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1978-01-18 第84回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年一月十八日(水曜日)    午前十時十七分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      大塚  喬君     野口 忠夫君      坂倉 藤吾君     寺田 熊雄君  一月十二日     辞任         補欠選任      案納  勝君     青木 薪次君      下村  泰君     市川 房枝君  一月十三日     辞任         補欠選任      青木 薪次君     案納  勝君  一月十七日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     神谷信之助君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        茜ケ久保重光君     理 事                 斎藤 十朗君                 坂元 親男君                 寺下 岩蔵君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 岩崎 純三君                 河本嘉久蔵君                 増岡 康治君                 丸谷 金保君                 和泉 照雄君                 神谷信之助君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 市川 房枝君                 江田 五月君    国務大臣        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        国税庁間税部長  矢島錦一郎君        農林政務次官   初村滝一郎君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省構造改善        局長       大場 敏彦君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        農林省畜産局長  杉山 克己君        農林省食品流通        局長       犬伏 孝治君        食糧庁長官    澤邊  守君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    森  整治君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        大蔵省国際金融        局企画課長    橋本 貞夫君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  宮沢  香君        農林省農林水産        技術会議事務局        研究総務官    北野 茂夫君        会計検査院事務        総局第四局長   阿部 一夫君    参考人        農林漁業金融公        庫総裁      武田 誠三君        畜産振興事業団        理事長      太田 康二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和四十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十九  年度政府関係機関決算書(第七十七回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十七回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二月二十二日、大塚喬君及び坂倉藤吾君が委員辞任され、その補欠として野口忠夫君及び寺田熊雄君が選任されました。  また、去る一月十二日、下村泰君が委員辞任され、その補欠として市川房枝君が選任されました。  また、昨十七日、沓脱タケ子君が委員辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  案納勝君の一時委員異動に伴い、理事が現在一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、理事野口忠夫君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、昭和四十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、農林省と、それに関係する農林漁業金融公庫決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 質疑通告のない武田農林漁業金融公庫総裁は退席して結構でございます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 丸谷金保

    丸谷金保君 質問通告の中にはございませんが、一点、緊急な問題についての大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  伊豆地方を襲った地震による狩野川のシアンヘドロの問題につきましては、各方面に非常に大きな影響を今後予測されますが、特に駿河湾沿岸における漁業にもきわめて深刻な影響が出ておると思います。上流にこの種のダム建設するに当たって、農林省は事前に協議を受けておるのかどうか、また法制上はどうなっているのか、お答えを願いたいと思います。
  9. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) このたびの災害で多くの被害が出ましたことはまことに遺憾でありまして、農林省としてもこの事態を厳しく受けとめておるところでございます。  まず、シアンヘドロ対策でございますが、目下係官現地に派遣をいたしまして、被害の実態について明らかにし、対策を講じてまいりたいと存じます。  なおシアンヘドロダム建設につきましては国有林でございますので建設については当時の基準に従いまして許可をいたしておるところでございます。ただ、ダムが決壊するような内容であったかどうかについては、これは事柄の責任の性質上当方としてはタッチいたしておりません。しかし、今後このようなことがあってはならないというところから、今後のあり方については十分検討してまいりたいと存ずる次第でございます。
  10. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題についてはそれぞれ各所管委員会等においても論議が行われると思いますが、特に水産に及ぼす影響、それらによる漁民の補償の問題等についてひとつ万全の措置を講ぜられるよう希望いたすものでございます。  次に、米の消費拡大生産調整の問題について御質問申し上げますが、前鈴木農林大臣は、十月の私の質問に答えて、前任者あるいは前々任者等歴代農林大臣答弁は、自民党内閣であるから私自身にも責任は継承されておるというふうに申しております。まず、中川農林大臣ももちろん同じ考えではあろうかと思いますが、確認の意味で御答弁願います。
  11. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 全くそのとおりでございます。
  12. 丸谷金保

    丸谷金保君 いつの時代も、日本を取り巻く食糧情勢というのは厳しゅうございます。しかし、それにしても、今日ほど非常にむずかしい時代はなく、特に農林水産に従事する青年たちが、現況きわめて前途に希望を失っていると、あるいは不安におびえていると言ってもいいんでないかというような、先行き大変な事態でございます。このことにつきましては、長い間の自民党の政策の無為無策が今日に至ったと言っても過言でないと思いますが、しかし、われわれもこれらをどう打開していくかということについては非常に心配をしておりますし、したがって、単に反対のための反対をするということでなく、こうすればここのところはもっとよくなるんじゃないかというような視点で、できるだけ代案を持って御質問をしていきたいと思います。このことは、時には農林大臣に対する助け舟にもなろうかと思いますが、そんなことで党利党略考えている時代でもございませんので、できるだけそうした姿勢質問を申し上げていきたいと思います。  したがって、ひとつ大臣社会党の言うことだから何でも反対だというふうなことでなく、ひとついいものはいいという点について謙虚にわれわれの意見にも耳を傾けていただき、いままでの悪かった点については率直に改めるというふうな姿勢をお願いいたしたい、かように存ずる次第でございます。そうでございませんと、私のよく知っておる酒の業界からの多額の政治献金があったというふうな話や、あるいはまたいまマスコミで盛んに騒がれております食肉業界自民党一部議員との癒着というふうな巷間のうわさがやっぱりそうだったのかな、こういうふうに考えざるを得ないことになってまいります。どうかひとつそういうことのないように、こうすればよくなるというふうなことについては勇気を持って実行していくようにお願いいたしたいと思います。この点についての大臣の所信をまず伺いたいと思います。
  13. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) この点はまさに御指摘のとおりでございますが、社会党だから反対をするなんていう姿勢は毛頭ございません。ただ私どもお願いしたいのは、政府自民党のやることだから反対だということではなくして、いいものはいいものとして私の方からも御協力をお願い申し上げたいと存じます。したがいまして、前向きの助け舟なり御意見でありますならば、積極的に取り上げて、この国難とも言うべき米の過剰問題について取り組んで、解決をしていきたいということでございますので、積極的な御意見を私の方からもお願い申し上げる次第でございます。ましてや、癒着とか何とかというようなことは私ども断じてあり得ないことと思っておりますし、そういうこととは全く無関係というよりは、そういうことのない姿勢ということで取り組むことは当然のことでございます。
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 前回決算委員会質問をして、善処を約された問題について、まず二点ほどお伺いいたします。  最初に、水産庁長官に、羅臼根室漁民北方四島で罰金を科せられて、そのお金を一たん基地に帰ってから持っていくと、日本円で。このことについては外為法ではみなし規定があって、北方四島は当分の間外国とみなすということになっております。そうしますと、これは外為法違反でないのかということについて、その後どのように対応しているか、簡単にひとつお願いいたしたいと思います。
  15. 森整治

    政府委員森整治君) その後、ソ連側と交渉を行っておりまして、簡単に申し上げますと、漁協の保証書を提出をいたしまして、それの受領書をもらって、白紙で一応渡しておいて、実際にその要求があった場合にそれに書き込んで向こうへ渡すと。それで、それの領収書をもらって帰って参りまして、自後、銀行等を通じて払い込みをする。大体こういう基本的な了解ができ上がりました。ただいま関係漁協漁民指導を行っておる、説明を行っておる最中でございます。これが終わりますれば、そういう手続で先生指摘のいろいろな問題がひとつ解決されるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 そのとき関連して申し上げたのですが、まず最初大蔵省の方に、当時も外為法違反違反でないかということは、所管の人がいなくて答えられないということだったのですが、きょうはおいでになっておると思います。外為法違反なんですか、違反でなかったんですか、そういうやり方は。
  17. 橋本貞夫

    説明員橋本貞夫君) 外為法では、通常罰金等支払いは外貨でかつ銀行を通じて送金することを想定しておりますので、洋上でかつ現金相手に手渡すということは法令規定上ございませんでした。したがいまして、これを形式的に当てはめますと違反になるケースもあり得る、そういうふうに了解しておったわけでございます。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は洋上での話をこの前は質問したんじゃないんです。一遍基地に帰ってきて、漁組等で金銭の工面をして、円を持ち出して向こうの島に渡って払っているのは外為法違反違反でないかと、こう聞いているので、その点についてどちらかはっきり言ってください、よけいなことはいいですから。違反なのか違反でないのか。
  19. 橋本貞夫

    説明員橋本貞夫君) 外国におきまして相手に手渡す行為は外為法適用地以外になりますので、日本の港において現金を船に積み込むことが輸出、つまり携帯輸出とみなし得るかどうかという点がポイントになろうかと思います。船の中に積んでありますものは、外国へ向けた積み出しと必ずしも言えないわけでございまして、船の中にあるいろいろなものは輸出という扱いをしておりませんけれども、相手に手渡すことを想定して積み込んだものは輸出であると、こういうふうに認定いたしますと、携帯輸出額は一人当たり十万円以下ということに現行法令ではなっておりますので、この点、乗組員の数とか積み込まれた金額とか、こういうものとの関連で違反になるケースがある、こういうふうに了解しております。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 質問に答えていただきたいんです。私は、一遍帰ってきてですよ――この前はちゃんと領収書も見せたんです。請求書も、向こう罰金の。四百何十万というお金を、罰金を支払う目的をもって羅臼の港から一遍帰ってきて、漁協でもらって、それを持って択捉島に渡って――その場合は国後でした、国後に渡って向こうで払うと、この事実が違反になるのかならないのか、どっちかはっきり言ってください、途中は要らないですから。
  21. 橋本貞夫

    説明員橋本貞夫君) 本件につきましてはケースバイケースでございまして、本件事態そのものを克明に調査いたしませんと違反かどうかの認定はむずかしいわけでございますが、違反の疑いが濃いと、こういう点は言えようかと思います。
  22. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題で長くやっているつもりはございませんので、それじゃこれは後に譲ります。この前ははっきりケースバイケースとしてきちっと事実を出して、証拠書類も見せてあるんです。ですから調べてみなきゃならぬというふうな事実でないんです。しかし、時間がありませんからこれはいいです。  ただ、ここで大臣の見解をお願いしたいんですが、そういう事例がエスカレートして一千万以上の罰金を賦課されて、根室でもって支払い能力がないというふうな事案が出ております。これは大臣選挙区でもあるからよく御存じかと思いますが、こういう事例が起こるのは、結局食えない、事業がやっていけないというために違反承知で出て行く漁民が多いということを、漁組で私、直接組合長から羅臼ではお聞きしました。これらの解決のために、いま定置、それを何とか再配分してくれということでいろいろお願いをしておったところ、それについては、地元町長なり組合長なりが地元意見をまとめて持ってくれば考慮するという前大臣答弁だったんです。しかし、私はそのときも、そんなことは地元でできませんよと、町長漁協組合長の中で調整できるんならそれはできるんだと、できない場合にどうするかと、水産庁長官現地に人を派遣してでもそういう点の調整をする考えはないかと言ったら、できるだけそういう点について考慮すると、こういう答弁があったんです。しかし、どうもその後行っている気配がないんです。特に定置の場合、鮭鱒定置人たちに言わすと、われわれはもうアキアジの来ない時分にせっせとふ化をして放流して、一生懸命になって資源をふやすことに努力したんで、いまころになってからほかの人たちが食えなくなったから割り込ませろというふうなことはちょっと聞けないというふうな問題が地元ではどうしても出ますんで、これらを踏まえてひとつ早急に、外為法違反を犯してまで外に出て行かなきゃならぬ漁業問題について、ひとつ善処をお願いいたしたいと思います。
  23. 森整治

    政府委員森整治君) 先般の委員会で御指摘ございまして、いま再度の御質問でございますが、現在、北海道におきまして、本年末を目途に定置漁業権の切りかえの準備を行っております。そこで、その切りかえに際しまして、先ほど御指摘のございましたそういう北方水域の問題、それから締め出されたというような関係漁民の話し合いを行いまして、定置協業化ということによりまして漁民の参画をさせると、それで漁場を総合的に利用していくと、こういう中で関係漁民吸収を至急検討するよう北海道庁を指導しておりました。道庁といたしましても、その線で地元で十分に練った案をもとに関係漁民関係漁協の意向を聞きまして、協業化による漁民吸収方策をただいま検討いたしております。  それから、そのほかに羅臼地元漁協から、漁業振興のために羅臼地先コンブ漁場の造成を行いたいということもございます。これもその促進を図るということ。それから新たにウニの幼稚仔保育場を造成するという要請もございました。水産庁といたしましては、道庁ともよく連絡をとりまして、地元の要望に沿うよう努力いたしまして、漁場の拡張を図ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  24. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ちょっと私からも補足をさせていただきますが、あの水域が非常に厳しいと、ソビエトの外圧が厳しいということもありまして、特に大型の定置業者小型の漁家との間に非常なトラブルのあることは、お互い選挙区でございましてよく承知いたしておるところでございます。第一番目に問題になりましたのは、サケ・マスの混獲小型漁業者混獲を禁止しておったと、ここに大きな問題がございましたので、一定のルールを設けて、混獲をしても差し支えないということに道庁が踏み切っておるはずでございます。第一段階、この大きな問題がそういうことで道の指導によって、あるいは理解によって解決いたしておりますが、ことし末切れます定置権漁業権にありましても、小型の方々との間にうまくいくように道においても最大の努力を払っておりますし、水産庁としてもあるいは農林大臣としても、円満な解決ができるよう、いずれにしてもこれは知事の権限でございますから、知事指導して適切に処置してまいりたいと、こう思っておるところでございます。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 その問題につきましては非常に急いでおりますんで、現地は。だんだんエスカレートして、一千万以上の罰金で払えないなんていうふうなことにもなってきておりますから、至急に漁民の食えるような体制づくり努力をお願いいたしたいと思います。  次に、同じくこれは農水で質問した問題でございますが、米の消費拡大について、このことにつきましては前農林大臣が、「大変私どもも重要な、有益な御提案であると、こう受けとめておりますので、十分政府部内での検討を進めたい。」と、こういうふうなことで私の質問に対して前向きの答弁をなさっております。これ、一応取りまとめてそのときの発言の要旨をさらに整理しまして、学校給食用炊飯システムセンター方式ということでひとつ実現方について努力をお願いいたしたいと思います。この件につきましては書類でそちらの方にお届けいたしますので、質疑は一応省略させていただきます。これをやっていると長くなりますので。とにかく、こうやりゃできると、大臣ひとつ、前の大臣もそういう点で前向きの答弁をしておりますし、それからこうやればできるという、私たち町村長の経験からして、それから多くの市町村長意見も聞いて実はこの前提言しておりますんで、先ほど申しましたように、社会党の方から提案されたことだから、腹の中ではいいと思っても、こんなことはやらないということのないようにひとつお願いいたしたいと思う次第でございます。それでこの問題については省略いたします。よく読んでいただきたいと思います。  それと同じときに、日本酒アル添の問題を、これは党の方針でもございます。アルコール添加をやめさせれば、消費がおおよそ百万トンくらいふえるんでないかと。これはまあ概略の数字でございますし、党の農林部会においてそういうことを検討しておるので、細かい数字は出てまいりません。そうしてそのことについて前回食糧庁長官は、とてもお金がたくさんかかるからそれは急速にはできないという答弁をしております。しかし、私の調査したところによりますと、日本酒アル添を禁止することにそんなにお金がかかるはずがないんです。それから、大臣は、これは北海道からの陳情者に、米の原料が三倍も要るようになれば、酒の値段もうんと高くなるからそれは無理だということをおっしゃっておったそうです。その御記憶ございますね。しかし、それはそんなばかなことないと思います。国税庁、一体、日本酒に一万リッターでも、一リッターでもよろしゅうございます。原料としてのお米はどの程度入っております。いまの三倍酒で結構ですから。
  26. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 先生の御質問の、現在お米にどのぐらいの、失礼いたしました、清酒にどのぐらいのお米が使われておるかという点でございますが、昭和五十一酒造年度、五十一年七月から五十二年六月でございますが、この間に製造いたしました清酒市販酒一・八リットル、一升でございますが、一本当たりの主な原料使用量は、原料の玄米で約六百七十グラムでございます。そのほかに醸造用添加アルコールとして百二十ミリリッター、それから糖類として三十三グラムということでございます。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは酒の原料米としては値段はどれぐらいになります。およそでいいです。――なければいいです。
  28. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 一升当たりに含まれるお酒の値段が幾らというところまでは、ちょっと資料を持ち合わせておりませんのでお許しいただきたいと思います。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 いずれにしても、日本酒の一リッター当たり値段の中における原料米が二倍になる、三倍になるといって、そんなに原価が違うはずがないんです。六百グラムぐらいですから、リッター当たり。ですから、これはもう原料が、酒にお米をたくさん使えば、原料がよけい要るのでそれだけべらぼうに酒の値段が高くなるのだということにはならないということを、ひとつ大臣認識していただきたいと思います。  そしてその上で、一体この日本酒アル添を始めた時期はいつかというと、これは昭和十八年なんです。当時戦争で非常にお米が足りなくなってきて、お米が足りないときにアル添を三倍までしてもいいと。三倍にするというふうなことを、その前から合成酒というのはございました。ございましたけれども、すべての日本酒アルコールを添加しなさいと、米をよけい使わないようにしなさいというふうになったのは戦争がたけなわになってからです。それがいま生きているんです。そして全部三倍酒というふうなことでやっております。  それからこの前食糧庁長官は、工場その他の設備も大変だとこう言っていますけれども、これはアルコールをしない方がそんなに設備要らないです。私ここに工程――アルコールを添加するときの工程と、現在すでにもうアルコールを添加しない清酒を売っているメーカーもありますので、アルコールを添加していないメーカー工程を持っておりますが、これはそんなに問題ないんです。ですから、大臣が決意して大蔵大臣とひとつ十分話をして、アルコール添加を禁止するあるいはもう少し縮めるというふうなことをするだけでも、何十万トンという米の消費がふえるんですよ。それをふえることわかっていながらやらないということになれば、米がふえるから仕方がないということはうそで、米が余るような政策をなおざりにしてある、いわゆる不作為の怠慢をやっておるから米が余ると言われても仕方がないと思いますが、この点についてのひとつ御意見を。
  30. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 現在お酒に使っておるお米は六十万トンでございます。これを全部アルコールを禁止して全部米でやるとすれば、四十万トンふえまして百万トンということになります。したがって、四十万トンの消費拡大になるという大きなメリットがございます。ただ、コストの面でいきますと、全部米を使いますと一キロリットル当たり原料コストは、約十八万八千円につくわけでございます。ところが、米にアルコールを入れましてやった場合には十二万六千円ということで、差額六万二千円がアルコール添加によって安くなっておると。逆に言うと、アルコール添加をやめて米にかえますと、一キロリットル当たり六万二千円高くなるということでございまして、これが全体でいきますと約千億円になるわけでございます。この千億円を消費者が負担してくれるかどうか。あるいは業界が持ち出すと言っても、現在の酒の業界に千億円を自分の企業努力によって生み出すことはとうてい不可能である。その辺の判断がまさに必要であって、これがアルコールを禁止することによって消費者にも負担をかけないという保証がありますならば即刻踏み切るところではありますが、やはり三分の一ぐらいは高くなると、十八万円のうち六万円が高くなるわけでございますから、三分の二でできる、十八万円が十二万円でできるものを、アルコールをやめて米にかえて十八万円の酒にして消費者に負担をかけることがいいことかどうかということがまさに政治判断でございまして、それでも消費者はがまんするからやれという国民的合意が得られるならばこれはあえて踏み切って構わないところでございますが、私の判断では、現在の酒の値段は十二万円でできておるわけですから、六万円プラスするということになれば約五割増しと、そして十八万円ということで了解が得られるかなあという心配をいたしておるところでございます。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 その原価計算の基礎になるのは工場製造原価でございますか。蔵出し原価か、それとも税も入れた原価計算か。
  32. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これは原料代だけでございますから、値段そのものが全体としてそれだけ高くなるとは――三分の二あるいは二分の一と申しましたが、原料代だけを拾ってみればそういうことになると、こういうことでございます。   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 その点につきましては、今度は従量税と従価税の問題とか、税制の面で配慮すれば相当程度カバーできる点があるし、それからまた、現実に酒の売り値との差から言うと、この六万円の差というのはそれほどのものでないんですよ。もっと別なことにいろいろ金がかかっているんです。お酒というのは。その点については間税部長にお伺いいたしますが、現在でも三倍酒をつくらないでやっているメーカーがたくさんございます。それらの値段、そんなに高いですか、酒の価格が。――お調べになったのございませんか、なければ私の方で。
  34. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) お答えいたします。  三増酒だけについて幾らという計算は私どもの方といたしましてはしておりませんのでよくわかりませんが、先ほどから御説明がございましたように、アルコール使用量を減少させまして米をたくさん使うということにつきましては、現在制度的な制約は全くございませんで、各製造者が自主的な判断で幾らでもお米をたくさん使うということができる状態になっております。また、最近の清酒の製造実績から見ましても、清酒業界は次第に三増酒を減少させましてお米を少しでも多く使おうという方向に向かってきておりまして、たとえば白米一トン当たりアルコール使用量、これはアルコール分一〇〇度で換算いたしますと、四十年には一トン当たりで二百八十八リットル使っておりましたものが五十一年には二百五十九リットルと約一割減少しているというようなことで、最近の清酒の製造実績から見てもそういう方向にだんだん向かってきているということは事実でございます。  ただ、先生のおっしゃるように急激にこれを進めるということになりますと、先ほど大臣から御説明がございましたように、非常に原価高になると。これは私ども、自主流通米のいろいろな助成措置それから政府米についての特別措置といったようなことを食糧庁からもいただいておりまして非常に感謝しておりますわけでございますが、それにしても、やはり米代というのはウイスキーとかあるいはビールに比べまして圧倒的に高うございます。製造原価の中に七割近くやはり米代というのが含まれておるというようなこと。そのほか、人件費もお米をたくさん使えばかかります。それから燃料費もかかります。といったようなことで、原料高が相当あるということもまた事実でございます。これは単にお米の値段だけの差ではございません。  その次に、やはり戦後長い間、先生もうすっかりおわかりのことだと思いますが、長い間、いわばそういうふうに消費者の嗜好がなれてきたというような傾向がございまして、これに対して、これに合致するような製品のものが、一挙に転換された場合に果たして得られるであろうかと。酒というのはやはり嗜好品でございます。急激な変更というのは嗜好上なかなかむずかしいという問題もございます。この点についても急激な変更というのはいかがかというふうに思うわけでございます。  それから、技術とか設備の面でどうなるかという問題がもう一つございます。これは九九・六%まで清酒業界というのは中小企業でございます。いずれも苦しい経営の中で一生懸命競争しておるわけでございますが、こういう面で、これを一挙に持っていくということになりますと、やはり純米清酒をいままで長い間つくってきたという経験が乏しいわけでございまして、こういう中小企業であります清酒製造業が非常にむずかしいと言われておりますこういう純米清酒をつくっていくというようなことになりますと、一抹の不安が残らぬでもないという問題もございます。  それから、先ほど先生、タンクがあれば済むといいますか、簡単にできるではないかというようなお話でございましたけれども、やはり米をいま以上たくさん使うということになりますと、やはりもろみ段階でも設備がいろいろ要るわけでございます。たとえば、精米機、蒸米機、放冷機といったようなもの……
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかっているんです。質問にだけ答えてください。
  36. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) はい。  そういうものもたくさんございますし、それから製造期間も延びるといったような問題もございます。そういうことで、くどくど申し上げるのもあれでございますが、なかなか一挙に変えるというのは、現在の業界というものを前提といたしますとなかなか困難であるということも申し上げたいと思います。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は大臣、そこでどうも酒の業界と政治との癒着があるんでないかという勘ぐりが出てくるんですよ。いいですか。こういういまのような答弁が。たとえば、いまの味になれてきたからと、こう言っていますわね。ならされてきたんです。これね。それから小さな企業が多いと。そうなんです。ところが、アル添をすることによって、清酒業界の大きな業者が、小さな業者の酒をどんどんたる買いをして同じような品質のものにつくりかえて出しているんです。御存じですね、間税部長は。そして、しかもそういうことが日本酒がまずくなったと言われる大きな原因になって、やむなく業界もなるたけアル添をしないような酒、そういう方向に向いてきていることもいまあなたがおっしゃったとおりですね。ですから、いまおっしゃったようなことではないんですよ。それからもろみの、そうです。もろみのタンクだのたくさん要ります。しかし、これは、この前も言ったんですから本当はもう言いたくないんですが、もろみタンクや何かうんと余って、何百万もするもろみタンクを五万か十万の古物でもって処分している清酒業者がたくさんいるんですよ。私のところもそれを買っているんですから、三百万もするようなもろみタンクを十万くらいで。いいですか。ですからそんなこと言ってもだめなの、それは。  それから、それでもう一つだけ提言します。たとえばヨーロッパがやっているように、アルコールを添加しておる酒ですということをもう少し大きく表示させてごらんなさい。それだけでもアルコールを添加していない酒の方に消費者は行きますよ。いまのようにこんな虫めがねで見なきゃならないような、あんな程度の表示でいいというふうな規制ではだめなんです。もっとだれにでもよくわかるように、これはアルコールを三倍にした酒ですということが大きくわかるようにぽんとレッテルに張ると、それだけでも米の消費うんとふえますよ。大臣、こんなことは簡単なことなんですから、ひとつ勇気を持って善処していただきたいと思います。後に肉の問題や林野の問題が残っていますので、このことについては――どうぞ答弁してください。簡単にお願いしますよ。
  38. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) いま先生から御質問のございましたように、まあアルコール添加あるいは三倍増醸というのがかなりあるということは事実でございまして、普通酒が大体七割と三増酒が三割ということでございますが……
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 そんなことを聞いているんじゃないの。答弁者は質問にだけ答えてくれないと、長くなっちゃうから、後にもっと大事なのがあるんだから。
  40. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) しかし、やはり三増酒とかアル添酒というのは、やはりそれなりのメリットがございます。やはり酒質が端麗になる、非常にさらっとなるとか、あるいは製造、貯蔵時のアルコールを高めることができるといったような面で腐敗も除くことができるといったような、そういうむしろメリットの問題もありまして、戦後こういうようなアル添といったものが必ずしも悪いことではないと、清酒づくりの上で弊害というより、むしろ醸造技術の進歩と相まちましていい役割りを果たしてきていると、清酒消費量の増大にもつながってきているといういい面もひとつ御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも時間をとるのでやめようと思うんだけれども、そう言われるとまたやらなきゃならなくなるので困っちゃうんですがね。いい役割りも果たしてきていると、日本酒の中でそんなにいい役割りを果たしてきているなら、私がいま提言したように、これはアルコールを三倍にしているおいしい酒ですよという表示をでっかくすること何でもないでしょう。なぜ虫めがねで見なきゃならないような表示しかみんなしないんです。あんなもの見る人いませんよ、消費者の方は。そんなにおいしいとあなた自信あるなら、私の提言したように、ぽんと、これはアルコールを何倍入れていますというやつを大きく消費者にわかるように表示させるように、これは法律改正でなくてできるでしょう、省令でね。簡単ですわね。もっと大きくせいというやつ、その程度のことはできますでしょう。できるかできないか、それだけでいいですから。
  42. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 酒団法上表示の問題につきまして、その級別、それから酒の種類ということを表示させられることになっております。そのほかに醸造用アルコール、それから米こうじといったような原料もまた表示することになっていますが、これは業者の自主的な判断に任されておりまして、大きくとか小さくといったところまで行政指導はなかなか及ばないというようなところがあろうかと思います。  いずれにいたしましても、自主規制として自主的な、中央会の方として自主的ないわば基準といたしまして原料を表示するということが行われているわけでございますが、これもまあ関係省庁の御指導も得まして規則どおりやっておるというのが現状でございます。
  43. 丸谷金保

