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1978-03-28 第84回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十八日(火曜日)    午前十一時九分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      小谷  守君     上田  哲君  三月二十八日     辞任         補欠選任      徳永 正利君     玉置 和郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 玉置 和郎君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 上田  哲君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        科学技術庁研究        調整局海洋開発        課長       島田  仁君        資源エネルギー        庁石油部開発課        長        鈴木玄八郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件国際情勢等に関する調査  (日中平和友好条約締結問題に関する件)  (成田空港乱入事件に関する件)  (竹島問題に関する件)  (中東問題に関する件)  (海洋法会議に関する件)  (日米安全保障条約に基づく事前協議に関する  件) ○日本国イラク共和国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○船員の職業上の災害の防止に関する条約(第百  三十四号)の締結について承認を求めるの件  (内閣提出) ○千九百七十年六月十九日にワシントンで作成さ  れた特許協力条約締結について承認を求める  の件(内閣提出衆議院送付) ○在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る三月二十四日、小谷守君が委員辞任され、その補欠として上田哲君が選任されました。  また、本日、徳永正利君が委員辞任され、その補欠として玉置和郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 玉置和郎

    玉置和郎君 中江さんにお伺いしますが、中江さん、あんたアジア局へ来て何年になりますか。
  5. 中江要介

    政府委員中江要介君) 六年半を過ぎました。
  6. 玉置和郎

    玉置和郎君 あなたは私の知る限りにおいては外務省で最も中国通だと思っておりますが、あなた以上に知っておる人はいま現役でおりますか。
  7. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、私は、自分では中国通とは思っておらないんでございますが、と申しますのも、中国語を解する能力もございませんし、アジア局に参りまして日中関係アジア局事務として携わってきた、そういう意味で この仕事を通じて中国に親しく話のできる人は、これは少なくとも二、三人はおります。
  8. 玉置和郎

    玉置和郎君 ところで、あなたより以上に、それなら中国を知っておる人は現役でおるの。
  9. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私以上に中国を知っている人は外務省にはたくさんおられると思います。
  10. 玉置和郎

    玉置和郎君 だれがおるの。
  11. 中江要介

    政府委員中江要介君) 歴代の中国課長はいずれも私よりも詳しいと思いますし、それから初代の小川大使中国専門家として尊敬している先輩でございます。
  12. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで中江さんに聞きますが、あなた、中国のいま顔と言ったらだれですか、普通で言うところの中国代表する顔。
  13. 中江要介

    政府委員中江要介君) これはとらえ方がいろいろあると思いますけれども、政府間の仕事の面では、国を代表する華国鋒主席ということになろうかと思います。
  14. 玉置和郎

    玉置和郎君 華国鋒主席奥さんはどなたですか。
  15. 中江要介

    政府委員中江要介君) 存じません。
  16. 玉置和郎

    玉置和郎君 子供は何人おるんですか。
  17. 中江要介

    政府委員中江要介君) それも私は存じません。
  18. 玉置和郎

    玉置和郎君 年は幾つですか。
  19. 中江要介

    政府委員中江要介君) いろいろ言われておりますが、日本で言うほど確たる戸籍調べのようなことはできないわけでございまして、承知いたしておりません。
  20. 玉置和郎

    玉置和郎君 お父さんお母さんはだれですか。
  21. 中江要介

    政府委員中江要介君) 存じ上げません。
  22. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、知っていますか。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) 存じません。
  24. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうでしょう。これは日本の例を見ても各国の例を見ても、その国々において仲よくしようとか結ばれようとか、特に結婚の場合、そうです。その人が幾つであるか、その人のお父さんお母さんがだれであるか、特に結婚の場合なんかは、相手結婚しておって、そこへまた入籍でもしに行ってみなさい、これ重婚というんですよ、これは。法律違反ですわな、これは。それはわからぬでしょうな。外務大臣、どうでございますか、失礼でございますが。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) いま覚えておりませんが、調べたらすぐわかります。調べたらすぐわかりますが、いまわかりません。
  26. 玉置和郎

    玉置和郎君 調べたら本当にわかりますか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) わかると存じます。
  28. 玉置和郎

    玉置和郎君 いつごろわかりますか、それは。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) きょうじゅうにわかると存じます。
  30. 玉置和郎

    玉置和郎君 この私の質問が終わるまでにわかりますか。電話をおかけになったらどうですか。特に中国通佐藤大使がおられるのだから、わかりますかな。
  31. 園田直

    国務大臣園田直君) すぐ調べます。
  32. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は恐らくわからぬと思います。これはあなたたちよりもよく知っておる現在の中華民国、台湾でもわからぬのだ、これは。だから佐藤大使がわかったら私は点数を差し上げます。だから、きょういま国際電話をかけて、奥さんはだれか、子供は何人あるのか、お父さんお母さんはだれか、これひとつはっきりしてください。これわかったら世界的ニュースです。それだけ自信がある外務大臣なら私はあなたを信頼する度合いかまた変わってきます。どうかひとつしっかりやってください。  そこで、私がなぜこういうことを言うのかというと、日本外交基本はあらゆる国と仲よくする、こういうようになっていますね。あらゆる国と仲よくしていける自信は、外務大臣、おありなんでしょうな。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) これは総理国会における演説、私の国会外交方針演説ではっきり申し上げましたとおり、いずれの国とも友好関係を結び敵対行為をとらないという基本方針日本国憲法の精神に従って、いろいろ困難はありましょうし一時的ないろんな問題はありましょうが、あらゆる国と友好善隣関係を発展させていくことは可能であると存じております。
  34. 玉置和郎

    玉置和郎君 われわれは、そういう全方位外交なんというのはこれは幻想であって、これはあくまで願望であって、現実の厳しい外交の中ではそういうことはできないという考え方を持っておるんです。それだけに、いまここで言いますが、ひとつこの中華人民共和国の新憲法前文で、ソ連は超大国の覇権主義だと規定しています。これは御承知でしょうな。大臣どうですか。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) 拝見しております。
  36. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうして敵視政策をうたい上げておりますし、華国鋒主席全人代大会での政治活動報告の中で、ソ連中国を敵視する政策をとり続け、身のほど知らずだとののしっておりますことも御承知でしょうな。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりでございます。
  38. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうでしょう。これを見ますと、いわゆる現在の中華人民共和国ソ連を敵視しているんです。これは明らかです。あなたも認めたとおりです。その国とわが国が手を結んで仲よくしたら、こんちくしょうと思っているソ連日本が仲よくできますか、どうなんです。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国ソ連対立関係、これは御発言のとおりでありますか、南国が対立しておるからといって中国及びソ連日本友好関係を進めていくことは別問題であると考えております。
  40. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは最近のどうも総理外務省の頭とわれわれの頭とどっちが狂っておるのか、どっちが狂っておるんでしょうか。
  41. 園田直

    国務大臣園田直君) どちらも狂ってないと存じております。
  42. 玉置和郎

    玉置和郎君 おかしなことですよ、これ。  たとえば私と鳩山さんが仲よくしておったとする、私と中江君も従来仲よくしておったとする。ところか鳩山さんと中江さんとはこのごろ大変仲が悪くなった、特に外務大臣をやめてから仲が悪くなった(笑声)――仮定の話ですよ。仮定の話で、鳩山さんは温厚なんですからね、そんなことはないですが、仮の話で、この中江のやろう、おれが使っておったときにはごますりやがって、いまになってこういうことをしやがったと仮に思った場合――鳩山さんにはそんなことないですよ、気の毒ですけれども、一番適切な人だから。この温厚な紳士である、日本的代表紳士である鳩山さんですらそういう考えを私は持ち得ると思うんです。それなのに、このソ連というわれわれにとってはなかなか不可解なあの国が、中国はけしからぬ、われわれに対して敵視政策をとり続ける、それと仲よくする日本もけしからぬ、敵視政策をとり続けると見るべきだ、こう言っておるときに、あなたが、そんなことはない、ソ連ソ連だ、中国中国だ。日本がそう考えたってソ連はそのとおりにはとらないですよ。ソ連はそうとらないという事実は知っていますか。
  43. 園田直

    国務大臣園田直君) 度合いの問題はあると思いますが、個人にしても友人にしてもきょうだいにしても、けんかしているとき一方のけんか相手と交際をすることは快きはずはありませんけれども、だから絶交であるとか断絶であるとか、そういうことはあり得ないと思います。けんかしている当事者であっても、こちらは別個の人格を持ってあなたとも仲よくし、鳩山さんとも交際することは可能であると考えております。
  44. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、最近、園田直という政治家人物像というものをずっと研究しまして、あなたは最近偉いと思っているんだ、私は。それは政治信念に生きておられる。かつて河野一郎先生のもとにおって、河野先生が親ソ的な政策をとられたときに、あなたはそれに真っ向から反対された。そして河野派除名になったか除名になりかけたか、とにかく大騒ぎかあった。それからまた、この北京の問題を言うことか官民党でタブー視されておったときに、あなたは日中関係は推進すべきだと言った。そして党紀違反にかけられかかった。この事実をずっと調べてきまして、いま外務大臣になられて、日中をどうしてもやろうというその信念、これは一つの物の考え方だし、私は人生の中でとうとい哲学だと思います。それだけに、あなたのそういう立場はよくわかりますし、なるほどなとうなずける点があります。  しかし、いまあなたに聞きたいのは、日中問題というのは懸案事項処理だと思いますか。
  45. 園田直

    国務大臣園田直君) 共同声明に基づいて約束したものを、条約締結する懸案事項であると考えております。
  46. 玉置和郎

    玉置和郎君 それが間違いなんです。懸案事項処理なら、私はここであなたに対して注意をしたい、国会議員として注意をしたい。懸案事項処理じゃない。懸案事項処理ということになれば、私はあなたのいままで言ってきたことを全部否定せなきゃならぬ。私がなぜ前段に、あなたが政治信念に生きられてここまできたかということを私たちの見方は違っても高く評価したのは、懸案事項処理じゃないんです。それは懸案事項処理も多少はあるでしょう。あなたはここで日本国の、日本国民命運を決する外交方針を選択するそのポイントを握っておられる。懸案事項処理園田直がやるんなら、私は反対、あくまで反対する。新しい意味日本国家日本人民命運を決するところの外交方針を選択するというその自由があってこそ園田戦略が生きるんです。そうじゃございませんか。
  47. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、御発言のとおり、二十数年来、アジアの平和、アジア地域の繁栄というのは中国日本が提携することによってできるとはかたく考えております。しかし、また一方、中国と提携することによってソ連を敵に回すことは決して考えておりません。いかなる機会、いかなる論文にも私はそういう反ソ的な言動は論じておりません。確かにおっしゃるとおりに中国ソ連は現在対立いたしております。対立いたしておりますが、ソ連の力も――中国の方ははっきりわかりませんけれども、少なくともその関係を改善したいという意欲はあるように考えます。日本が対立する中国ソ連友好関係を進めていくことは確かに困難であろうとは存じますが、これを解決することによってのみ日本の平和、アジアの平和はあり得るという信念もまた私はかたい信念を持っておるわけであります。一方、事務的には、共同声明というものがあって、これを進めていくべきだと考えておるわけであります。
  48. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、いまソ連の問題に触れられましたからお伺いしますが、共同声明にうたわれている覇権反対の項が、いまよく言われておる日本第三国に対するものでないと仮にうたい上げたとしますと、ソ連はどのように出るでしょうかな、予見される事項がありましたら教えてください。
  49. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連の方は、御発言のとおりに、中国対立関係にあるわけでありますから、仮に日中友好条約が折衝が開始されて締結された場合には、その締結される内容に重大なる関心を持っておると思います。そしてその条約内容日中両方が一緒になって自分を敵に回すものであるかどうかということについては非常に注意を払っておる、このように考えております。
  50. 玉置和郎

    玉置和郎君 私の聞きたいのは、二階堂さんが提案をされたと言われるあの二階堂方式、あるいはいま外務省がどうも考えておられると言われる第三国に対するものではないという、この覇権条項ですね、それをうたい上げたときに、ソ連は、ああそうかなあ、おれたちを敵視しないんだなあと、そういうふうに納得をしてくれるんでしょうか。それが私たち一番心配なんです。
  51. 園田直

    国務大臣園田直君) 条約内容については、二階堂さんの案であるとかだれの案であるとかいろいろ言われておりますが、これはあくまで推測の記事であって、まだ交渉を始めない前に外務省としては外に意見を漏らしたことはございません。もちろん相手中国にも話したことはございません。  そこで、一方から言えば、ソ連のたびたびの発言から憶測をすれば、第一にソ連がわれわれに言うことは、どのような文句を使ってみてもしょせんは中国ソ連に対する紛争に巻き込まれるんだからそれは得策でないという趣旨のことを、現に私にも言っておられました。しかし、とはいうものの、条約を真に結び、その条約がみんなが納得するものであり、その後の日本ソ連に対する外交政策中国と足並みをそろえて敵対行為をするものでないということが明瞭になれば、おのずから道はだんだんと開けてくる、このように考えております。
  52. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、大臣、そう見ないんですよ。ここにもこれを持ってきていますし、あなたたちはもちろん資料で持っておるでしょうが、中華人民共和国の新憲法、それから華国鋒主席政治活動報告葉剣英さんの憲法解釈報告、こういうものをずっと読んでみまして、この日中の間に条約交渉が進められて覇権の問題で仮に合意をしたとしても、二階堂方式だとか、言われるところの第三国に対するものではないとかいうものを書いたところで、いまあなたが言うように、ソ連はあくまでも、現在の中華人民共和国日本が組む場合、ソ連を敵視したものと見るのはこれはあたりまえのことですよ。憲法にああして規定していてソ連敵視政策をとっておる国において、また主席のこの政治活動報告を読むにしても、これは当然のことだと思うんです。それを、今後の努力にまつということはこれは結構ですよ。今後の努力するというあなたの決意は結構です。しかし、現実の問題として、この共同声明に盛られておる覇権反対の問題をどのように解釈して、まあ薄めたような形でやろうとも、ソ連納得をしないというこの厳粛なる事実について、重ねて聞きますが、どう思いますか。
  53. 園田直

    国務大臣園田直君) 覇権の問題は、第一に、ソ連納得することよりも日本国民の方が納得することが第一の要件であると考えておりますが、ソ連の方から言われてもまたこれ当然であります。共同声明に書かれた立場をわれわれは貫くわけでありますから、共同声明が出されたときにソ連かどういうことをおやりになったか、だとすれば、共同声明の線を貫きさえすれば、ソ連の方は争っておる相手でありますから快きはずはありませんけれども、それにどうこうということはないと私は存じておるわけでございます。
  54. 玉置和郎

    玉置和郎君 ただ、あなたとその問題でやっておったら時間が長くかかるから言いませんか、共同声明か発出された当時といまとでは、アメリカアジアにおける体制というものはずいぶん後退していますよ、それを見逃してのいまの発言はおかしいと思います。だから、もうこのことについてはあなたにどうだこうだということは言いませんが、十分おわかりだと思いますね、この問題は。アメリカか後退をしておる、そこでソ連が最近どう出てきたかということ、これはよく頭の中に入れておかないととんでもない間違いをしでかすということを、私は国会議員としてむしろ行政府の蒙を開くために言っておきます。  そこで、覇権反対憲法でうたい上げておることについて、外務省は真剣に検討したのかどうか、これ中江君どうなんだ。
  55. 中江要介

    政府委員中江要介君) その真剣に検討をしたかということの御趣旨は、外務省として、中国ソ連に対して非常に厳しい立場をとっているということがこの憲法によってもはっきりしてきているという意味では、国際環境としては真剣にこれを情勢判断の要素として検討していることは、これは間違いのない点でございます。
  56. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、さっき覇権反対の問題でソ連もさることながら日本国民納得ということがありましたね、私はこれは大事な言葉だと思います。  そこで、ここしばらくいろいろな動きがありましたが、公明党矢野さんが訪中なさった、私は大変な御苦労だったと思います。野党でありましても本当に一生懸命やっていただいたことに敬意を表します。この矢野訪中感触等から、どうもやっぱり覇権問題等において一致できる点があるんじゃないかなあという感触、あるいはまた、あなたかむずかしい外交交渉に出かけられる限りにおいては――これは出かけられるという前提において物を言っているんで、これからわれわれはこれは党内でいろいろやるわけです。しかし、出かけられるという意思はあなたは非常に強い。それだけに最大の難点である覇権の問題についても、何らかの解決の曙光というか、明かりというか、そういうものを見出し得ておるのかどうか、この辺は私は非常に大事なことだと思うんですね。それはどうですか。
  57. 園田直

    国務大臣園田直君) 公明党訪中団が帰られて、野党としての立場を堅持しつつ友好条約再開に側面から協力願ったことは非常に感謝し敬意を表しておるわけであります。しかし、向こうからの伝言であるという四項目は、いままでの中国言い分を整理をし明瞭にされただけであって、これによってやや中国の態度が変わってきたとか、あるいは妥協的であるとかというふうには甘くは判断いたしておりません。
  58. 玉置和郎

    玉置和郎君 あなたの後段私が言った訪中をしたいというその問題で、覇権の問題について何らかの新しい感触を得られておるのか、どうですか。
  59. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国からの伝言は、いままでの中国言い分一つも変えていないということであると考えております。
  60. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうすると、覇権の問題でも、やはりこれからあなたが仮に行かれても、非常にむずかしい場面に突き当たるということは、われわれは予測して間違いございませんね。
  61. 園田直

    国務大臣園田直君) 私自身が非常に大事で困難な問題であると考えております。
  62. 玉置和郎

    玉置和郎君 いまもう一回言ってください、大きな声で。このごろ耳が遠くなったので。
  63. 園田直

    国務大臣園田直君) 私自身も、玉置さんと同じように、きわめて大事でしかも非常に困難な問題であると考えております。
  64. 玉置和郎

    玉置和郎君 結構です。  次に、ちょっと変わった問題に触れますが、戸村一作さんというのは、大臣知っていますか、戸村一作
  65. 園田直

    国務大臣園田直君) 存じております。
  66. 玉置和郎

    玉置和郎君 この方が昭和四十七年の三月十七日から四月十日まで中国を訪問しておることは知っておられますか。
  67. 園田直

    国務大臣園田直君) 存じております。
  68. 玉置和郎

    玉置和郎君 このときに、中国の方は、この戸村さんにどういうことをされたか御存じでございますか。
  69. 園田直

    国務大臣園田直君) 周恩来当時の総理が会談をして、そして三里塚の闘争にいろいろ意見を述べて、そして歓待をしておるということを承知しております。なお勲章をもらったという話がありますが、これは調査をしておりますが、まだ事実はわかりません。
  70. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは勲章をもらっております。本人が帰ってきて自慢して勲章を見せておるから間違いないです。そうでなかったら、あれはどっかおもちゃ屋おもちゃかもわからぬ。まさかあれだけの人があれだけの勲章を皆に見せびらかしたんだから、もらっておる、写真も載っておる、どうですか。
  71. 園田直

    国務大臣園田直君) それは新聞で拝見しましたから、いま調査をしておるところでございます。
  72. 玉置和郎

    玉置和郎君 新聞もまさか読者五百人とか六百人というそんな新聞じゃないでしょうね、あなたが拝見したのは。――大新聞だよ。
  73. 園田直

    国務大臣園田直君) 新聞の名前は覚えておりませんが、小さな新聞ではありません、私が見た新聞でありますから。
  74. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうでしょう、大新聞ですよ。  そうしますとね、私たちは不思議に思うのです。あのとき警官三里塚事件で四名殺されれたんです。しかも無残な殺され方をした。全くあのときの状態は大臣も知っておられるとおり無法ですよ、法律なきがごとくです。そして惨殺をした、多くの警官がけがをした。それを中国全額負担で招聘して周恩来首相が英雄として持ち上げて勲章を渡した。そういうことに対して、あなたが今度訪中された場合に、中国のこういう姿勢に対して、独立国である、主権が確立してある誇り高き日本政府代表として、あなたは中国に対してそれにどう言いますか。
  75. 園田直

    国務大臣園田直君) 戸村氏を中国に招待する前に、同じグループの婦人部隊の隊長二名を中国は招待いたしておるわけです。その新聞を見ましたときに、恐らく玉置さんと同じような感じを持って新聞を見たことを覚えております。しかし、これは共同声明をやる前でありまして、共同声明後は、このような記事は新聞には出ませんし、中国新聞にも出ておりません。戸村さんのことは新聞に出ているわけであります。  そこで、私は、現在でも内政不干渉とはどういう意味なのか、いやしくも国内で反体制運動を行った者を一方の国が招待して英雄扱いをするということは礼儀にかなった道ではなかろう、したがって内政不干渉の内容とはどういうことであるか、こういう話は私はしたいと考えておるわけでありまして、御承知のとおり私は中国に対する一つ信念を持っておりますが、それ以上に私は日本国を愛しておる日本人の一人でございますから、そういう感情問題についても忌憚なく、できれば話したいと考えております。
  76. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、もう一つ別の観点からお聞きをしたいんですが、けさ中川君とぼくと電話でありましたか連絡しました。それはいつおまえさんモスクワへ行くんだということでした。それについて新聞を見たら外務大臣と話し合いをしておったが、その話し合いはしたのかと言ったら、それはもちろん会ったんだから、話し合い、新聞に載っておるとおりだと、こう言う。どういうふうな話し合いでした。
  77. 園田直

    国務大臣園田直君) きのうの中川農林大臣と私の話し合いというのは二つありまして、一つは漁業交渉一つは同じ党員として日中友好条約の問題を慎重にやれという強い申し入れでございます。  前段の漁業交渉の問題は、松浦代表が帰ってまいりましたので、それらの報告に基づきながらソ連の出された条件、今後の交渉等の見通しを話をして、そこで正直に申し上げますと、漁業交渉と日中交渉とどういうかみ合いでいくかよく緊密に連絡をしながらいこう、こういう話し合いをいたしました。  それ以上のことは御勘弁を願います。
  78. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、私の観測ですけれどもね、きょうの新聞によりますとイシコフさんは五日ごろまでおらぬということなんですね。その間に内村前農林次官が出かけて事務的な折衝をしておく、そして帰ってきて中川君に報告をする。いずれにしても出かけるのはこの内村君が帰ってくるということと、それからイシコフさんがモスクワにおられるということになろうかと思うんです。そうした場合に、四月五日より早くなることはあり得ないという推測は当たっていますか。
  79. 園田直

    国務大臣園田直君) 中川農林大臣がいつごろモスコーに行くようになるか、これは御勘弁を願いたいと思います。
  80. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、恐らく中川君もイシコフがおらぬのにのこのこ出かけていって、あすこにゴルフ場もないし、それからそんなのこのこ出かけている暇もない、だから、あの男はやっぱり行った場合には一発勝負で行きたいというぐらいの気魄を持って行く男ですから、その点は、立場は違ってもあなたとよく似ていますよ、戦略を持っておる。  で日本の戦略、ソ連の戦略、中国の戦略、アメリカの戦略を話し合いたいというのは彼のやはり基本の考えです。単にサケ・マスだけではないという。そういうことであるならば、ソ連で当事者であるイシコフさんあるいはソ連の首脳者がモスクワにおるということでないと、彼はなかなか出かけないと思います。私は友人として彼をよく知っていますから、そう思います。そういうことからずっと推しはかっていきますと、四月六日以降になることは間違いがない。相手ソ連ですから、三日や四日ですぐ終わるとは私は思わない。少なくとも十日、二週間はかかるんじゃないか、こう見て差し支えないと思います。また、そのぐらいの腰を落ちつけた会談でないと、世界の超大国であるソ連アメリカ中国――中国もこれは超大国ですよ、後で言いますが。そういうふうな国々の世界戦略を話し合わなければ、単にサケ・マスだけで行くんなら意味はない。またサケ・マスだけでは解決しないで、だんだん追い込まれていくのはあたりまえのことである。そういうことなら、大体、中川君が十日から十五日ぐらいおる、どんなに早く行っても六日だということになると、中川が帰ってくるということになれば、これは十五、六日で二十一、二日、四月の下旬になることは間違いない。そうすると、すぐに福田総理の訪米があります。これはもうセットされた問題だと思います。  私は、やっぱりあなたがこの訪中をもしされるとするなら、中川君と直接会って、中川のサイドから、あれはまたいろんな見方を持っていますから、中川のサイドからいろいろソ連というものを観測した、そういう分析をしたこういう情報に基づいて、あなたの、戦略を持っておられますが、その戦略の参考にしていく。さらに、アメリカに一緒に行かれます、総理と。それだけにカーターさんが最近何を考えておるか、アメリカの首脳が何を考えておるか。恐らく自由民主党の党員の中で戦略を語れる者の数少ない一人の政治家です、あなたは。それだけに私は敬意を表しますが、そういう戦略なき日本国と言われておる中に、貴重な戦略政治家であるあなたがカーターさんと会って、また中川君の意見を聞いて、その後にあなたのしっかりした戦略をお立てになって、戦略国家である中国と話をされるということは、これは非常に大事なことだと思いますが、あなたはどう思いますか。
  81. 園田直

    国務大臣園田直君) 貴重な御意見、参考としてよく承っておきます。
  82. 玉置和郎

    玉置和郎君 ということは、そういうことの後にという訪中考え方もまた出てくるということもあり得るということですね。
  83. 園田直

    国務大臣園田直君) 御承知のとおり、ただいま交渉再開について党側の御理解を求めているいま入り口に入った段階でありますから、その御理解を得てから、私の訪中するかどうかという問題も出てくるわけでありますので、ここで私の考え方を御返答申し上げるわけにまいりません。御意見は十分承ります。
  84. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、中ソ同盟条約についてお聞きします。  これは一九五〇年に中ソの間でこの同盟条約ができておりますが、この同盟条約の中で日本を敵性国家として扱っていることについては御承知おきのことだと思いますが、ここでもう一回確認しておきます。
  85. 園田直

    国務大臣園田直君) この中ソ同盟条約の中の数カ条にそういう点があることを承知しております。
  86. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは条約、数カ条のということでなしに、前文にもはっきりうたっておるわけですね。前文にうたい上げて、第一条からずっと第六条までうたい上げて、その中にいろいろまた敵性国の表現を使っておるわけです。これは、中江君、知っておるでしょうな。
  87. 園田直

    国務大臣園田直君) 存じております。
  88. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、この中ソ同感条約の中ソの間の見解はどうなんですか、中国はどう見解をとっておるんですか、これに対して。
  89. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国とはこの点で意見を交換したことはございませんからわかりませんか、モスコーに行ったときに、グロムイコ外務大臣と私の間に中ソ同盟条約の話は交互にいたしました。  その話し合いの中から察すると――私の言い分は、あなたの国がどこの国とどういう条約を結ばれようとも、結ぶなとか、打ち切れとかということは申しません、内政干渉にわたることはしない、ただし、その中でわが日本に関することがあることは困ると、こう意見を言いましたが、ソ連の方は、中国のことをこう言いました、中国のことはわからないと、こういう表現を使いました。それじゃあなたの方はと言ったら、返事をいたしませんでした。これから推察いたしますと、ソ連の方はこの同盟条約ソ連の方から打ち切ろうという意思はないなと私は判断をいたしております。
  90. 玉置和郎

    玉置和郎君 現在、中華人民共和国の方は、これに対してどういうふうに考えておられますか、御存じですか。
  91. 園田直

    国務大臣園田直君) グロムイコ外務大臣が、公式の場所で、中国のことは聞いてないからわからないと言ったからには、これに対する意見中国からソ連には何も来てないんだなと想像をいたしておるだけでございます。
  92. 玉置和郎

    玉置和郎君 いまここにシレンコ――シレンコというのは、これは欧亜局長知ってますな。
  93. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 最近はソ連大使館の一等書記官であることは承知しておりますが、本人自身は特に存じてはおりません。
  94. 玉置和郎

    玉置和郎君 これ、いまのソ連大使館の中でシレンコ氏は一番日本通だと言われておるし、大変な実力者だと評価されております。このシレンコさんか二月の二十七日に木内信胤先生の総合研究所で、しかもマスコミ総合研究所ですよ、ここで講演と質疑の応答をされております。これに外務省のOBである金山先生も出ております、金山元大使。かなり著名な人が出ております。  その中で、彼は、中ソ同盟条約はどうなるんだという質問に対して、こう答えております。中ソ同盟条約については中華人民共和国の方でやれ無効だとか、やれ機能停止だとかいろいろなことを言っておるが、少なくとも当事国であるわれわれソ連に対して一度も公式の見解を述べたことはない、こういうふうに、いま外務大臣から言われたように、意見がぴったり一致するんです。さらに、このテープではつけ加えていわく、中華人民共和国の方はこれは一方的によう破棄しないだろうと、こういう見解を述べております。これは重大な見解です。それはなぜかと言うと、中ソ同盟条約の中に日本国を敵性国家扱いしている。しかも、このシレンコさんのまだ話か続きまして、この中ソ同盟条約というものは国連憲章の第五十三条、第百七条に基づくものだということの講演をいたしております。これは旧敵国条項です。これは重大な発言です。  こういうことを考えていきましたときに、この中ソ同盟条約について来年の四月で一方が破棄通告をしたら、これが一年たてば廃止になるということになりますが、シレンコ氏の言うごとく、中国がよう廃棄通告しないだろうという、私は当然だと思いますよ、中華人民共和国のいま一番こわい敵は、これはソ連です。国境紛争、いろいろなことがありましても、戦争という大悲惨事にならない単なる地域紛争にとまるというその歯どめの一つは中ソ同盟条約だと私はこう考えております。それだけに軍事力という力の差ではこんなに懸隔があるこの中華人民共和国として、この中ソ同盟条約を一方的に通告して破棄するということは、これは大変な決心です。私は恐らくあり得ないと考えています。シレンコ氏の言うのは正しいと思う。  そういうことでありますならば、私はむしろ園田外務大臣訪中された際に、あなたの基本戦略に基づいて、あなたはソ連の戦略もよく知っている、アメリカの戦略も知っている、中国の戦略も知っている。それでASEANというものをどうしようかということをあんた真剣に考えておられる。インド亜大陸をどういうふうにして日本の協力者にさそうかということも考えておられる。そういうことを考えたときに、中ソ同盟条約という、中ソにとってというよりも、中華人民共和国の生存に関するこの条約意味、それのはね返ってくる日本立場、そういうものを考えた場合に、あなたは堂々とこの問題について日本の見解を述べられると私は信じておりますが、どうですか。
  95. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言は十分胸にこたえて受けとめて、対処をいたします。
  96. 玉置和郎

    玉置和郎君 もう一問、重大なことですから。中国の方では共同声明でも重ねて聞くということを言っていますので中国式にいきますが、重ねてお聞きしますけどね、重大なことです。そのことについて向こうと対応するという用意はありますね。
  97. 園田直

    国務大臣園田直君) 中ソ同盟条約については私なりにいろいろ考えがございますので、向こうに参りましたならば、これについても意見を交換したいと考えております。
  98. 玉置和郎

