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1978-02-16 第84回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十六日(木曜日)    午前十時八分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二十日     辞任         補欠選任      亀井 久興君     加藤 武徳君  十二月二十一日     辞任         補欠選任      加藤 武徳君     亀井 久興君      川村 清一君     阿具根 登君  十二月二十二日     辞任         補欠選任      阿具根 登君     田中寿美子君      福間 知之君     和田 静夫君  一月二十日     辞任         補欠選任      和田 静夫君     高杉 廸忠君  一月二十一日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     上田  哲君  一月二十五日     辞任         補欠選任      上原 正吉君     徳永 正利君  一月二十六日     辞任         補欠選任      原 文兵衛君     鳩山威一郎君  二月十四日     辞任         補欠選任      矢追 秀彦君     多田 省吾君  二月十五日     辞任         補欠選任      多田 省吾君     矢追 秀彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 徳永 正利君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 小野  明君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        外務政務次官   愛野興一郎君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        水産庁次長    恩田 幸雄君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        警察庁警備局外        事課長      城内 康光君        法務省人権擁護        局人権擁護管理        官        梅田 昌博君        外務大臣官房外        務参事官     枝村 純郎君        食糧庁総務部企        画課長      野明 宏至君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (外務省関係予算に関する件)  (外務省関係提出予定法律案及び条約に関する  件)  (日ソ問題に関する件)  (日中平和友好条約締結問題に関する件)  (国際人権規約に関する件)  (日本安全保障に関する件)  (日中貿易に関する件)  (インドネシアに対する食糧援助問題に関する  件)  (竹島問題に関する件)  (朝鮮問題に関する件)  (国連軍縮特別総会に関する件)  (核兵器使用禁止問題に関する件)  (国際捕鯨問題に関する件)  (金大中事件に関する件)     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  昨年十二月二十二日、阿具根登君及び福間知之君が委員辞任をされ、その補欠として田中寿美子君及び和田静夫君が、また、一月二十日、和田静夫君が委員辞任され、その補欠として高杉廸忠君が、また、一月二十一日、高杉廸忠君委員辞任され、その補欠として上田哲君が、また、一月二十五日、上原正吉君が委員辞任され、その補欠として徳永正利君がそれぞれ選任をされました。  また、去る一月二十六日、原文兵衛君が委員辞任され、その補欠として鳩山威一郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 理事補欠選任についてお諮りをいたします。  ただいま御報告いたしましたとおり、原文兵衛君の委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、この際、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事鳩山威一郎君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  昭和五十三年度外務省関係予算並びに今国会提出予定法律案及び条約について、順次、概要説明を聴取いたします。愛野外務政務次官
  6. 愛野興一郎

    政府委員愛野興一郎君) 昭和五十三年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  このたび、政府国会において御審議願うために提出いたしました昭和五十三年度一般会計予算において、外務省予算としては、二千四十五億八千六百万円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、二百六十九億二千六百万円の増加となり、一五・二%の伸び率でありますが、一般会計予算に占める割合では、前年度とほぼ同様、〇・六%となっております。  次に、内容について御説明いたします。  昭和五十三年度においても、昨年に引き続き、外交実施体制整備することとしております。このため、特に定員大幅増強機構整備を図るとともに、在外職員勤務条件改善の諸施策を強力に推進し、外務省責務遂行に遺漏なきを期することといたしました。  外務省定員につきましては、本省及び在外公館九十二名、他省振りかえ増二十三名、振りかえ増三十五名、計百五十名の増員となり、五十三年度外務省定員は、本省一千五百三十八名、在外一千七百七十六名、合計三千三百十四名となります。  本省及び在外公館機構整備につきましては、本管関係では、経済局に、同局の書記官を振りかえて資源第二課を新設することが予定されております。また、国際連合局軍縮課新設いたします。これは既設軍縮室を昇格させるものであります。  在外公館関係では、在EC代表部、在トリニダードトバゴ大使館、在フィジー大使館及び在カンザスシティ総領事館の計四館の実館設置予定されており、これが実現いたしますと、わが国在外公館数は百六十館となります。このほか、アフリカコモロ及びジブティに来館の大使館を設けることといたしております。  不健康地勤務条件改善関係経費は二億九千五百万円であり、前年度予算二億七千三百万円と比較いたしますと二千二百万円の増加であります。  本経費は、主として、中近東アフリカ地域に見られる生活条件勤務環境の厳しい地に所在する在外公館に勤務する職員が安んじて外交活動に専念し得るよう、健康管理福祉厚生施設等改善を図るためのものであります。その内訳として、まず健康管理休暇に伴う経費が四千五百万円で、この制度の適用を受ける公館数は五館増の三十公館となります。このほか、高池勤務対策のための経費不健康地在勤職員の家族に対する健康診断費等が計上されております。なお、別に、在外公館保安強化施設面人員面で図るための関連予算として二億五千万円が計上されております。  次に、国際協力拡充強化関連する予算内容を御説明いたします。  南北問題がますます深刻化しつつある今日、自由主義諸国中第二位の経済力を有するわが国が、経済技術協力拡充強化によってその国際的責務を果たすことは緊急の必要となっております。  五十三年度の経済協力関係予算は、総額一千二百十五億九千七百万円で外務省予算全体の約五九%を占めております。これを五十二年度当初予算九百九十七億二千五百万円と比較いたしますと二百十八億七千二百万円の増加となり、二一・九%という伸び率であります。  特に、二国間無償資金協力については、三百九十億円が計上されており、前年度予算百八十億円に比較して二百十億円の増加であります。  国際協力事業団事業につきましては、四百二十七億一千百万円が計上されております。  国際協力事業団は、昭和四十九年八月一日の設立以来、政府ベース技術協力担当機関として、開発途上地域等経済社会発展に貢献しておりますが、五十三年度予算においては、技術協力事業を初め、同事業団の各事業拡充強化を図ることといたしました。  技術協力関連する予算は、三百七十六億一千万円で、前年度予算に比し十四億三千七百万円の増加であります。具体的には、研修員受け入れ専門家派遣青年海外協力隊員派遣開発調査機材供与等に必要な経費と、開発途上地域等社会開発農林業及び鉱工業に係る関連施設整備及び試験的事業等に対する貸し付けを行うための開発投融資事業に必要な経費であります。  同じく国際協力事業団移住事業関係予算は、五十一億百万円で、前年度予算に比し一億九千八百万円の増加であります。  主な内容は、日本人ブラジル移住七十周年記念行事費を含む海外移住知識普及事業並びに移住投融資事業のための経費であります。移住投融資事業は、移住者等に対する農業、工業、漁業その他の事業に必要な資金貸し付け及び移住者が入植するための土地の取得、造成、管理及び譲渡等を行うものであります。  次に、広報文化活動の推進でございます。  海外広報活動拡充強化のための経費は、二十三億二千万円で、これは前年度予算に比し五千万円の増加であります。  その主な内容は、広報センター関係経費招待事業費フォーリン・プレスセンター委託事業費南北問題対外啓発費等であります。  第二に、国際交流基金事業のための経費は、六十三億五千五百万円でありまして、前年度予算に比し四千百万円の増加であります。特に、政府出資金五十億円の追加出資により基金に対する政府出資金合計四百億円となり、これの運用益による年間事業規模は三十一億八千七百万円となり、前年度予算に対し一〇%の伸び率になります。  重点事項の第四の柱であります日本人学校新設を初めとする海外子女教育充実強化のための関連予算としては、三十八億七千三百万円が計上されております。これを前年度と比較いたしますと四億七千二百万円の増加となります。現在、海外在留邦人同伴子女義務教育年齢にある者は二万人に達しようとしており、これらの子女教育がきわめて切実な問題となっておりますので、昭和五十三年度においても、引き続き、海外子女教育充実強化のための諸施策を推進するものであります。  具体的施策としては、ウィーン、シカゴ、ワルシャワ、アラブ首長国連邦のアブダビ、それにオーストラリアのパースの五都市に全日制日本人学校新設することになり、この結果、全日制日本人学校数は五十三校となります。右のほか、既設日本人学校について教員三十八名の増員を行い、教員の待遇についても必要な改善を行うこと・としております。また、校舎の確保、拡充に対する援助等経費も計上しております。  さらに、補修授業校については、謝金補助対象講師数を五十八名増員する等の改善を行うこととしております。  以上が外務省昭和五十三年度予算重点事項予算概要であります。
  7. 安孫子藤吉

  8. 枝村純郎

    説明員枝村純郎君) 今回の国会に御提出している外務省関係法案について御説明申し上げます。  まず、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案について概要を申し述べます。  今回の改正の主たる内容は、在外公館新設に関するものでございます。先ほど政務次官より御説明しましたとおり、昭和五十三年度予算政府原案において実館四館と兼館二館の設置が認められております。実館とは実際に公館長を駐在させ、事務所を開設するものでございまして、今回認められましたのは、在トリニダードトバゴ日本国大使館、在フィジー日本国大使館欧州共同体日本政府代表部及び在カンザスシティ日本国総領事館の四公館であります。このうち在トリニダードトバゴ日本国大使館、在フィジー日本国大使館及び欧州共同体日本政府代表部につきましては、従来近隣公館が兼轄していたところに、今回、実館を開設するものでございますので、その設置についてはすでに本法律に規定されております。したがいまして今回は在カンザスシティ日本国総領事館新設についてのみ規定することとなるわけでございます。  現在、アメリカ合衆国の中西部十二州は、在シカゴ日本国総領事館が管轄しておりますが、カンザスシティ周辺地域発展に伴い同地域わが国との関係も緊密の度合いを深めておりますので、本邦進出企業及び在留邦人指導保護並びに各種案件効率的処理に遺憾なきを期する必要があります。このためには在シカゴ総領事館所轄区域を二分し、カンザスシティに新たに総領事館を設けることが適当と考えられる次第でございます。  次に、兼館として新たに設置予定しておりますものは、在コモロ及び在ジブティの各日本国大使館でございます。コモロはマダガスカルの北西の島国でありまして、昭和五十年にフランス施政から独立いたしました。ジブティアフリカ東岸、エチオピアとソマリアの間に所在し、昨年やはりフランス施政から独立した国であります。したがいまして、わが国外交機関をこれら両国に設置する必要があるものでございます。  なお、これら在外公館新設に伴いまして、これらの公館に勤務する職員在勤基本手当基準額を定めることも必要となっております。  そのほか、アフリカマラウイの首府が遷都いたしましたので、この法律で定めている在マラウイ日本国大使館の所在地の地名を改正することといたしました。  以上が本法案改正内容でございます。  次に、国際協力事業団法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  今回の改正目的は、従来企画立案から実施に至るまで、すべて政府が行っておりました無償資金協力につきまして、その業務の一部を国際協力事業団に行わせんとするものでございます。  わが国無償資金協力は、ここ数年来、量的に拡大するとともに、その対象国数も著増し、わが国発展途上地域に対する援助の中で重要な地位を占めるに至っております。  一方、無償資金協力は、技術協力関連づけて供与することにより援助効果が高まるものでございまして、現に、無償資金協力の大部分は、技術協力と密接な関連を持ちつつ実施されております。これを具体的に申し上げますと、たとえば無償資金協力によって、学校、病院、研究所等の建物、施設整備いたしまして、そこへ技術協力によって専門家派遣するというようなことが行われているわけでございます。  このような技術協力との密接な関連を維持しつつ、無償資金協力の一層の効率的な実施を図るためには、その実施促進のための業務を、現在技術協力実施に当たっている国際協力事業団にあわせて取り扱わせることが適当と考えられる次第でございます。  無償資金協力のうち、法案にありますとおり、技術協力センターのような技術協力そのもののための施設はもとより、広く技術協力に密接な関連性を有する各種事業のための施設整備目的として行われる無償資金協力は、今次の改正によりまして事業団に取り扱わせるものの範囲に含まれております。これによりまして、いやしくも技術協力と何らかの関連を持って行われる無償資金協力の大部分については国際協力事業団が関与することとなる次第でございます。  これらの無償資金協力について、企画立案を初め、相手国政府との交渉あるいは取り決めの締結などは引き続き政府が行うわけでございますが、その実施促進に必要な業務国際協力事業団に行わせ、もってその効率的な実施を確保せんとするのが、今回、お願いしております改正法案趣旨でございます。  以上をもちまして、今次国会提出いたしました外務省関係法案二件の御説明を終わります。
  9. 安孫子藤吉

  10. 村田良平

    政府委員村田良平君) それでは、引き続きまして、今国会提出予定あるいは検討いたしております条約に関して御説明を申し上げます。  総計二十四件の提出を検討いたしておりまして、お手元の資料にございますとおり、提出予定しておりますのが二国間条約七件、多数国間条約八件、計十五件、目下検討中のものが九件でございます。  第一番目は、日本カナダとの間の原子力協定改正案件でございます。  この案件は、恐らく改正議定香という形をとると考えております。一月二十六日にすでに仮署名を行っておりまして、目下、カナダ側最終案文の確定について話し合いを行っておるところでございます。インドの核爆発等を背景といたしまして、カナダ保障措置強化政策が新たにとられまして、こういった事情を勘案いたしまして、昭和三十五年に発効いたしました現行日加原子力協定現状に合わせるために、この交渉を行った次第でございます。  改正主要点は、一定の情報を規制の対象とすること。あるいは従来の再処理等に加えまして二〇%以上の濃縮とかあるいは貯蔵の場合にも供給国事前同意対象とするということ。あるいは核物質保護、俗にフィジカルプロテクションと申しておりますが、こういった措置をとるというふうな点でございます。  二番目が、日米犯罪人引渡条約でございます。  現在、わが国アメリカとの間には、明治十九年につくられました犯罪人引渡条約があるわけでございますが、この現行条約は、引き渡し対象犯罪が非常に限られております等、現状に即さないものになっております。そこで、昨年の二月及び七月に交渉を行いまして、実質的な合意をほぼ達成いたしまして、その後、さらに細部を詰めました結果、昨二月十五日、本件交渉が妥結したわけでございます。そこで、政府といたしましては、今月の終わりにこの条約署名をいたしまして、三月早々、提出予定いたしております。  これは現行条約改正ということではなくて、新条約を締結するという形をとることになります。新しい条約では、引き渡し犯罪範囲を拡大いたしまして、また、これに関連する犯罪防止のための日米間の国際協力についての規定を置くことになっております。  なお、この条約に関しましては、国内法――逃亡犯罪人引渡法でございますが、この改正法案が今次国会提出される予定でございます。  三番目が、日独租税協定修正補足議定書でございます。  日独間には、昭和四十二年に発効いたしました租税協定があるわけでございますが、昭和四十九年及び五十一年にドイツ連邦共和国財産税法及び法人税法改正されましたので、これに対応いたしまして現行協定を修正補足するというのがこの議定軒趣旨でございます。  その内容といたしましては、協定対象としまして、新たに、ドイツ連邦共和国財産税を追加すること。及び配当に対するドイツ側源泉課税限度税率、現在二五%になっておりますが、これを一五%に引き下げるということでございます。  この議定書細部につきましては、目下、なお交渉中でございます。  四番目が、日ソ漁業協力協定でございます。  日ソ間には、昭和三十一年に結ばれました北西太平洋の公海における漁業に関する日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約、俗に日ソ漁業条約と申しておりますが、こういう条約があったわけでございますが、昨年四月、ソ連側がこれを廃棄通告いたしましたので、本年四月二十九日に失効するわけでございます。そこで、日ソ間の漁業関係の長期的な安定のために、昨年秋から新しい条約の作成に関して交渉を行いまして、一時中断いたしましたが、昨二月十五日から再びモスコーにおいてこの協定交渉を行っております。  政府といたしましては、最重点はもとより北西太平洋サケマス漁業でございますので、このサケマス漁業が漁期の開始までに確保されますように、目下、鋭意交渉中でございます。  五番目が、わが国イラクとの間の航空協定でございます。  この協定目的は、日本イラクとの間に航空業務を開設するためのものでございまして、内容は、他の航空協定と同様と考えていただいて結構でございます。わが国にとりましては三十一番目の航空協定ということでございます。  イラク側との話し合いによりまして、先方本邦乗り入れば成田空港が開港した後にするという了解がございますので、昨年末に案文については実質合意をいたしておりますけれども、三月に署名をいたしまして、その後直ちに国会本件協定提出するということを予定いたしております。  六番目は、日本国バングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定でございます。  通常、大多数の国との間には、郵便為替交換は、万国郵便連合郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定という多数国間条約によって行われているのでございますが、一部の国との間では、二国間の約定を結びまして、これに基づいて郵便為替交換を行っております。そこでバングラデシュとは、目下、この郵便為替交換に関する約定について交渉中でございまして、わが国の締結するこの種の約定としては第八番目のものでございますが、近く交渉が妥結するというふうに考えております。  七番目は、日本カナダとの間の小包郵便約定改正でございます。  カナダとの間には、昭和三十一年にこの約定が結ばれておるわけでございますが、最近、万国郵便連合小包郵便約定改正が行われましたので、それに伴いまして日加間の通関料その他の料金を改正するというのが今次改正趣旨でございまして、目下、なお交渉中でございます。  以上、二国間条約は七件ございますが、いずれも先方事情等もございまして、交渉最終妥結あるいは署名に至っておらないわけでございますが、政府といたしましては、交渉妥結次第、できるだけ早く国会に御提出するという考えでございます。  次に、多数国間条約にまいりまして、八番目が、世界観光機関憲章でございます。  この憲章は、この機関の前身とも言うべき公的旅行機関国際同盟という機関特別総会におきまして、昭和四十五年に採択されたものでございます。昭和五十年一月にすでにこの憲章は発効いたしておりまして、米国、フランスドイツ等主要国を含みます九十カ国以上がすでに締約国となっております。  この機関目的は、観光分野での国際協力を進めるということでございますが、特に開発途上国の観光の振興に国際的に協力するということが主眼になっておりまして、この憲章は、いま申し述べましたような目的のほかに、憲章の構成員の地位であるとか内部組織、予算、分担金等を定めているものでございます。本憲章は二月下旬に国会提出する運びとなっております。  九番目が、北太平洋の公海漁業に関する国際条約改正議定書でございます。  これは昭和二十七年に署名されましたいわゆる日米漁業条約に、米国及びカナダの二百海里漁業専管水域の実施を背景といたしまして、所要の改正を加えるものでございます。形といたしましては、改正議定書という形をとる予定でございます。交渉主要点は、申すまでもなく、北太平洋におきますサケマス漁業でございまして、わが国サケマス漁業の継続が確保されるように、目下、交渉に努力中でございます。三月にもう一度交渉を行いまして妥結を図るという予定でございます。  十番目が、特許協力条約でございます。  この条約は、特許出願が非常にふえておりますので、国際的な出願手続を合理化するということを目的といたしまして、昭和四十五年の六月に採択されたものでございまして、米国、ソ連、イギリス、ドイツ等がすでに加盟いたしておりまして、本年一月に発効いたしております。この条約によりまして、原則として特許出願人の国の特許庁に出願を行いますと、その出願が同時に指定されました外国における出願になるという、いわゆる国際出願の制度というものを設けて手続を合理化しておるのでございます。  また、これに加えまして国際調査及び国際予備審査という制度も設けることになっております。実は、本年四月十日から、この条約で設立されます国際特許協力同盟という機構の第一回の総会が開かれることになっております。日本は世界有数の特許大国でございまして、できれば、この総会におきまして、日本の特許庁がこの条約で定めますところの国際調査機関及び国際予備審査機関として指定されるということを希望しておりまして、その意味で、できる限り早期にこの条約の御承認をいただいて、そういった前提のもとに、いま申し述べました第一回総会にわが国として臨めるようにお願いいたしたいと考えているところでございます。  なお、本件に関しましては、国内法案も同時に今国会提出される予定でございます。  十一番目が、レコードの許諾を得ない複製に対するレコード製作者の保護に関する条約でございます。  この条約は、レコードの無断複製、俗に海賊版と申しておりますが、海賊版の作製の国際的な防止のために昭和四十六年の十一月に採択されたものでございます。昭和四十八年十二月にすでに発効いたしておりまして、現在、二十六カ国が締約国となっております。この条約の定めるところによりますと、締約国は他の締約国の国民であるレコード製作者を、レコードあるいはテープ等の無断複製あるいはこれらの輸入、販売等から、保護するという義務を負うことになっております。  なお、この条約関連いたしまして、今国会には、著作権法の一部改正法案提出する予定でございます。  十二番目が、船員の職業上の災害の防止に関する条約、これはILO第百三十四号条約でございます。  この条約は、昭和四十五年のILO第五十五回総会で採択されたものでございまして、昭和四十八年にすでに発効いたしております。条約目的といたしますところは、海上勤務で船員に起こり得べき業務災害等の防止を目的として、災害の報告、統計の作製、法令の整備等について規定しておるものでございます。  十三番目が、安全なコンテナーに関する国際条約でございます。  この条約は、コンテナの構造上の安全要件を国際的に統一するということを目的といたしまして、昭和四十七年に採択されたものでございます。昨年九月にすでに発効いたしております。コンテナの国際運送による円滑な実施のためにこの条約の早期締結が望ましいと考えておるところでございます。  十四番目が、一九七七年の国際砂糖協定でございます。  この協定は、砂糖の供給及び価格の安定を図ることを目的といたしておりまして、一昨年、昭和五十一年の五月にナイロビで行われました第四回国連貿易開発会議でのいわゆる一次産品総合プログラム採択の後につくられました最初の商品協定ということで特別の意義を有するものと考えております。本年一月に暫定的に発効いたしておりまして、わが国は昨年十二月この協定署名いたしますとともに、本年一月からいわゆる暫定適用を行っておるところでございます。  この協定の主要メカニズムといたしましては、輸出割り当て制度及び二百五十万トンの特別在庫量の保有義務でございます。特に、特別在庫のための基金の設立が予定されておりまして、この基金が七月一日から発足するという予定になっております。  最後の十五番目が、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約でございます。  この条約は、昭和四十七年にストックホルムで行われました国連人間環境会議の勧告を受けまして採択されたものでございまして、すでに昭和五十年の八月に発効いたしております。わが国昭和四十八年にすでに署名を行っております。  この条約は、人間の健康であるとか、あるいは生物資源等に対して有害な廃棄物、たとえば水銀とか砒素とかいろんな物質がございますが、こういったものの投棄によって海洋汚染を起こさないようにということで一定の禁止措置あるいは特別許可制度等の規制措置を定めたものでございます。  なお、この条約に関しましても、その実施のためには海洋汚染防止法その他の国内法改正が必要でございますので、目下、その点につき検討中でございます。  以上、十五件が提出予定でございますが、その他に九件の検討中のものがございます。この中で、お手元に差し上げております資料の中でごらんいただきたいのでございますが、イラクとの文化協定、それから資料の一番最後にございますILO百四十二号条約、これはすでに検討を了しておりまして、提出が可能というふうに判断いたしております。  イラクとの文化協定は、日本として第十七番目の文化協定でございまして、内容的には、従来わが国が各国と結んでおります文化協定と基本的に同じでございます。  それから、ILO百四十二号条約の方は、昭和五十年にILO総会で採択されましたものでございまして、人的資源開発のための職業訓練等について定めたものでございます。  それから、お手元の資料のやはり最後のページに、国際人権規約が検討中として記載されております。  国際人権規約は、そこにございますように、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約と、それから市民的及び政治的権利に関する国際規約という二つがあるわけでございますが、前者は、通常A規約と呼ばれておりまして、主として社会権的な権利を定めたものでございます。後者は、通常B規約と呼ばれまして、主として自由権的な権利を定めたものでございます。この両規約は、昭和四十一年に国連で採択されまして、それぞれ一昨年、昭和五十一年の一月及び三月に効力を生じておりまして、現在、締約国は、A規約が四十六カ国、B規約が四十四カ国ということになっております。  政府といたしましては、これまで両規約の早期批准を目標として関係省庁間で鋭意検討を進めてきたところでございまして、提出するか否かの決定はなお行われておりませんけれども、目下、最終的な詰めの作業を行っているというところでございます。  なお、日中平和友好条約その他の五件につきましても、相手国との交渉あるいは国内法令との調整等の作業が完了いたしました暁には、今国会に御提出したいということで検討しておる次第でございます。  以上でございます。
  11. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。  午後二時まで休憩をいたします。    午前十時四十一分休憩      ―――――・―――――    午後二時三分開会
  12. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 秦野章

