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1978-09-14 第84回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年九月十四日(木曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         寺田 熊雄君     理 事                 斎藤 十朗君                 坂元 親男君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 岩上 二郎君                 河本嘉久蔵君                 北  修二君                 永野 嚴夫君                 藤川 一秋君                 増岡 康治君                 丸谷 金保君                 黒柳  明君                 沓脱タケ子君                 喜屋武眞榮君                 江田 五月君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       牧  圭次君        最高裁判所事務        総局総務局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局人事局長   勝見 嘉美君        最高裁判所事務        総局経理局長   草場 良八君        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        総理府人事局長  菅野 弘夫君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省矯正局長  石原 一彦君        法務省保護局総        務課長      高田  治君        郵政省人事局長  守住 有信君        会計検査院事務        総局第二局長   藤井健太郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十年度一般会計歳入歳出決算昭和五十  年度特別会計歳入歳出決算昭和五十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和五十年度政府  関係機関決算書(第八十回国会内閣提出) ○昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第八十回国会内閣提出) ○昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第八十回国会内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和五十年度決算外二件を議題といたします。  本日は、法務省及び最高裁判所決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――   〔委員長退席理事野口忠夫君着席〕
  4. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まず、法務大臣お尋ねをいたしたいと存じますが、法務大臣は、昭和五十三年七月十四日開催の、全国公安労働係検事会同において訓示をなさっておられるようであります。その訓示の中にこういう一節があるわけですね。これを読んでみますと、「一方、労働の分野においては、今次春闘に際しても、一部官公労働組合による違法争議行為が見られたことは遺憾と言うほかないのでありますが、その中にあって、検察警察郵政当局との緊密な連絡協調のもとに、事前に万全の捜査体制を確立したことが起因となって、全逓労働組合による大規模な違法争議行為を中止するのやむなきに至らしめたことは意義深いものと考えるのであります」、こういう一節があるようでございますが、これは間違いございませんね。
  6. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そのとおり間違いありません。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この中の、事前の万全の捜査体制というのは、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか。これをまずお伺いしたいと存じます。
  8. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) もし違法な争議行為が行われました場合には、郵便法に触れるおそれがありますので、そのような事態発生いたしました場合には、これが検挙のために必要な準備の万全を期しておったと、こういうことでございます。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま刑事局長の御説明によりますと、検挙のための万全の体制という御答弁のようでしたが、その検挙の相手方といいますか、対象となるものはどういうものでしょうか。
  10. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 争議行為に伴って郵便物の不取り扱いの罪に当たる行為につきましてこれを教唆し、あるいは積極的に幇助をした、そういう者が出てまいりますればそれらの者を捜査対象としよう、こういうことでございます。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういますと、一般組合員といいますか、単純に職務を放棄してストに参加したという一般組合員逮捕は包含されないわけですか。
  12. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 捜査内容について、これは事犯発生しましてからもちろんこれに即応するものでございますから、事前にどういう捜査方針でおったかというようなことをこの際確定的に申し上げることは適当でないと思いますが、いずれにいたしましても、第一次名古屋中郵事件判決を踏まえまして、これに合ったような捜査方法で適切な措置をとりたい、こういう準備をしておったわけでございます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはおかしいでしょう。つまり、一般組合員に対しては刑罰権が否定されているというふうに考えるべきじゃないでしょうか。いま刑事局長は、全逓名古屋中央郵便局事件判例を踏まえてということをおっしゃいましたね。じゃ、名古屋中央郵便局事件のあの大法廷判決は、一般組合員についてはどういう判決をしておるか、御存じですか。
  14. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) もちろん存じておりまして、したがって、先ほど答弁申し上げましたように、積極的に郵便物の不取り扱い行為教唆扇動した者、こういう者についてこれを捜査対象として準備をしておった、こういうことでございまして、個々具体的にどういう者をあるいは逮捕するとか、そういうような点につきましては事犯発生を見ましてから対処することでございますから、そういう意味で、先ほどお答えいたしましたように、そういう具体的な捜査方針につきましてはお答えをするのは適当でなかろうと、こう申し上げたわけでございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま刑事局長の御答弁ですと、全逓名古屋中央郵便局事件判決は、単純なるスト参加者について刑罰権を否定しておるということはわかっている、したがって教唆扇動をした者、いわゆる指導者ですね、それについて捜査体制をしいたんだという、そういう御答弁だったんでしょうね。もう一遍確認いたします。
  16. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) そのとおりでございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうといたしますと、私が最初お尋ねした単純なるストライキ参加者一般組合員の単純なる業務放棄者、これは検挙対象にならないということははっきりしているんじゃないでしょうか。どうしてそれを語尾を濁されるんでしょうか。ちょっと了解しがたいのですが、はっきりその点、あんまり秘密になさらないでおっしゃっていただきたい。
  18. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 抽象的に考えまして、全く完全に単なる不作為による不取り扱い実行行為者、こういう者を考えますれば、もちろん検挙の、いわゆる逮捕対象にならないことは御指摘のとおりでございます。しかしながら、具体的な事案発生の過程におきましては、それぞれの職場その他におきましていろんな付随的な出来事もございますので、そういう意味で、スト参加者は一切逮捕しないという方針でおったというふうに御理解いただけるような御答弁は適当でないと、こう思ったわけでございます。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっとこの点は重要ですから、何かあいまいな答弁で過ごされるということは、不必要な摩擦なり威圧、と言いますか、を与えるわけですね。刑罰権の乱用に通ずるわけですよ。そういう何か持って回ったような御答弁が大変なデマ宣伝を当時振りまいた一つの原因になりました。  これは法務大臣、あなたが訓示をなさったことですから、いまの刑事局長答弁が、原則的に私の質問を肯定しておりながら、何か最後に少しあいまいな点を残すのであなたにお尋ねをするわけですが、全逓名古屋郵便局事件はこういう判示をしておるわけですね。   そこで、最後に、公労法一七条一項に違反す  る争議行為単純参加行為につき刑事法上の処  罰の阻却を認めるべき範囲は、処罰阻却を認  める根拠の面から、これを限定しなければなら  ない、ということについて述べておきたい。   まず、国公法の罰則があおり、そそのかしな  どの指導的行為処罰対象を絞っているのは、  東京中郵事件判決指摘するとおり、同盟罷  業、怠業その他単なる労務不提供のような不作  為を内容とする争議行為に対する刑事制裁をい  かにするかを念頭に置いてのことであるので、  単純参加行為に対する処罰阻却も、そのよう  な不作為的行為についてのみその事由があると  しなければならない。ここで単純参加行為に対  する処罰阻却を肯定するのは、もとよりその  行為を適法、正当なものと認めるからではな  く、違法性阻却しないけれども、右に述べた  諸般の考慮から刑事法上不処罰とするのが相当  であると解されるからなのである。  つまり、刑事法上不処罰とするということは、国家刑罰権を否定しているわけなんですね、単純なるスト参加者に対して。  この最高裁判所判決というものを、これは刑事局長もこれを根拠としているという御答弁のようでしたが、法務大臣もやはりこの名古屋中郵事件判決を踏まえて捜査体制をしいたということは間違いないのでしょうか、いかがでしょうか。
  20. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 細かい各関係法律内容承知いたしておりません。ただ、郵便法規定処罰規定がありますから、これは法務省というよりも、検察権最高裁判決を参考にしながら刑罰権の判定をしなければならない、こういうたてまえでやっておると私は了解をいたしております。でありますから、最高裁判示をした以外のことに刑罰権を行使しようという考えはないものと考えております。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっと最後の点、私よくわからなかったのですが……。
  22. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) どうも声が悪くて恐縮ですけれども、最高裁判決判示をいたしました趣旨以上に検察権を行使しようとは考えておらないと、かように私は了解しております。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうといたしますと、最高裁判所のこの判決が、争議行為単純参加行為、単純なる参加行為に対する処罰阻却するというのでありますから、刑罰権を否定しているわけですね。そうすると、その者に対して検挙とか逮捕とかいうようなことはあり得ないことになるわけです。法務大臣、この点は肯定なさいますか。
  24. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 寺田さん十分御承知でありますが、検察検察権を行使する場合に、必ずしもこれは逮捕しなければならないとか、検挙しなければならないというものじゃないと思います。犯罪ありと認めた場合に、それを逮捕して身柄を拘束して犯罪捜査する必要があるかどうか、そのときの事犯状況によってやるわけでございますから、この種の場合は多くは、上層部の下部に至る同盟罷業等指示についてはなかなか証拠がつかみにくい、あるいは証拠隠滅のおそれがある、こういう事態があるやに聞いております。そういう際に強制捜査に踏み切る、かようなことだと思います。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私のお尋ねを全く御理解になっていらっしゃらぬのですが、私は名古屋中郵事件判決指示すること以外の検挙であるとか、あるいは刑罰権の行使ということは、法務大臣はお考えになっておられないとおっしゃいましたね、先ほど。したがって、名古屋中郵事件が、単純なるスト参加行為は不処罰とする、処罰しないと考えるべきであるという判決をしている以上は、単純なるスト参加者に対する検挙であるとか、逮捕であるとかいうことは考えられないのではないでしょうかと言ってお尋ねしているのです。
  26. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) その点は先ほども申し上げたわけでございますが、検察検察権を行使する場合には法律規定に従う、しかもその法律解釈について最高裁がいまおっしゃったような判示をしておる、判決趣旨を尊重してやるものと私は考えております。でありますから、最高裁判決によってそこまで及ばないというような者について犯罪捜査として逮捕したり監禁したりするということはおよそ考えていないものと、かように了解しております。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長、いま大臣がおっしゃいましたね。この判決が指し示す以上に逮捕するとか検挙するとかいうようなことは考えていない、それは当然であるということをおっしゃったでしょう。そうすると、あなたが前段においては、この検挙というものはスト指導者に対するものである、指導的地位にあった者について考えたのであるということを肯定なさりながら、それでは単純なるスト参加者、それについての検挙であるとかあるいは逮捕であるとかいうことは、その捜査体制の中には入っていなかったのではないかという私の質問に対してははっきりと肯定しないのですね。それはどういうわけでしょうか。
  28. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 理論的な問題を申し上げて恐縮でございますが、最高裁判示に徴して、単純スト参加者逮捕もできないかという点については若干の議論があろうと思います。しかしながら、先ほど来御指摘のように、処罰対象としないとされておる者につきまして強制捜査を行うことは適当でないことは言うまでもありません。  ただ、実際の具体的な事案捜査ということに相なりますると、だれが単純参加者で、だれが教唆幇助者であるか必ずしもわからない場合もございます。また、同盟罷業に随伴しまして、他のたとえば刑法犯等発生する場合もございます。したがいまして、お尋ねに対しまして、私がきわめて定型的に、スト単純参加者逮捕しないんだと、こういうふうに申し上げてしまいますことは、若干の何といいますか、言葉が悪うございますが、行き過ぎた誤解を生むおそれがあると。したがいまして、単純参加者であるかどうかわからない場合もございましょうし、また、その他ストに随伴したいろいろな犯罪現象も生ずるでありましょうし、そういう点を考えますと、事前捜査方針としては、いわゆるストを指導したと世間的に言われます組合幹部だけを逮捕するのだと、それ以外は逮捕しないんだと、こういう方針を立てておくわけにもまいらぬわけでございまして、捜査の進展に応じまして、最高裁判決判示しておりますところを忠実に踏まえながら対処すると、こういうことしか申し上げられないのでございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変なお考え違いのようですが、まず、処罰権がない。つまり国家刑罰権がない者についてどうしてこれを逮捕できるんでしょうかね。その点ちょっと私わかりませんね。逮捕というのは刑罰権存在前提にしているわけでしょう。処罰し得ない者を逮捕するということがあり得ましょうかね。それが第一点です。  第二点は、あなたは、個々の具体的な場合にそれが単純なる参加行為かどうかわからないから調べる必要があるということをおっしゃった。それはわかりますよ。しかし、それはやはりその人間が単純なる参加行為だけをしたことによるものではなくて、その逮捕なりあるいは検挙なるものが、何らかの意味教唆扇動あるいは指導的行為をしたという疑いがあればこそそこにあなたの言う検挙なるものが生ずるわけで、私がお尋ねしているように、単純なるスト参加者についての逮捕ということには、あるいは検挙ということにはならないんじゃないでしょうかね。あなたのお言葉を踏まえてみてどうですか。
  30. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 先ほど来申し上げておりますように、郵便法違反単純スト参加者、これを逮捕することは適当でないと思っております。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、適当でないということをおっしゃる以上は、私がお尋ねしているように、そういう者を逮捕するという、そういう捜査体制なるものは組んでなかったと伺っていいわけでしょうか、適当でないものをあなたが企画するわけがないんだから。
  32. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 私がいまお答えいたしましたようなことを踏まえて捜査方針を立てておったようでございます。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからいまの、何ですか、刑罰権が明らかに否定されても逮捕できないことはないという理論はあくまでも固執されますか。やはり刑罰権前提にしなければ逮捕というような、強制捜査というものが成り立たたないというのが私は捜査の常識だと思いますが、それは局長いかがですか。
  34. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 単純スト参加者処罰しないということが、構成要件に該当しないから処罰しないのか、あるいは何らかの犯罪成立阻却する事由があるから処罰しないのか、その辺この最高裁判決の読み方がいろいろあろうと思います。そういう意味におきまして、単なる処罰阻却事由があるというような考え方に立ちますと、逮捕はできると、こういう理屈もあり得るわけでございます。たとえば親告罪で告訴がなくても逮捕できるというのと同じようなことになってまいります。この点につきましては、先ほども申し上げましたけれども、理論的には両説あり得るのであると。しかしながら、もともと公訴の提起できないような者を逮捕することが適当であるというようなことはだれが考えてもおかしいわけでございまして、したがいまして、実際の運用としては、さような者を逮捕するということは適当でないと、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたは何か刑罰権存在構成要件該当だけに限っておられるようですがね。構成要件該当だけじゃなくして、責任の問題もありますし、違法性の問題もある、処罰条件の問題もある。それがそろわなければ、それは刑罰権というのはないんですよね。それは何といいますか、違法性の有無のように、それが現実にその行為を調べてみなければこれは明らかでないという場合はまた別ですけれども、このような身分前提としてその身分のゆえに処罰条件がないんだ、それははっきりしているんですね、最高裁判所判例で。それをしもなおかつ両説ありと、それは不公平に過ぎるように思いますがね。いかがです。
  36. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 先ほど私は構成要件ということだけ申し上げたのは言葉が足らなかったのでございまして、もちろん違法、有責な構成要件該当行為前提にして申し上げるべきところを言葉が足りなかったわけでございまして、その点はおわびいたしますが、ただ私は率直に、郵便法解釈をめぐって、最高裁判決判示解釈をめぐってこの二つの議論が現にあると、したがって、逮捕を含む捜査行為被疑者としての捜査対象とはなし得るという説もあるということを理論上の問題として申し上げたわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、本来まさに御指摘のとおり、公訴の提起の対象にならない者を強制捜査対象とするということはきわめて適当でないということは申すまでもないことでございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変それで結構です。  それから官房長官お忙しいところをおいでいただいて恐縮でしたけれども、実は今次の全逓ストライキですね、いま法務大臣刑事局長にいろいろとお尋ねをしたのですけれども、何かあのストの前に、政府ストライキ指導的地位にある者、教唆扇動をした者だけでなくして、単純なるスト参加者一般組合員についても逮捕する計画を練っていたというような風説、風聞が飛びかいました。それが官房周辺から流されたといううわさがあるわけですね。これはたとえば五十三年五月二十日付の毎日新聞、この中に「あえぐ巨大労組全逓」という見出しで大変りっぱな報告があるのですが、その中に、「警察職務だから捜査するのは当たり前だ。労働省筋も「官邸サイドはやる気十分でしたな」ともらして」いるというような記事がその中にございます。それから五十三年四月二十五日の朝日新聞、「鉄の結束にすき間風 全逓脱落」という見出しの中の記事ですけれども、「富塚総評事務局長記者会見で「首相官邸周辺では、三日前に、ストには高姿勢の対応をすることが綿密に計画されていたという情報がある」と述べ」たというような記事があります。単純なるスト参加者につきましては、いま法務大臣刑事局長も、名古屋中郵事件判決判示を踏まえまして、それを逮捕するということは適当でない、したがって、そういう前提のもとに捜査体制を組んでいたという御答弁でありましたけれども、果たしてこのような風聞が事実といたしますと、いたずらなる刑罰権の威嚇といいますか、しかも最高裁判決判示に著しく抵触し、それを上回る拡張解釈前提として、労働運動刑罰をもって弾圧するような意図を暗にほのめかすような風聞を漏らしたと考えられないでもないんですね。これは何といいますか、民主主義国家としては非常に恥ずかしいことではないかと思いますけれども、これについて、官房長官、何かお聞きになっていることはありませんか。そういう事実はあったんでしょうか、なかったんでしょうか。
  38. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 内閣官房としましては、先般行われました公労協関係ストでありますが、このスト国民生活に非常に影響があるということで、違法なスト計画の中止を訴える官房長官談話というものを三回にわたりまして出すほか、関係省庁等とも連絡をとりながら、このスト情勢把握等に努めるなど、国民生活への影響を最小限に食いとめるために努力を払ってきたところでございまして、お話がございましたような、全逓幹部あるいは一般公務員を大量逮捕するというふうな情報内閣官房が流したということは一切ございません。これはもう何かの間違いではないかと思っております。
  39. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうといたしますと、捜査体制なるものについてはやはり司法当局に御一任になって、官房独自の計画であるとか、あるいは指示であるとか、そういうものをなさったことはないと承っていいんでしょうか。
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもう捜査当局司法当局が行われることであって、官房としては一切そういうものにはタッチしておりません。
  41. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうしますと、官房長官としましては、いまの捜査体制内容として、最初刑事局長検挙などの体制ということを御答弁になりまして、その検挙対象というものが、結局単純なるスト参加者は含まないという結論に最後にはなったわけですけれども、そういう解釈については、これは捜査当局一任して、官房がそれと異なる見解を持っていたというようなことはなかったと承っていいんでしょうか。
  42. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そのような問題は挙げて捜査当局一任をいたしておるわけでありますから、官房はこれに対して違った解釈をするとか、違った考え方を進めるとか、そういうことは一切ございませんです。
  43. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、ちょっと問題が違って、これは最高裁判官の任命の問題になるんですが、官房長官の御都合があるので、ちょっとそっちの方に問題を移さしていただきたいと思うんです。  最高裁判所裁判官にその人を得るということ、これは日本の法秩序を守るといいますか、司法の運営に関してきわめて重大な事柄なんですけれども、御承知のように、昭和二十二年吉田内閣の当時、それから続いて片山内閣の当時には、最高裁判所裁判官任命諮問委員会というものがございました。そしていわば内閣総理大臣の恣意なり専断というものによってその適正さが失われないように歯どめをかけたといいますか、そういう機関があったわけであります。その当時、片山内閣当時に任命諮問委員会の諮問を受けて三十名の候補者の中から十五人の裁判官が選任を見たわけであります。そのときに、一体どういう階層の方々から選任するかという問題、これで、大体、裁判官から五名、在野法曹から五名、それから学識経験者から五名という基準がまず一般に肯定されておったようでありますが、当時、やはり、それじゃ検察官の出身者はどうするかという問題がございまして、それは学識経験者の中に含めておったようであります。  ところが、その後、次第に裁判官出身者の数がふえて現在は六名のようであります。これは各小法廷に民刑の専門家が一人ずつおった方がいいというような配慮に基づくというふうな説明をする人もあります。それから、検察官が一名というのは二名に次第にふえてまいりました。この是非は、その後の最高裁判例を見ますというと、やはり検察官出身者というのはどうしても時代の進展からおくれているというような印象を受けざるを得ない少数意見というものをつける傾向があるように思うんですけれども、それは別として、この在野法曹の出身者が四名に減ってきておるわけです。しかも、その任命の場合に、全然日弁連の意向を無視した、完全な一本釣りであった、たとえば大塚喜一郎裁判官のような場合もあったわけであります。それから、とかくの批判がある、やはり弁護士出身者ではあっても日弁連の推薦が全くなく任命された、日弁連の方もその内定があってから推薦をしたというようなケースもあるようであります。  いずれにしても、日本の司法というものは在野法曹と在朝の法曹の両者から成り立っているわけでありますので、何か在野の法曹というものを軽んずる、その存在を軽く見るというふうなことは決して好ましいことではないと私は考えるわけであります。また、有為な人材もきわめて多いということは、これは政府当局においても認めておられるようであります。そうといたしますと、私は、やはり総理の専権にゆだねられた最高裁判官の任命というものについて、在野法曹からこれを選任するというその比率は軽々に動かすべきではないと考える。  それからもう一つは、在野法曹から人選をする場合には、やはり日弁連の意向を重く見て、できるだけこれを尊重すべきであると考えるんでありますが、官房長官としてはいかがでございましょう。この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 憲法の発足当時は、いまお話がございましたように、裁判官任命諮問委員会に諮問をするという形がとられてきたわけでございまして、最高裁の発足後初めて行われた最高裁の裁判官の任命は、その諮問委員会の諮問を経て行われたことは御承知のとおりでありますが、この方式が任命に対する責任の所在を不明確にするというおそれがあるなどの理由で、昭和二十三年の一月一日に廃止されたというふうに聞いておるわけでございまして、まあ最高裁の判事の任命権は、これはもうもちろん公正、厳粛に行わなければならないわけでございます。そのために、日本弁護士連合会あるいは最高裁長官、法務大臣等の御意見を伺うという考えもあるかと思うわけでありますが、しかし、任命権が内閣の専権にゆだねられておる、こういうことでございますから、やはり内閣が全精力を傾けて、最後はその全責任において人選を決定するということ、これが憲法の趣旨に適合をするものであるというふうに考えております。そのようにやっておるのが現在の実情でございます。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その事柄が、その権限が総理にあって、総理の専権にゆだねられているということと、どういう階層の方々の意見を聞き、それを決定するかということとはおのずから別だと思いますね。専権にゆだねられているんだから、だれの意見も聞く必要もないんだと、だれの意見も尊重する必要はないということにはならないと思います。私はやはり現行法上総理の専権にゆだねられていることは認めておりますけれども、しかし、やはり司法の運営は在朝、在野両法曹によってなされておるわけでありますからして、在朝の代表の方々の御意見を聞くということも適当でありましょうし、在野の法曹の意見を聞いて参考にするということは同じように必要ではないだろうかとお尋ねしているわけです。  私は、かつて三木内閣時代に井出官房長官に法務委員会においでをいただきまして、井出官房長官に、最高裁長官の意見は尊重しなければいけないんじゃないかというお尋ねをしたことがあります。井出さんは、まことにそのとおりであって、できるだけ、あたう限り最高裁長官の意見は尊重いたしますという答弁をなさったわけですね。在野の法曹から裁判官を任命する場合には、当然在野法曹の団体である日弁連会長の意見をやっぱり参考にするということが望ましいのではないかというお尋ねなんですが、いかがでしょう。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 最高裁判事の任命権というのは、もう私が何回も申し上げるまでもなく、これはもう内閣の専権事項でございますが、これをいかに公正に、厳粛に行うかということが内閣としての責任じゃないかと思っております。そういう意味で、これまでの最高裁判事の人事については、その重要性は十分認識をし、常にこれにふさわしい人材を選んでまいりましたが、この人選は従来から国民の信頼を得ておるものと考えておるわけでございます。  この専権を行使する場合において、いまお話がございましたような、最高裁長官あるいは法務大臣あるいはまた日本弁護士連合会の意見を聞くということも、これはまあ考えられるわけでございますが、しかし、最終的に内閣が専権でもって行うと、これはもう非常に事柄の重要性から内閣の全責任で行うということはこれはまた当然のことであろうと、こういうふうに思うわけです。
  47. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも私のお尋ねに近づいたようでもあり、またそうでないようでもあり、非常に御答弁が老練なのでありますけれども。長官ね、総理の専権にゆだねられておるというのでありますからして、その責任において最終的には御決定になることを私はあえて否定はしておりませんよ。それからまた、公正な人事でなければならぬという点も全く同感なんですが、公正な人事を行うとかあるいは最終的に自分が決定するということと、その前提として、できるだけ在朝、在野の法曹の意見を聞いて参考にするということとは、決して矛盾しないわけですね、両立しますよね。ですから、私はそれが総理の判断を誤たしめないためにもより望ましいことではないだろうか、必要ではなかろうかと言ってお尋ねをしているのです。もう一回お伺いします。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この大事な人事を行うに当たって、やはり先ほどから申し上げておりますように、在朝、在野の御意見を聞くということもまたあり得ると、考えられるということでございます。
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 聞くことも考えられるというところまできたわけでありますけれども、私どもはどうしても聞いて、さらに尊重してほしいというところまで譲歩していただきたいと思うのですけれども、そこまでは無理ですか。まあ意見を聞くこともあるというんですがね。意見を聞いて尊重いたしましょうというところはいかがです。
  50. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまあ三権分立の中で。最高裁の判事の任命というのは本当に私は重要な内閣としての仕事であると思っております。そのために、その重大性にかんがみまして、内閣としての全精力を集中してこれは決定をしなきゃならない人事と。それを行うためには、先ほどから申し上げましたように、在朝、在野の法曹界の意見も聞くということはまああり得ると、考えられるということでございまして、それ以上にどうしてもやれというお話でございますが、これはまあ内閣が最終的に全責任を持って行う人事でございますから、内閣の判断でやろうと私は考えます。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはまあ大変不十分な御答弁だと思いますけれども、官房長官も、聞くこともあり得るというところまでは譲歩なさったわけで、さらに竿頭一歩を進めて、尊重するというところまで言っていただきたかったのですね、私は。それがいまちょっとがんばっておられるようでありますからして、これは強い要望として申し上げておきますね。総理にその点お伝えいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  52. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまの御意見は、十分総理にお伝えを申し上げます。
  53. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ官房長官は結構です。  先ほど全逓の争議に戻りまして、この三公社五現業のストライキの問題で、ひとり全逓労働組合のみがこういう刑事弾圧を、よしんばそれが指導者なり指導的地位にある者についてに限定せられるといたしましても、なおかつ他の三公社五現業に比して著しく均衡を欠くではないかという考えを私どもは持っております。当然これは公務員法が改定されましたとき、あるいは公労法の制定時あるいは改定時等にこの点は当然整理すべかりし問題であったというふうに、法七十九条は、ストライキについてはこれは適用がないというふうな立法措置を講ずべきであったと私は考えるのでありますけれども、しかし、この問題についてかつて法務委員会で伊藤刑事局長お尋ねをしたことがありますね。伊藤刑事局長はその際、この名古屋中央郵便局事件判決の中の下田武三裁判官の補足意見、これを引いておられまして、こういうような考え方に立てば、全逓労働組合についてそういう刑事的な措置を行うということも「まんざら合理性がないわけでもないというふうにやはり考えるわけでございます」、こういう答弁をしておられる。「まんざら合理性がないわけでもない」、これはそこに刑事局長の批判精神、批判的精神がこれはやはり脈々と波を打ったような感じがするわけでありますけれども、あるいはその後に、「一応合理性がある」というような答弁をしておられる。そこで私が、「刑事局長としては郵政職員は他の四現業やあるいは三公社の職員の業務よりも、業務自体の性格がより公益に結びついているというか、重要であるというか、そういう評価をしていると、そういうお考えですか。」という質問をいたしましたときに、あなたは、「そういうような見方をすれば、この立法上の不合理というものはないというふうに解することができる、かように思っております。」という答弁をしておるわけです。これは速記録そのまま読んだわけですが、五十二年の五月十九日の参議院法務委員会会議録第八号。いまでもあなたはやはりそういうふうな解釈をとっておられますか。
  54. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) その際の御答弁でもお断り申し上げておきましたが、三公社五現業の職員の同盟罷業行為に対してどういうふうな政策をもって臨むかというのはすぐれて立法的事項でございまして、国会において彼此考覈してお決めになることだと、こういうふうに思いますが、現状は、御指摘のとおり郵政と電電のみにこの種の犯罪、罪というものが設けられておって、その他には設けられていない、こういうことでございますから、三公社五現業と一くくりで言いますと、その中にばらつきがあるという客観的な状況はあるわけでございますが、現状を私どもが合理的に理解しようと努めますれば、私個人の見解でございますが、第一次名古屋中郵判決における下田裁判官の補足意見というものが一つの参考になると、こういうふうに考えておるわけでございまして、その考えはいまでも変わりございません。
  55. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこで、郵政省の人事局長がおいでになっておられるのでお尋ねをするわけですけれども、いま、現行法を前提とすれば、やはり下田武三裁判官の補足意見のような考え方に立つとより合理的に解釈できる、そんなような法務当局の意見のようですね。あなたはどうなんですか。下田武三裁判官は、郵政職員というものの職務の公共性というものは国鉄職員よりもはるかに大きいんだと、一段高い公共性を持っておると下田武三裁判官ははっきりそう言い切っておる。現行法を前提とする限りそういうふうな解釈をとらないと合理的な説明がつかないと、こう法務当局は言う。あなたはどんなふうにお考えですか。
  56. 守住有信