    玉置和郎君 次に、条約局長というのは来ておるのかな。――この共同声明条約との違いはどう見ますか。
  99. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 共同声明は、通常、首脳会談のような重要な会談に際しまして、その内容を公表する目的で双方が合意の上作成する文書でございます。共同声明は、通常、法律的権利義務関係の設定といったような合意を構成する文書ではございませんから、その意味では、政治的には重要な意味を持ちますけれども、権利義務関係を設定する条約とは異にしているという点かございます。
  100. 玉置和郎

    玉置和郎君 これね、外務大臣、いま条約局長からお答えいただきましたように、共同声明共同声明であって、この両国間の条約締結ということとはおよそ根本的に意義が違うということは、これは当然のことです。  そこで、私がさっき言った懸案事項の解決じゃございませんぞと言うのはそれなんです。当時の両国の政治状態を述べ合っただけのことなんだ、共同声明というのは。政治的には重大な意義を持ちますよ。あなたが御苦心をなさっているのは私はそこだと思うんです。両当事国の条約締結というのは、共同声明でこううたったからそのとおりしなきゃならぬということなら、これはもう何も意味がない。あの当時のことについて私はもうこれ以上言いませんが、私たちが非常に心配したことが現実共同声明の中になってあらわれてきておるんです。  日ソの間でやっぱり共同宣言のあったことは御存じでしょうね。
  101. 園田直

    国務大臣園田直君) 存じております。
  102. 玉置和郎

    玉置和郎君 その共同宣言があって、何でいままで日ソの間で平和条約、これができなかったんですか。
  103. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) いわゆる北方の四島の返還につきましてソ連側と合意が達成できませんでしたので、共同宣言という形で国交回復をしたわけでございますが、平和条約は未締結という次第でございます。
  104. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこでね、やっぱり領土問題にひっかかっておるんですよ。だから、これはソ連が一方的に領土問題で北方四島はわが物だと習っておるから、解決しないから、平和条約に入れないというこの主張ですね。  いま共同声明を発出してから五年半たったからといって、われわれとしての見方は、べたべたべたべたと何で中国に傾斜をしていかなければならぬのか。ソ連にそういう言い分を言うなら、われわれの方としても言い分がある。それはあの覇権反対、あの問題、あるいは当時高島さんが非常に苦労なさった第一項目の不正常な状態はこれにて云々の問題、いわゆる台湾の問題ですね。それから日華平和条約に絡んでくる問題、こういう問題について中華人民共和国かかたくなな姿勢をとり続けた。そして一歩も譲ろうとしなかった。  私は、ここに霞山会刊の「中国総覧」、これを持ってきております。これはやっぱり中国の文献については私は一番詳しいと思いますし、外務省から相当資料が流れておると思います。これを読んでみますと、三木さんのときに、まあ三木さんはここまでよう譲ったものだなと思うぐらい譲りに譲っていますよ。そうして当時の外務大臣の宮澤さんが間に立って大変な御苦心をなさっておる。今日、私は一番冒頭に、中江君、おまえ何年おったんだと聞くのはそれなんです。この歴史の事実、そしていろんな政治家信念の欠如したとも思われるようなそういうやり方において外務省はよくがんばっておる、私はその点評価しますよ、評価する。  だから、外務大臣、大事なのはね、政治家です。私はこれ読み終わったのは四時半だ、けさの。その個所だけ。そして政治家というのはいかに大事かなということをつくづく考えた。宮澤さんが四つの項目だとか四つの原則、この四つの項目だとか四つの原則に分けたわけではないが、結局世間ではそう言っておる。ここまで折れていろんなことをやられた。そういう中で、一国の総理が何としてでも自分の在任中のお手柄にしたいというふうな思惑が仮にあったとするならば、国益を損することは大変なものです、これは。私はけさ四時半までこれを読んでみて、われわれの大先輩である三木武夫というこの政治家が、そういうことはよもやないと思いますが、この記録の文言をたどっていき、行間のその意のあるところを読んでみますと――これ行間ですから文字はないですよ、しかし、われわれは政治家だからわかる。いかぬなあという感じです。いまそのことについて重大な御決心をなさって、行動に移られようとしておる園田直という政治家、この話をどう受けとめますか。
  105. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりでありますが、特に外交というものは未来にわたる国家の運命を決定するわけでありますから、最後の瞬間まで慎重に検討し、慎重に考え、そして実行に移す必要があると考えております。
  106. 玉置和郎

    玉置和郎君 一言でいいですが、私はいま返事をもらうことはいかぬと思うかもわかりませんが、私は言っておきますが、もちろんあなたはさっきから言うように、政治信念に生きてこられた人だし、これからもまたそうだと思うし、戦略を存じておる外務大臣だと思いますから言うんですが、中華人民共和国言い分が、これだけ折れて折れて折れて折れまくった三木内閣においてすらできなかった問題について、あくまで固執をするというふうなことがあるならば、あなたはその非を正して、そして中国の態度を改めさせて、日本中国の長い友好関係、これを樹立さすということに自信がおありでございますか。
  107. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本中国の問題は、アジアの平和と繁栄ということが最大の目的でありますから、両国の意見がそれに沿って一致するかどうか、この点だけは確と確かめ、確と話し合い、そして確と決める、こういうことを考えております。
  108. 玉置和郎

    玉置和郎君 確とならないときには、どうなりますか。
  109. 園田直

    国務大臣園田直君) 確とならないという場合にはどうするかということを、私がここでお答えをして実行に移すということは、これはいかかなものかと考えますけれども、ただ一言で、私は日本国国民代表する外務大臣であるということで私のお答えとさしていただきたいと存じます。
  110. 玉置和郎

    玉置和郎君 私の願望として、これは願望でございますから返事は要りませんが、確とならないときには、せめて友人の玉置和郎とは相談するというお気持ちはおありでございましょうな。返事は要りませんよ、いまのその顔を見たらわかる、にこっと笑ったんだから。  それで次にいきますが、法制局、来ておるね。国連憲章五十三条、百七条をどう解釈しますか。
  111. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  国連憲章の百七条と五十三条、これは俗に旧敵国条項と称するものでございますが、このうち百七条につきましては、第二次大戦後におきまして、連合国によるいわゆる戦後処理が憲章の他の条項に違反しないようにするという見地からのいわば法技術的な経過規定の性格を有するものでございまして、わが国がすでに連合国と平和条約、その他の個別取り決めを結んでおり、また国連に加盟しております以上、わが国に関しましては今後この規定が適用される余地はないというふうに考えております。  また、第五十三条につきましては、わが国は、一九五六年に、国連憲章の第四条のいわゆる平和愛好国と認定されまして国連に加盟いたしたわけでございまして、国連加盟国相互間の関係は、憲章第二条の原則、なかんずく主権平等の原則により規制されることから考えますと、この第五十三条の規定はわが国には適用がないものであるというふうに解されております。  このような解釈は、従前からの政府の見解でございまして、一例を申し上げますと、第百七条の関係につきましては、昭和三十六年二月の衆議院予算委員会で、当時の林内閣法制局長官が同様の趣旨をお答えになっておりますし、また第五十三条の関係につきましては、昭和四十五年四月の参議院予算委員会で、当時の愛知外務大臣が同じく大体おおむね私が申し述べたところと同様の御答弁を申し上げているわけでございます。
  112. 玉置和郎

    玉置和郎君 あんたな、そんなこと言うたら答弁にならぬとさっき言ったじゃないか、そんなの答弁にならぬよ。  そんなら愛知さんが外務大臣のときに国連に行って、これをなくしてくれって何で演説したんだい、必要ないじゃないか、そんなこと。それと矛盾するじゃないか、いまの答弁だったら。それは実効的にこれに縛られてないんだというなら、何もそんなことを言うことないじゃないか。
  113. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 国連憲章にいわゆる旧敵国条項か戦後処理の一環として依然として残っておるということにつきましては、決して好ましいことではないということで、従来から、国連憲章再検討についてのいろいろの委員会におきまして、その削除方について同じ意見を持っている国々とともに鋭意努力していると聞いておりますか、詳細につきましては外務当局の方からお聞き取り願いたいと思います。
  114. 玉置和郎

    玉置和郎君 しかしね、あんたに聞くのは、そういう外交のいろんなやりとりのことを聞いておるんではないんですよ。法律の番人として、この問題は国際法上どういうふうな解釈ができるのか、憲法との見合いでどういうふうな解釈ができるのかということを聞いておるんですよ。純法理学的に答えなさい。ここにわしも芳賀さんの解釈を持ってきておる。
  115. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほど申し上げましたように、日本が国連に加盟したという事実等を踏まえました上で、憲章の他の条項との関連において総合的に解釈いたしますれば、憲章の第五十三条及び第百七条の規定は日本には適用がもはやないんだという解釈をとるのが妥当ではないかというふうに考えております。
  116. 玉置和郎

    玉置和郎君 ちょっと、あんた、芳賀四郎さんの「国際連合入門」の「逐条解説」を読んでみろよ。ちゃんと書いておるじゃないか、これ。これは間違っておるのか、芳賀さんの見解は。百二ページ、それからこっちの大きい方、国際協力の方のこれを読んだことあるのか。
  117. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) その論文は、私、実はまだ読んだことはございませんが、先ほど申し上げましたような理論構成によりまして、政府としては先ほど申し上げたような結論を持っておるわけでございます。
  118. 玉置和郎

    玉置和郎君 これはどうなるんだい。ここで「敵国による侵略更新の防止を目的とする相互援助条約に定められた措置」――「中ソ同盟条約によって中ソ両国が日本の侵略更新防止のため強制的行動を執るには、安全保障理事会の許可を必要としない。」云々とこれがずっと書いてある。またこっちにもいろんなそんなことが書いてある。これは芳賀さんの解釈はあなたの解釈と私は根本的に違うと思うがね。これは芳賀さんの解釈は間違っておるのか、どうなんだい。
  119. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほどるる申し上げましたような理由によりまして、憲章の五十三条あるいは百七条で言うところの敵国にはもはや日本は含まれていないという解釈をとっておるわけでございまして、いろいろ学説はあろうかと思うのでございますけれども、いま先生の御指摘のございました見解と政府の見解とは異なっていることは、これは事実でございます。
  120. 玉置和郎

    玉置和郎君 そんなら、もういま日本は、憲章に言うところの敵国条項に該当しないということなのか。
  121. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) そのとおりでございます。
  122. 玉置和郎

    玉置和郎君 なぜ、それなら改正させないんだよ、なぜ改めさせないんだよ。
  123. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) その点につきましては、先ほど申し上げましたように、あらゆる機会を通じましてその削除方につきまして鋭意努力しているということを聞いておるんでございますが、何せ国連憲章の改正を伴うものでございますから、手続的にもなかなか容易でないというふうに外務省からは私聞いております。
  124. 玉置和郎

    玉置和郎君 大川君。
  125. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) ただいま法制局から申し上げましたとおりでございまして、私どもとしては、従来から、この二つのいわゆる旧敵国条項が憲章第四条に基づいて国連に加盟を認められたわが国についてはもはや適用がないんだという解釈をとっております。これは日本だけがそういう解釈をとっておるんではございませんで、ほかにかなりの国が同じような見地から、この旧敵国条項はもはや不要ではないかという立場で議論をしているんでございます。そういったことを踏まえまして、私どもとしては、適用はないんであるけれども、依然として文革そのものが国連憲章に残っているということは望ましくないし目ざわりであるという見地から、たとえば国連憲章の再検討に関する特別の委員会がございますけれども、そういった場でも従来からその削除を主張しているところでございます。  ただし、国連憲章の改正という手続を経なきゃなりませんので、これは非常に手続的にもむずかしいものでございますから、なかなか日本の主張が現在までは実現していない。しかし、引き続き、これにつきまして努力してまいる所存でございます。
  126. 玉置和郎

    玉置和郎君 愛知外務大臣が国連でこの撤回を求めた、それに対してそのときソ連はどう出たですか。
  127. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) そのときにソ連が具体的にどういう反応を示したか、私はちょっとただいま手元に資料がございませんけれども、一般論として、ソ連は従来から国連憲章のいかなる改正につきましてもきわめて慎重な立場をとり続けてまいっております。
  128. 玉置和郎

    玉置和郎君 私はここに資料を持ってきておるか、ソ連が一番先に峻拒している。それでシレンコの二月二十七日の演説の中にもちゃんと五十三条、百七条がきておる。そして、それに基づいてソ連日本に対応すると演説しておる。どう解釈するんだよ。そんないま法制局が解釈したような解釈でソ連というあの超大国は通らないんだよ。日本はそう解釈しますが、われわれが一番心配しておるソ連さんはそういう解釈をおとりにならないんです。これはあなたたち厳しい国際政治の現実を知っておるから私はもうこれ以上言いませんけれども、力のある者はこういうもののややこしい解釈は自分勝手に解釈するんです。そして、それにかまかけて、行動が伴ったときに日本の平和と安全か脅かされるということなんです。  私はそれを言わんためにこれだけのことをやってきたんだよ。いろいろ国会図書館でも学者の先生を集めて話を聞いてみた。非常に疑問です。そういう法制局の甘い解釈、大川君の言うようなこういう甘い解釈、それでは通りません。それだけにきょう大臣と最後に話をしますけれども、これはやっぱりなるべく早い機会に、特にこうして日中が絡んできておるときには、こういうややこしいものははっきりしておかなければだめですよ。これについてアメリカ、英国、フランス、ベルリンの問題もこれあり、なかなかむずかしい立場に立とうと思いますが、真に日本国の将来を考えたらなぜやらぬかい、へ理屈ばかり言わぬで。何やっとったんだ、いままでおまえたち怠慢じゃないか、そう思わぬか、法制局答えてみい。法制局というのは、現実がどうのこうの言うんではないんだよ、純法理学的に言えばいいんだよ。現実の問題は外務省がやればいいんだ。そのためにおまえさん呼んだんだよ。きのうも法制局長官にそういうことを育ったんだよ、つべこべ言うなって。純法理学的な立場で言え。私は最近予算委員会で見ておって、きょう戸叶先生や皆さん野党で先輩おるが、法制局のやり方を見ておるとどうもいかぬ。三百代言か四百代言か六百代言みたいなことを言う。そうでないですか、実際。純法理学的なことを言えばいいんだよ。何も現実におもねることない。現実の問題は国会議員がその話を聞いてみて、これはおかしいなと思ったら、あなたたち国会政府に対して、これは立法せねばいけませんよと言うのが当然であって、おもねることないです。  だから、この見解は間違っておると言っていいんだな、芳賀四郎さんの見解は。もう一回聞いておきますよ。
  129. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 先ほどるる申し上げました私の見解は決して政治的におもねているものでもございませんで、純法理的に解釈した上での結論を申し上げているつもりでございます。
  130. 玉置和郎

    玉置和郎君 それでは、芳賀さんの解釈は間違っておるということになるな。
  131. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) その点、芳賀先生の論文を私見ておりませんので、どういうニュアンスのものかは存じませんだけに、何ともこの席でいろいろ申し上げることはちょっと差し控えたいと思います。
  132. 玉置和郎

    玉置和郎君 大川君、この五十三条、百七条について私はいま言ったが、これは改めさせるという努力はこれからどうするんだい、どういうかっこうでやるんだ。
  133. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 玉置先生からおしかりをいただきましたのを謙虚に受けとめておりますけれども、私どもとしては、かなり前から、国連憲章の再検討あるいは国連の機能の強化に関する一連の国連の作業におきまして、たびたびその問題について努力を続けております。これはもちろん日本だけでなかなか簡単に期するところを実現することはむずかしゅうございますけれども、幸いにして志を同じゅうする国も幾つかおりますので、そういった国々との協力を通じまして、今後、引き続き、この両規定の削除に向かって努力を続けてまいる所存でございます。
  134. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、愛知さんが外務大臣のときに国連憲章の五十三条、百七条の敵国条項、これをどけてくれ、撤回してくれという演説をして、一番先にソ連の峻拒に遭ってこれがつぶれておりますが、私はいま日中をやろうとするならば、この問題は、シレンコさんが演説しておるように、言いがかりを上手につけてくるソ連立場を考えたら、なるべく早い機会に、と言うよりも、速やかに国連に出て、総理なりあなたなりがこの問題について鋭意この撤回を早めていくような努力をしてほしいと思いますが、どうですか。
  135. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおりであると考えております。
  136. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで尖閣ですけれども、あなたとこれやったらいいのか悪いのか実際私は迷います。迷いますが、霞山会の「中国総覧」を読みますと、ここに尖閣についていろいろなことが言われておるのです。これはむしろ尖閣の帰属について私はこの際はっきりしておいた方がいいんじゃないか。そのことは中国に乗ぜられない、ソ連に乗ぜられない、そうしてしっかりと会議録に残しておく、こういうことのために言うんであって、意地悪く言うんでないということは篤と御承知だと思います。  そこで、ここにこう書いております。「七四年九月の木村・喬会談、同一一月の第一回予備交渉の段階で、棚上げにすることに中国側も同意していたという報道もあり、その後の交渉の中でも、これらの問題をめくる対立はなかった」――ということは、たな上げしておるからこういう部分の話はなかった、こういうことなんです。前段はそうなんです。この点はどうですか。
  137. 中江要介

    政府委員中江要介君) いまお読みになりました文脈から見ますと、日本側がたな上げを提案して中国側がこれに同意したというような書き方になってございますけれども、繰り返し申しておりますように、日本側からたな上げをしようと言い出したことは一度もございません。したがいまして、その記述は何らかの誤解に基づくものではないか、こう思います。
  138. 玉置和郎

    玉置和郎君 私もそうだと思います。ただ、日本の方で、政界もそうだし財界もそうだし文化人もそうたし、中国へべたべたべたべた行って、かつてヒトラーのところへ行きムッソリーニのところへ行って礼賛をしたように、ごきげんとりでべたべた行って、そして尖閣の問題については、これはあなたの方のものだと思いますがというようなばかなことを言っておるのがおる。そういう事実を、中江君、知っておるかな。
  139. 中江要介

    政府委員中江要介君) どういう問題の持ち出し方をされたかはこれは一々について詳細存じませんけれども、尖閣諸島の帰属について政府が認識しているのと全く同じ認識をお持ちにならない方かもし国民の中にありますとすれば、それは私どもの努力の不足であろうと思います。そういう誤解に基づいて中国側と何らかの話をされたことがあったといたしますれば、それは私どもとしては、見解か違うということを申し上げるほかはない、こう思います。
  140. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、ここにこう書いてあるのです。やっぱり百二十八ページですが「尖閣列島については、鄧小平副総理か七四年一〇月に訪中代表団に対し棚上げにしたいと述べている。」云々とあります。こういう事実について知っていますか。
  141. 中江要介

    政府委員中江要介君) いまの件は、新聞報道によって承知しております。
  142. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、この問題はどこかでけりをつけておかなきゃいかぬということは前から私は主張しておるんです、けりをつけておかなければと。それでないと竹島の二の舞しますよ。さらに台湾を武力解放するんだとうたい上げておる。当面はそういうことはあり得ないが、米中正常化というふうな暁には、これは可能性がないということは否定できない。そうなった場合に、尖閣に対してはっきりしておかないと、今度仮に台湾を解放したとすると、この中華人民共和国の勢力は尖閣に対して手を伸ばしてくることはもう明らかです。特にこの体制の違う共産主義国家というのはこの領土問題には非常にやかましい。  私は、そういうことを踏まえて、総務会でも、尖閣列島に対しては、あそこに緊急避難漁港をつくりなさい。そのことは台湾の船も中国の船もしけのときに、危ないときに、そこへ入っていいじゃないですかという人道的な立場で、日本国民の税金を投じて、そういう施設をつくるということが全方位外交じゃないんですか、どうですか。
  143. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの尖閣列島の問題、いつの機会にかこれを話し合って明確にすることは御意見のとおりだと思います。  なおまた、現在、わが国の領土でわが国の主権が行使されているということを確実にするために、ただいまの御意見は貴重な御意見として承っておきます。
  144. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、中連民国、台湾の問題ですけどね、これは、法制局、領土って何だい。
  145. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 一国の主権が及ぶ地域であると思います。
  146. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうしたら、中華民国が支配しているあの区域はどこの領土だい、法制局、純法理学的に言ったらとうなる。――それかいわゆる三百代言と言うんだ。純法理学的に答えたらいいんじゃないか、おまえ。何も聞くことないじゃないか、法律学者だろう。領土とは何だったら、主権の及ぶ範囲が領土になっとるんじゃないか。どうなんだい、法制局。
  147. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 中華人民共和国の領土であろうと思います。
  148. 玉置和郎

    玉置和郎君 それでいいんだよ。  そうすと、共同声明がややこしくなってくるんです、共同声明。これは大事なことなんですね、共同声明がややこしくなってくる。ここにね、園田さんが行かれて御苦心をなさる大きな理由がある。私はそれを言いたいんです。  私はね、これを会議録に残すのは外務省をいじめたり法制局をいじめたり、そんなことするんじゃないんです。この会議録、私がきょう演説したらね、明くる日は中国大使館へだれかこっそり届けに行くやつがおるんだよ、だれかおるんです。この中じゃないですよ、この中ではそんな不見識はおりませんけどね。だれかがおるんです、これは。ちゃあんとね、まだ会議録に出ない前に、速記録のところへ写しに行って、そうして中国大使館に、昼間行くか夜行くかわからぬが、大抵夜行くんです、そういう連中は。行くんですよ。これはもう戸叶先生事実ですよ。これは野党、与党超えてね、こういう恥ずかしいことはやめましょう。それか乗ぜられるもとなんです。  だから私は言うんですが、大平外務大臣が私の四十八年の予算委員会でのこの質問に対してこう答えています。中国というのはどういうことなんだと私聞いておるわけですね、中国という国があるんだったら教えてくれと。よう答えなかった。中国という国があるなら教えてみろと言ったら、よう答えない。中国という国はないんですよ。この前予算委員会で言ったように、中国というのは、侍、私たち子供のときにシナ、シナと言ったが、シナという地域名です、あそこの地域の名前です。だから中国という国はありません。中国という中に二つの政府が存在するんです。それはお認めになりますか。それはアジア局長答えたら、あんた歴史知っとるから。
  149. 中江要介

    政府委員中江要介君) 中国に前々からありました政権と、これを覆して革命によって樹立された政権と、この二つが存在したという事実がございます。
  150. 玉置和郎

    玉置和郎君 そのとおりなんです。  そこで、ここで有名な言葉があるんですが、これは四月九日の予算委員会ですが、「私は、中国に二つの政府があるということを否定しないわけであるわけでございます。」、こう言っとるんです。それで、またしばらくたって「問題は、あなたの言うように北京政府の支配が台湾に及んでいないことは、私も承知いたしておるわけでございます。」、こう言っておる。これは中江さん知っとるな。
  151. 中江要介

    政府委員中江要介君) 存じております。
  152. 玉置和郎

    玉置和郎君 ね、ここなんです。ここで園田外務大臣が苦労なさるんですよ。  あんな台湾なんか切ってしもうたらいい、台湾なんかわれわれは関知してないんだというふうなわけには、政権を担当している自由民主党、その政府であるいまの福田内閣はそういう気やすいことは言っておれない。しかも、閣議決定で従来の関係は絶たない、友好関係にあるそういう方面の従来の関係は絶たないということを――あるんです、閣議決定はここにちゃんとあります。全部持ってきとるんだよ、これ。持ってきとる、間違いない。それは閣議決定です。党議はそうじゃないんですよ。党議は、外交も含めて、中華民国とのあらゆる関係は絶っちゃならぬというのが党議だった。しかし、政府の日中正常化のときの閣議決定はそうです。その方針外務大臣として堅持されるのか、されないのか、どうなんですか。
  153. 園田直

    国務大臣園田直君) 閣議で決定されたいままでの事実関係は変えないということは、そのままだと存じます。
  154. 玉置和郎

    玉置和郎君 そこで、アジア局長、いまの日中の通商関係と日華――私ら日台とは置いたくないんたが――台湾との通商関係、これはとうなっていますか。
  155. 中江要介

    政府委員中江要介君) 手元に正確な数字を持ち合わせておりませんが、昨年の実績でいきますと、日本と台湾との貿易量の方が日本中国の貿易量を上回っているということでございます。  それから、ちょっとこの機会に、先ほどの法制局第一部長の答弁で補足さしていただきたいんですが、玉置先生の台湾はどこの領土かという御質問に対して、法制局第一部長から中華人民共和国の領土だという答弁があったんですが、これは日本国政府の見解ではなくて、中華人民共和国は台湾は中華人民共和国の領土だと言っていると、こういう趣旨でございますので……。
  156. 玉置和郎

    玉置和郎君 ありがとう。あんたは日本人で、こっちは日本人でないちゅうこっちゃ。法制局、私はいま気づかなかったけどね、それはあんた中華人民共和国の領土なんて言ったら、領土の中に主権が確立されてないじゃないか。どういうことなんだ。
  157. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) ただいまアジア局長が答弁されたとおりに私どもも心得ております。
  158. 玉置和郎

    玉置和郎君 なら、あんたの間違いだな。
  159. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) 言葉が少し足らなかったことをおわびいたします。
  160. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうでしょう。  だからね、もう一回重ねて聞いておきますがね、台湾というあの地域、それから金門、馬祖、澎湖島、この地域には中華人民共和国の統治権が及んでいないということは認めますか。
  161. 中江要介

    政府委員中江要介君) 事実上の問題として、実効支配が及んでいないということは私どもも認めます。
  162. 玉置和郎

    玉置和郎君 そのとおりでありましてね、だから従来の閣議決定の方針、そういうものは変更しないということはいま外務大臣から明確にお答えいただきました。どうかそれを踏まえて、日中交渉をしっかりやっていただきたい。  非常にむつかしい問題です。特に中国か新憲法で台湾の武力解放をうたい上げた。そうして解放軍に武力解放の準備を命じた。このことは五年半前の日中正常化の共同声明を発出した当時と今日とでは大変な違いであるということ、これをやっぱり御認識をしていただかないと、大きな過ちを犯すことになる。われわれは当時の閣議決定、そういうものを踏まえて、この日本の安全保障上非常に大事な立場にあるこの中華民国・台湾というものの地勢的立場、これを堅持していこうという考え方でございます、外交関係はなくとも。そういうことであるならば、この中華人民共和国憲法で台湾解放を武力でやるということをうたい、そうして解放軍に武力解放の準備を命じたということは、これは重大なことです。その辺の違いをどのように認識しますか。
  163. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま御指摘の中華人民共和国政府の台湾に対する政策というのは、これは中華人民共和国政府立場からすれば一つ政策として打ち出しているものとして理解はできますけれども、日本政府はどうかという点は、あくまでも日中共同声明における日本政府立場というものを堅持していく、こういうことでございます。
  164. 玉置和郎

    玉置和郎君 それは、中江君、さっきのそんなら国連憲章の解釈が、日本が国連に加盟することによってだんだん変わってきたんだと、あなたたちね、さっきそんなこと統一見解で言っておって、いま私の言うのは、五年半前のこの中華人民共和国の台湾に対する姿勢と、今日全人大会を開いた、そうして新憲法をつくったその中華人民共和国の台湾に対する姿勢というものはやっぱり大きな変換があったということ。それは憲法という国家基本の法の中に明文化されたということ、そうして華国鋒主席のこの政治活動報告の中で、台湾の武力解放を解放軍に命じたということ、これは日本側として私は見逃すべきものではない、これは中国の台湾に対する大きな変化だと、強い姿勢のあらわれだというふうに見ることは間違っていますか、どうですか。
  165. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは、玉置先生も御承知のように、中華人民共和国政府は、誕生以来、台湾の解放を唱え続けてきた政府でございます。で鄧小平副主席も述べられたことがあったと思いますが、場合によっては武力を行使することもあり得べしということは中華人民共和国政府の首脳か言っていたことでございます。したがいまして、その政策自身には変更はないと受けとめておりますが、憲法にそれが明記されたかどうかというのは、これは中国側の御事情でございますので、それをどういうふうに批判するかということは差し控えますけれども、中華人民共和国政府がその政策として台湾解放を堅持しているということは、これは私どももそのとおりに受けとめておるわけでございます。
  166. 玉置和郎

    玉置和郎君 私が言うのは、そんなこと聞きたくないんですよ、そんなことわかっておることなんだ。そういう中国の首脳が言ってきたことが国家基本法に入ったということ、憲法の文言としてうたい上げられたということ、これを言っておるんですよ。それは中国の首脳が個々に何を言おうとかにを言おうと、まあそれは多少の影響はあっても、事憲法でしょう、特に日本政府の場合は憲法は第一ですよ。何としたって何でも憲法だ。われわれ憲法改正を言っているけれども、なかなかそれがうまいこといかない。だから、そういうことであるなら、これは憲法にうたい上げられたということは事重大です。従来のようなそういう政策として個々に語っておるからどうのこうのということとね、私は大きな変化だと見るんだが、その見方は間違っておるか間違ってないかということを聞いておるんです。
  167. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私は間違っているとは申しませんけれども、強い決意の表明ではあると、こういうふうに思います。つまり大きな変化というよりも決意が強く表明されたという受けとめ方でございます。
  168. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣ね、私はなぜこんなことを聞くんかといったら、この武力解放をうたい上げた、憲法の中にうたい上げたということは、私たちはあそこの台湾、金門、馬祖、澎湖島、こういうところに中華民国という主権が、国交がなくても、統治権があって、そしてそこに支配が及んでおる、中華人民共和国のその手の届かぬところだということは、好むと好まざるにかかわらず、これは認めておるわけです。二つの政府があるということを認めておるんだし、そういうことであるなら、この友好関係にある中国が、そういうことを百も承知の上で、台湾に対して武力解放をするぞ、武力解放の準備をせよ、その命じるその姿勢は覇権主義じゃございませんか。
  169. 中江要介

    政府委員中江要介君) そこは台湾というものをどういうふうに認識するかということによって異なってくると思うんですけれども、日本につきましては、先ほど私が申し上げましたように、日中共同声明で台湾、澎湖諸島に対する日本の認識というものははっきりしております。であれが、あの地域に中華人民共和国以外の国家が国際法上の国家として存在しているという立場日本はとらないわけでございますので、その地域に対する中華人民共和国の決意の表明が即覇権になるかという点は非常に疑問がある、こういうふうに思います。
  170. 玉置和郎

    玉置和郎君 それからASEAN五カ国で、またインド亜大陸で、アフリカで、オセアニアの海域で中ソがいろいろなことで争っていますがね、私はあれは中国ソ連もあれ覇権主義だと思っていますがね、どうなんです。
  171. 中江要介

    政府委員中江要介君) 現在、日中平和友好条約交渉をめぐって覇権という言葉、あるいは覇権主義とか、あるいは反覇権ということが非常に微妙な段階になっておりますので、個々の具体例について覇権であるかないかということを言うことは差し控えなきゃならない問題だと思いますし、他方、覇権という言葉が、常識的な意味新聞その他で論じられていることが即私どもが真剣に交渉しようとしている覇権というものと必ずしも同じでない場合もあるということも申し上げておかなきゃならないかと、こう思います。
  172. 玉置和郎

