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1978-05-30 第84回国会 参議院 建設委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月三十日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  四月十二日     辞任         補欠選任      堀江 正夫君     降矢 敬義君  四月二十一日     辞任         補欠選任      降矢 敬義君     藤井 裕久君      増岡 康治君     植木 光教君  四月二十二日     辞任         補欠選任      藤井 裕久君     降矢 敬義君  四月二十六日     辞任         補欠選任      太田 淳夫君     内田 善利君  五月九日     辞任         補欠選任      降矢 敬義君     宮田  輝君      赤桐  操君     青木 薪次君  五月十日     辞任         補欠選任      宮田  輝君     降矢 敬義君      青木 薪次君     赤桐  操君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安永 英雄君     理 事                 古賀雷四郎君                 坂野 重信君                 赤桐  操君     委 員                 遠藤  要君                 寺下 岩蔵君                 中村 太郎君                 降矢 敬義君                 堀内 俊夫君                 桑名 義治君                 二宮 文造君                 上田耕一郎君                 栗林 卓司君    国務大臣        建 設 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君    事務局側        常任委員会専門        員        森  一衞君    説明員        消防庁技術監理        官        矢筈野義郎君        消防庁予防救急        課長       荒井 紀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (既存建築物の防災問題に関する件)     —————————————
  2. 安永英雄

    委員長安永英雄君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月十二日、堀江正夫君が委員辞任され、その補欠として降矢敬義君が、また四月二十一日、増岡康治君が委員辞任され、その補欠として植木光教君が、四月二十六日、太田淳夫君が委員辞任され、その補欠として内田善利君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  赤桐操君の委員異動に伴い、理事に欠員を生じましたので、この際、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事赤桐操君を指名いたします。     —————————————
  5. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 建設事業並びに建設計画に関する調査を議題といたします。  この際、建設大臣から発言を求められておりますので、これを許します。櫻内建設大臣
  6. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 既存建築物避難施設整備促進に関する法律案提出に至らなかった事情並びに今後の方針について申し述べたいと存じます。  政府としては、既存建築物について、避難施設整備等により、その防災対策を推進するための所要法案を作成すべく努力を重ねてきたところであります。すなわち、昨年八月以来、学識経験者関係行政機関関係業界の代表から成る懇談会を設け、これまでに部会、小委員会を含め延べ二十一回にわたって鋭意検討を進めてまいりました。  懇談会においては、現在までのところ、避難施設整備に関する基本的な考え方についてはおおむねの合意を得たところでありますが、引き続きこの技術的基準細目について検討を進めるとともに、これを具体的な既存建築物適用した場合、円滑な改修が可能か否かの検証も必要でありますので、あわせてケーススタディーを実施しているところであります。  また、最近の雑居ビル火災事例にかんがみ、雑居ビルについてもさらにきめ細かい防災対策を講ずる必要がありますので、これらの作業とあわせてその対策についての検討を始めたところであります。雑居ビル対策を含め、懇談会作業は本年夏ごろには終了する見込みであります。  以上の事情により、今国会においては法案提出に至らなかったのでありますが、政府としては、懇談会における検討結果を待って、防災対策を推進するため、法案提出等所要措置を図る所存であります。
  7. 安永英雄

    委員長安永英雄君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 赤桐操

    赤桐操君 ただいま大臣の申し述べられたビル防災関係法案問題に入ります前に、冒頭ひとつ伺いたいと思いますのは、けさのテレビ、あるいは昨晩のテレビでも出ておりまして、私も驚いたのでありますが、藤沢市内東急ストア火災発生をいたし人身事故まで出しておる、こういう状況でありますが、この状況についてひとつ消防庁の方から御説明をいただきたいと思います。
  9. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) ただいままでに入手しております資料に基づきまして御報告申し上げます。  火災発生した時刻は昨日の四時五十六分ごろでございますが、当ビル東急ストア辻堂店でございまして、鉄筋コンクリート造五階建て、延べ四千二百七十六平米でございまして、火災発生いたしました場所は、四階の日用品売り場の付近より出火している模様でございます。  なお、消防設備設置状況はただいままでのところ基準に適合しておりまして、その面からすると適合しておる施設ではございますが、火災時における初動体制、お客に対する避難誘導従業員行動等については詳細に目下調査しておりまして、果たして適切であったかどうか、日常避難訓練等防火管理実態が十分徹底していたかどうかについてはさらに今後調査してまいる所存でございますが、いずれにしましても、一人の痛ましい子供さんの死者と六人の負傷者を出しておりますので、この種のチェーンストア、これは消防法スプリンクラー設置を義務づけておる規模のものでございませんけれども、この種の問題につきまして、ビル防災体制についてもさらに検討を加える教訓を得たというふうに思っておりますが、消防隊のはしご車によりまして幸いにも六名の救助がなされたということはせめてもの、消防の方から申し上げますと、犠牲者を少なくした結果であろうというふうに考えますが、いずれにしましても、この種の問題については多くの問題が今後あるやに感ずるわけでございます。
  10. 赤桐操

    赤桐操君 調査中であるということでありますので、これはその調査を待たなければなりませんが、いずれにしても先般の大事故以来この種ビル火災問題等については大変な実は注目の中に置かれておるわけでありますが、またここで一件痛ましい人身事故を含めた火災発生いたしております。ぜひひとつこれは十分に調査をしていただきまして、別途また御報告を願いたいと思います。また、この種のものにまで火災発生が及んできているというこの事実を踏まえて、消防庁としてもやはり真剣な事前対策、そういうものについての検討を要する段階に来ているのではないか、こういうふうに思いますので、それらを含めまして調査検討をして、御報告をひとつ待ちたいと思います。  続いて、ビル防災問題に入りたいと思いますが、過日の建設委員会理事懇談会で、住宅局長から、既存建築物避難施設整備促進に関する法律案、この提出ができないという説明が一応なされております。この法案につきましては、今国会提出についてもうすでに一月の閣議決定をされたところでありまするし、さらにまた、この建設委員会におきましても建設関係法案一つとして提出予定されていたものでありますが、この段階に来てついに提出ができなくなった、こういうことになったわけであります。どうも新聞の報道等いろいろとこの間になされておる動きがあるのでありますが、「「不景気な時代に巨額の防災設備投資を強いられる」という関係業界や自民党などからの声に押し切られた形」と、こういうようなことが朝日新聞四月二十八日号に出ておるのでありますが、まあ私は建設省当局が、あるいはまた政府がそういう形で押し切られたとは思いませんが、いずれにしても、どうもここまで来てこういう事態に相なったということについてはいささか理解に苦しむものがあるのでありますが、大臣の一応のお話はございましたが、真の理由をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  11. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 今回、残念ながら提出に至らなかったわけでございます。これはまあ私ども事務当局努力というものが間に合わなかったということで、まことにこれはおわびしなければならないというように考えております。  その理由は、ただいま大臣からお話し申し上げたとおりであります。これはやはり既存建築物改修というような問題でございます。したがいまして、既存建築物が非常に多種多様でございます。新しく新築するものなら一つ基準に合わして設計し、工事ができるわけでございますが、既存の多種多様ないろんな形、用途のものをどう安全にしていくかという問題は、技術的にも非常にむずかしい問題がございます。したがいまして、そういった技術基準を本当にそういった懇談会において徹底的に詰めていくというような作業をいたしております関係上、どうしてもこれが間に合わなかったということでございます。これは先生御指摘のように、いろんな業界がどうのというようなことではございません。まあ私ども昨年来約一年近くにわたりまして、こういった懇談会の中でいろんな真剣な討議を続けておりますが、その中で私どもやはり業界としても安全というものに対して真剣に考えていただいているものというように判断しております。当初は確かに、なぜこういうことをしなければならないのかというようないろんな質問なり疑問点懇談会において出されたことは事実でございます。しかし、最近ではむしろ前向きにこうすべきではないかというようなそういった提案もなされているというような状況で、私どもこういった懇談会の中を通じて、本当に私ども考えております安全性の向上ということに、徹底的にケーススタディーを通じて今後検討を進めてまいりたいというように考えている次第でございます。
  12. 赤桐操

    赤桐操君 この問題は、実はもう五年越しの懸案となっているいわばいわくつき法案と言われるわけでありますが、昭和四十九年の第七十二国会提出をされまして、衆議院で継続審議を繰り返した上で、五十一年の七十八国会遡及適用部分を削除して成立をさせた、こういう経過になっておるものです。その際に、竹田四郎参議院建設委員長から当時、「人命尊重の見地からの既存適格建築物に対する防災避難対策強化は焦眉の急だと考えられますが、政府としては次期国会に必要な法律案について提案する用意があるのか」、こういう質問が出されております。これに対しまして、当時の中馬建設大臣からは、「修正削除を機にさらに内容検討を加えまして、建築基準法とは別に既存特殊建築物等避難施設等強化のための法律案をまとめまして、次の国会に必ず提案いたしたいと考えております。」旨の答弁があったわけであります。この法案審議はそういうことで継続されておったわけでありますが、それにもかかわらず、こういう結果に相なっております。特にまた、前国会で私は、少なくとも前建設大臣考え方国会における答弁をもとにして、必ずこの通常国会には提出をするはずではなかったのか、こういう実は質問をいたしております。これに対しましては、当時の長谷川四郎大臣、さらにまた住宅局長、それぞれ政府側答弁といたしまして、大変遺憾の意を表明され、ただいまのこの通常国会には必ず提案をいたしたい、こういう旨の答弁がなされておるわけであります。これは議事録に明らかになっているはずであります。  そういう実は前国会、前々国会からの一連の経過の中で、この国会提出をするということで政府閣議決定をしたと思うのでありますが、どうもここまでまいりますると、これはいささか重ねられた答弁、しかもそれが行われていかないということは大変重大な問題でありまして、国会に対するところの答弁の軽視ということにもなるわけでございまして、これは大変私はこれから大きな内容を持つものになるだろうと思うのですが、大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  13. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中馬大臣、また長谷川大臣が、それぞれ国会における答弁におきましては、その都度、次の国会提案をしたいと、こういうふうに申し上げておる次第でございまして、そのお約束を果たしてないということはまことに申しわけない次第だと思います。  先ほど私から御了解を得るために御発言を申し上げたわけでございますが、学識経験者関係行政機関関係業界から成る懇談会において繰り返し御論議をいただき、あるいは小委員会設置してその論議を詰めていただいておる。それはそれなりに私は誠意を持って努力をしておるものと信じておるわけでございます。その作業と申しましょうか、協議されておる中身も、この夏ごろには終了をする見込みであるということでございまして、私は就任以来、先ほど赤桐委員が言われたように、この一月でしたか、この国会提案予定法案としてこの法案についてもしておるということを申し上げており、そして速やかに結論が得られるように、本当に誠意を持って努めてきておるのでありますが、報告も中間的に何遍か聞いておるのでありますが、何分にも私どもがお願いした懇談会の方で論議がなかなか詰まらない、こういう状況。あるいは実際上、百貨店であるとかスーパーであるとか病院であるとか多種多様な建築物についてどういうふうに施設をするかというようなことになってくると、そこにいろいろ論議が出るということも、これをまあ私の方から専門的におやりになっておることについてああだこうだとも言えない面がございます。  赤桐委員がおっしゃるように、この問題をさかのぼって考えればもう四、五年にもなっておるじゃないかと言われれば、なるほどそのとおりだと言わざるを得ないんですね。しかし、といって私がこの懇談会や小委員会の方の作業状況を見ると、なかなかむずかしいものだと思わざるを得ない点が多々あるわけでございまして、したがって、先ほどの御了解を得るための発言をした次第でございまして、長谷川大臣あるいは中馬大臣の言質からいたしますと、まことに申しわけない次第でございますが、以上のことが率直に申し上げるところでございます。
  14. 赤桐操

