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1978-04-18 第84回国会 参議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      和田 春生君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 三善 信二君                 小野  明君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 田渕 哲也君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        海上保安庁次長  向井  清君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      西廣 整輝君        法務省民事局第        五課長      宮崎 直見君        外務省アメリカ        局外務参事官   北村  汎君        外務省欧亜局東        欧第一課長    都甲 岳洋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (尖閣列島問題に関する件)  (日中平和友好条約締結問題に関する件)  (竹島問題に関する件)  (日独外相会議に関する件)  (日米首脳会談に関する件)  (日米防衛協力小委員会に関する件)  (サハリン残留朝鮮半島出身者の帰還問題に関  する件) ○日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡し  に関する条約の締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  昨四月十七日、和田春生君が委員を辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     —————————————
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 秦野章

    秦野章君 海上保安庁見えていますね。けさの新聞を見ると、また新しい領海侵犯事案が出ているけれども、その概況をちょっと先に。
  5. 向井清

    政府委員向井清君) いまお尋ねございました中国漁船によります領海侵犯事件概要関係でございますが、当初からこの模様を概略申し上げますと、四月十二日の午前七時三十分、巡視船やえやま」がレーダーによりまして尖閣諸島周辺におきまして北北西海域でございますが、多数の船影を認めた。直ちに現場に接近急行いたしましたところ、同八時三十分、わが領海の内外にわたりまして約百隻の中国漁船を発見いたしたということでございまして、確認によりますというと、そのうち十六隻がわが国の領海内において漂泊、航送または操業中であったということでございます。これに対しまして「やえやま」は直ちに拡声機たれ幕等によりまして領海外退去を命じましたところ、中国漁船側当該海域中国領海であるということを主張しつつ、領海外への退去あるいは領海内への再入域というものを繰り返しながら現在に至っておるわけでございます。  ごく最近の情勢といたしましては、四月十六日の午後二時ごろから一たび全漁船領海外退去したという経緯がございますが、同十七日の午後五時四十分ごろから再び領海へ入ってまいっておるということでございまして、侵入退去がその後も繰り返されておるということでございます。  本日早朝午前六時三十分現在の状況を申しますと、約十隻が領海の中に入っておるということでございます。海上保安庁といたしましては、現在、巡視船の増派を急速に進めておりまして、ただいま十隻の巡視船及び航空機四機という態勢でもって現場において監視及び退去命令を行っておるということでございまして、今後も全力を挙げてこれを行っていきたいと考えております。
  6. 秦野章

    秦野章君 いまの説明関連するんだけれどもね、後できょうは田君も出てくると思うんだが、中国側は、これは偶然的な出来事であって、そしてまたいろいろ調査をしているというような話で終わっていたわけだね。その後の侵犯、そこから後だけでいいんだよ、そこをいまちょっと、その前は本会議等でも政府報告があったし、その自後だな、どういう状況だったか、その自後は。
  7. 向井清

    政府委員向井清君) 先ほど申し上げました後の方の繰り返しになるわけでございますが、十六日の午後三時ごろから一遍全船領海外退去という事実がございまして、その後、翌日になりますが、十七日の夕方午後五時四十分ごろから再びぼつぼつと入ってきておる、数隻あるいは二十隻程度というような入り方を何回かいたしまして、現在のところ、早朝の六時三十分現在におきまして十隻程度がまだ入っておるという状況でございます。
  8. 秦野章

    秦野章君 外務大臣、いまのような事態を見守るという政府姿勢の中で侵犯問題がまたそういう形で出てきているということについて、政府としては、どういうふうに見られますか。
  9. 園田直

    国務大臣園田直君) 十五日に、政府・自民党の首脳会議で三項目を決定したことは御承知のとおりでございます。その方針に基づいて、侵犯漁船を一刻も早く退去させるよう、東京及び北京で各レベルで公式、非公式に折衝をやっております。  その一環として公表できる動きは、日曜日に、中江アジア局長在京中国大使館の肖向前参事官を招致して、その後の具体的状況調査結果をただすとともに、中国側耿ヒョウ総理中国を訪問した田英夫議員一行に述べた内容の確認を求め、さらに尖閣諸島周辺状況事件発生以前の状態に戻ることが重要である旨を申し入れ、特に中国総理の発言についてこの種の問題については国交正常化ができている今日外交チャンネル確認されることが重要である旨を強調し、向こうからは、偶発的なものであり、絶対に故意や計画的なものではなく、また条約交渉とは関係のない問題であり、本件を今後とも大局的見地から処理したい旨の見解を述べております。  また、しばらく退去しましたが、領海外に集団をしておりましたから見守っておったわけでありますが、昨夜からまた出入りをしている、こういうことで、さらに外務省はこれについて折衝を続けております。
  10. 秦野章

    秦野章君 ちょっと大臣見解を承りたい問題は、折衝を当初の侵犯問題についてなさっているという状況はもうすでにわれわれも承知しているわけですけれども、再び、偶然的だと言いながら、またその後に侵犯が起きるということについてのそういう現象に対する見方といいますかね、社会主義国家ですから、共産主義国家ですから、相当上意下達のようなことはかなりできるのではなかろうかということも思われるのだけれども、しかし、偶発的であるというなら偶発的であることをわれわれも信じたい、そういう気持ちもないではない。だけれども、ちょっとおかしいじゃないかという、また侵犯をしているということ自体について、一体、政府はただ折衝する折衝するはいいんだけれども、どう大臣としてこれをごらんになるか、この事態を。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 向こう偶発的であると言い、この問題の処理大局的見地から処理したいという柔軟な姿勢を見せたわけでありますが、それにもかかわらず、依然として侵犯をやっている。ただし、いまの侵犯状況領海線をすれすれのところでやっている模様でありまして、前のような刺激的な行動はしないようではありますが、それにしても向こうの方で言っていることと符号しない点がございますので、こういう点についても、本日、さらに向こうに問い合わせたり折衝をやっているところでございます。
  12. 秦野章

    秦野章君 この新しい事態に対して、反応といいますかね、これは北京かあるいは日本在日大使館からか、いずれにしてもきょうあたりあるわけですか。
  13. 園田直

    国務大臣園田直君) こちらもやりますし、向こうからもあることと期待しております。
  14. 秦野章

    秦野章君 領土問題というのは、歴史的には戦争にもなるような契機になったことは、それほど国際間で重要な問題であることは明らかなんですけれども、余り威勢のいいことを言ったってしょうがないんですけれどもね、竹島問題とか北方領土問題とかといったような問題と関連をして日本外交姿勢というものを考えていくといった場合に、これは全然領土問題としては別々の問題であって別々でないという感じがするのですけれども北方領土問題と尖閣列島問題を比べてみた場合に、違うところと違わないところを、これは中江君で結構だけれども、どうだろう。
  15. 中江要介

    政府委員中江要介君) 非常に概括的に申し上げますと、北方領土尖閣諸島日本固有領土であるという日本の立場は共通しておるわけでございますが、北方領土の方はソ連によって不法に占拠されている。他方尖閣諸島の方は日本が古来ずっと有効的に支配をしてきている。したがいまして、現状で見ますと、一方は日本でない国によって不法占拠されており、他方日本が有効的に支配している、その違いがあろうかと思います。
  16. 秦野章

    秦野章君 それから、平和条約を結ぶに当たっての問題としては、だんだん似てきたような感じがするのだけれどもね。というのは、未解決の問題の中に領土問題が入っているということで、ソ連との関係では領土問題は解決済みだ、済みでないというようなことで平和条約が結べない、そういうふうになって今日まで来ているわけです。領土問題が先決なんだということが日ソ平和条約問題では一貫した姿勢ですわな。尖閣列島ではちょっとそこがニュアンスが違って、平和問題では、これは田君あたりに聞かなければわからぬけれども向こうはたな上げになったと言うし、こっちはあの領土固有領土なんだから触れる必要は全くないから、当然触れずに共同声明をやったんだ、こういうことでしょう。こういうことなんだが、だんだん領土問題として浮上してきちゃったですよね。浮上してきてしまうと、領土問題と平和条約並行でいくんだということで言い切れなくなってきたという意味においては日ソ領土問題とちょっと姿が似てきちゃった、また論理的にそういうふうになってきたという感じがするのですよ。そこらの点について、並行でいくという新聞の談なんかも出ていましたけれども、言い切れるのかどうか、そこらいかがですか。
  17. 中江要介

    政府委員中江要介君) ただいまの点は、私どもは、論理的にも姿から見ましても全く違っておるし、似てきていないという認識でございます。  それは、一つは、北方領土の問題は、これは本来は戦後処理の問題ではないのですけれどもサンフランシスコ条約という戦後処理条約の中の千島の放棄に関連しての見解の違いという形で出ておりますから、いかにも戦後処理領土問題というふうになってきておる、その点は確かにそうなんでございますけれども日本としては、日ソ平和条約を締結するに当たっては、本来戦後処理の対象になっていない固有領土を不法占拠しているという状況では平和条約は結べない、こういうことでございます。したがいまして日ソ平和条約に当たっては、その点ははっきりする必要がある、前提になる、こういうことであります。  他方尖閣諸島につきましては、まず第一点といたしまして、尖閣諸島に対する台湾及び中国領有権主張というのは戦争あるいは戦後処理とは全く関係がなくて、あの地域に石油資源があるということが明らかになってから、一九七〇年ごろから、やっとそういう主張が出てきたということですから、戦後処理とは全く関係がない。したがって平和条約になじむ問題ではない。その点は北方領土尖閣諸島とは根本的に違う。したがいまして日中の間尖閣諸島領有権をはっきりしなければ条約が結べないということを、北方領土について、北方領土がはっきりしないと日ソ平和条約が結べないということと同列に考えられるということは、私ども認識とは全く違うというふうに思います。  他方、また、いま問題になっております日中の平和友好条約というのは、これは毎回申しておりますように、平和条約ではなくて友好条約でございますから、領土問題に限らず、いかなる観点から見ましても、この条約は戦後処理的なものでない、戦後処理共同声明で終わっている。いま問題になっておる条約は、日中間平和友好関係を将来に向かって強固にし発展させるための条約である。したがって、この条約は、領土問題というものは、尖閣諸島に限らず、いかなる意味でもそういう戦後処理的なものは一切入らないということになっておるわけですから、論理的にもまた姿から見ましても、どちらから見ましても、これは日ソの場合とは根本的に違う、こういう考えでございます。
  18. 秦野章

    秦野章君 あなた、そういう理屈も立つんだけれども、それなら領土主権ですわな、主権の問題なんだけれども主権主権外交外交と、主権問題で争いがあっても外交外交で平和でいくんだ、そんなことができますか。私は、そういう歴史的な背景の違うこともわかる、わかるけれども、少なくとも平和友好条約を結ぶという段になって、一方において主権争いがあるということとは関係ないんだというそういう論理現実論として外交として成り立つかね。外交外交主権主権だと。しかも同じ国ですよ、相手は。別の国ならええわ。同じ国で、明快に論理的に別だ、こうあなた言い切っているけれども、その論理というものはいかにも公式論になり過ぎると私は常識論として思うのだがな。そんな外交外交主権主権だというふうに割り切ってできるほどこれはのんきな話かね。
  19. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私先ほど御説明いたしましたのは、先生の御質問が、日ソ平和条約北方領土とが関係日中平和友好条約尖閣諸島との関係とが似てきているという観点で御質問がございましたので、私は、平和条約との関連あるいは平和条約で扱われる戦後処理としての領土問題、そういう観点から見ると根本的に違うということを申し上げたわけで、尖閣諸島の問題がもしこれが主権争いとして紛争として具体的に取り上げられた場合に、そういうものを持ちながら友好条約が結べるかという問題になりますと、これは全く日ソとのアナロジー、類似の問題ではなくて、一般論としていま先生がおっしゃったようなことはあり得ると思うんです。  ただ、尖閣諸島につきましては、累次申し上げておりますように、日本固有領土だという主張をし、かつ有効的に支配している。今回もそういうことで貫いていっておるわけでございまして、他方中国は、このことをいま論争するつもりはないと、こう言っておるわけでございますので、それをどう受けとめるかということは、これは政策の問題として日本政府が独自で考える問題であろう、こういうふうに思っております。
  20. 秦野章

    秦野章君 私が似てきていると言った意味は、そういったあなたの言うような背景歴史の問題ではなくて、外交課題として、外交問題として領土問題というものがひっからかんできた、ひっからかんできたと言うより、ひっかからざるを得ないような状況になったという意味においては、これはやっぱり似てきたと言わざるを得ないのだな、常識的に。そういうことになってきた原因とか背景とかって、それは日ソと日中は違いますわ。違いますけれども、これを外交問題として片づけるという問題になったときに、平和友好条約平和友好条約主権は別だ、並行でいくんだ、全然別だと、こういう発想はどう考えても私は理解できないんですよ。その点だけ聞いているわけよ、その点だけを。  あんたの言うように背景とか、それから性格ね、戦後処理問題云々、それは違うでしょう、確かに。違うけれども韓国のように平和関係のすでにあれがあって、その後で竹島問題が起きたというんじゃないわけだ。平和友好条約をこれから結ぼうという前に起きちゃったと、そうでしょう。これから結ぼうかというときにそういう問題が起きちゃったんだけれども、それは別なんだというわけにはいかなくなってきたという、そこの一点だけを聞いているわけよ。歴史背景、そりゃまあいいわ、性格も違うでしょうよ。だけど、外交というものは何といったって主権問題やなんかというものが問題になってくると、この問題は大きいですからね。だから主権主権外交外交だみたいな話にはとてもならぬだろう。全くこれがうまくさばけるということなら話は別だけれども、どうもまた領海侵犯領域侵犯が続いてきたというような状況を見ていると、そこらに危惧を持つのはあたりまえじゃないですか。そして、あたりまえと同時に、本当に偶然的なものであったということで完璧に処理されるということがあるのか、ないのかということをやっぱり見きわめるというか、そういうことでない限り、とてもそれは平和条約並行するなどということを先走って言うことはちょっとどうかなと、こう私は思うわけよ。
  21. 中江要介

    政府委員中江要介君) 尖閣諸島についての中国主張というのは、よく言われておりますように、公式的には一九七一年の十二月三十日に外交部声明を出したということがございました。その時点から中国日本とは異なった見解を持つということが客観的に明らかになっておりましたけれども、にもかかわらず、日本尖閣諸島有効支配した状況日中正常化というものを行ったわけでございます。その日中正常化を行うに当たって、中国側はこれに触れないということで臨んだわけでありますので、中国側が触れなければ、日本固有領土である、主張に基づく有効支配というのが続いていく、で、それがずっと五年半、六年と続いてきていたわけでございます。  したがいまして、いまの状況はどういうことかというと、そういう状況の中で中国漁船による日本国領海侵犯という事件一つあった。したがって、この領海侵犯事件がどういうことであったのかと、この点はまさしく秦野委員のおっしゃいますように、この領海侵犯事件というのが偶発だと、どういうふうに偶発であるかというような点について中国は目下鋭意調査中と、こう言っておるわけでございますので、この領海侵犯事件領海侵犯事件としてその評価をこれから行っていくわけでございまして、尖閣諸島に対するわが方の主張及び有効支配というものは正常化以来ずっと続いたままで、いまもそのまま続いているというふうに受けとめておるわけで、それが根本的に問題になるということかどうかというのはいまのところでは断定できない。いまは領海侵犯事件についての調査の結果を見て、その様子を見て、これをどう評価するかということがこれから行われるわけでございますので、私が先ほど先走って並行でやるとか、関係がないとかと言ったというふうにお受け取りになりますと、それは私の背景とか問題の性質についての違いを強調した余りそういうふうな印象をお持ちになったといたしますと、それは私は将来の政策の問題を言っておったわけでございませんで、これからどうするかということは、冷静にこの領海侵犯事件成り行きというものを見守っているというのが現状だと、こういうふうに認識しております。  そういう状況ですので、昨日も総理が本会議でおっしゃっておりますように、この問題は、日本主張に基づいて日本有効支配しておる現状で、日本側からこの問題を解決しましょうというふうに言うような状況ではない、こういう認識でございます。
  22. 秦野章

    秦野章君 まあ本質的な問題から言えば、尖閣列島領土権について見解が両方違うということは確認してきた問題ですよね、両方が見解が違うということは。向こうは自分の方だと言うし、こっちは固有領土だと、こう言って、そういう見解が違うということは、言うならば、お互いにわかってきた。そうすると、そのわかってきたんだけれども、そういう見解が違うという問題がいつ現実的な問題として浮上するかということは、結局、これはいつかはこの問題が、特に資源問題なんかがあるから、やっぱり現実の問題として登場してくるという、問題を積み残して後に送っているっていう、そういう考えだと思うんですよね、そういうことですか。
  23. 中江要介

    政府委員中江要介君) 先ほど私申し上げましたようなことで、いまは領海侵犯事件成り行きを見守って、これをどう評価するかというのは中国側調査の結果を待ってしようということですので、いまこれを積み残してやるとか、将来の資源問題との関連でどうするかというところまではっきり詰めている、また、そういうことを詰めるべき段階には来ていない。つまり、この領海侵犯事件処理というものが焦眉の急である、こういう認識であろうと思います。
  24. 秦野章

    秦野章君 いかにもこう薬張りというかな、その場しのぎというか、そういうことでいこうということがありありとこうわかるような答弁なんだけども、触れない触れない——触れないと言ったって見解が根本的に違えばいつかは具体問題として浮上してくるということはあり得るわけです。それが意外と早かったということが、ある意味で、ある意味でですよ、政府考えていることの障害になったということかもしれませんわね。しかし、これはいつかは浮上してくるということなら、さあこれ、まあそれが意外と早く浮上しちゃったということは、これは避けて通れないだろう。主権外交というものをそういうふうにこう使い分けして、こう薬張りでいっちまうということが、さあ日本の将来にわたっていいのかどうか。  これに関連して竹島の問題なんかでも、これは一体どういう扱いを、いま政府はどういうふうな具体的な取り組みをされていますか。
  25. 中江要介

    政府委員中江要介君) 竹島につきましても、御承知のように、日本政府は、これは日本固有領土だということで一貫しておるわけですが、これは日韓正常化に先立ちまして、占領中のマッカーサー・ラインとの関連から李承晩ラインに発展いたしまして、韓国韓国主張をしてきた。したがって一九六五年の日韓正常化のときにすでにこれははっきり紛争であったわけでございます。これを解決して正常化するというのが望ましいということで、日本政府もあらゆる努力をいたしましたけれども、ついに妥協といいますか、解決ができなかった。そこで紛争解決に関する交換公文ということで解決の道をあけて、将来解決するときに従うべき準則というものを交換公文で決めて、そして正常化を行った。  その後、この紛争解決に関する交換公文に基づいて竹島問題を解決するに当たりましても、まず双方がその気持ちにならなきゃいけない。で、この紛争解決公換公文にあります手続の中にいろいろありますけれども、これも日韓双方でじゃこの手続でやりましょうということにならない限り、一方的に押しつけ得るような手続ではないわけでありますので、日本としては、日韓関係がいよいよ正常に調整されたので、残る一つ竹島の問題を解決しましょうという気持ち、そういう雰囲気が出てくるように相互の信頼関係をまず基盤に打ち立てなきゃならぬ。  その間、どうするかという点は、日本紛争は平和的に解決するという国是でございますので、力で何かするということはできない。しかし、将来、仲裁であれ調停であれ、あるいは場合によって国際司法裁判所であれ、法律的な問題でありますので、これを解決するに当たって、日本が、その間、国内法的に言えば時効の中断といいますか、日本主張を取り下げてないということをはっきり記録にとどめておく必要があるということで、定期的な巡視の結果に基づいて、韓国に抗議を申し入れ、あるいは韓国側で日本として納得のできない動き——新たな施設ができるとか、あるいはこの前も調査団が入っていろいろ調査したとか、そういう新たな事実があるごとに、日本としてはそれが認められないという抗議を記録にとどめておいて、将来の両方で解決しようというときに、日本としては一貫して韓国竹島の占有というものを認めていないという実績は、これは間違いなく記録しておこう、こういう態度で臨んでおりますが、最近また、領土問題についていろいろ韓国側でもあの竹島の既成事実について、私どもから見て、妥当でないと思われるようなこともございましたので、できることならば閣僚レベルの会議ででも正式にこれを議題として取り上げることはいかがなものだろうかということで、これは議題は両国で合意して決めてまいりますので、どう決まるかは別といたしまして、先般も外務大臣がそういう意向を明らかにされたというのが現状でございます。
  26. 秦野章

