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1978-03-24 第84回国会 参議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)    午後零時十九分開会     —————————————    委員異動  三月十七日     辞任         補欠選任      小山 一平君     宮之原貞光君  三月十八日     辞任         補欠選任      伊江 朝雄君     林  ゆう君      増岡 康治君     八木 一郎君      野末 陳平君     柿沢 弘治君  三月二十日     辞任         補欠選任      八木 一郎君     伊江 朝雄君      北  修二君     夏目 忠雄君  三月二十二日     辞任         補欠選任      夏目 忠雄君     北  修二君      林  ゆう君     増岡 康治君     —————————————   出席者は左のとおり     委員長        茜ケ久保重光君     理 事                 斎藤 十朗君                 坂元 親男君                 寺下 岩蔵君                 長谷川 信君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 岩崎 純三君                 北  修二君                 世耕 政隆君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 寺田 熊雄君                 丸谷 金保君                 和泉 照雄君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 江田 五月君    国務大臣        労 働 大 臣  藤井 勝志君    政府委員        労働政務次官   向山 一人君        労働大臣官房長  石井 甲三君        労働大臣官房審        議官       関  英夫君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君        労働省労政局長  北川 俊夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省婦人少年        局長       森山 眞弓君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業安定        局失業対策部長  細見  元君        労働省職業訓練        局長       岩崎 隆造君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        労働大臣官房国        際労働課長    石田  均君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  森  英良君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和四十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十九  年度政府関係機関決算書(第七十七回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十七回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月十八日、野末陳平君が委員辞任され、その補欠として柿沢弘治君が選任されました。     —————————————
  3. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、昭和四十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、労働省決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 労働大臣が時間の制約がおありのようですから、労働大臣お答えをいただくような問題に限って質問いたしたいと思いますが、最初は公務員労働者ストライキ権についてお尋ねをいたします。  労働大臣は、三月十七日の閣議後の記者会見において、政府公企体等基本問題会議スト権問題の審議が迂回している、スト権付与につき原点に帰っての検討が必要だと述べたと伝えられております。これは私は五十三年の三月十七日、毎日新聞の夕刊で拝見をしたのでありますが、こういうふうに記者会見でおっしゃったといたしますと、大臣のそのときの真意をまずお伺いしたいと思います。
  7. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 三公社五現業のスト権付与の問題は、御案内のように労働行政長年の懸案でございまして、すでに過去三回にわたる公務員制度審議会、それからその後、関係閣僚協議会専門委員懇談会、そして現在の公共企業体等基本問題会議、こういうふうに引き続いて第三者機関による検討がされておるわけでございまして、やはりこの検討が、結論が大体五、六月ごろというふうに予定を聞いておりますが、適切妥当の結論を得て、ひとつぜひこの際何らかの締めくくり、ピリオドを期待したいと、こういう気持ちでちょっとこの問題に触れたのが御指摘新聞記事になったというふうに理解しておるわけでございまして、私の労働大臣としての気持ちは、何とかしてひとついいけじめを、妥当な結論を得ていただきたいという、こういう念願で所見を発表したわけでございます。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 非常に含蓄のあるお答えのように思うんですが、何らかの結末であるとかよいけじめであるとかあるいは妥当な結論であるとか、こういう表現のお答えなのでありまして、この問題についてピリオドを打ちたいということでありますので、私どもとしましてはスト権付与方向に向けての前進だというふうに受けとめたいわけなんですね。ところが、いままでにも三木総理時代に、スト処分スト処分悪循環はもうそろそろ終止符を打つべきだというような御発言がなされたわけですね。しかし、それを突き詰めていきますと、違法ストをやるので少し状況が変わったという——スト権が奪われたからそれを取り戻すためにストライキをやるという、そういう労働側言い分に対して、現在では違法なんだ、だから、違法ストをやるようなそういうことではかえって悪影響があってできなくなるというような言い分でまた逆な結論を出してしまう。いろいろ政治家として困難な面はあるのでしょうけれども、しかし、本当に良心的な結論を出されたというふうにはどうしても受けとめられないわけですね。今度公労協は、御承知のように、いまの公労法十七条あるいは十八条というようなものは憲法二十八条に違反している違憲の規定である、もう固い信念を持って処分を覚悟でストライキをやる、現にそう言っておるわけです。それは行われるでしょう。ですから、政府がかたくなにスト権付与というものを拒む以上は、永久に労使の対決というものは避けられないわけですね。そういう現実はこれは何人も否定できないわけです。そういう現実があるわけです。ですから、労働大臣が、そういう現実を踏まえて何らかのいい解決をしてこの問題にピリオドを打ちましょうと言われる以上は、もうその解決方向あるいは予想される結果というものは大体もう決まっておる。それはやっぱり条件つきであろうと無条件であろうと、スト権付与方向に向かっての示唆であるというふうに受けとめざるを得ないわけですが、大臣もいろいろな党内のお立場があると思いますけれども、しかし、労働大臣という立場はやはり労働者に背を向けたのでは成り立たない仕事です。これはもう労働大臣としては、他の大臣がどうあろうと、やはりその信念をもって貫くべきそういうお立場におられるわけですから、やはり勇気を持って一定方向を指し示されることが私どもとしては望ましいと考えますが、いかがでしょう。
  9. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先般の私の記者会見新聞記事を踏まえて、ただいま寺田委員の重ねての私への御質問のお気持ちは十分私も理解できます。ただ、先ほど申しましたように、公共企業体等基本問題会議においてすでにスケジュールが相当進みまして、大体五、六月には何がしかの——何がしかと申しますか、何とかして方向づけといいますか、結論が出されるであろう、こういう状態でございますから、この場におきまして私の、まだ労働大臣としての見解を述べるというのはいささか時期尚早である。その結果を踏まえて、そして労働大臣としての見解を述べる機会を私としては考えたいと、このように思っております。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 労働大臣としていろいろな制約がおありでしょうから、それ以上どうしても言えと言って迫ることは無理かもしれません。ただ、ニュアンスとしては明らかにその方向がくみ取れるということは言えるのじゃないかと思いますね、いまのお言葉で。願わくは、労働大臣としてその職にある間にこの問題についてのピリオドをもう打たせる、そういう方向で、毀誉褒貶はいろいろあると思うのですが、御努力をくださるように、もう一遍その御決意を確認したいのです。いかがでしょう。
  11. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほどもお話し申し上げたように、これはもう長年の労働行政懸案でございまして、御指摘のごとくスト権スト悪循環が続いている現実、これを考えた時分に、労働行政を所管している責任者として何とかしてひとついい知恵を皆さん方からおかりして、またみずからも考えて決着をつけたいという、私はひたむきの気持ちであることは間違いございません。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、いまの大臣のそういうお言葉を信頼して、これからの大臣の御活動を見守りたいと思います。  次に、国際人権規約の問題なんですが、これは衆議院予算委員会におきまして、政府国際人権規約、これはA規約B規約とございますけれども、その批准に踏み切る決意をしているように思われる答弁をなさったわけですね。ただ、巷間伝えられるところによりますと、第七条の(a)項の(i)、これは同一労働、同一賃金、ことに男女の同一労働条件の原則。それから(d)項、これは休息、余暇、労働時間の合理的制限、定期的な有給の休日、公の休日に対する報酬の問題。それから御承知のように、いまの公務員労働基本権の条項、そういうものに対してこれは除外例を設ける、除外をして批准すべきであるというような意見も閣内にあるというように伝えられておるんですが、この点については労働大臣としてはどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  13. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 国際人権規約中心に具体的な内容を御指摘の御質問でございますが、この国際人権規約そのもの重要性については十分私も認識しておりまして、ただいま御指摘の問題も、この対応についていろいろ検討をいたしておるわけでございまして、この問題ば御案内のように外務省が窓口でございまして、外務大臣と密接な連絡をとりながら、そしてわが国内法との整合性、こういったものも十分検討をして、そしてできるだけ前向きで対応すべきである、こういう考え方で対処しているわけでございます。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 何らかの、労働大臣の御所管の問題について、もうすでに外務大臣との間で意見の調整のようなものがあったんでしょうか、まだそこまでいってないんでしょうか。
  15. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まだ実は大臣間で話し合うというところまで煮詰まっておりません。事務的にいま相互に連絡をし、結論を出すべく努力しておる、こういう状況でございます。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、その問題は後でまた事務当局の方にお伺いすることにいたします。  次に、政府は五十三年度予算——先ほど本会議でも労働大臣答弁になりましたけれども公共事業によって就労機会労働者に与える、雇用機会を維持しかつこれを拡大するんだ、こういう御答弁先ほども本会議でございました。この五十三年度予算に盛られている公共事業、これは一般会計も、財政投融資資金活用による公共事業も、それから地方財政による公共事業、これを含めてどのぐらい労働者雇用機会を生み出すものか。これについては衆議院でもかなり追及がございましたね。大臣は非常に正直なお方だから、まだそこまでの計算はできていないというふうにお答えになったように伝えられているんですが、これは人間的な面で好評もあるんですけれども、やはり労働大臣御所感としては、一定調査というものがその義務になっておるわけですから、あるいは計画とか、この公共事業でどの程度雇用が促進されるのか、それはやっぱり労働大臣としてのお見通しというものがあってしかるべきものだと思うんですが、いかがでしょう。
  17. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 公共事業拡大によってどの程度雇用——失業者が救済され、就労の場がふえるかという問題につきましては、先般衆議院予算委員会のしょっぱな、実はこの問題については、公共事業推進対策本部長大蔵大臣と、そして建設省関係ですね、ここら辺で、実は現在の仕組みが、やはりかつて寺田委員も御案内経済安定本部、こういったときのような仕組みになっておらない。したがって、この公共事業予算をふやすときに労働省が一枚加わって積み上げた数字というのができておりません。結局、現在不況の脱出ということ、それには公共事業が軸になって、それによって全体的なこの雇用の維持、拡大と、こういう方向念願をするというふうな、目標といいますか、念願に近い目標であって、積み上げられた数字が全然ないわけでありまして、結局は十七万人の雇用創出ということをその後相当時間をかけて経済企画庁中心になり、大蔵省、建設省あたりがまた資料を出しまして、それは過去の実績を踏まえてそれぞれの事業の種類なり、それによってのまた雇用者の吸収の可能性、こういうもので推定をして結論を出したのが十七万人ということになりますから、御指摘のように、私も労働大臣としてはできるだけ的確な見通しをつけた雇用失業情勢というものを踏まえたいと、こういうふうには考えておりますけれども、なかなかそういう仕組みになっておらないというのが率直な現在の状況であります。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 確かに建設大臣の御答弁では、雇用増十七万人を見込んでいると、そういう御答弁があったようでありますが、これは大臣でなくても結構なんですが、労働省の主管の局長もやはりそういうふうに把握しておられるのかどうか。もしそれがそういう同一の見通しをお持ちだとしますと、その雇用増というのがどういう産業面に生ずるのか、どういう職種のものに生ずるのか、そういう点でちょっとお答えをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
  19. 細見元

    政府委員細見元君) ただいま大臣お答え申し上げました十七万人という数は、各省が公共事業施行推進本部に集まりまして、公共事業施行推進本部推進対象となっております事業及び地方単独事業について、過去の平均的な数値等を使用してそれぞれ推計したものを集計いたしたものでございますので、先生お尋ねのように、職種別にどれだけの増があるということについては数字が出ておりませんけれども、ただ、事業種類別に、たとえば下水道環境衛生等につきましては、人日にいたしまして千四十八万人目、二百六十四日年間働くということで換算をいたしますと約四万人の雇用の増になるというような、事業種類別の一応の推計は出ておりますけれども職種別に、たとえば大工が何人、左官が何人、建設機械運転工が何人というような推計はなされておりません。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあ事業種類別とおっしゃったんですが、それだけでも結構ですから、ちょっと重立ったものをおっしゃっていただければ……。
  21. 細見元

    政府委員細見元君) 事業種類別に申し上げますと、まず治山治水関係が六百二十八万人目で約二万四千人、道路整備関係が八百六十万人目で約三万三千人、港湾、漁港、空港の関係が七十二万人目で約三千人、住宅対策関係が三百七十万人目で約一万二千人、下水道環境衛生関係が一番多うございまして千四十八万人目で約四万人、農業基盤整備関係が七百六十三万人目で約二万九千人、林道、工業用水等が約三百八十九万人目で約一万四千人、これに対しまして、災害復旧関係で約一千三百二十三万人目の、逆に減がございまして、これを人員に換算いたしますと約五万一千人の減が出ますので、これを総計いたしますとほぼ国の関係で十万人、そのほかに地方単独事業関係で七万人の増がございますので、合計をいたしまして十七万人程度雇用の増ということに相なっておるわけでございます。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その場合、宮澤経済企画庁長官が説明された、これは社会党の藤田高敏さんの質問に対する答えなんですが、五十二年度の就業総数が五千三百五十万、五十三年度の見込みが五千四百五万、失業者は、新規雇用増も見込んで、差し引いて五万人減だと、そういうような答弁をしておられるんですが、これとの関係はどうなるのか、ちょっとお答えをいただきたいのですが。
  23. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 昨年来、非常に厳しい雇用失業情勢が続いておりまして、そういう情勢を背景に、政府全体としては来年度の政策の重点といたしまして、景気の回復と雇用の安定を図るということを目標といたしておるわけでございまして、そのために、公共投資を主軸とした思い切った財政運営を行う、それによりまして七%の成長を図ると、こういう計画になっておりますが、それの経済政策を進めることによりまして、ただいま御指摘がありましたけれども就業者総数が五十二年度実績見込みで五千三百五十万に対しまして、五十三年度見通しでは五千四百五万と、五十五万の増を見ておるわけでございますが、労働力人口も五千四百六十五万から五千五百十五万と、五十万人ふえるわけでございますけれども、そういう五十万人ふえる労働力人口を含んで就業者数も五十五万増と、こういうことでございまして、十七万人との関係はその中に、就業者の増の中にも入るということになろうかと思います。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、宮澤推定説の中の公共部門だけをとってみて、公共事業の増加による新規雇用増というもの、それをとると十七万人だと、こういう解釈になるんですか。
  25. 細見元

