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1978-05-31 第84回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月三十一日(水曜日)    午前十時三十八分開会     —————————————    委員異動  五月二十七日     辞任         補欠選任      成相 善十君     熊谷  弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 房雄君     理 事                 源田  実君                 望月 邦夫君                 松前 達郎君                 塩出 啓典君                 佐藤 昭夫君     委 員                 岩上 二郎君                 亀井 久興君                 熊谷  弘君                 後藤 正夫君                 中山 太郎君                 山崎 竜男君                 小柳  勇君                 吉田 正雄君                 中村 利次君                 柿沢 弘治君                 福永 健司君    国務大臣        運 輸 大 臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君    政府委員        内閣法制次長   角田礼次郎君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        科学技術庁原子        力安全局次長   佐藤 兼二君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        武田  康君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        環境庁自然保護        局保護管理課長  中島 良吾君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○原子力基本法等の一部を改正する法律案(第八  十回国会内閣提出、第八十四回国会衆議院送  付)     —————————————
  2. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十七日、成相善十君が委員を辞任され、その補欠として熊谷弘君が選任されました。     —————————————
  3. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 原子力基本法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは、原子力基本法等改正案につきまして、この基本法原子力平和利用ということを基本理念としておるという点を踏まえまして、防衛庁にこれと関連をして若干質問をいたしたいと思っているのです。  御承知のように、最近、わが国防衛力の増強という観点から、核武装論なるものが盛んに論議をされているようであります。これをめぐって政府は、本国会における衆議院あるいは参議院の予算委員会等におきまして、核保有についてそれぞれ、外相あるいは内閣法制局長官あるいは首相答弁の形で、数回にわたって見解が示されておるわけです。しかし、この見解答弁者によってそれぞれニュアンスが異なっております。政府統一見解というものが、特に「核兵器保有に関する憲法第九条の解釈について」ということで、昭和五十三年三月九日と、それからもう一つは四月に入ってさらにその補足統一見解というものが出されておるわけです。これらの点を原子力基本法という観点からどのように政府が理解をし、把握をしておるのかということを明らかにすることが私は今日最も重要であると思いますし、そのことの確認、とりわけ原子力平和利用という担保の観点からして、そのことを明確にしないでいくならば、私は日本原子力平和利用の将来にとってきわめて重大な禍根を残すのではないかというふうに思うわけです。  もちろんここは内閣委員会でもありませんし、予算委員会でもありませんから、本格的な防衛論議をここでやろうとも思っておりませんし、またその時間的な余裕もありません。そういう点で、幾つかの点について実は大臣なり政務次官なりが出席をされたならば、若干憲法上の解釈についても再度お聞きをしたい点も幾つかあるのですけれども、そういう点については、きょうは大臣も都合が悪いということでありますし、それから防衛局長がかわって出席をされるということでありましたけれども、何かお聞きをするところによりますと、やむを得ない事情によりましてきょうは出席をできないということが事前に連絡がございましたので、これはやむを得ないと思っているわけです。しかし、きょう防衛庁の方から出席をされた方の答弁のいかんによっては、改めて防衛庁長官なり、あるいは政府統一見解を求めるという場面があるいは出るかもわからぬということをあらかじめお断わりをしておいて質問に入りたいと思うわけです。  防衛庁の方から出席をされておりますでしょうか。——それでは、出席された方も審議官のようでありますし、むしろ大臣よりも内部事情にあるいは詳しいかというふうに思われますので、本格的な質問に入る前に若干お聞きをしておきたいと思うのですが、これは新聞に報道されたことですけれども、実は栗栖統合幕僚会議議長部内研究誌に、「相手が核を持っている以上、こちらも核を持たねば、完全な防衛は今日、期待できない」という趣旨の、核兵器保有必要性というものを強調する論文発表しておるということが明らかになった。これは今日ではありませんが、栗栖議長がかつて陸上自衛隊の第四普通科連隊長時代に、陸上自衛隊幹部学校部内研究雑誌幹部学校記事」に「国防私見」、これは昭和三十八年六月号と「続国防私見」同年十月号です一と題して、二回にわたって発表をされたものです。特に核兵器保有論を強く打ち出しているのが第二論文の「続国防私見」であるわけです。これらのものが出されておるということを御承知でしょうか、まずお尋ねいたします。
  5. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘栗栖統幕議長一等陸佐当時に、そういう個人的な考えをつづった論文発表したと申しますのは、投稿したという事実は承知いたしております。
  6. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、これは単に私見というふうなことにはならないのじゃないかというふうに思うわけですが、これは幹部学校部内研究雑誌であるわけですね。したがって、単に個人研究というふうなものではないと思いますし、当時、一等陸佐という厳とした陸上自衛隊幹部としての地位を保っているわけです。したがって、こういうふうな論文——この雑誌もこれは公的なものだと思うのです。そういうものに発表することについて一体どのような防衛庁としては見解をお持ちなのかどうか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  7. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 幹部学校におきますその雑誌が半公的な性格を持つものであるという御指摘につきましては、そのとおりであろうと存じます。その当時、その雑誌が一体どういう公的性格を持っておるものか、全く個人的な基金によって運営されておった、いわば部内仲間同士の、何と申しましょうか全く私的な性格のものであったのか、あるいは幹部学校当局が何らかの形で関与しておったものかどうかというその詳細につきましては、古いことでありますので必ずしも明確ではございませんけれども、少なくとも先生指摘のような、全く私的なものではないではないかという御指摘につきましては、そのとおりだと存じます。  なお、そういう性格雑誌個人が、幹部学校の学生なりあるいは教官なりあるいは広く陸上自衛隊の中の者たちで、そういう研究テーマにつきまして発表したいというものがあった場合に、それをどういう基準でそこに採用するかということにつきましても、その明確な基準があるわけではないと思いますけれども、ただ、その雑誌性格上、また幹部学校といういわば研究機関性格上、個人自分の正しいと信ずることにつきまして腹蔵なく意見発表する、それに対してその反論もまた腹蔵なく収録される、そして切瑳琢磨していくという形のものは、これはその学校性格からいって、そういう種類の雑誌というものの必要性もあると存じます。ただ、その発表されました論文の当否につきましては、これはまた別の評価が当然あると存じます。
  8. 吉田正雄

    吉田正雄君 研究の自由であるとか、あるいは発表の自由ということが保障されなきゃならぬということは、一般的な論理としてはわかるのです。しかし、たとえば公務員日本国憲法を守っていくという宣誓のもとに公務についておるということも御承知だろうと思うんです。  そういう点で、それでは政府として憲法核兵器保有できるというふうな統一見解をすでに当時お持ちだったのかどうなのか。しかも、そのようなことを研究の自由という言い方の中で自由に論議をさせることが果たしていいのかどうなのか。  さらに、その当時とは言わず、なおこの新聞報道によれば、栗栖議長は、基本的な考え方はいまも変わっていない、戦略核兵器戦術核兵器の両方とも保有することが望ましいという趣旨のことがこの研究雑誌の中で言われているわけです。これは大変な問題だと思うのです。したがって、そのようなことを、いまの政府非核原則なり政府統一見解からして、統幕議長たる現職にあって、なおかつその考え方が変わっていないということになってまいりますと、私は非常に大きな問題が出てくるのじゃないかと思うのです。そういう点で、統幕議長として、いまもその考え方には変わりはないということを公言をされているということなんですが、その点については御存じなんでしょうか。
  9. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 私、統幕議長から直接そういう言葉を聞いたわけではございませんけれども、統幕議長考えが変わらないということにつきまして仮に統幕議長が申したといたしましても、必ずしも違法な発言、きわめて不適切な発言であろうとは実は考えられないわけでございます。と申しますのは、その論文、必ずしも私しさいに読んだわけじゃございませんけれども、言わんとするところは、こういう核戦略時代にありまして、一国がその国家存立を保全するためには、そういう核の脅威に対しては対抗する手段を持つ必要があるという趣旨考え方、これは現在もまた過去も防衛庁あるいは政府はそういう考えをとってきたわけでございまして、ただそれが、わが国がみずから核兵器保有する、戦略核攻撃力保有するということは、これは憲法上認めるところではないということも、これまた自衛隊発足当時から、あるいはむしろそれ以前から、政府憲法解釈につきましてそれは変わっていないわけでございまして、しからば、わが国はそういう核の脅威に対してどう対応するのかということにつきましては、これは日米安保条約によりまして、アメリカの持ちます強大なる核戦略報復力に依存するのであるという考えできてまいっておるわけでございます。
  10. 吉田正雄

    吉田正雄君 政府非核原則方針をとっているわけですね。そういう点で、統幕議長という立場にある人がそういう考え方を持っておる。考え方を持っておるということは、単に考え方にとどまらず、やはりそういう方向というものを志向する、そういう動きというものに私はつながっていく危険性があると思うのです。そういう点で、政府非核原則方針に照らして、果たしてそのような発言というものが適切というふうに思われるのかどうかということが第一点と、それから対外的な影響というものを私は無視してはならないと思うのです。先般、外務省ヨーロッパにおいて、ヨーロッパ各国の国民の日本に対する見方なり評価なりについての世論調査を行った結果が発表されておるわけです。それについて外務省は、大分誤解があるというふうな言い方をしておりますけれども、私は誤解だとは思わないのです。憲法第九条の解釈はいろいろあるわけです。確かにあります。これは、あらゆる軍隊、一切の戦争を否定するという考え方もあれば、いや、自衛戦争は認められる、自衛のための軍隊は持つことができるのだというのが、いまの私は日本政府考え方だろうと思うのです。しかし私は、憲法制定をされた経過から考えるならば、いまの政府のその見解は明らかに誤りだと思うし、その政府統一見解について、われわれは納得をしていないわけです。つまり、余りにも権力解釈的過ぎるのではないかというふうに思っているわけです。ですから、ヨーロッパにおいて、日本が再度また軍国主義の道を歩むのではないかとか、核武装するのではないかというふうに感じておるということは誤解ではなくて、日本政府の今日までとってきた政策なり、あるいは現実にこのような動きがあるという中からは、当然そのように受けとめられてもいたし方がないと思うのです。そして例の、アメリカ中央情報局が一月二十七日に公表した秘密文書の中でも、日本は八〇年代初めに核兵器開発決定を下す可能性があるというふうに指摘をしておるわけですね。つまり日本が、口では平和利用ということを言いながら、現実には核武装方向を歩んでいるのではないかという推測なり予測、こういうものが決して根拠のないものではない、そう言われても私は仕方がないのじゃないかと思うのです。そういう点で、やはり統幕議長という枢要な地位にある人の言動なりあるいは考え方発表にしても、きわめて私は慎重でなければいけないと思うのです。たとえばここで総理大臣が、私の私見でありますがと言いながら再軍備論を堂々とぶつとか、あるいは改憲論をぶつというふうなことになったら私は重大な問題だと思うのです。単に一個人考え方として済ますわけにはいかないと思うのです。公務員として憲法を守る義務があるわけですね。そういう点で、これらの対外的な影響であるとか、あるいは現在の地位なり時期なり、あるいは従来とってきた非核政策という政府方針に照らして、必ずしも適切な言動ではないと私は思うのですが、その点はいかがですか。
  11. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 公務員がそれぞれにつきますその地位に即しまして、その発言が慎重であるべきであるということにつきましては、全くお説のとおりであると存じます。ただ、栗栖統幕議長が一佐当時発言をいたしましたことを、直ちにそれをもちまして現在そのまま全く同じことを栗栖統幕議長考えておるということでは、これは必ずしもなかろうと存じます。基本的には、自分が一佐当時言ったことと変わらないというその言葉解釈いたしますれば、やはりその核抑止力というものの考え方につきまして、それがわが国みずからが保有するのかどうかその点は別といたしまして、そういう核兵器重要性と申しますか、国防上の意義というものにつきまして統幕議長なりの見解を持っておると思いますが、ただ、現在の統幕議長は、これは私も聞いておりますけれども、政府方針と全く反するものはいささかもないということでございます。そのことは、最近の対談と申しましょうか、マスコミにおきます対談等におきましても、彼みずからが言明しておるところと記憶いたしております。
  12. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁はちょっと納得できないのです。たとえばアメリカカーター大統領が在韓軍隊の引き揚げの方針というものを決定をして、その後一部修正をされたようですけれども、これに対して在韓駐留アメリカ軍幹部がこれに反対をしたということに対しては、反対は自由だということではなくて、その反対をした高級将校についてはその職を解いておる。そうして現在は退職いたしておるわけですね。ですから栗栖統幕議長の現在の考え方が、新聞報道では現在も変わっていないということなんですね。政府が、非核原則核兵器は持ちませんということを明確に、国是であるということで、一切の核兵器保有しないということを明言しておるにもかかわらず、統幕議長核兵器保有することが望ましいのだという、政府政策と真っ向から反するような、そういう考え方に立っておるということになったら、私はこれはまさに政府部内の意思不統一だと思うのです。単に個人見解では済まされない。そういう点で、そのようなことが一体認められるのかどうなのか。また、現に統幕議長は、本当に政府非核原則、将来に向かっても一切核兵器を持たないのだというその政策に従ってこれからの防衛政策を進めていくという立場に立つのか、立っているのかどうなのか、その点はここに本人がおいでになりませんから聞くすべもないんですね。いまの答弁も多分推測でおっしゃったんだろうと思うのですが、この点についてはどのようにお考えになっておりますか。それ確認できますか、統幕議長がそういう政府非核原則に沿って、日本自衛隊に将来とも一切の核兵器保有すべきでないという考え方に立つのか、政府方針反対なのか。どういうふうに判断されておるんですか。
  13. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 統幕議長は、申すまでもなく防衛庁最高幹部の一人でございまして、防衛庁長官のもとに、週何回か事務次官等々の、あるいは幕僚長等々の幹部と集まりまして意見交換をする機会は多々ございます。そういう席に不肖私も列席する機会がございますけれども、その席におきまして、ただいま御指摘のような新聞記事が出るような場合には、その記事につきましてそれが議題になることがございます。統幕議長は明確に、政府方針制服としては従うべきものであるし、またずっと従ってきたし、今後も従っていくということがシビリアンコントロールの要求するところでもありましょうし、またそういうことで従っていく、政府方針に従っていくということがこれまたわが日本国憲法のもとにおきまして当然のことであるということを申しておることを何回か聞いたことがございます。統幕議長がその新聞記事におきまして、基本的には自分考えは一佐当時と変わっていないと申しましたその意味は、これは先ほども申し上げましたけれども、核戦略抑止力というものの考え方、それは変わっていないということでございまして、わが国非核原則のもとに一切の核兵器保有しないというその政策につきましては、それは全く同意見でございます。そして核兵器わが国が持たなくても、現在の日米安保体制におきましてそういう核の脅威に対しましては万全の措置がとられているわけでございますから、わが国防衛に当たりまして、わが国みずからが核兵器を持たなくても、それはわが国防衛の任に当たる自衛隊制服最高幹部の一人としてそれで十分であると申しますか、政府方針に反する、異議を唱える、何らそういう異議を唱える意味はないということは私も何回も聞いたことがございますし、またそのことは確信を持ってこの席で申し上げられることでございます。
  14. 吉田正雄

    吉田正雄君 私も、もちろん直接聞いておるわけじゃないのですけれども、そのような考え方といいますか、つまり政府非核原則、今後とも一切の核兵器は持たないという考え方反対立場ではない、そのようなことを言うはずがないというふうに承ってよろしいわけですか。
  15. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 政府の決めました方針につきまして、自衛隊幹部がそれに反する行動をとる、言動をとるということはございません。
  16. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは研究誌ではありますが、先ほど申し上げました二つの「国防私見」というのと「続国防私見」、これ、資料があると思うのですけれども、ありましたらいただきたいと思うのですが、その点いかがですか。
  17. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 何分古い資料で、手持ちがあるかどうか調べてみますけれども、できるだけ探しまして御意図に沿うように努力したいと存じます。
  18. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃ、将来に向かって今後、たとえば何も統幕議長に限らず、少なくとも枢要な地位にある——これはもう何も私は自衛隊に関することではなくて、政府全体がそうだと思うのですけれども、そういう政府方針があるにもかかわらず、核武装すべきだという論議を外に向かってやるというのは、私はこれはやっぱり不見識ではないかと思うのですけれども、その点はどうですか。
  19. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 遠い将来のことは私ども責任を持つわけにいかないわけでございますけれども、少なくとも政府の決めました方針につきまして、それなりの責任のある地位にある幹部がそれを対外的に外に向かって批判をするということは、これは適切でないと存じます。もし意見があれば、それはみずからの直属上司に向かって言えばいいことでございまして、そういう道をとらずに、勝手に第三者に向かって政府の決めた方針に対して異を唱えるということは、これはまことに不見識なことであると存じます。
  20. 吉田正雄

    吉田正雄君 時間もありませんので、この問題が中心ではないわけですので、本題に入って、政府が先般出されました五十三年三月九日と、それから同じく四月三日の「核兵器保有に関する憲法第九条の解釈について」と同補足説明ですね。この点について若干お尋ねをいたしたいと思うのです。ここで、補足説明の中に三月九日の「第九条の解釈について」というものが全部含まれておりますから、四月三日の補足説明中心にして若干お聞きをいたしたいと思うのです。  私は当初も申し上げましたように、憲法論議を実はするつもりでなかったんですが、逐次、戦後のこの論議というものを見ますと、防衛論議というものが拡大の方向に来ているわけですね。そういう点で幾つかの点でやっぱりお聞きをしておきたいと思うのです。もっと端的に言うと、今日までの政府憲法第九条に対する説明解釈というのは、一貫をして、自衛力漸増の産物である保安隊、警備隊あるいは自衛隊の存在が憲法九条に違反をしていないということを、まあ率直に言うならば、言いくるめる、あるいはねじ曲げて説明をするという、つじつま合わせの政治的な説明に終始をしてきたと私は思うのです。このことは、この憲法が押しつけであるとかなんとかに関係なく、憲法制定趣旨やあるいはその内容、あるいはいろんな憲法全体の構成から判断するならば、憲法第九条というものが一切の戦争を放棄をし、一切の戦力、兵力というものを保持しない、こういうことを世界に向かって私は宣言したものであるというふうに思っているわけです。そういう点で、政府が従来とも答弁をしてきた戦力等についての説明も、その都度その都度拡大解釈されてきておるわけです。   〔委員長退席理事塩出啓典君着席〕 そういった点で、私は、この説明とか統一見解というものがいかに変わるものであるかということは、戦後一貫して行ってきた政府のいわゆる有権解釈というものを見ますと、非常に信用するに足りないというか、政府説明というのはそんなに変わるものかということを、私はつくづくこの第九条の憲法論議で思うわけです。一体どこまでいったら歯どめがかかるのかという点で私は非常な心配と不安を持っているのです。そういう点で幾つか、憲法論議というよりも、皆さん方が現在考えおいでになります内容について一応お聞きをしておきたいと思うのです。これは将来の、また防衛論議憲法論議がなされる際にも私は必要だろうと思いますし、さらには将来の原子力基本法に基づく原子力平和利用はどうあるべきかという点とも絡んで、やはりここでもって私は確認をしておく必要があるだろうというふうな点からお聞きをいたしたいと思うのです。この点についてはあらかじめ皆さんの方にこの点はどうかということについて申し上げておりませんでしたから、審議官としてもちょっと答えがたい、あるいは即答できかねるというものもあろうかと思うのです。そういう点については、私は追って文書で御回答をしていただきたいというふうに思うわけです。  まず、憲法第九条はいまさら読む必要もありませんので読み上げませんけれども、ここではいろんなことが言われておるわけですけれども、「国権の発動たる戦争」というのは、これは国際法上の戦争というふうに常識的に考えればいいというふうに思うのですが、その点はそれでいいのかどうかということですね。あるいはどのように解釈をされておるかということ。それから武力ですね、武力というものはどのように理解をされているのか、定義づけをされているのか、この点をお聞きをいたしたいと思うのです。また、「武力の行使」あるいは「武力による威嚇」というものは何を指すのか、どういうものを規定をするのかということです。それから「国際紛争を解決する手段として」ということです。ここは憲法論議に若干入ってくると思うのですけれども、この、手段としての戦争というものについていろいろ見解が分かれるところなんですね。この日本国憲法で指しておるところの「国際紛争を解決する手段として」というのは、一切の戦争というものを包含するのかどうなのかですね。いや、その中には自衛戦争や制裁戦争というのは含まないというふうに理解をされておるのかどうかということです。それから「戦力」ですね、「戦力」についてはいろいろ解釈が述べられてきておるわけです。戦力なき軍隊なんていう言葉も出たんですけれども、一体軍隊とは何か。軍隊を持ちながら戦力のない軍隊というのが一体あるのかどうなのか。これは国際通念から言って成り立たないと思うのですけれども、「戦力」というものをどのように理解をされておるのかどうか。これは日本の場合には、どうもいままでの政府見解ですというと、国際常識、国際通念から大分はみ出した、非常に無理な解釈、常識では通用しない説明を行われておるようでありますので、これらについても明らかにしていただきたいと思うのです。  それから、ついでですから一応指摘をしておきたいと思うのですが、いまの補足説明の中で、お持ちだろうと思いますけれども、よく「必要最小限度」という言葉が使われるのですけれども、この「必要最小限度」という内容をお聞きをするというと、またほかの表現で説明をされるというふうなことで、漢として内容がわれわれ聞いておってちっともわからないわけです。したがって「必要最小限度」というのは、その範囲というのは一体何を指すのか、この点を明らかにしていただきたいと思うわけです。  それから、同じこの解釈の二の中で、「憲法をはじめ法令の解釈は、」ということで、これがまた有権解釈になってくるわけですけれども、そこの中で、三行目ですか、「それぞれの解釈者にとって論理的に得られる正しい結論は当然一つしかなく、」というふうにおっしゃっているんですね。一体「それぞれ」というのは何を指しておるのか。「論理的に得られる正しい結論は当然一つしかなく、」というのは、一体有権解釈を、つまり政府のこの統一見解を指しているのか、いやそうではなくて、最終的には憲法判断であるから、最高裁の判断を指すんだということになれば、現在の政府のこの統一見解なりというものは、まだ最高裁の判断を仰いではおらないわけですから、これが現在直ちにもって正しい解釈である、今日の有権解釈は正しいのだということにはならないと思うのです。そういう点についての見解をお聞きをしたいと思うんです。  それから最後になります。そしてここが実は一番聞きたい点なんですけれども、御承知のように、原子力基本法ではあくまでも平和利用ということを強調いたしております。軍事利用は一切行わないということが、この法案が提案された当初の中曽根康弘議員の提案理由の説明の中でも明確に述べられているわけです。そしてそれが国権の最高機関たる国会の意思である。その意思から政府ははみ出すようなことがあってはならない。そういう点で、国会政府を厳重に今後は監視をしていくのだということを中曽根議員はおっしゃっているわけです。ところがこの統一見解を見ますと、この三月九日の文章と、それから四月三日の補足説明の文章が最後のところではぴしっと一致をしていないのですね。これがまた後ほどその解釈が違ってくるということになるんじゃないかというふうに心配しておるのですけれども、三月九日の説明の中では、最後の第三項のところでは政府はこのように言っているわけです。「憲法上その保有を禁じられていないものを含め、一切の核兵器について、政府は、政策として非核原則によりこれを保有しないこととしており、また、法律上及び条約上においても、原子力基本法及び核兵器不拡散条約の規定によりその保有が禁止されているところであるが、これらのことと核兵器保有に関する憲法第九条の法的解釈とは全く別の問題である。」と、こういう言い方です。そして今度は補足説明の方ではどういうふうに言っているかといいますと、「そうした政策的選択の下に、国是ともいうべき非核原則を堅持し、更に原子力基本法及び核兵器不拡散条約の規定により一切の核兵器保有し得ないこととしているところである。」、こういうふうに言っているわけです。  そこで、私がお聞きをしたいのは、憲法上のことはさておきます。これはもう意見の分かれるところです。政府の場合には憲法上その自衛の範囲内において持てるのだという言い方ですね。解釈上持てる。私どもは持てないと思っておるのです。だから、そこはもう明らかに違っておりますから、これはここで聞いてみても、これは見解の相違ということになろうかと思いますから、それはいいとしまして、ただ憲法——実は核兵器不拡散条約に日本は加盟をいたしておるわけです。そういたしますと、憲法の九十八条二項の条約遵守の規定からするならば、九条とは別にこの九十八条二項によって憲法核兵器を持つことができない。というのは園田外相も国会答弁をされておるわけですが、その点は確認をしてよろしゅうございますか。
  21. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 憲法解釈の問題につきましては、防衛庁の方から御答弁申し上げるよりも内閣法制局等所管の官庁がございます。しかし、私どもが理解しておることを申し上げますと、憲法の九条の解釈を……
  22. 吉田正雄

