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1978-04-21 第84回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十一日(金曜日)    午後一時七分開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      吉田 正雄君     山崎  昇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         藤原 房雄君     理 事                 源田  実君                 望月 邦夫君                 松前 達郎君                 塩出 啓典君     委 員                 岩上 二郎君                 後藤 正夫君                 安田 隆明君                 小柳  勇君                 森下 昭司君                 山崎  昇君                 中村 利次君                 柿沢 弘治君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      半澤 治雄君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁振興        局長       杉浦  博君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        科学技術庁原子        力安全局次長   佐藤 兼二君        資源エネルギー        庁次長      大永 勇作君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        武田  康君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        通商産業省機械        情報産業局自動        車課長      浜岡 平一君        運輸大臣官房政        策計画官     宮本 春樹君        運輸省船舶局首        席船舶検査官   赤岩 昭滋君        建設省住宅局住        宅生産課長    松谷蒼一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (原子力行政に関する件)  (省エネルギーに関する件)  (原子力発電安全性及び稼動率に関する件)  (国際エネルギー機関に関する件等)     —————————————
  2. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、吉田正雄君が委員を辞任され、その補欠として山崎昇君が選任されました。     —————————————
  3. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) ただいまの委員異動に伴い、理事に一名の欠員が生じておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長に御指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事松前達郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 望月邦夫

    望月邦夫君 私はまず最初に、エネルギー問題についてお伺いしたいと思います。  わが国におきましてエネルギーの問題を考える場合、何と申しましてもエネルギー開発あるいは石油の代替のエネルギー開発する、研究するということが重要であることは申すまでもありませんが、しかし、わが国のように資源の全然ない国におきましては、やはりこの開発研究と同時に、エネルギー消費節約をする、このことが非常に重要ではないかというふうに思っております。ところがわが国におきましては、エネルギー問題が重要であると言われながら、やはり研究開発努力等におきましてはアメリカあるいは西ドイツに比べまして相当な見劣りがしているようであると言われております。しかも省エネルギーの問題につきましても、エネルギー対策といたしましていろいろと文言がりっぱに書いてございますが、なかなか実行されているというふうには思えないのでございます。  そこでまず最初に、エネルギー問題に大きな責任を持っておられる科学技術庁として、この省エネルギー問題につきましてどのような見解を持ち、また施策としてどのようなことを考えておられるか、まずお伺いいたしたいと思います。
  7. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) いまエネルギー問題についていろいろ御発言がございましたが、第一に、現在のわが国エネルギー開発方向につきまして一応申し上げたいと存じます。  わが国エネルギー研究開発方向としましては、第一に考えられますのは、やはり原子力開発でございまして、たとえば各種の新型炉でありますとか、あるいは核融合の問題あるいは核燃料サイクル等問題等でございます。これが第一の問題。——第一か第二か順番は別としまして一つの問題であります。  もう一つは石炭のガス化液化等のいわゆる化石エネルギー技術開発でございます。  それから三番目に考えられますことは、地熱発電太陽発電波力発電等自然エネルギー利用技術開発でございます。  いま一つは、エネルギー有効利用技術開発でありまして、大体これらの点が大きなエネルギー開発の柱になっておると思っております。  そこで、科学技術庁におきましては、最初に申し上げました原子力関係の諸開発を強力に推進してまいっておりますほか、後に申し上げました波力発電技術研究開発、それから太陽エネルギー風力エネルギー有効利用に関する調査を積極的に推進しております。  それから、もう一つお尋ねのありました省エネルギーの点につきましては、政府委員から答弁させたいと存じます。
  8. 大澤弘之

    政府委員大澤弘之君) お答え申し上げます。  省エネルギー研究開発につきまして先生指摘がございましたのは、いろいろたくさん書いてあるが実際には、というお話でございましたが、科学技術庁におきましては、どちらかといいますと、思想と申しますか、この研究開発必要性とか、方向とかいうことが一番の任務でございます。そんなことから、多少あれになるかと思いますけれども、まずこういう時代を迎えましたのが大分前でございますが、昭和五十一年には科学技術会議エネルギー科学技術の推進に関する意見というのを取りまとめておりますが、その中で省エネルギーというようなことが、言葉エネルギーむしろ有効利用という言葉を使っておりますが、そういう問題の技術開発が大変重要であるというようなことの指摘をいたしておりまして、そういう意見ということを反映してと申しますか、各省庁がそれぞれの部面で、特に通産省は最近ムーンライト計画といったような具体的な実施計画を打ち出してございますが、各省庁におきまして省エネルギーのいろいろな方策を実施し出しておる、こういうことでございます。  その中で、具体的にというお話がございましたので、科学技術庁省エネルギー対策としていたしております点を申し上げますと、省エネルギー技術開発を含みますところのエネルギー全般についての研究開発基本計画ということを現在科学技術会議諮問を受けておりますので、それの事務局として策定を急いでおるということがまず第一でございます。  それから、科学技術庁はいわゆる研究開発予算総合調整見積方針調整ということがございますので、関係省庁のこういう省エネルギー研究開発予算についての見積方針調整という仕事をいたしてきております。それから科学技術庁諮問機関と申しますか、あるいは付属機関としまして資源調査会あるいは資源調査所というところがございますが、ここではっとにエネルギー問題のいろいろな調査をやってきておるわけでございますが、その中でごく最近では、やはり省エネルギーに関する調査ということをかなり力を入れていろいろの問題をやっております。  たとえば断熱材効果がどうであろうかとか、あるいは太陽エネルギー利用しますいわゆる住宅での利用効果とか、そういう省エネルギー問題についての調査をいたしてきております。それから先生先ほどちょっとお話がございましたが、技術開発ばかりではございませんで、省エネルギーということにつきましては、いわゆる節約と言いますか、そういう実際の行動でもってエネルギーを使わないようにしていくということの重要性もございまして、これにつきましては省エネルギー月間というようなところを利用して、国民生活の中でエネルギー節約ができるというようなことを具体的に挙げまして、これは前宇野大臣のときなんでございますけれども省エネルギーメニューといったようなものをつくりまして、たとえばガスの口火を小まめに消せば日本としてどのぐらいの効果があるかというようなことをまとめまして、それを国民一般認識していただいて、そしてエネルギー節約ということに国民の協力を得ていくというような意味での基礎的なデータも調べると、そういうようなことをいたしておるというふうなことでございます。
  9. 望月邦夫

    望月邦夫君 そこでちょっと通産省にお伺いいたしますが、エネルギー長期需給計画において、昭和六十年には省エネルギー比率を五・五%から一〇・八%に引き上げるんだと、この数字内容でございますけれども、この数字は、あなた方がいろいろとその対策を立てられた省エネルギー対策を積み上げて出されたものか、それとも経済成長率を想定して一つの試算から逆にこういうふうに一〇・八%にならなければいけないというふうに出された数字か、ちょっとこの数字の性格を知らせていただきたいと思います。
  10. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) いま御指摘趣旨からいたしますと、これは部門別に一応積み上げて計算したものでございまして、経済成長率につきましては六%程度エネルギー需要をはじいておりますが、その需要とそれから供給可能量とのギャップをいわゆる必要節約率ということではじいたものではなくて、先ほど申し上げましたように、一応部門別に積み上げたものでございます。
  11. 望月邦夫

    望月邦夫君 それで部門別に積み上げられたとするならば、その具体策実行状況を追跡されているかどうかお伺いしたい。  それに関連して、昭和五十二年度におきまして、石油消費量が対前年等に比べてどのような状況になっているか、ひとつお伺いしたいと思います。
  12. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) これは実績を正確につかまえることはなかなか困難でございますが、オイルショック後、たとえば鉄鋼におきましては高炉の炉頂圧利用しての発電でございますとか、あるいはセメントにおきましては、セメントのキルンの改造といったようなことで省エネルギーを実施しておりまして、そのようなものを大体積み上げてみますと、まあオイルショック前の四十八年に比べて現在はおおむね二%程度省エネルギー状況ではなかろうかというふうに推定をいたしております。それを先ほど申し上げましたように、六十年までには一〇%程度まで持っていくようにしたいというのが目標であるわけでございます。  それから第二にお尋ねの、五十二年度におきます石油消費量でございますが、燃料油につきましての需要は、五十二年度は、一つ産業活動の停滞の問題と、それから暖冬によりまして、たとえば灯油なんかも六%ぐらい五十一年度より落ち込んでおります。そういうことからいたしまして、燃料油全体では〇・一%増ということでございまして、五十一年度に比べまして微増にとどまっているというのが実態でございます。
  13. 望月邦夫

    望月邦夫君 そこでまた科学技術庁にお伺いしますが、省エネルギー実行されてないとか、できてないとか、そういう趣旨もありますけれども、やはりこれからのエネルギー問題を国民に理解していただくためには、どうしてもエネルギー節約についても政府も真剣に取り組んでいるのだということをひとつ声高らかにPRして、そしてほかの開発というものもあわせてやっていくということでなきゃならぬ。  そこで、省エネルギーという問題は、さきに計画局長言われましたとおり、一省一庁が専管的にこれをやるというわけにいかない問題ですから、科学技術庁としては対処が非常にむずかしい問題だと思うんです。しかし、省エネルギーの具体的な内容ということになりますと、やはり科学技術分野がすべてでございますので、科学技術庁としては長期的な観点に立って真剣に考えていただきたい。  それから、これもみずから科学技術庁が各省に積極的に働きかけていただくと同時に、長官エネルギー関係閣僚会議のメンバーでございますので、私は、開発の陰に隠れて省エネルギーの問題が影をひそめないようにひとつ声を大きくしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  14. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) ただいま御発言のとおり、資源、特にエネルギー資源の極端に乏しいわが国におきましては、省エネルギーという問題はきわめて重大でありまして、関係の深い当庁としては、今後とも一層省エネルギーの問題についての問題処理を進めてまいらねばならぬと思っております。特に当庁は、御承知のように、科学技術一般にわたりまして研究開発という面が特に重要な問題となっておりますので、あらゆる面にわたる省エネルギー研究開発という点には特に重点を置いて研究開発を進めながら、それの実効が、そういう研究開発によって得ました成果が、実現に、実行に移されますように、当庁としましても、当庁の責任者といたしましても、あるいはエネルギー関係閣僚の一人といたしましても、そういうことに努力してまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  15. 望月邦夫

    望月邦夫君 それでは次に、科学技術振興策について申し上げます。  実は、科学技術振興策あるいは省エネルギー技術開発という問題につきましても、科学技術庁としてはなかなかむずかしい問題であろうと思いますけれども、考え方をお伺いしたいと思うわけでございます。  さっきから申しているように、わが国資源というものが全然ございません。やはり科学技術というのが唯一の財産である、こう言っても過言ではなく、本当に国としてはこれから一番力を入れなければならない政策であると思います。しかし、科学技術振興と申しましても簡単なことではございません。いわゆる純粋の研究は大学において実施されておる。応用研究は、各官庁研究所あるいは企業研究機関が実施しておりますし、また、その研究分野も非常に多岐にわたり、その研究目的もそれぞそ相違をしているというふうに思います。  しかし、こういう現状におきましても、日本の将来を考えますと、科学技術というものは大いに振興しなければならない。そこに科学技術庁としての基本的な使命があるんではないかというふうに思いますが、私もわからないのでございますけれども、こういうふうな状況において、科学技術庁としては具体的に科学技術振興策についてまず考えておられることをお伺いいたしたいと思います。
  16. 大澤弘之

    政府委員大澤弘之君) 私どもも、先生ただいま御指摘がございましたように、科学技術振興は、これからの日本の立国と申しますか、立っていく基本になると、こういう認識を持ちまして、その振興策というのは大変に大事だということで取り組んでおりますが、もう少し具体的にと申しますか、その中身のことに関しましては、昨年五月に科学技術会議が、「長期的展望に立った総合的科学技術政策基本について」ということで総理大臣諮問を受けまして、答申を作成したわけでございますが、この中で、これからの科学技術方向というのは、まず資源エネルギーということで、わが国の二〇〇〇年に向かっての前途は大変きついので、それを克服していくような科学技術ということが何よりも大事であろうということ。それから、防災科学技術を初めといたしまして、国民生活に密着した部面での科学技術の展開ということが必要であろうということ。それから、一方におきましては、また宇宙海洋といった分野での、私どもは先導的・基盤的と、こういう言葉で言っておりますが、そういう部面での科学技術振興を図っていくこと。さらには、従来外国からの技術導入ということによってわが国経済発展なり現状なりができてきておるという認識なんでございますが、この技術導入ということにつきましても、技術革新自体が大分世界的にも減ってきておる、あるいはまた、諸外国から技術を導入するということにつきましてもいろいろな抵抗がふえてきておるというようなこと等を踏まえますと、自主技術開発といいますか、自分でいわゆる道を開いていかなきゃならないところに到達してきておりますので、そういうことを支える基盤的な、基礎的なと申しますか、そういう科学振興ということもまた大変に大事である、こういうような指摘をいたしまして、そのためには、研究投資なりあるいは人材の養成、確保といったこと、あるいは科学技術情報円滑化といったような、研究開発資源と、一言で言えばそういう言葉でございますが、研究開発資源の充実を図っていくといったようなことが非常に重要であると、こういうようなことで、さらには、そういう方法のもとでどういう研究開発課題が重要であるかということでの重要研究開発課題を摘出をするというようなことで答申内容がまとまっておるわけでございます。  この答申は、大体向こう十年間の科学技術基本的な政策というふうに与えられておりますので、その間着実にこれの実現に向かって努力をしていくということが私ども行政基本的姿勢ではないかと、かく考えておる次第でございます。
  17. 望月邦夫

