運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-03-03 第84回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三日(金曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査 正示啓次郎君       奧野 誠亮君    片岡 清一君       坊  秀男君    渡部 恒三君       井上  泉君    西宮  弘君       藤田 高敏君    横路 孝弘君       横山 利秋君    二見 伸明君       大内 啓伍君    兼務 石野 久男君 兼務 小林  進君    兼務 有島 重武君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房会         計課長     後藤 利雄君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      岡崎  洋君         農林省畜産局衛         生課長     小山 国治君     ――――――――――――― 分科員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     井上  泉君   二見 伸明君     斎藤  実君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     細谷 治嘉君   斎藤  実君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   細谷 治嘉君     横山 利秋君 同日  辞任         補欠選任   横山 利秋君     西宮  弘君 同日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     井上 一成君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     藤田 高敏君 同日  第三分科員小林進君、第四分科員石野久男君及  び第五分科員有島重武君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  (外務省所管)      ――――◇―――――
  2. 正示啓次郎

    ○正示主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。園田外務大臣
  3. 園田直

    園田国務大臣 昭和五十三年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  同予算総額は、二千四十五億八千六百二十三万七千円でありまして、これを昭和五十二年度予算一千七百七十六億五千九百九十八万八千円と比較いたしますと、二百六十九億二千六百二十四万九千円の増加となり、一五・二%の増加率を示しております。  申し上げるまでもなく相互依存関係をますます深めつつある今日の国際社会において、外交国民生活に密接に結びついております。このことは一九七〇年代前半に起きた石油危機を契機とする世界経済の混乱、二百海里時代の到来、多極化しつつある国際政治情勢等、現下の国際的諸問題のいずれをとっても明らかであります。  しかもわが国がその経済力にふさわしい役割り国際社会において積極的に果たすことについての期待はますます高まっております。  かかる中にあって、国民生活の安定と向上を確保し、かつ世界に役立つ日本となるための外交を進める外務省の職務と責任は、重大なものがあります。  かかる観点より、五十三年度外務省所管一般会計予算においては、開発途上国に対する経済協力充実強化するとともに、流動する国際情勢に機動的に対処し得る外交実施体制整備国際的な相互理解を増進するための広報文化活動強化海外子女教育充実強化のための諸施策重点的に配慮を加えた次第であります。  これをもちまして外務省関係予算概要について説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を主査において会議録に掲載せられるよう御配慮願いたいと存じます。
  4. 正示啓次郎

    ○正示主査 この際、お諮りいたします。  ただいま園田外務大臣から申し出のありましたとおり、外務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 正示啓次郎

    ○正示主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔参照〕    外務省所管昭和五十三年度予算説明  外務省所管昭和五十三年度予算について大要をご説明いたします。  予算総額は二千四十五億八千六百二十三万七千円でこれを主要経費別に区分いたしますと、経済協力費一千二百十五億九千七百十一万六千円、エネルギー対策費十四億三千百五十九万八千円、その他の事項経費八百十五億五千七百五十二万三千円であります。また「組織別」に大別いたしますと、外務本省一千五百七十五億三千七百七十四万七千円、在外公館四百七十億四千八百四十九万円であります。  只今その内容についてご説明いたします。    (組織外務本省  第一 外務本省一般行政に必要な経費百五十四億六千二百八十二万六千円は「外務省設置法」に基づく本省内部部局及び附属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務を処理するため必要な職員一、五三八名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費十七億七千三百十万円は諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三 アジア諸国に関する外交政策樹立に必要な経費十二億十七万一千円はアジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費財団法人交流協会等補助金十一億三千四百八十万五千円であります。  第四 米州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費四千八百三十五万七千円は米州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会等補助金三千七十五万三千円であります。  第五 欧州大洋諸国に関する外交政策樹立に必要な経費四千八百四十五万円は欧州大洋諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費社団法人北方領土復帰期成同盟補助金一千四百四十九万九千円であります。  第六 中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千三百十八万一千円は中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うため必要な経費社団法人アフリカ協会等補助金七百八十九万八千円であります。  第七 国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費七千二百四十五万二千円は国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行う際の準備等に必要な経費であります。  第八 条約締結及び条約集編集等に必要な経費四千四百六十六万三千円は国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集及び先例法規等調査研究に必要な事務費であります。  第九 国際協力に必要な経費十億七千九百十二万六千円は国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議我が国代表を派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人国際連合関係団体補助金三千五百三十一万一千円であります。  第十 情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費四十億二千六百四十四万六千円は国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに国際交流基金等補助金十八億六千百三十二万九千円及び啓発宣伝事業等委託費四億六千四百六十六万一千円等であります。  第十一 海外渡航関係事務処理に必要な経費三十九億六千九百七十六万八千円は旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務を処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費二十一億三千七百六十八万三千円であります。  第十二 国際交流基金出資に必要な経費五十億円は国際交流基金事業経費に充てる財源を生むための資金を設けるための出資に必要な経費であります。  第十三 経済技術協力に必要な経費十二億五千五百六十八万九千円は海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整並びに技術協力事業に要する経費地方公共団体等に対する補助金八億五千十一万四千円等であります。  第十四 経済開発等援助に必要な経費三百九十億円は発展途上国経済開発等のために行う援助及び海外における災害等に対処して行う緊急援助等に必要な経費であります。  第十五 経済協力に係る国際分担金等支払に必要な経費三百八十六億三千五万二千円は我が国が加盟している経済協力に係る各種国際機関に対する分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十六 国際原子力機関分担金等支払に必要な経費十四億三千百五十九万八千円は我が国が加盟している国際原子力機関支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十七 国際分担金等支払に必要な経費十七億六千四十九万三千円は我が国が加盟している各種国際分担金及び拠出金支払うため必要な経費であります。  第十八 国際協力事業団交付金に必要な経費三百九十八億五千五百三十七万五千円は国際協力事業団の行う技術協力事業青年海外協力活動事業及び海外移住事業等に必要な経費であります。  第十九 国際協力事業団出資に必要な経費二十八億五千六百万円は国際協力事業団の行う開発投融資事業及び移住投融資事業に要する資金等に充てるための同事業団に対し出資するため必要な経費であります。    (組織) 在外公館  第一 在外公館事務運営等に必要な経費三百九十六億三千九百六十万二千円は既設公館百五十二館四代表部と五十三年度中に新設予定の在EC代表部、在トリニダッド・トバコ大使館、在フィジー大使館及び在カンザス・シティ総領事館設置のため新たに必要となった職員並びに既設公館職員増加、合計一、七七六名の人件費及び事務費等であります。  第二 外交運営充実に必要な経費二十六億四千十万円は諸外国との外交交渉我が国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三 自由貿易体制維持強化に必要な経費四億四千六百四十二万三千円は自由貿易体制維持強化のための諸外国における啓発宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四 対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費十一億一千八百一万八千円は我が国と諸外国との親善に寄与するため、我が国政治経済及び文化等実情組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行うため必要な経費であります。  第五 在外公館施設整備に必要な経費三十二億四百三十四万七千円は在カタル大使館事務所及び公邸等建設費並びに在外職員宿舎等購入費とその他関連経費であります。  以上が只今上程されております外務省所管昭和五十三年度予算大要であります。慎重ご審議の程お願い申し上げます。     ―――――――――――――
  6. 正示啓次郎

    ○正示主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 正示啓次郎

    ○正示主査 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  8. 井上泉

    井上(泉)分科員 わが国外交が今日かつてない重要な時期に遭遇しておるということは、外務大臣もいまおっしゃられたとおりでありますし、また、われわれ国民もそのことを強く認識をしておるわけですが、やはり外交基本としては、国際関係において特に信義というものが大事だと私は思うわけですが、まず第一番に、福田総理が昨年ASEAN諸国を訪問したときに数々の経済協力の約束をされたのでありますが、それが具体的に実行せられつつあるのかどうか、現在どの程度のものが実行されたのか、御説明を承りたいと思います。
  9. 園田直

    園田国務大臣 いまの御指摘の点はきわめて大事でありますから、外務省としても十分留意をしてやっております。その経過概要事務当局から御報告いたさせます。
  10. 武藤利昭

    武藤政府委員 まず、経済協力の面につきましては、今後とも東南アジア諸国重点を置いた援助施策を進めるということでございますが、具体的に申し上げますと、ASEAN訪問の際、総理が約束されましたマレーシアに対する円借款インドネシアに対する円借款、タイ、フィリピン等に対する円借款、すべてその後交換公文締結を終わりまして、総理が言われたとおりのことが実施に移っているということでございます。  それから、ASEANプロジェクトに対する援助という問題がございます。このASEANプロジェクトのうち、いまASEAN諸国の間で話し合いがつきましたものはインドネシア尿素肥料でございますが、これにつきましては、現在、事業団の方から調査団を派遣いたしておりまして、詳細調査中でございます。そのほかのASEANプロジェクトにつきましては、まだASEANプロジェクトとして固まっておらないのでございますが、固まり次第、わが国といたしましては積極的にこれに対応していきたい、かように考えております。
  11. 井上泉

    井上(泉)分科員 その約束されたことは必ず実行する、実行ができ得る、こういう見通しにあるわけですか。
  12. 武藤利昭

    武藤政府委員 お説のとおりでございます。
  13. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、外務大臣ソ連の示してきた日ソ善隣条約について、日米、日中の離反をねらうものとして非常に厳しくこのことについての外相としての見解を述べられたことでありますが、私は外務大臣見解には賛意を表するものであります。  ところで、ソ連がこうした善隣友好条約を提出する以前にソ連がなさねばならないこと、そしてソ連わが国が要求すべきものがたくさんある中で、特に北方領土の問題については私どもは今日国民としてどうしても実現をせねばならない重要な課題だと思うわけですが、その点について、外務大臣も訪ソされ、そしてその後の経過等から考えて、ソ連がかたくなな態度をとり、そしていろいろな報復措置と思われるようなやり方を示してきておる。これは日本国民対ソ感情というものを悪化させる以外の何物でもない。もっと友好関係を深めるようなソ連方針ならば知らず、そうしたやり方というものは、ますますソ連に対するわが国民の感情を悪化さすと同時に、今度、一方においては、ソ連北方領土はもう解決済みだという線を固執して行動をとってくると思うわけですが、わが国外交最大課題であり、国民の悲願である北方領土返還について、外務大臣としては、どういう形でかたくななソ連のそういう方針に対して立ち向かっていくという決意を持っておるのか、この際、承りたいと思います。
  14. 園田直

    園田国務大臣 きわめて大事な問題でありまして、一つ海外諸国に対する日本不動不変方針が正当なものであるということを理解を願う。もう一つは、今度の善隣協力条約案なるものが、内容そのものがいろいろ問題があるという点等、広く海外諸国理解せしめる点と、その先に、もう一つは、日本国民の方々の世論が動揺したり分裂することがないように、この実情理解してもらって、日本国民の総意を結集してやるということが必要でございますので、それぞれ情報文化局では広報誌あるいは英文雑誌あるいは外務省で特につくった海外公館からの広報、それから国内についてはそれぞれ広報誌または必要に応じて外務省から講師等を派遣して各種団体や地域に御理解を深めるよう努力しておりますが、かかるときでありますから、さらにこれに重点を置いてこういう方面をやりたいと考えております。
  15. 井上泉

    井上(泉)分科員 ことしの二月一日の予算委員会総括質疑の中で、わが党の小林委員福田総理に対して、アメリカダレスが講演をした内容等を取り上げて質問をされたことは、大臣も御記憶にあることと思うわけですが、今日そのこと自体から見ても、ソ連わが国に対して大戦末期においてどういう行為をとってきたのか、そしてその結果どういうふうな行為をとっておるのか。一方においては中国は、一兵たりとも日本の国土の中に中国の兵隊が入ってきたわけではなし、すべて日本がいわばオール加害者として中国全土に対して多大な迷惑を与えた。しかしそれに対して中国は一銭の賠償も要求せずに、さらに日中の永遠の友好をやろうじゃないか、こういうことを言って外交交渉をされておるわけです。そこにソ連中国との大きな違いがあるわけですが、ソ連中国とのそうした違いというものに対して大臣はどう評価されておるのか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 私もいま発言されたと同様なふうに理解をいたしております。
  17. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、ポツダム宣言を受諾し、そうしてその結果北方領土を一時的にもせよそういう形でソ連が占拠したというこの事態の中で、今日これを解決する道としては、いま大臣が言われたような、国内世論をそういう方向に持っていく、さらには国際世論をそういう方向に持っていく中で北方領土返還を強く求めていく、こういう考え方の上に立つこと、これは私は当然だと思います。  そこで、国際外交の面で、国連外交というものが日本外交の大きな柱になっているわけですが、その当時にはいまの中国国連に加盟してなかったわけですが、戦争の最大交戦国であった、そして日本が被害を与えたその中国国連に加盟をしておる今日の状態の中で、そうしてアメリカにしても、ソ連のやってきたことについては不都合である、そういう認識をもってダレス長官も述べられてきておる。その考え方は今日でもアメリカもやはり一貫をしておると私は思うわけです。そうなれば、これは国連舞台の中にこうした問題を提起する道というものはないのかどうか、その点を大臣に承りたい。
  18. 園田直

    園田国務大臣 国連またはただいま行われております宇宙空間利用の小委員会等では、その点を人工衛星の問題でソ連のやったことを厳しく言っております。国連総会等日本立場を訴えることは必要であろうと思いますけれども、理解はいま井上先生がおっしゃったように理解しておりますけれども、日本外交方針はすべての国に敵対行為をとらないというのが基本であります。ソ連日本の間には、四島一括という問題は基本的に立場が違いますが、そのほかは共通の利害は相当多いわけでありまして、いま日中友好条約締結しようとするに当たってソ連がどのようなことに出てくるのか、これは相手のあることでありますから想像する以外にありませんけれども、少なくとも日本があれだけ手を尽くし、あれだけ理解を深めて、しかも中国とはだれが見ても正当なる条約締結をした、もしソ連が不当な行動に出られるならば、それはソ連の方が無理だ、こういう世論をつくることも大事であると思いますので、この際特にソ連を刺激するような言動は、外務大臣としては十分考えてからやりたいと思っております。
  19. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう慎重な態度をとられておるのも結構ですけれども、やはり国際外交の面でソ連のそうした行動に対しては強く訴えるということ、これは何もソ連との間を冷たくするというのではなしに、こうしたソ連態度は、日ソ領土問題以外の友好関係を逆に阻害することであるから、やはりソ連の蒙を開くためには国際外交の面でも、国連演説の中でも堂々と意見を開陳してもいい時期ではないか。そのことがソ連を刺激するというようには私は理解することはできないのですが、いまそういったことは困難ですか。
  20. 園田直

    園田国務大臣 いま言われましたことは十分貴重な参考として考慮の中に入れつつ国際外交舞台では必要なことは必ず主張する所存でございます。
  21. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、日中平和友好条約については、これは当委員会でも、そしてまた外相のいままでのいろいろな見解等でその熱意というものを非常に高く評価しておるものでありますので、この点についてはここでは質疑いたしませんが、一日も早く日中平和友好条約締結を望む国民の声というものを実現していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  そこで大臣に、同じようなアジアの平和の中で朝鮮半島の問題ですが、朝鮮半島二つの国が存在するということは大臣理解しておるでしょうね。
  22. 園田直

    園田国務大臣 理解いたしております。
  23. 井上泉

    井上(泉)分科員 二つの国が存在しておるということを理解しておって、一つの国とは国交があって、一つの国とは依然として国交がなされていないということについて大臣はどうお考えになりますか。
  24. 園田直

    園田国務大臣 この二つの国については過去の経緯は御承知のとおりでございます。したがいまして、わが方としては、この二つの国の緊張緩和がされ、しかも将来においてなるべく早い時期に両国が話し合いで民族の統一ができることを念願いたしております。そういうことで、一方韓国とは関係をますます深めつつも、北朝鮮の人民共和国の方とはそれぞれ人的、貿易文化等の分野における交流を積み重ねることによって相互理解の増進を逐次図っていきたいと考えております。
  25. 井上泉

    井上(泉)分科員 しかし朝鮮半島二つの国に分かれておるということは不幸な出来事であり、これが自主的に統一されることは当然われわれも期待し、その統一を阻むようなあらゆる行動は差し控えなければならぬわけですけれども、いま大臣の言われたように、共和国との関係においては人的、文化的あるいは経済的交流を深めるといいましても、それに対してもいろいろ障害があるでしょう。文化交流にしても、人的な交流にしても、あるいは経済交流にしてもいろいろな障害があるので、今日統一を促進さすためにも、国として位置づけておる共和国ですから、認識をしておる日本ですから、もうここらあたりで外務大臣としては決断をもって、共和国との外交関係なりあるいは人的、物的交流についての政府間の取り決めというようなものを促進させる時期じゃないか。その時期はまだまだというような形で、時の流れに任すというようなことは、逆に朝鮮の自主的な平和統一に対して日本が足を引っ張っておる、こういうそしりを受けることになりかねないので、その点についての大臣見解をさらに承りたいと思います。
  26. 園田直

    園田国務大臣 北の方韓国の現政権を相手にしないという立場をとり、また中ソ等北の方の側に立っている諸国韓国を承認していない現段階においては、直ちにその方に踏み切ることはできませんけれども、しかし流れに乗るのではなくて、逐次環境をつくりつつそういう方向に進んでいきたいと考えているところでございます。
  27. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう環境をつくるとするならば、たとえば具体的に共和国の方から日本に対する貿易のいろいろの債務の支払いを延期してもらいたい、こういうことが要請されてきた。これは民間貿易でやっておるのですから、政府は関知せざるということになると、大臣のいまのお気持ちとは大分反することになるわけですが、こうした債権の延べ払い猶予、そういう申し入れに対して政府としてはどういう対応の仕方をするのか。
  28. 中江要介

    ○中江政府委員 御指摘の、北朝鮮に対する債権の処理の問題でございますが、日朝貿易に従事しておられる民間の方々が非常に苦慮しておられるというのを政府としてただ放置しているわけではございませんので、関係各省の間でどういうふうに処理していくことが関係の民間団体の方のみならず、日朝関係、さらには朝鮮半島全体に対する日本の姿勢として適当であろうかということを目下鋭意検討しておるところでございます。
  29. 井上泉

    井上(泉)分科員 経済関係というものは、役所の言う鋭意検討で時間をなにすると、この不況の中で倒産というような事態も免れないと思うわけなので、そういう点からも一応この問題については、政府はこういう協力体制をとるよ、こういうふうな話し合いをするよというようなことを明示する、いつごろまでにこの問題についての決着をつけるというめどはお持ちになっていないのですか。
  30. 中江要介

    ○中江政府委員 現在のところはっきりしためどというものは特にないのですけれども、これは可及的速やかにやらなければ非常にむずかしくなる。保険を支払うというようなことも当座の解決一つの方法ではあろうということはかねがね言われておりますけれども、そのことは将来の日朝関係に相当の経済的な影響を及ぼすし、かといって日本政府としてどれだけこれに関与していけるかという問題につきましては、これは朝鮮民主主義人民共和国の方で現在の日本政府をどういうふうに見ておられるかという点については、昨年来の漁業協定の問題にも関連いたしますが、いろいろまだ解決すべき問題も残っておりますので、全般的な見地から妥当な方法を早く出したいということで目下検討中ということでございます。
  31. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、その朝鮮民主主義人民共和国日本政府をどう見ておるかという見方よりも、日本が朝鮮民主主義人民共和国の方をどう見ておるかということが大事ではないか、こういうふうに思うわけですが、これは向こう、いわゆる共和国の方としては、やはり日本政府のこうしたことについてのきちんとした方針あるいは共和国との外交関係を積み重ねていく、国としての交渉を持つようなそういう条件づくりというものを期待しているのではないか。向こうが期待すると否とにかかわらず、日本としては国と国との外交関係を修復していくような努力をすべきではないかと思うのですが、大臣どうですか。
  32. 園田直

    園田国務大臣 私の方でも、いままでの関係上、人民共和国の方が日本政府と直接交渉することを期待しておるかどうかわかりませんが、どうやら何らかそういう気持ちが動いているような気配がいたします。そこで、いま御指摘のとおり、わが方としても漁業あるいは貿易、そういう機会をとらえつつ相互理解を深めていきたいと考えておるところでございます。
  33. 井上泉

    井上(泉)分科員 けさの新聞で見ると、きのうの外務委員会か内閣委員会かどこかで、竹島に韓国がいわゆる兵を構えておる、そういうことについて質疑が交わされて、その中で、新聞報道でありまするから私もはっきりしたことは言えないのですけれども、そうしたことは安全について一つの大きな脅威と感ずるというような見解を述べられたように聞くわけですが、仮にそういうことになりますと、安全に対する脅威ならその脅威を排除しなければいかぬ、排除するためにはどうするか、こういうことになってくると非常にややこしくなってくるわけですが、その竹島の韓国のいわゆる軍事占拠についてはどういうふうにお考えになっておるのか、ここで改めてお聞きしたい。
  34. 園田直

    園田国務大臣 ただいま言われました竹島がわが国の防衛上脅威を受けるというのは、防衛庁長官が答えられたと承っております。そういう判断は私の所管ではありませんけれども、竹島の問題について私が答弁いたしましたのは次のようなことであります。長い間これがああいう現状のまま放置されて、そのままだんだん実績を積み重ねていくとこれは思わしくない。なおまた他の諸国に対しても、一方ソ連には四島返還を要求しておるときに、竹島だけは何にも言わぬでおいておれの方だけに言う、これはもちろん立場は若干違いますけれども、そういうこともありますので、やはり韓国との関係とは別個に、韓国だから大目に見るとかだらしなくしているということは好ましくありませんので、やはり適当な時期に竹島問題は主張しなければならないし、ある時期が来たならばきちんとしなければならない、私はこういう決意を答弁したわけでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)分科員 わが国固有の領土に対するこうした行為というものは、やはり日本政治としては毅然とした態度で臨まなければならないし、それはあえて武力に訴えるというようなことではなしに、今日の段階では、あくまでも平和的な外交交渉が大事なことであるので、そういう点からも、日本外交というものは、あらゆる点で戦争を回避する、つまり武力衝突を一切回避するという考え方基本の上に立って進めていただかなくてはならないと私は思うわけです。その点については大臣も異論はないと私は思うわけですけれども、あえてその点について大臣見解をお尋ねしたいと思います。
  36. 園田直

    園田国務大臣 異論はございません。そのとおりでございます。
  37. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういうふうな問題は、各国との関係を平和的に親密にしていくという考え方の上に立つならば、私はやはり日本外交関係を持つ、国と国との間に相互に利害関係を持つもの、それについては日本外交としては慎重でなくてはならない、こう思うわけです。その一つの大きな例が日韓大陸棚協定の問題でありますが、中国も、先般の経済代表団の訪中、そしてその後のいろいろな交渉の中で、日本中国とが大陸棚の開発をやろうではないか、またやらねばならないじゃないか、こういう話をされておるように聞くわけです。そうなると、韓国との間における大陸棚協定、これは、中国が強く反対をしたのを日本は押し切ってやっておるわけですから、それと衝突をし摩擦を生ずるということは当然予想されると思うわけです、この際、日韓大陸棚協定と、新しく中国中国との間で考えておる日中間の大陸棚協定、これについて大臣が今日どういうふうな考え方を持っておるのか、お伺いしたいと思います。
  38. 中江要介

    ○中江政府委員 御指摘の、中国が、日本との間で大陸棚の開発について話をしようという話題がありたかどうかにつきましては、政府レベルではまだ聞き及んでおりませんし、中国の方では、まだ東シナ海の大陸棚の開発までは具体的に考えておられないようですし、目下のところは大陸内の石油開発の方を重点的に検討されているというふうに承知しております。将来の問題といたしまして、もし中国日本との間であの大陸棚の開発について話をしようということになりますれば、これは日本はいつでも話し合いに応じますということをかねがね中国側には申しておるわけでございまして、具体的に東シナ海の大陸棚の開発ということで話が始まりますれば、当然日本中国と話をいたします。  その際に日韓大陸棚協定がどういう位置づけになるかといいますと、いまの日韓大陸棚協定の前提になっております韓国中国との中間線という境界の問題が不可避的に討議の対象になる、こういうふうに思います。その結果として日韓中の間であの大陸棚の境界画定ができますれば、これは中国がいつも言っておりますように、関係国の間で話し合うということが実現するわけでございますし、日本としても、その考え方は全面的に賛成だということを言っておるわけですので、円満に解決すると思います。そのときにいまの日韓の大陸棚協定が邪魔にならないかという点は、これはいまの協定をつくりますときから配慮しておるわけでございまして「第一点としてあの大陸棚協定の境界画定は、これは国際法上の境界を画定するものではないという権利留保をしておりますし、第二点といたしまして、将来、日韓中の間で決められました境界線ができますれば、それに応じて最終的な境界画定ができるという道を開いておるわけで、日韓大陸棚協定の共同開発の部分が、日本韓国国際法上の権利を最終的にこれで決めてしまう、そういうものでないというととは、協定の二十八条で明記しておるわけでございまして、その点は私は日中間で話が始まりますれば、非常にむしろ好ましい、あの大陸棚を関係諸国の間で円満に境界を画定して開発していくという事態になりますので、歓迎すべきことだ、こういうふうに受けとめております。
  39. 井上泉

    井上(泉)分科員 そういう見解であるとするならば、この日韓大陸棚協定というものは、これに対してこれ以上作業を進めないということがやはりこれは国際間の特に関係のある日中、そうして朝鮮半島共和国の方もこの大陸棚協定については意見を開陳をしておるわけなので、大陸棚協定というものは、日中の平和友好条約ももう目前に迫っておるのだから、もうこれ以上これは作業を進めない、ということをここでは言えないかもしれませんけれども、慎重に対処するということぐらいは見解としては述べられるわけじゃないかと思うわけですが、どうですか。
  40. 中江要介

    ○中江政府委員 日韓大陸棚協定は、詳しくは時間がございませんので、簡単に申し上げますと、国際法上、日本韓国とで開発し得る地域に限ってやっているという前提であることが一つでございます。したがいまして、これを取り進めることが中国の権利を害するものでないということは、いつも私どもが主張しているところであるわけです。  もう一つは、中国と異なりまして、日本韓国も石油資源の乏しい国でございますので、韓国中国の間で話ができるような国際情勢が到来するのを待つだけの余裕がないというところからそもそも起きた話でありますので、この資源小国であるという点については中国理解を示していただいておるわけでございます。これを取り進めるに当たって、近隣諸国と摩擦を起こしてまでやるのは賢明かというと、これは賢明でないことはおっしゃるとおりでございますので、日本韓国との間の協定は、これは日韓間の国際間の信頼関係あるいは信義の問題といたしまして、署名し、御承認をいただいた協定は速やかに発効すべきであるという立場をとっておりますと同時に、これを具体的に進めるに当たりましては、近隣諸国との無用の摩擦を起こさないように慎重に配慮するという点は、当初から私どもも心がけておるところでございます。
  41. 井上泉

