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1978-03-30 第84回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三十日(木曜日)    午後一時四十三分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     徳永 正利君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 亀井 久興君                 徳永 正利君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 三善 信二君                 小野  明君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        特許庁長官    熊谷 善二君        特許庁特許技監  城下 武文君        特許庁総務部長  勝谷  保君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省条約局外        務参事官     山田 中正君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○千九百七十年六月十九日にワシントンで作成さ  れた特許協力条約締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨三月二十九日、玉置和郎君が委員を辞任され、その補欠として徳永正利君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては、すでに趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣にお尋ねします。  総理大臣外務大臣もいろいろ日程が立て込んでいるようでありますが、最近における福田首相なり外務大臣なりの一挙手一投足を新聞は注目しており、日程をめぐって先取り記事というものが大体つくられている模様であります。  きょうの新聞によりますと、稲田首相日米首脳会議出席はするが、出たいと思っていたニューヨークで開かれる国連軍縮会議には日程的に出られないので、園田外務大臣がかわって出るというような報道がなされておりますが、それはそのとおりでございますか。
  5. 園田直

    国務大臣園田直君) きょうの新聞には出ておりますが、まだ決定しておりません。今度の軍縮総会各国が非常な関心を持っておる歴史的な総会でありますので、それぞれの国の総理大臣が出てまいる情報がありますので、できれば総理大臣の御出席を願うようにただいま検討中でございまして、どちらになるかまだ未定でございます。
  6. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま外務大臣の御答弁のように、今川開かれる国連軍縮会議はいままでとは違って、この激動変革時代における世界の危機をどうやって切り開くかという建設的な意見というものが各国責任ある人々によって図られる会合として世界では期待しているのでありまして、まげて総理大臣出席すべきであり、その場において日本外交政策基本的なものはいかなるものであるかということを世界に向かって明示しなければ、今日のようにソ連の、あるいはアメリカの、中国の、他の国の動きのみに眼を放って、みずからの主体性を示していない福田内閣の特異な、このわけのわからぬ外交に対してはあたり迷惑していると思うのであります。  そういう点において、外交基本は国際的な信義でありますから、日本はどういう方向に向かってどういう外交をやるか、特に発展途上国はいま困難の状態を来しておるのであります。中近東においてもアフリカにおいても火を噴いているのであります。朝鮮においても非常な不安感が増大しております。そういうときにユーゴスラビアのチトーがわざわざ出かけてきて、その火中のクリをも拾うというような勇気ある行動を行っているときに、隣国にあって高みの見物をしているという間抜けた国は日本以外に世界にないと思います。私は、そういう意味において、中近東アメリカの大統領も出向いているように、近隣諸国とのいろいろいままで集積された矛盾の累積の上に立って、そこに方向づけをやるのが日本外交基本ではないかと思うんですが、総理大臣が出られなかったときには外務大臣が出るべきであり、外務大臣よりも総理大臣が出るというのは当然のことだと思うのでありますが、そのことはいつごろはっきりわかってくるのでしょうか。
  7. 園田直

    国務大臣園田直君) なるべく早く決定をしなければ、準備その他がございますので、早急に決定してもらいたいと考えております。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、自民党内のことにくちばしを入れる必要はありませんが、外交権内閣が持っているのであります。与党において十分責任を持って審議すべきは当然でありまするけれども、自民党派閥は解消されたというが、事実上において解消されず、しかも福田に盤踞しているところのタカ派と称する者はハゲタカじゃないけれども、相当私はどぎつい一つの抵抗をやっていると思うのであります。これがいま日本はガラス張りで海外に響いております。一体福田さんのことを聞いていいのか、あのハゲタカぶりの言論をそのまま認めなければならないのか、どっちに向いてほえているのか。次の政権をめぐっての一つの取引もあるでしょうが、このような外交においてみずからの主体性党自身において確立できないような党が近代政党としての価値があるかどうか、こういう政党の上に基礎を置くところの内閣に国の運命を託するだけの外交権をゆだねておいてよいかどうか、形式的な法理論でなくて、政治論として改めてわれわれは福田内閣に対決を迫らなければならないときも来ていると思うのであります。これは秒読みの時代です。やはり国民に訴えて、そしてこのような不安定な政権のもとにおいて国の運命を決するような日中平和友好条約締結させてよいかどうかまで私たちは掘り下げていかなければならないような時代までいま来ていると思うんです。  多くの人は次々に異変が起きるので、今度は成田方向新聞はわあわあと、地震があった、成田だと、方々騒ぎ回っていますけれども、一体内閣人民の名において主権者国民に合意を得られるような外交がこの状態でできると思うかどうか、私は率直な意見外務大臣にお尋ねしたい。  本当に気の毒だと思うのは、やはり私がおととい聞いたようなことが依然として福田派内部会合においても公然と言われておるじゃありませんか。福田総理大臣園田の物の考え方は違うんだ、二人の分裂を通じて揺すぶって次期政権抗争方向づけをやろうというたくらみかもしれないけれども、いかに戦国騒乱時代でも、このような武士道も何もあったものでないような混乱状態は、いまだかつて応仁の乱前後以外にないと私は思うんです。乱世です。こういう私は日本の悲劇的な段階においてあなたを狂わしていると思いますが、私たちは傍観するわけにはいかぬ。介入してやっぱり国民の名において、果たしてこの内閣外交権を持たしていいかどうか、その審判をやらなけりゃならないような羽目にならないとも限らないと思うんです。ふざけたことはいいかげんにしてもらいたい。私たちはそういう意味において内閣外交権を与えているというのは、もっと主権者としての国民の合憲を得られるような、納得ずくが得られるような内閣としての想定のもとに与えているのであって、このように乱れに乱れ、責任も何もない、党があって眼中に国家なく、次期政権の野望があって国の運命に対しての方向づけ責任がない、こんなばかげた内閣日本始まって以来いまだない。  そういう意味において、私はこれは一園田君、一福田さんを指さしているんじゃないが、政治国民の信頼のないところに政治はないんです。あっても死んでいるんです。死んだしかばねの政治相手にわれわれは政治を論ずるわけにはいかないんで、その辺、あなたは与党福田派の集まりにも引きずり出されてつるし上げられている模様でありますが、どうなんです、一体これは。国民新聞において皆伝えられているじゃありませんか。このふしだらを続けておいて、総裁はだれなんです、総理大臣はだれなんです。ちょうちんでもつけて稲田さんの顔でもよく私らは拝まなければ、どこに総理大臣がいて、どこに総裁がいるんだかわからなくなってしまったと思うんです。本当国民はみんな読んでいるんです。新聞が言っているのは必ずしも正しいとは限らないかもしれませんが、なら取り消しを出しなさい。取り消しを出しても、国民は、私は、これが本当らしいなというふうに考えている、そこに禍乱根底があるんであって、ひとつ私は正確にそのことを与党との問答において、どういう点が問題点国民はさっぱりわからない。新聞に書いているのが本当かと思うと、聞くと、そうでもないようなことを言う。だけど、大体新聞に書いてあるのが本当だろうというふうなのが常識になっていますが、常識の置きどころはどの辺に置いたらよろしいですか。
  9. 園田直

    国務大臣園田直君) 戸叶先生からは平素ごもっともなありがたい御指導を賜っておるわけでありますが、ただいまの御発言はそのまま拝承するわけにはまいりません。いやしくも外交問題でありますから、与党といえども、これを党利党略、または一政権あるいは一個人の問題に扱っているわけではございません。ただいま外務大臣はきのうあたりから与党の方の御理解を求めるために努力をいたしておりますが、決して私をつるし上げをしたり攻撃をされているわけではなくて、大事な問題であるから間違いなしにやれという慎重な御発言をちょうだいし、これに基づいて私も今後の折衝について参考にしつつ諸般の準備を進めておるわけでありますから、どうか誤解なさらないようにお願いをいたしたいと存じます。
  10. 戸叶武

    ○戸叶武君 その御答弁は非常に参考になります。私たちも、さようならば、与党の諸君と同じような形において十分了解を得るまで、今後において総理大臣並びに外務大臣をつるし上げるわけじゃないんですから、国民にかわってやっぱり納得のいくような筋を追及したいと思います。  当然、いままで与党の中において近代政党として国の運命を決するような外交基本方針というものは平生において大体決定していなけりゃならないものであります。いざ鎌倉というときに役に立たないじゃありませんか。火がついてから消防ポンプを引っ張り出すようなことばっかりやるから成田のようなふしだらな事件が起きるんです。緩ふんです。みずからの体制が樹立していないから、一たん緩急の場合にそれに対応するような姿勢というものができてないんです。与党がこのような状態で、そうして下部にあるところの警察官や、あるいは外務省の役人の書いた何かメモなんかを振り回して、それを新聞に発表する。政治家はみずからの見解を発表すべきであって、役所からの文書などをやたらに振り回して発表するような、そういう無定見な政治家自民党の中においてはどうして飼っておくんです。こういうところに問題があるんで、今後において、官僚官僚としての役を果たさなきゃならないようだけれども、こういう形において与党に使われた日にゃ命が幾つあっても足りないじゃありませんか。少なくとも国においては官僚あり方内閣あり方政党あり方、おのずからけじめがあるんです。けじめのつかないようなだらしないことにだれがさせてしまったんだ。私は、あえて、いまあなたが開き直ったから、これからあなたに向かって挑戦する。こんなような外交のふしだらな状態で、成田事件のようなのは当然、それ以上の被害が民族の中に起きないとだれが保証できるか。  私は、そういう意味において、外交の問題というものは福田総理大臣でも何でも国連の場において列国の代表とともに胸襟を開いて世界運命の決する方向づけをやるというだけの見識と勇気と決断がなければ、政治家やめなさい。福田内閣なんて吹っ飛ばした方がいい。日本人一体何を考えているのかわからないようなえたいの知れないことをやっているから、今日の経済でも外交でも世界から侮りを受けるんです。ちょっと揺すぶればきっと腰を抜かすかもしれないと、ぶっ壊れおもちゃのようにやたらにおもしろがってソ連でも中国でもアメリカでも日本を揺すぶっている。そういう状態で、今後、韓国からも北鮮からも方々から揺すぶられた日にゃ腰の置きどころがないじゃないですか。私はそういうのを、苦言を、遠ぼえをしないんだ、面と向かって言うんだ。福田さんも入ってきたら、稲田さんの素っ首抜くわけにはいかないけれども、本当に私は福田さんに同情はするけれども、同情するがゆえに厳しくもっとみずからの姿勢をつくれということを言いたいと思うんです。  どうです、あなた補佐役として、あなたの方が若干福田さんより腰がしっかりしているんじゃないかというふうに見られて、それで福田とどうも園田構え方は腰の構えが違うというんで、そうして今度揺すぶられているんだと思いますが、あなたは、ずうずうしいというわけじゃないけれども、腹がすわっているからつるし上げられたとは受けとめないんだが、結局新聞だけ見ていると、どうも園田君が福田からも分離されて、つるし上げられて孤立無援のように見えるんで、気の毒だからひとつ気合いかけてやろうと思って、本当に私は与党玉置さんすらたまげたような気合いかけるんだから、与党においてあの程度だから、野党はもっと厳しくやっぱり気合いかけなくちゃいかぬと思ってしたんですが、その辺は本当に私は一番心配なんです。だれにでも聞かれるんだ、福田さんと園田、とうとう福田さんに園田さんはそでにされそうだなあというんで、そでにされるんじゃ気の毒だなあといって一臂の力をかそうと思って苦言を呈したんです(笑声)。  いや、どうですか、これは笑いごとじゃないですよ、本当に、私。世間の人はびっくりしているんですよ、あれほど股肱の臣と言われるのも危ないんだな。中国でも鄧小平がいま諸葛孔明だなんと言っても、文化革命のときにはどこかへ吹っ飛ばされちゃうんだから、やっぱりいまのような激動変革時代じゃ中国のことだけじゃない、日本福田内閣においても、今日は外務大臣、明日は菅原道真のように九州にぶん流されるなんということもないとは限らないんで、そういうやっぱり予告編を出しておかないと、そのときになってからじゃ間に合わないと思うから言っているんですが、ひとつしっかりやってもらいたいと思います。  それで、あなたでもいい、福田さんが行くのが本当だが、あなたが行ったとしても、もっと明快に、それによって出たりさわりができるかもしれないけれども、政治家責任を持つんです。ぴしっととにかく外交権を握って、どこにへそがあるのか、眠っているのか起きているのかわからないようなそういう政治家自民党じゃ成功するそうですけれども、そうでなくて、かっと目を開いて世界に向かって日本はこの道を行くんだと言えば、わかってくれるんです。ソ連だってわかりいいですよ。あなたが、この間、とにかく一番園田と言えばもうげじげじみたいにソ連が思っていたが、やっぱり漁業の問題でソ連にも悩みがあるんだというわかりのいいような答弁をしたんで、ああ園田というのはなかなか考えて、ソ連だけを敵視するんじゃないんだなと、すぐにはね返って、とにかくいまのように漁業問題に対しても何とかしなくちゃいかぬという、外交は生きているんですから、どうぞそういう意味において私はソ連アメリカ中国を見詰めながらも、相手ばかりを見てのぞき込むんじゃなくて、みずから一つ姿勢をつくって対処してもらいたいと思うんです。そうじゃないと危なくて任せておけませんよ、夜も眠れないで困っているんだ、このごろは。  そういう形ですが、そこで、いま中国との覇権問題に対しては、きょうあたりもいろんな分析を自民党さんでも大分細かくやっておりますが、どういうふうなところへ落ちつくと思うんですか。中国日本との関係において、自民党さんの内部にも大体三通りぐらいの意見が展開されているようですが、政府基本的な考えというものは煮詰まっているんですか、ないんですか。これは覇権問題に対してはもう煮詰まっていてもいいと思うんですよ、焦げつきますよ、余り煮ていると。
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見の数々は十分注意をして守ってやってまいります。  覇権の問題については、しばしば申し上げるとおり、日本政府共同声明の線に述べられた立場を一貫して貫く、こういうことでありまして、さて、その立場条約案文をつくる場合にどのように扱うかということは条約交渉の内容になりますから、ここでは申し上げるわけにはまいりません。
  12. 戸叶武

    ○戸叶武君 外交技術として共同声明というのに力点を置きまするけれども、田中さんが中国側と行った共同声明といえども、日本平和憲法なり非核三原則なり、そういうものを踏まえた上での平和共存日本中国がその柱となろう、その上に立って一切の覇権主義に反対し、みずからも自制し、そうしてわれわれの近隣諸国との関係において、まず日本中国から始まって、平和共存体制をつくり上げようという悲願があの中には込められているんだと思います。  私は、単に田中周恩来という形の個人のものでなく、国の現段階における外交政策基本をあすこで貫いたんだと思うんです。そういう形でないと、何か自民党の中でも、あれは田中の間違いだ――間違いじゃ済まないんです。外交の問題がきわめて重要なのは、一貫性がなけりゃならないので、国を代表して――田中さんなんか私余り好きじゃないけれども、一個人田中じゃない、田中はあの段階において日本人民を代表し、この道を歩む以外にないという決断の中に私はしたものだと思うんであって、だから中国側においては田中を尊重するというのは、田中でなくて、田中をしてそうせしめた日本の私は道義力の発揚というものに対して敬意を表しているんだと思うんです。それが信義です。それなのにもかかわらず、今日、福田さんの周辺において、俗に言えば岸派と言われ、あるいはいろんな形の絶えず権力に癒着して台湾あるいは韓国を往来している多くの人々によって揺すぶりの震度が激しく、まあ地震時代だから大分自信を持って揺すぶっているんでしょうが、こういう状態がなされていると、もろもろの私は諸悪の原因はここにあるという形で剔抉しなければならないような事態が私は起きてくると思うのです。  私が憂えるのは、あの複雑怪奇と言って平沼総理も腰を抜かしてしまったような、あれ以上の複雑怪奇な外交世界になされているときに、政府自身が動ずることなく、この激動変革時代に冷静に対処して、国の百年の計を保つという、この精神が躍動しないと、国民本当に途方に暮れると思うんですが、その辺のことは百も福田さんは心得ていると思いますが、いまのような状態で、自民党内部はまとまると思っていますか。ぶち壊し専門をやっているんじゃないんですか。ソ連あたりのある者は、情報によっては台湾を通じて、台湾ロビーなり何なりを動かして日本を揺すぶっているという評判すらも出ているし、ソ連としても一流のやつはそんなへまなことはやらぬと思いますが、非常に国際的な不信感というものを日本ソ連も私は受けていると思いますが、ソ連のことは言わない、問題は日本です。日本あってアジアあるという確信は覇権主義的な日本じゃない、日本がやっぱり中国のことも考え南北朝鮮の統一の悲願を達成さしてやりたい、そういうことをも構え日中平和条約締結促進をしているんだと思いますが、外務大臣は、どのような見解の上に立って、日中平和友好条約促進を図っているんでしょうか。
  13. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど御発言がありましたが、軍縮総会においても、それから今度の日中友好条約においても、わが日本がやるべきことは憲法第九条に基づく平和を願い、人数の繁栄を願って世界に貢献をするというこの基本方針世界に向かって明確に宣布するべきときであると考えております。  そこで、日中友好条約も、単に日本中国の平和、繁栄のみでなくて、これが契機になって、これがアジアの安定と平和につながり、それがひいては世界人類の平和と繁栄につながるように、両国が誠意を持って話し合うべき場所が今度の友好条約交渉の舞台である、このように考え努力をしたいと考えております。
  14. 戸叶武