    望月邦夫君 いまの科学技術会議答申につきましては、私は全面的に賛成でございます。  しかし、いま日本は、外国から非常に多くのパテントとかあるいはノーハウを買い入れまして、そうして経済成長を果たしてきた。ところが、実際にそれのノーハウを取り入れまして見てみますると、なぜ日本でこんな簡単なことが気がつかなかったのかということが、私もたびたび経験したものですから、あえて申し上げるわけですが、こういうふうな状態でございます。そしてノーハウとかパテントをもう買いあさっちゃって、そうして買う物がなくなると、もう技術革新は終わってしまって、高度経済成長は望めない——何も高度経済成長を望むというわけではございませんが、そういうふうな議論になっておる。  それから構造不況産業にいたしましても、ほとんど技術革新がないために、韓国とかあるいは台湾等に追い上げられて、本当に付加価値の高い製品ができない、それにどんどんと追い越されていくという現状じゃないかと思うわけです。  しかし、そこでさき答申を生かして、行政というものがこの技術開発にどの程度タッチするかということが非常にむずかしい問題だと思います。新しい分野、たとえば、いま言われましたように、原子力開発とか宇宙開発あるいは海洋開発等々については、科学技術庁自身が現在関与されております。問題は、国の基礎的な科学的技術水準をレベルアップしなければいけないということでございます。  そこで、私は科学技術庁にひとつお願いいたしたいのは、なかなかいまの現在のわが国研究実態というものが明らかにされていない。そしてどういうふうな研究がやられているんだということを一応分析していただきまして、やはり自力で技術革新を創造する力をつけるにはどういう点に問題があるか。たとえば企業ならば一つ製品だけにやっているのか、それから派生する問題についていろいろ研究結果もあろうかと思いますが、そういったものを洗い出して、さき答申を受けて具体的にそういう各官庁なりの技術対策を指導していただくというふうに思うわけでございますが、いかがですか。
  18. 大澤弘之

    政府委員大澤弘之君) 先生お話しのとおりと思っております。また、私どもも及ばずながらそういう努力はしておるつもりなんでございますが、なお不十分ということかと思うわけでございます。  答申と言いますか、その政策基本は先ほど申し上げましたとおりでございますが、私どもの方におきましては、それを具体化するために、ただいまちょうど先生から御指摘ございましたような技術革新あるいは自主開発ということを本当に日本の中に定着をさせるためには、具体的にはどういうことをしていったらいいのかということにつきましては、日々いろいろな角度の分析ということもいろいろやっておるわけでございます。それらの多少具体的に外に出ておりますものは、私ども実は毎年、科学技術白書というものをまとめておりますが、ここにおきましてそういう具体的なことの方向を明らかにしていく、そしてそれの実現努力をしていくというようなことをいたしておるわけでございます。  もう一つ具体的に申し上げますと、実は五十一年、一昨年の白書におきましては、「社会開発」という言葉を私ども使っておりますが、科学技術国民生活の近いところで適応していくときに、社会開発をしていくときに、いかに自主的な科学技術を育て、またあるいは有効な技術利用していくということができるのかという分析をし、そこでの問題点等指摘も行っております。五十二年、昨年の白書におきましては、日本民間企業が、ちょうどだだいま先生からお話があったようなことでございますが、そういう点の分析をいたしまして、こういう時代での民間企業がいち早く自主技術へ向かうようなこととしてはどういう問題点があり、どういうことをしていったらいいのかということで、端的に申しますと、私どもいわゆる技術移転ということを、国内におきます技術移転ということをもっと活発に進めるべきだといったようなことで、その現状等分析もし、施策のヒントになるようなことをいたしておるわけでございます。  そういうことで、必ずしも全般的にいろんな面でというふうなわけにもまいらぬのでございますが、できるところから個々に施策を講じてまいっておるというふうなことと思っております。
  19. 望月邦夫

    望月邦夫君 ですから、白書を出しておられますから、これを自信を持ってもっと国民にPRしていただきたいという気持ちが私は非常に多いわけです。やっぱり科学技術白書というものを一般研究会が尊重するという空気があるということが一つの大きな進歩じゃないかというふうに思うわけです。  そこで、こういう基礎的な科学技術の底上げをやるためには、アメリカアポロ計画のようにビッグサイエンスをやって、そしてそれとの関連において、冶金とかその他問題に波及効果が起こるというふうなことをよく言われておるわけでございますが、幸い科学技術庁におきましても、宇宙開発等におきましては、恐らくああいう衛星を静止する技術というものは日本を初め二、三カ国しかないだろうと思いますが、そういう技術レベルに達しているわが国ビッグサイエンスにおいて、あなた方どういうふうに考えておられるか知りませんけれども、やはりわが国基礎技術レベルにある程度の好影響があったんではないかというふうに思うわけですが、もしそういうことがございましたらひとつ遠慮なく言うてください、お願いします。
  20. 園山重道

    政府委員園山重道君) お答えいたします。  先生指摘宇宙開発につきまして、御指摘いただきましたように、日本静止軌道衛星をとめるという技術アメリカ、ソ連に続きまして獲得したわけでございます。しかしながら宇宙開発、やはり諸外国に比べまして基礎的な部分というのが、戦後の中断等がございまして、余り確実に基盤が確立されているという状態ではないところで始まりましたので、技術導入ということを非常に大幅に行いまして今日の段階まできておるわけでございます。  したがいまして、全く自前で始めましたときに比べましては、やはりアメリカにおけるアポロ計画のような波及効果というものは量的にも質的にも劣るものは、これはいたし方ないと思うわけでございますけれども、しかしながら、これだけやってまいりましたおかげをもちまして、若干の波及効果というものは私ども認識できる状態にあるかと思っております。  一つには、よく言われますように、宇宙開発というのがいわゆるシステム技術というものの典型である、こう言われておりまして、この宇宙開発で用いられましたいわゆるシステムエンジニアリング、システムマネッジメントといった考え方、やり方というのが非常に貴重な参考になっておりまして、これが各分野の産業技術等に波及しているということは、具体的な形ではなかなか申し上げられませんが、一般的に言えることではないかと思われます。  さらに、若干具体的になりますと、最近の日本の家電製品の進歩というのは大変目覚ましいものでございますが、私どもそういう分野の人たちに聞いてみますと、衛星におきます熱設計でございますとか、あるいは部品の小型化、さらに高信頼度化とかといったようなことが、テレビでございますとか、あるいはクーラーでございますとか、そういった一般の家電製品の改良にも非常に役立っておるということを皆さん言っておられるわけでございます。  さらに、私どもの直接経験いたしておりますところでは、現在地震予知のために東京を囲みます三つの深い井戸——これは大体二千五百メートルから三千メートルといった深い井戸を掘りまして、その底に非常に高感度の地震計を入れるわけでございますけれども、これが御承知のように、二千五百メートル、三千メートルとなりますと、非常に温度も百度を超すということでございますし、さらにこういったものは故障をせずに長期間働かなければなりませんので、その井戸の底に入れます地震計の設計、製作には、宇宙開発、具体的には日本の電離層観測衛星の作業グループがそれに参画して成果を得ておるというようなこともございまして、おいおいに経験が深まりますにつれまして、先生指摘のような波及効果というものが広がっていきつつあると、このように認識しているところでございます。
  21. 望月邦夫

    望月邦夫君 技術進歩につきまして最後に一つだけ、希望的な意見でございますが、申し述べたいと思います。  いままでわが国は、機械、電気あるいは科学、工学的な研究は非常に成果が上がってきたと思うのですが、やはりいままで国土が狭かった関係か、資源的な研究開発というのが石炭以外ほとんど見られなくて、そしてこの資源エネルギー時代になって日本技術が非常におくれをとったというふうに思われますが、私はこれからの研究方向として資源問題について相当重視をしていただきたいというふうに思いますが、科技庁としてはどういうふうにお考えかお伺いしたいと思います。
  22. 大澤弘之

    政府委員大澤弘之君) 私どももそのとおりに考えておりまして、具体的には、先ほどちょっと触れました諮問第6号と申しますか、「科学技術政策基本について」という中での研究開発課題というところで、かなりにいろいろの資源につきましての課題を掲げております。いま先生お話ございましたが、石炭ということのほかにもう少し大きな意味での資源でございますが、水資源あるいは国土資源と申しますか、非常に活躍の場が狭うございますので、それを人間の活躍の、日本人の活躍の場を広げるというような意味での開発とか、あるいは森林の資源とかいったようなことでそれぞれ重要な課題の摘出もしておりますので、所管の省庁においてそういうことについての研究開発が進められることを私どもも強く推進してまいりたいと、かく考えておるわけでございます。
  23. 望月邦夫

    望月邦夫君 それでは原子力関係にまいりたいと思いますが、その前にまず通産省にお伺いいたしますが、昭和五十三年度の景気浮揚策として、非常に波及効果の高い電力投資を五十三年度積極的にやろうというふうに決められておるわけですが、私がどこの電力会社に行きましても、やはり投資はしたい、将来のわが国の電力が不足するであろうというふうなことから非常に投資をしたい、ところが、どうも立地問題がうまくいかない、だからもう立地問題さえうまくいくならば、われわれとしては金目を惜しまない、これが将来の電力行政としてのあり方だというふうに言っておるわけでございます。  そこで、私は五十三年度、特に電力投資に、民間設備投資の大きな柱としてお願いしているわけでございますが、これの立地問題につきまして通産省は何か特別な対策をお持ちですかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  24. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生も御指摘のように、電力の設備投資につきましては、五十三年度三兆二千億円の計画を持っておりまして、そのほかに五十四年度以降の設備投資のうちで、約一兆円を繰り上げ発注したいということでやっておるわけでございますが、これの成否は、御指摘のように、もう立地問題がかぎになるわけでございます。  そこで、立地の推進につきましては、現在、大臣、政務次官以下全省を挙げて取り組んでおるわけでございますが、重要な地点につきましてはこれを指定いたしまして、政務次官あるいは担当部長等々が直接地元に出向きまして、電力会社と一体となって立地の促進に当たっておるわけでございますが、同時に予算的な問題といたしましては、五十三年度に着工する電源につきましては、いわゆる立地交付金の単価を五十二年度までの二倍に引き上げるということでもって、地元にも従来より一層の経済的なメリットが生ずるという形でもって一応促進しておる次第でございます。
  25. 望月邦夫

    望月邦夫君 そこで、原子力開発につきましても立地が死命を制する、この立地問題を考えてみますると、非常に住民による原子力発電に対する立地の反対がある。この反対には私はいろいろな要素があって、そう簡単なものではないと思いますけれども、少なくとも政府といたしましては、これの行政体制に対して不信感を抱かれるというふうなことは避けなきゃならないというふうに思っております。  私は実は、原子力船「むつ」、この問題が発生したときに、行政側の対応の仕方が全く自信がないと申しますか、非常に有機的な関連がなかった。したがいまして、「むつ」の問題が非常に過大に扱われまして、結局、この「むつ」の問題はわが国原子力開発というものにつきまして大きな蹉跌を生じた、これは考えようによっては非常に国家的な大損失ではないかというふうに私は考えておるわけでございます。  したがいまして、こういう事態を踏まえて、そして原子力発電を推進しなきゃいけないというふうな立場に立っておる政府として、行政に対する国民の信頼を得るということに対して、どういうふうに対処されるか、そのお考えを伺いたいと思います。
  26. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) お尋ねの点は、大変簡単なようでございますが、いろいろの内容が含まれると思いますので、また、私から申し上げて、足らぬところは政府委員から補足させたいと存じます。  この立地問題についてでございますが、特に原子力発電所の立地問題につきましては、原子力の平和利用、原発の推進という見地から言いまして、通産省はもとよりでありますが、われわれ科学技術庁といたしましても、非常に至大な関心を持ち、またこれに現実的に対処していく姿勢をもって臨んでいるわけであります。  そこで、この原子力の立地問題について一言申し添えたいと存じますことは、原子力発電所を含めまして、発電所全体の推進についてちょっと通産省の方からお話がありまして、それは全くそのとおりでございますが、特に私ども従来からのいろいろな経験を踏まえまして感じておりますことは、やっぱり現地に、地元でいろいろ反対がございまして、この反対を、まあ言葉は適当でありませんが、克服してまいらねばなりませんが、それにはやはり、一体どういうところから反対が生まれているかということを突きとめまして、そうしてこれに対処していくということでなければ現実的ではないと考えるわけであります。そうしますと、大体反対の中には、まあ率直に言えば何でも反対、どこまでも反対だというような、言ってみればそういう趣旨の非常に積極的な反対もありますし、一面から言えば、まだ原子力発電所に対するあるいは安全性に対する認識が十分行き渡っていない。その他不備な点がありますために、不信や疑念を抱かれての反対と、こういうものもあるかと思うわけであります。  そこで、まず極端な反対は反対といたしまして、まずもってそういう理解が徹底しない、あるいはその他いろいろ不備な点があって結局反対になるというような方々の御理解をまずもって得るということが先決問題であると考えているわけであります。これはきわめて当然のことのようでありますけれども、必ずしもそれに対する対応が現在まで十分であるとは思っておらぬのであります。と申すますことは、現在もう相当数の原発が日本の各地にありまして、ありますということは、結局府県なりあるいはそれぞれの地元が国のこの政策を受け入れて、そうして原発立地を認めていただいているわけでありますが、しかしせっかく受け入れていただいておりましても、なおかつそこにいろいろな不備、不満の点がありまして、必ずしもそういう点が完全に解決されているという点がまだ欠けている点が相当あると考えているわけであります。したがって、まずもって、受け入れていただいております地元の府県や市町村と政府との間に間隙のないようにしていかなきゃならぬ。いろいろ毎年陳情や要請が繰り返されておりますが、それはその間にまだ解決されない懸案があるから、そういう同じような陳情や要請が繰り返されているわけでありますから、これに正面から取り組んで、そうして直ちに解決できることは解決し、あるいはお互いが研究しあるいは理解を深めて、そうして今後解決の方向に向かっていくという道だけはつけていかねばならぬ。そういうことを推進してまいりますと、少なくとも素朴な疑問や不安に基づく反対ということは消えていく、府県や市町村のいろいろなそういう御理解によっておのずからそういう反対は影をひそめていくと考えているわけであります。それがまた、非常に積極的な反対に対しても大きな説得力を持っていく、私はこの点は軽視すべきではないと存じまして、科学技術庁としましては、原子力の平和利用を推進するというたてまえから、こういう点の解決に目下努力している最中でございます。  いろいろ申し上げたい点はたくさんありますが、さっきのお話のありました「むつ」の問題、この「むつ」の問題に関するいろいろな教訓といいますか、反省すべき点といいますか、そういう点はいろいろありますし、また、考え方によっては、そのとり方もいろいろあると思いますが、一つわれわれとして当然取り上げて考えなければならぬ点は、この原子力船の「むつ」に対する、つまり基本設計は科学技術庁であるとか、あるいは実際実施に当たられたのは運輸省であるとか、そういった面の区別が行政的に幾らか十分でなかったというような点、つまり極端に言えば責任の所在が明確でなかったと言われております点、これはいろいろとりょうはありますけれども、やはり率直にわれわれとしてはそれを受け入れまして、そして今回、原子力基本法の提案をいたしまして、御理解を願っておりますその内容一つとしましては、試験研究段階の開発総理大臣、まあ科学技術庁ということになりますが、取り扱わさしていただきますが、実用段階に入った発電所あるいは船舶といったものについては、ひとつ一貫した責任体制のもとに、安全もその後の建設ないし政策も一貫して責任を持っていただく。しかも、これに対しては一つの中立的な、そして実質的に権威のある安全委員会によってダブルチェックをしていただくということによってやっていくということを一つの教訓として受けとめて、そういうことをわれわれとしましてはお願いをしているようなわけでございます。申し漏らしている点がありましたら、また政府委員からお答え申し上げます。
  27. 望月邦夫