    ○秦野章君 最初に、外務大臣に、この間ソ連に行かれたときに、こちらは平和条約の草案を向こうへ渡して、それから向こうからは例の善隣協力条約ですか、あの案がこちらへ来たということですけれども、いままでのお話では、正式に検討するということじゃなくて、とにかくもらってきたんだというようなお話でしたが、内容は、一体、どういうことなんでしょう、検討しているという新聞記事も出ていましたが。
  14. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまお話のありました善隣友好協力条約というのは、平和条約交渉の問題で議論をしている最中に、突如として向こうのテーブルから紙を持ってきたわけでございます。そしてソ連が善隣友好協力条約を準備している、こういうようなことでありましたから、私は、これに対して、日本としては領土を解決をして平和条約を締結することがすべての先決問題であって、それ以外のものを受け付けるわけにまいりませんと。私は、実は、行く前に何か向こうから出すぞという情報をひそかに得ておりましたので、こちらもその場合のことを考えて平和条約の試案というのを準備しておりました。向こうからつかつかと歩いてきましたから、持ってきているかと、こう言ったら、ありますと、こう言うから、出せと、こう言って同時に出したわけであります。  そこで、私は、これを受領して検討するわけにはまいらぬ、平和条約締結後でなければ一切のものは受け付けない。しかし、いま書類を持ってこられたから、突っ返すことは失礼だから突っ返しはしないがと言ったら、向こうも同じように、私の方の平和条約試案というのは検討はいたしませんと、こういうことで持ってきたわけでありますが、したがいまして外務省ではこれの検討は全然やっていないわけでございます。  まあ、そのとき本当はそのまま突っ返した方がよかったのかもわかりませんけれども、私としても、向こうも返さないし、こっちも条件をつけて、正式に受け取ったわけじゃない、書類は失礼だから突っ返さぬがと、こういうことでありましたが、また、正直言うと、何を書いているか後で見たいという気持ちもありましたのでもらってきましたが、そういうわけでここで公開の席上で私の方で内容を報告することは、これを正式にあたかもこちらが取ったような印象も与えますし、この内容は御勘弁を願いたいと思います。
  15. 秦野章

    ○秦野章君 そうすると、外務大臣の受け取り方は、平和条約の草案を向こうへ渡したと、向こうからはそういう紙をもらってきたと、お互いにはなでもかんで捨てちまうような感じでもらい合ったという同価値の問題ですか。
  16. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) そうです。向こうもこれは受け取らない、検討はしないと、しかし書類は突っ返さないと。私も同様のことを先に言ったわけでございます。
  17. 秦野章

    ○秦野章君 そうすると、私の感じでは、同じ評価、軽いにしても、というふうな感じを受けるわけです。  ところが、一九五〇年の中ソ同盟ですね、この条文を見れば、明らかに日本を侵略の言うならば敵性国としてはっきり書いてあるわけですね。侵略する日本帝国主義という言葉もあるし、日本という言葉もあるけれども、とにかく仮想敵国としてはっきり中ソ条約で書いてあるその日本に、善隣友好もへったくれも私はないと思うんですけれども、その点は、外務大臣として、そのときに向こうに対して中ソ条約との関連において何かおっしゃったり、そのときの姿勢はいかがでございましたか。
  18. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中ソ同盟条約については、向こうの方から、中国とは言いませんでしたが、南の国でと、こういう表現がありましたから、その際、私は、次のような趣旨で発言をいたしました。  あなたの国とお隣の国はもともと兄弟の国であったはずだ、中ソ同盟条約というものを結んでわが日本を敵国ときめつけられておる。この中ソ同盟条約をお続けになるのかあるいはおやめになるのか、これは内政干渉にわたるから言わないけれども、いやしくも日本を敵国ときめつけられることだけは取りやめていただきたい。そういうもともと兄弟の国であるべきあなたの方とお隣の国がいま相争っておって、両方で争われればいいのに、その争いを日本にとばっちりかけられるのは迷惑だと、こういう趣旨の発言をいたしました。
  19. 秦野章

    ○秦野章君 それに対して向こうの答えはどうなんですか。
  20. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 返答いたしません。
  21. 秦野章

    ○秦野章君 そこらはちょっとなかなかわからぬですけれども、けさの新聞あたりを見ると、ちょっと角度を変えて質問しますけれども、中国との貿易が平和条約関係なくかなり長期的な見通しで進んでいるように受け取れるんですね。投資総額二兆円に及ぶというような、製鉄所を含んで、相当の経済協力が進んでいる。中国は四つの近代化の中で国防ということがやっぱり一つの重点でございますね。で国防が重点であるということになると、中国の国防ということに日本は協力をするということだから、ソ連はまたこれ非常に神経をとがらしているんではなかろうかという感じがするんです。  そこでプラウダが十一月の二十六日に、日中問題に関連して、ソ連の態度は日中関係が進めば報復的な措置をとる権利を持つことになると、こうはっきり政府関係機関紙がそういうふうに言っていますが、私は大変これは品のない言葉だと思うけれども、とにかくこの報復的措置を講ずるという意味は、外務大臣はどんなことをやると思われるか、この報復というのは。その外交の感触、それから具体的には一体どういうことだろうかという点をお聞きします。
  22. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私はその報復的措置という意味の理解にはなかなか困難だと思いますけれども、私が会ったときの印象や話題を基礎にして御報告申し上げますと、南の国が日本をそそのかして、そして自分との争いの中に巻き込もうとしておる、そういうものに巻き込まれてはいけないという意味の発言がありましたから、私は、話は承ったけれども、日本と中国の問題は日本と中国の問題であって、これは私の決するところである、第三国の意見を聞いて承るわけにはまいらぬ。ただし日本の外交の基本理念はどこの国とも敵対しないという理念であるから、おたくと手を組んで中国に敵対はしない、中国と手を組んでおたくと敵対する考えは毛頭ない、したがって日中の問題には意見は承ったが干渉は受けない。一言言っておくが、日中友好条約は近く締結する方向に進みますと、こういうことを言ったら、グロムイコはその話は理解すると、こう言いましたが、これが新聞に誤って伝えられて、日中友好条約の締結には理解を示したと書いた記事もありましたけれども、それは間違いであって、私はそのように甘くは考えておりません。私が第三国の干渉は受けぬと言った話の筋は理解したと、こういう意味であって、これに理解を与えたとは思っておりません。  しかし、報復的措置であるとか、あるいはどうとかいろいろありますけれども、問題は、日本国民なり世界の国々の人々が、ソ連が何か怒った場合に、それはソ連が怒るのがあたりまえだと言うか、あるいはああいうむちゃな怒り方があるかと言うか、一にそこにあるのであって、必ずしも日中友好条約を締結したからといってソ連が報復するという理屈もなければ原因もない、ただ自分が争っている国ですから、好ましいことではないということは十分理解しております。
  23. 秦野章

    ○秦野章君 いつも、これはもう園田さんだけじゃないんだけれども、条約の場合は、日中にしても日ソにしても二国間条約であって、ほかの国のことは関係ない、確かにたてまえはそうなんですね。しかし現実の外交というものはもう全部多極、これは外務大臣のあの外交演説にもあるわけですけれども、多極間外交なんですよね、実態は。だから、たてまえは日中は日中、日ソ日ソだと言うても、全然それはたてまえであって、本音は私は違うと思うんですよね。その本音のところで報復などということが出てくるわけですよ、本音でなければ報復という言葉は出てきませんよ。日ソの平和条約を結ばないということは向こうの考えですけれども、やっぱり報復という言葉が出てくるのはまさに二国間外交ではない、いまの外交の実態は。まさに多極なんだということから出てくると思いますので、そういう意味で向こうのやりとりの表現の言葉だけでは必ずしも信じがたいものがある、これが国民が一部不安を持っているところではなかろうか、こう思うんですがね、いかがですか。
  24. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私が先ほど申し上げたのは、この件を中心としたやりとりをまず御報告申し上げたわけであって、干渉されるべき問題ではないが、他国のことは考慮に入れなくてもよろしいということではなくて、それはおっしゃるとおりに、二国間で条約を結ぶ場合には、これの来るべき影響、あるいは関係諸国がどのような態度をとるかということは必然考慮の中に入れなければならぬということは御指摘のとおりだと思います。  しかしながら、二国間で条約を結んだり話し合いをしたりして、一々、よその国から報復手段を受けるなんというようなことは、私はどうも解せないところでございます。
  25. 秦野章

    ○秦野章君 それは理論的には解せないということもわかるんだけれども、あり得るということが現実の多極間の複雑な関係ではなかろうか、そういうふうに私は思うわけです。  そこで、次に、もうそれ以上申し上げませんが、対中経済協力が非常に製鉄所その他がだんだん進んでいって、中国の経済レベルが低いんだからそれを上げるということはいいことなんだけれども、やっぱり隣の国が軍事大国までいってしまうと、これまた非常に問題ですね。  これははるか遠い問題だと思いますけれども、私なんかが考えるのに、中国はあれだけの経済力の国でいち早く核兵器を開発し、それから今度は製鉄所とかいろいろ経済協力を得て軍の近代化というものを進めていって今世紀の末ごろ――鄧小平の言葉もたしかそうだったと思うんですけれども、今世紀の末ごろある程度世界的なレベルにいくということになって、初めて対ソとの交渉といいますかね、若干の修復ができるような交渉があり得るかもしれないという感じもするんですね。何しろ必死になって近代化をやろうというその中の国防は私はかなり大きなウエートを持つだろう、こう思うんですが、そういう路線の中で軍事大国になられちゃ困るという、そういう懸念はまさにまだ早いと思うけれども、やっぱり日本は何と言ってもアジア大陸にきわめて接近をしているという宿命の中で、日本としては頭のすみっこに置かなきゃならぬ問題だと思うんですが、いかがですか。
  26. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまおっしゃったようなことでチンコム、ココムというのがあったわけでありますが、チンコムはすでに全廃され、ココムも緩和される方向にございます。そこで中国で言っておるのは、産業の近代化が先であって軍の近代化はその後だ、こう言っているわけでありますけれども、もちろん産業の近代化をやればそれに伴って軍というものも強くなるということから言えばすべてのことがつながってくるわけでありますけれども、今度できました長期契約あるいはその他の経済問題等は、これは私は日本の置かれた現在の経済状態から言っても、それからお隣の日中両国の間に経済を中心にして友好が深まってくることはむしろ脅威ではなくて好ましいことである、私はこのように考えております。
  27. 秦野章

    ○秦野章君 米中関係と日中関係は形式論理からいけば全く別だという理屈にまたなるんですけれども、これは外交としては別じゃないでしょうね。米中関係と日中関係は全く別問題だというふうに理解することにはならぬと思うんですが、どうでしょう。
  28. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私も、米中関係と日中関係は無関係であるとは考えておりません。
  29. 秦野章

    ○秦野章君 米中関係の正常化というものがちょっとおくれていると思うんですよね。おくれているということの背景は、一体、何だろうということになると、それは台湾問題もあるだろうし、いろいろアメリカとして考える問題があるんだと思うんですけれども、一つの例として、昨年の秋にカナダの新聞記者が北京でもって中国の人権問題を取り扱って、人権が無視されているというレポートをロンドン・タイムズにどんどん送って、そのためにその記者は北京から追放になった。それに対して、十一月の二十七日ですか、ニューヨーク・タイムズが社説で、端的に言うならば、自分ところの国民のことをどうしようと勝手だというような国とはまともにつき合えないというような社説を善いたわけですよ。ニューヨーク・タイムズとカーター政権というのは、まあカーターが言えないことをニューヨーク・タイムズが言っていると見ていいのかもしれないという感じもする。  私は、人権問題というものはやはり基本的な問題だと、こう思いますので、米中関係はちょっと遠くなっているなという感じがする。しかし、米国としては中国もある程度近代化していくことを対ソ関係を考えても歓迎していることも間違いないだろう。しかし、そのアメリカの世界戦略といいますかね、ソ連を相手にした世界戦略と日本の外交政策というものはぴたっとイコールだということでもないんではないか、イコールではないんではないかという気がするんですけども、その点はイコルールでいいんですか、イコールであってはならぬのですか、いかがですか。
  30. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 米国と中国の関係については、失礼でございますが、私はいささか見解を異にいたしております。  この前、バンス国務長官が中国に参りまして、帰ってまいりました。それから昨年春の日米首脳者会議においてもこの問題は出ました。その話から結論しますと、福田総理は日中問題については頭越しはやらんでくれと、こう言っております。それから日本と中国はだんだんうまくいくだろう。しかし、米国はなかなかそうはいかぬのだと、こういう話がございました。バンス国務長官の話は、第一に、私は話の中で印象的なのは、一つの華国鋒政権は安定をしておる、中国人民は華国鋒政権を支持している、それから物価が非常に下がっておる、こういうことで中国に対してはほめる言葉が非常に多かった。それから二番目には、アメリカの方は台湾に対して武力解放をしないという約束をしろということを言った、中国の方は米国に対して台湾から軍を撤退しろということを言った、これは両方とも聞ける問題じゃない。したがって米中の間は当分はなかなか進まないだろう、こういう話がございました。  その間、雑談、あるいは外務省のついていった次官等といろいろ懇談をして、私は、その後、このように判断をしたわけであります。  米中が両方とも接近しないことはよく知っておる、表面上は。しかし、どうも中国をほめること、それから、そう言いながらも、バンス国務長官は鄧小平氏と二時間半会っている、外務大臣とは七時間半にわたっている会談を繰り返しておる、これからすると、そのような簡単な問題ではない。こういうことから、アメリカの軍事的な戦略のことは私は知りませんし、また日本の外務大臣としてそういう軍事的なアメリカの戦略にどうこうするべき立場ではないと思いますけれども、少なくとも表面上は近づけない、頭越しは絶対やらない、しかし、現実的な両国の利害問題でテーブルの下で手を握る可能性は十分ある、このように判断しておるわけでございます。
  31. 秦野章

    ○秦野章君 米中と日中は違う、違うけれども、それならアメリカがやることを日本がかわりにやってくれというわけでもないんでしょうね。
  32. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) そういうことはわかりませんが、少なくともアメリカの方から言えば、日本と中国の関係条約締結されることを、おれは関係ないから勝手にやれということよりも、むしろそれを進めてくれた方がいいという気持ちのような感じがいたします。
  33. 秦野章

    ○秦野章君 結局、米ソの関係というものがいま世界の基軸で、米ソの世界戦略というものを抜きには国際問題の判断がつかないくらい大きなウエートを占めていると思うんですね。そこで対ソ外交というのが非常に日本としてはむずかしいと思うんですが、やっぱり対中問題もそのことを抜きには考えられない。  それから、いま一つは、前に私も党内の会議で申し上げましたけれども、ソ連との外交については東ヨーロッパ外交というものをもっと進めなきゃならぬ。ところが、きょうも資料を外務省からもらったんだけれども、東ヨーロッパは八つの国があって、向こうからは大統領だとか首相だとか外相は来るんだけれども、こっちからは総理とか外務大臣は全然行っていない。経済関係は進んでいるけれども、東欧外交を無視することは対ソ外交上非常にまずいんじゃないかということを私はかねがね思っているんですが、向こうからは大統領、総理、副総理、外務大臣というちゃんとした外交の責任者が来るけれども、こっちは一遍も行かない、そこらの問題はどうですか。対ソ外交をやっていく上には、いろんな角度というか、広範な姿勢を持っていかなきゃならぬと思うんですけれども、この間外相はアラブ等にも行かれたんですけれども、東ヨーロッパというものは日本は伝統的と言ってもいいくらいかなりいいかげんにしているというふうに思うんですけれども、これは非常にまずいと思うんですがね。どうでしょう。
  34. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいま御指摘のとおり、全くそのとおりに考えております。東欧諸国との経済交流は相当進んでおるし、向こうからは要人たちがしばしばおいでになっておるわけでございます。したがいまして、私も、東欧諸国にはなるべく早い時期に、正式に招請を受けている国々もございますから、訪問をして、いまお教えいただいたような線で東欧諸国との交流、友好関係を進めていきたいと考えております。
  35. 秦野章

    ○秦野章君 さっき人権の問題をちょっと申し上げたんですけれども、今度、国際人権規約国会外務省は出して承認を求められるわけですけれども、これは私も当然国会もその線でいくべきだと思うんです、一部に異論があるようですけれども。  ただ、私は、外務省はカーターの人権外交というものをある程度評価されていると思うんですよね、人権というものはやっぱり大事だから。それで今度は国際人権規約国会に出して、そしてかなりの国がもうこの条約には入っているわけですから、かなり私は重い問題だというふうにも思うんだけれども、外務大臣の今国会における外交演説の中にそういう問題が入っていないんですよね。私は、いま日本が置かれた、この演説でもおっしゃっているように、とにかく日本のこれからの安全というものを考えたときに、やはり大きな平和とか人権とかという理想を掲げていくということが一番理解がいいんだ。  この前、われわれが核防条約を批准したときに、これは三木内閣のときでしたけれども、これも若干の異論はあったけれども、これは当然やるべきだということで批准に賛成をしたときにも、やっぱり軍縮の問題を十分に日本は主張していかなきゃならぬ。軍縮と人権はある意味においては日本外交の柱かもしれません。そのぐらいに思うんだけれども、軍縮の問題がこれまた今国会の外交演説で二行半なんだね。人権の問題もろくに出ていないということになると、世界に向かって日本の政治哲学、外交政策を訴えていくというその迫力が私は大変鈍いと思うんです。今回の外交演説は外務省の各局がそれぞれの分担で案を出したのをただ並べたようなかっこうになっているので、ちょっと私どもはさびしく思うんですよ。軍縮の問題なんか、これは国連がだんだん力がなくなって、ILOからアメリカが脱退したり、カナダの原子炉衛星についてもソ連の態度はなかなか厳しいですね、国連の場というものがだんだん相場が下がってきた。田舎の信用組合だと言って大臣を首になった例があるけれども、田舎の信用組合の方がしっかりしているかもしらぬくらいに国連というものはだんだん衰弱をしてきているということははなはだ残念だと思うんですね。だけども、アメリカもILOを脱退するんですから、だから米ソが国連なんかくそ食らえみたいなところがなきにしもあらず。本当に日本は国連外交ということを中心にやってきたんだけれども、非常に悲しい方向にあると思うんです。  そこで、国連局長ね、たとえば日本に引っ張ってきた国連大学にアメリカは分担金を出さないでしょう。そのほかアメリカは国際分担金でいろいろ出すべきものも出さなくなってきた。これはアメリカだけを責めるんじゃないんだ、ソ連も似たようなことなんだ、国連なんか無視しているんだから。そういうようなことの現実の中で、日本の外交政策というものに何を主張していったらいいのかということは私は懸命に追求していかなきゃならぬと思う。その場合に、今度五月に国連で軍縮総会があるわけですけれども、ここで一体どういう仕掛けで世界に訴えていくような何か具体的なものをお持ちですか、総理もまたこれに出られるんですか、そこらを伺いたいんですがね。
  36. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、人権の問題はおっしゃるとおり、私は内外の政治の出発点が人権であるということは御意見のとおりであります。そこで、私の国会における外交演説の中ではぜひこの人権問題を訴えたいと思って準備をしたわけでありますが、各省の調整がまだできていない。それから委員会で言うべきことではありませんが、与党の方の御理解をまだ願っていないので、ここへ出すのはおかしいということで、待った方がかえって通常国会にこの法案を出すためには力まない方がよかろう、こういうことで実は削ったわけであります。  それから、軍縮総会は、これも私はおっしゃるとおり日本の外交の一つの柱だ、特にただ一つの被爆国である日本にとっては大事なことだと思いますので、これは非常に重視をしておりますけれども、演説には二行半とおっしゃいますけれども、これは精魂込めて申し上げた二行半でございまして、今度の総会にはできれば総理のお出ましを願いたいということで、できなければ私が行きたい、こう検討しておりますが、この軍縮総会は世界各国ともきわめて重視をしておりますが、いままではとかくこのような総会では、日本は、現実的にできるかできぬかとか、あるいは米ソ二大国の模様等もうかがって、現実的なことではあるが、余り強く訴えることが少なかったような気がいたしますので、やはり唯一の被爆国日本は核兵器全廃ということをまず訴えて、そのために現実的にはどのようなことをやっていくか、こういう訴え方をしていきたいと考えております。  それから国連大学の話でございますが、これもおっしゃるとおりでございまして、国連大学の費用が五億、そのうち一億が日本の分担分で、あとはよその国からの御寄付を願うわけでありますが、本家本元のアメリカからいままで一銭も出ていない、それからカナダからも出ていない。この前、カナダの外務大臣が来たときに、おたくは一銭も出していないからことしから出してくれと、こう言ったときに、カナダの外務大臣は必ず出しますと。それからアメリカもモンデール副大統領に会って聞いたら、一千万ドルぐらいは出すつもりだと、こう言っておった。これは調べましたら七百八十万か八百万近くアメリカ予算は出しておるようでありますが、議会がなかなか通らぬ。こういうことで国連大学の学長、それから顧問の加藤前東大総長、この二人を招きまして、私の方でも各所に働きかけております、学校のもやれと。カナダは、後で聞きましたら、国連大学の誘致運動で日本と競争の関係にあったので、いままで出せなかったというのですが、後でわかって少し厚かましかったなあと思っているわけでありますが、そういうことで逐次この拠金というものは集めていきたい、こう考えております。
  37. 秦野章

    ○秦野章君 話がまたもとへ戻っちゃうのですけれども、アメリカの大統領の年頭教書、それからのついこの間発表された議会に対する国防報告ですね、まあ細かなことは私も見てないんだけれども、大筋で言うと、どうもアメリカという国はやはり外交政策、対外政策の一つの大きな目標はアメリカ安全保障だと、こういうふうに受け取れるようなんですよね。安全保障というものが一番大事だ、安全と平和。  それはまあ当然と言えば当然なんだけれども、日本に置きかえて考えたときにも、私は同じだと思うんですよね、安全保障、安全というものが大事だ。安全保障ということはやっぱり外交政策の基本にあると思うんですが、どうも安全保障というのが防衛庁だか外務省だかちょっとわからないみたいなところもあって、アメリカのように安全保障会議みたいなものもないし、やっぱり安全保障というのは外務省の大きな目標だと思うんですが、これはどうですか、ずばり軍事力だけを言っているんじゃないですよ、軍事力だけじゃなくて安全保障
  38. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) それは御指摘のとおりだと考えます。
  39. 秦野章

