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説明員(
松浦昭君) まず、海洋法
会議におきまして、
ソ側がどういった提案をしているかということを申し上げるところから始めた方がよろしいかと思います。
御案内のように、海洋法
会議におきましてはサケ・マスの条項というのが非常に重要な条項になっておりまして、統合草案と申しておりますが、現在までまとまってまいりました草案の中の第六十六条に遡河性魚類につきましての規定が置かれております。この規定は、まず第一に、遡河性の魚類につきましては母川国が第一義的にその利益と責任を持つということが書いてございまして、さらに二百海里の中でとるべきである。しかしながら母川国以外の漁業国、たとえば
日本のような国々がその経済的な打撃あるいは社会的な打撃が非常に著しいという場合には、それを考慮して二百海里外でもとり得るんだという規定になっております。さらに加えまして、従来の操業パターンその他を考えて経済的な打撃を最小限にしなければならぬという規定も置かれておるわけでございますが、実は、この草案はカラカス
会議以来もんでもんでもみまくってやっとつくった草案であったわけでございます。
ところが、昨年の海洋法
会議の会期におきまして、
ソ側は、非公式の提案でございますので
内容をつぶさに申し上げるわけにはまいりませんのですが、ただいま申しました第二の問題、つまり二百海里外の漁業、一口で申しますと公海漁業と申しますが、その公海漁業はどのような理由があっても禁止すべきだという態度で出てまいりました。
日本がもちろんこれに反対をいたしまして、いろいろな
交渉の結果、昨年は統合草案の中にはこれが盛り込まれなかった、従来どおりだという形になっておったわけでございます。ところが、ことしのジュネーブの
会議、第七会期でございますが、この会期におきまして、再び
ソ側はこの第六十六条につきましての修正の提案を出してまいりました。ところが、この提案は去年の提案から比べますと、かなりソフトな提案になっておりまして、これはいろいろな
交渉の経過を踏まえてのかなりリアルなアプローチであったと思うわけでございますが、ただいま申しました二百海里外のサケ・マスの全面的な禁漁ということは撤回をいたしておりまして、ただいま
議論をいたしておりますのは、一方において二百海里外における母川国以外の国々の
漁獲は認めるけれ
ども、同時に資源の保存とそれから母川国のサケ・マスへの依存の状況というものを考えて、この双方をバランスさせろという規定になっておるわけでございます。この点は一部の報道とは大分違いまして、実態を申しますと、去年よりもソフトな提案でございます。
しかしながら、その中をよく見ておりますと、場合によっては海上
漁獲を禁止し得るかもしれないというような文言がなお残されておる
状態でございまして、現在、私
どもの方から直ちに
審議官を派遣いたしまして
交渉をやっておりまして、さような危うい文言が入らないように、実質的に問題が残らないような形でこの統合草案が修正されるか、あるいは統合草案をそのまま残すか、そのようなかっこうで現在
交渉いたしておるわけでございます。そのようなことから、海洋法の
会議の
状態から直ちに明年のサケ・マスの海上
漁獲の禁止といったようなことにつきましては、そのような結果が出てくるというふうに私
どもは思っておらないわけでございます。
むしろ、問題は、ことしの非常に厳しい当初からの
ソ側のサケ・マスの
漁獲に対する態度からして、明年以降の
漁獲がどうなるかということであろうと思います。この点につきましては、再三
中川大臣が御答弁申し上げましたように、基本的に申しまして、今回の協力
協定は五カ年間の協力
協定でございまして、しかも、その協力
協定の中の第三条の規定の中に毎年協議ということが書いてございまして、しかも、その協議の結果というものはプロトコル、議定書に盛られるということになっております。もちろん現在の議定書はことし限りの議定書でございまして、明年以降の問題につきましては何ら書いてはいない、また明年以降はだめだという
議論もまたない状況でございます。そこで、私
どもの考えといたしましては、これだけ資源論についてももみにもみまして、しかも相当なクォータあるいは三角
水域の規制等につきまして相当もんだ結果、資源の保存ということも考慮いたしました結果の議定書ということになっておりますので、この
程度の
漁獲というものは、当然、将来も続け得るだろうという判断をいたして
大臣はお帰りになったということでございます。
ただし、これには、
大臣が再三申し上げておるように、非常に重要な条件がついておりまして、資源の状況がまた非常に変わるとか、あるいは操業につきまして、いろいろまたトラブル、問題が起こるといったようなことがございますれば、当然、その場合には、その変化に応じましてまた非常に厳しい
状態が出現するかもしれぬということでございまして、明年以降の
交渉の基盤を確保いたしますためにも、とにかく違反その他の問題が起こらないようにするということと、いま
一つは、資源をできるだけ大切にして
ソ連の河川にも相当
程度のサケ・マスが帰っていくという実態をつくり上げる、これが明年の
交渉の基盤であります。そういう
交渉の基盤のもとに明年以降の
交渉を行えば、われわれは現状
程度は続くという判断をしているわけでございます。