    望月邦夫君 もう大臣が相当お答えいただきましたので、大体あれでございますが、やはり私は責任体制、これがやはり行政の信頼を得る大きな柱であるというふうに思います。  そこで、大臣も安全委員会というお話ございました。これは昭和五十一年七月の原子力行政懇談会、有澤委員会において、原子力委員会というのが従来は開発と規制の両面を担当しておった、そして、この両面を担当することによって、むしろ有機的あるいは効率的な原子力行政ができるということでございましたけれども、いろいろの事件が発生いたしまして、やはり世論として、原子力委員会は開発に偏っているのではないかというふうなことから、行政の体制の責任を一貫化すると同時に、新たに原子力安全委員会を設けて、そして各省庁の行う安全規制の責任体制と安全委員会がダブルチェックをする、これによりまして、非常に安全性の確保が高まっていくんじゃないかというふうな結論を出されておるわけでございます。いま、大臣といたしましても、この問題については安全委員会を設けるというふうなことでお答えございましたが、さようでございますか、ひとつちょっともう少し詳しくお願いします。
  28. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) ただいまのお尋ねの点、「むつ」問題を反省いたしまして、ただいま大臣が申し上げたような原子力安全委員会の設置並びに行政の一貫化につきましての法案の御審議をお願いしておるわけでございますが、この原案になりましたものは、内閣に置かれました、ただいま先生指摘行政懇談会における結論を政府として慎重に検討した結果、ほぼその精神にのっとりまして提出させていただき、国会の御審議をお願いしておるものでございます。
  29. 望月邦夫

    望月邦夫君 そこで、私は安全委員会というものを設けて、ダブルチェックをするという組織をつくるということは、安全確保という面からは非常に大きな前進があるんではないかというふうに思うわけです。しかし、実際問題として、私は組織よりももっと重要な問題があるんじゃないかというふうに思っておるわけです。いろいろと言われておりますところの放射能の拡散の問題、あるいは温排水の問題、それからまた地震に対する安全性の問題、こういった具体的な問題の解決策についてもっと積極的にやらないと、安全委員会をつくってダブルチェックをするんだ、そうして実用炉は通産、船舶は運輸省と分けてみても、仏つくって魂を入れないということになっては、これは私はもう機構倒れになると思う。そこで、こういった放射能とか、あるいは温排水、これらは通産だけの問題でなく運輸省だけの問題でなく、これはもう原子力行政全体の問題でございますので、こういった問題に科学技術庁としても力を入れてほしいというように思いますが、見解はいかがですか。
  30. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) お言葉のとおりでございまして、安全委員会をつくれば、より安全性の確保に役立つというお話でございまして、それもそのとおりでございます。ただ原子力発電所の開発は、何といいましても安全確保が第一でございます。その他環境に影響がないようにということもありますが、何といっても安全第一でございまして、従来から原子力委員会のもとにおいて安全の問題を取り扱うにいたしましても、あるいは今後それぞれの省庁が実用の炉の開発に当たられるにいたしましても、やはり安全なくして開発ということはあり得ないと私は考えておりますが、しかし、さらに一歩進んで安全委員会を独立させて、そうしてその機能を十分発揮させるということは一層の前進になる、また国民の安全行政に対する信頼も深めていくゆえんであると、このように考えるわけでございます。もちろんその内容におきまして、地震に対する問題でありますとか、核不拡散の問題でありますとか、その他のいろいろな問題につきましては、もちろん従来からも第一にその点は考えてはきておりますが、そういう専門機関によってさらに一層の研究、推進がなされれば、これまた、それだけのより一層の効果が上がるものと思っております。  それからもう一つ、温排水の問題でございますが、これはいささか安全という問題とは、ストレートに安全という問題とは多少性質が変わっている点もありますが、実際におきまして、この温排水の取り扱いといったような問題については、率直に言いまして、なおひとつ政府として一層取り組んでまいらなければならぬ面がどうしても私どもとしては残されていると考えるわけでありまして、いろいろ研究は進められておりますが、これからも一層それを推進いたしまして、実用的にはっきり——はっきりと申し上げましては弊語があるかもしれませんが、もう少し何か適当な標準、基準をひとつつくるべきではないかと、このように考えているわけであります。
  31. 望月邦夫

    望月邦夫君 アメリカにおきましてNRCという行政委員会が規制を一元的に担当しておる。そこでわが国においてもこういうふうな安全委員会等も行政委員会にしてはどうかというふうな意見がありますが、この点につきまして政府側の御意見を賜りたいと思います。
  32. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先ほど御指摘がございました原子力行政問題懇談会の中におきましても、この安全委員会を三条機関行政委員会にするか、現行で御審議をお願いしております八条機関にするかというようないろいろな議論はあったわけでございますが、米国におきましては、このような行政機関というのが非常に定着しておる機関でございますが、わが国のたとえば発電の規制というようなものは通産省が一貫して行ってきておりますが、それとの見合いにおきまして、原子炉の規制においてどういう形がいいかというようなことにつきまして、行政懇でもいろいろ議論があったやに聞いております。私どもの見解といたしましては、この安全委員会はみずからが審査を行って許可をおろすよりも、第一次審査——これは行政庁が行うわけでございますが、行政庁が行う第一次審査から離れた立場でダブルチェックをした方がより中立性を確保できる、より客観的な判断を下し得るというような考え方で諮問機関にしたのがまず第一点でございます。そういうようなダブルチェックをするということで慎重な審査が行い得るというふうに判断したわけでございます。  それから、先ほどちょっと申し上げましたが、発電施設であるとか船舶の構成部分である原子炉だけを引き出してきて、これを行政委員会のようなところが規制をするというようなことはかえって行政の複雑化を来すのではないかと、こういうような考え方から、行政懇の意見を私どももそうだと考えまして、この安全委員会は日本の実情に合うものとしては諮問機関の方がいいではないかというふうな考え方をとっておる次第でございます。
  33. 望月邦夫