    ○秦野章君 そうしますと、私は、ちょっと揚げ足取りみたいになって申しわけないのだけれども、外交演説の中で、日本は要するにもう大きな国になったんだ、日本が安全でいくためには外国に寄与していかなければならぬ、それは言葉としてはまさにそのとおりなんだけれども、自由世界第二位の経済力を有するに至ったから、だから国際社会に与える影響も大きいし、また、その経済力にふさわしい役割りを国際社会において積極的に果たしていかなければならぬ。まことにかっこうのいい言葉なんだけれども、自由世界第二位の経済力とこう政府が一々そういうことを言うのだけれども、一体、第二位の経済力日本にあるんだろうか。  確かにGNPだけとらえれば、つまり一年のフローでとらえれば第二位なんですよね。ところが、国民所得一人当たりでけさの新聞を見れば世銀発表は十六位です。GNPでとらえてそして第二位の経済力だからそれだけの役割りを演じなければいかぬということはちいっと思い上がっているんじゃないだろうか、少しGNP主義ではなかろうか。  と言いますのは、たとえば社会資本の蓄積とかあるいは個人の蓄積、こういうものはほとんど関係ないのか。一年のつまり経済の総生産の流れをぽっととらえて、それだけで第二位の経済力だと言うけれども、たとえば、これは国によって年次が違いますけれども、道路の舗装率なんかを見ると、もちろん先進国で日本が一番びりっかすだし、下水道の普及率なんていうものは、農業がかなりウエートの高いフランスに比べても、これは半分ですよね。イギリスなんか経済成長率がろくすっぽないと言ったって九四%下水道は普及している。日本は二三%ですからね。その他、たとえば住宅にしても一人当たりの部屋数なんというのは、これは日本が最低なんです、一々数字を挙げませんがね。ひどいのは都市公園の面積なんというものは、これはもう話にならない、二十分の一程度。そういうように社会資本の蓄積というものは非常におくれているのですよ。これはヨーロッパ産業革命後の努力というものはかなりそういうものが実った蓄積を私は残していると思う。  日本は、GNP主義で、個人も意外と貧乏人だし、社会も貧乏なんだ。それにかかわらず、二言目には自由世界第二位の経済力を持っているのだからどうのこうのということを平気で政府は言うのだけれども、本当に経済力というものをそんな薄っぺらな、たった一年の流れでとらえたことだけで一体誇るに足るものであろうかということも一遍考えてみる必要がある。私は、南北問題の解決に努力をするななんということを言っているんじゃないんです、これもやらなければいかぬ。しかし、これはひょっとすると一つの大国のわなかもしれぬ、GNPでとらえているのは。そして出し方が鈍いのなんのと言われるんだけれども、こっちが少し反省するところがあるんではなかろうか。  昔は、国富の調査といいますかね、そういうものがあったけれども、いま経済企画庁に聞いてもないわけですよ。これはひとつ外務省の役人の方もこういうのをよく勉強してほしい。これは、外務大臣、どう思いますか、自由世界でのこういう誇り方を。
  40. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 日本が自由世界では経済第二位であるからどうこうという、そういうものの言い方、それから思い上がった考え方はこれは誤りであって、これは訂正しなきゃならぬと思います。その考え方こそ日本が捨てなければ、また、経済協力で、黒字がうんと出てきたから黒字減らしに経済協力をやるという考え方、これも余りに利己主義な考え方だと思います。私の外交演説の中にその言葉があったのははずみでございまして、おわびいたしまして、今後は、言葉遣いに注意をいたします。  ただ、申し上げたいことは、経済協力というのは、私は、やっぱり日本安全保障とはつながっておる、こう思います。日本はあり余る金でよそを助けてやる、こういう傲慢な考え方ではなくて、つらい中にでも開発途上国、特にアジアを中心とする国々の国づくり、開発に協力してこそアジアの平和が保てる。したがいまして、確かに社会資本もおくれております。おくれているからこそ減税よりも公共投資という、こういう案が出てくるわけでありますから、それはもうはっきり証拠が出ているわけであります。  ただ、申し上げますと、よその国に行ってお使いをいたしますと、よく、ASEANでもそうですが、そのほかビルマその他に行っても、日本経済協力経済協力と言うけれども、われわれに一番近い日本と遠いヨーロッパ、どっちが経済協力をたくさんやっているのだと、こういうことをよく言われるわけであります。GNPの比率からだけでは数字が必ずしも出てくるわけではありませんけれども、日本がよその国と比べて経済協力をやっている額というのは、GNPの比率で申しますと、スウェーデンの一位、二位のオランダを初めとして十三番目になっているわけで、決して私は経済協力がやり過ぎておると思いません。今後も、つらい中でも、つらい中の経済協力こそ一億の金が十億に響くようにやっていかなきゃならぬ、こう思っておるわけでございます。
  41. 秦野章

    ○秦野章君 どうもごまかされたような気がする。  経済協力はやるなとか何とかそんなことを言っているんじゃないんですよ。強い者が弱い者を助けるのはあたりまえのことで、特に日本人の精神というものはそこらにいいところがあるんだろと思うんですよ。そうじゃなくて、空振りみたいなもの、自由世界第二位の経済力だと誇って、こうやって外交演説を国会で――これはやはり英文に訳して世界じゅうの在外公館にも配るんでしょう、世界に物を言っているわけでしょう。だから、私は、平和とか安全とかというものは実に着実な努力、また国際寄与も着実な努力が必要なんです。それで私は言っているので、南北問題その他、そういった問題について乏しいながらも努力するというのは全く賛成です。それはそれで結構です。  次に、米ソの国防白書を見て感ずるのですけれども、軍事バランスといいますかね、ソ連のたとえば海軍なんかの増強ぶりはここ十年大変なもので、これは日本の国防白書にも出ているわけですけれども、この軍事バランスが平和を維持しているという必要悪みたいなものも、これはどうにもならない一つの認めざるを得ないものですけれども、八〇年代のバランスというものを考えたときに、若干の国民の不安というものがあるのは、今度の国防白書を見ても、アメリカはヨーロッパ第一主義といいますかね、ヨーロッパには実に軍事力の増強を図っているわけです。戦車などを初めとして、しかも恐怖の核抑止力を信じているわけにはいかないということを言って、通常兵器による戦争の危険の可能性というものを訴えているわけですよ。通常兵器による戦争の危険というものはヨーロッパにあるということを訴えて、ヨーロッパに通常兵力の増強を図っておる。ソ連も、もちろん、戦車その他大変な増強を図っておる。それは相互の関係でそうなるんでしょうけれども、ヨーロッパには非常に重点的に力を入れている。  考えてみれば、第一次大戦、第二次大戦、すべてヨーロッパから始まってアジアはあとから出てきたんですから、ヨーロッパが第一だということはわかるのですけれども、第一がヨーロッパ、第二が北東アジアということになるのはアメリカの世界戦略としてわからぬではない。ただ、アジアは非常に大事だと言いながらどこまでやってくれるのか、アメリカは。また、日本はそういうものを頼りにしなくても平和と安全が保たれるのかといったようなことについての若干の不安がベトナム以後において国民の間にあるような感じがするのです。これはどういうふうに理解したら、国民に理解してもろうたらいいわけですかね。
  42. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 軍事上の問題は、私が発言しますと、誤解をよく受けますので、注意をしながら申し上げますが、国防白書から見る私の感じでは、特にNATOの方にアジアの方から持っていって強化するというふうではなくて、おっしゃるとおり、前々からNATOが重点であり、第二番目がこちらの方だったわけでありますので、ただ、こちらでは変化があるのは韓国から地上軍を撤退するということだけが少し変わっておりますが、太平洋――北太平洋あるいは西太平洋における展開部隊の戦力はこのまま維持するということが大体今度の国防白書であろうと考えておりまするし、それから国際情勢から見ても、予見される将来に非常な紛争が起こるとも考えられませんし、朝鮮半島においても、これは米中ソともに現状維持ということが大体の腹のようでありまするし、北と南の軍備の均衡が保たれておりますから、ここでも予見される近い未来において大きな紛争はない、こう判断しておるわけであります。
  43. 秦野章

    ○秦野章君 防衛局長、八〇年代の日本をめぐる軍事情勢というものを考えたときに、アメリカの第七艦隊も、ソ連の太平洋艦隊も潜水艦に核を積むのは常識だと思うのだよね。いまでも積んでいるんじゃないかと思うのだけれども、どうですか、その辺は。
  44. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 潜水艦の中には、いわゆる核を搭載したポラリス、いわゆるSLBMという型の潜水艦がございます。それから、同時に、攻撃型の潜水艦にもいわゆる魚雷その他で核装備が可能であるというふうに考えております。
  45. 秦野章

    ○秦野章君 それから八〇年代になると、巡航ミサイルを潜水艦に装備するということも、これまた常識じゃないだろうか、どうだろう。
  46. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 巡航ミサイルはいま開発中でございまして、これをどういうものに搭載するかということはまだ詳しくは存じておりませんけれども、艦船、飛行機等に搭載されるということが予想されております。
  47. 秦野章

    ○秦野章君 艦船と言ったっていろいろあるがな。  それで問題は、この間ミッドウェーが横須賀へ入ってきたときに戦術核が載っていたか載っていなかったかということで衆議院の方でもいろいろ論戦があったわけですね。アメリカの世界戦略というものの中で、たとえば原子力潜水艦に核兵器を積むということが必要なら、これを阻止する力は日本にはなかろう。阻止するどころじゃなくて、アメリカの世界戦略を承認させられるという立場ではなかろうか、横須賀問題を抜きに、そのことをちょっと聞きたい。
  48. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 世界戦略の中で、アメリカは核戦力というものを戦略核戦力とそれから戦術核戦力というものを考えているわけでございます。したがいましてアメリカ軍の作戦の中にはこの核戦力というものが重要な位置を占めているということは当然のことでございますが、同時に、わが国の非核三原則というものがありまして、それに抵触するような形でミッドウェー等が入ってくるというようなことはないというふうに考えているわけでございます。
  49. 秦野章

    ○秦野章君 核三原則は、それはアメリカも理解しているでしょう。ただ、日本の核三原則という一種の国内原則よりもアメリカの世界戦略というものは強力であるはずだ。これはもうソ連とアメリカ、超大国としてね、強力であるはずだ。その世界戦略の中で、原子力潜水艦が核兵器を持つということはぼくはあると思うんだね。  その場合に、たとえば横須賀へ入ってきたと、あれは三原則に反すると騒ぐんだけれども、そういう世界戦略というもので平和を維持するんだという世界の宿命であるならば、非核三原則が国連の人権宣言ほどの値打ちもないし、私は、三原則で、つくらず、持ち込ませずというのはいいことなんだけれども、守らなきゃなりませんけれども、領海十二海里の外を核兵器を持った軍艦がうじゃうじゃして走っているのは安全で、十二海里から中へ入ったら危険だという論理は物理的に成り立たぬだろうと思うんです。十二海里と言ったらすぐそこだよ。その外側をソ連もアメリカの軍艦も要するに核を積んでいるんだよ、十二海里の中へ入ってきたら危ないんだと、こういう理屈は実はきわめて観念論であるから、私は、核三原則というものは、やはり安保条約のもとに横須賀軍港を基地として、何というか、認めている以上は、海なんだから、陸へ持ってくるんじゃないんだから、わざわざ十二海里の外で外せというばかなこともないんだよ、外す必要もないわけだ。十二海里の外が危なくなくて、十二海里の内が危なくなるというみたいな理屈で言っているもんだから、いつもよけいな騒ぎばかりしていると思う。これは三原則の放棄でも何でもない。私はもっとリアルな判断をぴしっとしないから非常に混乱をするだけだと思うんですね。港の中へ入ってきたら外で走り回って衝突するより安全かもわからないんだよ。要するに、論理的でないと思うんだな。だから十二海里の外もいけない、非核地帯をつくれというようなことを言うんなら、あるいは軍縮問題でいくんだということなら、これは実にりっぱな話なんだ。十二海里の中と外で何かやり合っているというばかばかしい議論を衆議院、参議院を通じて予算委員会でもいつもやっている。これはばかばかしい議論だと思うんだが、どうだな、これ。政府はやっぱりまともに答弁できないかな。
  50. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生は危険性の問題だけでおっしゃったわけでございますけれども、衆議院の予算委員会でも御説明したわけでございますが、今度の国防白書にも明らかにされておりますように、戦術核でも使用するということは全面戦争にエスカレートする危険があるから、これは十分注意しなければならないということを特に明記してございます。このことはアメリカの国防白書では初めてはっきり言われていることでございますが、実は、十数年前に……
  51. 秦野章

    ○秦野章君 簡単に簡単に、時間ないから。
  52. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ソ連も言っているわけでございます。したがいまして戦術核を使用する戦闘というものが極東においてすぐ行われるというふうには考えられないわけでございまして、そういった意味で日本の非核三原則を守るというアメリカの立場というものがアメリカの核戦略というものを大きく阻害するというふうにも直ちには考えられないわけでございます。
  53. 秦野章

    ○秦野章君 まあこれは伊藤君にそんなこと答えろと言っても無理かもしらぬが、余りいつまでもごまかさぬ方が私はいいと思うんだよ、物事は堂々とやった方が、国防なんという問題は。だから、これは研究問題だと思うんですよね、政府、自民党を挙げて。  それから、もう時間がだんだんなくなってきたので、法制局長官、お待たせして済みませんがね、ミグ25がこの前入ってきたでしょう。それでレーダーでつかまえられないというて防衛庁を非難したりなんかしたんだけど、仮にレーダーであれをつかまえられても、そしてあのミグ25が逃亡じゃなくてね、やっぱり日本を偵察する――東京急行というのかな、領空侵犯の事例はどのぐらいありますか、年間、一言。
  54. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 領空侵犯というのは、実は、過去二十数年間で四件しかございません。
  55. 秦野章

    ○秦野章君 これから日ソ関係がどうなってくるかわからぬが、いずれにしても仮定の問題として、領空侵犯をやって、それでスクランブルで日本の戦闘機が二機ぐらい飛び立っていくわけでしょう。ところが、正当防衛と緊急避難という論理、そういう論理でもって一種の領空侵犯機を迎えるわけだよね、迎え撃つんじゃなくて迎えるわけだ。それでこの領空侵犯機がたとえば非常にずうずうしくてね、北海道から低空飛行でずっと仮にやるとするんだよね、それどうにもならないんだよね。だから、あれはレーダーでつかまえられなかったなんて非難しても、これどうにもならぬことで、レーダーで仮につかまえても、たとえば堂々とした侵犯機でもずっとこうやってきても、向こうが撃たなきゃこっちは撃てないんだ、正当防衛だから。こっちからは撃てないというようなことになっていると思うんですよね。そして国際公法、戦時じゃなくて平時の国際公法上の慣例では、一体その辺が、伊藤君、どうなっておるんだね。領空侵犯をしたときの侵犯された国の態度というかな、それは。
  56. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 御提起の問題は、法律的に申しますと、国内法の面と国際法の面と両面あると思います。  国内法的には、御存じのとおり、自衛隊法の八十四条に、領空侵犯が行われたときには、自衛隊は、これを着陸させ、またはわが国の領域の外に上空から退去させるために必要な措置をとることができる、こういう制度になっているわけなんでございまして、いまの低空か上空かということは、実は法律的には余り関係のないことでありますし、それから日本の自衛隊では探知できない、つかまえられないとか探知できないじゃないかというのは、これは事実問題でございまして、私の方からお答えする限りではないと思います。  それで、わが国の領空を侵犯した外国の軍用機を仮に探知したと、そういう場合には、いま申しました八十四条で必要な措置ができる。ここまではまず問題がないわけなんでございまして、実は、じゃその必要な措置としてどこまでのことができるかということになると、国際法的な面がずいぶん重要視されるわけでございます。  そこで、まず、領空侵犯機に対しまして、自衛隊の航空機は、通例は、そこで警告を発する。もうあなたの飛行機は日本国の領空に入っています、出て行ってくださいという警告を発する。あるいは最寄りの飛行場へ着陸しなさいという警告なり命令を発する。それにも従わない場合に、それじゃ撃ち落としていいかどうかというせっぱ詰まった問題になるわけですが、そういう国際法があるとは私たちは承知しておりません。むしろ、外務省の御説明によりますと、警告を発した段階で、警告に従わないからといって直ちにこれに追撃、その他の武力による対抗措置がとれるかと、それは無理であろうというふうでございまして、やはりそういう外務省の御説明は、裏から言えば、現在の一般国際法から言えば、その程度で、つまり警告に従わないという程度でこれを撃墜するということはむしろ国際法違反だということになって、日本の憲法で言えば、むしろ九十八条の問題になってくるんではなかろうかと思うわけでございます。
  57. 秦野章

    ○秦野章君 威嚇射撃はどうなの。
  58. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 威嚇射撃といいますか、警告をするときに信号射撃ということはあるわけでございます。これは警告を発する方法で、まずボイスで国際信号を使ってやる場合、それからバンクを使って視認するような形でやる場合、さらに信号発射というようなこともあるわけでございます。
  59. 秦野章

    ○秦野章君 そうなると、結局、モラルというか、法的な根拠は「必要な措置」と法制局長官は言うけれども、必要な措置というのは別に具体的権限ではないわけだ。抽象的権限だから、必要な措置というものは、確かに撃ち落とすなどというようなことを言っているわけではないし、それから正当防衛というのは、ぼくはあると思うけれども、正当防衛というのは向こうがやってこなきゃこっちもやれないということだから、それはやっぱり簡単に言うと、結局、モラルみたいなことになっちゃうのか。  たとえば領空侵犯をやって、結局ずうずうしい者が勝ちだと。もう威嚇射撃も、もちろん撃ち落としもできない。冷戦時代にはすぐ撃ち落としをやったけれども、いまの段階では、とにかく後ろに二機くっついて、領海の外へ出るまで行って、また帰ってくるという商売をやっているんだということなんだね、結局は。簡単に答えてくれ、時間がないんだから。
  60. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 現実の問題といたしましては、世界各国がどういうルールでやっているかということは、これはわかりません。というのは、それぞれの国が発表しておりませんから。しかしながら、いま自衛隊がやっているような形であるということは考えられるわけでございまして、先ほど、私ちょっと間違って四回と申し上げましたが、五回あるうちで、意図的に侵略といいますか、侵入してきたというのはあのミグ25のときだけでございまして、あとは計器の故障なんかで警告を発するとすぐ出ていったというのが実態でございます。
  61. 秦野章

    ○秦野章君 伊藤君、やっぱりよその国のことはわからないというのは不勉強なんだよ。そんなことはもっと勉強して、できるだけ国際的なレベルで物をさばいていくという充実した内容を持っていかなきゃならぬ。それがやっぱり一つの防衛の姿勢だと思うのですよ。  これは長い長い国家と国家の対立の歴史の中で、国際法というものはかなり普通の法律と違ってぴしっとしたものじゃないけれども、何かぼくはあるだろうと思う。U2機なんかがよくおっことされたな。ああいう冷戦時代のことは別としても、私は、極言すれば、モラルだけなのかどうか。あるいは国連というものが非力になったとはいえ、国連もあるんだし、そういうようなことを、よその国はわからないという程度でいっていいのかどうか。  これは一種のミグの後始末的問題なんだけれども、いずれにしても、たとえば幾ら言っても誘導に乗ってこない、外にも出ていかないというときは、威嚇発砲ぐらいすることがあってもいいような気もするのだね。しかし、威嚇発砲したからって、法制局長官、これは憲法上の国際紛争に武力介入したことには私はならぬと思うのだけれども、どうだろうね。
  62. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) わが国の領空を侵犯した外国の軍用機が、わが国の自衛隊の航空機に対して発砲してきた。つまり抵抗をしてきたので、まあ正当防衛のようなものですから、それでそれに反撃を加えて撃ち落とすこともあり得ると思うのです。これはいまおっしゃいました憲法の第九条とは関係のないことなんで、第九条というのは、国権の発動としての戦争なり、武力による威嚇、武力の行使はしない、それは国際紛争を解決するための手段としては放棄したと言っているだけでございまして、しかし、独立国としての国有の自衛権を否定しているわけではない。これは国連憲章五十一条にあるとおりでございまして、そのわが国に対する武力攻撃というのは外国からの計画的組織的な武力攻撃というふうに解されますので、通例の偵察に来るとか、あるいは先ほど防衛局長から説明がありましたように故障で入ってきたとか、それがその途中からわが方に対してたまたま抵抗をしてきた、これを撃ち落とすということは、これは正当防衛のようなものであって、憲法九条とは関係がない、そういうふうに考えます。
  63. 秦野章

    ○秦野章君 あと一つだけ、真田長官にちょっと。  最近、衆議院の論議の中で、防衛力の相対的な観念で、つまり相対的に防衛力が増強されることは何か歯どめがないというような議論が出た。私はそうは思わぬけれども、歯どめがないという言論が少し出てきたから、それは間違いだと思うのだが、長官から、ひとつそこのところをぴしっと説明してもらいたい。歯どめがないということでは無論おかしいのでね、それを最後にひとつ。
  64. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) いまおっしゃった問題は、これは一月の三十日に参議院の予算委員会で私が御答弁申し上げたのが誤り伝えられまして、そして歯どめがないじゃないか、従来の政府の見解を改めて新解釈を出した、あるいは憲法の拡張解釈をしたというふうに伝えられまして、それで大騒ぎになったわけなんですが、私が申し上げました真意は、それは防衛力というのは、自衛力というのはやはりわが国を守るわけなんでございますから、諸般の事情はもとより、そのうちの一項目として軍事科学が進んで外国の軍備が非常に精巧になれば、わが国を守るためにはやはりそれに足るだけの軍備の進歩、自衛力の進歩は必要であろう。しかし、それは無条件に伸びていいものではないのであって、それは憲法上の制約はもちろんありますということははっきり申し上げておるはずでございます。
  65. 戸叶武

    戸叶武君 きょうは、園田外務大臣が、あすを控えて、福田首相と安倍官房長官と三者で話し合いをやって日中平和友好条約締結の最後の詰めをやるというので、すでに腹は決まっていると思いますが、新聞記者の諸君が大平幹事長に聞くところによると、大平幹事長も、福田首相が決断を示せば、その段階で党内の意見調整を行うということを言っているので、すべて問題はあすにかかわっていると思います。  あすを前にしての今日でありますから、率直――園田さんは直というので、率直をもって特徴としているようですから、きわめて素直にこの大きな問題に対して、大体三月ごろは行く予定だということまで憶測されているんですが、憶測では物足りませんから、どういうふうな煮詰めと、タイミングはどうとっているか、それを素直に答弁してもらいたいと思います。
  66. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 率直に言えということでありますが、私はどうも口が下手でありまして、ふんわり物が言えない。ときどき問題を起こしますから慎重にお答えしたいと思います。  私が訪中するとか、あるいはその他のことはほとんど全部推測記事でございます。ただ、申し上げられることは、日中友好条約交渉再開についての手順、段取り等について話し合いを始めたことは事実であります。したがって、だんだん時期が迫りつつあるということは申し上げられるわけでありますけれども、締結の時期であるとか、私が訪中する時期であるとか、段取りがどうなるかということは、いまの微妙な段階では、どうしても申し上げるわけにいきませんので、御勘弁を願いたいと思います。
  67. 戸叶武

    戸叶武君 これは非常に重大な問題ですから、福田さんでも園田さんでも慎重過ぎるほど慎重にやっているんだと思いますが、この条約の問題点はほとんど煮詰まっておりまして、去る十四日、佐藤正二中国大使が中国外務省の韓念竜次官を訪ねた際にも、先方から、日本側でやるとなればいつでも受けるという態度で万々中国側の腹は決まっているのです。決まっていないのは日本だけだと思います。  そこで、最終的な詰めの段階に来てもまだ慎重をきわめているのは、一つは、やはり覇権問題の条約における取り扱いの問題と、一つは、ソ連に行って率直に外務大臣は日本の腹を示して、向こう側の同意を得る――立場立場があるんですからですが、踏み切った発言をしていると思います。それに対する対応というものも多少あると思いますが、先ほどの質問の方は大変心配しておりますが、やはり外交は複雑怪奇な面はいつでもありますけれども、みずからの主体性を確立して相手を説得するだけの見識と決断がなければ外交なんていうのはやらない方がいいんです。相手の顔色を見ながら物を言うというのは、これは売笑婦的な外交です。やはり誠意が立場立場で通ずるか通じないかは別問題として、とるべき手順は踏んで、そしてやってきた園田さんの態度は私は高く評価します。その成功、不成功は別として、外交というのはかくあるべきということを一度政府みずからが示さなければ、日本政府は何やっているんだろう、福田さんは夜が来たんか昼が来たんかわからないようなお方だという評判まで出て、ついでに園田さんまでその仲間へ入れられちゃうんですが、そういうふうに、私は、物には国と国、それぞれの立場がありますから、それは一応配慮しなければならないが、踏み込むべきときには踏み込む、決定すべきときには決定する。政治家の生命は見識であり決断であり、その出処進退というものが私は政治の価値を生むのだと思いますが、園田さんは私が言わなくてもそういう新学を持っている方だと思います。問題は、この覇権の問題ですが、中国では覇権問題というのはいま始まった問題ではありません。中国革命の父の孫文が、ソ連と手を握って軍閥打倒をやろうという最後の瞬間に日本に来て、神戸で日本に訴えたあの大アジア主義――大アジア主義なんていうのは日本側でつけた題にすぎないんですが、あの中で側々として日本国民に訴えたのは、西洋と日本を便宜上彼は区別して、西洋の覇道主義と東洋の王道主義というものを対比して、われわれは王道主義で行くのだ。日本は大変アジア民族に対しては日露戦争に勝ったことにおいて白人帝国主義にじゅうりんせられたアジアに希望を与えた。けれども、その後のやり方というものは西洋の覇道主義に影響を受けているが、その底には、まだ東洋の王道主義的なものがあると信ずるという形で訴えたのであって、彼のねらいはやはり不平等条約の撤廃、特に治外法権の具体的な撤廃、そういうことに重点を置いて、当時としては米英帝国主義に対抗するためには、孫文は、ソ連は手を差し伸べてくれたが、ソ連だけでなく、日本なりドイツなりと結ぼうというこの模索の中であの訴えをしたのだと思います。抽象的に日本ではきわめて古い形の大アジア主義者が孫文の言葉の片言隻句をとらえて物を言っていますが、あの現実の政治家として高い理想を掲げながら、最後に訴えた訴えというものは今日の中国がそれを堅持しているのです。   〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕  中国はいろいろな点で欠点もある国民です。しかし、中国の外交の中には貫くものがあるのです、一貫性があるのです。私は、信義というものを重んじ、一貫性を持ち、誤ったことに対してはこれを変えていくという勇気もあると思うのです。そういう点を、園田さんは、どのように覇権問題をめぐっての中国側の苦悩と模索と前進についてつかまえておりますか。
  68. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまお教えいただきました孫文先生の最後の「日本の友人よ、王道を捨てて覇道を取るなかれ。」という演説は、私も、いましみじみ読み返しておるところでございます。  覇権問題では、すでにこれは論議の対象ではありません。日中共同声明で明確に示してあるところでございますから、この立場によって処理すべきものと私は判断をいたしております。しかし、この覇権問題をどう取り扱うかということは、これは条約の中身の問題でございますから、いま申し上げるわけにはまいりませんが、全文で御理解を願いたいと思います。  なお、外交について勇気を持ち、正しきことを行い、堂々と主張するところは主張し、見識を持ってやれというありがたいお教えは深く胸に刻んで、この問題を処理したいと考えております。
  69. 戸叶武