    赤桐操君 建設省側からいただいております資料の中で、「資料1 既存建築物避難施設整備促進について」というのがございます。この中の1の項の「既存建築物適用した場合円滑な改修が可能か否かの検証も必要であるので、」と、こういうことになっているんですが、それで、「必要であるので、あわせてケーススタディを実施している。」ということでありますけれども、一体この対象となる特殊建築物すべてにわたってこれは調査をしようとされておるのかどうか。それからまた、整備の資金も相当かかると思うんですけれども、融資も受けることのできないような経営状態に置かれているものがかなりの程度に上っておるのではないかと思いますが、これは一体どんなふうな実情であるのか、この辺のところをひとつ明らかにしてもらいたいと思うんです。
  15. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 私ども、当然技術基準細目を決めることに当たりまして、これは新しく新築するものと違いまして、先ほどお話し申し上げました多種多様ないろんな構造を持っております。したがいまして、そういった基本的な考えで実際にどの場所をどういうふうに直すかというケーススタディーが必要だということで、従来もいろいろケーススタディーを実施してきております。この懇談会でも実施しておりますし、懇談会の前にも私ども建設省で実施しておりまして、現在まで五十数棟にわたりまして全国的にいろんな用途のものをケーススタディーを実施してきております。その中で、ケーススタディー実施してみますと、やはり統一的に、あるこういったケース、こういったケースということが完全に分類できない。やはりこれは全数調査をやるべきではないかというような私、判断を持っておりまして、現在私どもがつかんでおります対象になるべき建物のむねが約二千四百棟というふうに考えておりますが、これは今回の夏までにはこのほぼ全数にわたりまして、地方公共団体にも御協力をお願いして、そして二千四百棟のほぼ全数について実施したいというように考えております。その際は、そういった技術的な細目適用した場合にどういうようなことになるかということだけでなくて、当然それに費用が大体どれぐらいかかるかというようなことも、逐一ケーススタディーとあわせて検討したいというように考えております。  それから、お尋ねの経営状態がどうかということでございます。これは大企業の上場されているような会社につきましては、経営状態はいろんな決算報告等で私どもも知ることができますが、大部分は上場されていない会社でございます。したがいまして、ただいまここでそういった赤字決算会社がどれくらいだというような明確なお答えができないのは残念でございますが、この点につきましても、そういったケーススタディー地方公共団体ケーススタディーを行います場合に、当然そういった状態も含めて検討していただきたいというように考えている次第でございます。  ただ、私どもこれはいろんな機会に聞くわけでございますが、たとえば地方百貨店等におきましては最近非常に経営が困難になっていろんな中央の百貨店あるいはスーパー等系列下に入るようなケースもよく耳にいたしておりますし、それから旅館等につきましても、特にレジャー関係のホテル、旅館等につきましては、最近のこういう状態の中で非常に経営的に苦しくなっているというような話も聞いております。また、特に公立の病院等につきましても経営的には非常にむずかしい状態に最近なっているというような話も聞いております。しかし、そういった問題も二千四百棟について実際上どういう状態になっているかということは、ケーススタディーとあわせて私ども調査をいたしたいというように考えている次第でございます。
  16. 赤桐操

    赤桐操君 次に、同じく「資料1」のところの2項に、「建設省としては、上記の検討結果を待って、所要措置についての制度整備を図ることとしたい。」と、こうなっておりますが、「所要措置についての制度整備」というのは、具体的に言うとどういうことになりますか。
  17. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 私どもは、そういったケーススタディーを通じまして八月までに技術基準あるいはそれの所要額、それからどうやってそれを直すか、安全にするかということを検討いたしたいと思います。それで、目的は結局そういった建物を安全にすることでございますので、まずそういった検討結果が終わりました段階で、私どもはこの既存建築物をどう安全にするかという防災対策基本方針、まあ要綱みたいなものを作成したいというように考えております。その対策要綱ができました段階で、その対策要綱に基づいて改修工事を実施するために法律改正が必要なのか、あるいは新しい法律の作成が必要なのか、あるいは既存建築基準法あるいは消防法等を背景にしました行政措置で十分にこれが達成できるのかどうかというような判断をいたしたいというように考えております。したがいまして、現在のところでは、そういった検討作業終了を待って最終的な判断をいたしたいということで「所要措置についての制度整備」というような表現をしているわけでございます。
  18. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにしても、これでこの国会にはこれは間に合わないわけですから、次の国会提出するということにならざるを得ないと思いますけれども、ともかく法案提出が断念をされる、この間また空白が続いていく、こういうことになりますが、この対策はどんなふうに考えておられますか。
  19. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) これは現在でも建築基準法十条がございまして、既存建築物で特に保安上著しく危険なものに対しましては措置命令が出せるような仕組みになっております。そういったものを当然活用しなければならないわけでございますが、これは消防庁とも御協力をいただきまして、春秋、毎年こういった特殊建築物を中心に防災週間に一斉査察を行っております。そういった一斉査察を通じまして必要な指導助言あるいは十条命令適用というようなことで日常いままでもやってきております。そういったものを今後とも強化し、防災週間だけでなくて日常的にもそういった指導をしてまいりたいというように考えている次第でございます。
  20. 赤桐操

    赤桐操君 消防庁の方にひとつ伺いたいと思うのですが、消防法改正は四十九年に行われまして、これに伴う措置については若干の、三年間の猶予期間ですか、これが置かれておったようであります。これが残念ながらこの猶予期間中には、猶予期間が置かれてその後いろいろ措置がなされておるわけでありますけれども、十分にこれが行われていない、こういうことが前回明らかにされておりますけれども、その後の状況はいかがですか。
  21. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 消防法改正によりまして、五十二年の三月までに遡及すべきものと、五十四年の三月までに遡及すべきものと二通りございましたけれども百貨店雑居ビル、地下街につきましてはすでに猶予期間を過ぎております。スプリンクラーの例をとりますけれども現実にどの程度設置しているかという実態調査をやりましたところ、全国分でまだ八三%しか設置されておりません。十大都市について調べてみますと、着工計画その他を含めまして約九八%、設置済みあるいは設置すべく着工工事中という状況でございます。いずれにしましても、こういうすでに猶予期間を過ぎておるもの及び来年の三月までに設置すべき予定旅館病院等実態調査いたしますと、スプリンクラーに例をとりますと、十大都市でことしの三月現在で計画を含めまして七八%ぐらいの状況でございます。現実設置されております率というのはさらに低いわけでございますので、強力なる行政指導を加えまして、期間内に設置完了すべき措置命令について現地の消防機関を督促しておるという実態でございます。  なお、先ほど建設省の方からもお話がございましたように、特に欠陥と申しましょうか、保安上重要なる問題点の多いビルに関しましては、消防法の十七条の四あるいは消防法五条に基づきまして措置命令使用停止等措置もとられるわけでございますので、できるだけ法律を守っていただくように根強い勧奨を続けますけれども、場合によってはそれらの措置も辞さないように行政指導を加えておる現状でございます。
  22. 赤桐操

    赤桐操君 消防庁側の御説明によりますと、去年の私が伺った数字よりは大分進んでおるように思うのですけれども、それでもまだかなり全国的にはおくれているということが実態だろうと思いますね。  そこで、今回予定されておりましたところの法案対象建築物というのは、いずれも床面積が千五百平方メートル以上のもの、さらに雑居ビルで二千平方メートル以上のものについての対象でありまして、それ以外のものについては及ばないというのが実情であろうと思います。それぞれの全国のこの雑居ビル状況とか床面積状況等については詳細な報告がなされておりますので、それらをもとにして検討するわけでありますが、中小の適用外のものがたくさんあるわけです。これが相当の数に上っている。最近の火災例を見るわけでありますが、昨日からきょうにかけてもテレビで放送され、先ほど消防庁の方からお話がありましたが、中小の雑居ビルの防火対策もこれから相当大きな問題として考えておかなければならない、こういう状況にあると思うのです。したがって、これらの中小の雑居ビルを含めた対策、これについてはどういうように考えるか、この点ひとつ伺いたいと思います。
  23. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 雑居ビルにつきましては、先生御指摘のように、中小規模の雑居ビルが頻繁に火災事故を起こしております。私ども消防庁の方と一緒に調べましたデータでは、スプリンクラー設置を要するような大規模な雑居ビル、これが約二千棟ございます。そのほか大体延べ面積が五百平米以上程度のいわゆる中規模の雑居ビルが約三万棟ございます。それから、百五十平米以上のものになりますとこれが八万四千棟程度ございまして、百五十平米以上の雑居ビルで十一万五千棟程度あろうかというように考えております。私どもはこういった中小の雑居ビルにつきまして問題が非常に多いということも感じている次第でございます。特に、中小規模の雑居ビルはその用途が非常に複雑雑多でございます。また、そういった中小規模の雑居ビルでございますと、ビル全体の管理体制というものも大規模のものに比べますとうまくいってない面もございます。また、中に入っております人たちが勝手に——と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、中のいわゆる造作につきましてしょっちゅう変更を加えているというような状態もございます。また、事故の事例を調べてみますと、事故が起こりました場合のビル全体に対するいろいろな通報装置、通報の事例、そういったものが非常にうまくいっていないというような問題がございます。したがいまして、中小雑居ビルにつきましては、施設の問題とあわせて管理上の問題もこれを指導していかなければ防災対策にならないというようなことを強く感じている次第でございます。したがいまして、中小の雑居ビル対策につきましては、消防庁と御一緒に今後とも、先ほど申し上げました懇談会の中でもこういったものも含めましてその対策について検討さしていただきまして、私ども、中小規模の雑居ビルができるだけ早く安全になるような対策をつくりまして、そしてそれを強力に行政指導をしてまいりたいというように考えている次第でございます。
  24. 赤桐操

    赤桐操君 中小の雑居ビルを含めた新法をつくるということについては考えられませんか。
  25. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先ほど申し上げましたが、そういった中小の雑居ビルも含めまして対策要綱を定めまして、そしてそれは新法による方がいいのか、あるいは既存法律改正がいいのか、あるいは現行の法律をもとに行政指導していった方が効果が上がるのか、そういったことを判断いたしまして、その判断に従いまして所要措置をとりたいというように考えている次第でございます。
  26. 赤桐操

    赤桐操君 いろいろ先ほど来御答弁をいただいてきたのでありますが、私は行政指導だけではできないということが明らかになっていると思うのです。したがって、どうも最近の動きを見るというと、建設省内部にも、いっそのこと行政指導に切りかえて十分じゃないかという意向もあるように聞いておりますが、まあなければ幸いでありますけれども、そういう形ではなくて、少なくともこの問題が発生した経緯から考えるならば、これはもう法律として当然一日も早く設定しなければならないし、法律をもって、新法をつくっていかない限りにおいては私はこの指導はできないというように考えるわけです。もうすでに前国会、前々国会以来の経過から考えてみて、私は単に行政府だけの問題ではなくて今日国会そのものの責任が問われ始めてきているのではないか、こういうように感ずるんです。したがって、同じことを何遍も繰り返す必要はもうないのでありまして、問題は、政府も一たん閣議決定したわけでありますし、今国会ではこれは間に合わないといたしましても、次の国会では出すのか出さないのか、こういうことに帰着すると思いますが、この点についてひとつ所見を伺いたいと思います。
  27. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先ほど大臣から冒頭に御説明申し上げましたように、私ども懇談会検討作業が夏に終わりました段階で、そういった最終的などういう方法でこの防災改修促進するかというような判断をいたしたいというように考えております。その中で、どういう方法でやることが本当に実効が上がるのかという問題がございます。私ども技術基準をいろいろ検討していく中で、一律の基準を決めてそれを実施するというような形をとりました場合に、本当の実行ができるという基準をいたしますと、全国一律に非常にある程度低い水準を決めざるを得ないというような状況考えられます。果たして全国のこういったビル防災対策上それが一番ベターな方法なのかどうかということも、こういったケーススタディーを通じて本当に真剣に私ども検討さしていただきたいというように考えている次第でございます。したがいまして、現在のところ、私ども、そういった新法をつくるのか、あるいは既存法律改正をするのか、あるいは既存法律をバックに強力な行政指導でいった方が効果があるのか、そういったことはケーススタディーの結果を待って判断さしていただきたいというように考えておる次第でございます。
  28. 赤桐操