    玉置和郎君 外務大臣、答弁要りませんけれども、私は、世界の超大国というのはアメリカソ連中国、この三つですよ。世界の覇権国家はソ連アメリカ中国です。これは中国がおれのところは覇権国家でございません、王道国家でございます、そんなの通りゃせぬ。そんな中国の言うとおりでございますというのはべたべた組だけですよ、こんなものは必ず中国から尊敬されないんです。  中国人の人生観を私書っておきます、最後に。それは私も十七歳からずっと中国で学生生活を送って中国でやってきた。ここに大鷹先生もおられる。中国人というのは、その一人一人の個性というものを非常に大事にします。体制が違おうが大事にします。そして信念に生きた人を大事にします。あっちにつきこっちにつきコウモリのごとくべたべたして、そして国内的には日中問題で内圧があるから、外からはソ連の圧力があるから、中国に乗ぜられるから、こういうふうなことでノイローゼになられるような人は中国人はだれ一人も信用しない、これは大事なことです。だから、このことをどうか踏まえて、外圧があろうか内圧があろうが、これが日本民族の将来にとって、日本国家の将来にとって、この選択が日本国家の平和と幸福につながるのだという信念、これが中国人の尊敬を集めるのであって、あなたが、理不尽なことを言った中国に対して、おまえはいかぬ、おれの人生観と違うんだ、おれの人生哲学にはそういうものはないんだということを言い切ってやった場合に、あなたに対する中国の尊敬はいや増しに増すであろうということを私は言っておきます。終わり。
  173. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど玉置さんから質問された華国鋒主席の身上というか、経歴ですが、半分は玉置さんのおっしゃるとおりわかりません。半分は私の言うとおりわかったということでございますが、年齢は五十七歳、これも七七年一月二十八日の新華社電で、華国鋒主席は四九年八月当時二十八歳と報道したことからの逆算であります。それから夫人の名前はわかりません。それから父母、これもわかりません。子供さんは四名、これは七六年十二月の長沙放送による由。末娘の方は七四年三月当時北京第百六十六中学校に在学中。出身地は山西省、こういうことでございます。
  174. 玉置和郎

    玉置和郎君 最後にね、外務大臣、そういうわかりにくい人とやられるのは、あなた大変だよ。
  175. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十二分開会
  176. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  177. 戸叶武

    戸叶武君 日中平和友好条約締結の問題は、いよいよ最後に煮詰まってきたと思うのでありますが、先ほどの外務大臣の答弁を聞いていて、やはり園田さんも腹を決めたし、福田さんも腹を決めざるを得ないところへ来たと思いますが、中国という相手があってのことであるし、またソ連がどうしてもこれをぶち壊そうという考え方もいまだに捨ててないようですから、アメリカはそれなりのまた見方をしていると思いますのですが、問題は、中国がどうだ、ソ連がどうだ、アメリカがどうだでなくて、外交権を持つところの政府が、民族の将来をも考えて、責任を持って現時点におけるみずからの主体性を確立することが重要だと思うのであります。  外交の問題は一国の運命を支配するものでありますから、これは主権者である国民の合意を得られるような配慮がとられなければ、福田さん、もっと政権を維持してくれと言っても、そこでおだぶつです。それから、福田さんも園田さんも、この日中問題というものは今後百年の計の上に立っての条約ですから、命を捨てるつもりでやってください。私のところでは浅沼がすでに命を捨てる覚悟で一九六〇年に日中提携のために死んでいるのです。浅沼君は周恩来と同じ年であります。私が二十の年、彼が二十五のときに、早稲田大学で反軍国主義運動を起こして以来の同志であります。彼は愚直な面があるが、祈るような気持ちで日本なくしてアジアの進歩なく、中国を除いてアジア問題の解決はない、この信念に徹して素朴な浅沼流のアジア主義ともいうか、窮地に立った中国ソ連から突き離されて近代化の道を閉ざされた中国、これを隣国として見ていられないという心情が浅沼のアメリカ帝国主義は日中共同の敵であるという一九五九年の北京における演説となったのであります。あのときに、すでにアメリカを指さしているけれども、中国はまだソ連の出方を見守って隠忍自重したが、昨日までは兄弟国として兄事して一枚岩の共産主義陣営にいた双壁であった中国が何がゆえにソ連に対して恨みを持ったか、このことを率直に私たちは私たちの国と中国の国とは違うが考えておく必要があると思うんです。  問題点は、端的に言ってヤルタ秘密協定です。一九四五年二月十一日に結ばれた戦時中の軍事秘密協定、これが連合国のフランス、中国を無視して、アメリカのルーズベルト、イギリスのチャーチル、スターリン、そこでソ連に利を食らわして、自分の腹を痛めないで、中国の領土や日本の領土を譲るというような、戦時中には間々あることでありますが、あのような軍事秘密協定、こういうものは、戦後三十三年もたって、聡明な一流の政治家ならば、ソ連においてもアメリカにおいても、イギリスはそれほどの発言力はないかもしれませんが、世界の大勢から見て、ヤルタ秘密軍事協定はみずからの責任において解消してしかるべきであって、われわれか領土返還を求めるのは、そう言わなけりゃわからないから言っているまでのことであって、私は平和条約基本的な理念というものは、次の平和を保障すべき条件を具備してのみ今後の平和条約締結さるべきであって、前向きの平和を保障し得るような条件を具備しないでは、平和条約を結んでもそれは形式的な名ばかりであって、成果はないと思うんです。私は、この問題が一番基本的な問題で、第一次世界戦争以後におけるベルサイユ体制崩壊後のあの姿を見るならば、第二次世界大戦後における諸悪の根源とも言ってもいいような、われわれにも罪があるが、ヤルタ秘密協定の解消なくして次の平和条約締結の地ならしは私は完全にできたとは蓄えないと思うんです。完全にできなくとも前進しなければならないのが外交でありますが、この関係をどういうふうに園田さんは踏まえておりますか。
  178. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言のとおりでありまして、日中友好条約交渉は、一にアジアの安定、アジアの平和、これは日本中国の真の友好関係なくしてあり得ない、こういう一点に目標を掲げて、そして日本中国が率直に誠意を持って話し合い、両国の今後の行動が真にアジアの安定と平和になるというこの基本線、及び日本国外交方針の線に従ってやるという姿勢は一貫してやっておるところであります。  だんだんと両国間の話し合いも進んでまいりまして、いよいよ交渉再開なるかという時期に来たときでありますから、きわめて重大な時期に、さらにそういう大事な点を見失わないように慎重に検討し、話を進めていきたいと考えております。
  179. 戸叶武

    戸叶武君 ソ連は領土問題に触れることを非常にいやがっております。それはソ連立場からするならば、領土問題においては、ヨーロッパにおいてアジアにおいて、いろんな理屈はあるけれども、ずいぶん無理をしておりますから、一日本の北方領土の問題だけを簡単に解決つけられるものではないことは私はわかっております。  しかし、一九六四年四月七日の日に、私は成田、石橋君らとともにソ連に迎えられて、クレムリンの最高幹部会の部屋で議論したときに、成田さん、当時の社会党の指導者は、そういう考えを持ったのでしょうけれども、われわれは、当初、敗戦後において、社会党は、敗戦国は不平等条約を押しつけられやすい、これを廃棄し、あるいは改正するきっかけをつくらなければならないと言って、俗に言えば私は河上丈太郎門下の右派でしたが、右派の中でただ一人平和条約にも反対したのであります。私のワイフは平和条約には賛成でした。しかし、君は講和条約のところへ行ってその空気にのまれているが、われわれは孤独に耐えても、この北方領土を無条件で、アメリカ自身もヤルタ協定には加担しているから文句は言えないのだが、日本に押しつけるような、しかも吉田さんがこれを放置するような軽率な外交をやることに対して、われわれは反対であるということをここで表明してなけりゃ、民族の明日において新しい活路を開くことはできないというので反対したのであります。当時、民主党は千島の返還だけで樺太の問題には触れませんでしたが、私たちは樺太の北方領土全体の返還を求めたのであります。  しかし、その後の経緯から言って、国民的な合意を得られるのは歯舞、色丹、国後、択捉のような四島返還の線で、要求は要求としてこの線程度でも平和条約を結んで、あとの領土返還はその後の話し合いでも可能であるが、歯舞、色丹というような形だけに押しつけられて平和条約を結んだならば、このことは結局だめになる、こういう信念でしたので、成田団長が書記長でしたが、歯舞、色丹で早期平和条約を結んで、あとの領土問題はと言ったとき、私は立ち上がって、失礼だが、団長ではなかったが、ソ連日本は国家性格が違うんだ。ソ連共産党はいわゆる革命の前衛党であって、共産党が国をプロレタリア独裁で責任を持って運営しているが、日本の国は人民主権の国だ。国民の合意を得られないような話し合いなり共同声明を出すと、これはソ連共産党を過たしめるし、また日本の社会党が国民から遊離して政権の確保などというものはできないと思いましたから、そういう意味において北方領土の返還ということは譲れないということを私は主張しました。失礼かもしれないか、やはり私は一党一派を乗り越えて、クレムリンにおいて無名な政治家がここで捕らわれて殺されても、民族の悲願を堂々と遠ぼえをするんじゃなくて相手の腹中にぶち込むことが大切である、ソ連だって物がわかる人がいるに相違ないと思ったから発言をしたのであります。  ミコヤンさんは非常に怒ってニェットと言いましたから、私もニェットならおれもう帰ると言って立ち上がったんですが、スースロフさんのとりなしで一週間後にフルシチョフとの単独会見に行ったんですが、フルシチョフが死んだからといって単独会見の内容をここで十分話すことはできませんけれども、彼らは社会党が簡単に政権はとれないということはわかった上での発言でしょうが、社会党が政権でもとるならば、すぐ返します、軍事的な意味以外に北方領土は何ら意味がありませんと言って明快な回答までしてくれましたが、その後でスースロフ氏は樺太、千島には日本人はもう住んでいない、しかもソ連があすこにはかん詰め工場や何かパルプ工場みたいなものをつくっている、人口はこれこれあると言うが、この古い主権論争なら、先ほども聞いておったんですが、住民がいなければ、それが主権が及んでいなければという形式論理か成り立つかもしれませんが、中国ソ連の領土問題の争いもモンゴルの問題です。  モンゴルの問題は二転三転していますが、当初、二十年間、中国は内戦に混迷して南北モンゴルかスターリンあるいは松岡協定において分割されているという現実、それを乗り越えて兄弟党であるソ連中国の批判を受けとめてくれると思って、毛沢東と周恩来かスターリンの誕生日に行ってお願いしたが、入れられなかった。しかもソ連の領土の方へ入れられていた。けれども、ソ連でもこれではいけないであろうというので、後では人民投票にとってやり直して、所属を決定して、連邦の中へ加えたのであります。  われわれがこの政治、外交を論ずるときに、形式的な法理論だけでなくて、歴史の流れに沿うたカレント、人々の心の動き、時勢の圧力、こういうものをも配慮して、総合的に私たち外交を展開しなければ、観念的な法理論であると揚げ足取りだけであって、空転するだけで何らの成果がないんです。私は、その問題に対してもっとダイナミックに生きた政治、実証主義的な現実に即応した外交の躍動がなければ、日中の問題も日ソの問題も打開できないと思いますが、片言隻句の中に多少遠慮しし物を言っている傾きがあるが、園田さんはそういう決意にまで到達している人間と、私は錯覚しているわけじゃないでしょうが、思い込んでいますが、どうでしょうか。
  180. 園田直

    国務大臣園田直君) 日ソ、日中ともに、日本外交基本方針はただいま発着されたと全く同じ意見で私もやるべきであると考えております。  日中が提携をし、真のアジアの安定平和が推し進められて、世界の平和安定のときにこそ四島返還の問題もめどがつくものであると考えております。そういう決意のもとに、不偏不党の信念を持って外交を進めていきたいと考えております。
  181. 戸叶武

    戸叶武君 私は先ほどの主権と領土論争を見て、ああ日本の国は国家学や政治学が発達しないで、社会科学というものが社会科学という名でマルキストの独壇場になってみたり、何かそういう学問に対するひ弱さがあるので、そういう形から形式的な法理論というものが非常にはやるんだな、これは日本の帝国大学の学問の亜流が日本に災いしているんじゃないかなと私は悲しんでいる一人であります。  先ほどの、外務省において日華条約の原案を作成したのは西村条約局長の時代で、西村君はほかの学者にもずいぶん協力を願ったと思いますが、いわゆる国際法学者の中においては、あの日華条約というものはなかなかうんちくのある一つ条約であります。あの当時、日本が中華民国というのをあがめているような時代に、あのように統治の及ぶ範囲内における主権の制約をやったのに国民政府がよく応じたと思うぐらいであります。この苦心談は、彼がフランス大使になってからセーヌ河畔の田舎町のマントの占いレストランで私は聞きましたか、ここでは言いません。しかし、現実において中国が統治していなくとも、国際連合に中国代表権を確保した前後から、世界の常識的な考え方というものは、中国代表を人民共和政府と見ているじゃありませんか。台湾に対していろんな配慮もなされておりますけれども、それをはっきりできないで、これからのこのこ北京に行ったのでは、私は一国の外務大臣が物笑いになると思うのであります。  割り切るものは割り切る、主権が中国の人民共和政府にあるけれども、中国といえども生きた政治は知っております。中国人ほど現実主義的で、メンツをたっとぶと同時に、現実主義に徹しておられます。徹しなければ前進がないということをわかっております。よけいなことを人の国に言うのよりも、中国みずからの責任において中国の内部の問題を解決するというだけの雄図大略がなければ中国を統治することはできなくなるので、われわれはよけいな他国のおせっかいよりも、自分の党の中をまとめることのできないようなふしだらな現状の外交政策の混乱、これを改める方が私は先じゃないかと思いますが、園田さん、どうでしょうか。
  182. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま、御承知のとおりに、友好条約交渉再開については与党の方には逐次御理解を求めておる段階でございます。
  183. 戸叶武

    戸叶武君 主権者は人民です、国民です。国民の方は聡明です。世論調査をとってごらんなさい。いまの自民党さんのやっているような議論は通用しないと思います。やることは結構です。春の日がだんだん長くなったからひねもすのたりのたりかななんてああいう御議論も一つの風流かと思いますが、いま大切なときに当たってこんなのろのろした遅々漫歩の状態で、ダイナミックに動いている世界の潮流に対して日本か対処しているかどうか、   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕 少し顔を洗い直してみたらどうかと思うんです。滞日遅々として、この間あたりは相田さんもお孫さんと遊んだり美人をながめたりいろいろ楽しんでおりますが、それも結構ですけれども、この状態はあきれたものですね。世界じゅうで私はびっくりしていると思うんです。中国人は気が長いといったか、日本人は気か長いのか気がなくなっているのか、これはつかみどころのない民族になったと言われやしないかと思うけれども、大臣、その辺は心配ありませんか。
  184. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理も盛んに努力をしておられまして、いまだんだんと御理解を求めることが進んでいるわけでございます。
  185. 戸叶武

    戸叶武君 総理は孫子をこのごろ読んでいるといいますが、孫子を読むことは決して損はしません、一個のあれは乱世の政治哲学で、孫子と荘子は読むべきであります。あれは乱世の政治学です、哲学です。しかし、孫子の兵法を学んで一番愚策をとったのが日中戦争における日本の孫子を学んで孫子を知らない将軍連中です。自分の功名、手柄だけに焦って包囲せん滅戦などというのはとるべきでない、敵に退路をいつも与えよというのが孫子の兵法の極意です。徐州において南京において、どこで包囲せん滅戦が一つでも成功したでしょうか。あの大平原において死にもの狂いで活路を求める人たちをみんな逃がしてしまって、かえって戦争を混乱させただけです。いつも相手立場を、戦争だけじゃないです、外交においても立場をやはり考慮する。相手立場に配慮なしに政治をやる、外交をやるなどというのはもってのほかであって、みずからの主体性をつくった上で相手立場も配慮して外交を展開するのが本当の外交じゃないかと思いますが、あなたはなかなか武道の達人で、したがって孫子も読んでいると思いますが、いまの孫子に対する御見解はいかような御見解でしょうか。――これは玉置流の質問です。(笑声)
  186. 園田直

    国務大臣園田直君) 孫子に対する先生の御見解、十分承って、さらに勉強することにいたします。
  187. 戸叶武

    戸叶武君 勉強していても、勉強することにするという、だんだん官僚的な答弁に変わってきましたか、私は、荘子、あれは比喩の上手な人ですが、渾沌の哲学というのに非常に――支那事変の真っ最中上海にいてつかみどころのない世界で、なるほどなあ、日本は雨が降って洪水になっても三日も過ぎれば濁りはなくなり水は引くのに、一年も前に降った雨が下流の揚子江では洪水を起こしたりなにかする、日本的感覚では中国はつかめないなあということを感じましたが、彼の比喩の中で一番おもしろいのはやっぱり渾沌王の比喩です。  渾沌王は中国の王様です。北の国の王様と南の国の王様が相会して大変なもてなしを受けた。北の国の王様と南の国の王様がどうして渾沌王、中国の王にお返しをしようかといったときに、二人がふと考えついたことは、よく見ると渾沌王にはあるべきところに穴がない、目がない、鼻がない、耳がない。七つの穴を掘って進ぜようというので、七日七晩かかって穴を掘ってしまったら、そのまま渾沌王は息を引き取ってしまったという。これはなかなか比喩としては、乱世の政治哲学としては私は最高のものじゃないか。あんまり完璧を期すと、よけいなおせっかいであって、大局を過たないで方向を与えれば、流れはおのずから道をつくって活路を開いていくのが水の趨勢でございます。  孫子があれだけのやはり一つの把握をしているように、いまの私は世界の情勢、アジアの情勢は、まさに日本の情勢は混沌というよりは少しどぶ板的な一つの臭気ふんぷんたるところがありますが、これはやはり私たちはもっと信用される政治をつくらなけりゃ、金を持ってさえすればどんな買収をやってもいい、選挙に勝ちさえすれば政権がとれるというようないまの政治の状態が改まらない限り、政治不信が今日における、若者どもを弁護するわけじゃありませんが、絶望的な抵抗を生んでいるんだと思うんです。ばか者を取り締まるのはよいことです。経験もなく歴史の流れも把握できないんですが、いつも混乱期において一つの戦争なり暴力革命なりに一つの何か活路を求めようとする右や左のこのあわて者、そういう者にも一つの道が与えられて――与えられたわけじゃないか。そこに血路を開かんとするような、この何とも言えない悲劇的な場面かいま展開されているこの現実は、われわれはわれわれの責任であるというふうに受けとめなきゃならないと思う。  いま日中問題を、私は、上田君が帰ってきたほやほやですから、そのニュースを聞く時間もあれしなければなりませんが、大体、福田さんもあなたも捨て身でやりなさいよ、死ぬつもりで。次の政権なんというのは考えないで、人間は一度死ぬところがあるので、浅沼君あたりもあそこで死んだからりっぱな革新政治家としての生き方ができたのです。私なんかも死に場所を目下探しているんです、どこで死んだらいいかと。これかやはり永遠に生きる道は死に方ですよ。迷わず往生することですよ。往生というのは、ベストを尽くして祈るような気持ちで歴史の中に年輪を刻み込むことです。批評は何とでも後のやつにやってもらったらいいじゃないですか。やはり自分の人力というものには限界かあるんですから、歴史のカレントに触れ、人々の心に触れてそれを納得せしめるようなものでなければ、本当の政治にはならないんで、政治は芸術ですよ、手先じゃないですよ。  先ほど戦略とか何とか言うけれども、あれはソ連アメリカあたりではやっているんだが、あんな権謀術策によって天下の大勢を決した歴史的な記録というものはないんです。栄えた者は皆滅びていくのは小手先の権謀術策が過ぎるからであって、外務省の一課長に何か文句でも書かせて、これが政府のあれだなんというようなことじゃ、ちょっと外務省の人たちはわれわれに参考資料をよこしてくれと言っても憶病になって出さなくなっちゃう。これは困ったことで、どうぞ自民党あたりからも、そういう卑しい弊風は一掃してくれるようにこの機会に私は頼んでおきます。  大臣、そういう意味において心理は常に具体的でなければならないんです。法理論や何かは学者に頼めば何とか理屈はつけてくれます。問題は、これが日本の生きる道であり、これかいろんな誤解を招いているが、中国のためにもソ連のためにもなるんだ。これがやがて――人はあるいは理想主義に走るというか、夢想と言うか知らないけれども、戦争や暴力革命で二十一世紀まで到達できますか、あと二十二年ですよ。この短い歴史の中におけるわれわれの責任というのは非常に大きいんです。巨象もマンモスも滅び、そういう形においてジラフも滅び、おごる者は久しからずで、いまわれわれが本当に日本が国は小なりといえども、国民を安堵に生活させ、働かせ、希望を持たせ、そして平和をつくり上げるというような具体的な事実をつくるためにも、いまの日中平和友好条約締結というものはその目玉になるんです。  つくり上げたところを見て少しは文句を言うだろうけれども、ソ連もなるほど、アメリカもなるほどりっぱだ、中国もあのとき日本にがんばられてもらってよかったなというような感謝は後から起きるものです。やはり人間は感情がたぎっていますよ。われわれか中国人ならば、やはりソ連の連中の胸ぐらをとってソ連を敵視したくなるですよ。そこを日本人は若干苦労して原爆もたたきつけられて、しかも平和憲法改正なんていうのに福田さんもあいまいな態度をとっているが、天皇みずからが勅語の中に言っていて、それをほごにするようなことになれば、あなたすぐ退位しろということになりますよ。信義です、政治は。敗戦という戦争の悲劇の中で日本には平和憲法ができたんです。原爆をたたきつけられて、その忍苦の中に、日本民族だけでなく、世界の悲劇を救おうという理念があの平和憲法の前文にも躍動しているんです。これが明治憲法に戻ったらどうです。統帥権の問題一つがあったばかりにでも、どうすることもできなかったじゃないですか。  私は、今度、毎日新聞から「二十世紀の昭和史」に書いてくれというので、「和平の模索と中国の友人たち」ということを書きましたが、全部初めからしまいまでみんなそれぞれの意欲を持ってやったが、軍人の中にも、とにかく石原莞爾氏にしてもあるいは影佐禎昭氏にしても相当な人であるけれども、視野の狭さ、あの軍部という部族の制約、全体主義的な憲法における致命的な制約、そういうものによって何一つ、人の問題ではなく、和平が実らなかったじゃないですか、戦争に入ったらブレーキがかからなくなったじゃないですか、政治はなくなってしまった、外交はなくなってしまった。再び戦争に陥ることのできないような歯どめが今日の平和憲法にはなされているんです。それを性こりもなくなし崩しに崩していこうなんていうのは国賊です。いままで戦争で破れて悲願を抱いて平和を求めた人、一身の屈辱を顧みず、国民とともに平和を誓い上げた天皇などというのをお粗末にすることもはなはだしい。追い込んじゃいますよ、近衛さんみたいに追い込まれたらどうするんです、表徴も何もあったものじゃないじゃないですか。民族統一の表徴としての限界は――政治責任を持てない者は表徴です。山本玄峰老師がアメリカの軍部の知性人に教えたのはこの一語です。山本玄峰老師みずから九十六歳にして断食して死んでいる。これは普通の安楽死とは違う。日本の一流の禅坊主が、私の恩師の那須雲巌寺の植木義雄老師も九十六歳でみずから生命の限界を知ったときには断食して迷わず往生しているんです。日本政治家も、断食をするというのまでは言い過ぎるのだけれども、やはり祈るような気持ちで自分の政治活動の限界を知って、やはり対処するだけの構えがなければ生きた政治は躍動しないと思います。  そういう意味において、あるやつは流言を飛ばして、どうも園田君があんまり日中問題に熱心なので福田との間に距離かできてしまったと言うから、そういうことはおれはないと思うがという、これはまじめな衆議院の外務委員の私が尊敬するような人でも、そういうふうな疑いを持つんだから、そこいらはわれわれよけいな人の疝気を頭痛に病むようなことはやめますか、そこいらはやはり福田さんとあなたは、日本が平和共存の道、この道をたどってみずからの姿勢をも改め、中国をも説きつけ、そうしてアジア太平洋の新しい体制をつくり上げるという悲願を達成しなけりゃ、東南アジア諸国の人たちはおびえてしまいます、アジアにも大混乱か生まれてきます。  アメリカアメリカなりに少しは方々で失敗したから、アジアに手をつけたらだめだから引っ込もうといっても十分引っ込みかねないでいるようですね。やはりアイケルバーガー司令官がいみじくもハワイに引き揚げたときに彼が言ったのは、アメリカの青年を犠牲にしないためには艦砲射撃と飛行機の爆撃だけでは大陸の戦いはできない、朝鮮においてもアメリカが負けたのはそうだ。やっぱり突撃には日本人を活用するのが一番いいというような率直な議論を表明したり、あるいはいまのシュレジンジャーが中国日本アメリカと結ばなけりゃソ連を封じ込めることはできないというような世界戦略も発表しているから、人の言ったことにおびえてソ連がびくびくしているのはあたりまえであるし、ソ連自身もまたアメリカと同じような覇権主義の国であるから、やはりみずからも、いいこともやっているかもしれないけれども、悪いこともずいぶんやっているから、自分かとがめるから戦々恐々たる面があるんですが、どうぞ迷わず、安心してソ連日本の手並みを見てくれというぐらいな、なるほど外交の手ほどきは日本園田さんや福田さんに習わなくちゃならないなとソ連あたりが出てくるような一つ外交――漁業問題でも大分変わってきたのは、やはりあなたが、この間、ずいぶん園田は悪いやつだというふうにソ連には感情的に受けられていたのを、私の質問に対して、漁業の問題でソ連が帯しんでいるのはよく私はわかります、これはやっぱりソ連にはソ連立場があるんで、大西洋から封じられたソ連に対する活路のことも考えてやらなけりゃならぬと、ああいう一言――ソ連というのは情報マニアですから、ああいう一言二言は、先ほど玉置君が言ったように、変な材料を持っていく人が多いですから、そういう人が、いや園田というがんこなやつかソ連に対してこんなことを言ったと。  しかも、赤城君のこの間の朝日新聞の投書の論文なんかも、さすがに古武士だけあって、ソ連をかばうだけじゃなく、領土問題は明確な線を出して、私は感心した。どうしてああいう人が――昔、大地主で農民に解放しても、あと何か自民党の金のある親方から金をもらったあんちゃんがのこのこと出て、そうしてああいう古武士が落ちていくのかと思うと、春になるとコブシの花が咲きますけど、悲しいかな、とにかく金と権力に癒着して政治は滅んでいくんだな。いまソ連のためにも、やはりソ連に迎合しないで本当に憂えて物を言えるような赤城さん級の人がいてほしいし、あんたでも、われわれでも、私なんかどっちかというと中国の方に同情を持っておるのですか、やはり私はけちな考えは持ちたくない。どうぞそういう意味において――あと何分……。  それでは、問題を転換します。やはり私はあくまでも文明史観と哲学を持たない民族は滅びると思うのです。田中さんのつくった五年前の日中共同声明もそれなりの意義がありますけれども、この機会に、日本中国も、中国に反省しろというのはわれわれには無理だから、向こうで反省するでしょうが、中国の当面の課題は、あれだけの内部的なトラブルをやっても近代化をやるのが至上命令であるが、周恩来も鄧小平もその犠牲者で、ずいぶんそのためには苦労してきたと思うのです。浅沼君がただ調子に乗って、アメリカ帝国主義は日中共同の敵だと言ったのでなくて、中国が近代化するためにソ連の技術なり経済援助を求めなければならないのが、ソ連の言うことを聞かないというので、それが全部シャットアウトされてしまった。西ドイツに頼ろうか、アメリカ帝国主義にはちょっと頼れないが、日本に頼ろうかフランスに頼ろうかと、迷い迷って日本に頼ろうとしたときに、だれか惻隠の情を持たない者があるか。窮鳥ふところに入らば猟師これを撃たずで、やっぱり浅沼のような野武士的な人間は――。  孫文が大正十三年、ソ連と組んで北洋軍閥を打ち砕く以外に中国の統一はないと思って、北京に行くときに――その前に神戸に来て、日本に訴え、北京に行ったのですが、日本側の主催者が、勝手に大アジア主義なんて題名をつけただけだか、大アジア主義よりは、孫文は、中国革命は武力革命以外にだめなんだという信念のもとで、命をかけて革命をやっちゃ失敗してきた男です。秋山好古にほれてみたり、いろんな手づるを求めて日本の武力援助を求めてきたが、成らないので、やむなく、ソ連が革命以後において不平等条約を廃棄し、そして中国に光を与えてくれたので、それに飛びついて、軍事援助を求めながら国共合作に踏み切ったのであって、あの時点を日本は理解していない。孫文の思想はいつも孫文の古典的な大アジア主義と見ている。動いているのです、政治は。生きているのです。  しかも、その後、第一次世界戦争が起きるや、そのどさくさに、いわゆる薩長閥の軍閥官僚の親玉の山県が、桂が薩摩と民党と組んで倒された後、今度は民党と組んで山本権兵衛内閣を倒した。しかし、これでは師団の増設も軍艦の拡張もできないと思って、大隈周辺をおだてて、そして大隈内閣の中に内務官僚の選挙干渉をするような不届きなやつを送り込み、三菱の婿の加藤高明を外務大臣に配して、ドイツ流の帝国主義にかわるイギリス流の帝国主義を、あの戦争のどさくさに二十一カ条を与えた。これで全部御破算になって、日本中国の敵になり、そして中国の新しいニューチャイナのナショナリズムを生んだのです。この断層というものはなかなか消えない。これがあって、その穴も埋めないで日中戦争に突入したんだから、日本に留学した者が、蒋介石のような者は最後まで日本に未練を持ったが、周囲がそれには応じない。海軍の秋山好古将軍、孫文の使いをした戴伝賢のような人も盧山会議のときに一番強硬に日本との主戦論を展開している。魯迅のようなすぐれた文化人も再び日本を訪ねることはしないという形の決意をさせた。それほど思い詰めさしたということは、日本にいつも自分立場だけは主張して、相手立場をくみ取るだけの、地下三千尺の水の心をくみ取るだけの惻隠の情がなかったからであります。  そういう点において、政治といい外交といい、きわめて重大なのは人の心というものを無視しては、唯物論的な弁証法がはやるからといって、物の力、経済的な変化だけで世界の歴史が変わるなんと考えているのは単細胞の考えです。人間あっての歴史です。歴史が人間を生み、人間が歴史をつくっていくんです。どうぞそういう意味において、いわゆる戦略戦術とか権謀術策の三流の政治家が考えるような政治哲学でもってこの日中平和友好条約をつくられたら、あたり迷惑です。一朝にして理想的なものができなくとも、お互いに励まし合い、お互いに間違ったところを反省し合って、そうして私は行くようなものをつくることによって、初めてなるほど中国に対しても、日本に対しても警戒する必要はないんだという気持ちがおのずから私はみんなに出てくると思うのであります。どうぞそういう意味において、イソップ物語の比喩じゃありませんが、暖かい太陽、温かい心、そういうものを流していかなければ、人の恨みなりあるいは復讐心なりというものは変わらないと思うんです。  私は、いまのアメリカだって、アメリカに行って原爆の話をすると、それだけは言わないでくれ、言わなくてもわかっているんでしょう。わからないようなことを言うからときどき言ってやるんだが、原爆反対の運動なんかは今後は日本だけでなく、世界じゅうの連中を動員してアメリカソ連に行ってやれば一番効果があるんで、これは武器も何も持ってないで、平和運動で世界の声をぶち込むんであって、広島と長崎だけで堂々めぐりして原爆反対運動をやってたんじゃマンネリになってきています。日本外交は、今後日本中国だけでしょい込むんじゃなくて、発展途上国の苦悩をも理解し、われわれは大衆とともに苦悩し、大衆とともに模索すると同様に、発展途上国の苦悩のさまもよく見て、武器弾薬なんかを送って、どさくさに金もうけしようなんという苦の大倉組みたいなけちな考え方を三菱あたりにもやめさせて、そして私はひたむきに日本が世界に生き残るために、滅びないために、この道以外にないということを私はこの日中平和条約の中でにじみ出してもらいたいと思うんです。中国側がわからないはずはないです。あれだけの四千年の文化道統があって、治乱興亡の流れを見詰めたならば、栄えた者が滅んでいくじゃありませんか。  どうぞそういう意味において、いま私が外交権を握っているわけじゃないから、仕方がないから福田さんや政府のあなたに、園田君に頼むんだ。しかし、あんたたちは、自民党だけじゃないんだ、これを見詰めているのは主権者である人民です。国民の合意を得なければ福田内閣はへのかっぱで吹っ飛んでしまうんですから、どうぞ党内のまとめというよりは、国民の心をかち得るような、世界の人々、この成り行きはどうなるだろうと見詰めている人たちを合点せしむるような外交的成果を上げるということは、これは一福田、一園田君ではなくて、日本人というものはなるほどりっぱだわいという一つの見直しになるんで、これを通じてもっと世直しを、これほどどん底まで来たんだから、もう景気は回復するなんと言ったって福田さんなんかの言うことはだれも聞く人はなくなったんだから、やっぱり日本人かどっかからか一つの光を求める運動が起きなけりゃいけない。この混沌たる不信がわだかまって、憎しみがわだかまっている外交の中からそれをつくり上げるということが、いま政治家としての、本当にこれがやれたら、あんた、十字架にかかっても大往生ですよ、神様になるかもしれませんよ。本当に困難なことを政治が先行しなけりゃ日本は立ち直れません、教育も、経済も、世界の信用も。  あと私の持ち分が二十分あるといいますけれども、それは私は返上しまして、上田君にひとつ譲ります。これをもって結びとします。
  188. 上田哲

