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1978-04-27 第84回国会 参議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十七日(木曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————   委員長異動  四月二十六日内田善利委員長辞任につき、そ  の補欠として三木忠雄君を議院において委員長  に選任した。     —————————————   委員異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      内田 善利君     太田 淳夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         三木 忠雄君     理 事                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 太田 淳夫君     委 員                 井上 吉夫君                 伊江 朝雄君                 石破 二朗君                 江藤  智君                 木村 睦男君                 佐藤 信二君                 高平 公友君                 瀬谷 英行君                目黒朝次郎君                 田代富士男君                 内藤  功君                 柳澤 錬造君                 山田  勇君    国務大臣        運 輸 大 臣  福永 健司君    政府委員        運輸大臣官房審        議官       真島  健君        運輸省海運局長  後藤 茂也君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省船員局長  高橋 英雄君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君    事務局側        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        防衛庁装備局艦        船課長      斎藤隆一郎君        外務省経済協力        局外務参事官   中村 泰三君        資源エネルギー        庁石油部精製課        長        清滝昌三郎君        労働大臣官房参        事官       鹿野  茂君        労働大臣官房参        事官       野見山眞之君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君        労働省職業安定        局業務指導課長  田淵 孝輔君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○運輸事情等に関する調査  (新幹線整備計画に関する件)  (造船不況問題に関する件)  (造船不況対策推進に関する決議)  (派遣委員報告)     —————————————
  2. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  私、このたび運輸委員長選任され、その重責を痛感いたしております。本委員会の運営に当たりましては、委員各位の御協力のもと、円滑公正に行ってまいりたいと存じますので、御指導、御支援を賜りますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)     —————————————
  3. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、内田善利君が委員辞任され、その補欠として太田淳夫君が委員選任されました。     —————————————
  4. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  私が委員長選任されたことに伴い、本委員会理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事太田淳夫君を指名いたします。     —————————————
  6. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 運輸事情等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 高平公友

    高平公友君 本日の運輸委員会は、海運造船不況対策、これが審議の主要事項であります。したがって、これから各委員から御発言があると思いますが、実は私がいただいた持ち時間というのはきわめて少ないわけであります。かねて私は新幹線のことについて大臣の所見をひとつお伺いしたいと思っておるわけでありまして、そのことについて御質問を申し上げたいと思いますが、しかしながら、先ごろ十九日から二十一日まで、委員長その他の委員の方と同行いたしまして、愛媛県の今治、それから広島県の因島、尾道、呉の現地を視察してまいりました。  要約して申し上げますと、この景気の停滞から海運不況円高と、これが大きな原因になっておるのではないか。そして今日、中小造船業皆様方は必死になってこの体制を立て直そう、歯を食いしばってでもがまんして、最低のものを確保して生き延びようとして努力しておいでになるのを実は目の当たりに見まして、本当に実は敬意を表してきた次第であります。  そこで私は、四点ほどについて御要望申し上げておきます。いずれ各位からお話があると思いますが、特定不況産業安定臨時措置法が近く成立しますけれども、これは海造審への諮問、答申という段階になると思います。これをぜひひとつ早目にやっていただきまして、そして造船安定計画というものをやはり国でもってお示しいただく、そのことを各地域の業界の人たちは大変待望しておいでになるということを申し上げたいわけであります。それと、特に中小造船業者の方はこれは兼業をいままでやっておりませんので、大企業なら陸上部門へ進出するとか、そういうことはなかなかやり得ません。したがって、仕事を確保してあげねばならない。やはり生きるためのある程度の仕事はぜひともこれは政府においていろいろ世話して確保してあげること、それから金融対策円高に対する対策通産省あたり方向もきょうの新聞に出ておりましたが、この金融対策雇用対策、これらが問題点であろうと思いますので、それらの措置お願いして、今度は私のかねて思っておりますことを、新幹線整備五線のことについて運輸大臣にお伺いを申し上げたいと思います。  この際整備五線計画一つの経緯をきわめて簡単に述べさしていただきたいわけですが、これは昭和四十八年の十一月に整備計画というのは閣議決定されております。そして調査指示国鉄鉄建公団へおろされておるわけであります。長崎と九州は国鉄鉄建公団は北陸と北海道と、こういうぐあいに手分けされて調査指示がなされております。そうしますと、この次は、今度は建設指示という段階になりまして、それぞれ工事実施計画をそれぞれの国鉄公団でつくって大臣に申請し、認可し、それから着工と、こういう段階になるわけであります。ところが、この建設指示のその時期に折あしく、昭和四十八年のオイルショックで総需要抑制ということでそれらの計画が全部ストップして今日に至っております。その間昭和四十八年以降調査費というものが百億ずつ毎年計上されまして、ことしでもって六年ずっと計上されておるわけであります。それともう一つ、これらの中の大きな変化といいますか、これは五十二年の、昨年の十一月四日の閣議決定になりました第三次全国総合開発計画、この中で「国土利用の均衡を図るための基盤整備に関する計画課題」の中で、五線の順次建設ということが示されております。  ところで、今日は、四十八年以降こうした経過をたどっておる中で、経済、社会の情勢というのは全く大きく変わってまいったわけであります。むしろ、国内需要の喚起というのはいまの予算を通じましても、これは政治の全くだれもが望むところの大きな方向であります。そしてそのあらわれといいますか、今度の運輸委員会における大臣所信表明の中でこの問題が示されておるわけでございます。昭和五十年代前期経済計画との整合性を保ちつつ進めてまいりたい、これは大臣所信表明の中に明らかにうたわれております。それともう一つ、しからば政府の首脳は一体どういう考え方をしておるか、これはわれわれは新聞で見るより仕方がないわけですけれども、三月十日の月例経済報告閣僚会議でも、全国新幹線整備計画について、大規模プロジェクトとしてこの建設を促進するということがその閣僚会議議題になっておることが報ぜられております。そして三月二十五日の閣僚協議会で、内需拡大を中心とする七つのプロジェクトがこの中でうたわれておる中で、その構想の中で整備新幹線計画を九月までにまとめると、これは報道されております。われわれは関係府県十七県、関係人口五千二百万人であります。これらの動向に対して、直接われわれの日常の活動に大きな影響がありますだけに、大変注視をしてこの推移をながめております。所管大臣であって本当に実力大臣であるところの福永運輸大臣におかれては、この着手構想を一体九月をめどとしてというのは、路線名工事区間工事方法を含めた実施計画を九月をめどとして方向を示されるのか、言うならば私が先ほど申し上げました調査指示建設指示ということでこの問題を受け取っていいのか、この点ひとつ大臣の誠意ある御答弁お願いを申し上げる次第であります。
  8. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ただいま高平さん御指摘の問題は政府にとっても非常に重大な問題であり、全般の施策にも大きく影響するものでございますが、九月三十日までに云々という表現なんでございますが、私どもといたしましては、これらの整備五線につきまして、これを実施するに至る手順及びその基準を考えております。したがってそれらの中には、着工順位を決める基準とか関係地元の御協力を得る具体的方策とか、ないしはすでにある程度進めているところでありますが、環境アセスメントをさらにいかに詰めていくかというようなことを考えておる次第でございます。これにつきましては、なかなか各地区とも御熱意を示しておられるところでありますが、一方国鉄では、考えようによっては、しょせんはこれ赤字がさらにふえるというようなこと等も考えなければならない。だがしかし、国民要望にこたえるにはおのずから考えなければならぬ幾多の点があろうと思うわけでございまして、それらのことをよく考えつついま申し上げましたようなことを、日限が表示されておりますが、それまでにと、こういうように考えております。
  9. 高平公友

    高平公友君 これはまあ「官庁速報」でありますけれども、九月末までの工事実施計画に対する新幹線のことを報道いたしておりますが、これは三月三十一日の「官庁速報」であります。福永運輸大臣は五十二年度から建設国債財源五線に順次着工すると、こういうことを決めておりますし、それからいま大臣おっしゃいましたけれども環境調査につきましては、これはすでに昨年、昭和五十二年の四月に開いた関係閣僚会議でも整備五線建設促進のための環境調査実施することに決めておる、こういうぐあいに言っておりますけれども、百億の予算を計上して、私はそれが環境調査のために使われたとは聞いておりません。ただ、閣僚会議というのは、私は大変重要なもので権威あるものだと思っております。しかし、閣僚会議でそういうぐあいに言いますことは、先ほど言いました関係民にとりましては大きな期待感となり、そしてまたこれらの実施を望んでおるという段階で私はいまの運輸大臣の御答弁はまことに歯切れが悪い、どうも前進が見られないんじゃないかという感じがするわけです。  もう一つ申し添えさしていただくならば、国鉄再建の問題でありますが、すでに八十三国会で国有鉄道運賃法日本国有鉄道法の一部を改正する法律案、これが決められまして、その際は国鉄再建基本方向というものがこの中で二日間も三日間もかかりて議論されまして、二ヵ年という期間の中にその方向を決めようじゃないか、私はそういうぐあいに理解をいたしておるわけであります。すべてこれがなくなってしまわねば何にもならぬという考え方は、どうも国鉄のことを言われますと私はちょっと奇異に感ずるんですが、われわれ一般国民は、家を建てるのに金を用意して家を建てるか。全部金がたまってから家を建てようか。そうでない。ローンあたりを利用してそして先行投資でやる。多くの国民はそういうかっこうです。このごろローンの問題がやかましいわけでありますけれども、少なくも国の行政の中で、やはり国民の強い要望など、運輸大臣としては当の責任者として——大変むずかしい大きな課題であることは重々承知いたしております。しかし私は、昭和五十二年の四月の閣僚会議以降、環境調査も全然前進を見ない、百億は相変わらず六ヵ年も積み立ててそのままに推移しておるというようなことであっては、これはもう一つの天下の大則から言うならばどうも納得が実はいかぬ次第でありまして、もっと大臣にひとつこの機会——せっかく私はこの貴重な時間をもらいまして、昨年の七月十日から委員になりましてこのことを一遍言わしてもらいたいと、もう委員長理事の方に本当に閉口頓首お願いしておるわけですよ。それはやっぱりいま申し上げたいことは、私はもっと明確に打ち出していただきたいと、そしていつまでもこうなんだ、これからこうなんだと。  やっぱりいろんな事情があると思います。また変わってくることもわれわれは百も承知であります。しかし、まあ百戦といいますか、臨時首相代理にもなられる福永運輸大臣から今度あたりはしっかりしたことを聞かねば私は一体だれがいいんだということになると思うんでありまして、ひとつもっと前進したお答えを賜りたいと思うんですよ。
  10. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 長い年月一遍は言わせろというお気持ちで今日に至られ、きょうは機会を得られて言われたんですが、言われたときにはさすがにいいことをおっしゃる。まあこういうことにならにゃいかぬと思うんでございますが、私もただいま高平さんがいろいろおっしゃった点につきましては多分にごもっともに存じ上げる次第でございます。ただどうも政治の上では、もっともだからといって何でもできるというわけにはなかなかまいりませんので、その点が頭の痛いところでございますが、御説のごとく、百億円ずつ積んでその環境アセスメント等も進んでいないという点については、私もまことに残念に思うわけでございまして、言うなればかっこう実施——実施というのは広い意味実施でございます——実施というか、まあ実施という言葉はほかに使われておりますが、実現と申しましょうか、そういうことについて国民各位の御期待には必ずしも沿っていないことを残念に思うわけでございます。そこで、こういうことが残念でないようにと思いまして、私も思いながらかなり日が過ぎてきたのでありますが、今度はそれと同じではないと私は理解をいたしておるわけでございます。  冒頭建設国債お話がございましたが、これも関係閣僚会議で話を出しまして、いまのようなやり方をやっていると国鉄赤字がどんどんどんどんふえていく、利子は負担していくというようなことでは、これは国民要望になかなか応じるということにいかないことなんであるから、ぜひまあ財源措置等についても、道路等について実現されているようなこと等も考えていかなきゃいかぬと。そこでまあ建設国債等鉄道にも取り入れるべきであるという主張もいたしましたし、このたびは閣僚諸君もごもっともということでそうしようということになっております。ただ、まだ御承知のように、現実にその国債が発行されているというところに至っておりませんが、方針はそういうようにみんなで決めます。でございますから、私はこの方針を今後実施関連して進めていかなければならぬと、こういうように考えておるわけでございます。  どうも私の申し上げたことがもうひとつ歯切れがよくないとおっしゃるが、私も実は歯切れよく言いたいところなんでございますけれども、そこがちょっとむずかしいというのが現実の姿でございますが、ぜひ近いうちに歯切れがよくなるようにというように心がけておる次第でございます。  いずれにいたしましても、国民の強い要望にこたえていかなければならぬし、なおまあ早い話が現在工事をしております東北とかあるいは上越とか、こういうのももうそう遠くなくて工事を終わるわけです。そういう仕事をする労働者等も、後仕事がなくて遊びになるというようなことはこれはすべきでもございませんし、一般景気に及ぼす影響も非常に大きいので、そういうようなこと等を考えつつできるだけ速やかに進めてまいりたい、かように考えております。
  11. 高平公友

    高平公友君 大臣のお気持ちはよくわかるわけでありますけれども、いままでと違ったかっこうで出てくるだろうと、こういう言葉に大きく期待を申し上げたいと思うわけです。しかも、九月末の閣僚協議会に何かひとつ今度は思い切った前進、私は実施計画指示と、こういうぐあいに思っておりますが、なかなかちょっとそれまではどうも進みがたいようないまの御答弁であります。しかし、われわれは九月の末にはいままでと違った形で、まあ一つ方向が、たとえば路線を大体こういうかっこうでやるとかという方向が出るものと、実は私の勝手でありますが、そういうぐあいに理解をしておきたいと思います。  そこで、最後に鉄監局長にひとつ一言お願いしたいんですが、どうですか、昨年の繰り越しとことしの調査費百億と全部で二百億あります。これはことし中にその方向の中でやはり実際にこれを使って、そして活動を展開していただけると思いますが、これもひとつあわせてお伺いしたいと思います。
  12. 住田正二

    政府委員住田正二君) 整備新幹線、五新幹線についております予算は御指摘のように、十分に使っていない現状でございます。先ほど工事実施計画をいつごろ認可するのかというお話があったわけでございますが、やはり工事実施計画を認可いたしませんと金は使いにくいわけでございます。先ほどお話がございましたように、九月末までに具体的な実施計画をつくりたいと思いますが、御承知のように、工事実施計画を認可する前には環境アセスメントを終えなければいけないという問題がございます。また私ども東北新幹線について大宮以南反対運動という苦い経験をいたしておりますので、今後やる場合にはああいうことを繰り返さないように、工事着工すれば円滑に進めていきたいということも考えておりますので、そういう問題をどうやって解決していくか、そこら辺の具体的な案をつくりたいと考えているわけでございますが、そのためにはなお若干の日にちが要るのじゃないか。したがって年度内工事実施計画の認可に持っていくことができれば持っていきたいと思っておりますけれども、いま申し上げましたような地元協力あるいは反対の方々とどういうような話し合いがつくかということによってその時期が決まってくるのではないかと思います。したがいまして、いまの段階年度内に昨年からの繰り越しの金を含めまして全部使い切るということをここでお約束することは非常にむずかしいと思いますけれども、できるだけ使えるような方向で努力をいたしたいと考えております。
  13. 高平公友

    高平公友君 ありがとうございました。
  14. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 運輸大臣、今回の春闘の問題ですね、私も二十二日からほとんど寝ないでけさ午前四時まで五日間ぶつ通しでおつき合いをさしてもらったんですがね。やはり見解だけ、今後ありますから一つだけ聞かしてもらいたいと思うんですがね。  やはり今回の私鉄なり国鉄賃金紛争あるいは裏から見れば待遇改善等について、運輸大臣として、具体的に、まあ聞けば介入しないと答えてくると思うんですが、相当程度私もこの五日間つき合ってみて、運輸大臣意向それから総理大臣意向、そういうものが国鉄側あるいは私鉄経協側の反応を見てますと、きわめて敏感に——私も二十何年動労の運動をやってきてあらゆる役職をやってまいりましたが、その経験から見ると、きわめていままで以上に敏感にはだで受けとめた。いい面もありますし、悪い面もありますが、私はこういう問題について今後とも一つの新たな方針として福田内閣が打ち出した姿勢なのかどうか。  それから二つ目は、私鉄国鉄待遇改善というのは、やはりうらはらの相関関係にあるべきではないのか、こういうふうに考えられるわけでありますが、なかなか言いにくい点もあると思いますが、ひとつ大臣の基本的な見解をこの際明らかにしておいてもらいたい、けさのことですから質問冒頭にお伺いしておきたいと、こう思うんです。
  15. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 国鉄にいたしましても、私鉄にいたしましても、私の所管にある非常に大きな企業体であり、またその企業体労働組合であるわけでございますが、いま目黒さん御指摘のような、政府が何かえらい圧力を加えたかのごときことを言う人がありますが、さようなことはもちろんないわけでございます。それぞれ人によって違いますけれども、どうも見守っているようなことではいかぬので、もっとしっかりやれと言って御鞭撻をあちこちからいただいた。もとよりそのおっしゃる人によってあべこべな意味でおっしゃる場合もあるわけでございます。私は法の定むるところにより、またこの種の交渉が当然あるべき姿というものについては私なりに心得ているつもりでございます。率直な話、今度のことで政府がどうこうと言われることは、これはまあかなり見当違いであると言わざるを得ないわけでございまして、この種のことの性質をよくわきまえて政府ないし運輸大臣があるべき姿を私は心得てやったつもりでございます。したがって、心得てやったがゆえにおまえのやったことは不十分であるというおしかりも受けるので、目黒さんにいま多少しかられたわけでございますけれども目黒さんが言われるようなことをするなというような意味でしかられるのと、また大臣としてはもっとしゃんとそういうことをやれというようなしかられ方等もいたしましたのでございますが、いずれにいたしましてもそういうことで、この物のあるべき姿、また法の定むるところに忠実に私は行動したつもりでございます。まあ私鉄国鉄というものが多くの点について類似ももちろんいたしておりますしいたしますが、また多少違う事情ところ等もございます。そこで御指摘のように関連があるのだがと、こういうお話でございますが、もとより関連もございますが違うところもあるということで、そこいらで多少の相違等もあるということは、これはそれはそれなりに自然であろうと思うわけでございます。この種の答弁、まことに目黒さんとしては御不満でございましょうが、何とぞ苦衷をお察しいただきたいと存じます。
  16. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それからもう一点、これは鉄監局長でも結構なんですが、今回の賃金紛争に当たって私鉄運賃値上げ国鉄運賃値上げと連動させて指導したのか、あるいは連動はさせませんという形で、いま大臣が言ったとおり、国鉄なり私鉄側自主的判断にあくまでも任せると、こういうことなのか、大事な今後のポイントなのでその見解だけ聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  17. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 先ほどお答え申し上げましたのとやや似た表現になりますが、いまお挙げになりました両者、労働賃金運賃というものは別に連動したものであるとは考えておりません。全然無関係ということではございますまいが、こういうときには当たって連動するかのごとき言動を私どもがいたしますと非常に誤解を生ずるわけでございます。私どもは謹しんでそういうこと——まあ率直に言えば、労働賃金上げたって乗車賃上げるのを認めないぞというようなことは余り言った覚えはございませんので、そういう意味で、新聞等にやや何かそういう誤解を生ずるかのごとき、かのごとき活字がございましたけれども、私どもはそういう点についてはよく心得て対処したつもりであり、将来もそうあるべきだと、こういうふうに考えております。
  18. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 もう一点ね。今回の私鉄国鉄賃金紛争が非常にこじれたその背景には、福田総理自身がいろいろ言われておるけれども、前年対四・四%のこの消費者物価、これをさらに引き下げていく、このために賃金と物価の悪循環を断ち切るというところに福田さんの政治生命をかけたと、こう各社の論説は指摘しているんですが、そういう消費者物価を下げるということになる展望をすると、私はいま国鉄運賃の値上げの問題なり私鉄運賃の値上げの問題なり、いわゆる公共料金の値上げという問題については、福田内閣として公共料金は上げないという基本線を、今日のベースアップで低額に抑えた以上はそういう道を打ち出すべきではないかと、理論的にそう思うんですが、政治的には、それはそれ、これはこれということで、公共料金についてはやはり従来どおり上げていく、こういう方針でいらっしゃるかどうか、その辺を筋論と政治論でどういう使い分けをなされようとしておるのか、この点についてひとつ見解を聞かせておいてもらいたいと、そう思うんです。
  19. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 福田総理は今回のことにつきまして確かに心配はしておりました。心配な顔つきは私は見ておりましたが、そのゆえに、いま目黒さんがお話しになったようなこと等についてこうありたいと、物価との関係はどうこうというようなことは私は全然聞きませんでしたし、そういうことについて私自身も率直な話、大いに内閣としてどうあるべきかということも考えると同時に、管轄下の労働者諸君の立場も私は十分に考えて対処しなければならぬ立場でございますので、こんなときそういうことを言われたんじゃ私自身も困るわけでございます。全然そういうことはございません。
  20. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これ以上論争してもあれですから、しかるべき機会にまたやるとして春闘関係は終わります。  それで、韓国・大韓航空のソ連領空侵犯事件についていろいろ報道されておるんですが、直接には外務省だという話もあるんですが、航空関係にかかわりがあるんで、現在いろいろ新聞に出ておりますが、具体的に新聞以外あるいは新聞の報道の誤りも含めてどんな関係になっているのか、ひとつ関係者からお知らせ願いたいと、こう思うんです。
  21. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) この問題は外務省が中心になって調べていたわけでございますが、私ども運輸省といたしましては、実は新聞に書いてありますこと以上のことを何も知っておりませんので、よろしく御了承願います。
  22. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 じゃしようがありませんね。これひとつ、日本の日本航空ですね、日本航空が国際線を飛んでいるんですが、仮に日本航空が伝えられるような情勢、条件にぶつかった場合どういう指導をしていらっしゃるのか。たとえば新聞でミグ戦闘機が翼をこう横に振るあるいは噴射して出す——われわれも若干の経験がある、兵隊の経験ですがね。やっぱり翼を振るといったやつはある程度の警報のしぐさだと、私はこう思っているわけなんです。仮にこういう事件に日本航空がぶつかった場合に——日本航空はきょう呼ぶ機会がありませんでしたから、監督官庁の航空局として、どういう取り扱いをしなさい、こういうふうに、日本の場合にはどういう指導をしていらっしゃるのか、ひとつお答え願いたい、こう思うんです。
  23. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) まず領空という問題は、これは領土、領海と並びまして主権国の非常に大事な問題でございますから、その上空を通過するあるいは付近の上空を通過する航空機は、領空というものにつきまして厳正な認識を持ちまして、仮にも領空侵犯のようなことを絶対起こさないということで飛ぶのがもう唯一無二の大原則であります。したがいまして、日本航空に対しましてはきつくそういう指導をいたしております。  ただ、そういうふうにパイロットが思っておりましても、実際に飛行機が曲がってしまえば領空侵犯になってしまうわけでございますので、そうならないように日本航空の航空機には全部——その地上の航行援助施設がある場合はいいんですけれども、それがないような、たとえば北極圏のようなところで、地上からの電波を受けてコースがとれないというところでは、航空機の中に内蔵している慣性航法装置というふうなものによりまして、技術的に完全にコースが守れるという手段を講じておりまして、機械の故障によって領空侵犯が起こるようなことを未然に防いでおります。こういった装置も三基つけていますから、たとえ一基ぐあいが悪くても大丈夫ということだと思います。したがって絶対起こりませんけれども、仮に万々が一そういうときには、民間航空条約の付属書で領空侵犯の場合にどういう警告があるかというやり方がちゃんと決まっておりますので、そういう警告があったときには直ちにそれに従って回避するなり、向こうの指示に従って行動するなりということをいたしまして、仮にも機体あるいは乗客、乗員に危害が及ぶようなことがないようにということを厳正に指導いたしているところであります。
  24. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは新聞ですから、私も専門的なことはわからないですが、新聞見ておるうちに、四月二十三日のサンケイ新聞に、韓国の本件事犯の調査班が発表したところによると、慣性航法装置INS、これがたまたまこの飛行機には取りつけられていなかった、だからINSを取りつけていればこういうことがなかったのでまことにこれは申しわけないと、こういう、これはサンケイ新聞ですが、そうすると、いま航空局長が言ったとおり、韓国のあの飛行機だって国際線ですから、万が一にもそういうことがないように二つも三つも四つもつけていると。韓国の飛行機だからこういう装置、日本の飛行機だからこういう装置という、国際線を飛ぶ飛行機にはそう私は安全装置上の違いはないと思うんですよ。たまたまこの飛行機がこのINSをつけていればこういうことはなかったと、こういう記事を読みますと、絶対安全だと言っても、国鉄新幹線だってああいう非常にちょいちょい事故を起こすんだから、われわれ絶対だと何回も教わってもああいうたまたま機械の故障があるんですから、ですから仮にこういう装備上の不備が——やっぱり総点検をしてみて確実に機能しているのかどうかということを、韓国の飛行機だからということじゃなくて、他山の石としてやはり国際線の飛行機について再点検すると、私は指導強化といいますか、こういうようなことも必要ではないかということをこの新聞記事を読んで気がついたんですが、この点はいかがでしょうか。
  25. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 今度の大韓航空のDC8の飛行機にはINSという非常に進歩した慣性航法装置は積んでなかったんですけれども、ジャイロコンパスを積んでおったわけです。普通、船なんかですとジャイロでやるんだろうと思いますけれども、いわば旧式であったということでございます。これは飛行機に積んでおりますすべてのそういう航行援助施設について同じでございますが、やはりその国の国力、エアラインの経済力等によりまして、いいものは当然高いわけですから、つけたいと思ってもつけられないという場合もあるわけでございます。もちろん私どもは、日本の主権の及ぶ航空会社に対しましては最善のものをつけるように指導いたしておりますけれども、遺憾ながら今回の場合には全く日本に寄港する予定のない航空機でございますので、指導のしようもなかったわけでございます。しかしながら、日本に寄港している航空機につきましては、これも直接日本政府としては指導監督権限がございませんけれども一つの要請といたしまして、できるだけ最新式の安全なものをつけるように、安全といいますか、最新式の安全の確保をし得るようないいものをつけるようにということを折に触れて要請はしたいと思っていますが、これは強制力がありませんのでどこまでいくかわかりませんが、したがいまして、総点検をして勧告をするというような形には国際線の外国の飛行機につきましては無理かと思いますけれども、しかし、より安全な方法を求めまして注意し、指導いたしたいと思います。
  26. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それから、こういう大事件が起きると政府関係者がいろいろ発言を求められるという点はわかるんですけれども、いま航空局長が言ったような新聞以外にわからないということが国会における公式の運輸省側の発言とすれば、私は少なくとも二十四日の記者会見における福田総理の発言、それから同じくこれは防衛庁幹部Aという、こういう隠し名を使っているんですがね、どなたかわかりません。この福田総理と防衛庁幹部Aの新聞の取材では、民間人を撃ったのはけしからぬというような発言をしている。韓国の朴大統領は、若干のいきさつはあったにしてもソ連側の取り扱いに感謝していると、こういう、日本の総理は間接批判する、肝心かなめの朴大統領は感謝していると、同じ記事が同じ紙面に載っているとどうも私は釈然としない。国際航空法の方々については、ソ連の措置はやむを得ないだろうという同じ論説になっている。そうしますと、わからないわからないと言っていながら、暗にやっぱりAB二つに分かれて批判している、その片棒を政府が担いでいるという点は、やっぱり措置として私は賢明じゃない、もう少し慎重にやるべきだと、こう思うんですが、これは大臣見解を、福田総理大臣の間接批判と防衛庁幹部のやつを含めて、どういう話を閣議でされておるのか。これは閣議の終わった後の記者会見だからね、閣議でされてやったのか、福田総理の個人プレーであるのか。今後こういう国際的な問題があるときは、まず監督官庁の運輸省がやはり見解を統一してそして発表する、そういう取り扱いというか、慎重さといいますか、そういうのがあってほしいなと、こう思うんですが、これは閣議後の記者会見ですから、大臣の記憶があったらどういうことなのか聞かしてもらいたい、こう思うんです。
  27. 福永健司