    赤桐操君 最後に、私は重ねてお願いをしておきたいと思うのでありますが、少なくとも全部のケースに満足されるようなものということになったら、これは私は成り立たないと思うんですよ。やはりわれわれは、一定の基準というものをきちっと決めて、そこに引き上げていく努力をしなきゃならぬ、それが私は国の行政であり、また責任だと思うんですね。そういう意味で持っていかなければ安全を保障するビルにはならないと思うんです。したがって、私は経営が中心じゃなくて安全を保障するビルでなければならぬわけですから、そういう意味でこの基本的なものをひとつ踏まえて、全体がもう納得するなんということはこれはあり得ないわけですから、そういうことにするならダウンしてしまうわけなんで、いまのお話のとおりになりますから。一定の基準というものはこれは当然守ることできないわけですから、そこに引き上げるためにどうしたらいいか、こういう前向きの姿勢で次期国会にひとつ提案してもらうようにお願いしまして、私の質問を終わります。
  29. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほどからの質問の中にも、五年続きの流産ということで質疑が行われたわけでございますが、その中で今回このようにビル防災法が再び流産になったといういわゆる説明が一応行われたわけですが、一番のいわゆる流産したというそのポイントはどこにあったわけですか。
  30. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 私ども、やはり一番のポイントは技術基準のところにあったというように考えております。技術基準の一応基本的な考え方につきましては懇談会において大体筋書きができたわけでございますが、これを細目技術基準に落とした場合に、果たしてどういう方法をとった場合にそういう目的を達成できるのかどうかというようなこと、そしてそれが果たして現実ビルにアプライした場合に実行可能かどうかという問題。これはその経営上という問題だけでなくて技術的に可能かどうか、あるいは既存建物を大きく壊しながら改修しなければならないのかどうかというようなそういった問題を含めてケーススタディーを通じて詰めているわけでございますが、ケーススタディーをやってみるほど非常に複雑ないろいろな多様な構造の建物が多く、そしてそれを例外、例外といろいろな規定をつくっていきますと非常にこれが大変な作業になってくる。そして、もっとこういうものがありはしないかというようなケースもございます。したがいまして、私どもこういった先ほど申し上げました五十数例のケーススタディーだけではこれでもう十分だというような確信が持てないということもございまして、先ほど申し上げました二千数百棟全部にわたってとにかく調査をしてみようじゃないかというような懇談会での結論になったわけでございます。それが今回残念ながら間に合わなかった一番大きな点だというように考えております。
  31. 桑名義治

    ○桑名義治君 関東では地震ということが非常にいま心配をされているわけでございますが、こういう震災にあわせてもビル防災法というものは当然改正をしていかなければならない急務のことであろうというように考えられるわけでございます。それと同時に、先ほどからも質疑に出ておったわけでございますが、今回、昨日の東急ストアの火事、こういうものも起こっておりますし、それと同時に、きのうは歌舞伎町で同じようにビル火災があっておりますが、これはスプリンクラーでこの火事の災害を消しとめることができた、非常に有効に働いた、こういう事柄が新聞では報道されているわけでございます。そういうふうにいろいろと考えると、消防法改正あるいはまた充実、あるいはまたこのビル防災法の改正ということが、防災、火災については非常に大きな役割りを占めているということは、これは一つの事例として昨日あらわれたわけでございますが、こういったことを考えながらこの問題は早急に対処していかなければならない、こういうように考えるわけです。先ほどから、では来年度の次国会には防災法の改正案が提出されるのかどうかというこの質疑に対しては、別に明確な御答弁がなかったように思われるわけですが、その点はどのようにお考えですか。
  32. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先ほども赤桐先生の御質問にお答え申し上げましたが、私ども八月までに二千四百棟のケーススタディーを行いまして、どの建物にはどういう改修措置が必要だということを一々検討したいというように考えております。その結果、これは新法をつくって、そして一律の基準でもってこれをやった方がいいのか、あるいは一律の基準じゃなくて、最低の基準は押さえながら、それをできるだけ現実に合わせて安全な方向に向上させるような行政指導をしてやった方がいいのか、この辺について私どもケーススタディーが終わった段階でひとつ判断さしていただきたいというように考えている次第でございます。
  33. 桑名義治

    ○桑名義治君 行政指導というお言葉が出たわけでございますが、四十九年の六月に消防法改正があったわけですが、いわゆるその改正基準にも現在まだ合っていないビルがたくさんあるわけですね。法が改正をされてもこれの基準が守られない。そういった中で果たして行政指導でもってどれほど効果があるのかということは非常に大きな疑問が残るわけです。それは行政指導になれば個々のビルについて具体的な指導ができるかもしれません。法改正ということになれば、ある一定限度、いわゆる一律な規制に終わるという面も出てくるかもしれません。しかし、現在の段階でこの法が完全に守られているならば行政指導ということも一応は考えられるわけですが、法律ができてもそれが守られない、そこに大きな問題がある。そうなってくると、やはり行政指導ということは非常に大きな疑問をわれわれは持つわけでございますが、行政指導になった場合にその強制力をどういうふうにするか、そこの点はどういうようにお考えですか。
  34. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 現行の建築基準法の第十条の既存の不適格建築物、これは原則的には新しい法律の規定は適用しないわけでございますが、ただその場合、「著しく保安上危険」な場合には行政命令が出せるというような規定がございます。ただ、従来こういった「著しく保安上危険」というものがどういう判断に基づいてそれが行い得るのかということが、地方公共団体におきまして、一律の判断基準がないということでなかなか従来も全般的に活用できないという面がございました。したがいまして、私どもは、こういった十条の「著しく保安上危険」という判断政府が示すことによりまして、従来よりもこういった十条の措置命令をバックに強力な行政指導が可能になるんではないかというような判断をいたしているわけでございます。
  35. 桑名義治

    ○桑名義治君 昭和四十九年の六月に消防法改正があったわけでございますが、このときに既存建物についても、ビル全体の防火計画スプリンクラー、それから自動火災報知機、それから避難器具、防火設備、このような遡及適用をすることになったわけでございますが、ここで今日までの五十二年遡及防火対象物の消防用設備等の全国における設置状況をまず説明を願いたいと思います。
  36. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 手元に屋内消火栓設備とスプリンクラー設備の二つにつきまして全国分の統計資料がございますので御説明申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。——屋内消火栓設備につきましては、百貨店等について八六・一%、雑居ビルについて九三・六%、地下街につきましては九八・一%、平均いたしまして九〇・九%でございます。スプリンクラー設備につきましては、百貨店等については九一%、雑居ビルについては七六・九%、これは非常に率が低いわけでございますが、地下街については九一・一%、平均いたしまして八二・六%でございます。なおまだ未設置のものが残っておるという実情でございます。
  37. 桑名義治

    ○桑名義治君 本来ならば、これらのものは五十二年の三月三十一日までに設置が終わらなければならないわけであるわけですが、スプリンクラー設備においては複合用途では七六・九%、屋内消火栓設備を見ても百貨店等では八六・一%、このような状況になっているわけでございますが、このような未達成の原因はどこにあるのか、今後こういった問題についてはどのように行政指導をなさろうとしておられるのか、まず伺っておきたいと思います。
  38. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 技術的に、遡及する設備について、具体的にこれを適用する場合に非常にむずかしい問題があるということは、建設省の方からも避難施設についてるる御説明がございましたが、私どもの方の消防設備に関しましても、営業を開始しながら遡及するということは非常にむずかしい問題がございます。しかしながら、やはりこういう安全というものは重要なことでございますので、率先してできるだけ法律が求めておる猶予期間内において設置するよう、現地の消防機関の方は関係者と会談を重ねながらじみちに努力をしておる実情でございますけれども経営の問題その他諸般の事情もございまして、ただいま申し上げましたような設置状況でございます。なお、これらについて私どもは資金のあっせん、税制上の措置等もあわせて講じながら、できるだけ遡及設置するように努力しておりますが、何よりも関係者の自主的な防災意識の認識といいましょうか、そういう点が一番重要なことではなかろうかと考えておる次第でございます。
  39. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうすると、消防庁としては、このような設置については大体いつをめどに一〇〇%を目指そうと考えておられるのですか。
  40. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) すでに五十二年の三月で期限が切れておるわけでございますので、消防法上は違反建築物になっておるわけでございます。したがいまして、法律の十七条の四に基づく消防設備規制、場合によりましては、非常に危険であると認められるものについては消防法五条に基づく使用停止命令等の措置も辞さないような強い姿勢で実は臨んでおるのが現状でございます。さらに、こういう点についてできるだけ早急に一〇〇%に設置が完了するようにいま目下努力を重ねておる。あわせて、来年の三月までにも設置しなければならない対象物もございますので、並行的に続行して作業をしておる状況でございます。いつまでという目標は掲げておりませんけれども、できるだけ早急に設置するよう督促しておる状況でございます。
  41. 桑名義治

    ○桑名義治君 冒頭にもちょっと申し上げましたように、昨日の歌舞伎町のビル火災におきましても、スプリンクラーが作動しなかったならばどのような状況になっただろうかという、背筋の寒い思いがするというような記事が書いてあるわけでございますが、スプリンクラーは初期消火ということについては非常に大きな効果をあらわしているという一つの実証になっていると思います。そうなってまいりますと、今回の法改正が流産になったというその一場しのぎの場においても、こういった消防施設を完全に施行させるということがこういう悲惨な災害を未然に防ぐことにもつながってくると思うんですね。そういった立場を踏まえて考えた場合には、少なくとも既存の現在ある法は完全に施行する、その上に立ってさらに次の方法を考えていく、防災の方法を考えていく、こういう方向をとらなきゃならないと思うんですね。幾ら法律をつくってもそれが完全に守られなければ何にもならないわけですね。だから、そういう立場から現在こういうふうに消防法改正もされているわけでもございますし、四十九年の六月に消防法改正があっているわけですから、少なくともこの基準は完全に守られるというその体制をつくるということが私はいまの段階では最も大事なことであろうと、こういうふうに考えるわけでございます。この完全な法の施行を、やはり一つの目標を決めて、そしてそれに向かって万全を期していく方向をとっていくのがいまの段階では最もベターな方法ではなかろうか、こういうふうに考えるわけですが、その点についてはどうお考えですか。
  42. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 全く先生と同感でございまして、御指摘のとおり、法律によって義務づけられているものについては、本当にそれを守っていただくように私どもも期待しておるわけでございますけれども、残念ながら先ほど申し上げましたような設置状況でございますので、私どもも非常に強い姿勢でこれらの完全なる設置について臨んでおるという状況でございますので御了承願いたいと思います。
  43. 桑名義治

    ○桑名義治君 ただ、国会でわれわれが了承したということでは、これは何にもならないと思うんですね、実際に災害はどんどんどんどん起こっていくわけですから。だから、もうやはり相当強い姿勢で、ある一定限度臨んでいかなければならないんではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、通常の単一企業が使用しているビル百貨店、これと違って雑居ビル防災対策にはむずかしい点が多々あるわけでございますが、こういった雑居ビルに対してどのように対処していこうというふうに考えておられますか。
  44. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 雑居ビルにつきましては、先ほど申し上げましたが、こういったいわゆるスプリンクラーなり、あるいは建築基準法に基づきます階段とか内装制限とかいろんな規定がございますが、それ以上にやはり雑居ビルは管理体制がなかなか複雑でうまくいってない。それから、中の造作につきましては、統一的な設計に基づかないで、後で入居された方が勝手にいろんな造作を取りつけられるというようなそういった問題、あるいは場合によっては、営業の形態によっては必要な窓をふさいでしまうというような問題、そういったいろんな問題が絡み合って安全上の問題を複雑にしているわけでございます。したがいまして、私どもも、そういった設備等のフィジカルな問題だけでなくて、管理問題もあわせてこれを考えなければ本当の雑居ビル対策というのは完璧を期しがたいということでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたが、この懇談会の中にも消防庁に御参加を願っております。そういった懇談会の中でもこういった雑居ビルの特に中小雑居ビルにつきましても対策を御検討願いまして、必要な対策を講じてまいりたいというように考えている次第でございます。
  45. 桑名義治