    政府委員細見元君) ただいま審議官から御答弁申し上げましたように、五十五万人の雇用者の増の中にただいま申し上げました公共事業関係によります十七万人の増が含まれておるということでございまして、恐らくこのほとんどは建設部門関係での雇用増につながるものと考えております。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣、このいまの不況下の中でわれわれが一番心を痛めるのはやはり失業の問題なんですね。労働者が職を失うというぐらい、本人や家族にとって致命的な打撃を受ける問題はないと思うんですが、この失業者というものは今年も私はかなり増加するんじゃないかと。いまもう次第に増加しつつあるので、今年度どの程度失業者が増加するというふうに把握していらっしゃるんでしょうか、まずそれを伺いたいと思います。
  27. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のごとく、失業するということは、これは本人はもちろんでありますけれども、一家にとっての大変な悲劇でございます。まあ労働省は、申し上げるまでもなく労働者の生活の安定と福祉の向上という、こういうことに全力を注がなきゃならない立場でございますから、現在の厳しい雇用失業情勢の現状を踏まえてあらゆる努力をしなきゃならぬと。それで、まず雇用安定資金制度活用ということによって失業者をできるだけ出さないようにする、そして職業転換をやっていくと。失業を見ないで職業転換ができるような方策を雇用安定資金制度によってやっていこうと。そして、昨今は御案内構造不況ということになっておりまして、そのためには特定不況業種離職者臨時措置法というのが、これがもう発足を見ておるわけでございますが、そのような制度によって今度は再就職の促進をしていくと。あるいはその間に職業訓練をやって、失業保険をもらいながら職業訓練をやって、そして新しい道へ入っていこうと、こういういろいろの努力をしておるわけでございますが、特に五十三年の新しい制度としては、中高年齢者を雇い入れる事業主に対して別途助成をやっていくと、それによって民間の力、活力をも活用して雇用創出をしていこうと、こういういろんな施策を推進することによって、先ほど政府から答弁をいたしましたように、現在五十二年度は百十五万人の完全失業者でございますが、これを百十万人に、失業者としては五万人減という、この見通しを立てて努力中でございます。  それから雇用者全体は五十万人の増でございまして、昭和五十三年は三千八百三十五万人という、五十二年度が三千七百八十万人でございますから、雇用者数においては五十五万人の増を見込んでおると、こういう状況でございます。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その御抱負は、御抱負なりに受けとめますけれども、私ども現実にいろいろ働く者から日々訴えを聞いておりますと、とてもそういう見通しが実現するとは考えられないので、現にいま、企業に何人の首切りが出ているという厳しい現実があるわけですね。ですから、私はその見通しはやや楽観に過ぎると思いますし、それからもう一つ、特定不況業種離職者臨時措置法、これは発足してまだ四カ月ですからこれをどうということは言えないかもしれませんが、いまの中高年齢者措置法など、どの程度の再雇用成果が上がっているか、それをまずお伺いして、その後でまたさらに御質問したいと思うんですが、一体、離職者法はまだ四カ月だけれども、それなりの成果が上がっているのか。さらに中高年齢者措置法現実にどの程度雇用というものが実現しているのか。年次別に説明していただくと時間がかかるので、たとえば昨年一年でよろしいから、度の程度雇用機会が生まれたのか、これをお答えいただきたい。
  29. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 詳細につきましては政府委員から答弁させますけれども、私が現在手元に持っております数字を御参考までに。  これは先般、就業構造基本調査をいたしまして、五十三年の一月現在でございまして、寺田委員の御指摘、私も実感として非常に雇用情勢の厳しさを心配をしております。そういうことで、私、実はこの調査をそういう気持ちで取り寄せた数字でございますが、やはり製造業が減っておるんです。で、五十三年の一月現在、製造業が千三百四万人でありまして、前年同月に比べて四十三万人の減です。減っております。建設業は五百二万人で、これは前年同月と比較して八万人の増であります。同じようなことで卸売、小売、金融、保険不動産業、これが千三百六十八万人で八万人の増であります。それからサービス業、これが九百五十四万人で、前年同月に比較して七十八万人ふえておると、こういうことで差し引き、結論として全産業五千百九十万人で、五十一万人の増というのが、これが五十三年一月現在の就業者状況でございます。——先ほど申しましたのは労働力調査でございますね、総理府統計局の。  以上であります。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣のここにおられる時間が刻々と過ぎているので結論に入りたいんですが、私がお尋ねしましたのは、中高年労働者雇用促進特別措置法ですが、この法律の運用による再就職率ですね、これがどの程度のものかということをお伺いしたわけですが、これは大臣、後で事務当局と詰めてみますから、これは結構です。  ただ、こういう離職者法や、いまの中高年齢者のための再雇用機会を生み出そうとする努力、それがどの程度実績を上げているかということが前提になるんですが、私どもではそれは余り実績を上げていないと見ているわけですね。そして、中高年者ほど再雇用機会というものが非常に得にくい厳しいものがある。そこで、私はやはり、この人々はどうしても現在の失対事業に吸収する必要があると見ているわけです。この失対事業については、いま政府はこれをむしろ減らしたいというふうに考えていらっしゃる。そして、いまの中高年者雇用促進特別措置法の附則第二条でこれ以上はふやさないという枠をはめてしまったわけですね。だけれども、中高年齢労働者が再就職の機会がない、失業保険も切れてしまう、そして娘は結婚しなけりゃいかぬ、息子も進学しなけりゃいかぬという一番お金の要る時期に、再雇用もできない、失業保険も切れてしまうとなると、これはもうどうしようもないので、これはやはり労働力を活用していくという国民経済的な立場と同時に、その生活を保障するという社会保障的な面と両方を考えてみると、これをほうっておく手はないので、やはり失対事業に吸収してそれなりの労働力を活用していくということがどういう見地から見ても望ましいと思うんですがね。ただ、いままで政府は、どうも自由労働組合というのが左の方へ行ってしまって自民党政権にとって都合が悪い。それから自治体の首長に対しても非常に厳しい団体交渉を要求して、自治体の首長を悩ませる。いろんな見地から、もう失対事業打ち切りという方針を打ち出しておるわけですね。だけれども、それは非常に間違った政策であって、その労働力を遊ばすという手もないし、その生活をめんどうを見ないという手もないし、そういうイデオロギーの見地から働く者の生活を破壊するということぐらい間違ったことはないので、これはやはり大臣、もう一遍この失対事業の問題を見直して、そういう職のない中高年齢者は失対事業に入れてその労働力を活用し、同時に生活を保障するという措置に踏み切るべきだと私は信じているんですが、いかがでしょう。
  31. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、まさに高齢者社会に日本も完全に入っておるわけでございますから、特に中高年齢層の中で、わけても高年齢者の雇用対策というのは私は雇用対策の中の最重点な課題だというふうに認識をいたしておること、寺田委員と私は同感だと思います。ただ、そのような中高年齢者雇用対策として、御指摘のような失対事業によってこれを吸収していくという、これはもうすでに過去において、すでに国会の方でも、あの法律改正のとき一応打ち切るという方向で御決議がなされておるわけでございまして、その趣旨は、やはり失対事業は、ああいう特定の事業失業者を吸収するというのは、私は緊急避難的な対策として一応その存在の意義はあると思うんです。したがって、沖繩においては六〇%あるいは特定不況業種の指定地域においては四〇%、こういう失業者公共事業に吸収するという制度が現在も運用されておるわけですから、そういうふうにして、やはり中高年齢者が再就職につながるような方向雇用政策を進めるべきである。私も労働大臣になって驚いたんですけれども、失対事業にもうずっと十九年も同じところへ滞留しているという姿は、その本人にとっても幸せな人生ではないという気がしますし、中高年齢者の場合には、大体失対事業というと建設関係とか道掃除とか、こういう何というか、そう働きがいのあるような職場ではないというような感じもするんです。したがって、やはり生きがいのある再就職の道を、中高年齢層にふさわしいような仕事を見つけていくということの方がよりベターではないかと、このように考えるわけでございまして、そういう線からわれわれは、本会議でも御答弁いたしましたように、中高年齢者を雇い入れる事業主に対しての助成措置によって、民間の力をかりて、生かして、そしてやっていく制度。あるいはまた定年制、これは御承知の定年延長奨励金であるとか、あるいは継続雇用奨励金ということによって、だんだんに定年の延長を図っていく。目標は六十歳を目標にしてとりあえず努力する。こういうことによってやはり高年齢者社会に対応する雇用政策として、過去のいろんな経験を踏まえて推進すべきではないか、このように考えるわけでございまして、せっかくの御提言でございますけれども、従来の失対事業に高年齢者を吸収するという、これは適当ではないと、このように私は思うわけでございます。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっと一言だけ。  大臣もう時間ですがね、大臣は非常に理想を追求していらっしゃるので、お気持ちはわかるのだけれども、生きがいのある再就職の機会がいま現に得られにくくなっているんですね。それから、特定不況業種のようなものが次第に失業者がふえて、これは何とか緊急に救わなきゃならぬ時代になってきている。それから、定年のことをおっしゃったが、定年はいま下げられつつありますよ、現実に。われわれは上げようとするのだが、いま現実に下げられつつある。そういう現実をひとつ踏まえてもう一度検討していただきたいと思いますが、これはきょうでなくてもいいですから、検討をお願いしておきます。
  33. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 午後二時から再開することとし、休憩いたします。    午後一時三分休憩      —————・—————    午後二時四分開会
  34. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 午前中は労働大臣お答えを求める趣旨の質問をしたのですが、今度は所管の事務当局の方にお尋ねをしたいんです。  さっき労働大臣のお話では、国際人権規約の批准の問題で、まだ外務大臣との協議のところまで行っておらない、事務当局の方の打ち合わせの程度である、というお答えがあったわけですが、外務事務当局との話し合いでは、先ほどお尋ねをしたA規約の六条、七条、それから団結権、スト権などの問題では八条、こういう問題について事務的な協議は行われておるんでしょうか。いかがでしょう。
  36. 石田均

    説明員(石田均君) お答えいたします。  国際人権規約の事務的な調整につきましては、当然のことながら、外務省が所管をいたしておるわけでございますので、外務省中心で現在協議が進められておるところでございまして、先ほどお示しのような幾つかの問題点につきましても当然いろいろと相談をしておるわけでございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その相談の内容はいま言っていただけないですか。
  38. 石田均