    井上(泉)分科員 時間が参りましたので、私は質問を終わるわけでありますけれども、いま中国関係あるいは韓国関係ソ連関係等を見た場合にも、日本外交の面でやはりアジア外交というものが、いかに大事であり、いかに今日、日中の平和友好条約を速やかに締結をし、そうして相互の友好関係を深めて、そして朝鮮半島の平和あるいはASEAN諸国との友好関係、こうしたものを深めていくためにも大事なものであるかということが私ははっきりしてきておるのではないかと思うのです。ASEAN諸国に対する日本政府のとった行動に対しても、中国側はむしろこれを歓迎をしておるということから見ても、私はこのASEAN諸国との間において交わした約束は速やかに実行して、そしてこのアジア外交というものをやはり――これは外相が言っておるように、日本の対米外交と大きな車の両輪のような位置づけ方でありますが、私は少なくともアジア外交日本外交の中心である、その中にこの対米外交があり、その他の諸国との外交がある、こういう考え方を持つものでありますが、なおその点についての外務大臣見解をお尋ねして私の質問を終わりたいと思います。
  42. 園田直

    園田国務大臣 外交は、しばしば申し上げますとおりに、外交の第一は国民の支持であり、同時に、日米外交基軸でありますものの、そういう問題も近隣諸国アジア諸国との友好関係が基礎であること、御意見のとおりでございます。ただいまの御意見を十分拝承しながら進めていく所存でございます。
  43. 井上泉

    井上(泉)分科員 終わります。
  44. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、有島重武君。
  45. 有島重武

    有島分科員 今国会の冒頭に園田外務大臣外交演説の中で、わが国世界に役立つ日本となるための基本方向を述べられたわけでございます。これはただいま承りました五十三年度の外務省予算概要説明でもうたっていらっしゃるわけでございます。  さて、この基本方向を具体化するためには、二国間の外交ということもさることながら、国連機構を軽視してはならぬということは、これは当然のことであろうかと思うのです。それで国連の問題でございますけれども、国連に非常な影響力を持ちながら、やや国連を、率直に申しますと見限ると言いますか、手を引いていこうというような国もその都度出てまいるという場面があります。そういった場面のときに、わが国としては、それじゃ余り役に立たないようだから手を引きましょうということになるか。あるいは、いや、国連機構というものは大切なものなんだからといって、むしろこれを擁護していく、守っていく。口幅ったい言葉で言えば、育てていくという方向にお進みになるのか。このことを第一番に承っておきたいと思うわけです。
  46. 園田直

    園田国務大臣 国連についてはいろいろ現実的な問題はありますけれども、この国連を守り、国連を育て、国連の各機関が正当な、しかも目的とするところを真に達成できるようにすることが、国際平和の大きな柱であると思いますから、国連というものを重視し、この中にどんどん入っていって、他の国々にも相談をして国連を守っていきたい、こう考えております。
  47. 有島重武

    有島分科員 国連わが国から有能な人材を国際公務員として大いに派遣すべきではないか。ところが、先般新聞紙上には日本女性の国連事務局初の女性部長が派遣されることになった、そういった記事が出ておりますけれども、現状はいかがなものか。国連及び国連の専門機関に働く職員というものは四万一千名おるそうですね。それで事務局の中枢をなすような専門職以上というのは一万八千人おる。日本人の職員はどうですか。
  48. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連本部に限って申し上げますと、現在いわゆる専門職以上の人たちで入っております数は六十九名でございます。これは日本として当然送り込んでいい水準よりは実ははるかに下回っておりますので、決して満足のできる状況ではございませんが、いろいろ制約がございまして、今日このような状況でございます。
  49. 有島重武

    有島分科員 大臣、このことについてどうお思いになりますか。それで広く言ってしまえば、やはりこれだけの国力を持っているわが国が、大体いまの御説明では国連事務局だけとってお答えになったわけでございますけれども、それで六十九名、望ましい職員数というのが百八十四名ですか、こういうことになっておる。これだけの枠がありながら充足しないという、このことについてはどうお考えになりますか。
  50. 園田直

    園田国務大臣 国連を大事にすると同時に、国連の中でイニシアチブを握り国連を好ましい方向に進める、こういうことについては各機関に優秀なる人材を送り込むことがきわめて大事であることは御指摘のとおりであります。  そこで一つは、国連各機関に対する分担金でありますが、分担金をもう少し思い切って、世界各国からなるほどと言われるようなことをしなければならぬということが一つと、それに伴ってそういう人材を送るためにいろいろな機関を、いまもありますけれども、さらにそういう人材養成の機関をつくり、事あるごとに人員をふやしていくということに努力をする覚悟でございます。
  51. 有島重武

    有島分科員 人材養成の機関をおつくりになる。これは過日、文教委員会の方で私ユネスコのことについて伺った場合にもそのようなお答えがございました。これは外務省と文部省でもって十分お打ち合わせをなさるという御用意がそれではおありになるわけですね。
  52. 大川美雄

    ○大川政府委員 私どもは平素から、文部省に限らず日本政府のほかの官庁ともできる限り国連その他の各国際機関事務局のポストについての情報を提供して、適材をそこに送り込めるようにほとんど連日のごとくいろいろ協議いたしております。具体的にどういうふうに人を養成するかということでございますけれども、仮に国連職員を養成するための特別の機関を設置することになりますと、歩どまりと申しますか、必ずそこで養成された人たちが採用されることになればよろしゅうございますけれども、いろいろの日本独特の制約がございましてそれが一〇〇%的中するということにはならないというところに一つの問題があろうかと思います。  どういう点が一番問題になっておるかと申し上げますと、まず一つは、国連の各機関では特定の専門分野を持っている人を要求するわけです。それに対しまして日本では専門分野を持つよりもむしろ非常に一般的な分野、いわゆるゼネラリスト的な人が多いということが一つ。それから次には語学能力の問題それから海外に行った場合の子女教育上のいろいろな制約、それからいま一つは、戦後の一時期に比べますと日本自体の給与体系、生活条件等がずっとよくなっておりますので、若い人たちにとってはもはや海外に出て行ってこういう機関に入ること自体の魅力が幾らか減少してきているというようなことが言えるのではないかと思います。
  53. 有島重武

    有島分科員 大臣は養成機関をつくってくださるというお話でございますので、これは今年度の予算の中でそうした措置がとられますか、それとも調査費ということになりますか。
  54. 大川美雄

    ○大川政府委員 必ずしも養成機関ではございませんけれども、外務省国連局の中にすでに国際機関人事センターというものを設けておりまして、そこで個々の国連に対する就職希望者のお世話を申し上げ、国連に対する働きかけを専門的にやっております。そこの機構が十分であるとは申し切れませんけれども、今後ともそれをできるだけ強化拡充、充実してまいりたいと思っております。
  55. 有島重武

    有島分科員 外務大臣、せっかくお答えいただいたのだけれども、局長のお答えは先ほどの大臣の御決意とは大分ずれておるように私は思います。それで局長さん、大臣がおっしゃったのは特別な養成機関をつくって、そうして国際公務員の充実を図ってまいる決意であると仰せられたのですから、その線でひとつやっていただきたいのですよ。それは当然でございますよ。  そこで大臣、いま言われました養成案内機関というようなものが予算をどのくらい取っているか御存じですか。御存じないでしょう。
  56. 園田直

    園田国務大臣 知りません。
  57. 有島重武

    有島分科員 千五百万円ですか、そういうことなんです。  職員は何人いますか。
  58. 大川美雄

    ○大川政府委員 五人でございます。
  59. 有島重武

    有島分科員 その五人のうち正式な職員は何人ですか。
  60. 大川美雄

    ○大川政府委員 二名でございます。
  61. 有島重武

    有島分科員 あと三人はアルバイトなんだ。そしてそのほかにも、千五百万の範囲の中でもって国連から人が来た場合にはその接待費なんかみんな取られるわけです。そこでいまパンフレットを出していらっしゃるらしいのだけれども、ろくな仕事ができないということはおわかりでしょう。これはひとつ大臣、いまのお答えの趣旨に従ってやっていただかなければ、いかに外務大臣でもリップサービスではおさまらぬと思うわけです。  それからもう一つは、いま局長からもお話がありましたように語学力の不足、それから雇用制度の違い、それから帰ってまいりましたときにうまく日本の社会の雇用体系の中になじまぬということが心配になっておるということも大きい問題のようです。それから大臣おっしゃった子女教育の問題。こうしたことについて配慮を配ろうとすれば工夫は幾らでもできる、それをいまのところやっておらぬというのです。それですから、そのできる努力をやっておらぬということは、突き詰めていくと国連軽視ということにつながるのじゃないかとよその国からは見えるわけです。日本の国は確かに銭は出す、だけれども本当に実質的なことをやってくれぬじゃないかということがあります。それから私は向こうの国際公務員になった方々数名からいろいろお話を承りましたけれども、どのポストにどういつだ人物を送り込もうかという研究がまだ足りないのじゃないかということですね。  それからもう一つは、局長が指摘されましたせっかくそんな機関をつくっても歩どまりが悪いであろう、こういうことを言われた。これは大臣どうでしょうか。歩どまりがたとえ悪くてもこうした国際感覚を備えた人物がたくさん出てくる、またその中から部署部署に合った人を送り出す、これでよろしいのじゃないでしょうか。つい忠実なる官吏の方々、お役人の方々はむだがあってはしかられるであろう、こういう御発想かもしれないけれども、大臣の御判断としてはもっとふところの大きいところでよろしいのじゃないかと私は思うのですが、もう一遍御所見を大臣から承りたい。
  62. 園田直

    園田国務大臣 職員が少ないことは、いろいろ事務当局からもそれから有島先生の方からも挙げられましたが、やはり一番大きな原因は国連加盟におくれたことがその原因でありまして、その惰性で今日まで来ているわけでございます。  歩どまりが悪いと言ったのは帰ってきてからの就職その他、あるいはそこへ来ても職員となれる保証がないなどありますけれども、しかし若い方にはそういう使命を感ずる方が多いわけでありますから、そういう方々を募集して、そしていまおっしゃるとおりにそういう国際的な知識かふえることだけでも大きな収穫でありますから、そういうことも考慮しながらいまのセンターを拡充し、あるいはそれを基本にして養成する機関等も考えながらやっていきたいと考えております。
  63. 有島重武

    有島分科員 大臣の御決意をどのように具体化されるか、今後とも見守ってまいりたいと思います。どうか文部省の方とも詰めてやっていってください。  そこで、国連大学というのがございます。この経営危機が伝えられております。基金目標は、当初四億ドル、ヘスター学長が五億ドルというようなことで言われている。わが国はすでに七千万ドル払っておるわけです。これは自発的な拠出というようなことと承っていますけれども、加盟国の中でも特に有力なアメリカがゼロである。この際政府としても、アメリカ、ECに対して拠出を促すように何らかの手をお打ちになるべきじゃないか。これは一遍つくってやったんだからそういうことは学長、副学長にお任せしてありますというような態度のように見受けられますけれども、大学は、学長、副学長その他の職員の方々は、むしろ金集めのために労力を費やすということよりも、もっと本当の仕事をさせるべきじゃないかと思うわけですけれども、ひとつこれにうんと肩入れをして、そして諸国に、外務大臣としても促進していく、そうした御決意はありませんか。いかがですか。
  64. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおり、七千八百万ドルいま集まりました。そのうち七千万ドルはわが国の方から出したわけでございます。米国、カナダ、これは全然拠出がございません。カナダの外務大臣には、早速拠出を頼む、こう言いましたところ、明年度から出すということで、これは私、カナダと日本が競争して日本がとったことを知らなかったものですから、お願いしたところ、出す、それからアメリカの方にも自分の方からも話す、アメリカの方でも明年度予算を組んでいるはずだ、こういう話がありましたし、国連大学の学長それから加藤顧問においでを願って、各国に対してそういう拠出の運動を始めるようにただいまやっておるところでございます。
  65. 有島重武

    有島分科員 そうすると、外務当局でもこれは大いに肩入れをしていらっしゃる、そういうお答えでございますね。
  66. 園田直

    園田国務大臣 さようでございます。
  67. 有島重武

    有島分科員 これは、大いにやっていただきたい。中途半端みたいになってしまって、引くに引かれず進むに進まれずというような形でおられる。これは重要なことだろうと思います。  それでは次に行きます。わが国は、多年国連の安全保障理事会の国ということになっておりますけれども、やがては常任理事国になりたいという意思を持っておるのかどうか、いかがですか。
  68. 大川美雄

    ○大川政府委員 このことにつきましては、実はわが国も、一九七〇年ごろから何回かにわたりまして、もし国連のほかの加盟国にとっても受諾できることであれば、日本としては安保理事会にいままでよりももう少し恒常的な形で貢献する用意と決意があるということを、たびたび表明いたしております。
  69. 有島重武

    有島分科員 大臣、これにつきまして、何らかの工作をすでにやっていらっしゃるのですか。
  70. 園田直

    園田国務大臣 米国は、これを推薦したばかりでなくて、自分たちもそれ相当の努力をするということでありまして、そのほか必要で話しやすい国々にそれぞれいま折衝を始めておるところでございます。
  71. 有島重武

    有島分科員 そうすると、この常任理事国の数といいますか席といいますか、これを一つないし二つふやすということですか、どこかの国を落として日本が入るということになりますか。
  72. 大川美雄

    ○大川政府委員 仮に日本が常任理事国になるといたしました場合に、いろいろの入り方があろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても現在の国連憲章の規定を改正しなければいけないという点が最大の難点であろうかと思います。
  73. 有島重武

    有島分科員 いま努力をしていらっしゃるということは承りました。  五月に開催されます国連軍縮総会でございますけれども、これは、総理も当然これに御出席なさるべきではないかと私は思います。このことについてはどういうふうになっておりますでしょうか。
  74. 園田直

    園田国務大臣 総理自身も、世界各国が注目をしておる総会でありますから、この特別の総会へ出たいという御意向のようでありますし、私も、お出まし願った方がいいのではないか、こういうことでありますが、まだ具体的には決定いたしておりません。検討中でございます。
  75. 有島重武

    有島分科員 出た方がよろしいという御判断を持っていらっしゃる。これは、原子炉衛星の落下事件以来のわが国ソ連申し入れということもございますし、それこそソ連に対しての二国間のこともあるけれども、世界全部にわたってわが国の非核三原則ということを改めて宣言して保有国に対しての反省を求めるべきであると私は思いますし、強く要望をするわけです。その際にわが国としてひとつ何か世界全部に対しての軍縮政策を提案するような御用意はお持ちなんでしょうか。
  76. 園田直

    園田国務大臣 軍縮総会でわが国が主張するものは、日本国憲法、それから非核三原則、それから核の洗礼を受けたただ一つの民族である、こういう三点から、核廃絶に向かって強く主張をすべきだと考え、この三本を骨子にしていま検討をしておるところでございます。
  77. 有島重武

    有島分科員 御検討いただいているそうであります。  これはちょっとさかのぼりますけれども、一月十九日アムゼガル・イラン首相が福田総理に対して正式招待の意向を表明したという御発表でございました。これは、イラン首相の意向表明は、立ち話のような感じ、外交辞令的なものであったのか、あるいはその表明自体がかなりフォーマルな、正式なものであったのか、この辺の感触はどうなっておるのでしょうか。
  78. 園田直

    園田国務大臣 これは儀礼的なものではなくて、真に早くおいでを願いたい、こういうことでありまして、私の中東訪問も、そういうことを前提にして、日本と中東の関係を拡大をしていく新しい時代をつくる露払いの意味でありますから、総理にはぜひ早い時期に中東訪問をされるようお願いをしておりますし、また、それを実現したいと考えております。
  79. 有島重武

    有島分科員 それは正式なものであった、正式な向こうからの意向であった、そういうお話でございましたね。それでは、これは約束といいますか、そういった申し出でございますから、これはけるわけにはいかぬことには相なっておるのではないか。あとは時期の問題だけでございますね。いかがですか、あとは時期の問題だけですか。
  80. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  81. 有島重武

    有島分科員 次の問題に入りたいのですけれども、時間がございませんので大急ぎでやります。  政治家の訪問ということ、この交歓ということは外交上大変メーンイベントになるには違いない。だけれども、きょうのこの概要説明にもございますように、国際的な相互理解を増進するということ、これがやはり本当の中身になるのじゃないでしょうか。そういたしますと、先ほどお話に出ておりました東南アジア各国にしても、あるいは中東にしても、やはり文化会館をつくっていく、これは理想だと思うのです。そういったような予算はお組みになるべきじゃないのだろうか。そういう目標をおつくりになった上で、いまの在外公館にあります日本PRのためのいろいろな資料といったものも増加していく、日本紹介のものも、また翻訳のものもつくっていく、そういう向きに踏み切っていかなければならぬのじゃないかと私は痛感しておるわけでございますが、大臣、いかがでございますか。
  82. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、サウジアラビアとは、すでに私がこの前参りましたときに両国で合意いたしまして、調査費も両国から金を出す、敷地を向こうが出すということで具体的に話を進めておるところでございます。
  83. 有島重武

    有島分科員 日本は資源を持っていく、買ってくれる、確かにお金は払ってくれる、だけれども、一口に言ってみれば文化でございますけれども、そういうものが、ほかの国については、アメリカだとかソ連だとか、フランスだとかイタリア、そういったところのことというのはとにかくわかる、大学に行っても本がある、日本はそれがないということなんです。たとえば日本国際教育協会、こういうものがあるのであります。留学生の交換なんかの問題でも、いま往復大体一万三千人くらいになっております。そのほかに技術研修ということで数千人を日本が受け入れておる。向こうにも行っている者がいる。そういうことは御承知のとおりでございますけれども、たとえば日本の外人留学生のための大学案内というような本はこれなんです。一枚の簡単な紙だ。ここに本はあるのですけれども、日本語で書いてあるわけです。この部数というのもきわめて少なくて、向こうの在外公館にわずかにあるだけ。少なくとも各教育機関なり図書館には一般的に数カ国語でやらなければならない。少なくとも国連で使っている数カ国語、そういったような翻訳はなさるのが当然じゃないかと思うのです。向こうの方も、日本がそれまでやっても、大したもんだなというよりも、やっとそうなったか、当然だと思うと思うのです。そういったことがまるっきりおくれているということを、大臣、ひとつ認めていただきたいのです。これは大いに促進していただきたい、お金もつけていただきたい。ちょうど時間がまいったわけでございますけれども、最後に御決意を承って終わろうと思います。
  84. 園田直

    園田国務大臣 御指摘は十分拝聴して努力いたします。
  85. 有島重武

    有島分科員 どうもありがとうございました。
  86. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、石野久男君。
  87. 石野久男

    石野分科員 ソ連が二月二十三日に政府の機関紙イズベスチヤで発表した日ソ善隣協力条約案なるものは、外相が一月に訪ソした際、グロムイコ外相から手渡されて、外務省の金庫の中にしまい込んであるというものと同じものなんですか。
  88. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 モスクワにおきましてグロムイコ外相が会談の最中に提出しましたソ日善隣協力条約案というものは、外務大臣はこれは検討はしない、儀礼上預かると言ってお受け取りになりましたものでございますので、これにつきましてその内容等に触れることは避けたいと思いますが、イズベスチヤで出しましたものにつきましては、これは先方がそのように申しておりまして、園田大臣にお渡ししたというようなことを述べておりますので、そのようにお考えいただいて結構でございます。
  89. 石野久男

    石野分科員 それでは、これは外相がグロムイコ外相から手渡しされたものと同じものだというふうに考えてよろしいのですね。
  90. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 イズベスチヤにそのように発表しておりますので、そのようにお考えいただいて結構でございます。
  91. 石野久男

    石野分科員 ソ連日本政府の、特に外相態度を承知の上でこの文章を発表した意味は、外交上の信頼関係を完全に無視していて、きわめて不遜なものと思いますが、外務大臣はどのようにお考えになりますか。
  92. 園田直

    園田国務大臣 これは予算委員会で申し上げましたとおりに、向こうが書類を持ってまいりましたが、私はこれを受けつけない、しかし、書類を突っ返すことは非礼であるからしないけれども受領したものではない、したがって検討しない、向こうも私の方の書類を受けつけない、検討はしない、こういったわけでありますから、外交文書でありませんから、両方合意の上で発表する必要はありませんので、向こうがどういう発表をされようと、その真意は何でありましょうとも、外交儀礼に反するものではないと思います。
  93. 石野久男

    石野分科員 そうしますと、このイズベスチヤで発表した条約案なるものに対してどのように対処していくつもりですか。外務大臣のお考えを聞かせてください。
  94. 園田直

    園田国務大臣 内容はすでに石野さん御承知のとおりでありますから、第一にどういう意図でこういうものを出したのか、私は理解に苦しむところでありますけれども、日中友好条約締結交渉を前にしてこの内容を発表すれば、日本国民がこれを理解して日本国民の四島一括返還という問題に世論が動揺するか、あるいはソ連の言うことをそうだと支持するかという全く誤った誤解からこういうことをされたのではなかろうかと判断をいたしております。  内容については、これまた別個の問題でありまして、第一に平和条約が先決問題であるということ、第二番目には、この内容は、おおよそ日本としては受けつけられない条項が多い、こういうことでございます。
  95. 石野久男

    石野分科員 この発表された協力条約案なるものを政府があるものとして交渉を進めた場合、日中平和友好条約交渉するに当たって有利になりますか不利になりますか。
  96. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約締結交渉には、いささかの影響もございません。
  97. 石野久男

    石野分科員 それでしたら、この案文は北方領土問題の交渉について有利になりますか不利になりますか。
  98. 園田直

    園田国務大臣 これは四島返還交渉の問題とは別個の問題であると考えます。
  99. 石野久男

    石野分科員 別個な問題であるとしますると、善隣協力条約案なるものと平和条約との関係についても全く関係なく考えてよろしいのですか。
  100. 園田直

    園田国務大臣 私は、しばしば申し上げましたとおり、四島一括返還、いわゆる未解決の問題を解決して日ソの間に平和条約締結するということが終始変わらざる決意であり、信念であり、これは明確にソ連に伝えてございますから、この条約案を発表されたからといって、いささかの決心が変更するものでもございません。
  101. 石野久男

    石野分科員 ソ連が発表した条約案の第三条ですね、これは両国の安全を害するいかなる場合にも領土を使用させないことを約束するということで書いておりますが、このことは日米安保条約とはどういうふうな関係を持ってまいりますか。
  102. 園田直

    園田国務大臣 これは、私の方では金庫の中に入れて検討しない、こう言っておりますのは、外交文書をもらったわけじゃないから、これは検討に値しない、向こうが勝手に出しただけだ、こういう態度をとっておりますので、公開の席上で一々の個条に対して私が所見を申し述べることは、これは相手にしたことになりますので、答弁はお許しを願いたいと思います。
  103. 石野久男

    石野分科員 個条書きの、条目別の御答弁をいただくということになると、いま外務大臣がおっしゃられたような立場になってくるかもしれませんが、金庫の中にある条文と同じだというような見方でいきますと、これは外務大臣はそんなことを言っておったって日本人にとっては大変なことですよね。これは別に金庫に入っておるから見なくてもいいというわけにいかないので、一方的にこういうようなことを出されているとすれば、日本人にとってはこの問題は重大な検討課題になってくるのです。特にわれわれ議員としてはほっておくわけにいかないですね。外務大臣がとっているような態度をわれわれはとっていこうとすれば、その金庫の中にあるものの処理からかかっていかなくちゃどうにもならなくなりますね。それはどういうふうに外務大臣――外務大臣立場はよくわかるけれども、われわれはこういうものを見せつけられたときはどうするかということも問題になりますけれども、じゃ外務大臣、そういうときにどういうように処置したらいいと思いますか。
  104. 園田直

    園田国務大臣 私が、岡田さんかだれかに対する答弁だと思いますが、検討はしないが研究する、こう言ったら、ソ連の方で検討と研究とどう違うのだろうかということを言っていたようですが、外務省としては、いろいろな情報を研究するのは勉強でありますし、検討とは、正式に受け入れてどうやるかということをやることが検討でありますので、検討はしない、こういうことでありますけれども、しかし、おっしゃったように、公開の席上で私がこれに対するいろいろな所見を申し述べますことは、これを正式に受け取らぬと言いながら相手にしているじゃないかという向こうの思うつぼにはまる――思うつぼと言ったら言葉は悪うございますが、ということになりますので。しかし、また一方、新聞等で発表されたことについて日本国民世論その他が動揺しないように、正しくこれを理解されるように何らかの方法は講じなければならぬと思っております。
  105. 石野久男

    石野分科員 その何らかの方法を講じるということについて、またわれわれは関心を持つわけなんですね。その何らかの方法というのはどういうことですか。
  106. 園田直

    園田国務大臣 これは情報文化局の仕事になると思いますけれども、ソ連の方で新聞でこういうことをされたようだが、これはこうだという解説あるいは理解を求める、こういう方法をとらなければならぬのじゃないかといま検討しているところでございます。
  107. 石野久男

    石野分科員 それは早急にそういう処置をなさいますか。
  108. 園田直

    園田国務大臣 政府としてはそういうことをやると、やはりこれを検討し、また受け入れないと言いながら受け入れたことになりますから、そこはどういうふうな方法でやるか、どういう団体に協力を願うか、政府としてではなくて国民の方々に理解を求めるような方法は講じなければならぬと思っております。
  109. 石野久男

    石野分科員 その思っているということはわかったのですが、それをいつやるかということを私はいま聞いたわけです。
  110. 園田直

    園田国務大臣 いま思っているわけでありますから、検討を命じて計画をして、これを実行に移すわけであります。
  111. 石野久男

    石野分科員 短い時間ですから余り同じことを繰り返しできませんが、しかし、それは思っているだけではどうにもなりませんから。しかも国民はこういうものを見せつけられれば当然問題にするわけですよ。ですから、早急にそのことはひとつ処置をなさっていただかないと困ります。  改めてお聞きしますけれども、これはもう予算審議が衆議院で終わるまでの間ぐらいにはそういう処置をなさいますか。
  112. 園田直

    園田国務大臣 政府としてはあくまで相手にしない、こういうものは問題でないという立場に立っておるわけでありますから、この公開の席上で、政府がだれに命令してどうやってこうやってということは頭隠してしり隠さずということになりますから、これは委員会が終わってからいろいろ指示を受けてやりたいと思います。よろしくお願いをいたします。
  113. 石野久男

    石野分科員 政府の苦しい立場はよくわかりますけれども、これは早急にやはり処置をなさるように私の方からも要請しておきたいと思います。  そこで外務大臣にお聞きしますけれども、ソ連は、日本との間の平和条約締結交渉を継続する意思を確認し、などとこの文案の中には書いてありますけれども、本当にそれをやるような気持ちがあると外務大臣はごらんになっておりますか。先般、ブレジネフ書記長が朝日新聞の質問に対して、日本とはさしあたり平和条約を結ぶ用意は持っていませんと、昨年文書回答しておりますですね。大臣は、この平和条約問題についてはソ連は積極的な考えがあるとお考えになっておられるか、どうですか。
  114. 園田直

    園田国務大臣 会談では、平和条約締結交渉を継続することは同意をし、今度は向こうのグロムイコ外務大臣が来る番でありますから、おいでを願いたいということも了承しておりますから、この交渉継続ということは正式に返事をしておることでございます。
  115. 石野久男