    丸谷金保君 まあその問題はひとつまた改めてやることにいたします。自主的にといっても、いろいろな行政指導も行われた上でやられていることですから。  それからもう一つだけ、ちょっと酒税法上私これ疑義があるんで、この機会にお聞きしておきたいと思うんですが、いまライスワインという、お米でつくったワインというのが市販され始めております。ワインというのは酒税法上果実酒ということになっておるんですが、お米でつくった酒にワインという名前をつけてレッテルを張って売ることが酒税法上許されておるかどうか、ちょっと疑義がありますので、この点をひとつ教えていただきたいと思います。
  44. 矢島錦一郎

    政府委員矢島錦一郎君) 現在その果実酒類を製造する場合におきましては、酒税法第三条の規定によりまして、果実または糖類を加えて製造した果実酒類のアルコール分の総量ができ上がった果実酒類のアルコール分の総量の一〇%以上、つまり原酒を一〇%以上入れるということが甘味果実酒について必要なことというふうにされております。  まあ、いま御質問のございましたのは、恐らく米を原料として製造いたしましたワインというふうなお話でございますが、米を原料といたしましてワイン酵母を使いまして製造した酒類のことについて、一部の製造者がライスワインというような言葉を使っているといったことについての御質問であろうかというふうに思うわけでございますが、この酒類につきましては、酒税法上はその果実酒類ではございません。清酒の範疇に属するものでございまして、したがいまして、果実の混和がされていない。また当然のことであるということでございます。  それから、その表示でございますが、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律というのがございまして、これに基づく表示義務の中で、まあいろいろございますが、酒類の種類、それから品目、級別、アルコール分、エキス分といったものが表示義務として決められておるわけでございますが、これに基づいた表示をしておりまして、実際に清酒という表示になっておるわけでございます。これ以外に、一部の業者の中には、いまの酒類業組合法上の清酒という表示に加えまして、ライスワインという名称を付しているものがあるというふうに聞いておるわけでございますが、これは私どもの所管しております酒類業組合法上の表示事項ではございませんで、当事者が任意の表示事項でございますので、これについて私どもとしては法的な見解を申し上げる立場にはございません。  以上でございます。
  45. 丸谷金保

    丸谷金保君 大変いい酒なんで、そうすると、このライスワインでも米の消費がふえるんで実はお聞きしたんですが、いろいろ大臣、米をふやすための工夫をすればまだまだあるんです。それをやってないで米が余る余る言わないで、ひとつ消費の方についてもう少し農林省サイドで酒の研究をして努力をお願いいたしたいと思います。  次に、昨年暮れに突如として営林局の廃止四局案というのが発表になりました。このことについて私どもはどうも北海道だけ営林局を四つ統廃合する、非常にこう理解に苦しむ次第でございます。まあ御承知のように三百二十三万ヘクタールというふうな、全国の国有林の中でも四〇%近い面積を占める北海道が五つのうち四つを統合して支局にする、そしてほかは手をつけないと、一体これはどういうわけなんだろうかと。聞くところによりますと、いやそうしてもいままでとは余り変わらないんだと、調整機能だけを札幌に一緒にするんだから、ほかのことについては変わらないというふうなお話も承っておりますが、変わらないんならいまのままにしておけばいいんで、どうして北海道だけ特にしなきゃならないのか、この点についてひとつ簡単に御説明願いたいと思います。
  46. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 国有林経営が最近とみに苦しくなっていることは御承知のとおりだと存じます。中でも赤字の大宗は、残念ながら北海道が持っておるということでございます。したがって、何としてもこの赤字の解消を図って健全な財政に国有林を持っていかなきゃならぬ。国有林の赤字を再建を図って健全なものにしなきゃならぬということも、これはもう至上要請でございます。そこで国は財投から、ことしで言うならば八百三十億という莫大な財投資金で処理をしなければなりませんし、それから林道、造林といったようなものに対しても一般会計から繰り入れをしなければならぬ、こういう国の援助も必要でありますが、国有林当局においても合理化というものも一方しなければならないことも当然でございます。  そこで、国有林の合理化の計画をいま審議会にもかけ鋭意検討中ではございますが、中でも北海道について、先ほど申し上げましたように赤字の大宗をなしており、ほかの行政と比較をして、なぜ北海道に五つも営林局があるのかという方がむしろ不思議なぐらいでございます。ほかの行政、たとえば道行政、開発行政、その他とも円滑な連絡を図るためには、北海道に総局的な、札幌営林局というのではなくして、北海道営林局として全体を総括することの方がむしろ行政上も必要ではないかということでございます。したがって、北海道にあります五つのうち一つを総局としてこれを合理化し、残りの四つは、これを廃止するのではなくして支局としての従来の機能を発揮せしめる、そして事業その他については従来どおりのことはできますが、管理部門とか統括的な仕事については、札幌営林局を北海道営林局としてそこに集中させることの方がむしろ国有林経営の上においても非常にプラスではなかろうかと、こう考えまして、ほかの行政機構とのバランス、国有林野、特に北海道の経営改善のために少しでも役立つならばと、こう考えまして踏み切った次第でございます。このことについては、非常に機構の改革でございますから議論の多いところではございますけれども、ぜひともひとつこの点は御理解をいただいて、むしろ国有林野経営改善のために御協力を願いたいと、こういう気持ちでございます。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 財政の問題と行政機構上便利だと、こういうお話でございます。これは一つ一つ御質問申し上げたいと思いますけれども、その前に、北海道へ行くとどこでも聞かれるんですが、一昨年十二月の選挙のときに、各地の立会演説会その他で中川一郎候補が、林野の木食い虫、これは今度おれが出ていったら全部退治してやるんだということをおっしゃったと。木食い虫というのはどういう虫なんでしょうか、ひとつ御説明願いたいと思います。
  48. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 院外における発言はいろいろありますから、これはお互い政治家、あらを拾えばいろいろありますから、言ったか言わぬかは別といたしまして、労働組合が自分の経営を大事にしないと、そして全国七百万町歩からある国有林経営について、民有林とは話にならないぐらい労働条件その他の闘争、しかも営林署に落書きをしたりですね、社会人に与える影響は非常に悪いと、これだけは私は政治家として断固として言えると思っております。これが日本の大事な資源を食い――食いと言ったらおかしいですが、おかしくし、財政をおかしくし、しかも大事な林業界に役立たなければならない国有林がむしろ迷惑をかけているとするならば、これは批判されるべきであると、こう思いまして、私はいまもなおいまの国有林野労働組合のあのやり方に対しては政治家としてどうしても反省をしてもらいたいと、こう思っておるところでございます。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 言ったか言わないかというふうなお話ですが、言いましたね。私も聞いたんです。
  50. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 言ったか言わないかはそちらの御判断に任せまして、外部で一々発言したことを国会で取り上げることになれば、これはお互い大変でございますから、言ったか言わないかはそちらで御判断を願いたいと存じます。
  51. 丸谷金保

    丸谷金保君 候補あるいは一国会議員といまあなたは違うんです。農林大臣なんです。農林大臣が――あなたの部下ですよ、部下に対していまでもやはり木食い虫と思っているんですか。
  52. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 悪い点があれば部下であるだけに反省をしてもらいたい気持ちは外におったよりむしろ強い。表現は別として、よくないやり方については、むしろ部下である以前より、むしろ自分の仲間であるというだけに厳しくこれは反省してもらいたいという気持ちは持っております。
  53. 丸谷金保

    丸谷金保君 部下というよりは、どちらかと言えばその所管に属する職員ということでございましょうが、それらのやっぱり職員は木食い虫というようなことを公開の席で堂々と各地で言って歩いた。しかも、大臣になったらまず一番最初にやったことが牛肉の問題であり、次が北海道における林野の統廃合だということになると、これはもう明らかにこう、何といいますか、その間における関連を考えざるを得ないんです。  それで、私は一体いまの林野の財政の状態、あるいはまたこれからの経営ということについて、本当に木食い虫は一体どこなんだと、だれなんだということをひとつ御質問申し上げたいと思います。そちらの方に写真を……。そのイは、これは昭和三十六年に天皇陛下が北海道へおいでになったときになさった記念の植林地なんです。写真ごらんになっても実によく手入れできておりますね。それからロはその隣にある国有林なんです。同じ土地に植えた、ちゃんと手入れをしてりっぱにしていけば記念の植林地のようになるやつを、手入れを散漫にして経営林として成り立たないような植林地をどんどんどんどんふやしておきながら、その責任は一体労働者にあるんですか、そういう管理は。管理者にはないんですか、それ。ひとつ御答弁願います。
  54. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これは労使ともに責任があるところだと存じます。
  55. 丸谷金保

    丸谷金保君 国会というところはそれでいいのかもしれませんが、管理責任というのは管理者の方にあるんじゃないんですか。田舎の町会でもそんな答弁をしたら問題になりますよ。労使ともにということはないはずです。管理しているんですから。  それでついでにもう一つ、大きな写真、長いやつがございます。これは定山渓の奥なんです。全部切っちゃったんですよ。そして業者に売ったんです。皆伐してしまったので――それ植林地なんです。それは植林したけれども木が育たないんです。これ労働者の責任ですか。このとき全部切るのはいかぬといって労働組合は反対したんです。それを無理やり切っちゃったんです。そして、後植林したけれども、木が植わらないようになっちゃったんです。山が。労働者の責任ですか、そんなことしたら大変だと言った労働者の。それでもやったのはだれなんです。
  56. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 個々のケースについて言えばいろいろあろうと思いますから、このケースがどういうことでこうなったか、これは調べてみませんとわかりませんが、私が申し上げておるのは、国民の財産を預かってこのように国民から批判をいただくようになった国有林の実態、総括的な話でございますが、これはまさに国有林、国民に奉仕すべき林野庁全体の責任であると。したがって、管理に当たる人も責任があれば、この管理下に従って働いていただかなければならない職員の皆さんも、これは堂々と国民の前に向かって――私も地元へ参りますが、同じ有権者であります心ある国民の皆さんは、あのような労働組合の実態では国有林野は守れないと、この際民有林に変えるべきだということも国民の声であると。この辺のところはお互い反省していかなければならないことであって、すべてが管理者が悪くてすべてが労働者が悪いという性質のものではなく、ともに反省して改善をして、国民の財産、国民の期待にこたえられる国有林にならなければならないと、こういうことを言っておるわけでございます。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこの事情をおわかりにならないそうですか、これは三十五年に植林した定山渓営林署の百六十一林班で、これは有名なので林野庁の方は御存じでしょう、どうしてこうなったか。ちょっとこれ大臣は知らぬそうですから、かわってひとつ。
  58. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) ただいまございました不良造林地でございますけれども、これは先生御存じのとおり、昭和二十八年に北海道に大きな洞爺丸台風が参りまして、あちらこちら倒れました。その結果、北海道では皆伐ということが非常に進みまして、いまの地点につきましては、確かに先生がおっしゃったように皆伐で伐採した地点でございます。
  59. 丸谷金保

    丸谷金保君 洞爺丸に関係ない、ここは。
  60. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) 亜高山地帯について皆伐で伐採した造林地につきましては、北海道で確かにその後不良造林地が出たという事実をわれわれもつかんでおります。したがいまして、今後はこういう亜高山地帯におきましては、大面積の伐採はしない、択伐でやっていこうということで現在方針を変えております。  そういう意味から、私どもは確かに過去におきまして皆伐をしたことの非というものは十分反省しながら、現在さらにいい山になるような努力をしておる次第でございます。
  61. 丸谷金保

    丸谷金保君 ここは洞爺丸に関係ないところですよ。そうですね。  大臣、いま長官のお話がございましたけれども、北海道の山林経営はいろんな点で失敗したということをいまおっしゃっております。成功しているところは余りないんです。植林地。これはもうたくさんの例がありますが、その一番大きな原因は撫育をちゃんとやらなかったこと。撫育、後の下草刈りだとか、そういうふうな枝払いだとか、いろんなことをよくやらなかったこと。これらが非常に大きな原因になっているんです。  そして、なおかつ林野庁は、農林省の林野行政でいいますと、都道府県や市町村については、下草を刈りなさい、間伐をしなさいと行政指導しているんです。自分の山の方は非常によくないんです。  そこに参考までに池田町の造林地。どうです。きれいでしょう、きちんと。市町村にはこういう指導をしているんですよ、こういうふうにやりなさいと言って。自分のところだけさっきの写真のようにやってないんです。一体、長官どうなんです。これ。
  62. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) 先生指摘のように、国有林につきましては昭和四十七年に非常に財政が苦しい時代がございました。この時点に、下刈りあるいはつる切り、除伐がおくれた個所がございます。それにつきまして五十年までに解消するように努力いたしました。その後やはり五十年、五十一年、財政の苦しい時期に、いま申し上げましたような、われわれ保育と申しておりますけれども、下刈りとかつる切り、除伐がおくれた個所がございまして、それを五十二年、昨年の四月に全部把握いたしまして、できるだけ早くこれを解消し、いい林分ができるような努力をしようということで現在鋭意努力中でございます。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 四十七年から五十年にかけて財政が苦しくなったからやらないんじゃないでしょう。その前からも非常に国有林のそういう撫育その他というのは問題があったというふうに思っております。こっちにまだ写真がありますけれども、時間もあれですから。  全体として山林経営、それはなぜだと、私はいま長官が言われた財政の問題があると思うんです。もともと山林経営の財政を特別会計で一年一年のプラスだマイナスだというところに私は国家百年の計を誤る山荒らしの原因があるんじゃないかと。  それと、洞爺丸台風を幸いにして大きく皆伐を打ち出して、洞爺丸台風の被害のところだけでなくどんどん木を切って、当時北海道の木材業者はうけに入っていました。これはもう大臣も御存じですわね、ずいぶん景気のいい時代があったのを。そういうことをどんどんやって山を荒らしてしまった。木を食った元凶、木食い虫というのは、大臣、林野の行政なんですよ。それからそれに群がって皆伐をどんどん進めて当時非常に景気のよかった木材業界、木食い虫というのはまさに林野庁の行政と業界との癒着の中で生まれてきているのであって、労働組合じゃないんです。そういう点についてひとつ大臣認識を改めていただきたい。あるいはよくそこら辺のことは御存じかとも思いますけれども、もう一遍答弁願います。
  64. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに洞爺丸台風で非常な倒木があったと、そして風倒木になって腐らしてはいけないというので、業界の数をふやし、そしてあの緊急な事態に対処をしたと。その結果非常に多くの木材業者がありまして、それが乱伐になりかねない動きであったことも事実でございます。そういったことで経営そのものにも反省しなければならない点がないとはもちろん言えません。したがって、その後業界の整理であるとか、払い下げの方法の合理化とか、いろいろとそれはそれなりの改善を加えておるところでございます。  しかし、北海道における国有林の労使関係が非常に悪くて、営林署長等にはもうなるのがいやだと、あの労働攻勢にはもう働きたくないと言われるくらい、いま国鉄における管理職者がいやだと言われるような過激な行動、労使関係にあったことも事実であって、経営が悪いから労働者だけがよかったということには賛成しかねるところであって、全体として反省すべきであるということだけは私は信念として変わらないところでございます。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 共同責任だとおっしゃるわけですね。共同責任のしわ寄せをそれでは労働者側にだけ寄せるというふうなことはございませんですね。しかし、いままで私はそういう点について、労働組合の側では山を守るという立場での労働組合における闘争が行われていたと、しかし、それに対するいろいろな処分その他を行われても、現実に木を食い山を荒らしてきた管理職の方で不明をわびるような言葉を聞いたことがないんです。いまの写真、さらにまたいまの長官答弁、明らかに北海道の山林を荒らしてしまった木食い虫の元凶というふうなものが那辺にあったかということについて、過去申しわけなかったというお気持ちを大臣持ちませんか。  それから私新しい提言があるんですが、けしからぬというだけでなく。
  66. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) でありますから、両方責任があると。したがって、管理職を代表する私であるとするならば、私が現在の責任者でありますから、過去については申しわけない点もあったと深く反省をいたすところでございます。しかし、これはお互いに相手ばかり言うのではなくして、労働組合側もやっぱり職場を大事にする。この間も労働組合の幹部の方に申し上げたんです。第一線には権限がないんですから、私に権限がありますから、悪い点があったら毎日でも私のところに来てくださいということで、ひとつ山を大事にしていこうじゃないですかと提案申し上げたところであります。  なお五つの営林局を一つに統合するに当たりましても、労働条件を悪くするなどとはひとつも考えておらないんであって、管理職の数を減らしていく。まさにその辺も反省の一助であろうと。五つの営林局のうちの部長さんが三つが一つ減るということであって、これはまさに管理職をなるべく自粛して減らしていこうということであって、労働組合側からこれが反対だ、署名運動が出るということもどういうところにあるのか私にはわからないと。このことによって労働組合に労働条件を悪化するというようなところでもあるならばそれを指摘していただきたいと思うのでありますが、管理職においても責任があるということが今度の合理化の一つのことでもあると、こういうふうに御理解いただきたいと存じます。
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣から申しわけなかったというお言葉がございましたので、まだたくさんありますけれど、省略して提言の方へひとつ移らしていただきます。こういうふうにやっていけばよくなるんじゃないかと。  その前に、ひとつ財政問題で、実は昭和三十八年から四十年にかけてドイツから枝打ちの機械を九十台入れておりますね。その点については会計検査院の方にお願いしたいんですが、それがどのように使われたかということの調査したのを、大変古くて申しわけありませんけれども、ありましたらひとつ御説明願いたいと思います。
  68. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 古いことでございますので、まことに恐縮でございますが、ちょっと現在の時点では把握しておりません。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 ああそうですか。私の聞いたところによりますと、余り使われなかったというふうに承知しているのですが、長官いかがですか。
  70. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) 林野庁におきましては、できるだけ労働の軽減その他の意味から機械化の努力をいたしておりますが、いま先生が御指摘になりました自動刈り払い機につきましては、保育のための枝打ち及び伐倒前の枝払いということの目的のために、昭和四十一年から四十四年にかけましてドイツから六十数台、これもはっきりした数字はわかっておりませんので恐縮でございますが、六十数台を購入し、各営林局で実用化の実験をいたしました。その結果、重量が非常に四十キロぐらいございまして重いということ、それからやにに弱いということ、それから枝ぶりが悪いと非常に効率が悪いということ、こういう面から実用化するには至らなかったことは事実でございます。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 ジュッセルドルフの方へ聞きましたら、日本に当時九十台売ったというから林野庁へ全部入ったのかと私思ったんですが、六十何台。それにしても、六十何台ほとんど使わないで、こういう財政放漫なことをやっているわけですわね。それでそれはもう何となくやみからやみへ……。  そこで大臣、こういう管理職の中で放漫な物の買い方を林野庁たくさんやっているんです。まだあります。これは、これから問題になるかと思いますけれど、あるんです。たとえば同じ枝打ちの機械、池田町も入れてきたんです。林野庁が入れたという話を聞いたので、私も。私はリューデスハイムの国有林へ行って、やっているところを実際に実験してもらいました。そして、これはすくっと、ドイツアカマツのようにすらっとした木だったらいいと、落葉やトドやエゾには使えるなと、こう思いました。それにしても一遍に入れてきては大変なので、一台だけ買って帰って三年使いました。それがそこにあります写真のようなことに実験として使ったんです。使ってみた結果、カラマツは昭和十七、八年生、そのくらいのときが一番効率がいいということがわかりました。そうするとその後に間伐をしなきゃならないんですから、間伐をするやつだけは枝打ちはやめていこうと、こういうことで、そういうふうな作業工程に入ってさらにまた数台注文すると。まだ着いておりませんけれども、そういう今度は実用することに……。ですから物を買うときにでも、われわれいわゆる民有林というか、公有林にしても国とは違います。非常に慎重に計画を立て実際に調べてみて買います。それをばたばたばたと六十何台も一遍に入れてきて、実験してみたらさっぱり使えなかったと。これは労働者責任ありますか、これ。こういう放漫なことをやりながら財政の赤字を出している原因たくさんあるんですよ。そこをほおかぶりして労働組合が悪いから赤字が出たんだと、とんでもない話だと思うのです。  それからもう一つ、たとえば枝打ちをする、これは金かかるのです。木を切るまでには何十年もかかります。私も二十年間植える方だけで、ついにお金にしないで植える方だけやって町長やめました。しかし、将来を考えてそういう財政投資をしたんです。山というのはそういうものなんです。いま北海道で赤字だから、それはもう管理体制、いまでさえ管理できていないのにもっとつぼめて、ますます管理体制悪くなります。そういうふうなことをして、本当に山を育て、国土を育てていくというふうなことができるんですか。ひとつその点についてもう一度お願いいたします。
  72. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 経営林を国営でやるところにそもそも問題があるという議論が出るのはまさにそのとおりなんです。これは経営者も、あるいは働く皆さんも、いわゆる親方日の丸的なことがあって採算というものを度外視する傾向がある。そこで前々の大臣でございましたか、大臣が、これは市町村とか道有林とか、いわゆる公有林に、これは丸谷町長さんが森林について、特に結婚のときに銀婚式か何かを目標にして五町歩ずつ山を植えられたと、そして長期的に楽しみなものにする、山について非常に関心があることは前から承知しておりますし、そういったような町村長さんとか、道とかいうようなところに分割経営をさした方が根本的にはいいという議論があるのもまさにそのためでございます。  しかし、いまこの段階で国有林の経営部門をそういった方面に移管するということはまたいかがかと思いますので、いまの経営体の中で何とか合理化をしてしっかりしたものにしていきたい。この場合、全部私は労働組合が悪いとは言っておらないのであって、経営自体も反省すべき点は大いに反省をして、そして、先ほど私が申しわけないというのは、そういった労務管理から一切を含めて今日の国有林になったことに対して申しわけないという気持ちでございまして、枝打ちの機械の購入方法とか、いろいろまだまだたくさんあると思います。われわれ経営の方もその点は十分反省して、またどんどんと御指摘をいただいて、そして経営もよくなるし労使関係もよくなって、ともに国民の財産であるこの国有林というものをしっかりしたものにすると、こういうふうにしていきたいと思いますので、悪かった点は本当に反省をして改めていきたいと存ずる次第でございます。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 労使反省というふうにおっしゃいますけれど、私は山で働いている労働者というのは、本来非常に性格のいい純情な人が多いと思うんです。私も毎年百町歩ずつ植林しています。これはお金にならないから苦しいです。したがって十分なこともできないけれど、これがやっぱり自分たちの子々孫々に残っていくんだということに対する働きがいを持つと、これは労働者というのは一生懸命やるもんです。しかし、いまの林野庁を見ておりますと、一事が万事労働者を逆なでするような、上の方にいろんな問題がある。これはもう一々指摘もいたしませんけれど、これは長官もおわかりだろうと思いますし、大臣もよく北海道の事情はわかっているので、くさいほどおわかりだろうと思います。そういうことをやっておきながら労働者にああやれこうやれと言っても、やっぱり労働者は聞かないんです。何言ってるんだと。もっとそういう点で管理職にあるものがえりを正した林野行政を行って、それをまずやって、それから労働者の問題であって、それが同列で労使双方の反省というふうなことではないんですよ。そういう考えだからうまくいかないんです。まず反省するのは使用者側の方ですよ。  それから、そういうことだけでなくて一つ提言したいのですが、一体それで山の管理ができない、そしてそのためにますます木の質が悪くなるし、将来的な赤字展望がふえていくと、会計検査院のこれに対する報告も読みました。で、一番、私、問題は何かというと、いまの林野の会計の制度の問題があるんじゃないかと思う。たとえば木を切ってそれでその年の経費を賄っていく、こういう制度ですね、いまは。われわれのところでもこのことについてはずいぶん考えました。そして公営企業法の一部適用を行いまして、いわゆる複式簿記の制度を採用した。そうしますと、たとえば植林、撫育その他財産的価値のある投資については、これは赤字じゃないんです。何十年か後に必ず返ってくるんですから。会計検査院は、それらを将来的に見てもそんなにかけたらやっぱり赤字になるだろうというふうな報告もしております。林野庁もそういうふうな見解を発表しております。しかし、ここには貨幣価値が明治以来ずっと上がってきている。ですから、少なくともドイツがやっているように、百年なり二百年なりの施業計画をかけてこの間の貨幣価値の変化というふうなものをもっていけば、財産的価値に見てその年の赤字にしないというふうな会計の制度をやっても、決して将来借金で国がつぶれるということには私はならぬと思います。木を植えておいて。ここら辺の会計法上の問題点を解決しないで、現況で赤字だからこうするああするということに私は問題があると思うんです。こういう点についての御検討を林野庁やっておりますか。
  74. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) 国有林の場合は、北海道にはまだ伐期に達しました造林地が非常に少のうございますから、確かにいま先生のおっしゃったような問題がございます。ただ、日本全体の国有林ということになりますと、九州あるいは四国等には相当造林地がございますし、特に大正の初め、明治の終わりに、われわれの先輩が非常にいい造林地をたくさんつくっていただきまして、そういうものと総合いたしますと、国有林としては当然伐採されました木材の代金である程度の経営はやれるべきであろうという判断も成り立つかと思います。  ただ、私どもも、現在国有林が実行いたしております仕事の中で、保安林あるいは地元にいろいろな協力できる林道等々がございます。そういう意味から、いままでは一般会計から金をいただいておりませんでしたけれども、五十三年度には、今回国会で御審議いただく予算には、何とか一般会計から御負担いただこうということで、そういう予算を組ましていただきまして御審議いただくことにいたしております。さらには財政投融資の方からもお金を拝借いたしましてここ数年やっておりますけれども、そういう形で今後努力してまいりますれば、相当時間はかかると思いますけれども、私どもは必ずやいま先生がおっしゃいましたような形で林業経営ができる国有林ができ上がるということで、現在その検討を進め、なおかつその努力に向かって鋭意検討を進めておる次第でございます。
  75. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは大臣社会党の国会議員が言ったからやらないということでなく、よく聞いておいてください。この会計学上の問題が一つあるんです。これがどうもいまの林野行政の中で見落としされているという状態です。ですから先ほど大臣が言ったように、北海道は赤字が多いということになるんです。植えるばっかりでしょう。まだ切っていないんです。植林。あたりまえでしょう。そんなことが局を統合する理由になりますか。ならないでしょう、植えるばっかりなんですから。これをしかも財産的価値としてちゃんと林野庁の指導でもって成長量とかいろいろなのがこう出ているんです。こういうので計算して、時価でもって採算の、いわゆるたな卸しをするように、採算のし直しをするなり、長期の貸借対照表をつくれば、北海道のようにどんどん植林だけしかしていかなきゃならないような状態のところでも赤字じゃなくなりますね、そういう会計にすれば。ざっと計算してもなりますでしょう。かけたやつを、一方では支出だけれども一方では財産的価値として収入に見ていけるんです。公営企業法のような形をすれば。しかも、ちゃんとおたくが出しているような年間の増量、これはありますわね、歩掛かりがちゃんと。出しているんです。林野庁が指導して、北海道には北海道の林政改良普及協会で出している、こういうふうにふえていきますよという基準があるんです。  ところが、いまのままですと、国有林の植林地だけはこういうふうにふえていきませんよね。林野庁が指導しているように撫育していないんですから、赤字になるからといって金かけないで。そうですわね。それをちゃんとやることになったら、局の廃止どころか、農林大臣は、北海道はこれだけたくさんの山があるんだから、全国の四〇%の山があるのに、十幾つの――十四ですか、営林局のうち、割合から言えば北海道はもっともっと営林局をふやさなかったら本当にいい山はできないんだと言ってもらわなきゃならないんですよ。そういう仕事があるにもかかわらず、やらないでおいて、赤字だ赤字だと。赤字じゃないんです。それはつくられた赤字であって。私たちも毎年百町歩ずつ植林してきました、二十年。そういうちゃんと指導によるところの計算方法をやれば赤字にならないんです。それは財政投資もしますけれど、林野庁がいまやっているようなべらぼうな、木代金全部つぎ込んでなお赤字だというふうな会計にはならないんです。こういう会計制度の見直しをひとつやっていただきたい。借金があっても財産があれば赤字じゃないんですよね。しかも、将来売れる。道路だとか橋だとかと違うんですから、木の場合は。そうして五十年、百年の大計を立てませんと、林野行政は本当に将来に禍根を残すことになる。  ましてや、そういう点でもっともっと植林もしなきゃならぬ。植林した方がいいに決まっているんですから。この論議をすると遅くなりますので割愛いたしますけれど、そういう面を十分踏まえて、ひとつ林野行政の現在抱えている矛盾が、労働組合の問題なんかよりももっともっと重大な問題を避けて通っているということについて、大臣ひとつ認識を新たにしていただきたい。私たちもそういう点について本当に北海道の山、日本の山をよくしていく、そのことはたとえばこの計算には出てきません。林野行政の計算には出てきませんけれど、木一本で幾らの保水力があるというふうなことも出ております。水源涵養林の問題から始まって、山をきちんと育てていくということが漁業にまでつながってきます。山を荒らしておいて、川がきれいなはずはありませんし、沿岸が汚れます。そういう一連の国政の中で後世誤りのないようなひとつ林野行政に目を開いていただきたいと思います。  これでこの問題についての質問は終わります。あとは牛肉の問題に入ります。
  76. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まさにそのとおりでございまして、単年が赤字だから国有林、森林経営が悪いんだというなまやさしい単純なものではないということは御指摘のとおりだと思います。だからこそ、まさに財政投融資、財投資金を投入して、約四千億円のうち千億に近いものが足りないと、まさに四分の一程度のものを財投資金で手当てをされるというのは、将来に向かっては必ず効果があるものであるというところからこういうものを手当てすることになったわけでございます。大蔵省とても、国民からお預かりした金を先々見通しなしに貸し得ないというのもそのためだろうと思います。  ただその場合、いまのような経営を続けていって、ただ木材というものは将来あるんだからという単純なことで解決できるかということ、やはり木材のそういった森林企業というものの特殊な性格と同時に、並行してやはり経営そのものも体質改善をしていかなければならないと。したがって、管理に当たります経営のやり方、これは営林局の数の問題も入ってきましょう、あるいは営林署の問題も入ってきましょう。こういうふうに、使用者側といいますか、経営者側だけではなくして、やはり労働者側も厳しい事態を踏まえて反省すべきことはなかったかなあということでなければ、この国有林経営というものはうまくいかないという考え方から、国も協力をする、理解をすると。同時に、経営についても反省をすると。そしてまた、働く皆さんにもひとつこういった事態に対処して前向きでいい方向に改めてもらうと。こういう三つが協力して成り立つものであって、どれ一つ欠けてもでき得ないものだと、こう思っておりますので、すべて私は労働者が悪いとは言いませんが、いまの労働者のやり方が、皆さんから見りゃどうかわかりませんけれども、心ある多くの農村の人や、町に働く人から見るならば、あのような経営ならばどんなに金を突っ込んだってどぶに金を突っ込むようなものだよと言う者も国民の中にあるということも労働者の皆さんも知っていただきたいと、こう思うわけでございます。全部がここで反省をして、前向きに国の大事な国有林を守っていくと、これはもう御指摘のとおり、ただ国有林経営がよくなればいいということだけではなくて、大事な治山治水、そして環境、これはもう国の宝でございますので、ぜひとも私たちも反省すべきは反省いたしますので、全部が協力をして守っていくと、こういうことに御協力いただきたいと存じます。
  77. 丸谷金保