    望月邦夫君 それでは最後に、さっき大臣にお答えいただいたように、科学技術庁におきましては、原発の立地に伴う技術的な諸問題につきまして、積極的に解決に努力していただくということと、それから昭和五十二年度の原子力発電の稼働率がついに五〇%を割った、こういうことがありますと、果たして通産省が安全規制の一環からそれを担当するということにつきましてもなかなか異論も出てくるんじゃないか。また、運輸省がこれからは原子力船「むつ」を担当するというふうな体制になりますと、果たして運輸省にそれを担当する技術者がいるのかどうかというふうな問題が出てくると思うわけでございます。これらの点について通産省、運輸省にお伺いして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  34. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 通産省におきましては、現在年間約百七十件の工事計画の認可の審査、それから六百件の検査業務を実施いたしております。そこで、先生指摘原子力発電所におきますいろんなトラブルもこういった検査を通じて発見されまして、その修理等々のために稼働率が低下しているというような実態もあるわけでございますが、今回の法改正が実施に移されますと、さらに一層の業務が生じてまいるわけでございまして、新しく原子力発電課を、現在原子力関係の二課がありますが、さらに一課増設いたし、あるいは統轄審査官等を含めまして、合計十六名を増員するというふうなことで、大幅に体制の整備を図りまして万全を期したいというふうに考えておる次第でございます。
  35. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 原子力船の開発につきましては、従来から科学技術庁と共同でいろいろやってきたわけでございます。現在の日本には原子力船といたしましては「むつ」がございます。それは建造段階にあるわけでございまして、これにつきましては現在は原子炉等規制法によりまして、安全審査につきましては科学技術庁で、それ以後につきましては船舶安全法によりまして運輸省でやっているわけでございますが、今回の法改正によりますと、研究開発段階にある原子炉は科学技術庁で一貫して見る、それから実用の舶用炉につきましては運輸省で見るということになるわけでございまして、「むつ」につきましては、炉は研究開発のうちの段階の炉ということになっておりまして、改正法によりましては、原子炉等規制法に基づきます規制は科学技術庁が一貫して行う、それから「むつ」につきます船舶安全法に基づきます規制はこれは運輸省でやっていくという形になるわけでございます。それで、「むつ」の開発が進みまして、将来実用原子力船が出現するという段階になりました場合には、運輸省の方におきましても炉規制法に基づきまして新たに基本設計の段階から炉規制をやるわけでございますので、その新しい責務が十分果たせるよう所要の体制整備を図っていくということにいたしたいと思っております。  それからこれは体制を整備いたします場合に、制度だけでなくて人間の確保、要員の養成ということが大事かと思っておりますが、現在、これまでも原子力関係のいろいろな各種の研修等にも人を出しておりますし、それから科学技術庁原子力部門との人事交流というものも従来もやってきておりまして、そういう原子力行政についての実務を経験さしておりますけれども、さらに今後もそういった体制、制度と申しますか、そういう実績を充実させまして、体制に万全を期していきたいというふうに考えております。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、省エネルギーの問題について二、三お尋ねしたいと思います。  先ほども望月委員の御質問にもありましたように、昭和六十年に一〇・八%の省エネルギー率を目標としておる、これが政府エネルギー計画でありますが、政府省エネルギー基本的な政策というものはあるのかどうか。というのは、計画のような、閣議等で決定をしたそういう一つの具体的な方針のようなものは何があるのか、お尋ねいたします。
  37. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 省エネルギーの目標につきましては、先生指摘のように、昨年の八月にエネルギー調査会でもちまして、昭和六十年度におきます省エネルギー率の目標を一〇・八%ということで定めておるわけでございますが、この省エネルギーの実施につきましては、通産省エネルギー庁がもちろん推進するわけでございますけれども、これは各省にも関連する問題がございますので、現在は総理府が中心になりまして省エネルギーに関します本部が設けられておりまして、ここでもって各省の協力を得ながら進めていくという体制がとられておるわけでございます。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理府に本部があることは知っておるんですが、本部があるだけでは省エネルギーは進まないわけで、どういうように省エネルギーを進めていくかという具体的な点についてお尋ねをしておるわけで、総合エネルギー調査会が省エネルギー部会を設けて昨年の十一月二十五日にレポートが出されているわけですが、これが政府の方針であると判断していいわけですか。これは政府の方針ではなしに、これはあくまでも調査会の一つの試案である、そのような認識でいいのか、その点はどうでしょうか。
  39. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 省エネルギー部会の審議につきましては、なお現在審議の途中でございまして、まだ正式の答申を得たわけではないわけでございますが、十一月に省エネルギー部会で取りまとめましたのが中間的な取りまとめの段階でございます。今後これがさらに煮詰められまして答申を得ましたならば、これは調査会の政府に対する要望、意見ということになるわけでございますので、これを踏まえまして、先ほど申し上げました本部におきまして省エネルギーにつきましての基本的な考え方を取りまとめると、こういう段取りになろうかと思うわけでございます。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いつ結論が出るんですか。この省エネルギー部会の答申はいつの予定なんですか、最終報告は。
  41. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) この省エネルギー部会の報告の時期につきましてはまだ決めておりませんが、全体としてのエネルギー調査会の取りまとめを大体この夏ごろまでにはまとめたいということでございますので、その段階でこの省エネルギー問題につきましても取りまとめをいたしたいと、こういうふうに考えております。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 省エネルギー部会の中間報告では、「産業、民生、輸送等各部門における省エネルギーの目標等を明らかにした長期基本計画を策定することが適当である。」と、こう書いておるわけですね。確かに私も、省エネルギーというのは幾ら叫んでも省エネルギー進むわけでもございませんし、また、どうしても産業構造の変革というものを伴ってくることを考えれば、かなり長期的な計画がなければいけないんじゃないかと思うんですが、こういう基本計画はあるのかないのか、あるいは現在進行中なのか、あるいは先ほどの省エネルギー部会の正式な報告書が出てから着手するのか、そのあたりはどうなんですか。
  43. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 省エネルギーを推進していきますには、先生指摘のように、産業、民生、輸送の各分野につきましてそれぞれ実施していくことが必要でございまして、それぞれの部門でどういうふうにそれを推進していくかということはきわめて大事な、大切なことであろうかと思います。  それでは、そういうものにつきまして現在すでに部門別省エネルギー基本計画というふうなものができ上がっておるかと言われますと、これはまだ実はできてないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、八月ごろに省エネルギー部会の答申がまとまりました段階で、それを受けまして政府として検討してまいるという段取りになろうかと存ずるわけでございます。
  44. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうなんですか。ちょっとゆっくりし過ぎているんじゃないでしょうかね、もう大体中間報告も出ているわけですしね。こういう計画をつくることが必要なことは、別に答申がなくても必要じゃないかと思うんですね。だから、いまのような政府の対応では、エネルギー危機だ危機だといっても、そんなのは本当に危機なのかなと。エネルギー庁は、この委員会等においては、一九八五年あるいは九〇年の石油危機については非常にアメリカのCIAのレポートとか、そういうものを支持しておるわけでしょう。そういうことであれば、もうちょっとこれはピッチを上げてやるべきじゃないかなと思うんですけれどもね。その点どうなんですか。そんなにゆっくりしていいんですか、省エネルギーの方は。
  45. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生指摘のように、なるべく早く、そういった基本的な目標に基づきます計画をつくりたいというふうに考えておるわけでございますが、たとえば産業問題につきましても、業種別に、たとえば鉄鋼業であれば、どこにどういう設備をどういう段階で導入していくのが適当であるかとか、いろいろかなり具体的に詰めるべき問題でございますので、若干の時日は要するわけでございますが、御指摘の御趣旨は十分踏まえまして、できるだけ早くやるようにいたしたいと、こういうふうに考えます。
  46. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は非常に問題は大変だと思いますよ、やっぱり。それだけに早くやらないとね。答申が出てから、ぱっとやってぱっとできるものではないわけで、できるだけ早くスタートし、各省間の話し合いも必要であると思いますし、そういう意味で、これはまた別の機会に、通産大臣なりあるいは総務長官なりを当委員会に御出席を願って質問をしたいと思いますが、きょうのところは、ともかく速やかにエネルギー庁からも各省にお願いをし、また科学技術庁長官としてもやっぱりエネルギー関係の閣僚の一人でございますので、科学技術庁原子力発電開発ばかり力を入れているということの言われることのないように、やはり省エネルギー原子力発電の建設と同じように大事なわけですから、そういう点、力を入れていただきたい、このことを要望しておきます。長官も、ひとつお願いします。
  47. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 御発言のとおり、省エネルギーのきわめて大切なことは申すまでもないことであります。先ほどもちょっと触れたかと存じますが、どの分野においてどれどれのエネルギー節約するといったような明確な数字、また、それに必要ないろいろな処置については、いま通産省からお答えいたしましたように、まだはっきりいたしておらぬ点もございますが、しかし、省エネルギーそのものを決して軽視しているのではないわけでありまして、そういう一つの形の上のプランができるまでもなく、各省庁においてそれぞれ可能な限り省エネルギー研究開発なり実施なりはやっておられるものと考えております。もちろん当庁におきましても、これまた先ほど申し上げましたとおり、特に当庁は研究開発に特に主眼を置かねばならぬ庁でもございますから、具体的に、先ほどこれも政府委員からお答えしましたが、当庁として取り上げられますいろいろな省エネルギー対策については現に実行もしておりますし、今後も推進してまいりたい。それからエネルギー閣僚会議のメンバーとして私どももその責任の重大なことを痛感いたしておりますので、そういう立場からも御発言趣旨に沿って極力努力してまいりたいと、このように考えているわけでございます。
  48. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから一〇・八%の根拠については、これは各部門ごとに積み上げたデータであると、このように御答弁ございましたが、私がいただいた資料では、民生関係が一四%、産業関係が一一%、輸送関係が一〇%と、このようになっておりますが、これで間違いはないのかどうか。さらにその民生の中でも、たとえば暖房が三四とかあるいは給湯——お湯を供給するのが二三%、厨房が一四%、動力が一三%と、このようにお聞きしておるわけでありますが、恐らく産業とか輸送もそれぞれ細かいのが全部積み重なってこういうデータになっておるのじゃないかと思うので、この一〇・八%の積み上げの根拠について資料として後日提出をしていただきたいと思いますが、その点はよろしいでしょうか。    〔委員長退席、理事望月邦夫君着席〕
  49. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) この数字につきましては、いま先生おっしゃいましたように、産業部門が一一%、民生部門が一四%程度、輸送部門が一〇%程度ということで、全体といたしまして一〇・八%という数字をはじいておるわけでございまして、それの計算根拠につきましても、一応たとえば産業部門につきましては、主な業種につきまして、業種別にどの程度省エネルギーが行われるであろうかということをはじきますし、また民生用につきましても、たとえば断熱材利用等によりましてどういう形になるか、輸送部門につきましても自動車の燃費向上等々がどういうふうになるかと、一応の根拠は——根拠といいますか、計算を基礎にいたしましてはじいておるわけでございますが、これは資源エネルギー庁におきまして、資源エネルギー庁だけの責任において計算したものでございまして、関連いたします各省庁等との協議のもとに計算したものではございませんので、この詳細な内訳につきましては、いまの段階ではなおこれを資料としてお出しするということにつきましては御容赦いただけないだろうかと思うわけでございます。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 正式に出せなければ非公式でもいいですから教えてくださいよ。われわれも非常に困っているんですよ。一〇・八%でいいのか、あるいは一五%でいいのか、そういう点はやはり政府は専門家がたくさんいらっしゃるわけですからね。そういうデータは何も企業秘密でも何でもないわけですし、別にそのデータを取り上げて政府を苦しめるためにわれわれは要求しているわけじゃないのですから。これは正式な資料として御提出いただけなければ非公式な資料としてでもいいですからこれは出してもらいたい。いいでしょう、その程度のことは。出せないという方がおかしいと思うんだけれどもね、ぼくは。
  51. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 非公式な資料として出すということがどういうことであるのかちょっと理解できないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、各省庁等とも協議済みの数字ではございません。全く非公式のものでございますので、非公式にお問いいただければこれに答えないという、企業機密等々の問題はないわけでございますが、やはり委員会に出すということになりますと、これは公式ということになろうかと思いますので、その辺につきましてはよろしく御拝察をいただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつ日本政府なりあるいは政府諮問機関であるエネルギー調査会が出したデータですから、やはり当然その裏づけがなければいけませんし、ただ勘でぱっぱっと決めたということになりますよ、それじゃ。そういう点から、これは正式にオーソライズされた数字ではないかもしれませんけれども、それは一つ資源エネルギー庁の試算という形でこれはひとつ提出をしていただきたい、このように思います。  それから五十二年度、先ほどのお話では石油消費量が〇・一%の伸びで、経済成長は五十二年度が六・七が五・三ですか、改定をされまして、最終的にはわかりませんが、恐らく五・三%はいっていると思うのですね。ところが、石油消費量は余り変更がない。こういうことになると、いわゆる経済成長に対する弾性値というものは非常に下がると思うのですけれどもね、この点この数年のやはり経済成長に対する弾性値というのはかなり下がっていると思うのですが、その点はどうなんですか。
  53. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生指摘のように、GNPに対します弾性値につきましては、たとえば昭和四十六年から五十一年度までをとりますと、エネルギー全体でもちまして約〇・八でございます。それから石油だけでとりまして〇・六ということでございまして、これは四十九年度、五十年あたりが前年度に比べて石油消費が減るというふうな事態がございまして、そういうものを全部含めた数字でございますので、今後ともそういう形で推移するかどうかにつきましては非常に問題がありますが、オイルショック前に比べれば、先生指摘のとおり、確かに弾性値は下がっておると言わざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは省エネルギーが推進されたから下がったのか、その点はどうなんですか。
  55. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) これは両面あると思います。先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、オイルショックエネルギー価格が非常に高くなりましたので、エネルギー有効利用をやろうということで、省エネルギーも確かにかなりな程度において行われております。これが一つの原因かと思います。  それからもう一つは、産業構造の問題といいますか、このGNPの中におきますいわゆる物離れの傾向ということで、従前は、先生も御承知のように、鉱工業生産の伸び率の方がGNPの伸び率よりも高かったわけでございますが、最近では鉱工業生産の伸び率の方がGNPの伸が率よりも下回っておるというような実態がございます。その中でも特にエネルギーを多消費いたします鉄鋼とか石油化学といったようなものが、御承知のように、最近におきます不況でもって生産が伸びないといったような事態がございまして、先ほど申し上げました省エネルギーの問題と、それからそういった構造的な不況の問題とが重なり合ってそういった状況を生じているのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 このエネルギー調査会の報告を見ますと、エネルギー消費の原単位というのは、昭和四十五年あるいは四十九年をボトムとしてそれ以後上昇しているわけですね。ということは、生産活動が低下すれば、どうしてもエネルギーの原単位は高くなってくる。こういうのを見てきますと、実際、先ほど省エネルギーもかなり進んできたと、こういうようなお話ですけれども、われわれデータで見る範囲では、エネルギー原単位が悪くなっておるわけですから、そうすると、石油の使用量が減ったのはむしろ不況による生産活動の低下とか、あるいはGNPの内容の変化とか、そういうものが主力ではないか、こういう感じがするのですけれどもね。私言いたいのは、結局省エネルギーももちろん進んだことは進んだと思うのですね。石油が高くなったんですから、皆企業はコストを下げるために節約をすると、こういうことは、家庭においてもどこにおいても行われておるわけなんですがね。そういうものはただ勘であって、どの程度が寄与しているのかということを掌握はできないわけでしょう、そういう統計は集まってこないわけでしょう。その点どうなんですか。
  57. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 先生指摘のように、確かに操業度が悪くなりますと熱の損失が大きくなりますので、エネルギーの原単位というのは上がるといいますか、悪くなる傾向があることは事実でございますが、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、たとえば鉄鋼業におきまして高炉のガスの圧力を利用しての炉頂圧発電を行うとか、あるいはセメントにおきまして製造方式を改造するとかいったような、いわゆる各種の設備投資を実施することによってエネルギー節約しているというふうな具体的な例もあるわけでございます。そういった省エネルギー措置によるものがどの程度のウェートになるのかということは、これは統計的につかまえることは非常に困難でございます。ただ、いま申し上げましたような幾つかの例をベースにいたしまして推定をいたしますならば、先ほどもちょっとお答え申し上げたわけでございますが、オイルショック前の四十八年度に比べまして二%程度省エネルギー現状で行われているのではいかと一応の推定をいたしておりますが、御指摘のように、これを統計的に把握するということは困難でございます。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 二%の根拠はあるんですか。その推計をしたそのもとになるデータ。何もなしにただ二%と、感じではなしに、こういうセメント部門においてはこうだ、あるいはこういう業界においてはこうだ、だからこの業界も恐らくこの程度であろう、だから二%ぐらいだという、こういう計算の資料は提出していただけますか。
  59. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) いま申し上げましたように、若干の例からの推定でございますので、お出しできるような内容のものがあるかどうか調査いたしまして、お出しできるに値するようなものでありましたならばこれをお出しいたしたいと、こういうふうに思います。
  60. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。しかし、委員会にも出せないような資料をもとにした推定を、委員会で結果だけ発言するということはぼくはよくないと思うんですよ。だからこういうものを、いやしくも当委員会で発言をした以上、その根拠となる資料が出せないようじゃ、ぼくは非常に問題だと思いますね。これはひとつぜひ出してください。先ほどの問題と一緒です。  それから、住宅の断熱構造化について、建設省としては、現在どの程度日本の場合は進んでおるのか。外国に比べて非常におくれているように聞いておるわけですが、その点がどうなのか。それから科学技術庁資源調査所では、断熱によるエネルギー節約の度合いがどの程度であるかということをやっておるということをいまお話がありましたが、大体どの程度節約ができるものか。それから太陽熱によるソーラーシステムの研究をいろいろやっておられるわけですけれども、実用化の見通しというのは大体何年後になるのか、こういう点について建設省と科学技術庁から簡単で結構でございますが、御答弁いただきたいと思います。
  61. 松谷蒼一郎

    説明員松谷蒼一郎君) お答え申し上げます。  住宅の断熱構造化の現状は、現在、住宅につきまして特にこういうことを目的とした調査、統計をしておりませんので、はっきりしたことはわかりませんが、断熱材の出荷状況等から見た推定値によりますと、新築住宅断熱材を使用している割合は北海道で約八〇%ぐらいあるのではないか。もちろん断熱材の使用の状況は施工の状況と関連するわけでございますが、大体北海道では天井、壁、床などの部分にグラスウールであれば五十ミリから百ミリぐらいのものを使っているのではないかというように推定をしております。それからまた関東以北、東北地方等におきましては、大体壁が五十ミリ、天井が五十ミリ程度のものを約五〇%程度使っているのではないか。その他の地域では壁に二十五ミリそれから五十ミリ程度断熱材を入れる場合につきまして、大体新築住宅の二〇%から三〇%程度が使用されているのではないかというように推定をしております。全国平均で申しますと、新築住宅のおおむね半分近くは断熱材を何らかの形で使用しているのではないかというように考えます。  諸外国との比較でございますが、諸外国とは、特に欧米先進諸国とは位置しております地理的状況がかなり違っております。アメリカにしても、イギリス、ドイツ等につきましてもかなり寒い地域に位置をしておりますので、当然断熱構造化というのはわが国よりは進んだ形で行なわれております。アメリカでは、たとえば既存住宅のうち断熱構造化を全く行っていないものは一〇%に満たないというように聞いております。そういう意味では諸外国の方がわが国よりは省エネルギー構造化と申しますか、断熱構造化の状況としては進んでいるのではないかと思います。  以上でございます。
  62. 大澤弘之