    石野分科員 このソ連の善隣協力条約案なるものは、その示された文案によりますると、一方では日米安保に対して、一方では彼らが意図しているアジア集団安保に対してその足場をつくっていこうというような考え方を持っているように思われる。同時にまたそのことは、外務大臣が大阪の財界での懇談会でも話をしておるように、米中との結びつきを牽制して日本を孤立化させた上、東欧諸国と同様の関係に持っていくソ連の本心と判断している、この条約のねらいは日本ソ連の衛星国にするにある、こういうようにも言っているということを新聞に伝えられておりますが、外務大臣がこのことを言われた本意はどういうことにありますか。
  116. 園田直

    園田国務大臣 なかなかむずかしい返答でありまして、言ったというと、国会でなぜ言わぬかということになるし……。しかし、財界の懇談会で、そういうことではなかろうかということは申しました。
  117. 石野久男

    石野分科員 もう時間がありませんから……。  いずれにしましても、平和条約というのは戦争終結を意味するものですね。それで、戦争終結ということが批准によって完成するということを考えました場合に、考えられることは北方領土問題です。ソ連は、この問題はもうすでに解決している、こういうふうに言っておるのですが、しかしこの領土問題講和条約の問題等について思い起こすのは、一九一七年十月にレーニンがいわゆるロシア革命に成功したときに、第二回全ロシア大会で行った平和についての布告を思い出します。この布告によりますと、政府がこのような講和とみなすものは無併合、無賠償の即時の講和である、こういうように言っております。その無併合ということを説明して、すなわち他国の土地を略奪することのない、他民族を強制的に併合することのない、このように言っているわけです。このようなレーニンの講和に対する物の考え方が、いまのソ連の対応の仕方の中にどのように映し出されているかということを、私は率直に言いまして非常に疑問に思います。合併という意味をまた別のところではこういうふうにも言っているのです。政府が他国の土地を合併または略奪と解するものはということを言って、そういうような合併は併合であり、すなわち略奪であり暴行であるというような言い方をしているのです。この間にいろいろな細かい説明がありますけれども、時間がありませんから申しません。レーニンは、戦争を続けることは政府が人類に対する最大の犯罪であると考えて講和を結ぶとまで言っているわけです。こういうような、いわゆるソビエト社会主義共和国をつくり上げているいまのソ連が、領土問題について特にレーニンの教えというか、講和に対する布告というものを本当に心に秘めて交渉に当たっているのかどうかということの疑問を実は私は持つわけなんです。こういうことについて外務省はどのようなお考えでございますか。ソ連態度をどのように見ておられますか。
  118. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいまおっしゃいましたレーニンの平和布告の内容と大変異なる態度をとっておりますことはソ連のために大変に惜しむべきことであると考えております。
  119. 石野久男

    石野分科員 そういうようなソ連の対応の仕方に対しては、日本は、レーニンが講和に対して、特に平和に対する布告の中で取り上げている領土問題の観点という立場交渉に当たるべきだと私は思いますけれども、その点についてはどうですか。
  120. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりだと思います。
  121. 石野久男

    石野分科員 レーニンは、ソビエト社会主義共和国をつくり上げたといいますか、最大の功労者です。そのレーニン主義によっていまのソ連世界外交をやっていると言われているときに、こういうようにレーニンの教えに反するようなやり方に対しては徹底的にわが国の主張をしていただきたい、こういうように思います。  外務大臣は、日中平和友好条約はこういう情勢のもとで情勢は非常に進んでいることをしばしば言っていますけれども、いま具体的に日中平和友好条約について今国会中に批准を終えるだけの目算がありますか。
  122. 園田直

    園田国務大臣 これは再開してから後の交渉経過であり相手のあることでありますから、この目途を申し上げるわけにはまいりませんけれども、現実を申し上げますと、韓念竜氏と佐藤大使との会談が行われるわけでありますが、中国の方では大会には関係ないよと言っておりましたけれども、現実としては大会が終了してからのことになると思います。そこでこの会談があと一回か二回ぐらい、私は一回で終わるような情勢だと思いますけれども、それが終わりますと、両方で再開合意ということで、それから交渉が始まるわけでございます。
  123. 石野久男

    石野分科員 日中平和友好条約をなるべく早くやってもらうことについては、私も希望し大臣もそう答えておりますが、大臣はまた別なところで大陸棚の共同開発のことも語っておられますね。日中平和友好条約ができたら大陸棚の共同開発をしたい、こういう話をなさっておりますが、この問題についてはどのようなお考えを持っていますか。
  124. 園田直

    園田国務大臣 これは中国と共同開発をやると言ったのではなくて、まず第一は、日本の国の海底資源の確保、次には近隣諸国との大陸棚の開発、こういうことを言いましたので、日中問題の後でございましたからそういうふうにとられたと思います。これは交渉締結後の相談になるわけでございます。
  125. 石野久男

    石野分科員 別に日中の間ではないと申しましても、大陸棚の共同開発ということになれば、朝鮮か中国よりほかありませんね。あとはソ連があるかもしれませんが、ちょっと当面ソ連はそういうことは考えられないでしょうから中国か朝鮮だろうと思いますが、ここで言われた意味はそのどちらのこと、両方ですか。特に大阪でこの発言をなさっておりますが。
  126. 園田直

    園田国務大臣 その両方ということにしておいていただきたいと存じます。
  127. 石野久男

    石野分科員 日本財界が中国との間に長期の経済協力に対する取り決めをいたしまして、非常に時宜を得た結構なことだと私は思いますし、アジアの平和のためにも非常にいいと思っております。日中の間における経済交流関係は、いわゆる共同声明が出される前から民間人がずいぶん努力してまいりましたし、いまここで長期の経済取り決めができたということは一層それが深化しました。アジアにおける平和のためにも両国の親善のためにも非常に結構なことだと思うのです。  そこでお聞きしたいのですが、長年にわたって非常に問題になっているのは、中国の食肉の輸入の問題なんです。これは、肉を輸入するということになると、国内でも業者の中に反対したり何かする人もいるわけでございますから、それは当然考えなければならぬものでもございますけれども、中国の食肉輸入の問題については常に口蹄疫病のことでひっかかっておるのでございますが、実際には口蹄疫病については一九六二年以来発生していないということをFAO、いわゆる国際食糧農業機構においてすでに確認するというところまでいっておると思います。家畜衛生官であるC・P・ピライという人がすでにそのことを言っておるし、日本の農林省なんかの関係者もそのことを付言しているという実情でございます。  日本国内におけるいわゆる食料輸入ということに関連する規約や何かでこのことがいつも締めつけられておるような情勢がございますが、きょうは農林省の方はおいでになっておりますけれども、そういう問題についていつまでもこういうふうにほっておかないで、もう情勢はこうなってきているし、しかも口蹄疫病自体も中国では一九六二年以来発生もしていないという実情にかんがみて、ぜひ省令なり何なりの改正をして、一気にこの問題の解決に入っていくことが望ましいのじゃないかと思いますが、どういうような見解をお持ちでございますか。
  128. 小山国治

    ○小山説明員 中国産食肉の輸入解禁の問題は、大変長い経過がございます。先生御指摘のとおりでございます。  そこで、私どもこの問題の解決に鋭意努力しているつもりでございますけれども、一方口蹄疫等海外伝染病から国内の畜産を守るということも大変大事な話でございまして、私どもの立場といたしまして、この問題について慎重に対応せざるを得ないものと理解をしております。  いま先生からお話のございましたドクター・C・P・ピライのレポートの件でございますが、タイのバンコクにアジア極東南西太平洋家畜生産衛生委員会というのがございまして、そこの事務局長をドクター・C・P・ピライがいたしておるわけでございます。わが国の場合、畜産を海外伝染病から守るために、常に世界各地の家畜防疫事情というものを的確に把握いたしまして、それに対応する動物検疫体制をとるということで努力しているわけでございますが、その一環といたしまして、各国の発生動向というものについて大変深い関心を持って情報を集めております。たまたま「エイジャン・ライブストック」という、その事務局で発行いたしております刊行物がございまして、その中でドクターピライの報告があったわけでございます。その中で原著者は、中国の西部国境地帯におきます発生は現に存在しているということを報告しております。一方、いま御指摘のとおり、その報告の後段で、一九六二年以降口蹄疫の報告がないと記述しておりまして、私どもとしてはその前段、後段を結びつけまして、どのように理解してよいのか判断に苦しんでいるところでございます。  わが国の場合、悪性伝染病の発生が疑われる地域からの偶蹄類動物の肉類というものについては、これを輸入を禁止いたしまして、厳しく対応するというような従来の姿勢がございますので、今後ともその姿勢で進んでまいるつもりでございますけれども、中国の場合、昭和四十六年八月にはその生畜の輸入を解禁いたしております。また四十七年八月には煮沸加工肉の輸入につきましてもその輸入の道を開きまして、当方の防疫体制の中で対応するというような仕組みになっておりますけれども、残念ながら中国からは、その家畜衛生事情に関する情報提供というものは大変欠けておりまして、国交回復以来、「家畜伝染病発生月報」がたった一回当方に送られてきたというようなことでございます。したがいまして、当方が的確な獣医学的な判断を下すというには情報量がきわめて乏しいという状況でございます。そういう中で中国産食肉の輸入解禁の問題は、家畜衛生の技術上の問題でございますので、双方の技術者の交流なり、あるいは情報の提供を重ねてまいりまして、その問題の解決に努力してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  129. 石野久男

    石野分科員 おっしゃるように、ピライの報告の中には、一九五五年以来発生がない、けれども西部に一部あるというようなことも書かれておる。しかし、もう六二年以来全然そういうものはないということも書いておるわけですね。  そこで、先ほど言われたように、煮沸肉なんかというものも一部は入れておるけれども、中国としてはそういうものには何ら興味がありませんということを日本に対して言ってきておるのですよ。基本的なものを解決してほしい。結局、基本的な日本政府の姿勢を問題にしているということでございます。仮に口蹄疫がないとかなんとか言っているところでもまた発生する場合もありますし、そういう疑問視しているところで全然そういう発生のない場合もありますし、これはやはり対応の仕方だと思うのです。情勢がこういうふうになってきているときに、特に日中の関係に対して政治的ないろいろな工作が行われておりますと、中国側はそれを、単に技術的な問題とか衛生上の問題というよりも、政治課題として取り上げておる面が非常に大きいわけです。そういうような疑いを持たれることは、私は非常にまずいと思います。  時間がありませんので、外務大臣にひとつ御答弁を承りたいのですが、情勢は決して憂えるべき状態ではございませんので、むしろ非常にいい方向に向いてきているし、中国でも非常に衛生面の監視状態は良好に保たれていると思いますので、この問題について、外務省は農林省とも連携をとりまして早急に解決していただきたいと思いますが、ひとつ大臣の御所見を承りたい。
  130. 園田直

    園田国務大臣 いまの御意見は十分理解をいたしました。農林省ともよく相談をいたします。
  131. 石野久男

    石野分科員 時間が来ましたから終わります。
  132. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、横山利秋君。
  133. 横山利秋

    横山分科員 いまの同僚委員の質問いたしました、やはり日ソ関係でございますが、少し角度の違った立場でお尋ねしたいと思います。  もちろん私ども、恐らく政府もその意味においては変わりはないと思いますか、日中の平和条約締結、日ソの平和条約締結、そして日ソ友好、領土の返還、この四点では共通の基盤がある、そう思いますが、いかがですか。
  134. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりに私も考えます。
  135. 横山利秋

    横山分科員 そこで、お伺いしたい第一は、ソビエトは善隣友好条約を正式に日本政府に提起した、日本政府は正式には受け取っていない、こういう態度でありますね。
  136. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりであります。
  137. 横山利秋

    横山分科員 それでは、日本政府は日ソ平和条約を正式に提案した、向こうは正式に受け取ってない、こういうことでありますか。
  138. 園田直

    園田国務大臣 平和条約案を正式に出し、向こうは受け取ってない、こういうことであります。
  139. 横山利秋

    横山分科員 両方とも正式に出した、両方とも正式に受け取っていない、そういうことはやはり今後の日ソ関係に事実上残る問題だ、私はそう思いますが、いかがですか。
  140. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 事実上残る問題とおっしゃいました御質問の意味が必ずしも私よくわかりませんけれども、平和条約締結するということは共同宣言以来の約束でございまして、日本側はそれに基づいてその交渉を進め、その一環として園田大臣がその骨子を渡されたわけでございますので、それを向こうがとらなかったということはこれは事実でございますが、日本側といたしましては、あくまでソ連側との合意に基づいた交渉の一環としてこれを提出した、そういう事実は当然残ってよろしいと思います。
  141. 横山利秋

    横山分科員 平和条約の案は、四島一括返還という政府の主張が入っておりますか。
  142. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 これは日本政府基本的な立場でございますので、その案に入っている、入っていないとにかかわらず、一貫した政府の対ソ平和条約交渉基本でございます。
  143. 横山利秋

    横山分科員 それでは入っておると思います。  そのほかに、平和条約にはどんなことが主張されていますか。
  144. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 これは、なおこれからソ連交渉いたすべき内容のものでございますので、細部にわたることは避けさしていただきたいと思いますが、四島一括返還ということを根幹とするものでございます。
  145. 横山利秋

    横山分科員 私は、先方が善隣条約案を公表したから、日本政府も対抗的に平和条約案を公表しろという意味ではありません。しかしながら、先ほども同僚委員が質問いたしましたように、結局、善隣条約案は公表されて、国民が非常にそれに関心を持った、それについての是非論がずいぶん行われておるときに、日本国民が何を考えればいいのか。日本政府の主張は、それに対案として出ておる平和条約というものは、一体どういうものなのか。そういう点では、国民が双方の案を討議し判断をする機会を持たせるべきではないか。平和条約案が公表されてまずい点が何かあるだろうか。私も、野党ではありますが、政府立場等も考えまして、一体平和条約案が公表されてどんなふぐあいな点があるだろうかということを考えますと、いま質問いたしました四島一括提案、それについてはまだ是非論が残ってはいますけれども、政府がそれを主張していることはよくわかっておる。だとするならば、国民に、両条約案の判断をし、議論をする、それに伴う資料の公開その他をするべきたと思うのですが、国民世論統一のためにも、日本政府は平和条約案を公表することをお考えになりませんか。聞くところによりますと、最初はそういうお気持ちが閣内にあったやに思います。その後それもやめてしまうということについては、私はいささか、国民的判断の機会を、別な意味でそれを阻害した結果になったのではないかと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  146. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連側の出しました案につきまして、国民の皆様、特に選良の皆様方がいろいろ議論をなさり、御意見を表明されることは結構でございますが、政府といたしましては、このようなものをソ連が出しましたときに、国民に対して政府見解として述べますことは四島一括返還の平和条約を結ぶことが先決である、これに尽きると思っております。  それから、日本側の平和条約案につきましては、これはこちらは重要な外交文書としてソ連側に出しておるものでございまして、これがいずれソ連側との交渉の対象になるべきものでございますので、その内容を出しますことは、外交慣例上も、またその他の観点からも差し控えたいと思います。ただ、日本側といたしましては、四島一括返還で平和条約を結ぶということをその平和条約の根幹としているということだけは、はっきり申し上げてよろしいかと思います。
  147. 横山利秋

    横山分科員 役所としての判断、外交的慣例、そういう点については一つの理屈があると思うのです。しかし、私は政治的判断、また国民的判断の機会、それから結局は両方とも正式に出したという主張をしておるわけでありますから、そういう点では適当な方法、適当な機会というものか――先ほど大臣は、善隣友好条約についての政府見解というものについて、適当な方法、適当な手段、時期、そういうことをお触れになりましたが、平和条約の案についても同じことが言えるのではないかと思いますが、大臣はどうお考えになりますか。
  148. 園田直

    園田国務大臣 御発言の要旨はよくわかりますけれども、善隣協力条約案なるものは突如として向こうが出したものであって、同時にこちらも平和条約の案を出した、やった行動は相打ちみたいな行動でありますが、これは相打ちではございません。こちらは、ソ連と平和条約締結交渉は継続するということを合意をしている、そのもとに出したものでありますから、平和条約の案と善隣協力の案とは、外交的に言って相違がある。こういうことを考え、こういうことを行動で示したい、こう考えておりますので、平和条約の案についてのこちらからの公表というものは、いまのところ考えておりません。
  149. 横山利秋

    横山分科員 善隣条約内容についてであります。  先ほども同僚委員が言いましたが、二十七日に大阪で、東欧と同様という発言を外務大臣はなさいました。牛場さんは記者会見で、むちゃくちゃだ、日本を衛星国並みという発言をなさいました。このことについて、私は前もって言っておきますけれども、客観的な判断、正確な資料の判断、そういうことが一番大事だと思うのです。いま私どもがソビエトの悪口を言えば領土を返してくれる、戦争でもしかければ領土を返してくれる、ソビエトのアキレス腱でもあって、ぐっと握っておれば領土を返してくれる、そういうものではないことをお互いに理解しなければいけません。公正な立場で批判をし、公正な判断を持って議論をするならいいのですけれども、東欧並みだ、むちゃくちゃだということについて、私はこの東欧関係条約案を外務省条約局から取り寄せてみました。  ここにハンガリー人民共和国、ブルガリア、東独、ルーマニア、ポーランド、チェコスロバキア等とソビエトとの友好協力及び相互援助に関する条約があります。この各条約に一貫いたしますことは、「社会主義共同体のすべての国の統一及び団結を絶えず強化し、」という文章がみられる。そして「相互に兄弟的援助を与える」というのが見られる。「国際的社会主義的分業の諸原則に基づいて、」という言葉がある。「帝国主義及び反動的侵略勢力の侵害から国際平和及び諸国民の安全を擁護し、」という言葉が見られる。「軍国主義又は報復主義のいかなる努力による侵略をも阻止するために必要なあらゆる措置をとる固い決意を表明する。」という言葉が見られる。「武力攻撃を受けた場合には、」「自己が利用しうるあらゆる手段により当該一方の締約国を支持する」という言葉が見られる。こういうことが東欧諸国と行われておる条約なんです。  ところが、最初この善隣条約が発表されましたころ、後進国並みだという意見が閣内にあったそうであります。後進国とソビエトの関係はどうなっているか。モザンビーク人民共和国、アンゴラ人民共和国、ソマリア、イラク、インド、アラブ、これとの条約をまた取り寄せてみました。この六件の条約について共通した条項は、敵対的、同盟ブロック不参加条項、この条約に抵触する他の国際協定への不参加条項、平和の脅威、侵害の発生の場合の協議条項、経済、科学、技術等の協力拡大条項、文化交流の拡大条項等が共通点であります。  そこで、この東欧諸国との間には、ある意味では軍事同盟であります。後進国関係の六件の条約について共通することは、それよりもはるかにやわらかいものだと私は思う。しかも、後進国関係とこの善隣条約と比べてみますと、善隣条約の方がもっとやわらかいといいますか、たとえば、ソ日両国は双方の利益にかかわる重要な国際問題について平和の維持にとって脅威であるとみなすような状況が生じた場合あるいは平和が侵害された場合、双方は事態改善のためにどのような措置をとり得るかについて協議するため直ちに接触するということは、東欧の条約、このモザンビークほかの条約よりもはるかに緩和されたといいますか、やわらかい案だ、こういうふうに私は理解をいたします。そういうことがわかっておりながら、一体なぜ後進国並みだ、なぜ東欧並みだと言われるのか。これは少し判断が違っているのではないか。私は短い時間ですべてを言い尽くすわけにいきませんけれども、私ども、この案を取り上げますためには時間がかかりました。研究にも時間がかかりました。国民は知りはしません。大臣が、東欧並みだ、後進国並みだと言えば、そういうものかと思う。そういう点についていささか軽率ではないかと考えますが、大臣、いかがでございますか。
  150. 園田直

    園田国務大臣 四島返還の問題及び日ソの平和条約交渉についていたずらにソ連を非難するだけではだめだ、善隣友好関係を続けつつ、不変不動でやっていけ、こういう御意見は、全くそのとおりでございます。善隣協力条約案が出されたときの閣議は、私が発表したということを報告しただけで、閣内では全然意見はございませんでした。したがって、閣内で後進国並みだという意見は、これは誤りであります。  次に、私が財界人との懇談会で申しましたのは、東欧並みの条約、こういう言葉は使いませんでした、東欧と同じような善隣関係友好関係を結ぼうと考えているのじゃないか、こういう言葉を使ったわけでありますが、私が外務省立場から言っても、先ほど御質問がありましても、善隣協力条約に対する批判その他の文書を外務省から出すことは差し控えたいと、こういうことをちゅうちょしておったのもそういう関係でありまして、そういう誤解を与えるような発言をしたことは余り適当でなかったと私は思っております。
  151. 横山利秋

    横山分科員 きわめて率直な大臣のお話で納得いたしました。大臣が先ほど同僚委員に、善隣条約について適当な時期に何かの方法でPRするというときに、東欧並み、後進国並みという言葉は大変不適当であります。これが国民に間違った判断、ソビエトに間違った誤解、そういうものを与えがちでございますから、事実に即して解説をしてもらいたいと私は思うのです。  それから、日中の問題が日ソに与える影響についてであります。  きのう大臣は国会で、日中の覇権問題は共同行動も軍事行動も伴わない、こういう解釈をお話しになりました。そのとおりでございますか。
  152. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりに、政府交渉はまだやっていないわけでありまして、日本から訪中された議員の方とかあるいは訪中した団体に対して中国がそのような意図を示した発言をしておることはございますけれども、しかし正式に表明したわけではありません。今後、交渉によって決まることでありますが、その交渉では、軍事同盟であるとか統一行動であるとか、こういうことは一切避けなければならぬ、こう思っております。
  153. 横山利秋

    横山分科員 そういたしますと、この解釈はまだ今日においては日本政府の解釈であって、中国側が覇権という言葉を、そういうふうに共同行動及び軍事行動を伴わないと中国側も解釈しているわけではまだないわけですね。
  154. 園田直

    園田国務大臣 政府としては正式に承ってはおりません。
  155. 横山利秋

    横山分科員 この間、日中条約を結んでも極東の軍事均衡は崩れぬという政府分析が、二月二十八日新聞に発表されました。これは政府筋でございますから、政府が言ったとは言いませんが、ごらんになって、この分析については大臣はほぼ同意見でございますか。
  156. 園田直

    園田国務大臣 まず、事実から御報告いたします。  私も新聞を見まして、全然知りませんでしたから、大臣として怠慢である、こういう事実を知らなかった、大変だ、こういうことで直ちに調査をしまして、外務省では、局でも部内でもそういう意見をしたことはありませんし、なお、先般ハワイで日米事務クラスの会談がありましたから、その際話が出たかと言ったら、その場合も話は出なかったということで、外務省に関する限り、こういう分析をした事実はないということであります。これは後で防衛庁の方から、防衛庁でという話がございましたけれども、軍事情勢の判断は外務省の仕事でありませんから、私はそれについては言及いたしたくないと存じます。
  157. 横山利秋

    横山分科員 時間の関係上、この問題に余り触れられないのが残念でございますが、いまの大臣のお話であるならば、一応別の機会にいたします。  次に、福田さんがブレジネフさんから書簡を受け取った、それについて、招待はブレジネフ書記長の訪日が先で福田総理大臣の訪ソは後が適当であるというふうに報道されておりますが、事実はどういうことに解釈したらいいのでしょうか。また、どういう理由でございましょうか。
  158. 園田直

    園田国務大臣 福田総理が招請を受けたのは今度が初めてでございます。日本側からしばしば、ソ連の書記長または首相、最高首脳の訪日を正式に招請し、機会あるごとにぜひおいで願いたいという催促をしておるわけであります。そこで、総理に招請がありましたから、総理からは御礼を言って、機会があったら行きたいと思うが、こちらからはもうずっと前から何回もお願いしておるのだから、ぜひそちらの方からおいでください、こういうあいさつをしたわけで、議論ではございません。
  159. 横山利秋

    横山分科員 ブレジネフ氏から正式に文書をもって総理大臣に出されたわけでありまして、それについて、いまお話しの口頭による回答といいますか、それで終わるのでありますか。総理大臣は正式に文書をもって御返事をなさるのですか。
  160. 園田直

    園田国務大臣 こちらの招請も、以前、正式の文書をもって行っておるわけでありますが、先般のブレジネフ書記長の親書は、私が参りますときに総理の親書を持って行った返書でございますので、これは口頭でお礼を言っておけばいいので、また機会ある場合に、親書を出す機会にその親書でお礼を言われることと思います。
  161. 横山利秋

    横山分科員 領土問題に入るわけでありますが、先ほど言いましたように、私はあなたと意見が全く一致いたします日ソ友好、日ソ平和条約締結、領土問題の解決、この意見の一致。与野党意見が一致しますこれを、これからどうしたらいいかということなのであります。率直に言えば、先ほど言ったように、悪口を言えば返してくれるか、戦争でもしかけたら返してくれるか、あるいはソビエトのアキレス腱でも持っておれば領土を返してくれるのかということになりますと、全くその可能性はないということを、お互いに政治家として腹に入れざるを得ないのであります。どうしても日ソ親善の段階、相互の信頼関係の段階で領土が解決されなければならぬ、そう思うのです。そう思いますと、今回の受け取れ、受け取らぬと双方が突っ放したという点を考えますと、これから領土問題を含めて日ソ平和条約について、外務大臣としては一体どういうふうにアプローチをするのか。しかも、私が先ほどちょっと心配をいたしましたように、善隣友好条約に関連して、悪口だけ言えばそれで済んだ、しかもそれは誇大に宣伝して、それで悪口を言う。そうしますと、向こうはますます離れてしまう。おれの方は善隣友好条約を出したじゃないか、おれの方は平和条約を出したじゃないか、おまえも受け取らぬ、受け取らぬと言えば、いままで以上にその距離は遠のいた。それで、双方の主張が入れられなければ、これはソビエト側としては、まあこういうことを私が言っては適当じゃないかもしれませんが、困りはせぬ。日本側は領土を返してもらいたい。この立場の相違というものが、われわれは、外交上及び政治上、政治家として、どういうふうにしたらこれから問題にアプローチしていけるのか。手詰まりではないか。悪口を言い合っておれば、ますます半永久的に問題解決が不可能になっていくのではないか、それを私は心配するわけであります。大臣は向こうにも行かれまして、私もあなたが行かれた後にモスクワで話し合っています。私は向こうへ行きましても、断固として、決して領土の問題を避けて通らぬと言うて私もがんばっておる人間でありますが、それにしても、この今日の状況を考えてみまして、双方にらみ合いということは、むしろいままでよりもより一層われわれの話し合いの距離を遠のかしてしまったと思うのですが、大臣はこの点について、これからの領土問題平和条約について日本政府としてのアプローチをどうお考えになりますか、展望を聞かしてもらいたい。
  162. 園田直