    秦野章君 いかにも教養が高過ぎて静かなる外交だと思うんだけれどもね、実効的支配向こうはしちゃっているでしょう、現に。そういうような状況が継続すれば、それはそれなりに一つの既得権みたいなことに、時間というものはかなりの意味を持ってくるわけですよ。そういうようなことがこう次々に——次々と言っちゃおかしいけれども、やっぱりそういう外交姿勢というかな、そういう実効的支配がずっと続いていくというようなことに対して、今度は閣僚レベルででも談判しようかみたいなのんきな話ではないんじゃないかという気がするんだがな。そういうことだと、通俗的な言葉で言えば、とにかく日本がもちろん紛争処理を実力でするとかなんとかいう問題はむずかしいことになっているけれども、しかし、そうかといって精力的な外交努力がそこにあるのかないのかということはやっぱり違ってくると思うんだな。だから、閣僚レベルででもやろうかなんと言うけれども、あたりまえじゃないの、そんなことは。こっちから行ったっていいんだし、とにかくそういう問題を片づけないとやっぱりしようがないんじゃないかな、時間がたてばたつほどむずかしくなる。それから別の角度で、国際司法裁判所とか国連機関とかといったようなものに必ずしも持ち込めないという手続上の問題があるでしょう。しかし、それは人間がつくり、みんな国家と国家が集まってつくった手続なんだから、持ち込めなければ持ち込めるような手続に変えていくというような努力をするとか——国連の努力かもわからぬけれども、そういうことはどうなんですか。それはいま中江君の言うように品のいいことを言っておったってなかなか解決しないぜ、これ。私は、だんだんだんだん相手の実効的支配が時間の継続とともに日本は決してもう有利にはならぬ、不利になるばかりだ、そういう事態を放置しておくこと自体がすでにあらゆる方面に問題を引き起こす原因になるだろう、そう思うんですよ。どうかね、その国際的な努力にまつとかいう、それから日本自身も二国間でももっと精力的な努力をやる。これは外務大臣いかがでしょうな、これ。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、竹島の問題でございますが、竹島は平和的にこれを解決するということになっておるわけでありますけれども、いままでのところは御指摘のとおりでございます。したがって、この問題はいつの日にか四つに組んで解決をしなきゃならぬときが来る、また、しなきゃならぬ、こう思います。そのかわりに平和的解決とは、話し合いだけではなくて、平和的に許されたすべての問題でありますから、韓国に対する経済協力から一切のことをかけてこの問題を解決するという政府・与党の決意と足並みがそろうという時代に四つに組んでやらなきゃならぬ、こういうふうに考えております。  それから尖閣列島の問題は、これはやや立場を異にしておりまして、わが国の領土であることは明白である。そこで、中国がわが国の領土であるということを一九七一年に初めて外交部声明で言った、共同声明以後これについては一言の話も中国からなかった、行動もなかったということでありまして、中国日本の立場は異なっていることは御指摘のとおりでありますけれども、わが国が実効的に支配をしているわけでありまして、これに対して話がなければ、わが国の実効支配が続き、そしていつの日にか話し合いで解決できる、こういうことでありますが、今度、こういう事件がありましたから、これまた少し趣を異にしてきたわけであります。  そこで、この事件偶発的なものか、大局的見地から処理されるものか、それとも、これを契機にして、まずこの領土問題を中国日本と話をはっきりつけようじゃないかということなら、そういうことでこちらも日中友好条約はさておいて、これと四つに組んで話をつけなきゃならぬ筋合いのものである。しかし、そうではなくて、偶発的な事件であって、これはまあまあ私の方は話はしばらくはやめましょうということであるならば、これは友好条約の中の必須条項ではございませんから、これの後になるか未来になるかわからぬが、いつか適当な時期に話をするということであると考えております。
  28. 秦野章

    秦野章君 竹島日本領土だと、尖閣列島領土だという点についてはもう全く同じだと思うんですよね。だから、それはいろんないま経済問題その他というようなことをおっしゃったけれども、確かに平和場裏に解決していくための手だてというもの、話し合いの内容というものはできるだけ豊かにしていかなければ、単純にがんばり合いでは片がつかぬということもあるだろうと思う。あるだろうと思うけれども、できるだけやっぱり領土というものはこっちの領土なんだから、ほかの対価でどうのこうのというのはちょっとおかしいんでね、やっぱり基本線はそこにあろうと思う。  しかし、いまおっしゃったように、全然突っ張り合いみたいなことで片がつかぬということで、何らかの多角的な談判交渉の中で平和場裏に解決していこうという気持ちはわからぬことはない。しかし、そういう観点からいくと、日韓大陸だな、きのうも本会議でいろいろ議論が出ていたけれども、野党の諸君なんか日本領土を一部譲ったような形で日韓大陸だなをやっているのはけしからぬと、こういう話が出ていましたが、尖閣列島日本領土だけれども、ちょっと譲って、石油をこっちが一緒に掘って、それをうまく分け合うみたいな展望で多角的な話し合い、豊かな内容の話し合いといいますかな、何かそういうことででもいかなきゃあるいは片がつかぬかもしらぬし、外務大臣としちゃいろいろそんなことも考えておられるわけですか。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおりであると考えます。
  30. 秦野章

    秦野章君 ついては、私は竹島のことを関連して申し上げたんだけれども北方領土についても、実は、領土問題なんというものは国論を統一してこれぶつかっていかなきゃならぬ、国論を。ところが、国論統一なら国会の決議なんかが必要なんだけれども、これは立木さんの共産党の方がちょっと違うものだから、本当は立木さんにこれ聞きたいんだけれども、あなた答弁してくれるかい。つまり四島返還ということについて国会決議をやるということになると、国論が統一してソ連北方領土ね、北方領土返還の問題について国論が統一した国会決議でもってやる、国会決議する、党によって考えが違うと、国会の決議が満場一致でできない。ああいう領土問題というものは満場一致で決議をして政府をバックアップする、こういうのがいいと思うんだけれども、立木さん、どうだ、ちょっと答弁してくれないかな、だめかな。何か具体的に一遍共産党も、一つの段階というか、考えてもらえぬかな。
  31. 立木洋

    ○立木洋君 フリートーキングの時間を設けて、その席で時間をとってやりますから。
  32. 秦野章

    秦野章君 フリートーキングで、ぜひひとつ、そういうことをやるような方向でいこうよ。政府にばっかり聞いておったってまずいわけですよ。  そういうことで、領土問題というものは、中江君が言うように、それは確かにみんな個性があって違うわけだよ。違うけれども、共通した問題がある。北方領土というような問題は、国民的な関心から言えば一番最初にあるわけよ。竹島、尖閣は後から出てきたわけよ。そういうことになれば北方領土で国論統一して政府をバックアップする、日本は一体なんだということがあれば、これは非常にやりいいだろうと思うし、また、それが当然の姿勢だろうと思う。自由討論でまたやると言ってくれているから非常にありがたいので、そういうことをやって、そういう方向で政府はひとつ——やっぱり北方領土問題が一番右翼にありますね、それで後がぽんぽんと出てくる。次から次へ沖繩の方まで来やせぬとは思うけれども、やっぱり領土というものは外交の中心だと思いますので、外交問題では非常に重大な課題だと思うんで、外務大臣、ひとつ竹島の問題も尖閣列島も不退転の決意で、国民がやっぱりそうだやってるなという迫力のある姿勢でやっていただきたいことを希望して、決意の点を伺って、これで終わりたいと思うんです。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) いま秦野さんの御発言の中で、それぞれ三つの問題は本質的には違うけれども、共通した問題があるはずだとおっしゃることは非常に理解ができます。北方四島についても、ただ返せ返せと言うだけではなくて、いろんな問題から相互理解を深めつつ平和的に多様な面からやれとおっしゃることは三島について全く同じでございまして、そういう方向で、かつ国会等でこういう際に国民の総意であるという意思表示があれば、政府としては、ますますそれに力を得て全力を尽くしたいと考えております。
  34. 秦野章

    秦野章君 さっき答弁漏れがあるんだけれども国際司法裁判所とか国連とかというものはいかさまこういう二国間の紛争について無力なんですよね。これは片方が提訴しても相手が同意しなきゃだめだとかいうことだけれども、ああいう手続問題というものは、国連に働きかけて何とか、国連がだんだん力がなくなってきていることは残念ながら事実ではあるんだけれども日本みたいな非力な国はとにかく国際紛争に実力行使しないんですから、ある意味では大変非力ですよね。ジャングルのおきてのような世界の中でそれでいこうってんだから大変なことなんだけれども、国連に対するそういう努力というものはやってもむだだという考えですかな、国連とか国際司法裁判所とか、そういう問題は。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) むだではないと思います。御発言のとおり、国連の場において世界各国に向かって積極的に精力的にやることが必要であると考えておりますので、今度の国連総会等では、そういう面も踏まえて努力していきたいと思います。
  36. 秦野章

    秦野章君 ぜひひとつ二国間問題をもっと広げて、領土問題なんというものはなるべく紛争を起こさぬ方がいいんだけれども、起きた場合には、それを解決する手段というものにいま少し衆知を集めて国際的な努力が盛り上がるようにひとつお願いをしたいと思うんですね。  それからいま一つ、最後に、日中の外交の問題で、今度も田君が日本の大使みたいな役割りを演じて向こう見解を聞くんだけれども、大使が余り大ぜいい過ぎて、自民党の国会議員もずいぶん大使のようにして向こうでいろいろ外務省にないような見解を聞いてくる。これは外交関係がないときはわかる。外交関係がもう樹立されているんでしょう、樹立されているんなら外交チャンネルでやるというのが近代国家の行き方だから、これは注意喚起をして——注意喚起というのか、それ自体がやっぱり一つ外交的手段で解決を迫るべき問題だと思う。こういうことは遺憾の意を表した程度では私はまずいと思うんだな。佐藤大使なんか全く値打ちない、さっぱり。そういう点は非常に将来も困るんじゃないかと思うのです。  それといま一つ関連して、佐藤大使が気に入るのか気に入らないのかもわからぬけれども、アメリカなんか国防長官やったのを大使に持っていったり、すごいことをやっていますよ。中国が国連加盟することに徹底的に反対した人物を持っていったり、実に何というか、アメリカのやり方というのはちょっとわれわれの常識を超えたようなところがあるけれども、しかし、かなり参考になるような問題があるんで、これは園田さんのような実力者が外務大臣に座れば、やればできると思うんだけれども、やっぱり中国大使とかああいうところは人の問題があると思うんですよ。佐藤さんがいい悪いじゃないんですよ。やっぱりもっと、何というか、アメリカの共和党の全国委員長をやったのを大使にしましたね、アメリカじゃ。自民党なら三役ぐらいやった人間になるのかどうか知らぬけれども、ばんとこう——田君だっていいじゃない、いずれにしても型破りの外交園田さんひとつ一遍考えてもらったらどうだろう。余りキャリアの——外交官だって使い道は幾らでもあると思うんですよ、これだけの国際化の中だから。そういう停滞の明治百年、官僚システムのいかにもあかがついて停滞、硬直化していますよ、これをぶち破るようなことが意外と私は外交姿勢として大事だと思うんです。これをひとつ最後に伺って終わります。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御意見は真剣に拝聴して、検討いたします。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 私は、現在起きている問題を深刻に考えております。それは日本外交というものは外交権が政府にある、内閣にあるとされておりますが、議会民主制の国家でありまして、政党によって支えられている福田内閣であります。その母体としての自民党、並びにそこが生み出した福田内閣が外交権を持っているのにもかかわらず、五年間、安閑としてなぜこの重大な日中平和友好条約を怠けていたか、こういう怠け者に果たして外交権を託すに足るその資格があるかどうかというものを国民に聞くために、ひとつ解散をやってみたらいいと思うのです。  憲法が守られているのにもかかわらず、平和憲法から逸脱して、青嵐会一派のごときは、日中平和友好条約への基本姿勢政府においてつくられたのにもかかわらず、憲法も政府の約束もへいちゃらで、台湾と韓国回りで憂き身をやつしている。ついでにつまらぬこともやってくるんだと思うが、このようなふざけた、ふまじめな政治姿勢の中において、まともに日本の政治が守れるかどうか、これをまず一発、外務大臣からお聞きいたします。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) いま解散の話が出ましたが、解散は総理の持っている大権でありますから、われらが指揮すべきことではございません。御発言は十分承っておきます。
  40. 戸叶武

    戸叶武君 それを百も承知の上で、総理から信頼されているか信頼されていないか、もことしてわからない状態にある外務大臣の苦悩をもくんで、私はあえて外務大臣質問するのであります。園田さんは紳士だから、どうもこういう点は黙して語らずで、がまんするのでしょうが、国民はがまんできないところまで怒りが心頭に発してきているということだけを福田さんにも、あなたにも、この際伝えておくことにします。  そこで、領土とは何ぞや、平和条約の中においていつもむずかしい問題は、戦争と平和の発火点、危機をも招くのはすべて領土問題の取り扱いの軽率さから起きるのであります。中ソ論争ももう二十年も続いておりますが、その発端は領土問題であるとはっきり共産圏で述べてくれたのはユーゴスラビアの歯に衣を着せないで物を言える政治家チトーだけでありました。チトーだけはやはり普通の共産党の政治家とちと違う一つの見識を持っておりますが、ほかの人は皆園田さんのように黙して語らず、うっかり口を開いたら大変だというので、たとえばスースロフやミコヤンのような人にも幾ら聞いても、あなたのように、いつ日本で座禅を学んだのか、黙して語らないのであります。語ったのはフルシチョフだけですが、語った途端に彼は吹っ飛んでしまったんです。それほどやはり私は外交官にとっては、この問題に対する発言は命がけの問題で、フルシチョフは少し軽率だから自分の力の限界を知らないで発言して、最高の地位から奈落へ落とされたのだと思うのでありまして、はっきり物を承った私が大変悪いことをしたと思って、後では反省しておりますが、なぜそういう不明朗な政治が二十世紀の後半各国を支配しているのか、これは明らかに権謀術策の政治であります。権謀術策の政治というのは、権力を持った者が自分の我説だけを押し通して、力任せに押していくのが権謀術策の政治であります。  そこで、この領土問題はおのおの違うと思いますが、具体的な事例で尖閣列島竹島北方領土の国後、択捉の問題、それに対してやや明確のようで明確でなく、はっきりしているようではっきりしない答弁がアジア局長の先ほどの答弁であるというのは、これは秦野さんがすでに認めているところでありますが、与野党ともに私は宮仕えをする人はつらいと思いますが、こんな答弁をしておって、あなたはわかるかもしれないけれども、国民はわかりますか。相手国のソ連でもあるいは中国でもわからないからこういう騒ぎが起きるんじゃないですか。わかったようで、暗やみで盲あるいはいざりがいざり寄って話し合うような始末で、何が何やらわからないのが今日の外交の状態で、自分では大体わかっているが相手には通じない、通じてもしらばっくれることもできる。  あいまいもこたるふざけた外交日本日本流に、中国中国流に、ソ連ソ連流にやっているんですが、まず、とりあえず尖閣列島日本領土なりという明快な私は信念を持っているし、いかなる者に対しても回答をこれははっきり物を言うのですが、なまはんか歯に衣を着せちゃってふんがふんが言っているから、台湾でも中国でもわからないので、台湾という国とは別にかかわり合いがないのにもかかわらず、割り切ってしまったのに、外交権を持っている政府を支えている自民党の台湾ロビーたちは、蒋介石には大変お世話になっているからなんて、余り知ったやつはいないらしいが、そうやって台湾回りをやって、そうして次の蒋経国が台湾の総統の座についたが、少しこのところ、もんでがんばるからなあなんていうことをささやいているのに相違ないと私は思うんですが、こういう形で一体だれが外交をやっているんです。  自民党では今度ちょうちん行列を国民にやらせて、ひとつ福田さんの顔とおえら方の中曽根さんとか灘尾さんという顔を少しさすってよく見ないと、この人たちは何を考えて何をやって、どこの国に属しているのか、どこの政府に属しているのか、これは一度手探りででも当たってみないとわからない状態だと思うんですが、これでいいんでしょうか。こんな国家はどっかにありましょうか、おもちゃの国家ですか、憲法を守っているんですか、政府を守っているんですか。揺すぶり専門じゃありませんか。東海地震どころの話じゃなくて、福田内閣ももう今日においては、地震に取り囲まれてノイローゼになっているのが福田内閣の現状じゃありませんか。私は国籍はどこだとまでは言いたくないけれども中国あたりで見りゃ一体日本には政府があるのか、外交権はだれにあるのか。おれの方もひとつ揺すぶってみようと、こういういたずらっ気がどこかからでも起きないということは言えないと思うんです、こういう状態じゃ。われわれの目は相手を見るために外敵に備えて目があるから自分のことは見えないが、だれでもやはり相手を見ると、日本政府の顔は漫画にもならない、お化けにもならない、えたいの知れない物にしか見えないじゃないですか。これは中国の態度は間違っているという前に、一体、日本は何を考え、何を奮言わんとしているか、何を行わんとしているか。  多少相手あっての外交で、その相手に言うだけでも通ずるような姿勢がなければ、竹島韓国が既成事実を出せば、おれの方はそのときには軍隊はないんだ、戦争手段には訴えられないんだと言って既成事実を黙認する。そういう習慣がついてしまったなら、今度はおれの方も既成事実をつくって、それを黙認させようという企てをどこの国でもやらないということは言えないじゃないか。それを進めさせているのは日本じゃないかという言葉がはね返ってきたときどういう答弁ができるんですか、竹島に対して、あるいは尖閣列島に対して、あるいは国後、択捉に対して。共産党に問うまでもありません。これはわれわれ政府姿勢がはっきりすれば、いまの共産党あたりはずいぶんユーロコミュニズムのように傾いて聡明になっているからそんな無理なことはやらなくなっています。やはり日本固有領土だ、領土だということを明確にして、ヤルタ協定なんという戦争中のインチキ協定、軍事謀略協定はわれわれは認められないんだということをはっきりソ連にもわかるように言えば、ソ連もああそうだったかと、そういう余りそれた返事はしないと思う。やはり物をはっきり言わないからわからなくなっちゃうんで、私らはクレムリンの宮殿に行ってそれをはっきり言ってきた。だから戸叶さんは日本人だということが確認されて、あとで成田さんみたいにいじめられることはない。右に左に意見が異なると、クレムリンで言った発言と北京で言った発言は違うじゃないか、一貫性がないというのが国際外交における信義違反の根源になるんです。わが党においても成田さんは責任を感じてやめてしまいました。やはり福田さんも成田さんがやったようなあの聡明さを私は今日の政治家としては進退の上において発揮してもらいたいと思う。みずからやはり裁くというのが政治家の使命です。  自分で責任をとれないやつがいつまでも責任ある位置にかじりついているというのは官僚の悪い習性であって、いやしくも政党政治家となって、自民党のフク総裁というのは名字が福田だからフク総裁だというわけにはいかないんで、やはりその点はあなたは忠実な福田さんの協力者であって、松野さんも逃げちゃった、あなたも逃げちゃったといったら福田さんにはだれもいなくなっちゃうから、本当に気の毒だけれども、そうしないためにも、私ははっきり瀬戸際の重大なときであるから、言いづらいことも、さすが園田、言いづらいことを言って、その後で割腹したわいというと、これは乃木将軍以上になるんで、私は政治家はそのくらいの土性骨がなけりゃ、いまの武器なき国における政治はやれないと思うんです。これはひとつ言いづらいことだけれども、あなた言ってください。言えなかったら、私が今度は福田さんに直言することにしますけれども。私は、そういう意味において、この尖閣列島竹島の問題、どうもアジア局長は宮仕えをする人で、政治的な発言をあの人から余り聞きただすということは残酷だから遠慮しますけれども、ここいらのけじめをはっきりしてもらいたい。  それから、北方領土の国後、択捉でも、社会党の社会主義協会というちょんまげマルキストの人たち、あるいは共産党のやはり長い間の習性で、プロレタリアの祖国と考えている人——私たちは祖国は日本以外にないと思っているんですから、日本において政権を取ろうとするならば、国民が主権者であってプロレタリアの独裁でないというのはもう共産党も認めたし、ユーロコミュニズムの世界でもそういう独裁形態は否定したんですから、ちょうど共産党の変わり目の転換としては歴史的な転換にもなるから、そういうことはやっぱりはっきりさせた方がすべてこの機会に私はいいと思うので、国会において——先ほどなかなか前の警視総監だけれども、勇気があって野性味があるが、彼が言ったように、やはり政府がこういうしらばくれた政府であることはわれわれの不明からきたんだから、国会決議でもやって、主権者に忠実なる国の最高機関たる国会の意思がこうだというのをぶち上げて、そうして福田内閣なんかは吹っ飛ばしていった方が、日中平和友好条約は——大体、法律の形式だけにとらわれておって、だれが法律をつくったか、だれがための憲法かということを忘れているような、主人公を忘れたような政府と国会、このぶざまな状態をぶち破っていくのには、これぐらいの勇気ある着想と行動がなけりゃ、いまの政局の転換を図ることはできないし、戦争へ入っちゃってから待ってくれじゃ間に合わないから、戦争のかわりにいまひとつ肉弾戦で国会からまずそういうぶちかましが始まらなけりゃ、いまのような性根のない政府、国会をも含めて、みずから反省の実を示さなけりゃならぬところにきている。  中国を批判することは楽です。だけれども日本のぶざまな状態を見れば、だれでもやっぱり小石の一つもぶつけてみたくなったり、揺すぶってみたりするのはあたりまえです。子供にいたずらするなと言うのが間違いで、子供がいたずらするような仕組みになっている政府の態勢なり政治の態勢に問題点があるんだから、禍根はそこにあるということをはっきり示せば、国民も黙っちゃいないです。殺すというんじゃないから、しばらくお休みというんだから、やっぱり政府であろうが国会であろうが、場合によっちゃ眠らせてしまうことが必要です。不必要なものにはやっぱり冬眠をとらせる。春になってもやっぱり冬眠をとらしておいた方が無難で、まだ生きている気配だけあればいいんだと思うんですから、そういう点において抜本的な治療をやらなけりゃ、いまの政治、外交なんというものは変わらないと思います。北方領土の問題に対しても、ひとつわれわれの方でも、もう少し慎重に、国会の出方や国際情勢の動きを見ておりますが、だめだというときには、これ以外にやはり荒療治はありませんから、国会の決議をやるなり、あるいは解散要求の、主権者の国民に呼びかけて、そして政治、外交を国民の手に奪還する運動を起こす以外に、憲政擁護などというなまぬるいことでは、もう憲法があっても、憲法を無視した与党があり政府があって、憲法ははいま冬眠状態でありますから、こういうふざけた状態の日本の国家体制の中に荒療治をやることがいまこそ必要だと思います。  それで、この領土の問題ですが、この三つを簡単に、外務大臣言いづらいでしょうが、どこいらからどうやってやっていくのか、その手順だけでもひとつ示してください。
  41. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私の所管に属しますところは、御質問の三つの領土問題のうち竹島尖閣諸島であるわけでございますが、日本政府は一貫しまして竹島尖閣諸島日本固有領土であるという立場を貫いております。また、これについては全国民的支持があるという認識で臨んでおりますので、その点ははっきりしておきたいと思います。  にもかかわらず、それぞれ何が問題であるかという点でございますけれども竹島は、これは日本がまだ国際社会に復帰する前からいろいろの経緯がございまして、韓国が事実上占拠しているという状況で、これをいかに正しい姿に戻すかということにつきましては、いま御指摘の日本国憲法に沿いまして平和的に解決する、そのための努力を重ねております。これはなかなか思わしい結果が出ないうちに既成事実が重ねられて日本にとって不利ではないかという点は、私どももその認識を持っておりますので、引き続き鋭意この話し合いによる解決というものを目指したいわけですが、その前提といたしまして、先ほど申し上げましたように、双方がこれを解決しようという気持ちにならなければ話し合いはできないわけでございますので、いたずらに雰囲気を悪くしたのでは解決から遠のく、したがってその辺のところを勘案しながら、その時期を早く招来させたい。また、他方国際司法裁判所あるいは国際連合というような国際機関を利用しても解決する道はないものかということもあわせ検討してまいりたい、こういうことでございます。  尖閣諸島の……よろしゅうございますか。
  42. 戸叶武

