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1978-06-02 第84回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月二日(金曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の異動  六月一日     辞任         補欠選任      柿沢 弘治君     野末 陳平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 房雄君     理 事                 源田  実君                 望月 邦夫君                 松前 達郎君                 塩出 啓典君                 佐藤 昭夫君     委 員                 岩上 二郎君                 亀井 久興君                 熊谷  弘君                 永野 嚴雄君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 中村 利次君                 野末 陳平君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        科学技術庁原子        力安全局次長   佐藤 兼二君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        武田  康君    説明員        環境庁自然保護        局保護管理課長  中島 良吾君        環境庁水質保全        局水質規制課長  島田 隆志君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電課長   高橋  宏君        運輸省船舶局首        席船舶検査官   赤岩 昭滋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○原子力基本法等の一部を改正する法律案(第八  十回国会内閣提出、第八十四回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会開会いたします。まず、連合審査に関する件についてお諮りいたします。  原子力基本法等の一部を改正する法律案について、商工委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。なお、連合審査会の日時については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  5. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 原子力基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 松前達郎

    松前達郎君 まず最初に、いま非常に注目の的となっております原子力船の問題について、特にその安全性についてかねがねいろいろと議論をされてきたわけなんですが、特にその中でも「むつ」に関して多少御質問をさしていただきたいと思うのですが、「むつ」について長崎県会核封印方式により佐世保入港受け入れると、こういったような趣旨の承認をしたということでありますけれども、その際に、これは新聞の報道によりますと、科学技術庁長官談話を発表されておるわけであります。その中で、残された手続の問題を処理するということを言われておられますけれども、その残された問題というのは一体どういうことを意味するのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  7. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) この談話新聞には全部出ているわけではありませんが、求められまして談話を発表した次第でございます。そこで、今後まだ問題が残っているということを申し上げましたのは、県会、まあ市会もそうでございますが、県会市会議決がなされましてもそれで直ちに執行できるというわけではないので、いろいろな準備手続が要ると考えているわけでございます。特に今回の場合に限ったことはありませんけれども、従来の経緯にかんがみまして特に慎重にそういう準備手続を進めねばなりませんので、議決があったからといって安易に、直ちにそのままもう進んでいいのではないという気持ちを含めまして申し上げたつもりでございます。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、佐世保入港についての、船を回航していかなければならない、そういった問題についての事務的な面でのことを言われたことになりますのでしょうか。
  9. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 大体お尋ねのような趣旨でございます。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、現在「むつ」は青森県の陸奥湾大湊に係留をされているということでありますけれども佐世保の問題が解決して入港をするという段取りになった場合、めどとしまして、いつごろ佐世保回航するスケジュールでございますか、それについて……。
  11. 山野正登

    政府委員山野正登君) ただいま長崎県知事佐世保市長協力をお願いしておるわけでございますが、この両者から受け入れをいたしましょうという御回答がありましてから起算するという前提でお話しするわけでございますが、今後本件を進めますためにはいろいろ法律上の手続、すなわち原子炉等規制法に基づく諸手続、また船舶安全法に基づく諸手続き、検査といったふうなことがあるわけでございますが、このようなものが順調に進みますれば、先方の御回答をいただきまして二カ月ないし三カ月といった準備期間を置きまして回航できるという運びになろうかと存じます。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、この回航が実現して佐世保入港できて、そしていざ修理を行う、こういうことになろうと思いますが、これについても佐世保重工業との関連というのが非常に問題にはなっておると思うのですが、この前の委員会では、たしかその問題については、佐世保重工業でやるために佐世保に持ってくるのではないという御回答があったと思います。しかし現地の方は、恐らく佐世保重工業の救済というものがやはり一つ目的となって、現地側としては、先ほど申し上げましたような核封印でいこうというふうな結論が出ているんじゃないかと、かように思いますが、佐世保入港したとして、この原子力船修理に当たるのは恐らくはかにはないんじゃないかと思うんですが、その技術的な保証ですね。佐世保重工業でやることになったとしますと、原子力船そのもの船体修理ですとか、あるいは原子炉遮蔽修理ですとかいろいろあると思うんですけれども、これらの技術的保証というのは一体あるのかどうか、どういうふうにお考えになっておりますか、その点お伺いいたしたいと思います。
  13. 山野正登

    政府委員山野正登君) ただいま政府の方が現地にお願いいたしておりますのは、佐世保港における修理ということでお願いしておるわけでございまして、従来御答弁申し上げておりますのは、そういう意味から、まだ具体的な企業名を挙げていろいろ御議論申し上げる段階ではないということで申し上げているわけでございますが、しかしお説のとおり、佐世保港を前提考えます場合には、佐世保重工業というものが最有力候補であるという点も、これまた間違いのないところでございます。今後契約相手方あるいは契約の形態というものはこれから詰めてまいるわけでございますが、その際に契約内容、つまり修理というものが契約条項に従って円滑に進め得るように相手能力というものは十分なければならないわけでございますから、そういう観点から相手の技術的な能力というものも十分に審査して、頭に置いてまいらなければならないというふうに考えております。また佐世保重工業自体は、従来とも船舶の建造あるいは修理というものにつきましては十分な経験を持った会社であるというふうに考えております。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 佐世保重工業以外に、佐世保港の付近にそういった能力がある会社があるかというと恐らくないと思いますから、もう佐世保重工業でやるのだということがほぼ決まっているようなものだと私は思うんですけれども船体修理はこれは造船上の問題で、佐世保重工業は十分な経験を持っているというふうに解釈していいと思うんですが、私ちょっと心配になりますのは原子炉に関する問題です。これは恐らく佐世保重工業は初めてじゃないかと私思うのです。そういう面で安全が確保できる中で修理を行うことができるのかどうか、その点がちょっと心配になります。したがいまして、それらについて今後政府としてどういうふうな保証といいますか、技術的なレベルあるいは能力についての調査をされるのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  15. 山野正登

    政府委員山野正登君) 佐世保重工業は、従来とも日本原子力船開発事業団技術者を派遣しておりますので、従来原子力関係に全く無縁であったわけではないのでございますが、かと言って「むつ」の修理をやると仮定しました場合に、十分な技術的能力と言い得るかどうかというのは、これはまた直ちにはそうであるとは答えにくいわけでございまして、この点は「むつ」の開発と申しますのは、日本の官民を挙げ、また民間におきましてはその総力を挙げて開発を進めてまいりたいと考えておるわけでございまして、仮に佐世保重工原子力関係の仕事をすると仮定しました場合にも、それなりに経験のある企業等協力といったふうなことも必要かと存じますが、その辺の具体的な形につきましては今後の課題というふうに考えております。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 船体修理については、先ほど申し上げたとおり十分な経験はあると思うのですけれども、これから問題になると思うのは原子炉に関する修理だと思うのです。これは受け入れ側の方では核封印方式ということを打ち出しておるわけですね。その場合、核封印、これはかぎを預かるとかいろいろございますけれども、その核封印方式で果たして、圧力容器の蓋を外さないでもしかこの修理を行うのだという前提に立つとなりますと、当然これは遮蔽の問題だけしか取り扱われないんじゃないか、いままで放射線がリークしていた場所に対する補強、これがやはり工事の一番中心になるんじゃないかと、かように思うのですが、蓋を外さないで外から遮蔽工事を行うだけを対象として考えておられるのか、それともその他の部分、総点検ということですから、あるいはその他の部分についてもお考えになっておられると思うのですが、どういう工事対象としてお考えになっておられるか、その点をお伺いいたします。
  17. 山野正登

    政府委員山野正登君) まず今後行います修理でございますが、遮蔽改修につきましては、圧力容器外方遮蔽改修、つまり一次遮蔽改修と、それから格納容器以外の二次遮蔽改修とに分かれるわけでございますが、そういう意味で、遮蔽改修という意味では別に圧力容器の内部をいじるというものではないわけでございます。現在言っておりますのは、この圧力容器外側遮蔽改修、特に圧力容器上蓋上部遮蔽改修をするに当たりまして、従来は、上蓋船外に取り出しまして所要の改修をした上で再び上蓋をするという手順考えておったわけでございますが、その手順を変えまして、圧力容器上蓋を取りませんで、そのまま船内におきまして上部遮蔽改修をするというふうに手順を変えたわけでございます。こういうふうに手順を変えましても、でき上がりました遮蔽の効果と申しますものは同じものであると考えるわけでございますが、ただ非常に狭いところで作業をしなければならないということになりますので作業性が落ちるということはございます。この作業性を犠牲にするという難点はあるわけでございますけれども、せっかく地元の方でそのような新しい方式を御提案になり、それならば受け入れも検討可能であるという御提案であったわけでございますので、私どもはその点、従来の方法でも十分に安全に修理はできると確信いたしておりますけれども先方の御都合というものもあわせ考える必要があるわけでございますので、これを受け入れることにしたわけでございます。  なお、そのようなことが安全に行い得るかどうかという点につきましては、「むつ」総点検改修技術検討委員会におきまして御検討いただきまして、そのような方法で十分できるという御確認を  いただいております。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、かつてアメリカの業者が舶用炉についていろいろと忠告といいますか、問題点について指摘をしていることがあるんです。たとえば上部の鉄板を厚くするかあるいはコンクリートにしなければ、これは放射線が漏れるんじゃないか、こういうことを言ったということが報道されておるのですが、じゃ、この点を今回修理の主たる内容として行おう、遮蔽強化をする、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  19. 山野正登

    政府委員山野正登君) 遮蔽強化をするというふうに御理解いただいて結構だと存じます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 それからもう一つ起動スイッチとか制御棒駆動装置キー久保知事に預けて久保知事が保管する、こういうふうなことがもう一つ条件となっておると思うのです。これの修理に際して——ここに原子炉の大まかな図を持っておるんですが、この原子炉の一番トップにある蓋をまず外して、中に工事をする人が入って、中でもって最終的な遮蔽の取りつけなり何なりの工事をする、非常に狭いところでやるから時間がかかる、こういうことをいまおっしゃっておったわけなんですが、この際、恐らくその一番外側容器の中にはただ単に原子炉圧力容器が入っているだけじゃなくて、原子炉圧力容器のたとえば制御棒の作動を行う装置ですとか、そういった動く部分ですね、そういう部分が中に収納されておると思うのですが、そうしますと、当然その駆動をするための何らかの電源なり何なりが要るわけですね。ですから恐らくこの中には電源等配線が相当入っているんじゃないか。そういうことになりますと、かぎを預けても、その辺をちょっといじくると駆動装置その他を動かすことができるんじゃないか。自動車で言いますと、キーを持たなくても直結をすればエンジンがかかるというのと同じで、そういうことがやれる可能性がある。また同時に作業中に誤って——これは往々にして原子炉事故の中でも作業員が誤って事故を誘発するという例がたくさんあったわけですが、誤ってこういったケーブル系統に何らかの被害を与えてしまうと、これが意思に反して動き出すというふうな、そういうことも考えられないことはない。その点いかがでしょうか。かぎを預けたから必ずしも安心できるものではない。このかぎを預けるということは一応形式上の問題であって、作業その他について考えますと、かぎそのものを預けたことによってこれが完全に動作をしないんだということの保証にならないような気もいたしますが、その点についていかがですか。
  21. 山野正登

    政府委員山野正登君) 運転モードスイッチかぎ県知事さんにお預けして管理保管していただくという点でございますが、これは先ほど御説明しました遮蔽改修とはまた別の話でございまして、遮蔽改修をいたしますのと同時に、原子炉プラント部分の主要なキーにつきまして安全性の総点検をしようということをもくろんでおるわけでございますが、その安全性の総点検の一環としまして、制御棒駆動機構試験というものもしようといたしておるわけでございます。この制御棒駆動機構試験をするにつきましては、御指摘のように、運転モードスイッチというものと制御棒駆動盤かぎという二つかぎが要るわけでございますけれども、この二つ県知事にお預けしようということでございます。お説の、このかぎがなくとも配線を変えれば制御棒は動かせるのではないかという点でございますが、この試験目的と申しますのは、正常に原子炉運転をしておる状態におきまして駆動棒が正常に動くかどうかということを検査するために行うわけでございますので、そのように配線等をいじりまして正常でない状態にいたして動かしても、これは何ら技術的に意味のないことでございますので、そのようなことはできるかできないか、ちょっと私はいま存じませんけれども、たとえできるといたしましても、する意思は毛頭ないということでございますので、制御棒駆動試験をいたしますときには、知事の了解をとりましてかぎを借りてこの試験を行うという運びになろうかと存じます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 まあ、いま申し上げたのは、故意配線を変えてやろうと思えばできないことはないから、そういう危険性はあるということを申し上げたんですが、まさか故意にやるということはちょっと考えられないことだと思います。したがって、作業中誤ってそういったような誤動作するような原因がつくられる可能性があるということを申し上げたんです。そういう意味からいきますと、非常に慎重にこの修理は行われるべきであって、そういう面も考えていきますと修理期間というのが案外長くなるんじゃないか、そういうように私思ったものですからお伺いしたわけなんですが、それでは、いま予定されております修理に要する期間ですね、大体どのぐらいの期間を予定されておりますでしょうか。
  23. 山野正登

    政府委員山野正登君) 入港をいたしまして大体三年間を予定いたしております。先ほど申し上げました遮蔽改修工事手順を変えましたことによりまして若干作業性が落ちるわけでございますが、これは圧力容器上蓋部作業だけをつかまえまして、それに着目した場合に二、三カ月ぐらいずれるかなという感じでございまして、これは全体の計画の中では十分に吸収され得る問題でございまして、従来計画いたしております大体三年間には終了し得るのではないかというふうに考えております。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、制御棒駆動試験ですね、これについて、かぎ久保知事に預けておくから、その預けているかぎをまた返してもらって、そのかぎでもって駆動試験を行うのだと、こういうことをいま申されたわけなんですが、この駆動試験を行うのはやはりドックの中で行おうというふうに考えておられますか。
  25. 山野正登

    政府委員山野正登君) ドックの中で行うか、岸壁で行うか、これはまだ未定でございます。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 そういう試験が一切終了してきますと、今度は原子炉出力上昇試験に入るんじゃないか、かように思うのですけれども、その間にいろいろな細かい試験もあろうと思いますが、炉の出力上昇試験は一体どこで行うのか、これについてお伺いします。
  27. 山野正登

    政府委員山野正登君) 出力上昇試験と申しますのは、停止の状態から全出力状態まで幾つかの段階に分けて行うわけでございますが、この修理が完了いたしました暁には、低出力試験と申しますのは新しくこれから決めます定係港岸壁において行う、それから高出力試験につきましては外洋に出て行うということを予定いたしております。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、大体いままでお伺いしてまいりますと、今回佐世保の方で修理をする、いろいろな条件をつけた上で修理をするという段取りになりますと、回航の時期もそれに従って決まってくる。さらに、ドックに入ってからの修理期間というのも大体見当がついてくる。そうして最終的には低出力試験あるいは高出力試験を行うという段階に入るわけですね。そういうプログラムが浮かんでくるわけなんですけれども、問題となるのは、佐世保まではいいかもしれません、それでできるかもしれませんが、いまの低出力試験に関しては定係港で行う、もっと違った言葉で言えば、恐らく母港という問題が出てくると思うのです。ですから、母港についても選定をし決定をしておく必要があるのじゃないか。そうしませんと、修理はできたけれどもまた同じことを、さまよっていくような感じになるのではないかと、かように思うのですが、この母港選定に関して決定していくスケジュールですね。これらについては一体どうお考えになっておりますか。
  29. 山野正登

    政府委員山野正登君) 母港につきましては、修理港問題が決着をし次第、その選定作業に入りたいというふうに考えております。
  30. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、比較的近い将来に母港選定を始めると、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。——佐世保母港にした方がいいじゃないかという考え方もあるようですが、これだけいろいろと問題のある船ですから、まだまだ住民のコンセンサスを十分取りつけているとも考えられない、そういう中で佐世保母港にするというのは、ちょっとなかなか大変なことじゃないか、かように思いますが、そういうふうな考え方もちらほら出ているようでございますけれども、これについてはいかがでしょう。
  31. 山野正登

    政府委員山野正登君) この母港選定問題もいろいろ微妙な問題でございまして、修理決着後に私ども選定に入るわけでございますが、長崎——地元におかれましても、この母港の問題というのは、反対論賛成論、入りまじっていろいろ議論が行われておるようでございまして、この時点に特定の地域母港候補地である、候補地でないというふうなコメントを申し上げるのは、きわめて不適切かと存じますので、何分その点は御了解いただきたいと存じます。
  32. 松前達郎

    松前達郎君 佐世保の方では、母港としては引き受けないんだということもおっしゃっておられるようでございます。母港の問題、非常にその次の段階として重要な問題と思いますから、これについてはスケジュールを立てて、ひとつ決定をしていただきたいと私は思うのです。といいますのは、どうもいままでの原子力船に関する行政的な面で、余りにも行き当たりばったりみたいな結果となっておるものですから、ここまで来ますと、今後の問題というのは十分計画的にひとつ配慮していただきたい、そういう意味で申し上げたわけでございます。  地元県議会、市議会の採決で受け入れを承知したということになったわけですが、当初は県議会の方は核抜き修理ということで承知をしておられた、こういうふうに伺っておるわけで、態度が急に変わったわけですね。これは恐らく、先ほど申し上げました佐世保重工問題等、あるいはそれに引きかえに新幹線ですとか、いろいろな経済的な問題、そういうものを引きかえに考えての、これは地元側の判断じゃないかと私は思うのです。政治的取引だというふうに一言で言えば言えるのじゃないかと思うのですが、「むつ受け入れに関して住民の方でまだ納得してない方々がたくさんおられるし、またこういった態度を急変する以上、それに対して今後十分な説明が行われなきゃいけない。これは何も原子力船だけじゃありません。原子力発電所についても地域住民納得というものがどうしても必要だというのが、これはもう原則なんですけれども、そういった受け入れに関して住民納得させるために、科学技術庁は知らないんだ、もう地元に任してあるんだというふうなことで行かれるのか、あるいは過去の例から考えまして、今回科学技術庁としましても積極的にこの住民に対して理解を得るような努力をされるのか、それについてお伺いをいたしたいと思います。
  33. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 先ほどから母港の問題、あるいは地元に対するいろいろな御心配の問題、大変貴重な御意見でありまして傾聴申し上げたわけでございます。いろいろの問題で地元にお任せしなければならぬ点は、いろいろまたありますけれども、やはり安全に対する責任政府でございますし、この点を十分に配慮するとともに、それに対する御納得をしていただくという点についても、もちろん地元の御協力を得なければなりませんが、最終の責任政府が持ちまして、地元の御協力を得ながら理解納得をしていただくように十分注意しなければならぬと思っております。  なお、これは、あえて原子力船だけではなしに、原子力発電所等を通じまして必要なことだという御意見でございまして、これは申すまでもなくごもっともでございます。こういう点につきまして、政府としても従来努めてまいりましたけれども、なおまだ残されている問題が具体的にたくさんあると存じますので、われわれといたしましては誠心誠意努力いたしまして、いま申しましたような方針が貫き得るように努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  34. 松前達郎

    松前達郎君 いま今後の姿勢について長官がおっしゃったわけですが、今日までを振り返ってみますと、もうこれはくどいようですけれども原子力船に関しての地元理解を得る努力というものですね、これがどうも政府の方で現状認識が甘かったというふうな批判もあるわけで、まあ努力が足らないというのは大方が指摘するところであろうと私は思っておるわけなんですが、これについてもいろんな調査が行われておって、政府を信頼できないという人たちが四七・四%あると、そういう調査もあるぐらいですから、やはり安全性説明の問題ですとか、あるいは行政的な一貫性の問題ですとか、秘密主義に走るということのないように、ひとつ十分努力を続けていただきたいと思うのです。  そこで、「むつ入港に関しましていろんな問題が起こってくると思うのですけれども、その中でもたとえば、これはかつてあったことで魚価の暴落ですね、魚の値段が下がってくるというふうな問題もあろうと思うのですが、こういうふうなもろもろのことが起こってきたときに、政府としてはどういうふうに対処されるつもりか。まあ補償などについては青森方式というのがありますけれども、そういったような方法で解決されるのか、あるいはその他の方法考えておられるのか、その点についてひとつ御説明いただきたいと思います。
  35. 山野正登

    政府委員山野正登君) 「むつ」に明らかに起因いたします魚価低落というもの、これはまあ風評による魚価低落というのはあるいはあり得るかもしれないと考えておりますが、そのようなものがあった場合には、政府において責任を持って補償しなきゃならぬというふうに考えておりますが、その仕組み等については今後検討していきたいというふうに考えております。
  36. 松前達郎