    国務大臣福永健司君) この種のものの取り扱いについては、目黒さんおっしゃることは私もおおむねそうだと思うわけでございますが、でございますので、私はそういうことについてコメントをするようないろいろのことを承知をもとよりいたしておりませんから、私は何にもしゃべりませんです。総理がどういうことを言われたか、防衛庁でどう言ったかということについては、私もこのところ余り新聞をよく読んでるいとまがありませんので正確には覚えておりませんが、たしか閣議では外務大臣から報告がありましたが、これも余り知らぬような話の報告であったように私は記憶いたしておるわけでございます。したがって、総理大臣が会見の際にかくかくのことを言ったように新聞が報じているがというお話の点は、閣議のときの話から察する限りにおきましては、どうもいろいろ総理がそういうことについて発言されるようなことはないんじゃないか。これは要するにすべきでないというような批判をしているわけじゃないんで、現実、閣議の後そういうことをいろいろ詳細に承知してその上でそれについての話をされたということじゃないんだろうと思うのでございますが、私も一遍よく調べてみたいと思います。いずれにいたしましても余り根拠のある話ではないんじゃないか、こういうように存じますし、今後につきましてはこの種の問題の取り扱いについては大いに関係者一同注意を必要とする、事国際問題とも関係をいたしますので、そういうことであるべきだと私は感じます。
  28. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは大体各社同じなんですよ、各社の記事がね。「記者団が「日本なら、領空侵犯されても、あのような措置はとらなかったのではないか」とただしたのに対し、「とらない。どこの国でもとらない」」、これは総理答弁ですよ、「と答え、ソ連の措置に強い不満を示した。また「それが国際慣行か」」とだめ押しされたら、それは「「国際慣行だ」」と断言したと。そうすると、ソ連のやり方は国際慣行に反するということをこれは言っているわけですね。だから私は、防衛庁の幹部あたりが匿名で言うんならまだいいですけれども、国際慣行で明らかにソ連のやったことは違反だと、一国の総理大臣が断言しているということになると、やっぱり私は、米国の大統領側近は本件問題は極秘であるから内容は発表できないと、むしろ米国の大統領側近の方がこれは慎重な発言をしているんですよ。だからこれは非常にやっぱり問題を起こしているなと、こう思うんですが、この国際慣行だということについては、航空局長、これどうなんでしょうか、総理のこの記事のあれによると。国際慣行で、ソ連のやったことは国際慣行違反だというふうにきめつけていいんですか。
  29. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 総理が閣議後にどういう御発言になったか、私直接知り得る立場にございませんので、ちょっと答弁は差し控えさせていただきます。
  30. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 まあなかなかややこしい問題ですから、後明らかになったらなおやります。ただ先ほど言ったとおり、こういう問題については慎重なひとつ配慮と発言をしてほしいということだけは私は要望として言っておきます。  次は造船の不況の問題について、二十五日ですか、参考人を呼んでいろいろ聞いたし、私たちも、私自身も十八日から二十日まで長崎県をずっと見せてもらっていろんな話を聞かされてまいりました。それで一つは、世界の船腹の過剰あるいは日本の船腹の過剰ということについて、政府としてはどういう見解を持っていらっしゃるのか、そしてその原因は何であったのか、それから立ち直るためにどういう手だてが必要なのか、そのことについて参考人は参考人として私は聞いたんですが、政府見解をひとつこの際明らかにしておいてもらいたい、このことを冒頭お伺いします。
  31. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 世界の船腹が、予想される海上荷動きに対していかに過剰であるかということについては、世上一般にタンカーと石油関係の荷動きとの関連において論ぜられておりますが、それによりますと、世界のタンカーが現在約三億八千万重量トンあるのに対して、そのうちの約一億重量トンは荷物に対して過剰である、このように言われております。またタンカー以外の貨物について、これは船の型がいろいろとございますから一概には論じられませんけれども、鉱石専用船の輸送分野におきましては、予想されますことしの鉄鉱石の輸送需要に対して、鉱石専用船の船腹は相当に過剰状態であるというふうな状態にあると承知しております。  このような船腹過剰状態がいかにして起こったか、一概にそれを断定することはできないかと思いますが、一般に考えられますことは、これはやはり世界的なオイルショック後の経済の環境の激変というものから、それまでに予想された海上貿易量の見通しと、それを前提にした船主の投資意欲というものと、その後急激に減少いたしました海上荷動きの減少ということから大体説明できるのではないかというふうに思います。その点では日本の船腹の過剰状態がよって来る淵源ということもそのようなことで説明できるのではないかと思います。  今後どのようにしてこれに対処すべきかということにつきましては、参考人の方々もいろいろと御意見を述べておられましたし、私どももただいまのところいろいろと所定の審議会の御意見など聞きながら検討を進めているところでございまして、この段階で断定的にこういう方向、ああいう方向ということを申し上げるまで、一つでは長期的な対策としては熟しておりませんし、短期的な対策としては個々の対策をいろいろと打っておるわけでございます。国際間の不況対策の努力というものは政府レベル及び民間レベルで一昨年以来長々と続けられておりますが、率直に申しまして、ただいままで世界的に一つの合意をみてこの船腹過剰に対して統一的な手を打つということはうまくいっておりません。日本の国内で申せばこれはじっとして世界の景気が回復するまで耐える、これが個々の企業の立場であろうかと思いますが、そういった立場というものを前提にして、それに対してきめ細かな支援をするということが一つ考えられます。その他造船工業会が主張しておられますような船腹のスクラップ・アンド・ビルドとかあるいは老朽過剰船腹のスクラップ買い入れであるとか、いろいろな政策上の提言がただいまございますし、ただいま私どもはそれを慎重に検討している段階でございます。
  32. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 参考人の先生が、船舶の不況、海運不況というのは十年を一つの区切りとして波がずっと来ているんだと、そういうことを陳述されておったのですが、海運とか造船の好、不況というのは、大体政府の方でも十年か十一年か、大体その前後を刻み波が来ると、こういう傾向については認められるかどうか。その波と今日の不況というものはどういう因果関係にあるというふうに受けとめられておるのかどうか。これをひとつ聞かしてもらいたい、こう思うのです。
  33. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 参考人がそのような過去におけるいきさつをお述べになったとすれば、私どもも過去における海運の好況、不況の波というものがそのように推移しているというふうに承知しておりまして、意見は同じでございます。ただ、過去における海運好況というものが到来いたしましたにつきましては、単なる世界的な経済のビジネスサイクルの結果そうなったというふうに説明いたしますほかに、たとえばスエズ運河の閉鎖であるとか、あるいは朝鮮あるいはその他の場所で起こりました局地的な戦争であるとか、そういったような原因が一方で起こりながら、それと並行して海運の好、不況というものが動いているわけでございまして、このような過去における事実から単純に将来の海運の好、不況というものを占うという考え方にはにわかに賛同できないかと思います。ただ、今日の世界の海運の不況の状態というものは、先ほど申し上げましたように荷動きと船腹のアンバランスというものから出ておるのでございまするから、世界的に船腹をふやさないという努力を続けることにもし成功いたしますならば、海上荷動きというものは徐々に回復するであろう、その徐々に回復して現在の船腹量とちょうど相見合う程度になる時期というものは、たとえば八〇年であろうとか、八一年であろうとか、八二年であろうとか、八〇年の年代の前半であろうという見通しは、いろんな調査機関の言っていることはほぼそういうところに集中していると思います。
  34. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、政府としても、たまたまこれは東京大学の平本先生と、それから船主協会の永井会長さんが、いまはどん底で八〇年前後ですか、一九八二年、この辺には大体景気がある程度回復してよくなるだろう、こういうふうに言っていらっしゃるということについては、大体同意されるわけですな。
  35. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 八二年あるいは八三年ということを船主協会の会長が申し上げたとすれば、それはそれに相応した世界の景気の回復というものをある一つの前提、仮定を置いてながめられた結果そういうふうな数字が出てくるのだと思います。ただ、世界の景気の回復あるいは海上荷動き、貿易量の荷動きの増加の程度というものを何%に見るかによって、この年は八一年であったり八五年であったり、相当に幅のあるものでございます。したがいまして、大勢として船主協会の言われたその数字というものに私どもの意見というものは一致いたします。正確に何年であるというふうには申せないものであろうかと思います。
  36. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 また傾向としていろいろな幾つかの条件がありますから、それは条件によって変わると思いますが、大体一つの傾向として八一年前後あたりになるということについては、参考人の二人の方、政府側もいま一致したわけですが、ただ五十一年の六月に今後の五十五年以降ですか、六百五十万トン体制という一つの答申が出ておると、その六百五十万トン体制から見ると、これは土居さんという方の陳述でありますが、五十年は百五十五万トン、五十一年は八十三万トン、五十二年は二百十四万トンで、五十三年はさらに落ちていくと。で、後じり貧になっちゃって、五十五年以降六百五十万トンというやつはとうてい出てこないと、そうしますと、この五十一年六月答申に沿っていま政府なり業界でいろいろやっている分については根本的に見直しが必要だと、こういうふうな意見があったんでありますが、この根本的な見直しの必要性というものについて政府側としてはどう受けとめておられるか、そして見直しをするとすればどの辺を見直しされようとしているのか、この点について見解を聞かしてもらいたいと、こう思うんです。
  37. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 先生御指摘の答申は、海運造船合理化審議会の五十一年六月の答申であろうかと思います。そのときの需要予測につきましては、七五年と八〇年——七五年をベースにいたしましてその前の実績を使いながら一九八〇年ないしは八〇年から八五年を参考として出したものを基礎として出した数字でございます。で、このときは、先ほど海運局長から答弁がありましたように、世界の海運の荷動きから船腹量を出しまして、それに現存船と新造船の要素を入れまして、現存船はどのぐらいでスクラップになり、あるいは海難その他の事故があるかとか、そういうところまで入れて需要の予測をしたわけでございます。そのときの世界全体の数字が一千万トンから千二百万トンという数字、これは一九八〇年の時期でございます。で、したがいまして、このときに日本としては外航船として約六百万トン、千二百万トンのうちの約半分六百万トン程度は確保できるであろうと、それに内航船その他の小型船五十万トンを加えまして六百五十万トンという数字を出したわけです。で、一九八〇年六百五十万トンということで、私どもとしてはそれを目標にいたしまして生産量を落としていく体制をとって五十二年度、五十三年度と操業短縮をやってまいったわけでございます。で、全体の数字の動きについてはそう大きな狂いはないかと考えております。  ただ問題は、このときにいろいろ検討はしたんですが、まだ未確定な要素としてありました、言うなれば世界の自由主義経済の中で従来の実績の五割が取れるであろうというところが、昨今の開発途上国の工業化計画あるいは欧州におきます欧州との間の国際協調等々がございまして、この点は今後見直すとすれば、見直すときの課題一つであろうかと考えております。  それから、五十五年から六十年にかけましてはこれはかなり大幅な見通しに差がありまして、この点につきましては今回はその見通しの幅を詰める作業をいまやっておりますが、これらの点をあわせて早急に需要の見通しについて結論をいただくようにしたいと、こう考えておる次第です。
  38. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 いや、私が聞いたのは、世界の船腹の過剰、日本の過剰。で、将来の展望、大体一九八〇年——五十五、六年ころはこういくと、そういうその流れについては大体一致したわけですよ。ところが、いま言った五十一年六月の答申からずっとこの歩みを見ると、具体的に言うと、五十年は受け取りが八百五十一、キャンセルが六百九十五、実際の建造が百五十五。五十一年は、受け取りが八百四十二それからキャンセルが七百五十九、残りが八十三。五十二年は、受け取りが四百九十三、キャンセルが二百七十九、実際は二百十四。このペースでいくと五十五年の六百ないし六百五十ということには達し得ないんじゃありませんかと、こう聞いているんですよ。世界の趨勢としては、八〇年あたりになると、こういう傾向値を引いたとしてもわが国の答申と実績の方はこれについていかないじゃありませんかと、なぜそうなるんですか、対策がありますかと、こう聞いているんですよ。
  39. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 先生御指摘のところで私一つ落としておりまして申しわけございません。確かに新規受注量の点は、いま先生御指摘のは新規受注量とキャンセルの量かと思いますが、御指摘のとおりでございます。キャンセルの量につきましては、これは極端な船腹過剰の時期でございますから、すでに発注をしたものをキャンセルするという問題については、一応計算の過程には入っておりませんが、考えられたところではあります。  それで、私が先ほど申しましたのは受注ではなくて、言うなれば生産の数字を申し上げたわけです。生産の数字については大体予定の線に従って、一応減量といいますか、大勢に適応するような形になってきております。ただ、五十二年、五十三年では私どもが想定していたものに比べて約九割、一割減というのが生産上の違いでございます。
  40. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 一割減……。
  41. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) ええ、一割の減でございます。  それで問題は、五十三年、五十四年、五十五年を見ますときに、先生御指摘の新規受注の動向とキャンセルの動向というのは、これは先を見通すためのきわめて重要な指標になります。そこで、外航船が六百万トン取れるか取れないかという点につきましては、最近の情勢で見ますと、ごく最近、五十二年度で五百万トンの見込みに対してキャンセルが二百八十万トンあったと。それで、したがって、新しい工事として上積みされるのが二百二十万トンと、こういうことでございます。そこで実は、その五十一年度で大半のものが、もうキャンセルとして出るべきものは出たという考え方でございましたのですが、これは五十二年度の初めから終わりにかけましてかなり大幅な円高の問題がございまして、これがさらにキャンセルを引き起こしてこういう状態になってきておると。したがいまして、今後は新規受注が大体私どもとしては、非常に極端な場合はことしの一月−三月に見られますように、月二十五万トンベースということもあり得ると。ただ、これは全くのきわめて底の底でございまして、二月、三月は三十万トンというような数字もございましたが、月別で見ますと三十万トンの受注をしております。したがいまして、今後キャンセルは、為替相場も高くなる、極限に近いところまできているし、これで後は一般的な受注努力をしながら上積みをしていくということでございますが、最近の情勢を見ますと、先生おっしゃるように、外航船だけとりまして六百万トン取れるか取れないかという点につきましては、まあ非常に厳しいという見方をしておりまして、これは、従来の需要以外に新しい需要を創出してできる限り上積みをしていくということで検討をしているところでございます。
  42. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それからもう一つ。ちょっと私も資料を求めようと思って求めかねたんですが、日本の造船は世界の五〇%を持っておったと。ところが逐次、このごろ第三勢力とかEC関係とかそういうところが力をつけてきて、造船の発注があってもその発注を取る、落札すると、落札の方がむしろだんだん日本の方が負けて第三勢力の方が二〇から三〇、三〇から四〇とだんだんこれも伸びてくるのではないかと、そういうふうな話なり傾向の数字が、この前ECの船舶部会だか造船部会で発表した数字をちょっと目にとめたんですが、そういう第三勢力といいますか、東南アジアなりあるいはECなり、そういうところとの競争力といいますか、その競争力は今後どんどん向こうの方が大きくなってわが方が地盤沈下していくと、そういう傾向として伸びていくのか。もしもそういう傾向に行くとすれば、わが方もECのように、向こうは民間造船会社に政府が助成していますね、政府が助成している。そういう政府の助成というふうなことを含めてやはりわが国の造船界が落札できるような体制整備をする必要があるのかどうか。あるとすればどこが一番問題かということについて、この際流れとしてお聞かせ願いたい、こう思うのです。
  43. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 先生御指摘のように、世界の造船業の今後について二つの問題点があろうかと思います。一つは開発途上国等の問題でございます。それからもう一つは、いわゆる欧州の造船国と日本との関係、この二つであることは御指摘のとおりでございます。基本的にはわが国の立場としては、開発途上国あるいは欧州造船諸国と、市場主義経済原理といいますか、あるいは自由主義経済原理といいますか、そういうものの上に立ってフェアに競争していくというのが基本的な態度でございます。  ただ、開発途上国の問題等でございますが、これは私どもがいわゆるその他諸国と呼んでおるもので、たとえばアメリカとかあるいは東欧共産圏でありますとか、こういったものと開発途上国を総合してその他諸国ということで議論をしております。これらの国は確かに徐々に生産を上げてきております。たとえば本当に一例として数字を申し上げれば、一九七〇年には約二百八万トンぐらいつくっていたものが、七七年、昭和五十二年では四百三十七万トンという数字になっております。したがいまして、この数字で見る限りは上がってきております。ただ、最近の三年ぐらいで見ますと、ほぼ四百万トン台で横ばいといいますか、微増という状況でございます。  これらの国々とフェアな競争によりまして船舶の受注活動をやっていくわけでございますが、基本的にこれらの国は、東欧の一部を除きましては、自国の商船隊を自国の造船所でつくるということでございまして、ごく一部の国を除きましては一般の市場あるいはフリーな自由市場には出てきてないところでございます。この点は一般的には自国の市場を国際的に開放しろという議論で私どもは対応をしておりますが、これは開発途上国、特に開発途上国等におきましてはその国の工業化計画の一環としてやっておるわけでございますから、基本的な態度はそうでございますが、まだなかなかこれらの諸国と議論をする場も少ないということで、これはこれなりの横ばいないし漸増の形で今後も推移すると、こう考えています。  それから、一方欧州諸国との関係でございますが、これは三十年代の後半、日本がOECDに加盟したときから、造船問題というのは一つの特別な課題として議論をしてまいっております。そこで基本的には、いわゆる国の助成によって国際競争の正常な進展を歪曲しないという原則は確立しているわけでございます。その上に立ってやってきているわけでございますが、ただごく短期に、最近の国際的な造船不況に対応するために全体として能力の削減を行うべきであるという点についても一致をしております。  問題は、緊急避難的に、これらの諸国は極端な不振に見舞われている時期が日本より一年か一年半ほど早うございました。その時期に御指摘のような助成問題が出てまいっております。それでOECDの基本も、要するに国家助成なり国の何らかの介入ということは極力避けようという原則はありますので、その点では問題ないわけでございますが、したがいまして、日本の考え得る国際競争力というのは三つほどあろうかと思いますが、それは技術の問題と納期の問題とそれから価格の問題があろうかと思います。技術上の問題、納期の問題については抜群の有利性は現在も失われておらないと、価格の問題についてもかつて抜群であったわけでございますが、いまもそれは一部の国等を除いては変わっておりません。ただ、欧州諸国が緊急避難的に一年ないし二年、構造改善をやる間、設備あるいは雇用の調整、設備の処理を行います間、日本との間での船価差について、主として自国の船主を中心として助成をして、それを自国の造船所の仕事量の増大につなげるという形でやっております。日本としましては最近の円高等もありまして、価格の問題はドル価格でやりますと依然としてまだ競争力はありますが、そういう問題がございまして、私どもとしてはOECDの原則である自由な競争、それから国家助成を極力排除するということでやっておるわけでございます。  今後の趨勢といたしまして、大局的に見ますと、全体の量が減ってまいりますと、その他諸国は固定的な、何といいますか横ばいないし漸増でございますが、固定的でございますので、したがって残りのところが少なくなってくる、それを五十五年まであるいは五十五年以降についてどう考えるかという点については、私冒頭に申し上げましたように、今後の課題であって、かつ慎重に検討をすべきものだと、こう考えております。
  44. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 大臣ね、いまずっと造船のやつを聞いてくると、結局いままで日本の造船界が世界の五〇%あるいはそれ以上取ろうということで一生懸命努力したことはわかるけれども、いま言った緊急避難的なEC側の措置なりあるいはアジアを中心とした方々が力をつけてきてやってくると、そうしますと造船の従来どおりいままでのように外国船を受注してつくってやると、こういう体制を少し軌道修正をして、やはり日本の造船界というのは主体的には日本の船をどうするか、そういうところに視点を置いた造船界のあり方ということにやっぱり軌道修正をする時期に来ているのではないかというふうな受け取り方をせざるを得ないではないかと、一つはそういう気がするのです。  それからもう一つは、やはりこの造船海運いろいろむずかしい点もあるでしょうが、この世界的な船腹の状態から見ると、各国で造船の規模といいますか、割り当てといいますか、これは割り当てと言っちゃ語弊がありますが、余り造船の規模というのはある程度完全に意見一致しなくても、結局は過剰設備を持った会社、そして最終的にはいま問題になっているように、お金が困るお金が困ると言えば、国民の税金をどうするか、そこに返ってくるわけでありますから、やはり国際的な仕事であるだけに、国際的な何らかの介入を持ちながら、そういうものを不当な過剰設備にならないように、お互いに各国が調和し合っていくという国際的な協調ということもやっぱり必要ではないのか、そういう造船のあり方に対する根本的な検討という点が私はどうも必要ではなかろうかと、こんなふうに考えておるわけでありますが、結論として大臣の所見を聞かせてもらいたい、こう思うんです。
  45. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ただいまお話しのような軌道修正的措置を必要とするとか、あるいはまた、日本ではもちろん日本の事情に対処する必要もあるが、同時に国際協調を考えての措置も必要であるというような点は、全くお説のとおりであるように思います。ただ私は、素人考えかもしれませんが、そのほかに、どうも世界の造船界等がいまやっていることなどのほかに、いずれにしてもトップを行っている日本の造船界というものは、いままでどおりのことばかりでなくて、世界のほかの国がやらないようなことに新たなる需要の創出を見出していくというようなことのために、これはもう官民ともに大いに協力する必要があるんじゃないか。まあ現在ではいろんなことが口にされておりますが、アイデアとしてはいろいろあっても、実現ということはなかなかむずかしいと思いますが、しかし、そのむずかしい新たなる構想なり、その構想の実現ということについての勇気ある措置を必要とする、こういうように考えるわけでございます。いままで日本が大きな存在であっただけに、何とかして幅広い対策を講じていきたいものだと、そんな感じがいたす次第でございます。
  46. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 大臣、私それを聞くのは、この佐世保重工の問題などもいろいろあったにしても、やはり新しい需要の拡大ということは、言葉としてはわからないわけじゃありませんが、余りにも造船界、海運界が、これはここにもいろんな雑誌がありますが、時間がありませんから、私きょう二時間しゃべるつもりで準備したんだけれども、議事に協力する意味で九十分と言われましたから、それに協力してしゃべりませんが、このいろんな本を見ると、やはりわれわれの仙台の言葉で言うと、山師と言いますか、造船海運屋さんは山師の、いわゆるばくち、かけですよ。そういう意味の取り組みが多分にあったんではないかということを非常に体質問題と絡んで批判している文章がいっぱいあるんです。SSKに行ってみていろいろ聞いてみても、そういう夢を持つことは結構なんだけれども、それが本当の夢、夢、夢のうちに自分の五体がパアになってしまうということになりかねない。だから、ここはやはり少し堅実さと言っちゃ語弊がありますけれども、かたくかたく石橋をたたいて行くというぐらいの私は堅実さをもってここ二、三年やっぱり世界の動向を見ていく、そういう発想でいろんな手を打たないとまた過ちを犯すんではなかろうか、失敗すれば政府がやってくれる、失敗すればどこかで見てくれる、失敗すれば銀行が見てくれる、そういうだけでは私はもう続かないと思う。したがって今日の造船不況の手を打つための前提は、やはりいまはどん底だ、世界の景気も一九八〇年ぐらいによくなるかもしれぬ、しかし、いままでのように五〇%以上取るなんということはなかなか客観情勢が許さぬ。さすれば国内船の需要がやっぱり重点だ、そこにポイントを置いた当面の対応策というのを、私は造船界の諸君もあるいは海運界の皆さんもやはりそこにポイントを置いて、もう一回足元を見直す、後退のようであるけれども、この際やっぱりじっとがまんして対策を練るということが必要ではないか、こう私は言いたいんです。  それで参考に、この前船主協会の会長さんに聞きました。いま問題になっているジャパンライン、このジャパンラインと、いわゆる海運界、造船界の変わり者と言われた、これはある大臣には申しわけないけれども、三光汽船、この三光汽船が五十二年の三月の決算段階で、三光汽船は資本金が千二百億、それから特別引当金が四百億、ところがジャパンライン、いま政府にお世話になっているジャパンラインが、何と資本金が三百八十億、特定引当金が二百九十億、資本金では大体四分の一でしょう。これなぜかというと、いわゆる一航海行くと十万ドルも十五万ドルももうかった段階で、それをどんどん海運界の先を見越して、借金しながらほとんど投資しちゃったという組と、そうは言ってもやっぱりかたく行こうやと言って、もうけのある程度のやつを資本金の方に入れて、やっぱり自己資本金をずっと堅実にためながら発展してきたという二つの造船界や海運界の行き方の私はこれはモデルだと思う。だから、今日の段階で私はジャパンライン方式は少し危険じゃないか、三光汽船方式で少し堅実にいってもいいではないか、そんな気がしたものですから、利はいま言ったようなことを考えているんです。ですから、そういうことについて申しわけないけれども大臣に再度、新しいアイデアは結構なんですけれども、余り夢を持たせないで、むしろこの際石橋をたたいて行く、世界経済の動向のある程度の見通しが出るまでは、国内需要に重点を置くという方がいいんではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  47. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私も夢を余りに大きく持つことについては、これは十分戒心を必要とするように存じます。先ほど申し上げましたのは、ちっとは夢もないと、なかなか将来への望みが持てないという状況では、いまの不況を脱するのに容易でないという気持ちがございますので実は申し上げたわけでございますが、堅実を旨とするということはもとより必要であると思います。そういう意味で、いまのお話の点は、私は決して夢を過信する、信じ過ぎるということであってはならない、こういうように思うわけでございます。お説の点等は、いまの不況を脱する、苦しい現実から抜け出すということのためにはぜひ必要であると考えます。
  48. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それでこれは簡単に一点聞くんですが、SSKの関係がいろいろな新聞に載っておるんですが、私は参議院の運輸委員会調査団の一員として行きまして、非常に憤慨して来ました。われわれが行ったら、くれた資料がこれ一枚なんです。こんな写真入りのパンフレットを参議院議員の調査団にくれて何になる。そうしたらまたこういうのを送ってよこした。これも見ましたよ。これもまたいままで雑誌、新聞に出た以上の域を出ていないんです。きょうも見ますと、大臣も大分やっているらしいけれども、佐世保重工の救済に政府がこれだけ手を貸すという背景は何なんでしょうか。そして、われわれ国会議員なり調査団にこんなお粗末な資料しか提示できないという、国会に対する取り組みはどうなんでしょうか。私は、こんな使い分けをするようなSSKの経営陣であれば、きわめて不可解千万なんですが、どういうことなのか、ひとつ……。一番、いや目黒、そう言うけれども、たとえば、現地の所長は言いました。二つ重要な発言があったですよ。いやあ、四大株主がおりまして、四大株主の意見が全部違うんで、株主の意見がそろいませんからもう言えませんという、素直なこの新聞記事に出ている株主同士のやりとりは九〇%以上事実に違いありませんと言って、これ率直に認めました。それからもう一つは、長崎の久保知事が、いやいや知事も憤慨しているんだと、あの会社、前からおかしい。どうするんだ、何とかならないか、危ないんじゃないかと言って、何回か本人自身も長崎県出身の財界人も通じてもういろいろ言ったけれども、いやいや心配ありません、いやいや心配ありませんと言って、知事のおれにも初めて明かしたのはことしになってからだと、こう言うんですよ。そうすると、運輸大臣には非常に御執念でお話し申し上げるけれども、われわれのところには足元も含めてさっぱり言わないということになりますと、非常にこう私は、臭いものと言っちゃ語弊がありますが、疑惑を持たざるを得ない。その疑惑の原因はまだつかめないのが残念なんですが、そのSSKの救済の本当のねらいというのは何なんですか。
  49. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 私は、このSSKというのはごく最近まで余り存じませんでした。いまいろいろお話がございましたそういう点は、そういうおしかりを受けるようなことがないようでなければ事業はうまくいかぬと私も思います。私も本来事業経営をやっていた男でございますので、そういうことを強く感ずるわけでございますが、私に対しましては、実は一番強く何とかしてやってくれというのは県とか市とか、あるいは労働組合等にあっても、より大きな団体がわれわれの中にこういうのがあるから何とかしてやってくれというような意味でいろいろお話等もございました。私は考えてみりゃ、SSKそのものと余り話しておりません。話もしてないくらいでございますから、もちろん関係があるような器用なことができる福永健司ではございませんが、いずれにしても私はこのSSKの事態というものは、これは全体がそうだとは言い切れないかもしれませんが、いろいろの意味において、いまの日本の造船界が非常に苦境にあえいでいるという姿の一つの浮き彫りのようにも思うわけであります。先ほどからいろいろお話がありましたように、同じようなことをやっている会社にいたしましても、非常に堅実にやっているところと、そうでないところ等がございますが、確かに大株主間でかなり物の考え方が違うということにつきましては、私も聞き及んでおりますし、それなるがゆえに、昨日も私のところへいわゆる大株主と言われる代表的な人たち、ないしはそういう企業の代表者に来てもらいまして、お話のように食い違っていると。食い違っているようなことではなかなかこれを立て直すということは容易じゃございませんから、ぜひ過去にどういういきさつがあったか、必ずしも私は詳細には存じませんが、大体のうわさは聞いておりますし、いろんな情報も聞き及んでいるわけでございますが、そういうことはこれはそれぞれ言い分がありそうでございますが、まあある程度言わないと済まぬということもありましょうが、それはひとつぜひ過去にこういうことがあったからというようなことで、余りそれにとらわれて協力はできないということでなくて、ぜひいまの造船界、またそうして佐世保のようなああいうかなり造船に頼っている町ないし地方のために、ぜひひとつここで協力してもらいたいということで、きのうも数時間協議をしてもらいました。私も国会の方からお呼び出し等がございましたものですから、ずっとは一緒にいられませんでしたけれども、初めあいさつをし、結論に達したころに国会から帰りましてその場に臨んだわけでございますが、私は私なりに非常にむずかしい話で、これからも容易じゃないと思います。思いますが、まあ何とかぜひなってもらいたいとこのように思っております。いまお話がありましたように、どうもSSKには政府がばかに一生懸命になるというように言われますが、そういう言葉がございますほどに、幾らかでもお役に立つように政府が動いているということ、私むしろまあまあと思っているわけでございます。この種のことになりますと政府はめんどう見ないじゃないかと言うてしかられるのが実は大変ございまして、私もこのところずいぶんおしかりを受けておりますが、いまは多少違った意味で御注意をいただいたことでございますが、政府の立場はいまのお話をいただいたようなことについても十分考えていかないと、ほかへの影響もございますから、今後もよく気をつけてまいりたいと思うわけでございます。  昨日私のとこへ来てもらいましたのは、いま目黒さんお話しのように大株主間で足並み等がそろわないと、このままではとても容易じゃないと思うし、それからまあそういうことについて心配をしてくれておった株主と違った立場の人たちからも、ぜひこの際私もそういうことについて心配してやってくれということでございましたので、私は私なりにそれも必要かと思って昨日のようなことにいたしました。どうも私のところへ人が来ますと、新聞社もえらい大きく書きましたんでございますが、あの記事ほど大きなことじゃないかもしれないと、こう思うのでございます。重々これから気をつけてまいりたいと存じます。
  50. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 誤解を受けると困りますがね、私は大臣に来ることも悪いと言っているんじゃないですよ。大臣に来る前に少なくとも自分の会社、佐世保における社会的な影響あるいは長崎は大体経済の五二%は造船関連の皆さんだと伺っているから、県全体に占める社会的な責任ということになれば、少なくとも株主同士ぐらいは手前の会社をどうするかという点を真剣に考えて、政府にはこういうことをお願いしようと、大蔵省にはこういうことをお願いしようと、銀行にはこういうことをお願いしようとそういうふうにくるのが筋道じゃないのかと、手前の足元の始末を大臣とか、永野会頭を引っ張り出したのはこれは別にして、大臣のところに来て自分の足元の整理をしてくれというのは、ちょっとお門違いじゃありませんか。そんな経営姿勢であるからSSKがこんなになってしまったんじゃないかというふうに私は言いたいんです。それでその点は誤解を受けるからはっきり言っておきます。  それで、今日これだけの請願書もいっぱい来ていますがね、私はこの請願書は時間がないから読みません。これは二つなんですね。一つ仕事をくれと、一つはどうしても仕事の見つからないときは、そこで失業なさる皆さんに何らか特別の措置を講じてもらえないだろうか、これを見ますとこういうことに尽きるんです。だから先ほど造船界を立て直すには、やはり内需の拡大奨励等が大事だ。それから、大手の方は機械部門を持っているけれども中小の方は造船オンリーですね。造船オンリーなものですから、結局造船仕事をもらわないと仕事がない。ところが大きい造船屋は、仕事がないともう、小さな修理や百万トン以下の小さい船まで競争入札ですから買ってしまう。損でもいいから遊ばせておくよりもいいということで仕事を受ける。何ヵ所か現物を見てきました。だから、仕事をくれるということについて最大の努力をしてもらう。仕事をくれる際には専業の中小の皆さんにはひもつきでいいから——これはひもつきでもいいと思うのですよ、きちっと仕事ができるように政府なり地方自治体が規制し指導をするということを考慮してほしい。  それからもう一つは、雇用の方についてどうしてもならない場合には、私は佐世保の市長さんにも長崎の県知事さんにもどうするのですかと聞いたら、公共投資で幾らかは仕事があるにしても県も市もお手上げだと言うのですよ。県も市もお手上げ、何か特別の措置を講じてもらわなければどうにもなりませんと。これは雇用保険の問題にしても、そういうことについて切実な要求がこれの共通点にありますから、この二つについて政府見解を聞いて私は質問を終わりたい、こう思うのです。
  51. 福永健司