    戸叶武君 いま今日の時点における日中平和友好条約の締結というのは、日本と中国だけの問題でなく、日本が平和憲法を守り、非核三原則を守り、核拡散防止条約に対する締結に踏み切り、そうして前進している平和共存の外交の基本路線――やはり外交と防衛の問題、広い意味における安全保障の問題は国の大事であります。これに対する基本線を揺るがすような形でいろいろな兵器が変わってくるから、それに沿うて防衛力を増大しなけりゃならないというお気持ちもわかりまするけれども、いま世界の大勢というものは、ソ連とアメリカが戦争するようなことは絶対にありません。どっちも傷ついてマンモスのごとく滅びていくじゃありませんか。自分の危険が内在していることは百も承知なのはソ連とアメリカであります。自分の方で兵器をつくり、それを世界じゅうに平気でばらまいて、そうして至るところでトラブルを起こしていれば軍需産業はもうかる。もうかるついでに賄賂もその中へ贈り込もうというのでやっているのが今日の世界各国を腐敗させている根源じゃありませんか。  私たちは、アメリカが人権宣言の精神を強調し、及び何とかして軍縮の方にも前向きのゼスチュアは示しておりますが、アメリカでもソ連でもまだ踏ん切れないのは――一番踏ん切って、アメリカにでもソ連にでも、世界の発展途上国の共鳴を得ながら、微力たりといえども世界の世論を形成して――そうしてこのできない戦争を幻想的に戦争の危険があるかのように不安感を与えて、朝鮮と連合して本物の演習をやるなんてことをやって刺激するようなやり方はあたり迷惑です。   〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 こういうやり方に何らの抗議もできないで、唯々諾々として、とにかく安全保障にはアメリカに頼っていなけりゃならない、ソ連を刺激しちゃいけない、こういう受け身の形だけでは、平家の公達が滅んでいったように、日本は受け身の中に何にもできないで滅んでいくんです。  いま、軍縮の問題に対してあるいは核兵器の問題に対しても、国際会議において予備会議とも言うべきところにおいて日本の代表は常々と意見は言っているが、さて、日本の外務大臣、奥にいる総理大臣は何を考えて、露払いに何をやらせているのかわけがわからぬというのが世界の私は一つの疑惑だと思うんです。  もっとやはり大事なのは、一国の総理大臣が民族の悲願を担って全人類を――秦野さんが言ったように、理想主義というのは甘ったるい汁粉のようなもんじゃないんです、魂が厳しくこもって全人類の心を揺すぶらなけりゃ、そんなものは何の力にもならないんです。いま日本がやる外交における大きな力の源泉は、原爆戦争なんかやったら人類は滅びる。アメリカもソ連もそれがわからないはずはない。人に迷惑をかけるようなことはしちゃいけない。武器を海外に輸出しちゃいけないと言いながら、中近東にどんどん武器を輸出しているじゃないか、こういうことは改めなければだめだと言って具体的な事例によって立ちはだかって、各国とともにそれを抑えるんじゃなくて、何かうまいことがあったならば、ロッキードの前例もあるから、ここいらでつまみ食いをしても一向に差し支えないじゃないかというようなことを繰り返したら、日本は一番無節操で無気力で世界を揺るがす何物もなくて滅んだその記念物として、国会も墓場に似ているからなんといってピラミッド型に保存されるようになったら、えらいことになると思う。  私は、そういう点で、この国際会議に、三人も外務大臣が大体できて、本物は、一番中心は園田さんのようですが、やはり園田さんなり福田さんが国際外交舞台に行って、笑われようが、さいなまれようが、やはり日本は、この道以外に人数の生きる道はない、日本だけの問題ではなくて、アメリカでもソ連でも変わってもらえなければ世界は修羅の世界になっていくと切々として訴えるだけの気力のない人に、今後の日本安全保障の問題、外交の問題を託することはできない。護憲運動なんかよりはもっと強い民族死活の問題をひっ提げてわれわれは闘わなければならない段階に来たと思うのです。  大正の二年から三年の時分のあの桂内閣なり、あるいは山本権兵衛内閣をぶっ倒した国民の気力というものは根底にあるんです。戦争はできないんです。暴力革命も成功しないんです。そういうことに対して明確な回答を持たない。しかも、若者に憤りを与えるようなモラルの低下によって政治の不信から今日の混迷は出ているんですが、外交の中からそれを一掃していく以外に、私は、日本みずからの主体性を確立することはできないと思うので、園田さんはつらいと思う。つらい立場だけれども、まあ度胸があるのが取り柄だし、感度もいいから、ひとつこの辺で踏ん切ってもらいたいと思うんです。
  70. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) お教えは十分守りまして、軍縮総会では、いま教えていただいたようなことを考えながら訴えて帰るつもりでございます。
  71. 戸叶武

    戸叶武君 これは、園田さんだけじゃなく、福田さんもやはりやらないと、世界が、日本というのは金もうけだけやって世界の人々に何もプラスなことをやってくれないというあれがあると思います。  初めは、なかなか聞いてくれないと思う。そんなことは現実離れをしている空理空論と言うけれども、もう二十一世紀まで二十二年ですよ。フランスの予言者は、四百年前に、一九九九年に人類は滅びるという予言まで、当たらないでしょうが、出しているくらいで、予告はいっぱい出ているのです。だれでも良識のある人は、バートランド・ラッセルでも、あるいはアインシュタインでも、この危機感の上に立って私は一つの物を言いながら亡くなっていったと思うのです。ああいう彼らやトインビーに流れているような高邁な精神が政治の中に躍動しなければ、政治というものは軽べつされます。インフレなんというのは政治の信用です。ドイツのインフレがとまったのもデノミじゃないんです。政治の信用を取り戻したことによってインフレの困難がとまったんで、いまのような金さえあれば、権力さえ握れば悪いことはしほうだい、金はもうけほうだい、弁護士であろうが裁判官であろうが、ある力を持って動かせば何でも唯々諾々として応ずるというふうな風潮は日本の滅亡寸前の姿です。  このことをいままで日本から出てきたいろいろな予言者は言っていた。いまはその予言者すら出てこない。もう出てくる余地がないほど私は悪い気流の中に包まれていると思う。これが危険だ。危険を知らないで火を放つとガスが爆発するんです。私はその寸前に来ていると思う。これはまじめな人が今日それを言っているのです。  個々のいろいろな、私は、あの国会の論議、委員会というものの論議も速記録を十分読み、新聞も読んでいますけれども、本当に民族の心を揺すぶるだけの論議がどこでなされているんですか。毎日、教育に熱心な奥さんたちが自殺したり、子供が不良になったり自殺したりしているが、この生きた悲劇に対する回答が政治の世界のどこに出ているんですか。私が残念でならないのは、減税、これも理論がある、しかし、そのぐらいの減税では何にもならないぞと、これも理屈がある。しかし、借金主義でいけば後で返さなけりゃならないぞ、負担も重いぞと言うが、この福祉の問題なり教育の問題なりに、いろいろな審議会だなんだと言っているが、抜本的にこれに回答を与えていない。せめて外交の世界で日中平和友好条約を通じて、日本も中国もけちな考えでなく、世界の人々の心を揺すぶるような、みずからも規制して、そうして相手を思って言うところへ行かなくちゃだめなんじゃないですか。  いまの自民党の中で――あの中ソ友好条約の軍事条項、特に朝鮮事変が起きる一年前、日本アメリカとが軍事的な協定を結ぶであろうという予測の前に日本を仮想敵国として条約を改定したのは事実であります。しかし、あの改定のときのソ連の態度のむなしさを腹から憤って、毛沢東なり周恩来がソ連と離れていったのも事実じゃありませんか。政治は条文、形式じゃないんです。心がこもってない、魂がこもってない条約なんか百つくったって、そんなものは何の役にも立たないんです。私は、もう本当に条約の末端に立つのでなく、現実において中国とソ連が兄弟国と言いながらも、あのような対立が生まれているじゃないですか。条約じゃない、条文じゃないじゃないですか。民族の心に違反するような、心温まるものがない以上は、どんな条約を結んでも人を動かすことはできないんだと思いますが、ソ連と中国の間を往来して、外務大臣は、どのように中ソ間におけるこの対立の現状、それを乗り越えて日本が入ったならば、いわゆる対立でなく、それを乗り越えてもっと平和共存の体制をつくり上げるという自信をお持ちか。  対立の方向へわれわれが行くんでなくて、やはり中国も日本もふん抜けた、ヤルタ協定であれほど悲劇的な運命の中に、フランスもソ連も、侮辱された日本も、それの解消は日本の外務大臣はいままで言っていない。われわれは樺太を返還しろじゃない、千島を返還しろじゃない。ソ連、イギリス、アメリカ共同で戦時中おける軍事謀略協定を、みずから次の平和条約をつくるべきときには解消するというのが未来の平和を保障する基本的な条件であり、姿勢じゃありませんか。それをサンフランシスコ講和条約であろうが何であろうが、受け入れようが受け入れまいが、烈々として訴える勇気と見識がないところに今日の日本の外交の自主的な姿勢が欠けたんだが、まあ過去を言ってもしようがないから、今度は私はしっかりとした形で、なるほど日本も中国も憤りを胸に秘めながらふん抜けたな、全人類のために訴えているんだなということを、あっと驚く為五郎じゃないが、びっくりさせるような条約を仕上げてもらいたいと思うんですが、どうですか。あんたならどうもできそうな顔をしている。
  72. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私は、モスコーで先ほどの問題が出た最後に、戸叶先生ほど高邁な意見を言いませんでしたが、もともとあなた方は兄弟の国であるべきはずだと、その兄弟の国の争いを、両方の争いならともかく、その飛ばっちりを日本にかけられてきては困る。日本はむしろおたくの国と中国がいつの日にかは仲よくなることを願い、必要があればいつでもその仲に立ちたいと思いますということだけは訴えてまいりました。  そのほか、いろいろお教えいただきましたことは、日中友好条約締結交渉に入りましたならば、いまのお教えを抱いて、本当に世界の人類の平和を願う人、こういう人々が喜ぶような条約をつくり上げたいと考えております。
  73. 戸叶武

    戸叶武君 そこで、ぐっと下がって、一つの貿易の問題に入りますが、日本の財界人の巨頭連中も世界の方々じゅうを回っている間に大分聡明になって、世界的視野で外交を考えようというところまでは来たようで、なかなか勇気も出てきたようであります。ソ連にも行き、中国にも行き、アメリカにも行き、ECにも行き、どうも金のあるやつはうらやましいと思うが、こうやって世界と接触している間に、石頭もずいぶんやわらかになって、時勢を見てきたと思うのです。  そこで、中国側でも、きょうあたり決まるんかと思いますが、大幅な貿易拡大に応ずるようですが、これをどのように外務大臣は見ておられますか。
  74. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 日中長期貿易取り決めがいよいよ調印されたということでございまして、政府といたしましては、もちろん日中間の将来の発展を念頭に置いて今回の妥結を歓迎しておりますし、これによって日中関係政府間のみならず、あらゆる分野でさらに友好的に発展していくことを期待している、こういう受けとめ方でございます。
  75. 戸叶武

    戸叶武君 上海その他に大規模な製鉄所をつくるというあの問題は、外務省としては正確に把握しておるんですか。
  76. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 外務省といたしましては、現段階では、まだ新聞報道以上のものを正確に把握しているという段階ではございませんで、民間での話し合いの進捗状況に応じて、政府としての側面的なあるいは直接の協力の分野があるならば検討していく、こういうことでございます。
  77. 戸叶武

    戸叶武君 何かアメリカ日本の貿易拡大に伴う延べ払い方式に対して、中国に特別の便宜を図るんじゃないかという、少しおせっかいな話だが、それで一つのいちゃもんをつけてきたというんですが、その真相はどういうのですか。
  78. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 日中間の取引についてアメリカが具体的に何かいちゃもんをつけたというような事実は、全くございません。
  79. 戸叶武

    戸叶武君 毎日新聞に載っている「中国要請の輸銀延べ払い緩和」に対してアメリカが反対を申し入れたという内容の記事は、全くこれはないのですか。
  80. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 事実を承知しておりません。
  81. 戸叶武

    戸叶武君 承知していないではなく、これだけ一流の新聞が堂々と書いているのに、これは承知していないでは済まないんじゃないかと思います。  「中国の延べ払い債務は、米商務省調べで四億二千百万ドル(昨年は四億二千万ドル、来年は三億五千五百万ドル)にのぼるという。このため中国は、わが国政府、財界に対しても「年利は六%程度、頭金はゼロで、返済の据え置き期間も長く設定してもらいたい」と非公式に申し入れていた。」これに対するあれですが、アメリカのクーパー国務次官、国際経済担当者ですが、クーパー次官の意見が「西側諸国が無秩序な輸出信用供与競争を中国やソ連・東欧諸国に対して行うことは、自由諸国の政治的団結を保持するうえで問題があり、中国などの一方的利益にしかならない」という理由を述べているということですが、全然そういう情報は入ってないんですか、外務省には。
  82. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま後段でおっしゃいました、先進国の間での開発途上国に対する援助についてのいろいろの紳士協定の話は、これは前々からございまして、ただ、日中関係について特にアメリカから日本側に公式に何か言ってきたかということは、そういうことはございません。
  83. 戸叶武

    戸叶武君 先ほどの外務省予算説明の中においても、外務省予算の半分以上が海外経済協力の方に向けられているというふうなお話でしたが、先ほどココムとチンコムの話があり、ココムはなくなったがチンコムはまだ生きておると思いますが、ココム、チンコムが生きている時分に、とにかくニクソンさんは、アメリカ自身の景気回復なり行き詰まり打開のためには、自由主義国家だけを相手にするのではなくて、中国やソ連ともあるところまで手を結ばなけりゃいけないという決意のもとに、頭越しで中国、ソ連訪問をやったんだと思うんです。  いまアメリカ自体は、いろんな関係があって、ヨーロッパに力を入れているのが事実で、軍事力もいろんな点においてもアジアから手を引いて、日本の防衛や軍備をもう少し拡充しろと言いながら、貿易の面の拡大は抑えようとしているのではアメリカとしては都合のいい考え方ですが、日本の行き場所がなくなる。アメリカでもECの国々でも、日本の貿易のやり方に、間違いもあるでしょうが、いま中国と日本とが、中国の簡単に言えば近代国家になるのをいろんな理屈はつけるが、もっと遅いテンポにしろというところにねらいがあると思いますが、中国でも、私は、近代化が進むならば、硬直した姿勢よりはもっと自由を拡大し、もっと民族の繁栄をしなけりゃならないという、古いぎこちない形の全体主義的な国家から脱皮していかなければならないときが来る。これは余計なことを他国にやらなくても、歴史の必然であります。  そういうときに、人権宣言を口にし、自由を強調し、そして世界の平和共存を説く国々が、なぜアジアにおける隣接の中国に対して、イデオロギーや国家性格を乗り越えて、人道的見地に立って日本が友愛の実を示そうという努力に対して不動金縛りのようなことをするのか。それは立場立場があると思いますが、これは外務大臣を中心として三人の外務大臣並みの人が本当に力を込めていけばわかってくれるんじゃないかと思いますが、それをしてもわからないと思いますか、どうですか。園田さん、これから頻繁に国際会議が開かれるんですが、その一つ一つの場合において、あなたがソ連に言いづらいことでも言うべきことは本当に本音を――本音とたてまえは違うんだなんということを言わないで、真実を訴えているように、真実を訴えていけば、おのずから私はわかってくれるのじゃないかと思いますが、どうですか。私は、そういう意味における人的交流なり相互理解が欠けているところに問題があるんじゃないかと思いますが、あなたはどういうふうにお考えですか。
  84. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) チンコムはすでに廃止されております。ココムもだんだん緩和の方向へ行っておりますが、この問題についても、いま仰せられたような線で、日本と中国が逐次経済が拡大していくように努力をしたいと考えております。
  85. 戸叶武

    戸叶武君 日本の財界人は、中国だけでなく、アメリカの方にも行って輸入促進をやろうというので、大型の訪米団をつくっておりますが、いろいろな形で日本の財界人なりあるいは政治家なり、とにかく一応アメリカなりソ連なりにも気がねしなければならないと思うんですが、やはり本当のことを言うならば、私はわかってくれるんじゃないかと思うんですが、それができないところに一つの大きな問題点があるので、この前も、私は漁業の問題と食糧の問題で農林大臣にも来てもらってお話ししたのは、牛場さんなんかはどうもアメリカ一辺倒かと思っていたら、牛場さんなんかやっぱり言うべきことはあるところまでアメリカで言っておりますが、言うべきところで本当に言わなけりゃならないような日本の、非公式かどうか知らないけれども、農林関係の権威あるお人たちというのがアメリカに行っても、あんまりはっきりしたことは言わないで、見物でお帰りのようだけれども、これでは、とにかくアメリカの中間選挙を前にして、アメリカの農村出の議員が一つでも選挙民に有利なことを日本に求めようという心情はわかりますが、アメリカのそういう農民代表の意見だけをほとんど聞き入れてしまって、日本の農民なり漁民を犠牲に供するというようなやり方では、一体、どちらの国の農民代表であるかという、そろそろ日本の農民もばかじゃありませんから、各地方からそういう意見も出てきております。  これは、議員だけでなく、日本の政党なり政府なりの政治姿勢というものに対して、アメリカに対しては日本は弱いんだから、今度はおれの方でもと、カナダもやり、あるいはソ連の方でも、アメリカの言うことを聞くのにおれの方をなめているという形でいったら、日本はなめられほうだいで終わっちゃうんじゃないかと思いますが、これは外交の中に貿易の問題、食糧の問題、エネルギーの問題、きわめて重要性を増した問題が内在しているんですが、これに対して、中近東その他を回ってきた経験もあるところの園田さんは、どう見ますか。
  86. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中近東は、それぞれの国で若干の相違はありますけれども、第一は、資源のない日本が心配しているよりも、産油国の国々は自分たちが石油がなくなったらどうやって国をつくっていくのかということを深刻に考えていることが非常に着目すべきことであります。そこで、中東諸国が求めておるのは、自分たちが資源がなくなった未来のことも考えて国づくりをしたい、その国づくりに対する協力を頼むというのが真意でありますので、それから出発をして、私は、中東諸国との貿易あるいは経済、技術の協力を進めていかなければ、単に石油を売ってくれる国であるから石油を切らさぬようにしてくれという考え方は間違いである。日本がやはり中東諸国にとって必要な国である、しかも、その必要な日本の役割りが何であるか、こういうことから貿易その他は出発をしていかなければならぬと思います。  日本に期待するところきわめて大でございますから、それぞれの国と相互理解を深めながら、貿易あるいは経済、技術の協力をますます進めていく所存でございます。
  87. 戸叶武

    戸叶武君 一つの具体的な事例として、川崎重工業が大型ヘリコプターを、また富士重工業、三菱重工業等が海外に飛行機の輸出のために努力している。川崎重工業の大型ヘリコプターはすでにサウジアラビアで受け入れることになったということで、これも飛行機といっても軍用の飛行機でない以上は飛行機生産だっておくれをとるべきではないと思いますが、中国のような土地はさらに広大な土地であって、今後においちゃ鉄道も日本から学ぼうと言っておりますが、あの大陸の交通というものはやはり飛行機を相当使わなければ円滑に、なめらかにできないと思うんですが、そういうことに対して中国側でも何か飛行機製造の大きな工場をつくるんだというような考え方もありますけれども、具体的には、日本側との締結なり、打診なりはどの程度のものが来ておるんでしょうか。
  88. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま御指摘になりました中東諸国に対しては、港湾であるとか鉄道であるとか、そういうことに対する協力には重点を置かなければならぬと思います。  特に、イランの国は、ほかの国と少し違っておりまして、イランの総理大臣は、私に対して、現在の日本とイランの協力は未来に向かってかじを修正すべきときだというりっぱな言葉を吐いたわけでありますが、具体的に言うと、イランの総理大臣は、わが国が持っているのは石油だけではない、鉄鉱もあれば何でもあるんだから、ひとつ日本からやってきて、技術が入って、そうして第一次産品に対する鉱業というものはここでやったらどうだと、そうして共同でよそへ持っていって、日本はこれを持っていって、さらに高度の工業化をすればいいじゃないかなどの話をしておりましたから、そういうことも踏まえて、いま御指摘のようなことに重点を置き、さらに量においてもふやしていかなければならぬ、このように考えております。
  89. 戸叶武

    戸叶武君 いま、政府は、廃油国の中でもイラン、サウジアラビアその他、重点的にこれと協力しようという態度を示していますが、具体的には、どのような成果を上げていますか。
  90. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 話題としては、港湾であるとか鉄道であるとか、あるいはその他の問題が出てきておりますが、検討する段階に入っているのは、いままで出ておる石油化学のプロジェクトであるとか、その他が出ているわけでありますが、私の考えとしては、そういう話し合いをしてまいりましたから、両国でもっと話し合いを詰めて、それでぜひ中東諸国に、総理のおいでになることを願っておりますので、総理がおいでになるまでには、そういう具体的な問題の話し合いができるように準備をしたいと考えておるところでございます。
  91. 戸叶武

    戸叶武君 このごろは、文化使節的な形で中国で廖承志さんが三笠宮御夫妻の訪中を要請しているということですが、三笠宮はオリエント研究の学究であり、シルクロードにも関心を持って、中国の殷墟やあるいは揚子江沿岸、黄河沿岸における遺跡等の研究も相当なされていると思います。このような相手国から、皇室の人だとかなんだとかというのを抜きにして、とにかく両方にプラスになるような人の文化交流を進めようというような考え方というものは素直に受けとめていいと思うんです。さらにまた、皇太子はブラジルに行くようですが、特に三笠宮が今度行かれるということは相当私は成果を上げると思いますが、園田さんは、どういうふうにこれを見ておりますか。
  92. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 三笠宮殿下が中国側から招待を受けておられるということは、政府としては、まだ承っておりません、情報の程度でございます。しかし、具体的に外国訪問が実現される前にはいろいろ詰めるべき問題もございますから、いまから具体的にどうということではありませんけれども、私としては、三笠宮が招請によって外国を訪問されることは結構なことであると考えております。
  93. 戸叶武

