○
政府委員(
村田良平君) それでは、引き続きまして、今
国会に
提出を
予定あるいは検討いたしております
条約に関して御
説明を申し上げます。
総計二十四件の
提出を検討いたしておりまして、お手元の資料にございますとおり、
提出を
予定しておりますのが二
国間条約七件、多数
国間条約八件、計十五件、
目下検討中のものが九件でございます。
第一番目は、
日本と
カナダとの間の
原子力協定の
改正の
案件でございます。
この
案件は、恐らく
改正議定香という形をとると考えております。一月二十六日にすでに仮
署名を行っておりまして、目下、
カナダ側と
最終案文の確定について
話し合いを行っておるところでございます。インドの
核爆発等を背景といたしまして、
カナダの
保障措置強化政策が新たにとられまして、こういった
事情を勘案いたしまして、
昭和三十五年に発効いたしました
現行の
日加原子力協定を
現状に合わせるために、この
交渉を行った次第でございます。
改正の
主要点は、一定の情報を規制の
対象とすること。あるいは従来の再
処理等に加えまして二〇%以上の濃縮とかあるいは貯蔵の場合にも
供給国の
事前同意の
対象とするということ。あるいは
核物質保護、俗にフィジカルプロテクションと申しておりますが、こういった
措置をとるというふうな点でございます。
二番目が、
日米犯罪人引渡条約でございます。
現在、
わが国と
アメリカとの間には、明治十九年につくられました
犯罪人引渡条約があるわけでございますが、この
現行条約は、
引き渡しの
対象犯罪が非常に限られております等、
現状に即さないものになっております。そこで、昨年の二月及び七月に
交渉を行いまして、実質的な
合意をほぼ達成いたしまして、その後、さらに
細部を詰めました結果、昨二月十五日、
本件交渉が妥結したわけでございます。そこで、
政府といたしましては、今月の終わりにこの
条約に
署名をいたしまして、三月早々、
提出を
予定いたしております。
これは
現行条約の
改正ということではなくて、新
条約を締結するという形をとることになります。新しい
条約では、
引き渡し犯罪の
範囲を拡大いたしまして、また、これに
関連する
犯罪防止のための
日米間の
国際協力についての規定を置くことになっております。
なお、この
条約に関しましては、
国内法――
逃亡犯罪人引渡法でございますが、この
改正法案が今次
国会に
提出される
予定でございます。
三番目が、
日独租税協定の
修正補足議定書でございます。
日独間には、
昭和四十二年に発効いたしました
租税協定があるわけでございますが、
昭和四十九年及び五十一年に
ドイツ連邦共和国の
財産税法及び
法人税法が
改正されましたので、これに対応いたしまして
現行協定を修正補足するというのがこの
議定軒の
趣旨でございます。
その
内容といたしましては、
協定の
対象としまして、新たに、
ドイツ連邦共和国の
財産税を追加すること。及び配当に対する
ドイツ側の
源泉課税の
限度税率、現在二五%になっておりますが、これを一五%に引き下げるということでございます。
この
議定書の
細部につきましては、目下、なお
交渉中でございます。
四番目が、
日ソ漁業協力協定でございます。
日ソ間には、
昭和三十一年に結ばれました
北西太平洋の公海における
漁業に関する
日本国と
ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の
条約、俗に
日ソ漁業条約と申しておりますが、こういう
条約があったわけでございますが、昨年四月、
ソ連側がこれを廃棄通告いたしましたので、本年四月二十九日に失効するわけでございます。そこで、
日ソ間の
漁業関係の長期的な安定のために、昨年秋から新しい
条約の作成に関して
交渉を行いまして、一時中断いたしましたが、昨二月十五日から再びモスコーにおいてこの
協定の
交渉を行っております。
政府といたしましては、最
重点はもとより
北西太平洋の
サケ・
マス漁業でございますので、この
サケ・
マス漁業が漁期の開始までに確保されますように、目下、鋭意
交渉中でございます。
五番目が、
わが国と
イラクとの間の
航空協定でございます。
この
協定の
目的は、
日本と
イラクとの間に
航空業務を開設するためのものでございまして、
内容は、他の
航空協定と同様と考えていただいて結構でございます。
わが国にとりましては三十一番目の
航空協定ということでございます。
イラク側との
話し合いによりまして、
先方の
本邦乗り入れば成田空港が開港した後にするという了解がございますので、昨年末に
案文については
実質合意をいたしておりますけれども、三月に
署名をいたしまして、その後直ちに
国会に
本件協定を
提出するということを
予定いたしております。
六番目は、
日本国と
