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1978-03-01 第84回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月一日(水曜日)     午前十時二十六分開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君       栗原 祐幸君    住  栄作君       太田 一夫君    川俣健二郎君       小林  進君    島田 琢郎君       島本 虎三君    田畑政一郎君       土井たか子君    貝沼 次郎君       春田 重昭君    藤原ひろ子君       大原 一三君    兼務 井上 一成君 兼務 池端 清一君    兼務 小川 省吾君 兼務 宮田 早苗君    兼務 米沢  隆君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         北海道開発庁予         算課長     岩瀬多喜造君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働大臣官房会         計課長     加藤  孝君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 真弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業安定         局失業対策部長 細見  元君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         厚生省保険局国         民健康保険課長 黒木 武弘君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      赤川 邦雄君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君     ————————————— 分科員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     島田 琢郎君   小林  進君     太田 一夫君   貝沼 次郎君     春田 重昭君   不破 哲三君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   太田 一夫君     島本 虎三君   島田 琢郎君     川俣健二郎君   春田 重昭君     長田 武士君   山原健二郎君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     山口 鶴男君   長田 武士君     貝沼 次郎君   柴田 睦夫君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     田畑政一郎君   藤原ひろ子君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   田畑政一郎君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     木原  実君 同日  辞任         補欠選任   木原  実君     小林  進君 同日  第四分科員池端清一君、小川省吾君、第五分科  員井上一成君、宮田早苗君及び米沢隆君が本分  科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算労働省所  管)      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算昭和五十三年度政府関係機関予算労働省所管について質疑を行います。  まず、太田一夫君。
  3. 太田一夫

    太田分科員 私は本日は、この数年来問題になっております寡婦の、御主人のない奥さん、しかも子供を抱えておるそういう寡婦の雇用問題につきまして、年来、雇用促進法制定の要望が強いのでありますが、なかなかそれが制定されない実情にある。そこでこの際、労働大臣お尋ねをしたいのでありますが、本来言いますと、いままで身障者、中高年と特殊な層を対象にいたしまして、恵まれない弱き者、いろいろと社会的生活において条件の十分でない者、こういう方々に対しまして、相次いで雇用促進のための立法化措置がなされてまいりました。寡婦に対する雇用促進法というようなものが仮にできるとするならば、それは福祉的立場に見ました輝かしい第三の立法になるものと国民は期待をいたしておったわけであります。  ところがそれが、そういう声が非常に大きいのにかかわらず一向に制定をされる動きが出てこない。そして労働省はともすれば、当面の糊塗あるいはびほうするというようなことに終始しておるように見受けられます。なぜそういう消極的な立場をおとりになっていらっしゃるのか。その消極的な立場をおとりになっていらっしゃるというそういうお気持ちの中には、いろいろあると思いますが、本意なのは一体何が本意なのか、労働省本意は何か。消極的であって制定しないという本意は何なのか。たとえばその本意の中には、人手が不足していて手が回らぬというそういう実情があるためなのか、何か行きがかりがあって、メンツというようなそういうお立場があったのか、一体何が本意で消極的な立場をとっていらっしゃるかということを、最初にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  4. 森山真弓

    森山(真)政府委員 寡婦の雇用問題につきましては、いろいろ問題がございますが、その主なポイントは、子供を抱えて生活していかなければならない寡婦が、子供保育がなかなか十分に行き届かないということ、それから、それまで家庭の中におりまして、職業経験あるいは知識の不足している寡婦が突然生活をしていかなければならない、そのために職業につかなければいけない、非常に情報知識の乏しい人が職業につく、経験のない人が収入を得なければならないというような事態に立ち至るということが問題であるというふうに考えられるわけでございます。  したがいまして、就業を希望する寡婦につきましては、従来から、特に保育の問題と、それから就業相談の充実と職業訓練雇用奨励というような面での施策の拡充ということに鋭意努めてまいったところでございまして、このような具体的な方法によりまして、実質的に寡婦就業援助することができると考えているわけでございます。
  5. 太田一夫

    太田分科員 いまのお話ですと、労働省としては、相談をするとか訓練をするとかというようなことを一応制度化しておるから、それによって就業援助ができる、こういうことでありますが、しからば、いまの実情はどれぐらい就業していらっしゃるのですか。
  6. 森山真弓

    森山(真)政府委員 昨年、寡婦就業につきまして特に詳細に調査をいたしまして、その結果によりますと、就業している者の状況といたしましては、全部の対象者寡婦のうち八九・六%が就業をしております。特に二十代と五十歳以上を除きますと、どの年齢でも九〇%を超えている状態でございまして、就業者の数は一般婦人に比べて非常に高いということが言えるわけでございます。
  7. 太田一夫

    太田分科員 これはちょっと労働大臣お尋ねをしなければならぬですが、いまのお話から見ると、あなたの省の中では、職業あっせん相談あるいは職業訓練等によって、八九・六と言えば約九割ですから、九割くらいが就業しておるが、それは一般に比べて非常に高い、言うならば恵まれておるという結論が出ておるといういまのお話大臣として、いまの寡婦、これは死別離別いろいろございますけれども子供を抱えて言うならば世間では皆困っておる、貧困家庭代表のように言われておる寡婦世帯、これから帰納していきますと、一般の人よりも雇用率が高いというようなことが言えるというのはおかしいと思うのですね。大臣、あなたは大ざっぱに、寡婦の就職という、職業につけさせることについては、一般の人に比べてそう問題がないというふうにお考えでしょうか。
  8. 森山真弓

    森山(真)政府委員 いま私が御説明申し上げましたのは、就業率が高いということでございまして、それをもって直ちに問題がないとか、あるいは恵まれているということを申し上げたつもりではございません。確かに就業している数は非常に多うございますけれども、その内容を見てみますと、問題が幾つか見られるわけでございます。  と申しますのは、就業しております者のうち、雇用労働者は全就業者の七二・九%を占めまして、これも大変多いわけでございますが、自営業者が一七・一%、内職者が六・一%、家族従業者が一・六%というふうな内訳でございます。特に、雇用労働者の勤めております先の事業所規模を見ますと、三十人未満というのが五三・0%、三十人から九十九人というのが一八・七%、百人から二百九十九人が九・四%、三百人以上というのが七・二%ということでございまして、産業別に見ますと、卸売小売業二八・八%、サービス業二七・0%、製造業二三・二%という、この三産業に集中しているわけでございます。  この規模及び産業別につきまして、一般の女子と比較いたしてみますと、寡婦の場合はより小規模のところに集中しておりますし、産業別では製造業がやや少なく、サービス業がやや多いというような傾向が見られるわけでございます。
  9. 太田一夫

    太田分科員 いまの雇用労働者七二・九%という数字は、私ども調べ数字あるいは聞いた数字とは若干差がありまして、ちょっと高いと思いますが、あなたの方で昨年お調べになりましたのは、人口集中地区における、言うなら町の真ん中における世帯の御調査でございましょう。だから、全国的な全体の統計とは違いますか。
  10. 森山真弓

    森山(真)政府委員 この調査対象になりました人口集中地区と申しますのは、国勢調査のときに用いられます技術的な用語でございまして、この人口集中地区の定義といたしましては、一平方キロメートル当たり人口が約四千人以上というような内容になっております。これを昭和五十年の国勢調査の結果から見てみますと、市部のうちの七一・八%、それから郡と言われる比較的田舎と見られる地方におきましても、そのうちの一〇・六%はこの人口集中地区というふうに呼ばれておるわけでございまして、寡婦世帯をさらに見てみますと、全国的には同じ五十年の国勢調査によりますと、女親子供から成る世帯数全国で百五十五万余りございますうち、この人口集中地区にあります同様の世帯は百二万、六六%近くがこの中に含まれているということで、統計信憑性は非常に高いと私は考えております。
  11. 太田一夫

    太田分科員 言うなら、人口密集だから、全国の六十二万世帯というものに対して最もモデル的な調査をされたとは必ずしも言えません。偏ったところで調査をされている。だから、都合のいい数字が出てきているわけですね。  その雇用率とか就業率が高いという表現はいささか問題があるので、あなたもさっきおっしゃったとおり、内容について高いということは恵まれているということではないとおっしゃった。サービス業についておるということは、八百屋さんの店先でミカンを売っていてもサービス業についているということになるかもしれませんから、そういうことは、仕事があるからということと、月に何万円もらえることと同じように連結して考えるわけにいかぬわけですね。給料は少ないことは事実だから、恵まれていないということをあなたはおっしゃった。  大臣、そういうことなんですよ。あなたのところの、お役人さんと言ってははなはだ失礼ですが、政府委員各位は、重要な仕事をなさっていらっしゃるわけだから、いろいろなデータをもとにして立案されること、これは私は別に認めないわけじゃない。けれども、なかなか実態把握ということはできないという面もあるのではないかと思います。  たまたま一つサンプル調査をなさった、一平方キロ当たり人口四千人という。まあ人口がたくさんあるところでお調べになったと言うなら、すぐそばにも何かしらお手伝いする仕事がありそうだ。それは四万か五万のはした金ですからかせぐこともできない、そういう収入状態。六十二万の寡婦世帯に対して、この中には六万の交通遺児寡婦世帯が含まれておりますけれども、そういう人たち就業状態並びに生活状態を一口に言うならば、七五%は思わしい仕事がなくてほとんどが困っておる。月給取りらしい月給をもらっておるのは、私ども調査によると二五%くらい。でございますから、この実態から考えてくると、雇用率が高いとか就業率が高いとかいうようなことに惑わされてしまわないで、裏の実質的には恵まれていないといまおっしゃったことを私は重視してほしいと思うんですね。  それで、月給制で雇われておる者は、その統計の中にはどれぐらいありましたか。
  12. 森山真弓

    森山(真)政府委員 月給制であるかないかという項目につきましては、現在まだ集計中でございまして、先般発表いたしましたものは速報でございますので、その分の中にはまだわかっておりません。いま集計中でございます。
  13. 太田一夫

    太田分科員 集計中とおっしゃることにお答えを求めることは無理ですから、私の方が一応調べたものを大臣、申し上げておく。  これはなかなかひどいものですよね。雇用労働、人に雇われておる、先ほどおっしゃった三十人未満、百人未満というのは、率そのものは大きな違いはないような気がしますが、雇用労働の中で、月給二五%、パート三九%、これが雇用労働になっている。それから、内職をやっているのが九・九%、農業自営が一八・二%、無職六・0%、その他一・五%になっている。だから、内職とか自営とか無職というところは大きな開きがないように思います。問題は、雇用労働認識が大きく離れておるような気がするんですね。  それで、私の申し上げる月給で二五%、言うならば、四世帯寡婦世帯の中で一世帯しか月給制によって雇われておるところはないという、こういう実態。それから、それであるから、四人の中の三人はその他の仕事ですから、農業自営といったところで完全にみずからが経営者であるかということは別問題でありますから、いささか不安定なものがある。  そこで、二五%、月給制の人はそれぐらいしかないということをちょっと申し上げておいて、収入というものの統計はどうなっておりましたか。
  14. 森山真弓

    森山(真)政府委員 この雇用労働者になっております寡婦勤労収入は、平均八万七千円というふうになっております。その世帯家計費が十一万一千円でございまして、世帯収入が、つまり月収総額が九万五千円でございます。先ほど申し上げました雇用労働者であります寡婦収入と、それから家計費十一万一千円との差額は、そのほかの家族勤労収入であるとか年金とか生活保護とか、その他家族援助であるとか、そういうもので賄われている実情のようにうかがわれます。
  15. 太田一夫

    太田分科員 八万台ですね、八万七千円。これもわれわれの実態と合わないですね。内職でやりくりしているところが非常に多うございますから、月収ということになると、内職の金も、あるいはその他家族の方のアルバイト収入も入るでしょうが、私の方の調べによりますというと、五万円未満月収のものが二二・三%、五万円から八万円のものが四七・五%、八万円から十万円までの月収は一九・六%で、十万円以上が一〇・七%、こういうことでありまして、七割が八万円以下なんですね。七割が八万円以下という、ここに一つ重点がありますが、そういう実態でありますから、あなたの方のいろいろな調査というのは、まだ完全な集計がなされておらないということがあるけれども、少し甘い。別にあなたの方が作為的であるとは思わないけれども、どことなしにおかしい、実態に合っておらない、これは申し上げておかなければ大変だと思いますね。  そこで、私はもう一つ進んでお尋ねしたいことでありますが、大ざっぱに言って、交通遺児育英会あたりが四年間にわたって調査したものを見ると、九〇%以上が貧困の中におるという結論が出ておるわけです。だから、貧しいために高校大学への進学もできないし、したがって、それがゆえに子供を育てるのに無理するから、母親の中の三人に一人は病気または病弱だ。医者にかかれない者が二割ある。こういうことを考えてみますると、これは容易ならざる社会問題ではないか。  離別とかあるいは死別とかいうのがたくさん出てきておりますね。これはいろいろ種類別にあなたの方も統計がわかっておるでしょうから、わかっておったらこの際、ちょっと教えてもらいたいのですが、どうですか。
  16. 森山真弓

    森山(真)政府委員 寡婦になりました理由につきましては、死別が五一・六%でございます。その内訳は、病死によるものが三九・0%、交通事故死が六・一%、労災死が三・七%でございます。離別は四〇・四%になっております。
  17. 太田一夫

    太田分科員 五一・六%の死別、四〇・四%の離別、これも少し合いませんね。どっちみち死別の方が離別よりも多いということは、どの調査でも明らかなのです。これは共通点です。  それで、五十一年の離婚件数十二万四千五百十二件あるということは、だんだんふえてきて、そういう傾向になっているということは大体間違いないですか。
  18. 森山真弓

    森山(真)政府委員 母子家庭実態につきましては、厚生省が六年に一度ずつ調査をしておられるのがございまして、それにも同様の調査事項がございますが、それを以前からずっと時系列的に見てみますと、離別が次第にふえつつあることは確かでございます。
  19. 太田一夫

    太田分科員 そうですね。離別がふえておるということが事実だとすると、離別の場合は死別よりも収入が悪いということは統計が示しておりますね。この間、お茶の水の先生がお調べになったものを私ちょっと拝見しましたが、やはり同じことが書いてある。だが、多い、少ないと言っても顕微鏡的なものであって、統計学的な数字の上ではそうなっても、五十歩百歩だ。母子家庭困窮度は一緒だ。  そこで、進学率の問題についてお尋ねをしますが、私の方で調べた結果によると、高校進学率というものは、一般が九五%ぐらいのところに持ってきて、寡婦家庭遺児の場合は七〇%。大学には、一般が四〇%に対してその半分の二〇%程度度だという概略の統計が入っておりますが、これはあなたの方の調べと合っていますか。
  20. 森山真弓

    森山(真)政府委員 進学率につきまして、詳細な調査はこの項目の中に入っておりません。
  21. 太田一夫

    太田分科員 だから、調査が入っておらぬということは、いまの収入ということについてもうちょっと目を注ぎ、就労仕事にありつく、雇用されるということについてもうちょっと関心を持っていただくと、そこにおのずから行くわけですね。  子供が中学だけで終わるのは気の毒だ。十人の中の十人近い人がいまじゃ高校へ行くようになっておるのに、十人の中の七人ぐらいしか行けない。三人は泣く泣く中卒で就職しなければならぬという状態大学に至っては、普通の家庭の半分しかないというふうなことはみじめじゃありませんかと私は思うわけです。そういう実態を見たら、労働省としては、寡婦の職場の確保ということにもうちょっと認識を高めてもらってもいいわけです。ところがなかなかそういうことにならないので私は心配するのですが、あなたの方は児童憲章などというものは関係があるのですか。
  22. 森山真弓

    森山(真)政府委員 児童憲章は、直接的には厚生省の御所管かと思いますが、私どもの方も非常に関心は持っております。
  23. 太田一夫

  24. 森山真弓

    森山(真)政府委員 母子福祉法につきましても同じでございます。
  25. 太田一夫

  26. 森山真弓

    森山(真)政府委員 勤労婦人福祉法労働省所管でございます。
  27. 太田一夫

    太田分科員 そこで、これはあなただけとやるのがどうもいささか私も心配をしておるのだが、いいのか悪いのか、いままでのことの御説明のような気がしますが、子供を持っておる母子家庭のお母さんの気持ち児童憲章を知ると知らざるとにかかわらず、「すべての児童は、心身ともに、健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障され」なければならないなあと思っておる。すべての児童は就学の道を確保される、学問を修める道を確保されるということも、そうならなければならぬわが国のたてまえだと思っていますよ。にかかわらず、貧乏なるがゆえに、職がパートタイマーないしは不確定労働であるがゆえに、収入も少なく、子供高校大学にやることは困難であるということに対しては、児童憲章ないしは先ほど申し上げた母子福祉法——母子福祉法はあなたの方の直接の関係でないとおっしゃいますが、生活の安定、向上ということのために措置をするという法律である。勤労婦人福祉法に至りましては、そういうことの「職業指導を行なう等必要な措置を講ずる」ということは、その七条にもはっきり響いてあるとおりでありまして、職業安定機関任務というのは、ふさわしい職業を選択して、そうして、その婦人がその能力とか技能とか経験に照らして働くことができるようにするということが七条にもはっきり具体的に出ておるのだから、それは寡婦世帯だからあなたの方は不安定だ、寡婦が再婚すれば寡婦でなくなり、子供が二十歳になれば児童でなくなるというような言い方で、あなたの世界は別世界だと差別をするということはおかしなものだと思う。  だから、少なくとも教育機会を均等に与えてもらうためにも、前提となる家庭生活の安定は第一義でしょう。これはいいですね、この安定させるということは。大臣、あなた一辺最後に一言言ってください。男女平等ですから、女の人だけ答えて男が答えないというのはぐあいが悪いから、男性の代表でひとつ答えてくださいよ。そういう家庭だって、生活の安定を図るというのは政治の第一要件でございましょう、労働省任務として。どうですか。
  28. 藤井勝志

    藤井国務大臣 太田委員から、社会的に非常に気の毒な、しかも社会的弱者立場にある寡婦の問題について大変御熱心な御発言をいま聞きまして、全く私もその思いは同じでございます。  局長からいろいろ御答弁いたしましたが、やはり何といっても寡婦就業を妨げている要因としては、すでに御案内のように、家庭の事情、子供を連れておるという、こういったことに対して、これを補完する保育所の施設であるとか、あるいはまたどうしても職業能力が乏しいという、こういったハンディキャップを補うためには、きめ細かい職業訓練とか、こういった寡婦の持つ弱点を補っていって、そしていまおっしゃるような寡婦就労機会、また、職業内容についても男子に劣らないような方向にその地位の安定を図っていくというところに問題のポイントがあるんではないか、このように思うわけでございまして、特に昨今、いわゆる交通戦争というようなこういう時代でございますから、母子家庭、こういった気の毒な婦人寡婦立場というものは、労働省としては大いに力を入れなければならぬ、御説をよく拝聴してその趣旨にこたえていきたい、このように考えております。
  29. 太田一夫

    太田分科員 それが基本的な考え方から出た御方針でしょうね。いまの訓練とか職業あっせんとか相談ということに重点を置いていただきますと、事態は進まないわけです。  ただ私、気になりますことは、日経連あたりのいわゆる企業側が、これ以上寡婦雇用を法定をされて雇用率の押しつけがあった場合には、それ身体障害者だ、それ中高年だ、さらに寡婦はということになるともうやりきれぬ、だから困るという声が大なるがゆえに労働省が足踏みしているというちまたの声があるわけです。そんなことはないと思いますけれども、世の中は減量経営時代に突入したでしょう。ますます寡婦の方は就業機会を奪われる。さらに企業の方からは敬遠されるということじゃ踏んだりけったりですから、そこのところで決意を最後に聞いておきたい。  もう一度改めて聞きますが、こういう事態において、このような実態の上において、あなたの方としては今後、六十二万世帯ある寡婦世帯の窮状に意を注ぎ、何とかそれを生活を安定、向上し、子女の教育にも支障のないよう、病気にかかって療養できないというような悲惨なことのないようしなければならぬと、それは基本的に思っておるということをおっしゃっていただきたいと思うのですがね、これはどうですか。
  30. 藤井勝志

    藤井国務大臣 日経連の情報については、私つまびらかに承知はいたしておりませんが、伝え聞いております。これは法律で雇用問題を云々するということが適当でないというふうな取り扱いではなかったかと思うのでありますけれども、それはそれとして、いまお話しになりましたお考え方、私も全く同感でございます。  今後寡婦の問題については大いに努力しなければなりませんが、現在も御承知のように、就職しやすいよう保育所は、これは厚生省所管でございますけれども、着々整備されております。これは労働省立場からもひとつ大いに積極的に連絡をとっていかなければならぬ。そして雇用奨励のための制度、雇用奨励金制度、それからまた就職訓練手当制度、こういったものも充実をして、そして所期の目的に前進をしたい。そのようなことで、いまの御発言に対して、私も意を体して今後も一層努力をいたしたい、このように思います。
  31. 太田一夫

    太田分科員 最後に一言だけ申し上げて終わります。  雇用促進法制定の声が大であることをお忘れなく、百尺竿頭さらに一歩を進めて、理想の政治を実現されるよう望んでやみません。  終わります。
  32. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて太田君の質疑は終了いたしました。  次に、島本虎三君。
  33. 島本虎三