    園田国務大臣 私も横山さんと同じ意見でありまして、ただ、四島を返さぬのはけしからぬと悪口言って反ソ感情をあおっておれば、これはだんだん距離は遠くなる。そうではなくて――ただし、主張は私も激しくやってまいりました。そしてまた経過についても、一歩も下がらず主張はいたしました。しかし、私は最後に言いましたことは、日本ソ連の間は、領土問題をのければ利害が共通する点がたくさんあるじゃありませんか、こういうことでお互いが話し合い理解し合い、助け合うということは非常に大事である、それからまた、日本日米関係が基軸であって、安保の体制に入っているし、けれども、ソ連側の方はまたつらい中に軍備をやられて、抑止力による平和に書記長以下苦労しておられることも知っておる、こういう話をしたわけでありますが、私も横山さんの御意見を聞いておって、考えられる中と私の腹は一致しているのじゃないか。やはりソ連には、善隣協力条約は別として、善隣友好関係は逐次進めていって、そしてお互いが理解し合い、お互いが話し合い、そしてまた、ソ連の方も日本に必要なものがありましょうし、日本の方もまたソ連に必要なものもあるし、それはお互いに話のつくことでございますから、そういう関係を進めていきながら主張することは主張し理解をしてもらう、こういう方針でなければ島は返ってこない。そういう方向でやっていけば国民世論が分裂しない、不変不動でやるならばそういう時期はいつかは必ず来る、こう考えております。
  163. 横山利秋

    横山分科員 おっしゃるとおりに、日ソ関係経済貿易文化、学術交流が年々歳々非常にふえているわけであります。困難ではあるけれども、いまの日本外交は、日中の平和条約、日ソの平和条約、それを矛盾しないように達成するというところが基本線でなければならぬ。私も日中平和条約に賛成でございますから、それは進むべき道だと思っております。けれども、それが日ソの外交にマイナス要因にならないように最大限の努力をしなければならぬ。われわれはソビエトに対して領土の返還をしてもらいたいのですから、そのための近道は一体何か、そのための大同は何か。日中の平和条約締結の運動に伴って、ことさらに外務省大臣までが誤解を生ずるような発言や何かをなさることは慎むべきである。その意味ではもう一歩進んでお伺いをしたいと思うのであります。  日本側は、領土と平和条約、そして善隣条約はそれをたな上げするものだという見解、ソビエト側は、善隣条約が平和条約締結への近道だ、橋頭塗になる、そういうことを言うておる。その見解の違いであります。それならば、その善隣条約にある平和条約への近道だという意味は、その理由は一体何か、その方法は何か、領土に関してそれは一体どういうことになるのかという点について、そのことをつかむ必要があるのではないか。確かにいま、善隣条約は正式に受け取らぬ。それで、お役人が検討か研究かしているだけでもいいですよ、この場合は。私はそれはいかぬとは言いません。けれども、政治を担当する大臣として、心ひそかに、それは一体どういう意味なんだということを打診することは、当然あなたはお考えになっていらっしゃると思うのですが、どうですか。
  164. 園田直

    園田国務大臣 もちろん、大臣事務当局も、善隣友好条約についての研究はしさいにいたしております。しかし、私としては平和条約締結が先決であって、その上でなければ相談に乗るべき筋合いではない、これは考え方は変わりません。
  165. 横山利秋

    横山分科員 相談をしろと言っているわけではありません。いま私の趣旨としては、日ソ平和条約に対してどういうアプローチをするか。この手詰まり、全く完全に手詰り。双方、おれは手札を出した、おれは手札を出した、その手札を持たなければ相談に乗らぬということでは、半永久的にこの問題は解決しない。それでは子供のけんかだ、外交というものはそういものではなかろうと私は言っている。いま直ちにと言うわけではありませんが、少なくとも平和条約と領土と善隣友好条約の接点は一体何かということをお互いに探究をすることが外交基本ではないか、私にはそう思われてならないのですが、大臣はどう思いますか。
  166. 園田直

    園田国務大臣 いろいろありますが、ソ連日本の間は対決であってはならぬことは、もう御意見のとおりでございます。そこで、どのように善隣友好を深めていくかということは、十分研究もいたしておりますが、今後努力をしなければならぬ問題であると考えております。
  167. 横山利秋

    横山分科員 重ねて申し上げますが、日ソの関係が改善されるとするならば、双方の主張は主張としながらそこに接点は一体何があるか平和条約善隣友好条約と領土、双方の主張の接点をどこに見つけるかということが外交基本ではないかと言っているのですが、私の趣旨に賛成をなさいますか。
  168. 園田直

    園田国務大臣 日ソの間は改善されて、逐次いま拡大をしているところでございますけれども、領土と平和条約と善隣協力条約との接点、これはなかなかむずかしい問題で、私にはただいまのところ理解ができません。
  169. 横山利秋

    横山分科員 いま直ちにそれをおっしゃることが大変むずかしい質問だとは私は思います。しかし、将来日ソ関係が改善されるとするならば、そこが接点だ、その接点をどういう時期に、どういう方法で、どういうアプローチの仕方でそれをするかということが、日中を過ぎた後のあなたの最大の問題であろう、私はそういうことを指摘して、質問を終わります。
  170. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、西宮弘君。
  171. 西宮弘

    西宮分科員 私は、質問通告をいたしておきましたように、国際人権規約についてお尋ねをしたいのであります。  新聞で報道されておりますように、これはこの国会にお出しになるわけですか、まずその点。
  172. 園田直

    園田国務大臣 いま手続中でございますから、私がここで申し上げるといろいろ影響があると思いますが、実は今国会にぜひ提出したい、そして御審議をお願いし批准をしていただきたい、こういうことで準備を進めてきたところでありますが、各省との調整はすでに終了いたしました。それから与党との御相談も終了いたしましたので、いまや法制上の手続、検討をやっておるところでございますから、多分私の希望が通るようなことになるのじゃなかろうか、こう思います。
  173. 西宮弘

    西宮分科員 実は私、この問題をこの機会にお伺いをいたしますのは、そこまで運んで大変結構だと思うのですが、私は常任委員会が法務なものですから……。  新聞報道によりますると、この国際人権規約の批准について一番問題になっているのは法務だというふうに、ある新聞が書いておったわけです。そこで私は、去年の国会で、法務委員会でそのことを指摘をいたしましたけれども、当時、法務大臣は就任間もないころでもありましたし、非常にはっきりしなかったわけです。それで私は、そのことの必要性を強調したわけであります。そうしましたら今度の国会には、法務大臣の所信表明という形で劈頭に法務大臣の意見が開陳されたわけです。それによりますと、早期に批准するのが適当であるというふうに述べられておったので、私非常に意を強うしたわけでございます。     〔主査退席、片岡主査代理着席〕 私がいろいろ国際人権規約の批准が必要であるということを強調して、これに関連する私の立場を法務委員会でも申し上げて、法務大臣にもこれには大いに共鳴をいただいたわけです。  実は、これは私の個人的な意見ではございましょうけれども、ちょうど昔の封建時代あるいはまた戦国騒乱の時代、そういう際に、やがて日本一つの国になって、日本の国の中では戦争がなくなるのだと言ったらば、当時完全に気違い扱いをされたに違いない。同じことがいまの国際間においても言えるのだ。しかし、やがて世界一つの国になって、世界の国の中でもうお互いに人間が相争うというときはなくなるのだ、そういうことを実は私は選挙のたびごとに申してまいりましたので、これはいわば私の選挙公約みたいなものなのであります。そういう立場から、私は、国会の中にあります世界連邦国家委員会というものの事務局をお預かりをいたしておるわけです。御承知のように委員長は福田篤泰さんでありますけれども、超党派の機関でありますので私は事務局を預かっておる、こういう立場にあるわけでございます。  お互いに人間が人間らしく生きるというためには、人権を完全に尊重し合うということが当然に必要であるし、さらに、できるならば国際間に完全に戦争などがなくなる、ちょうどかっての日本が現在の日本に変わったと同じような状態が世界的にもできなければならぬ、こういうことを申し上げてきたわけであります。この世界連邦を建設しようという民間の団体があるわけでありますが、これと相呼応いたしまして国会内に委員会ができておる。これは昭和二十四年十一月二十日に創立をいたしましたが、そのときの記録を見ますと、衆議院から二十四名、参議院から二十五名出席をいたしております。衆議院の中では松岡駒吉、北村徳太郎、山崎猛、三木武夫、鈴木義男、水谷長三郎、笹森順造、森戸辰男、小坂善太郎などといった、全く日本政治をリードしてきた方々が参加をして、そこで行われた宣言を見ますとまことに崇高な理想を掲げ、あるいはきわめて次元の高い立場からこの世界連邦運動のためにわれわれは全力を挙げるんだ、それがわれわれ国会委員会の道義的な義務であるというような決議をいたしておるわけでございます。  この国会委員会には園田大臣にも、これは大臣になる以前からでございますが、早くから参加をしていただいて、いろいろこの推進に当たっていただいているということで、私どもそういう意味では感謝をいたしておりますが、人権規約に入ります前に、一言だけ、この問題について大臣のお考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  174. 園田直

    園田国務大臣 御尽力を心から御礼申し上げます。法務省との関係も大筋は合意ができて、いま個々の問題等で相談しておるところでございます。できるだけ早く国会にお願いするように努力する所存でございます。
  175. 西宮弘

    西宮分科員 一言、人権規約に入る前に、私の立場上申し上げた世界連邦の問題ですね、私ども、その当時から国会委員会として、国会でその実現に向かって努力をしようという決議をしようということをみんなで相談をしておるわけです。もちろん、私どもは、いまの国際社会の中でそういうものが直ちにできるなんということはとうてい夢想もできないわけでありますけれども、少なくとも人類の終局の願いとしてぜひそこまでいきたいということで、そういう運動を進め、さらに国会ではそういう点について国会の意思表示をしたいということを考えておるわけですから、ぜひそういう問題について大臣の力をかしていただきたいと考えるのですが、いかがですか。
  176. 園田直

    園田国務大臣 政治一つの理想に向かって進むことはきわめて結構なことでございます。私もあの世界連邦の一員でございますから、分に応じて努力をいたしたいと存じます。
  177. 西宮弘

    西宮分科員 それでは、この人権規約の問題でありますが、各省の合意が得られたということであれば、あえてそれ以上お尋ねをいたしませんけれども、新聞報道等によりましても、外務省国際会議等に出ましても、この人権の問題になりますと、まだ規約を批准しておらないという点で大変肩身が狭いというようなことが載っておるわけでございます。外務大臣のこの間の本会議での演説の中にも「わが国民の平和への強い願い、その英知と勤勉は、すでに世界の敬意を集めております。」と大変誇らしげにうたっておるわけでありますが、これにもう一つ人権について、人権を尊重するという点についても世界の敬意を集めるというふうになってもらいたい。そうなれば、本当にわれわれはどこの国にも誇るべき日本だということになり得ると考えておるわけです。  政府内でも、あるいは与党との間でも合意がまとまったというお話でありますが、いわゆるA規約、B規約それから議定書というのがありますね、この三つを含めて批准をされるわけでしょうか。
  178. 大川美雄

    ○大川政府委員 政府といたしましては、当面経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約と市民的及び政治的権利に関する国際規約、この二つの規約を批准の対象として考えております。
  179. 西宮弘

    西宮分科員 国連での審議経過などを見ますと、いまの議定書については日本は棄権をしている、そういう状況等もありますので、私もその点を懸念しておったわけですけれども、やるならば、ぜひ議定書もここで批准をしてもらいたい。せっかくB規約も批准するについて、議定書が批准にならぬということになると、全く画竜点睛を欠くのじゃないかという気がするので、そのことを強く期待をしておりますが、それは違いますか。
  180. 大川美雄

    ○大川政府委員 国際人権規約の文書が国際連合の総会で採択されましたとき、B規約の付属議定書につきましては、日本はおっしゃいましたとおり棄権をいたしました。これはほかの国でも、規約そのものには賛成しながらB規約の付属議定書に必ずしも賛成でなかった国は相当あった次第でございまして、現在A規約の批准国は四十七カ国、B規約は四十五カ国であったかと思いますが、議定書につきましては十七カ国しか批准していないというような状況で、国際的にも、議定書に決められております。個人が直接にその人権侵害問題について国際機関に通信を行うという考え方については、まだ十分熟していないと申しますか、なじまないと感じている国がいろいろあるのではないか、こういうふうに考えております。  日本としても、あるいは将来の問題としては検討ということになるかもしれませんが、現在としては、最も大事な両規約そのものの批准を早急に進めたい、こういうように考えておる次第でございます。
  181. 西宮弘

    西宮分科員 B規約の方は規約の中で、それぞれ個人がこういう権利を持っているということで、あの規約の体裁から言ってもエブリワンとかエニーワンとかいうような言葉を使って、みんなそれぞれ個人が権利を持っているのだということを掲げているわけですね。ですから、それが批准をされるということになると、個人の権利が生かされてこないと、せっかくの条約が生きてこないというふうに私どもは心配をするわけです。しかも、あの議定書を批准した国の中にもずいぶん、いわば発展途上国、そういう国なども入っておって、私どもとしては、いやしくも文明国と言われる日本でそういう点について批准ができないということは非常に遺憾なことだと思うのですが、もう一度お答えください。
  182. 大川美雄

    ○大川政府委員 御意見としてよく踏まえて、今後検討いたしたいと思いますが、当面は両規約の批准ということに最大重点を置きたいと思っております。
  183. 西宮弘

    西宮分科員 私が申し上げたことも意見として含んで検討するというお話でありますから、それ以上申し上げますまい。ぜひそういう点、私はきわめて大事な問題だというふうに考えますので、そうしてもらいたい。  それから、新聞によると三カ所ばかり留保をするということがありますが、その点についてはどうなんですか。
  184. 大川美雄

    ○大川政府委員 報道されておりますとおり、幾つかの点につきましては、国内法との関係で若干問題がございます。  ただ、これは関係省庁と外務省との間で一応どういう方針で臨むかということが決まっておりますけれども、内閣法制局へも持ち込んでおりませんので、具体的にどの条項についてどうということだけは、いまの段階では申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 西宮弘

    西宮分科員 たとえば、さっき私が申し上げた、法務委員会で論議をする問題でありますが、ここなども、現行法では矛盾をするというような個所もあるわけです。しかし、そういう際には日本国内法を改正してもこの条約に合わせたいということを、法務省の当局は答えておられる。ですから、その他にももちろん現行法とはいろいろ抵触するというような点もあるんだと思うのですが、そういう際には勇敢に、日本国内法を改正してもぜひこの水準にまで持っていってもらいたいということを申し上げたいと思います。これはさっきの議定書の批准と同じように、要するに私の意見でありましょうから、それを含めてぜひ検討していただくように、そしてそれを実現していただくようにお願いしておきたいと思います。  私は、その次に、大臣にお尋ねをいたしますが、いま目立って韓国で、われわれの目から見ると人権侵害だと思われるような事件がたくさんあるわけです。そういう問題について、もう少し外務省あるいは外務大臣が積極的に関心を持ち、また積極的に発言をしてもらいたいということを考えるのですが、大臣、いかがでございますか。
  186. 中江要介

    ○中江政府委員 先生御指摘のように、人権問題についていろいろ韓国の現政権のあり方が議論されておりますことは、私どもも承知しております。人権問題は、これは世界的な問題でございますので、一国一国の事情もさることながら、世界的に人権が尊重されることが望ましいという点では、どの国も異存はないところだと思うのです。  ところで、日本といたしまして、あるいは政府といたしまして韓国に対してどうするかという点で、わが方として、韓国の主権にかかわる問題についてまで干渉がましいことは言えない。これは御承知のように、一九六五年に日韓正常化いたしましたときの基本関係条約にもうたわれているところでございますし、国連憲章に照らしましても、内政に干渉したり、相手の主権を尊重するという原則に背くことはできないけれども、しかし、他方、日本政府として関心を持っている問題については、いま申し上げましたところに細心の注意を払いながら、できるだけのことばやはり意見を交換して、韓国には韓国立場があるのならどういうことであるかというようなことにも関心を向けておりまして、私どもといたしましてはできるだけのことはしておるつもりですし、特にそれが向こうに渡りました日本人についての人権でありますれば、これは権利としていろいろできますし、そうでなくても、在日韓国人はかつて日本人であった人、また日本に生活の基盤を深くおろしている人、この人たちは国籍の問題で言いますと、国際法上相手国民ということですから、そう何もかも自国民のようにはまいりませんけれども、その特殊事情を考慮して、従来も、韓国におけるいろいろの司法手続の中でも人権が尊重されることを希望するし、また、そういう処理をしていただくことが大きい立場から見まして日韓の友好関係に実は役立つんだという、そういう角度からのアプローチといいますか、意見の交換というものは積極的に行ってきたつもりでございますし、将来とも一層努力してまいりたい、こう思っております。
  187. 西宮弘

    西宮分科員 いろいろ積極的にやってきたと言うので、どういうことをおやりになったのか、それをお聞かせ願いたいと思うのですが、その前に大臣、これはぜひ大臣にもお考え願いたいと思うのですが、私は、いわゆる他国に対して内政干渉、これはすべきではないと思うのですね。しかし、人権問題について発言をする、他国の間違ったやり方に対してわれわれがそれを指摘しあるいはその改善を求めるということは、私は、国際的にもあるいは国際法上も認められてしかるべきだ。いわゆる内政干渉が、たとえば何か軍事的に介入するとか、あるいは昔流に言えば王位継承問題とかそういったような責任者の選択に介入するとか、そういうことは明らかに内政干渉だと思いますけれども、人権の問題は、これはまさにその人権規約で、これから日本もその批准をしようとしておるほど、人権問題というのは、さっき二つばかりの例を挙げたけれども、そういう内政干渉とは根本的に性質を異にしている。この人権問題に関する限り、これは国境を越えた人類共通の問題だという認識に立って、相当他国の間違いを指摘するというようなことがあってしかるべきだというふうに私は考えるのですが、まず、その点について大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  188. 園田直

    園田国務大臣 いま西宮さんの御意見が、実質上にはどうやれば通るか。こういうことはけしからぬとか、あるいはこの刑は許してくれとか、あるいは刑を短くしてくれとかと正式に言うことは、これは内政干渉にわたるし、また、実際はそれによって逆効果を得るわけでありますから、いま言われました趣旨のように、いろんな韓国の逮捕者、刑の執行が確定した者、死刑の確定した者、こういう者については韓国政府が人道的観点に立って理解ある配意をすることが日韓友好関係を促進するものであるというような趣旨で、表に出ないように、絶えず折に触れ、機会をとらえて、その実が上がるように、大臣事務当局も努力しております。現に、それで釈放されたり、あるいは確定した刑が軽くなったり、死刑の確定が許されたりした例がございますけれども、これをここで申し上げると、これまた今後の問題に影響いたしますから……。ただ、西宮先生の御趣旨が通りますように、その実が上がるように、内政干渉にわたらないように留意しつつ努力をしていることだけ御理解をいただければありがたいと存じます。
  189. 西宮弘

    西宮分科員 そのいわゆる内政干渉にわたるかわたらぬかという点になると、具体的な問題では非常にデリケートな問題で、外務省も御苦労されるということはわかりますけれども、たとえばこれは、きのうの新聞にたまたまアメリカ韓国に対する声明が載っておるわけですけれども、米国務省としてありますからアメリカ政府の発表でありますが、これなどを見ると、世間に言われる内政干渉というようなことから言えば、明らかに内政干渉だ、いままでえてして内政干渉ということを言う、そういう人たちから見ればそういうふうに思えると思うのでありますが、しかし、きのうの新聞に載ったこのアメリカの声明などは、これはこれでりっぱに通っているわけですよ。だから、そういう点から見ると、私は事人権に関しては、もっと日本政府が勇敢に発言をし、あるいはまた具体的な行動に移すということがあって一向に差し支えがない。あるいはまた、もっとさらに突き進んで言うならば、それが日本の国の責務であるというふうに言ってさえ、人権を尊重するという立場から言うならば、それは日本としての責任だというふうに言っても私は差し支えないのではないかと考えるのですが、大臣のいま答弁されたお気持ちもわかりますけれども、いわゆる人道的な立場から物を考える、あるいは事に当たるという点については、もう少し踏み込んだ態度を期待をしたいと思うわけです。特に、在日韓国人があそこへ行ってつかまって死刑の宣告を受けたり、そういう人がたくさんいるわけです。これはさっき中江局長も言われたように、国籍は違いますけれども、実質的には日本の一人の市民として今日まで生活をしてきた人たちなんです。あるいはまた、日本で生まれたとか、そういうので、単なる外国人とは全然違うわけですから、そういう人たちに対しては、もっと日本が温かい気持ちで彼らを包んで、韓国政府に対してももう少し積極的な態度を持ってもらいたいということを私はお願いしたいと思うのですが、もう一遍大臣のお考えを聞かせてください。
  190. 園田直

    園田国務大臣 他国の人権問題に関することを指摘することは、これは十分慎重にやらなければ、内政干渉にわたり、不測の事態を起こすおそれがあると思いますけれども、人道的観点から、世界じゅうどこの国でも人権が尊重されるように努力をすることは、これはやはり日本の責任であると存じております。
  191. 西宮弘

    西宮分科員 中江さんがさつきいろいろやってきたというお話なので、どういうことをおやりになったのか聞かせていただきたいのですが、これは、昭和四十九年にも、あのときは例の北海道大学の金博士ですね、その人が問題になったときでありますけれども、同じ中江さんが、「韓国大使館とも再三にわたってお話をしております。」とか、あるいは「民間のグループの方からのいろいろの希望表明その他について、そういったものが正確に向こうに渡るように、事実上の橋渡し、便宜供与をあっせんするということはしております」、ただし政府レベルでは問題があるというようなことを後につけ加えておりますが、こういうふうに言っておられる。  いまのその韓国でつかまり、あるいはさらに死刑の判決を受けているといったような非常に気の毒な人たちが数多いわけでありますが、そういう人たちに対してどういうことをやってもらっているのか。私の方から前もって申し上げれば、たとえばいろいろな要望書、陳情書、そういうものがたくさん出ている、そういうのは、昭和四十九年の中江さんの答弁だと、事実上向こうに渡るようにいろいろ配慮をしているというお話なんだけれども、こういうのは政府の機関、つまりソウルにある日本の大使館から向こうの政府の当局に、たとえば死刑が確定したというのは行政の問題になるわけですから、あるいは裁判途中ならば裁判機関になるわけだけれども、どっちでも結構だけれども、そういうところに日本政府が反抗してこれをぜひ受け入れてくれというようなことまで言うことは少し行き過ぎかと私も思いますけれども、しかし、事実上大使館の職員がそれを向こうに持っていって大統領官邸に届けるとか、そういったようなことはやってもらってもいいのではないか、あるいはそのほかに、たとえば薬であるとかあるいは家族の手紙であるとか、そういうものも同じようにして渡してもらう、あるいは寒いときならば、たとえば防寒用の毛布を差し入れをするというくらいのことを日本政府がやってもいいのじゃないかというふうに考えるのですが、その辺のことについてはどうですか。
  192. 中江要介

    ○中江政府委員 いま西宮先生がおっしゃいましたようなことも考慮に入れましていろいろ努力はしておりますが、先ほど外務大臣も言われましたように、何という人に対してこういうことをしましたとか、こういうときにはこういうふうにいたしましたという、つまり私どもの事実上の努力を具体的に申し上げることは、韓国立場から見ますと、自分の方の法律に基づいて司法権を行使し、それを行政的に法に基づいて取り扱っているところに日本政府が何かかんかと言ってきているというふうな間違った印象、私どもの方では人道的な見地あるいは人権の立場から申し上げておりましても、先方でそれを誤解したり曲解したりされますと、本当に私どものねらっている目的の達成に実は邪魔になる場合があるという点は大変気を使っておりますが、その範囲内では、いま先生のおっしゃいましたようなことも含めて鋭意やっております。薬の問題もいろいろ例がございますし、私どもとしてはやっておりますけれども、そのことを具体的に、あるいは政府としてどうしているかということになりますと、これはやはりはっきり申し上げることがむずかしい場合がございますので、その点は御理解いただきたいと思います。
  193. 西宮弘

    西宮分科員 時間がなくなりましたので、一言だけですけれども、おととい大法院で死刑が確定したという姜宇奎という人がおるわけです。大臣、これもひとつ御承知願いたいと思うのですが、この人などは、十六歳のときに日本に渡ってきて、戦争中に大阪の軍需工場で働いていた、そこで左足を切断してかたわになってしまった。そうして、日本に来て四十六年ばかりになるわけですが、この人がたまたま韓国に渡ってつかまってしまった。そうしてついに死刑の宣告を受けて、それが大法院で決定したというのが一昨日なんであります。  この人などを考えてみても、スパイ事件だというのだけれども、常識的に考えても、年がもう六十を超えておりますし、足は不自由で歩けないというような人が、スパイ活動というような敏捷な仕事ができるとはとうてい思えない。日本にはりっぱな市民としての生活の根拠がありまして、後に残った家族たちは大変な苦労をして心配をしておるわけです。こういう際に、少なくとも死刑が宣告をされても死刑の執行は待ってほしいとか、その程度のこと、そしてその間にさっき申し上げたようなことを逐次やっていってもらう、こういうことをお願いしたいと考えるのです。そういうまことに条理に合わないことが行われておりますので、どうかよろしくお願いをいたしたいと思います。大臣、いかがでしょうか。
  194. 中江要介

    ○中江政府委員 いま御指摘の姜さんのことは私どもも承知いたしまして、早速まず事実関係を把握いたしまして、弁護士さんの方で再審請求の準備をしているということでございます。  ただ、その場合に、いま先生のおっしゃいました中の、こういう人はそういう罪を犯すはずがないではないかというたぐいの先方の裁判手続の具体的な内容について論評するということは、これは政府としてはとてもできないということでございますので、そこは御了承いただきまして、公正な裁判で人道的な取り扱いを受けるということと、そしてその死刑が仮に最終的に確定いたしました場合でも、それを執行するということの持つ外交的な意味というものについては、絶えず韓国側と話をしているということでございます。
  195. 片岡清一

    ○片岡主査代理 午後一時再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  196. 正示啓次郎

    ○正示主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について質疑を続行いたします。小林進君。
  197. 小林進

    小林(進)分科員 私は、金大中事件についてお伺いいたしまするけれども、外務大臣、金大中を拉致した犯人がだれであるかおわかりになっておりますか。あるいはまた金大中が拉致されて、いまでも病院に拘禁されている体でありまするけれども、その被害者である金大中自身から、一体この問題について直接お話をお聞きになったことがありますか。  時間がありませんから、私が申し上げまするけれども、それやこれやも含めて、一つも問題は明快になっておりません。日本の国に平穏無事に暮らしておる人が、ある日突然として拉致された。金大中自身の人権もまだ一つも回復されていない。それを日本政府は、政治解決が済んだと言っている。こういうことで、一切をこれはベールに包んだままに、もはや幕を閉じられていることは了承できません。  そこで、新外務大臣、ひとりお願いを兼ねて質問するのでありまするけれども、こういう不明瞭のままに政治解決したということは白紙に戻して、問題を洗い直すという御決意があるかどうか、まず承っておきたいのであります。
  198. 中江要介