    ○戸叶武君 いまの答弁は百点です。なかなかやっぱり外務大臣になりゃ外務大臣としてのやはり腹を決めての私は見識がそこに躍動していると思いますが、われわれは日中平和友好条約締結に対しては、第一に日本のことを考えておりますが、日本だけのことを考えたんでは、相手があっての世界でありますから、中国立場ソ連立場をも配慮して、日本自体がみずからしっかりして、日本だけのことでなく、禍乱近隣に及ぼすことなく、将来、本当日本立場を理解したならば、ソ連といえども中国といえども、日本の言ったことが、主張したことが正しいという、その見識敬意を表してくれるような平和条約締結するという意味がなければ、三百代言的な倫理の上に立って、権謀術策の上に立っての外交なんというのは十八、九世紀の遺物です。もうそういうものを乗り越えて明白の世界を先取りするだけの外交躍動がなしに日中平和友好条約締結しても、そんなものは意味をなさぬと私は思うのですが、園田さんがそれだけの配慮を持っているというのでは、これは園田さんに大体任してもいいんじゃないかという気持ちすらわれわれに起きるぐらいな見識ですが、私はそれを貫いてもらいたい。  中国でもソ連でもかたくななところがあります。しかし、国際的な不信感というものがいままであったがゆえに、自分の考えというものに一貫性を持って貫いていくのが、ソ連なりあるいは中国なり、特にそれにイデオロギー的なものが絡みついてかたくなな形をつくっておりますが、外交根底は、イデオロギーなり国家性格は違っても、お互いに胸襟を開いて話し合って、いろんな矛盾点があるけど、それを乗り越えて問題を解決つけるという意欲がなけりゃ外交意味はないと思うんです。  ですから、領土問題なんかとっても、自民党の中にもあるいはわれわれの党の中においてもいろいろな説がありますけれども、本当に私は政府が毅然としてこれを行うならば、国民はやはりわれわれと同じような形において、われわれ固有の領土というものは、戦争に負けたがゆえに、それをソ連あるいはアメリカあるいはイギリスの戦争中における軍事謀略協定ヤルタ協定によってそれを守って、そうしてわれわれの領土をも放棄しなけりゃならないなんというべらぼうな議論には屈するわけにはいかないんです。そういう意味において、鳩山さんのソ連との修復の問題あるいは田中さんの中国との修復の問題がある以前に、われわれは戦争においてずいぶん間違ったことをやり、迷惑をやり、世界不信を買ったが、原爆の洗礼を受けて戦争は再びやりたくない、われわれ日本人だけが原爆においてあのような残虐な目に遭っただけじゃなく、世界のいかなる人に対してもこのような目に遭わせたくないという悲願の上に立ってのわれわれの外交だと思うんです。  どうぞそういう意味において、アメリカに行くとアメリカ人も原爆の話をするといやがるです。ソ連に行っても、ソ連戦争のどさくさにヤルタ協定日本領土を略奪するとは何ごとかと私は率直にクレムリンで言ったが、いやがります。いやがるけど、それは本当なんだが、表現は外務大臣ぐらいになるとわれわれよりはもっと上品な表現でやわらかく物を言うでしょうが、やはり表現は気をつけなくちゃならないけど、真実をどこへ行っても貫くだけの強情な一貫性がなけりゃ、このような時代になめられちゃって、もうナマコにされちゃってどうにもならぬです。  私らは浅沼のしりぬぐいと言われて、一九六〇年に行ったときも、安保条約廃棄だけをほめられるんじゃ困る、われわれは安保条約の廃棄の闘いをやっているが、その十年前に、ソ連は、日本アメリカと軍事同盟を結ぶであろうということを想定して中ソ友好同盟条約の軍事同盟をつくった。それを解消するということを明記しなければ、共同声明には私は応じない、帰る、そう言って廖承志君や周恩来さんとも私は闘ったんです。闘ったというのは、闘うんじゃなく、われわれも人民の意思というものをやっぱり中国側にも伝達しないと、第五列的にどこへ行っても相手の国をほめてばかりいる、そういう性格に日本がなってしまったら日本はいよいよなめられてしまうと思って、あえて言いづらいこともわれわれは言ってきたんですが、この間、自民党の人でも園田はどうもモスクワに行ってのやり方は少し乱暴過ぎるなんて心配しておりますが、乱暴じゃない、なかなか私は本当のことを率直に言って、あれもやっぱり日本人だなあと、向こうでも日本人であるということは認めたと思うんですよ。  この間の朝日新聞に出た赤城君の、自民党の中における一番ソ連に親しい人ですが、あの投書なんかもりっぱなものです。領土問題に対しては姿勢を崩していません。私はそういうことがやはり政党政派を抜きにして国民の中に合意を得られるのには、自民党の中にも社会党の中にも共産党といえどもみんなやはり一つの国を思い、人数を思い、世界を思っていくものがあって、そうして少数のわからずやがあっても、それはやっぱり、このごろは奇形児が生まれるときですから、いろいろな奇人があってもそれはなかなか珍物として存在価値があるですけれども、やはりそういう形があってこそ初めて論議を尽くして、しかる後において国民的合意が得られるような平和条約締結になるんだと思いますけども、それにしても国民に了解を得る前に、いかに長くといってももう何年かかっているんです。五年かかって何やっていたんです、このときに自民党は。一党の総裁、自分がつくった総理大臣がつくりあげたことに対して五年間それをどこかへ死蔵しておいたんですか。こんな激動変革時代に怠慢な政党がありますか、怠慢な内閣がありますか。そういう意味において急場には間に合わない。だから、大切なときに成田事件なんて、やるやつもやるやつだが、やられるやつもやられるやつ。こういうふしだらの根源というものはこういうところにけじめのつかないところに禍根があるんです。  私は、そういう意味において、外交の面からでもせめて緊急な場合に対処するタイミングを外してはいけないというだけの生きた外交の躍動をやってもらいたいと思います。しびれどころか、みんなあくびしちゃってもうどうしようもないんですが、園田さんはよく飽きずに粘り強くやっているようですが、いつ日中平和友好にあなたは行くんですか、まだ日取りはわかりませんか。何を中心として、国民的合意を得る前提として何を求めているんですか。
  15. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま与党の御理解を求めておるところでありますが、この御理解が求められれば、きわめて重大な問題でありますから、野党の方々の御意見も承り、御注意もちょうだいをし、各党、国民の御理解と御協力を得てから、交渉再開に踏み出すつもりでございます。
  16. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本の俗謡に、桃栗三年柿八年、ユズのばか実は十八年と言っていますが、私は、浅沼のしりぬぐいのために北京に行ってくれというので、安保闘争のときに、あの安保条約改定阻止の訪中代表団の団長として北京に行ってから十八年です。それから一度も北京参りはしておりません。それはそのときに十分尽くした。  いまごろ、自民党あたりが中ソの間にいわゆる軍事条約があるじゃないかということを根掘り葉掘り、それを確めなきゃどうなんて言っているけれども、条約があっても、いまの中ソ関係というものは、その条約は事実上において守られていないじゃないですか。人々の心をかち取らないで条約の条文によってその国の人民なり政府を縛ることはできないという実例は、これによっても明らかなんです。外交政治も生きているんです。日本も日米間における安保条約があるからといって警戒されているけれども、野党いまだ健全にして、安保条約によって戦争に介入するようなことがあっては大変だというブレーキをかけておるからこそ、安保条約において国民が心配するような戦争への方向を食いとめているんです。政府も、この国民の心、野党の抵抗というものを十分考えて、成田あたりの問題でもあのような騒ぎであるので、国を挙げての禍乱を招いては大変だというので一応自重しているのでありましょうが、しかしながら、外交基本ともなるべきところの日本平和憲法に対して、みずからこの改正を叫び、この混乱のどさくさに危機に乗じて軍備を拡大し、そうして自衛力増大と称して国の保衛、それを強くしなければ戸締まりができないなどと言って、中には気違いになって三島のように死んでしまうやつもいますが、こういう病的な状態のもとにおいて世界の人を説得できますか。われわれ日本国民平和憲法を守る一貫した姿勢がなくして、軍備に頼るよりも世界における平和共在の理念に、軍縮の前進に、核兵器の廃棄に、そういうものに先頭に立って全力で闘うという姿勢政府にできない限りにおいては、日本というのは言ってることとやってることが違うということになってしまって、だれの信頼も得られないんです。  いまごろ、へなちょこな軍備を増大したからといって、アメリカの先兵たり得るかもしれないが、日本の安全が保てますか。アメリカソ連戦争はしません。ばかげた火中のクリを拾うんじゃなくて、アジアにおけるベトナム的な、中近東におけるところのあの騒乱のような中に軍備を充実させて入るというような方向づけをやったならば、何のかんばせあってわれわれがあれだけの戦争における犠牲者、天皇みずからも泣いて再び戦争はやらないという誓いを立てて勅語まで出しているじゃありませんか。憲法改正、再軍備即天皇に対しては責任を持って世界の笑い物になれというのと同じです。こういうばかげた非論理的論理が現実政策として依然として自民党で唱えられているというのは、少なくとも明日に対する方向づけをやる政党としては無資格であることをみずから暴露しているものであって、せめて園田外務大臣が言ったような理念の上に立って、日中平和条約の実践を通じて諸外国も、なるほど日本日本だけでなく中国と若干意見が異なるけれども、中国ソ連に対する怒り、憎しみは憎しみとして、それを乗り越えて、一つのアジアにおける安定勢力となり、世界に範を示そうという方向づけをやったとするならば、世界発展途上国は挙げて、われわれと同じように、平和共存の道の方向づけのために全力を挙げて私は協力してくれると思うんです。夢想じゃありません。アメリカでもソ連でも世界から孤立してどこにその国の存在の意義があるんですか。世界が愚昧にしていまだアメリカなりソ連覇権主眼というものにおびえているから、本当のことを言わないから、反省がないのです。  どうぞそういう意味において、この間、モスクワでやったことは園田さんの腹芸だけじゃなく、それだけの信念を持って日中平和友好条約をつくるというのでなけりゃだめで、それでも言うことを聞かない人は分離しなさい、憲法改正派、戦争への道、ファシスト集団。自民党というかさをかぶっているから、世間ではまだ最右翼のわからずやの集団だと認めてないからでかいことを言っているけれども、自民党から放ってやってごらんなさい。ヒトラーでもムッソリーニでもヒンデンブルクあたりが妥協したからあのようにのさばっちまったんです。今日のファシズムの風潮は恐るべきものがあります。命知らずの極左の破壊分子を恐れるけれども、あれを口実としてイタリアにおいてもフランスにおいてもあるいはドイツにおいても、第二次世界戦争を誘発させるだけのファシズムの台頭を許したのは、国会における議会勢力がみずからの責任において戦争を食いとめる能力を持たなかったからであるので、いまその危機に日本はあると思うんであります。  われわれ社会党も反省しなけりゃならない点は反省するけれども、いまの自民党のぶざまな体制を見ておったならば、一日中平和条約の問題ではない、日本を再び戦争禍乱に陥れるような方向づけをやっている徒輩に――あえて徒輩と言う。あなたは自民党を侮辱されちゃ困ると言うかもしれないが、世間は皆侮辱している。侮辱しなくってももう信頼感を失っている。政治は、国民に信頼されないような政党の存在価値はないのであって、日中平和友好条約に賛成か反対かの国民投票あるいは選挙においてそれを戦うならば、自民党一つ二つはぶっつぶしても日本の性根を入れる上において絶好の試練のチャンスだと思うので、遠慮会釈もない、自民党を二つに割りなさい。堂々の論議をやって、論議を尽くして、それに応じないで憲法改正、再軍備、台湾韓国と仲よくというのはそのうちにおだぶつしますから。歴史の運行に対して一寸先もわからないような徒輩に日本運命をゆだねることはできない。  私は福田さんに早くお目見えして、あなただけじゃ、どうも間接的でもって空気が抜けちゃうから、福田さんに、やっぱり上州っ子だから幾らか赤城の山のあの風は身にしみているだろうから、やはり私はこんなような状態国民がみんな心配している、成田の問題だけじゃないです、成田にはまだ不動さんがいるから何とかするでしょう。私はいまの政党のこの状態、これを黙視していくところの野党の状態、これを私は本当国民は憂えておると思うのです。そうでなくて、あの属僚を相手外交的な末節論の揚げ足取りをやっていたのでは、そのうちに国はおだぶつしてしまいますよ。徳川崩壊期における日本外交でも、松平石見守なりあの竹内下野守なり、文久二年ペテルスブルクに行って五十度の線を通じての樺太の問題を論じたときでも、崩壊すべき幕府の外交官でも堂々としてロシアの天文台に行って、そこに掲げている地図をイギリス製であるが示して、このように万国が南樺太以南は日本領であるということを明示しているじゃないかと言って、具体的な事例をひっ提げてソ連側とも論議を尽くしているのであります。ちょんまげを結い、崩壊期の徳川幕府においても、外交官というのはこれぐらいの日本人である以上は土性っ骨を持ったやつがいるんです。  いま、政党といい、あるいは外交官といい、外交官もいままではおおむねアメリカの方ばかり向いて、アメリカの方へ行って外交官として活躍した方がいいというので、ソ連を向いているやつは余りいなかった。しかし、個人の趣味や栄達じゃない。いやだと思っても、ソ連に対してもあるいは中国に対しても、みずから一国の運命を打開するためにそこで命を捨ててもよいと、それだけの覚悟ができた以外には、もう外交官もよしてもらうようにして、政治家もよしてもらうようにして、つまらぬ論議で小田原評議をやっていたのでは、成田の例がいい例じゃありませんか、何のために警官を動員したんです。ここに抜けられますという穴がありと、全く昔の赤線じゃあるまいし、抜けられますというような穴もふさぐことができないというのは全くあな恐ろしい末世的な時代でありますが、こういう形で、私は、これは笑い事じゃありませんよ、成田の例は不動さんがやはり教えたんです。不動というのは不動の姿勢です。不動の姿勢です。これだけの紅蓮をかぶっても不動の姿勢をもって方向づけなければ平和は確保できないのです。武力がなければ平和が保てないなどというのは時代おくれなんで、いつでも、福田内閣なり自民党がもうてこずってしまったからソ連中国外交はやめだと言うならば、野党が全部引き受けてみごとに問題を解決してみせますから。こういうまごまごしたことをやっていられるとなめられるばかりであって、いい悪いの問題で民族が相手から軽べつせられて、なめられるということになったら、もう収拾がつかなくなるんです。  どうぞそういう意味において、あなたはソ連の方には当分行かないかと思うんですが、今度、きょうの新聞によると、ずうっとポーランドからヨーロッパを歩いてくるといいますが、ああいう大体日程ですか。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が軍縮総会に出るとすれば、ああいう予定で各国を歴訪しようかと検討している一案でございます。
  18. 戸叶武

