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1978-02-27 第84回国会 参議院 決算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十七日(月曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  二月十五日     辞任         補欠選任      矢田部 理君     宮之原貞光君  二月十六日     辞任         補欠選任      井上  計君     三治 重信君  二月十七日     辞任         補欠選任      安武 洋子君     渡辺  武君  二月二十二日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     安武 洋子君  二月二十七日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     降矢 敬雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        茜ケ久保重光君     理 事                 斎藤 十朗君                 坂元 親男君                 長谷川 信君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 石本  茂君                 北  修二君                 藤川 一秋君                 降矢 敬雄君                 案納  勝君                 寺田 熊雄君                 丸谷 金保君                 和泉 照雄君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 喜屋武眞榮君                 野末 陳平君    国務大臣        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        経済企画政務次        官        前田治一郎君        経済企画庁長官        官房長      高橋  元君        経済企画庁長官        官房会計課長   小林  進君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君        科学技術庁長官        官房会計課長   剱持 浩裕君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁長官官房        審議官      石渡 鷹雄君        環境庁長官官房        会計課長     高橋 盛雄君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        気象庁長官    有住 直介君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        国土庁長官官房        震災対策課長   城野 好樹君        水産庁長官官房        漁政部長     矢崎 市朗君        資源エネルギー        庁石油部精製課        長        清滝昌三郎君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十九年度特別会計  歳入歳出決算昭和四十九年度国税収納金整理  資金受払計算書  昭和四十九年度政府関係機関決算書(第七十七  回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十七回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二月十五日、矢田部理君が委員辞任され、その補欠として宮之原貞光君が選任されました。  また、二月十六日、井上計君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。  また、本日、岩崎純三君が委員辞任され、その補欠として降矢敬雄君が選任されました。     —————————————
  3. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、昭和四十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、総理府のうち、経済企画庁科学技術庁及び環境庁決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野口忠夫

    野口忠夫君 経済企画庁にお尋ねいたしたいと思いますが、平河会という宮澤経済企画庁長官中心とする自民党の政策集団と言われる会がありまして、この平河会が「中期展望に立つ経済改革提案」をまとめて発表されておりますが、間違いございませんか。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平河会は、過去五年の間に何回か国のいろいろな問題について提言をいたしておりますが、ことしの一月にも最近の問題について提言をいたしたように承知しております。
  8. 野口忠夫

    野口忠夫君 長官が主宰する会合で公表されたものですから、今日のわが国対策方向に相当の影響を持つものと判断されますので、この点について二、三お聞きしたいと思います。  提案の中の一つに、年金、保険、児童手当等受益者に対し、高齢者社会を迎えて受益者が非常にふえてくると、必要経費も増大する一方で、財政資金には限りがあるから、これを有効に使うためという理由受益者所得制限を強化し、所得に対する逆累進制提案されています。しかしながら、現行年金等は将来自分が受ける給付財源は、現在の所得の中から積み立てていく積立方式でありまして、将来の給付に対して当然の権利を有するものと考えられるものですが、この個々人の将来の権利を、給付を受ける時点においてその人の受給時の所得を勘案して修正減額するというのは、大変な無理が生ずると思われるわけでありますが、この点について長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 平河会は五年ほどの歴史を持っておりまして、毎週政策研究をいたしておりますが、その間たまたま私、今回を含めまして二度ほど内閣の方に閣僚として仕事をするようになりまして、その間だけは平河会提案につきましては私は参画をいたさないということで、その都度会員との間でそういう了解をいたしております。できるだけ一緒に勉強はいたしたいと存じておりますけれども提言というようなことになりますと、やはり現在政府考えておりますことと提言の内容とはしばしば異なる場合がある、それがまた提言ということの意味でもございますので、私自身はそれには参加いたさないということを基本的に了解をいたしておりまして、ただいまお話しの提案はことし一月になされたものでございますが、私すでに閣内におりましたので、この提案には私自身は参加をしない、また拘束もされないことももちろんでございます。
  10. 野口忠夫

    野口忠夫君 経済企画庁長官という立場でこの会を主宰なさるわけでございましょうから、現在の状態では私はそれには余り関係はしない、影響は受けないと、こういうお話でございますが、このような考え方年金受給時に所得に応じて減額修正するということであるならば、現行積立方式を変えて賦課方式に改めるべきであろうと思われるわけであります。高齢者社会を迎えたとき、そのときの高齢者を、そのときの高齢者のために現在の若い人たちの拠出によって年金給付するというこの賦課方式であれば、勤労者所得からその所得に見合った額を拠出させて高齢者年金財源として充てるというのであれば、当然そのときの高齢者所得の額に応じ年金額は決定されるであろうと思われるわけでありますが、この提案の基盤に賦課方式ということを考えておられたのかどうか。まあそのことをどうするかこうするかではなくて、長官として、この問題について、そういうものが土台となっておったんだと、なるべきなんだと、こういう考えでおられたかどうか、お聞きしたいと思うわけであります。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたような理由で、私自身平河会提言そのもの政府考えを代表するものではございませんので、それにつきましての政府としての考えを申し上げる筋合いのものではないと存じますが、もともと平河会では、この問題は長いこといろんな機会に議論をいたしております。まあ、基本的には現在の修正積立方式というものを議論対象にしておるわけでございますけれども、いつまでそういう方式が可能であるかないかというようなことについては、いろいろ従来内部で議論をしております。しかし、この提言がなされた背景にその方式そのものをどうするかということは十分に詰め切った立場でこの提言をしたのではないのではなかろうかと。私、詳しい事情は、先ほど申しましたような理由参画をいたしませんでしたので存じませんけれども、そういう想像は可能だと存じます。
  12. 野口忠夫

    野口忠夫君 宮澤長官は非常に素直なお方でいられまして、いつもまあ私どもの耳にするところでは、中国問題あるいは経済見通し等について率直に御意見を述べられる方であると思うんですが、まあ政府の段階という立場よりも平河会というものの中でこういう話があったことについて、やっぱり長官の率直な意見を聞きたいと思うているわけなんでございますから、そういう意味でひとつお答え願いたいんです、政府がどうだということでお聞きしているわけでございませんので。  第二番目に、やっぱりあの提言の中の一つに、土地空気や水と同じような公共財としての性格を持つものであって、土地所有者私権を思い切って制限することをしてはどうかというような主張があられるわけであります。資本主義体制下わが国の今日の状況の中で、土地空気や水と同じ公共財であると考えたいという願望願望としてわかるわけでございますけれども、この願望と実現の間にはどうも疑問が残るんではないかと思われるわけであります。  公共財とは、各人が時と場所を選ばずにだれでも利用することができる財ということであって、空気などは典型的な例であろうと思います。しかし日本では、土地のうちでも宅地などについては商品化され、需要供給とによって価格が定まり、需要の大きさに比べて供給が非常に限定されているものですから、価格が高騰して庶民では購入できないような状態にも追い込まれております。こういう意味からすれば、宅地市場性の濃い財であり、公共財とは言えないのではないだろうかと思われるわけです。  土地公共財であるという理論を推し進めてまいりますと、国有化とか、社会化とかいうことになりまして、非常に国民の合意を得た上でそういうことが望まれるんではないかというような私ども考え方と近づいてくるわけでありますが、どうも総理経験者を含めて、土地に利潤を求めてあの狂乱物価を、あの混乱を生んだような今日の日本の現状ではちょっと現実離れしているんではないかというふうに思うわけであります。まして、今日の体制の中で私権制限ということになると、憲法二十九条の財産権侵害等の問題の解決も残るだろうと思われるわけでありますが、こういう、どうも願望としてはわかるんですけれども、本質的な問題に触れることなく理想論を述べられて、現実の宅地不足価格の高騰の解決というようなことになるとは思われないわけでございますけれども、こうしたことが提言の中にあるわけでありまして、これについて平河会最高幹部として、率直に言うてこの提案提言の持つ気持ちですね、それと今日的状態とあわせてどうお考えになるか、ひとつお聞きしたいというふうに思うわけであります。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、この問題には非常にむずかしい面がたくさんございますが、平河会では比較的早く数年前にこの問題を取り上げていろいろ議論をいたしまして、それが国土利用計画法等々を生みました背景に何がしかの貢献をしたというふうに私、見ておりますけれども、今回の提言もその線上にあるものであろうと私考えております。  すなわち、ただいま御指摘のように、憲法に定めるところの財産権というものは、これはもう絶対に尊重されなければならない。このことはもう基本的に問題の最も根本にある考え方でございます。また、平河会構成員が私ども自由民主党の党員でございますので、ことさらこの自由経済市場経済というものを基本考え立場から、私有財産というものは尊重されなければならないということは、基本的に強く考えております。その                      −上に立ちまして、しかし、東京、大阪、名古屋というようないわゆる大都会においてこれだけ住民の土地利用についての希望が高いときに、所有権の問題と利用権の問題とを、私有財産尊重の原則に触れることなく分けて考えることは可能であるかどうであろうかということが今回の提案背景であろうかと思います。提案では、財産権はもとより尊重をする、しかしそれが、利用権の面においていわゆる公共の福祉に非常に貢献をするというような場合にはそれなりの奨励なり補助を積極的に与える方法はないであろうか、あるいは、その道を選ばない所有者に対してはそれなりの負担を課するということは可能であろうか可能でないであろうかというようなことについての提言であると見ておりまして、この問題には、ただいま野口委員が御指摘になりましたように、非常にむずかしい面がたくさんございます。しかし、いろいろな提言をしておる間に、少しずつ——先ども申し上げました国土利用計画法のような、少しずつ世の中のコンセンサスを得ながら新しい制度が生まれてくるというような、そのような効果は時間をかけますとございますので、そういうことを考えました提言ではなかろうかと、私、観察をいたしておるわけでございます。
  14. 野口忠夫

    野口忠夫君 まあ、このことばかり申し上げて済まないんですけれども、最後に、これは非常に現実的な問題なんですけれども、この提案の中で公務員給与制度改正ということを提唱されているんでありますが、この問題について一、二伺いたいと思うんです。  非常に現在のこの不況の中で民間企業収益低下に苦しんでおって、一時帰休や昇給ストップがあって四苦八苦の状態の中にあるということは、これはもう言うまでもない事実であると思います。が、この苦境の、こういう苦しい状態の発生をした原因は、やはり政府経済政策失敗によるものであるということもまたこれ紛れもない事実であろうと思うわけであります。しかるに、この提案の骨子を拝見いたしますと、「人事院勧告民間給与実態を反映していないとの批判が強く」と、このようなことがあって、公務員給与優遇というようなことを批判しているわけであります。しかし、この批判対象となっている人事院勧告というのは、昭和二十三年の十二月から始まってこの方、常に公務員給与民間給与に比しまして一年有余の立ちおくれを勧告してきたものなのであります。で、毎年毎年公務員労働権の代償としての人事院に対して、われわれを保護してほしい、保障してほしいという公務員側からの要求の中で、この人事院勧告給与実態を反映していないとの批判が続いてまいりまして、ようやく近年になって半年おくれの四月実施ということになったものでありますが、勧告当初から政府実施時期引き延ばしなどで、この間における公務員の実損害額は膨大な額になると思われるわけであります。  このような公務員給与実態をネグレクトして、政府みずからの政策失敗が生み出した不況によって民間給与が低下したということにあるにもかかわらず、わけもなく公務員給与と対比させて公務員給与制度を検討をするなどという提案は、どうも政府政策失敗公務員給与優遇にすりかえようということにほかならないというようにきり思われないわけであります。常に先進的な立場平河会提案というものがこれなされてきている状態の中で、若干この提案はちょっと認識が不足しているような提案のように思われるわけですが、人事院勧告に基づく公務員給与制度改正という、このことは、人事院がどうして存在しているのか、公務員は一体どういう状態に置かれているのか、これは科学的な調査のもとに基づいて行われて人事院自身もやっぱりこういう批判に対してはずいぶん努力をしてきているということを言われているわけでありますけれども、こういう提案があったわけですけれども、この点についてはどうお考えでございましょうか。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この平河会のことしの一月の提案と私との関係は冒頭に申し上げたとおりでございますけれども、それにいたしましても、なおこの公務員に関する部分は、私、少し提案そのものが短絡に過ぎるという感じを持っております。またこれには背景がございまして、いわゆるこの石油危機以来ことにさようでございますけれども、国の経済が大きな変化に遭遇をしたその際、実は平河会人たちが最初に考えましたことは、われわれ国会に籍を置く者がやはり率先して自分たち給与について自粛をすべきではないのであろうかという考え方が一貫してございまして、そこから公僕としての公務員ということに考えが及んでいったものと思われます。が、そして恐らくこの提案背景には、人事院勧告の基礎にいたしますところの民間給与実態というものが、いわゆるかなり大きな企業中心調査——これはやむを得ないことですが、どうしてもそういうことになりますし、中小企業は必ずしもそのような状態にはないというような認識がまた背後にあるかと思いますけれども、しかし、せっかくこうやって人事院勧告制度定着をして、そうして多数の公務員がその制度の上で今日の経済的な環境にあるわけでございますから、いまこのようなことを提言することは、背景はただいま申し上げましたとおりでありますけれども、短絡的に過ぎるのではないかという感じを私としては持っております。
  16. 野口忠夫

    野口忠夫君 国家公務員のみならず、地方公務員給与についてもいろいろな問題があるわけでございますが、一部の地方自治体においては、国家公務員給与の水準より高いところがあることはこれは事実だと思います。しかしこのことは、各自治体がそれぞれの財政の枠の中で決めていることであって、このことを国が云々するということは、私はどうも地方自治精神に反することになるのではないかと思うわけであります。地方自治体給与が高いか低いかは、その自治体財政の枠の中で行政密度というものを勘案して決めていることであって、国がこれに関与するような態度は結構ではないのではなかろうか。あくまでもやはりこうした問題の指導あるいは助言というような立場でのあり方はあるにしましても、何か高いからこの制度改正せいというようなことになってきますと、地方自治体みずからが自治精神に基づいてそれの改正をやっていくというような方向ではなくて、上から押しつけてやっていくようなかっこうになってしまいますが、地方自治の本旨に基づく地方自治体あり方について、そういうようなあり方はちょっとうまくないというように思うわけでありますけれども、いかがでございましょうか。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御指摘のように、地方公務員の場合には人事委員会勧告を行う制度定着をいたしておるわけでございます。したがいまして、国がそれに対して指導助言といったようなことであればともかく、基本的にはやはり地方自治というものを一番基本考えなければならないという点については、私は野口委員の言われたとおりに存じます。
  18. 野口忠夫

    野口忠夫君 それじゃ経済問題についてお聞きしたいと思うんですが、宮澤経済企画庁長官は、まあ先ほど申し上げましたように、日中関係やあるいは景気回復見通しなどの例に見られるように、いつも何かこう素直な御意見を述べられる方であると私はお見受けしてまいりました。きょうはひとつ、福田内閣の現在やっている経済運営、これは国民生活の安定に役立っているのかどうかという問題について長官本音を聞きたいと思っているわけなんです。あっちこっちに気がねしないで、経済企画庁長官としての本音を私は聞きたいと、こういうふうに思うわけであります。  本席は昭和四十九年度の決算をこれ審議する場所でございますが、どうも日本経済あり方考えるに当たって、この昭和四十九年を今日の時点で見ますとまるで百八十度変わっているんですね。総需要抑制公共事業抑制インフレ収束に向けて強行されましたこれらの政策昭和四十九年の経済政策あり方というものは、どうもそれ以後の日本経済施策の進め方に大きなネックとなっているのではないか。その意味では、非常に本決算委員会における昭和四十九年度の問題というのは深刻なものを持っているんではないかというような考え方をするわけであります。福田内閣は、現在十五カ月予算による財政主導不況脱出を懸命に図っておりますが、その効果を論ずる前にまず重要な問題となるのは、福田総理がやはり経済企画庁長官をやっておられました昭和四十九年の石油ショック以後、この日本経済全治三年の大やけどをしたという情勢認識を持っておったことはもう周知の事実であります。当決算委員会においても、当時の福田経済企画庁長官がその旨の発言をしているのは、参議院の会議録で明らかであります。しかし、この認識は、その後現在に至るまでの経済の推移によってこの認識誤りであることが明らかになったのではないかということであります。大やけどは治っていないのではないか。この全治三年という認識の中から出発してくる経済政策、ここに大きな問題があるんではないかというふうに思われるんですが、この認識誤りについて経済企画庁長官の所見を承りたいんです。  経済全般運営基本方針及び毎年度の経済計画の策定などを任務とする経済企画庁設置法第三条にありまするこの企画庁の任務は、経済情勢を常に正しく認識することが不可欠でありまして、政府部内にその認識が誤っているものがある場合は、これをリードしていくべきであろうと考えておるのでありますが、全治三年の認識誤りの点から生まれる見解、それからまた現在の企画庁長官としての任務の上に立っての立場上の見解をお示し願いたいというふうに思うわけであります。
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和四十八年の中東戦争の結果生じましたいわゆる石油危機、これにどのように対処すべきであったかということにつきましては、わが国を初め各国ともいろいろ違う対応の仕方をいたして今日に及んでおるわけでありますが、このような事態はかつてなかった事態でありますだけに、これは長く恐らく経済政策の歴史に残って、将来に向かって非常にいろんな意味で示唆に富むケーススタディーになるのではないかと考えております。  その中でわが国がとりました政策は、いわゆる狂乱物価とそれから予想された国際収支の非常な危機というものを、ある程度時間をかけてなし崩しで対処をしようという方法をとったというふうに私考えておりまして、いわゆるその三年間云々ということを当時、現在の福田総理が言われましたその考え方は、経済法則に従って物価は幾ら上がってもいいではないか、仮に国際収支が赤字になってもやむを得ないというような考え方もこれも一つ考え方であるわけでございますけれども、そういう方法をとらずに、何とか需要を締めることによってなし崩しに物価を正常なところへ持ってこようと、そうして国際収支の赤字に何とか対処していこうと、こういう政策であったと私は過ぎ去った年月を考えて見ておるわけでございますが、結果として、私はこの政策は成功をしたというふうに自分としては評価をいたしております。私のいたしたことではございませんけれども、結果としてまずまず成功したのではないかと考えております。  と申しますのは、現在の段階におきましてわが国の物価は、当時の狂乱物価とは比べものにならないいわゆる正常化に近い状態になってまいりましたし、また当時、政府が人為的に抑えましたいろいろな価格要因も、電力料金等々を初め、ほぼ経済の各分野で正常化されたと。その後石油の値上がりは少しずつございますけれども基本的な四倍ぐらいの値上がりというものはまずわが国経済がほぼ吸収をしたと、現段階ではそう申し上げることができるのではないか。一部に石油価格などにまだまだ人為的な部分が残っておりますけれども、概して吸収をし得たということが申せるのではないか。  と同時にまた国際収支の方も、当時は、日本経済力をもってしては必要な石油が輸入できないと、それだけの国際収支に耐えられないという議論が多数でございましたけれども、今日はむしろその反対の問題が国際的にいろいろ提起をされておるような黒字の現状でございます。やり過ぎたと言えばやり過ぎたということになりますけれども、しかし、この外貨の国際収支の危機にわが国はりっぱに対処し得たということは疑いもない事実でございます。といたしますと、国内の物価の面で及び国際収支の面で、わが国はこのなし崩しの方法で時間をかけて石油危機にまず対処することができたという点では、先進各国に比べて日本がうまくやったと評価をされておるだけの理由は私はあるというふうに考えておるわけであります。  しかし、野口委員の御質問は、さらに進んで、それならば今日のわが国経済が全く正常な拡大均衡に入っておるかということになればそうではないではないかとおっしゃいますことは、もうまさにそのとおりでありまして、雇用を見ましても生産を見ましても、国民の消費態度を見ましても、もう申し上げるまでもないような今日の経済状態でございますから、これで完全な健康体に、もう一度拡大均衡を追えるような経済になったとはこれは申し上げられない。けれども、申し上げられることは、少なくともいまのわが国経済は、これだけ石油価格が上がりましたにもかかわらず、いま持っておる問題を、外圧と申しますか、よその要因に振り回されずに、自分の力で何とかして解決できるという程度の健康と申しますか、正常な事態を取り戻すことができたという意味では、そういう状態全治ともし呼ぶのならそれは呼べないことはない。つまり、よそからの要因で振り回されずに、われわれとしてはわれわれの力でこの経済を拡大均衡に持っていくという、それだけの石油危機からの回復をいたしたという意味で、そういう意味でそれを全治と言うのなら全治と呼んでもよろしいでございましょう。決していまや完全な拡大均衡に自然に乗るような経済になっているとは私申し上げられませんけれども、ともかく、あれだけの事態を国際収支の面及び物価の面でここまで持ってきたということは、これは一つのケーススタディーとして、わが国のやり方はやはりわが国の実情に即したものであったのではないかというふうに見ております。
  20. 野口忠夫

    野口忠夫君 全治の内容ですが、病気は治らぬ、けれども息だけはまあついていると、だからそのうちまた何とかなるんじゃないかというような全治の仕方であったというようなお答えにきり受け取れないわけなんですけれども、これから少し質問したいと思います。ただいまのお話でありましたように、やはり経済運営ということについての反省が少し足りないんではなかろうかという感じがするわけであります。  今回、福田内閣は、保革伯仲と言われる国会の中で五十三年度予算に関する野党の修正要求を突っぱねて、国会審議がストップするというようなことになったのには大きな責任があると思います。こうした状態をつくるその原因として見過ごすことのできないことは、公共事業実施不況脱出の決め手としてあくまでもこれに執着していく政府の強硬姿勢の根底に、実は政府経済運営の従来までやってきた実績に関してどうも反省不足が存在するというふうに推定されるわけであります。  昭和四十八年度の末期から五十年度に至る引き締め政策の過程で、企業がこれに対応していわゆる減量経営という行動様式をとるようになったことについて、企画庁の認識は必ずしも十分でないように私は見受けられるわけであります。昭和五十二年度の経済白書によりますと、企画庁は、昭和五十一年度の日本経済の特色の一つとして、企業の行動様式が変化して減量経営という形態のものになった経過を述べられておりますけれども、こういうことを述べた根拠が、やはり利益があるからとかないからとかという従来の資本の論理に基づいてとらえているようにこの白書の問題を私は考えるわけであります。しかし、ここではそういうとらえ方をしておりますけれども、総需要抑制財政繰り延べ措置との関連が、そういう政策的推進のやり方がこの減量経営方式に導いていったという姿との関連がどうも十分解明されていないように思われるわけであります。減量経営というものが政府政策に対応して生まれてきた側面をとらえることなしに、減量経営の各種の弊害について、どうも政府は責任を感じないという経済システムが生まれてくるんではなかろうかと思われるわけであります。公共事業の促進との関連でこれを考えていきますと、減量経営でありまするがゆえに、公共事業の促進が直接雇用の拡大につながらないし、景気回復も余り望めないと言えるようになっているのでありましょう。五十三年度の大型予算は景気回復の呼び水効果に乏しいということは、日本経済新聞が約三十社ばかりの主要企業を相手にして聞き取り調査をやったそのときの新聞報道によってでも、これが主要企業経営者の見解であるようであります。  ですから、減量経営というこのあり方の中に企業を追い込んでしまった政策誤り——私は、今度の円高ということによって中小企業が数多く倒産していることは長官の御存じのとおりだと思います。総理は国際機関の中で黒字減らしの約束をいたしました。しかし、その黒字は増大の一途をたどってきている。国際機関の中で公約をした問題ですから、これは国策だと思うんですよ。この国策に従っていけばドルは減るであろうと思われるのに、ドルは減るどころではなくどんどんどんどんふえていく。どこかの企業の中にふえているんだろうと思うんですよ。そのことが、報復的な措置というような姿の中で円高になってあらわれ、中小企業が見るも無残に倒産している。同じ日経新聞に出ておりますけれども、このドルを持っている日本の自動車産業などというところで、先行き不安であるがゆえにやはり合理化、引き締めをやっていかねばならぬと言うて、減量経営の上に乗った非常な利益を上げながら、国策に反してドルをどんどん取りながら、まさに日本の成長産業とも言われるような今日的状態の中で、同じような合理化引き締めの状態の中でこれが行こうとするようなそういう方向に持っていったもの、それは間違いなく総需要抑制政策という政策の進行の中で生まれた新しい経営の行動様式、それに乗る日本の経営企業、もうかっていても引き締め、減量、合理化等をやらねばならぬみたいな話にある。こういうことに導いていってしまった政策的な側面というものを見ないでやっていく経済政策の中に、公共事業をどんなに起こしていっても、企業の皆さんはこれに食いついてこないという政策失敗による袋小路がここにあるんではなかろうかというふうに思われるわけでありますけれども、この袋小路を導き出してしまった政府の責任、これを果たして持っているのかどうか。  ですから、一応物格は鎮静した、だから成功であった、そういう言い方ではとても言い切れないと思うんですよ。どうしてもここでその責任を考える中で一つ考え方を転回するようなことでなければ、本当の意味での経済政策になっていかないんじゃないかというふうに思うわけでありますけれども長官はどうお考えでございましょうか。
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 現在のいわゆる減量経営というものが、石油危機に際会しましたときに政府がとった政策、その結果として出てきているのではないかとおっしゃいますことは、私率直に真理の面があると思います。  現実の経済の動きを見てみますと、石油危機が起こりました昭和四十八年でございますが、この年には、公定歩合が四十八年年間で五回上がっております。これはもともと経済が過熱の情勢にありましたので、四月、五月、七月、八月と四遍上げておるわけでございますけれども、そこへ石油危機が参りまして、十二月には一挙に二%公定歩合を上げております。九%になっておるわけでありますが、ここのあたりで政府が総需要の管理、抑制ということにはっきりした態度を打ち出しましたことはこの事実からも明らかであります。もとより申し上げましたように、その目的は物価の抑制と国際収支の問題に対処するためであったわけであります。  しかるところ、ただいま御審議をいただいておりますこの四十九年でございますが、この年には一切公定歩合の動きはございませんで、五十年になりましてから、今度は一、二、三、四回公定歩合を下げております。で、現実の景気の谷は、後にわかったことでございますが、五十年の三月であったわけですけれども、十月まで公定歩合を下げ続けておると。また五十一年は公定歩合については何にも動きがございませんで、五十二年になりまして今回まで三遍、五十二年になりまして三遍公定歩合を下げて現在に至っておると、こういう姿でございますから、明らかに四十八年のおしまいになって政府は総需要の厳しい管理に乗り出し、そして四十九年はそれの推移を見ながら、五十年の四月になりまして、今度は一応事態が収拾しつつあると見て公定歩合の引き下げに入ったと、こういうのが経緯であったと思いますので、したがいまして、政府としては一応総需要の管理に成功をし、物価についても国際収支についてもめどが立ったというところで、五十年の四月から今度は公定歩合を下げる政策を続いて今日までやっておるわけでございます。しかしとにかく、石油の価格があれだけ、四倍にも五倍にもなったという大きな変化に対して、物価と国際収支の面ではわれわれは成功いたしましたけれども日本経済を順調な拡大均衡に乗せていくという政策には今日現在まだ成功していない。政府としては、公定歩合を下げる一方で、公共投資を中心不況脱出、雇用の改善を図っておるというのが現在の姿でございます。  したがいまして、冒頭に申しましたように、この石油危機にどう対処したかということは各国によって対応の仕方が違っておりまして、私は総じてわが国の場合には成功をしたと申し上げておりますけれども、同時に、まだまだ拡大均衡への民間の自信を十分に政府が確立するに至っていない。そのために、今回のような財政主導の予算を昨年よりさらに大きな重点を置きまして御審議を願っておるというのが今日の姿であると存じます。
  22. 野口忠夫

