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国務大臣(
牛場信彦君) 昨年の九月以来、
日米間で経済問題に対する協議が行われておりまして、去る一月の十二日及び十三日の協議によりましてこれに決着をつけまして、
日米の共同声明というものを発表いたしました。その経緯につきまして簡単に御
報告申し上げます。
この共同声明の趣旨は、
日米両国が、共通する目的、つまりインフレなき、できるだけ高度の成長、保護
主義の防遏、それからさらに
日本の非常に大きな経常収支の黒字の削減、こういうような目的につきまして、これを達成するためにおのおのいかなる施策をとるかということを通報し合ったというのがこの共同声明の主なる趣旨でございます。もちろん、
日米間でいろいろ
意見の交換がございまして、お互いに注文はつけ合いましたけれども、最終的に発表いたしましたものは、これは
日本及び
アメリカが、それぞれ独自の
立場からとる政策をお互いに通報し合ったという趣旨でございます。
この共通目的達成のために、
日本といたしましては、大体七%程度の高度の経済成長を目指す、これは明年度についてでございますが。それから経常収支の黒字を漸次削減いたしまして、これをなるべく早い機会に均衡まで持ってまいる。そうしてその間に赤字が出ることがあっても、それに対してそれは回避しない、こういうことを声明したわけでございます。
アメリカの方は、この問題に関しまして、
アメリカとしては輸出の振興に一層
努力をする。それからまた、ドルのよってもって立つ基盤を強化するために、国際収支の改善に力を用いて、なかんずく石油の輸入に関してこれを抑制するように
努力をする、そうして今後九十日間にエネルギー法案の国会通過を図るということを申したわけでございます。
これがいわゆるマクロの問題でございまして、そのほかにもう
一つマクロの問題としまして、
日本の製品輸入の拡大という問題がございます。これにつきまして、当初、一定の目標を一定の期間内に達成できないかという話もあったわけでございますけれども、この点は自由経済のもとにおいては不可能であるということで、できるだけ
努力をする。そうしてそれが達成できるように
日米間において常時協議をいたしていこうということが決まったわけでございます。
そのほか、この共同声明の中におきましては、
日本のとる措置につきまして、相当詳細な記述がございます。これはいずれも
アメリカに対して約束したということではございません。
世界的な
意味で、いわゆるグローバルに
日本としてこういう政策をとるということを宣明したということなんでございまして、たとえば関税の前倒しの問題、これは御
承知のとおり、目下ジュネーブにおいて進行中の東京ラウンドにおきましていずれ関税の引き下げが多角的に決まるわけでございます。その決定に先立ちまして、
日本が一方的に若干の品物について関税の引き下げを行うということを宣明したわけでございます。そのほか数個の品目につきまして自由化ということも声明いたしました。
また、特に、いま
世界的に非常に注目を浴びております
日本の国内市場の開放という点につきまして、輸入手続の簡素化でありますとか、あるいは輸入金融の緩和、ないしは為替管理の緩和、それから
政府調達の面におきまして外国企業の参入を認めるようにするというような点、これらはいずれも
日本側の措置として共同声明において明らかにしている次第でございます。
そのほかに、
日米間だけで合意した点も若干あるわけでございまして、たとえば
アメリカに対して、できるだけ早い機会に買い付けミッションを派遣するという話でございますとか、木材に関してやはりこれもミッションを交換するというようなこと。ないしは昨年の九月に第一回を行いましたいわゆる高級官吏会合というもの、これをことしの夏前に第二回を行うということ。さらに十月には、ストラウス氏と私とがもう一遍会おうというようなことを決めておりまして、いま申しましたうちの後の二つは、これは結局、共同声明において目標として掲げられていることが今後いかに達成されていくか、それをお互いにフォローして確かめ合おうという趣旨なんでございます。
この共同声明の性質は、したがいまして
日米間の昨年の九月に始まりました協議に一応の終止符を打ったということでございます。しかし、これはあくまでもそれだけの
意味を持っているわけでございまして、
日米の問題はこれで全部片づいたわけではもちろんございません。この次の段階としまして、
日米間の問題が討議されますのは、多くのものが論議されますのが恐らくガットの東京ラウンドの
交渉ということになると思いますし、それ以外においても、
日米の間におきましてバイラテラルに、双務的に話があることは、これは当然予期されるわけでございます。
そうして掲げました目標のうちで、一番
アメリカのみならず
世界的にも注目していると思われますのが、
日本の経常収支の削減という問題でございまして、これがいかにして実現されるかということを恐らくこれは
アメリカのみならず
世界も注視しているところではないか。これにつきましては、