    説明員(石田均君) 大変申しわけないことでございますけれども、まだ外務省との間でいろいろと協議を続けている最中でございまして、これはまた関係する省も多うございますので、現在の段階で内容を明らかにすることはお許しをいただきたいと存じます。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 先ほど、五十三年度の失業者見込みについて、大臣は、公共事業の推進によって約五万人完全失業者が減少をするのではないだろうかという見通しを述べられたんだけれども事務当局は、そういう楽観的な見通し現実性を持っていると思っておられるんでしょうかね。私は、失業者はふえこそすれ絶対に減ることはないと見ているんだけれども、どうでしょうかね。
  40. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 先ほども御説明をいたしましたけれども、御指摘のとおり大変厳しい雇用失業情勢が続いております。そういう情勢を背景に、来年度の重点が景気の回復と雇用の安定ということで、思い切った公共投資によります景気回復策を図る、七%の成長率を達成して雇用の維持増大をしようと、こういう政策を進めていくわけでございまして、そういう成長率を達成する経済運営が行われますと、年間を通じましては、大臣お答えいたしましたように、今年度の失業者実績見込みが百十五万人に対して五万人減ぐらいの百十万人になるであろうと、七%の成長率を達成する経済運営をいたしますとかなりの雇用需要、たとえば公共投資によります建設事業だけで十七万人の増になりますけれども、一方、労働力供給の方もふえますので、そういうものを見込みまして減少は残念ながら五万人ぐらいにとどまるんではなかろうかと、こういうふうに見ておるわけでございます。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあ七%成長の点を述べられたんだけれども、GNPが一%アップすると何人の雇用市場が確保できるというようにあなた方は推定していらっしゃるんでしょう。
  42. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) いまここに手元にすぐ一%で何万人というような数字は持ち合わせておりませんけれども、来年度の七%成長をもとにします経済運営におきましては、先ほど来申し上げておりますような労働力人口の増、一方、需要の拡大に基づきます就業者数雇用者数の伸びが五十五万人程度ということで、失業者としては五万人減少すると、こういうふうに見ておるわけでございます。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはわかりますけれども、やはり労働省として七%成長だからということをおっしゃるのでしたら、まあ一%のアップで大体何人の雇用市場が確保できるのかというような点、いままでの過去の実績でやっぱりつかんでいらっしゃらぬと、その計算がただ結論だけ覚えて答弁するということになるでしょう。だからやっぱり勉強して、そういう点もよくきわめてから答弁していただかないといけませんよ。  それからその次は、身障者の雇用促進についてお尋ねをしたいんだけれども、これは身障者雇用促進法、これに基づいてあなたがたはいろいろ御努力になっていらっしゃると思うんだけれども、一般事業主の身障者雇用義務の達成率というのはどのぐらいなんだろう、現実で。それをお答えいただきたいと思います。
  44. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 一昨年の十月一日から施行されました改正身体障害者雇用促進法におきまして、従来の雇用率を法的義務にするという雇用制度の強化が行われました。その雇用状況は毎年六月一日に報告させることになっておるわけでございます。昨年六月一日現在の雇用率の状況について見ますと、この雇用義務のある民間企業雇用されております身体障害者は全体で約十二万八千人でございます。その雇用率は一・〇九%で、法定雇用率は一・五%になっておりますから、これを下回っておるわけでございます。また、この一・五%の法定雇用率を達成いたしておらない事業所の割合は四七・二%になっておるわけでございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法定の雇用率がいま一・五%とおっしゃったんですが、これは政令で決めたんですね。いかがですか。
  46. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 御指摘のとおり政令でございます。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 条文をおっしゃっていただきたい。
  48. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 身体障害者雇用促進法施行令の第九条によりまして、「法第十四条第二項に規定する身体障害者雇用率は、百分の一・五とする」というふうになっておるわけでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま審議官お答えによると、この法定雇用率に達していない企業四七・二%とおっしゃったが、大体私どものあれでは大企業が多いと聞いているんですが、いかがでしょう。
  50. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 法定雇用率の達成状況を見ますと、御指摘のとおり、規模別に見ました場合は規模の大きい方が達成していない割合は多いような状況でございます。たとえば千人以上の規模の企業におきましては、全体の雇用率の達成率は〇・八〇%でございまして、雇用率を達成していない未達成の企業の割合も、同様の傾向から、千人以上の規模の企業におきましては七八・九%ということでございます。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはまあ法の十六条で公表制度というのがあるんですがね。公表なさった事例がありますか。
  52. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 公表制度と申しますのは、先ほど申し上げましたように、身体障害者雇用促進法が改正され、施行されましたのが一昨年の十月一日でございますが、この改正法により新たに設けられた制度でございます。すなわち、その内容は、公共職業安定所長が雇用率の未達成の企業に対しまして、身体障害者の雇い入れ計画の作成を命ずることができるという規定がございます。これで雇い入れ計画の作成を命じまして、その命じたところによりまして作成しました雇い入れ計画をさらに実施しない場合に、それの適正な実施を促進するために勧告を行うという仕組みになっております。こういう一連の指導によりまして、事業主の自主的な努力によりまして、身体障害者の雇用率達成のための雇用促進を促すわけでございますけれども、この勧告に正当な理由がなく従わないときに公表するということでございまして、現在まだ一昨年の十月一日からの施行と、それの施行された法律に基づきまして雇用率の状況を報告を求めたのが昨年の六月一日ということでございますので、現在まだ公表というような事例はないわけでございます。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま審議官のお話ですと、一千人以上の従業員を擁する企業の達成率、これは平均達成率でしょうね、これは〇・八%。そうすると、法定雇用率の約半分ということになりますが、それはその一千人以上の規模の企業の約八割近いものがこの雇用率に達していないという、これは非常な国策に対する不協力と言っていいわけですね。後でお尋ねするけれども、これは納付金制度があるから、お金さえ払えばいいという考え方なのかもしれないけれども、およそ弱者をいたわろうという国の施策に対して全く不協力という、しかもそれが十分経済的になし得る企業がなさないというのだから、これは当然労働大臣としては勧告してしかるべきだと思うのですが、なぜ勧告をしないんでしょう。
  54. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 先ほど申し上げましたように、雇用率の未達成の事業所につきましては、公共職業安定所長が身体障害者の雇い入れ計画の作成を命ずることができるということになっているわけでございます。したがいまして、そういう身体障害者の雇用状況等を勘案いたしまして、未達成事業のうちで特に必要な事業主につきまして、本年三月末までに雇い入れに関する計画を作成することを公共職業安定所長を通じて命じておるところでございます。すなわち、昨年の六月一日に雇用状況の報告を求めまして、その報告を調べまして、雇用率の達成の悪いところで雇い入れを促進する必要があると認められるものにつきましては、すでに安定所を通じて作成の命令を出しているところでございます。それに基づきまして雇い入れが出たものをどのように実行するかと、その実行の過程で十分行われない場合に勧告等を行うと、こういうような仕組みでございまして、現在は雇い入れ計画提出を命じておる段階でございます。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは審議官、ただ、五十二年の三月にもそういう計画というものはあなたの方の各公共職業安定所の方へ出されたんでしょう。どうなんですか。
  56. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) この雇用率なり雇用義務を強化する法律改正は五十一年の十月一日から改正法が施行になりまして、これに基づきまして毎年六月一日に、現在における雇用状況を報告させる、こういう仕組みでございますので、五十二年、すなわち昨年の六月一日現在における雇用状況の報告が、改正された後初めての報告でございまして、それをもとに問題を検討して、雇い入れを進める必要がある事業所に対して、現在その作成を命令いたしておると、こういうところでございます。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、この三月が最初の計画提出時期だと、こういうことになるわけですね。
  58. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) そのとおりでございます。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはその計画を見てからでないと、その努力のいかんということがはかられないかもしれませんが、その計画を見て、そうして低い雇用率でありますからして、それを法が期待する雇用率まで高めるというのにはかなりな努力がいるわけですね。それからまた、あなた方の指導監督の責任もまた重いと言うことができると思いますが、これはその状況によっては、いまの勧告制度に踏み切る、勧告を聞き入れなければ公表に踏み切るという決意はお持ちなんでしょうね。いかがです。
  60. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 法律改正なりその後の経緯につきましては、先ほど来申し上げたとおりでございまして、現在のところは、改正法の施行のまあいわば緒についたところでございますので、雇用率未達成の事業所で特に雇い入れを進める必要があるようなところにつきまして、雇い入れに関する計画提出を命じておるところでございまして、この計画一定期間の間にどういう形で身体障害者を雇用するかというような計画が出てこようかと思いますが、その出てまいりました計画をもとに、随時公共職業安定所長が事業所と連携を保って指導しながら、その指導状況を見まして、この計画に従わないようなもので正当の理由がないようなものにつきましては、いずれ公表制度ということも発動しなきゃならないようなこともあるということで考えております。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 同じように、五十年以後発足した制度に、身障者雇用納付金という制度がありますね。これは、いままでに納付せられた金額というのはどのくらいになるんでしょう。また、幾つぐらいの企業から納付せられたんでしょうか、ちょっと明らかにしていただけますか。
  62. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 幾つぐらいの企業からかは、ちょっといま調べておりますけれども、まず納付された金額について御説明いたしますと、現在納付されております納付金は、身体障害者雇用促進法が改正され、施行されました一昨年、すなわち昭和五十一年十月一日から昨年、すなわち昭和五十二年三月末までの期間にかかるものでございまして、納付金額は九十二億円ということになっております。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはまあ、後でわかりましたら、これを納付した企業、大体でいいから説明してください。  その次に、中高年労働者雇用促進特別措置法、この法律、これはたしか四十六年にできた法律だと思いますが、この法律の施行以来今日までの中高年失業労働者の数、それから一般失業者との比率、これは年次別に明らかにしていただきたい。
  64. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法は、ただいま御指摘のとおり、昭和四十六年に制定されたものでございますけれども、この昭和四十六年に制定されました中高年齢者雇用促進法では、中高年齢者の適職というものをもとに雇用を進めるという考えで中高年齢者の適職の指定がなされておったわけでございますが、身体障害者雇用促進法と同じく、一昨年の十月一日から改正された法律が施行されておるわけでございます。この一昨年の十月一日から施行されております改正法におきまして、高年齢者、すなわち五十五歳以上の年齢の方々の雇用率というものを定め、これを六%ということで決めまして、努力義務ということで実施をいたしておるわけでございます。  ただいま御指摘のありましたこの法律が制定施行されました以後の中高年齢者失業者の推移につきましては、手元に四十八年からのがございます。私ども五十一年の改正法で高年齢者の問題を特に取り上げてやっておるわけでございますが、四十八年から見てみますと、四十五歳以上ということでくくりますと、四十八年が十七万人、四十九年が十八万人、五十年が二十九万人、五十一年が三十四万人、五十二年が三十四万人ということでございまして、それぞれ全体の失業者に占める比率は四十八年が二六・六%、四十九年が二五%、五十年が二九・三%、五十一年が三一・五%、五十二年が三〇・九%、こういうような状況でございます。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは後ほどそれを表にして提出していただきたいんですが、いかがでしょうか。
  66. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 提出さしていただきます。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 同じくこうした中高年労働者に対する有効求人倍率、それから現実の再就職率、これもちょっと説明していただきたいんですが。
  68. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 安定所の窓口におきます求人求職の状況を示します有効求人倍率につきましては、ただいまの時期と同じ時期で見ますと、四十五歳以上の有効求人倍率は、四十八年は一・〇七、四十九年が〇・四六、五十年が〇・二〇、五十一年が〇・二三、五十二年が〇・一九ということでございまして、五十五歳以上について見ますと、四十八年は〇・五一、四十九年が〇・二二、五十年が〇・〇九、五十一年が〇・一〇、五十二年が〇・〇九というような状況でございます。  なお、この有効求人倍率は毎年十月現在で調査いたした数字でございます。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 こうしたのが現実に再就職した率というようなもの、あるいは数というようなものは掌握しておられないんでしょうか。
  70. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 失礼いたしました。  就職率、有効求職者のうちの就職した者の割合、率を見てみますと、四十八年から、四十五歳以上で八・六%、四十九年が六・五%、五十年が三・四%、五十一年が三・六%、五十二年が三・六%、五十五歳以上で見ますと、四十八年が五・九%、四十九年が四・四%、五十年が二・二%、五十一年が二・四%、五十二年が二・四%ということでございまして、この就職率自体は、職業安定所にまいっております求職者の中には、必ずしも失業者だけではなくて、特に若い層の中には転職希望者等も非常に多くて、職業安定所におきます求人だけでなく、求人広告を見たりあるいは知人の紹介とか、いろんな形で、求職活動をいたしておりまして、全体の就職率もそれほど高いものではないわけでございますが、一般的に就職状況がむずかしい年齢の高い層の就職率は低いというのが現状でございます。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それも審議官、後で表にして資料として提出していただきたいんですが、いかがでしょう。
  72. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 提出さしていただきます。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 こういう中高年の失業者のうちで、公共訓練施設で職業訓練を受けた者、あるいは受けて現実にいる者、これはどれぐらいおりますか。
  74. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 中高年齢者——離停職者は中高年齢者だけに限りませんが、離停職者に対する訓練といたしましては、大体平年度五万人ぐらいの規模で現在進められております。
  75. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 一年に平均して五万人程度ですね。
  76. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) さようでございます。
  77. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その五万人の中で、現実に就職した人の数というのはつかんでいらっしゃるんでしょうかね。もしおられましたら説明していただきたい。
  78. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 公共訓練施設で訓練を受ける場合には、一般的には公共職業安定所の受講指示によりまして訓練を受けておりますので、訓練を受けました者の就職率、これはもちろん自家営業とかそういうものもございますので、就職率としては八〇%ぐらいな見当になると思います。
  79. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま公共職業訓練施設で訓練を受けた者の就職率というのは八〇%、これはかなり高い就職率ですけれども、それ以外の者は、有効求人倍率、これが非常に低いこともあり、現実に再就職した人の率というものは、これは一般的にきわめて低い数字をいま御説明があったわけですが、そうといたしますと、これの雇用に関してせっかくの法律をおつくりになったので、これは身障者の雇用促進と同じように、やはり雇用調整金制度であるとか、助成金制度雇用納付金制度、そうしたようなものを設けたらどうかと、さらに一歩進んで公表制度まで設けると非常にいいんだけれども、私どもはそういうふうに思いますが、これは労働省としてはいかがなものでしょうかね。
  80. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 先ほど来御説明いたしておりますように、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法を五十一年に改正いたしまして、五十一年の十月一日から施行いたしております改正法におきまして、五十五歳以上の高年齢者の雇用制度を設けまして、これを六%と定め、この雇用率以上の高年齢者を雇用するように努めなきゃならぬということになっておるところでございまして、これに基づいた具体的な指導をいたしておるわけでございます。ただこの雇用率につきまして、御指摘のような、身体障害者雇用促進法と同じような法的義務にするとか、納付金制度を設けるというようなことにつきましては、現在のわが国特有の賃金慣行でございます年功序列賃金とか、あるいは終身雇用制、そういう雇用賃金慣行の改善を図るということがまず前提でございますので、そういう雇用賃金慣行の改善を図りながら行われなければならないということでございまして、そういうものと全く切り離しまして、雇用率だけに強制力を持たせるというようなことにつきましては、必ずしも適当ではないんじゃないかということで現状を考えておるわけでございます。
  81. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうしますと、法律が期待している六%の雇用率、これは大体達成しているように見ていらっしゃるんでしょうか、あるいはそれを調べてみたところ達成してないというのか、その達成率はどのぐらいでしょうか。
  82. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 高年齢者、すなわち五十五歳以上の高年齢者の雇用状況を見ますと、これは百人以上の規模の事業所について課しておるわけでございますが、全部の雇用率が五・六%で、この雇用率を達成してない企業の割合は五六・三%の状況でございます。
  83. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは定年制の問題とも関連しますからね。あなた方、先ほど労働大臣は定年制を延長するんだと。恐らく六十歳、望むらくは六十五歳という、そういう抱負をお持ちだと思うんだけれども、そういう理想をお持ちのときに、未達成の企業が半分以上もあると、これは百人以上の従業員を有する企業、そうなりますと、単純なる勧告であなた方はそうした法の理想が達成できると思っていらっしゃるのか、それともやっぱりむずかしいと思っていらっしゃるのか、どちらでしょう。
  84. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 現在から近い将来含めまして、労働力の高年齢化がわが国の場合非常に急速に進んでおるという状況でございまして、一方、需要の側では年功序列賃金とか、終身雇用ということでなかなか再就職がむずかしいという状況がございますので、先ほど大臣が申し上げましたように、高年齢者の雇用促進ということはわれわれ労働行政の重点課題といたして進めておるわけでございますけれども、ただ、御指摘のように、これに強制力を持たしてそれを実現するかどうかということにつきましては、先ほどちょっと御指摘もございましたが、結局年功序列賃金制度のもとにおきましては、年齢が高くなるにつれまして非常に賃金が高くなると、そういうものが賃金原資の問題にも一絡んでまいりますし、逆にまた、そういう問題とか、終身雇用制度状況を含めて中途採用もむずかしかったり、中途採用した場合の賃金をどのくらいにするかとか、そういうような実態がなかなか問題がございますので、そういう雇用賃金慣行なり実態というものの是正をしないで雇用率に強制力を持たして雇用させるということは、現状ではまだ適当ではないという考え方でございまして、したがいまして、結局は行政指導を強めることによりまして、そういう積み重ねによりまして雇用率達成の努力をしてまいりたいということで考えているわけでございます。
  85. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 年功序列型の賃金制度を是正するというようなことはちょっとおせっかいなんですね。それはあなた方がそういうことをやらなくても、企業がみずから生きるためには、企業はやりたがっていますからね、現実にもうやりつつあるわけでしょう。だから、そんなことまであなた方が企業のことを心配しておせっかいをしないでもいいんで、あなた方は、法が期待しているその高年、中高年者の就職を何とかして確保してやろうという、そういう理想に向かって進むべきなんでね。そのときに企業が困るでありましょう、だから、その企業のために年功序列型賃金制度を何とかいたしましてなんというのは、企業立場であって国の立場じゃないでしょう。おかしいですよ、それ。
  86. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 御指摘のように、賃金問題自体は労使で決められることでございますので、行政がその決め方についてどうこうという介入をするわけではございません。したがいまして、行政が行いますことは、定年制の延長についてもそうでございますけれども、高年齢者の雇用という問題につきましてはどういう問題なりどういう是正が望ましいかというようないろんな具体例を提供して参考に資すると、こういうようなことにとどまろうかと思いますけれども、いずれにしましても、高年齢者の雇用を進めるために雇用制度を法的義務にするかとか、あるいは強制力を持たすかということにつきましては、それを進めます前提となる基盤といいますか、すなわち雇用なり賃金の実態がある程度進みませんと、そのことだけを切り離して強制力を持たせるということについては、私どもとして現状ではなお問題があろうかということに思うわけでございまして、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 そういう意味で、行政指導をさらに強めながら促進を図ってまいりたいということで考えておるわけでございます。
  87. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 法が一定の理想を持っているときに、現実がなかなかそれについていけないからといってその現実を是認するような、その現実ゆえに理想が達成できないというような態度はとるべきじゃないですよ。昔、明治の時代に、おめかけさんを持っている政治家も多いし、実業家も多いし、おめかけさんを持っているような家族制度が多かったですね。しかし、民法は一夫一婦制をとってそれを断行したわけです。すべて法律は理想を持ってやろうとするときにはそれを貫かないと。それを何か、経営者が困るでありましょう、したがって年功序列型賃金を何とかいたしませんとなんて、そんなことで、あなた、中高年齢者雇用率が高まる道理がないでしょう。だから、いまどんどん企業は定年制をむしろ引き下げているんですよ。それからまた、いま多い首切りというのはみんなまず第一に五十歳以上の者というものを選んでいる。労働省の根本的な態度というものが間違っていますよ、それは。そうでしょう。いま定年が下げられようとしている現実、それから首切りが皆五十歳以上を首切ろうとしている現実、そういうものがあることをあなた方は御存じなんでしょう。それなのに、やれ年功序列型賃金を何とかせぬと企業が困るだろうと、まるで企業の代弁者のような態度をとって、法が求めている理想を達成しようというような情熱が片りんだにうかがわれない。  そういうことで、どうでしょうかね、これは政務次官いかがですか。これは根本的に労働省の態度を改めてもらわにゃいけませんよ。とても救えませんよ、これは。
  88. 向山一人

    政府委員(向山一人君) 高齢者の雇用の問題はきわめて重大な問題でございまして、先ほど申し上げましたように、五十二年の六月の時点では五・六%というような割合になっておりますけれども、今後の高齢化社会におきましてはますます高齢者の占める割合は大きくなってくることが予想されているわけでございまして、現実の問題としまして、五十五歳以上の高齢者の雇用を見ますと、五十年が一〇%、これは全体の労働者の中で占める割合。それから五十五年が一応、まあ先のことになりますけれども一一・七%ぐらいまでふえるであろうという予想を持っていまいるわけでございますが、この問題は、景気との関連において一番実は私ども心配しますことは、中小企業の中で働いている高齢者、すなわちこの質のいい労働者が大企業の方へ取られて、それから高齢者の関係が中小企業に入るという、集まるという状況がたくさんありますので、大企業について強制力を持たせればある程度吸収されるように思いますが、今度は中小企業関係の方が、非常に経営がこの二重構造の中で困っている中小企業の中の経営を考えたときに、相当にこれは慎重に考えないと、また中小企業を非常に圧迫するという原因になっては困ると、こういうことも非常に実は懸念をされておりますので、いまいろいろと御意見もございましたが、今後慎重に検討をしてまいりたいと考えております。
  89. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの政務次官のお話はわかります。それはなるほど年功序列型賃金制度というものがある以上、定年制を伸ばしたら中小企業は非常に経理上困難に逢着するだろうと、それはわかります。しかし、それは企業が定年制を延長した場合には、当然みずから生きるためにその制度を改めていくでしょうし、現にもうすでに改めつつあります、それは。労働組合でももうそれをのんでいる組合がずいぶん出てきました。だから、そこは余り考えずに、むしろ何とかそうした企業にはできるだけ助成をしていこうというような、そういう考え方で理想の実現を図っていくべきだと思いますよ。政務次官は慎重に検討をするということをおっしゃったので、私はそうしたお言葉を信用してこれ以上はお尋ねはしませんけれども、どうぞそういうことで、この問題は理想を達成するためには単純なる勧告でいいのか、もっとさらに一歩進んで強い態度をとるべきか。これは慎重に検討していただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほど大臣にこの法律の附則第二条の撤廃を求めたところ、大臣は過去においてすでに失対事業の打ち切りというものを決めたんだから、したがっていま改めるということには賛成できないと、そういう御意見がありました。しかし、現実に中高年労働者の首切りが出て、高い失業率が存在する。そうして再就職の機会も次第に失われているという現実がある場合に、それは何とかしなければいけないでしょう。それは藤井労働大臣は生きがいのある新しい再就職の機会を得させるんだとおっしゃるが、じゃ生きがいのある再就職の機会を与えられない失業者はどうします。どうして救えます。これはどうするのでしょうか。
  90. 向山一人