    島本分科員 私は、主に積雪寒冷地冬期雇用促進給付金、これを中心にして労働大臣の意向をお聞き申し上げたい、こう思っております。  大臣御承知のように、先般雇用保険法が制定されて失業保険制度が根本的に変わりました。北海道のごとき積雪寒冷地帯は雪の中で、不況の中の季節労務者にとってはまさに生活の問題であり、命の問題であります。そしていま重大な関頭に立っているわけであります。この点は、局長課長を初めとして大臣も十分実態を御承知だと思うのでありますが、この点、大臣はどのように考え、今後は対処するつもりでございましょう。
  34. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御承知のように、特に厳しい自然環境のもとに大変苦労されておる地域でございます。そういった地域の特殊性にかんがみて、通年雇用制度等を充実いたしまして、御期待にこたえるべく努力をいたしたい、このように考えております。
  35. 島本虎三

    島本分科員 北海道の季節労働者の問題については、従来の失業保険九十日給付、これでずっとやってきたのでありますが、今度五十日の一時金に切りかわったのであります。私どもとしては、通年雇用の体制が整うまでの間は、基本的な問題であるとして、当時からこれを叫び続けてまいりましたが、それにもかかわらず、五十日分の一時金に全面的に切りかえられてしまったわけであります。その結果として、いま雇用の場もなく妻子を抱えながら、雪の中で二十九万人を超える季節労働者が生活に困窮している。その中には、保険金の不正受給の事実すら発生するような状態になっていることは大臣、知っておられましょう。九十日給付と五十日の一時金、この選択制を当然とるべきだ、こういうふうにいまでも思って、これを要求してきたのでありますが、新しい法律の前に一切耳をかそうとしないのであります。  労働大臣、北海道という特殊寒冷地帯もあるのでありますから、九十日給付と五十日の一時金の選択制を当然とるべきではないかと思うのでありますが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  36. 藤井勝志

    藤井国務大臣 島本委員の御指摘、すでに島本さんも御案内と思いますけれども、従来の失業保険制度が改正されまして、いわゆる一時給付制度に切りかえられまして、これは給付と負担の公平という点と、それからいわゆる保険制度の原理から見てやむを得ない改正ではないか、このように思うわけでございます。従来の九十日を一時給付制度に切りかえたその直後の一年間においては、これが周知徹底の時間的余裕もございませんから選択制にいたしましたけれども、一応いま申しましたような合理性の上に立って改正された以上は、やはり今度は一時給付の制度に切りかえた線に合わしてもらう、このようにするのはまたやむを得ない制度の切りかえだ、このように思うわけでございます。
  37. 島本虎三

    島本分科員 したがって私どもは、永久にそれを要求するわけではないわけです。確かにいま大臣がおっしゃったように通年雇用、これが先決だ、こういうようなことは十分理解できるのであります。ただ、それを前面に出すと、北海道の場合はまだ通年雇用を約束されてもできないでしょう。それまでの間の過渡的暫定措置としていま言ったような制度、九十日、五十日の両方の選択制を併用したらどうか、こういうようなことなんであります。決して無理ではないのであります。そして、大臣の言うことを否定しておるわけではないのです。このギャップを埋めようとするわけです。通年雇用に反対する人は一人もありません。ただ、約束してもできないのが北海道の特殊事情である、したがって、それまでの間やったらどうだ、こういうことなのであります。したがって、特例一時金の給付を受けても就職ができない、そして失業しておる、こういうような場合には、四十日の特例求職者給付金というようなものも当然支給してしかるべきではないか。ことに、大臣はいま給付と負担の公平のためにとおっしゃいましたが、給付と負担の公平の前に、命と健康を守るためにといういわゆる人道上の大目標があるじゃありませんか。行政はおくれておるのです。したがって、いまのような補完措置をとったらどうかと思うのであります。四十日の特例求職者給付金の支給はいまの北海道には必要なのでありますが、これに踏み切る意思のあることを表明してもらいたいと思います。
  38. 藤井勝志

    藤井国務大臣 本当に厳しい自然条件のもとで苦労されておる現場のお立場代表されていま御発言がございました。お気持ちは私はわからぬことはございません。ただ、先ほども申し上げましたように、負担と給付の現状、これは具体的にはまた局長から説明をいたしますけれども、一時給付に切りかえた方が合理的である、そして、切りかえた直後は選択制を一年間とったわけでございますけれども、一応合理的な改正の上に立って、北海道の積雪寒冷地帯に対してはいろいろ別の面から手厚い配慮をすべきである。すでにことし積雪寒冷地冬期雇用促進給付金、それから通年雇用奨励金、相当大幅な増額をしておるわけでございまして、そういう点において補って、そして、本当に自然条件と闘っておられる地域の方々に対してできるだけの援助をしていく、こういう方向に持っていくことが、最終的に御指摘の点に沿う合理的な道ではないか、このように考えるわけでございます。
  39. 島本虎三

    島本分科員 この問題につきましては、前労働大臣であった石田博英氏も、五十二年度の予算案の審議の際に、通年雇用が実現できる、またそれを期して行政を実施する、こういうような一つの決意で臨んだのであります。しかし、最大の努力をすると言明したにもかかわらず、まだ道遠しの感じがあるのでありますが、労働省としても大臣としても、いま通年雇用が先決だ、先行する、こういうふうにおっしゃいましたが、通年雇用に対して労働省としてはどのような対策をとっておられましょうか。
  40. 藤井勝志

    藤井国務大臣 前労働大臣の当委員会においての発言も私は承知をいたしております。積雪寒冷地における季節労働者の雇用の安定のためには、冬季における就業機会を増加するという意味において御指摘の通年雇用を促進することが基本である、この考えにおいては全く私も同意見でございます。  このような考え方から、前大臣も発言をしたが、その後どのよに進めておるか。これに対して、公共事業の工期を平準化していく、こういったことや、できるだけ早く契約を結び、早期発注をする、こういったことについて、関係省庁と密接な連絡をとりまして協力をお願いいたしておるわけでございまして、それにあわせて、先ほど申しましたような積雪寒冷地帯の雇用促進給付金、そして通年雇用奨励金の増額をやっていく、こういったことで、ことしも予算措置として相当思い切った給付金の充実をいたしてまいっておる、これが御質問に対するわれわれの対応の現状である、このように御理解いただきたいと思うのであります。
  41. 島本虎三

    島本分科員 そういうような状態で指導されておるのですが、現状はそれがまだ行書渡っておらないのであります。したがって、いま塗炭の苦しみの中にある季節労働者、ことに冬季、雪の中に生活しなければならない北海道の場合、例年にない大雪なんでありますが、そういう悲惨な状態を、ただ法律があるからそれでいいのだというような一片の答弁だけでは済まないのであります。私は、問題はそこにあると思っていまこれを聞いているのであります。  確かに現行の積寒給付金の制度があります。しかし、本来的に事業主の通年雇用への意欲を助長するために、事業主を通じて行うということになっております。労働者がいかに働こうという意思があっても、事業主を通じなければやれないということになっておるのであります。したがって、いまの北海道、不況の中で雪の中、その中では不正行為が大規模に行われている。これも御存じでしょう。事業主を通じて行うために、いまのような状態の中では、制度そのものの持つ本来的な弱みを逆用されるような結果になっているじゃありませんか。制度そのものは労働者を救済するためにあるのを、事業主を通ずるということでそれが逆用されている。例はたくさんあるのであります。一村ぐるみでこういうふうなことをしているという報道もあります。また、幽霊会社をつくって、雇用保険を一億八千万円詐取している、三百五十一人が書類送検、こういうふうな事例もあります。制度そのものの持つ弱みというものはきちっとしないと、せっかくの大臣の考え方が労働者に伝わらないで、不正に行われてしまうのであります。ことに、事業所と雇用関係のない労働者に対して、雇用関係があるように装って、雇用保険被保険者資格の取得並びに喪失を行い不正に受給した者、こういうふうなのが後を絶たないほど出ているのであります。時間の関係一つ一つ言わないだけです。もうすでに事業主を通ずるというこのやり方が不正を生む一つの温床になっているわけです。これで救済されますか。私は残念なのであります。したがって、百尺竿頭もう一歩進めるべきところに行政は到達しているのじゃありませんか。一歩進めますということを聞きたいのです。
  42. 藤井勝志

    藤井国務大臣 人間のつくる制度でございますから、裏をかかれると、いろいろといまのような逆効果というよりむしろとんでもないところにこれが悪用される、こういつたこともあり得ることであり、また現にあったという御指摘でございますから、私は政治家の一人として、そういったことに対して、本当に制度の趣旨が生かされるようにいろいろ工夫をしなければならない。工夫の仕方について私、いまとっさにどういうといういい考えは出ませんけれども、せっかくの御提案でございますから、ひとつよく受けとめて検討させていただきたいと思います。
  43. 島本虎三

    島本分科員 大臣もせっかく検討する決意を表明してくださいまして、この点ありがたいのであります。  しかし大臣、現在なお生活しておる人もおります。ことに前大臣から、通年雇用実現のために最大の努力を払うという言明が、一回や二回じゃありません、数回、耳にたこができるほど聞いているのであります。通年雇用は、北海道の場合やるとしたらまず開発庁。ますます深刻化する失業雇用情勢の中で、北海道関係でも季節労働者が二十九万人を超えているのでありますが、この五十日の一時金では危機的な様相であることは御承知のとおりでありますが、救済のために北海道の公共事業の冬季施工の可能性、そしてその工事量というようなことについては、開発庁としてはどうでしょうか。
  44. 吉岡孝行

    ○吉岡(孝)政府委員 北海道における季節労働者の問題が非常に大きな問題であることは、われわれも十分承知しているわけでございます。  先ほど来労働大臣の方から御答弁がありましたように、結局これの解決には、基本的には通年雇用できる雇用の場を拡大することが必要なわけでございますが、そのためには、われわれも北海道総合開発計画等において、いろいろ二次産業の導入等大いに努力することにしておるわけでございます。ただ、この問題は、なかなか一朝一夕にしてそういった産業構造の転換なり地場産業の振興というのはできないわけでございます。  当面の問題としましては、先ほど来労働大臣から御答弁がありましたような労働省の諸施策とあわせまして、われわれも公共事業の執行を通じても最大限の努力をしておるわけであります。  具体的に申しますと、五十二年度の北海道開発事業の実施に当たりましても、四月における発注を前年度に比べて約百二十七億円ふやして、春先の仕事をふやす、さらに、全体として秋の発注を平準化して、今度は冬日の仕事量をふやすというような努力をしておるわけでございます。それから御承知のように、五十二年度の補正予算におきましては、これは国費ベースでございますが、第一次補正として三百十三億円、第二次補正として二百三十二億円、さらにいわゆる契約権限であります国庫債務負担行為の枠として第一次補正で八十三億円、第二次補正で三百九十二億円計上しておるわけでございます。これらを通じまして、今冬期におきましては、季節労働者の就労の場というのもかなり拡大されるとわれわれは考えておるわけでございます。  さらに長期的な問題としましては、建設省が中心になりまして、公共事業の通年施工化技術研究協議会というようなものを設けまして研究をいたしておりまして、公共事業が冬季にも施工できるように具体的に検討を行っておる、こういう状態でございます。
  45. 島本虎三

    島本分科員 大臣、いま言っているとおり、通年雇用には予算は組まれてやっておるのですが、まだまだいまのような状態で冬季施工は困難性があるということであります。単価のかさ上げをしたり、また工事量も大幅に増加しておる、予算もふえておる。この予算の中で、冬季施工できるような予算にしてこれをおろしてやる、三割くらい増してやらぬとだめなんであります。予算がついているのでありますから、これはことしからできるようにやってやらないと、せっかくの好意も画竜点睛を欠くのじゃないかと思うのでありますが、大臣、この点はよろしゅうございますか。
  46. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いまのお話、地元の実情に合わせてできるだけ公共事業をふやし、これが施工の平準化といった面で努力をしなければならぬ点はよくわかります。ただ、技術的に取り扱いがそう簡単にいかないような面もございますから、御趣旨を踏まえてせっかくの予算が生かされるように努力をいたしたい、このように思います。
  47. 島本虎三

    島本分科員 季節労働者の居住市町村、自治体で、単独の仕事の確保、仕事の創出を当然図ってしかるべきじゃないか。現に実施しているところもあるのであります。あるいは川ざらいであるとか、砂利の採取であるとか、また木の枝切りであるとかを施工させながら、そして市町村自体で仕事、雇用を創出している、つくり出している、こういうところもあるのであります。  自治省に伺いますが、地方自治体の行う単独事業として特別交付金等で助成措置を行って、助成対象種目は除雪などを含めて大いに広いものにしてやって、いま労働大臣が言ったような効果を少しでも高めるような方向に努力してもらいたいと思うのでありますが、この点の対応はどうなってございましょうか。
  48. 関根則之

    ○関根説明員 雇用ないし失業対策につきまして、真っ正面から自治体が単独でその任務を果たしていくということは、実際問題として地方財政が非常に厳しい状況にありますのでむずかしい問題であろうと思っております。考え方の基本といたしましては、やはり労働省を中心として国のサイドで制度なり対策というものをきちっと立てて、それに伴って地方団体に応分の負担を求めるという場合には、やはり当然それに対応した財源措置というものをとっていく必要があろうと思っておりますし、そういうやり方で今後ともやっていただきたいというのが自治省の考え方でございます。  しかし、そうは言いましても、現実に関係市町村ではいろいろな仕事をやっておりますので、私どもの方としては、そういった市町村に対しまして、特別交付税の配分上、出かせぎ対策として五十一年度は十九億五千万の配分をいたしておりますし、また、先生お話のございました除雪費につきましては、普通交付税で八百億の積雪等によってかかります経費を見ることによりまして、除雪対策経費が賄えるような考え方をしております。特に豪雪がありました昨年におきましては、特別交付税の配分におきまして総額で百五十九億円の配分をいたしたわけでございますが、こういった従来からやっております対策につきましては、私どもとしては今後とも拡充強化を図っていきたいというように考えております。
  49. 島本虎三

    島本分科員 この一月から三月までの間、事業主を通じて通年雇用に結びつける努力を労働省がしておられる。そしていま北海道では、特に地域包括最低賃金が一日二千二百五十円。そうすると、当然国の方の千五百円と通じて、事業主が七百五十円の上積みをしなければならなくなるわけです。この事業主が、いわば何でもない労働者、この人たちのために頭ごなしに七百五十円ずつ積んでやる、これがなかなか困難な事態になっているわけであります。給付金の活用を渋る原因はここにあるのであります。したがって、雇用を創出するためには、自治体か雇用促進事業団体というような公の機関でこの差額金を上積みしてやって、そして雇用の創出を図れないものかどうか、この点は労働省いかにお考えでしょうか。また、自治体の方でもこういう点は図れないものかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  50. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの趣旨が必ずしもちょっとはっきりしない形があるのでございますが、要するにいまの積雪寒冷地冬期雇用促進給付金制度そのものを、たとえば市町村等の事業を請け負う企業組合等をつくってそれに対応するようなことを考えてはどうか、こういう御趣旨と承ってよろしゅうございましょうか。——そういう趣旨でございますと、この冬期の雇用促進給付金制度は、本来的に事業主の通年雇用の意欲を喚起しよう、こういうねらいがございます。そういう点から見ますと、もとの事業主でないところでそういう制度が使われるという点については非常にむずかしい問題もあるのでございますけれども、同時に、先生御指摘のような現状、並びにこの制度が生かされていくことの必要性等いろいろございますので、その可能性の有無を含めまして少し研究をさせていただきたい、こう考えているわけでございます。
  51. 島本虎三

    島本分科員 これとあわせて、現在の積雪寒冷地冬期雇用促進給付金、長い名前なんですが、この実施状況は必ずしも適確にいってないのじゃありませんか。そういうような一つの前提をもとにして適確に、また有効に生かされるためにいま、問題の点はどの辺にあるのだ。結局北海道の場合は、上積みが七百五十円、これを何の関係もない労働者を救うために、われわれも困っているのにその上積みをする必要があるのだろうか、こういう考え方のために給付金の活用が渋られる結果にならないように、自治体か——自治体だった場合には、他人ではありませんし、きちんと税金を取りながら労働者を世話しているのでありますから、自治体か雇用促進事業団体のような公の機関でこの差額は補てんするようにしてやったらいいのじゃないか、こういうことなんであります。  しかし、その意味まで一歩踏み出せなければ、私はいまここで大臣一つはっきりと提案しておきたいのであります。  いま四万五千円でございましょう。四万五千円程度の給付金で雇用に結びつけようとしても、これはやはりいろいろな状態から、いま申しましたような理由も一つでありますが、無理があります。したがって、多くの季節労働者はこの制度の適用すら受けられないままに困難な事態に追い込まれている、このことは御承知のとおりです。そして季節労働者の働く意欲は十分にございます。そして、もうすでにそういうことを実行している団体もあるのであります。悪用される、雇用主を通じてそれを給付するということではなく、自分が、働く者が団体をつくって、そして一つの組合を通じて市町村から、砂利採取であるとか山林の枝の伐採であるとかいう仕事を請け負って、みずからの生活資金をかせぎ出しているのであります。したがって、そういうような組合を企業組合として仕事を委託させるような方法もあるではないか。そうすると、不正なんかに利用されなくてもいい、そのまま組合の方へ行く、こういうことをしたならば一挙両得じゃないか、こう思うのであります。  本来は通年雇用の体制が整備されるべきでありますけれども、いま言ったような状態で、特殊な状態のもとにそれが困難である。しかしながら、やらなければならない。その努力はわかる。その間のつなぎとしても、その間の一つの過渡的な措置といたしましても、いわゆる緊急退避、こういう意味を含めて緊急的な措置として、季節労働者が企業組合をつくってこのような仕事を行う場合には、積寒給付金の対象にすべきだ、私はそう思うのでありますが、大臣、この点はここで決意してもらえませんか。
  52. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御提案の気持ちは、先ほども申し上げたように私よく理解をいたしておるつもりでございます。  先ほど局長からも御答弁をいたしましたように、この制度の趣旨が、事業主を通じてやって、大いに仕事をしようという意欲をかき立てる、そういったところにあるわけでございます。ただその制度が、本当に雇用のチャンスを与えられる労働者にストレートにいかないで、途中で悪用される、こういったことはまことに遺憾なことでございます。したがって、御提案の趣旨を体して私は検討させていただきたいと思います。  ただ一つ、実は最近の非常な雇用情勢の厳しさをわれわれは認識いたしまして、職業安定所単位に地方自治体と都道府県の出先機関と協議機関をつくって、雇用対策協議会というものをつくりまして、いまのような問題についても周知徹底を図れば、受け取る方の側の立場にある労働者も実態がわかる。ごまかされているかどうかということがわかりますし、本当に地についた制度になるのではないか。特に積雪寒冷地帯の特別給付制度というのは、内容的には、ことしからいよいよ中身を充実して発足するわけでありますから、ひとつ十分この問題を踏まえて努力をいたしたい。御提案はひとつ検討させていただきたい、こう思います。
  53. 島本虎三

    島本分科員 いままでの、どの答弁より前向きだったことを評価させてもらいたいと思います。いままでは勉強させてもらいたいという程度から一歩も出なかったのでありますが、今度、改めて検討するという一つの意思表示がありました。これはやはり現実の面として私は評価しておきたいと思います。このことを心から申し上げまして、私の質問を終わります。
  54. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて島本君の質疑は終了しました。  次に、春田重昭君。
  55. 春田重昭

    春田分科員 私は、五年目を迎えた経済不況により深刻になった雇用問題につきまして質問をしてまいりたいと思いますが、まず最初に、一番新しい時点の完全失業者と失業率をお示し願いたいと思います。
  56. 細野正

    ○細野政府委員 十二月時点におきまして、完全失業者の数が再十一万、失業率は季節調整で二・〇八というふうに記憶しております。
  57. 春田重昭

    春田分科員 それは何月の時点ですか。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 昨年の十二月でございます。
  59. 春田重昭

    春田分科員 例年一月、二月、特に三月ごろが失業者が一番ふえる時期なのでございますけれども、この三月ぐらいに政府としては、どのくらい失業者が出ると見込んでいるのですか。
  60. 細野正

    ○細野政府委員 先生から、いま御指摘ございましたように、一−三月いつもふえるわけでございますが、そのふえ方が季節的な要因もあったり、それからたとえば雪が多いか少ないか、いろいろな事情がございますので、的確な数字を申し上げることは非常に困難だと思いますが、ただ、昨年下期の前年に対する比率を見ますと大体一割程度、一割弱でございますけれども、平均的に高い水準で来ております。したがいまして、昨年の一−三が百二十万台ぐらいでございますから、百三十万台ぐらいに上るのじゃなかろうかなというふうに懸念をいたしておるわけでございます。
  61. 春田重昭

    春田分科員 そこで、百十万から百二十万、石三十万という非常に膨大な失業者が出ているわけでございますけれども、この中で中高年齢者はどのくらい占めているか、おわかりだったら御説明願いたいと思うのです。
  62. 細野正

    ○細野政府委員 いま手元に持っております資料によりますと、四十歳以上と四十歳未満で完全失業者の年齢別の内訳が出ているわけで、それでお答えをさせていただきたいと思います。それによりますと、四十歳未満のところがちょうど六割でございます。この数字は五十二年、年平均の完全失業者の数の中における年齢別の内訳であります。したがいまして、四十歳以上のところはちょうど四割、こういうことになっております。
  63. 春田重昭