    国務大臣福永健司君) お話の点は私も同感とするところが多いわけでございまして、いま発注等についてお話がありましたことにつきましては、これもなかなかむずかしいのです。政府の関係のがみんなそっちへいくようにしてほかが怒るような影響のある発言はしにくいのでございますが、先生いまお話しのようなことを念頭に置いて対処したい、こういうように思います。  雇用等につきましても、われわれももちろん心配しなければならぬと思いますが、きのうもみんなで——みんなでというのは集まった諸君で協議をいたしまして、絶対につぶさないようにする、更生会社等にしないようにするというようなことの申し合わせもいたしておったようでございます。また、私は佐世保だからそういうことになったのだろうと思いますが、市議会でも議決して十億円くらいは保証をする、正確にはまだ聞いておりませんが、そういうような議決までしたということ等も聞いている。これは市としてはよくよくだろうと思うのです。——すると言ったらいかぬので、する予定だそうでございます。どっちにしても精神において大差ないと思いますが、そういう予定だそうでございます。そういうことを見るにつけ、地元もそこまでの熱意を持って臨んでいるということについては私は私なりの認識を持って対処しなければならないと思っております。いずれにいたしましても、わが国の中で造船に関してこういうことがあるということにつきましては、私は深刻にこれを受けとめて真摯なる態度でこの事態に対処したいと考える次第でございます。
  52. 野見山眞之

    説明員野見山眞之君) 造船不況に対する雇用対策につきましては、現在までおおむね四つの柱で対策を講じておるわけでございますが、一つは、失業を事前に防止するという観点から、現行の雇用安定資金制度の指定業種の対象として造船関連事業を指定いたしまして、一時休業なりあるいは生産調整中の訓練等に対する助成を行っているわけでございまして、造船関連事業につきましては引き続き指定業種として助成をしていくという考え方でございます。第二は、さきの国会において制定していただきました特定不況業種臨時措置法に基づきまして、やむを得ず離職した方々に対する待機手当あるいは訓練手当、さらには、四十歳以上の方々に対する失業給付の期間延長等によりまして失業期間中の生活安定に対する措置を講ずる。あるいは、三番目といたしましては、再就職に伴いまして必要な訓練をなさる事業主に対して賃金助成をするということで積極的に雇用の機会をつくっていくというような対策、さらには、特に造船不況地域におきましては公共事業の推進が図られるわけでございますが、そういった地域におきましては、造船離職者等が積極的に吸収されるような失業者吸収制度を活用いたしまして、就労の機会をつくっていくというような方策をとっておりまして、現行の制度を活用いたしまして雇用対策に万全を期していくというのが現在の状況でございます。
  53. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 労働省ね、それはわかっているの。それはわかっておるのですが、長崎のように、佐世保とかそういうところのようにあのように大量に出てくると、もうそれだけではどうにもならぬというのが知事なりあるいは市長さんなり労働組合側の皆さんを含めて共通した認識なんです。ですから、造船仕事から言ってもう少し期間を延長してもらうとか、あるいはその地域の特別の措置を考えてもらうとか、そういう、現状の上に何か特別なものを考えてもらわないと、いまはいいけれども来年のいまごろになったらもう大変だということを先を見通して心配する。ここ三ヵ月や六ヵ月はまだいいんです。ですから、造船の動向等を見ながら、そういう現状以上にそれじゃ何があるのかということについても、まだ時間がありますから前向きに検討してもらうと。これは答弁要りません。そういう現状だけ認識をして前向きの答弁を今後検討願いたいということだけ言っておきます。
  54. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 目黒議員の質問関連をして一つお伺いしたいと思う。  先ほど目黒議員が、例の大韓航空の領空侵犯の問題に関連をして、総理の答弁を引き合いに出していろいろ国際慣行といいますか、そのことについて質問をしたら、航空局長は、総理の答弁のことについてと考えられたかどうかしらぬけれども答弁を差し控えられたんです。それで、その質問の内容は、国際慣行としてはどうなっているのかということであって総理の答弁のよしあしを言っているわけではないと私は聞いていたんですが、幸いにして日本には余りそういう事例はなかったんですけれども、ただ前例としてはミグ戦闘機が函館へ着陸したという事例がありましたね。日本でもたとえば領空侵犯ということがあれば、自衛隊機のスクランブルということはあるわけです。発進をしていった飛行機が相手の飛行機に対して何をするかということは、国際慣行上ないということはないんじゃないかという気がするのですね。ただそばまで飛んでいくというだけじゃしようがないでしょう。歩いている人間ならもしもしとかなんとかと言うこともあるけれども、飛行機じゃ、中身が何であるかというのはわからないわけですから、その場合に一体どうするのか。飛んでいったところで、ただ並行して飛ぶだけじゃこれはどうもならぬわけです。日本の場合、あるいは外国でも、そういう場合の国際慣行、スクランブルをかけた場合にはどういうことをやることになっているのか、具体的な今回のような不幸な事例がほかにもあったのかなかったのか。航空局として所管外であって答えられないということなら答えられないでよろしいのです。これは自衛隊の方の範囲であるとか、わからなければわからないでいいのですけれども、先ほどの目黒議員の質問に対する答弁としては何かちょっと腑に落ちない点がありますから、その点をお答え願いたいと思います。
  55. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 御趣旨を取り違えたとすれば大変申しわけなく思っております。そういった領空侵犯を侵した疑いのある、そういったケースにつきましては、民間航空条約の付属の規則がございまして、この規則の中に事細かに領空侵犯を受けたと思われる国の軍用機が領空侵犯の疑いのある航空機に対しまして合図をする方式が決まっております。新聞にございますように、あるいは翼を振ったとか発光信をしたとか書いてありますが、そういう合図があることが原則であります。そういたしますと、原則としてその合図を受けた場合には、これはいかぬとはっと気がついて、それでその合図に従って、指示によって後をついて行くなり何なりしまして、侵犯されたと思われる国の側の軍用機の指示に従って行動するというのが原則でございます。今度の場合どういうことになったか知りませんが、一般原則はそういうことでございまして、途端に撃ってくるなんということはないようになっているはずでございます。
  56. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  57. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、運輸事情等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  58. 田代富士男