    野口忠夫君 インフレーション克服という課題をもって四十九年度に行われました経済政策、どうもこれはやっぱり失敗であったと、そういうことの中で、企業の冷え込みというものを減量経営というような方向で形づくってしまった、ここに何か今日の不況が、先ほどのような日経新聞の資料で申し上げましたように、公共事業中心の十五カ月予算で投入しても回復の呼び水にならないであろうと言われるこの問題のやっぱり根源がそこに残されてしまったのではないだろうか。これはやっぱり四十九年度の経済運営失敗ではなかったろうか。第一・四半期と第二・四半期には主として公共事業の契約抑制を行った後で、第三・四半期にはさらに公共事業の契約抑制財政執行の繰り延べということを同時に実施するというパンチを与えたわけでありますね。これはもうそうせざるを得ない方向に行くわけでしょう。それは物価引き下げという大きな問題があるだろうけれども、極端にその方に行ったということですね。  企画庁は、これによって物価は鎮静して、景気も第四・四半期にはおおむね底入れしたと見て、以後回復を期待していたと、そういうふうに白書にも述べてあるわけです。  しかし、今日に至るまで景気の回復は軌道に乗ったとは言えない状況があります。しかも、自律回復力さえ失われたというような今日の状態ではなかろうかと思われるわけです。どうも四十九年度には別の経済運営方式はとれなかったかどうかということがやっぱり残ってくるんじゃなかろうかと思うんですがね。長官、その辺は本音で言ってもらいたいんですがね。何か物価、今度は不況。四十九年と五十三年を比較してみて、何か物価と不況の間を行ったり来たりしているような経済政策、その往復ビンタを受けているのがどうも国民だということになるような今日の経済的実相ではないか。  こういう中で、実は、企画庁としてはそういう新たな道はないかということをまあ探したような白書の述べ方もあるわけでありますけれども、非常にこれは二律背反的の側面があるのでむずかしいというようなことに考えながら、まあそうしたような方向もどうかというような話があったわけでありますが、この二段階政策、こっちをやってこう、こっちをやってこうという、そのたんびに国民は往復ビンタを食っているわけですよ。これじゃどうも国民が、はっとひっついてこれやっていこうというような感じにならぬじゃないかというんですが、やっぱり物価安定とこの景気回復というものを経済政策としてはバランスをとってこなかったところに、どうも今日の景気回復が軌道に乗らない原因があるんではなかろうか。これは四十九年度の経済運営は全く失敗したことのこれは何よりの証拠ではなかろうかと思うんですけれども、この経済運営の実績、これについてどのように評価なさいますか、ひとつ見解を承りたいと思います。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あのころの経済運営について、石油危機以後の今日までの経済運営について、私は概してわが国としてはうまく対応したのではないかと申し上げておりますし、野口委員はいやそうではないと、あっち行きこっち行きして迷惑したのは国民であるというお立場で御批判をただいまいただいておるわけであります。しかし、いずれにしても野口委員と私とが一致できますことは、とにかくいまとなっては振り子が行き過ぎてしまったではないかということは、これは私もそう思います。  が、さて、その四十九年、五十年でございますけれども、非常に経済運営がむずかしいときであったということは御認識をいただきたいと存じますのは、四十九年度は実質経済成長率は御承知のようにマイナス〇・二%でございます。そのような厳しい経済運営をやりながら、なお経常収支は二十三億ドルの赤字になっておるわけでございますから、この段階ではまだわが国経済が四倍になった石油を買えるか買えないかということは、実はこの赤字で見ます限り、非常に危ないという状況にあったということが申し上げられると思います。しかも、それでいて経済成長率は実質でマイナスの〇・二%であったわけでございますから、この経済成長率をプラスに持っていきましたら、恐らく経常収支の幅はさらに赤字が大きくなっておったというふうに考えられます。次の五十年度でございますが、このときには実質成長率は三・四%になりまして、経常収支はいっぱいいっぱい、一億三千万ドルの黒字というところで、どうやらこの辺でいけるのかなという感じが出てまいったのではなかろうか。もう五十一年度になりますと、経常収支は四十六億になっておりますから、ほぼこの辺で対処する見当がついたということが言えるのではなかろうかと思っていまして、四十九、五十というのは、振り返ってみますとまずまず非常な危ないときをともかく何とか渡り切ったという二年間であったというふうに申し上げてもいいのじゃなかろうかと。  しかし、それで私はよくこの危機を乗り切って、概して国際収支面でも物価でも成功であったと申し上げたいわけですけれども、そうかといって、いまになってここまで振り子が、いわゆる経済の自律反転力が冷えてしまうまで、ここまで行かなくても何かやりようがなかったかとおっしゃいます意味では、これはやはりこれだけ大きな経済運営でございますから、どうやったらそうなれたかということは、よくいままだわかっておりませんけれども、もう少し上手な振り子の振り方はなかったかとおっしゃれば、これはやはり将来いろいろ検討してまいらなければならない問題を御指摘なさっていらっしゃるというふうに受け取らしていただくことは、私はそうなければならないと思います。
  24. 野口忠夫

    野口忠夫君 長官、時間があれなそうですみませんが、もう少し……。  いま、ここまで来る過程の中で何とかなるものはなかったかというお話でございますが、いまになってという問題はわかります。だけどこれは四十九年度の決算をやっているわけですから、非常に古いものをやっています。勉強が足りなくて、これ長くなって月曜日にやるようなことになってしまいましてすみませんが。だから私は、それは古い昔のことでもう仕方がないのではなくて、そこからやっぱり今日が出発してこなければならぬと考えるわけであります。それが間違っていたと。それは直しようないです。だがしかし、今日はそのことを土台としてやっぱり出発しないと、その意味では謙虚に政策失敗を、今日の景気の冷え込み状態の中では認めなければならぬのではなかろうか。でなければ、どんなことをやってもこれに応じて景気が回復してくるような道はどうも見つからぬのではなかろうか。そのための方策のまさぐりというものがいまの段階でなされなければならぬのが、どうもこれ、その政策に固執して、伯仲国会の中で野党の言うことなんか聞かないなんて言って力んでストップするようなことをやっておっては、どうもここら辺、ほかの人に言ってはわからないかもしれませんけれども経済企画庁長官宮澤さんにだけはこの辺の私の気持ちを理解してもらいたいと思うし、御答弁もいただきたいと思うわけなんです。やっぱりそのことから、その謙虚に失敗の上に立ってそれを認識する中で、それはもう出直しをこうしているんだというようなことになってこないと、減量経営方式に流れていった企業の皆さんを呼び戻してくるなんということは政治の力では容易ではないではなかろうかと私は思うわけでありますが、非常に深刻な問題の前に立っているんだということを考えていただかなければならぬかと思うんです。  もう一つは、時間がありませんのであちこち飛ばしますが、大分失業者がふえてくる中で、五十三年度に見込んでいる五十五万人の雇用増の内訳について、製造業はゼロであり、第三次産業が中心であると衆議院の予算委員会で長官は答弁をなさいました。このように、景気刺激の大型予算のもとにおいて製造業の雇用増が全く望めないというのは、これは重大問題ではなかろうか。どうもこれは製造業の減量経営の中に政策的に協力していくような傾向になっていくんではなかろうか。第三次産業にのみ雇用増を求めて、製造業はもうどうでもいい。製造業の中にも成長的の製造業があるわけでありまして、そういうところでは、やっぱり今日的失業者の出てくる中では雇用の増大も考えていただこう、できる限りのやっぱり努力をせいということが本当だと思うわけですが、何かここでまことに製造業にはだめで、第三次産業にだけ持っていくんだと、こういうようなことの半身不随的な雇用状態をつくり出した一つの原因は、やっぱりこの四十九年度を含む総需要政策にあるのではないかというふうに思われるわけであります。これは経済企画庁調査局の月報あるいは中小企業庁の白書の中にもありますけれども、総需要抑制実施のもとで、「従来にくらべて製造業での雇用調整がいちじるしい」、こういうことが見ているところでも明らかだと思うんです。  この五十五万人の雇用増は製造業以外で吸収するという事態は、また職業選択の自由を拘束することにならないだろうか。このような事態を招いた政府の責任というものを企画庁長官はどのように思うかということをひとつお伺いしたい。  それから、失業者の数の把握でございますけれども、いろいろな報告を見ますと、比率で言いますと各国から大分低いようでございますけれども、潜在失業者等を含めると四百万から六百万ぐらいあるんじゃないかというようなこともありますが、こういう失業人口の統計なんというものは、少ないものを出すんじゃなくて、やっぱり実態に即して報告されるべきが至当ではないかと思うんですけれども、この件についてもあわせて御答弁願いたいと思います。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私ども、雇用の問題は経済企画庁としてはいわゆるマクロでしかとらえられない問題でございますけれども、それにいたしましても、現在の五十三年度の経済運営が私ども考えておりますようにいくといたしまして、なお五十三年度末には百十万の完全失業があると、今年度に比べて五万程度の改善しかないということでございますので、これは残念な状態でございます。同時に、いわゆる企業の稼働率指数につきましても、五十三年度末、来年の三月でせいぜい稼働率指数で九二ぐらい、と申しますことは、稼働率で八三、四でございますから、そのように考えますと、五十三年度というのは、将来に向かってわが国経済が自律反転力を取り戻して拡大均衡に入るためのつなぎの役割りを担う年であって、この単年度で雇用なり稼働率なりが回復を完全にするという年には単年度としてはなり得ないというふうに私どもはこの年を、五十三年度を見ておるわけでございます。  したがいまして、製造業においては、一つ一つに出入りはございますものの、恐らく製造業の雇用の増というものはネットとしては見れないのではないか。その中で恐らく製造業の対応は、多少ずつ稼働率が上がってまいりますと、現にいる人たちに対する時間外給与の増大、いわゆる幾らかの残業手当というような、そういう形で動いていって、新規雇用というところまではいかないのではないだろうか、どうもそう考えざるを得ないというふうに思っておるわけであります。  このことは、しかしそれでそれが本来の姿、今後の日本経済の本来の姿であると申し上げておるのではありませんで、政府経済運営考えどおりいきますれば、将来に向かってそういう拡大均衡に入るための、いわゆる不況からの脱出と申しますか、そういう役割りをこの年、五十三年度が担うということに私ども考えておるわけでございます。  なお、失業統計の問題でございますけれども、過剰雇用がどのぐらいあるかということはしばしば国会でも御議論になりますし、私どもとしても大きな関心のあるところでございますけれども、その過剰雇用ということが十分に定義されないこともございまして、労働省としてはそのような統計は持っていないという立場だというふうに私ども承知をいたしておるわけでございます。
  26. 野口忠夫

    野口忠夫君 時間がないそうであれですが、長官はデノミについてはどういう見解ですか、簡単に。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい。  ただいまそのようなことを現実に実施をする経済情勢にはないというふうに考えております。
  28. 野口忠夫

    野口忠夫君 それじゃ御要望申し上げて終わりますが、経済計画の策定ということに当たっては、過去の経済運営国民生活に与えた影響を徹底して検討して、十分な反省の上に立って適正な経済計画の策定に努め、これを十分予算化して、国民生活の向上に真に役立つことが大切であると考えておりますが、ぜひそのような方向でお進め願うことを御要望申し上げて、私の長官に対する質問を終わります。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御好意のある御提言であると存じます。最大限の努力をいたさなければならないと考えております。
  30. 野口忠夫

    野口忠夫君 時間がありませんので、はしょって御質問申し上げたいと思うんですが、やはり今日の状態の中で非常に重要なことは物価安定の問題であろうと思うわけでありますが、先ほど申し上げましたようなこの物価安定と不況との間の谷間を行ったり来たりしている景気政策でございますが、四十九年には物価の問題で総需要、今回はまた景気回復というようなことを唯一として、物価問題に対する関心が何かいま一つ薄い不安を残しているように思われるわけであります。景気とこれとの間をこう行ったり来たりしながら今回は十五カ月予算で景気回復しようというこの中で、物価問題に対する御所見をひとつ承りたいと思うんですが。
  31. 前田治一郎

    政府委員前田治一郎君) 物価問題は当面の重要問題でございまして、最近消費者物価がやや安定した傾向にございますけれども、なお逆睹しがたいものがございます。詳細は政府委員の方から説明させますけれども、経企庁といたしましては、今日ただいまも十分物価の動向を監視している、その姿勢を維持しておることには間違いございませんので、さよう御了承願いたいと思います。
  32. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) 消費者物価、卸売物価ともに非常に落ちついた状況にございますが、まあ消費者物価については多少一時的な季節商品の値下がりというところによる面が出ておりまして、昨年十二月以来四%台の物価になっておりますけれども、基調としてその他の季節商品を除いたものを見ましても、安定をたどっていると思うところでございます。ただ、こういう状況でございますけれども、たとえば端境期になりますと野菜の値段が上がってくるということもございますし、そういう意味生活必需物資の供給確保ということについては従来とも力を入れておりますし、これからもやっていきたいと思っております。  それから、当面の問題として、円高のメリットというものができるだけ小売価格に反映するというような努力も必要ではないかということで、先般その関係につきまして調査をいたしまして発表したところでございます。これからもそのときどきの情勢に応じまして適切な物価対策を講じていきたいと思っておるところでございます。
  33. 野口忠夫

    野口忠夫君 物価問題が国民生活にとって非常に重要であることについての認識はおっしゃるとおりだと思うわけでありますが、この物価問題を考えるときに、皆さん方と一緒にこの物価というものをどうにかするという問題の中で、公共料金というものは一つ私たちの手の中で動かすことのできる問題であろうと思うわけであります。  公共性の高い事業に対して、私的営利の原則だけではなくて公共的なそういう性質の事業に対して、これに発言をし、これをコントロールするということのできるのが公共料金の意義であろうと思うのですが、国や地方公共団体あるいは政府関係機関が直接経営する国鉄、郵便、電話、都市交通、学校、病院、住宅、水道などについては、これは所得の高い人も低い人も、市民である以上平等にこれらのサービスを受けられるようにとの趣旨から、なるべく安い料金で利用させるという原則を守らなければならないと思うんですけれども、どうも政府は口を開けば赤字、赤字と言い、独立採算制である以上は料金値上げでカバーするのが当然と、受益者負担の原則を振りかざして公共性を忘れているのではなかろうか。このような状態で収支均衡を国民の負担の上にのみ求めようとすることは、やっぱり弱い者が苦しんで強い者はよいという、こういう政策になっていくんではなかろうか。公共料金の大義名分というものは消えてしまっていくのではないだろうか。  五十三年度においても公共料金の値上げがメジロ押しに予定されているようであります。時間がありませんので一つ一つ申し上げませんが、御承知のところであろうと思うんですけれども、この公共料金の国民のための意義というものと、また今年度値上げが予定されている公共料金が消費者物価にどのように影響してくるか、このことについて試算があったらひとつ伺いたいと思うんですけれども、御答弁願いたいと思います。
  34. 前田治一郎

    政府委員前田治一郎君) お答え申し上げます。  公共料金関係事業は、一般的に、公益上の観点から独占的な立場を認められたり、あるいは免許制をとったりあるいは立地制限をしたりするなど、競争が制限されているのが通常でございます。このような立場が認められている反面、その料金の決定については企業の自由に任せず、適当な水準となるよう政府が関与することといたしております。  公共料金は前述のような観点から政府が関与しているものでありますけれども、その決定に当たっては、基本的には経営合理化の徹底に努めることを前提とし、事業の健全な運営が確保されるように料金水準が定められるべきでありますし、またその負担については、サービスを利用する者が利用によって受ける便益の程度に応じて費用を負担するいわゆる受益者負担の原則によるべきであると考えております。この基本原則から逸脱したり、公共料金を凍結したり抑制し続ける場合には、事業の収支を悪化させ、国民生活に欠かすことのできないサービスの安定的な供給を困難にし、ひいては後日、より大幅な料金改定を避けられないものとすることになり、物価安定の観点から好ましいことでないばかりでなく、また、コストを下回る低い料金でサービスを利用できる場合には資源が浪費されがちになるなどの弊害が生ずると考えております。  このため料金水準はコストに対して適正なものでなければなりませんが、政府公共料金の決定に関与している趣旨によりまして、物価や国民生活に及ぼす影響について慎重に配慮していく必要があると考えております。  先生のおっしゃいました最近メジロ押しに公共料金の値上げが並んでおるではないかという御質問でございますけれども、そういう当該事業者の要望に対しましても、政府は先ほど述べましたような態度でもって十分慎重に検討してまいる所存でございます。御了承願います。
  35. 野口忠夫

    野口忠夫君 本当に時間がありませんで……。  総理府統計局が一月二十七日に発表いたしました消費者物価指数速報によりますと、消費者物価の上昇率が昨年十二月の五・〇%を下回って四・四%の上昇にとどまっていると言われております。消費者物価の前年比上昇率が五%を切ったのは、たしか石油危機前後の物価狂乱期にまだ入っていなかった四十七年十一月以来のことと思いますが、この消費者物価の前年同月比上昇率が五%を下回った原因はどこにあるとお考えでございますか、お聞きしたいと思います。
  36. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ちょっと答弁する前に、先ほどの野口委員からの質問の、公共料金の値上げが小売物価にどういうふうに出るかという質問、答弁なかったからその分とあわせて。
  37. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) 公共料金の改定による影響でございますけれども、本年度の状況は大体一・五%程度以内におさまるのではないかと思います。五十三年度については、いろいろ公共料金の関係について動きがございますが、はっきりいたしておりますものは予算に関連したものでございまして、これにつきましては、国鉄の運賃の引き上げの問題がございます。ただ、これはいつ幾らというところまで決まっているわけではございません。それから国立学校授業料については、これは実施するということにいたしておりまして、そちらの方の計算はできるわけでございます。全体として、予算関係のものについては五十二年度と同じ程度ではなかろうかと思います。それからその他の民間のもの、それから地方の公共料金につきましては、これから出てくるものを予測することはなかなか困難でございますが、五十二年度には電力とかガスというような大手の民間料金がなかったわけでございます。そういう状況は五十三年度においても変わりませんと思いますので、五十二年度と大体同じ姿ではないか。そういたしますと、予算関連のものも、それから民間、それから地方団体の料金も合わせますと、五十二年度の一・五%程度以内というものと五十三年度は変わらない姿に落ちつくのではないかというふうに見ております。  それから、最近の消費者物価の落ちつきの原因でございますけれども一つは、やはり卸売物価が非常に低い水準にある。卸売物価からの消費者物価への波及がその面で非常に穏やかなものであるということが一つかと思います。卸売物価の落ちついている原因は、やはり円高の影響が出ているとか、国内の需給が緩和しているというようなことではないかと思います。それからもう一つの原因は、季節商品が、特に野菜、果物につきまして、この気候の影響から非常に作柄がよくて下落をしているということがございます。それからもう一つは、いま申し上げましたように、公共料金からの波及でございますが、これは五十二年度は先ほど申し上げました一・五%以内におさまる。五十一年度はそれが三%程度でございましたから、そちらからの影響が非常に小さい。それから一般的にサービス料金も落ちつきの傾向が出ております。その辺が現在の物価の落ちついている原因ではないかと思います。
  38. 野口忠夫

    野口忠夫君 先ほど申し上げましたとおり、東京都区部一月の消費者物価指数は、上昇率が前月に比べて〇・七%であって、四・四%という低い上昇率にとどまった。安定傾向にあると言っていいと思うんでありますが、いまのお話でいうと、それはずっと五十三年も継続していくであろうというようなお話ですけれども、ここで、超大型の五十三年度予算の最重点施策である公共事業の大型投資ということによって、建設資材関連あるいは土地の値上がり等、そういうことによってこれらが口火になってまた卸売物価が上昇していくことも近いうちにあると、こういうことを言われているわけであります。また、今後値上げが予定されている公共料金がずらりと並んでいることを考えますと、現在言われている物価安定期も、もう底が見えたのではないかと思うのですけれども、新しい五十三年度の超大型公共投資によって起こってくる物価、土地、消費資材の値上がり、そういうことについてはどういうふうにお考えですか。
  39. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) 五十三年度の卸売物価でございますが、景気の関係から申しますと、いろんな積極策を講じております関係で需給が改善していくということになるかと思いますが、その関係は物価にとってはある程度上昇要因になると思います。しかし、一方経済規模が拡大いたしますと操業度が上がる、そういうことから固定費負担が減るという面もありますので、そちらの方は物価に対しては好ましい影響を与えると思います。そういう全体の傾向から見まして、来年度の卸売物価はある程度の上昇、年度の平均で二・七%ぐらい上がるのではないかというふうに現在見込んでおります。  それで、建設資材の関係等についてでございますけれども、全体として見ますと、いまの需給の状況とか、それから稼働率が非常に低いということがございますので、それが非常に価格の急騰につながるということはないと思いますが、ただ時期の問題——時期的に、または地域的な問題として一部の建設資材について価格についての心配も出てくるということもございますので、建設資材関係価格につきましては、物価、たとえば経済企画庁でございますと、物価担当官会議の中に建設資材の連絡会を設けまして価格を監視していくというような体制もとることにしております。
  40. 野口忠夫