    ○桑名義治君 四十九年の六月の消防法改正で、雑居ビルでもスプリンクラー、それから自動火災報知機、誘導灯、非常警報設備、屋内消火栓、こういったものが設置をされることが義務づけられたわけでございますけれども、しかし、建物のいわゆる面積によって規定があるわけでございまして、ここに一番問題がやっぱり存在しているのではないかというふうに思うんです。最近のいわゆる火災における災害ですね、それをずっと見てみますと、大きなビルよりもむしろ中小ビル一の方が非常に災害が多い、しかも人身事故が多い、こういうふうな一つのデータが出ているようでございます。先ほどからも議論になっておったわけですが、こういった中小の規模の雑居ビルに対してやっぱり適正な適切な処置がとられていかなければ災害の絶滅は期しがたいと、こういうふうに思うわけでございますが、その安全対策はどのようにお考えですか。
  46. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先生おっしゃるとおりでございまして、これは建築基準法あるいは消防法も同じようでございますが、やはり高さとか床面積とか大きいものにどちらかというと規制が厳しくなっているというような面がございます。これは社会的に見て、大きな建物にもし事故が起こった場合に社会的な非常に大きな影響が大きいということから、ある程度うなずけるわけでございますが、ただ、本当の安全の確立というような純技術的な面だけから判断いたしますと、むしろ私どもは中小のそういった雑居ビルの方が安全の確立は低いというように考えざるを得ないというように考えております。特に、中小のいわゆる鉛筆雑居ビルがございます。これはどうしてもそういった構造上から申しましても階段が一つしかとれない、出入り口は表通りだけしか出入り口がとれないというような、それはもう構造上の制約があるような建物が特に大都市の盛り場等につきましてはたくさんございます。こういったものをやはりどうやって安全にしていくかという問題は、先ほど申し上げましたが、そういったフィジカルな設備だけでなくて管理上の問題も含めて検討しなければなりませんが、同時に私どもは、これは都市構造の問題として、ああいった中小の鉛筆雑居ビルが林立するという都市構造そのものにやはり基本的な問題があるんではないか。ですから、私どもは、これはできれば再開発としてある程度まとまった再開発を行いまして、こういった中小の雑居ビルでない安全なビル化を進めていくというような対策、これはなかなかそう簡単にまいるわけではございませんが、そういったものもあわせてやっていかなければならないのじゃないかというように考えている次第でございます。
  47. 桑名義治

    ○桑名義治君 確かに既存建物についてこういったいろいろな防火設備をするということは大変なことかもしれません。しかしながら、そういうビルを建てたということ、それについてはやっぱり社会的な責任も同時に負っていかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、初期消火においてはスプリンクラーが非常に評価をされているわけでございますし、先ほどからたびたび申し上げておるように、今回の新宿のビルの場合だって、このスプリンクラーの作動によって大災害を免れることができたと、こういうふうに言われておるわけでございますが、いわゆる雑居ビルにおいても百平方メートル以上のものだけが義務づけられているわけでございますが、百平方メートル以下の雑居ビルでもスプリンクラーのようないわゆる初期消火に対応する器具をつける必要あるんじゃないかと、こういうふうに考えるわけでありますが、この点はどのようにお考えですか、消防庁
  48. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 御指摘のとおり、非常に小さな雑居ビルについての防火対策というのはきわめてむずかしい問題が多々ございまして、先ほど来建設省の方から御答弁していただいておりますように、管理形態のみならずハードの面も含めまして私ども非常に問題点が多いと思っております。御指摘のような自動的に散水できるような簡易なスプリンクラー設備が小さな規模のものにも適用できる、こういうものが開発されますと、私どもはその段階において考えないといけませんけれども、現在のスプリンクラー設備というのは相当大きなシステム全体として経費のかかるものでございますので、どうしても法律上規制する場合に一定規模という線を引かざるを得ないと、こういう実態でございます。それでは、そういうところはもう野放しになるのかということになりますけれども、それはできるだけ早期に火災を発見し、避難する、あるいは内装材料を不燃化する、区画をきちんとするといったような他の方法をもあわせ総合的に考えることによって防災対策の確立を期してまいりたいと、かように考えております。
  49. 桑名義治

    ○桑名義治君 なぜ私がしつこくこの問題を言うかといいますと、元来、雑居ビルというのは火を使う業者が多いわけですね。いわゆる飲食店、キャバレー、ダンスホール、クラブ、バー、こういった雑居ビルが最近は非常に多いわけですね。だから、非常にそういう危険性をはらんでいるビル、そういったところが放置をされているということはやっぱり非常に大きな問題がある。それと同時に、先ほどからいろいろとお話がありますように、雑居ビル防火管理体制をきちっとすると言っても、これまた経営者がばらばらですから非常にむずかしい。そういういろいろな難点があるがゆえに、多少の経費がかかってもやはりこういった初期防火に対応するだけの体制を整えるということが社会的責任ではなかろうかと、こういうふうに考えるわけでございますが、その点はどうでしょうか。
  50. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 御指摘のとおり、雑居ビルにおける各テナントがそれぞれの安全を期するということは社会的責任だというふうに私ども考えておりますけれども、何せ区画の面積というものが非常に多種多様でございますので、これを一律に法的に規制するというのはなかなかむずかしい問題がございます。研究をいたすことにいたしますけれども、それらの点をもう少し能率のいい消防設備なりあるいは防火管理のソフトの面も含めまして、安全を期する方法はないかということをさらに検討を続けておる段階でございますので、いま先生の御指摘のように、自動的に消火するということだけでは問題は解決しないんではなかろうかというふうに考えておりますから、まあ総合的な面から検討してまいりたいと、かように存じております。
  51. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、雑居ビル防火管理体制を定めた消防法の八条の二は徹底されているわけですね。
  52. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 管理を異にするビルについて特に防火管理者を選任する義務がございますけれども、それを統括して共同防火管理を行うということが消防法上義務づけられておるわけでございます。現実雑居ビルについてこれを実態調査をいたしてみますと、必ずしもその統括防火管理者が適確に消防計画を作成し、訓練を行い、全体のばらばらの各テナントを統括して防火管理しておるという実態でございませんので、強い指導をかけておる段階でございます。
  53. 桑名義治

    ○桑名義治君 そのように、雑居ビルに対してスプリンクラー等のいろいろな防火設備をつくることも非常にいろいろ困難な問題点がある。問題は、それぞれのいわゆるテナントが社会的責任を感じてどういうふうに防火体制をつくっていくかというのが主目的とするならば、先ほど申し上げましたように、少なくとも雑居ビル防火管理体制をこの消防法の八条の二によって完全にその体制をつくり上げるという、そういう強力ないわゆる行政指導こそがまたここで必要になってくるというふうに思いますので、その点については十二分のいわゆる強力な指導をお願いをしておきたい、こういうふうに思います。  それから、昨年の三月、建築物防災指導週間中に、建設省は約四千件のビル対象に防災上の安全点検を行ったというふうに聞いておりますが、そのうち約三千件が改善の指導を要するビルであったと、このようにも言われているわけでございます。そのほとんどがいわゆる避難手段の未確保、スプリンクラー、それから防煙シャッター、それから火災感知器、消火施設の不備である。あるいは建築基準法の第十条では、保安上危険である建築物に対して改善、使用制限等の処置がとられるようになっているわけでございますが、過去三年間の第十条適用件数、行政指導数を伺っておきたいと思います。
  54. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 建築基準法の第十条は、先ほども申し上げましたが、既存建築物について著しく保安上危険な場合に措置命令が出せることになっております。これは日常的にもやっているわけでございますが、特に春、秋の防災週間におきまして一斉査察を行いましてそういった措置を行っているわけでございます。ただ、十条の命令を出します場合に、一応予告通知というものをいたします。そして予告通知の段階ビルのオーナーが直していただいた場合には本命令まで至らないというようなそういった仕組みになっております。したがいまして、そういった予告通知を出しましたものも含めまして四十九年度が百七十三、五十年度百十四、五十一年度が百十三ということになっております。また、そういった著しく保安上危険かどうかという判断までには至らないが、ここはこう直してほしいというような行政指導をいたしました件数が、四十九年度が三千百三十四、五十年度が二千八百四十三、五十一年度が二千二百三十九ということになっている次第でございます。
  55. 桑名義治

    ○桑名義治君 消防庁では、緊急時の避難通路や適切な消防施設がない危険な既存雑居ビル等に対して、たとえば看板、広告のように、避難階段等を、一部敷地をはみ出してでも設置するように指導しても道路占有等の問題でむずかしい点があるというふうに聞いておるわけでございます。いわゆる看板は出すことは許可しても、なかなかその避難通路、避難階段、これが道路にはみ出したためにこれは無理だというようなことでそのまま放置されているような状況下にあるわけでございますが、そういう点についてはどのようにお考えですか。
  56. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) こういったビル防災対策につきまして、道路の上空に避難階段を設けたらどうかというような、そういうようなお話が昔からございます。また、現実にアメリカ等では、やはり昔からそういった安全対策のために、町を歩きますと、道路の上に避難階段が出ているケースが非常にたくさんございます。そういったことで私どもも鋭意検討しているわけでございますが、現在のところ避難階段につきましてはこれを許可しておりません。  これは道路法の占用の運用の問題が一つございます。それからもう一つは、建築基準法で、道路の内に設ける建築物については一応政令で指定されております。その中で、ビルビルとをつなぐいわゆる渡り廊下がございます。これにつきましては、一定基準のもとに建築基準法上渡り廊下を道路の上につくってもいいというような規定が設けられております。道路占用の方でもそういった運用をいたしております。こういった渡り廊下は、これは防災上も非常にこれは効果があるというように私ども考えておりまして、そういったものは今後とも実情に合わして進めていかなければならないわけでございますが、現在のところそういった避難階段を道路の上にはみ出させるということにつきましては、現在まだ基準法の政令の改正あるいは道路占用の運用基準の問題、そういった問題を改めなければできない状態でございます。したがいまして、私どもは、こういった問題につきまして確かに問題がございますので、先ほど申し上げましたケーススタディーを通じて、本当にどことどこが、どうしてもこれでなければ安全に改修ができないというようなケースをつかまえまして、それがどうしても必要だということなら道路当局とも相談いたしまして、必要な規定の改正なり何なりをして対処してまいりたいというように考えております。
  57. 桑名義治