    戸叶武君 よろしい。その話は前に聞きましたから、大体わかっているんです、そういう意味でよろしいと言ったんです、それに納得した意味じゃありませんから。  ただ、この竹島の問題でも尖閣列島の問題でも、中国なり台湾なり韓国なりがいきり立っているのは、形式的な法理論よりも、昭和四十五年八月に台湾政府尖閣列島周辺を含めた海域の石油採掘権をアメリカのメジャーのガルフ社に与えた。このことなんかも、問題は、その前々年の四十三年、エカフェ、国連アジア極東経済委員会が東シナ海一帯の石油調査をした結果、百万立方キロ、当時一兆ドルの埋蔵石油があるらしいという情報を流したので、それを中心としてエネルギー資源の確保という形で、ひとつこれはここへ突っ込んでおかなけりゃうまいことができぬぞというので、韓国も台湾も突っ込んできたんじゃないですか。日本中国との間に暗黙の話し合い、了解事項があったと言いながら、了解事項に沿うた信義を自民党の福田内閣は必ずしも守っているとは言えない。  台湾がいままで幾たびかこの尖閣列島に対してもあそこへ入ってきております。そのときにも日本はいいかげんにしております。韓国竹島を占領したような形を持っていても領土日本のだという念仏は唱えているが、鐘の声もろくに聞こえないで、そうしてそれだけで既成事実がつくられたままになっています。結局、これは日本という国は、力で押して既成事実をつくると南無阿弥陀仏ぐらいの念仏は申すだけで、一向何ら差し支えないという、韓国でも台湾でも中国でもそういうふうな受けとめ方をせざるを得ないところへきて、もしも先に台湾でも占拠したらどうなるかという心配事もあって、そういうことは表面には出さないが、いまの福田内閣に任しておくと、竹島のようなことになったら、日本もばかを見るかもしれないけれど、中国もこれは何ら自分たちの主張というものに耳を傾けてもらえないという考え方を持つのがあたりまえで、外交というのは自分の主張だけを述べるんじゃなくて、相手がどのように考え、相手の立場はどうであろうかということをも配慮しないで、一人相撲で、田舎の草相撲でも一人相撲というのはないんで、こういう相撲をいつまでもとっていてはふんどしかつぎ以上の相撲にはなれないと思うんですが、園田さん、どの程度まで相撲なら番付は上れると思いますか。これはもう冗談じゃなくて、私はあきれているから、なるだけ比喩で物を言っているんですけれども、まともには物を言えませんよ、これじゃ。これはどこでもそういう見方をしますよ。  ソ連だって、私は、ルーズベルトとチャーチルにスターリンが戦時中にだまされたという形じゃ何も返ってこないから、あそこでとぐろを巻いているんだと思うんですが、本当に筋さえわかれば、日本ソ連を仮想敵国としているところの今日の日米軍事同盟をあっさり解消をしてもいい、日本がまたソ連との緊張状態を、ソ連がもっと島を返してしまえば、そんなこと返すのは差し支えないというところまでこぎつけるだけの意欲を日本が示すこともしないで、何やらわけのわからない改正、改正と言って、へっぴり腰で力もなくて改正、改正と言っているのだから、これは相撲にならない。日ソ外交でもそうだが、日ソ外交だけじゃなく、これは台湾に向かっても韓国に向かっても中国に向かっても相撲にならぬ相撲をとっているのが日本じゃないでしょうか。外交姿勢の基本的な構え方ができていないということをこの際日本が一番反省しなくちゃ、みずからの外交の主体性がなければ外交はできないということを政府みずからが認識しなけりゃだめだと私は思うんですが、いかがなものですか。これは一番重大な問題です。
  43. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言はごもっともでございますので、今後、厳然として節度ある多様的な交渉を進めていきたいと存じます。
  44. 戸叶武

    戸叶武君 節度あると言うのだけれども、節には節があるんです。いまの福田内閣はのっぺりして、どこに目があるのか、どこに口があるのか、節々がないんです。そういうところにいまの党の非民主的運営、押しの強いずうずうしいやつがまかり通るというこの力の外交、これがやはりいまの私は危機を招いているんじゃないかと思うんです。政治は力だと言った原敬さんが中岡艮一に東京駅頭で刺されて死んでしまうとだれが思っていたでしょうか、絶対多数の上にあぐらをかいたときに往生してしまったじゃないですか。権謀術策の犬養毅が利口に立ち回って少数党から政友会の総裁になって多数党になったときに、話せばわかると言った途端に息を引き取ってしまったじゃないですか。万事こういうふうに政治が非情な状態で日本においては流れている。これを私たちはこの目で見てきたんです。いまそれと同じような気流が政界の底辺には流れているんです。それでらんちき騒ぎをしている今日の状態はまさに徳川時代のあの元禄の末期を思わせるような一つの悲劇的なものがもうすでに私は体内にうっせきしてきていると思うんです。危ないんです。ぼくが危ないと言うんだから、必ずこれは危ないに決まっている。これは予言者でなければなかなかはっきり物は見えないんで、私もこのごろは政治の現実より予言者になって、ひとつ政府に気合いをかけてやろうと心がけているんです。  本当に日中の平和条約でもまともにできないような状態なら、もう何にもできなくなっちまうんです。もう韓国にはばかにされ、ソ連にはばかにされ、アメリカにはばかにされて、バカンス時代だからいいだろうけれども、こういう状態で日本の国をこういう政府、こういう政党、こういう政治家に任せておけるかという国民が内部的に爆発しないとだれが言えるか、私は爆発寸前だと思っている。で、これは遠くの方で物を言っちゃわからないから、なるたけ国会の手近なところへ来て、田中正造のように天皇に直訴するかわりに人民に直訴して、人民の奮起を促したいというのがわれわれの今日の言動ですが、本当にこの日中平和友好条約の問題というものは、日本が生きるか死ぬか、死んでいるのか生きているのか、日本を試す一番の私は実験に持ってこいの課題だと思うのでありまして、もう園田さんなんかもつき合いがつき合いだから、ずいぶんがまん強いことになれてしまったから平気のようですが、われわれはやはりがまんができないぎりぎりのところまできたんで、一体、この日中平和友好条約を何とかながめていけば、川の水の流れているのを柳がながめているように、いけば何とかなるというそういう考え方ですか。それとももっと政府自身が積極的な努力をしなけりゃこの行き詰まりは打開しないという決意を持っているんですか。そこいら寝たんだか起きたんだか、死んだのか怠けているのか、何かわからない状態にいま福田内閣は陥っているんで、ひとつ注射でもやるよりほかにしょうがないからと思って、われわれのこういう質問に似て質問にあらざる激語をもって福田内閣を叱咤激励しているんですが、どうですか、あなた一番近くにいるんだから。
  45. 園田直

    国務大臣園田直君) 共同声明の趣旨に沿って、その締結に向かって努力するという方針は、総理のかたい決意でございまして、私も全く意見は一致をいたしております。
  46. 戸叶武

    戸叶武君 いや、そのつづり方を楽しみにして待っていたんだが、子供だってもう答案を出すときに、答案は出ない、つづり方は合唱しているだけで一つも前に進んでいない。機は熟したって、熟しておっこってしまうまで、サルはカキの種を拾うのが名人だから落ちるまで待つかもしれないけれども、こんな私は外交というのは、これは武器でも持たなけりゃできないというつもりで、意地をやかせるためにやっているのかもしれませんが、私は、武器はなくとも人間の魂が躍動する限り、生きている限り、政治は生きて躍動しなければならないものだと思います。去年、おととしあたりから、もう幕が閉じるようなときになってもさらに幕はあかない。こんな歴史はいままでの日本外交史の中にもない歴史だと私は思うので、新しい歴史をつくる興味からやっているのかとも思いますが、これでは本当にどこの国でも日本の国は相手にできなくなってしまう。政治はやはり信義というものが根底に流れているんであって、信義がなくなったらやはりいろいろな手をもって、とても理屈や信義じゃ通じないんだからというので、もろもろのいだずら事がこれから起きてこざるを得ないと私は思うんです。  大体、いつあなたはアメリカへ行き、いつ中国へ行く予定で、福田さんとはそういうスケジュールは幾らかは話しているんですか。今度のことで幸いどっちにも行かないで済むようになったとでも思っているんですか。ここらのところ、日程すらあなたたちの——歴史が動いているから仕方がないようなものの、動かないから、狂乱怒涛の状態の揺すぶりが出てくるんですが、お先真っ暗な政府に何もかも託して地獄へまで行かなけりゃならないというのはもう戦争でこりているんですから、そういう点は私らがいつどうやって行くのかというのを聞くのは不見識ですが、外交権を政府に託している以上、人民から選ばれたところの国の最高機関である国会が聞かなくてだれがこれを聞く人があるかと思うから、いやなことだが、たびたび私たちはこのことを聞くんですけれども、どういう日程でこれから総理大臣外務大臣は身を処しようと考えているんですか。
  47. 園田直

    国務大臣園田直君) 今回起こった事件をいま見守っておるわけでありますが、先般、秦野さんの御質問にお答えしたとおり、ここで中国尖閣列島領土権あるいはその他の問題を解決しようというのであれば、その方で四つに組んでわれわれは解決をしなきゃならぬと存じますが、これが偶発事件であり、しかも大局的な見地からお互いにうまく処理しようということであるならば、それはそれとして、日中平和友好条約共同声明の趣旨に沿って努力するという方針に変わりはございません。したがって、その方向に向かって一日も早くそれができるように全力を挙げて努力する所存でございます。
  48. 戸叶武

    戸叶武君 きのうの新聞を見て私は驚いたんですが、中江君のようなまじめな官僚だからやっぱりああ言わざるを得ないんだろうけれども外交の問題が政府間のルートであるところまで煮詰まりつつあるときに、横から田さんが出ぬでもいいのに出てきてよけいなことをやってくれたという意味にとれるような発言がなされているんで、私たちは田個人のためじゃなくて、国会議員が海外に旅行した場合において、国に問題が起きたならば、やっぱり心配で飛び込んで火中のクリを拾おうというのが、それだけの意気込みがなければ国会議員なんかには投票はだれもしてくれるやつがないです、国会議員を殺すなら別だけれども外交権を政府はありと力むのには少し口幅ったい状態に政府が陥っているときに、国を憂える肴が外国の要人に対して一番大切な問題を体当たりでぶつかって聞くのはあたりまえの常識じゃないかと思うんですが、何かあのときは、中江君、舌足らずかあるいは寝足らずでああいう発言をしたんだろうし、安倍君の発言は、官房長官でも新聞記者をやったから、それとは幾らか常識人で、違うように受けとれるような発言をやっていますが、大体、政府の官僚と党人との受けとめ方が鮮やかにここでは違っているんですが、あの真意は何を言わんとしたんです、中江さん。
  49. 園田直

    国務大臣園田直君) 中江局長の答弁で誤解があってはまいりませんので、ここで了解を得たいと存じますが、あれは田さんが中国へ出ていって、出るべきところへ出てああいう話をしたということに対する発言ではございません。田さんが行かれて副総理と会われて、そして向こうの意見を聞いてもらったことは、われわれとしても非常に参考になるわけであります。ただ、向こうの方で国交正常化をして外交チャネルを通じて話を進めているところでありますから、田さんに話をされるときには外交チャネルを通じても話をしてもらいたい。こちらには何の返答もなかったわけでありまして、後からこちらが確かめて間違いないということがわかったことでございますので、その後、向こうからこれは正式なあれであるという返答もございましたので、この問題は解決したわけであります。決して田さんを非難したわけじゃございませんので、御了解を願いたいと存じます。
  50. 戸叶武

    戸叶武君 田さんを非難したんではないという受けとめ方を私はしますが、それならば耿ヒョウさんを軽率であるという形で非難したことになるんですか。相手あっての物の言い方ですから、その辺ははっきりさせてください。
  51. 園田直

    国務大臣園田直君) これは外務省としては正式に、ああいうことであるならば、こちらにも偶発事件であるという回答をお願いしたい、実態を調査してということであったわけでありますから、その事実の調査はどうなったのか、それから偶然であるなら偶然であるという意見を外交チャネルを通じてわれわれにも話してもらいたいということを向こうへも正式に話をしているわけでありまして、個人に対する非難ではございません。
  52. 戸叶武

    戸叶武君 これは新聞では、いつ、どこで、だれが、何をというこのポイントを外さないようにして、できるだけ正確に人の言ったことは伝えることになっているのが新聞の生命でありますが、したがって、私は一種類の新聞でなく、すべての新聞を全部切り抜いてここに持っておりますが、新聞がそれでは間違って伝えたのですか。その表現はいまの弁解とは大分違うものがあるんで、私は中江さんを責めようとするんじゃないが、今後やはり官僚は官僚としての言動を慎まないと、えらいところにぶつかって、そんなつもりで投げたんじゃない、池に石を投げたんだというのが赤ん坊の頭へなんかぶつかってこぶを出させたりして後で困る場合もありますが、そういう新聞に対して、間違ったやつは、一々やはりあれは私の言った真意じゃないというような取り消しを求めるぐらいなあれがなければ、これからの外交は間違いだらけになる危険性がありますが、その辺は情報化時代といいますが、新聞とあなたたちの言った言葉とのかみ合わなかったところをどういうふうに今後はやっていきますか。
  53. 園田直

    国務大臣園田直君) 新聞の報道も、田さんであるとか中国の副総理を非難した言葉は使ってないわけでありまして、外交の慣例として国交正常化をした後であり、外交チャネルを通じてこの件の折衝をしているときであるから、こちらにも外交チャネルを通じてお話しを願いたい、こちらになかったことが遺憾である、こういう趣旨のことでございます。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 ここで私は中国の弁解をするんじゃないですけれども日中正常化に向かって共同声明がなされてから五年間も、自民党の政府並びに自民党は、この共同声明に沿うてどういう政府姿勢なりあるいは政党の姿勢を整えてきたんでしょうか。本当にこれで近代政党と言えるかどうか、私たちは他党に干渉するのではないですが、これでは国民が離れざるを得ない一つ事態を政党内部から醸成しつつあるんじゃないでしょうか。  私は、領土問題で国民をあおって戦争に導いていくことは三流の政治家でもできると思います。しかし、武力手段をとらないというふうな基本的な国家基本法ができているにもかかわらず、それを国会の公の論議でそれに侵犯するような言動を平気でやり、政府・与党みずから韓国や台湾を押し歩いている始末というものはアナーキーな状態です。戦争前夜におけるナチスやヒトラーのやったことと同じような危険なものに世界の人々が受け取らないとは限らないと思うんです。この危機感というものが私は今後においても意外な出来事を生まないとも限らないと思うのであります。  満州事変から中国戦争への道、統帥権というような非民主的なものが薩長軍閥によって明治憲法の中にあったことと、日本の体質がブレーキのきかなくなっていたことと、日清戦争や日露戦争のような廉潔な武人がなくて、立身出世にこだわったこと、今日の政党も、政権をとって大臣の禄でもはもうというろくでなしが多くなってきたから、そこにやたらに総理大臣でもかえて揺すぶり専門の政治家が出てきた。こういうところに、私は、満州事変からシナ事変に入ったときよりもさらに深刻な政治的な不安な状態がいま生まれてきたと思うんです。これがありますので、私たちは、本当にいまの福田内閣というものが憲法を守ろうとしているのか、この危機を利用して再軍備を強化しようとしているのか。  ソ連あたりでは、アメリカ、中国日本が結んでソ連を包囲しようとしているんじゃないかという疑心暗鬼が、やはり自分たちもどっか胸に手を当てると無理なことをしているから、よけいそういう心配事が出てきていると思うんです。私たちはこれは日本のためにも、中国のためにも、ソ連のためにも、世界平和のためにもならぬことで、日本を再び戦争に駆り立ててめちゃめちゃにしてしまったら、そんなつもりじゃなかったと言うけれども、物の見えないやつが現象面だけにとらわれて国家百年の計を誤ったときには、これはごめんねじゃ済まなくなってしまう。私は、そういう文明史観と哲学を持たない民族は滅びるという、この教訓を骨身にしみて私たちは体得しているものでありますが、危機は相手にあるんじゃなくて、内に禍乱はまかれているんであって、やはり私はいまの政府のあり方、それから政党のあり方、われわれ社会党でも反省しますが、自民党の中にも本当に志士仁人があって、いまこんなことであって亡国の政党として後で糾弾されないようになるだろうかどうかという憂いを持つような人が出てこないと、本当に私は大変なことになると思うんです。  私は危機感をやたらに乱打するのではないのですけれども、いまやらないと戦争が始まってからでは、ジャン・ジョレスが戦争反対を叫びながら殺されていってもせきとめることができなかった。ヒトラーのようなつまらぬ気違いでも、民心を把握して民族をあのような悲劇の中へたたき込んでしまう。日本でも東条のようなつまらないやつでもいばり散らしていく。なっちゃってからじゃどうにもならない。私は福田さんなんかまじめな人だと思うが、まじめな人ほど手に負えないんです、これは正直の上にばかというのがつきますから。私はやはり小心者が政治をやっていると、あっちこっちちょろちょろよろけてしまって、やるべきところに果敢な処理かできないのが——近衛が毒を仰いで死ぬぐらいならもう少し死ぬ覚悟で和平に専念すればいいが、東条だっておもちゃのピストルで自殺するぐらいならもう少し堂々と腹を切ればいいが、みんな後の祭りです。私は民族の悲劇を目の当たりにじっと見詰めてきたんで、戦争中よりもいまの危なくないようなかっこうをしているいまが一番われわれ日本にとっては危ないときだと思うんです。  福田さんのそばにいて、園田さんは福田さんに殉ずるつもりだし、これも忠犬ハチ公じゃないが非常に名を残すかもしれませんけれども、国のためならやはり、反逆しろと言うのじゃないけれども、顔の逆なでぐらいやってやるぐらいな土性骨がなければやはり本当の私は政治家にはなれないと思うんでありまして、どうぞそこいらのところを踏まえて、少しもっと国民から多少人気というわけじゃないけれども、こうも福田内閣が下落しては気の毒で見ちゃいられないので、春雨とともに花は散っていくが、福田内閣もまた春とともに散るというので一抹の風情があるかもしれません。しかし、これは私は容易なことじゃないと思いますが、あなたはその点少しも心配してないんですか、心配して眠れないんですか、これは私ら真剣になって聞いているんですよ、あなたをひやかしているんじゃないんだ。  私は、今度の事件が起きなければ、まずよその国から、日本人は聡明だからすぐばかにしてしまうけれども中国なんかずいぶんがまん強いところだからあんまり福田さんの顔を逆なでするようなことはないと思ったが、いんぎん無礼で実際は逆なでしているのが現状ですよ、ばかにしているんですよ、ばかにされているんですよ。ばかにするときはばかにしたとは言わないんですから、みんな大まじめであれは偶然の出来事だなんて言っていれば言葉で済むんですから。外交はもっと魂でやらなければ相手にばかにされるんです。どうですか、これは中江さんの方が答弁するにはいいかな(笑声)。
  55. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私ども事務当局は、そのときの内閣あるいは大臣がどなたでございましても、アジア局といたしましては、日本のアジア外交を誤ることなきようにということで一貫した姿勢で努力しておるわけでございます。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 名答弁です、役人としては。やはり政治家に答弁を求めなければだめだということになってしまいます。ごめんどうでも、園田さん、このことはきわめて重要ですから、政治家が答えてください。
  57. 園田直