    上田哲君 社会党第八次訪中団は三月二十二日に北京を訪れまして、昨二十七日帰国をいたしました。委員長を団長といたしますこの団は、かの国におきましても鄧小平副主席を初め朝野の要人と会談の機会を得まして、重要な話し合いの進展かあったものと私たちは考えております。私もこの代表団のスポークスマンとして参加をいたしました。つまり、昨日帰りました。一昨日鄧小平副主席以下と会談をしてきたばかりであります。  私どもは、野党立場から、政府専権にかかわる外交交渉に二元外交を企てようという気持ちはございません。そのゆえにこそ政府の強い決断を今日求めるところでありますが、われわれ自身立場からすれば、野党として、また長く国民運動を含めて日中平和友好条約締結のために努力をしてきた立場からして、今回の訪中は大きな意味合いがあったものとも考えますし、このことは一つには政府に伝達をし、その決断をさらに求めるという立場につなかるものでありますし、また、われわれがはだで感じた中国朝野の熱烈な条約締結についての気持ちもお伝えすべき立場があろうかど存じます。さらに、昨日は、福田総理及び園田外相に党としては公式にお目にかかりまして、そのことをも申し上げた次第でありますので、その際、福田総理から政府として与党である自由民主党に対して交渉再開の合意をいま求めているところである、しかも、その合意は可及的速やかに可能であろうという御見解も表明されております折から、私どもはいよいよ機は熟した、こういう立場から、この委員会の場でぜひ突っ込んだ政府側の決意と見解を承りたいと思う次第であります。   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕  そこで、いろいろ話し合いを行ったのでありますが、この中で中国側の代表であります鄧小平副主席が、日本政府の決断があればみずから日本を訪れる意向であるということを表明されたわけであります。重要なことだと考えるのでありますが、園田外務大臣はこのことをどのようにお受けとめになりましょうか。
  189. 園田直

    国務大臣園田直君) 昨日まで訪中をされてお帰りになったら直ちにわれわれに実情をお知らせいただき、言われたとおり、野党として日中友好関係を進めつつ、野党立場から現在ある交渉か速やかにいくように御努力を願い、いろいろ重要な参考の御意見を賜りましたことをこの席をかりて重ねて御礼を申し上げます。  特に、その中でも、いままでなかった鄧小平副主席が、福田総理が決断をし、その時期が来れば自分が訪日することも結構であるという御意見をお教えいただきましたが、非常に歓迎をすることであって、これは一に中国側の本友好条約締結に対する熱意であると受けとめております。
  190. 上田哲

    上田哲君 大変結構な御見解の表明だったと思います。  私どもも、咫尺の間に鄧副主席と面談をさせていただきまして、その中で強い表現でこのような表明がなされましたことを、いま外務大臣が言われましたように、条約締結についての強い決意の表明であったと、こういうふうに考えたわけでありますか、この点ずばり外務大臣から交渉締結についてのこれまでにない強い決意の表明であったという言葉を得ましたことは、いま日中にかかる橋を渡るについて非常に具体的な、双方の呼吸の合った感じという立場から私もうれしくお受け取りするところであります。  念のためでありますけれども、これまでにないという言葉をひとつもう一遍受け取らせていただいて、中国側の強い決意であったというふうにおっしゃったその点を確認させていただきます。
  191. 園田直

    国務大臣園田直君) 再び申し上げますが、いままでにない意思の表明でありまして、友好条約締結に対する中国側の強い決意と熱情のあらわれであると思い、これを歓迎いたす次第であります。
  192. 上田哲

    上田哲君 大変結構であります。  で、御承知のように、日中共同声明締結されて以来、さまざまな公式、非公式な交渉はありましたけれども、日本側から政府要人が何回か訪問されたにもかかわらず、中国側の要人はともかく、政府側要人の来日はないわけでありまして、そうしたことを考え、今後子々孫々に至る同国の前進のために、この決意は大いに評価さるべきだと私たちは考えるわけであります。  そのような決断を中国政府がされたということの背景には、これまで共同声明締結以来かなりな日月を費やしているわけでありますが、いよいよこの時期に締結についての情勢が、環境が成熟をしたという判断が根底にあるものと私は理解するのでありますが、御見解はいかがでございましょう。
  193. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおり、機はだんだんと熟してきたと、このように解釈いたしております。
  194. 上田哲

    上田哲君 そこで、鄧副主席の御発言でありますか、政府が決断をすれば、もう一つ華国鋒主席に時間かなければと、こういう言葉でありますが、考えよう、とりようによっては、華国鋒主席が時間があればという場合のことも一つ論理的には含まれるわけであります。外交上の微妙な問題も含みますし、かつ中国側の最高指導者のことでありますから、みだりな憶測をもって論ずることはできませんけれども、論理的にはそういうことにもなろうかと思うのであります。  漏れ承る限りでは、日本政府側としてはこの条約締結の暁は調印は東京でというふうな意向もお持ちだというふうに仄聞しているわけでありますけれども、それやこれやを考え合わせてみますると、鄧副主席があのような機の成熟、そして強い決意を東京に行きますという形で表明されたことは、日本政府側の意向もくみながら、締結の暁には調印を東京で行うという意思をも含んでいるように推測し得るものでありましょうか。
  195. 園田直

    国務大臣園田直君) 鄧小平副主席のあなた方に対する発言が、条約調印のためにおいでになるのか、あるいは条約調印が終わっておいでになるのか、このところははっきりいたしませんし、また、あなた方も特に微妙であるからあえて確かめなかったということでございますが、それはお確かめいただかなかった方が賢明であったと。仮に華国鋒主席がおいでになろうと鄧小平副主席がおいでになろうと、政府の要人がうまくこの条約が整いまして、そして日本においでになり調印ということになれば、これまた、いままでに例のないことであって、単に友好条約に対する積極的な決意と情熱だけではなくて、日本国民に対する友好と対等の儀礼を持っておられるということで、日本国民も非常に歓迎するところであろう、こう思っておりますが、まだはっきりわかりませんので、その程度でとめておきたいと存じます。
  196. 上田哲

    上田哲君 了解をいたします。  さっき申し上げましたように、同国の微妙な状況と、また中国政府の最高責任者の方々のことでありますから、推論をもって語ることはできないと思いますが、日本政府側の意向としては、締結の暁に調印の場を東京に求めたいということについては、どのような強さの御執着でありましようか。
  197. 園田直

    国務大臣園田直君) まだまだこれから始めようということでありますから、その先の計算をしてはいけませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、調印が東京で行われ、中国からわざわざ要人がおいでになるということは、政府にとっても日本国民にとっても非常な向こうの好意を感ずるところであろうと考えております。
  198. 上田哲

    上田哲君 政府側としても、それについての希望が強いということですね。
  199. 園田直

    国務大臣園田直君) もしうまくまとまりますれば、そのようにお願いしてみようかなと思っておったところでございます。
  200. 上田哲

    上田哲君 そのようにお願いしてみようかなと思っていたところというのは、大変よくわかる表現であります。  ならば、欲を出してひとつ伺いたいんですが、条約交渉に絡まる要素の一つとお考えでありましょうか。
  201. 園田直

    国務大臣園田直君) これはちょっと微妙でございますか、向こうで行ってもよいとおっしゃったことも、これは双方満足すればという意味もあると思いますから、これが条約交渉内容にかかわるとは考えておりません。
  202. 上田哲

    上田哲君 この機会にひとつあわせて伺っておきたいのは、先ほど鄧副主席の御発言についての感想をいただく中で、第二点でありますが、両国の条約締結に対する環境の成熟ということを挙げましたけれども、この点を、昨日私どもは福田総理にもお目にかかったわけでありますが、福田総理外務大臣と同じように強く意識されているものでありましようか。
  203. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理大臣も大体私と同じ御意見だと存じております。
  204. 上田哲

    上田哲君 これは大変結構であります。  そうしますと、総理が昨日替われました与党・自民党に対して合意を求められたという、その求められたものの中に「政府としては、これまでの中国側との接触等すべての状況を総合的に分析した結果、今や意見交換を続けるだけでなく、具体的な条約交渉に入ることが適当と判断するに至った。」こう書かれておりますし、その前段には、五十年九月の宮澤外相と喬冠華外交部長との会談か残念ながら大きな進展を見ないまま終わったということも触れられております。この期間、政府交渉が行われ、それがデッドロックに乗り上げたと。そしてその中でいま環境の成熟が認識され、大いに踏み出す点に至ったということのその差異は何でありますか。
  205. 園田直

    国務大臣園田直君) これは中断しておった交渉が、お互いに環境も変わり、そして相互の理解もだんだん深まってきた、こういうことだと考えております。
  206. 上田哲

    上田哲君 もう少し具体的に、たとえば、私どもは、今日、世論を含めまして、一衣帯水の日中両国の平和友好条約締結に対する大きな声が高まっている、これはこれまでにないことであるというふうに理解をいたしております。いまのところ、さまざまな制約条件はありますものの、今回私どもは首都北京以外には足を運びませんでしたが、わずかな狭い範囲の視野の中にも日中両国の交流の幅のふえ方と申しましょうか厚みと申しましょうか、そういうところを大きく感じましたし、これはまた数字の明らかにするところでもあります。大いに平和友好条約締結というもののそうした機運というのは目で見るごとく高まっているという感じがいたします。もちろん、政府外交出局がこのような決断に至る、一遍はやったが、うまくいかなかったが、今度こそそういう時期が来たというふうにお考えになるについては、単にそうした要素だけではない、もう少し踏み込んだ政治的、外交的判断がおありになるだろうと思うんでありますが、何となく接近の感じがするということではない立場でのこうした文章になる根底の要素は何でありましょうか。
  207. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言のとおりに、日本国民の方にも中国に対する理解、この条約締結すべきだという意見が高まってまいりましたし、中国の方でもまたそういう理解が深まってまいりましたし、国際環境の変転からいっても、なるべく早くアジアの安定と平和のために両国が条約を結ぶべきだという理解が深まってきたことが、このようにだんだん機が熟してきたことだと存じます。
  208. 上田哲

    上田哲君 抽象的でありますけれども、それはつまり逆に言えば、もろもろの要素が寄り集まってここに来たと、非常に得がたいチャンスがいま目の前にあるというふうに理解をしてよろしいわけですね。
  209. 園田直

    国務大臣園田直君) そのとおりだと存じます。
  210. 上田哲

    上田哲君 私どもが中国側首脳と会談をいたしましたときに感じたニュアンスもそのとおりであります。したがって両国交渉担当者の心証は一致しているということを私は大変今回の可能性の最大と数えたいのでありますが、その中で最も重視すべき発言一つは、鄧小平副主席か、いまや外交の角度では解決できない、政治の見地から解決すべきである、こう言われたのであります。  私もスポークスマンとして参りましたし、これまでの発言のことごとくを調べるなどの上で、この発言、これはその場の雰囲気も含めまして、この発言は非常に大きな言い方であるというふうに理解をしたわけです。このいまや外交の角度で解決できない――これはもう言葉どおりでありますが、てにをはまで、いまや外交の角度では解決できない、政治の見地から云々ということは、これまでの国会の審議を見てみましても、園田外相の見解と情勢認識が一致するものだと考えますが、いかがですか。
  211. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言の中で、鄧小平副主席が言われた御発言は私は十分理解ができるわけでありますが、ここで誤解を生じてはいけませんので、この点はっきりとしておきたいと思いますのは、いままで日中友好交渉が始まって、ある時期に外務大臣訪中することになれば、それは政治的解決を図るためだと、こういう記事が書かれたために、政治的解決とは何だと、これはきわめて不明確な言葉でありまして、不安を持つ国民の方や不安を持つ方々は、外務大臣中国にやると、もう中国と話し合って、言うとおりにばばっと判を押してくるんじゃないかという意見が相当あるわけでありまして、私は、その点は、鄧小平副主席のおっしゃったことも、いまや外交事務的な理屈の詰め合いはもうこれで段階は終わったと、政治家同士が話し合って、そして国際情勢なり両国の立場なりその他を考えてやろうじゃないかと、いう意味だと思います。  私も、政治折衝をやるべき段階――いますぐではありませんけれども、交渉再開をしたら、しかるべき事務的な手順、段取り等を早く決めまして、それが終わったら政治家同士の折衝をやるべきだと、しかし、そのやるべき結論は、あくまで日本国民中国国民、そして他の国の人々がなるほどと納得されるような結末はつけるべきだ、こういうふうに考えております。
  212. 上田哲

    上田哲君 きょうの質疑中国側も最も注目をしておると思いますから、外務大臣が言葉の一つ一つ注意深く発言されることを私は理解をいたします。その意味で、見識と勇気を持って政治的段階としての御理解をお持ちだろうと私は理解をするのであります。  そこで、もう少しく分け入って御見解を承りたいんですが、いまや政治の見地からというところを、内容の問題とやり方の問題に分けてお伺いをいたします。  やり方の問題でお伺いをするとなれば、いまや外交の角度では解決できない、政治の見地から解決するんだということは、先ほど来の注意深い外務大臣のコメントも含めた上で、私は、両当事者、両責任者に十分ないま成熟した環境についての踏み込む決意ありと、共通しているところありというふうに理解をいたしますから、その理解の上に立って、中国側がいまや外交の角度でなく政治の見地と述べたことは、すなわちそのまま園田外相の訪中歓迎と、直ちに即刻お待ちをするというふうに理解をすべきだと思うんですが、いかがでございますか。
  213. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま、御承知のとおりに、与党の方に対する御理解を昨日から願っておる段階でございまして、これは一にいま読まれましたとおり、こうこういう経過でこういう段階になってまいりましたから交渉再開をするということについて御理解を願いたい、こういうことでいま話を進めておるところでございます。そこで、私が訪中するとかせぬとかということは、交渉再開してよろしいと言われた後の手段でございますので、いまその点については私がここでお答えをすることは、与党の方から御理解を願うために時間が長くかかるおそれがありますから、御推察にお任せをいたすところでございます。
  214. 上田哲

    上田哲君 私どもの気持ちとしても、外交交渉にどんな小石でもけつまずかせる要素はつくりたくないと思いますから、日ごろのテーマとは違って、余り踏み込んで申し上げるつもりはございません。が、しかし、あえて与党をおもんぱかってほしいという御発言もある上に、たとえば新聞でもこれだけたくさん具体的に出ているわけでおりますから、その限りではもはや党内問題のみではなくて、国民的課題であるという立場での質疑にはたえねばならぬと思います。その限りで一定の踏み込まない限度を持ちながら、ぜひ伺っておかなければならぬと思うのであります。  そういうさまざまな要素はおいても、中国側がこれだけ踏み込んで発言をしたということは、園田さんすぐ来てくださいという意思表示であるということは理解できると思いますが、いかがですか。
  215. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃるような中国の歓迎の意であると考えております。
  216. 上田哲

    上田哲君 了解しました。  余り踏み込みたくはないのですが、さきに前向きの外務大臣の御発言が衆議院でございました。具体的には、バングラデシュのラーマン大統領と西ドイツのシェール大統領の訪日、セレモニー等々があるので、四月第三週をおいては具体的に物理的に日にちがないということに対して非常に示唆に富む御答弁があった。これはもう事実上そこにはまったと、決意そこにありというふうに私たちは理解をしているわけなんでありますけれどもそのことはもう一遍確認してよろしいですか。
  217. 園田直

    国務大臣園田直君) 衆議院でお答えしたのは、私の訪中はまだ決まったことではございませんから、ましていわんや時期等についてお答えはできませんと。しかし、いろいろ言われましたから、なかなか玄人の御推察でございますと、こう答弁したわけでございます。
  218. 上田哲

    上田哲君 その玄人の推察がたとえば党内事情等々によっておくれることはあり得ませんか。
  219. 園田直

    国務大臣園田直君) 一に今後のことはまだわからないところでございます。
  220. 上田哲

    上田哲君 それは党内事情のみでありますか。
  221. 園田直

    国務大臣園田直君) いよいよ交渉再開となればお互いにいろいろ問題が残っているわけでありますから、手順、段取りその他、いろいろの問題が出てくるわけでございます。そこで党内事情ばかりではございません。私の訪中自体を含めて、まだ今後検討されるべき問題であると考えております。
  222. 上田哲

    上田哲君 党内事情に深く入るつもりはありません。しかし、伺っておきたいのは、党内事情によってわれわれがかくのごとしであると考えている時期における、具体的に言えば、私の方から一方的に申し上げれば、四月第三週の訪中がおくれるという要素はあり得ないと確認してよろしいでしょうか。
  223. 園田直

    国務大臣園田直君) 全く見当がつきません。
  224. 上田哲

    上田哲君 いや、私が申し上げているのは、党内事情によっておくれることはないと考えていいかということですが。
  225. 園田直

    国務大臣園田直君) これもきのうから始めたばかりでありますから、まだ相談最中に、これから相談することをいや順調にいきますとか、あるいはひっかかると思いますとかと申し上げるわけにはまいりません。
  226. 上田哲

    上田哲君 じゃ角度を変えます。  福田総理と昨日お会いいたしましたときの御説明から敷衍するのですが、これは交渉再開についての党内合意を得るのであると。この党内合意の中には、交渉再開であるから外相訪中ということを含んでいるのではないというふうに伝えられているわけでありますが、ということの意味は、自民党内における、与党内における合意が交渉再開ということで得られるならば、外務大臣訪中問題については別に論ずる必要はないと、交渉再開ということになれば、当然、それは次の手順として出てくるものと考えてよいという意味でよろしいですか。
  227. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉再開をしてよろしいという与党の御理解があれば、後はどのような手段をするか、どのような駆け引きをするか、これは一に政府の持つ専権事項でありまして、外務大臣か全責任を持ち、職を賭してやるべきことであって、一々これを相談してやっておっては外交はできないと私は考えております。
  228. 上田哲

    上田哲君 大変結構であります。そういうふうにお答えをいただければよくわかります。その点では、どうかひとつ自主的に、見識を持って国民のための外交政府代表していただきたいと思います。  その場合、同じような表現でお伺いをいたしますけれども、政府の専権にかかわる事項とおっしゃったわけですが、交渉再開の合意が得られるならば、政府専権の交渉事項を推進するに当たっては、われわれも理解し得る最も具体的でかつ早期な時期をお選びになるという気持ちはお変わりになりませんね。
  229. 園田直

    国務大臣園田直君) 具体的に余り申し上げない方がいいわけでありますが、与党の方の御理解を願えれば、総理は何らかの形で野党の方々の御意見も伺い、そして国民の方々と各党の御理解と御協力を得た上で、交渉を始めるつもりでおられるわけでありまして、当然、与党を初め、皆さん方の御意見交渉中にはこれと無関係にあるわけではございませずに、皆さん方の御意見というものを腹におさめつつ外務大臣は進めていき、その結論としては国民の方や各党の方が納得されるような結論を得るように全力を挙げることが私の職務であり、もし、その際、どうしてもできなければ、私が職を辞するか罷免されるか、どちらかであるという覚悟を決めております。
  230. 上田哲

    上田哲君 最大級の決意表明がありましたことは大変欣快であります。  わが党といたしましては、昨日帰国いたしました党全体としての決意を踏まえまして、いまお申し出のありましたような、政府側から各党の合意を得るという申し出がございます場合には、まさに胸襟を開いて、この条約締結のための御協力を惜しまないことを表明もいたしますし、その限りでは、物理的に私どもは四月第三週に園田訪中が実現するものとの見解、すべきが妥当であるという見解を持っていることを表明をしておきますか、われわれの主張を園田外相は深く理解されますか。
  231. 園田直

    国務大臣園田直君) 時期とかあるいは方法とかいうことは、これは全くこれからの検討事項であります。詰められれば詰められるだけ口がかたくなるだけでございますから、よろしくお願いをいたします。
  232. 上田哲

    上田哲君 最大級の御決意があったところでありますから、専権に敬意を表しまして、それ以外にはあり得ないものとしての脈絡の中で大いにひとつ――にっこり笑っておられますから、私は四月第三週に職を辞してと言われた決意の訪中が実現するものと理解をいたしておきます。  念のためでありますが、私がこのことにこれだけこだわりますのは、物理的にということが一つの条件でありまして、物理的に指を折ってまいりますと、この時期を逸しますと五月がすぐ来るのであります。五月三日の日米首脳会談のカレンダーが目の前に迫っていることを考えますと、日中条約交渉の前に日米首脳会談がなければならないというようなお考えを政府当局がお持ちかどうかということを憂うる声もあるわけであります。この点はいかがでございますか。
  233. 園田直

    国務大臣園田直君) それはどちらも関係はないと考えております。
  234. 上田哲

    上田哲君 関係がないということはいかようにもとれますね。もっと具体的に申し上げれば、もう一カ月ほどに迫っております日米首脳会談を先にしなければ日中交渉は、園田訪中もできないということはありませんね。
  235. 園田直

    国務大臣園田直君) 首脳者会談を終わらなければ、こちらの交渉が進まぬということはあり得ないと存じます。
  236. 上田哲

    上田哲君 大変よくわかりましたが、もう一歩踏み込んでおきます。日米首脳会談の前には訪中をするというところまでは伺えますか。
  237. 園田直

    国務大臣園田直君) これは全く御返答ができません。
  238. 上田哲

    上田哲君 はい、わかりました。  それでは、やり方の問題でもう一つ伺っておきたいんですが、形態ですね、三つばかりの形があるように思います。  一つは、外務大臣が先行されて、いわゆる高島団長以下の交渉団が後から行く場合、それから外務大臣と高島団長以下交渉団が一緒に行かれる場合、それから高島交渉団が先に行かれる場合、三つのパターンがあると思うんですが、この三つのパターンのどれを選ばれることになりましょうか。
  239. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま交渉再開の御理解を願っているところでありまして、そのお許しがあれば、それからいよいよ考えることであります。したがいまして、それは一にさらに事務的に詰め、そういう段取りは相手の国とも相談の上やるべきことでございますから、交渉内容、やり方、こういうことについてはただいまのところ全然返答はできませんので、お許しを願います。
  240. 上田哲

    上田哲君 ちょっとこだわるんですか、いま合意を得るために話し合いをしているのだとおっしゃる意味は、中国側ですか、党内ですか。
  241. 園田直

    国務大臣園田直君) 党内に対しては、交渉を再開してもよろしいかという御理解を願っているわけであります。そこでよろしいということになれば、さらに相手の国と事務的に詰め、どのようにやるかという打ち合わせをした上でやらなければならぬことでございます。
  242. 上田哲

    上田哲君 私も、そこはそう思います。  そうなりますと、もう一つこだわるわけですが、この形態についてもすでに中国側と交渉が進んでいるという意味ですか。
  243. 園田直

    国務大臣園田直君) それはこちらの意思が決まれば、そういうことを申し入れて向こうと合意することになると存じます。
  244. 上田哲

    上田哲君 したがって、こちら側の意思をお伺いするわけですが、私は園田外相がもうずばり先行されるべきだと思うんであります。いまや、先ほども確認いたしましたように、外交の角度からでは解決できない、まさに政治的見地からの解決のみであるということを非常に強く中国側の責任者が言っていることのやり方の意味は、まさしくもう外交事務レベルの交渉ではない。鄧小平副主席は文字の問題ではないという言葉も実は厳しくわれわれにも表明されておるわけでありますが、そういうことを考えますと、もはや交渉団が先に行き外交事務レベルの詰めるべき内容はほとんどあり得ない。これはもう先ほど大変最高級、最大級の決意表明があったことを欣快とするのでありますが、私は、この際、園田外務大臣交渉団に先んじて中国側に行かれることが望ましいと、これはぜひひとつそのように考えるのでありますが、いかがですか。
  245. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見は承っておきます。
  246. 上田哲

    上田哲君 先ほどもこだわったのはそのためなんですが、向こう側と交渉するについて、こちらの見解なしということにはならないわけでありますから、さまざまな御事情もありましょうけれども、これはひとつ幕を開くということでは、私は、強く園田外務大臣交渉団に先行する訪中を要望するわけであります。一般的な御意見拝聴でない、しかるべきニュアンスのお答えをいただきたいと思います。
  247. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉を再開するということになれば、総理のお許しを得て、一番いい方法を選びたいと考えております。
  248. 上田哲

    上田哲君 一番いい方法は、私と園田外相との認識は一致するでありましょうか。
  249. 園田直

    国務大臣園田直君) なかなかなってみぬとわかりません。
  250. 上田哲

    上田哲君 国家、国民のため、日中両国のためにはそのことが一番ふさわしいと、ただいま帰ってまいりました私どもの認識でありますが、この認識に御理解をいただけるでありましょうか。
  251. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見は十分承って参考といたします。
  252. 上田哲

    上田哲君 よくわかりました。十分受け取っていただいて、参考にしていただけるということでありますから、あえて私は三つのパターンを申し上げましたけれども、今日交渉内容も限定はされておりますけれども、困難な冷え込みのある中で言えば、やはり政治家としての先ほどおっしゃった決断を含めて、ぜひ積極的な、最も積極的な形としての園田訪中優先ということをひとつ確認し得たものと私は理解をいたしておきます。  そこで、先ほど申し上げましたように、いまや外交の角度では解決できない政治的な見地云々の内容についてお伺いをいたしたいと思います。微妙な問題について触れようと思いませんので、先ほど申し上げたように、内外注目するであろう御発言のときでありますから、私の方も配慮をいたしますけれども、その限りではひとつお答えをいただきたいと思います。  そこで、今後詰めなければならない交渉内容覇権問題のみでありますか。
  253. 園田直

    国務大臣園田直君) 上田さん、なかなか糸を手繰るように私の腹を手繰り出されますので、だんだん警戒しているところでありますが、内容については一切お答えはできません。
  254. 上田哲

    上田哲君 これは内容じゃないんです。内容の中身じゃなくて内容の外側でありますから、その限りではひとつお答えをいただきたい。つまり、われわれがゆだねるべき外務大臣が何を考えているのか、まるで国民と違った方向のことを考えておる、あるいは中国側とはかみ合いようのないテーマに実は命をかけられたんでは困るのでありますから。内容については深くは入りません。外側を伺うのであります。  逆に伺います。覇権問題以外にも、大きく政治決断を必要とする部分があるのでありますか。
  255. 園田直

    国務大臣園田直君) 外側も、においも、煙も出せないときでありまして、ある時期が来ましたならば、必要に応じて申し上げます。
  256. 上田哲

    上田哲君 余りとびらを閉じているところを無理やりにあけようとはいたしません。これは私どもの今日の矜持でもあります。  私は、この交渉が、しかし、覇権問題以外にもあるなどということであってはそもそも政治的決断という言葉が論理矛盾をいたしますから、この点は常識中の常識であるということを踏まえてお伺いをしたわけでありますから、お答えはいただいても、いただかなくても同じことだと思うのですが、覇権問題の解決に努力をするというきわめて抽象的なことは言うまでもありませんね。
  257. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃいましたとおりに、答えなくても、答えても同じでございますから、どうか私の答えは御勘弁を願いたいと思います。
  258. 上田哲

    上田哲君 はい、了解しました。そう言っていただければ結構であります。  そこで、内容ではなくて、そのための前提条件という部分で伺っておきますが、鄧小平副主席が、七二年九月の日中共同声明から――つまり、こういう言葉を使われました、むろん前進が望ましいのだけれども、少なくとも後退しないことである、これが今日の両国の立場でなければならない、こういう発言でございました。これは実は福田総理新聞の上でおっしゃっている言葉であります。日中平和友好条約昭和四十七年日中国交正常化の際の日中共同声明第八項において言及されており、その締結交渉は約束されているものである、今回の日中平和友好条約は日中共同声明を基礎として、現在すでに存在している日中間の友好関係を長期的に確保しようとするものである、こう二カ所で言っておられるわけであります。これはもう議論の余地なく、日中共同声明から、いろんな形の前進ということはあるかもしれないが、少なくとも後退をしないことが基礎であるということは言うまでもないと思いますが、いかがですか。
  259. 園田直

    国務大臣園田直君) これは総理からも公開の席上でしばしば、私からも、日中共同声明立場を貫くということは明快にいたしておりますから、そのとおりでございます。
  260. 上田哲