    説明員守住有信君) 私どもといたしまして、他の三公社四現業と公共性の強弱につきまして比較云々する立場にはないわけでございますけれども、しかし、私ども事業を預かる者といたしましては、郵便の持つ、何と申しますか、基本的な通信手段としての問題、特にまた信書の送達が郵便事業の独占でございまして、国民の皆様方は郵便によらざるを得ないというふうな面等々、あるいはまた国民の皆様方の御期待等を考えました場合に、他の企業体の場合よりも、何と申しますか、まさるとも劣らないといいますか、むしろ私どもは自信を持って公共性が強いと、こういう使命感と申しますか、そういう気持ちを持っておる次第でございます。
  57. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあ私のお尋ねしておるところを肯定するがごとくにも見えるんですね。  これは、参考のためにお読みしますと、下田武三裁判官は、名古屋中央郵便局事件の補足意見の中で、一般参加者――あの人は一般参加者処罰しろという非常にタカ派の人なんですね。「このような見解は、他の公共的業務に比較しての郵便業務の格段の重要性と、その故に、特に郵便法に七九条一項の罰則が設けられた立法理由とを、無視するものといわなければならない」、「郵便業務は国家の完全な独占事業であるため、郵便ストの場合、国民は他に代替サービスを見出すことはできない。国鉄も、同様に広く国民大衆の利用の的となっているが、郵便は、この点において、国鉄以上に公共性の高いものというべきである」、こう言い切っておられるわけです。この意見を、法務省刑事局長としては、現行法の解釈を矛盾なくするためには重要な一つの判断資料であるというふうに言われるわけですね。人事局長のいまの御答弁によりますと、まさるとも劣らないという御意見のようでしたけれども、それでは現在の郵政職員の労働条件は、他の三公社五現業の職員の労働条件に比較して、その公共性、より高い公共性にふさわしいものとなっているかどうか。この点はどういうふうにお考えですか。
  58. 守住有信

    説明員守住有信君) 郵政職員、特にその中での郵便事業の職員の労働条件というお尋ねだと思いますが、労働条件の一番主要なものは給与でございますので、給与を中心にして御説明申し上げたいと思いますけれども、御承知のとおり、国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法というのがございまして、その中で職員の給与のあり方につきまして根本の原則を定めておるわけでございますが、それにおきましては、職員の給与はその職務内容と責任に応ずるものでなければならない。それからさらに、職員が発揮した能率が考慮されなければならない。それからもう一つのポイントといたしましては、一般行政の方の他の国家公務員及び民間事業の従業員の給与その他の事情、これは生計費とか消費者物価とかいろいろな問題であろうと思いますが、その他の事情を考慮して定めることとされておりますし、また、そのこと自体が労使間の団体交渉の対象事項である、このように理解をいたしておるわけでございまして、この郵政職員、あるいは特にその中の郵便事業職員の給与水準につきましては、これは十数年来のことでございますが、労使が自主的な団体交渉をしてどうしてもデッドロックに乗り上げるという場合に、公正な第三者機関であり紛争調整機関でもある公労委というものの中で、労使のいろいろな主張あるいは実情等を御調査の上、調停委員長見解、それが引き続いて仲裁裁定になるというのが従来からの通例でございますけれども、そのプロセスを通じまして、公労委の、いろいろな労使の主張なり実情調査なり、そういうものの中で、そういう事業の性格、内容あるいは民間との対比等々も十分慎重に御検討の上、これが決定がなされているというふうに私ども理解をしておるわけでございます。  そして、そのまた仲裁裁定が出ました後の配分交渉という問題があるわけでございますけれども、この配分交渉の中におきまして、関係労働組合も、同じ郵政職員の中で郵便事業職員の労働条件というものにつきまして非常に強い関心を持っておるわけでございまして、またさらにその郵便事業職員の中でも外務職員の給与と、さらにまた外務職員の中でも大都市あるいは発展地域における職員たちの労働条件、こういうものに強い関心を持っております。また私どもとしましても、郵便事業の非常に複雑な困難な特殊性というものを念頭に置きまして、この配分交渉の中でいわゆる郵便事業職員らしい調整額とか調整加算額というものを、郵便について、さらに外務職員について、さらに大都市についていろいろ積み増しをしておると、こういう状況でございまして、私どももまたそういう考え方で労使間で対応しておる、こういう状況でございます。
  59. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまあなたは、公労委で決定するに当たってそういう点の配慮が十分なされると思うというような御答弁でありましたけれども、たとえば今度の仲裁裁定によるベースアップを見ますというと、私はそれが決して十分考慮せられてはおらないと考えざるを得ないわけであります。もちろん他のものが高過ぎるというようなことは少しも申しておりません。それさえもなお私は低いと思うけれども、その他の低い公共企業体の職員の給与よりもさらに郵政が下回っているということ、これを見て驚くわけであります。そして、そういう格差をもたらした主要な原因について公労委の方に尋ねてみますと、公労委は年齢構成が主要な原因だということを言うわけですね。そしてあなたのおっしゃる他の三公社五現業の公共性に比してもまさるとも劣らない、そのまさるとも劣らない公共性にふさわしい待遇というものがこの仲裁裁定の少なくも数字の上には出ていないんです。全く同じで、そして年齢差によって差を設けているというふうにしか考えられない。これは郵政当局だけではなくして、恐らく組合の方においては多分に不満を持たざるを得ないところであると思うんですけれども、そういう点、公共性の自己主張といいますか、それをもうちょっとやはり人事局長、郵政局自体が職員の公共性の高さというものを、その上に特にわれわれはストライキの制限さえも受けているんだというような主張はやはりなさるべきではないか。そういう主張を当局がなさらない限りは、より高い公共性なんというものが認められる道理はないというふうに考えるんですがね、いかがでしょう。
  60. 守住有信

    説明員守住有信君) 実額におきまして、平均におきまして二万円弱の違いがあるということは承知いたしております。ただし、公労委の方もおっしゃっておられますように、年齢構成の点で、国鉄の方がはるかに年齢構成のレベルと申しますか、あれが高いわけでございますし、さらにはまた勤続年数と申しますか、こういう点でも国鉄の方がはるかに長いわけでございまして、わが郵便局の場合は、最近の中高年齢層の問題にもおきますように、比較的、何と申しますか、二十代の後半とか三十代の後半から郵便局に入ってくるという方々もだんだんまた多くなってまいっておりますし、それこれ考えました場合、単に形式の平均の二万円弱だけで即断はできないと思っておるわけでございますが、またこれは労働組合の内部のことにもなってまいりますけれども、国鉄と全逓――まあ全郵政もございますけれども――の物の考え方と全電通の考え方と、いわゆる最低は定率プラス定額と、こういうことになっておりますが、どちらにウエートをかけるかということで実は労使間の内部でもいろいろ議論があるところでございますが、私どもといたしましては、実は郵便事業は膨大な赤字を抱えておりますけれども、その郵便事業の困難な特殊性というものを念頭に置きまして、いろんな経営努力はしていかなきゃなりませんけれども、特に郵便従業員のことを考えまして、さらにその配分交渉の中で実は郵便にウエートをかけていくというふうなやり方をとっておるし、今後も努力していきたいと、このように考えておる次第でございます。
  61. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま、私がお尋ねするのでなくして局長自身の方からおっしゃったように、国鉄の職員と二万円内外の差がありますね。私は国鉄の方が高過ぎるなんてことは少しも申しておりませんよ。これはもっと高くてあたりまえだと思うけれども、しかし、少なくも郵政職員は、その国鉄の格差を年齢でやる、経験年数でやるということで肯定するのでなくして、やはりできるだけ公共性の主張のもとにその格差を縮めるように努力すべきであると私は考えるんです。そういうお気持がありますかどうか、その点お伺いします。
  62. 守住有信

    説明員守住有信君) 実は私どもといたしましては、郵便料金を根底といたしまして郵便事業を経営しておるわけでございますので、そういう非常に厳しい財政状況になっておりますので、いろんな経営努力を続けなきゃならないと思っておりますが、また、そこで働いておる諸君たちの勤労意欲と申しますか、そういうものをも十分念頭に置いて、いろんな場の中でいろんな工夫をし、努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  63. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、いまの格差の是正はどうなんですか。
  64. 守住有信

    説明員守住有信君) 格差論につきましては、これが非常にむずかしいわけでございますが、格差という角度でなくても、郵便事業の特殊性という角度からの主張というものは念頭に置いて続けたいと、このように考えております。
  65. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、よろしい、それで。大変不十分ですけれども、なおこれからやはりできるだけ郵政職員のそういう公共性の高いという見地から、いまあなたがおっしゃったことだけでなくして、できるだけ労働条件を高めるように御努力いただきたいと思います。そういう御努力を要請しておきます。いかがです、その努力は約束していただけますか。
  66. 守住有信