    国務大臣園田直君) すべての問題がそうでありますが、特に対中国の問題、外交問題はすべて節度があり、自主性があり、しかし、また一方には時期というものがありまして、時期を失すると、やることなすこと食い違いになるわけでありまして、そういう点を勘案しつつ、総理の意思に従い、場合によっては総理に真剣に意見具申をして努力を続けていきたいと考えております。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 それが通じないときはどうするんですか。
  59. 園田直

    国務大臣園田直君) 真に真剣に誠意を持って意見具申をし、総理の指示に従って努力をするならば、必ずや通するものと存じます。
  60. 戸叶武

    戸叶武君 新聞なんかまことしやかに、新聞でもいろいろありますけれども、どうも総理園田さんとには距離ができて、やっぱり園田も松野と同じく福田さんにあきれて、福田さんのところを涙をふるってお別れ、さよならということになるんだと言うけれども、そうなると福田さんはひとりぼっちになっちゃうから気の毒だと思うんですが、その点は園田さんどう思っていますか。
  61. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の性格戸叶さんよく御存じだと思いますが、私は有為転変によって人から去ったり、裏切ったりすることができないたちでありまして、栄枯盛衰ともに誠意を尽くして福田総理のもとで自分の責任を果たす所存でございます。  先般も、京都へ一緒に旅行いたしまして、車中でいろいろお話を承り、私も意見を申し上げて、完全に意見は一致しております。総理は私のことを目に入れても痛くないと、こういうことでございました(笑声)。
  62. 戸叶武

    戸叶武君 これは田舎で目の中にブヨが飛び込んだような話で、口に入れても痛くないと言うけれども、あなたはまさか目玉の中に入っちゃうほどの小物じゃないし、総理日本の国とどっちが大切だと思いますか。禅問答じゃないけれども、この問題は重要な問題ですよ、やっぱり。
  63. 園田直

    国務大臣園田直君) 国が大事であり、国のために尽くす総理は次に大事でございます。
  64. 戸叶武

    戸叶武君 うまいことを言うなあ(笑声)、そう言われるとわかんなくなっちゃう。困ったなあ、やはり園田さんあたりは野人で置きたかったんで、答弁が余りうまくなっちゃうと官僚と同じになっちゃうからつまんなくなっちゃうんで、本来の面目はどっかへ消えたような感じがしちゃうんで、これも時の運命だからしようがないけれども。  私は、そこで一転して、もう時間がありませんから、西ドイツの方でも大統領が来て、やはり日本とドイツあたりがアメリカの方に歯に衣を着せないで真実を訴えないと、アメリカさんはなかなかずうたいがソ連と同じくでかくて動きがとれなくなっているんじゃないかというので、この覇権両大国を、どうやって巨人を揺すぶろうかという半分は相談に来たんだと思いますが、その辺の大統領のねらいは、単なる親善ですか、やはりアメリカと日本と西ドイツとは共同の責任を持たなけりゃならないという使命感の上に立って来られたんですか、どっちでした。
  65. 園田直

    国務大臣園田直君) きょう総理と会われ、昨日は総理と大統領の会談があり、本日は皆様方の御協力を得て、外務大臣と長時間話したい、あすの朝も話したい、お昼も話したい、こういうことでありました。今度の訪日は新しい時代をつくる日独の責任を十分話したいという意欲に燃えていると拝察をいたします。  私は、きのう、外務大臣と何を話そうかということでありましたから、そろばんのことも大事であるが、とかく近ごろ日独の関係はそろばんだけの話になっておるから、これから先の未来について人類がどのようにやって生きていくか、こういう基本的な問題で突っ込んで話しましょうと、こういうことを話しておるところでございます。
  66. 戸叶武

    戸叶武君 ソ連にもアメリカにも、ずうたいはでかいが、急所があります。それは両国とも世界から孤立させられるんじゃないかという恐怖感が国にみなぎっていると思います。われわれは余り持ちつけないものを持つと間違いを起こしやすいが、余り持ち過ぎてもこれは持てるものの悩みがあるんです。やはりいまのアメリカ、いまのソ連には歯に衣を着せないで、いまのような態度をソ連でも米国でもとっていると、覇権主義だなんだというようなことで、言葉でどうこう言うんじゃないけれども、世界からアメリカとソ連は鼻つまみになって、日本もそういう傾向があるんで注意しているが、孤立してしまいますよということを西ドイツや日本なりが、多少、おもらい専門の国でない国が物を申すと——やはり私はソ連にも米国にもイデオロギーを別として聡明な見識人はいると思います。だれともつき合えなくなってしまうようないやらしい国というふうに、どこでも鼻つままれちゃったら、これはたまらぬというので、おのが姿のあさましさを振り返って、私は、ソ連でもアメリカでも大急ぎで変わってこざるを得ないところまで来たんじゃないかと思います。  原爆戦争が不可能だということはアメリカとソ連、持てる国が一番わかっている。わかっているから自分のところではやらないで、ほかの国をおだてて、うまくトラブルを起こさせているようなことをやっているが、世界が利口になってだんだんこれも飽きてきた、その手には乗らなくなってきた。そういう点で、二十世紀への一つのばく進というものは、いままでソ連やアメリカが考えていたのとは違う方向に発展途上国も皆動いてきたんです。イスラエルだってアラブだってそんなばかなことばかり、いつまでもイデオロギーや宗教の亡霊に支配されて破滅への道は行かなくなりつつあると私は思うんです。そういう意味で、いま園田さんが言ったように、私らはそこに重点を置いて、物の問題だけをさすってないで、西ドイツや日本戦争に敗れながらも臥薪嘗胆して立ち上がってきたこの民族の気魄の中には、再び戦争を起こすというばかげたヒトラーのような気違いじみた考えじゃなくて、世界とともに、人類とともに平和と繁栄を保つ責任をわれわれは罪滅ぼしのためにもやらなけりゃならない。そのぐらいのことを西ドイツの大統領と日本の福田さんあたりが考えついて、もっと勇気を持つようになれば、福田さんの顔なんかもっと若返って、明治三十八歳だなんて言わなくても済むような私ははつらつたるものになると思うんです。  きょうは、みんなが質問の時間をなるたけ短くして、園田さんも解放しよう。ついでに、やっぱり中国にわざわざ行ったんだから田さんの言うことも聞いたり、聞かれたりしようじゃないかというところで、大分参議院の方では、外交問題は政党政派やイデオロギーを乗り越えて、国のためにいま何が必要であるかという問題に一つの対話を進めていこうかというところまできょうの理事会も進んできたんで、よくここまで変わったもんだなあと思って私はびっくりしたんですが、こういうふうに政党の我利我利亡者と思われているやつまで少しずつ変わりつつあるんだから、政府あたりもこの辺で少し変わらないと、こっ恥ずかしくて昼日中歩けなくなってしまいますから、どうぞそういう意味において、やはりわれわれの言うことよりはドイツあたりの人の言うことを聞いた方が多少新味が出てくるでしょうから、そういうところでよく人の話も聞き、自分の主体性も述べて、話を聞くだけは上手で、いますぐやるやると言って少しも立たぬ、腹も立てるわけにもいかぬというような、こういうえたいのわからないような政治は政治でないんですから、そこいらをよく踏まえて、自分みずからの姿勢ができなくて人の方ばかりのぞいているのは、のぞきというのには限界があるんですから、やっぱりそういうのぞきの外交、のぞきの政治をやめていくんだ、今度はおれたちがやるんだ、責任を持つんだ、そういうふうな一つの気合いのかかる外交を発動してもらいたい。  今度の国連総会には福田さんの鼻になわをつけても引っ張っていくだけの勇気を持って、国際舞台において日本が世界に何を訴えるか、日本国民もわからなけりゃ世界もわからないというようなとぼけた外交では今後の外交はできませんから、そういうふうに私は——この前も園田さんはあくまでもやると言ったが、どうもだんだん話を聞いてみると、園田さんがやるんじゃなくて福田さんがやるんだから、なかなかこいつはむずかしいなという一抹の心配がありますけれども、そこいらはこの間京都へ行く途中でも言い含めましたか。
  67. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、本日の日独外相会談に格別の御好意をいただきましたことを、委員長初め、委員各位に心から御礼を申し上げます。  昨日、大統領のあいさつの中で、いま戸叶さんがおっしゃいましたことを具体的に彼は述べております。かつてドイツは力をもって秩序をつくろうとして自国をつぶしたばかりでなく、世界各国に大変迷惑をかけた。したがって、ドイツは、今後平和を確立をし、平和の中に世界各国の繁栄に貢献するという道を必死に進むつもりである。日本も幸い憲法で交戦権を放棄され、平和憲法を持っておられるが、全くドイツと立場を一緒にしておるから、日独が新しい道を開こうじゃないか、こういう趣旨のあいさつがございました。全くこれはいまおっしゃったと同等の意見であり、不肖私もそのようなことで日独が新しい関係を結ぶことはきわめて大事である、国連等においても協力してやるべきであると考えておりますので、委員長以下各位の御好意がむだにならないよう十分納得のいくように向こうの話も聞き、私の意見も申し述べて、やりたいと思います。  なお、国連総会においては、軍縮総会、国連総会両場面をかりまして、委員会で長時間承りました皆さん方の御意見を参考にしつつ、日本の向かうべき道、外交の基本方針、軍縮その他に対する態度等を明確に世界に訴えることはここでお約束をいたすものでございます。ありがとうございます。
  68. 戸叶武

    戸叶武君 ありがとうって、もう出ていっちゃうつもりなんですか、まだそうはなりませんよ。  やはり園田さんのことはわかっているけれども、いまのわからないのは福田さんと自民党の愛すべき人々が青嵐会なんかにはあるけれども、気立てはおもしろいが、何を考えて何をしているのか、やっぱりあんまりおつむを使ったことがない人たちのやり方はわからぬという声が、私じゃないんですが、国民の中からずいぶん出ています。  ドイツは戦争の悲劇を生かして使っているんです。あのアデナウアーさんにしても、あるいはブラントさんにしても、われわれは占領政策によって非常に学ぶところがあった。われわれは社会主義を信ずるけれども、民主的なデモクラティックな社会主義というよりも、さらにリベラルな柔軟な形においてみんなして一つの新しい時代を模索するような、そういうものを私たちは民主的な国家によって育った人々から学び取った。これがドイツにおける新しいリベラルな民主的な政治体制を持たなきゃならないという考えの基点になったんだ。前のようにワイマール憲法の観念だけはりっぱであったけれども、いまに見ろ、復活して一あわ吹かせてやるからと、いまの日本の右翼の頭の弱い方が考えているような考え方がドイツには横溢しておったのですが、そんなばかな考え方を持っている人は右にも左にも気違い以外には余りなくなってきたのがドイツの現状だと思うのです。  気違いはどこにもありますから、赤軍みたいのはやっぱり西ドイツにもありますけれども、大勢というものはそうなっているんですが、日本においては政治の中枢を占めている人たちがこういうふうにおつむが弱くって、そうして、変なところで力んでいるんでは、ナチスの化け物みたいなのが出てきた日には日本は収拾がつかない状態が出てくるんじゃないか。みんな愛国を口にするけれども、ひいきのひき倒しで、ヒトラーのような化け物が出てきたら、日本はもう、いま何か古い歌なんか流している程度ならいいけれども、収拾がつかない状態になるんじゃないか。しかも、それを野放しにして、何でも野放しがはやっていますが、これは困った状態が日本にはいま醸し出されていると思いますけれども、そういう意味で、私は、日本の政治と教育、医療、この退廃が日本の一番のガンだと思っていますけれども、そういう点でまず外交の面からでも気合いをかけて、本当の国民の愛国の姿勢というものを引き上げてこなければ、国を守るというのはどこにあるのか。  国際的なお互いの信用というものを把握しないで、どうして——条約だけをつくっても、日ソ軍事友好同盟条約はあっても発動しろと言っても発動ができないように、さびついてしまったのを見ればわかるように、一片の条約や何かでは民族の心を支配することはできないと思うのです。それにもかかわらず、つまんない、とにかく頭が悪い法理論者が考えているような形式的な法理論でもって、中ソ友好同盟条約廃棄をどうのなんて全く、シルレルが何と言いましたか、気違い扱いしたじゃありませんか。こういう古い法律学者や政治学者というものは横歩きのカニのようなものである、何にも真実を把握しないでへ理屈だけを述べているに過ぎない、役に立たないということを言って、当時の政治学者や法律学者を罵倒しておりましたが、いまは最も現実的な具体的な実証的な回答を政治の世界でも求めているのですから、この日中平和友好条約というものは、その点においては、本当にみんなが相手を余り傷つけないで、そうしていたわりながら、これをつくっていこうという配慮を持ってきたんだけれども、タイミングは合わないし、やるんだかやらないんだかわからない、信用していいのか信用して悪いのかわからない。この不信義というものがもろもろの不祥事を今後発生していくんです。もう少し待てと言えば、あすになればよけい今度はこんがらかってきちゃうんです。そういう点において、私は、政治は生きているんだ、タイミングを外してしまっちゃだめなんだ、気の抜けたビールを飲んでいるんじゃ花見もできぬ。こういう形において、死んだ政治をやっているんなら別だけれども、生きた政治をやるのには最もダイナミックにひらめきが躍動しなければだめなんだということを痛切に感じているんです。  政治哲学のない、文明史観を持たない政治屋に政治をゆだねることは国民は御免だ、こういう国民の声が私の耳の中には、予言者になったせいか、耳鳴りがして聞こえてくるんです。これをやっぱり一つの時の為政者に伝えようという声もくるんです。どうぞそういう意味において、私は比較的感度の強い園田さんに文句を言うのが一番通ずる道だ、最短距離の道だと思って物を言っているんです。  このドイツと日本中国、この辺がしっかりすればフランスも乗ってくるでしょう。ソ連と米国は余り荷物を持ち過ぎちゃって、くたびれちゃって体の動きができないようになっているんですから、血のめぐりの悪いやつはそっとしておいて、そうして血のめぐりの幾らかいいやつの方から新しい歴史をつくる一つの方向づけをやらなけりゃ歴史の方向というものは方向づけはできないんで、われわれが覇権反対と言うのは別にソ連やアメリカをたたけと言うのではない。余りばか力だけ持って力んでいるやつはマンモスのように滅びていけ、それを世界の声としてアメリカやソ連の耳に入るように大きな声でどなるやつがいないと、聞こえずじまいで死んでしまっちゃ気の毒だから、われわれはそういうことを本当に遠慮なしに叫ばなけれりゃならないと思って、この覇権問題のようなものは意地悪で、中国に引きずられてやるとかなんとかじゃない。一人よりは二人の方がいいし、やっぱり数が多ければ多いほど効き目があると思うから、世論の声、四海の声にして、間の抜けたような国民の中にも活気を入れるような一つの方向づけをやろうというのがいまのわれわれの外交の方向づけなんです。  どうぞそういう意味において、きょうは、ほかに通貨の問題にも触れていきたいと思いましたが、すべて時間が通過しましたから、これで終わることにいたします。
  69. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時五分開会   〔理事鳩山威一郎委員長席に着く〕
  70. 鳩山威一郎

    ○理事(鳩山威一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  国際情勢等に関する調査を議題といたします。  この際、委員長から申し上げますが、けさほどの理事会におきまして、本日は、本調査のうち当面する問題につきまして一部自由討議で調査を進めることに各党の意見が一致しております。  これより暫時自由討議とし、委員各位の御討議をお願いいたします。御意見のある方はお述べ願います。
  71. 秦野章

    秦野章君 田さんね、どうも御苦労さん。  尖閣列島の問題でね、ちょうどあなたが向こうへ行っておられて、耿ヒョウ副首相に会われて、そのときに偶然の出来事だという向こうの意見が開陳された。そのいきさつというかな、つまり向こうから先に言い出されたんですか、こちらから聞かれたわけですか、その辺のところをちょっと。
  72. 田英夫

    ○田英夫君 これは私の方から触れたわけです。今回こういう事件が起きたのは、日中平和友好条約が大詰めの段階を迎えている中で大変遺憾である、こういうことを言いましたら、それに対して、いきなり結論を先に出されて、それは偶然である、今回の事件は全く偶然である、こういう言い方をされて、さらに繰り返して、これは中国側が計画的にやったことでもなければ、故意にやったことでもありません、そういうことを非常に強調されましたね。
  73. 秦野章

    秦野章君 その後、また、こう領海侵犯みたいな事件が起きたんだけれども、そういうまた新たな事情をこう見た場合、やっぱり耿ヒョウ副首相の意見というのはそのとおり受け取っていいのかな、うまく統制ができないのかな、どうなんだろう。
  74. 田英夫

    ○田英夫君 ここは私は中国の内部の問題に立ち入って推測をすべき立場じゃありませんし、この辺は慎重に考えた方がいいと思うんですけれども耿ヒョウ副首相が言われた中で、いまのような計画的ではないということを言われた後、こういうことを言っておられるのですね。  ちょっと私メモをしてあるんですが、きのう午前中、ということは十四日の午前中ですね、十四日の午前中、日本側に回答したように、具体的状況はこちらでも調べてみる必要があります、こういうことを言っておられて、中国側としても——きのうあたりから一部ちょっと問題になっているようですけれども外交ルートを外していろいろやりとりするのはおかしいじゃないかという御意見もあるようですけれども、私は中国側中国側なりにやはり正式の外交ルートで調べますということを現地の堂ノ脇公使の申し入れに対して王暁雲さんが答えているわけですね、そのことを指しているわけです。で私どもに対しては、その上に立って、国家指導者という立場で一つの責任あることを言われた。しかし、それもまだ調べてみるということが前提になっているわけです。ですから、その調べの結果というものはやはり外交ルートに乗ってちゃんと返ってくるということを期待していいんじゃないかと私は思いますがね。
  75. 秦野章

    秦野章君 それで、尖閣列島のあれが日本領土だと、われわれ固有領土だということを言ってきているのだが、領土という言葉というかな、領土に触れての発言はどうですか。
  76. 田英夫