    上田哲君 そこで、鄧小平副主席は、中国側が出した案は、実は、共同声明のまる写しである。共同声明の第七項の前の一句を、つまり前の一句を今日に合わせて変えただけだと。言うまでもありませんけれども、第七項は「中日両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」この文章の中で、前段の部分の「中日両国間の国交正常化は、」となっているところを、中日両国が平和友好関係を樹立し、発展させることはと、こう直すのみだと言っておられるわけであります。おととい私たちが目の前で聞いてきた言葉がこのとおりなんでありますが、先ほど日中共同声明から後退をしないのだということでありますと、前進があるないは別にして、後退をしないのだというレベルだとしますと、私はこの表現ならば日中共同声明と変わっていないとしか理解できないと思うんですが、何か変わっておりますか。
  261. 園田直

    国務大臣園田直君) いま上田さんが読まれました案文というのは、中断をした前の中国側の案文でありまして、なお、それをどのように直せと日本が言っているということは、これは政府が案文について意見を交換したことは全くございません。これはその他のことでそういう話が出たんだと思いますけれども、それが今後の問題になってくるわけでありますから、ここではこれに対する批判は私は避けるべきだと考えております。
  262. 上田哲

    上田哲君 慎重に私はひとつその材料を選んだんですが、あえて伺うのは、前段に総理も言われ、ここではっきりまた外務大臣も表明されたように、日中共同声明からは一歩もひかぬ、こういうことでありますと、具体的なことは省きます、具体的な表現も触れません、しかし、いろんな形で中国側が表明している今日の中国側の考え、表現というものは、日中共同声明を超える、踏み出すという部分はないと私たちは考えているんですが、そういう御認識でしょうか。
  263. 園田直

    国務大臣園田直君) いま交渉を前にして、中国側の言い分なり表現の方法について、私がよいとか悪いとか言うべき立場にはないと存じます。
  264. 上田哲

    上田哲君 前から言われていたことでありますけれども、鄧小平副主席が今回も強調されたのは、元来一秒で解決できることだと、それかここまで複雑になってしまった、こういう言葉がございました。一秒でという意味は、これまでの交渉を大きく変える余地はもはやないという強い姿勢と受け取るべきなのでしょうか。
  265. 園田直

    国務大臣園田直君) わかりません。
  266. 上田哲

    上田哲君 日本側としては、これまでの中国側の表明に対して、この一秒を大きく変更させねばならぬとお考えですか。
  267. 園田直

    国務大臣園田直君) 一に今後の交渉次第だと考えております。
  268. 上田哲

    上田哲君 外務大臣の胸中には、さまざまに流布されております、たとえば、この条約は、などのさまざまの表現を入れることについて、何らかの影響を与えられているとお考えですか。
  269. 園田直

    国務大臣園田直君) それは全然お答えすべきことではございません。
  270. 上田哲

    上田哲君 念のために伺います。  まさにこのものずばりで、ここに文言を付加することなくした場合にも、言うところの日中以外の国に対して何らかの刺激あるいは進んで何らかの行動をとるという義務をこの表現では負わないだろうというふうに考えることになるのでしょうか。
  271. 園田直

    国務大臣園田直君) それもお答えはできません。
  272. 上田哲

    上田哲君 一秒ということがあらゆる文言の変更の可能性を持たないという場合にも、決断はあり得ますか。
  273. 園田直

    国務大臣園田直君) これは会って交渉をした上の話でありまして、一秒というのも、両方の意見が合えば一秒に近い時間でできることでありましょう。
  274. 上田哲

    上田哲君 わかりました。  モスクワに出張されておりましたサケ・マス交渉の松浦さんがお帰りになった、そして沖取り禁止の撤回の発言をお持ち帰りになったわけでありますが、これについて中川農林大臣がモスクワを訪問されるわけでありまして、昨日、中川農林大臣園田外務大臣の会談が行われたと理解をいたしておりますが、この会談の事実はございますね。
  275. 園田直

    国務大臣園田直君) 中川農林大臣と会いました。そして二つの用件で、一つは、一党員として友好条約は慎重にやれという強い申し入れ、一つはいまの漁業交渉報告であって、外務、農林協力をしてこれをうまくやろう、こういう相談でございました。
  276. 上田哲

    上田哲君 それが非常に気になるわけでありまして、外務、農林協力してと仲よくなられますと、日本政治の仲よしというのは足して二分の一が伝統でありますから、そこで余り露骨な言い方は慎むべきでありましょうけれども、沖取り問題などもあるので、この際、中国交渉についてはその分だけ前へ進むなというようなことが仲よくということであっては困るのでありますが、よもそのようなことはございませんか。
  277. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省と農林省が外国と結ぶ協定なり条約なりでありますから、外務省が表面の責任者でありますから、農林省と外務省がよく相談してやることは当然のことでありまして、だからどうこうというような内容のことは申し上げられません。
  278. 上田哲

    上田哲君 もう少し具体的に一つ確認しておきますけれども、この問題が日中交渉に影響を与えることは全くないと断言をしていただけますか。
  279. 園田直

    国務大臣園田直君) 全くあるかないかは、今後の進捗状態だと考えております。
  280. 上田哲

    上田哲君 それは大変困るのです。全くあってはならないことだと思うんですが、関係があり得るんですか。
  281. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の国がやることでありますから、影響がないとは言えません。
  282. 上田哲

    上田哲君 沖取り問題が出てこなかった前と後では変わりますか。
  283. 園田直

    国務大臣園田直君) それは困るとおっしゃるからこそ、うまく連絡してやろうじゃないかと、こういうことでありますから、それ以上は答弁はできません。
  284. 上田哲

    上田哲君 禅問答みたいなんですが、つまり沖取りか出てくると、日中を進める――このままでいくと困るぞという意味ですか。
  285. 園田直

    国務大臣園田直君) 禅問答をよくおわかりの上、私にはっきり言わせようとなさるところに無理があると存じます。
  286. 上田哲

    上田哲君 わかりました、よくわかりました。そういうところはひとつ、仲よくという言葉だけではなくて、外交関係の中に微妙な影響の影を落すことを否定することはできないでありましょうけれども、それが実は日中問題の基本にかかわるようなことになってもらっては困るので。  念のためにお断り申し上げておきますけれども、わが党といたしましては、言うところの親中派でありますとか親ソ派でありますとかという立場は全くございません。私自身もそのとおりであります。まさに決して狭いエゴイズムではない国民全般の国益ということを考えなければならない立場でありまして、その限りでは、わが党も今回の会談におきましても、その基本原則を固守してまいりましたし、最も高い次元において日本外交政策があらゆる国々と友好を深めつつ進むということは今後とも変えてはならないことだと思うのであります。その立場に立って、たとえば二百海里の問題以来、漁民の受け取る打撃の深刻さというのはまことに目を覆うばかりでありますし、このことに深甚な配慮をなすべきは言うまでもありませんけれども、そのことの配慮の余り、今回、一衣帯水の中国日本の間に、ようやくにしてこれまでにない形でと言われた、そのこれまでにない形で成熟しつつある日中平和友好条約締結の可能性を何分の一かでも減衰させるということになっては絶対にならないことだと思うわけであります。まあ両大臣それぞれの立場でどのようなお話かあるかはひとつ個人的友情に限定をしていただいて、国民の大きな願望であるこの交渉に影を落とすことのないように御努力を要望しておきたいと思います。  私はどうも座って質問するというのは性に合いませんので、立って質問いたしましたが、たとえばまさに猛将園田外務大臣に対してこの程度では許しがたい答弁の部分もございますが、非常に微妙なところであり、きのう帰ったばかりであり、ぜひともひとつ小さな石ころが全体の前進に支障を来すことのないことを願うために、大変抽象的、一般的でありました御発言をも含みながら、かなり率直に御見解の表明があったことと思いますので、機を逸することなく、先ほど来禅問答的な中ででも確認いたしました事項を深く胸におさめていただきまして、ぜひ一刻も早く政治決断をもって日中平和友好条約締結のために御努力あられんことを希望いたしまして、また、わが党といたしましても、第八次に及ぶ交渉、会談及びそれを支える国民運動の面を含めて、この条約締結のために今後とも政府の動向を見守りながら、全力で協力すべきは協力をするということも表明をいたします。外務大臣からそれらを含めて強い決意をひとつ伺いたいと思います。
  287. 園田直

    国務大臣園田直君) 日中友好条約に対する非常な熱情から御配慮を賜りましたことを御礼を申し上げます。  一時間にわたる質問の御発言の中、あるいは中国から帰られたばかりの生々しい体臭のもとに発言された御趣旨は十分拝承いたしましたので、全力を挙げて努力をする所存でございます。ありがとうございました。
  288. 上田哲

    上田哲君 終わります。
  289. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 日中問題に入ります前に、成田空港の事件につきまして大臣に所信をお伺いしたいと思います。これは質問通告しておりませんので恐縮です。  大変このように事件が起こりまして、空港の実際の開港もおくれることになりました。国際的な信用が失墜しておるわけでして、諸外国からいろんな苦情等もきておりますが、これに対して外務大臣としてはどのようにこの国際信用を回復させるために具体的な手を打たれるのか、その点について伺いたい。
  290. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおり、まことに遺憾なことで、特に安全ということを重点に置いて運航される各国の航空関係の方々に不信を与えたことは取り返しのつかない遺恨事であると考えております。  それで、これについては破壊された計器その他を完全に修復すると同時に、全面的な見直しをもやって各国の方々が安心して着陸、離陸かできるように、往復することができるようにしなければならぬ、早急にやるべきだと考えております。
  291. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 特に日本赤軍、この過激派は世界的にかなりいろいろな事件をそこらじゅうで起こしましたので、諸外国から見て大変ひんしゅくを買っておるわけですが、この問題については外務大臣として過激派に対する反応ですね、どう対処されるか。
  292. 園田直

    国務大臣園田直君) 二回にわたる対策会議を開きましたが、いま仰せのとおりでありまして、新空港が国際的な信用を回復することと、このような事件を起こした暴力集団、こういうものに対する徹底的な取り締まり、これは別個の問題でありますが、集団暴力に対する考え方は幸い各党、野党の方々の御意見も一致をしておりますので、政府は、世界的に残念ながら過激派の行動は日本の売り物みたいな印象を与えておるときでありますから、この取り締まりはこの際徹底的にやって、こういうような世界に対する不信の念を一掃することが大事であると考えております。
  293. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 こういう事件が起こると政府はいつも徹底的な取り締まり――私は取り締まりをやめろというわけではありませんけれども、もちろんそれもやりながら、そういった分子の発生しないような社会をつくる――これは政治に対する不信ということが一番特に大学生の間に起こってきてから発生しているわけですから、そういった点についてのことは余り政府は言われないわけでして、こういうことが起これば直ちに取り締まり取り締まりと、過剰な警備と、こういうことになってくるわけでして、その辺をひとつまず政治の立場から反省をされて、大学のあり方も問題になるでしょうし、また、それ以上に政治というものが国民の信頼を取り戻す、私はここが一番大事だと思うんですけれども、その点はいかかですか。
  294. 園田直

    国務大臣園田直君) 暴力集団が利用するような原因をつくらないこと、これまた大事でありますけれども、こういう際には、ややもするとそういうことが暴力集団に対する理解というか同情に変わるおそれもありますので、この際は、徹底的に暴力集団のやり方を追及をして、そしてまたおっしゃるような、その後そういう紛争が起きないようにする、紛争の原因をつくらぬようにする社会環境をつくる、こういうことも大事であると考えております。
  295. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまの問題に関連して、確認でお伺いをさせていただきたいと思います。  今回の事件は、もう遺憾という心情を通り越した状況ではなかったろうかと思います。で伝えられるところによりますと、アメリカの一流紙は一面トップでもって、今後日本の空港への乗り入れというものは考え直さなくちゃならぬという趣旨の報道がなされているということも聞いておりますし、特にパン・アメリカンあたりではその点を非常に憂慮しているということも伝えられ、急遽その対策に腐心をしているというようなことが言われております。  で、政府側としては、完全に修復がなされて就航まで約一カ月余りかかるのではあるまいかという見解の表明もあります。ただし、これまでこのいわくつきの成田空港というものが果たして国際信用の回復につながるものかどうなのか。油送管の問題あるいは今回の管制塔の破壊等々、予測しない出来事が続いたわけでしょう。しかも、その警備態勢とゲリラ側の数の上での比較を考えた場合に、圧倒的に警備陣が多かった。しかも、そうした一万数千名の警官を動員してまで警戒態勢に当たらなければならない、これが一体いつまでそういう状態が続くのか。また、そうしなければ秩序の推持というものができないかということになりますと、成田空港の今後の運営のしで、われわれが素人的な感覚で判断をいたしましても、先行き非常に不安かつきまとうんではないだろうか。そうしたことも十分政府側としては考慮の中に入れながら、今後の対策に取り組まれるのだろうとぼくは思うんです。  しかし、いま御答弁を伺っておりますと、確かに今回の事件が起こって徹底取り締まり、それもやるべきでありましょう。ただ、それだけでもって一切か解決されるというふうにはわれわれ思いたくないわけです。まだ不備の点が相当あるんではないか。で、果たして一カ月有余くらいの期間で国際的な信用の回復に努め得られるものかどうなのか、そしてまた、その信用回復が一応なされたとした場合に、それが将来にわたって持続できるのかどうなのかという御判断はいかがでございましょう。
  296. 園田直

    国務大臣園田直君) 私、所管でございませんから、私が責任を持ってお答えするかどうかは別としまして、話を聞いたところによると、壊された計器その他は大体急げば半月ぐらいで修復ができるだろう。しかし、いまおっしゃったように、その他の設備、その他各国との連絡、こういうものかあるからもう少し時間がかかるだろう、こういうことでございます。  いまおっしゃいました発言は十分これを拝承して、それに対する対応の措置をするよう関係各省には私の方から連絡をとるつもりでございます。
  297. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いずれにしても、閣議でもっていろんな対策というものが基本的には決められていくその中で、当然、園田さんもその一員としてお加わりになっておられると思いますし、特に、いまお話かなされておりますように、国際的な信用というものを考えた場合にこれは猶予できない、十分その点も、たとえ所管外かもしれませんけれども、考慮の中に入れてお取り組みをぜひいただきたい、こう思うわけでございます。
  298. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは日中問題に移ります。  先ほど来、上田委員の方からかなり詳しく生々しい社会党訪中団の状況を踏まえて質問がございました。ある意味ではダブる面が出てくるかもわかりませんが、お許しをいただきたいと思います。  まず、先ほど来問題になっておりました東京における日中平和友好条約の調印式、御答弁等を含めますと、かなり可能性が高い、もう東京調印式は現実に、時期は別として、調印式は東京ということは私は決まったように思いますが、もしそのように東京で調印式が行われた場合、正式招待として華国鋒主席あるいは鄧小平副主席を招待することになると思いますが、それに対する返礼の意味も含めまして、批准書の交換については日本総理訪中をしてやるようになるのか、その点はいかかでございますか。
  299. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどから申し上げますとおりに、鄧小平副主席が行ってもよいと言われたことは社会党の方から伺ったわけでありまして、これもまだはっきり調印式に行ってもいいという意味なのか、その後行ってもいいという意味なのか、具体的にはわからぬわけでありまして、おいでになれば、中国の首脳が訪日されるということが実現すればわが国は誠意を持ってこれを歓迎したい、こういうことはありますけれども、それをどのようにやるのか、その後どうするのかということは、まだそういう話だけで私が想像してお答えすることは適当でないと存じます。
  300. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 しばしばこの日中問題はいままで議論されてまいりまして、総理も決断した、あるいは外務大臣が早々に中国を訪問される、相当言われてきているわけですが、いまの時点でいよいよ与党内への、先ほど来もお話がありましたように、いろんな了解を得るための会合が持たれてきております。ということは、中身も含めまして、いよいよ福田総理はこの平和条約締結についてこの線でこういくという腹を決めた、こう受け取ってよろしいですか。
  301. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理のお考えを私が申し上げると、また誤解を招きますから申し上げませんが、総理締結に向かって交渉を再開したいという決断は間違いなしにされておるところでございます。
  302. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの時点で交渉再開を決断したということはかなりのものがまとまらなければできないわけですね。そのためにいろいろいま党内でおやりになっていると思うんですけれども、それはいかがですか。
  303. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉を始めようという決断はもう相当前にされたように存じております。これはしばしば国会でも言っておられたところであります。いよいよ大体これで機は熟してきて、交渉再開の実行に移ってもよいと判断されたから、党側に向かって理解を求められておるところであると存じます。
  304. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ここでは余りその中身等は言うのは大変だと思いますけれども、いまのお話を聞いておりますと、やなり具体的に中国側にぶつける大体最終的なものは決まった上でその決断をされ、党内の根回しをされておると、こう理解をしていいかと思うんですが、いかがですか。
  305. 園田直

    国務大臣園田直君) これは総理の腹はしばしばの発言で想像していただく以外に私からお答えすべき筋合いのものではないと存じます。
  306. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほど上田委員も少し触れられておりましたが、きょうの新聞等においても自民党――他党のことを言って恐縮ですが、決して内政干渉する意味ではございませんので、その点はお許しをいただきたいと思いますが、いろいろ動きがございました。たとえばアジア問題研究会では、日中平和友好条約締結は国益上メリットかない、こういう認識で一致をしたと、一が覇権条項、二が領土問題(尖閣列島)、三に友好諸国に対する影響、四番が中ソ友好同盟条約に対する中ソ両国の態度、五番目に台湾の動向に対する正確な見通し、六番目にその他国益上重要な諸問題、これについて政府が見通しを明らかにしない限り交渉再開には反対する、こういう方針か出ておりまして、そのためにいろいろお話し合いをされておると思うんですけれども、国益上メリットがないというのはちょっと私は大きな問題かと思いますけれども、こういういろんな議論をいま政府が一生懸命やっておられる話し合いの中で調整はつくという見通しがございますか。最終的にこの慎重な態度をとるグループについては見切り発車ということまで考えておられるのか、その点はいかがですか。
  307. 園田直

    国務大臣園田直君) 見切り発車をやる考えはございません。あくまでこのような大事な問題でありますから、それぞれ意見を尽くされた後、与党の支持、各党の御協力を得て、交渉を再開したいと考えております。  なお、党内にいろいろ意見がありますが、すべてその意見はわが国の国益にもとることがないようにとの観点からの意見でありまして、必ずしも全部が日中間の平和友好関係を強固にして発展させるために友好条約締結すること自体について反対という意見はないようでございます。だんだんと御理解を願えるものだと考えております。
  308. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま見切り発車はしないと言われたといたしますと、相当早い時期に――先ほど外務大臣訪中の時期については御答弁はございませんでしたが、上田委員のお話によると四月第三週、日米首脳会談の前と、こういうふうなことが害われておるわけでございますけれども、そうなりますと、少なくとも今月末あるいは来月の上旬までには党内の理解を得なければむつかしいと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  309. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の訪中するかどうかも含めて、これは今後の検討事項でありまして、まだ計画はつくっておりません。交渉再開してよろしいという御理解があってから初めて検討すべき問題でございます。なお、与党に対しては、なるべく速かに御理解を願いたいということをお願いしてございます。
  310. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの御答弁だとまだまだ固まっていない。そうなりますと、いままでいろいろ国会でも御答弁された非常に意欲のある線と何か矛盾を感じてくるんですが、今度外務大臣訪中されることによってそれはもう完全な決着と見ていいわけですね、大枠な決着と見て。
  311. 園田直

    国務大臣園田直君) そのつもりで、仮に訪中することになれば誠意を持って折衝するつもりでありますが、相手のあることでありますから、必ず決着とはここで断定するわけにはまいりません。
  312. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほど相当の決意を持って臨むと言われておりましたので、私は大枠の決着がつけられると思うわけですけれども、そうなりますと、かなりいままでいろんな議論されてきた点についても大体の見通しを持って、この辺なら大体一致できるだろう――もちろん中国側の主張もあるでしょう、またわが国の主張もあるでしょう、外交というのは全部が全部一〇〇%こちらの主張どおりにはいかぬものですから。しかし、ある程度の一致点が見出されるという見通しがなければこれは行けないわけですから、その点については私は大枠の決着というのはある程度の一致点も見出せるという自信の上から行かれてそうして決着をつけられる、こういう意味で申し上げておるわけですが、重ねてその点はいかがですか。
  313. 園田直

    国務大臣園田直君) 相手のある交渉ごとは、いかなる問題でも私は五分五分の問題であると考えております。五分五分の問題であるからこそ政治的折衝をし、誠意を持ってこの交渉に当たることが必要であると考えておるわけであります。私が先ほど決意と申しましたのは、このような決意で、是が非でも押し通すと、こういう意味ではございません。交渉再開してよろしいと、こうなる、そうすると、その間でいろいろこれはこうだ、あれはああだ、あれはこうだと言って一々御相談すべき筋合いのものではなくて、私か任された権限内において総理の指示を受けながら結末を仮につければ、そのつけた結末が気に入るか気に入らぬか、その場合には私が責任をとる以外にない、こういう意味のことを言ったわけでございます。
  314. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお話だと、交渉再開がオーケーが出たと、そうすると、もう直ちに大臣はすべての権限といいますか、を譲渡されて中国へ飛んで、一挙に話し合いで決めると、こういう感じも受けるんですが、また一面は、交渉再開はオーケーが出た、しかし、中身についてはもう少しいろんな点で様子を見て、向こうの出方も見ながら、現地においてまた大使もおられることですから、話し合いの中で決められた上で、大体の線が決まってから中国へ行かれるのか、その点はいかがですか。
  315. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉再開してもよろしいということになれば、そこでまた改めて方針なり、その他を検討して、総理の御指示を受け、佐藤大使を通じていろいろ連絡をして、その結果、私が行くか、行くとすればいつごろ行くかと、こういうことを決めることだと思います。
  316. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうなりますと、何か五月三日以前というのはむつかしいような気がするんですが、その点はいかがですか。
  317. 園田直

    国務大臣園田直君) 行くということも含めて、いつごろ行くかということも全く見当がつかない、いまの段階では見当がつかない、こういうことでございます。
  318. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 仮に首脳会談の前に行けない場合、これはアメリカとの関係あるいは中国との関係別々だという態度をとっておられますから、別に私は問題ないと思いますけれども、カーター大統領との会談の中における中国問題の話し合いについては少し変わってくるんじゃないかと思うんですが、大統領とは中国問題、特に日中条約について話し合いの議題にされる予定はございますか。
  319. 園田直

    国務大臣園田直君) 特に重大な問題として議題になることはあり得ないと存じますが、そのときの状況次第で話題になることはあると思います。
  320. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 アメリカに了解をとられるというふうなことはございますか、この線でいきますよと、いいですかと。
  321. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど申し上げたとおり、首脳者会談が済まなければ交渉再開はできないという理屈はないと思います。
  322. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いや、私の言っているのは、カーター大統領と会ったときに、日本中国に対してこういうふうな線で条約を結びます――まあ結はれておればもう問題ないんですけれども、終わっちゃっているから。終わってない場合の話です、大体こんな線で行きますという説明ですね、要するにアメリカの了解はとられるのか、そんなことは関係なしに日本中国とは独自の外交路線として貫かれるのか、あくまでもアメリカというものを相当意識をした上でアメリカの了解をとられるのか、これは安保条約等も関係してきますから申し上げるわけですけれども、その点はいかがですか。
  323. 園田直

    国務大臣園田直君) 当然、これだけ大事な、特にアジアの安定と平和ということを目標に進めていく交渉でありますから、アジアの国々、その他の国々、関係諸国の意向を知ることは外務大臣の当然の職務であると考えておりますか、首脳者会談へ行ってからこういうことをやりますというようなことでは、とうていこれは仕事が進まぬと思っております。
  324. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 日中条約と安保条約についてちょっとお伺いしたいと思いますけれども、それがありますので、私、首脳会談でこういう話が問題になるかなと思ってお伺いをしたんですけれども、従来、政府は、台湾は安保条約で言う極東の範囲に含まれている、こういう見解をとってこられましたが、これは日中条約締結をされれば変更になるのですか、その点はいかがですか。
  325. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 今回の日中平和友好条約交渉というものは、先ほど来お話が出ておりますように、日中共同声明を基礎として交渉が行われるということでございます。この日中共同声明が出されました際に、日米安保条約というものに触れられることなく日中間の国交が正常化されたということがございますので、今回の日中平和友好条約というものがまとまりました場合にも、それが日米安保体制というものに影響を及ぼすことはないというふうに考えております。
  326. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私が聞いているのは、安保体制ではなくて、安保条約の解釈が変更されるというふうなことがあるのか、要するに従来の政府の安保条約の、いま申し上げた極東の範囲についての解釈は変わらない、こういう線でいかれるのか、あるいは検討をされるのか、その点はいかがですか。
  327. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ただいま申し上げましたような次第でございますので、日中平和友好条約というものが成立いたしました暁にも、この問題を含めまして日米安保体制というものを変更するというような考え方は持っていない次第でございます。
  328. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いや、それは私の質問に対する回答じゃないですね、安保体制を云々は私も理解できるんですよ。安保条約における極東の範囲の中における台湾問題については変更があるのかないのか、従来どおりの解釈を進められるのかと。というのは、もし台湾が中国領土の一部であるという認識であれば、当然、極東の範囲から除かれるべきであると私は思いますけれども、そういった場合に変更が出てくるわけです。その場合、日本としては変更したいと、こういう気持ちがあっても、アメリカもありますから、そういった意味で私は米政府との話し合い等が出てくるのかどうか、その点、予想でございますけれども、お聞きをしておるわけです。
  329. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 先ほど申し上げましたように、基本的に政府として先ほどの極東の範囲といったような問題を含めまして、日米安保体制というものを変えていくという考えはないわけでございます。
  330. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大臣も同じ見解ですか。
  331. 園田直

    国務大臣園田直君) いま局長から答弁したとおりでございます。
  332. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これは仮定ですけれども、もし仮に台湾が武力解放されると、こういう事態が発生した場合、今日の米台関係、日米安保条約上、もし米軍がこれに関与をしたならば、在日米軍基地からの作戦行動ということになるわけです。こうなりますので私はお伺いをしておるわけですが、その点についてはいかがですか。
  333. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) その点につきましては、中国には中国立場があるということは存じておりますけれども、私どもといたしましては、この米中上海コミュニケというものができまして、米中間でもいろいろ話し合いが行われてきている、こういう状況から考えまして、この台湾の問題につきましては平和的に処理されるということを強く念願しているわけでございまして、そういう仮定に立った問題についてお答えすることは差し控えさしていただきたいと存じます。
  334. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 外務大臣にお尋ねをいたしますが、米中関係、これはどういうふうになっていくという見通しをお持ちですか。
  335. 園田直

    国務大臣園田直君) 米中関係日中関係と違った要素があるわけでありまして、一方は、台湾に米軍が駐留をしておる。それから一方、米国の方は、不測の事態が起きないように中国に対して武力解放はしないようにという要求をしたが、両方ともこれは話が合わなかったということは、先般のバンス国務長官が中国を訪問した後も公にされたところでございます。したがいまして、表面上、いま近い時期に米中関係が話し合うと思いませんけれども、両国とも大国でありまして、そういう現実のもとで何らかの友好関係は進んでいく、このように判断をいたしております。
  336. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、ソ連側が大変日中条約に神経をとがらしておることは最近のプラウダを初めとするいろいろな日本の国内においてソ連側の出しておる文書等についても言われておるわけですけれども、特に日中条約締結に伴ってソ連側の報復措置、世上よく言われております、こういうものはあるというお考えに立っておられますか、予想されますか、その点はいかがですか。
  337. 園田直

    国務大臣園田直君) 今後結ばるべきであろう日中友好条約内容次第で、これがソ連を敵とするものであるならば、ソ連としては何らかの行動をされるでありましょう。しかし、日中共同声明立場を貫いてこれが締結される場合には、日中共同声明がなされた場合もソ連は何らのこともなされなかったわけでありますから、日中両国に世界各国が納得するようなものであれば、ソ連がそういう特別な行動をされることはなかろうと想像いたしております。
  338. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ソ連側については、もうこれ以上話し合いはされませんか。この前、大臣ソ連へ行かれて、相当厳しい議論をされてきておりますけれども、この日中条約に関してはソ連側に対してはどういうふうな理解を求めるといいますか、話をつけるといいますか、その点はいかがですか。
  339. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉締結前に、ソ連側に連絡すべきことはもう余りないような気がいたします。仮に締結すれば、その内容ソ連側にも理解を求める努力をすることは必要であると考えております。
  340. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、竹島問題についてお伺いをいたしますが、竹島問題は長年にわたる日韓間の懸案でありますが、韓国側は、日韓条約の際、交換公文に基づいた交渉には応じてこないし、しかも、ここ数年、警備隊施設設置あるいは常駐など実力行使によって既成事実の積み重ねがされております。こういう態度というのは決して日本に対して友好的とは言いがたいんですが、これはしばしばこの委員会でも問題になっておりますが、改めて外務大臣にお伺いしたいと思いますが、これは決して友好的ではないと思うんですが、その点はいかがですか。
  341. 中江要介

    政府委員中江要介君) 竹島については、いま先生御指摘のように、紛争解決のための交換会文があるにもかかわらず、その交換公文にのっとった話し合いが行われてないという現実がございますが、その前提といたしまして、日韓正常化交渉の際に、日本側は、竹島はこれは日韓間の紛争であるという認識のもとにこの交換公文を行って、これによって解決しようという努力を続けておるのに対しまして、韓国は、あの島は自分の固有の領土であって、紛争ではないという主張を日韓正常化交渉のときからしておったわけです。しかしながら、韓国がそう言いましても、日本には日本の固有の領土であるという十分な根拠があるわけですので、これは国際法的に見ますと、間違いなく紛争であるわけでございます。  したがいまして、両国間で話し合いによって解決しなければならない立場にありながら、いま御指摘のように、警備隊を置いたり、もろもろの施設を設置したりしております。これは日韓関係にかんがみまして、まことに遺憾なことであるというふうに受けとめております。ただ、話し合いによって解決すると言いましても、ただ話し合いをすればいいというだけではなくて、その話し合いによって解決するのだという共通の認識が前提になければなりません。そういう意味で日韓間にこの問題についての相互信頼、相互理解というものが深まって、紛争解決に関する交換公文にのっとった解決が実りあるものになるという時期を早く招来したい、招きたいという態度で日本政府は臨んでおるわけでございます。
  342. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 まず、もう少し強く施設、人員の撤去を求めてもらいたいと思いますが、この点についてはいかがですか。  それから、外務大臣は、韓国が不法占拠していると、こういう認識をお持ちになっているのかどうか。  それから、これまで何回も日韓定期会議が行われておりますが、この問題は取り上げられてきておりません。そういった点についても大変弱い姿勢のように国民は感じておるわけですが、今秋予定されておる日韓閣僚会議ではこの問題が取り上げられるのかどうか。その三点について伺いたいと思います。
  343. 中江要介