    野口忠夫君 政府は一月二十四日の閣議で決定した経済見通しの中で、五十三年三月の消費者物価は前年同月比上昇率の目標を六・九%としているのですね。この目標が事実上決定した昨年十二月中旬でさえも、民間には、なぜそんなに高いところに目標を設定しなければならないかと首をかしげる向きがあったわけです。政府の目標は全国ベースのものとはいえ、一月の全国の消費者物価上昇率を東京都区部の前月比〇・七%上昇と同じ上昇率だとすると、一月の全国の前年同月比は四・五%の上昇になる。二月、三月が異常寒波で物価上昇が大問題になった昨年並みの上昇率だとしても、三月の前年同月比は四・五%の上昇にとどまると言われています。仮に、政府が本気で六・九%の消費者物価上昇を考えているとすれば、二カ月続けて前月比一・七%上昇という、物価狂乱期並みの事態を予想していることになるんではなかろうか。昨年三月の消費者物価が目標を大きく突破して責めを負ったことにこりて高目の目標を設定したとするならば、政府見通し及び物価対策についての姿勢に問題が残ってくるのではないかと言わざるを得ないのですけれども、この点についてはいかがでございますか。
  41. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) 政府の物価見通しを作成いたしました時点は昨年の十一月の物価が明らかになっていたときでございまして、その時点では、年度の初めから十一月までの物価の状況、それからその他の経済のいろいろな生産とか需要の動向、そういうものを全体として判断して決めたものでございますが、当時、十一月の時点で明らかになっておりました東京都の速報の数字では、物価は六%台の水準にあったわけでございます。そしてその際、その六%台というのは、その前月、その前々月くらいのあれから見ますと、当時七%台にございましたから、相当下がってきていた。その理由は、やはり非常に秋の気候がよくて野菜の値段が大幅に下落していたわけでございます。私ども見通しを立てるに当たりまして一番季節商品の動きについて関心を持ったわけですが、過去の例から申しますと、野菜というのはある時期に非常に下落いたしますと、その後大幅な反動による高騰が来るということがございますので、そういう点についていろいろ季節商品の動向についてある程度のその後の動きを想定せざるを得なかったという事情がございます。  その後十二月、一月と続きまして、さらに暖秋の後にまた暖冬が続いたということで、これまた非常に野菜の作柄がよろしかったわけでございます。それで現在では、野菜、果物あわせまして季節商品全体が昨年の同月に比べまして七・六%下がっているということでございまして、これがいまの物価四・四%という非常に低い水準にある大きな原因になっているわけでございまして、見通しとの間の非常に大きな乖離がございますけれども、どうもその季節商品のところに大きな原因があるというふうに思っておるわけでございます。  そういう意味で、これからの動向につきましては三月三日に二月の物価が判明いたします。その時点でことしの物価との関係についての見当をつけることができるのではないかと思っております。
  42. 野口忠夫

    野口忠夫君 いろいろな条件の中で考えられたか知りませんけれども、経企庁が発表する数字が何か不安定なものであってはどうもこれはけしからぬと思うのですね。何だかどうも理屈に合わないような数字の発表が——もっとやっぱり実態に即した正確な数字を発表するような、そうでなければ、経済企画庁政府経済指導して、これに小言を与えながら激励しながら進めていくなんという任務は、これなかなか果たせないんじゃないかと思うんですよ。  次に、ことしの一月十七日に河本通産大臣は、円高による為替差益を消費者に還元するという趣旨から、電力、ガス料金を少なくとも五十三年度いっぱいは据え置くことを、電力九社、大手ガス三社に通達されたようでありますが、通産省の試算によりますと、電力九社の為替差益金は、五十二年度下期から五十三年度までの短期間においても、為替レートを一ドル二百四十五円として五十二年度が一千億円、五十三年度が千四百億円となっており、大手ガス三社についても、同じレートで計算すると、五十二年度が百八十億円、五十三年度が二百五十億円に達することとしております。両業界ともこれだけの為替差益があるにもかかわらず、料金据え置きが五十三年度一年限りというのはどうしても納得できないところであります。物価担当であるところの経済企画庁は、前述の両業界の為替差益があれば料金据え置きは何年間くらい一体大丈夫と考えられるか、お伺いしておきたいと思うんです。また、単に据え置きばかりではなくて、積極的に値下げの方向に持っていくべきではなかろうか。それが今日の不況の中で国民の苦しんでいる者に対する温かい政治の姿ではないかというように考えるわけでありますが、ある者はたくさんの利益があって、ある者は料金値上げの中で苦しめられるというような状態経済政策が進むのでは、政治に対する信頼なんというものは戻ってこないと思う。いかがでございますか。
  43. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) ただいまお示しになった電力関係、それからガス関係の円高利益の数字はそのとおりでございます。  このように、電力会社、ガス会社に円高の利益が出ておりますが、一方、五十二年度まで現在の料金の計算値がございまして、五十三年度に入りますとその期間が切れてまいります。その五十三年度につきましては、その後の資本費の上昇とか人件費の上昇というようなコスト要因がございます一方で、石油の価格につきましても、昨年の年末OPECの総会で決まらなかったということがあって、またもう一度ことし見直そうという動きもあるものでございますから、全体としてその価格といいますか、コストについての非常に不明確な部分がございます。  そういうことで、現在の円高差益について、これを直接料金の引き下げに充てるということになりますと、またすぐその見直しということにもなりかねないわけでございまして、いわば公共料金というのはできるだけ長く安定的にしていった方がいいという考え方からいたしますれば、むしろ現在の、いまの料金をできるだけ長く据え置くということがいいのではないかということで通産省においても業界を指導してまいったわけでございまして、その結果、五十三年度中はともかくいまの料金を据え置くことははっきりさせる。そしてその後におきましても、できるだけ長くいまの料金を据え置くという方向で現在対処しているわけでございます。  そういうことでございますので、他方、その現在出ております円高差益についても、できるだけ社外にそれを流出することのないような指導もあわせて行っているわけでございまして、円高の還元の仕方にはいろいろあるかと思いますけれども、電力・ガス料金の場合はそういう料金据え置きという形での反映を考えているというのが実態でございます。
  44. 野口忠夫

    野口忠夫君 考えておるようでございますけれども、とにかく円高差益というものは、これは非常な犠牲の中であるところに集中していく所得の格差でございまして、こういうところをやっぱり平準化していくような中でこれからの経済政策考えていくという基本的な姿勢がないと、これはまずいことだと思うんですよ。そういう意味ではひとつ……。  もう一つ、時間がありませんが、今月二十三日に経済企画庁が発表した輸入品の価格動向調査によれば、円高効果が末端の小売価格に必ずしも反映していないということであります。円高によって輸入価格が下がったにもかかわらず、小売価格が上がっているものに工業製品、農水産物が目立っているが、この原因は、やっぱり国内業者との競合や国内での流通過程に問題があると指摘されております。このことは当該行政官庁の責任もさることでございますけれども、物価のお目付役ともいうべき経済企画庁の物価対策のやっぱり手ぬるさにあるんではないかというふうに思わざるを得ないわけであります。この点についての所見をひとつ伺います。  さらに、特にその中でも水産物については、生産地では安くて小売が高いということが報道されております。五十二年から国際的に経済水域二百海里が設定され、日本の漁獲高が減り、大衆魚でさえ私たちの口に入りにくくなったのに反し、円高で輸入水産物は安く私たちの手に入ると思っていたにもかかわらず、エビ、マグロ、タコの水産物については円高差益の効果がないとなってきますと、日本人はもう魚が食べられないというようなことではないかとこれは心配されるところでありますが、経済企画庁は、物価対策上からも、円高差益を庶民に還元するという意味からも、この魚の値段の引き下げというようなことに努力をしていかなければならぬのじゃないかと思うんですが、特に水産物に関しては水産庁からひとつお願いしたいと思います。
  45. 藤井直樹

    政府委員(藤井直樹君) 輸入品価格の動向調査につきましては、今回やりましたのは第二次調査でございまして、昨年の六月時点でやったものをさらに調査の充実を図ったわけでございますが、結果を見ますと、非常に昨年の後半に円高が進行したということもありまして、円建ての輸入価格、すなわち外貨建て輸入価格に円レートを乗じたものでございますが、これが非常に下がっております。三十三品目調査した中で二十一品目下がっているということでございまして、かなり円高の効果は出てきている、それが波打ち際に出てきているということになるかと思います。  一方、その輸入品の価格が国内でどう動いているかという小売価格の面で見ますと、昨年——昨年といいますか、五十一年の十二月に比べて五十二年の十二月が下がったものが全体として十七品目ございます。前回の調査ではそれが十品目でございましたから、そういう意味で、小売価格の低下したものがかなりふえてきているということが言えるかと思います。  一方、そういう状況でございますが、輸入価格が下がっても小売価格が下がっていないものがございまして、それが六品目あったわけでございます。その中に水産物が三品目あるということになりますが、全体を通じて見ますと、やはり輸入品について、輸入品相互間の競争があるとか、それから輸入品と国産品との間に競争があるというようなことがあるものにつきましてはかなり円高の効果が出ている。  それから同時に、国内の需要が非常に緩んでいるということもその円高の効果の反映に非常に大きな影響があると言えるわけでございまして、逆に小売価格が下がらないものにつきましては輸入品の持っている高級品イメージと言いますか、そういうものがありますと、なかなか敏感には反応しないということもございますし、それから水産物の場合には国内の小売価格というものと連動している面がありますので、卸売価格が仮に下がっても下がってこないというようなことがあるわけでございます。  水産物につきましてはそういうことで今回の六品目の中に三品目あるわけでございますが、これについての問題は、まあ多分に水産業の流通機構にかかわる問題も多いかと思うわけでございます。そういう流通機構そのものの問題もございますが、何とか当面の問題としてそういうような価格の動向が小売価格に反映していくようなことができないだろうかというようなことについては、これから農林省といろいろ御相談をしていきたいと思っております。
  46. 矢崎市朗

    説明員(矢崎市朗君) 輸入水産物につきましては、加工に伴う目減りがございますほか、さらに、流通の過程におきまして調理のサービスが含まれる、あるいは冷蔵保管の経費が加わるというふうなことがございまして、輸入価格がコストの中で比較的ウエートが低いというふうな一つの特色がございます。たとえばマグロ、タコ等について申しますと、コストの割合に対しまして輸入価格が二〇%程度というふうな状況になっているのが現状でございまして、このために、輸入価格の低下がすぐにストレートに小売末端の価格になかなか及ばないという一つの難点がございます。  それとタイムラグの問題もございますが、マグロ、タコ等に見ましても、それぞれこの六月ないし七月ころから低下の傾向は見せておるものの、このたびの価格動向調査の結果によって見ましても、やはり春からの一般の小売価格の上昇というものが依然続いておりまして、それが輸入品の価格につきましても足を引っ張っているというふうに思われるわけでございます。  そこで、私どもも、このたびの調査に基づいて現在具体的な状況を把握いたしておりますが、こうしたものに基づきまして、今後サービス販売の実施等必要な指導を業界に対してもいたしてまいりたいというふうに考えております。
  47. 野口忠夫

    野口忠夫君 終わります。
  48. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 午前の審査はこの程度とし、十二時四十分まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      —————・—————    午後零時四十四分開会
  49. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十九年度決算外二件を議題とし、総理府のうち経済企画庁科学技術庁及び環境庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 野口忠夫

    野口忠夫君 科学技術庁に原子炉衛星規制問題についてお伺いしたいと思います。  ソ連の原子炉衛星のカナダ落下の事故は、全地球が時と場所とを問わず、常に空から核の脅威にさらされていることを改めて知らされました。いま世界的課題としてその処理を迫られることになったと思います。科学技術というものはもろ刃の剣であって、巨大技術投資は人類に大きな利益をもたらしますが、使い方いかんによっては悪魔の道具にもなることを如実に示したものが、今日の原子炉衛星の事故が人間に示した贈り物ではなかろうかと考えます。今日、技術利用の大前提は安全の確保であることはもちろん、軍事利用といえども、これを度外視することは許されないと決意すべきであろうと思います。一九六七年十月発効の宇宙条約は、「平和目的のための宇宙空間の探査及び利用の進歩が全人類の共同の利益であること」をうたっていますけれども、原子炉衛星打ち上げ国、アメリカ、ソ連はこのたびの事故についてどのような判断をしているものであろうか、知れるところの範囲でお聞かせ願いたいと思います。
  51. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 今月の十三日からニューヨークの国連におきまして、宇宙空間平和利用委員会の科学技術小委員会が開催されておりますが、その席におきまして、日本、カナダ等々がこの問題についての総合的な検討を提案いたした次第でございます。  それに対しましてソ連の申しましたことを簡単に申し上げますと、宇宙における原子力利用の有用性を強調いたしまして、原子力衛星の安全性は既存の体制で一応確保されているという主張をいたしまして、そのために新たな規制や日本提案したような作業部会の設置は不用であるということで反対いたしました。  アメリカの方は、自分が打ち上げている原子力衛星の安全性を強調いたしました。安全であるという、十分の措置をとっているということを申しまして、ただし作業部会を設置するのであればそれも結構で、それには賛成いたしますと、それから各国から求められている原子力衛星に関するいろんな情報の提供も進んでやりましょうと、こういう姿勢を示しております。
  52. 野口忠夫

    野口忠夫君 アメリカ、ソ連の態度についていま御説明がありまして、カーター米大統領は一月三十日の記者会見で、確実な安全予防策ができない限り、原子炉衛星を地球周回軌道に打ち上げることを禁止する協定を結びたいと述べたと伝えられておりますが、アメリカがソ連に対して抗議など非難めいた公式声明は出していないことからもわかるように、米ソ両国に原子炉衛星禁止の問題を任せておいたのでは、その実行は期しがたいと思われます。真の核恐怖を除くためのこれに対する対策を達成するためには、非核国が協力して米並びにソ連に迫らねばならないと思いますが、わが国は特に世界唯一の被爆国として、非核国の先頭に立って核の脅威を世界からなくすための努力をする責務があろうと思うのでありますが、この原子炉衛星の事故に対しましていまどのような態度で臨もうとしているか、その態度についてお聞きしたいと思うわけであります。
  53. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) いかにもおっしゃいましたように、わが国といたしましては非核兵器国としてこの問題に重大な関心を持っているわけでございまして、さればこそただいま開かれております宇宙空間平和利用委員会の小委員会で積極的な姿勢でこれに臨んでいる次第でございます。宇宙空間の開発利用は、もちろんいろいろ人類の福祉のために貢献する面もございますので、そういう点も踏まえて、安全性の確保に万全が期せられるべきであると考えております。そのために、原子力衛星につきましては特に安全性確保の観点から厳しい規制が講ぜられるべきだと、こういう立場をとっております。この間のような事故が再び起こることのないようにするのには、国際協力の推進がきわめて望ましいということで、先ほど申しました小委員会でこの問題についての総合的検討を提唱した次第でございます。この総合的検討は、今後宇宙空間平和利用委員会の親委員会の方をも含めましていろんな場で推進されるべきであって、とりあえずいま開かれている科学技術小委員会での検討はそれのいわば第一歩というふうに観念して、すでにそういうような検討が始まっている、あるいは始まろうとしているということでございますが、そのほかに、その小委員会の作業部会として特別作業部会を設けて、特にこの問題について今後集中的に検討をしていくべきであるという具体的な提案を行った次第でございます。
  54. 野口忠夫

    野口忠夫君 現在の宇宙条約では原子炉の積載は禁止されておりません。カーター米大統領は原子炉衛星禁止協定をもってこの問題に当たりたいようでありますが、今回の事故を見てもわかるように、世界各国がその影響を受けるもとにあるわけでございますから、単に米ソ間の原子炉衛星禁止協定の締結という問題で片づくものではなくって、原子炉の積載が禁止されていない宇宙条約の改正という形で対処すべきものではないかと考えます。先ほどからお話しのように、今月の十三日から来月三日までの予定で国連宇宙空間平和利用委員会科学技術小委員会が開かれているようでありますが、わが国としては、宇宙条約改正の問題としてこの場に提起することはどうかと、こう思うわけでありますけれども、こうしたことに対しては各国の反応はどうであったか、そのことについてお伺いすると同時に、わが国としては、条約改正をするような場合、その改正の内容としてはどのような項目を具体的にお考えになっているか、お知らせ願いたいと思うわけであります。
  55. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ただいま始まっております作業は文字どおり科学的、技術的検討からの作業でございます。この宇宙空間平和利用委員会には科学技術小委員会のほかに法律小委員会というのも別にございまして、それは来月から今度はジュネーブで開かれることになっておりますけれども、法律面につきましてはそこの場で検討されることになろうかと思います。  で、いま言われました宇宙条約のどの条項を改正すべきかどうかという具体的な話には現在の段階ではまだなっておりませんが、いずれこの両小委員会における作業あるいは日本が提唱いたしております特別作業部会が設けられた場合のそこにおける作業を経て、徐々にそういう具体的な方向にまいることもあるかと思います。現在の段階では、条約のどの条項についてどういうふうに改正するという具体的な話はまだ出ておりません。
  56. 野口忠夫

    野口忠夫君 日本としてはどうする、どうしたいとお考えになりますか。
  57. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 日本といたしましては、宇宙空間の平和利用の積極面は当然尊重しながら、こういった原子力衛星が落下してくることによって生ずる危険を防止するために最大限の安全措置を講ずべきだと、そのためには、必要とあればそういった原子力衛星の打ち上げの禁止ということも可能性としては考えてみるべきじゃないかということを申しております。
  58. 野口忠夫

    野口忠夫君 今回の事故は俗称原子炉衛星の事故と言われるわけでありますが、その背後にあるものは米ソの宇宙軍拡競争であると考えることはもう一般の通念であろうと思うんです。二月二日にアメリカの議会に出されました国防報告を見てみますと、ソ連の衛星迎撃衛星の進歩が著しく、すでに実戦用衛星を配備しており、アメリカも、迎撃衛星を含め、宇宙兵器競争に踏み切らざるを得なくなったと述べているようであります。このことは単に原子炉衛星だけを禁止すれば足りる問題ではなくて、軍事衛星ということまでも規制しなければ本当の地球上の安全は確保されないのではないかと考えます。そのためには、まずこの原子炉衛星を初めとする軍事衛星の実態を解明し、それらのデータを公開することが必要になってくるんではないかと考えますけれども日本といたしましては、これらの点を、現在開かれている国連宇宙平和利用委員会科学技術小委員会等に、あるいは五月に予定されている国連軍縮特別総会の場に持ち出す用意があるのかどうか。また、それらの場所で検討されるよう働きかける考えがあるかどうかについてお伺いしたいと思います。
  59. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 関連の情報を提供してもらいたいということは、もちろん日本としても科学技術小委員会におけるわが代表の発言において強く主張いたしました。具体的には、すでに打ち上げられている原子力衛星について、その概要、それから特にそれが載せている原子力機器、載ております場合に載せておる原子力機器の特性等に関する情報を提供してもらいたい。それから、万が一そういった衛星が落ちてきそうな状況になりました場合には、その落ちてきそうな日時、いわゆる予測日時と申しますか、それから大体どの地域に落ちてきそうであるかといったようなことを、速やかに、しかも刻一刻継続的に情報として提供すべきであるということを強く要求いたしております。それから、この問題はもちろん軍縮特別総会においても場合によりましては提起されることがあろうかと思いますけれども、具体的に提起するかどうか、あるいはどういうふうにその場合提起するかということは、当面行われております宇宙空間平和利用委員会の両小委員会における検討の結果を踏まえて考えることになろうかと思います。
  60. 野口忠夫

    野口忠夫君 まあ、空の上はもうソ連とアメリカとの軍拡競争の中で、お互いにさらに進歩した科学兵器を駆使して、お互いがお互いをその力の均衡の中で軍備拡張、ことに核拡張というような姿でいま競争が行われている。これは今度は原子力衛星ということだけで問題を考えられがちですけれども、空は完全に戦争態勢の中に入っているような状態で、お互いが、力の均衡といいますか、そういうものをとろうとしているようでありますね。ですから、私としてはやはり日本の外務省が、核の被爆を受けたという経験を持つ限りにおいては、こうしたような危険な状態がさらに前進していく要素を断ち切るような意味で、世界に向かっての平和提言というようなものをやっぱり大胆に勇気を持ってやるべきではなかろうか。それをなし得ないアメリカ、ソ連の現状にあるとすれば、国連における非核国諸国を動員して全体の意思を統一しながら、この二つの勢力の均衡で争っているものを世界の平和という大きな使命の中で抑え込んでいくというような、こういう姿勢で臨んでほしいとしみじみ思います。これは私どもの要望として、今後の世界会議の中で十分ひとつ主張していただきたいと、こういうふうに考えるものであります。  原子炉衛星を積んだソ連の軍事衛星の墜落に関して、日本にも事前に何か通告があったのかどうか。もしそうした通告があった場合、科学技術庁としてはどのような対策を講じられたか、お伺いしたいと思います。
  61. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この原子炉衛星が地球上に墜落するかもしれないということの連絡につきましては、一月の二十一日の午前でございますけれども、外務省から、二十四日ごろにこの衛星が大気圏に再突入する可能性が強いということを連絡を受けております。で、外務省の方の御要請は、この情報につきましては絶対に外部に漏れないように必要な対処をしてほしいという御要請でございましたので、極秘のうちに科学技術庁の中に、もし日本にこの衛星が落ちてまいりました場合に、当然放射能によります影響が出てくることの可能性が考えられたわけでございますので、科学技術庁中心といたしました、少人数ではございますが、放射能関係の専門家のチームを直ちに編成いたしまして、もし日本の領土に落ちてきたような場合には、直ちに出向いて環境の放射能の測定をし得るような体制をとったわけでございます。  しかしながら、二十四日に至りまして日本には落ちなくてカナダの方に落ちたわけでございますので、この体制は直ちに解きましたけれども、なおカナダの上空で大気圏で衛星が燃え尽きるといたしましても、放射能が日本に及ぼす影響が場合によってはある可能性があるわけでございます。まあこのあれは非常に可能性としては少ないであろうということではございましたけれども、すでに日本で放射能の観測体制というものは、中国等の核実験、あるいは原子力潜水艦の入港、こういうもので体制が整えられておりますので、この調査体制だけは直ちに開始いたしまして、つい先日、日本に放射能の影響は全くないと思われるに至りましたので解除いたした次第でございます。
  62. 野口忠夫

    野口忠夫君 その秘密にするということですがね、後で長官からこの点ではお伺いしたいと思いますが、次に、わが国は現在宇宙条約には加盟しているのでありますが、損害賠償条約、救助返還協定等には加盟していない。仮に今回のソ連の原子炉衛星が日本に墜落して損害を受けた場合、ソ連に対して何に基づいて一体これは損害賠償の請求ができるのか。わが国が加盟している宇宙条約を盾に損害賠償条約が採用できるのかどうか。また、わが国は未加盟の損害賠償条約、救助返還協定をいつごろ批准する考えなのか。以上の点についてお伺いしたいと思います。
  63. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) わが国は宇宙条約には入っておりますけれども、損害賠償協定には入っておりませんので、今回のような場合に、もしわが国が実際に被害をこうむった場合には宇宙条約に基づく損害賠償請求並びに一般国際法に基づく請求ができることになります。これではやはり不十分なことも考えられますので、私どもとしては、損害賠償条約それから返還協定、登録条約等残りの三つの条約につきましても、国内法令措置の要否等の問題の検討をできるだけ早く進めまして、早く残りの三条約にも加入するように準備を進めてまいりたいと考えております。宇宙、損害賠償条約の当事国になりました場合には、その条約の規定に基づきまして相手国は無過失責任を負うことになります。日本もそれに基づいて相手国に請求ができることになります。
  64. 野口忠夫