    ○田英夫君 あります。この問題については、この島は中国中国領土主張し、日本日本領土主張している、したがって、この問題は一時触れないでおくということで合意をしているはずです、それから、この島は地図で見ると大変小さな島だ、小さいことをいまさら出して論議するより解決を将来に任せた方がいいと思います、こういう発言が続いています。で、さらに、こんな小さな島のことよりあの辺では台湾というもっと大きな島の問題さえ解決していないのです、これは中国の立場からすると、あるいは日本に対して絡めてもそうですけれども。そういうことを指摘しているわけでね、この辺のところは非常に冷静に私どもも受けとめる必要があるという印象ですね。
  77. 秦野章

    秦野章君 そのいまの合意してあるという合意は、日中で合意してあるという意味なのか、向こうの中で、首脳部間の合意なのか。それは日本の側では共同声明では触れてないと言うけれども、触れてないというのは合意なのかどうかよくわからぬが、合意でもないんだろうと思うんだが、それはどっちですか。
  78. 田英夫

    ○田英夫君 それは日中の間でと考えるのが自然だと思いますね。これは耿ヒョウさんの話ではありませんが、中国側の他の指導層と話し合ったときに、この問題については田中内閣時代の日中国交正常化の折に日中間で話し合いによって合意が行われているんだというふうに向こうは受け取っているようですね。その辺はひとつ政府の皆さんに確かめなければいけないところだと思うんです。
  79. 秦野章

    秦野章君 そこらは午前中もいろいろ質疑応答があったんだけれども政府の理解は、要するに共同声明では触れなかった、それは触れないのは当然こっちの領土なんだからということで、必ずしも合意ということでもないようにわれわれには理解できる、これは後の問題だけれども領土発言は結局それだけですな。
  80. 田英夫

    ○田英夫君 そうですね、領土に直接結びついた発言はそういうことです。
  81. 秦野章

    秦野章君 それで、田さんのあなたの感触で、将来解決していくんだと、いまとにかく触れないでおいといてというその解決、将来の問題にするんだというだけで、将来どういうふうにとか、それはもう全然わからないわけだね。
  82. 田英夫

    ○田英夫君 それは非常に領土の問題というのは微妙な、またそれぞれの国にとって譲り得ない問題だと思いますね。日本の周辺でも同様のケースがありますし、中国の場合は中国周辺で幾つかそういう紛争の火種は残っているわけで、いま一番大事なことは日中平和友好条約を締結するということで、それができた上で、将来は、信頼関係がまず築かれれば将来解決の糸口は見つかるかもしれないという含みだと私は理解しているんですがね。
  83. 秦野章

    秦野章君 そうすると、領土問題とは別に行こうというのが向こう側の考えだね。
  84. 田英夫

    ○田英夫君 はい。
  85. 秦野章

    秦野章君 もう時間が来ちゃったので、それじゃ一つだけ、あなたの感触でそういうことを——偶然だということがあって、また起きて、まだあの辺にいるらしいんだけれども、偶然が二度三度重なってくるというようなこと、まあいま調べているからわからないと言えばわからないけれども、あなたの感触で、何とかこれうまく領海侵犯のようなことはさせずにいるという感触ですか。
  86. 田英夫

    ○田英夫君 私は、やはり中国側が偶然だったという言葉を事実で示してほしいと思いますね。ですから、漁船がもう侵犯しないと。しかし、中国側侵犯とは思っていないということもまたこれは私ども頭の中に入れておかなくちゃいかぬことは重要なことだと思いますね。
  87. 秦野章

    秦野章君 向こう側はね。
  88. 田英夫

    ○田英夫君 向こう側は向こう側として。しかし、お互いに触れないでおこうという問題なんですから、向こうもそこへ漁船が出てくるというようなことはしないと。しかし、同時に、日本側も、非常に重要なことは、だから、いままでとあそこに条件を変えるような実際上の措置を、いろいろ与党の中でも御論議があるようですけれども、あそこに何か建造物をつくるとか、人間が住むとかいうようなことをここでやったり、あるいは日中平和友好条約の締結のための前提条件として尖閣列島問題が日本領有ということで解決しなければだめだというようなことをいまここで持ち出すということは、やはりいままでの状態から逸脱してしまうことになりますから、向こう漁船が出ていかないことを求めるとともに、やっぱりわれわれの方も良識を持っていままでの状態に戻るということが必要なんじゃないかという気がしましたね。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 田さんの送別の宴が北京飯店で十六日の夜、中日友好協会の廖承志会長、楚図南、超安博両顧問、孫平化秘書長を招いて答札の宴が開かれたということですが、楚図南氏は、一九六〇年、浅沼君が殺される前の安保闘争のカンパニアの団長として北京に行ったときにも、私たちの共同声明に調印した有力者として、郭沫若副総理と廖承志、楚図南氏らがあったんですが、その後、一回、楚図南氏も数年前に日本に来ておりますけれども、楚図南氏にしろ、あるいは耿ヒョウさん、特に耿ヒョウさんはいま重要な立場にあるんですが、そういう人があなたと会ったのは、私は非常な意義があったと思うんです。  それは簡単に言うならば、どうも福田内閣を不信任という言葉を表立っては言わないが、田さんならばわかってくれるだろうという、一つの惻隠の情をくむことのできる人に本当の心を訴えようというのが中国外交の中においては非常に大切なんです。言外の意味というものがあるんで、あれだけの行動があらわれたのは、表から言葉をぶっつけないで、何か突然ああいうことが起きたように言っているが、その言外の意味は、韓国竹島を占拠しても日本は何も言ってない、それから今度の尖閣列島に対してしばしばあの領海を台湾でもって侵犯していても何とも言ってない、行動も大して起こさない、だが日本中国の間には、日中間で言外の意味を秘めて、この問題はなかなかむずかしいものだから触れておくまいという一応約束というよりはお互いに相通ずるものがあったのにもかかわらず、台湾は、蒋介石も中国一つだと言い、人民共和国政府一つだと言って、中国が二つだと言っているわけじゃないが、このプライドの強い中国において、日中間における平和友好条約を結ぶ前提条件として一つ中国を認めて、日本はアメリカと同様に台湾は中国の一部だということをしていながら、福田内閣は一番大切なデリケートな領土問題なり国の主権のあり方に対して、あるところまで了解済みと思うのに、最終段階になってきて、公然と自民党の相当な長老であるとか何だとか顔役がちょろちょろ台湾に出向いたり、恐らくは蒋介石の後における蒋経国の擁立の問題も内面にあるデモンストレーションと思われるような、蒋介石の三周忌とか何とかと口実はつくっているが、そういうことを公然とやっている。  これで言外の意味でわかったでしょうが、とにかく、竹島の二の舞を台湾でやられたんじゃかなわないと言ってしまうと言葉に角が立つけれども、言わないで、何とか国民のやはりはやる気持ちというものは、偶然ああいうことをしでかしてしまったんだとも言い切れないが、鋭敏なあんたならそれをくみ取ってくれるんじゃないかという意味で、言外の意味を含めての問答、禅問答のような感じがするんだが、どうです、あんた、その問答の中に含まれているのは。
  90. 田英夫

    ○田英夫君 まあ私は、禅問答といいますか、そういう柄でもないかもしれませんが、戸叶さんが言われたような空気は私も十分に感じております。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 言外の意味を福田内閣もくみ取る、少し禅寺へ行って頭を冷やしていらっしゃい。
  92. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 このたび大変御苦労さまでした。  もういろいろな角度から今回の不幸な事件について議論が沸騰しているわけですが、いまもお話を伺っておりますと、故意か計画的かという問題が将来どういう解決への糸口になるのかどうなのかという感じがするんですが、偶発という問題は、これは常識的に考えましてわれわれとしてもちょっと判断しかねる、大変遺憾なこと。で二回、三回の侵犯もさることながら、百数十隻と大挙して、しかも船籍がみんなそれぞれ違う。これはもうどう見ても、何かこう意図があるんではないだろうか。  帰国直前、しかも、全体の会談の五分の一ぐらいしかこの話についてお触れにならなかったということで、そう詰めたお話もできなかったろうというふうに思うんですが、この偶発それ自体をとやかく余り逆なですることもいかがかと思うんですけれども、印象として、向こうは本当にそういうことを故意ではなかったんだというふうにわれわれ受けとめていいものかどうなのかですね。
  93. 田英夫

    ○田英夫君 これは中国のいわば最高責任者、特に外交問題について言えば最高責任者と言える耿ヒョウ総理がああいう発言をされたんですから、これは私どもやはり尊重しなければならないと思いますね。  推測することは私にもできることで、特にジャーナリスティックに推測することはもともと私は大いにやりがちな方かもしれませんが、そういうことをいまここでこの問題についてやるべきでないというふうに思いまして、特にこの問題で騒ぎ立てて喜ぶのは、一体、だれか。きょうも一部の新聞の社説にその意味のことも指摘してありまして、大変私は拝読をする気持ちで読みましたけれども、このことが非常に大事じゃないかと思います。大きなことの前にこれを騒ぎ立てて、一体、日中平和友好条約を結ぼうという方向ならば、不必要なジャーナリスティックな推測をやってこの問題をいろいろほじくり返してみるということは、少なくとも、いまのわれわれの立場ではやりたくないと思っているわけです。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 われわれが一番危惧いたしますのは、申すまでもなく、いまようやく煮詰まってもう一息というところで日中条約の交渉再開の道が開けるかどうか。先ほどお話を伺っておりますと、大変小さな島で、共同声明の際にも、これは一応将来話し合いで解決しようというふうに今回も耿ヒョウさんがおっしゃっておられるということであれば、やはり明確に日中条約は日中条約として促進すべきだ、あくまでもやはり中国の基本的な態度というものは変わらない、こういうふうに受けとめてよろしいんでしょうか。
  95. 田英夫

    ○田英夫君 まさにそのとおりだと思います。  これは耿ヒョウさんとの話し合いの中で、日中平和友好条約の問題にも直接触れた部分がたくさんあるわけですけれども、たとえば公明党の矢野代表団の皆さんに廖承志さんから示された四項目の中国側の態度、この問題も具体的に触れましていろいろやりとりをしたんですが、あれにつけ加えることは全くありません、あれが中国側のすべての態度を集約してまとめたものです、こういうような発言がありまして、この事件日中平和友好条約の問題とを絡めて、日中平和友好条約の締結を引き延ばす、おくらせるということになってはならないと思います。現に一部にそういう動きがあると、こう指摘を向こうもされているわけですが、そこのところが非常に渋谷さんも指摘されたとおり、本来の大きな問題にひとつ両方とも冷静になって立ち返ろうじゃないかということがいま一番われわれにとって重要なことじゃないでしょうか。
  96. 田渕哲也

    田渕哲也君 新聞等で田さんと耿ヒョウさんの会談の模様は大体承知はしておりますけれども、先ほども田さんからのお話がありましたように、尖閣列島の領有問題は日中間では意見の対立があるけれども触れないようにしようという合意があったと言われました。それから国会の予算委員会における日中条約の審議の経過を見ましても、政府の方も現在尖閣列島はわが国が有効支配をしておるから、あえてこちらからこの領有問題は持ち出さない、こういう態度で答弁を貫いてきたわけです。ところが、この時点へ来てこの領海侵犯問題が起こると、この問題の処理の仕方によっては領有問題まで発展せざるを得なくなる性格を持っておると思うんですね。だから、私は、中国側がこれは偶然の事件だとして処理をされるというのは一つの賢明なやり方だと思うんです。  ただ、その場合に、あくまで中国側もこの領有権問題をここで主張されますと、触れないという合意にちょっと背くことになるので、だから私はこれは非常に困った問題だと思います。それから、日中条約がせっかく締結されようというときに来て、こういう問題が起こると、日中条約反対派の主張というものに何か材料を与えたかっこうになる、だから日本情勢を見ても日中条約の締結についてはむしろこれはプラスにならないという判断ができるわけです。これは田さんと耿さんの会談の感触で、中国側はあくまで日中条約は早期に締結したい、こういう意向は変わらないように伺っておるわけですけれども、そうすると今回の事件は非常に困った事件だという感じは耿さんの方も持っておられるわけですか。
  97. 田英夫

    ○田英夫君 これは口へ出して、あるいは態度へ出して困ったということを言われる立場といいますか、そういう環境ではないということを私どもも推察しないといけないんじゃないかという気がするんです。つまり、日本はあそこは領土だと主張しておりますね、中国側主張しているわけです。その主張からすると、中国側の方はたとえば今度日本領海侵犯して申しわけありませんでしたというようなことは、これはもちろん毛頭言えないことであるということ、これはやはり理解しておかないといけないんで、同時に、日本側も、この問題を不問に付すということでずっときたことを崩すようなことはお互いに一切やるべきではない。  残念ながら、与党の一部に、いわゆる日中平和友好条約締結の条件というような形で十二項目の要求を出されていると聞くんですが、その中に尖閣列島の問題の解決ということが入っている。このことはやはり不問に付すということできた政府の態度に反するわけですから、与党である自民党の中でそういうことを主張されるということは私は適切ではないんじゃないか。他党のことに私干渉するつもりはありませんけれども、大きな胎動を見たときに、一人の日本人として、国の利益に反するようなことをここで主張されることはぜひやめていただいて、同時に、中国側漁船がここに入ってくるというようなことはひとつやめてほしいというのが私の率直な、中国側と接触していろいろ話した結果のいまの気持ちですね。
  98. 田渕哲也

    田渕哲也君 もう一言だけ。  与党の中でそういう意見があったということは私も承知しております。ただ、日本の国は言論の自由の国ですから、どの党でだれがどういう発言をしようと、それはやむを得ないと思うんですね。問題は、政府の方針なり姿勢というものだと思うんです。  それと、今度の問題が起きた以上は、これの解決が従来のところに戻るような解決なら私はいいと思うんですけれども、たとえば日本がそれを不問に付すと、今度は中国側の領有の主張の立場が強くなったということになるわけですね。だから、本当にもとのような状態に戻し得る方法でないとまずいのではないか。この事件によってどちらかが領有権主張し得る有利な立場に立つということはまずいんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  99. 田英夫

    ○田英夫君 それはそのとおりだと思います。いままでのお互いに触れないできたという状態にお互いが理解をして戻す。  ただ、現実の問題として、いま先ほど私が冒頭申し上げたように、私どもがたまたま行っておりましたから中国側も私に対してそういう態度を示されましたけれども、もともと外交ルートを通じて話し合うという姿勢は貫いておられるというふうに私は理解しております。私に——さっき外務大臣おられませんでしたから、重ねて申し上げますけれども、私に対する答えの中で、きのう、つまり十四日に日本政府にお答えしたとおり、調べてみますと、こういうことの姿勢の上に立っているわけですから、その調べの結果がまた外交ルートを通じて戻ってくる、そういうところをひとつきっかけにして、いま田渕さんが言われたような方向に、片っ方が有利になるというようなことでない状態の中で話し合いが円満にいくように、私は中国側も当然そういう方向にいこうとすると期待しております。
  100. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。
  101. 鳩山威一郎

    ○理事(鳩山威一郎君) 本問題に関する本日の自由討議はこの程度といたします。  引き続き、本調査についての質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 田英夫

    ○田英夫君 私、質問という時間をちょうだいいたしましたけれども、たまたまいま自由討議で委員の皆さんとお話し合いをする機会を与えていただきまして、参議院の討議らしいこういう時間をつくっていただいたことを大変感謝いたしますが、同時に、そういう精神からも、ここで、いまの時点で政府側にいわゆる追及するというような形で御質問をすることは私は適当でないと思いますし、避けたいと思います。むしろこの状態を、いまも自由討議の中で申し上げたように、一日も早く脱却して正常な姿へ戻らなければならない。そのために外務大臣としてどういうふうなお気持ちを持っておられるか、そういうことをひとつまず伺っておきたいと思います。
  103. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えをする前に、田議員に一言了承を得たいことがあるわけでありますが、実は、中国を訪問されて、副総理とも会談されて、そのときの会談の内容はいち早くニュースで承ったわけであります。それからややおくれまして、こちらから、北京の方であるいは東京で、田議員に言われたことは事実であるかどうか、それは公式的なものであるかどうかということを追認をし、向こうからも公式であると、こういうことを言われたわけであります。われわれとしては、田議員が訪中をされて会談をされて、その会談の内容で本件に関する見当がだんだんついてきたことを非常に参考にして感謝しておるわけでございます。  ただ、それまでのいきさつで、日中国交正常化をやっておって、外交チャネルの接衝もやっておることであるから、同時に外交チャネルを通じても正式に御折衝願わなかったことは遺憾であるという申し入れをしたわけでありますが、それがあたかも田議員の会談に遺憾であるかのごとき印象を与えましたことは深くおわびをしておきます。感謝をしたいと思います。  本件につきましては、いま御承知のとおりのようなことで、冷静に沈着にこちらは見守っておるところでございます。午前中の答弁でも申し上げたわけでありますが、土曜日の午前に政府首脳者会議を開きまして、本件に関することを次の三項に大体決めたわけであります。  一つは、わが国の領土であるということ、それから一つには、本件解決のために全力を挙げて外交交渉を行うこと、三つには、日中友好条約の締結については共同声明の線に従って全力を尽すという方針に変わりはない、こういうことを決めたわけでございます。  それに基いて、まず、外務省は事実を確認すると同時に、いろいろ折衝を公式、非公式にやっているわけでありますが、その後、一時領海から全部退去して、再びまた昨晩あたりから出たり入ったり、ただし、今度は領海すれすれのところを操業しているようで、海上保安庁に対してもいままでのような険しい態度ではなくてやっているわけでありますが、いずれにいたしましても、政府としては、この問題を見守りつつ折衝を続け、原状にまず第一に復したい。そこで、それによって、もしここで、中国の方で日本中国の立場が違うと、その立場を明確にしようということであれば、こちらも一時日中友好条約問題はおいて、この問題で四つに組んでいかなければならぬと思いますが、いままでのいきさつからいって、原状に復し、そして大局的立場からお互いに処理しようということになれば、これはこれでまた処理をしながら、一方、日中友好条約をなるべく早く進めたい、こういう考え方でおるわけでございます。
  104. 田英夫

    ○田英夫君 いまの政府の三つの基本的な態度というものには私自身も全く同感であります。ぜひそういう線を貫いて、一日も早く正常な状態に戻していただきたい。  中国側のこの問題についての大局的な立場に立った態度というものも同時に期待しなければならないのでございますが、そこでひとつ、余り時間もありませんので、若干意見になりますけれども申し上げて、また同僚委員の皆さんにもぜひ御理解をいただきたいと思うんですが、今回改めて中国の人たちと話し合って一人の日本人として感じますことは、いま日中平和友好条約が締結できるかどうかというところに、非常に重要なところへ来ておるわけですが、確かに日中国交正常化ということで戦争状態というものは一応形の上で終わっているわけでありますけれども、この平和友好条約を結ぶことによって最終的にそれが固まる、こういう段階であると思います。にもかかわらず、実は日本人のもう半分以上があの戦争を知らない世代になっているという、こういう時点で、改めてやはり過去の中国に対する誤った経緯というものを若い皆さんにも理解してほしいという、そういうことを含めて、それがなければ、形の上で日中友好条約を結んでも、中国との間に本当の意味平和友好というものが確立できるとは思えないわけであります。特に、今回のような事件が起きまして、これを若い世代の皆さんが誤って理解されるというようなことになれば、幾ら条約が形の上でできても、これは本当の意味はないと思います。ですから、政府としても、そういうひとつ日中平和友好条約を結ぶといういわば原点に立ち返る、われわれもお互いにそこのところに思いをいたしてみるということが非常に重要じゃないかということを感じたわけです。  で、これは改めて別の場で政府に御提案したいと思っているんですけれども、いま中国では四つの近代化というスローガンを掲げて建設に取り組んでいるわけですが、そういう中で賠償を免除されたという、そういう中国の好意ということも改めてここで考えて、賠償を支払わなくて済むのだということに甘えていていいかどうか、こういうことも含めて考えて、この四つの近代化に取り組んでいる中国の人たちに、その建設に協力をするということを通じて、日本国民の反省の気持ちを表現することはできないものだろうか。  たとえば四つの近代化のうちの一つは科学技術の近代化ということですけれども、こういう問題はまさに平和な問題であるし、日本が非常に世界的にすぐれた科学技術を持っているということから考えると、日中平和友好条約がいよいよ締結できるというような非常に望ましい状態になったときには、その上に立って日中科学技術協力協定というようなものを締結して、その気持ちをあらわすというようなことも一つの方法ではないだろうか。これは自由討議ということの雰囲気も含めまして、こういう席で外務大臣にお話をして、それに対する御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  105. 園田直