バングラデシュ人民共和国との間の
国際郵便為替の
交換に関する
約定でございます。
通常、大多数の国との間には、
郵便為替の
交換は、
万国郵便連合の
郵便為替及び
郵便旅行小為替に関する
約定という多数
国間条約によって行われているのでございますが、一部の国との間では、二国間の
約定を結びまして、これに基づいて
郵便為替の
交換を行っております。そこで
バングラデシュとは、目下、この
郵便為替の
交換に関する
約定について
交渉中でございまして、
わが国の締結するこの種の
約定としては第八番目のものでございますが、近く
交渉が妥結するというふうに考えております。
七番目は、
日本と
カナダとの間の
小包郵便約定の
改正でございます。
カナダとの間には、
昭和三十一年にこの
約定が結ばれておるわけでございますが、最近、
万国郵便連合の
小包郵便約定の
改正が行われましたので、それに伴いまして
日加間の
通関料その他の料金を
改正するというのが今次
改正の
趣旨でございまして、目下、なお
交渉中でございます。
以上、二
国間条約は七件ございますが、いずれも
先方の
事情等もございまして、
交渉の
最終妥結あるいは
署名に至っておらないわけでございますが、
政府といたしましては、
交渉妥結次第、できるだけ早く
国会に御
提出するという考えでございます。
次に、多数
国間条約にまいりまして、八番目が、
世界観光機関憲章でございます。
この
憲章は、この
機関の前身とも言うべき
公的旅行機関国際同盟という
機関の
特別総会におきまして、
昭和四十五年に採択されたものでございます。
昭和五十年一月にすでにこの
憲章は発効いたしておりまして、米国、
フランス、
ドイツ等主要国を含みます九十カ国以上がすでに
締約国となっております。
この
機関の
目的は、
観光分野での
国際協力を進めるということでございますが、特に開発途上国の観光の振興に国際的に協力するということが主眼になっておりまして、この
憲章は、いま申し述べましたような
目的のほかに、
憲章の構成員の地位であるとか内部組織、
予算、分担金等を定めているものでございます。本
憲章は二月下旬に
国会に
提出する運びとなっております。
九番目が、北太平洋の公海
漁業に関する国際
条約改正議定書でございます。
これは
昭和二十七年に
署名されましたいわゆる
日米加
漁業条約に、米国及び
カナダの二百海里
漁業専管水域の
実施を背景といたしまして、所要の
改正を加えるものでございます。形といたしましては、
改正議定書という形をとる
予定でございます。
交渉の
主要点は、申すまでもなく、北太平洋におきます
サケ・
マス漁業でございまして、
わが国の
サケ・
マス漁業の継続が確保されるように、目下、
交渉に努力中でございます。三月にもう一度
交渉を行いまして妥結を図るという
予定でございます。
十番目が、特許協力
条約でございます。
この
条約は、特許出願が非常にふえておりますので、国際的な出願手続を合理化するということを
目的といたしまして、
昭和四十五年の六月に採択されたものでございまして、米国、ソ連、イギリス、ドイツ等がすでに加盟いたしておりまして、本年一月に発効いたしております。この
条約によりまして、原則として特許出願人の国の特許庁に出願を行いますと、その出願が同時に指定されました外国における出願になるという、いわゆる国際出願の制度というものを設けて手続を合理化しておるのでございます。
また、これに加えまして国際
調査及び国際予備審査という制度も設けることになっております。実は、本年四月十日から、この
条約で設立されます国際特許協力同盟という
機構の第一回の総会が開かれることになっております。
日本は世界有数の特許大国でございまして、できれば、この総会におきまして、
日本の特許庁がこの
条約で定めますところの国際
調査機関及び国際予備審査
機関として指定されるということを希望しておりまして、その意味で、できる限り早期にこの
条約の御承認をいただいて、そういった前提のもとに、いま申し述べました第一回総会に
わが国として臨めるようにお願いいたしたいと考えているところでございます。
なお、本件に関しましては、
国内法案も同時に今
国会に
提出される
予定でございます。
十一番目が、レコードの許諾を得ない複製に対するレコード製作者の保護に関する
条約でございます。
この
条約は、レコードの無断複製、俗に海賊版と申しておりますが、海賊版の作製の国際的な防止のために
昭和四十六年の十一月に採択されたものでございます。
昭和四十八年十二月にすでに発効いたしておりまして、現在、二十六カ国が
締約国となっております。この
条約の定めるところによりますと、
締約国は他の
締約国の国民であるレコード製作者を、レコードあるいはテープ等の無断複製あるいはこれらの輸入、販売等から、保護するという義務を負うことになっております。