    野口忠夫君 最後に長官にお尋ねしたいわけですけれども、なかなか科学技術庁というところで取り扱う科学技術というのは非常に専門的であって、高度な知性がないとわかりにくい問題を扱っております。そしてまた、日本の国の発展形態の中でも新しい出来事が多くて、それを政治というような場面に転換してくる際にどうもお粗末なところが出てくるんではなかろうか。非常に国民にとって重要な問題を扱いながら、どうもそこら辺が手抜けのところがある。たとえば原子力船事業団の時限立法なんていうのは、これは全くどうもおかしなことではなかろうかと考えられるようなこともあるわけですが、一般的に言って、科学技術の問題というのは熟練の度合いが進んでいない。そしてまた一般的でありません。政治的に考えるとそういうことになると思うんです。専門の部門が多くて、一般国民の常識というものからは遠いところに存在している。特にこの原子力問題なんていうようなものは軍事問題を含んでおりまして、何でもかんでも秘密性ということがある。そしてまたそれを知るところの特定の人々に限るところの密室性が科学技術の問題につきまとっているのではないだろうか。  しかも科学技術が、先ほどもろ刃の剣と申し上げましたが、それが一般生活に与える影響というのは非常に大きいわけですが、その専門的な密室的な秘密のベールの中におけるものを、それらの人々が安全である、安全であると何ぼ言うても、国民はそれを理解することはなかなかできなくて、とかくこの科学技術の問題には国民的な不安感が助長されて、住民運動というようなものを引き起こしているように思うわけでありますが、先ほどのお話でも、ソ連の破片が落ちることについてはまあいろんな動揺とか——しかし、むしろ私は、どの辺から落ちてくるんだろうかなあといって空をながめる一億国民の姿があった方が結構じゃないかと思うんですがね。何かソ連とアメリカとのやっている軍拡競争の中で空がそうなっているんだということを国民に知らせることが原子力行政をちょっとゆがめるんじゃないかなんというみたいな印象ではいけないわけでしょうから、私の理屈から言えば、むしろ落つるかもしらぬと、だから国民はみんな表に出て空を見ていろと、そしてもし落ちてきたら逃げていけと、こういうようなやっぱり大衆と科学技術というものとが粘っていくような姿の中での科学技術庁の宣伝とかPRとか、そういうようなものが望まれるのが今日の段階ではなかろうか。密室性がある、秘密性がある、専門的であって上の方でやっているやつが、現実には地域に住んでいる生活の場の中で環境破壊や公害などを与えていくおそれを感じているわけですから、これはやっぱり早く国民の常識として一般に理解されるような方向で、こうした問題に国民が参加するような方向をとることのために、長官として、そういう点についてどうお考えか、所見を承りたいと思うわけであります。
  65. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) ただいま、科学技術というものは大変専門的なものであるから国民にどうも理解しにくい、また普及しにくい、もっとわかりやすくそういう知識が、そういうことが連絡できるようにすべきじゃないか、そして国民の理解を得て科学技術の発展を図っていくべきじゃないかというお話がございましたが、その御意見は至極ごもっともであると考えるわけであります。したがって、そういう点につきましては、今後とも御発言の趣旨に沿ったやり方をしてまいりたい、このように考えております。  ただ、たまたまその話のついでにお取り上げになりましたソ連の原子炉衛星、この問題につきましては、先ほど政府委員から答弁をいたしましたように、一月二十一日の午前中、外務省を通じてアメリカの方から連絡があったわけであります。そのときにアメリカからの連絡の内容としまして、これはアメリカでも、一般の関係のない国民にいたずらな不安や混乱を起こさせることを避けるために公表しないから、日本においてもそれを公表しないでおいていただきたい、無用の混乱や不安を招いてはぐあいが悪いと思うからという内容でありましたのと、もう一つは、その情報によりまして、当時から日本に落ちるという可能性は非常に少ないというようなことも考えられましたので、その二つの点からその方がいいであろうという判断を下しまして、いま申しましたように、それに対する処置としましては、十分にひとつ国民の安全を守るような処置がとれますように対応しながら、いたずらな不安や混乱を招かないためにそういう措置をとることが至当と信じまして行ったようなわけでございます。  しかし、これはこういう事情で公表しなかったわけでありまして、科学技術そのものにつきましては、先生の御趣旨のようになるべく国民の方に御理解を願えるように今後ともひとつ一層心がけてまいりたいと、このように考えておるわけでございます。
  66. 野口忠夫

    野口忠夫君 原子力船「むつ」の問題で一つお聞きしたいんですが、放射線漏れ事故を起こして以来、当面の課題は長崎県の佐世保港での修理問題でありますが、一昨年二月に政府は久保長崎県知事と辻佐世保市長に修理を要請いたしまして、昨年の四月に佐世保市議会は核燃料づきの修理という政府の要請を受け入れ議決しておりますが、長崎県議会は核燃料を抜いてくることを条件に受け入れを決めているのが現状であります。したがって、今後の焦点は、長崎県の要求どおりに核燃料抜きの修理に政府が応じるかどうかであるが、新たに科学技術庁長官に就任された熊谷科学技術庁長官は核燃料抜き修理についてどのように考えておられるか、御所見を承りたいと思います。
  67. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 「むつ」問題に関します従来の経緯につきましては、いま先生からお話しのあったとおりの経緯を経まして今日に至っておる次第でございます。これに関しましては、一昨年二月に政府が佐世保市並びに長崎県に対して御要請をし、昨年の四月に佐世保市から、また長崎県からこれまた御発言どおりの決議が行われたということもそのとおりでございます。その後、これも御承知かと思いますが、昨年五月には、それを受けまして「むつ」問題の関係閣僚の懇談会を開催いたしまして、それに対していろいろ検討を行い、越えて七月には、いわゆる安藤委員会におきまして、核燃料を抜きますことも安全に実施し得る、それも確認しますし、さらにはまた、核燃料づきのままの修理も可能である、安全に修理し得るという結論も改めて得ているようなわけであります。したがって、いろいろの検討が行われてきておりますので、それらの経緯を踏まえまして、私どもといたしましては、この「むつ」の修理を佐世保港において実現したいと、このように考えまして、近く結論を得まして地元に御要請したいと、このように考えているわけでございます。
  68. 野口忠夫

    野口忠夫君 このことの最後ですが、次に原子力船「むつ」の母港問題についてお伺いしたいんですけれども、原子力船「むつ」の定係港については、昭和四十九年十月十四日に鈴木自民党総務会長、杉山青森県漁業組合連合会長、竹内青森県知事、菊池むつ市長の四者からなる「原子力船「むつ」の定係港入港及び定係港の撤去に関する合意協定書」が締結され、入港後二年六カ月以内に定係港の撤去を完了することになっていますが、合意協定書が締結された当時と「むつ」をめぐる人的関係というものは最近変わってきているように思われます。  そういう状態の中で、昨年の十一月十九日に、原子力船「むつ」の母港問題をめぐって鈴木農林大臣、竹内青森県知事、河野むつ市長、植村青森県漁連会長の四者で話し合われたそうでありますが、この話し合いの中で何か新しい話があったのかどうか、政府はあくまでこの合意協定書を守るという考えに変わりはないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  69. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 昨年の四者の話し合いにおきましては、一応母港問題と修理港問題とを切り離しまして、まずもって修理港を早く決めるというように話が変わったというように心得ているわけであります。ただ、しかし、この昭和四十九年の四者協定におきましては、この二年半の期限内にあそこを立ち退く、むつを立ち退くというお約束になっておりまして、このお約束はそのままに残っているわけであります。したがって、それに従いますと、昨年の四月十四日にはここを立ち退かねばならぬことになっているわけであります。これが実行できませんので、大変政府としては申しわけなく思っているわけでありますが、やはりその修理港が決定しませんと現実にこれが実行できないわけでございますので、四者協定の趣旨はもちろん尊重しまして、一日も早くその協定を実行いたしたい。また、地元に対しましてはまことに申しわけないと考えておりますが、いずれにいたしましても、現実に修理港が決定いたしませんと何とも処置ができませんので、心ならずも今日の状態を続けているわけでありまして、非常に政府といたしまして苦慮いたしておるような状態でございます。
  70. 野口忠夫

    野口忠夫君 次に、原子力発電という問題に関してお伺いしたいんですけれども、現在わが国の原子力発電は十四基、八百万キロワットであると言われておりますが、政府の長期エネルギー需給暫定見通しでは、これを昭和六十年度は三千三百万キロワット、六十五年度には六千万キロワットまで持っていこうとする計画であります。原子力開発計画は、これまで昭和六十年度の発電規模を六千万キロワットにおいていたが、その後、これを四千九百万キロワットに修正し、さらに昨年の六月に再び三千三百万キロワットに下方修正したものであります。  ところが最近の新聞報道、これは二月二十三日の毎日新聞ですが、この新聞によりますと、六十年度の原子力発電規模は、今後立地がスムーズにいっても電力九社全体で二千九百七十一万キロワットにしかならず、目標の三千三百万キロワットを大幅に下回る見通しのようであります。このように見通しが非常に上下して狂っているという理由科学技術庁としてはどのようにお考えであるか、お伺いしたいと思います。
  71. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) やはりいろいろの原因があると考えますが、主要な原因の一つといたしましてはやはり立地問題、立地問題が思うように進んでまいらない、このようなことかと思っているわけでございます。
  72. 野口忠夫

    野口忠夫君 原子力発電のいま進まない現状、これは公共事業、十五カ月予算の中で大幅に投資していきますが、期待されるものは民間設備投資でありますね。この電力関係の民間設備投資というのは、これは大した膨大な要請があるわけであります。約総額で三千億円の投資、今回の景気回復の中ではビッグプロジェクトであろうと思うわけでありますが、鉄鋼とともに並ぶような民間設備投資期待の産業であるわけですね。これができないと七%はできない、こういう状態にあるわけでございますが、結果としては、福田内閣が命をかけた七%の成長、それを期待するであろう、つくるであろうところの民間設備投資のあり方の中での電力関係が落ち込んでいくということがどこから生まれているかというと、これは立地難、その問題の一つは環境問題にあるわけだと思うんです。  政府は、四十九年度から電源立地をスムーズに運ぶ目的で、地元市町村に電源立地促進対策交付金というものを支給しているわけでありますが、果たしてこれによって電源立地難は解消されたのだろうかどうか。何とか解消したいということで今度は倍額にするんだそうでありますね。大した交付金を出すと、こういうことであります。ところが聞くところによりますと、五十二年度の電源立地促進対策交付金予算は二百三十七億円のうち約百億円、これが五十二年度残っているという見通しのようであります。このことは交付金が立地問題打開のいわゆる切り札にならなかったことを示しているのではなかろうかと思うんです。つまり、交付金を与えて電源を立地しようしたが、そのことに問題があったのではなくて、環境問題というような中での住民の不安感情が今日の状態をつくっているということになるのじゃないかと思うんですけれども、原子力発電の安全性等環境問題を担当しております科学技術庁としては、交付金による立地問題打開の方法をどのように一体考えておられるか、科学技術庁立場でひとつこれ御検討いただきたいと思うんです。
  73. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) なかなかむずかしいお尋ねでございまして、十分御満足のいくような御回答ができるかどうかわかりませんが、いま御発言になりましたような趣旨になるべく沿うように私ども考えを簡単に申し述べさしていただきたいと存じます。  第一に、景気回復のために非常に大型な公共事業の予算を組み、しかもその中に電力開発の公共事業の事業費がたくさん含まれているのに電源開発関係が進まないと大きな支障になるのではないかというような御心配もありまして、これも一応ごもっともでございます。ただし、この電源開発——原発ではなしに電源開発全体の問題になりますと、多少われわれとは所管が違っておりまして、通産省関係で電源全体の立地計画をお進めになっておるわけでありますが、通産当局におかれましては、このいまの電源立地のおくれの問題が本年度の公共事業の消化ということには大きな関係はないというようにお考えになっていると存じます。もちろん、原発はその電源関係の中の一部分でございまして、これが直接本年度の公共事業の消化に支障を来すというまでには至っていないかと考えるわけであります。  ただ、それはそれでありますけれども日本の今後のエネルギー資源の問題という点から考えますと、原発の立地が現在のようにおくれがちであるということは、非常に重大な問題として考えていかねばならぬと思っているわけであります。  そこで、原発立地の推進のために、いわゆる電源三法をつくりましてそしていろいろ電源立地の推進に努めているが、昨年も金が余って、ということは余り電源立地の、電源三法の効果が期待されなかったからではないか、どういう考えかというようなお尋ねかと思うわけであります。実はそこまでのお尋ねはなかったかもしれませんが、この原発立地という問題を推進しますためにはいろいろなことが必要なわけでありまして、第一には、やっぱり何と申しましても、原発の安全性を推進するということが第一の問題でありますが、これにつきましては、いろいろな方法でその安全性の推進に現在までも努めてまいりましたし、今後も一層強力に安全性の推進ということを努めてまいるつもりであります。  それからいま一つは、原発の安全性に関する理解といいますか、普及でありますが、これにつきましても、それぞれいろいろ努力してまいっておりますけれども、なお、現在の状態では必ずしも十分ではない点もあると思っているわけであります。で、これにつきましてさしあたってわれわれが考えておりますことは、第一には、この原発を受け入れていただいております地元の府県なりあるいは市町村なりとの間に、まだ安全性の確認に関するいろいろな手続、方法等につきましてなお間然しているところがあるのではないか。この点をもっともっと密接に連絡を密にしまして、少なくともこの原発を受け入れていただいております地元の府県なりあるいは市町村なりとは十分に密着した状態でいろいろ問題を処理してまいらねばなりません。それにはやはり御要望も十分承って、あるいは政府としてあるいは事業者として、さらに反省し、さらに検討をしなければならぬ点はひとつ十分反省し、検討していこう。ただ、そういう話の場合に、地元の方に対しましても、政府なり事業者としての考え方をできるだけひとつ御理解を願って、少なくとも地元と政府との間にそういうすきがないようにしてまいらねばならぬ、こういうことを考えまして、現実にも、今回地元との公式な懇談会というものを設けまして、すでに一月中にその第一回の懇談会を開きまして、今後、目的が達成できるまでそういう懇談会を続けてまいって、いま申し上げましたような趣旨が徹底するように努めてまいりたいと、このように考えております。  それからもう一つの点は、どうもいままでの安全性の普及といいますか、PRといいますか、それがどちらかといいますと、やや一般的な安全性の普及ということで幾らか具体性を欠いていた点があるのではないか。したがって、もっと平易な、しかし具体的な問題でいろいろな場合の生じましたときにわかりやすく事情を御説明しまして、そうしてそういう御不安が解消しますように、またそういう接触の場面をつくれば、いろいろわれわれとしてさらに反省しなければならぬ点もできるのではないか。  いずれにしましても、そういう個々の疑念や不安に対しましてひとつ十分そういうお話を聞き、そういう御不安や疑念をできるだけ解消してまいりたい、こういうこともさらにつけ加えまして、そうして地元の理解を深めてまいりたい。そうして地元の立地の推進を図りたい。  最後に電源三法でございますが、やはり国の施策を受け入れていただくそういう地元に対しまして、できるだけそういう立地の地帯の整備に御協力するということは、これも非常に必要なことであると思いまして、たまたまこれは電源三法は原発だけではございませんが、御承知のように、火力、水力も含んでの電源三法でもございますので、こういうふうに余る、多少消化し切れない場合もありますが、それがむだになった、またそれが、それだけでは原発推進がうまくいかないというふうには考えないで、さらにいま申し上げましたようなことを全部ひとつ有効に推し進めまして、わが国の原発を目標に近づけ、来るべきエネルギー危機を回避するように努力したいと、このように考えておるわけでございます。
  74. 野口忠夫

    野口忠夫君 四十分ぐらいのものですからあと二分きりございません。環境庁に物申したいわけですけれども、若干言えないわけでございますけれども、いま長官が、科学技術庁立場で言うとやっぱりエネルギー技術の問題を考えるということは当然だと思いますし、それが不足するような状態の中で安全性を確かめていくと、こういうことは大事だと思うんですけれども、実は環境庁の方にお尋ねしましたときに、原子力問題についての環境公害等の問題は原子力委員会が持っていると、こういうことなんですよ。ですから、この問題に関しては、エネルギー問題もさることながら、それが進行しない原因は不安と環境等の問題があるわけですね。この間おいでになった方にお聞きしたんですけれども、福島県の東京電力の原子力発電所があるわけです。そこでこの間海水の中にコバルトが流れ込んだというような話があったんですが、そういう問題を扱っていく現地における姿を見ますと、みんなやっぱりやりたい方の人たちが多いんですね。その地元にいる、そういう危険なものと一緒に生活していかなければならぬ地域住民の人たち意見というものが、むずかしいものですから、なかなか自分のものになっていない。  環境問題がもし科学技術庁にあるとすれば、これはやっぱりその一点の中で科学技術庁がやっていただかないと、開発がおくれて困るとか電源が困るというのはこれは通産省の考え方です。通産省は一生懸命進めるだろうけれども、それが住民の幸せを壊してはいけないという、そういうやっぱり指導と監視とその体制を持つのが科学技術庁きりないわけなんですよ。ですから、通産省の言い分に従って進めなけりゃならぬのじゃなくて、住民の側に立って、やっぱり科学技術的な立場からこれはどうだというような現地調査もおやりの上に、現地住民と地方自治体の間における混乱というような問題の中に、冷静な科学的な根拠に基づく安心あるいは不安解消というような問題を——もしそれが不安なものであったら直ちにやっぱりそういう点ではこれを改めるような指導をしていただかなくちゃならぬかと思うわけでありますが、どうですかね、これは環境問題になればそちらに移るように言われては、ちょっと環境庁の方にもお聞きしたいんですけれども環境庁長官としては、やっぱり原子力の問題の環境問題も、私の方の仕事の方がやりいいと、こうおっしゃりたいのですかどうですか。あと質問する時間がなくなりましたから、これ一点でとどめることになりましたが、お答えいただきたいと思います。
  75. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 先ほど申しましたような方法を通じまして、先生の御発言尊重した処置を進めてまいりたいと、このように考えております。
  76. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 環境問題はわれわれの所管でございまするので、十分地方住民にそういう意味についての評価というものは冷静、科学的、客観的にきちっと行われていかなければならぬと考えております。ただし、公害対策基本法の第八条で、放射性物質については原子力基本法その他の関係法律でやることということになっておりまして、科学技術庁の原子力行政の一環として原子力施設の安全性の問題を所管するということになっておりまするので、科学技術庁の方で、十分そういう点を評価を加味しておやりになっていただいておることを期待しているようなわけでございます。
  77. 野口忠夫

    野口忠夫君 環境問題が起こったときには捨てておけないじゃないですか、環境庁なんだから。設置法によれば、あなた方は住民サイドに立って環境を守るべき責務を持って今回役所ができたわけでございましょう。下の方から環境問題だと言ってあなたのところに来たときに、いや、それは原子力委員会だからぼくらは関係ないと、こう言っていられるかどうか。だから、この際は環境庁みずから、そうかと、じゃひとつ行ってやろうかと、こう言ってやっぱり話を聞いて、それはこうだというような御指導があるべきではないかと思うんですが、いかがでございましょう。
  78. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 先ほど申し上げましたように、環境問題はわれわれのこれは責任の問題ですからね、そういうことで、われわれとしてはこれに対して十分そういう立場から協力してそれはやるということを申し上げたわけです。ただ、この原子力の問題になりまするというと、これは実に科学的なもの、安全性の問題になってまいりますので、そういう面については、むろんわれわれの立場はわれわれの立場であるとしても、これは科学技術庁のそういう専門的な立場というものにこれは第一義的にやっていただかなければならぬ面があるので、その点をここで触れて申し上げたような次第でございます。
  79. 野口忠夫

    野口忠夫君 時間が全くなくなりましたので、あと各党の方が環境庁十分に質問があるそうでございますので私はやめますが、この前環境庁への質問を私一回やっておるわけですけれども、どうも国会で三遍ほど環境評価の問題はお約束があったわけでございますけれども、どうもいつまでたっても何ともならない。で、不況の段階になってくる中ではそういうものは余り必要でないみたいな世論も高まる中で、環境庁の皆さんには非常にこれがんばってもらわなくちゃいけないんじゃないだろうか。で、私は省よりは庁の方が大事だと思っているんです、いま。縦割りの省よりは、横断的な行政を担当する庁というのは日本の国の国民の幸せのためにまことに重大な任務を持っている。これが縦割りに負けたり、その辺に物を言われてぐずぐずしておったりしたのでは、私は真の意味における国民のための行政は生まれてこないのではなかろうか。そういう意味では全体的な、横断的な庁という皆さん方のお仕事が、自分たちの良心を守る意味で進められていくことをお願いしたいと思うわけでありまして、なお後で公害対策委員会等で御質問申し上げたいと思いますが、以上要望申し上げまして、時間がないから御返事は要りませんが、よく心に銘じてひとつお願いいたしたいと思います。  以上でございます。
  80. 田代富士男

    田代富士男君 最初に私は、去る五十二年の七月に打ち上げられましたわが国で初めての静止衛星「ひまわり」のことについてお尋ねをしたいと思います。  この静止衛星「ひまわり」は、予報精度の向上のために大きな寄与をしておりますが、この「ひまわり」が製作されるに至りました製作経過と、それにかかりました製作費用を簡単に御説明願いたいと思います。
  81. 園山重道

    政府委員(園山重道君) お答えいたします。  御質問の「ひまわり」につきましては、日本で初めての実用的な静止気象衛星といたしまして昭和四十六年に計画が定められております。これは先生御承知かと思いますが、国際的なGARP計画と申しまして、各国が協力いたしまして地球大気の動きを観測しようという計画の一環でございます。四十六年に研究開発が始まりまして、先ほど御指摘のように五十一年度に終わりまして、昨年七月に打ち上げられたわけでございますが、その間の開発経費は、衛星につきましては約百十億円でございます。なお、この開発されました衛星を打ち上げます費用、これを追跡いたします費用、これが約五十八億円、それから気象庁におかれてこの衛星からのデータを解析いたしまして予報に役立てるという地上施設の整備に約百三十六億円がかかっておりまして、全体で約三百億円というものでございます。
  82. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、五十二年の九月の八日でございましたか、第一回の画像の撮影試験が行われた際、直径約五十センチぐらいでございますか、この地球の画像の面で北東−南西方向で八ミリの伸び、そしてその反対に北西それから南東の方向で八ミリの縮みというようなこういう画像が出されたと、こういうことが報道されております。当初この「ひまわり」を発注をされたのは米国のヒューズ航空機ではなかったかと思いますが、ここでの最初の予測といたしましては、回転軸のずれというものは〇・一度程度であると、このように見込まれていたわけなんです。それがこのような八ミリ、八ミリのずれた画面が出てまいりまして、その原因がいろいろ探究されたけれどもわからなかった。結論として、回転軸が二度傾いている、ずれていると、こういう結果が出てきたわけなんです。当初は〇・一度程度のずれと、そう見込まれていたのが二度のずれが生じた原因というものはそもそも何であったのか、そこのところをまずお願いいたします。
  83. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 先生御指摘のように、回転の軸が当初の予定から二度——一・九度でございますけれども、約二度ずれたということが事実でございます。目標値といたしましては、このずれを〇・一度以内におさめようという目標でありましたことも御指摘のとおりでございます。  その原因につきましては、これは非常に宇宙空間に上がっておるものでございまして、また地上において試験をいたしましたときには〇・一度以内に保たれておったわけでございますが、これが打ち上げられて宇宙空間で静止したときになぜこの約二度のずれになったかということにつきましては、いろいろ考えられる原因はございますけれども、大変むずかしい問題でございますので、まだ現在原因の究明中でございまして、いずれ、宇宙開発委員会におきましても、どういう原因でずれたかというようなことの検討を委員会の技術部会の分科会におきまして検討いたしておりますので、その御結論が出るのを待っている次第でございます。現在は検討中という段階でございます。
  84. 田代富士男

    田代富士男君 その原因は現在検討中ということでございますが、この「ひまわり」を打ち上げるに際しまして、もし失敗した場合ということに備えましてこの打ち上げ費用六十三億円に対する保険金が掛けられまして、保険会社はたしか七社であったかと思いますが、その保険金が掛けられております。その保険金の内容をちょっと調べてみましたならば、この保険では、衛星に積載されました各種の機器が正常に動くかどうかという、そういうものが契約の内容になっておりまして、約三カ月間の機器のチェック期間が置かれてあるわけなんです。そういうような条件で保険の支払い対象というものがつくられておるわけなんですが、いま御答弁されたことで言うならば、原因は不明であると、地上での検査は〇・一度のずれであった、どうして宇宙空間に静止したときに二度のずれが生じたかわからないということであるならば、当然これは保険金というものはどういう形になるのか、これがいま明確にされないままで、これもこの結論が出てからこの保険金の問題も明確になるのか、そこらあたりを明確にしていただきたいと思います。
  85. 園山重道

    政府委員(園山重道君) ただいま御質問の保険につきましては、御質問のように、再打ち上げに必要な金額約六十三億円というものを保険金額といたしまして、保険料としては約六億円の支払いがなされているわけでございます。この保険の対象につきましては、衛星の打ち上げをいたしましてこの衛星を静止軌道に入れること、つまり衛星を静止させることに失敗をした場合、あるいは静止をいたしますために衛星の積んでおります燃料を使うわけでございますけれども、これが非常に静止のためにたくさんの燃料を使い果たしまして規定の燃料が残っていないという燃料不足の状態、あるいは太陽電池に異常がございまして、太陽電池が発生する電力が不足している、この三つのいずれかの場合に保険金が支払われるという契約でございまして、御承知のように、大変まだ人工衛星むずかしい問題でございますので、あらゆるこのふぐあいというものについて保険が支払われるという契約にはなっていないわけでございますので、ただいまのこの軸の約二度の傾き、これもすでに新聞等では報じられておりますが、地上におきます受信側で十分それを補正をいたしまして使うことができる問題でございますし、外国の衛星でも若干のずれを生じた例はあるわけでございまして、したがいましてこれは保険金支払いの対象になるものではないと、こう理解をいたしております。
  86. 田代富士男

    田代富士男君 いま保険金の支払い対象になる事態ではないとおっしゃるけれども、静止衛星「ひまわり」自身は予定されたとおりのそういうような状態になってない、この事実をお認めになりますか。
  87. 園山重道