    説明員守住有信君) 私ども、国の経営する事業の場合は、公社と違いましていろんな面の規制が、単に七十九条の問題だけでなくていろいろあるわけでございますが、したがって、その規制の基本原則は守りながら、しかし、その働く郵便の諸君たちのことを十分考えて努力をしていきたい、こう考えております。
  67. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ人事局長結構です。  次に、法務大臣の鹿児島における八月八日の記者会見における御発言についてお尋ねしたいと思うんです。  法務大臣は五十三年八月八日、鹿児島地検において記者会見して、弁護人抜き法案の質問に伴ってこのように語ったと報ぜられておりますが、事実でしょうか。いまの日弁連は一部の弁護士の暴力の支配に屈しており、多数の弁護士は心の中で賛成している、三分の二は心の中で賛成している、賛成と言うと本人のみならず家族まで必ず脅迫を受けると語ったと報ぜられておるんですが、これは事実でしょうか。
  68. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 新聞報道がいろいろなされておりますが、こういう場合でなくても、新聞報道必ずしも発言をといいますか、真意を伝えない場合があると私は常日ごろ考えております。いまお話しの八月八日の私が鹿児島に行きましたときの記者会見についても同じような現象があらわれておる。いろいろ新聞に書いておりますが、どれも全然偽りだとは申しませんけれども、必ずしも私の真意を伝えておらないと私は考えております。いまの新聞はどれか知りませんが、各種の新聞がありますが、そのときの概要を書いてある地元の南日本新聞というのがあります。これが比較的に、これは何もかにもまとめて書きますから、それ全部そのとおりの発言ではありませんけれども、比較的に私の話したことをまとめておると思いますから、これをちょっと読んでみましょう。  これは五十三年八月九日の鹿児島で発行しておる南日本新聞でございます。南九州に相当頒布されておる新聞でございますが、これにはこういうように書いてあります。「発言要旨次の通り。」と書いてありますが、「一、弁護人抜き裁判は、弁護士なしで裁判をしようという考えではない。しかし、過激派裁判のように弁護士らしからぬ不当な行為をする弁護士がいて、出廷しないと現行法では裁判が開けない。特例法案は決まった日に正常な裁判が行われることを目的にしており、当たり前のこと。これで偏った裁判などありえない」。  もう一つの項を挙げておりますが、「一、日本の弁護士一万一千人の中で、三分の二は特例法に賛成と思っている。しかし、賛成を堂々と表にすると、脅迫が及ぶ。これは暴力の支配に屈しているとしか思われない。(不当な行為の)弁護士は粛正されなければならない制度があるのに、実際は運用できないところに問題があり、全体として(特例法案に)反対をせざるを得ないようだ。」と、こういうように南日本新聞ではまとめて書いております。私は、いまお尋ねの、弁護士会が一部の弁護士さんの暴力に屈しておる、あるいは支配を受けておるということを考えておりませんし、そのようなことを言っておるわけではございません。約二十分の記者会見の中で、いろんなこれをめぐる解説の中にまとめてそういうふうに出ておると思いますが、さようなことを言っておるわけではございません。
  69. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま大臣が比較的正確な新聞報道として紹介なさいました南日本新聞でさえも、これは大臣お持ちかもしれませんが、「弁護人抜き裁判 賛成すれば脅迫」という大きな見出しなんですよ。しかも、「来鹿の法相日弁連を強く批判」とありまして、いま大臣がお読みになりましたこの部分の前に、「瀬戸山三男法務大臣は、法務省関係施設を視察するため八日鹿児島市を訪れ、鹿児島地方検察庁で記者会見、弁護人抜き裁判特例法案にふれて「弁護士の中には賛成者も多い。しかし、賛成者に対しては本人のみならず家族まで脅迫を受ける状況で、弁護士会は暴力の支配に屈していると思われる」と述べ、日本弁護士連合会を強く批判した。」と。その後、大臣の言われた「発言要旨次の通り。」という部分が続くわけで、また、大臣がお読みになった中にも、「日本の弁護士一万一千人の中で、三分の二は特例法に賛成と思っている。しかし、賛成を堂々と表にすると、脅迫が及ぶ。これは暴力の支配に屈しているとしか思われない。」と、こういう個所がありますね。そうすると、結局先ほど私がお尋ねした点を肯定しておるとこれは考えざるを得ないんじゃないですか。少しこう大臣が、これは比較的正確だとおっしゃった南日本新聞の記事でさえも、やはり弁護士会が暴力の支配に屈していると。そういう御批判のように考えざるを得ないでしょう。だからそういうふうにおっしゃったわけでしょう。これはどうでしょうか。大臣御自身の御記憶なさるところでしょうし、御自分の行動ですから、その点をはっきりしていただきたい。
  70. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げましたように、約二十分間の懇談みたいな記者会見でありますから、新聞記者の皆さんがそれをそれぞれに受け取って書くものと思いますが、まとめて短かい文章に書くものと思います。これは通例であると思いますが、こういうことなんです。私から記者会見を求めたわけでもないし、こちらから言うことはありませんから、新聞記者諸君の方から、例の刑事裁判の特例法、あれは今後国会で成立するんでしょうか、成立させるつもりですかと、こういう話。いや、これはこうこういうわけで継続審議になったが、ぜひ成立さしてもらいたいと思っていると、こういうことです。しかし、弁護士会、日弁連等は反対しておりますが、それでも成立するのですかと、こういう話。これからのことでございますから、この必要性については、まだまだこちらで御審議いただいておりませんから細かく論議をされておりませんけれども、その必要性については、私ども考えておることを、常に申し上げておるとおりのことを話しておるわけでございます。  その中に、日本弁護士連合会が反対しておられるが、それでも成立を図るつもりかというくだりにいろいろ出てくるわけでございまして、これは衆議院の法務委員会でもたびたびいろいろお尋ねがあり、お答えをしておるわけでございますけれども、実は私のところにも、直接あるいは手紙等でこの法律の必要性を言ってこられる弁護士さんが相当にあるわけでございます。特に私が、直接見えたときに、そういうことであれば、弁護士会の中で皆さんこの必要性をひとつ主張し、御協力を願いたいと、こう私が申しますと、いやいや、とてもじゃないが、弁護士会の中でそういうことを言える状況でないのだと。どういう状況か、私細かく聞きませんけれども、そうおっしゃる。これは間違いないことでございます。  それから、これは前からあったわけでございますが、たとえばこういう過激派事件等について退席がある、不出頭があります場合に、国選弁護人の依頼をたびたび求めることがある。しかし、それについては、なかなかその種の事件については国選弁護人がつこうとされない、こういう事例がしばしばあるわけでございます。こういうことに関して、ある大学の教授、法律関係の教授だと思いますが、あるいは寺田さんもごらんになっておると思うのですが、日弁連の機関誌である「自由と正義」という雑誌の論文といいますか、所見を書いておられる一節の中に、日本では、こういう過激派事件等について、仮に国選弁護人をつけるというような制度をつくっても、とてもじゃないが、――とてもじゃないがとは書いてありませんが、本人のみならず家族まで脅迫を受けるという事態があるんです。これは、この法案に反対される日弁連の立場で論文を書かれた学者でありますけれども、そういうことを書いていらっしゃる。そういう解説をしておるわけでございます。  それから、私が三分の二云々と言うのも、これは衆議院の法務委員会等でも私が申し上げておるわけでございますが、これは私の推測である。全部反対のように見えておるけれども、全部反対ではないと私は見ておる。といいますのは、いま申し上げましたように、手紙等でも、むしろ日連弁の言うように反対ばかりじゃない、同志もたくさんおるのだという手紙をいただいておるし、また直接見えておる弁護士さんもいらっしゃる。その中に、日時はもう記憶しておりませんが、前にこの問題について全国大会をやられたことがあります。その際に、これも数字や記録を持っての御説明じゃありませんから不確かなところがございますが、一万一千名と言われる日弁連の会員の弁護士さんの集会に二千人余り集まられたと思います。それから四千人余がいわゆる委任状ということで、他は出席も委任状も出ておらない。こういう状況等を勘案いたしますと、内心では、これは私の推測でございますが、三分の二ぐらいはこういう制度がいまの状態では必要だと、かように考えておられるのじゃないか、こういう話をしておるわけでございます。それをまとめると三分の二の賛成だと、こうなるのだと思います。  そういうことでございまして、それをまとめて脅迫を受けておるとか何とかということになったのでしょうけれども、そういう事態の中でこの問題をわれわれ議論をしておるのだと、こういう解説をしたのが新聞記事になっておるわけでございます。
  71. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの法務大臣の御答弁を伺いますと、手紙で言ってくる人もあるし、あるいは直接言ってくる人も相当ある、この法案に賛成だと。そこで、大臣がそれじゃ弁護士会の中でそれを大いに主張してくれ、いやいや、そういう雰囲気ではないと言った。そういう雰囲気ではないということと、それを賛成だなんということを言うと本人や家族まで脅迫を受けるというのとは全然違いますね。また、暴力の支配に屈するというようなことにはならないでしょう。ですから、もしも大臣が賛成をすると脅迫を受けるというようなことをおっしゃったとすると、それは大臣の創作ということになってしまうでしょう、いまの御答弁だと。それからまた、暴力に屈するなんというようなことが出てくる道理がないでしょう、いまの大臣の御答弁では。どこが暴力に屈したのか、また、どんな具体的な脅迫行為があったのか、そういうことの確証を大臣がお持ちでないのにそういうような談話をなさるということは、これは大変な大きな誤りではないでしなうか。また、大変誤解を生ずる談話ではないでしょうか。  私が察するのに、大臣のいまの御答弁では、少しも、賛成をすると脅迫を受けるというようなことを根拠づける何物もないじゃありませんか。また、暴力に屈したなんということがどこから出てくるのでしょうか。それをお尋ねしているのです。もしそれが大臣が、私は断じてそういうことを言ってないと言うならそれでよろしいですよ。しかし、肯定するがごとく肯定せざるがごとく、単に雰囲気でないというようなことでもってそれを弁明するということは納得できないでしょう。はっきりしてください。
  72. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私が最初から、一部の弁護士から弁護士会が暴力の支配を受けておるとか、暴力で脅迫されておるということは言っていないのです。いま申し上げましたように、これをめぐる状況の中で、まだありますけれども、たとえば東京弁護士会では、これはほかの事件でありますが、脅迫を受けて、それで国弁選弁護人には三人に生命保険三千万円ずつですか、つけられて国選弁護人になっておる。これは弁護士さんが脅迫するんじゃなくて、そういう暴力事犯の支援団体が脅迫をしておる事実を私はとらえて申しておるのでありまして、そういうことが暴力に屈する結果になるんじゃないかと、こういうことを申しておるわけでございます。
  73. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 前段においては個々の弁護士会員が脅迫を受けたというようなことを私は言っていないという否定的な御答弁があって、それから後になりますと、ほかの事件であるけれども、東京弁護士会で国選弁護人をつけた、その国選弁護人が生命保険をつけたことが暴力に屈した結果になるんじゃないかという御答弁だったんです。どうしてそれが暴力に屈したことになりますか。支援団体が大変間違った行動をとって国選弁護人を攻撃して、そしてその国選弁護人は生命さえも危険があり、したがって生命保険をつけた。それだけの危険があるのにかかわらずなおかつ国選弁護人を買って出たんですからして、暴力に敢然と抵抗したということは言えても、暴力に屈したなんということになる道理がないじゃありませんか。どうしてそんな不合理な判断をなさるんです。反対でしょう、これは。
  74. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 一人三千万円の生命保険をかけてそういう事件の国選弁護人になるのはなかなかのことであろうと思います。私はそういう弁護士会に敬意は表しておる。しかし、それに至る間になかなか国選弁護人になろうとされない、ここに問題があると、こういうことを申し上げておるのでございます。これはもうだれそれと直接名前を挙げて申し上げることは差し控えますけれども、日弁連の有力な幹部であった弁護士さんです。いやとてもじゃない、私ども脅迫を受けるんですから、家族も迷惑するんですから、なかなかこういう事件の国選弁護人に率先してなるという人はほとんどおりませんと、こういうことを現に私は直接聞いております。一々調べて歩いているわけじゃありませんけれども、そういう雰囲気を申し上げて解説をしておる、新聞記者には説明しておる、こういうことでございます。
  75. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかしそういう事実は、大臣、やはり正確にお調べになって御発言にならないと困るんですよ。いま大臣は、自分の知人の弁護士がなかなか国選弁護人につくというような雰囲気ではないと語ったと、名前は言えないけれどもとおっしゃった。そのことのゆえに何か弁護士会が国選弁護人が全然つかないとか、あるいは暴力に屈したとかいう結論をどうして導き出せるのでしょうか。いまそれじゃ、国選弁護人がつかなくて現実に裁判がストップしている事例がありますか。おっしゃってください、あったら。また、現に生命の危険を冒してさえも東京弁護士会が永山則夫の事件に国選弁護人をつけたという、そういう暴力に抵抗した事跡を大臣はおっしゃっておりながら、どうして暴力に屈したということが言えるんでしょうか。はなはだしいそれは誤解なり、あるいは事実に即しない推測なり、国民を大変誤らすものと言うほかないですね。いかがでしょう。
  76. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま永山事件についてのことは私は非常に敬意を表しておるということを申し上げました。一々調べて歩くことも実際上できませんが、また、そういうことをしようとも思いませんけれども、先ほど私が引用いたしました「自由と正義」に書いておるどこかの法律学者――教授でしょうか、書いておりますのが、こういう問題について、西ドイツのように公設弁護人というのでしょうか、そういう制度をつくったらどうかという意見もあるけれども、わが国の状況では、仮にそういう趣旨の国選弁護人を選任するという何か制度をつくっても、さっき申し上げましたように、それはとても本人あるいは家族まで脅迫を受けるというような状態の中では実効は上がらないだろうと、その学者の人が書いていらっしゃる。私はそれは根拠があってのことだろうと思います。しかも、それは弁護士会の、日弁連のこの問題に対する反対の立場に立っての論文であると私は見ておりますが、そういうことを私は見まして、そういう状況になっておるんだなという推測をしておる、かようなことでございます。
  77. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣、ちょっとそのビラをごらんください。これはいま大臣がおっしゃった他の事件という、永山則夫事件ですね、連続ピストル殺人事件です。これが、いま大臣のおっしゃったように、三人の東京弁護士会の会員が生命保険をつけてまで国選弁護を買って出たと、そのことをあなたのおっしゃる支援団体が非常に攻撃をして、これを東京弁護士会の犬と称して、「九月六日、地裁刑事五部簑原と、これに加担する東弁に対する強固な抗議闘争に起とう」というようなビラを流しておるわけです。このように、あなたの、いわゆる暴力的な支援団体が犬と称して攻撃をして、生命の危険さえも感じせしめるような行動をとっておるわけです。それに対して、弁護士会が生命保険をつけてまで国選弁護人を買って出ているということ、これはまさに大臣のおっしゃる脅迫に屈していると、暴力に屈しているというようなことと正反対の事情ではないでしょうか。どう思われます。これをしもあなたは暴力に屈している行動だと思われるでしょうか。
  78. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) たびたび申し上げますように、この東京弁護士会のこのときの行為については敬意を表するということを申し上げておるわけでございます。細かいことは刑事局長からでも申し上げさせますが、従来、なかなか国選弁護人が、いわゆる過激派事件についてはつかれなかった。それには、背景にいま申し上げましたような事態があって、今回ようやく生命保険までつけてついてもらうと、こういう事態になっていることは事実あるわけでございますから、さようなことを私は申し上げておるわけでございません。
  79. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、結論として大臣は、いまの日本弁護士連合会が暴力に屈していると思っておられますか、屈してはいないと思っておられますか、どちらですか。
  80. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) これも最初に申し上げましたように、弁護士会が暴力に屈しているとは私は申しておらないのです。こういう事態を放置しておくと暴力に屈したような結果になってしまうじゃないかと、かような感想を申し述べておるわけでございます。
  81. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうといたしますと、暴力に屈していないという結論をあなたはいまおっしゃったわけですが、そうすると、どうしてこの弁護士会が暴力の支配に属していると思われるというような新聞記事が生まれるんでしょうか。しかも、これはいま大臣が比較的正確だとおっしゃった南日本新聞ですよ。しかも東京新聞、八月九日の朝刊でございますが、「暴力に屈した日弁連 弁護人抜き法案で法相が非難」。いま大臣は弁護士会が暴力に屈したとは思っていないとおっしゃるのに、大臣の談話はこういう印象を新聞記者に与えたわけですよ。そうといたしますと、これはよほど新聞記者会見で大臣はやはり言葉を慎重に用いていただかないと困るわけですよ。一国の法務大臣が、弁護士会が暴力に屈しておるかのごとき印象を与える談話を述べるということは、決して軽く見るわけにはいきません。これは、談話に当たっては特に慎重に御考慮願わなければいけません、こういうような印象を与えるような軽率な談話といいますか、これはもう絶対なさらないでいただきたい。いかがですか。
  82. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) もちろん記者会見等においては慎重な発言をしなければならない、私も常にさように考えております。しかし、今日の新聞にいろいろこう、新聞によっていろいろ違ってきますが、これについて私が全責任を持つというわけにはまいらない、かように考えておるわけでございます。
  83. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、あなたが真意をお述べになり、信念を吐露なさることは、これはもうあなたの自由で私どもがとやかく干渉すべきことではないんです。しかし、いま結論として、弁護士会が暴力に屈してはいないというあなたは御見解を表明なさった。そのあなたの真意とまるで逆なことがあなたの談話で載る、新聞記者にそういう印象を与えるということは、これはよほどお慎みいただかないと困るわけです。だから申し上げておる。  しかもあなたは、三分の二が賛成してもらっておるのじゃないかと思う、これは私の推測だとおっしゃいました。これは衆議院の法務委員会の五十三年八月十一日の稲葉誠一議員の質問に対してもあなたはそういうような御答弁をなさっていらっしゃる。そしていまもその推測の根拠について、日弁連が弁護人抜き法案反対の決議をした総会に二千数百人が集まったと思う、それに四千数百人がいわゆる委任状である、そういうことから三分の二が賛成しているんじゃないかということをおっしゃっておるんだけれども、稲葉氏はこの当時、大臣の御答弁を聞きまして、「おかしな算数というか、何だか変な計算」と言っておられますね。これは会議録に記載されておる。私はこの大臣のいまの国会の御答弁を、最近裁判官をやめられた、これは東京高等裁判所の部長判事をしてやめた人物ですけれども、読んで聞かしたんですよ。それはむちゃじゃなというて一言言いましたよ。こんなどうして非常識な判断ができるんでしょうか。  これは事実でも余り正確じゃありませんけれども、その事実の正確さをまず確かめておきますと、参会者はこの当時千二百二十九人だったんですよ。委任状は四千七百二名です。単位会が四十六名、これは個人参加であると同時に、会もやはり日弁連の会員になっておりますから、五十二会の中で四十六会が代表を出してきた。参会者は千二百二十九人、委任状は四千七百二名、合計五千九百七十七名です。これはいままでの日弁連の総会では最高の数字なんですね。私も単位会の会長をし、日弁連の理事をしたことがありますから、総会に出たことがあります。四十六年のときなどは、御承知の宮本判事補の再任拒否であるとか、阪口修習生の不合格などをめぐって大変日弁連が沸騰しまして、あのときも総会は大変な盛況だったわけです。しかし、それを上回るこれは盛況だったんです。何か大臣のおっしゃるように参加者が少ないなんということは、日弁連の歴史を考えればとうてい出てこない。  それからまた委任状がどうして真意でないということが言えますか。委任状で参加者に全権を任した場合に、参加者が反対をすれば、法律的な見解で少しもそれに賛成と見るのにちゅうちょするところはないはずですよ。それを、いかにも参加者が少ないからあと三分の二が賛成だと思うというような推測がどうして生まれるんでしょう。不参加者あるいは委任状を書かない者もそれは若干ありますね。半数近くあります。しかし、それが全部賛成だと大臣が断定をなさる根拠は何もないじゃありませんか。その不参加者、委任状を書かない者も全部賛成と見て、参加者が少ないから三分の二は賛成だというような非科学的な断定がどうして生まれるんでしょう。これは大臣御自身のお考え、推測というものはいまだに合理的だと思われますか。  また、大臣は一体日弁連の総会にお出になったことがあるのでしょうか。いかがです。
  84. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 日弁連の総会に出たことはありません。
  85. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ありますですか。
  86. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ありません。  たびたび申し上げておりますように、これはまさに推測でありまして、細かく一々お会いしたりあるいは回答を求めたりしておるわけじゃありませんから、まさに推測であってこれは断定しておるわけじゃありませんから、それは御理解をいただきたいと思います。といいますのは、私がたまに地方に出ましたときに地方の弁護士会長さんが、これもどこそこということは控えますが、お会いしますと、いや、日弁連の会はもう私どもによくわからないんですと、こういうお話をこの問題についてもおっしゃる方もいらっしゃるような状況で、どこまでが真にこの問題を根本から研究してやっておられるのかどうかということを、やや私は率直に言って疑念を持っておるところがあるわけでございます。そういうことから、まあそんなことかなという、本当のこれは私個人の推測でありますから、これは三分の二は賛成であると断定して物を言っておるわけじゃございません。もしそれが差しさわりがあるということになれば、単なる推測としてお聞き取りを願いたいと思います。
  87. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、推測で大臣が天下に新聞談話をなさることが困るわけですよ。法務大臣、あなた個人じゃないんですから、一国の司法行政をつかさどる大宮人なんですからね。その方が推測で根拠のないことをおっしゃり、それが満天下に流されるということになると迷惑するのは日弁連ですよ。また、その推測が合理的ならいいです。合理的でないんです、あなたの推測は。根拠がないんです。われわれは推測をします、公の問題で。それは許されます。しかし、その推測はあくまでも何らかの事実を前提とする合理的なものでないといけません。あなたのは合理的でないんです。そうでしょう。御説明を伺っただけでも、日弁連総会の参加者が何名であるか、委任状が何名である、だから三分の二は反対だと思って推測する。合理的でないんです。不合理な推測を満天下に流されて、いかにも日弁連の反対が少数の支配かのごとく、そういう風聞を流されること自身が大変問題なんです。また、そういう根拠のない不合理な推測で司法行政を運営なさることが問題なんです。私はそれを恐れるわけです。そうでしょう。一国の司法行政を担当なさる方は、あくまでも事実に即して合理的な判断をしていただかなければ困るんです。事実に即せずに不合理な推測をして、それで司法行政を運営したりあるいは満天下に情報を流されたりしては困るんです。それで私は申し上げているんです。いかがですか。
  88. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) もちろん司法行政は単なる推測でやるべきものではない。またやってはならないという心がけをいたしております。しかし、この問題で私はどうも――こういうことを言うと失礼になりますけれども、日弁連の一万一千と言われておる弁護士さんがみんなその気でああいう何といいますか文書を流したりして、本気でそういう考えを持っておられる人がそんなに多いのかということを実は疑っております。地方へ行きますと、この種の事犯というものは地方では何のことか全然わからない。いわゆる過激派の、言われておりますような事態がある裁判所というのはそうありませんから、地方の弁護士さんはそういうことがあるのかないのかもおわかりにならぬ方がこれは大分多いであろうと、私は、これも推測でございますが思います。それに、率直に申し上げて、憲法違反であるとか人権侵害であるとか、暗黒裁判になるからこれは反対せいと言われると、それは私でもそうなれば反対いたしますが、その程度のことでこの問題を深刻に考えていらっしゃるという方は、そうおっしゃるように、全部の弁護士さんがそうであるとは私はどうしても正直に言って考えられない、このことを申し上げておるのであって、推測がきわめて非科学的であるということをおっしゃればそのとおりでありますということを申し上げておきます。
  89. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 じゃ、まあ非科学的ということをお認めになったのですから、余り立ち入って申し上げることもいかがと思いますけれどもね。大臣はやはり言動を慎重にしていただきたいというのが私どもの願いです。そうでしょう。もし仮に逆の立場になったことを考えていただきたい。法務大臣があるいは法務省が、暴力に屈しているとか暴力団に屈しているとかなど言われたらどうしますか、それは。あなた方はそれはまなじりを決してお怒りになるでしょう。官と民との間にその差がないのですよ。われわれもやはり日弁連、弁護士の一員として日弁連として、暴力などには屈しないという誇りを日弁連も持っている。それをまるで反対のことを言われればこれは神経質にならざるを得ないのであって、それを問題にしないことの方がおかしいのですよ。名誉を重んずる国民としてはあたりまえのことを私は申し上げているのです。  なお、私はやはり日弁連で現にこの法案に賛成の立場をとっている人を知っておりますよ。これもやはり裁判官出身で現に大学教授をしておる人です。それと大臣の談話を話しました。おれも賛成しているけれども、脅迫なんか全く受けやせぬよと、こともなげに語っています。だから、大臣が一体どういう人間をお近づけになるのか、大臣のごますりばかりお近づけになって、それが大臣の推測なるものを形づくるのではないかということを恐れるわけです。できるだけたくさんの人々に会っていただきたいと思います。  なお大臣、日本弁護士連合会が、これは五十三年九月十一日にこの問題について大臣に公開質問状を発しましたけれども、これはお受け取りになりましたですか。
  90. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 受け取ったというのか、そういう文書が来たということは聞いております。
  91. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 やはりいま申し上げたように、立場を逆にしてお考えいただきたいと思うのです。もし、仮に大臣がそういうような非難を受けた、たとえば法務省が暴力に屈しているというような非難を受けたとしますと、これは大臣もやはり相手方に対してその不当をなじられると思うのです。そういう意味で日弁連は大臣に質問をし、お答えを待っておるわけです。ですから、誠意をもってやはりそれに対してはお答えをいただきたいと思います。いかがでしょう。
  92. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この問題では、日時はもうはっきり記憶しておりませんが、その間もなくのこと、衆議院の法務委員会で、先ほどお話しの稲葉委員からこの問題について質問がありました。その日に日弁連の会長、副会長さんだったと思いますが国会に見えたのです。その際に、きょう稲葉委員に事細かにそのときの状況を申し上げておりますが、そのとおりでありますから御理解を願いたいと、こう言っておいた次第でありまして、重ねて申し上げますが、弁護士会の一部の人が日弁連を脅迫しておる、弁護士会を脅迫しておる、そういうことを考えてもおりませんし、そういうことを申し上げておるわけではありませんということもそのとき申し上げておるわけでございますが、その後にいまおっしゃったような文書が来ておるそうでありますから、やはりそういうことをお答えしなきゃならないと、かように考えております。
  93. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その際に、この五十三年八月十一日の衆議院法務委員会の会議録、これも十分私どもは参考にして、そしてそれがきわめて不合理だと、いま私がお尋ねしたのは、その会議録を見てそしてお尋ねをしたわけです。この中の不合理な推測なるものをすべてお尋ねをしたわけですので、そういう不合理なものをそのまま答弁内容とせられるのでなくして、誠意を尽くして御答弁になって、ぎくしゃくした不用な摩擦というものを一刻も早く解消なされるように御努力をいただきたいと、こう思うんです。いかがでしょう。
  94. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私は、いろんな場で、日弁連の会長ともいろんな機会にお目にかかっておりますが、まあこの問題、賛成反対は別ですけれども、それほどぎくしゃくしておると思いませんから、さようにいたしたいと思います。
  95. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうもこだわっておられますけれどもね。まあ大臣が、余りこだわらずに、自説をどこまでも固持していくというこだわりのある態度でなくして、フランクに誤りを誤りと認めて、私は率直に間違ったところは取り消してこの話し合いに応ぜられるように強く要望しておきます。  最高裁判所にちょっとお尋ねをしたいんですがね。まだ法務省にもありますけれども、時間の関係最高裁判所の方に移りたいと思うんです、後、時間があればまた法務省に戻りますが。  最近、大須事件の判決が確定をしましたね。これがまあ昭和二十七年の事件で、実に確定まで二十六年間もかかったわけです。最高裁判所としましては、この裁判の遅延の原因がどこにあると思っておられますか。
  96. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) ただいま御指摘の大須事件につきましては、委員おっしゃいましたとおりに、この九月四日に上告棄却の決定があったわけでございますが、それにつきましては、九月七日以後何回かに分けて異議の申し立てがありまして、現在第二小法廷に係属中というところであります。  そこで、その決定の中で、二十六年という確かに長い期間、これについてこういうふうな指摘をしておられるわけであります。それは、今回の上告棄却の決定によりますと、長期化したことの原因と理由といたしまして、第一に、本件の主たる訴因が、規模の大きい騒擾という犯罪であって、その内容がもう複雑困難な事案である、取り調べを要する証拠も膨大で、被告人の数が百五十名もの多数であるということが一つ指摘されております。それから、それに加えて、被告人らにおいて執拗ないわゆる法廷闘争を展開したこともつけ加えておられます。この法廷闘争の内容としては、決定に摘示された内容としまして、もともと忌避の理由となし得ない理由による忌避の申し立てがあったというふうなこと、繰り返し執拗な意見陳述、もしくは釈明要求があったというふうなこと、あるいは詳細をきわめた証人尋問があったというふうなことが挙げてございます。  で、私どもの方でいま、決定で御指摘になっておりますような事実について、まあまだ粗い調査でございますけれども、一応把握しているところを申し上げますと、たとえば、理由のない忌避の申し立てというふうな問題につきましては、たとえば三十九年の四月三日に、別件の松川関連事件の有罪判決があったらしいんでございますが、それに抗議するというふうなことで忌避の申し立てがされる、これで約三カ月中断したというふうなことがございます。その次は十月に、検察官調書の採用不適当ということはけしからぬということで忌避の申し立てがあり、これで約三カ月停滞したと。こういったことが五回ほどございまして、合計で約一年二カ月の中断が起こっております。恐らくこの事実に基づいた御判断と思います。  それから、その他のものとしましては、たとえば事件と関連のない事項についてのいろいろな発言、抗議があったということがございます。それは、庁舎の警備に対する抗議、それから裁判官、検察官に対する自己紹介をしろということ、捜査機関に対する非難攻撃と、いろいろ分かれるわけでありますが、その中の一例をとってみますと、警察官による庁舎警備がいかぬというので、警察官がいると心理的に圧迫を受けるから起訴状朗読に入るには不適当であるというふうな発言がかなり執拗に行われる。それからあるいは、日中貿易は日本の経済政策上絶対必要なものであって、これを促進するための平和的集合を官憲がピストルとこん棒をもって弾圧したために本件が発生したのであるというふうな発言が行われる。それからあるいは、被告たちは帝国主義者の陰謀によって再軍備をして大虐殺を強行しようとしている元凶に対し断固闘う日本民族の立場を代表しており、検察官は人類の平和、独立を侵し、日本がかつて歩いた大虐殺を再び犯そうとする帝国主義者の側に立っていると、そういうかなり長時間の発言があった。あるいは、保釈決定に対する検察官が抗告をしたわけでございますが、検察官に対して、法廷で抗告申し立ての疎明資料を明らかにすることを要求する、検察官がそれに応じない限りは裁判の進行をあくまでも拒否するというふうな発言が繰り返し行われておる。あるいは、警察において拷問を受けたというふうな主張がありまして、それで、公判の当初から、手続の段階のいかんを問わず、即刻取り調べ警官等の取り調べを行うべきであるというふうな発言が繰り返して行われる。まあ、というふうなことがいろいろと主張されたわけであります。  それから、保釈要求がかなり行われまして、そのハンガーストライキが行われる、これで約六カ月を中断したというふうなことがございます。  それから統一公判――百五十名の公判でございますが、統一公判の要求がいろいろ繰り返し行われて、それを入れられないということで三カ月ぐらい中断したということがございます。  それから、公判手続――途中で一度裁判長交代したことがございまして、竹田裁判長が亡くなられて、井上裁判長に交代ということがあったわけでございますが、そのときに、統一公判、それから開廷数の減少ということを繰り返し繰り返し主張されまして、更新手続に約一年間を要したということがございます。  それから、この百五十人の中から、裁判の早期終結を希望する被告人があったわけでございますが、この被告人が三十四年の七月から統一組から分離して審理されるということになったわけであります。で、この分離して審理するということがこれはいかぬということで被告人の方から非難攻撃があって、八カ月間審理が進展しなかった。  こんなふうなことがあったようでありまして、これを指して法廷闘争の遅延云々と言えるんではないかというふうに指摘しておられるわけであります。  以上が九月四日の上告棄却の決定に即して私たちにわかっている程度の事実を申し上げたわけでございますが、事はまだ第二小法廷に異議の申し立てという形ではありますけれども係属しております。それで、具体的事案についての裁判所の措置、もしくは当事者の行動についてあれこれここで評価するのは必ずしも適当だとは存じませんので、ごく一般的にこういうこの種の事件で、これは二十六年ですが、こんな長い時間がかかるということ、これはだれが考えても妥当だというふうには考えられないわけでありまして、その責任といいますか、問題はどこにあるんだろうかということはわれわれなりに考えておるわけでございます。そういう一般的な問題としての答弁でよろしければここで御説明申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
  97. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 はい。
  98. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 大体訴訟は、御承知のとおりに、まず検察官が訴えを提起をします。この検察官の訴えの提起ということによってその訴訟の規模、それから言うなれば、比喩的に申し上げれば土俵が決まるわけでございまして、その中で被告人と検察官とが当事者として対立して取り組むわけであります。一つ相撲にたとえれば……
  99. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 簡単でいいです、時間の関係がありますから。
  100. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) はい。  ところが、その両方が十分な準備ができているということがないと必ずしもその訴訟は速やかにいかないということがございます。両方が本当にその訴訟についての争点を的確につかんでそれに対する準備を十分にしてやるということ、これが第一。
  101. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういう一般論はよくわかっていますから結構です。
  102. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) はい。  それからその次は、それを指揮していく裁判所の訴訟指揮ということ、これがありまして、裁判所が訴訟指揮を適宜務めていかなければいけないわけです。その面において裁判所の責任もある。ですから三者、検察官、それから被告人それからこれに対する弁護人、それから裁判所、この三者がそれぞれの分野で責任があるわけであります。  裁判所の責任としましては、ですから訴訟指揮ということがございますので、それで期日指定というふうなことが刑訴法二百七十三条でできるわけでございますけれども、それで、御承知のとおりに大須事件について被告人となっていた者たちも加わっている被告事件で高田事件というのがございまして、これを、大須事件と一緒に審理をしてほしい、とりあえず大須事件の審理が済むのを待ってほしいというふうな希望があってそれを入れたということはございますが、ともかく高田事件について審理をしないまま長い期間裁判所が期日を指定しないで置いておった、これはやっぱり裁判所の責任である。したがって、これは最高裁判所のやっぱり御判断で免訴ということで事件が終結したということであります。ですから、訴訟指揮をどういうふうにするか、これは裁判所の責任でございます。それを、その裁判所の訴訟指揮については、しかし当事者の方は服従していただかなくちゃいかぬ、したがって協力していただかなくちゃいかぬ、そういう関係に立っているというふうに考えておるわけでございます。  以上、ざっと申し上げました。
  103. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまあなたがおっしゃった決定というのは昭和五〇年(あ)第七八七号の決定だと思いますが、確かにいまあなたがおっしゃったような、それほど詳細ではないけれども説明をしておるわけです。主たる訴因が騒擾罪にあった、その内容が複雑困難な事案で、取り調べを要する証拠も膨大で、被告人が多数であったということを主なるものにしておりますね。それから後、あなたがおっしゃるような被告人らの執拗ないわゆる法廷闘争の展開も審理長期化の一因をなしていると認められる、こういうことを言っておりますね。それから、同じく五〇年(あ)第七八八号事件の決定では、被告人の法廷闘争に対しては触れずに、「事案の複雑、困難、証拠の厖大等本件騒擾事件の性質、内容にあること」ということを言っておるわけです。まあ、何にしても、事案によっては裁判が長期化するということを免れないということを認めたことには間違いないわけです。  さて、その事案が長期化した場合に、後でそれが裁判官の側に主たる原因があるか、あるいは検察官の側にあるか、被告人の側にあるかというようなことを判定することはきわめて困難だけれども、あなたのおっしゃった高田事件などは、裁判所がこれはやっぱり裁判所のミスだということを認めておるわけですね。皆が承知しておる。思い切った判決をしておるわけですが、ああいう場合には、免訴の結論が出たのでそれでもう償われるというふうに考えるべきか、やはりそれぞれに、裁判官の責任もあると考えると、裁判官の責任はどうしたらいいのか、どういうふうにとったらいいのかということが考えられるけれども、それは考えたことはないですか。
  104. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) その裁判官のなした訴訟指揮というもの、これは裁判でございますから、しかし訴訟指揮そのものについてはこれはどうこうということはございませんけれども、しかし、そのやり方が裁判官としてあるまじきことであるというふうな判断が下されるような場合があれば、それは当然裁判所の司法行政による監督の及ぶ場合もあり得るだろうというふうには考えます。しかし、いままでの事案がそういう事例に当たる場合であるというふうには考えておりません。
  105. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは高田事件もですか。
  106. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) この問題は、私自身が人事の直接の責任でございませんのであれですけれども、私の刑事局としての立場から考えますと、その当時の状況から見まして、被告人の要望で、これはひとつ自分が大須事件の方の被告人になっておるから、そっちの審理が済むまで待ってもらいたいということで待っておったということでございますので、それをとがめてすぐどうこうということまではという気持ちを持っております。
  107. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私もあえて裁判官を懲戒せよというようなことを求めているわけでないから。ただ、事案によっては四半世紀以上にも及ぶ裁判の遅延ということは免れないんだという結論が最高裁によっても是認されたということは非常に意味があると、そういう考えですね。それでお尋ねをしたわけです。  さて、衆議院の定数不均衡訴訟ですが、これは御承知のように東京高裁で相異なる二つの結論を持つ判決の言い渡しがあったわけですね。これは十一日と十三日との二日にわたって全く相異なる判決が生まれた。高裁判決というのは、御承知のようにこれは上告理由、その基準になりますね。それが、それに反する判決を下級審でした場合にはそれが上告理由になる。そういう重みを持っているわけでしょう。そういう重みを持っている高等裁判所の判決というものが相異なる結論を出すということについては、最高裁としてはどういうふうに考えていらっしゃるか。私には私なりの考えがあるけれども、まず最高裁のお考えをいただきたい。これは事務総長。
  108. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 議員定数の問題に関しましては、法律上きわめて微妙な問題があろうかと存じます。したがいまして、さきの大法廷判決においても、多数意見、少数意見というふうに分かれたところでございまして、これらの考え方が定着するまでにはある程度、若干時間を要するのではなかろうかというふうに考えております。したがいまして、それまでに至る間においてはそれぞれ各裁判単位がそれぞれの自主的な判断で行っておられるので、若干の意見の相違というようなものが出てくることはやむを得ないことではなかろうかというふうに思っております。
  109. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっとひっかかるものがありますね、総長の御答弁に。つまり、議員定数配分規定違憲大法廷判決という五十一年四月十四日の判決、これも最高裁で意見が分かれたという、確かに分かれているんです。分かれているけれども、本当の意味判決に反対意見というのは天野武一裁判官だけなんですよね。あとは、いわゆる少数意見でも、むしろ積極的に当該の違憲の選挙、その個々の選挙を無効にしようというような積極的な意見を持つ少数意見があったくらいで、大多数の裁判官はやはり一対五というような選挙権の不平等は許さるべきでない、それは憲法十四条一項に反するんだという点では一致しているわけですね。だから、それが定着するまではとおっしゃるけれども、定着するまではいろいろな意見があっても差し支えないという、まあちょっとひっかかるんですね。やはり下級審としては、そういう憲法判断を重く見て、そしてこの判決をすべきである。ことにこの判決は、各選挙区の選挙人数または人口数と配分議員定数との比率の平等が最も重要かつ根本的な基準とされるべきは当然である。つまり、議員の配分を決定する基準というのは、その選挙権の平等、比率の平等が最も重要なファクターとなるということを言っておるわけですね。それが今回は二つに分かれたのですからして、各人の意見によって分かれるのはしばらくはやむを得ないという総長の答弁はちょっとひっかかるものがありますね、いかがです。
  110. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 確かにそういうようなことが一致していくというようなことが望ましいことであろうと存じます。しかしながら、そこが裁判でございまして、三審制度の意味ということもそういうところにあろうかと存じます。したがいまして、順次これが統一されていくような傾向にあるんではなかろうかというふうに考えます。
  111. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それからもう一つは、昨日の判決は、私どもとしましては非常に先ほど最高裁法廷判決趣旨にのっとった合理的な判決だと思うのですけれども、民事第九部の安藤判決ですね。これは私どもとして、なぜ――判決の是非をこの法廷で論議するべき筋合いではないと思うけれども、あえてこれを持ち出さざるを得なかったことは、都市の人口集中は社会政策あるいは経済政策的に見て――社会政策とか経済政策というような言葉の使い方も非常になまはんかな使い方だと思うけれども、それはひとまずおくとして――望ましいものではなく、これをできるだけ避けるために政治的影響力を行使し得ることが望ましい、過疎地域の経済的、文化的な魅力を増大させるためには、大きな政治的影響力が必要だと、そのためには投票価値が大きくなって初めてそれが可能となるんだというような、これは国会が考えるべき政策的な行為、判断、それを何か裁判所が先取りをしちゃって、そして都会に余り代議士を出させるのはよくないよ、むしろ過疎地域の方をふやして過疎地域を繁栄させなければだめだよというような、政策的な判断を大変重く見て判決の基準にしておられる。しかも、それが、違憲かどうかの判断の大きなエレメントにしているわけでしょう。裁判官としてこれはどうなんだろうかというふうな考えを持たざるを得ない。その判例批評ということは、この場では適当ではないけれども、余りにも裁判所が政策の問題に踏み入って政策論を憲法論の基準にしていいものか、本当にこれはおかしいという感じがします。その点はどういうふうに考えられますか。
  112. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) きょうはこの行政事件の関係、所管をしております行政局長が参っておりませんが、便宜私からかわってお答えさしていただきたいと存じます。  いま、寺田委員御指摘の選挙無効訴訟の関係。現在、東京高等裁判所で二つの違った判決が出たわけでございますが、新聞報道等によりましても上告は予想される事件でございまして、いま御指摘の安藤判決の方の判決の中身が政治論を含んでいるかどうか、その政治論がいいのか悪いのかという点をも含めまして、今後上告審の判断を仰ぐということに相なるわけでございまして、ここでそれについてのコメントをすることはひとつ御勘弁願いたいと思います。
  113. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはよろしい。  ただ、私どもちょっとこの判決で気になるのは、千葉四区と東京七区と全国平均との人口比の偏差というものを非常に重く見ている。それを算定するのに、議員一人当たりの全国平均の人口を二十万四千八百二十四人が正しいのに、千葉四区と東京七区の偏差値を算出する分母にいまの数字を間違えて、二十万というのを三十万にして計算しているのですね。これはきょうの新聞によると訂正をしたということであるからして、裁判所みずから過ちを認めたことは事実なんです。事実審としては、こんな大切なことを勘違いするというのはちょっとわれわれの経験では粗漏であるという批判を免れないと思うのですね。だから、これはやはり判決というのは裁判官の生命ですからね。天下に裁判官が意思表示が許されるのは判決だけなんです。そのわずかに許されたその意思表示の唯一の機会にこういう誤りをするということは決して好もしいことじゃない。もうちょっとやっぱり真剣に誤りなきを期する態度というものを持ってもらわにゃ困る。これは司法行政の分野だと思うからして、事務総長にこの事件についてお考えを伺いたい。
  114. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) そのことについて……
  115. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 事務総長に答弁を求めているんです。
  116. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 裁判に対する国民の信頼を思いますときに、裁判の内容について誤りのなきを期するということは、これは当然のことでございまして、われわれといたしましては、その使命の重さに自粛自戒いたしまして、今後十分判決内容の適正を期するように各人いままで努力いたしておると存じますが、これからも努力してまいりたい。また事務総局としても、そういうようにできるようにいろいろ検討の場を設ける――協議会等の場で努力してまいりたいというふうに考えております。
  117. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大分時間もないようですから、最高裁長官の訓示についてお尋ねをしたいんですが、私は、前回法務委員会で岡原長官の談話――これは憲法記念日の前日における談話についていろいろとお尋ねをしましたけれども、どうもその後最高裁長官の訓示というのは納得のいかないものが多いので、またどうもお尋ねせざるを得ないのです。  それは、昭和五十三年六月八日、九日開催の高等裁判所長官、地方裁判所長及び家庭裁判所長会同における訓示とあるんですね。これは裁判所時報に出ておりますので拝見をしたわけですが、第二節ですか、「民主主義の下においては、国家の権能は、国民の信託に基づいて行使されるものであり、司法権もその例外ではありません。この点からすれば、裁判が、国民の総意と懸け離れることなく、その信頼を得られるように運営されたとき、初めて、我々は、使命を十分に果たしたことになるのであります」、こういう一節がありますね。私ども迷うのは、一体国民の総意とは何なのかと。いま現実に起きております裁判事件を見ますと、国民の価値観が非常に多様である。したがって、さまざまな問題に対する評価あるいは賛否というのがそういう価値観から分かれます。また政治的見解からも対立が生ずる。それが憲法解釈の差異を生んだりいたします。そういうことを原因として多くの訴訟事件が起き、また刑事事件も起きているわけです。先ほど全逓ストライキについてお尋ねをしたわけですけれども、労働事件などは特にそういうような価値観の多様性や政治的見解の対立を原因としておるわけですが、そういう世間の耳目を集めるような事件が多いいまこの現在に、国民の総意なるものを裁判官が探るなんていうことが一体できるんだろうか。一体総意というのは何で確認するのか。それはどういうふうに長官が考えて、また、これを何か総務局が起案したそうであるけれども、総務局長は何を総意と考えたのか、何によって総意を確認せんとしたのか、ちょっとお尋ねをいたしたいのです。
  118. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) いわゆる長官・所長会同におきます最高裁長官の訓示は、いま寺田委員御指摘のように、まずその原案の原案とでも申すべきものを総務局でつくりまして、事務総局で検討をいたしました上、さらに裁判官会議の慎重な御検討を得て決まる、こういう形になっております。でき上がりました訓示そのものは、本来それ自体で御判断いただくのが最も適当であろうかと存じますが、いまのせっかくのお尋ねでございますから、いま申しました原案の原案とでもいうべきものをつくりました者としての一つのコメントということでお聞き取りいただきたいと思います。  国民の総意というものは何かということは、これは憲法学者もいろいろ議論しておるところでございます。現に日本国憲法の中にも国民の総意という言葉が一、二カ所出てくるところもございます。これを一体どういうふうに言ったらいいか、それをどうやって発見したらいいかということを、ここでこうあるべきだということをなかなか申し上げることができるわけのものではございません。しかし、まあ、この原案の原案をつくりました者の感想ということで申し上げますれば、そんなにむずかしいことを考えているわけではございませんで、やはり裁判というものが、国政全般と同様に国民の信託に基づいてやるべきものでございますから、そういう意味では、裁判をやりますに当たっては、その結論が一般民衆の共感を呼ぶような、つまり共通の意識とかけ離れたものであってはならない。もっと砕いて申しましたら、言い方によっては国民の常識とでも言えるのかもしれませんが、まあまあそういう一般民衆の共感を呼ぶことができるような、なるほどとみんなが思うような、そういう判断をすべきではないか。そういう意味合いにおいて私どもとしては書いたもの、こういうふうに御理解をいただきたいと存じます。
  119. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 われわれはやはり裁判官時代に、この判決が世間の共感を呼ぶだろうかというようなことを考えたことはなかったね。裁判官が一体マスコミで珍重されるだろうか、世間の共感を得るだろうかなんということを考えてはもうおしまいなんですね。ときには政府と真っ向から対立することもあるし、あるいは国民から誤解を受けることもある。これはやむを得ないでしょう。  憲法の七十六条が、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と言ったのはそこを言ったわけなんでね。国民の総意がどうだろうか、世間の共感を得られるだろうかなんということを考えるような裁判官は、決して好もしい裁判官ではないです。よしんばその時代において共感を得られないことがあるかもしれない。しかし、憲法の国民の総意というようなことは、これはわが国が平和国家として生きるというようなことはそれは総意として肯定できるでしょう。あるいは基本的人権を尊重しなければいけないとか、民主主義であるとかいうようなことはそれは総意と言っていいだろうけれども、いまそんなことで解決できる事件なんというものはないです。これは価値観の多様性で両方の意見がもう深刻に対立するような事件ばかりなんですね、しかも難事件というのは。それを、どっちに軍配を上げたら国民の総意に沿うだろうか、世間の信頼を得られるだろうか、常識が肯定されるだろうか、そういうような配慮というものは決して好もしいことではない。  とかくいまの岡原長官の、前に私も質問をしたけれども、常識を後追いするようになっちゃ困るということを私が言ったら、事務総長は、決して常識を後追するのではありませんということを答弁されたことがあるんですね。そうでしょう。スト権なんというのは、もうストライキ犯罪とする、違法とする、それを労働者が闘って、罰せられて、そういうことが先行して次第に合法化されていくわけでね。それは歴史が示している。また労働法なんというのは皆そうです。御承知のように、労働時間の制限なんというのでも、昔の自由主義経済の論者から言うと大変なこれは革命的なことだった。しかし、次第に労働時間を、十五時間なんという労働時間は許されるべきじゃないと十時間労働にし、いまは八時間労働になっている。それは世間の常識に反しても、あるいは多数の時代の支配意識に反しても、闘って次第にそれが認められるようになってきたので、そういう歴史的に学ぶところがなければ困るので、何でも世間の常識を追うんだとか、総意を見るんだとか、それじゃ良心なんていうものが生きていないじゃないですか。どうも困るんです、そういうことでは。  それから「具体的な事件に対する裁判所の判断が、同種の紛争の帰すうや国の施策の立案にも影響を及ぼす場合があることを忘れてはなりません」、こういうことを言っているけれども、いまのあれでしょう、二つの判決があって、それで裁判官が、おまえの方はどういう裁判をするんだなんということをお互いに聞き合ったりしたらこれはもう堕落もはなはだしいことなんで、同種の紛争にどういう影響を与えようが、自分がその良心に従って法律判断をして正しいと思った道に邁進しないと裁判官の職責は務まらないんですよ。それを、同種の紛争にどういう影響を与えるか、また政府の施策に影響を及ぼすのではないかなんということを考える裁判官があっては困るんです。だから、あなた方は、何か行政当局が裁判官の心構えを説くと間違っちゃうんですね。大変困るんです。どう思われますか。
  120. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 寺田委員が御指摘になりました後の方の訓示の部分でございますが、「事象の一面にとらわれることなく、多面的、総合的に考察する態度が」必要ということ、それから、「具体的事件に対する裁判所の判断が、同種の紛争の帰すうや国の施策の立案にも影響を及ぼす場合があることを忘れてはなりません」、この部分でございますが、この訓示の部分も決して特定の事件を念頭に置いて、その裁判のあり方を支持するというような意味合いを持っていないことはもう当然でございまして、現に東京高裁でも二つの相反するそういう判決が出ておるわけでございます。いま、一般論といたしまして、価値観が多様化いたしまして利害の対立も著しくなっております現在の社会におきましては、非常に裁判がむずかしいという、そういう裁判のむずかしさを指摘いたしまして、その中で裁判をするについての心構えを一般的、抽象的に述べたものというふうに私は考えておる次第でございます。その心構えといたしまして、ここにありますような多面的、総合的な考察を強調いたしておりますのは、もともと公正かつ客観的に物事を判断すべき裁判官の認識、態度としてはむしろ当然のことを述べたにすぎないというふうに考えておるわけでございます。  なお、先ほども常識ということもちょっと申し上げましたが、これは決して政府に迎合するとか、あるいはマスコミに迎合するとか、そういうことを言っておるわけではございませんで、むしろそれよりももっと高次元な、と言いますと非常に抽象的になりますけれども、そういうことをも全部念頭に置いたあらゆる角度からの判断ということが必要なのだということをここで述べているのではないかと、そういうふうに私としては考える次第でございます。
  121. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それがどうもこのあれではとめ得ないんですね。さっきも、国民の総意なんというものを何か判決に当たって探ると。具体的な事件で国民の総意を探るというようなことを一生懸命裁判官がやるというようなことは決して好ましいことではなく、逆の方向に利用されるおそれがある。また、あなたがおっしゃった同種の紛争の帰趨にどういう影響を及ぼすなんというようなことは、判決の最終的な判断をなす場合には考慮に入れるべきではないんですね。人間だからそれは考慮することはあるでしょう。しかし、そんなことを重く見て判決したんじゃ困る。また、政府の施策に影響を及ぼすかどうか、それは考えるでしょう。しかし、そんな配慮をしながら判決をされては困る。やっぱり、当然のことというならば、憲法七十六条の第三項に言う、あくまでもやはり裁判官は、左顧右べんせずに自分の良心に従ってやってくれということを言えばいいんです。そのためには視野を広くして勉強しなさいと、象牙の塔に閉じこもっちゃ困るというようなことならわかるけれども、どうもいまの最高裁の長官――これは長官と言わざるを得ない、長官訓示だからね。だからそういう点は少なくもそう誤解を受けるでしょう、この訓示は。  最後に、事務総長にこれはお尋ねしたいんだけれども、やっぱり裁判官が視野を広くする、勉強をするということは非常に大事だし、それはしてもらわにゃいかぬけれども、判決をするに当たっては、やはり憲法の指し示すように、自己の良心に従って純粋に憲法、法律の判断をしてもらいたいと私思います。  あなた方、児島惟謙の湖南事件よく御存じでしょう。あのときに、西郷従道や伊藤博文、黒田清隆、枢密院も、松方内閣のとき、あれは津田三蔵を皇太子に対する殺人未遂の罪で罰しようということを裁判所に強制してきたのですね。それがむしろあのときは、何といいますか、政府の国策だったわけですね。内閣、枢密院、いずれも皆一致してそういう結論になった。もしも児島惟謙のように普通人に対する謀殺の罪で裁判をすれば、西郷従道はこう言ったんです。露国の艦隊品川沖に来たり、砲声一発、江戸は灰じんとならんと。そのときに児島惟謙が、そは予の関知するところにあらず、予はただ法を守るのみと言った。裁判官はそうあってほしいですね。  だから、総意を探れとか、ほかに影響を与えるかどうか考えろとか、政府の施策がどうのこうのなんということを言ってもらいたくない。児島惟謙の精神でいってもらいたい。それを要望したいが、事務総長いかがですか。
  122. 牧圭次