    丸谷金保君 あと牛肉に一時間と思っておりましたので、ちょっとこの問題、途中で非常に残念ですが、どうも大臣の話を聞いておりますと、どっちかで聞いたような言葉だなと思っていまふっと気がつきました。終戦の直後に、一億総ざんげとありましたね、戦争責任をぼかす。あのときに同じようなことを言われたんですよ。それじゃ困ります。やっぱり責任の一番あるのは一体どこだということを、そして、このことについては、さらに将来のことでございますので、一応質問はこれで打ち切らしていただきまして、会計学の問題、その他植林、もっともっと苗圃なんかもふやさなければだめだと。苗圃なんかでも、これ数字も持っておりますけれども、できるだけ山の近くの苗圃でつくった苗がずっと活着率がいいとか、それを苗圃も減らそうとしている、けしからぬ話だと、そういう問題はいずれまた別な機会に申し上げたいと思います。そして、牛肉の問題にひとつ入らせていただきたいと思います。  昨年以来、牛肉問題が非常に生産者、消費者含めて重要な問題になってまいりました。それで、このことについては中川大臣からいろいろな面について所信の表明が行われております。私はこれ、中川言行録というのでひとつまとめてみたんです。で、大臣のお話を聞きながら、まずもって御理解をいただきたいと思う。  私はいままで町営で二百頭の肥育牛を飼っております。それから既存の牧場五百町歩のほかに、さらに大規模で、これは大臣に御協力いただいて、大きな牧場をつくりつつあります。そうして、町営で屠場を持っております。肥育をするためには牛の買い付けもやっております。遠くは九州からまでも、私は飛んでいって市場で牛を買ってまいります。そして、屠場にかけて、今度は町営の冷凍庫を持っております。それから御承知のように、牛肉専門のレストランを町営でやっておりますし、さらにまた、町出資の東京においてもレストランをやっております。それからまたパッカーとして、要するに肉の業者という形で町が直接小売屋に卸して安い肉を町内でも売っております。ですから、本当に牛肉のことは、生まれたときから消費の末端までの全部を手がけております。なぜいまこういうことを申し上げたかというと、ですから、余りくどくどした説明をいただかないでも大抵わかりますので、これからの問題については質問に要領よく答えるというふうなことにしていただきたいと、こう思うわけでございます。  大臣は就任の直後に、消費者の牛肉を安くすると、輸入枠をふやすということを申しております。そして、このことは各新聞その他に取り上げられて非常に大きくマスコミに載りました。ところが、その直後にいろいろな問題が出てまいりまして、週刊誌の報道によりますと、きばを抜かれた中川一郎と、週刊新潮の十二月二十二日号、大変おもしろく読ませていただきました。そしてさらにまた、この種の問題については、正月にN日Kで中央会の山口さんその他の討論をしております。その中で、私はこれは大変いいことを言ってくださったと思います。農民は国の宝だと、こういう表現をしていらっしゃいます。まことにりっぱな、言葉としてはりっぱだというふうに実は思います。それからまた、同じ中で、事業団の利益というのは全部生産者に何らかの対策費の形で戻っているんだと、こういうことを申しておりました。流通改善その他の関係にも出ているけれど、これは生産者に戻っているんだと、こう言っております。  しかし、これは何ぼ戻したって結果が悪けりゃだめなんです。結果が。結果は、正月に農村を歩いてみました。肉牛を飼っている農村はいま非常に困っております。北海道だけかと思ったら、九州でも困っているんです。小さな利別農協というところで二十人ほど牛を飼っていて、ここのところで三億ほど、この二十軒で借金がふえたという話も聞いてまいりました。肉牛飼っていてもうからないんです。にもかかわらず、農民の生産者保護のためにいまの事業団があって調整機能を果たしているんだと、こういうふうに世間はみんな思っております。しかし、実際そうなんでしょうか。牛を飼っている農民が、特に肉牛を飼っている農民が、全国的に、事業団があるのでああよかったというふうな形にはどこを見てもなっていないんじゃないか、こういうふうに私たちは実態を歩いてみて感じる次第です。非常に困ったことだなと。生産者保護のために消費者が高い牛肉を食うのはやむを得ないというふうに思われております。都会の人には。けしからぬ話だとも言われております。そんなに生産者が実際に保護されているのかということになると、ちっともされていない。困っているんですから、借金で。生産費の調査もやってみました。一頭飼って、乳離れから五百キロくらいに育てて生産費の計算をすると、二千三百円くらいしか利潤が出てこないというふうな場合もあります。  一体これはどういうところにあるんだろう。そういう点で私たちはこの問題と取り組んでみました。そうすると、どうも、これらの問題の結果としては畜産事業団の問題を避けて通れないんです。流通過程の中でどうもわからなくなってしまうと言いますけれども、それで、この間における牛肉問題についていろいろな新聞の書いていること、あるいは雑誌の書いていることを、ずっと、これも言行録と同じように収録してみたんです。昭和五十二年の六月二十三日の週刊現代、五十二年十二月二十二日の週刊新潮、その他文芸春秋以下ずっと読んでみますと、結局流通過程の中で政治と業界癒着ということがどの雑誌にも出てまいります。こんなにたくさんいろんな人がそういうふうに思っていると。これは私は少なくても政治の責任において正していかなければならない問題だし、また根も非常に深いというふうなことをどう解きほぐしていくべきかということで実は悩みながら、なおかつこういう方法もあるじゃないかということもあわせて提言したく御質問申し上げる次第でございます。  最初事業団の理事長にお願いしたいと思いますが、事業理事長は雑誌の中で、われわれは法律に基づいて運営しているんだと、こう言っております。まさにそのとおりだと思います。畜安法という法律に基づいて事業団ができ、法に従って運営をしているんだと。そして、いささか、その言動の中では開き直りとも思えるような感じさえいたします。法律どおりにわれわれ運営しているんだから何が悪いんだと。肉の値段が下がらなくてもそれはわれわれの責任でないと言わんばかりの言葉が実は端に出てきます。しかし、一体そうでしょうか。この法律は、生産者を守り消費者にさらに安い牛肉を食わせるための調整機能を果たすべき目的を持ってつくられている法律です。理事長は、この法律が牛肉に関して目的どおり作動しているというふうにお考えですか、ひとつ御所見を伺いたいと思います。
  78. 太田康二

    参考人(太田康二君) 畜産物の価格安定等に関する法律の第一条にこの法律の目的が書かれておりまして、主要な畜産物の価格の安定を図るんだということがうたわれておるわけでございますが、そういった規定に基づきまして、御承知のとおり、牛肉につきましては昭和五十年の五月から畜安法の一部が改正されまして、牛肉につきましても豚肉と同様価格安定帯の制度ができたことは御承知のとおりでございます。これはあくまでも主要な中央卸売市場におきますところの枝肉の卸売価格の安定でございまして、政府が毎年度年度末に、翌年度に適用すべき牛肉につきましての安定上位価格と安定基準価格を定め、その安定価格帯の中に価格をおさめるということが私ども事業団に課せられた主要な任務になっておるわけでございます。  御承知のとおり、この法律が五十年五月に施行されまして、当初は、和牛につきましても乳用牡犢につきましても安定帯の中で推移をいたしたわけでございますが、八月以降ずうっと上限価格を突破して推移をいたしたことは御承知のとおりでございます。私どもの理解では、上限価格、いわゆる安定上位価格、これは消費者を守るためにある制度でございまして、これ以上高くはしないんだというための一つの目安の価格でございます。したがいまして、事業団といたしましては、当時まだチルドビーフの生産が復活いたしておりませんでしたので、いわゆるフローズンビーフを輸入をいたしまして、相当の大量の市場放出をいたしたのでございますが、直ちに効果もあらわれずに、相当長期間にわたりまして安定上位価格を超えて推移したことは御承知のとおりでございます。その後、まあ、事業団の売り渡しがうまくいったということを申し上げるわけではございませんが……
  79. 丸谷金保

    丸谷金保君 もう少し答弁を、いまそのあなたがおっしゃったことは前に馬場さんに答弁しているのと同じことですよね。こっちは記録は読んでいるんですから、前に言ったことはいいんです。最初にお断りしたように、私の聞いているのは、法どおり作動しているかどうかと聞いているんですから、そう長々と言わないでください、そこのところは覚えていますので。
  80. 太田康二

    参考人(太田康二君) だから、私が申し上げましたとおり、一昨年の十月から乳用牡犢につきましては安定価格帯の中に入りました。それから和牛につきましては、昨年の三月以降、これまた安定価格帯の中に入って推移をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、当面私どもに課せられた安定価格帯の中で卸売価格を実現するという主要な任務は果たし得たというふうに考えておる次第でございます。
  81. 丸谷金保

    丸谷金保君 それだけ言ってくれればいいんですよ。  事業団の理事長は、事業団は調整機能を法の目的どおり果たしている、こうおっしゃっておるんです。そうすると、事業団が法の目的どおり果たしているのに、どうして牛肉は――大臣は就任と同時にもっと安くしなければならぬと、これは総理も言っているんですから、ここいら辺の事業団との食い違いはどうなんでしょう。事業団はこれでいいんだと言っているんですよ、いま。法の目的どおりやっているんだから。
  82. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 事業団の主要な任務は……
  83. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかっているのです。
  84. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 失礼しました。  主要な任務は東京卸売市場における枝肉を安定させることにあると、こうなっておりますが、消費対策としてもっと事業団の肉を安売りとかいうようなことで消費者価格を下げられまいかと、こういうようなことから、事業団にもっとひとつ消費対策として働いてもらいたい、こういう意味で御注文申し上げているのであって、主要な目的は理事長答弁したとおりだと存じます。
  85. 丸谷金保

    丸谷金保君 理事長、いまの大臣答弁をお聞きになったと思うんですが、法どおり運営していて、もっとほかのことできますか。
  86. 太田康二

    参考人(太田康二君) 現在の畜産物の価格安定等に関する法律におきましては、法令によりまして私どもが買い上げました輸入牛肉の売り渡しについての、売り渡す場合の予定価格の定め方が規定をされております。安定上位価格を超えておりますときには安定上位価格を基準として定める。
  87. 丸谷金保

    丸谷金保君 それはわかっているの。
  88. 太田康二

    参考人(太田康二君) それから、安定帯の中にありますときは時価を参酌して定める、そういったことでございますから、私どもの輸入牛肉の売り渡し自体につきましては、価格でございますが、法令に基づく制約があることはもう間違いないわけでございます。  しかしながら、現在の法令に許される範囲内で、できる限り、いま大臣がおっしゃいましたように、消費者にも奉仕する道というようなことで、一つは、御承知のとおり、あの指定店制度をやりまして、私どもが直接量販店、あるいは食肉専門店に売り渡しを行いまして、私どもが指示した目安価格で部位を表示して売らしておるというようなことを一部消費対策の一環としてやっております。これが一つでございます。  いま一つは、輸入牛肉のいわゆる調整金あるいは売買差益等によって生じました剰余金を、助成勘定に繰り入れまして助成事業を実施いたしておりますが、この助成事業の一環として消費対策を実施いたしておりまして、これは主として国産牛肉の安売りに奉仕するという形で実施しておることはこれまた御承知のとおりでございまして、いま申し上げましたようなところで、現在は、いわゆる小売価格の、何と申しますか、引き下げ、安定供給というようなことの事業をやっておるという現況でございます。
  89. 丸谷金保

    丸谷金保君 畜産振興、生産者保護のための助成事業を一方でその差益金の中でやっている。それからまた一方では、消費者に対しては指定店のような制度で努力をしておる。それがうまくいっていれば、いまのように牛肉の問題こんなにならないと思うのですよ。うまくいってないからこうなるんだと思うんですが、それがうまくいっているかどうか、ひとつこれは資料要求をお願いいたしたいのですが、その中の一つ、具体的に言うと、全部というとこれは大変でしょうから、調べてみたいと思いますが、昭和五十一年に、肉用牛生産振興資金特別融通事業というのを北海道信用農業協同組合連合会ほか四十六都道府県に出しております。これの都道府県別の金額、これをひとつ――どうせこれ牛肉の問題も今回だけではおさまらないと思いますんで、安くなるまでやらなきゃなりませんから、それで生産者がもっと安定するまでやらなきゃなりませんので、あれですから、次回までに資料を私のところへひとつ届けていただきたい。  それから、会計検査院にお願いしますが、五十一年度の事業はまだ検査対象にはなっておりませんね。
  90. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 五十一年度の分につきましてはすでに検査を実施いたしております。
  91. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この事業が生産者にいかに効率的に作動しているかということについての検査の報告を、これも今回でなくてよろしゅうございますから、次回までにお願いしたい。これはできますね。会計検査院の方で調査できますか、事業団の補助金の問題について。
  92. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) いままでに実施した検査の結果でございましょうか。これから検査をしてということでございましょうか。
  93. 丸谷金保

    丸谷金保君 どの程度の検査をしているかわかりませんが、たとえば私は、先ほどの林野庁の経営について克明な調査をされて意見が出ております。そのように検査をしていただきたい。そういうふうな検査がしてあれば結構ですが、してなければ、ひとつぜひそういう検査をしていただきたい、実際にうまくいっているかどうかということを知りたいものですから。
  94. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 五十一年度の事業につきましては、原則として昨年、つまり五十二年中に検査をするわけでございますが、昨年はこの畜産振興事業団関係につきましては、毎年重点項目を定めて、そこに力を集中して検査を実施するという関係もございまして、この件につきましては昨年は検査を実施しておりません。で、五十三年、本年におきましては五十二年度を対象として検査を実施するわけでございますが、そのときあわせてさかのぼって五十一年度の分も見るということは可能でございますので、今年の検査で調べてみよということでございましたら、可能でございます。
  95. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は五十二年度の検査ではまだその実際の効果が上がっているかどうかわからないんですよ。五十一年度だとわかるんじゃないかと、こういうことがありますので……。  それで、実はきょう会計検査院の方にもそのことで特に意見を申し上げておきたいんですが、この前から会計検査の問題についていろいろ決算委員会等でも論議がされております。しかし、どうも一つはいまの会計検査院の旅費規程のようなことでは自主的な検査はできないんじゃないか。たとえば出張旅費が県庁所在地まで。あとは歩くんですかね、どうするんです。そういう問題があるんですけれども、一体本当に検査できるのかどうか、現場までは。
  96. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) ただいまの出張旅費の中の交通費についての御質問だと思いますが、必ず県庁所在地までということではございませんで、たとえば国の機関なんかでございますと、県庁所在地以外のところにございます機関のところに検査に行きます場合には、そこまでの汽車賃をいただいております。  ただ、従来都道府県に参りました補助金関係の検査などをやる場合には、県庁の所在地まで参りまして、それから県内を県庁の自動車で現場に参りますときには案内していただくというような場合には、実際に汽車に乗りますのは県庁所在地まででございますので、県庁所在地までの汽車賃をいただくという場合もございます。
  97. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、たとえばいま私が要望しておるような検査を行う場合にも、どこどこの事業団の指定するところまでの汽車賃は出るけれども、あとは今度は事業団の車か何か借りなければ動けないということですね。
  98. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) ただいまの信用協同組合連合会に金が行っている場合でございますと、信連は大体県庁の所在地にございますので、信連まで行くためにはこの県庁所在地までの汽車賃でよろしいわけでございますが、さらに実態をよくつかもうということで、末端の現場と申しますか、そういうところに行こうという場合には、これは汽車で行く必要があるような場合には、その現場までの汽車賃というものをいただくことは可能でございます。
  99. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうも汽車賃にこだわっているようですが、私は車のことを聞いているんですけれど、ハイヤー代とか、そういうのはないんですか。
  100. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 先ほど申し上げました、県庁にうかがいまして補助金の現場に行くというような場合には、これは公務ということで県庁の車で現場を案内していただくというふうな考え方をとっておりますけれども、ただいまの畜産振興事業団関係でございますと、これは県庁所在地にございます信連に参りましても、そこには事業団の出先機関というものがあるわけでございませんので、こういうような場合に、自分の方でタクシーを雇って現場に行かなければならないというような場合には官側で出してくれるというたてまえになっております。
  101. 丸谷金保

    丸谷金保君 実はそのたてまえで結構だと思うんですが、なぜそのことをお聞きするかというと、たとえば信連まで、信連というか、各都道府県の連合会まで行きますわね。そうすると、それの今度はたとえば個々の農家なり、単協なり、どんなにうまくいっているか、それを調べるということになりますと、そこの車で大抵案内してくれるんです。そうすると、案内してくれるというと、必ずうまくいっているところを見せるんですよ、これはわれわれもやったんですから。それじゃ本当のやつが出てこないんです。たとえば林業の場合でも、これは官側がこういうところを見せて、もう本当に悪いんだというところだけ一生懸命抜き打ちで見せればそういう結果が出てくるんで、もっと自分たちで、よしわかったと、これからあとはおれたちだけでもって行くと言って、自分たちで車を雇って行けるような旅費が出ていないので、そういうことをひとつ出るようにうんと要求してください。われわれもこれは大蔵大臣に強く言うことになるでしょうし、決算委員会としてはこの点また別個にやるということで理事さんたち心配しておられるようなので、私は具体的ないまの問題について心配なので、ひとつそういうことのないように、自主的にやれるような検査をお願いしたいということで、結構でございます。
  102. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 先生の御趣旨の線でやりたいと思いますが、ただ従来相手方の車で案内してもらった場合であっても、行く場所は相手が決めるというようなことはございませんで、現場が幾つかある中で、話を聞きましてここは見る必要があるんじゃないかという場合には、私どもの方でここを行って見たいというふうにやっておりまして、相手に案内をしてもらう場合であっても、行く場所を向こうに決めてもらうというようなことは従来なかったはずでございます。それだけ一言申し加えたいと思います。
  103. 丸谷金保

    丸谷金保君 まあよろしゅうございます。  牛肉の問題について……。
  104. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) いまの資料の問題は、資料要求の問題は……。
  105. 丸谷金保

    丸谷金保君 はい、それはひとつ事業団の方で。
  106. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) それは……。
  107. 太田康二

    参考人(太田康二君) 御提出いたします。
  108. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) こちらもわかりましたね。
  109. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) はい。
  110. 丸谷金保

    丸谷金保君 会計検査院の方もひとつあわせてしてくださるということでいいですね。
  111. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 検査の結果ということでございますと、これから検査を実施いたしますので、御報告できるのはかなり先になると思いますが。
  112. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) じゃ、それひとつよろしくお願いします。続けてください。
  113. 丸谷金保

    丸谷金保君 調整機能を法的には果たされているかしらぬけれども、実態としてはどうもそんなにうまくいっていない。そしてこのことについて、大臣が途中から、まあきばを抜かれるはずもないんですが、マスコミがそのように言うほど大きく言い分が変わってきたのは、業界の実態がいろいろとわかってきたからだろうと、こういうように実は思うわけなんです。大臣になられてから、牛肉を輸入して安くすると言った後で、全国の食肉事業協同組合の連合会長の小川さんとか、あるいは大阪の肉の関係の商社の朝田さん等にお会いになっておりますね。そのときにやっぱりいろいろ意見が出たと思うんです。私もお会いして、こうやれば安くなるんだなというふうな意見を実はいろいろ伺っているんで、そういう御意見、どのような意見が出されたかちょっとお聞かせ願えれば、記憶にある程度で結構でございます。
  114. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これは明日からだと思いますが、消費対策として朝市制度、共同仕入れをやりたいと、こういう話がございました。従来は、小売屋さんは座っておって肉を持ってきてもらいそれを売っておった。魚屋さんの方は朝市場に行って買ってくる、車の込まないときに朝のうちに買ってくると、こういう仕組みがあると。牛肉についてもそういう仕組みをこの際やりたいというので、十九日から実施をしたいと。そしてこれは市価の一割ぐらいとりあえず安い物でやってみたいと。いわゆる共同仕入れ、いままでにない画期的なことをやりたいということでございましたので、非常にありがたいことだと、肉はやっぱり消費対策というものも考えなければなりませんから、大変だとは思いますが、ひとつ御協力願いましょうと、十九日からやるというんであれば、私もひとつ十九日の朝は行ってみようという約束をいたしまして、あした七時、品川の近くにあります東京都の、あれは何と言うんですかな、食肉供給公社ですか、この場所を借りて、芝浦でございますのでそこへ行ってみたいと、こういう話をしたところでございます。
  115. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで、実は大臣が就任直後に大変消費者に安い牛肉をということを打ち上げた。この前後で生産者は非常に困ったんです。たとえばこれは北海道だけとるとあれだもんですから、九州の天草の市場を調査いたしましたが、九月に、これは細かく出ておりますが、平均が黒牛で生体が二百六十五キロ平均ということで三十二万九百八円、九月の市場ではしていたんです。ところが十二月の六日、七日になりますと、同じ市場で同じような牛が二十五万二百六十四円、七万下がっているんです。大臣のあの発言の後こんなに下がったんです。それから同じように、今度は別な熊本市場、これは黒牛でなく赤牛ですが、これも十月の二十七日と十二月の十五日では、二十七万から二十三万八千円ですから約三万以上、大臣が一言言っただけで生産市場というのはこんなに変動があるんです。  そして、これだけ安くなったんだから肉の値段はどうだろうと。芝浦屠場、十月も十一月も余り変わらないんです。十一月十五日、十二月十日、和牛にしても乳用雄子牛にしても、屠場での値段は変わらないんです。生産者の方はがたっと下がっているんですよ。そして芝浦市場では下がらないんです。もちろん市場で下がらないくらいですから、小売価格も下がらないんです。小売価格も十月、十一月、十二月というふうにとってみました。これも下がってないんです。同じなんです。上がり下がりがなくて。その点ではまさに畜産事業団の理事長さんの言うように安定しているんです。こういうのを高値安定と言いますわね。どういうわけなんでしょう。  それと、このように大臣の言ったことが、生産農民には非常に大きな打撃になっているということについて、大臣は政治的に責任感じませんか。
  116. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私が入閣をした際に言いましたことが、確かに九州方面の和牛の販売価格に影響したということを聞いております。この点は申しわけなかったなあと思っておりますが、その場合もそう長期的に下がったわけではございませんで、その後私の真意が伝わるにつれまして回復をいたしておりますから、短期的なことで迷惑をかけたなあと、やはり舌足らずの言葉はいけないなあということで反省をいたしているところでございます。
  117. 丸谷金保

    丸谷金保君 一月十五日の大分市場でも回復していませんです。ここに全部一頭ずつのやつがあります。これはまだ最近の資料ですから平均を出しておりませんが、どこでそんなふうに回復しました、どの市場で。
  118. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) ごく最近の現在までの数字はフォローしておりませんけれども、私ども聞いているところでは、宮崎なり鹿児島の市場で一時の下落からこれを回復してきているということを関係者から聞いております。
  119. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は昨日からきょうにかけて熊本、宮崎市場やっています。まだその資料来ておりませんが、夕方までには届くことになっているけれども、きのう入った電話ではそんなに回復していません。  大臣、あなたはいま回復していると言いましたね。だけれども、局長はまだ最近の数字は握ってないと言うんでしょう。どういう根拠で回復していると言うのですか。
  120. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ここ一、二日のことはわかりませんということだけは、これはお許しをいただきたいと思うのです。あの発言の後回復しているというふうに私は聞いております。
  121. 丸谷金保

    丸谷金保君 いいですか、十二月の十五日、一月十五日、回復していない。いつの時点で回復したんです。
  122. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 十二月末から一月にかけては回復をしたと私は報告を受けております。
  123. 丸谷金保

    丸谷金保君 どの程度回復しましたか。
  124. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) いまも申し上げましたように、最近の日々の数字をフォローしているわけではございませんが、全般的な水準として一時下がりましたものの、その後回復して正常の水準に戻ったということで、関係者の意見は聞いておるわけでございます。  いま先生指摘のような、個別の、特に最近の経過をたどっての数字は後ほど資料にして検討いたしたいと思っております。
  125. 丸谷金保