    ○中江政府委員 過般、園田外務大臣のおっしゃったことと記憶いたしますが、いわゆる外交的決着といいますのは、日本政府韓国政府との間で了解に達して、それを前提といたしまして、その後の日韓関係を進めてきておるという事情でございますので、両国関係にかんがみまして、約束したことはそれを守っていくという意味におきまして、いま突如として全面的に白紙に戻すということはできないということでございますが、他方、そのときの了解にございますように、わが方も捜査を継続しておるわけでございますので、あるいは韓国側も捜査を継続していると思いますが、新たな事実が出まして、韓国の公権力の行使ということがはっきりいたしますれば、これは日韓間でもとから話し直すという点ははっきり留保しているということでございます。
  199. 小林進

    小林(進)分科員 中江アジア局長の答弁は、私は聞き飽きたのですよ。同じことを十数回しゃべっておる。それで私は、あなたの答弁は実は欲しくない。新大臣なるがゆえに私はお聞きをしたい、こういうことでありまするから、いやしくも日本国内に平穏無事に暮らしておる者が、日本の国権を無視し、日本の独立を無視し、日本の名誉を無視して拉致せられたということは、古今東西の歴史の中でかってない、こういう不明瞭なことを不明瞭なままに、両国の政治的折衝で話し合いができたから、これで幕を引くなどということは、これは後世歴史に汚点を残したことになる。われわれはとても了承できる問題ではないのでありまするから、そこで白紙に戻したらどうか、こういうことを私は外務大臣に言っているのであります。  外務大臣、いいですか。これは率直に言って、朴政権に対して日本政府は屈服したということなんです。朴政権のよこしまなる行為に、日本政府日本の独立と名誉を売り払ったということになる。私の言うことが厳しければ懲罰にかけなさい。いいですか。日本の独立と名誉を朴政権に売ったことなんです。そうして金大中という野党第一党の党首、その人権も売ったことなんです。だから、それを政治的折衝がもうできたから、これは新しい事実が生まれるまではこのままで手を触れないなどということで、一体国を代表する国会議員としてわれわれは了承できますか。国民は了承できますか。ここでごまかし通せると思ったら大変な間違いですよ。  そこで、良心の苛責に耐えかねるならば、一度白紙に戻って、この政治的決着というものを再び第一歩に戻させる決意があるかどうか。中江君、立っちゃいけません。新外務大臣ですよ、ぼくが聞きたいのは。
  200. 園田直

    園田国務大臣 いまお答えしましたとおり、わが国としては刑事事件としての捜査をその後も継続しておりますので、将来、韓国側による公権力行為を明白に裏づける証拠が改めて出てきた場合には、右の外交的決着を見直すこととなろうと思います。
  201. 小林進

    小林(進)分科員 実は私は、園田外務大臣に期待するところが大きかったのでありまするけれども、いまの答弁を承って、百年の恋もさめたということで、実に落胆これたえざるものでありまするけれども、しかし、この分科会に限らず、時間がありませんから、ここで解決しなければ、またあすの総括あるいは別の委員会において、あくまでも、この政治的決着というものを政府が改めない限りは、それは私どもは永久にこの問題を追求をいたします。これだけを宣言いたしておきます。  第二番目として、これは私の二月一日の総括質問における政府側の答弁でありまするが、例の金在権、金大中拉致事件のときに総指揮官で日本にいた金在権公使、これはアメリカ国務省を通じて数回、日本の証言ですね、参考人でありまするから応じてくれるように交渉しているけれども、ようやくアメリカ国務省が直接接触してみるとの回答を得ている、こういう答弁を得ているのであります。一体その後どういうふうな変化が起こりましたか。金在権の問題について承っておきたいのであります。
  202. 中江要介

    ○中江政府委員 二月一日の予算委員会におきまして、小林先生の御質問に私が申し上げましたところは、いま先生が申されたとおりでございまして、私どもといたしましては、アメリカの国務省が、今度はただ手紙を送るというのではなくて、直接金在権と接触してその意向を確かめるということで、期待をしてその回答を待っておりましたわけですが、その後在米大使館を通じて通知してまいりましたところによりますと、その期待には十分にこたえた形ではなくて、金在権はもはやアメリカにいないので、アメリカ政府当局としては、直接接触して任意の事情聴取に関する金在権氏の意向を確認することはできない、しかしまた同人が米国に帰ってまいりました場合には、直接接触して確認を試みる用意があるのである、こういうことを連絡してまいったわけでございます。
  203. 小林進

    小林(進)分科員 その回答には偽りはないと思うのでありまするけれども、ともかくも四年有余の歳月を経て、何にも進歩していない。まことに残念にたえないのであります。そのほか劉永福の問題といい、柳春国の問題といい、あるいはわれわれが当然聞かなければならない金相根の問題だとか、ともかくこの事件に関係している人たちに対して、日本政府は何一つまじめに情報をとろうとか、話を聞こうとか、何にもされない。これくらい国民を侮辱した行為はないと私は思う。くどいようでもう私は言いたくないのでありまするけれども、朴東宣などに対するアメリカの立法府、アメリカの司法府、アメリカの行政のやり方を少しば考えてもらいたいということを言いたい。あの朴東宣に対するアメリカの行政のあり方なんか実にりっぱなものだ。それを横目で見ながら、朴東宣事件に比べて、金大中の事件だとかあるいは日韓癒着の問題などというのは何十倍も大きい、何十倍も腐敗した問題ですよ。朴東宣などというものは、まだ独立は侵されていない。金大中は日本の独立が侵されている。名誉が汚されている。そういうことに対して何もやらないということで、これでほおかぶりをして世の中通せると思ったら大変な間違いです。  そこで外務大臣、金在権はアメリカにいないならば、それは韓国にいるでしょう。金東雲だって一等書記官で、いわゆる金大中を拉致した現場の将校だ。これだっていまカナダにいるのだか、アメリカにいるのだか、どうですか、ひとつ草の根を分けてでも尋ねて、日本の名誉を守るという新しい構想は出てまいりませんか。外務大臣、あなたにお伺いするのであります。そういう被疑者がぞろぞろしているのでありますから、そういう人たちを直接さわって事の真相を追及するというその熱意はありませんか。外務大臣にお伺いいたします。
  204. 中江要介

    ○中江政府委員 小林先生御指摘の関係者の名前は何度も挙がっておりますし、日本の捜査当局もその一人一人について捜査上の評価をしておるわけでございまして、外務省といたしましては、先ほど申し上げました外交的決着の後は、日本の捜査当局の捜査の進展に応じて必要な措置をとっていくということでございますので、外交的決着を白紙に戻すというようなことがありますれば別でございますが、それのない限りは、捜査当局と協議しつつ、その必要な限度で行動をとっていくということになろうかと思います。
  205. 園田直

    園田国務大臣 いま申し上げましたとおり、刑事事件の捜査を待って対処します。
  206. 小林進

    小林(進)分科員 あなた方は同じ答弁ばかりオウムのように繰り返しているのだ。その捜査当局はここにいないでしょう。形式的に警視庁の中に二十三人の金大中捜査本部というものを設けて、五年の間ちびりちびりとやるがごとくやらざるがごとく、今度はその二十三名の捜査員を二十名に減らす、三名だけ減らしたというのでありますが、毎日何をやっているか。何もやらぬじゃないか。つめのあかほどの実績も出てこないじゃないですか。ただ日本国民に対する言いわけをするためにそんなものをつくっただけだ。今度は外務省はそれを受けて、捜査当局の捜査と言っている。何もやる気がないからです。そういう不謹慎なことでこの問題を処理しようと言ったって、それはそのままでほおかぶりし通せるものではありません。私は了承できません。  これは分科会ですからこのぐらいにして、また場所を変えてやります。何回もやります。これではだめです。あくまでもだめです。そのうちには動かすことのできない資料を私どもは出します。  実際に何もしない外務省ですから、余り支援もしたくないのでありますけれども、次は在外公館購入の問題に問題を移します。  外務省から資料をいただいておりますが、「国有在外公館(公邸及び事務所)一覧」という資料です。この資料によりますと、五十二年度における公館の実数は百五十六、そのうち日本国家の所有しているものが、公邸が七十八、事務所が三十八という報告を受けている。こういうことでありまするから、その他は全部借地借家であります。いま国有になっている公邸及び事務所の中でも、どうも古くて、わが日本の名誉を保ち得るような形のものではなくて、大変手狭なものもまた多数あることをわれわれは知っているのであります。  それゆえに、私はしばしばこの問題を予算委員会で取り上げた。永久に続く在外公館が借地借家に住んでいるなどということは国の名誉にも関するじゃないか、これは国有にすべきである、こういうことを要望してきたのであります。  大蔵大臣来ていますか。――さっき要望したのに何で連れてこないのだ。それは委員長の権限です。どうしたのですか。これはいけませんよ。  時間がないから、その問題について私は言いますけれども、昭和四十六年の二月です。当時の大蔵大臣は福田赳夫君だ。その福田赳夫君にこの問題を私は質問をしている。これに対して福田君は何と答えたか。まあそう遠からぬうちに、どこへ参りましてもりっぱな公館だなという感じを持っていただけるものにしたい、さように考えております。こういうふうに答えている。ところが依然として借家が多い。その当時の外務大臣愛知揆一氏に同じ質問を私は繰り返した。これに対して愛知揆一君は何と答えているか。「外務省としては、できれば在外の公邸、事務所等は全部国有化したいのです。そのほうが国家財政、ひいてタックスペイヤー」英語できている。「タックスペイヤーに対しても申し開きができることだと思いますので、相当具体的、計画的に計画も持っております。」「今後の新規五カ年なり十カ年計画をやってまいりたいと思います。たとえば場合によりましては、土地、建物ぐるみ購入するとか、あるいは土地を購入して新築をする、こういう点に特に配慮していきたいと思います。幸いに財政当局も協力的でございますから、ぜひ進めてまいりたいと思います。」こういう答弁をしているのであります。  大蔵大臣外務大臣もこういう答弁をしているのでありますから、これは必ず事実の上にあらわれてこなければならないのであります。どのようにこれが具体化されたか、微に入り細に入って大蔵大臣外務大臣にお伺いしておきたいのであります。
  207. 禿河徹映

    禿河政府委員 大変恐縮でございますが、ちょっと計数を私の方から申し上げたいと思いますので、お許し願いたいと思います。  さきに先生から分科会で御指摘がございました当時、四十五年の末ごろでございますが、その当時の在外公館等のいわゆる国有化率と申しますのが二〇・一%でございました。その後私ども外務省当局といろいろ御相談しながらこの国有化を進めてまいったわけでございまして、五十三年度予算を織り込みますと国有化率が三八・九%ぐらいに上がるものと考えております。そういうことで私ども逐次努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  208. 小林進

    小林(進)分科員 外務大臣、いまお聞きのとおりでありましょう。さっきはこういうことが出てくると思ったから、くどいようでありまするけれども大蔵大臣福田赳夫君の答弁をそのまま言った。そう遠からぬうちにどこへ参りましてもりっぱな公館だなとお感じいただけるようにいたします、さように考えておりますと言っている。四十六年からいま何年たったか。もはや五十三年じゃないか。そこへもってきて三八・九%とは一体何だ。半分もいっていないじゃないですか。三分の一強じゃありませんか。だから私は言っている。大蔵大臣呼んでこい、こう言っている。外務大臣も呼んでこい、そう言ったのです。みんな国会の中ではいいかげんな答弁をしておいて、そしてちょろまかしておいて、済めばそれでよろしいという、立法府に対する責任感というものはちっともこれ一つにもあらわれていない。その姿勢が私はおもしろくないのですよ。死んだ愛知揆一氏だって、もう死んだから泉下にいる人の悪口は言いたくないけれども、ただここへ出てきて、その場だけをごまかせば後はよろしいというこの姿勢が直らぬ。一番悪いのは外務省と大蔵省だ。それを本当に良心的に答弁しているなら、いまここへ来て国有化が五十三年度の予算も含めて三八・九%までいきますとは一体何事だ。いま私が読み上げた答弁から言えば、いまごろはもう全部在外公館、在外事務所というものは国有になっておらなければならぬ、この答弁の裏づけとしては。  来年度の在外公館の営繕費は一体幾らです。在外公館の借地借家料は幾らですか。今年度と比較して比率は一体どれだけ上がっているか。数字が得意だと言うなら数字で聞こうじゃありませんか。
  209. 禿河徹映

    禿河政府委員 五十三年度予算におきます在外公館の施設費は三十二億四百万円、それから無体財産権の購入費が六億一千八百万円、それから各所修繕費、それから在外公館等の借料を全部入れますと七十四億九千六百万円、対前年度一五・三%の増、かように相なっております。
  210. 小林進

    小林(進)分科員 大臣、お聞きになりましたか。三十四兆円組んで、いわゆる公共事業なんかに三二%、時によっては三六%もふやしている中で、在外公館の営繕費や貸借料も含めて去年の比率の一五・三%増だ。この大型予算の平均比率までいっていないじゃないですか。そんなみみっちいことをやって、そしてわれわれ国会の質問をごまかしているなんということは、その姿勢自身が大変間違っている。そういう間違ったことをやっちゃいけませんよ。大体外務省はみみっちい。ドルが余って始末に困るというこの内外の批判を受けているときに、こういうときこそわが日本の権威を保ち、国有財産をふやしていく。どんなに在外公館を買って歩いたところで、それがいかぬなんて外国から非難を受けることはありませんよ、あなた。いま二百三十億ドルなんて積み立てておいて、始末に困って内外から批判を受けている。こんなときこそ千載一遇ですよ。そんなときにまだいやだいやだと言う外国へ自動車を売りに行ったり、家庭電器を売りに行ったりして非難攻撃されているより、何で土地を買わない、何で公館を買わないのです。そして何でドルを減らさないのです。全部合わせて七十四億円とは一体何事だ。三十四兆円の国家予算の中で七十四億、全くかすんで、本当に虫めがねを使っても見えないような予算じゃないか。そういうけちん坊なことばかりやっているからてだめなんですよ、実際。どうですか、外務大臣、私の言うこと間違っておりますか。いままでの経過からながめて間違っておりますか。しかし、あなたもこういうことはすぐ手直ししなくちゃいけませんよ。これを全部公邸にするために推定幾らかかる。百五十六でいま三八・九%と言ったが、残りの六一・一%加えて一〇〇%、これを全部国有にするために概算幾らの金がかかる。
  211. 禿河徹映

    禿河政府委員 私どもちょっとその数字は把握いたしておりません。
  212. 小林進

    小林(進)分科員 大事なことだから、すぐ文書でその数字を出しなさい。いいですか。
  213. 禿河徹映

    禿河政府委員 恐らくその数字は、たとえば各在外公館全部に外務省さんの方から照会をして、大体どの程度か、こういうふうな推測価格みたいなものをおとりにならないとわからないかと思いますが、また中には、国の事情によりまして外国人あるいは外国政府等の取得を認めない国等もかなりあるようでございます。そういう点で果たしてどの程度の数字が出ますか、ちょっと私どもでは把握いたしかねますので、もし御必要があれば外務省さんの方から御説明願いたいと思います。
  214. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 外務省といたしましては、御趣旨のとおり緊急度の高いものから逐次国有化を進めておるわけでございますが、全体として幾らかかるという数字はまだ把握しておりません。ただ、御趣旨もございますので、いろいろな角度から検討して資料を整えたいと思います。
  215. 小林進

    小林(進)分科員 だからここでもあなた方の答弁を聞くと、こういう委員会予算委員会なんというのをうっちゃらかして、その場逃れの答弁をしておけばいいのだ、そういう姿勢がちゃんとあらわれている。先ほど読んだでしょう、当時の愛知外務大臣は何と言った。これを国有化するために五カ年間の計画をつくります、十カ年間の計画をつくります、そしてやっていきますと言ったじゃないか。この答弁に対する責任感が幾らかでもあるならば、ちゃんとできていなくちゃならない。何です、いま何もできていないというじゃないか。これから調べますと言っているじゃないか。それを私は言うのだ。これが外務省の一番悪いところなんだ。その外務省の一番悪い中でも一番悪い外務大臣が愛知揆一君だ。愛知さんは死んだから、線香代も含めて愛知さんの悪口は言わぬが……。それから宮澤喜一君だ。これが全部ごまかしちゃった。  もう時間がありませんが、金大中事件といい金東雲といい、とにかく宮澤君が私に与えられた答弁を夜も昼も私は速記録を全部調べて、これもだまされた、これもだまされた、くやしくて眠れない晩が三日ほど続いた。だましちゃいけませんよ、立法府の尊厳に基づいてわれわれがまじめに論じていることを。  そこで、もう時間も来ているから残念だけれども、いまこそこのドル減らしという問題は本当にやかましく言われているのだから、これほどドル減らしのいいときはないのですよ。こうして皆さん方がドル減らしの一環として在外公館を一〇〇%全部国有にしますと言ったって、共産党も含めて野党で反対する者なんかいませんよ。よろしい、外務省のその姿勢はよろしいと全部賛成する。そういう空気を察知しないで、去年より伸びていることたった一五%だという。全く情けなくて涙が出る。総括する費用が七十四億円とは一体何事ですか。いいですか、外務大臣。私はけちん坊ですけれども、一たん国から外へ出たときの在外公館というものはその国の姿を象徴するのです。われわれは日本にいて、あのお堀端の英国大使館を見て、ああ英国というものは大国だな。すぐそこまで行ってアメリカ大使館をながめて、あの広壮な白亜の建物を見て、ああやっぱりアメリカは実力国家だ、こう思う。われわれはその概念を持って外国へ行ってみると、日本の公邸、公館なんというものはその国のすみっこにちょこちょこっと置いてあって、本当に涙が出るほど残念だ。私はこれを改めろ、ここに金を使いなさいと言うのだ、国家を象徴する一つの建物だから金を使いなさいと。いいですか。だからいま計画書を私のところへ提出するというならば、まだ購入する計画もないというならば、大体その推定の建物はアメリカ大使館、英国大使館くらいの規模のものをちゃんと日本はこれから買うという想定のもとにひとつ予算書を組んで、計画書を組んで、私のところへ出してもらいたいと思う。またあなた方のその計画書を見て、私は私で所見を述べたいと思うのであります。いかがですか。
  216. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 われわれといたしましては、これについてはいろいろそういう五カ年計画あるいは十カ年計画というものを立案したことはあるわけでございますが、土地建物の値上がり傾向もいろいろございますので、もう一回そういう資料も点検し、また必要に応じて現地にも問い合わせました上で、資料を整えまして小林委員に御報告申し上げたいと思います。
  217. 小林進

    小林(進)分科員 時間が参りましたからこれはもうやめますけれども、私は私の質問を軽く言っているのではありませんよ。私も国会が済めば海外旅行にも出るのでありますが、行ってみると、一つの例ですが、ちょっと古い例になるかもしれませんけれども、ブラジル大使でおやめになった宇山さんあたりがインドの大使をおやりになったときです。新インドの外交公館の計画で各国に公館の敷地というものを割り当てた。そのときなんか二画も三画も買っておけばいいのを、外務省の根性が小さいから一画しか買わなかった。建って四年か五年もたたないうちにもう手狭になっちゃって、また新しい敷地の拡張と新しい公館を買わなければならないという、こういうことで大変出先の大使が困っておられたことを私は経験をした。これは一例なんですよ。一つの例であって、こういう例が行くところ行くところに顕在をしているのであります。それだから、こういうものは永久の建物であり永久の敷地だから、けちなことを言わないで、私の表現がアメリカ大使館、英国大使館と言って笑われたけれども、少なくとも三十年や五十年の先を見越して構想の大なものをおつくりなさい、ドルは余っている、そのことを申し上げている。外務大臣いかがですか。私の言うことに間違いありますか。ないならひとつ気張ってお答えいただいて、宮澤君のようなおちゃらな答弁じゃなくて、責任ある答弁をひとつ私は外務大臣から得ておきたいと思うのであります。
  218. 園田直

    園田国務大臣 非常にごりっぱな御意見を拝聴いたしまして、相手の当該国で許す国々は、逐次努力して国有化の方に進めていきたいと考えております。
  219. 小林進

    小林(進)分科員 これでやめます。どうぞひとつ投げやりじゃなくて、五カ年計画なり十カ年計画をきちっとつくって出していただくと同時に、その計画に基づいてひとつどんどんこれを解決していただきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  220. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、横路孝弘君。
  221. 横路孝弘

    ○横路分科員 きょうは少しあちこちになりますけれども、二、三の問題についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、アメリカの下院の国際関係委員会の公聴会のブラウン国防長官の証言に関連してお尋ねをしたいと思うのです。これもここ二、三日国会で議論されているようですけれども、議事録がまだできておりませんので、重複する面があるいはあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。  初めにブラウン国防長官が韓国が北から攻撃を受けたときのアメリカの対応について証言しておる。その部分が日本との関連で一番大事なんですが、一つは沖繩の海兵隊第三海兵師団、もう一つ韓国隣接海域の海軍機動部隊という証言と、西太平洋地域に配備されている飛行中隊という発言があるわけですが、これは一応、この海軍機動部隊というのはミッドウェーを含む第七艦隊、それから西太平洋配備飛行中隊というのは在日米第五空軍が含まれるというように解釈してよろしいのでしょうね。
  222. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 私ども、詳しい証言の内容というのは入手しておりませんので、はっきりしたことはわかりませんけれども、各種の報道等によりますと、いまの第七艦隊、それから航空部隊につきましては、西太平洋というのは沖繩、フィリピン等の飛行機ではないかと推測されます。
  223. 横路孝弘

    ○横路分科員 そうすると、いずれにしても在日米軍をかなりの広い範囲で含んでいるというように解釈して論議を進めていきたいと思いますが、そのブラウン長官がその前にロサンゼルスの演説で、空中警戒管制機いわゆるAEWに意識能力を持たせたものですね、それから巡航ミサイル、これは多分グアムになると思うのでありますが、あとF15戦闘機の飛行中隊というもののアジア地域への配備について発言がなされたようですけれども、このアジア地域への配備ということの中に、日本が含まれるのかどうか。事前に今日の段階において何らかのそういう連絡といいますか、協議といいますか、相談というのが外務省なり防衛庁の方にあるのかどうか。――この発言は知っていますか。
  224. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま先生御指摘の演説につきまして、その部分につきまして特に日本側に説明があったということはございません。
  225. 横路孝弘

    ○横路分科員 だんだんに議論していきたいと思いますが、日米首脳会談の日程が決まったわけですね。今までは経済問題が多分中心になるだろうということだったのですが、この議題については日米間でもうすでにかなり詰めておられますか。
  226. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 議題につきましては、これから外交チャンネルを通じて日程とともに詰めていくべき問題でございまして、当面細かな議題は決まっておりません。
  227. 横路孝弘

    ○横路分科員 外務大臣にお尋ねしたいのですが、経済問題が中心にはなると思いますけれども、今日のこのブラウン国防長官の証言が出てきて、とりわけ在韓米軍の撤退に対応した日本並びにアジアの情勢がどうなるのかということも議題になると思うのですけれども、その辺のところは、外務大臣としては何かこの首脳会談に臨むお考えというのはお持ちでしょうか。
  228. 園田直

    園田国務大臣 予定される日米首脳会談でただいま話しておるのは、世界経済問題及び国際情勢で二国間に共通の関心のある問題を議題とする、こういうことで、これをさらに具体的にどういう議題にするかは、ただいま外交チャンネルで話を詰めると同時に、一力、総理を中心にして近く検討しなすればならねと考えておるところでございます。
  229. 横路孝弘

    ○横路分科員 私は今日の情勢を考えてみて、ある意味で言うと軍事の占める比重というのは非常に低くなってきているのじゃないかというように考えておるわけですし、それから朝鮮戦争、ベトナム戦争というこの二つの戦争にアメリカが介入するということと日米の安保ということの中で日本アジア外交というのは非常に大きな制約を受けてきたと思うのですが、この制約が、ともかくインドシナの戦争が終わるとインドシナ解放という新しい状況を迎えて、私は、日本が独自の外交というものを展開できる、日中の平和条約というのもその一つの柱になると思いますけれども、そういういわば幅を持ち得る状況になった、つまりベトナム戦争の終結というものはそういう意味で言うと、日本外交の幅を広げたということが言えるだろうと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  230. 園田直

    園田国務大臣 その点は同意見でございます。
  231. 横路孝弘

    ○横路分科員 そこで、昨年福田総理ASEAN諸国を訪問したとき非常に歓迎されたのは何かと言うと、福田さんが演説したうちの、いわゆる軍事大国の道は日本は歩まない、他国に脅威を与えるようなことはしない、このときは園田外務大臣も官房長官として御一緒ですね。ですから、その反応は、私は十分受けとめておられると思うのです。そのことは、やはり今後の外交の柱にきちっと据えていかなければいけない。つまりいまは軍事よりやはり経済の問題に、安全保障という観点からもその重点というのは移ってきているし、移していかなければいけない、こういう状況だと思うのですが、外務大臣いかがですか。
  232. 園田直

    園田国務大臣 その点も私、同じ意見でございます。
  233. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり日米会談の中で、私はやはり今日のアジア情勢を受けて、日本としてはそこの態度をはっきりとアメリカ側にも主張すべき点は主張すべきであるというように考えるのですけれども、いかがでしょう。
  234. 園田直

    園田国務大臣 そのように私も考えております。
  235. 横路孝弘

    ○横路分科員 そこで、このブラウン国防長官の発言との絡みなんですが、これはもちろん日本としては、安保に基づいて米軍に施設、区域を提供しているわけですけれども、日本としては、戦闘作戦行動の基地になるというような事態になるということは、これは望ましいことじゃないですね、外務大臣。戦闘作戦行動の基地に日本がなるということは望ましいことではないですね、いかがでしょうか。
  236. 園田直

    園田国務大臣 望ましいことではございません。
  237. 横路孝弘

    ○横路分科員 そこで、今回のブラウン証言ですけれども、米軍の朝鮮半島緊急事態に対する出撃計画と言われるようなものなんですが、この中には日本からの直接戦闘行動といいますか、こういうものを含んでいるとこの証言を見ていいのか、その辺のところがなかなかあいまいなんですが、そこはどういうぐあいにこれを受けとめたらいいのでしょう。やはりこれは含んでいるのでしょうね。
  238. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど先生からもお触れになりましたが、ブラウン長官の証言につきましては、まだ正確な議事録が入っておりませんので、正確にどういうことを言ったかということは捕捉しがたいわけでございますが、新聞その他在米大使館からの報告を徴しますと、ブラウン長官は、朝鮮半島で特別の事態があったときに、近隣におきますところのアメリカの兵力をその事態に対応させることができるような体制にあるということを述べたのが主眼でございまして、事実、その辺のブラウン長官が使いました表現についても、われわれはこれこれの軍隊を移動することができるというような、クッドムーブというような言葉を使っているようでございまして、具体的にそれが戦闘作戦行動を行うとかいうようなことを特に言われたものではないように受けとめております。
  239. 横路孝弘

    ○横路分科員 そうすると、今度の証言は、つまりそこら辺のところが非常に大事なところなんですが、戦闘作戦行動日本から直接行うということを前提とした証言ではない。証言の中にはそういうことを断定したような証言はない、こういうように理解してよろしいわけですな。
  240. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 そのとおりでございます。  具体的にこれはいま申し上げましたように、正確な表現かどうかわからないのでございますが、私どもが捕捉いたしましたところで、たとえば新聞などで問題になりましたところの表現は、ブラウン長官はこのようなことを言われたように私どもは受けております。すなわち、米国は状況により、また米国の決定に応じて、地上兵力、すなわち沖繩にある海兵師団及び旅団を二、三日以内に移動することができるだろう。そして、米国からもハワイにある師団及び北西海岸にある数個師団を空輸、海路により数週間から一カ月以内に移動することができるだろうというようなことを言っておられるようでございます。したがいまして、これをもって日本から戦闘作戦行動を発進させるというようなことを直接言ったものとは私どもはとっておらないわけでございます。
  241. 横路孝弘

