運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-07-05 第84回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年七月五日(水曜日)    午前十時十八分開会     —————————————    委員長異動 六月十六日茜ケ久保重光委員長辞任につき、そ の補欠として寺田熊雄君を議院において委員長に 選任した。     —————————————    委員異動  六月十六日     辞任         補欠選任      茜ケ久保重光君    穐山  篤君  六月十九日     辞任         補欠選任      市川 房枝君     喜屋武眞榮君  七月五日     辞任         補欠選任      案納  勝君     赤桐  操君      穐山  篤君    茜ケ久保重光君      丸谷 金保君     粕谷 照美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺田 熊雄君     理 事                 坂元 親男君                 寺下 岩蔵君                 長谷川 信君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 岩崎 純三君                 河本嘉久蔵君                 北  修二君                 世耕 政隆君                 永野 嚴雄君                 藤川 一秋君                 降矢 敬義君                 赤桐  操君                茜ケ久保重光君                 粕谷 照美君                 宮之原貞光君                 和泉 照雄君                 黒柳  明君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 三治 重信君                 江田 五月君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        自 治 大 臣  加藤 武徳君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        経済企画庁物価        局審議官     坂井 清志君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        法務省民事局第        三課長      清水  湛君        法務省刑事局刑        事課長      佐藤 道夫君        大蔵省理財局国        有財産第二課長  山口 健治君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       宮崎 知雄君        国税庁長官    磯邊 律男君        通商産業省貿易        局長       水野上晃章君        資源エネルギー        庁長官      天谷 直弘君        中小企業庁長官  左近友三郎君        会計検査院事務        総局第一局長   前田 泰男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十年度一般会計歳入歳出決算昭和五十  年度特別会計歳入歳出決算昭和五十年度国税  収納金整理資金受払計算書昭和五十年度政府  関係機関決算書(第八十回国会内閣提出) ○昭和五十年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第八十回国会内閣提出) ○昭和五十年度国有財産無償貸付状況計算書  (第八十回国会内閣提出)     —————————————
  2. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六月十六日、茜ケ久保重光君が委員辞任され、その補欠として穐山篤君が選任せられました。  また、十九日、市川房枝君が委員辞任され、その補欠として喜屋武眞榮君が選任せられました。     —————————————
  3. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたび、はからずも院議により本委員会委員長に選任せられまして、その責任の重大さを痛感いたしております。浅学非才の未熟者ではございますが、幸いに皆様の御指導と御協力によりまして過ちなくこの大任を果たしてまいりたいと存じます。どうぞよろしく御支援、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)  次に、前委員長茜ケ久保重光君から発言を求められております。茜ケ久保君。
  4. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保重光君 委員長のお許しをいただきまして、一言ごあいさつ申し上げます。  昨年七月、本委員会委員長に選任されまして一年間、まことにそこつ者でありまして、大変皆様方に御迷惑をかけました。にもかかわりませず、委員各位の大変な温かい御指導と御協力無事大任を終えまして、感謝いたしております。  私が昨年委員長になりました当時は、果たしてこのままで四十九年度決算審議完了いたすことができるかどうか非常に危惧いたしておりました。本当にこれは理事さんや委員の方々の全くの御協力で、月曜に次く月曜の審議をさせていただきまして、本当に無事終わりました。私としてもこれは恐らく長い議員生活の中の非常に重要かつ思い出に残る一年と考えております。また、事務局の方にもいろいろと御協力いただきまして大いに感謝いたします。新委員長中心に、決算委員会の真髄を発揮されますよう、皆様方の今後の御精進を期待しております。本当にありがとうございました。(拍手
  5. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 次に、昭和五十年度決算外二件を議題とし、本日は総括質疑第一回を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野口忠夫

    野口忠夫君 本日からいよいよ五十年度決算の審査に入りますので、この際、昭和五十年の政府財政経済政策はどのようなものであったかについて振り返ってみたいと思います。  私は、先般、四十九年度決算総括質疑の際に、四十九年度において政府のとった総需要抑制策と、その結果生じた不況財政上の歳入欠陥についての大蔵大臣の御見解を承ったのでございますが、本日はその延長として、政府施策が四十九年の総需要抑制策から五十年に入ってからの景気回復策転換していく過程を見ながら二、三御質問申し上げたいと思います。  昭和五十年度予算が編成される時点においては、政府政策目標は、前年の四十九年度に引き続き物価の安定が最重点とされ、総需要抑制策を貫く方針のもとに財政規模の伸びの抑制公債発行の縮減、公共投資抑制等方針で編成されたものであります。しかし、四十九年度から総需要抑制策は、石油ショック後の狂乱物価の鎮静には確かに大きな効果はあったと思いますが、しかし、それと引きかえにわが国経済活動はすっかりもう冷え込んでしまったという現状であろうと思います。  このような経済活動の著しい落ち込みに、政府は五十年に入ってから、二月に四十九年度第四・四半期の公共事業等契約枠消化促進ないしは財政投融資機関事業施行促進をうたった第一次不況対策を打ち出したのを手始めに、三月には第二次、六月には第三次、九月に第四次と、公共事業の推進を中心とした不況対策を打ち出してきたわけであります。また、金融面でも、五十年四月に公定歩合を〇・五%引き下げたのを皮切りに、十月までに四回にわたって引き下げを行いまして、四月に九%であった公定歩合を六・五%まで引き下げるなど、それまでの総需要抑制策から一転して景気浮揚のための回復策に移ってきたのでありますが、こうした措置はどう考えてみましても、その場しのぎ場当たり的措置としか評価できぬものであり、したがって景気政府考えているように回復することにはなりませんでした。五十年の十月になりましてから、政府税収の激減によって歳入が大きく不足する見通しとなったため、二兆円余に上る赤字公債発行を含む四千五百億円に上る戦後初めての減額補正予算というものを組まざるを得ない立場に追い込まれたのが五十年の後半であります。  こうした経過を振り返ってみますと、明らかに行き過ぎた総需要抑制策失敗、また物価の値上がりを心配する余り、落ち込みかけた日本経済に対する施策のおくれというものが指摘されると思いますし、さらには実効の上がらぬ場当たり的景気回復策が、今日までこの尾を引いておりまする長期不況の原因となっていると断ぜざるを得ないと思うのでありますけれども、大蔵大臣はこの経過について、私の指摘しましたような点についてどのような御見解であるか、お聞きしたいと思うわけであります。
  7. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ちょうど四十八年から始まりました石油ショックは、四十八年、四十九年、日本でかつてない狂乱物価を引き起こしたことは御案内のとおりでございます。当時、何と申しましても、インフレ抑制するということが何より優先課題でございまして、そのために財政金融、あらゆる面につきまして、この狂乱物価をいかにして抑制するかということが国会においても中心的な課題として論議されたことは委員も御承知のとおりでございます。その各種の施策によりまして、日本狂乱物価は、各国に比較いたしますと非常に早く鎮静した。これが今日のやはり日本経済の立ち上がりを、ほかの国に比べますと私は早くしているのではないかと思うのでございます、基本的に申しまして。しかし、いま委員が御指摘のように、五十年度経済考えてみますと、確かにもう五十年の、いまから振り返ってみますと、一−三月が底になっているわけでございます。当時の卸売物価上昇要因考えてみますと、輸入物価はすでに横ばいの状態になっておるのでございまして、むしろどちらかと申しますれば、その前に行われました三四%というベースアップ、あるいは二〇%というベースァップ、そのことからくる賃金コスト上昇が、日本経済を、卸売物価高騰をもたらしておったということは、いまから振り返ってみれば明らかに出ているところでございます。したがいまして、ある時点においてやはり景気対策の方に向かわなければ逆に物価は下がらないという論理になるわけでございます。  しかし、日本といたしましては、その点は私は早く気がついたのではなかろうかと思うのでございます。ということは、すでに一−三月当時、国会におきましてまだ翌年度消費者物価を何%に抑えるかという論議が行われておることと相並行いたしまして、日本国会のそれぞれの党の中で、これでいいのかどうかということが真剣に検討されまして、税収ば恐らく大幅に不況を反映して落ち込むであろう、そしてまた、その落ち込んだ税収を補うために赤字公債は恐らく必至であろうということは、当時すでに三月から五月ごろに論じられておったことも承知しておるのでございます。単に赤字公債を出すだけでなくて、問題は景気を促進することが第一でございますので、やはり公共投資も加えてやらなければならないということが意識されまして、ちょうど五十年度補正は、税収減による補てんのための赤字公債と、それに加えて建設公債を増発いたしまして、自後景気回復に進んでいったことは御案内のとおりでございます。なかなか人間のことでございますので、その切りかえのポイントというのは非常にむずかしいのでございますけれども、しかし、世界経済の中において日本はいち早く気がついたのではなかろうか。そのような施策をずっと実施してまいりまして、自後、窓口規制を初めとする規制を順次緩和し、公定歩合はおっしゃるように四回にわたりまして引き下げを行い、さらにその局面に対応いたしました景気政策をとってまいって今日に至っておるということでございます。  そういう意味から申しますと、いろんな御批判はあると思いますけれども、やはり大局的に見ますれば、あの狂乱物価を抑え切ったということ、それから各国に先駆けて景気政策転換しておったということ、これが今日の国際経済下の同じ不況局面にあるものの、日本はまあまあ、国内的に見る限り、ほかの国に比べては回復が順調にいっているものと、かように理解しておるところでございます。
  8. 野口忠夫

    野口忠夫君 大蔵省という一つの役所の中から見る国の政策あり方ですね、そういうあり方進行評価として、その立場でよかったとか悪かったの評価をすると、どうもちょっとおかしいじゃないかというふうに思うのですがね。問題は、そういう政策進行過程国民が一体どうであったかという国民サイドの問題というのが残されてくると思うのですよ。高度経済成長の中で非常に大きな公害とかあるいは物価高とか、そういうものがあった。その中での経済成長国民が立たされた立場、それが一過していって今度はこういう時代になった。それは政治の力で改めていったんだというときには、すでに国民公害の中で苦しんでいる姿を残しているわけです。総需要抑制策の風潮ということになってきますと、これはやはり倒産とか失業とかいうような問題を国民の中に残してくるわけです。政策としては、そういうものを国民に残さないことが政策論としては正しい姿であろうと私は思うんですがね。それがその時代を過ぎていまはこうなってきたという、その後に残された国民の皆さんの受けた犠牲とか被害というようなものは改められないわけなんです。それが国民の上に残ってしまっている。  こういうことになると思うのですが、どうも田中内閣三木内閣福田内閣、そういう内閣の受け持ってきた流れの中で、国民サイドに立って考えた場合、そこにはおのずから政治的な責任も存在するであろうし、今日の時点に立って考えなければならない為政者としての反省の点が残るんじゃなかろうか。そういう点で考えているわけですけれども、どうも自民党内閣の交代を続けていく過程の中でやられてきた経済政策というのは、経済両極端というものをほほ五、六年の間に同じような自民党政府が右し、左するというこのわが国経済政策そのものですね、基本的なところで何か手を打たねばならないものが手を打たれることなく、当面の事象にのみ対応するという形で推進されていると思うのです。  私は、やはりこれからの問題としても、この経験を——高度成長期には適応した抑制の方法をとるべきであろうと思うのです。また、総需要抑制策をとるときには、極端な冷え込みを防ぐ適切な措置が並行してとられてくる。そういう経済政策の中で国民を苦しめることのない安定した成長経済というものができてきているんではなかろうか。両極端を走って右往左往するだけではなしに、いつも両者をじっとにらみながら考えてくるべきものであって、それは国民サイドに立った立場においてやはり考えていかないと、政治に対する国民の信頼というものは、傷跡だけが残って、よくなったわいという言葉だけ残ってくるわけです。  これを防ぐためには、経済成長を高度にしようというときには当然やっぱり物価の問題を考えなきゃいかぬし、物価の問題を考えるときにはやっぱり景気が余り冷え込んで国民が迷惑しないように考えていくという、そういう国民サイド経済政策というものを考えていかなければならないと思うのですけれども、どうも歴代自民党内閣のとってきた政策というのは一方に偏り過ぎていたように思うわけでありますけれども、こういう点について、五十年代を振り返ってみて、財政面責任者である大蔵大臣はどのようにお考えであるか、もう一度お伺いしたいと思います。
  9. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 過去を振り返ってみますと、日本の戦後の経済史というものは大変なものでございまして、一人当たりの国民所得から見ましても、とうてい問題にならないほど低かったわけでございますし、また外準考えてみましても、ほとんど借金政策でありまして、かつて十五億ドルたまったときに、池田総理国会で胸を張りまして、十五億ドルいま外貨準備がたまったと言ったのをわれわれは記憶をいたしているのでございます。  日本高度成長時代の一番安定期だと私たちが思っておりますのは四十年から四十五年でございますが、この間、実質成長率が大体一一%ぐらい、名目で一七ないし一八、卸売物価が年率二%、消費者物価が五%、この間における賃金コスト上昇はこの五年間を通じてほとんどゼロというきわめて安定した高度成長時代があったことは御案内のとおりでございます。  しかし、やはりいろいろな問題がございまして、一つは、当時から言われておりますように、戦後における爆発的な技術革新時代が漸次終息に近づいているということ、あるいは環境の問題、公害の問題そういう制約があったわけでございます。四十七年から変動為替相場に移りまして、当時、各国政府はいずれもやや強目の経済政策をとったと思うのでございますが、そのことは当然のことながら全体の潜在成長力を超えて、世界的に見ますれば需要がやはり少し強かったのじゃなかろうか。それが一次産品に影響を及ぼすのが四十七年の秋からだとわれわれは承知しているのでございまして、どんどん輸入物価は上がってまいりました。その一つのピークとしての四十八年の石油ショックを迎えまして、これが一挙に四倍ということになったわけでございますから、エネルギー依存率の一番多い日本が最も大きな打撃をこうむったことは当然でございまして、むしろいままでは消費者物価の方がどちかと言えば上がっておったものが、輸入物価中心とする卸売物価高騰、それに伴う消費者物価高騰ということで、四十七年、四十八年では卸売物価が実に二十何%ということでございますから、もう十倍のスピードで上がっていった。  あの当時を考えてみますと、いかにしてこれを鎮静するのか。もしあのままあれをほおっておきますれば、所得配分の不公平はもとよりのこと、一億総ブローカーになるのではないか、しまいにはインフレ利得だけを望んで、生産そのものもとまるのではないかということが論議されたことはわれわれのいまだに記憶に新しいところであったわけでございます。  国民のそういう不公平の問題あるいは生産ストップに対する脅威というものを抑えるためには、何よりも目先のインフレを抑えるということが最優先課題であったと思うのでございます。  これに対しまして、日本は果敢な措置を講じまして、御案内のように、財政はもとよりのこと、金融におきましても、公定歩合の引き上げ、さらには窓口規制という最も厳しい措置を講じまして、これも各省の物財の方とも相関連いたしまして、私はみごとに鎮静したと思っているのでございます。そのことは当然国民生活に対してプラスの影響を及ぼしたことには間違いない。ただし、もう五十年の一−三月ごろは、いまから考えてみれば底でございまして、しかも当時の物価要因は、先ほども申しましたように、輸入物価ではなくて、上がりました賃金生産性との関係賃金コスト上昇がむしろ卸売物価をつり上げ、そしてそれが消費者物価に及んでいるということは、いま振り返ってみれば大体明らかなところでございます。そういうことに大体もう気がつきまして、方向転換を、切りかえていったのでございますけれども、一国の経済政策でございますから、そう右から左にすぐ切りかえるということはなかなかできません。まあ秋まで待たねばならなかったのでございますけれども、やはりいまそういうふうに転換をいたしまして、その後における経済については御案内のとおりでございます。  四十九年につきましては、初めてGNPがマイナスを記録いたしましたが、五十年にはこれが三・四、五十一年には五・七ということで、世界最高経済成長になってきたわけでございます。今日の時点考えてみますと、この経済成長の中でドイツに次いでいま物価が安定しておることも御承知のとおりでございます。むしろ現在の問題は、各国不況の中で日本だけがこの大幅な黒字を続けておるというところに、国際流動性のやはり平準化という観点からいろんな批判をまた今日こうむっていることは御案内のとおりでございます。  こういった経済局面は、それぞれの時代によって変わってまいりますけれども、私たちはやはり世界経済の中の日本、そしてまた日本の持っておる今日的なあるいは将来の問題というものを見つめながら、それは最終的には、これは国民の幸せがどこにどういうふうに経済的につながるか、こういうことを考えながら施策を推進してまいるつもりでございます。  重ねて申し上げますが、やはり最終的には、国民の幸せ、国民の福祉ということにどうして結びつくであろうかと、こういう問題をわれわれは究極の目的にしているということについては、委員とちっとも変わりがないことを申し上げておきたいと思います。
  10. 野口忠夫

    野口忠夫君 大臣の御答弁を聞いていて、議論の点も残るように思うんですが、やっぱり政策が行われる現象というものに対して何か自然的にそうなっていく、それに対応してきたと。それがうまくいって今日になっているというような意味のお考えのようになるわけだと思うんですけれども、そうではなくて、そういう事象が起こってくるのには、そうしたようなものを引き出してきたやっぱり政策責任というものがあるんじゃなかろうか。極端な高度経済成長政策の中からいろんな問題が出てきて、そして物価が上がってどうにもならなかった。今度総需要抑制策という政策をとったときに結果としては不況という中に入ってきた。国民サイドから言えば、そういう変わり方によって国民自身往復びんたを食っているようなぐあいになってくる。そこにやっぱり今日の政治をつかさどる者にとって考えなきゃならぬ課題があるんじゃなかろうかと思うんですけれども、そうしたことについての議論をすると時間がなくなりますので、一応大臣のお答えの中で、そういう一つ一つ現象あらわれ方というものがあったということだけはお認めになっているようだし、私どもの立場では、そういう政策が極端に右し、左するような場当たり的なものではない方向でこれをずっと見つめてみる必要があるということをあえて私は要望しておきたいというふうに思うわけです。  次の質問に移りたいと思うのですが、佐世保重工業再建の問題についてお尋ねしたいと思うんですけれども、こうしたような政府経済政策失敗——大臣ば、失敗ではない、よくやってきたとおっしゃるんですが、今日の失業、雇用というような問題を考えますと、やっぱり経済政策失敗がそうなってきたというように思うので、わが国経済が長期的な不況というものの中から抜け切れないで企業倒産失業者の増加が大きな問題となっているのでありますが、こうした経済情勢の中で企業倒産を防止し、不幸にして倒産した企業の中にあって職を奪われた労働者救済については、責任ある企業ができるだけ手を尽くすということについては当然であろうと思いますけれども、国もまた行政の中で温かい手を伸べていかなければならないと思っております、これは。  今回の佐世保重工業の再建問題について、そうした意味では関係者の今日までの努力を私は完璧かもしれないと思っております。しかし、そのような立場に立ってみても、なおかつ政府のやり方についてはいろいろ疑問の点が多いというように言わざるを得ないのですが、以下、幾つかの点について、大蔵大臣関係のあるところをお伺いしたいと思います。  まず、今回の佐世保重工業救済について、福田総理から直接大蔵大臣にその救済策の検討が指示されたようでありますが、しかもその指示は三度も言われたと、実は六月八日の衆議院の決算委員会大蔵大臣は答弁しておられますが、一民間企業救済について、このように三回にもわたって総理から直接大蔵大臣が指示されるというようなことは、これはまことに異例なことだと思うのですけれども、大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま、今日の日本で、問題はこの景気回復というものをどのように持っていくか、あるいは七%成長というものをどのように持っていくかということ、そういったことが重要課題一つの大きな眼目であることは御承知のとおりでございます。しかし、日本の中には、御承知のように、単なる量的経済の拡大だけでは済まない、いわゆる構造不況業種を抱えておりまして、これは言ってみますれば、石油ショック以来の問題がなお残っておるということにわれわれは着目しなければならぬと思うのでございます。それにはそれに対応しただけのやはり特別な療法が必要だと思うのでございまして、今国会で特定構造不況業種の法案を御審議願ったのもその点にあるわけでございます。  佐世保重工の地位を考えてみますと、いわゆる特定不況業種に属するわけでございますし、特に佐世保の町の出荷額で見ますと、五十何%というものの出荷が佐世保の出荷になっているという問題、あるいはあそこの就業者の相当部分、特に下請を入れますと本当に多い部分が佐世保のあれにかかっているというところにあるわけでございます。金融機関は、当然のことながら、今日の公共的な使命に顧みまして、やはり金融原則にのっとった範囲内で金融支援をするということば当然なことだろうと思うのでございますが、佐世保の場合は、いま考えてみますと、やはり経営者の意思決定、あるいは意思の集中、経営者、新しい経営陣というものが、一体だれがどのような経営再建計画を立てるのか、そこが残念ながらほかの会社と違いましてなかなか意思決定ができない状況にあったわけでございます。総理が私に三回にわたったと言いましたけれども、一回言ったと言っても、三回言ったと言っても同じことなのでございますが、大蔵省大蔵省立場でできる限りのことをやってもらいたいという範囲に話はとどまっておるのでございます。当然のことを総理はおっしゃったと思うのでございますが、ただ、金融を預かっておる大蔵省立場でそれなりの支援をしてくれと言っても、もともと経営者の方の意思決定がはっきりしない。やはり株主が分散しておりまして、それが主たる経営者がはっきりしないということでございますから、何よりも経営者がやはりお互いにその責任を自覚して、可能な限り支援体制をとること、そして新しい再建計画を立てること。その具体的再建計画を見て、その範囲で、それをもとにして可能な限り金融支援をするということが金融当局としての大蔵省の当然の役割りだと思ったわけでございます。  したがいまして、問題は、だれを一体経営者にするのか、それについて株主間で急速にまとめてほしいということ並びに具体案を立ててもらいたいということ。そうでない限り、金融当局が金融原則にのっとった支援をしようと思ってもできない、こういう状況にありましたので、そういう意味で、まず株主間の協調、あるいは新しい経営者をだれにするかを相互で決めてもらいたい、そういうことについてお願いをいたしたということでございます。  幸いにいたしまして、最終的にはまだこれからの問題は残っておりますが、いま固まりつつある債権者あるいは株主の支援体制を見ますと、金融原則にのっとっておるというところまで幸いに来ておると思いますので、今後はその線に沿いまして可能な限りのまた妥当な範囲での金融支援を続けてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  12. 野口忠夫

    野口忠夫君 いま大臣の御答弁の中で、佐世保重工業救済の理由というものは示されたようですけれども、国民の側から見ますと、総理大臣みずからが三度にもわたって大蔵大臣救済を検討するよう指示するなど、異常とも思える積極的な姿勢というようなものの中に大きな不信の念が残ってくると思うんです。  先ほどの理由から言うと、景気が上向きつつあるときの大型倒産は避けたいとか、地域経済の発展を守るためにというようなお言葉でございましたが、それならば、これから先同じようなケースの企業の経営危機問題が起こる可能性は少なくないだろうと思うんです、今日の情勢では。そうした場合、政府はすべてに積極的救済措置をとると理解していいのかどうか。このことは、今後大きな倒産が出ないという政府考え方が示されたものであって、自由主義経済が原則の現状でのわが国経済体制にある程度の政治的コントロールというものを加えていこうというような政府の意向のあらわれとしてこれを解釈してよいかどうか。同じようなケースがこれからも出てくるだろうと思いますので、そういうような考え方でこれを見ていいのかどうか、お伺いしたいと思います。
  13. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) もう御承知のように、自由主義経済を前提にしておりますので、やはり何よりも関係者の自助努力というものをわれわれは前提にし、また金融につきましては、やはり預金者のお金を預かっているわけでございますので、おのずから金融支援には一つの限界があることは当然なことでございます。今後同じような問題が起きた場合と、こういうのでございますけれども、やはり基本的には自助努力、これをまず前提にしなくちゃならぬという点においては全く同様であるわけでございます。  佐世保の場合、非常に違っておりますのは、たとえば銀行にいたしましても、メーンはほとんどない。だから、普通の場合でございますと、経営者は普通、再建計画を立て、それをメーンと相談し、そして関係者関係株主あるいは関係金融機関にそれぞれの経済原則の中で支援を求めていく、これが通常であるわけでございまして、佐世保の場合はメーンがないだけでなくて、経営者の株式の保有率というのはほぼ同じでございまして、なかなか責任をとろうという人が出てこない、そこが非常に問題であったわけでございます。したがいまして、適当な対策ができれば助かるかもしれないというものにつきまして、やはり株主構成の関係からいたしまして、なかなかあえて具体案を立てようという人が出てこない。そこが最大の問題であったと思うのでございます。私も同じような不況業種を多少知っておりますけれども、こういう特殊の形というものは私たちはちょっと見当たらぬのでございます。  そういう意味で、私たちのやりましたことは、先ほどの繰り返しになりますけれども、やはり株主がそれぞれ経営者として責任を自覚してもらいたい。そうして特に具体的な再建策を立ててもらいたい。そうでなければ金融支援ということができないという角度からいたしまして、そうして株主その他につきまして、できるだけ早く意思決定をするようにということを促進したということにとどまるのではなかろうかと、かように思っておるところでございます。  したがいまして、今後同じような状態が出た場合と、こうおっしゃいましたが、佐世保重工のような形のものは余り出てこないのではなかろうか。支援の方から申しますれば、やはり自助努力を中心にいたしまして、できる限りの支援、合理的な支援は惜しまないつもりでございます。
  14. 野口忠夫