    吉田正雄君 いや、九条はいいんです。条約ですね、核不拡散条約に加盟をいたしておるわけですから、その関連で九十八条の二項は国際条約を遵守しなければならぬという義務規定があるわけですね。そういう点で九十八条二項からして、つまり憲法上、九条じゃない、九十八条二項で言う憲法上もこの核兵器を持つことができない、憲法上の制約があるというふうに園田外相も答弁しているわけです、国会の中で。その点は再確認してよろしゅうございますかと、こう聞いているのです。
  23. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 憲法で言います条約遵守義務、憲法九十八条第三項に規定しておりますこの条約遵守義務と申しますのは、一般的に、日本国が国家としておよそ諸外国と結んだ条約については、これは誠実に守る必要があるということを定めたものと理解しております。ただ、そのことから直ちにあらゆる個別条約、数百、数千に及ぶ条約の一々を、全部それを守ることが憲法上の要請である、結んだ条約、およそ結んだ条約を守らないならばそれは憲法違反であるというふうに、そういう論理にはつながらないと理解しております。したがいまして、政府が結びましたこの核兵器不拡散条約、これは条約として結びました以上は、その内容につきましてわが国政府が誠実に守ることはこれは憲法上の要請でございますけれども、一たん結んだ条約をたとえば改正する、あるいは廃止をするということが、そういうことをすればこれは憲法違反であるという論理にはならないと理解をいたしております。
  24. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの審議官の論理はちょっとおかしいですよ。一たん結んだ条約が、結んだ以上未来永劫にわたってその条約が遵守されなきやならぬということを聞いているのじゃないですよ。あるいは破棄することだってあるでしょう。脱退することだってあるでしょう。しかし、現にいま結んでいるですし、その条約に加盟をいたしておるわけですから、そういう点からして九十八条二項によってその制約を受け、したがって核兵器を所有することができない、そういうことを聞いているのです。未来永劫脱退しないとかなんとか、そんなことを聞いているのじゃないです。また一般論を言っているのじゃないのです。現実にいまこの問題に関して園田外務大臣はそのように答えているんですよ。だからその点を再確認をしたいと、こういうことを言っているわけです。
  25. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 現在政府が締結しております核兵器不拡散条約の規定、これは第二条と理解いたしますが、これによりまして、政府と申しますか、日本国が核兵器保有できないということはお説のとおりでございます。
  26. 吉田正雄

    吉田正雄君 その次に、原子力基本法では、先ほど来申し上げましたように、あくまでも平和利用に徹することであって一切の軍事利用というものはやらないということがはっきりいたしているわけですね。したがって、これは解釈で将来どのようにもなるというものでなくて、この基本法そのものによって核の軍事利用というものが一切禁止をされるのだ、つまり核兵器を持つということは原子力基本法に明らかに違反をするのだ、したがって核兵器はこの基本法上からも持てないということが明確だというふうに思うのです。単なるこれは解釈論ではなくて、明確に禁止をされているんだというふうに受けとめるのが正しいと思うのですが、その点は防衛庁ではどのように理解をされておりますか。
  27. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 現行の原子力基本法の規定によりまして核兵器保有できない、わが国保有できないということは明確であると存じます。
  28. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、これは——科学技術庁長官おいでになりませんですね。この点はいままでの論議の中でも繰り返し出てきておりますけれども、第九条の解釈論はここでは避けまして、例の核不拡散条約との関係、これはまた批准もされておりますし、先般の国会でも大分この参議院でも論議をして、科技庁当局からも一応意思表示は明確になされておりますけれども、改めてその後またこういう防衛論議というものが出てきておりますし、核兵器問題が出てきておりますから、長官に、ちょうどおいでになりましたからお尋ねいたしますけれども、日本核兵器不拡散条約に加盟をいたしているわけですね。したがいまして、憲法九十八条の二項に従いまして日本核兵器を持つことができないという先般の園田外務大臣発言、園田外務大臣発言するしないでなくて、そのことはこの前から本委員会においても論議をされてきてそれなりの見解が表明はされておりますけれども、改めてこの憲法九十八条二項との関係で核兵器を所有することはできないというふうに私たちは考えるわけですけれども、この点についての長官の見解と、それから同じく原子力基本法はあくまでも原子力平和利用、一切の軍事利用というものは禁止をするんだということを明確にしておるわけですね。その点からも一切の核兵器は所有できない、これは単なる解釈論でなくて、あくまでも法律の上からそれは明示をされておるんだというふうに受け取るのが、理解するのがこれは正しいと思うのです。そういう点での長官の見解をお聞きをしたいと思うのです。
  29. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 先ほどからいろいろ憲法解釈の問題あるいは防衛ないし戦力の問題等についての御見解、御質問等があったわけでございますが、そういう高度の政治判断に基づいて政府全体の立場からいろいろ考え見解につきましては、一科学技術庁としてよく御答弁にたえるところではないと存じますが、ただ、さきの憲法核兵器保有が禁止されていないという政府見解は純法理的な憲法解釈論としての見解であると、このように理解いたしておるわけであります。しかしこのような純法理的な憲法解釈の問題と政府現実にいかなる政策をとるかということとは、申すまでもなく全く別個の問題でありまして、政府といたしましては、先ほど御発言のありましたとおり、まず国是として非核原則を堅持してまいっているわけであります。それから法律的にはこれまた仰せのとおり、原子力基本法によって原子力平和利用ということが現に担保されているところであります。さらにまた国際条約上は核兵器の不拡散に関する条約、すなわちNPTによりまして一切の核兵器保有しない、してはならないということになっているわけでありまして、われわれといたしましては、現実原子力政策といたしまして、このような観点から原子力につきましてはこのたてまえを貫きまして平和利用に徹するという施策を進めてまいらねばならぬと、このように考えておるわけでございます。
  30. 吉田正雄

    吉田正雄君 長官、当初のところを、ちょっとおいでにならなかったからお聞きになっておらなかったと思うのですけれども、私が憲法との関係でお聞きをしたのは、憲法第九条の解釈をめぐっては政府統一見解と私どもの見解では大きく分かれるところなんです。ですからここでそれを幾ら論議をしてみても、政府は持てるとおっしゃるし、私どもは持てないというふうに思っているのです。第九条に関してはいま聞いてないんですよ。ただ、憲法に関して言うならば、いまも先ほど来話が出ております核不拡散条約、つまり国際条約との関連で、憲法の九十八条の二項では国際条約は遵守しなければならないという規定があるわけですね。その規定に従っても日本核兵器はやっぱり持てない。つまり憲法上という観点は二つあるわけですね。第九条というところは、これは意見が分かれるところです、見解の、解釈の分かれるところです。しかし九十八条の二項については、これは解釈は分かれないんですよ。政府でも、園田外相はつい先般の衆議院での答弁の中で、九十八条二項との関係でやっぱり核兵器は持てませんということを言っているわけです。だからそのことをお聞きをしているわけです。九条のことをいま聞いているんじゃないのです。その点でちょっと誤解があったようですので、その点重ねてお聞きをしたいと思うのです。それは憲法上ですから、単に国是としての非核原則より強いものですね、これは。政策というのは変わるんです。変わる場合もあるし変わらない場合もあります。政権が変わればあるいは政策は変わる場合あるんですね。だから政策上云々ということになりますと、将来核兵器を持ちますということも出てくるでしょう。しかし私は、いま少なくとも現状でこの国際条約に加盟をしている以上、憲法九十八条の二項によって持つことはできないし、また原子力基本法というこの法律の趣旨からしても、法上も持てない。単なる政策ではない、憲法上も法律上も一この九十八条二項と原子力基本法あるいは核不拡散条約加盟というそういう観点からも、一切の核兵器というものを所有することはできないのだと、こういうことをいまお尋ねしているわけです。だから、その最初の部分だけもう一回見解をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 憲法九十八条のみから直ちに核兵器が持てるか持てないかという解釈は、これは不可能だと存じますので、先ほど大臣答弁申し上げましたのは、核不拡散条約に加盟しておるわが国といたしましては、当然にこの条約を誠実に遵守する義務がございますので、そういう観点から核兵器は持てませんということを申し上げておるのだと存じます。
  32. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、その誠実に条約を遵守するというのが憲法九十八条の二項で明示をされておるわけでしょう。だから、根拠はそこにあるわけですよ。根っこは憲法九十八条の二項です。これは日米安保条約をめぐっての最高裁の判断も、国の統治行為としての条約、そういう国際条約を結んだならば、このいま言う憲法九十八条の二項によって遵守をする義務というものをその国は負うのだということを最高裁の判断の中でも示しておるわけですね。だから、その点についてはぼくはもう争いはないと、見解の相違はないと思っているのですよ。だから、ここへ来ると、何ですか、九十八条の二項を意識的に何か避けていかれるような感じがするのですが、これはむしろ後退した答弁じゃないかというふうに思うんですよ。その点どうなんですか。何も九十八条二項を避けられる必要はないんですよ。九十八条二項という憲法がまずどっしりありまして、そして条約を結んだ。それは当然九十八条二項によって、遵守しなければ憲法違反になるのですから。そういう点で申し上げているのですよ。
  33. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 憲法九十八条の規定は、おっしゃるとおり、国際条約を誠実に遵守するという義務を明記しておるわけでございますが、一方NPTにもわが国は加盟をしておるわけでございまして、そのNPTによって核兵器保有できないというのが出てくるわけでございますので、そういう意味で、両方合体しまして、憲法九十八条二項は国際条約遵守の義務を言っておる、一方NPTに加入しておる現在においては核兵器保有できないと、こういうふうなことを申し上げておるわけでございまして、私のいま申し上げる趣旨先生のおっしゃる趣旨と同様であれば、そのとおりでございます。
  34. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 実はさっき私が吉田議員のお尋ねを十分聞いていないというようにお話がありまして、もちろん十分には聞いていなかったわけでございますが、九十八条によって持てないか持てるかという点を尋ねているのだという、大体その御趣旨は私も御了承しながらお答えしたつもりでございます。ただ、NPTに加盟しているから持てないことが直ちに今度は憲法上持てないということにもなるのだと、そういうことについてどうかということを御念を押しておられるように思うわけでございます。ただそこまでお話しになりますと、率直に申し上げまして、それを直ちに憲法に結びつけてここで私がお答えするということはやや早計であるかと考えるわけでございますので、当面この条約によって持てないことは間違いありませんし、また条約を忠実に誠実に履行するということが憲法のたてまえであるということも、これは申し上げるまでもないことでございますが、憲法によって持てないのだということを私がここで直ちにお答えするということは、いささかあるいは場合によっては早計になるかもしれませんので、ひとつ検討させていただきたいと考えるわけであります。
  35. 小柳勇

    ○小柳勇君 いまのに関連して質問いたしますが、この四月三日に政府統一見解が出ました。その背景をちょっと法制局次長から御説明願います。
  36. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 「核兵器保有に関する憲法第九条の解釈についての補足説明」という題のもとに、御指摘のように四月三日に政府見解を申し上げたわけでございますが、これはそれより約一カ月前の三月九日に「核兵器保有に関する憲法第九条の解釈について」という政府見解政府として申し上げたわけでございます。それについて、なお当時の参議院の予算委員会で、さらに詳しく政府見解を明らかにせよという御要望がありまして、その御要望に従いまして四月の三日にそのような補足説明を行ったわけでございます。
  37. 小柳勇

    ○小柳勇君 結論的に言いますと、いま吉田委員が言いましたように、憲法九条では核兵器は禁止されていないけれども、不拡散条約と原子力基本法で制限されている、また「国是ともいうべき」と書いてあるけれども、その原子力原則、これで日本では核兵器は持てませんですと、こう理解していいですか。
  38. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) お言葉を返すわけではございませんが、正確に申し上げさしていただきたいと思います。  まず最初に、憲法第九条によりまして核兵器が禁じられていないというふうな御引用でございましたけれども、私どもの政府統一見解で申し上げたものは、まあ非常に簡略して言えばそういうことになるわけでございますが、正確に申し上げますと、自衛のため必要最小限度の範囲内の実力を保持することは憲法九条によって禁止されてないと、核兵器の中でもそういう範囲内のものであれば憲法九条によって禁止されてないと、こういうふうに申し上げているわけで、決して、何か憲法九条によって一切核兵器保有が禁止されていないというふうに、無論、先生は御承知の上で御質問になっておられると思いますが、世間にはそういうふうに伝わるおそれがございますので、一言だけそれを申し上げておきます。  それで憲法九条二項の解釈によっては、核兵器保有はそういう意味では禁止されてないわけでございますが、同時に、わが国原子力基本法制定しており、さらに核兵器不拡散条約に加入しておるわけでございますし、さらにまた非核原則というものもあるわけでございますから、そういうものを通じて現時点において核兵器を持つということはできないと、こういうことになるわけです。
  39. 小柳勇

    ○小柳勇君 防衛庁審議官、専門屋だろうけれども、核兵器で、いま法制局次長が言われたように、この自衛力の範囲内でとどまるような核兵器、そういう兵器がありますか。
  40. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 核兵器は、これは先生承知のとおり、大は大陸間弾道弾から小は現在では百五十五ミリのりゅう弾砲、これはどこの国でも持っております通常のいわゆる大砲でございますが、その大砲で撃てるいわゆる核砲弾というものまで多種多様にわたっております。そこで、私どもが考えております憲法上持てない、いわゆる自衛のための必要最小限度を超えるような核兵器と申しますのは、大陸間弾道弾、ICBMと称しておりますが、そういうようなものが典型的な例であろうと存じております。  また一方、自衛のため必要最小限度の実力の範囲内のものと申しますと、私ども必ずしもそういう核兵器についてすべての情報を持っているわけではございませんけれども、巷間伝えられます資料等によりますと、たとえば核地雷のごときものは、これは現憲法のもとにおいても持てる、所有できる兵器の例ではないかと存じております。
  41. 小柳勇

    ○小柳勇君 日本防衛庁でそれを持っていますか。
  42. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 一切の核兵器は持っておりません。
  43. 小柳勇

    ○小柳勇君 そうすると、この栗栖統幕議長が言いました、わが国でも相手に対応するような核兵器を持たなきゃならぬというのは、そういう意味に解していいですか。
  44. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 栗栖統幕議長がかつて申しましたその論文におきます核兵器わが国保有するという意味は、直接わが国——その当時は三十八年でございますけれども、昭和三十八年当時にありました核兵器のすべてを持つというふうに、わが国みずからが保有するというところまでは言及していないわけでございます。当時におきましても現在と同じように日米安保体制がございまして、核の脅威に対しましてはアメリカ核抑止力に依存するということでございます。わが国核兵器は持たないということはその当時も明らかであったと存じます。
  45. 小柳勇

    ○小柳勇君 法制局、皆さん書いているこの統一見解の中の自衛力の範囲内の核兵器というのは、いま審議官がおっしゃったような質、重いろいろのものを論議した結果こう書いているのですか。
  46. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 私どもとしては、憲法九条の解釈として純粋に法理論としての立場から申し上げたわけでございますから、現実にどういうものがこの自衛のため必要最小限度の範囲内のものに入るかどうかということについての検討は詳細にはしておりません。
  47. 小柳勇

    ○小柳勇君 いま、たとえば核軍縮会議とか、核不拡散条約などという、核というわれわれ国民の概念、それはあの広島の原爆、あるいは長崎の原爆など、大変威力の強い、一発落ちたら何十万人の者が死亡するという、あるいは建物が破壊されるという、そういう非常な威力のあるものを一般的にわれわれは核兵器と言っているわけですね。いまの審議官のような論議があるとするならば、たとえば大砲をつくるために、大砲に火薬のかわりに原子力を使いますと、そういう論議をした上でこれを書いたとするなら、また私のこれからの論争も少し変わってくるんだけれども、もう一回聞いておくが、いわゆる核兵器という法制局の概念の中には、いま防衛庁審議官が言ったように質、量分析した上でこれを書いているのかどうかもう一回はっきり聞いておきましょう。   〔理事塩出啓典君退席、委員長着席〕
  48. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 自衛のため必要最小限度の範囲内であれば核兵器保有することが禁じられていないという場合に、しからばそれがどういうものが当たるかという御質問だろうと思います。この点につきましては、先ほども申し上げたことをそのまま繰り返すほかないと思いますが、私どもとしては全く純粋の法理論として申し上げただけでありまして、それが現実にどういうものがあるかということについてはお答えいたしかねます。
  49. 小柳勇

    ○小柳勇君 法制局でこれだけの統一見解を書くのに、自衛力の範囲内の一ここに書いてありますよ。核兵器であっても仮に右の限度の範囲内にとどまるものがあるとすればつくっていいと、これはいいということなんですよ、統一見解は。私ども日本国民の憲法における核禁止というものは、いま防衛庁審議官が言われたような大砲、火薬のかわりに使っている核と、そういうものを恐らく国民全部が頭にないんじゃないかと思う。私どもいま初めてそんなことを……ただし私はこれを見て、たとえば核不拡散条約とか核軍縮会議というときは、大砲の弾に使う核なんということは考えないですね。一発落ちたら少なくとも都市が壊れるようなものを、そんなものはもうだめだというのが普通常識でしょう。にもかかわらずその論議をしないまま、核兵器の質も量も論議しないまま、一切の核兵器も、あの恐ろしい核兵器憲法では禁止されてないとするならば、私はこれもう少し憲法論争をやらなければならぬと思うが、いま古田君は九十八条言っておりますけれども、私は九条のいわゆる「戦力」とは一体何か、そこから論議していかなければならぬと思いますよ、その点は。自衛力のための戦力の中に、この憲法の言う、いまあなたが言ったようなその範囲内の戦力があるとするならば、これはその戦力というものを二つに分けて考えるとするならば大変なことだと思うんです。  したがって、時間も私、関連質問なものですから、しかも通告してないから、後は次の問題へいきますが、ここに政策的選択によって云々と書いてあります。政策的な選択と言えば、さっき吉田委員が言ったように、その政府の選択だと思う。核兵器をわれわれがいま廃絶しようとしているその真意は、これは時の政府の選択に任せるようなものじゃないわけです。言うなら国民の総意として、被爆国の国民の総意としてこの核兵器は世界から廃絶してもらいたい、廃止してもらいたい。けさの園田外相の演説のとおりですね。したがって、この「政策的選択の下に、国是ともいうべき」ということも、これちょっと気にかかりますけれども、政策的選択というものは一体主体はどこでしょう。
  50. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) たびたび申し上げますけれども、憲法九条の解釈は一応別の問題というふうに申し上げた上で、いまの政策的選択のことについてお答えいたしますが、私どもがこの統一見解におきまして「政策的選択」と書いた意味は、決して政府の選択という意味じゃございません。まず、非核原則につきましても、これは国会における御決議というものがあるわけでございますから、やはり国民を代表する国会の御意思というふうに私どもは受けとめて「国是」と書いたつもりでございます。  それから、原子力基本法、また核拡散防止条約、いずれも国会で御制定になり、あるいは承認されたものでございますから、これまた同様に国家といいますか、国民を代表される国会によって決められたものだと、決して政府政策的選択によって左右されるものではないという意味におきまして、私どもはこういうふうに書いたつもりでございます。
  51. 小柳勇

    ○小柳勇君 わかりました。  二つとも国権の最高機関である国会の意思だと、そういうようにこれは判断いたします。読みます。  そこで、いままた初めに返りまして、憲法では禁止してありません、核兵器は。不拡散条約と原子力基本法及び非核原則、こういうものによって禁止されているというのが大臣答弁でもございました。そのことが非常に国民的な不安といいましょうか、この統一見解が出たために、ある時期になったら、ある政府になったら、あるいはある国会の勢力になったら核兵器持てるんだと、そういう印象になります。そういう意味で、この栗栖統幕議長新聞なんかまたちょっと読んだんですけれども、このことをこの参議院のいまの原子力基本法の審議の中にちゃんと歯どめしておかなきゃならぬ。それはわが国だけじゃありません。第三国に対しましても非常に危険な、いまのこういうものが出たためにかえってそういう不安を感ずる。この前の委員会でもちょっと発言いたしましたけれども。  そこで、原子力局長に今度は質問いたします。この間の続きです。もう私が質問する時間ないかもしれませんから。そこで、憲法上の禁止でございません、不拡散条約と原子力基本法によって核兵器は禁止いたしますと言うならば、この原子力基本法の改正のときに、たとえば原子力委員会に平和小委員会をつくるとか、もっと核兵器禁止のための歯どめ措置をこの際にやるべきであると考えますが、いかがですか。
  52. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 原子力基本法の精神にのっとりまして、原子力の利用を平和の目的に限るということをいかにして確保するか、いかにして担保するかという問題でございますが、これにつきましては、この基本法のみならず、動燃事業団法、原子炉等規制法あるいは原研法、原船事業団法等に重ねてその目的を平和の目的に限るというふうに明定し、あるいは原子力基本法の精神に基づいて行うといったふうなことを定めて、重ねて基本方針を再確認しておるわけでございますけれども、具体的な担保の仕組みといたしましては、まず原子炉等規制法におきまして核原料物質、核燃料物質あるいは原子炉の利用というものが平和の目的に限られるような仕組みにしてあるわけでございます。まず、このような原子炉等の設置をします段階で設置許可の申請が出てまいりますと、これが平和の目的以外に利用されるおそれがないということをチェックしまして、原子力委員会の意見を聞いて、この原子力委員会の意見を尊示して処理をするという仕組みになっておりますし、またいよいよこの原子力の利用の活動が始まってまいりますと、核燃料物質の受け入れの量とかあるいは払い出しの量といったふうなものを克明に記録をいたしまして、その報告を徴収するといったふうなことによりまして、核燃料物質が平和の目的以外の違う目的に流用されるおそれのないように配慮をしておるということでございます。それからまた必要に応じましては立入検査をいたしまして査察をする体制というのも整備されておりまして、ただいま原子力安全局に保障措置課というのがございまして、通産省あるいは運輸省の検査官も動員いたしまして必要な査察行為を行っておるといったふうな状況にあるわけでございます。  先生指摘原子力委員会においてさらに何か歯どめになる、原子力平和利用を担保するために何か歯どめになる組織等を検討すべきではないかという御指摘でございますが、従来とも原子力委員会は、この原子力平和利用についていろいろ企画をされ決定されるに際しましては、平和利用の目的に限るという点を基本原則とされておることは当然でございまして、あらゆる機会にその決意を明確に内外に示されておるわけでございまして、もし将来何らかのさらにたとえば下部組織等で補強の必要があるといったふうな事態がありますれば、これは十分に検討してまいりたいと考えておりますが、いま直ちに制度的あるいは組織的に何らかの手当てをするということは予定しておりません。しかしきわめて重要な問題でございますので、今後の検討課題とさしていただきたいというふうに考えております。
  53. 小柳勇

    ○小柳勇君 じゃ、これで質問終わりますが、一つは防衛庁核兵器の質、量の問題ですね、これを少し論議しなければなりません。  それから憲法九条と核兵器、いわゆる戦力との問題、この統一見解はまだそういう点があいまいだと思うのです。これが出たためにかえって不安なんですよ。それはだからあと同僚議員も質問されるでしょうから、きょうは保留にしておきます。  それから長官ですね、いまの原子力局長から話がありましたけれども、査察制度につきましても、いま査察官がありますが、通産省でも査察員が代行しているわけだ。したがって、もしこれで委員会などというのがいまできないとするならば、その課をたとえば局にするとかして、通産省なり関係のものを全部集めて、不拡散条約との問題、国際機構との関連をもっと密接にするとか、もう少し充実して、そして国際的にも、これは日米原子力協定についてもそうですが、あるいは第三国との関係ももう少し安心できるといいましょうか、日本の国の方向としてはこうだという、がちっとしたものをこの際お考えになるべきであろうと思います。これは意見です。私の意見ですから答弁いいですけれども、そういうことで、一応私はいま関連質問ですから、これで終わります。
  54. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃ防衛論議の方ですね、いま小柳委員からもありましたが、先ほど幾つかの点について文書で出してもらいたいということを申し上げておきましたけれでも、よろしゅうございましょうか、防衛庁の方。
  55. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) いま先生がおっしゃいました文書で出すということが、先ほど私に対する御質問としていろいろございました憲法九条の解釈ということでございますと、これは私の方から文書でお出しするということはいかがかと存じますし、またもし私に答弁をお許しいただけるならば、いま御質問のことはこの場で申し上げたいと存じます。
  56. 吉田正雄