    最高裁判所長官代理者(牧圭次君) 私ども裁判官は、憲法の規定にございますように、憲法、法律、良心というものを唯一のよりどころにして裁判をいたさねばならないわけでございます。その点について日夜努力しておるつもりでございますが、そこで言われております良心と申しますものも、いわゆる自己の我執を出した良心ではなくて、法学上はまあ客観的良心というような言葉も用いられておりますように、できるだけ客観的な認識を持たなければならないというふうに言われております。そういうことを踏まえて、視野を広くし、あらゆる点についての知識も獲得するように努力し、憲法の精神に合うような裁判ができるように努力いたしてましりたいというふうに、相互にお互いに切磋琢磨してまいりたいというふうに考えております。
  123. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 終わります。
  124. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十五分開会
  125. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き昭和五十年度決算外二件を議題とし、法務省及び最高裁判所決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 最高裁にまず当面の問題二、三お聞きしたいんですけれども、事務総長来ておられますか。――まだ来てないんですか、最高裁。じゃ、刑事局長の方から。  有事立法が非常に論戦が華やかで、また十八日から一段とエスカレートすると思うのですけれども、これはある野党と幕僚と話したときに、いわゆる仮定なんか言うまでもないと思いますけれども、刑法上、奇襲を受けた場合に集団的な対処ができない。だけど個々に正当防衛、こういうやり方が刑法に許されている。だけど何とかこれを自衛隊、海にしましても艦もろともですから、空にしましてもやっぱり士官の命令ですからというようなことで、これは制服の方から、あるいは防衛庁筋の方から、集団的な正当防衛ということが刑法上許されないかしらと、こういう検討もと、こういうことが出ていたわけ、あるいは制服組から発言もあったわけですが、この点いかがなものでしょうか。刑法上個々の正当防衛ということは聞いたことがあるんですが、集団的正当防衛ということは刑法では許されることなんでしょうか。
  127. 伊藤榮樹