    丸谷金保君 そんなにもとへ戻っていないんです。大臣。どういう報告を受けているか知りませんけれども、このことをひとつ十分これから御注意していただきたいと思います。大臣になると、先ほど申し上げましたような、木食い虫というふうな、そうでないときのような軽々な言葉というのはお慎みになっておるのだろうと思いますけれど、それにしても大変な影響力が、生産者の困ることでここに出ているんです。  それから同じように、暮れから正月の牛肉は安くしたいということもおっしゃっていますね。安くなりましたか、小売価格で。東京の小売屋さんをずっと正月当たってみました。確かに指定店の一部の肉は下がっております。そのときだけ、安売りの。しかし、それはもうごくわずかです。あとの肉は下がっていないんですよ。これどう思います。
  126. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 確かに小売の価格は全体の水準としてはそれほど、目立つほど大きくは下がっておりません。ただ傾向として、十一月に比べれば十二月は下がっておりますし、特に十二月の後半から連日いわゆる国産肉の特別売却、その肉に関しては二割程度の価格の引き下げを図る、この措置をとったことによりまして、その肉自身も当然ではございますが、それに関連するような周辺の部分でも一部値下がりが見られたということはございます。必ずしも十分ではございませんが、今後ともそういう措置をとって、さらに価格の引き下げについて努力してまいりたいと考えておるところでございます。
  127. 丸谷金保

    丸谷金保君 努力はずっとしておるんでしょうが、いままででも努力しておったと思うんですが、やはり依然として小売価格は下がっていない、全体として。このことは確認できると思うんです。  それから大臣は、同じように、どうも消費者は高い方を買いたがるので困るということも言っておりますね。しかし、それは全く私は間違いだと思うんです。それはまあごく一部のお金持ちの方はいざ知らず、たとえば畜産事業団の理事長さんは、牛肉は高いから鳥肉しか食わないのだということを言っておるのです。こう出ております。畜座事業団の理事長さん程度の収入の人ではやっぱり牛肉高いんです。高いから買うというふうなことにはなりません。私は札幌で調べてみましたか、札幌の小売屋さんで特を上、上を並み程度に、ちょうどいま指定店で安売りをしている牛肉と同じくらいの値段で常時出している店があります。そこですと、牛肉が八割売れるし、衝動買いでなくてわざわざそこに買いに来ると。どうしてそんなことができるのだということになると、自分が屠場へ行って十分吟味をするし、またそういう点での肉の買い付け、その点で努力をしておれはこの程度には売れるんですと、じゃあ、それがなぜ一般でできないんだとその小売屋に聞いてみますと、売れないとどうしても利幅をとらなきゃならないから高くなるのだ、こういう答えが返ってきました。ですから、大臣が言うように、消費者は決して高いものに手を出しているんじゃないんです。それはもう本当にごく一部だということで、そこいら辺の考えから改めてもらわないと、生産者にプラスし、消費者に安い牛肉というふうなことになってきませんので、その点ひとつ御注意を願いたいと思います。
  128. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私が申し上げたのはそのとおりでございますが、言葉足らずと言えば言葉足らずですが、私は、高い物がいい物だとして消費者が手を出す空気だけは私の感覚として日本人には強いのではないかという考え方は変わっておりません。これはもうあらゆる物が高ければいいということでわりあいお客さんが多いのは、肉だけじゃなくて全体的に言える傾向ではないかということを申し上げましたわけでございますし、もう一つは、実態面としても和牛なども十八カ月ぐらいでかなり体が大きくなります。その段階で売れば一番生産コストが安くて農家にとっていいんでありますけれども、それから肥育をいたしまして脂身がかかると、体重はそれほどふえないけれども、脂がかかることによって小売価格が高くなるとその物が売れるということがやはり実態問題としてありますので、できたらば十八カ月ぐらいの生産コストの安い物がたくさんはけるような仕組みになるように消費者もひとつ頭を使ってもらいたいと、こういう意味のことを申し上げたわけでございます。
  129. 丸谷金保

    丸谷金保君 その感触として持っているうちはいいんですが、大臣がやっぱりテレビなどでああいうふうに言いますと、何か消費者が悪いようになっちゃうんです。ですからそういう言動は、やっぱり大臣なんですから、一言で牛の値段が七万も下がったり、十分これは注意していただかないといけないと思うんです。  それから、生産者にプラスにするためにどうしたらいいかと、一つはえさ対策です。草地事業はずいぶん行われておりますけれども、やはりうまくいっているところを私たち知りません。この問題、いずれ農林水産委員会で論議したいと思いますが、えさ対策。それから、えさにつきましても、たとえば全農は専用船を四隻も持って買ってきておりますし、えさを専用船で運んでくる大手商社はもうかっております。専用船を持ってない小さな商社というのは余りもうかっていません。じゃもうかっていない、損してもなぜやるんだと言ったら、売ったり買ったりの為替の問題があるからやめるわけにいかないんだ。ですから、ほかのメリットがあるからえさでもうからなくてもやっていくんだというふうな商社も大分あります。ですから、もうかっている人たちにもっと安くさせる。特に全農には、いろんな形で、畜産事業団や農林省からえさ対策その他についての助成がいろんな形でなされております。しかし、末端の感触としては、これは遠いところも近いところもあるから、プール計算するから組合を通していくえさの値段というのは安くならないんだというふうなことを言っておりますけれども、北海道で調べてみますと、全農の扱っているえさの量の五%程度です。北海道、遠いところへ行っているのは。ですからここいら辺、もう少しえさを下げることに行政指導をするお考えはいかがでしょうか。
  130. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) えさにもいろいろあるわけでございますが、自給飼料の話は別にいたしまして、特にいま輸入の配合飼料の問題でございます。配合飼料の価格は、昨年の九月ごろから飼料原料事情がアメリカにおける大豊作、トウモロコシだとか大豆、こういった穀類の大豊作を反映いたしまして大幅に好転してまいっております。  それから、為替相場が円高に推移して、これもまた輸入原料価格の上にいい影響を及ぼしているわけでございます。こういったことからトン当たり五千円、これ比率にしまして九%程度の値下げをこの九月に指導したわけでございます。しかし、その後もさらにトウモロコシ等、主原料の市況が安定的に推移いたしております。それから、大豆、油かす等のたん白飼料がこれがはっきり値下がりを示しております。為替相場もなお引き続き円高傾向にあったというようなこと等から、この一月、今月、今後六月までの配合飼料価格につきまして、さらにトン当たり三千八百円、比率にいたしまして六・九%、これ先ごろの九月の値下げとを通算いたしますと一四・六%と、かなりの幅になりますが、この水準まで引き下げるよう指導いたしたわけでございます。この指導につきましては、いまお話しのような農林省とも種々密接な連絡をとっております全国団体の全農を中心に指導をいたしましてその実現を図ったところでございます。今後ともそういうような原料価格の事情等を考慮して、配合飼料の価格については十分な指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  131. 丸谷金保

    丸谷金保君 それから、屠場の問題が、やはり生産者の値段を高くすることができない中で牛肉の値段が高い大きな原因にもなっているのじゃないか。いま農林省は畜産センター事業というのを各地にやっております。これらの非常に効率がよく上がっていないという数字をたくさん私もここにいま持っております。時間の関係でそれらに詳しく入るのは差し控えますが、いまのようなセンター事業だけでは、きめ細かく牛肉を安くすることにはならない。私のところでも屠場をやっていますが、歩どまりが違います。それから効率も大きな屠場は必ずしもよくありません。熊本でも三重でも、あるいは北海道の状態も調べてみましたけれども、とても実態はそんなによくなっていない。しかも、それと加工業者との間の癒着がありまして、鹿児島県などでも、生産者が畜産センター等へ持っていきたがらないというふうな実態も出てきております。これらをひとつ十分改めて検討をしていただきたいと思います。  それからさらに、黒牛中心のいまの畜産行政のあり方にも、牛肉の値段の下がらない理由も一つあるんではなかろうか。黒牛、黒いうわさというふうなものと結びつくのかもしれませんが、赤牛その他、いろいろ傾斜地でもどんどん登っていって雑草でも何でも食えるようなそういう生産体系をやり直さなきゃならないのじゃないかと、こういうふうに考えます。これらについてのひとつ御所見を伺いたいと思います。
  132. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 食肉流通センターでございますが、小規模の地域的に散在している屠場、これをできるだけ統合整備するということで、昭和三十五年以来大型の食肉流通センター、この育成を図ってまいったわけでございます。一般的には、そういったところの方が、何といいますか生産性が高い、コストダウンも図れるということではございますが、先生指摘のように、個別に見てまいりますればあるいはかえって能率が落ちているというようなところもあり得るかと思います。ただ、全般的にはそれなりの大きな効果を今日まで果たしてきていると思います。しかし、それで十分だというわけではなく、中には、御指摘のように販売面が弱くて加工業者が相当程度入ってきている、まあお手伝いをしているというような形になっているところもあろうかと思います。そういう点を是正するためにも食肉流通センター自身を今後とも充実させるということと並びまして、来年度の構想として部分肉センター、部分肉での流通をさらに積極的に開発促進するということでこれを意図しております。こういうものによって、これは主として大都市中心ということになるわけでございますが、こういうものをまた新しく組み立てるというようなことによって、食肉流通センターの機能も一層強化され、効率的に運用できるのではないかというふうに考えております。  それから、牛の導入品種問題そのほかいろいろございますが、畜産農家の育成強化ということについてはたくさん検討すべき問題もあると考えております。それらの点、このように牛肉について世の中の関心も高い時期でございますので、さらに一層私どもとしても努力して検討してまいりたいと考えております。
  133. 丸谷金保

    丸谷金保君 いろいろ牛の肉を安くするための問題というのはたくさんございます。しかし、特にいま畜産事業団から指定業者に払い下げをしておる冷凍肉あるいはチルド、これらの払い下げをめぐっていろんなうわさが飛んでおります。そうしてこの中で、馬場委員質問の中でも、特に関西の主婦連へ売り渡したり、あるいは全農、生産者の団体である全農にも売り渡しをしている。その他非常にこれはと思うようなところにも出ているという実態がいま次第に明らかにされつつあります。そして、これにつきましては前局長の大場さんも、主婦連等に売り渡したのが横流れしているというふうな事実を認めております。そういうこともあるというふうに聞いている。  事実は、たとえば昭和四十九年の三月十九日に関西主婦連がフローズンのビーフを三百八十八カートン、カートンというのは二ダース、二十四ケースをカートンというふうに思っておりますが、重さにして三万八十九ポンド、これを買い入れしております。輸入商社は三菱商事、入庫番号が二五九九ということで買い入れをしております。そして、これはいわゆるワンタッチ方式ということで、八月三十一日に三菱商事からA社に、さらに九月十五日に今度はB社へ出庫されているというふうなことで、横流しの事実が明らかにされ、保管原簿まで公表されております。こういうふうなことがあった場合にはそれははなはだ遺憾であるし、何とかしなければならぬというふうなことが前の委員会等でも答弁されておりますけれども、一方ではまた消費を拡大するためには主婦連その他に当初依頼したのだから、それらに枠がいくのはやむを得ないんだと。確かにそれらが直接売られているんであれば、消費の拡大、価格の安定等につながるでしょうけれども、肉転がしが行われておればそういうことにつながらないわけです。こういう事実があるのに、畜産事業団としては何らの手を打たないのはどういうわけなんですか。理事長にひとつお伺いしたいと思います。
  134. 太田康二

    参考人(太田康二君) ただいま御指摘の事実につきましては、私ちょっと承知をいたしておりませんので、よく調べまして……
  135. 丸谷金保

    丸谷金保君 ここにあるんだ、保管表も。よく調べましてって、前から問題になっているでしょう。あんた知らないの、本当にこれ。
  136. 太田康二

    参考人(太田康二君) 四十九年の事実は私、ただいまは存じ上げておりません。そこで、事業団の……
  137. 丸谷金保

    丸谷金保君 主婦連横流しというふうな問題については聞いておるでしょう。
  138. 太田康二

    参考人(太田康二君) 横流しという問題の考え方の問題でございまして、実は私ども、御承知のとおりチルドビーフとフローズンビーフの取り扱いをいたしておるわけでございますが、チルドビーフにつきましては、できる限り、何と申しますか、消費者に直結する団体に売るというたてまえになっておるわけでございますが、私どもの売っておる団体の中には、一部卸を組合員にいたしておる団体もあるわけでございます。したがいまして、そういった団体に売りました場合には、なるほど直接末端の消費者に最も近い団体に速やかに渡ることを期待をいたしておるわけでございますが、一部卸の業者もございますから、卸の取り扱いの相手方に売られるというような場合がございます。そういったものを横流しということで言われれば、私どもはそこまでは横流しと言わなくてもよろしかろうというふうに考えておるのでございます。  それから、冷凍牛肉の問題でございますが、冷凍牛肉の問題につきましては、私どもは御承知のとおり原則として市場売りがたてまえでございますが、市場が全国で中央卸売市場、地方市場含めまして二十五市場でございますので、できる限り広い範囲にこれを売ってまいりたいということで、現在一応の内部の規程を決めまして、指定基準を決めまして、原則に適合するものはできる限り広く認めていこう。しぼったりいたしますと、またそのしぼったことについてのいろいろ問題も呼ぶわけでございますので、冷凍牛肉につきましては広い範囲に行き渡るようにしたい、そして適正な競争が行われるようにいたしたいということで、現在十八団体に指定団体を広げて実施をいたしておるということでございます。
  139. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 前任者ではありますけれども、大場局長が主婦連の横流しを認めたという発言でございますが、認めておらないそうでございますので、主婦連の名誉にもかかわることでございますから、その点は明らかにしておきます。
  140. 丸谷金保

    丸谷金保君 じゃこれ記録、ちょっと時間がないんですが、そういうことになると、認めないということになると……
  141. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 肉転がしを認めれば警察の御厄介を受けることになっておることでございますので、そういう軽率な肉転がし、犯罪に結びつくようなことを畜産局が認めたということになりますと大変なことでございますから、その辺は慎重にしていただきたいと存じます。
  142. 丸谷金保

    丸谷金保君 いいですか、物特の十月二十五日、衆議院のです。これは記録の十六ページにあります。大場政府委員は馬場委員質問に答えて、「チルド牛肉については、われわれが意図したような形ですうっと末端に物が流れていたかという厳しい御批判を受ければ、やはりそれはいろいろ問題はあったのじゃないか。必ずしも末端の消費者のところまで行かないで途中で吸われたり、あるいは横流しされたり」、いいですか、「横流しされたり、」と言ってるんですよ。「プレミアムがついたり、こういったいろいろな議論がありまして、利権物資化しているのじゃないか、それはおかしいじゃないかという厳しい御批判があったことは事実でありますし、私どももそれは認識しております。」と。認識しているというのは認めたことじゃないんですか。
  143. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) そういうすりかえは困るんであって、議論のあったことを認識しているんであって、あった事実を認めたと言っておらないんでありますから、そういうところは慎重に処理していただきたいと存じます。
  144. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃこの問題はほかのところでもまだ議論になっておりますし、主婦連の名前も別に挙がっております。そして、それは否定をしていなければ私たちは認めたというふうに思わざるを得ないんで……
  145. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 議論のあることを認めざるを得ないでしょう。
  146. 丸谷金保

    丸谷金保君 このことは、さらにもう一度この問題についてはやりたいと思います。そして、これだけ細かな数字や保管原簿等というふうなものもマスコミにも流れておるんですから、それをあなたたちが認めないと言うんであれば、これはさらにもう一度やらなければならない問題だと思います。  そして、特にこういうことに関連して、最後でございますが、私は不足払いの問題等があるんですけれども、いまのそういうふうな議論になりますと、実は(「時間守らなければだめだよ」と呼ぶ者あり)実は、今月の二月号の文藝春秋、そのほかにたくさんありますが、「スーパーの食肉担当者が、突然消えたりした例はいままで数多くありますよ」というような文章と同じように、一連のマスコミの報道の中で非常に法治国としては大変だというような問題が流通機構の中にあるから、これには手をつけないんだと言ってそこに逃げ込んでしまうような問題がたくさん出てきております。こういうことをわれわれがほっといて、牛肉の安くならないのはこれはちょっと手をつけられないところだというわけにはいかないと思います。したがって、これらの問題につきまして、法治国として許されないようなこういうことが、白昼、本当にマスコミの言うように通っているのかどうか、この種の問題を十分調査して、さらにこの問題については御提言もしていきたいし、こういうことがなくなるためには、不足払い方式その他、いまの畜産事業団の制度を変えていかなければならないんだというふうなことについて、さらにこの問題については、委員長、ひとつこれで終わりでなく、次の機会に質問することを御了解いただきたいと思います。終わりませんので。答弁の方が私の質問よりも長々長々とやられるものだから、時間が延びているんですよ。後でよく読んでごらんなさい。
  147. 野口忠夫

    理事野口忠夫君) それでは、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩      ―――――・―――――    午後二時五分開会
  148. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、昭和四十九年度決算外二件を議題とし、農林省と、それに関係する農林漁業金融公庫決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  149. 田代富士男

    田代富士男君 きょうは、農林省関係質問でございますから、過日、日米通商交渉におきまして、いろいろ牛肉の輸入割り当て枠の増加の問題、ジュースの問題、オレンジの問題等が取り上げられておりますから、そのことにつきまして質問をしてまいりたいと思います。  日米通商交渉におきましては、百億ドルの黒字減らしのためにということで、主に農業関係品目が大きく取り上げられました。残存輸入制限品目二十七品目の中で、農業関係二十二品目全部を自由化したといたしましても、金額にいたしまして、わずか五億ドルにしかすぎないのでございますが、そういう中にありまして、農業関係品目がクローズアップされたその理由は何であるのか、まずこれが第一点。  このような日米交渉の不均衡を是正するという目的からするならば、これは根本的な問題が摘出されたということは言えないのではないかと思うんです。むしろ、いま国内にもいろいろな問題が起きておりますし、日米経済摩擦はなお続いていくんではないかと、このように、これは国民世論の中からも出ておりますが、こういうことを踏まえまして、大臣としていかがお考えをお持ちであるか、最初にお聞きしたいと思います。
  150. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のように、ドル関係では、対米関係だけでも百億ドルと言われております。したがって、農産物が、仮に二十二品目全部やりましても、確かに五億ドル程度のものであって、それほど大きな効果がないにもかかわらずという議論も一方にありますが、また逆の言い方をいたしますと、何といっても百億ドル一遍にはできませんでも、六十億程度はやりたいという考え方のもとに今度の対米調整を行ったわけでございます。したがいまして、農業の受け持つ部分は全体としてはきわめて少ない。やはり何といっても基本的には工業関係完成品でこれに対応しなければできない性格のものである、こういうことになろうかと存じます。  なお、今回措置いたしました分は、まあドルに換算いたしまして六千万ドル程度ではなかろうかということになりますから、まさに大部分は農業以外のところで受け持ったのであって、農業そのものとしては非常に少ないものである。にもかかわらず、なぜ農業にそれだけ強い希望があったかということでございますが、これは全体として日本の経常収支が大幅な黒字であり、そうしてそれがまた対米関係でも、日本からは輸出超ということがアメリカの議会筋で全体として大きな問題となり、工業製品については貿易保護主義ということが声としてなってまいり、農業でももっと日本は協力してもいいのではないか。特にアメリカの関心品目でございます牛肉、オレンジ、果汁等については、農村の間からもまたこれを背景とする国会側からも、かなり強い意見が出てまいりまして、わが国に要求してきたというのが現状でございます。
  151. 田代富士男

    田代富士男君 それで現在農産物輸入の問題点として取り上げられるものは、具体的な問題として提示いたしますと、一つは、いま農林大臣も申されました膨大な対米貿易の黒字というものは工業製品の急激な輸出の結果でありまして、こういう農産物の問題ではないわけなんです。そういう意味から、これは農業がそのツケ払いにされるということば、そういう農産物の生産者にとりましては憤りがあることは当然じゃないかと思うんです。また、対米輸入の五割余りは穀物を中心とする農産物でありますけれども、アメリカの農業に対しましては、すでに一つの国とするならば、日本の国はアメリカに対して世界最大の市場を提供しているのではないでしょうか。そのために、国内におきましては、こういう穀物あるいは大豆、砂糖等を加えて見た場合に、自給度というものは三〇%余りに落ち込んでいるわけなんです。こういう実情をどう見るのか。  また対米小麦の輸入増などによりまして、午前中もちょっと問題になりかかりましたけれども、米の過剰在庫が深刻化しておりまして、来年からは、面積にたとえるならば九州全体の水田面積に当たる四十万ヘクタールというものが米以外の作物に転作しなくちゃならない。またミカンも過剰で二割余りは摘果を実施されていると、こういう実情である。また、こういうようにすべての輸入枠の拡大の影響というものは畜産業界にも及んでおりまして、事態の推移によりましては転廃業の危機に瀕しているという、こういう実情である。にもかかわらず、いま言うようなそういうドル減らしという一つのことでありますけれども、圧力を加えられなくちゃならないということは認識できないわけなんですが、この実態を大臣としてどのように踏まえて解決しようとされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  152. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まさに御指摘のとおり、対米関係のドルの状態が悪くなったのは農産品ではなくて工業製品であると、むしろ農業産品について言うならば、大変なアメリカに対しては黒字でございますし、しかも日本輸出国の中では一番のお客さんであるというところでございますので、堂々として農業がアンバランスであるということは受け入れられないところでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、アメリカの農村あるいは農村議員からもっと何とかならないかという注文が出てきたのでございます。そこで、理屈から言えば一切というところもありますけれども、まあわが国の農政上支障がないものがあるならば、協力できるものがあるならばということで検討してみた結果、二十二自由化品目が農産物資にございますが、一品目まとめて自由化に協力できるものはない。ただし、農産品というよりはむしろ農産品を原料とする、たとえば味の素関係調製品、こういうようなものは御協力してもいいのではないかというので、十一でございますが、まあできるだけ協力するということで農村に支障を与えない――漁業、林業もそうでございますが、支障を与えないもので自由化することに回答申し上げ、そして総合農政上支障がないということの範囲内で、牛肉についてまあホテル枠三千トンぐらい買っても支障がないのではないか、あるいはオレンジについて言うならば五割ぐらい、一万五千トンのものを五割ぐらいふやしても支障ないのではないか、またジュースについては、ブレンド用として千トンのものを二千トンにしてもまあまあ支障ないのではないかという回答をいたしたわけでございます。  それに対して向こう側から、牛肉については一万トンホテル枠を設けて買ってもらいたい。それからオレンジについては季節自由化をしてもらいたい、これは柑橘業者に影響がないはずであると、影響のない時期に、すなわち四月から八月までの間自由化してもらいたいという願いでございます。ジュースについては、どう間違ったのかわかりませんが、五万トンわが国ではミカンジュースができておりますが、五万トンブレンド用として買ってほしいという注文がまいったわけでございます。  そこで、第一回目提案したものとは若干前進はいたしましたが、向こうの言い分にはまだはるか遠いものがありましたが、今回、牛肉についてはホテル枠は三千トンとし、残り希望のありました七千トンについては、まあ国内に需要があればお互い努力してみましょうということでございます。  これもこの際申し上げておきますが、アメリカから言われたから牛肉の輸入枠を必要でないものを一万トンふやしたということではなくして、総枠はこれは国内の需要、供給との関係を見て決めるものであって、来年度以降そういったことで買って努力をしてみましょう、三千トンプラス高級牛肉七千というようなものがあるかないか努力してみましょう。枠をふやしましたのは、今年度の下期、アメリカとの関係が直接ございません下期について、畜産振興事業団の手持ちの肉も少なくなってまいりましたので五千トンふやす。来年度の上期もまずまず三万五千トン買う予定をいたしておりますが、これではちょっと不足するのではないか、五千トンぐらい買わなければならないかなと。これはアメリカの関係だけではなくて、ニュージーあるいは豪州、二百海里時代を迎えてそういった交渉もしなければなりませんので、そういった方面を考えて、どの肉ということではなくて、総体として枠はふやしましたが、アメリカだけに一万トンふやしたわけではございません。  それからオレンジについては、季節自由化の強い要望がございましたが、季節自由化には応ぜられない。これはミカンの貯蔵も非常に発達してまいりましたし、オレンジも貯蔵がききますから、季節自由化は通年自由化に通ずるということでこれはお断り申し上げたところでございます。  なお、四月、五月輸入したいということに対しても、これはまだオレンジないしはタンカン、夏ミカン等に影響があるということで、これもお断り申し上げまして、六月、七月、八月、本当に果物の端境期、国民的にも非常に不足を与えているときに二万二千五百トン、前回、通年ベースで一万五千トンが二万二千五百トンになっておりますが、そのほかに、その期間、六月、七月、八月に限って二万二千五百トン、合計四万五千トン、これは柑橘農家にも支障を与えないのではないかということでございます。  それから果汁につきましては、ブレンド用として千トンが二千トンのものを、三千トンまで――五万トンからありますミカンジュースに対して、ブレンドしてもらいたいという声も消費者ないしは製造業者の中から強いわけでございますので、その程度こたえることが、国内のブレンド用のミカンジュースがふえるということも勘案してお答えをしたわけでございます。  これに関連して、グレープフルーツジュースを千トン別枠で買うということの調整を行いました。  以上が経緯と結果のすべてでございますが、要はこのことによって、私は日本の農政、食糧転換ということでいま大きな方向転換をしておるというときでもありますから、慎重を期さなければなりませんが、この程度ならば悪影響を与えないであろう。もし万々これでも悪影響があるというようなことがありますれば、肉については畜産物価格安定法もございますし、あるいは生産対策もあるし、事後の対策を講じて、生産農家に支障のないように、また柑橘につきましても、それぞれ生産対策あるいは価格対策を講じておりますが、これでまた害があるということであれば、さらに補完をして柑橘農家対策も講じていきたい、こういう態度で臨んだ次第でございます。
  153. 田代富士男

    田代富士男君 私の質問時間が三十分の予定で私質問しておりますもんですから、御丁寧な答弁ありがとうございました。  それで、いま大臣が申されました高級牛肉の問題でございますが、共同声明には、「貿易上の措置」といたしまして、「相互に需要開発の努力を払う」、このようにうたわれておりますけれども、わが国のホテル牛肉の年間需要量は大体四千トンとみなされておりまして、今回ホテル用牛肉を三千トン輸入するとなりましたならば国産の高級牛肉二千トンを国内消費しなくちゃならない問題点が起きてまいります。農林大臣は三千トンでは支障はないじゃないかとおっしゃいますけれども、この二千トンの牛肉が店頭へ回った場合に果たしてそれだけの購買力があるのかどうか。支障はないでなくして、支障があるのではないかと心配するゆえんでありますし、また、こういうアメリカの肉が入ってくるということになりますと、いま同僚議員が午前中質問されました、大臣発言だけでも生産価格が下がってきたと言われるように、流通業者というものは生産者ヘダンピングを要求すると思われますけれども、そういう対策というものはどうされるのか、簡単にお答え願いたいと思います。
  154. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ホテル枠の三千トンでございますが、千トンが三千トンになったわけでございますが、肉全体としては日本では四十万トンから使用しておるわけでございます。この中にはいい肉あるいは北海道の育成肉あるいは廃牛等、いろいろありますけれども、それほど国内の生産者に大きな影響は与えないのではないか、こう見て措置をとったところであり、あるいは今後消費の拡大というものも相当努力してまいりたいと思いますので、まあまあ大きな影響はないのではないかと、こう見ておるところでございます。
  155. 田代富士男