    政府委員中江要介君) 第一点の、韓国が設置しております設備、施設のみならず、配置されております人員あるいはその他の韓国側が公にとっている措置、そういったものにつきましては、事実が確認されますごとに強硬に韓国側に撤去なり善処を求めておるわけですけれども、残念ながら、いままでそれに沿った効果というものがあらわれていないのは私どもとしても遺憾に思っておるということは先ほども申し上げたとおりでございます。  この問題について、不法占拠であるという認識があるかといいますと、これはまさしくそのとおりでありまして、日本の、歴史的に見ましても、あるいは国際法的に見ましても、固有の領土であるということについては日本政府立場に一点の疑念もないということでありますので、それを韓国が不法に占拠しているという、そういう前提でこの問題を日本側で認識していることは、これは間違いのない点でございます。  第三番目に、定期閣僚会議の議題としてでも韓国側と話し合いたいという強い御意向は、過般、園田外務大臣委員会の席上表明されました。いままで日韓定期閣僚会議の開催に先立ちまして、双方で議題について合意をいたしまして、それを議論するわけでございます。ただ効果のない問題で言い合うだけの議題というものが果たして賢明かどうかという問題もございますけれども、今回は、外務大臣の御意向もありますし、できることならば議題に掲上することについて韓国側と強く話し合いを行って、幸いにして議題となりましたならば、日本側の主張を引き続き、繰り返し先方に働きかけていきたい、こういう方針でございます。
  344. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 この竹島問題もずっと問題になりながらいまなお解決していない問題でありますので、外務大臣、ひとつ精力的に取り組んでいただいて、何とか国民納得できる線を出していただきたい。かなり厳しい姿勢も必要ではないか、こう思いますので、この問題については、最後に大臣からお答え願いたいと思います。
  345. 園田直

    国務大臣園田直君) 御意見十分拝聴いたしまして、努力をいたしたいと存じます。
  346. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に、中東問題を少しお伺いしたいと思うのですけれども、中東は依然として、いまなお中東和平というのが、華々しくベギン首相とサダト大統領の間で話し合いが始まったにもかかわらず、いまなお低迷を繰り返しておりまして、私、大変中東紛争というのは、日本と遠いところであるからといって関係ないのではなくて、大変重要な関係を、OPEC等が絡みますから問題にするわけですけれども、この中東に対して政府としてはどのように注目をされておりますのか、まずお伺いしたい。
  347. 園田直

    国務大臣園田直君) これはしばしば申し上げたとおりでありますが、過去の経緯は御承知でありますから省略をいたします。両方盛んに努力をしておりますが、パレスチナ問題占領地撤退問題等で相当の両方の立場の隔たりがあったところへ、最近になって御承知のとおりパレスチナゲリラのイスラエル浸入、イスラエルのレバノンへの侵攻事件等が起こって、関係諸国の和平努力を取り巻く環境は一層厳しいものになっているところでございます。  しかし、ここで紆余曲折はありましても、この和平工作が成功しなければ、これは大変な事態になるわけでございますので、わが国としては、関係当事国の一層の努力によって一日も早く中東に公正かつ永続的な和平が来るように願うばかりでなく、この前に参りましたときにいろいろ相談をしておりますから、わが国としてこの和平工作に貢献できる問題等は、逐次、これを努力していきたいと考えております。
  348. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま最後に言われた、その具体的にどういった点が貢献できるのか、その点はいかがですか。
  349. 園田直

    国務大臣園田直君) この和平工作に対しては、中東諸国は、全部今度の和平工作が停滞をすると、これは非常に深刻な状態になってくる、そこでイスラエルの面目も立てながら自分たちは何とかやっていきたい、こういう希望でありまして、そのためには、日本に対して、一つは非産油国に対する経済技術の協力、もう一つは米国に対する話し合い、ヨーロッパ諸国に対する世論の工作、こういうことを頼まれているわけでありますから、これを逐次やっていっているわけであります。その基本は、国連で決められた線に従って、われわれはこれを和平工作に横から努力をしたいと考えております。
  350. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ぜひ、中東、私も大変心配をしておりますし、かなり大臣もいま厳しい認識でございますからいいと思いますけれども、本気になってこの問題には取り組んでいただきたいと思います。  最後に、四月に入りますと、日中条約交渉があります。それからソ連との間の漁業問題が出てきます。またアメリカとの首脳会談、これももう五月ですから、本格的に日中あるいは日ソ、日米、大変外交の華やかな時期にこれから入るわけでございまして、それだけによほど自主性と国民の世論というものをバックにした上での交渉をやっていただかないと、いろいろ日本がいま御承知のように円高に見られるようにある面では袋だたきに遭っている時代です。それだけに慎重、そしてまた大胆に勇敢に私はやっていただきたいと、こう思いますか、この日中、日ソ、日米、この四月を迎えまして、大臣の所信を最後に承って質問を終わりたいと思います。
  351. 園田直

    国務大臣園田直君) 仰せのとおり、各種の問題が詰まりまして、華やかというよりも複雑、深刻になってきたわけでありますが、いまの御注意をよく承りつつ、これに対する対応の措置をやっていきたいと考えております。
  352. 和田春生

    ○和田春生君 それでは、まず最初に日中交渉問題についてお尋ねをいたしたいと思います。この問題についてはけさほどから、それぞれ角度は違いますけれども、いろんな観点から問題点が取り上げてこられました。かなり明らかになった点、また明らかにならなかった点もあるわけでございます。時間の関係もございますので、とりわけ重要と思われる点にしぼってお伺いをいたしたいと思います。もちろん、いま非常にむつかしい時期に到達しているわけでありますから、外務大臣として言いにくいこと、また、われわれが無理に聞き出してはならないようなことについてはお聞きしようと思いませんけれども、伝えられる限りにおいて、かなりいろんな面で不安といいますか、私ども疑問を感ぜざるを得ない点があるわけです。  その一つは、けさほどからこれも何度か触れられたことでありますが、外務大臣訪中をされて政治的折衝を図る、こういう言葉が使われております。この点について外務大臣は衆議院等におきまして、政治的決着という言葉は誤解を招くが、いまや政治的な折衝の段階にきたんだ、こういうような意味のことを説明をしておられたと思うんです。それからこの席でも鄧副首相の発言内容、すなわち社会党訪中団に対して語った言葉の中に、外交の段階を離れて政治の段階に入ったということが議論になりました。私は、実は、このことがよくわからないのです。けさほどからの議論を聞いておっても十分納得できません。  というのは、内政といい防衛といい、あるいは外交といいましても、それは政治のそれぞれの分野を表現しているわけでございまして、日中平和友好条約交渉というのはすぐれて外交的な課題でありますから、交渉のレベルというのが事務折衝のレベルか、あるいは局長ないしは外務大臣のレベルにくるのか、あるいはこのごろ先進国首脳会談等もございますが、各国のトップのレベルでやるのか、その交渉のレベルの問題はいろいろとあると思うのですね。しかし、ここまでが外交折衝でこれからが政治的折衝だということになると、一体、その政治的折衝というのは何を具体的に意味しているのか、当事者である外務大臣からお伺いをしたいと思うのです。
  353. 園田直

    国務大臣園田直君) 政治折衝または政治決着という言葉はきわめて抽象的なあいまいな言葉であります。また、鄧小平副主席が言われた外交を離れて政治の段階だと言われたことも、これは抽象的な言葉であります。  そこで、私は、外交というのは外交事務と政治と離れてはあり得ない。これはあくまで一体のものであって、折衝をする場合には筋を通しながらやっていかなければならぬ。その筋とは外交折衝、外交事務的なレベルであると考えて、あくまで政治折衝とは事務的なレベルの話し合いから政治家同士の話し合いに段階を移すという意味が厳密な意味だと考えております。そこで、私は、仮に訪中する時期が来ましたならば、外交に責任を持つ政治家としてあくまで筋を通し、事務当局いわゆる外交チャンネルの意見を聞きながら交渉に当たり、国民及び各党の皆様方の理解を得るようにやりたいということを政治折衝と述べたわけであります。  政治決着はつけないと、こう言う意味は、とかく政治決着という言葉は両方の意見が食い違う場合にうやむやに妥協したり、あるいは玉虫色な話を決めたり、そういうことはいたしませんと、こういう意味を政治決着はつけませんとこう言った意味でございまして、あくまで筋を通しながらみんなの人が納得をするような解決をしたい。その解決をするに当たっては、ある段階が来れば、私も政治家として、政治家同士の話し合いにレベルを移していくべきときではあろうかなと、こういう意味でございます。
  354. 和田春生

    ○和田春生君 政治的折衝という意味が非常にはっきりしてまいりまして、そうした意味でありますならば、やはりあくまでも日本の国の国益を踏まえて筋を通して解決をするという面に外務大臣の努力をお願いいたしたいと思うわけです。  ところで、そういうような努力に関連いたしまして一つ伺いたいことがあるわけです。これは政府委員の方にまず最初にお伺いをいたしたいと思うのですが、この委員会でも問題になりまして、私も理事会で取り上げて問題にした一人でございますが、日中交渉に対する外務省の説明という文書があるわけであります。これに関して外務当局の説明するところによりますと、そういう文書はある、しかしそれは外務省の公式な文書ではない。説明を求められて参考資料に出したもので、粗雑な表現というものはあるけれども、そこに書かれていることは外務省の考えているところとおおむね食い違いはないのだ、こういうふうに聞いたわけですけれども、大変重要でありますから、私がそういうふうに理解してよろしいかどうか、まず最初に確かめておきたいと思うわけです。
  355. 中江要介

    政府委員中江要介君) 御指摘の文書は、まず外務省の文書があるがとおっしゃいましたが、私どもの認識では、外務省の文書と言いますときには、これはやはり外務省の公式な文書という意味にとりますので、その文書は外務省の文書ではないということが第一点でございまして、しかし、他方、ある人に外務省事務当局が御説明をいたしまして、それを文書にしたためてくれないかと言われてしたためたものでありますので、その内容は、外務省事務当局の説明したところでありますので、そこには食い違いといいますか、外務省事務当局が考えてないことがあるかというと、それはないということでございます。
  356. 園田直

    国務大臣園田直君) ちょっと補足いたしますけれども、正直に申し上げますと、いま与党の理解を求める努力をしているわけでありますが、ある議員から説明をするのに資料を持ってこいと、こう言われて持っていったのがあれでありまして、それをその議員がコピーをして配られた、こういう経緯がありますので、念のために。
  357. 和田春生

    ○和田春生君 そういうふうに私も理解をして質問を進めたいと思うんですが、最後のところで外務省考え方と違っているというわけではないという意味の御説明がございました。直接私はその文書にしたものを持っているわけではなくて、新聞記事の引用でありますから、間違っておったら訂正をしていただいたらいいと思うんですが、その説明に使われた外務省の担当官が記したという文書の中で、こういう言葉があります。  「元来、この条約は、日中間に何ら新しいコミットメントを行うものではなく、日中共同声明を基礎として、現在すでに依存している日中間の友好関係を長期的に確保しようとするに過ぎないものである。つまり、日中共同声明の延長線上のものである。」こういうふうに書かれております。これはこのとおりですか。
  358. 中江要介

    政府委員中江要介君) その結論的に書かれております日中平和友好条約というのは、日中共同声明の延長線上のものであるという認識は、これは共同声明が出されました直後の北京のプレスクラブにおける大平外務大臣の説明にもそのように述べられているところで、私どもの一貫した認識でございます。
  359. 和田春生

    ○和田春生君 そこで、非常に大きな疑問が出てくるわけですね。もしいま私が確認をしてお答えになったようなとおりであるとするならば、何も問題がないんです。それこそ中国サイダーか言うように一秒で調印ができることのはずなんですね。それがなぜこういうふうに時間かかけられ、政府においてもいろいろと慎重な配慮をし、問いただされればされるほど園田外務大臣の口もかたくなる。説明がつかないと思うんですね、このとおりであるならば。したがって、私は、もし外務省当局がこういう考え方を持っているとするなら、これはまさに世論をミスリードするものではないか、あるいは与党に対する説明工作としても納得をしてもらうために、ことさらにこういう言い回しをするということは大変問題を後に残すことになりはしないかということを非常に恐れるんですね。  なぜかといえば、これはけさほど来もそういう点がいろいろ議論されておりますけれども、共同声明以来約五年たちまして、その間、覇権反対という問題に関する中国サイドの態度にかなりの変化があったということは、公式の声明文章あるいは中国内部における政治報告等、これは中国自体が公表しているテキストに基づいても明らかな事実であると思うんですね。したがって、もし外務省のこういう見解で、これは何ら新しいコミットメントを行うものではないんだ、日中共同声明の延長線上のものであるんだという形になれば、私は逆にお伺いしたい。  これは外務大臣からもお答えをしていただきたいと思うんですけれども、それでは田中元総理中国を訪問して日中共同声明を出したときに、そのときは田中元総理を初めついていったわが方の外務省の担当者も含めての話ですよ。覇権反対は即反ソである、しかもそれはソ連社会帝国主義を主敵にする、そしてこのソ連社会帝国主義の侵略やあるいは恫喝や侮りやこういうことを受けている国々と広範に提携をして反ソの統一戦線をつくる、それが中華人民共和国の国家としての基本的な大原則である、そのことを承知の上で覇権反対共同声明に調印をし発表したのかどうか、このことを確かめなくちゃいかぬことになる。場合によれば、田中元総理を証人に呼んでもらって、そういうことを承知の上であの覇権反対という声明をやったのかということをわれわれは問いたださなくてはならないのですね。いかがですか、その点は。
  360. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、私から御説明さしていただきますが、この覇権反対条項を含めた日中共同声明が出ましたときの交渉経緯あるいは調印の前後の事情というものについて確かな記録に基づいて申し上げるわけではありませんが、一つは、この覇権反対条項に書かれていること、つまり日本中国もともにアジア太平洋地域で覇権を求めない。このこと自身はこれは日本もかつてアジアにおいていろいろの出来事を経験してきておりますその立場あるいはそういう過去の日本をイメージの中に持っているアジアの他の諸国の対日感、そういったものも考慮にいれまして、日本覇権を求めないということを公にすることにはそれなりの意味があるであろうし、また、日本の平和と安全と繁栄がかかっておりますアジア太平洋地域において、それかいかなる国であろうと、覇権を求めるような試みがあれば、これには日本反対であるということ自身も、これも妥当なことであるという素直な受けとめ方が一つにあったというふうに聞いております。  もう一つは、一九七二年の二月に上海で出されました米中共同コミュニケにおきましても、アメリカ中国が同じような約束をしているということもありまして、当時、この条項自身について反ソ統一戦線にこれによって日本が巻き込まれるというような認識は全くなかったということだけは申し上げることができるかと思います。そしてまた、それを原点といたしまして、その延長線上の条約交渉に臨んでいる、こういうことであろうかと思います。
  361. 和田春生

    ○和田春生君 確かに当時はそうであったと思うんです。私も、当時、日中の交渉につきましては衆議院に議席を持っておったころですけれども、本会議でも質問をしたこともあるわけですが、確かにいまあなたが説明したような理解でほとんどの日本国民は受け取っておったと私は考えるわけなんですね。ですから、あそこで、宣言された覇権反対ということは一般的な原則である。中国の方は、確かにアメリカソ連超大国の覇権反対をする、こういうことは言っておったけれども、それはそれとして、あの共同声明、コミュニケの文句はいま説明をされたような理解として、恐らく田中元総理を初め日本代表団もそういうつもりであったでしょうし、全部がそういうふうに受け取っておった。  ところが、その後に、御承知のとおり、一九七五年の一月開かれた第四期の全国人民代表大会で中華人民共和国憲法が採択をされた。この中で、ソ連社会帝国主義、これに対する規定というものがはっきり入ってきた。そこにおける政治報告においても、まさにソ連というものを明確に一つのターゲットにして覇権反対ということが説明をされた。しかし、まだこのときには帝国主義、社会帝国主義というものが並んでおって、そのときに同じく七五年に行われた日本社会党と中国との共同声明の中におきましても「双方は両超大国の覇権主義反対することを一致して認め」たという表現になっている。  ところか、昨年の七七年八月十二日の中国共産党の第十一回全国代表大会で華国鋒主席が政治報告をやっておりますね。これは中国の大使館が発表したテキストを私はここに持っているわけです。この中では、もう明らかに覇権反対というのはソ連が主敵である、そしてその反ソの統一戦線をつくるために、簡単に言えば大いに奮闘しなくてはならぬ。しかも中でいろいろレーニンの言葉まで引用されておりますけれども、どんなすきにでもつけ込む、どんな小さなことでも利用する、どんなに頼りない同盟者でも利用する、そうして戦っていかなければ、この強大な覇権主義の国に対して戦いを進めることはできない、ごく要約をしたからテキストどおり正確でありませんが、ということまでうたっているわけですね。  そして今度新しく、その後に、ことし三月につくられた中国の新憲法におきましては、皆さんもお読みになっていると思いますけれども、「社会帝国主義と帝国主義超大国の侵略、転覆、干渉、支配、侮辱を受けているすべての国と連合し、最も幅広い国際統一戦線を結成し、」云々と、こうなっているわけですから、これは日本側が変ったんじゃないんですね。それはもともとソ連アメリカ覇権反対ということは言っておったが、いまやアメリカは二の次にして、至るところに、とりわけソ連社会帝国主義、とりわけときて、主敵にしている。  そういう状況のもとにおいて、つまり覇権反対をするという言葉は同じであっても、中国側の国家の体制として意味づけが反ソという面で非常にエスカレートしてきているという今日の段階がある。だからこそこれが問題になり、総理外務大臣もそこのところを、そういう反ソ統一戦線に巻き込まれるというような形にしないためにどうしたらいいかという形でいろいろと御苦労なさっていると思うんですね。にもかかわらず、外務省の文書について確かめたところ、考え方とは違っておらぬと言うけれども、いま言ったように何ら新しいコミットメントを行うものではないんだ、「つまり日中共同声明の延長線上のものである。」しかも、その後につけ加えて「従って、その賛否をめぐり甲論乙駁を重ねることは、極論すればソ連に踊らされているという面があるのは否めない。」とまで書いてある。どういうことですか、これ。
  362. 中江要介

    政府委員中江要介君) その文書の一つ一つの表現につきましては、これが粗雑なものであって、どういう経緯で出たものかということは前回にも大臣からお話のあったところでございますし、先ほど私のお答えしましたようなものでございますか、いま先生の御指摘の中国の反ソ政策あるいは反ソ統一戦線、そういったものを私どもが知らないわけではございませんけれども、それは中国の対ソ政策であって、日本は、繰り返し申されておりますように、あらゆる国と友好親善関係を維持するように努力していく、これが日本の国是でございますので、中国がそういう政策をとったからといって日本がそれと同じことができるかというと、それはできない、そこのところははっきりしておって、日本として何ができるかというと、先ほど申し上げましたように、日中共同声明が出ましたときの反覇権条項の認識、これそのものは素直に受けとめておったわけでございますので、その延長線上のものとしてこれを処理していこうということで、その点かいろいろいま議論が大いに行われているところでございますけれども、日本のそういった立場を崩してまで何かをやろうということではなくて、あくまでも日中共同声明の認識を原点として、その延長線上のものとして日本基本的な政策にもとらないものにしようということを努力していくというのが現段階である、こういう認識でございます。
  363. 和田春生

    ○和田春生君 この文章はそうは読めませんよ、これは、どう読んでも。簡単に言えば、日中共同声明を基礎として進めていくんだ、新しいコミットメントは何もやらないんだ、延長線上にあるんだ、とやかく言うなということになる、とやかく言うやつはソ連の手先じゃないか、日本語で読めばそうなるわけです。粗雑な表現なんというものじゃないですしね、幾ら説得の材料といえども、日本外務省の中にこういう考え方を持っている人間がおるというのは私は言語道断だと思う。  つまり、わか方は共同声明のときの精神で何とか日中条約をまとめるならばつくろうといって努力しているのであって、覇権反対ソ連を主敵としてソ連社会帝国主義に対する統一戦線を広範に結成するんだということを言っているのは中国のサイドですから、日中間の問題は日本中国の問題だけれども、ソ連を巻き込んでいるのは中国サイドでしょう。もちろん、われわれはソ連のやり方に対して腹の据えかねるものはたくさんあるんです、ソ連に対しては言いたいことはいっぱいあるわけなんです。だから日ソの関係の問題になれば、またいろんな問題でやりたいことがあるわけですけれども、それは日本の自主的な立場ソ連に対して考えるわけであって、中国の言う反ソ統一戦線に組み込まれる形で覇権反対ソ連社会帝国主義に反対、そういうような態度を表明されるという考え方は毛頭ないわけですし、断じてあってはならないと思うんですね。  ですから、ソ連ソ連中国中国と言うけれども、日中関係交渉に影を落としたのは日本の側じゃないんですよ、中国のサイドなんです。だから日本中国と仲よくしましょう、条約締結するということは非常にいいけれども、そのけじめをきちんとしておくということが私は大変重要なことじゃないか。にもかかわらず、こういうような一見読めばミスリードするような文書が、たとえ公式のものではない説明であろうとも、出てくるということは私はきわめて遺憾である、この点、外務大臣、いかがお考えですか。
  364. 園田直

    国務大臣園田直君) いま局長が説明いたしましたが、その文書の中で主として反覇権に対する問題、これがわが国の立場共同声明に述べられておるとおりであって、現在でも変わってないということを力説するために延長線上であるという言葉を使ったんでありますが、その後の、とかく議論するものは「ソ連に踊らされている」とか、あるいはその後にもまた一行ぐらいそういう問題が出てくるわけですが、説得しようと思ってかえって問題を起こしたということになっておるわけであります。この点は深くおわびをしてお許しを願いたいと存じます。  なお、この覇権問題は、今後どう取り扱うかということが一番大きな問題でありますから、ここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、少なくとも日本中国立場で違うものが、政治形態が違うということを抜きにして、やっぱり二つぐらいあるわけであります。一つは、ソ連に対する外交方針が違うわけであります。一つは、また中国の方は戦争だ、戦争だとおっしゃっている、わが方は戦争は絶対に起こさせてはならぬという、ここのところが食い違いがあるわけであります。そこで、単に覇権反対と書いた場合にはそれでもよかったけれども、中国の方でああだこうだ、ああだこうだと雰囲気をつくられてくると、そこへ何らか日本国民納得し、世間の人も納得するようなことを考えなければならぬというのが今後の取り扱いの問題でございます。それ以上のことは御勘弁を願いたいと思います。
  365. 和田春生

    ○和田春生君 そういたしますと、いずれにいたしましても、いつか機会を得て外務大臣が向こうに出かけて交渉をする、いずれかの形で決着はつけざるを得ないと思うんですが、その決着の形というものを考えてみますと、この覇権反対ということについては四つのパターンがあると思うんですね。  一つは、いま私が申し上げましたような中国側の青い分を何らかの形でも認めるようなかっこうでまとめるというパターンが一つある。しかし、これは今朝来の質疑においても明らかになったように、それは日本としてははなはだ不都合であるから、そういうことはない。そうすると、第二のパターンとしては、中国側のいわゆるソ連に対する言い分、こういうものは条約上排除して日本立場が貫かれるような形でまとめるという形が一つある。それから、第三は、そういう話がつかなければ、覇権反対というのは比較的新しい用記でありますし、こういう平和条約等についてはなじみがないことであるから、中国覇権反対は即反ソ連社会帝国主義である、それは中国立場だから内政干渉はいたしません、日本はそういう意味は持たせませんよ、一般原則ですよという形になると、話がまとまらぬわけでありますから、そういう問題のある条項は日中条約から外して平和条約を結ぶというパターンもあり得る。向こう側がうんと言うか言わぬかこれからの交渉の問題でありますね。これは覇権反対なんていう条項を無理やりして、玉虫色かなんか知らぬけれども、両方それぞれ違った解釈をしてトラブルを起こすようなことならば、条約に入れなくて、それぞれの立場として自分たち言い分を宣言をするというやり方だってこれはパターンとしてはあり得るわけですね。第三のパターンとしては、そういうことがある。第四のパターンとしては、どれもだめなら条約締結せずに事態の推移を見守る。決着というのは、どれだけ考えてみても、この四つのパターンのどれかだと思うんです。  どれをするかとか、どうなるとかいう見通しをこの段階で外務大臣にここで感想を述べてください、そういうことは私は言おうと思いません。ただ、しかし、さっきの第一のパターンだけはないと、そういうことにやるようなことは断じてしないと、そのために苦労しがんばっているんだということだけは確認しておいてよろしいでしょうね。
  366. 園田直

    国務大臣園田直君) 国民の方が納得されないようなことは私としては断じてできません。  なおまた、もう一つは、ある抽象的な文句を書いておって、中国側はこれはソ連に対するものであると言い、わが方は、帰ってきてから、これはソ連を指すものではありませんと、両方から言い分が違うような玉虫色の表現はあえてとらざるところでございます。
  367. 和田春生

    ○和田春生君 この問題をかなり念を入れてお伺いしているのはほかでもありません、それはわが国の世論ないしは一般的論調を見ましても、この覇権反対についてはソ連かいろいろとこれに対して文句をつけている。ソ連が日中平和友好条約締結を牽制し、これに対して大変神経をとがらしているので、事と次第によっては報復手段に出るのではないかということも言われております。そういう見方もあると思うんです。  しかし、私は、ずっとソ連外交の軌跡、とりわけ戦後のソ連のやり方というものを見ていると、そんな単純なものではない。いま盛んに牽制しているけれども、日中平和友好条約の結ばれ方、中身いかんによっては、その上にのしかかってきて、今度は日ソの平和条約、親善条約にいたしましても相当の難題を吹っかけてきて、おまえさんは中国のもとではこういうことを認めたではないか、おれの方に認めないのは何事だと、そういうふうにいままで自分たちが批判をし反対しておったことを逆用して、のしかかってくるという可能性もソ連という国には非常にあるんじゃないか、そこまで見ておかぬといけないと思います。  それは後から、これから質問する海洋法会議の二百海里の水域の問題についてソ連がどういう態度をとったかということを見ても説明のつくところでありまして、やはり日ソ、日中というのは非常に重要なかかわりを持っているわけでありますから、ひとつその点につきましては、外務大臣も再々話しておられますけれども、いやしくもそういう形で結んだ後で、しまった、こんなはずではなかったということは断じてないように、その点はきちんとやっていただきたい、このことを特に希望いたしたいと思います。よろしゅうございますか。
  368. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連がどうやるかということは、これは想像にすぎませんけれども、外務大臣としては、大体、和田さんが後段でおっしゃったようなことで将来締結されるであろう友好条約内容について微に入り細に入り重大な関心を持っておるということは全く同意見でございます。したかいまして、そちらの方も十分考慮しながらやらなきやならぬ、こう考えております。
  369. 和田春生

    ○和田春生君 それでは日中問題はこの程度にいたしまして、また議論のときがあると思います。  今度は、海洋法の問題に移りたいと思いますか、いま大方日本国民の目は日中平和友好条約外交上の問題では向けられておるようでございますが、わが国百年の大計というものを考えた場合に、私はこの海洋法問題は日本の国益にとってある意味においては日中条約以上に重要なかかわりを持っていると思うんです。ところが、残念なことに、国会の論議を聞きましても、マスコミの血におきましても、どうも海洋法会議の問題というのはすみっこの方に押しやられておりますが、たまたま今週から第三次海洋法会議の第七会期が始まりまして、いま始まったばかりであります。そこで、この問題について余り細かい技術的なことは時間の関係もありますのでお伺いいたしませんけれども、基本的な問題をお伺いしたいと思うんです。  まず、第三次会議におきましても、第五会期、第六会期と経てまいりました。その中で一つの変化があったのは、御承知のように、第六会期におきまして、それまでの単一交渉草案を統合いたしました統合草案というものがぶつけられた。その中でいろんな問題点が新たに巻き起こってきているわけでありますが、第七会期にいますでにもう臨んでいるわけでございますが、対処する日本政府基本的態度というものが主要な問題点についてどういうことをお考えになっているか、まず原則的なものとしてお聞きしておきたいと思うんです。
  370. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ただいま先生御指摘の第三次海洋法会議の第七会期は三月二十八日、ちょうど本日より七ないし八週間の予定でジュネーブにおいて開催されることとなっております。  この会議に臨む基本的姿勢といたしましては、わが国は世界有数の海洋国家として従来から海洋法会議の早期妥結に努力してきておりますが、二百海里時代を迎えた今日においても国際的な合意を通じて新しい海洋法秩序を確立することはわが国の総合的国益から依然として必要であるという観点から、わが国としては、国益が確保されるような公正な海洋法秩序の確立を目指して、今会期におきましても一層の努力を行うという考え方でございます。
  371. 和田春生

    ○和田春生君 公正な結論が得られるように努力するというのは、これは答えにならぬのですよ。いままで延々と長いことやってまいりましたけれども、なかなか公正な結論か得られない。そして話がまとまらぬうちに二百海里問題のように、それぞれの国が先に走り出してしまう、後から日本は息せき切ってついていく、あるいは振り回されてふうふう言っているというのが実態なわけでありまして、私は私なりの見通しで、この第七会期で期待できるような公正な結論が得られる、海洋法会議がまとまるという可能性はむしろ薄い。対立をより激しくして結論が出ない、そういう結果になる見通しの方が強いというふうに考えているんですが、外務省当局はどう見ておりますか。
  372. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 先ほど御指摘のように、今回の会期におきましては、その前の会期でつくられました非公式統合交渉草案を基礎として、条約のいわば最終的な話し合いに入るわけでございます。この第七会期におきましては、特に深海海底の開発の問題、あるいは内陸国、地理的不利国の権利等の問題が残されておりますけれども、中でも一番の焦点となると思われますのは深海海底開発の問題であると考えております。  この問題につきましては、開発途上国は、国際機関による開発とそのための資金、技術を国際機関に与えることを出張しているのに対しまして、先進国側は国際機関と並んで、国または私企業による開発権が確実に保障されるような制度を主張しておりまして、両者の出張にはまだ相当な開きが見られるところでございます。このような情勢から考えますと、いまのような問題を含めて主要問題が解決されて新海洋法条約の成立を見るというまでには、今後ともなお紆余曲折が避けられないというふうに考えております。
  373. 和田春生