    ○戸叶武君 方々、中近東を見たし、東南アジアも見たし、それからヨーロッパも東欧圏も見て、しっかり総理大臣外務大臣もふんどしを引き締めて私はやらないと、頼りなくてしようがないと思います。  いま私は日本が見ているのは、日本のやはり政治外交面において、具体的には円の問題もさることながら、円だって二百二十二円にたたき落とされるなんていうのは、これは日銀は日銀、大蔵省は大蔵省とちょっとばらばらなところもありますが、やってみても、あんな小手細工じゃどうにもならないじゃないですか、信用されてないんだから。やはりドイツにおけるあの底なしのインフレーションが行われたときにも、ドイツの中には祖国のために死のうという政治家が、シュトレーゼマンのような人は事実上死んでしまったが、あのインフレを食いとめるために政治姿勢を正しくして、まず第一に自分が命を張って政治の信用を確保したというところにドイツのインフレーションを食いとめることができたんです。ヤング案、ドーズ案という形だけでなくて、政治家の中心にある者が祖国を救うためには自分は命をかけて祈る気持ちでやっていくということなしには、私はインフレーションなんていうのは物価なり通貨の面における不信用からきているので、その根源は政治から発しているんです。  福田さんなり何なりわかっているはずだが、なまはんかやっぱり大蔵官僚であって、その方の小手先がきくがゆえに一番大切なことを忘れているから、福田さん的な思考のもとにおいて物価を一応抑えたような形であるが、景気浮揚ができないのは大衆を信じないからです。生産に従事する働く人にゆとりができ、安心ができ、その購買力が復活しなければ、絶対に需給のバランスというものはつくり上げられないのであります。経済を単なる経済現象として見るんじゃなくて、経済は生きた人間の生活と結びついている現象であって、この生きた人間の心を把握しなければ、それは観念的な精神主義じゃない、悩みを理解し、その人たちを勇み立って生産に従事させるような体制ができなければ、私は断じて日本のインフレ食いとめなり通貨政策というものは失敗を繰り返すだけにすぎないと思うんです。それが証拠に、だらしないじゃないか、下痢が続いて下痢どめができないじゃないですか。まあ余り心配したことじゃなくて、私がイギリスに留学した時分は、一ドルが二円でしたから、まだそこまでは下がってきませんから余裕があるけれども、その時代の基準といまの基準は違っているんでありまして、日本がこれだけの一つの生産意欲、勤労意欲を持っていながら、このだらしない状態にまできているというのは国際的に孤立しているからです。どこへ行っても鼻つままれている。鼻つままれるといっても日本人はそんな悪いやつばっかりいるわけじゃないけれども、うそを言うからいけない、信用されてないからいけないんで、その一番の中心は成田事件でもそうでしょう。  政治において、教育において、憲法で教育なりあるいは厚生関係なり保障するといって書かれていても、図面には書かれているが貧乏人は教育はできない。ばかでも金さえ使えば医者にもなれる、金さえ使えば国会議員にも出てくる。こういうふしだらな悪循環の中に日本はいま埋没しようとしているのです。これはもう全く昭和元禄とはよく言ったもので徳川幕府を倒したのは元禄の退廃の中から崩れていったんですが、いま本当福田さんあたりは一生懸命やっている、園田さんもおれは一生懸命やっているんだという一生懸命に力んでいる姿はわかるが、どこか私は空気が漏れているところがあるんじゃないか。力み過ぎるとやはりだめなんで、幾らか間を置いて――日本の芸術というのは間を置くところに芸術があるんだそうですが、やはり一つのゆとりを持たして国民に安心感を与えなければ、これはとても危機感の累積だけだと不祥事が起きると思うのです。私だけじゃない、まじめな人たちがもういま血盟団事件、あの二・二六が起きる前夜をほうふつさせるものがあるというふうに見ているのが多いのです。  人を直接テロリズムで殺さないけど、人を殺す以上の凶悪と思われるような事態が成田でも何でもなされて、それが当然であるような感覚でばか者たちがそこへ突入していかなければならないような空気は、ばか者たちを取り締まることも急務であるが、その悪気流をつくった根源はどこにあるかということを政治家はえりを正しゅうして考えなければ、私は危機は去らないと思うのです。どうぞ、あの時代においてもそうです。共産党狩りだ、あるいはテロリストに対する弾圧だと言っていながら、警官、特高、法律、そういうものだけ厳しくなったのと反比例してファシズムを助長させた激流となって戦争戦争への道を歩んでいったのです。いまファシズムの台頭期です。現象面だけを見ているけれども、世界じゅうに政治不信の渦が巻いて、日本だけではないが、若者たちがわけのわからないと思うような、のたうち回っている姿というものを見ると、これは非常な世界の危機感というものが深まっているということを私は感ぜざるを得ないのです。  園田さんに私は願いたいのは、隗より始めよです、自分がばかになることです、傷だらけになることです。紅蓮の炎の中でまといを握りしめて倒れていくようなあの火消し、まとい持ちが持ったような精神を持って外務大臣をやらなければ、なまはんかなカクテルパーティやレセプションや、あるいはそういうような形の虚礼だけでは今日の狂瀾怒濤を生きることはできないと私は外務大臣は覚悟してもらいたいと思うのでありまして、それを抽象的な論議ではだめだ。この日中平和友好条約を通じて議論をすべきところは徹底的に議論をし、自民党あたりでは遠慮が要らないから、熱血児が多いからつかみ合いのけんかでも何でもやって、意見が分かれたら党を割って脱党でも何でもやって、そうして意見を通すという形で、もうはっきり物を決しなければ、フランスにおけるドゴールがドゴール体例をつくったときも、ファシズムヘの道を行ったのじゃない、無性格な国のために、何が大切かを忘れた政治に対して何らかのショック療法をしなければならないというのがルネ・キャピタンなりアンドレ・モーロアの一つの批判であったと思うのです。いま日本に、フランスとは違うが、アンドレ・モーロアやあるいはルネ・キャピタンのような者が出て国を憂えていかなければ、漫然として対処したのでは日本を救うことはできないところへ私は来ていると思います。これはもうこの辺にして、質問はしないで、これはもう釈迦に説法で、余りお釈迦さんになられても困るから、この辺でひとつ園田さんしっかりやってくださいよ、本当に。  それでは、特許協力条約の問題で質問をいたします。  これは国際条約でありまして、特許協力条約の問題は、すでに私たちがいままでこの前提として国際機関にアタッシェを送るようなことをもなし遂げてまいったのでありますが、どうしてもこの条約を早く成立させなければ前進がないというので今日特許協力条約関連国内法改正に対するいろいろな要請があるのですが、これがおくれた原因は何にあったんでしょうか。これは特許庁なり外務省にお聞きしたいのですが、イギリスなりアメリカなりと違って、日本はなぜこういうふうにいままでおくらしてきたのでしょうか。
  19. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) この条約は八カ国が批准書を寄託した後に三カ月で効力を生ずるということになっておりまして、本年一月になりまして、この条件が充足されて発効したわけでございます。したがいまして、発効いたしましてからまだ非常に日がたっておらないという状況にございます。  わが国といたしましては、いわゆる特許大国といたしまして早くこの条約を締結すべきではなかったかというお考えはまことにごもっともでございますが、すでにこの条約に加入している国につきましても国内体制の整備に時間がかかっておる実情にございます。この条約の発効条件を充足するのに本年一月まで待たなければならなかったという事情も各国のそうした実態に存するわけでございます。わが国におきましても、これらの諸国と同様、国内体制の整備に時間がかかったという点が一番批准に時間を要した点でございます。
  20. 戸叶武

    ○戸叶武君 これに関連して、改正法案の条文で、これを理由とする特許異議の申し立てがあった場合に限るということによると、原文の範囲を拡大した翻訳文でも審査官は審査できず、異議申し立てがあっても多国籍企業が資金力に物を言わせて異議申し立て人を抑えてしまうようなこともあるので、そういうことが起こらないようなことを十分配慮しなければならない。この問題は、翻訳問題に関して、衆議院の外務委員会で土井さんが具体的に指摘しておりますが、あのいきさつの問題点はどこにあるのですか。
  21. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) まず、仏国において審査の段階でどういう措置をとるかということにつきましては、それぞれの国の自主的な判断に任されておるわけでございます。そもそも、こういった特許協力条約のような多国間の取り決めにおきまして、多数の種類の国語によって構成されております国の間での国際出願の統一化、こういうことをこの条約はねらっているわけでございますが、こういう条約では、もともと原語によります出願とそれから翻訳文というものが一体であるということを前提として初めて成り立つわけだと考えております。  で、各国は、実際の審査に当たりまして、翻訳文の提出を待って審査を開始する、こういうことになるわけでございますが、そのそれぞれの国の国語で特許の権利というものが付与されるわけでございます。そういう意味で、一定の期間内に翻釈文が提出されない場合には、それは国際出願を取り下げたものとみなされる、こういう条約の規定になっておるわけでございまして、私どもが、こういった考え方の上に立ちまして、国内法の段階で、ただいま先生御指摘になりました、翻訳文と原文との間に不一致が生じた場合にどのようにするか、これはきわめて重要な問題でございまして、私どもも種々検討いたしましたが、この条約と並行いたしまして国内法案を別途本国会に提出をいたしておりますが、そこでは、翻訳文に基礎を置いて審査をいたしまして、その翻訳文の範囲が原文の範囲を超えておるという場合につきましては、もともとこういうケースというのは先ほど申しました前提から見てそう多くはないわけでございますが、そういった場合には二つの方法で救済措置をとっているわけでございます。  一つは、権利になった後そういった事態を発見した場合には、無効審判と訂正審判とを法的にリンクさせる方式によりまして、その範囲をきちんと是正することができるような措置を一つ講じております。それから二つ目には、特許権の付与の前の段階におきましては、出願公告の後で異議の申し立てによって是正するという措置を講じております。この出願公告というのはいわば仮保護の権利が与えられるわけでございますので、いわゆる権利付与されたものに準じたものとしまして同様の措置を講じているわけでございます。  さて、それでは、その以前にさらにさかのぼって、審査の段階でたまたまその原文の範囲を超えておる、そういった翻訳があることを発見した場合に、審査官が職権でこれを是正するということができるかどうか、こういう問題がございます。いま御指摘になった問題でございます。  これにつきましては、私どもの考え方としましては、原文と翻訳文と一致しているという前提を疑いまして、当初からそれをきちんと照合し、後審査をやっていくという問題につきましては、これは非常に多くの種類の言語があるわけでございます。それらについてすべてそういう措置をし照合をやって審査を行っていくということを審査段階で要求することは実際上不可能でございますし、また、そのことを法的に強制をするということはこれまた実情に反しておるという考えを持っておるわけでございます。さらに、たまたま審査の段階で審査官が発見した場合に是正措置を講ずるようにいたしますと、これはどういう事情によってかわかりませんが、たまたまそういう事態がありました場合には、その審査官の恣意的な審査を容認するという、いわば制度の公平さを担保することができない。それぞれの審査官の考えで、あるいはその置かれたある状況のもとでたまたま発見できたものだけをそういう措置をするということになりますと、大変審査の内容についてばらつきが出るわけでございまして、これは出願に対する公平性を確保するという特許制度の一番大きな目標というものに対して矛盾する、こういう考え方で、私どもは、これは法的にはとらないという考え方をとっておるわけでございます。  結論といたしまして、審査中におきます審査は日本文によって行う。後の救済措置は、先ほど申し上げましたような公告後異義の申し立て、それから特許後無効審判の請求という形において整理をする、こういう考え方で対処することにいたしております。
  22. 戸叶武

    ○戸叶武君 衆議院で指摘したのは、翻釈文の内容が特許庁でしたものと外務省で出したものと違う、いずれが正しいのかというような追及がなされたようですが、あなたたち見解では、翻訳にはいろいろな訳し方も表現において若干の迷いもあるが、内容的には何ら変わっていないというような形において答弁されたと思うのでありますが、その点が明らかに一般からわからないような場合においては、それに対して解説書を出すなり、あるいは問い合わせに対しては親切にその説明を行うなり、そういうことをしないと、いわゆる役所仕事でおざなりだと混乱を招くおそれもあると思いますが、それをどういうふうに今後具体的には対処していくおつもりでありますか。
  23. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) まず第一に、今回、私ども、この条約の承認をいただきました場合に、特許協力条約室というのを新設といいますか、創設をする考えでございます。ここがこのPCT関係につきましての直接の担当の室である、こういう内部的な機構の整備を行う考えでございます。もともと工業所有権相談所というのがこちらにございますが、特許庁の中でこの相談所とPCT室というものを整備いたしまして、いろいろな御相談なり指導を行いたいというのが第一でございます。  第二は、この新しい制度の創設でございますので、全国各地におきまして講習会、説明会を開催をして周知方を図る計画でございます。  節三に、発明協会という財団法人がございますが、これは各府県に支部を持っております全国的な組織でございます。これはいろいろ発明思想の普及ということを担当しております公益法人でございますが、ここの全国組織を活用いたしまして、名地の中小企業の方々も含めましてこのPCTに関します内容、細かい手続等に対します指導を行うよう私どもとしても促進をいたしてまいりたい、かように考えております。
  24. 戸叶武

    ○戸叶武君 その翻訳文が公表されるのは二十カ月以内ということになっているんですか。
  25. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 国際出願を行いまして、それが認められますと、その後、二十カ月以内に出願を希望しております指定国に翻訳文を提出するということに条約上なっております。
  26. 戸叶武

    ○戸叶武君 アメリカではどうなっていますか。
  27. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 条約上は、各国同じ取り扱いでございます。
  28. 戸叶武

    ○戸叶武君 法定訳文は統一あるように修正さるべきものであるという見解もありますが、この条約第十一条(3)、同七条(1)、同八条(2)の(a)、その他の規定において「サブジェクト トゥ」に関する訳文の統一、それはどういう方法においてなされるでしょうか。
  29. 山田中正

    説明員(山田中正君) お答え申し上げます。  いま先生御指摘になりました条約テキストの原文に「サブジェクト トゥ」がある場合の訳し方の問題でございますが、まず原則といたしまして、私ども、国会で御審議いただきます条約和文テキストを策定いたします場合に、同一の条約の中で同一の表現がございます場合には、日本語におきましても同一の日本語を用いるというのが大原則でございますが、たまたま先生御指摘になりました場合は必ずしもその原則が適用できないという場合でございます。  「サブジェクト トゥ」を用いております場合は、条約の中で二つ以上の規定の適用関係をあらわしておるわけでございますが、その適用関係が、一つの規定の適用があります場合に他の規定の適用を排除いたします場合に、私どもとしては何々の「場合を除くほか」というふうに訳しておりまして、他方、一つの規定の適用があって、その規定である程度修飾はされますけれども、さらに他の方の規定も適用がある場合、この場合には「従うことを条件として」というふうに訳し分けております。と申しますのは、そのように訳し分けた方がテキストを御理解いただくのに理解しやすいのではないかと思う次第でございます。  御指摘ございました第十一条でございますが、十一条の(3)項のところに「第六十四条(4)の規定に従うことを条件として、」という私先ほど申し上げました後者の例を用いておりますが、これは六十四条の(4)項をごらんいただきますと、六十四条の(4)で先行技術の問題について一つの制度を有する国が宣言ができる。そしてその(b)、項で「(a)の宣言を行った国は、その限度において第十一条(3)の規定に拘束されない。」したがいまして六十四条の(4)項の規定の適用がございます場合には十一条(3)の適用が少し変更されますが、しかし、ここで申しておりますのは、その限度において拘束されないということで、十一条(3)項の規定の適用自体が排除いたされておりませんので、「規定に従うことを条件として、」というふうに訳出いたしております。  なお、御参考までに、先ほど申しました「適用される場合を除くほか、」という例といたしましては、たとえば第七条の(2)、項に「(2)(ii)の規定が適用される場合を除くほか、」という表現を用いておりますが、これは出願人が図面の提出を要求される場合につきまして、第七条では(1)項で「発明の理解に必要な場合に要求される。」それから(2)項の(ii)では「発明の理解に必要でない場合であっても、発明の性質上図面によって説明することができるとき」であって、指定官庁が提出を要求した場合、したがいまして出願人はこの(1)項の場合と(2)の二つのケースの場合に図面の提出を要求される場合があるわけでございますが、この二つの規定の適用関係はどちらか一方が適用されればどちらかが適用されないという排他的関係でございますので「適用される場合を除くほか、」というふうに訳しております。
  30. 戸叶武