    吉田正雄君 たとえば、いま小柳委員の方から、核兵器の質、量についての論議がなくて最小必要限度の自衛の範囲内で核兵器が持てるという、非常に抽象的なんですね。しかし、現実の問題としてそんなことは一体許されるのかということです。統一見解を出すからには、自衛の範囲というのはどこまでなのか、あるいは許される範囲というのは何なのかということをまず明確にしなきゃならない。そのことは逆に言うならば、持っている兵力なり戦力なり、あるいはもっと端的に言うならば軍隊としてのその軍事力、そういうものを抜きにして、自衛の限度内とか、あるいは政府が相対的にとおっしゃる、あるいは情勢の変化に応じてとおっしゃるわけですから、そういう点で、単に抽象的に漠然と自衛の限度の範囲内なんていったって、これは意味をなさぬと思うのです。そういう点で、私はやはり何らの論議がなくて憲法九条は持てるんだという言い方は無制限に広がっていくと思うのですよ。これはもう角田法制次長だって御存じのとおりだと思うのですが、かつての大東亜戦争なり満州事変なり、あるいは今日までの第一次世界大戦、第二次世界大戦、みんな自衛のための戦争と称して実は侵略戦争というものが全部始まったという私どもは歴史的な苦い経験持っているわけです。だから自衛ということそのものがそもそも一体いいのか悪いのか、どうやって歯どめをかけるのか、理念としての平和なんて幾ら言ったってしょうがないんです。  そこで、やはり日本国憲法の第九条というのは、軍隊を持てば自衛の名のもとに戦争に発展をする危険性がある。そういう点で、一切の交戦権をこれを禁止をしたという、ここに私は日本国憲法のやはり本旨があると思うんです。一切の戦争というものを放棄したんだということなんですね。時間ありませんから憲法論議やらぬということでもありましたけれども、幾つかの点で皆さん説明ではきわめて抽象的で不十分なんです。そういう点で、むしろこの統一見解が不安を拡大する、国民の間に、じゃ将来日本核兵器を持つんじゃないかという、そういう不安感というものを私はもたらしていると思うのです。そういう点で、いつでも、どのようにでも言い逃れができるような、あいまいもことしたそういう説明でなくて、もう少し厳密な、やはりこの戦力なり兵力なりそういうものに対する皆さんなりの定義というものがなければ、これは大変なことになっていくのじゃないか。自衛自衛ということで幾らでも拡大できていく。最後には事前の自衛ということで相手の基地をたたくなんていうことで、戦略核兵器まで持てることになるんだなんてことに私はなっていくと思うのです。そういう点で先ほど幾つかの点で申し上げたんですが、これは文書で回答することができないということになってきますと、いまここでは答えられないということに、どうもいまの話だとそうなんですが、文書ではそれ出せないということですか。
  57. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 文書でお出しするその内容、実は恐縮ですが、どういう内容をお出しすればよいか、実は私ただいまはっきりと認識できないわけでございますが、私に先ほど先生からございました御質問憲法九条の一項の、たとえば「国権の発動たる戦争」とは何かとか、「武力」とは何かとか、「国際紛争を解決する手段としては、」という意味はどうかとか、そういうようなことでありますと、これはただいまここでお答えしたいと、こう申し上げたわけでございます。  また、核兵器の質、量の問題でございますけれども、防御的な核兵器と申しますか、純粋に国土防衛のためにのみ用いられるような核兵器、たとえば核地雷のごときものは、これは憲法上は保有することができるということは、これは従来しばしば政府が申し上げておることでございまして、今度の国会で新しく出てきた問題というわけでは全くございません。
  58. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃもう少し私の方で質問内容について整理をして提出いたしますから、それについての見解を文書でひとつ回答していただきたいと思うのです。それはよろしゅうございますか。何もきょうという、せくことにはなりませんけれども、いずれにしても整理をして出しますので、よろしゅうございますか。
  59. 上野隆史

    政府委員上野隆史君) 御質問につきましては、御要望に沿うように処置をさせていただきたいと思います。
  60. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃ防衛庁関係の皆さん、それから法制局、ありがとうございました。  それではまた科技庁の方に質問を今度申します。先般来幾つかの質問が残っておりましたので、残された質問について、これもまた時間があと三十分くらいしかなくなってきたんで、十分お聞きできないのが残念ですけれども、いつまでも無制限というわけにもまいりませんので、それくらいで私の質問は終わりたいと思っているのです。  まず最初に、長官に、今日までるる批判もされてまいりました原子力行政のあり方の中で、私はやはり最大のものは二つあると思うのです。一つは秘密主義と、もう一つは原子力発電所の建設に伴う、国民と言ったらいいでしょうか、地域住民の意見というものが十分に吸い上げられなかった、そういう点での不満というものが中心だったろうと思いますし、またそういう批判が今回の法改正の一つの大きなきっかけにもなっておるというふうに思うわけです。  そこで、公開ヒヤリングのあり方についてお聞きをしたいと思うんです。五月八日付の、科学技術庁としての「公開ヒヤリングの概要について」というものが実は資料としていただいております。いま一々この内容を細かくお聞きする必要もないと思うんですが、私は基本的な姿勢として長官にお尋ねいたしたいというのは、これが単に文書で書かれたものであってはならないと思うのです。従来も繰り返し、住民の意見は十分にお聞きをしますということを答弁をされながら、たとえば柏崎の問題一つとってみても、いまだにこの現地住民の意見というものが聞かれていない。るる要求は出されておるわけです。そういうことで、今後、形式をどうするこうするという以前の問題として、とりわけ反対者の意見を聞くことに私は最大の意味があると思うのです。国民的合意を得るということは、賛成者の意見は改めて聞く必要はないわけです。やはり国民的合意とかあるいは理解を得るという、その対象というのは反対者のものでなければいけないわけです。それが中心に据えられなきゃいけないわけですよ。そういう点で、細かい技術的な手続に名をかりて公開ヒヤリングを延期をするとか、あるいはとりやめるというふうなことがあってはならないと思うのです。そういう点で、柏崎の問題、あるいは今後巻の問題も出てくると思うのですが、これは何も柏崎、巻に限らず、今後の皆さん方が計画をされておるそういう原発建設について、本当に地元住民の意見というものを率直に聞いていくという態度がなければいかぬと思うのです。技術問題は私は二の次だと思うのです。その点についての長官のまず見解をお聞きをしたいと思うのです。
  61. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) いろいろまた細かい点につきまして、場合によりまして政府委員から補足してお答えさせますが、その基本的なお考え方で、本当に反対する人の意見こそ傾聴すべきであると言われました基本的なお考え方については、全く同感であると考えております。ただ、これもなかなかお互いに、こちらはそういう態度である、また言う人はそういうつもりだというようなことになりまして、そこに実際的にはいろいろな問題も生じてまいるかと思いますが、そういう問題も十分今後整理いたしまして、そうして率直に、こういう点が疑念のもとである、あるいはこういう点が反対であるということについては傾聴すべきである、こういう基本的態度で今後大いにさらに推進していかねばならぬと思っているわけでございます。
  62. 吉田正雄

    吉田正雄君 長官のところにはまだ報告があるいは行ってないかと思うのですけれども、実はいま柏崎の方から、意見をできるだけ早急に聞くべきだという要請が強く出ているわけです。そういう点で、いろいろ手続だとかややっこしい問題もあるでしょうけれども、それはそれなりにして、やはり積極的に聞いていくという姿勢はおありですね、大臣
  63. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) おっしゃるとおりでございます。
  64. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは公開ヒヤリングの問題については、その程度でとどめておきます。  次に、ダブルチェックの問題です。これがこの改正案の中でも、原子力の安全性をどう確保していくのかという点で法改正の一つの大きな柱にもなっておるわけです。私が前から指摘もし、またそういう点でまだ十分納得できなかったということで先般も指摘をしたんですが、安全審査の基本的な基準については、安全委員会の方でその基準案というものをつくられるわけですね。それに従って、実用原子炉については通産省、実用舶用炉については運輸省がまず第一次的に審査をやっていく。そうしてその間、その審査に科技庁、安全委員会との協議もありますけれども、その協議を経て認可をしていくということになるわけです。その際、いわゆるダブルチェックというものについて、全く同じ基準、同じ視点で行うならば、私はダブルチェックの意味がないと思うのです。なぜないのかということについてはこの前も若干触れましたが、たとえば通産省の場合ですと、どうしてもそこに企業性、あるいは経済性、あるいは採算性等、いろんなそういう要素というものが入ってくるわけです。したがって、厳密な意味での安全審査にどうしても手抜かりといいますか、比重が薄れる可能性というものがあるわけです。そういう点で私は原子力安全委員会が行う審査というものは、基準は同じであっても視点を変えて、やはり厳密に科学的な観点から安全性というものを審査をしていくべきではないか。またもっとはっきり言うならば、通産や運輸省が行った安全審査より以上の権威を持つ、そういうダブルチェックが行われる、そういう体制というものをつくっていくべきではないかというふうに思うのです。その点についてどのような見解をお持ちになっているのか。また体制としてはどういう体制というもの、まあこの前、いろいろいただいているんですけれども、どうもあれではアメリカあたりの安全規制委員会の体制と比較をして不十分ではないかという心配があるわけです。この点について、将来どのようにこの機構といいますか、スタッフを充実されていくのかお聞かせ願いたいと思うのです。  あわせまして、安全専門審査会、この人選についてはすでに相当進んでいるんじゃないかと思いますが、繰り返し私の方から要請をいたしておりますように、単に一流大学の一流学者だという、そういう名目にこだわるのでなくて、実質的に、本当にその安全審査に従事できる、そういう方たちを選任をしていくべきではないか。これはまあ大山委員会の中でも指摘をされておりましたように、ほとんど審査会に出ない、偉い方は忙しくてなかなか出れないというふうなことでは、これは今度の法改正にも私はもとるものだと思いますから、その人選等については、どのように今後考えていかれるのか、改めてお聞きをしたいと思うのです。
  65. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) まず安全委員会が行いますダブルチェックの問題でございますが、これは本来的には原子力安全委員会が発足しまして、早急に安全委員会でこのやり方等をお決め願う問題でございます。しかしながら、私ども事務局といたしましてはいろいろ検討を進め、安全委員会の発足に当たりましてできるだけ早くそういう考え方を明らかにしたいというふうに考えておる次第でございます。  そこで、いま私どもとしての一応の考え方をお答えさしていただきたいと思います。このダブルチェックにつきまして、先生指摘のように、行政庁が行うような審査と全く同じことをやったら意味ないことは御説のとおりであろうと思います。したがいまして、安全委員会として、行政庁が行いました審査の結果につきまして、原子力安全委員会という立場から、高度の識見によって原子炉の安全性を判断していきたいというふうに考えておるところでございます。個々の、たとえば先生の御指摘にございましたように、基準、指針等の適用の状況につきまして、当然行政庁もそれに基づいてやってくると思いますけれども、さらにわれわれとしては、それをチェックできるようなことをぜひ考えてまいりたいというふうに考えております。また、チェックの仕方につきましても独自の手法によりまして、いろいろな安全解析をするとかいうふうなこと、あるいはサイト、原子力発電所の立地の問題でありますと、その地域の特殊性があるわけでございますので、そういう点につきまして、十分現地調査を行うというようなことを含めまして検討するということでございます。御存じのように、原子炉それぞれにつきまして、いろいろな技術的な新しい観点からの設計の考え方というものが当然技術進歩に伴いまして出てまいりますので、そういう点につきましては、十分に安全委員会のダブルチェックで安全性につきまして検討していきたいと、かように考えておる次第でございます。  それから、この安全委員会が行います安全審査を支えます機構の問題でございますけれども、現在の法律の定員は三十名でございますが、この法律改正をお認めいただきますと、私どもとしては審査委員の数も四十五名にして大幅に体制強化を図りたいと思っておりますが、その審査委員の人選に当たりましては、先生指摘のように、できるだけ若手の、実際に審査をできると申しますか、現在の先生方もやっていただいておりますけれども、新しい知識を十分組み込んでおられる若手の方等も含めて充実していきたいというふうに考えております。  なお、スタッフの問題でございますけれども、当面私どもの局の中に、仮称でございますけれども安全調査室という室を新設することにいたしまして、特に安全委員会の行います安全審査あるいは基準の策定等の業務を専属のスタッフとして安全委員会につけるつもりでございますので、一応の体制は整ったと考えておりますが、今後の状況によりまして強化を図っていくというふうなことも十分考えてまいりたい、かように考えております。
  66. 吉田正雄

    吉田正雄君 時間がありませんので、最後に、それでは国家行政組織法との関係についてお聞きをしたいと思うんですが、御承知のように、安全委員会も国家行政組織法上の八条機関、いわゆる諮問機関として位置づけられておるわけです。したがって、ダブルチェックを行うといっても法上の行政権限が付与されているわけじゃないわけですし、そういう点で行政懇が指摘をし期待しているような原子力政策に関して、本当に名実ともに国の最高責任ある仕事というものが一体できるのかどうなのか。もっと端的に言うならば、各省庁の上に立って原子力委員会なり原子力安全委員会がその責任を全うし得るのかどうかということになってくると、非常に私は困難だろうと思うわけです。言うべくしてしかし実際にはそのことは困難ではないかというふうに思うわけです。そこで、その点が心配になって、衆議院における附帯決議の中では第三項として、「原子力委員会及び原子力安全委員会の意見を十分に尊重しなければならないという規定の趣旨にかんがみ、原子炉の設置許可等に際しては、両委員会の意見を守って行政処分等を行うこと。」と、こういうふうになっているわけですね。これもちょっと考えようによってはおもしろい附帯決議だと思うのですけれども、こういう附帯決議がつくこと自体、従来尊重をされていなかったと。どうも尊重というと精神規定であって、都合が悪ければそういう意見なりというものは取り入れない、ほおかむりをしてきたということがあるものですから、尊重ということは今度は「十分に尊重」だというふうに、さらにその上へまた「十分」などというたすきをかけなきやならぬという結果が出てきていると思うのですけれども、そこでお聞きをしたいんですけれども、この附帯決議で言う十分尊重という意味が、「両委員会の意見を守って行政処分等を行う」というふうになっておりますが、この点は尊重されるんですか、されないんですか、どちらなんですか。
  67. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) おっしゃるとおり、十分尊重していく、十分守って行政を行うという御趣旨でございますので、私どももそれを守ってまいりたいと思っております。  なお、現在の体制で申し上げますと、原子力委員会でございますけれども、少なくとも安全規制の関係におきまして設置許可等を行いますときの原子力委員会の意見というものは、この委員会が八条機関ではありますけれども、各行政庁がこの意見に反して処分等を行ったことはいままでの例でございません。したがいまして、衆議院のそういう修正をいただきまして、附帯決議におきまして十分尊重するという意味は、それを守って行政等を行っていくという趣旨であるということをいただいておりますので、私どももその趣旨を十分守って対処していくということになろうかと思います。
  68. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、実際の運用上、尊重をするということは十分尊重することであって、それはその意見を守ってやるんだということになりますと、これは三条機関の性格になってくるのではないかというふうに思うのですね。そうなると、この十分守ってということになりますと、諮問機関の意見なり報告なりというものが各省庁を今度は縛るということになってくるわけですね。そういう点で、この八条機関の性格というものと、今度は附帯決議を守ってやっていくのだということになるその間に矛盾というものが生じてくるのじゃないかというふうに思うのですが、その点についてはどのようにお考えになっているのか。また、各省庁はそれに縛られるということになるわけですから、各省庁が今度は逆に言うと行政府の権限上の観点からはどうなっていくのか。法的にその辺の理解というか整理の仕方がどうなるのかここではっきりしておかないと、憲法の第九条問題じゃないんですが、また後ほどこの解釈をめぐってああでもないこうでもないという論議が出てくるんじゃないかというふうに思いますので、ここで明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  69. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先ほど私申し上げたのは、衆議院の附帯決議もあることでございますので、行政の姿勢としてこれを十分に守っていくということを申し上げておるわけでございます。純法律理論からいきますと、この安全委員会は八条機関でございますので、政府としてはこれに従わない可能性というのは全くないということは言えないわけでございますが、そこで、法律的な位置づけはそういうことでございますが、実際問題としてこれを政府責任において十分に守っていくというふうなことを行いたいということを申し上げておるわけでございます。
  70. 吉田正雄

    吉田正雄君 まだそういう事態が出てきておらないから何か仮定の論議のように受けとめられては困ると思うんですけれども、しかし私は具体的にそういう事態が出てくる可能性ということは十分予想できると思うのです。たとえば原子力発電所に事故が起きたというふうな場合、安全委員会が直ちに運転の停止を命ずるとか、あるいは場合によっては、まだ安全審査が不十分であったから、一たん建設は許可したけれどもそれはやっぱり取り消すのが妥当ではないかというふうな、仮にそういうものが出たというふうな場合、まあいろんな場合が想定されますけれども、そういうときに、やっぱりそれが政府の意思と相異なるような意見であると、これは私はいま簡単におっしゃったように、十分意見を守っていきますなどということにはならないんじゃないかと思うのです。じゃあどちらが優先されるか、意見が衝突した場合、合わない場合一体どちらを選択をされるかということになれば、私はやはりこの機関の性格からして行政庁の処置というか考え方というものが優先をしていくんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  71. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この安全委員会並びに新しい原子力委員会もそうでございますけれども、尊重義務並びにその意見を内閣総理大臣を通じて勧告する権限も持っておるわけでございます。先生指摘のようなことは私ども起こることはないと考えておるわけでございますが、また、事安全に関しまして、たとえば先生がおっしゃるような意見の対立があるというふうなことは、私どもあり得ないと思っておるわけでございますが、安全性につきまして、原子力安全委員会が決定してこうすべきであるという意見を出したときに、行政庁が従わないというようなケースが仮にあったといたしますと、これは、そのようなことがいまの日本の状況におきまして世論が許すかどうかということを考えただけでもあり得ないと私どもは考えております。そういう点につきましては、安全委員会は決定はすべて公表するたてまえをとっておりますので、私どもはそういう事態があり得るとは考えておりません。また、この基本法の改正に当たりまして、安全委員会の強化という趣旨で修正が行われ附帯決議までしていただいて、その権限なり行政に対しての御注文を受けていることを考えますと、私どもはそういう事態が起こるとは考えていない次第でございます。
  72. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) いまいろいろ御質問の具体的な内容に関しましては政府委員からお答えしたところでございますが、いろいろ諮問機関か行政機関かという点についての御論議が、衆参両院を通じましてずいぶん行われたわけでありまして、一番肝心な点は、この安全委員会が、本当にそのたてまえを貫いて安全確保について一層厳しい措置を進めるとともに、その措置が国民全体に対しての原子力の安全に対する御信頼をいよいよ深めていくということでなければならぬわけであります。その点につきまして、いろいろな御点から諮問機関ということにしているわけではありますが、諮問機関でありましても、第一にこれは独立した機関でありまして、たとえ政府といえども、そういう独立機関としてのたてまえから、肝心の安全問題に対して立てられます御意見なり御処置なりを、いろいろかれこれ干渉がましいようなことをすることは許されないと考えるわけであります。  それから、いろいろ行政庁と安全委員会の間に仮に何か意見のそごがあった場合、何といいましても、この原子力平和利用推進につきましては安全ということが第一であるということは、もう世論の常識であります。したがって、この安全確保を使命とされます原子力安全委員会の決定に背くということは、このような常識からとうていそういうことは許されないと脅えるわけでありまして、その意味からも、そういう心配はないのじゃないかというように思っております。  それからまた別の見地から、科学技術庁といたしましては、そういう安全委員会のいわゆる補佐大臣、補佐官庁といたしまして、この安全委員会の決定を十分権威があるようなものとして実行できるようにしていく義務があるわけであります。まあ安全確保は原子力行政のかなめでありますから、原子力行政全般を担当いたしております科学技術庁といたしましては、その見地からも、十分に安全委員会の安全確保に対する使命が遂行できますように万全の御協力をしなければならぬというふうにも考えられますので、法律上いろいろな問題、いろいろな御見解、御意見があるとしましても、われわれとしては、この安全委員会の安全確保に対する使命が十分達成されますように考えますとともに、また達成できると現在の段階では考えているようなわけでございます。
  73. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは最後に要望だけして私の質問を終わりたいと思います。  どんな組織も機構も、最終的にそれを生かしていくというのはやはり人であるわけですね。そういう点で原子力委員あるいは原子力安全委員の選任については、先般来長官にも要望してきているところですけれども、もちろん高邁な人格であるとか、あるいは識見を持っておるということはこれは当然ですけれども、私はもう一つ、単なるイエスマンでなくて、やはり政府に向かっても言いがたいことをきっちりやっぱり言うという、こういう人がやはり委員の中に入ることによって、私は真の意味で国民の信頼を得られる、原子力行政が推進されるのじゃないかというふうに思うのです。そういう点で、長官も幅広くとこの前からおっしゃっておりますので、従来、ややもすると逐次イエスマンが集められておるのではないかという批判も出てきておりますので、そういうことのないように、また当初私が申し上げましたように、当初の原子力委員の選任については、それなりの配慮というものが行われたということもあるわけです。そういう点で、私は本当に幅広くこの人材を求めるという観点からのひとつ人選をぜひ進めていただきたいことをお願いをして私の質問を終わりたいと思います。
  74. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 微力でございますが、御趣旨を体しまして十分その点が徹底いたしますように努めてまいりたいと考えております。
  75. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      —————・—————    午後一時四十二分開会
  76. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、原子力基本法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これより福永運輸大臣に対する.質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  77. 吉田正雄

    吉田正雄君 今回の原子力基本法等の一部改正に伴って、実用船舶炉につきましては、今度は運輸省が第一次的な安全審査と、その安全審査にパスをするならば、その設置認可というものを行うことになるわけです。そこでお尋ねをいたしたいと思いますけれども、従来の原子力船「むつ」の放射線漏れ等の問題にも示されておりますように、果たして運輸省が安全審査を十分に行い得る体制というものをつくり得るのかどうか、現状と、それから現在はまだ実用にはなっておらないわけですから、そういう点ではいまだ研究段階にあるわけです。そういう点で、将来に向けての経過的にはどのような体制を考えおいでになるのか。そして「むつ」が実用船舶としての許可が出た以後の段階での体制をどのように考えおいでになるのか。そういう点についての構想、そういうものをぜひお聞かせ願いたいと思うのです。
  78. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) まず私から大略の点を申し上げまして、なお事務当局からも補足せしめたいと存じますが、ただいま御質問の中でも御指摘のように、原子力船についての新しい時代を迎えるに当たりまして、この新事態に対処するわれわれ、特に今次法改正によって新たなる任務を課せられる立場の運輸省といたしましては、これに対する万全の対策を講じていかなければならないことは当然でございます。  そこで、いままでの運輸省の体制等をごらんいただいておりますと、それで大丈夫かと、こういうような御指摘をいただきつつ御質問をいただくその事情を、まあ、ある意味では遺憾とするわけではございますが、いずれにいたしましても、遺憾な点のないように対処していかなければならぬと痛感をいたしております。それに傭えて諸般の準備を進めているわけでございます。  申すまでもなく、この原子力船というのも、もう試験の段階を経て実用化へ備えるという体制は、世界的に見ても米独ソ等を初めとして、あちこちでそういう傾向が見られるわけであり、有数の海運国であり造船国である日本が、こういう世界の大勢におくれてはならぬことは申すまでもないことでございます。したがって、おくれをとらないようにするためには、いまや法改正についても国会で御審議を煩わしている、こういう段階でございます。おのずからわれわれはその体制に向かって、皆さんが安心して、それじゃしっかりやれというように言っていただけるようにしなければならぬと思います。ただ、現在のところでは、たとえば機構的に励ましても、法がまだ改正されていない段階において、新たなる任務を持ったそういう機構をというわけにもまいりませんので、法改正ができますれば直ちにこれに対応できるようにという準備をいたしておるわけでございます。そういう面から見ますと、機構の面からもそうだし、そうしてまた、そういう新しい機構ができるとするならば、これに対する人的要素等においても遺憾はないかというような点等もございますが、これらにつきましてはおおむね対応できるようにという心構えでいま備えをしている、こういう次第でございます。
  79. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 現在の体制は、原子炉の設置については、法律に基づきまして安全審査を行った上で内閣総理大臣が許可をする。その際に、運輸省といたしましては船舶安全法によって現在の「むつ」を検査しているわけでございます。したがいまして、現在としては船舶局にあります検査測度課、これは主として制度、企画等を担当しているところでございますが、ここの一部と、それから実際の検査は、首席船舶検査官以下次席船舶検査官、本省の船舶検査官五名をもって担当しているわけでございます。なお、実際の検査等に当たりましては、各機器等が製造されます地方海運局に同様に検査官、検査課がございますので、そこで担当しているというのが現在でございます。  今回の法律改正によりまして、原子炉の設置の許可の権限が実用舶用原子炉について運輸省がそれを担当するということになります場合には、もちろんこれに対応する体制をとるわけでございますが、先生も御指摘のように、実用原子力船の建造計画についてはまだいつということを明示できる段階ではございませんが、具体化する段階におきましては、運輸省としては、法律に基づきます設置許可のための安全審査等を担当する部門と、さらに船舶安全法に基づきます設計検査等を実施するための検査官制度の体制を整備する必要があろうかと考えております。私どもとしましては、その移行に当たりまして、原子力基本法等改正案が成立いたしましたら直ちに、部内に、現在企画、制度を担当しております検査測度課長を長といたします原子力船安全対策室を新設いたしまして、そこで規制法によります関係基準の準備、それから原子力船関係要員の養成の推進、それから原子力船行政体制の整備計画、さらに船舶安全法に基づきます原子力船安全基準の整備強化というものに取り組んでまいりたいと考えております。  なお、「むつ」につきましては、これは今回の法律改正によりまして政令で指定をするわけでございますが、研究開発段階にある原子炉という認識を持っておりますので、「むつ」につきましては科学技術庁が担当するということになろうかと思います。さらに、「むつ」が実用船の段階になるかどうかという点につきましては、その段階において、「むつ」の検査あるいは「むつ」の安全についてどういう形で担当すべきであるかということについて、実用に移ることが検討される段階において私どもも対応したい、こう考えております。
  80. 吉田正雄