    野口忠夫君 何か先ごろの新聞で見ますと、ある経営危機にあえいでいる企業関係者が、佐世保重工と同じように救済措置を講じてもらいたいというようなことを大蔵省に陳情をしたというような新聞記事を見ておるわけでございますが、やはり出ないだろう、佐世保の自主的な努力でやってもらうんだ、それをわきから援助したにすぎないと言うんだけれども、やっぱり救済対策等措置をとって大きく政治的に入ったことについては、国民はみんなそう理解しておりますよ。そこの中では、何で佐世保だけが救われるのかという、こういう疑問が出てくるわけでございますが、私は、こうした企業の努力が今後こうした機会から出てくることは無理からぬものがあるだろうと思うんですけれども、政府は、そういう点について、あとはないとあなたはいまおっしゃいましたが、こういうふうなものはないだろうとおっしゃいましたけれども、自信を持ってやっぱり佐世保についてやったことについての説明というものが、ぼくはいまのようなお答えではどうも説明にならぬと思うんですよ。今後出てくるかもしれない。出ないという断定には立てないでございましょうから、そうすると、これからもやっぱりこうしたことにひとつの政治的なコントロールを加えていくんだというこういう解釈もなされるわけでございますよ。  そうした点についての御答弁は余りはっきりしないんですが、まあ非常にわきから助けただけだと言うんですけれども、佐世保重工業救済策の最も大きな問題となったところは、退職金及び経営資金などについて金融機関に融資させることにあったと思うんですよ。ここで大蔵省はその大きな役割りを果たされた。新聞の報ずるところによりますと、六月七日ごろ大蔵省救済策がまとまりまして、その中で金融機関に百億円を超す無担保融資が要請された。金融機関は無担保、無保証の融資には応じられぬとの態度を表明しておったようであります。この場合の金融機関の態度は筋道が通っていると私は思います。逆に、預金者保護の立場にある銀行に対してきわめて強力な行政指導を行っている大蔵省が、このような筋道の通らぬ融資を銀行側に要請をするというようなことは、大蔵省みずからが、救済金融常識を破る異例中の異例であることを示したことになると思うのであります。大蔵大臣は、金融機関の支援体制については、行政指導の範囲を超えるくらいのところまでやってやるということを語ったことも報道されておるのでありますが、大蔵省ばその立場、その責任を逸脱して動いたと思われても仕方がないと思うのですけれども、大臣はこの点どうお考えでございましょうか。
  15. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 詳細は政府委員から答えていただきますが、私たちがやりましたことは、要するに自助努力を前提にしているわけでございますので、経営者の自助努力についてできるだけ自覚を促したという一点でございまして、金融原則は守っておるわけでございます。  詳細につきましては、銀行局長から答弁させます。
  16. 徳田博美

    説明員(徳田博美君) 佐世保に関する御質問でございますが、先ほど大臣から申し上げましたように、最近、構造的に問題を抱えた業種を中心に経営困難に陥る企業があるわけでございまして、これに対する金融機関の支援が問題になるわけでございます。この点につきましては、先ほど委員も御指摘のとおり、通常個々の金融機関の判断に任せるべきものでございますが、金融機関といたしましては、預金者保護であるとか、あるいは私企業であるというところから限界があるわけでございます。しかしながら、一方金融機関としても、その社会的な公共性という観点から、極力企業を支援するということも必要でございまして、したがいまして、中長期的に見て、再建の見通しのついた企業に対しては、預金者保護ということで限界をわきまえながら、金融原則にのっとって精いっぱいの支援を行うというのがこれからの金融機関のあり方ではないかと考えているわけでございます。  佐世保重工につきましても、途中でいろいろの経緯はございましたけれども、最終の金融的なおさまりの姿と申しますものは、先ほど大臣から申し上げましたとおり、全く金融の原則の中に入っているわけでございます。途中の段階において、新聞においてあるいは委員の御指摘のようないろいろな報道がなされていたこともございますけれども、これは事実についての報道ではございません。恐らく推測に基づいてのそういう記事かと思います。最終的な段階におきましては、当初から金融機関の主張しておりました株主による債務保証であるとか、あるいは適正な不動産による担保であるとか、さらには株主による増資の見通しであるとか、そのような諸条件が全部そろってきたわけでございます。また、佐世保重工の経営陣も確立いたしましたし、またその再建計画、これは受注の問題が中心になるわけでございますけれども、この点につきましてもはっきりとした見通しがついたわけでございまして、このような諸条件がそろいますと、これは全く金融原則の範囲に入ってくるわけでございまして、そういう形で金融支援が決められたわけでございます。
  17. 野口忠夫

    野口忠夫君 金融界の常識に従うようなところまでいって、これはスムーズにいったんだというようなことで、新聞報道は推測記事であろうというようなことであるわけですけれども、あの中には金融機関のそれぞれの責任者の方がそれぞれの談話なども出しているわけですね。その中には、まことにこういうようなところに無保証の融資、無担保の融資というようなことをやることについては全くこれはもう反対だというような御意見の表明もあったわけでございましょう。これはまあここでの御答弁としては一応納得できるかもしれませんけれども、国民全体の考えから言っている金融というような問題について、納得のできる御答弁でありませんね、それは。結果的には諸条件がそろったというものの、貸す相手がまだはっきりしないような状態の中で、やはり国民のための金を扱っている銀行側としては、国民の利益を守るために自由が欲しいという意見はあったと思うんですね。それをやっぱりずうっと持っていったのは政策指導だと思うんです。やっぱり政治的、行政的に、最終的にはそういうふうになってしまったというような印象をぬぐうことはできないと思うんです。これは単なる推測記事というような言葉だけでは、どうも従来までの大蔵省金融筋がやってきた指導から言うと、これはちょっと佐世保重工に限っては何でこんなようなことをするんだろうというような疑惑は持たれますよ。  では、大臣にお聞きしたいんですが、まあいろいろな条件も整ったというような御答弁はありましたが、従来までのこの金融常識を破るようなものとして、これからの金融制度にはさまざまな影響を与えていくんではないかという心配を私はするんですけれども、大蔵大臣は、そうした心配は全くないと自信を持ってお答えになられますか。
  18. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 佐世保重工の金融支援については全く金融原則の範囲内の問題でございまして、今後といえどもそれを破るようなことはいたさないつもりでございます。     —————————————
  19. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、案納勝君、穐山篤君及び丸谷金保君が委員辞任され、その補欠として赤桐操君、茜ケ久保重光君及び粕谷照美君が選任せられました。     —————————————
  20. 野口忠夫

    野口忠夫君 大臣に、最後にこの問題でお尋ねいたしますが、この佐世保重工救済ということに総理並びに大蔵大臣が非常に異常であったというその理由について、いろいろなことを言われているわけです。まあ推測すれば、日米会談から帰ってきた日の後に、大蔵大臣を呼んで福田総理の指示があったというようなこと、あるいはいろいろあるわけです。私は、そういういろいろの点については後刻事実かどうかについては明らかになると思いますが、この一点だけはどうもこれは大問題でないかと思うのですがね。  今回の佐世保重工救済のために政府が異常なほど熱心であった理由の一つに、原子力船「むつ」の修理港をめぐる問題が絡んでいると、これは多くの国民がやっぱり疑っているわけです。福田総理大臣ばこれを否定しておられるようでございますけれども、修理港引き受けの条件として地元が出していたものの中に佐世保重工再建が入っていたと。このことは、政府が「むつ」問題解決のため佐世保重工再建をより重大視したこととなると考えるのはきわめて当然のことではないかというように思うわけであります。  政府が、総理がどのように否定しましょうと、またこの二つの問題が全く偶然の一致で、何の関係もないとの立場でそれぞれが処理されたものとしても、「むつ」問題が佐世保重工再建の取引材料にされたとの疑いは、これは払拭できないのではなかろうかと思います。このことは、これからの「むつ」の抱える諸問題、ひいてはわが国の原子力の安全問題にまたさらに困難な政治的なしこりを残す結果になったのではないかと思われるわけでございますが、大蔵大臣は、「むつ」問題と佐世保重工救済問題とのかかわりについては、これはどのような認識をお持ちになっておられますか、お答え願いたい。
  21. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今度の佐世保の問題につきましては、「むつ」とは全くかかわりがないということだけは申し上げられると思います。  先ほども申しましたように、今日、不況業種の問題あるいは地域ぐるみ不況の問題、まだ構造不況業種に対する法案が通らない段階の問題、日本経済がいまよくなりつつあるという問題そして佐世保の方の事情を考えますと、やはり経営者の自助努力というものができない、自分たちだけではなかなかやり切れないというような特殊事情があったという点、そういった点を中心にいたしまして経営者の自助努力を促したということでございまして、その一点に尽きるわけでございまして、「むつ」とはかかわり合いのない問題でございます。
  22. 野口忠夫

    野口忠夫君 まあかかわりがあったということに申すこともできないかと思いますけれども、どうもこの御答弁では国民が納得するところには至らないと思うのですけれども、時間もありませんので、次に移っていきたいと思います。  次の問題は、国と地方との問題についてお伺いしたいと思うわけでありますが、最初に、国と地方との制度的あり方の基本的な問題についてお尋ねしたいと思うんです。  新しい憲法のこの新しい理念のもとに、自治の本旨に基づく新しい地方制度が出発してから三十年になります。記念式典なども挙行されたようであるわけですが、今日の地方制度の最も重要な基本的課題、いろいろ抱えている問題の奥底にひそんでいる基本的な課題は、国と地方との制度的あり方についての抜本的見直しの課題を解決することにある。これは私がここで言うのではなくて、四十七都道府県、三千三百余の全国市町村団体等の構成する、地方六団体と俗称言われておりますが、さらには学者、文化人、あるいは自治団体に関係する諸団体の数年来にわたるそれぞれの貴重な経験と研究の上に行われた提言がなされております。  さらに、地方制度調査会においては、この国と地方との抜本的な見直しについて、数次にわたる答申等も行っているわけでありますが、全国四十七都道府県、三千三百の市町村団体、この方々が提言し、答申をしているもののすべては、このことを如実に示しているんではないかと私は考えます。  自治大臣は、担当大臣として、地方団体、地域住民の声を直接受け取って、課題解決の直接責任を私は負っていると思いますけれども、こうした国と地方のあり方の基本的な問題の奥底にひそむもの、今日の地方自治体にある、問題解決の基本的なところにある問題についてどのような御所信を持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思うわけであります。
  23. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 新しい憲法のもとに現在の地方制度が発足をいたしまして三十余年を経過したことは御承知のとおりでございます。この間の経験を踏まえながら、現時点に立ちましていろいろの反省がありますことも御承知のとおりでございますし、また、今後の課題として多くの問題が残されておりますこともこれまた申すまでもないことでございます。それは、地方自治の制度の問題であり、あるいは住民意識の高揚の問題であり、あるいは国と地方団体との事務の配分の問題であり、あるいは税源の配分の問題であり、多くのことがあるのでございますから、さような各面にわたりまして、委員会等でもいろいろ御提言がございましたし、また地方団体からもいろいろ御意見等を承っておるのでございまして、さような意見を踏まえながらこれから対処してまいりますことが自治省の務めであろうと、かように感じているところであります。
  24. 野口忠夫

    野口忠夫君 地方自治制度発足の当時、当国会の中にも、神戸委員会と呼び名される地方行政調査委員会議が非常に大きな権力を持っていたんですね。これは政府国会に対しての勧告権を持っておりました。そして、この神戸委員会の主張したところは、主権在民の新憲法の示す日本民主化という日本課題の解決の原点として地方制度確立は絶対必要であるという、そういう基本的な立場に立っての努力がこの国会の中で実は払われておったわけであります。神戸さんはその当時の国会議員で、委員長になられたわけであります。そういう歴史を国会の中で持っている。こういう今日までの状況であろうと思うんですが、こうしたことはもう御承知であろうと思います。  あれから三十年たって、率直に申しまして、今日、地方団体のこうした声の出るということは、やっぱり今日までの国のあり方が、憲法に保障された地方自治の本旨に基づく方向に沿っていなかったということを裏書きしているものだと受け取らなきゃならぬと思うんです、その点は。  国に七、地方に三という税財源の配分の問題、地方団体の創意性を奪っている起債の認可制。一方、国庫支出金と称せられる一方的国のひもつき施策の補助金行政、これが押しつけられる機関委任事務。仕事は地方でやってもらいましょう、お金は国でひとつ出しましょうと、仕事と金とを逆にして考えているこういうあり方の中で、地方行財政一つ一つが国との従属関係なしには果たし得ない下請機関化しているというのが今日の現状であろうと思います。拘束性の強い国と地方との制度的依存から脱出することによって、真の意味における国と地方の国民にこたえる民主的地方行政を求めようとする多くの団体や人々の声と受け取るべきであろう。これは大蔵大臣にひとつ受け取ってもらわなきゃならぬと思うんです。  国と地方の正常な関係における抜本的見直しの課題は、混迷する日本の今日の情勢の解決の原点でもあろうと私は思っております。成田問題を見ても それが地方自治体の中でなぜ解決できないんだろう。主権在民の思想の中で地方自治体が果たさなければならない課題というのは、そういう意味では日本民主化の原点をなしているんだと。そこに自主的な主体的なそういう自治をつくろうとする四十七都道府県、三千三百の地方団体のこの提言というものを、私は国側の立場に立って、大蔵大臣、特に留意すべきときに来ているのではなかろうかというふうに思います。地方自治の正常な発展を願う国劇の答えも、当然に早急に用意されてしかるべきではなかろうかと思います。この課題は、これは財源不足とか経済不況とかによって制約されるべき課題ではないと私は考えます。日本民主化の、国民協力の原点として、みずからの責任において地方組織をつくっていこうということでございますから、これは国の経済が悪い、不景気だからというようなことでこの地方自治団体に制約を加えるようなことは、何か日本の憲法の示す理念の方向日本の民主化の課題にどうも逆らっていくような形になっていくわけでありますから、こうした観点に立って、私はこの辺で国と地方との見直しの問題について一歩突っ込んだ国の態度というものを出していただきたいと思うんですけれども、国の財政責任を負う大蔵大臣は、地方制度のあるべき課題についてどう受けとめられるか、どういま考えているか、今後どうするか、これをひとつ大蔵大臣から御答弁願いたいと思うんです。
  25. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま野口委員のおっしゃった地方自治の重要性については、私としても全く同感でございます。国民は、同時に住民という両方の資格を持っているわけでございまして、国家の構成員である、国の構成員であると同時に地域の構成員であるわけでございます。今日のような時代になりますと、国だけの施策で行政水準あるいはその地域のニーズに的確に合わせていくということは、国だけの行政ではなかなかできないことは当然でございます。そういう意味で、新憲法下におきまして地方自治の重要性がうたわれたこともまた当然だと思うのでございます。今日の行財政はそういう趣旨にのっとってできているわけであろうと思うのでございます。  しかし、いま問題は、国民でありあるいは住民である、その景気の問題これがいま経済として最大の問題であるわけでございます。いまとっておりますやり方は、御案内のように国が借金をしてでもまず経済の振興を図るということ、それが結局回り回って、逆説的ではありますけれども、財政の健全化に最終的にやはり資するであろう、こういうことで今年度は思い切ってやっているわけでございます。  しかし、こういう日本経済のいわば変化の過渡期におきまして、程度の違いはございますけれども、やはり国も地方も非常に財政難であることは御案内のとおりでございまして、いずれもかなりの大きな借金をしながらの財政運営をやらざるを得ないということも御理解いただけると思うのでございます。ただ、その間にありまして、国と地方との財政の調整のやり方につきましては、車の両輪でございますから、一方だけでやるということはとうていむずかしいのでございますが、まあ両方ともお互いに助け合いながらやっているところでございます。  しかし、今度の地方財政対策を見ていただいてもおわかりだと思うのでございますが、国も可能な限り、地方の不足財源については、まず国の持っておる力からいたしまして、できる限りの措置をいたしたつもりでございますし、今後ともさような方針に変わりはない。同じような方針で続けてまいりたい。ただ、経済が非常に混乱していま過渡期にありますので最終的な問題ばなお残されているということは、これは御理解いただきたいと、かように思うのでございます。
  26. 野口忠夫

    野口忠夫君 私の申し上げました課題は、地方財政が今日的不況の中での困難性のある中から生まれてきた課題ではないということを大蔵大臣にひとつ認識してもらいたいと思うんです。自然増収という財源が非常に多くて高度な経済成長の行われていたころにも、国と地方との見直しの問題というのは提示されておったということであります。ですから、これは単なる財政問題経済問題で考えられるべき問題ではなくて、やっぱり基本的な国と地方のあり方、もっと言えば、憲法に示される日本民主化の過程の中で国は地方をどう見直していくかという課題とつながっているわけであります。そのことは、当国会の中で神戸委員会国会並びに政府に対して勧告している文が残っているわけですけれども、その中に強く示されているわけであります。  ですから、このような経済不況の中で、いまのところどうにもならないというようなお言葉で考え課題ではないのではなかろうか。やはりこの問題は、そういう観点に立って、もうそろそろそのことを考えていく課題の中に入っていくことでなければ、今日の住民の問題、公害とか成田とか、こういう地域住民の国の政治に対して余り賛成できないような言い方のあり方がどこの時点で一体解決していくんだろう。警察の取り締まりだけで解決できますか。私は、これはやっぱり千葉の市長さんの責任になるべきであろう、千葉県の知事さんがやっぱり住民自治というものの中でおさめられていく問題ではなかろうか。戦後三十年の歴史は、そこまでその積み上げをやってこいという提言を神戸委員会はやっているわけですよ。ですから、国の政策方向がそういった意味に沿ってこなかったという反省をこの辺でそろそろしないと、もうこれは新幹線も通らないし、下水道も通らぬし、道路もつくれないというような現状が日本の民主憲法の中で生まれてくるのではなかろうか。そうしたものを自分みずからが反省し、自分の責任において問題を解決するというような国民のそういう意識、国民立場というものを自治という組織の中でつくり上げていくんだという形を、つまり警官の力による取り締まりではなくて、国民の道徳性に立ったみずからがみずからを律していこうとするような民主的な成長というものが、自治体に自治を与えることによって生まれてくるのではないかというこの課題を、大蔵大臣、国の立場でやっぱり考え直してもらいたいと思うんです。  私は、今日の地方自治体に与えている公共事業の促進というようなものも、国の景気回復のためにやるというようなあり方は間違いだと思っています。景気回復のために地方自治体が住民のためにいろいろな仕事をやっているんじゃなかろう、あくまでもこうした基本的な観点に立って、地方自治の推進を図っていく過程の中で経済も興ってきたと。何か逆立ちしているような感じがするんですね、この景気回復の問題も。真の意味の安定経済というのはそういう意味で生まれてくるのではなかろうかというふうに思うわけでありますが、時間がもうございませんですので、いろいろ問題ありますから、これから具体的な問題に少し——この際、大蔵大臣に、自治大臣にも列席してもらって、頭にひとつしみ込ませてもらいたいと思っていろいろ準備はしてきましたが、ちょっと時間がなくなってきたようでございますので、基本的課題を申し上げただけでございますが、ひとつ大蔵大臣、私の申し上げている趣旨、十分にひとつわかっていただいて、この課題に取り組むことを、来年度予算、この辺から前向きの姿勢で臨んでいくというような、そういうお答えをいただけませんか。
  27. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほども申し上げましたように、車の両輪でございますし、特に地方財政考えてみますと、四十七都道府県、それから三千余りに上る市町村があるわけでございまして、一つ一つの会計を見ますと非常に小さい規模でございます。そういう中で地方自治というものを財政的にも確立していくためには、やはり特段の配慮が必要だと思うのでございます。  したがいまして、今年度をごらんになりましても、国は赤字公債を約五兆円発行しておりますけれども、おととし地方は赤字地方債を発行いたしましたが、去年、ことしと、もう赤字公債は出さないような財源措置を講じているのでございます。もう詳しいことは省略させていただきますが、財源不足三兆五百億につきましては財源対策債一兆三千五百億を講じますし、なおそのほかの不足財源一兆七千億円につきましては、特例交付金千五百億を引きました一兆五千五百億の半分、これは全部、総額運用部から借り入れることにしておりますが、その半額は国が最終的に償還について負担を負うということをことし決めさせていただきました。なお、財源対策債につきましても、とりわけ財政基盤の弱い市町村の方に重点を置きまして、そしてその財源対策債に関する限り運用部で全部引き受けることにいたしましょうということもいたしております。また、六兆余りに上る地方債のうち、六〇%については、国の原資と同じ利率まで利差補給をするという措置も講じているところであるわけでございます。苦しい世帯の中でそれぞれ自治省と十分打ち合わせをやりましてやりくりいたしているわけでございますけれども、今後といえどもこういう姿勢はとってまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  28. 野口忠夫

    野口忠夫君 時間がないので細かく入ることは避けたいと思ったんですが、後の問題について、大蔵大臣、これ、国と地方との関係というのはやっぱり車の両輪ということをおっしゃっているわけですから、今度、地方行政委員会大蔵大臣ひとつ御出席を願いたいと思うんですけれども、これはできますか。ひとつ約束してくれませんか、一度来ていただくこと。そこでひとつ地方の問題について、やっぱり国会における話し合いというようなものをお聞き取り願いたいというふうに思うような感じがするんですよ、いまのお答えを聞いておって。これば恐らく超党派の意見であろうと私は思います。ほとんど地方行政委員会の中では各党各派なんというものは余りございませんで一致しておりますから、その中で大蔵大臣にひとつ聞いてもらいたいというふうに思うんですけれどもね。それはひとつ後で御要請申し上げますから、そのときは暇をつくっておいで願うようにしていただきたい。  細かい問題、いまの国税の問題も出ましたし、いろいろ御努力になった大臣の御苦心はよくわかるんですよ。そういう点はよくわかるんですが、そのことについてやっぱり問題が残っていることを申し上げたいんですが、これは避けます。  次に、同じく地方自治問題に関係する問題で、熊本県に対する県債発行の問題について少しお尋ねしたいと思うんです。  公害病患者への補償はもともと企業責任であって、県債発行が決まっても補償はチッソができるだけ企業努力によって行い、いよいよ不足分だけを県債でというのが筋であり、チッソは必ず払っていくんだというような立場で今度県債発行ということが行われたわけでございますが、この水俣病患者への巨額の補償金を背負って経営危機に陥っているチッソの救済問題は、これは六月十六日、水俣病関係閣僚会議で四項目から成る対策の決定が行われて一応の決着を見たと思います。この救済策の柱となっているのは、熊本県が発行する県債を、補償総額の六割までを国が、残りを金融機関が引き受けて、こうして集めた資金を熊本県がチッソに融資して患者への補償に充てるという仕組みで、万一チッソが返済が不可能になった場合には、国が相当部分の債務を保証するといういわゆる県債方式であります。チッソの経営能力では耐えられない部分を県債発行で賄う、焦げついた場合ば国が所要の措置を講ずるというこの取り決めは、県と政府が応分の責任を果たしているように表面は見えます。しかし、公害責任をチッソも地方自治体も国もあいまいな形で負っていくという形で、責任の所在というものを拡散してしまうおそれがあるんではなかろうか。公害問題の根底にある責任を避けて通った一時しのぎの解決ではなかろうかというふうに思われるんですが、一私企業に対し国と県が救済するという前例のない今回の措置について、大蔵大臣はどうお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  29. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 水俣病に関するチッソの問題につきましては、私たちは、被害者の方が全くお気の毒であると同時に、加害者であるチッソもまた、これなかなか大変な話であると率直に思っているわけでございます。この両者の間で裁判上の和解が行われまして補償金額が決まりました。PPPの原則から申しまして当然のことであろうと思うのでございます。しかし、実際問題としまして、もしチッソが経営がうまくいかないというようなことがあれば、これはなかなか被害者の救済に対しても重大な問題を持つことは当然なことでございます。しかし、同時にPPPの原則はあくまでも貫かねばならぬのでございます。そういう現実の問題を踏まえまして、やはりこの際はできるだけ、金融面からチッソが成り立たなくなる、そのために被害者に対する補償が不幸にしてとまるというようなことがあっては大変だと、こういうことで金融支援を決めたわけでございます。  金融支援の方法につきましては、いま委員がおっしゃいましたように、おおむね六割程度のものは運用部で引き受けます。残りのものについては、従来どおり金融機関で引き受けてもらいたいと。なお、金融機関についても、従来から支援しておりますような元本の返済猶予あるいは利子のたな上げ、そういったことは国としても要請したところでございます。  いずれにいたしましても、金融面から、いまの被害者も加害者も、ともに不幸になる事態、これを避けたい、こういうことで決めさしていただいたと、このように御理解願いたいのでございます。
  30. 野口忠夫

    野口忠夫君 今回の措置は、補償金の支払いで経営難に陥った企業政府と地方自治体が一体となって救済するという、一つの新しい道を開いたと思うのです。チッソが倒産すれば患者は補償が取れなくなる、これで倒産は避けられる、補償金の支払いは現在のまま続けることができる、患者の不安は遠のくことになる。この公害の加害企業の象徴のような企業に国や県が財政援助をすることは、患者と地元企業、城下町経済を救うという大義名分のもとではありますけれども、公害問題の基本である汚染者負担の原則、PPPというものが崩され、風穴があいたことになるのではなかろうか。企業公害をまき散らして汚染地域で多くの被害者を出しても、その補償を抱えて経営が行き詰まれば最後には国に駆け込むという実例、悪例をつくったことにはならないだろうか。汚染者負担の原則と今回の措置ということについて、大臣はどのようにお考えであるか、時間もありませんので、その点をひとつ。
  31. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) その点だけ申し上げますと、あくまでも金融措置でございます。補助金を出して、それを補償金の支払いに充ててくれというようなことは言っておるわけじゃございません。当然チッソは今度の県債を通じて金融を受けたわけでございますから、いずれはその県債に対して返していただく、あるいはまた、それを通じまして運用部に返していただく、こういうことでございまして、補助金を出したわけではございませんので、PPPの原則はやはり貫いているわけでございます。
  32. 野口忠夫

    野口忠夫君 チッソがつぶれてしまったら今度貸した金は取れなくなる、それは国がこれを支払う、国の支払うのは税金で穴埋めするようになれば、これはどうも現実、いまのところはそうだとおっしゃったのですけれども、将来にわたって考えた場合——なるほどいまおっしゃったとおりのお話だと思うのです、いまは。  ところが、主要銀行でさえも、どうも何か回収の見込みが危なくて貸せないというような状態を新聞などで見るわけですね。そういうところに、公的資金で、しかも三十年という超長期の融資である。これは実質的には補償の肩がわりということになってしまうのではなかろうかと思うのですがね。その点では、汚染者負担の原則というのは崩れているんではなかろうかというように思うのですけれども、いまのところはという大臣の御答弁はわかりました。しかし、もし回収できなくなったときにはということになりますとどういうことになるかというのですね。今回の措置は異例の対策であり、今後の企業対策の前例としないことを関係閣僚会議でも確認したということでありますが、今後、ほかの公害補償で企業が補償金を支払えなくなったとき、公害だけではなく、デパート火災の補償のような場合も含めて、第二、第三のチッソが出てくるんではなかろうかと考えられるのですけれども、そのときの歯どめは一体どのようにするのか、、そのときまた特例ということになり、それが常態化するようになれば、とうも私企業の自己責任の原則は崩れることになる心配があるんではなかろうか、こういう不安を持つわけですけれども、その点ではどうですか。
  33. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) われわれは、チッソがずっと継続的に事業をできるようにしようということでございます。万一、チッソがどうなったかという場合を考えているわけではございません。そのようにならないことを念願いたしまして今回の措置を決めているわけでございます。  似たようなものが出てきたときはと、こういうお話でございますが、こういうような公害問題、これは再びあってはならぬことだと思います。したがいまして、そのような公害が発生することそれ自体をわれわれは予見しているわけではございません。絶滅しなければならぬと、その意味で前例にしない、こう言っているわけでございます。
  34. 野口忠夫