    春田分科員 中高年といったら四十五歳以上ですから、四割弱だと、人数にして四十万ぐらいじゃないかと私たち踏んでいるわけでございます。そこで、政府としては新年度五十三年度には経済成長率を七%と見ておりますけれども、この七%成長を達成するためには雇用創出をどのくらい見ておるのか御説明願いたいと思います。
  64. 細野正

    ○細野政府委員 政府の経済見通しは御指摘のように七%成長を達成しよう、こういうことでございまして、その場合に、マクロで見まして就業者も雇用者も、いずれも前年度に比べて五十五万人増、こういう見通しを立てておるわけでございます。
  65. 春田重昭

    春田分科員 その五十五万人増の中で中高年者はどのくらい雇用を見ているのか、わかれば御説明願いたいと思います。
  66. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま申し上げましたように、この五十五万という数字はあくまでもマクロで計算しているものでございます。したがいまして、年齢別な内訳というものは出ていないわけでございます。しかし、この五十五万、これはネットで五十五万ふえるということですから、そのほかに交代、補充分がそこにございますから、全体としての総需要というものはもっと多いわけでございますが、それが先生御指摘のような中高年齢者の雇用に結びつきますように、いろいろな施策を通じて私どもとしては努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  67. 春田重昭

    春田分科員 努力するのはわかりますけれども、大体どれくらいを、たとえば三割とか四割とか、半分まで見るか、その辺の見通しというのは立てられないのですか。
  68. 細野正

    ○細野政府委員 これは求人と求職の結合は、求人者側の要件もあれば求職者側の要件もございますので、個別の結合というものを積み上げて計算するわけにもまいりませんので、なかなかむずかしいわけでございますが、ただ、先ほど申し上げましたように来年度から、中高年齢者を雇い入れる事業主に対する助成制度というようなものを新設することにいたしておりまして、そういうものによって雇用需要の増大を中高年齢者の雇用促進に結びつけてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 春田重昭

    春田分科員 失業の原因はいろいろな原因があると思いますけれども、大体要約すれば、企業の人減らし、また構造不況業種の職業転換の困難、そういうものが主な原因だと言われておりますけれども、特に高年齢者の方々が定年で退職したり会社が倒産して失業になったということで、非常に生活が苦しくて働かざるを得ない、こういう現況で失業者が一向に減らない。そういう高年齢者たちが滞留しているというのが一つ実情じゃないかと私は思うのです。ある統計によりますと、各企業が採用している五十五年定年制、これが変わらないとすれば十五年後には約一千万人の定年退職者が出てくる、このように言われているわけです。そういう点では中高年者の雇用問題というものは、いまや社会的問題となって無視できない、こういう現況じゃなかろうかと思うのです。  そこで、政府としては雇用法というものがあるわけでございまして、これは一昨年ですか十月改正されました。その雇用法の中には五十五歳以上の高齢者の雇用を一律六%の達成というものを課しているわけでございますけれども、この六%雇用率というものが必ずしも達成されてない、このように聞いているわけでございますけれども、従業員別で、その雇用率と、それの達成率を御説明願いたいと思うのです。
  70. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ね中高年雇用促進特別措置法に基づきまして六%という努力義務を課しておるわけでございますが、それの実際の雇用率がどうなっておるか、こういう点につきまして、昨年の六月現在における調査、この結果で申し上げるわけでございますが、実際に雇われている実雇用率産業計で五・六%、したがいまして、平均してみますと0・四ポイント法定努力義務としての雇用率を下回っている、こういうことになるわけでございます。  なお、これを規模別に見ますと、百ないし二百九十九人のところが八・三%、三百ないし四百九十九人のところが六・六%、それから五百ないし九百九十九人が五・八%、千人以上のところが三・九%、この平均が先ほど申し上げました五・六になるわけでございます。
  71. 春田重昭

    春田分科員 上と下をとった場合に、百名から三百名、これが八・三%、一応達成しておるわけです。ところが千名以上になったら三・九%、これは非常に達成してない。私から言わせれば非常に逆ではないか、このように思うわけでございます。  そこで、私の地元のを一応私も調査してみたわけでございますけれども対象事業所が八十二社ありまして、その中で二十三社だけが達成している。率からいったら二八%です。先ほども雇用率を言われましたけれども、私の調査によれば、三百人以下は未達成率が事業によっては五〇・九%ですか、一千名以上の従業員の会社では八二%が未達成である、こういう状況だと聞いております。従業員が多い大企業ほど非常に雇用率が悪い、こういう結果が出ておるわけですね。  この原因でございますけれども、政府としてもいろいろ対策なり処置をなさっていると思いますけれども、その達成されてない原因というものはどういうものか、それに対して政府としてはどのように、いわゆる行政指導なり処置をなさっているのか、その辺をひとつ明確に御説明願いたいと思います。
  72. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま先生御指摘のように、規模の大きいところほど達成率が悪くて、規模の小さいところは、むしろ法定雇用率を上回っている、これは御指摘のとおりなわけでございます。  その原因でございますが、いろいろの事情があるかと思われますが、一つには、小さい規模のところは比較的いわゆる年功序列賃金の体系になっていない。したがって高年齢者を雇いやすいという賃金体系になっているという側面が一つあるかと思います。それからもう一つは、大企業の場合には高年齢者を関連企業等にお願いをして、そこで新しい雇用の場を設けるというようなことが可能である。しかし小さいところになると、それができないというふうなこと。それから若い人を大企業の場合には比較的とりやすい。小企業の場合にはとりにくいので高年齢者を活用せざるを得ないというふうな、いろんな要素の結果として、先ほど申し上げましたような、規模が大きくなるほど高年者の雇用率が悪いという結果が生じているのではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  73. 春田重昭

    春田分科員 その原因はいいですよ。そこで、こういう法があるわけですから、名のみあって実なしでは何にもならないのですから、それに対する対策、処置、行政指導、どういうことを政府としてはやっているのか、それを聞きたいのです。
  74. 細野正

    ○細野政府委員 まず、高年齢者の雇用を当然促進しなければなりませんので、私どもとしては来年度から高齢者につきまして雇用安定給付金制度というようなものを、これは現在やっておるものでございますけれども、これを大幅に拡充してまいりたい。中身を若干申し上げますと、五十五歳以上の失業者を雇い入れていただいた場合に、その事業主に対して六カ月間、賃金の三分の二、二分の一を助成してまいりたい。こういう制度によりまして、高年齢者の雇用を促進してまいりたい。  それからもう一つは、高年齢者の雇用を進めるためには、何といいましても定年延長ということが大事でございますので、したがいまして定年延長についての奨励金も、来年度におきましては今年度の五割増しというふうな大幅なアップをいたしているわけでございます。念のために金額を申し上げますと、中小企業の場合には延長の対象になった労働者一人当たり十二万円というものを、来年度から年額十八万円にするというふうな大幅なアップを図りまして、こういうものを積極的に活用してまいりたい、これが一つの対策でございます。  それからもう一つは、結局、高年齢者の雇用率が非常に悪いところにつきましては、これの達成計画の作成を命ずることができる規定がございますので、この制度を活用してまいりたいというふうに考えているわけでありまして、当面、未達成企業全部といっても、これはなかなか一遍にやることができませんので、とりあえずの私どもの考え方としましては、まず達成率が非常に悪いということと、それから率だけではなくて達成の幅の人数が非常に大きいというようなことと、それからある程度、現に新規採用をできる状況にある。つまり構造不況等の非常にそこの現状維持すら困難なところに、これを強制するのはなかなかむずかしゅうございますので、そういう三点をメルクマールにいたしまして、この三点をメルクマールにしますと結果的にはかなり大企業がその対象になってくるということに当然なるわけでございまして、そういう意味で先ほどの御指摘のように大企業は非常に雇用率が悪いという点に対処して、達成計画を立てていただき、その計画の実施状況をずっとフォローしていくというかっこうで、雇用率の達成が進捗するように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  75. 春田重昭

    春田分科員 ただいま政府の助成強化と達成計画、こういう面から、この雇用率を達成していきたいという話があったわけでございますが、それも必要と思いますけれども、私はこの六%も低いと思っているのですよ。だから根本的には雇用率というものが一つは努力目標という形になっている。この努力目標という点で、各企業とも非常に厳しいでしょう、人員採用という面については一番問題点があります。そういう点がありますけれども、このいわゆる努力目標という点についてはきちっと法改正やって、明確に法のもとで規定していくということが必要じゃないか。それは一律にはできないですよ。従業員数が千名以上の大企業とか、あるいは構造不況業種は除くというような制約があるとは思いますけれども、そういう面においては努力目標じゃなくて法的にも明確にきちっと示す、また罰則も決める、それくらいの非常に強い一面の措置が必要じゃないか。いままででも助成だってあるわけだし、いろんな奨励制度だってあるわけですよ。それでもなお、これが達成されていないというのは、やはり基本的には余り効果を持っていない。若干幅を広めるという点はわかりますけれども、非常にむずかしいのじゃないか。私はこの六%でも低いと思っているのですから、そういう点から、その法の中身を強化する必要があるのじゃないかと思っているのですが、どうでしょうか。
  76. 細野正

    ○細野政府委員 こういう情勢の中で高年齢者の雇用を進めるのが非常にむずかしい点があって、したがって先生、切歯扼腕されて、もうちょっと規制を強めるべきじゃないか、こういうお気持ちは大変よくわかるのでありますが、しかし結局、高年齢者の雇用の問題は、定年延長そのものもそうでございますけれども、わが国の賃金体系自体が、いわば年齢が高まる、あるいは勤続年数が長くなること自体によって賃金がだんだん上がっていくという体系になっているわけでございます。それをそのままにして定年を延長すると、そのことによって、ますます賃金が上がっていく、あるいは退職金が増高する。あるいは各企業の中の問題として見れば、高年齢者の使い方がいままでどおりでございますと結局、人事が停滞する、したがって逆に労働者の内部でも若い人たちの共感がなかなか得られにくいとか、実は日本の労使関係上のいろんな問題があるわけでございます。  したがいまして高年齢者雇用というのは、やはりそういう賃金体系等を含めての企業内の人の扱いみたいなものをどういうふうにしたらいいかという点についての労使のコンセンサスというものが基本前提になって、労使がそのコンセンサスをつくりながら進めていくべき性質のものじゃなかろうか、こういうふうに考えているわけでありまして、そこの労使のコンセンサスづくりの問題を離れまして、率だけを強制して罰則をかけるというようなやり方では、実態的にも問題がございますし、結果としても、いろいろ大きな問題を残すのじゃなかろうかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、大変迂遠なようであり切歯扼腕ということになるかと思うのでございますけれども、やはり事業主の理解を得、それから労働組合の理解も得、そして賃金体系等についての改善も進めながら、同時に私どもがいろんな助成措置というものを強化しまして、これを一歩一歩進めていくというのが、この問題についての一番妥当なあり方ではないかな、こういうふうに考えているわけでございます。
  77. 春田重昭

    春田分科員 確かにわかりますよ。わかりますけれども大臣はよく認識なされていると思いますが、私の地元、守口の職業安定所で調べ統計によりますと、これは守口市と門真市、二市あるわけです。そこの求職数は三千四百六十五名になっております。ところが、求人倍率が平均で言ったら0・四七なんです。二人に一人は求職状態にあるわけです。ところが中高年、四十五歳以上の求職数といったら、三千四百六十五名の求職者の中で一千四百三十名です。全体の約四割です。そこで、この中高年齢の求人数は倍率で言ったら0・0五、いわゆる二十人に一人しかないわけですよ。若年者にとっては求人倍率は二人に一人ですけれども、四十五歳以上の中高年に対しては二十人に一人と非常に厳しい状況になっております。  そういう点からいっても今日、雇用問題というのは社会問題になっておりますし、特に中高年の雇用というのは大きな課題です。先ほど説明があったように、失業者の四割を中高年が占めているわけですから。  そういう点から経済成長七%、その中で個人消費を一一・七%伸ばすという形になっておりますけれども、この個人消費を伸ばすためにも、この雇用率というのは重要なかぎになっているのですね。そういう点で雇用率の問題につきましては先ほど説明ありましたけれども、私自身からいったら強化すべきである、こういう意見を持っているわけでございますが、大臣の所感はどうでしょう。
  78. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御指摘のように、中高年齢者の雇用対策というのは、現在いわゆる高齢者社会に入ってきた日本社会においては雇用問題の最大の課題である。特に不況の長く続く現下においては、なおさらその認識を新たにするわけでございまして、そういう面について、ただいま局長からるるこの雇用対策について御説明を申し上げた次第でございまして、何といってもお互い、ありがたいことに寿命が延びて、男子の場合もう七十二歳が平均寿命だという、こういう時代でありますから、労働省としては厳しい雇用情勢を背景にして、中高年齢者の雇用対策については知恵をしぼって工夫をし、また委員会の各委員の皆さん方の御発言を体して、ひとつ大いに今後も充実していきたい、このように考えておる次第でございます。
  79. 春田重昭

    春田分科員 そこで、この中高年齢層の方たちの能力を開発したり職業転換をやるために職業訓練校というのがあるわけでございます。この職業訓練校というのは、職業訓練法の中で昭和三十三年制定されたわけでございますけれども、ここで明確に記されておるわけでございますが、この中身の問題でございます。最近非常に中高年の方に人気を呼んでいる科にビル管理科とか造園科とかいろいろあるわけでございますけれども、私の地元の例からいったら、これは都道府県主体の訓練校でございますけれども、守口の高等職業訓練校というのがあります。この中でビル管理科というのがあるのです。ところが定員が十名なんです。したがって、この定員十名の枠の中で、守口の職安としては、いろいろな最寄りの職安も全部申し込むわけですから、いわゆる受講支持ですか、その学校へ推薦する依頼書、これを発行するその受講支持がわずか一名なんですね。ところが、先ほど言ったように求職数の中で約四〇%が中高年の方で、こういう点で非常に訓練校に行きたがっているわけですよ。ところが枠が狭いということで行けない。こういうことで、そういう訓練校の中においては制度を改善すべきいろいろな問題があると思うのです。こういう点で、やはり時代に応じて、また時に応じて、その中身を改善する必要があるのではなかろうか。特に、こういう造園科とかビル管理科とか、ふすまの張りかえ、そういう非常に人気を博している科は制度改善をする必要があるのではないかと思っておりますけれども、どうですか。
  80. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 先生御指摘のとおり、既存の職業訓練校は、どちらかというといわゆる生産工程の技能労働者あるいは建築関係の技能労働者の関係の職種が非常に多いわけでございますけれども、最近の離転職者訓練、特に産業構造の変化に伴いますいわゆる第三次産業向けの職種、あるいはいま御指摘のようなビル管理科あるいは造園等の職種に転換をさせるというための訓練を拡充しなければならないことはもちろんでございます。施設内でやります場合にも、外からの外部講師等を活用いたしまして、できるだけ多くの人数が収容できるようにいたさなければならない。同時に、いろいろな事情で、いま具体的に御指摘の点は私ども調べて検討させていただきたいと思いますが、民間の共同事業内訓練等でやっております施設に対しても委託をいたしまして、そういう職種への転換の訓練を充実してまいりたいという方向で考えております。現実にビル管理の問題につきましては、民間でそういった教育訓練施設がございまして、東京あるいは名古屋、大阪等にそういうものがありますので、それらともコンタクトを十分とりまして、今後そういった離転職者の訓練に対する要請にできるだけこたえるように努力してまいりたいと思います。
  81. 春田重昭

    春田分科員 これらの問題は、いま審議会で鋭意検討されているということを聞いておりますし、この審議会で諮問されたものの答申が来るでしょう。これはこの通常国会に出す予定なんですか。出すとすればいつごろになるのか、明確にしていただきたいと思います。
  82. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま局長からいろいろ職業訓練の対応についてお話しいたしましたが、すでに職業訓練法は十年前改正をされて、その後の激しい日本経済社会の変化に対応し切れないような状態でございまして、先ほどから御指摘のございましたような問題、私も全く同感でございまして、そのような方向に職業訓練ができるように、職業訓練法の改正について、現在、改正案を急ぎまして審議会にかけて答申を得次第、社会労働委員会、所管の委員会に諮りまして改正をいたしたい、このように考えております。
  83. 春田重昭

    春田分科員 それは時期的に大体いつごろですか。
  84. 藤井勝志

    藤井国務大臣 三月の大体中旬ごろをめどに準備を進めております。
  85. 春田重昭

    春田分科員 最後に、時間が参りましたのでまとめて質問していきたいと思いますが、一つは、せっかく訓練校へ行っても、それが就職に結ばないという面があるわけでございまして、そこで企業との雇用予約制度といいますか、契約制度といいますか、非常にむずかしい問題もあると思いますけれども、これを法の中に入れたらどうかという問題、これはもう要望です。それが一つ。  それから二番目は、雇用保険がきかない人については訓練費があるわけです。いま平均で六万七千円か六万八千円と聞いておりますけれども、これも非常に少ない。そういう点で、訓練校に行きながら生活を支える方については、この六万七千や六万八千では少ないので、少なくともアップすべきである。私は十万ぐらいにすべきじゃないかという提案を持っておるわけですけれども、この点どうか。  三番目は、時期の問題でございますけれども、一年定期の方は大体四月が入学期になっています。六ヵ月間通う方は四月と十月、こうなっておりますけれども、これもやはり入所希望者によって、時期的に四月とか十月とかそういうふうに決めないで、それに順応して入所時期を決めていくべきではないか、こういう意見を持っておるわけでございますけれども、この三点につきまして、最後にまとめてひとつ御答弁願いたいと思います。
  86. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの第一点の離転職訓練をする者について、あらかじめ企業との雇用予約をとってやるべきではないか、これは実際に私どもも、職業安定機関が受講支持をいたします。それから訓練が三ヵ月ないし六カ月行われるわけでございますが、その間においても、その訓練を受けている方々の雇用先についての開拓は努力をいたしておるわけでございます。それで、できるならば訓練の途中の二カ月なり三カ月ぐらいのところで、雇用しようという事業主が見つかれば、今度はその事業主との連携を十分とりまして、その事業主が要望するような訓練のできぐあいということも考えてまいりたい。しかし、これは必ずしも法律の規定を必要とすることではなしに、現実には指導ないし私どもの行政努力で進めていけることだと思い、私どもも、そういうような形での職業安定機関訓練校との十分な連携については常々指導をしております。今後とも、その指導を強めてまいりたいと思っております。  それから第二点の訓練手当の件ですが、現在の離転職者の大部分は、失業保険給付を受けながら、あるいはまた失業保険給付相当の訓練手当を受給しながら職業訓練を受けているというのが実態でございます。そうでなしに、中高年措置等によります失業保険給付ではない訓練手当、これにつきましての御指摘かと思いますけれども、これもほかのいろいろな諸手当とのリンクの問題もございまして、来年度の予算では今年度に比べて一〇・九%、一一%弱のアップによりまして約七万五千円という数字になっております。これがまだ低過ぎるじゃないかという御指摘かと思いますが、その点は今後ともに年度年度についてはできるだけの努力をしてまいりたい、このように考えております。  第三点の入所時期の問題でございますが、これは正直に申し上げまして現在いろいろな訓練の技法等の問題もありますために、能力再開発の訓練は四月、十月というようなことを一般に行っております。しかし、私ども昨年来この訓練技法の開発についても手がけ、努力をしておりまして、ないし、その訓練技法の開発を待つまでもなく、全国職業訓練校において離転職者訓練については入校時期を多様化すべきであるということから、来年度につきましては相当の幅を持ちまして年四回とか、そういうことで漸次二月に一遍というようなことにできるだけ近づけてまいりたい、こういうことで努力をいたしております。
  87. 春田重昭

    春田分科員 いずれにしても中高年層の雇用問題は大きな問題でございます。今回、法改正されようとするものが雇用創出につながる、それが永続性につながるものとして私は運用を望む次第でございます。  最後に、この職業訓練校には身障者の訓練や指導員の待遇改善、設備老朽化の改善等々、様々な問題がございますけれども、今回、時間がございませんので中高年の問題だけにしぼってきたわけでございますが、こうした問題につきましても鋭意努力していただきたい。この点を要望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  88. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて春田君の質疑は終了いたしました。  次に、池端清一君。
  89. 池端清一

    池端分科員 私は、学校給食の民間委託に関する労働法制上の諸問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に学校給食のあり方について、労働大臣の御見解を承りたいと思うのであります。従来、政府は学校給食につきましては、学校給食は学校教育の一環であるから設置者の責任において実施すべきものである。いろいろ財政事情はあろうとも、いわゆる直営方式で公の行政が担当すべきものである、こういう態度を国会においても、しばしば表明してきたところであります。本来これは文部省の所管に属する事項ではございますが、後に職安法との関連をお尋ねすることになっておりますので、そういう観点から、この際あえて労働大臣の御見解を承りたい、こう思うわけであります。
  90. 藤井勝志

    藤井国務大臣 学校給食の問題につきましては、ただいま御指摘のように、これはあくまで教育的見地という立場から地方自治体が管理者として、また学校がその執行をいたします責任者として行っておられるわけでございまして、われわれ労働省としては文部当局の指導方針に従い、指導方針を尊重してまいることは当然であると思います。
  91. 池端清一