    松前達郎君 いままでいろいろ例がありましたので、その辺今後十分御検討いただきたいと思うんですが、ただ、お金を出して何とか承知さしていくんだという方法、それは一つ方法かもしれませんが、しかし、それがやはり不信までを解決することにはならない、かように思っております。そういう面でひとつ今後御配慮をいただきたい、かように思うわけです。  そこで、今度は原子力船の今後の問題について御質問を続けさしていただきますが、原子力船に関して実用舶用の原子炉ですね、これを積んだ船が次々と将来建造されるであろうと、恐らくそういうふうな想定のもとに今度の法改正も行われているんじゃないかと私は思うのですけれども、次々と建造される——いま世界でそんなに数多くないわけですね。しかも最近になって次々とは建造されてないわけです。そういうふうに、今後実用船が建造されるのはいつごろになるというふうにお考えでしょうか。
  37. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 原子力船につきましては、先生いま御指摘のとおり、現在のところそう数があるわけじゃございませんですが、海運、造船という立場で各国もやっておるわけでございますが、そのほかに最近はエネルギー事情というふうなことも絡みまして、エネルギーの多様化ということも考え原子力船開発が諸外国で積極的に行われておるという段階でございまして、すでにアメリカ、ソ連、西ドイツにおきましては第一船の建造が行われて実用化に備えているわけでございますが、わが国におきましても、この「むつ」によりまして、建造の実績とそれから運航の経験を積もうということで、いまそのための努力を続けているわけでございますが、実用化の見通しということにつきましてはいろいろと見方があろうかと思いますけれども、昭和五十年の九月にニューヨークで開かれました原子力船に関します国際会議におきまして、欧米諸国ではおおむね一致した見通しということで、一九八〇年代の後半には原子力船が本格的に海運界で活躍するのではないかというふうな予想をしているわけでございますが、これにつきましても多少の前後のずれということがあろうかと思いますけれども、一応その辺か原子力船の実用化の時代というふうに考えていいかと思います。そういう世界の情勢でございますので、わが国といたしましてもそういう国際的な動向に留意しながら原子力船時代に備えていく必要があろうかと考えております。
  38. 松前達郎

    松前達郎君 まあエネルギー問題から考えて、動力として原子炉の動力を使おうという考えが出てくるのは当然かもしれませんけれども、どうもその状況を見てみますと、世界的にも最初のうちは景気よく原子力船の建設をやり始めたんだけれども、最近どうもちっともそれが推進されていない。たしか世界でいま原子力船として運航されているのは三隻じゃないかと思うんですね、もっとありますか。そんなにないと思うんです、まあ「むつ」は別として。しかもそれは大分前につくられているんで、それ以降新たな建設がほとんどの国で行われていない。特にソビエトあたりですと、これは砕氷船という特殊の船で建設が行われているし、あるいは原子力潜水艦で行われている。まあこれまで入れりゃ大変なんですが、軍事目的は別として船の建造というのは余り推進されていない、そういうふうに思うのですけれども、現在世界各国で建設をされつつある新しい原子力船というのがあるかどうか、その点一つお伺いいたしたいと思います。
  39. 山野正登

    政府委員山野正登君) 現在のところ一番新しい原子力商船というのはソ連のシビリー号が昨年就航したと聞いておるわけでございますが、それ以降確かに現在建造中のものはございませんが、カナダが一つ原子力商船の計画を進めておるというふうに聞いております。  これは御承知のように、造船、海運業界というのが非常に不況に陥っておりまして、先ほど運輸省の方から一九八〇年代後半には実用化時代が来るであろうという見通しが述べられましたけれども、従来考えられておった線よりも若干後にずれておるわけでございますが、かといってこの原子力船開発というものをおろそかにしていいかというと、そうはまいらぬと思うのでございまして、ソ連は昭和三十四年、それから米国は昭和三十七年、西独は昭和四十三年だったかと思いますが、おのおのそういう年代に商船第一船の建造を終了しておるわけでございまして、十分な運航実績も積みまして来るべき実用化時代に備えておるということでございますので、わが国としましても、できるだけ早くこの「むつ」の開発というものを続行いたしまして十年後に備えなければならないという状況ではないかというふうに考えております。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 実用的に原子力船がどしどし使われるようになる見通しについてさっきお伺いしたんですが、まあ一九八〇年代の後半ということですが、これも恐らく多少ずれてきているというお話でございます。まあ、ここ十年ぐらいはそう原子力船の新しい開発というのはなかなかないんじゃないかということになるんじゃないかと思うんです。したがいまして、いま原子力船開発をやはり手がけておかないとエネルギー政策の問題からいっても、その時代の流れに乗りおくれるんだというふうな意味の御答弁があったわけですが、船としてまとめて開発をするというのはどうも早いんじゃないか。するのなら、小型の動力炉として開発をしておいて、これが完成される、十分安全でしかも実用に供せられる、もう極端に言えばどこかこの辺の庭先でも置けるんだというふうな、そのくらいの自信を持った技術が確立されてからこれを船に搭載すればいいんじゃないか。初めから船と一緒になって考えますと、またいろいろな問題が出てくるんじゃないかと、私はそういうふうに思っておるわけであります。  さてそこで、原子力船についてお伺いしますが、原子力船の建造費ですね、一般の船はいまディーゼルエンジン、高速ディーゼル、そういうものを積んでおるわけですが、一般の船とそれから原子力船の建造費というのは一体どのぐらいの差があるものでしょうか。相当原子力船の方が価格が高いのじゃないかと私思うんですが。
  41. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 船の建造費が幾らかかるかということになりますと、これはいつつくるかということにも関連いたそうかと思います。それでさらに、原子力船と在来船との間の建造費がどう違うかということになりますと、これも最近のように造船が不況というようなときになりますと船の建造費も安くなる、それから昭和四十八年ごろのように非常に受注が多かったときには高くなるということもございますので、なかなか比較というものはむずかしいかと思いますが、原子力船原子炉を搭載しておりますし、またそれのための安全確保ということで船体構造にもいろいろな対応策が講じられておるわけでございますので、一般的に申し上げますと、在来船に比べて原子力船の値段は割り高になるというようなことになろうかと思いますが、その場合でも船の大きさとかスピードというようなもの、言うなれば推進機関の出力が大きくなるということになりますと、その格差というものが若干縮まってくるんじゃないかというふうに考えられておるわけでございます。それで船価の比較につきましては、これも一九七五年にニューヨークで開かれました原子力船会議でアメリカで出した試算がございます、それから同じ年にイギリスでもいろんなそういう試算をしたのがございますけれども、船の種類その他によって変わってこようかと思いますが、その試算によりますと、大体原子力船は在来船に比べて建造費が五割ぐらい高くなろうかというような数字が出ております。これもそのときどきあるいは船の大きさ、それから出力等を若干いじりますと、また数字が変わるということがございますけれども、その当時の数字ですと、大体五割程度高くなろうというような数字が出ております。
  42. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、大体五〇%ぐらい高くなるというふうに理解していいのじゃないかと思うのですが、さてそこで今度は船体の寿命ですね、これは一般的な船の場合で、使い方にもよると思いますが、寿命は大体私は二十年ぐらいじゃないかと思うのですが、その中に搭載しております舶用炉の寿命ですね、原子炉の寿命、これが一体どのぐらいになると推定をされておりますか。
  43. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) ちょっと前の質問について補足さしていただきます。先ほど船の建造費は五割ぐらい高くなろうかと申し上げましたが、それとあわせて追加しまして経済性についてちょっと御説明しておきたいと思いますが、これにつきましてもいろんな要素がございますのと、それから実証的なデータというものが現在得られてないという状況でございますけれども、これも先ほど申し上げましたときの検討資料から、大体原子力船と在来船は競争できるというような感じの結果が出ております。  それからただいまの御質問の原子力船舶用炉の寿命は何年ぐらいかということでございますが、陸用の炉の耐用年数につきましては、普通三十年ぐらいというふうに言われているやに聞いておるわけでございますが、舶用炉につきましては、そういう実績はまだございませんけれども、陸用炉と比べて特に舶用炉が短いんだということにはならないかと思いますので、原子力船の寿命そのものにつきましても、実際在来船と大体同程度というふうに考えてよろしいんじゃないかと考えております。
  44. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと大体二十年、私も実は船を取り扱ったことがありますけれども、手入れの仕方で違うといえばそれっきりですが、大体二十年ぐらいだと考えていいんじゃないかと思うのですが、なぜこういうことを申し上げるかといいますと、エネルギーが将来なくなるであろうから——これも、石油エネルギーについてなくなる、なくなると言いながらいつまでたっても、三十年持つというのがここ五年ぐらい続いているわけですね、新規の開発も進められる。こういう中で、果たしてこの原子力船そのものが経済的に——エネルギーがなくなれば別ですけれども、現時点では経済的に成立するのかという問題、これを考えたものですから、そういう意味でお尋ねをいたしたわけでございます。  そういうことから考えますと、これは軍事目的だったら話は別なんですけれども、わが国の場合はそういうことは許されない。したがいまして、軍事目的以外に考えますと、原子力船の役割りというのはまだまだ将来の話であろう、そういうふうに解釈せざるを得ないんじゃないかと思うんですが、そういうふうになるとすれば、先ほど申し上げたように、動力炉としての小型原子炉開発というものを慎重に、しかも信頼できるものにする努力を続けていく、これは陸上でできる話なんで、そういうことから始めてプログラムを組んでいくべきじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけです。小型炉の応用というのは、たとえば離島における発電の問題ですとか、これも離島においては風が強いとか、風力とかいろんなことを言っておりますが、しかし、これも一〇〇%電力を賄えない。そういう面から考えると、やはりそういったいろんな使い道がある。これを基礎的にいまから着手をしておくべきじゃないか、それができて船にも搭載できるようになる、こういう考え方開発を進めるべきだと私は思うわけなんです。やはり何でも新しい技術の開発というのは手順があるわけで、この手順を踏んで行っていかなきゃならない、こういうふうに思うのです。  そういう意味からいたしますと、今回の法改正において実用舶用原子炉について許可を運輸大臣が行うということが出ておるわけなんですが、何かどうもおつき合いにさせられているんじゃないか、しかも、ずっとその議論をお伺いしておりますと、体制そのものもまだ不十分である、こういうふうに考えるわけなんで、ちょっと時期が早いんじゃないかという感じを私持っておるわけです。  また原子力船にしましても、せっかくつくったにしても現在のような状況、国内においてもそうなんですから、しかも諸外国においては原子力の利用に関していろいろな議論が最近ほうはいとして沸き上がりつつある。西ドイツあたりでも原子力開発というものについてもう一遍見直そうという考えも出てきている。そういう状況の中で、果たして日本を出航したはよかったけれども各国に寄港できない、反対運動があって寄港できない。そういうふうなことになったんじゃこれはもう何のためにやったのかわからない、こういうふうなことになりかねないわけで、また同時に、石油が比較的、三十年で枯渇するとかいろいろ言われておりましたが、これもその時点での開発見通しを含めての考え方なんで、まだまだ石油そのものについても開発される余地というのは、探査等を行えば幾らでも出てくるので、まだまだあるんじゃないか、さらに石油にかわるエネルギーとしてのガス、このエネルギーについてもいまのところどんどんと新たなガス田が発見されている、こういう状況ですから、そういうふうな意味から原子力船というのはまだ早いというような気が私はしてならないのです。早いというのはやるなということじゃないのです。やるなということじゃなくて、実用船として考えるのはまだ早い。しかも、船は、外航船の場合、一たん国外へ出ますと油を補給するのは日本の油じゃないんです。外国の油をそれぞれの港で補給して歩いて、日本へ帰ってきて余っていれば税金がかけられるということです。そういう点から考えても、この原子力船開発についてはやはり慎重に検討をしていかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに私考えたものですからいま御質問をさしていただいたわけでございます。  そこで、今度は原子炉、いわゆる発電用原子炉について若干御質問させていただきたいんですが、本会議でも私代表質問をさせていただいて、発電用原子炉というのは現時点ですでに十分実用化された、もっと言いますと完成されたものである、したがって、この原子炉に関しての許可については各省庁に任せていいんだ、こういった意味の答弁があったと私思うんです。私自身はまだ現在の発電用原子炉については実用化の域に十分達してないという解釈をいたしておりますので、その点について御質問さしていただきたいと思うんです。これは完璧に一〇〇%完成されるということはあり得ないでしょうが、一応完成されたというふうにみなしておられるのは、一体何をもって完成されたというふうにみなしておられるか、その点についてお伺いします。
  45. 武田康

    政府委員(武田康君) 御質問の、実用化の段階に達した、あるいは完成したと、これはある意味で抽象的な表現でございまして、仮に完成という意味が、細部にわたりましてもう何ら一切手を加える余地のない、また改善の余地のないというような、きわめて一〇〇%完全な意味での完成というぐあいに考えますと、現在の軽水炉は、私どもも改良標準化作業——そのうちの改良というのは明らかに改善の余地があるということでございますが、やっているところでございますので、そういう完成という定義であれば完成していないというふうになるわけでございます。しかし、社会常識として、こういう技術が完成している、こういう技術が実用化しているというのは、十分実用に耐え得るということでございまして、たとえば、現在の私どもお互い使っております自動車でもそうでございますし、やはりあれも毎年毎年改良いたしております。そういう意味で、社会一般の方々、あるいは特定の事業をする人たちが、こういうものを大いに使っていこう、それが技術的にもそんなにひどい手間のかかるものではない、また経済的にもほぼ成り立ち得るという域にございますと、これは十分実用化されたと考えてよいと。まあ、言い方にもよりますが、これは技術として完成していると——まあ漠たる言い方の完成でございますけれども、そう言っていいんじゃないかと思うわけでございます。  現在、発電用の軽水炉、数十万キロワットから百万キロワットクラスのものにつきまして考えますと、現在日本の中でも十数台、一千万キロ近くのものが動いているわけでございますし、世界的には一億キロワット近くのものが動いておりまして、それはそれなりの効用をみんな発揮しているわけでございます。もちろん個々にはいろいろ問題はございます。そういう意味で私どもは発電用の軽水炉、いまのようなタイプのものでございますけれども、これは十分実用化の域に達し——言葉の表現の問題でございますけれども、さらに言えば完成と言ってもいいというようなふうに考えているわけでございます。
  46. 松前達郎

    松前達郎君 表現の問題と言えばそれっ切りになってしまうんで、一〇〇%完成ということはあり得ない、これは当然な話です。いま自動車の例を挙げられましたけれども、自動車の台数と、たかだか十四基程度の数とで比較するのもこれはおかしい話だと思うんです。いまわれわれの周りを走っている自動車でも稼働率は四〇%ということはないんですからね、ほとんど故障しないで動いているんですから、こういう比較はちょっとまずいと思うんですが、私は、完成されたというふうな意味でみなすのは、標準化作業が完全に終わった時点、ある段階ですね、終わった時点、こういうふうに解釈はしておるんですけれども、いまの発電用原子炉の稼働の問題一つ挙げましても、これは平均的に言いまして、一番いい五十三年四月あたりをとっても時間稼働率で四六・六%なんですね。ですから、目標が七〇%ということを盛んに言われておるわけなんで、少なくともこの七〇%に近づいた時点ぐらいまではまだまだ十分開発するべき余地が残っているんだと、その点から言ってもそういうことが考えられるわけなんです。そういう意味も含めてまだ完成されてないと、私は解釈をいたしておるんです。本法案が提出されたのが八十国会だということを聞いておりますけれども、昭和五十二年、その当時からもうすでにこの法案出ているわけですから、私はその当時おりませんでしたからわかりませんが、その当時からもうすでに完成されたという議論で進められているんじゃないかと私思うんです。ですから、そういう意味も含めて、完成しているという問題、これは非常にむずかしい問題ではありますが、私はまだまだというふうに解釈をいたしておりますが、稼働率をずっとながめてみますと、東海の原子炉、コールダーホール型の原子炉ですが、これは比較的稼働率が安定しているんですね。安定して、いいんです。これは一体どういうところに原因があるんだろうか。これはシステムが軽水炉型のと違いますから、そういう点で何か特徴があるのかどうか、その点についてお伺いしたい。
  47. 武田康

    政府委員(武田康君) 御指摘のとおり、東海のガス炉は、稼働率表というものをつくりますと、いい数字がずっと並んでいるわけでございます。稼働率がほかのものと比べまして、少なくとも実績としては平均的に日本の中では軽水炉よりはいいというのには幾つか理由があろうかと思います。そのうちの一つは、東海のガス炉は運転中に燃料を取りかえするというようなシステムでございます。軽水炉の場合には、ある時期にとめまして燃料を取り出すというようなやり方をいたしております。そういうやり方の軽水炉の場合には、定期検査のクリティカルパスを燃料取りかえが一部受け持っているわけでございます。燃料取りかえのせいだけということではございません。それに対しまして、東海のガス炉の場合には燃料取りかえというクリティカルパスの構成要素はございません。これが一つの差でございます。それから、これはガス炉、軽水炉あるいはその規模等々もろもろの関係がございますけれども、東海のガス炉の場合には、軽水炉に比べまして、発電所内といいますか、いろいろ手入れをすべき設備内での放射線レベルが少し低うございます。これは作業性がいいということにつながっております。ですから、同じ手間がかかるとしましても、時間的には節約になるというか、効率よくできるというような要素がございます。それから、これは東海のケースのみにアプライできることかと思いますけれども、東海の発電所はタービン発電機が二台ございます。で、タービン発電機系の方での計画的な停止または予定外の停止と——軽水炉の場合には一対一対応でございますので原子炉をとめるというような要因になりますが、東海の場合には、片一方が残っていれば原子炉をとめなくて済むというような機器構成上の、稼働率という点ではメリットがございます。実は、東海発電所も当初幾つかのトラブルがございました。いまでもときどきトラブルを起こしておりますけれども、そういうトラブル経験を生かしましていろんなところで手直し等々いたしております。で、現在ではそういう意味での予定外の停止というか、予定外の点検というか、そういうものがだんだん減ってまいりましてかなりいい稼働率であるということでございます。
  48. 松前達郎

    松前達郎君 稼働率が、保守の方法のシステムが違うからということであろうかと思います。現在まで稼働率の悪い炉がありますね。できてしばらく運転したらそれっきりもう全然動かない、そういう炉があるわけなんですが、稼働率の悪い炉について特にその原因というのは挙げられますか。
  49. 武田康

    政府委員(武田康君) 現在十数台動いております軽水炉のうち、御指摘のように特に悪いと言うとあれでございますけれども、非常に低い稼働率を示した発電所がございます。これは一部の発電所におきまして定期検査の過程で配管のひび割れとか蒸気発生器細管のリークであるとか、そういうようなものを見つけまして、その手直しにかなりの時間がかかったというようなことが原因でございます。
  50. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、定期検査で発見をする、大体そういうふうなことでその手直しに時間がかかっていると、こういうことだと承りますけれども、そのほかに定期検査で特に出てくる欠陥ですね、ひび割れとかそういうもの以外に出てくる欠陥というのの主なものは一体どういうものがありますか。
  51. 武田康

    政府委員(武田康君) わりに最近の例で申し上げますと、たとえば沸騰水型では制御棒駆動水戻りノズルのひび、ライザー管などの応力腐食割れ。それから加圧水型では蒸気発生器細管のリーク。このほかに燃料で取りかえなければいけないもの、これはピンホールみたいなものがあいてリークがあるというようなことでございますが、そういったようなものはかつては出ておりました。いまは非常に減っております。
  52. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、原子炉本体そのもの——本体といいますか、それとの関連部分ですね、以外に恐らく制御機器とかそういった周辺機器があると思うんですね。こういった周辺機器についてのトラブルなり事故なり、そういう例はございますか。
  53. 武田康

    政府委員(武田康君) 私どものところにいろいろ事故の報告あるいは故障の報告というものは来ておりますけれども、その中の周りの方では、たとえば誤操作で原子炉がとまったというようなのが幾つかございます。それから、周辺機器と言っていいのかどうか、その周辺の定義によりますけれども、たとえばバルブがどうもぐあいが悪くなって取りかえましたと、あるいはポンプの調子が悪くて取りかえた、手直ししたというようなケースはいろいろその報告を受けており、またそれなりの処置をしております。
  54. 松前達郎

    松前達郎君 これらのいろいろなトラブルあるいは事故等があるわけなんですが、この周辺機器まで含めていわゆる標準化ですね、これはもう完了いたしておりますか。
  55. 武田康

    政府委員(武田康君) 私どもこの三年来、三年ぐらい前から改良標準化計画というのを進めておりまして、五十二年度までに第一次の改良標準化プランというのができまして、これはこれからつくるものに設計としてもアプライされております。しかし同時に、引き続きまして改良標準化計画を進めております。したがいまして、先ほどの先生のお話にもございました改良標準化が完成したときが実用化のポイントであるというようなお話ございましたけれども、その意味では改良標準化作業は今後とも続けていくということでございます。  なお、改良標準化、私どもこれから三年がかりぐらいで第二次が終わるということでございますが、しかし技術は日々進歩するものでございますので、また標準化の思想は、ある時点で一番適切なものというのをフィックスいたしまして、それをアプライして一まとめのロットのもの、原子力の場合には三年、五年同じようなタイプのものをつくりということになろうかと思いますが、そうしてさらにその後また三年、五年先にもっといいものをというのが標準化と技術進歩との調和の思想かと思いますので、そういう意味で言えば軽水炉が続く限り改良標準化的なこと、それを計画とみなすかどうかわかりませんが、それは続けていくのではなかろうか。将来の話でございますので断定的に申し上げるわけにはまいりませんが、そういう努力は恐らく今後ずっと続けていくと、こういうことになろうかと思います。
  56. 松前達郎