    野口忠夫君 二度とこういう問題があってばならないという大臣の御答弁は、まことにそのとおりだと思うのです。こんなことがあってはならないと思うのです。これはチッソもそうだったと思うのですね、あの当時は。だけれども、そうなっちゃったのだ。ここでやっぱり閣議決定だけではおさまらない状態の問題が残されているわけですね。そういうことも予想しながら考えなくちゃならぬと思うのですけれども、いまのところチッソは再建さしていくように努力する、これがつぶれるというようなことはないという前提に立っていま考えられるという御答弁でございますけれども、やっぱり万一を考えなくちゃならぬと思うのですがね。万一、返済が不能になった場合の債務保証、これは関係閣僚会議の決定では、「熊本県が発行した地方債の財源の確保が困難になった場合、国が所要の措置を講ずる、具体策は関係大臣が協議して決める」となっており、閣僚会議の了解事項でも、「地方債の償還財源については、国が十分の措置を講ずるよう配慮する」となっているんですけれども、国と県の負担はあいまいなものになっている。国と県の負担についてはどのような取り決めになっているのかお聞きしたいのです。  チッソは、補償金の支払いで、この三月末現在の累積赤字が三百六十四億円、資本金の五倍近くに達しているし、今後補償が増加し、チッソの経営が破綻するおそれは少なくないのであります。決定事項では、実際にそういう事態が生じたときになって話し合うように見えるが、万一、熊本県財政に穴があいたときば一般会計で補てんするわけだから、これは国民の血税であると思います。国においてとる所要の措置とはどの辺を目途にしているのですか。資金運用部の県債の引き受けの範囲までか、それとも金融機関が引き受けた部分も入っているのか。できればこれは具体的にひとつお伺いしたいと思うんです。
  35. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほどからもお答え申し上げますように、われわればチッソがやはり事業をずっと継続してまいりまして、被害者に対する補償金が円滑に支払われる、そして今度の金融措置による融資の返済を当然予定しているところでございます。したがいまして、その万一という場合は、余り考えていないことは当然なことなのでございます。これが継続できるということを前提に物を考えております。ただ実際問題として、知事さんの立場で申しますれば、なかなかそれでは大変であろうということでございまして、そのようなことはないことを望むものでございますけれども、万一というような場合については、それは県にはできるだけ御迷惑をかけない。そのような趣旨のことを閣議了解で出したわけでございます。  具体的な問題は決まっているわけではございません。そのようなことのないことを前提にしているわけでございます。万一の場合は、そのときその時点でそういった趣旨で考えてまいりたいと、かような閣議了解と御理解願いたいと思います。
  36. 野口忠夫

    野口忠夫君 これはやっぱり万一の場合をいま想定して考えておく必要があるのじゃなかろうかと思うんですがね。そのときになってから考えますと言うて、いま御返事のできないのはどういうわけですか。万一のことがないと予想している、そのとおりだと思うんです。ない方がいいんですが、しかし、いまここで私の方で心配なのは万一の心配なんですよ、なければ一向に差し支えございませんけれども。だからお聞きしているのですけれども、なぜ御返事にならないのですか。
  37. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほどから申しているように、PPPの原則は守っていくわけでございます。したがいまして、その財源は、最終的には被害者の救済のためにはチッソがやはり事業を続けていくということが前提であるわけでございます。したがいまして、PPPの原則、被害者の救済ということを考えますときに、万一ということにアクセントを置くのではなくて、継続できるように支援をしていくという方向にいま重点を置いて考えていると、こういうことを申し上げたわけでございます。
  38. 野口忠夫

    野口忠夫君 自治大臣にお伺いいたしますが、いまの大蔵大臣の御答弁で言えば、公害病患者の補償はもともと企業責任であり、県債発行が決まっても補償はチッソができるだけ企業努力で行え、いよいよ不足分だけを県債でというのが筋であり、チッソは必ず返済するという姿勢で経営努力をすると、こういうふうにいまおっしゃっているわけです。県債の発行規模は、これはチッソの経営内容によってチッソが負担する額と水俣病患者の認定作業との関係で決まってきますね、県債の発行額は。地方債を許可していくという自治省は、この許可についてどのような方針でいるのでございますか。これはもう必ずチッソから返ってくるという問題ですから、危なげないということだけで自治省は県債の発行を許していくのかどうか。チッソが補償金の一部を負担できないようなことになった場合は、これは全額をやっぱり県債で発行するということになるのでございましょうか。それからまた、さしあたり五十三年度は県債の発行規模はどのくらいでございましょうか。これをひとつ大臣にお伺いしたいと思うんです。
  39. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 大蔵大臣から答弁がございましたように、今回、熊本県が転貸債を発行いたしましてチッソに融資をいたす、かような決意をいたしましたその理由は、チッソの経営が継続されなければならぬ、継続されないような事態が生ずるといたしますと結果としては水俣病患者に大変な影響が生ずる、かようなことであったと思うのでございますから、したがって、熊本県が転貸債を発行して原資を得ました上でチッソに融資をいたしますのは、企業の経営継続、このことを前提に考えていると思うのでございます。  が、しかし、にもかかわらず万一企業経営が不可能になった場合にはどうしなければならぬか。このことにつきましても関係閣僚会議で議論されましたし、また、了解事項といたしまして何がしかの記述があることは御承知と思うのでございますけれども、自治省といたしましては、熊本県が回収不能になりました場合には国において十分な処置をしていただかなければならぬし、結果的には熊本県といたしましても了承し得ます条件でなければならぬと、かような基本の考え方を持っているのでございますけれども、しかし、これはあってはならぬ。また、あるべからざること、かような前提でのことでございますから、それを頭に置いての今回の処置ではなかったのでありますけれども、念のために万一の場合を明記いたしておる、かように理解をいたしておるところでございます。  なお、最後の発行額でございますね。もう知事が海外出張から帰ってきておると思うのでございますけれども、どの程度の転貸債を五十三年度発行いたしますかにつきましては、まだ明確な線を県自身が握っておらないようでありますし、したがって、まだ自治省へ、国へ起債の認可申請は出ておらないのでございますけれども、五十三年度におけるチッソの経営状況の見通しもあるでございましょうし、また、どの程度の放償額を支払わなければならぬか、この金額の算定もあるかと思いますし、なおかつ新規にどの程度の患者が認定されるのか、これも非常な関連を持っていること。かように思うのでございますから、さようなことを総合いたしながら、そう遠くはない時期に転貸債の額を県みずからが決定いたし、議会の議決をも経まして国にその承認申請をしていく、かようなことになろうかと思うのでございます。ですから、結論的にはまだその金額は明確ではないと、かように言わざるを得ないのであります。
  40. 野口忠夫

    野口忠夫君 自治大臣も、これは払う方の立場ですから非常に御遠慮なさっているけれども、万一が心配だとおっしゃっているわけだ。私と同じだ。これに対してやはり大蔵大臣、答えなくちゃいかぬと思うんですね。私は、この問題はこれで最後にいたしますけれども、この問題で万一支払い不能というようなことになった場合、熊本県に対してこの県債発行によっての犠牲は、決して迷惑はかけないと。先ほどの閣僚会議了解事項によると、十分な措置と言うんですけれども、迷惑はかけない。私はこれがやっぱり地方自治体全体の中で何とか始末してほしいというようなことになると、これは意外な迷惑をこうむることになるわけであります。お金を渡す際には大きな金を渡すことになりますから、その中で処理するような問題ではなくて、やはり県債発行という熊本県のやったことは、国がなし得ないことを熊本県がかばってやったと、こう解釈したいと思うのです。財政法上、地方財政法上そうなっているのではないか。本当から言うて、熊本県が県債を発行して、一体あのチッソを救うだけの税金などいただいているかどうかについて、やはり疑問じゃないかというように思うんですよ、法人税の場合などは。そういう意味では熊本県が本当に責任があるかとうか。しかし、それを財政法上、熊本県の県債を通じてやるというのですから、これに迷惑をかけてはならないと思うわけでありまして、先ほどそういう事態の場合、万一あったときにはこれは全額国においてひとつやってもらいたいというようなことを要請したいという自治大臣の決意でございますが、この自治大臣考え方に対して、大蔵大臣としてはその考え方をそのとおり守ってやると、こういうお答えになるかどうかお聞きします。
  41. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは万一の場合の話でございますし、また県当局としてはそういうことを御心配になる気持ちもよくわかるわけでございます。そのような意味合いで閣議了解の記述があるわけでございます。ただいま委員のおっしゃったことも十分頭に置きまして万一の場合には善処してまいりたい、かように思っているところでございます。
  42. 野口忠夫

    野口忠夫君 では、自治大臣、結構でございます、地方問題を終わりますので。  円高問題でひとつお尋ねしたいと思います。けさほどの各新聞にまず大きく出ましたね。けさの朝日を持ってきたんですけれども、「英であっさり二百円台 大台割れに警戒強まる」という見出しで、円高問題がいよいよ二百円を割ってしまうというそういう状態の中で御質問申し上げたいと思うんですけれども、最近のこの円高というのは、異常な状態で上昇を続けまして、一ドル二百円ラインなんというのは、きのうの時点でまだそこまではと思っておりましたが、きょうの新聞ではそれをもう突破することになったと。国民としてはまことに先行きについて大きな不安を持っていると思われるわけであります。  まず、第一番にお聞きしたいのは、今日のこの状態において、円、マルク、スイスフラン、これがスミソニアンレートないしは変動相場レート、このレートに換算して、その基準で見た対ドルレートの切り上げ状況はどういうふうになっているのか、これを大蔵大臣にお聞きしたいと思うわけであります。
  43. 宮崎知雄

    説明員(宮崎知雄君) 円、それからドイツマルク、それからスイスフランの対スミソニアンの時点からの切り上げ率、及び変動相場移行時からの切り上げ率についてお答え申し上げますと、これはもちろんドルとの関係でございますが、スミソニアン比、四十六年の十二月のスミソニアンのときに比べまして、昨日の七月四日の終わり値で見ますと、円の切り上げ率は五三%になっております。それから同じくドイツマルクは五七・三%、それからスイスフランは一一三・七%でございます。それから変動相場移行時との比較でございますが、これは円、マルク、スイスフランによって若干日にちが違っておりますが、円の場合には、七三年二月十四日でございますが、そのときのレートに比べまして三四・七%の切り上げになっております。それからドイツマルクは、一九七三年の三月十九日以降でございますが、三八・一%の切り上げになっております。それからスイスフランは、一九七三年一月二十三日以降でございますが、これが一〇七・八%の切り上げになっております。以上の計算はいずれもIMF方式によって計算したものでございます。
  44. 野口忠夫

    野口忠夫君 大変な状態でこの円高が世界的なレートの中でもこうなっているんだと思いますが、この円高を一体どう考えるかということだと思いますが、国会の中でこれを明らかにしたいと思うんです。  五十二年度中小企業白書によりますと、「円高は、我が国経済力の相対的地位の向上を意味するものである」、こういうようなことが中小企業白書の八十五ページに載っておるわけであります。同時に、それが国際的に円滑にわが国民生活の相対的地位の向上でもある限りにおいて歓迎すべきものである、こういうようなことが書いてあるわけなんです。円高のあるべき姿について中小企業白書はこういう記述をしているわけでありますが、これをひとつ大蔵大臣、通産、経済企画庁、この三つの方から、円高に対してどう見るかについてお答え願いたいと思うんです。
  45. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはいろんな評価はあるわけでございますが、そのこと自体を端的に経済白書がある一面でとらえていると思うんでございますが、日本の労働力が高く買われている、日本の技術力が高く買われている、そういう面から見ますれば確かにそういう評価はできると思うのでございます。しかし、現実の日本経済に及ぼすメリット、デメリット、いろいろ考えますと、それはそうばかりは言っておれない。それは一つの一面だろうと思うのでございます。輸出につきましては、御案内のようにやはり輸出競争力を失っておる、円高で困っておる輸出関連企業がたくさんあることも御承知のとおりでございます。また、今度は円高によりまして輸入物価がどんどん下がってまいるわけでございますから、それはやがて日本卸売物価あるいは今後の生産の拡充という問題については明るい面も持っておることは御承知のとおりでございまして、この円高の及ぼす影響はある面ではメリットがあり、ある点ではデメリットがあるということでございます。問題は、急激に変動するということは、いかなる意味におきましてもやはり経済のあるいは企業の指針が立たない、あるいは対応ができない、こういう問題でわれわれはこの問題はできるだけ配慮していかなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  46. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) いま御指摘のありました中小企業白書の記述でございますが、これは読み上げますと、「円高は、我が国経済力の相対的地位の向上を意味するものであるが、輸出面からみると、同じドル価格では円換算した手取り額が減少し、また、他の競合国製品との価格面での競争上不利となる側面を有している。」というふうなことで、あと中小企業にとってそういう不利な側面が非常に大きいので、この不利を克服する努力が要るということを五十二年度の実情を通じて分析したものでございます。したがいまして、いま大蔵大臣がおっしゃいましたように、円高には確かに世上言われておるメリットがあるけれども、現在の時点でば、二とに中小企業にとっては大きな試練であり、また非常な不利な点があるということを説明した部分でございます。
  47. 岩田幸基

    説明員(岩田幸基君) いま大蔵大臣から御答弁いただきましたことと同じようなことになるかと思いますが、円高と申しますのは、一国の通貨価値、日本の通貨価値が他の国の通貨に比べて上がるということでございますから、その限りにおいては、確かに総合的な日本経済力が相対的に上がったということが言えると思います。しかし、これは原理原則でございまして、実際は、最近のような急激なしかも非常に早い期間で円が上がるということになりますと、一方では物価の安定には非常に役に立つというメリットがございますけれども、同時に、輸出産業、特に中小企業等については非常に大きな影響を与えるということでございますので、いずれにいたしましても円の価値が早く安定をするということが一番大事なことで、円が変動ずることはやはり経済にとっては非常に大きな影響があるというふうに考えております。
  48. 野口忠夫

    野口忠夫君 メリット、デメリット、両方持っているという大臣のお答えでございましたが、円高の問題が非常に急激な変化というようなことはまことにこれはいろいろな意味で摩擦を生ずることになると。私もそのとおりだと思うわけでありますが、一体この円の対ドルレートというのは幾らぐらいが適切であるとお考えでございますか。なかなか種々の条件が関係することでございますからむずかしい問題ではあろうと思いますが、先月アメリカのミンチュー氏、アメリカITC委員長、まあアメリカ高官だと言われる方ですが、最近、一ドルは二百三十五円から二百四十円が適切であるなどと述べられておるのが日経新聞にあったわけでございますけれども、政府としては円の対ドル適正レートといったようなものをどのようにお考えになっているのか、大蔵大臣にひとつお聞きしたいと思います。
  49. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 金融の直接の衝に当たっている者が円の先行きの見通しについて申し上げることば御容赦いただきたいと思うのでございますが、いずれにいたしましても、巷間伝えるいろんなあれを言いますと、大体もう底値感が来ているんじゃないかというのが一般の考え方のように思っておるのでございます。
  50. 野口忠夫

    野口忠夫君 なかなかむずかしい問題でお答えがいただけないと思ったんですけれども、どこまで行くかわからないという中での国民のやっぱり一つの適正レートというようなところに抑えていく努力、そういうようなものがやっぱり基本的には欲しいような感じがするわけですがね。どこまで行くかわからぬ、成り行きに任せておけばいい——けさほどの新聞など見ますと、余りこれは手を加えぬでもいい、そのうち自然に市場操作が働いてまた適正になってくる、余り気をもまぬでもいいみたいな御意見もあるようでございますけれども、国民立場で言うと、この変化の中から起こってくる摩擦というやつは耐え切れないものがあろうと思うんですが、非常にメリット、デメリットの問題があって円高の問題があると思うんですけれども、この円高の影響についてひとつお聞きしたいと思うんです。  円高がもたらす企業利益に対する影響は、輸入原材料価格についての為替差益などによって、たとえば電力会社は三月期決算で年間差益九百十七億円、石油九社のそれは五千五百億円など大幅な利益を上げる企業がある一方、五社に一社は欠損を生じているというこういう二極分化の状態が明らかになっているのではないかと思うんですが、円高が企業の収益にどのような影響を与えたか。これはひとつ業種別、企業規模別の実態などについて経済企画庁長官の方からお聞きしたいと思うんです。
  51. 岩田幸基

    説明員(岩田幸基君) 円高の企業に及ぼす影響、特に電力等につきましては物価局の方からお答えすると思いますけれども、大ざっぱに申しますと、ことしの三月決算で申しますと、昨年の九月決算に比べまして約二、三%経常利益がふえております。この二、三%ふえました経常利益のかなりの部分が、石油精製業あるいは電力、ガス等の円高差益による利益増であるということは事実でございますし、それからまた自動車あるいは精密機械等のいわゆる輸出産業でございますが、これも昨年一年間に円は約二〇%上がったわけでございますが、同時に工業品の輸出価格が平均一四%ぐらいドル建てで上がっております。一方、輸入原材料の価格は一七、八%下がっているというようなこともございまして、予想以上に企業利益に及ぼす影響は平均的に見る限りはそう大きくなかったということもございまして、それらが合成されまして全体として二、三%の増益になっているということでございます。  具体的な業種につきましては物価局からお答えいたします。
  52. 坂井清志

    説明員(坂井清志君) 電力、ガスにつきまして申し上げます。  五十二年度で申し上げますと、一応これはきわめて大ざっぱな試算でございますが、九電力の円高の差益額として五十二年度に約九百二十五億円という数字が試算をされております。それからなおガスでございますが、大手のガスの三社を合計いたしまして、これも同様に百六十億円、こういう試算がなされております。これは一応の試算でございまして、電力会社、ガス会社ともに、費用の面で、ほかに資本費人件費その他の費用の高騰といった問題もございますので、それらをあわせた問題につきましては通産省の方から御説明いただく方が適当かと思います。
  53. 天谷直弘

    説明員(天谷直弘君) 電力及びガスの差益額につきましては、いま経済企画庁の方から御説明がございましたが、非常に大ざっぱに申し上げますと、一円の円高につきまして、たとえば電力の場合は三十四億円くらいの為替差益があると、こういうふうな計算をいたしております。なお、十円の場合は三百四十億。  そこで、五十三年度について考えてみますと、四−六月の平均為替レートは二百二十二円でございましたが、おおむねこの水準で、仮に為替レートが年間通じてその水準で推移するといたしますと、為替差益としては二千二百億円くらいになると思っておりますが、さらに先ほど申し上げました十円で三百四十億、二十円で七百億弱ということになりますけれども、もし二百円で以後推移するとすれば、その分だけまた為替差益がふえるということになるわけであります。しかしながら、他方、電力のコストというのは、過去十年間を振り返ってみますと、総費用がおおむね毎年一七%くらいの速度で上がっております。したがいまして、こういう総費用の上昇ということを勘案いたしますと、五十三年度の予想といたしましては、円高差益がある場合で約千八百億円。ただし、これは二百二十二円ということを前提にしておりますから、もし二百円であれば、またさっき申しました一円につき三十四億ということで足し算をしていただかなければならないわけであります。  それから五十四年度につきましては、御高承のとおり、差益と通常申しておりますのは、査定原価に対しまして、円高の結果輸入価格が下落した場合に、その差額を為替差益と言っておるわけでありますが、五十四年度につきましてはその査定原価がないわけでございますから、ちょっと為替差益の定義もあいまいになりますし、いろいろ仮定の数字が多くなるのでございますけれども、五十四年度も五十二年、三年の査定原価をそのまま使うと仮にいたしますならば、五十四年度で費用の上昇と為替差益と差し引きいたしますと六百五十億くらいの赤字になる。ただし、これも二百円であるということになりますと、先ほどの数字が加算されますから、ほとんどとんとんということになるだろうと思います。  それからまた、五十三年度、五十四年度を続きで考えてみますと、きわめて大ざっぱに申し上げまして一千億前後の黒字があるということでございます。したがいまして、電力料金の総収入が十二兆くらいございますから、これに対する比率で申し上げますならば、五十三年、五十四年通算をいたしますと、為替差益、それから費用の上昇、これらをすべて勘案いたしまして、きわめてラフに申せば一%くらいの黒字があるということになるかと思います。
  54. 野口忠夫

    野口忠夫君 為替相場の円高差益金については、実は衆議院、参議院において決議が上がっているわけですね、為替相場の円高差益についてば、「物価安定政策への活用及び国民生活への還元」が不十分であるから、「一層の努力を行い、具体的な施策に反映すべきである。」旨の決議が四月二十六日に参議院であり、次いで衆議院でも同様の決議が上がったわけでありますが、今日の時点においてもうこれ一ドルが二百円になるという状態でございますから、先ほどエネルギー庁長官の御説明によっても、相当の——ただ黙っていて入ってくる金だね、これは汗を流さなくてもひょっと入ってくる金だ、これが相当膨大な金が入ってくる。二百円になったらもっと——こうなって赤字はもう解消するだろうと、こういうことなんですね。これが二百円というようなことまでも記録したという状態になってさましたらば、まことにこういう状況の変化に対して円高の差益の還元の努力というものを政府は一層強化すべきではなかろうか。やはり国民の側から見た場合、どんどんふえていくんだと、こういう状態をつくっているわけですから、それが単に企業側の意見だけで云々されるんではなくて、政府自身がやっぱりそうした円高差益金を国民に還元するということを、ああよかったという国民の声を聞くような意味で、やはり円高のごの利益というものは還元されるように政府自身も努力すべきではないかというふうに、決議もあることでございますから努力の方向は当然だと思うんですけれども、改めて大蔵大臣にひとつ差益の還元の政府の努力というようなことについてお聞きしたいと思うんです。
  55. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この問題は、企画庁を中心といたしまして関係閣僚会議でしばしば論議したところでございます。本来は市場機能を通じて自然還元されるということになりましょうけれども、やはりもろもろの事情でそういうことを阻害している要因がある場合には、できるだけ政府も手をかしてそのような措置を図りたいということを決定しておるわけでございまして、先般その状況につきましては、どういうものがいま還元されておるか、なかなか還元がむずかしいものについてはその理由等を経済企画庁から詳細に発表いたしておるところでございます。詳しい事情は、そういった意味経済企画庁からお聞き取り願いたいと思っておりますが、政府の方も、できるだけ市場原理でもって還元される、もしそれができない場合には政府もその理由をただして、できるだけの円高メリットを還元させる、あるいは将来、原価が恒常的に上がるものについては、やはり将来のことを考えますと、この際は料金据え置きという方向考えた方が最終的にはベターではないかという部門、業種もある、こういうようなことで分類しているところでございます。
  56. 野口忠夫

    野口忠夫君 いろいろ前の方まで進んだ御答弁になっちゃって、電力料金据え置きの問題はそのままがいいんではないかと言うんですけれども、とにかく二百円台に入ってくる中での円高の利益というようなもの、これはやっぱり国民に返すという考え方をとるべきではなかろうか。電力料金についてはそもそも円高差益に応じた引き下げを行うべきであるという意見が現在も国内にはあるわけであります。学習院大学の先生なども、これをやっぱり引き下げすることが当然であるという意見です、円高差益については。企業努力によって生まれた利益の問題ではなくて、円高という問題によって起こってきたこの問題には、そういうやっぱり国民の要求する権利もあるんでばなかろうかというような御意見も現にあるわけでございますが、特に円棒上げの状況といいましょうか、一ドル二百円台になるというのは全くこれは時間——もうなっているだろうと思うわけでございますが、そういう立場に立ってみますと、この意見というのば非常に傾聴するに値すると思うんです。  私、お聞きしますが、電力会社の五十三年四−六月半期ですか、この円高差益産業が大分あったようでございますが、電力会社の五十三年の四−六月半期、この円高差益金ですね、これはどのくらいになるか。あわせて、これをもし返した場合、引き下げた場合、一世帯どのくらいずつ下がっていくものか。それをひとつ電力とガスと両方あわせてお答え願いたいと思います。
  57. 天谷直弘

    説明員(天谷直弘君) 四−六月という特定の期間を限りまして幾ら円高差益があったかという計算は、いまのところちょっと自信がないわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、年間二百二十円で滑っていくと——四−六月の相場は平均しますと二百二十円でございます。これで滑っていくと仮定いたしますと、先ほど申し上げましたように電力の場合は二千二百億ということでありますので、四半期分といたしますれば、その四分の一ということでお考えいただければよろしいのではなかろうかというふうに考えます。  次に、ガスでございますが、大手ガス会社について推定いたしますと、年間約三百四十億円程度の差益があるというふうに考えられますので、これを一・四半期別に直しますと八十億くらい。ただ、ガスについては季節性が非常に大きゅうございますので、こういうふうに単純に四で割った場合に第一・四半期の本当の数字とどの程度一致するか疑問ではありますけれども、まあ大ざっぱに四で割ればそういう数字になるわけでございます。  次に、これを電気料金の引き下げに回した場合に一体どの程度の引き下げが可能であるかという御質問でございますが、まあラフに申し上げまして、一キロワットアワー当たりにいたしますと為替差益が二十三銭ということになります。それから一ヵ月の電気料、これは百二十キロワットアワーというのがナショナルミニマムということになっておりますけれども、これだけを使用する家庭への影響といたしましては二十八円、それから平均使用料の家庭への影響ば四十円。要するに、月当たりでございますが、三十円ないし四十円の引き下げができる。もし、コストの上昇の方は全部無視いたしまして、この為替差益を全部引き下げに回せるとすれば、そういうことになるということでございます。  それからガスでございますけれども、ガスの一立方メートル当たり為替差益、これはいろいろ前提がございますが、これもラフに申し上げまして二円八十銭程度。したがいまして、ガス使用料の平均的な家庭への影響は一ヵ月おおむね九十円前後というふうに考えております。ただし、これもいずれもコスト上昇はないと仮定した場合の話でございます。
  58. 野口忠夫

    野口忠夫君 いまのは二百二十円ですね。
  59. 天谷直弘

    説明員(天谷直弘君) さようでございます。
  60. 野口忠夫

    野口忠夫君 これ、二百円になっての計算というのはまだ早いわけですね。これはちと早過ぎるようだが、これもあすあたりになると百九十円くらいになるかもしれない。これはひとつどうですか、通産省、エネルギー庁あたりで電気料金の引き下げというやつですね、電力料金の。いまのところでは横ばいということを言うているようですけれども、こういう円高差益でございますから、電力料金の引き下げ方向に持っていくというような考え方は通産省、これはどうですか、そういう考えはないのでございますか。
  61. 天谷直弘