    池端分科員 文部当局の指導方針に従い、それを尊重する、こういう立場に立っておる、これが政府の統一見解である、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  92. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働省として、また、その責任者である労働大臣としての考え方を申し上げたわけでございます。
  93. 池端清一

    池端分科員 それでは、ひとつ具体的にお尋ねをしたいと思うのでありますが、学校給食の民間委託、すなわち各自治体で設置をいたしております学校給食センターの調理部門を民間に委託するということにつきまして、職業安定法上問題がないかどうか、この点をお尋ねしたいと思うのであります。  御案内のように職業安定法第四十四条では「何人も、第四十五条に規定する場合を除く外、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を使用してはならない。」このように規定をされておりますが、民間委託というのはこの労働者供給事業の禁止に触れるのではないか、このように思うのでありますが、労働省の見解を承りたいと思います。
  94. 細野正

    ○細野政府委員 いまお尋ねございました学校給食を民間委託するということにつきましては、その請負契約の内容いかんによりましては安定法の四十四条で禁止する労働者供給事業に該当する場合があるというふうに考えております。この場合、特に問題となりますのは、一つには、請負をされた方がみずからの責任で労働者を指揮監督しているかどうかということが一つのメルクマールになるかと思うわけであります。もう一つは、作業に必要な機械、資材等をみずから提供してやっておるかどうか。それから請負業者そのものが、その責任において作業の遂行につきまして全般的に企画したり、あるいは専門的な技術並びに経験性を発揮しているかどうかというふうなことが一つのメルクマールになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  95. 池端清一

    池端分科員 一つのメルクマールになるのではないかというお答えでございますが、私は重ねてお尋ねをいたしますけれども職業安定法施行規則第四条第一項の一号から四号までのすべての構成要件を満たしていなければ、これは労働者供給事業の禁止に違反する、こういうふうに実は理解をいたしておるわけであります。その理解が間違っておるのかどうか、その点をもう一回重ねてお尋ねをしたいと思います。
  96. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねございましたように、安定法施行規則の四条一項の各号に書いてございますことは、これはその本文にもありますように、すべてに該当する場合を除いて労働者供給事業を行う者とすると書いてありますから、この表現の限りにおきましてはメルクマールではないというふうに考えます。ただ、私が先ほど若干例示的に申し上げましたのがメルクマールという意味で申し上げたわけでございます。
  97. 池端清一

    池端分科員 それでは、もう一回念のためにお尋ねいたしますが、この施行規則第四条第一項の一号から四号までの要件を満たしていなければならない、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  98. 細野正

    ○細野政府委員 現行の施行規則上はおっしゃるとおりでございます。
  99. 池端清一

    池端分科員 現行というのは何ですか。現行というよけいな注釈をつけないでもらいたいのですよ、私は法律に即して物を言っているわけですから。
  100. 細野正

    ○細野政府委員 施行規則上おっしゃるとおりになっておるわけでございます。
  101. 池端清一

    池端分科員 次に、具体的にいま問題が起きております北海道苫小牧市のケースについてお尋ねいたしたいと思います。  苫小牧市の場合につきましては、労働省としても、これまで直接、市当局並びに労働組合側から事情を聞いておりますので、その内容は十分熟知されておると思うのでありますが、苫小牧市が現在考えております学校給食センターの調理部門の民間委託について、労働省としてどのような見解を持っておられるか、また今日まで、どのような指導をなされてきたのか、その辺を具体的にお伺いしたいと思うのです。
  102. 細野正

    ○細野政府委員 苫小牧市におきます学校給食業務の関係でございますが、これは学校給食の業務量が増加してまいりましたので、従来から市の直営で第一給食センターというのを実施いたしておりまして、それに新たに第二給食センターを設けまして、第二の方を民間業者に委託しようという計画のように聞いておるわけです。  この計画の具体的内容につきましては、たとえば献立の作成が市職員である栄養士及び受託業者の栄養士の双方で作成するというようなお話になっております。それから原材料の購入は市が実施して、その調理部門を民間業者に委託をする。委託を受けた方の受託業者は第二センター施設内で調理、食器洗い、ボイラー、設備、機械の保全等の業務を行うというふうに聞いているわけであります。  これにつきまして、お尋ねがございました安定法との関係で見ますと、市の職員である栄養士が受託業者の栄養士あるいはその他の人たちを指揮監督するということになりますと、先ほどの規定との関係で問題があるのじゃなかろうかということが一つございます。  それから二番目には、市の職員でありますところの栄養士の方が中心になって献立を作成したりというふうなことでございますと、受託業者側みずからの責任で企画しておるかどうかという点についても疑念が出てまいるわけであります。そういう意味で、法律上疑義があるということで、私どもの方で内々指導をいたしたわけでございます。これに対しまして苫小牧市の方から、指摘されました事項について一定の改善を加えた案を私どもの方に出してきているわけでございます。  その案の中身は、一つには、献立の作成は市の栄養士と、それから外部の委員、その中に栄養士等も入るのだと思いますが、それを入れました委員会で行うという形が一つ。二番目には、市の職員である栄養士は受託業者の栄養士とその他の従業員について指揮監督はしないという条件をつけます。こういう案を御提出になってきているわけであります。  ただ、私どもも学校給食業務の特殊性等から見まして、その改善案につきましてもなお、たとえば実際の運用上について若干疑念が残るというふうに考えているわけでございます。したがって、これが直ちに法違反なのか、あるいはどうなのか、こういう点につきましては現在慎重に検討しているところでございまして、結論につきましては、いましばらく時間的な御猶予をいただきたいと考えているわけでございます。
  103. 池端清一

    池端分科員 当初、市側が出してきた内容では法律上疑義があるということでございますね。法律上疑義があるということは、この労働者供給事業の禁止に触れる、こういうふうに考えられるということでしょうか。その点を重ねてお尋ねします。
  104. 細野正

    ○細野政府委員 そのおそれがあるということで指導をいたしたということでございます。
  105. 池端清一

    池端分科員 そういう指導をなされたようでありますけれども、実は、二月二十八日から開かれております苫小牧市議会では、いま局長が言われたようないわゆる第二次案といいますか、改善案を提案しているのではなしに、当初の案を提案している。おたくの方でそういう指導をしているにもかかわらず、依然として従来の案で市議会の承認を求めようとしているわけであります。この当初の案で、もしおやりになるというのであれば、これから労働省としてはどういう対策、指導をされていくのか、ひとつその辺をしかと承りたいと思うのですよ。
  106. 細野正

    ○細野政府委員 私どもは、先ほどお話を申しましたように指導をいたしましたのに対して、この改善案が出てきておるわけですから、少なくとも、そのもとの案のままで強行されることについては、よく接触をとりまして、それについては疑義があるということを強く申し入れてまいりたい、こういうふうに考えております。
  107. 池端清一

    池端分科員 どうも、労働省はいろいろ指導をしておると言うけれども、実際に地方でやっておることは必ずしもそれに沿ったような方向で行われていない。私はやはりこういう問題については毅然として指導を行うべきだ、こう思うのです。文部省も、これは好ましくないということを再三言っておるわけでありますけれども、どうも強制力がない。ですから私は、きょうあえて労働法制上の問題で労働省お尋ねをしておるわけであります。  そこで、いま第二次案ということが言われました。私もこの内容を検討いたしましたが、確かに、問題点を薄めようとしている姿勢はわかります。姿勢はわかりますけれども、たとえば市の職員である場長というのがおるわけです。この場長さんが場内の総括管理と委託業者との連絡調整に当たるだけで、作業に従事する労働者を指揮監督するものではない、こういうふうに市当局は説明をしておるようでありますが、私は総括管理の中には当然指揮監督の権能も含まれるものだというふうに理解をするわけであります。単に、この施設管理の責任を負うだけというふうに言うのは表面上の糊塗策ではないかと思うわけであります。  第二に、献立は公費の栄養士と民間の栄養士を含めた委員会方式をとることによって民間の栄養士に企画性を持たせようとしておるわけであります。ところが市当局は、これまでの職員団体との交渉の席上では、献立は現にある第一給食センターと、四月一日から発足しようとする第二給食センターと全く同じものにするのです。こういう説明をしておるわけであります。私は当然、献立は同じものでなければならないと思うのであります。そういうことであるならば、なおさらのこと委託部門の民間栄養士は単なる労務を提供するだけのものではないか、こういう疑問を強く持つわけであります。  以上のように考えてきますと、改善案とは言っておりますけれども、依然として問題点は解消してない、こういうふうに私は考えるわけでありますが、その点について再度、この改善案と称するものの内容についての見解を承りたいと思うのです。
  108. 細野正

    ○細野政府委員 いま先生からお話がございましたように、改善案自体については、私どもの指導の線に、ある程度沿って改善されてきている面があると私どもも思っております。しかし先生御指摘のように、主として実際の運用がどうなるかというようなあたりについて、私どもとしても懸念が残っている点も事実でございまして、そういう点も含めまして、いま慎重に検討しているという段階でございます。
  109. 池端清一

    池端分科員 なお懸念がある、問題点がある、こういうことでございますね。それで現在慎重に検討中だ、こういうことですが、それではいつまで検討を続けるのか。実はこれは四月一日から発足することになっているわけであります。現に二十八日から開かれております市議会にも提案をされて、いま、この問題をめぐって苫小牧では大変な問題になっているわけであります。そう悠長に構えてはいられない、そういう情勢にいま直面しておるわけでありますが、いつごろまでに最終的な結論を出すのか、その点をひとつお尋ねしたいと思います。
  110. 細野正

    ○細野政府委員 検討の時期につきましては、先ほど申しましたような実体的な運用の問題等もございますから、その辺についての判断をしなければなりませんので、何月何日というように正確な日数で申し上げるのはなかなかむずかしいと思います。しかし同時に、先生御指摘のようにいま現に市議会等で問題になっているという点も十分踏まえまして、できるだけ早く結論を出すように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  111. 池端清一

    池端分科員 非常に時期が急がれている問題でございます。  そこで、この施行規則の第四条の第二項で「前項の各号のすべてに該当する場合であっても、それが法第四十四条の規定に違反することを免かれるため故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第五条第六項の規定による労働者供給の事業を行う者であることを免かれることができない。」と規定もされているわけであります。私は、苫小牧市の場合これが偽装であるというように極言をするつもりはございませんけれども、法はこのように厳密に規定をしているということを十分踏まえていただきたいと思うのであります。したがって、なお問題があるというのであれば、この法の精神に従って厳密に対処して、関係自治体に適切な指導を行ってもらいたい、こう思うのであります。  そこで、この指導の方法ですね。もう口頭でやりとりいたしましても、今日まで聞いた聞かないの水かけ論になったりしているわけであります。文部省から道の教育委員会を通じてもいろいろな指導がなされているわけでありますが、これを指導と受け取らないとか、そういう話は聞かなかったというようなことも出ておるわけなんで、この指導の方法等についてもどのようになさるお考えなのか、ひとつ承りたい、こう思うのです。
  112. 細野正

    ○細野政府委員 この種の問題につきましては、中間段階では、たとえば文書とかなんとかというかっこうでやりとりすることは、いろいろな逆の問題も考えられますので、やはり直接担当の、たとえば道の関係者が市の関係者から事情を聴取するとか、あるいは現地に行って指導するとか、そういうやり方を考えているわけでございます。
  113. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 分科会の審議進捗上、主査に対してお願いしたいのですが、この問題は米飯給食奨励といういまの国策上の問題もあり、全国的に非常に重要な問題だと思うのです。  いまの池端委員との質疑応答によれば、労働省当局は原案は職安法に触れる疑いがあると見た、そこで注意をした、改善案が出てきた。ところが池端委員によると、二月二十八日ですから昨日ですか、原案で提案している。この辺の真相と、それから改善案を一切検討されないような状態であるのかどうかを、分科会の労働日はきょういっぱいですけれども、ぜひ分科会中に早急に連絡をとって池端委員にそれを明らかにして、委員会の運びをスムーズにお願いしたいことを主査に提案いたします。
  114. 細野正

    ○細野政府委員 いまの御指摘の二点につきまして調査をいたしまして、池端先生に報告するようにいたします。
  115. 池端清一

    池端分科員 最後に申し上げますが、最初に大臣が述べられましたように、学校給食というのは単に児童生徒に食事を与えるといったようなものではないわけであります。学校給食法に明確にその目的、目標が規定をされておりまして、これは教育の一環として実施をしているものであります。したがって当然公の責任で実施すべきものであります。そういう重要な観点も踏まえて、ひとつ早急にこの問題は結論を出してもらいたい。先ほど来から申し上げておりますように、いま市議会が開かれておりまして、この問題についていろいろな議論がなされております。やはり地方でこういうものを審議する場合の明確な指針、方針というものを国が早急に打ち出すことが重要であろう、こう思いますので、ひとつこのことを念頭に置いて検討をしてもらいたい。  それからもう一つは、先ほどから申し上げておりますように、法律は労働者供給事業の禁止ということを厳密に規定をしているわけであります。この職安法の精神に沿って、労働法の番人である労働省がやはり厳然たる姿勢を示してもらいたい。これは単に北海道苫小牧市だけの問題ではありません。いま、全国的に学校給食の昂間委託という傾向が強まろうとしておるわけでありますので、非常に大きな問題でありますから、そういうことを念頭に置いて、速やかなる結論を出してもらいたいということを大臣に強く要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  それからなお、先ほど川俣委員から指摘をいたしました問題についても、早急に回答を示していただきたい。
  116. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御発言の趣旨に沿いまして善処いたします。
  117. 池端清一

    池端分科員 終わります。
  118. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて池端君の質疑は終了しました。  午後一時再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  119. 住栄作

    ○住主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川省吾君。
  120. 小川省吾

    小川(省)分科員 お尋ねをいたします。  私がこれからお尋ねをいたすことは、むしろ通産にかかわる問題だろうと思うのでありますが、特定不況業種離職者臨時措置法が労働省所管でございますので、お尋ねをいたしてまいりたいと思っております。  フェロアロイ産業というのがありますね。フェロアロイの業界の実態についてどのような認識をお持ちでしょうか、お尋ねをいたします。
  121. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねのフェロアロイにつきましては、そのほとんどが鉄鋼生産に使われるものでありますために、最近になりまして世界的な鉄鋼の減産により需要が著しく低下をしていると聞いているわけであります。また、電気料金の高騰によりまして、国際競争力も減退をしていると聞いておるわけであります。  なお日本フェロアロイ協会の統計によりますと、生産量は、五十年の約二百十一万トンから逐年減少しまして、五十二年には約一割減の百八十四万トンに低下をしている、雇用者数につきましても、五十年の約一万一千人から五十二年には約一万人程度へと減少しているというふうに聞いておるわけであります。  そういうことで、通産省と関係業界との間で、このフェロアロイ業の将来の見通しを踏まえまして、今後の基本的な諸問題について現在検討しているところであると承っておるわけでございます。
  122. 小川省吾

    小川(省)分科員 おっしゃるように、フェロアロイ産業は銑鉄から鋼や特殊鋼をつくる際に用いる脱酸剤や、または添加剤として使用されるフェロマンガンとかシリコマンガンとかフェロシリコンとかフェロクロム等が、製鉄について不可欠のものになっておるわけであります。  フェロアロイ業界は、オイルショック以降不況の度が進んで、いまや救いがたい現況にあると思われます。人員整理をして企業閉鎖をするところ、あるいはまた他の部門へ吸収を図るというふうなところなど、壊滅に近い状態を呈しておるわけでございます。その原因や理由を見ますと、電力多消費の産業でございますから、高い電気料金やあるいは資源ナショナリズムによるところのいわゆる原料高の製品安、あるいは円高による輸出競争力の低下等いろいろあります。鉄鋼とともに伸びてきた産業ですから、製鉄業界の不況による内需の低下等が主要な原因になっているようであります。そういうことですね。
  123. 細野正

    ○細野政府委員 私ども承っておりますのも、いま先生御指摘と大体同じでございます。
  124. 小川省吾

    小川(省)分科員 フェロアロイの生産は昭和四十九年度に二百四十五万トンが最高で、昭和五十一年度は二百十五万トンで、昭和五十二年度は二百万トンを割るというふうに言われています。一方内需は、昭和四十八年度は二百三十四万トンが最高で、昭和五十一年度は二百十万トン、昭和五十二年度は二百万トンを割るというふうに言われておるわけであります。  一方、わが国のフェロアロイ生産設備は、世界最高の水準と言われております。昭和五十一年度末におけるフェロアロイ製造用の電気炉は百九十基、百九十一万三千三百キロワットあると言われておるわけであります。設備の稼働率は昭和四十九年度を頂点として、その後は鉄鋼不況を反映して次第に低下をして、五十二年十一月には五〇%を下回り、今後はさらに低下をしていくものだと思われるわけであります。  そこでお伺いしたいのは、休炉や人員整理、解雇等が続出をしている現況にありますので、特定不況業種離職者臨時措置法の指定対象にぜひしていただけないものかどうか、お尋ねをいたしたいと思うわけであります。
  125. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねのフェロアロイ業界につきましては、これを特定不況業種離職者臨時措置法の対象にならぬか、こういうお尋ねでございますが、先生も御存じのように、特定不況業種としての指定をいたします場合には、いま先生のお話しございましたような、生産とか雇用とかが低下をしているというだけではなくて、これは明らかに法律上、法令に基づく行為または国の施策に基づく事業規模の縮小等が行われることが要件とされているわけであります。そういう意味で、この辺の国の施策そのものをどういうふうに通産省において今後考えていくか、この辺につきましては、現在業界と通産省とが検討いたしていると聞いているわけでございます。そういう意味で、私どもとしましても、現在通産省と関係業界の間で行われております基本的な諸問題についての検討の推移を見守りつつ、この法適用の問題については検討させていただきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  126. 小川省吾

    小川(省)分科員 特定不況業種離職者臨時措置法では、十二月二十六日に二十六業種、一月二十三日に六業種の指定をしたわけですね。そうでしょう。
  127. 細野正

    ○細野政府委員 正確な数字は記憶しておりませんが、先生御指摘のように、しばしば追加指定をいたしたわけでございます。
  128. 小川省吾

    小川(省)分科員 十二月の二十六日に政令三百三十号の指定のその十七番目に「電気炉による製鋼及び圧延業」という項目があるわけですね。製鋼には不可欠のフェロアロイ業界でありますから、この中に含まれるといいますか、この項目の適用はできないのかどうか、重ねてお伺いをいたします。
  129. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど申し上げましたように、この業界について国の方針自体が確立されるということが法適用の要件になっておりますので、したがいまして、その通産省における国の施策の検討を待たないと法の適用をするわけには現にまいらないという状況にあるわけでございます。
  130. 小川省吾

    小川(省)分科員 現在フェロアロイの業界に働く労働者の総数は一万七千人と言われております。いまこうして話をしているときでも、首を切られているような労働者がいるわけですから、当然早急に指定をされるべきではないかというふうに思うのであります。先ほど言いましたように、十二月二十六日に出された二十六業種のうちの十七に、電気炉による製鋼あるいは圧延業というのがあるわけですから、その中に該当させてもよろしいのではないか、こういうふうに考えているわけであります。早急に手を打つべきだというふうに思うのでありますが、特に製鋼に関連をする不況のわけでありますからなおさらだと思うわけであります。いかがですか。
  131. 細野正

    ○細野政府委員 業界の実情につきましては、先生御指摘のような事情を私どももある程度予知しておりまして、したがいまして、お気持ちはよくわかるのでございますが、先ほど来申し上げておりますように、通産省のこれに対する基本的な方針を決めてもらうのがまず前提要件になりますので、むしろ、私どもも、通産省とよく連携をとりまして、早急にその方針が出るように通産とよく打ち合わせをしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  132. 小川省吾

    小川(省)分科員 何か聞くところによりますと、通産の方では、特定といいますか、不況業種に対する新しい法案を用意をしているやに聞いております。それができればその中に包含をして適用していけるのではないか、こんなふうなお話を通産筋からは聞くわけでありますけれども労働省の方ではどのように把握をしておりますか。
  133. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、関係法案が通産省において、もう提案になったと思いますが、準備をいたしておるわけでございます。私どもは、方針さえ決まれば、その法律の成立を待たなくても、特定不況業種離職者臨時措置法の対象にはなし得るというふうに考えておりまして、したがいまして、いま御指摘のように、そちらの法案に乗っけるか、あるいは乗っけなくても、方針を固めて離職者臨時措置法そのものでやるか、いずれにしても、通産省とよく連携をとって早急に検討してまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。
  134. 小川省吾

    小川(省)分科員 何か聞くところによると、その新しくつくる法律でフェロアロイを含めれば、そういう形の上で適用できるようになるのだというふうに私は通産筋から承っているのですが、そんな理解でよろしいでしょうか。
  135. 細野正

    ○細野政府委員 数字的な実態、たとえば生産量とか雇用量とかについては、ある程度要件を満たしているように思われますので、したがいまして、通産省の方針が決まれば適用になる、こういう考え方でおりますから、したがいまして、通産省で御準備の方の法案の対象になれば、これは当然適用されるべきものではないかというふうに考えておるわけであります。  なお、その法律の成立を待たなくても、通産省の方の方針さえ固まれば、離職者臨時措置法そのものの適用対象にはなり得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  136. 小川省吾