    ○横路分科員 在韓米軍の撤退に伴って、在日米軍の行動の範囲とか行動の態様について、事前に何らかの協議みたいなものは日本政府との間にあったのですか。
  242. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ございません。
  243. 横路孝弘

    ○横路分科員 そうすると、事前協議の運用についても、在韓米軍が撤退するからといって変化はないというように解釈してよろしいでしょうか。
  244. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 そのとおりでございます。現に、昨年福田総理アメリカを訪問されましたときに、鳩山大臣がバンス国務長官から、在韓米軍の撤退によっても、事前協議の問題には何ら影響はないという点を明確にした発言を聴取いたしております。
  245. 横路孝弘

    ○横路分科員 ちょっと防衛庁の方にお尋ねしますが、チームスピリット78ですね、緊急事態に効果的にいつでも対応できる能力を確保するための韓国での軍事演習と言われていますけれども、この演習そのものについては、何らかの連絡みたいなものは、軍事サイドではアメリカの方からあったのでしょうか。内容についてはどういうように皆さんの方で掌握されているのでしょうか。
  246. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 実はこのチームスピリットにつきましては、私の方に最初に連絡があったということではございませんで、ハワイの事務レベルの会議がありましたときに概要のお話があったようでございますが……。
  247. 横路孝弘

    ○横路分科員 いつですか。
  248. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 一月の十六、七日ごろでございます。それから二月の中旬に外務省を通じまして概要というものを入手いたしたわけでございます。
  249. 横路孝弘

    ○横路分科員 そこで、その演習の概要ですが、それはどうなんですか、演習では、在日米軍は、日本の施設、区域からのいわゆる直接的な戦闘作戦行動ということになっているのではありませんか。
  250. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまの防衛局長の御答弁を補足させていただきますと、一月の半ばのハワイにおける安保事務レベルの協議におきまして、このチームスピリットは、ことしもこの演習をやるのであるという概要の話がございました。御承知のようにチームスピリットは昨年も、七七年、七六年と二回やっておりまして、同じような演習をことしもやるというお話がございました。今月の中旬に在京アメリカ大使館から私どもに、このチームスピリット78についての一般的な説明がございました。一般的な説明と申しますのは、特にその演習の詳細な運営についての説明ではなくて、大体の規模につきまして説明があったわけでございます。
  251. 横路孝弘

    ○横路分科員 外務省の方にはそういう説明だろうと思いますが、防衛庁の方にはもうちょっときちっと軍事的な説明をなさっていると思うのですね。これはどうなんですか。在日米軍は、やはり日本からの直接戦闘作戦行動というものの中に含まれているのじゃありませんか。
  252. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 これは米軍と韓国軍との共同演習でございますので、具体的な内容というものは詳しく私どもの方に連絡は来ておりません。したがいまして、いま外務省の方でお答えした以上に、その演習の想定、状況等について詳しいことは来ていないわけでございます。
  253. 横路孝弘

    ○横路分科員 ミッドウェーが出ていったり、それから沖繩の海兵隊も行動開始するということで、全然連絡がないはずはないわけですが……。  そこでちょっと質問を変えますが、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明というのがありますね。そのときの佐藤総理の、いわゆるナショナルプレスクラブでの演説があるわけですね。「事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する」ということがあるわけです。国会答弁では、ケースを見て、イエス、ノーもあり得る、こういうことになっているわけですけれども、アメリカの方の受けとめ方としては、毎年行われていると言っても、それぞれ演習そのものの中身はやはり違ってきているわけなんで、こういうものを見ますと、自由な基地使用というものをアメリカ側は受けとめているのじゃないですか。アメリカの方ははっきりしているのですか。日本の場合は、ノーと言う場合もあるのだぞということをきちっとアメリカの方で認識しているのですか。
  254. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この点は、従来もたびたび国会において御論議があったところでございますが、アメリカは、そもそも条約上の義務として、事前協議にかけるということを約束しているわけでございまして、そして事前協議の問題に関しては、日本政府の意思に反して行動することはないということをアイゼンハワー大統領以降、トップレベルで日本側に明らかにしている実態でございます。日本側は、事前協議には、イエスもあり、ノーもある、核問題についてはノーと言うという態度は、これはもうきわめて明確になっておりまして、アメリカ側もこれは当然に理解をしているところでございます。
  255. 横路孝弘

    ○横路分科員 今度のチームスピリット78の演習で、アメリカ側からの通告の内容とは別に、在日米軍の動きがどうなっているかということは防衛庁でわかるでしょう。在日米軍がもう動き始めているのじゃないですか。どんな動きになっていますか。
  256. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 具体的な動きというものは把握いたしておりません。
  257. 横路孝弘

    ○横路分科員 それはまだ把握していないというのか、把握する気がないというのか。これは日本としては、当然どんな態様の演習をするのかというのは何もアメリカから通報を受けなくたってあなた方の関心の対象でしょう。どういう形で動いていくのかということ、これはたとえば飛行機が飛ぶことでだって押さえることができるわけです。管制を通して見ればわかるわけでしょう。無線を通してその態様を知ることもできるわけですよ。それはどうなんですか。私は在日米軍がどういう対応をしたのかということを防衛庁でちゃんと掌握されて、できれば後ほど報告をしていただきたいと思います。
  258. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 現在私どものところでは承知いたしておりませんけれども、わかる範囲で調べて御報告いたします。
  259. 横路孝弘

    ○横路分科員 外務大臣、今度のブラウン国防長官の証言というのは、やはり今日の在韓米軍撤退という状況の中で、仮定の話ですけれども、朝鮮半島で何か起きたときに在日米軍が真っ先にそこに行く、しかも当面は在日米軍が全部主力部隊となって――そうでしょう、第七艦隊、第五空軍、海兵隊ということになるわけですから。初期の、有事の場合のきわめて主力部隊になるわけですね。それだけに、安保に基づいて提供しているとはいえ、先ほど外務大臣表明がありましたが、日本としては戦闘作戦行動の基地になることは望ましくない。しかし事態はそういう形で動いているわけです。そこで、事前協議に関連して従来から議論されてきているところで、ややもう整理されつつあるわけでありますが、二、三の点だけ確認をしておきたいと思うのです。  従来から事前協議の対象となる戦闘作戦行動というのは、一つは戦闘作戦の命令が出たかどうかだ。それからもう一つは、戦闘作戦のいわば装備、客観的条件と主観的条件と二つの問題が政府の答弁としてなされできたろうと思うのです。四十七年でしたか米国と了解した三つの統一見解というものが出されておりますけれども、それでよろしいわけですね。確認だけですが。
  260. 大森誠一

    ○大森政府委員 戦闘作戦行動についての統一見解というものは、その後も変わっていないわけでございます。
  261. 横路孝弘

    ○横路分科員 そこで、問題は命令なんですけれども、命令というのは在日米軍に出されると同時に日本政府には通告があるのですか。運用上その辺のところは詰めてあるのでしょうか。
  262. 大森誠一

    ○大森政府委員 日米間で了解されております事前協議の対象となる事項に関連する事態が起きます場合には、当然その事前にアメリカ政府日本政府に協議をしてくるというのが制度でございます。事前でございます。
  263. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり、在日米軍に命令が出される以前に日本政府に対して通告があって協議をする、こういうことになっているわけですね。
  264. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 その場合の命令いかんによるのだろうと思います。日本政府との接触が先になるか後になるかということは、命令の内容いかんによるのではないかと思います。
  265. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり事前協議の話をしているわけでありますから、戦闘作戦行動についての命令なわけですがね。つまり問題は、アメリカが知らせてくれなければわからないという仕組みになっているわけですね。そこのところが主観的条件のほかに客観的条件という条件をもう一つの要素として出して、出撃の装備などを見て、命令を出したという事前の通告はないけれども、日本側としてはこれは戦闘作戦行動に従事するための行動ではないかというように判断した場合には、日本政府の方からも協議を持ちかけることはできるわけでしょう。そんな意味で、客観的要件と主観的要件ということが、従来の福田外務大臣当時の答弁なんかを見ますと、大体そういうことになっているように思います。これは確認なんですが、それでよろしいですか。
  266. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 日本政府の側からも事前協議の問題をアメリカ側に提起することは、安保条約第四条に基づいてできるわけでございます。
  267. 横路孝弘

    ○横路分科員 四条ばかりでなくて、六条の事前協議の話です。これはできるのでしょう。
  268. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 六条に定めますところの事前協議そのものは、具体的な行動をとりたいと希望するところのアメリカ側が発議すべき問題であるというのが従来からお答え申し上げていることでございます。ただ、それでは日本側からは一切その問題の論議のイニシアチブをとれないかということになれば、日本側としても幾らでもそのような発議をすることができる。ただし、法律的に厳密に区別すれば、それは日本側から持ち出すのは条約第四条に基づく随時協議の性格のものであろう、こういうことでございます。
  269. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり命令が出されたかどうかといったら、日本政府というのは通告がなければ知りようがないわけでしょう。ただ、しかし、そこで私が日本側から持ち出せると言うのは、従来の政府答弁でも、装備などを見てこれは出撃態勢だと見れば、その場合はやはり事前協議の対象になるんだ。アメリカ政府から申し出がなくても、飛び立つ装備を見れば、たとえば爆弾を積んで爆撃機が飛び立つというような仮定の話をした場合、それはやはり事前協議の対象になる。しかしアメリカ政府からは別に何らの戦闘作戦行動を起こしたぞという事前協議の申し出はなくても、そういう状況も一つの要素じゃないかということで、たとえば四十七年五月二十三日の福田外務大臣の参議院の答弁なんかはそういうように理解していいのじゃないですか。
  270. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 従来からも具体的な事態に応じてということを申し上げているわけでございまして、具体的な事態の一つとしていま先生が御指摘のような装備だとかいう外から見たありさまも入り得ることは当然でございます。
  271. 横路孝弘

    ○横路分科員 たとえば府中にコンバット・オペレーションズ・センターというのがありますね。アラート1から5までですか。そうすると、米軍の行動というのは日本政府としてあそこで当然掌握できるわけでしょう。あそこは自衛隊ばかりじゃなくて、在日米軍の幹部もCOCに一緒におるわけでしょう。そんな意味ではあれは連動するわけでしょう。だからその辺のところはわかるのじゃないですか、どうですか。
  272. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 あそこの指揮所でわかるといいますのは、通常の場合DEFCONが上がったということ、米軍が上がったということはわかると思います。
  273. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり上がっていく段階を見ていって、どこまで上がるかを見ておって、あと行動を見れば、米軍がどういう行動をとっていくのかということはわかるわけでしょう。つまりそこでもって米軍の命令が出たかどうかということは、見ておればある程度わかるわけでしょう。
  274. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 レーダーで届く範囲が、米軍の行動というのはわかるわけでございます。
  275. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり外務大臣、これはあたりまえのことなんです。いままでのことと別に新しいことを議論しているわけじゃなくて、ただ、こういう段階ですから、従来の答弁を確認しておきたいわけです。つまり事前協議の対象に戦闘作戦行動――これは日本の施設、区域からの行動ですね。これは該当するんだ。では一体米軍の行動が戦闘行動であるかどうかということについては、戦闘作戦行動だという命令が出た場合だ、命令が出て命令に従って行動した場合だというのが一つあるわけです。もう一つは、命令が出ているかどうかは米軍が申し出をしなければわからない。従来の答弁は、ですよ。わからない。しかし、ここに福田さんの答弁がありますが、装備を見ていると、どうも客観的に戦闘作戦行動じゃないかという場合がある。この場合どうするかと言えば、日本の方からも、事前協議の対象にかかるのじゃないかということを、アメリカとの間に、こちら側から今度は話をして、つまり米軍は、できるだけ事前協議の対象にしたくないということを考えるでしょうから、そうでしょう。軍事的な行動を敏速にやるときに、日本政府に一々通告しているというようなことは、アメリカの場合は、軍事的には考えようとしないわけでしょう。ですから、そこのところを見ておって、たとえば防衛庁の府中でやっておるところのCOCを見たって、米軍の行動がわかるわけですし、それから各基地を見ていれば、爆弾を積んでどんどん飛び立つというようなことで、客観的なそのときの情勢もあるでしょう。そうすると、これはやはり戦闘作戦行動じゃないかと言って、日本からそこのところにチェックをかけるということは、従来の答弁の大きな変更じゃないですよ。その延長上としてあるのじゃないか。これは外務大臣、いかがです。
  276. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大臣のお答えの前に、まず一点として、先ほど来私が申し上げておりますことは、事前協議の問題ではないかということを、日本側からアメリカ側に持ちかけることはできますということを従来も御答弁申し上げてあるわけで、法律的にその根拠は何かと言えば、条約に照らせば第四条の問題であって、第六条の事前協議そのものではないということを申し上げたわけでございます。  それからもう一つ。私どもといたしましては、アメリカ側が事前協議を行うべき事態であるにもかかわらず、意識的に事前協議を済ませないでしまうというようなことがあるというふうには全く考えていないわけでございまして、これは条約上の義務でございますから、当然にアメリカ側は、事前協議を行うべき事態においては、その事前協議を行ってくるというふうに信じているわけでございます。
  277. 横路孝弘

    ○横路分科員 そうすると、本当にアメリカを信じるというだけなんですが、軍事の態様というのは軍事の態様なんでありまして、それはやはり違うわけですよ。  そこで、ちょっとお尋ねしたいのですが、有事の際に在日米軍が動くとして、朝鮮半島の有事の際ですよ、戦闘作戦の命令を受けないで在日米軍が行動するなんということは、これは常識的に考えられますか。
  278. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 それは考えられると思うのでございますが、まず航空部隊が向こうに行って作戦をする場合に、最初に移動命令をもらって向こうに着く、そして向こうの体制の中に入るということは当然あり得ると思います。
  279. 横路孝弘

    ○横路分科員 しかし、それはいまの太平洋における米軍の指揮系統そのほかから言って、戦略空軍、戦略海軍の関係、細かい議論をちょっときょうやれませんけれども、それから言って、そっちの方の指揮に入るのじゃなくて、こっちがむしろ指揮を持ってやるわけでしょう、たとえば第七艦隊なんかの場合は、そんな意味で、海兵隊だって韓国の方の指揮下に入るわけじゃないので、移動の場合もひとつはっきりさせておきますが、移動の場合も、戦闘作戦行動の命令を受けての移動は、たとえば韓国に一たん寄って、どっかの部隊に入ったとしても、これは事前協議の対象になるわけですよ。そうですね。
  280. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 ちょっといまの行動概要を申し上げますと、実は、御承知のように第五空軍の隷下に韓国の部隊がございます。しかし、有事の際にその部隊は、指揮系統は、在韓米軍の隷下に入るということになっておりまして、いわゆる作戦をやるときの運用というのは、指揮系統が現在のまま続いていくということではないというふうに理解をいたしております。
  281. 横路孝弘

    ○横路分科員 移動の場合はいいわけですね。移動の場合でも、それが命令を受けておれば、事前協議の対象になるということも確認しておいていいですね。
  282. 伊藤圭一

    ○伊藤(圭)政府委員 移動は事前協議の対象にはなりません。
  283. 横路孝弘

    ○横路分科員 単純な移動ではなくて、戦闘作戦行動の命令を受けている場合は、これはいままでの答弁から言うと、移動の場合でも、つまり戦闘作戦行動と密接不可分な移動については、これは事前協議の対象になるというのが従来の政府答弁の解釈ですよ。
  284. 大森誠一

    ○大森政府委員 何が米軍のわが国における施設、区域を使用しての戦闘作戦行動への発進であるかという点につきましては、その個々の場合の行動の任務、態様を考慮して考えざるを得ないわけでございまして、単なる移動という場合には、これは事前協議の対象にはならないということでございます。その移動というのが、わが国の施設、区域からの直接の戦闘作戦行動の発進であるという場合には、これは事前協議の対象となる、こういうわけであります。
  285. 横路孝弘

    ○横路分科員 たとえば、同じいまのような状況で、つまり日本を発進後に韓国内の基地で補給などをして、その後行動に移る場合はどうなるかという問いに対して、昭和四十三年の三木外務大臣昭和四十七年の福田外務大臣が、いずれも日本の基地を使って戦闘作戦行動の命令が出て行動したら、行ったところが韓国内の米軍基地であっても、フィリピンに寄ったとしても、フィリピンというのはベトナムの場合ですけれども、寄ったとしても、それは事前協議の対象になるのは明らかだという答弁なんです、従来の答弁は。だから、それはいいわけでしょう。確認だけしてもらえばいいわけです。
  286. 大森誠一

    ○大森政府委員 先ほど申し上げましたように、わが国の施設、区域から戦闘作戦行動の任務を持って出た場合、そういう場合は事前協議の対象  になります。
  287. 横路孝弘

    ○横路分科員 だから、移動であろうと何であろうと、それはともかく全部事前協議の対象になるわけです。今日のアジア情勢の中で、ブラウン国防長官の発言というのは非常に重要な意味を持っておりますので、事前協議について若干の議論をして、従来の確認なわけですけれども、変更されていないということを御確認いただいたわけでありまして、次の問題に移りたいと思います。防衛局長、結構です。  そこで、アジアの情勢なんですが、先ほど私が指摘しましたように、インドシナ解放後、ある意味で言うと、日本が幅広くアジア外交を展開できる、そういう余地が出てきたのじゃないか、まさにそのとおりだというようにお話があったわけです。その場合に、アジアといってもかなり範囲が広いわけですし、従来、たとえば日本経済協力等を見ても、特定の国に集中をしているわけですね。したがって、ASEAN諸国ばかりでなくて、インドシナ半島からあるいはインド大陸、あるいはもうちょっと広げれば、アジアの範疇に入らないのでしょうが、恐らくニュージーランドというあたりまで含めた全域における日本外交基本的なあり方というものをいまきちっとすべきじゃないか。とりわけASEAN諸国とインドシナ半島との間の、それぞれの発展のために、調整的機能を含めた役割りというものを日本が果たせる立場にあります。その基本的な方向について、外務大臣はどのようにお考えですか。
  288. 園田直

    園田国務大臣 この前ASEANに参りましたときも、そういうことを考えの中に置きながら、各国の首脳と総理と会談をいたしました。いずれにいたしましても、インドシナ半島に対する日本態度、これに対する援助、こういうものをASEANの諸国理解を深めてきたのは、いま発言されたような趣旨からでありまして、やはりASEANというのは、ビルマを含むニュージーランド、豪州を入れた地域を考えて、平和と繁栄を願う、こういうことが基本であると考えております。
  289. 横路孝弘

    ○横路分科員 アジア諸国の貧富の格差とか、成長率の差というのは非常にはっきり出てきているいまの状況ですね。日本援助というのが特定国に集中してきたというのは、実績を見ればはっきりしているわけです。ほとんど政府開発援助ですね。アジア諸国の中でも日本政府が行わなかったような国もあるわけで、対象もこれから広げていかなければいけないということだろうと思うのです。  そこで、先日の予算委員会の一般質問に答えて外務大臣は、ロメ協定について、いわゆる所得の安定制度のようなことも考えたいというようなお答えが出たのですが、これは政府としての、まとまった、そういう方向で行くのだという政策になっているのでしょうか。
  290. 三宅和助

    ○三宅政府委員 本件に関しましては、実は総理が東南アジアを訪問いたしましたときに、所得安定のスキームをアジアにどういうぐあいにやっていくかということにつきましては今後共同で研究しようということになりまして、十一月の第二回のジャ。ハンASEANフォーラムにおきましても、さらに事務的に共同研究をやろうということになっております。そういう方向で現在検討中の段階でございます。
  291. 横路孝弘

    ○横路分科員 ロメ協定の方はアフリカ、カリブ海、太平洋地域の開発途上国が大変たくさん参加しているわけですね。もちろん所得補償ばかりじゃない、さまざまな問題があるわけです。ただ、これは一つの地域経済の協力体をつくるということになるわけですね。そこに日本としてどういう道を選んだらいいのか。フランスなんかはわりあいとそういう自分たちのグループをつくっていこうという考え方が全体として強いようです。フランス社会党なんかも地中海の何か経済圏みたいなものを考えておるようですね。ドイツなんかの場合はわりあいとそういう自分のところの地域経済圏というものをつくるという考えじゃなくて、かなりあちらこちらと貿易をしていく、こういうことになっているわけですね。  そこで問題は、ロメ協定、これは南の国からの要求になっているわけですが、もしっくるとするならば、ASEANだけで地域経済ブロックをつくるというのは、やはりいま外務大臣が答弁された方向と違うんで、そこはもう少し広く考えるべきじゃないかということと、それから地域経済協力体をつくる場合には、特に日本の場合は従来から指摘されているのは、石油にしても、さまざまな資源を依存する、その依存が一つの国に集中して依存し過ぎるんじゃないか、もう少し散らしていく方が安全保障という観点からいいのではないかというような議論が大変むずかしいところだろうと思うのであります。その辺のところを、基本的にはロメ協定のような協定というのはやはり南の国の要求にこたえるという立場に立てば必要だ、しかし、それが狭い経済ブロックをつくるということになれば問題が起きてくるんじゃないかというように考えておるわけですが、そこら辺のところはどういうぐあいにお考えでしょう。
  292. 園田直

    園田国務大臣 注意しなければならない一つには、ナショナリズムに通ずるブロックイズム、こういうものでないように警戒しなければならぬということ、一つはいま言われた資源その他のことを考えましても、これは広く中東、アフリカ、こういうものも入れたことを考えなければいけないと思っております。
  293. 横路孝弘

    ○横路分科員 その一般論はそれで大変結構なんでありますが、そこでいまの御答弁だと、しかしASEAN諸国との間に詰めようということなんでしょう、そこは違うのですか。
  294. 三宅和助

    ○三宅政府委員 この点につきましては、いま大臣からお答えありましたように、グローバリズムとの関連におきまして果たしてどうなるのか、ロメ協定と申しましてもいろんなエレメントがございます。また輸出所得補償方式にいたしましてもいろいろな方式がございますものですから、今後事務的にASEAN諸国との間で共同研究してこの問題について研究していこう、具体的に検討していこうということでございます。
  295. 横路孝弘

    ○横路分科員 いまインドシナ半島の情勢も、われわれ見ておってもさっぱりわけがわからぬ状況なんですが、これはちょっと外務省としてはどういうぐあいに把握されているのかということと、インドシナ半島とのかかわり合いは、じゃあどのように持とうとしておられるのですか。
  296. 三宅和助

    ○三宅政府委員 インドシナ情勢の中でベトナムに関しましては、経済再建の方向に着々と進んでいるというぐあいに理解しております。それからラオスにつきましては一応の安定が保れておりますが、ことしの春以降には食糧問題があるいは出てくるということで、経済的に若干不安定な面が出るというような見方がIMFその他からございます。カンボジアにつきましては、御承知のように日本側はコンタクトを持っておりませんし、いろいろな情報を聞きますと非常に経済的にはむずかしい情勢にあるというぐあいに聞いております。  それから第二点、日本との関係でございますが、御承知のようにベトナムとの関係最大の問題点は債権債務の解決でございまして、これにつきましては先方と非常にいい方向交渉が進んでおりまして、近く問題の解決が得られることを期待しております。ラオスの関係では通常の経済協力関係が進んでおります。カンボジアとの関係につきましては、現在のところ外交関係はできているということでございますが、大使館がまだ設置されておりませんものですから、具体的なコンタクトが実際にはできていないという状況でございます。
  297. 横路孝弘

    ○横路分科員 繰り返しになりますけれども、日中平和友好条約締結されるということになりますと、それが一つの柱になるだろうと思うのですね。同時に、従来はASEAN諸国を中心にいろいろと経済的なてこ入れを日本も行ってきた。しかし、たとえばインドなどを見ますと、インドの場合ですと、たとえば貿易というのはイギリスあたりとの貿易は非常に盛んだけれども、日本との間ではまだまだだという関係にあるわけですね。したがって、全体をながめながら、いまこそやはり日本がある程度アメリカから離れてと言うと皆さんの方に抵抗があるかもしれませんが、ある意味ではやはりアメリカ世界政策と関係なしに日本独自の、そういう経済を中心とした外交方針というものをアジアについて考え得る状況が日中平和有効条約締結後の情勢、しかもインドシナにおけるベトナム戦争終了という今日の情勢で私はあるのではないかと思うので、そこのところを外務大臣としてしっかり立てていただきたい、われわれも大いに議論に参加していきたいというふうに考えておりますが、くどいようですがいかがでしょう。
  298. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃったようなことをやることが、米国とも話し合いができ、また相談にもなる出発点だ、こう思いますので、私はその方面に特に注意をし、具体的にそれぞれの計画を事務当局に研究させておるところでございます。
  299. 横路孝弘

    ○横路分科員 どうも時間がなくなってきたのですが、そこでアジアからちょっと先の中東になりますが、先ほどもちょっと議論がありましたけれども、「通産ジャーナル」という、これは通産省の広報誌でありますが、これの中に「石油ショックが起きると、中東へ三木さんが行き、中曽根さんが行き、河本さんが行って例えばイラクにGGベースで二十億ドルもの約束をしてきた。ところが相手国の事情、手続きやらそれがなかなか実現しない。」外務省というのはどうもフォローをさっぱりしないので困るという話が、これは通産省の広報誌に載っておるわけでありますが、園田外務大臣、中東訪問されて、従来の中東諸国日本に対する不満というものも相当たくさんあったのではないかというように考えております。あちこちで外務大臣の発表されたものもいただいて読ませていただきましたけれども、この一月中旬から行かれた中東訪問、一体その訪問の目的と成果といわれるようなものについてどのようにお考えでしょうか。
  300. 園田直

    園田国務大臣 私が中東に参りましたのは、日本外交が中東には全然手を伸ばしていなかった、したがって、参りますると約束を実行しないという不満よりも、むしろ日本が全然自分たちの方に目を向けない、手を出さない、こういうことでありました。その反面、非常ないろいろなまじめな相談や歓待を受けたわけでありますが、私はモスコーからすぐ中東に行きましたのは、いま世界の平和と繁栄の争点が中東になっていると思います。それからもう一つは、日本が中東と関係を結ぶことを、単に石油の関係で売る方、買う方、こういう関係ではうまくいくはずがないのであります。それを離れて中東の繁栄に協力をしたい。そして私が行ったことは露払い程度であって、私が行って向こうの話を聞いて帰って、これを外務省で具体的に検討して、大体話が具体的になったならば、ぜひ総理に一遍訪問願って、これを形づくりたい、こういうことでやっておるわけであります。
  301. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり石油を買うばかりじゃないということですが、経済的な協力のほかに、中東問題はイスラエルとの問題が一つあるわけですね。多分その点について、イスラエルの譲歩を迫るような国際的な環境づくりに日本ももう少し協力すべきだというような話というのは出たはずだと思うのです。結局中東との関係を考えてみた場合に、日本がプラント輸出して経済の工業化に協力をするというばかりでなくて、こういう政治問題というのは避けて通ることのできない問題だと思うのですね。そのことをきちんと、その後国連の場そのほかを含めて日本政府がどういう行動をとるのかということを今度訪問した中東諸国というのは見詰めているのではないか。経済協力の話もさることながら、やはりその辺のことがあるのではないかと思いますね。その辺のところは、訪問されてどういう話になったのか、今後具体的にどういうことを日本政府としてやっていかなければいけないというふうにお考えになっているのか、これはどうでしょうか。
  302. 園田直