    田代富士男君 まだ大臣がお見えになっておりませんが、時間がもったいないですから、先にお聞きさしていただきたいと思いますが、午前中からもこの造船問題に対する質疑が行われております。また、当委員会で参考人の方を二回にわたりましておいでいただきまして意見を聴取するということは、恐らくいまだかつてないことでございます。そのように造船界の現在の問題というものは大きな社会問題になっております。特に、参考人の方からの意見もありましたが、運輸省当局といたしまして、現在の状況をどのように受けとめられておるのか。最近、倒産件数が非常に多くなってきておりますが、まず最初に、その状況につきましてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  59. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船業の現状につきましては、私どもも非常に深刻であり、かつあらゆる手段を尽くしましてこの不況打開のために尽くさなければならないと、こういうふうに考えております。  問題は、五十一年の六月に海運造船合理化審議会の答申をいただきまして、約二千万トン弱の生産量のベースから六百五十万トンの生産量のベースにスローダウンをするということで、五十二年度から具体的に対策をとってきたわけでございます。五十二年度まではおおむね私どもが想定をいたしました線に沿って事態が動いてまいったわけでございますが、五十二年度の後半から急速に短期的な円高によりまして非常に事態が深刻になってきて、予想しておりました以上の事態についての懸念をいたしておるわけでございます。昨年から新規受注が目立って落ちてきておりますが、それでも四月から九月の前半期におきましては、月約五十万トンベースで受注があったわけです。それが十月以降三月まで、四十万トンベースあるいは二十五万トンベースというふうに落ちてまいりました。これに加えまして、さらにキャンセルが引き続きございまして、この両方からの影響で、想定いたしました六百万トンを切ろうかという事態になり、かつ中小造船所の倒産が目立ってきたわけでございます。この倒産も夏以降急激に出てきたということで、これらの企業につきましては会社更生法の手続によりまして更生開始に至ったところもありますし、まだその過程にあるところもあります。これらの事態を踏まえまして、従来の需要の落ちこぼれを少しでもとめるという努力と、さらに新しい需要の喚起をしながら基本的には仕事の安定的な確保ということを今後とも図ってまいりたいと考えております。その一方におきまして、倒産企業についてもなるべく更生の計画に乗って再建できるようにすると同時に、関係省等にお願いをいたしまして雇用問題等につきましても十分しっかり頭に入れて対応してまいりたい、こう考えているところでございます。
  60. 田代富士男

    田代富士男君 いまるるお話がございましたが、従来毎月五十万トンベースで来てたのが二十万トンから下降線をたどってきている。それにキャンセルもふえてきている。このことにつきましては後ほど質問をするといたしまして、大手、中手、小手とありますけれども、私は特に中手、小手の造船所というものは大変ではないかと思うわけなんです。だから、中手の造船所が現在抱えているところの負債額はどのくらいであるのか、また中手あるいは小手の造船所を持つところの地域というものは、造船所の好、不景気というものが地域経済にも非常な影響を与えております。そういうところでこの倒産というものを考えた場合に地域に与える影響というものは大変でありますから、こういうところからも運輸省といたしましても対策を講じなければならないと思いますが、大臣もお見えになりましたから、そういう対策はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、御所見を聞きたいと思います。
  61. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 中手造船所の負債等につきましてはいま詳細な分析把握を行っておりますが、手元にございます中手十一社、これは操業勧告の第二グループといいますか、大手七社の次に位するグループの十七社のうちの十一社でございます。これの貸借対照表上の負債総額は約八千八百億円であります。このうち金融機関等からの借入金は約四千八百億円、さらにこの内訳といたしまして、輸出船の延べ払いに伴う長期運転資金、これは輸銀の融資分と市中の協調融資分の合計でございますが、これが約千五百億円、こういう数字になっております。これまでも中手以下の造船所に対しまして私ども基本的に配慮をしてまいっておりますが、私どもの認識といたしましては、全体で約千五百ほど造船所ございますが、そのうちで外航船を中心につくっております六十数社を除きますとその残余の部分は主として国内の内航船あるいは漁船、遊漁船等の建造が主でございまして、これは若干の変動がありますが内需が中心でございますので、他からの影響につきましては、たとえば一般的な景気停滞に伴う問題としては出ておりますが、比較的そう急激な落ち込みではなくて、これについては金融対策等でカバーしていくという考えでございます。外航船建造造船所の中で、先生御指摘の大手の七社を除きます造船所は、造船の専業比率がきわめて高うございます。そこで従来は生産見込みのダウンの現象に対応いたしまして操業短縮をやっておりますが、この中で、特に中手以下についてはその専業度あるいは地域経済に与える影響等も考慮いたしまして、平均で落とさずに、たとえば五十二年度の例で申し上げますと、平均で四十九年度に比して七五%の操業短縮を行う際に、大手が六七%、中手の第二グループが七六%、それからその下の第三グループが八二%というように、大手に厳しく中手以下については操業短縮の程度を緩和して運用しているということ、さらには大手の持っております大きな船台では並列建造を行わせない等の措置を講じてまいっておるわけでございます。その他、一般的には、中小企業対策といたしまして、もろもろの中小企業の昨今の対策の中で造船業を指定業種としてお願いをしておりまして、たとえば中小企業信用保険法に基づきます不況業種の指定でございますとか、中小企業の倒産対策の緊急融資でございますとか、あるいは円高の高騰関連中小企業対策臨時措置法の対象業種指定等を行いまして、できる限りの措置をやりながら、そのほか、官公庁船等につきましても技術的な問題で実質的に特に困難がないようなものについては、極力専業中手以下の造船所に具体的に仕事が入るように配慮をしてきたところでございます。
  62. 田代富士男

    田代富士男君 いまるる御説明されましたが、私が心配していることは、中手、小手の造船所に対してはいま手厚い行政指導を行っているのだというお話でございますけれども、いかんせん仕事量が少ないためにそういうような関係で行き詰まっている。そうした場合に、その地域の金融機関だとかそういうとこらからの融資というものも考えられるでありましょうけれども、しかしそれにも限度がありまして、そういうような金融機関もあるいは政府もめんどう見切れなくなったとした場合に、いまも申すとおりに、その地域における一つの基幹産業的立場であるし、地域経済がもろにかぶると、そこが信用がなくなると、信用不安ということは即金融不安にも通じてくるでありましょうし、そうした場合の関連企業も倒産をすると地域経済の倒産ということにもなってまいるわけなんです。これはまあ現実に、今治を初め佐世保等においても新聞紙上で言われるとおりでございますけれども、こういう地方によって起こる、こういう金融恐慌といいますか、こういうようなことがもう起きつつある。これに対する対策も考えなくてはならないと思うんですが、大臣いかがでございましょう。
  63. 福永健司

    国務大臣福永健司君) いまだんだんお話しのようなことが非常に大切である、必要であると、こういうように私も痛感いたしております。
  64. 田代富士男

    田代富士男君 大臣ですね、当委員会でもその現地視察も行きまして、いろいろそういうことも心配をしておりますけれども、そういう対策が必要であるという、まあいま大臣としてそこまでしかお答えできないかと思いますけれども、もうちょっと具体的に述べていただけませんでしょうか。
  65. 福永健司

    国務大臣福永健司君) できるだけ具体的に申し上げるべきであると思いますが、局長からお答えさせることにさしていただきます。
  66. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 地域との問題につきまして、ただいままで実施あるいは検討している点につきまして御答弁を申し上げます。  一つは、造船業等の不況によりまして雇用の安定が重要な問題となっている地域につきましては、三月二十五日の経済対策閣僚会議の申し合わせによりまして、公共事業の地域配分について十分配慮するということをお決めいただいたわけです。  それからまた、特定不況業種からの離職者が多い地域について公共事業失業者吸収率制度を拡大することとして、昭和五十三年四月一日から造船所の集中しております室蘭、尾道、今治、長崎、佐世保地区を追加してもらっております。まあ、これらにつきましては、私どもも従来造船の関係都道府県の連絡会議がございます。これは市及び市町村、それから都道府県の単位で行われておりますが、これらにつきましては従来からも、たとえば地域の公共事業を造船関連に回せないだろうかということで、各県と具体的に公共事業あるいは鉄鋼構造物を使用する等の工事があった場合に、どう具体的に関係の地域の造船所に優先して発注できるだろうかということを検討して、まあ一、二の地域では具体的に成果を上げているところもございます。したがいまして、冒頭に御説明申し上げました大きな柱もできたわけでございますので、地方の海運局あるいは地方の海運局と関係都道府県、市町村、それから私どもも先ほど申しました連絡会議を通じて具体的に進めるように今後とも積極的に取り組んでいきたいと、こう考えております。
  67. 福永健司

    国務大臣福永健司君) いま局長からも申し上げましたが、三月二十五日に関係閣僚会議でその種のことを決定をいたしまして、もちろんそういう方針を決定するだけではいけませんので、現実に、たとえば私と建設大臣とで打ち合わせするということなどをいたしまして、まあ造船なら造船仕事になるような対策を講じなきゃならぬというようなことで、具体的にたとえば瀬戸内海ではどういうような仕事をどういう方面にやるというようなこと等も若干打ち合わせをいたしまして、まだまだこれからその種の努力が必要と存じますので、そういうことをますます進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  68. 田代富士男

    田代富士男君 そういう地域の経済のことも考慮していただきまして対処していただきたい、これは私の希望でございます。  それと同時に、やはり造船業自身でも努力しなくちゃならないし、またその業界だけでは解決できない問題があります。これはやはり政府の応援なくしてはできないことではないかと思われるのが、御承知のとおりに、輸出契約のキャンセルが非常に多いということでございます。私がいただきました資料によりますれば、昭和五十一年度の受注量が八百四十二万トン、キャンセル量が七百五十九万トン、五十二年度が受注量が五百万トン、キャンセルされまたキャンセルが今後行われると見込まれるその数まで入れますと、概算二百八十万トンであると、こういうような数字を私お聞きいたしましたけれども、これはどう見ましても、これだけのキャンセルがあったならば、造船所としてもやっていくことはできないのではないかと。まあ最初問題になりました波止浜造船所がつぶれた原因も、これが一つの原因になっているということも聞いておるわけなんですが、船はできたが引き取り手がないというような、こういうようなことでは大変だと。それを造船所側あるいは商社がそういう船を引き受けて用船に出している。その費用を船会社が持つか商社が持つか。船会社に全部かかった場合には倒産というような、こういうことが起きてきているわけなんですけれども、これは造船会社だけではとうてい解決できる問題ではないし、海外の重立った海運業者に対しまして引き取らせるように、いかに運輸省としてこれを指導されてきたのか。  これはただ単に船だけの問題では解決できない。ちょうどいま日本が反対の立場に置かれて交渉をされている問題が——たとえば二百海里の問題が世界的な問題となりまして、ニュージーランドにおきまして二百海里の問題が表面化した。しかし、牛肉を買ってくれるならばこれは考慮しましょう、こういうことが相手から出てきております。アメリカは、まあ日米のこの問題で論議になりましたオレンジ、牛肉を一方的に押しつけようとしてきている。これはいま日本が反対の立場です。そのように、この造船してそれを引き取らないと。まあ聞くところによれば、造船所へ勤めている直接仕事をしてる人たちに聞きますと、引き取らない理由に、ペンキの塗り方が悪いとか、溶接が悪いとか、たったそれだけのことで引き取らない。これはけしからぬことです。意図は別にありますが、何かそういう理由づけをして引き取れないと、そういうようなことで、契約どおりに取引させるような対策を運輸省としてもこれは造船業界の代表と話し合いをしまして、国家的な立場から対策を講ずべきじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
  69. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) キャンセルの問題につきましては、二つ態様がございます。一つは、先生御指摘の技術的な問題にひっかけて引き取り拒否をすると、それからもう一つは、船主が技術的な問題にかかわらず、すでに支払ってある前受け金の損を覚悟でキャンセルする、こういう二例がございます。で、これはいずれも本来ですと契約によりまして船を建造し引き取ると、こういう相互の責任とそれから義務があるわけでございますが、義務と権利があるわけでございますが、国際的にこの契約が今回のオイルショックを契機といたしまして崩れつつあるということについては非常に遺憾に考えております。したがいまして、これから先こういったことが行われるようになりますと、契約というのは一体何であるかと、こういう問題まで発展するものでございます。その意味におきまして、基本的には中手以下の造船所につきましては商社を経由してできるだけ日本の国内問題としてそれが処理できるようにということで、商社が間に入っている例が多いわけでございます。その意味で中手のキャンセル問題については、商社が引き取ったり、あるいは商社が契約に従ってその損をかぶったりということで、まあ中手造船所との間でそういう問題があったときは、私どもは具体的な例の場合におきましても、双方の事情を聞いて解決のお手伝いをしたことがございます。ただ、基本的には先生御指摘のように、非常に急激な海運造船のマーケットの変化でございますんで、現実に船が要らないと、たとえば荷物が現実につかなかったというときには、どういう理屈をつけても引き取りたくないというのが基本的に船主側にあるわけでございます。そこで、私どもがそれを防ぐために前受け金を、たとえば引き渡しまでにかなりの量が入るように、延べ払いにおきましてもかなりの量が入るように取り引条件を決めてある。ところが、たとえば二割一般のマーケットが下がった場合には二割の手付金は捨ててもその船主側にとっては得すると、こういうような事態でございまして、一つは契約上のモラルの問題になりますが、一般的に当事者の間でこれを根気強くネゴを進めながら、たとえばキャンセルされてもかわりの船を発注をもらうとか、こういうやり方で従来対応してきております。したがって、数字にありますキャンセルの量が全部キャンセルしつ放しということじゃなくて、それの約五分の一ぐらいは代船として新造をしておるわけです。まあこういう事情もありますが、なかなかその当事者間の問題でありますので、一件一件全部立ち入るというわけにはいきませんので、これからの問題でございますが、造船業者が立場上不利を招かないように契約を取り交わすときの指導をするとか、あるいはなるべく商社を間に入れて危険分散をするとかこういうことを今後とも指導してまいりたいと思っておりますが、そういう点で個々の問題でございまして、なかなか全般的に介入しがたいという事情にあります。  国対国というお話でございますが、大体キャンセルに出てきておりますのは、外国で言いますと、たとえばギリシャ船主でありますとか、便宜置籍国の船主でありますとか、こういうところでございまして、相互間の信用の非常に厚い、従来の取引関係の非常に濃いところはこういうことにはならないで、若干の船価の値引きとかあるいは船の切りかえとか、こういうことでおさまるわけでございます。  そこで、じゃ全体的にそのキャンセルなり値引きの交渉に応ずるかという問題がございまして、たとえばギリシャの船主協会から造船工業会の会長あてに、全体的な値引きとかあるいは一部の船の引き取り延期とか、こういう議論が出てまいっております。これは全体でやりますと、むしろそこまで考えていない船主、造船所にも、それなら自分たちもという波及もありまして、やはりこれは個々の船主、造船所で粘り強くお互いの利害関係を調整しながら進めていき、必要な段階政府も、運輸省としてもそれに助言をしていくということではないかということで、まあ非常に私どもも歯がゆいんでございますが、おのずから個別の契約についての限度があるというのが実情かと思っております。
  70. 田代富士男

    田代富士男君 いま局長お話しになりまして、キャンセルになってもそういう被害が少ないように現時点においてはやっているとおっしゃいますけれども、やっぱりそれは、そういう前受け金はいただきますよと、そういいましてもね、やはり建造して相手に渡して純然たるそういう取引をするということが一番べターではないかと思うんです。だから、そういうことから考えれば、そういう何といいますか、船をつくるというその問題自身を考えた場合に、じゃ現在の日本の送船所の施設というものがいまからの造船業界に対して果たしてどういう、どのくらいの仕事をやっていくことができるか、また雇用関係も全部含んで総合的に考えなくてはならない段階にきていると思うんです。だからこの前から参考人の方にもいろいろお聞きいたしましたら、この海運業界と造船業界とはこれは一体不離のものであると、しかしこれは景気、不景気の差が一つの周期を得ていると、この周期を得ている原因についても参考人から聞きましたけれども、私はここでもう一つ考えなくちゃならない、運輸行政の立場から考えなくちゃならない問題というのが一つあるんじゃないかと思うんです。それは、この造船所の船台をつくる、こういう一つにしましても、すべて運輸省の許可が必要になっておるわけなんです。そうしますと、こういう将来を展望した場合、ある程度のここまではいけるだろうという、そういうような将来展望があった場合には、無差別に民間がどんどんやることができるという場合は歯どめはできませんけれども、運輸省の許認可の範囲内ですからある程度のコントロールはできる。ところが、過ぎたものはもう取り返しがつきませんですが、過去を振り返ってみますと、造船業界では昭和四十年代以降に中手の造船会社、小手の造船会社が大拡張を行っておりますね。その大拡張をやりました設備というものがほとんど造船専業のための設備をやっておる。もう九八%、九九%は造船専業でその設備をやっている。ところが大手メーカーの造船会社はどうであるかと、これは昭和三十年代初めから造船だけであったならばこれは危ないと、そういう意味から造船所という中にありまして多角的な仕事をやっていこうというような方向転換をしております。これはもう御承知のとおりでございます。たとえば川崎重工業におきましては、売り上げの八割以上というものは船舶以外の関係の売り上げになっている。また石川島播磨重工業では七割ぐらいが船を主体としたもので、あとの三割はそれ以外の売り上げをやっている。三井造船、日立造船、まあこれは半分ずつぐらいで陸上の機械部門を持っている。これは戦前にこういうような手痛い不況期を乗り切ってきた経験を生かしまして、そういう体制を組んでいる。だから造船界が不況でありましても、それ以外の部門によりまして何とかこれは生き延びていく対策ができるわけなんです。そうした場合に昭和四十年以降に中小メーカーの設備拡大をこのように許可をしたという運輸省は、これだけやってもなおかつ造船業界としての仕事量も確保できるし、世界的日本の経済の位置づけというものもできるんだという目途があったればこそ許可をしたのではないかと。しかし、現実には今日のように廃棄しなくてはならないところも出てきているということは、目途の違いがあったのではないかと思われますけれども、こういう点をどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
  71. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 昭和四十年代の造船設備の拡張につきましては、基本的に二つ答申が出ております。四十五年の三月に、今後の造船施設の整備のあり方ということで、世界的に昭和五十年の需要が千二百八十万トンであるということで、これに対応してそれぞれの大きさ別、船の種類別に考えて設備の拡張についての指針を出しております。これが出てまいりまして、その後の事態をいまから振り返ってみますと、昭和四十四、五年から国内におきましても国際的に見ましても非常に急激に船舶に対する需要が増加いたしまして、私どもの記憶の中におきましても、たとえば船台について、船をつくるべき船の種類、大きさを決めないで船台に予約の手付を打つとか、そういうことで非常に船価も急騰したという時期があったわけでございます。それらの事態に対応いたしまして、海運業者、これは内外からでございますが、とにかく、設備について抑制的でなくて実態に合った設備の新設を認めるべきではないかという議論が非常に強く出てきたわけでございます。そこで、四十六年の六月に答申を再度いただいておりますが、この中では、ここ当分の船舶の建造需要はきわめて強いのでこれに対応するよう造船施設の整備を図ることが必要であると、こういう基調の答申が出されたわけでございます。そこで、中手以下の造船所におきましても、まず船舶の大型化が始まっております。これは大中小問わず船舶が大型化していることは貨物船、タンカーいずれをとりましても事実でございまして、これに対応するために造船所の施設を拡大したいと、新設よりも拡張して少し大きい船に対応したいと、こういうことがまず出てまいりまして、その後、先ほど御説明いたしましたきわめて強い需要に対応するために設備の拡張、新設に向かったわけでございます。その間私どもも野放しでやっておったわけでございませんで、その答申に従って所要のスクラップを付しまして、特に中手以下の造船所に対しましては建造技術の向上ということを条件にしながら設備の増強をスクラップをかけて認めてきたわけでございます。したがいまして、この期間中は国内だけでなくて国際的にも設備がふえてまいったわけでございます。それが目途違いといえば、四十八年の石油危機を境にいたしまして国際的に貿易の基調が変わり、あるいはエネルギーの消費の基調が変わるということで船腹の需給にアンバランスができてきたということでございます。したがいまして、私どもとしましては、国際的な動向も考え、日本の造船業を堅実に再建し、さらに発展さしていくためには設備の処理を含む構造改善が必要であると、こういうことを考えております。  なお、この中で老朽施設と新鋭設備をどう対応していくか等問題がありますが、運輸省として設備増強してまいりました事情について御説明を申し上げた次第でございます。
  72. 田代富士男