    小川(省)分科員 以上、いろいろ申し上げてきたわけですが、実は私の選挙区に大間々町という町があります。そこに赤城合金という会社があります。資本金は六千万円、全額日本重化学工業の出資でありますが、従業員は工場長以下二百二十四人の工場であります。この工場はフェロアロイの中の特に低炭素フェロクロムをつくっているところの会社でありますが、昨年以来御多分に漏れず景況がダウンをして、いまや操業停止に追い込まれているのが実態であります。低炭素フェロクロムばかりの工場ですから、いわば他の部門へ転出するといいますか、出向するというか、そういうことができない状態で、従業員はそこが操業停止をすればやめなければならぬというようなことになっております。近く従業員の三分の一を希望退職という名の解雇をして、そして他の部門に転進をしようというようなことで、現在組合と協議中になっておるわけであります。この会社の経営の責任でもないし、業界の実態から来ていることはもう明らかな事実でありますから、ひいては鉄鋼業界全体の影響であることは明らかであろうと思うのであります。そういう意味では、私は、どうしても特定不況業種離職君臨時措置法による指定がぜひとも必要だ。この際、フェロアロイ業界全体一万七千人の指定をぜひまげてもお願いをいたしたいと思うのでありますが、第二条の定義のところに、先ほど局長が言われたような、いわゆる法令等に基づく企業の縮小とかというのがありますけれども、まげてこの際この適用をできるようにぜひお願いをできないかということで御質問を申し上げるわけです。
  137. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御発言の趣旨を踏まえて、検討させていただきます。
  138. 小川省吾

    小川(省)分科員 私は、去って行く労働者を見るに忍びないし、実際にその会社の責任でもなく、業界全体、鉄鋼業界全体の影響で来ているわけでありますから、いま大臣が言われましたようにぜひひとつ検討をお願いをしたい。そして、法第二条の定義の中にあることは、十分、法令その他によるところの企業の縮小とか何とかいうのがありますけれども、まげてひとつ御解釈をいただいて、適用していただくように、心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  139. 住栄作

    ○住主査代理 これにて小川君の質疑は終了しました。  次に、宮田早苗君。
  140. 宮田早苗

    宮田分科員 産業界の雇用の問題は、今日一部企業が直面しておりますように、賃上げか、雇用かというまことに厳しい状態に追い込まれておるのであります。いわゆる離職者法の制定の際に定義づけをいたしました構造不況業種だけを考えておればいい、こういう時代ではすでになくなったような感がするわけであります。そこで私は、三十分間でございますけれども、御質問をさせていただくということでございます。  このたび政府が提出いたしました特定不況産業安定臨時措置法と、離職者法に関連しての質問でございますから、まず一つは昨年末離職者法が成立をして施行されたわけでございますが、これまでの適用者数、これを業種別にわかっておりますならば、お示しを願いたいと思います。
  141. 細野正

    ○細野政府委員 一月二十八日までの分の数字しか持っておりませんので、現在よりは多少少な目になるかもしれませんが、とりあえず手元の資料でお答え申し上げますと、特定不況業種の指定業種が三十二業種、対象従業員数は百四十四万五千ということになっております。
  142. 宮田早苗

    宮田分科員 実はこの離職者法案ができる前、たとえば平電炉業界におきましては、御存じのような状況でございましたので、すでに離職をさせたとか、あるいは帰休という提唱をして実施をしておるとか、こういう問題があるわけです。法案ができて以降という効果よりは、法案のできる前、この法律というものの適用の範囲というのがより大きいわけなんです。そこで、非常に希望が強いのは、法案ができる前にさかのぼって、ずっと前まではさかのぼる必要はございませんが、一年ないし半年ぐらい前までにはさかのぼってでも、この法律の適用というものが考慮されないものかどうか、ちょっと御意見を聞かせていただけたらと思いますが。
  143. 細野正

    ○細野政府委員 この法律が運用されます場合におきましては、御存じのように、産業界としての見通しがある程度立って、それに基づいて事業主側に再就職援助計画等が立てられてと、そういう再就職援助計画にかかわる離職者だけがこれの対象になって救われる、こういう仕組みになっておりますから、もともとが実はさかのぼることは非常に困難な立て方になっているわけでございます。  しかしながら、御存じのように、先生御指摘のような事情もございましたので、特にこの法律の成立につきまして与野党でお話し合いを願いましたときに、十二月一日以降のものについてはさかのぼろうということで、非常に無理をして約一月さかのぼったということでございまして、これ以上さかのぼることは、現行法上はまずできないことは当然ですが、実際問題としても非常にむずかしいというふうに申し上げざるを得ないと思うわけでございます。
  144. 宮田早苗

    宮田分科員 これは希望でございますから答弁要りませんけれども、業種指定なりその対象になりますと、三年間有効の離職者手帳というのが支給される。そこで、一年前にさかのぼってこれを実施するといたしましても、決して無理を言っておるわけじゃないのです。残りの期間、それを含めて三年間という形の中で離職者手帳の交付というものができないものかどうか。できる限り前向きにひとつ検討していただきたいということを特にお願いを申し上げておきます。  そこでさらに、政令事項であります業種指定の問題でございますが、施行後日が浅いということもございましょう、運用について業界からいろいろな意見が労働省に参っておると思います。私どものところにもいろいろな相談あるいは陳情が来ておるわけでありますが、一番困りますのが、大手の下請企業の問題でございます。  たとえば鉄鋼業界では、企業の従業員と同じぐらいの関連企業の従業員が働いておることは御存じのとおりであります。鉄鋼本体もそうですし、業種指定を受けました大手の鉄鋼用耐火れんがメーカー、これも同じことが言えるわけです。現場の親企業が人減らしをいたしますと、また減産をいたしますと、関連企業への影響というものがそれ以上に大きいということでございます。このような下請企業が業種指定を受けられないといった事態、あるいは法に言う中小企業の範疇でない中堅の企業の場合、救済の方法がないんじゃないかという気がするわけであります。こういった法律の運用について一体どういうお考えを持っておられるか、まずお聞きをいたします。
  145. 細野正

    ○細野政府委員 先生もただいま鉄鋼の例をお引きになりまして、確かにそういうすそ野の非常に広い業界につきましては、業種の指定というのはよほど、業界の御意見もよく聞き、それから関係労働組合の意見も聞き、それから関係所管官庁ともよく打ち合わせた上でやらなければならぬと私ども思っておりまして、そういう観点から、造船なんかの場合でございますと、単に造船業、製造業、修理業ということだけでなくて、広く関連の業種をすべて拾って、その全体をまず指定しよう、こういうことで、そういう意味から言いますと、関連の業種はほとんど落ちなく拾ったつもりではいるわけでございます。  そういう形で、造船以外につきましても幾つかの業種につきまして、たとえば陶磁器関係とかその他について、同じような指定の仕方をし工夫をこらしているという状況でございます。
  146. 宮田早苗

    宮田分科員 局長も御理解がいっておるようですが、親企業に関連をいたします企業の性格上、この業種というのが非常に多様化しておるものですから、業種指定という言葉そのことだけではやはり適切ではないのじゃないか、こう思うのです。たとえば輸送とか梱包とかきず取りあるいはまた炉の下の整理とか、そういうものが非常に多い。種々雑多と言ってもいいわけですけれども、この実態を考えますならば、指定の範囲というもので、もう少し大くくりな方法というものができないかどうか。地域でくくるとか、その企業の構内なら構内作業という形でくくるものか、言葉の上では関連ということでくくるものか、そういう形にしていただけないものかどうか、その点はどうですか。
  147. 細野正

    ○細野政府委員 確かに、現実に業種の指定に当たりまして、先生御指摘のような問題も配慮しなければならない点がいろいろあるわけでございます。そういう意味で、たとえば鉄鋼等の場合にも、運送業等も含めて、ただし鉄鋼を主として運ぶものに限るとか、いろいろそういう意味での工夫をして業種指定をいたしておりまして、したがいまして、造船等の場合には社外工等の問題もございますから、確かに普通の意味で言う産業一点ばりで処理するのはなかなかむずかしい面もありますが、その点はかなり実態に合わせて配慮した指定をいたしたつもりでいるわけでございます。
  148. 宮田早苗

    宮田分科員 それで、ぜひお願い申し上げたいことなんですが、そういうことが非常に困難ということになりますと、その製造に引き継いで行います作業、これは、同時にその製造業の品種、業種という形を延長してでも業種指定、こういうことにしていただきたいと思うのです。この前はちょっと御無理を申し上げましたが、たとえば、耐火れんが製造業というものを指定していただいたわけですけれども、かま出しというものが下請になって、梱包というのが下請になっております。それを業種指定という形ではとらえていただけないわけでありますから、かま出しというのは、だれが考えましてもやはり耐火れんが製造業の一環だと従業員も認識をして取り組んでおるわけですし、また、その企業のいろいろな担当者もその認識で取り組んでおるものですから、決して不自然ではないと思うわけでありますから、そういう運営をこれから特にしていただきたい。何かありましたらひとつお答え願いたいと思います。
  149. 細野正

    ○細野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、いわば不可分密接なものにつきましては、かなりいろいろな実情を伺った上で工夫をこらしているわけであります。ただ、もう一つの要素として、先ほど来出ておりますように、結局法令または国の施策で、政府が方針として、ここの部門というものは今後縮小すべきであるという方針を明確にして指導をやっているということが条件になっておりますから、それがかぶっている範囲では、先ほど来申し上げておりますようないろいろな工夫をして、できるだけ実情に合わせてまいりたい、このように考えておる次第であります。
  150. 宮田早苗

    宮田分科員 もう一つ関連する質問でございますが、業種指定の要件を満たす目安として、企業収入、ウエートというのでしょうか、その占める割合が五〇%以上ということになっておるわけですが、これの緩和というものはできないものかどうかお聞きいたします。
  151. 細野正

    ○細野政府委員 結局、先ほど来申し上げておりますような、広い意味での業種というしぼり方をするにいたしましても、ある産業なり企業がこの業種に該当するのかどうかという判断を現実にしなければならぬわけでございます。その場合に、その業種に属するかどうかの判断というのは、一般的に五〇%というのは一つのメルクマールであって、それが、単にそういう方法が通常とられているだけでなくて、世間的にも、一つのやむを得ない、その辺のところだろうという容認がされているような制度じゃなかろうか、こう思うわけであります。  ただ、余り厳密にそれを言うと、たとえば、ある時点においてちょっと足りなかったとか、そういう問題までも含めて五〇%という線を厳守するのにも実情に沿わない点がございますから、したがいまして、現在の基準では、約五〇%を上回る、こういう言い方にしまして、そこに弾力性をある程度与えておりますのと、それからもう一つは、先ほど申しましたように、できるだけ広い範囲で、つまり実情に合わして指定をする。この二つのやり方を並用することによって、なるべく落ちこぼれが出ないように、こういう考え方で実は運用しているわけであります。もし、逆に五〇%以下でもいいということになりますと、一つのある産業なり何なりが、どの業種にもみんな該当してしまって、ある意味からいくと非常に不公平なりアンバランスの問題も逆に起きてくるおそ汝もございまして、やはり一応約五〇%という弾力的な要素は導入しながらも、そこのところで一応判断をさしていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  152. 宮田早苗

    宮田分科員 できるだけ柔軟な、実態に即した運営というものをお願いを申し上げます。  そこで、このたび通産省が策定をいたしました特定不況産業安定臨時措置法ですが、通産省が失業の予防その他雇用の安定について労働省と連携を密にする、こう言っておるわけでございまして、結構なことだと思います。労働省としても、言うまでもありませんが、積極的に対処していただかなければならぬと思い、ます。  そこで、二つの法律、一つは案でありますけれども、これにあります業種指定の関係でございますが、安定臨時措置法で指定されましたものは、国の施策で構造改善をやるわけですから、当然離職者法の対象になる、こう考えるのですが、この点はいかがですか。
  153. 細野正

    ○細野政府委員 先生御指摘のように、特定不況産業安定臨時措置法の方も、いわば国の方針として、今後設備等についての共同処理が必要である、こういう方針が業種指定という形で具現化するわけでございますから、そういう意味で、いま御指摘の離職者臨時措置法との間には、まずほとんどの場合にすき間が生ずるということはないのじゃなかろうか、こういうふうに考えているのであります。ただ、若干すき間が生ずるかもしれないという点があるとすれば、それは、現在まだ通産省の方の法案につきまして、具体的な指定に当たっての基準が定まっておりませんが、労働省の方の基準は、御存じのように安定審議会に諮りまして決まっておりますので、これと数量的な基準が通産省の方が合ったものでお決めいただければ、まずすき間が生じない。多少のすき間が生じた場合につきましては、基準の運用につきまして、私どももできるだけ弾力的に考えて、現実的にもすき間の生じないように、よく通産省と連携をとってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  154. 宮田早苗

    宮田分科員 新しい法案では、設備の廃棄等の際に関係審議会の意見を聞くよう義務づけております。商工委員会で審議に入りましたらさらに検討しなければならぬと思いますが、この種の審議会には、考えられております不況業種の労働組合の代表はほとんど選ばれていないわけでございます。そこで、国を挙げて不況対策をやるためにこの法案をつくったのですから、関係審議会を改組してでも、関係労組の代表を入れていただきたい。労働省の見解をちょっと承りたいわけです。
  155. 細野正

    ○細野政府委員 この法の立案過程におきまして、先生も御存じのように、労働省と通産省といろいろと何回も何回も打ち合わせをいたしたわけでございますが、その過程におきまして、通産省の方からも、いわゆる一般的な労働組合の代表の方、たとえば労働四団体というような方のみならず、いま御指摘のように、関係業種の労働組合の代表の意見も反映するような仕組みを考える、こういう両者間の話し合いになっておるということでございます。
  156. 宮田早苗

    宮田分科員 労働組合もこれは非常に大きな関係があるわけでございますし、また労働組合の代表自身も、今日の実態というのは十分と言っていいほど理解をしておる、何としてもこれの打開という強い熱意を持っておるわけでございますから、そういう意味から、もし労働組合の代表としての意見が入れられないということになると、改組してでも入れていただく、またそれができない場合は、事前に労働組合の意見を聴取する機会を十分にひとつつくっていただきたい、私はこう思っておりますので、この点は要望になりますけれども、特にお願いを申し上げたいと思うのです。  それから、二十二日の質問で、企画庁長官は、雇用問題で、第二次産業はゼロであろう、こうおっしゃいました。しかし、設備廃棄という非常に大きな問題に当面し、これを実行に移さなければならぬということから、ゼロというのは甘いような気がしてならぬ。むしろマイナスという方向になるのじゃないかと思いますが、労働省としての、見通しの問題は非常にむずかしいわけでございますけれども、感触でもありましたら、ひとつ説明をお願いしたいと思います。
  157. 細野正

    ○細野政府委員 いままさに先生がおっしゃいましたように、見通しというのは大変むずかしい上に、特に最近の経済情勢というのは一層日ごろよりもむずかしい情勢にありますから、私どもも明確に、確信を持ってお答えするわけにはまいらないわけでございますが、ただ、確かに先生御指摘のように、構造不況業種等におきましては、今後も離職者が発生し、労働者の数が減るということは、残念ながら想定せざるを得ないと思うわけでありますが、同時に、最近の在庫調整の動き等を見ておりますと、政府のとっております景気振興対策が、生産指数なりあるいは稼働率なりにある程度影響を持つのではないかという期待を持ち得る要素も、兆しではありますが見え始めているというふうなことを考えますと、プラス・マイナス・ゼロというのも、ある程度見通しとしては一つの見方ではないかなというふうに私どもは思っているわけでございます。
  158. 宮田早苗

    宮田分科員 第二次産業、特に製造業に対する通産省のあらゆる施策をどう分析をいたしましても、人がふえるという政策は一つもないわけですから、そういう問題について労働省は大変苦慮されておるのではないかと思いますので、その問題を踏まえて、今度は五十三年度の雇用増を第三次産業に求めておられるようでございますが、第三次産業といいましても、範囲も広うございますし、そう景気が好転するというのはまだまだむずかしいのじゃないか。しかし、それに求めざるを得ないということはわかります。しかし、どの程度雇用増を求められておるものか、これも推測で恐縮でございますけれども、わかっておる範囲内でお知らせ願いたいと思います。
  159. 細野正

    ○細野政府委員 企画庁のマクロで計算しました雇用の見通しとしましては、先生も御存じのように、雇用者ベースで、五十二年度に比べて五十三年度は全体で五十五万雇用者がふえる、失業者の方は年平均で五万ほど減るだろう、こういう見通しを立てたわけでありますが、その中で、先ほどお話にございましたように、製造業関係がゼロとしますと、結局建設業に一部期待をし、残りの大部分というものは三次産業であるというふうな構成にならざるを得ないわけでありまして、そういう意味で、三次産業に対する期待というものは大きいし、それから現在の不況下の中でも、実は金融、保険、卸売、小売等を中心に、雇用者は現実に労働力調査で見る限りふえておるということでございましたので、来年度におきましても、その傾向を持続というふうに見ているし、またそう見ていいんじゃないかな、こう思っておるわけであります。
  160. 宮田早苗

    宮田分科員 最後の質問ですけれども、いまいろいろ問題になっております春闘問題について。  政府は七%の実質成長を何としてもやり遂げなければならぬ、こういうことなんです。そのために、雇用所得の伸びを九・五%というふうにおっしゃっております。もちろん、これはぜひ達成しなければならぬという責任もあろうかと思っております。そこで、今度の春闘の結果いかんが七%成長ということに対して非常に大きな影響を持つ、また、政府のおっしゃっております九・五%という所得の伸び、これも非常に大きな影響力を持っておると思います。  そういう意味から、労使に政府が介入する、また、してほしいなんということは決して言いはしませんけれども、やはり労働省という立場で、今度の春闘の結果好ましいある程度の考え方というものを大臣お持ちと思いますけれども、まずそれはどうですか。
  161. 北川俊夫

    ○北川政府委員 いま宮田先生御指摘のように、春闘におきます賃金と申しますのは、労使が自主的に決定すべきもので、私たちがいまの段階で、どのぐらいが望ましいとかあるいは高くなるとか低くなるというような予測はすべきでないと思っております。ただ、先生御指摘のように、個人消費をふやすということがこれからの経済運営で非常に重要でございますし、そのことが賃上げと関係がないと言えばこれはうそになると思います。やはり個人消費がふえる一つの源として、給与がふえるということは密接な関係があろうかと思います。ただ、賃金が上がるという面は、反面、製品コストといいますか、企業コスト、あるいはそれが雇用の問題とも絡むという関連で、私たちは、やはりいまの厳しい経済情勢あるいは雇用問題が深刻な事態に、そういうものを踏まえて、労使が良識ある解決をしていただくということを切に望んでおる次第でございます。
  162. 宮田早苗

    宮田分科員 もちろん、局長がおっしゃいましたように、良識ある解決ということで、それぞれの労使がこれから交渉に入るわけでございますけれども、何しろこの状態の中で、やはり日本の将来展望を切り開く基盤づくりがことしじゃないかというふうに思っております。そのために、七%の成長というのはもう何としても実現しなければならぬ、これは世界的な関係からも言われるわけでございましょう。しかし、やはり国内需要という問題がこの中では非常に大きな一つの柱になる。国内需要の最大の原動力というのはやはり一般消費者ではないか。一般消費者、即、言うならば労働者、それを組織しております労働組合ということにつながるわけでございますから、いままでの春闘、いままでの労使関係と違って、今日は国を挙げてのいわゆる経済問題、労働問題をとらえていかなければならぬときだけに、この際、思い切って大臣の方から、行政的にもかくあるべきだというような考え方を出してしかるべきじゃないか、私はこう思っておりますが、その点大臣、どうですか。
  163. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いまお話の中にもうかがわれる、現在の日本経済を取り巻く認識は、非常に厳しい内外の経済の情勢、これは新しい日本の経済へ軌道修正をする過渡的な、強いて言えば産業構造そのものが変化を遂げている、しかも質的に変化を遂げる、こういうふうな時代だと思うのであります。  したがって、御指摘のごとく、今度のいわゆる春闘においては政労使が同一の認識に立って事に当たるということがぜひ望ましい、このように思うわけでございます。  そういう面におきまして、いま景気回復の一つの、また消費拡大の手がかりとして、ベースアップの問題は決して無関係ではないと私は思うのです。ただ、政府が現在やっておりますことは、御承知のごとく景気回復の大きな柱として、公共事業を中心にそして民間の企業の活力を復活する、そして明るい景気回復の兆しをそこからひとつきっかけをつくろうではないか、そういうこと、それが先々が明るくなれば、これまた財布のひもが緩んでくるというふうな、いい循環に回ることを期待しておるという面もありますから、これを要するところ、全国民的視野に立って問題に対応する、こういうことでありまして、先ほど局長から御答弁いたしましたように、われわれの発言は、やはり春闘のベースアップそのものにストレートな発言は、とかく労使の自主的決定という、この労使関係の基本的ルールを誤り伝えられるようなこともございますから、その点はひとつ十二分に御理解をいただきたい、こう思うわけでございます。
  164. 宮田早苗