    ○戸叶武君 昭和五十一年五月十一日、参議院の外務委員会において、私たちが全会一致で要望した点は、情報時代における特許事務の対応体制です。  一、特許情報の複雑多様化、国際化の進展に伴う特許分数の重要性にかんがみ、特許分類審査機構の抜本的拡充を図るとともに、特許分類についての法的措置を速やかに講ずること。  二、工業所有権制度の国際化に対応し得るよう、専門の職員を内外において確保すること。特にジュネーブ国際機関日本政府代表部の人員の確保を早急に実現すること。  三、日本特許分類から国際特許分類への変換に伴い、審査体制の抜本的再検討を進めるとともに、公報の利用等について過渡期の混乱を極力避けるため、これらの内容の周知徹底を図り、その円滑な運用に努めること。  四、特許情報の有効的利用を促進し、特に、中小企業等の利用の便宜を図るため、地方における閲覧体制の整備等、特許情報サービスの強化拡充を図ること。  五、特許情報に関する国際企業の進出に対処するため、日本特許情報センターの強化拡充を図ること。  これを全会一致で私たち外務委員会で要請したんですが、これは大体この方の努力は払われておりますか。
  31. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 冒頭の、今後増大してまいります特許情報の効率的な管理を通じて、内外の特許付与に対します効率の向上、サービスの改善、こういったことはきわめて私どもも御指摘のとおり今後の最重要な課題であると考えておりまして、鋭意、今日まで努力をいたしてまいっております。  その基礎になりますのは分類でございますが、この分類はすでに当委員会でも御承認賜りましたIPC国際分類並びに日本特許分類、この両分類を現在付与いたしておるわけでございますが、この分類は、この付与が誤りますと、情報の検索が円滑にまいらないということになりますので、また同時に、これは当庁の審査業務にも重大な関連もございます。御指摘いただきましたこの分類に対しましては、私ども、年々、分類審査室におきます業務体制の拡充を図ってまいっておりまして、五十三年度におきましては五人の増員を考えております。今日現状が二十九人でございますので、五十三年度には三十四人ということになるわけでございますが、逐年、この分類審査官の増員をいたしております。また分類付与のための、とりわけIPCを付与していくという面におきまして、運用基準を作成いたしまして、その促進化に努力をいたしているところでございます。  第二に、御指摘の国際機関に対します職員の日本からの出向職員の増員の問題でございますが、これも鋭意努力をいたしておりますが、とりわけ、今回、このPCT条約が批准され、日本が加盟をするということになりました暁には、現在二人参っております職員に対しまして、さらに増員を行うということについて明るい展望を持つことができると考えております。また、五十三年度におきまして、先生御指摘のように、初めてジュネーブの日本代表部に特許アタッシェの新設が認められておりますので、今後、特許制度の国際化の際に、この特許アタッシェは非常に大きな役割りを果たすものと期待をいたしております。  三番目の、審査体制の強化の問題につきましては、今日まで鋭意努力を続けてまいっております。どうも私ども審査の面におきまして、かねがね言われておりました特許庁におきます出願の滞貸が非常に多い、処理がおくれるという問題を当庁といたしまして最大の課題と考え、その滞貨の縮小ということに向かって努力を続けまして、当庁審査官の大変な努力によりまして、今日かなりの改善を見るに至っております。昭和四十五年に、いわゆる要処理期間、処理に要する期間、平均五年という時代がございましたが、今日ただいまでは、これがほぼ二年三カ月程度に短縮してまいっているかと思います。国際水準はほぼ三年前後でございますので、まだ一歩足りない感じではございますが、引き続き努力をいたしまして、改善に努力をいたしたいと考えているものでございます。  四番目の、いわゆる閲覧体制の強化につきましては、これも私どもの行政の重要な一環といたしまして今日まで努力をいたしているところでございます。  とりわけ、その中核に今後なってまいると思います特許情報センターの育成の問題、これは最後の問題になるわけでございますが、この強化につきまして私ども従来以上にさらに努力をしてまいりたい。とりわけ国の補助金、また、その他の金の増額等を行いまして、この特許情報センターの財政基盤の強化をいたしまして、一般のニーズに対応できるような特許情報の検索業務が円滑にいくように充実をしてまいりたいと考えておるところでございます。とりわけサービスの体制として問題になりますのは、全国に組織を持っております発明協会と、それからこの特許情報センターとタイアップいたしまして、昨年の秋に業務提携が実現いたしました。今後の全国各地のニーズに対応できるように、またニーズの発掘は何かと、その把握に努めるというような体制もでき上がっておりますので、この特許情報センターと発明協会とのそれぞれの分担に応じまして、両者の提携によりましてサービスの向上にさらに努力を続けたい、かように考えております。
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 特許協力条約、PCTへの加盟はアメリカが一九七五年の十一月二十六日、ドイツが一九七六年の七月十九日、イギリスが一九七七年の十月二十四日、フランスが一九七七年の十一月二十五日、ソビエトが一九七七年の十二月二十九日となっておりますが、日本がこれらの先進諸国から見ると一番後になったのは、簡単でいいですが、事情はどういうところにあります。
  33. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 先ほどもお答えしたことに重複するかと存じますけれども、国内体制の整備ということに一番時間がかかったということもございます。それに、続きましては、各国、要するに特許の主要国と言われる国が加盟しておりません限りにおきましては、この条約の国際的な、あるいは国内的な効果というものも非常に減殺されるわけでございますが、そうした点からいわゆる特許大国と言われる諸国が加盟するという事実を認めがたかったという点もあるわけでございます。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、昨年の十一年九日付の質問主意書におきまして、ジュネーブ国際機関日本政府代表部の人員確保についてただしたところ、現在協議中である旨の回答がありましたが、その後、アタッシェを派遣することにもなったということですが、これは現在どのような状態で、今後このWIPO、世界知的所有権機構等にどれほど職員を日本で持っていくことができるか、その点を簡単にお尋ねいたします。
  35. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 明年度から特許協力条約関係で一名増員がすでに政府原案においては認められておりますので、予算の成立次第、その実施が実現し得るということでございます。  それからお尋ねのWIPOの職員でございますが、このWIPOには現在のところ百七十一名の国際職員がおりますが、そのうち日本人職員が配属されておりますのは三名でございます。
  36. 戸叶武

    ○戸叶武君 時間が参りましたので、最後に、締めくくりの形で外務大臣に一点を質問いたします。  それは、日本で北方領土の問題、漁業の問題等の実情を知りたいために宮澤外務大臣がその視察に赴いたときに、ソ連側では大変警戒線を張って、いら立って宮澤外務大臣の攻撃を行いましたが、日本側では、今回、ブレジネフ書記長がシベリアへ出発した。それにソ連の国防相のウスチノフ国防相も同行したといいますが、ソ連がシベリアの地帯を視察し、あるいは中ソ国境とか、あるいはその地を視察しても、日本は別にそれにいら立つ必要はないと思いますが、ソ連のいら立ちと日本のこの冷静さはどこに違いがあるかを承りたい。  それからもう一つは、ユーゴのチトーさんが南北朝鮮の会議を目指して、そうして中立路線、第三路線を設定しようという試みもあるようですが、これに対しては暗黙の理解をアメリカあるいはソ連も行っているのかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) 新聞報道による北鮮と南鮮との話し合いをユーゴの大統領がやったという報道でありますが、これはまずユーゴが米国に提案をしたと言われておりまして、そして北と南に仲介をして話し合いをしたいという提案があったときに、アメリカ韓国の了承があればよいけれども、了承が問題であるという話があり、韓国の方は第三者立ち会いの話し合いを拒否したというのが私の聞いております情報でございます。  なお、ブレジネフ書記長が二十九日にウスチノフ国防大臣を帯同して、列車でシベリア極東地方視察に出発をして、同書記長は二十九日にキーロフ、ウドムロト自治共和国領内及びペルミ市で下車して、出迎えた現地の各党組織指導者に対し、第十次五カ年計画の課題遂行における成功について演説したという情報を承っておるわけであります。したがいまして、まだ出先公館から報告が来たわけではありませんから、目的等を詳細には把握しておりませんけれども、国防大臣を帯同してシベリアを視察をしたということは軍事的な面等もあって行ったものと推察をいたします。しかし、それが具体的に特別な問題等を提起しているわけではございませんから、いまのところ冷静に私はこれを見守っておるわけでございます。
  38. 戸叶武

    ○戸叶武君 以上で終わります。
  39. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 一昨日、当委員会におきまして、ただいま議題となっておりますPCTの趣旨説明が行われたわけであります。述べられておりますように、本件につきましては、将来展望を考えた場合でも、日本は宿命的とも言える技術立国としてこれから歩みを続けていかなければならない、当然だろうと私は思うんです。と同時に、今後の経済成長を考え、また科学技術の進歩というものを考えた場合に、特許の権利を保護するということは非常に重要な問題になるであろうし、また、それが阻害された場合に日本全体に及ぼす影響というものはきわめて脅威である、こういうことになることは常識的にも判断できる問題でございます。  ところが、そのような重要な条約であるにかかわらず、実際、私どもの手元に来ましたこの三百七十四ページにわたる条約案件は、調べようにも調べようがないです、こういう重大な問題について。それはいろんな問題点が私はあったんだろうと思うんですけれども、たとえば国内法との関連においてどう整合性を持たせるかという問題もございましょう。けれども、ワシントンにおいてこの問題が提起されたのは一九七〇年六月十九日であります。もうすでに特許庁においては仮訳文を持って、それを土台にしながら検討してきたといういきさつもあるわけでございます。先ほど小林さんから非常におくれたという理由を伺いました。しかし、それはおくれたというにはいろいろな理由づけというものがあるだろうと私は思います、表面的には。けれども、われわれから考えれば、やはり国の将来をどうするかという問題につながるだけに、こんな安直な審議の仕方でいいんだろうか。  確かにこれが発効されて、具体的な運営の段階に入るまでわずかな期間しかない、急がなければならない。努力もされてきたことは私も決して評価をしないわけじゃございませんけれども、園田さん、いかがでございましょうか、これからこういう条約案件というものがしばしばこういう形になって出されるというところに非常に危険を感ずるのでございます。基本的な問題については、また別の機会に総括的にやりたいと思うんですけれども、今回、いみじくもこうしたことが一例となって提起されたわけです。いかがでございましょうか。
  40. 園田直