    説明員(天谷直弘君) 変動為替レートは御承知のように非常に不安定でございます。以後、円高が棒上げといいますか、一方的に上がり続けるものかどうか。逆に、山高ければ谷深しという考え方もあり得るでございましょうし、その辺、将来を推定することは非常に困難であるというふうに思っております。  それからもう一つは、産油国の油の値上げの可能性がどの程度あるかという問題でございまして、仮に原油価格が五%上げられたといたしますと、電力の場合にはそれが六百億のコスト上昇ということになるわけでございます。その他、電力はいま資本設備の投資を非常に活発にやっております。年間大体三兆円を超すような規模でやっておるわけでございますが、この資本費の高騰というような要因もあるわけでございます。為替差益の点だけ見ますと、確かに還元すべきである、特にもし今後とも円高が続くといたしますならば還元すべきであるということになるかと思われますけれども、いま申し上げましたように、いろいろ不確定な要因がございまして、これらの不確定な要因が動くたびに電力料金を下げたり上げたりする、非常に敏感にコスト変動と料金と連動させまして上げたり下げたりするということは、果たしていかがなものであろうかという疑念もございます。まあわれわれといたしまして、今後円高が趨勢的に続くと、二百円になり百八十円になりということが確実であるという確信を得られますならば、もちろんこれは料金の改定ということをしなければならないと思っておりますけれども、まあその辺、やはり不確定でございますし、余り電力料金をしょっちゅう朝令暮改するというのもいかがかという気もいたしますので、非常に苦慮いたしておるところでございます。
  62. 野口忠夫

    野口忠夫君 まあ横ばいの中では、企業内に蓄積しておいてというような意味の話もあるんですがね。おっしゃることはよくわかるような気もしますけれども、しかし、国民のサイドから言いますと、やっぱりこの際何らかの善政が施されて必要だと。大分物価が高い中で電気料金が下がったなんということになると、それば十円でも二十円でも——大分近ごろガソリンが下がっているものですから、いろいろそういう意味ではあるようでございますがね。これは再検討をひとつしてもらって、なるべく国民考え立場での料金値下げというような方向考えられるような通産省の指導をお願いしたい、これは御要望申し上げておきたいと思います。  それから、中小企業に対する影響でございますが、これも輸出関連の中小企業に対する円高の影響をひとつ取り上げたいと思うんです。やはり中小企業白書で見ますと、中小企業の典型的な存立形態である輸出に特化しておりまする全国七十九の輸出型産地について円高の影響が考察されているようであります。これによりますと、輸出型産地の輸出採算レートは、五十二年十月末で、一ドル二百五十円の時点で、産地の平均的企業で二百七十円台とする産地が最も多かった、これが輸出採算レートとしてそういうことがある。採算がとれるとする産地はほとんどなかった。その後も五十三年の二月末、一ドル二百三十八円の時点で、二百四十円から二百七十円台が輸出採算レートであった。このことは、一方において輸出採算レートの改善の企業努力が合理化と新製品開発などの形で行われておりますが、他方において輸出採算レートの改善が円の急騰に追いつかず、長期にわたって輸出採算レートを上回る高水準の為替相場での成約を余儀なくされていることが中小企業白書に記述されているわけでありますが、その結果、合理化に伴う失業、採算割れの輸出に伴う損失、受注高の減少、倒産など大きな影響があらわれていることも述べられているわけであります。十月中の輸出向け新規成約が前年同月に比べて八〇から一〇〇%減とする産地が、磨棒鋼、これは大阪です、ねじ、東大阪市、自転車及び同部品、堺市など十五産地、約二〇%に上っておって、五十二年十月から五十三年二月までの間に倒産した企業が十産地で見られ、休業も十二産地で見られたという状況であります。  そこで、第一に、円高に対応した合理化の努力状況について通産大臣にひとつお伺いしたいんですが、中小企業は非常に努力をされてきて、四十九年度以降減量措置というものを講じて、五十年以降の三年間について何らかの減量措置を講じたとする中小企業は、製造業で七五%、商業で七〇%であると報告されております。中小企業の現時点における減量経営、特に雇用調整、従業員一人当たりの人件費の抑制などについて、ひとつ通産大臣にお伺いしたいと思います。
  63. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) いま御指摘がございましたように、円高の中小企業、ことに輸出産地に及ぼす影響は非常に甚大なものがございます。それで、中小企業白書でも五十三年の三月まで、つまり昨年度の状態についていろいろ分析をしたわけでございます。それ以後、最近また円高になったわけでございますが、従来からの傾向を見ますと、やはりこの成約をする場合に、円高になりますと、本来はそれだけドルベースの成約価格を引き上げてもらえれば円手取りはイコールになっていいわけでございますが、事実上はなかなかそれがむずかしい。それで、現在まあ二つの方向でそれに対処しているわけでございまして、一つは、同じ商品でございますと、なかなか発展途上国との競争というふうなもののございます商品も多いものでございますから、そのドル価格を上げることができないんでございますが、デザインを変化させるとか、新製品をつくるとか、あるいは製品の高級化を図るとかいうことで、その産地の独自のものを打ち出しまして、ほかにかわりがないというふうなものになりますと、比較的ドル価格が上げやすいということでございまして、それに非常に努力をしている産地がございますし、最近でもそれによって何とか切り抜けられる——これはまあ常時われわれ各産地の情報を得ておりますが、という産地もございます。しかしながら、相当多数の産地につきましては、なかなかその努力もすぐには効果が発揮できないという点がございます。そういたしますと、結局この円価格を引き下げるという形になる、要するにコストを切るという現象が出てまいるわけでございます。そのためにはいま御指摘のような減量経営ということで対処をしておるわけでございますが、最近の状態を見ますと、その減量経営というのも大体限度に来ておるようでございますので、今後の中小企業の生きる道ということにいたしましては、やはり先ほど申しました新技術その他によって特徴のある製品をねらっていくということと、それから、これば白書の中にも出ておりますが、内需に転換をしていくというふうな点を考えております。さらには製品自身を変えていく、企業自身の転換を図っていくというふうな点もございますが、現在の時点ではそういうことでございますので、新技術と内需転換というところに活路を見出しつつあるというのが現状でございます。
  64. 野口忠夫

    野口忠夫君 まあ円高の原因はいろいろあろうと思うんですけれども、どうも総需要抑制策から生まれたこの減量経営という日本企業あり方の中で、これは中小企業に限らず大企業もですが、非常に輸出ドライブをかけてきたものが、労働者の首切りとか低賃金とか、合理化とか、そこで安い物ができたと。その安い物が、よい物ができたので売れたというのが、やっぱり輸出競争力の強化につながってきたんでなかろうかというふうに思うんですがね。つまり、減量経営という総需要抑制策のもとに生まれてきた一つの形、それが何か輸出ドライブをかけている原因になっている。日本の低賃金というふうなことが問題になるんではないかというふうに思うわけでございますけれども、通産省、経済企画庁あたりで、私のそういう意見についていかがでございますか。
  65. 左近友三郎

    説明員左近友三郎君) 先ほど申し上げましたように、中小企業の産地等の側面から見ますと、いまのような減量経営というのも大体限度に来ております。そして、ことに下請の中小企業では、むしろ経営者が即生産の従事員ということでございますので、何と申しますか、これを減量するというのも限度がございます。したがいまして、中小企業の側面につきましては、やはり減量経営というよりは、むしろ新技術その他によって活路を見出すという側面を今後われわれとしては推進していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  66. 岩田幸基

    説明員(岩田幸基君) 確かに先生がおっしゃいますように、大企業といわず中小企業といわず、この数年間大変な減量経営をやってきたということは事実でございますし、そのことによって、たとえば輸出産業におきましても利益を確保してくることができたということも事実だと思います。しかし、ごく最近の輸出の状況から申しますと、確かにそういう面から価格競争力が出てきたということもありますけれども、それよりも、たとえば最近自動車の価格などはそうでございますが、すでにアメリカの国内の国産車に比べますと、一台当たり二百ドルから四百ドルも日本の車の方が高い、にもかかわらず輸出が出ているというように、日本の機械製品はとちらかと申しますと価格以外の競争力が非常に強いという面があるんじゃないか。したがいまして、必ずしも先生がおっしゃいますように、最近の輸出の増加がいわば減量経営の結果高水準を続けている、そういう面がなきにしもあらずですが、それが大きな原因だとは私とも考えておりません。また、企業賃金も、御承知のように最近の円高によりまして、ドル換算をいたしますともうアメリカの賃金とはほほ近い水準まで上がってきておりますし、そうした意味から申しますと、やはり日本商品の持つ価格競争力以外の競争力が非常に強いという点に大きな原因があるんではないかと思います。
  67. 野口忠夫

    野口忠夫君 さしたる原因ではないというようなお話でございますけれども、現在工場などに行ってみまして、ことに中小企業関係あたりの一つの家内工業的な場面に行ってみますと、まずずいぶん安い賃金でございますね、パートなどの場合は。そういう中で、まず朝から晩までノルマを与えられまして、それで目の前に大きな看板がありまして、きょうこれだけやらぬと普通の賃金をくれないみたいなかっこうになっているわけです。そのノルマを毎日見ながら、その下で若い娘さんが一生懸命繊維などをやっているわけでございますけれども、もう欧米などでは半日労働というような形に変わって、それでやっぱり雇用を増大していこうというような方向考えているようなんですけれども、日本の場合はだんだん皆はじき出すことばかりやっているわけです、いわゆるコストの問題、人件費の問題をはじき出すばかりで。まあ電電公社などへ行ってみますというと、あの大きな建物の中にいる人は二、三人でいいというようなことになっていくんじゃなかろうか。そういうような技術革新というもので、機械設備の中で人間が追い出されるみたいなかっこうにもなるわけで、やっぱりその点では労働時間を今度は半日労働にするというようなことをいま先進国では考えていられるわけだ。だから、日本の場合には非常に先進的な工業もあるんだけれども、何か日本の産業の生産の約九〇‐八〇%くらいまでも占めているこの中小企業、零細企業、こういう下請企業みたいなところにおけるコスト、賃金その他労働条件などを見ますと、これは中進国よりもちょっと下がりまして発展途上国並みの状態も見られるのが——福島県というところは山でございますので、山の中に行くとそういうところがございます。やっぱりそこにも頼らなければ今日の米価の安い中、農産物価格の安くなる中では容易ではないという、出かせぎの皆さんの労働の過重な状態がある。こういう労働政策というような問題、これは労働省の問題かもしれませんけれども、やはりよい品物を安くという、そこにこの問題があるんだということをやっぱり一応踏まえてもらわぬといかぬのじゃなかろうか。賃金などもアメリカと比較した日本賃金はどうだろう、西ドイツと比較してはどうだろう。働く人間の努力によって生まれた生産と考えていただかないとね。企業が生み出した生産みたいな考えだけではうまくないと思うんですよ。そういう意味では、どうも減量経営というものをつくり出した総需要抑制策一つのやっぱり大きな何か日本の産業経済に対する影があるんじゃなかろうかという、そういう気持ちもされるわけですが、時間ももうなくなってしまいましたので……。  次は、円高防止対策の緩和措置ですね。五月の中旬に大蔵省は為替相場鎮静と情勢判断して、円の持ち出しを解禁するなど円高防止策を一部緩和したと伝えられております。この時期はアメリカがドル安定策として金を売却していると伝えられておりましたが、アメリカの金保有量は、流出したドルに比べては格段に、少量であることから、金売却によるドル安定はまさに一時的現象であることが明瞭であろうと思うわけですが、にもかかわらず、政府が円高防止対策の一部を緩和した理由はこれはどこにあったのか、また、現状はどうなっているのか。これは大蔵大臣にお聞きをしたいと思います。
  68. 宮崎知雄

    説明員(宮崎知雄君) 従来、渡航者が海外に円を持ち出す場合には、これは一人当たり十万円という制限がございまして、これは主として渡航者が出国しましたときに、ホテル代とかあるいはタクシー代に充てるとか、そういう趣旨で認められていたものでございます。最近、日本の国際的な地位の向上に伴いまして、わが国の為替管理もこれを順次緩和していく、こういう措置をとってまいりまして、ことしの四月から為替管理を一層自由化いたしまして、たとえば海外渡航の場合にはもう外貨の購入は無制限に自由にする、それからまた、そのほかの措置もとったわけでございます。こういうふうな為替管理の緩和の一環といたしまして、円の持ち出しにつきましても、先進国、たとえばアメリカ、ドイツ、スイス、そういうふうな国は自国通貨の持ち出しを制限しておりませんので、なるべくそういう為替管理は緩和していきたいという方針のもとに円の持ち出しを緩和いたした次第でございます。  ただ、この円の持ち出しを無制限に認めるというのはやはり資本逃避のおそれもございますので、一応他のいろいろな規制との関連も考慮いたしまして一人当たり三百万円という限度を設けて緩和した次第でございます。
  69. 野口忠夫

    野口忠夫君 円高の国内努力としての防止策としてとられだこうした問題で円の防止策を緩和した、まことに危険なことではないかというふうに思われるわけですけれども、実はこれも新聞でございますが、黒字減らしといいますかね、最近この黒字減らし、ドルがよけいだということに便乗して、何かドルさえ早く使っちまえば日本の円高、これはなくなっていくんだというような風潮が全体としてみなぎっているように思うわけでございますがね。政府の中にもそういう姿が見られると思うんですが、アメリカに行ってアメリカの弾薬を買ってアメリカにそれを貯蔵してもらって、八十億ドルのあれを使えば黒字減らしでよかったみたいなことでは、これちょっとね。アメリカに行って演習するんだそうですね、あれは。新聞記事でございますから、改めて金丸長官に来てもらってお聞きしないとならぬと思うから陰で悪口言うことはやめたいと思いますが、しかし、これ黒字減らしというものは、何でもかんでも減らせばいいという考え方は、きょうの新聞に出ておるようでございますけども、輸出を切るとか、輸出を抑えるとか、あるいは輸入を増大するとか、あるいは黒字を減らすというようなことは、本当の意味での円高対策の問題にはなっていないんじゃないかというような意見もあるわけでございますね、新規に輸入するといってもね。問題は、やっぱりそういうことを考えますと、いろいろな意味で黒字減らしというのは慎重にせねばならぬというふうな考え方を持つわけでございます。  これも新聞報道でございますけれども、最近、通産省のだれか知りませんけれども、話の中に、金を買おうかという話が出ているそうでございますが、これも新聞にありました。この新聞は日経の四月十九日の新聞ですね。そこに、ドル減らしのために金をアメリカから買ったらいいじゃないかという、こういう話があったという、これは本当ですか。また、通産省としてはそういう考え方があるんでございますか。
  70. 水野上晃章

    説明員水野上晃章君) 円高対策の一環といたしまして、いろいろの緊急輸入といいますか、石油備蓄でございますとか……
  71. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ちょっと大きな声で。
  72. 水野上晃章

    説明員水野上晃章君) 石油の備蓄でございますとか、あるいはウランの鉱石の備蓄でございますとか、あるいはニッケル、クローム等の非鉄金属の輸入でございますとか、そういったものの一環といたしまして、工業用に使います金を輸入したらどうかという意見があったことは事実でございます。ただ、これにつきましては、国際的な市況に与える影響その他もございますし、いち早くドロップした案でございます。
  73. 野口忠夫

    野口忠夫君 ちょっと終わりの方が聞こえなかったんですが、それは、あったがやめたということですか。
  74. 水野上晃章

    説明員水野上晃章君) そういうことでございます。
  75. 野口忠夫

    野口忠夫君 何でおやめになったのかな。
  76. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 水野上貿易局長、改めて……。
  77. 水野上晃章

    説明員水野上晃章君) 案といたしましては、非常に広範な案につきましていろんな意見を出しまして検討したわけでございます。したがいまして、その中に一案としてあったことは事実でございますが、これはいち早く消えた案でございます。
  78. 野口忠夫

    野口忠夫君 それでは問題がなくなったと思うんですけれども、私の意見としては、消す必要はなかったんではなかろうかという感じがするんですがね。やはりそういうふうに日本の国が強くなっていくための手段として、どこまで行くかわからないようなものにいつまでも日本の生産の努力を頼っていることはやめて、ひとつ最も基準である金の方に頼っていくというような国の考え方も少し出てきてもいいじゃなかろうかというような感じもしておったものですから、大変通産省は前向きの話でよかったなというような感じがしたんですけれども、なくしてしまったんでは、これはどこかに気がねをしてなくしたことになるんじゃなかろうかという、ちょっと残念な気がしますがね。  いろいろドル減らしの問題、先ほどもございまして、ウランを買うとかいろんなことばあるようでございますが、ドルさえ減らせばいいという考えの中で物事を進めようとする考え方に余り軽率に入っていくことは、やはり国民全体が見ている中でやるドル減らしですから、いろんな不安感を持たせるようなことを申すと、またやったな、またやったなというようなことで、福田総理というのは右傾化しているというんだけれども、まことに右の方に行っちまうななんていうようなことも本当だったわいというようなことになってくると、福田さんのためにも、次期総理になるのには余り結構ではなかろうと思う気もするわけでありまして、ひとつ大蔵大臣、黒字減らしということで何か何もかもやっていくようなそういう傾向に見られておると思うんですけれども、この辺のところについて大蔵大臣にお聞きしたいと思うのです。
  79. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) そもそも、いま世界的に日本の黒字が問題になっているということは、やはり国際流動性の限られた中で日本に大きく偏在するということ、それは当然ほかの国でそれだけやはりマイナスが出るということを意味しているわけでございまして、世界協力して今度の不況を克服しなくちゃならない中で、その問題ば余りにも自国主義的ではないか。保護貿易の高まり等もある中で、やはり国際的な経済の疎通をよくするということのために日本はもっと世界的な視野で物を考えるべきであると、こういう問題が国際面からは言われているわけでございまして、その限りにおいてはそのようなことであろうと思うわけでございます。したがいまして、国内対策をもあわせ兼ねまして、御承知のように基本的には、黒字減らしというものは内需の拡大をまず求めていくということ、それから金利をできるだけ実勢に合わせて低くするということ、それから日本経済をできるだけ開放的に持っていくということ、この問題については外国でもずいぶん誤解があるようでございますけれども、何分にも為替管理の体系がまだ古い体系で、原則禁止、例外自由と、こういう原則でございます。中身はすでにほとんど先進国の域にいっているわけでございますけれども、しかし、まだ当時の外貨不足のときの尾豚骨とも言うべきものもあるわけでございますので、そういう問題をどんどん開放してまいりまして内需の拡大と金利の軽減、それから開放市場体制、これを基本線といたしましていまの国際的な偏在の問題を直そうとしているわけでございます。しかし、なかなかそれだけでは足りないといいますか、不十分でございますので、御案内のように緊急輸入措置をとっておりまして、政府におきましても緊急輸入措置をとる、また、民間におきましても新たなる外貨貸し制度、つまり為替リスクを持たなくてもよろしいと、こういう金融措置を講じまして、そして新しい輸入需要を開拓しようといまいたしておるところでございます。むやみやたらに黒字減らしをすべきでない——そのむやみやたらにというところは全く同感でございまして、おのずからそこには経済原則もありましょうし、そしてまた他国も余り評価しない問題がたくさんあるわけでございます。そういう問題を経済閣僚会議で一つ一つ案が出てきたものを見まして、これは適当であるとか、これは適当でないとか、こういうふうに振り分けてやっているところでございます。
  80. 野口忠夫

    野口忠夫君 まだお聞きしたいことがあったんですけれども、時間がもう来てしまいました。あと三分くらいきりございませんので、最後に大阪国税局の幹部の方や税務署幹部の皆さんが、天下り顧問税理士問題というようなことで新聞に大分書き立てられておるわけで、これについてお尋ねしたいと思うのです。これは後から同僚議員の皆さんも御質問があるようにお聞きしておりましたが、もう全く時間がありませんから、一、二お尋ねしたいと思うのです。  新聞等で拝見いたしますと、税理士の顧問先のあっせんを税務署退職幹部のため国税局長、在職幹部が行ったということでありますが、国税局という国民に最も結びつく職権を持つ国税局の職員が、退職幹部職員のためにその職権を利用して顧問先のあっせんなどをやっていたというようなことがあったとすれば、これは大変な問題だと思うわけでございます。そういう新聞の記事を拝見しておって、現地からもそういう問題で私の方にも話があったわけでございますが、これについて当局の御見解を承りたいと思います。
  81. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) ただいま先生御指摘ございましたように、国税職員が退職いたしますときに、その退職後の生活の安定のためにいろいろと職場として配慮しているということば御指摘のとおりでございます。御承知のように、国家公務員には定年というのはございませんけれども、やはり一般的に各局とも、職員構成の老齢化を防ぐあるいは人事の刷新をする、それから行政能率の向上の維持等のために、一定の年齢に達しました場合にはいわゆる退職勧告ということをしているわけでありますけれども、しかし同時に、そういった退職していきます職員の退職後の生活の安定ということにつきましては、私たちも職場の責任者としてあるいは同僚としていろいろと気を配っているところであります。こういった場合に、税務職員の持つ税務あるいは会計の知識というものを欲しいという企業もございますし、それからまた同時に、私たちの方からそういった企業に対しまして、こういった人物が今度退職するから採用してもらえないかということをお願いするということがあるわけでありまして、そういったことによりまして国税職員の退職者の就職のあっせんをしているという、そういったのをいまのところ各局ともやっておるというのが私は事実であると承知しております。ただその場合に、先生がただいま御指摘のように、それが税務官署という一つの権限をもって押しつけていくというふうなことがあっては、やはりこれは税務の執行の公正さに疑いを持たれ、あるいは企業との癒着関係というふうなことの疑惑を持たれるということは、これは厳に私たち戒むべきところであろうと思いますので、こちらの方からそういった顧問税理士として、あるいはその会社の職員として就職をお願いするような場合にも、決してそういった誤解のないように節度を持ってやっておるつもりでございます。  しかし、いずれにいたしましても、このたび新聞紙上等でこの問題が大きく取り上げられまして、そういったことの批判あるいは疑惑というものを持たれたということに対しまして、国税庁長官としては非常に残念に、また申しわけなく思っておる次第でございます。
  82. 野口忠夫

    野口忠夫君 もう時間が終わりましたが、結構ですから、私の方から申し上げておきますが、税理士法四十二条などによりますと、税務職員が離職前一年内に占めていた職の所掌しているところについては離職後一年間は税理士業務を行ってはならないというような法律があったり、公務員法の百三条があったりするわけですが、あの新聞等を拝見いたしますと、どうも公務員がこの法律を遵守していないというようなことがるる書かれてあるわけでございますね。中には告発を受けている者もあるというようなことも書かれてありますが、少なくとも国税庁は、これだけ国税の、国民から言えば非常にきちっとしたところでなければならないわけですね。そういうところからこういうものが出ているということについてばまことにどうも結構ではないというふうに私は思うわけでございますが、公務に従事する者、あるいはした者、これが法を守らないで職権によってそうしてやるというようなことはもう許されないのでございますから、時間がありませんので、これは後日また改めます。なお、後から同僚議員のあれもあるようですから、ひとつこれから今後十分調査の上御検討願いたいというふうに思っております。  以上で終わりたいんですが、最後に、これは大蔵大臣にお願いしたいんですが、きょうの総括ば大臣一人で答えなきゃならぬのですよ、これ。そうなっているんです。大臣をお願いしたんだが、みんな大臣は逃げちゃっているんです。逃げたでは語弊がありますが、お忙しくて来れないと、こういうことです。予算委員会には何日出ているんですか、予算委員会には。決算委員会の二日の総括に呼ばれたら行く、呼ばれなけりゃ行かないという、そんな決算審議あり方というのはほくはないと思うんですよ。何だかどうも頼みはしたがみんないろいろ事情があるらしい。これば心がけが悪いんで、用があって来れないのは仕方ない。しかし、何日には決算があるということになっているし、そして総括だと、それも二日だと。少なくともきょうは全大臣が出席して、そしてあらゆる関係する問題についてわれわれが質問することに答えるという姿勢を、これをひとつ今後とってもらわなくちゃならない。委員長にもその点で十分ひとつお願いしたいと思うんですが、大蔵大臣はこれ担当大臣ですから、ひとつ閣僚会議の中で、決算に出ないというのは何だと言っておしかり願いたいと思うんですがね。  これは私、決して言い過ぎではないと思うんです。使った金の後始末をする。中曽根さんなどは、使った後調べているようなことはおかしいみたいな発言あったようなことを新聞記事でちらっと見たこともありますが、なるほど、使ってしまった金、後から言ったって仕方がないと言えばそれまでですね。そういうことではしかし……。だから私は、やっぱり決算というのは予算の裏だとすれば、決算が終わらないうちには予算が組めないというようなそういうルールまでも立てていくべきではなかろうか。これはわれわれちょっとおくれておりまして、いま五十年度をやっておりますが、早急にこれは決算を終了して五十一年度に持っていって、次年度あたりからはびしっと予算の場合と合って、予算の裏づけ資料にある参考の中には決算の文書がずっとつけられてありますね、予算資料の中には。ということは、予算の場合は決算のことを十分検討せいということだと私は思うんですね、あの資料のついているのは。それほどやっぱり考えられなきゃならぬ問題が、総括の日に大臣がだれも出てこない。まあ自治大臣はきょうは一日いるつもりでしたから、自治大臣はほめておきたいと思うんですが、ほかの方は、しかし用事があるんでこれは悪口言うわけにはいきません。だけど、心がけの問題として、そこを検討を願って、これから決算の総括というのは全部出るというようにひとつ——二日ですからね、一ヵ月だの二ヵ月もいてくれろというんではございません。これは決して無理なお願いではないと思うんで、大蔵大臣のひとつお話を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  83. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまの野口委員の御意見、ごもっともでございますので、閣僚会議、閣議におきまして十分報告して、各大臣から御勉強を願いたい、かように思っているわけでございます。
  84. 天谷直弘

    説明員(天谷直弘君) 先ほど私が御説明しました中に正確を欠いた点がございますので、敷衍をさしていただきたいと存じます。  先ほど、電力、ガスの為替差益の家庭への還元に関しまして試算値を申し上げましたわけですが、これのベースば、昭和五十二年度の九百二十五億円という差益を全額家庭に還元した場合にこうなるという数字でございます。ところで、五十三年度につきましては、コストの上昇の方は一切無視いたしまして差益だけ計算いたしますならば、先ほど申し上げましたように二千二百億程度になるというふうに考えられますので、先ほどのそのベースで考えますならば、五十三年度におきましては、家庭への還元の幅は、さっき申し上げた数字の二倍強になるものと考えられますので、訂正をさしていただきます。
  85. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまの野口君の発言につきましては、委員長からも一言お話をしておきますが、前委員長が、四十九年度の最終の総括質問におきまして、福田総理大臣に対して、やはり大臣の出席についてその所信をただしたことがあります。そのときに福田総理も、できるだけ大臣の出席については今後御要望に沿うように善処いたしたいという答弁をいたしております。したがって、大蔵大臣、先ほどの御答弁のように、いまの点で十分善処してくださるように委員長からも重ねて要望しておきます。  午前の審査はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      —————・—————    午後二時六分開会
  86. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十年度決算外二件を議題とし、総括質疑を続けます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  87. 田代富士男