    政府委員(向山一人君) この問題は産業政策経済政策にはきわめて大きな関連がございまして、私どもどうしても本質的には雇用拡大を図らなければならない。しかも、今日雇用されている方々の割合を見ますと、今日企業の中に高齢者、いわゆる中高年齢者は相当大きなウエートを占めているわけですが、これが不況が継続的に長期化しますと、どうしても高齢者の方が解雇される対象になりがちでございますので、そういうことにならないように、定年制の延長等もくるめながら企業に積極的に協力をしてもらうようにしているわけでございますが、定年制の延長の問題等も、これも法制力をもって当面やるわけではございませんので、当面の目標として六十歳を定年の目標にしまして、将来は六十五歳まで、あと年金に継続していけるような形までできるだけひとつ推し進めてまいりたい。そんな中においてこうした問題の調整を図ってまいりたい。先ほども申し上げましたように、定年を延長することによって、かえって企業の側では退職金はふえるし、賃金も年々ベースアップをしなきゃならぬということになると、かえって企業の方では敬遠する原因にもなりますものですから、そうした問題を、六十歳まで延長して雇用拡大を仮にする場合に、一区切りをつけて、勤続年限からは除外するとかあるいは昇級は後見合わせるとか、いろいろな条件が伴うだろうと思いますが、そんなことも広範囲の中から、広い範囲でいろいろとこうした問題を考慮しながら推し進めてまいりたい。結果においては高齢者が何とかこの企業の中に残る、あるいはまた再就職ができるという方向に結びつけてまいりたい、こんなふうに実は考えております。
  91. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その定年を六十五歳まで延長する、それから再就職の機会失業者に得させると、それが達成できるまでの期間ですね、中高年の失業者をほうっておけということになりましょう。ほうっておけないんですよ。だから、ほうっておかずに、それは失対事業に吸収したらいいんじゃありませんか言っているんですから、お答えにならぬのですよ、政務次官のお気持ちはわかるけれどもね。そのお答えでは、私のお尋ねに対する適切な答えにならないんですよ。救えない。六十五歳までなかなかいけないでしょう、六十歳までいってないんだから。それから、現実に再雇用機会を与え得ないものがずいぶん残っているでしょう。それをどうするんですかとお尋ねしているんですよ。それはやはり失対かなんかに入れない限りには救えないじゃないですか、いかがでしょう。
  92. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) ちょっと事務的に答えさせていただきますけれども、実は大臣から先ほど答弁申し上げましたように、失業対策事業のように、失業者を直接吸収するような事業を行うかどうかということにつきましては、この事業昭和二十四年にできましてから、非常に大きな滞留を抱えて再就職の道につながらなかったということをもとに、各方面からの意見もございまして、新しい流入は認めない改正が行われたわけでございまして、したがいまして、私どもとしては、いま御指摘のような状況に対してどのように失業者を再就職につなげるかとかあるいは吸収するかというような問題につきましては、やはり基本的には経済全体が回復に向かって雇用需要が出ると、そういうための経済運営をするということが必要でございますけれども雇用面におきましては、たとえば雇用者数自体は、現在におきましても全産業におきましては、前年同期に比較いたしまして毎月増加しておるような状況もございますし、そういう産業間の転換をどうするかというようなことも含めまして、これも大臣から申し上げましたけれども、やはり民間における雇用機会の増大を図るというような観点から、主として四十五歳以上のような中高年に対しましては、これを雇われる事業所に対します大幅な助成制度を設けることによりまして雇用開発を図るとか、あるいは公共事業が非常に増加いたして実施されるわけでございますが、そういう公共事業失業者吸収率制度というようなものはもうございますので、その吸収率制度活用しながら就労機会の確保に努めると、こういうようなことを積み重ねることによりまして、緊急的には対応しなきゃならぬということで考えておるわけでございます。
  93. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私はそれでは救えないと思いますが、どうもまだお考えを改めるところまでいかないようですね。これはまあ後日に譲ります。というのは、これはもう幾つも質問事項があって、時間が切れてしまうので。  次に、時間外労働の問題でお尋ねしたいんですが、労働基準法違反の事件というのはきわめて多いので、ことに運送会社、タクシー会社においてそれが非常にはなはだしいことを見るわけです。俗に言う二・九通達というものは、もう現実に少しも守られていないのですね。この間私ども関係した運送会社では、これは一日の労働時間が十三時間ということの協定を、労働組合がないのですが、労働者を代表する者と会社との間に協定をしておるわけですね。まあ十三時間なんというのは、これは実働の場合ですから、これは違反なことはわかり切っているので、それが遂に二十四時間の連続実働をさせて、交通事故を起こして死んでしもうたんです。それが初めて発覚して、この間会社社長、それから運行責任者、いずれも罰金に処せられたという事件があります。それから自動車の整備が非常に悪いということで、整備不良のために命を落とした運送会社の運転者というものについても、最近私は相談を受けた。こういうような会社は、おおむね二重帳簿をつくっているわけですね。事故が起きますと、その取り調べ官に対しては、そういう過酷な労働であるということを全然隠してしまう。そうして表帳簿だけを見せて逃れようとする。そういう傾向が現実に多いんだけれども、二・九通達が労働省におかれては現実に守られているというふうに見ておられますか、守られていないと見ておられますか、どうでしょう。
  94. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 二・九通達ができましたのは昭和四十二年でございまして、当時非常に神風タクシーと言われるような問題にあらわされますように、交通事故が多いということから、特に指導基準として決めたわけでございます。それからすでに十年余りを経過しておりまして、その間交通事故の数は相当減ってきた傾向にございますけれども、私ども監督機関を通じて把握している限りでは、なおそうしたタクシーやあるいは道路運送等の事業労働時間に関する違反はまだ結構ございますので、なお徹底してその指導に当たっていこうということで、特にほかの業種よりも監督、指導の割合も高めまして、そうした自動車運送業についての監督に当たっているところでございます。
  95. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この間、「社会問題月報」の二月号に、「「トラック野郎」の実体」という非常に興味のある報告が載っているわけですね。これは労働時間の問題もあるけれども、給与の実態が基本給が四万七千円、勤続手当が六千円、皆勤手当が一万七千円、家族手当が五千円、交通費が一万一千円、危険手当が七千円など、すべてを含めても月に九万三千円であると、これではとても生活できないので、残りは超過勤務手当でかせいでいるのだと。そのために超過勤務手当が毎月百八十時間から二百五十時間に達しているという、これは興味ある報告があります。「文字通り休むヒマはない」、「金はいらない、眠りが欲しい」という実態であるという。こういう実態は、私どもも実は現実に運送会社の職員から聞きますと、これはもう至るところにあるんですね。そうして居眠り運転のために事故を起こし、私自身が弁護した者さえもある。死んでしもうた人もある。その兄弟が同じ会社から今度は総評系の労働組合のタクシー会社に移りますと、前の会社と比べるとまるで天国のようですという、そういう報告を受けている。地獄に等しいと思われるくらい過酷な労働をしておる実態がある。そういう実態をつかんでいらっしゃるんだろうか。
  96. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 私ども関係労働組合の方からもいろいろと事情を伺っております。たとえば貨物の例で申し上げますと、貨物が国鉄離れをする、それが自動車運送の方へ回るけれども、その同じ自動車運送の中でも、そうした労働条件の悪い、どちらかと言えば中小零細の運送事業の方にどんどん荷物がとられてしまって、それが結局すべての問題を引き起こしている一番の原因じゃないかというような問題の指摘も受けております。したがって、そういう特に一人親方的なトラック運転手を使ってやるというような形のものにそういう問題が多いというふうにも聞いておりますので、そうした問題、これは労働基準法の適用は可能かどうか、労働しわ寄せの問題もございますので、なかなかむずかしい点でございますが、できるだけそうした点にも目を向けて監督指導に当たっていこうということで臨んでいるところでございます。
  97. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはよほどあなた方が理想を高くして、またその理想を達成するためにはどうしたらいいかということを考えて、強力に進めていただかないと直りませんよ、これは。あなた方はある程度実態を把握していらっしゃるんだろうと思う。私どもがお役人の方に伺うと、それはもうよくわかっておりますということを言われる。わかっていて直らない。その一つのあれには、基準監督官というものの数が少ないこともありますよ。これは単にこの労働時間だけの問題じゃなくて、たとえば衛生設備の問題あるいは危険除去の施設の問題、粉じんの問題、いろんな問題があるんだけれども、監督官に伺うと、非常に広大な企業に出かけて行っても、二人ぐらいの監督官が行ったってどうしようもありませんと、こう言う。少なくも十人ぐらいの者で行かないと、それは違反なんかつかまえようがないと言う。それはそのとおりだと思う。それから県下の何百という運送事業体を見るというのに、県にいる三人あるいは四人程度の監督官ではこれは監督ができようわけがない。だから、あなた方もやはり思い切って理想を達成しようと思うならば、それだけの人的な体制をつくらなければいけない。それをつくらないでじっとしているというのは怠慢なんですよ。思い切って基準監督官を——また基準監督官が数が適当にふえ、そしてそれが本当に職務を励行しようという理想に燃えて初めて基準法なんというのは守られるんでね、そうでなければ、基準法なんというのはもうあってなきに等しいわけです。もう少し責任を持ってこれを守ろうという体制をとっていただきたいんだが、どうでしょう。
  98. 野口忠夫

    ○理事(野口忠夫君) 寺田君、時間になりました。
  99. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ時間が来たそうですから、ちょうど大臣いらっしゃるので、いま大臣決意を伺いたいんですが、つまり、労働基準法の労働時間に関するような規定というものは守られてないということは基準監督局長もお認めになったわけです。そのために、過酷な労働を強いられて居眠り運転をして事故を起こしたり、みずからの命を落としたりする事故があるんです。そういうものを直そうと思えば、やはり基準監督官が足りないんですよ。だから、思い切ってそれを整備をして、そしてやはり基準法を守ろうという体制をつくっていただかないと、ああいう法律があっても何にもならない。だから大臣も、大臣としていらっしゃる間に、思い切ってそういう理想を達成するための努力をしていただきたいと思うんですが、そういう努力をお約束していただけますか、どうでしょう。
  100. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 寺田委員の御指摘は私も同感でございます。労働行政は申し上げるまでもなくマン・ツー・マンの関係で、建設省あたりとはちょっと趣が違うというふうに私は思いまして、就任早々、ちょうど五十三年度の予算編成が始まりましたから、いろいろ内容に入って調べてみますと、労働省の全体の職員の数が、いわゆる行政簡素化、定員削減の基本方針に従って毎年少なくなっておったのでございまして、昭和四十二年から昭和五十二年まで、これは合計しますと純減すること二千三百名、そういったことでございましたから、私はこの問題は労働大臣就任の一つの大切な仕事として体を張ろうというので閣議にもとの折衝を持ち込みまして、そしてこの純減だけは差しとめました。  そのような厳しい情勢であるにかかわらず、従来、御指摘の監督官は、いまのような全体を圧縮されておりまして、昭和五十二年には六十六、七名純減です。昭和五十一年は百五、六名の純減だった。そういう厳しい情勢にあるにかかわらず、監督官だけは大体三十名ぐらい増員をしているというのが現状ではあるんです。そういう現状であるにかかわらず、確かに労働災害とかいろんな問題に対しての監督官の陣容はまだまだ十分とは言えないと、こういうふうには思うわけでございまして、   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕 御趣旨を十分体して今後も努力したいと、このように思います。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 きょう私は、財形貯蓄の問題についてお尋ねをしたいと思います。  現在の長期不況克服のために、現在、政府は大型の公共投資でもって打開を図ろうといういろいろな施策が講じられております。特に公明党は、大型の公共事業よりも生活関連の公共投資に力を注ぐべきである、このように私たちは強く主張しております。特に持ち家住宅、このような住宅の建設の促進等を図りまして、国民の生活の安定を図ることができますし、あわせて中小の建設業者の皆様にも影響を与えることになるわけでございます。ところが、現在政府が行っております財形貯蓄一つをもちましても、これが景気対策の一環に果たしてなっておるのかと見ますれば、そのようにはなってない面が多々ございます。有効な持ち家建設の促進になってない、そういう点を数点取り上げまして私は質疑をしてまいりたいと思います。  労働省からいただきました財形持ち家分譲融資貸し付け決定状況を、四十八年度から五十三年二月度までの数字をいただきました。これで八百二十三件、三千九百八十戸、金額にしまして三百四億二千七百万円、財形持ち家個人融資申し込みの状況が、五十三年二月の現在で四百七十九件、四百七十九戸、十四億四千五百万円という、こういうような実情になっておりますが、私は五年間の数字を見まして、これは見方にもよりますけれども、余りよい実績ではないと思うんです。制度が発足して余り日がたってない、そういう理由もあるかと思います。PR不足であると、いろいろの理由があるかと思いますが、私はこのような業績が、余り芳しくないという、ここには何かの原因があると。いま申し上げたことも一つでしょうし、あるいは貸付条件が厳しいのではないかという、そういう見方もされますが、これを労働省としてどのように受けとめていらっしゃるか、まず最初にお尋ねしたいと思います。
  102. 森英良

    説明員(森英良君) お答え申し上げます。  財形持ち家融資がどうも所期どおりの成果を上げていないという点はまことに御指摘のとおりでございまして、その理由はいろいろございますが、特に個人融資、これは本年度から始まったのでございますけれども、これがどうも伸びません理由は、やはり先生御指摘のとおり、本制度が発足いたしましてなお一年足らずでございまして、その周知がどうも徹底していないという点がまず挙げられるかと思います。  それから、この融資につきましても、それぞれ事業主がやはり相当の援助をするということになっておるわけでございますが、それにしましては現在の経済環境が非常に悪うございまして、したがって、そういう景気的な影響も受けているということが言えるかと思います。そのほか、融資を受けるための資格要件につきましても若干厳し過ぎる面があるようでございまして、この点は、現在国会に御提出申し上げております財形法の改正法案の中におきまして、相当程度の改善を図るということで考えております。なお、財形融資の中の財形分譲融資、これは法律の制定当時からでございまして、すでに相当期間の実績があるわけでございますが、これも必ずしも良好でございませんけれども、しかし時系列で見ますと、だんだんに伸びてきておるということが言える状況でございます。
  103. 田代富士男

    田代富士男君 いま実績が余りよくないということを申し上げまして、制度が発足して間もない、貸付条件が厳しい。それから、この制度というものは国と事業主が援助して、そうして、そういう皆さん方に対して寄与してあげようというところから発足して事業主も一部の負担をしなくてはならない。ところが、現在のこのような不況でありまして、こういうものを打開するために現在勤労者財産形成促進法の一部が改正されようとしておりまして、貯金をしました、その貯蓄額のいままでは二倍の融資、これを三倍、限度額一千万円が一千五百万円というような、こういうことが言われておりまして、そちらの改正案が出されておりますが、事業主が負担しなくてはならない。こういう不況時に、ただでさえも厳しいときに事業主の負担を強いられるということは、なかなかこれはさらに厳しい面が見られます。そういうところが、実績不振といいますか、こういうものを促進するブレーキになっているのではないかと思いますし、その事業主負担の方の改善というものが今回の改正案にも余り見られないのですが、この点はどうですか。私はあわせて改善すべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  104. 森英良