    国務大臣園田直君) 御存じのとおりに、条約、協定の数が逐次増大をしておりまして、これを御審議願うについては前もって準備をし、前もって資料をお届けをして、そしてこれを検討していただく時間を十分考えて御審議を願うよう、いままでのやり方をさらに検討をするべきことだと考えます。
  41. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、私も非常に短い時間、窮屈な思いをしながら、とても全部なんか検討し切れません、これははっきり申し上げて。国内法との関連において一体どうなっているんだろう、そういうことも調べなければならないわけですね。特許庁としては完璧な整合性がある、条約に基づいて国内の関連法も完璧である、そのようにお認めになりますか。
  42. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 私は、そのように考えております。  一番問題になりますのは、こういった多国間の取り決め、条約でございますので、それぞれの国情、国内体制というものが違っておるわけでございまして、どのように国内にこれをドッキングさせていくかということが各国にとりましての非常に大きな問題でございます。私どもとしましては、すでに五十一年から工業所有権審議会にPCT小委員会を設けまして、各界の専門家にお入りいただきまして審議をいたしてまいりまして、一つは国際出願という、従来の特許法、実用新案法等、工業所有権の分野になかった新しい制度を創設をするということが一つでございますが、同時に、いわゆる外国から外国語で日本に向けて国際出願されましたものが、日本へ参った後、現行の特許法でこれをどのように受けとめるかという問題がございます。この二点をこの審議会小委員会で二年近い時間をかけて今日まで議論を賜ったわけでございます。  非常に法技術的になかなかむずかしい点もあるわけでございますが、私ども、まずは条約との関連、国内法との関連につきまして慎重に審議を賜りまして、これはちょっと経緯として申し上げますが、工業所有権審議会におきまして全会一致をもちまして答申を賜りましたものを今回国内法案といたしまして本国会に御審議のために付記をいたしているわけでございまして、今後、十分な御審議を賜りたい。私どもとしては、今回の条約に伴います国内法の体制というものは最善、完璧なものであるという自信を持って御提出を申し上げているわけでございます。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま私どもが手元に持っておりますこの条約でございますが、これはこのとおりに受けとめてよろしいものですか、それとも解釈という段階でもって、もっと拡大された理解というものを求められるものでございましょうか。
  44. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 非常に御指摘のように膨大な条約でございますし、関連する部分が技術的に非常に広範にわたっておりますので、解釈について疑問が利用者の方から提起される、関係者から指摘されるということも将来あり得るかと存じますので、これは運用の過程において補足される面が多いかと存じます。ただいまのところ、私どもといたしましては、特許庁におきまして、これがわが国につきまして効力を持つようになりましたと同時に、その説明のための資料の作成あるいは説明の機会を設けるといったような点を通じて周知に努めるというふうに了解いたしておりますけれども、今後の運用を通じて補足的に説明を明らかにしていく必要の生ずる点があり得るというふうには感じております。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの御答弁ですと、補足的にということは、これはばらばらであってはならないわけですね。当然、統一された見解に基づいて解釈されなければならない。そうしたことがしょっちゅうこれからも起こる可能性があるだろうというふうに思うんです。  聞くところによりますと、それは注解というふうな判断でもって解釈されているというふうに伺っているんですけれども、それはどうなんですか。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) いま事務当局から御答弁を申し上げましたが、いま御指摘をされたことはきわめて重大でありまして、いよいよこの条約を批准し、これが実際に実行されますと、日本国民で特許の出願を各国にするわけであります。そのする場合に、日本語で書かれた文章の理解と、これは原文は英語とフランス語でありますから、その際に食い違いがあるかどうか、あるいは日本の方で理解される方々に一々問題が起こってから説明する、こういうことでは大変なことであります。  しかしながら、ここで承認をお願いする以上、やってみまして、後欠点があったら補足しますと、こういうことでは手おくれでございまして、この条約を御承認願えれば、事務当局は全力を挙げてこれを検討し、そしてこれの運用の解説書を別に準備をして、そして日本人の方々にその説明をすべく準備をすることが妥当なことであると考え、そのように努力したいと考えております。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃるとおりだと思います。  そこで、限られた時間で果たしてどこまでお伺いできるかわかりませんけれども、まず最初に、先ほどもちょっと話が出ておりますけれども、条約の第十一条第三項目、これはしばしば衆議院の段階でも問題になったようでございますが、私が何も知らない一国民という立場に立ってわかりやすくひとつ教えていただきたいと思うのでありますが、この第十一条の第三項目というこの目的、これはどういう意味を持ったものであるのか。
  48. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) これまた外務省の方からも御説明があるかとも思いますが、私ども実施する立場にある者といたしまして、この十一条の三項というのは次のように解釈をいたしております。  この十一条三項の趣旨は、定められました一定の要件を満たし、また国際出願日を認められました国際出願というものが各指定国において正規の国内の出願としての効果を持っておるということ、国際出願日は各指定国におきます実際の出願日とみなす、こういうことが趣旨でございまして、要するに、国際出願のそれぞれ指定されました国において一体どういう効果を持つかというのがこの十一条三項の趣旨であると考えておるわけでございます。つまり、一つの国際出願というものが多数の国をそれぞれ指定国として出ていくわけでございますので、それぞれ出されました先の指定国におきまして国内の出願と同一の効果を持つということをこの十一条の三項で規定するということが目的である、こういうふうに理解をいたしております。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その場合ですれ、その審査の手続といたしまして、原文が基本になるのか、翻訳文が基本になるのか、どちらでございますか。
  50. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 先ほどもちょっと触れたわけでございますが、審査の段階でどのようにするかは各国の自主的な判断に任せられているわけでございますが、日本の場合には、審査は翻訳文の提出を待って行う場合に、その翻訳文を正規の国内の審査の際の基礎になる国内出願としての効果を持たせることにいたしております。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしますと、あくまで翻訳が基本になるということでございますね。この第三項目を見る限りにおいては、どこにもそういうことが規定されておりませんね。これはどこで理解したらよろしいんですか。原文によるのか、翻訳文によるのか、これは先ほど御説明があったように、こちらの判断にゆだねられる、したがってそのゆだねられたその結果は翻訳文をもとにする、その論拠はどこにあるのか。
  52. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御指摘をされたところは非常に急所を御指摘されたわけで、渋谷先生が言われたことは原語と日本語との関係を言っておられることだと思います。  原語は「サブジェクト トゥ」という原語で、この三項では「規定に従うことを条件とし」と訳してあるし、それからその前の七条では「適用される場合を除くほか」と、こういうふうに同じ言葉が二つに使い分けてあるわけであります。これをきっと御指摘されたことだと思いますが、日本語というものはなかなか複雑でございましてむずかしいものでございますので、前後の続きでこのように訳してあるわけでありまして、どちらも間違った訳とは言えないわけであります。しかし、そこにそういう誤解が出てくる、それを日本文を読んだ者の判断によって示すということは、いろいろその後出願をする人々に煩瑣な手続をかけ迷惑をかけるわけでありますから、こういう点が、先ほど申しましたように、その判断を的確に統一をして解説書を出すべきだ、こういうことを申し上げたわけでございます。
  53. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま、園田さんは、私が次に聞こうということを先にお述べになっちゃったんですよね。私は、いま長官に、そうじゃないんです、翻訳文に基づくという論拠はどこにあるのかということを尋ねているのです。
  54. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) まず、二十三条に翻訳文を提出しなさいということが書いてございます。それから、二十四条に、この翻釈文を一定の期間内に提出しない場合には取り下げとみなすということが書かれておるわけでございます。  これが先ほども申し上げましたが、翻訳文と原語による国際出願というものをどのように各国で処理をするかという、この条約で書かれている条項でございまして、これを受けまして、私どもといたしましては、翻訳文を基礎といたしまして審査を行います。ただ、それによりますと原語とそれから国際出願との間に不一致が生ずることが先ほど出しましたようにございます。その場合の措置といたしまして、条約四十六条によりまして、権利後の措置に対して、特に原語を越えた翻訳文の部分と申しますか、限りにおいてそれは無効とすることができるという規定があるわけでございまして、その規定に従いまして措置を行っておるというわけでございます。条約上、認められておるものというふうに考えておるわけです。
  55. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し上げている問題はすでに提起された内容でありまして、その辺を含まれて、いま長官は経過を述べられたんだろうと思うんですね、四十六条注解に基づく。  そこで、四十六条からさらに今度園田さんが答弁されたことに連動していくわけなんですけれども、まあその翻訳文に基づくことも結構です、後からまた若干それについて触れたい。いまここで明確になったことは、一本の場合には、その審査の手続はあくまでも翻訳文による、こう理解してよろしいですね。
  56. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) さようでございます。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで四十六条の問題なんですが、これは私が読んでも、何回も何回も読んで一生懸命理解に努めようと思ってみたんですが、一体、全体を示すのか、部分を示すのかというその問題ですね。これはすでに特許庁自身が一九七〇年以降においていろいろと御検討になった際に仮訳が出ているんですね、この仮訳とこの本文が全く違う。その仮説の場合はきわめて明確です。だれが見ても、これはああなるほど、こういうことを述べているんだなと。ところが、それががらっと変わっちゃって、この訳文になりますと、一体、何を意味しているんだろうかと、こうした問題がまず一つ。  それから、せっかく山田さんおっしゃってくださったもんですから、この「サブジェクト トゥ」についてもこれは一体何通りあると思いますか。条約や規則の中で五通り出てくるんですよ、その解釈の違いが。日本語は複雑ですから、とりようによってはいろいろととり方が出てくることもやむを得ないと言えばやむを得ないかもしれませんけれども、こんなに混乱した訳し方でいいのかどうなのか。その辺はせっかく法制局の方もお出かけをいただいておりますので、この機会に、将来もありますので明快にひとつ私どもにわかるように御答弁をいただきたいというふうに思うわけです。
  58. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 多数国間条約の日本語テキストの作成に当たりましては、できるだけ原文に忠実に、しかもその日本文として正確でわかりやすいものであるべきだという基本的な考え方に立っております。しかし、いかなる場合にもこれらすべての要件が満たされるとは限りませんので、その場合にどうするかと申しますと、私どもとしましてはやはり原文に忠実であるということを基本的な方針としております。と申しますのは、もしその翻訳によりまして条約自体の案文が修正されるようなことがあるということでは行き過ぎであるということでございますので、原文に忠実であるということを基本的な方針としております。  まず、御指摘の一点につきましては、四十六条の「となる限りにおいて」というところの御指摘であろうかと存じますけれども、この点につきましても、私どもは従来の先例をも参照いたしまして、たとえば千九百六十一年の麻薬に関する単一条約の四十九条等におきましては、同じ原文の原語に対しまして「限りにおいて」という訳語を与えておりますこと。それから、この四十六条自体の文脈におきまして何々「となる限りにおいて」と、そういうのが相当と考えまして、さような訳語にしたという次第でございます。  それから、いま一点の「サブジェクト トゥ」の問題でございますけれども、まず第八条の(2)におきまして、「場合を除くほか」といたしましたのは、国内法令におきます規定の仕方にならったものでございますけれども、同条におきましては、(b)の規定が適用されます場合には(a)の規定が適用されない、(a)と(b)とは排他性と申しますか、相互排除の関係にあるということで、このような訳語を用いました。  それから十一条の(3)でございますが、十一条の(3)は六十四条と関係ございまして、六十四条の宣言が行われた場合には六十四条の規定に従うことを条件としてという趣旨だと存じますけれども、そこまで書きますのは行き過ぎではないかということで原文の限りで書いておりますので、なおさらわかりにくくなっておるかと存じますけれども、六十四条の(4)の宣言が行われますと、六十四条の(b)の規定によりまして、十一条の規定に拘束をされない。つまり国際出願の効力というものが先行技術との関係でモディファイを受ける。そういう意味から申しますと、第八条の場合の相互に排他性を有するということとの関係とは違う。そういう意味におきまして使い分けをしたような次第でございます。  なお、「サブジェクト トゥ」を「場合を除くほか」と訳しました例、これは「除くほか」ということになっておりますけれども、先例といたしましては、関税率表における物品の分類のための品目表に関する条約及び改正議定書第二条にございますし、それから「従うことを条件として」と訳しました例といたしましては、外交関係のウィーン条約あるいは国際民間航空条約、こういったものにその例がございまして、私どもとしましては、冒頭に申し上げましたような基本的な考え方に基づきまして一番正確に、しかも、わかりやすくなるにはどのような訳語を用いたらいいかということでせっかく努力をしているつもりでございます。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま前田さんおっしゃったとおり、この原則論は正しいと思うのですよ。あくまでも原文に忠実にわかりやすくということ、そういかない場合には例外があるということはそれはもう常識でございましょう。  ただ、多過ぎるんですれ、いま御説明がありましたように。もうこれは一々条文と規則をここに羅列することは時間がかかりますのでやめておきますけれども、いまお話がありましたように「規定が適用される場合を除くほか」あるいは「規定に従うことを条件として」「に従うことを条件として」「に従い」「を得て」「に従って」「に定める場合を除くほか」と、こういうふうに翻訳された場合に、ずいぶんこれは日本語というのは厄介だなあという感じがするわけで、全部意味が違いますね、受けとめ方が。同じですか、違うでしょう。そんなに幅広く、一つの「サブジェクト トゥ」というわずかな単語が、そんなふうに拡大されて盛り込まれていいものかどうなのか。ぼくは専門じゃありませんからわかりませんけれども、字引にはないですね、少なくとも。さっきもぼくは高橋さんにそのいわくを聞きました、字引どおりいかない、それはわかります。けれども、字引にないことがどんどんどんどん拡大されていく。もう一遍新しい字引をつくったらいいんじゃないのかなという感じすらするわけです。全然オーソライズされてないですね。  この辺が本当に条約というものが日本文に直された場合、受けとめ方、理解のされ方、認識のされ方というものがばらばらであった場合に、どういう弊害が起こるんであろうかということを、さっきも園田さんの答弁の中にもありましたように、やはり本当に慎重を期さなければならないんではないだろうか。その辺は統一できないものかどうなのか、ある程度ですよ。それは五つも六つもあるやつをぴしゃっと一つにしろという、そういうむちゃなことは言いません。けれども、もっと集約できるんじゃないだろうかということなんですがね、いかがでしょう。
  60. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 原語が同一であります場合に、すべて日本語を同一にということには絶対まいらないかと思いますけれども、ただいま先生御指摘の点につきましては、今後、一層努力をしてまいりたいと思います。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後は努力でごまかされちゃうんですよ、いつも。本当に皆さん方のお立場はお気の毒だと思うんです。これは園田さん聞いておいてくださいよ、外務省の場合と連動するんですから。特許庁もそうなんだ。附帯決議の事項をもう一遍ぼくは言いますけれども、人員が足りないんですわ。だからもう内閣法制局を通してくるまでの間に相当時間がかかるわけでしょう、もうたまりにたまっているわけです。何人のスタッフで一体そういう翻訳事務に当たっているのか、そしてその整合性を持たせるような完璧なものに一体作業が進められるのか。いまの人員じゃ、よくもノイローゼにならないということが不思議なくらいじゃないかとぼくは思うんです。  ちょっと横道へそれるようですけれども、行政改革は結構です、遊んでいるようなものは整理した方がいいんです。けれども、そういう国の将来の展望に立って必要な――特許庁にしてもそうです、いまの審査官の数じゃもうとてもできませんよ。それから法制局だってそうだ、外務省だってそうです。こうした事態を何とか総定員法というその枠組みの中で一切処理しようじゃとても無理がぼくは生ずるんじゃないかと思うんです。だから、この辺の運用の仕方ということもあるでしょうけれども、片方を減らせば片方をふやす、そんな機械的なことじゃとてももういま追いつかない。しばしは述べておられますように、これからの激励する国際情勢に対応するときに、これから条約案件はたくさんふえてくる、処理し切れますか、いまの法制局の陣容で。いかがですか、部長、遠慮することないから明確に言ってください。
  62. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 先生から御理解あるお言葉をいただきまして大変ありがたく存じております。  現存、私の方は専担の参事官としては一名おりまして、それから最近外務省の御配慮で若い方を一人応援に出していただいておりますので、実際には二名が担当しているという現状でございますが、何もこの三人だけで審査しているわけではございませんで、外務省初め関係省とともども一緒になりまして審査の作業をやっておるわけでございますが、ただいま先生から御指摘いただきましたような事情もございまして、なかなかその審査が進捗していないという現状にあることも否定できないところだと存じます。しかしながら、私どもといたしましては、与えられました条件の中でできるだけ努力をいたしまして、国会に提出すべき案件につきましてはなるべく早期に審査を終わりまして提出申し上げるような状態にいたしたいと、せっかく努力しているつもりでございます。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 くどいようですけれども、お気持ちはわかりますよ。事故が起こってからでは取り返しがつかない。特にこういう条約の問題なんかについては、相当オーバーワークにもなっていらっしゃるでしょうし、もう大変な重圧の中でやっておられるんじゃないか、私の推測ですけれども。  それは部長立場ですから、なかなかそれを推進しようと思ってもその道は開けない、それは特許庁においても同じことが言えるんです。それを、園田さん、ひとつどうか十分に受けとめていただきまして、やはり日本の将来展望を考えた場合に、もう最優先すべきそういう人事の配置については、この機会に、私は、ちょっと横道へそれましたけれども、十分御配慮をいただきたい、こう思うわけです。われわれも側面的に応援しますよ。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御発言は、横道ではなくて、きわめて適当な御発言をいただいたと思っております。これは一外務省、一法制局の問題ではなくて、行政の主導性の問題であると考えます。単に行政改革と言えば、各省とも何割削減などというふうに、すべての行政について一律にこれをやろうとするころに問題があるわけで、時勢の変転に伴い、必要なものとふやさないものと当然あるわけでありますから、切るところを思い切って切り、伸ばすところは思い切って伸ばすというところに行政の主導性があるわけであります。的確な御意見でございますから、十分今後注意をして、総理にもその日は確実にお伝え申し上げる所存でございます。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、第十一条三項目に連動するたとえばという例を引きながら、こういう場合はどうなるのかということを確認をしておきたいと思うんです。  先ほどもちょっと話が出たようでございます。たとえばアメリカから日本に出願された、いわゆる国際出願がなされたという場合がありますね。で、その後に――その後と言っても物理的にいろいろ、とにかく国内の場合は十八カ月、国際の場合には翻訳の審査の段階が二十カ月ということでございますから、国内と国際出願の期限を考えた場合二カ月のそこに開きがございます、言うまでもありませんが。で、その後に日本国内において国内出願がなされた。で、たまたま翻訳に至る段階に国際出願者は国内出願者の内容を――もうすでに三カ月の余裕があるわけですからね、公示されるわけでしょう、すでに国内出願者の方は。その公示後において国際出願者がいろいろすばらしい出願が日本国内において出されたと、それをまた導入をいたしまして、翻訳段階――原文はもとのままもう何も手を加えない、ただ翻訳の段階日本国内において出願されたものを全部かあるいは若干、いろいろその度合いの迷いはございましょう、プラスしたものを翻訳の段階において出した、こういった場合の関係性はどうなりますか。将来考えられることだろうと思うんです、いまはもうどんどん各国とも技術の進歩というものは平均化してきているわけですから。
  66. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) いま先生の御指摘になりました場合の問題点としましては、国際出願というのがもともと、たとえばAという国際出願があって、それにたとえばBというようないわゆる原文にはないが、いま先生のお話にありましたように、十八カ月で国内にたまたま公開されました国内の別の出願というものがあって、それがBといったようなものであった場合に、それを意図的にいわゆる原語の国際出願にプラスして翻訳を提出してきた場合に、国内の出願であるBというのが排除されるかどうか、つまり順序は国際出願よりは後に出願されておりますので、後願として拒絶されるかどうかという点のお尋ねかと思います。  私ども、この場合におきましては、今度出しております改正特許法の二十九条の二というところを一部直しておりまして、このケースにおきましてBを排除するためのもとになります国際出願は一体何かということの規定が人っております。これは原文と翻訳文が一致しているところ、これがいわゆる出願の範囲でございまして、いまのケースで申し上げますと、Aの部分だけである、Bの部分はこれは本体ではない、こういう規定がございますので、この仮のBによりまして国内出願が拒絶されるということにはならない、こういうふうに取り扱うことになっております。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そのチェックの方法は。
  68. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) この場合におきましては、国内の審査をいたします場合に、たとえばいろんな文献を調べる、それからもちろんこれに関連しましていまの例で申しますと、AプラスBという翻訳文が出てまいります。こういったものも一つの文献と並んでの資料になるわけでございますが、これにつきましては、翻訳文とそれから原文とがどこまでが合致しているものであるかどうかをチェックすることにいたしておりまして、そのチェックをいたしました上で、国内の出願に対しての拒絶の判断を出すわけでございますので、国内出願であるBが拒絶されることはない、こういうことになるわけでございます。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただ、二十九条の二項においてという問題と、それから三十九条のかかわり合いはどうなりますか。
  70. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いま先生お尋ねの三十九条の問題でございますけれども、三十九条というのはいわゆる先後願の規定でございます。私ども、特許庁の内部の取り扱いでございますけれども、先後願と申しますのは、ある発明とある発明が同じであった場合にどっちか早い方に権利を与えようじゃないか、ところがその場合には、先の方の発明が確かにこの発明であるということが確定されませんと、後の方は排除できません。したがいまして、実務上は、先の方の発明が公告になりましてから拒絶理由を出しまして、その後、特許権という権利になりますれば初めの特許権が確定いたしますので、その後において後の発明を排除する、こういうことになっております。  ところで、先生のいまのお尋ねの件でございますけれども、いまの設問でございますと、つまり国際出願のものと国内のものと、これが審査の段階でお互いに走っている場合の段階では、三十九条の先後願の規定でもって後の国内の、いま長官のお話のBという仮の発明でございますけれども、それに対して公告前の段階では手当てすることはなかろうかと考えております。つまり二十九条の二でもってBという国内の出願に対してアクションを起こすことになろうかと、かように考えております。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それで、ちょっと別な角度になるかもしれませんが、その拒絶をするかしないかという判定はどの時点でやりますか。そのいまのA、Bのたとえでおっしゃってくださって結構です、私も頭の中に入っていますから。
  72. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 判定と申しますのは、いまの場合は、Bという日本の出願の審査をしているときに判定をすることになろうかと思います。つまりBというものを審査しておるわけでございますので、そのときにこのBというものが一体拒絶理由があるかどうかということをいろいろ探すわけでございまして、そのときにこういう拒絶理由がございますということになれば、その拒絶理由でもって拒絶しようということを出願人に通知するわけでございまして、その段階で拒絶しようとひとまず考えるわけでございます。その旨出願人に通知いたしまして、出願人からの意見を待ちます。待ちまして、その意見参考にして最後の査定をする、そういうことになろうかと思います。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は、誤解されては困るんですが、あくまでも、その際、国内出願を保健するという立場に立って申し上げておるわけでございますので、ただそういう事例がないとは限らないということを心配をしながらいま申し上げているわけでございます。  国際出願の場合、AプラスBとなった場合、実際それが基準になって翻訳される、翻訳されたものが公告されるわけでしょう、そうですね。この段階においては、審査官はそこでずっと調べて、国内出願のあれもよく頭に入っていらっしゃいますから、これはおかしいじゃないかということで拒絶することはできないんですね。
  74. 城下武文

    政府委員(城下武文君) そのとおりでございます。拒絶いたしません。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 拒絶されませんね。
  76. 城下武文

    政府委員(城下武文君) はい。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 結局、公告後、出願人から異議の申し立てがない限りは拒絶の理由にはならないということになりますね。
  78. 城下武文

    政府委員(城下武文君) そのとおりでございます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうすると、おかしいじゃないですか。
  80. 城下武文