    田代富士男君 最初に、私は、大阪の国税局を中心といたしまして、退職される職員に対しまして、国税局といたしまして、顧問先といいますか、そういう就職先のあっせんを行っているということで一つの大きな社会問題に発展しておりますが、最初に国税庁当局といたしまして現在どのようにこの問題を把握なさっていらっしゃるのか、概略の御説明をお願いしたいと思います。
  88. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) ただいま先生の御指摘になりました事案につきましては、現在、私どもとしても非常に重要な問題であると承知して頭を痛めておるところでございます。  御承知のように、われわれ国家公務員の場合には定年制がございませんけれども、やはり人事の老齢化を防ぎ、それからまた人事を刷新し、また行政能率を向上させるために、一定の年齢に達した場合には退職を求めておるわけでございます。そういった場合に、やはりわれわれ職場の者としましては、その退職を求められた職員の退職後の生活の安定ということも十分考えてあげなければならないということがございまして、これは率直に申しまして、その退職に際しましては、大阪国税局のみならず各国税局におきまして、退職していく職員に対しての退職後の就職のあっせんをしておるというのがこれが事実でございます。  その就職のあっせんの対象といたしましては、税理士の資格を持っている人につきましては顧問先、それからあるいはその税理士の資格を持っていてもそういった税理士業務をやる希望のない人、あるいは税理士の資格を持っていない職員等に対しましては、一定の会社あるいは諸団体等についての職員として採用をお願いするというふうなことでございます。  ただ、こういった就職のあっせんをいたしますにつきましては、午前中にも御答弁申し上げましたけれども、やはり国税の職場というものは、税務というきわめて厳しい仕事をやっておる職場であり、また官庁としてもきわめていわゆる国家権力の強い官庁であるということから、その就職のあっせんに当たりましては、そのことが税務の今後の公正な運営に支障を来すことがないように、それからまた一般の納税者から誤解を受けることのないように、それからさらにまた、従来の税理士の方々の職場を不当に荒らすということのないように十分配慮してやっておるつもりでございますが、しかし、このたび、大阪を中心といたしましていろいろと新聞紙上で取り上げられ、また各方面の話題になり、世間をお騒がせしているということに対しては、私はまことに申しわけなく思っているわけでございます。  ただ、私たち、これは非常にむずかしい問題でございまして、一方におきましては、長年職場で非常に苦労してきた職員、そういった人たちがまだ十分働けるときにやめていかにゃならぬということをわれわれお願いする、それだけに、そういったもとの職員の、次の退職後の生活の安定ということを何とかわれわれも心配せにゃいかぬという、そういった問題それから同時に、それが現在いろいろと批判を受けておりますいろいろな問題をまた引き起こしておる、その二つの矛盾ということに対して非常に私ども悩んでおるわけでございますけれども、しかしいずれにいたしましても、やはりわれわれ公務員としましては、李下に冠を正さずというたとえがございますように、世間一般の誤解を招き、あるいは非難を受けることのないように、十分自粛してまいる所存でございます。
  89. 田代富士男

    田代富士男君 いま長官からいろいろな現在の問題点をお話しいただきまして、一つは退職後の生活の安定をどうするのかと、また、こういう国家権力の強い職場であるからそういういろいろな面に迷惑を与えないようにという、こういう配慮をし、そういう指導をいままでとりながら今日まで来られたと、このように私も理解を示しますが、現実にいま、大阪国税局を中心にいろいろな問題点が浮き彫りにされてきておるわけでございます。長官もいま申されましたとおりに、厳正公平に税務執行を行うべき国税当局が、退職する職員のために納税者の中から得意先を集めてくるというような行為というものは、私は国税当局と特定納税者との間の癒着を招くおそれがあるのではなかろうか、ひいては税の公平な執行を妨げることになるのではないかと、こういう危惧の一念を持つものでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  90. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) ただいま田代先生御指摘いただきましたこと、まさに私たちもこの就職のあっせんにつきましては一番心しておる点でございます。そういった意味におきまして、決してこの就職のあっせんが押しつけにならないように、それからまた、とかくいろいろと風評のある企業、あるいは問題を起こしそうな事業体、そういったものに対しましては、実は私たち、そういった就職のあっせんということは避けておる、そういうことによって誤解を生ずるのを妨ぎたいというふうに努めておるわけでございます。  それから同時に、そういった誤解だけではなくて、現実にこの再就職の問題が公務員法の百三条あるいは税理士法の四十二条、そういった法律違反になるというふうなことはあってはなりませんので、具体的に国税庁長官通達を出しましてそういったことのないように厳に戒めておりますし、それから各国税局とも、そういった局長通達を出して就職あっせん等についての注意というものを喚起しております。  それからまたさらに、いつも人事異動の前の局長会議あるいは総務部長会議の席上では必ずこの問題を取り上げまして、注意を喚起しておりますと同時に、退職する職員で税理士業務を営むというふうな予定のある職員につきましては、一人一人に対してその注意書を渡し、この法律違反のないように、それからまた、世の中の誤解を招くことのないようにというのを一人一人通知をしておるというのが実態でございます。
  91. 田代富士男

    田代富士男君 いま長官が、従来から退職される人に対しては一人一人に対して、誤解を招くようなことのないようにという、そのような通達も現実にやってきた。しかし、いま現在大阪国税局を中心として問題が起きておるわけでございますが、それで私が一つ心配することは、退職する職員のために得意先を集めにいくために、退職のたとえば統括官が、勤務中に、税務調査という名目のもとに出向いた折にそういう得意先を開拓するようなことをやってるようなことはないだろうか。これば、私も現場を見たわけではございませんけれども、このように長官は指導されていると、しかし現実はどうだろうか、このように思うんですが、いかがでございましょうか。
  92. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 就職をあっせんいたしますときには、二つのルートがあるわけでございますが、一つは、かねてからその企業において税務経理等に明るい職員が欲しいといったような申し出がございますときには、人事当局の方でその申し出の会社のリスト等もつくっておりまして、そして退職のときに、こういった本人がおるが採用してもらえるかということで、面接を受けて、そしてそれによってよろしいということになったら採用してもらうというやり方。それからさらにまた、年によりましてはかなり退職者が多くて、そういった申し出が少ないような場合には、これは局の方でその人事の担当者の方から、こういった人がおるけれどもおたくの方で採用してもらえないかとか、あるいは税理士の資格を持って登録することになると思うけれども、そのときにはひとつ顧問税理士として雇ってもらえないかというふうなことをお願いして、それによって再就職のあっせんをするというのが、これは率直に申しまして実態でございます。  ただ、その場合に、ただいま先生御指摘になりましたように、それがいわば職務権限を利用して相手方に押しつけるというふうなことがあってはこれは困りますので、その点については十分注意しておりまして、もちろん、その調査に際してその相手先に対してそういった就職のあっせんをするというふうなことは、これは厳に戒めておりまして、こういった運用というのは、原則として一元的に人事担当者の方でやっておるというのが実態でございます。
  93. 田代富士男

    田代富士男君 いま長官お話しいただいたとおりに、企業の方から税務関係に明るい人が欲しい、そういう場合も申し出があるでしょう。それに対応するために、国税局の中においてそういうような対策を講じている一面がある、また少ない場合には、こういうまだ年齢的にも仕事ができる人が多い場合にはこちらから話をする場合もある、そういうお話でございますが、一つ心配されることは、退職前に特定納税者とそういう顧問契約を結んでいると、こういうことが報道されているわけなんです。私、これが事実とするならば、いま局長がお話をされた趣旨ばわかりますけれども、その趣旨に私はちょっと外れた行き方ではないかと思うわけなんです。そうした場合には、そういうことが事実とするならば、税務の執行上においてもあるいは倫理的においてもこれは考えるべきではないかという、私はそのように思うんですけれども、長官として、いまもお話を聞きましたけれども、新聞報道その他においてそういう事実が述べられておりますけれども、これをどのように理解し、これを解決されようとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  94. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 私たちが職員に対しまして退職を勧告する、いわゆる肩たたきという言葉を使っておりますけれども、そのときには、やはりその職員に対しまして、きみはまあこれこれの年齢に達しているから、ひとつ職場を去って後進に道を譲ってくれと。しかし、急にそう言っても、言われた職員も、今後の退職後の生活の設計あるいは生活の安定ということに対して全然予定も立たずに、また、われわれの方で退職を勧奨する職員の今後の生活についての責任も持たずにやめてもらうというのは、それはいかにもわれわれとしても忍びないというふうなことから、やはり退職を勧奨するに当たりましては、たとえばこういった会社があるが、そこの経理課長というポストがある、それについて行ってくれないかというふうに、次の生活の設計というもののめども当事者に与えておいて、そして円満に辞職願を出してもらうということ。それからさらにまた、企業に入りたくないといったような人については、もちろん税理士の資格を取っておりまして、さらにまだその段階では税理士としての登録をしてないわけですから、税理士業務はできないわけですけれども、そういった登録さえすれば税理士業務のできる態勢にある人については、税理士業務をやるのであれば、たとえばこういったところの顧問先というものの申し出もあるし、それからまたない場合でも、こういったところにかねがね欲しいという声があったからひとつ頼んであげるからというふうなことで、本人に対して一応そういった今後の生活の設計なり、めどが立つような形でやめていたたくというようなことでございますから、そういったことから、現職のときからすでに顧問契約をしているとか、あるいはもう予約しておるといった誤解が生まれてくるんではないかと思うわけであります。  ただ、私たちとしては、それが現職のときからすでに一定の企業との事実上の顧問契約みたいなものがあって、それによって税務の執行というものが妨げられるということになりますとこれは重要なことでありますから、そういったことのないように、できれば私たちは、そういった再就職先を、職員に対して勧告する場合でも、後の生活についてはわれわれの方で十分めんどうを見るからというふうな話をしておいて、そして本人が、それじゃもうお任せします、これで円満に辞表を出しますといったような場合に、その辞表を受け取って、実はこういうところにといったような話をして、現職のときに特定の企業とのそういった結びつきなり癒着が起きるということのないように十分気をつけていまやっているつもりでございます。
  95. 田代富士男

    田代富士男君 長官がいろいろ配慮していらっしゃることは私も理解をいたしますが、いま退職後の生活をまず見定めてからというお話もわかりますが、企業のポストへつかれる人はこれは別に問題はございませんが、所定の手続を経て退職される人が、税理士として今度は退職後直ちに会社の顧問となってそして顧問の報酬を受けるということは、長官も御存じのとおりに、税理士法の第四十二条、または国家公務員法の百三条、こういう内容は御存じのとおりだと思いますが、ここに私は関係が出てくるのではないかと、大きな問題点がここにあるのではないかと、このように私は見ておりますが、長官としてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  96. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 田代先生御指摘のように、国家公務員法百三条あるいは税理士法四十二条違反の状態が生ずるということは、これはもってのほかと私は考えております。  そういった意味で、先ほど御答弁申し上げましたように、そういった法律違反にならないように、一定の、こういった場合には法律違反になる、こういった場合はよろしいというふうな分類を国税庁長官通達で出しまして、そうして一般に周知徹底をさしておりますし、それからまた、繰り返し国税局長通達あるいは会議の席上における注意喚起、そういったところで、そういった違法状態の起きないように十分注意しておるつもりでございます。  ただ、このたびのことで、大阪で一名の税理士が税理士法四十二条違反の疑いということで、大阪地方検察庁の方に告発されたという事件でございます。この点については私たち非常に残念に思っておるわけでございます。
  97. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまも長官が申されましたとおりに、新聞報道によりますと、大阪専業税理士協会から、税理士法四十二条違反の疑いで、Aという税理士さんが告発されたということを私も承知しておりますけれども、長官は、そういう退職される人に対しては当然本人も理解されておる、その上に立って違反のないようにという指導徹底をされておりますけれども、こういう問題が現実に起きたわけでございますが、この事実をどのように受けとめていらっしゃるのか、それに対して今後どのようにこれは対処していくのか、お聞かせいただきたいと思います。
  98. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 大阪の事件はまことに私も遺憾なことと思っております。  ただ、これはまだ御質問はいただいておりませんけれども、税理士法が施行になりまして、四十二条違反で国税庁の方で処分をした事例というのは実はその前に二件ございました。たとえばそういったときには直ちに各国税局では国税局長名で、こういった事件があったと、それについては決してこういった類似の事件が起きないように十分注意しろということで通達を出しておるわけでありますけれども、このたびも、単に告発されたという一つの問題ではなくて、このたびの一連の問題にかんがみまして、実は国税庁の中で、今後の就職のあっせん問題と、それからそういったいま問題とされ、批判されているいろいろな諸問題それをどのように調和していったらいいのかということで、内部でいま検討しているわけでございます。  これについては、実は八月の一日に臨時の国税局長会議を招集することを予定しておるわけでありますけれども、この席上でこういった問題も取り上げまして、各国局長の意見も聞きながら、世間の疑惑なり指弾を受けることのないように自戒してまいりたいと考えております。
  99. 田代富士男

    田代富士男君 ぜひともその徹底はやっていただきたいことをこちらからも希望をする次第でございますが、いま大阪を中心とした各紙に報道をされておりますが、その報道されている内容を見ますれば、一貫して言われていることは、税務職員が退職後税理士業務に直ちに従事するということは、これは天下りではないか、こういうことが各紙ともに一貫して主張されておりますが、国税庁長官といたしまして、これは天下りになるのかどうか、どのようにお考えになっていらっしゃるのかお聞かせいただきたいと思います。
  100. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 天下りということの定義をどういうふうに定義づけてよろしいか、私もちょっといま思い浮かばないわけでありますけれども、通常言われておるように、国家公務員が退職後に一般の民間企業にその職を求めるといったような場合であって、それがやはり在職中の職務と何らかの形で関連があるような場合、それが天下りというふうに言ってよろしいのじゃないかと思うわけであります。  御承知のように、税務職員が再就職いたしますのは、一つは、税理士として独立の自由職業としてそれぞれ顧問契約、委任契約を結んである特定の企業の税理士となる場合、それから、ある会社と顧問契約は結んでおるけれども、それは別に税理士業務ではなくて、一般の経営コンサルタント的な顧問契約である場合、それからまた、一般の民間の企業等について、その中で何々課長であるとか、何々部長であるとかいったような形で再就職する場合というふうな形があるわけであります。この中で、一つの税理士の資格をもってそして不特定多数の企業との間に税理士としての契約を結ぶといったような場合は、それが在職中の職務と特に密接でなかったような場合、これはもう普通の事業活動であって、天下りというふうなことは言えないんじゃないかというふうに考えておるわけであります。ただ、それが、先ほど申しましたように、一年間の税理士契約の禁止がございますけれども、その法律の規定によってもうかがわれますように、やはり在職中の職務とかなり密接な関係のあるような企業と顧問契約を結ぶといったような場合には、やはりこれは天下りというのをきわめて厳しく解釈すれば、やはりその一つの変形であろうかと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、一番誤解を受けやすいのは、そういったいわゆる天下りと言われるような形で再就職なり、あるいは税理士の契約を結ぶということにあるわけでありますから、こういう点については十分われわれとしても自粛、自戒をしておるというのでございます。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 私は次の質問もありますものですから、最後に移りたいと思いますが、いま、大阪国税局を中心として退職者の就職の問題で幾つかの問題点を提起したわけでございますが、この問題をとのように受けとめて、今後どのように改善しようとされるのか、大蔵大臣、また、国税庁長官から所信を伺いまして、国税局に対する質問を終わりたいと思います。
  102. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 先ほどお答えいたしましたように、これは私たちの職場だけに通じる議論かもしれませんけれども、長い間まじめに税務の職場で一筋に勤務してきたその諸君が、一定の年齢に達した場合に後進に道を譲るべく職場を去ってもらう、そういった諸君の職場を去った後の生活の安定ということについては、私どもとしては重大な関心を持たざるを得ないわけでありまして、そういった職員の生活の安定をとういうふうに配慮していくかという問題、それと、ただいま問題となっております、批判等を受けております、いろいろといわゆる天下り的なことはいけない、それからまた、職務権限を行使して押しつけをするようなことがあってはならないというこの二つの問題、それをどのように解決していくかということが私たちの一番いま頭を悩ましているところでございます。  いずれにいたしましても、一方においては職員の生活の安定ということを十分に配慮しながら、同時にそれが世の中の指弾、あるいは非難を受けることのないように、そしてまた、われわれの行動が李下に冠を正すことのないように十分今後気をつけてまいりたいと、かように考えておるわけであります。
  103. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま国税庁長官から述べましたように、やはり今後十分注意の上にも注意しなければならぬと思っております。  一つは、やはり就職先、あるいは顧問先をお願いするときに無理なことはやってはいかぬというようなこと、それから、国家公務員法におよそ触れるようなことがあってばならぬということ、それから税理士として仕事をやる場合には当然税理士法の規定を守るということを本人によく自覚してもらう。いま聞いておりますと、国税庁長官は一人一人にその点を注意を与えておるということでございますけれども、さらに一層やはり自覚を促す必要があろうかと思います。いずれにいたしましても、重大な仕事を持っておりまして、やはり国民との信頼関係がつながらなければこの仕事は遂行できないのでございますので、そのような点に十分注意いたしまして今後ともやっていきたいと、かように思っているところでございます。
  104. 田代富士男

    田代富士男君 以上で国税局関係の質問は終わりますから、長官、退席していただいて結構でございます。  引き続きまして、沖縄の国有地の問題に関しまして質問をしたいと思います。  きょうは大蔵大臣も御出席でございますから、衆議院の予算委員会、あるいは各委員会でも懸案事項となっておりました沖縄の国有地の問題でございます。また、これに対しましては、四月の十七日に大蔵省が最終結論として予算委員会に文書をもって提出されております。この沖縄における旧軍用地問題について、まず四月十七日に文書が出されている。公明党といたしましては質問趣意書も内閣に出しているわけでございますが、この問題点の一つは、旧軍飛行場開設の最終段階でもその用地の一部についてそこに民有地であったという登記書類が発見されたわけでございます。これもすでに大蔵省に渡してありますけれども、大蔵省といたしまして、これだけ大きな問題になっているその問題点に、新たにこういう権利書が、民有地であると証明される権利書が出てきたわけでございますから、まずどのようにこの問題を受けとめていらっしゃるか、お答え願いたいと思います。
  105. 山口健治

    説明員(山口健治君) 沖縄の旧軍買収地問題につきましては、四月十七日に報告書を衆議院の予算委員会に提出したわけでございますけれども、いま先生のおっしゃられた新たな登記申請書につきましては、何分にもこれ発見されましたのがまだ非常に近い時点でございますので、現在現地において調査中でございますけれども、まだ調査が進行中でございまして、最終的な調査の結果及びそれに基づく結論というものは得られておりません。
  106. 田代富士男

    田代富士男君 課長、いま偽書に近い状態である、こういうような御発言でございますが、後ほどこれはいろいろやりとりいたしましょう。もうすでに沖縄においては、これは本物であるということが総合事務局立場で明らかにされているじゃないですか。それがこういうところで偽書に近い状態である、こういうことは私は理解するわけにはまいりません。後ほどこれはやりましょう。詰めましょう。  それで、もう一つだけ私はお尋ねしておきますが、大蔵省の文書そのものについてお聞きしておきますが、大蔵省みずからが認めているように、沖縄本島と伊江島に関しては土地の売買についての証拠が発見されなかったと言っているわけですが、これはそのとおりでよろしいですね。
  107. 山口健治

    説明員(山口健治君) 沖縄本島と伊江島につきましては、先生御承知のとおり、直接地上戦闘が行われたわけでございます。本件につきましては、われわれは昭和四十八年以降六年間にわたって間違いのない結論を出すべく最大限の努力をいたしまして、可能な限りの調査はほとんどすべて終わったとわれわれ考えておるわけでございますけれども、沖縄本島と伊江島におきましては、直接土地の売買を証するような資料、たとえば契約書とかあるいは領収書とか、そういうものは発見されませんでした。
  108. 田代富士男

    田代富士男君 それで、これ大臣にお尋ねいたしますが、民有地であって飛行場開設の最終段階、十九年の九月二十日でさえ国有地になっていなかったという新しい証拠が出てきたわけなんです。いまはまだ偽書の段階だとか、課長はそのように言っておりますけれども、現実には総合事務局において、これはほんものであるということが証明されている。そうするならば大蔵省としては、証拠を重んじてこの問題の処理をしようとする基本姿勢からして、沖縄本島及び伊江島に関しては国有地となったという判断を変更すべきではないかと考えますけれども、大臣の所信はいかがでございますか。
  109. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私がいままで事務当局から聞いているところで申しますと、沖縄本島並びに伊江島、これは戦闘が行われましたので、直接のいろんな売買契約書あるいは領収書、そういうものはないと、なかなか手に入りにくいと——入ってないと聞いております。しかし、当時におきます旧陸軍がいろんな土地買収に関する通達類を出しておる、そういう通達類は入っておると聞いております。また、当時の陸軍の関係者あるいは市町村の方々の話を総合いたしますと、当時売買が行われたやの証言を得ておるということも聞いておるわけでございます。そういった直接領収書とかあれはありませんが、いわば間接書類と申しますか、そういうものはやはり発見されておるわけでございますし、また当時のアメリカの治政下にあるときに所有権確認の行為が行われておるのでございまして、その所有権確認のやり方等についても、かなり米軍も慎重にそれぞれの利害関係者からの申し立てを聞いた上で民有地とすべきものは民有地とし、当時国有地とすべきものは国有地としておったと、それが現在の登記簿に残って、おるということを聞いておるのでございます。このようなことは、一方戦闘行為のなかった宮古島あるいは石垣島では、いま言ったような本島、伊江島であるような書類のほかに、領収書あるいは契約書、こういうものがあるわけでございます。  いま、新しい資料が伊江島と本島でございましたか、見つかったということを聞き及んでおります。その話を要約いたしますと、いわば旧陸軍が買収したと思われる時点以降において相続があって、その相続に伴うところの所有権移転登記があったと、こういう書類あるいは登記簿に関する書類が別に発見された、こういうことであるわけでございます。だから、短絡的に言いますと、そのことは買収の行われたと思われる時点以降において民有地であったから相続の上で移転登記が行われたと判断すべきなのか、いま恐らく田代委員のおっしゃっているのはそのような御見解に基づくあれだろうと思うのでございますが、一方、宮古島なり石垣島におきましても、買収があったと思われる、それからまたその買収があったと思われる時点以降に買収されたと思われるものにつきまして同じようなやっぱり相続上の問題があって、そういう書類が、いま発見されたというのと同じような書類が発見されているのでございます。  そこで、二つの解釈がございまして、一つは、田代委員がおっしゃったように、当時民有地であったからそうであったのか、あるいはまた逆に申しますと、すでに売買契約が軍との間で行われておったけれども、その登記上の履行が済んでいない、その間に相続が起きて、いわば陸軍に所有権を移転するための登記上の手続として、やはり被相続人から相続人に名義を移し、しかる後に旧陸軍に名義を移したのか、そこのところがやはり不明であるわけでございます。いまどちらともにわかに判断を下しかねておるわけでございますけれども、宮古島、石垣島に同種の書類が買収地について散見されるという事態もありますので、目下、その辺のことについて沖縄庁を通じまして具体的な調査を進めている、こういうことでございます。
  110. 田代富士男

    田代富士男君 大臣、私がお聞きしたことは簡単なことなんですよ。いままで大蔵省は国有地であるということの一点張りでおいでになったわけなんです。それに対して、いま大臣はこの権利書がどういう権利書であるのかと、るるいろいろな見方を申された。しかし、いずれにしても民有地であるという一つの証拠になるべきこの証拠が出たわけなんでしょう、民有地であるという。権利書が出てきたわけなんです。いままでの段階ではこういう権利書すらもなかった。それで、大蔵省としても国有地であるというその証拠も確たる証拠がない。そこにこの一つの証拠です。これが出てきたんだから、新しい段階を得たということになるのと違いますか。  これがどういうものであるかどうか、ここに権利書があります。大蔵省にも差し上げておりますけれども、十九年九月二十日現在の当該土地の所有権はどうなっているのか、あるいはこういう権利書からどのような権利関係が生ずるのか。法務省のお方、来ていらっしゃいましょうか。——お願いいたします。
  111. 清水湛

    説明員(清水湛君) お尋ねの、この昭和十九年九月二十日に当該土地につきまして家督相続による土地所有権移転登記の申請があったということでございまして、この書面が間違いなければ、この土地の所有者につきまして昭和十七年十一月二十七日に家督相続という登記原因が生じまして、この昭和十七年の相続につきまして昭和十九年に相続の登記の申請があったと、これはいわゆる登記済み証でございまして、御承知のように、登記済み証というのは、相続なんかの場合には登記原因証書というのがございませんので、申請書とともに申請書副本というものを登記所に提出する。その申請書副本に登記が済んだということを登記所の方で記載しまして申請人に返すという手続になっているわけでございます。この田代先生の方からお渡しいただきましたこの書面は、そういう意味での登記済み証でございますが、恐らくこのとおり登記簿にも登記されたであろうということは当然のこととして認められるというふうに考えております。
  112. 田代富士男

    田代富士男君 これは一番大事な問題ですから、もう一度私なりに確認をさしていただきますが、法務省にもこの権利書は差し上げてあると思います。で、これは相続の登記がなされたということは、この當間平一氏が相続登記を原因として所有権を取得したということを公示されたものだ。そして公示されたということは、第三者に対する対抗力を當間平一氏が持ったということにほかならないわけなんです。そういたしますと、昭和十九年九月二十日現在にはこれは民有地であるという、これの一つの確認すべきものであるし、国有地ではなかったということが判断されると私は理解するのですけれども、それでよろしいでしょう。
  113. 清水湛

    説明員(清水湛君) このいわゆる登記済み証で判断する限り、昭和十七年の十一月二十七日の原因が発生した当時におきまして、當間平一氏が家督相続によってその所有権を取得したということは、この記載を形式的に見ます限り、そういうふうに判断されるものと私どもは考えております。  ただ、御承知のように、登記というのは、登記されたから権利があるということではございませんで、ある一定の時点においてそういう権利を持っていた。本件で申しますと、昭和十七年十一月二十七日時点においては當間平一氏はその所有権を取得したということは一応認められる。しかし、十七年十一月二十七日以降において、売買等によってその所有権を失うということもあり得るわけであります。このような場合には登記手続をどうするかと申しますと、相続登記を省略したままで売買登記をするということはできませんので、一たん相続登記をした上でさらに必要な売買登記をするということも実は考えられるわけでございます。  したがいまして、この昭和十九年九月二十日の時点において當間平一氏が完全に一〇〇%所有権者であったということがこの登記済み証からは直ちには判断できない。これは純粋な法律論のたてまえから私ども申しているわけでございまして、具体的にこの當間平一氏が当時本当に所有者であったかどうかというようなことはこれはお答えできませんけれども、一般論といたしまして、登記申請の時点である十九年九月二十日時点においても名実ともに當間平一氏が所有権者であったということは直ちにこれからは断定できない、かように考えております。
  114. 田代富士男