    田代富士男君 局長、いま局長の話を聞きますと、運輸省は、まず一番最初、四十五年の三月に昭和五十年度を目指して世界的にこういう問題が検討された結果、そこで打ち出された方針に対応してきたと。また四十六年六月の答申によってそういう需要が拡大したことに対応すべきであるということに応じてきたんだと。一つ、いまの話を聞きますと運輸省としての主体性というものが何にもないような感じを受けるんですよ。全部よそからこうやれこうやれこうやれときたんだと。私はそこに問題があると思うんです。やはりその対応は、世界的な一つの動きがありますから参考にしていかなくちゃならないでしょうけれども、これ以上つくったならば、また再び造船所をつくっても廃棄しなくちゃならないという限界があるでしょう。一応、船舶は四十六年大型化してきたと、その後、後進国のが国際的にもふえてきたと、こういうことは想像されるわけなんです。というのは、やはり運輸省の関係の方もいろいろ韓国にもブラジルにも視察に行っていらっしゃる。私もブラジルの造船所に行ってきました。私はブラジルの造船所を見まして、これはいずれ日本は追い越されるぞと、また従業員の意欲というものを感じました。そういうものを総合的に感じた場合に、こういう四十六年の六月の答申で、当分の間そういう建造は対応していきなさいという答申だったと言いますけれども、そういう歯どめをしていたならば私は今日に至ってない。まして、造船業界というものは世界の船舶の建造の六割から七割を日本でというような一時期がありましたね。もうそのくらいの意欲に満ちていた。そういうような、それをよしと認めてきたところの運輸省の指導、それを——健康体であるならば腹八分目ということも昔から言われている。その時点で少なくとも三割かないし四割くらいのそういう施設で臨んでいたならば、今日受けなくてはならないこういう不況というものに何とか対応ができたのではなかろうかと。こういう後進国の発展、こういうような許認可制度というものを——答申答申と言っておりますけれども、私は、そういうような海造審の意見も聞かなくちゃならないけれども、これは運輸大臣を中心とする運輸省の意見というものも大事じゃないかと思うんです。その点大臣いかがでございましょうか。主体性というものをもっと持つべきじゃないか。そういうところで目途の違いがあったのではないかと思いますが、大臣からお聞きしたいと思います。
  73. 福永健司

    国務大臣福永健司君) お話のように主体性を持ち、許認可等について独自の考えによって善処するということはもとより必要であると思います。具体的にお示しの時期につきましては、確かに今日になってみれば、もう少しこういう点について深く考えていたらこういうことがなかったろうにという御批判があることは、これは全くそのとおりであると思うわけでございます。これは造船に限らずその種のことがよくあるわけではございますが、現実造船についてそういうような残念な事態があるということは、遺憾ながらこれはもう認めざるを得ないと思うわけでございます。それだけに、こういう辛き体験を将来に生かすことを考えなければならぬ、こういうように存じます。
  74. 田代富士男

    田代富士男君 そこで私は、運輸省の皆さんもそれはまじめに仕事には取り組んでいらっしゃると、これは私も一応は認めますけれども、もっと現場の実態に即した、あるいはそういう関係者の意見に即した行政的な指導をするなら指導をしていただきたい。それが余りにもかけ離れたそういう指導がなされておるために、運輸省は一体何を考えているのか、雲の上で考えていることじゃないかと、そのことからすべてを評価されても仕方のない面があるわけなんです。その具体的な例を一つ申し上げますと、運輸省勧告ベース操業度とそれから既契約船の操業度との間に非常な隔たりがあるということを、これは五十二年十二月末の日本造船工業会から発表されました資料に明記されているわけです。この資料を見ますと、主要造船会社二十三社の操業度を進水ベースの推移で出されておりますけれども、運輸省勧告ベース操業度七五・一%という昭和五十一年度の実績を分岐点といたしまして、運輸省勧告ベース操業度と既契約船の操業度との大きな隔たりがある数字がここに出されております。数字を簡単に申し上げますと、運輸省の勧告ベース操業度では五十二年度は七〇・五%、それに対して既契約船は五七%に落ち込んでおります。五十三年度は運輸省の勧告が六六・八%、それに対しまして既契約船は二七%。昭和五十四年度は、運輸省勧告によると五九・六%、これに対して既契約船は四・七%。このような数字になっております。このように運輸省から操業度を勧告されるということは、一つ造船所に偏らないように公平に仕事ができるようにという立場からこういう操業度ということを勧告をし指導をしていらっしゃるわけなんです。そのための操業度ではないかと思うわけなんです。これだけの仕事があるからこの範囲内でやりなさいよと。ところが、現実にはただいま申し上げましたとおりに、特に五十四年度においては運輸省勧告の操業度は五九・六%、それに実際既契約船、仕事をしたのは四・七%という、まことにこれはこういう開きがあるということは、一体運輸省としてどんな指導をしているのか。だから、運輸省の指導は上限のみのこういう試算でなくして、実際に合った、比率実態に合った指導をすべきではないかと思うわけなんです。こういうところからそういう外国の後進国の造船業界の進出とかそういうものも総合判断するのに、たった国内において、指導できる監督官庁の指導すらが実態に合わない、こういうことであるならば、このような事態に陥った原因というものは運輸省にもあるんではないかと思うんですが、私もこういうことについて深い専門家でありませんけれども、私なりに資料を集めて勉強したこの範囲内でも、これは大変だなと私も思った次第ですけれども、こういう実態に対して私は現場の認識不足ではないか。だから、現場の認識不足のためにそれに対する対策というものがこういうようないいかげんな対策になっているのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。大臣いかがでしょうか。
  75. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) ちょっと数字の……
  76. 田代富士男

    田代富士男君 だから、大臣にもお聞きしたいんですが。
  77. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 操業度勧告についての実態を申し上げますと、これは各社が各社の操業度をここまでの範囲でおやりくださいという操業度の上限でございます。したがいまして、平均的には四十九年度に対しまして、先ほど来申し上げておりますように、たとえば五十二年度をとりますと、四十九年度に比して七五%まで限度にして各社おやりくださいということで、これは企業の中に強弱がございます。したがいまして、ほっときますとこれは強いところは一〇〇に近く、あるいは弱いところは三〇とか四〇になるということが懸念されますので、いままでのところでは各社それぞれがまんして、この危機を乗り切るという体制で来ましたから、そういう意味で数字の上限を示しております。したがって、各社はそれを上回らないということでございますから、実態の数字は足し算いたしますとそれよりも低くなります。たとえば五十二年度で申し上げますと七五%の操業度勧告、これは各社の上限の合計でございますが、実績は六七%になっております。これは本来ですと目いっぱい張りつくわけでございますが、約一割少なくなっているということは、それだけ深刻になっているということについては私どもも認めるところでございます。  先生御指摘の五十二年度七〇・五%に対して造工メンバー二十三社で五七・〇%という数字でございますが、これは実績かあるいは予定の数字かちょっと私確認のしようがございませんが、たとえば五十三年度で六六・八に対して二七と、これは既契約の分と先生もおっしゃいましたように、これから取って積んでいくものは入っておらないわけでございます。私どもは年間で年度の終わりに締めまして、五十三年度七〇%の操業度勧告に対していままでですと六三%ぐらいの達成率でないかと思っておりますが、これは昨今の事情から再検討すべきだということで、特安法が成立いたしましたらこの議論を再検討いたしますが、いまお示しいただきました数字はこれは既契約だけの分でございます。したがいまして、五十四年度が五九・六に対して四・七というのはまさにそういう状態だと思います。通常ブーム時には、これが五十三年度はもちろん五十四年度、五十五年度もかなりの既契約船で埋まるわけでございます。ところが、最近のような情勢では、これは二年先とか一年先の分というよりは、いま今日、ただいまことしの分を取るということで、その点では非常に深刻ではございますが、これから十一ヵ月ばかりでどういうこれに上乗せできるかということでございまして、これは個別企業ももちろんでございますが、私どもとしてもできるだけ需要をこれに上積みするという形と、もう一つはこれは一般の商船だけでございます。したがいまして、雇用なり企業の操業度と言いますときは一船の商船以外のたとえば海洋構造物でございますとか、こういう点はここからわざと——わざとといいますか、あけてあるわけです。できるだけそっちに向くようにということで、そこはフリーにしまして、先生先ほどのお話にもございましたように、新しい分野に転換する場合には操業度規制の網にかぶせないで、フリーに出ていけるようにという配慮でございまして、工場全体あるいは企業全体の操業度ということになりますと、一般商船の新造以外の分もこれに加えて考えてまいりますが、いずれにいたしましても五十三年度、五十四年度は既契約ではおっしゃいます数字のとおりでございまして、それだけ厳しさについては痛感をいたしております。
  78. 田代富士男

    田代富士男君 局長ですね、私は運輸省を何もやってないじゃないかとつついたり、そういうことをしているんじゃないんです。私が言わんとすることは、こういう実情をよく知っていただいて、それを運輸省の一つの政策の中に生かしてもらいたいと。いま数字上で、この五十二年度の数字は私が言った七〇・五%、五七%はそうじゃない、七五%、六七%ですよと。しかし、五十三年、五十四年は開きが出てるんです。数字の違いを言ってるんじゃないんです。数字の計算はどの分を入れるかという基礎のデータによって少々の違いがあるけれども、傾向としては私が申し述べるように開きがあることをお認めになるでしょう。だから、そういうようなことも含んで、そういうものを運輸省の一つの政策の中に私は生かすべきだと、そういう意味から、そういう私は具体的な例として数字の上から指摘したわけなんですが、大臣、この問題いかがでございましょうか、数字のやりとりじゃなくして私は大きい立場から言ってるんですから。
  79. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 御指摘のごとく実情をよく知り尽くして施策の中に生かしていかなきゃならない、そういうように感じます。
  80. 田代富士男

    田代富士男君 そこでいかんせんこういう数字が何%なのかと言っていても仕方がありません。要するに仕事量をふやす以外に解決の道はないのじゃないかと思うんです。じゃあ、その仕事量をどのようにしてふやしていくかということが最大の問題点になってくるわけです。で、この委員会でも二回にわたって、参考人の皆さんからどのようにすれば仕事量がふえるかといういろいろな意見を聞きました。その意見をお聞きした上でお尋ねしますが、まず最初はSB方式、このSB方式の場合は私は一つ問題点となるものは簿価とスクラップ価格に格差がある、この補助をひとつお願いしたいという、これはやはり検討しなくてはならないのではないかと思うんです。これが第一点。  時間があればゆっくりお聞きしたいと思いますが、時間がありませんからまとめてお聞きしますが、また第二点には、ビルドの場合、国際競争力を高めていかなくちゃならない、新造船をつくっていかなくちゃならない、そうした場合政府として、運輸省として、このSB方式をという政府方針に対するならば、ビルドの立場の場合どのようにやってもらえるのか。ECの場合ちょっと調べてみましたら、国によって数字の違いがありますが、また局長、私、数字を言ったらそれは違いますがとおっしゃるかもわからない。平均していうと二七%か二八%は補助していますね、これは御承知のとおりだと思いますが。そういうわけでECの場合はそういう補助がされている、また延べ払いの条件を見ましても、日本の場合は七年ですけれども、ECの場合は十二年ぐらいだという、これも一応お聞きいたしましたけれども、こうした場合に政府としてこのようなビルドの場合に対してどういう対策をやってもらえるのか、助成をやってもらえるのか。  それから、こういう造船だけでは仕事がないために、それ以外の仕事ということで上五島の石油備蓄の問題等も意見が出ておりましたが、そうするとこれには漁業補償、安全基準とかそういうものがどういうふうになるのか。言うことは簡単ですけれども、これも大変なことではないかと思うんですね。  それと中古外国船の解体会社を設立しまして船の解撤をやってもらいたい、何とかつなぎとしてこれはぜひとも実現したいというような要望があった。じゃ、これに対して鉄くずはできるけれども、そういう鉄くずを販売しなくちゃならない、それはどういうふうに協力をしてもらえるものであるのか。また、いま御承知のとおりに、くず鉄業業界のユーザーが鉄鋼業界、この鉄鋼業界が不況である。その鉄鋼業界のユーザーの中に造船もある、こういう三すくみが全部不況の中に入っている。だから三すくみの全部が不況、どこか一つよくなるとこれはよくなっていくわけなんですが、全部そういう不況である、こういう三すくみのそういうような中で解撤会社をつくってもらいたいという、そういう意見に対してどのように答えてもらえるのか。こういうところも考えなくちゃならないし、また造船所で橋梁やトンネル等のそういうような部門への転換を図りたい、こういうようなことを申されましたけれども、将来不況を切り開くためにもこれは対策をしていかなくちゃならないと思いますが、時間がないからいま五点、いろいろ参考人の皆さんから聞いた意見の中から、このようにして仕事量をふやさなくちゃならないという立場から申し上げたわけなんです。  それと時間がありませんから、これもう一つ、航空局長もお見えになっていらっしゃいますけれども、意見があったのは、たとえばいま成田新空港の問題でもめておりますけれども、今後飛行場をつくるときには何とか洋上の飛行場をつくってもらえないだろうか、そうした場合にこういう鉄鋼の需要というものがふえるんだと、関西新空港あたりは洋上でというような、これはまだ決まってないことじゃないかと思いますけれども、また高松空港も洋上でそういう浮体方式をとってもらえたならばこういう鉄鋼のあれができるんじゃないかということでございますけれども、技術的にこういうことは可能であるのかどうか、まだ決まっていない問題であるかと思いますけれども、一応これは造船の不況、鉄の需要という面だけで新空港をつくる、つくらないじゃなくて、そういう面からの参考としてお聞かせ願えたらと思いますが。
  81. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 最初のSBの問題についてお答え申し上げます。  造船不況の対策として国内船のスクラップ・アンド・ビルドの政策を実現するということはきわめて意味のあることだと思いますので、何とかこれを実現するようにただいま検討中でございます。御質問のその場合にスクラップの差額を補助するのか、あるは新船の建造についてどのような補助政策を考えるか、これはただいま検討中でございまして、なおただいまのところはっきりしたお答えがまだできるまでに至っておりません。
  82. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 上五島の石油備蓄の問題につきましては、運輸省の立場あるいは船舶局の立場といたしましては、これは需要の創出としてきわめて大きい効果を持っているという認識を強く持っておりまして、地元の県あるいは市町村等の協力を得るために安全指針についてぜひ早く確立していくという立場で、過日の運輸技術審議会でこの種の海上構造物によります石油の備蓄につきましての安全指針をいただいたわけでございます。それに基づきまして必要な技術的な基準、省令をこれから至急に詰めてまいりますが、大筋においては上五島の備蓄センターにつきましては安全を確保し得るものというふうに考えて、地元等と安全問題については十分詰めてまいりたい、こう考えております。  それから、スクラップの問題につきましては、これは過日の経済閣僚懇談会で、大臣から特に終了後御指示がありまして、外国船を購入いたしましてこれをスクラップすることによりまして仕事量の一助としてぜひ検討しろと、こういうことで御指示を受けておりまして、考え方といたしましては、外貨貸しの制度を活用して資金の円滑化を図り、担当するところは従来は下請事業者のみが協同組合をつくってやってきたわけですが、造船会社、企業そのものがお互いに共同出資して共同会社をつくって、本格的に船腹の購入から、解撤から、それのできましたスクラップの販売まで具体的にどうするか検討中でございまして、私どももその内容を十分聞きながら、外貨貸しの制度の運用についてどうできるか検討したいと考えております。
  83. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 海上空港をつくる問題でございますが、最近、空港の建設は騒音問題を中心とする地元反対によってかなり難航いたしておりますので、そういった点では海上空港は騒音問題がほとんど起こらないという立地条件でございますので、大変好ましいことであると思います。したがいまして、その地域の各種の条件が許す限りにおいては、できるだけ空港は海上に立地さしたいということだと思います。  具体的な問題といたしましては、いまお挙げになりました関西空港の問題がございますが、関西新空港の建設につきましては、従来埋め立てということで大体きてましたけれども、昨年来のやはり全国的な造船不況あるいは鉄鋼不況というふうなことを基盤に考えまするならば、もしもそういったことに少しでも役立つような建設工法がとれるのならば、それも一つ前向きの方法ではないだろうかと、そういうことでかねてより浮体工法ということも関西新空港の建設工法の中にあったわけでございますが、しかしながらそういった点につきまして、特に福永大臣見えましてからこれをひとつ精力的に詰めてみろと、こういう御指示がございまして、昨年度の予算で三千五百万、ことしの予算で一億円とりまして、この浮体工法の技術的な可能性というものを船舶技術研究所及び港湾技術研究所でいま調査をいたしております。関西空港約千ヘクタールでございますが、全部これを浮体工法で沖へつくってしまうのか、あるいは海岸に埋め立てによりまして旅客ターミナル等をつくりまして沖合いに滑走路などをつくるのか、こういう分離方式ということもあり得るわけでございます。それらにつきましても、分離方式の経済性の問題等につきまして別途千四百万程度の予算で研究いたしております。それらを全部合わせまして、ことしの末になりますれば関西新空港を浮体工法でつくることが技術的に適当かどうかという結論が出ると思います。別途関西新空港につきましてはすでに五十一年度から総合的な環境アセスメントをやっておりますので、そういった環境アセスメントの中に関西新空港はいかなる工法でつくるべきかという工法の問題が含まれておりますので、ことしの末に出ますこの浮体工法の可能性という結論は、大きな関西新空港の環境アセスメントの六十億円ぐらいかけてやりますその中に入れ込みまして、それでよろしければだんだん具体化していく、こういう段取りになると思います。かなり埋め立て工法に比べて金がかかるということで、数年前の航空審議会の答申のときには問題にされましたけれども、埋め立てにつきましてもだんだん人夫賃等が上がってきまするならば金がかかってくるということもありましょうし、逆に浮体工法の場合には当時よりも比較的割り安に工事ができるというような事情などを考えますと、当時のような価格差というものは少なくなるかもしれませんが、それにしても相当の金もかかりますので、そこらの問題はまた総合的に検討いたしたいと思っております。  なお、似たような考え方が高松空港について地元で出ております。もともと高松空港は千二百メートルの空港でございまして、何とかこれを拡張しなきゃいけないと、また現在の場所は騒音問題等で問題が起こっていますので、移転拡張という案が県にございました。で、海岸を埋め立てるのかどうかというような案がいろいろございましたけれども、最近の話では海岸埋め立ての方式でなくて、沖合いにこれもやはり浮体工法でつくったらという御意見があるようでございます。私どもはまだ県の段階でその辺の考え方が出てくるのを待っておりますが、県の方から正式にそういったことで話し合いがございますれば、埋め立て工法を含めまして調査をいたしていきたいと思っております。したがって、まだどのぐらい金がかかるということについては全く未知数でございますが、地元、県で集約される御意見を待ちまして対応いたしてまいりたいと思っております。
  84. 福永健司

    国務大臣福永健司君) いま田代さんがおっしゃいましたようなことにつきまして、私直接関係者等からいろいろな陳情なりまた意見なりを聞かされておりますので、一、二申し上げさしていただきたいと思います。  外国船を買って解撤等をするということ等につきましては、過般、造船業界の会長以下大ぜい参りまして、この中には大きいのもそれからさほど大きくない造船会社の関係の人たちも見えたのでございます。私素人でございますので、率直にこれで勘定に合うようにやれますかということを素人なりの質問をいたしました。そのときにこもごもみんなが申しますことには、従来はとても勘定に合いませんというように考えておりましたと、ところが昨今のいろいろな事情を考えてみると、そんなことを言っておられないし、その気になれば必ず何とかして見せますと、非常に強い決意で、正直に言って造船業界もかつては大変苦労をいたしましたが、その後わりあいに順調にいくものだからちょっと有頂天にもなっておりました、ここで何とかして筋金を入れ直したいと思いますということで、そして大きいのも小さいのももとは解撤等をやったが、最近ではもちろんそういうことをやってなかったもの等も、今度という今度は本当に一生懸命に協力してやりますから政府も心配してくれと、まあちょうどそのとおりいくかどうかわかりませんけれども、そのときの話で、順調にいけば十億ドルぐらいな船を買って、それによって解撤等もやっていくというようなことは可能ですということでございます。十億ドルは、ドル減らしドル減らしといま言っておるときでございますから、こういう当てにしなかったところから十億ドルぐらいドルが減らせるということになれば、これは相当なことだと私は思いまして、それから数日後の経済閣僚会議におきまして、こういうこともやらそうじゃないかと。ところが、それにつきましては先ほどからもお話が出ておりますように、大蔵省等で外貨貸し等その他若干の施策を講じてやらないと、ほうっておいてできるというものじゃございません。で、それを業者がそういう決意で臨むとするならば、政府もそういうことに対応する措置を講じていこうじゃないか、ことに運輸省ではない大蔵省等の関係者にはぜひそういうことを心得てやってもらわなければいかぬということも私申しまして、それじゃそうやろうということに実はなっております。いまの話のとおりいくかどうかはわかりませんが、ぜひ何とかしたいというふうに考えております。  それから、浮体工法等につきましては、率直に申しまして私素人なりに感じておりましたことから出発いたしまして、そういうものをということを申したのは事実でございます。でございますが、昨今になりまして実はそういうことがいいじゃないかという説が大分出てまいりましたことを、言うならば一種のまぐれ当たりのような気がいたしておりますが、私は決して専門家なるがゆえに確信を持ってということではございませんけれども、いまのような日本では何かそういうことを考えていかなきゃなるまいということから申しておったのでありますが、たとえば高松の例がさっき出ましたが、近々中に関係者が大ぜいでやってきて、どうしてもそれでやってもらうように陳情に来ると、こう言っておりました。まだ聞いておりませんが、大変な熱意に伺っております。また、これもそのとおりいくかどうかはわかりませんけれども、浮体工法と関連いたしまして、まあもとのままの埋め立ての方がもちろんいいんだというように強く言っている人もございます。これは当然だと思いますが、実はどこというとまずいのでございますけれども、その近くで大阪でないところで、大阪がぐずぐず言っているのなら自分の方へ浮体工法によるところの新空港をつくってくれちゃどうだというので、関係者が大ぜいで、そういう意見がいまほうはいとして起こってきておる。これまた近日中に皆が来るというんですが、そういうことになるとまた、おまえが要らぬこと言うからいろんな話が起こったと言われるかもしれませんけれども、私は必ずしもそうばかりと思わない。とにかくこの種のことをやると、これじゃいかぬ、あれじゃいかぬというしかられることばかり多い中にあって、おれたちは何にも言わぬからそういうのでやってくれというようなところがあるということは、これはまたそれなりの意味があるような気もいたすわけでございます。いずれにいたしましても、そういう話がいろいろございまして、こういうことで混乱するということでなくして、それをいい方向へ向けるための材料にしていくというような物の考え方をしていきたいと、そういうように考えておる次第でございます。
  85. 田代富士男