    松前達郎君 将来に関して標準化の努力を続けていく、標準化に対するまたその裏づけになる技術開発はどんどん進めていくということなんですが、しかし、ある程度の標準化ですね、これはもうすべて製品つくるときに考えられる手順として必ず標準化というのがあるわけです。ですから、標準化がどこまで行ったら終わるのだという、これまた議論としては合わない面もありますけれども、常識的に基本的な標準化というのが大体終了する、それからさらに技術がよくなれば次のステップの標準化が行われる。これはあたりまえの話なんです。そういった第一次的な標準化——第一次と言ってもどの程度まで第一次かまだ御説明伺っておりませんが、そのほとんどの内容についての、大まかな内容について標準化が終了し、その仕様によって原子炉がつくられ、しかも稼働率がある程度上がる、安定した動作をするという、それが私完成された時点だというふうに解釈をするものですからいろいろとお伺いいたしたわけでございます。  西ドイツの場合ですね、恐らくわれわれとして大いに西ドイツの考え方も勉強しなきゃいけないんだと思うのですが、西ドイツの原子炉開発事情についてはいろいろ言われておりますが、大ざっぱに言ってどういうふうに理解しておられるのですか。
  57. 武田康

    政府委員(武田康君) 私ども先ほど申し上げましたように、もとはアメリカの技術でございますが、改良標準化計画、五、六年になりますけれども、二、三年後にはいわば、表現が適切かどうかは別にしまして、日本的な改良標準化発電所をつくっていくと、こういうようなステップでございますけれども、西ドイツではやはり当初はアメリカからの導入でございますけれども、ドイツタイプというようなものをすでにつくって一部輸出をもしていると、こういうような状況でございます。なお、少し詳細は原子力発電課長から答えさせていただきます。
  58. 高橋宏

    説明員(高橋宏君) 西ドイツでございますが、大体導入の時期は日本と同じだったわけでございます。しかも、アメリカのGE及びウエスチングハウスからでございますので日本とパターンは同じでございますが、私が承知している限りで申し上げますと、一九六九年にオブリッヒハイムという、ドイツでは原型炉と呼んでおりますが、三十六万キロワット程度のものができております。これがほぼ完全導入ベースだと思われます。それから次のステップとしまして、一九七二年に運転を開始しておりますシュターデという発電所がございます。これはフォーループの六十六万キロワットでございまして、ちょっといまのタイプと違いますが、このあたりからかなり自主的な改良が加えられておりまして、さらにそれに続くプラントといたしましてビブリスのAタイプというものがございます。これは百二十万キロワットのフォーループでございます。ここに至りましてほぼ球形格納容器を特徴といたしますドイツ型の原型ができ上がりました。続いてビブリスBを準標準型と呼び、ビブリスCタイプにおいていわゆるドイツ型標準炉ということで海外にも売り出しているようでございます。  日本との特徴を若干比較いたしますと、一番象徴的なものは球形格納容器でございまして、日本のいわゆるアイスコンデンサータイプの格納容器と根本的に違っておりまして、中身が球形でございますので非常にゆったりいたしておりまして、いろいろ作業性がいいとか、あるいはスペント・フユエル・ピットをこのコンテナの中に入れておるとか、あるいはコンテナの中にも人間が入る作業区域と入れない作業区域を分けております。日本は全部入れませんけれども、そういったところにかなりの特徴があるかと思います。なお、このドイツ型におきましても、ただ圧力容器そのものは日本からの全面輸入でございまして、逆に言いますと、ドイツの圧力容器そのものは日本が全面的に輸出いたしております。溶接技術が日本が非常にすぐれておるというようなことが特徴かと思います。  それから、いろいろライン川のほとりにある関係あるいはベーザー川、エルベ川、みんな川っぷちでございまして、非常に近うございます。そういうことで防御システム等が違いますが、こういうドイツ型でございますが、ただいま審議官から説明がありましたように、日本におきましても現在第一次改良とその標準化を終了いたしまして、本年度から着工いたしますたとえば川内の1号機あるいは福島第二の2号機等は私ども日本におきますいろいろな改良成果を取り入れた標準型を完成し、その標準成果を取り入れさせております。この特徴も一つはこの容器のスペースを約二倍ぐらいに広くいたしました。中の機器の配置を変えると同時に、作業性改善のためのいろいろな作業スペースそれから階段等かなり工夫をいたしますとともに、作業時の被曝低減ということに意を用いた設計に改良いたし、それを標準化いたしました。今後はさらに第二次標準化に向かって作業を進める段階でございます。
  59. 松前達郎

    松前達郎君 西ドイツの開発事情をお伺いしたわけなんで、西ドイツの開発の事情は自主技術というものを相当重視して開発を行って、現在ではある程度のものをつくり上げ、しかも外国まで輸出している、圧力容器日本からというのは日本の溶接技術がいい、それは確かなことでございます。そういうことを考えてみますと、やはりここに日本の原子力行政も大いに勉強しなきゃならない面があるんじゃないか、これは基本法の中で「自主」という主葉が使われておりますけれども、この「自主」というのはいろいろな意味がありますが、その中の一つにやはりわれわれの力で、自分たちの技術でつくろうじゃないかという意味も含まれているんじゃないか。そのためには相当慎重な開発計画が行われ、しかもその計画に基づいて十分実用にたえるものというふうなところまで持っていって、それから原子炉としての商用性というものが認められてくるんだ、こういう段取りだと私思っておるわけなんです。そういう意味で、西ドイツの開発の様子というのが非常に参考になるんじゃないかと思ったのでお伺いいたしたわけなんです。  いまちょっとお触れになりましたけれども、今後、わが国の軽水炉技術ですね、これらについて自主的な開発、ただ外国からノーハウを持ってきて、それに基づいてつくり上げた原子炉を何とか稼働率を上げるため、あるいは故障をなくするためにいろんな面で手当てをしながら、だましだまし使っていくということじゃなくて、今後日本型といいますか、われわれのタイプで、われわれが考え出した新しい軽水炉をつくるという自主的な技術の開発について、科学技術庁としてあるいは通産でも結構ですが、どういうお考えを持っておられるか、それについてお伺いいたしたいと思います。
  60. 山野正登

    政府委員山野正登君) 自主技術の確立がきわめて重要であるということは先生御指摘のとおりでございまして、軽水炉につきましては、先ほど通産省の方から御説明ございましたように、導入しましたものの国産化に加えまして、できるだけこれを日本型のものにするという努力が続けられておるわけでございますが、今後ともこの面の努力というのは一層拡大してまいりたいと考えておりますし、また単に軽水炉のみならず、軽水炉を支えます燃料サイクルといったふうなものにつきましても、製錬、燃料加工、濃縮あるいは再処理という各般にわたりまして、その自主技術の確立ということを目指しまして鋭意努力を傾けておるところでございまして、たとえば濃縮につきましては、昨年濃縮パイロットプラントというものの建設に自主技術をベースとして入ってまいりましたし、また再処理事業につきましては、現在これはフランスから導入した技術によるものではございますが、動燃の再処理工場というものが試運転に入っておりまして、この秋から本格運転に入りますが、この技術をベースとしまして、第二再処理工場というものはできるだけ自主技術を中心に進めていきたいというふうに考えておるわけでございまして、御指摘の点は今後とも十分留意をしてまいりたいというふうに考えております。
  61. 松前達郎

    松前達郎君 自主技術の開発について今後進めるということですけれども、その場合に、やはり基礎的な研究の面ですね、これは各方面でやられている基礎的な研究面、それをくみ上げていってこれを実用化の方に移していく、リサーチとデベロプの問題です。こういったような問題の関連というのが非常に重要だと私は思うのです。恐らくこれについては今後科学技術庁が担当されるんじゃないかと思うんですけれども、その点についていままで行われているのは必ずしもそれがしつくりといってないような気もするわけです。そういう点については一体どういうふうに今後対処されるつもりですか、ありましたらひとつ。
  62. 山野正登

    政府委員山野正登君) 先ほど出ましたドイツの例を見ましても、過去二十年間のうち前半の十年間というのは主として基礎研究に力を注ぎ、最近十年間というのはその基礎研究に基づく実用化に努めてまいったというのがその経緯であろうかと考えておるわけでございまして、私どもも現在主として基礎的な研究を担当いたしております日本原子力研究所でございますとか、あるいはそれに関連した国立試験研究機関といったふうなもので進められる基礎研究をベースとしまして、たとえば動燃事業団といった開発機関が新しい動力炉の開発を手がけるといったふうな仕組みになっておるわけでございまして、お説のとおり、単に開発に先走るというだけではなくて、基礎研究というものにも十分力を入れていきたいというふうに考えております。
  63. 松前達郎

    松前達郎君 実用炉であるという考え方に基づいて今回の法改正の一つの基礎があるのではないかということでいま質問さしていただいたわけなんですけれども、多少技術的な面にわたるかもしれませんが、かねがねいろいろ疑問を持っておるものですから、その点についてまとめてちょっとお伺いしたいのです。  軽水炉で万一事故があるとすると重大事故につながるわけです。その事故の原因として考えられるものに再循環装置の配管破断というのが考えられますね、これはもう技術的にはだれも考えておる、こういうふうなことが考えられますが、これに対して一体対策ができているのかどうか、これが一つです。それからさらに、これは材料学的にいたって、熱サイクル、熱が繰り返して加えられますと、当然そこに材料の脆化の問題が出てくるわけです。その熱サイクルやあるいは相当高温における材料の強度低下、これはごく一般的な常識として起こってくる問題でありますが、これについては解決ができているのかどうか。さらに、放射線によるダメージといいますか、いわゆる放射線照射による強度低下これも当然起こり得ることであります。これについての解決が十分できているのかどうか。さらにいろいろ問題になっている応力腐食の問題がある、あるいは軽水、水を使うわけですからこの媒体によります耐食性の問題、いろいろなものを入れて耐食性について解決しようと努力はされておるようですが、この問題については解決されているのか。さらに、たとえば放射線によってN16とかN18というものができるわけですが、この放射能に対する遮蔽の問題については解決されているのかどうか。たくさんありますけれども、いままとめて申し上げましたが、そういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  64. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 幾つかの御指摘でございますが、まず再循環配管の破断問題でございますが、特にBWRの配管でいろいろな損傷が発見されたことは事実でございまして、特にライザー管あるいはエルボー等の溶接部近傍でひび割れが発見されたわけでございます。この発見されました理由も各種調査がされておりまして、この起こる理由としては使用環境、材料、これは溶接を含めました応力の問題、この三つの要素が総合して起こるというふうに検討されております。  現在その対策といたしまして、環境につきましては、溶存酸素あるいは塩素等の低減化を行うということで十分対処できる。それから材料につきましては、この原因が出るおそれのある場所の材料につきましては、特にカーボンの少ない材料を使うことによって十分対策が立て得られるということ。それから溶接等に当たりまして材料が鋭敏化する問題がございますが、これらを溶接の仕方等を改良することによって解除することができるというようなこと。そのほか、残留応力の除去の方法、こういうような問題を十分行えばこのひび割れ等が非常に発生しにくくなるということが技術的にわかってまいりましたので、現在の原子力発電所におきましては、これらの対策を講じた手法によりまして対応しておるというのが現状であると聞いております。  それから次に熱サイクルの関係でございますけれども、この熱サイクルにつきましては、軽水炉の使用温度というのは三百度程度でございまして、一般的に申しますと、火力発電の五百度以上という高温下、環境下の問題よりもシビアではないわけでございますが、特にそういう意味ではいろいろな強度特性というものは実証されておりますが、軽水炉用の材料として高温強度について特に配慮をする必要というのはないわけでございますが、しかしながら、軽水炉の運転中に熱サイクルによる影響というものが起きておることも事実でございますので、その点につきましては対策が十分立てられるというふうに考えておるわけでございます。  それから、放射線によりますダメージ、材料の照射による脆化の問題でございますけれども、これにつきましては、すでに外国におきましてもあるいは国内におきましても、非常な基礎研究が積まれておるわけでございます。しかも、発電所におきましては、重要な材料につきましては、原子炉の中に同一の材料を入れてその脆化の問題を常に監視しておるところではございますけれども、材質的にも非常に脆化のあらわれにくい、たとえばマンガン、モリブデン、ニッケル、低合金鋼というようなものを使うというようなことで対処しておるところでございます。  それから、最後に窒素の16あるいは窒素の18の遮蔽のお尋ねでございますけれども、確かにこの窒素16あるいは18は空気あるいは水の放射線分解によりまして発生するわけでございます。しかもこれらは非常に高いエネルギーのガンマ線を発生いたします。しかしながら、この核種はそれぞれ半減期が窒素の16では七秒、窒素の18では〇・六秒というきわめて短い半減期の核種でございます。したがいまして、原子炉遮蔽設計を考えます場合に、この二つの核種が量的に支配的に遮蔽設計に及ぼすというほどの大きなものではございません。したがいまして、現在の遮蔽設計であれば、この二つの核種の遮蔽については十分であるというふうに判断しておるところでございます。
  65. 松前達郎

    松前達郎君 大分話が細かくなってまいったわけで……。  それぞれ解決に対する対策というものが検討されしかも物によっては実行されていると、その結果大丈夫だと、もうこれは解決済みだというものがどれだけあるのかということですね。これもやはり完成されたものであるということの考え方の相違に基づいて私は質問申し上げたわけなんですが、このほか、原子炉そのものではありませんけれども、まだ残されている問題がいろいろあると思うのです。たとえば温排水の問題が一つある。これもやはり原子力発電所である以上、温排水というものは必ず出てくるわけなんで、たとえばこれを逆にうまく利用しているのは、たとえばスウェーデンあたりですと、ちょうどデンマークとの境目の海が凍らなくなったその一つの原因として温排水のせいがあるんだなんと言っているところもありますけれども、しかしこの温排水の影響というのはまだまだどういう影響があるか、ただ温度だけの影響で海が凍らないというようなことだけじゃなくて、そのほかにまだいろいろな影響が、これはいい影響も悪い影響も含めてあるんじゃないか、私はそう思うのですが、これについて明らかな分析ができているのかどうか。これも必ず問題となってくるところでありますから、それについて明らかにこういう影響がある、この影響に対してはこういうふうに処置できるんだ、あるいは処置できているんだ、そういうふうな分析ですね、これができているかどうか、それについてちょっとお伺いしたい。
  66. 武田康

    政府委員(武田康君) 温排水の影響でございますけれども、大規模になったのは最近でございますか、大昔から——大昔というと変ですけれども、何十年も前から火力発電所がございまして、そこではやはり海の水を使っておりましたので、同じように温排水の影響というのが定性的にあったわけでございます。いま温度だけかどうかというお話でございますけれども、確かにまず温度の変化がございまして、同時に、取水し放水するということでございますので、ある意味では、原子力発電所に着目すれば、原子力発電所周辺の海域に別の小さな海の流れのルートができる。それと自然——自然にもいろいろ流れかございますけれども、それとの組み合わせ、重畳が結果的に流れを支配する、こういうことになるわけでございます。  一方、海の温度が上がりますと、その中には植物、動物を含めまして、プランクトンから大きな魚までいろんな生物が存在しているわけでございますけれども、その生物がそれぞれ適切なといいますか、最適生存温度みたいなものがございまして、これは人間同様ある幅があるわけでございますが、その幅の範囲を逸脱してしまうようなもの、あるいはその幅の範囲でなおいい方向に温度が変わってくれるというようなもの、いろいろ出てくるわけでございます。生態系が違えば温度だけの話でなくて、生態系への影響があり得るわけでございますから、いろんな面で変わってくるということは十分考えられるわけでございます。そんなような意味で、それらプラス要素、マイナス要素すべてがわかったのかというような御質問であれば、わかっていない部分がたくさんございますというのがお答えでございます。  それでは何にもわかっていないのかということになりますと、いままで幾つかわかっていることがございまして、これは環境庁、水産庁、私どももそうでございますし、科学技術庁もそうでございますが、分業と協力関係でいろいろ分析をし研究をし、いろんな作業、仕事をやっております。そういう意味では、たとえば温排水はどんなぐあいに拡散するんだろうか、その拡散と実際の実態とが、シミュレーションと実態が大体合っているんだろうかどうかというような問題につきましては、かなりいい線までいっているというのが現状でございます。  一方、その温排水の温度変化によりましてそれぞれの生物、生体がどういう影響を受けるかという点につきましては、生体の最適温度といいますか、生存温度といいますか、そういったようなものについてはかなりなデータがございますが、じゃ、それと特定の場所の温度変化との関係がどうなのかという点については、なお不明確な点がたくさん存在しているところでございます。また、生体のプランクトンから大きな魚までの間で層のような構造をなしているわけでございますが、それが個々のものの影響はいろいろわかってきている部分がございますけれども、群としてどうか、あるいは生体群としてどうかという点については、なお勉強するべき点がたくさんございます。回遊等についても同じでございまして、先ほど申し上げましたような関係省庁、関係機関がいろいろ研究分析を続けている、こういうことでございます。
  67. 松前達郎

    松前達郎君 温排水のことについて、結果としてどういうことが生じたかということですね、それをまずつかまえて調査し分析し、それに対策するという、そういうことが当然これは行われるべきことなんでしょうが、いま申し上げたのはいわゆるシステムとして、原子力発電のシステムの中の一環としてこの温排水についてどういうふうな分析をしているのかという、そういうことですね、それと、今後、起きたから対処するんじゃなくて、そのシステムとしての予測されるものも含めて分析をし、しかもそれに対処できるような体制をとる、こういう必要があるのじゃないかと思うのです。これはしかし大昔からじゃなくて、そんなに昔じゃないのです、火力発電ができたのも。大昔というと大変な昔のことになる。そういうことなんで、その火力発電でも経験がある、こういうことですから、その点はある程度解決するのも時間の問題でできるのではないかと思うのです。  さて次に、これもまた非常にまだまだ未解決の問題が多過ぎると思うのですが、放射性廃棄物ですね。いわゆる核燃料の燃えかすとは違って放射性廃棄物、これか大量に——大量というか、ある程度出てくる、これは仕方がないことです。現在ではドラムかんの中に詰めてみたり、あるいはコンクリート詰めにしてどこかにまとめておくんだ、ある程度たまったら深いところへ海の底に沈めてしまえ、あるいはこれは費用がかかってしようがないんですが、宇宙に打ち上げてしまえなんというような考え方もあるようなんですが、この放射性廃棄物について、処理体制と安全確保の体制が確立されているのか。これもやはり原子力発電のシステムの中の一環として考えていかなきゃならない問題だと思うのですが、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  68. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 主として発電所から出る放射性廃棄物につきましてお答えいたします。先生御指摘のとおり、原子力施設から発生いたします低レベルの固体廃棄物は、現在は発電所の敷地内に安全な管理のもとに保管されておるわけでございます。この保管の状態は、安全審査の際あるいは保管庫の増設の際に逐一安全審査が行われておるわけでございます。また、保安規定等によりましてその管理の仕方等を義務づけて行わせておるところでございます。これらの放射性廃棄物は、当面、原子力事業者の施設の中で保管するということを方針としておることは事実でございますが、仮にその原子炉の約三十年という寿命につきまして、それをすべて施設内に保管しても十分なだけの敷地的な余裕は持っておるわけでございますが、この廃棄物が非常に累積してくるということは、また別の意味でも問題がいろいろあるということで、その最終処分につきまして現在いろいろと研究開発を進めておるところでございまして、その計画につきましては、原子力委員会が定めました方針に従いまして二つの処分の方法をこれから研究していこうということになっております。  まず、海洋投棄とそれから地中の処理——陸地処分、この二つを組み合わせてやっていきたいというふうに考えておるところでございます。それに必要な基礎研究はすでに相当積み重ねられまして、海洋処分につきましては比較的その進行状況も、基礎的な研究につきましてはほぼ終了の段階にございます。その結果をあわせまして五十四年度から試験的な海洋処分を実施していきたいというふうに考えておる段階でございます。これを実施するに当たりましては、試験的な海洋処分でございますので、国の計画として実施するということを考えておる次第でございまして、現在、原子力委員会の下部に設けました専門部会におきましてその計画の安全審査を進めておる段階でございます。この安全審査の終了を待ちまして関係漁業者の方々と打ち合わせに入り、御了解を得た上で試験処分を推進していきたいというふうに考えておる段階でございます。  陸地処分につきましては、現在基礎的な研究が原研等において進められておる段階でございまして、これも基礎研究の終了を待ちまして、候補地選定して安全に管理できるような処分方法を検討していきたいというふうに考えております。
  69. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、この安全審査に関しては、今度法体制が変わった場合、どこで行うのですか。
  70. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) これは一貫化のあれになりますから、行政庁でまず審査をいたしまして、それを安全委員会がダブルチェックをするというシステムで考えております。
  71. 松前達郎