    吉田正雄君 「むつ」の放射線漏れ問題が出た段階で、大山委員会の俗に大山報告というものが出されて調査結果が出ておりますし、さらに今後への提言というものが行われておるわけです。これは科技庁とも関連をすると思うのですが、私は、特に運輸大臣に今後のこともありますので十分ひとつ聞いておいていただきたいと思いますのは、「むつ」問題が出た原因というのはいろいろあるわけですけれども、行政的な面から言って組織が確立をしておらなかったとか、あるいは基本設計と詳細設計の間に十分な連絡なり検討がなされておらなかったとか、とにかく建設というか計画当初から最後までの首尾が一貫しておらなかったということが指摘をされておるわけですし、それから、この報告雷とは別にいたしまして、技術者の中には、「むつ」の放射線漏れの原因がまだ完全には究明をされておらない、したがって今度の修繕とか改善という内容は、とにかくおなかが痛いけれども原因はわからぬ、痛いことだけは確かだから湿布をするというふうな、ふたをして当面を糊塗する、そういう内容ではないかというふうなことを指摘をしておる学者もあるわけです。つまり、原因が本当にわからない中では本当の修繕対策というものは講じ得ない、こういう指摘があるわけです。それについてどのようにお思いになっておるのか。これは運輸省としてあるいは科技庁としてどのように受けとめておいでになるのか、その点についてお聞きをしたいと思うのです。それにしても、この大山報告の中で、今後への提言が何点かにわたって行われているわけです。時間の関係もありますから、一々これ読んでおりますと大変ですので、運輸省の方でもこの大山報告の内容については御存じだと思いますので、これらの指摘や提言について今日までどのように検討されてきたのか、そして、今後どのようにこの提言を受けとめてこれからやっていこうとするのか、それぞれ、と言ってもあの提言何点かあるわけですが、簡単にそれについてお答えを願いたいと思うわけです。  それからもう一つ、これは大臣に基本的にお聞きしたいと思うのですが、今度の法改正の特徴としては、あくまでも安全性というものを重視していくという点で、学者の中には、単にふたをするのでなくて、もう一回炉というものについて抜本的な検討をする必要があるじゃないかということを提案している学者もおるわけです。これは、先般参考人を呼んだときの論議の中でも、まだ必ずしも十分に真相が究明されていないじゃないかという意見も出されているわけです。今度の改正案では、安全委員会が設置をされて、たとえば運輸省が認可をしたものについてダブルチェックを行うことになっているわけです。そういう点で、これはまだ実用段階に入っておらないので将来の問題ですが、仮に、運輸省が実用船舶炉について認可をされた、ところがその後の安全委員会のダブルチェックによって問題点が出た。こういう場合には、その指摘を受けて、認可というものを取り消して再度安全審査を行うべきではないかと思うわけです。それは将来の架空のことだとおっしゃればそれまでですが、しかし現実にはいままで起こり得ないということが起こってきたわけですので、今度の法改正の趣旨からするならば、当然ダブルチェックの結果というものについて尊重すべきではないかと思うわけです。「むつ」の問題も、余りにもメンツにこだわり過ぎたのではないかという批判もあるわけですので、今後の原子力行政のあり方としては、そういうメンツにこだわるのでなくて、本当に国民のための原子力行政の観点から、そういう疑念や不安というものを一掃していく必要があると思うのです。そういう点での基本的な大臣考え方を私はぜひここで明らかにしていただきたいと思うわけです。
  81. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) いわゆる大山委員会で御検討いただいた結果につきましてはいろいろと御指摘があるわけでございますが、これらにつきましては、これを将来に生かすように努力をしなければならぬ、これを強く私どもは感じておるわけでございます。また、いま吉田さんがいろいろの点から、こういう点が心配になるというようにお話しになりました諸点は、私どももこのお話もよく念頭に置いて今後に対処しなければならない、こういうように考えております。ダブルチェックの結果をいかようにということにつきましても、仰せの点はよくわれわれも考えていかなければなりませんが、私よりはやや専門的知識を多く持ち合わせております局長以下にもこれから答弁させますが、率直に申しまして、私原子力というようなことについては専門家じゃございませんが、それだけに、これから新しく開けていく部門であり、しかも、世界にとってもそうだが、特に日本のような国については非常に大事な点でございますので、この大事なものを取り扱うにふさわしいように諸般の考慮をしつつ全きを期して進めていかなければならぬと思います。ただいまいろいろお話をいただきましたが、そういう点等につきましても重々心得て処していかなければならぬ、こういうように存じます。
  82. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 原子力船「むつ」が放射線漏れを起こしました直後、この問題についての調査委員会が先生指摘の大山委員会として設けられ検討されたわけでございますが、この中で指摘をされております主な点は四点かと考えております。第一点は、事業団の組織を一層技術的な能力を持つものに改める。二は、政府の計画は安全性の確保を含めて十分な技術的裏づけのもとに行われるべきこと。三は、新型式炉に対しては経験に裏づけられた強力な技術組織の確立が必要であること。四は、地元住民に対する正確な情報を伝え理解を深めること。この四点かと存じます。   〔委員長退席、理事松前達郎君着席〕  そこで、この委員会の結論及びその後に行われました原子力行政懇談会の意見に沿いまして、運輸省としましては科学技術庁とともに「むつ」に関して事業団の体制については技術陣の強化を図ってまいりましたし、それからさらに、政府の中での技術的な事業団の行います計画をさらにチェックするということで、運輸省、科学技術庁合同で「むつ」総点検・改修技術検討委員会を設置して厳重にチェックをしてまいっております。それから、三には原子力船の研究を行っております船舶技術研究所の成果をフィードバックするための定例連絡会を設置いたしまして、技術研究所でやっております遮蔽等を中心としました安全研究を実際の計画の立案それからチェックに大いに活用をしてきたところでございます。  第二の点といたしまして、運輸省が今度の法改正によりまして原子炉設置の認可をいたしました後の事故の問題と、それから原子力安全委員会との関係でございますが、まず基本的には、運輸省が設置の許可をいたします場合には、事前に原子力安全委員会のダブルチェックを受けることになっております。したがいまして、そのダブルチェックが終わった後で運輸省は設置の許可を出すということに第一段階はなります。まあ仮に何らかの、故障といいますか不都合が生じた場合には、これは当然安全確保のために改修、改善の努力をするわけでございますが、その際に、基本的な事項であって安全審査にかかわる重要な事項につきましては、その後も運輸省が検査の都度、あるいは実際の運航に当たって問題が生じた場合には、運輸省は報告を受ける立場にございますので、それをもとにしまして、安全審査会の決められた重要事項に該当するものにつきましては当然審査会に御相談をし、必要があればさらに審査のやり直し、ダブルチェックを受けるということになろうかと考えております。
  83. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま運輸省の場合には、確かに経過的な段階ですから想定事項が非常に多いと思いますが、先ほど来指摘をしている点、また心配もおわかりいただけると思いますので、そういう点ではこの法改正の趣旨が本当に生かされていくということでぜひひとつ努力をしてもらいたいと思うのです。  そこで、この「むつ」の問題でもうちょっとお聞きをしておきたいと思うのですけれども、いま御承知のように長崎県議会が臨時議会を開いて、安藤委員会で検討された燃料の封印ですね、核抜きから今度は封印ということで修理をひとつ引き受けてもらえないかということで、いま科技庁長官も大分その点で奔走されたようですが、これは両大臣に関連すると思いますけれども、長崎県議会の場合には燃料棒つきでもいいという、こういうたしかあれだったと思うのです。市議会も何かあすあたりから開かれるというふうに聞いておりますけれども、もし県議会、市議会の結論が異なった場合にはどうなるのか。それから、仮に形式上県議会で決議がされたとしても、その内容を見た場合に、やはり非常に強い反対というものがあったということで、多数決のような形でそのことが行われるというふうな場合ですね、どういうふうにお考えになるのかどうか。それから、もし核抜きでなければだめだというふうにまた結論が出た場合ですね、どういうふうになっていくのか。それから、この論議がいつの間にか——私は原子力利用の全体についても雷えることだと思うのですけれども、安全性の確認というよりも不況対策ということが前面に出て、その他の条件なり配慮というものが後についていく、軽視をされるというふうな状況が出たのではこれは主客転倒だと思うのです。そういう点で、三年ちょっとかけて三十億程度ですかの修理費でやろうというふうなことなんですが、佐世保重工の再建の問題も現在まだどのような方向に行くのかめどもついていないという状況の中で、原子力船「むつ」の修繕によって佐世保重工再建の救世主のような役割りを与えることが一体妥当なのかどうなのか。また、そういう期待を持たせること、あるいは佐世保市なり長崎県に対して、この「むつ」の修理だけによって今日の造船業界の不況そのものがあたかも克服されるかのようなそういう印象を市民なり県民に与えるということになったら、これは私はまた大きな誤りを犯すのじゃないかというふうに思うわけです。そういう点で、この再建問題と絡んだり不況克服ということが強調されているのですけれども、そういうことになるのじゃないかと期待を持たせるべきじゃないと思うのですけれども、その点についてどのようにお考えになっているのか。  それからもう一つは、まだ母港が決定をしていないわけですね。だから、長崎で修理ができないということになれば、再びまたむつにずっとおらなきゃならぬということになるわけです。したがって、例の四者協定もありますし、一体母港というのは将来どうなるのか。もっと突っ込んで言うならば、どこかに母港が決まったとしても、一つだけ母港が決まったんでは、全国各地を回航して——回航ですね、めぐって歩く、こういうことができないのじゃないかと思うのです、今度。ちょうどあの原子力空母が入ってくるときに拒否反応ができたように、母港はあったとしてもその母港から出てほかの港へ寄らなければ意味ないわけですね。その場合に一体他の港に寄港ができるのかどうなのか。その見通しをどのように持っておいでになるのか。もし寄港できないということになるならば、新母港が決定をしても、結局原子力船「むつ」というものはその母港に単に係留をするにとどまるということになってきて、結局利用価値がないのじゃないかという疑問が出てくるわけですね。これらの見通しについてどのようにお考えになっているのか、これらをお聞かせ願いたいと思うのです。
  84. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 両大臣にお尋ねでございますが、一応私から大体のお答えを申し上げたいと存じます。   〔理事松前達郎君退席、委員長着席〕  第一は、この決議が長崎県議会で行われるような状態になっており、また、佐世保の市議会においても、明日あたりから議会が始まるらしいが、両方の決議が違った場合にはどうなるかというお尋ねかと存じます。これは大変むずかしいお答えになるかと思いますが、これは、決議の結果によりまして私どもとしてはその対応を考えねばなりませんので、いまどういう決議になるか、また、県と市との決議がどういう内容に、あるいは同じになるか違ってくるか、そういう点を見きわめなければ、いまの段階ではちょっとお答えがしにくいと考えておるわけでございます。  それから、たとえば県議会の決議が、結論としては認めても、その内容においていろいろ厳しい問題があればそれについてはどうかということでございますが、これまた実際を見なければ具体的にはお答えいたしかねますけれども、あるいは御決議の内容の中に、安全問題を初めとして当方としてさらに今後考えなければならぬ、考慮しなければならぬ点があるとしますならば、取り上げるべき点について取り上げてまいるということに決してやぶさかなものではありません。  それからまた、核抜きの決議になったらどうかというお話でございますが、これまたその決議の結果がはっきりしなければ、どう対応するという考え方を申し上げるわけにもいかぬじゃないかと、これは決してお答えをしないというのではありませんが、私の方としましては、いまお答えできるという段階ではないと思っておるわけでございます。  それから、このいろいろな状況から言いまして、安全性の確認という問題よりは、これがたとえば佐世保重工の再建問題を主とした、そういういわゆる不況対策、雇用対策等にすりかえられている感があるが、これはどういうことかというふうなお尋ねかと存じますが、いろいろの問題には、それなりのいろいろな波及的な問題が起きてまいりますので、あるいはこれに伴ったいろいろのそういう世間的な面の問題もあるかと思いますが、われわれとしましては、決してそういう問題と安全確認の問題とをいわばすりかえているといったことはありませんので、これはたびたび申し上げておりますが、佐世保重工の救済問題は、これはいろいろな点から、国家的に非常に重大な問題であるという見地から処理されているものと心得ているわけであります。もちろんこの問題に関連のありますわれわれといたしましては、いろいろな点から考えまして、佐世保重工の再建が一日も早く確固たる軌道に乗りますことを念願しておりますことは言うまでもありませんが、しかし、これを条件にして「むつ」の安全を——過去を省みずそういうことを強行するというような考えではありませんので、その点ははっきり区別しまして考えておりまして、「むつ」につきましては、十分皆様の安全確保についての御理解を得られるように、また、もちろん安全確保そのものについては言うまでもありませんが、皆様のこれに対する御理解が得られますように、今後とも万全を尽くしてまいる考えでございます。  それから母港の問題、まだ母港も決まっていないのに、この先どうするかということでございますが、これはまだ修理港すら決まっていないという現状でありますから、一日も早く修理港を確定いたしまして、まず修理港を決めて、修理が軌道に乗るということを、修理が進むということを見きわめました上で母港の選定といったものを急いでやってまいりますし、引き続きまして、実際その原子力船が活動できますようないろんな条件を取りそろえてまいりますように、いろいろ手配を進めてまいらねばならぬと。いまの段階におきましては、具体的にこうしてこうしてこうするというようなことも、これまた残念ながら申し上げかねるような現況でございます。
  85. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 私の所管いたします部分と関連いたします部分についてちょっと補足をさせていただきます。  吉田さん御指摘のように、不況対策と「むつ」の修理ということが混同されてはならぬし、また特に主客転倒の結果等になっては相ならぬというお説の点は私どもも全然同感でございます。偶然といいますか、あたかも時を同じゅういたしまして、佐世保重工がああいうような窮境に陥るということになりました。佐世保重工は、わが国造船界では大手七社に次ぐ大きな存在であり、いまの造船界全体を見ますと、これがもし倒産するというようなことになりますと、わが国の造船業界に大きく影響を及ぼします。そういう観点からいたしまして、私どもはこれを何とかしなきゃならないということで、いろいろ対策を関係者多くの者で講じつつあるのではございます。決して「むつ」についてわれわれが何らかのことを考える、そしてそれと関連して佐世保重工を助けると、こういう意味ではございません。あるいは結果において両方並行的に、と言うのは、時間的に並行的にそれらのことが進められるということにあるいはなるかもしれませんし、また、そのとおりいくかいかぬかはまだこれからの経緯を見なければなりませんが、いずれにいたしましても、そういう次第でございますから、お話のように、一方のために一方を特にいろいろ考えてやるというような、そしてそのために大事な安全ということが妙なことになるというようなことは断じてないようにしなければなりません。その点はよく心得ているつもりでございます。  ちょっとこの点を補足させていただきました。
  86. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して一問だけ、運輸大臣に主として質問します。  いま「むつ」は、原子炉が悪いと承っておるわけですよ、われわれずっと、故障して動きませんので。佐世保に入港して一体何を修繕するのであろうか。「むつ」は原子炉は封印してしまって船体修理するだろうということですね。したがってそういう面、部分的なものはよろしゅうございます。一番問題は、原子力船に運輸省と科学技術庁とそれから事業団と、三者でいままでやってきてます。こういうところに一番私は問題があるのじゃないかと思う。どこも責任がない——もちろん全部、三者責任でありますけれども、責任をとろうとしない。たとえば、いま総理大臣以下政府が一生懸命に佐世保のドックの救済と一緒に「むつ」の修理ということでやっておられるが、それじゃ原子力船事業団の名前なんか一言も出てこないわけですね。船をつくった事業団は、もう後は政府がやるだろうということで恐らく見ているだろうと思うけれども、事業団で船をつくりまして、故障が起こったから、それは科学技術庁と運輸省の責任でありましょうけれども、つくりました事業団だって責任があるはずです。法律上そう書いてあります、その運用が。にもかかわりませず、総理が造船所の救済とからめてこうやっているのに……、したがって私は根本的に原子力船事業団そのものがもう無意味ではないかという気がするのです。もしやるとするならば、将来運輸省なら運輸省が、船をつくるんですから運輸省が責任持って一元的にやらなきゃだめだと思う。今度の原子力基本法では、まだ試験段階であるから科技庁が主として持つということになっておるようでありますけれども、私はこの改正についても問題だと思うのですよ。もしいまのような造船事業であるなら、いまは船つくる必要はないであろうから、もう舶用炉なら舶用炉を陸上でつくって、それを試験する。そして舶用炉が大丈夫ですということになってそれをそっくり船に乗せます、その容量は幾らです。そこから先は運輸省でできますね、造船の方で。船だから運輸省だと思うけれども、舶用炉の方は科学技術庁です、それをつくるのは事業団ですと、こうなっておるわけだ。しかも事業団の方で責任とったという話は聞かない。すでにもう十五年ですよ、十五年。あれつくり始めて、漂流して、港もないで十五年。全くぶざまですね。だから聞きたいのは、原子力船事業団は一体どうされようとするのか。それから原子力船をまだつくろうとされているのかどうかですね。まあ、造船はいま不景気でありますから、原子力いま考えるのはいいだろうと思う。したがって根本的に原子力船については一体政府はどういう方針を持っておられるか。  その後もし時間があれば一もう時間が、二十三分までのようでありますが、技術的に封印した原子炉、舶用炉を持った船をそのまま佐世保に置いておいて船体を修理するって、一体それは将来どうするのか。その点だけ質問いたします。
  87. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) やや私よりも科学的に認識をしておる局長からも補足させますが、先生いまお話しのように、現行法のもとにおいては現行法を尊重しなければならぬのは当然でございます。これはこれで心得てまいりたいと思うわけでございます。  ただ、原子力船の将来の展望と関連いたします部分につきましては、もう世界の趨勢は原子力船にどんどん進んでいく。日本がそれにあんまりおくれをとっていてはならぬということも、これも当然のことでございます。これらを心得て対処しなければならぬ、こういうように考える次第でございます。  事業団に対しましては、私ども大いに敬意を表しておるわけでございます。当面、事業団は事業団で大いにその使命の達成に邁進していただかなければならぬ、こういうように存じます。  将来の点につきましては、私ども原子力については、これはよほど大きな考えを持って臨まないと世界に置いてきぼりを食うのではないかということを私は危惧いたしておる、そういうことにならないようにいたしたいと考えております。
  88. 小柳勇

    ○小柳勇君 もう時間がないから意見だけ言いますけれども、初めて日本でつくったなら、漂流してもそれはやむを得ぬと思いますけれども、しかし外国で動いでいるのですからね。外国で動いている原子力船をつくってみて、母港もないように漂流しているということについては、本当にこれは一体何しているかという——これは国民全部がそうだと思いますよ。したがって、根本的にもっとやっぱり行政というのは一元化したらいいんじゃないかと思うのですよ。いまの原子力基本法でももう少し私どもはこの改正で論議したい。いろいろ説明聞きますけれども、また同じようなことが起こると思います、私は。舶用炉の方は科学技術庁ですと、それが実用になりましたら運輸省ですといったって、何年先になるかわかりませんですよ。それよりもっと現実に即したいま法改正をやるならやる。事業団法から原子力基本法についての改正についてもいまもっと私は討議しながら一元的に責任体制——そのかわり、もうだめなときは運輸大臣やめてもらう。そうしませんと本当の行政になりませんですよ。だれも責任をとったという話を聞かないのですよ。そういうことを意見だけ申し述べまして質問を終わります。
  89. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) ありがたく拝聴させていただきます。
  90. 塩出啓典

    塩出啓典君 運輸大臣にお尋ねいたしますが、将来原子力船が実用化した段階におきましては、運輸省が原子力船の建造の認可を与えるわけでありますが、そのときに原子力安全委員会のダブルチェックを受けるわけであります。運輸大臣はこの原子力安全委員会の結論を十分に尊重すると、こういうことでありますが、原子力安全委員会の結論に反したような判断は断じて下さない、意見が違う場合もあると思うのですが、そういうときはお互いに話し合いをして、安全に関する科学的な問題ですから、話し合いはつくと思いますし、したがって原子力安全委員会の結論に反したような処置は断じてやらないと、このことを明言してもらいたいと思います。
  91. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 御説の点、全く同感でございまして、御懸念のようなことのないようにすべきだと私は考えております。また原子力安全委員会の方が、他の機関がみんなが考えて、そんなばかなことがあるかというような結論を出すようなことはなかろうと、私はそれなりに信頼をしておりますので、そういう事態は起こらぬと思いますので、そういうことも加えて、私どもはお話しのような趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  92. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういう将来の問題として、運輸省としては第一次の審査をやっていかなければならない、その運輸省が行う審査というものは、安全委員会のダブルチェックがあるんだからといっていいかげんなものであってはならないと思うわけであります。したがって、今日まで原子力委員会のもとに原子炉安全審査会があって、そして広く学者の意見も聞き、ただ行政サイドではなしに、客観的なそういう意見も取り入れて、国民から信頼してもらえる結論を出していかなければいけないと思うわけでありますが、そういう点で運輸省としては今後原子力対策室とか、あるいは船舶技術研究原子力船部の充実の問題、あるいは船舶検査官の教育とか、こういうような問題に力を入れていくといういまお話があったわけですけれども、そういう点も含めて、運輸省としては国民から信頼されるような審査体制をつくる、そういう時期になれば。またそういう準備をしていくんだ、こういう大臣の決意を承っておきます。
  93. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) お話しの点は、まさに国民が信頼をしてくれるような諸対策を講じていかなければならないことは当然と考えております。率直に申しまして、まだできてないものですから、できたら一体どうなるのだという意味で御心配を煩わすことは大変恐縮に存じますが、私どもといたしましては、この新たに生まれ出る部門につきましては、いろいろお話がありましたような点を十分心得まして、ぜひ御趣旨に沿うようなことにいたしたいと存ずる次第でございます。
  94. 塩出啓典

    塩出啓典君 原子力船の実用化の世界の状況がかなり当初よりおくれてきておるのではないか、情勢はかなり変わってきておるという意見があるわけでありますが、原子力船の実用化の世界の状況については、運輸省としてはどういう判断をしておるのか。これは時間がございませんので、余り詳しく説明していただくのはまた別の機会として、大体どういう感覚であると、これだけをひとつ承っておきたいと思います。
  95. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) これはまあ世界あちこちの国によってとか、あるいはまた国の中でも学者等によっていろいろなことが述べられておりますが、私どもは世界各国の情勢や、またIMCOの動き等いろいろなものを見つつ思いますことは、きわめてラフな言い方で恐縮でございますが、まあ十年内外で実用化の時代に入るというような気がいたします。十年内外ですが、この十年内外も十年以内にそういうことになろうかというように、私自身はまあ素人といえば素人でございますが、運輸省の体制もそう考えておるわけでございます。したがって、十年以内というともうわけはない、もうすぐ迫ってきていることでございますので、いま先生がお話のように、そういうように見られておったが、若干おくれそうだなという見方も確かにあるようでございますが、おくれてもそんなにおくれやしない、余りおくれやしないと思うので、十年中へかなり入ってというのが、十年そこそこでということにあるいはなるかもしれませんが、いずれにいたしましても対策は急に要するというように私どもは認識をいたしております。
  96. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま日本では修理港も決まらない、先ほどお話がありましたように、母港もいつのことかわからない。そういうことで、わが国原子力船の将来が果たしてどうなるのか私たちも非常に心配をしておるわけでありますが、率直に言って、いまわが国原子力船の技術というものは、世界先進国の中で大体並んでおるのか、大分おくれておるのか。わが国は軍事用の原子力船つくっていないから大分おくれていることは事実だと思うのですが、そういう点の認識はどうなのか、これをひとつ簡単に承っておきたいと思います。
  97. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 局長からも補足させますが、いまお話のように、いろいろあらわれている現象から申しますと、私若干おくれているような気がいたします。ただ、日本人の頭脳という点から言うと、いまおくれているかのごとくに見えるが、そう頭がおくれているとは思いませんので、必要に応じこれは追いついていくであろうというように、私はそういう意味の信頼をしているわけでございます。しかし、とてものんびりとした観測をしていることができるような状態ではないというように考えております。ただいま局長からも申させます。
  98. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 「むつ」自身は、総合的に見まして、大山委員会の報告でもかなりの水準に達していると、こういうことが言われているわけですが、確かにアメリカ、ドイツ、ソ連等ではすでに実験航海あるいは実用化の準備のためにかなりの数の航海をし、実際の業務についたわけでございますから、その間のデータの蓄積という点では率直に言いましておくれているというふうに申し上げるべきかと思います。したがいまして、今後「むつ」の改修・総点検が終わりまして、私どもとしてはできるだけ早くその試験実験を終わってデータの蓄積をし、それを今後の設計なりあるいは政策面での改善に役立て、さらには安全の基準の確立改善に役立てていくということと同時に、関係研究機関等でさらに今後の新しい型式の炉等についてのいわゆる実験研究は進んでおりますので、そういうものをあわせてさらに技術水準のレベルアップを図っていくべきではないかと、こういうふうに考えております。
  99. 塩出啓典