    戸叶武君 これは考古学者とともに民族学者などというものも、植物学者も鉱物学者もそうですが、中国とも交流をやらして、政治的な形だけでなく、もっと日中関係の文化の掘り下げというものもやる必要があると思うんです。  私は、蓉さんという婦人の国際法学者で、お父さんは広東の大学の教授をしており、国際基督教大学を出て、エール大学の大学院を出て、東大の博士課程をやって、それからいまニューヨークへ行っておりますが、その人が、中国で最初にソビエトをつくり上げた毛沢東に農民組織、農民の中にあるエネルギーというものは無限なものであるということを教えた彭湃君の研究をエール大学で読んで訪ねてきたんです。いろいろな歴史が常に権力者本位に物を書かれておりますけれども、歴史の秘史というか、日中関係におけるいままでの留学生や魯迅の時代、戴天仇の時代あるいは周恩来の時代、摩承志君の時代、もう日中関係においてそういう中国側にも人が出ておりますけれども、日本でももっと日中関係の秘史というか、そういうものをやはり人間関係の結びによって――不幸に彭湃君なんかも一九二九年のクーデターで上海で殺され、彭湃デーは設けられておりますが、歴史の中において埋没させられておるような人がいっぱいあるんです。  こういう点にやいて、日中平和友好条約と並行して、明治維新における志士をいい悪いは別問題としてねんごろに葬っているように、日本と中国は、よかれあしかれよきものを求めて民族の犠牲となったような人たちを慰めるような一つの保存も試みる必要があり、これは外務省なり文部省なり、あるいはもっとも民間団体でしょうけれども、やはり歴史が人間を生み、人間が歴史をつくっていくんです。人間を大切にしない国には信義というものは実らないと思うんです。  今度の三笠宮の問題でも、やはり岡崎嘉平太さんのような人が間に入っている以上は、これは根拠のある人で、中国側では村田省蔵さんとか高碕達之助さんとか岡崎嘉平太さんというのは信用しているんです。そうじゃなくて、何かうまいことはないかというような形でうろちょろしていたんでは、これも趣味だからとめるわけにはいかないけれども、日中関係の本当の友好の太い線というものはつくられないんじゃないかと思うんです。どうぞ、そういう意味において、そういうことも外務大臣はやはり気にとめておいてもらいたいと思うのであります。  ただ、私は、ここで心配なのは、一種のファシズム現象が強く出ているんです。新聞の論説にも出ているけれども、国民投票なんて言いますが、議会民主政治を捨てたのなら別ですが、国民投票という名のもとにヒットラーもナポレオン三世みたいな愚かなやつも国民投票ということで出てきた一つのデマゴーグです。私は、日本の政治家の中には、はったりの巧みなデマゴーグが非常にいま幅をきかしている時代だと思うんです。いまの政治哲学の中で一番基本的問題は、形式的な民主政治でなく、やはり内容的な民主政治を求めるのであって、オリガーキーかデモクラシーかの政治哲学の根源に対する論争よりも、具体的な事実を基礎として私は民主主義の固めをやっていかなければ日本は危ないと思うんです。こういうふうな、いまだれでも識者が考えているのは、第二次世界戦争の起きる前と同じような一つの政治気流が流れているということです。私はこのことを決してわれわれは無視してはいけないと思うんです。あのテレビなんかを見て、国会の放送は見たくないという人もずいぶんふえてきます。統計をとってみるといいと思うんです。しんはないし内容はないしと、こう言われたら国会みずからがやはり反省していかないと、えらいことになると思います。もう政府だけじゃないんです、国民のとにかく政治に対する不信、憤りはやはり国会にも向けられているんです。  どうぞ、そういう意味において、外交の問題に対しては、十分慎重さは必要であるけれども、やはり一個の文明史観を持ち、哲学を持って、少なくとも国の十年、二十年、三十年――二十一世紀まで二十二年ですからね、戦争が終わってから三十三年たっているんですよ、あれより短いんです。この三年、私はこの三年間が日本にとっても世界にとっても大変な激動変革の時代だと思うんです。先取りをやったやつが勝ちです。まごまごしてばか力を入れて、力を入れなくてもいいところをやればふん詰まりが来るのはあたりまえのことです。デノミをやったって間に合わないです、そんなことは。すべて経済に対しても外交に対してももっとダイナミックな、タイミングの合う、歴史は生きているんです、その流れに沿うて、ああそうだ、あのときは失敗したじゃ済まないんです。  日本じゃ日中問題に私は力点を置くんですが、あの二十一カ条の失敗というものが中国の青年たちを刺激して、あれが五四運動となって、新しいナショナリズムの源泉となって、日本がまいた種が反日抗争の中に中国の現在をつくったんです。日本の官僚外交と官僚軍部が行った外交がどれだけ日中関係の悲劇をつくったかわからないんです。一九一五年における加藤高明の二十一カ条――大隈が山県一派の策動に乗ぜられて、戦争を奇貨として中国に対して帝国主義的な要求を出したということが日中関係を悪化させた原点です。そしてシナ事変が起きたときのあの蘆溝橋の問題も、石原莞爾のごとき、あるいは柴山来四郎のごとき、参謀本部においても陸軍省においても若干の見識人があって、声涙ともに下る主張をやって不拡大を主張したって、統帥権が邪魔になって、そうしてどうすることもできない。しかも満州建国の夢を持っていたが、統帥権を悪用した人々の説教はやはり通じない。むなしい形において八年間の全面戦争になり、だれも日本が無条件降服するとは思っていなかったけれども、今後、世界の中における日本があのような官僚軍部に任して独善的な、ふざけた外交をやっていれば、取り返しのつかない私は悲劇が出てくると思うのです。私は、もう武器を持たないのだ、総理大臣でも外務大臣でも自分の体を張って歴史を刻むという態度を示す以外に民族を守る一つの守り方はできないのだと思うのです。  私は、そういう意味において、あの二月十一日はヤルタ協定によって屈辱を受けた日で、八月十五日は日本が無能な政治家をいただいたがために無条件降服をした日である。天長節、紀元節どころの騒ぎじゃない。いまだ日本はこのような悲劇をなめてきながらも、民族が臥薪嘗胆して、かたきを討つんでない。前方に向かって新しい時代を開く、こう天皇も宣言し、憲法は改正しないと誓って、そういうのにもかかわらず、私は、天皇を利用してみたり、あるいは紀元節を利用してみたりして、反動の歯車を変えようとするようなやり方で、憲法改正で再び統帥権などというものが復活したならば、人民主権は否定されるのであります、民主主義は破壊されるのです。そういうことが堂々と政府・与党の中において蠢動を許されるということは、たがが緩んだ証拠です。もしも憲法改正をしたときに、あれほど世界に誓った、みずから体を張って誓った天皇は即座に退位をしなければならない、世界に謝罪しなければならない。あんなばかなことが平気でとにかく行われるというのは、政府・与党の中に平和憲法を守る本当の哲学がひそんでない、これでは私は危険は倍加すると思うのであります。武器なくとも勝てる、勝てるという信念を持つのは世界の心をかち得ることです。  どうぞ、そういう意味において、私は、園田さんなり福田さんは慎重だから、それなりにもう腹切ってもいい用意をして、体を張っているんだと思いますが、いまのような形で党内だけの操作に夢中になると、蒋介石は相手にしないと言った近衛さんがみずから毒を飲んで死ななければならない。相手にされない方の人が長生きして、相手にしないと言った人が先に死ぬというのじゃ、これじゃ悲劇もはなはだしいものであります。どうぞ、そういう意味において、もっと雄大な構想を持って、あんまりけちな、ごまのはいのような、きんちゃく切りのようなとにかく政治論議は捨てて、ひとつ天下の大道を濶歩してもらいたいと思うのです。そうでなければ、日本というものはだれも尊敬しませんよ。まあ園田さんは幾らか尊敬されるかしれないけれども、福田さんあたりももっとやはり信頼される政治家になってもらいたいということをあなたからあしたよく言ってくださいよ(笑声)。そうでないと、インフレになっちゃいますよ、テロが出ますよ、本当に。こわいから、悪気流の中に、公害どころの騒ぎじゃありませんよ。そういう点――時間はあと幾らありますか。
  94. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) あと十分あります。
  95. 戸叶武

    戸叶武君 十分間、じゃもっとやわらかく聞きます。  ときにインドネシアの問題ですが、インドネシアから私たちが集めてくる情報だと、細かいことは時間がないから言いませんけれども、とにかく学生があの腐敗政治打倒、賄賂政治打倒のために相当な決意を固めて暴発時期をねらっておるようです。だから言論統制を強化しているんです。しかも食糧が足りないのは事実です。  農林省の人に聞いてみたら、とにかくインドネシアで食べる米はインド系の細い米で、日本の米では通用しないと言うが、それはうそです。インドネシアの上流の人はみんな日本米と同じようなものを食べているのです。ジャカルタあたりに行って食べてみればわかるのですけれども、湿地帯でとれる。稲作というものの根源は、東南アジアなりチグリス・ユーフラテスの方から来たのですから、オカボなんていうのは、騎馬民族や山岳民族が仕方なしにソバやオカボを食べたのですけれども、日本の米が余っていると言うけれども、米も食えないで餓死するという人がとにかくインドやパキスタンあるいはインドネシア、その他にあるんだが、そういうのは日本だけの責任じゃなくて、米の問題を中心に論議する国際機関がローマにおいても置かれていますけれども、国際的な共同の責任において、それをサイロでストックするなり、現地にそういうものを送るなりする。  そういう方針は、よく見たら、福田さんの歩いた報告、あなたも行ったのかな、あるいは鳩山さんかな、報告の中には、どれだけの金を援助して、どれだけの量の米を援助するということも書いてあるのですが、それは細かく引用しませんけれども、あなたは御承知と思いますが、今度前の農林大臣あたりが出かけるようですが、インドネシアもフィリピンもそういう危機をはらんでいるのです。外務省は金がないので情報が正確に入らないという泣き言も聞いておりますが、新聞記者の方はどうも正確には入っているようですが、その辺の事情はどういうふうに受けとめていますか。
  96. 中江要介

    政府委員(中江要介君) インドネシアヘの米の援助についての御質問でございますけれども、いま御指摘のように、インドネシア自身は相変わらず米不足に悩んでおるわけです。もちろん、インドネシア政府自身、食糧自給のために増産の努力はやっておるようですけれども、人口の増加がなかなか大きな率でございますし、他方、たとえば昨年などは干ばつ、虫害、そういったもののために米不足が深刻であったというようなこともございまして、いま御指摘のように、福田総理が昨年夏回られたときにもお約束しましたが、その後、昨年の十月にはさらに六十五億円の食糧借款を供与したり、最近には、また十万トンの追加の供与というようなことを検討して実施しておりますのも、いま申されましたように、諸般の事情がありましても、人道的な立場から援助すべきものは援助していかなければならぬ、こういうことで、KR食糧援助のほかに、延べ払い輸出、また現物供与、その場合にも、KR援助の場合ですと、日本米のみならず、タイやビルマの米もそれによって支給するということを取り計らっているという現状でございます。
  97. 戸叶武

    戸叶武君 これは非公式な形で農林省の若干権威のある人に聞いてみたが、金を向こうは欲しがっているんで、米だと倉庫代だとか悪くなるとか、いろいろなあれがあってめんどうくさくて、日本の米は高いし、それなら安い米をもっと簡単に手に入れるんだというので、金、金と言っているそうですが、かねがねそういう話は聞いておりますけれども、大体、日本の米よりも金と言うのにやはり米で約束したというのは、米が余っているから、輸送料も倉敷料もいろいろかかるだろうけれども、まず米でという、そういう研究の上で総理大臣の発言で約束だからしたんでしょうね、それはどういうことになっていますか。
  98. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま御指摘のようないろいろの事情もあったわけでございますけれども、最終的には、わが方の食糧庁とインドネシアの食糧調達庁との間で、日本の米は国際価格に比べると高いのでございますけれども、その分を円借と現金払いということを組み合わせまして十万トンということで合意されてまいったと、こういうことでございます。
  99. 戸叶武

    戸叶武君 どうも日本では安上がり農政で、それとアメリカの方の小麦を無理しても買わなくちゃならないという国際分業論に日本の財界もくみし、日本の官僚もそれにくみしたようですが、それによって小麦もつくれなくなった。米だけが価格が安定しているからみんな米へ米へと、実際困ったものだけれども、米だけがふえている。いま減反をやれなんと言ったってなかなか実行はできない。実際見てごらんなさい。町村にしわ寄せがあって、町村の財源のないところで責任を末端として負わせられたならば、日本の弱小自治体、自主財源を持たないところから私は財政破綻の危機が生まれて、米騒動の段階における暴動と違う形において底の深い抵抗がいま生まれてくると思います。  やはり米なら米を、若干の輸送料や何かがかかったとしても、米の足りないところにやるべきであって、金だけをやったんじゃもうどこへ金が行っちゃうのかとにかくわからないようになる。大体、アメリカ日本でそういうやり方を教えちゃったから、ほかでも政府の要路というのはたいてい悪いことをしても、まあ国のためだというので見逃されるという習慣をアメリカ日本からつけられちゃったから、どこでもそういっちゃう。韓国ばかりじゃない。韓国だって口に出しては言わないけれども、おれのところだけじゃないじゃないかと言いたいのが本音だと思う。そういう状態のもとにあって、日本の海外援助の問題はきめ細かく問題を処理してやらなくちゃならない。  米の問題でも、日本の米の学者というものは余り研究していない。ただ南から来たんだろうと言うけれども、チグリス・ユーフラテスから米でも麦でも出て、イタリア米でもあるいはスペイン米でも見てごらんなさい、日本の米よりちっとも劣ってやしません。アメリカのとにかくカリフォルニア米でもあるいは国府田農場でつくった米やモチ米でもどんどんハワイへでもブラジルへでも輸出されているじゃないですか。それから古代における焼米が古跡からいろいろ出ていると言うけれども、あれは騎馬民族が一つの食糧を運んだヨガの方式でつくった米の貯蔵方式です。そういうようなものをちっとも勉強していないで、そうして北海道なんかで災害があれば、全部あれですよ、とれないのが本当なんですよ。少しいろいろな品種改良をやったと言うけれども、それだけれども、北海道で米をつくりたいというのは、とれなくても共済制度が確立して金が入るという農政のインチキ仕組みによって、全部とれなければそれだけよけいに金が入るというような仕組みがそうしているので、もう少し日本の農業というものも根本的に考え直さなければ、酪農も何も私は発展しないと思うんです。  最近、非常に私が痛切に感じたのは、日本では生糸が足りない。日本は世界一の生産国であり消費国であったが、これこれ外国から買っているんだから、今度は、米をつくらないような田に桑を植えろ、そうすれば補助金も出してやる、いろいろな援助もしてやると農林省が言っているけれども、二十年ほど前にナイロンが発展したときに桑を抜けと言ったのが農林省、今度桑を植えろと言うのも農林省。農林省の言うなりになると百姓は日干しになっちゃうって悲鳴を上げております。  私が聞きたいのは、中国との関係です。中国における戦争中の日本の政策も、農民の繭をつくるのを抑えて、日本の養蚕農家を救おうというような考えの政策がずいぶんやられたんです。今度、私はやはり中国においても米だけじゃない、換金作物としての中国古来の山繭でもりっぱなものがある。その養蚕が私は伸びると思うんですが、その養蚕なり、繭、生糸、朝鮮からも相当入っていますが、そういうことに対する外務省は情報をキャッチし、その上に立って農林省やなんかと十分な連絡をやってそういう政策決定をやっているのかどうか。外交は外務省、農政は農林省、こういうセクショナリズムにおいてはもはや私はそういう問題の解決は不可能だと思うんですが、どうでしょう、園田さん。
  100. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 先生の御心配の農産物についての外交施策という面につきましては、十分農林省と緊密に情報も交換し、連絡をとりながら粗漏のないようにやっております。  農林省側の実情につきましては、農林省から御説明いただくのが適当かと思います。
  101. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) お答え申し上げます。  日本の米が東南アジア諸国では好まれない、そういうことはないのではないかというお話が一つございましたが、その点につきましては、一般的には東南アジア諸国は長粒種の米、日本の米は丸くて粘り気があるわけですが、長粒種の粘り気のない米を常食にしておるわけでございます。したがいまして一般的には日本の米は好まれないと言ってよろしいかと思います。ただ、食糧が不足するというふうなときに、日本の米を持って行った場合に、それが受け入れられないかと申しますと、そういうことは必ずしもございませんで、先般のインドネシアに対する食糧借款を活用いたしました輸出につきましても、これが受け入れられておるという実情にございます。  それから、もう一点、現在、わが国の米の自給は非常に大幅な過剰の状態にございまして、総需要量が千二百万トンを下回る千百七十万トン程度、これに対しまして潜在生産量が千三百四十万トン程度あるということで、五十三年度から水田利用再編対策ということで、水田を活用した、他の需要の強い、国内で生産する必要のある農産物の生産の拡大ということを図ることにいたしておりますが、そういうことをやるよりもむしろ輸出を考えたらどうだというふうなお話もただいまのお話の中にございましたが、これにつきましては、わが国の米の値段は約三十万円近いものになっております。国際価格は大体六万円程度でございますから、そのままの値段では相手国も受け入れてはくれない。したがって、これを出すといたしますと六万円程度ということになりまして、その差の財政負担は膨大なものになります。他方、農家自身がそれを負担するということになりますと、これは農家もそういった輸出はなかなかできない。結局は財政負担の問題になってまいりますが、ただいま申し上げましたように、たとえば十万トンで約三百億の財政負担が必要になる、こういったような財政食掛につきましては非常に大きな問題でございまして、やはりそれよりもむしろ他に国内でつくる必要のある農産物があるわけでございますから、そういうものの生産の拡大に努めていくということが必要かと存じておるわけでございます。
  102. 戸叶武

