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参考人(
澤田光英君) 空き家問題の
取り扱いは、ただいま先生がおっしゃいましたような筋が全くそのとおりでございます。有賀
理事から御
説明を申し上げましたのは、現在空き家になっておるものをどういうふうに対処をするかということでございます。しかし、私どもは、この空き家対策というのは、もっと、いまおっしゃられましたような、長期的といいますか、全体的な問題であるというふうにこの発生の
時点からとらえております。と申しますのは、今後住宅公団の空き家をなくするようなこと、すなわちニーズに合った住宅を供給すること、これのためには、まず、これから新たに仕掛かるものにつきましては空き家を絶対に出さない、ニーズに全く合ったものを出すと、こういうようなことになるわけでございます。
そういうことから、実は、五十三年の数が減って四万戸になったり、五十三年の三万五千になったりということになるわけでございますが、この方はニーズに合ったものを出すということが一番の大
前提でございまして、それを押さえておきまして、実は私ども工事中のストックを非常にたくさん持っております。それはたとえば、五十二年三月、すなわち空き家問題発生の間もないころでございますが、このころには十五万三千四百戸という工事中のストックを持っておりました。これは実は公団は、団地は大体三年でつくりますので、三年間の手持ちというものがこのくらいはある、やや多うございますが、さようなことでございます。三年前のニーズに果たして現在出てきて合うかという問題がございまして、この十五万三千四百の中から、できるたんびに空き家が発生するというおそれがあるものが相当ありました。
この十五万三千四百の当時の内訳を申しますと、会計検査院からも御
指摘ありましたように、当時発注したけれどもいろいろな事情で未着工のもの、これが四万三千五百でございます。工事中のものが八万一千七百、屋外工事中のものが一万七百、保守管理中、すなわち建物はできましたけれどもまだまだ人を入れるに至らぬとか、あるいは先ほど先生おっしゃいましたように、同じ団地に空き家があるので需要調整上持っておる、こういうふうなものが一万七千五百でございまして、こういう内訳を持った十五万三千四百でございます。これは工程順にいま申し上げましたが、すでに相当でき上がってしまったもの、これは物理的に非常に直しにくうございます。したがいまして、有賀
理事が先ほど申し上げましたような家賃の傾斜の問題とか、あるいは宣伝の問題とか、こういうふうなことでやりますけれども、このストックの形を直せるものはニーズに合うように直すということの全力投球をしたわけでございます。
で、実は昨年度の初めから、先ほど住宅
局長申しましたように、おおむね年末あたりまでこれの見直しを全部やったわけでございます。すなわち、三年間の設計を全部やり直したようなかっこうになっております。いろいろと工程がございますから、大がかりにできたものもございます。特に未着工の四万三千五百につきましてはこれは
契約をしておりますけれども、発注をとめまして全然見直すというふうなことをやりました。これは姿を新たにして出てくるということでございます。したがいまして、こういうものからは空き家の発生のおそれが少なくなっておる、こういうふうな状態でございます。約一年間そういうふうなことをやりました結果、この十五万戸のほとんどすべてについて設計なり
計画なりというものが違ってきております。
したがいまして、
契約更改とか
契約変更、こういう
手続もございますが、形の上での結果といたしますと、細かくて恐縮でございますが手元に資料がございますので、どういうことがやられたかという数字を申し上げますと、住宅の大型化、これが一万五百戸程度になっております。その
内容は、工事中で直せるものは大きく直す、工事が終わりましてなかなか手がつけられないようなものでも、需要があるものは二戸を一戸にするというようなことをやりました。
その次に、二番目は戸数増でございます。これは実は高、遠、狭の高に
関係をするわけでございますが、家賃が高いために人が入らないというおそれを除くために、いままでの団地の中をもう一回見直しまして、仕掛かり中も含めましてその中に戸数をふやしていく、すなわち
土地の効率
利用を行うということで六千二百戸程度の戸数がふえております。これによりまして原価がその団地では下がりまして家賃その他が下がってくる、かようなかっこうになっております。
三番目は、これは建物のかっこうを変える。遠くへ行けば低層庭つきのようなものが需要に、ニーズに合うわけでございます。ところが、いままでの
計画と申しますのは、
土地問題あるいは
計画上から言って遠くへ行っても高層住宅などがございました。そういうことではニーズに合わないということで、できるものは高層住宅をやめて、遠いものは庭つき住宅にする、こういうふうなかっこうを変えましたものが一万二千余戸になっております。
そのほか大きなことは、実はこれは狭に
関係するわけでございますが、二DKはすでに賃貸住宅としては不適でございますが、片や三DKも分譲住宅としてはもうニーズがございません。そこで、この三DKは、直せないものにつきましてはこれを賃貸住宅に切り変える、かようなことをやりました。そういうものが約一万五千弱でございます。そのほか細かいことはいっぱいございますけれども、おおむねさようなことにわたりまして、
計画変更、設計変更をやりまして、ニーズに合わせるという作業を実はやったわけでございます。
そこで大事なことは、新たな建設
計画にも
関係するわけでございますが、どうやったらニーズに合うかという物差しを新たに私どもが持つことでございまして、この
経過を経まして、私どもはいままでの物差しではだめだと、新たな需要に対応する物差しというものをつくり得たというふうに思っておりまして、その成果がここにあらわれて、今後はこのストックからいままでのような大量の空き家が発生してくるということが抑えられるんじゃないかというふうに思っております。
したがいまして、こういう見直しが終わりまして、新たに発注するものからはほとんど空き家は出ない。過去のストックからは空き家が抑えられるという
経過を経まして、現在、先ほど総裁から申し上げましたように、四万戸を上下する程度のことでございますが、いましばらくは、十何万戸は出てまいりますので、四万戸は上下するかもしれませんが、この効果は次第に効いてまいりまして、漸減するという方向に向かうと思っております。