    政府委員(城下武文君) ただいまの場合、いま先生お尋ねの、どのものを審査しているかという問題になりますけれども、いまの先生のお尋ねの件で、まず一つの問題は、国際出願、つまりアメリカからの出願を審査するケース、アメリカからのものだけを審査しているケースはまさにそういうことになると思います。そこで、日本のものを審査しておりまして、今度は日本のものでございます、審査しておりまして、その日本のBというものを審査しておる段階におきまして、審査官がたとえばAプラスBというものが国内で公開されておりますから、それを見ます。どうもこれは国際出願だから原本がある、原本と不一致かもしれないということで、それを発見した場合には、これは重複部分でございますから、Bとは違うということで、Bが生きることがあり得る、こういうことでございます。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ですから、あり得るということは、Bが拒絶の対象になってしまわないかということをぼくは恐れるんです。  やはり国際出願の方は先に出しているわけですから、先に出したその後においてもうすでに国内で出願したものが公告されているわけでしょう、そうして片方が翻訳の段階に至るまでの間にBの分を盗用するか、いろいろとAの中にBを加えて、そうして翻訳をする、公告をする、こういう段取りを経ていくわけでしょう。そうしてそこでは審査官がその内容がBとダブっている、明らかに競合している、これはあかんと思っても、そこでは審査官は拒絶するわけにいかないとおっしゃったでしょう、いま。ということになると、今度は先願権のある国際出願の方が有利になって、Bの方が拒絶される対象になりはしまいかということを心配する。同時に、その特別の異議申し立てがない限りはどうにもならぬということになるじゃありませんか。これは審査官ができないことは、百八十四条の十四項目か何かに規定されていますね、特別の異議申し立てがない限りは、これはできないということになっているわけですから。
  82. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いまのケースは、先ほど私が日本の出願であるBが拒絶されることがあり得ると申し上げましたけれども、拒絶されることはありません。したがいまして先生御心配のようなケースと申しますのは、つまり国際出願があるためにBが拒絶されてしまうのではないか、アメリカの出願だけが生きてしまって日本のは死んでしまうのじゃないか、こういうお尋ねでございますけれども、日本のものは死ぬことはありません。ただ、アメリカのものは、先生御指摘のとおり、異議がないと拒絶できませんので、異議を待ちましてアメリカのものは拒絶される、こういうことになります。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その場合、Bの方は拒絶の対象にならない、ならないとしても、片方はすでに翻訳の段限まで入って公告までしている、先願権というパリ条約に加盟している場合においてはこれは認めざるを得ないということになりはしませんか。そうすると、Bというものがどうしても拒絶の対象になりはしまいかということを心配するわけです。論理的にいくと、そういうふうになりませんかね。
  84. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 先願権の問題でございますけれども、純粋な意味で先願権と申しますのは、先ほど先生御指摘の三十九条の問題でございます。三十九条の問題というのは現行法にも三十九条の問題がございまして、今度の改正では改正になっておりませんけれども、たとえばいまのケースでございますと、たとえば仮に一番もとがAでございます、後からAプラスになりました。Aプラスになったものが一体そのものの本当の先願権はどこでございますかといった議論になった場合に、それはやっぱり一番もとの先願権はそれはAにあると考えております。それは現在でもそういった解釈に立ってわれわれは実務を行っておりますし、現在特許法第四十一条に要旨変更の規定がございまして、そういう規定の理解からも一応三十九条の先後願の理解、つまり先願の範囲というものは、そういったAとAプラスBがありました場合には、Aに先願権があるんだ、したがって先生の御指摘の今回のケースにつきましては、AプラスBに先願権があるんじゃなくて、Aにございますと、かような理解でございます。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その場合であってもAに先願権があると、結果はどうなるんですか、拒絶する理由にはならないということになりますか。  それともう一つ、重ねて、アメリカ日本で同日に出された場合、それはいまは時間をずらして申し上げましたけれども、その規定も国内法であるはずですね。
  86. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いまのケースでございますけれども、一応、アメリカに初めにAという出願がありまして、それから翻訳文でAプラスBにいたしました。一本でAよりは後の時間において、しかし、AプラスBよりは前の時間でBという出願がありましたという、このケースについて申し上げますと、これは先ほどの設問のケーケでございますけれども、アメリカの方の先願権はAでございまして、日本のものはBでございますから、これはそういう先願の範囲の問題については全く違うものでございますので、そういった意味では、何と申しますか、お互いに排除するというような作用は働かないことになりますので、問題はないかと考えております。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なかなかわからぬ。わかったようなわからないようなことになるかもしれませんが、これにばっかり時間をかけておると、あとの問題が言えませんのでね。  そこで、百八十四条第十四項目、つまり審査官は途中の段階においても拒絶できるだけの働きができないという規定があるでしょう、異議申し立てがない限り。ほかの国にそういう例がありますか。審議官というものには全面的に信頼を置いて、審議官に一切の責任を負わせるというのが、これがたてまえじゃないでしょうかね、原則的に考えると。いかがですか。
  88. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 国内の審査の段階でどういう審査のやり方をするかという問題につきましては、これは各国のいろいろな行政の目的から考えましてやり方があろうかと思いますけれども、先生御指摘のように、各国の法制におきましては拒絶理由におきまして非常に、何と申しますか、細かく規定はしておりません。したがいまして、そういう意味から申し上げれば、日本のように、今度は、日本の場合には今回は百八十四条の十四というところで先生御指摘のような規定を設けてあるわけでございますけれども、そういったような規定は一応見当たらないと思います。
  89. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうでしょうか。細かく条項というものが規定されたから、その運用いかんによっては途中の段階で審査官がチェックして発見したとしても、できないというのは、どうも理解に私は苦しむんですけれどもね。審査官はいろんな立場を考慮し、そしてまた出願人の立場というものを保護するために、これはもう明らかに拒絶の対象になると、公告以前に発見した場合でも拒絶ができないということはいかがなもんでございましょうか。
  90. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いまの御指摘の百八十四条の十四に、実は「特許異議の申立てがあった場合に限る。」という、こういう規定になっておりますので、その点について先生からのいまの御意見をいただいていることだと思います。  それで、この百八十四条の十四の規定を設けた趣旨と申しますのは、先ほど長官から御説明がございましたとおりでございまして、条約、要するに今度のPCT条約におきましては特許のことについて一応規定がございまして、しかも条約第四十六条のノートによりまして審査は翻訳によって行うことができるというその規定から、一応こういったような規定をわが国はとったわけでございます。そういうことからいたしますと、わが国におきましては無効審判、つまり審判においてこういう問題は取り扱うということになるんでございますけれども、先ほど来申し上げましたように、一応特許、要するに出願公告になるということ自体が特許権になったと同じような効果を持つこともこれあり、という意味からこういった制度をとる、こういうことになった次第でございます。
  91. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大分回りくどくおっしゃられたんじゃないかと思いますがね……。
  92. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) いまの問題に少し補足申し上げたいと思います。  先ほど私もすでに触れた点でございますが、本件質問との関連でもう一度申し上げたいと思いますが、いま城下技監からこの本条約との関係を申し上げました。これは四十六条の注解というのがございまして、翻訳文によってのみ審査することができるということになっておるわけでございますが、日本はそれを採用して、国内の審査の段階におきましては翻訳文だけでやるということになったわけでございます。  で、この点について、先生御指摘のように、それでは途中でたまたま見つかった場合に、それがみすみす実体がないものでありながら、あたかも実体を持ったかのごとく公告され、場合によれば特許になるということは、事前にやはりわかった段階で防止すべきではないかという御指摘であろうと思うんでございます。  私どももこの問題はいろいろ検討したわけでございますが、先ほども申しましたように、これをもしそういうふうにいたしました場合には、審査の恣意性と申しますか、たまたまわかったと、どういうケースかわかりませんが、たとえば英語の場合でたまたま内容が十分よく、非常にまあ堪能であるというような場合にはその瑕疵がわかった場合と、あるいはそうでなくても審査の語学というのは英語だけじゃありませんで、フランス語あるいはスウェーデン語とか、その他の言葉になるわけでございますが、それぞれの言葉について同じような内容のチェックが一体できるかと。それができない場合に、たまたま何かの事情でわかったという場合に、その部分はそれによって解決されますが、その他の部分はそうならないわけでございます。これは公平という観点から見まして、たまたま審査の段階で見たからといってその部分だけを、それに関しましてはそれは一つ考え方かもしれません、しかし他との関係考えますと公平性が担保されない。審査の場合に裁量の範囲というものが余りにも大きくなり過ぎまして、制度の公平性というものが担保できないということが私どもがとり得ない理由としている点でございます。  もしさらに一歩進んで、たまたまではなくて、もう最初からそれでは全部見るべきではないか、翻訳文と原文を常に最初から全部見る、極端な例を申し上げますと、たとえばどこかの翻訳専門の機関に認証をしてもらうとか、いろいろそういった手間をやって、最初からでも全部見るということをやるべきではないかと、こういうことが考えられるかと思います。しかし、これは大変私は極端な意見だと思うんでございまして、無限の人員と無限の費用と無限の時間と申しますか、そういった条件を抜きにいたしますれば、一つの理想としては私は理解できないわけではございませんが、現実問題としまして、これは実施することは不可能に近いというふうに私どもは考えておるわけでございます。  で、また、そういったものをそれでは法律で書けば、それは直ちにできるかといえば、それは現実にできないものはできないわけでございまして、法律違反になるようなそういった法による義務づけということはできない。したがいまして、私どもは、いわゆる審査の公平性を考え、かつまたこの多国間条約の取り決めの基礎にあります一つの前提としての翻訳文と原文というのは一致しているたてまえというものに立ちまして、日本文のみによって審査をすることができるという四十六条注解をもとに、それを翻訳文だけによって審査を行う、その結果、不一致の部分は、先ほど申しましたように、救済措置を別途、異議申し立てあるいは無効審判請求と訂正審判による法的リンクでこれを措置する、こういうやり方が最善であろう、こういう結論に達したものでございます。
  93. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 長官、御承知のとおり、不備のある法律については改正をすればいいのでありまして、これは国会でこれから問題にすればいいわけです。冒頭に、完璧な整合性があるとおっしゃった手前があるもんですから、審査官に対するそうした権限の付与というものについては、恐らく日本だけだろうと言われているんですね。その翻訳をし、そして公告の途中においてこれは拒絶をしなければならないということがわかったときでも、それが言えない、それが第百八十四条の十四項目でしょう。こうして一人一人少ない人数でもっていろんなチェックをしなければならない、それを総合的にまたどういうふうな機能の働かせ方をするのかを考えただけでもぞっとするような問題じゃないかというふうに、側面から見ると、そういうことが言える。  そうした場合に、先ほど私が申し上げたように、やはり審査の段階で、ベテランがやっているわけですからね、間違いだとか、それから、まさしくだれが見てもこれは拒絶の対象であるという場合には、審査官の権限においてそれができるというような方向へ持っていくことの方がより事務処理の円滑に寄与することができはしまいかということを実は申し上げたかったんです。いかがでしょう、簡単に言ってください、もう余り時間がないですから。
  94. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) この問題は国内法の審議の段階でさらにまた御審議を賜りたいと思っておりますが、私はこういうケースは全体を通じましてもともとそれほど多くないケースだと思うわけでございます。確かに、いま先生は一つのたまたま発見した場合だけでもできるようにしたらどうかと、こういう御指摘の点につきましては、私ども、先ほども申しましたように、たまたまということの性格を考えました場合に、やはり制度の公平性が維持できない、こういう考え方で、制度としてはやはりとりにくいというのが私どもの考えで、国内法ではさような措置をいたしておるわけでございます。先生の御指摘はわからないではございませんが、そういう問題点が別途あるということでございます。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務大臣は所管大臣じゃございませんので、こうしたことを申し上げるということは筋違いのことになるであろうと私は思うんですが、大変長いこと商工委員会でも議論されたという経過については私も知ってはおりますけれども、どう見ても、国内法との関連におきまして、もう一回整備をする必要があるんではないか。閣僚のお一人として、そういうことを本件がいま審議されている道程から受けとめていただいて、特許庁としてはこの場でおっしゃりにくい面がたくさんあるだろうと私は思うんですが、やはりやりやすい方向へ持っていくことが事務能力をアップしていく上においても大きなプラスになるであろう、この見解についてはいかがでございましょうか。
  96. 園田直

    国務大臣園田直君) 国際条約は、各条約ともそうでありますが、各国内法に関連をしてくる、この各国内法は各省との関連性がある、こういうことで、一方には条約批准がおくれ、あるいは批准した後問題が出てくるわけでありますから、いま御指摘された点は十分留意をして各省間の調整をさらに進めることにし、特許庁が実施をした場合に、長官の意見等も聞いて、この条約を中心にして国内法を改正してまいりたいと思います。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 当然御存じのことだろうと思いますけれども、日本アメリカ――ヨーロッパはどうかと思いますけれども、全体を合わせればまた違いが出てきますけれども、出願件数においてはもうはるかに違う、アメリカの方が日本の三倍以上も出願件数を持っているわけですね。これからふえる一方だろうと思うんです。平均すると五%ないし六%はこれからそういう出願件数というものがふえるであろう。そういうことを頭の中に描いておった場合に、これから、これは簡素化ということがねらいとされているはずなんだけれども、実際のその衝に当たっている審査官自体は大変なまたオーバーワークになるはずであろうというふうに私は素人なりに側面的に判断をしているわけです。ですから、やりよくするということは、これはもう願ってもない、それぞれ現場におられる方についても当然の私は御要望だろうと思うんです。だから、これらの点について十分、もう一遍――いま条約の案文を訂正しろとかそういうことを言っているんじゃないんです、もう間に合いませんから。今後起こるであろういろんなその予測される問題については十分御配慮をいただきたいというふうに申し上げたいわけです。  そこで、法制局の方、お待たせしちゃって済みません。第四十六条をまた問題にすることは私ももういやになっちゃうんですけれども、第四十六条の最後の二行、「特許の範囲が原語の国際出願の範囲を越えることとなる限りにおいて特許が無効であることを宣言することができる。」仮訳と全く違うんですね。これは全体を意味するのか部分を意味するのかという、それはどのように判断されてこういう表現にされたんでしょうか。仮訳の場合は、先ほど申し上げたように、部分なんですね、部分については排除すると。これは全体なのか部分なのか全然わからない。
  98. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 私どもは、先ほど申し上げましたように、この原語は「トゥ ジ エクステント」でございますが、それの訳語といたしましてはこのように「となる限りにおいて」と訳すのがこの文脈からいたしまして相当であろうということで訳しておりますけれども、解釈といたしましては、その越えた部分を無効とするということで理解をしております。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 くどいようですけれども、日本語というものは非常にいろいろと解釈される幅広い含みがございまして、たった一言違っただけで、もう全然違った意味にとれる。  で、途中の段階で申し述べましたように、一九七〇年六月十九日にワシントンにおいてこの条約が発効して以来、必ず近い将来に日本も加盟しなければならないだろうという前提に立って、特に審議会あたりも仮説を中心としてやってきたという経緯があるわけでしょう。そうすると、この段階になって、何だか部分なのか全体なのかわからない。果たしてこれから出願するであろう方々が聞いた場合にどういう理解を示すであろうか、そういうことを私は不安に思う一人として、この日本語の解釈というものはどういうふうに明確に受けとめたらいいのであろうかというふうに、決して意地の悪いことを申し上げたくてそういうことを言うているのではございませんけれども、まだいまの御答弁だけでは何かこう余り理解できないような感じを抱くんですけれどもね。重ねてもう一回おっしゃっていただいて、それで終わったらお帰りになってくだすって結構ですから。
  100. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 私どもは、この訳語をつくりますにつきましては、研究社の大辞典でございますとかオックスフォードの辞典でございますとかいうのを参考にはいたしました。その際、研究社の大辞典によりますれば「広がり、区域、地区範囲、広さ、大きさ、長さ、量」というのが「エクステント」の訳でございまして、「トゥジ エクステント」に当たりますものとしましては、若干「オブ」がついたりがございますけれども、「の程度まで」とか「その程度まで」「極度に」何々「の限り」と、こういうような訳語になっておりまして、それをそのまま用いるというわけにまいらないということでございまして、先ほど申し上げましたように、前例といたしまして何々「の限りにおいて」という訳語を使っておりましたので、そういうこととの対比からいたしまして、この訳語を使わしていただいたという次第でございます。
  101. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねて済みませんでした。  それから、もう時間が経過はしておりますけれども、いま少し委員長にお許しをいただきましたから、もうちょっとごしんぼうをいただきたいと思います。  その一つは、近く、この条約に加盟した後において、まず当面の課題であるジュネーブの国際機関に先ほどもちょっと話が出ましたアタッシェを派遣する、それは実現するんですか。これはどっちの方ですか、外務省の方になるんですか。
  102. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) この予算が成立し次第、四月一日付で派遣が可能になる、その方向で特許庁におかれても具体的な人選等の配慮をされていると承知しております。
  103. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務大臣、私はジュネーブだけじゃ足りないと思うんですよ。いま出願件数の一番多いと言われているのは大体七カ国ぐらいあるというふうに私ども理解をしておるんですけれども、まずこの七カ国ぐらいはせめてやはり人員の確保をなさって、やはり情報の提供なんていう――加盟されれば、当然、日本の特許庁も国際機関に指定されるでしょうから、そうなった場合に情報の収集が全然できないということになったら、これはどうしようもないと思うんですがね。その辺の腹づもりをちょっとお伺いしておきたいと思うんですがね。
  104. 園田直

    国務大臣園田直君) これの附則によって、わが国の出願が保護されるかどうかという問題でありますから、きわめて大事でありまして、今回から初めてできるわけでありますから、逐次、次の予算からふやしていきたいと考えております。
  105. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまおっしゃられたように、今回の予算の枠組みの中ではむずかしいかと思いますけれども、次の機会にはぜひ、その点をいまお認めをいただいたわけでございますから、推進をしていただきたいというふうに思います。  それから、昭和四十五年衆議院の商工委員会の決議、先ほども説明されておりましたけれども、あの説明だけじゃ納得いかないですわね。特許庁としては御努力されてきたと思うんです。あそこの一項目を見ますと、大幅増員しろと書いてあるんですよね、二百名ないし三百名。さっき伺ってみますと、非常にちょびちょびとしか増員されていませんね、この八年間において。どのくらい増員されたんですか、この八年間において。
  106. 勝谷保