    松前達郎君 さらに、微量放射線の被曝について、これもいろいろと議論されているところなんですが、これについてもまだ確信が持てるデータがどうもないのじゃないか、これもわが国独自のデータがなくてICRPのデータに依存している、こういう現状じゃないかと思うのです。  そこで、これも新聞なんですが、五月八日の新聞ですが、米国のエネルギー研究開発——ERDA、ここに働いている施設労働者の健康と死亡研究最終報告書というのが出されておる。アメリカの原子力委員会の委託で行われた調査報告なんですが、これによりますと、ごく微量の放射線を浴びても長期にわたって浴びている場合にはガンの発生率が多い、多い点で有意である、そういう結果が出ておるわけなんです。これに対して科学技術庁の方の話が載っておるわけなんですが、行政の立場としては一つの報告書だけをどうのこうのと批評するわけにはいかない。放射線審議会などで検討の対象にはなるかもしれないけれども、現行基準はICRPの新しい勧告がない限り手直しする必要はないと、こういうふうな意味談話が出ておるわけなんですが、こういった微量放射線に関するデータというのは今後どんどん出てくるのじゃないか。ですからそういう意味も含めて考えますと、まだまだいわゆるわれわれ人体に与える放射線の影響についての問題というのは、はっきりとした線が出てきてないんじゃないか、こういうふうに私考えるわけなんです。恐らくこれは御存じだと思いますが、この点についていかがお答えでしょうか。
  72. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生御指摘のハンフォード原子力センターの問題でございますが、これはハンフォードの原子力センターにおきます従業者のガン死亡者とその被曝線量を調査して、ガン死亡者の一部は放射線が原因となっているというような報告でございます。この報告につきましては、アメリカの規制委員会——NRCにおきましても、なお詳細に検討する必要があるというふうに言っておるわけでございまして、他の研究者によりまして独立の研究を進めておる段階でございます。また、この報告に対しまして、低レベルの被曝線量における影響というものの死亡率との関係につきまして、この研究が若干疑問があるというのをイギリスの国立放射線防護委員会等でも検討の結果、いろいろな点が指摘されておるのも事実でございます。まあこの調査研究が統計処理におきまして若干の問題があるというようなこと、あるいは若干専門的ではございますが、倍加線量の値を小さくとり過ぎているというふうな見解も表明されておるわけでございます。いずれにいたしましても、こういうような問題は、当然国際間で規制値としてこういう問題を議論する場といたしまして放射線防護委員会——ICRPというものがあるわけでございまして、こういうところの検討の結果というようなものを十分踏まえて、それぞれの国が規制値を検討するということになるシステムをいままでもとっておりますので、私どもとしてはその検討の結果を待ちたいというふうに考える次第でございます。  なお、低レベルの放射線による人体への影響につきまして、日本といたしましてもその基礎研究を進めるということはきわめて重要でございますので、日本におきましては、放射線医学総合研究所を中心にいたしまして、現在鋭意その研究を進めておるところでございます。
  73. 松前達郎

    松前達郎君 いろいろと質問を申し上げたわけなんですけれども、本委員会でいままで法律的な内容の問題からいろいろと議論あるいは質問が行われて、大体今回の法改正についての全容というのが出てきたんじゃなかろうか。ですから、そういう意味で残された部門として、残された面としていわゆる商用化されているんだという実用化の問題について、きょうは私自身の考えと多少違うものですから質問さしていただいたわけなんですが、今日までの軽水炉の技術ですね、これについて外国からノーハウを入れて日本で国産化——ある程度のわが国の生産力を使って炉をつくり上げてきたという歴史ですね。その中でやはりどうしても考えなきゃいけないのは、さっき申し上げました自主技術の問題であり、今後ずっとやっていこうというならば、その辺を基本的に考え直してシステムをつくり、しかもそれを着実に実行するというのが開発の手段だと私は思っておるわけなんです。たとえばいままでの軽水炉についてはある程度経験があるわけですから、多少技術的な問題もわかってきつつあるんじゃないか、あるいはわかっているんじゃないか、かようにも思われますが、今後システムの違う炉が導入された場合、たとえば例として挙げますとカナダのCANDU炉、こういう炉が導入された場合、あるいはまた、今後われわれ日本開発をいま進めておる各種のシステムと違う高速増殖炉とか、そういったようなたぐいの炉がありますが、こういった新しい分野のものが出てきた場合に、やはり今後その許可については通産省がやるのですか。これはもう実用化されたものとして考えて通産省が許可をするのかどうか。あるいはいままでと同じように手順を踏んで実用化されたと認められるまでの間は、通産省じゃなくて、原子力委員会なりなんなりの分野で検討されて、それから通産省の方に実用化されたと認定した上で持っていくのかどうか、その辺について。
  74. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 今回の法律改正によりまして、炉の形によりまして炉の区分をいたしまして、それぞれの主務大臣を定めて一貫的に規制するという方式をとっておるわけでございます。先生御指摘のたとえば研究開発段階にある炉、これにつきましては科学技術庁が所管していく。それから実用の原子力発電所でございますと通産省になるわけでございます。そこで、いまわが国が研究開発を進めておりますATRとかFBRにつきましては、当然、まだ研究開発段階でございますので、科学技術庁が所管することになるわけでございます。  もう一点、たとえばカナダで実用化がされておりますCANDU炉をもし導入した場合はどうなるかという御指摘でございますが、この炉の区分をいたしますときには、研究開発段階にあるか、あるいはもう実用化にあるかということの決定に当たりまして、原子力委員会並びに原子力安全委員会に意見を求めることになっておりまして、その意見を求めた上で政令で指定するという形になっております。したがいまして、CANDU炉が導入されることが決まりましたときに、当然その手続を踏んで実用炉と判断するかどうかが決められるわけでございますが、ただこのCANDU炉にいたしましても、カナダでは確かに商業的に、実用的に十分運転されているわけでございますが、わが国の立地の条件等から見ましてどんなものであるかというようなことは十分検討しなければいけない項目だと思っております。そのようなことにつきまして両委員会の意見も十分聞きまして区分してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  75. 松前達郎

    松前達郎君 恐らくカナダの炉の導入問題というのは今後クローズアップされてくるのじゃないかと思うのです。そういう点でちょっとお伺いをしたわけなんですが、いろいろとそういう問題でいままで同僚の委員の方からの質問もありましたので、最後になりますけれども、安全について多少質問をさしていただきたいと思うのですが、特に安全審査に関して前に柿沢委員から恐らく指摘があったと思うのですけれども、基本設計については図面審査、規制法適用である、詳細設計では電気事業法であって、その辺がどうもすっきりしないのだ、逆じゃないか、私も実はそういう考えを持っておるわけなんです。逆にした方がどうもいいような感じがする。その点についていかがでしょう。
  76. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 従来の法律体系におきましても、電気事業法と原子力規制法の関係につきまして、先生御指摘のような適用除外に一部がなっておるわけでございます。しかしながら、この両法とも公共の安全の確保ということを主目的にしておるわけでございます。  そこで、この電気事業法というのは、規制法ができます前からそういう規定をすでに持っておったわけでございます。そこで、この規制法をつくりましたときに、設計及び工事方法の認可等の後の段階につきましては、規制法の適用を二重行政を排除するという趣旨から適用除外になっておったものでございます。この考え方は、原子力発電所というものは、原子炉はいわゆる電気事業法に言います電気工作物のその一構成要素でございまして、その一構成要素だけを取り出してきて別の法体系で規制するということは、電気事業あるいは電気工作物全体としての整合性をとる意味合いから好ましくないという判断で現在の形になったわけでございます。  しかしながら、今回の法改正におきましても、その方法は続くわけでございますけれども、今般の法律改正に当たりまして衆議院で行われました一部修正、あるいは附帯決議等によりまして、安全委員会のダブルチェックというものは基本設計のみでなくて、詳細設計あるいは設工認以降のものについてもその重要なものはチェックするという体制をとっていただいておるわけでございますので、このことによって規制が弱まるというようなことはないものと考えておる次第でございます。
  77. 松前達郎

    松前達郎君 それからこれも何回か質問が行われたことなんですが、ダブルチェックという言葉は非常にいいのですけれども、どうもこのダブルチェックというのがまだまだ果たして本当にダブルチェックになるのかどうかというのが非常に疑問に思っておるわけなんです。クロスチェックという言葉に直したとしても、ただ言葉が直っただけで、果たしてクロスチェックが行われるかどうかですね、それはチェックの仕方の変更にすぎない、こういうことなんですが、やはりこのダブルチェックということをうたう以上本当のダブルチェック——同じ内容を同じような方法で繰り返してチェックするのだったら、これはもうやる必要ないのですね。やはり違う観点からクロスチェックと言いましょうか、違う観点から見たチェックが行われるべきなんだ。この点がどうもまだまだすっきりしない面があるんですけれども、これについてはいろいろとまた皆さんが質問をされたわけなんで、ここで改めて質問はいたしません。  しかし問題は、安全委員会の人選、安全委員会のメンバーというのがやはりその基礎となってくるんじゃないかと思うのです。もう前からお伺いしていますと、中立的な人を選ぶのだというんですが、私はどうも中立的な人なんていないんじゃないかと思うのです、この世の中に。それぞれやはり意見を持っているはずで、もしか中立的であるのだったら、これは人選としては逆に言うと適当じゃない。何でも言うことを聞く、全然意見のない人だということになりゃせぬかと思うんですけれども、この人選の問題これは非常に大切だというふうに思います。この選出方法について、これもいろいろと検討する必要があるんじゃないか。これについて、私としては、ある程度の人を、これは国民の代表である国会の中のそれぞれの分野からの推薦でも結構です、そういうところから出してもらう。しかも、これは人数を、たとえば五人なら五人と限って出すんじゃなくて、ある程度出してもらって、その中から選択をしていくんだと、そういう方法もあるのじゃないか、こういうふうに思うのですが、これはちらっと聞いたんですけれども、これはうそか本当かわかりません。もうすでにあるところには人選をお願いしますというような話がいっているというふうな話をちらっと聞きましたけれども、そういうことありますか。
  78. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) まだこの法律は現在審議していただいておりまして、通っていないわけでございますので、そのようなことを正式に依頼しておるとは私思いません。いろいろなお話の中で御意見が出たのを承っておくというようなことが、幹部の中にそういう意見を承ったということはあろうかと思いますが、私どもとしては、法律の改正を待ちまして人選に大至急入らさしていただきたいと思っている次第でございます。  それから、先生ただいま、私どもが中立という言葉を言いましたが、この意味合いは、原子力につきましてはなから反対であるとか、それから安全を無視してでも推進すべきであるというような方は、この安全委員会は科学技術的に審査されるべき安全審査等の最終結論を議論していただく重要な場でございますので、望ましいと思っておりませんので、そこで、その中間ということで中立的というふうに言わさしていただいておることだけちょっとお断わりいたします。
  79. 松前達郎

    松前達郎君 正式に言ったんじゃこれは大変なことになってしまうんです。だけれども、非公式であろうと——どうも最近新聞の方が早いんですね。たとえば今度の法改正がまだこの参議院のここに提案される前に、もう七月には人選に入る予定というのが出ているわけなんです。ということは、もう初めから通るということを頭に置いて皆さん考えておられるんじゃなかろうかと。そういうことから考えると、どうも非公式に打診があるのも無理からぬ話であると私は思っておったところにそういうふうなうわさが入ったものですから、そういうことをお伺いしたんですが、しかしそれぞれ各政党に、どういう人が皆さんあるのかどうか、そういうことを通った後で意見を求め、しかも推薦をしてもらうということも一つの手かもしれません。そういうふうなことで、今後この安全委員会の人選については十分配慮をしなければいけないことであろうと思いますし、また同時に、人が選ばれてりっぱな方々がその委員になったとしても、今度はさらにもう一つ問題があって、果たしてそこの結論が大きな力を持つことができるのかどうか、これがまた一つの問題であるわけですね。権限の問題、これは諸外国においてもいろいろな制度があろうと思いますが、どうもこの安全委員会というのは、今後の活動の中で余り権限があるとは思われない。もっとも諮問機関ですから、それを受けて立つ側の方々の受け取り方によってはこれは多少違ってくるかもしれませんが、そういった面で、まだまだ不満な点が非常に多いわけなんでありまして、どうも結論から言うと、まあはっきりここで申し上げますと、機構いじりと私最初に代表質問のときに申し上げましたが、そんなような感じも受けるわけです。  またさらに、行政の一貫化といいますけれども、これは取り扱っている事務的な面から見ると、確かに逆から見ると一貫化かもしれませんが、国民のサイドから見ますと、ある意味で言うとこれは三分割である。そして、国民のサイドから見て一貫化というのは、従来のようにすべての必要な審査や検査、安全に関する問題等の取り扱いですね、これが総理大臣のもとで一貫して行われるんだということの方が、どうも国民の信頼を得ることができるような気がしてならないわけです。そういう面から考えますと、いろいろ問題がある法案だと私は思っておるわけなんです。  しかし、もしかこういうふうなことが行われていく場合には、やはり先ほどから申し上げましたような一つ手順というのですか、開発に関する手順というものは踏んでいかなきゃいけないんだということ。それから、将来に対するビジョンも計画も持っていなければいけないのだということ。それからもう一つは、国民の中にある原子力の問題に対してのいろいろな考え方、こういうものも十分聞いて、それを反映しながら進めなければいけないんだという、こういう基本的な問題、これは原子力基本法に十分うたわれていることなんですが、そういう問題についてやはりそれを基本として、精神として進めなければいけない。これは、以前に、いままでの原子力行政に対していろいろ問題があったことについて反省をされるという言葉もおっしゃったと思います。この反省のもとに進めていかなければいけない問題であろうと私は思うわけなんです。その点痛感をいたしておりますので、要望をいたしまして、ほかにも多少ございますけれども、同僚議員からも質問があったことでございますので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  80. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) いろいろ大変有益な御意見を承っている次第でございます。  最初、この法案がまだ審議の過程である段階において、どこかの団体に推薦を求めるとか、あるいは推薦を受けたとかというふうな疑いといいますか、そういうことも言われているというようなお話もございましたが、私どもの承知いたしております限りにおきましては、今日までさようなことは決してないということを申し上げることができると思います。もちろん、われわれでさえも、ある人から、おれはこういう人を推薦するからなというふうなことを向こうから言われるような、そういうことはありましたけれども、言われる人に黙っているわけにもいきませんから、はいはいといって聞いておりますが、それはそれなりのことでありまして、こちらから進んでどなたかを推薦を求めるとかどうとか、そんなことは絶対ないつもりでおります。  それから、ダブルチェックないしクロスチェックの方法につきましては、しばしば皆様から御発言がありますように、いろいろな御意見、御見解もあるかと思っております。ただ、私どもとしましては、現在御審議願っておりますこの形におきまして安全規制を行うことが現在の段階で最も適切であると考えておるわけであります。  それに関しまして、あるいはいろいろな点から、果たしてこの安全委員会の決めたことがすんなりと実行できるかどうか、そういうことについていろいろ問題があるというふうに承っておりますが、これもしばしば申し上げておりますように、原子力行政にとりまして安全の確保、安全に関する規制ということは最も重大なことであり、これをさらにこの趣旨を進める、徹底させる意味から今回の原子力安全委員会というものをお願いしているような現状でありますから、幸いに御理解を得ましてこれが成立し、それが発足いたしました暁におきましては、第一にこのような目的のもとで創設されました安全委員会の、そういうせっかくの規制に反するようなことは、もう行政官庁としてもそういうことはあり得ないと思いますし、第一にそういうことを無視するような決定というものは厳しい世論が絶対に許さないだろうと確信をいたしております。さらにはまた、われわれ自身といたしましてはそういう安全委員会の、これも先日申し上げましたが、いわば補佐をするような立場にあるものとしましては、この安全委員会決定というものは全面的に絶対に支持するものでありますし、また原子力行政のいわゆる総合大臣としての、あるいは総合官庁としての立場から、この安全委員会の進め方につきましては、安全確保の立場から言いましても絶対に安全委員会決定が何にも増して優先されますことを誓って御支持するつもりでおりますので、こういう過程的な段階でいろいろの御意見、御見解もあるかと存じますが、われわれは将来におきまして決してそういう何といいますか、固定的な考えにはございませんので、将来さらにそのときの段階におきましていろいろな、また、よりいいという方法考えられるときまで、それまでは、非常にかたくなな態度考えているわけではありませんが、現在の段階では、重ねて申し上げますように、この方法が原子力の安全を確保し、これに対して国民の方に一層それに対する御信頼を増していただきます最大の方法であると信じておりますので、どうか御理解をいただきますことを心からお願いたしまして私のお答えにかえる次第でございます。
  81. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  82. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き原子力基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まず最初に、公聴会の件について少しお尋ねをしたいと思います。  原子力基本法等の改正案につきましては、当委員会においてたび重なる質疑を続けてきたわけでございますが、きょうは、科学技術特別委員会としては最後の質問の機会になろうかと思いますので、総括的な意味において質問をさしていただくわけであります。  そこで、公聴会の問題が法制化されていない、こういう点につきましては、行政懇談会の意図を受けて、将来は法制化していくけれども、現段階においてはまず定着化を図るよう努力していくと、このような御趣旨理解をしておるわけであります。しかし、私が心配をするのは、公聴会を実施するということは、反対の側からすれば、公聴会が一つの闘争の場となって混乱が起きる、こういうような点から結局公聴会ができないということで軌道に乗らないんではないかと、こういうことを心配するわけでありますが、政府としては今後は公聴会というものを必ずやる、何らかの形でやるということを約束できるのかどうか。
  84. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生御指摘のとおり、過去におきましては公聴会が必ずしもうまく行われていない場合もあったわけでございますが、今後につきましては、その公聴会の開催につきましては二回にわたって行いたいというふうに考えております。そこでその時期につきましては、立地の決まるよりも……
  85. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それはもうたびたび聞いておるのですよ。必ずやるかどうか。
  86. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 必ずやるようにいたしたいと思います。
  87. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 少なくとも、政府の方からいろんな理由をつけて公聴会を避ける、こういうような姿勢であってはならないと思うわけでありますが、その点科学技術庁長官の御決意を承っておきます。簡単で結構です。
  88. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 政府の方からいまおっしゃったような何をするようなことは決していたしません。もう極力定着化を進めてまいりまして御期待に沿うようなところにまいることを期待しておるわけでございます。
  89. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま私たちが政府から説明を受けておりますのは、電調審の決定の前、もう一つは原子力安全委員会がダブルチェックするとき、こういうふうに聞いておるわけでありますが、これで見る限りは、いわゆる原子力発電所の建設がこの対象になろうかと思うわけでありますが、たとえば将来母港選定される、母港決定をされる、こういうときにも地域住民との対話の意味において公聴会を必ずやるのかどうか、その点はどうですか。
  90. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) ただいままでいろいろ御説明してきたのは主として原子力発電所でございますが、先生御指摘原子力船定係港選定、建設に当たって公聴会を開くかどうかということにつきましては、この母港を設置いたしますときの地元協力を得なければいけない問題でございますので、十分検討させていただきたいというふうに考えております。
  91. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 検討するということは、やらないかもしれないということなんですか。私は本委員会での今日の趣旨から考えて、当然母港設置のような問題は公聴会をやる対象になる、原子力発電所同様、あるいはそれ以上大事な問題でありますので、当然公開ヒヤリングの対象になると、こう判断をしておったわけなんですが、そうではないんですか。当然そうすべきでしょう。
  92. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) まだ私どもそこまで事務的に検討していなかった問題でございますので、先生の御趣旨も踏まえまして、十分今後検討してまいりたいと思います。
  93. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういうことは余り検討していないわけなんですか、科学技術庁としては。やはり原子力船開発というのは、何も「むつ」を修理すればいいというものではなしに、ずっと将来の問題もあるわけでしょう。将来実用船をつくるという計画のもとに実験船としてつくられておるんですから、当然そういうことも考えていないというのはおかしいわけで、だから、公開ヒヤリングをやるように考えてないならないとはっきり言ってもらえばいいわけで、やる方向で当然検討すべきであると私は思うのですが、その点長官はどうですか。
  94. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 前向きに検討させていただきます。
  95. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう点もひとつ検討していただきたいと思います。今回の佐世保での修理をやる、こういう問題についても、地元から公聴会を開けというような要望が出ておるわけでありますが、これはやはり、私も当然地域住民理解を深めるためにも公聴会をできるように政府としても最大限の努力をすべきだと思うのですが、その点のお考えはどうなんでしょうか。
  96. 山野正登

    政府委員山野正登君) 五十一年の二月に地元修理港についての協力をお願いしまして以来、私どもは事業団並びに科学技術庁双方とも現地に事務所を設けまして、いろいろ地元との連絡を密にするという作業をいたしますとともに、これまでに大体、細かい説明会等も加えまして四百五十回ぐらい説明会を開催いたしております。それに加えて、原子力関係の施設、発電所の見学会でございますとか、あるいは講演会といったふうなものもあわせ行いまして、できるだけ原子力船についての必要性とか安全性といったふうなことにつきまして地元の方々の御理解を賜るように鋭意努力をしてまいったわけでございます。また、先般来の県議会の審議の経過を見ますと、今後ともそういうふうなことの必要性というのがまたうたわれているわけでございまして、これは県当局、市当局ともども、今後ともそういうふうな努力を続けていきたいと思っておりますが、いまのところ具体的に考えておりますのは、従来進めてまいりました説明会を、今後とも、船が入りましてからも引き続き続けていきたいというふうに考えております。
  97. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いわゆる公開ヒヤリングはやる考えではない、そう理解していいわけですか。
  98. 山野正登