    説明員伊藤榮樹君) 実は最近、防衛問題をめぐりまして有事立法ということとかあるいは緊急時の措置とかいうことが新聞等で報道されておりまして、その中に、法務省にも何か相談しておるかのごとき記事がありまして、全く身に覚えのないことで、どういうことかなと思っておるわけでございますが、ただいま御指摘のこの自衛隊の――ただいまお尋ねのは有事立法というよりもむしろ緊急時の措置の問題であろうと思いますが、その場合に、個人としていわゆる正当防衛的な行動ができるか、あるいは部隊としてそういうことができるか、こういう問題は、私どもの考えますところでは刑法上の問題では全くない、刑法に正当防衛とか緊急避難とかいう概念がございますけれども、これは犯罪構成要件に当たるような行為を犯しました人の刑事責任を評価する際に一つの判断基準になるものでございまして、一般的には、広く行政法の分野でも正当防衛的な行為あるいは緊急避難的な行為というものが許される場合があると思いますけれども、これは自衛隊等の行為につきましては刑法の問題としてとらえるのは全く場所が違うんじゃないか。したがいまして、むしろ私どもがお答えすべき分野ではなくて、内閣法制局あたりで一般的な国際法あるいは行政法の分野でお考えになるべき問題であろう、かように考えております。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 法制局にも見解を聞かなきゃならないし、聞いているわけですが、当面、いまの局長答弁ですと刑法で逃げ込むことはできないと、こういう判断だと思います。  それから最高裁が来ていないんで、大臣、先国会でも一、二発言はありましたけれども、いよいよ来月の二十日ごろには鄧小平副主席がいらっしゃると、こういうようなことで日中平和友好条約の批准が行われると、こういうことですが、これで恩赦ということはあるんですかないんですか、考えているんですか。ひとつもう一回、当面の問題なんで、重ねてお伺いします。
  129. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 日中条約が締結、批准されるということで、法務省あるいは法務大臣として、いわゆる恩赦、これは考えておることは全然いまございません。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 矯正局長、お待ち遠さまでした。初めからと思っていたでしょうけれどね、やっぱり間を置いた方がいいわけですよ。  受刑者の作業項目、まあこれはいろんな作業項目があるわけですね、業種にしましてもいろいろあるんで、その中で牧畜関係の作業項目、これがあると思うんですけれども、これは刑務所は何カ所あるいはどういう牧畜を扱っているか、その点からひとつ。
  131. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいま黒柳委員からも御指摘のように、受刑者のいわゆる刑務作業の種類は多々ございます。その中にいわゆる牧畜関係というものがございまして、その内容は豚の飼育、牛の飼育あるいは搾乳、それから馬、鶏等を扱っております。現在こうした牧畜をやっております庁数は七庁でございますが、そのうち豚を扱っておりますのが五庁、牛も同様に五庁、馬が三庁、鶏は一庁ということに相なっております。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはまあ国が正式に認めた牧畜関係の施設ないしいまの頭数、ところが、そのほかに国が認めたというか認めないというか、そのほかに養豚事業をやっている、こういうことがありますね。まず事実関係だけ。
  133. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ございます。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 その個所、それからその頭数というと、子豚、親豚――相当豚は数があれしますんで、きょうがあした、きのうがきょう違っていると思うんですが、大体どのぐらいいるか、何カ所でどのぐらいいるか。
  135. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいまの御指摘でございまして、職員会で養豚をやっているところがございます。それは刑務所、拘置所等で七十一庁ございます。それからこの飼育の頭数でございますが、御指摘のように、豚は通常の動物と違いまして、人間並みといいますか、いつでもあれをいたしますものですから、ふえたり減ったりなかなかとりにくいのでございますが、全体で約六千頭でございまして、その中にいわゆる子豚と称しますのが約四千頭でございます。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 私もあっちこっち調べたわけじゃありませんが、たとえばきのう行った中野でも、五十頭いるはずなのに七十頭で二十頭ふえちゃっているわけですね。きのうのきょう二十頭というわけじゃないんですけれども、わずか数カ月で二十頭もふえちゃっている。ですからいまの六千頭は  一万ぐらいに近くなっているんではなかろうかと。これはわからぬ、全部調べてみなきゃ。そちらも調べたわけじゃないと思うんですけれども、まあ相当ふえていることは間違いないと思うんですが、法務大臣、こういう職員組合が養豚事業をやっているという事実については法務大臣は御存じですか。
  137. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 説明を聞いて知っております。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 知ってますね。いままで知っていたと言っているんですね。この職員組合は養豚事業をやることによって収益を上げてますね。
  139. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) そのとおりでございます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのとおりと言われるとこっちも気抜けしちゃうんですけどね。ちょっと抵抗してもらわないと、あんまり話がするするいっちゃうんで、まあ率直にあれで結構だと思うのですよ。  どういうところにどのくらいの金を払っているか、項目ですね。まず金額についてはそちらで調べてないと思うのですけれども、まず収益を上げた分の金はどういう種類の金を払っているか、項目だけ言ってくれますか。
  141. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) この豚で収益が上がると申しますのは、子豚を大きくいたしまして売るわけでございまして、先ほど黒柳委員から六千頭がいま二万頭ではないかと……
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、一万とは言わない。
  143. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 一万頭になりますと、これは収益は入らないわけでございまして、売ったり何かするわけでございます。大体払っております点を申し上げますと、すでに黒柳委員十分御存じだろうと思いますが、いわば役所の費用の不足のために万やむなく出している点が多いのでございまして、大きく分けますと、御承知のとおり、刑務所の職員の仕事といいますのは非常に不愉快な点もあります。そういう点で、それを補ってあげたいという点、それからその次には情報交換といいますか、刑務所の場合には人の出入り等――人といいますのは入所、出所でございますが、拘置所から刑務所へ連れていくと、そうした場合に、拘置所での行状はどうであったかというようなことを十分聞かなければならない、あるいは各課でもっていろいろな検討会、これを職務研究会と称しておりますが、そうしたときに、夜まで至るあるいは途中のお茶菓子等というものを出すという場合に使われる職務に関連した分がございます。それからもう一つは、地域社会との連絡で、外部の方の御協力が非常に多いのでございますが、そういう方から有益なお話を伺うあるいは情報交換等をするという際の費用がございます。それから最後に、非常配置の際の雑費でございます。最近の例で申し上げますれば、御存じかと思いますが、宮城沖地震で宮城刑務所のへいが壊れました。やむなく全職員を非常呼集いたしまして、へいのかわりに人がきで夜っぴて防御をいたしたわけでございますが、遺憾ながら、そういう際に夜食等を配る予算上の費目はございませんので、職員会の費用から夜食等を提供した、いわば非常配置の際の雑費というふうに分けられるかと思います。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま言われたのは、国の費用、予算が少ないから、もうけた収益で、自分たちでかせいだので国の少ない分を負担しているんだと、こういうことですけれどもね。そうじゃなくて、まず大きく挙げられるのはあれでしょう、刑務所内の豚舎、これは国有地ですからこの土地の借用料、これに払っているんじゃないですか。それからさらに、受刑者を使いますから、受刑者に賃金、労賃を払う、これもあるんじゃないですか。これは大きな二つの面ですね。それでいま言ったのもある、こういうことです、理解は。もう間違いない、同じだと思うのです。  そこで、これはいろいろあるんですけれども、いわゆる国家公務員が収益事業をやるということについて、これは当然大臣、これは法務省ですから、法守りの中心であり、しかも極端に言うとあの囲いの中ということはある面で世間の人の目に映らない面があるんですね。これはちょっとおかしいんですけれども、へいの中に入っている人は刑に服して悪いことをやった人なんですが、その中でいい人が悪いことをやるという、ちょっと矛盾な理論なんですけれどもね。国家公務員が隠れて囲いの中で収益事業をやっているかのような錯覚も与えるんです。ああいう中というのは特殊地域なんです、言うならば、私たちの感覚が。それは別にしましても、ともかく国家公務員が収益事業に携わるということは、これはうまくないんではないでしょうか。まずこの点どうです、大臣。
  145. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) まあ私、全体を知っておるわけじゃありませんが、これがいわゆる収益事業と言えるのかどうか、これもやや私自身は疑問を持っております。これは黒柳さんは御承知だと思いますが、御存じのように刑務所というところは、ところによって多少の差はありますけれども、受刑者を収容して矯正を続ける、こういうことをやっておるわけでございますが、たくさんの残飯というのが出るわけでございます。その処理をどうするかということで、これは長い前からのことだそうでございますけれども、この際それを外に出すについても費用がかかる、あるいは最近の状況ではなかなかそれを利用する人も少ない、こういうような事情から、刑務所内で豚でも養ってそこで処理をし、それからある程度の利益を上げてさっき申し上げたような経費にしようじゃないかという、どこから出た知恵かわかりませんけれども、そういうことをやっておるわけでございますから、全部そういうものを国の費用で賄えればこれが一番いいんだと思いますけれども、なかなか財政の事情もありましてそこまでいけない。そういうことで、生活の知恵というのでしょうか、残飯がたくさん出ますからその処理を兼ねて豚を養う、それから出たある程度の利益をさっき申し上げたように活用しておると、こういうことでございまして、聞きますと、各地の施設の所長が職員会長ということで、そういう立場でやっておるんだそうでありますが、どう解釈したらいいんでしょうかな、これは。どうも直ちに公務員の規則に違反するのかどうか、私もちょっと判断しかねているわけでございます。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、これは大臣に求めているんじゃないです。ちゃんと公務員法に違反するかどうかは総理府の人事局の分野ですからね。大臣、言葉を返すようですけれども、大臣は全体知らないと。矯正局長は全体をもう十二分に知っているんです。収益事業であると断定したんです。それでいまおっしゃったのは二つあるんですよ。一つは国の費用が足らないからと。これはもう論外。どれだけかかる。大臣恥かきますよ。三十九兆二千八百億の予算をこれからつけようというのに、それじゃそれにどれぐらいかかるかといったら、本当に大臣いまの言葉は恥かきますよ、いいですか。それが一つ。  もう一つは残飯が出る。確かに残飯を拾わせると費用がかかるんです。だから豚を飼うのだと、こういうことなんです。自衛隊に行って言ったんです。防衛庁長官金丸さんに出てもらったら、ちょうどいい、やりたいというのです、うちでも。二十六万、自衛隊でもって残飯が出てしようがないんだと、幸せなることに演習場があいているから、あそこに豚舎をつくって豚飼おうか、うちもと。法務大臣がそういういいことを教えてくれたから、自衛隊こそ豚を飼って、それで自衛隊の職員に、レクリエーション代として予算が少ないから――防衛庁は予算多いと言いませんよ。予算少ないと言っていますよ、防衛庁も。  そんなばかなことは許されない、いいですか。収益事業であるかどうかとおっしゃったけれども、それじゃ土地代はどこから払うんですか、払っているじゃないですか。収益を上げているから土地代出しているんじゃないですか、収益を上げているから受刑者たちに労賃を払っているんじゃないですか。収益事業であるかどうか疑問というのはどこを根拠におっしゃっているんですか。ひとつそれじゃ大臣に詰めましょう、局長はいいから。局長とはもう話し合った。大臣、やりましょう。大臣、とことんまでやりましょう。大臣困りますぞ、そんなことをどんどん言っていくと。大臣は収益事業じゃないと。収益事業と言ったんです。収益事業であるかどうか疑問だという根拠
  147. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 収益事業であるかないか、私自身が判断に苦しむと言いましたのは、収益が上がっていることは事実です。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 上がっていれば収益事業じゃないですか。
  149. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そういうものを収益事業でないとは言いませんけれども、ただこれが営利事業としてやっておるということではないという、こういう判断を申し上げたわけでございます。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は収益事業と聞いたんですよ。
  151. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 収益は上がっておるんですから、一つの事業をやっていれば収益事業でいいと思います。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一回聞きましょう。営利事業であるかなんていうのは聞いていません。収益事業ですかと聞いた。イエスと言った。いや収益事業であるかどうか疑問だと思うと言うから私重ねて言ったんですよ。収益事業でないんですかと、収益事業ですね。
  153. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 収益を上げておる事業でありますから、収益事業と言って差し支えないと思います。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうなんですよ。局長みたいに素直にやればそんなに時間かからないわけです、話し合っているんだから。納得しているんですから局長は。  それで総理府の方ですね、人事局長さん、どうですか、国家公務員法百四条、もう私言うまでもなく、専門家ですから百四条が何たるかを――「職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。」と、こういうことなんです。まあ、これに非常に私は抵触するんじゃないかという疑問を持っているんですが、いかがでございましょう。
  155. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) お答えを申し上げます。  実は御指摘の養豚事業でございますけれども、私まだその詳細の事実を存じておりませんので、まあ断定的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、いまいろいろお聞きをする限り、この公務員法上どうなるかという御疑問だと思います。  で、公務員法の百四条をいろいろわれわれも所管をいたしておりますので、まあその前に百三条か百四条かという問題もございますが、百三条は人事院の関係でございますので、百四条、私どもの所管の関係で申し上げますと、まあ事業かどうかというようなことがまず一つ。それから報酬かどうかというようなことがその一つでございまして、それらにつきましては、先ほど最初にお断りいたしましたように、事実関係を詳細存じませんので即答申し上げかねますが、先ほどのお話のように、それらがそれに従事する職員の報酬的なものとして返っていくようなことなのかどうかということを含めましてそこら辺の問題があるんではないかと思います。そういうことで、事実関係を十分さらに法務省の方からもお聞きをいたしまして判断をし、必要があれば調査をいたしたいというふうに思っておるところでございます。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 収益を上げているということだけでいいと思うんです、収益を。そのことだけを、これははっきりしたんですから、大臣認めているんですから、そのことだけについてはどうですか。
  157. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) まあ、その職員会というものがいわゆる営利的なことをやる団体であるかどうかという問題もございますが、いま申されました収益という点について、その収益というのが個々のそれに従事する職員に分配をされていくような形態になっているのかどうか、そこら辺も、いま先ほど法務省の方の御説明では必ずしも私、十分納得するように拝聴いたしませんので、そこら辺も十分調べましてから判断をいたしたいと思います。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは調べましてといったって――それじゃ実態論をずっと言っていきますからよく聞いていてくださいよ、みんな法務省認めますから。いいですか。それで最終的に言ってくださいよ。そんなインチキ答弁はないよ。あなた、いいですか。この場でそんな逃げ答弁打ったらこの後大変ですよ。前の約束と違うじゃないですか。あなたの言ったことと違うじゃないですか。これはおかしいと全くはっきり断定したじゃないですか。ここにいて法務大臣が隣に来たらびびっちゃったんですか。そんな腰抜けな総理府じゃしようがないですよ。だめはだめ、疑惑は疑惑とはっきり言わなきゃだめじゃないですか。まあこれは結構、ないしょ話です、いまのは。  そうすると、いま法務大臣が、これは職員組合が何かやっているみたいだと言うんですが、実態論に入りましょう。聞いていてくださいよ、実態論。  局長、これはどういう、だれがこの養豚事業、まあ事業と言うか、疑問かなんかというけれども、だれがこれを養豚をやらして、だれがこの養豚を委託しているか、その委託関係ですね、これはどういうふうになっているんですか。さっき職員組合かなんかがやっているみたいですって大臣がくしくもおっしゃいましたけども。
  159. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) まず養豚のことは職員会が主体としてやっております。で、職員会がいたします場合に、契約を二つ結びます、大きく申し上げまして。一つは刑務所と職員会との間の契約でございますが、これは受刑者を使うという意味での契約でございます。すなわち、職員会がいわば主体になるわけでございますが、現実の養豚の仕事は受刑者を刑務作業として使うわけでございまして、そうなりますと受刑者を使ったという意味で、職員会が国に費用を払わなければならないという関係がございます。そのほか細かい点を申し上げますと、残飯を刑務所から買うという費用等もございますが、これは小さい点なので省きますが、一般的に一つそれがある。  それからもう一つは、国有地を職員会が借りて養豚をいたす関係上、国有地の借用に関する契約を結ぶということでございます。で、国の方から申し上げますと、国有地を貸してその借料を取ると、残飯を売ってその残飯料を取ると、それから受刑者を使いますので、それが契約賃金として収入になるということになるわけでございます。  一方、払います点は、受刑者に対する費用でございまして、これは御承知のとおり作業賞与金をもって支払われるという関係になります。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、聞いていてくださいよ、総理府もね。要するに受刑者を使うわけですね。それから刑務所内の国有地を使って豚舎をつくるわけですから、国有地に対しての使用許可、それから受刑者を使いますからその契約、これは契約の当事者は中野刑務所長花田馨、それから職員会の会長は同じく花田馨、だから所長が二つの顔を持っているわけですよ。職員会の会長でもあり、それから今度は国を代表する国有地の使用の許可、受刑者の作業に従事する許可、これを与える長だと。こんな、所長さんが二つの顔を持って自分が自分と契約する。かつてこれは国有地問題で千葉県を中心に大きな問題になったんです、こんな契約の仕方があるかということで、土地転がしの大きな原因。こういうことについて法務大臣、これは許可しましたか。許可しているんですか、法務大臣は。これは許可してやらしているんですね。
  161. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私も最近法務大臣になったので、これは前からあるんだそうでございますから、私が許可するということはありませんが、その関係については局長から御説明申し上げます。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくして、法務大臣の許可がなければ――前だったって後だったってみんな法務大臣法務大臣じゃないですか。前の法務大臣といまの法務大臣と許可が違うということはないじゃないですか。法務大臣が許可しましたか。十年前は十年前の法務大臣ですよ。いまはいまですよ。許可しているんですか、このことを。
  163. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいまたまたま中野刑務所で……
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 たとえばね、全部同じ形態だから。
  165. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 所長たる花田君と、会の会長たる花田君とが契約を結ぶというのはおかしいではないかと、こういう御指摘であろうと思います。これはやっぱり人格を異にいたしまして、刑務所長たる……
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。ぼくが言っているのは、法務大臣がこれを許可しているんですかと言っているんです。
  167. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) わかりました。ということでやっておるわけでございますが、その中野の刑務所長は、国有財産を分掌する形で出ておりますので、法務省の代表者たる形で中野刑務所長の名前が出るものと理解しております。したがいまして、直接法務大臣と契約するようなものではないし、そうした契約手続等につきましては、国有財産法その他の規則にのっとってやっておりますから、あえて法務大臣の許可という問題は生じないのではないか、かように理解をいたしております。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 土地の使用と受刑者の作業に従事する、この二つですよ。いま土地だけじゃないですか、言ったのは。二つ、この受刑者を作業に従事させるということも許可の必要ないですか、法務大臣
  169. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) まず土地の問題で……
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、土地はいいです。
  171. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 土地はよろしゅうございますか。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 受刑者の……。
  173. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 受刑者の分につきましては、どういう作業にどういう受刑者を使うという全般的なことは法務省の作業に関する訓令で決まっております。したがいまして、職員会以外のところでも、どういう業者から入れるという場合には、たとえば破産しそうな業者が入っても困るわけでございますが、そういう点で一般的に刑務作業の運営の方法を訓令で決めております。名前を申し上げますと、刑務作業事務取扱規程によって決めて、それらの契約その他をやる権限を所長に任せているというのが実態でございます。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、この養豚業というのは、逆に言うと合法である、こういうことを言いたいんですか。国家公務員が収益を上げて作業に従事していることはいいんだと、こう言いたいんですか。その点まず聞きましょう。
  175. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 先ほど大臣の御答弁にもございましたように、残飯が出た、その残飯の処理ということで昔からやっておるわけでございます。その点につきましては、昭和四十年代の初めから、主として黒柳委員からいろいろ御指摘をいただきまして、われわれも適正化に努力いたしているところであります。  それで、合法か違法かという点につきましては、そのために委員会をおやりになっておりまして、私が軽々に申し上げることはいかがかと思いますが、私自身、率直に申し上げまして決して好ましいものとは思っておりません。予算的な措置がとれるならば、これはできるだけ縮小していきたいと、こう考え、これまた事務指導をいたしているところでありますが、現在の諸情勢から考えますときには、遺憾ながらやむを得ないことであるというふうに言わざるを得ません。したがいまして、その運営につきましては、あらゆる点から考慮いたしまして、適正なる運営方法を確立していくというところに重点を置いているわけであります。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはおかしいよ。予算の問題と、合法か違法か、適正か不適正かというのは別でしょう。だから、さっきもちょっと言ったように、予算と言ったってこれは数億ですよ、予算化するったって。そんな問題は、三十何兆の中から予算化できないことないじゃないですか。要するに、いつからのしきたりかわからないけど、不適正なものならやめなきゃならないじゃないですか。その予算を取るんだったら、二億、三億、自民党の先生方に取ってもらいなさい、そんなものは。刑務所の中で不適正なものをやっている。予算が足らないからやるんだと言ったら、逆じゃないですか、大臣の言い方、局長の言い方。全くおかしいんじゃないですか。これはもう委員長、弁護士の先生を煩わせる必要はないくらい、素人の私だって、全くそんなことおかしいじゃないですか。国家の予算が足りないんだと、だから残飯を豚に食わしてそれを大きくして、それで職員のレクリエーション、飲み食い代に使うんだと。いや、台風があったときにへいが倒れちゃった、国家の予算がないから、おれたちが汗水流して働いた金でへいつくるんだと。これはかわいそう、そんなことをやらしたら。反対、逆ですよ。国民の税金をつまみ食いする悪い人はいるけれども、自分たちが汗水流して働いた金を、国家の予算が足りないところを補てんするなんていう、そんな奇特な人どこにいるんですか、いまの世の中に。そうもし法務省の刑務所の職員にやらせていることをこの場で正々堂々と言うならば、これは感覚がおかしいですよ。つまみ食いすることがいいと言ってるんじゃないですよ。そういう世の中に、自分の汗流して、予算が足りないから、へいが壊れたから、あの仙台の地震のとき、へいを直すのに働いた金でへい建てたんですって、そんなことをしゃあしゃあと言えるんですか。そんなかわいそうなことをさせてるんですか。いつの時代から続いているから、それはあたりまえだと。不適正だと言いながら予算が足りないと、こういうことは逆じゃないですか。論旨がおかしいじゃないですか、大臣。それじゃ、予算を取るようにしなさい。どのくらいかかると思いますか、この予算。大臣、聞きましょう、まず。大体このくらいのことはわかるでしょう。どのくらい予算取ればこれが解消できますか。――いいよいいよ、たまには恥かかしたほうがいいの。こんなことやんなさんな。たまには変な答弁さしたほうがいいんです。薬になるんだからいいよ。
  177. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) これが合法かどうかと、私直ちに判断はできませんが、おっしゃるように、検討してみる必要があると、かように考えます。  ただ、先ほども申し上げましたように、刑務所内の残飯等を処理するのにこういう手段、方法がいいのかどうか、あるいは他にやるべき方法があるか。予算の問題は、聞きますと、これで出ておりますのは現在のところは一億前後だということ。それで刑務所の諸般の必要経費が足りると思いませんけれども、そういうことで賄っているという説明先ほどいたしました。この金額は大したことはないと思います。だから、予算が足らぬからこれをやらせるんだということは、黒柳さんおっしゃるように、これは正当の弁明にならないと思います。ただ、刑務所というああいうところで、残飯の処理をどういうふうな処置をしたほうがいいか。いまこれはやめますという簡単なお断りができるだけの材料は私ございません。御指摘がありますから、どういうあり方のほうがいいか、やめてしまうのがいいか、これはよく検討してみたいと思います。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、総理府に聞きましょう。  国家公務員法違反であることは調べなければわからない。それじゃ、自衛隊が同じことをやったって、これは実態がわかるまでそのままにしておきますね、同じ養豚業をやって。いいですね、自衛隊が同じことをやっても。残飯がうんと出る、もっとうんと出る。二十六万人いるんだから、広場もあるんだから、非常にやりたがっているが、いいですね、そのまま放置しておいて、実態がわかるまで。
  179. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) いまのお話のものが、やり方、たとえば報酬を得てというところが、それぞれの職員にそういうふうに金品になって戻っていくやり方なのかどうか、そういう基本的な問題がございますので、百四条自体にすぐに触れるのか触れないのかという断定はできないんですが、先生御指摘のように、そういうことがいいのかどうか、好ましいのかどうか、あるいは適正なのかどうかということになりますと、私がいまお聞きする限り、公務員というのは服務は法に当たらないから何でもいいということじゃございませんで、やはり適正な服務が要請されるわけでございますので、お話の限りにおいて私は好ましいものであるというふうには決して思いません。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 そういうふうに言う約束だったじゃないですか、それを初め変なことを言ったから。いまお聞きする限りといったって、ほんの二、三分しかやってないよ、いまお聞きしたのは。そんなでたらめばかりやっている。ね、おかしいんですよ。ぼくは何でもかんでもぶちまけちゃって、それで皆さん方にわかっていただければ、そして、改めていただければそれでいいんだと、非常に純真な、謙虚な気持ちでやっているんだから。私はサクラでも何でもないんですから。好ましくないんですよ、本来。あなたのいまの言葉だって、予算が予算がって盛んに言ったですよ、この議事録取るまでもなく。本会議ならこれ大変だ。議運の理事がぱあっと駆け上がってさあ議事録検討だなんてことになるんですよ。いまあなたが予算が予算がと言ったでしょう。その言葉のまた舌の乾かないうちに、予算は大したことありませんなんて、詭弁じゃないですか、そんなことは。予算が問題だからと言ったじゃないですか。それを、いま見るところによると一億ぐらいですから予算の問題じゃありません、これはおかしいですよ。さらにおかしいのは残飯の処理。残飯の処理に困るような法務大臣じゃ困るじゃないか。しかも、受刑者が一カ所に集まっるんじゃないですよ、五十カ所、七十カ所に分散しているんですよ、日本全国に。狭いといったって広いです、日本は。残飯処理にどのぐらい金がかかるんですか。残飯処理にどのぐらいの労賃がかかるんですか。もしも、いま言ったように、わずかなことで不適正であり好ましくないということをこの場ではっきりさせるという約束をさせないでいったら、またずるずるいったら大変ですよ。残飯処理、それじゃどこの庁でもいいですよ、どこの省でも、残飯処理に困るからという話聞いたことありますか、法務大臣、どっかの省庁から。刑務所の囲いの中だけが特殊地域じゃありませんよ。人が何千、何万といるところはもっとあるんですよ。何千もいやしませんよ、一カ所で。残飯処理ということじゃないんです。長年やってきたからということがまず第一の前提で、予算も大したことないけれども、まあこの際やめるのも、ということだけなんですよ、法務大臣。だれかが断を下さなかったらだめじゃないですか、ここで。そのための国会審議です、冗談じゃないんですよ、何か笑いか何かでごまかして。私が不適正であるかどうか、収益事業じゃないというのは、収益事業だ、予算が足らないからというのは、予算は問題ないと言った。言うたびに違っているじゃないですか。議事録取りましょうか、これ。もうわずかの間に、言うたびに違っていますよ、法務大臣の答えは。残飯の問題だ、残ったものは。残飯があるからと、そうじゃないんです。自衛隊はどう処理しているか知っていますか、残飯の処理。二千も三千も各省庁いるじゃないですか、刑務所よりもっと多いところがあるんですよ、幾らも囲いの中に。どう処理しているか知っていますか。そんなことは、残飯の処理だから豚に食わせるという論議じゃないんです。長くやっているからまあやろうや、それが予算も少ないから、残飯も出るからというようなことにすり違っているだけですよ。好ましくないというなら、適正でないというなら、そんなものをやることはないじゃないですか、やっちゃいけないじゃないですか。一億ぐらいの予算をつけなきゃかわいそうじゃなないですか。それじゃほかのところで残飯処理の問題が出て同じことをやったら、法務大臣法務省がやっているのだからということになりますよ、法務大臣。いいですか、ほかの省庁でそういうことをやって。認めますか、残飯処理で困っているところがあったら、法務大臣。これは法務大臣ですから法守りの大臣ですから、しかも、その密室みたいに思われている刑務所の中でやっていることですから、これは厳正に、公平に、厳しく対処しなかったら大変なことですよ、いいかげんな答弁だったら。どうです、法務大臣、残飯処理だけの問題ですか。
  181. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いや、予算が不足しているか云々というのは、そういうことに回して今日まで来ておるそうですと、こういうことを申し上げたのです。また別に、そういう予算がどのくらい足らぬのかとおっしゃるから、これから出ているのは一億前後のものを出しておりますと、こういうことを言っているのでございます。これが適当でないということになれば、先ほども申し上げましたように、これは検討してみる必要がある。正すべきは正さなければならない、かように言っておるわけであります。長くやっておりますから、きょう直ちに私はこれはもうすぐあしたからやめますと言うだけの自信がありませんので、これがどうあるべきかを検討しなければならない、こういうことです。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 石原局長が知っているのです。私は昭和四十三年に指摘したんです。いいですか、あのときはおれは大臣じゃないからと、こうは言わせませんよ。それから十年たった。変わりありません。もっと巧妙になっているということをこれから指摘しましょうか、大臣。私はいま聞いた、大臣になってから、聞いたのはいまなんです。おぼろげながらしか知らない。だけれども行政当局、事務当局は、長年かかって指摘されたにもかかわらずそのままですよ。いまの問題じゃないということを大臣も認識してください。いいですか、十年かかっている。どうですか、大臣。この問題は十年かかっている、指摘してから。だからいまがいまの問題じゃないんです。
  183. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 予算の問題で黒柳委員から……
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、そこのところじゃなくて、いま大臣が、いまがいま不適正だからと言ってやるわけには、どうこうと言うわけにはいかない、検討しなきゃと。検討を十年かかっている、こういうことに対しての答弁なんです。
  185. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) これは大臣にも申し上げてございます。昭和四十三年の国会において御指摘くださいましてから順次適正化を図りつつあるわけでございます。  予算の問題でございますが、黒柳委員のお言葉の中に、つらい仕事を刑務所の職員にやらしているではないかという御指摘がございました。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいやそんなことは言っていない、これから言うから。これから個々に言うから。
  187. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 私といたしましても二万一千人の職員を預かる矯正局の責任者でございまして、予算がないからと言ってつらい仕事をさせる気持ちは毛頭ございません。しかしながら、やはり国全体の財政規模を考えて予算の配分をいたしておるのが現状でございますから、その意味から申しますと、なぜ職員の苦労を減らす方の予算にいかないかという点は、実は収容者の処遇向上に重点がいっているからでございます。  これは御承知のとおり、刑務所、あるは拘置所の仕事は、社会から犯罪人を隔離する仕事でございまして、予算時期になりますと、報道関係各位にも御協力をいただくのでございますが、食料費の増額、たとえばでございますが、食料費の増額について法務省が重点を置きます。この点を恐らく多とされているかと思いますが、報道機関にも御協力をいただいている。現在私どもは食料費、あるいは本年度の予算で申し上げますれば、何とか寝巻きを収容者に配ろうではないか。あるいはまた畳。これは拘置所とか、成績のいい受刑者に対しては畳が出ておりますが、できるだけ畳を配るようにいたしたいというふうに重点がいくわけであります。これは矯正局長の立場で申し上げるのもおかしいのでございますが、私は矯正局長になりまして、予算全体を見ましたときに、先人が自分たちの部下よりも収容者の社会、施設内生活の向上に努力しているその実態を見まして、ある面では非常に感謝もいたしているのであります。  そういう点で、たとえば、いまの問題につきましても、たとえばこれで上がっている利潤というものは一億である、じゃ一億だけ取ればいいかという点になりますと、そのほか、先ほど残飯の処理の点がございまして、ほかのところでいい残飯の処理をやっているところがございますれば私どもも参考にいたしたいと思いますが、最近、養豚につきましては、御承知だと思いますが、混合飼料を使うようでございまして、残飯を使っているところがございません。したがいまして、残飯を業者に頼んで捨てていただきました場合に、こちらが残飯を買ってもらうんではなくて、お金を出して残飯を処理してもらうということになるようでございます。  これはしからば残飯処理を全部金に換算すれば幾らになるかという点につきましては、その業者が多いか少ないか、あるいは投棄する場所があるかないかによって金額が違うようでございますが、東京近辺でもう養豚はやめようということでいたしましたときの残飯処理代は一キロ当たり七円二十三銭だそうでございます。現にそれをやっておりますが、この相当数のものを業者に全部委託いたしますときには、七円で計算いたしますと実は二億七千万になるわけでございます。これは私は少し高過ぎるのではないかということで、目の子算でございますが、やはり刑務所なり、拘置所における残飯処理を全部業者に委託をしてお金を払うということになりますと、約一億はかかるのではないかと計算いたしております。  そうすると、現在上げております一つの収益と残飯処理をやりますと二億になります。逆に二億の金を収容者の方に回しますと、食料の米麦混合率が、ただいま一般の場合は六対四でございますけれども、これを七、三にできるかもしれない、あるいは副食費も多くなるかもしれないということになりますと、どうしてもそちらの方に重点が行くということでございます。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 細かいことはいいですよ。  考え方が逆だというのさ、さっきから何回も言っているように。法務省でしょう、法務大臣でしょう。社会から隔離するというへいの中でやっていることでしょう。そこでやっていることが思わしくないと言うんだ、不適正だと言うんだ、それを考えなきゃならないんじゃないですか、これが第一点。いいですか、大臣。いますぐ言われてもと言うけれども、十年もかかっているんだ。いますぐじゃないですよ。これから検討なんという悠長なものじゃないんですよ。こんな単純な話ぐらいわからなきゃ困るじゃないですか。残飯のいい処理の仕方を教えてくれなんて、ぼくは残飯屋じゃないから知らないです。所管省に聞いてごらんなさい。幾らも、何万という従業員がおり、工場がありますから聞いてごらんなさい。こんなことで本当に頭を悩ましているなんて。悩ましているんじゃないですよ、そう言わなきゃならないから言っているだけじゃないですか。矯正局長国家の予算で頭悩ますことない、そんなことは。奇特な人と言えば奇特な人で表彰ものですけれども。それはもう逆ですよ、話が。そう思いませんか、法務大臣。不適正である、思わしくないということから話を進めなきゃならないということが一つ。残飯のいい処理の方法があったらどうだとか、長年やっているから云々だとか、そんなものじゃない。ましてお涙ちょうだい式の浪花節なんてここでやったって全く意味がないじゃないですか、そんなことは。福田さんに聞かしてやってください。ああわが役人にもこういう方がいるのかと、表彰してくれます。ぼくは表彰なんかできない、いいですか。それと、十年もかかって何も改善されてやしない、実態は変わりない、若干時間があるから言いますけれども。それをいまからまた検討ということは筋違いじゃないですか。非常にわかりいい議論だと思うな、ぼくは。法務大臣、どうですか。もうややこしいことはやめましょう。
  189. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 残飯の処理はいろいろありますが、くどいようでありますけれども、これのよしあしは判断をしなきゃならないと思いますが、刑務所という構内で残飯が出る、刑務作業でいろいろ矯正作業をやっておりますから、そこで豚でも養えば残飯処理にもなるし、先ほども申し上げましたようなある程度の経費も出る、こういうことでやってきているわけでございますね、御承知のとおり。それがけしからぬと、法に触れると、こういうことになりますと、それは金がかかってもこれは改めなきゃならない、そういう点を検討してみたいと、こういうことでございます。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 思わしくないと言っているんですよ。  もうちょっと話を進めましょう。  いろんなのがあるんですけれども、実態論は。たとえば豚舎、国有地の上に豚を飼育するわけだ、豚の建物をつくりますね。この豚舎は、矯正局長、要するに収益の中から出る場合もあるし、あるいは国費から出て建っているものもあると、こう私は認識して聞いておりますけれども、それは間違いないでしょうか。
  191. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 現在では豚舎の修理あるいは新しくつくるということは実際にはございませんが、つくるという費用はすべて職員会から出ております。ただこれが昔からやっております関係上、昔つくられた際に、国の費用でつくったのではないかという懸念はございますが、そうしたことが行われておりましたのは大正年代だと私は聞いております。したがいまして、すでに五十年たっております上に、豚舎が堅牢なる建物ではございませんので、その後建てかえの際にはやはり職員会の費用をもってなされているものと認識いたしております。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは実態をつかんでそう言っているのか、それともそう認識しているという常識論から言っているのか、どっちですか。
  193. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 実態を相当程度つかんだ上の認識でございます。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 全部つかんでいませんな。
  195. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 私の方もできるだけ実態を明らかにする意味で謙譲の精神をもってお答え申し上げている次第でございますが、こういうことでございます。たとえば……
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 全部つかんでいるかどうか、それだけ、もう話があれだから。
  197. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 全部はつかんでおりません。しかし、国費で出しているにはそれだけの理由があるものでございます。
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 さらに、会計検査院、よく聞いておいてくださいよ。いま会計検査院の方に入っていますからね。この契約の中にこういうくだりがあるんですよ。これは土地の使用の契約の方ですけれどもね。「(経費の負担等)第六条」、要するに、豚舎をつくるという、こういうことについて土地を使う、「使用を許可された者は、当該使用を許可された物件に付帯する電話」、豚舎にある「電話・暖房・電気・ガス及び水道等の使用料金を負担しなければならない。」、こういうこと。これは収益の分から出すということですね。この実態はつかんでますか、経費の実態。
  199. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) その点はつかんでおります。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 つかんでますか。この電話料は収益の中から払われていますか。
  201. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 私は払われていると思います。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 思うじゃない、ぼくが言ったのは。十年前からぼくはこのことをやっている。十年来豚ばかりやっているわけはないですけどね。済みません、訂正します、やったことがあるということ。そのときは国有地の問題だけだったんだ。刑務所の中でそういうものがあっちゃうまくないということだけしかやらなかった。こういう契約やなんか全然知らなかった。いいですね、それはもう矯正局長は知っているわけだから。思い出すでしょう。だから、ぼくがいま言ったんだ。大臣、聞いておいてくださいよ、会計検査院。長年たっていて実態すら知らないじゃないですか。電話料を、豚舎には電話はない。刑務所長のところに、何とか部長、何とか課長のところに電話が入る、飼料を買う、売買の取引をやる、この区別はできませんとはっきり言っている。どうです、つかんでますか、この実態を。電話料は経費の負担から払うようになっていますか。なっているなら明細出しなさい。でたらめ言ったらだんだん声が大きくなるよ。実態論を知らないで物言うな。実態知っているなら言ってください。知らなかったら知らないとはっきり言いなさい。
  203. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 実態を十分御存じの黒柳委員の御質問でありますので、その点私も考えて、思いますという言葉を使ったのでございます。なるほどおっしゃるとおり、場合によりましては豚舎の飼料の点につきまして役所の電話をかけることがあろうかとも思います。しかしながら、逆豚舎近くに電話が置いてあって、いろいろな連絡をする場合に、役所の業務に関する点でその電話を使うこともあるのではなかろうかという点までいきますので、思いますと申し上げておったのでございますが、電話の内容を具体的に調査することはもう御承知のように非常に困難でございます。しかしながら、全般的に見ますれば、何といいますか、国費で架設された電話を職員会のためにむやみにと、こう言いますか、よけい以上に、よけいにやっているということはないというふうに考えております。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 実態はわからない、会計検査院。私も七十数カ所全部の実態――そん暇ないですからね。幾ら私だって豚の後ばっかし追っかけるのが国政の仕事じゃありません。ですけど、私が相当数調べたところ、この契約の中で、いわゆる電話とか暖房とか電気とかというような費用は収益分で負担させることになっているんだけれども、区別なんかできない、水道だって。ゲージがないんですから、第一。そうでしょう。ゲージがないところ、どうやってこれ分けるんですか。分けられやしません。電話だけじゃないんです、この問題は、実態がわからないんだから。  さらに建物にしましたって、たとえばもう行って驚いた。中野の豚舎がこれ鉄筋コンクリートづくりですよ、かわら屋根のりっぱなもの。都会の真ん中でこんなものがあるなんということは、それこそだれも知らない。私のなんてもう四十年たつからぼろぼろだけど、豚舎の方がよっぽどりっぱですよ、鉄筋コンクリートですから。公費でつくられている分もある。この実態につきまして、ひとつ会計検査院、すぐ調べてもらいたい。契約書でこういうことをうたっているが、実態は違うんです。豚舎の建築費用にしたって、実態は知らないんです、公費でつくられている。そういうものにつきましてひとつ実態をすぐさま調べていただきたい。どうです。
  205. 藤井健太郎