    宮田分科員 最後でございますが、何しろ国内全般がすべての面にわたって非常に苦悩しておる。私どもが一番懸念しなければならぬのは、やはり働いておる方々あるいは消費者の方々にしろ、沈滞ムードといいますか、それが結果として悲観ムードという、こういう方向になるということが非常にこわいといいますか、問題だと思う。やはり労働省の置かれている立場からいたしますと、余り悲観をさせるような政策ということよりは、まあいまは真剣にそれと取り組んでいかなければならぬときでございますけれども、やはり明るい曙光といいますか、期待を持たせるという、こういう御指導というものも一面今日非常に必要じゃないかと思っておりますので、そういう面について極力留意をされて、御指導を大臣以下省を挙げてやっていただきたい、このことを最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  165. 住栄作

    ○住主査代理 これにて官田君の質疑は終了しました。  次に、井上一成君。
  166. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、まず大臣お尋ねをいたしたいと思います。  先日の稻村総理府総務長官の、同和問題についての誤った認識に基づく発言について、労働大臣としてどうお考えでいらっしゃるか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  167. 藤井勝志

    藤井国務大臣 同和問題とは、御承知のとおり、わが日本の封建社会に形成されたいわゆる身分差別によって、現在の社会の中にも、まだ残念ながら、職業選択の自由等いわゆる市民的権利が完全に保障されてないという、こういった最も深刻な社会問題、重要な社会問題だと私は認識するわけでございます。特に私は、しばしば委員会においても発言をさせてもらっておりますけれども、就職の機会均等ということが同和問題解決の中心課題である、こういうふうな認識を持っておるわけでございますから、労働省といたしましては、このような考え方の上に立って今後も同和対策を積極的に進めてまいりたい、このように考えるわけでございます。
  168. 井上一成

    井上(一)分科員 就職の機会均等を完全に保障していくんだ、そして同和問題解決の中心的な課題を十分御認識をしていただいておると私は信じたいわけであります。そういう意味で、先般の稻村長官の発言は、お互いに、大臣も私も含めて、大変遺憾な残念なことだと思います。  さらに私は、大臣に、そういう中で、特別措置法が制定されて以来もう九年たつわけであります。がしかし、深刻な同和地区の労働実態、さらには、今後相当長期にわたって従来の水準以上の労働行政が必要であるという現実を踏まえて、労働大臣はこの特別措置法がさらに延長せざるを得ない現実であるということの御認識をお持ちだと私は受けとめたいわけでありますけれども、念のために、特別措置法の強化、延長に同意をするお考えをお持ちでいらっしゃるか、重ねてお尋ねをいたします。
  169. 藤井勝志

    藤井国務大臣 今後とも、同和地区住民の就職の機会均等を図るという面におきまして、同和対策事業特別措置法の延長を含めて、同和対策としての雇用対策について万遺憾なきを期したい、このように考えております。
  170. 井上一成

    井上(一)分科員 いまのお答えは、措置法がさらに延長せざるを得ない状態であるという、そしてそのために努力をしていただけるというふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  171. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在の四囲の情勢を踏まえ、特別措置法の延長、これは主管が労働省ではございませんけれども気持ちとしては、私は井上委員の御期待と同じ考えでございます。
  172. 井上一成

    井上(一)分科員 十分御努力をいただくことをお願いをしたいと思いますし、ぜひ一日も早く差別のない社会を実現するために、大臣としてのなお一瞬の御奮闘を期待いたします。  さて、私は、数年来続いた不況の中で、ここ一年経済成長七%だと繰り返すだけで、国民の失業問題については何ら具体的な策が見つけ出されなかったわけであります。そして、何とか政府がさらに失業、雇用問題について力を注いでいただけるように、私自身も、野党の中にあっても協力をし、提言をしてきたわけでありますけれども、事ここに至っては、もう抽象的なそんな数字の羅列だけで国民は食っていけないわけであります。昨年は十二カ月間連続で失業者の数が百万人を超え、恐らくこの三月には史上最悪の百五十万にも達すると言われているわけであります。とりわけ、私はここでぜひ指摘をしておきたいのは、昨年十二月の失業者百十一万人のうち、最も生活費のかさむ四十歳以上が四割も占めているというこの現実の問題であります。求人難あるいは雇用調整が中商年齢層にしわ寄せをされている、そしてそれが一段と深刻化しつつあるという現実であります。このまま放置をいたしますと、いわゆる無理心中、自殺、みずからみずからの生活を断たざるを得ないような非常に不安な状態がなお今後続くであろう、いや必ず続くと私は思っておるわけであります。  そこで、きょうはもう、経済成長七%だ、それを目指すのだ、それによって雇用の拡大を図っていくのだという抽象論でなく、具体的に雇用対策をいかにいまお持ちなのか、ひとつ大臣から詳しくお聞かせをいただきたいわけであります。
  173. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく、まことに皮肉といいますか、困った現象は、日本はいわゆる高齢者社会に入りまして寿命がずっと延びた、しかるに、不況が長引いてきているきょう今日、雇用問題の一番大きな悩みは中高年齢層の雇用対策でございます。  したがいまして、われわれ労働省といたしましては、この問題についてはあらゆる知恵を動員し、工夫をいたしまして、現在までいろいろ努力してまいっているわけでございまして、その具体的な事柄について、一応私から基本的な問題についてお答えをいたしまして、詳細は、必要によっては政府委員からお答えさせていただきますが、中高年齢層の就職のあっせんのためには、職業安定所に特別ないわゆる就職促進指導官を配置いたしておりまして、私も就任早々現場視察をいたしたときに人材銀行というのを視察したのでありますけれども、なかなかこれが情報を——まだ個所が東京と名古屋と大阪でございますけれども、これは行く行くは全国的に相当広げるに値する機関ではないかと思うのでありまして、中高年齢層の就職のあっせんを活発にやっている現場を見たわけでございますが、こういったことをやりながら、積極的に求人活動をやり、きめの細かい職業指導職業紹介を現に関係者は一生懸命に努力いたしております。それから、高年齢者の就職につきましては、御案内の高齢者雇用率制度を軸といたしまして定年延長奨励金、継続雇用奨励金制度、こういった助成措置を五十三年度、現在お諮りしております予算案の中にも相当充実をいたしております。そして、この定年延長というものの促進、そしてできるだけ早い機会にいろんな環境の改善が必要でございます。すなわち、年功序列制の賃金体系であるとか退職金のあり方とかいろんなものがありますが、ともかく定年制延長もひとつとりあえずの目標は六十歳を目標に早く実現するように努力をする、こういうふうなもろもろの施策を推進をしてやっていきたい。  同時に、今度特定不況業種から出てくるであろう離職者に対して、これまた中高年齢層がほとんどでございましょうから、そこら辺に対しては職業訓練法を改正をして、そしていまは職業訓練には年に二回の入校時期がございますけれども、そういったものを多様化していく、また中高年齢に向く職業訓練科目をずっとふやしていく、こういうふうなことでこれからの雇用対策というのは職業訓練と直結をしてこれが積極的な雇用の開拓をやるべきだ、私はこのように考えておるわけでございます。
  174. 井上一成

    井上(一)分科員 失業問題の解決はただ単に失業者に金を与えればいいんだという、そんな簡単なものでは決してないと思うわけであります。雇用の機会を提供、拡大していかなければならないし、そのことにおいて雇用問題がさらに充実をしていくことになるわけであります。  そこで、私はひとつ新しい雇用問題の解決への方法として提案をいたしたいわけであります。と申し上げることは、いまも新しい技術を身につけるべき職業訓練に力を入れていらっしゃるというお答えがあったわけでありますけれども、技術を身につけても、いま申し上げたように雇用の機会がなければいけないわけでありまして、どうしても機会をつくり出していかなければいけないわけであります。そこで、企業の付加価値額に応じて一定の採用を義務づけてはいかがなものかということであります。不況だから、企業側としてはどうしても採用をちゅうちょしたり、あるいは先行き不安の中での雇用拡大ということにはいろいろと内部的な、いい悪いは別として、問題があろうかと思います。そういうことを打ち破るためにも新しい雇用の場を企業自体が提供するという一つの形、いま申し上げた付加価値額に応じて企業に対して一定の採用を義務づけていくという新しい法則を私は提案したいわけなんです。  大臣、いかがなものでございましょうか。ぜひ検討をしていただきたいと思うわけであります。
  175. 細野正

    ○細野政府委員 先生御指摘のように、一般的に付加価値の高い企業ほど雇用吸収力があるという点は確かに御指摘のとおりでございまして、なかなか示唆に富む御提案をいただいたわけでございますが、同時に、よく考えてみますと、付加価値というのは非常に短期に変動する性格のものでございまして、一方において雇用というのは、御存じのように、長期継続的な関係でございますので、これをストレートに結びつけるというのは非常に問題があるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。また、御存じのように、いろんな雇用の問題があるたびごとに雇用率を義務づけるというのも、企業全体の労働力の量全体というものをどういうふうに決めるかというのは経営の基本に係る問題でございますから、そういう意味でもいわば雇用率的な形で幾務づけていくということも、これを乱発するのもまたいろいろ問題がある、こういうふうに考えておるわけでありまして、やはり迂遠なようであっても、景気を拡大し、民間の中に雇用の拡大要素を見出していく、それから、先ほど大臣からお話がありましたように、その場合に訓練をやるなりあるいは助成措置を講ずるなりという形でこれを補完していくというのが最も妥当な行き方ではなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  176. 井上一成

    井上(一)分科員 さらに、週休二日制の問題についてであります。このことについてはもう何回となく提案がなされておるわけであります。中央労働基準審議会の昨年十一月二十九日の建議でも、長期的雇用安定のため労働時間の短縮が必要であると述べられているわけでありまして、いまわが国は経済が低成長期に入った、そして雇用問題の解決にはどうしても労働時間の短縮しかない、一度は通り抜けなければいけない関門でもあるわけでございます。とりわけ短期的なとらえ方をいたしますと、コストアップになり、経営困難になり、逆に雇用不安につながるのだ、こういうような論もあるわけでありますけれども、これは誤っている。長期的に雇用の安定、拡大を考えるならば、やはりどうしても労働時間の短縮に踏み切らなければいけない。端的な例を申し上げますと、三千二百万人の労働者がいま週当たり平均四十二時間働いているのを四十時間に短縮する、これだけで百六十万人分の雇用がふえるわけであります。どうしても週休二日制という問題もこの機会に思い切った措置を、そして決断をしなければいけないということを私からも強く提起したいわけであります。  大臣のお考えをさらにお聞きいたします。
  177. 藤井勝志

    藤井国務大臣 時間短縮、週休二日制あるいは有給休暇の完全実施、こういった一連の問題は、ただいま御指摘のとおり、中央労働基準審議会の建議の形において、去年の暮れ、公労使一致した形でいただいたわけでございまして、いま御指摘のように、私は、長期的に考えれば何とかしてひとつこれが実現を見なければならない、このように思っていること、井上委員のお考えと全く一致しております。ただ現在、経済情勢というのが非常に厳しい情勢でございます。ただ私は、厳しい状況であるからこれが後ろ向きとか停滞をするという考え方は持っておりません。この現状を踏まえながら、やはりいろんな環境が総合的に前進させられるような条件が整備しないと前に進みませんから、現在の日給月給制あるいは時間賃金制、こういう関係から考えてみましても、やはり労使の自主的な話し合いという環境がまず必要であり、同時に日本の経済の現在の状態、こういったものを考えまして、やはり漸進的に着実に進めていくということで、後ずさりはしない、ステップ・バイ・ステップ、前進をする、こういうことによって私は御指摘のごとく労働者の福祉の向上を考えている労働省としては、やはり生活にゆとりができ、そして仕事を分け合う、そしてみんなが幸せになれるというような方向に労働時間のあり方が大きく作用しているというこの事実に着目して努力しなければならぬ大切な課題だと思っております。
  178. 井上一成

    井上(一)分科員 さらに私は、今度は身体障害者雇用促進法というものが立法化されて、その中で一定の雇用義務を明記しておるわけであります。  そこでお尋ねをいたしたいのでございますが、この雇用義務に違反をした場合にその罰則規定があるわけであります。第九章において。現在までの罰則適用者の実態はどのような状態であるか、さらにそれによって集められた罰金——罰金というか、罰則によって集められた金額並びにその使途をお尋ねいたします。
  179. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、身障法によりまして雇用義務を課されているわけでございますが、民間企業について見ますと、課されております雇用率の義務は一・五%でございますが、実際に雇われている実雇用率、これは一・0九%でございます。したがいまして、平均的に雇用率を割っているわけでございますが、未達成の企業の割合は民間全体で四七・二%という状況でございます。  なお、先ほど罰則というお話がございましたが、御承知のように、未達成の企業につきましては身体障害者の雇用納付金というものを納めることになっておりますが、これはいわば罰金ではなくて身体障害者を雇っている企業と雇っていない企業との間に経済的負担の差ができますので、その負担を相互に調整をしよう、こういう趣旨で未達成企業から徴収をいたすものでございます。この雇用納付金がどのくらい集まっているかというお尋ねでございました。この雇用納付金は、御存じのように、常時三百人を超える労働者を雇用する事業主に対しまして、これが先ほどの雇用率を達成していない場合に、その未達成の不足数一人当たり月額三万円を取る、こういう形でございます。その総額は、現在のところ約九十二億円というふうになっております。  なお、その使途はどうなっておるか、こういうお尋ねでございましたので、あわせてお答え申し上げますが、その使途はこの納付金を財源としまして、一つには身体障害者の雇用調整金というものを支給することになっております。この雇用調整給付金と申しますのは、法定雇用率を達成している事業主、これは常時三百人を超える方でございますが、それの場合に法定の人数を超えて雇っている身体障害者一人当たり毎月一万四千円を支給する、こういうことでございます。     〔住主査代理退席、主査着席〕  それからもう一つは、中小企業の場合でございますが、常時三百人以下の企業につきましては一定数の標準を設けまして、その数を超えて身体障害者を雇い入れる場合にその身体障害者一人当たり月額八千円を支給する、これが報奨金ということになっております。  そういう、いま申しました調整金、報奨金という形でまず、たとえば雇用率以上に雇っておられる方に対する負担の軽減を図る。  それからさらに、身体障害者を雇い入れるためには、先ほど申しましたように、いろいろと経費がかかりますので、その場合に身体障害者を雇い入れるために必要な作業施設を設置する、あるいは住宅を確保する、あるいは専任の指導員を配置するというふうな場合に、それぞれの事業主に対しまする各種の助成金を支給するということになっておるわけでございます。
  180. 井上一成

    井上(一)分科員 私はこの質問に対しては後ほど詳細に、徴収された金額がいま九十二億円だとお答えがあったわけであります。それがどのように使われておるかということを資料をもって提出をしていただくことをここでお願いをしたいわけでございますが、主査、いかがでございましょう。
  181. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 どうですか。
  182. 細野正

    ○細野政府委員 いま申し上げました各種の調整金、奨励金、助成金等はいずれも新しく始まった制度でございまして、目下申請受け付け中でございますから、したがいまして支給済み額とか支給額という形での統計はないわけでございますが、申請の受け付け状況等について御報告するようにいたしたいと思います。
  183. 井上一成

    井上(一)分科員 そこを私はお尋ねをしているわけなんですよ。九十二億という金が、より身体障害者の雇用拡大のために活用されなければいけないと思う。そして、即刻、申請を待つのではなく行政側からアプローチをしなさいということなんです。この点についてはいずれかの機会に改めてお尋ねをいたします。いま申し上げたように、申請中の資料でも結構ですから後刻届けていただくということで、次の質問に移ります。  労働基準法の施行規則第三十五条の改正についてお尋ねをいたしたいと思います。御承知のように、労働基準法施行規則第三十五条、業務上疾病の範囲は、法制定以来三十年余りにわたり一回も改正されずに今日に至ったわけであります。三十年前と今日を比べると労働環境なり作業態様も大きく変わり、また今日の職業病多発の現状からしても、改正はむしろ遅過ぎたの感を私は持つわけであります。しかし、改正はあくまでも業務上疾病の実態に即したものであるべきであり、業務上疾病の範囲を狭めることがあってはいけない、むしろ改正によって業務上のそれらの疾病の認定が促進されるようにすべきであると考えるわけでありますが、この点についてのお考え、さらに現在の業務上疾病の実態に即してというならば、あるいはまたこの施行規則に基づいて万が一にも業務に起因する疾病でありながら認定をされずに健康と生活が破壊されている労働者がいらっしゃるということになれば、この改正は非常に慎重の上にも慎重を重ねて広く国民諸階層の意見を十分に聴取すべきだと私は考えるわけでありますけれども、そのようなことについてどのように当局側はお考えでいらっしゃるのか。  さらにもう一点、労働省が原案をつくる際に三十三人の専門家に聞いた、その意見を聴取されたわけであります。この際、三十三人の聴取された方々の、いわゆる学識者と私は受けとめているわけでありますが、それらの方々のお名前を明らかにしていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  この三点について、まずお答えをいただきます。
  184. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 今回の三十五条の改正は、いま先生の御指摘のように、最近の産業社会が変わってまいりましたものですから、それに合わすべくいろいろと研究を重ねて今回改正をいたしたい。  その考え方は、従来ややもするとやはり不明確な規定あるいは非常に狭く解釈される面もございますので、今回の改正によって、より明確にこの規定を読み取ることによって、業務上疾病者の認定を速やかに、迅速に、しかも的確にやろう、こういうことでございます。したがって、従来より狭めるという考え方は毛頭持っておらないわけでございます。  それから、具体的なこういった業務上災害の認定に当たって漏れるようなことがあってはいけないというお話でございますが、私どもはこの規定の運用に当たってはできるだけ「その他」という条項を入れまして、そして救うような形で処理をいたしてまいりたいと思っております。  それから、この原案はあくまでも労働省の責任において私どもは出したわけでございます。したがって、非常にむずかしいがんその他のことでございますものですから、三十数名の方の御意見を聞きました。しかし、これはあくまでも私ども原案を作成する段階において、私どもの原案を責任を持って出すという意味において御感触を聞いたわけでございまして、また、こういう先生方に名前を公表するという前提でお聞きしたわけでもございませんし、それからまた、確かにこういった審議会の中でお話もちょっと出ましたけれども関係小委員会の中では、やはりその面はいろいろな事情もあろうから聞かないという形で一応御了解になっております。したがって、私どもは、三十年ぶりにやります大改正でございますので、審議会を三ヵ月かけてもうすでに八回ぐらいやっておりますが、慎重の上にも慎重に、また関係者の意見を十分くみ取って、もし御意見が一致して出ますれば、その審議会の意見を全面的に尊重いたして処理をいたしてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  185. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、この問題についてもさらに機会を改めて質問を続けたいと思います。  いま、いろいろな事情があって三十三名のお名前は申し上げられないのだということですが、そのいろいろな事情とは一体何なのか、最後お尋ねをして質問を終えます。
  186. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもはこういった問題の処理に当たりまして、特に部外にお名前を出したといういままでの前例を持っておりません。それも一つの事情でございます。  それから、ときどき私ども一般に聞きますけれども、お名前が出たことによってその先生方が将来一般的に行政に御協力をいただけない、そういったことも間々聞くわけでございますので、そういったいろいろな事情を勘案しながら、この問題はやはりあくまでも私どもの責任において原案を作成した、その原案について御批判がありますれば、十分に御意見を承って直すべきところは直していく、こういう考え方でございます。
  187. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて井上君の質疑は終了しました。  次に、米沢隆君。
  188. 米沢隆

    米沢分科員 私は、将来の雇用安定対策に関連いたしまして、若干の御質問をさせていただきたいと思います。  この問題は予算委員会を通じましてもかなり議論がなされておるところでありますが、何といいましても雇用不安解消のために重要なことは、まず第一に経済産業政策のよろしきを得て早く景気を回復させ、早急に日本経済を安定経済基調に乗せることということはあたりまえのことであります。  このことを労働行政に即して言いますならば、雇用不安の実態をまず正確にとらえること、最悪の事態にも的確な対応ができる体制を整えること、その上で具体的な失業対策、雇用の維持対策等を実施していくことであることは言うまでもありません。しかし、ここまでは従来までの労働行政で曲がりなりにもその施策の充実を期するならば対応できる問題でありますが、しかし今後の経済の見通し、あるいは産業構造の変化等々を見通した場合、一口に雇用安定と言いましてもまさに大変むずかしい問題になる可能性が十分にございます。現に短期的な雇用見通しも大変暗い状況にございますし、中長期的にもいま以上に暗くなるかもしれないという予測もあるわけでございまして、産業構造の変化一つ取り上げましても、たとえば構造不況業種等は、一説によれば七、八十万という離職者を出さない限り、産業として安定をしないという問題もある。  同時に、今後の産業構造をながめたときに、やれ知識集約産業だとかソフトウエアだとかハードウエアだとかいろいろむずかしい言葉がありますが、そういうところはほとんど雇用創出産業、雇用を拡大する産業ではあり得ない。また、構造不況業種等は発展途上国の追い上げでピンチになっている一面がありますが、その他の産業につきましても、今後国際競争の中で生きていくためにまず人減らしをしなければ産業が安定しないということで、御案内のとおり、毎日毎日新聞等をにぎわしておりますように、人を抱えるどころか人を減らす方向でみんなが動いておると言ってもこれは過言ではありません。そういう意味では、長期的な観点からこの産業構造の変化等を見ましたときに、これは大変大きな問題をはらんでおるような感じがします。  そこで、まず第一に労働大臣お尋ねしたいことは、将来の雇用構造というもの、この十年間、これは大変激変する可能性があるわけでありますが、労働省として中期的あるいは長期的な雇用構造の変化をどう予測されて行政が対応されようとしておるのか、このあたりから聞かせていただきたいと思います。
  189. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、現在の政治の最大課題は、景気の回復、一日も早く不況脱出ということと、それと直結しております雇用問題、これが政治の中心課題であることは、私から申し上げるまでもございません。  そのような観点から、われわれ労働省としては雇用問題、労働者の生活の安定と福祉の向上という面において、この問題について現在まともに取り組んでおるわけでございまして、これから先どのような産業構造の変化に対して雇用構造が対応しなければならぬかというこの問題につきましては、なかなかむずかしい問題であります。われわれは一つの展望と同時に、願望に似た展望を持って現在いろいろ模索しておるわけでありまして、やはり何といってもこれから伸びる付加価値の高い産業というものを、関係各省といろいろ連絡をとり合って、いま検討いたしております。  同時に、第三次産業、これはこれからの日本の社会のあり方というのがいわゆる福祉社会というようなことになりますから、そういう面における人手というものをそちらの方に充当していくことが当然社会の要請でもある、こういうようなこと、それからやはりサービス関係の事業、こういった点も考えなければなりません。私は、今度は現在の厳しい雇用情勢を乗り越えて、新しい日本の社会を担う日本人の、いわゆる人の配置がえをやっていくというふうな構想でこの問題に取っ組むべきである。産業構造の変化に対応して日本人が配置転換される、こういう方向で物事を検討すべきであり、政策を進めていくべきである、このように考えるわけであります。
  190. 米沢隆