    田代富士男君 外務省の方来ていただきましたから、これ運輸省と両方に時間がありませんからお尋ねいたしますが、いま造船業界が不況であるために希望退職を募っていらっしゃいます。その実例を新聞でも報道されておりますし、参考人の方からもお聞きいたしました。これは本工員の場合はいろいろ退職金なるものが明確になっておりますが、問題は、組合員でない下請の業者のもとで働いている人は、これこそ好、不況によっていつも切り捨て御免という立場をとられているわけなんです。こういう人に対する手当てというものが何らされていない。雇用不安といいますか、私は本工であろうともあるいは下請であろうとも、これは立場は同じく平等に見てあげなくてはならないのではないかと思うわけなんです。本工の人の平均給料どのくらいかと。三十七歳ぐらいで十五万円前後である。下請の人は四十七歳ぐらいで基準内の賃金が九万五千円、プラス時間外の労働時間によっての加算がされるんであろうと思いますが、このように考えてみますと、これすらも差別がある。また退職をされていく年齢層を見ますと、参考人の方も言っていらっしゃいましたが、従来は希望退職者はある程度のもう年配者がほとんどであった。しかし、最近の希望退職者を見ると、若い二十歳代、三十歳代の若い人が多い。これは一つの特異な傾向であります。私、その参考人の話を聞きまして、日本の造船界の将来というものを考えた場合に、やはり周期というものがあるということを最初に申し上げました。十年後ぐらいには好況の時期を迎えるであろうということが予測されております。これは予想でありますけれども、過去の例を見ますと必ずそういう周期がある。じゃ年配者がやめていかれると、これも惜しいことですけれども、後には若い人がその技術を引き継いでいくことができる。しかし、ここで二十歳代、三十歳代の若い人が造船業界から離れていくということは、好況期になったときにさあ技術者を養成しようとしても間に合うものではありません。  じゃあ、いかなる理由で若い人がやめていくのか。その意見は、その土地で生涯この造船所とともに人生を送っていこうと腹を決めて住宅を建てた。その住宅ローンのために、いままでは時間外手当が大体三万、四万、五万ぐらいはあったと。それで何とか住宅ローンを払っていた。しかし、最近は時間外手当もない。そういう倒産の憂き目を見ようとしておるときに、住宅ローンは依然として払っていかなくちゃならない。こうした場合に、一時的な退職金でその重荷になっている住宅ローンのそれを処理して、次は給料は従来よりも安いところでもよいから働いていきたいと、こういうような傾向が見られる。これは造船業界の将来を考えた場合にしましても、ただ単なる雇用問題とかそういう問題以外の問題を含んでいると思うんです。そういう意味で、運輸大臣にこの事態をどのようにするか、若い者に希望を与えていく方法はないものか、こういう本工と下請との差別があってはならないと、これは運輸大臣にお聞きしたいと思います。  そこで、外務省の経済協力関係の方ですね。ここに交通新聞がございますが、これには海外からの協力要請、国鉄の技術、これは日本の国鉄の技術というのは世界最高です。海外から技術要請が来ている。そのように造船の技術というものはいま世界で最高の技術を持っております。そうした場合に私はそういう二十歳代、三十歳代のそういう若い希望のあふれる人が仕事をやりたいけれども仕事がないというならば、こういう海外の技術移民といいますか、こういう面に力を注いで、その人の仕事をやりたいという希望も、またその人の職場も与え、国際関係の交流にもなり、ひいては全世界の経済発展にもつながると思いますが、こういう立場からひとつ御答弁いただきたいと思いますが、最初運輸大臣からお願いいたします。
  86. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 若い人たち造船から離れていくということは、将来を考えました場合、御説のとおり、これはよく考えなければならぬ問題であると思うわけでございます。何としてもそういうことを防がなければなりませんが、防ぐためには、そういう人たちが将来に希望を持ちつつ働けるような環境をつくっていかなきゃならないことは当然だと、そのことが容易でない事態であることは残念に存じますが、この点についてはいろいろ対策を講じて、そういうことでないようにしなければならぬと当然に考えておるわけでございますが、いま後段で、海外へそういう意味での技術移民等をという話、外務省からは外務省としてのお答えがもちろんあろうと思いますが、実は最近各国から来る閣僚とかそれと一緒に来る大使とかいう者の中に、いま田代さんお話しのような話がずいぶん私どもの方へございます。それだけ聞いておるとなかなかいろいろあるようにも思います。昔は相当苦労をしても日本から大ぜい出ていったわけでございますが、いまは昔ほどに苦労をしてまで行こうというのがなかなか少なくなった。こういう点については日本国民全体として、こういう苦しい事態のもとでぜひ考え直して、広く世界に、いまお話しのような意味で雄飛していくことを考えていかなければならぬと思うわけでございます。  なおそれと逆に、最近外国へ大使で行くような諸君で懇意な連中が大ぜいおりまして、現実にその若干について向こうからたとえば造船あるいは鉄道、こういうようなものにつきまして、非常に大きな技術協力等を求めている事例がございます。そういうような諸君とは相談をいたしまして、行ったら必ずその話が実現するようにと、その中の国々によりましては、その話等も本当に実を結ぶようなことになるころに大統領等も来て、話を固めたいなどという実際上の話等もございます。まあでき上がりますまでは、それはもうしかとそうだということはとうてい言えないのでございます。いまの日本としてはぜひそういうことを現実化していかせたいと、日本民族がこれから伸びる一つのぜひ望ましいと思われる姿の一つであると、こういうふうに存ずる次第でございます。
  87. 中村泰三

    説明員(中村泰三君) 経済協力についての考え方でございますが、基本的には経済社会の発展あるいは民生の向上、こういうことを目的とした開発途上国自身の努力に対して、わが方が側面から協力するということでございまして、基本的には途上国の方に願望があるあるいは要請があるということが前提になるかと思います。ただし、途上国におきましては、最近わが国に対する技術協力期待する声が非常に高まっておりまして、しかも技術協力、これは手間暇のかかる仕事でございますけれども、いわゆる心と心、人と人との結びつきを通じて、単に技術の移転ではなくて、相互の理解を深めるという意味で非常に質のいい経済協力一つの形態だというふうに考えております。したがいまして、途上国側から要請があり、わが方としてこれに対応することが途上国側の経済社会の開発に役立つということでございますれば、技術協力の形態で大いに私たちとしても増進してまいりたいと、こういうふうに考えておりますが、ただわが国の特定分野に余剰な労働力があるということで、わが方から押しつけるという形になりますと、これは技術協力、あるいはわが国の経済協力にとってのマイナスの効果もあるかもしれないと思いますので、その点については慎重に検討する必要があるのじゃないかと、かように考えております。
  88. 内藤功

    ○内藤功君 この一ヵ月の間に、二度にわたる造船問題での参考人の意見聴取もいたしましたし、また私自身、本委員会の長崎、佐世保地域の委員派遣の一員として参加をいたしました。また、その他関係者に私なりにいろいろと当たってみまして、一番深刻なのはこれは最も弱い立場にある下請の方とそこで働く労働者、それからいわゆる本工と言われる方々、労働者ですね。この方々の雇用、失業問題というのがきわめてこの造船業において深刻だということを、本当に短い期間の調査でありましたが、痛感をしておるところでございます。いわゆる設備廃棄ということがいま盛んに言われておる。物というものは廃棄をしてもまたつくることができるかもしれません。物を廃棄しても前よりよい物が再びつくられる可能性があるのです。しかし、人間、特にこの造船業で働く労働者というのは、いま前にも御議論がありましたけれども、一遍、長年働いた、また自分が仕事として打ち込んだ職場を離れたならば、これはもうすべておしまいであって、再びこういう生きがいのあるところで働いて生活の糧を得るということはできなくなる。こういう意味でこの雇用、失業問題は、このいわゆる弱者である労働者をどういうふうに守っていくかということにやはり徹していくような指導政府において行われることが必要だと、これが私がこの造船問題の調査を通して本当に痛感しておるところでございます。  そこでお伺いしたいのでありますが、まず、この大手のいわゆる人減らしということの問題であります。私は非常に深刻だと思うのは、いまもお話が出ておったようでございますが、いわゆる希望退職を募るというこのやり方の中に一つ問題が非常にあると私は思うんです。まず、大手の日立造船がいま実施をしておる雇用対策諸制度の中に「転職転進援助制度」というものがいま行われているように私は聞いておりますけれども、労働省にもこの点私どもの党の同僚議員の方から調査を具体的に先日要求しておいた次第でありますが、この日立で実施しておる「転職転進援助制度」というものは、かいつまんで言うとどういうものであるのかという点をまずお伺いしたいと思います。
  89. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 日立造船から聞いておりますところでは、「転職転進援助制度」というものは四十九年から始めておりますが、四十九年の段階では、行十歳以上で転職する人が退職する場合には定年退職扱いということにしております。したがいまして、本人の希望で退職するわけでございますが、会社の制度上の定年退職扱いとするということでございます。  それから、さらに昭和五十三年に労使が合意した上でこの制度の拡充を図っておりますが、これはことしの三月から五月までの間は、四十歳以上四十四歳以下で転職する人に対しても定年退職扱いとするということと、それから四十五歳以上で転職する人は定年退職扱いに加えまして特別加算金、これは基準賃金の二ヵ月分から十二ヵ月分の範囲と聞いておりますが、そういった加算金を支払うことにしたということで、この制度で希望者としては約千五百人程度が見込まれているというふうに聞いております。
  90. 内藤功

    ○内藤功君 私の方で、これは日立の人事部のつくった資料がここにありますが、これはもう一般の社員に配られている「じんじとくほう」である。これによるといま局長が言ったように、対象は「四〇才以上の者で転職・転進を希望し、会社が認めた者。」、特別加算金は、四十五歳以上の者に対して基準賃金の二から十二ヵ月分を加算するということで、そうしてこれは手続は退職届に転職・転進内容などを記入の上、人事担当課へ申請すると、こういう仕組みになっております。この制度の法律的な性質は、私は退職制度、定年より早くやめれば割り増しの分がつく、そういう退職制度だと思いますが、そういうふうに理解していいですか。
  91. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 基本的には、昨今のような厳しい状況でございますので、造船各社におきまして出向、配転等に加えまして、希望退職ということで従業員の方に希望退職を募集をするということが出てまいっております。まあ私はこの日立造船の制度そのものを詳しく存じませんが、まあ転職転進援助ということで、この制度に加えて会社として転進転職についてどういうあっせんをするか、この内容をつまびらかにしておりませんが、そういうことが、先ほどの先生御指摘のように退職届にそういうものの内容が書いてあるということで、会社としてもできるだけそういう者に援助するという制度のように見受けておりますが、そういうことであれば通常の希望退職を募るということとは若干違うんじゃないかと、こういうふうに考えております。
  92. 内藤功

    ○内藤功君 私の聞いたのは「転職転進援助制度」とあるけれども、その実質は退職制度だと、退職制度の一つの変形だと、こういう法律的な見解を私は述べた。これはもう明らかだと思うんですね。そこで、問題はこの募集の仕方です、私が問題にしたいのは。この退職希望者をあくまで本人の意思に基づいて、本人の真意に基づいて、そういう条件でいいと、よく理解をしてのみ込んで応募するということであるなら格別ですが、必ずしもそうではないと。本人の意思というものに反してこの希望者の募集というものが行われているという実態が私ども調査で明らかになっておる。もし本人の希望ということじゃなくて、本人はこの会社にもっと働いていたいんだが、しかし、いろんなことを言って、長い時間かけたり、あるいはしつこく言ったり、あるいは応じないと不利益を受けるようなことを言ったりなんかして、いろんな、ある意味での強制ですね。これを課してこういう人たちを募集するということはこれは許されないと思いますが、どうですか。
  93. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私の聞いているところによりますと、まあ日立造船はかねてから労使の関係については非常に気を配って、お互いに経営の実態についても話し合うというような会社の施策を持っているというふうに聞いております。したがいまして、この制度が労使合意の上で成り立っているということでございますれば、先生御指摘のような事実についても私承知しておりませんので、ここでそういうことがあるかどうか、あるいはあったとしたらどうだということについては、私はまだそういう内容について聞いたことがございませんのでお答えをしかねるというように思います。
  94. 内藤功

    ○内藤功君 この労使合意の上に成り立つというのは、これは労働組合——具体的に労働組合の執行部と会社の担当者との間に合意ができる。これは確かに合意があるでしょう。しかし問題は、その合意を個々の労働者に対して実行する段階でどういうことが行われるか、やっぱりここを調べなきゃならぬと思う。合意があってもその合意を実行する段階でそこに強制があっちゃいかぬと思うんですが、これ一般論としてはどうですか、局長
  95. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) この制度の内容について私聞いておりませんので、一般論としても、まあ私の常識論で申し上げれば、労働組合企業と合意した上では、組合としてもその点組合員の同意を得て労使合意に達したと思っておりますので、その間で個々の転職転進希望者がどういう形で出てくるかについては、これは私ども企業としてもそう無理な形でやられる、進められるというふうには考えておりませんし、内容について、私まだそういう事実があったと、あるいはそういうことが行われているということを聞いておりませんので、お答えは——一般論として、労使合意の上に立って、さらに労働組合もその全体の総意の上に立ってというふうに理解をしたいと考えております。
  96. 内藤功

    ○内藤功君 一般論としては局長が言いたいのはこうでしょう、これは労使合意で行われたことを実行していくんだからあくまで労働者の同意が前提だと、だから、労働者の同意なしに、あるいは労働者の同意というものを強制した形でやってはいけないと、こうなんでしょう。
  97. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) これは、この制度、内容つまびらかに読んでおりませんが、転職転進の援助の制度でございますから、本人の意思が先だと考えております。
  98. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、調査が十分に実態の方まで及んでないような御答弁ですので、私の方から少し進めて質問したいと思います。  われわれの調査の内容を一部明らかにしますと、具体的には日立造船の神奈川工場です。ここでは本人の意思としてはやめたくないと、もっとこの会社にいたいと、この工場で働きたいと言う数多くの人たちに対して、退職するように、この転職転進制度によって退職届を出すように非常に強い力が、説得が加えられていると。これは強制と言ってもいいような事実がある。私は、この点をまず労働省当局と通産省当局に調べてほしい。先日、私の方の党の同僚議員からも申し入れを行ったところでありますけれども、労働省来ておられますか——この点についてあなた方調査したかどうか、調査の内容についてつまびらかにしてもらいたい。
  99. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) 先生おっしゃいましたように、そういう事実の指摘を受けまして、労働省としましては、とりあえず会社側の責任者の方々に労働省に来ていただきまして事情を聴取いたしました。転職転進援助制度の内容につきましては、先ほど運輸省の方から御説明のあったとおりのことを私ども聞いております。また、その運用につきましては、私ども会社から事情聴取したところでは、強制にわたるようなことはないと、あくまでも労使合意に基づく制度であって、しかも個々の労働者の強制というようなことはないと。また、特に何か五十三歳以上の者について強い強制があるというような指摘もあったようでございますが、そういう年齢による差別をしているというようなこともないというふうな説明がございました。また、退職する人につきましてもその氏名等は組合へも通知をし、組合の方でもその個別の人たちについて了解を与えているというような運用の状態にあるというふうに聞いております。
  100. 内藤功

    ○内藤功君 それはもっと正確に調べてほしいということを重ねて要求をしたいと思う。  まず、ことしの三月の十五日に、四十五歳以上の人を各部ごとに集めてこの制度について説明をして、三月二十四日までに希望者は申し出るということになったと、この点はどうですか。
  101. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) そういう具体的な事実についてはまだ聞き及んでおりません。
  102. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、どうです、三月二十四日までに申し出ろということで申し込んだ人はほんの数名であったと、この点はいかがですか。
  103. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) その点についても特に聞いておりません。
  104. 内藤功

    ○内藤功君 三月二十五日から二十六日二日間かけて四十五歳以上の人に個別に説明をして、そうしてさらに四月の十二日には第二回目の各部ごとの説明をやった、そして四月の十四日以降——ごく最近ですな、五十三歳以上の人を重点に個別説得をやった、こういう経過であります。この事実は労働省としていかがですか。
  105. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) そういう具体的な事実についてまだ聞き及んでおりませんが、一般的にはそういう強制にわたるようなことはないという説明を受けております。
  106. 内藤功

    ○内藤功君 運輸省、この点はいかがですか、いまの経過。
  107. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私ども一般的な制度について聞いておりまして、いま先生御指摘の個別の事実についてはまだ聞き及んでおりません。
  108. 内藤功

    ○内藤功君 労働省、運輸省両方に伺いますが、わが党の同僚議員、名前を申し上げれば山中議員から、たしか二十一日の日に、これは労働省に対して、強要にわたる事実があると、こういう指摘をして調査を要求したはずですが、いかがでしょう。ただ一般的な制度だけを調べてくれと、こういうふうに言ったわけじゃなくして、強要の事実を調べるようにという指摘をしたはずですが、どうでしょうか。
  109. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) 確かに山中先生から強要にわたるような事実があるから調査をしてくれということがございまして、私どもは、その日時とか時辰とかいうところまで存じませんでしたので、一般的に強要にわたることはないか、年齢によって特に強いあれがあるかどうかといったようなことを聞いただけでございます。
  110. 内藤功

    ○内藤功君 私の指摘はそれだけじゃないんですね。そういう個別説得の中でこういうことがやられているんですね。いまこの退職を納得しなければ何回でもやると、何回でもあなたとやると。それから、退職させられて結局退職届を出したある人は、やめると言うまで何回も説得をされた。大体、部屋の中へ一人呼ばれてそこで説得をされる。一時間以上にわたった場合もあると。それから、会社を休んでいる人には家まで電話をかけて説得をされた例があると。これは私の調べた範囲のごく一部でありますけれども、こういう事実が私のところに報告されております。これはやはり具体的に本人の希望が前提だと、同意が前提だとさつきから船舶局長も言っており、また常識的にも法的にも私はそうだと思いますが、これを明らかに逸脱したやり方が行われていると思うんですね。私は、こういう点を調べないで、ただ一般的に強制が行われておりませんと言うんですけれども、会社側に聞けば行われておりませんと言うでありましょう。しかし、それだけじゃなくていまのこの具体的な御指摘の事実があるわけなんです。さらに私のところに手紙も来ております。手紙、電話なども大分来ております。手紙とりあえず二つ持ってきました。一つはこう言っているんですね。自分は上司から呼ばれて一時間以上にわたって、くどくど話を聞かされたと、こういう憂うつな毎日が続くのかと思うととてもいやになってやめてしまったと。上司はやめるまで何度でも話し合うという態度である。何とも情けない。希望退職なんかではないと、やめなくてはならない感じにさせてしまいますと。それに退職金やボーナスがめっきり少なくなるとさんざん言われるし——ということを一人の人は訴えております。もう一人の人は、私には会社しかなかったと、生きがいがということですね。それが五十四歳になるからといってやめてくれです。あと四年精いっぱい働こうと思っていましたと、何か頭をがつんといってたたかれたような気持ちだと、何度かの上司の呼び出しにも、私の気持ちを本当に知ってもらえれば、本当に働く意思を知ってもらえれば大丈夫だと思っていたと。つまり自分は働く意思があると言えば大丈夫だと思っておったと、しかし、会社にとって私は要らなかった。過去の業績など何の役にも立たなかったと、何とむごいことではないでしょうか。もう何にも信じられない気持ちであるということをもう一人の人は手紙で書いてきております。これは後であなたにお見せしますからよく見ていただきたいですね。  こういう事実がやはり訴えられてきておるわけですよ。したがって、ただ一般的に強要は行われてないと聞いておりますというだけじゃなくて、私きょうこれだけの具体的なことを指摘しましたから、労働省当局として、この造船不況ということにいかに理由をつけても、労働者の働きたいという気持ちを強要してやめさせるようなことは、これはちょうど例は悪いですけれども、頭をパッと切るのではなくて、ピストルを渡し、短刀を渡してさあということと私は同じだと思うんです。私は佐世保重工では、これは私も調査のとき強く聞きただしたんですが、会社当局者はなかなかはっきり認めようとしませんけれども、非情ないわゆる肩たたきというものが行われたのではないか。それが原因ではないかと思われる自殺された方も佐世保重工に出ております。私はそれを断定するわけじゃないが、これが行き過ぎると、佐世保重工に限らず、どこの企業でもこういう自殺者というものが出るところまでいくわけですね。私はそういう意味でもこの退職制度というのをつくるのはこれは労使の合意でつくるわけですけれども、その運用のことを言っている。運用において行き過ぎそれから強要というものがあってはならぬと。そういうものがあってはならぬということだけじゃなくて、あった場合に、労働省当局はやはりただ一般的に聞くというだけではなくて、さらに突っ込んだ再調査、再点検それから再びこういう訴えが来ないように、そのもとが起きないようにこの労使関係、特に退職強要がないかどうかを当局としてやっぱり厳しく監視をするということも労働者の立場を守る上から私は大事だと思う。こういった点についてあなた方はいまこの指摘に対してどうされるおつもりか、労働省の見解をお伺いいたしたいです。
  111. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) 指摘を受けましてからまだ日時も浅いことでございまして、とりあえずは管理者側、企業側の責任者を呼んで聞いたわけでございまして、本来なれば労働組合側あるいは労働者個人からも意見を聞くべきところでございますが、時間的な余裕もございませんでしたので、とりあえず聞きました。そうして会社側から提供された資料によりますと、日立造船労働組合の組合の方の広報室みたいな組合員に配った資料の中にも、肩たたきではなく適切なアドバイスがあるというような意味表現もあり、私としては強制にわたるような事実はないんじゃないかというふうに憶測をしたわけでございますが、いま先生御指摘のような、本人の意思に反するような強制的な事例があるといたしますと、解雇ということにもつながりますし、法律的な問題もあるいはあろうかと思いますので、労働省としてはさらに実態を調査する用意はございます。
  112. 内藤功