    戸叶武君 生糸のやつは、中国からの生糸の輸出。
  103. 野明宏至

    説明員(野明宏至君) まことに申しわけございませんが、それはちょっと私の担当でございませんので……。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ここ一週間来、衆議院の予算委員会あるいは外務委員会、当委員会、また記者クラブにおける総理の発言等を通じまして、多年の外交上の懸案であり政治的課題でありました日中条約交渉への手がかりと申しますが、促進と申しますか、ようやくその道が開けようとしていることは大変喜ばしいと思うんであります。  先ほども答弁を伺っておりまして感じますことは、いままでいろんな議論のやりとりの中で、特に共同宣言に盛られた覇権条項というものが非常に検討に値するというような背景等もありまして、恐らく交渉への一つの障壁になってきたんではないかということをわれわれ印象として受けとめておったわけでありますが、実際は、そうではなくして、むしろいわゆる共同宣言に盛られた精神を、どのようにその文言を整理しながら、しかも世界にそれを示す場合でもりっぱな条約であるという評価を得るためのいま作業が進んでいるというような趣旨の御答弁であったろうと私は受けとめたんですが、となれば、もう時間の問題であることは再々言われておりますとおり、もう指呼の間に望まれておるというふうに判断されるわけであります。となれば、当然、責任者である外務大臣がいつ、どういうときに中国を訪問するという軽率なことは言えないにしても、その時期はもう間近であると、まあこれは大変抽象的な言い方でございますね。場合によると、国会開会中においてもというような感触すらも受けられるわけでございますが、そういう意味においてその時期は大変狭まっている、近づいている、再度確認でございますけれども、そのように受けとめてよろしゅうございましょうか。
  105. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま仰せの中で御了解を得ておきたいことは、先般の韓念竜・佐藤大使の二人の会談は、交渉再開ではなくて、再開のための手順についての話し合いがあったわけでありまして、見通しとしては、御発言のとおり、そう遠からず御相談する時期が来るのではないかと内々考えておるわけでございます。  私の訪中については、総理も、すでに、外務大臣が訪中をすることも一つの方法であるという発言をされているとおりでございまして、必要に応じて、いつでも私は訪中する準備はしつつあるところでございますが、いつ出かけるということは、今後の両方の話し合いもあるし、これに対する具体的な検討も要るわけでございますので、私としては、なるべく早く行きたいと考えておるところであります。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ようやく日中間の展望が新しい方向へ向かっていま展開されようとしている、望ましいいま方向へ行こうとしているわけで大変歓迎.されることなんですが、この一衣帯水の中国がそういうことでいま新たな環境をつくろうとしている。ところが、もっと至近距離にある韓国の問題あるいは北朝鮮の問題となりますと、もっともっと厄介な問題が複雑に絡み合って、思うような方向というものが必ずしもとれていないんじゃないかという、そういう疑問が絶えずわれわれの頭の中をよぎるわけでございます。  きょうは、この限られた時間の中でどの程度お尋ねできるかわかりませんけれども、まず第一点として申し上げたいことは、一昨日でございますか、韓国の朴東鎮外務大臣が来られて、いろんな点についてのお話し合いをされた。伝えられるところによりますと、かねてからの問題であります大陸だなの関係、あるいは貿易、漁業の問題、あるいは朝鮮半島全体に対する情勢の話し合いというようなことが伝えられているわけでございます。  具体的にと、こうなりますと、当委員会での大臣の発言の中身というものはすぐ韓国政府なり北朝鮮へ伝わることは事実でありまして、なかなかそれは言いにくい面もあろうかと思うんですけれども、やはりわれわれが今後政府の考え方を明確にとらまえながら、ときにはわれわれもその判断の基準としつつ、今後の対韓国、対北朝鮮のあり方というものを考えなければならないという点については大変必要なことでございますので、どういう話し合いがなされたか、その点から最初お伺いしておきたいと思います。
  107. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、御理解を願いたいと思いますことは、一昨日の私と韓国の朴外務部長官との会談は、会談というよりも官房長官時代の懇意ではありますが、私が外務大臣になってからは初めての両方の話でございまするし、朴長官は今度アフリカその他の公館長会議で行かれる途中立ち寄って話をしようじゃないかということでございますから、一般の会談とはやや趣を異にしたことでありまして、場所等も会談室ではなくて、テーブルで茶を飲みながら、茶室でやったというかっこうでございます。  そこで、朴長官の方から話が出たのは、大陸だなを何とかよろしく頼む、これ以外には向こうからは出ませんでした。あとは私の方が話題を出したわけでございます。御指摘のとおり、近ければ近いほど、いろいろ頭の痛い問題が両国にあるわけでございまして、そういうことについて話し合いをしたわけでございます。
  108. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 韓国の問題をとらまえますときに、どうしてもすぐぱっと頭の中に浮かんでくるのが竹島の問題なんです。これはもう戦後ずっと今日に乗るまで未解決のまま放置されている。しかも外務大臣が交代されるたびごとに、ともあれ、どういうルートを通じておやりになるか私にはわかりませんけれども、日本のいわゆる領有であるという立場に立っての主張を厳重に韓国政府に申し入れを行ってきた。しかし、その効果が出ないまま今日まで来ているということは大変残念なことだと思うわけですね。  歴史的な経過等については、もうしばしば繰り返し明らかにだれが見てもこれは日本の領有であるということは動かしがたい事実である。にもかかわらず、言うなれば、大変論理の通らない、筋の通らない反論の仕方でもって韓国側は今日までかたくなな姿勢を崩さない。非常におかしいと思いますことは、日本が大分韓国の姿勢というものに押されぎみではないんだろうか。  なるほど、韓国が戦後経済復興をなし遂げるためには、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、日本からも莫大な経済援助というものを受けつつ、今日、ともあれ、中進国と言えるのかどうかわかりませんけれども、そこまでの規模を持つに至った。最近もより以上また日本政府としても韓国に対する援助協力というものを惜しまないという方針が貫かれているわけでございます。で向こうの方の要求というものは、多少の難点があっても、いままで大体のんでそれを具体化してきたというその経過を振り返ってみますと、余りにも向こうの言い分にこちらは言われっ放しじゃあるまいか。じゃ竹島は一体どうしたんだということで、このあたりでもう決着をつけるべきではないか。  これはもう常識的に考えましても、さらに五年、十年、二十年、三十年とたってまいりますときに、一体、その領有の問題はどうなっていくんだろうかという、われわれは死んでいく人間ですからね、まあどうでもいいかもしれません。しかし、残された子供なり孫という時代になった場合に、先輩は大変無責任なことを残してくれたなということがあってはやはりわれわれとしては情けないことになりはしまいかと先行きを考えますと、そういうことのおそれすらもある。これはなぜ竹島問題をしばしば議論の対象としなければならないか、私は多言を費やす必要はないだろうと思います、漁業問題が絡んでいるわけであります。いま二百海里時代という新しい環境を迎えたときに、果たして将来日本の漁民がこうむるであろう莫大な損害というものに思いをいたしたときの絡み、いろんなことが考えられるわけですね。一体、外務省として、園田さんとしては、その問題に対してどう一体毅然たる態度を貫いて、あるいはどういう時期に返還という事実関係をもってそれを立証できるような方向へこぎつけられるのかどうなのか、その辺の抱負と未来の展望をひとつ最初に伺っておきたいと思います。
  109. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 竹島については、全く御指摘のとおりでございます。歴史的事実に見ても、国際法上からも、わが国の領土であることは明々白々たる事実であると思います。終始一貫したこういう立場できておりますものの、御指摘のとおりに、不法占拠しておるわけであります。わが方は文書あるいは口上等でしばしば抗議をしておる、巡視船等で付近の巡視等も行って竹島からの即時撤退を要求しておりますが、遅々として進まない、こういう状況でございます。  政府としては、竹島の領有権に関する日韓間の紛争は平和的に話し合いで解決しようという基本線で決めておりますけれども、この基本的立場に立って粘り強くいま仰せられたような方針で一貫した態度で進めていきたいと思います。  この前の会談では平行線でございましたが、とりあえず私が言って向こうに納得さしたことは、少なくとも実績を積み重ねることだけはよしてもらいたい。話し合いは今後続けていくけれども、やれ調査団を派遣するとか、新しい看板をつけるとか、いかにもこれは韓国のものであるという実績を積むことは直ちにやめてもらいたいということで、向こうもそれは十分わかったと、こういうことでありますから、これをきっかけにして、逐次、いま仰せられた、御指摘されたような線でこれは交渉を進めていきたいと考えております。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 しかし、だれよりも園田さん御自身がいたくお感じになっていらっしゃるとおり、平和的、結構だと私は思うんですよ。そうあらねばならないと思うんです、日本外交のこれからの方針というものを考えた場合に、それは貫いていただきたい。しかし、そのためにはいろんな方法、手段というものが当然考えられるだろうと思うんですね。  三十年の間に一向に平行線をたどったまま決着がつかない。いまおっしゃられたように、竹島には既成事実というようなことで警備隊の常駐もやっている、時折発砲もされる、こういうような危険な状態に置かれながら、なおかつ手の打ちようがないんだろうか、そう考えざるを得ませんね。恐らく中国の次には――次にはということよりも、並行的に、特に最も関係の深い両国間におけるこの問題の解決というものは急を要さなければならないことは当然だろうと思うんです。いまどういう考え方がおありになるかということをいま直ちに問い詰めてみましても、恐らく平和的にという大変抽象的な言い方しか返ってこないんじゃないかというそのおそれを実は抱くわけであります。また、しばらくたちますと、次の外務委員会か、あるいは次の外務委員会になるかわかりませんけれども、また思い出したように竹島はどうなっていますかと、同じようなことの今日までずっと繰り返しであったことを私は残念に思うわけです。  で交換公文の点もありますね。昨年の三月の参議院の予算委員会で、私どもの同僚議員に対して中江局長もそれは言明しているんです。きょうは、その写しを、私、念のために持ってきているわけですけれども、ここで非常に微妙な発言をされていらっしゃるわけですね。  交換公文では、外交ルートで解決できないときは調停によって解決することになっている、これは当然ですね、盛られているとおりですから。それにも応じないとなると公文に違反となり、「別な外交問題として取り上げなければならない段階」に入る、こうおっしゃっているわけです。まあ一つの手順をお示しになったんだろうと私は思うんです。ただし、この「別な」ということは、もうそれ以上のことは何にも御答弁がないわけです。  国際司法裁判所への提訴の問題もございましょう、しかし、相手が応訴しない、応訴しなければ実際問題それは成立をしない。けれども、その問題自体についても、もっと問題解決の一つの突破口が開けないのか、一方的であるにせよ、提訴された場合にその問題を取り上げざるを得ない、こういう慣行がいままであったというふうに私ども理解をしているわけです。そういう面から、韓国側に対しても十分理解を示させる一環として、やはり強力な方向というものも、これは決して武力を用いてどうのこうのというわけじゃございませんので、これもやはり平和的な解決への一つの手がかりになるんではなかろうか、その点なんかについての含みはいかがでございますか。
  111. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 昨年の私の御説明を御引用になりましたので、いまの御疑問の点についてお答えいたしますと、まず、この交換公文で定められている手順を踏んでもそれに応じないというときには別な方法と出しましたのは、そのときには、国際約束に違反している相手国に対する国際法上の責任を追及するという形での方法になるわけですから、もはや紛争の解決の交換公文の実施という場面ではなくて、相手の国際法上の責任を追及するという方法に移るだろうということを念頭に置いて申し上げたわけでございます。  それから、もう一つ、国際司法裁判所に一方が提訴すれば相手が応訴するかという点につきましては、これは国際司法裁判所というものの制度から見まして、日本と韓国の場合ですと、日韓の合意がない限り、いかようにいたしましても韓国を国際司法裁判所の法廷に連れ出す、誘い出すということは不可能な状況でございます。したがって国際司法裁判所を強制的に利用するという道は、いまのところは、ないということであろうと思います。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私どもは、そういうこうかつなやり方に対して、あえてそういうふうに申し上げたいと思うんです。報復とか、そういう不気味なやり方は好みません、もちろん。けれど、何とか歯どめがいろんないままでの行きがかりの上において考えられないのか。いまおっしゃったことを通じて考えますと、これはもう無条件に絶望に近い行き方になってしまうおそれが考えられはしまいかという嫌いすら出てきます。その点、園田さんとしては、どういうふうに御判断なさいますか。
  113. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) なかなかむつかしい、困難な問題ではありますものの、いまのままにこれを放任いたしますと、いつの間にかこれが慣習になってしまって、全く絶望ということになってきますので、一度はぴしっとやらなきゃならぬことだと考えております。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに決意のほどは、大変短い御答弁でございましたけれども、おありになると思うんです。  で、やはりその時期が、くどいようですけれども、おくれればおくれるほど、これはどうにもならない焦りだけが残って、不満だけが残って、もう失望以外ない。ということになりますと、どういうレベルで、それは外相会談でやるのか、あるいは最高百脳会談で煮詰めてそれをやるのか、もうこれは事務段階じゃないと思うんですね、お互いに言い尽くしているんです。いまの国際司法裁判所にも応訴しないということも何回か繰り返されているんです。とすると、残るは一体何だ。やはり日本の立場を、もう強硬であれ何であれ、とにかくそれを認めさせるという、これはやはり対話を通じて向こうに明確な一つの考え方の転換を求めるような行き方、それはどういう話し合いが可能性があるのか、これは私どももなかなか容易に、こうする方法が望ましいとか言うことはできません。しかし、いずれにしても、いろんな文献、いろんな資料、そういうものがあるわけですので、そういう論理の積み重ねによって一つの道を開く方法ということもございましょう。ただ文書のやりとりでもって、日本政府はこういう主張だ、いや、それに対して韓国は違うんだという反駁のやりとりでは、私はいつまでたっても解決の糸口にはならない。やはり絶えず、折を見て園田さん自身がソウルに飛ぶなり何かして、この問題だけに限って一つの道を開くという、そういう方向でぜひ取り組んでいただきたいなとこう思うんですが、いかがでございましょうか。
  115. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまの御意見は十分理解をいたしまして、その方向に向かって検討してみたいと思います。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、北朝鮮の問題でございます。  これも古くて常に新しい政治課題であるわけでございますが、いろんな入ってくる情報、それが資料にまとめられる、その資料等を読んでみますと、北朝鮮のいま国内情勢もなかなか大変な状態である、どういうふうに大変なのかはさておくにいたしましても。いずれにしても、朝鮮半島の統一ということは、それは民族自決の立場からいって、これはわれわれが口にすべき問題ではないし、下手をすれば内政干渉というそしりを免れない、朝鮮民族御自身がお決めになること。とは言うものの、もう現実に社会主義国家と自由主義国家の二つに分断されているという厳粛なこの事実は否定できない。それぞれ異なった社会体制のもとで、これを一緒にしようといってもそれはなかなか大変なことじゃないか。もうよほどなアクシデントが起きない限りは、将来ともに考えられないということの判断に立てば、当然、北朝鮮における国交回復ということももう考えなければならない、むしろ進めなければならない、そういう事態に来ているんではないだろうかというふうに思えるわけでございます。  この問題も何回か取り上げられているんです。しかし、取り上げられておりましても、一年たてば一年たっただけ国際情勢は変わるわけでありますから、変化するわけでありますから、その変化の道程の中に再びやはり北朝鮮問題というものをどう政府としてはとらまえていかなければならないのかというお考えをひとつお示しいただきたいなと思うわけであります。
  117. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 答弁の方もまた何回も繰り返しているわけでありますけれども、北朝鮮が韓国の現政権を相手にしないという立場をとり、これを支持する中、ソ両国が韓国を承認していないという立場、こういうことから、現段階において、わが国が北朝鮮を承認をし、これと外交関係を正式に樹立することはまだその段階ではないと考えておりますものの、御意見のような点も多々あるわけでありますから、人的あるいは経済的な交流を図りつつ、事あるごとにこれを積み上げていきたいと考えております。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 なるほど、御指摘のとおり、中、ソが韓国を承認していない。それだけをもって果たして国交正常化への道というものが模索もされない、まだ遠い将来のことだと言ってしまわれるのか。  いろんな物の見方があるようでございまして、クロス承認なんてことも考えたらどうだろう、たとえば日本アメリカが北朝鮮を承認する、同時に中、ソが韓国を承認するというような、これも外交折衝の道程の中で当然取り上げられていかなければならない問題で、そういったことも踏まえながら、やはり日本日本としての外交上の自主性というものが貫かれていくところに今後も進んでいっていただきたいわけでございます。  となると、それはアメリカの場合にしても、あるいは中国の場合にしても、ソビエトの場合にしても、それぞれの国情が違う、いろいろな物の考え方も違う。日本と違って、そう簡単に国交正常化へ踏み切れるかとなると、やはり若干おくれる場合もある。あるいは場合によっては、アメリカのカーター大統領がすでにユーゴスラビアの幹部会の代表ですかに言明したそうでございますけれども、チトーのあの親書に対しまして、場合によっては韓国が同席するならば金日成と話し合ってもいいというような感触を示しているような環境にまでいま進みつつある。そういったときに、一番関係性の深い日本がただアメリカの動向だけをうかがって、そしてそのことを見きわめもし、取り決めもしていかなけりゃならぬということになりますと、またぞろ日本外交は後手を踏んだかと、大変な事態を引き起こしかねないことになることを実は心配するわけです。  すでに、これも言うまでもないことですが、自民党の久野さんが団長となって過去二回訪朝され、たった一つの民間のいわゆる北朝鮮と接触する窓口としていままで開いてこられた。けれども、もうすでに友好の段階は過ぎていると久野さん自身がおっしゃっているんですね、はっきり。やはり国交の正常化が図られなければ、特に、これも御存じのとおりの島根県あたりを中心とするあの地域の漁民がもう完全にシャットアウトされる。去年行かれたときですか、九月に、向こうの対外文化協会かなんかの代表と会って大変厳しい条件を突きつけられた。いわゆる二百海里の中における操業については、ことしの六月までは入漁料も払わなくてもいい、許可を求める必要もない、そういう一方的な表明をされたのをのんで帰らなければならなかった。ということになりますと、もしことしの六月三十日を過ぎますと、日本海においてはイカ漁、黄海においてはカニ漁あるいはフグ漁、こういったものがもう全然できないという締め出しの状況になるわけですね。  そうなったとき、一体、どこから道を開いて、その辺の調整を図るおつもりなのか。そうした現実的に差し迫った問題を実は抱えておるわけです。これはもう釈迦に説法みたいなもので、よく御存じのことだろうと思うんですけれどもね。そうしたいま現実の厳しい問題を前面に控えておりながら、なおかつ国交正常化への道がどうしても、韓国の問題等これあり、つながり等がこれあり、まだ手をこまねいてそこまで踏み切れないということは、余りにも日本外交としてはいかがなものかと思わざるを得ないんですが、その点、どのような感触を園田さん御自身がお持ちになって、その道を開かれようといま決意されているのか、御方針をお持ちになっていらっしゃるのか。
  119. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 非常に貴重な御意見を拝聴いたしまして、十分これを理解し、これから先のことを考えたいと思います。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 余りにもそっけないんだな。  中江さんは、いままで局長をずいぶん長いことお務めになっていらっしゃって経過をよくわきまえていらっしゃるわけだ。それなりに園田さんに対しても進言というとともございましょう、こうすべきではありませんでしょうかと。あなたが決定権を出すわけにはいかないにしても、いままでの経過を踏まえてどのような解決策があるのか。もう慎重にとか検討に値するなんといういま段階じゃないんです。具体的にどうすべきかという、いまその手がかりをつかまなければいけない、そういうところへ来ているんではないかということを心配していまお聞きしました。  大変慎重な、決断もお早いかわりに慎重な外務大臣ですからね、いまなかなかおっしゃらないんだろうと思います、対外的な影響をいろいろお考えになって。いまでの経過の中で、局長は、どういうふうに受けとめていらっしゃいますか。
  121. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 今回の国会の冒頭の外務大臣の演説の中に北朝鮮との関係部分がございまして、そこに、まず相互理解を深めることの必要性というものを説いておられるわけです。  その何よりもまず相互理解を深めなきゃならないということの意味は、先ほど外務大臣がおっしゃいました、北朝鮮の方で南にあります韓国政府の存在というものを認めないという、そこのところが日本としてはなかなかむずかしいところであるわけですけれども、日本自身は、御承知のように日韓基本関係条約を締結しまして以来、三十八度線以北、いわゆる北の部分について日本が何らかの関係を持つことにこの条約が支障にならないように配慮してあるわけですから、日本としては、北との関係を新たにいかように築くかということを進めるに当たっていまの日韓基本関係条約は支障にならない、こういう前提でありますけれども、同時に、日本が国交正常化しております南の政権の存在すらも認めない、そういうところについては、もう少し北朝鮮も現実に即した見方をしてもらえないだろうか。  と申しますのも、御承知のように、承認国で言いましても、いま韓国を承認しているのは百二カ国、北朝鮮を承認しておりますのは九十一カ国、その中の五十二カ国というのは双方を承認しておるわけです。国連で百五十カ国近くありましても、その三分の一に達する国は南北それぞれを承認しておるわけです。ですから、そういう現実から見ますと、やはり、行く行く朝鮮民族がみずからの道をどういうふうに選ばれるか、これはわれわれの関与すべき問題ではありませんけれども、現実に即して見れば、先ほど先生がおっしゃいましたように、南も北もそれぞれ百カ国余りあるいは百カ国足らずの国が承認しており、また両方を承認している国が五十幾つある。この現実を踏まえてみれば、日本が韓国との関係を持っていること、さらに言えば、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、北朝鮮としては、まずアメリカと話をして、それから韓国といいますか、南と話をする、しかし、その南でもいまの政権では話の対象にならない、そういう主張を固持しております間は、日本としてはなかなか正式の国家関係といいますか、承認まで進むのはむずかしい。  しかし、それだけでは済まされないということで、先ほど来おっしゃっておりますように、現実に処理すべき問題というのは次々にあるわけでございます。最も最近起きましたのが二百海里の経済水域です。北朝鮮の場合は、漁業水域ではなくて経済水域ということであったわけですが、この経済水域の実態、また、その場合に実績尊重の話をどういうふうにするのかということについて、これは現実に日朝双方で解決すべき問題だから、この問題をめぐって話し合いが少しはできはしないかというので、御承知のようにニューヨークを通じて政府間でも本件に限って話し合いができまいかということで打診をしたことも御承知のとおりです。しかし、それに対しても北朝鮮側からの反応というのはきわめて冷たいものであった、これはかつての松生丸事件のときもそうであったわけです。日本政府としては、北朝鮮を敵視したり、あるいはこれと対決したりという姿勢は一貫してとっておらないのでございますけれども、北朝鮮の方で十分応じてくるような反応がないために行き悩んでいるという状況でございます。  今度、六月三十日で民間の漁業のアレンジメンツが期限が切れますけれども、昨年のも、いまおっしゃいましたように、国際法上なかなか認めがたいような制限も受けなきゃならないような状況であったわけです。こういうものは是正したいという気持ちはあるんでありますけれども、果たして北朝鮮の当局との間で話ができるかどうか。私どもとしては、必要に応じては、そういうことも話ができればいいという気持ちでおるわけですけれども、相手の方が、いまの朝鮮半島に対する考え方というのが一貫してわが国が承認し友好関係を持っている韓国政府の存在を無視しているというところに――それは決して私どもとしては北朝鮮を敵視するものではないと思っておるんですけれども、北朝鮮から見ますと、その辺のところがあるいはわだかまりになっているかなという気がしますけれども、その辺のところをもう少し相互理解を深めていきたい。相互理解を深めて、双方ともが現実に即した政策がとれるようになることが前提ではなかろうかという意味で、今度の外交方針の演説の中で、何よりもまず相互理解を深めというふうに入れていただいたというのが経緯でございます。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に、もう一つだけ念を押して伺っておきたいんですが、確かにそのとおりの経緯であろうと私も理解をしております。北朝鮮側にとって日本の考え方をどう理解しているか、あるいは日本の韓国に対する姿勢というものに対してどういう考え方を持っているか、いろんなそういう絡みはもちろんあるんだろうと思います。端的に言えば、日本のかかる主張というのは聞けないと。  いま御説明にもありましたように、まずアメリカと窓口を開きたい。先ほど途中でも触れましたように、カーター大統領としても比較的積極的な姿勢を持っている、議会筋では反対論もあるけれども、その中でできれば早い機会に北朝鮮の首脳とも会談をしたい、そういう趣のことが伝えられております。もう一つは、今年春ですか、チトー大統領が訪米するという日程が何か決まっているようなことが伝えられております。そうすると、昨年ですか、チトーは北朝鮮を訪問しておりますし、恐らくそこでどういう話し合いが行われたのか、そういう話し合いを通じて、当然、カーターにも働きかけることが予測されるであろう。  そういった一連の国際間の動きの中で、やはり日本は捨てておけない問題であることはもう先刻御承知のとおりであるならば、まずやむを得ない、残念なことではあるけれども、アメリカを前面に押し出して一つの窓口を開く、いろんなことが考えられるんじゃないかと私思うんですね。ただ、このまま手をこまねいていたんじゃ、向こうの北朝鮮側の出方待ちだということになったんでは、私はまたこの漁業問題に対しても深刻な影響を与えずにはおかないということ、とにかく差し迫った問題が前面にはだかっているんだということの認識の上に立って、政府として、可能な限り、そしてまたあらゆる発想というものをお持ちになりながら、可能な限り、その道を開くということが、直接二国間の話し合いのみならず、いろんな国連の場もありましょう、アメリカとの話し合いの場もございましょう、そういう側面的なプッシュを通して北朝鮮への一つの政府間同士の話し合いの場が持てるような方向というものをぜひ開いていただきたい、これを最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  123. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いままでの経過並びに北朝鮮のわが国に対する態度はいま中江君が報告したとおりでございます。若干変化しつつある状態でありまして、近時、北朝鮮のわが国に対する接遇というか感情というか、何か微妙な変化を来しておる、私はその徴候もあると見ております。それから、アメリカの方は、北朝鮮とは韓国の関係があるから韓国抜きにして北朝鮮と接触はしないという方針を明言しておりますものの、やはり話し合いの機会があればという気持ちも情報として聞いておりますので、そういうことも含めながら、いま言われましたもろもろのことも考えながら、今後、十分考えていきたいと思っております。
  124. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、国連軍縮特別総会がいよいよ間近に迫ってきたわけですが、諸国の政府の意見といいますか見解といいますか、大体出されておりますし、それも見せていただいたのですけれども、今日の核兵器がどんどん増大しておる現状というのは大変な状態になっておると思うのです。  これは前回出されました国連の事務総長の報告等々によりましても、核兵器を中心とする軍事費が、一九六〇年代の後半では、年間世界的には大体二千億ドルぐらいの規模だった。それが今日一九七五年段階に来ると、三千五百億ドルという大変な増加を示しておる。これが世界の平和と安全を脅かしているだけではなくて、いろいろな経済的な圧迫をもたらしておるというふうなことも国連事務総長の指摘等々では出されてきているわけですけれども、こういう今日の核がきわめて急激に増大しておる現状、そういう中で今度の軍縮特別総会を迎えるという点について、現状に対する御認識と、今度の国連軍縮特別総会に臨まれる基本的な考え方を、各国政府の意見が大体出されておるという状況の中で、日本政府としてのお考え方を、まず最初にお尋ねしておきたいと思います。
  125. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 核軍縮は世界各国の悲願でありますけれども、しかし、現実は、その軍縮の実効は余り上がっていないばかりでなくて、軍縮を口にしながら、現状よりも注意をしなければ進むようなおそれがあると判断をいたしております。  そこで、今度の国連軍縮特別総会は、私は非常にこれを重視しておりまして、日本としても、また世界各国もこれに関心がある。また、米ソにとっても非常な問題の総会であると思いますが、私は、いろいろ問題がありまするし、具体的なこともありますけれども、日本としては、ただ一つの被爆国であります。したがいまして、わが国は、まず第一に核廃絶ということを大きく訴える必要がある。それを訴えないでおいて、現実的な問題から入っていくと、何か日本が消極的で中途半端でおるような印象を与えてはいけませんので、これは、私は、米ソばかりでなく、世界人類、世界各国に対して、唯一の被爆国である日本が二度とこのような悲惨なことをやってもらっては困る。われわれは、われわれの反省の上に、この前のようなことはしないが、また、われわれが受けた悲惨な状態を二度と繰り返してはならぬ。核廃絶、これが特別軍縮の目的であるということを大きくアピールすべきである。その上で、過去の状況あるいはお互いに相談し合う、いろいろな国連総会には日本と立場を同じくする国があるわけですから、こういう国々と相談をして、国際管理の問題であるとか、あるいは実験禁止の問題であるとか、それから核兵器用の分裂性物質の生産停止等の問題、こういう具体的な問題を諮って、後の方で言ったことはこれの実現を図りたい、こういうのが大体の私の方針でございます。  したがいまして、そういう意味から、できれば総理大臣、できなければ私が出ていって、本当に真剣に訴えてみたいと思います。
  126. 立木洋

    ○立木洋君 いま大臣がおっしゃったように、いままでの経過から見ると、十分に行われていないというふうな指摘もありましたし、ワルトハイム事務総長の報告の中では、いままでの経過についてある意味では失敗であるというふうな言葉も使われておる。ですから、今度の軍縮特別総会というのは、いままでの単なる惰性的な流れでなくして、相当抜本的な問題が議論される必要が私はやっぱりあるだろうと思うのですね。  いまお触れになった中で述べられていないんですが、核兵器の使用禁止の問題ですね、つまり使うことをさせないという問題というのはきわめて重大なことであるし、園田さんは原水爆禁止運動について全く御存じないことはなくて、いろいろ十分お知りになっているいままでのあれがありますから特にお尋ねしたいわけですが、やはり核兵器を使うということは国連憲章に反するものであると一九六一年の国連の決議の中でも述べられておりますけれども、前回も問題にされましたが、核及び熱核兵器を使用するいかなる国も国連憲章を侵犯し、人道の法に違反し、人数と文明に対する犯罪を犯すものとみなされるべきである、こういうふうな一九六一年の国連での決議もあるわけですが、この核兵器を使用するということがやはり国連憲章違反であり、人類に対する犯罪であるという点については、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  127. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 国連憲章は、御存じのとおり、個別的または集団的自衛の権利を認めておりますので、もちろん一般に武力の行使を侵略的な意図で用いることは国連憲章に違反するんでございますけれども、自衛的な目的で使います場合には、それは国連憲章で認められているというのが私どもの解釈でございます。
  128. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、前回、一九六一年の、いま私が読みました、使用するいかなる国も人類と文明に対する犯罪を犯すものとみなすべきであるということについては、大川さん、あの当時は日本政府は賛成したわけですよね、この第一項主文には。
  129. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) はい。
  130. 立木洋