    政府委員山野正登君) 安全審査に絡む公開ヒヤリングという御質問かと存じますが、これにつきましてはまだまだ今後の検討課題と思っております。しかしながら、地元理解協力が最優先であるという点は、これはいかなる会合をどういう名前で呼ぶかということとは別に、これはもう当然のことでございますので、先ほど申し上げましたような努力を続けたいということでございます。
  99. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう小さな会合の努力は原発の建設の場合も何百回何千回と行われておるわけで、それでいいのであれば、何も公開ヒヤリングをいまさら政府が仰々しくやるということを言う必要はないわけですよ。けれども原子力発電所の場合は、それに加えて、きちっとした公の公開ヒヤリングをやることによって住民理解を求め、また住民の意見も聞き、そこで公式の場ではっきりと考え方を示していく、これが公開ヒヤリングの趣旨だと思うのです。そういう点で、私は今回の法改正の中にそれを入れるべきである、具体的なやり方は政令なりにして、ともかくやるということを入れるべきだということを主張したわけですが、それは今度入っていない。これは一歩譲るとしても、定着を図る意味において、今回の修理港の問題についても公開ヒヤリングをやるべきである。これは余り、やるほど大したことないじゃないかという認識ではいけない。今日まで佐世保市あるいは長崎県等が長い間の時間を費やしてここまで来たということは、この問題を慎重に取り扱っていかなければ、将来に大きな禍根を残すんではないか。ここまで来た以上は決して急いではなりませんし、ちゃんと手続を踏んでいくべきである。そういう点から、佐世保修理を開始する段階において公聴会を持つべきである、修理内容の問題、地域については決して心配はないんだと。そういうことを私は主張するわけですが、検討する気持ちはありますか。ここで、やるとは言えないでしょうけれども、検討するというぐらいのことは言ってもいいんじゃないでしょうか。それも言えないようじゃ、ちょっと問題ですよ。
  100. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 今回の改修につきまして、規制当局としては、まだ申請が出されていないわけでございますが、恐らく佐世保における修理というのは絶対に原子炉は起動させない、冷態停止のままの状態での修理であろうかというふうに考えておりまして、その意味合いにおきまして、先ほど原子力局長も答弁いたしましたように、安全委員会が安全審査の過程で公聴会を開くということは、いま私どもがいろいろ説明しております公開ヒヤリングの制度を考えました場合に若干異なる点があるのではないかという考え方から、この形におけるヒヤリングを、公聴会を開くことは、私どもいままで事務的には必要ないと考えておったわけでございます。それにかわるものとして、いろいろ地元住民の方々に御納得をいただくような、説明会であるとか、そういうものをもって行えばいいんではなかろうかという考え方でございました。しかしながら、ただいま先生の御指摘もございますので、十分検討をさせていただきたいと、このように考える次第でございます。     —————————————
  101. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 委員の異動について御報告いたします。  昨日、柿沢弘治君が委員を辞任され、その補欠として野末陳平君が選任されました。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長官にお尋ねしますが、公聴会の問題にしても、今回の場合は、いま言われたように、炉を封印するのであれば、単なる船の修理という見方もありますし、それならば何も言う必要ないではないかと、こういう意見もあるわけですが、それは私ももっともだと思います。非常に数少ない人が公聴会開いてくれと言ったから、それでやれということじゃないわけですけれども、いやしくも市民の代表である佐世保市議会あるいは長崎県議会あるいは一番関係のある多くの漁民の団体である漁業組合、そういうようないわゆる長崎の県民の代表の方たちが、こういう理由でひとつ公開ヒヤリングをやってもらいたい、こういうような声があるならば、政府としても積極的に応ずべきである。このことは約束できるでしょうか。
  103. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 大体いまお尋ねの件につきましては、政府委員からお答えしたところでございます。  これもお答えいたしましたように、船の問題それから原子炉の問題と、両方ございますから、どちらの点から言いましても、漁民の方々の御納得のいくように、またいろいろな御要請があって、これは聞くべきであり、また十分聞けるといったようなものについては、いろいろお聞きする必要もあると存じます。したがって、この法案に盛られたような公聴会をやるかどうかということは、これはちょっといまここで早々に確言はできませんが、御納得を得る、あるいは御希望を聞くというようなことについては、これはもう十分ひとつやっていきたい、その上で、先生の御趣旨の点について十分検討したい、このように考えます。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 長官もなかなか答弁がうまくなって、局長の答弁したとおりでございますと言われると、局長の答弁ではっきりしないから長官に聞いておるわけですので、何かわかったようなわからないような——私が言うのは、公聴会をやれということはここでは言いません、しかし、その必要に応じて、県議会や市議会や漁業組合等のやはり多くの長崎県民を代表する人たちが、そういう立場から国にこういうヒヤリングをやってくれと、そういうときには政府としては前向きに取り組むと、考えがあるかと言うから、考えがありますと言ってもらえればいいわけでね。それは、局長さん、いいでしょう、ありますと言うても。
  105. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) どうも、答弁がうまくなったと——余りうまくなってないので、そういうお尋ねが出るわけでございます。  実は、局長の申し上げたとおりということは、その上に私がこういうことを補足するという意味でございますので、その点はひとつ御了承を願いたいと存じます。いずれにいたしましても、いまお話しの趣旨は十分尊重さしていただきます。
  106. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それに関連してちょっと二、三お尋ねしますが、「むつ修理契約は、これは当然原子力船事業団と佐世保重工との間に結ばれるものと考えていいのかどうか。そして、それには原子炉等規制法による届け出は必要があるのかどうか。  それから、これは原子力委員会がその内容を当然チェックするのかどうか、現段階においてはまだ原子力委員会しかございませんので。この三点について、簡単で結構ですから。
  107. 山野正登

    政府委員山野正登君) まず契約の当事者でございますが、一方の当事者が日本原子力船開発事業団であることはこれは自明でございますが、相手方の方につきましては、これは佐世保重工を含めまして、契約の形態自体がまだ決まっていないわけでございますので、どういう関係会社がどういう協力関係で、またどういう形で当事者になるかということは現在事業団で鋭意詰めているさなかでございまして、佐世保重工相手方に組み込まれる可能性は大いにあるということでございますが、当事者は事業団と佐世保重工であるというふうに言い切る段階にはまだなってない、こういうことでございます。
  108. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この修理計画が出されて判断されることではございますが、規制法の手続によりまして、設置の許可の変更が要るものと考えておりますし、それに伴います安全審査が行われ、安全委員会のチェックを受けるということになろうかと考えております。
  109. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは、私は当委員会でも今日までたびたび申していますように、当然契約する相手方というものは、技術的な能力とともに、この契約を遂行し得る経理的な基礎というものがなければいけない。そういう点から慎重にやっていただきたいと思うわけでありますが、経営的な基礎が十分であるという最終的判断を下すのはどこになりますか。どういう手続を経て判断することになりますか。たとえば原子力委員会の答申を受けて科学技術庁長官あるいは総理大臣が判断するものであるのか。原子炉等規制法によりますと、加工に出す場合なんかも全部原子力委員会がその経理的基礎というものをつかんでおるわけなんですが、それと同様に考えていいのかどうか。
  110. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) ただいまの現行法でいきますと、原子力委員会の意見を聞いて、それで内閣総理大臣が許可を与える。新しい法律になりますと、科学技術庁が原子力委員会の意見を聞いて、その意見に基づいて設置変更許可をするということに相なります。
  111. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 契約相手はまだSSKには決まっていないということでありますが、たとえば長崎県が契約をして、長崎県の責任のもとでSSKに発注するとか、こういうような形態の可能性もあるのかどうか、その点はどうなんですか。
  112. 山野正登

    政府委員山野正登君) 長崎県を契約相手方として契約するといったことはまずまずないのではないかと考えております。もしいまお説のことが、しかるべき契約相手方がいまして、その下請に佐世保重工業が当たるという形を頭に描いての御質問であるとすれば、ある造船会社契約相手方になって、これに佐世保重工協力するという形は理論的にはあり得ると考えております。
  113. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう点、私たちは非常に佐世保重工の再建に心配をしておるわけでありまして、そういう心配のあるところと国が契約するということであれば、科学技術庁としての姿勢も問われかねないのではないか。そういう点は、契約はしたけれどもそれが責任もって遂行されない、こういうことのないように慎重にひとつ進めていただきたい。このことを長官に要望いたします。簡単で結構です。
  114. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 御趣旨を体しまして十分慎重に進めてまいりたいと考えております。
  115. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 本委員会で今日まで原子力基本法等の一部を改正する法律案の検討を、法案審議をしてきたわけでありますが、この法案改正の一つの柱であるいわゆる原子力委員会を原子力委員会とそれから原子力安全委員会に分ける、この分けるというその意図は私は次のように理解をしているわけでありますが、行政懇の中にも書いてありますように、「最近の原子力行政は、多くの深刻な問題に直面し、他方、国民の間では、安全規制面に比して開発面にウエイトをかけすぎているという不信が生じており、原子力委員会は、今までのような進め方では、このような情勢に対応できなくなったと考える。」と、こういうことで、開発と規制というものを分けて、安全規制というものが開発に引きずられないようにするために分離をしたと、私はそう理解をしておるわけでありますが、それでよろしいかどうか。よろしくなければ、どこが間違っているか。
  116. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、開発と規制を同一の機関でやっておくという、ある場合には矛盾することもあり得る機能を一つの機関が持っておるということを反省いたしまして、このような不信感を解消するとともに、原子力利用に伴う安全の確保をより強力にするという趣旨で分離をお願いしておる次第でございます。したがいまして、先生のおっしゃる御趣旨はほぼそのとおりであろうかと考えます。
  117. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、私はどうしても納得できないのは、二十一条の両委員会の連絡ですね、原子力委員会と原子力安全委員会というものは非常に密接な連絡をしなければいけない。もちろん政府の機関ですから全然反対方向へ行ったのでは困るわけですけれども、わざわざこういう条文を設けることは安全委員会の独立性を失うのではないか。政府の答弁は、決して連絡調整、意見の統一を図るものではない、ただ連絡を密にするだけなんだと、そういう説明ですね。私は何もこういう条項は必要ないのじゃないか、そう思うのですが、もしこの第二十一条というものがなければ原子力行政の運営においてどういう問題が起こりますか。どういうことを想定されてこういう条項を設けたのですか。
  118. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) これは両委員会が実際上緊密な連絡をとって意思疎通を図ることを規定したものでございます。このような意味合いのものを入れましたところといたしましては、原子力委員会は、当然のことながら原子力利用に関する政策を企画し立案するという一つの役目を設置法二条の一項でございますが持っております。一方、原子力安全委員会の所掌事務といたしまして、設置法十三条の第一項で「原子力利用に関する政策のうち、安全の確保のための規制に関する政策に関すること。」という政策の立案を安全委員会が持っておるわけでございます。この政策の立案に当たりましては、開発利用を進めるに当たっての規制の政策と非常に相関連することがあるわけでございます。たとえば原子力委員会が何か開発利用の政策を立てる場合に、規制面を考えないで政策を立てるということも非常にまずいことが起きることが予想されます。こういう観点において、十分に連絡を図って、それぞれの委員会がお立てになる政策が調整のとれたりっぱなものに一開発と規制、安全面の配慮とが十分両立した政策になっていくような必要があるわけでございます。したがいまして、そういうような意味合いから連絡を密にする。しかしながら、その意思決定に当たりましては、これは全くそれぞれ独立の機関でございますので、それを踏まえて意思決定をしていただくというふうな形を考えたわけでございます。そういう意味合いでこの「連絡」が入っておりまして、恐らく先生の御心配の点で、原子力安全委員会が行います実際の規制の仕事、これは安全委員会の所掌事務にきわめてはっきりと明定していただいておりますので、この点については、原子力委員会がこうしてほしいというような都合的なことを言っても、それは何ら影響を及ぼさないような形で所掌事務も書かれておりますし、独立の機関になっておるということから完全に中立性を保ち得るというふうに考えておる次第でございます。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまの御説明では全く納得はできません。私は、確かに両委員会が、両方に関する問題があると思うのです。安全委員会が担当するもの、原子力委員会が担当するもの、こういうのはいろいろ資料をもらいましたけれども、やっぱり両方に重なるものもあるわけでしょう。両方に関係するものもあるわけでしょう。そういうときの関係はどうなっているのですか。
  120. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) たとえば両委員会の持っておる政策に関することの中で安全研究というものを考えた場合に、安全研究の計画というものを当然原子力安全委員会がまず決めることになると思います。そのときに、それに伴う予算の問題が起きるわけでございますが、これは原子力委員会が予算の総合調整をするということで、その予算面から見ますと原子力委員会の所掌の業務になってくるわけでございます。このようなときに連絡を密にすることによって安全委員会の意向が十分原子力委員会の方にも伝わるようになってなければいけない。こういう点の先生おっしゃるような重なり合いをうまく連絡を密にしてやっていただく。  それからもう一点は、それぞれの委員会がそれぞれの所掌で区分けされておるわけでございますが、場合によりましては何か空隙を生ずるようなことがあり得る分野が将来出てくるかもしれません。こういうようなことは、この連絡を密にすることによりまして、その空隙を来さないような政策をそれぞれが立てていくということも必要であろうかというふうに考えておる次第でございます。
  121. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、原子炉の安全審査という安全委員会独自の問題については、何も原子力委員会と連携を密にする必要はない、共通する問題についてのみ連絡をすればいいと、こう理解していいわけですね。
  122. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 大筋においてそういうことでございます。規制面につきましても、安全のための安全審査は安全委員会がやるわけでございます。それから平和利用、計画的遂行という面は原子力委員会が見て、それぞれはっきり分けて意思決定をしていただくという形になると思います。
  123. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、そういう安全に関する問題については原子力委員会と相互に緊密な連携をとらなくてもいいと局長はおっしゃいましたけれども法律にはそう書いてないわけですよ。「原子力委員会及び原子力安全委員会は、その所掌事務の遂行について、原子力利用が円滑に行われるように相互に緊密な連絡をとるものとする。」と、こういうことで、原子力委員会と原子力安全委員会が緊密な連携をとる。そして原子力委員会委員長科学技術庁の長官である。そうすると、原子力安全委員会というものも、形は分かれましたけれども、いままでと同じように、結局は科学技術庁長官と連携を密にとっていかなければやっていけないということになれば、そもそも今回こうやって苦労して出した原子力基本法等の一部を改正する法律案の一番肝心なところが、その精神が全く死んでしまう。私はだから二十一条なんかはなくすればいいと思うんですよ。そして、たとえば原子力の基本計画、長期計画、そういうものは原子力委員会が独自に考え科学技術庁長官に答申をする。原子力の開発基本計画はどんどんたくさんふえてくればマクロの面において当然安全委員会がその安全性もチェックしなければならぬ。そういうときには科学技術庁長官が今度は安全委員会に諮問をすればいい問題なんですからね。そういう点でこの二十一条というものを外すべきである。ここで外せと言っても恐らく外すわけにはいかぬでしょうから、これは今後とも検討すると、それぐらいの気持ちはないかどうか、これは長官どうですか。
  124. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生の御指摘でございますが、私ども考え方は若干先生の御意見と違っておることは事実でございますが、せっかくの御指摘でございますので、今後の運用を見て、何か悪い点が生ずるようなことがあればいかぬわけでございますので、慎重な検討をさせていただきたいと考える次第でございます。
  125. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) また、政府委員の言ったとおりでございまして、と言って同じことを申し上げるのもあれでございますが、政府委員の申し上げたことも御参照にしてみていただきたいと存じますが、先生が大変御心配になることは、大体原子力委員会は計画の推進というようなことを主眼としているのであり、また安全委員会はこの中の特に安全規制ということを主眼として生きるものであるから、この大切な安全規制が推進計画の犠牲になるようなことがいやしくもあってはならぬという点からの御心配であると存じます。したがって、そういう点の御懸念をも含めまして今後その趣旨については十分検討させていただきたいと考えております。
  126. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは、「相互に緊密な連絡をとるものとする。」ということは、具体的にはどういうようにするつもりなんですか。非常に漠然としたことですね。毎日連絡せよというのか、そのあたり、まあこの法案がスタートすれば、後はこの法律に基づいて原子力委員会、原子力安全委員会ができ、その原子力委員会や安全委員会はこの条文をもとに判断をしていくわけで、じゃあ、どういうときに連絡すればいいのか、そういう細かい詰めはやっておるのですか。
  127. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) はっきりしたことをいまわれわれが決めておるわけではございませんけれども、これは両委員会ができて、それぞれの両委員会の意見を賜ってその辺の取り扱いを決めてまいりたいと考えておりますが、たとえば一方の委員会が非常に重要な決定等をなさった、あるいはなさろうとされるようなときに打ち合わせをされる、あるいは場合によりましては定期的に月一遍打合会をするというようなことも考えられるわけでございますが、そのやり方等については両委員会の意見を聞いて決めてまいりたいというふうに考えております。
  128. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 前回の委員会でも質問しましたように、原子力安全委員会一つの審査をする場合には、当然原子力研究所の研究結果あるいは放射線医学研究所の研究結果、そういう意見と同じように、もちろん原子力委員会の意見も必要であればこれは安全委員会の自主性において行うことは、これは当然だと思うのですよ。また原子力委員会の方が、こういう計画をつくるけれども安全委員会の意見を聞きたいと、そういう原子力委員会独自の判断に基づいて安全委員会の意見を聞く、これはもうけだし当然のことであって、それを何もわざわざ条文で指定しなくても、これは当然それぞれの委員会の自主性のもとにおいて行われるわけなんです。だからこういう条文は必要ない。したがって、じゃ具体的な緊密な連絡というものはどういうものかということは科学技術庁としても検討していかにゃいかぬわけです。私がいま申し上げました、それぞれの両委員会の自主性というものは最大限に尊重していくように十分配慮していく、いやしくも、国民から見てどうも原子力安全委員会が原子力委員会にコントロールされておるじゃないか、しかも原子力委員会の長は科学技術庁の長官じゃないか、結局は前と少しも変わっていないではないかというようないささかの誤解も受けるようなことのないようにやってもらいたい。そうでなければ、われわれがせっかくこれを審議した価値は少しもないですよ。その点約束してもらえるかどうか。
  129. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) そういうことがありませんようにここではっきりお約束申し上げます。
  130. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、これもこの間質問した問題ですけれども、原子力委員会委員長科学技術庁長官でなければならない理由、これでこの前御答弁いただいたのは、閣議の場で論議されるときに、原子力委員会の審議結果を閣議で反映させる道を開くためにも委員会の長は科学技術庁長官がいいんだ、特に原子力委員会というのは各省にまたがる問題だから、その調整のためにも科学技術庁長官が原子力委員会委員長を占めた方がいいんだということなんですが、これはどうなんですか、何も科学技術庁長官が原子力委員会委員長でなくても、たとえば平の委員であっても当然反映できるわけですし、あるいは委員じゃなくても、科学技術庁長官はこの諮問委員会の意見を聞くわけなんですから、そうすれば十分反映をしていくわけでありまして、国民から原子力委員会の中立性を疑われるようなデメリットを覚悟してまで原子力委員会委員長科学技術庁長官がならなければならない理由はないと思うのですが、科学技術庁長官が原子力委員長でないと原子力行政に支障を来しますか。どういう支障を来すんですか、一体。
  131. 山野正登

    政府委員山野正登君) 原子力委員会委員長国務大臣にした理由というのはこの前御説明申し上げましたとおりでございますが、これが委員長でなくて委員であってもいいではないか、平委員でもいいではないかというのは、これは論理的にはそのとおりかとも存じますが、一方、原子力委員長たる国務大臣は、科学技術庁長官としては、各省庁の原子力開発利用の推進につきまして、これを総合調整するという立場もお持ちになっておられるわけでございまして、そういう面からも、単なる平委員というよりも委員長としてお座りになる方がより適切であろうということでございます。  で、先生が御指摘の、委員長であるよりも委員である方があるいはいい面もあるかもしれないというお考えは、たとえば国務大臣たる原子力委員長に原子力委員会意思決定そのものが引きずられはしないかというふうな御懸念もあろうかと存じますが、その点につきましては、あくまでも原子力委員会と申しますのは、これは合議体でございまして、委員長が独断でいろいろできるわけではない、委員長といえども一票を行使し得るにすぎないわけでございますので、その辺の歯どめはあると思っております。
  132. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 可否同数の場合はどうするんですか。原子力委員会の可否同数の場合はどうなるのですか。
  133. 山野正登

    政府委員山野正登君) 可否同数の場合というのは、実は過去に余りそういう例はございませんで、従来の原子力委員会決定内容を見ますと、大体全会一致でお決めになるというのがこれまでの実績でございますが、可否同数の場合は、これは偶数でもってやる場合に起こり得るかもしれませんが、それはそれで決定できないということでございまして、引き続き……
  134. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 委員長を含めての場合はどうなるのですか。
  135. 山野正登

    政府委員山野正登君) 委員長を含めて可否同数という御趣旨だと思いますが、それは引き続き審議をして結論が出るまでやらざるを得ないということであろうと存じます。
  136. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いや、この条文では可否同数の場合は委員長が決するというようになっているんじゃないですか。
  137. 山野正登