    塩出啓典君 まあ母港も決まらないと、そういう点でいくと、果たして原子力船「むつ」の将来はどうなるのか、さらに漂流が続くのではないか、こういう点を非常に私は憂慮をしております。したがって、わが国原子力船というものをどうしていくのかという長期的な計画もない、行き当たりばったりにやっていて、結局予算は使ったけれどもさっぱり前へは進まない、こういう状態になっては、やっぱり税金のむだ遣いになってしまうと思うのです。そういう点から、私はやはり十年なり二十年の長期計画をつくってそして出発すべきである。そういう点で、当初原子力船事業団ができたときといまとではかなり事情も変わっておりますので、したがって、原子力船の将来に対して世界の情勢も見きわめて、そうしてここで長期計画というものを慎重に検討し、そこからスタートすべきではないか。そういう長期計画、再検討の決意ありや、あるいはすでにやっておるとすれば、いつ完成するのか、これを伺っておきたいと思います。
  100. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 御承知のように、「むつ」につきましては基本計画というようなものはできておりますが、その「むつ」がいま御指摘のようなこと等もございまして、したがって政治のあるべき姿としては、もっと広く、もっと的確な展望を持ってという必要があろうと思います。事はかなり高度の科学技術に関するものではありますが、しかし、それだけにこういうことについて的確なる政治的判断、対策等がなければならぬことも事実でございまして、いま御説の点等につきましては、なお私どもそういう認識の上に立って関係者で相談をいたしてみたいと思っております。
  101. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから佐世保重工の再建問題が非常に難航をしております。銀行は債務保証のないところには金を出さないと。しかし一方、日本鋼管を初めとする大株主は、そういう株主の有限責任という立場から保証しようとしない。結局これは佐世保重工の再建が非常にむずかしいと。やっぱり銀行にしても株主にしても、会社はさらに多くの株主に責任があり、銀行も預金者に責任があるわけですから、そういう点で、率直に言って難航している原因というものは、これは現在の造船業界の置かれた環境の中から、佐世保重工の再建が非常に厳しいから難航しているのだと、これがすべてではありませんけれども、かなり大きな原因はそこにあるということは運輸大臣も認めざるを得ぬでしょう。この点はどうですか。
  102. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) いまお話のような傾向はかなり強いわけでございます。ある見方からすれば、造船能力の方がかなり大きいのだから、うまくいかぬところはつぶれたってしょうがないじゃないかという意見も確かにあるのです。あるのでございますが、そういうことでもこれは政治になりませんので、多少時間がかかっておりまして大変残念でございますが、いわゆる大株主と称せられるグループ等を集めたり、金融筋とも相談をしたりしていろいろ言っておりますが、いまどういう説があってどうということを申しますと、どこかの悪口を言わなきゃなりませんので、そういうようになると、つぶれずにうまくいくということがいきませんので、私はあえて遠慮をさしていただきますが、いまもお話があったようなことを理屈だけで言いますと、そんなんじゃつぶそうかということにいきやすい。ですから私はそういうことでなくて、それを越えて、先ほどから申しておりますように、佐世保重工というものが単に一会社としてでなくて、業界全体についても、あるいは日本の経済界に対しても大きな影響も持っておりますだけに、ぜひ何とかしたいということでございまして、この上まだしばらくということはいかにも迂遠な感がないでもございませんが、この種のことは、もうだめだなあというところまで、近くまでいかないとなかなか解決しないような気がいたします。もうしばらく何とか、時間は要りますけれども、いずれにしてもつぶれないような措置を講じて、あとうまくいくようにということで、私は決して望みを捨てておりません。だがしかし、容易でないということは私も感じております。ぜひ何とかしたいというのが本音でございます。
  103. 塩出啓典

    塩出啓典君 日本の造船業界は、最高のときには千九百万総トンぐらいの工事をし、たしか運輸省の見通しでは、もうそれを三分の一ぐらいにしなければならない、こういう造船業界全体の中で、われわれも佐世保重工というものもぜひ再建をしてもらわなくちゃならぬ。再建というか、まあ再建ですね。そのためには、かなり人員も削減もし、やってもらわなければならないわけでありますが、それは当然わかるわけなんですけれども、しかし、運輸大臣はいま望みを捨てていないと、こういう発言では困ると思うのです。私は、この後にする質問で、運輸大臣として佐世保重工に責任を持てるのかと、こういうことを聞こうと思ったのに、望みを捨てていないというのでは、はなはだ話にならぬと思うのです。そういう会社にいま日本政府が国民の予算を使って物を頼もうとしているわけですから、そういうことでは私は国民は納得しないと思うのです。そういう点で、運輸大臣としては、本当に佐世保重工の再建には、いろんな条件はあるでしょうけれども、責任は持てるのかどうか、その点どうですか。
  104. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 先生の御質問のぐあいが、どうもだめらしいようなことを前提にされてのお話だったので、私は望みを捨てておりませんという表現をいたしましたが、もともとこれをつぶさないでおこうと思っていろいろ動いております私といたしましては、きわめて消極的な表現というつもりで言ったのではございませんので、望みを捨ててないということは、まさに望みありというようにひとつ御認識をいただきたいと思います。そのことのためには、まだまだこれから一層の努力が必要だと思うわけでございます。正直に申しますと、いままでのところで、ここらあたりで何とかうまくいきそうなものだと思ったのが、そういっていないところ等もございます。そういうことにつきましては、われわれいろいろ過去の経験等をよく考えて、気をつけて、そうは申しましても、もうかなり時間が経過しておりますので、あと急いで対処していきたいと思います。ただいま、しっかりやれという意味で激励をしていただいてありがとうございます。そういう気持ちで臨みたいと存じております。
  105. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは最後の質問ですが、「むつ」の修理発注と再建問題は別問題である。確かにそのとおりだと思うのです。であるならば、私は、この佐世保重工の再建の見通しが立ち、国民から見ても、あれなら何とかいけるだろうと、そういう見通しが立ってから、「むつ」の修理を頼むべきである。現在、県議会でいろいろやっておりますが、これはやって、受け入れオーケーという体制になっても、そういう体制がくるまでは、私は科学技術庁あるいは原子力船事業団としての正式な契約というものはすべきではない、その点を私ははっきり明示すべきだと思うのですよ。造船は日本の将来にとって必要なんですから、もちろんその規模が、かなりの手術をしなければならないことは、これは何も佐世保重工だけではない。日本全体の造船業界がそういう厳しい中に置かれておるわけですけれども、その中にそういう適正な手を打てば再建できない道は絶対にないわけでありますので、そういうめどが立ってから、正式なやはり発油をすべきである。科学技術庁長官の御答弁だけ承っておきます。
  106. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 今後「むつ」改修についての契約のあり方、あるいは関係会社の協力のあり方というのは、今後詰めるべき問題でございますが、お説のとおり、契約をいたしましても、先方の社内事情によりまして契約の内容が十分に履行できないというようなことでは困りますので、十分にその辺は配慮して進めてまいりたいというように考えております。
  107. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 法改正が行われた暁、運輸省における原子力船の安全審査の体制がどういう形に移行するのかという問題について、すでに当局から文書でおおよそのところをいただいておるわけでありますが、お尋ねをいたしたいのは、今国会でも衆議院の段階での運輸省当局の御説明が、どうも二転、三転している、そういう感じがしてならないわけです。重ねてお尋ねをするわけでありますが、当面の原子力船安全対策室ですね、先ほどお話が出ておりました、八名ほどのメンバーでやっていくのだというのですが、これは兼任ですね、予算上の専任体制ではありませんね。
  108. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 当面ということからいたしますと、御説のごとく兼任でということになります。ただ、いままでのものが兼任するというだけじゃ、それじゃ大したことないじゃないかという印象を与えることは事実でございます。私どもはそういう点について、まだ発足はいたしておりませんけれども、発足する段階においては、そういう体制ではあるが仕事に心配がないと言っていただけるようなことにしなければならない、こういうように存じております。若干具体的なことについては局長から申し上げさしていただきます。
  109. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それならちょっとついでに質問しておきますけれども、しからば現在は兼任だと、そういう案だということですけれども、いっ専任体制をとるのか、そういう点についての運輸省見解だけではなくて、閣議の確認はできているのかという点含めて御答弁願いたいと思います。
  110. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 法改正ができれば直ちに対応しなければならぬことは理の当然であると思います。それで、閣議等で詳細にそういう場合はどうというのはまだしておりませんが、間に合うように私が責任を持って善処したいと思います。
  111. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 法改正の暁直ちにということでありますが、これはまだ今国会で通るか通らぬかは未知数でありますけれども、これ通った場合、直ちに専任体制がとれるんですか。予算がすでに決まってますね。追加予算を組むんですか。ですから五十四年度からなんじゃないですか、早くても。
  112. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 実用化していくのに支障ないようにという見地でございますので、その辺はさらに事務当局からお聞きいただくといいと思うのですが、必要があれば予算措置等は適当に講ずるようにいたしたいと思います。したがって……
  113. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 適当にとはどういうこと。国会の承認要りますよ。
  114. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) だから、申せば、補正の措置等をとるということも一つでございますが、それでは問に合わぬほどの事情にありとするならば予備費を使うとかなんとか、いずれにしてもこれを実行するのに差し支えのないように責任を持って私が対処いたします。
  115. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 今回の法案が成立をいたしました暁は、先生指摘原子力船安全対策室を兼任でやっていくわけでございますが、これは兼任といいましても、先ほど私御答弁申し上げましたとおり、今度の法改正によって必要な規制法等に関します手続基準の準備、それから人材の養成、それから行政組織の検討、さらに船舶安全法によります安全基準の検討等に当たるわけでございまして、ここで今後の行政組織のあり方を検討していくわけでございますが、当面は「むつ」の問題かと思います。「むつ」の問題につきましては、これは科学技術庁が原子炉については発展段階にあるということで一次的にやりますので、あとは現在の船舶安全法による……
  116. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと時間が短いですからね、聞いていることだけ。
  117. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) はい。検査が適切かどうかと、こういうことを検討していくわけでございます。
  118. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 当面科技庁が担当するということはわかり切ったことです。
  119. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) はい。それで、実用船の段階になった場合には、この実用船を対象とします審査件数がどのぐらいになるか、こういうものを頭に置きながら、必要な時期に必要な組織を他省庁の経験も参考にしながら詰めていきたいと、こう考えております。
  120. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 当座の問題はそういうことですけれども、それなら、この原子力船の実用化の段階での将来構想として、いただいておる文書では、新たに原子力船規制課というものをつくり、安全審査官十名程度を含めて十五人程度の規制課をつくる、それから船舶検査官として原子力船担当の五人程度の船舶検査官を置くということが出ておるわけでありますが、これはおおよそこういうことで固まっている。これがかなり変わるということはありませんか。
  121. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) いま仰せのように、おおよそということでございますが、何年からというところまではまだいっておりません。先ほども申し上げましたように、諸情勢と即応するようにというつもりでございますが、早く必要があっても支障のないようにはいたしたいと存じております。
  122. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それならお尋ねをいたしますが、いま数字も含めて出されております組織体制の新しい方向ですね、これは原子力幾つを実用船建造をするということを前提にした体制なのかということが一つと、それから従来原子力委員会、科学技術庁のもとで「むつ」の安全審査がやられてきたわけですけれども、当然この際には例の原子炉安全専門審査会、こういう学識経験者の専門家集団を置いて、そこの英知もくみ上げて行政当局としても必要な検討をやっていくという体制があるわけですけれども、これが全然脱落をしているわけですね。だからそういう問題がどうなっておるのか。それから、究極的にいま言われておりますおおよそということだけれども、これは関係閣僚会議、当面は「むつ」問題でありますけれども、そういう原子力船のあれについての閣議なり関係閣僚会議でこれは確認をされておる構想ですか、運輸省見解ですか。
  123. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私どもが検討いたしまして数字を説明を申し上げているものにつきましては、これは運輸省としまして実用原子力船に対応する体制ということで検討している段階でございます。ただ実用原子力船が何隻ぐらいかという点につきましては、これは一隻出てまいりましても新しい法律によります審査、検査をやっていかなければならないわけでございますから、一隻程度でございますれば現在の船舶安全法、それから原子炉等規制法によります同意の事項を担当しますところに若干の増員をすればよろしいかと思います。ただ実用化時代ということになりますと、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、八〇年代の後半にはそういうことが到来するという想定になりますと、少なくとも単に一隻とかあるいはそういった単位ではなくて、外国の入港船も考えますとある程度の量になるということで、一応私どもとしては科学技術庁あるいは通産省の現在の仕事の状況を考えて、そういう実用化船の到来します事態の前には、先ほど申しましたような数字の程度の規模で体制を整備する必要がある、こう考えているわけでございます。ただこの案はもちろんまだ運輸省の内部の案でございまして、したがいまして、原子力関係の閣僚懇談会なりあるいはその他の公式の政府としての場に持ち出している数字ではございません。
  124. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) いまお話しの閣議等でどう扱うかということでございますが、本法案を提出いたしますときの閣議決定の際に、そのときの閣僚諸公はそれなりの理解と認識の上に立ってこの法案を提出する決定をしておるのでございますが、お話しのように、これから具体的にいろいろ決めていかなければならないことが出てまいりますので、そういうことが必要なときには時間的に間に合うように私の方でないし私ばかりではございません、関係閣僚諸公とも打ち合わせをいたしまして対処することにいたしたいと思います。
  125. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大臣、どうなんでしょうね。法改正を提案をなさる場合に、法改正の一つの重要な部分として、原子力船の関係については、この法改正の暁はこういうふうに移行をしますということも一つの柱になった今度の法改正だ。ところが移行の暁こういう体制をとりますというこの話が、閣議決定政府が提案をするわけですから、閣議で確認もされないまま運輸省の腹案程度の形でこの問題が出されているということ自体私問題だと思います。それだけじゃなくて、これは衆議院を引くまでもなく、私の部屋にも検査官に来ていただいて、運輸省、どういう体制になるのですかということをお聞きしたときには、いやなかなかもう一つ固まってないのですという話で、後からちらちらと当面は安全対策室という話が出た。それから、さっき言いました原子力船規制課という新しい課を設置をする、あるいは船舶検査官という新しい検査官制度を置く、こういう話が大分後の方になってから出てくる。この法案というのは、考えてみれば八十国会から提案をされている法案でしょう。今度の国会に急に出てきたという法案ではないと思うのです。にもかかわらず、それは多少、十五人と言っていた人数が上下の人数の異同が起こるという、そんな細かいことを言っているわけではない。大筋、この法案の提案目的に沿う今後の運輸省の体制が、骨組みがどうなるかという、ここの問題がぐるぐる変わるし、この話が出てきたというのはごく最近だ。こういう提案のやり方というのは、これは非常に無責任ではないかというふうに思います。おまけに、さっき局長の御答弁になかったんですけれども、実際に安全審査をやっていこうと思えば、これは科技庁でも原子力委員会でも通産省でも、学識経験者の英知を集めるという専門委員、技術顧問団、こういうものを設置しているわけですけれども、こういうものは全然出てないということで、私は非常に無責任な提案ではないかという感を強くするわけですけれども、以上、もう時間ですので最後の質問にしたいと思います。
  126. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 失礼をしました。答弁漏れがございましたので補足をさせていただきます。  私どもが第一次審査を行います場合に、顧問会といったような形で外部の学識経験者の意見を求める組織をつくるべきではないか、こういう点でございますが、実は私どもも現有の「むつ」の検査に当たります際には造船技術審議会という運輸省の審議会がございまして、そこで百十一回と記憶しておりますが、分科会をつくってやった実績も持っておりますし、それから核燃料運搬の専用船につきましても外部の先生方のお知恵をかりる組織をつくってやっております。したがいまして、今後の顧問会といった形での外部学識経験者の御意見を聞くという点につきましても、これは十分考えておりますし、現状としまして、それがどういう形でいいかという点については今後の検討にまちたいと思いますが、従来からもそういうふうにやってきております点だけ補足させていただきたいと思います。
  127. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 先ほどのお話に御指摘がございましたが、初めの方で必ずしも明確な物の言い方をしてなかった、最近に至って幾らかはっきりしてきたような点もあるという御指摘、そういうことだと思います。私、運輸省に関する部分で過去にどういうことを申し上げておったか、必ずしも明らかにいたしてはおりませんが、どうぞひとつ、最近申し上げていることをもって運輸省の考え方だというように御理解をいただきたいと思います。今後のことにつきましては、いまもお話しいただいたように、大事なことであるからなるべく早くからいろいろ明確にしていく必要があろうという意味で、お話等の点は念頭に置きつつ今後に対処したい、こういうふうに考えます。
  128. 中村利次

    ○中村利次君 原子力基本法等の一部改正は、これは明らかに原子力の安全の前進であるというぐあいに私は受け取っています。発電用の原子炉にしても船舶用の原子炉にしても、これやっぱり原子力平和利用として進めていかなければならぬというのは当然でございます。ただ、この原子炉には多量の放射性物質があるわけでありますから、これが漏れると大変である、とにかく厳しく安全については取り組まなきゃならぬというので、行政懇の衆知を集めて、その意見を尊重をして、たとえば安全審査についてもダブルチェックを今度新たにやろうというわけでありますから、安全上から言ってもこれは確かに前進であることは間違いないわけであって後退ということはどこから見ても言えないわけですね。ところが、私は、これは運輸省と通産省の場合にはちょっとやっぱり対応が違うべきだと思うんですね。通産省の場合には促進ケースで昭和六十年三千三百万キロという具体的な発電用原子炉の計画を政府として持っておる。ですから、それに合わして万遺漏のない体制づくりをやるのは、もう法案を提出したときからそんなものがなきゃこれは問題だ、あるのがあたりまえだ、だから通産省は持っておるわけですね。運輸省の場合には、これは政府にしても、失礼だが与党の自民党としても、これは釈明のできないようなお粗末をおやりになったんです。私は本委員会でもこれはそういうことを言ってきたんですが、少なくとも日本の原子炉で放射能漏れということをやったのは「むつ」だけでしょう。これは〇・二ミリレムというんですから、放射線の漏れをやったことに対する政府、科技庁、原子力船事業団の責任というものはこれは逃れられない。しかし漏れたのは〇・二ミリレントゲンですが、これが目がつり上がっちゃって、危ない危ない、大変だ大変だと言って大騒ぎをした。こんなのなんか、〇・二ミリどころか一ミリだろうと十ミリだろうと百ミリだろうと、その中に私は一生住んでみせますけれども。ところが、それが政府じゃなくって、これは与党の責任もそこにあると言うのは、与党の総務会長が行って、科学的根拠の全くない政治的な取引というんだか、妥協というんだか、そして危険だから出ていけと言うのに応じて母港を撤去したわけですから。こんな科学的に言って物笑いになるようなことを日本政府はやったんです。だから、いまの科技庁の長官の責任ではない、いまの運輸大臣は知らない、こんなことを言ってみても、私はこれは政府責任は免れないと思う。そういうことで、少なくとも原子力船については大変に退歩をしました。私はエネルギー問題の見通しと、それから仮にこのオイルショック後の深刻な国際的な不況、それから船腹の様相は変わってまいりました。こういうのがなかったら、これは政府責任というものは重加されて大変だったと思うのだが、しかし、いま原子力船をむきになって開発をし走らせないでも、とにかくタンカー備蓄まで考えなければならないことになっているわけですから、そういうものにやっぱりかなり救われているものがある。  そこで、そういう情勢から考えますと、船舶用の実用炉ですね、船舶用の実用炉を安全審査をしなきゃならない時期はそれじゃいつなのかということになれば、かなりこれは先ですよ。そこで私は、決してこれは後ろ向いて走るんじゃない。日本はいま深刻な不況と歳入不足によって、歳入をどうはかり歳出をどう抑えていくのか、大変な国民的課題を抱えているわけですね。  そこで私は、原子力基本法等の一部改正で、運輸省が具体的な舶用炉の安全審査をやるというものが当分ないままに、法案が成立したのだから対応しなきゃならないというので、そういう法律対応用の体制をつくってむだでも起こしたら、お役人なんというものは一回つくったらこれはやめさせるわけにはいきませんよ、行管庁が幾ら逆立ちしたって。とにかく、ここを行政改革すれば国民のためになると思ったって、そんなことをやったら内閣が一つや二つつぶれるくらいのあれがなけりゃできないと言われているぐらいですから。ですから、そういう点についての私は決意を聞きたい。  むしろ、ダブルチェックということになりますと、お役所の体質というのか、あるいは誇りというのか、なわ張り意識というのか、そういうものからいきますと、通産省の発電用原子炉に対する安全審査の体制、まあ運輸省はずっと先だけれども舶用炉に対する安全審査の体制、それが通産省はりっぱだったけれども運輸省はだめだったということになると、これはやっぱりお役所のなわ張り意識、対抗意識、誇りというものが許さぬと思うから、それは私は万全の体制をつくると思いますよ。むしろ心配なのは、そういうお役所体質からすると、安全委員会のクロスチェックだかダブルチェックだかで、何かどうも指摘すべきものがあったという場合、果たしてそういうものがオープンにされて国民とともに安全の徹底を図り得るかどうかの方がむしろ心配であって、体制づくりにはお役所なんというものは私は優秀だと確信して疑いませんから、むしろ私はそのむだみたいなことをやられたんではたまったものじゃない。だから、船舶用実用炉の安全審査の見通しを的確にしていただいて、それに対応できるようなぴしゃっとした計画をおつくりいただくことがいまの運輸省の当面あるいは中期的な役割りであると思うんですよ。それについての御決意のほどを承りたいと思います。
  129. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) 私も役人育ちじゃございませんので、それなりにいまの先生のお話を伺っていて感ずるところもあるわけでございますが、いまこの法案で問題になっているようなことが恐らく先生のおっしゃるようなことになるであろうなどということを申し上げるつもりはございません。御注意はありがたく拝聴してまいりますが、いずれにしても、日本のような官僚組織のもとにおいては適当な理屈はっけられるとは言うものの、理屈を抜きにしてぜひなるたけむだのないようにということでなければならぬと思います。そういう意味から申しまして、いまのお話等の点については私どもも重々留意していきたいと、こういうふうに思います。と言って、そんなことばかり言っておって安全が十分に保たれないということになったらこれはまた大変でございますから、両々大いに気をつけてまいりたいと思います。
  130. 中村利次