    ○立木洋君 だから、いまでも犯罪とみなすべきであるというお考えに賛成かどうかということを大臣に一言お伺いしておきたいんです。政府が賛成しておいて、いまになって犯罪とみなさないというふうに変えられるのかどうなのか。
  131. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 言われますとおり、日本政府は、一九六一年にこの決議案が出ましたとき、これは実は国連総会におきまして核兵器の不使用という問題を決議案の形で取り上げた最初のケースではなかったかと思いますけれども、もちろん、その全体の趣旨にはわが国としても共鳴し得たわけでございます。核戦争の惨禍を防止しなければならない、そういう立場から決議案全体の趣旨には賛成という立場をとったんでございますけれども、具体的に核不使用条約署名するための国際会議を招集するようにという趣旨の第二項は余りにも具体的な問題であり、その点については日本は非現実的であるという立場から棄権したんでございます。
  132. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、時間がないから、その犯罪とみなすかどうかという、これは日本政府は当時賛成したんだから、だから犯罪とみなすべきであるという、これについてはいまひっくり返すんですか、賛成でしょう、いまでも。
  133. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) それは当然使用については反対でございます。
  134. 立木洋

    ○立木洋君 いま世界でやっぱり核兵器は使うべきでないと、核兵器は禁止すべきであるというふうに考えている国が大体どれぐらいあるかお調べになったことがありますか、これは局長で結構ですけれども。
  135. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) この一九六一年の決議は採択されたわけでございますけれども、それに基づきまして、国連の事務総長が当時の国連加盟国に対してこれについての考え方を求めたという経緯がございまして、その各国の返事の中で二十五カ国はその会議の開催に賛成、残りは反対で、あと五十カ国ぐらいが棄権と、特に返事をしなかったというようなことでございます。
  136. 立木洋

    ○立木洋君 それは一九六一年当時の話ですよね。で当時の状況というのは、二十五カ国じゃなくて、二十六カ国ですよ、おたくの方からいただいた文書に書いてあるのですけれどもね。それが今度核兵器の使用禁止問題について、これを徹底して討議する、審議する会議を持つべきであるというのが一九六六年、六七年に提起されたときには、このときには賛成が七十七カ国、反対はゼロ、棄権が二十九となっています。前回行われた三十二国連総会においては、この核兵器の使用といわゆる核での脅迫政策、これに反対することを求めた件については賛成が九十五、反対がゼロ、棄権が三十八というふうになっております。これは外務省からいただいた資料ですから間違いないだろうと思うんですが。ですから、圧倒的な国というのはやっぱり核兵器使用を禁止すべきだという考え方にずっと大きくなってきておるという状態が私は見えるだろうと思う。  ところが、こういうふうに核兵器は使用を禁止すべきであるという国際的な世論、それに賛成する国々が多くなっているにもかかわらず、現実に使用禁止が行われない原因は、一体、どこにあるというふうにお考えになっておられるのか、大臣からお聞きしたいのです。
  137. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) この核の使用禁止の問題は、もちろんわが国として世界で唯一の被爆国である、しかも……
  138. 立木洋

    ○立木洋君 日本政府の立場は後でお尋ねしますから、その原因を。
  139. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) その核の不使用という条約が仮につくられたとしても、それが果たして本当に現実に守られるであろうかという保証がないではないかということだろうと思うのです、一言で申しますと。
  140. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、端的に言えば、大川さん、やっぱり核の使用禁止をしてもらったら困る国があるから、できないんじゃないですか、現実に保証されるか保証されないかではなくて。  これは、結局、常にいままで国連の中でも第十六総会の場合も、先ほど言われたように、主文の第二、あるいは第十八国連総会等々でも、いわゆるこの問題をジュネーブ軍縮委員会で取り上げて議論すべきであるというふうな問題が国連で採択されておりますけれども、実際にジュネーブ軍縮委員会が開かれても、ほとんどそれについての審議が行われていない。ですから、今日に至ってはジュネーブ軍縮委員会というのは国連総会の軍縮決議の墓場ではないかというふうなことさえ言われておる状態にまでなってきておるわけですね。これは結局いわゆる核兵器の使用を禁止されては自国の核政策から見て困る国があるからだ、もっと端的に言うならば、核を保有している大国の思惑があるんですよ。さらにもっとせんじ詰めて言えば、やっぱりアメリカ政府としてはこれをやってもらったら困るということが私はあるからだと思うんだけれども、大臣、いかがでしょうか。
  141. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 核の不使用条約ができたとしても、どんどんどんどん核兵器の生産がふえていき貯蔵もふえていき、しかも、その核兵器の質的な改善をねらうための核実験も地下では依然として続いている、そういうような現実の状況で、仮にその不使用条約ができたとしても、果たしてそれが実効性があるかどうか、その点については私どもとしては非常な疑念を持っている。そこで、まず、そういった具体的な軍縮につながる措置が伴わないと実効性が上がらないんではないか、こういうふうに考えております。
  142. 立木洋

    ○立木洋君 たとえば、それなら核兵器の包括的な実験禁止条約というのが結ばれても、いま大川さんの言われるようなことで言うならば、実効性がないということなんですよ。言うならば、核兵器を全面的に禁止するという方向が明確にされて、そのプログラムとしてどうするかという形で実験の禁止の問題も使用禁止の問題も位置づければ、これは明確になるんですよ。だけど、いま政府が出されている今度国連に対する意見書の場合だって、核兵器全面禁止という協定を明確にして、それに対するプログラムの内容として包括的な実験禁止の問題を取り上げているわけじゃないわけですから、それは大川さんがそう言われるならば、私はその言葉をそのままそっくり保証がないからやったってだめじゃないでしょうかというふうにお返しせざるを得ない、実験禁止の問題についても言うならば。  しかし、いま核の使用という問題は大変な状態になっているわけですから、これを禁止してくれという世論があるわけですから、そして先ほど大臣も言われたように、私たちもそのように考えておりますという、核の使用する国はいかなる国であろうとも、これは人類と文明に対する犯罪とみなすべきであるということであるならば、これは使用を禁止するという条約を明確に日本政府は提起すべきだ。それを裏切るならば、それは裏切ったとして問題がより明確になるわけですから、その点で、日本政府がいままでこの核の使用禁止の問題が一九六一年の国連で取り上げられて以来、先ほど言いましたように、たとえば十八国連総会あるいは二十一国連総会あるいは二十二国連総会等々がやられてきておりますが、会議を開いて核兵器使用禁止条約の問題について積極的に議論をすべきであるという問題が提起されているけれども、それについては日本政府はいままでどういう態度をとってまいりましたか、国連のその決議に対して。
  143. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 先ほどの一番最初の六一年の決議のときには全体に賛成いたしまして、第二項には棄権した。それ以後の数回の総会で不使用決議案が出ましたときには、棄権いたしております。
  144. 立木洋

    ○立木洋君 だから、核兵器の使用を禁止すべきであるという問題を討議すべきであるということにすら日本政府は賛成をしないで、すべて棄権をしてきたという理由はいかがでしょうか、どういう理由でしょうか。  先ほどの大臣のお話で言えば、使うということは犯罪にやっぱりなるんだと、そういう考え方には賛成できると言われたし、日本の国が唯一の被爆国であるならば、広島や長崎を再び繰り返すべきではないというもう全国民的な世論ですよね。それにもかかわらず、使用を禁止すべきだという討議にすら日本政府は賛成しないで、大多数の国が賛成している中でも日本政府は棄権をしたというのはどういう理由でしょうか。
  145. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先ほどから申し上げておりますとおりに、日本政府の方針は、核使用禁止については、反対をしたその方針は一貫をしております。そこで、それをやるために、これを討論する会議を開催することが大事なのか、それともその目的に向かって一つずつ実績を積み上げていった方が大事なのか。しかし、その会議を開催するということに反対をしては、使用禁止に賛成をした態度が一貫性を欠く、何だかあいまいになってくる、そこで棄権と、こういうことになっておるわけであります。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 いや、大臣のいまのお話はやっぱりつじつまが合わぬですよ。一歩一歩どうやって核をなくしていくんですか。やっぱり国連というすべての国が参加している場で議論される、やっぱり使用を禁止すべきだという問題も含めて議論する、そういう場を積み重ねていって初めてそれが実現できるわけで、そういう会議を開くことには棄権をして、どこで一体一歩一歩やっていくのかという問題になってくる。  ですから、日本政府は、本当に核の使用についてはいついかなる場合でも使用を禁止すべきだという立場に完全に立脚しておられるのか、あるいは、核を使用するということにはわれわれは反対だけれども、しかし、場合によっては使うということもやむを得ないというふうにお考えになっているのか、その点はいかがでしょうか、大臣。
  147. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 日本国民の悲願とでも申しますか、究極的な願望としては、この地上から核兵器がなくされることをわれわれ日本政府として、あるいは日本国民として望んでいることは間違いございません。ただ、同時に、核の抑止力に基づく地域的な資金保障取り決めが現実にあるわけでございますね。それによってまた国際平和が保たれているという情勢でございます、今日は。遺憾ながらと申しましょうか、依然としてそういう状態である。そういう現実の世界においては、将来の目標はもちろんそのまま維持するといたしましても、当面は、この核不使用という問題は現実性がないんではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 結局、いかなる場合でも核の使用は犯罪であるという明確な立場に立つならば、やはりこの核の使用を禁止するということは、日本国民の悲願を日本政府としてははっきりとその立場を貫くべきである。  大川さんが言われたその後のしかしという部分がやっぱりくせものだと思うんですよ。場合によってはそういうこともあり得ると。だから、いままでの宮澤さんの場合もそうですし、いろいろな外務大臣に何回かお尋ねしましたけれども、いわゆるアメリカの核先制使用発言等々がシュレジンジャー等々ありましたよね、七五年あたりから。だから、あれは理解し得るという御答弁でしたよ、あの問題に関しては。使われてはやはり困るけれども、ああいうふうに述べる点については理解し得ると。つまり日本政府というのはアメリカの核のかさに入っておって、アメリカが一切核は使いませんと言われてもらうと、これは核のかさに入っていることが効果がなくなるわけでしょう、大臣。結局、核で場合によってはおどかしてももらいたいわけだ。場合によっては核を使いますぞと言ってもらいたいわけですよ、核のかさに入っているんだから。これは明確に両立しないんじゃないですか。  一方では日本国民の悲願を代表する日本政府として核の使用を明確に禁止すべきだということが言えない原因は、アメリカの核のかさに入っているからだ。だから、結局、時間がないからもう言ってしまいますけれども、現実に核投下訓練を沖繩でやられているわけですよね。あの核投下訓練というのは、あれはもちろん模擬爆弾ですけれども、しかし現実に核を使うということを想定した訓練がやられて、日本政府もそれを認めておるということは、核の使用に事実上全面的に反対するという立場に立脚していない。これが日米安保条約によるいわゆる核のかさに入っている日本政府の国民の利益を代表し得ない根本的な私は矛盾点になっている。それは保証がないからだとかいろいろ言われるけれども、私は基本はそこにあるだろう。その矛盾点を解決しなければならないというふうに考えますが、大臣、今度は大川さんではなくて、大臣にひとつお願いします。
  149. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 核の使用にはあくまで反対いたしますが、そのために、まず核兵器の生産、貯蔵の削減に伴う有効な国際管理、こういうことから具体的措置によって逐次裏づけていこう、こういう考え方でございます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がありませんから、最後ですが、大臣、その製造、貯蔵、実験までは反対だと言われるわけですね、禁止すべきだというふうな考えだと。なぜ使用をお入れにならないのかという問題があるわけですよ。製造はしないということになってくれば、現実に核はまだ存在しているわけですよ。貯蔵も一切なくすんだと言ったら、使ってはいけないということも明確に言えるはずなんですよ。反対だと言いながら、なぜ使用の問題だけを大臣がわざわざいまお抜かしになったのか。  だから、私はもう時間がないから最後結論を急ぎますけれども、今度の国連軍縮特別総会というのは、大臣が先ほど言われましたように、日本の国民の悲願ですよ、核兵器を何としてもなくしてほしいと。核兵器の全面禁止ということをさっき訴えられると言われるんですから、だから、この核兵器は使わんでくれ、再びあの広島や長崎みたいな事態を起こさんでくれ、これは日本国民の要求だ、どんなことがあっても使ってはならないんだ、人類の犯罪だということが国連で決議されたことを想起してくれということを私は国連特別総会では必ず日本政府として訴えていただきたい。それは大臣がおいでになるか、総理が行かれるかわかりませんけれども。  もう一つは、日本政府は非核三原則を国是とされているんですから、日本政府としては、つくらず、持たず、持ち込ませずという非核三原則の立場をとっておるということを全世界にこの国連総会を通じて明確に述べていただきたいということをお願いしたいんですけれども、その点について大臣の最後の御答弁をいただきたい。
  151. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 使わないでほしい、絶対に使ってもらっては困るという悲願は必ず訴えます。  それから、非核三原則をこの場所ですべての国に向かって宣言するということ、これは非常に貴重な御意見でございますから、十分検討いたします。
  152. 和田春生

    和田春生君 きょうは、いろいろと質問したいことを用意いたしておりましたけれども、委員会の運営で時間が大変限定をされました。一つは、小さいようだけれども、大変大きな捕鯨関係の問題、もう一つは、日中平和友好条約の締結に絡む問題、二つに焦点をしぼってお伺いしたいと思うんです。  すでに外務大臣も御承知のように、本年の六月の最終の週からロンドンでIWC――国際捕鯨委員会の第三十回会議が開かれることになっております。しかも、その二週間前にはケンブリッジで科学委員会が開かれるわけであります。御承知のように、日本の捕鯨はだんだんだんだん追い詰められてまいりまして、いまやっと一船団の操業を維持するだけという状況に来たわけですね。現在の捕鯨の状況というものにつきましても、御承知のように、これは昭和五十一年に政府自体が捕鯨の統合勧告をやりまして、各社に分かれているものを共同捕鯨一社にまとめ、政府からも資金的に援助をして捕鯨業を続けようとやっているわけであります。ところが、国際的な環境は大変厳しいわけですけれども、われわれの見るところ、科学的な根拠に基づくというよりも、大変エモーショナルな、あるいは各国の国内事情も絡んだ、あんまりいい意味ではない政治的な影響、そういうもので反捕鯨的な世論がずうっとつくられている。そうした中でことしの捕鯨委員会は大変厳しい状況に直面をすると思うんです。  実は、こういう捕鯨にしろ、またサケ・マスの交渉もありますけれども、これは水産行政の枠をいまやはみ出して、すぐれて外交的課題になっていると思います。きょうの質問に直接関係ないんですが、実は、日ソ、ソ日の漁業協定の場合に、この委員会で、私は――そこに鳩山前外務大臣がいらっしゃいますけれども、私の集めている情報というものを根拠にして、結局、日本は追い詰められて、はなはだまずい結果になるのではないか、それに対する用意ありや、あらかじめ十分事前に対処策をとらなくてはいけないではないかということを言ったわけでございます。政府の方はいろいろ準備をしているとおっしゃいましたけれども、結果を見ると、私が指摘したとおりになっちゃったんですね。だから言わんこっちゃないと言って後から言っておったんではこれは手おくれであります。  そこで、この捕鯨の問題についても、もう余すところ三カ月ちょっとの余裕しかないわけですから、ことしの六月末から開かれるIWCに臨む対策、捕鯨問題に対する日本政府の基本的な姿勢はどんなものか、これはもう水産行政の枠をはみ出て、日本の非常にすぐれたやはり外交課題の一つでありますから、そういう点について、ひとつ最初に園田外務大臣のお考え、決意というものを伺っておきたいと思います。
  153. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 捕鯨の問題では、いま御指摘のとおり、非常に厳しいばかりでなくて、このままほうっておくと、いまの最低船団さえもなくなるおそれさえございます。しかも、よその国の世論というものは決して温かくはない。日本の方で科学的な調査をして資料を持っていくと、それは日本の方で勝手に恣意的につくった資料じゃないかなどと言われるくらいであります。  そこで、今度の第三十回の年次会議については、最悪の場合といえども、いまの最低の一船団は確保するということで、事前の対外折衝がきわめて大事でありまして、これは米国初め各国に日本の実情を理解してもらわなきゃならぬ、こういうことを考えておりまして、先般、特に米国の方にも申し入れをして、わが国の捕鯨に対する立場、決意、現状というものを理解してもらうように申し入れを行い、かつ関係各国の在外大使にはこの点を十分指令をし、懸命の努力をしているところでございます。
  154. 和田春生

    和田春生君 私どもがいろいろ集めている情報によりますと、そんなことがあっては困るのですが、実は、日本の姿勢について、農林省、水産庁あるいは関係者は非常にいま大臣がおっしゃったように最低一船団の操業規模は確保しなくてはならぬ、こういう姿勢を持っているけれども、どうも外務省並びに外交出先機関の方では、もう日本は捕鯨をあきらめたみたいな声がちらほら聞こえているというような声を耳にするんですが、そんなことはありませんでしょうな。
  155. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私も、そういう話は承りました。そこで、念のために、そういうことがないように十分注意をして、この最低目的に向かって努力するように指令をいたしました。  なお、また、会議前には、特別のミッション等を派遣して、いま御指摘されたようなことに対する事前工作をしたいと考えております。
  156. 和田春生

    和田春生君 ぜひ、そういう線で積極的に取り組んでいただきたいと思うんです。  もう一つの問題は、御承知のように、IWCの非加盟国というのはかなりIWCの枠外で盛んに鯨をとっているわけであります。これらの国々もやはり国際捕鯨委員会――IWCに加盟をさせるということでないと、日本がIWCの枠を守って国際的に協力しようといろいろな面で国際的世論の中で努力をしましても、結局、しり抜けになっているわけですが、これらの非加盟国を加盟させるという面について、日本はいままでどういう外交的努力をお払いになってきたか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  157. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 加盟国が非加盟捕鯨国から鯨の製品を輸入するのを禁止するために、御承知のとおりに、必要な措置をとるべき旨の決議がされたわけでありますけれども、政府は、昨年十二月に、水産庁長官の通達によって関係業界に対して、非加盟国からの鯨製品の輸入を厳に慎むよう指導いたしましたけれども、これに加えて、近日中に、非加盟国に対し外交チャンネルを通じてIWCに加盟するよう働きかけるようにいまいたしております。
  158. 和田春生

    和田春生君 そういう努力をやはり日本が積極的に行うということ、むしろ加盟国の中でも、わが国が非加盟国を加盟させるという面について一番熱心に働きかけるという姿勢を保つことが国際世論対策の上におきましても、私は大変重要なことではないかと思います。  現に非加盟国の中で相当捕鯨をやっているのは、お隣の韓国、北朝鮮は国交はございませんが、スペインとかペルーとかソマリアという国々があるわけでありますから、ぜひそういう点についても取り組んでいただくと同時に、いま大臣が私のお伺いする前に多少触れられておりましたけれども、どうもことしの六月から始まるこのIWCの会議では、日本が非加盟国からIWCの決議に反して相当の鯨肉を輸入している、六千トンを超える鯨肉を五十二年度実績で輸入していますね。これが非難集中の一つの的にされるんではないかという気配が強く感じられるわけです。  そういたしますと、単に一片の通達を出した、出したけれども、通達が守られておらぬといったときには、相変わらずどんどん非加盟国から決議に反して輸入しているということになると、IWCに加盟しとったって決議したことを日本は一つも守らぬじゃないかと、そういう非難が従来の日本に対するいろいろなエモーショナルな非難に加わって、実際的な問題として不信感をあらわにした攻撃が出てくると思うんですね。これについてどういうふうにお考えになっていますか、これは水産庁ひとつ。
  159. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) ただいまも大臣から御説明いたしましたように、私どもは、水産関係の輸入商社の団体でございます水産物輸入協会長あて指導したところでございます。  私どもは、この指導通達に基づきまして、さらに厳重な指導を行ってまいると同時に、その今後の経過を見ながら、これらの措置のほかに、どんな措置が考えられるかについて関係の方面と十分協議しつつ検討してまいりたいと考えております。したがいまして時期を失してはならない問題でございますので、厳重にその動きは見つつ検討も急いでやりたいと考えております。
  160. 和田春生

    和田春生君 大変優等生官僚的答弁なんですが、どういう措置をとろうとしているんですか。これをほうっておいたら、去年の十二月九日に水産庁長官からいま言ったような一つの指示が出ているわけですね。しかし、どうも一向に衰える気配がないようなんですけれども、具体的にそういう国際非難を強めて、結果は日本の捕鯨業そのものの自殺行為に通ずるようなことが同じ日本の国内で行われているわけですね、とめるためにどういう具体的な措置をお考えになっていますか。
  161. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 先ほど申し上げましたように、関係の商社が幾つかございますので、これらに対しまして特に厳しく指導をいたしております。そのほかに、どういう措置がとれるか、これは法的な措置がどの辺までとれるかということも含めまして、現在、検討を行っている次第でございます。
  162. 和田春生

    和田春生君 私はやはり日本が非加盟国に強力にIWCに加盟するように勧告をする、その積極的な努力を前提にして、それにもかかわらず非加盟国が加盟しないんならば、あなたの国からはもう鯨肉等を輸入するということは日本としては打ち切らざるを得ないよと、そういう国際的なはっきりした態度と関連して、国内においてもそういうことをやらぬようにという行政指導を進めなくちゃいけないと思いますが、そういうことをおとりになりますか。
  163. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもも、加盟につきまして、従来、いろいろな海洋法会議その他国際会議を通じまして、非加盟国に対しましてすぐ加盟するようにということでいろいろお話をしてきたわけでございます。現在、この事態にまいりまして、さらに外務省を通じまして外交ルートでもお願いしていただくようにお願いしておる次第でございます。
  164. 和田春生

    和田春生君 ぜひ、そういう努力を具体的にひとつとっていただきたいということを特に要望をいたしておきまして、次の質問に移ります。  これはもっぱら外務大臣にお伺いするんですが、日中平和友好条約の締結、いろんな問題があると思うんですが、これは本日の委員会でも同僚の委員から一部触れられておりましたけれども、時間の関係で、中ソ同盟条約と中華人民共和国と日本との平和友好条約との関係をお伺いしたいと思うんです。  中ソ同盟条約日本敵視の条項を持っているということはもう御存じのとおりでありますから、あえて触れません。で、この問題についてよくこういうことが言われておりますし、先ほど外務大臣御自身も、中ソ同盟条約をどうこうしろということは内政干渉になるというようなことをちょっとおっしゃっておったように思うのです。しかし、私は内政干渉にならないと思うのです。  なぜかと言えば、日本と中国が平和友好条約を結ぶ。ソ連との関係は領土問題が引っかかっておりますから、なかなか簡単にいかないと思いますが、仮にソ連とも平和条約、そういうものを結ぶ。そういう形で日本がそれぞれの国との基本的な友好関係を確立するという条約を結んでいる。その相手方の二つの国が日本を敵国扱いをする条約を持っているというような、そんな妙な三魚関係というものは国際的に考えて許してはならぬと思うのです。ですから、その条約が存在しているときに、やはり中国との平和友好条約を結ぼうとするならば、一体、それはどうなるのかということは明らかにしておかなくちゃいけない。ところが、そういうことを言うのは日中条約の締結を妨害する行為であるというような、われわれから見ると、見当違いな声もちらほら聞こえてくるわけであります。そのことについても、ひとつ外務大臣としての基本的なお考え方を承っておきたいと思うのです。
  165. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 先ほど申し上げましたのは、中ソ同盟条約に対して、これを続けられるか、あるいはやめられるのか、そういうことについては私は申し上げない。ただし、日本を敵視するという敵視条項だけはやめてもらわなきゃ困るということをソ連の方に言ったわけであります。この問題では、すでに日ソ共同声明、日中共同声明で両国間との国交正常化は回復をされて友好関係にあるわけでありまして、実質的には中ソの関係から見ても失われたものと判断をいたしまするし、それからまた、中国側は、御承知のとおりに、名存実亡であるという見解を何回か明らかにしておりますけれども、やはりおっしゃるとおり、日中友好条約交渉においては、このような点が何らかの形で日本国民に納得されるよう、明確になるように心がけたい、こういうことを考えておりますが、具体的にどうやるかは交渉に入ってから向こうと相談をしてやりたいと思います。
  166. 和田春生

