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1978-03-01 第84回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月一日(水曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 伊東 正義君       田中 龍夫君    中島源太郎君       山下 元利君    井上  泉君       小川 仁一君    岡田 利春君       川崎 寛治君    中村  茂君       松沢 俊昭君    横山 利秋君       米田 東吾君    渡部 行雄君       権藤 恒夫君    竹本 孫一君    兼務 湯山  勇君 兼務 石田幸四郎君    兼務 三谷 秀治君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画政務次         官       前田治一郎君         経済企画庁長官         官房長     高橋  元君         経済企画庁長官         官房会計課長  小林  進君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林大臣官房予         算課長     田中 宏尚君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君  分科員外出席者         国土庁水資源局         水資源計画課長 和気 三郎君         法務省民事局参         事官      元木  伸君         外務省アジア局         北東アジア課長 佐藤 嘉恭君         大蔵省主計局主         計官      塚越 則男君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         農林省食品流通         局流通企画課長 牛尾 藤治君         通商産業省産業         政策局消費経済         課長      野崎  紀君         労働省職業安定         局雇用保険課長 望月 三郎君         建設省河川局開         発課長     堀  和夫君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   太田 康二君     ————————————— 分科員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   石野 久男君     横山 利秋君   岡田 利春君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     渡部 行雄君   横山 利秋君     松沢 俊昭君 同日  辞任         補欠選任   松沢 俊昭君     井上  泉君   渡部 行雄君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   井上  泉君     小川 省吾君 同日  辞任         補欠選任   小川 省吾君     米田 東吾君 同日  辞任         補欠選任   米田 東吾君     中村  茂君 同日  辞任         補欠選任   中村  茂君     川崎 寛治君 同日  辞任         補欠選任   川崎 寛治君     小川 仁一君 同日  辞任         補欠選任   小川 仁一君     石野 久男君 同日  第二分科員三谷秀治君、第五分科員湯山勇君及  び石田幸四郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算総理府所管  (経済企画庁)、農林省所管〕      ————◇—————
  2. 伊東正義

    伊東主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  まず、昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算経済企画庁所管について政府から説明を聴取いたします。宮澤経済企画庁長官
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十三年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算総額は、百十六億五千七百万円となっており、これは前年度予算額に比べて二億六千万円の増額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として千二百一億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず第一は、国民生活行政拡充に必要な経費でありまして、四十四億三千二百万円を計上しております。この内訳の主なものとしては、研修、テスト施設の建設を推進するなど、国民生活センター事業拡充強化に三十八億八千九百万円、地方消費者行政推進に二億四千八百万円、総合社会政策体系等開発推進に八千二百万円、省資源国民生活改善促進に一億六千百万円を、それぞれ計上し、総合的国民生活政策展開を図ることとしております。  第二に、物価対策のための予算といたしましては、各省庁に広く計上されているところでありますが、当庁におきましても、物価の安定が引き続き経済運営の重要な課題であるという観点に立ち、その総合的効果を図るため、生活必需物資等需給価格動向の監視、生活必需物資等安定供給対策物価に関する的確な情報提供等を実施するための経費として国民生活安定特別対策費二十七億円を計上するとともに、物価対策基礎調査等経費として一億八千五百万円を計上しております。  第三は、長期経済計画策定等並びに経済基本政策企画立案及び調整業務充実を図るために必要な経費でありまして、二億五千百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、長期経済計画推進のための経費として一億一千二百万円、経済見通し作成経済基本政策の総合的な運営展開を期するための各種経済情報の収集、国際経済協力に関する基本的政策企画立案調整等に要する経費として一億三千九百万円を計上しております。  第四は、経済社会に関する総合的な調査研究充実に必要な経費でありまして、五億三千五百万円を計上しております。  この内訳といたしましては、まず内外の経済情勢変化に即応した適切な政策立案に必要な調査分析及び統計の作成整備のための経費として二億四千四百万円、経済に関する基礎的調査研究及び新国民経済計算体系整備のための経費として一億七千二百万円、各省庁経済政策に関連する調査総合調整のための経費として一億一千九百万円を、それぞれ計上しております。  最後に、海外経済協力基金に係る財政投融資計画といたしまして、千二百一億円を計上しております。海外経済協力基金事業計画は、この千二百一億円のほかに、大蔵省に計上している一般会計からの出資分九百三十九億円を含む自己資金等千八百二十九億円を原資として総額三千三十億円を予定しております。  同基金事業規模は、前年度に比較して四百二十億円の増額でありますが、これは、わが国国際的地位の向上とその果たすべき国際的任務の増大に即応し、アジア諸国等に対する海外経済協力充実を図るためのものであります。  なお、その内訳は直接借款二千八百二十億円及び一般案件二百十億円であります。  以上、五十三年度における経済企画庁予算及び財政投融資計画についてその概要を御説明申し上げました。  何とぞよろしく御審議のほど、お願いを申し上げます。
  4. 伊東正義

    伊東主査 以上をもちまして経済企画庁所管についての説明は終わりました。
  5. 伊東正義

    伊東主査 質疑に先立ちまして分科員各位にお願い申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力賜りますようにお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は的確かつ簡潔にお願い申し上げます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  6. 岡田利春

    岡田(利)分科員 質問に入る前に主査にお願いいたしておきますが、私、円高ドル安の問題で二、三の質問をしたいと思っておるわけです。なお、これに関連して、引き続き横山議員質問いたしますので、さよう取り計らいをくださいますようにお願い申し上げておきます。  五カ国蔵相会議が終了後、特にスイスフラン、またマルクが今日高騰し始めておるわけですが、これに引きずられるように円高傾向が再燃をしてきた。そして一時的でありますけれども、二百三十六円台を記録する。いま景気回復政策を進めるわが国にとって再び円高傾向はきわめて注目をすべきだし、また憂慮されるべき状況ではなかろうか、こういう心配を実はいたしておるわけであります。特に、二百四十円の大台を割って二百三十円台が実現をしたということは、さらに引き続き円高傾向は続いていくのではないか、そして結果的に二百三十円台、二百三十幾らになるかは別として、二百三十円台に、大体円が対ドルレートとして落ちつくのではなかろうか、こう心配をされるわけであります。したがって、昭和五十三年度の経済運営に当たって、まだ四月を迎える前にしてこういう傾向について、長官は最近の動向を一体どう判断されておるか、そういう点についてまず長官の見解をこの機会にお聞かせ願いたいと思うわけです。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 岡田委員のお尋ねはごもっともなことでございますし、御趣旨もよく了解をいたしますが、何分にも御指摘のように為替相場がいろいろなことに神経質になっております現状でございますので、それについてとやかく申し上げますことがいろいろ不測の影響を与えるおそれがございます。この点は御了解いただけることと存じますが、日本政府といたしましてはいわゆるクリーンフロートという立場で、相場相場に任せるというような、極端な乱高下はもとより防止をいたしますけれども、そのような立場でありますことは御承知のとおりでございます。ヨーロッパにおきまして、西ドイツの経済運営について必ずしも米独間で完全な合意がないというようなことが伝えられておりますが、他方で、ごく最近聞くところによりますと、米国においてはカーター大統領及びブルメンソール財務長官、両方ともドル価値維持について積極的な関心を持ち、発言をしたということを、内々のことでございますけれども聞いてもおりますので、そういったところから、マルクにいたしましても、スイスフランにいたしましても、円にいたしましても、安定してくれればいいということを私自身はこいねがっておるわけでございます。
  8. 岡田利春

    岡田(利)分科員 昨年十二月三十日には金の価格が一オンス、百六十四ドル四十五セントであったわけです。そしてこの傾向は、今日では百八十ドル台に金価格上昇いたしておりますから、この間だいたい六・四%上がっておるわけです。九月末の円は二百六十六円でありましたけれども、十二月には二百四十円になっておりますから、大体六・二%。金の価格上昇円高上昇率というものはほぼ似ておるわけであります。そういたしますと、大体これからの金の価格の予想は、アメリカの来年度の物価上昇は大体六%ないし七%、したがって金価格も大体十ドルは値上がりをするであろう。そういう意味で、二百ドル大台を超す場合もあるということが実は言われておるわけです。これは端的に言うと、やはりドル離れ、換物傾向といいますか、こういうのが端的に出て、しかもそういう通貨動向と非常に微妙に連動した動きが見られる、こう私は思うわけです。そういうような判断から考えて、一体この金の動向というのは、単に換物主義だけではなくして、もちろん金の需要動きもありますけれども、一方において政治不安とか、いろいろな問題を含んでおるのだと私は思います。しかし、この傾向は、そういう意味基軸通貨であるドル傾向を占うには非常に大きな関心を持って見るべきではなかろうか。金の価格動向についてはドル価値が上下するということに非常に敏感である、かつての基軸通貨だったドルはそういう敏感な作用を持っておると私は認識をするわけです。したがって、カーター大統領もいろいろ言っておりますけれども、円やあるいはマルクに対しては、アメリカは従来の方針である外圧によっていわば円高マルク高という方向で今日の国際貿易関係改善をしていく、自分の道を切り開いていくという姿勢は依然として変わっていないと判断されるのですけれども、いかがでしょうか。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカ貿易収支の赤字というものが今年一九七七年に比べましてどのような変化があるかということは、正確には予測できませんけれども、関係者の話を聞きますと、多少の改善はあるであろう、しかし、石油輸入中心とした政策は、エネルギー法案がよほど早く成立をし、関連の施策が実行に移されませんと、大きな変化はなかなか期待できないということのようでございます。しかしながら、他方で、アメリカ経済そのものは、昨年ほどではないにいたしましても、今年も順調に成長すると考えられますので、その点から申しますと、ドル価値が非常に弱くなるというふうには考えにくいのでありまして、依然基軸通貨としての位置を維持していくことはもう間違いないと考えております。カーター大統領あるいはブルメンソール財務長官連銀等が、今後具体的に乱高下に対してどのように対処するかということは、先ほど申しました最近の話では、相当の決意を持っているということでございますけれども、ヨーロッパ筋には、なお十分その具体的な実績がないではないかと疑う向きもあることは事実のようでございますけれども、基本的には、私は、アメリカ経済動向から見ましてドルが非常に弱くなっていくというふうには考えておりません。
  10. 岡田利春

    岡田(利)分科員 先般牛場対外経済相は、対米関係から言えば、わが国の七%実質経済成長よりも、いわば貿易収支改善の方が非常に重大なんだ、七%はそれが達成できなくてもそう大した問題はない、もちろん国内の景気回復雇用生活安定という面ではこれは重要でありますけれども、対アメリカ関係重要度から言えば、むしろ貿易収支改善することの方が重要なんだ、したがって、自動車等については輸出の規制をやる方が得策だ、積極的にやるべきだ、こういう発言を実はいたしておるわけです。この認識については長官は同じでありますか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 日米間でいろいろ議論されましたことは、対米貿易黒字縮小ということではございますけれども、それを一時的な緊急輸入であるとかあるいは人為的な輸出抑制とか貿易縮小であるとかいう形で解決するのが本筋ではなく、むしろ、わが国経済がより開放的な体制をとること、そして経済成長率が高くなることによってそれなり輸入需要が起こる、そういうことで、縮小という姿でなく、拡大という姿をとりながら対米黒字縮小を図る、これが本筋考え方であろうという意味では日米間に合意をいたしておるわけでございますので、牛場国務大臣が言われましたとただいま御紹介になりましたこと、短期的な意味では理解できないわけではございませんけれども、やはり本筋は、わが国経済雇用問題を中心現状に対処をすることによって順調な成長をし、それによって輸入増が出てくるという、そういう政策運営の方が私は本筋ではないかと考えております。
  12. 岡田利春

    岡田(利)分科員 五十三年度の大型予算を実行するに当たって、財政の出番は思い切ってふんぎりをつけたわけですから、量的にも、また質的にも大きく一歩を踏み出したということが言えるだろうと思うのです。しかし、景気回復するためには、これに連動して金融のいわば量よりも質という問題がさらに重要な課題でありますし、最近のドル流入状況から判断しても、やはり思い切った金利引き下げ、そのことによって短期外資導入抑制をするという効果も当然考えなければなりませんし、一方においては、景気回復住宅投資等がその目玉になっておるわけですから、このローンの金利引き下げということもより有効に働くことは間違いがないと思うわけです。いわばそういう意味で、金融政策の問題については、もちろんこれは中立でございますけれども、そのタイミングということが非常に重要ではないか、そういう段階にさしかかっておるのではないか、こう私は判断せざるを得ないわけですが、この点についても長官のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、まさにこの問題は日本銀行において決定をされるべき問題でございますが、推察するところでは、日銀としては、過去における公定歩合の引き下げに市中金利が十分に追随をする、フルにそれが反映し終わったというところにはまだいっていないと見ておるようでございますし、また、金利の変更をいたすとすればそれなりに最も効果的な時期を選ぶべきだというふうに日本銀行としては考えておるのではないかと思っております。そういう時期等々の選択については日本銀行判断に任せるということがよろしいのではないだろうか、私自身もいずれ適当なときにはそういうことがあるのではないかと予測はいたしておりますけれども、時期、幅等選択日本銀行総裁判断にまつということでよろしいのではないかと考えておるわけでございます。
  14. 伊東正義

    伊東主査 これにて岡田君の質疑は終了しました。  次に、横山利秋君。
  15. 横山利秋

    横山分科員 大臣を初め、政府側御存じでございましょうが、きょうはスモン病判決がある日であります。私は、恐らくカネミ油症判決と並んで歴史的な判決になるだろうと思うです。  きょう大臣初め各位にお伺いしたいのは、これら一連の補償事件の中から、また国民の中からわき上がってまいりました製造物責任の問題であります。製造物責任の問題は、一般の公害よりもちょっと立ちおくれましたけれども、最近はサリドマイドや大衆保健薬医療行政告発あるいはネーダーによる告発的消費者運動に触発されて、非常に多くの国民課題になってまいりました。われわれの日常一般生活は、他人の生産または製造物を買って、それを消費する形で維持、成立しています。しかし、仮にその物について予想しない瑕瑾、欠陥存在しておれば、それが購入者やあるいは家族、被養者、顧客及びその他の第三者の生命身体への損害、財産上の損害を与えることがきわめて大きくなってまいります。それらの場合は、被害者は何人に損害てん補を請求するべきであるのか、また可能であるのか、その場合の法的根拠は何か、そのような問題がこの製造物責任の問題であることは御存じのとおりであります。  そこで、カネミ油症の問題がきわめて歴史的な判決となったことは御存じのとおりであります。いまカネミの話を十分に申し上げる時間はございませんが、カネミが表面化したのは四十三年十月、九大の調査で、カネミ倉庫熱媒体に使っていたPCBが、脱臭かん内のステンレスパイプにできた腐食孔から米ぬか油に混入したためとわかった。認定患者は、西日本を中心に千六百二十九人、うち死者五十二人、推定患者は一万人を超えると言われています。そして、この判決患者側全面勝訴をいたしました。この勝訴について渡辺厚生大臣はそのとき、「本判決カネミ油症に関する初めての判決であるが、国も被告として民事訴訟が係属中である福岡地裁小倉支部における判決を控え、厚生省としても重大な関心を寄せていたところであり、至急判決文を取り寄せて検討したい。」原告側は次の声明を出しました。「本判決に基づき被告支払い義務が履行されたとしても、原因、治療の手がかりはつかめないのが現状で、全面的に被害回復されたとはいえない。裁判の無力さを補い、被害者を救済するのは行政政治である。被害者具体的救済行政政治が一日も早く手を差し伸べることを願う。」各紙は一斉に社説を掲げて、カネミ油症判決製造物責任について論陣を張ったわけであります。  一方経済企画庁としては、私の手元へ「消費者被害救済制度海外調査団報告書」が寄せられましたが、その要旨を読んでみますと、次の結論をしています。「製造物責任は、製造業者責任明確化を指向するものである。欠陥商品による拡大損害責任製造業者に課すべきであるという主張は、もともと、消費者製造業者過失を立証することは困難である、製造業者製品欠陥のリスクを防止し、その費用を転嫁、分散するのに最適の立場にあるという考え方にもとづいている。西ヨーロッパアメリカでは、製造物責任法制における進展の相異はあるものの、消費者製造業者(あるいは保険会社を含め)のバランスを運用面において具体的にどうとるかが、今後の大きな課題とされていた。さらに、訴訟手続き改善や、公平迅速かつ簡便な苦情処理機関設置等も今後の検討対象とされていた。製造物責任問題の解決には、法制度導入においても、運用においても、社会的な公平性感覚とコモンセンスか重要である。」これは外国の報告の結語ではありますが、しかし、いまわれわれが何をなさんとするか、何をするべきであるかということを、えんきょくに経済企画庁として呼びかけておる、そういうふうに私は理解しておるわけであります。  特にこの際、お互いに銘記しなければならないのは、カネミ訴訟における判決の、被告カネミ責任についてのくだりであります。時間の関係もございますけれども、重要な項でございますから読みますと、「以上に述べた点から、食品製造業者民事責任については、次のような判断基準が定立されるべきである。すなわち、食品の出荷以前に生じまたは存在した原因によって、食品に人の生命、健康を害する瑕疵欠陥)が生じ、その瑕疵欠陥)ある食品を摂取したことによって人の生命身体被害が及んだ場合には、それだけで瑕疵欠陥)ある食品製造、販売した者の過失が事実上強く推定され、そのような瑕疵欠陥)の発生または存在食品製造業者に要求される高度なかつ厳格な注意義務を尽しても、全く予見し得なかったことが主張、立証されない限り、右推定は覆えらないものというべきである。したがって、右瑕疵欠陥)の発生または存在が全く予見し得ないものと認められない以上は、瑕疵欠陥)の発生防止措置発見方法存在しないことなどを主張しても、右推定は左右されないというべきである。」全く製造者の無過失責任を言うておるわけであります。  これらの前段を踏まえて、大臣に最終的にお伺いするにしても、まず各省の関係について伺います。  通産省にまず伺います。これは「消費生活用製品安全法のしおり」であります。この内容をいまいろいろとやかく言いません。しかし、これによりますと、SGマーク三十八商品については、製品安全協会保険制度がある、こういうことなのであります。このいまの立場、論理、それから大きな歴史の流れからいいますと、この消費生活用製品安全法というものが十分に満たし得ていない。三十八商品だけはこれによってある意味保険がされるということになるのですけれども、三十八商品以外の問題についてはどういうふうに考えたらいいのか。  また、よく保証書というものがある。このテープレコーダーを買ってもらったら一年間は保証しますという保証書というものは、法律的には、民法あるいはそのほかの法律によって、消費者の権利、消費者への賠償というものが、保証書によって時限的にその法律は消えてしまうものであるかどうか、保証書というものはいかなる意味があるか、これらの点を伺いたいと思います。
  16. 野崎紀

    野崎説明員 お答えいたします。  第一点の御質問でございますが、SGマーク制度というのが御指摘のとおりございまして、製品安全法が昭和四十八年に成立をいたしまして、それ以来鋭意SGマーク制度に必要な商品を乗せて、被害者救済を図るべく努力をしてまいった次第ですが、その結果、現在のところ三十八品目に達した次第でございます。これは現在認定基準というものを制定し終わった製品でございますが、このうち二十五品目に現在実際にSGマークが貼付されて、市場にそういう製品が出回っておるという状況になっております。  私どもといたしましては、今後ともこういったSGマークの対象となる商品の数を順次ふやしてまいりまして、危険が少しでもあるという商品につきましては、被害者救済が簡単な手続でとられるよう、保険制度を加味したこういう制度を拡充してまいりたい、こういうふうに考えております。  それからさらに、むしろ危険な製品をつくらないようにする政策面でもより一層の厳しい指導をしてまいりたい。これは電気用品取締法あるいはガス事業法等の取締法もございますし、また製品安全法による特定製品といった問題もございますので、そういった制度を活用いたしまして遺漏なきを図ってまいりたいと考えておる次第でございます。  それからさらに、第二の御質問の保証書の問題でございますが、保証書につきましては、現在消費者の方からのいろいろな要望等もございますし、またクレームその他も当省に参っておる例もございますので、現在産業構造審議会の消費経済部会におきまして、学識経験者、消費者あるいは業界の方々を委員といたしまして鋭意検討中でございます。なるべく早く結論を出しまして、国としての一つの考え方というものもまとめてみたいというふうに考えております。
  17. 横山利秋

    横山分科員 お聞きのとおりに、いまの消費生活用製品安全法も、それからその運用保険制度も、それからいわゆる保証書なるものも、やはり基本的な問題を解決していない、そういう点を私は強く痛感いたします。  いま連絡がありまして、厚生省はスモン病判決のために記者会見その他で出れないというのであります。聞きましたら、原告勝訴だそうであります。これはきわめて重大な問題をまた国及び製造業者に与えておると私は思うのであります。  農林省に伺います。  農林省は食品製造研究会を開いておるという話でありますが、この製造物責任はどういうふうな観点で作業が進んでいますか。
  18. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 いま先生御指摘のように、食品産業センターという団体に国が委託いたしまして、食品事故の研究会を開いております。この食品産業センターと申しますのは、いわば食品関係諸団体の中央会的な存在でございます。議論の中心は、食品の事故は一たん発生しますと非常に広範に影響が及ぶ場合が多い、そのとき一番問題なのは消費者に対する賠償費用の問題だと存じます。それに対しまして保険的な手法が導入できないかどうか、あるいは製品の回収も考えなければいけませんので、そういうシステムの問題、そういうことを中心にして五十二年度、五十三年度、この二年度で研究させる、こういうことで現在鋭意検討中でございます。
  19. 横山利秋

    横山分科員 お聞きのとおりに、百年河清を待つような気がいたします。  そこで、経済企画庁国民生活局が所管だそうでありますが、先ほど引用いたしましたように、経済企画庁調査団を派遣して製造物責任中心として欧米諸国の実情を調査されました。調査団は経済企画庁、法務省、農林省、通産省の四省庁で構成されたそうであります。このほかに、たとえばいま裁判の進行中であります諸問題をとらえてみますと、サリドマイド事件、森永ドライミルク事件、これは民事は解決しておりますが、カネミ油症事件、スモン病事件、そのほかにもプロパンガス爆発事件、エレベーターの事件、建造物の欠陥事件等たくさんの問題が存在しておりまして、今後ますます製造物責任中心としての訴訟なり、あるいは消費者運動が活発に発展をすると痛感しておるわけであります。聞きますと、経済企画庁では被害者救済の全般の総合調査の作業をなさっておる、これも一環だそうでありますが、経済企画庁の所管としては一体どんな作業が進んでいますか、事務当局から伺いたいと思います。
  20. 井川博

    ○井川政府委員 一般的な消費者被害救済制度の問題につきまして、経済企画庁としましては、昭和四十八年以来国民生活審議会の場で検討を進めてまいっておるわけでございますが、先生御案内のように、この問題には大変広範ないろいろな問題を含んでおるわけでございます。五十一年の十月に消費者保護部会といたしまして、一応中間的な答申として、消費者被害救済制度のあり方について中間答申を出したわけでございますが、この中間答申の中心になりますのがいまお話のございました製造物責任でございます。しかし、この問題については海外のいろいろな状況も十分調査をした上、日本的な制度の検討をすべきである。それから、さらにまた、わが国ではまだこの問題についての議論が進んでいない。そういう意味で、いろんな調査その他検討をしていくべきである。かつまた、やり方といたしましていろんな段階があるわけですけれども、事実上の事業者の対応の仕方であるとか、あるいは行政上の苦情の処理の仕方であるとか、あるいは司法上の問題等々あるけれども、段階を踏んでやっていくべきであるというふうな答申内容になっているわけでございます。  いま先生からお話のございました昨年の秋に参りました調査団と申しますのも、その一環といたしまして、十分明らかになっておりませんでした欧米の被害者救済制度、特に製造物責任制度についてつぶさに調査をしてきてもらったというわけでございまして、この発表が去る一月になされたわけでございます。  それと並行いたしまして、経済企画庁といたしましては関係各省と連携をとりながら、各種の調査を今後とも進めていくわけでございますが、五十二年度におきましては一応概算的な、先ほど申し上げたような広い意味消費者被害というものの実態がどうなっているかという消費者被害状況調査、これを一年がかりでまとめまして、これも先般、二月末に発表いたしました。  それからもう一つは、拡大損害の一つの例といたしまして、火災による消費者被害というものがどういう状況であるかというふうなこと、これも五十二年度といたしまして調査を進め、先般発表いたしたわけでございます。  こうした各種消費者被害についての実態が、一般的に申しましていまだ明らかでない面がございますので、そうした調査をやりましたし、今後も続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  21. 横山利秋

    横山分科員 土曜日の新聞でございますが、厚生省が出てこないのは残念でございますが、薬害救済法と薬事法の改正が今国会に提案できないという記事があります。それによりますと、「薬害救済制度については、国がどの程度、責任を負うべきかについて、国側の意思統一ができなかったのが最大の理由。この結果、関連して改正しなければならない薬事法の手直しも行き詰まることになった。」「薬害に対する国の責任が新法案作成の過程で問題となったのは、スモン、コラルジル、クロロキンなど係争中の一連の薬害訴訟で、原告側から責任追及を受けている国が、「現在の薬事法が安全性確保の制度を規定していない」として、薬害の直接の責任は製薬企業にあるという主張を続けていることも微妙に関係している。」という記事が出ています。要するに、いままだ建設省、運輸省の問題もたくさん事例を私は持っておるわけでありますが、余り広範に問題を広げてもいけませんので、きょう来ていただいた四省を中心に話をしておるわけですけれども、結局いまの各省の作業が経済企画庁中心として、経済企画庁がお茶とコーヒーを出すぐらいでそれぞれやってくれというような雰囲気のように思う。一方、カネミ油症にしてもスモン訴訟にしてもどんどんと製造物責任の問題が定義づけられておる、そして原告の勝訴になっている。だから、いまこれを放置しておきますと、カネミが十年かかって勝ったからあれは勝てるんだという確信を、製造物責任については国民に植えつけていく。したがって、おれたちも訴訟しようということになる。けれども、十年かかってようやく勝ったものの、その中で非常に多数の患者があるということ。そういうことを考えてみますと、訴訟をやれば勝てるじゃないかということのまま放置するのは許されぬ。また、各省がそれぞれやっておるにしても、いまのこの薬害救済法の問題の焦点である国の意思統一ができていない。だから、せいぜい通産省のやっております消費生活用製品安全法を少しずつ枠を拡大するという程度にとどまる。基本的な原理というものの意思統一ができていないというところから、百年河清を待つようなかっこうになると私は判断せざるを得ないのです。  そこで、すでに政府側としては、御存じのように、七五年でございますか、製造物責任法要綱試案というものが、学者を中心にして発表されました。当時この要綱試案というものが、専門家の中ではきわめて注目をされて、なるほど一つの指標を与えられたという感じが私はするわけであります。私はいまこの法案要綱の内容についていろいろ申し上げる時間はございませんけれども、少なくとも検討の基調として、大きな大黒柱としてこれがあるではないかという気がいたします。私は、先般サラ金の問題について、法務委員会で、一体主管省はだれか、どこかということを言いました。結局、法務大臣が二回閣議で言っても、いまもって責任のある省、責任のある大臣が発見されないままになっている。この製造物責任についても同じことが言えようかと思うのです。  大臣を前にして大変恐縮でございますけれども、経済企画庁が本当にこの問題について責任を持った法案づくりを、消費者保護の立場からなさるお気持ちがあるかどうか、いままで私はちょっと疑問を持っておるわけです。なぜかといいますと、申すまでもありませんが、この基本的な問題は民法にある、民法を直さなければいかぬとも私は思っているわけであります。そういう基本的な論理になりますと法務省じゃないかと経済企画庁は言いそうな気がするわけであります。法務省に打診をしてみますと、民法のような大法典に無過失責任導入し、製造物責任導入するということは容易ならざることだと言ってちゅうちょしておる。仮に法務省がその気になっても、各省がなかなかそれは大変なことだから、メーカーの全面的反対を受けることであるからとちゅうちょをして、各省独自でこの種の作業をさせるならば、結局基本的な国の責任というものにちゅうちょして、討議をしない。せいぜい現行法を多少直していくということにとどまってしまう。裁判がどんどん進行して、次から次へと、製造物責任判決で原告勝訴というかっこうが出ていくというかっこうを私は想定せざるを得ないのであります。  そこで、いよいよ大臣にお伺いをするのですけれども、一体この問題、製造物責任について責任を持ってくれる省は、経済企画庁がやってくれますかどうか。あなたが責任を持ってこの製造物責任の法案を、このとおりにつくれと言っているわけではありませんが、少なくとも骨格が民間有識者の中にできているのだから、土台として検討を速やかに進める、単に経済企画庁がお茶とコーヒーを出すわけじゃない、海外旅行の先頭に立つわけじゃない、自分たちが責任を持つ、消費者保護のために責任を持つというお立場になっていただけるかどうか承りたい。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題の複雑さにつきましては、横山分科員がただいまるるお述べになりましたとおりでございます。まさしくそういうむずかしい問題がございます。  経済企画庁といたしましては、いままで消費者保護という立場から、政府によります消費者保護会議の基本的な決定を推進し、それに基づきまして各種の調査をし、また海外事情も調べ、そしてそれを世の中に公表するということで、今日まで問題の提起に努めてまいったつもりであります。今後もまたさようにいたしたいと考えております。  ただ、まさしく横山分科員の言われましたような広範な問題を含んでおりますから、経済企画庁責任を持っていつまでにこういう法律案を作成し、国会に御提案をいたしますということは、私としてはただいまの段階で申し上げにくうございます。御指摘のように、いろいろな判例も出てくる、そして社会的なそのようなコンセンサスがだんだんできていくということは好ましいことでございますし、それに向かって私どもなりの調査、所見等は発表してまいるつもりでございますが、やはり究極的には、そのような国民的ないわば合意が熟していくのを待たなければならないのではないか。そのための努力はいたしますけれども、その以前に法律案を作成するということはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えます。
  23. 横山利秋

    横山分科員 やはり私が想像したような御答弁をなさいました。私は大変残念なことだと思うのです。きょうの判決内容がどういうものであるかはわかりません。わかりませんが、原告勝訴と聞きまして、カネミ油症判決と相並んで世論は一斉に政府の立ち上がりの遅さを糾弾をすることに相なろうと思う。  この製造物責任の問題について、原告側としては不法行為としての成立要件を満足させればいいわけなんですが、加害者つまり製造業者の故意、過失の証明、因果関係の証明が実際問題では困難であることはだれしも容易にわかるところであります。一消費者として企業の内部に立ち入り、調査することは不可能で、仮に入っても、そこで調査、分析する専門的知識も能力も備えていないことは通常であります。そこでどうしても不法行為的な処理の面についても契約的処理と同様に技巧的な面を導入することになる。民法七百十五条の使用者責任、七百十七条無過失責任等の立法趣旨を援用しようとしても、条文を素直に読む限りにおいては相当に困難な問題がある。民法のいまの条項だけで訴訟に勝つということは、実際問題としては困難であります。カネミ油症判決は先ほど読み上げたとおりでありますし、きょうの判決がどういうことになるかわかりませんけれども、それでもなおかつ時代の趨勢として製造者責任を追及せざるを得ない。そういうことは、裁判官が公正に判断をする限りは私は当然なことだと思うのです。  そこで法務省にお伺いをいたします。  いま私が申しました趣旨において民法の改正がどうしても必要視されると思うのですが、法務省の見解はいかがでございます。
  24. 元木伸

    ○元木説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、現在七百九条、不法行為によりますと過失責任ということになっておりまして、過失の立証が原告の側に課されているということでございます。  ただ、民法が過失責任主義をとっておりますのは、人の行動の自由を保障するということがございまして、人が行動した場合に無過失損害賠償請求をされるということになりますと、かなり社会活動等が阻害されるのではないか、こういう立場に立っているわけでございます。したがいまして、民法におきまして無過失責任主義をとってしまうということになりますと、人の社会活動に対する影響というのはかなり大きいのではなかろうか、このように存じます。しかも、いわゆる製造物責任ということになってまいりますと、その製造された物の種類、性質等、かなりいろいろ違ってまいりまして、ただいま先生からも御指摘がございましたように、無過失責任主義をとるかあるいは立証責任に転換をするか、あるいは因果関係についての立証をどういうふうにして持っていくかというようなことできめ細かい対策が必要なのではなかろうか、このように存じます。したがいまして、民法全体を直ちに変更いたしまして無過失責任主義にしてしまうということはかなり問題があろうかと存じます。それぞれの単独立法をもってやるべきものではなかろうか、このように考えます。
  25. 横山利秋

    横山分科員 いまのお答えの中で民法全般を改正するとおっしゃいましたが、私は必ずしもそこまで言っていないわけです。関係の条文の改正。それからもう一つ結語でおっしゃったのですけれども、恐らくそれぞれの問題に応じて法律をつくれ、各省でやれという趣旨だと理解をいたします。そうですね。——そのことにつきましても、仮に最後におっしゃったやり方にしましても、国としての統一的な意思がなければなりません。各省で勝手にばらばらに、どの趣旨でやれと言うのかということになるわけであります。したがって、民法改正をすべきであると思いますけれども、仮に民法を改正しなくても、裁判の判例その他によって国の責任を追及されておる、また判例が生きたのであるから、この判例の趣旨に沿って各省がそれぞれ単独法でやれ、経済企画庁消費者保護基本法のようなもの、あるいは消費者被害救済法のようなもの、あるいは私が言う製造物責任法のようなもの、そういうものをつくればいいわけであります。民法を現状のままに置いても、そういうものをつくればいいわけであります。法務省は率直に言ってそういうことを示唆しておると思うのですけれども、大臣ばどうお考えですか。
  26. 井川博

    ○井川政府委員 事実上の法制ということになりますといろいろなやり方があろうかと思います。しかしそれ以前に、先ほど大臣からお答えいただきましたように、国民的なコンセンサスを得るということが大切でございまして、カネミ裁判の判決もまだ最終判決になっておりませんし、今回のスモン判決につきましても最終的にどうなるかということはわかりません。しかし、少なくとも現在の法律の解釈、判例としてそういうものがあるというのが事実、これは法曹界だけじゃなしに、わが国全般のそうしたコンセンサスづくりにもなっておりますし、あるいはまたわれわれがやりました欧米における調査団の報告自体も、消費者のみならず事業者の非常に大きい関心を呼んでおるわけでございます。政府部内におきましても、こうした問題についていろいろな意味調査をし、処置を拡大をしていこうというふうな動向があるわけでございまして、私たちはそういうふうな調査とコンセンサスづくりをやりながら、その法律をつくるとすることがいいのかどうか、あるいはまたつくる場合のつくり方等についても検討してまいりたい、こういうふうな考え方を持っておるわけでございます。現段階ではその前段階にある。なお先生御承知のように、実は製造物責任の法律として明確にございますのは、アメリカの判例を中心とした法制、これはもうきわめて進んだものがございます。しかし、ヨーロッパでは実はまだそういうものはございませんで、ECがそれについての案を出している、これについて各国が懸命に検討しているけれども、まだいろいろ問題があって、数年各国内の検討がかかりそうだという状況で、それぞれ問題があります。わが国においてもたくさんの問題がございますので、そういう問題を逐次調査、究明をしながら前向きに対処していきたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  27. 横山利秋

