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国務大臣(
園田直君) 第五回の定期
会議では、私は主張すべきものはいままでの数倍主張をし、しかも粘り強く折衝したつもりでございます。
共同声明が出せなかったというおしかりでございますが、これは私がここにおる
宮澤欧亜局長そのほかの幹部を呼びまして、未
解決の問題を
解決をするという
言葉が入らぬ限りは、共同声明は出さない、乗るな、
向こうから相談があっても、その文字を残されて共同声明を出しますと
外務大臣としての会談のかっこうはつきますけれ
ども、
自分の会談の成果を上げるために、かっこうをつけるばっかりに未
解決の問題という
言葉が抜かれては、これは一歩後退になりますから、だとするならば、共同声明は出さないで、私一人がしかられれば済むことならば、その前の共同宣言、共同声明の中に盛られた未
解決の問題を
解決し、
平和条約の
締結という
言葉が依然として残っておるわけでありますから、この方が有利であると考えて、共同声明は私の方から断ったわけであります。
したがいまして、
交渉の中でも、共同声明、共同宣言に盛られたことは、共同声明ではあるが、これは
条約にも匹敵する二国間の約束である、これを守らないことは
ソ連は国際信義を守らぬということになるじゃありませんか、こういうことを言うと、
向こうは黙ってしまうわけでありまして、この点は
向こうもなかなか返答がしにくい。したがって領土の問題にはなるべく触れたくない、こういうことであると私は考えてまいりました。非公式にもいろいろ
グロムイコ外務大臣とはこの問題で話をしてきたわけでありますが、私は、率直に言いまして、この領土の問題は、ただ
外交交渉で定期会談をやるとか、あるいは
外務大臣が決意を表明するとか、そういうことでは実際にはなかなか片づかぬと思うわけであります。
やはり武力のない日本、そして現在の国際環境の中に包まれた日本がこの問題を本当に
解決しようと思うなら、ほかのことは一切捨てて、この問題に腰を据えて取り組み、しかも、ただいま私は一生懸命やっているつもりでありますが、日中問題では仲間の
方々から大分おしかりを受けておるわけでありますが、この問題も当事者の
外務大臣が真剣に取り組もうと思うならば、ただ返してくれと言うだけでは返るはずはないと私は
外務大臣として考えておるわけでありまして、やはり
ソ連が何を望んでおるか、何が一番
ソ連がつらいのか、
ソ連は
ソ連としての問題があるわけであります。そこで、そういう問題について、本当に返してくれと言うならば、
国民の方からあるいはたたかれ、しかられ、踏まれ、けられしながら、四つの島だけは何とかかっこうをつけたということで仕事を進めていかなければ、私は返ってこないとひそかに考えておるわけであります。
それにしても、先ほど
川村先生、北先生がおっしゃいましたように、
国民の
世論が基礎でありますから、これもありがたいことではありますけれ
ども、十年も二十年もほっといて果たして
国民の
世論がこのまま続くか、これは言ってはならぬことでありますが、私は非常に
心配をしておるわけであります。したがって、そこで
国民も私も本当に思い込んでいろんなことを考えてやるならば、決して返ってくることは不可能じゃありませんという希望とそして私の決意を表明したわけでありまして、何年に返るということは私が言ったわけではございません。以上のことでございますので、お許しを願いたいと存じます。