    田代富士男君 大きい影響はないということでございますが、楽観せずに、これは大きな問題になりますから、時間がありませんからこれ以上ちょっと申し上げませんけれども、取り組んでいただきたい。これは希望意見として申し上げておきたいと思います。  それで、農林大臣もいま御説明されました、グローバルベースで約一万トンに対しまして、そのうち三千トンアメリカからという数字的な大枠はわかりましたけれども、残りの七千トンないし八千トン、いまこれはアメリカからでなくしてこの枠は保ったということでございますから、もしかこれをニュージーランドやあるいは豪州から輸入したといたしまして、残りをアメリカから一トンも輸入しなかったと仮定したならば、それでもアメリカは納得するのか。もしそういう事態が生じたならば、アメリカは新しい要求というものを突きつけてくるのじゃないでしょうか。ここらあたりはどのように受けとめていらっしゃるのか。
  156. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) グローバルの問題はこの三千トンにも実は当てはまるわけでございます。アメリカが一番関心が深く、アメリカから輸入しやすいという点から着目をしてホテル枠にこだわったわけでございます。したがって、ホテル枠のみならず、残り七千トンと想定されるものも、グローバルでございますからニュージー、豪州に負ける可能性は十分あるわけでございます。この点は、交渉段階においても、ホテルの三千トンはまずまず買える見通しは立てられるが、それ以外についてはいまのところ相当お互い努力しなければなりませんし、また豪州、ニュージーランドからも強い要請が、その範囲内においてその肉に着目をしてくるでありましょうということは重重申し上げまして、そこで努力してもできなかった場合にはこれは仕方がないということでございまして、その点ははっきりと、できなかった場合には次にまたこうするぞというようなことにはなっておらないわけでございます。
  157. 田代富士男

    田代富士男君 そのことは明確にしておきたいと思いますから、よろしくお願いいたします。  次に、牛肉を取り上げまして、消費者にいかに安くおいしい牛肉を提供するかということが農林省としても大きな仕事ではないかと思いますけれども、日本の牛肉は非常に高い、アメリカの三倍、豪州の五倍くらいの金額でございますし、午前中も問題になりましたが、中川農林大臣が就任早々、牛肉の価格を下げると。また福田総理も、お年玉として牛肉の問題を取り上げていらっしゃいます。同僚議員の午前中の質問で、大臣は、そういう発言をしたことに対して、消費者に価格を下げられるか、消費対策としてそういう注文をしたんだという意味の御答弁をされたのでございまして、同僚委員から、あなたがそういう発言をしたために生産価格が七万から八万下がったんだと、こういう御指摘がありましたことに対して、それは舌足らずでありましたという御答弁が午前中の委員会を通じてありました。しかし、結果として消費者には何ら下がってない。私は生産業者の立場も守らねばならない、その生産業者に対しては私の舌足らずであったということでありますが、生産業者も守らなくちゃならないけれども、消費者はアメリカの三倍、豪州の五倍の高い肉を食べておるわけなんです。だから、生産者には舌足らずであったけれども消費者に対しては安くしてあげますよと。これは舌足らずでなくして、大臣として、生産者は生産段階で安くなってきた、流通段階でもう一歩力を入れて、安くというところに力を入れまして、消費者にも安くしていただけるように、私が言ったことは必ず大臣である間に実現をしますと言うのが当然じゃないかと思います。生産者には、舌足らずでありましたでそれで済みますけれども、私は消費者の立場から言うならば、それは片手落ちのそれこそ舌足らずの答弁ではなかっただろうかと思うんですけれども、消費者の立場からいかがでございましょうか。
  158. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私が発言した中でどこが舌足らずであったかというと、あたかも牛肉を外国からどんどん入れて安くして、そして消費者に安い肉をと、でその後で生産者対策もと、こういうふうに受け取られて、洪水のごとく牛肉が入ってくるように伝わったことに舌足らずであったと。私の言いたかったのは、御指摘のように消費者の牛肉が高い、何とかこれが安く食べられるような仕組みを考えたい、ついては生産者対策、まず国際競争力から言えば生産費が非常に高いわけでございます。と申しますのは、豪州あたりでは二千町歩、三千町歩と自然放牧のような中で生産費はかけずに肉が生産される。アメリカでも、約百五十五町歩で日本の耕地面積の百倍以上でございますから、畜産農家になったら恐らく二百倍、三百倍、こういう広いところで生産をされますから、非常に差がある。そういう条件の悪い日本の土地条件ではありますし、その上にえさの大部分は地球の裏側でありますアメリカ等から運搬をしてきて肉にかえるわけでございますので、コスト高であることには間違いない。そこで何とかまずできるだけ、厳しい中にあっても、生産コストを下げるためのえさ対策とかあるいは草地改良とかいろんなことを総合的にやる努力もひとつしてみたい。  もう一つ日本の牛肉が高いのは、流通過程である。これが非常に複雑でございますので、午前中も議論がありましたように、また批判もありましたが、食肉流通センターというものを、全国ネットワークをつくりまして生産段階の流通を合理化する、そして消費者段階においても、これの受けざらとして部分肉センターというものをまず東京につくりまして、全国のそういった団体による食肉センターでできた部分肉をストレートで東京の部分肉センターの市場に出す、そして小売業者が直接そこで部分肉を買う、こういう仕組みをつくって、若干時間はかかりますが産地から消費者への直結ルートを、まあバイパスと申しておりますが、このバイパスをぜひともつくりたいということで、来年度予算においても予算の前倒し、新設等、相当大幅に改善をしてこれにこたえることといたしたわけでございます。  そのほか、短期的なものとしては、朝市の共同仕入れだとか、あるいは指定店の強化であるとか、あるいは産地直入というようなもの等きめ細かく配慮いたしまして、とりあえずの措置と並行して牛肉消費者にこたえたい。これは舌足らずといいますか、若干時間がかかるものもあり、すぐできるものもありますが、必ずこれは精力的に御期待にこたえたい、こう思っておるところでございます。
  159. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、牛肉の問題を考えていく場合に、もちろん数量を図っていくということもよろしいですけれども、これを少し長期的な考えから見るならば、午前中も取り上げられておりましたけれども、制度面の改革ということも必要ではないかと思うわけなんです。現在、輸入について見ますと、チルド、フローズンの二本立てで行われておりますけれども、これはチルドの場合は割り当て制というものがなされまして、いろいろな弊害が生じているということも御承知のとおりだと思いますけれども、そういう意味から、フローズンの場合はこれを推進して、そしてだれでも市場で入札できるようにするならば、これは新しい一つの道が開けてくるんではないかと思うわけなんです。そういう意味で、チルドというものは味がよいという面も考えられますけれども、そういう市場入札にだれでも参加できるというようなことになりましたならば、割り当て方式による弊害というものを除去することができるわけなんです。こういうことにもメスを入れる必要があるんではないかと思うんです。  それと、牛肉の場合は、豚や鶏と違いまして、工業的生産になじまないものであると、こういうところから、ただいま申しました価格の点においてもアメリカや豪州との差が非常に大きい。これは、将来、食糧資源の重要性ということから考えまして決してノーマルなものではないと思われるわけなんです。こういうところから、制度面の改革というものもやっていく必要があるんではないか。そうして、いま五倍も値段の違いがあるということですけれども、せめて、オーストラリアと西独とでは約二倍ぐらいの程度の価格ということを聞いておりますけれども、日本も現在の半分ぐらいの価格を一応目標としてこれは取り組むべきではなかろうか。そうなりますと、消費も大幅に伸びていくことでありますし、対外的にもこれは好影響を与えるんではないかと思いますから、こういうところに力を注ぐべきではないでしょうか。  それと同時に、やはり畜産業界に対しまして、国としても保護育成というものを強化をしていかなければならないじゃないでしょうか。それで、日本の将来のために、これはいずれはこの牛肉の事情というものは行き詰まるということがFAOにおいてもOECDにおいても指摘されておりますが、そういう意味から将来を考えた場合には、牧草地を拡大して経営規模の拡大を図っていかねばならないじゃないかと思うんです。そういう意味から、いまのうちから財源というものをすべて投入しましてやっていくべきではなかろうかと、そういう立場から、私は肉牛の飼育のために国有林あるいは公有林の活用はできないものか。まあ、このように競争力をふやすについては土地が拡大できないということが最大の問題点になっておりますから、こういうところを検討する必要があるんではなかろうか。そうして、牧草の生産量に応じた飼育が必要でございますが、まあ現在、一頭につき草地は何ヘクタールが適当であるかということはこれはいろいろな議論もございますけれども、牧草の生産量にも応じて異なりますけれども、一ヘクタール一頭というところまではいかないにしても、そのくらいの対策を講ずる必要があるんではないかと思うわけなんです。こういうことに対しまして、大臣としてどのように取り組んでいただけるか、御答弁願いたいと思います。
  160. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 外国から入ってまいります安い肉は、消費者にメリットを与えてどなたにでも売れるような仕組みというものがございます。私ももうできたらそうしたいなあと思うのでありますが、実はその安く売るべき牛肉の差益を、国内の価格にバランスをとって売っておるものでございますからかなり収益がある。これは三百億ぐらいあるわけでございます。それは一部消費対策にも使っておりますが、大部分は生産者対策に利子補給とかいろんな形でやってございます。この三百億に近いお金を生産者から取り上げますと、たちまち生産者がまいってしまいますので、にわかに踏み切れない。そこで、一般会計からその分は補てんをして消費対策に回すべきだという意見もございますので、それらについては今後また努力をしてみたい、研究をしてみたいと思っております。  なお、牛肉農家の生産コストを下げるために国有林あるいは公有林の活用等、土地利用について考えるべきだと御指摘がございます。これは国有林野の活用に関する法律もございますので、ひとつ積極的にこの際、取り組んでみたい。その点は、国有林のあり方の問題とも関連してまいりますが、国民経済的に見るならば、やはりむしろその方がいいところが相当あるのではないか、こうも思っておるところでございます。
  161. 田代富士男

    田代富士男君 あと時間がありませんから、もうまとめて一、二点、ミカンの問題と果汁の問題でお尋ねしたいと思いますが、ミカンの問題は大臣申されたとおりに、一万五千トン輸入されたところに通年で七千五百トンがふえますから、これに対する対策というものはしてもらわなくちゃなりませんが、いまも話が出ました四万五千トンの輸入のうちの半分の二万二千五百トンが六月から八月に輸入されることになるわけなんです。これはアメリカのオレンジは冷蔵保存がよくきくということでございますが、日本のミカンがなくなった時期ということが見込まれておりますけれども、このオレンジが冷蔵保存されまして、ミカンが出されるときまでそういうふうにされた場合には、何のために六月から八月まで輸入したのかわからなくなってまいりますし、そういう意味から、六月から八月までに輸入したものはその期間中に全部販売するというような、こういう行政面の適切な指導が必要ではないかと思うわけなんです。そういう意味からこれは力を入れてもらいたいと思います。  それと、今度はこのミカンの対策を見てみますと、十年前から農林省は温州ミカンの増産を奨励してまいりましたけれども、四十九年からは減反政策が五カ年計画でとられておるわけなんです。特に晩柑類への移行についての方針がどうなっているのか。この晩柑類以外の転作に何を考えているのか、こういうことを考えた場合に、ミカンの耕作地で他の品種の適地作物はどんなものがあるか。たとえば桃などのように輸入不可能なものの転換にも力を注ぐべきではないかと思うわけなんです。そうした場合に、農家への価格保証という問題等が大きく上がってまいりますが、生産費所得補償で計算したものと市場価格とのその差額を補助金で補う価格差補給制度をもって減反、転作というものを指導していくべきではないかと思うわけなんです。そうしなければ、このミカンの問題は、奨励した農林省としてはこれは責任あることですから、当然やるべきではないかと思うわけなんです。  それとミカンの果汁の問題ですが、国内の消費というものは、前年度を例にとりますと、濃縮で五万トンあるというふうに数字が出ておりますけれども、昨年はミカンの生産量が三百八万八千トン、ことしは三百五十四万トン、そのような数字が出されまして、約五十万余トンの過剰生産がされておるわけなんです。こういう国内産だけでもジュース用の果汁になっているときに、オレンジジュースが三千トンも入ってくる。余り影響はないということを農林大臣申されましたけれども、農家に与える影響は大ではなかろうかと思うわけなんです。そういうところから、とりわけ農家収量の生食以外の分はすべてかん詰め、ジャムあるいは果汁等に向ける等、どういうふうにされるのか、そこらあたりの対策というものを明確に示していただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  162. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まず最初のオレンジの季節輸入でございますが、通関は六月から八月末までの間にしかしない、しかも条件として、その期間に正常の販売ルートに乗せるということを条件といたすつもりでございます。これを冷凍したり、貯蔵したりして、やがて九月、十月に出てまいりますミカンに影響を与えないということを詰めてまいりたい。手続その他はこれからやりますが、そういう基本方針でございます。  それからミカンについて価格差補給金という説もございますが、そこまでまいりますと、ミカンだけで済まない、いろんなものにまあ大変影響いたしますので、とりあえずとしては原料ミカン価格安定対策の保証基準価格を引き上げたり、柑橘の園地再整備事業をやったり、ミカン対策もそういうところで講じてまいりたいし、また、被害が出てさましたらさらに考えてみたい。  それから、果汁でございますが、果汁が余っておるということは事実でございますし、心配される問題でございますから、果樹調整保管事業に対してもこれを強化をして対処してまいりたいというわけでございます。  このように、まあまあひとつこのたびの調整で果樹や牛肉生産農家に支障を与えないぎりぎりのことをやっておりますが、今後また推移を見まして、新たな事態ができれば適切に対処してまいりたいと、こう思う次第でございます。
  163. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、農業団体の農地に対する対応といいますか、そういう問題について質問をいたします。  昨年の十月の二十八日に当決算委員会で、海洋開発技術研究所に関連をして、海洋開発技術学校用地の農地転用についてお尋ねをいたしたわけです。学校用地は、昭和四十六年と四十七年に休耕奨励金が二年にわたって出ているたんぼでございますが、交付対象面積は三ヘクタールとなっており、実際の面積は四ヘクタールもある広大なたんぼが、農地転用の申請もなく、もちろん農林大臣の許可も受けないで売買されたことについて質問をしたわけでございますが、このことが、結局農業団体がこの農地を転用することとしたことで、実際はこの学校が建ちませんで、いま現地で農民の方々はこのたんぼを原形に復旧して返せという訴訟が起こっているわけでございます。そういうことで質問をしたわけでございますが、昨年の森政府委員答弁では、「いつの時点で農地の転用があったのかというところあたりが、実は私ども詳細に承知をしておらないというのが現状でございます。」と、このように答弁をされておるのでございますが、その後調査をされたか、その調査の結果はどうなっているか、お伺いいたしたい。  また、農民の方々の農地を返せという訴訟が起こっておるわけでございますが、農民のこのささやかな要望にこたえるためには科学技術庁と話し合いをしてもらいたいと、このように十月の時点で要望しておったわけでございますが、この話し合いはどのようになったか、お聞かせ願いたいと思います。
  164. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) いま御指摘になりました案件は、鹿児島県の上甑村の瀬上の干拓地についてのお尋ねだろうと思うわけでありますが、それにつきましては、四十九年に瀬上土地改良区から登記所に対して照会の回答がありまして、農業委員会から雑種地として認定することが適当であるという回答もあったわけでありまして、不動産登記法に基づきまして登記官がその土地の現況を確認の上、雑種地であるというふうに認定いたしまして、その旨登記がなされたということに承知しております。したがいまして、いまお尋ねのありましたように、農地転用の許可というものはなされていないというふうに承知しているわけであります。農地ではないという認定、つまり雑種地であるという認定でありましたので、当然の帰結といたしまして、いわゆる農地転用の許可はなかったというふうに承知しているわけであります。  それから、その後の経緯でございますが、昨年の十一月であったかと思いますが、いわゆる海洋開発技術研究所に貸し付けておりました土地につきましては、〇・七ヘクタールにつきましては建物が建っております関係上、村との間で二年間の契約更新をするということになっておりますが、残余の約二・三ヘクタールの利用につきましては、これは村に返還するということになっておりまして、返還されましたその土地の利用につきましては、村と土地改良区との間でいろいろ話し合いを行うということになっております。これは今月末からあるいは来月にかけてその話し合いが行われるということになっておりますので、私どもその話し合いの推移を見守っていたい、かように思っているわけであります。
  165. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 いまあなたがおっしゃった、いま建物が建っておるところは、村とあるいは海洋開発の方であと二年間という契約が結ばれておるようでありますけれども、農家の方々はこれは了解はしておらないところであります。  そこで、問題になるのは、いまあなたが、法務局の出張所の方に農業委員会が――いままで昭和四十六年と四十七年に休耕補償金をもらっていると。四十七年といいますと、四十七年の四月から四十八年の三月までの期間でございます。四十八年の三月は、改良区が反対の農家の方々の反対を押し切って売却をするということを決めた時点が四十八年の三月でございます。農地でたんぼをずっとつくっておったということで、この干拓地は十七年のころからずっと農家の方々が営々として犠牲を払いながら造成をしたところでございますが、そういうようなところを、反対を押し切って学校を誘致しようという村の意向に農業委員会が盲従をしたところにこの問題の発展が私はあると思います。農業委員会というのは、もう御承知と思いますが、農地を確保し拡大をしていくのが農業委員会の役目だと思うんです。それがいままで休耕補償金をもらっておるたんぼを雑種地と認定したということについて、あなたはどう思われますか。
  166. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 確かに四十六年から四十七年におきましては、約三ヘクタールにつきまして休耕奨励金の交付を受けたというふうに聞いております。この土地は約三ヘクタールにつきまして戦時中に干陸したわけでありますけれども、いわゆる土地配分という形をしないで、耕作希望者がいわゆる一時使用という形で水稲を栽培していたわけであります。元来土地が不安定な状況であったわけでありまして、そういった耕作期間中もその一部には海水が浸入して、収穫がきわめて不安定な状態にあったというふうに聞いているわけであります。その後四十六、四十七年において、生産調整のため約三ヘクタールについて休耕奨励金の交付を受けたということになっているわけでありますが、その後の推移を見ますと、四十八年以降耕作はされていない、こういったことになっている。四十九年に、いま御指摘がありましたように、登記官が雑種地として認定をしたと、そういったことで、認定をするに当たっては農業委員会に照会して、その現況は農地であるかどうであるか、こういった判断を仰いだ上、かつみずから現況を確認した上で雑種地として認定して、その結果所有権の移転があったと、こういったことになっているわけであります。そういう意味で、その現況の認定の問題にいたしましては一応やはり有効な手段というものは、手続というものは踏んでいるわけでありまして、農地でなかったがゆえに当然農地転用の許可はされていないということになっているわけであります。  その土地の利用につきましては、これはいろいろ地元で問題があるということはよく承知しておりますが、結局地元土地改良区あるいは村当局あるいは学校といいますか、研究所ですね、そういったものの間でよく話し合いで解決なさるべきものであるというふうに考えているわけであります。
  167. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私は、農業委員会というのは、先ほど申し上げた農地の確保、拡大ということが任務だと思うんです。そして、奨励金ももらっておりながら、遠い昔のことではなくてつい最近のことを、休耕しておりますと雑草がある程度生えることはこれは当然かと思いますが、そういうような状態で、土地改良区の方もこれは私は問題があると思います。土地改良区が売却をしようというこの三ヘクタール以上ある農地をそのように決めたことにも問題があると思いますけれども、そういうふうに決めて、そして県の耕地事務所に向かって、未完工であるのに完工したという完工証明をお願いをして、そして県の方は、またこれを確認もしないで未完工地を完工したという証明を出して、それが登記の条件になって、完工しておるということになりますと改良区区民一人一人の名義になるのが当然でございますが、それを土地改良区の名義にするという矛盾した取り扱いをしながら証明をしたという、この農政の当局者の取り扱いがこの問題を私は一層複雑怪奇にしておると思います。そういうような違法な行為で正当化したようなことがこの問題の発端でございますので、この土地改良区の、未完成の土地を完成したというふうに申請をした問題、そしてまた農地を、土地改良区が知っておるんですから、たんぼであるのに雑種地と認定してくれということを農業委員会の方にもまた言っておりますし、登記所の方にもまた申請しているというこのことについて、あなた方農政を担当される方々は果たしてこれでいいのかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  168. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) まず、農地であったのにもかかわらずこれを転用したのは妥当ではないのじゃないかというのが第一点のお尋ねであったかと思いますが、私ども、本件土地が農地であったかどうかということは、その時点でおいて現況が農地であったかどうかというようなことに実はかかわってくる問題でありまして、その当時におきまして、手続といたしましては、登記官がその土地を確認するに当たって、以前に農業委員会に対してその土地はどういうような状況であるかという照会をいたしまして、その回答が雑種地であるというふうな回答を得た、それから、登記官がやはりその土地の状況をみずから確認の上、やはり雑種地であるという認定をいたしましたので、やはりそれは合法的な形で手続がされているというふうに考えるわけであります。そういう意味で、不動産登記法に基づく土地の地目に関する登記というものは登記官が職権で土地の状況を確認の上されるという手続に従ってなされたものというふうに考えているわけで、いわゆる農地であるものをまげて雑種地であるというふうに認定したというふうには断定は必ずしもできないのではないかと、こう思うわけであります。  それから、干拓地の処分につきまして適当であるかどうかと、こういったお尋ね、それから干拓事業が手続上正式に完了しているのかどうか、こういったお尋ねがあったわけでありますが、本件工事につきましては、これは戦時中の混乱期に開始されたものでありますけれども、工事に伴う諸手続が要るわけでありますが、それにつきましては四十九年の五月に鹿児島県が証明をしているということで、手続的な形は整えたものとして同県から報告を受けているわけであります。鹿児島県の証明では、三十五年十二月に干拓工事は完了したものであると、これに基づく諸手続はすべて完了していると、こういった証明をしているという報告を私どもは受け取っているわけであります。  それから、当該係争地の処分につきまして、個人に配分せずに土地改良区が村等に売ったということにつきましては、これはやはり土地改良区の内部の手続の問題に実はかかわってくるんだろうと思うわけでありますが、私どもいろいろ鹿児島県に照会いたしましたところでは、処分につきましての土地改良区の意思決定について、いろいろ、招集手続だとかあるいは定足数だとか、表決数だとか、そういったことにつきましては瑕疵はなかった、適法にやはり議決が行われたという報告を受け取っておるわけであります。
  169. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 じゃお尋ねしますが、四十六年、四十七年に、米の生産調整の休耕補償金というものはたんぼでなければ出さないはずですが、それを四十六年と四十七年に出したということは、その当該地がたんぼであるということになるんでしょう。
  170. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 四十六年と四十七年につきましては、米の生産調整下における休耕補償金を出した、それは、まさに農地である、たんぼであると、こういった認識のもとに奨励金を交付したということであります。その後、先ほど御説明いたしましたが、元来この土地は、これはむしろ先生の方がお詳しいのかもしれませんが、私どもの聞いておる限りでは、しばしば頻繁に冠水する、そういったことで収量もきわめて不安定であるということで、四十八年以降は耕作もされていない、したがって休耕奨励金の交付もされていない、こういった状態が続いたわけであります。それで、いま問題になりました四十九年になりましてから、その土地の認定、現況が何であるかという認定の問題が出てきて、そこで雑種地という認定をしたと、こういう経緯になっているわけであります。
  171. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 それから、農業委員会の方は未完成の土地であるというふうに法務局の方には言うておるんですがね。それを県あたりで完工したと言うことは、これあたりは非常に矛盾すると思うんですけれども、このあたりはどうお考えですか。
  172. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 土地改良区の方が未完成であるというふうにおっしゃっておるのかどうか、それはちょっと私まだ聞き漏らしてはおりますが、やはりその当該係争地が完了されているか、正式に了されているかどうかとか、こういったことにつきましては、やはり地元を管轄する責任ある行政庁である鹿児島県知事、そういったものの証明というものを私どもは信用するというのが妥当であろうという判断をしているわけであります。そこで、先ほど御答弁申し上げましたように、四十九年の五月に鹿児島県知事が諸手続をすべて完了している、この地区は三十五年の十二月に干拓工事を完了したものである、こういった証明をなされておりますので、これを信頼するということが妥当であろうというように判断しているわけであります。
  173. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 これは農業委員会が会長名で法務局の出張所に出した文書の中で、当該土地は未完成であると、こういうふうに言うておるんですよ。  だから、農林大臣にお聞きしますけれども、大臣、こういうふうに、末端の、鹿児島県であっても特に離島の中では、一つの行政庁がこういうふうにやろうということになりますと、農地が、要するに農林大臣の許可を受けなければならない農地が、広さであるのにかかわらず、それをよけて通る脱法行為が平然と行われて、いま農民の間に行政当局と訴訟になっておるわけです。こういうことで、いまの答弁は私はもう聞いておって非常に詭弁でございますし、補償金をもらっておる農地を売るということを決めたのは四十八年の三月ですから、それ以降は休耕の申請をしたって受け付けないわけでありますが、そういうようなことで、たんぼであったものをそういうふうにして、未完成のものを完工であるというふうな、証明も偽りの証明をして、そしてそういうようなもの、そろったものを受け付けた登記官はそういうふうに雑種地というふうに載せてしまって売買がなされたと、こういうような経緯を踏んでおるわけで、これは私は農業団体が、農業委員会という土地を確保し拡大をする任務のこういうような団体が、そして土地改良区という、農地を造成して食糧増産に備えるという、そういうような団体が、このような違法行為を平然としていま農民の間に抗争を起こしておるということを、これをあなたはひとつ正確に認識をして、そしてきちっとした指導もされて、そしてこの前私が当委員会で申し上げた解決の方向に、科学技術庁あるいは法務省、そういうところと合い議をしていただいてこの問題の解決を図ってもらうようにしていただきたいと思いますが、決意のほどをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  174. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 実はこの問題は先ほど来初めて聞いたことでございますし、いま質問の中にも、確かに生産調整金をもらってそれが農地でない雑種地であると、しかも農業委員会がそれを判断をしたということからすれば、農地でないものになぜ生産調整金を払ったんだという逆論も出てまいろうかと存じます。それやこれや、ひとつ研究いたしましてしかるべく措置を講じたいと、こう思う次第でございます。
  175. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 じゃひとつそれは前向きで農家の方々の御意向に沿うように努力をしていただきたいと思います。  次は、残留農薬の汚染調査と対策についてお尋ねをいたします。  昨年の三月の十二日に愛知県の犬山市の財団法人日本モンキーセンターで開かれた第二十一回プリマーテス研究会で、ニホンザル奇形問題研究会が、人間に最も近いサルの世界にも環境汚染の犠牲が大量に出た、すなわち、全国三十一地域五十二群中、十五地域二十二群のニホンザルに裂手、裂足などの先天性四肢奇形が見られ、水や食物が農薬などに複合汚染された結果ではないかという、このような発表があったわけであります。  発表による最も顕著な例は、兵庫県の淡路島と長野県の志賀高原の地獄谷と言われ、淡路島では四十五年、四十六年には出産した個体の七〇%が奇形で生まれている。ミカンの暴落で農薬を半分しか使用しなかった翌年には奇形ザルも激減をしたと。ミカンの殺虫剤として劇薬の弗素系農薬が使われ、またミカンの酸味を減らす制酸剤、除草剤、消毒剤等、年間を通じて多量に使用されているところが淡路島でございます。また志賀高原の地獄谷のサルは、昭和三十七年にえづけを始めたが、その四年後の四十年に奇形が発現をしている。その後毎年のように発現をしているわけであります。えつけに使われるえさにはリンゴが最も多く、昭和四十六年にリンゴが多量に与えられ、まあサルは人間の体重の六分の一ぐらいしかありませんが、この一日に食べる量は、リンゴを大体十五個ぐらいは平気で食べるそうであります。翌四十七年出生した十三匹のうち六匹の奇形が発現をしております。リンゴ、ミカンの殺菌剤に用いられる二つの農薬、マネブとジュネブには催奇性があると、このようにも言われておるわけでありますが、またリンゴ園は九月、十月の台風シーズンに当たるときには落果防止剤を使用するようになっておりますが、この農薬はベトナム戦争でアメリカ軍が使用した枯れ葉剤の成分と同じ二・四・五TP系で、落果防止剤のついたリンゴを食べたサルは、ちょうど妊娠初期に睡眠剤を飲んでサリドマイド児が生まれた人間の世界と同じ現象を呈すると言われております。  このように、人間と同じミカン、リンゴを食べた、えつけをされたニホンザルに奇形出産が近年目立ってふえ、中には手も足もない、木にも登れないだるまと呼ばれる、まるでサリドマイド禍の子供を思わせるサルの世界の出来事は、人間世界にも起こり得る公算が多いと思われます。  サルの世界の奇形発生は、昭和四十年から多発して十数年を経過しているのでありますけれども、人間への影響考え、サルの奇形発現を参考として、リンゴ、ミカンに使用された除草剤、殺菌剤、殺虫剤、制酸剤、落果防止剤等の残留農薬の人体に及ぼす影響、人間に対する農薬の汚染状況調査、またこれが対策について、農林省並びに厚生省はどのような対処をしていらっしゃるか、お聞かせ願いたいと思います。
  176. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) ただいまお話のありました兵庫県淡路島あるいは高崎山、そういうところにおきましてのサルの奇形の発生につきましては、新聞報道等によりわれわれも承知はいたしておりますが、農林省としまして直接調査したことはございませんし、また関係者やあるいは専門の機関からそれらに関する情報を聞いておるところでございます。兵庫県、大分県あるいは京大の霊長類研究所等からの情報では、えづけをしたサルの一部に奇形発生の事実はあるが、原因については食物の影響のほかに、遺伝的影響とか、あるいは近親結婚とか、あるいはウイルスによる感染等、いろいろのことが考えられて、農薬が付着したミカン等を食べたため、それだけであるという結論はまだ聞いていないところでございます。目下、専門家がさらにその原因の究明に努めているところでありますんで、当面はわれわれとしてもその結果を見たいと思っているわけでございます。  また、農薬の安全対策につきましては、農薬の登録に当たりまして、催奇性試験はもとより、慢性の毒性試験、そういう成績等をつけまして、農薬取締法に基づきまして環境庁長官が定める農薬の保留基準、それに適合するかどうかを農薬検査所を通じまして検査をいたしまして、それに合格したもののみについて販売を認めているところでございます。また、このような登録を受けた農薬につきましても、さらに農家に対しましては、農林省で農薬の安全使用基準というものを定めまして、いろんなまき方、回数、いつまくかと、そういうようなことで十分安全性の確保のために留意をいたして指導をしておるところでございます。
  177. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 御説明申し上げます。  ただいま先生指摘になりましたサルの奇形の問題でございます。厚生省としましては、かつてサリドマイドのような悲惨なことを経験しておりまして、特にそれを経験を生かしまして、専門の学者等に奇形についてのそのテストの方法等を鋭意研究さしてまいったわけでございます。そしてまた、食品に残留する農薬の安全性についても、これは国際機関でございますFAO、WHOが中心になってその作業をやっておりますが、日本もそれに参加して一緒にやっておるわけでございます。わが国におきましては、こういった食品に使われ、そして残留するおそれのある農薬について、食品衛生法でもってその安全性を十分見た上で、その残留基準を決めておるわけでございます。先ほど農林省から御説明ありましたように、食品衛生法に基づきましても、個別の農薬について催奇形性試験を初めとし、一生涯にわたって動物に投与するいわゆる慢性毒性試験であるとか、あるいは蓄積性とか、そういった幾つかの実験を全部行いましたものについて、十分人間にとって安全であるという安全許容量を設定し、そして使われる農薬についての残存量を決定してきておるわけでございます。現在までに非常に汎用される農薬二十四種類について、リンゴとかミカンとかキャベツとか、そういった私どもの非常に身近な農産物五十二種類についての基準が決められておるわけでございます。私どもはこういった安全性については今後も強力に進めてまいるわけでございますが、そういうふうにして食品を通して残留している農薬による人体に対する影響については、万全の対策を進めておるわけでございます。
  178. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 先ほど農林省の方は遺伝も一つの大きなというようなお話がありましたけれども、このサルの奇形というのは遺伝ということよりは――ということは、野生ザルにはほとんどこの奇形は出現をしていないわけであります。で、人間が食べるリンゴとかミカンとか落花性とか、そういうものでえつけをした、そして人間の人家の近くに居住をするようになってから奇形が発現をし出したというところに大きな問題があるわけであります。  そういうことで、この残留農薬の調査、追跡調査といいますか、対策ということを、私は、非常に人間に近いサルの世界にこういうことが起こっておるわけでありますから、もう少し真剣になってやっていかなければならない問題ではないかと、こういうふうに思うから質問をしておるわけでございまして、ちょうどこの奇形ザルが発現をした当時、日本列島の中での人間の世界でも先天性四肢奇形というのが出現をし出しておるということは、もう御承知のところかと思います。そういうことで、ひとつこれを前向きに、アメリカの環境衛生学者のゴードン・パーク博士という方がおっしゃるのには、十年後日本で生まれる赤ん坊のうち二〇%が奇形になるだろう、こういうようなことを警告をしたというのが――実はこれは昨年の暮れに非常に関心を持たれたカメラマンの方がお撮りになった「奇形猿は訴える」という、これをごらんになったら本当にぞっとするような写真ばかりでございますが、この最後の方にそういう所感も書いてあるとおり、これは私は次の世代の、若い世代の方々のためにも、どうしても厚生省と農林省が手を取り合って、この問題は追跡調査をしていかなけりゃならない由々しい問題ではないか、こういうように思うんですが、農林大臣の御所見を。
  179. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 農薬取締法を四十六年に改正いたしまして、登録段階において催奇形性試験をやったり、慢性毒性試験等の試験成績を求め、厳重に検査した上で販売するというようにし、このような登録を受けた農薬についても、さらに使用については食品衛生法で守ることにいたしております。農薬は農業生産の大事なものであると同時に、そういった公害についてはもう慎重に慎重を期さなければなりません。御指摘の、まだ人間にとは断定されませんが、人間に近いと言われるサルについてそういうことがあれば、これは厚生省とも連絡をとりながら、原因がどこにあるかということを早く究明して、もし万一人体にも及ぼすようなそういう残留農薬によるものだということであれば、もちろん適切な処置をとって対処していきたいと、こう思う次第でございます。
  180. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 じゃ最後に水銀汚染の問題についてお尋ねをいたします。  昭和四十九年の農林省決算概要説明書にも、水銀汚染調査に関連をした記述がございますが、実は鹿児島湾内の湾奥の水銀汚染魚の問題でございます。あの鹿児島湾内は、私は鹿児島県の出身でございますから、もう承知のとおり、水銀の汚染のない海であるにかかわらずなぜ水銀汚染魚が出るのか、その解明のために、昨年の九月、環境庁の計らいで潜水艇による海底噴気調査というものが行われておりますが、水産庁の方では、酸性水の生物実験ということが行われておるようでございますが、近くこの分析結果がたしか三月ごろ発表されるやに聞いておりますが、監督官庁としては中間報告をおとりになっておると思いますが、その中間報告の状態についてお聞かせ願いたいと思います。
  181. 森整治