    政府委員(園山重道君) この目的といたしましたスピン軸を〇・一度以内に保つという目標値からはずれておることがたしかでございますけれども、これはやはり地上で試験をいたしますときしか、宇宙空間で実際に受け取りの検査をするということができませんので、地上での試験の状態を規定したものでございまして、したがいましてこれが宇宙空間においてずれて、まあ著しくずれまして全く機能を果たさないということでございますれば、これは明らかに大きな問題でございますが、一・九度、二度程度のずれでございますれば、地上の受信側で十分補正ができますので、〇・一度から一・九度にずれたということは確かでございますけれども、これが必ずしも目的を達する範囲を逸脱したということではないと思っておる次第でございます。
  88. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、「ひまわり」衛星の使命を果たす寿命と申しますか、これは約四年であると、このように私は聞きましたけれども、そういたしますれば、四年先には再び第二号を打ち上げなくてはならない。そのときに、いまの答弁では、〇・一度ということは当初見込まれていたけれども、二度程度のずれというものは画像にさほどの影響がないと言われるけれども、地上においては日本列島で百キロからの違いがあります。それだからよいというものではなくして、第二回目に打ち上げるに対しましてはどのようにこれを改善するのか、そういうところの研究なり対策というものは講じなければ、これはコンピューターのプログラムを入れかえさえするならばよいというような、そういう姿勢で対処していたならば、同じことを繰り返すのじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。これは保険金なんかと別な問題で、これも国民の税金です。これは二度傾いてもそれは大したことはないという、そういう性格のものではないと思いますが、四年先に打ち上げるこういう第二号に対してもどのような対処をしていらっしゃるのか。また、第一号の反省をどのように第二号に生かそうとするのか、そこらあたりを聞かしてください。
  89. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 確かに御指摘のように、目標といたしました精度からずれたわけでございますので、これをできるだけ第二号を打ち上げます場合には、今回の経験を生かしましてきちんと目標値におさまるものをつくらなければならないと考えております。  ただ、先ほど申し上げましたように、現在まだこの原因というのが、いろいろな予想はされておりますけれども、推測はされておりますが、まだこれが煮詰まっておりませんので、できるだけ早くこの原因究明を行いまして、その結果を第二号の設計あるいは製作にはね返らせるように努力をしてまいりたいと考えております。
  90. 田代富士男

    田代富士男君 長官にお尋ねいたしますが、いま私申し上げましたとおりに、「ひまわり」の当初の計画では〇・一度のずれであると見込まれたのが二度であると、しかし、それもコンピューターの操作によって画像は修正できるからよいんだというような、そういう姿勢で——宇宙開発計画というものはちょっとのずれがあっても大変です。たった八ミリ、八ミリのずれで、いま言うように百キロからのずれがあるんです。こういうような姿勢で基本的な方針が行われたならば大変であると思いますが、長官はその責任者といたしまして、今後のわが国の宇宙開発の基本方針に対する姿勢はどういう姿勢で臨まれるのか、またこれかて国民の血税です。こういう理解なくしてこれはもう仕方がなかったんだというものではないと思うんですが、長官の御意見をお聞きしたいと思うんです。   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕
  91. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) お話しの御趣旨のとおりでございまして、そういう安易な姿勢で取り組むべきものではないと思っておりますから、十分御発言の御趣旨に沿ったような態度でこの研究を推進してまいりたいと、このように考えております。
  92. 田代富士男

    田代富士男君 次に、原子炉衛星についてお尋ねをしたいと思います。  ただいまも野口委員の方から一、二御質問がございましたが、すでに御承知のとおりに、ソ連の原子炉衛星コスモス954号が墜落をした事故がございました。これは、人工衛星の電源として原子炉が使われ、放射能汚染の危機にさらされている恐怖というものを間近に見た感じでございます。この問題から考えますれば、この原子炉衛星が大気圏に突入する場合には、摩擦熱によって溶解してこれは全部蒸発してしまうんだ、危険性はないということが発表されておりましたけれども、現実にはその危険性が起きております。カナダの原子力規則委員会の発表によりますと、原子炉衛星の破片から二時間で人間が死ぬほどの危険な放射能が検出されている。また、カナダの報道によりますと、もしもこれが三十秒の誤差があったならば六十万都市の上に落ちていたというような報道もされております。これは黙って聞いておくわけにはいかないと思うんです。科学者の発言では落ちてこないと言っていたのが落ちてきたんです。そういうものは全部危険性はないと言っていたのが、そういう危険性が現実に起きて落ちている。いまさっきも、日本には通知があったのかということに対して答弁がありましたけれども、そのときにもしも日本に落ちていたならばどうなっていただろうか。わが国において現在、こういうようなコスモス、今回の原子炉衛星に対して追跡することができたのか。わが国の現在の科学技術庁の技術において、今回のこの原子炉衛星を追跡できたのか。日本へ落ちてきますよと言われた場合にどういう対処をするのか。いまお話を聞きますと、放射能観測体制調査体制だけはでき上がっているということでございますが、これで本当に完璧であるのか。今回のコスモスに対して追跡能力があったのか、なかったのか。現実に起きてきた場合には、ただ単なる測定で済まされないと思いますけれども、これに対する体制というものはどうなっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  93. 園山重道

    政府委員(園山重道君) お答えいたします。  追跡能力の問題でございますけれども科学技術庁には御承知のとおり宇宙開発事業団がございまして、わが国が打ち上げます人工衛星の追跡はいたしておるわけでございます。しかしながら、この宇宙開発事業団が持っております追跡能力と申しますのは、わが国が打ち上げます人工衛星の追跡能力でございますので、非常に制限があるわけでございます。わが国の打ち上げます人工衛星が使います周波数、電波の周波数でございますが、この周波数を追跡できるようになっておるわけでございまして、一般に宇宙空間を飛んでおります衛星、しかも電波を出してないものというようなものにつきましては追跡能力がございません。たとえばどういう衛星が落ちそうだということで、たとえばこの間のコスモス954にいたしましても、軌道のデータというものが入りますれば、これを計算して、日本の上空を通過するのはいつごろかというような計算をいたすことはできますけれども、そういった計算能力とそれから限られた電波の周波数に対しての追跡能力というものを持っているということでございます。  ちなみに、今回のコスモスに954つきましては、最後まで軌道情報が入りませんので、その計算もできなかったわけでございます。
  94. 田代富士男

    田代富士男君 そうすると、こういうものに対しましては、落ちてきたという結果が出てから対処するという、これにすぎないわけなんですね、現在のところ日本体制においては。そうした場合に、受け身だけの形にならざるを得ない。また、そういう立場になるならば、いまさっきも損害賠償条約の問題が出ましたけれども、人工天体が落下した場合、返還、損害に関するそういう損害賠償請求権をうたったのが宇宙条約でありますけれども、これが不備であるというところから、この損害賠償条約をどうするかということもありましたけれども、これにも加入されてない。そういうものに対しては体制が整っていないし、そういう被害を受けた場合の条約も完備していない。皆無に等しいのが現在のわが国体制と言わざるを得ません。専門的にはいろいろ努力していらっしゃるかは知りませんけれども、いま聞いた範囲内においては。特に、原子炉衛星の問題も申し上げましたが、損害補償の問題に至りましては、もう専門家でございますから御承知のとおりに、現在は地球周辺を四千五百四十六個もの人工天体、付属品や破片が回っている。そうして、聞くところによれば、毎年三百三十あるいは三百四十個がこの軌道からずれている。言うならば、一日に一個弱の割合で軌道からずれて落ちてきているというのです。わが国でも昭和四十一年から八個それが確認されている。これは晴天の夜確認される。日中だとか曇天の夜は確認できない。これは、数倍のそういうものが落ちてきている可能性がある。原子炉衛星の場合は被害が大きいけれども、他のそういうものが落ちてきた場合の被害もある。それに対しても、まだまだいまのところはこういうような救助返還協定であるとかあるいは損害賠償条約だとかいうものに対して加入されていないということは、私はちょっと無関心過ぎはしないかと思うわけなんです。そういう意味から、いまさっきも野口委員からの質問がありましたけれども、こういう条約に対しましては私は速やかに加入すべきであると思うのです。いまさっき外務省の方から早急に加入というようなことでございますが、そういうことはもっと具体的に、これだけ具体的な問題が起きてきておりますから対処すべきだと思うのです。こういう宇宙対策といいますか、こういう問題に対しては、受け身のそういう体制に対しまして、一歩前進さすような体制が必要であるのじゃないかと思うのですが、これは科学技術庁立場から、あるいは、こういう条約に対しては早急に入るべきだと、これは外務省のお立場から御答弁願いたいと思うのです。
  95. 園山重道

    政府委員(園山重道君) お答えをいたします。  まず最初に御指摘のございました、飛んでおります衛星に対する追跡いかんということでございますが、確かに、あらゆる宇宙飛しょう体に対しまして追跡しその軌道を常に把握するということができればこれにこしたことはないわけでございますけれども、これにはやはり相当膨大な施設、人員、経費がかかるものでございますので、なかなか、現状におきましてアメリカのような体制を整えるということはむずかしい問題かと考えております。  なお、損害賠償条約に関する加盟につきましては、御承知のように、宇宙条約には加盟いたしておりますが、その関係のございます三つの——二つの条約と一つの協定、損害賠償条約、それから登録条約並びに救助返還協定と言われておりますものにまだ加盟をしてないわけでございます。これらにつきましては、特に今回の問題を契機といたしまして、科学技術庁といたしましてもこれに対する加盟についての努力をいたしておるところでございます。御承知のように、これら三条約というのは、いまの二条約一協定でございますが、それぞれ関連をいたしておりますので、加盟いたしますならばこの三者同時に加入することがいいのではないかということでございますが、そういたしますと、当然のことといたしまして、これに伴う国内措置について十分な準備をいたさなければならないわけでございまして、私ども科学技術庁といたしましては、これが批准された場合にどういう国内措置が必要であるかということにつきまして、関係省庁とも連絡をとりながら現在鋭意検討を進めておるところでございます。
  96. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 外務省といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、できるだけ早くこれを批准すべきであると、科学技術庁を含めまして関係省庁と積極的に協議を進めたいと思います。
  97. 田代富士男

    田代富士男君 外務省のお立場としてもそれ以上のことは言えないかと思いますが、事情がこういう事情でございますし、幸い国連においてもこういう原子力衛星の規制問題等が論議されております時期から言っても、ちょうど機は熟していると思いますから、早急に実現されることを要望したいと思います。  そこで、次にお聞きしたいことは、人工衛星がほとんど大気中で燃え尽くしてしまうから心配することはないということでございますが、微粒子化した放射性物質というものは永年にわたりまして大気を汚染して、そうして地上におりてくることは間違いございません。私は科学技術庁の若いお方が、これは大気汚染といっても微々たるものですよ、心配することありませんよというようなことを話していらっしゃるということを耳にしまして、そういう姿勢でこの問題を対処していたならば大変なことであると、責任官庁の人がそういう大したことはないというような考えであったならば、これは問題であると思うんです、私は。だから、一九六四年の四月にアメリカの人工衛星が南半球のインド洋上に墜落した事故がありました。そのとき大気中に拡散したプルトニウムは四年もたってから地上におりてきて、日本でも異常に高い放射能量が記録されたということが残されております。これが、大気圏汚染というものは大したことはないんだと言う、こういう姿勢自身に、いま言った大きな問題を解決することのできない一つの壁があるんじゃないかと思うんです。  いま一番恐れられております原子炉衛星、これはソ連が十六個、アメリカが一個というようなことが言われておりますし、原子力電池を積載した人工衛星はアメリカが九個飛ばしているというようなことも聞いておりますが、こういうような原子炉衛星あるいは原子力電池を積載した衛星が飛んでいる。この前カナダにおいてソ連の原子炉衛星が落ちたときにも、これはアメリカのホワイトハウスの国家安全保障会議のスタッフは、原子炉そのものが落ちたならば核爆弾と同じであるという、こういうような危険のあることも発表をしておりますけれども、こういうようなことを考えたならば、私は大気汚染という問題に対しては、これは人ごとではないと思うわけなんです。ましてこれは、ますます米ソのこういうような宇宙兵器開発競争というものは進みまして、いまではハンターキラーというような要撃衛星といいますか、こういうものが開発されている。まさしくいまアメリカや世界でヒットしているSF映画そのものを地でいくような状態にならざるを得ないじゃないかと思うんです。そうした場合に、その原子炉衛星をつくり作動さすものは人間である、その作動さすべき人間自身の生存を危ぶますような事態が刻々と訪れてきていることをわれわれは知らなくてはならないし、それが全世界の国がやっているのでなくして、アメリカやソ連という大国のエゴのもとに地球上の人類の生命と健康を代償にするようなことがあっては断じてならないと思うんです。  こういうことに対しましては、先日も本会議におきまして福田総理、園田外務大臣も断固強い姿勢を示していらっしゃいますけれども、私はこういうことを考えるに当たりまして、日本が宇宙開発のための研究をしていらっしゃるけれども、もしやこのような原子力衛星への開発というものはなさってはいないだろうと思うんですけれども、今後長官といたしまして、これは断じてそういうことはやらないと、被爆国でありますわれわれ日本立場から断言すべきであると思いますけれども長官いかがでございますか。
  98. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 段々いろいろ御発言ございましたが、われわれとしてはそういう考えは現在持っておりませんから、その点をはっきり申し上げておきます。
  99. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、私はわが国にはそういうことがあってはならないということを申し上げましたが、いま国連の宇宙空間平和利用委員会科学技術小委員会におきまして、原子力衛星規制への作業文書が日本、カナダ、スウェーデンなんかを中心といたしましていままとめられつつありますが、これに対しましていろいろな反対が起きつつあります。  というのは、いま申してまいりました宇宙条約の中には、この条約の中には核兵器の打ち上げやあるいは軍事基地あるいは兵器、そういうようなものに対する兵器実験等は禁止されておりますけれども、偵察活動やあるいはスパイ行為、そういうものを禁じたものにはなっておりません。また、電源用としての原子炉の打ち上げも規制されていないわけなんですから、こういう意味からも、今回のソ連の原子炉衛星の墜落事故というようなこともありまして、宇宙空間の汚染を防止するためにも何らかのこういう国際的な規制が必要だということからこの作業が始められておりますが、しかし、これがソ連を初め東ヨーロッパの各国に反対されているというようなことが報道されておりますけれども、こういうことは被爆国であります日本の国は積極的にこれは立ち上がるべきではないかと思うんです。しかし、これにもまして、こういう事故を起こしたソ連の態度でありますけれども、事故を起こしたにもかかわらず、五十三年の二月の十四日のタス通信では、原子炉衛星の打ち上げは今後も断念をしない、こういうような発表をしておりますし、アメリカのカーター大統領は原子炉衛星打ち上げを禁止するというような提案をしておりますが、この内容とても、カーター大統領は禁止の提案をしましたけれども、議会には新しい新年度の予算に衛星用の特殊原子炉の研究開発というもので予算が組まれたりしている。こういうような状態でありましたならば、一体これは規制できるのであるのかどうか。これに対しまして私はあくまで、いまこの委員会が行われておりますから、そういう立場に対して、外務省の立場からも、科学技術庁立場からも、断固とした態度で臨むべきではないかと思うんですが、どうでしょうか。
  100. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 先生御指摘のように、この宇宙開発を進めます場合の安全性ということは一番重要な問題でございます。したがいまして、私どもは現在のところいわゆる原子力衛星について、これがあるいは軍事用に使われておりますか、そういったものについての明確な資料、データというものを持っておりませんので、これは国際的にまずはそういう資料が公開されて、これに基づいて今後人類の宇宙開発はいかにあるべきかということが国際的な協力のもとに検討されるべきものと考えておりますので、その点で外務省とも御相談をいたしておりますし、今回の会議でそのような方向に進むようにいろいろ外務省に対しても御提案を申し上げておるところでございます。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 もう時間が来たようでございますから、私は最後に一言。  これはいまのカーター大統領の例も挙げましたけれども、こういうような地球防衛について本当に真剣に考えた政治家が一人おります。これは御承知のとおりに、亡くなりましたアメリカの大統領のケネディ大統領でございますが、大統領に就任いたしましてしばらくして、一九六一年の九月の二十五日でございます。第十六回国連総会で彼はこういう演説をしております。「偶発、誤算あるいは狂気によっていまにも切り落とされそうなごく細かい糸でつり下げられたダモクレスの核の剣のもとですべての男女、そして子供が暮らしている」、こういうような演説をやっております。ケネディ大統領はホワイトハウスの大統領のいすに座ったときに、恐るべき核戦争を合図するボタンから目をそらすことができなかったと言われております。そうして、アメリカでそれを押す者は自分である、ほかならぬ彼の指であることを自覚し、ダモクレスの剣が頭上に危うくぶら下がっている実感というものをだれよりも感じた一人であると言われております。私は、この第十六回国連総会で演説したケネディ大統領のこの思想というものを、いまこそ国連の場において、三月には法律小委員会だとか、五月には軍縮総会、六月には宇宙委員会等の討議がされるということでございますから、そういう意味から、二十一世紀の平和のためにもこの精神を生かしていただきたいと思いますが、最後に時間がありませんから長官の御決意をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 全く仰せのとおりでございまして、そういうかたい決意でわれわれの立場からも進んでまいりたいと、このように考えております。
  103. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は地震対策について質問をいたしたいと思います。  去る一月十四日の昼過ぎ発生をした伊豆大島近海地震は、震源地に近い伊豆半島東海岸で、多くのがけ崩れ、家屋の倒壊、それに伴い多くの死者を出すという大きな惨事となり、いまさらのように地震の恐ろしさを思い知らされたわけでございます。犠牲になられた方々には心から哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた多くの方々の一日も早い立ち直りを念願をする、そういう立場から質問をいたします。  科学技術庁長官内閣の地震予知推進本部長をしておられますので、本日は、地震に関する諸問題の中で、地震被害をできる限り少なくするために絶対必要な地震予知にしぼってお伺いをしたいと思います。  まず、気象庁にお尋ねをいたしますが、今回の伊豆大島近海地震が発生をした一月十四日のその前日の十三日には、伊豆大島近海で群発地震が起こっており、また十四日も午前中何回も地震があったようでございます。しかし、この群発地震があれほど大きな地震に結びつくとは専門家の間でも考えられなかったようでございます。あるいは考えられたかもしれませんが、それを発表することによって起こる社会的混乱を恐れて黙っていたのか、その辺のところはよくわかりませんけれども、新聞報道などによりますと、気象庁と地震予知連との間にこれら群発地震に対する見解の相違があったようでございます。専門家の間でも意見が分かれるほど、この予知技術というものがまだまだ幾多の問題を抱えたところの技術であり、われわれが期待する予知などはまだまだ先の話かというような思いがするわけでございますが、実際問題として地震予知は現在どの程度まで可能なのか、また完全な予知は将来可能なのか、可能としたらそれはいつごろのことか、その点をお伺いしたいと思います。
  104. 有住直介

    政府委員(有住直介君) まず、一月十三日から十四日にかけて気象庁での様子を御説明申し上げます。  一月の十三日の午後八時三十八分から、伊豆大島近海に人体に感ずるような、いわゆる有感地震と言っておりますが、それが発生し始めまして、十四日の午前八時十二分からそれが連続的に有感地震が発生してまいりました。この大島付近はほとんど毎年地震が群発するところでございまして、昨年も十月九日から十二月十一日まで三十回ぐらいの群発地震がございました。ところが今回の地震は、例年の群発地震に比べますとやや異なっておるということで、十時五十分に多少の被害を伴うおそれがあるという情報を発表したわけでございます。それに対しまして津波注意報等必要な手続を行ったわけでございます。注意報は出しましたが、幸いにして津波の方は大したことはなかったわけでございます。  で、いま御質問の、もう少し大きな地震があるということがわかっていたのかどうかということでございますが、いま申し上げましたように群発地震が起こりまして、その群発の様子、その群発の中にまじっている地震の大きさ等がやや従来よりも大きいものがあるというようなことから、これは群発地震ではあるけれども、やや多少被害を伴う地震もあるのではないかというおそれを感じまして、地震に関する情報として発表いたしまして、その検討の階段で大きな地震が後で出てくるということはわかりませんでした。それが実情でございます。  それから、この予報の——予想の技術でございますが——予報というのは間違いでございます。この見込みでございますけれども、これはいまは、現時点では技術的に非常にむずかしくて、業務的にこれを行うという階段にはまだ達しておらないというふうに判断しております。それで、そういうことがありまして、地震予知推進本部の御決定になりました予知連絡会の下部機関として、東海地域につきましては特に東海地域の地震判定会というのが設けられまして、そこでいまお話出ました萩原先生の外五名の学識経験者の方々にお願いいたしまして、地震についての将来のことに関しましては御検討いただいている。そして、その結果を踏まえまして私ども発表するという考え方で進めておるわけでございます。
  105. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 ちょうどけさのNHKの七時三十五分のニュースの中で、確かに前兆はあったんだと、各気象庁とかあるいは科学技術庁あるいは各大学の研究をされた中で、起こった後からいろいろデータを見てみたら、確かに前兆があったんだと、これを統計的に集中的に集めれば予知ができたんだということの意見を約五カ所についてのことをいろいろと報道されておりました。まず気象庁の体積ひずみ計が伸縮の幅が非常に大きくなっておったと、あるいはまたラドン濃度の変化が非常に著しかったとか、御前崎の地下水の水位の変化があったとか、神奈川県の油壷の検潮所の潮位の差が非常に著しかったと、あるいは東大の地震研究所の地震回数の変化が非常にに多かったと、こういうことを集中的に集めておれば、その前兆が出ておったんだから予知ができたというようなことを言われておるんですが、この集中体制と、この前兆があったということに対して、気象庁はどのように把握しておられますか。
  106. 有住直介

    政府委員(有住直介君) お話しのとおり、後で調べますといろいろの現象というものがあった、多々あったわけでございますけれども、そういうのを私ども事後的な調査、後予報というような言い方をしておりますけれども、後から見ますといろいろな事象がわかってくるわけでございます。これはまた非常に研究上大切なことでございまして、ゆるがせにできないことなんでございますけれども、そういうことがあったので、じゃ次の予想をするときにそれではそういうものを業務的にやってやれるかというと、そういう経験というものは非常に多くの経験、そういうものを積み重ねていきませんと、業務的にこれを仕事に移してやるということは非常にむずかしいことでございます。私ども気象の予報、そういうことで経験しておるわけでございますけれども、かなり経験や研究が進みませんと、業務的にそういう仕事をやるということは大変困難だというふうに私ども考えているわけでございます。  しかしながら、これは非常に大切なことでございまして、だからデータを集中しなくてもいいということでは決してございませんで、現在におきましても各関係の方面、科学技術庁や文部省、各大学、そのほか防災センターその他、もう非常に方々の方々の御協力を得ながら気象庁にデータを集めるということを逐次進めております。これは気象庁が二十四時間監視体制をしいているという特徴がございますので、皆様からの御期待もいただきましてこの点は十分に気象庁としても生かしていきたい。それで、そういう将来重要であろうという資料に関しましては、できるだけ東海地域判定会の先生方の御意見ども聞きながら逐次データの集中をし、監視をしていくと、そういう体制を整えていこうということで努力を払っております。
  107. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 ぜひともこのテレメーターシステムということは検討して、気象庁の方でそういうふうな総合的に判断をする資料というものを把握された方がいいと思いますので、これは御要望しておきます。  次は観測体制の拡大といいますか、いま東海地方を重点に観測が行われておりますけれども、今回はその東海地方の接点の隣接地区で起こったという、そういうような盲点をつかれたようなかっこうで起こっておるわけでございます。ですから、これを全国的ネットでやはり把握する必要があるんじゃないかと、このように思うわけでございますが、この点は科学技術庁長官、どうお考えでしょうか。
  108. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 先生御指摘のとおり、地震予知のための観測網をできるだけ強化していかなければならないと、こう考えておるところでございますが、何分にも、先ほど気象庁長官のお話にもございましたが、現在まだ予知技術が確立されたという段階ではございません。したがいまして、きわめて多くの観測手段がこれに網羅されておるわけでございまして、これらすべてを全国一円に高密度で展開するということはなかなか経費的にもまた技術的にも予算的にも困難な面もございます。したがいまして、現在日本の地震予知の計画は、文部省にございます測地学審議会におきまして、地震学者の先生方、専門家の方々がお集まりになりまして計画を立てておられます。これは五カ年計画、現在第三次五カ年計画が来年度五十三年度までということで進んでおるわけでございますけれども、現在すでにその後の五十四年度から始まります五カ年計画を御検討中でございまして、近々にその結論が出されるということも伺っております。したがいまして、全般的には、この測地学審議会が出されます計画の線に沿って、政府といたしましても地震予知推進本部等の場を通じまして各省庁、大学を含めて協力をしながらこれを進めていくべきものと考えております。  なお、全国の中でも特に観測をよくやらなければならない地域というものを地震予知連絡会というところでお決めになっておられまして、現在の東海地域及び関東地区南部というのはその中で特に観測強化地域ということに指定されております。そのほかにも、特定地域ということで、普通のところよりはより観測すべき場所というのが現在も指定されておりますので、こういった観測強化地域あるいは特定地域というところを中心に全国的な地震予知のための観測網を展開していくべきものと考えております。
  109. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 気象庁の方にお伺いしますが、民間の地震予知情報に対する気象庁の取り組み方といいますか、今回のこの地震でも非常に新聞等をにぎわしておるのは、民間に、生物や自然現象などの動きから地震の発生の前兆を予知しようという研究をするグループが非常に多いということが報ぜられておるようでありますけれども、大体気象庁の方は、こういうことは科学的でないというようなお考え方から余り関心をお持ちでなかったように聞いておりますが、お隣の中国では、海城地震等では官民一体で相当実績を上げておるわけですが、気象庁はこの民間の地震予知の情報というものの把握に対する取り組み方、お考えが変わられたかどうか、そこらあたりの事情をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  110. 有住直介