    横山分科員 ちょっと警告しておきたいと思うのですが、アメリカヨーロッパ調査をされた、それは非常に私は結構なことだと思う。しかし、アメリカにおける公害と日本における公害、アメリカにおける製造物の発展度合い、日本における経済成長の発展度合い、ヨーロッパにおける雰囲気と日本の雰囲気とはまるっきり違うわけでありますから、むしろ今日的状況から言うならば、日本の方がよほど進んだ製造物責任の体制があってしかるべきであり、ヨーロッパがこうであるからそれに追随するにはまだ早いとか、アメリカがこうであるからそれより進んだ物の考え方はいかがなものであろうか、とはおっしゃいませんでしたけれども、どうもそれがその辺にあるような気がして仕方がない、逆なんだと私は思う。  法務省にもう一つ伺いたいのでありますが、この法案要綱試案の付記で四つの問題を提起しています。この問題はここで整理をされておりますが、各方面ですでにいろいろ指摘をされておる問題であります。つまり「新たな制度の設置および既存の制度の改善がのぞまれる。ことに、次に列挙するような制度の導入を考慮すべきである。」として、「一 相手方および第三者の所持する証拠方法を強制的に裁判所に提出させるための制度 二少額被害の救済のための制度 三 クラス・アクション等、特定の者が多数の被害者の利益を代表して救済をはかるための制度 四 被告が第三者を訴訟に引き込むための制度」私が説明をしなくてもよくおわかりだと思うのでありますが、最近、法務委員会におきましてもこれらの四項目が課題になりまして、法務省の善処を促しておるところでありますが、この一連のここでの意見交換の中で、法務省がこの四項目をどう前向きにとらえていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  28. 元木伸

    ○元木説明員 ただいま先生の御指摘の問題は、いずれもあわせましていわゆるクラスアクションといいますか、多数者が原告となりまして特定の者を訴えるという問題に帰着するかと思います。先生御指摘のように、アメリカではいわゆるクラスアクション制度が導入をされまして、ことに最近連邦民訴規則が改正されまして、非常に充実したものになっているわけでございますけれども、これにつきましては、アメリカの制度とわが国の制度が全く異なっておりまして、ことに、私どもの申します既判力の問題と申しますか、裁判の結果の客観的な範囲というものにつきまして非常に違う問題があるわけでございます。したがいまして、日本でクラスアクションをとりました場合に、一体そういう既判力の客観的範囲というものがどこまで及ぶのかということについて、非常に重大な問題を提起するのではなかろうか、このように考えるわけでございます。  それから、もし現行法でそういう目的を達するということでありますならば、現在のところ、いわゆる選定当事者訴訟というのがございまして、これによってかなりのものが賄われていくのではなかろうか、このように考えます。したがいまして、この問題についてはさらに慎重に検討していかなければならないのではないかと存じております。
  29. 横山利秋

    横山分科員 時間がなくなってまいりましたので大臣にもう一回意向をただしたいと思うのでありますが、先ほど大変むずかしい問題だからとおっしゃいました。確かにむずかしい問題だと思います。  私も、短い時間で質問するためには、ずいぶん省略した点がございますが、ずいぶんいろんな本も読みましたし、あるいは各方面の提言も目を通してみました。読めば読むほど、これからの日本のありようについて、製造物のメーカー及び国の責任というものの体制を整えなければならぬと思います。もちろん、仮に製造物責任法ができました際に、いま付記の中で申し上げた少額裁判制度のような、アメリカでも弊害としてあるような、ネコもしゃくしもこれを盾にとって駆け込み訴えをするという可能性が決してないとは言えません。物事は何でもつくればいいというものではないわけであります。そういう点はございますけれども、いまや次から次へと判例が出ていく、政府の態度がおくれておる、各省でやろうとしても統一的な考えが確立していない、そういうことでは困ると思うのであります。いま直ちに法律ができないにしても、少なくともこれに関する基本的な法律を目指して、第一歩として、消費者保護の責任に当たられるあなたが、この種の問題についての国としての対応の原則をまず確立をされることが必要ではないか。各省でばらばらでやれ、民法は改正しないけれども、この判決が出ているのだから、各省だってばかじゃないのだからその辺は考えるだろう、では困るのであります。あなたは消費者保護の最高の責任者であるとするならば、この最近の事例について何らかの指標を各省に示し、あるいは閣議で決め、この方向に沿って各省がこの種の被害者の救済について当たるべきである、原則を示されることが必要ではないかと思いますが、いかがです。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 民法そのものに触れるということはいろいろな意味で困難だということはよくわかるわけでございますが、さてしかし、個々の単行法で処理をすればいいということになるといたしましても、その単行法をつくりますときの基本思想というものはやはり決めておきませんと、結局問題が同じところに帰着をいたすのではないかと思います。私どもとしましては、消費者の保護の観点からできるだけいろいろな実情の調査をし、そしてそれを広く世論に御紹介をする、その中でわれわれとしては、できるだけ消費者の保護を図っていきたいという主張、そこまではいたさなければならないと考えておりますけれども、実際に基本的な物の考え方政府で一定の時期までにつくって、そしてそれを法制化していけということにつきましては、私はやはり先ほど申し上げたことの繰り返しになりますけれども、関係者がすべて、この辺まではもはや時代の趨勢ではないかというふうに考える、その考え方の成熟というものをもう少し助けていかなければならないというふうに考えております。
  31. 横山利秋

    横山分科員 私は法務省の言葉を援用して言ったのでありまして、民法を改正しなくてもいいという立場ではないわけです。民法を改正しろという立場であるけれども、仮に法務省の立場を援用してもという立場で言ったわけであります。  それから、いま国が製造許可制度をとっているものがたくさんあること、御存じのとおりであります。各省すべてと言っていいほど、薬にしても食品にしてもあるいは建築物にしても、きわめて広範に国が許可制度をとっておる。国が許可する責任というものは一体どういうものなのか、国家が許可したのであるから売っても差し支えはない、そういう論理というものは、被害が出ても仕方がない一国に責任があるという論理は成り立たぬとは思っています。けれども同時に国が精密な調査をして、この食品は、この薬は、この建築物は、この自動車は製造してもよろしいと言った責任の問題は決して私はなおざりにすることができないと思っている。今後これらの判決の中で出てまいりますことは当然であります。許可した責任というものをどう国がとるかということが大事な命題の一つでありまして、いまいろいろとお答えのような中で、私の核心に触れる御答弁がなかったのは非常に残念でございますけれども、好むと好まざるとにかかわらず、もはやこの製造物責任、国とメーカーの責任、第一義的にはメーカーでありましょうとも、そこに関連する国の責任というものはもう避けることのできない論争の焦点になってきておるわけであります。ですから、国民のコンセンサスとおっしゃいました。国民のコンセンサスということは要するにメーカーとのコンセンサスだと、私はいやがらせではありますけれども言わざるを得ないのであります。製造物責任主張いたしますと、メーカーは大変いやな顔をいたします。けれども私はそれについては、法案要綱にもございます保険制度もあるではないか、基金制度もあるではないか、いまもうすでにその濫觴は幾つかあるではないか。一つのメーカーにすべての危険を負担させず分散する保険なり基金の制度というものが決していまないわけではない。そういう点を考えていきますと、これはもういまの政府のありようというものはきわめて退嬰的であり、消極的であり、そしてメーカーの圧力を恐れて、国民とのコンセンサスでなくてメーカーとのコンセンサスがどこに得られるかということが先入主であるとするならば何をか言わんやという考えがいたします。ちょっと皮肉でございますけれども、もう一度あなたの御答弁を聞いて質問を終わりたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 メーカーが一般的にそのようなことを考えておるということは自明のことであると存じますけれども、私どもが考えておりますのは、そのことよりはむしろ無過失であることの挙証責任を、いわば基本的に転換するということについて、いわゆる自由との関連がどうなるであろうかということを国民全体がどう考えるか、そういうことの方が私はむしろ気になっておることでありまして、一定の場合にはそれはやむを得ないというふうに国民が世論として考えていくようになれば、それはそういうことを受け入れる基盤ができるということでございますし、それについていろいろ議論がございますと、これはメーカーであろうとだれであろうと、やはり自由の裏側としての、故意はもとよりですが、過失ということをどう考えるかという問題に突き当たらざるを得ないと思いますので、メーカーの立場を考えて踏み切れないというほど、実は単純に考えておるわけではございません。
  33. 伊東正義

    伊東主査 以上をもちまして、昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算経済企画庁所管について質疑は終了いたしました。     —————————————
  34. 伊東正義

    伊東主査 次に、昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算農林省所管について政府から説明を聴取いたします。中川農林大臣
  35. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昭和五十三年度農林水産関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  最初に、各位の御協力を得て御審議いただくに当たりまして、予算の基礎となっております農林水産業施策の基本方針について御説明申し上げます。  最近のわが国農林水産業を取り巻く内外の環境にはきわめて厳しいものがあります。すなわち、米が再び過剰基調を強める一方で、増産の必要な麦、大豆、飼料作物等の生産が伸び悩んでおり、また林業、水産業においても、木材価格の低迷、国有林野事業の経営悪化、二百海里時代の到来による国際的規制の強化等の諸問題に直面しております。他方、昨年来わが国の大幅な国際収支の黒字をめぐって、米国を初め諸外国より対外均衡の回復が強く要請されており、農林水産物の貿易問題についても引き続き厳しい状況にあり、その対応を迫られています。  このようなわが国の農林水産業をめぐる内外の諸情勢に対処し、将来にわたる国民食糧の安定供給を確保するためには、食糧の需要動向に即応して農林水産業の生産体制を整備し、総合的な食糧自給力の向上と農林水産業の健全な発展を図ることを基本として、長期的視点に立って総合的な施策を展開する必要があります。  まず、米の過剰問題については、米の消費拡大を積極的に推進しつつ米の生産を計画的に調整し、麦、大豆、飼料作物等の生産の拡大を図ることが肝要であります。このため、米の消費拡大を図るための施策を大幅に拡充するほか、今後の需要動向に即応して農業生産を再編成するという観点から、水田利用の再編、畑作の振興、畜産の振興等を強力に推進することといたしております。  次に、農業生産基盤の整備については、農業生産の再編成を推進するとともに、あわせてわが国経済、特に農山漁村の景気対策にも配慮し、近年にない予算額の大幅な増大を図っており、水田の汎用化、畑作の振興、農村環境整備に重点を置いて事業の積極的な推進を図ることとしております。  主要農産物の振興対策については、農業生産の再編成を図るため、今後生産増強の必要な麦、大豆、飼料作物、果実、畜産物等につき、それぞれの特性に応じた生産対策を拡充強化するとともに、これら農産物の価格対策の充実にも配慮を加えております。  また、食糧需要動向変化に対応した農業生産の体制を整備するためには、長期的視点に立って、農業への意欲と能力を有する中核的担い手の育成と後継者の確保を図るとともに、これら担い手、後継者への土地利用の集積による農業生産構造の改善推進する必要があります。このため、新農業構造改善事業を発足させることとしているほか、地域農政特別対策事業を拡充実施することとしております。  以上の施策とあわせ、近年高まっている農山漁村の生活環境整備の要請にこたえるため、農村につき既存事業を拡大実施するほか、新たに、林業または漁業集落を対象とするモデル事業に着手するとともに、山村地域を対象に生活環境整備を含む緊急補足整備事業を実施することとしております。  また、流通加工対策については、卸売市場の計画的整備等生鮮食料品の流通改善及び消費者保護のための施策の推進を図ることとしておりますが、特に、食肉及び果実につきましては、食肉流通の近代化及び果汁工場の近代化のための施策を強力に推進することとしております。  農林漁業の金融については、農林漁業金融公庫の貸付枠の拡大を初めとして、その充実に努めております。  次に、森林、林業施策については、木材価格の低迷、国有林野事業の経営の悪化等林業をめぐる厳しい諸情勢に対処し、わが国林業の安定的発展を図るため、各種施策の充実強化を行うこととしております。  まず、林道、造林事業等の林業生産基盤の整備及び治山事業等の国土保全対策について、その積極的な拡大実施を図るとともに 林業構造改善事業、マツクイムシの計画的防除等を推進することとしております。  また、林業労働対策について、林業労働者の就労の実態に合った退職金共済制度の適用促進対策を新たに実施するほか、シイタケ、ナメコ等の特用林産物の振興対策の強化を図ることとしております。  国有林野事業については、経営悪化の状況にかんがみ、所要の合理化に努めるとともに、国有林野における生産基盤整備事業につき一般会計資金の導入を図るための措置を講ずる等経営の改善を図ることとしております。  水産業については、二百海里時代の到来に対処し、水産物の安定的供給を確保し、わが国水産業の振興を図るため、水産施策の強力な展開を図るとともに、水産行政機構の拡充強化を図ることとしております。  まず、わが国周辺水域内の水産資源の維持培養とその高度利用を促進するため、資源調査、沿岸漁場の整備開発、水産増養殖の推進等を積極的に推進することとしております。  また、遠洋漁業の新たな展開の場を見出すため、新漁場、新資源の開発を推進するとともに、漁業外交の展開等により海外漁場の確保を図ることとしております。  以上のほか、多獲性魚等の利用加工技術の開発等、水産物の高度利用を推進するための施策を講ずるとともに、漁港整備事業及び沿岸漁業構造改善事業の計画的推進並びに流通、価格、経営対策の充実を図ることとしております。  以上、申し述べました農林水産業の施策の推進を図るため、昭和五十三年度農林水産関係予算充実に努めた次第であります。  昭和五十三年度一般会計における農林水産関係予算総額は、総理府など他省庁所管の関係予算を含めて三兆五百六十七億円であり、前年度の当初予算額と比較して一五・八%、四千百六十六億円の増加となっております。  以下、この農林水産関係予算重点事項につきましては、委員各位のお許しを得まして説明を省略させていただきたいと思います。よろしく御審議くださいますよう、お願い申し上げます。
  36. 伊東正義

    伊東主査 この際、お諮りいたします。  ただいま中川農林大臣から申し出がありました農林省所管関係予算重点事項説明につきましては、これを省略して、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 伊東正義

    伊東主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔中川国務大臣説明を省略した部分〕  以下、予算重点事項について御説明いたします。(食糧需要動向変化に対応した農業生産の再編成)  第一に、食糧需要動向変化に対応した農業生産の再編成に関する予算について申し上げます。  最近、稲作志向がきわめて根強い一方、米に対する需要が引き続き停滞しているため、米過剰の基調は一層強まっており、他方、麦、大豆、飼料作物等今後増産の必要な農産物の生産は伸び悩んでおります。  このような状況を踏まえ、米の生産を計画的に調整するとともに、農地利用の中核的農家への集積を図りつつ、水田の高い生産力を活用して今後増産の必要な農産物の生産を拡大し、またその定着を図ることが肝要であります。このため、新たに昭和五十三年度以降おおむね十年間の対策として、水田利用再編対策を実施することとし、昭和五十三年度から昭和五十五年度までをその第一期として、各年百七十万トンに相当する水田を対象に転作等を推進することとしております。  また、本対策の円滑な推進に資するため、奨励補助金の水準を適正に定めるとともに、都道府県が地域の実情に応じて転作条件を整備するのに必要な諸対策を機動的に実施するための転作促進対策特別事業を創設するなど、水田利用再編対策として総額二千百十二億円を計上しております。  次に、農業生産基盤の整備については、農業生産の再編成を図るとともに、あわせてわが国経済特に農山漁村の景気対策にも配慮し、近年にない大幅な予算額の増大を図ったところであります。特に、水田利用再編対策と畑作の振興を強力に推進するため、圃場整備事業、畑地帯総合土地改良事業、土地改良総合整備事業等を積極的に推進することとし、新たに水源工事を必要とする特殊土壌地帯を対象として畑地帯水源整備事業を創設することとしております。また、農用地開発事業の積極的な推進を図るため、補助事業の採択要件の緩和を行うとともに、農用地開発公団事業として、干拓地において農畜産物の生産団地を形成するための事業を創設することとしております。これらを含めた農業生産基盤整備費として、総額七千二百八十二億円を計上しております。  次に、主要農産物の振興対策について申し上げます。  まず、麦については、農作業の受委託、営農排水等営農条件の整備等を総合的に行う高度麦作集団育成総合対策事業等を引き続き実施するとともに、新たに麦を取り入れた合理的輪作体系の確立と畑作麦の担い手の確保等を総合的に推進するための畑麦作集団育成特別対策事業を実施することとしており、麦生産振興対策として総額百七十三億円を計上しております。  また、大豆、甘味資源作物、特産農産物については、それぞれ既存事業の拡充実施を図るほか、新たに、地域の実態に応じた大豆作の受委託を推進する事業、簡易な土地基盤整備、栽培の機械化等を推進するサトウキビ生産団地育成事業、営農的土地基盤整備、省力機械の導入等を行う特産畑作振興対策事業等を実施することとし、総額百十三億円を計上しております。  養蚕対策については、新たに桑苗主産地の育成及び罹病桑園の改善推進する桑園生産改善緊急対策事業を実施する等施策の充実を図ることとし、総額三十九億円を計上しております。  また、野菜の生産対策については、野菜の生産、供給の安定を図るため、野菜指定産地を中心とする集団的な野菜産地の育成強化対策を進めるとともに、地方都市周辺の地場野菜産地について、水田における野菜への転作の推進にも配慮しつつ、その維持育成を図るため、新たに地場野菜産地生産流通対策事業を実施することとしております。なお、以上のほか、野菜の合理的輪作体系の導入定着の促進を図るための事業、園芸用廃プラスチックの適正処理を推進するための事業等についても、引き続き実施することとしております。  野菜の価格対策については、水田利用再編対策の推進に資する観点からも制度の拡充を図ることとしており、指定消費地域の拡大、補てん率及び保証基準額の引き上げ等価格補てん制度の改善、都道府県段階で行われている特定野菜の価格安定事業の対象品目の拡大等を行うこととしております。  これら野菜対策として、総額三百二十三億円を計上しております。  果樹の振興対策について申し上げます。温州ミカンについては、その需給及び価格の安定を図るため、果実生産出荷安定基金を活用して、生産、価格、流通にわたる総合的な対策を講ずることとしておりますが、特に、加工原料用果実の価格補てん事業につき、保証基準価格及び補てん率の引き上げ等を図ることとしております。また、新たに温州ミカンを中心として、栽培の省力化、品質の向上等を図る柑橘産地の再整備対策を実施するとともに、果汁仕向け量の増大に対応するため、果汁工場の主要施設の整備を新たに実施することとしております。リンゴ、桃、ナシ等の落葉果樹については、引き続き生産振興対策を実施するほか、桜桃につきましては、内外の諸情勢にかんがみ、生産、出荷の合理化対策を拡充強化することとしております。これらを含めた果樹対策として、総額七十六億円を計上しております。  次に、畜産の振興対策について申し上げます。  まず、飼料対策については、既存の畜産地帯を再編整備し、新たな畜産主産地の形成を図る公社営畜産基地建設事業の創設等により、草地開発事業を積極的に推進するとともに、新たに飼料基盤の脆弱な大家畜経営の健全な発展を図り、また水田利用再編対策の推進にも資するため、土地条件の整備、飼料作物の生産利用の合理化施設の設置等を行う自給飼料生産向上特別対策事業等を実施するほか、飼料穀物の備蓄対策及び配合飼料の価格対策を推進することとしております。  酪農、肉用牛、養豚の各部門についても、団地育成事業を拡充し、地域の実情に応じて他畜種を組み合わせた畜種複合型の団地の育成を図るとともに、牛肉生産体制を緊急に整備する必要があることにかんがみ、肉用牛団地育成事業につき計画の繰り上げ実施等を行うこととしております。また、家畜導入対策、家畜改良増殖対策の充実にも努めることとしております。  畜産物の価格、流通加工対策については、肉用子牛の価格安定事業につき、保証基準価格及び補てん率の引き上げ等を図るとともに、加工原料乳に対する不足払いの実施等価格対策及び牛乳の消費拡大対策を充実するほか、牛肉をめぐる内外の諸情勢にかんがみ、総合食肉流通体系の整備を繰り上げ実施するとともに、新たに部分肉の物流と取引の拠点としての部分肉センターの設置、食肉の小売店の協同組織による共同仕入れ、処理等を促進する食肉共同処理施設の設置等を行うこととしております。このほか、畜産振興事業団の指定助成対象事業においても、牛肉の流通改善を図るための事業に要する経費を別途計上しております。  これらの畜産振興対策として、総額千四百九十七億円を計上しております。  以上のほか、農業機械の効率利用及び農作業の安全確保を総合的に推進する等の農業機械対策、畑地の重粘土等の不良土壌を改良する耕土改良対策等の地力対策を実施することとしております。  (農業構造の改善と地域農業の振興)  第二に、農業構造の改善と地域農業の振興に関する予算について申し上げます。  食糧需要動向変化に対応した農業生産の体制を整備するためには、長期的視点に立って、農業への意欲と能力を有する担い手の育成と後継者の確保を図るとともに、これら担い手、後継者への土地利用の集積による農業生産構造の改善推進する必要があります。  このため、地域の実情に即し、担い手を中心とした農業の組織化、土地利用の適正化、生産条件及び生活環境の整備等を総合的に推進する新農業構造改善事業を当面前期五カ年計画として総事業費一兆円の規模で発足させることとし、昭和五十三年度は、計画樹立を行うほか、水田利用再編対策の推進にも配意し、一部即着工を図ることとしており、総額五十六億円を計上しております。なお、第二次農業構造改善事業については、これを計画的に推進することとし、総額六百五十三億円を計上しております。  また、意欲的に農業に取り組む者の自主性と創意工夫を生かして地域農業を推進し、担い手の育成、農用地の利用増進等を図るため、地域農政特別対策事業等を拡大実施することとし、百三十六億円を計上しているほか、農地保有合理化促進事業の推進を図ることとしております。  農業後継者対策については、県の農民研修教育施設の計画的な増設を図るとともに、農村青少年活動促進対策等の推進を図るほか、農業後継者育成資金及び総合施設資金の貸付枠の拡大を行うこととしております。(農山漁村の生活環境の整備と福祉の向上)  第三に、農山漁村の生活環境の整備と福祉の向上に関する予算について申し上げます。  農林漁業の生産体制を整備するためには、生産の担い手である農林漁業者が居住する農山漁村を、活力に満ち豊かで安定感のある地域社会とすることが肝要であります。このため、農村地域を対象に農村総合整備モデル事業の第二期事業に着手するとともに、農村基盤総合整備事業を積極的に推進するほか、新たに林業及び漁業集落の環境条件を総合的に整備する事業をモデル的に実施することとしております。  また、農山漁村における就業構造の改善に資するため、農業就業改善総合対策の推進に努めるとともに、新たに、生活環境の整備、高齢者活動の推進等を行う山村地域農林漁業特別対策緊急補足整備事業を実施する等、山村等の振興対策を促進することとし、所要の経費を計上しております。  農業者年金制度についても、農業者年金基金法を改正し、未納保険料の納付を特例的に認める救済措置を講ずる等、制度改正を行うこととし、三百八十四億円を計上しております。  次に、農業者の健康の維持増進を図るため、農業者健康モデル地区育成事業等を推進するとともに、生活環境改善対策の一環として、新たに地域住民の共同作業により、身近な生活環境の整備を行う手づくりの村整備事業を実施するほか、農村婦人の福祉の向上に資するため農村婦人の家の増設等を行うこととしております。(食品流通加工の近代化等)  第四に、食品流通加工の近代化と消費者対策の充実等に関する予算について申し上げます。  農産物を適正な価格で供給し、国民の食生活の安定に資するため、先に申し上げましたように、野菜、果実、畜産物等について生産、価格、流通加工対策を拡充強化するほか、生鮮食料品の流通のかなめである卸売市場の整備について百六十四億円を計上しております。また、新たに食糧事務所の職員を活用して、食品製造、流通段階における品質管理、価格、需給動向の予察等を行う食品流通改善巡回点検指導事業を実施する等食品流通の改善効率化等のための諸施策を推進することとしております。  消費者保護対策、食品産業等農林関連企業対策、生鮮食料品等小売業の近代化対策についても施策の充実を図っております。(農林漁業金融拡充)  第五に、農林漁業金融拡充に関する予算について申し上げます。  まず、農林漁業金融公庫資金については、新規貸付計画額を六千三百二十億円に拡大するとともに、貸付限度額の引き上げ等融資内容充実を図ることとしております。また、さきに申し上げました新農業構造改善事業について、補助事業のほか融資事業を実施するとともに、北海道及び南九州における畑作営農改善資金制度につき内容改善して延長することとし、所要の法律改正を行うこととしております。以上の貸付計画に関連し、同公庫に対する補給金として七百五十六億円を計上しております。  次に、農業近代化資金について、貸付枠四千五百億円を確保するほか、農業改良資金、林業改善資金、漁業近代化資金について、それぞれ三百二十億円、四十三億円、千億円と貸付枠の拡大を図っております。(森林、林業施策の充実)  第六に、森林、林業施策に関する予算について申し上げます。  森林、林業施策については、林業をめぐる内外の諸情勢に対処して、国内林業生産の振興と森林の公益的機能の発揮とを調和させつつ、その強力な展開を図ることとしております。  まず、林業生産基盤の整備については、林道事業として六百三十二億円、造林事業として三百三十八億円をそれぞれ計上し、事業の積極的な推進を図ることとし、新たに林道網の整備と一体的に林業集落の環境整備をモデル的に進める林業集落基盤総合整備事業に着手することとしております。  国土保全対策の充実については、第五次治山事業五ヵ年計画の第二年度として、治山事業につき千百九十五億円を計上するとともに、森林開発公団による水源林造成事業のための出資金百四十八億円を計上しております。  次に、林業構造改善事業については、二百十億円を計上し、事業の進捗を図るとともに、新たに構造改善事業終了地域等において、間伐促進等のための生産基盤、生産技術高度化施設等の整備に重点を置いた特別事業を実施することとしております。  また、林業の担い手たる林業従事者及び後継者の確保を図るため、新たに、林業労働者の就労の実態に即した退職金共済制度の適用促進対策を実施するとともに、林業普及指導事業の一環として総合的な後継者対策を講ずることとし、所要の経費を計上しております。  さらに、特用林産振興対策については、シイタケ、ナメコ等の特用林産物の安定的供給と農山村地域における住民所得の安定に資するため、樹林造成、生産・流通改善施設の設置に加えて、新たに生産基盤整備、広域流通基幹施設の設置等を含めた総合的な対策として拡充実施することとしております。  また、森林計画制度、保安林制度等の適正な運用を図るほか、マツクイムシの防除を計画的に推進することとし、森林病害虫等防除対策として五十二億円を計上しております。  以上のほか、木材の流通消費改善対策等についても、施策の充実に努めております。(水産業の振興)  第七に、水産業の振興に関する予算について申し上げます。  二百海里時代の到来に対処して、水産物の安定的供給の確保とわが国水産業の振興を図るため、水産関係施策の大幅な拡充を図るとともに、水産行政機構の拡充強化を図ることとしております。  まず、わが国周辺水域内の水産資源の維持培養とその高度利用を促進するため、大陸棚斜面の未利用資源の調査等を含め、資源調査を大幅に拡充するほか、沿岸漁業の生産基盤である沿岸漁場の整備開発を積極的に促進することとしております。また、栽培漁業の推進を図るため、栽培漁業センターの施設整備等を促進するほか、沖合い養殖及び浮魚礁等新方式による増養殖技術の開発を推進するとともに、サケ・マスふ化放流事業等を拡充することとしております。  以上、これらの事業に要する経費として、総額二百十八億円を計上しております。  次に、遠洋海域の水産資源開発と遠洋漁業の新たな展開の場を見出すため、海洋水産資源開発センターによる新資源、新漁場の開発調査拡大実施するほか、漁業外交の推進、海外漁業協力の拡充等を図ることとし、これらの事業に要する経費として、総額百五十一億円を計上しております。  また、水産資源の有効利用を図るため、イワシ、サバ等の多獲性魚、オキアミに重点を置いた利用加工技術の開発を推進するとともに、多獲性魚等の消費の促進を図ることとし、所要の経費を計上しております。  漁港施設の整備については、第六次漁港整備長期計画に基づき、沿岸沖合い漁業の基地の整備を重点として、その整備の促進を図るほか、漁港の整備とあわせて漁業集落の環境整備を行う漁業集落環境整備事業に着手することとし、漁港関連道の整備を含めて、総額千三百十四億円を計上しております。また、沿岸漁業構造改善事業についても、五十三億円を計上し、その計画的推進を図っております。  さらに、水産物の価格、流通加工対策については、水産加工原材料の供給事情の著しい変化に対応し、新たに、水産加工業の原材料の転換等を促進するため、設備の導入推進する等施策の推進を図っております。  また、最近の漁業を取り巻く国際環境の変化等の情勢に対処して、水産業経営の維持安定を図るために必要な長期低利の資金を融通するとともに、漁業近代化資金等制度金融拡充することとしております。(その他の重要施策)  以上のほか、農林水産業施策の推進のために重要な予算としては、試験研究費として八百三十六億円を計上するほか、農業、林業、水産業の普及指導事業及び生活改善普及事業について、総額三百七十八億円を計上しております。  また、農業災害補償制度の実施について千二百五十億円、農林漁業統計情報の整備充実に百七億円を計上しております。  次に、昭和五十三年度の農林水産関係特別会計予算について御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計については、国内米、国内麦及び輸入食糧につき食糧管理制度の適正な運用を図るとともに、国内産芋でん粉の価格の安定並びに飼料の需給及び価格の安定を図るため、所要の予算を計上しております。特に、米の消費拡大を一層積極的に推進するため、米穀需要拡大宣伝事業の充実を図るとともに、学校給食用米穀の特別売却の継続実施に加え、学校給食米飯導入促進事業の大幅拡充等を行うこととしております。食糧管理特別会計への一般会計からの繰入額は、調整勘定へ六千二十億円、国内米管理勘定へ二百八十八億円、農産物等安定勘定へ十九億円及び輸入飼料勘定へ五十四億円を計上しております。  また、農業共済再保険特別会計については一般会計から七百七十六億円を繰り入れることとしたほか、森林保険、漁船再保険及び漁業共済保険、自作農創設特別措置及び特定土地改良工事の各特別会計についてもそれぞれ所要の予算を計上しております。また国有林野事業特別会計については、国有林野における林道及び造林事業につき、一般会計からの繰り入れを行う等の措置を講ずることとしております。  最後に、昭和五十三年度の農林水産関係財政投融資計画については、農林漁業金融公庫等が必要とするもの等、総額六千八百九十九億円の資金運用部資金等の借り入れ計画を予定しております。  これをもちまして、昭和五十三年度農林水産関係予算概要の御説明を終わります。  よろしく御審議下さいますようお願い申し上げます。
  38. 伊東正義

    伊東主査 以上をもちまして農林省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  39. 伊東正義

    伊東主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松沢俊昭君。
  40. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 いま問題になっておりますところの米の生産調整の問題につきまして、農林大臣に御質問申し上げたいと思います。  私はまず最初に、国の行政というものはすべて法令に基づいて行なわなければならないと思っておりますが、今回の生産調整の根拠はどの法に基づいて行われているのか、この点を大臣から、はっきりと御答弁をいただきたいと思います。  それから二番目の問題といたしましては、末端の方に参りますとこの生産調整の問題で大変混乱をいたしておりますが、今回の生産調整は日本の農業生産の構造を変えるということを政府の方では言っておられますが、一体そういうのが目的であるのか、それとも一年間に百七十万トン、三年間で五百十万トンの生産を抑制する、これが目的なのか、政府の方針が、現地の方に入れば入るほど、さっぱりその見当がつかぬという状態でございますので、その点明確にしてもらいたい。  それから三番目といたしましては、食管会計の問題なんでありますけれども、昭和五十一年から五ヵ年間で逆ざやの解消をやるという計画が進められているわけなんでありますが、本年度、五十三年度の具体的な方針はどういうふうにしてやられていくのか、この三点をまず御質問申し上げたいと思います。
  41. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御質問は三つございますが、説明の都合上、二番目から答弁した方がよろしいと思います。  今度の生産調整は、単なる余剰米を減らすだけなのか、あるいはそのほか農政上何かあるのかという趣旨でございますが、前回の生産調整は確かに緊急避難で七百万トンの過剰米、そして単年二百三十万トンの主童調整を図る、したがって、休耕であるとかあるいは森林をつくるとかあるいは魚に転換するとかというようなものを含めて、とりあえずとにかく七百万トンを処理し、そして単年の需給のアンバランスを解消するということでございましたが、今回のは若干違いまして、米の需給のバランスをとると同時に、不足いたしております麦あるいは飼料作物、大豆、甘味資源等、こういったものの自給率の向上を図る。しかも今度は五年ではなくして約十年という長期的な日本の農業の食糧総合政策を遂行するという大きな、幅広い政策を持った転換である。こういうことにおいて、前回の生産調整とは内容、目的において、また規模において、やり方において違っておる、こういうことが言えるかと存じます。  さて、しからばそれは何に基づいてやっておるのかと言いますれば、これはもう当然農林省の行政として国民に必要な食糧を安定的に供給するという基本的なことでございますが、強いて法律を——強いてといいますか、法律に根拠して見ましても、農業基本法の第二条に明らかに、少ないものの増進を図り、余剰なものは転換をしていく、こういう条項もございますので、農業基本法にも沿った考え方である、こういうことでございます。  三番目の、食管会計の赤字を、逆ざやを解消する、これは五十一年からでございますが、いわゆる売買逆ざやというのがございまして、これは当時三千円くらいあったかと思いますが、数年でこれを解消するという基本方針を立てまして、五十一年、五十二年、それぞれ若干やってまいりましたが、五十三年度以降もこの基本方針に従って解消の方向をとる。どれぐらいとるかについては、生産者米価、消費者米価、米価審議会の御議論を経なければなりませんので、額については申し上げられませんが、そういう方向で進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  42. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 まず第一番目の質問に対しまするところの答弁でございますけれども、強いて言えば法的には農業基本法の第二条だ、こう言っておられるわけなんでありまするが、農業基本法には確かに大臣の言われたようなことが書かれております。八項目並べられておりまするけれども、第二項には、自然的社会的経済的な面というものを配慮してやれということが書かれているわけなのであります。  そこで、政府の方といたしましては、田畑輪換可能面積が発表されております。その可能面積以外のところは不可能なんであります。その不可能な面積しかないところの場所に、相当の転作面積がおりてきている、そういうところで一つの混乱があるわけであります。そうしますと、強いて言うならば基本法からきているのだ、こういうお話でございますけれども、それならば、そういう無理なことはやらぬ方がいいじゃないか、これが一つであります。  それからもう一つは、売り渡しの政令というのがございますね。いままでの答弁からいたしますと、これは行政指導であって要請だ、つまりお願いの筋なんだ、こういうことできておられるわけなんでありますが、しかし売り渡しの政令には、買い入れ限度数量というのは県の方に割り当てをする、県の方は市町村の方に割り当てをする、市町村の方は末端の農家に割り当てをする、こうなっているわけなんでありまして、昭和四十六年に、私もこの政令をめぐりまして質問をやったことがあるわけなんでありますが、これは明らかに機関委任事務である、こういう答弁がなされているわけなんであります。しかし、この政令には、転作目標を割り当てするということは書かれていないわけなんであります。私の思うに、政令というものは罰則というものをかけるわけにはいかぬというふうに憲法に規定してありますので、とにかく米をつくってはならないというふうな規制をやるということになれば、これは憲法二十二条の職業選択の自由を拘束するということになると思います。そういうような点からして、この政令をつくられる場合におきましても、転作面積というものは割り当てをするわけにはいかぬじゃないか、こういう配慮からして、転作面積の割り当てはやらないということになっているのじゃないか、こう思うわけなんであります。今回の場合におきましては、まず出てくるのが市町村長が農家に割り当てをしている。その一番最初に出るのが転作面積なんであります。そういう点からいたしますと、これは別に法律的な根拠というのはないのだ、強いて言うならば農基法の二条の問題なんだ、こういうことで、非常にあいまいもことしているわけなんであります。そういう点をもう少し明らかにしてもらいたいと私は思うわけであります。
  43. 中川一郎