    政府委員山野正登君) その点はそのとおりでございます。
  138. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 はっきりしてくださいよ。原子力委員会というのは、原子力基本法等に基づいて政府の諮問機関としていろいろな原子力政策を答申するわけでしょう。その答申を受けるのは科学技術庁長官であり、総理大臣なりが受けるわけでしょう、あるいはほかの省の場合もあるわけですがね。だから、諮問をする方の責任者と諮問を受ける者とが同一人であるというようなことは、私は余り聞いたことないんですが、政府の諮問委員会の中でほかにもそういうのがありますか。ないでしょう、そんなのは。どこがあるの、あるんだったら言ってくださいよ。
  139. 佐藤兼二

    政府委員佐藤兼二君) ここで具体的に手持ちの資料ございませんが、あります。現にそういうことも私は承知しております。
  140. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それは具体的に言ってくださいよ、すぐ調べて。あと十分ありますから、終了までにひとつ調べてくださいよ。
  141. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 早速調べまして、調べた上で御報告いたします。
  142. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それはぼくも調べていないから、あるかもしれませんけれども、あったとしても、そういうのはごくまれでしょう。  で、この原子力委員の任期は何年ですか。これは法律にちゃんと書いてある。
  143. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 三年でございます。
  144. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 三年にした理由は何ですか。
  145. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) これは現在の原子力委員会の任期が三年になっておりますのを踏襲したわけでございます。
  146. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 やっぱり原子力委員という人が日本の原子力行政の方向を決めていく大事な立場にあるわけですから、そういう人がしょっちゅうかわっては困る、やはり継続性を考えて少なくとも三年、しかもこれは再任は妨げない、そういうことできておるわけですね。ところが、科学技術庁長官というのはもう政権がかわるたびにかわるわけですね。私、科学技術庁から初代長官、委員長のずっと一覧表をもらいましたけれども、昭和三十一年に科学技術庁ができて、ちょうど原子力委員会もその当時だったと思います。したがって、今日まで約二十年余りですけれども、その間に、現在の熊谷長官は第三十四代の長官なんですね。そうしますと、一番長い人が佐々木義武長官、三十一代、これが大体二十一カ月ですね。一番短い人は石橋湛山みたいに二日で科学技術庁長官をやめている人もいるわけですね。それから第十六代の池田勇人、この人なんかは一カ月もやっていない、三十九年六月二十九日に就任して七月十八日にもうやめておるわけなんですね、これなどはもうまさに三週間もやっていない。あるいは三十代の足立篤郎原子力委員長もこれは四十九年の十一月十一日から十二月九日まで一カ月もやっていないわけなんですね。私は、この大事な原子力行政というものを決めていく原子力委員会の一番中心者というものが、そういう内閣改造のたびにぱっぱっとかわっていっていいものであろうかどうか、科学技術庁長官というものは原子力委員会の外にいて、その委員会決定というものを尊重して、最終的な結論は科学技術庁長官が下せるわけなんですからね。私たちは十分尊重していけとは言ってますけれども、しかし原子力委員会の結論が本当に国民全体から見て納得いかない問題であれば、科学技術庁長官がそこで国民の世論をバックにして是正していくことも、それはできないわけはないわけなんですから、そういう点で、このようにしょっちゅう科学技術庁長官がかわり、そのたびに原子力委員長がかわっても何ら原子力委員会の運営には支障はないんですか、そういう点の心配はございませんか。
  147. 山野正登

    政府委員山野正登君) 原子力委員長の御在任が二日とか一週間というのじゃなくて、できるだけ長い方がよろしいという点は、これは全くお説のとおりであると考えるわけでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げました内閣全体の政策との関連ということとの利害得失をどちらに求めるかといったふうな問題であろうかと存じます。私どももできるだけ委員長が長く在任されることを期待しているわけでございます。
  148. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回の原子力基本法等の一部を改正する法律案というのは、国会の答弁でもしばしば原子力行政懇談会がこういっているんだからということで、もう原子力行政懇談会の有澤答申というものを最大限に尊重してできた法律じゃないかと思うのですが、原子力委員会委員長科学技術庁長官にしろというようなことはここではいってないわけでしょう。行政懇談会は原子力委員会委員長はどうせいという結論だったんですか。
  149. 山野正登

    政府委員山野正登君) 学識経験者と国務大臣と両論併記でございます。
  150. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 両論併記ですけれども、どっちの方が多かったんですか。実際は、やっぱり国務大臣でない方がいいという意見の方が強かったわけでしょう。
  151. 山野正登

    政府委員山野正登君) 審議の経過においては、あるいはどちらかに若干のウエートがあったということはあり得たかとも存じますが、この答申に関する限り、両論併記ということになっておりまして、特に片一方を推すということになっていないと思います。
  152. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これにはこう書いているのです。「原子力委員会委員長については、学識経験者から選任すべきであるとする意見と国務大臣をあてるべきであるとする意見がある。」、大体こういう政府の答申というのは、より多い方を先に書くわけですからね。両方一緒だったら、国務大臣を充てるというのはいまの姿なんですから、当然いまの姿が前に出て、学識経験者から選任すべきだという意見もあったというのがつけ加わるわけなんです。そういう点で、本法律の改正案というものの一番大きな主眼が原子力安全委員会というものの独立性、自主性というものをより信頼あらしめるためにできた改正案であるならば、いまのように、原子力安全委員会は常に原子力委員会と連携を密にしなければならない、そして、その原子力委員会の長は科学技術庁長官であると、結局は原子力安全委員会科学技術庁長官と連携をとらなければならないということになってしまうのですね、これ見ていきますと。それは国民を欺く内容であると、私はそう言わざるを得ないと思うのです。したがって、本改正案のすべてが悪いわけではない、私たちも一歩前進というところは率直に認めますけれども、その中に、肝心なところに画竜点睛を欠くというか、非常に残念であるということを主張をしておきたいと思います。これは、いまここまで来てこの法律を修正をするということも、現実的にはこれはできないと思うのですが、科学技術庁長官として御自身の立場の問題ではありますが、原子力委員会委員長科学技術庁長官であるという点については、今後この法律が施行後の状態もよく見て、さらにひとつ改善をするように努力をしていくと、そういう決意を承りたいと思うのです。
  153. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 十分御趣旨を体して今後の運営を進めたいと思いますし、御指摘の点についても十分研究いたします。
  154. 佐藤兼二

    政府委員佐藤兼二君) 先ほどの御質問でございます。具体的には科学技術庁に内閣総理大臣の諮問機関としてあります科学技術会議、それがその例であります。この会議の議長は、また内閣総理大臣ということでございます。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それだけですか。
  156. 佐藤兼二

    政府委員佐藤兼二君) いま即座に調べた具体的な例と申しましては、そういうことでございます。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 科学技術会議の議長が総理大臣で、結局その諮問をする方も受ける方も総理大臣である、そういう例として挙げられたが、これはひとつよく調べてくださいよ、もっとほかのところも。この問題は私としては非常に禍根を残すものである、そこまで改めれば今回の改正案の評価はもう一つ上がったんじゃないか、そういうことを私の個人的な意見として申し上げておきます。  最後に、先般からも問題になっておりますこの委員の人選の問題で、どういう委員を選ぶかということで政府からいただきました資料では、深い見識を有し、厳正かつ中立の立場でより高い立場から大局的な判断を行える方々、その中立ということについて、中立というのは、ともかくどんなに危険でもどんどんつくれと言うような人とか、絶対に原子力発電に反対であるというような、そういう人を除いたのが中立だというわけだけれども原子力発電所が危険であってもなくても、ともかくつくれなんていうような、こういうような学者は恐らく日本にはいないですよ。そういうような人がおったにしてもごく少数なんです。そういう人を除いた中から選ぶのならば、何も中立なんていうような言葉はないわけで、私は中立ということよりも、むしろ各界の、やはり国民のいろんな意見を代表した、そういう学者というか……、そのあたりを、ちょっともう一回中立という意味を伺っておきたいと思うのです。
  158. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 中立と申しましたのは、原子力開発利用の推進等に関しまして、頭から安全を無視しても開発を進めろ、あるいは絶対反対であるという極端な方々は先生御指摘のように適当でないということから、そういうような両極端でない方を選びたいということのあらわれで中立という表現をとらせていただいておりますが、先生の御指摘のようなことであれば、この中立の中に入る問題だと思います。  それから私どものいまの考え方は、各界というよりも、この原子炉安全というものが広い範囲にわたります相当専門の知識を必要とするということでございますので、可能な限り、原子力の安全にかかわります学術分野の中から厳正、大局的に御判断をいただける方になっていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃ、もう時間も参りましたので、最後にいたしますが、ひとつ原子力安全委員会あるいは原子力委員会委員の選任に当たっては偏ることのないようにやっていただきたい、そういう点から、ひとつ野党の意見も十分取り入れて、国会においても少なくとも全会一致で選ばれるような人を出すように努力をしてもらいたい、野党の反対を押し切って自民党だけで見切り発車をするようなことのないようにしてもらいたい、これについての長官の御見解を承っておきます。
  160. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) できる限りそういう趣旨に沿って善処、努力いたしたいと考えます。
  161. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 前回、行政懇報告の環境調査報告、この問題で少し質問に入っておりましたけれども、その関係でまず最初に、温排水問題について質問をいたしたいと思います。  御存じのように、昭和四十五年十二月、国会で、温排水の規制基準を早期確定をすべきだという国会の附帯決議が行われておるわけであります。ところが、すでに今日七年半年月が経過をしておると思いますけれども、いまだにこの基準が確定をしないということは、国会決議との関係でも非常に重大だと思うのです。  そこで、まず最初に、この国会決議に基づいてどういう作業がやられてきたのか、なぜいまだにこれが確定をしないのか、そういった点について御説明を願いたいと思います。
  162. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) ただいま先生から御指摘ございましたように、四十五年の十二月、国会決議がございまして、それに沿いまして、環境庁といたしましても四十七年からいろいろな諸調査研究を現在まで引き続いてやってきているわけでございます。あわせまして、中央公害対策審議会の中に、温排水分科会という温排水問題を専門に行います分科会もつくりまして、そこで四十七年から五十年の十二月まで十数回にわたりまして、いわゆる温排水問題の基本的な方向、方針の策定のためのいろんな調査研究のやり方あるいはそれの解析、あわせまして温排水の基準についていろいろ審議していただいたわけでございます。そうしまして、五十年の十二月に中間報告ということで御報告をいただいたわけでございますが、一つは、やはり国レベルでの統一的な基準をつくるにつきましては、やはり温排水が地先の水域にどういう影響を及ぼすか、特に生物相に対しましてどういう影響を及ぼすか、その辺の知見が十分でないということが一つでございます。これについて早急に調査研究を進めて知見を集積しようというのが一つでございます。  それから、温排水の規制の基準の審議の中で、やはり今後の方向としましては、地先水域におきます温排水の環境容量を考慮した規制方式というものを検討することが必要であるという基準につきまして二つの見解をいただいておるわけでございますが、これを受けまして、環境庁としましては、五十二年度から、五十年の十二月にできました海洋生物環境研究所に委託しまして、いわゆる温排水と温度とそれの生物相への影響ということで調査を始めております。先生も御案内のように、いわゆる水生生物の温度に関する研究というものは、一つ試験方法から——半数致死量の試験等から始めるわけでございますが、そういう試験方法から、装置から開発しなければならないというような、やっと緒についた段階でございます。  これともう一つは、温排水と生物との関係ということで、非常に時間をかけなければならないという大きな問題がございますが、環境庁としましては、引き続きましてこの調査研究を強化しまして、国会決議の趣旨に沿うよう一生懸命努力しているところでございますが、今後とも一層調査研究を進めまして、いろいろむずかしい問題ございますけれども、早期に排水基準が決定できるよう努力してまいりたいと思っております。
  163. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 行政懇報告にも記述をされておる問題でありますし、また、恐らくもうすでにそういう方向で実際の行政を進めておるのだという報告も受けておりますし、これからもやられていく行政庁としての方針になるということだと思いますが、あの行政懇報告では、電力会社が行う温排水についての環境調査、これを通産省などが現地調査も含む点検を行って、そうしてそれを関係省庁——環境庁、水産庁、こういうところの同意を求めて最終的な環境調査報告書というものをつくり上げる、こういう形で進むと思うのです。ところが問題は、これで温排水の影響については安全だと判定できるんだというこの判定の物差しをどこに求めているのか。いまの御答弁によっても、もうすでに七年半時日が経過をしているんですけれども、温排水の影響の可否を判定する物差しが依然としてはっきりしてないというそういう状況のもとで、温排水に関する調査報告書というのはどういうふうにしてつくるのかという、この点を説明してください。
  164. 武田康

    政府委員(武田康君) 現在も同様なことを行政庁は実行しているわけでございますが、温排水に関します環境審査、私どもの報告書は、そのベースになるものは発電所を設置しようとする電気事業者の調査の報告でございます。  で、その調査の内容といたしましては、海の状況がどういうようなものであるか、これは、海流の状況もあれば、地形もあれば、また年間各時期におきます温度状況——表層と深層とてまた違いますが、そういったものを包含し、それから、その中で各種の生物がどんなような賦存状況であるかというようなことも含まれ、また、復水器冷却水が出てまいりますと、そこは温度が高くなるわけでございますが、その量と温度の関係でどんなようなくあいに温排水——発電所かない場合に比べて温度が上昇するんだろうか、その広がりぐあいはどうかというようなシミュレーション等を含みまして、しかもなお、かたがた周囲の漁業の関係がいろいろあるわけでございますけれども、こういうような工夫をすれば温排水による影響範囲がある程度限定されるというようなたぐいのデータでございます。これには電気事業者自身としての評価がある意味含まれているわけでございます。それをベースにいたしまして私どもとしては、物によりましては、ダブルチェックと言ったらいいか、クロスチェックと言ったらいいか、定義の問題でございますけれども、私どもなりの調査をする場合がございますが、そうしてその電力会社考えている温排水というか冷却水の取水なりの状況、そういったものを、ある意味では、いずれ熱が出ますので、環境にある影響があるのは当然なんでございますけれども、その影響範囲が、周辺漁業関係等々との関連で、なるべく低減するようにというような工夫が十分尽くされているかどうかというようなあたりをチェックいたしまして、必要に応じ私どもとしてのコメントをし、当通産省としてはまとめているわけでございます。  なお、電源開発調整審議会とも関連いたしまして、私どもとしては、関係省庁に私どもなりの考え方を御説明いたしますが、その過程では、環境庁なり水産庁なり、また場合によれば、ほかのところからいろいろ御意見をいただき、直すべきところがあれば直すというような調整も同時並行してやっているのが現状でございます。  で、きょう現在は公開ヒヤリングというようなものがないわけでございますけれども、行政懇の御意見にございますような公開ヒヤリング、それとも関連するかと思いますが、電調審前に環境審査報告書を作成し、環境庁、水産庁等の同意を求め、そして電源開発基本計画決定前に公表するというようなプラクティスに今後なるかと思いますが、その場合でも、その環境審査報告書をつくるプロセスは、現在やっておりますようなものを踏襲し、もちろん改善すべき点があれば改善いたしますが、そんなようなことになるんではなかろうかと考えておるわけでございます。
  165. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと環境庁。
  166. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 先ほどちょっと説明があるいは不足だったかと思いますが、現在の排水基準というのは、全国統一的な排水基準をつくるという意味での、並びでの排水基準の問題を申し上げたわけでございますけれども、先ほど申し上げました中間報告におきましても、個別の案件につきましては、その個々の水域の海象もわかりますし、あるいは温排水の拡散の予測、あるいはそこにすんでおります水生生物等の調査等によりまして影響もわかりますので、そういう結果を踏まえて水産資源の保護だとか、あるいは文化財等々への影響がないように十分にアセスメントをやりまして、場合によっては放水の方法を変えるとか、あるいは立地場所の選定に十分留意するとか、あるいは排出後の長期にわたるモニタリングというものをあわせて十分に個々については留意しながらやりなさいということで、これで十分対応できるということで御指摘を受けているわけでございますが、いま通産省の方からも話がございましたように、私どもも個々の案件につきましては、電源開発調整審議会の委員に私どもの長官がなっておりますので、委員としまして、個々の案件につきまして、環境庁としましてそういう環境への及ぼす影響をチェックしまして、意見のあるところは連絡会なり、あるいは幹事会なり委員会で申し上げ、いろんな対策をやってもらうということで対処しているわけでございます。  たとえば生物への影響につきましても、ノリの場合はどうだとか、若干知見があるものもございますので、そういうものも現在ある知見もわきまえながら個々に評価をして意見を申し上げております。
  167. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうも話がはっきりしないと思うのですけれども、最初の通産省の御説明によりますと、電力会社の方がいろいろ環境調査をやって、できるだけ影響を少なくするためのどういう工夫、手立てをやっているかという、ここをいろいろ点検をするんだということでありますし、それから環境庁の方もいまの御説明は大体似たような話。  具体的にお尋ねをするんですけれども、さっき触れられております国会決議に基づく中央公害対策審議会水質部会の温排水分科会、これの昭和五十年十二月の中間報告というのが出ておりますが、たとえばその中の温排水の影響にかかわっての「当面の対策」というところで、大きく三つほどの項目が出されておるわけですけれども、この項目が、これがまあいわば環境庁として判断する場合の物差しだという程度だということですか。
  168. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) これは、中央公害対策審議会の分科会の中間報告でございますので、環境庁は当然こういうことを頭に置きながらやるということでございますし、各省庁もそういうことを踏まえていろいろ参考にして実際上の運営をやっておられると思っております。
  169. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうでありますと、そこの第一項目で、前文は省略しますけれども、「一定温度以上(例えば、2〜3。C以上)上昇する水域の範囲に、重要な藻場、魚礁、産卵場、稚仔の生育場、海中公園地区、天然記念物生息水域等が含まれる場合には水産資源の保護、文化財等の保存に悪影響が及ぶことが予想される。」と、こういう表現が出てくるわけですけれども、どうなんですか、温排水というのは多くの場合二ないし三度以上放水によって温度が上昇するということは十分あり得ることですね。
  170. 武田康