    政府委員(有住直介君) 国民の皆様が非常に関心を持っていろいろ観測等を進めておられる、その結果を教えていただけるというわけでございますので、私どもとしてはこれらは喜んでそういう報告をお受けして記録にとどめていきたい、そういうふうに思っております。そうしてそれらは、現在におきましてはまだこれをどういうふうに処理したらどういう予想ができるかという技術的な検討を現在やっているところでございまして、また、気象庁のみならず、研究サイドの方々が非常に努力されておりますので、そういうものもわれわれ学びながら将来にこれを活用していきたい、そういうように考えておるわけでございます。
  111. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 国土庁にお伺いしますが、今回の伊豆大島近海地震が発生をする少し前の昨年の十二月に、全国知事会は大地震対策特別緊急措置法案の要綱なるものをまとめて政府に速やかに立法措置を要求をしたことは御承知のとおりでございますが、確かに現在地震に対処する法律は災害対策基本法があるのみで、地震の予知による警報発令など応急の事前措置については、この法律では対策のとりようがないのが実情であります。政府部内でもかねてから地震のための特別立法については種々の論議がなされていたことは聞いておりましたけれども、そのような状況のところに今回の大地震が起こったわけで、福田総理が一月十七日の閣議で、予知に基づいて非常体制のとれるような特別立法をつくるよう指示をしたのに基づき、ようやくこのほど国土庁から大規模地震対策特別措置法案の要旨なるものが発表されたわけでございますが、この法案の中で、学者による予知から警報発令、総理の警戒態勢布告に至るまではどのようなシステムでなされるのか、その辺を御説明願いたいと思います。
  112. 城野好樹

    説明員(城野好樹君) 御説明申し上げます。  現在国土庁におきまして検討中の大規模地震対策の法律におきましては、地震対策強化地域の観測網の計器に異常が発見されまして、先ほど気象庁長官の方からお話がございました判定会が招集された段階で、防災側も連絡を受けまして待機状態に入っておく、そういたしまして、判定会の判定結果が示されまして、それが気象庁長官から、大規模な地震が発生するおそれがあり、かつその発生が切迫しているという旨の報告がありましたときには、内閣総理大臣が国民の生命、身体、財産を保護するために警戒態勢に入るべき旨の布告を発する、これを防災関係機関、関係の都道府県知事に通知いたしますとともに、報道機関に発表をいたしまして一般国民に周知する措置をとる、また、防災関係機関及び関係都道府県知事はそれをさらに下部の組織に通達いたしますとともに、それ以前から、強化地域を指定いたしました段階で、こういうサインが出た場合にどういうことをするという形での緊急計画をつくっておきまして、その緊急計画に基づきます防災上の措置を直ちにとるというシステムを考えておるわけでございます。
  113. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 この地震の予知というのは、国民に対して完全に周知徹底ができるような警報発令と結びつかなければ意味がないわけでございます。しかし、この地震の警報は、たとえそれが外れたとしても、それによって起こってくる人心不安や社会的パニックを考えると、非常にむずかしい点を持っておることも事実でございます。  伊豆大島近海地震の後、静岡県が、災害対策本部の出した余震情報がもとになって起こった一部地域のパニック現象ということを考えますと、こうした警報とか情報の出し方がいかにむずかしいかを痛感させられるわけでございますが、地域の判定会の下す結論はあくまでも学問的、技術的な立場からなされるものであると思います。これを国民に知らせるには、そこに重大な行政的な判断、配慮がなされなければならないのは当然であろうかと思います。従来、警報発令の行政上の責任体制がはっきりしておりませんでしたけれども、今回のこの特別法要旨によれば、その点がややはっきりしてきたところは前進だと思いますけれども、この地震の問題はあす起こるかもしれない危険性があるわけでございますので、一日も早くこの法案が国会に提出をされ、論議が進められなければならないと思うのでございますけれども、いつごろ提出をされる予定なのか、その辺の見通しを国土庁にお聞かせ願いたいと思います。
  114. 城野好樹

    説明員(城野好樹君) 御説明申し上げます。  現在、先生御指摘の要旨を条文化の作業をいたしておりまして、関係省庁初め、各方面と細部の調整を行っておる段階でございます。三月中旬までに何とか成案を得て、今国会に提出することを目途に作業中でございます。
  115. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、先ほど申し上げました、静岡県が発しました余震情報に関する科学技術庁で行われた電話調査結果についてお伺いをしたいと思います。  今回の伊豆大島近海地震の際、静岡県が発した余震情報によって生じた混乱に関連した調査を未来工学研究所に科学技術庁は委託をして、その調査結果を発表されましたが、それに基づいて若干の点をお伺いしたいと思います。  まず、調査の一として、県の余震情報をテレビ、ラジオ、広報車などで直接見聞きした人は四〇%でございます。その見聞きをした人の三八%が、地震警報が出たとか、いまにも地震が起こりそうだと誤解をして受けとめたとの報告がございますが、直接見聞きしていながら三八%もの人が誤解をしたということについて、科学技術庁はどのように認識をされるでしょうか。
  116. 園山重道

    政府委員(園山重道君) これはやはり、先ほどの話にも出ましたが、地震という非常に学問的な検討の結果出されましたものを、一般の国民の方々にわかりやすく説明するという間におきまして、若干配慮の足りない点があったのではないかという気がいたします。調査その他によりますと、マグニチュード六と震度六を間違えたとか、あるいはM6というのをPM6、午後六時と間違えたとかいうようなことが言われております。したがいまして、そういう発表の中身の書き方、出し方、話し方、あるいはそれを出すときの状況というものを十分考えて出さなければならないのではないかと、このように考えております。
  117. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 国民は、マグニチュードとそれから震度階と、その区別がはっきりつかないわけでございまして、ですから、こういうのは情報を出すときには、国民が理解ができる震度階とか、こういうふうに統一をした方がいいんじゃなかろうかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  118. 園山重道

    政府委員(園山重道君) 御指摘のとおりでございまして、先ほど御質問の中にございましたように、電話による緊急の調査をいたしたわけでございますが、それ以前に、すでにこの調査の前に、地震予知情報の伝達というのはいかにあるべきかということで、昨年の十月にすでにこの財団法人の未来工学研究所に委託しております地震予知情報伝達システムに関する研究というのを実施しておりまして、これは五十二年度、五十三年度、二カ年間にわたって行おうといたしておるものでございます。その途中で今回のことが起きましたので、緊急に、余り記憶のさめないうちにということで、一週間後に電話でのインタビューをいたしたわけでございますけれども、その結果を踏まえ、さらに現在行っておりますこの研究の中で、予知情報というのはどういう言葉を使ってどういうポイントを伝えれば一番わかりやすくかつ混乱が少ないかという結論を得たいと、このように考えておるところでございます。
  119. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 科学技術庁長官に最後にお尋ねをいたしますが、地震というのは、御承知のとおり、いつ起こるか予測もできませんし、しかも、一たん発生をしますと、その被害の大きさは他の災害に比較できないぐらい大きいものであることは御承知のとおりでございますが、しかも、現在の都市のごとく、大きなビル、たくさんの自動車、危険物の大量貯蔵など、その災害をより大きくする要因は至るところにあるわけで、最近外国に起こる事例でもはっきりすると思います。地震発生の際の大災害の状況考えれば、それら被害を少しでも小さくするために、あらゆる面で災害防止の備えがなされなければならないと思います。特に予知から始まる事前の備えのためには、もっと政府は本腰を入れ、かつ金をかけてもよいのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。今回ようやくおくれている行政上の対応を法制化しようとする動きが現実化してきたことでもあり、予知のための観測網の整備等には大いに力を入れるべきだと思います。観測に従事をしている学者の方々に、もう少し予算があればと、こう嘆かせることがないように対処していただきたいと思いますが、科学技術庁長官の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  120. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 地震の問題につきまして、被害その他の非常に恐るべきこと等につきましても全く御同感でございます。御承知のように、地震予知の技術的な研究は、残念ながら、まだ非常に浅い段階にあるわけでございます。現在実際に地震予知を行っておりますのは、気象庁、それから国土地理院、それから科学技術庁関係の防災科学技術センター、そのほかに各大学の研究機関がございます。で、地震対策本部といたしましては、こういう各種の機関を、自分の所管の科学技術センターはもちろんでありますが、総合的かつ計画的にその推進を図っていくと、こういうたてまえでございまして、非常に重大な予知に関しましては任務を負っているわけでございます。  それで予算関係も、本年度は昨年度に比べまして、昨年度の三十七億円という額に対しまして、大変わずかではございますが、四十七億円というぐあいに増額もいたしまして、少しでも予知の研究を進めてまいるつもりはいたしておりますが、何分にもまだ十分とは言いかねるとわれわれも思っておりますので、御発言の趣旨に従いまして、さらに一段とこの地震予知に関する研究開発を進めてまいりたい、このように思っております。
  121. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、環境庁長官に志布志湾開発の問題についてお尋ねをいたします。  先日、鹿児島県において新大隅開発計画案に対して環境アセスメントを発表いたしましたが、自主的にアセスメントを行ったのは今回が初めてでありますが、このような県独自によるアセスメントの公表について環境庁はどのような評価をしていらっしゃるか、お伺いいたします。
  122. 信澤清

    政府委員信澤清君) お話しございましたように、先般鹿児島県が志布志湾地区につきましていゆわる環境アセスメントの結果を公表いたしたわけでございます。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕 その内容については、実は私どもも手元にいただいております。ただし、このアセスメントをやるにつきまして、環境庁が特別の指示をいたしたり、あるいは御協力をしたりということはいたしておりません。県御自身の御説明にもございますように、今回のアセスメントは、計画の作成主体である鹿児島県が、計画案を環境保全の面から検討を行い、計画決定の判断に資するため県が独自の立場実施したものだとこうおっしゃっているわけでございまして、私どもはそのように受けとっておるわけでございます。
  123. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 環境アセスメントと言っても、いろいろほかの県でもありましたけれども、今回の場合は特に二県にまたがっている。隣県の方からいろいろ意見をとっておるというようなことで、こういうような二県にまたがる、大きな影響を与える場合には、いま全然指導もしておらないとおっしゃいますけれども、それで果たしていいんでしょうか。
  124. 信澤清

    政府委員信澤清君) 御指摘の点がまず一つの問題であろうかと思います。この鹿児島県のアセスメントの公表に関連いたしまして、宮崎県の方はこれについての問題点をすでに御指摘になっておるわけでございます。そこで、先ほど申し上げたような県の独自の判断に基づくアセスメントでございますが、三全総等で一応西日本に数地区の相当規模の工業開発をやる、その候補地の一つとして志布志を挙げておるわけでございますから、したがって、そのような国レベルの計画として取り扱うというふうなことが今後起きます場合には、私どもとしては、従来むつ小川原等についてやってまいりましたと同じように、お話しのような宮崎県を含むきちっとしたアセスメントを改めてやっていただく、こういうことになろうかと考えております。
  125. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 しかし、この新大隅開発計画というのは、昭和四十六年の十二月に第一次試案が出されて、新全総が昭和四十四年でございますから、それに乗っかって推進をして、県民の大変な反対を受けて引っ込めて、新たに第二次試案というものを出した、その案に対するアセスメントということで、今回の第三次全国総合開発の三全総の中にも、西日本地区は志布志湾ということが指定をされたかっこうであれば、まいた種というのは国が少なくともまいた種であって、そういうようなヒントを与えたことによって県がやったわけでございますから、全然あずかり知らない、そういうふうなことは指導もしてないとおっしゃるのは、ちょっと私は筋が通らないと思うんですが、いかがでしょうか。
  126. 信澤清

    政府委員信澤清君) お話しのような考え方はよくわかるわけでございます。ただ、三全総、いまお触れになりましたけれども、三全総ではいわば「志布志湾地区等」と、いわば例示として挙げておるわけでございまして、ここを必ず工業開発地区にすると、こういう形をとっておらないわけでございます。したがって、既成事実がつくられているじゃないかと、こういうようなことも、そういうふうなお考えもあろうかと思いますが、私どもとしては、やはりいまの段階で国としてこの地域における開発についてとやかく言うことはむしろ差し控えた方が適当であろう、こういう判断をいたしておるわけでございます。
  127. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 三全総の中には、「西日本においては志布志湾地区等について環境影響評価を含め調査検討を進め、その結果を踏まえ、相当規模の工業基地を数地区建設する」と、こういうように明らかに建設をすると三全総ではうたわれておるわけでございます。そしてまた、先ほど申し上げたとおり、新全総でもそういうような候補地に入ってきたわけで、また、あなたたちが三全総で決めたら新たにやるというのだったら、それこそ血税のむだ遣いじゃございませんか、同じようなところで県にやらしてまたあなた方がやるというのだったら。県の方から少なくとも皆さんの方には指導を求めていろいろと来ておると思いますが、そのときにアドバイスをしていらっしゃると思うんですが、そこらあたりはどうでしょう。
  128. 信澤清

    政府委員信澤清君) お言葉を返すようでございますが、いまお読み上げになりましたように三全総に書いてはございます。しかし、あの読み方はあくまで例示であって、志布志湾地区については当然開発の対象地域とするということを言っているわけではないわけでございまして、この点は政府部内で考え方は一致しているわけでございます。  それから、アセスメントについて県から助力なりあるいは指導を求められたことがないかというお話でございますが、一般的な問題として、アセスメントの手法等については、過去たとえば中公審からいただきました答申等もございまするし、先ほども申し上げましたむつ小川原地区につきましては環境庁自身が細い指針を示しましてそれでやった経緯があるわけでございます。したがって、県としてはそのような従来のいろいろな資料を参考にして今回やったんだと、こういう御説明をされているわけでございます。
  129. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 しかしながら、最近の環境庁の実績から見ますと、大型開発計画のむつ小川原とかあるいは木更津などの五つの港湾計画、大阪などの二港の港の中の埋め立て、九州電力の十カ所の発電建設計画などについては、環境庁の方から積極的にいろいろと意見を出したり要望事項をつけていらっしゃる。こういうような実績があるわけです。二県にまたがるような非常に大きな、大変影響のあるようなこういう環境アセスに、どうして環境庁の方が要望、そういうような意見をおつけにならないのですか。
  130. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先ほど来申し上げておりますように、三全総に基づく計画として国として取り上げるという段階になりますれば、恐らく国土庁が中心になりまして関係各省が相談をする、そういう体制をつくって対応することになろうかと思います。従来そのような形でやってきた例が多いわけでございます。したがって、その段階になりました場合、現在鹿児島県がやりましたアセスメントの結果を全く無視してしまうというわけじゃございませんが、いまお話しのように、宮崎県側について宮崎県自身がいろいろ問題点を指摘されておるわけでございますから、そういう問題を全般的に踏まえた新しいと申しまするか、さらにアセスメントを続けていただくということはこれは当然であろうというふうに思うわけでございまして、現在までのところ、そういうような取り組み方で政府部内の考え方を統一してまいっているわけでございます。
  131. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 じゃ、次は環境庁の方でお出しになっておる指針によりますと、住民の声を十分に吸い上げる、アセスを実施するときには。そしてアセスメントの報告をやるときには、そういうようなことに十分配慮をしながら公聴会を開くのが妥当であろうという指針が出ておりますが、今回は県の方では公聴会を無視した状態であるようでございますが、これについては、指針のとおり県の方に公聴会をおやりになった方がいいというそういう御意見とか、要望とか、そういうことを、住民の声を吸い上げるという、現にいま説明会が行われておりますけれども、七百何十ページで非常に短い期間で、縦覧場所も九カ所でそこの市町村の役場だけであるということで、また説明に行った方々が説明をされても地域住民はチンプンカンプンわからない。こういうことよりは、専門家の公聴会をぜひやってもらいたいという意見が強うございますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  132. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先ほど申し上げておりますむつ小川原の際も、あるいは現に進行中でございますが、本四架橋の場合にも、公聴会の問題については、必要に応じて公聴会をやる、こういうことを示しておるわけでございますが、いま申し上げた二つの。プロジェクトについては、いずれも公聴会は、むつ小川原については県の御判断、それから本四架橋の児島−坂出ルートについては、公団と県の御相談の結果、それぞれ公聴会の必要はないだろうということでやっておられないというふうに承知をいたしておるわけでございます。したがって、私どもとしては、いろいろ住民の御意見が出ると思いますが、その結果を見て、必要ならば、従来の考え方から言えば公聴会をやってほしいということを申すべきことかもしれません。しかし、私どもは、今回のアセスメントは、あくまで県が独自に県の計画として決定するための一つのプロセスとしてこの手続を踏んでいるということでございますので、この時期に、あたかも国がこの計画を認めるような形で指示をいたしますことが適当であるかどうか、もう少し研究さしていただきたいと思います。
  133. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それならば、環境庁の方で、三全総の中で志布志湾を認め、取り上げて環境アセスをおやりになるというときには、それの発表のときには公聴会をおやりになる、そういうふうな前向きの姿勢をお持ちでしょうか。
  134. 信澤清

    政府委員信澤清君) いまからそういたしますということを申し上げるのはいかがかと思いますが、従来、そのように取り扱ってまいったことは先ほど来申し上げたとおりでございます。
  135. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 この志布志湾は、日南海岸国定公園の指定を受けておるわけでございますが、この国定公園の削除ということについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  136. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 日南海岸の国定公園は、御指摘のように、宮崎、鹿児島の両県にまたがっておりまして、海岸の景観を主体として、昭和三十年に指定されたものでございます。  今回のアセスメントは、鹿児島県が独自の立場で行われたものであるということは企画調整局長が申し上げたとおりでございますが、国定公園の区域の問題等につきましては、まだ鹿児島県と宮崎県との御調整も今後必要かと思われますし、現段階では国がその問題について申し上げる段階ではないと考えておりますが、当該地域が日南海岸国定公園の重要な一部でもございますので、慎重に対処してまいりたいと考えております。
  137. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 環境庁長官にお尋ねをしますが、去る二十五日各新聞紙上で発表をされました、環境庁が今国会に提出を準備している環境アセスメント法案の草案ともいうべきものが発表されたようでございます。内容を見てみますと、都市計画事業を対象から除外するとか、あるいは影響の予測と評価の指針は事業の主管大臣が環境庁長官と協議して決めることにするとか、あるいは意見を述べられる住民の範囲は当該地域に住所を持つ者と、このように厳しく限定をして、さらに、事業者が開催することになっていた公聴会は知事が開催するように変更されるなど、主客転倒の感を抱かせ、環境行政を後退させるような方法がとられております。このような法案は、環境庁設置法第三条にある、「国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するため、環境の保全に関する行政を総合的に推進することをその主たる任務とする」と明記してあります、この環境庁の「主たる任務」の放棄ではないかと、このように思うのでございますが、環境庁長官の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  138. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 新聞紙上に出ておったようでございまするけれども、実は、あれはどんなふうにして出ましたか、私ども自身として、一つの案としてまだ私自身がこれについての判断も加えているものじゃございません。そのことをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  なお、いま御指摘になったような点、したがって、そういう意味では具体的な点についてのいろいろ評価ということ、つまり、環境庁のまだ意見を申し上げるという段階にはなっておらないものでございまするので、この点については、私がここで云々することはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  139. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 最後に、環境庁にお尋ねをしますが、鹿児島の錦江湾というところは、最近非常に汚染度が進行しておりまして、地域住民の中では、大正三年に桜島の大爆発で結合しましたあの陸続きになった大隅半島の部分を開削をして、そうして潮流の交流を速くした方がその汚染度の進行をとめるのじゃないか、こういうような意見と、昨年実は赤潮が発生をして、大変漁民が困ったわけでございます。そういうような海水の老化に対する防止の措置としての問題と、御承知のとおりの水銀汚染魚の問題、海底火山で酸性水塊になっておりますので、その酸性水塊を拡散をするという意味合いからも、ぜひともあの地域を開削をしたというような意見があるわけでございますが、これに対する長官のお考えと、あの地域はまた、国立公園特別保護地域の一種、二種に指定をされておるところでございますが、そういうようなところでございますけれども、地域振興、そして錦江湾の海水の老化の防止という意味から、ぜひそれを、地域住民の要望をかなえていただきたいと思うわけでございますが、御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  140. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) ちょっと、その点政府委員から答弁さすようにさせていただきたいと思います。
  141. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま先生から、錦江湾——鹿児島湾でございますが、これの水質の、海水の老化、これの防止をするために掘削をやったらどうかという話があるということでございますが、具体的にこの掘削の話は、具体的なものとしてはまだ伺っておりません。ただ、先生が御指摘のように、鹿児島湾そのものにつきましては、ただいま先生お話しございましたように、水銀の汚染の問題、これが確かにございます。汚染魚につきまして、現在水産庁の方で自主規制措置等も講じております。環境庁の方では、これの水質の調査、さらに昨年の場合は、「はくよう」という潜水艇を使いまして、この水銀汚染の原因究明等にも助成等をいたしましてやっておるということがございます。それから赤潮の問題、これも確かに昨年ホルネリア族の赤潮が発生いたしまして、養殖ハマチが斃死をしたという事実も確かにございます。  そういう観点からいたしまして、この鹿児島湾、これはやや閉鎖的な水域になっておりますけれども、これの水質の保全ということにつきましては、県とも連絡をとりつつ、水質の浄化対策、これには前向きに取り組んでいきたいと思っておりますが、冒頭申し上げましたように、掘削という方法によってやったらどうかという具体的な話につきましては、具体的にこれは伺っておりませんので、十分検討はいたしておりません。
  142. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 先ほどの環境庁長官の答弁の中で新聞発表は全然知らなかったと。しかし、ああいうかなり重大な内容を含んだ発表があったのですから、新聞記者諸君が何か環境庁から——環境庁の知らぬ前に書いたとは言えません。したがって、官房長は来ていましたね、官房長官房長いる。——じゃこれは早急に調査して、だれか環境庁の人で話したに違いない、新聞発表。環境庁長官は知らぬとおっしゃっている。したがって、新聞社が勝手にああいうことを書いたのか、それならそれでこれはまた新聞社に対してこれは厳重な注意をしなければならぬ、あるいは勧告。もし環境庁の中からそういうものを出しておったのなら、これは長官の知らぬことを勝手にしたことは重大な問題だと思う。したがって、ひとつ早急に調査して、後刻当委員会にその実態を報告してもらいたい。答弁は要らぬ。
  143. 安武洋子