    説明員藤井健太郎君) お答えいたします。  会計検査院といたしましては、可能な限り能率的な検査を実施しておるわけでございますが、ただいま先生の御質問のような事態につきまして、まことに残念ながら実態を把握していない状況でございます。つきましては、先生おっしゃいますように、できるだけ早い機会におきまして調査を実施したいというふうに考えております。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだいろいろあるのですけれども、時間がどんどんたっちゃいまして、もう大臣、そんなに質問しませんから安心して聞いていてください。  たとえば受刑者に対する労賃の問題ですけれども、労賃は、一日作業に従事して、これは若干作業の等級というのがあるわけですな、受刑者に。それによって違う、こう認識しておりますが、一日平均幾らぐらいですか、養豚事業、この作業に従事して、平均。
  207. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 平均いたしますと二千二、三百円というところでございます。多い者は五千円余り取っている者もございます。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、受刑者一日当たり平均ですよ、千三百六十円と出ているじゃないですか。
  209. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいま御指摘の千三百六十円と申しますのは、職員会から取る金が千三百六十円でございます、一日に。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 そう、そういうことです。それを言っているんです。職員会から千三百六十円ですね。それで、あと用地、国有地の借用料なり、あるいは涙ぐましいところに使う、厚生、福祉にも使う、飲み食いにも使うという。ところがこれは農林省の五十二年の調べですと、要するに養豚に従事する人一人当たり、子豚で八千二百七十円、それから成育した豚で五千五百二十円、これだけはかかるというのですよ。いいですか。ところが大臣、この組合では一人平均千三百六十円しか出してない、組合からは。だから、相当利潤が上がっているということです。いや、首をかしげるのは違うのですよ。これは受刑者ですから、いろんな労賃に対してもらう金が世間一般並みとは言わないのです。そうしろということじゃないのです。なぜかならば、豚を売る場合には世間並みに売っているんです。大体百キロから九十五キロですと五万から六万で売るんですよ。いいですか、大臣。その収入は入るのです。ところが、世間並みの労賃を受刑者には払っていないのです。だから相当もうかってるという論拠、これはわかりませんか。これはわかるでしょう、非常に明快だから。大臣どうですか。
  211. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いまおっしゃるように、いわゆる外部でやる養豚業の労賃と刑務所内とは、これは違ってる。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 違う、それはあたりまえだ。
  213. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただ、その上がった収益と言いますか、それは先ほど局長からいろいろ説明申し上げましたが、そういう方面に使われておる、かように聞いております。
  214. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいやそうじゃなくて、私の言っているのは、問題点のまた一つとしまして――受刑者が外部並みの労賃を取るということじゃないんです。外部で飼育した場合には相当お金がかかる。売る額が同じなんですから、外部で豚を売るのも、この組合が売る豚の額も同じなんですよ。それだけの費用がかかってないわけです。相当もうけはあるんです。こういうこと、これを認識しないと困るんです。もうけは相当あるということですよ、この刑務所の中でやる養豚業というのは、事業というのは。事業です、これは明らかに。また最後に聞きますからよく聞いておいてくださいよ。実態がわからないって言うから、いろんな実態をどんどん言っているのです。しかも、さっき局長がおっしゃった、涙ぐましい物語だけじゃないんですよ。レクリエーションをやる、飲み食い代にも使う、そういう自分たちの飲食費にだったって幾らもここから使うのですよ。そうですね、局長
  215. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 率直に言わしていただきますと、飲み食い代と言われるとちょっと抵抗を感ずるわけでございまして、現金でこうしたものを配るというのは好ましくございませんのでいたしません。たとえば職務研究会をいたしたときに、きょうの研究テーマでよくわからぬ、それではもう少し続けてやろうではないか、それが夜になったと、そのときに食事を出します。それは現実には、結果的には飲食費になりますけれども、必ずしもそれをただ飲み食いをしているということじゃないんではなかろうか。やっぱり仕事に関連し、自分の知識を啓発するため、あるいは一杯飲む場合もありましょう。一杯飲んで知識交換をするというような場合にも使うのでございまして、ただ飲食代だけに使っているという点についてはひとつ御理解のほどをお願いしたいと思います。
  216. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務大臣、あくまでも法務省ですよ、あなたはね。国家公務員が知識の交換で一杯飲まなければだめだなんて、そんな論拠はどこから生まれるのですか。石原さんだからこれ許されるのですよ。ほかの局長だったら大変だ、これは。法務大臣、笑い事じゃないよ、あなたこれ。法務大臣ですよ。法の番兵の一番最高責任者ですよ。ロッキードのときはいろいろなことを言って、一番見識を持って格式が高い。こういうことになったら全く素人以上に論拠が支離滅裂じゃないですか。夜まで作業をやった、それで一杯飲んで知識の交換をやるんだ、許されるんだという、そんな論拠がどこにあるか。いま言ったこと当てはまりますか。そこだけ聞きましょう。まず聞きましょう、そこだけ、法務大臣
  217. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) それは私から言わせていただきたいと思います。
  218. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいよ、いいよ。  法務大臣、そういうこと許されますか、国家公務員に。それだったらみんなそのためのアルバイトをやればいいじゃないですか。みんな公務員は大変なんだから、大蔵省ではどんどんアルバイトをやっていく。ぼくが先頭になって養豚事業の経営者になりましょう、大蔵省の。こういう点もう予算編成で大変なんだから、夜になったらその収益で知識の交換のために一杯やるか。これは石原矯正局長が認めたのだと。これは笑い事じゃないよ、そんなものは。ぼくはおとなしいからこのぐらいで済んでいるのよ。本当ですよ。ぼくじゃなかったらこの委員会は大変だ、それこそ。法務大臣、いまの局長のそんな答弁、許される答弁じゃないでしょう。後ろにいらっしゃる方々は一生懸命やっている国家公務員ですよ。刑務所だけ何をやっているんだ、役人がアルバイトやっているんだったら、おれたちだってやりたいよ、この厳しい予算書づくりの中で一生懸命やっているのにと、笑い事じゃないよ、おこっていますよ。見てごらんなさい。みんなおこっている顔です。大臣、後ろを向いてください。おこっている顔だ。大臣をにらみつけています、みんな。そんなことで許されますか。間違ったって、国家公務員が収益を上げて、これで一杯飲んで知識の交換だなんて、しゃあしゃあ言う、そういう部下があなたの下にいることを許されますか、そんなこと。いいという前提からそんなものを考えたら大変じゃないですか。これは大変なことになる、法務大臣
  219. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 細かいことは局長から御答弁させますが、いま黒柳さんからいろいろ御指摘がありました。こういう問題を含めて、この問題はもう少し洗ってみたい、検討してみたい、かように考えております。世間から誤解を受けるようなことがあってはならない、かように考えております。
  220. 黒柳明