    ○中川国務大臣 第一番目は、農業基本法第二条第二項には、確かに「地域の自然的経済的社会的諸条件を考慮して講ずるものとする。」まさにそうでございますから、今度の転作面積をお願いするに当たりましても、いわゆる乾田率というものにウエートを置いて県にそれぞれお願いをした、県はこれまた自然的社会的条件を考慮しながら、自主的に町村にお願いをする、町村もまた個人にお願いする、こういう仕組みであって、この二条の二項に抵触するものではないという考え方をとっております。  それから、売り渡し義務は、政令によって町村あるいは県に機関委任事務としてお願いをしているところでございます。生産調整の方はそうではなくて、あくまでも理解と協力によって、過剰を生じないというふうにお願いをしているわけなんです。ですから、これはペナルティーをかけるものではない、罰則ではない。ただ、できなかった場合どうなるかというと、そのできなかった分は、まじめに転作をした人の負担になる。これではこの仕組みとしてはまずいので、その年にできなければその翌年にやってもらう、こういうことを自主的に協力をお願いしたい、こういうことでございます。  それから、買い入れとの関係は、買い入れは単年度でございますけれども、米の必要なものについて限度数量を決めて各県に割り、各県が町村に割って、町村が個人に割って必要な米を買い入れるという仕組みからいけば、限度数量というものがなければ仕組みそのものが成り立たないわけでございますから、限度数量は政令をもって決めて、しかも機関委任事務として自治団体にお願いしている、こういう仕組みでございます。そこで、今度は生産調整をうらはらにやって、余った米はどうなるのかということになりますと、これは限度数量をオーバーはいたしますけれども、この米を全く何も知らぬとは言えませんで、やはり自主流通のルートに乗せて、そして消費者に配られる、こういう仕組み、しかもそれに対しては国も助成をするということで、まんざらこれは知らない米だといって放置しているわけではない、こういうことでございまして、いろいろ御議論もあろうとは思いますが、要は、生産調整は、国民に必要でない米は、国も地方団体も農家も、お互いに自主的にひとつ理解をして協力し合っていく、こういう仕組みのものでございまして、法的にこれをどうこう言える性格のものではないというわけでございます。
  44. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 一つは、確かに農林省ベースで割り当てをする場合においては、それは無理がないと思いますね。農林省の方では、百七十七万四千町歩、これは転作可能な面積だ、こういうふうにして把握しておられるわけなんです。したがって、これを各県別に割り当てをするにしましても、各県にそれぞれの可能面積というのはある、確かにそのとおりなんです。そうすると、今度は県の方が市町村に割り当てをするとか、市町村が個人の方に割り当てをするとかいうそのものについては、農林省は責任はないのですか、これが一つであります。責任の所在というのを明確にしてもらいたいと思います。  それからもう一つの問題は、法令に基づいてやっているわけではないのだ、理解と協力によって転作目標はこなしていくのだ、こういうお話なのであります。そうすると、末端の町村では、理解もしたいけれども、とても協力するわけにまいりませんというふうにして町村長がこれを拒否した場合、これに対する歯どめというのは、法的根拠がないわけなんだから、歯どめはないのですかどうですか、その点明確にしていただきたい。
  45. 中川一郎

    ○中川国務大臣 国から県にお願いします場合は、百七十七万町歩の水田から畑に転換できる面積があるから、四十万町歩が限度であるので無理はない、それが県から町村にいく場合もあるいは無理がないかもしれぬし、あるいは無理が出てくるかもしれぬ、特に町から個人に行く場合は、全く湿田ばかりで、転換しろと言ってもできないじゃないかというのもあるであろう、こういう質問だろうと思うのです。まさにそのとおりだと思いますので、そこで、転換ができるように、水田転作特別事業というので百二十億円を用意して、転作しやすいように、県知事さんに配分をして転作できるようにするという仕組みもございますし、また極端なことを言えば、高畝栽培とかいろいろな工夫、理解と協力の方法があるならばできるであろうし、あるいはそれでもどうしてもだめなときにはまた農協の管理転作等々、二重三重にそういったことも配慮してやっておるというわけでございます。  それから、県から町村へやる場合、国は関係ないのか。まさにこれは一般的な指導はいたしますけれども、県なり町村はそれぞれ独自な考え方のもとにやっていただく。県、町村によってそれぞれ事情が違うことでございますので、それぞれの事情を勘案してまさに自主的にやっていただくということでございます。そういうことでございますから、国そのものとして町村や個人に直接こうしろというようなことばいたさない、こういう仕組みでございます。
  46. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 そうすると、もう一度確認しますけれども、要するに、全く法律的なものではないのであって、理解と協力だ。こうなりますと、市町村長がもうこれはとてもできないということで拒否しても政府としてはどうにもならぬということですか。
  47. 中川一郎

    ○中川国務大臣 それはまさに、やらない町村があった分をやった町村に翌年かけたり、あるいはやらない県があったからその分をやった県にお願いするという仕組みは、これはこの仕組みを全うするためには許されないことでございますので、その町村のできなかった分は次の年にやってもらうし、その県のできなかった分はその翌年にやってもらう、こういう仕組みでございます。農家ができなかった分は翌年やると同じように、その町村のできない分は次の年に、その県のできなかった分はその次の年、こういうふうになるわけでございます。
  48. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 そこで、それがペナルティーなのじゃないか、こういうことでもめているわけなんでありまして、できないところに結果的に押しつけられる。できませんと言うと、それはできなかったら、じゃ来年の買い入れ限度数量を減らしますよ、こういうことは罰則主義なんじゃないか、こういうことでいま実際問題になっているわけなんですよ。  そこで、私、聞きますけれども、要するに、三年間固定するというわけですね。百七十万トンを三年間固定する、つまり三年間で五百十万トンの生産抑制をやる、こういうことだと思うのです。そこで、たとえば三年間百俵を売り渡ししたいと思ったのが十俵制限が加えられた、そうすると、制限を加えられるのは三年間で三十俵なんですね。その場合は一番最終年度の五十五年にその三十俵を減らしてもらう、ことしは百俵出す、来年も百俵出す、最後の五十五年には三十俵減らします。こういう方法でもペナルティーにならないということ。つまり公平確保の最低の措置、こういうふうにこの前から言っておられるわけなんですから、そういうことであるなら、要するに、これでも公平確保の最低の措置になるわけですね。こういうことはどうなんですか。
  49. 中川一郎

    ○中川国務大臣 それも一つの方法だとは思うのです。ですが、米の需給のバランスというのは単年主義でございますから、生産調整なり米の買い上げを、三年まとめて三千万トンであって、消費が何ぼであって、五百十万トンが余るという仕組みではございませんから、単年度の限度数量は、その十俵分は入らない、したがって、それは自主流通米で二年間やっていただく、それで三年目に三十俵をやるということもこれまたやむを得ない方法だろう、こう思うわけでございます。
  50. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 それじゃ、ことしは百俵出します。来年百俵出します。そして最後の年に三十俵減らします。これであるならば、ことしは買い入れ限度数量を百俵にして、来年百俵にして、そして三年後においては七十俵にする、こうなるわけですね。
  51. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまのお話はいろいろ問題があると思いますが、私の方の需給面からのお答えをしたいと思います。  現在、前年産の古米を新しい米穀年度になりましてからも配給に回すということをやっておるわけでございます。大体私どもの目標といたしましては、通常の年には百七十万トンぐらい主食用として前年産米、いわゆる古米を売り渡したいというつもりでおるわけでございます。いまのお尋ねのございました三年目にまとめてやるということになりますと、一年目、二年目の分がそれだけ余分になるわけでございますから、その分を持っておって三年目にやるということになりますと、古米が古々米になるというようなことになりまして、数量いかんにもよりますけれども、そういう配給に回すことができないというような事情も発生しますので、先ほど大臣がお答えしましたように、単年度で需給バランスをとっていくということをぜひやっていきたいというふうに考えるわけであります。
  52. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 いや、単年度でやっていくというのが私は正しいと思うのですよ。だけれども、単年度で問題が起きた場合においては次年度に繰り越しをやるというところに農民が問題にしているわけなんでしょう。だから、あなた方は勝手だと思うんだ。とにかく三年間固定して百七十万トン、合計して五百十万トン、これだけは生産の抑制をやらなければならないんだ、こう言っているんだから、それならば三年目にやっても、あるいはまた一年目にやっても事は同じになるわけだ。ところが、ただ、そうやりますと、今度は翌年度に買い入れ限度数量というのを減らしますよと、こういうことはペナルティーではないか。そうでなしに、公平の原則を確保する、こういうのが目的なんであって、決してペナルティーじゃないんだ。公平ということになれば、三年間のうちに三十俵減らせばいいわけだから、最終年度に減らしても差し支えないんじゃないですか。ペナルティーであるとするなら別ですよ。ペナルティーでなくて、公平を保つための最低の措置だ、こういうことであるなら、これは三年後でもいいんじゃないですか。
  53. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ですから、三年までの最初の二年間の十トンずつ、その二十トンの米は一体どうなるのかということなんです。もしそれを政府が買って持っておいて配給するとすれば、古々米になってしまいます。三年間持っておってですよ。それじゃ消費者の反発を受けるから買うわけにはいかない。古々米になることがわかっている米は買えないでしょう。買えません。それじゃ、それはペナルティーでなくて正規に買えばいいじゃないか、古々米で配給しないで、買えばいいじゃないか。買った場合は翌年その分だけどなたかに、まじめにやった人に生産調整をしてもらわないと、また余ってくるわけですから。そういうことを引き受けてくれるまじめな農家があるだろうか。まじめに自分がやった上に、やらなかった人の分、また古々米になったら困りますから、あんたことしよけいに、去年中川さんのやらなかった分はひとつやってくださいと言って、単年のバランスがとれるならいいけれども、そういうことはできないというので、やはりその人のやらなかった分はその翌年はその人がやってもらうという仕組みだけは残しておかなければいかぬというので、決してペナルティーではなくて、本当に生産調整の全きを期するためには、やはり割り当てをお願いした分は責任を持ってやってもらう。しかし、できた米を知らぬというわけにはいきませんから、自主流通ルートに乗せて処理はいたすように御協力申し上げます。こういう仕組みでございます。
  54. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 いや、私の言っているのは、それじゃ、要するにそういうペナルティーというものは——まあペナルティーでないと言うのだからあれだけれども、公平を確保するところの措置なのだなどということを言わぬで、ペナルティーだからペナルティーだとはっきり言った方がいいのじゃないですか。三年間固定する、だからこうしなければならないというのであるならば、農民の立場からするならば、それは三年後の一番最終年度にやってもいいじゃないか、こういう理屈になる。これは公平になりますよ。公平公平と言われるから聞くのだけれども、要するに二年目に三十俵減らして、ことしと再来年百俵ずつ出しても、これは公平なんじゃないですか。何しろ百俵とれるところを十俵ずつ減らしていけばいいわけなんだから。
  55. 中川一郎

    ○中川国務大臣 もし、あなたの言うことを、一〇〇%の農家がでは三年後にやろうとみんな思ったらどうなりますか。百七十万トンが五百十万トン余っちゃって、それで三年目に五百十万トン生産調整しましたからといって、五百十万トンの古米、古々米を消費者が食ってくれますか。食ってくれないでしょう。とするならば、消費者にも喜んでもらう仕組みをつくるならば、やはりやってもらわなければならない。やれないならば、その次はその人がやってもらうという最善の努力をして、消費者にもこたえ、やった人がまじめに全部が買ってもらえるという仕組みを考えていくしかないと思うのですよ。理屈を言って、いや、三年たてばいいんだからといって、みんなの農家が三年たってやるということは、可能性としてはありますね。あった場合どうなるのか。いや、三年でいいと言ったんだから、三年でやったんだからいいじゃないか、五百十万トン余って、おれが責任を持って消費者に食わしてやりますからという人があったら、私は結構だと言いますが、いまの消費者の実態から言って、五百十万トンの古米、古々米ができた、二年、三年分を三年後に消費できないという矛盾のあることも御理解いただきたいと存じます。
  56. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 それでは聞きますが、最初の質問に戻りますけれども、いままでの生産調整といまの生産調整というのは違っているのだというのはわかりました。だけれども、いままでの稲転の経過を見ますと、結局休耕奨励金が出ておった昭和四十八年まではそれなりに相当規模の休耕をやっております。だけれども、これがなくなった途端に休耕はがたっと減っているわけなんですね。いま私が申し上げましたように、生産構造を変えていくのだという考え方であるとするならば、農協管理転作、これは実際休耕ですよ。これは二年で切られるわけでしょう。そうなればまたもとの米に戻る、こうなるのじゃないですか。こういう点を考えていきますと、しかもさっき私が申し上げましたように、転作不可能のところへ割り当てをやっておる、こういう問題があるわけです。あなたはいま消費者立場を考えてくれということを言いますけれども、生産者の立場も考えてもらわなければならぬわけです。  そこで、たとえば稲作技術を持っているけれども、畑作技術というのは全然持っていないという農家があるわけでしょう。そういう農家に、しかも転作の条件というものが全然ないという状態のところへ押しつけるということがあれば、結局休耕というものは出るかもしれぬけれども、三年後においてはまた米をつくらなければならぬということになれば、政府の考えておられるところのいわゆる生産構造の改善を図るのだというものともつながらない。あなたが言っておられるように、総合的に食糧を国民に供給するということにもつながらない。だから、一体何を考えてこの方針を出されたのか、現地、現場ではさっぱり見当がつかぬ、こういうことになるわけなんです。ですから、消費者立場でやっていくのだということになれば、生産者の立場もこの場合考えてもらわなければならぬじゃないか。生産者の立場を考えるということになれば、畑作技術もない、条件もない、こういう場合においては、その条件を整えてからやらせるというのが、これは当然なんじゃないですか。
  57. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、過剰生産のときに農家がどれくらい苦しむものか、これは農家だけではありません。もうあらゆる業種が過剰生産のときには大変な苦労をしておるわけです。ミカン農家の現状を見ても、あるいは養蚕農家の現状を見ても、過剰生産のときには相当苦しまなければならないものなんです。だけれども、農家の実態が大変だからというので、反四万から七万の転作奨励金も出しているわけなんです。もし仮にその人ができなければ、私どもの聞いたところでは、三年たったらおれはできるからその間は乾田のおまえさんのところでやってくれ、そのかわり反何ぼ出すとか一俵何ぼ出すとかいうようなことで、こういう余った時代だから自分も——北海道の漁師の人なども、減船になればやめていく人に、あるいは休んだ人に共補償というのもあるのです。そういう仕組みでやればできることは幾らでもあるのです。それをできない理屈ばかり考えてきて、こうだああだと言うのは間違いであって、しかも、政府は農家のことは何も考えてない、とんでもないことで、これだけの政策をやっているのは、北海道の畑作農家から見ればやり過ぎだ、水田農家のめんどうを見過ぎだというくらい私はやっているのであって、めんどうを見てないなんていう批判は断固として私は引き受けられません。
  58. 松沢俊昭

    松沢(俊)分科員 これで終わりますけれども、とにかく、大臣、開き直った御答弁でございますけれども、とんでもない話なんであって、こっちこそ迷惑この上ない話なんでありまして、無理のないようにやらなければならないということを私は言っているわけなんです。ところが、いまの生産調整というのは全く拙速主義だ。だから混乱が起きているのじゃないか。この点は十分考えてやってもらわぬと困るのじゃないか。こういうことを申し上げまして、質問を終わります。
  59. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私も、決して生産調整が安易なもので、農家にとって喜ばしいものだとは一つも思っていません。水田しかつくれないところにほかの作物をつくるのですから、大変なことだろう。ですから、いろいろな土地改良の政策やいろいろなことをやっているつもりなんです。厳しい事情はよくお聞きしますけれども、政府も一生懸命やっていることだけはひとつ理解をいただきたいとお願いしておきます。
  60. 伊東正義

    伊東主査 これにて松沢俊昭君の質疑は終了いたしました。  次に、井上泉君。
  61. 井上泉

    井上(泉)分科員 大臣にお伺いするわけですが、大臣もマスコミの評によりますと、結構楽しゅうに農林行政をやっておるというようなことで、いろいろな評価がされておるわけですが、少なくともいままでの農林大臣と変わった農政が期待されるというふうに世間一般では思っておったのです。ところが、逆に農民に強制的な、強権的な姿勢で臨むような印象が最近非常に強くなってきておる。そのことは、いま日本の農業が抱えておる米の過剰に伴う生産調整の問題だとか、あるいは円高対策による農産物の輸入の自由化、さらにはまた、各国の発展途上国のナショナリズム思想によって、おらの物を買えばおまえの物も買ってやろうと、そういう中で農林省関係のものがいろいろと非常に重要な段階を迎えて、集中的な、危機的なものを持っておるということになろうと思うのですが、米の生産調整については、米が余ったから三十九万ヘクタールなんかの生産調整をすぐやるのだというだけではないでしょう。米が余ったからやるというのではなしに、これは去年の十一月十九日か二十日に、これの府県別の割り当てをしたときに鈴木農林大臣が、この対策はわが国産業の構造を変えようとするもので、緊急避難的なものでなく、農地改革に匹敵する事業だ、こういう談話を出されておるわけですか、そういう位置づけの中にこの生産調整というものを考えておるのが今日の政府考え方じゃないですか。
  62. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先ほど松沢委員にも答弁しましたとおり、過去昭和四十五、六年ごろにやりましたときは、緊急避難の生産調整、過剰米を処理する、あるいは発生をしないということが主目的でございましたが、今度は過剰米を生じたことを契機に農政の転換を図って、特に自給率の不足しております大豆、飼料作物等々に転換をするという鈴木農林大臣が答弁した農村の構造改革、あるいは農地改革にも匹敵するような体質の転換であるということは間違いございません。
  63. 井上泉

    井上(泉)分科員 そのことは必然的にいわば九州七県の農地の構造改善の生産調整をするという数字に出てくるわけです。だから、米から他の作物に転換するためにはいろいろな土地の整備をやらなければいかぬ。大きく言えば、これは国土の改造につながる大きな仕事ではないか。ある学者は、これは形を変えた日本列島改造計画版なんだ、こういうことを言っておるわけですが、私は、いまの日本の米は生産過剰であるけれども、その他の農作物は少ないから、これの生産ができるような条件をつくるという考え方、これは考え方としては悪い考え方じゃないと思うのです。ところが、それを受け入れるような農業のいまの実態であるのかどうか、そういうことを考えてみますと、これはかなり問題がありはしないか。たとえば水利関係一つをとってみても、これはいままでたんぼで水を流しておったものを、今度は畑にすると、その水はどういうふうにするのか、こういうことになるし、そうなると大規模な農地の構造改善事業というものが並行して行われなければこの生産調整というものはその目的を達することはできないと思うので、その点についての大臣の見解を承りたい。
  64. 中川一郎

    ○中川国務大臣 全くそのとおりでございまして、日本列島の面積が何ぼあるかは別としても、四十万町歩に及ぶ水田を畑作に変えていくわけでございますから、列島改造の一部にもなるぐらいの大きな改革だと存じます。その場合、水利系統一つとってみてもできにくいところがあるのではないか、これもまさにそのとおりだと思うのです。  しかし、農林省の調査では、畑作から水田に転換できます面積が、特に手を加えなくても百七十万町歩からございます。それでもなおかつ町村あるいは個人におろしました場合にはできにくいところもあるであろうから、水田対策特別事業として百二十億円の予算も計上して、水利系統も改善できるように補完的にやっていく、こういうことをやって実効あらしめたいというように思っておるわけでございます。
  65. 井上泉

    井上(泉)分科員 私は、生産調整の問題については、これ以上論議をする時間がないので言いませんが、いま大臣は、水田から畑作に転換するのは案外容易だというような話もされておるわけですけれども、それは北海道のような広いところだったらあるいはできるかもしれませんけれども、日本の農村地帯というものは大体が小規模な農地群を形成しているところが多いわけです。だから、それを従来のような土地改良の仕方ではなかなかできないと思います。特に零細な一反十アールに足らないような農地が何筆もに分散をしているようなところでは。だから、そういうふうなごく小規模の地域における農地の改良工事に対する大幅な国家投資というものが私はこの際なさるべきではないか、こう思うわけですが、その点についてどうなっておりますか。
  66. 野崎博之

    野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、圃場整備とか、そういうものの条件整備が必要でございまして、特に御希望のものにつきましては、ことしは特別対策事業といたしまして百二十億円の経費を計上いたしまして、特に排水改良を重点としまして、非常に小規模な、一ヘクタール以下というようなところも対象にできるようにいたしておる次第でございます。
  67. 井上泉

    井上(泉)分科員 一ヘクタール以下のものも対象にする、それは補助率というのはどういう状態ですか。
  68. 野崎博之

    野崎政府委員 おおむね一ヘクタールまででございます。
  69. 井上泉

    井上(泉)分科員 補助率は幾らですか。
  70. 野崎博之

    野崎政府委員 補助率は二分の一でございます。
  71. 井上泉

    井上(泉)分科員 そしてあとの二分の一はどういうふうにするのですか。農家負担ですか。
  72. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど一ヘクタール以下と申し上げましたが、一ヘクタール以上の間違いでございますので訂正をいたします。  それはまた、県におきまして県費の補助、あるいは市町村等もそれについて助成をする、そういうふうな仕組みも考えておるわけでございます。
  73. 井上泉

    井上(泉)分科員 これは大臣、そういう一ヘクタール以上とかいうようなことで規制せずに、一ヘクタールを一応一つの基準とするとか標準とするとか、ひとつ弾力性を持ったようなことにしないと、一町歩の農地が一体何筆あるかというような現実を見た場合には、農林省がせっかく一ヘクタール以上のものには二分の一の補助をやるということを言っておりますけれども、一ヘクタールということに限定をされたら、私はこれはいかないと思うのです。その点については運用よろしきを得るでしょうか。
  74. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まさにそういうところが実態面として井上委員指摘のようにあると思うのです。一町歩以上ということになれば面積がまとまらないというので、そういう手の届かない実態面として多い御指摘のようなところに対して、稲作転作対策特別事業というので百二十億円を別に用意をして、これは余り補助率も言わず、規格その他むずかしいことを言わずに、知事さんが独自の権限でできるという仕組みを設けたのは、井上委員指摘の点があろうということを考えて、初め百十億の要求だったのですが、最後の段階で十億またさらに張り込んで百二十億、金額の面ではかなり張り切って用意をしておるところでございます。
  75. 井上泉

    井上(泉)分科員 それはもう小規模なそういう土地敵良というものをかなり広範に行われると思うので、その二分の一の補助といっても、二分の一のものは県が幾らだとか何が何とかいっても、県が金を出すわけではないし、農家がそれだけのものを、米が余ってあとつくるものも米にかわるところの有利な作物をつくるわけでもないし、これは自己負担の資金というものは非常に苦労すると思うわけですが、そういう点についての資金対策というものはやはり講じてなければ私はだめだと思うわけです。講じておるのですか。
  76. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ちょっと井上委員におわび申し上げます。先ほど一町歩以下と言ったのは間違いであって、やはり一町歩以上だけで、一町歩以下については対策は及んでおらないようです。これからひとつ研究させていただきます。  それから、補助率、自己負担については事務当局から説明させます。
  77. 野崎博之

    野崎政府委員 補助率につきましては、先ほど申し上げましたように二分の一でございますし、自己負担は、県なりあるいは町村も持ちますが、自己負担があった場合には、公庫の補助残融資、そういう制度がございますので、それを積極的に活用していただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  78. 井上泉

    井上(泉)分科員 農家からそういう要求があった場合には、それを弾力的に運用するということ、さらにはまた、農家に自己資金のない場合には、それに対しては十分相談に乗って、土地というものは一年二年のものではないのですから、そこで一遍改造すれば何十年も何百年も、その次改造せぬ限りは永代続くものですから、やはりそういう土地改良をやる場合における資金手当てというものについては農家の身になってお世話申し上げる、相談に応ずる、そういう気構えを農林省に持ってもらわぬと私は困ると思うのですが、大臣、どうですか。
  79. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど申し上げましたように、県なり市町村も持ちますけれども、その自己負担の分については、公庫の補助残融資という制度がございますので、公庫も十分その相談相手になってくれるはずでございます。
  80. 井上泉

    井上(泉)分科員 そこで、安心をして土地改良をやりなさい、その資金については自己負担のない分についてはめんどう見ますから、こういう話を率直に農家が認識をするような方法をとらなければいかぬのじゃないですか。
  81. 中川一郎

    ○中川国務大臣 裏負担につきましては、国庫融資等で十分見て、自己資金がないためにこれができないというようなことにならないように措置をしていきたいと存じます。
  82. 井上泉

    井上(泉)分科員 毎朝NHKは「明るい農村」といっていろいろやっているのですけれども、そこは部分的な明るい農村であって、農業全体をとらえると明るいものは何もないわけで、いま前段私が申し上げましたような、米が余ったから生産調整もやらなければいかぬ、あるいは円が高くなってドルをため込んだから農産物の輸入自由化をやらなければいかぬというようなことで、農業の前途というものは決して明るくないのだから、せめてそういう政府の施策に対して農家が安心してついていけるような財政措置、財源措置というものを明確に指示をしてやっていただきたいということを強く要望しておきます。  それから、林業関係について質問申し上げますが、いま大臣の水産関係説明を聞く中で、林業関係についてもるる述べられておるわけであります。ところが、この林業関係がるる述べられておる中で、一つは、林業に従事する労働者の健康管理という面、この面については農林省は、林業労働者でも労働者だから労働省だという形で、これをなおざりにしておるのか、いま全国の山林労働者の中には、いわゆる白ろう病という職業病に冒されて大変な苦汁をなめておる人たちがおるわけですが、それに対する対策というものについての言及がなされてないわけです。林業もただで太るわけじゃないわけですから、やはりお百姓さんが米をつくるのと同じように、労働者があってこそ木というものは育ち、つくられるわけですから、その点どうですか。
  83. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生御指摘ございましたけれども、林業の面から林野庁といたしましては、たとえば振動病等に対しましては、その予防を図るということで、積極的に予防の面で対応するという姿勢をとっております。そのために森林地内等のパトロールだとか、あるいは機械の扱い方の訓練だとか、そういう面について積極的な対応をいたしておりますし、さらに、ただいまリモートコントロールのチェーンソーもできております。そういうものも積極的に導入を図るべく改善資金の面でもそういう対応をし、林野庁といたしましては、予防の面で積極的に対応し、さらには労働省、関係省庁と十分タイアップしながら、林業従事者の健康管理に対応してまいりたいというふうに考えております。
  84. 井上泉

    井上(泉)分科員 予防の面はいいけれども、既往の、もうかかった分については、神経を冒されておるわけですから、かなり長期の療養も必要であるし、そういう面についての対策というものももっと積極的に進めなければいかぬのじゃないかと私は思う。これから起こさないけれども、いままで起こったものはしようがないというようなことでほおかぶりをされたら、林業労働者としてはたまったものではないので、そのことを指摘しておきます。  そこで、もう一つ。外国との関係で日本の農林業というものはあらゆる部門で重圧を受けておるわけですが、しかし、木というものは、これはもう大臣も御承知のとおり、ことし植えてから来年切れるものではない、一年で成木するものではないのですから、いまこそ山を育てるために、林業というものにウエートを置いた施策というものをやることは、これはやはり雇用拡大を図る面においても大切なことではないかと私は思うわけです。そして大臣も所信表明の中に、林業というものの位置づけをずいぶん強くされておるのです。その点から、その中心になる営林署の統廃合とかいうようなことがやかましく言われるわけですけれども、そういうことを、今日この大事な時期に考えるべきものではないと思うのですが、どうですか。
  85. 中川一郎

    ○中川国務大臣 日本の林業がいま危機状態にあるということでございますので、民有林はもとより、生産あるいは流通、あるいは外国からの輸入問題に対して、いろいろと策を講じております。その中にあって、御指摘のありました国有林の問題でございますが、非常に経営が悪化しまして、財投資金も年間約一千億円入れなければいけない。それだけではなくて、林道、造林等の資金も一般会計の力をかりなければいけないというぐらい厳しくなっておるところでございます。  そこで、こういった国からの資金投入なり助成と並行して、やはり国有林をしっかりしたものにするためには、機構の改革といいますか、合理化も進めなければいかぬ。その中にあって、営林局あるいは営林署等について見直してもいいのではないかというところが幾つかある。これらはこの際、姿勢としても民有林等の経営に対する模範的といいますか、民有林等から見ても、ああよくやっているなあと言われるような姿勢を示すために最小限度のものをやるのであって、これは山を荒らす目的あるいは労働者を圧迫するということではなくして、むしろ山を守り、そして労働者の待遇もしっかりしたものになる、こういうことのために営林局あるいは営林署の最小限度の整理統合を行うのであって、ぜひともこれは前向きのことであると御理解をいただきたいのでございます。
  86. 井上泉

    井上(泉)分科員 そうすると、営林署の統廃合はやらなければならぬというような考え方であるかもしれぬけれども、しかし、これはいまの営林署の地域に果たしておる役割り等から考えて、私は他府県のことは余り例としては承知をしませんけれども、少なくとも高知県のように山村が八割というところで、そうして山村のいわば経済あるいはその地域の文化の面においても、いろいろな面で営林署の存在というものが非常に大事な役割りを果たしておるわけで、そういう中でこれを統廃合するとかいうようなことになると、その該当町村においては村としての経営ができていかなくなるような致命的な状態になるので、そういう点を十分考慮した上において廃止をすべきでない、こういう論を持つものであるので、その点については直接その担当の衝にある林野庁長官からひとつ明確に簡単に答弁願いたい。
  87. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま大臣から御答弁いただきましたように、国有林の財政が非常に厳しくなっておりますので、そういう観点から、私どもといたしましても、営林署につきましては、昭和二十二年に特別会計ができましてから現在ほとんど変わっておりませんが、その後の社会の情勢なり交通網のあり方なり、そういうものを考えますと、やはりそれに見合った営林署というものを考えていかなければいけない。  さらに、ただいま先生御指摘の山村の問題でございますけれども、当然、私どもといたしましても、山村振興法なりあるいは過疎対策なり、いろいろな面から山村の振興というものに十分対応していかなければいけないと思っておりますが、一番問題なのは肥大化いたしました管理部門でございます。したがって、私どもとしては、肥大化した管理部門についてメスを入れたいということで営林署の統廃合を考えておりまして、その地域におきます事業その他につきましては従来と一切変わらない、さらには今後農林業全体のいろいろな施策をその中に投入して、その地域の振興を図りつつ、なおかつ営林署の財政等が健全になるような形で営林署の統廃合も図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  88. 井上泉

    井上(泉)分科員 時間がないのですが、私は、営林署を統廃合することによってどれだけのプラスがあるのか、それによって受けるマイナス、これを対比して考えたいと思うわけですが、それを対比してみた場合に、やはりこれは廃止をしたらマイナスの面が多いなあ、こういうことになれば、大臣、そういうふうな統合とか廃止とかいうことはやらないですか。
  89. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いま長官が御説明申し上げたように、それは特に管理部門がふくれ上がり過ぎているというところから、経費の節約のために、あるいは事務の合理化のためにやるものであって、そのことによって全体の経営が悪化をするというようなところは当然差し控えるべきであろうと存じます。これは全体的に見て管理部門だけが統合されるのであって、経営、事業そのものについては、従来と何ら変わらない仕組みでやっていくということでございますので、恐らく全体として赤字になるようなところはないと思います。また御指摘でもあれば、御意見を承りたいと存じます。
  90. 井上泉

    井上(泉)分科員 これはまた別の問題ですけれども、大体今度の予算は、雇用拡大、不況克服ということで、公共事業が大盤振る舞いと世間では言われておるわけです。ところが、その公共事業に従事する労働者の大半は農村の出身者だと私は思う。この間、建設委員会等でも大臣にいろいろとお尋ねしたところですが、五百万からの建設の労働者の中で、政府管掌の健康保険とかあるいは日雇い健保とかあるいは国保の関係とかいうようなもので建設産業に従事しておる労働者としての雇用関係が立証されるような保険に該当しておる者は半数しかない、あとの約三百万人というものは、法的に野放しの状態、放置をされておるという状態ですが、そういう点について、労働省から雇用保険課長が見えておるわけですが、そういう出かせぎ者に対する法律上の保護というものは一体十分なされておると思っておるのかどうか。
  91. 望月三郎

    ○望月説明員 御質問にお答えいたします。  出かせぎ者に対します雇用保険の適用につきましては、四カ月未満の雇用者については適用はございませんが、それ以上の方々につきましては、全面的に雇用保険が適用になっております。ただ、おっしゃるように、その中で適用把握ができてないという方々があるいはあろうかと思いますが、その点につきましては、鋭意努力をして適用していくということでございまして、万一具体的に適用漏れで失業したというような場合には、安定所へ来ていただければ、保険料を払ってなくても、後で遡及適用するという方式をとりまして、保険給付額を完全支給する、こういう方式をとっております。
  92. 井上泉

    井上(泉)分科員 時間がないので次へ移ります。  大臣、いま労働省からの説明をお聞きになったような状況にあるわけですけれども、ところが、後からとこう言いましても、下請、下請の形の中で使われておるのですから、やはり農村からの出かせぎ者に対する保護ということは、農林省も、そのことは労働省だというのではなしに、頭に入れて行政の中で私は保護してやるべきだ、こう思うわけなのですが、そういう点は農林省は無関心ですか。
  93. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農林省といたしましては、出かせぎ労働者にならないように、農業の体質改善をするということに重点を置く一方、現実にまた出かせぎ者がございますので、労働省とも十分連絡をとりながら、こういった対策についてはよりよきものにできるだけしてまいりたいというふうに考えております。
  94. 井上泉

    井上(泉)分科員 農林省は、出かせぎ者を出さないようにと言いましても、生産調整からいろいろやって、それでこれだけ企業が不況になってくると、帰農者がふえて、また出かせぎ者がふえる。こういうことになることは必然でございますので、そういう点についても、いわゆる出身は農民ですから、十分ひとつ留意していただきたいと思います。  そこで、水産関係についてお尋ねをするわけですが、鈴木前農林大臣の物別れに終わったニュージーランド交渉ということで、日本の遠洋カツオ、マグロの漁業者も大変困っておるという状態にあるわけですが、これに対する対策と、そうして、さらには依然としてソ連の漁船が日本の近海に、領海すれすれあるいは領海内にたまには入ってくるとか、この間も、私は高知県ですが、高知県のずっと沖合いに船がたくさん来た。どうもあれはソ連の船じゃなかったろうか、こんな話もされておるわけですが、こういうソ連漁船の日本近海における、漁網を切ったりあるいは日本の領海内すれすれに来るとかということについての対応の仕方というものについては万全を期しておるかどうか、そうして、それに対する対策というものをどういうふうにしておるのか、御答弁を願いたいと思います。
  95. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ニュージーランドと漁業二百海里に対する問題がうまくいかなかったということは、本当に遺憾なことだと存じております。  ただ、御承知のようにわが国のとるべき態度は、ニュージーに対しましても、豪州に対しても、世界に対してもできるだけ誠意をもってやっておるところであり、今回も特にニュージー、豪州等々に誠意を尽くした回答をいたしておりますから、必ずやニュージーは理解してくれるもの、今回は厳しくありましたけれども、今後理解をしてくれるものと確信をいたしておりますし、政府といたしましても、今後粘り強くわが国の真意を説明申し上げて打開をしてまいりたい、こう思っており、また打開できるものと確信をいたして、誠意をもって今後とも交渉していきたいと思います。  なお、ソビエト関連につきましては、大体うまくいっておるとは思いますが、御指摘の点については長官から御説明申し上げます。
  96. 森整治