    米沢分科員 いまお答えいただきましたように、今後の産業のあり方を考えましたときに、よく言われますように、資源消費型から知識集約型の経済になるのだとか、あるいは成長経済から福祉経済に変わるんだとか、それに基づいて産業構造が変化するのだから雇用構造も変化するのは当然であり、それに即応して対策を練っていくという、そこまでの総論はだれがお答えになってもそういうお答えにならざるを得ない一面があります。しかし、現在の段階で中長期的な将来の雇用構造を見ましたときに、総論で賛成で、その後具体的に、ではどういうふうなかっこうで進めていくのか、どういう検討をしていくのか、どういう研究機関を設けていくのか、そういう意味では何かまだまだ遠い先のこと、あるいはそんなことは言うべくしてむずかしいんだからという、何かそんな感じが表に出てどうも具体的な検討になっていかない、つながっていかないという、そのあたりが大変われわれとしては不安なのでございます。  たとえば、構造不況業種等で四十万から七、八十万の幅はありましょうが、あの不況法案等の時限は五年間ですから約五年間ぐらいにめどを立てて構造改善が行われていく。その間、四十万から七、八十万の人間が離職せざるを得ない。では、そういう労働力をどういう産業に配分をするのかということになりますと、これまた方向はせざるを得ないであろうという答えは出てきますけれども、では具体的にどういう産業でございますかとなるとほとんど答えは返ってこない。そのあたりにいま日本の雇用問題の抱える非常にむずかしい一面があるのではないか、そう思います。  そういう意味で、たとえば構造不況業種等の労働力の再配分というものを、具体的な指針を示すほどに、もう少し具体的な検討がなされていかなければならない。同時に、労働市場も若手から中高年齢層になっていく。では、そういう者を喜んで使い、安定した雇用関係を結ばせる、そういう意味で何か策があるかといいますと、単に奨励金をやるくらいのものでしかあり得ない。そういう意味で、今後、こういう対策というものは、総論はみんなもうわかっておるわけでありますから、今度は各論として、具体的に労働省そのものが中心になって長期的な雇用問題を研究していく、そういう具体的な機関というものをつくるということが必要ではないかと私は思うのでありますが、どういう御見解でございましょうか。
  191. 藤井勝志

    藤井国務大臣 米沢委員御指摘のとおりでございまして、非常に重要な問題でありますから、何とかしてわれわれは、困難な問題であるけれども前進する具体的な方策を見つけなければならぬ。労働省といたしましては、いままで組織はあったのですけれども、再発足をいたしまして雇用政策調査研究会という専門の先生方の知識、学識経験者を動員して、いまお示しになったような問題を専門的に検討してもらうという体制をすでに発足をさせております。  そして、先ほど私がいろいろ総論的なお話を申し上げましたが、やはりこれからのわれわれが進むべき方向としては福祉部門、医療部門あるいは生活部門、情報部門、そのほか保健部門とかいろいろありましょうが、福祉部門では保母とかホームヘルパーとか老人家庭奉仕員、こういったところへは中高年齢の再就職、こういった方向に向く仕事であるし、日本の社会がこれから進まなければならぬ福祉社会の担い手になろうと思うものであります。それから、医療部門、もちろん看護婦とか栄養士とか助産婦とか、こういうような問題もありましょうし、生活部門では一般にいろいろ知られておるような職種以外に、最近ビルができまして、ビルの管理人といいますか、ここら辺が中高年齢の慎重な生活体験のある人が案外非常に役立つ、これは相当希望者もありますし、就職率も非常にいい、こういうことでありますし、情報部門ではプログラマーであるとかキーパンチャーであるとか、そういったことで情報処理、電子計算機関係、こういうようなことであります。  要するに、これからの雇用対策というものは職業訓練と直結していく、具体的に申しますと、労働省職業訓練局というのが職業安定局とも一体となって政策の立案、推進に当たるべきである、こういうふうに考えているわけでございまして、後ほどまた国会にお諮りするべく準備を進めておりまして、すでに成案を得ました職業訓練法の改正もそういう考え方の上に後刻御提案を申し上げたい、こう考えておるわけでございます。
  192. 米沢隆

    米沢分科員 いまお示しいただきましたように、中期的にはいろいろと御検討いただいておるやに聞きました。そういう意味では、先ほどおっしゃいましたような雇用研究機関等をますます充実されて、具体的に指針が出る段階まで早急に機関の整備なり予算の配分なりというものを心がけていただきたいことをまず期待をしておきたいと存じます。  それから同時に、当面どうするかという問題が出てくるわけでありますが、これも予算委員会を通じまして、では具体的に雇用の創出というものをどう考えるかという御質問に対しまして、公共事業でどれくらいとか、失業者が年末にはどのくらい減るとかいう話にはなりましたけれども、具体的な雇用の創出という問題につきましてはまだまだ策がない、そういうふうな感じがするわけであります。  そこで、当面の問題といたしましても、労働省そのものがいわゆる雇用安定対策を進めていかれる政府の中では最大のポストを握っておられるわけでありますから、今後あらゆる問題につきまして、労働省そのものが新しい雇用の創出というものを常に念頭に置いた行政のアプローチというものがますます推進されなければならぬのではないかという感じもいたします。  そこで、たとえば今度の予算編成の過程におきまして、その時点におきましても雇用の創出というものは緊急な課題であることはみんなが認識をしておった問題でありますから、この予算編成の過程において、今後特に公共事業をやる場合には雇用効果の高い、いまおっしゃいました住宅関連あるいは公共サービス部門に振り向けるような配慮が欲しい、こういう意見もずっとなされてきたわけでありますから、そういう観点から具体的に労働省として今度の予算編成の過程でそんな努力がなされたのかどうか、そんなのは言うべくして、結果論としてそういうものは出てくるのか、そのあたりをちょっと聞かして欲しいと思うのです。
  193. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御承知のごとく、景気回復の決め手、目玉商品として公共事業、大型積極推進をしていこうという、したがって公共事業の遂行、施行に当たりましては公共事業等施行推進本部、大蔵大臣が本部長でありますが、地方には地方でこれに似た協議会ができまして、中央地方を通じて公共事業を大いに積極的にやる、その公共事業に、この特定不況産業安定臨時措置法から出てくるであろう離職者とかそのほかの事情での失業者を結びつける、こういうことで実はおとといの閣議でも私は発言をいたしまして、同時に、その前の経済閣僚会議においても積極的な発言をいたしまして、失業者をせっかく拡大をする公共事業に吸収してもらう、そして特に失業が多発する地帯に対しては地域指定をいたしまして失業者の吸収をこれまた図る、こういうことをやり、同時にまた、これは地方自治体とも緊密な連絡をとることによって実際に地についた仕事ができますから、職業安定所があっせん役をいたしまして、県の出先と市町村、地方自治体と職業安定所、こういったものが緊密な連絡をとって失業者の吸収に努める。それに別途、中高年齢者に対しましては事業主に助成金を出して受け入れをしてもらって、民間の活力を生かして、相ともに現在の難局を切り抜けていこう、こういう対策を現に進めておるわけでございます。
  194. 米沢隆

    米沢分科員 当面緊急な雇用の創出というものが問題になりますけれども、雇用の創出と申し上げましても、ベースとしてはやはり民間の活力を生かした新しい仕事が開拓されねばならぬということ、それから予算編成等においていわゆる公共サービス部門等を充実してでき得る限り雇用拡大をしていくということ、それからもう一つは、いつも言われますように、時短あるいは週休二日あるいは時間外労働等を活用して、何とか労働時間よりも雇用の拡大の方を多くするといういろいろなアプローチの仕方があると思うのでございます。  そこで、議論を進めていく場合に、いま大臣がおっしゃいましたように、政府の各種の協議あるいは懇談の席で御努力をいただいておるさまはわかりましたけれども、どうも各省庁ともに、常に雇用拡大というものが前面に出た対策よりも、まずその省庁の管轄するものがスムーズにいって、その後雇用の問題が出てくるというきらいがなきにしもあらずという感じがします。  どうしてもここで労働大臣にお願いを申し上げたいことは、短期的なあるいは中長期的な雇用創出を図っていくというこの課題をもう少し前面に打ち立てて、政府部内ばらばらではなくて、統一した意思決定機関として雇用創出に具体的に取り組んでいく検討機関というものがつくられて、まじめに取り組まれていく方向を労働大臣のリーダーシップでつくってもらわねばならぬ、そういうことを感ずるものでございます。  たとえば、先ほどの話にありましたように、今後の産業構造はどうなっていくか、それに基づいて雇用構造がどうなっていくのかといういろいろな議論がなされます。たとえば、通産省の産業構造審議会というのがあって産業構造の長期ビジョン等がありますけれども、しかし、それはまさに本当に長期的なものでありまして、具体的に、では、そのビジョンを読んで、事業転換をしなければならない事業主が何かいい示唆でも与えられるかといいますと、何もそんなのは出てこない、それはちょっと遠い存在にしかすぎないわけなんで旧すね。  同時にまた、先ほどおっしゃいましたように、第三次産業というのが今後の雇用吸収力のある産業としてあるいは検討が加えられる、あるいは再編成される、そんな話がございましたけれども、現に第三次産業で一番雇用吸収力の高いたとえばスーパーとかあるいはチェーンストアとか、ああいうところは、御案内のとおり大店舗法の改正等を通じて逆に進出規制という方向に進みつつある。まあ産業政策上はいろいろありましょうけれども、雇用という面からは第三次産業で吸収してほしいというものは逆に少なくなっていくのだ。  そういうことをもろもろ考えてみますと、省庁の仕事そのものを進めていきながら結果的に雇用の問題を考えるという感じにならざるを得ない一面があるのですね。そこで、やはり労働大臣として特にリーダーシップを持って、そのあたりばらばらな動きというものを、雇用創出を前面に打ち立てた公式な検討機関というものをつくって取り組んでいただくことが私は必要なのではないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  195. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御激励を受けまして、大いにがんばらなければならぬというふうに思うわけでございますが、実は政府はすでにこの雇用問題の重要性ということを認識いたしまして、昨年の秋、雇用問題閣僚懇談会というのをつくっておるのでございます。実はこの懇談会が御期待のような活発な動きができていないということは私も率直に認めざるを得ないのでありまして、私はひとつ適当な時期に、いま予算審議が進行中でありますから、できるだけ早い機会にこの懇談会を御期待の方向に向かってやっていけるように努力したい、このように思います。  ただ、ひとつ御理解いただかなければならぬと思いますことは、現在の日本の雇用政策の政治の仕組みというのが、やはり景気を回復して、そして民間の企業のバイタリティーを大いに復活させて、それに失業者を吸収してもらい、新たな雇用の造出をしていこう、こういう一つの考え方が前提にありますから、労働大臣が余り先々出るといったことに対しては、やはりまず景気が回復するという産業政策といったものを大いにやってもらうということ、現在の仕組みとしてそうなっております。ただしかし、そうかといって、私はいま御発言のような線に沿うて大いに自分の職責を果たさなければならないというふうに考えておりますから、今後大いにがんばりたい、せっかくの御鞭撻、御協力をお願いいたしたいと思う次第であります。
  196. 米沢隆

    米沢分科員 確かに雇用不安を解消するのはまず景気を回復させることだ。しかし、長期的に見たら、もう皆さんも御案内のとおり、普通の状態で景気がよくなってもやはり労働力が余るというところにいま抱えている新しい問題があるのじゃないかと私は思います。だから、一応景気を回復するために努力をし、一応の好況感みたいなものが出てきてそれで完全雇用が達成されるかといいますと、そうでないというところに今後の新しい問題があると私は思うのですね。そういう意味で、景気が回復してもまだ完全雇用を達し得ない、そういう雇用というものを今後どう考えていくのかというのが、長期的な政策としては主眼にならねばならぬと私は思います。  そういう意味で、時短とかあるいは週休二日とか、あるいは時間外労働の規制なんというものはいままでとは違った観点で、逆に雇用の機会を拡大するという立場から取り組むという新しい意味での一面が強調されないと、長期的な雇用不安を解消することにならない。そういう意味で、これもいろいろと委員会で質疑がなされておりましたけれども、時短とか週休二日とか定年延長とか時間外労働規制の問題等々、私は、一面労働基準法等を改正して積極的に労働省自体がリーダーシップをとりながら進めていくという段階にもう来ておるのではないかという感じがしてなりません。  最後に、その労働基準法の改正の問題について、方向だけではなくて具体的に取り組むという姿勢を打ち出してほしいと思うのでありますが、大臣の御見解を聞きたいと思います。
  197. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働時間対策の進め方の一環として御発言がございまして、これをむしろ労働基準法の改正という法制によってきちんとしたらどうかという、こういう御発言と承りますが、私はこの問題についてはやはり企業産業実態を踏まえていかないと、一律にこの段階において法律で事を区切りをつけるということはいささか無理が生ずる、そのような事情があったと思いますが、この問題を審議された公労使のいわゆる労働基準審議会の建議も、行政指導によってとりあえずやるべきだ、こういう提言があるわけでございまして、私はこの建議を踏まえて御趣旨を生かすように、環境整備をしながら着実に前進をいたしたい、一歩も後退は許さない、こういう考えで努力をいたすことをお誓いをいたしまして、御答弁にする次第であります。
  198. 米沢隆

    米沢分科員 確かに一言に、時短を法制化して、そしてそれに基づいて雇用の機会を拡大するという、それはしゃくし定規な議論になるかもしれません。私が申し上げますのも、単なる産業企業実態を無視して法制を強行して、それに基づいてやれというのではなくて、行政指導を幾らされてもやはり限界があることは事実ですね。そういう意味では、たとえば週労働時間を一時間でも減らしていくという、そういうものと相タイアップしながら行政指導を強化する、あるいは産業企業実態の中からいろんな協議を進めて行政指導を効果あらしめるという、そういうものが必要だと私は思うのですね。そういう意味で、労働基準法の改正というものは、一挙にそれをやりさえすればうまくいくという問題ではありませんけれども、労働基準法の改正そのものを一面ではやるという意思がない限り、私は行政指導だけでは効果が上がらない一面があるのではないか、そう思うのです。  そういう意味で、すぐ労働基準法を改正しろという議論ではなくて、近い将来において労働基準法の改正というものも含めた時短あるいは週休二日というものに取り組む姿勢があるんだ、こういうような御見解をぜひ聞きたいと思うのであります。いかがですか。
  199. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御趣旨はよく理解いたします。すでに労働省におきましても、労働基準法研究会という研究会がございまして、いろいろいままで実績を残しておりますが、私はこの労働基準法研究会において、当面大きな政治課題となってまいりました時間短縮を含めた問題もひとつ研究してもらう、ともどもにわれわれもこれの実現方について知恵を出し合いたい、このように考えております。
  200. 米沢隆

    米沢分科員 ありがとうございました。  終わります。
  201. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 以上をもちまして米沢君の質疑は終了しました。  次に、島田琢郎君。
  202. 島田琢郎

    島田分科員 私は、失業労務者対策といいますか、俗に言う失対の問題についてきょうは限定してお尋ねやら私の考え方を述べてひとつぜひ善処いただく、こういう点については積極的に取り組んでいただきたい、こんな願いを込めて主として大臣お尋ねをしてまいりたい、こう思います。  この制度が始まりましてからかなりの年数がたってまいりました。法律的には制度の見直しというのを五年ごとにやる、こういうふうなことになっているようでございますが、しかし今日のように非常に目まぐるしく社会の状況、環境が変化を遂げてまいりますと、五年ではとてもこれは長過ぎるということを指摘をする向きもございますし、また事実、昨今のようなこういう失業者がふえていく、こういう状況の中ではこれに的確に対応するということがぜひ所管労働省としては私は必要だ、こういうふうに思っているのでありますが、幸か不幸か、ことしがその見直しの年に当たっているというふうに実は聞いています。私は、前段では法律がありますから五年間見直しはしないということで、これはたてまえとしてはそうなりましょうけれども、しかし的確に対応するという姿勢から言いますと、これに必ずしも固執するべきではないという考え方を持っているのでありますが、そもそも今度の制度の見直しの時期を前にして、所管労働省としてはどういう点を見直していこうというふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点をまず最初にお聞きをしたいと思います。
  203. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生からお尋ねのございましたように、失業対策事業につきましては五年ごとに検討するということでやってまいっておりまして、五十年に一番最近の制度検討を行いまして、五十一年度から新しい制度として発足をいたしまして現在が第二年度目、四月から第三年度目ということになりますので、先生おっしゃいましたように、私どもとしてはむしろ五十一年度から発足いたしました新しい制度を軌道に乗せることに努めておりまして、ただいまのところ、次の制度検討で特に何を重点としてお願いするかということについては、まだ私どもまとまった考えを持っておらない段階でございます。
  204. 島田琢郎

    島田分科員 そうですか、私はことし見直しの年だと思っていたら、そうですね、いまのお話から言うとまだまだ時期があるわけですね。  私は先ほどもちょっと指摘をしておいたのですけれども、いまのこういう不況が深刻になっていく過程では、非常に雇用拡大ということが大きな政治課題でもありましょうし、特にこの制度が発足をして以来、地方自治体がこの部分を受け持ってまいりました中で、失対労務者の皆さん方が地域的に非常に重宝な存在として大きく見直しがされてまいりましたし、事実またその町村における大変ありがたくない部分を積極的に引き受けて、そしてまじめに仕事に取り組んでおられる、こういう姿勢、姿というのは非常に好感を持って迎えられているわけでありますが、しばしば制度の見直しというようなことが議論されます過程で、私どもが遺憾に思っていますのは、この制度を縮小するという方向でどうかすると議論がされがちだ、つまり厄介者扱いする、こういう傾向が強いのでありますが、これは私は、こういう制度をつくりながら地方自治体にかなり多くおんぶをしているというような、そういう制度的な欠陥があるのではないか、こんなふうに見ている一人であります。  大臣、この私の感じというのは間違っているのかどうか、そこのところがきちんといたしませんと、これに対する積極的な対策というのは出てこない。それどころか、かつて一時金で縮小をおやりになろうとしたような、ああいう考え方がまたぞろ頭をもたげてくる、こういうことでございます。ですから、今日のような積極的な雇用拡大の場所をつくっていくというそういう意味で、私は全部地方自治体に責任を負わせてしまうということの不都合というものについてはやはりこの中で見直しをしてかかりながら、国が積極的な責任を持っていくという態度が明確に出てきて初めて地方自治体も協力ができる、こういうことの関係にあるんだと思うのでありますが、私がいま申し上げましたことについて、大臣の御所見はいかがでございますか。
  205. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生のお話にございましたように、最近の失業対策事業につきまして地方公共団体、自治体の側からもその事業の推移について見直しと申しますか、好意的な評価がなされておるし、また就労者の方々がまじめに仕事に取り組んでおるのではないかとおっしゃることにつきましては、私どもも最近特にそういう傾向があらわれてきておると思っております。特に、先ほど申し上げましたように、五十一年度から甲乙両事業に区分をいたしました。六十五歳以上の方あるいはそれと同程度の体力を持っておられる方についての甲事業と、それからそれ以外の比較的若手の方の乙事業と、事業を二つに大きく区分いたしまして、それぞれの効率的な運営を図るようになりましてからは、特に先生おっしゃるような傾向が出てきておるように思います。  それから、地方自治体へおんぶしておるというお話でございますけれども、この問題につきましては、御承知のように三分の二の補助率でやっておりますので、こういったような簡易な土木事業等に対する補助制度の内容としては比較的高い方へ入るのじゃないかと思っております。  なお、失業対策事業について検討の話が出るたびに、縮小の方向で考えておるのではないかというお話でございますけれども、ただいまも申し上げましたように五十一年度から甲乙両事業に区分いたしまして、六十五歳以上の比較的高齢者の方に対してもそれにふさわしい仕事をそれぞれ地方公共団体で工夫して準備をしていただいておりますので、現在のところは、私ども特に縮小というようなことで次の制度検討に臨まなければならないというふうには考えておりません。
  206. 島田琢郎