    園田国務大臣 いま中東で行われている和平工作については、積極的に私もこの中に介入するつもりで出てまいりました。そこで、モスクワでも中東の話を大分聞かれましたが、中東ではモスクワの話を逆に聞かれた。そして、いま言われたとおり、率直に言うと和平工作について日本がなすべき役割り、何かやれることがあるかということでむしろこちらから進んで出たわけであります。これについては、二、三件日本にぜひ頼みたいということが出てきたわけであります。中東では、イスラエルを押さえ込んでやろうという考え方ではなくて、どのようなかっこうでもいいからいま行われている和平工作を成功させたい。そこで、そのためにはイスラエルの面目も立つように自分たちは考えておるのだ。一方にはサダトというものの独走的な動きを内心は支持しながらもアラブ諸国の足並みをそろえる。もう一つは、イスラエルにも面目を立てて話し合いができるように、こういうことで、一つはイスラエルの面目を立てるということで協力を願いたい。もう一つはアラブ非産油国、こういうものの発展、繁栄について協力を願いたい。もう一つは、世界各国に対する日本役割り。この三つを頼まれましたわけでありますが、具体的にはまだそれ以上申し上げるわけにはまいりません。
  303. 横路孝弘

    ○横路分科員 つまり、非常に大事なのは、いつも経済ベースの話だけで、それぞれの国の置かれている政治的な情勢なり状況なりというものの判断について、ここで通産省が言っている中に外務省のフォローアップが足りないということの指摘があるのですね。だから、約束したけれども、どうもそれがそのままになっていて、一体どうなったのかということを在外公館でフォローしてない。これは通産の言い分でありますから、皆さんには皆さんの言い分があるのでしょうけれども、その辺のところの目配りというのは非常に大事なのではないかというふうに思います。外務大臣が行って、帰ってきてからの行動を中東諸国というものは見ているわけですね。いままで何回もそれの繰り返しをしてきたわけでしょう。したがって、そのことを繰り返すことのないように要望をしておきたいと思うのです。  そこで、時間の配分がまずくていつも時間切れになってしまうのですが、政府のいわゆる海外協力、五年間で倍増にするということで、それでもことしDACベースにはまだまだいってないわけですね、グラントエレメントにしても対GNP比にしても、問題は、単に金額だけ倍にすればいいというのではなくて、倍にする中身は何かということが非常に問題だと思うのですね。倍にしていく中身はどういう方向でやるのかということについては、その調整に当たるのは一体どこでやっているのですか。やはり外務省が中心になってやるのですか。経企庁なんですか、通産省なんですか。
  304. 武藤利昭

    武藤政府委員 外務省が一応中心になりまして各省と御相談をしながら経済協力の政策を進めていくということになっております。
  305. 横路孝弘

    ○横路分科員 それと牛場さんのところとどういう関係になるのですか。何かこう見ておると、あちらはもっぱらアメリカとEC担当で、皆さんの方、外務大臣の方は中東、アジア担当みたいな感じを受けるのですが。たとえば今度債務の問題でUNCTADの会議が行われますね。ああいうところにはどこから人を出して、政府方針というのはどういうぐあいにしているのですか。
  306. 武藤利昭

    武藤政府委員 UNCTADの会議でございますので、主管は外務省国連局がやっておりますが、実体につきましてはまた各省と御相談しなければならない問題がございます。実体の問題と申しますと、外務省の中でも経済協力局が御相談にあずかる、それからまた各省とも御相談をしながら対処方針をつくる、こういう体制でございます。
  307. 横路孝弘

    ○横路分科員 そうすると、五年間で倍増するという方針を決めたけれども、中身をどういうぐあいにしていくのかということはまだ全然協議が調っていない、こういうことですか。
  308. 武藤利昭

    武藤政府委員 五年間に倍増以上にするということにつきましてはもう各省間でも合意に達しているところでございますが、その中身につきましては、ただいま御指摘のございましたとおり援助の質の問題は非常に各国に比べておくれておりますので、これもできるだけ早く各国並みの水準まで引き上げなければならないという認識は各省あるわけでございますが、それをどういう段取りでどういうスピードで各国並みの水準まで近づけるかということにつきましては、まだはっきりした線は出ていないという状況でございます。
  309. 横路孝弘

    ○横路分科員 線は出ていないじゃなくて、その作業はやっているのですか、つまり五年間倍増以上にするということの中身をどうしていくのかということです。これはこの前も指摘をしたのですけれども、日本の場合の援助というのはやはり資源確保、市場確保という側面が非常に強いですね。ところが、南の国の方の要求というのは、この前ASEAN諸国を福田さんが訪れたときにフィリピンのマルコス大統領から指摘があったように、やっぱり社会インフラの問題とか、もうちょっと民衆に直接接するような農業とか漁業とか医療とか教育とかいうところの援助をしてもらいたい。これはそれぞれの国によって要求というものは違うと思いますけれども。その辺のところをきちっと外務省なら外務省が責任を持って中身を決めないと、数字だけ決めて金だけ出せばいいということになれば、結局は何か計画が延びていって、最初の計画だけはあっても実際にお金は出ていかないということになってしまうのじゃないかと思うのですね。そこら辺のところを。
  310. 武藤利昭

    武藤政府委員 最初の質の問題につきましては、まさに御指摘のような問題があるわけでございまして、政府関係当局とも質もよくしなければならないということは留意しているわけでございます。一例を申し上げますと、ただいま御審議をいただいております五十三年度政府開発援助予算は、総額といたしましては一五・八%の伸びになっているわけでございますけれども、その中で無償の伸びは非常に高い。計算の仕方によりますが、九〇%近い伸びになっている。同じ開発援助予算の中で無償の占める割合が大きいということはいわゆるグラントエレメントを引き上げる効果があるということでございまして、そういうような手だてを通じまして今後とも援助の質を高めるために努力してまいりたいと思っている次第でございます。  それから援助の出し方についてでございますが、これも私どもただいま先生おっしゃったようなことは非常に意識しているところでございまして、何も日本としまして経済的な見返りのために経済協力しているという意識ではなくて、あくまでも相手国の必要に応じまして日本としてできることについて援助をしていくということでございますし、また、その援助の対象といたしましても、従来のような工業中心のプロジェクトからできるだけ相手国の国民の必要とするもの、国民の生活に密接に関連するような事業、たとえば社会的なインフラストラクチュアでございますとか、病院でございますとか、農業開発とかいうものに私どもの経済協力重点を移していこう、まさにそういうことをいま考えている段階でございます。
  311. 横路孝弘

    ○横路分科員 外務省が暮れに出した報告書の中にいろんな試案という形で中期援助計画試案ですか、これは外務省がわざわざ出した意味というのはどういう意味なんですか。これが出てから「通産ジャーナル」が出されまして、そこで今度は外務省は一定の批判を受けているわけですが、各省でやり合ったって仕方がない。つまり、こういう形で外務省が出したのは私は非常にいいと思うのですが、ただ、それならばもうちょっと政府方針としてきちんと各省調整の上でやるべきじゃないか。試案をわざわざ出されたというのは、どうも何となく各省庁間にいろいろわれわれにわからないもやもやしたものがあって、まとまらぬところで外務省がぽんと打ち上げたという感じがするわけですね。中身は非常に結構なんですがね。ただ、どうせ出されるのなら、外務省でも出す、通産省でも出す、経企庁も出すということじゃなくて、やはり政府方針としてまとめたものをきちっと出された方がいいのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  312. 武藤利昭

    武藤政府委員 昨年出しました私どもの方の資料でございますけれども、これはまさに先ほど私が申し上げましたような援助の量を倍増以上にする、しかも質を国際水準まで高めるというためにはどういうことが必要かというようなことを五年間にわたって計算してみるとこういうそろばん勘定になります。つまり、五年間で倍増以上にいたします、質も改善いたしますと言いましても、何らかのめどがなければなるまいということで一応計算してみたいわゆる試案でございます。まさに各省全部協議の上でそういうものができればそれにこしたことはないわけでございますが、なかなかそういう状況にはならない。ともかく外務省として外務省なりの姿勢を出していろいろ論議を呼ぼうというのがその趣旨であったわけでございます。
  313. 園田直

    園田国務大臣 ちょっと一言。  経済援助で御注意がありましたが、やはり回ってみますと、大型プロジェクトばかりやって、そしてその経済協力が、あるいは市場あるいはその他のことにやられているので、それは、完成した暁に、大衆とこちらが協力した事業とがだんだん離れていっているような気がいたします。  御指摘のとおり、ASEANの国々も近ごろはそういうことに気がついて、民衆の、あるいは地域の住民の利益を図るということに経済協力の要求が出てきたことはいいことでありまして、われわれも十分注意して、質を改善していきたいと思います。  それからいまの書類は、いろいろそういう意見がありまして、実は、通産省から出された白書には外務省も参画しておるわけでありますから、その参画している外務省がこういうのを出すのはおかしいという意見もありましたけれども、私ちょっと考えまして、こういう際には議論をして問題を起こした方がいい、展望を持ったものを出せ、こういうことで出したわけであります。
  314. 横路孝弘

    ○横路分科員 だから、その出したことをとやかく言っているのではなくて、つまり、政府としてのまとめた方針を――お金の方だけ出しているわけでしょう。つまり、この中身の計画をきちっと持たずにお金の方だけ出すというのじゃなくて、きちっとした統一したものを持った方が、今後の外交の武器にもそれはなるのでしょうし、そこを、どうも調整がつかぬのでということじゃなくてまとめていただきたいし、外務大臣の方で、それはむしろあなたのところが中心になってやるんだという先ほどの局長の御答弁なんで、ぜひ外務省でまとめて、早急にこの案といいますか、政府のまとまった方針というものをつくっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  315. 園田直

    園田国務大臣 はい、わかりました。
  316. 横路孝弘

    ○横路分科員 もう時間が来ましたので、最後になるのですか、技術協力――やはり一つは、外交も結局は人と人とのつき合いだと思うのですね。つまり、人間と人間との交流みたいなもの、どれほどお互いに知っているのかということがやはり何といっても基本になるのじゃないかという意味で言うと、日本海外協力の中で、やはり技術協力といいますか、向こうから留学生、研修生を受け入れる、こちらから専門家を派遣をするということがこのかなめでなければいけないんじゃないかというように思いますが、フランスそのほかと比べてみると、どうしてもやはり日本の場合はまだまだと。来年度予算でもわずか、たとえば研修生の受け入れば百五十人の増加、専門家の派遣は五十人の増員でしかないわけですね。これはどの程度希望があるのか私はよくわかりませんし、どういう形でこの研修生の受け入れをしているのか、その募集の仕方も何かいろいろ問題があるようでありますが、これは希望者は相当たくさん来ているのでしょう。  だから私は、もう時間がないので、最後にまとめて答弁してもらって終わりますが、この人間の交流ということを、今後の方針を立てるときに重視をしてもらいたい。  この前もちょっとお話ししましたが、日本の医薬品というのは、本当に輸出が非常に少ないのですよ。これはなぜかというと、日本で医師の養成をしていないからですね。アメリカやドイツで養成されたお医者さんというのは、自分の国に帰りますと、アメリカの薬、アメリカの機械、ドイツの場合はドイツの薬、ドイツの機械ということになるわけですね。だから、日本で、国内でもまだまだ医者の場合は不足だという状況でありますけれども、やはりそういうことを重視して計画を立てていただきたいというように思いますが、これを最後に御答弁をいただいて終わります。
  317. 園田直

    園田国務大臣 どこの国を回りましても、ASEANでも中東でもまず言われることは、遠いヨーロッパ諸国と近い日本の国を比べて経済協力がどうなっているのか、あるいは技術協力がどうなっているのかということをよく聞かれます。それから、個人の申し込みはわかりませんが、技術の協力、特に研修員の派遣、交換教育、こういうことはどこの国でも国自体として要求は強いわけでありますから、これはもうおっしゃるとおり、技術協力は経済協力以上のものでありますから、十分検討してやりたいと思います。
  318. 横路孝弘

    ○横路分科員 ありがとうございました。
  319. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、大内啓伍君。
  320. 大内啓伍

    ○大内分科員 外務大臣を初め皆さんには、もう大変お疲れだと思いますが、私が最後の質問でございますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  まず初めにお伺いをしたい問題は、米国のアジア離れという問題がよく言われるのでありますが、実はこの問題の認識いかんが日本のこれからの防衛のあり方あるいは外交の進め方について重要な要素になると思うのであります。  そういう意味から実はお伺いをしたいと思うのですが、去る二月二日のアメリカの七九年度国防報告を見ますと、確かにアメリカのこれからの方向というのが、アジアよりか欧州に向き始めている。その中には、欧州ソ連の通常戦力による脅威が最大の地域であり、不穏な脅威が存在する――実は、最近の兵力の移動を見ておりましても、脱亜入欧といいますか、アジアから離れていってその分が欧州に投入されるという事態が確かに起こっているように思うのであります。たとえば、七八年末には在韓米軍の引き揚げが行われる。しかし、西欧においては逆に来年度にかけて兵力の増強が意図されている。たとえば、現有のアメリカアジアにおける勢力は十三万九千人でございまして、これは一九六八年から昨年に至る間に約七十万人の減少が起こっている。しかし、西欧におきましては、アジアの十三万に対して三十万六千人が投入されまして、これがさらに増強の状態にある。  これらの状況を見ますと、確かにアメリカの政策からいっても、これは言うまでもなく、ニクソン・ドクトリン以来の政策からいっても、徐々にアジアの問題はその地域の国家にゆだねていこうというような方向が見られ、これが俗に言うところのアジア離れというような表現になっていると思うのでありますが、外務大臣は、このアメリカアジア離れという問題をどういうふうにごらんになっているか、その基本認識を伺いたいのであります。
  321. 園田直

    園田国務大臣 先般、日米首脳会談が行われましたが、その時期におけるASEANの国々の考え方は、ベトナムから米軍撤退、韓国から地上軍撤退、こういうことを踏まえて、米国というのは真にアジアの平和を守ろうとしているのか、それとも自分の戦略体制を守ろうとしておるのか、こういうことに対する不安が非常に強くて、具体的にそれぞれ発言があったわけであります。  そこで、これについては、先般の日米首脳者会談では、やはり総理からそういう点を発言されて、アジアというものの地位が米国で下がったんじゃないが、不安を持っているという話はしたわけでありますが、今度のブラウン長官の証言、講演、今度の戦闘訓練、昨年も同じ訓練をやったものでございますが、これは一連の戦闘訓練よりも、こういうことに対する政治的配慮が相当あると私は判断をしておりまして、韓国から地上軍が撤退するが、その撤退の実情はこうこうだ、いざ有事の際にはこのように米軍は有事の態勢がいっでもできる、したがって、アジアの平和に対して後退するのではないというゼスチュアも相当含まれておると思います。しかし、いま先生がおっしゃいましたとおり、ニクソン・ドクトリンからだんだん戦略的な配置が変化していることは事実でございますが、そこでアメリカは、現体制より以上後退したりアジアの平和に対する責任を離れることはない、こういうことをいま力説をし、具体的に示そうとしておるところでありまして、ヨーロッパとアジアと比べて、ヨーロッパに戦略上の重点、攻撃、防御の主力が形成されていることは以前と同様でありますが、今度特にアジアから引き揚げて、そしてこれをヨーロッパに持っていく、アジアをだんだん手薄にしていくとは判断しておりません。
  322. 大内啓伍

    ○大内分科員 そうしますと、外務大臣見解としては、現状以上のアメリカの極東における勢力の後退はないであろうというようなお説だと思うのです。これは実は二月二十日のブラウン国防長官のロサンゼルスの世界問題協議会における演説の中にも相当はっきり述べられておりまして、米国がアジアから引き揚げつつあるという見方は間違っているということをストレートに言っておられます。外務大臣見解もほぼそれに近いものだと思うのであります。にもかかわらず、たとえば国防報告におきましては、日本は西太平洋地域に空海及び他の戦力で強力な防衛線を配備する能力を保持すべきである、こういうふうに言っていることも実は相当重要なポイントだと思っているのであります。つまりアメリカは現在程度のプレゼンスをアジア、極東に維持しつつも、各国に対して、特に日本に対しては西太平洋地域において空海及びその他の戦力、恐らくこれは艦船護衛と思われますが、そういう点についての能力を向上させてほしい、つまりそういう面での自主防衛力というものを強化してほしい、こういうふうに願っていると見られますし、これは決して最近だけではなくて、シュレジンジャー国防長官以来の発言の中にも見られていると思うのであります。この辺については外務大臣はどういうふうにごらんになっておりましょうか。
  323. 園田直

    園田国務大臣 私も演説やあるいは発言の中にそういう個所があることを聞いております。そしてまたそれぞれ考えておりますが、日本の自衛力を日本が独立を守るために十分な整備をすることは必要でありますけれども、日本国憲法の枠外に外れて任務や使命を達成することはできないわけでありますから、その点を判断しながらそういう話を聞いているわけであります。
  324. 大内啓伍

    ○大内分科員 端的にお伺いをいたしますが、アメリカ日本に対して自主防衛能力の強化を求めているというふうに認識しておられますか。
  325. 園田直

    園田国務大臣 会談とかあるいは政府に対する発言では、そのようなことはいままでのところ何にもありません。
  326. 大内啓伍

    ○大内分科員 何にもないということはないのじゃないでしょうか。たとえばいま私が申し上げました国防報告の中にもはっきり入っておりますし、あるいはブラウン国防長官の演説の中にもはっきり入っておりますし、それからその前のシュレジンジャー国防長官もその点ははっきり言っているのじゃないでしょうか。ですからいまの外相答弁は事実と違うのじゃないでしょうか。これらの発言は言うまでもなく日本及び日本政府に対して言われていることであって、日本国民に対して直接呼びかけがなされたものではありません。いかがでしょう。
  327. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 アメリカ側の認識といたしまして、北東アジア、西太平洋地域の平和安全の維持にとって日本が非常に重要である、そういう認識は当然のことながら持っていると思います。他方、それではその重要な日本が軍事的に何らかのことをなすということを向こう側が要求しているかという点になれば、これは防衛力の整備日本が自主的に憲法の範囲で行うという点についてはアメリカ側も十分理解しているところでございます。向こう側から何らかの軍事的負担を要求するというようなことはないというふうに考えて「おります。
  328. 大内啓伍

    ○大内分科員 本当にそうでしょうか。私の知っているアメリカの高官の言質では、日本の防衛力の強化という問題についてやはりアメリカは大きな期待を持っている。私も実は昨年アメリカの方に参りましてモンデール副大統領以下との会談を行いましたけれども、そういうことははっきりおっしゃいますが、日本政府は全然聞いてないわけなんでしょうか。いまの中島アメリカ局長のお話では、もちろんアメリカ日本も独立国でございますし、それぞれ内政不干渉という立場をとっておりますから、一つ方向を押しつけるようなそういうゼスチュアはなさらないと思うのでありますが、少なくとも日本認識として、日米基軸と言われるその相手国であるアメリカ日本の自主防衛強化についてどういう期待を持っているかということについて、日本外務省なり政府が一定の認識を持つということは当然だと思うのでありますが、これは外務大臣いかがでしょう。
  329. 園田直

    園田国務大臣 私、答弁いたしますときに、言えないことは言えませんと言うし、ないことはないとはっきり言うくせがあるわけでありますが、日米首脳者会議でもその話は全然話題になりません。それからその他の外務大臣外務大臣の話にもそういう話題は出てまいりません。ただ、おっしゃるとおりに、議員の方とか政治家とかに会うと、ただの理論だとかあるいは日本は自分の防衛だけは自分でやれとか、そういう話題はありますけれども、政府間折衝でいままでのところ出てきたことはございません。
  330. 大内啓伍

    ○大内分科員 そうしますと、昨年の九月でありましたか、三原防衛庁長官がブラウン国防長官と会ったときに、日本に対して空海及び艦船護衛について防衛力の強化が望ましい、こういうことを言われたことはうそだとおっしゃいますか。
  331. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ブラウン国防長官が三原長官に言われたことを私、いま正確に記憶いたしておりませんけれども、当時、巷間アメリカ側からいわゆる六項目の要求があったというような話がありました。そのような要求は一切なかったということを防衛庁の方から伺っている次第でございます。
  332. 大内啓伍

    ○大内分科員 それでは、この前のハワイ会談ではいかがですか。アメリカから具体的な要望があったでしょう。
  333. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ハワイとおっしゃられるのは、日米の安保事務レベル協議のことかと存じますが、そこでもそのようなアメリカ側から要求があったという事実は一切ございません。
  334. 大内啓伍

    ○大内分科員 それでは、直接ではなくて間接的な要望はたくさん聞いておられますか。
  335. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 アメリカ側が日米安保条約によりますアメリカの抑止力を補完する意味で日本の自衛力の整備に一般的な期待感を持っているであろうということは、私どもも推測はいたしておりますが、ただいま申し上げましたように、それがアメリカ政府から日本政府に対する要求というような形で行われたことは一切ないわけでございます。御承知のように、自衛力の整備の問題は、日本自身が、先生もおっしゃっておられるように国民のコンセンサスを得ながら自主的に行っていくものである、その基本的な立場というものはアメリカ側も十分これを踏まえて日本側に対処しておる、こういうふうに理解いたしております。
  336. 大内啓伍

    ○大内分科員 そうしますと、その一般的期待というのはどういう面での自主防衛力の強化ということですか。
  337. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 そのお尋ねは防衛庁の当局に言っていただいた方があるいは適切かと存じます。私が一般的な期待感と申しましたのは、何か特定の軍事的な面での増強とか整備とかいうことを考えて申し上げたわけではないわけでございます。
  338. 大内啓伍

    ○大内分科員 だって、三月一日のブラウン国防長官の下院の予算委員会における証言ではっきり言っているじゃありませんか。アメリカ日本の自衛力の増強、特に防空及び対潜能力の増強を支援すると言っているじゃありませんか。さっきから全然何も言ってないようなことをおっしゃるけれども、一般論でただ自主防衛の強化を促しているようなことじゃありませんよ。シュレジンジャー国防長官だってきちっと項目ごとに言っておりますよ。ですから私の冒頭に申し上げたのは、できるだけフランクに国民にわかるように素直に、アメリカ当局の言っていることについては日本政府としては大体こういうふうに理解している、その理解をぴしっと言うということが、やはり国防についての、あるいは防衛についての国民のコンセンサスを得る意味では非常にいいことだし、それがフェアプレーだと私は思うのです。私は、何か追及しようと思って聞いているのじゃないのです。日米基軸といい、そしてアメリカの安全保障あるいは極東における防衛体制というものをぴしっと理解し、そのアメリカ日本に対してどういう要望を持っているかということを理解しなければ、日本の防衛政策も成り立たないじゃございませんか。まさにそういうことが官僚答弁であって、もっとフランクにディスカスしようじゃありませんか。
  339. 園田直

    園田国務大臣 私が答弁しましたのは、私が関係した会談で話題にならなかったということで、いまの対空、対潜の強化という話はどこかに入っているような気がしますから、当局から……。
  340. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私が先ほども申しましたのは、その前に私が御答弁申し上げました、アメリカ側においても一般的な期待感を持っているだろうということは推測しておりますと言ったときの、一般的なということの意味として申し上げたので、あるいは私の意が十分に明らかでなかったかも存じません。  いずれにせよ、先生も御指摘のように、アメリカ側が特に対潜水艦作戦、防空等の能力の向上に重点を置いてわが方の防衛力の整備がなされることを期待しておるという機運にあるということは、私どもも認識いたしております。
  341. 大内啓伍

    ○大内分科員 私は、それを初めから言っていただければ、こんな長い押し問答をする必要はなかったのですけれども、大変時間を損してしまいました。  私は、実はなぜそういう問題を冒頭にぶつけたかと言いますと、五月三日に総理がカーター大統領との間に会談をされる。そして、その前日にはバンス国務長官等とのお話し合いがされる。国務長官のレベルにおきましては二国間の問題、そして大統領との間にはもっと多角的なグローバルなお話がされる。私が心配しますのは、その段階で、もちろん福田総理としては世界経済の問題を中心にお話し合いをしたいということだろうと思うのでありますが、私どもに入っているいろいろな情報から言いますと、決してアメリカはそれだけでは済まないで、やはり極東の安全保障とかその中における日本との集団安全保障のあり方とか、現にブラウン国防長官は、真の集団的安全保障システムを確立したいということを三月一日の下院の予算委員会でも証言しているわけなんです。これはやはりアメリカとしても当然日本と話し合わなければならない大きな課題だと思うのです。そして、先ほど来御紹介申し上げておりました国防報告から言いましても、アメリカ日本に対して徐々に、自主防衛力の強化という観点から、アジアにおける大国として日本も極東アジアの平和について責任を負ってほしい、もっとそういう防衛力をしてほしい、さらには日米の防衛分担についても一層の負担を要求してくる。私はそのこと自身がいい悪いということを申し上げているのじゃないのですが、そういう情勢に入るのではないかと思われるわけです。  そこで、この福田・カーターの会談の目的、これはいま私が申し上げたことも含めて、この会談を通じて日本としては、どういう話し合いをカーター大統領及びアメリカの首脳とされようとしているのか、その目的をお聞かせいただきたい。
  342. 園田直

    園田国務大臣 総理とカーター大統領との首脳会談は、いま日にちが決まっただけでありまして、そのときの議題は、世界経済及び国際情勢で二国間に関係の共通の関心があるもの、こういうことがいま出ておる話でありまして、これから何を日本から言うか、あるいはどういう議題になるかということは、日本では総理を中心に検討し、向こうから何が出るか、議題にするかということは、外交チャンネルを通じて逐次詰めていくところでございます。
  343. 大内啓伍

    ○大内分科員 もちろん、現段階ではそうでありましょう。しかし、少なくとも日本としては、単に経済問題のみならず、やはりアジア情勢が相当変化しておりますから、そういうアジアにおける安全保障――朝鮮においても御存じのような演習が行われようとしているわけですから、それが行われた後に行かれるわけでありますし、また、後で触れますけれども、恐らく日中関係もその間にはいまよりか相当前進を見ているでありましょうし、この面についてもアメリカ理解を得るということは同盟国として当然だと思いますし、それからアジアの安全保障、日中問題を含めて広範な話し合いをするというふうに大体理解してよろしゅうございますか。
  344. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、これはまだ議題を具体的にはここで申し上げるわけにはまいりません。ただ、これもわかりませんが、私も一緒に同行しますので、私とバンス国務長官の会談等も今後検討し計画することになると思います。大統領と総理の話の中ではそれほどの問題は出ないが、アジアの問題についてはやはりおっしゃるとおりに出ると思います。それから、私との会談ではもっと突っ込んで出るかもわかりませんが、いまのところはどういう議題になるか、あるいはどういう話題になるかという推察を申し上げる段階ではございません。
  345. 大内啓伍