なお、この
条約に
関連いたしまして、今
国会には、著作権法の一部
改正法案を
提出する
予定でございます。
十二番目が、船員の職業上の災害の防止に関する
条約、これはILO第百三十四号
条約でございます。
この
条約は、
昭和四十五年のILO第五十五回総会で採択されたものでございまして、
昭和四十八年にすでに発効いたしております。
条約の
目的といたしますところは、海上勤務で船員に起こり得べき
業務災害等の防止を
目的として、災害の報告、統計の作製、法令の
整備等について規定しておるものでございます。
十三番目が、安全なコンテナーに関する国際
条約でございます。
この
条約は、コンテナの構造上の安全要件を国際的に統一するということを
目的といたしまして、
昭和四十七年に採択されたものでございます。昨年九月にすでに発効いたしております。コンテナの国際運送による円滑な
実施のためにこの
条約の早期締結が望ましいと考えておるところでございます。
十四番目が、一九七七年の国際砂糖
協定でございます。
この
協定は、砂糖の供給及び価格の安定を図ることを
目的といたしておりまして、一昨年、
昭和五十一年の五月にナイロビで行われました第四回国連貿易開発会議でのいわゆる一次産品総合プログラム採択の後につくられました最初の商品
協定ということで特別の意義を有するものと考えております。本年一月に暫定的に発効いたしておりまして、
わが国は昨年十二月この
協定に
署名いたしますとともに、本年一月からいわゆる暫定適用を行っておるところでございます。
この
協定の主要メカニズムといたしましては、輸出割り当て制度及び二百五十万トンの特別在庫量の保有義務でございます。特に、特別在庫のための
基金の設立が
予定されておりまして、この
基金が七月一日から発足するという
予定になっております。
最後の十五番目が、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する
条約でございます。
この
条約は、
昭和四十七年にストックホルムで行われました国連人間環境会議の勧告を受けまして採択されたものでございまして、すでに
昭和五十年の八月に発効いたしております。
わが国は
昭和四十八年にすでに
署名を行っております。
この
条約は、人間の健康であるとか、あるいは生物資源等に対して有害な廃棄物、たとえば水銀とか砒素とかいろんな物質がございますが、こういったものの投棄によって海洋汚染を起こさないようにということで一定の禁止
措置あるいは特別許可制度等の規制
措置を定めたものでございます。
なお、この
条約に関しましても、その
実施のためには海洋汚染防止法その他の
国内法の
改正が必要でございますので、目下、その点につき検討中でございます。
以上、十五件が
提出予定でございますが、その他に九件の検討中のものがございます。この中で、お手元に差し上げております資料の中でごらんいただきたいのでございますが、
イラクとの文化
協定、それから資料の一番最後にございますILO百四十二号
条約、これはすでに検討を了しておりまして、
提出が可能というふうに判断いたしております。
イラクとの文化
協定は、
日本として第十七番目の文化
協定でございまして、
内容的には、従来
わが国が各国と結んでおります文化
協定と基本的に同じでございます。
それから、ILO百四十二号
条約の方は、
昭和五十年にILO総会で採択されましたものでございまして、人的資源開発のための職業訓練等について定めたものでございます。
それから、お手元の資料のやはり最後のページに、
国際人権規約が検討中として記載されております。
国際人権規約は、そこにございますように、
経済的・
社会的及び文化的権利に関する国際規約と、それから市民的及び政治的権利に関する国際規約という二つがあるわけでございますが、前者は、通常A規約と呼ばれておりまして、主として
社会権的な権利を定めたものでございます。後者は、通常B規約と呼ばれまして、主として自由権的な権利を定めたものでございます。この両規約は、
昭和四十一年に国連で採択されまして、それぞれ一昨年、
昭和五十一年の一月及び三月に効力を生じておりまして、現在、
締約国は、A規約が四十六カ国、B規約が四十四カ国ということになっております。
政府といたしましては、これまで両規約の早期批准を目標として
関係省庁間で鋭意検討を進めてきたところでございまして、
提出するか否かの決定はなお行われておりませんけれども、目下、最終的な詰めの作業を行っているというところでございます。
なお、日中平和友好
条約その他の五件につきましても、相手国との
交渉あるいは
国内法令との調整等の作業が完了いたしました暁には、今
国会に御
提出したいということで検討しておる次第でございます。
以上でございます。