    ○森(整)政府委員 ソ連漁船の日本沿岸における操業につきましては、昨年の七月領海法が通りましてから、一時非常に被害が減りまして七件であったわけですが、ごく最近に至りまして、二月二十、二十一、二十二日と、福島、茨城県の沖で事故がございました。早速、こういう問題につきましてはわが方から、在京のソ連大使館に抗議を行いまして、こういう結果に相なっておるわけでございます。向こうは、全く遺憾でありましたということでございまして、早速本国に連絡をとって適切な措置をとる、とった内容については日本側に連絡をする、こういうことで、われわれといたしましても、ともかく事故がないようにということを心がけてもらいたいということで、ある意味では日本の今度の問題につきましては、若干どうも日本の漁法を知らないでやったという言いわけをしておったようでありますが、それは困るということで、ともかく事のないことを期するわけでございますが、今回みたいな場合には、ただいま申し上げましたような措置をとって、早急な改善を求めるということで対応してまいりたいというふうに思っております。  なお、御承知のように、損害賠償につきましては、委員会がございまして、それぞれに提出してまだ解決したものはございませんけれども、そういうことでさらに強力に過去の問題につきましては解決を進めてまいるということでやってまいりたいというふうに思っておるわけであります。
  97. 井上泉

    井上(泉)分科員 日本漁船がソ連の方に行けば罰金を即座に取られるわけですけれども、日本はそういうことをせずに、穏やかな外交交渉の中で問題の解決を図ろう、こうしておるわけです。そういう点からも、漁業関係について漁民に安心を与えるような水産政策というものをさらに積極的に進めていただくということと、そうして、何といいましても生産調整ということは、新たな農業の首切りが始まった、こう私どもは考えざるを得ないような状態にあるのです。だから農民は、困った困った、こう言っておる。農民に、困ったということでなしに、明るい展望を与えるような施策の転換を強く農林大臣に要望して、私の質問を終わります。
  98. 伊東正義

    伊東主査 これにて井上泉君の質疑は終了しました。  この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  99. 伊東正義

    伊東主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林省所管について質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  100. 湯山勇

    湯山分科員 一月の十三日、日米通商交渉がまとまりまして、共同声明が発表になりました。いろいろ問題はありますけれども、私はその中で、時間の関係もありますし、焦点をしぼるという意味から、オレンジ及びオレンジの果汁関係の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  今回の交渉について委員会等でもいろいろ質問がございましたが、それについて外貨減らしの効果は余りないのだというようなことでございまして、一体これは何のためにやったのかということが明確でないような気がいたします。しかも、だれのためにやったのかということも問題であって、聞くところによりますと、一つは、アメリカの中間選挙あるいは下院の選挙が秋予定されている、その対策だという話もあります。それから、日本とアメリカとの交渉が非常に厳しかったという背景には、日本側のだれということばわかりかねますけれども、とにかく日本側から、輸入枠を拡大してもらっても十分はけるのだ、あるいはそういうことを希望していろいろ裏の動きがあったということも聞いております。それから新聞等で見ますと、今度は決定された枠の割り当てをめぐってかなり激しい割り当て獲得の動き、争奪戦が行われておって、それにはいろいろな団体とかあるいは政治的な動きもあるということ、これは新聞紙が伝えております。  そういうことを見ますと、これは一体だれのために、何のためにやったかということがもう一遍明らかにされなければならない、こう思いますので、いまのようなアメリカ自身のそういう政治的な背景はなかったのかどうか、それから、あるいは政府政府ではなくて、陰の業者等の動き、これは交渉過程においてあるいはそれ以前にあったのかなかったのか、あるいは今日輸入枠割り当てについてそういう動きがあるのかないのか、簡単に御答弁いただきたいと思います。
  101. 中川一郎

    ○中川国務大臣 オレンジあるいは果汁の輸入関係が今度の対米黒字減らしというところから出てきたことは事実でございます。御指摘のように、黒字減らしに効果がないことも事実でございます。ところが、アメリカ側からかなり強かった背景はと言えば、アメリカには保護貿易主義という政治勢力がございます。それはいけないのだという政治勢力もある。そこで、いけないという政治勢力の中から、日本も農業が保護貿易に過ぎているではないか、この辺について日本にも働きかけるべきだという動きがあったことは事実でございます。そこで、ではこれがなぜ実行されたかというと、アメリカの要請も強かったのでございますけれども、アメリカもまた農業は保護貿易でなければやっていけないということを十分理解しておりました。ところが、だれが言ったかわかりませんが、アメリカ側もよく知っておりまして、競合作物であるミカンとは、季節自由化ならば競合しないではないか、なぜ消費者その他が望んでおる季節自由化ができないんだ、これは非常に強い関心がございました。一方、国内からも、夏ミカン、タンカン類のない時期、果物の端境期に安いオレンジが入ってしかるべきだという声が非常に強かったことも事実でございます。そこで私としては、日本の柑橘類に影響を与えない範囲はどのくらいか。季節自由化は、もちろん通年自由化に貯蔵等から関連してまいりますので、絶対排除しなければならない。向こうの要求しておりますのは四月からということでしたが、四月、五月はタンカン類に影響を与える。六、七、八は全体の果物はもとより、特にオレンジやミカン、タンカン類には一切影響がない。こういう範囲ならば二万二千五百トン通年ベースくらいのものは入れても、農家にも影響はなかろうし、一方消費者にも喜ばれるであろうしということで、調整に応じたということでございます。  商社その他の動きが当時あったかどうかについては私も承知いたしておりません。ただ一般的な空気として、日本にもそういう意見がある、夏の時期はいいではないかという動きがございました。  それから輸入割り当ての動きをめぐって動きがある、私のところにはそれほどございませんが、農業団体が関係すべきがどうかについて御意見がありますので、農業団体と農林省との間で話し合いを進めて、しかるべき、公平、妥当な輸入枠の割り当てをしたい、こう思っておるわけでございます。
  102. 湯山勇

    湯山分科員 輸入枠の割り当ての問題に関連してですけれども、今度のオレンジ四万五千トン、これの輸入の仕入れ原価、関税その他を抜いて利益というのはどれくらいあるのですか。これも新聞の伝えるところでは六十億というようなことがありましたが、どれくらいの利益があると見込んでおられるのでしょう。
  103. 野崎博之

    野崎政府委員 現在確かに輸入価格と販売価格との間に相当開きがありますので、利益が上がっていることは確実だと思いますが、はっきりどれだけ利益が上がっているかということは私どもも余り承知しておらないわけでございます。輸入量がふえますと、オレンジ自体の価格もある程度下がりますので、一部で伝えられているような、それほど大きな利益の発生にはならないというふうに考えております。
  104. 湯山勇

    湯山分科員 金額ではおよそどれくらいというめども立ちませんか。
  105. 野崎博之

    野崎政府委員 大体どれだけと言われても、私どもの方ではまだつかんでおりませんので、恐縮でございますが……。
  106. 湯山勇

    湯山分科員 やはり判断するのにはどれくらいあるという見当は必要であるし、利益のあるところで割り当てが行われるということになれば、問題を起こすおそれもないではないと思いますので、そういう点はできるだけ明確にしていただきたいと思うのです。  そこで、大臣はこの程度であれば国内生産者に悪影響を生じないということ、それから消費者も喜ぶだろうという判断、これは私は若干違うのじゃないかと思います。というのは、いま局長の御答弁にありましたが、輸入がふえてくれば値段も下がってくるということです。確かに輸入業者から卸される値段というのは下がっています。昨年に比べて大体二割、三割下がっています。けれども、小売値段、下がっていますか。
  107. 野崎博之

    野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、確かに卸売価格は下がっておりますが、小売価格はまだそれほど急激な値下がりはいたしておりません。
  108. 湯山勇

    湯山分科員 そうですよね。  オレンジは市場で競りにかかりますか。
  109. 野崎博之

    野崎政府委員 相対取引でございます。
  110. 湯山勇

    湯山分科員 大臣、その問題があるのです。ですから、カートン当たり去年は高いときに一万円もしたものがいま六千円くらい、安くなっています。小売は、ここの議面の下で売っておるのでも、カートン当たりMで八十八個入っている、これが大体二百円から二百二十円です。ちっとも下がっていない。それから、一流の果物屋で聞いてみますと、やはりわりに小さいので二百円くらい、いいのは五百円ですよ、きのう聞いてみて。ちっとも下がっていないのです。ですから、大臣、いまの機構のままで入っても、結局競りにかかって需給関係で値段が下がるということはないのです。それだけうまみが多いから、どんどん入れろ、自由化しても構わないということになるので、ここらを抑えないで、ただ安いのが夏にたくさん入っていいじゃないかという判断では困りますが、これはいかがでしょう。おわかりになったでしょうか。
  111. 中川一郎

    ○中川国務大臣 現在の値段が下がっておらないというのは、現在はまだふやしておりませんで……(湯山分科員「いや、ふえております。五十二年度」と呼ぶ)五十二年度下期もまだ割り当てしておりませんで、これからしょうかなというところでございますので、まだ入っておりません。でございますけれども、そういうメカニズムその他で小売価格等が問題あることも承知いたしております。ただ、六、七、八の三カ月にかなり集中的に入れば、オレンジそのものの値段も安くなるのではなかろうか。やってみなければわかりませんけれども、その辺のところは十分監視してまいります。
  112. 湯山勇

    湯山分科員 業者に聞きますと、やはりあれが決まってばたっと下がったと言うとおり、三割方下がっているわけです。ところが小売は下がらない。何で下がったかというと、ほかの関係もあるけれども、あれだけ枠がふえると言えば下がるのは当然です。こう言っております。しかし、これは市場にかからないのですから、そうすると相対でいきますから下がりっこないです。ここに問題がありますが、何か解決の道ありますか。
  113. 野崎博之

    野崎政府委員 いまは下がっていないのですが、先ほど大臣もおっしゃいましたように、量がふえて、四万五千トンが入ってくれば恐らく小売値も下がってくるであろうというふうに考えております。
  114. 湯山勇

    湯山分科員 輸入業者から渡す価格は現に下がっておるのですよ。それが下がってないのですから、いまのは判断にならないのです。これが一つ。  それから第二の問題。影響ないということをおっしゃるわけでありますけれども、私はそんなに簡単でないと思うのはグレープフルーツです。これは四十六年に、農林大臣が目の黒い間は自由化しないと言っておったのが、六月にいきなりやった。御存じのとおりです。それから後昨年OPPの問題が出ました。OPPの使用を許可するときにどう言われたかというと、大体十五万トンで定着しておるからこれはふえないだろうというのが農林省の当時の発表でした。これも御存じと思います。ところが、どうなんでしょう。昨年は十六万トンでしょう。しかもOPPを規定以上に使っておったために若干抑えられたのもありますがね。それを含めてそうなんですから、十五万トン横ばいと言ったのはもうたちまち崩れています。一万トン崩れている。これも大臣、農林省の観測が間違っておるのです。おわかりでしょうか。
  115. 野崎博之

    野崎政府委員 おっしゃいましたように、ここ数年ずっと見ておりますと、十五万トン前後という数字でございます。それほどそう急激にふえたというような状態ではないと思っておるわけでございます。
  116. 湯山勇

    湯山分科員 と思っておったのが十六万トンになったのですから、これは横ばいというわけにいきません。一万トン多くなるというのはなかなか容易なことじゃないのです。これはグレープフルーツですね。そうなると、グレープフルーツが十六万トン、今度の枠で約四万五千トン、両方合わせて二十万トンとしますか。日本の晩柑はどれくらいできますか、年間生産量。
  117. 野崎博之

    野崎政府委員 大体六十万トン程度でございます。
  118. 湯山勇

    湯山分科員 晩柑類六十万トンで、二十万トン来るのですよ、その上へ。これは決して甘く見ちゃいけない数字じゃないですか。
  119. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私が判断しましたのは、大体月間最高百万トンぐらい果物を食べる胃袋が日本全体にある。ところが六、七、八は非常にこれが少なくなっておりまして、三カ月間で二万二千五百トンくらい入れてもそう影響ないのじゃないか。特に競合品目でありますミカン、四月でなくなりますし、それから晩柑類も四月、五月でなくなりますから、市場、正規のルートに乗せる——このオレンジをまた貯蔵して次の秋に重なるようなことになれば秋早い柑橘類には大きく影響するかもしれないが、正規の市場に乗せるという約束になっておりますから、これもなくなってしまって次の年の柑橘類には影響を与えない、こういう判断でございまして、タンカソ類とも時期的には重ならないようにしていると思いますので、若干のところはあるかもしれませんが、大筋においては重ならないものでございますから影響を与えないのではないか、こう判断したのでございますが、勉強させていただきます。
  120. 湯山勇

    湯山分科員 そう簡単にぴしっと区切れて、ここから向こうはなくなって、これからはこうだというような性質のものではないことは御存じのとおりです。ことに晩柑をなるべく引き延ばそうというので、それぞれ苦労していろいろなものを、品種も新しいのをつくり出したりして後へ延ばす努力をしています。それに国も補助している。で、切りかえていって、やっと晩柑類が五十万トンか六十万トン近くになってきた。それへもってきていまのように従来よりも三万トン多いものがかぶってくる、これは容易ならぬ問題です。したがって、ことしはいろいろな事情があって、今日段階でも晩柑類、やはり二〇%方安くなっています。これも御存じと思いますが、どうです。そうなっていますでしょう。
  121. 野崎博之

    野崎政府委員 晩柑類は確かに先生おっしゃいましたように去年よりは値下がりいたしておりますが、ただこれは去年が例の寒波によって非常に減産しまして非常に高くなったからでございまして、五十一年度に比べますと、むしろ高くなっておるというような状況でございます。
  122. 湯山勇

    湯山分科員 それでもなかなかやっていけないというので、そこでハウスミカンを苦労してやっています。あのハウスには補助がありますか。
  123. 野崎博之

    野崎政府委員 別にございません。
  124. 湯山勇

    湯山分科員 補助も何もないのに、十アール当たり大体四、五百万かかるのじゃないですか。
  125. 野崎博之

    野崎政府委員 三百万ないし五百万程度でございます。
  126. 湯山勇

    湯山分科員 愛媛県なんかは一番多くて、いまどれくらいになっていますか、百ヘクタールくらいありはしませんか。
  127. 野崎博之

    野崎政府委員 全国で二百ヘクタール、愛媛では約六十ヘクタール程度でございます。
  128. 湯山勇

    湯山分科員 それだけやっていますから、二百ヘクタールといえば仮に三百万としても六十億になりますか、それだけの金を何の補助もなくやっておるのですよ、高い金利を使って。なぜやっておるかというと、これは、晩柑に切りかえる、それでも追っつかない、いまのミカン農家は立っていかないというのでそういうことをやっておる。そのピークが八月、これへ向かっていまのが来る。もう昨年は、一昨年に比べると、キロ千円もしたものが七百円台に下がっています。ふえていっている。ふえるというのは、そこへ向けてはけ口を求めている。補助も何もない、自分の努力でそうやったものへ、ほんといまのようなのがやってくる。これは影響なしと見ることはできないと私は思うのですが、どうでしょうか。
  129. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私もいろいろ研究しまして、まずミカンについてはダブらない。タンカン類についてもまずまずダブらない。秋口についてもまず大丈夫だ、六、七、八であれば。そこで一番心配したのはいまのハウスミカンでございます。ハウスミカンがせっかく伸びつつあるのに、これに大きな影響を与えてはならぬということを非常に心配いたしまして、これも研究してみたのですが、ハウスミカンは現在一万トンぐらいである。その一万トンと三ヵ月間で入ってまいります二万二千五百トンのものがどういう流れ方をするかというと、オレンジは御承知のように、末端値段が下がらぬというのは大衆の人が食べておらないのです。特殊なおみやげ屋とか特殊な人がやっておるのであって、そういう意味で競合することはまずまずないだろう、影響はまずないだろうという判断がありましたので踏み切ったわけですが、この点は時期的に重なるだけに私も頭を使っておるところでございます。
  130. 湯山勇

    湯山分科員 ハウスミカンというのは奨励していくつもりですか、ほうっておくつもりですか。
  131. 中川一郎

    ○中川国務大臣 大変金もかかりますし、これが将来どうなるかという問題もありますが、採算の合うものなら結構でありますが、余り危険を冒してという気持ちは持っておりません。このあり方についてはまた研究してみたいと思っております。
  132. 湯山勇

    湯山分科員 これは何の恩典も受けていないのです。だから、高い金利の金をそのまま借りて、一生懸命自分で努力してやってきた。これについては農林省は非常に冷淡です。そんなにまでしてやらなければならない今日の柑橘類、それを私どもも心配しておるわけです。ですから、いま簡単に、晩柑類の三分の一に当たるものが入ってくる、しかも夏はもうそこで処理しなければならぬ、貯蔵してはいかぬということになったら、もうもろにかぶってきます。そこらの配慮なしで、いまのようにまず心配ないだろうと、だろうでやられては大変な問題を起こす。これが一つです。ことに、グレープフルーツのときにはいまのような形でやって、しかもそのときの観測でも、去年のいまごろですか、OPPの問題、そのころは十五万トン続いておるからこれはふえないと言ったのが、もはやたちまち一万トンふえている。  それから果汁の問題も同様なんです。これは私も、グレープフルーツのジュースは酸味が強くて、業者が欲しがっておったことをよく知っています。かつて、アメリカの二つあるうちの一つの代表が来て、農林大臣に会いたいということがありました。当時は櫻内農林大臣で、会いたいと言うけれども、自分は会わぬ、会えばこの話になる、だから団体と話してもらって、私は一切会わないのだと言って拒否されました。結局話がまとまらないで終わったことも、大分前ですが、あったわけです。当時、五百トンかそこらしか入ってないときに、なおかつそういうことがあった。そしてグレープフルーツの問題もあった。それを、いまこれだけ大きく枠をふやすのに何の心配もないと言う。検討していただく問題はたくさんありますけれども、これはむしろこれから検討しなければならない問題だというように考えますが、いかがでしょうか。
  133. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私も一切ないとは申し上げておらないので、悪影響を与えて大変なことになるようなことはないだろう、もしこれによってまた影響があるならば、これに対する対策も講じていきたい、こういうぎりぎりのところで調整を図ったつもりでございますが、今後の成り行きは十分見てまいりたいと存じます。
  134. 湯山勇

    湯山分科員 大臣の言われることは理解できます。ただ、こういう問題というのは、それがそうなったからといって直ちに影響が出てくるというものではありません。しかし、オレンジならばいまのような状態で、卸は下がって小売は下がってないという事実などはしっかり把握するし、それがどれだけ利益を生むものかということもしっかり把握してないと、そういうのをだろうでやられたのでは、私は大変な問題になると思います。  そこで、いろいろあるのですが、最後に私が大臣に申し上げたいのは、ミカン農家も、いま、夏の真っ盛りに摘果をやって、それから選果に当たってはずいぶん無理をして選果をして価格維持を図っておるけれども、それでもうまくいかない。ジュース原料に生で出すものにはキロ一円ずつ出して、それを政府の支持価格、三十四円になるのですか、それにかぶせて互助的な体制で維持している。愛媛県あたりもそれをやっています。それを見れば、ジュースは簡単にふやせるものでもないと思う。  それから、重要なことは共済制度、これも十分できておりません。果樹共済の加入率はどれくらいありますか。
  135. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 私の記憶では、収穫共済は二七%、約三〇%近くまで、これはわりあい伸びております。それから樹体共済はなかなか伸びませんで、十何%かになっております。
  136. 湯山勇

    湯山分科員 法律で決めた制度で三〇%とか十何%しか加入していないというのは、国の制度としての価値がないわけです。これらの検討もしないで、ただ影響ないと言いっ放しは余りにも冷淡過ぎるというように感じます。これは私の感じじゃなくて生産者が感じる。申し上げたい点は、余っているときになおかつ輸入をふやすという政治、一体政治はこれでいいのか。農政全体に対する今日の農民の不信感、それがやはり反対運動になって出てきている。ここを直さない限り、どんなに大臣が、影響がない、こう考えたと言ってもそれは受け取られない。反対するのは間違いだと言っても、それは司違いじゃありません。それはグレープフルーツから今日までの一連の政策、それからいまおっしゃったハウスなんかも、勝手にやるならやれで、それがつぶれるような輸入をやっていく。これを直さなければ農政は成り立たないと私は思うのですが、大臣もこれはよくおわかりだと思います。そのためにどうするか。こういうことはやらなければならぬ、調査してやるのならやる、これはこうしなければならぬ、お気持ちの上でなり、具体策の上でなり、農政の基本に対する不安をこの問題を通して一体どう取り除いていくか、これについて最後に大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。
  137. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ミカンについての議論は先ほど申し上げたとおりで、ハウスミカンとの関係も十分慎重に見きわめていきたいと考えます。  ジュースでございますが、ジュースが過剰なときに入れたというおしかりをこうむっているわけでございますが、実は今度入れますジュースはブレンド用ということでございます。これは、果汁協会から、ブレンド用千トンでは足りない、ジュースが伸びないのはその辺のところがもう一つあるのだ、ブレンドして売れば相当売れ行きもいい、消費拡大にもなる、こういうところから調整したものでございます。そういう私の判断が誤っておるのかもしれませんが、しかし、私が判断したときの根拠は、ブレンド用で、それ以外は輸入しない、直接競合しない、必ずブレンドして消費を拡大する、これはこれからもまた厳重に守らしていきますが、そういうことから判断したのでございます。そのほか、肉についても畜産振興事業団で価格操作をする、こういう幾つかの歯どめがあって、まずまずこれなら農政に影響を与えないだろうという判断でやりましたが、もしこのことによって影響があるのなら、いろいろな生産対策や、あるいは先ほどの共済制度の強化やもろもろの施策を講じて穴埋めはしてまいりたい、決して農民、農家を苦しめた上で、犠牲の上で輸入を強いるという姿勢ではなかったのでございますし、もしそれが間違っていれば措置を講ずる。今後またMTN、東京ラウンド等——ニュージーランドからもいま魚との関連等々の外圧が、アメリカのみならず非常に強いのでございますから、承りました意見をしかと胸に秘めて今後対処し、農民に不安を与えないようにしたい。ただ、一つだけ申し上げると、実際は卸売市場で下がっておりません肉が、現地では子牛が下がる、大変なんだ大変なんだと必要以上にふれ回ることが、むしろ農家を必要以上に不安に陥れて混乱、被害が大きくなる、この辺のところも戒め合いながら慎重に対処していきたい、こう思います。
  138. 湯山勇

    湯山分科員 愛媛県ではこういうふうに自由化反対をやりまして、決定後四千人から集まって抗議集会を開いて市内をずっと訴えてまいりました。そのときに出ておったのは、勤労者みんなに訴えて、ひとつ外国から来たオレンジは食べないことにしよう、外国から来たジュースは飲まないことにしよう。ブレンドされればこれは飲まないわけにいかぬことになるのですが、やはりそういう訴えは、農民と国民が一体になっていいことだと私は思うのです。大臣で断れなければ、やはりわれわれがそれを食べないようにする、飲まないようにする。そういう運動ができなくなりますね。これも私は国民の力というのは大きいので、麦の輸入だって、これは国内でつくれば自然に外国の麦は輸入が少なくなっていく。そういう力でなければ日本の農業は立っていかないと思うので、それらを含めてひとつ大臣の今後の御健闘、御配慮をお願いして終わります。
  139. 伊東正義

    伊東主査 これにて湯山勇君の質疑は終了いたしました。  次に、米田東吾君。
  140. 米田東吾

    米田分科員 私は限られた時間でありますので、日本と朝鮮との漁業の問題につきまして中川主管大臣にひとつ御質問したいと思うわけです。  日本と朝鮮との漁業の問題は、イコール日本と朝鮮とのいろいろな友好関係、国と国との関係に根本がかかわってくるわけです。そこで、私は中川農林大臣に率直にお聞きをしたいのでありますけれども、中川農林大臣は、朝鮮半島の中でも韓国の方に非常に興味と見識を持っていらっしゃる。また、自民党の中でもそういう面については指導的な立場にいらっしゃる。反面、私がいまこれから提起しようとする朝鮮民主主義人民共和国、俗に言う北朝鮮でありますが、北朝鮮との関係についてはうらはらでありまして、どちらかといえば大臣は余り興味を持たない、そういうことじゃないかと思っておるのであります。しかし、大臣は自民党の政治家でいらっしゃる。そうして、いまは福田内閣の農林大臣として閣内において総理に協力をし、総理を助けて、特に魚の問題、漁業の問題についてはいかなる国といえども友好を堅持しながら日本の国益と、そしてまた関係漁民の利益のために任務を遂行していただかなければならない大臣でいらっしゃるわけです。そこで私は、大臣からこの際、朝鮮半島、特に北の方の朝鮮民主主義人民共和国との関係について大臣の現在の心境を聞きたい。大臣は南の方に興味はあるけれども北の方に興味がないというようなことが杞憂であるのかどうか、それから漁業の関係についても、日朝の漁業関係を大事にして日本の国益に沿って、イデオロギーはどうであろうとも、大臣としてはこの問題の解決に懸命に尽くされなければならぬと私は思いますが、そういう点について御決意もあると思う。最初にそこらあたりをひとつお聞きしておきたい。
  141. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は政党的には自由民主党でございますから、やはり自由主義世界国家との連携ということを大事な外交の基本方針としております。したがって、韓国、アメリカ、かつての中華民国あるいは東南アジアという国々と積極的に友好を構える。それでは社会主義国家はどうかというと、これは興味ないとかあるいは反対するとかということではなくして、これまた平和裏に、自由主義国家との外交を侵さない範囲内において門戸を開き、そしてまた外交関係を結んでいくということに私はいささかも反対したことはないのでございまして、したがって、朝鮮民主主義人民共和国に対しても、興味がないとか反感を持っているようなことはございませんで、できるだけの関係を持ちながら友好裏に進めてまいりたい。特に水産関係においても、従来やられましたやり方についても高く評価をいたしております。今後もそういった方向でやっていきたい、こういう考え方であります。
  142. 米田東吾

    米田分科員 私がこれから質問しようとする日朝漁業の問題につきましては、いまも大臣が答弁に触れられたのでありますけれども、すでにこの国会の予算委員会でも安宅議員が取り上げられまして、大臣からの見解もただしておるところでございます。したがいまして、いま大臣が御答弁なさったことについて、私はそれなりに評価をいたします。何といいましても所管大臣、農林大臣が先頭に立って、この問題の解決にはひとつ手腕を発揮していただかなければならぬわけであります。評価をいたしまして、ひとつ今後ぜひ日本の国務大臣として、この問題について公正な指導、有効な指導をお願いしたいと思っておるわけであります。  そこで大臣、いま日本の水産漁業も二百海里時代を迎えまして、言うなれば四面楚歌の状態が日本の業界にもたらされておるわけであります。ソ連といいカナダといい、あるいは米国といい、あるいは南の方に行きましてもニュージーランド、豪州、それから隣に行けば中華人民共和国にいたしましても韓国にいたしましても、日本の漁業という関係で見ますならば非常に条件は悪化しておりますし、厳しい状況に置かれておる。しかし、これらの国々は、日本とは国交の関係がまず一つあるということ。それから、いろいろ不備な点や問題はあったといたしましても、今日やはり秩序は保たれておる。漁業協定あるいは漁業についての何らかの取り決めがありまして、秩序があるわけであります。しかし、朝鮮民主主義人民共和国との関係においては、一番近いところであって、しかも漁場はほとんど日本の漁民と競合する漁場、一番密接な関係を持ち、しかも日本の漁民と競合する関係にある。そうして、近いこの国との関係はどうかというと、国交もないわけであります。そうして、政府間の何らかの有効な秩序というようなものがあるかというと、これもない。ようやく昨年九月に日朝議連が先陣を切りまして、日本の水産業界と一緒に訪朝いたしました。そして、朝鮮民主主義人民共和国の二百海里宣言に対処する日本の漁業権益の確保について話し合いをいたしまして、一定の合意を見て、一つの暫定的な秩序というものは今日存在しておるわけであります。何といいましても国交のない関係政府間の交渉がない関係、あるいは政府・与党と共和国とのパイプという関係もきわめて弱い。そういうような関係で、漁業の関係というのは、どこの国に比べても朝鮮との関係というものはおくれておるし、非常に不安定な危険な状態にある、こういうふうに私は思うのです。  一面、朝鮮近海における日本の漁業というのはどうであったかというと、これは、きょうは水産庁長官関係局長もおいでいただいておりますから十分おわかりのとおりでありますけれども、軽視できない。たとえば北だけにとりましても、平均いたしまして大体八万トンちょっとの漁獲高を持っているわけであります。そうして、この漁場に関係する漁民は約三万。大臣の選挙区の北海道からも朝鮮近海には漁船が行っておるわけであります。日本海岸、山形、新潟、富山、石川あるいは京都、山口、そうして九州、非常に広大な、日本のほとんどの地域から漁民はこの地域に漁労に出ておる。そういう重要な日本の、しかも近海に値する漁場でありますから、これについては何としても政府は、あらゆる方法をとって朝鮮との関係改善しながら現在の漁業の秩序というものをこれからも維持して、さらに発展させていかなければならぬ立場責任があると私は思うのでありますけれども、この点については大臣の見解はいかがですか。
  143. 中川一郎

    ○中川国務大臣 二百海里時代を迎えまして、わが国水産業が非常に厳しい情勢になったということも事実でございます。そしてまたこの二百海里問題は、それぞれ個々の国によって事情が違いまして、交渉のあり方、現状等々それぞれ固有の問題を持っておりますから、それぞれに対応した対策を講じていかなければならない。ソビエトにはソビエトの対応の仕方、南方水域には南方水域、その中にありまして朝鮮民主主義人民共和国が日本との関係において、国交の問題から非常に厳しい状況にある。しかし、この水域における漁業資源というものが、量のみならず、漁家数あるいは魚の種類等々から言って、わが国水産業、特に日本海、九州方面の漁業にとって非常に重要な地域である。でありますので、この水域での操業というものに非常に深い関心を持っております。  そこで、この水域の漁獲量を確保するためには、昨年来お願いいたしました日朝間の民間レベルでの話し合いというのが一番ありがたいことであり、当を得たことであり、このことに対する見解は、この間の予算委員会でも安宅委員の質問に答えて、鈴木前農林大臣考え方と寸分も違わないということで対処していきたいということを思っており、今後もこのルートによる操業確保ということを大きく期待いたしており、それに対する政府のできることがあるならば、助言なり何なり積極的に協力をさせていただきたい、こう思っておるわけでございます。
  144. 米田東吾

    米田分科員 きわめて明快な答弁をいただいておりますので、確認をしておきたいと思います。  そこで、水産庁長官、幸いにして去年は最悪の事態が回避されまして、十月一日からことしの六月末までの期間で暫定的な朝鮮民主主義人民共和国東の海、東海の側の一定地域に日本の漁船が、主として小型の漁船になりますけれども、許可証もとらない、入漁料も要らない、また日本政府の保証も要らないという条件で暫定的に漁労ができるような取り決めになって、今日日本の船が出漁しているわけであります。あなたの方でいま持っている一番新しい資料で、この六月以降の、あえて言えば暫定期間といいますか、この期間で日本の漁労というものはどの程度の状況で、そして漁獲はどの程度であったのか。聞くところによりますと、肝心のイカがことしは日本海、非常に不漁であったということも聞いておりますけれども、どういう状況であるのか、ひとつ答弁をしていただきたいし、あわせて、この地域で今日までこの合意に反しての何かの原因で漁船間のトラブルがあったかどうか。私は平穏であったと思いますけれども、何か問題があったかどうか、この二つをちょっと答弁していただきたい。
  145. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生御指摘のとおりに、この朝鮮民主主義人民共和国の二百海里水域内での日本の操業の実績が、五十一年では先生先ほど申されました八万一千トンということでございましたが、その後の私どもいま手元にあります資料では、五十二年の七月からことしの一月までの数字がございますが、五十二年の七月には千六百隻のイカ釣りの漁船が出ております。しかし十月、十一月、十二月は、十月が五十隻、十一月が三百隻、十二月が二百隻ということで、全体的にイカの出ぐあいが非常に悪いということで、その不振が響いておりまして余り漁獲が上がっていないということで、船も大幅に減少しているということのようでございます。そのほかには、カニのかごの船が十一月、十二月に若干出ておりますが、いまのところ大きな成果がそういう意味では上がってない。これはむしろ漁況が悪いということからきておるものと私どもは判断をいたしております。  それからあと、その後何か事件があったかということでございますが、私どもの方が聞いている限りではそういう事故があったという報告は一件もございません。  水揚げ量のところはちょっと資料ができておりません。
  146. 米田東吾

    米田分科員 いま答弁いただきましたが、漁況の関係で必ずしも成果は上がってないような答弁でございました。これは日本海の海洋の状況とか気候の状況とか、魚にかかわってくる環境の問題だろうと思うのでありますけれども、いずれにしても この期間に大体日本の漁船はこの海域に出漁して、しかも両者おのおの合意に基づく条項を守ってトラブルもなく、今日日本の漁民というのはこの地域の権益を守って国益に沿った漁業を続けておるということは、私は喜ばしいことだと思うのであります。  そこで、この協定もいま申し上げましたようにあと六月までで何らかの手を打たなければ期限が切れるわけであります。言うところの本来の民間漁業協定に発展するという可能性はないわけであります。そこで問題は、六月以降のこの日本と朝鮮の漁業をどうするか、いよいよもって本格的に政府も言うところの民間漁業協定についてもう一歩進めた検討とこの対策が迫られておるのではないかこういうふうに思うわけであります。いま大臣の答弁もありましたけれども、単にこれは民間団体あるいは全漁連とかそういう関係業界団体だけの問題としては、相手が独立した朝鮮民主主義人民共和国の国家の主権にかかわってくる取り決めになっていくわけでありますから、日本の方は政府が出ないで民間でやるといいましても、相手国との関係はそれでは条件が整わないことになる。したがっていよいよ政府としても本腰を入れてもらわなければならないときが来ていると私は思うのであります。  そこで、私は私なりに考えるのでありますけれども、これにはいまから一つの環境整備が必要である。六月になって、さあひとつというわけにはいかぬと私は思うのです。いまから環境整備が必要である。その一つは、やはり日本と朝鮮民主主義人民共和国との関係の友好の促進といいますか関係改善、これがまず不可欠の問題じゃないか、私はこう思っておるわけであります。このことにつきましては、きょうは外務省からも来ていただいておりますが、外交的には日本の政府は別に敵視をしているのではないとか、あるいは文化、人事、経済貿易等の関係については交流が深まっているとか、いろいろそういうことで、朝鮮との関係につきましては現状を評価しておりますけれども、しかし一方、朝鮮の側から日本政府なり日本の対応についてどう見ているかというと、必ずしもそうは受け取っておらない。これはまた、向こうへ行っていろいろ話をする場合に無視できないと私どもは思いますね。私はもう一歩進めて、日本と朝鮮との関係について外交的な、政治的な分野での改善というものが必要になってきておる、こういうふうに基本的に考えておるのでありますけれども、きょうは外務大臣に来てもらうことができませんで、外務省のアジア局から来ていただいておりますけれども、外務省として、この面についてひとつ見解を聞かしてもらいたい、こう思うのです。
  147. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 日本と北朝鮮との関係でございますけれども、私どもといたしましては、先生の御指摘のとおり人事、文化、諸般の分野におきまして交流を深めて、まず相互理解を深めていくということがきわめて重要であろうかと考えております。この点は、外交演説におきまして園田外務大臣も御指摘になっておるわけでございますが、現在の朝鮮半島におきます状況を見ますと、北朝鮮の側、あるいはこれにはソ連、中国との関係もあろうかと思いますが、韓国を承認していないという状況もございます。かような状況で、北朝鮮との関係政治の分野におきまして道を切り開いていくということがきわめて困難な状況にあることも他方事実でございます。しかしながら、外務省といたしましてはできるだけ相互理解を深める場をとらえていきたい、かように考えておるわけでございます。
  148. 米田東吾