    ○内藤功君 船舶局長どうですか、これは合理化の中でこういう行き過ぎが起きることは許せないと思うんですよ、こういう点についてあなたの御見解はどうです。
  113. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私の方も企業側から第一回のヒヤリングをいたしたわけでございますから、先生御指摘のようなことがあるかどうか、さらに詰めて聞くということにしたいと思います。
  114. 内藤功

    ○内藤功君 私は労働省には調査の細かい方法まで私が指示する気持ちはないですけれども、少なくとも会社側の人事担当者だけを呼んで意見を聞くというんでは調査不行き届きのそしり免れないと思うから、この点は再度要望しておきます。  それで労働省にもう一点聞きたいのは、今度はこういういわゆる四十歳代で退職金を二ヵ月から十二ヵ月分加算するというようなこと、二ヵ月分なんかもらっても少しもありがたくないだろうと思うんだけれども、不況宣伝に動かされていろいろ強い勧奨を受けてやめていくんだろうとぼくは察するのだけれども、こういう四十歳とか四十四歳とか本当にまだ中年といっても働き盛りですよね。こういうような人たちの退職を促進するということは、政府特に労働省がここ数年来非常に努力をしていらっしゃるところの定年延長促進、これは通達まで出しておられると思うのですが、こういうような方向と私はこのやり方はいかに不況下とはいえ矛盾してくる方向じゃないかと思うのです。そういう点についてどうお考えになるのか。  それからもう一つは、中高年に対しては法律で、特に五十五歳以上は六%以上という雇用目標もつくられておるわけなんであります。こういった点についてこれはどう考えるか。具体的に私数字をいま会社、組合両方の資料から調べましたところ、全従業員が、私の調べでは、五十二年十二月末に日立造船は、数字の微細な点間違ったら訂正しますけれども、二万一千九百九十七名。そうしてこの〇・〇六で計算をいたしますというと一千三百二十名が〇・〇六になる。ところが実際は五十五歳以上の方は一千百三名、大体五%なんですね。現実に五%です。こういう点でこれは去年の十二月現在でも六%を五十五歳以上の人は割っておる状況であります、これは私の去年十二月現在の数字を前提にした調べではね。そうすると五十五歳以上の方はすでにこの雇用目標六%を下回っている。それにまた今度は個別説得でやめさせると。さっきの手紙にもありましたし、あと四年働ける、あと何年働けるという人をこういう形でやるというのは、非常に私は、法律論は後でやりますが、まずこれは人間の扱いとして実に無情であるということを言わざるを得ないと思う。労働省として、いまの高齢者雇用六%との関連、さらに大方針としての定年延長促進というこういう方針から見てどういうふうに思われるか、そういう点を率直なところ伺っておきたい。
  115. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) 日立造船におきます定年制は五十八歳ということでございまして、この定年年齢そのものを動かす考えは全くないというふうに聞いております。今回のこの転職転進援助制度は、直接は定年制そのものとかかわりはないものだというふうに理解いたしまして、転進転職をしなかった人は、五十八歳までは、定年まではおれるという保障があろうというふうに私は見ております。  ただもう一点お尋ねの高齢者の雇用率につきましては、先生御承知のとおり五十五歳以上の者を高齢者と呼んでおりますが、これを全従業員の六%以上雇用することを法律的に義務づけております。まあ努力義務という形でございますが、これは法律上とられた義務でございまして、これを達成する義務は事業主にあるわけでございます。この点につきましては、私どもとしては今回の措置によりまして高齢者雇用率が低下するとか、あるいは特に高齢者に重くしわ寄せされるというようなことのないように、いろんな経営上の事情とかいろんな諸般の情勢、やむを得ない場合もあるいはあろうかと思いますけれども、特にこれ労使の合意の上に成り立っている制度でございますので、私どもとしては、非常にむずかしいところでございますけれども、行政の立場としましては、高齢者になるべくしわ寄せが及ばないようにできるだけの配慮をお願いしたいというふうに、先日事情聴取においでいただいた方にも申し上げた次第でございます。
  116. 内藤功

    ○内藤功君 こういう時期ですから、できるだけの御配慮をお願いしたい。これは決して悪いと言いませんけれども、そういう姿勢だとやっぱり本当に労働者の雇用を守るという労働省の任務を果たせませんと私思うんです。もっとしっかりやって、言葉は穏やかでもいいんですよ。言葉は穏やかでもいいけれども、しっかりした態度で臨んでもらいたいと思いますよ。私はこういう点でまだ非常に不満がありますが、最後に運輸大臣にお聞きしておきたい。  いまずっと聞いておられて、物的な設備の廃棄というだけにとどまらず、生身の人間の首を切ると言うと強い言葉ですけれども、実際はそうなんですね。ただ説明会開いて、説明会でよくわかったと、じゃ、その制度で退職しようという人が何人か出てきて、その人にやめてもらうというんだったらぼくも言いません。しかし、今度は一対一じゃ非常に弱い労働者を呼んで、そしてやめろということを強制するという事実が  いまこれから調べるということになるんですけれども、こういう事実があった場合、私はこれは大きく言えば、日本の憲法は、人間はみんな生きる最低限度の権利を持っている。勤労の権利、働く権利みんな持っている。個人の尊厳というのも規定されている。強迫による意思表示の強制というのはこれは許されない。裁判で、こういう強迫で退職届を出した人が救済された例だって何回かあります。私自身も実際そういうものを扱った経験がある。しかしこれは一たん出してしまったらなかなか裁判で救済されるというのは時間がかかるし大変なんです。ですから、その前に退職届を不本意で出すような人がないようにやっぱり労働行政の上から監督すると同時に、運輸省の立場としても、特に大臣は前に労働大臣経験も長年やっておられてこの道で経験のある方でありますから、こういうことがないようにやはり配慮をしながら、いまの造船の雇用問題、労働問題というものに対処しないと、これは物を廃棄するついでに大事な人を、人生の生きがいを失って、生活権を奪って、さらに場合によってはみずから命を絶つところまで追いやるということになったら、これは大変な問題だと思う。私どもはこの面について大臣がよほどのやはり所見を持ち、識見を持ち、また決意を持って労働者の側の生活を守るという立場というものを貫いていくべきではないか、いくべきだというふうに思うわけなんですが、この点についての大臣の所見を最後にお伺いしておきたい。
  117. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 内藤さんお挙げになったような事例のもとにおいて、自由意思の強制、強迫等があるというような事態は、これはもうもとより望ましからぬことでございます。具体的にはいろいろの事情がございましょうが、見方によってはよくよくの事情とも考えられますが、そういう目に遭う労働者の立場を考えるときには、これは政治でいかにあるべきかということは、これはもう申すまでもなく何とかしたいというところでございます。具体的にいろいろ事例もございましょうが、私もまあ労働大臣をやったことがどうかはともかくといたしまして、何万人かの従業員を持つ会社の責任者であったことがございます、いましがない代議士をやっておりますけれども。そういうことで従業員とともにずいぶん苦労をいたしましたこと等がございます。したがって、いまお話しになったようなことについてどうするかということになりますと、これはいろいろ行政的に配慮すべきこともございましょうし、事態によっては法律的にどうすべきかという問題等も起こり得るかと思いますが、いずれにいたしましても、一般論といたしまして、そういうことの起こらないような行政をやっていきたいものだと、こういうように存ずるわけでございます。
  118. 内藤功

    ○内藤功君 そこで大臣に、いまの点は、きょう私が指摘したことに対して政府委員の方からはそういう具体的な事実を把握してないという、こういう対応であったわけです。そこで、これはほかの会社にも恐らく同種のことはあるのではないかと思いますけれども、私どものいま指摘した日立造船の件について、私が間違っておればこれは直さなきゃなりませんから、実態を正確に調査してもらいたい。会社側の人事の方に来ていただいて、上面だけで、一般的にそういうことはなかったようでありますというのでは、調査不十分のそしりは免れないと思いますから、大臣の方から特にこれは担当者に調査の御指示を願いたいと私は思うんですが、いかがですか。
  119. 福永健司

    国務大臣福永健司君) そういう調査の実行ということにつきましては、どの役所がどういう権限に基づいてというような問題も考えなきゃいかぬかと思いますが、運輸省は運輸省なりに努力をいたしたいと存じます。
  120. 内藤功

    ○内藤功君 労働省はひとつこの点について、いま私の指摘したことも含めて調べてほしいと思います。調査の結果を、この委員会での私の質問関連しての調査をしていただいて報告をしていただきたいと思います。いかがですか。
  121. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 雇用問題の視点からの事情聴取その他、職業安定局の方で先ほど御答弁したような形でやっておるわけでございますが、同時に、個々の労働者の言うなら権利救済という問題になりますと、私ども労働基準監督機関を通じての取り扱いも出てまいるわけでございます。先ほど来のお話の中で、会社側からの話だけでは必ずしも正確には実態がつかめない点確かにあるわけでございますが、ただ、どの労働者の方がそういう形の扱いを受けているか具体的に特定されませんとなかなか事情もつかみにくい点もございますので、先ほど来のお話で、勧奨なりあるいは肩たたきが度が過ぎて、これが意に反した退職届の提出というかっこうになれば当然解雇という形のものになるわけでございまして、そうなれば基準法上定められた解雇の手続に違反しているかどうかという基準法の違反の問題が出てまいりますから、監督機関としてはそうした視点での調査については至急に当たってみたいと存じます。ただ、具体的名称等わかりませんので、できますれば基準法百四条で言うところの申告というような形がありますと、個々の方も特定できて調査もしやすくなるという点があるわけでございます。監督機関の立場ではそういう視点でやってみたいと思います。
  122. 内藤功

    ○内藤功君 それはだれでも知っていることなんですよ。申告という手続があることはだれでも知っているんですから。そうじゃなくて、私はこの労働省というのは労働行政全体を指導監督する立場からこれはやはり調査をすると、申告に対してやるのは当然のこと。そのほかに、この委員会で言っているのは、そういうことよりもっと労働行政の立場からこれはやってほしいということであります。あなた方の立場では判断できないことですか、そうじゃないと思いますがね。
  123. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 何々の局がどうのこうのということじゃございませんで、労働省の立場でいまの問題についてはさらに実態をつかむように努力したいと思います。  ただ先ほど私が申し上げましたのは、具体的にどの労働者の方がそういう形の扱いを受けているかということがわかりませんとなかなか実情も調べにくいという点もございましたので、たまたま労働組合の側でそうした会社からの話を受けて退職届を出された方の名前も承知しているということになりますれば、たとえば労働組合を通じてそういう実情の調査もできようかと思いますから、そうしたような方法もあわせて検討してみたいと思います。
  124. 内藤功

    ○内藤功君 あらゆる可能な方法をとってやるということを要望しておきたいと思うのです。  時間が来ましたけれどももう一点お伺いしたい。それは、時間の関係で前段は省略しますが、波止浜造船の問題です。波止浜造船の更生開始決定が四月二十二日に松山地裁でなされたようです。が、運輸省にお伺いしたいのですが、この波止浜の下請の協力会に加盟しておる下請が三十六社で、そしてそこの未払い債権、未回収債権が一億五千二百二十三万九千円、約一億五千万円を超える債権がいわゆるたな上げである。そのほとんどが賃金債権に当たるもののようであります。会社更生法の三十五条三項、それからして百九十四条の三項によりますると、企業を監督する行政庁は更生開始決定、更生手続それから更生計画などについて行政庁としての意見を述べることができる、こういう条文になっております。私はきょう質問する前に裁判所、法務省の扱いをずっと聞いてみましたが、この意見を述べるという権利を使って、たとえばこういう下請の賃金債権を優先的に支払うように、こういう意見具申を私は運輸省として裁判所に更生開始決定がなされた現段階でおやりになる必要があると思うのです。さっきも同僚議員から、佐世保重工にはなぜあんなに大蔵省、運輸省が入れ揚げて——入れ揚げてと言えば語弊がありますが、力を入れているのか。同じ地域に及ぼす影響であれば、波止浜だってやっぱり地域経済に及ぼす影響はでかいのでありますから、そういう疑問が出るのも私はもっともだと思う。少なくとも更生開始決定になった以上は、こういう主管庁としての意見具申の中で、下請の救済、特に賃金債権の救済ということはぜひ裁判所に、法律の規定もあるのですからやるべきだと私は思っている。あるいはすでにそういうことをやる決定をしているのかもしれませんけれども、この点伺いたい。  三月の十五日には、下請の離職者の奥さんが、生活苦のために、生まれたばかりの赤ん坊を殺すというような痛ましい事件も出て、報道されております。私は最低限まず更生開始決定の時点で波止浜についてこれをやってもらいたいと思うのです。これは大臣局長の方からこの点についての御答弁を求めて、もっと私やりたいのですが、時間が超過しましたからこれで最後の質問にします。
  125. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 非常にお気の毒な実例をお挙げになってのお話でございます。私も伺いつつ、まことにお気の毒だという感を深くするものでございます。ちょうど私波止浜がああいう事態になりましたあの時期に就任をいたしまして、波止浜造船がこういうことになったということの報告を受けて大変残念に思ったわけでございますが、私といたしましては、どこだから特にとか、どこだから大して心配ないと、そういうことは決してございません。ございませんが、たまたま浜止浜についてはちょうどそういうタイミングになったので残念に思っておりますが、今度の事態につきましては、幾らかでも運輸行政ということに携わりつつ多少の経験を経たタイミングでこういう事態があり、何としても助けなければならぬということで対処しておるわけでございます。そういうわけで、波止浜と佐世保を大変差別扱いをしておる、そういうことでは決してございませんが、しかしいずれにいたしましても、単純に両者を比較される方から見るとそういうお感じをお受けになるのも無理からぬところであると思いますが、私の本意は決してそういうわけではなくて、いずれの場合にもこの種のことについては行政庁としてはできるだけのことをしなければならない、こういうことが本意であることを御理解いただきたいと存じます。
  126. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私自身も波止浜の問題につきましては精いっぱいやったつもりでございますが、力足らずの形になったことについて非常に残念に遺憾に考えております。いま先生御指摘の、波止浜造船の更生開始について四月の二十二日決定を松山地方裁判所で出されました。原則的には更生債権の弁済は禁止されておりますが、先生御指摘のような趣旨で、関連中小企業の連鎖倒産防止等の観点から、中小企業者の債権についての特別の配慮が行われることになっております。したがいまして、これらの制度の活用については第一次的には裁判所の判断だと考えておりますが、運輸省としましても、裁判所から意見を求められる求められないにかかわらず、従来から保全管理人あるいは弁護士、裁判所と連絡をとりながら進めておりますので、できる限りの対応をしてまいりたい、こう考えております。
  127. 内藤功

    ○内藤功君 いま言われたところをはっきりさしてもらいたい。求められても求められなくても——求められたと否とにかかわらず意見を行政官庁は述べることができる、こういう扱いであり条文ですからね。ですから、求められないから出さなかったということはこれはできない。それはよろしいですね、わかっておりますね。
  128. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 私が申し上げたのもその趣旨でございます。
  129. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は、最初に福永運輸大臣に、造船産業の問題について大変御熱意を持って取り組んでいただいていることを感謝を申し上げ、あわせて敬意を表しておきたいと思います。  最初に私が聞いていきたいことは、造船産業の行方なんです。参考人を呼んでここでいろいろ聞きました。あのときにも造船工業会の南副会長の方からは、ことしの一月から三月までは七十万トンの受注しかなかった。この状態ならばことしはせいぜい三百万トンぐらいではないかと。運輸省が出されました五十二年度の造船事情の速報を見ましても、五十二年度が四百九十四万トン、大変少ないわけです。二千万トンからの能力のあるところに五百万トン足らずしか注文がなかった。それが五十三年になったらさらに下がってきているということを言われているわけなんです。それから、造船重機労連の土居委員長の方からも、いまの状態ならば七、八月ごろになったらほとんどの大手、中小を含めて船台が空っぽになっていきますということが述べられておったんです。私は、先ほど田代先生の方から今後の見通しについて御質問がありました、それのお答えが船舶局長からございましたのですからそれはもう省きまして、いまの時点でもってどん底がどこになるのだというそこのところだけちょっと聞かしてください。
  130. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 現在の事態から考えますと、五十三年度、五十四年度、五十五年度の両三年ぐらいが非常に厳しい状態になると、こういうふうに考えております。
  131. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 次に、これは大臣の方にお聞きしてまいりますけれども、先ほどからも出ているように、長崎県の現地視察をしてまいりまして、県の方からもその他からも説明の中で、あの長崎県の県全体の製造業の生産高の中で造船企業が占めるウエートというものが五二%を占めると。造船県が幾つもあるけれども、けた外れに違いますということです。で、その造船所が、昨年ごろはかなり船がありましたけれども、ことしはもうドックも空っぽ、岸壁もほとんど空っぽの状態を見てきたわけなんです。さらに、佐世保へ参りましたときに、佐世保市の方で言われておったことは、職安の登録失業者がいま五千五百人おるんです。有効求人倍率が全国平均で〇・五四なのに対して、佐世保はいま〇・三六に下がっている。ここへいま四月末で、先ほどからお話が出ております佐世保重工、SSKの退職の者が千六百八十一人出る。これが出てきたら恐らく佐世保の有効求人倍率は〇・二ぐらいになりましょう。もう地方自治体の手には負えませんということが市の方から述べられている。けさ新聞にも若干、大分明るい方向で出ておりましたんですから、およその見当は私もつきますけれども大臣の方にいろいろ御努力をいただいて、佐世保重工の救済の見通しがついたのかどうなのか。そして、いまの時点でお話のできる範囲でもってこれから先の見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 佐世保重工につきましては、大分前からいろんな有力者等にも助力をしてもらうように話をしたり、関係者にも、私直接の場合もありますが、多くは次官以下の諸君にいろいろ話をしてもらったというようなことが多いのでございますが、まず最初に申し上げますが、けさほどの新聞には、みんなの話し合いでこの点はいよいよ明確にする時期まではもうしばらくというような点が幾つか実はございます。私もそいつは一部聞いているわけでございます。そういうことでまあなかなか、見る人によってはあいまいに見えるし、事情をかなり知った方から言うと大体見当がつくなということになっていただけるようでございますが、有力株主等におきましても、みんなで絶対つぶさないようにしようと、そういうことから申し合わせて、その結果具体的にどうするかというようなことについて、もうしばらく、いまここで発表してしまうと、協力する人も相談の後でないと、なかなか、先に決めちまってこうだからこうというわけにはいかぬというような事情等もあるので、というような話等もございました。  そこで、私といたしますと、初めのうち大分心配しておりましたが、関係者がまああれより前にも確かにいろいろの方法で意思の疎通を図る方途が講ぜられてはおりましたものの、一緒に集まって、中にはもとのままでございますと、あんまり、にこにこしてあいさつする間の人たちでない人がああいうことになって、最後は非常に気持ちよく別れ、何人かで求められるままに記者会見等もしておりましたが、そういうようなことでございますので、私、まあ何とかなってもらいたいと強く念願する立場からそう見えるのかどうかわかりませんが、むずかしいという見方もございますが、十分なうまい解決になるかならぬかは別といたしまして、これで最悪の事態、つまり会社がつぶれるというようなことには至らないであろう、何とかなると、こういう印象を率直のところ私は受けておる次第でございます。
  133. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ありがとうございました。次に、労働省おいでになってますね。これも長崎県の視察に回ったときなんですが、特定不況業種離職者臨時措置法、昨年成立した法案なんです。下請の協力工の人たちにはほとんど適用されていない。これは、業界のその業者の代表からもそういう発言がありました。それから、労働組合サイドの側からもそういう陳情があったわけです。で、その陳情の場合に言われておったことは、造船の中で働いておったけれども仕事がなくなってきたから結局ほかの仕事をやるようになる。そうすると、その造船のウエートというものが五〇%を割ってしまうから、それは適用できませんと言われて断られた。  それからもう一つの例でいくと、この二次下請、わかりますわね、この二次下請の人たちはもう完全にアウトだと。適用されないと。なぜなんだと言って県の方に聞いてみても、県の方ではいや労働省もそういう見解なんですということで、もうどうにもなりません。  それで、これは先ほどからも下請労働者の話も出ているわけだけれども、あの法律のいろいろ法の適用の上についてあるいはその欠けた点があったかどうかこれはわかりませんけれども、いわゆる私は法の適用というものを、いま言われたような理由でそこに線を引いたり差別をしてやるということは適当ではないと思います。この人たちが、せっかくそうやって皆さん方がつくってくれたんですけれども、私たちのところは頭の上を素通りしただけなんですということを言って、切々と訴えられたわけなんです。なぜそういうことになっちゃうかということ、そして、どうしてもう少しその辺は応用動作といいますか、血の通った扱い方ができなかったのかということを聞きたいんです。
  134. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) ただいま先生から御指摘の特定不況業種離職者臨時措置法に基づく業種指定の関連で、まず造船業につきましては、その業種の形態が非常に複雑であると、他の業種と異なるということから、他の業種と違った業種指定のとり方をしておるわけでございます。すなわち、造船業におきましては、一次、二次を問わず下請を含めまして、関連企業がすべて包括してこの業種の対象になるような指定の方式をとっておるところでございます。ただ、その造船業関連企業の中におきましても、必ずしも造船業だけに依存するのではなくて他の産業と併合してやられる場合があるという場合につきましては、その五〇%という率を、先生御指摘のように、掛けておるわけでございます。しかし、私ども、この五〇%の基準につきましても、先生御指摘のように、この法が制定された趣旨というものにできるだけ沿った、しかも離職者対策としてなるような運営の仕方をしてまいりたいということで、まずその五〇%の取り方につきまして最近一年間というのが原則でございましたけれども造船業のように急速に衰退した産業、あるいは長期的にこう衰退してまいりますと、御指摘のように、五〇%の依存度が低くなってしまう場合がありますので、できるだけそれを長い期間の間でとらえられるようにということで、三年間の間の一番いい一年間をとらえてもいいというような形で、この五〇%という基準というのを満たすような配慮をひとつしているところでございます。  さらにまた、造船業の場合は、構内で作業をしている場合が非常に多いわけでございますが、本来一つの事業所としてとらえなければならないということが原則になっておりますけれども、構内部分とその他の産業部門とある場合については、本当はあわせて一事業所としてとらえるのが原則でございますが、その構内企業、構内部分だけが一事業所として独立してとらえられるようにもしてみたいということで、最近その運用の仕方について変更を試みまして、できる限り造船関連の離職者がこの対策によって再就職ができるように措置いたしているところでございます。が、しかしながら、まだいろんな面で実態としては問題があろうかと思いますので、さらに実態を十分調査させていただきまして、いろいろ工夫をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  135. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いま言われた言葉は各都道府県におりてるの。
  136. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) これは最近そういうような措置をしたものでございますので、先生が長崎県へ実態調査に行かれた後に各県に通達した形になろうかと思っております。
  137. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 労働省、そこのところばかり言っているわけにいかないから、大変私もそういう答弁いただけりゃ何も心配はないことなんで、こちらからもそれはもう一回地元の方にも知らせますから、労働省の方からもよくその点をお伝えをしてください。いまのようなことならばそうさしたる問題も起きないように思うんですけれども、少なくとも私たちがこの間回ってきたところでは、経営側のサイドからも働いている労働者のサイドからも、両方から行く先々でこれは言われたことなんです。ですから、そういう点でいろいろと雇用契約からいけばそういう——まあ雇用契約からいったって、下請といっても、ある企業には同じようにやっぱり契約を結んでいるだけであって、別に下請だとか何とかはないんです。どういう形で扱われておってでも、同じ労働者として同じように日の当たるものは当たるようにしてやっていただきたいということ、ぜひともそれは徹底していただきたいということを、再度これはお願いだけ申し上げておきます。  次に、防衛庁の方は——これはいまの造船不況を救うのには、スクラップ・アンド・ビルドも民間の商船の方のもいろいろ話は出てくるわけですけれども、いまの状態の中ですぐといってもなかなかそれは進まないわけなんです。そういう点でもって官公庁船もというのがいろいろの団体から出てくるわけなんです。そういう点ではやはり一番手っ取り早いという言い方はいけないんですけれども、緊急にいろいろ手を打つ上においては効果があるわけなんですが、先ほども言いましたように、七、八月ごろになると全然もうお手上げになるというところが次々出てくる状態の中で、いま官公庁船というとまあ保安庁、防衛庁になってくるんで、防衛庁の方がいまお考えになっていること、古い船をたくさん持っているはずなんで、その辺でそういう不況対策としてお考えのことがあるかどうかお聞きいたします。
  138. 斎藤隆一郎