    政府委員森整治君) 私どもの水産庁といたしましては、その原因を究明するためにいろいろ調査を行っておりますが、恐らく先生指摘の問題は、五十一年に西海区の水産の研究所で調査船を出しましていろいろ調査を行った結果、低PH、酸性の水域が発見をされておると、そこで水産庁といたしましては、水銀が魚にどういうふうにしてたまってくるのかというそこのところを究明をいたしたいということで、そのPHの減少と魚の蓄積の関係もございますが、それと火山活動と魚介類の水銀汚染とのメカニズムということを解明をいたしたいということで調査に着手をいたしました。そこで、五十二年、五十三年度も調査を継続して実施することになっておりますが、ただいまのところ五十二年の調査に入ったという段階でございまして、それ以上のことが、知見があるというわけではございません。ただ、先ほど御指摘のございました環境庁の方でもいろいろ調査をされておるわけでございます。その他いろいろ学者の方々の御研究もあるわけでございまして、それらを総合して今後その究明に当たってまいりたい。その中で何とか――結局、自然現象でどうも水銀と関係をしてくるということのようでございますから、だんだんそういう方向になってきておるわけでございますから、それなりに何か対応がないものかということでいろいろ調査を進めておるわけでございます。
  182. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 私たちも「はくよう」の現場に行っていろいろ見せてもらいましたが、炭酸ガスがあの噴気孔から、またテレビ等でも鮮明に映像が出ておりましたが、そういうことで、ガスの採取には環境庁の方でも成功をされていま分析中と聞いておりますが、多分炭酸ガスの場合でありますと酸性水塊になると。そうなると酸性水塊の中の魚というのは水銀の食い込みが非常に多くなると。こういうシステムになるということはこれはもう今日常識のようになっておりますけれども、問題は三千人になんなんとする漁民の救済を抱えておるわけでございますので、天然水銀の自然汚染であるということになりますと、マグロと同じだというふうに、結論が出た場合はすぐいまの出荷規制は解除されるものかどうか、それからされないとすれば、生物実験をして食べて大丈夫だということをやはり証明づけなければならないと思うんですが、それも厚生省の方であわせて、水産庁の方が要請をされるなりしてあわせてやらないと、ここ四、五年あるいは六、七年先になって結論が出ては、ことしになりますと生活資金として利子補給をしていただいていよいよ元金の償還に当たるわけでございますが、そういうような問題を控えて非常に漁民は困るわけでございますが、その点はどのように解決をしていかれようとするのか、厚生省と生物実験について合い議をしてあわせて進めていく、そういうようなシステムをとらないと非常に立ちおくれになるのじゃないかと私は思うんですが、そこらあたりはいかがでしょうか。
  183. 森整治

    政府委員森整治君) これは、魚介類の水銀の暫定規制値ということで国全体として決めた基準でございますから、この問題につきましては私どもがどうこうということにはなかなかまいらないと思っておるわけでございます。御指摘のように、とりあえずの措置といたしまして利子補給の基金を設けまして、県も相当な上乗せをいたしまして、漁民の負担がそう多くないような形での一応救済措置が五十一年からとられておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、できるだけ早く関係各省協力いたしまして水銀汚染のメカニズムの究明に早急に努めたいということで、来年の調査費も相当多額な額を計上をいたしておるわけでございます。そういうことで何とかこの究明を、一千万円以上来年度使いましてこの究明を図っていくのが当面の急務ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  184. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 マグロの場合は、鹿児島県の口之島というところの島民の方々の頭髪からも、阿賀野川の方々と同じぐらいの水銀が頭髪から検出されたんですよ。しかし発病はしない。また、韓国のマグロ漁船の、サモア諸島でマグロ漁をやっておる人たちも毛髪から相当な水銀が検出されているわけです。そこで、ある学者は、魚の場合は有機水銀のほかにカドミウムが拮抗力として作用するから発病をしないんだと、こういうような意見をお述べになる方もおられるようであります。そういうようなことがございますので、私もあの水銀汚染魚の出荷規制があるところの姶良郡の福山町の出身でございますが、子供のころからずっと食べておって発病はしてないわけであります。ですから、そういうところをいろいろと手厚い措置はしていらっしゃるけれども、原因究明をされるのに並行されて、そして食べても大丈夫だという生物試験をやはり厚生省の方にお願いをされて、国民の皆さんが安心して食べる状態で出荷規制を排除をしなければ私はならないと思うんですけれども、その点はいかがお考えであるか。  それから、長官、いま一つは、ことしから、五十三年から漁業安定資金の返還期になっておるわけですよ。原因究明で出荷を規制をされて返還ができないという漁民の状態を勘案されて、これは延期をしていただくように配慮をしていただかなければならぬと思うんですが、そこらあたりも含めて御答弁を願います。
  185. 森整治

    政府委員森整治君) 先生指摘のような問題も含めて検討をいたしたいと思います。事が事でございますから、われわれ自身でということよりも、あるいは厚生省にお願いをするということも含めて政府内部で検討をさせていただきたいというふうに思います。  それから、後段の御質問につきましては、これはなるたけ漁民に負担のかからない方法ということをわれわれも検討をすべき問題であろうと思いますので、これにつきましても検討をさせていただきたいというふうに思います。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 最初に私は、お米の減反、転作の問題についてお伺いいたします。  まず最初に、近畿地方の今後の長期的な農業のあり方についてお伺いしたいと思います。  三全総では、関東、近畿地方においては、「市場条件の相対的有利性を生かして、大消費地への生鮮食料品を中心とした食糧供給基地としての整備を進める。このため、都市的土地利用との計画的調整を図りつつ、優良農地の確保・保全に努めるとともに、」「野菜、果実、中小家畜等の生産の振興を図る」、こういうふうになっております。一方、地域指標の方でも、「東海、近畿においては、引き続き市場条件の有利性を生かしながら野菜、果実等の生鮮食料品の生産に傾斜していくとみられ、水稲生産は減少するもののその農業において依然かなりの比重を特つとみられる」、こういうふうになっておりまして、両方とも共通して、野菜、果実等が消費条件とのかかわりで生産規模の拡大、それから果たす役割り、これが高められるように構想が立てられているわけです。  いま、日本を取り巻く環境の変化とか、それから米の需給調整、こういうふうな問題で農村構造が変化する中で、野菜、果物などが構想のように伸びることが確保されるのかどうか。また、近畿地方の農業の今後のあり方、見通し、展望、こういうものの基本的なお考えを私はまず大臣にお伺いいたしたいと思います。
  187. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 農業生産の地域指標の試案は、地域の農業生産を長期的に誘導するガイドポストとして作成したものでございまして、私の記憶するところでも大体いま御指摘のあったようなことになっておると思います。少し事務当局からまた補足して説明させます。
  188. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) 近畿地域の将来の農業のあり方につきましては、ただいま先生もお話がございましたように、三全総ないしは地域指標等におきましても、主として市場条件の有利性を生かして野菜、果実というようなものないしは畜産というようなものについての振興を図ろうというふうな考え方でございます。  ただ、一方におきまして、近畿地域におきましては都市化の進展が相当に激しいというふうに考えておりまして、農地等についての転用が進むとか、ないしは農業労働力が他部門に移っていくというようなことも考えられますので、そういうふうな構造の変化に対応して、いま申しました畜産なり果実ないしは野菜というようなものを振興させていかなければならない。そうなりますと、やはりこの地域においてしっかりした野菜なり果実なりの生産の担い手をつくっていくというようなことが非常に重要なことになろうかと思います。それとともに、野菜ないしは果実等につきましてそれぞれの振興施策を講じておりますので、この地域の特色を生かしながらこのような部門別の生産の振興を図っていきたい。それとともに、流通面におきましても、この市場条件の有利性を十分に生かせるような流通施設の整備というようなものも図っていきたいというようなことが総括的な近畿農業についての考え方であろうかと思います。
  189. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのお答えでも、野菜、果物への傾斜が言われているわけですけれども、地域指標で野菜、果物の伸び率、これを個別に見てみますと、野菜とか果物というのは、麦とか豆とか飼料用作物、その他の農産物に比べて必ずしも生産の伸び率が高くなっていないわけです。たとえば、昭和五十年から六十年における生産の伸び率というのは、麦について見ますと十三倍です。豆は四倍です。飼料用作物は約三倍と、こうなっておりますけれども、一方、野菜というのは一・二倍、果実も一・二倍で、作付面積の方をとってみましても、水稲が二万六千ヘクタールの減です。他の農産物というのは三万三千ヘクタールの増加が見込まれておりますけれども、ここでも野菜、果物、おのおの四千ヘクタールと五千ヘクタールふえるということになっているのです。これに対して、麦というのは八千ヘクタール、豆は七千ヘクタール、飼料用作物というのが八千ヘクタールと、いずれも作付面積の実増といいますのは野菜、果物を上回っているわけなんです。このような予測が立てられておりますし、各農産物の伸び率、これを見てみますと、さきに言いましたような野菜とか果物とか、これを重視して傾斜していくというふうな基本的な展望と私は一致しないというふうに思うのですけれども、その点いかがなんでしょうか。
  190. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) ただいま御指摘がございましたように、伸び率自体で見てみますと、たとえば非常に面積の少ない麦類とか豆類とかというようなものについては伸び率が高くなっておりますが、いかにも面積が全体として、麦類は一千ヘクタールが九千ヘクタール、豆類は六千ヘクタールが一万三千ヘクタールというふうに、非常に少ない面積でございますから、比率としては高くなってくるというようなことがあろうと思います。それに比べますと、野葉、果実等は相当程度の面積がございますので、伸び率自体としては必ずしも飛躍的ではないということが言えるかと思いますけれども、全国の生産額の中に占める近畿の割合からいたしますと、野菜については約七%、果実についても九%というようなことでございまして、全体の農業の占める割合の中では相対的に野菜、果実等が近畿について重きをなしておるということは言えるかと思います。したがいまして、量的な関係だけではなくて、先ほど申しましたように、これらの野菜なり果実なりが市場条件の有利性というようなものを生かしてしっかりした経営ができるようにというふうな質的な面での強化というようなことも含めまして、野菜、果実等に対する農業の傾斜というようなことも考えておるわけでございます。
  191. 安武洋子

    ○安武洋子君 野菜への傾斜の根拠として、市場条件の有利性、こういうことを挙げられましたですけれども、しかし、地域指標を拝見いたしますと、大規模生産地による大消費地への供給体制が一層整備されるというふうなことで、低温流通技術の普及、それから貯蔵技術の改善及びコンテナ、通い容器の導入、こういうものによって「広域流通及び地域流通の合理化が進展するものと見込まれる」というふうに見込んでおられるわけです。  兵庫県では、十二月に生鮮食料品、野菜、果物等がコンテナ専用船で九州から運ばれてきているわけです。これは全国初の試みで、今後もこの冷温コンテナを利用して定期的に輸送されるというふうなことなんです。政府のこの流通整備が進んでいけば、近郊農業、野菜、これは必ずしも市場条件の有利性、こういうふうには言えないのではないかというふうに思いますけれども、こういう矛盾はいかがなんでしょうか。
  192. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) 確かに、野菜と地域的な農業の立地の関係につきましては、お話しのように、流通施設の整備等によりまして、非常に遠距離の流通が可能になってくる。それからまた、産地の方もできるだけ立地を大規模にして集団化していくというようなことからいたしまして、必ずしも距離的に市場から近いだけが市場条件の有利性というふうには言えないということはあろうかと思います。しかし、最近におきましては、この流通につきまして余りにも長距離の流通というようなものが、かえって流通経費を増加し、輸送関係のふくそう等を招くというようなことからいたしますと、より近距離な農産物の輸送、地域の需給というようなことを考えました流通ということも問題が大きいというふうに考えられておりますので、必ずしも遠距離の大規模な流通だけではなくて、市場に近いところにおいて、その立地条件を生かした流通というようなことも考えていかなければならないんではないか、なるべく産地と消費地が直結したような流通のあり方ということも考えていかなければならないんではないかというふうに思っておるわけでございます。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま、農民は稲作からの転換を強制的に迫られているわけですけれども、これは農民にとっては死活にかかわる大問題なんです。政府は、一方では転作を強制なさっていらっしゃる。一方では、農民がどのような農業をやったら本当に安定して農業が成り立っていくのか、どういうふうな農業をやればいいのかということを具体的に示していらっしゃらない。大変あいまいで、安心して農業を続けていくというふうなめどが立たないわけなんです。だからこそ、いま転作を迫られている農民にとっては、一番の重大関心事は、どういうふうにすれば農業が成り立っていくのかということであり、不満、不安はここに集中しているわけなんです。これは戦後の日本の農業についてもずっと指摘され通してきたところなんです。  私は、兵庫県の淡路島の声を聞いたわけですけれども、ここでは政府の奨励でおミカンをつくり始めております。昨年末は出荷したかったんだけれども、まだ買い手がつかないというふうな状況があるわけなんです。しかも一キロ三十円なんです。昨年は九十円、一昨年ですら六十円なんです。三十円といいますのは、労力費ゼロ、それから利益もゼロというふうなことで、このままでいきますと、三月になると三〇%は腐ってしまうというふうなことなんです。この上オレンジが輸入されて、輸入枠がふえるというふうになれば、ますますこのミカンの行く先というのはだめになる。お米をつくろうと思っても米はつくるなと言うし、ミカンはだめというふうになると、農民そのものをやめてしまわなければならないと、農民は痛切な声を上げているわけです。花づくりもやっておりますけれども、ここでは、温室のカーネーション栽培を始めたときは確かに一本百円ほどです。しかし、いまでは一円から二円と、こういう状態で、もう廃墟になったような温室がたくさんあるというふうな状態なんです。花木へ転作してみても、農民は大変な苦労をしているわけです。  一例を挙げますと、日高町というところがありますけれども、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 ここは松の苗木をやろうと、こういうふうなことで、二十ヘクタールに一本五円で苗木を仕入れてきて植えたわけなんです。ところが、苗木を家族が総ぐるみで三年間世話をしてやっと十五円。しかも、それは市で引き取ってくれない。だから、トラックに積んで、大阪の家を一軒一軒売り歩いていくと、こういうふうな状態になっているんです。  こういう状態だからこそ、先日も兵庫県で、昨年末転作の目標が各市町村に割り当てられたとき、氷上郡の六町が、一応この時点では割り当て通達の受け取りを拒否したわけなんです。その理由というのは、大変こういう不安があるので、農民の反対が強いということと、それから資料や説明が不足していると、こういうことだったわけです。これは一月の十日には、町関係者と農民代表が改めて説明を受けて、一応やむを得ないというふうなことになっておりますけれども、いま割り当てを指示された市町村でも、農家へ割り当てるというふうなことで非常に苦慮しているというふうな段階です。現在、各府県で市町村への割り当てが終了をして、農民への割り当てが行われている時期だと思いますけれども、全国的な進捗状況、まずこれをお聞きしたいです。  それから、一体農民がどういうふうな声を上げているのか、それを農林省はどう受けとめていらっしゃるのか、どういうふうな問題が提起されているのか、一体問題があるのかないのか、その辺のところをお伺いいたしとうございます。
  194. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) ただいまの御質問でございますが、五十三年度の転作の目標額三十九万一千ヘクタール、これは昨年の十一月十九日に都道府県に通知をいたしまして、各ブロック別でいろいろ会議を持ちまして、各県の推進体制の整備を図ってきたところでございますが、都道府県から市町村までの配分についてはほぼ終了をいたしております。まだ二県残っておりますが、これは今月中に終了する予定でございます。  それから県からの転作の目標面積の配分を受けた市町村あるいは農業団体は、やはり一様に厳しいものとしては受けとめておるわけでございますが、大勢としては、現下の米需給事情を考えれば、転作条件の整備のための措置が強化されることを前提にして、本対策もやむを得ないであろうと、そういう市町村が大体圧倒的でございまして、現在関係機関が一体となって対応しているところでございます。  なお、市町村からの農業者別配分につきましては、ただいま各県でも市町村の中の集落座談会等を開催をいたしまして、各農民の方の協力等を得ながら実施をしてまいるように指導をいたしております。県からの目標配分が非常に早かったところでは、もうすでに農業者割り当てを終わったところもございますが、大部分は一月から二月にかけて大体終了をする予定になっております。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 政府は、一方では強制的に転作を進めておられる、一方では、何に転作をすれば安定した経営が成り立つのか、そういう作物があるのかどうかと、こういう声が農民の間で非常に強いわけなんです。  兵庫県では、年初めに、農業事務所が説明会を開いております。ここでは、やはりいま言ったような声が圧倒的に出てくるわけです。これに対して兵庫県が、結局どういう答弁をしているかというと、国の推奨する小麦、大豆、飼料作物以外は保障できないというふうに答えているわけなんです。転作を本当にやろうと思えば、まず転作ができる条件、これを整備しなければならないわけです。いまもそれが前提だというふうにおっしゃいましたけれども、これがなければ転作不可能なわけです。転作に見合うような土地の整備とか、それから農作物の価格の保証とか品種の改良とか、あるいは技術、機械の問題、流通の保障と、こういうさまざまな問題が私は横たわっていると思うわけです。  こういうふうな転作条件を整備するということを農林省はおっしゃっていらっしゃるんです。いまもおっしゃいました。しかし、予算を拝見しますと、私は従来の延長にすぎないというふうに思うわけですね。強制的な転作に見合うような根本的な改善をするような予算にはなっていないと思うんです。  政府は、今回の転作の中で、麦類等の生産拡大と経営の定着化、これを挙げておられますけれども、長期見通しの中で、昭和六十年には五十五万三千トン、自給率九%にしようと、こういう計画をお立てでございました。しかし、いま計画どきの五%だったものが四%に落ち込んでいると。目標どころか、四%に落ち込んでしまっているというふうな状態があるわけです。  一方、今回の日米交渉、これを見ましても、アメリカの姿勢はもう大変強硬である。今後も日本の農業、とりわけ穀物、小麦、大豆、飼料作物の輸入拡大、これを強く迫ってくる、こういう予測が成り立つわけです。だから今度の、転作しても総合的な自給力を強化するというふうな施策の一端で小麦が推薦されているわけですけれども、本当にこの自給率を引き上げられるのかどうか、私は大変疑問を持つわけなんです。転作した農民が、先ほどもいろいろ転作した人がばかをみているという話を申し上げましたけれども、転作した農民がばかをみないように、断固とした姿勢で自給率の向上を本当に図られる気があるのかどうなのか。また、アメリカとの引き続く交渉の中でこの穀物輸入の拡大を迫られたときに、自給率向上の立場から断固として対応される決意がおありなのかどうかということを私は大臣にお伺いいたします。
  196. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに米の作付転換というのは、日本の風土、歴史、いろいろ考えまして非常に厳しいことでございます。生産性も高いし、価格も保証されておりますし、経営面積が少ないところでの米の作付というのが一番有利性がある。しかしこれは避けて通れない。何としても百七十万トン単年で余るという事実も厳然として存在するわけでございますから、転換をしてもらわなきゃならないと。ところが、転換すればそれじゃ何をつくっていいのかわからぬじゃないですかということでございますから、これもまた確かに厳しくわれわれも受けとめておるところでございます。そこで、自給率の低い作物、特に大豆、それから麦類、さらには飼料作物、先ほども公明党の先生から御指摘のあったとおりでございます。こういうものについては戦略作物として奨励金も高くしてございます。七万円という、反七万円という差をつけてございます。それから、価格も、麦、それから大豆についてはたくさんできたから豊作貧乏になるという仕組みじゃなくて、きちっと価格支持政策ができております。また、肉についてもいろいろ議論がありますが、飼料作物をつくって、牛肉にした場合にも畜産物価格安定法によって保障しておるということでございますので、この三品目については農家に御迷惑をかける仕組みにはなっておらないと。  ただ、それじゃすぐ麦や大豆や飼料作物ができるか、水田にと、こういう声もありますので、土地条件の整備についてはかなりの前向きの予算措置も講じてございますし、また、知事に独自で判断して対処できる仕組みの予算も百十億要求しておりましたが、これも前向きで百二十億ということで、余りむずかしい縛りをしないで知事ができる仕組みもいたしております。  そこで、どうしてもまた、それでもできないという方には、管理転作、前は休耕という措置を講じたのでございますが、これはまた国民の皆さんから非常に反発を食うというので、農協に管理をすると、そして農協がこの土地をうまく管理するなり、また、他に栽培希望のある人に管理耕作をさせる、こういう仕組みも講じてございます。特に、最後に御指摘のありました麦類について、一生懸命つくったらアメリカからまた外圧でやられてしまうんではないかという御指摘がありましたが、そのようなことは、アメリカからもっと麦を買えとかいうようなことはいままで聞いておりません。いま買っておることについてありがたいということは聞いておりますが、麦をもっと買わなければけしからぬというようなことは今日までも来ておりませんし、今後も日本で米を転換してつくった麦がけしからぬというようなことはないであろうと、こう思っておるところでございます。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 ないであろうというお見通しでなく、そういうことを迫られてくるときには断固として日本の自給率を高めるという姿勢にお立ちいただけますかということです。
  198. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ないであろうし、もし万が一あった場合にはそのような姿勢で、わが国の生産体制に内政干渉してもらっては困るということで断じてはね返すつもりでございます。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 兵庫県では以前多くの農家が麦をつくっていたわけです。しかし、現在はがた減りをしております。昭和四十年には二万一千二百ヘクタール作付されていたんです。ところが、五十年になるとわずか六百三十一ヘクタールと、三十分の一の減少なんです。原因は収益性が低いとか、それから作付面積が零細で機械化が困難だとか、あるいは水稲の田植え時期が早まって麦の収穫期と重なるとか、あるいは収穫期が梅雨で作柄が不安定で、年ごとによって変動が大きいとか、こういう原因があるわけですけれども、これは政府が麦の価格を低く抑えて、技術研究、こういうものをやってこなかったという私は結果であろうと思うんです。  まず、第一点をお伺いいたしますけれども、政府は、麦の収穫期が田植えとか、梅雨とかに重なるために麦の転作について踏み切れない、こういう農民がいるわけです。こういう品質改良を手がけるべきだと私は考えますけれども、研究、改良のお考えがあるのかどうか、なさっていらっしゃるのか、この点をまず第一点にお伺いいたします。  それから第二点です。  兵庫県の場合は麦の反収が平均より下回っておりますので、転作奨励金とそれから転作の計画加算金、これを合わせてやっと米並みの収入になるわけです。個人転作の五万五千円では採算がとれないわけです。ですから、一体奨励金というのはいつまで実施なさるおつもりなのか、あるいは将来とも、内外の環境の変化にかかわらず、最低米並みの価格保証をしていくというのが私は基本的な姿勢であろうと思うわけですけれども、こういうことをおやりになっていただけるかどうかということをお伺いいたします。
  200. 北野茂夫