    米田分科員 その程度の答弁では本当は答弁になっていないと私は思うのですけれども、何しろ三十分でございまして、あなたとまたやりとりしておったって時間がそれで終わってしまうわけであります。要は、私は、朝鮮との関係については魚の問題だけではなしに、貿易の問題、いろいろな関係があるわけでありますけれども、ひとつもっと一歩踏み出してもらいたい。韓国の関係、もちろんありましょう。アジアの一般的な情勢ももちろんこれは配慮しなければならぬと思いますけれども、だからといっていまのような朝鮮との関係が冷え切っておっていいか。朝鮮の方は、はっきり日本の福田内閣は敵視政策をとっているのじゃないかという見方もしておるわけであります。私どもは必ずしも皆さんが敵視政策をとっておるとは思いませんけれども、しかし改善が依然としてなされない。むしろ最近の福田内閣の外交政策からいきますと後退しているのじゃないかという心配すらしておるわけであります。それをもって共和国の方が敵視政策だと言うのも無理がないと思うわけであります。私はひとつ課長から、この点は私の真意を十分くみ取ってもらって、何も朝鮮といますぐ国交の回復をやれとかどうこうしろということを具体的に言っているわけではないのでありまして、これから外交の中でも、人事の交流であろうと文化の交流であろうと、あるいは漁場の画定の条件づくりであろうと、やろうと思えばいろいろな方法があるのでありますから、ひとつ一歩進めていただくようにお願いしておきたい。  特にいま申し上げました昨年の九月に結びました暫定合意書の中には、こういう条項も入っているわけです。これは五の項でありますけれども、「双方は水産資源を保護、増殖し水産業を発展させるために必要な漁具および漁法等に関する水産科学技術資料の交流を行い、漁具をはじめとする科学技術器材の購入に際し協力する。」これは双方の協力義務をうたっておるわけでありまして、言うなれば、漁業の分野の背景となる技術とか資源とか、あるいは資材等についてはひとつお互い協力して、この面ではどちらかと言えば日本の方が朝鮮よりは先進的でありますから、したがって、できるだけの日本の指導なり、あるいは器材の購入については日本の市場があるわけでありますから協力をするということをうたっておるわけなんでありまして、これらの点につきましては、政府の姿勢いかんによっては私は相当実のある進展したものが今日でもできるのじゃないか、可能だろうと思っておる。これはぜひひとつ注意を喚起しておきたいと思います。  それからもう一つ、これは大臣と外務省にもお願いしたいのでありますが、政府間のパイプがない、与党の関係でもパイプがなかなか、これはあることはありますけれども、弱い。したがってこの段階では、国民レベルと言ってはちょっとオーバーになるかもしれませんけれども、野党の使い方ですね、野党をこの際ひとつ日朝友好という面でもっと大胆に、与党も政府国民外交レベルでの野党の協力の仕方、これはもうはっきり言って使い方といいますか、そういう面についてもひとつ考えていただいていいのじゃないか。そういうことが順調に、しかも効果的に進めば、結果的には政府の外交あるいは漁業の環境づくりというところにはね返って役立ってくることは当然である。今日野党が朝鮮といろいろな関係を持ったからといって、何も野党のメンツとか利益ということでこだわっているわけではないのであります。思い切って野党を使うということが必要だろう。これにつきまして大臣の見解、どうでしょうか。
  149. 中川一郎

    ○中川国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国との関係は、不幸にして外交関係がございませんで、あくまでも民間レベル、こういうことでございますので、民間レベルを野党の先生方が指導していただいて、この民間レベルでの交渉が円満にいくということは国益上も非常にありがたいことでございますので、使ってという言葉がありましたが、使ってじゃなくて、協力をお願いして、また自民党の先生の中にもそういう方もいらっしゃいますし、このパイプをより一層御協力をいただいて、日本の漁業関係のみならず、両国の関係がよくなるということを私どもは非常に期待をいたしておる次第で、この上ともよろしくお願い申し上げたいと存じます。
  150. 米田東吾

    米田分科員 そこで時間もなくなりますが、もう一つお聞きしておきたいのでありますが、私ども、きょう幸いに分科会主査をやっていらっしゃる伊東先生もその有力な功績者なんでありますが、昨年行きまして、いまの暫定合意書を取り決めてきたわけであります。何回も申し上げますが、これは六月で切れてしまう。そこでこれを継続させるには、とりあえず早急に予備交渉的なものが民間レベルで必要だろうと私は思っております。これは恐らく政治レベルの、久野忠治自民党代議士を会長とする日朝議連、これがやはり先導になりまして、この本協定に向けての予備交渉に入らなければならぬだろうと私は思う。したがって、そういうことを想定いたしまして、その面について外務省も、それから主管の農林大臣からも、いろいろな面での協力、これをいただきたいと私は思っておるわけであります。  なおこの協定に入る段階で、これは私の見解でありますけれども、問題になりますのは、一つは共和国が一方的に発表しております五十海里の軍事警戒ライン、事実上いまの合意書は欠陥合意書でありまして、黄海側の、西海側の漁場については軍事警戒ライン設定のために日本の船はいま入れない状態です。私どもは、当時軍事警戒ラインについては、日本のわれわれとしては認める立場にない、遺憾であるという態度を表明してまいりました。これはまた相手の主権にかかわる問題であります。いまこれがネックになって残っているわけでございます。この問題は、どうしてもある程度の解決点を見出さなければならない問題じゃないか。  それからもう一つは、東海側はこの五十海里から二百海里の間、百五十海里にわたっての暫定海域ができておりますけれども、しかし業界の皆さんが言っているのでは、五十海里の外ではもう余り漁がない、やはり沿岸に寄れば寄るほど、魚というのはこれは一般的にそうでありますけれども、漁があるわけです。何とか東海側でも、五十海里について交渉の段階でもう少し条件を引き出すような努力ができないものかどうか、一つのネックになっているわけであります。  これらの問題につきまして、私どもは民間レベルでの予備折衝の段階で当然打診はしなければならぬと思いますし、交渉しなければならぬと思う。いろいろ相手から譲歩を引き出すにいたしましても、最終的に来るのは、まとめの段階では政府の保証の関係なんです。これはもう多く申しませんが、鈴木農林大臣の時代におきましてもこのことについてはある程度の示唆をわれわれに与えたわけなんです。この政府保証の関係については、中川農林大臣も実力大臣でありますから、やはりいまの福田内閣を指導されて、そのときは的確な、日本として最大限の保証が出せる、そういう条件を考えておいていただかなければならぬし、中川農林大臣に、そういう面についての政府部内についてのいまからの対処も私は考えていただかなければならぬ、こういうふうに思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  151. 中川一郎

    ○中川国務大臣 政府保証の問題につきましては、内容、形式等が現在のところ明らかになっておりませんので、これに対して政府立場を申し上げるわけにはまだまいりませんけれども、この上とも、その内容その他がわかり次第また研究してみたいと思っております。私どもも最大の努力を払いたいと思う次第であります。
  152. 米田東吾

    米田分科員 もう時間があれですから終わりますが、大臣、ひとつこれは本当にお願いしておきます。民間はあくまでも民間でありまして、権限がありません。外交関係はもちろん、二国間の何らかの取り決めをするにしても、それ自体民間は権限を持たない。やはり当事者能力のないような民間が交渉して、何とか日本の国益に沿った漁業協定を結ぼうというのでありますから、それゆえにある程度政府の、俗な言葉で言えばお墨つきがなければ相手も信用しませんし、相手にしませんし、実際問題としては成果あるものにはなっていかないと思う。ですから、きょうの段階ではいまの大臣の答弁はやむを得ないと思いますけれども、その点だけは考えておいていただいて、これはもう最も重要な日本の漁業の、近海の漁業三万人の漁民がこれによって影響を受けるわけであります。どうかひとつ、資源の乏しい今日でありますから、大臣ひとつ決意をしておいていただいて、そのときはりっぱなお墨つきが出るように、ぜひひとつ御配慮しておいていただきたいと思います。  終わります。
  153. 伊東正義

    伊東主査 これにて米田東吾君の質疑は終了いたしました。  次に、石田幸四郎君。
  154. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 まず大臣にお伺いをいたしますが、私がこれから申し上げようという問題は、輸入牛肉の横流しの問題が去年からことしにかけて国会でも取り上げられておりますし、新聞等でもたびたび話題になっておるわけであります。この問題についてお伺いをいたしたいわけですが、まず基本的な問題で一つだけ伺っておきます。  大臣御存じのとおり、貿易の自由化という問題は、今日の円高の問題と絡んで非常に大事な問題になっております。そのためにアメリカあるいはオーストラリア等から牛肉を日本に買ってもらいたいという話がしばしば出て、大変大臣も苦労してそれに対処されてきたわけですが、それと同時に考えなければならないのは、食糧の自給化の問題でございましょう。動物たん白を確保するということが、これまた国内にとって非常に大きな問題でありますし、いま肥育業者等においても、なかなか採算がとれないといって一時大きな騒ぎになったことがございます。そういったことを考えますと、動物たん白の輸入の問題それから国内における生産とをこれからどういう方向で指導していくのか。量的に規制するだけなら問題はありませんけれども、価格の問題では日本の国内産ははるかにかなわないわけです。しかし、そこに質的な問題も絡んでおりまして、一概に値段だけでは決められないわけですけれども、しかし、いずれにしても、やはり現在たくさんの人たちが牛を飼っておるわけでございます。あるいは豚を飼っておるわけでありまして、ただ貿易の自由化だけで問題を処理するということはできないわけですね。その価格の問題もひとつ考慮の中に入れていただいて、今後どういう方向でこの二つの問題を整理していこうとされるのか、この基本的な問題を伺っておきたいと思います。
  155. 中川一郎

    ○中川国務大臣 わが国の牛肉は世界に比べて非常に割り高である、またしたがって消費量も少ないという特殊な地位に置かれております。これは歴史的な問題もあれば、土地条件等から来た制約もありますので、これはやむを得ないことだと思います。  そこで、私としては、できるだけ生産費を引き下げて割り安なものになるように、生産対策なり金融対策なり、もろもろの施策を講じて割り安に消費者に届く工夫をする、そして消費の拡大を図ることにも努力をし、そのことが国内畜産農家、肉農家の安定的な発展にも寄与する、かたがた不足した分は、これは外国に依存をしていく、こういう基本的な態度、中でもコスト引き下げに当たりましては、生産対策ももちろん大事ですが、なかんずく流通過程が非常に複雑であり、割り高なものになっていると言われておる、この辺を合理化して、そして消費者に安い牛肉が行く最善の努力をしていきたい、こういうことで、就任以来、朝市の設置であるとかあるいは指定店の強化等々、そして恒久的には流通の根幹をなします食肉流通センター、これは生産段階での合理化でございますが、消費地では部分肉センターというものを受けざらとして設置して、この両面を全国にできるだけ早い機会にネットワーク化して、そして生産者もそれから消費者も、かたがた外国の輸入にも対処する、こういう大きな柱で鋭意やっておるつもりであり、今後とも努力をしたいと思います。
  156. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 これについてはわが党も、いわゆる産地牧畜というのですか、そういったものもかなり研究して推奨してきたわけですが、あらゆる手段を通して、やはりそういった業者の人たちがやっていけるように、そういう御努力をいただきたいわけです。私も物価の委員会に所属しておったのですが、生産地の値段とそれから実際の小売業者の値段の間には非常に大きな差があります。どうかひとつ、いま大臣が言われたように流通段階でぜひメスを入れていただいて、いままで何回もそういうお話があったのですけれども、なかなか効果が上がらない。ぜひ格段の御努力をいただきたいと思うわけでございます。  さて、この輸入牛肉の横流しの問題でございますが、二月二十一日、日経新聞にかなり具体的な形で、輸入牛肉が大量に横流しがされておるということが記載をされておるわけでございますが、畜産局長、この記事はごらんになりましたか。
  157. 杉山克己

    ○杉山政府委員 見ております。
  158. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それで、たとえば一月十八日の参議院決算委員会で取り上げられた際に、中川農林大臣が、疑惑があれば晴らしたいという旨をおっしゃったということでありますけれども、まず最初に、農林省の方では五十二年八月十八日に、五つの団体に対して「輸入牛肉取扱いの適正化について」という通達を出していらっしゃいますね。間違いありませんね。
  159. 杉山克己

    ○杉山政府委員 出しております。
  160. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それで、この中で私は一つ問題があると思うのですけれども、ちょっと読み上げてみますと、「最近輸入牛肉、特に冷蔵牛肉の事業団の売渡しについてマスコミ等で取り上げられ、なかでも冷蔵牛肉の売渡団体については本来の趣旨に反し、これを傘下組合員を通じて適正な価格で販売していない場合があるとの強い批判がなされております。こうした事態にかんがみ、農林省及び畜産振興事業団は、まず事実関係調査を進めているところでありますが、」云々というふうにあるわけです。これは五十二年八月の通達でございますから、事実関係調査を進めているとすれば、この時点で進めているというような表現でありますから、もう何らかの結論が出ていなければならぬ。この事実関係調査の結果について御報告を願いたいと思います。
  161. 杉山克己

    ○杉山政府委員 事実関係調査といいましても、個別具体的な取引を一つ一つ追跡調査するというようなことではなく、全体として報告を徴収する、そして所定の本来期待されている傘下の組合員に売られているか、そのことを書類によって点検し、必要があれば聞き取りチェックをするというようなことをやっておるわけでございます。それから、  個別具体的に、極端な例ではないかというような御指摘を受けた問題につきましては、これを現地に照会してその事実を確かめるというようなことをやっておるわけでございますが、いろいろお話は承りますし、それから、確かに日本経済新聞にもその疑いがあることを記事として指摘されているわけでございます。私ども、極端な事例が出てまいりました場合は、なかなか手もなくて大変な問題ではございますが、場合によっては個別の取引の実態にも立ち入って調査をする必要があろうかというふうに考えております。
  162. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 個別調査ではない、全体的にそういう状況がないかどうか報告を聴取して、そんな形で調べているんだというお話でございますけれども、この文面を見ると「事実関係調査を進めているところ」というふうな表現になっておりますね。ちょっとこれは意味が違うのじゃないですか。  じゃ、一体どういう趣旨でこの通達をお出しになったんですか。この通達の中には現在進行形の形で書いてあるでしょう。具体的に各業界に対してどういうような文面をお出しになりましたか。その文面について、またその答えについて、ちゃんと書類でひとつ御報告を願いたいと思いますが、いかがですか。
  163. 杉山克己

    ○杉山政府委員 この通達は、まさに一つ通達を出すということで業界の自粛を促すというところに強い意味があるわけでございます。  それから調査の問題につきましては、私どももいま申し上げましたように、報告をとって、その過程を通じて、個別に調査をする必要、さらに追跡をする必要があると思われるものが出た場合にはそれを追跡調査するというふうに考えておるわけでございますが、現在までのところ、そういう個別調査については一、二件やった実績はございますが、細部に立ち入ったなかなかむずかしい調査になりますので、まだまとめて報告できるような段階にはなっておりません。  それから、団体等に対して文書を出したかということでございますが、この通達そのものを出しますと同時に、この趣旨について団体を集めて十分説明をいたしたわけでございます。この趣旨を受けまして、畜産振興事業団におきましては、それぞれの売り渡し先に対して売り渡し条件あるいはさらにそのほかの要領等の趣旨を徹底させるということを図っております。それから事業団から、その後各売り渡し先に対して、そのずっと末端までどういう形で売られていったか、その数量、日時等について詳細な報告を出すようにということで、様式を指定いたしまして報告を徴収しているところでございます。
  164. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それではおかしいじゃないですか。あなたはいま、この通達を出した趣旨というのは業界に自粛を与えるためである、それから問題があってはいけないのでそういった意味の警告を発するためであると言うのですけれども、この中には明確に調査を進めていると書いてあるのですよ。これは誤りなんですね。誤っておる。こんな間違いの通達を出していいのですか。おかしいじゃないですか。これは現在進行形だ。そんな答弁では私は納得できませんよ。これはもう一回御答弁をいただくとして……。  次に、この通達を受けた一つの業界である全国食肉事業協同組合連合会が、半年後の五十三年の二月に各連合会の会長さんに通達を出していますね。それには「全肉連が畜産振興事業団から随意契約により売渡しを受け会員に対し、供給する輸入牛肉は、所属会員の組合に対してのみに供給し、他に供給しないこと。」こういう通達を出していらっしゃいます。これは半年後ですよ。われわれが考えるに、恐らく全肉連は五十二年八月に出された通達を受けてそれぞれの業界に、いまあなたも丁寧に御説明したということでありますから、そのときに何らかの指導をしていらっしゃるわけだ。その後さらに半年を経過して、あたかも過去にそういった横流しの形跡があったようなニュアンスの通達を出していらっしゃるわけですけれども、この開きを見ましても、私は、新聞が指摘するようなそういった横流しの事実がここにあったというふうに認定せざるを得ないような状況が生まれていると思うのです。全肉連が出された五十三年二月六日の通達、畜産局長さん、これを一体どういうように解釈されますか、さっきの問題を含めてもう一回御答弁ください。
  165. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほどからの答弁の繰り返しになって恐縮でございますが、調査といいましてもいろいろな段階の調査があるわけでございます。私ども個別に多数の取引を調査するというのもなかなか能力的にも限界があるものでございますから、報告を求めて、それを基礎にして、明らかな事実があると思われるようなときは、場合によっては個別にそれを追跡調査するという考え方でおるわけで、現在まで確かに一、二件調査をした例もございますが、まとめる段階までには至っておらないわけでございます。  それから、団体がそれを受けてどう行動したかということでございますが、当初、通達を出した時点において直ちに文書の指導をしていなかったということはあるかもしれませんが、実態的には、それは組織でございますから、各般の、各所の会合を通じて傘下組合員にその趣旨の徹底を図っているというふうに承知いたしております。最近に至りまして、全肉連と略称しておりますが、全国食肉事業協同組合連合会、この団体が傘下の組合員に対して指導の通達を出したというふうに聞いております。  これの意味ということでございますが、最近いろいろ御批判を受けることも多い。確かに部分的に、場合によってそういう横流しの事態があるのではないかというような疑いも持たれておるわけでございまして、事実があったからどうかということよりも、そういう疑いを持たれること自体に問題がある。やはりこういう御時世であるし、業界としても自粛を図るべきである、そういうまじめな考え方に立って組合員に対して警告を出したものというふうに私は受けとめております。
  166. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それは局長さん、全然話が違うじゃないですか。そんなことを言うと少し声を大きくしなければならないのですけれども。畜産局では、そういったそれぞれの業界に組織があるから多少の日時がかかっても構わない、仕方がない。あなた方が指導通達したことは、そのすぐ下の団体には半年も経過しなければこういう指導を出さないのですか。こんな怠慢なことはないじゃないですか。おかしいでしょう。まあ、あなたも言いにくいことがあるからそういうふうにおっしゃっているのでしょうけれども……。  いずれにしてももう一点問題なのは、そういう事実があるかどうかよりも疑いをかけられていることの方が問題だ。しかしそれは、そういう事実があるかないかを明確にして、その上でそういう事実があればなお厳しく行政指導しなければならないし、そういう事実がないとすればなかったということを天下に明らかにすべきであって、疑惑の姿勢が、そういう疑いをかけられたというだけで問題があるのだという発想は逆じゃないですか。その点もう一遍お伺いします。事実関係を明らかにすることの方が先じゃないですか。私はそれが行政の姿勢でなければならぬと思いますが、いかがですか。おかしいですよ。
  167. 杉山克己

    ○杉山政府委員 個別の事実関係が全くないということを証明するようなことは、私ども実際問題としてこれは能力的に言っても事柄の性格から言っても、まずできない話ではないかというふうに思っております。ただ、こういう取引の実態からして、そういうおそれが全くないかと言えば、私はそれはあり得る話だと思っております。そういう話を個別に一つ一つ拾い出してこれをどうのこうのと言うことは、もちろんそれはそれとして必要なことかと存じますが、それ以前に、そもそもそういうことの起こらないよう、これに携わっている全体の人間の気持ちを引き締める、今後、一般的な問題としてまずそういうことが起こらないように、商業道徳としてもこの本来の趣旨に従って売ってもらうというふうに努力してもらうことが必要ではないかと考えているわけでございます。
  168. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 どうもおかしな答弁ですな。大臣、それは農林省としても手が足りないという点もいろいろあるでしょうけれども、しかしこういう問題、疑惑を抱かれっぱなしで事実調査もしないというようなことではだめだと思うのです。現に大臣も疑惑があるなら話したいとおっしゃっているわけだから、やはりこういう問題に対する個別調査を厳重になさるべきじゃないですか。特に日経新聞によりますれば、ある食肉の関係者が明らかにしたところによると、次のようなケースはごく一般的に見られるという。「大手商社が荷主だった二百カートン余りは事業団を経由して翌日、全国組織の指定団体に名義が変わり、本来ならさん下の地域団体に入るものが、二月上旬になって突然、全く関係のない大手食肉問屋に流れ、さらに東京・芝浦の仲卸人を経てカット肉業者に荷主が変わり、中旬までに首都圏にある精肉店数店に出庫されている。」ここまで具体的に示している。しかも冷凍倉庫の中において荷主がかわっているというような状況指摘しているわけです。畜産事業団か牛肉を輸入させる、させたらそれで話は終わり、全く行政責任はないというような態度では私はいかぬと思うのです。だからこそ恐らく農林大臣だって、疑惑があるならば話したいというふうに明言をされたと思うんですけれども、そういった意味でそれは事実関係があったかないかについては、運輸省との協力を得て、明確に調査なら調査をしてみるというようなことが私は必要だと思うんです。  そういうわけで私は、ここら辺の問題にメスを入れてもらいたいという要求を申し上げます。そんれに対する御答弁をいただきたいのと、それから同時に、こういうような問題が何回も国会で話題にされているような状況でございますから、やはりこれは何らかのチェック機関が必要ではないか、こういうふうに思うわけです。というのは、基本的に申し上げれば、大臣御存じのとおり、輸入牛肉、特にチルドの問題は、最近は一般消費者にも大変理解をされてきて、ぜひ安い牛肉を食べたいという非常に強い要望が大都市を中心にして起こっておるわけでございますから、そういった意味でやはりその消費者の要望にこたえるためにも、もう少し行政の上ですっきりした形をとらねばならぬ。  その後朝日新聞等の報道によりますと、取扱店をふやすとか等の措置を講じようというような対策をいま考えておられるそうですけれども、それは簡単に取扱店をふやすだけでは問題が片づかないわけでありまして、せっかく安い牛肉を輸入し、その差益というものが日本のそういった畜産業者に渡されているという状況等を考えましても、国の責任において行われている事業であるだけに、もう少しそれを行政上すっきりした形で前進をさせる必要があると思うんです。私、いまの畜産局長さん、いろいろ言いにくい点があっておっしゃらないんだと思うんだけれども、そのような答弁では、私はとうてい納得できません。どうかひとつ御答弁をいただきたい。
  169. 中川一郎

    ○中川国務大臣 肉の問題、なかんずく畜産振興事業団が扱いますチルド牛肉の流れ方についていろいろ御批判がございます。国会でもまた御指摘があり、これが適正なものでなければならないことは当然のことでございます。そこで、われわれとしても十分関心を持つのでございますが、調査といいましても、言ってみれば調査権限にもおのずから限界があるというので、これが白であったか黒であったか、言われるようなことが全部事実であったか一部分なのか、なかなか容易でないところも現実問題としてあるようでございます。しかし、これだけ批判がある以上、若干時間はかかりましても、できる限り実態を把握すると同時に、今後こういう批判のないように、良識をもって業界が当たってくれませんと、何ぼ厳しく政府や周りが言いましても、協力体制がないとできないととでございますので、業界とも十分話し合いながら、批判のないように万全を期していきたい。しかし現実どうなっておるかということについては、われわれの許される範囲内において実態も明らかにしていきたい。誠意を持ってやっておりますが、当初申し上げたように、何分にもわれわれの調査の権限にもおのずから限界があるということも、ひとつ御賢察いただければと思う次第でございます。
  170. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 いずれにしても、できるだけ自分たちの能力の範囲内においてやりたいとおっしゃっておるわけでございますから、やはりこれは何らかの形においてその結果を国民の前に明らかにしていただかなければならぬと思うのです。私はここで日にちを区切りたいと思うんですけれども、そうもいかぬでしょうから、なかなかむずかしい点もあるでしょうから、いずれにしても早急にこれらの問題についての解明の結果をひとつ明らかにしていただきたい。これだけ御要望を申し上げておきたいと思います。  終わります。
  171. 伊東正義

    伊東主査 これにて石田幸四郎君の質疑は終了いたしました。  次に、中村茂君。
  172. 中村茂

    中村(茂)分科員 まず最初に私は米の生産調整、いわゆる減反について質問いたしたいと思います。基本的にはこの減反政策について私ども反対でございますが、限られた時間でございますから、次の二点について質問申し上げたいと思います。  その一つは、自主流通米を含めて、この米は消費者は欲しい、またどんなにつくっても足りない、こういうところについては減反をする必要がないのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。その一つの例を申し上げたいと思います。  東京都内の目黒、品川、世田谷、ここを中心にして六千四百人の会員を持つあけほの生協という生協がございます。この生協は四十七年に発足したわけでございますが、発足以来全国的に無公害の食品を販売したい、または普及したい、こういうことでいろいろ活動をしております。米についても、無農薬米の米を全国的に探したわけでございますけれども、結果的に、無農薬米という、本当に農薬を全然使っていないという米は見つけることができませんでしたけれども、低農薬米、ほとんど農薬を使っていない米を探し当てました。その米は、長野県の佐久市の佐久平農協で取り扱っているしなのこがねという米でございます。この地域は御存じのように標高が非常に高いので、いもち病が発生しない、そういう風土のところでございます。そのところに、この地方ではコイを非常に飼っていまして、水田でコイの養殖をするために農薬の散布量は他のところの三分の一以下、しかも米の味がいい、こういうことで、この佐久平農協でしなのこがねを、全体として五十二年度には三万七千俵の収獲量がある。そのうちの一万五千俵を、梅原米穀問屋を通じてこのあけほの生協が手に入れた。また一万五千俵を他の山種という米穀商が契約をした。そこで問題が起きたわけでありますけれども、今回の減反で佐久平農協の該当の佐久市に割り当てられた百五十ヘクタール、ちょうど一万五千俵に該当するわけでありますけれども、そうしますと、このしなのこがねが全体として生産は四割減となる。そこで、五十二年度産米がそういう約束をしたわけでありますけれども、この減反政策が割り当てられた五十三年度からはそれだけ減収になるので、あけほの生協への出荷を大幅に減らさなければならないという佐久平農協からの通知を受けた、こういう問題があったわけであります。ですから、このようなところについてはあえて減反をする必要がないのではないか、私はこういうふうに思うわけであります。お考えをひとつ。
  173. 野崎博之

    野崎政府委員 今度の生産調整につきましては、それぞれ各地域について応分の御負担を願っているところでございまして、地域の実情はよく考えて配分をいたしたつもりでございますし、またいまのような非常に良質米のできる産地につきましては百分の二十というようなウェートをかけて減るようにいたしておりますし、県内あるいは市町村内のそれぞれの配分については知事、市町村長にお任せいたしておりますので、そういう事情を十分勘案して、市町村長の方でもあるいは県知事もそういうことを十分考慮に入れて配分をいたしておると思っておるわけでございます。
  174. 中村茂

    中村(茂)分科員 考慮していれば、百五十ヘクタールは割り当てにならなかったというふうに私は思うのです。ところが、いろいろ皆さんのところでも、私も承知していますけれども、データに基づいて、全思的にも凹凸がありますし、県でも確かに凹凸があります。ですから、そこのところでとれる米、自主流通米を含めて、確かに古米は残らない、足りないくらいだというところでも、県にすればどのくらいかは割り振らざるを得ないという実情になっているわけなのです。ですから、この人たちが長野県知事のところにも陳情したそうです。そうしたら知事は、東京の真ん中でしなのこがねなんていううまい米を一生懸命で宣伝してもらうことはありがたいけれども、さて困ったな、こう言った、それが実情だと思うのですね。それは根本的な問題ですから、私はこの問題についてこれ以上触れないわけですけれども、現実にこれが実施されて、本当に欲しい人が困るというのは、また皆さんの指導なり県の指導、農協等を通じて確保する方法はいろいろあると思うのですよね。ですから、頭の中へ入れておいて、この問題は根本的にはもう私ども反対でありますけれども出てきたそういう問題についてはそれ相応の対策をしていただきたい、このことを強く要望しておきたいというふうに思います。  それから二つ目には、ここに「水田利用再編対策の推進状況について」という五十三年一月三十一日付の長野県農政部発行のものがございます。これを見ますと、減反割り当てというものをいかに消化するかということで、各市町村が非常に苦心している姿が歴然と幾つかの項目の中に出てきております。超過負担をせざるを得ないような市町村まで出てきております。そういう中で、各市町村における問題点、要望が十二点にわたって挙がっております。これを全部御質問している時間がありませんので、私はこの中から三点だけお聞きしておきたいというふうに思うわけであります。  まずその一つは、「湿田、強粘土、豪雪地帯等立地条件の不良な水田では、有利な転作作物が少なく転作が困難である。」転作がむずかしい、非常に困難だ、こういうわけであります。  それから二点目には、「目標達成をしてなおかつ生じた限度数量超過米についても、全量政府が買上げること。」目標を達成すれば全量買い上げは当然だと私は思います。  それから三点目には、「永年性作物の補助期間制限を廃止(又は交付期間を延長)する」ようにしてもらいたい。特にここで言っている長野県のこういう地帯では桑なども非常に多いわけであります。それから、果樹なども多いわけであります。三年では、確かに果樹などはなり始めたばかりであります。桑などはやっと芽が多くなってきたばかりであります。一人前になるには、種類によって違いますけれども、どうしても八年から十年はかかります。ですから、それを三年というようなことでは全くのお義理の補助ではないか、こういうふうに私は思う。本当に皆さんが転作をさせていくということなら、この点についてどういうふうにお考えになっているか。  以上についてひとつ。
  175. 野崎博之

    野崎政府委員 まず第一点の湿田その他の地域の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、都道府県の配分に当たりましては、排水条件等転作の条件を十分考慮いたしまして、やはり排水条件といいますか自然条件といいますか、そういうものへ百分の十のウェートをつけて少なくするように配分いたしておりますし、県なり市町村の中でもそういうような配慮が十分なされていると思っておるわけでございます。  それからまた、そういう湿田等でも応分の御協力はいただかなければいかぬわけでございますが、今回百二十億円という転作促進対策事業をつくりまして、県の知恵も入れました簡易な排水事業、そういうものもできるようになっておりますし、その他の一般的な排水改良事業、それからその土地に合った栽培技術の指導、そういうことを通じまして、いろいろ転作をしていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、三番目の果樹の問題でございますが、これは永年作物で、果樹は五年、桑は三年といたしておるわけでございます。これは旧対策でも同じような期間にいたしておったわけでございますが、果樹等につきましては、いまおっしゃいましたように、生育期間が三年から七、八年といったように非常にばらばらでありますが、大体三年ないし五年で着果開始時期というものがございまして、そこである程度の収入が上がってくるわけでございます。したがいまして、そういう育成投資、そういうものに初年度に相当金がかかる。そういうことも考えまして奨励金の方は大幅にアップをいたしておるわけでございますが、期間の方はいま言いましたようなところで大体平均五年ということにいたしておるわけでございます。それから、桑も従来そういうことでやっておったわけでございますが、桑は三年で育成しまして、普通桑では反収大体六十キロぐらい上がりまして、十五年間程度更新をしない、そういう性格のものでございますので、桑については三年、従来もそういうことでやっておったわけでございます。
  176. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 お尋ねの第二点のいわゆる限度超過米の全量買い入れの問題についてお答えをしたいと思います。  豊作等の原因によりまして、転作目標面積は達成したにかかわらず、流通可能量が限度をオーバーするという場合があり得るわけでございます。ただ、食糧管理制度の現段階におきます運用といたしましては、食管制度の目的に照らしまして政府が直接買い入れまして管理する必要のあるものを、ということは需給上必要であるものを政府が買い入れをするという趣旨で買い入れ限度制というものを四十六年以来しいているわけでございます。そういう点からいたしますと、買い入れて管理する必要がない限度を超えるものについて、たとえ豊作の場合であれ買い入れるということは、食管制度の適正な運用上非常に問題があるということで買い入れをしないということでこれまできているわけでございます。四十六年当時二百三十万トンという現在以上の生産調整をやりましたとき以来一回も買っておらない。ただ、流通秩序を守りますために自主流通ルートを通じて販売をしていただくということを指導をし、政府の手を通ずることなく卸売業者に指定法人から直接売っていただく、こういうようなことをしているわけでございます。ただ、そういう自主流通ルートで販売をしていただくということは、流通秩序を守るために必要なことでございますが、その場合に、そのルートにうまく流れますために奨励措置を講じております。その際に、達成した農家と達成しなかった農家というものは、おのずから公平確保という観点から取り扱いを異にいたしまして助成措置をこれまでも実施しておりますので、今後もその方向で対処してまいりたいというふうに考えております。
  177. 中村茂