    国務大臣園田直君) 日中共同声明は、この前の不幸な事件によって、わが国は自分の国をつぶしたばかりでなく、世界各国に大変迷惑をかけ、特にお隣の中国の人民には大変な御迷惑をかけたことは事実でございまして、それから出発して共同声明が出たわけでありまして、その共同声明の線に従って日中友好条約を結ぶということは、当然、これはお互いに相助け合い、お互いに貢献し合うということから具体的に話が進んでいくのは当然でありまして、友好条約締結後、もろもろの問題がありますれば、当然、そういう問題については助け合い、そして貢献し合うということが大事であるということはお説のとおりであると考えております。
  106. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、質問の順序などを御配慮いただいたことを感謝いたしまして、質問を終わります。
  107. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回の突発的な、また予測しがたい不幸な事件、非常に残念だったと思うんであります。今日までこの問題についてはいろんな角度から国内世論の背景をもとにしつつ議論が展開されてまいりました。国情の違い、また立場の違いというようなこともございましょうし、その理解をこれからどう求めていくのか、どこでその収拾の糸口を一体つかまなければならないのか、こうしたことが当面する大きな課題になるであろうというふうに思うわけでございます。  先ほどのみならず、何回か御答弁を伺っておりますと、福田さん御自身もおっしゃっておりますけれども、もうしばらく事態の推移というものを見詰めながら、沈着にして冷静に対応していきたいという大変抽象的な言い回しですけれども、そういうことも一応決意の一端として述べられているわけですけれども、果たしてこれから収拾への日本政府としての働きかけ、いまお話があった点について触れてみましても、まず最大の条件は原状に回復することである、これは当然だと思うんですね。そういった可能性というものが十分考えられるかどうか。そしてまた正常な交渉への糸口というものが相当先にいくのか、また近い将来において十分考えられるのかというようなことがやっぱりわれわれとして大変不安でもありますし、その辺はいろんなルートを通じて今日まで分析もされている当局といたしまして、いま現在、どういう判断にお立ちになっていらっしゃるか、まず最初に総合的にそうした面についてお尋ねをしたいと思います。
  108. 園田直

    国務大臣園田直君) お答えをする前に、本日、十二時三十分の海上保安庁からの連絡を御報告を申し上げます。  本十八日、七時以降、侵犯船は六隻から十隻であり、十一時現在では魚釣島西端の北西方九・五から〇・二海里付近海域において六隻が漂泊中である。天候曇り、北西の風四メートル、波浪三、視程良好、こういう報告でございます。  いま及び今後どのようなことをやるか、まず事動当局からお答えをいたします。
  109. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは外交チャネルでもって私どもが受けております北京における中国側説明は、御承知のように、これから事実関係調査しますというのが十四日現在の説明であったわけです。ただいままで私どもはその調査の結果を知らせていただけるのを待っているという状況でありまして、これはできるだけ早く知りたい。その過程で先ほど来話の出ております田議員に対する先方の耿ヒョウ副首相の説明というのがございまして、これが偶発の出来事である。そしてこれは大局的に平和友好条約とは関係のない問題として処理したい、こういう意向が伝えられて、それを日曜日でございましたけれども、一昨日、東京でも確認したということでありますので、現在のところは、事務当局では、偶発の出来事であるということと、いま調査をしているということとの二つの説明を受けておるわけでございますので、それが一体どういうふうに調査報告を受ける段階で説明されるのかということにすべての関心を集めておるわけでございまして、そのことが折に触れ中国側が言っておりますように、この問題について国交正常化のとき以来触れないでおくんだという従来の態度に変わりがないと言っておりますそれが引き続き変わりがないのか、先ほど大臣が言われましたように。あるいはまた、今日この問題を論ずるつもりはないということも言っておりまして、それが引き続きそうであるのかということも含めまして、いましばらく成り行きを見て、そしてその上で慎重に、しかし迅速に判断してまいりたい、こういうのが現状でございます。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 時間的に長引けば長引くほど、もうすでに竹島の例これあり、決して好ましい方向へ展開はしないだろうということを私どもやっぱり案じないわけにはまいりません。確かに正式な外交ルートを通じての接触というものに大変御努力もされておられると思うんです。その点を十分配慮しながら、近い将来においてやはりこの突破口を開かなきゃならぬという日本政府としても判断がおありになるだろうという感じがいたします。  すでに中江さんは中国大使館の肖参事官とも会って、中国側の真意というものをすでにただしておられるわけですね。ただし、その段階においては、まだ私どもが十分納得いくような話までいっていないんではあるまいかというふうにも感じます。ただ向こうからの回答というものを待っていいのかという場合もございましょう。なれば、佐藤・韓念竜外務次官との会談というものを通じてまずこの問題の処理が先決であるというようなことになるのか。また日本政府として、あくまでもやはり尖閣列島という問題、原状回復ということが大前提であるという、その意向というものに基本方針どおり変わりがないし、その問題が明確にならない限りは日中条約交渉再開への段取りはできない、こういうふうにわれわれは受けとめるべきなのか、その辺いろいろこれからのスケジュールが当然考えられているだろうと思うんですね。その辺差し支えない範囲で確認をしておきたいというふうに思いますね。
  111. 園田直

    国務大臣園田直君) 本件の処理は、第一は、いま尖閣列島周辺に集結をし、一部が領海付近を出たり入ったりしているという現状から、直ちに退去してもらって、そして正当な姿に返ってもらうということが第一であります。第二番目は、この問題をどういうふうに処理しようとされておるのか、あるいは日本とどういうふうに話し合ってこの問題を片づけるのか。この場でこの領土問題を解決しようとなさるのか、それとも、これは大局的見地から偶然の出来事であるから原状を回復して、いままでどおりこの件については話はしないということになるのか、それによって今後の段取りも違うわけでありますけれども、本日も、それぞれ公式、非公式に向こう折衝をしておるわけでございます。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほどのフリートーキングの中でも田さんが述べられた中で、耿ヒョウさんとの話の中には、いままでも伝えられておるとおりでありますけれども尖閣列島そのものは大変小さな島であると、日中共同声明の線を踏まえた話をされているわけですね。将来これはまた話し合いでもって解決しようと、これはあくまでも日中平和条約交渉再開、締結への問題とは明確に切り離して取り組むべきであろうということを述べられたそうであります。そうなりますと、その辺に日本側中国側で受けとめている受け方というものが大分すれ違っている面がありはしないかという印象を受けるわけです。  したがいまして、再度申し上げておきたいことは、あくまでも原状回復ということが大前提であって、それでなければ日中条約というものにはもちろん触れられないのか。もしそうだとすれば、やはりトップ会談を通じて、先ほど来から申されておりますように、四つに組んでこの処理というものを考えていかなければならないのか。これもこれからの推移というものを見ない限りは早急にいまここでああだこうだという結論は出しかねるだろうというふうには思います。しかし、一応、いろんな事態の推移というもの、社会主義体制の中国側のいままでの経過というものを十分いろんな角度から検討もされ分析もされておりますね。それで野党の方々が行かれる。そしていわゆる正式な外交ルートを飛び越えたそういうものが展開されて、それが公式の中国考え方であるというようなことが定着している側面も実はあるわけです。  ですから、その辺をどういうふうに整理をしながら、今後、国対国という正常な形における外交ルートというものが開けるものかどうなのか。大分やはり事象が違うように思うんですね、そうした面を十分踏まえながら、ときには園田さん御自身が実情というものを確認する上からもその突破口を開かなきゃならぬという決意をお持ちになっていらっしゃるのかどうなのか、その辺あわせて含めてお聞かせをいただきたいというふうに思うわけです。
  113. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国の側の言い分はわかったわけでありますが、その言い分が実行されるかどうかということが一つの問題でありまして、偶然の出来事であるならば、この日中友好条約の締結に障害になるような現状をそのまま放任されるはずはない、こう思うわけでありますが、このまま数日間も過ごすということになれば、また新たな方向に変わってくるわけであります。したがいまして、ただいま公式、非公式にこれについての調査の結果、並びに退去されるように折衝をしているわけであります。その結果によってどうこうということでありますが、本件処理のためにはだんだんレベルを上げながら交渉しているわけでありますから、まだいまの段階で大臣が直接乗り出してこのことで話をする時期ではないと考えております。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 園田さん御自身、いま中国側も事実関係について調査をされているという表明が繰り返しなされておるわけですが、先ほど冒頭に私が申し上げたように、こうした事態というものは長くなればなるほど収拾が困難といういろんな事例がございますし、いつごろまでにあることが望ましいという期待をお持ちになっていらっしゃいますか。
  115. 園田直

    国務大臣園田直君) なるべく早く現状がもとに返ることを望んでいるわけであります。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 こうした領土問題は、午前中以来、単に尖閣列島に限らず、竹島にしても北方領土にしても、あるいは中ソ間における領土問題、一応解決済みというふうになっているそうでありますが、その他にも大変困難ないろんな問題が伏線としてあるようでありまして、それももうきわめて短い期間に解決がなされたという例は皆無に等しいということを考えますと、もしこれが日中条約締結へ解決をしておかなければならない課題であるということになりますと、大変な阻害要素になっていきはしまいかというふうに思えてならないわけであります。  どういう出方をするか、出方待ちということがいま一番望ましいことだろうと思いますし、また同時に、有田外務次官が昨日の記者会見で言われた非常に常識的な大変穏当なああいう判断というものは私はやっぱり望ましいと思いますしね、いたずらに抵抗を与えるような、事を荒立てるというような方向へ持っていっていただきたくは絶対ない。けれども、やはり日本には日本の立場がありますし、それが貫けるのかどうなのかという面については大変厳しい情勢であろうということは否めないだろう。ただ、従来のようないろんな領土問題とはちょっとやはり異質のそういう感じもしないではないし、一日も早くこの解決が望ましいということは言うまでもございません。  どうですか、率直に、いままでいろんな報告も聞かれ、また情報もお聞きになって、そして園田さんとしては、こうあるべきだろうというような、いまいろんな考え方を整理されながらまとめておられるんではないだろうかと思いますが、これはもう全く友好裏に、しかも穏便に解決が図られ、そして条約締結への再交渉というそうした窓口が開かれると、こういうふうにごらんになっておられますか。
  117. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃられました外務省の有田次官の新聞記者クラブに対する発言は私も全く妥当なものであると思い、慎重に冷静に感情に走らず、これを見守っておるわけであります。  問題は、現場尖閣列島周辺の中国漁船の行動がどのようになるか、その時期はいつごろかということが非常に微妙に響いてくるわけでございまして、その行動と中国側が言うことと一致をしなければ、われわれは将来に対する見通しを持てないわけでございますので、これがなるべく早く解決をされて、中国側の行動と言葉と一致している、そしてこちらと話し合って、事後の処置を話し合い、友好条約締結に支障なく進めるよう希望しながら見守っているところでございます。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題がきっかけとなったと言ってもいいくらいに、これもしばしば繰り返されている問題ではありますけれども、ようやく尖閣諸島に対する実効的な主権の及ぶ支配ということが表面化してきたようでございます。言うなれば大変手おくれといいますかね、おくればせでもそういうことに気がついたというのが多少でもまだ救いがあるのかもしれません。  もちろん、もし領土問題が話し合われる、その前提にそうしたようなことが具体的に移されるような方向でいまこれから取り組まれようとされておるのか。あるいは、いたずらに火種をまたつくるみたいなことになってもまずいんじゃないか、いろいろそういうわれわれの考え方の中にも行きつ戻りつする、そういうようなことがあるわけでございます。果たしてそうした魚釣島を中心とした地域に建造物であるとかというようなものを中心とした、そういう実効ある方法というものが具体的にいまもう考えられているのか、将来の希望としてそういうふうにしたいといま考えられているのか、その辺はいかがでございましょうか。
  119. 園田直

    国務大臣園田直君) 実効的支配というものを実績を積むことば、これは論理としては当然であろうと思いますけれども、でき得れば両方ともこれは話し合いでいきたいという現在、それをいまどうこうするということはむしろこちらが口実を相手に与えることでございますから、これは慎重にやるべきだと考えております。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回の件につきましては、大変忍耐強く対応していただかなければならない側面があろうかと思いますし、いずれにせよ、政府としていい方向へぜひ道を開いていただけるように善処を特に要望しておきたいと思うわけであります。  この問題が出ますと、必ずと言っていいくらい竹島北方領土ということになるんですが、とりわけこの竹島については、もう私もこの委員会で何回か発言をしておりますけれども、やはりそうしたような趨勢というものはいろんなふうに連動する可能性というものを十分に秘めているということは疑う余地がないと思うんですね。この件につきましても、いままでの御答弁をずっと整理して思い起こしてみますと、努力いたします、検討いたしますと、果たしてその努力がどういうふうになされたのか、具体的にどういう検討がなされたのかということがその後においては何にも報告がなされていないわけです。われわれの質問を待たない限りは、そういったような報告がなされなくてもいいという習慣はやはり変えなければなりませんでしょうし、こうしたことが将来発展途上国に対する経済協力の面でも言わずもがな、いろんな面で新しい一つの阻害条件というものが形成されてこないとも限らないということになりますと、日本の置かれた立場というものは一体何だと、アジアの孤児じゃないかという大変手厳しいそういう評価をなされる評論家の方もいらっしゃいます。事実上、やはりそういうような方向へ、よほど腹を据えて取り組みませんと、なりかねないということを憂慮せざるを得ないというふうに思うわけでございます。  その後、せっかく話が出たついでと言っては失礼ではございますけれども竹島についても見通しがあるのかないのか、この機会に若干触れて確認をしておきたいというふうに思うわけです。
  121. 中江要介

    政府委員中江要介君) もし御質問の趣旨が、竹島が本来の姿、つまり日本領土として日本の管轄権下に入るという具体的な見通しありやという御質問ですと、正直言って、ございません。  この問題は、御承知のように、日韓正常化の前から問題になっておりまして、正常化のときにも大問題になりまして、政府として片時も忘れてないことは事実なんでございますけれども他方、そうかといって、有効な手段、方法というものがあるかということになりますと、ただ、この島を何が何でも取り戻せればそれでいいという問題でなくて、大きな日韓関係全体の中の一つの懸案でございますので、政府としてもいろいろの角度から検討してまいって、毎回御答弁いたしましても、それが不十分、不満足ということでおしかりをちょうだいしておりますが、最近では、外務大臣の御答弁がかつてございましたように、もうそうはいっても、いつまでもほうっておくわけにもまいらないし、韓国もだんだん経済的にも発展してまいりましたし、日韓関係でももっと率直にあらゆる問題が話し合える仲になってくれば、やがてこの問題も話し合いによって解決するという時期が来る準備をしておかなきゃならないだろうという感じもございまして、この秋に予定されております日韓定期閣僚会議ででも正式の議題として取り上げることを韓国側に持ち出してみるかということをいま考えているという程度でございます。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにいま明確にお述べになったと思うんですね。そういう既成事実がつくられてしまいますと、にっちもさっちもいかない。こういったことを将来に思いをいたしますときに、海底資源の開発の問題もございましょう、経済水域の問題もございましょう、一体、日本はどういう方向を目指していったらいいのかという大変深刻な事態が、こう周囲を海に阻まれているとはいうものの大変なショックを、また国全体の方向を誤らせることになりはしまいかというふうに思えてならないわけですね。  そうした最近の国際情勢の非常に厳しい移り変わりの中で、やはりいまおっしゃったように、日韓会談が持たれるその機会に、決して私は遠慮をする必要はないと思うんです。あくまでも主張主張として、その結論が出るまでこれを貫き通すという方向というものが絶えず持続されなければならないというふうに思うんですが、その点は、園田さん、いかがでしょうか、恐らく同意見だろうと私は思うんですが。
  123. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりであると考えております。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題につきましては、また次の機会にでも改めて事態の推移を考えつつお尋ねをしてまいりたいというふうに思うわけでございます。  さて、残された時間もわずかでございますが、今月の末から来月の七日にかけて訪米される御予定と伺っております。その前に、いまもう時々刻々に日中間の問題も、あるいは日ソ関係につきましても、漁業交渉の成果というものがどういうふうにあらわれるか、と同時に、その協定締結という方向へいくであろう、大変目まぐるしく情勢の変化というものが恐らくこれから連休なんていうものは考えずに五月の初めまで、あるいは五月の国会が幕を閉じるその瞬間まで次から次へいろんなことが起こりかねない、そういう趨勢ではあるまいかというふうに私は判断するわけです。そうしたことを背景として考えた場合に、やはり最高責任者として外務大臣日本におとどまりになって、機敏にそれに対処をされることが望ましいんではないだろうかというふうに思うんですけれども、その辺はいかがでございますか。
  125. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理訪米の重要性にかんがみて、外務大臣としては総理に同行することに計画をしているわけでございますが、ワシントンでは私はバンス国務長官と個別に会談する予定を決めておりまして、同長官との間で首脳会談を補完する形で種々の意見交換を行いたいと考えておるわけであります。いま御指摘のとおり、いろいろ問題があるわけでありますが、こういう際には、むしろ外務大臣総理が一緒の場所におることがきわめて大事でありまして、問題は判断でございますから、東京と現地との問の連絡は緊密にしながら、国務に遺漏なきことを期したいと考えておるわけでございます。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん、随行されることは、いまお答えになったように、総理を補完されるという役割りの上から考えれば、それは必要でございましょう。それだけに今回の日米会談というものが非常に重要性を帯びている。ところが、いままで本会議等においても、福田さんの御答弁を伺っておりますと、まあ一年に一遍ぐらいは友好親善のきずなを強める意味からも会って話をするぐらいのことはという、大変楽な気持ちでおっしゃったのでしょうけれども、実際は違うと思うのですね。  円高ドル安の問題もございましょう、今回の日中関係の問題もございましょう、日ソ関係もございましょう、あるいは対ECとの関係もございましょう。いろいろいま日本がどうしても解決を迫られている問題というのは山積していることは事実です。恐らくどれもこれも軽視できない重要課題であります。特に円高ドル安という問題が基軸になるだろうと思うのですけれども、いま申し上げたようなことが今回の会談の主たる議題になるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  127. 園田直

    国務大臣園田直君) おっしゃるとおりでございまして、今度の日米会談は、二国間の問題もなかなか厳しいものがございますけれども、世界経済のあり方、それからアジア情勢、中東情勢など国際政治、経済全般にわたって率直に話し合うべき時期だと考えておりますが、なおまた、いま発言のありました国際通貨問題等についても、これは当然日米両国が保護主義の防遏と世界経済の安定的拡大にいかに貢献するかとの観点からも重大な議題として話し合うべきことであると思い、だんだんとその議題等を詰めておるところでございます。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今回、一つの区切りとしてカーター大統領に会うことは時期的には大変好ましいことではないか。ただ、いまお述べになったそのことをもう一遍考え直してみた場合に、特にいま日本が、これだけは何としてもアメリカに要望もしなければならないし、また実現の方向へぜひとも話し合うべき問題である、優劣をつけるわけではございませんけれども、やはり会談の内容の中にはおのずから重要課題というものが当然出てくるだろうと思うのです。特にと言った場合に、何を中心にして今回話し合いの中身にされるいま御予定でございますか。
  129. 園田直

    国務大臣園田直君) いま申し上げましたとおり、日米の間でだんだんと議題を詰めておるところでございますけれども、しかし、何にいたしましても一番大事な問題は、自由主義側経済の第一であるアメリカが世界経済、世界情勢の中でいかなる役割りを果たすべきであるか、いかなる任務を尽くすべきであるか、こういう点が一番大事なところだと考えております。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 恐らく、近く新しい日ソ漁業協定というものがまた結ばれる段階になるだろうと思うのですが、樺太のマスの漁獲を認めてくれないかという当方の主張というものが大変厳しく受けとめられている。それのみならず、五月、六月を過ぎますと漁期を過ぎますので、いま非常に重要な時期に差しかかっているだろう。と同時に、日米加の漁業協定が議題にされてくる日も近くあるわけですね。漁業というものは、言うまでもなく、日本にとっては大変大事な政治課題でもございますし、その面まで幅広く話し合いの中に入っているというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  131. 園田直