アメリカ内部におきましてもこれを厳しくウォッチ、注視していこうという動きもございます。また、多角的な場では、たとえばOECDの
会議でありますとか、あるいは先進国間の首脳
会議、これは七月にボンで開かれるはずになっておりますが、そういうような機会にまた論議の対象になるということ、これは当然予期しなければならないところであろうと思うのであります。他方、また、
アメリカのとりますエネルギー節約の措置でありますとか、あるいはエネルギー法案の成立を図るというような約束、これはこれとしてまた両国間におきましても、また
世界的にも、注視の的となるということではないかと思うのでございます。
以上が、大体、
日米の間の
話し合いに対する御
報告でございます。
引き続きまして、
日本とヨーロッパ共同体との間でもって現在
話し合いが行われておる次第でございまして、これはなお進行中でございますので全貌を申し上げるわけにはいかないと存じますが、大体の筋道といたしましては、ヨーロッパ共同体側におきましては、今回の
日米の協議の成果、もちろんこれは一応評価しているわけでございますけれども、これが
日本と
アメリカだけの
話し合いでもって行われた点に少なからず抵抗を感じておるようであります。これに対して、私どもの方といたしましては、
日米の共同声明の成果というものは、これはすべて一般的、グローバルなものであって、決してヨーロッパを差別待遇しているものではない。また、現に、たとえば関税の前倒しにいたしましても、
内容をごらんになれば、ヨーロッパの利益をむしろ
日本としては重視しているということがわかるではないかということを申しておるのでございますが、先方としましては、やはり何かヨーロッパの委員会との間におきましても、
アメリカとの間で行ったような協議を
日本がやってくれることを非常に希望しており、また、それに引き続いて恐らく一種の共同声明みたいなものの発表も期待しているのではないかと思われる節があるわけでございます。
そこで、ヨーロッパの委員会の方からは、最近の外相理事会、これは二月の初めに行われたわけでございますが、その結果、共同体の
委員長のジェンキンズ氏から
総理あての手紙が参りました。それからまた、ヨーロッパの首脳
会議の議長を務めておりますデンマークの首相から
総理あての手紙が参っておりまして、いずれも
日本とECとの間において経済問題に関する協議を行いたいという趣旨のものでございます。そしてそれをぜひ成功裏に終結せしめたい。そのために、すでにECの方からは一人
局長級の人が参りまして、わが方と協議をして帰りました。来月の半ばごろには、今度は次官級の人が参ることになっておりまして、わが方と協議を重ねて、その結果うまくいく見通しがつけば、向こうの副
委員長でありますハフェルカンプという人が東京へ来る、来月の末にはそういう運びにいたしたいということでございます。ECの方は、四月七日、八日に首脳
会議を予定しておりまして、その首脳
会議に対して
報告をしたいということのようであります。
これに対しまして、もちろん、われわれとしてできるだけの
努力をして、彼らの正当な要求は入れるつもりでやっておるのでございますけれども、何分にも対米協議の際に、先ほど申しましたように、グローバルな
立場からわが方のやれることはほとんど全部やってしまったという
関係もありますので、さらにヨーロッパに対して、この際、ことにガットの
交渉が行われている際に、追加的な措置をとるということはなかなかむずかしい次第なんでございます。
ヨーロッパが特に問題にしておりますのは、ヨーロッパと
日本との間の貿易が非常に片貿易になっている、
日本の輸出超過になっていることなんでございますが、この点は確かに数字的にはそうなっておるわけでありますけれども、さて、それでは、ヨーロッパから
日本に輸出できるものが非常にあるかと申しますと、これは先方の
努力いかんにもよるところが非常に多いのでありますけれども、なかなかいまのところ見通しがつきにくい。しかし、先方としては、ことしの夏ぐらいまでにはぜひ貿易の基調が変わったということを示してもらいたい、こういうような希望があるわけでございまして、困難な
交渉でございますけれども、できるだけわれわれとしましてもヨーロッパ側との
関係をよくしていきたいわけでございますから、
日米欧、この三者の
関係を強化するという点から申しましても、
日本とヨーロッパとの
関係を強くすることは非常に必要でありますので、
総理からも、そういう趣旨でジェンキンズ
委員長及びデンマークの首相に返事が出ております。また、この二十七日には、デンマークの
外務大臣がわざわざこの問題のために
日本へ参られるということで、先方としても、決して
日本と事を
構えるというんじゃなくて、
日本との
関係をよくする
意味において大いに
努力をしたいということでございますので、そういう精神におきまして、われわれもこの協議を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。
はなはだ簡単でございますが、以上で
報告を終わります。