    ○桑名義治君 それから、防災上のもう一つの問題としまして、建物の構造と同時に建設資材の安全性という事柄が常に論議をされているわけでございます。特に、雑居ビルのような飲食街が多いものは、特にその壁あたりはいろいろな装飾で新建材や、あるいはガスを発生するようないろいろな建材が使われているわけです。こういう合成建材の多用を制限する等の検討はなされているのかどうか、この点について伺っておきたいと思います。
  58. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 現在のところ、そういった雑居ビルだけでなくて、普通のビルにつきましても内装制限を行っております。現在のところ、三階以上で延べ面積が五百平米以上の建物、これは雑居ビルだけではございません、一般の全部の建物でございますが、これにつきましては、居室につきましては難燃材料以上の壁の仕上げをすること、それから階段とか廊下等の避難施設につきましては準不燃材料以上の内装仕上げをすることというような規定が設けられております。特に、そういったバーとかキャバレーとかいったような特殊建築につきましては、居室につきましても準不燃材料以上の内装をとるようにという規定がなされているわけでございます。  ただ、私ども雑居ビル実態を見ておりますと、壁は確かにそういったものでつくられておりましても、先ほども申し上げましたが、後からテナントとして入った方が、やはり商売上のいろいろな問題で、その上にいろいろな飾りつけをされる、これが可燃材料で行われる。それから、たとえばバー等でございますと、せっかく不燃材料でつくられました壁の上にカーテンのようなものを、可燃のものを張りめぐらす、そういったような問題がございます。これは法体系上、後からのいろいろな飾りつけの問題あるいはカーテン等につきまして、建築基準法あるいは消防法上これをどうやって法体系の上で整理していくのか、これはこれからの非常に大きな研究課題ではないかというように考えております。したがいまして、そういったものも含めまして今後十分に検討をさしていただきたいというように考えている次第でございます。
  59. 桑名義治

    ○桑名義治君 それともう一つ、東北地方を襲った震度四の地震で仙台市内ではビルの窓ガラスの雨が降った、こういうことで災害が起こったわけでございますし、三菱重工業の爆破事件でもガラスの破片で多数の死傷者が出た。昭和四十年以前に建築されたビルの多くはスチール製の固定枠を使用しているために弾力性がない、そのためにちょっとしたきしみでもガラスが割れるというような危険が十二分にあるわけでございます。こういった被害を最小限度にとどめるためにやはり処置をしていかなければならないのじゃないかというように考えるわけですが、この点については建設省としてはどのようにお考えですか。
  60. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 現在の規定では、三十一メーター以上のビルにつきましては、建物が変形してもガラスが割れないような遊びを設けるような規定が設けてございます。しかしながら、それ以下のビルにつきましては、現在のところそれに相当する実体的な規定が設けられておりません。仙台の地震、それからアメリカでも数年前のロサンゼルスの地震、これもガラスの被害が非常に多かったということで、ずっと検討を進めておりますが、ただ、仙台の場合等でも、私どもの建築研究所の調査によりますと、ガラスが割れたのは主として固定したいわゆるはめごろしの窓で、かつ古いビルで、いわゆるパテを使って固定してあるというものが非常に被害が大きいというようなことのようでございます。最近のいわゆるガラスのとめ方としましては、合成ゴム系統のものでとめるように一般的になっております。したがいまして、そういったものにつきましては仙台の地震でもほとんど被害が出ておりません。  したがいまして、問題は、これからそういった古いやつをどうやっていくか。これはいろんな地震対策上のこともございますし、あるいは昨日の辻堂の火災におきましても、火災のためにガラスが相当割れて路上に散乱した、これが幸いにしてアーケードの上だったからよかったというような新聞報道もございます。そういった全体の問題も含めまして、こういった古い建物の、特に人がたくさん通行するような道路に面したものにつきまして、どうガラスが割れないような措置ができるかというようなことにつきましても現在建築研究所でいろいろ研究していただいておりますが、たとえばフィルム状の薄い膜をガラスの内側から張りまして、割れても粉々になって飛び散らないようにというようなことも可能性があるんじゃないかというようないろんな研究をしてもらっております。そういった研究成果を待って、できるだけそういった主な道路に面しますガラスにつきましては、そういった措置をとってもらえるようなことを考えていきたいというように考えている次第でございます。
  61. 桑名義治

    ○桑名義治君 最後に、これは要望としてとどめておきますが、いまから先、日本のような土地柄でありますと、土地の有効利用ということで上に伸びる以外に道がない、そういう方向へ急速に進んでいるこういう状況の中でもありますし、あるいは先ほど申し上げましたように、また大震災が起こった場合には、大地震が起こった場合にはどう対応するか。そういったいわゆる震災対策についてもいま非常に計画を立て、あるいはいろいろな研究がなされておる重大課題を関東地方は持っているわけでございます。そういったいろいろな面から考えまして、いろいろビルの災害をどういうふうに未然に防ぐかということで、今回のこの法改正がなされなかったということは非常に残念ではありますけれども、しかし、よりベターな方向で検討を進めた上で提出をするということになれば、これまた話は別でございますが、いずれにしましても、これはそう猶予のある問題ではございませんので、早急にこの問題の解決のために全力を挙げて取り組んでいただくことを要望して、終わりたいと思います。
  62. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ピル防災法の五年越しのおくれというのは、やはり人命尊重の問題、重要な問題だと思います。私、先日東京消防庁へ行っていろいろ聞いたり資料を見せてもらったんですが、東京の場合、たとえばデパート、それから地下街、雑居ビル等のスプリンクラー設置、約三百三十五あるんですね。五十二年度遡及適用なんですけれども、非常に東京消防庁一つ一つ行政指導もし、やっていて、いまあと計画提出していないのはたった一つというところまでやってきたというふうに言っていました。多少おくれてはいるけれども、ここまでできたのはやはり消防法遡及適用という法改正、これがあったからだということは明らかだと思うんですけれども、スプリングラーや屋内消火栓等々、消防法関係遡及適用が行われてこうやっているのに、建築基準法の方の既存建築物に対する法適用ですね、これが非常におくれているということは、火災防止あるいは避難の責任を持っている消防庁としてなかなか大変な問題だと思うんですけれども、このおくれについて消防庁としてはどうお考えですか。
  63. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 建物の安全対策というものは、建築構造あるいは消防設備を全部ひっくるめまして総合的に考えないといけない問題でございます。火災発生した場合における人命の安全という問題につきましては、消防は、具体的な現場活動もさることながら、予防行政を通じて精力的にその面についての効果が上がるよう行政措置をいたしておるわけでございますので、そういう観点から申し上げるならば、やはり建築基準法上のいろんな避難施設、防火区画等が火災発生した場合に十分でないと考えられるケースがあれば、それを具体的に安全な面にカバーするよう措置するということは当然望ましいことでございますので、具体的な行政指導は、消防としては消防設備の遡及と同時に加えておるという実態でございます。しかしながら、現実において権限が建築行政庁にありますので、両機関がよく密接に協調しない限り効果を上げるということは期待できないというふうになりますので、従前も十分協調をとって推進してきておりましたが、さらに今後は一段とそういう面についての連携を強化して、ビル全体の総合的な安全というものを考慮してまいる必要があろうかと思っております。
  64. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 桑名委員質問で、なぜこうおくれているのか、ポイントは何かと言うと、救仁郷さんは技術的基準の問題だと言われました。ケーススタディー、五十数棟やったと。しかし、これでは足りないので二千四百全部やると言われるのですね。全部やるのだとケーススタディーじゃなくてオールスタディーなんで、とんでもない話だと思うのですね。五十数棟やって、建築はそれは二千四百全部違うでしょうけれども、タイプ分けはできるんでね。なに二千四百全部やらなければ法律要綱ができないというのは、これはおくれをやっぱり合理化することにしかならぬと、そうも私は考えざるを得ない。二千四百これから全部やって、夏までにやるというこの考え方ですね。何で五十数棟で足りなかったら百ぐらいでできないのか。二千四百やらなければわからないほど建設省には技術者が少ないのか、あるいは知識も経験も不足なのかという責任さえ問われる問題だと思うのですけれども、いかがですか。
  65. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 五十数棟、私ども実際にやってまいりましたのは、むしろ本当のケーススタディーという観点から技術的基準を、こういったケースではこういった対処の方法があるというようないろんな建築物の多様性に対応しまして細かい技術基準を作成するためにケーススタディーをしたわけでございます。したがいまして、今後私ども二千四百棟につきまして、そういった技術基準をつくった場合に、それだけのいろんな多様性に対して対応できるのかどうかという検証を、やるというような気持ちでやるわけでございます。そしてそういった五十数棟のケーススタディーを通じた細目技術基準が本当にそのままでいけるのかどうかという検証をいたしたいということで実施したいということでございますので、決して五十数棟のそのままを二千四百全部にわたらなければ技術基準がつくれないというような性質のものではございません。これは私ども本当に確信を持つために検証いたしたいというためのケーススタディーじゃなくてオールスタディーをやりたいということでございます。
  66. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは議事録を調べなければならぬけれども救仁郷さんは、先ほどは五十数棟ではたしか分類やタイプがなかなかできないという答弁を一度おっしゃいましたので、いまの答弁とちょっと違うと思うのですね。しかし、問題はこの技術的基準にあるということは、恐らく正確でしょう。われわれ非常に危惧するのは、最初の建築基準法改正にあった法律内容、それから昨年衆議院の理事懇で建設省側説明された法案並びに政令案の中身、それから今回私どもがいただいた、新しい懇談会で一致したと言われる技術的基準、この三つが次々と後退しているという点に、事人命にかかわるだけに非常に危惧を持つわけです。たとえば進入口の問題を見ますと、最初の基準改正では十メートルに一つ必要だったという案だったわけですね。昨年の案では十メートルに〇・九平方メートルあればいいというところまで後退している。今度は一つの階に二つあればいいと、進入口が。というように三段階後退したわけですが、消防庁懇談会に出ているようですけれども、進入口は幾ら大きなデパートでも一階に二つあれば人は助けられるんですか、責任を持って賛成したんですか。これは消防庁が入る場所だから、あなた方よく知っていなければならぬ。
  67. 荒井紀雄

    説明員(荒井紀雄君) 現在の現地の消防機関に対しましてわれわれといたしまして指導をしておりますのが、いまおっしゃいましたような二ケ所ということで指導いたしておりまして、現在の懇談会検討いたしております基準で、十分ではありませんけれども実態に即しましてこの程度でやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  68. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 十分ではありませんけどというので、自信がないわけですね。今度の技術基準考え方自体がこういうふうになっているんですね。「経済的にも技術的にも多くの困難が生じることとなるため」、だから「適用すべき技術的基準は、建築物内の人の避難の安全を確保する上で必要最小限のものに限定」すると。だから、ぐるぐるぎゆうっと最小限のところへ縮めてしまった。だから、進入口問題でも消防庁としては十分だとは考えないけれども、やむを得ないだろうというところにまで——一階について二つですよ、二つ以上ですね。そういうところにまで進入口も後退してしまった。これはやはり人命救助の点から言って非常に大事な問題で、その進入口近くのところで火事が起きたらそこは入れないんですから。そうすると、もうあと一個しかないですね。そういうふうなことになるという点で非常な危険性があるということを指摘しておきたい。  それからもっと大きな問題は、私は竪穴問題だと思います。先ほどから各委員の方々が触れられております、きのうの辻堂の火事ですね。これは四階で発生した。四階にはお客さんは新聞を見ると五、六人しかいなかった、四階のお客さんはすぐ階段に誘導されていなくなった。ところが、五階にいた少女が階段で煙に巻かれて死んだわけです。つまり、四階で火事が起きて煙がどっといって、これは竪穴に遮煙シャッターがあれば助かっているんですよ。消防庁どうですか、きのうの火事は竪穴に遮煙シャッターがあればこの女の子は死なないで済んだろうと思うんですけれども、いかがでしょう。
  69. 荒井紀雄