    ○中村利次君 原子力平和利用については、発電用だとか船舶用なんかの原子炉だけではなくて、また医療用だけでなくて、いろんなやっぱり平和利用を今後考えていかなきゃいけない。なかんずく、舶用炉にしてもエネルギーの一種ですけれども、エネルギー問題が非常に心配な国際的現状、わが国の見通し等からすれば、もう私は原子力平和利用というのは本命中の本命だというぐあいに考えるんですよ。そうなりますと、むしろ、原子力平和利用についての安全性についての意識というものは、開発反対だという人たちよりももっと厳しいものがありませんと、とにかく人間の生命だとか健康にまるで影響のないような何か小さな亀裂が出た、あるいはもう小さな穴があいたというだけで大騒ぎされるわけでありますから、本当に事故と称するものだったらこれはやっぱり大変なことですからね。そしていわゆる人類に不可欠のエネルギー確保に大変なマイナスを来しますから、安全性については、むしろ、開発をすべきであるという側の方がもっと真剣にあるいは裏づけのある対応をしなきゃいかぬと思うのです。ですから、たとえば舶用炉の安全審査について完璧を期するために、どんなに金がかかっても、どんなに人がかかってもそれは当然つぎ込んでやるべきである。ただしこれはむだとは違いますからね。与野党の別なく、たとえば行政改革等については総論賛成、各論反対ということになるわけですから、そういうことにならないひとつ本当に真剣な対応を期待をして質問を終わります。
  131. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 舶用原子炉につきましては、原子力基本法、それから原子炉等規制法によりますと、基本設計だけが原子炉等規制法、原子力基本法により審査をされ、詳細設計以降については船舶安全法で検査をされることになっております。しかし「むつ」については、もう一度それが実験用だということで科学技術庁の方へ権限が移っており、当面運輸省は何もしないでいいというようなお話でございますけれども、原子力船「むつ」についての原子炉部分については船舶安全法上の検査その他は行われるわけでしょうか。
  132. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 炉規制法の改正がありましても、船舶安全法上の機関としては抜いておりませんので、理論的には船舶安全法についてもかかることになります。ただ、これは炉規制法で基本設計から性能検査までやるわけでございますから、実際上は、原子炉等規制法で行われました審査検査の結果を見まして、私どもとしては、安全法上の検査の判断基準としてそれが信頼すべきものであるということで、実質的に二重検査にならないように考えていく、こういうやり方で進んでいきたい、こう考えております。
  133. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そこのところがなかなかむずかしいと思うのですが、陸上にある原子炉であればそれでいいと思うのですけれども、やはり船に載っけますといろんな形で船舶の運航上からの影響が出てくる。その運航上からの影響を含めて、その原子炉について科学技術庁の方で検査をし、その検査の結果をいただいて、その部分はそれで一応省略をしてほかとの連係の部分だけをやる、こうなりますと、また「むつ」と同じような、遮蔽部分とか遮蔽とその構造物を支持する部分との対応の関係とか、それから波による動揺とか、いろんな影響が十分科学技術庁と運輸省の間で連係プレーがいくんだろうか、再び同じような問題を繰り返すのじゃないかという心配があるわけですけれども、その辺について行政上そういう心配はありませんというふうにお考えかどうか。運輸省と科学技術庁と両方からお聞きしたいと思います。
  134. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 「むつ」を建造し実験をします責任原子力船事業団が持っているわけです。原子力船事業団につきましては科学技術庁と私どもが共管でございまして、建造についての責任は第一義的には事業団でございますが、それを監督する立場で私ども両省庁が責任を持ってやっております。したがいまして、今度の総点検・改修でも、両方の委員会が全部チェックをしてやっていくということになっておりますし、今後具体的に改修が進み実験が進みます場合には、私どもとしては運航上の、あるいは船として動かすための条件についてはすでに設計上織り込んでありますが、それをまた何かの試験航海あるいは実験航海のときにさらに改善すべき点があれば、これは当然両方の担当しています技術検討委員会を存置するつもりでございますので、船舶技術研究所、原子力研究所の研究の成果も入れながら、そこは責任を持っている事業団の監督省としてやってまいると、こういうつもりでございます。
  135. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 大丈夫ですか。
  136. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のとおり、「むつ」に搭載している原子炉は、今回の法改正に伴いまして、当面、研究開発段階の炉であるということで、規制法によりまして原子炉の許可、設計工事の認可等の一連の規制が行われるわけでございます。しかし、「むつ」に搭載している原子炉はまた船舶に搭載しておるわけでございますので、当然船舶安全法の規制が行われるわけでございます。この二つの規制が全く二重の規制になることは私どもまずいと思っておりますが、私どもの考え方といたしましては、原子炉施設の安全規制については内閣総理大臣が規制法に基づいて責任を持って行う、それからその他の船舶の安全確保、これにつきましては運輸大臣責任を持って行っていただきたい。そこで、その間にむだな重複あるいは間隙があってはならないという御指摘であろうと思いますが、私どもといたしましては、これは運用上十分両省庁が調整を図って進めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  137. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 今度の安全対策の強化の一つの柱が検査その他の一貫化ということでございますから、その方向で改善をされている点は認めますけれども、いまの原子力船の炉というものが実験炉というふうな形になるのか。炉そのものは実験炉であり、原子力船としては実験船であっても、その炉が船の上に載っかっているという意味ではこれはもう実用だというふうに考えざるを得ない。この問題は実は原研や動燃の発電用の原子炉にも共通する問題で、その場合には科技庁と通産省との関係のむしろ重複検査というのがあるわけですけれども、まあ発電所の場合には陸上にあるから問題は比較的軽微だと思いますけれども、船の場合には公海上を航海する、非常に過酷な条件の中で使用されるという意味で、そこのところの検査体制がしっかりと連携プレーをやっていくかどうかによって再び問題を起こしかねないという点で、ぜひその点は行政上しっかりと連携をしていただきたいというふうにお願いをいたします。  それから、先ほど来出ております検査体制ですけれども、これについては、実は私は運輸大臣と違って役人出身でございますから、役所のわれわれの仲間のビヘービアをもっと知っているわけですけれども、いま実際に実用原子力船については対象になるものがない、しかも先ほどからの御説明ですと当分出てこないだろうということですから、検査の対象のないものについていまから検査官をふやすの何のと、そういうことを、要求するということは、やはりこれも国民の血税を使っての仕事ですから決してそれは望ましいことではない。やはり行政需要の大きさに対応した機構というものを考えていかなきゃいけない。その点ではどうも日本国会は税金を使うことに一生懸命で、税金を減らすことには全く関心を持っておられない方々が多うございますけれども、そういうことでは私はいけないと思います。その点では、むしろ組織づくりについては、実際の実用原子力船のこれからの登場の見通しをいま中村委員がおっしゃったように十分見通しながら、必要な限度においてやっていくという慎重さが必要ではないかというふうに私は思いますので、そう希望しておきたいと思います。  それからもう一つ税金のむだ遣いで言えば、「むつ」の母港のあの騒ぎのときに、さまざまな形でむだな支出が地元の青森県のむつに対して行われました。それについては私も前科学技術庁長官にも申し上げました。二度とそういう過ちを繰り返してはいけないというふうに申し上げたわけですけれども、いま佐世保重工の再建をめぐってやはり同じような危惧を持っている人が非常に多いと思います。さらには佐世保重工だけでなくて長崎新幹線とか、運輸大臣の認可の可能性のある範囲の中でさまざまな口約束がなされておりますけれども、これはもう前回の「むつ」の騒動と同じ手法ではないか。その点については決して「むつ」の修理港の問題と佐世保重工とを絡ましてはいけない。そのしりは最後は結局国民の税金や何かにかかってくるわけですから、その点については先ほどから絡ましてはいないとおっしゃっておりますけれども、総理大臣以下の動きを見ていますと私どもは大変心配になります。もう一度、その点については決して絡ませないというお約束をいただきたいと思います。
  138. 福永健司

    ○国務大臣(福永健司君) いろいろ関連することについて御指摘がございましたが、まず、最後におっしゃいました佐世保重工の問題と原子力船「むつ」の修理との関連につきましては、先ほどから幾たびか申し上げましたように、これを絡ませるとか混同するとかということのないように気をつけたいと思います。ただ、時間的に一緒に起こったものですから、外から見ますと、あいつら両方一緒にごちゃまぜにしておるんじゃないかというようにごらんになる方もあるかと思いますが、決してそういうことではございません。またその他の問題等につきましても、確かに柿沢さんおっしゃるように、私も費用はできるだけ節減することによって国民へのサービスをよくするという行政でなければならぬことも当然でございますが、余りそればかり言っておって、いよいよ必要なときに間に合わぬというようなことになってもいけませんので、両方とも何とかうまくやりたいというようなことで、言い回し方が、見方によってあるいは一方の方が十分でないという印象もお受けになったかと思います。いままで諸先生方おっしゃったこと、いずれも気をつけて対処していくというつもりでございます。柿沢さんのおっしゃったことについてもぜひそうありたいと思っております。
  139. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 以上で福永運輸大臣に対する質疑は終わりました。  それではこれより科学技術庁及び関係各省に対し、質疑を続けます。
  140. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回の原子力基本法の一部改正を初めこの法律が成立いたしますと、全部で十余りの関係法律がそれぞれ改正されるわけでございますが、この法律の公示とか施行というのは大体成立後どういうめどで行われるのか、これを承っておきます。もちろんまだ成立はしていないわけでありますが、ある時点で成立したとした場合、それから以後どうなっていくのか、この事務的な手続、見通しについて承っておきます。
  141. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この法律を認めていただきまして法律施行後、安全委員会の設置につきましては三カ月以内、それから一貫化を実施する時期につきましては六カ月以内を考えております。
  142. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、現在原子力船「むつ」の修理の問題等が議題になっておりますが、この修理計画とかあるいは修理後の検査とか、そういうものは旧法の体制になるのか、そのあたりはどうなりますか。
  143. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 修理の計画が整いまして、それに基づいて恐らく設置変更の許可等が出てまいりまして、その後審査が終わり工事が進められるという大部分のものは新しい法律施行後の問題になってくる問題であろうと思っております。したがいまして、私どもが安全審査をいたす必要が出てまいりました場合に、この新しい法律の趣旨にのっとりまして行政庁の審査並びに安全委員会のダブルチェックを受け、その後工事に取りかかっていくというふうなたてまえになっていくものと考えております。
  144. 塩出啓典

    塩出啓典君 先般科学技術庁は、長崎県、佐世保市に「むつ」封印のままの修理を申し入れをしたようでございますが、そうしてそれに基づいてただいま長崎県議会で知事からの提案があり審議をされておる、やがて佐世保市においてもそういうことが審議されていく、これは今後の問題でどうなるかわかりませんが、もし長崎県、佐世保市が科学技術庁長官の提案を受け入れようと、こういう方向に決まった場合、今後の事務的な手続はどうなるのか、これを承っておきます。
  145. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 長崎県知事並びに佐世保市長の方から政府の要請を受け入れるという御返事がございますれば、至急に事業団を中心にいたしまして「むつ」を修理港に回航する準備にかかるわけでございますが、あわせて今後どのような会社のグループとどのような契約をするかという問題も詰めなきゃならぬわけでございます。現在、ごく大ざっぱな見通しではございますが、先方の返事をいただきまして回航するまでには少なくとも二、三カ月の時間というものは必要かと存じますが、その間に規制法上の入港の届け出でございますとか、あるいは、要すれば規制法の設置変更許可申請といったふうなものにつきましても所要の事務的な措置をとるといったふうなことになろうかと考えております。
  146. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回新しい法律が施行されれば、「むつ」の場合は試験船でございますので、当然基本設計、詳細設計、修理計画あるいは完成後の検査、そういうものは全部科学技術庁が担当をして行わなければならないわけでありますが、現段階においては、「むつ」のいわゆる核燃料封印のままの総点検計画というものは、科学技術庁としてはこれは妥当であるという判断をすでに公式に下しているわけなんですか。
  147. 山野正登

    政府委員(山野正登君) ただいま事業団の考えております遮蔽の改修並びに総点検の計画につきましては、これは私ども科学技術庁と運輸省が審査するのみならず、両省庁で第三者機関とも言うべきいわゆる安藤委員会というものを設けまして、事業団の立案いたしております計画というものが妥当かどうかということについて検討をお願いするわけでございまして、五十一年にこの修理の概念案につきまして同委員会の了承を取りつけておるわけでございますが、それ以降計画の進展に応じまして、重要な節目節目でこの委員会のチェックをさせながら進めておるということでございます。したがいまして、私どもとしましては、現在事業団の考えておりますこの修理関係の諸計画というものは妥当なものであるというふうに考えております。
  148. 塩出啓典

    塩出啓典君 この安藤委員会、すなわち改修技術検討委員会ですね、こういうものは法的な位置づけはどうなっておるのですか、現段階においてですね。
  149. 山野正登

    政府委員(山野正登君) これは法律に基づいて設置されたものではないわけでございまして、科学技術庁と運輸省、両大臣の相談をいたします機関としまして設置したものでございまして、行政上の措置としてつくったものでございます。
  150. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、今後新しい体制に移行した場合、やはりこのような私的な、その都度、まあ適当にと言えば語弊があるかもしれませんが、法律によらないそれぞれのグループをつくって、そうして「むつ」の総点検計画を諮問する、あるいは詳細設計、さらには完成検査もそういうグループにいろいろ諮問をしていく、こういうことになるわけですか。
  151. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この安藤委員会と申しますのは、科学技術庁で申し上げれば原子力局、いわば推進サイドにおきまして事業団を監督します際に、技術的諸問題につきまして過ちなきようにやっていこうという配慮でつくられたものでございますので、この安藤委員会の審査を経たということは規制とは全く無関係でございまして、規制の先取りというものでもないわけでございます。そこで、この安藤委員会のチェックを受けながら進めてまいることにつきまして、規制法上所要の時期が参りますれば許可申請をいたしまして規制当局の審査を受ける、こういう運びになるわけでございまして、規制と安藤委員会というものは全く別次元のものであるというふうに御理解いただきたいと思います。
  152. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、安藤委員会というのは通産省の場合で言えば顧問会のようなものである、したがって、ある段階が来ればこの法案でできます原子力、安全委員会のチェックを受けるようになると、こう理解していいわけですか。
  153. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 通産省の顧問会と申しますのも、これも規制に関連した組織であろうかと存じますので、顧問会ともまた違うと思うのでございます。要するに、安藤委員会というのは、行政レベルで科学技術庁長官と運輸大臣との諮問にこたえるという形でございまして、規制のときにはこれは全く安全委員会サイドでおやりになるわけでございまして、安全委員会というものと安藤委員会というものとは何ら関係はない、これは全く別の、異質の組織であるというふうに脅えております。   〔委員長退席、理事松前達郎君着席〕
  154. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、いま安藤委員会はオーケーを出しているわけですね。したがって正式な「むつ」の修理計画が出発するその前には、科学技術庁の中でもいわゆる規制の方の立場ですね、現在まだ安全委員会ができてないわけですから原子力安全局サイドのチェックを受ける、そして初めてこの核燃料封印の修理計画がいろいろな点で妥当であるという最終的な判断が出されると、こう理解していいわけですね。
  155. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 大ざっぱに申し上げてそのとおりであると思います。細かく申し上げれば、原子炉等規制法の設置許可申請に該当する項目につきましてはそのとおりでございます。細かい点につきましては安全規制の許可申請をしないで行うものもあり得るということでございます。
  156. 塩出啓典

    塩出啓典君 先ほどの運輸大臣への質問を通しましても、佐世保重工の再建がまだ現在軌道に乗っていない、こういう現状にあるわけでありまして、そういうところに原子力船「むつ」の修理を依頼することは原子炉等規制法第二十四条違反のおそれがあるのではないかと、こういうような意見があるわけでありますが、それについては科学技術庁はどういう見解を持っておりますか。
  157. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 現在「むつ」について予定されております遮蔽改修工事につきまして、これが当初許可された基本設計の内容に変更が必要であるというものにつきましては、先生指摘の規制法第二十六条の変更の許可が必要であるわけでございます。ここで先生の御指摘は、その中に二十四条の許可の基準を準用することになっておりまして、それが経理的基礎あるいは技術的な基盤があるかというところを指しての御指摘であろうと思うわけでございますが、今回の改修の内容につきまして現在安藤委員会の意見を聞きつつ原子力船事業団を中心にその検討が進められておる段階でございまして、いかなるものが提出されるかどうか、まだ私ども規制当局が受け取っていないわけでございますので、その内容を見まして具体的に検討をしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  158. 塩出啓典

    塩出啓典君 第二十四条第一項の第三号には、「その者に原子炉を設置するために必要な技術的能力及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があること。」とあるわけですが、この場合の「その者」というのは何を指しますか。
  159. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 設置者を指しておりまして、今回の場合は原子力船事業団でございます。
  160. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから同法二十四条では一この設置者である原子力船事業団が技術的な能力と経理的な基礎がなければならない、これは当然だと思うのです。しかし「その者」の次に括弧して、「原子炉を船舶に設置する場合にあっては、その船舶を建造する造船事業者を含む。」と。したがって、もし原子力船を新しく建造する場合には、その船を建造する造船会社にも技術的な能力、経理的な基礎がなければいけない、こういうのが第二十四条の趣旨であると、このように私は理解しておるわけでありますが、科学技術庁としてはどういう見解を持っておりますか。
  161. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) おおむね先生の御指摘のとおりであろうかと思っておりますが、今回の問題になりますのはまだ申請が出てきていない、この段階で基本設計の内容に変更が生じるかどうかも規制当局におきましてはまだわかっていないわけでございますけれども、この変更を行う場合には規制法二十六条の変更許可を要することは当然でございます。この変更許可の判断に当たりまして二十四条の許可基準を準用する、しかも原子力船の場合には、原子炉を船舶に設置する場合にあってはその船舶を建造する造船事業者を含めた申請者の技術的能力、経理的基礎があるべきことというふうになっておるわけでございますので、当然、同条項を準用するということでございますので、変更の許可のときにはそれらを内容を見て判断するべき事柄だと思っております。
  162. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうすると、今回出された計画というものが同法二十六条の「変更の許可」に該当しない場合は、純法律的に言えば、二十四条一項の三号に言うところの技術的な能力、経理的な基礎というものは問題にはならない、少なくとも原子炉等規制法違反にはならないと、こういうことなんですね。
  163. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 御指摘のとおり、その変更が基本設計にかかわるものでなければ、工事の変更というような段階での処理でございますれば、この基準を適用しないでいいという場合もあるわけでございます。
  164. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、経理的基礎のないところへ発注してもいい、こういうことにはなるんですか、そうなると。
  165. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 技術的能力あるいは経理的能力が全くないようなところへそういう修理等が発注されるのは一般的に言ってもおかしな話でございますので、私はそういうのは原則としてあり得ないと思います。
  166. 塩出啓典

    塩出啓典君 ではこれは、だから原子炉等規制法の二十四条一項三号による違反ではないけれども、やはり財政法とかそういう立場から、国がある仕事を注文する場合に経理的基礎というものがないところへ注文するということは許されないことですから、そういう意味で、規制法二十四条の違反ではないけれども、もっと大きな財政のあり方という立場から当然経理的基礎のあるところに発注をするのが科学技術庁の姿勢である、こう判断していいわけですね。
  167. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 「むつ」の修理を進めるに当たりましては、契約の内容が相手契約業者の社内事情、特に経理的な理由等によりまして遂行できないというふうなことになってはもちろん問題でございますので、その点は十分に審査をして進めたいというふうに考えております。
  168. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題の最後に、先ほど運輸大臣への質問で私最後に質問をした問題で、大臣の御答弁はいただいていないわけでありますが、   〔理事松前達郎君退席、委員長着席〕 少なくとも今後進められるであろう「むつ」の修理の発注においては、やはり佐世保重工の再建のめどが立ち、まあ客観的にも国民の皆さんから見てももう大丈夫だと、こういう見通しが立てられるまでは当然発注等はすべきではない。それが私は、いまの原子力局長の答弁でも、意図はそうであろうと思うんですが、その点、科学技術庁長官見解を承っておきます。
  169. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) その点につきましては、ただいま政府委員原子力局長からお答えしたとおりでございます。
  170. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、原子力安全委員会が国家行政組織法の三条機関か八条機関かと、こういうことは、衆議院の委員会におきましても、また当委員会においてもいろいろ論議をされたところでありますが、御存じのように、昭和三十年原子力三法ができた当初も、三条機関、いわゆる諮問機関ではなしに公正取引委員会のような機関にせよという、そういう強い意見があったわけであります。しかし、結論的には現在の原子力委員会のような八条機関となったわけでありますが、そういうときのいきさつを科学技術庁としてはどのように認識をしておるのか、これを承っておきます。
  171. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 確かに、先生指摘のとおり、基本法並びに原子力委員会設置法が国会で審議されましたときに、行政委員会にすべしという御議論もあったことは事実でございますけれども、それよりもむしろ原子力委員会が非常に強い権限を持った諮問機関であったために、これが八条機関なのかあるいは三条機関なのかというふうなことでの若干の不明確さを指摘されまして、かなりの議論が行われたと聞いておるわけでございますが、いずれにしても八条機関で原子力委員会が発足したわけでございます。  今回、原子力委員会を三分いたしまして、規制を担当する原子力安全委員会と新しい原子力委員会に二つに分かれるわけでございますが、この法律案を提出する前に、行政懇談会におきましても十分いろいろな議論がされて、特に安全面につきましては、行政委員会ではなくて諮問機関として各省庁の行う安全規制政策を、安全審査を別の中立的な立場からダブルチェックする方がいいんだという御結論を得たわけでございます。政府もその意見を十分検討いたしまして、こういう法改正をお願いしておるわけでございますので、この精神にのっとりまして、今後万全を期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  172. 塩出啓典

    塩出啓典君 いろいろその当時の状況を私も調べてみましたが、その当時は、いわゆる松永委員会と言われる公益事業委員会、これが行政委員会として存在をしておったわけでありますが、この松永委員会がひとり歩きをして政府の意向を余り聞かなかった——余り聞かなかったと言うとちょっと語弊はあるかもしれませんが、政府考えとこの松永委員会と害われた公益襲業委員会の考え方にずれがあった。そういう先例にこりて、行政委員会にしろという強い世論を与党が押し切って諮問委員会にしてしまったと、私はこのように理解をしておるわけでありますが、科学技術庁はそれを認めますか。
  173. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 公益事業委員会のその辺の経緯につきまして私ども十分承知している立場にいないわけでございますので、はっきり御返答ができるわけではございませんけれども、ただ、この原子力委員会の性格を決めるに際しまして、背景といたしまして、昭和二十六年の政令諮問委員会の答申におきます行政委員会制度、わが国における行政委員会制度について消極的な見解が述べられているというものが若干の背景にあったものと考えられるわけでございます。しかしながら、今回の法案提出に当たりまして、この問題につきまして、先ほども御答弁申し上げましたが、行政懇談会において相当の議論が行われたわけでございます。安全の問題並びに平和利用の担保というような問題を責任を持って遂行するためには、単なる行政委員会となって一つの役所と同じ機関になってしまって、それで担保するよりも、御意見番と申しますか、中立的な立場からこの安全なりをチェックしていくという方が日本の行政組織によりなじむという判断があったかと思います。また、それを受けて、今回の政府原案でも、私どももその方がいいんではないか、いいという結論を出しまして法案を出しておる次第でございますので、その辺はぜひ御理解をいただきたいと考える次第でございます。
  174. 塩出啓典