    田代富士男君 これは一つ議論の対象になりますけれども、この権利書は、まず大蔵省はこれは偽書であるとか、こういう説明をされているわけなんです。偽書の段階だ、いまさっきの課長の話では。しかし現実には、沖縄の総合事務局課長が、これは登記証は本物であると、これは地元の新聞にもこのように出されております。だから、これは民有地であったという一つの——それは法理論はいま法務省の清水課長が言われたとおりであるかと思いますけれども、いままでこういう公文書なるものは一件もなかった。ここに初めて出てきたわけなんです。これが一つの大きな問題点になっておるわけなんですが、その法理論は法理論といたしまして、時間もありませんから、この権利書の当該土地の場所ば大蔵省として確認されてあると思いますが、もう一度確認しますが、確認してありますね。
  115. 山口健治

    説明員(山口健治君) 先ほどから偽書という言葉をお使いになっておられますけれども、私、本件に関して偽書ということを一切言った覚えがございませんので、その点御了承いただきたいと思います。  それから本件の土地につきましては、まだ現在調査中で最終的にははっきりと申し上げられないんですけれども、一応大体その場所は推定できております。
  116. 田代富士男

    田代富士男君 法理論は一応さておいて、これは一つの民有地であるという証拠には、これはなると思うのです。そういう立場から私は確認をいたしますけれども、この当該土地は、沖縄県中頭郡読谷山村字座喜味大通千七百拾参番——これは現在の読谷村字座喜味大道何番、ここであるということが確認されております。そしてこの場所は全部飛行場内である。このように沖縄の総合事務局の田仲管財第二課長もこれは証明をしておるわけなんです。  この土地が、大蔵省は一貫して国有地であると言われたけれども、民有地であるという一つの証拠が出てきた。そうするならば、私は大蔵省として、国有地でありましたという、そういう何らかの証拠というものを出さなければ、この新しく出てきました権利書の証拠を打ち消すことはできないと思うのです。だから、国への所有権移転の嘱託申請書なり、あるいは地主の承諾書なり、そういう証拠を示さない限り、国の所有権の主張は不可能ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  117. 山口健治

    説明員(山口健治君) 国有地であるということの証拠を示したらどうかということでございますけれども、本島と伊江島の土地につきましては、旧軍が買収した当時の買収手続、あるいは代金の支払い方法等に関する通牒、通達書類等をわれわれたくさん持っておりまして、これは間接的な資料になると思います。  それから読谷飛行場につきましては、境界ぐいが四本見つかっておりまして、これは「陸軍」というはっきりした字が彫ってありまして、ナンバーも打ってありますし、これも一つの証拠にはなるのではないかと思っております。  それから、契約書、領収書等は発見できなかったのでございますけれども、当時の旧軍の買収を担当した担当官、あるいは役場、官公署等の職員あるいは地主さん方から、非常にたくさんの事情聴取をいたしているわけでございますけれども、それらの事情聴取の中身を見ますと、旧軍は正当に金を払って買収手続をやったのだという証言が非常にたくさんございますので、これも証拠になるのではないかと思います。  それから何よりも、本島と伊江島では直接戦闘が行われたわけでございますので、戦後米軍の布告によって行ったわけでございますが、昭和二十一年から二十六年にかけて、土地所有権認定作業ということを全島にわたって行ったわけでございます。その認定作業と申しますのは、各村に村委員会、それからその字ごとに字委員会というものをつくりまして、各地主が自分の土地であるということを主張したいと思う場合には、隣接地主二人の保証人署名捺印のもとに書類をつくってそれを委員会に提出する。それを委員会は審査をして、問題がなければ、その人の所有地も認定して三十日間縦覧期間を置いて異議の申し立てを認める。そのほか調停制度、裁判制度も用意して所有権を確定したわけでございます。したがって、確かに米軍治政下とはいえ、沖縄の方々による地元の地主さん、隣接地主二人の保証書を添えた上で、字委員会、村委員会、それから調停制度、仲裁制度、それからさらに裁判制度、こういういろいろな手続を準備して行ったものでございますから、これに基づいてつくられた土地台帳、あるいはそれに引き続いてそれをもとにしてつくりました登記簿等が現存してありますので、これを否定することは何人もできないのではないか、こういうふうに思います。したがって、大蔵省としては、これらの旧軍買収地は正当な手続によって国有地として買収されたのだというふうに考えておるわけでございます。
  118. 田代富士男

    田代富士男君 きょうは山口課長からゆっくりお話を聞きましたが、衆議院の委員会ではなかなかしゃべらしてもらえないからということでございましたけれども、いまお話をしていただいたことはすでにわれわれも承知していることです。  そういうことで、これが国有地であるということを断定されるものではないわけなんです。それは山口課長も一番よく御存じのはずです。それだけで推定され、宮古島や石垣島がそういう手続をされたと。だから本島もそうなんだと。それから旧軍のそういうような通牒があるとか境界ぐいがあるとか、そういうものではこれは確固たる国有地と証明されるものじゃないです。その証拠に、国有地であるという台帳を見せてくれと言っても見せてもらえないじゃないですか。白紙じゃないですか。いつ、どのようにして売買されたのか、そういうものは明記されてないじゃないですか、見せてくれと言ったときでも。そういうことから考えてこの権利書というものは、私は当時民有地であるということが証明される一つの——大蔵省として総合勘案する、総合勘案するとおっしゃる、その勘案する材料の一つに入れるべきではないかと思いますよ。考えてみれば、昭和十九年の九月の二十日、この権利書、この時点では民有地という一つの証拠になる。そうして十月の十日に十十爆撃と言われる沖縄の爆撃がなされたと。それまでは民有地であるという一つの証拠になるべきものなんです。これを私は新たに提出をした。それであるならば、大蔵省としてそれは民有地でないという、これを打ち消すだけの直接の証拠、いま言ったような間接的な証拠がこれだけありますということでありますけれども、そういう間接的な証拠でなくして、直接的証拠を出すべきではないでしょうか。また、先日出されました大蔵省の文書も、その時点ではこの権利書の問題が提出されないときに書かれたあの文書でありますけれども、一たびこういう権利書というものが出てきたならば、あの「むすび」の中に、総合勘案して国有地であると、こういうふうに指定されてありますけれども、総合勘案する中にこの権利書が新たに出てきたということも入れるべきではないかと、私はこのように主張するのですが、大臣いかがでございましょうか。大蔵省から出された文書を一応総合勘案すべきじゃないでしょうか。
  119. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほどからいろいろ申し上げているわけでございますが、残念ながら本島、伊江島では売買契約書、領収書が失われているわけでございます。したがいまして、その周辺をめぐる間接証拠あるいは当時の関係者からの話を聞いているわけでございますが、少なくとも二十一年から二十六年まで行われました——これはアメリカの軍政下ではございましたけれども、その登記簿上は国有地になっておるという点がやはり一つあるわけでございます。それぞれの利害関係者に申し立てをしていただきまして、字ごとに調停委員会をつくり、さらに調停委員会、それから巡回裁判所と、まあ米軍のもとではありましたけれども、手続をとった上で、いま問題になっているところは国有地と登記簿上表示されておるというふうに聞いているわけでございます。  いま委員がおっしゃいましたのは、しかし、相続の登記の申請があるわけじゃないかと。それは恐らく事実であろうと思うのでございます。ですから、それがすぐ当時民有地であったという直接証拠にはやはりなかなかなりにくいものであろうと思うのでございます。先ほど法務省からも話がございましたように、登記関係の問題はこれは対抗要件でございまして、やはり所有権の直接的なものは、特定地でございますから、売買契約書なり、あるいは領収書によってそのとき移転が決まるものと承知しているわけでございます。したがって、いま発見されたというようなものが、宮古島あるいは石垣島でも、すでに国有地になっているところでも同じような事例もまたあるやに聞いているわけでございますので、いま断定するわけにはまいりません。  それだからと言って、国有地であるものを、単に所有権移転の登記を済ます手続としてそういう相続による移転登記を行ったのではないかと、そういう手続上の問題としてあったんだという断定も私はいたしておるわけではございません。しかし、そういうことも十分あり得るわけでございますので、やはり問題は、土地所有権に関する法律問題でございますので、いまその辺の事情をさらに新しい証拠が出てまいりましたので、いま調査をしておると、こう申し上げているわけでございます。
  120. 田代富士男

    田代富士男君 大臣、私がいま言ったのは、四月十七日に大蔵省から文書を出されております。その大蔵省の文書の一番最後の方に「むすび」が述べてございますが、「むすび」のところで、「上記調査結果を総合勘案すると、沖縄において戦時中旧軍が取得した土地は、私法上の売買契約により正当な手続を経て国有財産になったものと判断される」、このように結んであるわけなんです。   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕  この時点では、この権利書等のこういうものは出ておりませんでした、ありませんでした。しかし、この問題の新しい権利書が出てきたということは、総合勘案するというならば、その総合勘案する中にこれも入れるべきではないか、私はこのように主張するわけなんです。だから、この「むすび」のここは改めるべきではないか。いまも大臣が、調査の上新たなものが出てきたからとおっしゃる。だから、そうならば「むすび」のここは、こういう断定せずに改めるべきではないかということを主張しているのですが、大臣、いかがですか。
  121. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この問題の調査の性質上、概括的にこれは結論を述べざるを得なかったわけでございますので、われわれは国会の御要請もあり、できるだけの調査をいたした結果このように判断いたしたものでございます。  そして、また、いま委員がお取り上げになったような事例は、国有地だと言って石垣島あるいは宮古島に登記されている分につきましても、同じようなやはり相続に基づく同様な書類が発見されていることも事実でございます。その辺を考えますと、やはり少なくとも宮古島とか石垣島の場合には、登記上の対抗要件を備えるために、所有権が、事実上売買契約が行われた後において相続が起きた場合に名義の変更をするためにとられた手続上の問題だと。石垣島なり、あるいは宮古島についてはそういうふうに総合判断せざるを得ないわけでございます。  で、いまの問題は、委員がせっかくそういうふうにお出しいただいたものでございますので、これも石垣島と同じ事例であるという即断をすることはいかがかと、こう思いまして、改めて調査をお願いしているというところでございます。調査の性質上、やはり概括的に述べざるを得ないものでございますから、私たち国会からのお話もございまして鋭意調査した結論をここに書いているわけでございます。したがいまして、全般的な問題としてこの判断を変えることにはならぬのではなかろうか、かように考えているのでございます。
  122. 田代富士男

    田代富士男君 それで、民事局の第三課長にちょっともう一度再確認をしておきますけれども、この権利書の問題でございますが、いま法理論的に申されましたけれども、登記簿に登記されている所有権というものは、一般的にその名義者の所有であることを証明していることを確認しておかないと法務省としてもおかしいじゃないですか。その点をはっきりしてください。いまさっき明確にされておりません。ただし売買証明書があるならばその登記の変更はできるということじゃないですか。いまさっきの話では、何となくこの権利書がどうかというようなことでございますが、このことを明確にしておきたいと思うんですが。
  123. 清水湛

    説明員(清水湛君) これも法律論でございますが、一般論といたしまして、登記簿にある人が所有者であるというふうに登記されておるというふうにいたしますと、これは登記の推定力と申しますが、そういう記載に基づいてその者が真実の所有権者であると推定されるという効力があるということになっているわけでございます。厳格に法律的に申しますと推定ということでございますが、実際上は、その登記簿によって所有権は原則として証明されるということに相なろうかと思います。  問題は、しからば登記済み証に基づいて一体どういうことが考えられるかということでございますが、先ほど私が申し上げましたように、昭和十七年十一月二十七日に家督相続という原因が起こった、これに基づきまして、この申請人の方がその土地を相続によってその所有権を取得したということがあるわけでございます。そして十九年の九月に、過去に、いわばその二年前に起こった原因に基づきまして所有権を取得したということのその登記の申請をしておる。その時点で見ますと、すなわちその十九年の九月二十日時点の登記簿には、この申請人の方が所有者という形で登記をされたということになります。したがいまして、その時点だけで考えますと、十九年九月二十日の登記簿から見ますと、この申請人の方が所有者であるという推定を一応受けるということになろうかと思います。  ただ、先ほど私が申し上げましたのは、この相続登記というのはよく前提登記というふうに言う場合も多いのでございますけれども、ある次の登記をする必要がある。つまり、売買によって所有権移転登記をする必要があるんだけれども、相続登記がしてないから、まだ売買による所有権の移転の登記ができない。そこで、前提として相続の登記をし、次いで必要な売買登記をするというようなことも一般社会ではごく普通に行われていることでございまして、そういう意味から申しますと、この相続登記の登記済み証から、十九年九月二十日時点においても名実ともにこの申請人の方が所有者であるというふうには、これはもうちょっと認定できない、そういう意味で申し上げたわけでございます。  一般的な推定力ということでございますと、登記簿の記載に基づいて真実の所有権者であると推定される、こういうことは、これはそのとおりでございます。
  124. 田代富士男

    田代富士男君 いまも再確認をしましたけれども、相続の登記がなされたということは、この當間平一氏が家督相続を原因として所有権を取得したということを公示されたことであるし、公示されたということは、第三者に対する対抗力を當間平一氏が持ったということになるし、一般論としてはこのとおりであるということでございます。  そこで、私は、再度お尋ねをいたしますが、大蔵省提出の文書の中の第三の、米国治政下における所有権認定作業のところでお尋ねしたいんですが、いまも山口課長が、所有権認定作業等は公正民主的に行われてきたと、こういう具体的な例が出されておりますが、実際にも、同委員会の決定に基づきまして、旧軍飛行場に食い込む形の土地が民有地と認定された事例と載っておりますが、この旧軍飛行場に食い込む形というのは、その食い込んだというのは、その旧軍飛行場の食い込まれる前の部分は国有地扱いにされていたのかどうかという、この点をまず明らかにしていただきたいと思います。簡単にお願いします、時間がありませんから。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕
  125. 山口健治

    説明員(山口健治君) 民有地と認定される前にどうであったかということにつきましては、われわれの方でも調査をしたのでございますけれども、何しろ三十数年前のことでありまして、国有地であったか民有地であったかということの確認はできておりません。
  126. 田代富士男

    田代富士男君 民有地であったかどうか確認がされてないというんですが、ちょうどここにありますとおりに、山口課長も一番御存じのとおりに、これが読谷村の全部の飛行場ですよ、この一円。たったこれだけの、ここだけですよ。これだけはいり込んでいるんです。これが民有地であるか国有地であるかわからないって言うんですか、課長。これ、もう一回はっきりしてください、私が聞いているのは国有地であったかどうかということを聞いているんですから。
  127. 山口健治

    説明員(山口健治君) その認定される前にどうであったかということは、はっきりとは確認されていないんですけれども、さっき私が申し上げましたように、その土地は昭和二十一年から二十六年までの認定作業の結果、民有地として確認したものであります。したがって、民有地として確認する際には、単に本人が自分の土地であるということを申請するのみならず、隣接地主の保証書をとって認定し、かつそれを字委員会、村委員会及び諮詢会の総務部がチェックをして公告をして決めたものですから、まず民有地であったことに間違いないんではなかろうかと、こういうふうに考えます。
  128. 田代富士男

    田代富士男君 考えてみなさいよ。これ、飛行場をつくるときに、時の軍当局がこれだけ民有地として残して飛行場をつくりますか。そんなでたらめな言い方をしちゃだめですよ。国有地であるという主張をするときには、これは民有地が残っていたかわかりませんよと——いまさっきも問題になりました権利書一つにしましても、これいいかげんです。反論の余地がない。これに対抗する書類がない。それならば、これが民有地であったというならば、民有地であったという私は証拠の書類を出していただきたい。これは委員長にお願いしたい。これが民有地であったと大蔵省が言う以上は——これだけが全部の飛行場です。これだけはいり込んだ、これだけが民有地であったということは考えられないことだ。民有地であると言うならば、民有地であったという資料を提出してもらうように、委員長にお願いしたいと思います。
  129. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) これは、山口国有財産第二課長、どうですか。
  130. 山口健治

    説明員(山口健治君) その証拠を出していただきたいと申されましても、大臣も御答弁いたしましたように、われわれとしては、もうあらゆる限りの調査をいたした結果、集めたすべての資料をもとにして報告書を提出したわけでございまして、もう一回探してはみますけれども、お出しできるかどうかということは確約できないと思います。  それから、その点につきましては、くどいようですけれども、米国治政下とはいえ、当時の国際法上も適法な布令、布告に基づいて適正に行われた土地所有権認定作業の結果を云々するということは私はできないと思っております。
  131. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) そうすると、民有地であったか国有地であったかを判別するに足る資料を持ち合わせておらぬということですか。
  132. 山口健治

    説明員(山口健治君) いまこの時点で戦前にどうであったかという資料を出せと言われればございません。
  133. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) ない……。
  134. 山口健治

    説明員(山口健治君) いまこの時点ではございません。
  135. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) いまこの時点ではないということは、どういうことです。過去においてはあったということか、将来ならあり得るということか、どちらですか。
  136. 山口健治

    説明員(山口健治君) それは、いまから探して、見つかればあるいはお出しできるかもしれない。いままで調査をした限りにおいては見つかっておりません、こういう意味でございます。
  137. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) その、あなたの言われる資料というのは、どちらの方の資料なの。国有、国の所有地であったということを認めるに足る資料なの、それとも、私有地であったということを認めるに足る資料なの。
  138. 山口健治

    説明員(山口健治君) それは、田代先生御要望の資料は、この土地がかつて民有地であったということの資料を出せということですから、私のいままでの答弁は民有地であるということの証拠という意味でございます。
  139. 田代富士男

    田代富士男君 ここで大蔵省のいままでのいろいろな言い分は、確固たる裏づけのある証拠でなくして、すべてが推定、推定できているんです。国有地であった、売買契約がされたと。それは宮古島、石垣島も売買契約はされた、向こうは戦禍に遭ってないから売買契約のそういう資料が残っている。本島にはそういう資料がない。しかし、宮古島、石垣島がされたんだから沖縄本島もされているであろうと。間違いなくされているという直接的証拠は何もない。いまさっきから一貫して聞いている。いまのこれも、民有地であるかどうかということも明確でない。ただ、民有地であったと思いますと。そういうような不完全な認定作業が行われていた。そういうものを総合勘案してという、そういう代表的な言葉で結んで国有地とみなすというけれども、新たに一般論から言っても、これは民有地であるという権利書が出てきている、ここに。これは新しい事態です。大蔵大臣、いまのやりとり、委員長から特に確認していただいた。確認していただいても大蔵省として言えない。だから、私は総合勘案するという結びのあそこはもう一度改めるべきではないかと、私はこのように言っているわけなんです。変えるわけにいきませんと、確固たる証拠がなくして、決めた以上は変えるわけにいかないと。私はこういうことは言いたくないですけれども、先日ある人から聞きました。大蔵省が国有地としてがんばっていると。そのときに  正式の席上じゃありませんよ。その席上で山口課長が、それは昭和十九年か二十年ごろにこれが民有地であったという確固たる書類が出てきたならば、これは国有地ということは全部崩れてしまいますけれどもと、そういうことを——これは公式な席上じゃないですよ、話されたことを私はある人から耳にしまして、それならば十九年、二十年に民有地であったという証拠になるような書類を捜そうじゃないかと、そうして手に入ったのがこの資料なんです。だから、四月の十七日に出されましたあの大蔵省の文書というものは、この新しい事態が出るまでの一つの文書であって、民有地であるという新しいこういう文書が出てきたと。いまの問題一つにしても、民有地であるかどうか、証拠はあるかないかという、それ一つもあやふやじゃないですか。だから、そういうことから総合勘案するならば、もう一度あの問題は検討をすべきではないかと私は思うんですが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  140. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いずれにいたしましても、本島並びに伊江島につきましては、まあ直接証拠と申しますか、直接証拠という意味は、私の申し上げておるのは、売買契約書並びにその裏づけになる領収書を意味しているのでございます。それはありませんと、こう申し上げているわけでございます。やはり特定物でございますから、売買契約書によりまして、そのときにやはり権利の移転はあるはずでございます。そういう意味の直接証拠は残念ながら見当たりませんでしたと。したがって、いろいろな間接的ないわば資料によって推定せざるを得ないわけでございますけれども、本島、伊江島について見ますと、二十一年から二十六年までやはり所有権の認定作業がかなり綿密に、しかも時間をかけて行われたと、その登記簿上ば国有地になっておりますと、こういう事実がございます。私は、それも直接証拠だとは法律上厳密の意味では言っていないのでございます。しかし、いま問題になっておるところは、国有地と、その認定作業においては認定されておるのでございます。そして、その裏づけになる資料をいろいろとってみますと、これは当時の市町村長等から聞きますと、やはり普通の買収行為であって、総動員法に基づくものではないということも確認されているわけでございます。そういったもろもろのことから申しまして、現在認定作業に基づいて国有地になっているものを覆すだけのものが一体あるだろうかと、こういうところが実は問題なのでございます。  そこで、先ほど田代委員がおっしゃいましたような、いわば旧軍によって売買が行われたと思われる後において、いま田代委員がおっしゃったような相続に基づく移転が、宮古島あるいは石垣島においてやはり発見されていることも事実なのでございます。しかし、それはやはり依然としてその当該土地については国有地と認定作業ではされているのでございます。そういったことを詰めていきますと、先ほど法務省から申しましたように、相続に基づく、まあ日本でも、内地でも多くあるわけでございますけれども、相続に基づく移転登記というのは、実は売買登記に伴う移転登記を完結するために前段階としてやるということは多くある事例でございますし、現に、石垣島なり宮古島でもその種の書類が、国有地といまなっておって、争いのないものについても同じような書類が発見されておりますということを申し上げておるのでございます。  ただ私は慎重を期する意味で、それだからそのいまお出しになっているものも、前段階としての単なる手続上のものであるとここで断定しているわけではございません。しかし、やはり法律上の所有権に基づく話でございますので、念には念を入れて、やはり調査をやってみましょうと、こう申し上げておるのでございます。したがって、いまのようなものの書類が出てきたから、だからこの認定作業において国有地とされているものを直ちに覆すべき直接資料というふうにはなかなかとれないと、こう申し上げているのでございます。
  141. 田代富士男

    田代富士男君 もう与えられた時間が来てしまいましたから、質問する予定の半分もいっておりませんけれども、最後に大臣、簡単にお聞きいたしますけれども、いま宮古島、石垣島の話をされましたが、これはわれわれも宮古島、石垣島のことについては承知していることなんです。それを話されたらまたややこしくなるんです。それはもうわれわれも認めていることなんですが、これとはまた違いますから。だから、私がいまさっきから大臣に言っていることは、こういう新しい一つの権利書というものが、民有地であったという権利書なるものが出てきたんだから、これは検討をする余地があるのではなかろうかと、調査でなくして検討する必要があるんじゃないかと、私はこれを聞いているのです。もう一度このことを聞きたい。  それから最後に簡単に、国有地扱いであった場合には個人は申請できたかどうかと、これは簡単に……。  この二点について大臣からお答え願います。
  142. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ検討と申しますか、調査と申しますか、私はそれは個別案件として検討し、あるいは個別案件として調査すると、こう申し上げているのでございます。  それからもう一つは、国有地……
  143. 田代富士男

    田代富士男君 そうです。国有地扱いであった場合には、個人は申請できたかどうかと、いまのところの当該土地です。
  144. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 認定作業のときに、認定作業以前に国有地ということになったときに……。  ちょっといま細かい点わかりませんので、係から答えさせます。
  145. 山口健治

    説明員(山口健治君) 国有地であったものについて土地所有権申請ができたかということでございますが、仮にそのとき、その当時国有地扱いであったものにつきましても、それが、その申し出た方が正当な権利者であるという場合には、土地所有申請は認められておったと思います。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 この問題はまだ今後続けてまいりますが、時間が参りましたから一応これで終わります。
  147. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 山口国有財産第二課長、いま、ないという資料を出せと言っても無理だからそれはいいけれども、探して見つかれば、それが推定の証拠でも、断定し得る証拠でも構いませんから、当委員会に出してください。よろしいですか。
  148. 山口健治