    説明員(荒井紀雄君) 詳細につきましてまだ報告を受けておりませんので、正確なところはちょっとお答え申し上げかねるわけでございますが、電話等で照会したところによりますと、やはり大量の可燃物から発生しました煙が上階へ階段等を伝わっていったというふうなことを聞いております。したがいまして、今後十分調査いたしまして、そういったものが今回の犠牲者にどういうふうな影響を与えてそうなったのかという点につきまして十分慎重に調査をいたしたいというふうに考えております。
  70. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 新聞報道を見ますと、読売では、店側はシャッターを手でおろしたと言っているんですね。ところが、少女は黒煙が立ち込めて階段で煙に巻かれたと見ている。恐らく実際にはおろせなかったんだろうと思うんですね。朝日新聞は、「このような店舗に対し、」「通称ビル防災法案がすでにできているが、業界の反対で国会への提案が見送られたままである。」ということまで指摘してあるわけです。だから、きのうの辻堂の火事も、もしこの五年越しこのままになっている法案がちゃんと成立して施行されていれば少女の命は助かった例だろうと、こう私は思います。  さて、やっぱり一番問題は竪穴でありまして、火事が起きると煙がもうもうと出る、フラッシューオーバーを過ぎると物すごい煙が出て、それで竪穴を通じて秒速何メートルからのスピードでばっと上まで行っちゃうわけですね。そういう状況なので、この竪穴をどうするかということが一番の問題です。それからまた、去年提出されたケーススタディーを見ますと、どの例を見ても竪穴に対する施工が最も費用がかかっているということも明らかであります。ところが、今回の技術的基準で何よりも重要な竪穴の技術基準について重大な後退が行われております。この後退は私は非常に大変な問題だと思うんです。  その後退の第一は、これは戸川理論による避難計算式というのがありますけれども、この避難計算式というものを使っている。この避難計算式を使うのはある基準として構わないと思いますけれども、昨年建設省側説明した案では、この避難計算式が適用されて、たとえばスプリンクラーがある場合には、大体九分で外へ出られるという状況の場合には、煙感知器連動のシャッターでなくて熱感知器連動のシャッターにしてもよろしいというある例外を設けていたわけですね。ところが、今回の案は、煙感を熱感にしてもよろしいというのにこの避難計算式を使うのではなくて、この避難計算式が合えば竪穴については一切措置しないでよろしいというところにまで後退させてしまったわけです。これは私は非常に大変な問題だと思うんですけれども建設省にお伺いしますが、この戸川理論による避難計算式というのは、実際の場合にはパニックが起きたり不測の事故がいろいろあるわけでしょう、どの程度の信頼がおけるものと考えてこれを使っているんですか。
  71. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) もちろん私どもが使っております戸川理論の避難計算方式がございます。これは戸川理論自身が相当な安全率を持っております。通常の場合、みんなが駆け足とかなんとかということでなくて、いわゆる駅の階段等でおりる場合の速度を考えて計算しております。したがいまして、私ども本当にみんなが急ぐという状態になればあれよりもう少し速いんじゃないかというように考えております。ただ、先生御指摘のパニックといいますか、そういった状態が起こる可能性があるということもこれは十分また考えなければならない、何かの事故でそのとおりの避難ができないというような状態考えられると思います。したがいまして、私どもの計算の中にはそれだけでなくて、いわゆる片寄り係数と申しまして、一ケ所に集中した場合のロス等を考慮して、そういった不測の事態に備えた安全率をとりたいというように考えております。ただ問題は、そういった本当にパニック的な状態が起こって階段で将棋倒しになる危険はないかどうかという問題でございますが、これはやはりそういった物理的な対処だけでは解決できない、やはり店員の避難誘導というようなそういった体制にまたなければならない問題もこれは当然残されるわけでございまして、そういったものを総合いたしまして安全の問題を考えたいというように考えております。
  72. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういう式も、ある効率があることは私も認めます。しかし、いま言われたように、一秒間に一メートルの幅で人間が一・三人動けるというんでしょう。これは駅の混雑の状況から計算したものだというので、駅の混雑というのは、どこに行けばホームがあってどうなっているというのは皆知っているわけですよ。火事の場合と違うんですからね。火事の場合には、みんなもよくわからない、どこに避難口があり、どこに階段があるかもよく知らないお客さんがいっぱいいるところでいきなり火事が起きる。で、パニック状況が起きるわけでしょう。駅の場合に混雑して、さあ急げ急げというのとこれは根本的に違うだろうと、そういう点は私は素人としてもやっぱり感じるわけです。だから、いま片寄り係数と言われたけれども、この係数は去年出した資料によれば二でしょう。そうすると、これはどこか階段が一つ、火事になったら、その場合に二として考えているわけで、非常に特別に大きな幅をとっているというものでもないと思うんですね。もちろん私はこういう式を否定しないけれども、その式が実際に火事が起きた場合にどの程度適用できるかどうかというのは、相当誤差もあり得るということを考えてやっておかないといかぬだろうと。それがこういう式をこういう百貨店その他の避難誘導の場合に適用する際の当然の心構えだろうと思うんです。  そういう限界をよく考えてみるならば、去年のように全館が大体避難できると計算式に当てはまる場合に、煙感連動を熱感知器連動あるいは温度ヒューズの連動に変えてよろしいと、その程度ならわれわれもわかりますよ。しかし、今度の案はこういうふうになっているんですからね。こういうふうに全館避難誘導計算式が当てはまるなら「安全な時間内に在館者全員が館外に避難できるとみられる場合には措置を要しない」ものと、何もしないでいいと言うんですよ、竪穴対策を一切やらないでいいと。そうすると、これは大変なことですよ。連動シャッターも何もやらぬでもいい、竪穴の防煙、防火措置既存建築物に対して何にもやらぬでいい、この式に当てはまれば。これは非常に私は重大な問題だと思うんですけれども消防庁いかがですか。そういうふうにこの式に当てはめて、これは大体逃げられると。お子さんやお年寄りだっているんですよ、転ぶことだってあるし、そういうことを一切考えてない、この計算式に当てはまれば措置は一切要らないと。消防庁の方もこの懇談会に出ているんですけれども、こういうものに賛成なんですか、消防庁は。
  73. 荒井紀雄