    塩出啓典君 長官にお尋ねしますが、いま私申し上げましたのは、たしか原子力産業会議がいろいろ原子力の歴史をずっとまとめた中にあったことでございますので、そう間違いではないと思うんですね。それは過ぎたことですから、いまさらここで論議をしようという気持ちはございませんけれども、ただ、ひとり歩きをした先例にこりて、そうして諮問委員会にしてしまうという、こういう姿勢は私はよくないんじゃないか、国会においても、野党がいなければ与党だけで審議するんであれば法案もどんどん通るし、この基本法の審議にはそんなに二十時間も二十四時間もかからなくて楽ではありますけれども、やはり反対をする勢力が一つのコントロールというか、行き過ぎを是正するという意味で批判勢力が必要であるように、やはり政府の姿勢としては、この原子力平和利用においても、うるさいやつは向こうへ行けと、そういうものは切ってしまえと、こういうことではなしに、やはり政府の姿勢に反対する意見も慎重に聞いていくという姿勢は私は今後とも必要である、そう思うわけでありますが、長官のお考えを承りたい。
  175. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 先ほど来、前のいろいろな経緯をお話しになりまして、そういうような経緯もあって余り政府の言うとおりにならない点があるので今度の安全委員会も諮問委員会にしたというきらいはないかというようなお話でございますが、実は私も不勉強でございまして、そういういきさつについては十分わきまえていないわけでございます。ただ、今回のこの安全委員会をいわゆる第八条機関にしたということにつきましては、従来この委員会におきましてもたびたび申し上げておりますように、いろいろな行政懇の御議論を踏まえまして、このようにしていくことが安全委員会として安全規制の仕事をやることが一番適当であると、こういう結論に基づきまして、ここで御検討を願っているような案にして御審議を願っているわけでございます。  そこで、いま、政府反対するような組織、簡単にすぐに反対するような組織はつくらないで、何でも政府の言うことを聞くようなものをつくるという、政府考え方にすぐ賛成するようなものをつくるということはいかがであるかというふうな点について長官はどう思うかというような御発言趣旨かと存じますが、私どもは、この委員会につきましてはそのようなことは全然考えていないと申し上げても過言ではありません。申すまでもありません、これもたびたび申し上げているところでございますが、安全委員会として安全規制上示しました見解が他の要因によって覆される、あるいは影響されるということは、私は、私の信じます範囲ではあり得ないと考えておるわけでございます。まあ、理由というほどではありませんが、そういう考えを持ちますことについて気づいておりますことはいろいろございますが、第一は、御承知のように、諮問機関ではありますが非常に強い権限を持った委員会で、諮問機関でございますが、特にこれもたびたび申し上げておりますように、全く独立の権限を持った諮問機関であり、独立の仕事を、事務を認められました諮問機関でありまして、今日の単なる常識から言いましても、そういう独立の任務を持ったそういう機関に対して、いやしくもこれを干渉したり、あるいはとかくそれを曲げたりするということは常識的にいわゆる世論の上からは許されない、今日の時勢におきまして、と思うのであります。ことに、原子力行政のもう肝心かなめ、だれが考えましても肯定せざるを得ないことは、何としても原子力の安全を確保し、しかも、その点について国民の方々の御理解を得るということが最大の問題であることは、これはもう天下の常識であります。したがって、この安全委員会ができましたのも、そういう世論をもとにいたしましてできた委員会でありまして、この安全規制をいたします安全委員会がそのようないわばよこしまな考え方によってその考えを左右するということは、これはとうていそういう点からはできないと考えております。  なお、これにつきましては、御承知のように、科学技術庁としては、いわば委員会のいわゆる補佐大臣といったような立場にもあるわけでありますし、さらにまた、科学技術庁長官原子力行政全般を総括していくという責任を持っている役所でありますから、この原子力行政の最大のかなめであります安全性の確保という、そういうことのためにわざわざできましたそういう機関の決定を左右するということは決して許さない、行政的な立場からそういう安全委員会の意向を無視するようなことは絶対許さないという立場にもむろん立っていくわけでありますし、いろいろな点から言って、私はそういう心配はないものと信じているようなわけでございます。
  176. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、原子力安全委員会がいろいろ仕事をする上において、特に政府機関である原子力研究所あるいは放射線医学研究所その他の研究所との協力体制が強固でなければならないと思います。もろもろの研究所で研究し明らかとなったいろんな研究結果というものが安全審査の上に速やかに生かされてこなければいけないと思うわけであります。そういう点の協力体制は万全であるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  177. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のように、原子力研究所あるいは放医研は、原子力の安全にかかわります重要な研究を推進しておる機関でございます。そこで、安全委員会が発足いたしまして、その業務とするところがこの両機関との間に十分密接な関係が必要なことは言うまでもないところでございます。すでに、現在の体制におきまして、原子力委員会は、安全研究につきましてはそれぞれ年次計画をつくりまして、工学的な安全性につきましては原子力研究所、また、環境放射能の安全あるいは放射線の人体等への影響研究につきましては放医研が中心になって、その委員会が定めた年次計画に従って行われておるわけでございます。で、それらの成果が、安全基準の作成あるいは安全審査に当たっての考え方に従来からも反映させておるところでございます。で、安全委員会が発足いたしましてもその考え方は引き続き続けていきたい、むしろ強化してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。また、この両機関で研究されておる研究者の方々につきましても、設置許可の段階におきまして、あるいは審査委員として、あるいは基準をつくる場合の専門委員としても随時御参画をいただいておるところでございまして、これらの機関がおさめられた成果は原子力安全委員会等に十分反映させるようにこれからも対処してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  178. 塩出啓典

    塩出啓典君 御趣旨はわかりましたし、そういう方向にやってもらわなければいけないと思いますが、しかし、今回提案された法律を見る限りは、そういう原子力安全委員会とこれら諸機関との協力体制については、はっきりとしたルールなり法律の中に明文は何もないわけですね。そういう点は不十分ではないのか。たとえば、今後原子炉安全専門審査会のメンバーに必ずこういう研究所のメンバーを何名か加えるとか、こういうルールでもできれば次善の策としてはいいと思うんですが、現在そういうものは何もない。なぜ法律の中にちゃんと明示しなかったのか、この点はどうでしょうか。
  179. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のように、先生の御趣旨が法律上書かれてないのは事実でございますが、私ども先生の御指摘の御趣旨は運用で十分対処できると考えておるわけでございます。そこで、現段階においてはそういうことで運用で対処させていただきたいと思っておりますが、たとえば先ほども御答弁申し上げましたが、安全審査会には現実にも相当の数の方が安全審査の委員となっていらっしゃいます。この辺の考え方は、まあ何と申しますか、ルールと申しますか、選定にあたっての考え方として、十分御意見を受けとめまして今後運用をさせていただくようにしたいと考える次第でございます。
  180. 塩出啓典

    塩出啓典君 基本法の第二十一条に、原子力委員会と原子力安全委員会が相互に緊密な連絡をとらなければいけない、こういうような条文があるわけでありますが、本来、原子力委員会と原子力安全委員会というのはそれぞれ独立をした諮問機関でございますので、こういうものがなぜ連絡をとらなければならないのか、安全委員会の独立性が損なわれるのではないかと。したがって、こういう条文は何ら必要はない、運用でやっていけばいい問題であって、先ほどのお話のように、わざわざここにこういうものを設けた意図はどこにあるのか、それを伺っておきます。
  181. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 行政懇におきます答申にも指摘されておることでございますけれども、それぞれ独立の機関であることは御指摘のとおりでございますが、同じ原子力の開発利用に関します委員会でございまして、その運用に当たりまして両委員会の間にだれも見ていないと、間隙を生ずることがあってはきわめてゆゆしい問題になるわけでございます。そういうことを配慮いたしまして、連絡を密にする必要をうたっておるわけでございます。で、この連絡を密にするということは、両者の権限を調整し合うということではなくて、それぞれ独立の機関が間隙を来さないように連絡を密にするという趣旨の条項でございます。
  182. 塩出啓典

    塩出啓典君 先ほど、原子力安全委員会サイドと原子力研究所あるいは放医研のようなものと大いに連携をとらなければならない、そういうところでも運用でやっていくと。何ら法律の上に、条文の上には明記をしていないわけですね。したがって、そういう点から考えるならば、いま安全局長が言われたように、当然政府部内のお互いの省庁の間においては連携をとらなければならないことは、これはもう当然のことでありますし、原子力委員会あるいは原子力安全委員会も、その事務局は同じ科学技術庁の中なんですからね、したがって、いま言われたようなことは運用として当然やっていくのが、ほかの例から考えても妥当な考えであって、わざわざこれをこの中に入れなければならない、こういうものは非常に私は理解しがたいんですけれども、こういうような例はほかにもありますか。
  183. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) ほかに例があるかないかは私知らないところでございますが、いままで一体の現行の原子力委員会を、規制の所掌のものにつきまして、規制分野を安全委員会に所掌させるということで二分割しに非常に特殊な例であろうかと思います。この二分割したときに、私どもの脅え方としては、その際に連絡を密にするというのは当然であろうと実は考えておる次第でございます。
  184. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、当然のこと、だから何も法文に書く必要はないわけですよ。総理大臣科学技術庁長官は同じ福田内閣ですから、恐らく連携をとらなきやならないのは当然じゃないかと思うんですね。総理大臣方向科学技術庁長官方向が行き違っちゃ困るわけです。しかし、恐らく科学技術庁長官総理大臣と連携をとらなきやならぬという法律は私はないんじゃないかと思うんですがね。そういう点で、なぜこの二十一条を設けたのか、そういう点は非常に納得しがたい、そのことを申し上げておきます。これはこれ以上論議をしておりますと時間がございませんので、この程度にいたします。  それから、原子力委員会と安全委員会の対等性の問題がいろいろ衆議院、参議院等でも論議されてきたわけでありますが、原子力委員会の長は大臣でなくてもよかったんじゃないかと、原子力委員会の委員長ですね。科学技術庁長官原子力委員会の方だけ長になるということは好ましくない。強いて理由を挙げるなら、いままでの原子力委員会の長が科学技術庁長官であったからそれを継続した程度の理由であって、科学技術庁長官でない人が原子力委員会の長になった場合は非常に困るという理由は何らないと思うが、その点はどうですか。
  185. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 原子力委員会は主として原子力の開発利用の推進面を担当するわけでございますが、当然のことながら、その原子力開発利用推進面と申しますと、各省庁の行政ときわめて密接に絡み合ってくる問題になるわけでございまして、安全の規制という問題を所掌する安全委員会とはおのずからその性格が基本的に違うわけでございますので、そういう意味から、閣議等に出席できる大臣委員長を兼ねる方がよりその機能を十分に遂行し得るというふうな配慮、これは行政懇の意見でもあるわけでございますが、この意見も尊重して、このようにした次第でございます。
  186. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、諮問委員会の性格からするならば、その諮問委員会の意見というものを参考にして行政というものが一つの方向を決めていく、したがって、科学技術庁がこういう方向をしたいということに対して、諮問委員会がそれはそうだと、そこにその信頼性が加わってくると思うんですね。科学技術庁もそう言っているし、諮問委員会もそう言っているんだから、科学技術庁の方向は正しいんじゃないかと、こういうことで、いま言われたようなことであるならば、これは諮問委員会の原子力委員会の意向を受けて科学技術庁長官が閣議でやっていけばいいわけなんですから、何も諮問委員会にまで科学技術庁長官が親分として乗り込む必要は何らないわけでありましてね。むしろ、そういうことになりますと、原子力委員会というものと科学技術庁というものが同じ穴のムジナという国民の批判を受けて、結局諮問委員会の客観性というものが失われていくことはむしろマイナスであると、私はそう思うのですけれどもね。その点どうですか。
  187. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 確かに先生お説のような観点からは、この原子力委員会の中立性あるいは客観性という面からは、国務大臣委員長とを同一人物があわせ兼ね務めるということは不適当であるという点も私どもうなずけるわけでございますが、私が先ほど申し上げましたプラス面との利害得失の考え方でございまして、両方とももちろんかなえれば一番よろしいわけでございますが、なかなかそれもできないというふうなことでございまして、ある程度、この委員長と国務大臣とが同一人物であるという点は、この原子力委員会は合議制でございまして、国務大臣たる委員長も一票を行使し得るにしかすぎないということも配慮しまして、このようなことにしたわけでございます。
  188. 塩出啓典

    塩出啓典君 兼任する場合のデメリットもあるということを率直に認めましたので、これ以上余り言いたくありませんけれども、私は、現在の原子力行政で一番大きな問題は、予算をとることももちろん大事なんですが、あるいは各省庁の連絡をすることも大事だと思うんですけれどもね。それ以上いま政府が挙げて努力をしなければならないことは、国民のやはり理解と協力を得ることじゃないかと思うんですね。そうすると、予算をとったり各省庁との連携において多少のデメリットがあっても、国民的コンセンサスを得る方によりメリットがあるならば、その方を採用すべきではないか。そういう点で、原子力委員会の長を大臣としたということは非常によろしくないんではないか。こういうことを主張として申し上げておきます。  それから最後に、今後この新しい体制のもとにおきましては、「むつ」のような試験炉、試験船、あるいは原子力研究所等にできる試験炉、そういうものは基本設計から詳細設計に至るまで全部科学技術庁が責任を持たなければいけないわけでありますが、科学技術庁そのものがやった審査に対して安全委員会のダブルチェックを受けるようになるわけですね。その場合に、科学技術庁が安全委員会の審査を受けると、この安全委員会の審査と科学技術庁の審査というものは一緒ではダブルチェックにはならないわけで、それと別個の科学技術庁としての独自の責任ある審査をやっていかにゃいかぬ。それは基本設計しかり。しかも、詳細設計以後になってくると、これは主として科学技術庁がやっていかなくちゃなりません。そういう点から、科学技術庁としては、安全委員会における原子炉安全審査会のような一つの科学技術庁としての諮問機関と申しますか、学者のグループ、そういうものを考え方針はあるのかどうか。そういうものは考えないで、科学技術庁の現在の体制の中だけでやっていくのか。そのあたりの方向を伺っておきます。
  189. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のとおり、科学技術庁としては、研究炉あるいは研究開発段階の炉の規制を一貫して見る立場になるわけでございます。そこで、この法律改正で行政庁の審査を安全委員会がダブルチェックするという体制の中でこの問題を対処するわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、行政庁の審査、科学技術庁の一次的な安全審査を十分に行う責任を新たに付加されたわけでございます。したがいまして、これに対処するため、科学技術庁の中に原子炉の設置許可のための安全審査を実施する専門家による場をつくりたいというふうに考えております。そこで、五十三年度の予算におきましても、現在十四、五名の専門家を擁してこの検討会を持っていく予算も認められておりますので、これをもちましてわれわれの審査に御意見を賜るような各分野の専門家の検討会を持ちまして、それで対処していきたいというふうに考えております。その際、私ども科学技術庁としては、また安全委員会の事務局もいたしますので、安全委員会の安全審査委員とそういう先生方がダブらないような配慮も当然しつつその運用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  190. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、まず原子力安全委員会のダブルチェック機能に関する幾つかの問題でお尋ねをいたしたいと思いますが、午前中の吉田委員の御質問の中でありましたように、行政庁、開発官庁が基本設計の第一次審査を行う、安全委員会がダブルチェックの審査をやるというその場合に、双方の意見が食い違った場合に安全委員会の意見を優先をするんだ、結局御答弁では食い違うということはまああり得ないということでありますが、仮定の場合、食い違ったときには安全委員会の意見が優先をされるんだという御答弁を伺ったかと思うんですけれども、そういうことですか。
  191. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のとおりでございます。今回原子力安全委員会が発足いたしますと——法律上原子力委員会の意見を聞き、これを尊重しなければならないということになっておることは、すでに法律で明定されておるわけでございます。しかも、その上衆議院の段階におきまして、従来「尊重しなければならない。」ということを「十分に尊重しなければならない。」というふうに修正していただいたわけでございます。それと、衆議院段階におきましては、さらに附帯決議におきまして、この「十分に尊重」するということは、これを守って行政処分等を行う旨の意味であるということの附帯決議をいただいておるわけでございます。したがいまして、私ども行政庁といたしましては、これを踏まえまして、安全委員会が出しましたダブルチェックの意見はこれを守っていくという基本理念をもって対処していきたいというふうに考えておるところでございます。
  192. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ただいまの御答弁で、法案の修正なり附帯決議を引用して述べられておる。そのとおり本当にもしも食い違った場合に安全委員会の意見を優先をするんだという、それがまさしくそのとおり厳密に行われていくというのであればそれでいいわけですけれども、ただこの点については、依然としていままでのずっといろんな歴史的な経緯を振り返って、やはり今度の法案改正というのは開発官庁優位の行政で進んでいくんではないかという、国民がその点を非常に心配をして見ているという状況があると思うんです。したがって、なおその点を念を押す意味でお尋ねをするわけですけれども、安全委員会の意見が優先をするんだという意味合い、もっと言えば開発官庁は安全委員会のダブルチェック審査に基づく意見を守らなければならない、こういう意味合いの事柄を、たとえば開発官庁の安全審査指針のようなものになると思うんですけれども、そういうところにきちっと明文化をする、そういう意思はございませんか。
  193. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 現法律体系でもそうでございますけれども、行政庁が、今回の改正によりまして主務大臣が三つに分かれるわけでございますが、設置の許可を行うに当たりましては、原子力委員会並びに安全委員会のそれぞれの所掌に分かれて意見を聞かなければならないということがはっきり明定されておるわけでございます。しかも、原子力安全委員会並びに原子力委員会の意見というものは十分に尊重しなくちゃいけないというのもそれぞれ法律で定められたことでございます。したがいまして、内規でそういうようなものをちゃんとつくりなさいという御指摘ではございますけれども、法律ではっきり定められておるということが一番の担保ではなかろうかと実は私ども考える次第でございます。
  194. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 法律で定められておるという言い方をされますと、法律で定められておるのは、十分に尊重するという定め方ですね。附帯決議で、安全委員会の意見を守るという附帯決議がされておる。参議院がどういう附帯決議をするのかというのはこれからの問題だと思いますが、法律で定められておるものは、いま言いましたように十分に尊重をするという定め方なんで、これでもってはっきりしているというふうにはちょっと距離があると思うんです。で、やはり答弁をされておる、守るんだと、安全委員会の意見が優先をするんだという、このことを何かの形で明文化をするという必要があるんじゃないかということですけれども、これは科技庁と通産省にも関係する問題でありますので、科技庁はいま一度、通産省も御答弁、双方再度お願いをしたいんです。
  195. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 新しく安全委員会が発足しました際には、ただいま先生の御指摘のような点につきましても、十分安全委員会として踏まえてこれから安全委員会の業務を進めるわけでございますが、安全委員会としては恐らくその国会の御趣旨を踏まえて各行政庁に対して考え方を指示してまいることになろうと思います。また、各行政庁におきましては、この考え方を心構えとしていっでも念頭に置いて対処していくというふうな形になっていくものと考えておる次第でございます。
  196. 武田康

    政府委員(武田康君) 私ども従来から、原子炉の設置許可等に際して政府原子力委員会の意見を尊重してきたところでございますけれども、今後とも私どもは許可等に当たりまして、原子力委員会、原子力安全委員会の御意見を十分に尊重一し、いわば守って、そして原子力発電の安全確保というものに万全を期していきたいと思っているところでございます。
  197. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ぜひ御検討願いたいと思うんです、やはり国民が注目をしておる一つの焦点ですから。なるほど当局は国会の場でも、開発官庁側は安全委員会の意見は守るんです、ひとつそれを御信用いただきたいという、こういうところかと思いますけれども、しかし実際は、表に出ます法文上の規定は「十分に尊重」という表現でありますから、守るという表現ではないわけですから、その点を何かの形で、何らかの規定でそういうことを明文化をするというのが、国民の心配をぬぐって国民合意の原子力行政を進める上で私はぜひとも必要なことだ、それはやってもいいことだろうというふうに思いますので、ぜひ御検討願いたいと思うんです。  それから、発電炉の認可以降のたとえば詳細設計の安全審査、それから運転中の安全規制、こういった問題について安全委員会がどこまでタッチができるのかということで、いままでの御答弁では、安全委員会が必要と認めたものについては安全審査会なんかにも検討をお願いをして、開発官庁から必要な報告も求め、いろんな検討をやるということでありますけれども、ただ、本来的に安全委員会が詳細設計、安全規制、こういうところまで権限を持つ、すべきではないかという同僚委員の主張に対して、一つの答弁として、そこまで安全委員会が手を広げるとするとかなり膨大な人数が要るという言い方が前回されておったと思うんですけれども、それほど膨大な人数が要るんでしょうか。もしそうなるとしたらどれくらいの人数が要るのか、試算をされたことがありますか。
  198. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 正確な試算をしたわけではございませんけれども、現在のたとえば発電炉につきましては、通産省が詳細設計並びに設工認以降の認可検査等をやっておるわけでございますが、それにたぐいすると申しますか、相当の人数が必要であろうかというふうに考えられます。
  199. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは逆に通産省にお尋ねしますけれども、通産省では、法改正後の体制としては、その細かい区分はできませんにしても、前回御説明いただいておるところによりますと、詳細設計を担当をする安全第一課の中の詳細設計担当者として十三人、それから第二課のいわゆる運転中安全規制二十一人、ですから合わせますと三十四人、この程度の人数ではないかというふうに私は判断をするわけですけれども、ですからこれが膨大な人数でとても予算上できないと、そういうことではないんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、一つはいま挙げました数字、通産省の方で間違いがあれば訂正をしていただきたいし、そのことの関係で得度局長にお尋ねをします。
  200. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 私どものただいまの考え方は、確かに詳細設計以降の確認行為に安全委員会がダブルチェックをすべてに行うという考え方をとっていないのは、膨大な件数ということもございますけれども、それと同時に、この詳細設計以降のいろいろな事柄は、基本設計の詳細な確認的な行為が相当の部分を占めるわけでございます。したがいまして、原子力安全委員会がダブルチェックをしますのは、行政庁の行ったものを高度の判断をもってダブルチェックをするという趣旨からいたしますと、細かい詳細設計の確認的行為は行政庁に任せて、安全委員会が必要と認める基本的な重要な事項につきまして今後このダブルチェックを行っていくのがいいんではないか。確かに通産省で三十人前後の方がおられるわけでございます。それを当方も、安全委員会も同じような事務体制をとってチェックをするということは不可能ではございませんけれども、これは、この確認的な行為をするときにある意味では二重な手間ではなかろうか、それよりも、安全審査に当たりましてこの点は非常に重要な問題であるという指摘を安全委員会がいたしまして、これは現実にその原案をつくるのは安全専門審査会でございますけれども、それを行政庁に指示いたしまして、その詳細設計あるいは工事の認可、それぞれの段階におきましてその指摘したものにつきまして行政庁から報告を受けてそれを審議して、必要があれば再度行政庁に指示をするという体制がよろしいんではないかというふうに考えておる次第でございます。  なお、この考え方は事故等が起きましたときも同様に扱っていきたいというふうに考えておることはもちろんでございます。
  201. 武田康

    政府委員(武田康君) 先ほど先生の御指摘になった審査、検査関係、詳細設計以降運転までの人数でございますけれども、中央、つまり資源エネルギー庁の内部の人数といたしましては、細かいことは別にいたしまして、先生の御指摘のとおりでございます。ただ、同時に私ども地方通産局という出先を持っておりまして、そこに検査官だけでたしか五十人ぐらいでございますが、そのほか発電関係者ということですともっと大きな人数でございますが、そういう職員も参加しておりますので、その点だけ補足させていただきたいと思いまして、お答えさせていただいたわけでございます。
  202. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いま科技庁側の御答弁は、安全委員会の性格づけをあくまでダブルチェック機能という、これが最もよろしいんだという考え方に立っての、したがって詳細設計から安全規制、ここまで安全委員会が見ていくという、その人数にどれぐらいの人数が要るのか、そこの多少はさりながら、ダブルチェック機能にとどめたらいいんだという前提で御答弁になっているわけですけれども、しかし、本委員会でも一貫してほかの委員からも出ていますように、この安全規制行政の安全行政を原子力安全委員会のもとに一貫化する、こういうやり方こそがいま国民が注目をしておる状況のもとで、仮に法改正を行うとすれば、その方向こそが賢明な方向ではないかという、この一つの大きな立論があるわけですね。こういう立論に立って考えてみた場合に、それほど膨大な人数が要るというわけでもないだろうということの問題として提示をしておるんだということでありますけれども、そういう点で再度御答弁いただきたいと思うんですけれども、ついでに詳細設計以降の問題について行政庁に、開発官庁に安全委員会が報告を求めることができるということになっていますが、その報告を求めてそれの検討を行う。これは書面審査だけでいくのか、あるいは必要によっては安全委員会として現地調査をやるということもあるのか、その点もあわせてお尋ねをします。
  203. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 詳細設計以降のチェックにつきましては、すでに現段階におきましても原子力委員会でそのやり方につきましての決定があるわけでございますが、安全委員会が発足いたしますと、新たな観点からこの辺の御検討もいただいて決定するわけでございますけれども、先生指摘の書面審査だけでなくて、必要があれば現地の調査をする等々の措置を講じることになろうかと考えております。
  204. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと前段の質問……。
  205. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 前段のとおっしゃる御趣旨がちょっとわからないのでございますが……。
  206. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 一貫して御答弁の大前提は、安全委員会というものはダブルチェック機能にとどめたらいいんだという前提からこの話がされているわけですけれども、ほかの委員からもいろいろ出ていますけれども、この委員会の議論の中で、安全委員会のもとにこそ安全行政を一貫化する、こういう法改正をむしろやるべきではないかという議論があるわけですね。そういう点から免れば、そういう見地から詳細設計、運転中の安全規制問題という、このことによって国全体の予算として大きな何の変動が起こるわけではないわけでしょう。どこに不都合が起こるんですか。そういう立場での法改正をやったときに不都合が起こるんですかということを聞いているんです。
  207. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 現在御審議願っております法案の考え方とは違う先生の御指摘でございますが、仮にそういう、安全委員会が一貫してやるというたてまえでの機構を考えた場合には、それほど大きな差がないということは言えるかと思っておりますが、今回私どもがお願いしております法案の趣旨は、原子炉の設置の許可から建設、運転までの安全規制をそれぞれ所掌をいたします行政庁が一貫して責任を持って事に当たるという改正と、それから安全委員会の新設ということを二つの柱をお願いしておるわけでございます。  そこで、行政庁が責任を持って規制を実施するに当たりまして安全委員会がその安全の問題に対してどう対処すればいいかという考え方のいろいろな行政懇等の御議論も踏まえて、安全委員会は、行政庁の行う安全審査であるとか詳細設計の認可その他をダブルチェックするという考え方中心に法律をまとめてきたということでございます。私どもの考え方はそういうことでございますので、先生の御指摘ではございますけれども、私どもとしては、安全委員会がそのようなダブルチェックをするのが一番いい方法だというふうに考えておる次第でございます。
  208. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうもまだ説明が納得できませんけれども、なおあわせてお尋ねしますけれども、そういう詳細設計以降の諸問題について安全委員会が開発官庁に報告を求めて一定の検討を行い、その検討に基づく意見ですね、この意見は、さっきのは基本設計問題でお尋ねしておったんですが、念のため聞くわけですけれども、詳細設計以降の諸問題について安全委員会が提出をする意見を、開発官庁はそれを守るということで確認をしてよろしいわけですか。
  209. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 詳細設計以降も同じことと私どもは考えております。
  210. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 通産省も同様ですか。
  211. 武田康