    説明員(森英良君) 先生御指摘のとおり、財形持ち家融資につきましては、いずれも国が相当の負担をいたしましてできるだけ有利な資金を提供しますと同時に、それを受けて事業主が住宅の分譲あるいは住宅の貸し付けをします場合に事業主としてもある程度の援助をしてもらうということになっておりまして、これを事業主の行う勤労者のための負担軽減措置と呼んでおるわけでございますが、これはどういう式で入っておるかと申しますと、やはり財形政策の理念というものが、本来勤労者の自主的な財産形成のための努力というものを前提にいたしまして、それをできるだけ国と事業主が援助する。そこに財形政策の基本的な理念と申しますか、目的があるということが根本にございまして、そこで財形貯蓄につきましても事業主賃金からの天引き、それから預入の代行というような便宜を提供しておりますし、財形持ち家融資につきましても、そういう限度で事業主が負担軽減措置を行うということになっておるわけでございます。そういうことで、この制度自体は財形政策の基本的なところに触れる要素でもございますので、今回もこの線は従来どおり維持するということで改正法も措置しておるわけでございます。  しかしながら、確かにこういう不況状況になってまいりますと、なかんづく中小零細企業等におきましては、かえってこの負担軽減措置を行うという負担そのものが障害になりまして、伸びるべき住宅融資が伸びないのではないかという先生御指摘のような御意見も十分あり得るところでございまして、この点はやはり財形制度の基本理念とも絡みますので、今後慎重に検討さしていただきたいというふうに考えております。
  105. 田代富士男

    田代富士男君 その問題は慎重に検討するということでございますが、趣旨は、国と事業者が援助するというそのものの前提に立った上で推進できないのは、事業者負担というものがブレーキになっておりますから、それは検討するとおっしゃることは早急に実現できるように要望をしておきたいと思います。  続いて、財形貯蓄の発足以来の推移を見てみますと、昭和四十六年から五十二年の十二月末までの財形実施事業所数は約六万二千五百カ所、財形実施勤労者数は七百四十八万人、財形貯蓄の残高一兆七千九百六十七七億三千三百万円。これが私いただきました数字でございますけれども、この融資の対象として一応決められるのは、毎年前年度の九月末の残高によりまして決められているということを私はお聞きいたしておりますけれども、それでいきますと、昭和五十二年度では五十一年九月末の貯蓄残高が一兆円弱でございますから、その三分の一、すなわち三千億円、また、昭和五十三年年度では五十二年九月末の貯蓄残高一兆五千億円、そのうちの三分の一が融資の対象になる金額でございますから、約五千億円が融資のための最高額ということになるわけでございますが、ところが、現在それだけの融資枠があるにもかかわりませず、ただいま私が申し上げましたとおりに、現在では約三百億円しか融資をされていない。これだけの融資枠がある。限度額の十分の一、五十一年度では。五十二年度においては十七分の一しかない。  そういう意味で、法律で想定されております調達額の限度までは相当な開きがこの数字を見ましてもあるわけなんです。だから、現在個人の貯蓄残高の二倍の融資、これが三倍に認められたといたしましても、貸し出し限度額というものには及びません。この実態をどのように受けとめて改善をするという、いまさっきも私は指摘しましたら、そういう改善をすると言うんです。この実態、これだけの開き、限度額の十分の一、十七分の一にも満たない。どのように受けとめていらっしゃるのか。
  106. 森英良

    説明員(森英良君) 先生御指摘のように、財形持ち家融資その他の財形融資につきましては、財形貯蓄残高の三分の一まで一応これに使用できる。また、その限度では財形貯蓄を取り扱っております金融機関が資金協力をするということになっております。しかしながら、必ずしも財形貯蓄の三分の一まではそういう形で出さなければならないという趣旨ではございませんので、むしろそれぞれの年の財形持ち家融資の融資枠につきましては、実際に財形持ち家融資によりまして住宅を取得しようとする希望者の数でありますとか、あるいは前年度までの融資実績でありますとか、そういう具体的な資料に基づきまして毎年度の融資枠を決定しておりまして、それが現在のところ、今年度で申しますと、分譲が百五十億、それから個人融資が四百億というような程度になっておるわけでございますが、しかしながら、御指摘のように財形貯蓄の三分の一までは一応使えることになっておりますので、できるだけ実際に勤労者に還元さしたいということは、全く私どももそのように考えておるわけでございます。  そういうことで、若干財形貯蓄がどんどん伸びますのに比べまして持ち家融資が伸びない点は、われわれとしましても最も大きな問題点の一つであるというように考えまして、今回の改正法案におきましても、この持ち家融資の促進のための種種の拡充策を講じましたし、また持ち家融資のほかにも、還元の道を開きますために教育融資等も新しく行うというふうに措置をしているわけでございます。
  107. 田代富士男

    田代富士男君 いまおっしゃるとおりに、勤労者に還元さすためにどうすればよいかという、そこにやはり労働省として力を注ぐべきではないでしょうか。  そこで藤井大臣お尋ねいたしますけれども、勤労者財産形成促進法の第一条には、「この法律は、勤労者の財産形成を促進することにより、勤労者の生活の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」と、このようになっておりますけれども、現状はこのようにまだなっておりません、いま数字で申し上げましたとおりに。限度額があるけれども、これは使える限度額でございます。使わなくてもよいというようなことをおっしゃったけれども、使える限度額でございます。勤労者に還元すべきであります。その限度額いっぱいまでいかない場合もあり得るかわかりませんが、余りにも開きがあり過ぎる。そういう意味から、これが有効にこの制度が生かされるためには、融資限度額の引き上げやあるいは国からの利子補給の拡大だとか、融資条件や運用内容の改善、特に融資条件が厳しいためにこれが伸びなかったということもいまさっきお話がありましたとおりでございますが、そのようにいたしまして、一般の勤労者の持ち家住宅、持ち家を取得できるような改善策、すなわち持ち家建設の助成強化に力を注ぐべきであると思いますが、指導、監督の長であらせられます藤井大臣、いかがでございましょうか。
  108. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおり、私は財形貯蓄が財形貯蓄のための貯蓄ではないと。やはり御指摘のような勤労者の生活を豊かにするやはり支えと申しますか、そういった政策に連なってこなければなりません。そういう面から考えまして、やはり今度いろいろ財形融資の制度の改善をしたわけでございまして、その具体的な措置として、まず財形貯蓄残高の二倍を三倍にするということ。それから、いままでは新しく家を建てなければ貸さなかったわけでありますけれども、中古住宅あるいは住宅の改造、それへもっていって、公務員の住宅に対して一応の道はつけてあったんですけれども、実際に利用できるような整備された体制はなかった。これもまた整備いたしたわけでございまして、それと同時に、これは話はちょっとそれるようでございますけれども、やはり本人並びに子弟が教育を受けたり、進学したいという、これに対する融資も私は広い意味のいわゆる還元融資である。そして、次の時代を背負う子弟の教育は大切な勤労者の資産である、私はこのように考えるわけでございますが、この貯蓄残高の二倍を三倍にしたんですが、まだまだもう少しふやしたらどうかというこの御趣旨の点、これは私はやはりある程度貯蓄された枠の中で還元融資するわけですから、調子がいいからというので、調子に乗って余り貸し出しの額を広げますと、広くみんなに還元融資するということは種切れになってしまうという、こういうことも心配されますから、とりあえず今度の改正では三倍ということにして、その状況を踏まえながら、まだそのほかいろんな、先ほど指摘事業主の負担の問題についても、やはり私はこの制度ができた当時の経済情勢と現在の非常に厳しい経済環境に置かれた企業者、事業主、こういった経済条件を考えれば検討すべき問題ではないかと、このように思うわけでございまして、御指摘の第一条の線に沿う方向に向かって絶えず見直すということをしなければならぬと思っております。
  109. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、大臣お尋ねいたしますが、いま改正案で二倍から三倍へ、限度額も一千万から一千五百万まで、また今度は教育の方面にもという意味はわかりますけれども、いま私は住宅の問題、持ち家住宅の問題を質問しておるわけなんですが、それで余り調子に乗れば種切れしてしまうという、そういうことをおっしゃいましたけれども、いま申すとおりに、財形貯蓄の残高、十分の一、十七分の一ですから、その種切れにならない範囲内ですよ、それは三分の一の金額というものは。そうならば、種切れになるとおっしゃるならば、現在の法律で定められました残高の何倍までを融資することができるのか、法律で定められた範囲内のですね。そういう試算をされたことありますか。種切れになるとおっしゃるけれども、ただ二倍か三倍とおっしゃるけれども、その点は試算されましたら数字を教えていただきたいと思うのです。
  110. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) この制度の発足がまだ日が浅いわけでございまして、この試算の上で私は正確に種切れをすると、こういうことではなくて、一般論としてそういうことが考えられた点を指摘したわけでございまして、とりあえずこの改正でもう逐次改正をしておるわけでありますから、この法律はまた情勢を見て、あるいは来年あるいは再来年と、こういうことも十分考えられるわけでございますから、一応全体広くこれが還元融資ができるように配慮するためには、とりあえず二倍から三倍にするという、段階的にこれをふやしていくというのが適当ではないか、このように考えるわけでございまして、必要な補足説明を政府委員からやってもらいます。
  111. 森英良

    説明員(森英良君) 大体財形貯蓄の三分の一までが限度でございます。さらに財形貯蓄の三倍まで貸すと今度の改正法ではなっておるわけでございますが、そうしますと、その三倍にいたしましても、財形貯蓄をやって融資を受けられる者はきわめて大ざっぱでございますが九分の一である。財形貯蓄の九分の一が財形融資を受けられるという状況になるわけでございます。ところが、私ども調査によりますと、現在、財形貯蓄をやっております者のうちの三分の一が住宅取得を目的に財形貯蓄をやっておるということを答えておりまして、しかもこの融資は、二十年、三十年と一遍貸せば返済は分割で返ってまいりますので、だんだんに貸し付けをした人は蓄積してまいります。そうしますと、貸し付けのできる範囲が九分の一、しかも希望者は三分の一という関係を考えますと、一応この三倍の融資でありましても、相当将来は長い目で見ますと融資ができる範囲が制約されてしまうということが考えられますので、現在はもちろん余裕がございますが、貸したものはすぐに返ってまいりませんから、だんだん蓄積されていくということを考えますと、将来にわたって生ずるであろう貸し付け希望者に対してやはり留保をしておくということも含めまして、一応三分の一で今回は進むべきではないかというふうに考えたわけでございます。
  112. 田代富士男

    田代富士男君 大臣は、いまも改正案をやっているけれども、来年、再来年は実情に応じて対応していかなくちゃならないという、そういうことをおっしゃいましたけれども大臣、これは持ち家住宅は促進しなくちゃならないのでしょう。現状維持でよろしいのですか。促進しなくてはならないわけなんです。将来のために留保するという意味もわからないわけではありませんけれども、少なくとも調子に乗ってはだめだとおっしゃる意味はわかります。そこで、限度額は一千万から一千五百万で抑えるなら抑えても、倍率を二倍から三倍という、この倍率をもっと研究する必要はあるんじゃないですか、倍率を。少なくとも五倍から十倍ぐらいまでやってみなさいよ。全部、喜んで持ち家住宅を建てますよ。それでも、法律で定められた範囲内のその枠である程度の処理はできると思うんですよ。それでなければ、将来のために留保するとおっしゃいますが、いま申しましたとおりに残高が約一兆七千億円ある。そして、融資として貸し出されたのが三百億円ですよ。一兆七千億対三百億ですよ。余りにも開き過ぎるじゃないですか。勤労者は、貯蓄だけやれ、持ち家住宅の促進でなくして貯蓄奨励じゃないか、こういう勤労者の間から不満の声がいっぱい出ております。だから、この不満の声を、一兆七千億対三百億、これをどのように大臣理解されますか。これで、持ち家を促進していると言う、第一条の精神は私は尊重しますとおっしゃったけれども、尊重されてないじゃないですか、大臣。私はこの点にいまはなはだ矛盾するし、勤労者の立場からも、持ち家住宅促進じゃなくて貯蓄奨励じゃないかという声がありますが、これに謙虚にお答えください。また、どのように対処するのか、的確にお願いします。
  113. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 制度ができまして、現在の貯蓄残高の総計と融資された金額を比較されますと御指摘のようでございますけれども、ことしは相当、還元融資に条件整備をしたわけでございますから、一応私はこの成果を踏まえて検討をさしていただきたい。十分御趣旨の線は、私も先ほど申し上げたように、財形貯蓄のための貯蓄ではないと、こういうことを考えているわけでございまして、また同時に、やはり貯蓄すること自体、一つの資産がふえてくるわけですから、それも悪いことじゃないんですから、それにこの持ち家住宅をふやしていくということで、両々相まっていけば、とりあえずはことしはこの線で状況を、推移を見ると、こういうことでいかしていただきたいと、このように考えているわけでございます。
  114. 田代富士男