    政府委員大澤弘之君) 資源調査会が断熱の調査をいたしましたのは、五十一年の十月に資源調査会の資料というのを出しておりまして、「省資源省エネルギーに関する調査」ということでございますが、住宅で暖房用のエネルギーがどのぐらい断熱材を使用すると節約になるものかということを全国規模で推計をしてみようということでやった調査でございます。  これのつまり推計と申しますか、計算をしていく上におきましてはいろんな仮定をたくさん置いていかなきゃならないわけでございます。簡単に申しまして、たとえば家に住む人は何度で住むのか、あるいは外気の条件がうんと寒いときもございましょうし、風の吹くときもありましょうしとか、そういうことによりまして家全体で見ました断熱効果というのも非常に違ってくるわけでございまして、大変めんどうな計算でございますが、一つのモデルを考えましてやりました結果の結論だけを申し上げますと、全国ベースの一年間の暖房用エネルギー——冷房は実はこの時点ではやっておりません。暖房用エネルギー節約の量は約五五%になるということでございます。この五五%というのはどういうものかと先にちょっと申し上げますと、断熱材を使用しない場合の暖房エネルギーはどれだけになるかというまず量を出します。それから断熱材を使ったときの使用のエネルギーはどれだけになるかということを出します。それからもう一つ断熱材自身を製造するためのエネルギーというのが要ります。つまり製造するエネルギーと、それから使用した場合のエネルギーを使用しないものから引いたものと、その使用しない場合のエネルギーの比と、こういうことで出たのが五五%と、かなり効果があるということでございますが、仮定といたしましては、全国を日照が多いところとか、寒いところとかいうことで四地区に区分をしております。それから住宅は一応三種類の住宅を考えるというようなことで、わりあい私ども小まめな勘定かと思っております。五十一年でございますが、かなり断熱の効果はあるのではなかろうかと思っております。  ちなみに数量で申し上げますと、この報告の中では、日本全国の節約の総量は千八百八十五万キロリットルという数字が出ております。これは現在の石油の全消費量が約三億キロリットルでございますので、それとの比較で千八百八十五万キロリットルというような量で、かなりの節約効果が、これはまあ全国の家がこういうある程度の断熱の構造をとった場合という非常に理想的な計算でございます。  それからもう一つお話がございましたソーラーハウスでございますが、ソーラーハウスというのは御承知のように俗称でございまして、いわゆる太陽熱を家庭エネルギー利用する家ということでございます。これは科学技術庁あるいは工業技術院のいわゆるサンシャイン計画ということでもなされておりますが、科学技術庁の分につきまして概要を申し上げますと、科学技術庁のソーラーハウスは四十九年からの四カ年計画で、太陽熱の家庭エネルギーへの有効転換技術に関する調査ということで総額約四千七百万円を使いまして五十二年度で終了をしたという調査でございます。いままでまだ五十二年度のデータの整理が十分に済んでおりませんので、五十一年度までの調査の結果で申し上げますと、私どもつくりましたソーラーハウスでは、冷暖房、それから給湯ということにこの太陽エネルギーをどれだけ使えるかということを、代替できるかということをやったわけでございます。住宅は実験住宅をつくりましたので、ただいまの断熱材等、つまり省エネルギーのハウジング技術をその時点ではできるだけ取り入れた家で、御承知のように、屋上にいわゆる太陽熱を吸収する装置をつけまして、それの熱エネルギーで冷房もし、かつ暖房もする、さらには給湯もする、それからそれを補う意味でヒートポンプもするという、まあかなり設備としましては非常に一般に必ずしもすぐできるようなあれじゃございませんで、エネルギーがどれだけ使えるかということを試してみようと、こういうことでございますので、ぜいたくな設備で実験をしたわけでございますが、その結果は冷暖房、給湯、まあそれぞれにいろいろございまして、特に冷房の利用はやはりいろいろまだ代替率が十分でないというようなこともございますが、平均で見ますと四九から五七%というのは——年度によりまして日照時間その他が違うものでございますから幅が出ておるんでございますが、ごく簡単に申しまして約五〇%、半分は代替ができる。この居住の条件は大変実はいい居住条件でございまして、たとえば暖房に関しましては二十四時間暖房でございますので、いま日本の通常の家では夜は必ずしも暖房しないということでございますけれども、朝起きたときでもいつも同じ温度になるような、そういう大変理想的な住宅での実験で代替率が五〇%ということでございます。ただ、この経済性の方から申しますと、ただいま申し上げましたように大変、何というのですか、大がかりな設備をいたしておりますので、この設備を現在の電気料金とかガス料金とかいうもので回収をいたしますと、十一年から十八年かかるというようなことで、その面だけから見ますと、実はいますぐ使えるといいますか、経済的に使えるということにはかなりまだ問題があるような結果が出ております。しかし、私ども、この利用効率はもう少し今後は上がっていくでございましょうし、量産をすれば設備というものは相当安くなるだろうしといったような期待をかけて、これをコストの面に考えますと、これはまだ余り計算が十分にこういうことがなかなかしにくいんでございますので、数値としては何も計算してないんでございますけれども、ソーラーハウスの将来の実用化ということについては期待が持てるものと、こういうふうに調査の結果考えておるわけでございます。
  63. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 建設省にお伺いしますが、断熱を使えばいま助成措置というのはあるのかないのか、現段階においては。
  64. 松谷蒼一郎

    説明員松谷蒼一郎君) 現在の段階では、特にそのための助成措置というのはございませんが、本年度住宅金融公庫の融資におきまして、特に改良工事でございますが、省エネルギー化された住宅につきましては、特に木造二月建て住宅の場合、百三十万円までの限度額の融資を十万円増額いたしまして百四十万円まで奮発するということにしております。
  65. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま科学技術庁研究によりますと、実際に断熱をした場合、その断熱にエネルギーを使うことを考慮しても五五%省エネルギーができるということは半分以下のエネルギーで済むということで、これは非常に手っ取り早い一つ省エネルギーじゃないかと思うんですが、先ほどのお話では、断熱もいろいろ使い方がまちまちであると、必要以上に使ってもこれは意味ありませんし、こういう部屋ならばこの程度使えば何%ぐらい節約できるんだと、こういうような一つの標準はあるのかないのか。あるいはいま検討中であるのか。その点どうでしょうか。
  66. 松谷蒼一郎

    説明員松谷蒼一郎君) 現在のところはまだ省エネルギー住宅の基準というものはございませんが、先ほど申し上げましたように、住宅金融公庫の融資におきまして、省エネルギー住宅については特に増額融資をするということ等いたしております。そのために至急に省エネルギー住宅とはどういう構造のものであるか、そのための基準を現在検討しておりまして、できれば五月中にでもこれを公表したいというように思っております。  なお、大変恐縮でございますが、先ほど私答弁の中で、省エネルギー住宅につきましては、一戸建て木造住宅の場合に百三十万円を百四十万円と申しましたが、これは百四十万円までのものを百五十万円まで増額融資するということでございます。訂正いたします。
  67. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから運輸省にお尋ねしますが、非常に自動車輸送の比率がどんどん高まっておるわけですね。そういう点はむしろエネルギーの原単位から言えば逆効果でございますが、こういう点やはり長期的には輸送体系というものをどうするのか、自動車を余りこれ以上野放しにふやすことは問題ではないかという意見もあるわけですね。しかし自動車産業もいまは非常に輸出産業の中で欠かすことのできない産業で、急速な変化はできないにしても、やはりそういう点、エネルギーの面から輸送体系の長期ビジョンというものが必要ではないかと思うんですが、そういうものはいま検討しているのかですね。  それと電気自動車がこれは省エネルギーにも役立つように聞いておるわけですが、この研究状況はどうであるのかですね。時間が余りないんで一申しわけありませんが、できるだけ要点だけ御説明をいただきたいと思います。
  68. 宮本春樹

    説明員(宮本春樹君) お答えいたします。  省エネルギーの推進というのは先生お話しのとおり、きわめて重要な課題であるということはわが方も認識しておりまして、運輸部門におきましても鋭意努力しておるところでございますけれども、輸送機関のエネルギー効率といいますのは、その運行形態でありますとかあるいは利用効率であるますとか、そういうものによって大きく変化するものであるということは先生も御承知のとおりだと思います。したがいまして、自動車でございますとか、あるいは鉄道であるとかというような、一般的な比較では必ずしもエネルギーのことを論じられないわけでありまして、輸送の実態を十分踏まえまして、それからエネルギー以外にも労働力の問題でありますとか、その他物的資源の問題も含めて、広い立場から比較検討を行う必要があると、このように私どもは考えております。このような観点から、実効のある省エネルギー対策の推進ということを図ってまいりたいと存じておるわけでございますけれども、やはり輸送機関というのはそれぞれ特性を持っておりますから、できるだけその特性を生かすように考えていきたい、そのように考えております。たとえば鉄道につきましては、都市間の旅客輸送でありますとか、あるいは大都市圏の旅客輸送、あるいは中長距離大量な貨物運送、そういう分野で重要な役割りを果たすように、お話しになりました自動車につきましてはその機動性が発揮できるように、その利点を生かして協同一貫輸送というのをわれわれ推進しておりますけれども、そういうことによって省エネルギーの実を上げたいと、そんなふうに考えております。  それから御質問にありました電気自動車は通産省の方からお答えいたします。
  69. 浜岡平一

    説明員(浜岡平一君) 電気自動車についてお答え申し上げます。  御承知のとおり、排ガスがない、騒音が小さいというような公害対策面のメリットに加えまして、エネルギー源の多様化ができるというようなメリットもございますし、加えまして都市内走行につきましては、エネルギーの総合効率で見ますとむしろガソリン車よりもいいんではないか、一〇%程度いいというような試算もあるわけでございます。  現在の開発状況でございますけれども昭和四十年代の前半ぐらいから民間で開発が始まりまして、一充電で大体五十キロから百キロぐらい走れるというような車が現在ある程度出回っております。で、将来の効用に着目をいたしまして、昭和四十六年度から五十一年度にかけまして、いわゆる大型プロジェクト制度を活用しまして、電気自動車の開発を官民を挙げて推進をいたしたわけでございます。その結果といたしまして、一充電で大体二百キロ、車種によりましては四百キロ走れるようなものも出てまいりまして、性能面では非常に大きな成果を上げることができたわけでございますが、現在のところこれを生産をいたしますと、ガソリン車に比べまして二倍から三倍のコストがかかるというような状況になっておりまして、これを実用化していくということが今後の大きな課題でございます。本年の二月に標準実用電気自動車研究開発組合、大変長い名前でございますが、こういう名前の研究開発組合を関連メーカーが共同してつくっておりまして、ことしから三年間の間に何とか実用のめどのつく体制をつくっていこうというようなことで勉強がスタートしたというのが現在の段階でございます。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは時間も来ましたようでございますので、細かいことはまた後日に譲りたいと思いますが、やはり省エネルギーは各部門にわたって細かくやっていかなければいけない。そういう点から特に資源エネルギー庁、科学技術庁等が中心になって、具体的な基本計画をつくるように努力をしていただきたいことを要望しておきます。  それで、省エネルギー法案というのを今回国会に出すと、そういうことで、二月あるいは三月の新聞等でこの省エネルギー法案の内容、条文まで私拝見をしたわけでございますが、これはもう国会に出されたわけでございますか。あるいはまだ出されてないとすれば、どういう理由でこれは出せれないのか。法案はできたのか、あるいはどういう点が問題になって各省の詰めが行われているのか、そのあたりはどうなんでしょう。
  71. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) 俗称省エネルギー法案、エネルギーの使用の合理化に関する法律案というふうなことで一応検討いたしておりますが、新聞等に出ましたのはまだその途中の段階の案でございまして、現在の案ではないわけでございますが、この法案につきましては、現在各省及び法制局と御相談中ということでございまして、われわれといたしましてもできるだけ早く提出いたしたいということで、現在準備をいたしておるところでございますが、まだ国会の方には提出をいたしておらない状況でございます。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もう国会は五月十七日で終わるわけですがね。今国会はちょっと時間的にもこのような状態では私は出せないんじゃないかと思うのですがね。恐らくこれは商工委員会にかかるんじゃないかと思うのですが、商工委員会、いろいろ問題法案を抱えておりますし、そういう点、やはり出してもちょっとむずかしいということで出さないのか。内容的には大体成文——まとまっておるのか、それを法制局のような事務的なレベルでおくれておるのか、あるいは各省にまたがるために、いろいろまだ調整すベき点があって——この新聞なんかで見ますと、立ち入りの問題とか罰則の問題とか、そういうことでいろいろもめているような感じもするんですけれども、そのあたりの感触はどうなんですか。
  73. 大永勇作