    中村(茂)分科員 食管制度の適正な運用と言われるけれども、私はそのことは適正な運用じゃないと思うのです。前からやってきたと言われるけれども、確かにやってきたことです。反対もあったことも事実です。そこで今回、減反割り当てというものについて皆さんが相当強い姿勢でやっている。それに協力して目的が達成すれば、いままでやってきたことだけれども超過については買ってもらわなければ困る、こういう意見が出てきているわけです。ですから、今度の作付転換、減反政策、これに協力したから、目標達成したから、いままでやってきたしどうだからということじゃなくて、新しい観点で検討していただかなければならぬと思う。  それと、先ほどの桑の問題でもそうです。いままでもそうだったと言うけれども、桑なんというのは三年で少しは取れるか、こういうことなんですよ。本当にいい桑ということになれば、少なくとも五年から八年たたなければだめなんです。転作したって本物にならない。それを減反のための転作なんだから、いままで三年でやってきたから、補助で出したから、いろいろやってきたから、こういうことでは私は対処し切れないと思う。この点についてはまた違う機会でも私はあくまでも主張していきたいと思いますので、よく考えていただきたいというふうに思うのです。  そこで大臣の御意見をひとつお聞きしたいと思うのですが、いまずっと出てきたようないろいろな意見または要望があるわけです。先ほど申し上げましたように、長野県の農政部だけでも十二点にわたるほどのいろいろな問題が挙がってきている。ですから、今回の生産調整というのは私は拙速過ぎたのではないか、また米は過剰だから減反だというのはきわめて短絡的なやり方ではなかったのか、こういうふうに思うのです。もう少し時間をかけて、日本の農業はどういうふうに持っていくのか、また、農家の皆さんがそれを見ても、ああなるほど、農業を経営しているんだけれども、減反してもこういう経営でこうやっていけば食べていかれるのか、農業が発展するのか、そういうふうに十分理解と納得のできるように、もう少し時間をとり、もう少し綿密な計画のもとに、農家の皆さんが理解と納得のできるような方法でやるべきではなかったか、こういうふうに私は思うのですけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  178. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに、約四十万町歩からの水田を畑にかえる作業を行うわけですから、相当末端においては議論があり、問題もあろうと存じます。そういうこともありましたので、昨年の春以来、このやり方については農業団体や県当局とも十分相談をして、この国会でも怒られながら、昨年末一応意見をまとめた案を、都道府県を通じて町村へ、そしていま農家にお示しをしているということでございまして、この問題を急にやったわけではなくて、一年間十分議論をしてきたところである。今日末端でそういう議論のありますのも、作付までの間に御納得いただく期間をとりたいというためにかなり早くからやってきたということもぜひ御理解をいただきたいと存じます。もう少し、まだ一年、二年待ったらどうかという御意見もありますが、現実問題としては五百万トンに近い過剰米が出まして、これを一年二年待つということはもう大変な過剰米になって、待つ余裕がないという実態もございます。そこで何とかわれわれとしては一つ一つ、御説明申し上げるように、改良普及員あるいは県当局等を通じて、生産調整の意義、やり方等について最善の努力をしておるところでございます。したがいまして、生産奨励金も前回よりはかなり大幅に伸ばしておりますし、あるいは転換特別対策事業百二十億という金も用意をして基盤整備、条件整備も図る、もろもろの施策を講じて、何とかこの過剰傾向に対して長期的に、しかも今回は単に一時しのぎじゃなくて自給力の低い飼料作物とか大豆、麦あるいは甘味資源作物といったようなものに転換をしていく。まさに水田利用再編対策としてどうしてもやっていかなければならない今日の日本の農政の実態だと思います。いま町村、県、普及員等が全力を傾けてやって、農家の御理解をいただけないところはいろいろと御説明申し上げておるところでございますので、ぜひともこれを、一年延ばすということでなくして、農家の皆さんあるいは関係団体の皆さんの理解と協力という基本的な考え方に立って遂行さしていただきたい、こう思う次第でございます。
  179. 中村茂

    中村(茂)分科員 次に、昨年もお願いしたわけでございますけれども、農林業の同和対策事業の一つとしてナメコの培養施設をお願いいたしました。五十二年度、結果的にはどのようになったでしょうか、実施状況を明らかにしていただきたいと思います。
  180. 大場敏彦

    ○大場政府委員 お尋ねの件は、長野県下におきます同和関係農家のナメコ栽培施設についての助成、そういうことだろうと思うわけでありますが、御説明申し上げます。  五十二年度では、栽培施設一式、これは温度調整がないわけでありますが、それから周年栽培施設一棟、ナメコの発生施設一棟、このほかに県の単独事業というものが加わりまして、合計いたしますと、事業費ベースで申し上げますと、国の関係では五千二百五十万円、県の単独事業が九百八十万円、こういった形でナメコ栽培施設の設置を進めている現況でございます。
  181. 中村茂

    中村(茂)分科員 というのは培養施設一棟、発生施設一棟じゃないかと思うのですが、五十三年度分として、センター方式というやり方で五十二年度に一棟培養施設をつくっていただきましたから、あともう二棟つくっていただいて、それをセンターにして、発生施設を八棟、いわば合計して十棟計画されていると思いますけれども、農林省としてはそれをどういうふうに受けとめていますか。
  182. 大場敏彦

    ○大場政府委員 五十三年度についての設置計画でございますが、県を初めといたしまして地元の関係農家の御要望が非常に強うございます。私どもが承っておりますのは、ナメコの栽培施設一式と、それからいま先生が御指摘になりました培養センター二棟、それから発生施設、こういったものにつきまして具体的な数字を伺っております。かなり地元の御要望が強く、熱意があるわけでございますが、総額で二億三千七百万、これは国のベースで、そのほかに県が五千百五十万というような御要望でございます。その国全体の予算もおかげさまで前年度に比べまして一四〇%というような伸びを示しておりますが、その中でこの御要望をどうやって吸収していくか、地元の御要望はできるだけ尊重いたしたいと思いますが、ほかの地区とのバランスということもまた一方において考えなければなりませんので、これから県や地元と御相談して御要望はできるだけかなえたい、こういうふうに思っております。
  183. 中村茂

    中村(茂)分科員 特に部落の人たちが不況という中で仕事がなくなってきた。それから今度、先ほどから話が出ておりました水田の減反政策によって何をしたらいいか、こういう中で求めに求めたのがこのナメコ事業、こういうことでございまして、昨年芽を出していただくということで一棟認めていただいたわけでございますけれども、どうしても地域の事情やそういう面からして、いま計画しているのを一日も早くやっていただきたい、またそういう時期に来ている、こういうふうに思いますので、地域の熱情にこたえてこの計画を一日も早く推進できるように御努力をお願いいたしたい、こういうふうに思います。  それから次に、やはり農林業の同和対策事業の対象条件、これが問題だというふうに思うのです。地区の戸数が十戸以上あるところ、その割合が同和関係の農林漁の家であること、これが条件になっていますけれども、特に御存じのように全国の部落の八〇%が農村、漁村、こういうところに存在している。しかもその多くは少数点在部落が多い。こういう中でこの条件というのは、特にこれ以下のところについてはこの同和対策事業から取り残されてしまう点が非常に多く出るのではないか、こういうふうに思いますので、その点をどういうふうに考えているか、ひとつお考えを明らかにしていただきたい。
  184. 大場敏彦

    ○大場政府委員 農林関係の同和対策事業の対象地域の拾い方でありますけれども、いま先生が御指摘になりましたように、農山漁家数が十戸、それから当該地区の同和関係農林漁家の割合が全体戸数の中で五割以上、こういったことになっているわけであります。しかし、これにつきましては、やはりもっと細分化してほしいという、いわば採択基準を緩和してほしい、こういう御要望が強いわけでありますので、いろいろ従来検討の結果、五戸以上の地区で実施できるよう改善措置を講じてきているわけであります。一つは、たとえば昭和四十八年でありますけれども、離農等の理由で戸数が十戸未満になる、こういう場合にはしょうがない。それから過疎だとか山村だとかあるいは辺地あるいは産炭地域、そういった特殊な地域でどうしても財政力指数が非常に全国平均より乏しい、こういった町村の場合には五戸でもいい、こういうふうに緩和措置は講じてきております。  なお、こういった条件にも照らしてみて、いろいろむずかしい地域があるいはあろうかと思いますが、そこは地域の実情に即して、できるだけその地域が拾えるように弾力的に運用をしていきたいと思っております。
  185. 中村茂

    中村(茂)分科員 最後でございますが、大臣に要望申し上げておきたいというふうに思いますが、御存じのように同和対策事業特別措置法は、その強化延長がいま重要な課題になっているわけであります。この法律は直接大臣の担当ではございませんけれども、農林省関係だけでも五十年度以降の残事業量は一千九百九十九億円になる。それから五十三年度の同法の期限切れ以降も、いろいろ試算してみますと六百七十四億円事業が残る。この五十年のときに残事業を出したわけでありますけれども、その後ここに組み入れられなかったものが続々として出てきている。先ほど私ナメコの問題を言ったわけですけれども、係官に言われたんですが、五十年のときの残事業の中にこれは入ってなかったんですよ、こういうふうに言われたんですが、そういうふうに時代の推移に従って残事業も多くなってきている。そういうときでございますから、この特別措置法の内容の強化と期限の延長、これはどうしても行わなければならない問題だというふうに思いますけれども、大臣に強く要望申し上げておきたいと思います。何か言うことがあったらひとつ。
  186. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり残事業もまだかなりございますので、他省庁とも十分協議をいたしまして前向きで検討したいと思います。
  187. 中村茂

    中村(茂)分科員 終わります。
  188. 伊東正義

    伊東主査 これにて中村茂君の質疑は終了しました。  次に、川崎寛治君。
  189. 川崎寛治

    川崎分科員 限られた時間で二つの問題点をお尋ねをいたします。一つは、二百海里時代におけるカツオ、マグロの問題、それからもう一つは、農業機械によります労働災害補償制度の問題であります。そこで、限られた時間ですから、私の方も簡単にまとめて質問しますが、答弁もそういうつもりでお願いしたい、こういうふうに思います。  ニュージーランドにつきましては、鈴木前農林大臣が参りまして、いろいろと困難な問題にぶつかっておる、困難な状況にあるということについては新聞の報道のとおりであろう、こう思います。私たち自身も、昨年暮れの社会主義インターの首脳会議においてニュージーランドの前総理でありますビル・ロ−リング氏といろいろ話し合いをいたしておりますし、それらの点については十分承知をしております。問題は、昨年が北洋漁業が大変問題でしたし、継続化しておりますが、日本の漁業、今度は南の方に移りましてことしはカツオ、マグロの年、こういうふうに言われておるわけですが、要するに南太平洋フォーラム諸国との関係、これにしほられてくると思います。そこで現在、カツオ、マグロ関係者というのは非常な不安を持っておる。それは国内における価格の問題もありますし、そうした国際環境の問題もあるわけです。  そこで、南太平洋フォーラムは、近くそれぞれ二百海里宣言なり実施なりに入ってくるわけですから、そういう太平洋フォーラム諸国に対する政府としての対策、それから方向、そういうものを明らかにしてほしいと思います。
  190. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり、ことしはソビエトも残っておりますし、そのほかの国もありますが、やっぱり南の三国が問題だと思います。ニュージーと豪州はことしの三月三十日で切れて四月一日から二百海里宣言ということになっております。幸い鈴木前大臣の交渉によりましてオーストラリアは交渉に入っていくということで明るい方向へ向かってきております。ニュージーはまだ納得がいただけませんで厳しい状況にありますけれども、われわれとしてはさらに最善の努力を払って交渉していくならば、必ずニュージーも理解してくれるものという確信のもとに一層の努力を払っていきたいと存じます。  また、ミクロネシアについては来年七月と承っておりますので、まだ時間もありますので、いまのうちからいろいろと手を打って打開策を講じていきたい、こう思っておるところでございます。
  191. 森整治

    ○森(整)政府委員 南太平洋のフォーラム諸国とそれぞれの交渉を行っておるわけでございますが、大臣からも御答弁がございましたように、オーストラリアについては、年央までに法案が通って施行される、その場合には優先的に扱っていただけるというつもりでおります。  また、ニュージーにつきましては、いま大臣から御答弁がございました。  PNGにつきましては、ただいま交渉に入っておりまして、あとフィジー、南サモア、トンガ、ナウル、こういう国々につきましては、あとのほかの国々との交渉の動向を見ながら対処していくということにしております。  それからギルバート諸島、これにつきましては、近く独立をするという動きがございまして、本年四月初めに実施の予定でございます。これともすでに予備交渉に入っております。  それからソロモン諸島でございますが、これにつきましては、先般向こうの首席大臣が見えて、二月下旬、先月の下旬、民間のミッションがただいま向こうに参りまして交渉をしておるということでございます。  その他の国につきましても、それぞれいろいろ対応をしてまいりたいと思っておりますが、先生御指摘のように、この地域における主な、いろいろございますが、やはりカツオ、マグロ漁業の主要な漁場でございます。先生御承知のように、ことにミナミマグロというのは非常に貴重な、高価なものでございまして、何とかこの漁場を確保してまいりたい。回遊性の魚でございますから、私どもは二百海里ということでいろいろ規制を受けることにつきましては基本的には疑問を持っておるわけでございますけれども、相手様がそうおっしゃるわけですから、ともかく漁場を確保するという観点から最大の努力をしてまいりたいと思っております。
  192. 川崎寛治

    川崎分科員 高度回遊魚ですから、国際海洋法会議との関連もあり、細かにいけば、確かにいまの二百海里の中で進められておる方向というのは必ずしも妥当ではないと思うのです。しかし、いずれにしても確保せざるを得ない、こういうことですから、太平洋フォーラム諸国との関係については十分対策を立てていただきたい。特に発展途上国であれば、それだけにこれは経済主権の問題とも絡みますし、なかなかそう理屈どおりにいかない面もあると思いますから。そうしますと、いま言われましたように、四月前後というのが非常に一つの山場という感じがするわけですが、そういうタイムテーブルで言えば、大体これら太平洋フォーラム諸国との関係についてはいつごろめどを立てられるおつもりですか。
  193. 森整治

    ○森(整)政府委員 大きな漁場といいますか、大きな交渉相手は豪州、ニュージーランド、その他各国々ございますが、遅いのでミクロネシアが来年の七月ということでございまして、大体本年中にいろいろ法制的に二百海里をしいてくるということでございまして、南太平洋フォーラム自身がそういう考え方で、本年の四月を中心に二百海里体制をお互いにしこう、こういう考え方で進めてきているわけでございますから、それに対応して対策を講じていく、その中でやはり漁業協力というものをわれわれ打ち出しておりまして、片一方で漁業協力をしながら入漁を認めてもらうという形で、大体今年中に一つの山場が来るというふうに考えております。
  194. 川崎寛治

    川崎分科員 次に、そういう地域というのは、ある意味においては漁場を狭められるというか、そういう制限を受ける。それから一方、資源が枯渇しつつあるという意見もあるのですね。資源に赤信号が来ているという意見もある。しかし一方、高度回遊魚ですから、全世界的に見ますならばまだ手を広げられる、こういうことになる。そうしますと、その漁場が非常に遠隔の地に行くという傾向は否定できない、こう思います。そうしますと、二百海里の問題並びに漁場の遠隔化、それにもってきて石油危機以降の燃油の高騰というふうな条件を考えますと、これらカツオ、マグロ漁業というのは中小漁業ですから、その中小漁業の背負っておりますリスクというものは大変大きくなっていると思うのです。そこで私は、一つ一つをとっておりますと時間がありませんから、そういうふうに中小のリスクが非常に大きくなっておる。そこで経営不安というものを非常に持っておるわけです。しかも、一方国内においては韓国産のマグロ等自主規制の数量以上に十二、三万トン入ってきておるわけですから、そういうものから来る圧迫、だから、これは輸入の体制の問題。そして三番目には、国内価格が産地安の消費価格高、こういう状況にあるわけです。だから、鹿児島のマグロ関係の漁協の役員諸君は、われわれは果たしてこれからマグロをやっておっていいのだろうかというふうな、何十年来父祖代々からやってきているのだけれども、そういう不安まで持ってきておる。それに対して、そうした中小漁業者のリスクの問題をどう軽くしていくか、あるいは保障するか、それから価格の安定というものについてまとめてお尋ねしたいと思います。
  195. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、マグロの資源の問題につきましては現在ほぼ満限状態にまで開発をされておりまして、クロマグロ、ミナミマグロにつきましては、資源的に、いろいろある程度の保護、規制を図っていくということで、国際的にもいろいろ時期的に調整をするということが行われているわけでございますが、したがいまして、全般的な考え方から申しますと、これ以上漁獲を非常に激しくするということがない限りは、資源的に見てそう大きな不安を持つ必要はないのではないだろうか。ただ、そういうふうに守っていかなければならないということは当然であると思います。資源保護を図りながら漁獲をしていくということは当然だと思いますが、そういうふうに考えております。  そこで、いま二百海里でいろいろ問題になっておるわけですが、それで一つそういう影響が出てくるのが、ことし、ことに南太平洋諸国の動きによって漁場がどうなるかということで、一つの大きな山場を迎えておることは間違いないと思います。また、先生御指摘のように、いろいろ輸入のマグロが相当入っておりまして、いま市況の問題につきましても非常にいろいろ問題にされていることは事実でございます。ただ、われわれといたしましては、そういうことにつきましてもなお今後輸入体制の調整はさらに強化をしてまいるというようなことを考えておりまして、今後やはり漁場が確かに遠隔化してくる、それから生産コストが上がっていく、それから、いまちょっと、いろいろな要素がございますが、需要が停滞をしておる、いろいろな問題があるわけでございますが、これはやはり一つ一つ解決しなければいけない問題でございます。ただ、長期的に見ますならば、経営構造の改善なり、特に消費を伸ばしていくということを積極的にやっていくというようなことを図りまして、近くわれわれもそういう消費拡大につきまして手を打ちたいと思っておりますが、民間も合わせて、政府と一体となってさらに施策を展開していくということでまいりますれば、やはりマグロの漁業の将来が決して暗いものではないというふうに私どもは考えております。ただ、やはり政府も民間も一緒になりまして、需要を伸ばしコストダウンを図っていく、そういういろいろな手だてを通じて今後の将来をわれわれ担保していきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  196. 川崎寛治

    川崎分科員 カツオの方はどうですか。カツオの方がいま価格的には非常に深刻な状況にありますけれども。
  197. 森整治

    ○森(整)政府委員 カツオの問題につきましては、最近むしろ漁獲量が非常によろしい。よろし過ぎて倉庫状況等いろいろ問題が出ておることは事実でございますが、これにつきましては、とりあえずは調整保管ということを政府として助成をしながらその措置を講じていくということを中心に、市況をともかく支えていく努力を当面は続けたいというふうに考えております。  あと、加工需要等の動きを今後注目していかなければなりませんけれども、全体の需給といいますか、需要全般、消費全般が非常に停滞をしておるわけでございますから、現在日鰹連でも、むしろなまものを消費させるという運動を展開する。われわれもこういうことにつきましては大いに応援をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  198. 川崎寛治

    川崎分科員 じゃ次に移ります。  農業労働災害補償制度の問題ですが、これは去年の当分科会でも私は取り上げてまいりました。だから、去年の質疑を前提にして進めていきたいと思います。  農林省の調査によりますと、農作業の事故死亡者が五十年度に四百十三人、こういうふうな統計になっております。そこでお尋ねをしたいのは、この四百十三人のうち労災の特別加入制度に入っていた人が何人おるのか、それで補償された人が何人おるのか。一方、昭和四十年の十一月に特別加入制度ができた。それ以後十二年たっておりますけれども伸びていない。依然として六万数千。農家人口からいたしますと一%、こういう状況です。そこで政府の施策に不信がある。そのことが農協独自の共済制度というものを進める方向にありますし、あるいはまだごくわずかでございますが、市町村でやっておる、こういうふうになります。そこで四百十三人が、いま言ったように労災の特別加入の人は何人か。それから農協独自の、この農業機械事故共済のこれに対する制度に入っておる者が何人か。それから、市町村の独自のものに入っておるのが何人かという内訳をお尋ねしたいと思います。
  199. 野崎博之

    野崎政府委員 最初のお尋ねの分につきましては、百四十七人のうち六人が労災保険に入っておるという数字になっております。それから農協共済者の中では五十二人でございます。それから市町村の方は、私どもちょっとまだ数字がわかっておりませんので、ひとつ御了解を願いたいと思います。
  200. 川崎寛治

    川崎分科員 そのように特別加入制度に、せっかくあって進めてはおる。農林省も一生懸命に進めておることは認めておりますが、実際には普及していない、こういう状況です。ですから、いまの五十年度のものもわずかに六人だ、こういうことですね。では去年、五十二年の四月、私が質問をした後適用範囲というものが広げられまして、そして受委託なり他人の圃場の事故についても適用、こういうふうに適用拡大になったわけですが、四月から十二月までのその適用の実態というものはどういうふうになっておるか伺いたいと思います。
  201. 野崎博之

    野崎政府委員 人員がどれだけになっているかということをまだ私の方も把握しておりませんし、労働省の方も、聞いてみますとまだ把握していないようでございますが、たしか、先生のおっしゃいましたように、例の受委託が認められてからは、非常に農民の間では高く評価されておるわけでありまして、要するに、いろんな面での外注といいますか、外部で発注するのが約七〇%程度もあるわけでございますので、そういう意味から言いましても、昨年度の改正というものは非常に有意義であったというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  202. 川崎寛治

    川崎分科員 有意義であったと観念的に言われても、実態がどうなっておるかということがわからなければ、じゃ次にどうしていくかという方策は立たぬわけです。だから、一生懸命宣伝はしているのだ、普及はやっているのだ、こう言うのだけれども、実態はわからぬわけでしょう。こうだからこうしなさいということにならぬわけですよ。だから十二年もたっていて依然として六万そこそこ、こういうところにあるわけですから、私は本当を言うと、そこのところはもっと詰めたいのです。しかし、時間がありませんから。  これは、いまの特別加入制度というものの実態からしますと、農林省が把握できないという弱音を吐くのはわかるのですよ。労働省の方も、そこの特別加入制度の農業機械による事故関係というものがそれだけピックアップできないということで、恐らく統計上は出てこないのだ、こういうことになると思うのですよ。だがしかし、それが私はやはり問題だと思うのです。農業機械というのは、動力耕運機にしますともう普及率八〇%、こういう状況ですから、またその他の農業機械を考えますと、もう農業機械を抜きにして日本の農業というのは考えられない。そうしますと、この農業機械からくる事故災害、それに対する補償制度というのは、農林大臣、よく聞いておいてくださいよ。これは農林省が労働省にいつまでもお預けをしてやってもらうという時代ではないと思うのです。そこで特別加入制度というのを去年質問しましたときにも、一生懸命普及しますと、こう言った。しかし実際にこの一年間にどれだけ伸びたかまだわからぬ。どのように普及しようとしておるのか、そしてその見通し、あるいは農業団体とも話し合います。こう言っております。その点はいかがですか。
  203. 野崎博之

    野崎政府委員 この災害補償制度のPRを行うため、安全月間におけるポスターでのPRあるいはスライド、映画、それから制度の案内の資料を各県に配っておりますし、それから災害補償制度の改善につきまして、これから引き続きまた労働省と連携の上、いろいろな研究を進めてまいりたいと思っておりますが、とりあえず五十三年度につきましては、従来百四十市町村でやっておりました農作業安全特別対策事業、この中には安全啓蒙の講習会とかいろいろなものも含まれておるわけでございますが、いまのこの労災の補償のPRも含まれておるわけでございまして、これを五十三年度三百二十九町村と大幅に広げて、そこで災害補償のPRをする、それからまた新規の予算といたしまして新たに八百万円計上いたしまして、これは各県に対する予算でございますが、市町村だけでなしに、県に対してもいろいろPRするための必要な予算を計上して、普及に努めているところでございます。  それから、農業団体とはこの問題につきましても従来話し合ってきたところでございますが、昭和五十一年度から全共連の農協共済の中で、農作業中傷害共済、それから特定農機具傷害共済、これが新たに開始をされたわけでございまして、その成果も最近上がってきておりますので、これらの制度の実績推移を見ながら、それぞれの制度の加入の促進を図る、そういうふうなつもりでおるわけでございます。
  204. 川崎寛治

    川崎分科員 では農林大臣にお尋ねしますが、農林省は農業の生産を高めるということについては、農林省の機構全体がそういう方向であるわけです。ところが、農民を扱う課というのがないんです。たとえば建設労働者あるいは工場の労働者、そういうものは建設省関係、通産省関係ありますね。それは労働省が雇用労働者として受けているのです。それから農林省の中で水産庁の関係は、部分的には運輸省が船員局というところで受けている。ところが、農民のこういう災害とか農民の暮らしの問題、あるいは生活改善課がありますとか、ここで福祉をやっておりますとか、こういう言い方をします。しかし農林省の中には、農業生産者としての農民を扱う課というのは、残念ながらない。この農業災害補償の関係を扱っておるのが、いま農林省の肥料機械課ですね。担当しておる人が何人おると思いますか。大臣お尋ねします。
  205. 中川一郎

    ○中川国務大臣 残念ながら人数はまだ承知しておりませんでした。
  206. 川崎寛治

    川崎分科員 局長、何人ですか。
  207. 野崎博之

    野崎政府委員 肥料機械課全体では三十人ぐらいでございますが、いわゆる労災保険だけに限りました窓口ということになれば、一人で担当いたしております。
  208. 川崎寛治

    川崎分科員 大臣、一人ですよ。建設省なり通産省なりそういうところの関係は、労働省が受けているわけです。ところが農民のこうした問題は、肥料機械課の中の機械普及と片手間に一人がやっているんです。これはやはり、今日機械が普及をされておる、あるいは施設園芸がどんどん進んでおる、ハウス病の問題なんかをどうするかということは、もう大変な問題になっているわけです。しかも農民というのは、国の経済政策の中で、産業政策の中で、景気、不景気で都会に出たり農村に帰ったりという、あふられているわけです。しかもそれでいながら、農業生産者を人間として、農労働者——労働者という言い方か悪ければ、生産者として、工場生産者なり船に乗っている者なりというものの実態からしますならば、この扱いというのは大変人間的じゃない。これは農林省の機構上の問題です。だから、この労働災害の問題を今後扱っていく上については、農林省の機構自体も検討してほしい、私はそう思います。まずその点を大臣にお尋ねします。
  209. 中川一郎

    ○中川国務大臣 生産、流通という農林省の基本的な仕事も大事でございますけれども、やはり生産者としての農家の健康あるいは傷害というようなことはきわめて重要でございますので、研究させていただきます。
  210. 川崎寛治

    川崎分科員 そこで局長、普及しますと、こう言った。それでは向こう何年間でどれくらいに伸ばそうとされるのですか。
  211. 野崎博之

    野崎政府委員 さしあたり具体的な何カ年計画、そういうような特別な数字は持っておりませんが、この災害補償制度のPRとそれから先ほど申し上げました農協共済の加入、これは農民との選択の自由ということになるわけでございますが、極力そういう面で労災の普及に努めて極力ふやしてまいりたいというふうに考えております。
  212. 川崎寛治

    川崎分科員 いままで加入が大変むずかしいということで、農協で事務組合をつくって、この特別加入制度に加入という方向を指導していたと思うのです。広島県など各町村で独自につくっておるということも、これは政府の今日の施策についての不信の一つのあらわれであろう、こう思います。そこで市町村、自治体が農協を通して事務組合をつくることをいままで指導をしていたと思いますが、それをさらに布町村を通して積極的に事務組合をつくって加入を進めるという方向について検討すべきじゃないか。そしてやはり加入をふやしていくという方向はいかがですか。
  213. 野崎博之

    野崎政府委員 先生のおっしゃる点、ごもっともな点ございますので、われわれもその方向で検討いたしてみたいと思っております。
  214. 川崎寛治

    川崎分科員 それから全国農業会議所にしましても農協中央会にいたしましても、当面は特別加入制度の加入をふやすという方向で動いておりますが、しかし先ほども指摘をしましたように、農業機械の普及ということを考えますと、自動車は強制加入、今後さらにこの農業構造の変化というふうなものの中でより農業機械のウエートというものは高まるわけですから、そういたしますと、農民を対象にした独自の労働災害補償制度というものを検討すべきだ、こう思います。去年は、当時の鈴木農林大臣は、労働省、農業団体と話し合いますと、こういうお答えをしておるわけです。そのことはいろいろな決議、農業団体の諸決議にもあらわれてきているのです。そうしますと、そういう方向を受けて、先ほどは農民を単に技術の面ではなくて、人間としてのそういう方向も検討しましょう、研究しますと、こういうことでしたから、農民独自のそういう制度というものについて鈴木前農林大臣の答弁を受けてどうするか、具体的にはこの一年間その話し合いはなされていないのです。私は調べたのですが、されていない。だから、それをどういうふうに独自の制度をつくることについて進められるか、明らかにしていただきたいと思います。
  215. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私も農村を歩きまして、農業機械による災害というものが農村に非常に大きく脅威となっているというような感じを持っております。ただ、先ほど来お話があったように、特別制度に加入しないのは、ほかの災害のように、自分が何ぼ注意していても不可抗力で来るというようなものとは若干違って、自分がちょっと注意すれば、あるいは機械がちゃんとしていればという配慮の方に頭がいっているのではないか。ですから、保険に入るよりは、むしろ安全な機械はどうしたらいいとか、あるいはこういうときには注意をすれば済むんだという感じがあって入らないのではないかなという感じを私個人でずっと回ってみて持つわけでございます。しかし、農業団体等とも私まだ積極的な御意見も聞いたことはありませんので、大事な問題でございますから、必ず農業団体とも相談をして、どういうふうに行くか結論を出しておきたいと、こう思う次第でございます。
  216. 川崎寛治

    川崎分科員 前向きに進めていただきますことを希望いたしまして、終わります。
  217. 伊東正義

    伊東主査 これにて川崎寛治君の質疑は終了いたしました。  次に、権藤恒夫君。
  218. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 初めに三点ほど、農業問題についてお伺いします。     〔主査退席、中島(源)主査代理着席〕  私の住んでおります筑後地方というのは、約百万人ぐらいおるわけですけれども、ここは基幹産業が農業で、米、麦、そして果樹、蔬菜、園芸というものがその中心になりまして都市を形成しているわけで、いわば農業抜きでは生活ができないという状況であるわけでありますけれども、そういう中で、今度の減反政策に協力するのが日本のためになるのか、反対するのが日本のためになるのか、というような議論がけんけんごうごうとなされております。  そこで、政府がそのような方針を出したのだから、とにかくできるだけのことは協力すべきであるというようなことで、いまこの転作の方法を一生懸命に、何がいいかということで模索をしておるわけであります。特定作物にしましても、あるいは一般作物にしましても、米をつくってその所得と比較をしていくわけでございますので、決めかねております。そこで、国から何をつくれ、こういうふうに指定してもらいたいと言うのです。そうしたら私たちは何でもつくりましょう、そのかわり、たとえば野菜をつくった場合、値段が下がることは、これはもう当然予想される、そこで価格保障の方法を確立してもらいたい、そういうことによって進む以外に方法はないのじゃないかという、きわめて深刻な、また当然のことであろうと思うわけです。  大臣、このことについて、転作に協力するそういう人が、米をつくっておったときと同じように所得が得られるような、そういう方法をぜひ考えでもらいたい、いかがでございましょうか。
  219. 中川一郎

    ○中川国務大臣 転作に当たりまして、御指摘のように末端では本当に大変な議論をしているのだろうと思うのでございます。  そこで、基本的にはこういう考え方になっております。  一つは、転作しても、将来に向かっても、あるいは周りの農家に対しても、本人自身価格心配することのないという仕組みのあります麦、飼料作物、大豆、甘味資源作物、こういうものはたくさんつくっていただいても、まずまず価格制度で保障されておるし、酪農品は若干生産オーバーの牛乳等がありますけれども、大豆、麦、甘味資源作物等は、長期的に見ても、まずまず過剰生産で困ったとかいうことはないし、また、申し上げたように値段で豊作貧乏になったということはない仕組みでございますから、これは思い切りつくってください、こうお願し、そしてまた足りない作物でございますから、奨励金も上乗せをして大きなものにしている。それから、転作されては困る、ミカンのように過剰生産になっているというものは転作作物として扱いません、こういう、やってください、やっては困りますという、その真ん中に、これはひとつ自主的に判断して、生産事情なり何かをよく考えながら、余りオーバーにならないようにということで、この典型的なものが野菜だろうと思うのでございます。対象とはいたしますけれども、転換するに当たっては、農協あるいは都道府県知事とも相談して、この県なら、あるいはこの町村ならこれぐらいまではいいのじゃないか、これ以上は無理だな、あるいはこれぐらいまではつくってもらいたいものだという独自なところがあるのではないか、独自なことで考えてもらう方がいいのではないか、大きく言ってこういう三つに分けて生産調整をお願いする。  その場合、転作するものは全部国が保障価格を設けるのだということになると、これはまたなかなか大変なことでございまして、その辺、そうやれば一番いいのでございましょうけれども、財政の問題もあれば、あるいは価格保障するに当たっては技術的な、たとえば野菜の価格保障とは一体どういうものを、どういう時期に、どういうふうにとやってまいりますと、最低価格のものならまだまだですが、一つの基準をつくって、幾らで買うという技術的な問題もありますし、なかなかそこには踏み切れませんけれども、現地としてはなかなか大変だということも理解できますし、市町村等を通じて、あるいは農業団体と相談しながら、いま言ったような三つの仕組みの中で、円滑に転換されるように指導もしてまいりますし、また協力も願いたい、こう思うわけでございます。
  220. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 その麦、それから大豆、ソバ、飼料ですか、やはり水田が主なものですから、大豆それからソバというのはできないのです。あと残っているのは麦だけですけれども、麦もやはり生産コストが高くて余りよくないということで、勢い野菜に集中しておるわけです。いままで、過去ずっと三十数年ごろから、転作で果樹それから蔬菜をやるだけやってきておりますので、それで手いっぱいになっているということです。これはもう議論もし尽くされていることでございますし、陳情等もあっておりますので、ひとつ不安のないように最大限にやっていただくように要望しておきます。  次に、ミカン生産者でございますけれども、これももう生産費も出ないということで、赤字なんです。それで制度融資を借りまして、たとえば一例を引きますと、福岡県に山川町というのがありますが、農家が六百戸なんです。この人たちが納めております住民税が、何と六百戸で十万五千円だというのです。それで町そのものが成り行き立たないのです。事情を聞いてみますと、制度資金を九億借りておる、それで足りないから農協の一般資金を十一億借りて、もう二十億借金がある。それで、これもぜひとも聞いてほしいということなんですけれども、償還期限、利息を三年間ぐらいたな上げしてほしい、それから利子補給をもう少しやっていただければ何とかうまくいくのではないかな、こういう柑橘業者の希望であるわけでございますが、そういうことを農林省として何かお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  221. 野崎博之

    野崎政府委員 借入金の償還条件の緩和につきましては、通達を出してどうだというような一律措置というのはなかなかむずかしいわけでございますが、いまおっしゃいましたような事情にあられる方につきましては、個々の農家の実情に応じまして、個々に融資機関と協議の上で償還条件を緩和するという措置は従来も講ぜられているところでございますし、そういう道があるわけでございます。  いまおっしゃいましたように、最近ミカンが非常に過剰になりまして、市場価格も低迷をいたしておる、そういうようなこともございますので、ひとつそういう制度を利用していただきたい。  それから、われわれの方では去る二月二十二日に、償還期間の延長等につきまして、よくそういう実態に応じて個々の農家と協議をして、そういう条件に応ずるようにということで依頼をいたしております。中金、全信連、それから全国銀行協会、地方銀行協会、相互銀行協会、それから信用金庫の協会、それに対しまして正式に公文でそういう依頼をいたしております。
  222. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 時間がありませんので、市町村からいろいろと陳情もあると思いますので、ひとつその都度適切に期待にこたえてやっていただきたい、かように強く要望しておきたいと思います。  それから、耳納山麓の国営総合灌漑排水事業、耳納パイロットでございますけれども、これも今日までもう経済事情の変化でありますとかいろいろなことで延び延びになりまして、地元入植者は非常に困っておるわけでございます。  それで、これも端的なお願いでございますけれども、償還期限が工事完了後二年据え置きの十七年ということになっておる。それで、ここはカキを植えるところでございますので、カキは一年、二年ではならないわけでございます。ですから、工事完了後五年間ぐらいは据え置いていただいて、二十年ぐらいの償還にしてくれという要望が強いわけなんですが、そういうことができましょうか。これは農家の戸数にしてみますとわずかでございますけれども、本人たちがその入植希望の土地を、町有林を払い下げて、もうすでに二百万、三百万という借金を持っているわけです。そういうことでこの開発がされましたけれども、おくれてきたので、当然事業費が上がってきて受益者負担が非常に高くなっている。それと急傾斜地でございますので、その排水事業がうまくいかないわけでございます。そこで、植えた苗木が流されたり、土が流れて瓦礫の山のようになっているわけです。ですから、皆さん方の方で、要するに土の深さが一メーターであるとかというような条件というものは全く整っていない、そういう中で一生懸命に農家の人はがんばっているわけなんですが、そういう償還期限の延長ということにつきまして、ぜひともひとつ実施してもらいたいという声が強いわけであります。いかがでございましょうか。
  223. 大場敏彦