    田代富士男君 大臣ね、貯蓄をするだけ財産がふえるじゃないかと言う。それならばもっと利息の高いところへ全部預けますよ。家を欲しいためにその財形貯蓄の制度へ入ってるじゃないですか。ただ、貯金するためだったら、もっとほかへ投資する方法、たくさんありますよ。そういう考え方だからだめなんですよ。西ドイツにおいてはどうですか、この財形貯蓄、この制度を国の施策として、これで景気回復からいろんな一のを国の施策としてこれを盛り上げていったじゃないですか。いま西ドイツにおいては一千八百九十万人ぐらいこれに入ってるじゃないですか。ここまで国を挙げて、そのように国の施策として推進している。景気回復景気回復と、福田総理も住宅関連の仕事と、いろいろ言っておりますけれども、持ち家推進のこの制度があるんですから、この貸付条件が厳しいために進んでないと、そういうところですから、これを私は改善すべきだと思うんですけれども大臣どうですか。まあ私の時間がもう来てしまいましたから、最後の質問ですけれども、貯金しているじゃありませんかと、そういうような開き直ったような言い方では納得できませんよ。
  115. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 決して私は開き直った気持ちで申し上げたんではございません。同時にまた、お言葉を返す意味でもございませんけれども、財形貯蓄が伸びるということは、やはり税額控除という大変な恩典がこの貯蓄には与えられておると、こういうことが、一般の貯蓄に回らないでこっちに回っていると、こういう背景はあるということを私は申し述べさしていただきたいと。しかしながら、私はやはり最初申し上げたように、これは還元融資を極力知恵をしぼって図るべきであると、基本線においては委員の御指摘と私の考え方は一致しております。今後も検討さしていただきたいと、改善の方向に向かって前向きの検討をしたいと、このように思います。
  116. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、母子家庭の母親の雇用問題ということについてと、それから身障者の雇用問題について質問をする予定にしておりましたが、時間の関係がございますので、身障者の雇用問題に限って質問をいたしたいと思います。  現在、職場で働いていらっしゃる身障者の方は約三十万人で、職を求めようと努力をしていらっしゃる身障者は約七万三千人と、このように推定されておりますが、そこでお尋ねをしたいのは、職業訓練法第十八条による国立身体障害者職業訓練校の問題についてお尋ねをいたします。  まず、この身障者訓練校の実態——学校の名前と所在地、修学年限、入校資格、定員、入校者数、修了者数、就職数について説明をしていただきたいと思います。
  117. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いまお尋ねの件でございますが、身体障害者の職業訓練校というのが十四校ございまして、そのうち三校は都道府県立でございまして、あとの十一校が国立でございます。それで、所在地はちょっといま調べますが、合計の定員が二千人弱になっております。そして、入校率は、年によって違いますけれども、大体七〇から七五ぐらいのパーセンテージになっておりまして、修了いたしました者の就職率は八〇%強ということになっております。——恐縮でございました。身体障害者の訓練校の所在地、名称でございますが、北海道、宮城、東京、神奈川、石川、愛知、大阪、兵庫、広島、福岡、鹿児島、以上十一校が国立でございまして、国でつくりまして都道府県に運営を委託しているというかっこうでございます。そのほかに県立で三校ございまして、これは国が半額補助をするというかっこうになっておりますが、青森、愛知、兵庫にそれぞれ一校ずつございます。
  118. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いま御答弁になりましたのをもう少し年度別に調べてみますと、五十年度が大体定員が、国立の訓練所でございますが千七百三十名、入校者が千三百十五名、約七六%、修了者がこの入校者の七六%、千七名、そして、修了した人の八〇%に当たる八百名が就職をしているということでございます。で、昭和五十一年度が、定員が千七百六十名で、その七〇%が入校して千二百三十六名、千二百三十六名の七〇%に当たる千二名が修了をして、そして八〇%に当たる七百九十三名が就職をしていると。まあ、このような実態を見てみますと、非常に実態が悪いような感じがするわけでございますが、どうしてこのような、定員に対して入校が、入校者に対して修了者——途中て脱落者がおるわけでございますが、どうしてこのような実態が悪いのか、その理由を明らかにしていただきたいんです。
  119. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いま先生御指摘の点でございますが、私ども、入校率の問題につきましては、一つには、実際に入校の希望者が参りましても、まだやはり治療をもう少ししなければならぬのじゃないかというような障害度の方もございますし、それから、御本人が希望しておられます職業訓練科目が、その御本人が入校を希望して来られました訓練校に必ずしも適応してないという問題がございます。と申しますのは、全国に国立だけですと十一校ですが、県立を入れましても十四校でございますので、平均いたしますと三か四都道府県に一校ということになりますので、その点にも問題がございます。その立地条件の問題もございますが、それからいま申し上げました御本人の希望ということのみならず、やはり私ども今後検討していかなければならないと思っておりますものに、職業訓練科目をさらに身体障害者向けのものに新たに開発してやっていきませんと、現在ありますものが必ずしも適用できないものが出てきているんじゃないか。それやこれやありまして入校率が一〇〇%近くまでいかないという問題があります。それから、途中の脱落、まあ脱落とばかりも言えないのでございまして、途中でやはり別の道に進んでいくというようなこともあります。それから、やはり訓練に耐えられないためにやめていかれるというような問題もあることは事実でございます。
  120. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 そうしますと、この訓練校に対する国の予算というのは、五十年、五十一年度は大体幾らぐらいになっておるわけですか。
  121. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 数字のことですから、いまちょっと調べてお答えを申し上げます。——五十三年度の予算額が身体障害者訓練校関係で二十六億弱でございます。それで、昭和五十二年度は三十三億弱ございました。むしろ七億ばかり減っているような計算になっておりますが、これは実は所沢に国立のリハビリセンターを建設中でございまして、これが昭和五十二年度をもって建物としては完結をいたします。そこで建物として昭和五十二年度に入っておりました額が落ちましたために、むしろ昭和五十三年度が平年度ベースに戻ったという形で二十六億弱ということに減っているわけでございます。
  122. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 先ほど実態で明らかになりましたとおり、定員に対して修了者、入校者、そういうパーセンテージが余り実態がよくない。こうなりますと、この予算の不用額というのが相当計上されてくるんじゃないかと思うんですが、その辺の事情はいかがでしょうか。
  123. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 実際具体的には、実は予算の執行の面でいろいろと工夫がございまして、現実に施設、設備の改善につきまして単価問題等もございますし、それから運営費と教材費、その他訓練指導員の給与その他の問題というようなこともございまして、実際に予算の実行上はそれだけのものを都道府県に実際に補助をするわけでございますので、補助をして運営をしているというのが実態でございます。
  124. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 要するに、各訓練校は生徒の募集で大変苦労していらっしゃることが実態のようでございますが、なぜ生徒が集まらないかと、私はここらあたりをちょっと検討をする必要があるんじゃないかと。  私が私なりに考えた主な理由を六つぐらい申し上げてみたいと思いますが、第一は、修業期間が一年という短期間であるということ。ですから、それによって生ずる修了生が身につける技術が非常に短期間であるために未熟である。第三番目には、時代に即応し得ないような訓練科目と訓練内容が、内容を見てみますと大分あるようでございます。事四番目は、訓練主の質の問題、持に素行問題等にいろいろ問題があるやに聞いております。これは年々低下の傾向にあるとも言われておるようでございますが、第五番目には、訓練校の職員の方々の質の問題も問題になるんじゃないかと思います。最後には、訓練校修了者を受け入れる社会環境、事業所の問題、こういうような確保の問題があろうかと思うのですが、こういうふうに六つに集約をしたわけですが、これに対する御見解はいかがでしょう。
  125. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 現在身体障害者に対する職業訓練といたしましては、実は軽度の方につきましては、一般の訓練校におきまして健常者の方々と同じような訓練をやっているという面があるわけでございまして、やはり体のハンディのために訓練施設あるいは設備面で特別の措置をしなければならないような方を身体障害者職業訓練校において訓練をしているということのわけですが、そこで身体障害者職業訓練校におきます訓練期間は、先生おっしゃいますように原則として一年ということにしております。ただ、身体障害者の方の場合には、まず最初に訓練の何が自分の適性に合うかというようなところから、試行的にいろいろとやってみて、それから一つの科目に決めて訓練をするというようなこともありますので、そのやっている課程の中で、一年の修了期限ではどうしても訓練として十分にその成果を上げ得ないという方につきましては、個別に期間を延長して適切なところまで到達するように配慮をしているわけでございます。制度上はそういうことにしております。しかしながら、実際には一年たちますとやはりやや学校課程的な考え方もありまして出て行く方がございますので、先生がおっしゃるような未熟のままに労働市場に出て行ってしまうじゃないかという御指摘もないとは申せないと思います。  それから、先生御指摘の訓練科目の点につきましては私どももそのように考えておりまして、やはり先ほど申し上げましたような新しい訓練科目、あるいは新しい雇用需要に応じます訓練科目への転換、あるいは身体障害者に適切な訓練科目の開発というようなことをやっていかなければならない、若干手おくれのものがあるという点も御指摘の点があると思います。  それから、入校者の質の問題、あるいは訓練をする方の指導員の質の問題という御指摘がありましたが、私どもその辺は実情を十分に調べまして、たとえば指導員の場合でしたら、これは適当でなければ当然再訓練をするなりして質を向上せしめていかなければなりませんので、検討いたしまして、そのようなことがありますればそういう努力をしてまいりたいと思っております。  それから、最後に修了者の受け入れの問題ですが、これはいま、一昨年成立さしていただきました身体障害者の雇用促進法等で、受け入れの側の企業に対する納付金制度等もありまして、受け入れ体制を整備していただかなければならないわけで、これに対して職業紹介機関とそれから職業訓練校が十分の連携をとりまして、適切な職業訓練科目を訓練を受けさせた上で、それにふさわしい職場に修了生を送り込むような努力をいたしておるわけでございますが、その点につきましては、今後ともに連携を密にしながら一層の努力をしてまいりたい、このように考えます。
  126. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 訓練校の生徒さん方には訓練手当というのが、年齢によりまして、二十未満とか二十以上ということでいろいろといろんな種類の手当が支給されておると思うんですが、その種類と金額と総額について。
  127. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 職業訓練を受ける場合の訓練手当につきましては、毎年度改善を図ってまいっておりますが、昭和五十三年度の予定といたしましては、基本手当が月額六万円、それから技能習得手当というのがございますが、それに二種類ありまして、受講手当、これが一万九百二十八円、それから通所手当、訓練校に通うための交通費のようなものですが、これが月額三千二百五十五円、それに寄宿舎に入ります場合には寄宿手当が月額七千五百円、これを平均いたしまして月額七万四千九百三十三円ということになっております。そしてそれを合計いたしますと、ちょっと合計の金額が、それの合計の内訳がちょっと予算書上はございませんので、調べて後ほどお答え申し上げます。
  128. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 そこで問題になる点でございますが、それほどの手当をいただいているということで、いまから申し上げることはこれは重要な問題でございますので、毎年この生徒募集のことで九月から十月ごろにかけまして、訓練校の先生方が生徒募集のために各県の福祉施設を訪問をしていらっしゃるけれども、余り成果は期待ができない状態が先ほどのパーセンテージに上がっておる状態ではないかと思いますが、その結果、定員を何とか充足をするということで、私が事実聞いたことでは、生徒のたらい回しという、まことに悲しむべきそういうような現象が発生をしているようであります。  では、この生徒のたらい回しというのはどういうようなことかといいますと、私の聞いたところでは、訓練校を修了してある事業所にその修了生が就職をしたとする。そうしますと、最低三カ月ぐらいそこに就業さして、そして再度そこをやめさして身体障害者職業訓練校の生徒にまた再入所させると、このサイクルを繰り返していく過程を生徒のたらい回しと、このように呼ばれておるようであります。いま申されたとおり、訓練校における生徒の待遇は約七万四千円以上でございます。この待遇のよさというのがこの生徒のたらい回し現象をますます増長させている原因ではないかと、このようにも思われるわけでございますが、とにかく一年間訓練校に在籍していれば黙っていても月に七万四千円ふところに入るのだからといって、そのようなぐあいで一年間だけ訓練校に入れてしまうというような現象。だから、訓練校の生徒がだんだん質が低下していくというのもそういう点にあるんじゃないかと、このように思うわけです。  こういうことは訓練校の設立の趣旨にも反しますし、また国費の浪費でもありますし、それ以上に身体障害者の働く意欲を阻害する重大な悪徳行為ではないかと、私は非常に心配するわけでございますが、この点について大臣はどのような御見解をお持ちか、お答え願いたいと思います。
  129. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘を受けて、私も大変こうショッキングなお話と承るわけでございまして、早速事実を調査をいたします。そしてそのようなことがあれば、本当にハンディキャップのある方々の雇用対策としてせっかくのいい制度をわれわれが考えているのを逆手に使った、そういう社会正義に反する行為は私は断じて排除しなきゃならぬと、このように思いますから、ひとつ早速調査の上で善処方をお約束いたします。
  130. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 この問題は、入所している生徒が非常に矛盾を感じて私たちのところに申し述べたことでございますので、しかるべく厳重な調査をして善処をしていただきたくよう要望しておきます。  最後に申し上げたいことは、先ほど所在地をずっとお述べになって、訓練校の名前も述べていただきましたが、大体ほとんどの身体障害者職業訓練校は、石川県と鹿児島とを除いては昭和二十年代に開設されたものでございます。その間修理とか改築がなされておりますけれども、大部分が老朽化しておりますし、新しい時代に即応しない面が多々あるようでありますので、こういうような訓練校の改築も含めて、内容の運営面も含めての抜本的な処置をとられることが大事ではないかと思いますが、その辺の御決意を伺わさしていただいて質問を終わります。
  131. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点私も同感でございまして、とりあえず来年度は東京の身体障害者の訓練校の改築をやりますけれども、それと同時に、身体障害者のみならず、全体の訓練校のあり方について、職業訓練法の改正の御審議と相まって、今後適切な処置をとっていきたいと、このように考えております。
  132. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは大変制約された時間でございますので、きょうは雇用における平等といいますか、むしろ働く婦人の男女差別に関する問題をお尋ねしたいと思います。  一九七五年に、国際婦人年を契機にいたしまして、国会では御承知のように、「国際婦人年にあたり、婦人の社会的地位の向上をはかる決議」というのが全会一致で衆参両院で採択をされました。  その後、メキシコでは、国連におけるいわゆる国際婦人年世界会議で、世界行動計画が採択をされました。わが国の政府代表もとれには賛成をなさいました。その後政府におかれましては、世界行動計画に呼応いたしまして国内行動計画を策定をされ、さらにそれの具体化を図るということで、前期の重点目標というのを明らかにされました。その中で労働省は、雇用における男女平等と、寡婦等の自立促進を進めるというふうな点を中心に施策を進めておられるようでございます。  また、たまたま四月の十日からは第三十回の婦人週間が来ておりますけれども、婦人週間のテーマは、「男女の平等と婦人の社会参加をすすめる」というのがテーマになっております。  そこで、きょう私は働く婦人の雇用における平等に関する問題について、非常に限られた時間でございますが、お伺いをしていきたいと思っております。  今日働く婦人というのは雇用労働者全体の三分の一を超え、千二百万を超えるという状況でございますし、そういう実態の中では、経済社会活動に対する女子労働者の貢献度はきわめて大きいと思います。しかしその反面、職業における男女の不平等というのはきわめて根強く残されているというのが今日の実態でございます。私はまず勤労婦人における平等と地位の向上というのを、基本的には、基本的な方針というのは、やっぱりせっかく採択をされました世界行動計画、それから国連におけるILOの策定をした行動計画ですか、こういう基準に合わせたものにするべきではないかというふうに思うわけです。そういう点から言いますと、わが国の国内行動計画あるいはそれを具体化するための前期重点目標等についてはやはり大分おくれているんではないかというふうに思いますが、その点についての御見解をまずひとつ大臣からお伺いをしたいと思います。
  133. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、政府は五十二年の一月に国内行動計画を策定いたしまして、婦人問題の職場における男女の平等の問題についていろいろ対策を進めておるわけでございます。それで、内容的な詳細はまた政府委員から答弁いたしますけれども、私はひとつ問題は、母性という男にはできない持ち味といいますか、それを保護するというか、大切に守るということと、それからそういうことから長年の日本の歴史的な社会的ならわしといいますか、そういうことの中には、やはり科学的な根拠のない、改正しなければならぬ問題が混在してきておると。そこら辺を整理して、そしてせっかく示された国内行動計画に従って、本当に職場においての男女平等を確立していくということが、当面の私は婦人対策として一番大切な問題であると、このように思います。  各論につきましては政府委員から答弁させます。
  134. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 各論を具体的に伺っておりますとちょっと時間がありませんので、基本的な御見解だけにきょうはとめておきたいと思うんです。  私はいま大臣がおっしゃられました点に関連をいたしますが、特に国内行動計画を策定するという段階から、保護か平等か論という問題が論議をされるというふうなことになってきております。いま大臣もお触れになられた点ですね。この点につきましては、わが国のような雇用状況のもとでは非常に問題が多いと思います。これは私、別の機会にまた具体例を用いてぜひ考えていただかなければならないと思っているわけですが、わが国の雇用情勢のもとできわめて問題が多いといいますのは、たとえば産前産後休暇といった種類のものが減給されるとか、あるいはベースアップ、昇給のときの欠勤日数として算定をされるとか、そういったことが企業では横行している。こういう状況のもとではこの保護か平等か論という一般論の論議というのはきわめて問題が多いというふうに思いますのは、そういう事実を踏まえての意見でございます。私は、ですから基本的に、この問題については保護か平等かという二者択一ではなくて、むしろいまの段階で、特に世界行動計画、国内行動計画を策定して施策をこの十年の間に急速に進めようという段階に至りましては、むしろ無条件に平等を保障する施策というのを進めるということが第一ではないかというふうに思うんです。その上において働く婦人が母性として持っておる特性、この母性に対する保護行政というのは、これは次の時代を担う健全な子孫を守るという点から見まして、当然これは社会的な責務として保障されるべきものだというふうに考えるわけでございます。したがって、保護行政の検討というのは、そういった立場で、特に国際的な条約あるいは行動計画などによりますと、このILOの行動計画でも非常にその分野でははっきりと問題を明記しておりますが、少なべともこれらの保護基準についての検討というのは労働者の生活水準の改善を目指すものでなければならないというふうなことが明確にされておりますが、そういう点をやはりはっきりしておかなければならないのではないかと考えております。  そこで、私はそういう立場で、必要な法制化などというのは当然政府としては考えていかなければならないんではないかというように思うんです。特に今日の深刻な不況下、こういう中で婦人の労働者に対するしわ寄せというのはきわめて厳しいというのは、もう私がるる申し上げなくても御承知のとおりでございます。たとえば学卒者の就職の困難あるいは首切りの場合の女子労働者がまず第一に対象にされるというふうな問題、あるいはパートの首切り、それから女子の失業率が男子よりはるかに高くなってきているというふうなことになっております。  しかし、そういう不況下で女子労働者に対するしわ寄せが厳しければ厳しいだけに、特に男女の平等とか、勤労婦人の地位の向上に対する施策を強化するということが特別に大事だというふうに思うんです。私は、ですからそういう立場に立ちまして、労働者全体の福祉の向上という立場から見ましても、また雇用対策の面から言いましても、何といってもいま労働時間の短縮だとか、あるいは有給休暇のこれは世界的水準の増加ですね。いま保障されているのは、有給休暇取得率などというのが企業では問題になっているんですね。二十日間あったって、六・七日とか八・四日とか、取得率がそういうことになっているというふうな、本来の有給休暇というのが権利として保障されていないという実態、こういう状況を踏まえて、やはり世界的水準並みにきちんと保障されるというふうなことが必要だと思いますし、それに必要な労基法の改正。特に私はこの男女平等というんですか、働く婦人の平等を保障していく上で差し迫って必要なのは、いろいろあると思いますけれども、全国の働く婦人が思想、信条、立場を超えて一致して要求をしているようなたとえば産前産後休暇八週間というふうな問題などを含めて、これはもう直ちに法制化をするべきだと思うんですね。そういうことを具体化していくということが、こういった国内行動計画の具体化として一番大事な点ではないかと思いますが、そういった点での施策の進め方をお考えになっておられるかどうか、その点、基本点についてだけ大臣からお伺いをしたいと思います。
  135. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) いろいろ御指摘がございました。私はお考え方は、男性でありますが私もよく理解し、共鳴をいたしております。ただ、この法制化につきましては、やはり現在せっかく労働基準法研究会というのがございまして、これにいろいろ諮問をいたしておるわけでございまして、その結果を待って、御指摘のもろもろの点に対しても前向きに対応していきたいと、このように考えるわけでございまして、先ほど指摘がございましたように、女子なるがゆえに若年定年制であるとか、あるいは退職関係、あるいは妊娠、結婚、出産、こういったことで簡単に首切られるというような、こういうことのない、そして本当に職場における男女平等というものをこれを確立する、これが必要であろうと思うんでありまして、ただ私はそういうことを考えながらも、やはり頭の片すみには、母性としての女子の立場、これを保護するということとの調和をどこに求めるかという、これは私は基本的な問題として、それこそ専門家の意見もよく体して善処していきたいと、このように考えております。
  136. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは労働基準法研究会とおっしゃいますと、初めて聞いたらそうかいなということになりますが、数年来続いていて、いつ聞いても労働基準法研究会で検討していただいておりますので、というのがもう何年来ですよ。そんなこと言ってたら間に合わないですよ。十年計画、ことし三年目ですよ。ですから、意見の違うものについては御検討いただけばよろしいのであって、むしろ先ほど申し上げたように、思想、信条、立場の違いを超えて一致するような要求についてはそういうものからまず実現をしていくと、そういう立場をおとりいただくということがいま何よりも大事だというふうに私は申し上げたわけでございます。そういう経緯とか事情を踏まえた上で実はお尋ねを申し上げたつもりでございますので、そういう点についてひとつもう一回お答えをいただきたい。
  137. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まあ私が就任いたしましたのが去年の末でございますが、その後いろいろそれぞれの所管、つかさから報告を受けておりまして、女子の職場における男女平等の確立という問題については、ただいま申し上げました研究会において熱心に——まあ結果がいままだ出ていないから、何をもたもたしているかと、こういう御心配もあろうかと思いますが、熱心に審議は進み、ひとつりっぱな結論が出るように努力してもらっておると、こう確認をしております。したがって、ただ答弁逃れの隠れみのに研究会の名前を引き出す、こういう考えはさらさらございません。
  138. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大臣もお触れになりましたが、次にちょっとお尋ねをしていきたいと思いますのは、労働省が若年定年解消の五カ年計画ですね、これはことしからですね、ことしから発足をしておられるんでございますが、この問題に関してちょっとお伺いしたいと思うんです。  調査の結果によりますと、これは定年差別を持っておる企業というのが二四%、それから四十歳未満の年齢差別のある企業というのは六%、四十歳から五十五歳未満の差別のある企業が六三%、それから恐れ入ったのは、まだ結婚、妊娠、出産退職の制度が残っている企業が八%ということだそうでございますが、これをどういうふうに改善をしていくという御計画なのか、ちょっとこれは簡潔にお伺いをしたいと思います。
  139. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) おっしゃいますとおり、若年定年、結婚退職制等につきましては、特別に年次計画をつくりまして、昨年来実態把握から取りかかっているところでございます。五十二年度一年かかりまして実態把握ということで、婦人少年室、大変一生懸命把握したところでございますが、おっしゃるような実態がある程度わかってまいりまして、五十三年度から改善指導に本格的に取り組みたいと考えております。当面、私どもの心づもりといたしましては、残る四年間を二つに分けまして五十三、五十四年度には男女別定年制のうち、特に女子の定年年齢が四十歳未満のもの及び結婚、妊娠、出産退職制などの解消に力を入れたいと。後の二年間五十五、六年度におきましては、男女別定年制のうち、女子の定年年齢が五十五歳未満のものの解消を図るということに重点を置きたいと考えております。そしてそのことを目標に重点的な行政指導をする予定でございます。
  140. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省で実態調査を五十二年度やっていただいておるようでございますが、私ども——私は大阪の出身なものですから、大阪を中心にしていろいろ実態調査を始めてみているんですけれども、個別問題というのは実にさまざまな実態がございます。まあこれは定年差別だけではなくて、いわゆる女性差別のもろもろの諸現象というのは実に複雑で、多岐にわたっていて、これは簡単になかなかなまやさしく解決のできないものだなということを、調査をすればするほど実はひしひしと感じているわけです。中には違法性のものもあり、あるいは違法とは言えなくてもずいぶん好ましくないというふうなものなどを含めて、ずいぶん実例がたくさんあります。  たとえば、私は先ほどデータの中で、結婚、妊娠、出産退職がいまだにやられている企業が八%というふうなデータの中で、こういうのだってあるんですね。明文上は男女差別、年齢差別はないんだ、しかし慣行としてというんですかね。所属長あたりから肩たたきあるいは強要というふうな形で、現実に明文はちゃんと整っているけれども、中は具体的には定年差別、若年定年、結婚退職、出産退職というようなことが横行しているんですね。  これは私調べましたのでも、大きな企業の中で、やっと定年年齢差別がなくなった、これはかねて私がこの委員会でも取り上げた企業なんですがね。いよいよあしたから出産休暇に入ると、産休にに入るという前の日の五時半に所属長が呼んで、そして子供を産むんなら、産んでも勤めるんなら、まあ産休が済んで出てきてもよろしいが——これは一月の半ばの話ですが、九月の末日付で退職願に判を押しなさいと言って、泣く泣く判を押させられたというふうなケース。これは直接伺ったから間違いないと思います。あるいは、結婚退職の勧奨では、まず結婚をするんなら、姓を変えないで、旧姓のままで働く気はないかとか、あるいは結婚して働くなら五年間でやめるというふうなことをまあひとつ黙契で約束できないかとか、そういうかっこうでのやられ方というのがずいぶんやられております。あるいは明文上は年齢がちゃんとそろっている。ところが、実質的には既婚婦人というのはその企業に一人もいないというふうなことがございます。こういう問題を把握していくのにどうするか、この点についてお伺いしたいのです。
  141. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 御指摘のような事例がたくさんあるということは私ども承知いたしておりますが、先ほど御説明いたしました年次計画によります行政指導というものにつきましては、あらかじめどこにどういう規則があり、どういう申し合わせがあるかということを把握いたしまして、それに基づきまして逐次改善していくという考え方でございますので、就業規則なり労働協約でそういうのを決めておられるところもあるんですが、そういう書き物にしてあるところをとりあえず把握したわけでございます。それによって把握いたしました事例を一つ一つ直していきたいというのが先ほど計画でございますが、おっしゃいますような事実上の慣行といいますか、個別的な事例として挙がってくるものにつきましては、当然その事例が発生いたしましたときに、私どもといたしましては把握できました時点で改善をしていきたいというふうに考えております。
  142. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は大臣がおっしゃるように、ほんとに職場でのそういう実質的な若年定年というふうなことをなくしていくためには、これは労働省が御調査になってもなかなか実態を全部は把握できないと思うのです。そこで、そういう事態に遭遇した女子労働者が、基準局なりあるいは監督署なりに申告するとか、あるいは婦人少年室に御相談に行くとか、そういう場合には直ちにお取り上げになって行政指導をなさるというふうなふうにはできませんか。それが一番いいんじゃないかというふうに思うのですね。
  143. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) そういう具体的な訴えがあれば、私は当然御指摘のような対応を示すべきであると、御案内のように全国に四十七の婦人少年室がございますが、それに婦人雇用コンサルタント——五十二年から発足しておりますから、そこら辺の力をかり、未然にそういうことの起こらないような啓蒙運動と、起こった場合にはすぐたちどころに対応する、こういうふうに努めていきたい、このように思います。
  144. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それからもう一つは、労働省が二年ずつ四年計画で、四十歳未満、それから五十五歳までというふうにしておられますが、これも、この段階論だけではこれはすべてがカバーできないし、特に最近、いよいよ差別されている定年年齢に達している女子労働者が困るというふうな問題が起こりますね。  たとえば、私訴えを受けたんですが、これは住友金属工業株式会社大阪本社です。ここは定年年齢は男子が五十五歳、女子は五十歳ですね。これは就業規則によりますとそうなっているんですが、その段階論でいきますとこれ、五十五年以降になるんですよ。ところが実際上は、戦後の大変な時期に働いておった女子労働者が、ずっと親兄弟のめんどうを見ながら大部分が独身者で、しかももう四十七、八、九というふうな方々という、一定のやっぱり年齢層の女子労働者というのがいるんですね。そういう人たち、ことしもう五十歳になると、来年は私五十歳だ、これじゃ困るんだというふうな問題というのが具体的に出ていますね。こういう問題というのは、何というんですか、段階論だけでは困るんで、そういった点のわかっている企業というのは早くやはり御指導をなさって、そういう現実に差別された定年年齢で職を奪われようとしているような女子労働者は少なくとも救済をしていくというようなことはできませんか。
  145. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 先ほど申し上げました計画で、五十五歳まで、そしてしかも四十歳以上五十五歳までの分はあとの二年というふうに申し上げましたのは、実は統計によりますと、男子の場合は、五十一年の調査によりますと、五十四歳以下の定年というのは一つもないわけでございますが、女子の場合、五十四歳以下の定年に決められているものが六八・六%あるわけでございます。したがって、その五十五歳を境にして非常に女子の定年が若く決まっているというのが多いものですから、そういう意味で一つの区切りと考えたわけでございます。それからもう一つは、私どもの方の婦人少年局の主体的能力と申しますが、職員の数も少のうございますし、重点的に計画をつくるという趣旨で、その二つの理由からそういう計画をしているわけでございますが、ほかの例でも先ほど申し上げましたように、具体的にそういう御相談がありますれば、必ずしもことしの計画の中に入っていないものでも御相談に応じたいと考えております。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、これも、監督署なりあるいは婦人少年室なりに該当者が御相談に行くというふうなことで捕捉できた場合には、御指導いただけるというふうになるわけですね。
  147. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) そのとおりでございます。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 で、やっぱり大臣ね、本当に雇用の平等を保障していくというためには、そういう、初歩的なところですけれども、いざというときに駆け込んでいけるというところがないと困るんです。そういう点で、基準局やあるいは婦人少年室がその役割りを十分果たしていただけるように、そういう場合に窓口を開いておいていただくというのは婦人労働者にとって非常に切望されている、そのことは特にお願いをしておきたいと思います。  で、婦人少年局長が能力が低いのでとおっしゃったのは、能力は高いんだけれども体制が弱いんだと思うんですよ。大臣、これは急速に、十年間で一定のレベルまでばーっとやらねばならぬということなんですから、本当はここの分野は一定の人員増、体制の強化というふうなものをあわせてやはり考えなければならない非常に大事な点だと思いますので、これはひとつぜひ認識を新たにしていただいて対処をいただきたいと思います。  余り時間がありませんので、長々言うているとまただめになりますから、もう一つこの若年定年の改善の対策の中で心配なのは、労働省が御指導になっても企業が拒否した場合にどうなるかという問題ですね。これは非常に心配なんです。  現に御承知のように、かつて私も申し上げたことがあるんですが、地方団体である大阪市で、交通局の婦人労働者、三十三歳の若年定年という、まあバスの車掌さんですが、あの問題というのがおかしいじゃないかと、地方団体で解決をしないというふうなことではぐあいが悪いじゃないかという問題を提起したことがあったんですが、その後、いろんな情勢の変化で四十五歳に変更しようというような動きがあるようですけれども、四十五歳だっておかしいわけですね。男子五十五歳、女子四十五歳にしようという動きですよね。  こういうふうに、これは明らかに拒否されているかっこうだと思うんですけれども、地方団体あたりで拒否されるということになると、民間会社に及ぼす影響が大だと思いますが、民間、地方団体を問わず拒否をされるというふうな場合にはどうなさいます。
  149. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 地方公共団体の問題につきましては、大阪に限らずほかにも幾つか見受けられるものですから、私どもといたしましては、特に自治省と連携をとりまして、自治省の御協力も得て改善に努力していきたいということでいろいろと相談をいたしているところでございます。  それから民間の事業所につきましても、おっしゃるようなことがあることは考えられます。しかし、この十年来、そのようなケースが裁判でも幾つか判例が示されておりまして、世間の公の常識ではなかろうかと、そういうふうに認められたものではないかと私どもは考えているわけでございますし、この個々の事業所の考え方も、やはり社会全体の理解なり支持なりというものによって究極的には直していけるものであると考えますので、個々の事業所にいろいろな方法で御指導さしていただくと同時に、世間一般の御理解を得るべく啓発活動に力を入れていきたいと考えております。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これ、大臣ね、私、大阪市の例をたまたま取り上げましたけれども、地方団体で大分あるんですね。自治省でもしかし実態はつかめないと言っているんですよね。少なくとも地方公共団体でまずそういうものを解決するというために、労働大臣、これは特別に努力を払っていただかなければならないと思うんです。民間会社に行政指導を強めるためにも、これはもう第一条件だと思いますが、その点についての基本的な姿勢というのは——基本的な姿勢というよりも構えてすね、その点をちょっとはっきりしておいていただきたいと思うんです。
  151. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点、大切な問題でございまして、まあやはり地方公共団体、これにまず姿勢を正してもらわなければ民間の方へもいい影響を及ぼすわけにいかない。したがって、自治省とよく連絡をとりまして、地方自治団体、公共団体に、職場における男女平等の確立に向かってひとつ協力してもらうような体制を整えたい。  それから、先ほどのお話、ちょっと言及しますが、まあ労働行政はいわゆるマン・ツー・マンの仕事でありますから、多々ますます弁ずという。しかしこれは一応の行政簡素化という、こういうような面から制約がございますから、私はやはりこれはこの外部の団体の協力、特に婦人団体、こういったところの協力を得て一つの世論としてやはり盛り上げてくる、国民運動として盛り上げてくると、こういう一つの協力体制も、婦人少年室がせっかくありますし、あるいはコンサルタントの協力を得て、そういう環境づくりもあわせて進めるべきじゃないかと、このように思っております。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと時間がなくなってきたので、具体例たくさんいろんなものがあるんですが、私は、ははんこれはなかなかなまやさしくないなあと思ったのは、たとえばこういう実例があるんですね。なかなか根強いもので簡単には片がつかないなあと思ったのは、これは住友生命なんですが、これは大阪本社ですか。これは違法ではないんですが、実にひどいなあと思ったのは、結婚の祝電の問題で、社内でこういうことを言われているんですよ。祝賀電報というのは、対象というのは、「全職員(嘱託員を含む)及び結婚退職の女子職員で退職後六カ月以内に結婚する者」には打つと、「ただし、原則として、結婚後引続き勤務する女子職員ならびに特に打電するのが適当でないと判断されている者については打電は見合わせたく存じますので、ご了承下さい。なお再婚者に対しても打電いたしますので、お含みおき下さい」、これは部内資料ですよ。部内文書ですね、これ。これは違法とは言えぬですよね。しかし、電報だから違法に該当しないとは思いますけれども、実に念のいった通達でしょう。  こういう考え方というのは、まさに非常に露骨に、会社の方針は結婚退職をしてもらいたいということを露骨に示す方針だと思うんですね。こういう会社の、企業の根強い考え方というのが随所にあらわれてきているものですからね。こういう考え方を改めさせませんと、いま申し上げたような定年年齢差別だとか、もっと大事な賃金差別だとか、その他ずいぶんいろいろありますが、きょうはもう時間がありませんから触れませんけれども、基本的にはここを改めさせなかったらかっこうがつかぬというふうに思うんです。これは一遍資料を差し上げますけれども、こんなことは改めさしてほしいと思うんです。どうです。
  153. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 伺いながら笑いたくなるようなケースでございまして、おっしゃるように、使用者の方の結婚退職をしてもらいたいという気持ちが非常ににじみ出ているように思いますが、その中身自体が違法だとは言えませんので、その資料をちょうだいして検討いたしたいとは存じますけれども、その資料をもって、どのようにしたらよろしいか、検討さしていただきたいと思います。  伺いながら感じましたことは、そういうふうに文書にしてはっきり言わなくても、それらしい雰囲気を大変強く持っている会社はたくさんあると思います。で、そこに働く婦人の方々がそのような雰囲気に押されないように、負けないように、御自分自身が職業人として確固たる自信を持って努力していくということも必要ではなかろうかと感じた次第でございます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、もう時間が残り少なくなりましたので、最後に、やっぱり女性差別の中で一番大きいのは賃金差別だと思うんですね。この賃金差別の問題というのは、調査をしますといよいよ複雑怪奇でございまして、初任給の差別から、仕事別賃金だという賃金体系の差別から、昇任昇格の差別から、あるいは職務職階給の差別までずいぶん複雑多岐にわたっております。  労働省の御調査の一番最近のでは、全国的な比較では五八・二%ですか、男子一〇〇に対して五八・二%ということになっておりますが、これは私はいつまでたっても変わらないんだなあと思って、実態調査の中でちょっと驚いたんですが、女工哀史の現在版とでも言えるような、繊維関係というのはずいぶん低賃金なんですね。よく聞いてみますと、もうずいぶん大きな差がありますね。勤続二十九年で四十四歳の女子労働者が十万八千九十円ですね。勤続二十八年で四十六歳の男子が二十二万円ですよ。だから、そこでは約十二万円の開きが出ている。あるいは十四年ぐらいのところで、三十三歳の女子労働者が九万九千六百円。同じ程度の十二年の勤続三十一歳の労働者で、男の人だったら十五万円と、こういうことなんです。ここでちょっと驚きましたのは、これにはいろいろな職務給、あるいは昇任昇格、いろんなことが組み合わされてこうなっているんです。  ここでちょっと気になったのは、高卒の入社時の賃金が、女子がこれはランクGB3で六万七千五百円なんです。男子職員がGA4で七万四千円なんですね。その差額が六千五百円もあるんですが、それじゃ男子の初任給のところへ女子労働者が到達するのに、普通で昇給をして何年かかるかといったら、七年の差があると。これは初任給で六千五百円もの差があると、しかも高卒の初任給ですね。これはちょっと違法性があるんではないかというふうに思うんですよ。こういうことが事実だとしたら、御見解どうですか。
  155. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 御質問の事案につきまして、もう少し具体的にお聞きした方がいいと思いますけれども、私ども一応想像してのお答えになるかと思いますけれども、初任給の場合、その男子の方、女子の方、全く同じ学歴で全く同じポストにつかれてそして賃金が違うということは、基準法上四条の違反の問題が出てまいると思います。ただ、具体的の中身がわかりませんけれども、その辺の実情がどうなっているか、もし職務が違うとか、あるいは必要とする技能が違うということになりますと、そこの辺はもう少し判断をすべき問題があるんではないか、こういうふうに思います。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは一遍御調査をいただいて、違法性があれば是正勧告をしていただきたいと思うんです。ひとつ御調査の結果を報告を願えますか。
  157. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) どこの会社かまだ聞いておりませんので、後でお聞きいたしまして善処いたしたいと思います。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いまのは東洋紡です、私申し上げた実例は。  最後に、時間がありませんので、問題になっておりました第一勧銀ですね、第一勧銀の差別賃金というのが申告をされておったと思いますが、労働省も違法性は認めておられたようなんですが、この申告に対して、労働省としては御調査の経過、それから処置等について報告をちょっとお願いしたいと思います。
  159. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 昨年の九月に第一勧業銀行浜松支店における基準法四条違反の申告を監督機関として受けました。自来いろいろ調査をしてまいったのでございます。その結果、当該銀行で昭和五十年、それと五十一年の四月に実施した昇給において、年齢別調整昇給額について男女で差をつけていたという点については、これは女子であることを理由として賃金について男子と差別的取り扱いをしたというふうに認められます。したがって、労働基準法四条の違反の問題が出てまいるわけでございます。したがいまして、そうした問題について本日、午後でございますが、それぞれ担当の監督署において、会社に対し是正の勧告をいたしております。と同時に、静岡の基準局におきましては、本社から責任者を呼びまして、本社に対しても是正方の指導をいたしております。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 終わりますが、最後に、大臣に対して要請しておきます。  大臣、こういうちょっと一例を申し上げてもいろいろ問題があります。そこで、行動計画の進め方で若年定年改善だけで半分終わってしまったんでは困りますので、一番差別の大きい賃金差別の問題を具体的に調査をされ、解決のメスを入れていくように具体的な施策を前進させてもらいたいというふうに思いますが、これについて御決意だけ伺っておきたい。それで終わります。
  161. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の趣旨、よく体して今後も改善方、善処いたしたいと、このように考えます。
  162. 三治重信