    政府委員(勝谷保君) お答えいたします。  増員の問題でございますが、四十七年度から五十二年度までの間に、特実の審査官を百二十七名ふやしております。なお五十三年度予算案でも、特許庁全体で五十一人の増員を図ることとしております。
  107. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、さあそのふえた段階をもとにいたしまして、年間一人の審査官が何件扱っているか、世界と対比した場合にどれだけの違いがあるか。
  108. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  審査官一人当たり、大体二百件から二百二、三十件でございます。  世界と比較いたしますと、大体、先進諸国の数字から言えば約倍に当たります。
  109. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 大分少な目におっしゃっているみたいですがね、大臣。いかがですか、いまの数字をお開きになっても、いかに過重な仕事を強いられているかという、まあ日本人というのは優秀ですからね、頭脳が。それは一人で五人分も十人分もやるでしょう。与えられた職責を守って一生懸命やる。しかし、何かそこで手当てをしてあげないことには、いま国際条約にも加盟しようという段階において、どないなるんだろうと。特許庁をぼくは応援しているんですよ、率直に申し上げて。私は、いまの段階では大変な事故を起こす状況になりはしまいか。八年間空費してきていますよ、少なくとも。四十五年から八年間かかっていまだにアメリカと仮に対比をした場合に、二倍も、三倍近くの仕事の量を抱えて、これから国際出願もふえてくる、どないしますか。解決の見通しがありますか。将来、一年先にはどうする。二年先にはどうする、五年先にはどうするという具体的な計画を持たれて、それを推進していこうという展望をお持ちになっていらっしゃるかどうか。
  110. 城下武文

    政府委員(城下武文君) お答えいたします。  私、いま、日本の場合に、大体先進諸国の約倍の量をこなしていると申し上げましたけれども、少し詳しく申し上げたいと思いますが、日本の場合には御存じのとおり……
  111. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もう詳しくいま聞いている時間が余りないんだ、もう概略でいいよ。
  112. 城下武文

    政府委員(城下武文君) 大づかみで言えば、日本の審議官は実用新案と特許と合わせて大体二百件くらいやっております。したがいまして正確に外国の件数と日本の二百件という件数を比較いたします場合には、なお二、三のコメントが必要かと思いますが、それはさておきまして、私どもといたしましては、今後、国際化に対処しながら質の向上を図らぬといかぬと思っております。そういった意味で、ますます審議官の増員を図ると同時に、一人当たりの審査の質の向上のために、その一人当たりの件数というものは低下する方向でもってできるだけ努力してまいりたい、かように考えております。
  113. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 努力だけでは何回聞いても大変空虚な響きを持ってしか聞こえないんですけれども、そこには何ら具体性がないということしか申し上げられないんですけれども、ともあれ特許庁というとずいぶん古い建物ですね。近々建てられる御予定があるんだそうですけれども、庁舎にしてもそうです、あるいは機器、設備等においてもそうでしょう。閲覧式なんといったって、お客がふえるときには立って読まなきゃならぬという状況になっているんでしょう、実際には。そういうことを放置しておきながら、これから技術立国として大きく羽ばたいていきましょうなんと言ったって、できるんだろうか。先ほど私は冒頭にそのことを大臣に申し上げました。もう全く背筋の寒い思いがするということなんです。  それは特許庁の人は思い切ったことを言えない場合があるかもしれない。だが、われわれもそういうことを気がつかなさ過ぎた点ということを反省をしなければならないかもしれないけれども、しかし、余りにも時間がかかり過ぎている。だから一般的に言われておりますように、今回の条約に加盟することによって労働力がさらに増加して、果たして円滑な機能というものが発揮できるんだろうかという心配。そうないことを私は願いたいために、わざわざ昭和四十五年の商工委員会の附帯決議を――大体、附帯決議なんということはいままで余り実行されたことはない。せっかくつけた以上は、委員会で決議され本会議で決議されたこの権威については政府側としても十分そんたくをするという答弁を必ず得ているはずでございますので、その点、締めくくりとして外務大臣から御答弁をいただきたいと思うんです。
  114. 園田直

    国務大臣園田直君) 審査官の増員及びその他の施設費の予算の獲得、これは特許庁長官がやることで、通産大臣の所管ではありますものの、事きわめて重大であり、これは政府としての責任もあるわけであります。こうやって一緒に長官と苦労したよしみもありますから、今後の予算については外務大臣努力をし、責任を持って努力いたすことにいたします。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、きょうは、まだ半分ぐらいしか質問できないんです。きょうはお伺いいたしますと、二、三日来、もう激務に次ぐ激務で、大臣としてもちょっと再開後の委員会までお休みをいただきたいという御要望もあったそうですので、人間尊重の立場から、もうこれ以上やるということは非常に決められた枠をはるかに越えておりますので、これで質問を終わりにしたいと思います。いずれにしても、いま申し上げたこと、これは国益をやはり守る、単なる出願人の保護ということの段階ではなくして、国益を守る、当然でしょう。それと同時に、その現場に当たっている方々の立場というものも十分考慮しながら、そしてその道が洋々として開けるという、そういう方向へぜひ取り組んでいただきたいことを最後に要望いたしまして、私の質疑を終わります。
  116. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午後五時十五分まで休憩いたします。    午後四時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後五時十七分開会
  117. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  118. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、いま戸叶委員、渋谷委員がそれぞれ質問なさって、私予算委員会の方に出ておりましたので、その質問の内容をお聞きしていないものですから、ダブる点があるかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。  この条約では、日本の特許庁が国際調査機関及び予備審査機関にならなければメリットが十分にないということだと思うんですが、この選定は四月の十日から始まる設立総会で選定されるというふうに聞いておりますけれども、それはどうでしょうか。
  119. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 御指摘ございましたように、四月の十日から十四日までジュネーブにおきまして第一回PCT同盟総会が開かれるわけでございます。総会の最大の議題は、各国の特許庁に対しまして国際調査機関あるいは国際予備審査機関の候補として手を挙げた国々に対しまして、総会としてこれを選定するかどうかというのが最大の議題でございます。  私どもとしましては、まだ加盟をいたしておりませんので、参加の資格はいわゆるスペシャルオブザーバーという形ではございますが、私ども、いま先生御指摘になりましたように、日本語による出願が認められるためには国際調査機関に選定されなければなりません。したがいまして、この第一回総会において、他の諸国、特許大国と並びまして承認を得たいと考えておるわけでございますが、現実にはまだ加盟をいたしておりませんので、将来、加盟した暁には、国際調査機関あるいは国際予備審査機関としての選定が効力を発効するような形で、この総会において御承認をいただくということを期待をいたしておりまして、現在、国際事務局とも接触を続けておるところでございます。
  120. 立木洋

    ○立木洋君 この条約の締約国になるには、国会で批准承認を得る、そして批准書を事務局長に寄託する必要があるわけですが、外務省の方としてはいつの時期を考えておられますか。
  121. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 批准後、できる限り速やかに批准書の寄託を行う予定でございます。まだ具体的な日にちは国会の議事の進行とも関係がございますので、予定いたしておりませんけれども、業務がこの夏からでも開始できるということにしたいということもございますので、批准書の寄託後三カ月で拘束を受ける状態が生ずるわけでございますから、わが日本におきましてもその実際の取り扱いができますのは拘束を受けるような状態になり次第、わが国につきましてその条約が発効した後になりますので、できる限り速やかにということを考えております。
  122. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) ちょっといま外務省からお話がございましたのに関連いたしまして、ちょっと補足を申し上げたいと思います。  これは私どもの業務の実体を踏まえて私どものいまの感じをちょっと申し上げておきたいと思いますが、私ども先ほどの御審議の中で申し上げましたが、この条約の加盟や前提といたしまして特許協力条約というものを十月にはこれを正式に発足させることにいたしたいと考えておるわけでございますが、今日から約半年の間の諸準備を完了いたしまして、諸準備の中には御承知のように政令、省令その他ございます。また関係者に対するPRの期間もございます。そういった諸準備を態勢を整えまして、十月一日には業務が開始できるようにいたしたいという予定で、現在、準備を進めているところでございます。したがいましてまだ正式にいつの時点で批准という問題につきましては、これは外務省当局とも打ち合わせをしなければならぬと思っておりますが、現在の私どもの見積もりとしましては、その辺を考えておるわけでございます。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 外務省の方は、これは国内法との関係ですね、国内法が成立するしないにかかわりなく寄託するんですか、その点の関係はどうなんですか。
  124. 山田中正

    説明員(山田中正君) いま特許庁長官の方からお答えがございましたが、国会の御審議を得まして国内法の整備ができ、それからまた政令のお話もございましたが、そういう諸準備ができまして、実際にこの条約を実施する予定が確定いたしました段階で、それに見合う形で批准書を寄託したい、そのように考えています。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、四月十日の創立総会までには締約国にはならない、つまりなれない、時期的に言えば。その場合に、この国際調査機関やあるいは予備審査機関に選定されるということはどういうふうになるんでしょうか。
  126. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 先ほど申し上げましたが、私ども条件づきで総会承認をいただく、こういうことでございます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 そうすれば、特許庁の方としては、今度のこの条約の批准承認というのが今国会中に行われればよいと、つまりきわめて一両日を急いでやらなければならないということではないんですか。
  128. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 二つに分けて御説明を申し上げたいと思いますが、一つは、実はいま目前にします十日の総会を予定いたしておるわけでございますが、そこで条約につきまして御承認を賜るということがはっきりいたしておりますことが、国際会議におきます議題を現在国際事務局において取りまとめ、各国に対する連絡等をやっておる最中でございますが、できるだけ早い機会に当委員会で御承認を賜りまして、この国際会議に正式議題としてのせられることができるようにいたしたいと、めどなくしてはやはり正式議題に上げることには国際事務局としても問題があるやに聞いておるわけでございますので、まずは条約の批准承認をなるべく早く賜りたいというのが私どもの希望でございます。  第二は、国内法の問題でございますが、いまお話ございましたように、国内法も今国会におきまして、できるだけいい機会に、もとより十分国会の御審議を賜りたいと思っておりますが、その上でできるだけ早い機会に国内の法律を通していただきまして、あと十月を目途にしました諸準備に万遺漏なきよりにしたいというのが私どもの考えでございます。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 これは外務省の方にお尋ねしたいんですが、これは政府としては一九七〇年に本条約に署名しているわけですね。すでに今日まで八年間たっておる。もちろん、その間、いろいろ審議することは必要だろうと思うんですね。だけれども、八年間もやっぱり延ばすというふうなことは問題だと思うんですね。  ここでは、説明書の中を見てみますと「PCTは、米国、西欧諸国等の特許に関する主要国の参加なくしては意味を持たず、主要国の動向を慎重に見究める必要があった。」と、外務省の大体説明書の文章というのは外国の動向をどう見きわめるかということで、いつも受動的になっている。そして国会にわっと出してきたら、さあひとつ急いで急いで、こういう日切れ的な要素がありますから急いでください急いでくださいというふうな形でやる。これはこの間外務委員長の方からも、私たち委員会の内容として、こういう点は今後なきように十分に万全を期すべきである。そしてよく選択して、速やかにしかるべき条約等々は出して、国会における審議が十分に行えるようにやってほしいということを私たちは申し伝え、そのように努力するというふうに外務大臣の御答弁があったわけですが、まさにそういう話があったとたんに、こういう状況になっているというのは全く遺憾なわけですね。この点について大臣のお考えをお聞きしておきたいと思うのですが。
  130. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおりに、これは四十五年に採択されてから八年間かかっております。この条約は八カ国が寄託した後三カ月で効力を生ずるという第六十三条があるわけであります。本年一月に至って初めて条件が充足されて本条約が発効した。こういうことで本条約に加入している国についても国内体制整備に時間がかかっており、本条約の発効条件を充足するのに本年一月まで待たなければならなかったものでございます。わが国にとっても、これら諸国と同様、国内体制整備に時間がかかったものでございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 時間が一定の時間必要だということは、それはすべて否定するわけではないわけであって、国会の審議をやっぱり十分に尊重していただきたいという点を私は特に強調したいわけで、今後こういうことのないように、この間大臣も十分な決意を表明されたわけですから、こういう事態が繰り返されないようにひとつ御注意をいただきたい。
  132. 園田直