    ○大場政府委員 国営灌漑排水事業の負担金の軽減の問題でございますが、特定地区、それぞれ個別の地区につきましては問題はあろうかと存じます。一般的に、四十年度に償還期間を従来の十年から十五年に五ヵ年延長した経緯がございますし、最近では、四十九年度に新たに二カ年据え置き期間を設けて、二年据え置き、十五年償還という形で逐次、そのたびごとに改善策を講じてきておる、こういうような状況でございます。これを一般的に、さらに据え置き期間を延長するあるいは償還期間を延長するということは、率直に申し上げまして、いろいろ他の事業とのバランスあるいは予算の制約という問題がありますから、非常に困難を伴うわけであります。ただ、この地区につきましては、やはり一般関係事業でやっておりますと、事業がとかく、これもいろいろ批判をいただいておるわけでありますけれども、長く延びてしまうということでありますので、最近御存じのとおり、特別会計事業として採択してできるだけ事業を早くする、そういうふうにすることによって受益効果をできるだけ早く発現させるということと、それから一般会計でやっておりまして、これも先生から御指摘がありましたけれども、なかなかおくれるために事業費がふえて、そのためにまた農家の負担がふえるということになりかねないわけでありますから、そういう急行列車にいま乗せたという経緯もありますが、そのほかにさらにいろいろ御事情はあろうかと思いますけれども、一般的な基準の緩和というのはいろいろ検討課題としてはさしていただきますけれども、すぐ実現できるかどうかということになりますと、これはかなりむずかしい困難性が伴う問題だというふうには現在時点では考えております。
  224. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 大臣、やはり非常にむずかしい問題だと思うのです。ですけれども、実情は実情でございますので、ひとつ十分検討していただいて、できれば実施してほしいと思うのですが、よろしくひとつお願いしておきます。  それから次に、築後川水系水資源開発基本計画、例のフルプランの問題についてお伺いしたいと思います。一月の二十日に福岡、佐賀、大分、熊本の四県にこのフルプランの計画を提示してあると思うのですが、佐賀県の方からその基本計画案そのままその計画を策定するのは当を得ていないというような意見書が出ているということでございます。その内容につきましてお伺いしたいのです。  それから、このフルプランというものが北九州の飲料水、それから工業用水、農業用水、非常に大事な問題を含んでおるわけでございますが、そのような中で、年度内にこのフルプランが決定するのかどうかということです。これは非常に心配なものですからお聞きしたいわけでございますが、いかがでございましょうか。
  225. 和気三郎

    ○和気説明員 先生御指摘の水資源開発の基本計画の件でございますが、私どもこの筑後川にかかわる水資源開発基本計画というものの改定策につきまして現在鋭意作業中のところでございまして、一月の二十日に関係県に御説明いたしました原案と申しますのは、いままで関係省庁並びに関係県と打ち合わせを進めてきたものを取りまとめたものでございまして、今後具体的に水資源開発促進法に基づいて正式に協議をする前の一つの案ということでございます。したがいまして、これからなおさらに関係省庁並びに関係県の意見を聞いた上で正式に協議をするところの案というものを策定したい、かように考えておりますので、今後さらに関係の県並びに各省とも詰めてまいりたい、こういうふうに考えております。  なお、そういうことで私どもとしてはできるだけ早くこの基本計画を策定したいと考えておりますが、これらの手続を済ました上でということになりますので、その点につきましても十分関係県並びに関係各省の意見を調整をいたしましてから進めたい、かように考えております。
  226. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 関係県と言いましても、一番問題になりますのは福岡県と佐賀県なんです。これは、流域でいろいろと仕事をしていらっしゃる方は既得権の問題ということが絡んでくるわけですね。それで、私どもこの筑後大ぜきをつくることにつきましては、もう十数年間、地方にありましても関心を持ってきたわけでございますけれども、この流域住民の意見の合意を得てないというのが一つですね。それと、もう行政の一方的なスケジュールじゃないかというような批判があるわけです。そこで国土庁といたしましては、昭和四十四年から五十年にかけましていろいろとその流域調査なんかしていらっしゃるわけですが、そういうものをもっとそのデータに基づいて積極的に納得させる、そういう努力が私は欠けているのではないかと思うのです。このフルプランの原案につきましても、これは北水協がつくったものをそのまま出していらっしゃる。そういうようなものが批判を受けているわけです。ですから、佐賀県あたりはこの原案をそのまま計画策定するのは当を得てないんだということであろうと思うわけです。  そこで数点にわたって聞きたいわけでございますが、この筑後川の瀬の下合口にそのせきをつくるわけですけれども、その下には約四万人近い漁業者が生活をしているわけですね。それで洪水時期、要するに雨期でございますけれども、相当の水が流れていく。そういうものが堆積しまして、そしてノリ、それから干潟等によりまして魚のいわゆる発生から生育、漁獲、再生産というのが着実に行われていく。ここはもう魚の種類というものはものすごく多いのです。特にムツゴロウなんというものは名物でございます。それからエツというのがおる。このエツというのは四月、五月にかけて二ヵ月ぐらいとるのですけれども、これによりまして旅館が経営されておるわけです。そして大川というところの漁業組合あたりはこのエツをとりまして、ほとんど冬場はノリ、それから夏はこのエツということで生活を立てておる。そういう人たちに対する配慮が足りないのではないか。ですから、この合口せきをつくられまして平均の流量というものがどのぐらい確保されるのかというのが、この漁民が賛成する反対するという一つの大きなかぎになっておるわけです。ノリの生産は福岡県だけで大体年間百八十億です。それからこの下流域で漁家が四万人ぐらい生活しておるわけですが、そういう人たちの生活が果たしていま出していらっしゃるその計画案で保障されるのかどうか。そういうことについてひとつお伺いしたいわけです。
  227. 和気三郎

    ○和気説明員 この基本計画の案につきましては、基本計画は特にそういうことをうたいまして、各下流の既得水利並びに水資源、水産業、特にノリ漁業等に及ぼす影響がないように十分配慮するものとするということを特に掲げて、そのような考え方で個々の事業を進めていこうという趣旨でつくっております。なお、個々の具体的な事業につきまして、これらのものが配慮され、具体的に事業が進められていくというように考えております。
  228. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 ですから、そういう抽象的なことでなくて、たとえばあなた方国土庁が福岡県と佐賀県に委託をして、九大の先生あたりが調査しましたでしょう。その調査をしまして、平均をして毎秒五十トン、六十トンの水が流れていくということがこの漁業に最適であるという、そういうデータが出ておりますでしょう。それが確保されるのかということなんです。これが確保されますと、漁業団体あたりは四十五トンから五十トン確保されれば大体影響はないだろう、何かのときはあるのですけれども、まあ、いいだろうというふうに一応了解をしているような傾向もあるわけでございますから、果たして五十トン、六十トンというものがこの冬場、夏場ともにその下流域に確保されるかということなんです。それを聞いているわけなんです。
  229. 和気三郎

    ○和気説明員 この点につきましては現在までに調査いたしました状況を踏まえまして関係府県とも十分話をして、また関係各省とも十分話をして詰めていきたいということになろうかと思いますが、ほぼ先生のおっしゃるような事柄で具体的に内容をさらに詰めてまいりたいと思っております。
  230. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 もう少し詳しくお話し申し上げておきたいと思いますので、ひとつ十分検討の資料にしてほしいと思うのです。  水を取りますね、取りますとずっと塩分が上がってくるわけです。塩分が上がってきますと魚の生息状況ががらっと変わってくるわけです。これは漁業革命と言われます。そうしますと、いまの流量でもって、あの有明海というのは特異なところでありまして、大体潮の干満が五メートルくらいあるのです。ずっと行きまして、奥で攪拌されてそれが戻ってくるのに大体一週間かかる。そういうような状況の中で沖の方で産卵をして、ずっと上がってきて、魚種が豊富にあるわけですから、貝もそうなんですが、一々ここで申し上げますと時間がありませんので申し上げられませんけれども、そういうものががらっと変わってきますと、同じ流域四万人というのは大変なことになるわけです。三全総あたりでも流域圏というものを設けまして、川の流れの周囲の人たちが豊かな生活ができるようにというのが三全総の骨にもなっているわけです。ところが地域住民から見ますと、水が大切だということはわかっている、だけれども私たちが犠牲になって生活も立たぬようになって何でしなければならぬのかという感情が先行しておるわけなんです。十分ひとつ配慮をして、そしてこの計画案が皆さん方が計画していらっしゃるとおりにいくようにひとつ積極的な努力をしてほしい、こういうふうに申し上げておきたいと思うわけであります。  それから農林省にお伺いしますけれども、筑後導水改良組合というのがございます。これは柳川地区のクリークを埋め増していこう、この合口せきで淡取水というものから水を取っていこうというわけです。これが十分に組合の了解が得られないままに計画案が出されたということで反対だと言っておるらしい。訴訟してでもというような意気込みでいらっしゃるわけでございます。こういう改良組合に対しましてどういう形で説得をしていらっしゃるのか、どういうことをすれば了解されるのか、そのことについてお聞きしたいと思います。
  231. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いま問題になっております筑後大ぜきの建設着工に当たりまして地元の土地改良組合から、筑後大ぜきが建設されますと下流における既得水利が不安定になる侵害されるおそれが出てくるのじゃないか、こういう形で訴訟も辞さないという動きがあるように聞いております。私どもやはりこの筑後川水系の基本問題を処理するに当たって重要な問題の一つに、実は漁業者の問題それから既得水利権者の保護の問題、これがありますから、そこは十分考えていきたいと思いますが、一方、私ども現在仕事をしております筑後川の下流地区の国営灌排事業、こういうものがありますから、これはそもそも、先生御存じのとおり、下流地区の水利の俗称淡取水の安定を図るというのを主な目的としている事業でございますが、それをできるだけ早く進める、筑後大ぜきと並行してそれを進めるということがやはり基本的には関係の農民の方々の御了解を得る一番の近道だと思っております。
  232. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 それを進めていくためにはやはり農林省と通産省、厚生省、厚生省が飲料水をどれだけ取るか、通産省が工業用水をどれだけ取るかということが決まらなければ決まらないわけなんです。それが決まらないからこの計画というものが宙に浮いてしまっているわけですから、その積み上げは一体大方合意できたのですか。
  233. 大場敏彦

    ○大場政府委員 これは上流地域のダムとか、そういった問題とも実は絡む問題でございますし、私ども、これは県もそうでございますから、関係県、ほかの省と早急にそういった問題を詰めて、それから私がいま申し上げました国営灌排事業の早期完成というものはどういう方式がいいかということもありますので、ついこの間も県の方々と御相談している最中でございますが、できるだけ早く進めていきたいと思います。
  234. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 それからもう二点でございますけれども、九十三万トンですか瀬の下に水をためる、そうしますと水位が相当上がってくるわけです。御承知かどうか知りませんが、あのあたりはたんぼの方が水位よりも低いのです。それでこれが九十三万トンためますと地下水の変動があるだろうということが懸念されておるわけです。ここはずっと畑でございまして、米じゃありません。これ以上湿度がふえますと畑がつくれないわけです。そういうことについての地質調査はしてあるかということが一点。  それから、日本でただ一カ所日本住血吸虫が生息しているわけです。これはミヤイリガイが媒体でございますから、汚染された貝はないということなんです。けれども、この住血吸虫は生息しているのです。これは湿度がずっと上がっていきますと恐らくミヤイリガイが汚染されるだろう。汚染されてまいりますと、飲料水、農業用水、工業用水、これがずっと攪拌されていくおそれがある。それで久留米大学あたりにいたしましても、ぜひこういう疫学研究をやりたい、だから役所の方からそういうような依頼があればやっていきたいという考えを持っておるわけです。そういうことについての調査がどこまで進んでいるかということ。  それから、筑後川の上流はずっと温泉群です。それとこの上流に豚、牛を五万五千頭ぐらい飼っている、調査してみると。それから生活排水でありますとか屎尿処理場をつくろうとしているわけです。そうしますと、これも九大の環境衛生あたりの調査によりますと、大体あと七年から十年ぐらいするともう飲料水に使えない、農業用水にも使えないだろうというふうに言われておるわけです。汚染されるから。  そういうような環境問題、特に汚染対策、あるいはそういう周囲の地下水の問題、あるいはさっき申し上げましたような住血吸虫等の問題についてどういうふうに調査されておるか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  235. 堀和夫

    ○堀説明員 私ども筑後大ぜきの建設の主務省でございますが、まず内水対策、それからミヤイリガイ対策につきましては、筑後大ぜきにつきましては、これは洪水の疎通を図り、それから既得水利の取水の安定を図る、あわせて九十数万トンの貯留を行うわけであります。これに対する水位上昇対策といたしましては、まず筑後川高水敷の護岸 これを十分やる、これによって堤内の浸透水を防ぐ、それから護岸対策があわせてミヤイリガイの撲滅に非常に有効でございますので、これの推進を図ってまいるということでございます。  それから水質問題でございますが、私ども、完成後も、河川管理者として水質については観測等十分配慮してまいりたいと思っております。
  236. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 大臣に最後にお尋ねしたいのですが、以上のようなことでフルプランというものが九州にとりまして非常に大きな問題になっているわけです。そこで時間がございませんので、いろいろと聞きたいこともあるのですがそれもできませんので、ひとつ十分にそういうことを御承知いただいて、そして地域住民が取水というものによって被害を受けることのないような、そういう保全はやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、その決意などをひとつ……。
  237. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私も九州大学を出ておりますので、あの辺の実情はよく知っております。愛情を持って処置するようにいたしたいと思います。
  238. 権藤恒夫

    ○権藤分科員 以上で終わります。     〔中島(源)主査代理退席、主査着席〕
  239. 伊東正義

  240. 小川仁一

    小川(仁)分科員 農林省の方にお尋ねをいたします。  私は文教常任委員をやっております関係で、子供そして教育、こういう立場から農業問題について御質問申し上げたいと思います。  いま地域の農業をやっておられるお母さん、お父さんと学校の教師たちが一緒になって郷土教育といいますか、郷土に生きる教育、こういうふうな立場で農業後継者づくり、こういう課題に取り組んでおります。これは特に東北その他食糧自給県においては、小さいときから学校教育だけではなくて、生活環境から、あるいは地域の状態から含めて非常に大きな課題だと考えておりますが、実ばそうは言いましても、父兄の中には現実の課題として二つの考え方があるわけです。  一つの考え方は、いま言った形で郷土の中で生きていく農民の子供を育てるということ、農業後継者を育てていこうという非常にまじめに取り組んでいる農民の方々と、もう一つは、まだ高度成長の夢を追っているのかどうか、子供は都会へ出て、就職をさした方がいい、そういう教育をしてくれという父兄の方々、特に今回の生産調整あるいはここ数年の減反政策の中で農業に希望を抱かなくなった父兄の方々、この意見が対立をしているわけでございます。したがって、農業後継者というものを小、中、高を通しながらどう育てていくかという一つの方向性みたいなものが明確に打ち出されていないのです。当然のこととして農業の生産調整とかその他の課題もあると思いますけれども、日本の農政を大きく発展させる上において後継者づくりということは大事な課題だ、そう思いますので、こういうことについての特段の農林省のお考えその他がございましたら、まず最初に伺っておきたいと思います。
  241. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農業後継者の問題は相当前から大きな課題となっております。基本は、やはり農村の生活がよくなるということが大切なことであって、そのために、大変厳しく御批判もありますけれども、農業基盤の整備とか、あるいは資金の問題とか流通対策、もろもろの政策をやっておるのもまさにそのためでございます。しかし、それだけではなくて、後継者対策、資金の問題だとか教育の問題だとか、いろいろ農林省としてもやっておることもございます。ただ基本は、私はこれは押しつけるわけでもないのでございますが、農業というものが単に経済的な価値だけであろうか、やはり生物、動物やそういった育つものと一緒に生きる生きがい、あるいはそのことによって社会に貢献する生きがいというようなものもそろそろ取り入れてきていい時代ではないだろうか。かつて高度経済成長の時代はすべて価値観が金であったり物であったり出世であったりする時代があった。もうそろそろ、安定成長の時代になれば、そういった生きがいというものが単なる金だけではない、経済だけではないという方向も、これは国が押しつけたり農林省が指導したりするものでもなくして、自然に生まれてきてしかるべきものではないかな、こういう感じを持っておるわけでございますが、これは人間それぞれの価値観でございますから、強制するわけにはまいりません。農林省といたしましては、三ちゃん農業に見られるように兼業が進んで農村には担い手がないということは非常に残念なことでございますので、中核的なしっかりした若い担い手が定着するように、生産面あるいは担い手対策等も講じてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  242. 小川仁一

    小川(仁)分科員 ただいまの大臣の、農業という問題に対する価値観、これを高めていく教育というものが、私は後継者教育の基本だと、同じように考えます。しかし、現在の学校教育の中における農業高校といったようなものは、実は圧倒的部分が就職という形で、農業後継者というかっこうでは存在してない。こういうことを考えてみますと、いろいろ農業生産形式の変わり等があって、子供たちが私たちの若いときと違って日常的に農業生産に従事しない。機械化されてまいりますから、当然のこととして、おまえは学校へ行っていろ、うちでかあちゃんが田植えをするんだ、こういうかっこうになっているわけであります。ですから、日常的に子供たちが農業の生産に何らかの形で携わっていくという教育は、学校教育という面もありますけれども、全体的な施設、設備を含めた状態の中でやられていかなければならない。今回の生産調整の中で、余った水田を中学校等が学校田として借りて、そして子供たちに、うちでは農業生産にタッチしていないけれども、学校で集団的に農業生産に携わらせようではないかという考え方が幾つか生まれてきたわけであります。こういう面についてやろうとしても、実はいろいろ機械の不足あるいは設備の不足その他があるわけなんで、こういう面に関して農林省は何か機械その他についての御配慮がいただける用意があるものでしょうか。
  243. 野崎博之

    野崎政府委員 いま学校農園の問題が出たわけでございますが、学校農園に対して生産調整は関係がないわけでございますけれども、特別に学校農園に対する機械の補助とかなんとかという制度は、いまのところはないわけでございます。ただ、生産調整をかけないで、実際に稲作の技術を習得するとか、いま先生がおっしゃいましたように、稲作になれるとか、そういうようなことはやっていただくつもりでございますので、米の生産調整の対象にいたしておらないわけでございます。
  244. 小川仁一

    小川(仁)分科員 ここ二、三年の農業後継者の数というものはおわかりでございますか。その傾向をひとつお知らせいただきたい。
  245. 野崎博之

    野崎政府委員 新規学卒者について見ますと、最近三年を見ますと、卒業者は五十年が九十一万八千人のうち約一万人、それから五十一年が八十五万人中約一万人、五十二年が八十四万八千人のうち約一万二千人、最近若干ふえておる傾向でございます。
  246. 小川仁一

    小川(仁)分科員 そういう傾向が実はさっき言った郷土教育、あるいは農民との話し合いの中で、生産調整特にペナルティー問題が非常に子供たちに影響が出てきているわけであります。いままでの減反ですと、将来また復活するかもしれないというふうなことを含めて、子供たちが農業あるいは地域の生産という問題を、主として中学校ですけれども、見てきたのが、ペナルティーの問題が出てから非常に希望を失った感じがするわけなんです。ですから、学校でどうにかして地域に生きる子供たちをというので、学校農園、学校田といったようなものをつくって働かせても、やはり農業は見込みがないのだといったような印象に流れていく傾向がある。こういう傾向がありますだけに、私は子供の将来性、特に農業生産に従事しようとする子供の将来への希望といったものから、ペナルティーという問題は何とかお考え直しをいただけないものだろうか。これは非常にむずかしい問題だと私自身も思いますよ。私自身も思いますけれども、しかしことしやれなければ、来年は拡大をするといった形での将来の希望がなくなるという印象が非常に強いのです。これは子供たちに印象づけますというと、ますます農村離れが起きてくる。  違った例で言いますと、今度岩手大学では新しく農業の講座を設けました。それはいままで工業高専、高専がありますね、あそこへ入っている農村の子供たちが、先ほどの農業後継者の数の中にもあると思いますけれども、逆に農業土木というかっこうで農業へuターンしてくる、そういう傾向が出てきているので、新しい科を設けたわけであります。そういう人たちもまた今回の措置で、せっかく科を設けたのに、高専から農学部へ来るということに非常に渋り始めた。  こういう点がありますので、ひとつ大臣、子供たちの将来の希望、特に農村の子供たちの将来の希望に対して、何かここで明るいお話をいただけないものでしょうか。
  247. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに、生産調整というのは農家自体も大変ですし、特にまたいま御指摘のように、子供さんが、将来これはだめだなというようなマイナスですね、したがって、後継者がいなくなるという本当に大きな転換期ですから、多くの課題を持っているだろうと思うのです。ですから、生産調整をやらなくて済む農業というものを考えたいというので、私は、怒られながらも、気違いのように、生産や消費拡大ということを事あるごとにお願いしておるわけなんです。消費さえ拡大されれば、これは何も政府が無理して生産調整を農家にお願いしたり御苦労願わなくて済むのでございますけれども、現在の消費の動向で参りますと、単年百七十万トン、そしてまた現在五百万トン近く余っておりますから、生産調整を行わなかった場合の過剰米が出たときに、一体これをどう処理するのか。これはまた輸出の問題を言う人もあれば、いろいろおっしゃる人もあるのでございますけれども、単年度、二、三年の経済協力ならいいけれども、毎年毎年何十万トンとか百万トンとかというものがそういった仕組みであるということであるならば、これは大変なことになるのじゃないか。そうすれば、まあ大変問題はあっても、百七十万トンの生産調整を行っていただいて、とりあえずの需給のバランスをとっていくと、過剰米が生じない。こういうふうにしませんとどうにもならぬと私は思うのであります。  そこで、百七十万トンを確実なものにするためには、まじめにやった人のところへ前の年やらなかった人の分が乗っかってくる、そうなれば今度は、おれはもうそんなものには協力しないということになってきて、生産調整の仕組みそのものができなくなってくる。やらなくて済むなら私もやりませんということで、全員がやらないことになってしまうかもしれない。それとまた、前の経験におきましても、前も二百三十万トンの生産調整をやったことがございますが、農家の方からも、これを実効あらしめるためには、やはり割り当てされた人はそれぞれが責任を持ってもらわなければわれわれは協力できない、まじめにやろうとする人もこの仕組みには参加できないぞという意見もかなり有力にあるわけでございますので、農業後継者その他大変な問題だと思いますが、ペナルティーと言われておる、当年度達成できなかった目標面積を翌年負担していただくという公平確保の最小限度の措置をやめるわけには——子供さんのためにと言われると、私もちょっとぐっと来るところがあるのでございますけれども、未来に希望をつなぐ後継者に対しては、新しい転換した農業がまた魅力あるものであるように、土地基盤の整備であるとか、あるいは農業技術の指導だとかいうようなことで対処して、米は米、米以外の農業にも魅力あるものをということで努力してみたい、こういう感じでございます。
  248. 小川仁一

    小川(仁)分科員 専門的なお話は農林水産委員会等でおやりになっているとは思うのですけれども、私はいまの子供たちの非行化とか、いろいろな課題を考えてまいりますと、一番精神的動揺の激しい中学校、高等学校の生徒の中で、特に将来への希望というふうなものが夢として存在しなければならぬ。もうこれは農業後継者じゃなくて、お互い日本人の後継者をつくる上からも大事な問題だ。特に、私は一般に就職する人たちを批判するつもりはありませんが、あるときは工場にも行く、あるときは公共事業にも行く、あるときはいろいろな職種に自分の希望で動くことはできますけれども、自分の家に一定の生産力のある田畑がありますと、やはりそこで生きていこうという希望を持つのが農村の子供たちの当然の状態だと思います。それに来年も再来年も、さらにペナルティーが重なってというかっこうで子供たちが希望を失いますと、やはりこれは本当に日本農業の将来的根幹にかかわるという感じがするわけです。ですから、いろいろ農業行政上の問題ということよりも、率直に将来という問題を考えていただいて、ここは大臣、いまのいろいろ苦しい立場をわからないわけではないのですけれども、子供たちに、将来農業をやっていっても大丈夫、おまえたちは生活ができるぞ、同時にまた農業がこんなに大事なものなんだと、さっきおっしゃったいわゆる価値観ですね、物をつくり上げる、特に食糧をつくり上げるという価値観、こういったようなものをやはりきちんとお出しになることが、いまの時期だけに非常に大事なような感じがしてならないのであります。そういう立場から、ひとつ勇断といいますか、明快な立場を今後おとりいただきたい。いますぐでなくても、これは非常に大事な問題としてお考え願いたい、こういうお願いを申し上げておきます。  続きまして、時間がありませんから、やはり子供の課題に入りますけれども、私は岩手の出身ですが、岩手は、ことし冷害が厳しゅうございました。これは東北、北海道、全部そうです。その中で特に教育現場で苦労したのは、母子家庭の子供に対する対処だったと思います。母子家庭の子供たちは、実は冷害で米がとれなかった。しかも季節労働者とかあるいは日雇いとかというかっこうで一家の柱になる人が出ていくということもできないという状態が存在して、冷害に対する特別措置等で学校給食等はどうにかしのぎましたけれども、日常的家庭生活等では大変困っております。  で、まず第一にお願いしたいことは、そういう他に労働力のない母子家庭に対して、ぜひ生産調整、減反を割り当てないでほしいということを全国的に御指導できないでしょうか。これは特定部分でございまして、あるいはむずかしいかもしれませんけれども、ここには他に労働力がないわけですから、お母さんが働く、子供は学校へ行く、こういう状態で、しかも、そういう家庭というものはそんなに大きな反別をやっているわけではございません。この前聞きましたら、四反歩に三畝当たったといううちもありました。岩手では、これはなるべく割り当てないようにということで指導しているという話も聞きました。しかし、農林省として全国的にこの部分の特例を見てやらないと大変なことになりそうな気がする。子供がろくな飯も食えない、それしか収入がないために学校生活も十分に送れない、こういったような課題になりそうなんで、この点についてのお考えをお伺いしたい。
  249. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど来からいろいろお話出ましたように、昨年の倍という非常に大きい面積でございますので、それぞれ地域の実情に合いまして応分の御負担をいただくということにいたしておるわけでございます。都道府県を通じまして末端の市町村あるいは末端の農業者の配分につきましては、やはり一番熟知している市町村長にお任せをする。市町村長は、いま先生の御指摘の点も十分配慮をしてやっているとわれわれは思っているわけでございます。一般的に通達でどうというお話ではなくて、やはり市町村長にお任せをいたしておりますので、市町村長はそういうところ、いま御指摘の点十分配慮をしてやっていっているものとわれわれは考えておるわけでございます。
  250. 小川仁一

    小川(仁)分科員 そうしますと、いまお話を伺いますと、そういう人たちには割り当てないでやっているものと思われる、思っているというお話ですね、いまの最後の御答弁。
  251. 野崎博之

    野崎政府委員 やはり集落の実情あるいは個々の家庭の実情というのは市町村長の方で一番よく認識をしているはずでございますので、集落懇談会やそういうものを通じていまやっている最中でございますので、恐らくそういう中でいろんな方々にお集まりいただいて、そこでいろんなお話が出ると思います。それを聞きながら市町村長はいろいろ割り当てると思いますので、当然そういうお話も出ると思いますし、そういう点はひとつ市町村長の御配慮で末端の実情を受けてやっていっていただきたい、そういうふうに思っております。
  252. 小川仁一

    小川(仁)分科員 お話を聞いておりますと、母子家庭に割り当てないという配慮をしているものと思うという期待をお持ちのような御答弁でございましたが、それでは余りにも実情を知らな過ぎます。一つの部落の中におりますと、母子家庭だからというので私のところは割り当てないでくださいということを、特に母子家庭であるがゆえに日常的にはいろいろ部落の世話になっているだけにそう簡単に言えないのです。そうしてまた、それをがんばりますと今度は逆に村八分になるという可能性さえあるのです。だから、もしあなたが御期待をなさっているような心理状態がございますなら、母子家庭だけは何とかこの生産調整から外すようにという行政的指導というものができないのでしょうか。
  253. 野崎博之

    野崎政府委員 末端に行けばそういういまお話のような例もございます。そのほかいろいろなたくさんの例があると思います。だから、そういう細かい一々の実情に応じては、なかなかどういう場合こういう場合というのは、一律に国の方でどうするというような性格のものではなくて、一番末端の部落の懇談会等を通じましたそういう意見を吸収して市町村長がやられるので、やはり私どもの方といたしましては、市町村長にお任せをいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  254. 小川仁一

    小川(仁)分科員 これはお役所のやることですから、市町村長に責任を転嫁すればいいと思いますけれども、これは一昨年の冷害のときから考えてみましても、学校の給食はともかくとして、日常的な家庭の経済に母子家庭などでは非常にきつく影響が出てくるということは、これは想像にかたくないと思うのです。しかも、さっき言ったように、絶えず部落から世話になっておりますだけに強いことも言えない。こういう窮地にあっていま一番困っているのが母子家庭だと思うのです。その母子家庭の中には父親が戦死したためにというふうな状態のものもありますし、さまざまあるわけです。私は、もし政治に温情があるとすれば、少なくとも市町村長がわかっているだろうから配慮するだろうという投げ方ではなしに、この部分だけは国の政治の中で考えるという部分があってもいいような気がするのです。そういう部分の中に、他に労働力のない母子家庭をお入れになることが、逆に言うと政策の中で非常に大事なことだ、そう考えて、これはお役人の立場ではなくて、本当に農民を知っておられる政治家の立場としての大臣にひとつお考えを願えないかということで、もう一度意見をお伺いしたいと思います。
  255. 中川一郎

    ○中川国務大臣 身につまされる話でございまして、現場では確かに母子家庭でわれわれの想像もつかないような苦労をしながら、しかも四反歩のうち三畝を生産調整ということで、その生産に命をかけている母子家庭にとっては大変なことだろうと思います。そしてまた母子家庭であるがゆえに、常日ごろお世話になっておるのでそのことも声を出せないというのはまさに現実あり得る話であり、何とかしたいなという気持ちでございます。  ただ、いま局長が答弁申し上げましたように、仕組みとしては町村長に一切任せるという仕組みになっております。その中の一角に、仮に母子家庭だけはという政治判断のもとに指示をするということになりますと、私は政治をやって日本で一番むずかしいのは線引きでございます。その次は、けがをしてこういうわけだから、けがした人だけは何とかやめてくれないかということになったり、あるいは金持ちには倍やったらどうだ、あそこは二倍の生活しているのだから二倍やったらどうかという、これまた一つ突破口を開きますとそういう非常に複雑な問題に発展しかねないのではないか。私どもも政治家をやってみて、きちっとすればいいなと思っても、一角が崩れると、だっと入ってくるということで明確な線引きができなくなるところにむずかしさがあるのかな、こう思います。今度の問題も、これだけで済むものならばすぐにでもそういう指示をしたいという気持ちでいっぱいでございますけれども、それが他にどういう影響を与えていくかということも、また全体を通して考えてまいらなければならない責任ある者としては、いますぐここでわかりましたと言いたい気持ちではあるけれども、お約束ができない悲しさだけはひとつ御理解いただきたいと存じます。
  256. 小川仁一

    小川(仁)分科員 福祉問題というのが政治の基本にあるようでございます。それはやはり、この部分だけは、不幸な家庭だけは、こういう問題で老人の問題もあれば母子家庭の問題もあるわけです。他に全然稼働力を持たない母子家庭、これはおわかりだと思います。だとすれば、これはやはり一般的な行政ではなくて政治的な課題として、ほんの少数部分ですから大臣、文書に書かなくても言葉の端々で指導されるということもあり得るかと思うのですよ、一定の影響力あるような言い方でですよ。こういう点も含めてぜひ再考慮を願いたい、そうすることがいまの政治の中で非常に大事なことである、こう私は考えますので、これはひとつ大臣のこれからの政治的な言動に十分御期待を申し上げます。  同時に後継者問題につきましては、再度また担当課と私自身話し合いますが、この問題も非常に大きな問題だけに、私はいずれの機会かにまたお話し合いをさせていただきます。  では時間が参りましたので、大臣ひとつよろしく政治的な御判断をお願いして、終わらせていただきます。
  257. 伊東正義

    伊東主査 これにて小川仁一君の質疑は終了いたしました。  次いで、渡部行雄君。
  258. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 私は農林大臣にお伺いいたしますが、現在日本農業は、国の基本政策の失敗から、明日への夢と希望を農民に持たせることができず、農民の農業に対する情熱は氷のように冷え切っているのであります。とりわけ米作農民は不法な生産調整を強いられ、不安と動揺はその極に達していると言っても過言ではありません。また一方、山村においてはさらに深刻な事態に見舞われ、毎年、住みなれたふるさとを捨てて、ほかの職場を求めて都会に出ていく若者が後を絶たないのであります。このような山村でも、戦前は製炭業や伐採など仕事は幾らでもあって、比較的安定した平和な生活を続けることができたのであります。ところが、戦後、工業の著しい発展とエネルギー革命等により、生活様式が一変して、山村生活者の生命線とも頼む炭焼きや伐採など、そのほとんどを彼らの手から奪い去ってしまったのであります。しかも木材は、外材の輸入に押されて採算がとれず、いまや山村生活者は何をもっておのれが生活維持しようかと途方に暮れておるのでございます。このように、文明の進歩が逆に山間僻地から光明を奪い去るということは断じて許すことができないと思います。これは文明の進歩がもたらした避けがたい結果ではなく、文明の変化に対応できないでいる為政者の思考能力の欠如であると指摘せざるを得ないのであります。  そこで私は、この山村生活者に光を与え、将来に大きな夢をふくらませて、先祖伝来の麗しいふるさとに定住させるためにはどうすればよいかという問題について提案を申し上げ、大臣の御理解と、今後の積極的施策をお願いするものであります。  すなわち、今日の林野行政は、明治の初めから、伐採と植林の繰り返しに、治山事業、林道開設などを主たる業務内容として現在に至っているのであります。しかも、何十年何百年とたったトチノキやボダイジュあるいは山桜、キハダその他、多くの重要なみつ源である花木を片っ端から切り倒し、その跡には、ほとんど杉やヒノキ、松、カラマツなどの針葉樹を植林してきたのであります。これがため、山野を彩る大自然の美しさは次第に失われ、花に群がる昆虫は非常に少なくなり、したがって鳥獣の住みにくい山野に変貌しておるのであります。  そこで私は、このような現状を考えるとき、今日までの林野行政を見直して、いままでのようなやり方ではなしに、もっと夢多い未来を開いていく、そういう行政のあり方にすべきだろうと思うのであります。それには、みつ林の保護、いわゆるハチみつをとるその元手になるみつ源樹の保護と育成、あるいはミツバチを国有林の中に導入して、山村農民に養蜂を奨励する、そうしてこの山村農民がみずからのふるさとを拠点として生活ができるようにする、そうして過疎対策の一助とするというやり方が考えられていいのではないか。また、このみつ源樹は広葉樹でございまして、大きくなればなるほどみつを出すわけでございます。したがって、これは伐採の必要はありません。そうすれば何十年何百年という将来に対して非常に大きく夢はふくらんでいくわけであります。しかも、これらの森林がどんどんと成長してまいりますと、それは水資源の涵養にいたしましても、あるいはまた災害防除にいたしましても、非常に重要な役割りを果たすと私は思います。しかもそればかりではありません。そういう一つのみつ源地帯に養蜂者を入れてまいる際に、入山料というものを一定の割合で取っていけば、これは林野庁の財政にも非常に大きなプラスを与えると思います。  こういう一つのやり方を今後考えて、林野行政とそれから養蜂の普及、しかもそれは森林とともに生活をしておる山村農民にその技術を奨励して過疎対策を図っていく、あるいはこういうものを中心にさらに食品加工工業を誘致するなり、いろいろそこから開かれるものがあろうと思うわけであります。そういうことをひとつこの際十分お考えくださいまして、積極的な大臣考え方をお願いするものであります。まずその点が第一点でございます。
  259. 中川一郎