    ○三治重信君 きょうは、雇用問題に限ってお尋ねいたしますが、いま問題にこれからもなる、いわゆる高齢者の雇用の問題でございますが、その前に、ひとつ現在非常に四年にわたって不況だと言われている。それでしかも大変な工場閉鎖、首切りというような問題や何かも行われているわけなんですが、現在においてもなおやはり、若年労働者といいますか、中学、高校卒業生の就職場等はまず心配ないものかどうか。大学の卒業にはどの程度、と申しますか、大学卒業生が非常にふえてまいってきておるわけですが、この大学卒業生の雇用の問題は労働省としてどの程度把握し、またどんな対策をとろうとしておられるか。まずそれをひとつお聞きしたいと思います。
  163. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 日本の社会が御案内のごとく高齢化社会に向かっておるきょう今日、また、不況が続き雇用情勢の大変厳しいとき、中高年齢者、特に高年齢者の雇用対策というのが雇用対策の中でも私は一番大切な問題だというふうに認識をしております。まあ、そういう点からいろいろ現在政府が新しい施策も含めて展開をしようとしておるわけでございまして、中高年齢者を雇い入れる事業主に対する助成の制度というのはまさにその趣旨を生かさんとするわけでございますが、そのほか定年制の延長であるとか、そのようなことをやりながら、また、私も現場を視察いたしましたが、人材銀行という、こういった職業紹介所とはまたこう雰囲気の違った中高年齢者雇用に対して情報を提供し、中高年齢者の職業のあっせんをすると、こういう機能も果たしておるわけでございます。  大学卒の就職の問題、実は私はこのような厳しい情勢ですから、ことしの大学卒業生の就職問題については相当関心を持ったわけでございますけれども、案外、就職先をより好みしなければ思ったより就職は容易であると。具体的に言いますと、大企業を選ばないで中小企業の方を選ぶことによって去年とそう変わらないという、これは私の周囲の——お互い、まあ、政治家としていろいろ依頼を受けますが、そういう実感からも、労働省の役所から受け取った感じも一致していると、こういうことでございます。  したがって、中高年齢者、また、大学卒業生決して楽観をしているわけではございませんけれども、もろもろの施策をきめ細かくやることによって現在の厳しい雇用情勢を乗り切りたいと、このように考えているわけでございます。
  164. 三治重信