    安武洋子君 瀬戸内海環境保全臨時措置法が四十八年十一月二日に施行されまして、今国会にはこの継続法の提案も予定されておりまして、環境庁もいま各省庁と折衝されていると思いますけれども、瀬戸内海は開発に次ぐ開発で、いま産業運河、こう言われるまでに環境が破壊されてしまっております。この反省の上に立って後継法が策定されるよう、私はこのように願っておりますし、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 環境庁の方でもこういう反省に立って後継法を策定なされようとしているいま、私は、改めて瀬戸内海の環境を守るという、こういう精神のもとで環境庁はどういう基本的な姿勢を持っておいでかということをまず最初にお伺いしたいと思います。  長官にお伺いいたしますが、まずこの瀬戸内法です。施行後四年以上経過しておりますが、いま瀬戸内海の環境保全、これがどのような時点に到達しているとお考えなのでしょうか。  そしてさらに、保全を進める上で当面どのような措置が求められているというふうにお考えなのでしょうか。  そして、環境庁としては、いま瀬戸内海の環境保全を求める訴訟というのが非常に多発をしているわけです。たとえば、五十二年十月十七日には甲子園浜埋め立て中止を求めて住民二千四人がマンモス訴訟を起こしております。これは阪神間にただ一つ残された自然海岸、この西宮甲子園浜の港湾計画というのは十分なアセスメントも行われずに、沿岸住民の生活、自然環境、これを破壊するものであると、埋め立ては違法だなどという訴えを起こしているわけです。五十三年の一月六日には、姫路地先のLNG基地の港湾計画変更、これを求めて百五十二名が訴訟を起こしております。五十二年の一月の十二日、三百三十二名が大分の新産都市八号地、この計画の取り消しを求めてもおりますし、さらには瀬戸内海の赤潮被害の工場排水の差しとめの訴訟など、こういう訴訟になぜ住民が訴えるのかというふうなことです。現にいま、広島の海田湾の埋め立てが訴訟準備中ということも聞いております。赤潮とか、あるいは海難事故の発生による油濁とか、埋め立てとか、産業立地とか、こういうふうに瀬戸内海の環境がどんどん破壊されるということについて住民が訴訟をもって告発する、ここまで至っているということを一体どのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。  こういうことを含めて基本的な姿勢をまず長官にお伺いいたしします。
  144. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 瀬戸内海の環境保全臨時措置法は、御案内のように、昭和四十八年十一月に施行されました。当初は三年間の時限立法でございましたけれども、その後第七十七国会で期限が二年延長されておりましたことは御承知のとおりであります。  この法律の主な柱といたしましては、御承知のように、基本的な計画の策定のほかに、産業排水に係るCOD汚濁の負荷量の半減措置、第二には、特定施設の設置の許可制、また次に、埋め立てに当たっての環境保全の配慮というようなことが柱になっております。  この基本計画の策定につきましては、後継法の検討とあわせて進めておりまするほかに、CODの半減の措置につきましては、五十一年十一月及び五十二年の五月の確認調査の結果、約一三%の達成率ということになっております。また、埋め立てについても、法施行前に比べまして件数、面積とも大幅に減少しておる、そういう実情でございます。以上の点から考えまして、瀬戸内海の環境保全の面においてはなおいろんな問題を抱えておるにもかかわらず、この法律の施行によりまして相当程度の効果を上げてまいったものと考えておる次第でございます。  今後に残された問題といたしまして、瀬戸内海の水質は、CODの半減措置により、改善の傾向にはございますけれども、なお、環境基準の達成という点になりまするというと困難な状況にありまするので、さらに一段と改善を図る必要がある、こういう観点で対処をしていきたい。また、赤潮の多発化など、富栄養化の問題があることなどのほか、瀬戸内海の環境保全対策については各界からいろんな意見が提起されているという、こういう実情であることは、御案内のとおりでございます。  御承知のように、瀬戸内海の環境保全臨時措置法は本年の十一月ということが期限になっておりまするから、これを引き継ぐための立法措置、これはどうしてもつくっていかなきゃならない、この立法措置によりまして瀬戸内海の環境保全対策を総合的にひとつ推進していくことが必要である、こういう状況でおりまするので、現行法というものをもとにいたしまして、いま現行法による諸施策、また、各界からのいろんな意見、要望というようなものも勘案いたしまして立法措置の内容につきまして現在鋭意検討を進めておる、こういう実情でございます。  瀬戸内海の後継法は、さらに、別途制度化を予想しておりまする水質の総量規制制度、こういうものとも密接に関連を持っておるというようなことでございまするので、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案、そういうものを一緒にしたような形で法律案を提出したらどうか、こういうような予定をもって対処いたしております。環境庁といたしましては、臨時措置法の期限等からぜひとも今国会でこの問題を成立を期していきたい。その際、いまお話がございましたいろんな問題点は、先ほど申し上げましたように、各界の意見というものも十分考慮に入れながらひとつこの問題に対処してまいりたいという方針をもって現在臨んでおる次第でございます。
  145. 安武洋子

    安武洋子君 私は、いま多数の住民から、瀬戸内海の環境破壊に対して、訴訟まで起こしてやはりこの告発をしているということについてどう受けとめておられるのかということをお伺いしたわけなんですが、それに対するお答えはなかったように思いますけれども、私は、これは本当に環境保全をしようという真剣な姿勢をお持ちなら、住民の声を尊重するということを基本にまず置かれるべきだと、ここが行政に欠如をしていたのではなかろうかというふうに思うわけです。ですから、後継法とか、いまお話に出ました基本計画、この策定に当たっては、私は何よりも住民の声を尊重して、関係の団体、それから住民、ここらとよく本当にお話し合いをなさらなければならない。それでなければ、本当に実効のある法律ができないというふうに思うわけです。  それで法の策定に当たられましては、私はまずお伺いいたしますけれども、漁民の間でいま非常に要望が強いのは大型船とかタンカー、危険船、こういうものの航行規制です。特に、タンカー、危険船の夜間航行を禁止する、こういう意図をお持ちかどうか。これは相次ぐ衝突事故で、特に五十二年の四月には、釣島水道で、パナマ大型タンカーのアストロレオ号が日本貨物船と衝突などをいたしまして海洋汚染の一大原因をつくっております。こういうことが多発していては海洋汚染を防げないわけです。こういう意図をお持ちかどうかということが第一点です。  第二点です。これは開発、それから産業立地、これに対する規制の強化が私はどうしても必要だと思います。埋め立てに対する規制の強化、それから公害発生事業所の新増設の禁止、こういうことが必要だと思いますけれども、こういうことについて基本的にどういうお考えをお持ちなんでしょうか。  そして、第三点目に、民主的、科学的な住民の声を反映したアセスメント、これを行うことが何よりも必要だと思いますけれども、そういう御意向をお持ちでしょうか。  第四点です。環境の基準、排水基準、この見直しです。この強化が私はどうしても必要であると思うんです。窒素、燐などの規制、この強化も必要ですけれども、こういう点も基本的な姿勢の中にお持ちでしょうか。それから瀬戸内海というところは非常に景観の美しいところ、この景観それから海浜の保全、これを十分に配慮して行うべきだというふうに考えます。こういう基本姿勢をお持ちかどうかということを重ねて長官にお伺いいたします。
  146. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) それでは各項目につきましてお答え申し上げます。  一つは、タンカーの航行規制の問題でございます。先生からもお話しございましたように、昨年の春、釣島水道でアストロレオ号と幾春丸が衝突をいたしまして、流れました油はそれほど多くはなかったわけですが、積んでおりました油は水島流出事故で流出いたしました重油の約十倍ということでございます。したがいまして、関係の住民の方、漁民の方等から、非常にこの航行規制をぜひともやってもらいたいという強い要請を現に受けております。したがいまして、現在運輸省、海上保安庁等におきまして、船舶の航行面につきましては海上衝突予防法あるいは海上交通安全法等々によりまして万全を期するようやっておられるわけではございますけれども、さらにそういう住民の方、漁民の方の要請というものを踏まえて何らかのタンカーの航行規制の措置が考えられないかというようなことで、現在所管の運輸省等と折衝をしておると、こういう状況でございます。  それから埋め立ての関係でございますけれども、埋め立てにつきましては、現在の臨時措置法、これに十三条の規定がございまして、埋め立てについては、瀬戸内海の特殊性というものを十分に配慮すべきであるという規定がございます。したがいまして、この規定にのっとりまして瀬戸内海の審議会に諮問いたしまして、埋め立ての運用の基本方針、これを御答申いただきまして、現在これを物差しにいたしまして、個別案件ごとにケース・バイ・ケースで審査をいたしておるわけでございます。その際は、一般的なアセスメントのほかに、環境影響評価のほかに、この十三条によります特別の配慮という角度の審査を加えまして審査をしておるということでございます。  そこで、こういう規定を一体今後どうするかというお尋ねかと思いますが、環境庁といたしましては、一昨年の五十一年十二月に基本計画の基本考え方という答申を瀬戸内海の審議会からちょうだいをいたしております。その際に、埋め立てのくだりにつきましては、どういう答申になっておるかと申しますと、埋め立ての運用のこの基本方針に沿って引き続き環境保全に十分配慮すべしと、こういう答申になっております。したがいまして、環境庁といたしましては、この答申を尊重いたしまして、基本的には現行法の規定の趣旨、これを堅持すべきであるという考え方に立っておるわけでございます。ただ、問題は、その際に、具体的に法文として後継法にどういうような表現なりで書き込むかという問題につきましては、全般的な後継法の検討とあわせまして、この埋め立てに関する条項につきましても目下検討中であると、こういうことでございます。  それから排水基準の見直しの問題でございます。この点につきましては、先ほど長官からお答え申し上げましたように、産業系排水に係るCOD二分の一カットの措置、これが現行法の第四条の規定にあるわけでございますが、これは五十一年の十一月確認調査をいたしましたところ、三割の超過達成ということに相なっておるわけでございます。  そこで、この臨時措置法の後継法でこの産業系排水に係るCOD二分の一カットの措置、これをどう引き継ぐかという問題になるわけでございますけれども、これにつきましては、水質の総量規制制度、これを瀬戸内海に実施をいたしたいという考え方を持っております。総量規制になりますと、産業系だけでございませんで、生活系も当然入ってまいります。そういうことで、当面やるのはCODということで考えておりますが、従来の措置は産業系の分でございますが、今度は産業系のみならず生活系統も対象にした総合的な負荷量削減措置ということを講じたい、それに発展さしていきたいというようなことで現在検討をしておると、こういう状況でございます。  それから窒素、燐の関係……
  147. 安武洋子

    安武洋子君 基本的な考え方を聞いてますから。
  148. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) はい。  窒素、燐の関係でございますが、この窒素、燐につきましては、赤潮発生の要因物質と言われておるわけでございますが、これの処理技術の面からいたしまして、窒素はまだこのめどが立っておりません。燐の方が一応処理技術につきまして実用化のめどが出てまいっておりますので、この面につきまして、五十三年度から環境水質なり、排水処理技術についてのガイドラインといいますか、これの策定調査にとりかかっていきたいということで、全国ベースとしてはそういうことで取り組んでいく考えでございますが、瀬戸内海につきましては、昨年の八月末に播磨灘で大規模赤潮が発生をしたという事態にもかんがみまして、燐の削減につきましては、ただいまの環境水なり、あるいは排水処理技術のガイドラインが出るのはまだ先になりますけれども、そういうものに先立って、何か先駆的に具体的な削減措置が講ぜられないものかどうか。これは現在鋭意検討をしておる、こういう段階でございます。  それから次は……
  149. 安武洋子

    安武洋子君 基本姿勢を聞いてますので、もっと端的に答えてください。
  150. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) はい。  次は海浜の保全等でございますが、これらにつきましても、現在自然海岸というものが相当減りつつあるという実態にもかんがみまして、何らかの保全措置があり得ないか。大部分は国立公園その他の網がかぶっておりますし、そういうものの見直しということで対処できると思いますが、それ以外の分につきまして何かの措置がないかどうか。これもいろいろ検討中、こういうことでございます。  以上でございます。
  151. 安武洋子

    安武洋子君 いやいや、長いお答えですけれども、アセスメントが抜けています。アセスメントを簡単に。
  152. 信澤清

    政府委員信澤清君) アセスメントの問題につきましては、先ほどもお話出ましたが、環境影響評価法案という形で今国会で御審議をいただくことにいたしておりますので、瀬戸内海関連もこれによってやっていただくということでございます。
  153. 安武洋子

    安武洋子君 私は、環境庁の姿勢が問われている問題というのは、いまのお答えの中でもたくさん出てきたと思うのです。  まず、その一つですけれども、瀬戸内法が施行された後にも、私が先ほど申し上げたようにたくさんの訴訟が起こっているわけです。埋め立ても、いまこれをきょう私は規制を強化すべきだというふうに申し上げましたけれども現行のままのような御答弁が返ってきたわけですけれども、埋め立ては減ったということで、昨年の五月の二十五日、私は公害委員会で御質問申し上げましたときには、年平均四百五ヘクタールと、こういう数字をお挙げになっておられました。これは三年の平均が四百五ヘクタールでございますけれども、四年間の平均をいただいてみますと五百四十ヘクタールということなんです。ということは、最近これまでの倍の八百ヘクタールも埋め立てを行っているということが明らかにこの数字で出てくるわけなんです。現在非常な不況の中で民間の設備投資というのが激減しているのに、こういう膨大な埋め立てがこの一年間に行われてきているというふうなことがあるわけです。  それから、法が施行されました第一の埋め立て許可というのが愛媛県の西条市沖の三百五十ヘクタール。第二が姫路市の白浜地先の八十ヘクタール、いずれを見ましても、これは法第十三条の一項の埋め立てについての規定の運用に関する基本的方針で、埋め立てはできるだけ避けるように配慮すること、こういうことになっている海域です。しかし、この埋め立てられる後の上物というのは、西条というところでは住友化学などです。それから姫路では関西電力、大阪瓦斯なんです。こういうことを見ましても、産業界の基本的な開発攻勢に環境庁が押し切られていると、こう言われても私は仕方がないと思うのです。  現行法、これはさらに厳密に実施するとともに、私は後継法はさらに厳しく規制を盛り込むべきだというふうに申し上げたいと思いますけれども長官はいかがお考えでございますか。長官の御答弁をいただきとうございます。
  154. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) これはただいまの瀬戸内海の臨時措置法の精神にのっとって後継法を考えていくという、そういうたてまえで、それと同時に、その後に起こっておる各方面の意見、無論利害関係者の、いま住民のいろんな声ということは非常に重要な考慮すべき点であると考えます。と同時に、利害関係者、いろんな方面から出てきている意見というものは——別に差別するというたてまえじゃないが、これは同時にひとつ虚心坦懐にそういうものを織り込んで、そうして対処していきたい、そういうような角度からひとつ検討を客観的に、冷静に加えて臨んでいきたい、こういう方針でやっているわけでございます。
  155. 安武洋子

    安武洋子君 ここで一つ私は問題にしたいわけですけれども、姫路の白浜地先のLNGの埋め立てにつきましては、私は昨年の五月の二十五日に公害委員会でも取り上げさしていただきました。そして再三この問題についてはいろいろなところで取り上げて問題にしております。この埋め立てについてはいかに問題が多いかということで私は問題にもしてきましたし、住民の方の間でも大問題です。  昨年の十月の四日、この埋め立てで再三陳情をされてこられた地元の方とともに、運輸省から環境庁意見が求められている段階で、環境庁が審査をされているということなので、それまでは住民の方が来られても、まだ環境庁にはこういう書類が回ってきていない、審査の段階でないというお返事ばかりでしたから、ちょうど環境庁で審査をなさっていらっしゃるという段階で、住民とともに私は総合的な問題を指摘すると、こういうことで準備をいたしまして、要請に上がるということを通告いたしました。ところが急に、本当に抜き打ち的に、その前日になって運輸省に同意をされたと、こういうことです。これは住民の意見を全く聞かないという姿勢だと言われても私は仕方がないと思います。なぜ住民の意見を聞かれてから、そして住民が納得すれば、運輸省に対して私は同意の返事を出されても遅くなかったのではないか、そうされるべきだというふうに思いますけれども、こういう姿勢に対して一体環境庁はどうお考えなのでしょうか。私はここで抗議をしたいと思います。
  156. 信澤清

    政府委員信澤清君) ただいまのお話でございますと、九月ごろの段階で環境庁へまだ書類が参っていないということをだれかが申したようなお話でございますが、実際には書類は七月の半ばに運輸省からいただいておるわけでございます。したがいまして、もしそのようなことを申したとすれば、それは事実に反することを申し上げたことになろうかと思います。その意味では大変申しわけないことだというふうに思うわけでございます。
  157. 安武洋子

    安武洋子君 そのことじゃないですよ。そういうことを言っているのじゃなくて、昨年の十月の四日に、住民の方とともに、私がいままで指摘してきたことを総合的に——環境庁に書類が回って審査をなさっていらっしゃるから、環境庁に対して私どもが陳情するということを通告出し上げた。その前日になって急に抜き打ち的に、私どもが通告した後で発表なさって運輸省に同意を与えられている。こういうことは、住民が来るということがわかっているわけですよ。それまで再三再四来ているわけです。私も委員会でいろいろなところで取り上げて、どんなに問題が多いかということを申し上げて、それに御回答がないわけですよ。それなのに、急にその日の前日の午後ですよ、なぜ同意を与えられるか。こういう抜き打ち的に住民の声を無視されるようなことをされるのかと住民は大変怒っておりました。住民の声を聞かない環境庁なのかと、こう言われても仕方ないじゃありませんか。こういう点についてどうお考えなんですか。
  158. 信澤清

    政府委員信澤清君) 結果的に先生おっしゃったような形になったと思いますが、私はこの問題を扱う窓口の局長といたしまして、庁内各局に関係がある問題でございますから、したがって各局の意見が出そろい、また環境保全上の環境庁として言うべきことを取りまとめた上で運輸省に返事をするという事務を進めておったわけでございます。たまたまそれが前日であったということになりますれば、何か意図的にやったというふうにおっしゃられても仕方がないと思いますが、私は少なくとも、何といいますか、一つの流れに乗っかって、庁内の意見がまとまったところで運輸省に回答したということでございますので、まあ、おっしゃられてみると大変申しわけなかった、これまた申しわけないことをしたというふうに思うわけでございます。
  159. 安武洋子

    安武洋子君 それだけじゃないんです。住民軽視というのは、住民に対して公告縦覧をした資料と、それから国会で私が審議をさせていただいている資料と、後でお出しになった資料と違うという、ここにも住民軽視があらわれていると思うのです。そのことを申し上げたいと思いますけれども、このLNGの埋め立てという問題の中心点は、環境保全に資するかどうかということがこのアセスメントの中心になっているわけなんです。これが実にずさんであるということを私は再三再四申し上げてきたわけなんです。特に、一酸化窒素の汚染がここ三年全国一というこの姫路の汚染地域に二百七十万トンものLNGの導入について、このLNGを導入したことによって、NOxの汚染がどう変化するかと、これがポイントなわけなんです。  ところが、アセスでは実際の導入は昭和六十年なのに、五十二年時点で導入したと仮定をして、重油からLNG二百七十万トンに切りかえることによって七%NOxがカットできると、こういうアセスを出してあったんです。で、私は、これでは昭和六十年まで八年間ありますから、石油の低窒素酸化物対策、これが進んだら七%のカットぐらいは石油でも十分できると、LNGを導入するまでもないと、LNG導入が環境保全に役立つどころか、危険がどんなにたくさんあるかというデメリット、これがもう本当にたくさんあるということをずっと挙げて指摘をして、そして環境庁も、その一つ一つ環境庁に資料が回ってきた段階で慎重に審査をします、検討をします、こう答弁をされております。しかし、その六十年に二百七十万トンのLNG、これを導入したときにどうなりますかというアセスメントの資料については、そのとき環境庁にはなかったわけです。私は提出を求めましたけれども、私のところにお持ちじゃない。ところが、認可をなさってから私が要求をしたら、補足資料をお持ちでした。それを見ますと、これは公告縦覧なさった資料と違うわけでしょう。私が国会でいろいろとここで論議を交わしているときにはそういうものはなかったわけなんです。これはまず住民軽視じゃないですか。住民には全く違うものを見せておられるということになりますけれども、この点についていかがお考えなんでしょう。
  160. 信澤清

    政府委員信澤清君) 公有水面埋立法でお話しのような告示縦覧の規定を設けておりますのは、やはり埋め立ての内容というものについて関係の住民の方の御理解を得ると同時に、その御意見を事業に反映させると、こういう面が一つあろうかと思います。さような意味から申しますると、御指摘のような問題について再三国会でも御質疑をいただき、また、いろいろお話も別の機会にも伺ったように承知をいたしております。したがって、私どもといたしましては、公示縦覧された資料だけで実は意見を申しているわけではございませんで、お話しのように、後から運輸省を通じていただきました資料をもとにいたしまして、先ほど来申し上げておりますように、局内で相談の上、まあ、これならばある意味でやむを得ないと、こういう判断をいたしたわけでございます。したがって、そのことが一つは公有水面埋立法による公示縦覧との関係で、それと関係ない資料を使うことはどうであろうかということになりますれば、これは公有水面埋立法の運用の問題かというふうに思うわけでございます。  それからまた私ども立場といたしましては、やはり公示縦覧されたような、きちっとした資料で判断できるようにこの制度を動かしてもらいたいということを私どもの希望としては強く持っているわけでございます。
  161. 安武洋子

    安武洋子君 しかも、お出しいただいた資料を見ると非常に不思議なんです。これは昭和五十年十二月の兵庫県姫路市のアセスメントの昭和五十二年改善計画、これによる総量に対しまして、LNG二百七十万トン転換すると窒素は七%減ると、こうなっているんです。公告縦覧の数値によりますと、昭和五十二年改善計画による総量に対してLNGに関電分百七十万トン分を転換すると窒素は二二%に減ると、こうなっているんです。そして、私の求めによって出された補足資料によりますと、昭和六十年の改善計画による総量に対してLNG二百七十万トン転換すると窒素は一三%減る。こうなっているんです。石油をLNGに転換した場合、昭和五十二年では七%しか窒素が減らない。しかし、五十二年に比べまして八年間で石油の窒素酸化物、脱硝技術の開発等が非常に進み、公害規制も強くなるこういう六十年に、NOx対策が進んでいるはずのこの六十年の方が、LNGによる窒素の削減率が一三%——二倍にも高くなると、常識で考えられない数字がここに出てきているのです。  私は、こういう資料を拝見すると、まずいいかげんなアセスメントを住民に公告縦覧してこられたのか。それとも、許可を得るために都合のよい一三%カットなどという数字をうのみにされたのか。この二つのうち一つしかないと思うのです。一体どちらなんですか。
  162. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) まず初めに申し上げたいと思いますが、先生の御指摘のNOが一番高いというところは、あるいは排気ガスの影響力、あるいは近所の煙突の影響があるのではなかろうかという場所でございます。確かに高うございます。一番高くなっております。また、測定サイトとしての選択が地域の代表性のあるものとは思えないというのが一つの判断でございます。  それから、その次は全く違うものを出したという御指摘でございますが、この先生の御指摘のあった、先生の御要望に応じてこれは環境審査課の方がお持ちして御説明したものだそうでございますが、その中に昭和六十年度にこのLNGを入れないで、そしてこの五十二年のその時点で、そのときこれぐらいまでは脱硝を入れなくてもいくだろうという技術的なある程度の見通しを立てながら入れて出した排出量と、それからそこにLNGを入れた場合に果たしてどれだけ減るかという数字とを比べておるわけでございまして、先ほどの七%と先生のおっしゃいましたのは、この県が五十二年の削減計画というのをこの四十八年から四十九年の時点でやっております。これは四十八年の第一次規制と、それからもう一つは、企業が協定によって五十二年度の末までにやると言った数字を見込んだ数字を出しておりまして、その五十二年度の削減計画、これは計画数字でございますが、それに対して七%と言った。これはうそではございません。全くそのとおりでございます。  ところが計算を、今度はこの将来に対する計算でございますから、私どもは審査をいたしますときに簡単な資料だけ出されたら、これでは審査できないと言って徹底的にいろいろな角度からつくわけでございます。そのときに、果たして六十年度にどうなるのかということで、もしも大きく見せようと思いますと、六十年度に四十八年度と同じ対策で何にもしなかったとすると大体三〇%近くのカットになるという数字がございます。そういうものも一方にございますが、そうではなしに、この六十年度にLNGを入れた場合と入れない場合と、そしてその場合の技術の水準は、これは毎年毎年技術評価をして出してきております。  それからもう一点は、第一次規制、第二次規制、第三次規制とずっと進んできておりますから、数字が非常に動くわけです。そういう点の見通しを入れてやってみますと、いま先生のおっしゃったその一三%カットになると、これはまた事実でございます。ただその一三%カットになるという資料がその公告のところに出ておらなかったという御指摘が先生の御指摘であろうかと思います。決していいかげんなものではございませんで、大気汚染の角度からはやはりLNGというクリーンエネルギーを入れるということは非常にこれはメリットでございます。将来恐らく争奪戦になると思います。  姫路の場合にLNGが入るということはSOx対策ではがくっと減らすことになりますし、またNOx対策でも、年率大体五・七%ぐらい伸びると計算しておりますから、いま申し上げたような数字になるということは私ども審査の過程でいろいろ調べまして何ら間違った捏造の数字ではないということはひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。
  163. 安武洋子

    安武洋子君 私が聞いておりますのは、石油の窒素酸化物対策が進むという六十年に、なぜ五十二年にお出しになっているこの七%カットよりも二%カットというふうな倍の数字が出てくるのですか。これが不思議でしょうがないという御質問をいま申し上げておりますが。
  164. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) これはいま五十二年度のときには——これは五十二年度以降に伸びがあるわけです。伸びがありまして、五・七%ずっと伸びてまいりますから、そこの中にLNGでシフトしてまいります。そして技術が加わってまいります。そういうところになりますので、これは全く計算の問題でございまして、決して摸造でも何でもございません。
  165. 安武洋子