    説明員(山口健治君) わかりました。
  149. 田代富士男

    田代富士男君 どうもありがとうございました。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは最初に、国税局の幹部職員の退職後の顧問税理士問題が、これは報道関係でも連日報道をされておりますし、また去る七月の三日には、大阪専業税理士協会から告発をされるというふうな事件も起こっております。すでに同僚委員からもお尋ねがございましたので、私端的にこの問題についてお聞きをしていきたいと思うわけです。  こうして報道関係の中でずいぶん報道され、実態がいろいろな形で解明をされてきているという事態を見ておりまして、納税者である国民立場から言いますと、これは税務行政上に対する非常に深い疑惑と不信というのが広がっているわけです。これは大変重大だと思いますので、少なくともこれだけ社会問題化してまいりますと、国税当局としては、国民に対して、これは当然疑惑やあるいは不信、こういうものの広がっている中で、この国民の不信にこたえる責任があると思うんです。そういう立場できょうはお聞きをしたいと思っているわけです。大変限られた時間ですから、問題を集中してお尋ねをしたいと思うんです。  先ほどの同僚委員の質問に対するお答えで、長官は、いわゆる退職幹部職員の退職後の生活保障のために若干のそういう準備をしているということを全国的にお認めになられたようでございますが、ですから、これは新聞でも報道されましたが、大阪でも総務部長が、顧問先集めは上級幹部に限って国税局としてやっていると、一人二社程度だと、これを基礎として退職後りっぱな税理士になってほしいんだというようなことをお述べになっておられるのは、これはもう、そうしますと、まず国税庁の方針でそうしているんだということに理解をしてよろしゅうございますか。
  151. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 国税庁の方針としてとのことでございますけれども、これは先ほど申しましたように、国税庁として一つ方針を出したというわけではなくて、むしろ私たち方針を出しておるとすれば、退職を勧奨して職場を去る職員については今後の生活の安定等について十分温かい配慮をするようにということを示しておるということでございまして、大阪の国税局の総務部長が語ったという、そういったことをそのまま国税庁の方針として示したものではございません。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 しかし、まあ相矛盾しないということですね。というのは、これは非常に大事なんです。新聞に報道されているということを私ども何回か国税庁の御関係者にお尋ねをいたしましたが、そんなことを言うはずがないという御意見というのはいままでたびたびあったんです。きょう長官から、非常に明確に、退職幹部の生活安定のために一定のことは全国的にやっているということをお認めになったということは非常に重大だと思っているわけです。それと同時に、しかし、適正にやらなきゃならぬということで自粛通達等をお出しになっておるようですね。  これは私、昨日——一昨日でしたか、お聞きをしたら、庁の自粛通達もある、国税局の局長通達もあるということでございましたので、いただきたいと申し上げたんだけれども、どうしてもお出しいただけない。これ、もうすでに一部は報道もされているわけなんで、ところが、国会審議に必要だというのでお出しをいただきたいと言うんだけれども、現物はお出しいただけない。私ども、すでに報道もされているので、これは入手をした大阪国税局の局長名での、いわゆる俗に言われている自粛通達というのを拝見いたしました。  これは昭和五十三年四月七日付です。「退職税務職員の税理士業務の制限等について」という「各部(課・室)長、税務署長殿」というあて名の通達でございますが、これを見ますと、「本年も定期異動期を控え」というふうにお書きになっておるんですね、書き出しが。「本年も」ということは、だから毎年お出しになっているのかどうか知りませんが、どうも初めての通達ではなさそうなんです。「本年も定期異動期を控え、この機に退職して税理士となる者及び営利」云々とこうなっているんですがね、これを見ますと、これの1の(2)の項ですね、これにはこう書いてある。「職員が、その地位を利用して、退職後における税理士業務の委嘱をあらかじめ要請したり、また、退職予定者のために税理士業務の関与先をあっせんする等の行為は、公務員としての品位を著しく損うものであるから厳に慎む。」と書いてある。これが通達です。  私、先ほどから実は御答弁を克明にお伺いをいたしておりまして、非常に理解しにくい。通達では、そういうことになったら品位を著しく損なうから厳に慎めと書いてある。ところが、長官が、いや退職職員の生活保障で一定のことはやっていますと。これは非常に矛盾撞着をすると思うんですが、その点はどうですか。
  153. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) この通達に書いてございますのは、「職員が」というのは、それぞれの職員が、勝手な行動でその地位を利用して退職後の税理士業務の委嘱をあらかじめ予約する、それからあるいは勝手に、そういった退職する予定者の先輩のために関与先をあっせんするというようなことはしてはならない。といいますのは、これを勝手にやりますと、非常にそこで不明朗な関係が出てきたりいたしますので、私が先ほど御答弁申し上げましたのは、人事担当者の方でそれを統一してやっておるという意味で申し上げたわけであります。  ここで書いてありますのは、そういったことから離れて勝手にやってもらっちゃ困るよということを書いてあるわけでございます。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、退職する職員あるいはまた退職する職員のために勝手にそういうことをやったらよくないけれども、局の幹部が退職職員のためにやることは品位を損なわないと、こういうことですか。これはおかしいな。
  155. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 品位を損なうかどうかということは別でございますけれども……
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 書いてあるもの。
  157. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) やはり私たちとしては、職場を去る職員のために、責任あるその人事担当者が、あらかじめ税務職員のOBについて雇用したいといったような要望のある企業のリストを整理しておいたり、それからまた、一定の信頼のおける企業等に対しまして、こういった人を採用してもらえないかということをその責任者がやっておるわけでありまして、それがそういった職務としてではなくて、個人的に勝手にその地位を利用して就職のあっせんとか顧問契約の関与先のあっせんというふうなことをやってはならない。そうしますと、どうしてもそこに不明朗な関係が生じやすいものですから、それでこの注意通達が出ておるわけでございます。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは長官は、そういうふうにうまくいっていると思っておられますか。これは私、「本年も」という「も」は、きわめて意味深長だと思う。わざわざ「本年も」と書かんならぬ自粛通達を出さなければならないということは、長官のおっしゃっているようにうまくいっているのかどうか。これは長官、御存じないんだったら、少なくとも御調査なさる必要があります。  私、あんまりそのことについてきょうは細かく触れようと思っていないんですがね。この通達を見ましてもこういうことですよね。「税理士法第四十二条関係について」というのが第一項なんですね。ですから、税理士法第四十二条というのは、先ほどもお話がありましたように、これは税務職員が税理士になる場合の一年間のいわゆる業務制限ですね、端的に申し上げたら。  そこでちょっとお聞きをしたいんですが、この四十二条関係で違反件数はいままでありましたか。
  159. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 私どもの承知している範囲では、国税庁長官として処分をいたしましたのが現在まで二件ございます。  それから、現在まだ処分に至っておりませんけれども、御承知のように過日大阪である税理士が四十二条違反の疑いで大阪地検に告発されたということは承知しております。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはいただいた資料はゼロなんですよ。どっちが本当ですか。
  161. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) それは失礼いたしました。たしかそれは私の記憶では、先生が最近五年間におけるというふうなことで御要求されたということでございましたのでゼロとしたわけでございますけれども、その以前に二件ございますのです。それはただいま申し上げたようなことでございます。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは違うんです。四十二条違反というのはいままでに何件あったかというのが私が資料をお願い申し上げたことなんです。
  163. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 失礼いたしました。いま答弁間違いました。四十二条違反で処罰された件数ということでございましたのでゼロということを申し上げたわけですけれども、二件ありましたのはこれは五年以前と申しましたが、間違いました。五年以内で行政処分したのが二件で、刑事処罰を受けたというのがゼロということでございます。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、四十二条のただし書きに、国税庁長官の承認を受けたら特例としてやれるということになっていますね。そのただし書きでの承認件数ですね、届け出件数と承認件数はどうですか。
  165. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) この制度が始まりましてから、国税庁長官がこのただし書きによりまして承認いたしました件数は、現在まで五件ございます。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはもう全く困るんですね。承認件数一件という資料を先ほどいただいたんです。それは石垣島で税理士さんがおらぬので特例として承認したんだといって、ついさっき聞いたんです。どっちが本当なんですかな。これはもうややこしいから、確かな数字は後でください。
  167. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) それが実は、さっき私答弁を間違えて失礼いたしたんですけれども、御要請が五年以内ということでございましたので、五年以内というのは沖縄県の石垣市の方が一人おられるということで、私がただいま五件と申しましたのは、昭和三十一年以来からの数字でございます。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、その他、私、大分資料のお願いをしたんです。当初は、この五年間大阪国税局管内のいわゆる課長以上、税務署長、副署長の方々の公示所得の一覧を欲しいと言うた。そしたら、なかなかできないと言うんで、それでは時間の都合もあって気の毒だろうと思って——これはもう数日、もう大分前ですよ。それじゃしょうがないからと思って二十五人に限定をしてお願いをした。ところがこれも出てこなくて、ついにきのう出てきたのはわずかに七人の資料が出てきた。  それでこの資料なんですがね。七人の資料をいただいたんですが、これもちょっとおかしいなと思うんですね。ちょっと聞きたいのは、七人というのは、これは大阪府内の税務署への申告によって調査したものと書いてあるので、これは五十年以降に退職した方ですが、大阪府内の税務署に申告なさった方全部でしょうか。これはもう長官でなくてよろしい。
  169. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 公示所得金額で一千万円以上が公示されますので、その公示所得金額のある税理士でございます。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ところが、たとえばこのいただ一いた資料を見まして、私どもも調査をいろいろやっておるんですが、この七人書いてある下から二人目の川城さんという方、これは元調査部次長の方ですが、この方は五十二年だけでなしに五十一年度も公示の金額になってますよ。千四百八十三万六千円です。それからその下の長田という方、これは元東大阪税務署長です。これも五十一年分所得公示額、これは千四百六十三万九千円です。大阪府下の管内にこれだけだとおっしゃるんだけれども、私どもちょっと調べただけで、これは元南税務署長、これは大阪市南区です。それから元北税務署長、大阪市北区です、というふうに、ち、よっと調べても出てきます。これで全部だとおっしゃるとちょっと理解に苦しむんですが、これは一遍御調査をいただいて、もうきょう時間をこれでとりたくありませんので、資料をいただきたいと思うんです、正確に、時間をかけていただいて。というのは、こんなのちょっと私ども二、三調べても違うというのが出てきますと困りますので。  そこで、いただいた資料なんですが、これを見てまいりますと、やめた年の公示額が一千万以上の方というのがやっぱりあるんですね。この、いただいた資料の毛利政男という方は、五十二年七月におやめになっているんですが、元直税部次長です。それで、五十二年分所得公示額というのは千五百四十二万四千円。これは当然退職金は含まれておりませんし、五十二年というのは、七月におやめになったんですから、一月から七月までの給与分として、これは二百五十万か三百万か、その程度はあろうと思いますが、あと千二百万ぐらいというのがあとの半年の収入になるんですよ。この方は税理士をなさっている。そうしたら、大阪管内で二口と言うけれども、一口はたった五万円ですよ。もし、これ半年で千二、三百万。これ千二百万としたって、月に二百万ずつの収益がなかったらこんな公示金額にならぬのですよ。二百万といったら五万円口の顧問の口というのは幾つないといかぬのかな。四十口です。二つや三つと違うんですよ。これは恐らくその他の収入というのもおありになるだろうと思いますから、全部だとは言いませんけれども、単純に見たってそうなっている。  それから私どもの調査の中でも、元西宮税務署長さんというのも、これやっぱりやめた年、五十一年七月におやめになって、五十一年のいわゆる公示所得が一千四十三万ですよ。それから、こんなの調べれば何ぼでも出てくるんですけれども、元直税部次長という方も、これはやめた年に千八百万ですね。それで、ちょっと私どもの調査の機能というのは知れてますけれども、顧問先を調べてみた。私の調査では、この元直税部次長という人の場合は、日商岩井とか京都新聞、青木建設、関西相互銀行というようなところを含めて、その他等々となっているわけです。それで、翌年の公示所得がこれまた一千万以上。翌年というのはちょうどやめて一年以後ですから、五十二年の七月にやめたら五十三年の六月までで一年ですからね。ですから翌年は、当然四十二条の該当期間なんです。  その中で、これはいただいた資料を見てみますと、これは元徴収部長という方が、二年目ですが、これはいただいた資料によりますと荒井広とおっしゃるんですが、二千五百八十二万三千円。それから、元査察部次長という方も、これはやめた翌年ですが、八浜昇さんとおっしゃるんですが、千九百三十万七千円と、こういうふうになっている。まだそのほかにもあります、挙げれば。いただいた資料だけでもそうなっている。しかもこの資料はずっとこれ下までそうですが、翌年度全部一千万以上ですね。それで、下から二番目に書いてある川城という方なんかは、元調査部次長で、一千九十万円ですが、この人も顧問先はなかなかいいところで、大林組とかミノルタ、近畿相互銀行、これは私どもの調査の範囲です。それ以上たくさんあるんだと思いますが、それはわかりません。そのときにちょっと聞いたのは、大林組は、五十年七月におやめになって、五十年八月から五十二年七月まで就任していた。これは会社から聞いた話です。それから元南税務署長とか元北税務署長とか、皆翌年に一千万以上の所得になっています。  これは大阪だけかと思っていたら、東京もです。東京を見てみますと、東京国税局関係を見てみますと、五十二年七月にやめられました元神田署長、この方は神田の署長さんだったのですが、五十二年公示所得が一千三十三万二千円。この人は、事務所は、日本橋のだれか友人の事務所の中に置いておられた。それから、元日本橋署長、これも五十二年七月にやめて、五十二年の所得が一千百五十九万円。それから、五十一年七月におやめになった元荻窪税務署長、これは翌年ですが、一千四百六十万八千円と、これは挙げていったら切りがなくて、いま長官がおっしゃっておられるように、退職する幹部職員の生活の安定のためにとおっしゃるんだけれども、やめた年から一千万、二千万というような膨大な公示所得になっているんですね。公示所得ですから、これは当然退職金は別ですよね。それで、もちろんあれでしょう、経費を引いていますから、経費込みの収入といったらまた大変なものですね。こういうことになっているんです。  そこで、さっきも申し上げたように、五十年七月にやめて、五十年八月から直ちに顧問契約していると、こういうところまできてやっているんですけれども、これは四十二条違反になりませんか、どうなんです。
  171. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) これは実態を調べてみなければわかりませんけれども、たとえば国税局の調査部長が二人おるような場合に、そしてそれぞれ分担がございまして、それぞれの在職中一年間の分担というのは決まっておりますので、あるいはその分担から離れておる企業ということになりますと、これは四十二条違反ということにはならないんじゃないかと思っております。
  172. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、四十二条のところには、「所掌」云々の問題がありますよね。これまた、所掌というやつがさっぱりわからぬ。三十一年の国税庁長官通達というのが、三十一年十二月二十日付で、「税理士法第四十二条の規定の取扱について」という運用規定を出しておられるのですが、これを見ていったら、大体その四十二条にひっかかる人は一体だれなのかとわからんほどみんなひっかからぬのですよね、私、ようわからぬけど。だから、税務署長は、やめてから一年間は、自分の署長をやっていた管内はひっかかるのですな。そういうことになるんでしょう。それなら国税局の部長だとか次長だとかというのは、よけいやるんですがね。これはどうなんですか、ひっかからぬのですか。それはどうなっているんですか。
  173. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) 税理士法四十二条に規定する職の所掌の範囲でございますが、これは私たちとしては、できるだけそれぞれの職員の実際の仕事の内容、それから法理上の職務権限、そういったものを勘案いたしまして、一応内部的に決めておるわけであります。たとえて申しますならば、国税庁長官は、これは全国の私企業に関連ありということで、国税局長というのは、その国税局の管内に全部関係がある。税務署長というのはその署管内の全私企業関係があるということであります。これは、その課税標準の賦課決定につきましての決定権を持っておるということから、国税庁長官なり国税局長というものは、実際の課税標準の調査、検査を自分でやるわけではありませんけれども、法的なそういった権限を持っておるということで、これは全部に関連ありということにしているわけであります。  ただ、たとえばいま御指摘ありました、国税局のそれでは直税部の部長はどうかということになるわけでありますけれども、国税局の直税部長といいますのは、決定権を持っておる国税局長に対する補助部局であります。したがいまして、直税部長というのは原則として私企業には関連なしということでございます。ただその中で、直税部長の仕事というのは税務署における直税事務の指導、監督業務でありますから外しておるわけでありますが、ただ、その中でも、直税部でじきじきに所掌する事案がございます。それは直税部の中で資料調査課というのがございまして、これはいわゆる特別調査事案というものを担当し、それを調査する立場にあるわけでありますから、そういったものに対しては、これはひっかかる、あるいは訴訟事務についてはひっかかるというふうに個別的に内容を見て分けておるわけであります。
  174. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それがわからぬのですがな。これを読んでいたら、皆ひっかからぬようになっておるように見えてしょうがない。それで、たとえば五十年の七月にやめて、八月から顧問になっておると、これひっかかりませんのか。それがひっかからぬのだったら、四十二条というような規定はしり抜けですな。私、ちょっと不思議に思ったのですけれども、この通達の四十二条関係についての前段にこう書いてある。「なお、顧問等の名称を使用している場合であっても、実質的に税理士業務を行っているときは、同法にいう「税理士業務」に該当するから留意する」ことと書いてある。これは一体、何やと言って聞いたら、ちょっとこれ理解をしたいので聞くのですがね。それはだから、やめて翌月から顧問になって金をもらってもこれは四十二条違反に該当しないけれども、いわゆる税理士法二条による税理士業務、これをやったらひっかかるのだと、こういうことらしいですね。だから、それは気つけなさいと。税理士業務って何をするんやと言ったら、申告書の作成、調査の立ち会いだと、こうおっしゃった。私、一番に聞いた。確かにそういう重要な業務はありますわ。二条を見ますと、それなら立ち会いのときに何人かの税理士が並んでおって、何も物を言わないけれども、にらみだけきかしておったという場合はどうだと聞いたら、物を言わなかったらこれは該当しないと。そんなこと言ったら、もうそれは法律はあるけれども、何とかうまいことみな抜けてしまうということになりがちですよ。これは私、専門家でないからそういうふうに思った。  こういうことで、しかも二件ずつか三件ずつか知らないけれども、おみやげをやっておられるのか知りませんが、何しろ在職中よりはるかに優雅な退職後の生活保障をするというふうなことが国税局幹部の中で全く天国的やり方でやられているというのは、これは国民批判を浴びますよ。いま国民が定年で退職したら、中高年の就職口がなくてどんなに苦労しているか、学働省に聞いてみなさい。退職した中高年の人たちが、退職労働者が、あの完全失業者の中では一番率が高いじゃないですか。これは一体どういうことになっているのですか。私は、恐らくや四十二条違反というのはないとおっしゃるのだから一まあ警告は二件ほどあったそうですが、ないとおっしゃるのだから、うまいことになっているとは思うけれども、これは通達によってうまいことになっているというだけでは話にならぬと思うんです、実際に。そうでしょう。それなら、せっかく法律があるけれども、法律は全部通達でしり抜けになって、解釈でどうにでもなるというようなことだったら、しかも四十二条というのはこれは罰則のついた法律でしょう。こんなものを通達でしり抜けにして、好きなことをやっているというふうに国民が見てもこれはやむを得ないですよ。こんなことがあっちゃならぬ。  そこで、私は最後に申し上げたいと思うのは、それじゃ今日、私、いま国民の置かれている退職後の状況を言いましたけれども、税理士業界もどうなっているか。むずかしい試験を受けて税理士の資格を取って開業はしたけれども、不況でお客がなくてお困りになっている方々というのはずいぶんあるんです、実情の中では。ところが、国税局の幹部であったばっかりに、やめるときにはちゃんと局から保障してもらえる。それ以上どうなっているのか知らないけれども、多い人は五十件も百件も持っている。こんなことがぬけぬけと許されるということは、これはいまの社会では通用しませんよ。ですから、これは少なくとも私はそういう国民の不信や疑惑、こういうものを晴らしていく責任があると冒頭に申し上げたのはそこなんです。  ですから、せっかく四十二条——四十二条も非常に頼りないというか、たった一年ですから、そう厳密な法律ではないと思いますけれども、四十二条が厳正に実施されるように、また、現状把握についても、これは国会でおっしゃっておるというだけではなしに、現状把握も長官おやりになって、通達等を見直して国民の信を回復するように対処する必要があると思うんですが、その点どうですか。
  175. 磯邊律男

    説明員磯邊律男君) ただいま沓脱先生御指摘の、おっしゃることは私もかなりの部分に対しては同感でございます。その同感と申しますのは、まず四十二条違反というものがあってはならないということでございます。これは全く私はそのとおりであります。したがいまして、ただいままでは、先ほどお答えいたしましたように、四十二条違反で行政処分を受けた件数は二件だけでございますけれども、こういったことを機会に、この四十二条違反の有無についての巌重な実態調査をやらしていただきたいと思います。
  176. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後に、大蔵大臣にこの件について御見解を聞きたい。
  177. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 納税者と最も信頼関係を持つべき税務職員につきまして、四十二条違反の疑いが持たれておるようなことはきわめて残念なことだと思うのでございます。ただいま国税庁長官が申し上げましたように、この点につきましてはとくと留意いたしまして今後そのようなことがないようにやりたいと思います。
  178. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ、あと時間が少なくなりましたけれども、もう一つサラ金問題に関して若干お聞きをしたいと思います。  御承知のように、サラ金問題の国民被害というのは非常に深刻で、かつ、広がっておるというのはもうすでに御承知のとおりでございます。本院におきましても、第八十四国会では、四十九年度決算の認定に当たって警告決議をやったわけですが、その一項目にも本問題は取り上げられた。その中で警告決議は、政府は、法令の整備あるいは指導の強化により、利用者の保護に所要の措置を講ずべきであるという結びになっておるわけでございます。したがって、本院の意思である警告決議、これに対する対応をどうするのか、こういう立場でしばらくの時間お聞きをしたいと思うわけです。  お伺いをいたしますと、政府は業者の実態調査をお始めになっておるようでございます。被害者の実態についてはどうなっているのかということなんですね。業者の実態だけを調査していただいても、サラ金問題の国民的深刻な被害、事態の深刻さというのはこれはわからないので、少なくとも被害者の実態というものをつかんでいただく。それをつかんでいただければ、対策が一日もゆるがせにできないということが明らかになると思う。  私、いろいろな資料がございますが、地元の大阪でサラ金被害者の会というのがございますが、そこの相談件数だとか内容というものを拝見をいたしました。それによりますと、わずかにことしの一月の二十七日から五月の末というんですから、まるまる四ヵ月ですね。その間に受付が三百五十件、一人平均大体百七十八万円の借金を背負っておる。その人たちの中でどういう実態が起っておるかというのは、自殺が一件、離婚が三件、家出が十一件、自己破産が七件、保証人になっていて借り主に逃げられたという保証人が十三件。それから、被害者に対する取り立ての厳しさというのはこれはもう有名でございますが、電話による脅迫というのが二千四百九件、家に来て脅迫的取り立てをするというのが五百二件、保証人に対して脅迫的取り立てをするというのが二百六件という状況でございます。  私はこういう中で、それじゃどうしてたかだか百万か二百万そこそこの借金のために蒸発をしたり、あるいは自殺をしたりというふうな深刻な被害が起こるかということについて、これはいかに厳しい取り立てがやられているかということを知っていただきたいと思って、実は取り立ての厳しさのテープというのを若干聞いてもらいたいと思ったんですが、これは理事会でお許しをいただけませんでしたので、これは若干紹介をしたいと思う。  これは全部やむなくテープを起こしましたが、テープ全部言うていたら時間がかかりますから、まずどの程度のことか、これは電話での取り立てですよ。借り主が弁護士に相談をした。それを知った業者が大変怒って、電話で、「おい、なめたまねをしてくれるじゃないか。わがケツに火がついたら、われ消さんかいや。」——これは私、ああいう空気よう出しませんがね。「ちょっと考え違いしてるんと違うか。嫁はん、子供もおってよ、餓鬼みたいなことしたらあかんやんけ、おまえ、日本国じゅう六十余州みんな身の置くところのないようにしてやるで。」と。「こんなことになって済まぬ」と言うたら、「どこのサラ金がそんなこと言うて納得するんや。話に花も実もつけて持ってこんかい。首洗って待っとれ」、この調子ですわ。これを私たまたまここへ持ってきましたのは、家でひそんでいる人たち、あれは取り立ての厳しさの一つの姿ですが、こういうビラを本人の家から周りにべたべた張るわけです。これに至っては写真入りですよ。写真と名前が書いてある。これを家の周囲へ数十枚張るわけです。自宅からおふろ屋さんの間とか、自宅から駅までとか、こういうふうに張るわけです。これ、私ここに持っているだけで三人分です。一種類ずつ三人分です。こういう状況なんですね。ですから、これは当然被害者は借金もさることながら、蒸発をせざるを得ぬような状況になるわけです。  そこで、私思うんですけれども、たとえばこんなケースもあるんですね。親子、兄弟、もうこわいから家の中で毛布をかぶってじっとしている。それをかぎをねじあげて家へ入ってきて、脅迫的言辞で催促、要求する、こういうことなんですね。こういうことを考えてみますと、これはどうなんですかね、ちょうど法務大臣、おいでいただいたんですが、こんなビラを家の周りヘべたべた張りつける、それから電話を職場へもうひっきりなしにかけてきて仕事ができぬようにしていく、こんなことは軽犯罪法違反と違うんですかな。あるいは家にひそんでいるものを、とびらをけ破ったり、あるいはこじあけたりして入ってきて催促するというのは家宅侵入罪と違いますか。ところが、こういうのは余りこわいから子供が一一〇番へ電話すると、お巡りさんは、せっかく来てくれたけれども、民事不介入でございますと言って帰ってしまうというんですよ。こういうのを少なくとも軽犯罪法あるいは刑法の疑いのある場合ですね、これは取り締まりをするということはできるはずだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  179. 佐藤道夫

    説明員(佐藤道夫君) お答え申し上げます。  ただいまのようないわゆる金融関係につきましての暴力団的な行いをして取り立てをするといういわゆる暴力取り立ての行為につきましては、先生御案内のとおり、刑法上の住居侵入罪、あるいはまた脅迫罪に該当する疑いがありますれば、それ相応な処置を警察署あるいは検察庁においてとることと相なるわけでございまして、現にさようなケースも全国的にかなりございます。
  180. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうすると、言うたらちゃんと取り締まってくれますな。いや、民事不介入や言うて帰ってしまうというようなことはないですな。いま被害者の中ではこんなになっているんですよ。自殺でも起こさぬ限り問題にしてもらえない、ここまで来ているんです。どうですか。
  181. 森永正比古

    説明員森永正比古君) 警察といたしましては、悪質な金融事犯の取り締まりということについては運営上の重点として今日まで至ってきておるわけでございます。それで、取り締まりに当たりましては、被害者保護という立場に立ちまして、違法行為があれば厳しく取り締まっていくというような方針でございます。しかしながら、ただいま先生御指摘になりましたように、これは債権債務という民事上の関係の中に発生する事犯でございますので、不当に介入いたしまして人権を侵害するというようなことのないように処理するように考えておるわけでございます。で、ただいま先生御指摘になりましたいろいろの暴力的手段によるところの取り立て等につきましては、一一〇番等連絡がございましたら直ちに参りまして処理をする、被害がございましたら届け出をしていただければ厳しく取り締まりをしていく、こういう考え方でございます。
  182. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これはそういう脅迫的あるいはこわくて蒸発したり逃げたりするんですから、あるいは自殺に追い込まれたりするんですから、警察でそういう点を本当に乗り出してくださるならば被害者はいまよりはうんと助かると思うんですよ。だから、通報すればこれはぜひ適切な措置をとるということをやっぱりやってもらわないと、民事不介入、民事不介入じゃ困るんです。その点は特にお願いをしておきたい。  特にこういう状況の中で、去る六月の十五日に、実は大阪の朝日新聞で、いわゆるサラ金業界の政界への癒着という問題が報道された。大変ショッキングな衝撃を実は与えているんです。これば余りもう時間がありませんので詳しくお聞きできませんが、一つだけ聞いておきたいんですが’サラ金業界では、いわゆる貸金業者なども含めてでしょうが、団体がいまJCFAとそれからいわゆる全金連と略称されている二つがありますが、この全金連についてちょっと聞きますが、これは私実は調べてみてちょっとびっくりしたんですが、この全金連という協会の顧問に十一人の国会議員の方が名を連ねていらっしゃる。田中伊三次、横山利秋、足立篤郎、鴨田宗一、瀬戸山三男、森喜朗、金丸信、三塚博、中川一郎、沖本泰幸、佐藤観樹とあるんですが、これは間違いありませんか。
  183. 徳田博美