    政府委員(武田康君) 先ほど牧村局長からもお話がございましたが、現在の体制のもとでも原子炉設置許可の段階等でいろいろ、あるいは重点事項あるいはアフターケアすべき事項というふうなことでお話の出たことにつきまして、私ども詳細設計なり運転なりという段階で起こりましたことについて、あるいは考えるべきことにつきまして、従来も、すでに現在でも原子力委員会に御報告し、あるいはこういうことで処理するというような方針を御提出し、そして御意見を承りまして、現在で言えば原子力委員会の御意見を尊重して物事の処理をしているところでございます。今度の新しい体制のもとで安全委員会が発足された後、同様な関係が安全委員会との間で生じる、詳細設計以降の段階につきまして生じることと思いますけれども、現在原子力委員会に対して行っておりますと同様、安全委員会に対しまして安全委員会から御指摘があるような事項について御報告をし、あるいは御意見を伺い、そして御意見がある場合には御意見を尊重すると、こういうような体制は今後とも続けるつもりでございます。
  212. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 御意見の尊重ということで聞いているんじゃなくて、尊重というのは、いわば「十分に尊重」という法律自体に修正案で明記されたんですから、それは当然のことということで、問題はそれを守るか守らぬのかというこの点でお聞きしているわけですけれども、それで、再度ひとつ科学技術庁と通産省に次回——次回になりますか、次々回になりますか、最終的な段階でお尋ねをしますので、よく内部で御検討いただきたいと思うんですけれども、私は国民が注目をしておる問題ということとの関係でその点を対外的にも明らかにする、そういう意味で何かの形でそれを明文化をする、安全委員会から出された意見に開発官庁は従うんだということを明文化をするという問題をいま一度ひとつ御検討いただきたいというふうに思います。  次の問題は、原子力委員なり安全委員の選任の方法の問題について、ほかの委員からもいろいろ御意見が出ておりますけれども、前回少し角度を変えて、私は安全審査会の専門委員の人選について、今日の日本の学術研究最高の英知を集める、そういう意味日本の学者の最も広範に網羅をする代表的な機関とも言うべき学術会議意見もひとつ十分くみ入れてしっかり安全審査が行われるような、そういう人選を進めていただきたいという、そういう問題を提起をして、いろいろやりとりはありましたけれども、最終的にそういう方向で検討しますという御答弁をいただいておるわけでありますけれども、同様な観点から、これから新たに選ばれるのは安全委員でありますけれども、法改正にもしなれば。この安全委員の人選について、同様の観点から、そういう学術会議意見もひとつくみ入れて、誤りのない人選を進めるというこの問題について、熊谷長官どうでしょうか。
  213. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) 安全委員会の人選につきましては、言うまでもありませんが、その任務の非常に重要性にかんがみまして、きわめて抽象的な言い方ではありますが、中立的で、しかも安全について専門的かつ大局的な見地から政策判断を行い得る人材を充てる必要があると考えるわけであります。もちろんそのほかにいろいろな人間的な条件は必要でありますが、特にそういう点を重視したいと考えるわけであります。したがいまして、その人選に当たりましては、学術会議に限らず、学術会議も同様、御意見がある向きにつきましては、お話があればなるべくできるだけ広い範囲でお聞きしたいと考えているわけであります。これらの御意見を参酌しながら、各界の人材を考慮に入れて、これは科学技術庁の責任におきましてなるべく多くの方々の御納得を得られるような人選をも考えてまいる所存でございます。そういうことでひとつ十分善処いたしたいと考えております。
  214. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 先ほど塩出委員指摘をされておりましたけれども、原子力安全委員会をなぜ行政権限を持った委員会にしないのかということで、いろいろな答弁がなされておりましたけれども、一つは中立性を持たせる必要があるという理由が言われておりますけれども、これは安全委員会の事務局が中立性を持った独立機関ではないということで、その説明というのは首尾一貫をしていないと思うんですね。それから、中立性とか独立性とかという表現を使われているわけですけれども、そこでどうなんでしょうか、いま原案として出されておりますような、委員会は諮問機関、事務局は行政庁の科技庁に属すると、こういうのが原案の姿ですね。で、私どもが主張していますのは、委員会は行政権限を持つ、事務局も行政庁と独立をした独立の事務局、この姿の方がどう考えてみたって中立性、独立性が強いというふうに判断をするわけですけれども、いや後の方、私が言うた後の方がまずいんだという反論がありますか。
  215. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 今回の法律改正をお願いしております一つの大きなねらいに、行政庁が行う安全審査を、中立的な立場で、役所とはやや離れた立場でダブルチェックするという安全規制のファンクションをお願いしておるわけでございます。これを安全委員会を行政委員会にいたしますと、これは一つの行政組織になるわけでございますので、言ってみればダブルチェックをする人はほかにいないことに相なります。こういう点で、私どもは、諮問機関ではございますけれども、非常に強い権限を持った安全委員会を設置していただきまして、各省庁が行う安全審査につきましてそれを中立的な立場でダブルチェックするという方がむしろ安全の確保を図りやすい、また一般の国民の方々の御理解を得やすいというふうに考えておる次第でございます。
  216. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 だからこそ、先ほども言っていますように、安全委員会というものをダブルチェック機能にとどめるというここの、すべてそこを前提の話じゃなくて、本当に国民との関係において原子力行政の安全が確保されるような行政体系をどうつくり上げるかという点で、安全委員会が、これがこのもとに安全行政が一貫化される、こういうやり方もあるということですね。そこで、この話は幾ら問答をやっておっても進まぬと思うんですけれども、いま一度お尋ねをするわけですけれども、こういう法改正をやって、しかし、しばらく実態を見て、やはり安全委員会のもとに一貫化をはかる、そして、安全委員会が行政機関として独立の事務局を持つ、強力な行政権限が発揮できるという必要のある場合には、そういうことも一定の時期には検討するということは、当局には念頭にありますか。
  217. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 現段階におきましては、この法案を通していただきまして、安全規制のわが国における体制を確立したいということでございまして、いまの段階でこの安全委員会を行政委員会にするという考え方は持っておりません。
  218. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、いまの答弁は大変不満ですけれども、次に進みます。  行政懇報告が提起をしている幾つかの問題についてお尋ねをいたしますが、一つは公聴会ですね。科技庁側から提示をされています方針は、定着を図った上で規則化をするというのが方針になっておるわけですけれども、この言い方が根拠になっていろいろトラブルが予想されるから公聴会を実施をしていくということがためらわれたり、間々実施がされないということがふえていくということになれば本末転倒だと思うんですけれども、当然住民との対話、合意、これを大前提に原子力行政を進めるというのが言うまでもがなの問題でありますが、そういう点で、行政懇報告との関係で表向きの方針はいまのような方針になっているんだけれども、しかし今後は、一つは第一次公聴会については通産省、第二次公聴会についていえば安全委員会が主宰をするという主宰形態になりますが、公聴会は必ず実施をするというふうに約束できますか。
  219. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 原子力安全委員会発足後直ちにこの公開ヒヤリングの実施の仕方につきましては御検討いただき、それに基づいて必ずやるつもりでございます。ただ、過去の経験等から見まして、やれなかったケースもあるわけでございます。その場合には何らかのそれにかわる方法等々を考えてまいりまして実施してまいりたい。それから今後は、現在の原子力委員会の公聴会に対する考え方は、すべての炉に対してやるということにはなっておりませんが、今後はすべての新設される原子炉につきましてやってまいりたい、このように考えております。
  220. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 通産省は。
  221. 武田康

    政府委員(武田康君) 行政懇の意見にもございます公開ヒヤリング第一次につきましては、私どもがいわばその主宰者、関係各省庁とは協力いたしますが、主宰者のポジションでございます。この法改正に伴います規制行政の一貫体制の実施、それがその後早急に公開ヒヤリングを開けるように、いま詳細なやり方等々につきましていろいろ検討しているところでございまして、公開ヒヤリングを実施していきたいという方針で現在進んでいるところでございます。
  222. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その御答弁のちょっと末尾の部分が気にかかるのですけれども、実施いたします、ただしいままでの経過もあるのでというあれですけれども、とにかく開いてみて、開催をしてみて、しかし、事前の住民との対話不十分のためにいろいろなことが起こる場合があるかもわからない。しかし、少なくとも主宰をする上での責任を持っておる通産省、第一次について言えば通産省、第二次については安全委員会、こことしては、とにかく公開公聴会というものはやるということをはっきりすべきだと思うんですけれども、何か、ただしというのがつくと、結局はやらぬ場合もあるのかという理解が広がっていくと思うんですけれども、その点もう一遍ちょっと念のために。
  223. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先ほどお答えいたしましたのは、先生の御指摘のとおり、やることに、やるつもりでございます。これは安全委員会でございますので、私、事務局として申し上げているんですが、やる方針を打ち立てていただきたいと考えておるわけでございます。それで、ただ、いままでの経験で、やるんだと決めていろいろ地元と折衝いたしましたときに、やれないケースもあったわけでございます。そこで、そういうようなケースの場合には、そのほかの手段、たとえば文書によって意見を求めるというようなことがあったわけでございますが、それに対してお答えをしたというようなケースもあったわけでございますが、今後どういう−地元の対応によりましては不可能なことがあった場合には、それにかわることを何か考えていきたいということを申し上げたんでございまして、方針としては、すべての発電炉についてやるのだという方針で対処してまいりたいというふうに考えます。
  224. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 通歴省もいいですか、そういうことで。
  225. 武田康

    政府委員(武田康君) 私ども第一次ヒヤリングにつきましては、先ほど申し上げましたようにすべての原子力発電所につきましてやる方針でございます。考え方としてやはり地元でということが念頭にございますので、やはり地元の御協力も得なければいけません。で、私どもの方針は確定しておりますけれども、やり方の細目というのはいま詰めておるところでございます。そういったような意味で、さっきその方針でいま進行しておるところでございます、こういうことを申し上げたわけでございます。
  226. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 公聴会を開催をするというのはいわば当然のことでありますが、問題は、その公聴会を開いてもそれに参加できるというのは、建物の関係で参加できる人数に制約があるとか、それから実際に対話、質疑応答をやるのに時間的な制約があるとか、当然そういう制約が伴ってくるものです。  そこで、たとえば公聴会を開催をする以前に、一定の時期に、これは第一次公聴会のかかわる問題ですけれども、電力会社の方の原子力発電所の設置計画、それからこれで安全が保障されるのだという根拠、こういうものを文書で公表をして、公聴会に参加できないような人でもそれに目を通して必要な意見が述べられる、しかるべき方法で意見が述べられる、こういう方法を十分とりませんと、制約のある公聴会だけですべて終わり、意見を述べるのはそれで終わりということでは、結局公聴会は開くだけだということになると思うんですね。あるいはまた公聴会を実施した後、その会の質疑応答の議事録の要点ですね、どういう質問が出てどういう答弁があったかという議事録の要点、これを公表をして、これも広く意見を求める、こういうことが公聴会とあわせ行われませんと、本当に住民の十分な合意のもとに事を進めるということになっていかぬと思いますけれども、そういうことは考えられていますか。
  227. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) すでに、原子力委員会におきまして行いました公聴会におきましてもすでに行われておることでございますが、安全審査にかかわる資料は公開しておりますし、また公聴会後に先生がおっしゃいますような議事概要と申しますか、そういうものも取りまとめて報告しておるところでございますので、当然新しい体制におきます公聴会におきましても、先生指摘趣旨を入れたもので行われることになると考えております。
  228. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それからもう一つの問題は、公聴会でいろいろ出された意見が聞きっ放しではなくて、行政にそれがどういうふうに生かされるのかという、ここが住民との合意のもとに事を進めるという点で非常に重要になってくると思うんですけれども、その出された意見を行政にどう生かすかという点についてはどういうことを考えておられますか。
  229. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) この公聴会を開く意味は、先生指摘のように、安全性並びにその安全性が確保されるならばその原子力事業が必要な理由を国民に十分な意思疎通を行い、特に地域住民の御理解を深めるという趣旨の問題でございますので、当然公聴会で出ました意見につきまして、私どもは対話の方式でそれに答えられる段階のものはお答えするということに努めるとともに、安全審査なりにそれを反映していくというふうなことが必要であると思います。したがいまして、公聴会の制度を検討いたします際に、当然その問題は重要な事項として検討されるべき問題だと考えております。
  230. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと念のためにお尋ねしますけれども、安全委員会が安全審査の結論を出される前に、公聴会でいろいろ出た意見、これについて中間報告的に、安全委員会としてはこれこれこれこれの意見についてはこういうふうな意見、こういうふうに思うのだという中間報告を出して、そこで事前になお意見があれば意見を求めるという手だて、あるいは通産省の場合で言えば、同様に第一次審査の結論を出す前に、そういう通産省としての中間報告を文書で発表して、広く住民の意見を求めるという手だて、こういうことをやられるつもりはあるかどうかという点はどうですか。
  231. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 私どものいま考えております安全委員会におきます公開ヒヤリングにつきましては、その審査の初期の段階におきまして住民の方々の御意見を承って、それを安全審査に反映していこうというふうに考えております。したがいまして、その答えは当然安全委員会が行いました安全審査の報告書に盛り込まれていくことになると考えておりまして、いまの段階におきましては、先生のおっしゃいますような中間報告という形のものは考えておりません。
  232. 武田康

    政府委員(武田康君) 私どもの主宰いたします第一次につきましては、これは電源開発調整審議会の前の段階でございます。そういう意味では、電源開発調整審議会でいろいろ御議論のある場合にそういったものが参考になろうかと思いますが、私ども自身、通産省自身で考えますと、その後私どもが第一次審査、安全審査を担当いたします。で、第一次公開ヒヤリングの段階におきましても安全に関する議論もいろいろ出てこようかと思いますが、その過程で出てまいりましたような御議論等々につきましては、私どもの安全審査の過程に有用な御意見はそれなりに取り入れる等々のことで、安全審査そのものにも反映をさしていきたいと考えております。
  233. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私がここで言っておりますのは、どうこの住民との合意のもとに原子力行政を進めるかという手だての一つの例として言っているわけですけれども、いままでのままの安全審査の結論というのが、いや目下検討中目下検討中と、こう言いながら、ある日突然ぽんと決定と、こういう発表が行われて住民の側からの一層の反対を大きくするという、こういう行政のやり方というのが問題を複雑にしてきた経緯もあると思うんです。ですから、私がいろいろ調べておるあれでも、たとえばアメリカなんかではそういう中間報告を何回かやって、必要な意見があるなら意見をずっと求めて、何遍もそしゃくをして、それで結論を出していくという努力も最近始められている模様です。ですから、ぜひそういう点は科技庁、通産省それぞれいま提起をしておる問題についてはお考えを願う必要があろうと思います。  もう一つ、公聴会の問題に関係をしてですけれども、当面をしています「むつ」改修問題ですね、核封印改修という、これがそれじゃ本当に安全性の保障をされる、そういう改修になるのかどうか、核つきと何の変わりもないじゃないかという大いに議論のあるところです。もちろん長崎県議会とか市議会とか、こういうところでも議論がやられるわけですけれども、住民サイドの、あるいは学者、研究者に集まってもらって、そういう住民サイド、広範な学者、研究者を含む当面する「むつ」改修問題についての公聴会を開く意思はありませんか。
  234. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 私どもは、従来ともこの原子力船「むつ」の開発の必要性というものにつきましては、地域住民の方々に十分な理解をいただく必要があるということを認識いたしておりまして、五十一年に長崎県と佐世保市に修理港受け入れの要請をいたしまして以来、現地に事業団並びに私どもの出先の事務所もつくりまして、いろいろ地元との連絡を密にする努力をしてまいったわけでございますし、また、その間これまでに四百回以上に及ぶ説明会を開きまして、「むつ」の修理の安全性、必要性といったふうなことにつきましていろいろ御説明しまして、地元の理解、協力が得られるように進めてきたつもりでおります。ただいまは県議会と市議会とで本件を検討しておられるわけでございますが、今後ともこの問題の解決のために一層地元の御理解が得られますように必要な説明会等は続けてまいりたいというふうに考えておりますが、これは先生がいま御指摘の行政懇の答申で見ますれば、「公開ヒアリング等のあり方について」という中に、「公開ヒアリング」、それから「シンポジウム」、「説明会」といった三つのものがございますけれども、いまの時点、私ども「むつ」につきましては、この説明会ということで対応してまいりたいというふうに考えております。
  235. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 説明会ということですと、どういう性格になるのか、いろいろ意見はお出しください、しかし結論は変わりませんよというのがこの説明会の性質ではないかというふうに思うんですけれども、一つは、長崎の住民の人にとっていろいろ不安を呼んでいる問題であることは言うまでもない。同時に、この「むつ」問題というのは単に地元問題だけではないわけですね。これからの日本原子力船行政のあり方、それからまた、またぞろこういう手抜き改修でもしも事故が起こるということになった場合には、これはいわば日本原子力行政の名誉にもかかわる問題ということでもあろうと思うし、そういう意味では全国的問題としていろんな形での注日を集めておる問題だと思います。ですから、単に狭い意味での地元に対する説明会ということでは私は足りないと思うんです。中央段階、長崎段階、それぞれの段階で広く意見を求めるという、そういう公聴会のようなものが持たれる必要があると思うんですけれども、重ねてお尋ねをします。
  236. 山野正登

    政府委員(山野正登君) ただいま御指摘のとおり、単に「むつ」の改修の必要性、安全性ということにとどまりませんで、原子力行政のあり方、規制体制のあり方あるいは開発を担当します事業団のあり方といったふうなものも含めまして、きのう、きょうの県議会における御議論ではいろいろ議論をいただいておるようでございますが、そういったふうな問題も含めまして地元に十分な説明をしたいと考えておりますし、また、御指摘のように全国的な規模におきまして、このような問題につきまして国民のコンセンサスというものは必要であるということはそのとおりでございますので、今後原子力全般の問題につきましても、この行政懇で指摘されておりますシンポジウムといったふうなものも活用しまして、できるだけそのような努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  237. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一つ、この行政懇報告に直接書いているわけではありませんが、住民との合意のもとに、しかもそれが民主的な進め方による合意のもとに原子力行政を進めていくという、そういう観点でお尋ねをするんですけれども、前回吉田委員が原発設置をめぐる買収問題でいろいろ質問をなさっておりましたけれども、端的にお尋ねをしますが、電力会社等が行います事前宣伝についてはおのずから限界がありますということを、長官もまた通産大臣も答えられておったと思うんですけれども、そこでお尋ねをするんですけれども、そこの関係地域の全住民を対象とする宣伝行為ではなくて、特定の人物、たとえば議会の議員だとか町内会の役員だとか、いわゆる原発を設置をするかせぬかという問題についての世論誘導に影響力のある人々ですね、そういう特定の人々を対象に何がしかの金品を贈呈をしたり、あるいは便宜供与を図ったり、こういう行為を行うということは私は事前宣伝の限界を超える行為と——広く原子力発電は、まあ電力会社なりにいま大事です、また、こうこうこういうふうにして安全は守れるんですというようないろんな宣伝をやるというのは、それは常識的範囲であれば、この会社はそれはまあやむを得ぬことかと思うんですけれども、いま一つの例で挙げましたような、特定の人物を対象にしての金品の贈呈あるいは便宜供与をやるという、こういう行為は限界を超える行為だというふうに思うんですが、この点、熊谷長官どうでしょうか。
  238. 熊谷太三郎

    ○国務大臣熊谷太三郎君) まあ、いま一つの筋としてお話しになりましたことは、限界を超えるというよりはむしろ違った意味で好ましいことではないと考えます。
  239. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう少しお尋ねをいたしますが、実はきょう温排水の問題で相当お聞きをしたいと思っておりましたんですけれども、時間がありませんので、もうこの問題は全部次の質問に譲りまして、ただ、行政懇報告の中で触れておりますいわゆる環境審査報告書にかかわるちょっと入り口の問題をあと一、二だけお尋ねをいたしたいと思いますが、「温排水等の環境審査報告書」を「安全審査報告書案」とともに出して、で、それをもとにして、後この安全委員会が審査をやっていくと、こういう行政懇報告になっていますし、恐らくそういうパターンをたどっていくんだろうというふうに思うわけですけれども、一つはこの環境審査報告の中に盛られる主な項目といいますか、内容ですね。これは何か「温排水等」となっていますけれども、主な内容。それから環境審査報告には「案」という言葉がことさらついていないわけです。安全審査の方は「案」と。そうしますと、環境審査の方はこれはもうダブルチェックを受けないというふうに考えなさいということなのかどうか。それから通産省がこの報告書を作成をする場合に、たとえば温排水について電力会社がやりました観測結果、これを書面審査をするということだけなのか、通産省としても独自の観測点検をやるのか、こういう点についてひとつ……。
  240. 武田康

    政府委員(武田康君) 現在すでに私どもは環境影響審査というのを実体的にやっておりまして、今後ともまあそれが続き、内容的には改善されていくものと思われます。  で、それをベースにしてお答え申し上げますと、私どもは現在環境調査あるいは環境審査の中で、温排水のほかに、これは原子力のみでございませんで、原子力、火力等々発電に関するものはみんなやっておりますので、大気汚染の関係その他もろもろの公害の関係、植生の関係等々いろいろな項目につきまして環境審査をやっているところでございます。  それから第二点、いつまとめるのかというタイミング的なことでございますけれども、いま申し上げたような項目でございますので、審査の基準といいますか、法律的に定めるベースになるようなものは、どちらかといえば環境庁でお決めになる公署関係の諸基準というようなのがベースになる感覚のものでございます。そういうようなものでございますが、発電所をつくるという意味で私どもが実体的審査をしているわけでございまして、それがもちろん発電所をつくりたいという電気事業者が、自分で調べたデータを私どものところに提出するわけでございますが、私どもでは書面審査とともに自分自身のクロスチェックというのを併用いたしております。それから、まとめるタイミングでございますが、従来電源開発調整審議会の時期にまとめまして、実は環境庁なり農林省、水産庁等々ともいろいろ非常に密接に関係がございますので、電源開発調整審議会の場でそういったような観点の調整もしていただけるような形で、その時期にまとめているのが従来の例でございます。今後ともそういうことになろうかと思います。  それで、行政懇の報告では、環境審査報告書につきまして、「その作成に当たって環境庁、水産庁等の同意を求め、それぞれの省庁の責任関係を明確にしたうえで電源開発基本計画決定前に公表する。」というような意見をいただいておりますので、その線に沿って今後はやっていくことになろうかと考えております。
  241. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それで、それに「案」という言葉がついていないのは、もうそれで結論だということですか。
  242. 武田康

    政府委員(武田康君) 先ほど申し上げましたような内容でございますので、そこがまあ一つの結論でございます。したがいまして、ですから、その時点で外に出すものは案でなくて結論でございます。
  243. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 わざわざ環境庁に来ていただいておりますので、最後にもう一問だけちょっとさせていただきたいと思いますが、原発立地と景観保存との関係ですね。たとえば自然公園等があります地域にそういう発電所をひとつつくろう、こういう問題について、一つは現在そういう自然公園の区域内に発電所が設置をされておるその種類と数、現状はどうか。それから今後の新しい原発立地について、自然公園を保護するという、そういう立場からの環境庁の基本態度というのはどういうことになっているのか、その点お尋ねしたい。
  244. 中島良吾

    説明員(中島良吾君) 御説明申し上げます。  第一点につきましては、現在、若狭国定公園の中に関西電力が大飯と高浜と美浜、大飯の場合は4号でございますが、高浜は現在2号まで、増設が4号まで、それから美浜が3号、これを許可したケースがございます。  それからもう一つ、やはり若狭湾の国定公園でございますが、原電の方に敦賀の発電所を許可した例がございます。以上が現状でございます。  それから第二点につきましては、国立公園等自然公園内における原子力発電所の立地につきましては、自然景観の保護の立場からは好ましいものではないと考えております。しかしながら、原子力発電といいます公益性に着目いたしますれば、ある程度の調整は必要かと考えますが、この調整に当たりましては、自然環境保全を原則といたしまして、計画の実施が、自然環境に与える影響等事前の調査をしてもらいまして、この審査を厳重にしていくというふうに考えております。
  245. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 終わります。
  246. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 他に御発言がなければ、本案についての質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会