    国務大臣園田直君) 日米二国間の問題の中で、そういう問題も当然話されるべきだと思います。
  132. 立木洋

    ○立木洋君 質問に入ります前に、きょうの午前中の委員会で戸叶議員が何回か共産党のことについてお触れになりましたが、共産党のことについてお触れになられることはもちろん結構でございますけれども、間違った御理解で触れていただかないように一言申し上げておきたいと思います。  それでは質問いたします。  尖閣列島領海に対する侵犯問題が問題になっておりますが、これは中国側の意向がどうであったのかということはまだ明確な回答がないので、いまの時点では明らかではないという状態になっておると思うのですね。しかしいずれにしろ、領海侵犯されたということは事実ですし、これは主権の問題としてあいまいにしておくことはできないだろうと思うのです。いままでの議論の中でも、もとの時点に立ち返る、あるいはいわゆる原点に立ち返るというふうなお話がありますので、その立ち返るべきだと言われておるいわゆる原点なるもの、もとの時点なるものがどういうものなのか、その内容について若干お尋ねしておきたいと思うのです。  きのうも問題になりましたけれども国交正常化の交渉が行われていた時期ですね、その経過あるいはその後の今回の領海侵犯問題が起こるまでの間に、日本政府としては、公式に中国側に尖閣初島に対する考え方を説明したことがおありになるのかどうなのか、この事実関係を最初にお尋ねしておきたいと思います。
  133. 中江要介

    政府委員中江要介君) もとの状態がどうかという点について一言だけ申し上げておきますと、国交正常化が行われました一九七二年、そしてまた、その年が沖繩返還が実現しまして尖閣諸島に対するわが方の管轄権が有効に戻った年でもあるわけですが、その年からいままで、尖閣諸島の周辺の領海への不法入域というものは、私ども承知しておりますところでは全部で四百五十三隻あったわけでございますが、その四百五十三隻の中には、今回の事件が起きますまでには中国漁船は一隻も入ってなかったということが注目されなければならぬと思います。したがいまして、もとの状態に戻るということはどういうことかというと、そういう状態に戻るべきであるというのがまず最初の御質問に対する説明です。  第二番目でございますが、国交正常化のときに触れなかったということは、再三、この問題について双方が触れることなしに正常化したということは申し上げましたが、その後、中国で、あるいは出版物なりあるいは中国の掲げております地図なりに、わが方の尖閣諸島に対する領有権を否定して、これに中国領有権があるという前提でそういうものが出ましたときに、日本政府として日本政府の立場を明確に先方に伝えたケースといたしまして、一つは、一昨年の六月に、「中国画報」という雑誌の四月号に記事が出ておりまして、その中で中国が自国領という主張をしております、これに対しまして在北京のわが方大使館から先方外交部に七月十日に申し入れをしたというケースがございます。それからまた、それよりも少し前になりますけれども、一九七四年の十月ごろに、ある場所に示されておりました地図に尖閣諸島中国領として記載してあるのがございまして、これに対しまして、その年の十月五日に在北京大使館で中国側に、それは日本主張ではない、日本主張はこうであるということを明確にしたということがございます。それから先ほど申し上げました「中国画報」についての申し入れがございまして、そのときに、王暁雲アジア局次長でございますが、先方は、今回と同じようにこの島の問題をしばらくおいておこうということを説明していたという経緯もございます。それが、国交正常化後、日本中国に対して日本の立場を説明した具体的な事例でございます。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 その後の経過は、問題が起こった時点でそれぞれこちら側からの見解は表明したということは理解できますけれども、つまり、国交正常化の時点で、これはこちらから言わないのが当然であったという点についてはやはり考える余地があったんではないだろうか。もちろん、それは交渉の内容として問題を提起するという意味ではなくて、国交正常化に当たってこの問題についての日本側考え方を述べておくということも外交のあり方としては私はあり得ることだと思うんですけれども、その点はどうでしょう。
  135. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私の承知しておりますところでは、正常化の際には、中国側がこの問題には触れたくないという、そういう意向を示したというふうに聞いております。で、いまの立木先生の言われるように、向こうは触れたくないのにこちらが触れておくことが適当であったかどうかという点は、これはわが方の固有領土について相手といいますか、いずれかの国が触れたくないと言うのにわざわざ触れる必要はないということになろうかと、こういう考え方でございます。
  136. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、きのうの質問でも出されておりましたけれども中国側のある要人が触れないということで合意があったという趣旨の問題で、あなたに質問したとき、あなたはその発言に対して理解に苦しむという表現をされましたが、これはどういう意味ですか。
  137. 中江要介

    政府委員中江要介君) あの場合の御質問が、日本中国との間に国交正常化の際にこれをたな上げにするという合意があったはずだという孫平化氏の発言についてどうかということでございましたので、まずたな上げという考え方がないということが一つと、そういう合意とか了解とか、そういうはっきりした意思の合致というようなものはなかったということを申し上げたわけで、当時、日本からは取り上げるまでもない問題だし、先方はこの問題を取り上げたくない、こういうことであったということで、したがって、そのまま正常化が行われ、いままできている、こういうことを申し上げたわけであります。
  138. 立木洋

    ○立木洋君 外交交渉の常識からいって、それはちょっと苦しい答弁だと私は思うんですよ。  大臣にその点お尋ねしておきますけれども、交渉の状況の中で、中国側は、この問題については触れないでおきたいという趣旨を述べられた。日本側としては、それについて触れる必要がないので、それで触れないということで、こちら側も述べなかったという態度をとったということは、つまり、それについて同意をしたというある意味の意思表示なんですね。つまり、それについて同意できないということであるならば、何らかの反論をするなり、あるいは条件を述べておく必要があるだろうと思うんです。これは私たちの領土でございますけれども、今回おたくの方で触れたくないというのであるならば、そういうことについても結構でありますだとか、という何らかの条件をつけるかっけないかということになると、この場合には相手が触れないでおきたいというふうに述べたのに対して、それについて同意する態度をとったということは、これは俗に言われている外交交渉の上では暗黙の了解ということじゃないかと思いますが、その点は大臣どうですか。
  139. 園田直

    国務大臣園田直君) 現実の問題としては、相手が言わなかったからこちらも言わなかったと、こういうことが事実のようでございます。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 いや、相手が言わなかったんじゃない、触れないでおこうというふうに述べたというわけです、相手は。そしてこちら側は、それに対して反対の態度をとらないで、われわれとしても述べる必要がないので述べなかったということになると、これは暗黙の了解ということじゃないですか。
  141. 園田直

    国務大臣園田直君) これはアジア局長が言いましたとおりに、この領土はわが国の領土であることは明確であるし、現有権を考慮しているわけでありますから、向こうが言わなければその方が結構でございますから、こちらも言わなかったと、こういうふうに解釈をしております。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 中江さん、それは暗黙の了解と理解していいですね。
  143. 中江要介

    政府委員中江要介君) 暗黙の了解という言葉の問題を議論することは、私、本意でないんですけれども、事実が示しているところは双方が取り上げなかったということで、それがすべてであるというふうに御了解いただきたいと思うんです。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 まあそれはそれ以上申さないことにしましょう。大体、私の言っておる意味大臣中江さんもわかっておられるだろうと思うんで、それ以上言いませんけれども中国側が、その時点で、触れないでおきたいという意味をどういう意味中国側が言われたのか、あるいはそれを日本側はその時点でどういうふうに受け取ったのと、その中身についてちょっと、触れないでおこうということの中身をちょっとお尋ねしておきたい。
  145. 中江要介

    政府委員中江要介君) 中国側がどういう意図であったかということは推察することは避けたいと思いますが、日本側はどう思っていたかといいますと、先ほど来中しておりますように、これは固有領土であるし、現に有効に支配しているのであるから、いずれの国からも取り上げられるはすのないものであるという自信に満ちた態度でありましたので、中国側が触れないのは当然のことである、こういう感じであったと思います。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、日中国交正常化が行われる時点で、私は先ほども申し上げましたけれども、やはり少なくともそれを交渉して解決しなければならないという問題として問題を提起するということではなしに、いわゆる日本側考え方は一応述べておくと、おたくの方では触れたくない、では触れたくないと言われる点についてはそれは別に異存はないが、しかし、この点については昨年あなた方の方で中国の領有であるという主張があるのだから、この際、日本側考え方についても一言触れておきたいというふうに私は述べておいた方がよかっただろうと思うんです、その後の経緯を考えてみても。  つまり、これは外交交渉の上で、政治的にあるいは法的にも日本がその領有権主張する優位な立場を持つかどうかという観点から考えてみれば、今日こういう事態が起こらなければ、それはそれなりにその後話し合いでうまく解決いくということになれば、これは問題ないですよ。しかし、こういう事態が起こった時点になって考えてみるならば、やはり最初にそういうことについてははっきりと述べておくことも私は必要なことではなかったかというふうに思いますが、その点について大臣のお考えをお聞きしておきたいんですが。
  147. 園田直

    国務大臣園田直君) 現実はいま申し上げたとおりでございまして、したがって、いまおっしゃったように、こういう事件がなければ非常にスムーズにいった問題でありますが、こういう事件が起きると、改めてこの問題を先に取り上げるか後でよいかという問題が起こってくるわけであります。まことに遺憾であると考えております。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 それで、今回、これが偶発事件であったという中国側説明があったわけですが、そのほか中国側の要人のお話では、魚群を追っかけてたまたま入ったんではないだろうかとか、あるいは漁期が長期にわたるものではないからこれは一時的な現象であるだとかいうふうな、いろいろなことが新聞で報道されているわけですね。  問題は、先ほど言いましたように、いままで一回もそういう尖閣列島領海内に中国漁船が入ったことがないと言われる事態に復するということであるならば、少なくとも今後こういうふうなことが再び起こらないということはやっぱりはっきりさしておく必要があるだろうと思うんですね。いまのような状態のままであれば、やはり今後こうした事態が、魚群を追っかけてまた入りました、いや偶発でございましたと、また言われても何も言えない事態になると、これは日本の国民感情としては、一体、どうなっているんだということにならざるを得ないわけですから、ですから、そういう問題については明確に、こういうことが再び起こらないという保証だけははっきりさしておくことが私は必要だろうと思うんです。  もちろん、領土それ自体の問題については、これは一朝一夕でなかなか解決できないでしょうし、これは長期の展望を持って十分に話し合いをして処理しなければならない。もちろん私たちもこれは日本の領有であるということはもう明確に主張しているわけですから、その点では政府考え方と違う点はございませんけれども、しかし、こういうことが再び起こらないという点について最小限の保証だけは明確にしておくということが私は必要だろうと思いますが、その点について、大臣、いかがでしょうか。   〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕
  149. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは北京におきましても、また東京におきましても、外交チャネルで中国と今回の事件について話し合っておりますときに、必ず明確にしている点はその点でございまして、日本としては、この尖閣諸島日本領土であるのであるから、その距岸十二海里の領海内で外国の漁船が操業するということは日本の法律に触れるんだということは明確にしております。  で、今回の事件が起きたからとおっしゃいましたが、今回の事件が何であるかということについていま明らかなことは、先ほど先生もおっしゃいましたように、漁船による領海侵犯があったということでありますので、これはほかの国についても、先ほど申し上げましたように、過去に四百何件あった領海侵犯が今回は中国漁船によって行われた領海侵犯であるということですので、それと同じ処理をしていく。その処理というのは、実効支配をしているのであれば、その領海の外にまず出てもらわなければ実効支配が確立されたということにならない。またこれを繰り返さないということについて念を押す。しかし、またそれが繰り返されて領海侵犯があれば、また同じようにそれは排除する。その間に、単なる漁船領海侵犯以上の問題がその中に含まれてくるのであれば、先ほど大臣も言われましたように、それはそういう角度から今度は解決しなきゃならないということになる。その辺のところがどうであるかということは、いまの段階では、これは冒頭に先生もお認めになりましたように、いまのところはまだこの事件全体についての全貌がはっきりするまでにいってないという段階でありますので、どういうことだということについてはまだ断定ができない、こういうことだと思います。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 政府の方の見解として、いわゆるたな上げはしないということが述べられておりますけれども、これは大臣どういう意味でしょうか。侵犯問題なのか、領有権問題なのか、これをどういうふうに、たな上げしないという意味ですね、少し説明していただきたいと思います。
  151. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどお答えいたしましたとおり、第一は、現在行われておる侵犯状況を速やかに退去してもらう。二番目には、二度とこういう事件が起きないようにという申し入れ。そこで、さてその次には、これが原状に復したらこの問題をどう取り扱うかという両方の了解が要るわけであります。そこで、その場合は、たな上げということではなくて、中国がいままでどおりこの問題については言わない、こういうことであれば条約を先にするか、これを後にするかということは、その後の問題で出てくることであろうと考えております。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 この問題については、大臣が繰り返し述べられておりますけれども、一方では、もちろん主権の問題ですから、これは毅然とした態度が必要でしょうし、しかも友好を促進させるという観点から言うならば、これはやはり節度も持ち慎重に対処しなければならないという面があるだろうと思うんですけれども、これはやはりいずれにしろ国民自身が十分に納得できるような形で解決されるということが最も望まれている点だと思うんですね。この点は午前中来いろいろ議論があったところですから、その点は重ねて強く述べておきたいと思うんです。  それで、防衛庁の方おいでになっていますか。——防御協力小委員会かできてから数回にわたっていままで研究協議がなされておると思うんですけれども、いままで何回行われてきたのか、あるいはどういうふうな内容が問題になっておるのか。それから作業部会が設けられておるわけですが、この作業部会が何回行われて、どういうふうなことが問題になっておるのか。それからある程度のまとめが行われて安保協議会にすでに報告が、中間的でも報告がなされたのかどうなのか。そういう事実関係とその内容の点で述べていただける点があれば述べていただきたいと思います。
  153. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 御承知のように、防衛協力小委員会は一昨年の七月の安保協議委員会で設置をされまして、その後、小委員会といたしましては、昨年の九月までに六日開かれております。そして最近半年ほど開かれてないわけですが、これは御承知のように日本側の主たるメンバーでありますアメリカ局長なりあるいは防衛庁の防衛局長お二人が国会の方に非常に拘束されますので、日本側の都合で最近は開かれてないというのが実情であります。  なお、防衛小委員会の下部機構といたしまして、作戦部会、それから情報部会、それから後方支援部会という三つの部会がございまして、それぞれ作戦機能あるいは情報関係の機能、後方支援関係の機能ということについて研究協議の作業をやるということになっております。これらの作業部会はそれぞれ違いますけれども、過去一年間ほどの間に、三カ月に一回ないし三カ月に一回開かれて作業をしておるというのが実情であります。  なお、防衛協力小委員会ができましてから、まだまとめの段階に入っておりませんので、安保協議委員会等もその後開かれておりません。以上が現状であります。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 その内容で述べられる点があったら、述べていただきたいんですが。
  155. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 内容につきましては、まだ作業部会でやっている段階でありまして、細部については差し控えさしていただきたいわけでありますが、考え方は、日米が現在やっておりますのは、日本に対して直接侵略が行われた場合、あるいはそれのおそれがある場合、そういった際に日本と米軍が整合のとれた作戦行動ができるようにということで、作戦についてあるいは情報について、その他後方支援等について、それぞれの機能に関連してどういう分担をするかとか、どうやれば整合のとれた作戦行動ができるかというものを研究しようというものであります。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 四月の十日に、アメリカ国防総省の東アジア・太平洋局長など日本部のスタッフの人々が記者会見をした席上で「「後方支援態勢とは、具体的にはミサイル、弾薬、燃料、パイロットの訓練など、総合的な兵器体系をさす」と述べると共に、すでに東京における日米防衛協力小委員会で、これら弾薬燃料などの、米軍と自衛隊の共同使用の可能性を含め、本格的な検討に入っていることを明らかにした。」というふうに新聞で報道されておりますが、これは事実でしょうか。
  157. 北村汎

    説明員(北村汎君) 先生いま御指摘の報道とは十二日付の読売新聞に掲載された記事を指していらっしゃるんだと思いますが、これは先生さっきおっしゃいましたように、十日に、米国防総省のピンクニイという太平洋局長、それからローマンという日本課長がワシントンに駐在する日本あるいはアジアの新聞記者に対して行ったブリーフィングで言ったという報道でございますが、私どもは、この報道について事実関係ないしは少し用語の点について必ずしもはっきりいたしませんと思いましたので、本人についてアメリカ大使館を通じて確かめましたところ、このブリーフィングにおいてここに書いてありますような、弾薬、燃料を含む後方支援について現在防衛協力小委員会において検討がなされているということを、これは一般的に述べたものでありまして、御指摘のように共同使用していくとか、そういうようなことは述べていないということが判明いたしました。  この共同使用という言葉自体がどういうことを意味するのかははっきりわからないんですが、もし朝鮮有事というような際のために、あらかじめ自衛隊とアメリカ軍とが弾薬とか燃料を共同で管理するというような意味で使われておるんでありましたら、そういうことは考えられないということでございます。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ、アメリカの国防総省が「日本の航空自衛隊の戦闘機がパイロットとともに、飛行中隊単位で米国内に一定期間駐留し、トレーニングを受けるという新しい方式の訓練計画について、日本側からの提案により検討を続けてきたが、原則的にはこの計画を受け入れ、実施するという基本方針を内定」したというふうに新聞で報道されておりますが、この事実関係とその内容について説明していただきたい。
  159. 西廣整輝

    説明員西廣整輝君) 現在、わが方の戦闘機のパイロットが訓練をいたします上で、たとえば超音速飛行で飛行訓練をやるといったような場合に、訓練空域が狭い、あるいは非常に洋上遠く離れておるということで十分な訓練を行って練度の維持をすることが非常に困難な状況にあるということは私どもよく自覚をしておりまして、これを改善するためにはどんな施策があるだろうかと、いろいろな検討をいたしております。その中の一つの選択肢といたしまして米国で訓練をするということも考えまして、西独が現在そういうことをやっておりますが、そういった状況調査したり、あるいは米側にいかがなものであろうかという打診程度のことは行っております。ただ、まだ米側の方から具体的な回答といいますか、打診に対する返事もございませんので、その問題につきまして、私どもの方でただいまはどういう状況にあるという内容的に申し上げる段階にございません。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間が来ましたからきょうはこれだけでとどめておきますけれども、これは私はきわめて重大な問題だと思うんですね。今国会におけるいわゆる防御論議の問題についても、政府姿勢と、いわゆる防衛力強化、事実上アメリカと韓国、さらには日本ですね、軍事的な一体化の方向を進めるというような内容の問題として私はきわめて重要だと思うんです。この点については時期を改めてもっと詳しくお尋ねし、問題の内容をただしていきたいと思いますが、きょうは時間がありませんので、ただお尋ねしただけでとどめておきます。
  161. 田渕哲也

    田渕哲也君 まず、尖閣列島の問題で二、三質問をしたいと思います。  尖閣列島日本固有領土であるということは明白であります。それにかかわらず、一九七二年田中首相の訪中のときにあいまいにしたまま国交回復をした。つまり、主張の食い違いを黙認したまま国交回復をしたわけであります。私はここに禍根があると思いますけれども、これについての大臣見解はいかがですか。
  162. 園田直

    国務大臣園田直君) 当時の日中共同声明の時期における話は先ほどからありのままに申し上げたとおりでありまして、こういう事件が起きてみると、そのときのことが一つの、やっておけばこういうことはなかったとも言えるわけでございますが、済んだことでございますので……。
  163. 田渕哲也

    田渕哲也君 先ほどからのこの問題に対する政府の立場は、現に尖閣列島有効支配しておる、だから、これについて向こうが言わなければ現状がそのまま認められるということになるわけですね。だから、あえて持ち出さなかったということでありますけれども、そうすると、今回、中国漁船領海侵犯の場合にどういう措置をとるのか。わが国の主権が行使されるということになれば、当然、領海法違反、外国人漁業規制法違反、こういうもので処理しなければならないと思います。この点はいかがですか。
  164. 中江要介

    政府委員中江要介君) これはいままで、尖閣諸島に対する施政権が沖繩返還の際に日本側に返還されまして以来、起きました不法入域あるいは不法操業、そのときに講じてまいりました措置と同じ態度で臨むということになろうかと思いますが、従来は、領海内の不法操業あるいは不法入域がございました場合には、わが方の海上保安庁巡視船その他が警告をして領域外に出てもらう。そして出て、再び公海に去った場合に、それをあえて追及して検挙して処罰したという例は何件ありましたか、正確に記憶いたしませんが、非常に限られていたというふうに承知しております。
  165. 田渕哲也

    田渕哲也君 今回の場合は、領海に入って、巡視船が警告したにかかわらず、これは無視されておる。しかも十数日にわたって領海違反を継続しておる。これについて何らの措置もしないということは、わが国は主権の行使をしていないということになるのではないか、この点はいかがですか。
  166. 中江要介

    政府委員中江要介君) したがいまして、昨日も総理が本会議でおっしゃいましたように、領海侵犯については厳正な態度で対処するということでございます。
  167. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、今回の中国漁船の行動というのは、尖閣列島の領有に関するわが国の従来の状態ですね、つまり有効支配しておる状態を妨害しておるわけです。だから、私は、この問題についてきちんとした処理をしないと尖閣列島領有に対する日中の関係というものが従来から後退するおそれがある。後退しないような措置というものはどういうものが考えられるか、いかがですか。
  168. 中江要介