    ○三治重信君 まあ中高年の雇用対策で一番まず第一に制度的に労働省で主張されていくのは、やはり定年制の延長が一番たくさんの人を救えると思うんです。この問題は、ことに老齢年金が、政府制度として国家公務員、地方公務員とか、その他それに準ずる共済制度のところは、何と申しますか、五十五歳から支給されているというのが一般のようです。しかし、一般の民間の雇用労働についてはほとんど厚生年金という老齢年金の対策になっているわけです。そこで、労働省も重点が定年制の延長で指導されておられるわけなんですが、最近定年制の延長によってどれぐらい、何と申しますか、延長が五十五歳から見ると六十歳の定年までにどれぐらい最近ふえてきているのか。また減るというような、具体的な数字はとにかくとして、減るというような、その取り消しですね、五十八歳までしたのだけれどもやはりまだ暫定的にしただけであって、不景気だからまた五十五歳だとか、こういうようなことは最近起きていないものかどうか。やはり一たん積み上げた定年制のかさ上げは、不況になっても、全体として不況企業がそれに人員縮小なり希望退職なりいろいろのことはあっても、制度的にはこれは余り下げるということはないんだと、この傾向はどういうふうになっておりますか。
  165. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 定年の延長の状況につきましては、労働省で三年置きに雇用管理調査をいたしております。この雇用管理調査によりますと、四十九年の調査におきまして、五十五歳定年をとっておりますのが全体の五二%、これは一律定年制をしいている企業の中で五二%。それから六十歳が三二・四%というようなことでございますが、今回の五十一年が五十五歳定年が四七・三%、六十歳定年が三二・三%でございます。で、四十九年から五十一年の間、経済情勢はちょうど非常に不況状況の中で推移したわけでございますけれども、その間におきまして、労使の取り組みとか、あるいは勤労者の意識の変化等を反映いたしまして、不況の中でも五十五歳定年が初めて五二%から五〇を割るような状況になっておるところでございます。  なお、御指摘のございました最近の厳しい雇用情勢の中でこれが悪くなっておらないかという御質問でございますが、私ども承知いたしておりますのは、定年制そのものを変えるというよりは、定年制の上に勤務延長なり再雇用制度を設けているところにつきまして、一部非常に構造不況業種等で不況なところが、人員整理をするに際して、この再雇用なり勤務延長の制度を暫定的に取りやめるというのが一、二ございますけれども、中には会社側で撤回されたものもございますし、また私どもも直接会社を指導したような事例もございます。
  166. 三治重信

    ○三治重信君 それから、この定年制の延長が十分でなく、また中小企業からの離職者で高齢者で再雇用をされるのには、先ほど大臣の御説明で、雇い入れの、雇い主の助成が行われている。そういうことで再雇用の促進を図られておるわけなんですが、私は何と申しますか、だんだん高齢化社会になっていくと、やはり高齢者のそれぞれの——いわゆる高齢者といっても、五十五歳まではいままで定年の範囲内に入っていたわけなんです。その中での求職というのは、労働異動と考えた。定年後の雇用の場というものを考えてみると、五十五歳からを考えると、そういう人たちの何といいますか、職場、職種、こういうものの適職対策。  それからまた、そういう人たちの再雇用について、職場の秩序維持からいきますと、やはり一般の年功序列賃金や、職場の従来の定員の中での職場待遇、こういうことと別個に、やはり職種別賃金なりその評価によって、雇用主がそういう特別な定年後の労働者や職員を雇いやすいような労働条件のもう標準的なものを、いろいろこの程度なら大体現段階にはよさそうだと、こういうような一つの資料を、やはり民間なりまたはいろいろの職安で再就職なり求人開拓をやる場合に、そういう一つの具体的なデータがあり、そういうものが高齢者の職場の確保される手引きになっていくようなことを考えたらどうかと思うんですが、そういうことの実効性についてどういうふうになるか、職安の方と基準の方と。これはこれからやはり定年制以後の賃金制のやつには加味して指導していただかぬとうまくいかぬじゃないかと思うが、それに対する御意見をひとつお願いします。
  167. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 中高年齢者に適する職種を選んで、そうして雇用の促進を図ったらどうかというこの御提言、私も全く同感でございまして、現に労働省は、中高年齢者に適する職種として六十三職種を設定をいたしておるわけでございまして、そのようなことによって中高年齢者雇用の促進を図ると、こういう施策を現に進めております。今後もさらにそういうことに対して、中高年齢者にふさわしい職種はどういうものであるかということは、これは、職業研究所というのがサンプラザの中にございますが、そこで専門家の努力によって積極的に新しい職種の研究をしてもらうと、こういうことでございます。  それから、中高年齢者に対する賃金を、やはり基準賃金といいますか、何か設定をしたらどうかと、こういう御提言でございますけれども、私、この賃金問題は、まあ労働市場といいますか、需要と供給というか、そういう一つの背景の経済原理の上に立って、そして賃金そのものは、具体的な賃金そのものは労使の間の決定と、こういうことが筋でありまして、労働省側がその目安をつくるということはちょっといかがなものであろうかと、必ずしも適当ではないと、このように考えるわけでございます。
  168. 三治重信

    ○三治重信君 いまの場合、いわゆる賃金というのは、私言うのは、そういう職場の標準的な実例の資料を事業主に示すと、幾らぐらいで雇ったらいいもんかというようなことにおいての意味で。もちろんいまの大臣のおっしゃっております具体的な標準賃金といっても、まあこれはちょっと解釈あるいはそれによって誤解を受ける可能性があるかもわかりませんけれども、そういうことでなくして、中高年齢者を雇う雇い主に対する資料提供と、それから職場の、何というのですか、企業により年功序列賃金になっておりますと、やはりそこに中途採用というものができにくいいわゆる職場環境になっている。それを欠員に対して特別に中高年齢者をとると、既存の年功序列賃金の体系の中に入っているものに、中高年齢者のいままで入っていないやつを入れるということになりますと、その賃金をどういうふうに決めたらいいかということになると、一般のいわゆる賃金表に適用するというと、その企業にしては非常な大きな負担になる可能性があると、こういうことからちょっと申し上げたんで、非常に技術的なことですから大臣結構でございます。  そういうことで、非常に配慮されておるようでございますが、今後この不況並びに不況がある程度脱却していっても、私はやはり今後の安定成長の中における経済施策の中で最も雇用問題が重要であると思うんですが、この雇用問題は従来とかく一つのマクロでやる、これはまあ一つの経済政策として当然なことであるんですけれども、職安行政や就職というものを考えたり、職場の安定というものを考えると、そういうものではうまくいかないと思うわけです。したがってそういうことからいくと、新しい中高年齢層の労働市場というものをどういうふうにやるかということになると、やはり中高年齢者に、五十五歳以上の人に適する、これがまあ本来の若年労働者の職場と同じように、中高年齢者の職場は、世間一般どこの企業もこういう職種については中高年齢者を通常的に雇う体制でこの社会の公正を期していくと、こういうムード、またそういう体制をとっていけないものかなあと、こういうふうに思うわけでございます。どうかひとつ、いまの大臣のお取り組みに私は非常に賛意を表しておるわけでございます。  きょうはお忙しいところを大変ありがとうございました。ひとつ労働省の職安、基準の関係は、ことにこれから中高年齢層の雇用対策については、雇用条件まで含めてひとつ対策をとっていただきたいということを特に要望いたしまして御質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  169. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 他に御発言もないようですから、労働省の審査についてはこの程度といたします。  次回の委員会は来る二十七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会      —————・—————