    ○黒柳明君 もういま現在誤解を受けていますね。いま現在やっぱり思わしくない、不適正であるということは認識していますね、大臣。
  221. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) おっしゃるようなことがあれば適当でないと、かように考えております。
  222. 黒柳明

    ○黒柳明君 おっしゃるようなことがあればということはどういうことですか。おっしゃるようなことがあればというのは何ですか、おっしゃるようなことがあればというのは。私がいま言ったようなことは思わしくないというのですか。
  223. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 刑務所内でこういう作業をして、そして不当にと申しましょうか、飲み食いに使っておるというような弊害があれば、これは正さなければならない、かようなことでございます。
  224. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう同じ議論を繰り返しても――これは細かいことは一ぱいありますから、実態論ですから。いいですね。実態論、これだけやったらどうしようもない。  それで総理府の人事局長、またいきましょう、そっちに。そういう実態があるから、思わしくないのがあるから言っているんです。認めているのです。どうですか。
  225. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) 先ほどお答え申し上げましたように、いま問題は、百四条にすぐいくのかどうかはっきりいたしませんけれども、服務全体を見ますと、たとえば勤務時間の問題、あるいは職務専念義務の問題等もございますし、およそ服務の根本基準の問題もございますし、同一人が国の仕事としてやっているのか、あるいは職員会というお話でございますが、こういう仕事としてやっているのかという点がはっきりしない行為もあるようでございますので、服務全体を見まして私は好ましくないというふうに思います。
  226. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまの点だけお教えしましょう。受刑者がいわゆる作業をやっているんですから、職員会全体いわゆる国の費用で――給料をもらっている公務員もそれに従事しているわけですよ。二またかけているわけですよ。当然受刑者は――まあ厳密にこうである、こうであるとは言えなくても、残飯の運びとか、整理とか、食わせるとか、あと業者との取引をするとか、管理をするとかいうのはみんな職員がやっているわけですよ。だからこの組合ぐるみでやっている、公務員がやっていることになっている、服務の実態は。こんなばかなこと考えられないじゃないですか。実態はそうなんです。石原さんに聞いてごらんなさい、そのとおりだと言うんです。受刑者二人、三人だけでやっているんじゃないんです。残飯食わせるぐらいはやっているかもしれませんよ、掃除ぐらいは。その管理から売買から何からやっているのは全部職員。職員全体がやっているんですよ。相当数あるいは一部の職員がやっているわけです、その仕事を。やらなかったらこれはできない。  だから職員組合としてやっているわけです。そうでしょう。その分の手当をもらっているのかどうか、そこまではわかりませんが、残業手当が出ているのかどうなのかわかりませんが、そこに問題がある。経理については何もタッチしてないです。任せっ切りなんです。そこに問題があるんですよ。そこまでいけない、時間がないから。そういうずさんな経営。会計検査院の方にも、先ほど問題がはっきりした点だけ調べてもらう。一番問題はそうじゃないんですよ。いいですか、三億から五億の収入、そのうちの実益が一億、その経理が何もわからないで所内部へ任せっ切りなんですよ。そこに弊害が起こってくるんです。そういうことなんですよ。ですから、服務の遵守の関係というのは受刑者だけじゃなくて、職員も含めてそれをやっていく、こういうことについては、これは全く百四条のこれそのものじゃないですか。それを許可なしにやっているんだから、だから私はここでこだわるわけですよ。
  227. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) もう一度お答えしますけれども、いま勤務時間中にそういうことをやっているとすれば、これはたとえば百一条の職務専念義務の違反というものに当たると思います。
  228. 黒柳明

    ○黒柳明君 やっているんです。やってますね。
  229. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 私は勤務時間中にやっているとは考えません。休憩時間あるいは勤務時間以後における連絡であろうと思います。
  230. 黒柳明

    ○黒柳明君 何を言うか。初めて大きい声を出した。  委員長、これは笑い事ではなくなっちゃった、こうなったら。勤務時間外にやっている、休憩時間にやっている――できるわけないんです、養豚事業管理なんていうのは。実態を一回調べてください。もし石原局長の言っていることがうそだったら、ぼくは徹底的にいまの問題、発言、この議事録を見て、でたらめばかり言ってますから、この次もう一回ぼくはやり直します。ぜひこれは実態を調べてください。  まず一点だけでそれならお聞きします。  勤務時間外に養豚管理事業をやっているか、やってないか、その一点からいきましょうか。と思いますと。まあ、これは思いますということで、やっていると、断定していません。私認めましょう、思いますと。思いますだけであって、実態はわからないんですね。やっているかわかりませんね、勤務時間中に。やってないと確信しますか。その一点だけ聞きましょう。
  231. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 石原矯正局長、その点はっきりしてください。
  232. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) この点は、先ほど時間がないので私も答弁を簡単に申しておりますが、たとえば電話をかけるときの電話料がわからないという点は……
  233. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃない。勤務時間中に作業をやっているか、やっていないか。
  234. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 通常の仕事のときにそういう話をする場合もないとは言えないであろうという気がいたします。そういたしますと、その分につきましては勤務時間中に連絡をしたということに相なるかもしれませんが、先ほど来の御質問でおわかりのように、これは刑務作業としてやっておりますので、それに従事している者は受刑者が中心でございます。それを戒護する職員がおります。しかし、これは職員会の仕事としてやっているのではなくて、受刑者の戒護でやっているわけでございます。そうやって残ります仕事は何かといいますと、いま管理業務という言葉を黒柳委員がお使いになりましたけれども、帳簿つけであるとか、あるいは飼料の購入であるとか、売り先を見つけるということであろうかと思います。こういう点は勤務に差し支えるような形での勤務時間を使ってやっていることは、これは絶対にないということ、そこは申し上げられます。実態的に、勤務時間中に一切合財養豚に関するような電話もかけない、それから帳簿づけもしない、頭でも考えないと、こう言われますと、これはちょっと私がここでもって絶対にないと申し上げることではなかろうと、こう言っているわけです。
  235. 黒柳明

    ○黒柳明君 頭で考えてもいいですよ、許しましょう。雑談してもいいですよ、これも結構です。ですけれども、業者との売買の取引があります。大きな問題です、これは。飼料の購入の取引の問題があります。これも大きな問題です。これは受刑者でやれませんから。まだ挙げればいっぱいあるのですよ。言ったってしようがない、実態をよく知っているのですから。そういう問題すべて、時間外でやっているわけないじゃありませんか。やれるわけないじゃありませんか。それをぼくは言っているのです。時間外にやっていますか。全国七十一カ所全部時間外にやっていますか。やれるわけないじゃありませんか。実態一番よく知っているじゃないですか。それをいま言ったんですよ。時間内でやっていれば、勤務中にやっていれば、百一条のたとえば服務専念規定、違反するということを言ったのですよ。  もうこれでやめましょう、時間がないから。
  236. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) その点は実態を仰せのとおり十分に調査しなければ軽々にはお答えできないことであろうかと思います。
  237. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、実態は知らないんですと、そういうふうに言った方がいいわけです。当然このことは勤務時間外にできる問題でないし、幾らもそれをやっている。そんなことは罪の意識がないんですから。法務大臣が罪の意識ないんだから、所長あるいはそれ以下の人が罪の意識があるわけないじゃないですか。そして勤務時間中にやっていれば百一条違反ですな。罰なんです、罰則規定の。
  238. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) 百一条の規定でございますので、それぞれ懲戒の対象になるとか、そういうことはあり得ると思います。
  239. 黒柳明

    ○黒柳明君 すぐそれじゃ人事局としても実態を調べてください。その、いま言った時間中にやっている。ぼくなんか資料ありますよ、それも含めて。  それから、百四条にも抵触する可能性があると思う。これも懲役ですね。あれすれば罰金刑ですね。そうですな、百四条。そうじゃないの。
  240. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) 百四条は……
  241. 黒柳明

    ○黒柳明君 三条か。
  242. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) 百三条じゃございません。百四条の方はありません。
  243. 黒柳明

    ○黒柳明君 一条、三条等、これはやはり厳格にやるべきですよ、法務省ですから。ほかの省庁と違うのですから。一応実態をしっかり調べて、私の調べたのもお出ししますから、それで処分すべきはきちっと処分すると。こういう方向でぜひとも速やかに調査してもらいたい。どうですか。
  244. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど来、局長からもいろいろ御説明申し上げておりますが、刑務所内の作業はこの養豚業とダブっておるような性質のものでございますから、そのけじめをはっきりつけなければならない。そういう意味でよく実態を見まして、正すべきものは正す、こういうふうにしたいと思います。
  245. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ初めと同じような認識に立っている。これ以上私言うことはないと思いますけれども、さっき言ったのは総理府の方に、はっきり先ほど言いましたけれども、実態を速やかにあれして正すべきは正すと、こういうふうにむしろ聞いたわけです。
  246. 菅野弘夫

    説明員(菅野弘夫君) 事実の問題につきましては私たちも調査をいたしますし、法務省からもいろいろお聞きをいたしたいと思います
  247. 黒柳明

    ○黒柳明君 法務省に聞くよりぼくに聞いた方が早いよ。知りゃしないです、そんなのは。済ません、以上です。
  248. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私、初めに日本全国の刑務所の状況の実態についてお尋ねいたしたいと思いますが、まずその尋ねる内容は三点にしぼってありますので、簡潔にお答えを願います。  まず第一点は、全国で何カ所の刑務所が現在あるのか。  第二点は、この刑務所に収容されておるのは、現在――最も近い現在です、どれぐらいおるのか。  第三点は、その刑務所の管理運営の状況はきわめてうまくいっているのであるか、あるいは問題点があるのであるか。このことについて概況をお尋ねしたいと思います。
  249. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 第一の数の問題でございますが、刑務所は全国に六十七庁ございます。拘置所が七庁でございまして、これを合計いたしますと七十四庁でございます。そのほかに再三でございましたか、後で数字を申し上げますが、別途、拘置支所、刑務支所がございます。  それから、八月末現在の収容者の数をたまたま統計でとっておりますが、支所を含めまして五万三百十人でございます。  それから施設の運営でございますが、最近はいわゆる監獄をめぐる情勢が厳しくはなっておりますが、職員の努力によりまして良好に運営されていると思っております。
  250. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの管理運営の状況につきましては、二、三掘り下げていきたい点もありますけれども、時間の関係がありますので、後日に譲りたいと思います。  そこで、次にお尋ねしたいことは、いま沖繩県の刑務所移転を間近に控えております。そのことに関して質問を進めていきたいと思います。沖繩刑務所の移転と、それからこの職員の待遇問題、これを中心としてお尋ねしたいんですが、この移転の時期は、はっきりもうめどが決まったのであるかどうか、そのことを初めにお聞きしたいと思います。
  251. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 落成式を挙行するというような日がいまだ決定いたしておりませんが、会計年度でございますが、昭和五十三年度代に移転することが予定されております。
  252. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 五十三年のいつですか。
  253. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 二、三、地元等と折衝いたすことがございまして、確定した日は申し上げる時期に至っておりませんが、本年末あるいは来年の一月から三月の間に入るかという時期の、なるべく早い時期に移転を完了いたしたいと、かようなことでございまして、まだ確定した日をいつごろだと言う時期にはいまだ至っておりません。
  254. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは相当前の話ですが、少なくとも九月から十月の末ごろには移転の予定であるということを答えられたことがありますが、そのことと、いまの、来年の三月ごろとのこのずれは何が原因ですか。
  255. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 実は前回お答えのときに、私の方で五十三年度の後半というふうにお答えを申し上げたことがあります。後半となりますと、暦年度でいきますと、秋ごろという意味で申し上げたのでございますが、主として現在は排水問題、それから後に御質問があろうかと思いますが、職員が移る関係の施設整備等をいたす関係で、当初の予定よりも若干遅延したというのが現状でございます。
  256. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ、いまお答えの時期に、もうそれ以上ずれることはないですね。
  257. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 予算的には本会計年度に完遂いたすことに相なっておりますので、本年の三月には、特段の事情が今後生じない限りはそれまでには移転できるものと考えております。
  258. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、職員のいまの定数ですね、現在何名おるか。このうちの知念の新しい刑務所に移転を予想されておる職員と、現在地に残る職員の振り割りはどうなっておりますか。
  259. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 現在沖繩刑務所の職員数は二百七十九人でございます。で、知念村に移りますと、拘署支所は那覇市に残さざるを得ません。したがいまして、刑務所と拘置支所に分けるわけでございますが、刑務所に行く者が百七十六人、拘置支所に勤務する者が百三人という割り振りになることを予定いたしております。
  260. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この移転問題をめぐって、その敷地決定までにも相当の紆余曲折があって、やっと決まって工事も着手されたわけなんです。ところが、いざ引っ越すとなると、いろいろ職員側から要望が具体的にしばらく前に出されておりますね。そこで、あの要望書を踏まえて検討をされたであろう、それが現時点ではどのように解決されておるのであるか。そのことについて一問一答すると時間がかかりますので、一応要望項目だけを挙げますから、答えだけを明快に答えていただけば結構です。  まず第一点は、託児所の設置ですね。託児所の設置の要望が、これはどうなっておるか。  第二点、集会室、娯楽室を設置してほしいという要望が出ておるが、それがどうなっておるか。  第三問、職員の子供さん方の学校への通学路。通学路の整備は現在どうなっておるか。  四つに、遊園地を設置してほしいという要望がありますが、これがどう解決されたか。  五つに、施設内に売店、食堂の設置運営をという要望が出ておりますが、これがどのように決定されておるか、解決をしていこうとしておるのであるか。  六つに、診療所の設置、同時に医者の確保ですね、診療所の設置と医者の確保。特に医者の確保いうと、沖繩現地自体でも非常に医療問題に関連して医者の問題は非常に困っておるわけですが、特にこの問題に関連しても、現地で医者を求めることは非常に困難だと思いますが、その点非常に気になるんです。  七つに、電話回線がないので赤電話を設置してほしいという要望が出ております。これがどうなっておるか。  八つに、あの地域は、沖繩では独特のハブがおるわけですが、そんなにこわいほどおるというわけでもありませんが、とにかくある地域によっては多い地域があるわけです。この地域もハブ地帯だと言われております。ハブ生息地帯なので街灯を設置してほしいと、周辺の道路を整備せよ、こういうことも要望されております。  それからバス路線を確保してほしい。  十番目に、宿舎にガス器具を設置してほしい。  十一番に、現在の公務員宿舎を継続使用させてほしい。  こういう具体的な要望が出ております。十分検討されたと思いますが、その答えは、解決はどのように出されておるか、お尋ねします。
  261. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 順次お答え申し上げてまいります。  第一の託児所でございますが、これは近接の部落に村立の託児所があるようでございまして、これを利用させるというふうになっておりますが、移転後独立採算がとれるというような諸条件が整いました暁には、共済組合の経営で設置することをも検討したいと考えております。  二番目の集会室、娯楽室でございますが、これは現在独身寮になっておりますのを、護送の職員が参ったときの宿泊施設に充てます。そういたしますと、あいてくる建物に構外待機所がございます。これを集会室、娯楽室として利用させるよう配慮いたしたいと存じております。  四番目の児童遊園地、これは設置する予定でございます。  それから……
  262. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 通学路は。
  263. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 失礼しました。  三番目の通学路を含む道路の整備につきましては、現在村当局と協議中でございます。いずれにいたしましても、お子さんが学校に通学する際に御不便をかけないような措置にいたしたい。  それから四番目の児童遊園地、これは設置いたします。  五番目の売店、食堂でございますが、これは共済組合で業者等に経営委託して実施する予定となっております。  六番目の診療所でございますが、この点につきましては、共済組合の経営で実施する予定でございます。  医者の確保につきましては、御指摘のように、非常に困難な点がございますが、現在医師の確保に最大限の努力をいたしておるところでございまして、医師会に対しまして御協力を要請いたすなり、琉球大学の付属病院への協力等を要請いたしまして、これは受刑者のみならず、職員の健康管理にも十分な点を期したい、かように考えております。  それから、七番目の赤電話、八番目の夜間街灯、これに伴う周辺道路の整備、これはいたす予定でございます。  それから、九番目のバス路線でございますが、現在バス会社と折衝中でございます。  十番目の宿舎のガス供給設備でございますが、これは設置いたす予定でございます。  最後の、現に使用している宿舎の継続使用でございますが、御承知のように、刑務所の勤務といいますのは、二十四時間受刑者を国家が身柄を預かって処遇するというような関係上、職員も夜間勤務が要請されるわけでございまして、そのために宿舎は刑務所の近くにできているのが現状でございます。したがいまして、原則といたしましてはやはり刑務所の近くに移っていただかなければならないであろうと、これが矯正の責務を全うするゆえんであろうと思いますが、たとえば共稼ぎ等によりまして那覇市内に奥さんがおいでになるというような事情ももちろんございますので、こうした継続使用、現在那覇にある宿舎を継続しなければならないという事情にある者につきましては、移転実施時におけるそうした者の人数その他の状況を十分考慮いたしまして、継続するように努力いたしたい、かように考えております。
  264. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの回答で大分解決のめどがついたことは非常に結構だと思いますが、未解決の問題につきましてはぜひひとつ最善の努力をしていただいて、要望にこたえていただきたいと要望しておきます。  次に、通勤手当の問題特殊勤務手当あるいは準僻地の取り扱いにしてほしい、こういった要望も出ておりますが、これについてはどのように検討され、また理解しておられるでしょうか。
  265. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) いまの手当につきましては、人事院の指定を受けなければなりません。人事院と協議するに当たりましては、やはり生活が著しく不便であるかどうかという点を明らかにしなければなりませんが、そのためには、従前から学校との関係、役場との関係、病院との関係、郵便局との関係、あるいは駅――鉄道の駅はないようでございますが、停留所までの距離、交通機関があるかないか、あるとすればその頻度等を基準によって評価して、一定の基準に達した場合にはいわゆる特殊勤務手当の支給の対象になる、こういう方法をとっております。  そこで、この点についてでございますが、いずれにいたしましても、移転したときの状況に応じて判断しなければなりません。たとえば交通機関で、バス会社等とも折衝いたしまして、バスをたくさん出してくれるようにというようなことをいま交渉中でございますが、そうしたあらゆる要素が固まりました段階において、先ほど申し上げましたようなファクターを十分考慮いたしまして、必要がありますれば人事院と協議したいと、かように考えております。
  266. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 他の組織、団体との関連性が法的にもあるわけですので、そういった点もお含みの上、ひとつ善処へ努力していただきたいと思います。  次に、大臣にお聞きしたいと思います。それは労働時間の問題についてであります。  と申しますのは、申し上げるまでもなく、今日民間週休二日制あるいは週四十時間労働時間の方向に進みつつあることは申し上げるまでもありません。また公務員の場合でありましても、一般的には週四十から四十四時間であり、それから刑務所保安職員の勤務時間はそれと異なりまして四十八時間と義務づけられております。四十八時間以上にならぬと超勤も認めぬ、こういった特殊の立場に置かれておるわけですが、この刑務所職員に準ずる、このような状態に灘かれておる立場の職務労働者があるかどうか、これが一つ。  そうして、この労働時間の問題については一体どのように考えておられるかどうか。  それから三つには、この四十時間ないし四十四時間労働に短縮をしていくという、あるいは週休二日制の実施についてはどのように考えておられるのであるか。そういった点を含めて、ひとつ大臣の御見解をお聞きします。
  267. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 労働時間の問題はきわめて重要な問題でありますが、週休二日制の問題全般といたしましては、喜屋武さんも御承知だと思いますが、政府はいま試行実施をしてみようと、こういうことで、どういう状態に国民に対するサービスとの関係影響があるか、支障はないか、こういうことを現に実施中でございます。細かい点については、刑務所関係については矯正局長からお答えいたしますが、刑務所の勤務は、御承知のとおり他の場所と違った勤務状況がありますので、問題は人をいまたくさんふやせるという状況じゃありません、国家財政その他の関係から。それとの兼ね合いで、政府としては現状の人員でどのくらい週休二日制に応じられるか、仕事の繁閑を考えながらいま試しに実施をやっており、二年目でございますが、その結果を見てどう実施をすべきかということを検討したいと、こういうようにしておるわけでございますが、刑務所作業については局長からお答えさせることにいたします。
  268. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) ただいま大臣から御答弁のございましたように、刑務所はやはり特殊な勤務形態をとらなきゃならない要素がございます。事務官庁と違いまして、夕方になればそのまま帰れるということではございませんで、夜間勤務というものもどうしてもあるわけでございます。そのほか、休日をも含めまして夜間をも処遇するという関係がある関係から、やはりほかとは違う要素が出てくるであろうというふうに思っております。  しかしながら、仰せのように四十八時間を四十四時間とするようなお話もありまして、仮にこれをしない場合には、刑務所職員の勤務条件が非常に過酷になる、ひいては有能な人材を刑務官として採用できなくなるという心配もございますので、私どもといたしましては、勤務時間の短縮あるいは週休二日制の導入はできるだけそれを取り込んでいきたい、かように考えております。  しかしながら、刑務官だけが楽になりまして、受刑者の処遇あるいは少年院、婦人補導院に入っておる者の処遇が停滞することになりますとこれまた問題がございますので、まず、勤務時間の短縮につきましては、事務の省力化を大幅に行って、どれだけ人的余力が生ずるか、その点を明らかにして、必要な人員についてはやはりお願いをしなければならないのではないか。  いずれにいたしましても、その実態を十分に把握しようということで努力しているところでございます。  それから週休二日につきましては、大臣も申し上げましたが、刑務所三十一庁、少年院二十一庁、鑑別所二十三庁、それから婦人補導院一庁で試行あるいは試行計画中でございます。  喜屋武委員の御関心のあります沖繩刑務所につきましては、ことしの九月三十日から明年三月二十三日の間試行をいたしたいということを考えておりますが、これらの試行ができた段階で週休二日制を実施することができるかどうか、仮にできないとすればどこに問題点があるかという点を明らかにしたいというふうに行政当局では考えているところでございます。
  269. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 労働時間の短縮ということ、これは申すまでもなく時代の趨勢でありますし、また特に刑務所という職場が非常に緊張感の連続という、こういった特殊な職場でもありますのでよけいこの点を配慮すべきじゃないか、こういうことも思われますので、ひとつこの点についてはぜひ善処して解決の方向へ努力していただきたいことを強く要望しておきます。  次に、宿舎の設備についてのまた要望があります。それは、庁舎は水洗便所であるけれども、職員宿舎は非水洗便所のところがあるわけですね。それをどのように改善しようとしておられるのか、その点ひとつ。
  270. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 実は非常に、恐らく御激励の趣旨での御質問であろうかと思いますが、宿舎の非水洗という点につきましては私も頭を悩ましているのでございます。庁舎が水洗になりながら宿舎が非水洗であるという個所が非常に多いのでございまして、現在これは官房営繕課とも十分協議をいたし、財政当局にも事情をお話しいたしまして、できる限りの努力をもちまして宿舎の水洗取り組みについて努力をいたしておるということでございます。現在は那覇の古いものを建てかえまして、建てかえた分については水洗化するという方策をとりあえずとっているところでございます。今後新しくできるところはもちろんのこと、努力を重ねていきたいと考えているところでございます。
  271. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 持ち時間が差し迫ったようで通告が来ておりますので、問題をまたまとめてお尋ねしますので、お答え願いたいと思います。  まず第一点は、職員のサービスについて、図書室の設備あるいはその他教養施設整備をすべきだと、こういった要望があります。これが一つ。  次に地域住民との関連ですね、刑務所というとやっぱりある程度拒否反応もあるわけですが、その地域住民との関連、広報活動、一般の人々に対する矯正処遇のそういったものを知ってもらわなければいけないといこう思うんですが、その点の御計画はどのようになさるつもりですか、またなされておるのであるか。  次に、特に村民からの強い拒否反応がありましたのが排水の問題ですね。知念村漁業協同組合で、たしか昭和五十二年の五月の末ごろだったと、三十日だったと思いますが、決議がなされております。刑務所施設からの排水を海に流すことは絶対反対である、漁場が汚染されると漁民にとってまさに死活問題である。その近くの海は非常にいい漁場であるわけですが、この問題はどのように対処されておるか。解決済みであるか、まだ未解決であるか、またどのように対処しようとしておるのか。  次に、沖繩刑務所の、これはちょっと申し上げるのも気がひける点もあるわけですが、他県から赴任された職員と沖繩の採用された職員との間におもしろくない空気、トラブルがあるようなことを向こうの機関紙で見たことがありますが、ハブ新聞というような機関紙がありますが、そのことは、これは特殊な職場であるだけに職員同士の精神的な摩擦、対立があるということは、これは非常に残念なことだと思うんですが、その点現在どうなっておるか、またそのことを御存じかどうか、そのことをお伺いしたい。  最後に、沖繩刑務所が知念村に引っ越しますというと、拘置所は残るわけですが、その跡地利用にはいろいろな経緯から要望があるわけですが、その跡地利用については、法務省とされては、あるいはこれは最終的には大蔵の責任かと思いますが、立場かと思いますが、この跡地利用についてはどのように考えておられるか。  以上お答え願いまして私の質問を終わります。
  272. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 第一の図書室の整備につきましては、これは整備いたしたいと存じております。それとともに、先ほど黒柳委員の御質問の際にも申し上げたのでございますが、収容者の図書室と職員の図書室を比べますと、どうも本の冊数等は収容者の方にあって職員の図書室の方にはないというような現状でございますが、この点につきましても、教養の向上という観点、あるいは視野を広めるという観点から、図書の内容についても今後予算的措置と相まちまして整備していきたい、充実していきたい、かように考えております。  第二の点は、地域住民への広報活動でございます。この点につきましては、昭和四十九年からいわゆる新しく建築されます沖繩刑務所の構想に関しましてパンフレット等を作成いたしまして、村の方々、あるいは村議会、あるいは知念村全区において説明会を実施した際、配付いたしました。さらに昭和五十二年には、刑務所の、後で出てまいります生活用水に関する問題が出ましたので、これのパンフレットも作成いたしまして説明会を行い、配付を行っております。こういう点を含めまして、矯正行政に対する御理解、あるいは今後の矯正についての部外協力者としての御協力をお願いしたいと、かように努めているわけでございます。  そのほかへ新しい沖繩刑務所におきまして診療所等を設けます。そのほか運動場等を設けます。これはテニスコートとかバレーコート、野球場でございますが、これにつきましても、当方で使わない場合には地域住民に開放いたしたいと。あるいはまた、さらに地域住民と職員との間での競技会等を行いまして、地域に密着した矯正の樹立に今後とも努力していきたい、かように考えております。  それから第三の刑務所からの排水の処理の問題でございまして、汚い水を海へ流してもらっては困るという御要望がございました。この点はそのようにいたすべく、現在いわゆる高性能浄化槽、性能の高い浄化槽によりまして三次処理を行うというところで、農業、漁業への悪い影響を及ぼすようなことはないように努力をいたしております。この点についてはやや未解決の点もございますが、村当局及び関係地元住民と目下いろいろお話し合いをしている段階でございます。  第四の沖繩御出身の方に対する差別的言動の点でございます。矯正職員は、もう御承知のとおり、被収容者を人として尊重し、人たるに値する生活をいたさせまして社会に復帰させる、そのための適応能力をつけるわけでございまして、そうした任務を持っている者が差別的なことをするということが許されないことであることは言うまでもございません。ただ、沖繩が復帰いたしまして、沖繩の方が日本の刑務所に転勤になったような際に、これまでの執務形態と違うような点がございましたので、中には心ない者が失礼に当たること、あるいは侮べつに当たるようなことを言ったのではないかと、またそういう点があるというような話は、私も矯正局長になる前でございますが聞いたことがあります。しかし、かようなことがあってはなりませんので、現在では現地施設長を通じまして厳しい指導体制をとっております。  いずれにいたしましても、矯正職員には、厳しい勤務条件のもとで犯罪者を処遇するというむずかしい仕事をいたすわけでございまして、どうしても使命感が強いということが一番要求されます。その意味におきましても、沖繩が復帰して相当な年月になるわけでございまして、いわゆるそれまでの者と沖繩の者とが一緒になってりっぱな矯正の伝統をこれからつくり上げていくという点につきましては、今後とも指導監督を十分にしていきたいと、かように考えております。  最後に第五といたしまして、跡地利用計画でございますが、先ほど指摘のように、現在の沖繩刑務所の敷地は大蔵省所管の普通財産でございまして、これを大蔵省の承認を得て現在使っているのでございます。沖繩刑務所の移転に伴いまして、先ほど申し上げましたように、拘置支所を残さなきゃなりませんので、現敷地の一部に沖繩の拘置支所、それと宿舎を整備いたしております。この拘置支所と宿舎を残したあとの敷地でございますが、これらにつきましては、行政合同庁舎、家庭裁判所、法務合同庁舎、それから公園というような用途に充てられると私どもは聞いております。  以上でございます。
  273. 江田五月