    説明員斎藤隆一郎君) ただいま先生の方から御指摘ありました、いわゆる業界の不況対策の一環と申しますか、という観点から防衛庁の艦艇を建造することについてどうかという御趣旨かと思いますが、防衛庁の艦艇の建造と申しますのは、いわゆる防衛力整備の一環として艦艇を建造するという立場にございますので、いわゆる業界の不況対策という面には非常になじみにくいものがあろうかと存じます。しかしながら、現在防衛庁が持っております艦船につきましては、御指摘のようにかなり古いものもございますので、この点いわゆるスクラップ・アンド・ビルドという面で見たらどうなるかということでございますが、現在建造を予定しております、予算で認めていただきました艦艇の大半につきましては、すでにいわゆる代替建造と申しますか、そういう性格を持っております船が大半でございます。したがいまして、古い船をいわゆる除籍いたしまして新しい船をつくっていくという計画のもとに、現在すでにそういう形でスクラップ・アンド・ビルドという趣旨ではすでに実行されておるということでございます。
  139. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が聞いているのはそんなことじゃないんだけれどもね。いまここでもってもうそれ以上お聞きするのはやめておきますから……。  保安庁の方はいらっしゃらない……。
  140. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 海上保安庁がおりますから……。
  141. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私、海上保安庁は、これ最初に大変な活動をしているなあといっていろいろ調べていて気がついたんです。この海上保安庁の皆さん方のやっている——現在巡視船が九十五隻と、それから小さいのを二百十五隻ぐらい持っているんですけれども、調べてわかったことは、五十一年度にも延べ四千七十九隻が出動し、飛行機も三百七十九機が飛び出していって、海難救助だけでも七百隻である。人命を四千百八十八人も救っているというのが記録に残っているわけです。さらに驚いたのは海上の犯罪防止、一年間に立入検査をした船だけで十四万四千隻あるというんですけれども、本当ですかって聞きたいくらいで、これでやると一日四百隻ぐらいになるんですね。ですから、そういう点からいくならば、そういう海上犯罪なんかの点においての活躍も大変なことだし、それから海洋汚染の問題、これも千八百六十八件、そのうちの油が約千五百一件だということが記録に残っているわけですが、恐らくこれは保安庁の方が監視をして回っていって発見したものだけだと思うんですね、見つけなきゃわからないわけだから。ですから、特にこの海上犯罪防止なんか、そういう大変な活動もなさっているわけなんで御苦労だと思いますが、海の汚染の方の関係なんかは保安庁の皆さん方の御判断で大体こう回っておって、ほとんどもうつかまえて、その挙がっているいまの数字というものがほぼ一〇〇%だというふうに見ているのか、それともいまの状態ではなかなかっかみ切れない点があって実数はもっとかなり多いというふうに見ているのか、その辺のところをまずお聞きしたいんです。
  142. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いま御指摘いただきました点、特に海洋汚染防止対策に関してでございますが、私ども九十六隻の巡視船と、それから二百十六隻の巡視艇と、それから航空機が三十六機でございますが、それをいろんな用途に多目的に使いながら、また単独に海洋汚染防止だけでその任務に従事しながらということでございますが、幸いにしてもう先生すでに御承知のとおり、汚染の摘発件数というのがたしか四十八年がピークでございまして、ずっと減ってきたということは、関係の皆さん方が海洋汚染について非常に意を用いられた、それから法規的にもかなり完備してきたと、それから国民の海をきれいにという考え方が非常に皆さんに徹底してくれて、まあそういう面でも監視が非常に行き届いているという点もございましょうが、私どもの取り締まりもこれは口幅ったいんですけれども、できるだけのことをやってきたということは考えられると思います。ただ全部が全部目が行き届いたかと申しますと、実は現象をとらえながら原因がわからないという点もございまして、そういう事案については私ども実は非常にみずから残念だなあと思っている点もございますが、そういう点でせっかく仕事をしているということを御報告したいと思います。
  143. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それで、これは運輸大臣ね、こんな数字、大臣だって知らなかったと思うんだけれども、もう一つ、領海内に入ってきて不法操業したりいろいろの不法行為をしている外国船、そういうものの摘発と言えば摘発になるわけだけれども、そういうのだけでも一年間千四百九十九隻もあるんですね。私よくこれだけのことを海上保安庁の人たちがいまの勢力だけでおやりになっているということ、本当にその点は感心もしましたし、敬意を表したいと思うんです。長官ね、昨年の五月の二日の八十国会で領海十二海里、それから漁業専管水域二百海里決められたわけなんですが、かなり広がってきている。いままではいろいろそういうことをおやりになっても、ますます私は大変なことになると思うんです。ですから、そういう点で海上保安庁自体としても、巡視船なり飛行機なり、そういうものはかなり増強をしなきゃいけないんじゃないか。とてもじゃないけれども、広範囲のそういう形について十分活動ができなくなるんじゃないか。その辺についてこれからのことの構想といいますか、御計画がどういうものをお持ちなのかということをお聞きしたいんです。
  144. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ちょっと私に初めに申させていただきたいんですが。海上保安庁をほめてやっていただいてありがとうございます。実は、最近起こりましたこと等と関係して、人によっては大分海上保安庁をぼろくそに言う人もあるわけであります。決して皆さんじゃございません。で、そういう中にあってまあまあにやってくれていると私は思って、それなりの言葉海上保安庁長官以下の諸君に与えておるのでございますが、いま柳澤さん御指摘のように、昨今というか、これも言葉を慎まないと誤解を生じちゃいけませんが、大分前からを含めてということにしていただきましょうか、新海洋時代に対処して、それに合うような望ましい海上保安庁の人的、物的対処方策、そういうものが十分できているかどうかということにつきましては、私就任の当時、予算折衝もかなりのところまで実はいっておりました。そこでそのときにもいろいろみんなで努力して、若干伸ばすことはできましたけれども、いまにして思えば、あれではとうていいけないということをしみじみと私自身も感じております。そこで、海上保安庁長官以下の諸君ともいろいろ相談をいたしまして、いま予算が成立してまだ間なしでございますが、新予算によるものは若干の手配をいろいろしておるところでございますが、何としても、私今日までの経験からいたしますと、いまの予算だけでは足りないというように私は思います。そこでそうすると、あとここで何とかすると言えば、それはもう予備費でも使うか、あるいは補正予算というようなことをいまごろ内閣の中におる者が言うたら、これは大変なことになる。これはそういうことは万が一そうなればというような程度で、その万が一というようなことも余り言っちゃいかぬと思うのでございますが、何としても私ここで何らかの対処方策を講じたい、こういうように思っております。そこで若干、私は私なりのことをいまいたしておるわけでございます。まだどのくらい、どういうものをというのを、海上保安庁の方では計画としては持っておりますが、私としてはやはり現実にそのための資金等もすっかり用意する方途を講じないと明確には言えないわけでございますが、しかし、こういうことについては平和的にいろいろ事を進めるコーストガード的な使命等を十分やらせる、そして二百海里時代になった日本にふさわしく、いろいろやらせるということにふさわしい対処方策を進めていきたい。私これ、実は強く感じておることでございます。若干具体的なことは海上保安庁の方から申し上げるだろうと思います。
  145. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 柳澤先生からこの前にも予算委員会でもお説を承りました。そのときにも数字、余り詳しく私お答えのときに申し上げなかったので非常に失礼したんですが、私ども、いまお話しのとおり、去年の五月二日にいわゆる海洋二法が通りまして、七月一日から施行になって、それからソ連関係は八月十六日から適用ということでございました。ソ連船がいよいよあらわれましたのが九月の末からということでございます。細かい数字などは挙げないことにいたしまして、北の方ではやはりソ連の対策がございます。また、最近の話をしますと、またちょっとこれは語弊がございますのですが、別の面にもソ連に対応するような配備の必要が出てまいったことはごく最近の事象でございます。  そこで私ども、いま九十六隻の巡視船のうちで大体それぞれに十隻ずつぐらい割り当てまして、できるだけのことをやらしていただいておるということでございます。しかし、私どもいつも海上の警備に当たっているものとして、最近のような事例を予期していなかったと言いますとこれは語弊がございますのですが、従来われわれがいろいろと頭の中で考えていたよりは少し異常な事態が発生したと感じざるを得ないので、いま大臣から申し上げましたとおり、計画を検討してみたいということでございます。中に古い船もございます。これはもう、先生この前御指摘いただいたとおりの隻数で、かなり古い船もございますので、もちろん大事に使うことは大事に使わせていただきますけれども、やはり即戦力、即活動力になるように、適当にスクラップ・アンド・ビルドも考えているところでございます。
  146. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 次に、これは大臣の方からお答えいただかなければならぬ政治的な判断の問題になってくると思うのですが、この前、予算委員会でもお聞きいたしましたIMCOの二月の会議でこの大体の方向が決まったわけなんですが、あのときも大臣の方から大変前向きな形の御答弁をいただいたわけなんですが、その後のアメリカの状態を見ても、あのIMCOの決定で大体落ちつきそうだということも聞いておるわけなんです。そうしてきますと、日本としてもこれについての態度を早く決めなくてはいけないのではないかと思います。ですから、そうなってくると、この条約として批准をするのか、そうではなしに別な方法をおとりになるということになるのか。ともかく実質的にいけば世界で一番船を日本が持っているのですから、そういう点からいくならば、船を持っている日本として海を汚さないようにするという点で率先範を垂れる、そういうことが必要になってくると思うので、大体これからのこれの扱いについて大臣がどのようなお考えかという大筋の流れのところで、お話を聞きたいわけです。
  147. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 申すまでもなく、一九八一年六月までに発効させるべきことが決議されたわけでございますが、運輸省としましてはこの条約批准のためのいろんな国内的な手続等を進めることはもちろんでございますし、また、その内容の実施を促進するためにいろいろ必要なことに努力していきたい。これを要するに、全体として速やかにその実効が上がるような方途を講じていきたい、こういうふうに考えております。条約等につきましては当然批准をすべきものだと考え、そのための諸般の準備等を、手続等を進めていきたいと思います。
  148. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これはどなたか、船舶整備公団のことは海運局長——これももう一回あれだけれども局長この前は四千五百トン以下のいまの対象を変える考えがないようなことを言われておったんですが、もう一度きょうお聞きするんです。それでいまの造船不況の中で、それは大手も中手も小手もみんな大変なんだけれども、この中小造船所の仕事ということを考えたときに、いまの船舶整備公団が小さい船だけやっているんではなくて、やはりこの前も申し上げましたように、一万トン以下対象に引き上げて、中小造船所が仕事ができるようなそういうことを考えてやるべきだと思うんです。それでまたそのくらいのになると、近海船航路の船なんかのスクラップ・アンド・ビルドもやれるようになると思うんで、その辺のお考えが依然として変わらぬのか、それとも今日の状態の中で若干そういう点について変えるお考えなのか、それをお聞きしたいんです。
  149. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 船舶整備公団の貨物船に限ってのお話でございますけれども、ただいまいろいろ公団が取り扱います船舶のトン数の上限を四千五百トンに切っておると、つまり四千五百トン未満の船について公団が援助してつくることができると、この上限をもっと大きくしたらどうかと、それがまた現在の中小造船所の救済につながるのではないかと、こういう御趣旨の御質問だと承ります。これは現在船舶整備公団は内航旅客船、内航貨物船、近海貨物船と、これらの整備に力を入れております。一方、開発銀行が行います計画造船で遠洋の外航貨物船というふうにして、政府のいわば政策金融、公団の場合は正確には区切りはございませんが、その分野を遠洋と近海ということで分けられておりまして、その区分は船舶整備公団法に法律で定められております。したがいまして、ただいまにわかに船舶整備公団によって遠洋貨物船までつくれるように法律を改正して、開発銀行と公団の現在の分野をそれで変えるというか、ダブらせるということ、そういうことをやることが適当であるかどうかについては、先ほど来の先生の御指摘でございますけれども、なおさらに慎重に考えさせていただきたいと思います。  ただ、その船舶整備公団、今日ただいま四千五百トンという上限でやっておりますけれども、その中で貨物船を建造するという点については内航船、近海船、それぞれに実は公団の制度そのものではなくて、船主側のいろいろな事情によっていろいろと問題がございますが、その制約の中でできるだけたくさんのいわば船舶の発注の仕事をこれで賄えるように、これは今後ともきめ細かに対処してまいりたい、このように思っております。
  150. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私、海運局長、法律論争なんかやる気はないんであって、ただどうなんですか、区分が内航と近海と遠洋でしょう、そして内航は日本の近辺を走り回っているんで、南洋材なんか、あちらへ材木を積みにいっているあれは近海でしょう。私が言っているのはそこなんですよ。遠洋までは言っちゃいない。遠洋になるとかなり船も大きくなってくるし、またこれは大手の関係。あの南洋のラワン材なんかを運んでいる近海航路の船、これはもう私が言わなくたって、むしろ海運局長の方が詳しいと思うけれども、ほとんどいまのままにしておいたらもう国際競争力を失って、もう近海航路から落後していくと思うんですね。そういうことから考えていっても、何らかのこれは手を打たなければいけないんであって、ですから、そういう意味でもうちょっと幅を広げてくれって言っていたんです。
  151. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 私のさきの御答弁の一番最後の後段でお答え申し上げたことを敷衍して御説明することになりますけれども、ただいまおっしゃいますようなラワン材を運ぶいわゆる近海船、これはまさに現在の制度のもとで船舶整備公団が援助をして整備をする対象になっておりますし、それから実際上四千五百トンの上限云々ということを申し上げましたけれども、ラワン材、それが主として近海貨物船の大宗でございますが、これは材木を積む港の事情からしまして、総トンで四千五百トンといったようなところを上限にした船のタイプというものが全部ほとんど大部分でございまして、したがって、この近海船を今後どのように対処していくかについては、これは海運独自の問題としていろいろと問題ございますけれども、それを実際つくるについては、この船舶整備公団はきわめて有効に活用できるたてまえのものでございます。また五十三年度予算にはこの近海船のスクラップ・アンド・ビルドということで、全体として六十億円の船舶建造の事業を中にもくろんでおります。
  152. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 五万トン。
  153. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 重量トンで五万トンでございます。
  154. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間がないですから。ただ海運局長ね、その重量トンで五万トン程度のことでは足りないんで、もっとその辺を広げていただかなければということ、一番私が言いたい点はそこなんだから、そのすれ違いの答弁だけではこれは不十分なんです。  で、資源エネルギー庁の方は、もう時間がないですから最後の御質問にしていきますけれども、石油備蓄の問題なんです。それでこれもエネルギー庁の方だから私が言うまでもなくて、いま日本の備蓄がこの三月で八十日分、ヨーロッパが百日を二、三日いま超えているところ、アメリカに至っては百八十日分だということなんですね。さらにアメリカは今後五ヵ年計画でこれを倍にするという計画まで持っているわけです。ところが日本の場合には、九十日を来年三月までを目標にしていって、もうそれ以上はやらない。ただ国が備蓄するのがそのほかに十日分いまやろうと言っているから、それが全部でき上がって百日ということになるわけなんですけれども、果たしてその程度でいいのかどうかということが一つ問題点。  それからもう一つは、やはりこの造船産業がこういう仕事がないときにこの浮体構造物や鉄鋼構造物、そういうものなんかがかなりこれは大きな工事量になるということはおわかりのとおりなんですが、そういう点に立って、いま洋上備蓄の問題だとか、陸上備蓄の問題だとか、いろいろとこう出されているわけなんですが、その辺について、エネルギー庁の方として、いまどういうお考えでどのようにこれからそれを推進、実現をしていくということをお考えなのか、ということをお聞きをしたい。
  155. 清滝昌三郎

    説明員清滝昌三郎君) ただいま先生から御指摘のございましたように、現在わが国では五十四年度末までに民間によります石油備蓄といたしまして九十日を達成するべく努力している最中でございます。五十二年度の末には八十日を十分達成いたしまして、今後九十日の目標に向かって一応計画を推進しているわけでございます。で、諸外国、特にヨーロッパ諸国での平均をとりますと、およそ備蓄量といたしまして百日ということでございまして、そういった諸情勢を勘案いたしまして九十日を超えます石油備蓄といたしまして、これによって一千万キロリットル、これは約十日分に相当いたします。これを五十三年度から計画を進めるべく現在法律改正をお願いしている最中でございます。で、特に備蓄に必要なのは御承知のようにタンクでございまして、これには年々三百万から四百万キロリットルのタンクを必要とするというふうなことになっております。そういったことで、大部分はこれは陸上タンクによりましてこれが実行されることになるわけでございますけれども、御承知のような立地条件等からいたしまして、陸上タンクにプラスして、たとえば現在長崎県で進められておりますような洋上備蓄といったようなものも新しい備蓄方式として進められているということでございます。いずれにしても、九十日なりそれ以上の備蓄を推進することは、わが国の石油の安定確保、緊急時の安定確保といった意味で非常に重要でございますので、通産省といたしましても、これは強力に推進したいと思っているわけでございます。
  156. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間ですからもうやめます。そこまではわかっているんです。
  157. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  158. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 山崎君から発言を求められておりますので、これを許します。山崎君。
  159. 山崎竜男

    ○山崎竜男君 私は、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党、第二院クラブの各派共同提案に係る造船不況対策推進に関する決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    造船不況対策推進に関する決議(案)   我が国の基幹産業である造船業は、不況に直面し、国民経済及び特定地域経済に重大な悪影響を及ぼしつつあり、その前途は誠に憂慮すべき状況である。   よつて、政府は、当面の造船不況克服のため左記の対策を早急に推進するとともに、中・長期にわたる造船政策を確立し、我が国造船業の安定と雇用対策に遺憾なきを期すべきである。       記  一、造船業の安定のための構造改善について債務保証、融資等について特段の措置を講ずるとともに、中小専業造船業の分野の確保及び雇用対策について十分な配慮を行うこと。  二、緊急に需要の創出を図るため、スクラップ・アンド・ビルド方式による船舶建造の促進、官公庁船等の早期代替建造、海洋汚染防止のためのタンカーの改造促進、特殊船舶、海上構造物の建造、発展途上国への船舶輸出、その他国家的要請に基づくプロジェクトの実現を促進すること。    なお、これらの需要の創出に際しては、その波及効果が下請、関連事業に及ぶよう十分配慮すること。  三、関係企業の倒産等による連鎖倒産を防止するため必要な金融対策を講ずること。  四、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業に係る資金については、必要に応じ返済猶予等の救済措置について配慮すること。  五、雇用保険法に基づく雇用安定資金制度、特定不況業種離職者臨時措置法に基づく措置等の充実、強化に努めるとともに、その運用にあたつては、実情に即応し積極的、弾力的運用を行うこととし、雇用対策に遺憾なきを期すること。  右決議する。  以上のとおりでございます。
  160. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまの山崎君提出の決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  161. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 多数と認めます。よって本決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  なお、この取り扱いにつきましては委員長に御一任願います。  ただいまの決議に対し福永運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。福永運輸大臣
  162. 福永健司

    国務大臣福永健司君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って十分配慮してまいりたいと存じます。
  163. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 派遣委員報告に関する件についてお諮りいたします。  先般当委員会が行いました造船不況に関する実情調査のための委員派遣についての各班からの口頭報告は省略し、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十五分散会      —————・—————