    政府委員(武田康君) 現在、火力、原子力の発電所の復水器のデザイン、いろんな考え方がございますけれども、幅でまいりますと復水器を通過する間の冷却水の温度上昇は五、六度から十数度と、世界じゅうの話でございますが、というようなのが現在のプラクティスでございまして、日本の中でいまつくっているもの、あるいは最近できたものではその幅がかなり縮まっておりまして、五、六度から七、八度あるいは九度なんていうのもあるかもしれませんが、そんな幅でございます。したがいまして、冷却水の取り入れ口、復水器の入り口の温度がちょうど放水口の温度と全く同じであるというような条件のもとでは、復水器の出口では七、八度温度が上がっているということでございまして、先生御指摘の二、三度よりも上がることがあるであろうというのは大抵の場合についてはあろうかと思います。ただそれは復水器の出口のすぐ近くでございまして、七、八度ぐらい温度が上がっていたものがすぐ外に行きますと二、三度レベルまで下がりまして、ただ二、三度レベルのものは見方によりましてはかなりの範囲、たとえば一キロ四方あるいは二キロ四方なんという場合もございますけれども、その範囲は表層におきまして二、三度ぐらい上昇しているというような現象は現に起こっております。
  171. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それと、実際に日本で発電所の立地が行われるのは、これはもうほとんどすべてと言っていいぐらい海岸線地域で、その多くは、いま触れた点でいきますと、藻とか、魚礁とか、産卵場とか、稚仔の生育、こういう場所がかなり含んでおるという、こういう状況だと思うのですけれども、そう見ますと、いまの二ないし三度以上上昇する場合には、これらのものについての悪影響が及ぶことが予想されるという点で、これは当面の一つの温排水の規制の物差しということになり得る問題ではないかと思うのですけれども、そういった点については環境庁どうですか。
  172. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 審議の過程でも、先ほど申し上げましたように、いろいろ取水と放水の温度差等で基準を決めるとか、あるいはそれに排水量を掛けた総熱容量みたいなものでとか、いろいろな議論があったわけでございます。それから温度への影響ということにつきましてもいろいろな議論があったわけでございますが、ここで、たとえばということで挙げてあるわけでございます。これをもって大丈夫なのかというようなことについて、先ほど申し上げましたように、十分に化学的にまだ知見がないということで基準をつくり得るに至らなかったわけでございますが、一つのいままでの知見として、たとえばこういうことがあるということで、これをもって基準となし得るかどうかということについては、この分科会では結論は出ておりません。
  173. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 結論が出ておりませんと言われるけれども、ここには「当面の対策」ということで挙げているわけでしょう。で、この温排水の熱拡散のメカニズムが、まだもう一つ学理的にはっきりしないから、だからこの基準をつくるといったってできませんのだということが、これが基準制定のおくれておる理由の重要な一つに挙げられている。しかし、そのメカニズムがわからぬでも、少なくとも、この程度の温度上昇があれば、この程度のものには悪影響を及ぼすであろうということは、やはり任務として担当されたこの温排水分科会の、専門学者を含むここの分科会でのおおよその結論ということで出てきたということだと思うのです。  角度を変えてお聞きをしますけれども、四十五年の十二月に国会決議がありながら、この水質部会温排水分科会というものが実際に動き出したのは四十七年の七月からですね。そして、しかも、この五十年十二月に中間報告が出されてからは、この委員会は一回も会議が持たれていないというふうに聞くわけです。   〔委員長退席、理事松前達郎君着席〕 本当に政府として力を入れて、早く国会決議に基づいての温排水の規制基準をつくろうと、こういうまずその政府自身の努力があるのかというこの問題を非常に疑問に思いわけです。おまけに、このメカニズムがはっきりしないのだということでの理由の一つに挙げられておる環境容量という考え方、この考え方はいつ出だしたんですか、五十年ごろでしょう。四十七年から作業を始めながら、大体いまのいろんな公害防止との関係なんかから言いましても、環境容量で規制しようというのは大ざっぱに言えばいわゆる総量規制という考え方だと思うのです。総量規制やらなくちゃいかぬというのは、いま公害規制の問題についてはいわば常識の話。それがこの分科会が発足をして三年もたってから、やっぱりこのことをやらなくてはならぬという、いわば当然の話がまた持ち出されて依然として結論がずるずると延びている。しかも、この中間報告書が出てからは一遍もそのための集中議論をやる会議もやられていない。私はどうも、温排水の規制基準の問題を、国会の決議はやられたけれども、電力会社の側にとっては、余りいろんな規制基準がばちっと決められたら、これはもう発電所建設にとってはスムーズに建設が進まぬという、そこらあたりのことをおもんぱかって政府がこの努力を怠っているんじゃないかというふうに思われたってしようがないような取り組みの現状になっておるんじゃないかというふうに思うのですが、そういう点どうですか。
  174. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 五十年の十二月に答申をいただきまして、先生のお手元のその中間報告書の中で、今後調査検討を進めるべき事項ということでいろいろな宿題をいただいておるわけでございます。それで先ほど言いましたように、五十二年からいわゆる生物的な影響というようなことで環境容量の基礎調査を始めたわけでございますが、一つは私どもの方としまして、そういう生物的な調査研究をやる機関としまして環境庁みずからそういうものを持っていないわけでございますが、一つは先ほども触れましたように、海洋生物環境研究所というものが五十年十二月できまして、その辺が使えるようになったのが五十一年あるいは五十二年ということで、そういうところでいま精力的に五十二年から始めているわけでございます。  もう一つは、どうして中央公害対策審議会の温排水分科会を動かさないかということでございますが、そういう知見を早く収集しろという宿題をいただいておりますので、その辺をもとにして早急に、若干知見もまとまってきておりますので、早急にそういう知見をもとにしていろいろ議論していただくということで、意識的に、あるいは先ほど先生御指摘ございましたような、どこかからの圧力があるんじゃないかというようなことは毛頭ございません。私どもも一生懸命いま知見を集めているということで、その辺をもとにしまして早急にまた温排水分科会等にも御相談しながら進めてまいりたいという所存でございます。
  175. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 しかしあれでしょう、一生懸命知見を集めておるので目下静観中だということですけれども、この中間報告が出てからもう二年半たっているわけでしょう。これはどう常識的に考えましても、この分科会というのは何も解散をしたわけではない、組織は残っている。ここでいろいろ議論をやるデータ収集だと、環境容量というこの新しい考え方に基づく基礎資料の収集だと。しかし、この環境容量という考え方は、さっき私言いましたように、忽然とその考え方が出てくるというのはそもそも私としては合点がいかないんです。そういう上で、二年半にわたってデータ収集と称してこの組織というのは全然動いていないという、こういう状況が片一方にある。しかし片一方では、五十年十二月の中間報告で最低ある程度判断がつく問題として、二ないし三度ぐらい上昇すれば、言うなら海底に付着をしている卵だとか海草類だとか、こういったようなものには悪影響が起こりますよというのが片一方ここで出ているわけですね。こういった問題なんかは、せめてまずやれるところから基準制定をして、後世に漁業上、漁民の生活上重大な問題が招来をしないようにいろんな手だてを講ずるということなんかは、いま最低判断つくことでやろうと思えばやれるという問題がありながら、しかしそれはこういう報告だけにとどまって物差しをつくるという作業になってない。何か説明してください。できますか。
  176. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 排水基準と申しますのは、温排水——復水器を通りましたものを排水するどころでの温度の規制ということ、そこをどうするかというのが私どもの与えられた排水基準であるわけでございますが、ここに一つ影響のアセスをする場合の一つの配慮事項という形で、例としてこういう二、三度の場合はそこの範囲に影響がないような方法考えなさいよと、そういう原子力発電所なり火力発電所全体の設計等も含めましてそういうことが指摘されておるわけでございますが、そういう事前にいろいろな評価をする場合の一つのめどといいますか、配慮ということで十分この二、三度というものは個々のアセスをする際には配慮事項として使えるんじゃないかと思いますが、これをも排水規制という形の、通常いま水質汚濁防止法で決めております排水というのは、たとえば何PPmだとかそういう形になるのかもしれませんか、たとえば温度ですと——それが海だとかあるいは川へ排水されることになるかと思いますが、そういう排水基準という形でそのまま国の統一的な基準としてこれが使えるかということになりますと、まだこれだけでは不十分ではないかということだと思います。
  177. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 少し別の問題からまたお尋ねしますけれども、いまは主として排水の問題ですけれども、それならば取水がどういう影響を与えるかと、そういう点で当然のこと復水器を通過をするときに、力学的な影響、熱的な影響さらにいろいろな、作業衣を洗たくをするなど、そういうことに伴う、洗剤が混入をすることに伴う化学的な作用、さまざま考えられるわけですけれども、こういうものの影響調査とその対策についてはどういうことでこの作業が進行しておるのか、あるいは温排水の蒸発に伴う微気象への影響という問題もあるわけですね。   〔理事松前達郎君退席、委員長着席〕 こういった問題についての調査とその対策はどういうふうになっているのか御説明してください。
  178. 武田康

    政府委員(武田康君) 私どもも環境庁、水産庁等に御協力し、あるいは一緒に温排水の影響を解明すべく行われる研究の一環を担っているわけでございますが、取水の影響という点では、復水器を通過するときにプランクトンがどんな状況に変わるだろうか、たとえば百個プランクトンが通ると何個壊れるだろうかというようなたぐいの勉強を委託等々でやってもらっております。で、先生御指摘のように、復水器の中を通りますときには温度が急に七、八度上がる、設計にもよるわけでございますが、あるいは機械的なショックで生物がっくというようなこと等々ございますので、これはそういう面を追求すべくそういう研究を委託してやっているわけでございます。ただ、そこでは機械的にどの程度破壊されるという実験データは得られますけれども、海のたとえばプランクトンの例で申しますと、実は取水口にもそれから排水口の先にもたくさんプランクトン、いろんな種類がございますが、いるわけでございまして、生態系でございますので、一つ一つの個体が破壊されるということと、当該群が減少するあるいは増加するということとの間に一対一の対応関係がないようでございまして、したがいまして復水器を通過したその瞬間にある部分が破壊されるということはある程度わかるわけでございますけれども、それが当該場所のプランクトンだけに限定しても、プランクトンの群としての生態にどう影響するかというようなあたりはなかなかむずかしい問題があるようでございまして、そういった意味の研究も今後なおさらに続けていかなければいけない段階のようでございます。それから作業衣等々の洗たく等で汚れた水がというお話で、これも現にあるわけでございますが、そういう点につきましても海の汚染、これは物質的な意味の汚染でございますが、これもそういったことがある限界を超えないようにというようなチェックといいますか、気をつけるというようなことを現実に電気事業者もしておりますし、私どもも指導しているところでございます。また復水器を通りました水を排出いたしますと、これは出口では一般には七、八度温度が高く、それから少し拡散しましても二、三度のレンジがあり、その先に行きますと一度以下ということになりまして、差がキャッチできませんけれども、先生御指摘の蒸発というような点では温度が高いほど蒸発の程度が多いようでございます。非常にそれを極端に表現いたしますと、温排水を大量にあるいは冷却水を大量に使って、大量の温排水が出ていくと、もやができて霧になるんではなかろうかというような議論はあるわけでございます。ただ、その辺の発生メカニズムは非常にむずかしいようでございまして、これも勉強課題の一つとしていろんな方々がアプローチをされているわけでございますが、ただ、日常生活なり日常漁業を続けるというような観点から、きわめて顕著な影響、そういう意味での影響がキャッチされて、したがって、非常に問題であったというケースは実はいままでのところ余りないわけでございます、きわめて局部的にはいろんな例があるようでございますが。というような意味で、実は影響が非常にはっきりしているものでないというために、そのいろんな勉強はいたしながらも、断定的にこういうものであるという答えを出すのがなかなかむずかしいということで、しかしその勉強の努力は続けているというのが現状でございます。
  179. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろ御説明をされましたけれども、まだ十分こういう対策をとればいいんだという結論を得るまでの調査研究が進行してないという現状がこの問題でも出ているということだと思うのです。この温排水の規制基準が確定をしない段階でもやれる問題というのは幾つか考えられると思うんです。排出をする水の温度をできるだけ下げて排出をさせればいい、こういうことになるわけですから、大体世界的にいろいろ議論されてきていますのが、一つは冷却塔または冷却池、これに一遍通して温度を下げて排水をするというやり方、あるいは海の表層へじかに排水をするんじゃなくて、海底の方から深層放流をやる、こういうやり方をやれば温度が下げられるということがもうおおよそ一致をした方向になってきておると思うのですけれども、こういった問題について、一つはこの現状ですね、通産省としての指導方向はどういう方向なのか、御説明願いたいと思います。
  180. 武田康

    政府委員(武田康君) まず第二番目の方から御説明さしていただきたいと思いますけれども、先ほどのように、復水器を通りますと現在の通常の設計では七度、八度あるいは九度という調子で温度が上がるものでございますので、仮に発電所がなかったときと同じような状態を保つのが一番いいというふうに考える場合には、先生御指摘のように温度を下げる方がよくて、そのためには、実は海の表面で考えますと、海の底の方に排水を出してやりますと、底の方には冷たい水がありますので、そことまざりまして、海の表面では温度差が七、八度じゃなくて、もう少し低いところになる。つまり排水口周辺における温度の拡散、それがもとからそこにございます海水とそれから冷却水とのまざりぐあいをよくするというようなことで、それが深層放流のプラクティスでございます。これにつきましては、現在の原子力発電所の中にもすでに運転中のものでたしか二例ございまして、また建設中のものでたしか三例だったと思いますが、すでにやっているところでございます。火力につきましても同様なプラクティスを採用しているケースがございます。ただ、これをすべての発電所に採用する方が適切なのかどうかという点につきましては、当該発電所の地域というよりは、海域の海の形なりそれから海の底の形、海流のかっこう等々によりまして、一概に言い切るわけにはまいりませんが、仮にそういうプラクティスをとりまして、温度差を——温度差といいますか、温度影響の範囲をより限定できるような場合には私どもとしてはそういうことをとるように、そういう対策も考えるようにというような指導を前々からいたしておるところでございますし、今後ともそういう考え方を続けたいと思っているわけでございます。  さて、第一点の方に戻りまして、冷却塔なり冷却池でございますけれども、私どもとしては現在までのところ、冷却塔をつくることを検討しろ、あるいは冷却池をつくれというような指導をいたしたことがございません。今後につきましては、いろいろ未来のことでございますので断定的には申し上げかねるわけでございますが、現在の日本の発電所の立地条件のもとでは、冷却塔をつくるあるいは冷却池をつくるというような指導をすることが適切であるかどうかはきわめて疑問であると考えております。外国では、たとえばヨーロッパの内陸部、アメリカの中部等々におきましては、正確な比率ではございませんが、発電所の半分ぐらいのものが冷却塔を持っております。また冷却池を持っているケースがございます。これはむしろ、たとえばアメリカで一番大きなミシシッピ川、ヨーロッパでのライン川等々でも流量がたかだか日本の近海の海域に比べますと何分の一、何十分の一というオーダーでございまして、温排水を薄めるその原水の方が非常に限られているわけでございます。そこで川の水のみで、川で温度を薄めるということでは不十分というようなことが現実にございまして、そうなりますと、川の水を使うのみでなくて、何か別の冷却方式考えなければいけないということでございまして、それが冷却塔というシステム、またはそこにもし土地に余裕がある場合、あるいは天然の池等々があってそこを使える場合に冷却池というようなシステムを取り入れているわけでございます。そうすれば必ずいいのかどうかという点でございますけれども、少なくとも川の水に対する影響は冷却塔なり冷却池で薄められる分だけ軽減されるわけでございます。しかし、先ほど先生が、海の水を使った場合に蒸発の影響はどうだというような御指摘もございましたけれども、ある意味では冷却塔——雨を降らせて冷却するわけでございまして、そうなりますとコンマ数%とか一%近くの水が蒸発いたします。その程度は現在の日本でやっているようなプラクティスに比べまして多分非常に大きなウエートでございまして、したがいまして、そういう観点の立地問題が起こっているようなケースを現に聞いたこともございます。また一方、水の中には微量成分が含まれておりまして、ちょうどあわみたいなもの、蒸発に伴いましてあわみたいなものが発生し、そのあわが飛んでいくというようなこともございまして、定性的にはいろいろな問題がございます。かたがたどこで熱を発散するかというのは、冷却塔は一カ所でございますが、日本のような海水にまぜて冷却する場合には、熱容量の大きな水を使いまして、しかしある程度の面積ではありますが、そこで徐々に発散させるというようなことで、そういったような意味でも冷却塔というプラクティスがこの日本で採用する場合に適切かどうかという点につきましてはきわめて疑問でございまして、かたがた耐震設計その他これは経済的な問題ではございますが、きわめて大きな構造物、場合によりますと高さが百メートルを超し、直径が百メートルを超すような円筒形の筒でございますけれども、これをたくさんつくるというのが本当にいいかどうかという点について疑問がみるわけでございます。冷却池につきましても、これまたつくれという指導をしていないわけでございますが、日本の土地の事情で考えますと、海を仕切るということに相当するかと思います。現在海を仕切ってはおりませんけれども、温度の分布の範囲というものについてはシミュレーションなりモンタリングなりをやっておりまして、この程度の範囲で、二度の分布範囲であるというような勘定ができますが、同じようなことを海を仕切ってやりましても似たようことでございまして、日本の海岸の陸上に池を新たにつくるというのはこれまた大ごとかと思われますので、そういったような意味で、従来こういう指導をしたことがないし、今後ともそういう可能性は少ないであろう、こういうことを申し上げたわけでございます。  ただ一言だけつけ加えさしていただきますと、現在地熱発電所を山の中につくっております。これは川の水を使わざるを得なくて、かなり上の方でございまして水量が不十分でございます。そんな意味で、先生のおっしゃった冷却塔方式というのがある意味では地熱発電におけるプラクティスになっておりますので、冷却塔という技術がだめだということではございませんで、いろんな考え方のどれを選択するかという点では現在のようなやり方であって、しかし、先生が御指摘になりましたような、たとえば排水で深層放流というようなのが有益であれば、メリットがあればそれを使うという取水なり排水のやり方、取水口、排水口の場所、そういったものをいかに選んで、いかに一番よさそうなものにするか、こういうようなことが現在の私どもの指導方針であり、現在のプラクティスでございます。
  181. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 長い説明があったんですけれども、当面深層放流方式を指導方向としてとっていきたいと思っておるということでありますけれども、ところが現状は、それならそういう方向ですべての現在の原子力発電所がこの方式を設置準備をするという状況で進んでいるかと言えば、なっていないということでありますし、ぜひこれは鋭意——なかなかまだ温排水の規制基準がはっきり決まらぬという、そういう状況のもとでどうやって影響を少なく抑えるかという対策として、やはりすべての発電所に、原子力に限りませんけれども、そういう方向をとらせるということで強力な指導体制を通産省はとってもらう必要があると思うんです。  もう、大分時間が経過してきておりますが、長官にお尋ねをいたしますが、この問題は決して科学技術庁にも無縁ではない。実験研究炉に伴う温排水問題というのは厳然としてあるわけでありますし、同時に、やはり原子力行政全体の総括的責任大臣でありますのでお尋ねをするわけでありますが、先ほど来るる述べておりますように、一つは、もう七年半前の国会決議というこの関係から言って、それから実際にすべてにわたっての厳密な基準というのはまだまだむずかしいということであるにしても、部分問題について言えば、こういう点はやはり規制した方がよろしいということはある程度こういった専門分科会でも出てきているわけですね。そういう、当座やれること、それと同時に、全体的な温排水の規制基準を、やはり国会決議に照らして——これは当然、たとえば発電所設置の段階に公聴会を開くとなれば、環境審査報告というのがその公聴会に報告されるわけですけれども住民の側から何の物差しで悪い影響が出ませんという結論を出したんだということは必ず問いとして出ると思うんですね。そういう意味では、この法律が通れば今後おいおい公聴会も開かれるという局面も遠からざる将来にやってくるわけですし、そういうときに温排水についての基準をどう考えているかというのは、やはりこれは政府として一定の見解を持っていなくちゃならぬ問題だ。そういう点で、ひとつ、そういう統括責任大臣として温排水の規制基準を一日も早くつくり上げるというこの問題について関係各僚、各省相談をして鋭意努力をするという、その点での決意をお聞きをしたいと思います。
  182. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 先ほど来相当長時間にわたりまして温排水の影響問題についていろいろお話があったわけでございます。実は、御発言までもなく、われわれといたしましても、温排水の基準といいますか、この問題が一刻も早く決着を見ますことはきわめてわれわれとしても望んでいるところでございます。先ほどお話のうちに、実際事業の、立地の一線に当たります事業会社等の圧力でもあるんではないかというふうなこともお話に出ましたが、これは実際事業に当たります会社としても、一刻も早くそこそこの——そこそこと言うと何ですが、いまおっしゃいましたように非常に細かい精密なことはできなくても、さしあたってのこれだけはこうだというふうな基準をつくってもらった方が、いろいろの対応策を立てるためにも非常に都合がいいという立場から望んでいることと思っております。したがって、われわれとしましては、それは別としまして、とにかく一刻も早く温排水の基準が決められることをもう前々から痛切に望んでいるわけであります。いまお話にも出てまいりましたように、なかなか非常にむずかしいような技術的な、あるいはその他の事情があるようでございまして、この点はある程度やむを得ないかと存じておりますが、それはそれとしまして、とにかく実際にいろいろな点から役立ちます基準というものだけでもひとつ早く決めてもらいたいということを望んでいるわけでありまして、御発言にあるまでもなく、われわれとしましては、関係当局とさらに打ち合わせを密にいたしまして、この温排水の基準問題の解決といいますか、早く決めていただくように、お話のように最終的な非常に細かい点はこれまた後日の研究に譲るといたしましても、さしあたって必要な何かの基準を早く決めていただきたい、こういうことを前々から念じておりますので、この上とも関係省庁とさらに打ち合わせを進めまして、急いでその方向に向かって努力したいと考えております。
  183. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 温排水は以上で終わりますが、環境審査に関連をして、前回非常に時間の関係でせいておりましたので、もう一遍環境庁にお尋ねをいたします。  自然公園などと原発立地との関係の問題で前回御質問をして、法のたてまえからは自然公園に立地するということはできるだけ避けたい、ただ、もう一つ法のたてまえ上、公益事業との関係の調整の問題もあるという御答弁でしたけれども法律はそういうたてまえになっていると思うのですけれども、実際問題として、日本列島海岸線だけ拾っていけばかなり長いと思うのですけれども、そういう状況で、これから新たに立地をしようという場合に、ことさら自然公園に建てるという、こういうことはできるだけ避けた方がいいんじゃないか。私は、日本の美しい自然を守るという点で、できるだけ避けた方がいいんじゃないかと思うのですが、その点の指導理念ですね、ちょっと伺っておきたいと思います。
  184. 中島良吾