    ○大内分科員 そこで、私が先ほどちょっと提起いたしました日米の防衛分担の強化という問題なんです。これは私は決して新聞記事だけで議論しようとするのではありませんが、先ほど申し上げた三月一日のブラウン国防長官の議会における証言では、事実上日本の防衛分担の増大を期待するような証言がはっきりと出ています。したがって、これはバンス国務長官との会談においても当然出る問題だと思うのですが、日米の防衛分担の問題も当然出てくるというふうにお考えでございますか。
  346. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま外務大臣からお話がございましたように、五月の日米会談に向かって両国の首脳がそれぞれどのようなことを期待し、どのように考えるかという点は、今後を見なければならないわけでございまして、ちょっと、その辺の推測をいまの時点でいたすことは尚早かという感じを持っております。  他方、防衛分担という先生の御提起になりました問題につきまして、御承知のように、先ほど来お話のありましたようなわが国の防衛力の自主的な整備ということであれば、先ほど来御論議のようなことでありましょうし、また、いわゆる防衛経費の分担というような意味で御提起になっておられるとすれば、この問題は、御承知のように地位協定二十四条にそのルールがあるわけでございまして、アメリカ側としてもこのルールは当然にわきまえた上での対処ぶりを考えることになるであろうと考えますので、いま私どもといたしましては、ときどき新聞などにありますような、何か特定の防衛関係経費の分担を日本側に要求してくるというようなことは予想しておらないわけでございます。
  347. 大内啓伍

    ○大内分科員 もちろん、いまの段階でそういうことを具体的に政府が言うということは、差しさわりのある問題でありましょう。  そこで、私はきのう予算の第一分科会でも質問したことなのでありますが、きょうも恐らく横路委員が質問されたと思うのであります。昨日の私とのやりとりの中で防衛庁当局は、在日米軍の朝鮮有事にかかわる発動については原則的に事前協議の対象になるということを答弁されたわけであります。もちろんそれは具体的に、在日米軍のここがこういう形で発進するという前提に立ったものでありますが、その辺について、外務省見解と幾らか食い違いがあるのかなという感じも実はしているのであります。それとも食い違いはない、この辺はいかがでございましょう。
  348. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど来の御論議にもあったのでございますが、朝鮮で何らかの特別の事態が生じた場合ということで、いま先生のおっしゃられたように、その戦闘作戦行動わが国におけるところの施設区域から発進されるということであれば、当然にこれは事前協議の対象になりますし、そうでなければ事前協議の対象にはならないということを、いわばカテゴリカルにお答えせざるを得ないわけでございます。先ほど御論議にも出たところでございますが、先般のブラウン国防長官の議会における証言そのものは、そのことから直ちに、事前協議が行われるべき事態において事前協議を行う必要がないということを示したものだというふうにとる必要は全くない。むしろブラウン長官は、異常な事態が生じた場合に近隣の兵力をそこに集中する体制があるということを述べたのがそのポイントというふうに、私どもは考えているわけでございます。
  349. 大内啓伍

    ○大内分科員 昨日のやりとりの中で、防衛庁当局は第五条関係、つまり日本に対して侵略等が行われた場合の日米共同行動という問題について、安保小委員会等アメリカとの間に協議をしつつある、それから同時に、第六条の関係、つまり極東条項関係についてもこれから話し合う必要があるというふうに思っている、そして防衛庁長官は、場合によっては自分が出かけていってこういう問題を話し合わなければならないかもしれない、というようなお話がございました。いままで日本歴代政府が言ってまいりました韓国条項あるいは朝鮮条項からしますと、朝鮮の有事という事態は日本の安全保障の可否を決する非常に大きな影響を持つわけであります。そして、アメリカはすでに、今回の演習等を見ましても、いろいろな既定事実をもって在日米軍の出動というものをその計画の中に織り込んでいる。その有事の事態というものを軽々に想定することは本意ではございませんけれども、しかし、防衛というのはあらゆるケースに対して備えなければならぬという立場からすれば、アメリカが少なくともそこまで考えている状況の中では、第六条の極東条項関係については日米の間で、第五条関係とともに不断に協議を煮詰めておく必要があるというふうに思っておりますし、防衛庁当局はそういう問題の必要性を痛感されている答弁がなされているのであります。外務大臣、この辺はいかがでございましょう。
  350. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大臣のお答えの前に、事実関係だけちょっと御説明させていただきますが、先生御承知のように、日米間の防衛協力、軍事面を主としたところの防衛協力の問題につきましては、日米防衛協力小委員会において討議することになっております。これも昨日恐らく防衛庁から御答弁があったかと思いますが、その防衛協力小委員会の討議すべき議題として三つのことが合意されております。当面、第一の議題についての作業をいま行っておるということでございます。その第一の作業というのは、基本的に、わが国に直接武力攻撃がなされた場合またはそのおそれのある場合の諸問題ということでございますが、この作業を了した暁には第二の問題に移っていく。この第二の問題で、いま申し上げました第一の問題以外の極東における事態でわが国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題という問題が討議せられることになっておるわけでございますが、そこまで作業が行きますにはなお相当の時間がかかるという状況になっております。
  351. 園田直

    園田国務大臣 いま発言されましたような問題で綿密に相談し、協議することは、私は反対ではありません。
  352. 大内啓伍

    ○大内分科員 同じように昨日のやりとりの中で、朝鮮有事に際しての難民がたとえば日本に向かってくる。私は、朝鮮問題の直接的な日本に対する影響というのは、恐らくそういう形から始まってくるんじゃないかと思うのでありますが、これについて昨日防衛庁当局は、これは自衛隊の本来的な任務ではないけれども、自衛隊がそういうものの救済に乗り出すということはあり得るという御答弁がありました。私は、時間がございませんでしたのでそれ以上は突き進みませんでしたのですが、もしそういうものがあり得るといたしますと、もちろん日本の領海内あるいは領海外における公海上、さらには朝鮮半島、あるいは韓国と言っていいと思うのです、の領海内等、いずれの場合においてもそういうことが可能なのか。そういうことがあり得るとしても、そこには憲法上一つの限界があるのか。その辺は外務省はどういうふうにお考えでしょうか。
  353. 中江要介

    ○中江政府委員 いまの御質問の状況というのは、非常に綿密な分析をいたしませんと、それぞれの場合についてどういう反応があり得るかということはわからないと思いますが、一般的に申しますと、朝鮮半島に何か事が起きて難民が発生した場合に、それに対処する場合考慮しなければならないことが二つあると思います。一つ国際法上の制約でございまして、これは中立義務でありますとか、交戦団体との関係とか、あるいはその地域につきましては公海か領海かというようなこともありましょうし、国際法上の制約というのが一つございます。もう一つは、今度は人道上の考慮でございまして、そういうことを言っていても始まらないような人道的な緊急性がある場合にはこれに対処するというその考慮がございまして、そういったものの複雑な絡み合いの中で処理されていくことと想像いたしますけれども、いずれにいたしましても、そのケースに応じて対処していくということしかいまの段階では言えないのではないか。対処いたします必要に応じて憲法との関係で自衛隊がどう動くかというようなことは、これはまた自衛隊の方でお考えになることだろうと思いますが、外務省立場からいたしますと、私どもは平素考えておりますのは、この二つの制約の中でどちらにのみ偏しても間違いがあるかもしれないという心構えでおるわけでございます。
  354. 大内啓伍

    ○大内分科員 いまおっしゃられました二つの理由は、言うまでもなく、相矛盾する場合もあるわけでございますね。たとえば、国際法上から言えば、相手の領海に入ることは許されないわけですね。しかし、人道上それは見過ごせないという場合には入る場合もあるわけですね。そうすると、いまの中江局長の御答弁ですと、韓国の領海内にあっても、そういう事態が人道上の問題として起こり得る場合があるということでございますね。
  355. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど前提で申し上げましたように、ただ一つの側面だけで状況を想定するのは非常に危険だと思いますけれども、国際法上の要請と人道上の要請がいまおっしゃいましたように抵触するというか、対立しましたときには、国際法上の違法性を阻却するに十分な理由のある人道上の理由がありますれば、それはやはり国際法上の違法性を阻却して人道上の考慮から行動を起こすということは、これは抽象論でございますけれども、あり得てもいいのではないかというふうに思っております。
  356. 大内啓伍

    ○大内分科員 なかなか重要な発言だと思うのでありますが、次の問題に入りたいと思うのであります。  日中平和友好条約日本としての位置づけの問題についてお伺いをしたいのであります。その前に、中国で行われておりました全国人民代表大会の華国鋒主席の報告については、全文入手されておりますか。
  357. 中江要介

    ○中江政府委員 まだ全文入手しておりません。
  358. 大内啓伍

    ○大内分科員 私ども、新聞の報道等でしかそれを知るよしもないわけでありますが、今度の華国鋒報告の中で、反覇権に対する部分はなかなか強烈なものがある。たとえば、反覇権の国際統一戦線の結成を目指すというような趣旨が述べられているわけでありますが、これは、中国がこれまでとってきた反覇権に対する姿勢をより一層鮮明にしたものというふうに受け取ることができますし、これから日中平和友好条約を結ぶに当たっても、この問題に対する中国理解日本が正確に理解しておくということは重要なポイントであると思うのです。この辺を華国鋒演説の中からどういうふうに日本政府は評価しているかということが一つと、もう一つは、対日関係については中国の姿勢はどういう姿勢にあると理解しているか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  359. 中江要介

    ○中江政府委員 第一点の反覇権に関する部分でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、全文は入手しておりませんので、公表された要旨から見る限りは、ソ米両覇権主義国だとかあるいは超大国の覇権主義だとか、第三世界を主力軍とする国際反覇権統一戦線というような言葉が出ていることは、いま御指摘のとおりですが、こういった言葉遣いは、昨年の十一月一日の人民日報の論文の中にも出ておりますし、いままでも、今回の二月二十六日の部分のいまのような表現も、私どもの目から見ますと、新しい表現であるとか、より激烈になったとか、そういう印象は特に持っておりません。それで、従来の対外政策を論じますときに使われていた用語がそのように用いられている、したがって新しい方向づけであるというふうには、その要旨からはまだくみ取っていないということでございます。  第二点の、日本についての言及でございますが、この要旨の中では、日本について言及した部分はないと見ております。  ただ、これは御承知のように三時間半の大報告でございますので、全文が出てきますと、日本についての言及があろうかと想像いたします。と申しますのは、前回の一九七五年一月の全人大会の、亡くなりました周恩来国務院総理政府活動報告の中では日本についての言及があったわけでございますので、そういうこともあり得ようか、こういうふうに見ております。
  360. 大内啓伍

    ○大内分科員 最近、鄧小平氏のお話の中にも実はそういうような趣旨があったように記憶をしているのでございますが、そうしますと、この華国鋒報告、つまり反覇権に関する中国首脳の態度から言いますと、反覇権の国際統一戦線の結成を目指すということになりますと、たとえば日中条約の中で反覇権主義というものを挿入した場合に、中国から見れば、この国際統一戦線の結成について日中間において一つの前進、結論が見られたということに理解することが論理的なんじゃないですか。その辺はどういうふうにごらんになっていますか。
  361. 中江要介

    ○中江政府委員 これは中国が唱えている政策でございますので、その中にどういうふうに位置づけるかというのは中国の問題であるわけで、私どもからどうということは言えない。また、言うべきじゃないし、言うことのできない問題だと思います。  ただ、反覇権主義というのは、御承知のように一九七二年の九月二十九日の共同声明に述べられておりますあの第七項の趣旨というのは、日本中国も最高首脳の間で合意されたものでございますし、日本もそのもの自身に賛成をし、また、これを忠実に遵守するという方針で進んでおりますので、この共同声明の条項にのっとって、今回の条約を仮に交渉いたしましても、それ以上に出るあるいはそれ以下になるということはあってはならない、こういう考え方でございます。
  362. 大内啓伍

    ○大内分科員 私も中国へ参りまして、中国首脳との会談をやったことがあるのですが、中国が述べている反覇権主義というのは、はっきりソ連を指しているというふうに日本政府はごらんになっていますか。
  363. 中江要介

    ○中江政府委員 日本としては、中国がいろいろの場でいろいろおっしゃっておるのは中国外交政策でございまして、その外国外交政策を、はっきりと公の場で日本政府としてきめつけるあるいは論評するということは、慎んだ方がいいかというふうに私どもは思っております。
  364. 大内啓伍

    ○大内分科員 要は、言いにくいという意味ですね。  そこで、外務大臣にお伺いいたしますが、これは一月十六日の新聞報道でございまして、私がその会合の中に入っておるわけではございませんので、どの程度正確かは確かではございません。しかし、いまの日本の新聞、この種の記事については信頼していいと思いますので、そういう意味で申し上げるのでございますが、自民党の調査会での発言として、日本外交日米が基軸であり、米国との関係で、日中平和友好条約日本が勝手にやらしてもらうというよりも、もっと進んだ状態つまりアメリカ世界戦略の一環として考えているという発言がなされたと聞いております。そして、後で外務省の高官がその意味というものを意訳をされておられますが、言われたのは外務大臣でございますから、このことは外務大臣の真意でございますか。
  365. 園田直

    園田国務大臣 これは与党の外交調査会の外交部会の合同部会で私が発言をした一節でございます。少し違いますが、大体はそのとおりでございます。  その前後を説明しますと、慎重派の方々からいろいろ質問を受け、これに理解を求めて答弁をしておるとき、最後に、日中友好条約を結ぶについて米国は理解をしているのか、話し合いは進んでいるのか。そこで、米国の態度は、日本日中友好条約締結するのは、するなら勝手にしろ、おれの方は文句は言わぬ、こういう程度であるのか、あるいはまた、アメリカが心の中で望む世界戦略の一環か、こういう質問が出てきたわけでございます。これに対しまして、日中の関係についてはこの前の日米首脳者会談でも話題になりました、そこでアメリカは、日本がやるなら独立国家であるから勝手にやれ、こういうものではなくて、むしろ、アメリカの方ではこれを歓迎するという、そこへ私、つい戦略という言葉を使ったのです。本当は戦略という言葉は適当でございませんでした。方略と言うか、あるいはもっと詳しく説明をして、アメリカが抑止力による平和を維持しつつ緊張緩和方向へだんだん持っていって、世界の平和、アジアの平和を願っている、その考え方の一環として一致するものでございます。こう言えばよかったものを、つい私が、いやアメリカも決して勝手にしろということではなくて、内々歓迎するというアメリカの戦略とは一致するものでございます。こう答えましたが、戦略という言葉はちょっといけなかったなと思っております。もっと説明すればよかったと思っております。
  366. 大内啓伍

    ○大内分科員 でも、アメリカ世界戦略でしょう。だって、外務大臣は御存じだと思うのですよ。一九七五年十二月七日のフォード大統領によって出された新太平洋ドクトリンの重要な柱というのは、御存じのように、対ソを十分に意識しましてさらに軍事力の増強を図るということ、二つには、日米安保条約の意義を強調し、その体制の重要性を強調したということ、第三番目は、これは非常に新しい問題として米中の国交正常化、こういう三つの柱が新太平洋ドクトリンの柱だったわけです。これはアメリカ世界戦略であります。ですから、日中条約というものを考える場合に、アメリカの戦略とこれが合っているかなと外務大臣が念頭に置くということは、あの一九七一年のニクソン・ショックを考えたって当然考えるべき一つの筋合いだと思う。しかし、にもかかわらずここであえてこういう問題を私が出したというのは、そのことが日中平和友条約を結ぶ第一義的なものであるかのような印象を与えていったということは、それかもし恣意であるとすれば――そうではないと思いますが、日本外務大臣としては若干不見識ではないのか。つまり日中平和友好条約を結ぶ第一義的な意味は、何と言ったって、かつて戦争状態にあったアジアの大国同士が二国間において真の友好を確立する、これが第一の目的であり、その結果、極東、アジアの平和にその行為行動というものが寄与していく、そして第三には、わが国と同盟関係にあるアメリカの極東政策とも結果として一致する、そういうことをトータルで言うことがやはり外務大臣としてのお立場であり、新聞には載らなかったのでしょうが、恐らく外務大臣もきっとそういうふうに申し述べられたと思うのです。そういうふうに日中条約というものを位置づけているということを、この際はっきり言っていただきたいのです。
  367. 園田直

    園田国務大臣 御好意ある発言をいただいて恐縮をいたしておりますが、私は、そのときは言葉が足りなかったのが本当でありまして、いまあなたはアメリカ世界戦略に間違いないとおっしゃいます。分析その他よくわかりますが、外務大臣としてはこれを見とめるわけにはまいりません。というのは、いま言われたとおりに、これが第一義であると誤解を受けてはかなわぬ。それからもう一つは、覇権問題でいろいろあると思いますので、一方で文句をいかに書こうとも、それは世界戦略で、日米中で包囲するのじゃないかという刺激をするおそれがありますから、私は、私の前言を取り消して、ひとつ御理解を願いたいと思います。しかし、御発言の要旨はよくわかっております。
  368. 大内啓伍

    ○大内分科員 私はいま三つ並べましたけれども、その最後のところで決してアメリカ世界戦略とは言っていないのです。アメリカアジアにおける政策ということを申し上げているのであります。  そうしますと、アメリカ世界戦略の一環としてということは、正式に取り消されたわけでございますね。
  369. 園田直

    園田国務大臣 御礼申し上げます。そのとおりでございます。  なお、日中平和条約締結については全然アメリカの方も反対してないということを強調したいのであって、いまおっしゃったとおり、アジアの平和、日中の永遠の友好が大事であることは、私は二十数年前に「世界」「中央公論」等に論文を発表しておりますので、御信用願いたいと思います。
  370. 大内啓伍

    ○大内分科員 日中問題を以上で終わりまして、最後に、ソ連提案の善隣協力条約についてお伺いをしたいと思うのであります。  このソ連の善隣協力条約締結に関する呼びかけというのは、私の理解では、やはりソ連としては相当計算しているのではないか。たとえば、一月に園田外相が訪ソをされた際に条約草案を渡された。そして二月二十二日には、ポリャンスキー大使がブレジネフ親書を福田総理に渡した。そのときに福田総理の訪ソを要請したのに対して、福田総理は、そのことについては言葉を濁しながら、善隣協力条約についてははっきり拒否をしました。そしてその翌日には、ソ連条約草案を発表した。このような行動は、決してソ連感情的な行動ではなくて、一連の計算された対日攻撃の第一弾というふうに見ていいんじゃないかと思うのです。特に、あの一九六九年にアジア集団安保という構想をアドバルーンとして揚げて以来、そして一九七五年夏のヘルシンキ宣言でヨーロッパにおける国境凍結をやって以来、ソ連が一貫してアジアにおいて求めてきた方向だと思うのであります。私はこのソ連の出方を見ながら、ソ連外交というのはなかなかしたたかであるという感じを禁じ得ないのでありますが、この一連のソ連の善隣協力条約の提起をめぐる態度について、外務大臣はどのような受け取り方をしておられましょうか。
  371. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 園田外務大臣に先方が条約草案を手交しようといたしましたときに、園田外務大臣は、日本は四島の一括返還によって平和条約を結ぶことが先決であるから、そのような案は検討に値しない、検討するわけにいかない、礼儀上受け取ると言って、物理的に受け取られたのにすぎないわけでございますが、その後、ただいま大内委員御指摘のような時間的な順序で、最後には、イズベスチヤによりまして一方的に善隣協力条約なるものを発表したわけでございますが、このようなソ連の意図が那辺にございますか、一方的に向こうのやりました外国政府の政策でございますから、私どもがそんたくする限りでもございませんが、やはり領土問題に関しまして四島一括返還という国を挙げての不動の決意に何らかの影響を与えたい、このようなことを考えたものではないかとまず考えております。
  372. 大内啓伍

    ○大内分科員 日中条約締結は阻止できないという考えを恐らくソ連はお持ちであろうし、この条約を結ぶならソ連との間には善隣協力条約でいこう、こういう考え方がにじみ出ていると思うのです。しがも、それを政府レベルではなくて日本国民へ直接アピールしてくる、大変な外交を展開しておりますが、外務大臣は、このソ連態度についてはどういうお考えをお持ちですか。
  373. 園田直

    園田国務大臣 私が新聞を見て意見を言う立場にはございませんが、大体、大内委員と同じように判断をいたしております。
  374. 大内啓伍

    ○大内分科員 二月二十二日にポリャンスキー大使がもたらしましたブレジネフ親書では、福田総理大臣の訪ソを要請してきている。これに対しては、日本政府としてはどういう対応をしようと思っているのですか。
  375. 園田直

    園田国務大臣 ソ連のブレジネフ書記長またはコスイギン首相、最高首脳にぜひ日本においで願いたいという総理の正式の招請は前々からなされているところでありまして、その後、機会あるごとにぜひおいで願いたいということを、しばしば礼を厚くして申し述べているところでございます。そこで総理は、そのことがあった場合に、御好意を感謝するというお礼を言われて、そこで、私の方から先にお願いしておるのであるから、私の訪ソもそうだが、どうかあなたの方から訪日をしていただきたい、待っております。こういう返事をなされたようでございます。
  376. 大内啓伍

    ○大内分科員 そうすると、福田総理の訪ソという問題は、ソ連首脳の来日があってから検討すべき課題だというふうにお考えですか。
  377. 園田直

    園田国務大臣 そこまでかた苦しいものではありませんが、こちらから招待しているのですからどうぞおいでくださいという礼儀を尽くした返答だ、反駁の議論ではない、こう思いますが、福田総理が訪ソされるかどうかということは、今後状況の変化によって検討しなければならぬ問題であると考えております。
  378. 大内啓伍

    ○大内分科員 そうすると、行く場合もあるということでございますね。
  379. 園田直

    園田国務大臣 ここで行くとか行かぬとかということは言えませんけれども、招請を受けたわけでありますから、これに対しては、時期があったらお伺いするという検討をすることが礼儀として当然だと思っております。
  380. 大内啓伍

    ○大内分科員 その時期とは、ことしじゅうというものも可能性の中に含めてでございますか。
  381. 園田直

    園田国務大臣 それは全然まだ見当がつきません。
  382. 大内啓伍

    ○大内分科員 私は、福田訪ソという問題について一つの心配を持っております。と申しますのは、ソ連のこれからの対日攻勢の一つの重要な柱は、日本が好むと好まざるとにかかわらず、やはり善隣協力条約締結の執拗な呼びかけというものになってくると思うのです。そうしますと、もし福田総理がいまのような状況のもとで訪ソされるということになりますと、このソ連の要求を福田総理が全面的にかぶる、私はこういう懸念を持っておりますが、それでは、そういう点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  383. 園田直

    園田国務大臣 向こうから招請を受けたわけでありますから、あなたの方から来なければいかぬ、こういう返答をするわけにまいりません。なるべく早い時期にというお礼を言う以外に外交儀礼としてないわけでありますから、いま言われたようなことは十分腹の中に入れて検討をする所存でございます。
  384. 大内啓伍

    ○大内分科員 園田外務大臣の腹の中がよく見えないものですから……。  しかし、いまの御答弁ぶりでございますと、私が申し上げたことを念頭に置きつつも、しかし儀礼に反するような、つまり逆に言えば、儀礼にはこたえなければならぬというようなニュアンスでやはり外務大臣の答弁は相当響いてしまいますよ。そういうことが真意なんですか。
  385. 園田直

    園田国務大臣 私が言いましたのは、招請の礼儀に対する返答の言葉の儀礼を申し上げたわけであります。
  386. 大内啓伍

    ○大内分科員 ああそうですか、わかりました。  そこで、平和条約締結、これは領土問題が絡みますのでなかなかむずかしい問題がある。私の知るところでは、あの朝鮮動乱が済んだ直後に、中国が百七十五万平方キロメートルの領土をソ連によって略取された。それは天津条約、北京条約、イリ条約、愛琿条約等々であるという指摘の中で中ソ対立が激化していった経緯を見ますと、やはり北方領土返還するという問題は、ソ連にとって欧州における国境凍結問題にも絡んで非常にむずかしい問題であることは、十分理解しなければならない。しかし、にもかかわらず日本はこのむずかしい問題と取り組まなければならぬ、この辺が非常に大変な問題だと思うのであります。  そして、園田外相が訪ソされました後に、これは真意かどうかわかりませんが、予算委員会でもちょっと議論されたのですが、領土問題については五年をめどにというようなお話もございましたし、また、この間のポリャンスキー大使の福田総理訪問に際しては、領土問題についてはやはり例の共同声明というものを中心に打開しなければならないというようなお話もされているようでありますが、いまの状態では、なかなかこれは硬直状態といいますか、その問題をすぐ打開する道はなかなかむずかしいと思うのであります。この領土問題の解決方法について、少なくとも五年をめどにということを一時でもおっしゃった外務大臣としては、今後どういうやり方でいけばこの領土問題というのは自然にほぐれ、解決方向に向かうというふうに考えているのか。つまり、その条件整備について日本はどういうことが必要だというふうにお考えになっているか、そのことを最後にお伺いしたいと思うのであります。
  387. 園田直

    園田国務大臣 北方四島問題の処置いかんによってヨーロッパ及び中国との国境問題に非常に影響するということ、それから今日の米ソ関係、こういうことからソ連態度は非常にかたいという判断は、御意見のとおりでございます。  そこで、国際情勢の変化等もありましょうけれども、私は、五年以内に返ってくるということは、どの委員会でも発言はしておりませんし、記者会見、懇談会等でも発言はしておりません。ただ、出迎えの方々に、どうも領土問題解決できませんでした、しかし強く主張してきましたので、これに対して国民が絶望されるようなことがあってはなりません、われわれは不変不動の決意で粘り強くやるならば必ず返ってくる日がございます。遠からず実現したいものでございます。こう言ったのが五年と出たわけでありますから、五年ということは間違いであるということを御了承願いたいと思います。  そこで、いまソ連が善隣協力条約案なるものを、御指摘のとおり政府相手にしないから国民相手に呼びかけた、こういうことで、これで日本国民が動揺するとか、世論が分裂するとか、あるいはそういうことならいいことではないか、なぜ結ばぬかという世論が起こることを期待したと思いますけれども、これはソ連の仮想な判断であると同時に、またわれわれ自体も、日本国民世論が動揺しないように、分裂しないように、国民の総意をもって皆さんの御努力を得ながら、一面には領土問題を使ってソ連を刺激したり反ソ感情をあおるようなことではなくて、やはりソ連日本の間には利害の共通する点は幾らでもあるわけでございますから、これを私は理屈で通してまいりましたが、一面には善隣友好関係を進め、理を尽くし、条を尽くしながら返還を実現するということが、私は遠いようで一番近い道であると考えております。
  388. 大内啓伍

    ○大内分科員 時間でありますので、以上をもちまして終わります。ありがとうございました。
  389. 正示啓次郎

    ○正示主査 御苦労さんでした。  以上で、外務省所管についての質疑は終了いたしました。  これをもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会