    政府委員(大永勇作君) これは法律的な、いま先生指摘のように罰則等々の問題もございますが、それから各省庁とも関係いたす点がございますので、その辺の調整が必要なわけでございまして、この調整が、正直に申しまして現段階ではまだ済んでいないということでございます。われわれといたしましては、一日も早く調整を終えまして国会に提出いたしたいというつもりで準備を進めておるところでございます。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあIEAの先般の理事会におきましても、日本政府に対する勧告の中においては、この省エネルギーの項目が一番多かったわけですね。そういう点から、私は科学技術庁といたしましても、また資源エネルギー庁としても全力を挙げて取り組んでいただきたい、そのために省エネルギー法案も速やかにひとつ出していただいて、内容等もちろん問題になると思うのですけれどもね、そのようにひとつ努力をしていただきたい、このことを両庁に要望いたしまして、きょうの質問は終わります。長官として、省エネルギー法の成立に努力すると、そのことをひとつ約束してもらいたい、これは省は違うかもしれぬけれども、いま資源エネルギー庁にもお願いをしたのですけれども科学技術庁としてもひとつ協力すると、このことを一言御答弁をいただいて……。
  75. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 申し上げるまでもありませんが、もう十分努力いたしますことをここで申し上げてお答えにかえます。
  76. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 最近の原子力関係の問題での国際的な幾つかの動きについて、まずお伺いをいたします。それから後で原子力の安全行政についてお伺いをしたいと思います。  先月の十日に発効いたしました米国の核不拡散法では、米国の国産燃料の再処理について事前同意が必要となっているわけでございますが、現在の日米原子力協定ではその点が触れられている、わが国への影響は当面ないと言われておりますけれども、そう考えてよろしゅうございますか。それと同時に、フィジカルプロテクションの強化、ウランの濃縮の問題、そしてプルトニウム等の貯蔵施設についての事前同意等では、これは日米の原子力協定に触れられていない、その意味で協定の改定の必要性が出てくるんじゃないかというふうに考えられますけれども政府はその点についてどうお考えで、どのような準備をしておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  77. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 米国の新しい核不拡散法でございますが、この法律は米国から原子力関連機材あるいは技術といったふうなものを輸出します際に、核不拡散のための措置を強化しようという目的でございまして、御指摘のとおりいろいろな規制条項が含まれておりまして、その中には米国から輸出された核物質の再処理に際して米国の事前同意を必要とする、いわゆる再処理の事前同意、これは現行協定にあるものでございますが、それに加えまして、新しく濃縮をする場合、あるいはまたプルトニウムとか高濃縮ウランを貯蔵する施設について、米国の事前同意が必要であるといったふうな条項も含まれております。  それから、そういったものにさらに加えまして、一般的な核不拡散のための措置といたしまして、IAEAのセーフガードでございますとか、あるいは核物質防護措置といったふうなものも義務づけられているわけでございます。  こういったふうなものは、今後わが国にどういう影響を与えるであろうかという点でございますが、まず、現行協定にもございます再処理の事前同意でございますが、これは昨年の日米原子力交渉におきます日米の共同決定によりまして、現在九十九トンの使用済み燃料を限度として、ウランの使用済み燃料のホット試験を実施しておるわけでございますが、これにつきましては免除規定がございまして、今回の法律の対象にはならないということであろうかと存じます。  それから、プルトニウムあるいは高濃縮ウランの貯蔵施設についての事前同意といったふうなことにつきましては、これは現行協定にないわけでございますから、いずれ米国は自国の国内法に基づきまして、わが国に協定改定交渉というものを持ち込んでこようかと思います。そのときの問題であろうかと思いますし、また、核物質の防護措置につきましても、どの程度のものを要求してくるかということも、将来の協定改定交渉の段階を待たなければ何とも言えない状況でございます。  ただ、私どもとしましては、核不拡散についての国際的な動きというのは最近非常に顕著なわけでございますが、国際核燃料サイクル評価計画の中でもこの問題を検討しておりますので、国際核燃料サイクル評価の検討の経過、この検討の成果といったふうなものは、将来起こるでありましょう日米の改定交渉に非常に大きな影響を持つものであるというふうに考えておりますので、そういうふうな機会を含めて、あらゆる機会を通じてわが国の国益が損なわれないように十分対処してまいりたいというふうに考えております。
  78. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまの御説明ですと、アメリカ側としては、協定の改定交渉をすぐにでも申し入れてくるということは考えられないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。つまり、国際核燃料サイクル評価の作業の結果を待ってということになれば、しばらく時間がかかると思いますが、その関係で同時にお聞きをしておきますが、いま、国際核燃料サイクル評価——INFCEの作業がすでに行われているわけですけれども、ちょうど、何か来月の十五日から東京でその中の第四部会——再処理問題の会合が開かれるというふうに聞いておりますが、その辺に対する政府の対応策と今後のステジュール、それもあわせてお聞きをし、それがある程度の結論を得るまで、アメリカ側との改定交渉というのは一応お預けになっているというふうに考えてよろしいのかどうかお伺いしたい。
  79. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 問題を二つに分けまして、INFCEの進捗状況をまずお話申し上げまして、その後でINFCEと核不拡散法との関連を申し上げたいと思いますが、INFCEの方は、御承知のように、昨年の十月から世界の四十カ国、四国際機関が参加して、二年間を予定して開始されたものでございまして、昨年の暮れからことしの初めにかけまして、このINFCEの中に設けられました八つの作業部会の第一回の会合がおのおの開かれまして、今後の作業の進め方につきまして検討が行われたわけでございます。わが国はそのうちの第四作業部会、つまり、再処理とプルトニウムの取り扱い並びに利用についての部会の議長国を務めておるわけでございまして、来月には日本におきまして、そのサブグループ並びに第二回の会合が行われるわけでございまして、今後、各種再処理技術についての評価でございますとか、あるいはこれに関連する保障措置、技術の評価、あるいは再処理についての地域センター等、制度的な問題についての検討といったふうなものがいよいよ始まるという運びになるわけでございます。  そこで、このINFCEは二年間でございますから、来年の秋ぐらいを目標にして結論が出されるわけでございまして、先ほど申し上げました、米国の核不拡散法に基づくわが国への協定改定交渉の動きというのが、それまで待つであろうかどうであろうかという問題でございますが、これは米側が現時点では何ら意志表示をいたしておりませんので不明でございますが、私どもの感じとしましては、来年の秋までのんびり待ってくれるというふうなことは余り期待できないんじゃないかという気がいたします。
  80. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 もう一つの動きとしては、アメリカがウィーンのIAEAでフィジカルプロテクションに関する国際条約をつくろうという提案をしている。もう昨年の秋、ことしの春と、すでに二回討議がされているというふうに聞いておりますが、この点もいまの問題に関連をしてくると思います。  日本としては、こうした国際条約化の動きに対してどういう対応をしていこうとしているのか。また、その国際条約化が早急に実現をするのかどうか。もし早急に実現をするのであれば、この問題と日米原子力協定の改定の問題とが絡んでくるのかどうか。その辺の問題についてお伺いをいたしたいと思います。
  81. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) PP条約に関しましては、先生指摘のとおり、昨年秋並びに本年四月十日から現在開催されておるわけでございます。  昨年秋に開催されましたときの各国の状況では、ことしの四月のこの会期におきまして、場合によりましては成案を得るかもしれないというふうな話でございましたけれども、最近わが方からも職員を派遣して、各省と協力してこれに当たっておるわけでございますが、外務省を通じての話では、なおいろいろ問題点が各国から出されておって、本会期で成案を得るまでには至らないだろうということでございますが、非常に各法律分野あるいは技術分野の議論が詰まってまいりまして、それほど遅くならない時期にあるいは国際条約の成案が得られてくる可能性がございます。  で、先生指摘のように、このPPの問題というのは、それぞれの各国の特殊事情も加味しなくちゃなりませんし、核物質の輸送等におきましては国際間の問題があるわけでございまして、恐らくアメリカがPPの強化というようなことで、場合によりましては協定に盛り込むことを要求することも考えられるわけでございますが、この国際条約の動き等の関連は当然出てくるものと考えておりますし、私どもは、こういう国際の動きも踏まえつつ、米国側の折衝の要請があった場合には、その状況に応じて対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、わが国現状のPPの体制でございますけれども、これはかねてよりIAEAが国際的に勧告を出しておりまして、現在ではそのレベルを保つことが各国に要請されておるわけでございますけれども、そのレベルには一応達しておる、なお、若干の法制面それから今後研究していかなくちゃいけない面等がございまして、その点につきましては、国内的な問題を含めていま各省庁と協議、検討を進めておるというのが現在の状況でございます。
  82. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 東海村の再処理施設については、日米の再処理交渉、むずかしい問題を乗り越えてこれから進めていかなければいけない。そうした中で、さらにいまのINFCEでの討議とか、核不拡散法もしくはそれの条約化の動きというようなものも当然絡んでくると思います。その意味で、動燃事業団の東海村の再処理施設の最近の状況、そして第二処理工場の建設準備等、国内の体制の整備が一体どういう進捗状況になっているのか、その点をお伺いをいたしたいと思います。
  83. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず東海再処理施設の運転状況でございますが、昨年の九月二十二日から使用済み燃料のいわゆる勇断作業というのを開始いたしまして、再処理作業に入ったわけでございますが、原研の動力試験炉の使用済み燃料約三・三トンの再処理を終了いたしました。本年の二月の中旬から東京電力の福島1号炉の使用済み燃料約四・七トンの処理を開始いたしまして、三月いっぱいでこの処理を終えておりまして、現在再処理結果につきまして分析作業をしておるという状況でございます。  今後の予定としましては、関西電力の美浜2号炉の使用済み燃料を使ってのホット試験というものを予定しておりまして、ことしの夏ぐらいまでにこのホット試験を終了いたしまして、いよいよこの秋から本格的な運転に入りたいというふうに考えております。  それから第二再処理工場の準備状況でございますが、これは電力業界を中心にしまして昭和四十九年に濃縮・再処理準備会という準備組織をつくりまして、この組織が中心となりましていろいろと準備活動をしてまいったわけでございまして、これまでに図面上における立地地点の調査でございますとか、あるいはいずれ必要となる再処理技術についての調査でございますとか、それからまた再処理工場を建設します場合のマスタースケジュールでございますとか、そういったふうなものにつきましていろいろと検討してまいっておるわけでございますが、ただいま国会に規制法の改正をお願いいたしておりまして、再処理事業を民間産業会社にまで広げて行わしめ得るようにしようという法改正をお願いしておるわけでございますが、この法改正の御審議に歩調を合わせまして、産業界におきましてもこの濃縮・再処理準備会を発展的に改組いたしまして、再処理会社の準備のための事務的な組織というものを電気事業連合会の中に最近設けまして、いよいよ本格的に第二再処理工場の建設の準備作業にかかったというところでございます。
  84. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そうした再処理施設の整備というものと、先ほどお話のありましたINFCEの作業の結果というものとがいろいろな意味で関連をしてくると思いますが、その影響というものはお考えになっておられますか。
  85. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 当然御指摘の影響はあるわけでございますが、私ども基本的な考え方といたしましては、やはり日本のように非常にウラン資源の乏しい国におきましては、輸入いたしましたウラン資源というものを最大限に活用する必要があるわけでございまして、そういう意味で現在の原子力平和利用を進める一番の基本原則としましては、これを再処理してプルトニウムの利用を図るということをおいてないわけでございますので、そういう意味で、この世界的な核不拡散強化の動きというものによって、この基本路線を安易に変えるというわけにはまいらないわけでございまして、この原則に基づく平和利用を進めながらも、なおかつ核不拡散強化の国際的な動向にも協力をしていくというのが基本方針でございます。そういう意味で、確かにこの米国の核不拡散法に基づくわが国の協定改定交渉、あるいはINFCEの場における関係国の核不拡散強化と平和利用の調和点を求める論争といったふうなものを通じまして、いろいろな影響がわが国にあると思いますが、こういったふうなものを、先ほどの基本姿勢でわが国の国益を損わないように最大限の努力をしなきゃならぬという立場にあるというふうに考えております。
  86. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまおっしゃった最大限の努力というものの内容でございますが、核不拡散の国際的な動きもしくは米国のカーター大統領の政策というものに日本が協力するにやぶさかではない。しかし、それと同時に、日本の場合にはエネルギー資源の確保といいますか、将来のエネルギーの確保のために原子力の平和利用開発というものは、これは進めていかなければいけない。その意味でどこで調和点を求めるかというのが問題だろうと思います。その意味で、先般の日米の再処理交渉と同じような形で、アメリカに対して日米原子力協定の改定の問題を契機としていろいろな交渉が展開される、日本の特殊性というものをアメリカに要求していくということはやっていただかなければいけないと思うわけですけれども日本のそうした特恵的な地位といいますか、特別の地位というものを米国側に認めさせる、そうした成算があるのかどうか。実は私、二月にアメリカへ参りましたときに、ニューヨーク大学の総長のソーヒルと話をしたとき、日本のそうした特殊な地位というものをアメリカとしてもぜひ認識をしてもらいたい、その点について十分な認識がないと、東海村の再処理交渉のようなああした厳しい交渉をもう一度やらなければいけないかもしれないということをくぎを刺してきたわけですけれども、その辺について政府基本的な考え方——まだアメリカが言い出してないからというお話がいまありましたけれどもアメリカから言い出される前に基本的な姿勢というものを決めておく必要があるんじゃないか、その点についてはいかがでございましょうか。
  87. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 核不拡散強化の方向には、もちろん国際社会の一員としましてわが国は協力を惜しむわけではないわけでございますが、たとえば再処理事業につきまして、この核不拡散強化という問題を考えます場合に、えてして単体抽出法とか、あるいは混合抽出法といったふうな技術的な問題のみが取り上げられがちでございますが、私どもはこの核不拡散強化というのは、そういう技術的な問題だけで解決できる問題ではないと考えておりまして、当然にその国の政治的な、あるいは社会的な諸条件というものもあわせて考慮に入れる必要があると考えておるわけでございまして、いま先生が御指摘わが国の特殊な事情というのは、そういうエネルギー資源の問題のみならず、そういった政治的、社会的諸条件も含めて私どもは主張してまいりたい、そういったふうなもののパッケージによって核不拡散の強化を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。今後米国等とそういうふうな問題について、いずれ国際的な交渉をするに際しましても、そういったわが国の立場というものは十分に主張をしていくつもりでおりますし、また昨年の日米原子力交渉でもわが国のそういった実情というものは十分に米国が理解をいたしまして、その成果として合意点に達し得たという貴重な経験、実績もあるわけでございますから、今後もそれと同じように十分に米国もわが国の立場というものは理解してもらえるものと思っております。  なお、まだそういう交渉がないわけでございますが、INFCEに臨むわが国基本的姿勢でございますとか、あるいは将来あるでございましょうそういった交渉に臨む基本的姿勢というものにつきましては、関係省庁のみならず、原子力委員会の中に原子力国際問題等懇談会という組織を設けまして、広く官民有識者の御意見を総合いたしまして、誤りなきを期したいというふうに考えております。
  88. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) いま原子力関係発電関係の国際的な問題につきましていろいろ御発言がありましたし、これに対してできるだけの対応策を講じていくということを御答弁申し上げましたが、御発言のとおり、きわめて今後重大かつ困難な問題が起きてまいると予想しております。それじゃ、それに対して万全の体制をとらねばならぬということになりますが、残念なるかな、日本はこれに対抗する絶対的な手段はないわけであります。したがって、われわれとしましてはやはり誠心誠意、不拡散の精神に協力するという誠意を示しますとともに、どうしても原子力の平和利用ということは日本の生存にとって欠くことができないという主張を土台といたしまして、今後いろいろな問題にできるだけひとつ対応していくような、国際的な交渉に対する場合に、日本としての総力を発揮してまいらねばならぬと考えておるわけであります。いま国際問題等懇談会のお話局長から申し上げましたが、これはこういう情勢を民間においても非常に御心配になりまして、そういう御提言もありましたので、私どもは進んでそういう御提言を取り入れまして、原子力委員会の中に原子力国際問題等懇談会という組織をおつくり願って、これは座長は御承知かと思いますが、土光経団連会長さんに当たっていただきまして、もう官界、産業界、あらゆるそういう方面の権威者を網羅しまして、そういう組織もつくっていただきまして、そういう場合に処する一応の、とりあえずの手段は考えましたが、しかし、今後生起してまいります問題につきましては十分の決意をもって、また十分の配慮をもって臨んでまいらねばならぬ、必ずむずかしい事態がくるということを予想しなければならぬと考えておりますことだけを申し添えておきます。
  89. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 熊谷長官からも御決意のほどが述べられましたので、ぜひひとつそうした方向日本の国益、将来の原子力エネルギーの確保という問題について御努力をいただきたいと思います。  もう一つ、全く別の話ですけれども、先週東京で行われましたIEAの理事会で、日本エネルギー政策に関する勧告が採択されております。この勧告の中で、原子力を含むさまざまな問題が勧告をされておりますが、この勧告というものの性格は一体どういうものなのでしょうか。日本政府としてはこれについてはただ聞きおけばいいのか、それとも何らかの具体的な措置が必要なのか、報告が必要なのか、その辺の勧告の性格というものをまずお聞きしたいと思います。
  90. 山野正登