    国務大臣園田直君) 今後、十分注意をいたします。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 次に、いま国会に提出されております特許法一部改正案ですね、その百八十四条の六のところに、こういうふうに書かれてありますが、「外国語特許出願に係る願書の出願翻訳文は、第三十六条第一項の規定により提出した願書とみなす。」というみなし規定がここに述べられてありますが、この規定はどういうことでしょうか。
  134. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) これは今回の条約によりまして国際出願というものが新しく創設されることになるわけでございますが、それを各国日本の場合には日本の現行の特許法でございますが、特許法で国内手続として、これをどのように性格づけるかということで、いわば国際出願と国内出願をドッキングさせるための規定でございます。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、具体的に特許庁が審査をする場合、翻訳文で審査をする、疑問が生じた場合には審査を正確にするために、やっぱり原文と照らす、そしてチェックをする必要があるのではないかというふうに考えるわけですが、このみなし規定によれば、結局、原文に照らしてみなくてもよいという立場で具体的な業務を進めるということになるのか、それとも原文と照らしてチェックするように業務を進めるのか、その点についてはいかがでしょうか。
  136. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 私ども、今回、国内法改正案を出しておりますが、それでは国内の審査の段階におきましては、国際出願とみなされました内容のものと同じみになされたその翻訳文によって審査を行う、こういうことにいたしておるわけでございます。したがいまして審査の段階で当初から翻訳文と原文がマッチしているかどうかということを常に照合しつつ審査をするという体制はとっておりませんで、国内審査は翻訳文で行うということにいたしておるわけでございます。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、翻訳文で審査をして、途中で審査をしている方がいろいろ疑いを持たれる、これはどうなっているんだろうかというふうな場合もチェックしないでやる、こういうことになると、これは大変な問題になってくるんじゃないかと思うんですが、それでもやらないわけですか。
  138. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) この法律のたてまえとしましては、義務としてそれをやることはしないということにいたしております。  なぜかと申しますと、まず、条約におきまして四十六条の注解で翻訳文のみによって審査することができるということになっております。もう一つ、やはり四十六条でございますが、一部もし翻訳文の方が原文を上回っておる場合には、その上回っている範囲に限りまして無効にすることができる規定になっておるわけでございます。これはいわゆる特許されました後の措置について条約では規定されておるわけでございます。  そこで、私どもは、国内審査を翻訳文でいたします。それによって公告をされました場合は、公告の段階で異議の申し立ての機会を与える、それによってそのいわゆる上回った部分の是正措置を講ずることが第一。それから、特許になってしまった後でそういった上回っておるというような瑕疵のあるものにつきましては無効審判を請求し、それに対応して訂正審判の請求を待ちまして、必要な範囲に是正をする、こういうプラクティスをとっておるわけでございます。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 いま言われたPCTの四十六条に関する注釈ですね、これはあくまでできるということなんであって、そうしなさいということじゃない。できるし、そうしなくてもいいわけですよ。  外務省の方にお尋ねしたいんですが、条約の前文のところに「発明の法的保護を完全なものにすることを希望し、」と書いてあるわけで、「完全なものにする」という精神から照らして、そういうふうに翻訳文で審査をし、疑義を感ずる場合に原文と照らし合わせることもやらないというふうなことでは、この精神から見て問題になるんではないですか。
  140. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) ただいまの特許庁長官の方の御説明は、結局、この条約に基づいて実際の行政実務を運用するに当たっての一つの統一的な行き方ということを御説明申し上げたものと存じます。条約の精神から申しますれば、もちろんその特許によって保護されるべき法益が最もよく実現されるように運用さるべきものでございますけれども、しかしながら、これは行政実務の実際に照らして何が最も現実的であるかという問題との兼ね合いもございますので、その双方の妥協から最も適当と思われる手段を講ずるほかはないというふうに考えます。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、これは、この第十一条ですね、「国際出願日及び国際出願の効果」というところの第三項では、このように書かれてあるわけですね。「国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなす。」こういうふうに書かれてある。つまり、国際出願というのは「正規の国内出願の効果を有するもの」と、そうすると翻訳文で審査をして誤りがある場合、つまり原文での効果といわゆる翻訳文での効果というのは食い違いが出てくるんではないだろうか。ここに、国際出願というのは「正規の国内出願の効果を有する」というふうに述べられているわけですから、原文の国際出願にその効果を認めるという規定ではないかというふうに判断するわけですが、この点はいかがですか。
  142. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) これは私どもの国内法との関連での質問でございますので、私の方からこの条項の趣旨について御説明を申し上げたいと思いますが、この十一条の三項の趣旨は、国際出願が出ましてそれが希望します指定国、相手方の国においてどのような効果を持つかということをこの条項で規定しておるわけでございまして、一つの国際出願で同時に複数の国に出願したと同様の効果を与えるための規定でございます。  他方、関連して申し上げますが、翻訳文につきましては二十二条と二十四条によりまして翻訳文の提出の規定がございます。この翻訳文の提出が二十カ月以内に提出されない場合には、その国際出願は取り下げられたものとみなされることになっておるわけでございます。それで各国がこれをどのように受けとめるかにつきましては、これは各国の国内法で処理をすべきものでございまして、私どものいま御提出、御審議をお願いしております法案におきましては、これは翻訳文をもってこの国際出願になされました出願の願書とみなしておるわけでございます。  それで、いま先年御指摘のいわゆる原語の出願との食い違いの場合にどうするかという点につきましては、これは今回の改正法の関係条項にすべて盛り込んでおりますが、たとえば二十九条の二という条文がございます。その二項にやはり条文が出ておりますが、原語による出願とそれから翻訳文と重なり合っておる部分、これが基本になるということを国内法で規定しておるわけでございます。したがいまして、いわゆる飛び出しておる部分等につきましては瑕疵のあるものということになるわけでございます。審査は翻訳文でいたしますが、それは先ほど申しましたように、異議の申し立てあるいは無効審判によりまして瑕疵は是正される、こういう仕組みになっておるものでございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、外国の場合についてお尋ねしたいんですけれども、各国の国内官庁における審査で、翻訳文のみを基礎とする国は主要先進国ではどういう国がございますか。
  144. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 各国のやり方はそれぞれ国内の法制のたてまえ等がございますので、一概に申し上げられませんが、運用の細部についてまでは必ずしも明らかでない点もございますけれども、この翻訳文だけで実際にやるのか、あるいは反証があった場合にそれを是正する、この反証というのがどの範囲まで、どの時点からやるかという点につきましては必ずしも明確ではございませんで、私どもが一年半ほど前に出しました調査団での調査によりますと、各国では出されました国際出願というものを勘案しながら、翻訳文の方の是正はかなり弾力的にやるということも考えている国もあるようでございます。いま各国のそれぞれにつきまして詳細についての御説明は、まだデータがそろっておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ別の点からお伺いしますけれども、原文と翻訳文とを系統的に照合するか、あるいは系統的に照合しないまでも審査官が疑いを持ったものは職権で出願人に訂正させる、補正させるなどの処置をとることができるようにしている国はどういう国がございますか。
  146. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いま先生のお尋ねの件でございますが、つまり現在の段階で原文と照合することができるような国はどこかというお尋ねでございますけれども、いま長官からの御答弁にございましたんですが、私どもの調査の結果では、少なくともそういうことができないようなことをはっきりと書いているという国は、私ども現在の段階では、日本以外に、法制上の違いもございまして、承知しておりません。  たとえばアメリカでございますけれども、アメリカの場合には、出願に際しましていわゆる真正な翻訳ということで、英文ではベリファイド・トランスレーションと言っておりますけれども、何かそういった一つの真正を持った翻訳をいたすことを課しておりまして、それに反した場合には別の意味の何か罰則がかかる、こういうシステムになっておると聞いております。それから、たとえばドイツとかイギリスの場合には、審査の段階では明確な拒絶理由を詳しく列挙していないような法制をとっているかに聞いておりまして、そういった意味では日本のようなこういう体系はとっていないというぐあいに聞いております。  なお、一たん公告なり、あるいは特許になった後の措置につきましては、日本と全く同じような体系をとっておるというように聞いております。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 PCTの調査団の報告書によりますと「オランダ、スウェーデン、オーストリア、西独、英、米など、諸外国はことごとく、原文と翻訳文とを系統化に照合するか、あるいは系統的に照合はしないまでも、審議官が疑いを持ったものは職権で出願人に補正させるなどの処置をとることができるように定めています」と、だとすれば、この条約の前文、先ほど読み上げましたように完全にということでその精神に基づいてやらなければならない。また第十三条の三項にも、先ほど私が指摘したような点に抵触するような審査の方法をとるというのは日本だけではないかというふうに感じるんですが、こういうふうな原文と照合しないでやると特許の審査が不正確になるというふうなことはお認めになりますか。
  148. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 私ども、翻訳文で審査をいたすことにおいてそれは十全であると、ただ、この翻訳文と原文との不一致の点はその場合見ないわけでございますので、それに対する処置はどうかという点については、ただいま申しました公告後の異議の申し立て並びに特許後の無効審判等の請求によりまして是正することをもって十分であるというふうに考えておるわけでございます。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 全商工労働組合の特許庁分会のアンケートを見せていただいたわけですが、審査官の部門におけるアンケートでは、翻訳文のみを基礎に審査をした場合望ましくないと何らかの形で難色を示している方々が八四%にも上っている。実際に特許の審査に携わっている方々がこういう意見を出しているわけですね。そして事実上翻訳文のみで審査をして明らかに瑕疵がある翻訳だというふうにわかっていても、原文と照合しチェックできない。翻訳の瑕疵を知りながら公告決定して判こを押さなければならない。審査官の任務ということから見てもこれは問題になるわけですし、ましてやそういう多くの方々が異論を述べておるのに、こういう事態で推し進めるということはどうしても納得できないわけですが、この点についてはどのようにお考えですか。
  150. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) いまお話しございましたアンケート調査というものの詳細につきましては、私、どういう対象でどういう文書でどういう内容のものか詳細に承知いたしておりません。  で、私ども、今日まで庁内での本問題に対する検討のために庁内委員会を五十年から設定いたしまして今日までいろいろ検討し、その結果につきましては逐次各組織を通じて全職員に流しておるわけでございます。また、意見もその段階で聞いておるわけでございますが、組織を通じて実はやっております。  また、工業所有権審議会のPCT小委員会というものをこれも五十一年に設置をいたしまして、昨年の七月に中間答申を発表し、これを全国に説明会を開きまして、その場合の中間答申の中身としましては、やはり翻訳文によって審査をするという案で実は中間答申が出ておりまして、各界の御意見を聞き、それから全国的な意見も聴取をしてきておりまして、本年二月に最終答申をその線でいただいたわけでございますが、そういう線で私ども本件の措置は、この特許制度の中で特に新しい国際出願制度というものを導入した場合に生じます翻訳文との間の不一致の問題について関係各界の意見を十分徴したつもりでございます。もちろん国会で十分御審議賜る重要な点でございますが、そのように考えております。  ちょっと最後に一つ補足させて御説明させていただきたいのは、先ほど私が申し上げました翻訳文のみで審査する、これは条約上は先ほど申したとおり許されているわけでございますが、じゃ他にどういう方法があるかと申しますと、いま先生御指摘のように、たまたま審査の過程でわかった場合に、それが直せないのはおかしいじゃないか、こういう点があろうと思いますが、それらの点につきましては、何せ語学の種類がたくさんございます。どれについても同様なレベルで審査ができるということはございません。したがいまして、たまたま何らかの事情で知り得た場合だけについては原文と照合してやるということになりますと、これは国際出願は相互に先願、後願の関係があるわけでございまして、その限りにおいては理解できないわけではございませんが、全体の公平性の維持、それから審査の裁量の範囲が余りにも広くなり過ぎまして公正な制度としての担保がない、こういう難点がございます。  それでもう一つ、さらば、いま先生の御指摘になりましたように、一々最初から全部ベリファイされました翻訳文に基づいて――その翻訳、そういったベリファイをするという形において最初からチェックをするということになりました場合には、これは大変多数の語学にわたりますものをそこまで審査官に要求をすることはほとんど不可能である。また、そういう実態にあるものを法律で当初からそれを義務づけるということ、これまた非現実的である、こういうことでございまして、私ども、今日お出ししております翻訳文だけで審査をし、後で必要な調整、救済措置をとっておくということが最善の措置である、そういうふうに私どもは考えておるわけでございます。
  151. 立木洋

    ○立木洋君 先ほどのアンケート調査ですね、これは十分にどういうことかおわかりないと、そして機構を通じていろいろ資料を流しておると。少なくとも行政の責任者は、いわゆる具体的にその仕事に携わっている審査官の方々が行政が機関を通じて流した資料に基づいてどういう意見があるのか、十分にそれが実行できるのかどうかというのは、十分に調べて、意見もよく聞いて、その上でより効果的な方法をつくり上げていく努力をするのが私は責任者としての当然のあり方だろうと思うんですよね。だから、そういうことをぜひ考えていただきたいし、それから先ほど言われた問題について言いますと、いままでのパリ条約では翻訳文と原文を照らし合わせてチェックをしていることになっているわけでしょう、パリ条約では。
  152. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) まず、最初のアンケートの点でございますが、これはけさほどたまたま私初めて目にしたものでございますので、それがどういった内容のどの程度のものであるかは承知してないということを申し上げたわけでございます。庁内は、もちろん組織を通じ、また職員団体とは機会あるごとに私ども誠意を持って話し合いをし意見を聞くということは当然やるべきだと考え、今日までやってまいっているつもりでございます。先生の御指摘の点は、さらに私としましても十分今後配意していきたいというふうに考えております。  なお、二番目の、パリ同盟条約の場合に、いま原文との関係について御質問がございました点につきましては、城下技監からお答え申し上げます。
  153. 城下武文

    政府委員(城下武文君) いま先生からパリ条約の場合はどうかという御質問でございますけれども、庁内の取りまとめといたしましては、必要がある場合には原本を見ながら仕事をする、こういうことになっております。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 だから、必要がある場合には原文と照らしてやるようにしたらいいんですよ。――答弁要りません。  この質問の終わりになりますから、大臣にお尋ねしますけれども、いわゆる翻訳文でやっていろいろ間違いが出てくる、これは原文と翻訳文との関係というのは外交官の最高の責任者の大臣はもうよくおわかりだろうと思うのです。外交活動をいろいろやっている場合に、翻訳文と原文との関係というのはきわめて厳密性が要求される。正確に、一字一句の過ちすらおろそかにできない。そして外務省としては、その点で言えば、これは仮訳でございますと言って国会議員に出す資料すら拒むという事態がいままでもあった。それぐらい厳格にやるというのが本来の筋なんですよ。ましてやこの条約については、完全にやらなければならないということが前文で規定されているわけでしょう。それを翻訳文のみでやっていろいろ事態が起こってくるかもしれない。いままではやっておったわけですから。だから、そういう問題についてはもっと、これは省庁が違いますから外務大臣にお話ししてもあれでしょうけれども、このあたり考え方について大臣の御見解を賜りたいのですが。
  155. 園田直

    国務大臣園田直君) これは原語がもとでありまして、翻訳したやつがもとというわけにもまいりませんが、そこで、外務省では、翻訳する場合には、一人でやるのではなくて、それぞれ合議をしてやるわけであります。今度の場合も、外務省、法制局、特許庁三者で合議した結果、印刷してお届けいたしました案文を採用しているわけでございます。おっしゃるとおり、これは厳密にやらなければならぬ問題でありますけれども、同じ言葉でいろいろ異訳、五訳、さまざまな訳があって繁雑だという御注意も先般受けたわけでありますが、この点は今後とも十分注意してやりたいと考えております。
  156. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) いま先生の、従来もパリ同盟条約の中で必要な場合は見るということでやっていたということをもって直ちに本件についても一様な措置をとるべきであるという考えのお話がございましたのですが、ちょっと補足して申し上げさせていただきたいのは、今回のような、いわゆる出願という形で同一のものを扱うというケースは今回が初めてでございます。従来パリ同盟条約であったケースと申しますのは、たとえば優先権主張をいたします際のことであろうと考えます、それが一つ。それはたまたま、たとえばアメリカに出願されましてから一年以内に日本に出願された場合に、日本ではその優先権を主張した事実を確かめるということがございます。これは出願が同一ということとは違います。  それから、文献につきましては、これは世界公知の文献でチェックをいたしますので、各国の文献は必要があれば原文で見る、あるいはまずは日本語で翻訳されているものを見る、いろんな方法で見るということがある。そういう意味で、いま申し上げましたのは必要な場合に見るということを言ったわけでございまして、性格が今回の場合と全く違うものでございまして、それをもって直ちに今回も適用できると考えるのはいささか的を射ないのではないかと私考えております。
  157. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないので、最後に一括してちょっとお尋ねしたいのですが、いま述べられたような点については、私としては十分に納得できませんし、この問題については国内法の審査の場合商工委員会等々で他の委員も質問するかと思いますけれども、今後とも明らかにするように私たち考えてみたいと思います。  先般、私は特許分類などの問題について質問主意書を出しましてあれしたのですけれども、回答をいただいた内容がどうも私としては理解できない点があるので、この際、二問に限ってお尋ねしておきたいのです。  一つは、分類を公報に掲載することを法律事項とするという問題について、五十年の五月二十八日、衆議院の商工委員会で齋藤長官は質問に答えて、至急検討するというふうに言われています。また、当外務委員会でも、特許分類についての法的措置を速やかに講じることとして、それに対して当時の宮澤外相は、ただいまの戸叶委員の御発言並びに委員長からの御要望について関係省庁間で十分に協議し努力するというふうに答えていただいたわけですが、私の私の質問主意書の第三項(イ)、これは五十三年の十一月二十五日の質問主意書ですが、そこでは、その立法準備状況についての説明を求めたところ、答弁書では、分類は事務的な性質のみだから従来から法定しないと答えているわけですね。こういうことでは、国会の審議を経、また国会においても至急検討するというお約束まで長官からいただいておりながら、それがどうなったのかということはこの答弁ではきわめて私は遺憾なわけで、その点についてひとつお尋ねしたい。  もう一つの点は、情報検索に分類する場合ファセット分類が望ましいけれども、IPCやJPCともともに十分でないのでその補完手段があるかという質問に対して、IPC改正の提案をしているだとか全く見当違いの答弁があるわけで、この点についても、分類の重要な役目から考えてみて、一つ以上のさまざまな観点でサーチするからには、分類というものがただ一つではなくて、すべてのサーチする人に対応し切れないという問題もあるわけですから、そのために別の観点からも分類が二つ以上必要ではないかというふうな問題について、この二点改めてお尋ねしておきたいと思います。
  158. 城下武文

    政府委員(城下武文君) それでは、いまの御質問二つございまして、一点からお答え申し上げたいと思います。  まず第一点は、特許分類の付与を法律に明定すべきではないか、こういう点かと思いますが、特許分類につきましては、これは公開公報であるとか公告公報等の特許分類に記載されております発明に関する情報を整理したり、あるいは検索の便に供するために発明に付与する分類の体系でございます、これはもう先生十分御承知のことと思いますが。したがいまして、これはストラスブール協定にも書いてございますけれども、あくまで事務的性質のみを有するものでございまして、いわゆる特許法に書かなければいけない、権利の効力であるとか範囲であるとか、そういうものに影響を与えるものではございません。したがいまして、分類と申しましても、たとえば同じ特許庁で付しておる分類の中で、商標なんかの分類につきましては、これは権利の範囲を言っておるものでございますけれども、特許の分類と申しますのは、いま申し上げましたように、あくまでも事務的性質を有する、こういうものと私どもは理解しております。  したがいまして特許分類は日本でも従来から付与してまいっておりますけれども、特許分類の付与につきまして特許法等で特に明定されずに、今日まで十分そのいろんな特許文献に付与され十分その機能を果たしてきている、かように理解をしております。そういうわけでございますので、特に特許法等に明定はしなくても、今後とも不都合なく運用ができるんではないかと、かように考えております。この点につきましては十分私ども内部でもいろいろな角度から検討をしてみましたけれども、現在の特許法のいろんな組み立て方とかいうことから考えまして、そういった意味で現在の法律の枠内で、その他というところで十分読んでおりまするし、読めるんではないだろうかと、こういうことでございます。  それからもう一点は、御質問の、これは先生にこの前いただきました主意書に書いてあることでございまして、「検索に分類を使用する場合、ファセット分類が望ましい」したがって、その場合に日本特許分類もあるいは国際特許分類も、そういう意味では非常に一本の分類だけで手薄だから、それの検討はどうなっているか、こういうことでございます。  それで、実は、私どもも、そういった意味では確かに日本分類もIPC分類も両方ともある一面をとらえた分頻でございます。そういった意味では、検索する場合には多面的な分類というものが望ましいことは、私ども、そういうぐあいに理解しております。したがいまして特許庁といたしましては、昭和五十年からIPC検索システムというものを研究してまいっております。そのためにIPCの中でファセット分類というものを一、二研究して作成してまいっておりますけれども、まだこれは一、二の範囲を出ておりません。たとえば医薬の分類につきましては一、二ファセットをつくってきております。まだこれは中を広げるに至っておりません。と申しますのは、なかなか分類をつくるのは大変な作業でございまして、まだ広げるに至っておりません。ただ、そうは言っても、一般の民間あるいは事業者にとりましては膨大な特許情報を整理する場合に、一日もその事業を望まれますので、そういった意味では日本特許情報センターというところにおきまして、五十二年からファセット分類にかわるキーワードをIPCに組み合わせまして、いわゆるIPC広域情報検索システムといったものでサービスをすべく現在システムの完成を急いでおります。このサービスは現在のところシステムが大体でき上がりまして、五十三年度中にはこのサービスを始めることが可能かと、かように考えております。
  159. 立木洋

    ○立木洋君 これで終わります。異論があっていろいろ述べたいわけですけれども、もう時間がありませんので、別の機会に譲りたいと思います。
  160. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手をお願いします。   〔賛成者挙手〕
  161. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会