    説明員(徳田博美君) 全国庶民金融業協会連合会は大蔵省の所管法人でございますが、そこよりの届け出事項は役員だけでございまして、顧問は届け出ておりませんので、大蔵省としては確認いたしかねるわけでございます。
  184. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 大蔵省は確認できないんですね。これは実は全金連の会から正式にいただいた。これ御存じないんですか。あなたのところが持ってきてくれたら何人か抜けておったりいろいろあったから、結局全金連の会からいただいたんです。だから、確認はようせぬというわけですな。  それで、そこの全金連の五十三年度予算書も一緒にいただいたんです。これによりますと、顧問費が百五十万、交際接待費が百五十万、法制対策費が六百万と、こういうふうに出ているんです。これも御存じないですか。
  185. 徳田博美

    説明員(徳田博美君) 全金連からの五十三年度予算でございますと、御指摘のとおり、法制対策費は六百万円顧問費は百五十万円でございます。なお、五十二年度決算では、顧問費の支出は一万円、法制対策費の支出は四十七万円となっております。
  186. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それは、私申し上げたのは五十三年ですよ。そのとおりですね。間違いないですね。——それで、私は、こういうサラ金問題が社会問題化しているときに、これは、金が出ているか出てないか知りませんよ、業界が予算化しているということを申し上げているんだから。そういう点で、本当にいま被害者が解決をしてほしいと思っているのは、このべらぼうな高金利を何とかしてほしい、それで暴力的な取り立てというような取り立てを何とか解決してほしいと思っているわけですよ。それが最大の願いなんです。ところが、私は瀬戸山法務大臣にもちょっとお聞きをしたいと思いますのは、そういうときに、被害者がそういう状況にあるときに、いわゆるこのサラ金業界あるいは貸金業界団体の顧問に名を連ねておられるという点については、これは国民立場から言いますと、やっぱり業者寄りの対策にはこんなにたくさんの方々が力を尽くしているのかということになると思うんですよ。私は瀬戸山法務大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、いまサラ金問題というのはいわゆる高金利、高利息というのが問題でしょう。しかも法的にはいわゆる利息制限法が二〇%、出資法では一〇九・五%といういわゆるグレーゾーンの問題というのが一つは問題点になっているんですが、こういう中で、利息制限法の場合には二〇%を超す分についてば返還を請求できるというふうな最高裁の判例もあるわけですが、まあ言うたら最高裁の判例を守らせなければならないお立場の法務大臣が、ちょっとこれは団体の顧問というのは適格ではないんではないかというふうに思いますが、御見解を承りたいと思います。
  187. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 実は沓脱さんから、全金連というのは私はいま承って知ったわけですが、こういう協会の顧問になっておるんで、そのいきさつはどうかということをお尋ねになる、こういうお話をきのう間接に承って、ああそうだったかなあと実は思っておるんです。日時は覚えておりませんが、ことしなんでしょう、ことしだということですから。各県にあると思うんですが、宮崎県の庶民金融何とか協会の人が見えて、こういう協会の指導をいただくために顧問をやってくれぬかと、こういうお話がありました。これは御承知のとおり、貸金業者の自主規制の助長に関する法律、これ四十七年にできておるようですが、これは議員立法で法律ができておりますね。そこで、この適正な運営それから不正金融の防止というようなことで、こういう協会をつくって、いわゆる自主規制をしながら庶民金融の円滑化を図ろうという法律に基づいてできておる協会でございます。でありますから、そういう御相談を受けたときに、結構でしょうと、こういうふうにしておるんであって、この顧問をしておる——ほかの方がどういう人がしておるか現に知りませんけれども、私は宮崎県の協会の顧問かと思ったら全国の顧問になっておるということで、ああそうかなあと思っておりますが、そのこと自体私は全然不都合でない。国会で制定されて、そういうふうな金融の正常化を図る、また不正金融の是正を図る、こういう趣旨の協会でありますから、それ自体については何らいま特別な感想を持っておりません。ただ、おっしゃるように、私が何かその相談を受けたときに、よろしいでしょうと言ったのは、この協会に入った人、私数字をつまびらかにしておりませんが、一万数千だそうでございます。いわゆる庶民金融といういろいろ形があるようでございますが、全国約十六万あると言われておる。そのうちの一〇%にも当たらない人々がこの協会に入ってやっている。でありますから、そういうふうにしていろいろサラ金問題が一つの社会問題となって、先ほど沓脱さんがおっしゃったとおりに非常な弊害が起こる、そういうことにならないために、そういうことを防止するためにやはりお互い力を合わせなければいかぬ、かような考えでありますから、まだ一遍も相談を受けておりませんけれども、私はやっぱり政治家というものはそういうことに努力すべきものだ、かように考えておりますから、この顧問になっていることはけしからぬとおっしゃればそれは認識の違いでありますが、さようには考えておらない、こういうことでございます。
  188. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後に。法務大臣大臣のお立場におられたら、これは顧問になどじゃなくてもっと御指導もできるわけですから、これはおやめになられた方が誤解がなくていいんじゃないですか。
  189. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私、別にこんなのに固執するわけじゃありませんが、私はむしろそういう内部の話もいろいろ聞いて、私は非常にこのサラ金問題については深い関心を持っておる。あらゆる弊害がありますから、何とか早くもっと法律の整備をすべきである。こういう立場政府にも検討してもらっておるわけです。でありますから、これを別に誤解を受けるから引かなきゃならぬ、さような感じは持っておりません。むしろこれを善導することに努力すべきである、かように考えております。
  190. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後に、大蔵大臣一言。  大臣、お聞き及びのとおりです。これはわが党もこの問題に関しては政策も出しておりますが、何と言ってもいま被害者が一番望んでいるという点の金利引き下げの問題、それからいわゆる融資の限度額の問題もあるのですね。もう無制限に貸してもらったら困るのですよ、過剰貸し付けを。だから、百万円程度に抑えるとか、あるいは暴力団には認可しないとか、あるいは不当なやり方をした業者については認可をしないとか、特に営業を許可制にしなければならぬと思うのです、だれだってできるのだから。五十万、百万のお金があったら、届けたらだれだってできるのだから。この状態では困ると思うのですね。早急に法規制等を含めて対策をなさるべきだと思いますが、それについての御見解をお伺いいたしまして終わりたいと思います。
  191. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いわゆるサラ金業者の問題というものは、おっしゃるように、現在では自由営業の分野であるわけでございます。それはそれなりにある種の理由があって出ているわけでございますが、沓脱委員の御指摘のように、いろんな問題をいま引き起こしているのも御承知のとおりでございます。その問題は単なる金融問題を超えまして、あるいは刑事問題になりあるいは暴力問題になり、非常に問題が複雑化いたしているのでございます。したがいまして、これが対応策といたしましていかなる角度からこの問題と取り組んでいくべきであるか。取り締まりを中心にしていくのであるか、あるいは四十七年にできましたいわゆる自主規制をやろうという人たちがいま全国でやっているのでございますけれども、これはたくさんの中でそれでも何とか庶民の金融にこたえたい、自分たちがほかの人たちと同じように扱われることに非常に不満だという人たちが集まりまして、四十七年のいわば助成に関する議員立法が形成されたわけでございます。そういった芽を今後どのように指導して一体伸ばしていくのか、それからそうでないところをどんなふうに抑えていくのか、非常に大きな問題があるわけでございますので、現在関係省庁が十回にわたりまして、被害の状況あるいは貸し金の実態、あるいは取り締まり官庁の実態、こういった各種の方面からいま調査を進めておるところでございまして、現在アンケート調査の集計を急ぎつつあるところでございます。いずれにいたしましても、非常に複雑多岐な問題でございますので、早く問題を煮詰めまして、そして成案を得たいということでせっかくいま努力しているところでございます。今後といえどもこの問題が早急に片づくように関係省庁と精力的に検討を進めてまいりたい、かように思っております。
  192. 三治重信

    ○三治重信君 私は円高の問題について質問したいと思いますが、最近また急激な円高になって二百円を割ろうかというようなことになってきておりますので、五十年度決算審議に当たって、少し歴史を振り返ってみたいと思うんです。  四十六年の十二月に、いわゆるスミソニアン協定で一ドル三百八円ができた。したがって、このときでも、四十年代になって日本が非常に黒字の国になってきた。そして四十七年、八年、さらに一ドル三百八円でもなおおさまらないで、また円攻勢をやられて、外国為替市場も四十七年の六月、四十八年の二月には東京市場を閉鎖しなくちゃならぬと、こういうような事態であったわけであります。その後石油ショックで非常に日本が赤字になるかと思ったらば、四十九年はえらい赤字になったけれども、五十年は早速国際関係は非常に早く回復した、こういうことになって、その後さらに政府も大分努力をしたんだけれども、国際為替の相場が強くなって、いまや二百円などということになると、特別生産性の高い自動車、鉄鋼、それからテレビなんかは持ちこたえるかもしれぬけれども、その他、特定産業以外の一般産業で輸出産業というものが非常な打撃を受ける。そうすると、産業構造の急激な変化を来さないとそれに対応できない。これはとても保てる問題じゃない。こういうことからいくと、私は大蔵省としては、やはり国内問題のそういう非常な構造不況、構造変化を緩和するためにも、国際均衡について相当考えなくちゃならぬと思うわけなんです。  ところがこの決算の状況を見ると、四十九年の状況は、経済協力の実績はこれは政府の正式の発表で二十九億六千万ドル、前年に対しては対外協力の実績は半減をしている、こういう注がついている。五十一年の七月に、また五十年の実績を発表したのでは二十八億九千万ドルになっている。前年に対してこれはわずかですが二・四%対外経済協力の実績が減っている、こういうかっこうになっているわけなんですが、こういうのからもやはり円高の原因をつくっているんじゃないか。日本が貿易収支で黒字の体質の経済構造になってきたらば、よほど貿易外のいわゆるこういう対外経済協力、海外投資、こういうもので対外収支の均衡を図るように大蔵大臣としては考慮を払っていかれるのが当然じゃないかと思うんですが、こういう問題について五十年で特に問題とされ、配慮された問題、また今日から見て反省されるというのがありましたら御説明願いたいと思います。
  193. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 急激なる円高の問題は、内外ともに大きな問題をはらんでいることは御指摘のとおりでございます。国内経済に対しましては、円高によるメリットもございますけれども、やはりその反面デメリットをこうむっております中小輸出関連企業、こういったものの苦痛は大変なものでございます。ですから、そういったものに対して先般緊急的な金融措置あるいは税制措置その他を講じたことは御案内のとおりでございまして、国内的にメリット、デメリットはありますけれども、いずれにしろ急激なる変動ということはいかなる意味におきましても困ったことでございまして、対応のしてみようがない、こういう問題でございます。国際的に考えますと、やはり一番大きな問題は、今日経常収支の黒字あるいは赤字問題を大きく言われているということは、やはり世界的なオイルショックの不況の中で失業が非常に多発しているという事実でございます。したがいまして、経常収支の黒字ということは、言いかえますと、相手国にとりましては失業を輸出しているという受け取り方さえするわけでございますので、国際収支の中でも経常収支の黒字、赤字問題が大きく論ぜられていることは当然なことなのでございます。  しかし、この問題は、原因を考えますとやはり一国だけで決まる問題ではございませんで、すでに日本におきましてばこの黒字、いわば過剰なる黒字減らしのためには種々なる方策を講じておりまして、好ましいことではございませんけれども、輸出についてある程度の行政指導をやっているわけでございます。四月、五月の輸出の実績を見ておりますと、数量では確かに減っているのでございます、若干でございますが。しかし、国際競争力があり、アメリカにおける卸売物価が上がっているために、どんどんドル建て建て値を改定しております。為替レートが上がっただけ全部オフセットしているとは言えませんけれども、ほとんどそれに近いだけやっているわけでございますから、ドルの輸出金額としてはそう変わりない。  一方、輸入の方を考えますと、数量は前年同期に比べまして四・五月はふえておりますけれども、市況の関係からいたしまして、ドル建ての価格はごく微細にしか上がっていない。したがって、ドル建てでの収支差額を出しますと、去年に比べて非常に大きな黒字幅になっているということなのでございます。そのことは、やはりアメリカ側もインフレ抑制ということをやはりやってもらわにゃならない。特にエネルギー問題について、やはり国内的に努力をしてほしいということをわれわれしばしば言っているわけでございます。われわれの方でも、好ましいことではありませんけれども、輸出のある程度の抑制をやる、緊急輸入までやっているというようなことでございます。  しかし、いま三治委員がおっしゃいましたように、本来為替相場というのは総合収支で決まるべき性質の問題でございますから、レートだけの問題で言いますとそのほかに資本収支があるわけでございます。とりわけLDCに対する対策といたしましては、単なるそういう国際収支の問題だけではなくて、今日のような発展途上国と先進国というような二極構造があるわけでございますので、今後長らく国際的にともに共栄共存を図っていくという立場考えますと、やはり発展途上国に対して先進国、特に日本のような国が援助をしていくということはこれは長い目で見て世界経済の繁栄のために、また政治的不安を解消するためにぜひとも必要なことであろうと思います。日本はいまLDCに対しましての援助については格段の努力をいたしているところでございます。  しかしながら、御案内のように、この努力の方向と申しましても、予算はかなりふえているのでございますけれども、国際的に評価されますのは実際幾ら金を支払ったかというところで評価されるわけでございます。まあ援助のやり方はプロジェクト援助もありますし、商品援助もございます。どうも見ておりますと、やはり相手国のプロジェクトに対してこちらが約束をする、交換公文を結ぶ。その後事務的に詰めてまいりまして、そして協力基金等を通じてディスバースを行うわけでございますが、どうしてもプロジェクト援助というものは、そのプロジェクトそのものの内容が余り固まっていない、相手国自身が余り固まっていない、だから実行段階でそれを詰めていかにやならぬというようなことで、まあ大ざっぱに申しますと、予算のうちの三割ぐらいは未執行に立っているわけでございます。その未執行の分を差し引いた残りが出ているわけでございますので、今後われわれは、いかにして、予算の方もできるだけよけいつけるという配慮はもちろんでございますけれども、何より急ぐべきはやはり使い残りがないようにするというところに最大の問題があるのではなかろうか。そういった問題については、たとえばプロジェクト援助から商品援助に少しやっていくとか、あるいは国際機関がいろんな調査をいたしまして援助をしておる、その調査事績を借りましてバイでもって、相対で援助をやっていく、そうすればそのプロジェクトの吟味その他というような時間は省けますから、そういう道も今後考えていくべきではなかろうか、このようなことをいま考えているわけでございます。
  194. 三治重信

    ○三治重信君 大臣が、予算もつけてもなかなか実行が伴わぬような海外協力援助の実績だと、非常に率直なその現状を御説明いただいたわけなんですが、これも私は、まだ日本がいわゆる対外関係においては、やはり債務国、まあ金を借りて仕事をして、そうして発展をするというような気風から抜けていない。やはりこちらから金を貸したり、またこちらから援助して、そして相手国の経済または社会を発展さすということに力を入れよという、全体の政府立場がまだ十分理解されてないから、また相手国もありますけれども、そういう積極性の足らないために、そういう予算の未執行の点も、相手もありますけれども、努力をしていくべきだというふうな感じを持つわけですが、そこで基本原則は、大臣ももう私の言うように、いわゆる海外経済協力または援助、プロジェクトというものを発展さすと。これは政府のずっと記録を見てみましても、五十一年の八月には、特に五十二年には経済協力予算の拡充を図るという方針と、特別の大蔵大臣予算編成の発表までされているわけですから。しかし、どうもいまおっしゃるように、予算をせっかくつけても三割も未執行、こういうことが続いているからこの円高がまた一面非常にあると、こういうふうな認識を持つわけです。それで、やはりみずから大蔵大臣がひとつ大蔵省が先頭切って、日本はやはり戦後の債務国から債権国にもう変わってきて、貿易も、為替の上がり方によって単に物量だけでなくて金額でえらい黒字をなすことは大変国際関係に非常な摩擦を起こす、こういう関係から言っても、やはり貿易で黒字ならば、それに対応して貿易外の、黒字をどうして投資なり、また借款なり、あらゆる方面を配慮して、これは大蔵大臣が金をにぎっておられるわけですから最も総合的に配慮して、そういうものを緩和していく努力が必要じゃないかと思うわけなんです。いまもおっしゃったように、やはり二百円に急激に上がった、それによって貿易数量は大分制限されてきたんだけれども、レートが上がったためにドルの金額がどんどんふえて、結果として黒字はちっとも減らない、ふえる傾向だと、こういうことになりますと、やはりその結果、産業構造に大変なひずみが来る。外国から失業を輸出されていると言われて、また今度は国内では構造不況で非常な摩擦、困難が、失業の問題が深刻化すると、こういう事情でございますので、ひとつどうか来年度予算については、貿易外の、予想される黒字に対してできる限り有効的に使われる対策を、ひとつぜひ予算の編成の中に入れて考えていただきたい。まあ五十一年のときには五十二年の編成で非常に考えた。五十三年のときには余り出ていないようなんですが、これは五十四年でもう一遍さらに練り直していただかないと、これは二百円を切っていくような状況になってくると、国内の産業構造、雇用、失業に大変なひずみが来ると、こういうふうに覚悟しなくちゃならぬと思うんですが、そういうことについての大臣のお気持ちをひとつお聞かせ願いたい。
  195. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまお話しの中で、特に発展途上国に対する援助の問題は非常にあらゆる面から見て大事だと思うのでございまして、その意味で、先般総理もワシントンに行かれたときに、従来五年間で援助額を倍増にするというところを、少し期間を早めて三年間倍増ということを打ち出しましたので、その線に沿いましてわれわれは予算編成も考えてまいりたいと。これはまあ三年間の問題でございますけれども、それを十分に頭に置いて考えてまいりたいと思っているのでございます。  ただ、いまのディスバースベースで援助額全体で申しますと、いまや、五十二年の暦年の実績は出ておりますが、日本はいま三番目に額ではなっているのでございます。しかし、何しろGNPが大きいわけでございますので、対GNP比では残念ながら、漸次ほかの国に比べて改善されてはおりますけれども、まだ三番目というわけにはいかないという状況でございます。しかし、日本の置かれた国際的な立場考えますときに、この問題は重要であると思いますので、議員のおっしゃるとおり、今後とも力を尽くしてまいりたいと、かように思っているところでございます。
  196. 三治重信

    ○三治重信君 これは本来あした質問しようかと思っていたんですが、まあ大蔵大臣がおられるときだから一緒の方がいいと思って、日銀の関係の方来てみえますか。——見えてなけりゃ、まあ大蔵大臣方針だけ。  それで、外貨の運用については大蔵大臣も相談されておられると思うんですが、日銀の。まあ、外貨はいかにもたまったみたいにこうなってきておるけれども、いまのように、これ以上余り過去の二年間みたいに上がることもないでしょうけれども、まあ三百円が二百五十円、二百二十円、二百円と、こう上がっていく場合に、日銀の外貨の運用について、どういう方針をとってこの外貨の運用をされようとしているのか。その、ドルはふえていくけれども、中身は円高によって減るような、まあこれはいままで日銀が全般の金融政策をやっているときで四千億とか六千億も日銀が大蔵省に納付していた利益も、こういう外貨の運用いかんによってみんなそれが食われてしまう、あるいはもっとそれから赤字が出るんじゃないか、こういうようなことも心配されていると聞くんですが、この外貨の運用の方針といいますか、こういうまあ昔の金と違ってドルで積み立てていると。いわゆる紙の金と言われる——紙の金に対してこの外貨というものを大蔵、日銀はどういうふうにこういうふうな変動に対して方針をもって対処されていくのか、考え方。
  197. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ日銀の場合に即して申しますと、日銀ば見合い資産として日銀券を発行して、おるわけでございます。これは当然日銀にとっては債務でございまして、それの身がわりとしていわばドルが入ってくるわけでございます。ドルは言うまでもなく外貨準備でございますので、やはりその運用というものは、やはり外貨という性質に即して運用しなくちゃならぬのでございます。言いますならば、やはり流動性を持っておるということ、いつでも発動し得るという流動性、それから安全性、あるいは収益性と、こういうまあ三つぐらいの基本的な考え方に立ってこれは運用しているわけでございます。だから、収益面から申しますと、確かに確実なものに、しかもいつでも換金できる体制で運用しているのでございますが、何しろドルはどんどん下がってまいりますので、元本の値下がりが出ることはやむを得ないのでございまして、そのために日銀の方では経常利益は出ない、赤字になってくるのでございまして、昨年のたしか上半期においては四千何百億円の赤字計上をいたしたのでございまして、したがって、日銀の通常の利益はマイナスになりまして、法人税あるいは法人住民税を納めるに至らなかった、こういう状況にあるわけでございます。しかし、為替でございますから、上がるときもありますし下がるときもありますけれども、運用といたしましては、やはりいま言った流動性、それから収益性、安全性という点に着目して運用をしているものと承知しております。
  198. 三治重信

    ○三治重信君 会計検査院。五十年度決算審議していくに当たって、私は会計検査院に、この決算委員会初めてなんで特別にお聞きするんですが、会計検査院としては、毎年度検査される場合に、いわゆる決算の五十年度なら五十年度決算について、こういう事情のもとに編成をされてそして施行されているんだと、そういう予算に対して基本的に特に、こういうところを重点にやっていくか、まんべんなくやるか、何か重点的な決算といいますか、特に統一的に各省、また予算の投資的な経費とかいろいろ費目の問題等、縦横どちらの方から重点をどういうふうに選び出すかという問題もあろうかと思うんですけれども、そういう検査の方針について毎年度新しくつくられるんじゃないかと思うんですが、そういうことはなくて、ただ各所管それぞれ検査官独自でやる、こういうふうになっているのか、全体としての調和や重点を決めて会計検査に当たっているのか、それをちょっとお示し願いたい。
  199. 前田泰男

    説明員(前田泰男君) ただいまの御質問でございまするけれども、従来から合計検査院は国の収入、支出の決算を検査、確認するという考え方が伝統的にあったわけでございます。それでございますので、全部書面によりまして会計検査院に出していただく、それを悉皆的に検査しようというような考え方が従来かなり強かったように私思っております。最近は主として決算委員会方面の御要望も相当ございまして、やはり先生が御指摘なさいましたような、やっぱり毎年毎年切れてしまう、あるいは個々の収入、支出だけ切ってしまう、こういう検査ではいけないんじゃないか。これがまた世界的な会計検査の傾向でもございまして、やはり一つのプロジェクトとして大きなものはちゃんと見ていかなきゃならない。  それで、最近と申しましてもかなり前になりまするけれども、先生御指摘のとおり、毎年大蔵省予算を作成されるわけでございますが、われわれそれを一年後に検査いたしますけれども、たとえばことしでございますると、やはり一月ごろに各課がいろいろ勉強いたしまして、五十二年度予算はどういう趣旨でつくられたか、こういうことをみんな勉強いたします。そのころの前後に主計局と、各主計官と私たちの方の、検査課長とがまた話し合いまして、大蔵省としてはこういう予算をこのつもりでつけている、こういう話し合いがあるわけでございます。それを踏んまえまして、一応大蔵省ないし政府予算をつけました考え方はこのとおりだと、そういうことを踏んまえる。  それからもう一つは、これは会計検査独特でございますけれども、こういう点に政府の会計に弱みがある、こういう要素も一つ入ってまいります。そういうものを総合勘案いたしまして、大体毎年二月から三月にかけまして、一応その前にわれわれ年度末の検査施行があるわけでございますが、そういう結果も踏んまえました結果、ことしはこういうことを重点として検査をいたしたいということを検査官会議にかけまして御指示を得る。そしてまた、そろそろ来ると思いますが、その検査の結果また問題点が出ますれば、六、七月ごろにまた検査官会議に御報告申し上げて修正を図る、こういったような検査体制が最近の一般的な体制でございます。
  200. 三治重信

    ○三治重信君 わかりました。  そうすると、いまのは一般的な御説明ですが、五十年度について特に重点とされて、その結果検査報告に特にこういうところを、われわれの苦心したところを見てほしいというようなところがあったら一、二御説明願えれば非常に——会計検査院の方で五十年度予算で特別こういう部面について興味を持って統一的に検査に当たった、それはこういうところに出ているというのがあったら、ひとつ御指摘願いたいと思うんです。
  201. 前田泰男

    説明員(前田泰男君) 後ほどまた御審議でいろいろ御意見が出ると思いまするが、五十年度決算検査報告におきましてわれわれが特に気を配りましたことは、これも衆参両院決算委員会の方の御要望であったと思います。われわれは一応、不当事項だと断定できるもの、それから、あるいはこれは政府に対してお直しいただかなければいけないじゃないかというようなもの、これを大体いままで検査報告に載せてきたわけでございますが、ところが、不当とは無論申し上げられない、さればといって政治的な大問題でございますので、政府に対して改善しろとは申し上げられない、こういう事項がかなり実はあるわけでございます。たとえば一例を挙げますと、成田の空港の問題、これは片づきましたですけれども、五十年のわれわれが検査に入りましたときには、どういうことに相なるのか。それから、あるいは現在でもまだはっきりいたしておりませんが、原子力船「むつ」が一体どう相なるのか。それから、あるいは食糧管理特別会計が赤字をずっと続けている。あるいはこれは厚生省の方では一応カドミウムが若干入っているお米で食糧に適するということでございまするけれども、したがって、政府としては買い上げなければならない。ところが、結局は食糧庁の方としては、やっぱり国民の感情を顧慮いたしましてお売りにならない。これがだんだん在庫がたまっていってしまう。別に、これは農林省のとっておられる処置がけしからぬとは申し上げられない。こういう問題を一体どう考えたらいいのか。実はこういったような問題がずいぶんあったわけでございますが、一応そういったような問題につきまして、一応われわれ、会計経理の方の専門屋をもって任じておるわけでございまするけれども、それの計数だけでもはっきりお出しいたしまして、そのものの経過を事実的に淡々と書く、そういたしまして実態はこうでございますよということを国会に御報告申し上げるというのも一つのやり方ではないかということで、言葉が適当であるかどうか存じませんけれども、いわゆる「特に掲記を要すると認めた事項」というのがこの年度から始まっております。  結局これをいたしました趣旨と申しまするのは、結局はそういうわれわれが文句を申し上げるというものじゃなくても、ただ事実を淡々と書くということによりまして、やはり財政執行の効率性というものに何か貢献することができるんじゃないか、こういうことでございまして、ほかはそう著しく変わった——各局ではそれぞれあると思いますが、私一局長でございますので各局の方の全部の御説明は御容赦願いますけれども、検査院全体としては、五十年度の検査報告で変わりました点はその程度でございます。
  202. 寺田熊雄

    委員長寺田熊雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回の委員会は明六日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会