    政府委員(山野正登君) この勧告につきましては、特にわが国政府がこれを守る義務を負うといったふうな性格のものではないというふうに承知いたしておりますけれども、しかし、いずれも貴重な意見でございますので、十分参考にしながら今後の原子力行政に資していきたいというふうに考えております。
  91. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 原子力についていろんなことを言っているんですけれども、私ちょっといただいた資料を見てますと、「エネルギー政策に関する勧告」「日韓大陸棚協定の実施。」なんていうのが入っているんですね。こういう政治的な絡みのあるものについてまでIEAから勧告を受けて、これは一体どうするのか。このIEA勧告全体はどこが受け取っているわけですか。当然科学技術庁でしょう、窓口は。
  92. 山野正登

    政府委員(山野正登君) 日本政府が受け取ったわけでございまして、形式的には外務省でございますが、内容的にはエネルギー関係のある各省庁ということになろうかと存じます。
  93. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 この問題、後でもしできましたら関係省庁の方から御意見を伺いたいと思うのです。    〔理事望月邦夫君退席、委員長着席〕  この「3.4」のところの「エネルギー供給」、「3.4石油及びガス」というところで「日韓大陸棚協定の実施。」というのが勧告されているわけですね。私は、こういうものを安易に受け取るということには問題があるんじゃないだろうかというふうに思っておりますので、担当のところからぜひ御説明をいただきたいというふうに思います。  それから、「原子力」の関係では、公衆に対する原子力安全性、それから将来のエネルギー需要に対する原子力重要性を周知させることによりパブリックアクセプタンスを得る努力をすることという点と、原子力発電所の許認可手続の迅速化及び用地確保等を促進すること、放射性廃棄物処理についての一層の努力という点が勧告されておりますし、さらに、安全性を維持しつつ発電所の稼働率を高めることというこの三点が勧告をされているわけですが、これについて具体的に政府としてはどのようなことをやるおつもりか。それから、これはこういうことをやりますという報告をしないでいいのかどうか。
  94. 山野正登

    政府委員(山野正登君) まず私に非常に関係の深い原子力についての意見につきまして、私の所感を申し上げますが、この三項目、いずれも私どもが日ごろ原子力の平和利用を進めるに当たりまして、最も重要な柱と目しておるものと全く同じものでございまして、まずパブリックアクセプタンスを得る努力というのは、私ども従来とも非常に力を入れてやっておるところでございますが、特に最近におきましては、一般国民のみならず、むしろ地域の住民の方々を対象にいたしまして、原子力発電立地推進懇談会といったふうなものを大臣主宰のもとに設けまして、地元と政府との意思の疎通を図るとか、あるいは原子力モニター制度というものを昨年度から置きまして、全国約五百人のモニターの方々に直接原子力発電についてのいろいろの御意見をちょうだいするといったふうな組織もつくっておりまして、いろいろな機会を通じまして、従来の普及啓発活動に加えまして、工夫をこらしながら強化する努力を進めておるものでございます。  それから、許認可手続の迅速化等に関連しましては、昨年の総合エネルギー対策推進閣僚会議でも取り上げられておる問題でございまして、資源エネルギー庁を中心にいたしまして、各省庁が現在鋭意努力をいたしておるということでございます。  それから、原子力発電所の操業度の向上という問題でございますが、これにつきましても、私ども安全研究には昭和四十七、八年以来格段の力を入れておるところでございますし、特に最近におきましては、通産省を中心にいたしまして、改良標準化といったふうな作業も進めておるわけでございまして、これも今後一層力を入れまして信頼性の向上、稼働率の向上というものに努めてまいりたいと考えております。
  95. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それでは原子力の安全確保の問題に移らせていただきます。  原子力基本法の改正法案が衆議院を通過して、これから私ども参議院で審議をすることになるわけですけれども原子力の安全の問題についてはいろいろと意見の分かれるところでございますし、その点については今後とも原子力安全行政の強化、質の向上というものに取り組んでいくことは、原子力の平和利用を発展させるために不可欠の前提だというふうに思います。今度の法改正によってダブルチェックが導入される、さらに安全行政が各省と科学技術庁との間で職務分担といいますか、事務分担がはっきりして整然とされるというふうに聞いておりますけれども、それによって原子力の安全確保が一層向上することを私たちとしてもぜひ期待をしたいというふうに思っているわけです。その意味で、法文化されているものだけではなくて、それを受ける行政の側で一体どういう準備がされているのか、法案が成立した場合の実施機関としての科学技術庁なり通産省、運輸省の行政事務体制に問題はないのか、その辺の整備の動きについてお伺いをいたしておきたいと思います。
  96. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 先生指摘のように、今回の法改正によりまして、試験研究炉並びに研究開発段階の炉は科学技術庁、実用発電炉につきましては通産省、実用舶用炉につきましては運輸省と、主務大臣がそれぞれ一貫して原子力の安全行政を推進することになるわけでございます。  このうち科学技術庁は、ただいま申し上げました試験研究炉あるいは研究開発段階の炉につきまして行政庁としての規制を行う必要があるわけでございます。科学技術庁研究炉等につきましては従来から一貫した規制を行ってきておるわけでございますが、今回安全委員会が新設されますと、行政庁の審査をさらに安全委員会がダブルチェックするということになりますので、私どもの立場としては、行政庁としての規制と、安全委員会の事務局といたしまして、安全委員会をお手伝いして安全委員会がダブルチェックするための事務も行う必要があるわけでございます。したがいまして、原子力安全局に従来の原子炉規制課のほかに安全調査室という——仮称でございますが、室を設けさせていただいておりまして、本年度定員十一名で発足する予定でございますが、こちらの調査室におきましては、安全委員会が行いますダブルチェック等の実質的な事務を補佐する事務局といたしたいと、こういうようなことで、行政庁の仕事と、それから安全委員会の仕事の中立性の確保と申しますか、こういうものを図っていくような考え方をいたしております。  なお、安全委員会につきましては、大幅に審査員の増強あるいは審査に必要な基準等の整備に必要な各種専門部会が必要でございますが、専門委員の増強等、大幅な増強を図っておる次第でございます。したがいまして、今後各省庁と協力いたしまして、主務大臣が三つに分かれて原子炉の規制が行われますが、安全委員会を中心として一貫性のある規制が行い得るような体制をぜひつくってまいりたいと、かように考えておる次第でございます。
  97. 武田康

    政府委員(武田康君) 今度の法改正が行われますと、当通産省といたしましては、従来、科学技術庁原子力委員会がなさっておられました安全審査、これを引き継ぐことになるわけでございます。私どもは従来から基礎設計以降運転に至りますまでの安全の確保というのにタッチしてきたわけでございますけれども、そういう経験を生かし、さらに引き継ぎに当たりまして、組織とかあるいは要員とか、これを一段と拡充いたしまして、引き継ぎに万全を期したいと、こう思っておるわけでございます。  少し具体的に申し上げますと、実は現在私どもの方では、原子力の安全を扱う原子力発電安全課というのがございますが、この引き継ぎに当たりまして、さらに一課を増設いたしまして、安全関係の二課体制と、そしてまた別途、従来からございます原子力発電課を合わせまして三課体制をとっていきたいと思っているわけでございます。そして安全審査の関係等で、統轄安全審査官、これは現在の科学技術庁におられます監理官に相当するものでございますが、これにつきましても増員を図り、また審査担当の増員も図るということで、合計十六名の増員を現在予定しているところでございます。そしてその中には、現在科学技術庁で実用発電炉につきまして審査を担当されている数に相当するものを引き継ぐというようなことが含まれているわけでございます。  一方、原子力の安全確保は人数だけで、あるいは課だけで、組織だけでできるものではございませんで、中の職員の能力をいうものが大切でございます。そういう点につきましては、従来から詳細設計から運転にわたりまして、審査なり検査という経験を積み重ねてきたわけでございますが、同時に留学制度とか研修制度、これは科技庁等々でいろいろおつくりになっていらっしゃいますけれども、そういうものも活用させていただいて、人材面の能力向上というのも従来から図ってきたところでございまして、組織、要員の増強と、そういった従来から図っている能力の活用と、これらを含めまして、私どもの安全確保体制といいますか、安全規制体制に万全を期し、自信を持ってお引き継ぎしたいと、こう思っておるところでございます。
  98. 赤岩昭滋

    説明員(赤岩昭滋君) 原子力船につきましては、これは造船海運政策という観点からでなしに、まあ最近のエネルギー事情にかんがみまして、船舶用のエネルギーの多様化の観点という面からも、諸外国において非常に積極的に研究開発が進められておりまして、すでにアメリカ、 ソ連、西ドイツでは、原子力第一船の試験を終わって実用化に備えている状況でございまして、わが国といたしましても、世界有数の造船国であり、海運国であるわけでございまして、先進諸国におくれをとらないように、原子力船に積極的に対応するということがきわめて重要なことだと考えているわけでございますが、こういう原子力船の開発に当たりまして、何はともあれ、その安全の確保というものがきわめて重要なことと考えておる次第でございまして、今国会で御審議をお願いしております原子力基本法等の一部改正の法案が成立いたしますと、実用原子力船の原子炉につきましては、新たに運輸省が原子炉等規制法に基づきまして、設置許可から運転管理までの業務を一貫して担当することになるわけでございまして、これは非常に重要な責務でございますので、これに対応して万全な体制整備を図って対処していきたいと考えておる次第でございます。  具体的には、改正案が成立いたしましたら、直ちに部内に原子力船安全対策室というようなものをつくって、基準の整備等いろいろの問題についての検討を行うと同時に、実用の原子力船の計画が具体化する段階では、この規制法に基づきます安全審査等の新しい責務が十分生かせるように、それに対応した組織、人員の整備強化を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。それで、この体制の整備に当たりましては、それに当たります要員の確保——十分能力のある人間を確保する必要がございます。この原子力関係の人材の養成につきましては、従来から原子力研究所での研修とか海外留学ということによって専門研修を行ってきておりますし、また科学技術庁原子力部門との人事交流を行いまして、具体的に原子力行政の実務を経験させるというようなことをやってきておるわけでございますが、今後ともこういったことを充実させまして、技術者の養成、技術者の一層の層を厚くしていくということをやりまして、万全に体制を整えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  99. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それぞれの行政機関の中で十分に審査体制を確立していただきたいと思いますが、その点で特にお聞きしておきたいのは、原子力の安全の問題で、国民の側から見て不信感を持つのは、むしろその設置の許可前の審査体制ではなくて、それが設置をされた以降の運転状況、その中で起こる事故の問題、それに対してしっかりした審査体制があるのかどうか。これ審査というのか、監査といいますか、その点についての疑問があるんじゃないだろうかというふうに思います。その点では、特に実用炉をこれから見守っていくといいますか、監督をしていく立場になる通産省なり運輸省にお伺いしたいわけですけれども、その設置許可以後の安全の問題、事故が発生したときのチェックの問題、それの安全性の確認の問題、そういう問題について十分の体制整備ができているのかどうか。  ひとつ具体的にお伺いをいたしますけれども、関西電力の美浜の発電所の燃料棒の事故、この原因については、私どもも東海村へ行ったときに分析の結果を見せていただきましたけれども、こうした、特に安全性に直接関係があるのかないのかという問題について、行政当局がともすれば事故の発生を外部に公表しない。何とかして内部でもみ消したいというようなことが起こる。外部から見てそうした不信を抱かせるというようなことを繰り返すようでは、原子力の安全の問題についての国民の信頼感というのが生まれてこないように思うんです。この美浜の発電所の事故について、その後そうした事故隠しとか行政の秘密性とか、そういう非難に対して、一体通産省としてはそうした批判を克服できるといいますか、批判に対して十分な回答をし、信頼感の回復に努めていらっしゃるのかどうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  100. 武田康