    説明員(中島良吾君) 先生御指摘のとおりでございまして、環境庁といたしましても、できる限り自然公園区域内は避けていただきたいという方向で通産省なり科学技術庁なりにお願いをするところでございます。しかしながら、諸般の情勢、立地条件等からしまして、やむを得ず公園の中に入ってくる可能性もございますので、その点につきまして先般お答えを申し上げた次第でございます。
  185. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 本日最終日の質問になりますので、もう少し原子炉の安全審査にかかわる若干の問題についてお尋ねをしておきたいと思いますが、この原子力委員会のもとでの安全専門審査会、あるいは通産省のもとでの技術顧問会、これは例の大山報告も触れておる問題でありますし、科技庁側からは資料もいただきましたけれども、本当に原子炉の安全審査という重大な任務に照らして、委員会の出席状況がふさわしい状況にあるかということで、これはまあ名誉にかかわる問題でもありましょうから、私はあえてここで数字は出しませんけれども、現状は決して好ましい状況にはないと思います。問題は、いろいろな御都合で欠席をされる委員もあると思うんですけれども、重要な審査項目について、出席者だけで、それでぱっぱと決められて運営がやられているということだと、私、大変だと思うんです。やむを得ざる理由で欠席をされるという場合に、やっぱり重要な審査項目については文書で同意を求める措置だとか、それからさらに、かなり重要な意見相違があるという場合に、そういった問題は、現行は原子力委員会、新法によれば安全委員会ということになろうかと思うんですけれども、そこへの答申が出る場合に、両論併記をして、やはり科学的な審議が正確にやられる、そういう運営はどうなっていますか。
  186. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 確かに、安全審査会がこれまでほぼ月一回の割合で開かれるわけでございますが、その際にある程度欠席される委員が出られるのはやむを得ないことであるわけでございますが、できるだけその出席率を高めるということは、先生御指摘のとおり、重要なことかと思っております。ただ、安全審査会の場合、非常に重要な決定等が行われるわけでございますので、会議前に、会議の日にちを決めますときに、あらかじめ各審査委員の出欠の御予定を伺うということをやっておるわけでございます。で、必ず過半数の委員の出席を確認して開催する。また、議案によりまして、どうしてもその先生が出ていただかないと困るような場合には、その先生方がおいでいただける日を選んで決めておるというような運用をいたしております。また、不幸にしてその当日に来られない先生に対しましては、事務局の方で直接御本人に資料をお送りする、あるいは、非常に重要な案件であれば、事前に資料をお送りしてあらかじめ意見を聞いておくということをとって運営しておりまして、事務局の方から、この先生の御意見はこうでございましたというのを事務的に御報告するというふうなことを加えまして、慎重な審査をしていただいておるつもりでございます。今後もそのようなことで十分な審査が行えるように努力してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  187. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それで、やはりそういう重大な任務に照らして、審査会なり技術顧問会が充実をした運営がどうやられるか、そういう点で、一つは、そういう学者、研究者の方を遇するに、やっぱり処遇を改善をするという問題を考える必要があると思うんです。で、繰り返しませんが、委員会で質問をしましたように、とりわけ通産省の側はそういう点が弱い、科技庁の側も決して十分とは言えぬということで、専門委員の方々が十分腰を据えて任務が全うできるような処遇の改善をどうするかという問題。それから、いま直ちにということではありませんが、将来方向としては、恐らく原子力発電所も年々増加をしていく方向になるんじゃないかと思うんですけれども、将来の方向として、専門委員などは、常勤者も含めて専門委員会の体制をとる。専門委員すべてとは言いませんけれども、そういう将来方向についても検討をすべきではないか。すべて非常勤でよろしいということではいかぬだろうというふうに思うんですが  以上二点についてひとつ。
  188. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この安全審査等を担当していただく審査委員の方の常勤化の問題につきましては、いろいろな分野から御意見をいただいておりまして、常勤化せよという御注文もよく受けるわけでございます。今回も、法律改正に当りまして、そういうことの可否についても私どもいろいろ検討したことは事実でございますが、何分にも、いまのわが国の国家公務員の制度、あるいは社会の終身雇用の制度等々の関係から、きわめて高度の知識を持った学識経験者を常勤にして運営するということはいろいろむずかしい点があることは事実でございます。したがいましてなかなかこの問題を解決をするということは困難ではございますけれども、先生の御指摘もございますし、また、その他の要望もないわけではございませんので、今後ともいろいろ検討してまいりたいというふうに考えております。
  189. 武田康

    政府委員(武田康君) まず、私どもの顧問の先生方の処遇と言うとおかしいんですが、差し上げる手当でございますけれども、実は現状残念ながら科学技術庁の方でなさっている安全審査委員の方々への手当の半分ということでございまして、まことに、先生御指摘のとおり、私どもとしても顧問の先生方に申しわけなく思っているわけでございます。実は、毎年予算要求ではもう少しということで、この二、三年で少しは改善されたんでございますが、まだきわめて不十分でございまして、今後とも改善の努力をしたいと思っているわけでございます。ただ、残念な点では、私どもの顧問の方々のみでなくて、通産省内にはたくさんいろんな委員会がございまして、他省庁も含めますと全体で何万人というオーダーかと思われます。その方々全部のバランスに成り立っているものでございますので、私ども担当部門としては一生懸命やるつもりでございますけれども、そのつもりほどの成果がなかなか上がってこなかったのが現在までの実態でございまして、今後最大限努力はするといたしまして、しかし、先生のおっしゃるところまでいけるかどうか、実は一けたぐらい上げなければ本当はおかりしている知恵の価値に比べまして足りないんじゃないかという気があるもので、そういうことを申し上げるわけでございますが、最大限これからも努力したいと思っております。  それから、将来方向として常勤ということでございますけれども、私ども顧問の先生方にお願いしておりますのは、私どもが通産省の行政部門としてある判断をする、そのときに自分自身で判断できるものもございますし、また、一応判断はするものの、やはりだれかに確認してみないと自信がない、あるものにつきましては、どうも初めからこれは高度の知識を持つ先生方に判断をお願いするというふうなことでございまして、いろいろそのお願いの仕方が違っております。それで、お願いするにつきましては、実は原子力は境界領域の一種でございますので、それだけをやっている人にお願いするというよりは、むしろ各部門の専門分野についていろいろなさっている方にその目で原子力という境界領域をながめていただくという方がいいという感じもございますし、あと、先ほど原子力安全局長のお話にございましたように、雇用制度等の問題がございます。そんなことで、従来から非常勤の顧問の先生をお願いするという体制を続けてきたわけでございますが、理論構成としては先生の御指摘ごもっともな点があり、私ども共鳴する点がございますが、しかし、現実問題としては現在のような非常勤顧問の方々を充実しながらお願いしていく。一方で、役所そのものの職員を、専門知識を持つような者、つまり能力の向上を図りながら職員の増強を図っていくと、こういうことで、先生のおっしゃるような御趣旨を総合して達成していくのが私どもの進むべき道かなというふうに考えているわけでございます。
  190. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) ちょっと御質問にお答えしてなかった点がございますので補足さしていただきますが、専門委員の報酬につきましては、先ほども通産省からもお話がございましたように、予算的な各省庁横並びとか、いろいろな制限がございますが、私どもとしては、できるだけさらに高額にしていくという努力をしてまいりたいと考えます。また、そういうような安全審査の先生方を非常勤にしておることで、非常に常勤化がむずかしいわけでございますので、私どもとしては、事務局、安全局の中に原子力安全調査室というようなものをつくって、事務局機能を強化するという線での突っかい棒と申しますか、を行った次第でございまして、そういうことと両々相まって審査の充実を図ってまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  191. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 安全の確保を旨とし、国民に信頼をされる原子力行政を確立をするという立場の問題との関係でお尋ねをしますけれども、いままでとかく原子力諸施設が事故が起こった場合に事故隠しをする、そういう傾向が非常に強かったと思うんですけれども、これがますます国民の不信をつのらせておる一つの重要な原因になっているということだと思うんです。この委員会でも、そういう議論の流れもありました。重ねてお尋ねをいたしますが、国民に信頼をされる原子力行政を確立をするということで、事故については原因分析はいろいろ必要な検討をやったらいいわけですが、やはり事故は公表をするという行政のルールを確立をすべきだと思うんですが、この点どうですか。
  192. 武田康

    政府委員(武田康君) 運転上あるいは運転状態に入ってから後起こりました事故につきましては、現在私どもとしてはそれを速やかに公表する、あるいは評価した後公表するということを現に実行しているところでございます。で、事故のみならず——実は電気事業法上事故という定義がございまして、これは発電所がとまったりするとみんな事故になるわけでございますが、そういう事故のみならず、運転上その他発電所の工事なり、維持なり、運用に関連いたしまして軽微な故障なりトラブルと、こういうものが起こった場合につきましても、会社の方から速やかに私どもの方に報告させまして、原因を調査し、評価し、あるいは所要の対策をとり、その結果を速やかに公表するというような措置を現在とっておりまして、これは今後とも続けたいと思っておるわけでございます。もちろん、同時並行いたしまして、現在は原子力委員会の方に事故、故障などというものを御報告しておりますけれども、今後、原子力安全委員会が発足するということになりましたらば、これはまた安全委員会の方とそういう点につきまして御相談し、公表すると思います。
  193. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと、時間ですので、同じ御意見だったらいいんです。
  194. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) いまわれわれ事務局で検討しておりますが、新しい安全委員会の発足した後におきましては、報告された事故につきまして評価を加えて公表したい、定期的に取りまとめて公表していきたいと、こういうふうに考えております。
  195. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと、最後の質問ですので、もう少しお許しを願いたいと思います。  事故の評価について、行政庁の評価だけで結論を出すんじゃなくて、事故が起こった場合には、住民からのいろんな疑問が向けられておるわけですし、やはり公聴会的なものを通じて関係地域住民、専門学者を含めて、いろんな質問や意見が出せるというふうに、これもルール化をすべきではないかという問題が一つと、それから、自治体の長から、非常に住民の中で今日不安がつのっているから、事故ないし故障が起こっている場合、一遍ちょっと運転を停止をしてくれという自治体の長から申し出かあった場合には、関係庁としてはやはりそれにこたえるということが、国民合意の原子力行政を進めていく上で重要じゃないかと思うのですが、これらの点について御意見を……。
  196. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 事故、故障等の問題について、専門家の間、専門家を含めていろいろ公聴会をというお話でございますが、私ども、この御指摘につきましては、公聴会というよりはむしろ学者間のシンポジウム、そういうようなものを考えていったらばいいんではないかというふうに考えている次第でございます。  なおもう一つの、自治体の長の要請によって原子炉をとめるというお話ではございますが、これは各発電会社におきまして安全にかかわる自治体との協定をそれぞれ取り結んでおりまして、事故等が起きましたときにも、私どもに報告されると同時に、各自治体の長に対して報告等がなされておるわけでございます。もし重大な事故等が起きて、自治体の御要請等があれば、一義的には発電会社との話し合いが必要であろうと思いますし、また、原子炉運転でございますれば、通産省と協議された上でいろいろ決定されるべき問題だと考えております。
  197. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最後に、「むつ」の問題でもう少しお尋ねをしておきたいと思います。  一昨日の質問で、私からも「むつ」問題についても公聴会のようなものを開くべきだということを主張しておりましたし、きょうも塩出委員からも質問があったということで、漸次当局の答弁、前進をしてきておると思うのですけれども、当面の修理問題について、母港設定にかかわる問題について公聴会の要望があれば前向き方向で検討、対応をいたしますという御答弁になっておるわけですけれども、きのうも触れておったんですけれども、同様に、「むつ」問題というのは現地問題でありますと同時に、全国的問題、国民的に注視されておる問題、特に専門学者が非常に注視をしておると思います。そういう点で、今後の原子力船のあり方について、そういう問題も含めて、中央段階での学者、専門家を含むシンポジウムのようなものを、そういうことが具体的な話が煮えてくれば、それに当局としては積極的に対応するということを検討するという問題についてはどうですか。
  198. 山野正登

    政府委員山野正登君) 「むつ」の問題を含めまして、原子力船の平和利用、また広く原子力開発の推進ということについての国民の理解協力を求める努力の一環としまして、いろいろ公開ヒヤリングとかシンポジウムあるいは説明会といったふうなものをこれから開いていこうということは考えておるわけでございますけれども、昨年の暮れに、私どもが認可いたしております日本原子力文化振興財団というものが主催をいたしまして、各政党の先生方にお出ましを願いまして、「エネルギー・原子力を考える」というパネル討論会を開いていただいた経緯があるわけでございますが、その際にも多数の参加者に聞いていただいて、このエネルギー問題についての国民一般の理解を深めるのに非常にあずかって力があったと思いますし、また、ことしの三月であったかと思いますが、同じ団体が主催をいたしまして、原子力について賛成の立場の方あるいは批判的な立場の方々にお集まりいただいて、同じくパネル討論をし、また会場に参加した一般の方々もこれに参加した。そして結果的には国民各層の方々の原子力についての理解を深めるのに非常に役立ったというふうに私どもは評価しているわけでございますが、このような努力というのを今後とも、いま御指摘原子力船の問題も含めまして、幅広く進めてまいりたいというふうに考えております。で、きょう現在「むつ」についてそのような企画はあるかと聞かれますと、きょう現在はないわけでございますが、将来課題としまして前向きに検討したいというふうに考えております。
  199. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 工事の発注について、もう再々長官からも、佐世保重工がいまの経営状況のこのままでは、規制法に基づいても余りふさわしくないということをたびたび発言をなさっておるわけでありますが、角度を変えまして、かつて「むつ」建造に当たってあの欠陥原子炉をつくりました当時の企業責任、企業の今回の改修工事に当たっての責任をどういうふうにとらそうとするのか。一般的な話はいままで聞いてきていますけれども、社会的道義的責任はあるんだと。具体的にいよいよこの改修ということが科技庁としてはお考えになっておるこの時期に来ていますので、どういう具体的な姿を考えておられるのか、お示しを願いたいと思います。
  200. 山野正登

    政府委員山野正登君) 「むつ」の放射線漏れの原因となりましたこの遮蔽の欠陥という問題につきましては、大山委員会指摘をまつまでもなく、この設計整備に当たりました三菱原子力工業というものにも責任があったことは明白でございまして、契約上の責任の追及というものはこの保証期間がすでに切れた後であったわけでございまして、これはできなかったわけでございますが、しかし、その後におきましても、三菱グループとしましては、十分に道義的な責任というものは感じておるわけでございまして、これまでもいろいろな形で事業団のこの「むつ」の開発の続行という面におきまして協力をしておるわけでございますが、過去を見ますと、事業団の行います遮蔽改修・総点検の概念案の作成あるいは概念設計といったふうなもの、これは五十一年の中ごろまで続けられたわけでございますが、これに契約によらず、三菱グループは無償で協力をいたしておりますし、また、その後におきましても、モックアップ実験に三菱原子力から協力員一名を派遣しておる。さらに、基本設計段階になりましても、現在技術協力員二十二名、これは有償契約ベースではございますが、を派遣して協力をしておるというふうな状況でございまして、今後とも、この「むつ」の遮蔽改修・総点検の進行に当たりまして、これら三菱グループの協力というものは引き続きあると思われますし、また、その協力の具体的な形というものはさらに引き続いて事業団と三菱グループとが決めていく問題であるというふうに考えております。
  201. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ひとつ、今後の方向についても、一層相当な国費を投じてやってきたこの事業でありますから、そういう点で国民の納得のいく姿で、どうやって企業責任をとらせるかという問題について、十分科技庁として検討していただきたいというふうに思いますが、長官どうですか。
  202. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 十分検討してまいりたいと存じます。
  203. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最後に質問をいたしますが、この「むつ」の改修の問題について私も何回か当委員会で質問という形での意見を述べてきたわけでありますけれども、やはりこの核封印改修というのは核つき改修であることには間違いないわけでありますし、こういう形で改修工事が行われてそれで万全の総点検が行われるということにはならないと思うんです。やはり部分点検、手抜き点検ということにならざるを得ないと。そういう意味で、いよいよこれから改修に伴うもう一遍安全審査問題が登場をしてくるわけですけれども、もう一回原点に返って、本当に大丈夫かというこの総点検計画を、いままでのことにこだわらず、やはり当局としては原点に返ってよく考えてもらう必要があるだろうということが一つと、それから、これも議論の中で出ておりましたけれども、せっかく今度また相当の膨大な国費を投じて改修はやったわ、後出力上昇試験をやる母港も決まらぬと、こういうことでは、また洋上に漂流をする。金を投じて改修をやったけれども、また漂流をする「むつ」ということになりかねない。そういう点で、やはりむだのない確実な行政を進めるという点で、私は、やっぱり新定係港母港が決まった、もうこれでいよいよ行き先ははっきりしたと、こういう状況でいよいよ具体的な改修工事に入る、改修工事に入るのはやっぱり母港が決まってからやると、こういうことでありませんと、工事はやったわ、どこへ行った、行く先わからぬということでは国費のむだになる。そういう意味で、そういう前提を置かなくちゃならぬ。そういう上で、片一方、どこの工場に頼むか、会社に頼むか、実際問題で佐世保でやろうと思えば佐世保重工以外にない。しかし、いまの状況では任せられる状況ではない。いま政府は鋭意、「むつ」問題と切り離してという言い方をされながら、いろんな対策を、佐世保重工対策を進められておるわけでありますけれども、一定の対策ができたとしましても、本当に経営基盤が安定をして、大丈夫だと、技術陣も大丈夫だ、経営基盤も大丈夫だという判断がつくのは、まだこれから私は半年ぐらいかかるだろうと思うんです。これは会社の経営診断というのが一月二月で簡単にできるものではない。そういうふうに見ましても、時期的に言って、いま出ておる話では九月から改修ということを言われていますけれども、あと三月ほどの間にそんなに急いでとっとっと事を進めたら、また悔いを残すことになる。そういう点で、両面から見て国民の納得のいく全面的な点検、これをもう一回原点に返ってよく練り直す、それと、実際に安心して任せられる改修工事計画のスケジュールを決める、こういう点で、母港が決まるまで、それから国民の納得できる総点検計画が合意できるまで、具体的な改修工事は急ぐべきでないというふうに私は強く思うわけですけれども、この点、長官御意見どうでしょうか。
  204. 山野正登

    政府委員山野正登君) 幾つかの点の御指摘があったわけでございますが、まず、今回計画いたしております修理というものが部分的な手抜き点検にならないかという点でございますが、これにつきまして、確かに今回の修理というものは圧力容器上蓋を取らないで改修をするとか、あるいはかぎ知事に預けるといったふうなことで、従来お願いしておったのとは違う条件でやりますし、また御指摘のように、燃料棒は挿入したままの状況の修理でございますけれども、かといって、部分的な修理あるいは手抜きの点検ということには私どもはならないと考えておるわけでございまして、現在の遮蔽改修内容あるいは総点検内容と申しますものは、これは事業団が立案いたしましたものを改めて安藤委員会で慎重に御検討願って決めたものでございまして、私どもは、いまのところ、これで万全のものであるというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、それによって、あるいは今後とも過ちがあってはもちろんいかぬわけでございますので、作業の進展に応じて、引き続き安藤委員会、第三者機関の十分な御審査をいただきながら進めてまいりたいというふうに考えております。  それから母港選定作業でございますが、これも御指摘のように、できるだけ早く選定を進めるにこしたことはないわけでございますので、私ども修理港問題が決着を見次第この母港選定作業に入りたいというふうに考えております。  それから佐世保重工業の問題でございますが、今後佐世保重工業というものが契約相手方としてどのような形で組み込まれるか、これはまだ決定を見ておりませんけれども、その際には、同社の技術的な、あるいは経営的な能力というものは、規制当局の審査を待つ前に私どもとしましても十分慎重に考えていきたいというふうに考えております。  それから、今後いつごろから修理が始まるかという問題でございますが、本日の答弁におきましても、私、修理港について地元回答がありまして二カ月ないし三カ月回航までに必要だろうということを申し上げておるわけでございますが、これは法律上の事務手続上その程度の時日が要るということを申し上げておるわけでございまして、法律上の手続以外にいろいろと行うべき問題はあるわけでございますから、そういうふうなものについて万遺漏なきよう措置をしまして進めたいというふうに考えております。  それから具体的な改修工事でございますが、これは入港をすればすぐに修理作業が始まるというものではございませんで、入港いたしましても、修理に関する安全審査が済むまで、また、場合によりましては総点検の結果による修理の安全審査が終了するまでは具体的な修理作業には入れないということでございますので、これはかなり先になろうかと考えております。
  205. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 長官の最後の御答弁をいただく前にもう一言。  きょうの各新聞にも、きのうの長崎県議会でああいう議決も行われたということとの関係で、たとえば読売、毎日、それぞれ社説という形もとりながら触れておることはごらんになったと思うんです。大まかに言って、一つは、安全性の十分な国民的合意が得られないまま事がこういうふうに進んでおることについての問題と、それから母港も決まらないままの改修工事を急ぐというこの問題。それから、とにかく目に映るのは政治決着だと。最も科学を大切にすべき原子力行政が科学的決着じゃなくて政治的決着がやられようとしている、「むつ」問題の繰り返しだと、かつての。新聞というのは世論を一定程度背景にしながら書いておるものだと思うんですけれども、こんなことも含めて、こういう出されておる疑問にどう前向きにこたえるか、そういう点を含めて最後の長官の御答弁をお聞きをして終わります。
  206. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 総点検ということにつきましては、さっき政府委員からお答えしたところでございますが、従来の計画に必ずしも拘泥しないで、とにかく万全を期して、今度やるときには、試運転等をやります場合には、あらゆる見地からそういういろんなトラブルが起きないようにやってまいりたいと考えております。  それから、新しい母港ができるまでは修理云々というお話もございましたが、新定係港は急いで決定する、選定を急ぐつもりでございますので、修理もなかなかおくれますけれども、必ずしも新定係港決定できるまで修理を延ばすということもちょっとどうかと思いますので、両方並行いたしまして、両方とも急ぐ問題であると思いますので、そのように進めてまいりたいと考えております。  また、新聞等にいろいろ盛られました意見については新聞も拝見いたしております。また、私どもなりのいろいろな批判もありますけれども、とるべき点については十分教訓を生かしまして、あらゆる努力をひとつやってまいりたいと、このように考えております。
  207. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 他に御発言がなければ、本案に対する質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会