    ○和田春生君 そこで、問題が出てくるわけですけれども、確かに第一委員会における深海海底資源の開発の問題をめぐって先進国、開発途上国、これが猛烈な押し合いへし合いをやっている、これが最大の問題点である、表面的に言えばそのとおりだと思うんです。その裏に何があるかということを考えてみると、やっぱり第二委員会で扱われている排他的経済水域の問題というものが深く絡んでいるということを私どもは考えなくてはいけないんじゃないか。  といいますのは、この排他的な経済水域の問題では、当初は先進国と開発途上国の対立が根深いように見られたけれども、開発途上国の間でも地理的に有利な国と地理的に不利な国、沿岸国と海岸を持たない内陸国、この間における対立というものは非常に深刻なものがあるわけですから、この排他的経済水域の問題というものがどんどん進んでいきますと、後から具体的にお伺いしたいと思っている大陸だなの問題がありますけれども、これは開発途上国の間に非常に深い裂け目といいますか、仲間割れというものが起こる。そういうところから、まだ自分たちにとっては当面の問題ではない深海海底の開発、それはアメリカであるとか西ドイツであるとかフランスであるとか日本であるとか、これにある程度取り組んでいる国は別といたしまして、開発途上国においてはその技術もない、その用意もない、全く将来の問題である。そうなれば、そのことについて、原則論、抽象論で意思の統一が図られるわけですから、そういう意味で七十七カ国グループを初め開発途上国というものは一致結束して相当無理難題というものを持ちかけてきているように思うんですね。  いま条約局長がお話しになりましたけれども、その開発の問題について、その国際機関、つまりオーソリティーの開発、それから国または私企業。で先進国側は、国または私企業の開発というものを一定の制限ないしは規制のもとに認めろということを言っているが、開発途上国側はそれは一切認めない、こういうふうに言って突っ張っているわけですね。ところが、そういうふうな形でこの第七会期でもまとまらぬとすると、一体、何が起こるだろうか。結局、先進国側にとっては遠い将来の抽象論の問題ではなくて、現在自分たちが着手しようとし、あるいはアメリカ等においては非常に進んでいる領域の問題ですから、もういつまでもそんな議論にかかわって待っておるわけにはいかないよという形で、御承知のとおりすでにアメリカは国内法を準備しているわけです。二百海里の場合と同じ問題が起きてきて、すったもんだすったもんだ言っているうちに、海洋法会議の結論が出ないうちに、国内法を成立させてアメリカが乗り出してくるという形になってくれば、当然、これは西側の先進国もソ連もずっとその線になって乗り出してくる。  そうすると、海面並びにその海中の資源である漁業の問題、これは海洋法の一部の問題でありましたけれども、この海洋法会議の中の主題である未利用の深海海底資源の問題、人類に残された、しかも現在各国の主権の及んでいない範囲における海底資源の開発というものについて分捕り合戦というか、先陣争いというものか猛烈に巻き起こってくるという可能性があると思います。それに対する用意はありますか、どういう態度で臨もうとしておりますか、日本政府は。
  374. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) ただいま先生御指摘のように、この深海海底の資源開発をめぐりまして、開発途上国側と先進国側で相当な開きのある立場が見られるわけでございます。ただいまのところ、開発途上国側も、先進国が主張している国、私企業の開発権というものを初めから全面的に拒否しているということではありませんけれども、だんだん一定の期間を置いて撤退していくと申しますか、フェーズアウトしていくべきであるという立場で臨んできているというのが一般的な状況でございます。  そこで、アメリカがこの海底資源開発に関しての国内立法の動きというものが行われているわけでございますが、この米国の国内立法につきましては、少なくとも今次第七会期中には成立しないという見通しでございます。しかし、先生御指摘のように、いずれにせよアメリカがいずれ何らかの形の暫定的にもせよ、国内立法を行うであろうということはほぼ避けられないのではないかという見通しでございます。このような動きが海洋法会議の全般の趨勢にどのように影響を与えるか、あるいは開発途上国側がこれに対してどのような反応を示すか、この点についてはなお慎重に見守る必要もございます。  わが方といたしましては、深海海底資源開発の制度を含めて、やはり新しい海洋秩序がそういう一方的な措置じゃなくて、国際的な合意を通じて包括的に確立されることがあくまでも海洋国家たる日本にとっては望ましいということから、先ほど来申し上げておりますように、今会期におきましても、できるだけそういう方向に向かって全力を尽くすべきであるというふうに考えている次第でございます。  なお、わが国がそれでは立法するかという点につきましては、わが国の立場としては、先ほど申し上げましたのが基本的な考え方でございますから、この海洋法会議の動向とか、あるいはアメリカ以外の国の動向というものも見きわめながら、また、国内においては関係省庁とも十分意見を交換し合ってこの点は慎重に対処してまいりたいというのがただいまの姿勢でございます。
  375. 和田春生

    ○和田春生君 大臣には後でまとめていろいろ御所見を伺いたいと思いますけれども、これは外務大臣もよく聞いておいていただきたいと思うんです。  いまの外務省の答弁というのは一つも進歩がない。経験に徴して新しい方法を考えていくという積極性が一かけらも認められませんね。なぜそういうことを言うかというと、私は、外交は大体水際までと、外に持ち出すべきではないという立場に立っておりますから、常に筋の通ったものなら政府は激励しなくちゃならぬという立場に立っているわけですけれども、二百海里の問題を思い起こしてほしいんですよ。あの二百海里問題のときに、これはもう三年以上前ですけれども、私たちはこの問題は必ずそういう形になる、そしてアメリカは一方的に踏み切る、アメリカが踏み切れば、二百海里に対して当初は反対に立っているようなソ連も必ずそれに追随をする、カナダもソ連も次々にくる、そうなるとこれは日本にとってはもう後手に回って大変なことになるからそれに対応する態度をとれということを強く打ち出した。特に民社党の場合には、この問題を大会で、海洋法問題に対する緊急アピールとして取り上げた。時の政府にも申し入れました。ところが、総理外務大臣以下馬耳東風、残念ながらマスコミだって一行も取り上げないんですね。そしてそれから間もなく現実の事態になった。  あの周章ろうばいぶりなんというものは見ちゃおれないでしょう。二百海里法をつくるというんだってまるでみっともないことで、問題があるにもかかわらず、ここではもう時間切れになると大変だから、ともかくつくってくれ、つくってくれという形でどろなわ式でやった。つくったはいいが、政令もつくっても欠陥があって、これはぼくが追及したんだけれども答弁ができなくなって、しどろもどろになっちまうという状況です。  十二海里の問題なんかはもっと前からぼくは国会で何度か取り上げた。十二海里時代になる、きちんとそれをやっておきなさい、そして領海十二海里をやっておいて、日本でも津軽とか対馬とかというような国際海峡については日本の主権のもとに現状に合わして、たとえばソ連の艦艇とかアメリカの艦艇が通る場合にはある程度認めるということはあってもいいけれども、それは日本の主権の範囲でやるべきであって、十二海里というものは一律しくべきではないかということを、国防上の見地から、安全保障、国益上の見地から言った、全然耳をかさなかった。そうしてどうですか、あわてふためいてつくった日本の領海十二海里なんというものは、国際海峡だけは三海里で線を引くというような世にも珍妙なる領海法をつくったわけでしょう。そうして対馬海峡をソ連の軍用機か通ったという場合に、それはややこしいかっこうになっているわけですから、かすった、領海を侵犯したとか侵犯しないとかということで大騒ぎをやっている、みっともない限りじゃないですか。そういう苦い経験をしてきている。しかも、それは私は後から言っているんじゃない。そういうことが起こるぞということをあらかじめ指摘をして、世論にも訴えた、政府にも申し入れた。全然そういうことに関心を示さずに、国際動向を十分に慎重に見きわめましてわが国としては公正な結論が出ますように鋭意努力中でございますと言って、次々、次々にやられたというのか現実じゃないですか。  まさに今度は残された海洋法の、しかも最大の主題である深海海底の関発という問題は、その可能性は現実に出てきている。アメリカはすでにその動きをやっているわけじゃないですか。第七会期をしてもまとまらぬという形になれば、いまあなたも懸念されたように必ずそういう問題が起こる。そういう問題が一つあると思うんですね。同時に、その深海海底の開発という問題は、先ほど言いましたけれども、第二委員会の議題である排他的経済水域の問題と大陸だなの開発の問題に絡んでいるわけです。ですから、コンチネンタルマージンの範囲を決めるということについて議論が非常にいま深刻なことになっているわけでありますね。  で、私は、このコンチネンタルマージンの外縁規定に関して日本がどういう態度をとるのかということも、いろいろ技術的な面を含めて実は質問をしようと思ったわけです。で多少時間を前段で食いましたのでそこは言いませんけれども、これも深海海底とつながっているわけで、御承知のようにコンチネンタルマージン、それはコンチネンタルシェルフ――大陸たながある、スロープがある、ライズがある、そうしてアビサルプレインにつながっていくというふうに一体のものですけれども、全体はコンチネンタルマージンで、しかもその一部が大陸だなである。その大陸だなの規定を通じてコンチネンタルマージンの外縁規定をやるというのは、むしろ大陸たな――コンチネンタルシェルフという概念が海洋法の会議の中で完全に変わってしまっておる。自然延長をとって、二百海里を突破してでもコンチネンタルマージンの外縁というものを決めようによっては、それは即深海海底につながるわけです。これは今後の開発に、特に地形的に見ればアジア大陸の大陸だなの上に乗っかっているようなかっこうになる日本海構という非常な深海を近くに持っている日本の場合、今後大きな問題になるんですよ。  したがって、そんな、あなた、のんきなことを言っておらずに、いまの海洋法会議をやっているときに、もし決裂をしたらという場合に備えてだ、じゃ日本はどういう国内法をとるのか、どういう体制をとるのか。そういう場合に、日本の国益を守るためにおくれをとらぬようにするためにはどうするか。片方は国際正義を掲げて公正な方針が出るようにということはいいですよ、その態度がなくて交渉なんかできるわけないじゃありませんか。備えがないからいつも振り回されて、口先ばっかりでいいことを言っているというのがいままでの経過じゃないですか。だから、どういう基本的な態度で臨むのかということを聞いているわけですよ。日本の国益に根本的にかかわっている問題ですよ。外務大臣、この点いかがでしょうか。
  376. 園田直

    国務大臣園田直君) 非常にいろいろ深い御意見を承って参考にするところでありますが、今回の海洋法会議で、一つの場合は、いまおっしゃいましたコンチネンタルマージン、これが大体自然延長論の方が強まってきまして、すでに審議会では自然延長論を前提にして、そして開発収益の分配制度等の審議にしほられているような状況でございます。そこで、そうなりますと、この自然延長論というのはこれまた定義が非常にあいまいでありまして、隣接各国との争奪戦というか、いろんな問題が出てくるわけであります。  なおまた、これが次には、いまおっしゃいましたように、第七問の海洋法会議がデッドロックに乗り上げて、そして米国を初めとする先進諸国が単独で海洋開発に乗り出すということも考えられるわけでありますから、こういう点を考慮すると、どちらにまいりましても直ちに二百海里以上の深刻な問題が出てくるわけでありますから、微力でありましても急いで外務省は各省と相談をし、それに対する対応の措置を講じ、そうしてまたその場合に日本の国益を守るるためにどのような線を引っ張るかなどという具体的な研究を急いで検討いたさせるつもりでございます。
  377. 和田春生

    ○和田春生君 それで、いま問題になっている一番重要な問題は、深海海底資源の開発の問題ですけれども、第二委員会で扱われている排他的経済水域と大陸だなが関係をしているという、その大陸だなという観点がいま日本では大方の人が、ここにおられる方もそうだろうと思いますが、従来の意味の大陸だなという考え方で、それが陸地の自然延長という点でつながっていると思うんですね。ところが、もういまはそれを越えちゃって、大陸だなというコンチネンタルマージンの一部の問題じゃなくて、コンチネンタルマージン全体が大陸だなという概念の中に入ってきちゃって、そしてそのコンチネンタルマージンの外縁規定という形でまさにこれは深海海底とドッキングしちゃったという形になっているわけですね。  そういう中で、われわれが今後の開発に取り組んでいくという場合に非常に大きな問題ができますのは、仮にこの海洋法会議が非常にうまくいってまとまったとしたら、そしてオーソリティーがやる、あるいは国の開発、私企業の開発というものもある程度認められるという形になったとしても、それはこれだけの新しい未知の分野に挑戦するという場合に私の企業ではリスクになかなか耐えられない、非常に大きな問題がある、どうしても国というものが前面に出なくちゃいけない。あるいはオーソリティがやるという場合でも、その国際機構の中には日本が技術と用意を持って入っていくんでなければ、口先で議論しているだけではその中でちゃんとした地位を握っていくことはできないと思う。まして、ぶっ壊れた場合には、これはもう日本は独自で開発に乗り出さなくちゃいかぬという立場が出てくるわけですね。  そういう点について、今度は外務省ではなくて、ほかの省庁にお伺いして、また後で外務大臣にお尋ねしたいと思うんですが、ある程度民間企業が海洋開発に取り組んでいる。ところが、ちゃちな開発とか、ごく大陸だな周辺なら別でありますけれども、私がいま申し上げましたような状況の中でコンチネンタルマージンから深海海底への開発というものを考えますと、これはなかなか民間企業ではコストの面からいってもリスクの面からいっても大変だと、積極的に政府がてこ入れしてやらなくちゃいけない。通産省は、そういうような面に、一種の開発の産業政策としてどういう態度をとってきたのか、今後どういう態度で臨もうとしているのかという問題が一つ。  それから科学技術庁に対しては、これは民間の知恵も総動員をしなくちゃいけない、民間の技術というものもフルにこれは利用しなくてはいけませんけれども、やはり国家的なプロジェクトとしてそういう未知の分野に挑戦をするという面の技術的な開発、これはハードウエア並びに利用方法の測定やを含めましてどういう体制で取り組んでいるか、このことをお聞きしたい。  もう一つは、運輸省であります。というのは、深海海底ないしは海洋開発という場合には非常に過酷な自然現象の中で問題か処理されるわけでありますから、一応設計をして工場でできたからオーケーというものじゃないと思うんですね。実際に持っていって使う。特に海の底でいろいろやるという場合には、いいと思っても未知の条件に遭遇していろんなやっぱしトラブルも起こるし問題があると思う。そういうものをやはり調査をして、データをフィードバックしてまた新たに技術を進めていくということが特に必要である。そうなってくると、これは海上保安庁を抱え海の行政を扱っている運輸省というものも無関心でおるわけにはいかない。そういうような技術を促進するという意味調査、実験、それをフィードバックしていく、それに対する援助協力体制、こういうものについてどういう方策を持っているか、それぞれお聞きをしたいと思います。
  378. 鈴木玄八郎

    説明員鈴木玄八郎君) 通産省といたしましては、マンガンジュールの開発は資源の確保、産業政策、技術政策の観点からきわめて重要であると考えております。したがいまして昭和四十七年度以来地質調査船の白嶺丸を建造いたしまして、昭和五十年度からハワイ南方海域で毎年九十日間探査を実施しておりまして、現在までにかなり有望と見られる区域を発見しつつあるところでございます。今後は、さらにその探査を急速に進めるために第二探査船とも言うべき船を建造中でございまして、五十五年度の初めには完成の予定でございます。この新しい探査船によりまして第二次、第三次の探査を行い、開発可能区域を見つけ出すよう努力をしたいと考えておるところでございます。  そのような調査結果を踏まえて、どのような形で開発するかという点につきましては、現在、検討を進めているところでございますが、いずれにせよ、この調査結果を十分に活用し、有効に開発できるような体制の確立に努力をいたしたいと考えておるところでございます。
  379. 和田春生

    ○和田春生君 ハワイ沖でいまやって、かなり有望と思われる結果を得たと。水深は何千メートルのところか、それが一つ。  それから、第二次探査船を建造して五十五年度には完成する予定ということを言われているが、船舶の建造費及びそれに含める調査費も全般的に包括して予算措置としてはどれぐらいのものを考えているか、その二点を聞きたい。
  380. 鈴木玄八郎

    説明員鈴木玄八郎君) 深さにつきましては五千メートル前後の地域でございます。  それから船舶の建造費は四年間で四十億円でございまして、そのほか各年探査の経費もございますので、約五十億円程度を現在考えているところでございます。五十五年度の初めには新船建造というふうに考えております。
  381. 和田春生

    ○和田春生君 で、民間企業の開発に対してどういうふうな態度で臨んでおりますか。
  382. 鈴木玄八郎

    説明員鈴木玄八郎君) 民間の企業につきましては、一部二グループにつきまして、すでにコンソーシアムに参加している企業がございます。これに対しましては金属鉱業事業団からすでに融資をいたしているところでございます。こういうような形によりまして、民間が進めておりますその事業につきましても、今後とも援助をいたしたいというふうに考えております。
  383. 和田春生

    ○和田春生君 今後とも援助したいではなくて、私はこの大きなプロジェクトについて、まことにやってないとは言わないけれども、微々たるもんだと思うんです。もっと飛躍的に国家が投資をしなければ百年の計を失うことになると思うんですけれども、それを大幅にふやしていくという考え方はありますか。
  384. 鈴木玄八郎

    説明員鈴木玄八郎君) 民間企業が実施しております部分につきましても今後できる限り努力をいたしたいと考えておりますが、国が現在探査をいたしております事業をいずれは開発につなげることを考えているわけでございます。その開発体制につきましては、少し先のことでございますので現在検討中でございますけれども、世界の大勢に乗りおくれないような形で開発ができるよう今後とも研究を進めたいと考えております。
  385. 和田春生

    ○和田春生君 それじゃ科学技術庁、通産省にはまた問題はありますけれども、後で聞きます。
  386. 島田仁

    説明員(島田仁君) 海洋の重要性はいまさらもう申し上げるまでもなく、われわれとしてもこの重要性を非常に認識しておりまして、海底のマンガン団塊ばかりではなしに、石油、天然ガス等の資源も含めて、総合的な開発ということを考えておるわけです。こういう分野の海洋開発を総合的、計画的に推進するための場としては、昭和四十六年に内閣総理大臣の諮問機関として海洋開発審議会がありまして、いま科学技術庁の方はその事務局としてお世話をしております。  この審議会では、昭和四十八年に「わが国海洋開発推進の基本的構想および基本的方策について」という答申を行っておりまして、また、昭和五十一年には流動的な国際動向に対応した問題点についての報告書が出されております。これらの報告書の中で、お尋ねの深海資源開発について述べられているところを要約しますと、次のとおりです。まず資源開発のための調査研究の実施、それからこういう深海調査システム及び機器の開発の実施、それから深海底管理についての妥当な制度機構の早期確立のための努力、こういったものが挙げられておりまして、具体的にはいま通産省鈴木課長からお話がありましたように、マンガン団塊探査専用船の建造、また高速テレビシステム等の探査技術開発等が進められておりまして、科学技術庁としても各省の調査を大いに活用するための総合的な調査を実施するとともに、特に深海底については二千メートルまでの深海の調査をできる潜水船の建造というのを現在開始いたしたところであります。  こういうようなことで、この審議会の答申に基づいた方向は現在着々実施中でありますけれども、いまお尋ねのように、最近の国際環境というのは非常に大きく変ってきております。したがって、こういうような新しい二百海里水域あるいは公海の国際管理、こういうようなことに対応いたしまして、この二月に総理大臣から新しい諮問が海洋開発審議会に出ております。その内容は「長期的展望にたつ海洋開発の基本的構想及び推進方策について」ということでありまして、この答申は来年の夏に予定されております。この審議にわれわれは非常に期待しておりまして、この中で今後の海洋秩序に対応した展望と政策が明らかになることを期待しております。
  387. 和田春生

    ○和田春生君 事務当局の答弁ですから仕方ないと思いますけれども、総理から新たに諮問か出たということは知っていますけれども、長期的展望なんといって、それは長期的展望も必要でしょうけれども、差し迫った問題として総力を挙げないと大変なおくれをとるという問題があるわけです。  一体、科学技術庁がそういう基本的な調査とか、民間のいろんな研究について利用すると言っていますけれども、一体何人のスタッフで、どういうプロジェクトを持って、どれだけの予算をかけているんですか。
  388. 島田仁

    説明員(島田仁君) いま海洋開発関連予算、昭和五十二年度、これは科学技術庁の方で特に海の海沖開発に関連した予算の合計が百九十九億、約二百億でありましたけれども、これが来年度、この四月から始まる昭和五十三年度には三百八億ということで五割以上の増加をしております。もちろん、この中には海上保安庁の海上の監視とかああいうものは入っておりません。そういうことで政府も非常にこの面で全体として力を入れているということはこの予算の数字からも御理解いただけると思います。  それから具体的に科学技術庁の科学技術開発という点について申し上げますと、昭和五十二年度の予算が約十八億円、それに対して五十二年度の予算が三十億円ということで、これは八割ぐらいの増加になっておりまして、一応おそまきながらと言われるかもしれませんけれども、いま大いに努力しているところですので、今後も御支援をお願いしたいと思います。
  389. 和田春生

    ○和田春生君 ちょっとここで、運輸省の答弁の前に、これは大臣に総括的に御答弁を願う場合に重要なことですけれども、いまそれぞれに努力をしておりますと、予算面から見たら大分ふえておりますということですね。確かに事務当局としてはそう思うかもわかりませんけれども、大事な視点が一つ抜けている。  なぜかといいますと、たとえばアメリカの深海の海底開発の技術というのは、実は、軍事的な開発が優先しているわけですね。原子力潜水艦が事故を起こした場合に、どうやって救助をするか、あるいは海底のミサイル基地の発射あるいは探索のいろいろな施設、そういうものがずうっと進められているということは御承知のとおりだと思う。特に仮想敵国の陸岸に近いところに、海底に沈めてミサイルの発射基地をつくればICBMを用いなくたって膨大なる威力が発揮できるわけでありますから、   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕 核弾頭をつけるか、つけないかということは後の問題として、アメリカもやっておる、ソ連も考えているわけですよね。そういうような形でずうっと深海海底を軍事的に利用するという面で膨大な投資というものが軍事費用として使われている。その軍事的な費用で行われている開発というものが平和利用に対して技術移転ができるわけなんですよ。  ところが、日本の場合にはそういう軍事的な開発とか軍事利用という面については非常に厳しい憲法上の制約もある、だからその点はないものと考える。そうすればですよ、アメリカソ連までには及びもつかないけれども、海洋国家日本で、西太平洋の中に長い列島を持っている日本でありますから、そんな五十億だとか三百億なんという冗談じゃないと言いたいんですよ、こういうふうにせっぱ詰まってきたら。外国ではそういうふうな軍事費用の中にもぐり込んでおって、そこで軍事的な面とドッキングして行われた技術開発、その開発技術というものが平和利用に移転をされていって、ぐんぐんぐんぐん進んでいくという形になっていくわけですから、要するに、民間の部門の開発、政府の努力としては軍事利用の面はこれはもう別ですけれども、平和利用の面に関してそれはもっと積極的な態度で取り組まにゃこれはいかぬのです。それは、将来、海国日本なんて言ったけれども、資源がない。目の前に資源を見なから割りを食って後からぼそぼそついていって、アメリカやその他の先進国の技術のおすそ分けにあずかってちょろちょろやっていくなんていうようなことじゃ、そういった日本の将来はどうなるかという問題は私はあると思うんですね。  運輸省の問題で聞いてみたいというのも、これはもうアメリカなら海軍が何をやっておるかという形になるわけですか、日本では海上自衛隊はそこまではなかなかいかないんで、いろいろ索敵その他で技術的なことはやっておりますけれども、深海海底を利用するという面について、これはなかなか憲法上の制約もあって、公海上に出ていってやるなんという議論がなかなかできない。しかし平和的な利用という面になれば、これはいろんな面でまた前進もできるわけですから、そうした面では大いにやらにゃいかぬ。  それは国連の海洋法会議が第七会期で何とかまとまるであろう、第七会期でもまとまらなくても、ほぼ結論が出て、もう一回やればまとまってスムーズにいくという場合には、ちょっと一息つける。それでもやはり日本が技術を持っていかなければ国際機構の中で名誉ある投割りを果たすことができない。   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕 もしぶっこわれたときには、日本独自で乗り出さなくちゃいけないということを考えますと、これはそんなことではいかぬのではないか。予算書をずっとにらんでおりまして、これはなかなか心細い限りであるというふうにも私は見ているわけです。  ただ、残念なことに、海洋問題になると、口を開けば――ここには記者の皆さんもおって失礼たけれども、ヤスコミさんも海の国日本、海の国の日本と言うけれども、海洋開発のことについてはもうまるっきりすみっこの方に追いやられちまって、政治的にもそれを真険に取り上げるという空気がないわけです。われわれ一人や三人が一生懸命折に触れて叫んでおったって、なかなかそういう声が届いていかないわけですけれども、二百海里、十二海里問題で見るように、だんだんだんだん日本が追い詰められてきているわけですから、そういう点でぜひひとつがんばってやっていただきたい。そういう点について運輸省の方で御答弁を無理にする必要かないと言われればそれはよろしゅうございますか、特に答えたい点があれば答えていただいて、最後に、大臣から、これは外務大臣の領域以外の点があると思いますが、やっぱし現在の福田内閣きっての実力大臣でございまして、事実上の副総理格ぐらいの実力をお持ちですから、日本政策としてひとつしかと存念のほどをお伺いいたしたい、こう思うわけであります。
  390. 園田直

    国務大臣園田直君) いま承りまして、いろいろ考えながら聞いておりましたが、一例を挙げると、わが外務省は、条約局の中に海洋会議の課があるだけでありまして、これはまさに国際会議の進行や運営だけを専門にやっておるわけであります。そして通産省、運輸省、科学技術庁とばらばらにやっておるわけでありますから、これはこのような大きな問題でありますから、農林大臣が主管をするか、だれが統括をするか、少なくとも統括運用の責任者を決めて各省の連絡を密にして、もっと深刻に大規模にやる必要があると思いますので、とりあえず次の機会の経済閣僚会議でこの問題を提起するつもりでおります。
  391. 立木洋

    ○立木洋君 予算委員会の集中審議でどうも時間が同じ時間になりましたもので大変失礼いたしました。  きょうは、問題になっております事前協議の問題と、日中平和友好条約の問題についてお尋ねしたいと思います。  事前協議の問題では、いろいろいままでも何回か質問を行ってまいりましたけれども、事実上、この事前協議ということが空洞化に等しくなっているんではないかというふうな点を非常に強く感じざるを得ない状態にあるわけです。それで改めてお尋ねしておきたいわけですが、この事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動とは何かという点ですが、これは四十七年の六月七日に統一見解が出されております。この統一見解は今日でも一字一句変化がないのかどうなのか、その点についてまず最初にお尋ねしたいと思います。
  392. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 四十七年六月七日の戦闘作戦行動についてという見解については、その後、その見解を変えたという事実は全くございません。
  393. 立木洋

    ○立木洋君 この点、四十七年の四月の十日、参議院の予算委員会において、当時の福田外相が事前協議制度の運用の再検討を表明されました。そしてその事前協議の見直しということで、第十四回日米安保協議委員会で、四十八年の一月二十三日、検討されておりますが、このときの事前協議の再検討がなぜ必要になったのか、その点についてはどういうことであったのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  394. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 当時の事情の詳細につきましては、いま直ちに私つまびらかにいたしておりませんけれども、記憶いたします限り、四十七年現在におきまして、事前協議制度の運用面について米側との間に十分話し合いをしておくことが必要ではないか、こういう御議論がありまして、当時の福田外務大臣がそのようなことをやってみようということをお答えになられたところから、そういう作業が行われたというふうに理解をいたしております。
  395. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、当時、事前協議の問題については、もう一遍よく話し合っておく必要があるんではないかという事態が生じたから話し合いが行われたということだと思うんですね。  それで、その協議委員会でなされた確認というのは「双方は同制度の運用上の基本的枠組みについての双方の合意を荷確認するとともに、」ということですから、それまでの統一見解の内容について双方がもう一遍再確認をし合った。そして「その運用は基本的には相互信頼及び現実の状況に即した双方の密接な意思の疎通に依存すべきものであることに意見の一致をみた。」ということになっておるわけですが、ここで確認されたことは、それ以前の運用に比べて、何らかの点で異なった点が起こったのか、あるいはさらに明確になったというか、そういうふうな何らかの変化があったのか、全く変化がなかったのか、これは運用上ですよ。基本的な枠組みについては双方が合意を確認したというんですから、運用上については何らかの変化やさらに一層明瞭になったような点があるのかどうなのか、その点はいかがですか。
  396. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま先生がお読みになりました文章に明らかなように、その事前協議制度の運用上の基本的な枠組みについては意見が一致したということでございますから、その限りにおいて特に新しいことが明確になったということはないというふうに理解いたしております。
  397. 立木洋

    ○立木洋君 それで、この統一見解の内容一つ一つずっと現実の状態に照らして見てまいりますと、いろいろなやっぱり問題点を感じるわけですが、そこで一つの点ですが、ここにこういうふうに述べられてあります。  前回の統一見解なるものの中には「航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への降下、地上部隊の上陸作戦等」を戦闘作戦行動の典型的なものとして挙げてあります。ところが、これ以外の行動については「個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して判断するよりほかない。」というふうにされております。つまり、このような具体的に判断するよりほかにないという典型的な例以外の場合、これはやはり結局はアメリカ側の判断によるというふうに解釈されるわけですね。
  398. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) アメリカ側の判断によるとおっしゃられることの意味が必ずしも私は明確につかめませんでした。ただ、明らかなことは、問題は、事前協議の対象は戦闘作戦行動の発進基地として日本の施設、区域を使用するか否かということでございますから、戦闘作戦行動がまさに発進されるか否かということによって事前協議の対象になるか否かということが決まる、こういうことだと思います。
  399. 立木洋

    ○立木洋君 いや、つまり、いま中島さんが言われていましたけれども、その具体的な運用の場合、それぞれの任務や態様によって変わるというわけですね。だけど事前協議をかけるのは米側ですね。これは事前協議にかけなければならないことなのかどうなのかということはアメリカ側が判断せざるを得ない。日本側がその判断をしておいて、その態様は事前協議にかけぬといかぬじゃないかと言って事前協議を要求することができないわけでしょう。だとするならば、アメリカ側の判断によると、そうじゃないですか。
  400. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) おっしゃられることの意味が少しはっきりいたしましたが、いずれにせよ事前協議の問題は、その事前協議の対象として規定されましたところの行動をとるべき当事者、すなわちアメリカがその事前協議の発議をすべきものでございますから、その限りにおいてアメリカ側の判断が第一義的に重要になるということは先生のおっしゃられるとおりだろうと思います。  他方、それではアメリカ側の考え方いかんによって事前協議の問題がすべて決せられて、日本側の意思は何ら絡む余地がないかということになれば、それはそのとおりではないのでございまして、この点は、安保国会以来、るる政府側から説明がありますように、事前協議の問題に関して日本側において疑義があるとか、照会する必要があるとか、討議すべき必要があるとかいうようには、もちろん日本側からアメリカ側に対してその問題を提起して討議することができるわけであります。ただ、それを法律的な構造の問題として、それが条約上の根拠かどこであるかといえば、それは第六条の実施に関する交換公文の問題ではなくて、第四条の協議の問題として出てくる、こういうことを累次御説明申し上げているわけでございます。
  401. 立木洋