    説明員(荒井紀雄君) 基本的に、おおよそのところで安全計算以内に避難ができます場合には、理屈としましてはそういうことだろうというふうに考えておりますけれども、確かに先生いまおっしゃるとおり、安全というものはやはり二重に担保する必要もございますし、また不測の事態の起きる可能性もあるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、懇談会経過を通じまして、仮にその全館避難ができる場合におきましても、少なくとも一本は特別避難階段、あるいは避難階段に準ずるような性格の階段を確保してもらいたいというふうなことを申し上げました結果、この答弁の中身にもございますけれども、最終的な避難経路の「最終的避難手段を確保する対策を講ずる」というふうなことで入れていただいたわけでございます。そういうことで、やはり最悪の場合でも避難の確保ということは貫かれておるというふうに考えておりますが、なお今後の問題といたしまして、先生御指摘のとおり、病院等身体不自由な方を収容している施設でございますとか、あるいは酒に酔って避難行動が迅速にできないというふうなことが心配されます風営関係施設につきましては、こういった問題につきましてなお慎重に検討いたしまして、個別にそれぞれ実態に即しました検討をしていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。
  74. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やはり、消防庁側はかなりこの問題についてはいろいろ問題を感じていていまのような答弁があったわけですが、建設省側はいかがですか。この避難式が当てはまる場合には措置を要しないということについて、私はこういうものはやっぱり再検討すべきだと思うんですね。もしこのままわれわれ国会も了承して、これがこのままいって、それで事故が起きて人が死んだと、ちゃんと国会を通った案どおりやったんだということになりますと、本当に政府の責任であると同時に、われわれ国会の特に建設委員会の責任ともなるので、建設省として、この問題、再検討してほしいと思いますけれども……。
  75. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 私どももその避難計算だけを信じているわけではございません。これは当然人の問題でございます。どんな不測の事態が起こるかということも当然私ども考えなければなりません。したがいまして、ただいま消防庁の方からもお話し申し上げましたが、一応私どもはそういった避難計算上で大半のほとんどの人は避難が可能だというふうに考えております。ただ問題は、昨日の火災でもございましたように、どうしてもその中には若干の逃げおくれた方が出るということは、これはもう当然想定して考えなければならない。そのために最終の避難経路としての特別避難階段あるいは避難階段というものを最小限一つは必ず設けるんだということがこのバックになっているわけでございます。したがいまして、私どもはそういった一段、二段の措置をとって十分な対処をしていきたいというふうに考えております。なお、私どもこの建物の安全を考えます場合に、まずやはり一番の基本は火を出さない、火災を出さないということ、これが第一。第二は、火災が出た場合でも、その延焼速度をできるだけ最小限にとどめ、火災を拡大させないということ。それと同時に、館内の人を安全に外に安全な場所まで誘導していく。この三点ではないかというように考えております。  私ども、そういった観点からいたしますと、スプリンクラーの効果というものが大体初期消火に九十数%の効果を持っている、九十数%のそれに漏れた場合にあと数%に対してどうやっていくかという対策でございます。したがいまして、その数%をできるだけ一〇〇%に近づけるためにそういった避難計算をいたしまして、まず第一に大抵の人が逃げられるような体制をとる、最終的に逃げおくれた人には最終的な避難の手段を確保するというような、そういった基本的な考え方で私どもまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  76. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの問題は、スプリンクラーがあればと言われるけれども、この避難計算式ではスプリンクラー設置した場合九分なんですよ。最初の三分というのは警報が出るまでの三分ですからね、火事が起きてから。実際にみんなが逃げる時間は六分ですよ。六分で逃げられなければみんな煙に巻かれて死んでしまう、死んでしまう可能性が非常に強くなるという状況なんで、だから再度こういう点本当に検討してほしいと思う。  二番目には、やっぱり同じ問題ですけれどもスプリンクラーがある場合、また今度は階別の避難計算式を使って、それを満足するならば、避難経路とならない竪穴、吹き抜き、エスカレーター、こういうものは措置を要しないというようにしてあるわけですね。こうやってなるべく施工するオーナー側にとっては余り金を使ってやらぬで済むように済むように、最小限に最小限にというようにやっぱりしてあるわけで、こういうことをそのままにしておいて、もし事故が起きた場合大きな責任だという点で、もっと本当に——まあケーススタディーじゃなくてオールスタディーをおやりになるそうですから、本当にそれを全部おやりになった場合に絶対大丈夫だというような案をぜひ提出してほしいと思うのであります。  私がこの問題を重視するのは、全館避難計算のケースですね、これを私ちょっと計算してみたんです。この計算によりますと、たとえば廊下の幅ですね、どのぐらいあるかというので割るわけですが、私はこういう計算をしてみたんです。かなりのデパートと考えて、一つの階に幅三メートルの階段が四つあるということにしてこの避難計算式で計算してみますと、もちろんスプリンクラーがあるから九分ですわな。そうすると、お客さんが二千八百七十二人いるデパートで、やらぬで済むというわけですよ。これは去年出された皆さん方のケーススタディーから考えますと、どうもかなりのデパートがこの計算式を使って計算すると「措置を要しない」というところに入ってしまうんじゃないかと、そう見ざるを得ないんです。だから、この全館計算で大丈夫な場合は措置を要しないというのが去年の案より最大の後退なんですけれども技術的基準の後退であるだけでなくて、竪穴対策をやらないで済む対象物が、既存特殊建築物ですね、これは物すごくふえちゃうんじゃないかと思うんですね。大デパートというのは三メートル幅の階段が四つぐらいじゃないですよ、もっと大きな階段なんか、中央階段なんかありますからね、どうもこれをやるとデパートはほとんどやらないで済んでしまうのではないか。それで、去年のケーススタディーを見ると、A百貨店、これは約九千七百五十一万円かかることになっていますけれども、竪穴区画が九千七百三十四万円ですよ。ほとんど竪穴区画です。やらないで済んでしまうことになるのではないか。  それで、建設省にお伺いしますが、いままでのケーススタディーで五十数棟おやりになったそうですけれども、この全館避難計算式に当てはまってセーフになった、竪穴区画措置必要なしということになったケースは何棟ぐらいありますか。
  77. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) いままでケーススタディーをやっておりますが、これは先ほど申し上げました片寄り係数をどうとるかという問題が若干残っております。片寄り係数を一応二とした場合には、約半数のものが措置不要、半数のものは措置を要すというような結果に現在のところなっております。
  78. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 その半数の中には、たとえば去年皆さんがおやりになったA、B、Cですね。これはほとんど東京の百貨店だとわれわれ聞いておりますけれども、こういうものはやっぱりやらないでいい方に入ったんじゃないですか。
  79. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) ちょっといま資料を調べておりますので、その点は後で答弁させていただきたいと思います。
  80. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まあ資料を調べるそうですけれども、私は大変な問題だと思うんですね、その後退が。このケーススタディーの去年のA百貨店、これは新宿の百貨店ですけれども、約一億円ですよ。あと、みんな一億円前後ですよ。これが今度のように後退しますと、ほとんど金が要らなくなってしまう、物すごい業界救済になると思うんですね。去年の中でEというのがあります。これは北九州の地方百貨店だそうですけれども、これは避難計算で安全が確認されたため、竪穴区画はヒューズつき防火シャッターで可となった。その場合で四百五十万円ですよ。今度はそれさえ要らなくなっちゃうんでしょう。業界の負担がたくさんあると言われるけれども、こういうふうにぼくは大した額じゃないと思うんです。人間が一人死ねばその補償に何千万円もいま払わなきゃならないときですからね。ところが、大百貨店でわずか一億円前後ですよ。年に直して、日本開発銀行から十五年償還でしょう、それで大体大百貨店で去年の計算で年に一千万円足らずということですからね。先ほどの北九州の場合なんか年に三十万円ぐらいのことなんでしょう。それでやっぱり人命が安全だということなら、少なくとも私は去年の方式よりも下がるべきでないと思う。この計算式が当てはまればそれは熱感連動でよろしいというのより下がって、竪穴区画そのものをやらぬでいいというふうなところまで下げるのは、私は非常にやっぱり業界に対して、先ほど救仁郷さんは不況の問題やなんかいろいろ言われておりましたけれども、それに対して少し後退し過ぎていると思うんですね。それで、去年出されたものを見ましても各業界の意見が出てますわな。これを見ますと、みんなもうやむを得ないと思っている業界ばっかりですよ。それで保留しているのは百貨店だけですね。百貨店協会だけが技術的基準細目がわかったときに回答すると言っているわけで……。  それで、もう時間になりましたので私は最後にお伺いしたいんですけれども救仁郷さんの先ほどの説明では、これを夏までオールスタディーをやって、大体三つの方向があると。いままでの法律改正か、あるいは新法の制定か、あるいは建築基準法十条、その他消防法などによる行政指導かと、この三つを考えているというお話ですけれども、先ほど申しましたように、私はやっぱり法律を当然制定すべきだと思うんです。スプリンクラーの場合にも、法律があって初めてみんなあれだけ努力するわけですから、今度の建築基準法のこのビル防災の遡及適用問題でも、やはりできるだけ努力をして法律をつくり、政令を出し、政令の中に具体的なケースにおいてはある特例措置を認めるということだって可能なんですから、当然やはり法律にすべきだと思うんです。一番かたい態度をとっているという百貨店協会も、協会の幹部に会ったわけじゃありませんけれども、私、先日都内の百貨店を幾つか回って、現地も見て、それから担当者にも会いましたけれども行政指導にしてほしいなんて声は、百貨店協会、われわれの側にはありませんという御返事でした。やはりみんなあの法律がつくられると、ただ、その法律の技術的内容がどうなるかということをそれぞれの立場でいろいろ考えているわけなんですね。業界のどこにも行政指導で結構にしてくれというような声も何もないと思うんですけれども懇談会でも恐らくそんな声はなかったと思うんだけれども、なぜ行政指導というような方向を三つの一つに出してしまったのか。これ、五年越しずっとやっていることで、赤桐委員からも経過説明がありました。私も大臣質問し、次の国会に出すという答弁をいただいたこともありますし、最初に出したものが削除されて消えてしまうと、その次国会に出すという約束を何回もして、その約束がとうとう——どうも法律も怪しい、行政指導で済ますかもしれませんということを公然と局長がここで答弁するというような事態は非常に大変な問題だと思う。  国会であれが削除されたとき、各紙が社説を出して、やっぱり国会業界の圧力に屈すべきでないと、このままだと屈すると見られても仕方ないのではないかということを書きましたけれども、私は人命尊重の観点から、建設省並びにわれわれ建設委員に課せられた任務を正しく果たして、やっぱり国民の命を安全にできるような法改正をやるべきだと思うんですけれども、最後に、大臣にその問題についてお考えをお聞きしたいと思います。
  81. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 上田委員がこの委員会でいろいろ協議をされておるところを取りまとめて、法律か、現行法の改正か、行政指導かというように御議論を整理されたのでありますが、先ほど冒頭に御了解を得べく発言をしましたように、この部会、小委員会等で二十一回も昨年八月以来熱心に討議をされておるその中身というものは、私はそれなりに評価すべきものだと思うんです。そしてこのケーススタディーもいろいろ御批判がございましたが、二千四百に上るいろいろ検証あるいはケーススタディーをする、そしてその結論がこの夏にはもう出る。せっかく御努力されておる成果というものは、もう近く出てくることも間違いがないんでありますから、そこで住宅局長は、その結論を出たところでいろいろ考えたいと、こう申し上げておるわけでございます。私は私なりにこの委員会での御論議も聞きまして、実際は現行の建築基準法でも本来しっかりやっておれば問題なくいけるというようにも受けとめられる点があるわけであります。しかし、そうでなく、それ以上に新立法によってしっかりやる方法があると、いい結論が出たと、こういうことであればそれも結構なことでございます。要は、昨日のようなああいう火災を起こし死亡者を出すというようなことのない、そのことが一番肝心だと思うのでありまして、別段もう前提をつくって行政指導がいいんだということを言っておるわけではございませんで、せっかくの懇談会の御協議の結果が出るその前に、私どもが何か結論めいたことを言い、あるいは前提を置くという方がいかがと思うので、先ほど来の局長の答弁になっておると思います。私としては悲惨な事態が起こらないようにそのことを最大の眼目といたしまして、懇談会の御報告をお待ちしたいと、こう思います。
  82. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 朝日新聞でも「ビル防災法 五年続き〃流産〃 行政指導に切り替え?」という記事も出ているところでありますし、世論もやっぱり注視していると思いますし、この問題、超党派で協力できる問題なので、ぜひ建設省建設大臣、それから消防庁の側の誠意ある、また責任ある態度を要望しまして、質問を終わりたいと思います。
  83. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 若干整理をしてお尋ねをしたいと思うんですけれどもビル防災の新しい法律案が仮にできたとしてのお尋ねですけれども、そうなりますと新ビル防災法案の中で統一的な基準が当然書き込まれるんだろうと思います。その統一的な基準と現行の建築基準法基準というのはどういうかかわり合いになるのか。お尋ねする意味をもう少し申し上げますと、建築基準法というのは強行性を持った法規でありますから、その基準というのは公益に照らしての最低基準というのが考え方だろうと思います。ところが、新しいビル防災法ができると現行建築基準法よりも低い基準を恐らく出さざるを得ない、現行建築基準法でいいというぐらいなら簡単に遡及の議論でいけるわけですから。そうなってくると、これが最低基準なんだと現行建築基準法で国が示しながら、さらに実はまた下の最低があったということが成り立つんだろうか。この点どうお考えか、伺います。
  84. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 建築基準法は、人命の安全とともに財産の保護ということも目的といたしまして技術基準を定めております。それは先生御指摘のように、社会的に見て最低の基準を定めるということになっているわけでございます。ただ、今回の考えております技術基準は、当然現行建築基準法よりも内容は下回っていることは事実でございます。これは一つは、そういった建築基準法の目的でございます人命の安全、財産の保護という二つの目的の中で、財産の保護はこの際切り捨てて、人命の保護だけに焦点を当てて基準を作成したいということが第一点でございます。  それから、いわゆる既存適格建築物でございますので、これは不遡及の原則のもとに一応適用除外ということになっておりますが、これをやはり人命尊重という立場からそれに対して改善の措置をとろうという措置でございます。そうしたために、現行の技術基準よりも若干下回るのはやむを得ないんじゃないかということが第二点でございます。  それから第三点は、こういった建物の安全を考えます場合にいろんな要因、要素がございます。たとえば避難階段、あるいはスプリンクラー、あるいは内装制限、いろんな要素が重なって総体的に人命の安全が図られるというような規定になっております。これが新しくビルをつくります場合には、そういった個々の安全に関する要素を全部あるレベルで満足しておれば、総体的に全体として安全だという判断をとっております。しかし、実際の建物の安全をそういった基準を離れて考えました場合に、ある部分では安全の要素が非常に高いレベルで設計されているという場合には、ほかのレベルが若干低くてもトータルとしては現在の基準法が目的としております安全のレベルに到達することが可能でございます。これが新しくビルをつくる場合には、そういったことでなくて、全体の各要素ごとの安全レベルをそろえるということは可能でございますが、既存建築物をいじります場合には、そういった現在の基準を離れて全体として総合的に安全の問題を考えなければならないというむずかしい問題がございます。  そういった問題も含めまして今回基準をつくるわけでございますので、御指摘のように非常にこの既存建築物改修技術基準というのはむずかしい問題がございますが、そういったものを総合的に判断して基準づくりをいたしたいという考えでございます。
  85. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 重ねてお尋ねするようですけども建築基準法基準を生命の安全と財産の保全と二つに分けて考えますと、財産の保全については、新しい改正が行われたからといって、既存建築物に対してさかのぼってまでその保全の要請をさらに強めるべきかどうかということはこれはいろいろ議論があると思います。ところが、生命の安全ということになりますと、生命の安全のためには総合的に見てこれだけの質が最低求められるということを改正によって建築基準法が決めたということになると、総合的な質そのものは法律解釈の問題ではなくて、やはりそれはさかのぼっていく。したがって、いまビル防災法ということが議論されるにしても、それは個々のどういう組み合わせでやるかということは抜きにしても、総合的な、結果として保障されている安全水準というのは、現行建築基準法が決めている基準と合致しなければいかぬ、そう理解してよろしいですか。
  86. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 御指摘のように、人命の安全に関する限りは、そういった現行の基準法のレベルに近づけるということを目標にすべきだということは、これはもう当然のことだろうと思います。ただ、それをどういう手段でもって、あるいは法的に一斉にそのレベルまで引き上げるということは、これは事実の問題として不可能に近い問題もございます。したがいまして、将来の問題としてどうやってそこに近づけるかということはこれは当然目標としなければなりませんが、過渡的な段階として一応ステップ、ステップで考えていかなければならない問題ではないか。私どもが今回そういった技術基準考えます場合でも、今回考えております技術基準がもうそれで満足だということでなくて、やはり現在の技術基準に合うまで全体として引き上げていくような考え方を基本的には持つべきだろうというふうに考えている次第でございます。
  87. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまのお答えの中で、引き上げていくと再々お話しなんですが、建築基準法基準というのは公益の点から見て求められる最低の基準なんです。というのは、強行性がある法規だから余りぜいたくは言えないんだと、最低ぎりぎりこれでございますというわけですから、近づけていくんじゃなくて、個々の手法は別ですよ、総合的に結果として担保されている安全基準というのは一緒でなければ筋が通らない。過渡的な対策はあることは認めます。あくまでもそれは一緒なんですと認めることが議論の出発点じゃないかと私は思うんだけども、どうでしょうか。
  88. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 確かにそういう御議論もあろうと思います。ただ、いわゆる法律が原則として遡及しないんだという原則のもとに物を考えました場合に、あるいは現実の問題としてそういった改修が短期間で全部可能かどうかという問題を総合的に判断しました場合に、考え方は先生のおっしゃることもよくわかりますが、現実の問題としてそこまで現実にやることは実際上は無理じゃないかと。したがって、それに近づけるような努力を常にやることが必要ではないかというような感じがしております。
  89. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまお尋ねしてますのは、先ほど来の行政指導とも絡むんだけど、統一基準というかっこうを法律に書き込む方が本当に実効が上がるのか、考え方としては現行建築基準法の水準に合わせるんですと言いながら個々別に鋭い対策を打っていく方が、どっちが結果として実効が上がるんだろうかということと絡んだ問題なんで私はくどくお尋ねしているんです。財産の保全ですと、先ほど申し上げましたように古い建物をいまさらどうするという話になかなかならない。ところが、建築基準法が人命の安全に関してなぜ改正を繰り返してきたかというと、確かに環境が変わってきた、人口もふえた、都市化にもなった、スーパーに至っては店員の数がごそっと減っちゃって、来ているお客さんをどう管理するかといったって、それとてもなかなか思うに任せない。非常に不時の災害に対して弱い都市構造、生活構造になっちゃっているから、建物の構造の中で相当のものをあらかじめ準備しておかないと生命の安全が期しがたい。これが建築基準法を先般変えられた理由でしょう。同じことが既存建築物についても同じように言えるわけだから、どうやってやるかは別として、あくまでも求められている総合的な安全水準は一致しなければいけない。これが、あなたが持つべきというよりは、建設省が持つべき基本的な哲学じゃないんだろうか。あとどうやるかはそれから後の話。その意味で、そうは言ってもできませんから近づけますというのは、いささか私にすると心得ない御答弁に受け取れるんですが、重ねて伺います。
  90. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 考え方の基本としては、先生のおっしゃるとおりだというように考えております。
  91. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、お尋ねしますけれども、現行建築基準法どおりいまの建物が全部できていたら話題のこの不幸な辻堂の事件もなかったわけですね。で、何とかそれに近づけていこうじゃないか。そのときに中途半端な統一基準をつくった方がいいのか、あるいは先ほど来お話しの十条を生かして、精神としては建築基準法の現在水準に近づけるんですとやった方がいいかというのはなかなか重要な私は選択のはずだ。にもかかわらず、新法を出しますということを軽々になぜ国会答弁したのか、する前にもっと慎重な配慮があってしかるべきだったんじゃないか。そうしますと、発言に縛られて、しょうがないから夏出しますというような話になっちまうけど、本当にそれでいいんだろうか。人命尊重という立場から言っていいのかどうか慎重にお考えいただきたい。御所見を求めます。
  92. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先生のおっしゃる意味はよくわかります。私どもも部内でそういった議論をやっております。実は消防法スプリンクラーのいわゆる遡及適用が先行いたしました関係で、こういった大規模な特殊建築物につきましては相当大がかりな工事が行われております。その中で、当然のことながら業界の中の自主的なやはり安全に対する認識というものも相当高まってきておりますし、また消防当局あるいは私どもの出先の特定行政庁のいろんなサゼスチョンもありまして、現在スプリンクラー工事をやるんならほかの防災上の問題も一緒にやろうではないかというようなことで、相当いろんなスプリンクラー工事にあわせて改修を行っていただいているのが事実でございます。  私ども実際上はっきりしたデータを持っておりませんが、そういったいろんな改修工事というのが、スプリンクラーだけでなくて、私どもの分野でございます建築物そのものに対しても相当改善が加えられる。ところが、その中で、先生が確かに御指摘のように、現行のレベルより低い基準法律でもってオーソライズして、もうそれでいいんだということを天下に表明して、そしてそのレベルでとどめた方が本当にいいのかどうか。あるいは先生のおっしゃるように、目標はここなんだと、現行のレベルなんだと。ただそれにはいろんな何といいますか、事実問題として一挙に近づくことはできないけれども、レベルとしてはそこに行くんだという基本的な理念のもとにレベルを上げていった方がいいのか。この辺は私ども、先ほど来大臣からも申し上げておりますが、いわゆる二千四百棟の本当のケーススタディーをやって、どのレベル、どうやった方が一番総体的に見て建築物の安全が向上するかどうかということで判断をいたしたいというように考えておる次第でございます。
  93. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、あともう一つ重要なことだと思いますのは、ケーススタディーも啓蒙的な効果を含めて私はむだなことだとは思わないし、ずいぶんと回数を重ねて熱心な御議論の経過はわかるんだけど、ただ、どういう手法を編み出すにしても、おおむね大体何年後ぐらいには求められている水準に近づけよう、目標年次の明示はこれはまず最初にあってよかったんじゃないんだろうか。その辺はどうお考えですか。
  94. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 目標年次は、当然のことながら、そういった技術基準のレベルあるいは現在のレベルということを総体的に判断して、本当にそれで実行可能かどうかということを判断しなければならないと思います。そういった意味で、私どもやはりケーススタディーを通じて、どこまで、どれくらいの期間の中に可能かということを総合的に判断しなければならないわけでございますが、私どもがやはり目標の年次として、これから検討することではございますが、人命に関する問題である限り、少なくとも最小限五年程度をやはり目標とした対策を講ずべきではないかというように考えておる次第でございます。
  95. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 五年の是非についてここで議論をいたしませんけども、目標年次を設定しますと、では、どういう金融処置を講じたらいいのか、条件がどうかという政策がすぐついてくるわけで、ですから二千四百全部ひっくり返してという検討は当然必要でありますけれども、あわせて、なたで割るような大きなレイアウトの設定も一緒にしていかないと、なかなかではないんだろうか、この点、一言だけ申し上げておきます。  最後に、その途中経過で時間がかかるというのはよく実際問題わかるわけですけど、その間国民はどうやって自衛したらいいんだろうか、その点を最後にお尋ねしたい。現行建築基準法だったらきのうのこの悲惨な事故もなかった。この建物は違法建築じゃないけど、現行建築基準法の安全基準には合致していないということを国民は知っているんだろうか。それを知っていたら、この亡くなった少女がきのう四階で待ち合わせを決めただろうか。経過処置は時間がかかるのはよくわかる。わかるけど、その間国民はどうやって自衛したらいいんだろうか。その点どうお考えなりますか。
  96. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) これは、私どもの行政庁の側としまして、先ほど来申し上げておりますが、消防庁と一緒に春秋の一斉査察、あるいは日常的にもある程度はやっているわけでございますが、そういった問題を通じて必要な行政指導、あるいは特に必要なものに対しましては十条の措置命令というようなことを行っているわけでございます。そういったことを通じて、本当に危ないものに対しては、この現在の検討のほかに私どもやはり対策を講じていかなけりゃならないということは当然でございます。それからもう一つの問題としまして、それを一般の国民の方に、どの建物はどういった安全のレベルにあるのかということをお知らせしたらどうかというようなことも私どももう長年いろんな検討を進めてきております。ただこの問題は、現実の問題としては非常にむずかしいいろんな問題がございます。したがって、軽々に私からこうやりますという結論をお出しすることはなかなかむずかしいわけでございますが、ただ数年前、東京消防庁でいろいろ個々のビルについてこういった安全のレベルにあるというような趣旨のことを新聞発表されたことがございます。これがまたいろんな波及効果を及ぼしますので、そのこと自体がすぐにいい悪いの問題はこれはまた別問題だろうと思いますが、そういった問題も含めまして、本当に建築物が安全であって国民の生命が守られるには一番どういう方法をとったらいいのか、これはもう法律問題を離れまして私どもも真剣に消防庁の方と相談さしていただきたいというように考えております。
  97. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 消防庁にお尋ねしたいんですが、きのうのスーパーの火事ですけど、新聞記事に書いてないんで伺うんですが、これはスプリンクラー設置してあったんでしょうか。
  98. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 設置してありません。法律上も設置義務がございません。
  99. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、消防庁にまず伺いましょうか。スプリンクラーというのは初期消火対策として大変有効である、そうは言いながら、そう全部もいかぬわと。これも現実問題として理解ができないわけではない。ただ、ついているか、いないかというのを子供に見ろと言ったって無理ですわね。しかもこれは適用除外だから違法建築ではスプリンクラーに関してはない。それを国民に知らせていくときには、たとえば子供が行くんだったら親子同伴で来なさいとか、そうされたら、いやでもつけますけどね。いやがらせでやれと言うんじゃないんだけど、そういったものがわかるようにしながら、周辺住民の協力とも相まちながら安全水準を高めていきたいということは、消防庁としてやっぱりお考えにならないといけないんじゃないだろうか。しかもスプリンクラーが万能みたいな話をこの五年間やってきているんだけど、この事故スプリンクラーもついてない。どうお考えですか。
  100. 矢筈野義郎