    ○江田五月君 少年の保護処分の処遇の問題について多少伺っておきたいと思います。  御存じのとおり、保護処分というのは、少年法では保護観察とあとは少年送致。少年送致が初等少年院送致、中等少年院送致、特別少年院送致、医療少年院送致と分かれて、さらにいろいろの少年院もそれぞれ特性を持ったものが数多く設置されておりますから、その限りではかなり少年の特性に応じた処遇ができていないわけではなかろうと思いますが、それにしても、やはりこれだけでは処遇が非常に画一化されているというような難点があって、そのため多様な少年保護の実務的な要請にこたえられないといううらみがいままであったかと思うのです。そういうこともあって、家庭裁判所の方で、在宅の試験観察の制度とか、あるいは補導委託の制度とかが相当大幅に実施されてきた。これは少年法との整合性を合わせるために、審判の必要上、経過を観察するんだというようにして理屈はつけておりましたが、その実態としては、いわば家庭裁判所サイドの実務家の現実の必要から生まれた一つの保護処分の創造なんだというようなことも言われていたことは御承知のとおりです。ところが、こういった保護処分の多様化というのが必要だというのが、少年法改正の議論と絡んで、改正に賛成の立場からあるいは反対の立場から、いずれにしてももっと多様化していかなきゃならぬという議論がいろいろ行われておりましたが、最近かなり多様化してきたようなことを聞くわけであります。いままで聞いているところでは、従来相当前からありました交通に関して短期の処遇を行う少年院、これが一部地域のみであったものが相当広範囲に設置されたと。それから、あとはやはり交通について、短期で解除をする保護観察の制度を取り入れるようになった。それと交通でなくて、一般の非行少年について短期の処遇課程を持つ少年院を大幅に設置したというようなことを聞いておりますが、ほかに、いま申し上げたような処遇の多様化というような点で何か工夫がございましょうか。
  274. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 十分私どもの方の時代に合った変転につきまして御理解あるお話を承りまして、感謝申し上げるところでございますが、矯正に関する限りにおきましては、ただいま御指摘の点をこれから充実していきたい、かように考えております。  そのほか特につけ加えますと、私どもが念願いたしましたのは、先ほど整合性というお言葉がございますが、やはり次代を担う青少年の健全なる育成につきましての国民的関心はきわめて高いと思われるのでありまして、その点は家庭裁判所に事件が集中されるということから、家庭裁判所との連絡調整、特に十分御意見を聞いて処遇をいたすという点を、一つ全般の運営の改善をめぐる指標といたしております。それと、とにもかくにも保護機関にお渡しして、保護で十分な社会適応性をつけていただくということから、保護との連絡の有機的連携を図るという点に重点を置いております。  それから、さらに少年がたくさん入っておりましたときにはいろいろな御批判も受けましたが、少年の処遇につきましては、画一的な集団処遇であってはならないのでございまして、いわゆる処遇の個別化を図らなければならないという点につき、私どもも保護の機関とも協力をいたしまして、それを十分にいたしたい。  最後に、先ほど申し上げましたように、国民的関心が高い少年の問題でございますので、関係機関あるいは社会一般の方々の御理解を得た少年矯正を実施するという点、以上大きなところだけ四つ申し上げましたが、その点を重点に置いているところでございます。
  275. 江田五月

    ○江田五月君 そうしますと、いろいろ連絡をやっていくというようなことはこれは当然なことでありますけれども、処遇の実際の問題としては、新しくできた、先ほど言った交通短期保護観察、それから交通の短期少年院、これは短期少年院という少年院が別にあるわけじゃありませんが、そういう言葉で言わしてもらいますが、それと一般の短期の少年院、この三つの制度ですが、こうしたものは、保護処分の実施、処遇の実際の中で、いずれも相互に有機的な関連がなければならないわけでありますし、さらにまた、私は、この短期の収容保護が非常に意味があると思いますが、一般によく短期の収容、特に成人の場合には、短期懲役刑は害こそあっても益は何にもないのだというようなことも言われるわけでありまして、そういうことも考えますと、こうした三つの制度を新たに設けるについては相当綿密な準備なりあるいは検討なりが必要であったんではなかろうか、いろんな関係者の意見も聞くべきものであったろうと思われますけれども、どういうような機関が一体どの程度の期間検討をされた結果こういうものが採用になったのかということをお知らせください。
  276. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 少年院の運営につきましては、昭和二十四年に少年法ができまして以来、矯正当局初め保護も同様でございますが、関係機関において常に改善に努力をしてきたところでございます。特に御承知のとおり、少年は可塑性に富む点がございますし、時代の背景、時代の変転というものを受けやすい立場にございます。したがいまして、少年矯正あるいは少年保護というものは時代の推移にのっとった処遇でなければならないということでございます。ところが、遺憾ながら過剰収容時代が昭和三十年代にございましたが、そのときに悪風感染あるいは犯罪学校化しているという悪い評判が立ちました。現実にさような欠陥が出た点もございますが、その後特に少年矯正におきましては、その改善に努力を重ねてきたところでございます。  もう申すまでもなく、いわゆる刑事政策の進展といいますのは、少年矯正に対する新しい施策を取り入れていって、それが成功した場合に順次成人に押し及ぼしていくという形になるわけでございますが、この短期の処遇につきましては、先人が数庁におきまして実施をいたしてまいりました。その効果が非常に高かったのでございます。さらに最近の少年の傾向を見ておりますと、私どもの犯罪白書等にも書かれておりますように、少年で、昔はいわば欠損家庭というようなところから少年犯罪が多かったのでありますが、一応の中流家庭と見られるところで犯罪が出ている、非行が出ているという傾向がございます。それから、特に高等学校がそうでございますが、いま高等学校が義務教育化いたしまして、相当数の方々が義務教育と同様な形で高等学校に子弟を入学さしているという傾向がございます。そうしたときに、これまでのように長い期間入れていく少年矯正では時代の要請に合わないのではないかということが出てまいったのでありまして、そのために、先ほど申し上げましたように、数庁でもっていわゆる短期処遇等を実施いたしまして非常に成果を上げていったということがございました。  そうしている間に、家庭局あるいは家庭裁判所、それから保護ともいろいろ今後どうするかということを話し合っておりました。さらに少年法改正が論議されまして、その中におきまして少年矯正についてもいろいろな御要望が出たわけでございまして、その御要望を一言で申し上げますと、やはり長期に、長く入れておくというのは必ずしも少年のためによくないのではないか、やはり少年は規範意識の低いために起こった犯罪あるいは享楽的動機に基づいた犯罪があるのだけれども、これについては短期間の収容、処遇によって規範意識を回復する、遵法意識がつけられるということがあるのではないか。まさに前から先人がやっておりましたその効果と一致したわけでございまして、その後いろいろと家庭局あるいは保護等等、あるいは検察警察関係機関の御意見を伺いました結果、通達ではございますが、矯正局長通達をもちまして、短期処遇を拡大していく、そして効果を上げていこうということで実施いたしました。  幸いに家庭裁判所の御協力あるいは保護の御協力等も得まして、現在までのところは大きな効果を上げていると信じております。  もとよりそこでの御心配は、短期に入れておいて果たしてよくなるのかという点がございますが、先ほど申し上げましたように、少年に可塑性があるものですから、審判の段階においては短期に入れてもいい。ところが入れてみていろいろやってみたところが、とても短期間――いわば六カ月入れるということで、五カ月程度で仮退院するわけでございますが、それでは十分でないという場合には、家庭裁判所の御意見も承りまして、長期の少年院の方の処遇に移すということも考えているわけでございます。
  277. 江田五月

    ○江田五月君 いまの矯正局長通達は、これはいつお出しになったものですか。
  278. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) 五十一年の十二月に一応試行通達を出しまして、昨年の五月二十五日付をもって、これを本通達に直し、六月一日から短期処遇というのを正式に実施しているというのが現状でございます。
  279. 江田五月

    ○江田五月君 保護観察の方も同じですか。
  280. 高田治

    説明員(高田治君) 短期処遇を実施する少年院からの仮退院の問題は保護局所管でございますので、最高裁判所並びに矯正局と綿密な……
  281. 江田五月

    ○江田五月君 いや、そうじゃなくて、交通短期保護観察に関する通達も同じでしょうかという質問です。
  282. 高田治

    説明員(高田治君) 失礼いたしました。  交通短期保護観察につきましては昭和五十二年三月二十四日付保護局長通達を出しております。
  283. 江田五月

    ○江田五月君 ちょっといまの保護観察だけ聞きますが、短期の保護観察が、この五十二年三月二十四日の保護局長の通達によるものは、三カ月経過してその間に再犯がないという場合には解除可能ということでしたと思いますが、その前に、一般の保護観察じゃなくて、短期に六カ月程度経過して三カ月程度良好な状態の場合は解除していいという通達がたしか出ていると思いますが、これはいつ出ていましたかね。
  284. 高田治

    説明員(高田治君) 当初は昭和四十年に保護局長の通達が出たのが始まりでございます。その後、昭和四十九年六月二十二日に保護局長の通達が出ております。同じく六カ月程度で成績良好な場合に保護観察を解除するという考え方はすでに昭和四十年の通達に出ておりましたわけでございまして、それが、昭和四十九年の仮釈放及び保護観察等に関する規則が制定された機会に新たに通達が出まして、昭和四十年の通達と同趣旨の通達が出たわけでございます。昭和四十九年四月一日でございます。  しかし、昭和五十一年春ごろから最高裁、家庭局と綿密な御協議をいただきまして、従来六カ月程度で保護観察を解除していたやり方とは別に、現在の大量の少年の交通事犯を見ますと、さらにもっと短縮した三カ月ないし四カ月程度で保護観察を実施して処遇効果を上げる交通少年がいるのではないかという発想に基づきまして、従来の通達とは別に、三カ月ないし四カ月程度の短期の保護観察で解除するという通達を出しております。
  285. 江田五月

    ○江田五月君 昭和四十年に短期の保護観察に関するこれを実施することを可能にするような通達が出されているのに、実際問題としてはその通達に従った短期の保護観察というのはそれほどなされていなかった。多少の庁で試行的に行ったものはあると思いますけれども、全国的にはなされていなかった。ところが、今度新しいものをお出しになって、これはどの程度全国規模で広がっているのかという点が一つと、それから、前に、同じようなもので全国的に必ずしも広がらなかったことについてどういう反省の上で今回のものをお出しになったのか、その積み重ねがやっぱりなければ、ただ新しくやればというだけではいかぬのじゃないかと思いますが、そういった点をお伺いしたいと思います。
  286. 高田治

    説明員(高田治君) 従来の六カ月程度の保護観察期間で保護観察を解除するという通達が実効を上げたかどうかということでございますが、聞くところによりますと、その間家庭裁判所の決定になった保護観察対象者の質といいますか非行性といいますか、それが非常にまちまちであったということから早期に解除できなかったということもあるということに聞き及んでおります。それで昭和五十二年四月一日からの交通短期保護観察というのはそれとは別でございまして、より短期の保護観察を実施することによって処遇効果を上げる事案があるという前提に立って実施していくわけでございます。もちろんその間私どもの経験としましては、特に昭和四十七年当時、千葉保護観察所で千葉家庭裁判所の大変な御指導と御協力をいただきまして実施した実績がございまして、今度新たな通達の実施につきましても、その四十七年当時からの千葉保護観察所の経験を非常に参考にしまして実施に踏み切った、こういう経緯でございます。
  287. 江田五月

    ○江田五月君 矯正局長に伺いますが、いまの短期の少年院の制度の導入についていろいろ関係官庁の御意見を伺ったということがありましたけれども、それだけでなくて、たとえば学者であるとか、あるいは少年の教育関係者であるとか、あるいは精神医学の関係であるとか、そうしたような矯正にいろんな関係で携わっている方々以外の人の意見というのをどの程度聴取されているのかということ、これをちょっと伺っておきたいと思います。
  288. 石原一彦

    説明員(石原一彦君) この点につきましては、あるいは十分ではないという御批判があるかもしれません。と申しますのは、私どもといたしましても矯正に御理解のあるいわゆる委員会、それから私どもに講義に来てくださる方等々以外の方の御意見も聞きましたが、いかんせん日本全国にわたります上に、相当数の方々がおられまして、たとえば公聴会を全部開いた上というような点にはならなかったのでございます。したがいまして、委員会その他の方々、これは少年保護部会のほかに矯正保護審議会等もございまして、そこに御列席されている方の御意見は承りました。そのほかは矯正研修所及びその支所に講義等においでになっていただく方から御意見を承ったのでございます。  と申しますのは、私、よく言うんでございますが、好事門を出ず、悪事千里を走るということでございまして、三十年代の過剰拘禁当時における少年院の処遇の悪さ、これのみが非常に喧伝されて、いいことをやってもなかなか世間の方にお認め願えないという点がございました。そういう点もございまして、率直に御意見を伺うという、何といいますか、すそ野を広げた矯正のPR等々が十分に行われていなかったきらいがございますので、直接そうしたことに御関心を持っておられる方とも接触が少なかった。しかしながら、これを実施いたしましてから、少年院の御見学あるいは御視察等をいたしていただくようになりまして、先般も実は参議院の法務委員会の方々がおいでくださったのですが、やはり実態を見ていただいて、現在のいい処遇というものを御理解願いたいということで努力いたしてまいりました結果、われわれが直接、いままで接触のなかった方々からも御激励あるいはいい御批判をいただきまして、そうした御意見を謙虚に取り入れて、今後とも少年矯正の充実に資していきたい、かように考えます。
  289. 江田五月

    ○江田五月君 いまおっしゃっている点、まことにごもっともなんですが、やはり少年の保護矯正というのは、社会一般の理解というものがどうしても土台に必要なわけで、ああ保護観察になった、えらいことだと、少年送致で大変だというようにすぐ受け取られてしまうということがあってはなかなか矯正の実が上がるものじゃない。そうすると、こうしたせっかく一つのいい制度をやられようとするときに、たとえばこの機会に家庭のお母さん方の理解をもっと深めてもらうような、あるいは学校の理解を深めてもらうようなことのためにも、そうした人の意見をずっと聴取した上で、一つの制度をつくるということがなされたらよかったなというふうに、まあこれは感想なんですが、思います。  それと、もう二十五分でこれだけのことを聞くのはとうてい無理で、いろんな質問をはしょることになりますが、最後に、やはりそれにしても少年保護というのはどうしても官の側では無理なんだという意見があるんですね。先ほどの話じゃありませんけれども、ちょっと豚を飼ったらすぐ経理がどうとか、違法性がどうとかいうふうな議論になってしまう、そういう枠組みの中で少年保護をやるということはやっぱり非常にむずかしいんだという声も一部にはあるわけで、これにも十分耳を傾けなきゃならぬという気はするわけです。ですから、先ほどの豚の話だって、余り後ろ向きの答弁じゃなくて、刑務所の方はよく知りませんけれども、事、少年院に関する限りは豚を飼っているところでやっぱりそれなりの効果を上げているんじゃないでしょうか。そうした配慮をもっとしていかなきゃいかぬだろう、だからそれに多少違法の疑いがあるなら法的な手当てを十分するということを考えるべきであって、後ろ向きになっちゃいけないんじゃないかという気がするんですけれども、そういう意味で、こういう画一化されたいままでの処遇から非常に多様化の方向へ進まれたことをさらに進めて、心の通った本当に個別的な処遇をもっと進めていただきたいということと、それから大臣に伺っておきますが、そういうような状況で、いま保護の現場というのは本当に真剣に、ある意味では非常な犠牲を払って職員の方々が保護に当たられているわけでして、せんだってもある少年院に伺ったところ、マスコミの方が来ていろいろ取材をされた。非常にいい、高等学校とどこが違うんですかという質問があって、高等学校の先生ならまた帰ってこいよと少年に言えるけれども、ここではまた帰ってこいよとは言えないんだという、そういう話を伺ったんですが、そうした社会の裏方さんとしてやっていらっしゃる矯正の方々に対して、もっと、妙なところで挙げ足取られるんじゃなくて、十分な予算措置もする、あるいは心を通わせるという姿勢が必要なんじゃないかと思いますので、その点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  290. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ありがたい御意見をいただきまして厚くお礼を申し上げます。  おっしゃるように、少年の保護更生といいますか、これは画一的であってはならないと思います。少年は何といっても未熟といいますか、社会機関等に対する未熟、そういう点から非行に走るわけでございますから、やっぱり愛情を持って成熟をさせる、心身ともに成熟をさせる、こういう意味でいかなければ、ただ懲罰的だけでは間に合わない、かように考えます。仰せのとおりに、われわれもいろんな御意見を承って、また効果的な方法に全力を挙げたい、かように考えております。
  291. 江田五月

    ○江田五月君 終わります。
  292. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 他に御発言もなければ、法務省及び最高裁判所決算につきましてはこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会      ―――――・―――――