    ○立木洋君 それでお尋ねしますけれども、具体的にアメリカ側からいままで事前協議がかけられてきた事実があるのかどうなのかという問題が一つと、それからもう一つは、日本側からこういう場合には事前協議にかけるべきではないかということを申し入れた事実があるのかないのか、その二点についてはいかがでしょうか。
  402. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 第一点の、事前協議の発議をアメリカ側から行ってきたということはないということは従来より申し上げているところでございます。  それから、日本側からこの問題については事前協議をすべきではないかという具体的な問題を提起したということはないというふうに記憶いたしております。
  403. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ一つ一つこういう場合が事前協議にかかるのかどうなのかというものをお尋ねしたいと思うんですけれども、一つの点は、つまり実態として戦備を備えて日本の基地を発進しても、事前協議にかかる場合とかからない場合があるのでしょうか。
  404. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いまおっしゃられた戦備を備えて日本から発進するということの意味いかんだろうと思います。まさに戦闘作戦行動を発進させるということであれば事前協議の対象になります。
  405. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つ言いますと、つまり、いままで繰り返してきた点では、その発進したときに、実態としては、たとえばある地域で戦闘が現に起こっておった、で実態としてはそれの戦闘に参加するだろうということは前後の関連から想定される。しかし、いままでの場合で言いますと、発進時に戦闘作戦行動に参加せよという命令を受けていなければ事前協議の対象にならないという説明をなさってきておったわけですね。こういう場合を考えたときに、つまり発進時に命令を受けていなければ、前後の実態からその戦闘行動に参加するというふうに判断されておっても、命令を受けていなければ事前協議の対象にかからないというふうに判断していいんですか。
  406. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) この点は従来からの説明でも明らかだと存じますが、先ほど先生がお読みになりました統一見解自体にも「個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して」ということがございます。当然のことながら、その発進時の当該戦闘部隊が受けている命令だけかこの事前協議を決するものではないということになるわけでございまして、まさにその任務・態様の具体的な内容全体を判断して決定さるべきものであろうというふうに考えます。
  407. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、発進時に具体的ないわゆる作戦行動への参加の命令がおりていなくても、前後の関連から見て作戦行動に事実上参加するものだろうというふうに判断される場合には、当然、事前協議の対象になるわけですね。
  408. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) そのような場合に、具体的な戦闘作戦行動の命令を受けていないということが実際上あり得るものかどうか、きわめて疑問だろうと思います。ただ、具体的な命令を受けているか否かが外部から見てわからない、明確ではないという事態はあり得ると思いますけれども、戦闘作戦行動を発進させるに当たって、そのような命令を内部的にも受けていないという事態は考えられないのではないかというふうに考えます。
  409. 立木洋

    ○立木洋君 これは戦闘作戦行動の出撃の命令を受ける場合に、たとえば将来的というか、その事態によってそのときに命令を発進する場合と、しない場合があると思うんですよ。この軍は今後たとえばベトナムで戦争が起こっていた場合、それに参戦する目的をもって行く、具体的にどういう作戦行動に参加するかは現地においての指示を待てというふうなことだってあり得るわけですから、だからいま言われたように、作戦行動自体の問題については、だから私が言いたいのは、命令を受けている、いないにかかわらず、実質的に作戦行動に参加するということが前後の関連から明確な場合には、すべて事前協議の対象になるというふうに言い切っていいわけですか。
  410. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま先生かお挙げになりました事態というのは、まさに通常言われておりますところの移動のケースであろうというふうに考えられます。と申しますのは、その戦闘地域に赴いてそこで待機の姿勢に入るということがそこで受けているところの一般的な任務であろうと思われるからでありまして、そのような場合に日本の施設、区域を使って戦闘作戦行動を発進させるというような事態とは異なるのではないかというふうに考えます。
  411. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、この問題についてはまた後で確かめますけれども、次に、伊藤さん、三月二十三日の衆議院の内閣委員会で局長が述べられた、つまり沖繩のアメリカの海兵隊が朝鮮に向かって出撃しても、在韓米軍の指揮下に入らざる限り事前協議の対象にはならないというふうな、正確な私は引用ではございませんが、というような趣旨の御答弁があったというふうに新聞紙上で見たわけですが、これはどういう意味でしょうか。
  412. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) この二十三日の委員会におきまして、安井先生の御質問の中で私が御説明申し上げたわけでございますが、その御質問は、テレビの討論会において金丸長官が、沖繩からの移動の際は事前協議の対象になると言っているけれども、従来、その移動というのは事前協議の対象とならないという答弁だったのが変わったのかという御質問があったわけでございます。  そこで、その移動の場合にもいわゆる作戦基地として使うような、たとえば地上部隊が上陸作戦を行うという命令を受けて出たような場合の移動、これは事前協議の対象になりますと。したがいまして、私は、その金丸長官の発言を正確に覚えておりませんけれども、いわゆる出動といいますか、上陸作戦なんかの命令を受けて出たような場合には事前協議の対象になるというふうに考えておりますというふうに申し上げたわけでございます。  で、その場合に、さらに御質問がございまして、いま先生がおっしゃいましたように、作戦を目的とした移動ではないかというようなお話がございました。そこで、私は、典型的な軍事的な面から見た場合に、たとえば紛争が起こりそうな場所に前もって移動させておくということも当然考えられるわけでございます。したがって、そういうのは、通常の場合、在韓米軍の場合には、これはチーム・スピリットとの関係で御質問がございましたので、たとえば第五空軍の隷下にある飛行機も有事になりますと在韓米軍司令官の指揮下に入るわけでございます。そこで作戦行動というのが行われるわけでございます。したがいまして海兵隊が移動していくときには、通常、いわゆる朝鮮半島全体が紛争でどうにもならなくなって直ちに上陸作戦を行わなければならないような事態というものは予想しにくいわけでございまして、その場合には、まず向こうに移動をしていって、そして在韓米軍司令官の指揮下に入って戦闘するというのが常識的には考えられるようなことではないでしょうか。そういうような移動というものは事前協議の対象にならないというふうに思いますというふうに御説明申し上げたわけでございます。
  413. 立木洋

    ○立木洋君 中島さん、いま伊藤さんのおっしゃった点ですね、つまり移動の問題と絡めて、それがたとえば韓国で行われる戦闘の場合に、在韓米軍の指揮下に入るかどうかという指揮系統の問題も絡めて事前協議の対象になるかどうかという新しい論点を出されているのですが、その点は、外務省はそれでいいんですか、事前協議内容は。
  414. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま伊藤防衛局長から御説明があったとおりでございまして、いずれにせよ、わが国から移動していった米軍の部隊が移動先でその戦闘作戦行動に入る場合に、その先の司令官の指揮下に入るであろうということは、現実の事態としてそういう可能性が多いであろうということは考えられますか、しかし、その行き先の指揮下に入るかどうかということが事前協議の対象になるか否かの決め手ということにはならないというふうに理解いたしております。
  415. 立木洋

    ○立木洋君 つまりその指揮下に入る場合も、あるいは入らない場合も、直接戦闘行動に参加する場合には、これはもう事前協議の対象になるわけですよね。ですから、そのいま言われた指揮下に入るということが新たな事前協議の対象になるかどうかの決め手にするということは正当ではない、いいんですね、それで。両方ともいいんですか――ちょっと何か声を出してくださいよ。
  416. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) おっしゃられるとおりだと思います。
  417. 立木洋

    ○立木洋君 次に、こういう場合はどうなりますかね。前回も行われたチーム・スピリットの演習ですね、あれが実際の場合とした場合に、いわゆるいろいろな戦闘行動に直接参加する、横田を経由していく、いろいろ経由していきますね。ああいう場合に、いわゆるこれは在日米軍ではない。その米軍が日本を経由していく場合、これは事前協議の対象になりますか、なりませんか。
  418. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いわゆるわが国におけるところの施設、区域を本拠として駐留するということではない限りは、配置における重要な変更としての事前協議の対象にはならないということでございます。  他方、おっしゃられる点が前回の演習についての関係であれば、いずれにしろ戦闘作戦行動ではございませんから、戦闘作戦行動の基地としての在日施設、区域の使用という意味での事前協議の対象にもならない、こういうことでございます。
  419. 立木洋

    ○立木洋君 演習というのは、あれが実戦であった場合というふうに私は仮定して述べたわけですね。その場合には、あなたがいま言われたのは施設、区域を本拠としてという、本拠という言葉を新しくつけ加えられた。本拠としなくても、そこを通過していく、一たんそこに、横田なら横田の基地においてそして飛び立っていくというふうな場合ですよ、事前協議の対象になるか、ならないか。
  420. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来の御議論の蒸し返しになりますが、横田なら横田の基地を使って米軍の空軍機が出ていくときの態様がまさに戦闘作戦行動の発進ということであれば、事前協議の対象になりますし、そこを単に経由して、韓国なら韓国地域に移動していくということであれば、事前協議の対象にはならないという先ほど来の議論のとおりになるわけでございます。
  421. 立木洋

    ○立木洋君 つまり明確な作戦行動としての命令を持ったいわゆる部隊が一時日本に駐留し、そこから、横田の基地から発進していったという場合ですから、これは明確に事前協議の対象になるというふうに理解していいわけですね、私の言っているのは。
  422. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 戦闘作戦行動の発進を行えば、事前協議の対象になります。
  423. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つ、こういう場合はどうなりますかね。日本の領海内に存在する空母、領海内、十二海里内にある空舟から艦載機が戦闘作戦行動に出撃するという命令を受けて飛び立ったという場合には、事前協議の対象になりますか。
  424. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御承知のように、安保条約上、米軍が戦闘作戦行動の発進基地としてわが国を利用するのは、わが国における施設、区域から行われるということが当然予想されているわけでございます。したがいまして施設、区域でないところから戦闘作戦行動を発進させるということは、条約上、想定されていない事態ということでございます。
  425. 立木洋

    ○立木洋君 想定されていない事態についても、前回、いろいろ議論があったところですね。三木さんがこの問題について、たとえば民間空港が利用されて、そこから作戦行動の命令を受けて発進するというふうな事態、それはそういう事態というのはあり得ないだろうと思うけれども、万が一そういう事態があるならば、事前協議にかかるでしょうという趣旨の答弁を最初になさった。それはそれでいいんですか、いまでもそういうことですか。
  426. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 当時の三木大臣の答弁は私もよく記憶いたしておりますが、わが国の同意が必要である事態であるという点において、答弁されたとおりであろうと、思います。
  427. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、同意が必要であろうというのは、事前協議ではなしにということは後で言いかえされたわけですよね、三木さんは。最初は事前協議が必要であろうと言われた。その後は事前協議ではなしに同意が必要であろうという趣旨のことを行われている。二つ答弁がある、それは前後として。  そうすると、この領海内から、日本に存在する米軍の空母から作戦行動だということで命令を受けて発進しても、これは事前協議の対象にならないという場合ですね、これは非常に大きな問題になってくると思うんですけれども、防衛局長にお伺いしたいんですが、領海から、つまり艦載機が作戦行動の命令を受けて発進をした。そのときに相手国からいわゆる報復措置として日本の領海内における空母ですね、あるいは場合によってはその近辺を報復措置として攻撃を受けるかもしれない。これはそういう事態が起こると、日本に対するいわゆる相手国の武力攻撃というふうに防衛庁としては判断するわけですか、そういう事態が起こった場合は。
  428. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 領海内、それから領土内におきます米軍の基地あるいは米軍のいわゆる艦艇が攻撃を受けた場合には、日本が攻撃されたというふうに理解いたしております。
  429. 立木洋

    ○立木洋君 これは非常に大きな問題が起こってくるというふうに思うわけですが、事前協議を受けないで、領海内に存在する空母から艦載機が発進した、この事態は事前協議が受けられていないわけですから、日本政府としてはあずかり知らない、あずかり知らないうちに飛行機が飛び立っていったわけですね、それに対してこれは日本の領海内に存在する米空母から来たんだといって報復攻撃がなされてきた。防衛庁としては、それは日本に対する武力攻撃だといって対応した。これはまさに日本が知らない間に戦闘に巻き込まれるのじゃないですか、大臣、いかがですか。
  430. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど私が申し上げましたように、米軍がわが国から戦闘作戦行動を発進させるために使用し得るものはわが国におけるところの施設、区域でございまして、そのような場合には、事前協議の対象になるということであります。他方、わが国の施設、区域以外のわが国の領域を利用して戦闘作戦行動を発進させるということは安保条約上想定されていない事態でありまして、したがいまして、それは安保条約事前協議以前の問題として、わが国の同意が必要である、こういうことを先ほど申し上げたわけで、わが国の同意なくして米軍がわが国の領域を使用して、戦闘作戦行動を発進させるということはあり得ないということでございます。
  431. 立木洋

    ○立木洋君 そこは、どこでどういうふうな文書が交換されていますか。
  432. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) これは一般国際法の問題でございまして、ある国が他国の領域を軍事的に使用するということについては、当然に、その国の意思にかからしめられている事態でありまして、それを安保条約は施設、区域を使用してそのような軍事行動を行うことを許容しているわけで、そこで許容されていないものについては、国際法一般の原則から、当然に、その国の同意が必要である、こういうことです。
  433. 立木洋

    ○立木洋君 一般的な国際法にはそうなっていますよね、確かに。日米間で明確な文書の交換があるか、確約があるのかということを聞いてる。
  434. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 文書のあるなしにかかわらず、一般国際法の一般原則はいずれの国の場合にも通用する原則でございますから、文書は全く必要はないと信じております。
  435. 立木洋

    ○立木洋君 それはやっぱり信頼関係だということに落ちつくわけですよね。答弁いいですよ。  私は、その点で、もう一遍原点に戻ってお話を聞きたいわけですけれども、大臣事前協議というのは、一体、何のために設けられたんでしょう、大臣にお尋ねしたい。
  436. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の意思にかかわらず、米軍の意思に強制されることのないように設けられたものでございます。
  437. 立木洋

    ○立木洋君 そうですね。これは四十六年十一月十一日、当時の佐藤総理が述べられている委員会での答弁ですが、「われわれは、自由出撃あるいは日本を基地として出撃する、こういう場合に、戦争に巻き込まれる、そういう危険がないように心から願っておるものでございますから、そういう判断に立って、われわれは、自由出撃、そういうことが自動的にきまるのではなくて、自主的に日本立場から事前協議に対応して、イエスあるいはノー、これがはっきり言えるようにしたい、かような意味でございます。」というふうに述べていますが、これはいまでも間違いございませんね。
  438. 園田直

    国務大臣園田直君) 間違いございません。
  439. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、先ほど来の問題というのは、非常に私は矛盾を感じるわけですが、たとえば前後の事態から見て、戦闘が起こっておるところに事実上作戦に参加するということが明確であるにもかかわらず、それが移動という口実で事前協議の対象にかけられない。これが移動であるか、あるいは作戦行動への参加の一環として行われるものであるかということは、これは移動でございます、いや移動でございませんと言って日本が幾ら弁明しようとも、戦闘が行われている相手国にしてみれば、あれは移動でございまして、直接戦闘作戦行動に参加するのではございませんから、日本の基地から来た海兵隊だけれども、そんなら報復攻撃はいたしませんなんというふうなことを果たして言うんだろうか。いずれにしろ、移動であろうと直接作戦行動命令を受けてきた軍隊であろうと、日本の沖繩の米海兵隊が出撃してきた。どういう理由であろうと、これは日本の基地を利用して出てきた米海兵隊だとするならば、それに対する報復措置というのは起こり得る。あるいは航空機が飛び立つ場合でも私は同様だろうと思うんです。  それから、先ほど言われた指揮系統の問題については、それが唯一の条件ではございませんと言ったけれども、指揮系統にかかわってくるのか、かかわってこないのかは別としても、たとえば韓国で戦闘が起こった場合に、在韓米軍の指揮下に入らなかったとしても作戦行動に参加することはあり得るわけですから、そういう場合も私は同様のことが言えるだろう。あるいは移動のためだと称して、日本の横田基地を一時使用して、作戦行動の命令を受けたのが事前協議にかかわらないで、移動だと称して飛んでいった。相手国にしてみれば、それは移動の飛行機でございますとか、直接作戦行動の命令を受けてきた飛行機でございますって区別するはずがないんじゃないですか。つまり、アメリカが行うかもしれないそういう戦争に巻き込まれないようにする、その危険から日本を守る、それはイエスと言うかノーと言うかは、それは別としてもですよ、そういう区別っていうのは戦闘が現に行われている相手国にとっては、それは全く有名無実じゃないですか。そうして報復措置が事実上行われれば、いやあれは実は移動でございましたので事前協議にかかっておりませんでした、日本政府は知りませんでしたと言って、報復攻撃を受けてから、これは大変だと言って自衛隊がそれに対応するというふうなことになれば、これはまさに知らないときに戦争に巻き込まれるということになるんじゃないですか。大臣、いかがでしょうか。
  440. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいまのお話で幾つかの点をお答え申し上げたいと存ずるのでありますけれども、まず第一に、安保条約は、日本にかかわりのある米軍の軍事行動すべてをすべて日本国政府の意向に絡ませて事前協議にかからしめるという考え方ではできておらないわけでございます。で施設、区域を使用して行われる米軍の軍事行動のうち、直接戦闘を目的として発進されるところの戦闘作戦行動については、わが国の意向に反してこれが行われることがないようにというのが事前協議制度の本旨でございます。  他方、先生は戦争に巻き込まれる危険とか、相手方からの報復措置の可能性という観点からお尋ねがあったわけでございますが、まさにわが国が安全保障条約を結んで米軍のわが国における存在を許しておるということは、その抑止効果として戦争発生の危険性、戦争に巻き込まれる危険性というものをあらかじめ抑止するというのが趣旨でありますので、そのような心配は、むしろ米軍の存在を許すことによってこれを未然に防止するということにあるわけでございます。
  441. 立木洋

    ○立木洋君 どうも私はその中島さんの話というのは納得できないんですけどね。そうすると、事前協議にかからない事態でも、いわゆる戦闘に日本が事実上巻き込まれるという可能性はあるわけですね、すべてが事前協議にかかるんではございませんと言ったんだから。
  442. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) まさにおっしゃられるように、たとえば日本から補給活動を行うとか移動をするとか偵察に出かけるとかいうようなことについては、事前協議にかからしめていないわけでございます。米軍が行いますところの軍事行動のうち、最もわが国として関心の強いところのわが国の施設、区域が使われることについて、関心の強いところの戦闘作戦行動について事前協議の対象にするというのがこの制度の本旨であるということを申し上げたわけでございます。
  443. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、やはり事前協議にかからない事態で、やっぱり戦争に巻き込まれる可能性があるわけですよね、すべてが事前協議にかかるわけじゃないんですから。中島さんの言われたのはそういう意味に理解していいわけでしょう、同じ説明ではなくて。
  444. 園田直

    国務大臣園田直君) いま立木さんは個々の飛行機の飛び立つとか、あるいは兵力の移動とかいうことばかり書っておられますが、事前協議は向こうから相談されるばかりじゃなくて、こちらから事前協議を持ち出すこともあるわけであります。
  445. 立木洋

    ○立木洋君 ありますか。
  446. 園田直

    国務大臣園田直君) あります。それは両方に権限はあるはずであります。事前協議の問題をこちらが出すことはできるはずであります。
  447. 立木洋

    ○立木洋君 問題ですね。
  448. 園田直

    国務大臣園田直君) 問題です。そこで、問題は、安保体制というのは、日本が直接侵略をされるか、あるいは日本の安全に脅威がある場合、こういうことになっておるわけでありますから、当然、米国か向こうに侵略行動などを起こす場合には、事前に日本が問題点を提起することかできるわけであります。そういう二重になっておりますから、戦争に巻き込まれるおそれはない、こう思います。
  449. 立木洋

    ○立木洋君 どうも大臣のお話もおかしくなってきたんですけどね、いま言いましたように、つまり事前協議にかかる場合っていうのは限定されておる。それ以外の場合に、相手国がこれは日本の基地を利用しているんだからといって報復攻撃をかけてくる可能性はやっぱり依然として残っているわけですよね。だから事前協議っていうのは全く日本が戦争に巻き込まれるおそれをすべてなくすという意味にはないと、事前協議っていうのは。いいですね、それは。
  450. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来申し上げておりますように、日本からたとえば米軍が補給活動を行う、そういうことによっても日本が戦争に巻き込まれる危険が理論的にあるということを御心配であれば、そのこと自体は私は否定するものではありません。  ただ、問題は、いま大臣が申し上げましたように、事前協議の対象たる事項はその交換公文に規定されているとおりであるけれども、その対象に必ずしも該当しないような事態であっても、それについて日本が不当に戦争に巻き込まれるとか、そのような具体的な懸念があるような事態においては、これは日本側から問題を持ち出して米側と協議することはできるわけであって、その本当に戦争に巻き込まれる可能性があるということであれば、それなりの話し合いは行われ得るということを申し上げておるわけでございます。
  451. 立木洋

    ○立木洋君 補給の問題は統一見解の中にすでに述べられておるからもう中島さんおっしゃらなくてもわかるわけですけれども、さっき私が言ったのは、つまり実質的には戦闘に参加するということを移動だというふうに一方では区別する、一方では作戦行動に直接参加する命令を受けた発進だという。だけど、移動と作戦行動への直接参加という区別が現に戦争を行っておる場合の相手国に理解されないわけでしょう、それはされないですよね。
  452. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来申し上げておるように、一つの韓国なら韓国、ベトナムならベトナムという地域に米軍が出ていく、そこから戦闘作戦行動が発進されるということと、日本から戦闘作戦行動が発進されるということは、これは概念的にもはっきり明確に区別されますし、それから外から見た場合でも、これは具体的に明確になる事態であろうというふうに考えます。
  453. 立木洋

    ○立木洋君 なかなかそういうふうにはいかないと思うんですよね。そんなら命令を受けた時点によって区別されるのかどうなのか、それは単なる経由地が明確にあるならば問題がないのかどうなのか。これはベトナムの場合には遠くだから問題がないと、先般もこれ大臣言われていますよね、社会党の岩垂さんの質問に対して。韓国の場合には椎名さんの答弁と同じですということを述べられておる。ベトナムの場合は遠いからといっていいと、問題がないでしょうけれども、韓国というとこれは近くなんですよ、途中で経由地がないかもしれません。これは移動ですと言って飛び立っていって途中で命令を受けましたと言って作戦行動に参加するというふうな事態で日本事前協議がかけられていない、すると報復攻撃は当然あり得るわけですから、そういう場合の移動だとか作戦行動なんていうのは、どこで区別するんですか。区別しようがないじゃないですか。
  454. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先生は命令をどこどこで受けたからということを……
  455. 立木洋

    ○立木洋君 それは外務省が言っているから私が言っているだけであって……。
  456. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど来申し上げましておるように、命令だけが事前協議の対象か否かを決定する要因ではないということ、すべてその任務・態様に応じて判断さるべき問題であるということが一つ。他方、先生は、米軍によるいわば脱法的な本当に戦闘作戦行動が発進されているにもかかわらず、それを移動と称して事前協議の対象にしないというような事態を心配していらっしゃるようでありますけれども、脱法行為を許すということを申し上げているわけではないのでありまして、そこは安保条約を結んでわが国の防衛の寄与を依頼している以上、米軍がこれを脱法的な措置をとる行動に出るということは全く予想していないわけでございます。
  457. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、この間、二月二十八日の衆議院の内閣委員会でこのようにお述べになっております。  日米安保の事前協議はあくまで日本の安全、平和と国益を守るためにある。その方針に沿い事前協議には厳格に対処していくつもりであるというふうにお述べになっておりますが、だとするならば、やはりいまの事前協議の事態というのは、日本の平和と安全、知らない間に事実上巻き込まれる可能性が全くないわけではないという外務省の見解によるならば、この事前協議の問題については、先ほど大臣が言われたように、日本側からだって出すことができるんだとおっしゃるならば、この事態をもっとここに大臣自身がお述べになっているように事前協議には厳格に対処していく努力をなさってもいいんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。やっぱりまだいろいろ抜け道がどうもありそうですから、ここら辺の問題についてはもう少しやっぱり厳格に対処するために米側と話をするという必要があると私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  458. 園田直

    国務大臣園田直君) 立木さんは盛んに報復爆撃のことを言われるわけでありますか、爆撃を受ける方からいくと絶えず不安がつきまとうわけでありますが、爆撃する方からいうと、そう簡単には爆撃できないわけです。宣戦布告の手続もあるだろうし、爆撃した後の国際問題もあるわけでありますから、なおまた爆撃するについても爆弾は無制限にあるわけじゃないです、飛行機に積んでおる爆弾は制限されておるわけでありますから、ちゃんとそこにはいかようなる目的で、いかなる戦略的な基地を爆撃するかということがあるので、そう簡単に報復はできないわけでありますが、しかし、それにしても現在の事前協議の中で、いろいろ日本と米国は緊密に連絡をするわけでありますから、その際には緊密、厳密に連絡する必要があるとは考えております。
  459. 立木洋

    ○立木洋君 これは四十六年に統一見解が出されてから、四十七年にやっぱりもっと画検討する必要があるという趣旨意見がいろいろ出された。再検討されて、その結果が四十七年に再度話し合いがなされて第十四回の安保協議会で問題になったわけですね。  いまの事態というのは、時間がないものですから私はよく十分にそのすべての点について述べるわけにはいかなかったわけですけれども、中島さんのお話を聞いておっても、だから事前協議ではすべての問題がかかるわけではございませんということになってきて、限定されておる。また、限定された内容をも、どういう事態がどうなのかという具体的な点についてもっときょうはお聞きしたかったんですけれども、時間がないので、これ以上お聞きするわけにはいきませんけれども、そういう事態の問題ここで述べられておるそのときの具体的な任務や態様によってというのがこれが私はくせ者だと思うんですよ。アメリカの場合には、日本の基地がより自由に使用できるようにという要望は持っておりますし、繰り返し日本に対して要求してきている。だんだんだんだん事前協議にかかるような事態というのは少なくなっていく可能性がある。一方、日本としては、事前協議が何のためにつくられたかという基本的な点を踏まえるならば、先ほど大臣が言われたようなことで、当然、厳格に対処していかなければならない。だから、そういう点はもっと問題を詰めて明確にしておく必要があるというふうに私は考えるので、その点、最後に大臣のお考えを重ねてお聞きしたい。  で、当初述べました日中平和友好条約の問題についてもお尋ねする予定でしたけれども、ちょうど時間か来ましたので、その件については次の機会に譲って、これで私の質問を終わります。
  460. 園田直

    国務大臣園田直君) 四十八年の一月二十三日に開催された第十四回の日米安保協議委員会においては、日本側から問題を提起し、日米間で討議が行われました。  その結果、同制度の運用上の基本的枠組みについては、日米双方の考え方が一致していることが再確認をされ、その具体的な運用は日米間の相互信頼と現実の状況に即した密接な連絡協議によるべきものであるとの点で意見の一致を見た次第でありますか、政府としては、同委員会を通じて、日米双方における事前協議制度の運用上の理解が十分確認されたと考えており、事前協議制度の運用上の基本的な枠組みについて検討する必要はないと考えておりまするが、密接に具体的にさらに連絡を緊密にして、そのような米国が勝手なことができないようにするということは必要であると考えております。
  461. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本日の調査はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  462. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件  船員の職業上の災害の防止に関する条約(第百三十四号)の締結について承認を求めるの件  千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件  及び、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案  以上四件を便宜一括して議題とし、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  463. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国とイラク共和国との間の文化交流を促進するためにイラク共和国との間に文化協定締結することは、両国間の相互理解と友好関係の一層の強化に資するところ大であると考えられましたので、昭和五十二年一月に行われたマルーフ・イラク共和国副大統領の訪日の機会に、福田総理と同副大統領との間で本件協定の締結交渉を開始することに意見の一致を見、その後交渉を行いました結果、昭和五十三年三月二十日にバグダッドにおいて、わが方伊達大使と先方アル・ハラフ高等教育科学研究次官との間でこの協定の署名を行った次第であります。  この協定の内容は、戦後わが国が締結した各国との文化協定と同様、文化及び教育の各分野における両国間の文化交流を奨励することに規定しております。  この協定の締結は、両国間の文化交流の一層の促進に資するところ大であると期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、船員の職業上の災害の防止に関する条約(第百三十四号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和四十五年に国際労働機関の第五十五回総会で採択されたものであり、その内容は、船員の職業上の災害に関する調査の実施及び統計の作成、災害の防止に関する国内法制の整備、災害防止計画の作成等に関する規定から成り立っております。  この条約の規定は、わが国においては、船員法、同法に基づく船員労働安全衛生規則、船員災害防止協会等に関する法律等の関係法令により、充足されているところであります。この条約締結することは、わが国の船舶に乗り組む船員の安全を一層確実なものにする上から、また、労働の分野における国際協調を推進する上から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  近年の国際的な経済活動の緊密化及び技術交流の拡大という状況にかんがみ、商品輸出及び技術輸出の拡大を図るためには外国における特許権の確立がますます重要となってきております。このような趨勢を反映して、国際的に外国への特許出願が増大するとともに、同一の発明について複数の国において特許出願を行う事例が顕著な増加を示しております。  従来の例によれば、同一の発明について複数の国において保護を求める場合には、出願人は、各国の法令に従い、各国語で出願書類を作成し、各国ごとに出願手続をとらねばならず、これは出願人にとってかなりの負担となっております。一方、各国の特許庁は、同一の発明であるにもかかわらず、それぞれ独自に調査、審査を行うため、国際的に見れば、重複して労力を費やすこととなり、特許出願の処理の効率化を図る観点からは問題なしとしません。このような事態に対処するため、国際的な出願手続の簡素化及び出願の審査の面における国際協力を図ろうとする機運が高まりまして、その結果、昭和四十五年六月十九日にワシントンでこの条約が採択された次第であります。  この条約は、以上のごとき問題意識に立って、国際出願手続、国際調査、国際予備審査及び国際出願の国際公開に関する制度を創設するとともに、あわせて開発途上国に対し特許の分野における技術援助を行うことを内容としております。  わが国は、従来から技術立国を重視し、そのための基盤の拡充等の観点から、工業所有権制度の国際的動向に強い関心を持ち、この条約の作成にも積極的に貢献してまいりました。わが国がこの条約締結すれば、外国への出願手続が簡素化されることを通じてわが国の国民による外国特許の取得が助長されるとの効果が期待され、ひいては、わが国の一癖の経済発展にも資することとなると認められます。また、国際協力の推進という観点から言えば、わが国の特許庁が、この条約のもとで、国際調査機関及び国際予備審査機関として行動すること等を通じ工業所有権の分野において国際的役割を果たすことは、それ自体としてきわめて有意義であるばかりでなく、同条約のもとでは、開発途上国に対する特許面の技術援助の促進も期待されます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  今回の改正は、まず、近年アフリカ地域においてフランスから独立いたしましたコモロ及びジブティの両国に、それぞれ兼館の大使館を設置し、また、アメリカ合衆国ミズーリ州のカンザス・シティに総領事館を実館として設置しますとともに、これら新設する在外公館の在外職員の在勤基本手当の基準額を定めることといたしております。  次に、アフリカのマラウイの首府が遷都したことに伴い、同国に兼館として設置しておりますわが国大使館の位置名の改正を行うこととしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。  ありがとうございました。
  464. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上をもって説明は終わりました。  四件の自後の審査は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時八分散会