    説明員矢筈野義郎君) 消防設備はそれぞれその効用がございまして、確かにおっしゃるとおり、百貨店みたいなところはスプリンクラーが非常に効果的だというふうに考えております。病院旅館、その他あらゆる用途のものにつきまして総合的観点から非常に安全性が高いと思われるものについては、従前、消防設備優といったようなマークをつけさせる。あるいは修学旅行の学生生徒が旅行する場合については、地元の消防の方から、こういう旅館消防設備あるいは防火管理上優秀であるといったような問い合わせに対する回答をする等、公表、表示、そういう制度も活用させながら安全性の高いものについては示し、まあ逆に言いますと、そういう公表されてないところについては低いといったようなことの啓蒙、それから国民に対するPRも兼ねながら、私ども苦慮しております。しかし、その問題についてはなかなか軽々に実施するということについては、単に消防設備だけでございませんので非常にむずかしい問題がございますが、総合的な観点からそういう点について活用を図っておりますが、今後も研究を重ねてまいりたいと思っております。
  101. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 では、最後に大臣の御所見だけ承りたいと思うんですけども、どうやって周知徹底させるのか、国民としてどう自衛するかというのはなかなか担当としては答えづらい話でありますからこれ以上申し上げませんけれども、ただ、これまでの議論というのは、そんなことを言ったってできるものかみたいなところから始まっちまって時間がずっとかかってきた、それはいまの不況の中でわからないわけではありません。しかし、それはその建物を持っている人たちの言い分であって、だったら、それはそれなりに国民の側で使いこなしていこうということは工夫としてあっていい。違法建築ではないけれども、現行の政府国会が決めた建築基準法に照らしてこれは不十分であるということを周知徹底させる、そういうデパートだったら前にぺたんと張るとかいうことぐらいはあったっていいんじゃないか。いかにも、そうすると、いやがらせにその業界団体には見えるかもしらぬけれども、しかし、それを当然のこととして受けとめていくような雰囲気をおつくりになることが人命尊重のいわば出発点じゃないのかと私は思えてならない。大臣の御所見だけ承ります。
  102. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 第一には、せっかくの懇談会も大詰めに来ておることでございますから、その結論に基づいてわれわれとしての責任を果たしたいと、こういうことであります。  また、昨日のようなああいう火災もある、まことに遺憾な実情にあるわけでございまして、現在私ども措置すべき法律というものを持っておるのでありますから、その法律に基づいてあらゆる努力、工夫をする。その努力の中にはいま栗林委員のおっしゃるようなことも当然考えていい、極力防災体制強化すべきである、これはもうおっしゃるとおりだと思います。
  103. 救仁郷斉

    政府委員救仁郷斉君) 先ほど上田先生からお尋ねがございました三件のデパートについての適用の問題でございますが、残念ながらいまいろいろ資料が混雑しておりまして、次期委員会で御答弁さしていただきたいというふうに考えております。よろしくお願いいたします。
  104. 安永英雄

    委員長安永英雄君) この際、委員長から建設大臣に対して要望しておきます。  建築物防災対策を図ることは、国民の生命、財産を守るために重要な施策であります。多数のとうとい犠牲者を出したビル火災を見るまでもなく、既存建築物防災対策を進めることが急務であります。これについては今日までの国会論議等の過去の経緯、いきさつ、こういったものもありますから、行政指導という形ではなくて、法律をもって既存特殊建築物等の避難設備、この整備を義務づけるというのが当然じゃないかと私は思うのです。そういう方向でぜひ検討してもらいたい。また、次期国会には必ずこれは出す、こういう決意でひとつ最大限の努力をしていただくことを要望しておきます。  本件に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後零時二十三分散会      —————・—————