    政府委員中江要介君) いまの御質問の前提のところが、わが国の実効支配に対する妨害、つまり中国領有権に基づく妨害という意図に出たものであるのか、それとも中国がすでに一部言っておりますように、偶発的な事件であるのか、その辺のところは先方は鋭意調査中ということでございますので、その結果を見て判断するということが妥当ではないか、こういうふうに考えております。
  169. 田渕哲也

    田渕哲也君 もし中国側領海から退去した場合、わが国がこれに対してそれなら黙っていた場合、これは少なくとも中国漁船が十日以上にわたって領海侵犯したのを黙認したことにならないか、この点はいかがですか。
  170. 中江要介

    政府委員中江要介君) それは従来他国の船によって不法入域してわが国の領海侵犯されたときと同じように受けとめていく問題だろうと思いますが、今回の事件について具体的にどうかということはまだ少し時期が早いんじゃないか、こういうふうに思います。
  171. 田渕哲也

    田渕哲也君 いままで、これだけ長期間にわたって巡視船の警告を無視して領海にとどまり続けた例はありますか。
  172. 中江要介

    政府委員中江要介君) これはちょっと海上保安庁の方に確かめてみませんと正確なことは申し上げられないと思います。
  173. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、せっかくこの日中友好条約の促進、締結の交渉が続けられておるわけですから、この問題がそれに対する大きな障害とならないことを望むわけです。しかし、少なくとも尖閣列島の領有の問題についてのわが国の立場を後退させないような措置をとりながら条約を進めてもらいたい。この点について大臣の決意なり見解をお伺いしたいと思います。
  174. 園田直

    国務大臣園田直君) 退去した後、両方でお互いに話し合って、どのようにするかは今後の問題でありますけれども、少なくともいままでの状態から退歩するようなことは絶対にしてはいけない、これはもうおっしゃるとおりだと思っております。
  175. 田渕哲也

    田渕哲也君 では、次に、サハリン残留の韓国人問題についてお尋ねをしたいと思います。  この問題は、再三、委員会で取り上げてきた問題でありますけれども、現在、いまだに四万人の朝鮮半島出身者がサハリンに残留しております。そのうち七千名が帰還を希望しておると言われております。そして、現在、わが国に対してそれらの人から入国許可申請が出ておる数が百三十七世帯四百三十八名、それに対してわが国が入国許可を与えたものが百十三世帯三百七十八名。ところが帰還した者は、そのうちたった三名にすぎません。ほとんど進捗していないというのが実態でありますけれども、その原因はどこにありますか。
  176. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは、結局、サハリン残留の朝鮮半島出身者がソ連の管轄下にあるわけでございますので、ソ連が出国を許可いたしませんと出国ができないということで、政府といたしましては折に触れてソ連に対しまして好意的な配慮を申し入れてきておりますが、ソ連側の出国の許可がなかなか進んでいないというのがいま御質問の進展していない最大の理由である、こういうふうに受けとめております。
  177. 田渕哲也

    田渕哲也君 ソ連側のこの問題に対する方針はどうなのか。昭和四十八年の五月に、日ソ赤十字会談でソ連の赤十字社の総裁が樺太、サハリン在留朝鮮人の自由意思を尊重して、日本に移住を許可するか、母国への希望者には日本経由で帰国することを許可する、こういうことを言っておるわけですけれどもソ連の基本方針は大体この発言に沿っておると考えていいわけですか。
  178. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御指摘のように、当時、ソ連の赤十字総裁が本件の解決のためにできるだけ努力をしたいということを述べた経緯がございますけれども、その後、累次のソ連側との接触及び園田大臣が訪ソされてグロムイコ大臣と話し合われたときに示されたソ連側の立場は、必ずしもそのような前向きな姿勢でなかったということでございます。それで、本年一月に大臣が行かれたときにも、この点について好意的配慮を主張したわけでございますけれどもソ連側といたしましては北朝鮮との関係があり、かなりむずかしい問題を抱えているという印象を受けた次第でございます。
  179. 田渕哲也

    田渕哲也君 ソ連としても、たてまえとすれば、先ほど言ったことがたてまえではないかと思います、本音はともかくとして。そうすると、あと日本側が入国許可をもうすでに出しておるのに、なかなか帰れない。これは私はどこに原因があるかよくわかりませんけれども日ソの間でこういう問題を事務的に処理するような協議機関というものが設けられないものか、この点はいかがですか。
  180. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 御承知のように、本件の解決のためにはソ連政府の意向というものが非常に大きく影響するわけでございますけれども、先ほど御説明いたしましたようなソ連側の意向もあり、本件は日ソ両国の政府間で協議機関を設けて処理をするということにはなじまないような気がいたしております。今後とも、私どもといたしましては、人道的見地より、ソ連側に対してこの問題を実務的に処理するように説得をしてまいる所存でございますけれども、そのような方法の方がより実際的ではないかというふうに考えております。
  181. 田渕哲也

    田渕哲也君 ソ連とのそういう協議機関の設置がむずかしければ、少なくとも日本政府の中に専門に担当する部門というものを設けるべきではないか、これは私は戦後の処理としてきわめて重大な問題だと思うんですね。だから専門にその部署を設けるぐらいの熱意を示してもいいと思いますが、いかがですか。
  182. 中江要介

    政府委員中江要介君) その点につきましては、政府は、従来、これも先生承知のとおりでございますけれどもソ連との折衝外務省が当たっておりますし、入国許可をするかどうかというのはこれは入国を管理しております法務省の所管でございます。また、日本に一時にしろ、あるいは長期永住でありましょうと、日本に滞在することになった場合のこういう人たちの福利厚生の問題は厚生省の問題というふうに多省庁にわたっておりますので、それをまとめた一つの部署を設けるという考え方もあるいはあり得るかとも思いますけれども、現在までのところ、本件に関しましては少なくとも長年の懸案でございますので、連絡は非常に密にしておりますし、いまのような横の連携、共同施策において特に支障があって、そのためにこの帰還がむずかしくなるというようなことはなかったと思いますので、いまのところは、従来のような緊密な連絡によって実現に努力を重ねてまいりたい、こういう考えでおるわけでございます。
  183. 田渕哲也

    田渕哲也君 私は、日本政府がこの問題に取り組む姿勢が弱いと思うんです。その弱い根拠は、サンフンシスコ平和条約によって、もはやサハリンにいる韓国人は日本の国籍を持っていない、だから日本に法的責任もないし、権限もない、ただ単に人道的立場から取り上げるんだと、私はこういうことではソ連が簡単においそれと言うことは聞いてくれないのではないかと思うんですね。もう少し強い立場を日本が持つべきではないか。  これは法的にはなかなかむずかしいと思いますけれども、現在、この問題について日本で裁判が行われておりますね。これは無国籍になった人たちは日本の国籍がまだ残存しておるのではないかという訴えです。それから同時に、日本政府に対して、原因をつくったのは日本政府であるから、原状回復の請求をしております。これはいまだに係争中でありますけれども、私は一つの方法として、サンフランシスコ条約日本の国籍はなくなったといいましても、日本から強制連行していった人、少なくともその中でまだ国籍のない人ですね、こういう人たちに日本の国籍を与えるという、そういう特例というものをつくる、こういう道は開けないかどうか、この点はいかがですか。
  184. 宮崎直見

    説明員(宮崎直見君) 確かにおっしゃるとおり、サンフランシスコ平和条約で朝鮮の独立を承認したものの対人主権も放棄したということで日本に居住する者及び居住の地のいかんを問わず、日本国籍を喪失せしめたということにはいろいろ反対する人があって、訴訟になっていることはおっしゃるとおりでございます。  しかし、現時点で考えますと、サンフランシスコ平和条約から現在まで、一応、そういう人たちは日本国籍を喪失したものとして現に扱ってきておるわけです。現時点でこの人たちに日本国籍を一律に与えるかどうかの問題に関しては、これは非常にむずかしいんではないか。というのは、日本国籍の付与というのは、これは国籍の選択権の問題でございますので、やはり本人の意志とか本人が将来どこに住むのかということを前提としてなされるということで、そういうような形で国籍の取得方法というものは、現在の国籍法では帰化のみでございますので、帰化事件処理ということでやっていかざるを得ないんではないかというふうに考えております。
  185. 田渕哲也

    田渕哲也君 私が申し上げているのは、特に向こうで無国籍になった人の立場が非常に弱いわけですね。弱いといいますか、自分の母国にも帰れないという結果を招いておるわけです。だから、もちろんその本人の希望がない人に日本の国籍を与えるわけにはいきません。少なくとも日本に帰る、あるいは日本に帰った後朝鮮に帰る、そういう人たちには便宜的に、元日本人であったわけですから、日本国籍を再び付与するか、これは特例的にそういう措置を設けられないことはないと思うんです。この点はいかがですか。
  186. 宮崎直見

    説明員(宮崎直見君) 日本国籍というのは、これは非常に基本的な問題でございまして、これは平和条約によって日本国籍を失った者というのは非常に数が多いわけでございまして、この一部だけについて特例を設けるということは法技術上むずかしいんではないか。平和条約によって日本国籍を失った者は、もちろん朝鮮半島に住む者すべてが含まれるし、台湾における現在の中国人もすべて含まれるということで、この一部サハリン残留韓国人についてのみ認めるというような措置は法技術的には非常にむずかしいんではないかということでございます。  それから先ほど無国籍という話がございましたけれども、サハリンに残留する韓国人——朝鮮半島出身者でございますけれども、これについては日本国籍を失ったということは同時に韓国の国籍を取得したというふうに理解しておりまして、この理解については韓国政府もこれに異議を申しておるわけじゃございませんので、無国籍というふうには必ずしも判断できないんではないかというふうに考えております。
  187. 田渕哲也

    田渕哲也君 それはおかしいんで、現実韓国籍は取られていないわけですよ、それらの人たちは。取ることを認められていないわけです、だから無国籍者として残っておるわけです。  それから、私は何も法律的なことを言っているんじゃなくて、その人たちを帰還させるための一つの方法としてそういうことを考えるべきではないか。もし日本国籍を取得すれば、これは日本からソ連に対して交渉する一つの根拠ができるわけですね。いま根拠がないからというので、人道的立場でお願いするだけで言いっ放しで向こうは知らぬ顔ということでしょう、これではらちが明かないと思うんです。  それからもう一つサンフランシスコ条約を締結したときに、こんなことは恐らく連合国側も予想していなかったと思うんです。ところが、その後、世界が東西対立、冷戦ということになってこういう悲劇を生んでおるわけですから、私は、この問題は、もし日本に現在法的権限がないとするならば、連合国側にも責任があると思うんですね。だから、私は、この連合国側にももう少し何か行動を起こさせるべきではないか。少なくとも国連で何らかの行動を起こさないと、いつまでたってもこれはらちが明かないのではないかと思いますけれども、いかがですか。
  188. 中江要介

    政府委員中江要介君) 国連で取り上げることがどういう効果が実際に期待できるかどうかについては必ずしも私直接の担当でないので予見はむずかしい問題であるわけですが、いま先生がおっしゃいましたように、その人たちが無国籍というか、自分の国籍が取得できない一番の根本は、やはり朝鮮半島が二分されているということで、そして二分された北の方はソ連と国交があって認められるけれども、南の方は関係がないので認めるわけにいかないという、この分断国家といいますか、そういうものの持つ一つの非常に異例な事態というものが根本にあると思います。  したがって日本の国籍を与えて、日本国民として、そして自国民の保護ということでソ連に当たるというのも、理論的可能性としてはいまおっしゃるように考え得ることでありますけれども、これに伴う障害といいますか、困難というのは、法務省が先ほど言いましたようなことがあると思いますし、より根本的には、やはり朝鮮半島の緊張が早く緩和して、そして二つの朝鮮が話し合いによってどういうふうな将来を持つか、そしてそういう姿にソ連が理解を示せば、そうすればいまの北か南かということからくる障害はまず除去されるだろう。したがって私どものアジアの情勢の中から見ますと、やはり朝鮮半島の問題の基本が少し変化していかなければ根本的にはむずかしい問題てではないか。それが見られるまでは、日本としは、申されましたように、その人たちの過去について日本政府が持っている責任といいますか、人道的な観点、そういうものでソ連と誠意を持って交渉するということで臨むのがいま許されている道ではないか、こういう認識でございますが、国連その他については、私はちょっとにわかに判断はいたしかねるわけでございます。
  189. 田渕哲也

    田渕哲也君 国際情勢がよくなって解決されればそれにこしたことはありませんけれども国際情勢というものがよくなるのはいつのことかわかりません。ところが、サハリンにいる人たちは、当時働き盛りで連れていかれた人がもう六十、七十の老年になっております。せめて年をとったとき故郷へ帰って死にたいとか、あるいは死ぬまでにもう一度肉親に会いたい、こういう一日千秋の思いで待ちこがれておるわけです。それに国際情勢の好転を待ってなんということはちょっと私は悠長に過ぎると思うんです。  だから、私が先ほどから言っておるのは、何か非常な手段に訴えてでも、特別な便宜措置をつくってでも、その人たちの希望をかなえてあげるべきではないか。それからまた、これは原因は日本政府がつくったわけですから、その後日本に法的責任がなくなったといっても、やはり日本としては最大限の努力をすべきである。そうすると、先ほど言ったように、国籍の特例法というものも考えてみるべきであるし、それから国連の場に出して連合国側に動いてもらうということも考えるべきではなかろうか。やっぱりそういう努力を日本政府がしなければならないと思いますけれども大臣はどうお考えになっておりますか。
  190. 園田直

    国務大臣園田直君) この問題はなかなか大事な問題でありまして、樺太に住んでいる朝鮮半島出身の方々は必ずしも自分の意思で住んだわけではない。そして戦が終わってから、自分の意思にかかわらず、国籍を失った、こういうことでありますから、日本国政府の責任であることは御指摘のとおりであります。  そこで、私がモスコーに行きましたときにも強く要請をいたしましたが、向こうはなかなかむずかしい返事でありまして、いろいろ話をしてみますと、おっしゃるとおりに、樺太に在住している人々が日本の国籍で、日本に引き取るならば、これは問題はなく、ソ連の方も他に理屈はありましょうけれども納得するわけでありますが、日本の国籍のない者を何で引き取るのだ、要するに引き取るのではなくて、朝鮮半島へ帰してやるための便法として引き取って帰すのだ、こういうことになると、いまアジア局長が言ったような朝鮮半島の現状、北朝鮮との関係上なかなか厳しいものがありまして、仮に国籍の特例法がうまくいって、日本に引き取る、引き取ってから朝鮮半島に帰す、こういうことになってくると、これまたソ連の方ではいろいろむずかしい問題が出てくると思います。国連でこの問題を持ち出すこともおっしゃるとおりでありますが、これには強くソ連が反対をいたしております。表面上田連で持ち出すかどうかは別でありますが、国連の場所でそれぞれ関係国の理解を求めるなど、ありとあらゆる努力をしなければならぬことは当然だと思います。  なおまた、もう一つは、ソ連から出ることもそういうことで困難でございますが、帰ってきた場合の待遇、取り扱いが、日本の国籍がないために、滞在期間であるとか、あるいは補償であるとか、旅費の問題等で非常に違うわけでありまして、これはまさに大変なことでありますから、先般、厚生大臣、法務大臣と相談をして、帰ってきた場合のあれは日本の準国籍を持った人として扱うようにしようじゃないかということで、いま三省で検討しておるところでありますが、ソ連の方から引き取るということについては、いまおっしゃったようなことも考えながら、いろんな努力をしたいと考えております。
  191. 田渕哲也

    田渕哲也君 時間がなくなりましたので、最後に、もう一問だけお伺いします。  いま大臣がおっしゃった中に、日本へ一遍帰ってきてから朝鮮へ渡るとなれば、これまた問題があると言われましたけれども、それはむずかしい問題がいろいろあろうかと思うんです。ところが、いままでの調査によりますと、帰還希望者七千名のうち千五百名は日本に永住を希望しております。私はせめてこういう人たちにはそういう措置がとれないだろうかということが一つ。  それから、私は、終戦処理をした——もちろん原因をつくったのは日本でありますけれども、終戦処理サンフランシスコ条約等にかかわったすべての国にこの問題については人道的責任があると思うんです。だから、私は、それらの国に対しても日本政府から現状説明して、何らか打開の措置を国連の場でとってもらうように要求をすべきではないか、この点が第二点です。  それから第三点は、いま厚生省並びに法務省とも協議しておるということですけれども、これは外務大臣が三月二日の衆議院の内閣委員会でそういう答弁をされました。ところが、その後、この三者の協議はどのように進んでおるのか、この受入体制についてですね、もう少し具体的にお答えをいただきたいと思います。
  192. 園田直

    国務大臣園田直君) 国連の場所へ出すことは先ほど申し上げましたとおりでありまして、これを国連の表舞台に出しますことはソ連が強く拒否しております。しかし、国連の場所で関係各国に理解を求め協力を求めるという協力をすることは当然だと考えております。  なお、三大臣の相談では、その場で準日本国籍を持った人として取り扱う。こういう方針はもう決めたわけでありますから、それについてどのように事務的に進めていくかということは三省で直ちに検討しているはずでありますから、もう一遍よく確かめてから御返答いたします。
  193. 田渕哲也

    田渕哲也君 第一点に対しては——日本永住希望者には日本の国籍を与えてもいいのではないかという意見ですが。
  194. 園田直

    国務大臣園田直君) その点は、日本に帰ってきて日本に住むということになれば、ソ連考え方が少しは変わってくるのじゃないかという感じが、私、話しておって、したわけでございます。そこで帰ってきてから、これはどういう法律上の手続かわかりませんけれども、本人が希望する何らかの方法で、日本に永住し、日本の国籍を与える方法はあるのじゃないかと思いますけれども、法律の専門家でありませんから、後でよく相談をいたします。
  195. 田渕哲也

    田渕哲也君 終わります。
  196. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本調査についての本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  197. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  198. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  現在、日米間には、明治十九年に締結され、明治三十九年に追加修正された日米犯罪人引渡条約がございますが、現行条約は、締結以来九十余年を経ており、引渡し対象犯罪が殺人罪等の伝統的な犯罪に限定されているため、国際的な交通機関の発達等による国際的渉外事件の増加を初めとする最近の事態に適合しなくなっている面があり、これを改善することが望まれていたところであります。  政府は、昭和五十年八月のクアラ・ランプール事件等を契機とする国際的な犯罪の抑圧のための協力についての国内の認識の高まりを背景に、犯罪の抑圧のための日米両国の協力を一層実効あるものとするため、昭和五十一年一月にアメリカ合衆国政府に対し、現行条約を全面的に改定することを提案いたしました。その後、二回にわたる交渉と外交経路を通じての調整の結果、新条約案について合意が得られ、本年三月三日に東京において、本大臣とマンスフィールド駐日アメリカ合衆国大使との間でこの条約の署名が行われた次第であります。  この条約は、本文十六カ条及び付表から成り、さらに、交換公文が付属しておりますが、その主要な内容は、次のとおりであります。  すなわち、各締約国は、両国法令により死刑または無期もしくは長期一年を超える拘禁刑に処するとされている犯罪について、訴追等を行うために他方の締約国からその引き渡しを求められ、自国の領域で発見された者を他方の締約国に引き渡すことを約束しております。引き渡しの対象となる代表的な犯罪四十七種類は、本条約の付表に列挙されております。また、引き渡し請求犯罪が政治犯罪である場合は引き渡しは行われず、自国民の取り扱いについては、被請求国は、引き渡しの義務を負わないが、裁量により自国民の引き渡しを行うことができることなどが定められております。引き渡し請求は、逮捕状の写し、証拠資料等の必要な資料を添付して外交経路により行いますが、緊急の場合、一方の締約国は、他方の締約国より要請されたときには、仮拘禁を行い得ることになっております。さらに各締約国は、第三国から他方の締約国に引き渡される者を自国領域を経由して通過護送する権利を他方の締約国に認めることが定められております。  この条約を締結することにより、引き渡し対象犯罪が現行条約に比べ飛躍的に拡大されるのみならず、将来生じ得る新しい犯罪も引き渡しの対象とされることとなるなど、多くの点で改善が施され、犯罪の抑圧のための日米両国の協力関係が一層実効性のあるものとなることが期待されます。  よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いをいたします。
  199. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本件に対する自後の審査は後日に譲ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十三分散会      —————・—————