    和田春生君 交渉の中身までお伺いをしようとは思っていないのですが、日中平和友好条約を共同声明に基づいて結ぶべきである、そういう前提に立って、私はこの問題は基本的に重要だというふうに感じておるもんですから、お伺いをしているわけなんです。  実は、事実関係について外務大臣はもう御承知だと思うのですけれども、日中共同声明を結んだ後に、一九七五年の一月に第四期の全人代会議で中国は憲法を改正しましたですね。その憲法の中で「帝国主義、社会帝国主義の侵略政策と戦争政策に反対し、超大国の覆権主義に反対しなければならない。」こういうことをうたい込んでおることは御存じのとおりであります。  同時に、その全人代会議の中で――これは毛沢東主席が亡くなられた後でございますけれども、周恩来さんが演説をやっておられる。その中で、非常に長文のもんですけれども、幾つかの重要なことを言っておるわけですね。たとえば「米ソ両超大国は現代における最大の国際的抑圧者、搾取者であり、新しい世界戦争の策源地である。」「われわれは世界の連合できるすべての勢力と連合して、植民地主義、帝国主義、とりわけ超大国の覇権主義に反対しなければならない。」「第三世界は、植民地主義、帝国主義、覇権主義とたたかう主力軍である。」こういう言葉があります。そればかりではなくて「毛沢東主席は」こう言ったという中で、全文は省略いたしますが、「ソ連修正主義裏切り者集団を中心とする現代修正主義を批判する偉大な闘争をおこし、世界のプロレタリア革命事業と各国人民の反帝国主義・反覇権主義事業のめざましい発展を促し、人類の歴史の前進を促した。」それを受けて、後の方で「われわれは必ず毛主席の遺志をうけつぎ、毛主席の革命的外交路線と政策をひきつづきだんことして遂行しなければならない。」こういうことが言われているわけですね。  そういたしますと、あの日中共同声明を発表したときに、当時の田中総理は、覇権主義反対という言葉がかくも明確にソ連に対決し、ソ連と闘うという意味を含んでいるということを承知の上であそこに覇権主義反対ということを入れたのかどうか、事実関係で問題になってくると思うんです。  時間もございませんから、一問一答は避けますけれども、結局、あのときには恐らく一般的にはお互いに覇権を求めない、覇権主義に反対をする、そういうつもりで共同声明に入れた。一般の日本国民も大方そういうふうに受け取っておった。ところが、その後の中ソ関係発展によりまして、覇権主義反対ということは明確にソ連を相手とする言葉としてここに登場してきている、こういう問題があるわけでありますね。  そういう中で、日本が中国との平和友好条約を結んでいく。確かにそういう中で現在の中ソ同盟条約は、大臣も指摘されたように、中国の要路者は名存実亡だと、名前はあるけれども実体はない、こういうふうに話していると言われるんですが、来年は、これは中ソ同盟条約を継続するか破棄するかということの決定的な年なんですね。いま続いているから名存実亡ということを一方の当事者が言っておる。それはそれで中国はそういうつもりでおるんでしょうとわれわれは仮に素直に理解いたしましょう、もし仮に来年廃棄をせずに、さらにこの条約が続けられるというようなことに、またぞろ今度はこういう形から中ソ関係というものが変わってきて、なるという形になりますと、この中国の覇権反対、日中の平和友好条約、その中で中ソ同盟条約の有効期間が延長されるという問題が絡んできたときに、一体、日本はどういう立場に立つか、これはなかなか容易ならざる事態が国際間で出てくると思うんですね。その点に対して確たるお見通しはあるんですか。
  167. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの問題は、覇権の問題とも絡んでくるわけでありますが、覇権反対ということは日本国憲法の精神であり、国連憲章にも書いてあるとおりでございまして、ソ連の方も中国の方もそれぞれ覇権反対を言っているわけであります。したがいまして覇権の問題については私は日中共同声明の立場をとってやるつもりであります。  なお、いまの中ソ同盟については、先ほど申し上げましたとおり、実体を失ったということで日中条約締結に支障にはならぬと思いますけれども、やはり交渉を進める際には、この点について日本の国民がわかるような明確な形で何らかの意思表示をしなければならぬと考えております。  なお、この覇権の問題は、先ほど申し上げましたように、日中共同声明の立場をとるわけでありますが、ただ、違うところは、ソ連に対する外交方針というものは中国と日本は明確に違うわけでありますから、その点は私は主張するつもりでありますが、これをどのように表現するかは交渉内容の問題でございますから、御勘弁を願いたいと思います。
  168. 和田春生

    和田春生君 覇権反対の問題をどう処理するかという処理の方法についてきょう問題にしようとは思っていないのです。これについては私なりの考え方を持っているわけですね。  いま私がいろいろ引用したのは、日中共同声明を出したときにわれわれが理解をしておった、また調印をされた当時の総理が理解しておったことと、覇権反対ということに対して意味が違ったような形に持ってきたというのは、いま事実関係を指摘いたしましたように、もっぱら中華人民共和国の側の事情によるわけでしょう。われわれが変えると言ったわけじゃないんです。その後に覇権主義反対というのは明確に反ソを意味するというふうな立場を明確にしている。最近においても、中国の当路者は覇権主義反対が反ソを意味するという中国の基本的立場は変えるわけにはいかぬということも言明しているという事実もあるわけですね。そういう中で、日本が幾らおれたちはそうではないんだということを言って結んでおいても、それはある意味でいくと、中国と手を結んでソ連に反対をする、対決をするんだという意味合いをソ連の側がとる、こういう形になる。それはソ連側がそういうふうに受け取ったからけしかるとか、けしからぬとか言えないと思うのですね。  そこで、今度は、そういう形ができるにもかかわらず、ある程度結んでおいた。そして日本についての敵視条項を含んでいる中ソ同盟条約が中身を変えずに延長されたら、どうなるんだと言うんですよ。まるで踏んだりけったりみたいなことになるじゃないですかと言うんです。その辺に対して、どういう交渉をするかということはお聞きしようと思いませんが、間違いがないと、まかり間違ってもそういう妙な形にはならぬと、一方では中国と一緒にソ連を敵視するような態度をとりながら、同こうはソ連との間で日本敵視の条約をさらに効力を延長する、そんなことにはならないと、そういうことについての確たる見通しと自信がおありなんですかということを伺っているんです。
  169. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 中ソ同盟条約については、先ほどから申し上げるとおりに、交渉の経過において何らかの形でそれは明確にしたいと考えております。  なお、この、ソ連に対する中国と日本の態度は、中国の態度は反ソでありますが、日本は反ソじゃありません。したがって、これはどのように話し合っていくかということは今後の残る問題で、微妙な問題でありますから、その点だけはっきりさせていただいて、あとは御勘弁を願いたいと思います。
  170. 和田春生

    和田春生君 時間もまいりましたので、これ以上この問題はこの席では取り上げないことにしたいと思いますが、日中平和友好条約を結ぶということは、それは従来のいきさつから見て結構だと思いますし、最近、福田内閣が非常に熱意を持って取り組んでおられるということも国会の質疑、その他で承知をいたしております。  私は、この問題は、条約の一方の当事者が中ソ同盟条約について名存実亡だからと言ったから、ないに等しいというような考え方をしてはならぬと思います。特に、平和条約というのは、共同声明と違って、それぞれの国の間の恒久的な関係を基本的に定める重要な条約でありますから、その一方で、名存実亡かどうか知らぬけれども、その片方の当聖者を敵視する条約が別の国との間に存在をしている、こういうことがあっては非常に困るわけです。その懸念を強く抱いているものですから、その辺に間違いがないように適切に対処されることを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  171. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) よくわかりました。
  172. 田英夫

    ○田英夫君 私は、園田外務大臣に質問させていただくのは実は初めてでありまして、歴代の外務大臣にそうした最初の質問の折に外交の基本的なお考えを伺ってきたという経緯もありました。  また、事実、自由民主党政府の外務大臣であられるわけですけれども、大変失礼ですが、外務大臣によって外交の姿勢がかなり違っていたということは私は事実だろうと思うんです。お名前を挙げては失礼ですけれども、たとえば朝鮮問題について木村元外務大臣と宮澤元外務大臣の間に大きな違いがあったということは、これはもう世の中の人が皆知っていることであります。そのことは決して軽視できない問題だと思います。日本の国際社会の中での進路を操る役目でありますから、その外務大臣のお考えが揺れ動くということは実は大変問題だろうと思うし、そのことが実は大変国民の皆さんの関心にあると思いますので、これは別に踏み絵を踏んでいただこうというつもりはありませんが、幾つかの問題をとらえて、そういう立場からひとつ質問をさせていただきたいと思います。  一つは、こんなことは大臣に質問するのは大変失礼なんですけれども、昨年、あるマスコミが、多分全国会議員に出したんだろうと思いますが、何といいますか意見を聞くような調査をいたしました。その中に、日本の外交上最も大切な国はどこだと思いますかという一項がありました。私は何と書いたか自分では忘れましたけれども、その結果が発表になりましたときに、自由民主党の方はほとんどがアメリカであるというふうにお書きになったということが発表された、それは覚えております。これは外務大臣にこういうことをお聞きするというのは大変失礼なんですけれども、園田外務大臣はこういう質問があった場合に、どういうふうにお答えになりますか。
  173. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私は、どこの国とも友好信義を深めていくというのが日本の外交方針でありますけれども、日本の外交の一番大事なところは、やはりASEAN、ビルマその他を含む隣国、中国、ソ連、こういう隣国との問題が一番大事であって、隣国との友好関係がうまくいっておって初めて日米基軸という問題がうまくいくと考えております。
  174. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、実は、そういうお答えが返ってくることは大変私も歓迎をするわけです。  つまり、実を申し上げると、アメリカであるとお答えになった方々の頭の中には、依然として世界は冷戦構造であるというふうなお考えが頭を占めているんじゃないだろうか。確かに吉田さんがサンフランシスコ平和条約を締結をされるあの決断をされたときには、世界は冷戦構造、東西対立でありました。自由主義陣営を選ぶか社会主義陣営を選ぶかという選択の中で、ああいう決定をされた。その決定の結果は私は問題があるとしても、それは一つの勇気ある決定であったし、選択はその二つしかなかった。しかし、現在はそうでないはずなんですね。いまそのことを大臣は言われたわけでありまして、したがってその論法からすると、日米安保条約というものを中心にして、軍事的に、政治的に、経済的にアメリカとの関係を最も重視するという考え方は、すでにこれは冷戦構造の頭の中から出てくる考え方なんだ、こういうことで、きょう一日じゅう各委員の皆さんが質問をされた日中の問題、日ソの問題、アメリカの問題、アジアの問題というようなことについても、そうしたことがにじみ出ていると思うわけです。  この国際情勢についての認識というものを、私は、非常に重要視しなければならない。いまは冷戦構造ではないんだということですね。しかも、日本経済的に非常にすぐれた工業生産力を持っているにもかかわらず、そのための資源もエネルギーも皆無に等しいということになれば、いま大臣が言われたように、第三世界といいますか、中国を含めた、そうした資源エネルギーを供給する国との関係を最も円滑に友好的にすることこそがいまの時代の日本の外交の基本ではないかということを実は申し上げたいと思っていたところに大臣のお答えが返ってきたわけであります。  そこで、そういう立場から幾つかの問題を取り上げてみたいと思いますが、まず、一番近い朝鮮半島の問題でありますけれども、大臣は、これは本来一つであるべきなのか、現在のように分断された状態であってもいいと思っておられるのか、その点はいかがでしょうか。
  175. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 一つにあるべきであり、それが必然性であると考えております。
  176. 田英夫

    ○田英夫君 結論は、当然、そうなるんでありますけれども、実は、従来、自民党政府のおやりになってきた朝鮮半島に対する外交政策というものは、その大きな終着の方向に向かって果たして進められていたかどうかということについて大変疑問を感ずるわけであります。  北との関係については、むしろ最近アメリカの方が非常に大きな変化を示し始めているんではないだろうか。昨年九月に、ワシントンで日米議員会議がありまして私も出席いたしましたが、その冒頭に、マクガバン上院議員が北との接触、みずからの訪問を含めて、そういう意味の演説をしたのは御存じだろうと思いますけれども、そういう一つの積極的な姿勢を、これは議会でありますけれども、とり始めている。アメリカ政府自体も、ここ数年の間に、韓国に対する政策は明らかに一つの大きな転換をし、カーター大統領になってからは、それが非常に表に出てきていることも御存じのとおりであります。  そこで、大変具体的な問題にいきなり入るんですけれども、先日、金大中さんの釈放というニュースが世界を駆けめぐったわけでありますが、これについては、外務省としては、事前にある程度の情報はとっておられたんでしょうか。
  177. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 具体的にいつどういう形でということではなくて、一般的に朴政権の人権にかかわる政策が緩和の方向に向かっていくんではないかということは、昨年の募れぐらいから一つの流れとして感知されていたということは事実でございますけれども、金大中氏自身について、何らかの動きがあろうかという点については確たる情報はつかんでおりませんでした。
  178. 田英夫

    ○田英夫君 たしか今月七日だと思いますが、このニュースが出ましたのが。そのニュースが出た直後に、金大中さんに最も近い筋が――御本人は現在病院ですが、収監されているに等しい状態ですけれども、金大中さんの側の状況を知り得る範囲の中で調べたところでは、御本人も事前に知っていた、そういう情報を知らされていたという話があります。  現に、金大中さん以外は、いわゆる民主救国宣言のために投獄されていた人は全員いまは釈放されているわけですけれども、金大中氏が釈放をされるというような事態になってきたということを、外務省としては、どういうふうに受けとめられていますか。
  179. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 政府としてといってお尋ねになりますと、これは全く韓国の主権に属する事項でございますので、ある一つの事件について拘束された人たちをどう扱うかというのは全くその国の主権の問題でございますので、何とも論評すべきでないというふうに受けとめるべきだと思います。
  180. 田英夫

    ○田英夫君 実は、この問題は、過去もう五年近く中江さんともいろいろやりとりをしてきた問題ですけれども、ここで、昨年の四月に、衆議院の外務委員会で、中江局長が、あるいはその前に鳩山前外務大臣がまず答えておられるんですが、西ドイツの事件と金大中事件の対比を社会党の井上一成委員が質問したのに対して、西ドイツの場合には犯人を逮捕している、西ドイツ自身が。それで解決に向かったんだけれども、日本の場合は犯人逮捕に至らなかった。これが非常に大きな違いで、日本の場合は、要するに事件の解決ということにはならずに、いわゆる政治的解決ということになったんだという意味の答弁をしておられる。ここにいま速記録があるんですが、これはそのとおりですね。
  181. 中江要介

    政府委員(中江要介君) そのとおりでございます。
  182. 田英夫

    ○田英夫君 そうなりますと、ここで一つ非常に問題なのは、私もこれ何回もこの席で取り上げているんで繰り返しになるんですけれども、日本はこの犯人を逮捕できなかったんじゃなくて、政治的に逮捕をしなかったんだと、こう言わざるを得ないと思うんです。  警察庁おいでになっていると思いますが、金東雲という人物が、八月八日に事件が起こった直後の九月五日に容疑者として警察当局から発表されたわけですね。しかし、このときは外交官の特権を盾にして出頭をいたしませんでした。で結果的には韓国へ戻ってしまいまして、その後、政治的解決という中で、官澤外務大臣のとき、つまり三木内閣のときに、韓国側は、これは犯人とは断定できないということにしてしまった、簡単に言えばこういう経過だと思います。  一九七三年、つまり事件が起こりました年の九月十八日の外務委員会で、私の質問に対して、当時の警察庁の中島参事官は、金東雲の指紋は肉眼で鑑定できる、絶対に間違いないものである、こういう答弁をされているわけですけれども、という意味は、この証拠一つで逮捕状を請求し、逮捕できるということだと受け取っていいんじゃないでしょうか。
  183. 城内康光

    説明員(城内康光君) お答えいたします。  先生も御承知のように、指紋というものは終生不変、万人不同でございまして、そういう指紋があったということはきわめて有力な証拠であるというふうに考えます。それに加えまして、本件の場合には、エレベーター内での目撃者などがございまして、そういう状況というものがありますので、これは逮捕しようと思い、本人が日本国内にいるというような場合だったら、明らかに令状も恐らく発付されるであろうというふうに考えております。
  184. 田英夫

    ○田英夫君 いま改めて、事件が起こってからもう数年たってそういうお答えが出てきているわけですね。  大臣、このことなんですけれども、中江さんのおっしゃったことは間違いではないんですけれども、しかし、これは順序が逆なんですね。実は、逮捕できるにもかかわらず、逮捕しなかったという政治的な事情があった、こう考えざるを得ないんです。この問題はもう国民の皆さんの間にいまだに非常にもやもやとした問題として残っている。これは日本と韓国の友好関係ということからしてきわめて遺憾なことだと、こう言わざるを得ないんですがね。いま改めてまだ金大中さんの釈放ということが大きく新聞の一面に載るような問題なんですよ。そういうことを背景にして、大臣、このことをどういうふうにお感じになっていますか。
  185. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの逮捕できるものを逆に逮捕しなかったと、こういうことでございますが、これは事実問題を知りませんし、私の発言する立場じゃございませんので、私からは答弁を御遠慮したいと思います。
  186. 田英夫

    ○田英夫君 これはそういうことでは済まないことだと思いますよ。これは、前官房長官でもあり、外務大臣であると同時に国務大臣である日本政府の責任者として、どうして金大中さんの釈放ということがいまだにあれだけ大きなマスコミのニュースになるかというこの感覚を持っていただかないと――私は、朴政権に対しては、個人的には現在の状況に対して非常に遺憾な状態だと思っている一人ですけれども、しかし、日本と韓国の関係というものはきわめて友好的でなければならないと非常に強く思っているわけですよ。だからこそ、このことを申し上げてきたんです。  話を変えますけれども、先ほどから伺っていても、きょう一日伺っていても、秦野さんのお言葉にもありましたけれども、やはり日本の外交というのは平和を守るということと、民主主義といいますか、特に人権を守るということが非常に大きな基本になっていなければならぬし、また、なっているはずだと思うんですね。ですから、そういう意味からも、それから冒頭お聞きしたようにどこを一番重点にするのかという、これに対してまさに韓国も当然入るわけですけれども、近隣のアジア諸国を最も重視しなければならぬという言葉が返ってきた。だからこそこういうことを申し上げているし、さらに時間がありましたら朝鮮の統一の問題などはもっと突き詰めて伺いたいところでありますけれども、そういう平和と人権という立場からすると、もう一つどうしても伺っておかなければならないのは、きょうの午前中の外務省の御説明にも出てまいりましたけれども、国際人権規約というものを今国会提出するかどうかということがペンディングの方の項目に書かれているわけですよ。こういうことであっていいのかどうか。  いまや先進国で――という言い方がいいかどうかわかりませんが、先進国としては、この条約を批准していないのは日本だけ、こういう状況になっているのは御存じのとおりであります。一体、何が問題なのか。新聞報道は大分出ておりますけれども、政府としてはもう当然これは詰めを終えておられるに違いないと思うんですけれども、関係各省の中でおいでいただいているところは、順次、法務省などからひとつ問題点の現状を答えていただきたいと思います。
  187. 梅田昌博

    説明員(梅田昌博君) 法務省といたしましては、この国際人権規約、A、Bというふうに申し上げてよろしゅうございましょうか、この二つの規約で幾つか法務省に関係する条項がございますけれども、これまで慎重に検討をいたしてきた結果、いずれも特段の問題点はないということになっております。
  188. 田英夫

    ○田英夫君 時間が余りないようですから、私の方から申し上げますけれども、政府は、例のA規約の方では、三つの点で留保するということが言われておりますね。一つは労働者の公休日に対する報酬の問題、それからいわゆるスト権、同盟罷業に対する権利の問題、第八条ですね。それから中高等教育の無償化の問題、これは留保するということになると、どういう状況を生むことになるわけですか、批准してから。  まず、伺いたいのは、この三つを留保するという方針は間違いないですね。
  189. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 報道されているような幾つかの点が問題になっていることは確かでございますけれども、最終的にどの条文をどういうふうにするかという、その決定はまだいたしておりません。
  190. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、前に伺った留保という条項、これはいわゆるプログラム規定といいますか、A規約の方は漸進的に実現をしていくということになっているから留保ということがあり得るんでしょうけれども、最終的には、この条約に決められたように、国内法は改めなければならぬという点については変わりはないと思うんですね。その常識で言うと、国際条約の、そういう場合には、時限はどのくらいになるかということです、大体、どのくらいの限度でやればいいのかということです。
  191. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 御質問の趣旨は、留保を付す際の期限、それとも付した場合……
  192. 田英夫

    ○田英夫君 付した場合です。しかし、やはり関係国内法は漸進的にはこの条約の方向に向かって改めていかなければならないと思うのですね。その実際に最終的に改めるにはどのぐらいの限度でやったらいいかというのが国際的な常識としてあるだろうと思うのです、そのことです。
  193. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 私の理解いたしておりますところでは、A規約については漸進点な実現を図っていくという義務を負う、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、現在の考え方といたしましては、留保を付すという場合には、現在の状況から予見し得る将来を見ました場合に、それを漸進的にも実現していくことがいろいろの面で困難であるという場合に留保を付すると、こういうことになろうかと思います。  それでは留保を付さない場合にはどうかと、その期限につきましては、必ずしも明確な何年といったようなことは人権規約上規定されていないわけでございます。
  194. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ちょっと私からもお願いがございますが、人権批准の問題は、私としては、曲がりなりにも今国会に何とかして提出したいということで、もう当初から外交演説にも入れたいと思うぐらいにやっておったわけでありますが、まだ問題ありますが、各省の意見は大体調整されたかっこうで、いま与党の理解を求める微妙な段階にあるわけでありまして、それも日にちがもうここ一週間で何とか片をつけないと今国会提出が危なくなる、こういう時期でございますので、どうかよろしく――。
  195. 田英夫

    ○田英夫君 大変微妙な御発言がありましたので、私もよくわかりますから協力をさしていただきますが、一つだけ確認しておきたいのは、たとえばいま申し上げた留保の三つの問題以外に、従来からこれは留保のない、漸進的ではない方のB規約の方で、私なんかが読むと、たとえば同和問題、一切の差別があってはならないというような問題があると思います。あるいは内外人平等の原則ということがこの条約の全体を貫いていると思うんです。そうすると、在日朝鮮人、韓国人の問題、これは福祉だとか教育だとかいうところに現在差別があるという状況は否めないと思うんですけれども、こういう点について先ほど法務省は問題ないという御答弁でしたけれども、一切この点は懸念はないわけですか。
  196. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 何しろ非常に広範な事項にわたる膨大な条約二本でございますので、もちろんいろいろ問題があったわけでございまして、それがだんだんだんだん煮詰まってきている状況でございます。  いまおっしゃったような問題ももちろんいろいろの場で討議されてまいりました。それが最終的にどういうことになっているかという点については、いまの状況を申し上げることは、できれば御遠慮さしていただきたいと思います。
  197. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまおっしゃいました中で、私が特にこの批准を早くやりたいというのは、どんどんどんどん批准する国がふえて日本だけがおくれているという意味ではなくて、やはり日本の外交が本当に国際的な舞台に入っていくためには、日本の国内で人種差別があってはこれはもう日本人が孤立をしていく。やっぱり日本人自体が国際化されていかなきゃならぬということで、内外人の区別を何とかしたい。いまベトナム難民の問題で不当な非難を受けているのも原因はやっぱりここにあるわけでございます。  なおまた、同和問題もそのとおりでございますが、御承知のとおり、この問題はよってきたる広範な問題にいろいろ年金とかやれ何とかに及んでくるわけであります。でございますから、その点は、鋭意、いまの御意見は十分私どもも思う意見でありますから努力をしておりますので、御了解を願いたいと思います。
  198. 田英夫

    ○田英夫君 最後に、いま大臣も一週間という時間まで挙げられてのお話ですから大変結構なことだと思いますし、ひとつ与党の中も円満にこの点は理解をしていただいて、これは日本のためですから、いまおっしゃったとおりのことなんで、ぜひ今国会提出をしていただいたときに、改めてまたいろいろ質問をするということで、きょうは終わりたいと思います。
  199. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時二十三分散会      ―――――・―――――