    政府委員(武田康君) 私どもは従前から詳細設計以下運転にわたりまして監督、安全確保の責任を持っていたわけでございます。原子炉等規制法あるいは電気事業法に基づきまして原子力発電所の安全監督が行われているわけでございますが、工事計画認可、詳細設計以下につきましては相当な人員を投入し、また先生方のお知恵もかり、それから一方、工事に入りますと、検査官を派遣いたしましてその工事が適切に行われているかどうか、それから運転に当たりましても毎年定期検査をやる。これは検査官を派遣して立ち会ってチェックする部分と、それから報告を受けて確認する部分、両方ございますが、さらに一方、事故が起こりましたとき、この事故というのは壊れてしまったというようなものももちろん入りますが、たとえば停電になってしまった、どこかの小さい機械が故障して、あるいは異常な現象が起こって、それをキャッチして自動的にとめてしまった、これも事故という定義をいたしておりますが、そういったものについては当然法律上の報告がございます。しかしそれ以外に、その事故報告の法的対象じゃございませんささいなものにつきましても、事実上報告をしてもらうというようなやり方をいたしまして、運転状況をキャッチし、あるいは建設の状況をキャッチし、そして何か問題があるときには是正させるというような体系で規制をしてきているわけでございます。  先ほど美浜につきましてお話ございましたけれども、実はあの以前からもいささか努力はいたしておりましたけれども、美浜の事故の例にかんがみまして、私どもとしてはささいな事故、トラブルも、たとえばそれが法律上報告を要しないようなものにつきましても報告を受け、そしてそれが外部に与える影響が仮に全くないようなものでございましても、技術的にフィードバックできるようなものであれば、それを調べ、評価し、そしてまとめた結果につきましては公表する、これはプレス等を通じてでございますが、そういうようなことを美浜を契機にいたしまして——それ以前からもやっていたわけでございますが、さらに一層強化するというようなことをやっておりまして、実は定期検査の経過報告等々、この一、二年の間は月に一遍か二月に一遍ぐらいまとめまして新聞等を通じまして公表するというようなことをやってきたわけでございます。美浜の燃料体の損傷事故、これに関しましては、それ自身が直接外部に放射能被曝を与えた、あるいは従業員に被曝を与えたというようなものではございませんけれども、あの時点におきまして燃料体損傷に関しまして関西電力がとりました措置というのはきわめて不適切。つまり当時において報告がなかったわけでございますが、きわめて不適切である、それから管理上も不適切である、原子力発電の安全確保に対する取り組みの姿勢そのものにかかわるものということでございまして、きわめて遺憾に思っているわけでございます。そして、それが私どもとしてわかりました時点におきまして、もっともわかった後、詳細を調べまして評価した——中間評価でございますが、評価した後、昨年の二月とあと三月の三日でございますけれども、同社に対しまして保安管理体制を総点検しなさい、それから運転再開——その時点におきましては運転再開の準備のような段階にあったわけでございますが、それを延期しなさい、それからその件に関します当時の同社の責任体制を明確にしなさい、それから主任技術者免状の返納措置と、こういったような四項目の措置をとることを命じまして、それを実施させたわけでございますが、同時に通産省自身といたしましても、原子力発電所の定期検査あるいは立入検査といいますか、立入調査、こういったものの拡充を、美浜のみならず一般につきまして拡充強化したということでございます。これが私どものとりました概要でございまして、また美浜発電所自身につきましても、燃料棒の実態のチェック、これは先ほどごらんになったというお話でございますが、それから発電所の中の調査等々、随時検査官を派遣し、いままだ調べが進行していると、こういうことでございます。
  101. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 まあ、しっかりした措置をおとりになったということでございますから、そうした若干厳しいといいますか、姿勢を繰り返すことによって一つ一つやはり信頼感を高めていくということが大切ではないかと思います。  今度の法改正が成立した後の安全審査体制の中で、いまのような実用炉に関しての運転後の事故、故障その他については、科学技術庁原子力安全委員会その他については報告の義務が生まれるわけでございますか。それから、原子力安全委員会としては何らかの発言の機会を持つことになるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  102. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 衆議院段階で、安全委員会が詳細設計以降の建設段階におきましても関係行政機関から報告を徴収することができることになっておりますし、従来からその安全審査が基本設計だけ行われておるという御批判もございまして、すでに現在原子力委員会のもとにおきましても、重要なものにつきましては詳細設計以降の問題について指摘したものについては通産省等から報告を受け、意見を申し述べるということをやってきておりましたけれども、今回の法改正によりまして安全委員会は十分その辺を引き続きやっていくということになっておる次第でございます。  また事故の、故障の問題でございますが、ただいま通産省からもお答えがございましたように、私ども事務局といたしましては、安全委員会の方に事故、故障をできるだけ詳細に報告していただきまして、これは報告し、発表することだけが重要であるわけではございませんで、その原因等を技術的に解明して将来の安全審査等に役立てる必要がございますので、そういうような報告も受けられるような体制になっている次第でございます。また、そういうものを整理いたしまして広く国民に発表するというような手段もぜひとっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  103. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 衆議院の修正では資料の提出等を求めることができるということになっているわけですね。ですから、これは提出を要求しない限り自動的には来ないということになるわけですけれども、実際の行政実行上は、あるレベルの事故等については、自動的に安全委員会の方に実用炉を監督していらっしゃる通産省、運輸省からフィードバックされるということが今後の設置許可等の参考にするためにも必要だと思いますけれども、そうした行政機関同士の取り決めといいますか、実施のための手続というのは考えておられるのかどうか。
  104. 牧村信之

    政府委員(牧村信之君) 報告の徴収を設けておるわけでございますが、それと同時に、衆議院におきまして附帯決議によりまして、これの意味合いと申しますか、詳細設計以降の重要なものについて原子力安全委員会が審議し、意見を申し述べるということが明記されております。なお、これを受けまして、恐らく原子力安全委員会が発足しますと、当然科学技術庁通産省に御相談申し上げて、その処理の方針につきまして安全委員会の決定をいただけるものと思っております。そこで事務的な進め方等も含めて決定いたしまして万全を期してまいりたい、かように考えております。
  105. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それでは最後に、原子力発電所については、特に最近は事故もしくは故障による稼働率の低下というものが問題になっておりますので、その点をお伺いしたいと思いますが、最近の発表によりますと、原子力発電所の稼働率、五十二年度は四一・八%、これまでの最低であると同時に、外国との比較、国際的な比較でも非常に低い水準になっていると言われております。その原因は一体何なのか、その点をお伺いすると同時に、そこで、稼働率の低下は、すなわち現在の日本原子力発電所の安全性の欠陥だという指摘もしくは議論について、それは一部では正しいのか、それとも全く根拠のない批判になるのか、その点をお伺いをしたいと思います。
  106. 武田康

    政府委員(武田康君) 昭和五十二年度の稼働率、過去の記録をつくりましたことは先生おっしゃったとおりでございます。  それで、稼働率低下の原因は先ほど申し上げましたけれども、年に一回定期検査というのをやっております。定期検査は通常三カ月あるいは三カ月半、四カ月、こういうようなのが何もなければ完了する期間でございますが、実は昨年、三つの発電所におきましては稼働率一〇%というようなことで、定期検査期間が一年超してしまったものが出たというようなきわめて低い発電所が幾つかあったわけでございます。したがいまして、平均が非常に下がってしまったということでございます。  さて、そんなに一年もかかってしまったものが出てきた原因でございますけれども、一言で言えば事故、故障を定検の過程で発見したと言えますが、詳しく申し上げますと、定期検査の過程で、たとえば配管に微細なひび割れが見つかった、あるいはひび割れになるかもしれないというような感じのものが見つかった、それそのものがすぐ大きな事故につながるものではございません。しかし、その先運転を続けますと、一年ぐらいいいかもしれませんけれども、あるいは物によりましては短期間の間にそれが発展いたしまして大きなひび割れになるというようなことが予想されるわけでございます。したがいまして、そういうものは発見した時点で除去しなければいけない。除去に当たりましては、実はある程度の放射線レベルがございますので作業がなかなかむずかしい。そして、たとえば配管の例でございますと、配管を切り取って新しい材料を持ってきて溶接し直すというような作業でございまして、一つの作業をいたしますのに大きなものでは二、三ヵ月かかるようなケースもございます。何分狭いところで作業いたすものでございますから、そういったものが二つ三つ重なる、また点検もシリーズに点検していきますので、とめたとたんに一遍に全部のものがわかるということではございません。したがいまして、定期検査の進行中にここで新たに見つかるというようなケースもございます。それからよその発電所で見つかりましたことにつきまして、同様な機械がある、同様な配管があるという場合に、それでは予防的に対策をとろうというようなことを同時にやっているケースもございます。そういういま申し上げましたような措置、これが長引きまして結果として稼働率が下がったということでございまして、実はそういう手入れを相当いたしたものでございますから、完全には済んでおりませんが、昨年度の四二%弱に比べまして本年度は五五%ぐらいまでいくだろうというふうに私ども思っているわけでございます。  それで稼働率の低下というのは、確かにそんなに危ない発電所なのかというイメージを与える可能性があるわけでございますけれども、いま私ども自身が実際に立ち会って検査をし、またはその状況分析評価して、先生方というか学識経験者の方にお知恵をかりている場合もございますが、そういった仕事をしております点から判断いたしますと、それそのものが安全の欠陥であるとか、そういうものではないと思っておりまして、しかし何分ああいう機械、たくさんなパーツで構成する機械でございまして、同時に圧力、温度がかかり、しかもそれがある時期には変動するというようなことでございますので、やはり毎年の手入れをしていかなければいけない、その手入れのためにある程度時間がかかるのはやむを得ない。経済性の面はその分だけ損なうわけでございますけれども、しかし、将来に向かっての安全確保、かたがたそういう手入れを十分いたしますと稼働率もよくなって、そして経済性の方も上がっていくということでございますが、まずはその安全の確保という方で、そういうある程度の経済性やむを得ないというようなかっこうでやっておりますものでございますので、したがって、結果的には昨年度は非常に下がってしまって、一部の方には大丈夫なのかなというような御疑念を持たれた向きがあったかと思いますけれども、そういうようなものではないと思っております。むしろ安全確保のためにそういったもの、稼働率は結果的に出てくるものでございますから、そこを考えずに十分な手入れをするというような姿勢のあらわれである、こういうふうに御理解いただければと思うわけでございます。
  107. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 その点はぜひPRをしていただきたいと思うんですが、それにしても五五%ではまだまだ国際的水準から見て自慢できる数字ではないですね。それから経済性が確保できる水準でもないんじゃないかと思いますけれども、その点はどうなんですか。
  108. 武田康

    政府委員(武田康君) 五十三年度五五ぐらいまでいくだろうということを申し上げました。私どもまあ目標と言ったらいいのか、希望的目標と言ったらいいかしれませんが、従前から原子力発電所稼働率七〇%というようなことを言っておりますんで、それが希望的目標でございます。しかし、少なくとも六〇%台にいかなければいけないなと、こう思っております。  一方、経済性の点でございますが、五十一年度完成というようなことで標準的な発電所を頭に描きまして、火力発電所と原子力発電所の経済性の比較をいたした試算例がございます。それによりますと、同じ稼働率で、たとえば稼働率七〇%であるといたしますと、火力が九円とかそんなような数字原子力が六円とかそんなような数字でございまして、まあ六、七割方のコストでございます。一方、稼働率が下がりますと、その分固定費が逆比例的に上積みになります。たとえば、四〇%になったらどうだろうか、それを火力の七〇%と比較してということでそういう勘定をいたしますと、五十一年度の試算例では、大体原子力の四〇%で火力並みのコストになるわけでございます。したがいまして、五五%という数字がことし確保できれば、二年たちましたのでコストの実態また変わっているかとも思いますけれども、火力に比べまして格段に悪いというふうなことにはならず、五五なら火力よりもいいと……
  109. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 安いわけですか。
  110. 武田康

    政府委員(武田康君) はい。というようなことに、つまり同時点の比較では火力よりも原子力が安い、五〇でも安いかもしれませんし、あるいは計算の誤差がいろいろございますが、四五でも同時点比較では安いというようなことが起こるかと思います。しかし、これはもともと期待しているのが六〇以上は期待しているわけでございますから、その期待値に比べますとコストが非常に高いものでございまして、決してほめたことじゃございませんで、やはり適切な稼働率、妥当な稼働率は維持できるように、もちろん安全の確保が大前提でございますが、そういったようなものに仕上げていかなければいけないということで、その個々の発電所の手入れ、てこ入れもそうでございますが、同時に、改良標準化作業、設計を採用するとかいうようなもろもろの施策をより一層進めていかなければいけないと思っているわけでございます。
  111. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 まあ一年のうち半分は遊んでいる、休んでいるということではこれは実用炉と言えるかどうか。実験炉だということで、むしろ通産省の所管から科学技術庁に移されければいけないのかもしれませんけれども、そういうふうに言われないように、「むつ」の場合もそうですけれども日本として完全に習熟してない、成熟してない技術を、ともかく早く実用化したいという動きがいままでの原子力導入にあったように思いますので、その点については、もうすでに投資をされてしまっているものですから、方針としてはいま御説明のように、安全第一ということでやっていただくのは結構だと思いますけれども、実用炉でなくて実験炉だと言われないように、今後の導入についてはぜひ慎重にお願いをいたしたいと思います。  これで質問を終わらせていただきます。
  112. 藤原房雄

    委員長藤原房雄君) 他に御発言がなければ、本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三分散会