    安武洋子君 私が御質問申し上げておりますのは、去年の五月の二十五日なんです。その時点でおわかりにならない。それがわずかの間に、あっと言う間にそういうすばらしい技術が開発されるということがおわかりになるということはまことにこれもまた不思議。それで私は、この問題は枝葉末節の問題じゃないんです。姫路のLNG基地を埋め立てする、これは環境改善に資するものとして許可なさっていらっしゃるわけなんです。その中心問題なんです。だから、私が納得いくような補足資料をお出しになってください。私は、これでは納得できないです。それが一点です。  それから住民に対して公告縦覧、これを私は再びおやりにならないといけないと思います。このことを、どうですか、運輸省に求めてくださいますか。
  166. 信澤清

    政府委員信澤清君) 資料の点につきましては、おっしゃっている資料がどういうものであるかちょっとわかりませんが、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思います。ただし、委員会での御質問でございますから、場合によっては理事会等でお扱いを決めていただければよろしいかと、よけいなことでございますが、申し上げたいと思います。  それから公有水面埋立法の問題は、これは運輸省の御所管でございますが、いまお話しのような事例が二、三ほかにもございます。したがって、いまの法律でもう一度やり直すというのはあるいはむずかしいかもしれませんが、しかし、少なくとも私どもが判断に使った資料については、やはり地元でお求めがあれば公表する、こういう姿勢はとっていただきたいということはかねがね運輸省にもお願いしております。
  167. 安武洋子

    安武洋子君 この問題、何も初めてじゃございませんでしょう、こういう問題を起こしておられるのは。特に、五十年七月三十一日に許可をなさいました瀬戸内法施行後の最大の、先ほど申し上げた西条沖の埋め立て、あの際にも公告縦覧後百カ所に及ぶアセスメントの訂正が行われたということを、五十年の八月八日の衆議院の公害委員会で、私どもの代議士であった当時の木下元二代議士から指摘をされておられるはずなんです。これは同じことをまたやられているということ、こうじやありませんか。ですから私は、こういう埋め立ての具体的な内容を正確に住民に知らせるというふうなことをおやりにならないといけない。やはり運輸省に対して、これは強く私は言っていただきたい。いかがですか。
  168. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先ほども申し上げたように、一応私どもも申しておるつもりでございますが、重ねてのお話でございますから、そのように処置をいたしたいと思います。
  169. 安武洋子

    安武洋子君 じゃ、私は、まだ環境庁の姿勢にかかわる問題として問題にしたいと思うのです。  これも私が公害委員会あるいは決算委員会の総括でも取り上げました、兵庫県の汚濁の負荷量の約三分の一を占めるという皮革汚染の問題なんです。前処理場の稼働、これが一日も早くと急がれているわけなんです。決算委員会の総括質問の場でも、建設大臣も自治大臣も総理府長官も、それから通産、環境庁長官——環境庁長官は公害委員会の席上でもおっしゃいましたけれども、努力をすると、何としてでも一日も早く前処理揚を稼働させてこういうものは浄化するというふうに言われたわけなんです。  ところがなんです。この龍野の松原ですけれども、ここの処理場というのはすでに完成している。何度も申し上げますけれども、地元の建設省の職員の方も、いま川にたれ流しているこの管渠とそれから処理場の管渠を結合しさえすればすぐに動くんだと、こう言っているんですよ。ところが、昨年の九月に動かすと、こう言われた。今度はそれを四月に変更された。それをまた来年の、五十四年の六月。これは何ですか。これは、水質汚濁防止法の排水基準の暫定措置のぎりぎりいっぱいの日なんですよね。ここまで延ばす、稼働させないということは、暫定期間を悪用して、いま住民が大被害を受けている、そういう住民の大被害を放置しようとすることじゃないんですか。住民は、もう耐えられないから川にどろでもほうり込みたい、それぐらいな切実な気持ちなんだと、こう言っているんです。あの決算委員会で各大臣が、稼働させるために全力を挙げます、私が、一日も早くやらないとだめなんですと、それも努力をいたしますと、こう答弁されたことは、一体どうなっているんでしょうか。その点をお伺いいたします。
  170. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま先生からお話しございましたように、昨年の十月二十八日、この決算委員会におきましてこの皮革産業の排水問題、これが質疑があったことはそのとおりでございます。その際にも、環境庁長官を初め、関係大臣の方からも、この龍野市、特にいま御指摘ございました松原、これは前処理場ができておりますが、これが稼働につきましては極力努力するという趣旨の答弁があったことはそのとおりでございます。その後、総理府の同和対策室が中心になりまして、ことしも一月の末でございますか、環境庁初め、通産省、建設省、自治省、厚生省等々が集まりまして、この皮革産業の排水問題、特に前処理場の建設並びにすでにできておりますところの稼働の問題等々の打ち合わせ等もやったわけでございます。  まあ環境庁といたしましては、せっかくこの前処理揚ができたわけでございますから、これが何ら稼働せずに機能していないというのははなはだもったいない話でもございますし、また、他面、この林田川等、汚染状態というものはきわめて悪うございます。そういうことで、これは放置できない話であるという認識に立っておりますので、今後とも、この総理府本府の方とも十分連絡をとり、また、県の方とも十分連絡をとりたい。県の方は、これは、当然、関係の市や町と具体的な打開策をいろいろ検討を重ねておるということでございますから、県の方とも十分連絡をとりまして、ただいまお話しございました五十四年の六月二十三日までということじゃなしに、極力早くこれが稼働するように今後とも努力したいと、かように思います。
  171. 安武洋子

    安武洋子君 具体的に、いつまでに動かすというめどを立てていらっしゃるんですか。
  172. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この龍野市の松原の前処理施設をいつまでに動かすかということでございますが、この松原の前処理場につきましては、これを動かすということに相なりますれば当然維持管理費の問題が出てまいるわけでございますが、この維持管理費の費用負担の問題、これがなかなかめどが立たずに運転ができない、こういう状況になっておるわけでございます。したがいまして、この費用負担関係、これがいつ決着がつくのかというところがキーポイントになっているわけでございます。そこで、事業者の方々の方では、非常に零細な方が多うございましてなかなか費用負担がむずかしい。それでは龍野市が持つかという話になりますと、龍野市も財政的にきわめて税収等が貧弱でございます。したがいまして、市の財政という問題からしますと、これまたなかなか困難である。県の方も、助成措置等につきましていろいろ県なりにも考えておりますが、これまた県の方の財政事情、その他の事情で具体的に打ち出せないというような状況が現在ございます。したがいまして、こういう関係者の方々で、非常にむずかしい問題ではございますけれども、やはり何とか林田川等の水質汚濁というのが非常に悪い姿になっておりますので、極力その辺の話し合いを精力的にやっていただきまして、なるべく早く稼働をするということに持ち込むように県の方も指導したい。  いつまでか、いつがめどかということでございますが、この面につきましては、いつということが現段階で申し上げかねるという段階でございまして、この点ははなはだ残念でございますが、その辺は御容赦いただきたいと、かように思います。
  173. 安武洋子

    安武洋子君 いま予算編成期じゃありませんか。私はいまおたくがおっしゃったようなことをるる言って、そうしてそういうところの努力だけに任せておいては動かないから、国として十分にやってくださいということで、各大臣が努力しますという、こういうお答えなんです。堂々めぐりなんです。ですから、一刻も早く動かそうと思えばいま努力をなさるべきだというふうに思うんです。  私は環境庁の姿勢の問題としていろいろの問題を挙げてきましたけれども、やっぱり私は環境庁の姿勢の問題の中には、もっとこの住民の声に耳をおかしにならなければいけないと思うんです。  私、ここに関西経済連合会環境問題委員会、これの「瀬戸内海環境保全特別措置法の制定並びに水質の総量規制制度の導入に関する意見」というのを持ってまいりましたけれども、ここの中では、いかにこういう関西経済連合会などが巻き返しを図っているかというのがもう如実にあらわれております。少し抜粋して読ませていただきますけれども、「基本計画の策定に当っては、単に環境保全のみに偏することなく、瀬戸内海地域の現実の多面的な利用状況、将来の位置づけ等を十分考慮して瀬戸内海の発展を総合的に推進してゆく旨を明記すべきである」、こういうのもありますし、「リン、窒素等の環境基準も未だ設定されていない現状において、指定物質の負荷量の目標値の設定等を行うことは、科学的、合理的根拠がなく賛成し難い」、あるいは「産業廃棄物」「発電所建設等の公益性の強い事業の用地については、環境保全に十分配慮することを前提に、その埋立が可能となるよう、格別の配慮をすべきである」とか、あるいは「自然海浜の保全については、現在、自然環境保全法、自然公園法及び海岸法において規定されており、本法において更に規定を加えることは屋上屋を重ねる結果となり不適当である」と、それから、「タンカーの夜間航行の禁止をした場合には」「安全性確保に問題がある」とか、あるいは、「水質汚濁防止法の一部を改正する意向と伝えられる」が、「基本考え方には、我々ももとより異存はない。しかしながら、答申における具体的施策には到底納得し難く、法案作成については十分な検討期間を設け」云々と。まだございます。「生活排水等の対策に重点を置いた総合的な水質保全対策を検討すべきである」と、「工場、事業場に不当なしわ寄せがかからぬよう、総量削減基本方針及び総量削減計画は、これ迄の努力等を十分勘案し、産業排水と生活排水等のバランスがとれた合理的な内容とすべきである」と、まあいっぱい書いてあるわけなんです。  だから、私が申し上げたいのは、これは住民のいまの願いに対して真っ向から挑戦するような中身になっている。こういう意見に押し切られるのではなくって、いま住民が求めているのは、この瀬戸内海の環境を保全する最後のチェック機関としての機能を環境庁に求めているわけなんです。だからこそ、住民の声にこたえるように、こういう私は環境庁であっていただきたいと、そうでなければいけないと思います。ですから、いま私がいろいろ申し上げたようなことを含めて瀬戸内海のこの後継法の策定にも当たられたいし、アセスメント法についても策定をしていただきたい、こういうふうにお願いいたしますが、大臣いかがお考えでございましょうか。大臣のお考えを伺います。
  174. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 先ほど来すでにお答え申し上げましたように、この瀬戸内海の引き継ぎ法、無論地元住民の声、これは重要な要因として十分これを考慮に入れてやっていきたい。と同時に、利害関係者のいろいろな要望というものも、これはもう冷静に虚心担懐、そういうものを十分評価して、そうしてひとつできるだけ合理的な後継法、これをつくり上げるために私はぜひともひとつ一生懸命に尽力したいということで、目下対処しているわけでございまして、この点どうかわれわれの努力、御理解いただきたいと思います。
  175. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私はこれから四つの問題についてお尋ねしたいんですが、時間の都合であるいは全部に触れることができないかとも思いますので、せっかくお呼びしてありますけれども、もし途中で打ち切る場合にはあしからずひとつ御了承願いたいと思います。  まず第一に私はお尋ねしたいことは、沖繩の金武湾の汚染の問題についてお尋ねしたいと思います。  その差し上げました地図をごらんになればおわかりですが、この昭和五十二年の十二月二十三日付で、その金武湾の袋の底になっております石川市の議会で、第四十二回定例議会において決議しております要請事項を携えて東京にやってまいりました。で、去る二月一日から三日まで、私最初から最後までお供をいたしまして、内閣官房長官、沖繩開発庁、通商産業省、農林省、防衛庁、環境庁に陳情を、私が御案内いたしましていたしました。  そこで、この金武湾が汚染をしておるということは、もう疑う余地はございません。ごらんになったかと思いますが、ここにも持っております、この特別委員会報告書に、いろいろの立場からそのデータが立証されております。だから、汚染しておることは間違いがないという前提に立って質疑を進めていきたいと思います。  その原因に問題がありました。六カ所訪ねまして、原因が、まず第一点は生活排水の流入ということが一つ。第二は工業排水のたれ流しということが二つ。第三は、米軍の演習場からの赤土の流入。第四が海中道路、与那城、この海中道路による潮流の変化。大体この四つがその理由に挙げられております。  そこで、この六カ所のお答えをまとめますと、こういうことでございます。早急に調査をし、何が原因であるかを知り、対策を立てねばならないと、こういうお答えが、全体の答弁をまとめますと、そういうことになっております。  そこでお聞きしたい第一点は、その御答弁に従って関係庁とどのような話し合いを持たれ、調査への具体的な案を持っておられるか、まずそれを示してもらいたい。
  176. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 金武湾の水質が汚濁をしておる、良好な状態にないということは御指摘のとおりでございます。原因等につきましても、先生がただいま挙げられましたものが主因でございます。そのほか考えられるものとしては、畜産排水、これがあろうかと思います。いずれにいたしましても、やはり原因究明と実態把握、これが必要でございます。その上に立って対策を講ずるということがやはり必要かと思います。  そこで問題は、まず県の方におきましてこの実態の把握あるいは原因の究明、これをまずやる、そしてその上に立って、県としてどういう対策を講じていくかという一つの具体案を県の方に立てていただくということが何としても必要ではないか、かように考えるわけでございます。  県の方におきましては、現在この金武湾の汚染機構と申しますか、こういう面の調査を予定をいたしております。底質環境調査、その他与勝海域、区域の環境調査等々予定をしておるようでございますので、そういう調査結果を踏まえて、県として具体的に、こういうかっこうでやっていきたいという具体案を早くつくっていただきまして、これを環境庁初め関係省でそれにどう対処していくか相談をしたい、こう思っております。
  177. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、県において調査しているということですが、私が三日間にわたって石川市の議会の代表の皆さんを御案内して要請したそのお答えは、早急に政府として関係庁と話し合って、どのような組織で調査をするかということについての話し合いはまだだと、こう受けとめていいんですね。
  178. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この金武湾の汚染の問題といいますのは、いわゆる生活環境項目、CODの関係でございます。しかも、この金武湾それ自体の環境基準の設定その他、これはいわゆる委任水域ということで、県の方でやっておられるわけでございます。そういうことでもございますので、むしろ県が実態把握、しかもまたそれを踏まえての対策というものを県が軸になって考えるべきものであろう、かように考えておるわけです。したがいまして、国の方で実態調査調査項目なり、あるいはチーム編成をして、国が出向いていくということは、これはよその省の方があるいはおっしゃったかどうか、それは私もよく存じておりませんが、環境庁としては、水質ということでの問題としてはそこまでは考えておらない、こういうことでございます。
  179. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それは当然県としてもその責任があるわけですが、ところがどうも私の感触としましては、都合のいいときには県に、都合の悪いときには国だと、こういったすりかえに、特に沖繩の諸問題を通じて顧みた場合に思われてなりません。  なぜ私がそう申し上げるかといいますと、環境庁の役割りとして、地方公共団体の行う監視、測定に対する助言及び助成を行うという、こういう任務を境環庁は、持っておられますね。だから、それを地方任せにしておったんじゃこれはいつになるかわからない。そんなにまた簡単なものでもありませんのでね。それを県にだけ任しておったんじゃ、いつになるかわからない。非常に私はその点不満を持ちます。むしろ国が乗り出していってリードするぐらいの、しりをたたいてもらうくらいの努力をしてもらいたいと、私はそれを要望いたします。  その理由はいろいろありましょうが、先ほど理由一つに、海中道路による潮流の変化ということを申し上げましたが、実はこの海中道路の設定によってこの汚染の大きな原因になっておるということは、私も疑う余地はないと思うわけなんですが、それには実は覚書が交わされておるわけなんです。この覚書なんです。この覚書の第五項に、非常に大事な項目だと思いますが、「当該公有水面埋立免許申請書に添付した設計書及び仕様書に従って建設した海中道路の竣工後七ケ年以内に於いて、若し、海水汚染を防止するため、海中道路に、海水の流通口を設置する必要が実証されるならば、ガルフ社は、その技術設計コンサルタントが、海水汚染を防止するために必要と認める流通口の設計書の作成及び流通口の設置については、一切の責任を負うことに同意する」と、こういう大事な項目があるわけなんです。もしその汚染の原因がこの海中道路のためであるということがはっきりするならばですね。これが一九七〇年の十二月三十一日に交わされたガルフ社と与那城村との覚書なんですね。  そうすると、竣工してから七年以内ということですから、手をつけてからということになると、去年の十二月三十一日なんです、竣工ですから。ところが、一カ年はあれはかかっていないんじゃないかと、ちょっと私、その辺は確かでありませんが。そうしますと、この覚書の有効期間というのは、もうあとわずかに迫っておるわけなんですね。それをぼやぼやしておりますというと、この覚書が無効になる、こういった実は背景もありますがゆえに、その汚染自体を究明することも最も大事ですが、もしその原因が、その海中道路にも大きな原因があるということがはっきりするならば、この覚書に従ってまた処置しなければいけない、こういうことなんですが、それはいかがお考えですか。
  180. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 金武湾の水質の汚濁の原因、これは先ほども先生が四点ほど挙げられたわけでございますが、いろいろな汚濁要因がございまして、それが総合された結果汚濁が現実のものとして出ておる、こういう姿だろうと思います。その際に、この海中道路というものがつくられまして、約四・七キロほどあると、こういうふうに聞いておりますが、これで締め切ったわけでございます。若干あいているところもあるとは伺っておりますが、ほとんど海水の交換というものが遮断されるという姿になっておるわけですから、そういう面では海水の交換が悪くなることによります汚濁というのは、これはあろうかと思います。  ただ、問題は、先ほど言いましたような、先生が挙げられました四点、そのほか私がちょっと申し上げました畜産排水等も加えまして、一体この海中道路をつくったことによる汚濁の寄与度がどの程度かということにつきましては、これは簡単にはどの程度寄与しているということを申し上げるのは、また技術的に究明するのもなかなか困難かと思います。いずれにしても、閉鎖して水の交換が悪くなったということは、水質を悪くする要因であることは事実でございます。  それから、もう一つ覚書というのが、これも私の方も承知いたしておりますが、この覚書の関係につきましては、この海中道路そのものがたしか村道に認定をしているのかと思います。したがいまして、具体的には建設省の方におきまして、道路局の方におきましていろいろ県の方にも指導をやっておるというふうにも聞いておりますので、ただいまの先生の御指摘の面につきましては、道路行政を所管しております建設省の方ともよく連携をとって進めたいと、かように思います。
  181. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 だから私が言いたいのは、その原因が何であるかということを早く確認してもらえば、対策は、たとえばその道路の問題であるならばこれは当然建設省にやるわけですが、早くその原因を確認し、究明して、その対策を早く講じてもらわなければいけないという意味において、私は一刻も早くこの原因を究明してもらいたいことを強く要望いたします。  次に、この埋め立てとの関連でさらに汚染が心配されておるという、このことは、私一人じゃなくして多くの県民がその埋め立てによる今後のまた汚染も非常に心配しております。  そこで、私お聞きしたいんですが、第七十国会の予算委員会において、当時の通産大臣、中會根通産大臣と私との一問一答がございます。そのことについて私、確認いたしたいと思います。質問であります。   工業基地の建設について、特に、通産省でCTSの計画がなされておるようですが、それと公害対策との関係について、どういう考えを持っておるか、承りたい。   この問いに対して中會根通産大臣は、   金武湾は、湾が広く、かつ水深が深く、CTS地点としては最も恵まれた条件を有していると言えます。   なお、当地区では、すでに沖繩ターミナルが百二十万キロリットルのCTSを保有しており、さらに、CTS規模の拡張計画をしている由であります。また、三菱石油と丸善石油は共同してCTSを建設すべく、現在、当地区で埋め立て工事を行なっており、その他、アラビア石油も当地区にCTSを建設する計画を有しておる由であります。通産省としましては、本年度、財団法人日本工業立地センターに沖繩県CTS調査を委託しておりますが、同センターでは、地元の学識経験者を含む委員会を組織し、安全性が高く、公害防止対策の完全な合理的な規模のCTSについて、現在水理模型実験等を含めた調査を開始しており、来年三月末までにその調査結果を通産省に提出することになっております。今後はその調査をもとに、沖繩県当局とも十分協議しまして、公害・保安対策に万全を期したCTS計画の建設を指導してまいる所存でございます。  この答弁であります。そこで、この答弁の中からお聞きしたいことは、来年の三月までというと昭和四十八年の三月三十一日までということなんであります、これは四十七年の質問ですから。調査結果はどうなっておりますか、お聞きします。
  182. 清滝昌三郎

    説明員清滝昌三郎君) ただいま御紹介のございました財団法人日本立地センターによります調査につきましては、四十八年三月にレポートがまとめられて出されております。その結果によりますと、特に、物理的な面、その他環境保全上の面といったことを勘案いたしまして、記憶いたしております数字では、たしか二千万キロリットルのCTSが可能であるといった趣旨の内容が盛り込まれていたと承知しております。
  183. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題につきましては、もう結論だけ申し上げます。いままで埋め立てた地域に対する賛成をした与那城村自体も、もうこれ以上ふやすことには反対でありますということをはっきり言っております。県当局ももちろん反対であります。議会もですね。このことを念頭に入れられまして、「沖繩県当局とも十分協議しまして、公害・保安対策に万全を期したCTS計画の建設を指導してまいる所存でございます」と、すでにもう五年前に答弁しておられるわけでありますから、このことを申し添えまして、もう時間が迫ったようでありますが、もう一点。  人間には人権というものがある。ならば、ネコには猫権というものがあるかどうかは知りませんが、いま八重山の西表で一大問題を巻き起こしておるイリオモテヤマネコですね、八重山のイリオモテヤマネコ。これは専門家によりますと特別天然記念物で非常に珍しい世界的な動物のようでございます。ところが、いま住民との非常にトラブルが起こっておりますのはどういうわけかといいますと、西表に行っておる住民の多くは、沖繩本島で戦争に焼け出され、破壊され、そして命からがら生き延びた県民が、しかも土地は軍事基地に接収され、そういった方々が八重山に移住して西表の開発、あるいは石垣島の開発と、こういう方々であります。その方々が営々として三十余年にわたって西表開発をしていまもう定着をして、サトウキビを中心に開拓をして、製糖工場のあることも御存じだと思いますが、このように開拓に大きな夢を託して、そうして九〇%があそこは国有林でありますから、その国有林も払い下げてもらいたいという強い強い熱望があるわけなんですね。そういう情勢の中で、多分政府がこのことに熱を出されたのは、去年の八月の九日に英国のエジンバラ公から皇太子殿下あてにヤマネコ保護についてのお手紙が届けられた。その際、西ドイツのライハウゼン博士の報告書も添えられていたと。詳しいことを申し上げませんが、一は、わなと狩猟を禁ずる。わなを仕掛けることと狩猟を、撃つことを禁ずる。完全保護区の設定。三、研究所の設置と保護官の常駐。この三つが主なる内容のようであるとお聞きしております。そして、西表島は全生態系は脆弱で、数百人以上の人間との共存は不可能なので、観光旅行は十分注意して許可すべきであると提案されておると、こう聞いております。そうすると、このヤマネコを守るために——このように世界的な注目を浴びておるからこれはすばらしい存在動物であることは間違いないでしょう。しかし、私は残念に思うことは、そこは無人島ではない。日本国民が生存しておる。しかもさっき申し上げたような日本国民が営々として開拓にいそしんでおる。この人々のことも考えてくれという一言もないことには、私は残念に思い、さびしさを感ずるわけでありますが、それで私は、だから人間優先か、人権か猫権かと最初に申し上げたのはそれであります。どうかひとつ、ネコも大事、私は否定はしません、否定はしません。しかも、そこに住まっておる日本国民である沖繩県民は、このような戦後の犠牲を負うて、そして西表の開拓にいまいそしんでおるという、このすばらしい方々を無視して、やれイリオモテヤマネコだ、ヤマネコだと言って、そうしてネコのことばかりに気が向いて、そこにとうとい人間の存在を忘れるようなことがあると大変なことになる、これは許せない、こういう気がしてなりません。  時間がまいったようでありますので、もうあとの二つはまた次の機会に譲りたいと思いますが、この問題に対するひとつ環境庁の、そして政府の見解をはっきり示していただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  184. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) ただいま御指摘の点、われわれもよくわかっているつもりでございます。西表については、それは、ヤマネコを初め、なかなか貴重な鳥獣が生存しておりまして、無論、鳥獣保護区の設定ということもぜひ必要だと考えておりますが、一方、地元住民の生活向上ということと当然両立するような配慮が必要であるとわれわれ考えております。したがいまして、今後これについては、まあわれわれは、ライハウゼン博士の話というものはあるようでございまするけれども、別にそういうこととはかかわりなく、われわれとしてはわれわれの考え方でやっていこうと思っておりますので、今後とも地元民との理解、協力が得られるような、そういう方法で、そしてまた保護という問題もできるようにということで考えてまいりたいと、こう思っておりますので、先生重ねて御指摘の点は十分考慮しておりますので、そのようにひとつ御理解いただきたいと思います。
  185. 野口忠夫

    ○理事(野口忠夫君) 他に御発言もないようですから、総理府のうち経済企画庁科学技術庁及び環境庁決算につきましてはこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十三分散会      —————・—————