    説明員(北野茂夫君) 麦の研究についてお答え申し上げます。  国内麦を振興するためには、夏作物である水稲との作期の競合とか、あるいはただいま御質問にありましたように、梅雨との関係等を調整する必要がございますので、わが国におきます麦作の安定の基本的な問題は、水稲との競合、あるいは水稲と申しましても田植えとの競合、あるいは梅雨との競合を避けるということでわせ化ということが明治以来の一貫した方針でございまして、常にわせ、良質、多収ということを目標に、特に、昭和の初年以来、麦につきましては大々的な試験研究を実施してまいっておりまして、非常に成果が挙がっておりますが、現在のわが国の小麦というのは、世界的に見ますと、もうわせ化の限界に来ているわけでございます。ですから、これ以上わせにするということは非常に困難でございますけれども、現在日本各地に広まっております農林六十一号という小麦を基準にいたしまして、九州では八日、関東では五日ぐらい早めるというのが目下の目標になっておりまして、北は北海道あるいは東北農業試験場、農事試験場、その他地域の試験場、あるいは都道府県の試験研究機関、総力を挙げて良質なわせの麦の品種改良をやっているわけでございます。  現在のところゴガツコムギとかあるいは、サキガケコムギとか、そのようなわせ化の小麦も育成されておりますが、多くの人の意見によりますと、一日わせ化すると十アール当たり十キロ減収する、そういうような収量の問題、あるいはわせ化したために早く茎が伸び始めますので、凍霜害に遭って結局は減収もするし、晩生化してしまう、そういうような問題がございまして、一概にわせというものをこれ以上進めるということは非常にいま困難な状態になっております。  しかし、ただいまお話のありましたように、水稲との関係等を調整する上ではどうしてもわせ化する必要がございますので、現在、世界的にわせの遺伝子の収集をし、品種改良の材料にするとともに、積極的にそのような品種の早急な育成を努力しておりますが、小麦でないビール麦であるとか、あるいはその他の麦についてはわせ化しておりますので、積極的にやっております。  それからもう一つは、麦ばかりではなくて、水稲の方も、稚苗ではなくて中苗の移植というようなことを考えましてお互いに稲と麦で作期の調整をしたい、そのように考えております。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 大豆についてちょっとお伺いいたしますけれども、大豆についても、収穫機、それから脱穀、こういう機械がないと収穫どきにほとんど手仕事でやらなければならないというふうな状態があるわけです。しかも、現在の収穫機といいますのは、兵庫などに多い狭い畑、こういうところでは不適当で使えないわけなんです。農林省は省力化のための研究をすると、こういうふうに言っておられますけれども、畑の実情に合った機械でなければだめなわけなんですけれども、機械開発をどのように進めていらっしゃるのかというふうなことを、今度は簡単にお答えいただきとうございます。
  202. 北野茂夫

    説明員(北野茂夫君) 大豆の機械化栽培につきましては、農業機械化研究所におきまして施肥播種機並びに収穫機等の開発をやっておりまして、現在すでに実用にたえる試作品が作製されております。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 野菜なんですけれども、これはお米とか麦などに比べますと大変な労力が要るわけです。だから兼業農家が多くなっている現在で、野菜づくりを奨励して振興するというのは、これは大変な仕事だろうと思うのです。しかも、野菜づくりで安定した収入が得られるか、販路が開けるか、こういう経営上の不安というものにこたえていないわけですね。こういうものは不安がたくさんあるわけなんです。政府は現在野菜の価格補てんをしておられますけれども、保証基準額のいわゆる頭打ち、足切り、これを是正してほしいという農家の声が非常に強いわけなんです。特に価格保証を受けようと思っても、一定規模以上でないと産地指定が受けられない、指定産地にならないわけですね。今度の転作で野菜づくりを始めたとしても、指定産地でない、こういうことで価格保証が受けられないというふうなことが起こるわけなんです。転作についても消極的になってしまうというふうなことにもなりますので、私は野菜の転作の実情に即して、やはり基準よりも小規模であっても、指定産地と同じように価格保証が受けられるような弾力的な運用が望ましいと思いますが、こういう弾力的な運用をお考えいただけませんでしょうか。大臣いかがでしょうか。
  204. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) 野菜の指定産地の指定要件でございます作付面積規模の御質問でございますが、これは当該産地が将来とも高能率な集団産地になると見込まれるように、そのような要件で設けておるものでございます。その運用に当たりまして、いま弾力的なというお話ございましたが、作付されておる圃場がまとまって一定の規模があることを要件にしておるものではなくて、出荷単位で見ましてまとまりがあれば、そのような圃場が分散しておっても集荷の範囲としてまとまりがあれば対象にするという運用をいたしております。  今回の転作によりまして、この指定産地制度を大いに活用を図ってまいりたいというふうに考えておりまして、いま申し上げましたような基準で要件を満たしており、また満たす見込みが確実である場合には、積極的に指定産地として指定をしてまいりたいというふうに考えております。
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣にお伺いいたします。  今度の転作は減反の不足分を翌年の目標に加算する、こういうペナルティーが課されております。これは転作に対する条件整備がきわめて不十分だというふうな中で、減反、転作だけはしゃにむにやるというふうな、政府のいままでの農政の欠陥、それを農民にしわ寄せするものだというふうに私は思うわけです。転作条件の整備を私は急がなければいけないと思いますし、農民の合意を得るような民主的な話し合いの中でこういうものは行われなければならない。ペナルティーをかざして稲転をごり押しするというのは農民の不団結、いがみ合いを招くわけなんです。  ですから、農政の基本というのは、これは農民の声を尊重するということから始まらなければいけないと思うのです。ですから、日本の農業の発展、それから食糧の自給率の向上と、そして農業の経営の安定、こういうものを本当に考えられる、日本の農業の将来を真剣に考えられるというふうな立場に立たれるなら、安易な力づくの行政を私はやるべきでない。農民を信頼されて、じっくりと腰を据えた行政をやって農民の声を尊重し、農民にこたえていくべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがお考えでございましょう。
  206. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに、今年度生産調整ができない分を翌年また責任を持ってもらう。これがペナルティーと言えばペナルティーかもしれませんが、私どもはペナルティーとは考えておらないのでございます。どうしても百七十万トンの生産調整をやらなければ食管制度そのものがおかしくなるというぐらい絶対要請であるということでございますので、これはぜひやってもらいたい。  それからもう一つ申し上げたいのでありますが、農政が悪かったかどうか、いろいろ批判のあるところではありますが、この生産調整は、全部が政府の責任であるということではなくして、やはり農民と政府と、米の消費拡大については実は国全体の問題だというぐらいで考えるべきであって、これはせひとも農業団体との間でこれだけはやらなければならぬということで、ともに責任を持っていただきたいと、こう思う次第でございます。  なお、これを翌年に回さないということになれば、生産調整が喜んでやっていただける仕組ではございませんので、この仕組みそのものが、やる人がなくなってしまうということにもなりますし、またどうしても先ほど来お話があったように、つくるものがないじゃありませんか、土地条件がそうじゃないじゃないですかという方には、管理転作と称して、農協にその土地の管理を委託する、その方にも奨励金を差し上げる、こういう仕組みにもなっておりますので、ぜひとも御協力をいただいて、このむずかしい問題をともどもにやっていく、こういうことで御協力をいただきたいと思う次第でございます。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 喜んで転作をやる人がないからこそ、私は、じっくりと農民の声に耳を傾けて民主的にこういう物事をおやりにならないと、将来に禍根を残すのではないかということを主張しているわけです。ぜひそういう立場にお立ちいただきたいと私の方から御要望申し上げます。  次に、私は質問を変えまして、輸入牛肉の問題についてお伺いいたします。  輸入牛肉の流通をめぐって、いま各方面からさまざまな疑惑が提起されております。この疑惑の主な点と申しますのは、第一点は指定店割り当て分の一部が横流しされ、指定店にはわずかな量しか回っていないというふうな疑惑です。  第二点は、全国食肉事業協同組合連合会――全肉連ですね。これと、それから全国同和食肉事業協同組合連合会――全国同和食肉です。また関西主婦連、この割り当て分の一部が小売店で販売されずに、食肉加工メーカーなどに横流しをされているのじゃなかろうかという疑惑です。  それから第三点は、食肉流通界と政治家との癒着もうわさされているわけです。  第四点は、輸入牛肉を仲間うちで取引をして値段をつり上げる肉転がしがやられているのじゃないか、こういう疑惑なんです。特にチルドビーフについての疑惑が多いわけで、兵庫県でも、神戸の市議会で、食肉問題緊急対策委員会、これを設置してまで調査をしているわけです。神戸では、神戸市営の食肉卸売市場でただ一つの卸売会社である神戸中央畜産荷受会社の社長が市場内の売買に加わる団体の会長を兼ねている、こういうことが判明して、買参人の資格を取り消しするという措置がとられました。  農林省は、いま流通経路を見直して疑惑が生ぜぬようにしてほしい、改善すべきだという声が大変強いわけですが、この声に対してどのように対処をするおつもりなのか。同僚議員にいままで御答弁なさったその重複は避けて、私はいまの私の質問にお答えいただきたいと思います。
  208. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 輸入肉の放出につきましては、フローズン、冷凍された肉と、それからチルドとの両方があるわけでございますが、前者、冷凍肉につきましては、これは市場を経由して競りでもって流す、これを原則としながら、一部全国団体を中心として十八団体にこれを売却する。その際は入札制度でこれを売るということにいたしております。それからチルド肉につきましては五団体と、それから指定店、これに対して直接売却するというやり方で、これは入札ということでなしに、割り当てで数量を決めて売却いたしておるわけでございます。  前者の冷凍肉につきましては、これは入札ということで流れるわけでございますから、数量はやはり高い価格で入札したものによけい回るということになるわけでございます。  それからチルド肉につきましては、これはかつてチルド肉がなかなか売れなかった、評判がよくなくて非常に売れなかったという時代もあったわけでございますが、その後市場開拓に努めてまいりました経過もございまして、当初から御協力いただいている、また、チルド肉について公正にこれを取り扱っていただいているところの五団体と指定店にこれを売っているわけでございます。輸入肉、特にチルド肉につきましては、これが価格的にも安いということから、引く手あまたといいますか、欲しい人はたくさんおるわけでございましょうが、私どもといたしましては、やはり原則的には全国を区域とする食肉関係団体、一部例外的に、直接精肉を系列において扱う団体というようなことで関西主婦連のようなものを入れているわけでございますが、これは先ほども申し上げましたように、当初の需要開拓というようなことの経緯もあって入れているわけでございます。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういう経過は結構ですから、私の質問の疑惑にどう答えるのかということを具体的に答えてください。
  210. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) そこで、私の申し上げた中にも出ていると思いますが、そういう経過もあって、いろいろ誠実に努力していただいてきている団体に対し、あるいは指定店に対して出しておるわけでございまして、そういうことをめぐって疑惑がある、あるいは横流しをしているんじゃないかということの批判のあることを承知いたしておりますが、私ども具体的にそういう事実があったということまでは把握いたしておりません。今後ともそういう、実際にそういうことが起こるのはもちろんでございますが、起こらないまでもそういう疑惑を受けるようなことがあってはならないと考えております。そこで神戸の問題等もお話出ましたが、直接にはそれぞれの地方公共団体にもモニターによる監視等をお願いしておりますし、今後私どもといたしましても、直接にも間接にもそういう問題の起こらないよう、また疑惑の起こらないようさらに十分な監督指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の聞いたことにだけ御答弁いただいたらいいわけで、いま私の質問に対してお答えいただいたのは、疑惑が起こらないように善処してまいりたいと、それだけなんですよ。それでは困るわけなんです。  神戸市では、指定店に対して事業団の割り当てが少ない、途中で横流しをされているのではないかと、こういう疑惑に対して二回の調査を行っております。一回目の調査では、指定店一店当たりの割り当て量が月二十から三十キロほどしかなかったと、その上に、サーロインとかリブロース、ヒレ、こういう良質部位の割り当てが全くないというふうな状態で疑惑を呼んだわけです。その後二回目の調査では正常に戻ったと、こう言われております。指定店への割り当て量も平均が月百十三・九キロですか、こういうふうになったと。しかし、だからといって、一回目の調査以前の指定店への割り当て量、それから割り当て部位の疑惑が解消したものではないわけなんです。で、わが党の浦井議員が十二月に質問趣意書を出しております。これに対して農林省は、今後調査を行い適切な措置を講ずると、こういうふうに答弁をなさっていらっしゃるわけなんです。ところが先ほどの御答弁を聞いておりますと、そういう疑惑がないようなお答えなんですけれども、一体いままでどういう調査をなさったのか、いつまでにどのような調査をされようとしているのか、こういうことを端的にお答え願います。
  212. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 神戸市における指定店に対する畜産振興事業団からの牛肉の売却でございますが、これは一店当たりで見ますというと約百十キログラムが渡るべきところでございました。これに対して神戸市当局が調査いたしたのでございますが、当初の調査はある特定の日をとった販売量を調査したのでございますが、これが配分量に達していないという批判があったわけでございます。質問趣意書でもその点に触れておられたわけでございます。  私ども農林省におきましても、早速神戸市当局の担当者を呼んで調査の内容等を含めて実態を聞き取りいたしました。その結果、いま申し上げましたように、その調査は一日限りの扱い量を調査したものであるというようなことで、その時点だけの数量をもって、これは機関を通じて販売されるものでございますから、各店舗の割り当て量が必ずしも適正に売られていなかったということは言いがたいと思うのでございます。  それから、神戸市はその後こういう私どもの再調査の要請もあったものでございますから、指定店における販売量の再調査を行ったわけでございます。その結果を私どもの方にも報告してまいっておりますが、調査対象三十二店のうち十八店から回答を取っております。ほかの十四店は責任者がいないとかということで聞き取りができなかったそうでございますが、それの結果を見てみますというと、全体として売り渡し量、販売量、それから価格についてもおおむね適正にいま取り扱われているということを承知いたしております。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 調査したのが一日だけで、その調査のとき一日だけの調査だからおかしくないんだというふうなことでは、私は御答弁にならないと思います。一日だけおかしければこれだけたくさんの疑感というのが出てこないわけです。去年じゅう本当に牛肉の問題についてはたくさんの疑惑がマスコミなんかでも提起をされているわけです。そういうふうな安易な受け取り方をしていただいたら大変なことだと思います。私は輸入牛肉というのが、たとえどのような段階であっても、やはり横流しとか、肉転がし、こういうふうなことで小売店にはわずかしか出回らない、価格は高騰すると、こういうことがあっては好ましくないと思うわけなんです。畜安法の精神から言っても、農林大臣が就任後に御発言なさっていらっしゃる所信表明から言っても、牛肉の根本的な見直しを図る決意をおっしゃっているわけですけれども、輸入牛肉についてのいままでの疑惑というのは全部解明をしていただかなければならない。それでなければ国民の疑惑というのは、いまが正常になったからといって晴れるものではないわけなんです。そして疑惑と、どこに疑惑があったのか、どこに欠陥があったのか、そういうことを明らかにしない限り、正しい方策というものは打ち立てられないというふうに思うわけです。  それなのにいまの御答弁も全くけしからぬ御答弁だと思いますし、浦井議員の質問趣意書に対しても、神戸市議会の参考人質疑の中で提起された疑惑、それから兵庫県食肉卸事業協同組合の買い付け量――浦井議員が提起している疑惑ですね、これは兵庫県の食肉卸事業協同組合が買い付け量を利権化して横流ししているのではないかというこういう疑惑に対して、協同組合が組合員にさえ分配していればその先は牛肉がどのようになろうと関知しないというふうな御答弁なんです。これは横流しの疑いがある限り中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合であろうとなかろうと、いかなる業者団体であろうと、直ちに調査をして疑惑を晴らすのが私は農林省の国民に対する義務ではなかろうかと思うわけです。  私はここに一つの資料を持ってきております。これは神戸港渡し輸入のチルドビーフについて、団体別随契分ですね、これは全国食肉事業協同組合連合会の関係の分というので、入港月日、本船名、それから数量とか輸入商社とかいうふうなことでここの手元に資料があるわけです。これは神戸の市議会の参考人質疑の中でも一部言われております。これは参考人質疑の中では、日畜が貿易した肉が神戸中央畜産株式会社に入り、それがまた日畜に返ってくる。したがって、組合員の手には渡らないというふうなことが言われているわけですし、一部週刊誌の中でも一、二のケースが報道されておりますけれども、私の方にももたらされた情報、一、二例を挙げさせていただきます。  これは、輸入商社と言いますのは丸紅です。これは日も、あるいは入ってきた本船名も数量も、すべてわかっておりますけれども、これはあなた方の方で御調査をなさればすぐにわかることですので私は一応伏せて、どういうルートで流れているかということを申し上げます。輸入商社が丸紅です。そして丸紅から事業団に行って、全肉連に行って、兵庫県連に行って、日畜に行って、そしてある冷蔵に入庫しております。それから日本食肉市場共同株式会社関係です。これも輸入商社と言いますのがシンガポール産業です。これはシンガポール産業株式会社から事業団に回り、日本市場共同株式会社、それから神戸中畜ですね。それから日畜、日本ハムと、全量がこういうかっこうで流れて、ラストにも全量が行っているわけなんです。  こういう問題が指摘されているというふうになれば、私は当然お調べにならなければならない。それがあたりまえだというふうに思いますけれども、一体いかがお考えなんでしょうか。大臣にお伺いいたします。
  214. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) いや、実は、私、初めて聞いておりますので、事前にでもあればまた私も勉強してまいりましたが、いろいろ問題はありますが、私としては不正なことがないように、過去についてはもちろんのこと、今後について最善を尽くしたい。実態については事務当局から答弁をさせます。
  215. 杉山克己

    政府委員(杉山克己君) 神戸市の実態がどうであったかということについて、私は、当初の調査は一日限りのものであったということを申し上げました。実際にどれだけ売られているかということは、期間を通じて平均してどれだけかということで判定すべきだと思います。ある日多くてもある日少ない。その日のやっぱり交通事情とか販売事情によって扱い量に差が出てまいります。その点、当初の調査はパトロールというようなことで、実質的なそういう期間的な調査よりはある時点の調査ということに重点が置かれたことかと思いますが、特定日しか調べていなかった。その点、二度目の調査では、十一月の月中の調査ということになっているわけでございます。そういう意味で、私、二度目の調査でもって前の調査が間違っておったということを申し上げたわけではなく、ある期間をカバーし得ているから二度目の調査の結果を申し上げるべきであるというふうに考えて御説明したわけでございます。  それから兵庫県食肉卸事業協同組合、ここで扱っている肉が横流しをされたのではないかという二番目のお尋ねでございますが、これは私先ほど御説明申し上げましたように、枠を割り当てて売却しているそのチルドビーフではなくて、フローズンの、冷凍肉の方でございます。これは先ほども御説明いたしましたとおり、入札でもって売るということにいたしておりますので、やはり落札価格が高ければそこによけい落ちる。そこから傘下の業者に売られていくということになるわけでございまして、この売り方について、枠を割り当てて特定のところにということではございませんので、横流しということはそれ自身としては当たらないのではないかと思うわけでございます。ただ、当然こういう今日のような、牛肉について適正な流通を図り疑惑を受けることのないようにするということは当然でございますから、私どもそういう輸入肉について行き先をきちんとフォローして、不正とかが起こることはもちろんでございますが、そういう疑惑を受けることのないよう、大臣からも申し上げましたとおり、最善を尽くしてこれを監視してまいりたいと考えております。  それから、丸紅どうのというようなことで、商社系列から横へ流れたようなお話もまた別途ございましたが、この個々の実態につきましては、私の方でも事業団にさらに聞き取りをして調査してまいりたいと思っております。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 扱い量の問題をおっしゃいましたけれども、差がはなはだし過ぎるわけです。しかも、疑惑があるから調査をやっているんですよ。すでに疑惑がいっぱいある。そういう中で調査がやられているんです。ですから、そういう受けとめ方では私はだめだと思うんです。過去の疑惑を晴らすと大臣もおっしゃっているんです。それが晴れない限りは国民は納得しないわけなんです。ですから、私はやっぱり、いかにここのところで輸入枠をふやしてみたところで、こういう流通経路をこのままに置いておいては、値段が下がるというふうなことは期待できないわけです。ですから、やはり疑惑を招かないようにするためには、過去の疑惑は全部晴らす、そうして流通経路を正していく、こういう基本姿勢を持っていただかなければならない。いまのままの疑惑に満ちた流通経路でいいものかどうかという点をよくお考えになっていただきたい。そういうことで、私はいままでの疑惑は晴らし、そうして流通経路を正していくということで、そういうことをやっていただけるかどうかという大臣の決意をお伺いして、私の質問を終わります。
  217. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のとおりでございまして、過去についても、また今後についても、そういうことのないように最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  218. 三治重信

    ○三治重信君 大分時間が長くなりましたが、きょうは米の過剰処理対策で大転換をやらなくちゃならぬということでありますが、そういうことから、関連して食管会計の問題をお聞きしたいと思っております。  四十九年度の決算の報告でも、食管の赤字が全体として九千五百一億円、約一兆円になんなんとする。現在でも大体そう。それだけの赤字を食管で出していながら、なおかつ、また米の転換対策のために何千億か使わなければならぬ、こういうことに対して、一般、食管会計の今後の処理をどう考えておられるか、こういう問題を中心にしてひとつ御答弁を願いたいと思いますが、米の買い入れ価格と売り渡し価格の差は、これは年々拡大している。その中で、最近、米の買い入れ価格より売り渡し価格を高めておりますが、そういうことで、今後さらにこの買い入れ価格と売り渡し価格の差をとことん縮めていく考え方かどうか。
  219. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) これはきわめて大事な問題でございまして、食管の赤字が九千億、これが全部米の逆ざやとは申しませんが、いずれにしても、後ろ向きの、農家の人からも喜ばれない、消費者の人からも喜ばれない、しかも国民の税金が約一兆円に近いものが使われている、これは問題があるんじゃないか。特に農家の将来を考えるならば、こういった金は農家の生産者対策に回していくことの方がむしろ長期的に農家対策になるのではないか。こういう点に着目いたしまして、昨年の米価から少なくとも逆ざやは不拡大、そうして四、五年のうちにこの逆ざやは解消する、こういう基本方向を打ち出してございます。したがって、生産者米価は所得補償方式で決めていかなければなりませんが、政治加算をするようなことの、過去のようなことのないように、これは慎重に対処すると同時に、消費者米価決定に当たっては、解消方向――もちろん家計、台所に急激な変化を与えてはなりませんが、急激なことはできないにしても、方向としてはそういった、これを解消して、その解消分は農政費に充てる、こういう方向を守っていきたいと思っておるところでございます。
  220. 三治重信

    ○三治重信君 そういう方向になるといたしますと、ここに問題は、売り渡し価格をどんどん――いまでもまだ大分差があるわけですね。それで、大体そうすると、これは、四十九年度でも政府の買い入れ価格が玄米六十キロ当たり一万三千六百十五円だと。それが四十九年十月一日から、新米穀年度から一万二百五十六円に上げて、このときでも三万四千円からの六十キロ当たりで差があると。こういうのをいつまで、大体何年度までに解消する目算でおられるのか。
  221. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) あとまあ三、四年のうちには解消したいなあと、こう思っておるところでございます。
  222. 三治重信

    ○三治重信君 これは事務当局で結構ですが、この四十九年のとき、これだけの価格差を約三万四百円ほどの補給を受けていながらでも、このときの一般の会計で、財政負担が五千五百円と、こう言うのですが、それをやはり最終的にはこの米のやつについてはほとんどゼロにすると、三、四年でゼロにすると。いま現在、今度のこの五十三年度ですか、はずっと、いままで資料を四十九年度中心にしていただいたのでは、四十九年度で五千五百円、五十三年度はどれぐらいになっていますか。そしていま大臣が言われた、三、四年たって買い入れ価格と売り渡し価格をゼロにしていくと、管理費、流通費、保管費とか利子とかいうことになるわけですが、それだけで大体いけるかどうか。
  223. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 先ほど大臣からお答えいたしましたように、昭和五十一年度からおおむね五カ年間を目途にいたしまして、売買逆ざやの是正を図っていきたいというのが現段階におきます政府の考え方でございます。五十二年の米価で見ますと、売買逆ざやが二千四百六十一円ございます。これをあと三年間ぐらいを目途にということで考えておりますが、その今後の経済情勢なりあるいは家計消費の動向等も見まして、機械的に毎年その三分の一をやるというような考え方を固定的に持っておるわけではございませんが、情勢を見ながら一応その辺を目途にしてとりあえず売買逆ざやを解消することを考えておるわけでございます。もちろんコスト逆ざやは売買逆ざや以上にあるわけでございますが、当面は売買逆ざやの是正により、食管会計の健全化ということを目指して努力をしておるところでございます。
  224. 三治重信

    ○三治重信君 そういう前提でいくと、結局米の値段が物すごく高くなるわけですね。現在ですらその米の消費がだんだん減ってきつつある。米の消費が減るのは、生活水準の向上によって主食の消費量の減と、一般的な減というものもありますけれども、それも一つあるけれども、さらにこういうふうにこの逆ざやを解消することによって消費者米価をどんどん上げていくと、現在まで大分いわゆる米からの逃げが行われているのを、さらに米を値上げすることによって消費がさらに米から離脱するのを追い打ちをかけることになりゃせぬですか。それに対する対策はどう考えておるか。
  225. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 米の消費量は、最近の数字で見まして、五十一年度の数字で国民一人当たり八十六・二キロという数字が出ておりまして、前年に比べましても約二キロ減っております。これはもちろん価格関係によりまして、特に麦製品との価格関係もある程度の影響はございますけれども、単なる価格関係だけによる減少とばかりは言えない面がございまして、やはり食生活のパターン自体が多様化、あるいは裕福化するとよく言われますように、西欧諸国におきましては主食的な概念がないということをよく言われますけれども、そういう方向に近づいてきておるということのために減っておる面がございます。その中でも、特に若い、若年層等におきましては麦製品の方に嗜好が向くという面は、現在までの傾向としてはこれは否めないところでございます。
  226. 三治重信