    ○中川国務大臣 非常に高邁な御意見を承りまして、感銘深く聞いたところでございます。  確かに日本は少しぎすぎすしておりまして、もうちょっと花木というものを大事にして、私も、道路なんかでも思うのですが、山だけではなくて、道端などにも花木を植えたりして美観をよくし、さらにそれが養蜂農家にも非常に役立つ、こういうようなことを工夫できないかなと、常々北海道あたりでも私は町村長に、環境をよくするために、何でも国ということではなく、月に一回ぐらいの道普請で道路端に花畑をつくるぐらいの余裕があってもいいのではないか、それに国も助成してもいいし、地方公共団体が率先するというような考え方でやったらどうかなんということも指摘してきた私といたしましては、非常に感銘深く承ったところでございますので、今後林野行政なり、特に国有林等についてはそういったことに配慮してまいりたいという感を深くしておるところでございます。
  260. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生からいろいろ細かい御指摘もございました。それから大臣からいま御説明申し上げましたように、私どもも、かって日本の、国有林の場合でございますけれども、やはり木材の需要とすれば、どうしても杉、ヒノキを中心にする住宅の要望が非常に強うございます。それに引きかえて、いま日本でも御存じのように国産の需要がわずか三五%ということでございますので、やはり端的に需要の多い杉、ヒノキ、カラマツ等々の建築用材を中心にした造林地を何とか仕立てなければいけない、こういう一つの大きな宿命がございます。  あわせまして、ただいま先生が御指摘ございましたように、そればかりではなくて、広葉樹を中心にいたします自然環境保全だとかあるいは国土保全だとか、そういう問題をわれわれも十分検討いたしまして、特に最近国有林におきましては、大面積の皆伐ではなくて、面積を小さくして伐採する、そうしてそれを飛び飛びに伐採するというような形の中で保護樹帯等々を設け、広葉樹を積極的に残すという施策を考えております。そういう観点から、私どもも、広葉樹がいろいろな意味国民に利用され、また先生御指摘の養蜂にも利用されておるわけでございますので、そういう面につきましては伐採の場合にもそういう木があれば残すとかいろいろな対応をしてまいっておりますし、今後もそういう姿勢で国有林の経営をやってまいりたいというふうに考えております。
  261. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 いま大臣はそういう感を深くしたという御答弁ですが、感を深くしたのでなくて、それならこういうふうに積極的に取り組む、こういう答弁がなければ、ただ感銘だけされたのでは話にならぬので、その辺ひとつよろしくお願いいたします。  また林野庁長官は、建築材等に必要なために針葉樹を主体とせざるを得ないというような趣旨の御答弁がありましたが、しかしいま建築用法も変ってまいりまして、ほとんど燃えないうちというのがこれからの理想的なうちになってきているわけです。しかも日本の森林だけを対象として建築材が考えられるならいざ知らず、外材がどんどん入っている中で、いま針葉樹を切って黒字にならないでしょう。実際に赤字と私は聞いているのですよ。だから林野庁が一生懸命三十年も五十年も育ててきた杉や松は、切って赤字。特に大臣のいる北海道なんかではそれこそ何百年もたったようなボダイジュの大森林を全部切り払って、その後にカラマツを植えてきているのですね。そしていまカラマツを切れば皆赤字というのが実態ですよ。そして日本の大切なみつ源をなくしてきて、いまこの時代になって、建設資材が大事だから針葉樹を主体とするのはやむを得ないという答弁は私は聞かれないのです。しかも、桜にしてもトチノキにしても、その材料というのはいまりっぱな家具材として大変に広く用いられている。だから切ってもよし、切らなくてもよしという、こんないい木はないと思うのですよ。だから、こういうものに全部そうしろとは私は言いません。たとえばここに植林の計画が出ておりますが、五十一年度では約四万五千ヘクタールですね。年次ごとに四万から五万ヘクタールの植林をしていく際に、少なくともそのうちの一万ヘクタールぐらい、そのうちトチノキ幾ら、ボダイジュが幾らあるいはアカシアが幾ら、これはちょうどその花季が違うのです。いわゆる花の咲く季節が非常に都合よくずれて咲く木なんです。そこで、こういうものをひとつ計画的に植林していく方法は考えていいじゃないか、こういうことなんですがいかがですか。
  262. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど申し上げましたように、いま国有林を中心にいたしまして造林につきましては主として針葉樹を中心にやっておりますが、林野庁の国有林の造林計画につきましても、すべてを針葉樹の造林地にするということではなくて、御存じのとおり国有林約七百五十万ヘクタールございますけれども、そのうちのおよそ三百万ヘクタール弱をいま申し上げましたような形で今後経営していこう、残りの約四百万ヘクタール余のものにつきましては、先生御指摘のようなそういう広葉樹を中心の天然林という形で私どもも対応していきたいというふうに考えておりますし、また伐採に当たりましては、先ほど申し上げましたような保護樹帯あるいは伐採しない地点、飛び飛びの地点というような観点から広葉樹を残していく。さらに伐採する個所におきましてもトチ、シナ、その他、みつ源として必要な樹木がありましたら、それは伐採から外して残していこうという姿勢で、特に養蜂等について必要な広葉樹については残していく姿勢で現在対応しようということで指導もいたしておりますし、そういう形で今後とも養蜂業者の方々に御迷惑のかからないようなあり方、そしてまたそういう者が積極的に行けるような方途を見出していこうという姿勢で対応しておりますし、今後もそういうことで考えてまいりたいというふうに思っております。
  263. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私も先ほど申し上げたつもりでございますが、一般民有林はもとより、国有林についてもそういう配慮をしていきたいな、こういう感じでいま長官の申し上げたようなことを積極的に進めてまいりたい、こう思うわけでございます。
  264. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、このみつ源の、一つは保護という観点、それからもう一つは培養、育成という観点、この二つがあると思うのです。そこで現在あるトチノキ、シナノキあるいはキハダ、アカシア、そういうものを、ある程度群生しておるところは、これはひとつ地域指定なりをしまして、そうして保護するなり、あるいはこういう大切な花木は登録制にして保護するなり、その保護の仕方があると思うのですが、何か聞くところによると欧州あたり、特にソ連とか東ドイツ、西ドイツ、スウェーデンあたりは、このボダイジュなんかについては伐採を禁止しているというようなことも聞いているのですが、やはり日本も何か法的な措置でこういう木を保護することが必要ではなかろうか、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  265. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生ただいま御指摘ございました養蜂に必要な樹種等につきましては、先ほども申し上げましたけれども、昨年の暮れにも林野庁から各営林局にあてまして、そういう木がある場合には残しなさい、またそういう対応ができる自然休養林だとか、治山事業の場合にはそういうものを対応して積極的に導入を図りなさいという指導通達を出しております。そういう観点とあわせまして、何か法律で規制できないかというただいまの御質問でございますけれども、いま森林法によりまして、国土保全なりあるいは環境保全の面から禁伐を必要とする地域につきましては、地域を決めまして、保安林という形で禁伐をいたしておりますけれども、特定なそういう業種のために樹木の伐採を禁止するということは、法律の趣旨からいいましても非常にむずかしいのではなかろうかとわれわれ考えておりますし、そのためにこういうみつ源に必要な樹種につきましては、先生御存じの養ほう振興法というのがございまして、その第五条に書いてございます精神で私ども十分対応してまいりたいというふうに考えております。
  266. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そうすると、法的な措置としてはなかなかむずかしい、そうすればどういう形でこの保護育成というものをやるおつもりなのか。それは養ほう振興法の第五条の精神とかなんとか言われましたけれども、そういう漠然としたものでなしに、何かもっときついものとして考える余地はないでしょうか。
  267. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほども御説明いたしましたように、いま民有林につきましてはこの法律でそれぞれ伐採その他について対応しておると思いますけれども、国有林につきましては、先ほど申し上げましたように特に通達を出しまして、特用樹種の保護、確保についてという形で、さっき申し上げましたような伐採に当たりましてもそういう樹種を残す、あるいは自然休養林だとか治山事業という事業をやっておりますけれども、こういう事業の場合には植栽を積極的に行うという形で確保、造成を図っていきたいというふうに考えておりますし、今後こういう形で対応してまいりたいというふうに考えております。
  268. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 そこで、これは畜産局が養蜂の一つの管轄をしておるそうですから畜産局にお伺いいたしますけれども、いま日本のハチみつというものは大体二割程度の自給率しかないわけでございまして、この二割の自給率というのは非常に少ないという反面、これからの開拓する余地がそれだけ大きいということを私は意味していると思うのです。そういう観点で考えた際に、むしろこういうハチみつというのはますますその用途が注目されて発展の方向になってきておりますから、これに積極的に取り組んで、そうして林野庁なり、あるいは先ほど大臣も触れられたように建設省なりに十分相談をして、街路樹をトチノキやボダイジュで彩る。これはもうヨーロッパ旅行された人であるならばひとしく感銘しておるものと思いますのでその説明は省きますが、そういう一つの積極的な姿勢を持ってこれからの養蜂に対する基本的な見解をひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  269. 杉山克己

    ○杉山政府委員 わが国のハチみつの生産量は、ここ十年ほど六、七千トンの水準でほほ横ばいでございます。一方需要の方は大分伸びてまいりまして、全体で約三万トン近くになっております。自給率は先生御指摘のとおり約二〇%ということになっておるわけでございます。国際的なハチみつ一人当たりの消費量等から見ますと日本の消費量はまだそれほど大きくはないかとは存じますが、今後とも伸びる可能性は持っているというふうに見ております。したがいまして、できるだけ自給率を高める、国内産のハチみつの生産をふやしていくという方向で対処いたしたいと考えておるわけでございますが、最近何といってもみつ源が、先生のずっと御質問の過程で御指摘ありましたように、不足してまいっております。私ども、養蜂産業につきましては、もちろんハチみつの生産ということで重要な役割りを果たしておりますが、そればかりでなく、花粉の受精ということによって果樹等農作物そのものの生産にもきわめて重要な役割りを果たしておるという面の評価もいたしておるわけでございます。  そこで、そういう重要な養蜂業の安定的な発展を図るために、みつ源の涵養ということもありますが、蜂群の適正配置、あるだけのみつ源に対してこれを適正に配置して有効に活用する、それからみつ源植物の保護、増植、家畜伝染病予防法に基づく伝染病——腐蛆病かその代表的なものでございますが、その予防等にも努めております。  それから、特に五十三年度におきましては、従来業者間でいろいろ紛争などもあった転飼調整問題について円滑化を図ることといたしまして、みつ源植物の効率的な利用を図るという考え方のもとに、安定推進事業という名前で、都道府県等にも参加してもらってその調整を進めるということにいたしております。  それから、特に農林省といたしまして水田利用再編対策を現在進めている段階でございますが、この中におきまして、みつ源といたしましてのレンゲ、これを転作対象作物に組み入れることとしております。それから林地におきましては、林野庁長官から御説明申し上げましたように、みつ源樹木の確保ということで、最近におきましては積極的にその関係の通達を出していただくというようなことを図っていただいております。  そのほか、飼料作物の生産振興の一環といたしましても、レンゲの生産を図る、あるいはその生産に必要な施設整備について対応してまいるというようなことで総合的に考えてまいりたいと思っております。
  270. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 畜産局の非常に積極的な姿勢に感謝しますが、なお一層、これはただ養蜂家対策ではなしに、日本の糖分摂取の一つの大きな立場からも、日本国民の健康の立場からも、あるいは農業振興の立場からもひとつ十分考えられて、特にみつ源を預かる林野庁とは密接な関係を持たれて、今後とも十分な施策の推進に当たっていただきたいと思います。  そこで、この具体的な推進についてでございますが、まず林野庁に対しては、民間の山林については、分収林と申しますか部分林を設定して、その中でのみつの分配契約をしていく、こういうようなやり方も考えられるのではないか、あるいは造林計画は、先ほど長官が残った四百万ヘクタールについて考えていくと言われましたから、これは私は非常にすばらしい成果であると考えますので、ぜひそういう四百万ヘクタールを何年で消化するかという積極的な計画を立てて推進をしていただきたいと思います。  なお、これは林野庁と畜産局が共同で考えなければならない問題として国営の養蜂場を設置するお考えはないかどうか、これは私は非常に重要な問題だと思っております。一定の区域の中で国営養蜂をやっていけば、これが一つの起爆剤と申しますか牽引力になって、山村農民に対するそこでの講習会を開いたりいろいろやっていく中で養蜂に対する知識を深めていく、そして何とか山の中で苦しむ人たちが養蜂をすることによって生き返る、こういうような一つの施策を与える上で重要なものではないだろうか、この点についてもひとつ十分配慮していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。答弁をひとつ積極的にお願いします。
  271. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 林野庁に関係いたします分についてお答えいたしたいと思いますけれども、初めに、先生いま四百万ヘクタールを積極的にというお話ございまして、私、申し上げましたのは、四百万ヘクタールを天然林のままに残すということで、その中にございますみつ源として必要な樹種については積極的に残して、今後とも保存してまいりたいということでございますので、御了解いただきたいと思います。  それから、部分林制度をやってはどうかというお話でございましたけれども、部分林については、御存じのとおり、いまやっておりますのは植えた木を最後に分収しようというのが部分林制度でございまして、基本的にみつ源の養成は、木を利用するのではなくて、その間においてみつを取るという形になりますので、基本的にはちょっとなじまないのではなかろうかと思いますけれども、最終的には木を分収するということで、その過程においてこういうみつを採取するということが考えられるのであるならば、私どももこういうことについては今後検討を加えてみたいというふうに考えております。  それから、国営養蜂場の設置はどうかというお話ございましたけれども、いま国有林におきましては、端的に申し上げますとこういうものは考えておりませんが、特にこのみつ源になります樹種につきましては、樹種の種類それから開花時期がまちまちでございまして、これを一定の地域でやるというのは非常にむずかしい問題もあるのではなかろうかという気がいたします。私どもの理解しております範囲では、こういう方々はやはり花の咲いている時期に、またその木のあるところに順々にお移りになっておられるという形もございますので、なかなかこの辺が、一定の場所でこれをやるというのは非常にむずかしいのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  272. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまの国営でもって精製工場、養蜂場をつくってはどうかという御指摘でございますが、林野庁長官からもお答えいたしましたように、場所を移動する、したがって、ある特定のところに多額の投資をするということは経済的にどうかという問題もございます。それから、業者が壁純な機械を持って、行く先々でもって小規模に精製を図るというのがむしろ効率的ではないかと思うわけでございます。  ただ、先生いろいろ御指摘なさいましたように、十分な知識を持たない業者がいろいろ精製技術等におきまして不十分な点があるというようなことも考えられますし、そのほか、みつ源等の問題、流通の問題、飼料の問題、各般の問題を抱えておりますので、私どもとしても、全国的に日本養蜂はちみつ協会というような組織もございますので、こういった組織を通じてできるだけ周知徹底を図ってお手伝いをしてまいりたいというふうに考えております。
  273. 渡部行雄

    渡部(行)分科員 時間が来ましたので、いろいろまだまだ問題はあるわけですが、これは約束の時間ですから終わることにいたしますが、それにしましても大臣、「農業富民」という雑誌の二月号、これに太田原芳治という方が、非常にためになる論文を出しております。この方は私の恩師でありまして、ですから、ひとつよく読んでいただいて、その精神をくみ取っていただくならば、きょうの私の質問概要は十分つかめると思います。ひとつよろしくお願いいたしまして、終わります。
  274. 伊東正義

    伊東主査 これにて渡部行雄君の質疑は終了いたしました。  次に、三谷秀治君の質疑に入るのでありますが、同君の質疑に対し、参考人として畜産振興事業団理事長太田康二君が御出席になっております。御意見は質疑の中で聴取することにいたします。  三谷秀治君。
  275. 三谷秀治

    三谷分科員 私は、輸入牛肉の問題につきまして、農林省及び畜産振興事業団の所見を承りたいと思います。  畜産振興事業団が扱っております輸入牛肉売り渡しのうち、冷凍肉の売り渡しは、市場競りが三〇%、指名競争入札売り渡しが六〇%、指定店への定価売り渡しが一〇%と聞いておりますが、この配分は間違いがないでしょうか。
  276. 杉山克己

    ○杉山政府委員 おおむねいま先生が言われたような数字の割合になっております。
  277. 三谷秀治

    三谷分科員 売り渡し価格につきましては、指定店への定価売り渡し分以外は、畜安法の安定価格に基づきまして事業団が定めた売り渡し予定価格以上の価格で、市場にあっては競り、指名十八団体については入札で取引されるということもそのとおりでございましょうか。
  278. 杉山克己

    ○杉山政府委員 そのとおりでございます。     〔主査退席、田中(龍)主査代理着席〕
  279. 三谷秀治

    三谷分科員 そうしますと、どちらも月一回程度、競りないし入札を行っていらっしゃいますが、市場の競りが団体入札の実勢価格の形成にも関係する、その基礎になることも間違いがないでしょうか。
  280. 杉山克己

    ○杉山政府委員 市場というのは、多数の需要家と多数の供給者との間でもって競りによって価格が形成される、その価格は公正な価格だということで一般的に取引の指標になります。それから事業団が入札売却をいたします場合は、指定価格、入札予定価格を示すわけでございますが、これは当然そういった価格も一つの参考にして市場の実勢価格を基礎にして決めるということになっております。
  281. 三谷秀治

    三谷分科員 フローズンの売り渡し実績というのは、競り及び入札の合計で、先ほど御説明がありましたように九〇%を占める。つまりフローズン流通の大部分は競りと入札によって流れておるということも間違いがないわけでありますが、この場合の価格決定が、市場の競争原理によりまして動いていくということもいま御説明がございましたが、輸入牛肉はチルドも含めまして輸入割り当て制でありまして、国産肉との生産構造の差異などによりまして輸入肉は安いという事実があるわけであって、その点で一定の希少価値を持っておるということは間違いのない点であります。     〔田中(龍)主査代理退席、主査着席〕 つまり、求めるものが多いのに比べまして売り渡し量が非常に制限されておるという事情にありますから、勢い売り手市場にならざるを得ないのであります。現在の売り渡し方法をとります限り、保管施設の発達に伴って投機的な素地というものが存在するということも争えない事実だと思います。そこで肉転がしだとか横流しという問題が起きてくる。政府の売り渡し方式の中にその生地があるのではないかと考えられますが、その点はどうでしょうか。
  282. 杉山克己

    ○杉山政府委員 フローズンにつきましては、市場に三〇%を出すということは、本来なら全部市場に出したいところでございますが、市場が存在をする地域は限られておる。中央卸売市場、地方卸売市場を通じて全国で二十五でございます。したがって、それ以外の地域のことも考えますと、それ以外の全国的に販売網を傘下に有する団体組織を通じて売却するということが必要になってまいるわけでございます。  そこで、価格形成について公正が期せられるかということでございますが、私ども、競りにいたしましても入札にいたしましても、多数の需要家が経済原則に従って自分の採算の許す限り高い値でもって落とすということになると思います。その意味では、適正な価格競争の中で一番妥当な価格が形成されるというふうに考えているわけでございます。
  283. 三谷秀治

    三谷分科員 妥当な価格でなしに高値安定をするという状況が出てくるということを私は申し上げておるわけでありますが、お手元に差し上げました資料は、最近の中央卸売市場の売り渡し分のデータであります。  そこで、ごらんになったらわかりますけれども、競りでありますから、どうしても事業団の売り渡し予定価格を超えた価格でなければ渡さないという条件が一つある。それから、価格で最高の値をつけた買参人の手に渡るということも経済の原則的な要素を持っておるわけであります。そこで五十一年の実績で見ますと、この肉のほとんどのものが、各市場における買参人のうちでごく少数の買参人によって独占的に買い占められているという数字が出ておるのであります。上位五人の買参人の落札割合を見てみますと、京都では実際に落としました買参人は九人でありましたが、このうち上位五人が九六%を占めております。広島では上位五人の買い占め率が九三%になっております。神戸でも八七%、仙台でも七九%、横浜でも七八%。東京は調査ができておりませんが、中央市場のうちの五市場までが上位五位で全取引の七〇%以上を買い占めておる、こういう状況になっておるのであります。この中には一人の買参人がたくさんの買い占めをしておるという顕著な例もあります。これもごらんになったらわかりますが、神戸では一人が四六%を買い占めております。横浜では三六%、広島では三三%、これが高い例として示されておるわけであります。取引量一位の者の九市場における買い占め率を見ますと、平均二八%、三割近い量が一人の買参人によって独占されております。これは五十一年の例でありますが、五十二年の場合もほぼ同じ状況にあることが数字で出ておるのであります。ですから、このようにしまして特定の人が、特に設備などを十分に備えている者が大量な買い占めをしまして、これはまた後でお聞きしますが、価格の問題にも関係してくるという状態になっておるのでございます。  そこで、こういう状態というものが価格のつり上げ、肉の偏在という状況をつくり出しておるということが考えられますが、輸入肉などというものは特殊なものでありますから、これについてはこういう形の販売方法、売り渡し方法でなしに、別個の方法が考え得るのではないかと思われますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  284. 杉山克己

    ○杉山政府委員 畜産振興事業団は、日本の国内では供給し得ない部分について輸入をする、そしてその肉については国内産の肉と価格を調整しながらこれを売り渡すということを使命としているわけでございます。いわば需給を通じ価格の安定を図る。その場合、国産肉との調整ということが主眼でございまして、直接みずから市場に出ていってこれを売買する、いわば流通業者としての機能を果たすというところまでは考えておらないわけでございます。しかし、今日的な要請にこたえるためには、輸入肉をできるだけ能率的に公正に消費者のお手元に届けることが使命として課せられておるわけでございます。  その場合、どういう筋道、形を通って輸入肉を流通させるかということになりますと、既存の流通機構を利用することしか手はないわけでございます。ただ、流通機構も、特に食肉につきましては非常に複雑でございまして、各種のルートがあるわけでございます。それらの実態を見ますと、現在の市場を通ずるルート、あるいは団体を通じてその傘下の販売系列を通ずるルート、あるいは直接量販店、スーパーとか生協の売店等を通ずる葬り方、特に指定店という形で最後のところは強化されているわけでございますが、そういうものを併用して効率的に消費者のお手元に届けるということを考えるべきだと私どもは思っておるわけでございます。
  285. 三谷秀治

    三谷分科員 併用してお届けになることについては私は何も意見を言っておりませんが、要するに流していく流し方ですね、これを検討する必要があるのではないか。これは価格の方の問題にも関係してくるわけでありまして、この問題とあわせてお尋ねをしておきます。  お手元に差し上げました資料の中に、五十二年度の四月から十一月までのフローズンが各市場で取引されたときの価格実績が出ております。フローズンの場合は、冷凍肉の各部位ごとに取引されますために、価格は各部位によってまちまちになっております。事業団の売り渡し予定価格も各部位ごとに設定されておるわけでありますが、その点は間違いありませんか。
  286. 杉山克己

    ○杉山政府委員 間違いありません。
  287. 三谷秀治

    三谷分科員 したがって、ここに出ております取引実績というものは事業団の予定価格以上の額で取引された結果だと思いますが、その点も念のためにお尋ねしておきます。
  288. 杉山克己

    ○杉山政府委員 この数字は、実は私初めて拝見するものでございますから、事業団の予定価格との関係がこれではすぐにはわかりかねるのでございますが……。
  289. 三谷秀治

    三谷分科員 事業団の方はどうですか。
  290. 太田康二

    ○太田参考人 私どもの予定売り渡し価格の決定の方式については、先ほど先生がおっしゃいましたように法律に基づいた政令で決められておりまして、農林大臣の承認を受けて決めておるわけでございますが、いまこの資料をいただいて、たとえば神戸のフルブリスケットの安値八百十三円というのが私どもの予定価格と比べてどうなんだと言われても、私ども予定価格の数字をここに持っておりませんので、ちょっと御意見を申し上げかねるわけでございます。
  291. 三谷秀治

    三谷分科員 原則的に申しますと予定価格以下では売り渡しはしないというわけでありますから、安値も予定価格以上のものであるということは間違いがないと思いますが、その点どうでしょうか。
  292. 太田康二

    ○太田参考人 まさに競りでございますので、私どもが売り渡しに委託上場した数量まで高いものから順次取るということでございますから、おっしゃる趣旨がそういう趣旨でございますればそのとおりでございます。
  293. 三谷秀治

    三谷分科員 この表は、各取引部位ごとの同一取引日における最高値と最安値を抽出したものであります。間違いがありません。  そこで、フローズンの市場売り渡しは全国二十七市場で実施されておるはずでありますが、この表で明らかなように、昨年の七月七日、一番上段で見ますと、神戸で取引されましたフルブリスケットは全国市場の中で最高値を示しております。キロ当たり千七百八十三円になっております。最安値も同じ神戸市場で八百十三円になっております。この高値と安値の差が九百七十円に達しておるわけであります。高値率は一一九・三%に達しておりますが、取引に倍以上の開きがあるということがわかるのでございます。この例は極端な場合かもしれませんけれども、その次の四月二十一日、フルブリスケット、これで見ましても、大宮の市場で千三百八十円の高値を示しておる。同日の岐阜の市場の安値が七百七十六円と出ておりますから、ここでも六百四円の開きがあるわけであります。高値率は七七%に達しております。同じように四月二十一日のボナカウについて見ましても、大宮市場の高値千二百二十円に対して、京都市場の安値が八百二十三円、高値率が四八%になっております。  こうして高値率が三〇%以上の取引が行われておる。これは当然のこととしまして加重平均価格にも影響してきておるわけでありまして、全体として高値で安定をするという傾向を示しておるのでございます。この価格の形成というものと、先ほど申しました特殊な業者の買い占めという問題が当然関連をしておる。買い占めまして、冷凍でありますから設備に貯蔵するということが現実に行われておるわけでありまして、先般の新聞の論説を見ましても「資力に物を言わせて高値で放出肉を買い占めて、すぐに小売店に売り渡さずに倉庫に寝かせて値上がりを待つ卸売業者もおる。冷凍肉の在庫を大量に持ち、小売店には卸値よりも高値でないと売らないということも起きかねない。」という、こういう論説が出ておるわけであります。この状態はそのことをはっきりと証明しておるのでありますが、こういう事態を見ました場合、この売り渡し方法について検討する必要が当然あるだろう。生産者対策だけで牛肉を見ていったのでは、これは消費者にとってはたまったものじゃないわけであって、生産者対策であり同時に消費者対策である、そういう要素の売り渡し法を考える必要がある。それはないとは言えないわけでありますから、そういう研究を当然なさるべきではないかと思いますが、その点はいかがでございましょう。
  294. 杉山克己

    ○杉山政府委員 輸入牛肉は、国内肉の価格と調整をとりながら、売り渡しの方法をいま、先ほど来御説明しているような形でとっておるわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、特に最近におきましては、消費者に安くこれをお届けするということを考えますと、いままでの売り方について部分的に改善措置をとる必要があるのではないか、そう私ども考えまして、たとえば入札に参加する団体の数をふやすとか、さらに、特に直接国あるいは事業団の目が行き届き、そして中間で不当な利潤をむさぼることのないような、ルートを特定した指定店への販売、さらには、新しい販売形態でありますところのスーパーでありますとか生協を通ずる、特にそこを重点とする指定店への販売というような形で、現在の流通制度の仕組みの中で、それなり消費者立場も考えた対応をとってまいっておるわけでございます。これは、何も輸入肉ばかりでなく、国産肉につきましても、特別売却という仕組みをとりましたり、週に一回安売りの日を設けるというような形で実施いたしておりますが、そのほかに、いわゆる朝市という仕組み、東京都におきまして小売の共同仕入れによる一定価格での販売というようなやり方を採用する等、もろもろの形を通じまして消費者にも配慮をいたしておるつもりでございます。今後とも流通段階の改善につきましては、そういうそのときそのときの対策だけでなしに、恒久的な対策も必要であると考えておりまして、生産、流通の合理化を進める意味で、食肉センターあるいは部分肉市場、こういったものの増設あるいは新設に力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
  295. 太田康二

    ○太田参考人 ただいま先生から御指摘のございました神戸のフルブリスケットの例で、高値千七百八十三円、安値八百十三円というお話がございましたが、ちょっと思い出してみますと、このときに神戸の場合は若干特殊事情がございまして、こういった価格が実現したというふうに私どもは理解をいたしております。  そこで、私どもといたしまして、これはあくまで特殊なケースだろうと思うのでございますが、全体の二十五市場の姿をながめまして、たとえば非常に高値の市場があり、一方で安値の市場があるということは、その地域における需給実勢を反映してそういった価格が形成されておるのだろうということでございますので、安いところの配分を減ずりまして高いところに次の上場数量をふやすというようなことも、微調整ではございますが、実はやりまして、市場間の価格ができる限り均衡するように努力はいたしておるつもりでございます。
  296. 三谷秀治

    三谷分科員 高値と安値が時と場所によりまして非常な変動をしておりますから、需要供給の関係のみとは見られない点があると思います。やはり個々の市場で機能しております買参人の思惑とか能力とか、そういうものも当然関係があると思うわけであります。  そこで、いま局長がおっしゃいました点でありますけれども、やや一般的に過ぎると思うのですが、ここで、社団法人の日本食肉協議会というものがありますが、この委嘱によりまして学者、専門家で構成されました食肉流通近代化促進研究会の報告書が出ておりますが、これは「秩序ある食肉流通への道」と題しておりますが、これは当然、輸入肉の国内売り渡しの方法を改善すべきである、そういう主張をしておるのであります。また「食肉通信」という業界紙が旧臘実施しました業界の世論調査を見ますと、一番業者が不満としておりますのは、配分、売り渡し方法が公平でないということ、これは六六%おります。それから、欲しい品物が適正価格で入手しがたい、欲しいものは値がどんどん上がってくる、これは五二%おるのであります。ですから、この売り渡し方法につきましては十分に検討する必要がある。チルドの販売方法を変更するとおっしゃっておるようでありますが、これも、競りでやりますと結局どんどんと競り上げてしまって高くなってくる。結局高値に焦げついてしまうという結果になってくるわけであって、これは消費者としてはがまんができない点であります。そうしますと一体どういう方法があるかと申しますと、予定価格というのは、これは事業団としてはその価格で売ればいいわけなんでしょう。その予定価格を公表しまして、それをたとえば抽せんで渡すとか、これは私の発想にすぎませんが、そういうふうなやり方、つまり競り上げないやり方ですね、何かありそうなものだと思う。あるいは買参人の交代による買い取りだとか、そして、価格はもう当然市場におきましても明らかにするというような措置を講じまして食肉の、輸入肉の安値安定を図ってもらわなければならない。これがいま大変な問題になってきましたのは、どんどん高くなってくる、しかも不正常な品物を通じて高くなってくるというのが問題になってきたわけでありますから、それは単にこの中に介在します業者の責任だけではなしに、これは農林省なり畜産事業団の売り渡しの方法、手段にも研究すべき点があるのではないかということを考えますが、その点はいかがでしょう。
  297. 杉山克己

    ○杉山政府委員 国内産牛肉との価格の調整を図るということ、それから消費者にできるだけ安い価格で供給するということ、それから売り方について公正を期するということ、この間に実は私ども事務方としては非常に解決困難な、むずかしい幾つかの技術的な難点に突き当たっているわけでございます。公正を期するには、経済原則を利用して最大限競争させる、入札をもっと強化して一般参加者にも広く参加を求めるということがあってもいいわけでございますが、それは、先生御指摘のようにまさにますます高値をもたらすということになりかねないと思います。それでは、一定価格でもって、消費者の家計のことも考えた安い価格で売るようにするということになりますと、この流れにつきまして厳正に監視をする必要が出てまいります。ところが、何といいましてもこれは統制物資ではございません。それから役所の能力からいたしまして、その流れを一つ一つ監視して、期待に沿った売り方あるいは価格、それでないという場合にそれを摘発できるか、あるいは是正を求めることができるかということになりますと、これは事実問題としてまず不可能でございます。そういう意味で、私ども、やや両方をにらんだ折衷的といいますか、調整した考え方でございますが、指定店というものを一つのモデル的なケースといたしまして、ここを重点に、指定店ならば限られた店の数でもございますし、それから、店の選択につきましても特に配慮しているというようなこともありまして、監視もきくわけでございます。都道府県あるいは一般の民間のモニターにもお願いしてその監視を図るというようなことを通じまして、定価でもって売却を行っているところでございます。そういった部分的なモデル的なケースが全体についての一つの先駆けになって、これが価格の安定、安値に結びつけばはなはだ幸いであるというふうに、流通改善と並行しながら、そういう現在の仕組みを活用した売り渡し方法でもって、現在格段の工夫をいたしてあるところでございます。
  298. 三谷秀治

    三谷分科員 時間がありませんから重ねてお尋ねできませんが、いまおっしゃいました点ですけれども、指定店でやっているとおっしゃいますが、指定店に品物がなくて、この間委員会で追及があったのじゃないですか。品物がない、回ってこない、いま申しました高値のものが指定店に行ったりしているという状況になっている。ですから私は、私の申し上げましたのも一つの発想にすぎませんから、いろいろな困難がある、これはわかりますよ。わかりますが、もう少し何かできそうなものだ。特に消費者消費者団体の協力を得てやっていく。そして、いまこういうふうにして価格が非常にややこしくなってきているのは、もとの価格が明確になっていないところに原因がある。もとは何ぼだということを明らかにして、そしてその観点に立って消費者が協力をするとかいうことが行われますならば、役所だけでこれを管理しようとしてもできるものではありませんが、そういう方法を考えていきますならば、これはなお改善の余地が十分にあるということを私は考えておるわけであります。  そこで、せっかくきょうは大臣にお目にかかって、けいがいに接しないのも何とも不満の至りでありますから、大臣も生産者代表でなしに消費者立場でひとつ御検討いただきたい、このことをお願いしておきたい。
  299. 中川一郎

    ○中川国務大臣 先ほど来聞いておりますが、実需者団体が畜産事業団から安く買ってもうけているという話かと思ったら、逆に高く買っておるという話でございます。そして、それが消費者に高値になっているという、いままでとは発想の違う高邁な御議論でございます。  これもまた消費者にとってはよくないことでございますから、何とか公平妥当に、いい価格消費者に行く、消費者も負担がなく、さらにそのことが肉生産農家にも悪影響を与えない、最大公約数のいいところを、だんだんと各方面の意見も聞きながら、また各方面の批判もいただきながら、よりよい方向に改善に努めてまいりたい、こう思う次第でございます。
  300. 三谷秀治

    三谷分科員 時間ですから、終わります。
  301. 伊東正義

    伊東主査 これにて三谷秀治君の質疑は終了しました。  次回は、明二日午前十時より開会し、農林省所管について質疑を続行することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会