    ○三治重信君 その生活程度の上がりぐあいによって、いわゆる主食の消費が減るということについては意見が一致しておるわけなんですが、それがまあ値段を上げることによってさらに拍車をかける。それの意味は、結局この食糧会計で、まあ麦も一種の食糧会計でやってみえますが、そうすると、その麦の価格の値上がり状況は、この米の値上がり、売り渡し価格の、また消費者価格の値上げ状況と対比してどういう推移になっており、また今後どういうふうに――まあ今後はわからぬわけですが、いまの、現在、前から価格がこう開いていると思うのですが、価格は最近米の方を先に、逆ざやをおさめるために上げていって、そうするといわゆる麦の売り渡し価格の方が、一時食糧の非常な世界的な不況ということで急激に小麦の値を上げたことがあって、この四十九年度はそのためにえらい小麦の輸入価格、この輸入麦の勘定でえらい赤字を出しているようですが、その関係説明をひとつしていただきたい。
  227. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 麦の価格につきましては、御承知のように、四十七年以降世界的に麦の需給が逼迫をいたしまして、国際価格が非常に上がったということがございまして、政府の売り渡し価格も、家計への影響等も考えましてなるべく引き上げをしないようにというようなことをしてきましたために、四十九年の例でいきますと、一千四百億ぐらいの財政負担を麦勘定においてやったこともあるわけでございますが、最近は国際価格が非常に低落してまいっておりますので、今年度はかなり黒字が出る見込みでございます。  そこで、もう一つお尋ねの、米の価格と小麦の価格との関係でございますが、これはまあ消費影響がございますのは、政府の売り渡し価格直接ではございませんので、むしろ消費者価格、小麦粉の価格なりあるいはパンなりうどんなりというものとの関係でまあ消費影響を受けてくるということになるわけでございますが、米の消費者価格、これ百グラムにいたしまして現在、五十一年の例でございますが、三十二円十七銭という数字が出ておりますが、これは小麦粉のそれ、五十一年の価格は十四円七十七銭、これは米に対しまして小麦粉の消費者価格は四五・九%でございます。これは四十年ごろは六〇・九%ということで、小麦粉の価格が最近は、当時の四十年ごろに比べまして割り安になってきていると。六〇・九から四五・九でございますから、そういう傾向が見えます。  ただ、これは小麦粉でございまして、消費者も直接小麦粉を買うことはもちろんございますけれども、それを一般的に主食として用います場合には、パンなりめんなりということでございますが、そのパンなりめんなりを比べてみますと、四十年と五十一年比べてみますと、食パンの米の消費者価格との価格比ですが、これは四十年には九一・八%でございます。それが五十一年には八九・一%ということで、これにつきましては小麦粉ほど割り安になっておらないと。同じようにうどんの例で見ますと、四十年は米に比べまして九六・二%の価格比でございましたが、五十一年度は一〇三・三と、逆に高くなっておるというような面がございます。小麦粉は割り安になっておりますが、製品におきましては、物によっては割り高になっている面もあるというのは、これは加工費が入るわけでございます。  その辺から見ますと、必ずしも消費段階で競争関係にございます米の消費者価格と麦製品の価格関係というのは、麦製品が非常に割り安になっておるということはないという現状になっております。
  228. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、農林省の方は、そういういま実態の推移の報告なんですが、主食の食糧の価格政策として、どこを均衡価格として、米と小麦の消費の代替効率の消費価格の比率をどこをどういうふうな基準に置いて価格政策をやってきたのか、あるいはそういうことは別に大して重点を置いてやってこなかったのか、そのいきさつをひとつ説明してください。
  229. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) これまでの経過は申し上げましたけれども、私どもといたしましては、政府の売り渡し価格についてでございますが、現在、御承知のような米の過剰問題をいかに処理するかということが農政の最重点課題になっております。先ほど言いましたように、必ずしも消費に価格のみが影響するわけではございませんけれども、長い目で見ればやはり価格は影響するということは当然でございますので、売り渡し価格におきまして米の消費拡大を図るというような農政の基本的な方向に即して考えますれば、麦製品の政府の売り渡し価格はかつてに比べまして割り安になっておりますので、その点は時間をかげながら是正をしていくということが農政の基本方向に即した姿勢ではないかというように考えております。
  230. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、消費者価格においてはそれほどの均衡価格の変化はなかったけれども、政府の売り渡し価格においてはいま大分割り安になってきたというのは、結局いままでそういう米と麦との、小麦との、いわゆる米とパンとの、あるいはうどんとの代替効率というものを余り考えていなかったと言ってもいいのか。それとも、その比率を今後――聞きますのは、こういうことなんです。私は一時、小麦が四十六年ごろ大変上がったときには、二倍半ぐらいに上がったですね、一遍に一年ぐらいに。そのときには、非常に食糧不足ということで、国際的な穀物である小麦が不足する、こういうことになって、今後も値段が上がるだろうということだったんですけれども、どうもいま見ると、必ずしもそれは、やはり世界の食糧事情を見ても、経済的なことを考慮していくというと、必ずしもそう急激に食糧の不足状態が、気候変化が出れば別として、経済的には余りないじゃないかと。こういうことを見ると、外国一般の穀物の価格が、今後、あの四十六、七年のように今後とも上がるとか、一時騒がれたような世界的な食糧の価格が危機というものによって騰貴するということが余り予想されないじゃないかということが前提になって聞いているわけなんですが、またそういうことが予想されるからという見込みで食糧政策を立てておられるのかということもありますけれども、そういうことからいきますと、私はやはり小麦が世界的な食糧の需給関係の価格に非常に鋭敏に響くということになってくると、米と小麦との売り渡し価格について、やはり相当国民の選択を、今後、これだけ犠牲を払って米の消費の需給を、強制的に需給をアンバランスさすわけですね、生産を抑えて。それだからには、米の消費をできるだけふやしていくために麦との価格差、価格のプロポーションを、どっちかと言えば小麦への代替を押し気味に、むしろ米の消費がふえるような対策に、ことに価格政策も考えなけりゃならぬじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  231. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) ただいま先生のおっしゃられました、米の、あるいは食糧の世界的な需給についてでございますが、私どもといたしましては、気象条件のことは毎年の変化がございますから、これは別にいたしまして、短期的には、確かに四十七、八年、九年ごろに比べまして、最近は国際価格は需給も緩和いたしまして、価格が落ち着いてきているということはそのとおりでございますけれども、やはり食糧政策を考えます場合やや長期に見なければいけないということになりますと、やはり人口増の問題なりあるいは飼料用の穀物の消費の増大の問題等考えますと、私どもといたしましては、長期的に見た、五年なり十年あるいはそれ以上というような長期の見通しといたしましては、国際価格必ずしも楽観できない、需給についても楽観できないということを前提にいたしまして食糧政策を進めていく必要があるのではないかと。  そういう点からいたしますと、米の過剰問題にも対処する意味からいたしまして、やはり米の消費拡大を図って、食糧の総合的な自給力を高めていくという中で米の消費の拡大も図っていくということになりますれば、米と麦との政府の売り渡し価格におきましては、現在よりは米の売り渡し価格が割り高であるというような関係は、時間をかけながら是正をしていくということが必要ではないかというふうに考えます。
  232. 三治重信

    ○三治重信君 そうしますと、大臣、いま麦の輸入価格が、円高で、さらに国際価格において日本だけ円高になるからなおさら安くなる、そうすると、そういう黒字が出るからまた麦を安くせいという意見が非常に出てくるんだろうと思うんですが、いま食糧庁長官がおっしゃったように、そういうことでなくして、やはり米の消費の維持、拡大のために、麦との価格の比率は、たとえ輸入外麦がいかに安く、円レートや国際需給によって安くなっても、それは黒字として処理し、国内におけるそういう価格というものは、国際価格が安くなっても小麦の値段は安くしない、こういう方針でいかれるわけですか。
  233. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 麦の値段は、米価に比較して最近、消費段階は別としても、小麦そのものではかなり差が開いてきた。そこで、これを格差を是正して米の消費拡大に役立たせようと、こう思ってここ二、三年運用してまいりましたが、昨年暮れ、実は麦価決定の際、御指摘のように米の消費拡大のためには引き上げるべきであると。そして、この差を縮めて、麦よりはむしろ米へという姿勢を示そうと思ったんでございますが、一方では、円高による国民のメリットがないじゃないかと、政府は円高のメリットを消費者に与えよと、これがまた非常に強い声でもございましたので、これにもこたえなきゃならぬというところから、昨年は据え置きということで処理をいたしましたが、円高の問題も落ち着いてまいりました段落においては、また五十三年度の消費者米価を決めなければならないころと相前後して、関連をしてやはりこの問題は引き上げて、差を縮めるという方向で処理をしていきたい、こう思っております。今年度もそうであるばかりでなく、長期的にこれはだんだんつり合いをとって、米の消費拡大ということを、どちらかというと大事にしていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  234. 三治重信

    ○三治重信君 大体そういう方向にいかなくちゃならぬと思いますが、そういうことからいくと、何といいますか、小麦の消費団体であるパン協会とか、小麦粉の中に米の粉をまぜろとか、余り茶茶を入れるとまた変なことになる。むしろ価格操作というものを私は重点にして、その中で公正な消費の、消費者の選択に任すような政策をとっていただきたいと思うわけなんです。  そこで米の方も、どうも見ると生産者に対して、銘柄米奨励金とかそれから流通促進奨励金とかいろいろの奨励金をつけておられるわけですけれども、こういうものをつけるぐらいなら、むしろ食管の、食糧庁の方で、銘柄米とか、こういう米の品質によって売り渡し価格を違えるような、一つのいわゆる買い入れ業者の好みによって売り渡すやつが決められるような体制をとったら、どういう米をどれぐらいの量、いわゆる流通業者、仲買業者や卸の会社が買いたいのか、そういうことによってもっと品質による価格差を食糧庁でやる、あるいはそれができなければ、それを代理する会社をつくってやる、こういうふうにして、もう少し米の品質による価格差をつけぬことには消費においてもそれぞれうまくいかぬじゃないかと思うんですが、その点をどういうふうに考えるか。  その一つは、今度でも出たように、なぜ新米の値段をちっとも変えないで、古米のまずいのをまぜて、そして同じ値段で買えというのか、若干はまぜるといっても。そうすれば、新米の値段と古米の値段を格差をつければ、消費量はそう全体として変わらないわけなんだから、それは古米の方で損をして新米の方で高くして、全体としての値段は一つの標準価格でいくけれども、その中の価格、米の品質によって格差をつける態勢を食糧庁がもっとよっぽどやらぬと、消費の選択、米に対する消費はうまくいかぬじゃないかと思うんです。それの意見と、そういうことをぜひやらぬと、これは小麦でも、非常にそれぞれの品質によって値段をずいぶん小麦粉でも違えているわけでしょう。米の値段は政府が会計やっているから、政府が食管でやっているからといって、事簡単に全部一から十まで同じ値段で売ったり買ったりするだけしかやらぬというのは、ちょっと時代に合わぬじゃないかと思うんです。
  235. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 政府の売り渡し価格におきましては、銘柄米それから特例銘柄米、それから非銘柄米による差は現在もちろん設けておるわけでございます。新米と古米につきましては差を設けておりませんけれども、これは最近の技術で低温貯蔵の保管がかなり普及をしておりますので、これにつきましてはほとんど新米と古米と品質上の差異がないということもございまして差を設けておらないわけでございますが、先生があるいはおっしゃっておられますのは、自主流通米等につきましては各産地銘柄による差がずいぶんきめ細かく自由市場の中で形成されておるわけでございますが、そういうことが政府でできないかというようなあるいは御趣旨かと思うわけでございますが、これはやはり政府が売ります場合に、どうしても行政で価格を決めますということになりますと、売り渡し価格につきましても画一的になりやすい。きめ細かい基準、格差を設けることがなかなか技術的にもむずかしいということもございますし、それから買い入れ価格におきましても、当然きめ細かな、いま以上にきめ細かな差を設けなければいけないということになるわけでございますが、この点はこれまでやっておりまして、実際の運用上、政府が決めます場合には自主流通米のごとく自由な競争のもとにおいて決定される場合と違いまして、そういうきめ細かな格差を設けるというのは非常にむずかしいというところから、全体としては食管法の規制のもとにおきます自主流通米という制度を四十四年から設けまして、自主流通米につきましては消費者の選好に応じましてかなりの格差が設けられるというような方法で、ただいま先生のおっしゃっているような趣旨にこたえることにしておるわけでございます。
  236. 三治重信

    ○三治重信君 一つだけお願いします。もう一遍一つ。  いまそれが一般的な答弁だろうと思うんですけれども、私は自主流通米で、実際の市場価格でだんだん銘柄米なりいろいろ各産地によって実際の市場で格差の出た値段が出てくるわけなんだから、それを今度は食糧庁が見習って、その買い入れ価格からどういうふうな品質でするか、そういう実際に市場流通価格が出てきたんだから、それをやはりいままでは何も白紙のところじゃできぬけれども、今度は出てきたんだから、逆にそれに乗るような体制にして、したがって、食管は維持するにしても、たくさん消費するところの米はよくできるように、余り消費されないところは安く買い入れるというやつをだんだん食糧庁もやっていかぬと、産地ごとの格差なりそういうものによって、もう少し――米の生産制限をやっていくからには、やはりそこに生産努力なり生産の価格に反映するような、生産者に反映するような価格――流通を全部持っているわけなんだから、それの一部だけ、いいところだけ業界に渡すと言ってそれでぼうっとしていちゃいかぬと思うんだ。そのいいところを取り入れて、そうしてだんだんお役人がやる食糧庁でも、商社になった気持ちでやる体制をやらぬと、この食管会計というのはとてもじゃないが国民の信頼を得られぬようになると思うんです。よろしくひとつお願いします。
  237. 市川房枝

    市川房枝君 最初に私は、消費者の立場で実は輸入牛肉について伺いたいと思っておりましたけれども、いままでに同僚議員の方から質問がありましたのでそれは省いて、婦人に関係の三つの問題だけについて、農林大臣及び事務当局からお答えをいただきたいと思います。  第一番目は、現在の日本の農業は、五十一年の農林省の調査によりますと、農業従事者の六二・二%が婦人ですね。さらに基幹的農業従事者の五四・八%、これが婦人になっている。したがって、婦人が日本の農業を支えていると、こういうことになると思いますが、一体そんな国はほかにありますか。農林大臣はもちろんこのことは御存じだと思うんですが、まずこのことについての御感想を伺いたいと思います。
  238. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まさに御指摘のとおり、日本の農業は婦人によって支えられておるということも事実でございます。なお、特に最近は三ちゃん農業というようなことで、御主人が兼業に勤めるということになりましてからなおこの傾向が強いかと存じます。こういう例は世界であるかどうか。日本は確かに御婦人のお力をおかりしているということは事実だろうと存じます。
  239. 市川房枝

    市川房枝君 男の生産者の場合と女の生産者の場合とでは違いますね。農林省当局は一体その違いをどういうふうに認識しておいでになるか。これは事務当局からでもいいですけれども、伺いたいと思います。
  240. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) いま先生のおっしゃいましたように、農家の主婦の場合は、一般の農業に従事して仕事をしているほかに、やはり家事、育児などの一般的な家庭の主婦の面も兼ね備えているわけでございまして、比較的一般の家庭婦人に比べて労働時間も長くなっているわけでございます。それからまた、最近農業の省力化の進行する過程で、水稲、養蚕などでは比較的労働比率が下がってきておるわけでございますが、反面、ハウス野菜、施設園芸などで婦人の労働比率がまた高まっている分野も多くなってきているところでございます。
  241. 市川房枝

    市川房枝君 農業に従事しています婦人たちは、生産に従事するほかに、それと同時に主婦として家庭の責任を持ち、また母として子供の養育にも従っております。その結果、過労で、婦人の農業に従事している人たちのほとんど大部分といいますか、病気一歩手前の、いわゆる農夫症というのにかかっているということが農林省の御発表の数字でもうかがえるわけでありますが、こうした農業婦人労働者に対して行政としてどんな考慮を払っておいでになるのか、これも事務当局で結構ですが、伺いたいんです。
  242. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) いまおっしゃいましたように、確かに農夫症という病気が年々ふえてきているわけでございますが、農林省といたしましては、生活改善普及事業を通じまして農家生活の各分野におきます合理化を図っていくと、婦人労働の軽減、あるいは健康の保持等、そういうことを目的にいたしまして、農業者健康モデル地区育成事業というのも始めまして、農家の健康状態の調査あるいはその改善指導、あるいはまた農業団体を通じまして農業者の健康増進のための教育なり啓蒙、普及活動を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  243. 市川房枝

    市川房枝君 農蚕園芸局の下に生活改善課というのがありまして、婦人の課長以下婦人の人たちが熱心に努力していることはよく承知しています。また、昨年一月に政府が発表しました婦人の国内行動計画で、農村婦人の地位と福祉の向上のために幾つかの新規の事業が掲げられていることも承知しております。しかし、その事業を進めていくための婦人の生活普及員というのは、毎年、だんだん減らしていっているんでしょう。来年度も減っているらしいんですけれども、それでは進めていくことはできないのじゃないのかと。また、生活改善課一つだけじゃなくて、農林省全体として、私は婦人の働く人たちのことを考えるべきだと思うんですけれども、これは大臣からちょっとお考えを伺いたいと思います。
  244. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 改良普及員につきましては、これは農村婦人の問題だけじゃなくて、きわめて大事であるということで、昨年でありましたか、農業改良助長法でございますか、法の改正を行いまして、身分をしっかりし、そしてまた職務の内容も明らかにするということで、改良員の実質的な近代化、合理化といいますか、農業の中における位置づけというものをはっきりして、希望を持たせるように改善をいたしたところでございます。  なお、その中にありまして、生活改善を中心にして、幾つかの予算をきめ細かく新規でもとりまして、まだ年数が浅うございますから、全国的にそれほど目覚ましいものはありませんけれども、今後も改良普及員を指導督励して、生活改善、婦人の立場というものを守るために最善の努力をすると同時に、予算の措置についても前向きで今後やっていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  245. 市川房枝

    市川房枝君 生活改善課の担当しているその普及員の人員が、さっき言いましたようにだんだん減っていっているんですが、これは行政管理庁関係で、何%にいまなりましたか、三%ですか、減らしておいでになることは承知しているんですよ。承知しているけれども、これは農林省全体として考えるパーセントであって、だから農林省自身で生活改善課というか、婦人の農業者の問題を重要視してお考えくださるのならば、そこでは減らすのではなくてむしろふやすと。いや、ほかに農林省としては減らすべきところがあるんだろうと思うんですが、それはどこか申し上げないことにしますけれども、その点はどうですか。どうお考えになりますか。
  246. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) いま先生おっしゃいましたように、確かに毎年少しずつ減ってきているわけでございますが、これは御承知のように、例の五十一年の閣議決定に基づきます定員管理による行政の簡素化と、そういう一環としてやられておるわけでございますが、しかしながら、このことによって普及活動に支障のないように、予算面で自動車その他の機動力の充実、あるいは普及職員の資質の向上のための研修費、そういうものを組んでおりますし、それからまた、生活改善の課題をいろいろ聞かしていただくための収集協力者、生活改善の課題の収集協力者という方を御依頼いたしまして、いろいろその方々に集まっていただいて講習会をやったり、そのための経費なり旅費等の補助をやって、実質的に余り影響のないように予算面で措置をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  247. 市川房枝

    市川房枝君 第二番目には、第一に関連をいたしますけれども、農林省に勤務している婦人の公務員の数、男子との割合といいますか、それから管理職にいる婦人が一体どのくらいいるのか。それからまた、農林省内に設けられている調査会、審議会といったようなものに一体婦人の数がどれくらい入っているのか。ことに昨年の六月から今日までにおいて、一体ふえているのかどうかということを事務当局から伺いたいと思います。
  248. 松本作衛

    政府委員(松本作衛君) 現在、農林省の職員全体の数は、国有林野等の特別の職員を除きますと五万二千名でございますが、そのうち婦人職員の数は四千五百五十五名でございまして、約八・八%に当たっております。その中で、いわゆる管理職手当を受けておる管理職員は、試験研究機関も含めまして四十四名ということになっておるわけでございます。  それからまた、農林省所管の審議会の数は全体で二十四でございまして、委員は任命手続中のものを含めまして四百五十三名でございますが、このうち婦人の委員は全体で十名にとどまっております。これは農林省所管の審議会が、いわゆる農業の技術的な問題等を多く抱えております関係もございまして、必ずしも多い数ではございません。二・二%にとどまっておりますが、なお昨年以降委員の数を一名増加して、漸次婦人の数の拡充を図っていきたいというふうに考えております。
  249. 市川房枝

    市川房枝君 なぜ私がこんなことを伺うかといいますと、昨年の六月十四日に婦人問題企画推進本部長としての福田総理から、「政府の行政への婦人の参画を拡大するとともに、広く公共、民間部門の政策・方針の決定に当たっても婦人の参加を促進されるよう」と、こういうことで、特別活動推進要綱を添えて農林省にも通達があったはずと思うので伺ったわけでございます。その要綱の第四の一の「行政への婦人の参画の拡大」という中にはっきり掲げられているからでございまして、いま官房長から御答弁がありまして、今後だんだんそれをふやしていくということですから、それをひとつお約束をいただきたいと思っております。  次に、実は率直に申し上げますと、農林省という役所は、従来の農業の生産が男子中心であり、また、その農業においては、昔から封建的な習慣が強く残っておりますので、婦人のことなんかは本当はちっとも考えられてこなかったと、こう言っていいと思うのですが、前に申したように、生活改善課にしても、これは終戦直後に、いわゆる占領軍から強要されたといいますか、そういう役所だと解釈しております。農林省には、日本の農業が婦人によって支えられているということは恥ずかしいことなんだと、だからそれを公に認めたくないという高級官僚の方もあるやに聞いておりますが、私は、そういうことだと日本の農業の将来は、婦人のこうした面からでもやがてつぶれていくんではないのかということを心配しておる一人でございます。将来の農林行政と婦人従業者について、大臣から簡単に御意見を伺いたいと思います。
  250. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のとおり、日本の農業のみならず、水産業についても、婦人の果たす役割りはきわめて大きく、また、婦人が先ほど御指摘のとおり、これまた、家庭を守り、子女を教育し、非常に重い責任、そして非常な苦労を願っておるわけでございますから、私といたしましても、生活改善なり地位の向上に最善を尽くしていきたいと、こう思う次第でございます。
  251. 市川房枝

    市川房枝君 三番目には、実は昨年の七月に新聞で、「“かあちゃん漁師”勝訴」という見出しで伝えられました。つまり、二十二名の漁業に従事している婦人たち漁業協同組合に加入を阻止されたということで裁判に訴えて、その裁判が勝訴、勝ったわけでございます。大臣、このことを御存じでしたらば大臣から、あるいはもしそうでなかったら事務当局からでもいいんですけれども、この裁判の結果をどういうふうにお感じになりましたか、伺いたいんです。
  252. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) この判決はよく承知しておりますし、こういう判決が出ました以上、今後組合員資格等について女性が差別されることのないように指導してまいりたいと、こう思っておる次第でございます。
  253. 市川房枝

    市川房枝君 いまのは漁業協同組合の問題でしたけれども、農業協同組合にも、同じように婦人の組合への加入を禁止しているところがあると聞いておりますが、その実情は農林省の担当の方御存じでしょうか。
  254. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 御質問のように、農協の加入に際しまして女性を差別をして問題になっておるということは私承知をいたしておりませんが、しかし、農協につきましても、他の組合と同様に加入の自由という基本原則があるわけでございまして、正当な事由がないのにその加入を拒んではならないわけでございます。この場合、女性であることが加入拒否の事由として正当な事由に当たるとは思っておりません。したがって、御指摘のような事実が万一ございますれば、私たちは都道府県あるいは農協系統組織を通じまして、十分指導してまいりたいと思っておる次第でございます。
  255. 市川房枝

    市川房枝君 言うまでもなく水産業協同組合法あるいは農業協同組合法では、その地域に住んでいる者で一年に九十日ないし百二十日漁業あるいは農業に従事した者とありますので、婦人の加入禁止は法律違反だと、こう言っていいわけで、それで裁判も勝訴になったわけでございますが、いま大臣から御答弁がありましたけれども、やっぱりこういう組合の、つまり法律を守っていないというか、違反しているということについては、私はその裁判の判決なんか待たないで、農林省当局の方で当然指導を、いわゆる行政指導をしていただいていいはずだと思うんですが、実はきょうこの問題をちょっと取り上げようと思いまして、全国農協中央会及び全国漁業協同組合の担当の役員の方にお目にかかって、この問題についての会としての実情を実は聞いたわけですが、第一番目に、婦人の組合員の数が一体どのくらいあるということはどちらも調査をしたことがないんだと、わからないんだと、幾らかはあるらしいと、こういうことなんでございます。それから、それぞれ婦人については、漁協の方も農協の方も、それぞれ婦人部というものがあって、そこで婦人の啓発あるいは協力を得ているんだと。だから、何も組合員に入れてなくたってもいいんじゃないかということを――そうはおっしゃいませんけれども、言外にそれを察したわけなんですが、ところがいま現状であります農協の婦人団体というか、あるいは漁協の婦人団体というのは、組合員でない人が入っているんですよ。そして、組合に対しては何らの権限はないわけです。農協の問題で古い私の記憶から言いますと、農協の方が購買組合でいろいろ売るものを仕入れするんだけれども、その仕入れするときには女なんかに一つも相談しないで、それで残ってしまう。残ってしまうと今度はそれを女たちに押しつけて買わせる。しかも、それは高いんだということを大会のフロアから発言する人がありまして、ところが、農協の男の幹部の方が出てきておっしゃるのには、高いのはあたりまえなんだと、高くても買えとかなんとかそういう態度で、それを女の人たちがはい、はいと、言うことを聞いている。農協の方にはこの裁判事件というものはないみたいなんですが、漁協の方はそういう点で女の人たちが立って訴訟に訴えるということはこれはよほどの勇気のあることだと思うんですけれども、こういう状態で、私はこういう婦人部とか婦人会というのは、これは私から言えば一種のごまかしなんだと。やはり法でちゃんと認めておるように、女も直接に漁業なり農業なりに従事している人は組合員として加盟させて、そして、組合の運営あるいは役員の選挙権、被選挙権あるいは補償費が入ったような場合には組合員に平等に分配する、そういう権利を当然与えるべきであって、こうすることが私は法の趣旨であり、また協同組合本来のあり方であって、これを農林省がはっきりと私は認識していただいて、そして行政指導をしていただく、こう当然やるべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。  一番最初に私、そういう組合なんかに対して、一体女の組合員は何名、男は何名だぐらいを調査するようにおっしゃっていただいてもいいと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか。
  256. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに御指摘のようなことで、農林省から積極的に女性も加えなさいということでいくのがいいのか。やはり組合は任意団体といいますか、組合は民主的に結成されておるものでございますから、上からいくのではなくて、民主的にそういう方向が自然に生まれてくるということが望ましいのではなかろうかということでございますので、裁判の判決もあったことでございますから、恐らく民主的にそういう空気が組合、組合によって話し合いの中から出てくるだろう。そういうことが生まれてくることを期待し、また、われわれとしてもできる限りの上から押しつけて女性も入れなさいというやり方ではない方向で指導してまいりたいと、こう思うわけでございます。
  257. 市川房枝

    市川房枝君 組合が民主的に運営されるというのは当然なんですけれども、しかし、それは法の範囲内においてであって、明らかに法に違反しているのが民主的な組合の運営とは言えないんじゃないかと思いますけれども、いまの大臣のようなお言葉でひとつこちらの方面を御指導をしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  258. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 他に御発言もないようですから、農林省と、それに関係する農林漁業金融公庫決算につきましてはこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。午後五時九分散会