    島田分科員 部長がおっしゃるのは、これはたてまえだと思うのです。実態は必ずしもそうではありませんで、いま申し上げておりますのは、地方自治体に負担が重くかかり過ぎないかという点の指摘なんであります。それはたてまえは確かに国が三分の二出しておる、こういうことでありますけれども、しかし、やはりそれなりに地方自治体はいろんな知恵と工夫と、ない財源をひねり出して、それは三分の一持てば済むという制度にはなっていますけれども、そうではない。こういう面について、制度的にも非常に定着をし、社会からもこの制度の積極的な認知といいますか、こういうものがなされている、そういう世論というものもあるわけでございますから、まあいまの制度で不都合だと思っておりませんというお話でありますけれども、私は必ずしもそういうしゃくし定規に判断するような事態にはなっていないんではないか、こんなふうに思うわけであります。  そもそも、こういうお話をいたしますと決まって出てまいりますのが、失対事業というのは失業対策という、出発点の違う対策なんでございましてと、必ずそういう話になるのでありますけれども時代がこういうふうに進んでまいりまして、確かに失対労務者対策だ、こういうふうな制度的な一つの枠があるということはこれは認めなくちゃいけないのでありますけれども、しかし、働いている場所とか、地方自治体が責任を持っておるという立場から言いますと、地方公務員の状態と失対労務者との比較というのは、これはやはり身近なところでありますから行われるのは当然だし、またそういう感覚が出てくるのは、これまた否定できないわけです。そういう中では、たとえば寒冷地手当の問題、石炭手当を含めました寒冷地手当の問題だとかあるいは交通費の問題なんかも比較論議がそこに出てまいりまして、制度的に何とか少し前進を図ってもらいたいという要求が必然的に出てくるのも、これまた避けられぬことだと私は思っておりますので、そろそろ積極的に見直しを図っていく、そういう姿勢で取り組んでもらいたい、こういうふうに考えているわけであります。  そこで、いま申し上げました、たとえば石炭手当の問題でありますけれども、特に昨年の冬と今年の冬、ついこの二、三日前までは、春を目の前にして北海道の寒さというのは、とてもとても常識で考えられないような大変な寒波に見舞われて、私のところの周辺でも連日氷点下二十度を超すという厳しい寒さに見舞われているわけであります。失業者は生活の上で大きな不安と危険を感じているのはあたりまえのことでありますが、しかし、これを補償する生活給の一つであります石炭手当、寒冷地給というのは、他に比較して非常に恵まれない状態にある。これも制度的にそういう仕掛けにはなっておりませんのでということになるのでありましょうけれども、これにはいろいろな歴史的な経緯があって、失対部長も頭をひねって御苦労されていることは私もよくわかるのであります。きょうは大蔵省からも来ていると思いますので、後ほど大蔵省の見解も聞きたいのでありますが、比較してみますと余りにも格差が大き過ぎます。これも比較論議でやるということは許されぬという制度的なものがあることは承知でも、それでも私は納得ができないし、何とかこれを制度化することについて、いまの役人の皆さんの明晰な頭脳の中で私はもっといい知恵が出るのではないかとさえ思っているのです。私の言うような正攻法的な制度化を図れということが当面むずかしいとすれば、これを何とかもう少し直してもらうことができぬでしょうか。公式論議をするといろいろ差しさわりのある部面もあることを承知の上で私は申し上げているのでありますが、たとえばこれの基本になっております単価の見方だって、昭和四十年にその原資三円と決められて、こんなに物価が大変な値上がりをしているときでも、今日まで依然三円がそのまま据え置かれて原資の計算の根拠になっているというのは、これはちょっと時代がかってい過ぎはしないでしょうかな、そんなふうな感じがするのであります。これは失対部長と私とやり合ってもしょうがないわけですが、大臣、そういう御認識を十分お持ちになっていらっしゃると思うのですけれども、どうですか、私がいま指摘したような点について改善する必要があるというふうにお思いにならぬのでしょうか。  そしてしかも、この寒冷地給というのはいま一日百八十円であります。これも現実には、必ず働かないとこれがつかないものであります。休んでいたらつかないのであります。平均稼働日数で見ると言いますけれども、大体二十日から二十二日くらいの間の計算で百八十円掛けてまいりますから、一カ月というのは本当に驚くべき低額であります。仮に石油二十リットル一かんが七百円といたしましても、一体幾かん買えるかということになったら、これは大変なことであります。こういう時代がかった内容をそのまま据え置いているというのはいかがなものか、こんなふうに考えます。公務員は幾ら、生活保護は幾らという比較論議もありますけれども、それは法律のよって来るところが違うわけでありますから単純に比較することは私は避けていきたいと思いますけれども、私は非常に質問しづらい、議論しにくいところをいまやっておるのでありまして、その辺のところを大いに御理解いただいた上で、これはぜひ大臣からお聞かせ願いたいと思うのであります。  それからもう一つ、二番目には交通費の問題であります。これも同じような議論になりますが、地方公務員、つまり市町村役場でお働きになっている方は大体二キロ以上になりますと実費弁償されるという仕組みになっているようでありますが、この失対労務者につきましては六キロ以上でないと見ない。しかもそれは半分ということで実費の二分の一しか見ない、こういうふうなことでありますが、これもまだ制度化という点では問題があるわけでございます。お年寄りの方が多いし、また御婦人もいらっしゃるわけで、現場に駆けつけるのにはなかなか交通費なんかもばかにならぬ額になる、こういうことを考えますと、これらも大上段に振りかぶった正攻法的な話ではなくて、恩情あふるるというようなところから制度的に何か知恵をめぐらして改善を図っていくということができないのでしょうか。大臣、いま私は二つの具体的な問題を提起いたしました。御感想、いかがですか。
  207. 藤井勝志

    藤井国務大臣 実態的なお話でございますから、担当の政府委員に答弁をさせます。
  208. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生から、現在の制度の仕組みあるいは欠陥も十分御承知の上でお話がございましたので、私どもの努力の不足を何か感じさせられるような点がございますけれども、一応申し上げさせていただきますと、まず第一点にお尋ねのございました寒冷地の問題につきましては、現在、失対賃金の制度につきまして私どもが講じております冬季加算の問題であろうかと思うわけでございます。失対事業は二十四年から始まったわけでございますけれども、冬季加算につきましては、三十二年から冬季加算という制度を設けたわけでございます。御承知のように、失対賃金につきましては、現在の段階では全国を九つの地域区分に分かちまして、その九つのそれぞれの地域についてさらに八段階の賃金を決定いたしておるわけでございます。細かく申し上げますと、八、九、七十二で、七十二種類の賃金額が決まっているわけでございますけれども、北海道、東北等の寒冷地につきましては、ただいま申し上げましたように三十二年から、全国的に決まりました賃金の上に冬期間何がしかの金額を冬季加算として積み上げるということで現在に至っているわけでございまして、その額は、五十二年度におきましては十二月から五月まで北海道は六ヵ月間、一日について百八十円を加算するということでやってまいっております。この制度は当初は実行で、やりくりでやっておりましたが、三十六年以降一応の財源措置を認められて今日に至っておるわけでございます。御承知のように、この冬季加算は当初二十円から発足いたしまして、五十二年は百八十円ということになっております。ただいま申し上げましたのは五十二年度の冬季加算の額でございますので、五十三年度いかがするかにつきましては、これまた先生御承知のように、失対事業就労者の賃金は失業対策事業賃金審議会に御相談した上で労働大臣が決定するという仕組みになっておりますので、現在失対事業賃金審議会と御相談いたしておる段階でございます。  それから第二点の、失対事業就労者の通勤交通費の問題でございますけれども、これまた先生御承知のように、失業対策事業の賃金は、緊急失対法に基づきまして、同一地域における類似の作業に従事する労働者の賃金を考慮して定めるというたてまえになっておりまして、この失対賃金を決定いたします際の基礎資料として用いておりますのは、屋外労働者職種別賃金調査と申しますが、この屋外労働者職種別賃金調査におきまして、民間の同種の日雇い労働者に支払われる現金給与の総額を調査するということになっております。したがいまして、この屋外労働者職種別賃金調査で上がってまいります金額といたしましては、決まって支払われる現金給与の総額がすべて含まれておるということになりまして、したがって、民間の日雇い労働者につきまして通勤に要する費用等が現金で決まって支給されている場合には、それを含めた額が調査対象として上がってまいりますので、その限りにおきましては、現在の失対賃金においても民間の交通費の要素がある程度反映されておるというふうに考えております。ただ実際問題といたしまして、その先をさらに考えてまいります場合には、民間の日雇い屋外労働者の場合には、事業主の方で、最近の例でございますとマイクロバスあるいはバス等をもって、むしろこちらから就労者の居住地へ出向いていって迎えてくるというようなことが相当行われておるわけでございますので、正確に通勤に要する費用の全額が反映されておるとは私どもも思っておりませんけれども、繰り返すようでございますけれども、現金で決まって支給されている場合には、現在の失対の賃金にもその限りで反映をされておるということになろうかと存じております。
  209. 島田琢郎

    島田分科員 そもそも冬季加算という問題については、全国九つに分けて八段階、つまり七十二種類で、段階別に地域の実情調査の上決めていくというお話でありますが、それにしても、確かにそういう精査をしていくということは大事なことなんでありますけれども、大蔵省、この原資の計算の根拠で三円というのは、だんだん人数も余りふえない、ふえる傾向よりもむしろ減る傾向になっていっていますから、原資三円でもう十何年も据え置いて何ともお感じにならぬのかとさえ思うのですよ。これは、ですから、どんぶりが大きくならぬのですから、同じどんぶりの中だから、北海道で元気よくやると南の方が減っていく、今度は南の方から押し返されると北の方の冬季加算が減る、こういう関係になってしまいまして、私は、もうそろそろこの原資をふやす、額をかさ上げするということを検討してもらわなければいかぬと思うのですが、検討の余地はないのでしょうか。
  210. 窪田弘

    ○窪田説明員 先ほど畠田先生から、過去の経緯も十分御承知になり、またいろいろの問題のあることも十分御承知になった上での御質問で、正面から聞きにくいというお話もございましたが、確かに、三円でいいか、こういうふうに御質問をいただくと、それは一つの計算の過程でございまして、私どもも冷たい財政論でこういう働く人の賃金を割り切るつもりはございません。そこで、これは失業対策事業賃金審議会の答申をいただいて決めることになっております。近くそういう手続もあることでございますので、その答申を私どもは尊重する所存でございます。
  211. 島田琢郎

    島田分科員 審議会にお諮りしてというお話でありますが、これはそもそも原案がふくれてきませんと審議会だって審議できないわけで、思い切って倍にぐらいしたっていいのではないかと私は思うのですが、そういう思い切った原案を審議会にかけるおつもりなんですか。その点も含めて検討するかどうか。
  212. 細見元

    ○細見政府委員 ただいま先生からお尋ねのございました審議会に諮問をいたしますのは私ども労働省の責任でございますので、ただいま大蔵省とも御相談しながら審議会に提出する最終案と申しますか、私どもの事務的な最終案を検討しておる段階でございます。
  213. 島田琢郎

    島田分科員 私はあえて窪田さんの顔を見て言ったのは、そういう審議会にかける責任は確かに失対部長の原局にあるのですけれども、事前にあなたがひねっちゃったら幾ら失対部長が一生懸命前向きにやろうったってできないから、その辺のところはやはりいま私が申し上げたそういうことを踏まえてひとつ御検討が願えるか。あなたがだめだと言うたら、何ぼ失対部長が前向きに考えたって、労働省大臣が一生懸命お考えになったって実現しないですからね。これは実態に合わぬということについて御理解ができたのなら検討してください。どうですか。
  214. 窪田弘

    ○窪田説明員 ことさらにひねるというふうな考え方は持っておりませんので、御指摘をいただいた点も十分頭に入れまして、労働省の意見も聞きまして御相談したいと思います。
  215. 島田琢郎

    島田分科員 私は期待をしております。余り大げさな言い方をするつもりはありませんが、これはもうだれが考えても時代がかっている。ここのところを近代的に改めていただくということに温かい気持ちで——いまのような時代で本当に失業者をふやしてはいけない。そうして、大事な失対労務者対策という新たな制度化を図って今日まで進めてきたというこの制度について、私は一つの評価をしている一人なんです。これはだめだと言っているわけではありません。こんないい制度を前向きに生かしていただいて、地域で喜んでこの制度が推進されていくように、地方自治体にも余り困らせないように財源的にも少し国がめんどうを見ていく。確かに三分の二と言えばずいぶん高い補助率だということになるわけですけれども、私がさっき言ったように、それは名目上のことでございまして、実態というのはかなり地方が負担しておりますよ。こういうことは窪田さんは頭に置いて十分知っての上のことだと私も思いますけれども、きょうの議論は、大上段に振りかぶって、けしからぬという話じゃありませんで、ぜひひとつこれは改めてもらいたいな、私はそういう願いを込めて申し上げているのでございますから、ひとつお願いしたいと思います。  それから、通勤手当の問題でありますけれども、これも制度の上では、いま失対部長から、あなたの言うようなことではなくて実態を十分反映しているはずだ、こういうことでありますし、また仕事就労の場所というのが月によって、毎日変わるなんということは余りないようでありますけれども、ときによっては町の遠いところへ行ったり近いところへ行ったりすることによって、居住地から近くなったり遠くなったりするから、極端に言えば毎日距離が変わる、交通の方法が変わるということでは把握しづらいということをおっしゃっているわけですけれども、それは一つのへ理屈だと私は思うのです。そんなのは実態に合わせてやれるはずだし、しゃくし定規にここからここまでといったような区切り方ではなくて、そういう点を正確に把握されているというふうに含めておっしゃっているのかもしれませんけれども、必ずしもそうなっていないのじゃないか。ですから、その辺について一回全国的に調査を進めていただきたいものだ、こう思うのですが、いかがですか。
  216. 細見元

    ○細見政府委員 先ほどから申し上げておりますように、たてまえとしては日々雇用という形式になっておりますし、さらには、必ずしも失対事業だけで就労日数二十二日を過ごすということではなしに、できることならば公共事業なり民間に就労して、その残りは失対事業へ戻っていただくということが原則になっておるわけですが、先生のおっしゃいますように、通勤交通費の問題につきましては就労者の側からも大変強い要望がございますので、私どもとしても何らかの形で全国実態を把握するようにしてみたいと考えます。
  217. 島田琢郎

    島田分科員 時間が来ましたから終わりますが、大臣、いまお聞きのとおり、大変大事な労働対策をお進めになっている労働省所管一つにこういうひずみといいますか、日陰になっている部分もある。ここのところもひとつ十分頭に置いていただいて日の当たる行政をお進め願いたい、こう思うのですが、最後に、先ほど部長からは、この制度の見直しは前向きにも後ろ向きにもやりませんというお話でありますが、私は、かりそめにもこの制度を縮小していくというようなことは考えていない、こう理解してよろしゅうございますね。
  218. 藤井勝志

    藤井国務大臣 失対事業に対して大変御熱意のある御発言を承りまして、私も労働省を預かっておる責任者といたしまして、実態を踏まえ、実情をよく考えて、御要請の線を少しでも前進するように努力をいたしたい、こう考えます。
  219. 島田琢郎

    島田分科員 終わります。
  220. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて島田君の質疑は終了しました。  次に、田畑政一郎君。
  221. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 まず第一に、いま大変問題になっております永大産業の倒産と雇用対策について労働省の御見解を承りたいと思うのでございます。  ちょうど一番最新のエコノミストを持ってまいりましたが、これにはこういうふうに書いてございます。「あわれなのは従業員である。倒産の被害者は多いが、顧客や中小の取引先救済には関係官庁が積極的な対応策を示している。通りいっぺんの作業で終わる恐れもあるが、法的にも被害を最小限にする歯止め装置も、一応はある。だが、従業員の場合、今後、大幅の人員整理もなしとはしない。」こう出ておるわけであります。御案内のとおり、政府はいわゆる関連産業の倒産の防止あるいは当面の永大産業の資金繰り、あるいはまた永大産業が諸官庁から受ける契約あるいは受注等につきましては、倒産会社としてもこれを継続するというような、いろいろなかなり積極的な方法が打ち出されておるわけでございます。ところが、私、率直に申し上げまして、それじゃ一体労働者はどうなるのかという問題につきましては余り触れられておらないわけでございますね。やはりこの窓口と申しますか、主務官庁は労働省でございまして、労働省は、政府が一体となって救済しておるところのこの永大問題につきましては、雇用対策についてはかく措置するという基本的な方法がなければならぬと思うわけでございまして、この点いかがなっておるか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  222. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変不況が続いておる中に、永大産業がここに倒産を余儀なくされたという不幸な事態、大変心を痛めておるわけでございますが、永大産業の報を受けまして、われわれは早速、去る二十日に会社の責任者を労働省に呼びましていろいろ事情を聴取いたしまして、何といってもわれわれの所管であります労働者の雇用の問題、労働条件の問題、こういったことについてはいろいろ指導してまいったわけでございまして、その後引き続き本省並びに現地の方とも連絡をとりまして事態の推移をいろいろ見守っておるわけでございますが、何よりもまず、われわれはこの大きな企業の倒産に対して、いわゆる雇用安定資金の指定を大型倒産企業種として早急に決定をしようというので、いろいろ調査をいたしまして、実はきょう指定をいたしたわけでございます。今後もこの永大産業の問題につきましては事態の推移を見ながら、必要とあらば現地に担当官を派遣してよく今後の指導に万全を期したい。労働者の雇用の問題、労働条件の問題について労働省としてとり得る処置は万全を期したい、このように考えております。
  223. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 重ねてお伺いいたしますが、この再建のために会社更生法の適用を申請いたしておりますので、一日も早く会社更生法が適用されるということが望ましいとされておるわけでございます。しかし、少なくともその適用まではやはり全財産を保全いたしまして、また操業も平常どおり運営をする、政府もこれに対してはいろいろな意味で力をかす、銀行にも協力を依頼する、こうなっておるわけであります。私は、最低限度労働省として当面やっていただかなければならぬことは、会社更生法の適用が出るまで、判決があるまでは解雇者を出さない、あるいは賃金不払いがない、労働条件の低下はないということ、これは政府が全部やっているのに労働者だけあるということになっては困るわけでございまして、そういう点はぜひお願いをいたしたいと思うのでありますが、重ねてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  224. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、永大産業に会社更生法の決定の決まる途中において労働者の雇用の問題あるいは解雇の問題、こういった問題に対して重大な関心をわれわれは持っております。ただ、解雇の問題につきましてはいろいろ労使の決定、こういう問題もございますが、賃金の不払いといったことが生じないように現在厳重に事態の推移を見守っておるわけでございまして、また近く永大の責任者を労働省に呼びまして、御趣旨の線を踏まえて万遺憾なきを期したい、労働省としての尽くせる手は尽くしたい、このように考えております。
  225. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 いま賃金等の問題については御答弁いただきました。ただ、御案内のとおり、会社更生法が決定されるまでの間は、その間管財人が決定されまして、財産等についてはこれを保全する義務があるわけでございますが、その間にいわゆる人員整理というようなことが行われるということになりますと、これは再建計画が立たないうちに人員整理が行われるということになりまして労使紛争に発展する、それがひいては再建に悪影響を及ぼす、こういうことになるわけでありますから、私は、まさかその途中におやりになるとは考えられないけれども、少なくとも主務官庁である労働省あるいは労働大臣は、そういうことのないように十分なる措置をしていただかなければならぬのじゃないか、こう考えるわけでございますが、その点はいかがでございますか。
  226. 北川俊夫

    ○北川政府委員 永大産業の労使関係について見ますと、組合と会社側に、合理化に当たって合意に努力をするという協約がございます。今回更生決定がいたされまして管財人が任命されましても、法律上、管財人はそういう有効な協約については当然守るべきでありますし、従来慣行としまして、そういう場合に永大産業の労使は十分話し合いを行ってきたという慣行もございますので、そういう点は管財人におかれて十分そういうところに意を配して対処されることを期待しておりますが、いま先生御指摘のように、労働関係につきましては通産当局のみならず永大産業の会社側とも十分連携をとりまして、そういう指導に万遺憾なきを期したい、こう考えております。
  227. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 私が申し上げました趣旨につきましては十分おわかりと思いますので、ひとつ十分なる処置をとっていただくようにお願いをいたしておきます。  次に、第二番目の問題といたしまして、俗に言われておりますサラリーマン金融のことについて申し上げたいと思うわけであります。  従来、こういう高利の金融機関が届け出をもって設置をされておりまして、最近まではサラリーマン金融というような言葉はなかったわけでございますが、すでに全国では二万二千社に及んでおると聞いております。またその利用者も三百五十万という数を数えておると言われております。御案内のとおり、三百五十万というのは、これは中小企業の人も借りてはおると思うのでございますが、雇用労働者にこれを比較いたしますと約一割以上の諸君がこれを利用しているということです。今日、まことに労働者にとっては無関心ではいられない状態になっておるわけでございます。そしてまた、その被害の状況等についても時折新聞に出ておるわけでございまして、一家心中、夜逃げあるいは離職、あるいは会社を解雇になるというようなまことに悲惨な状況が出ております。そして、この取り立てば職場、家庭を問わず非常に積極的なと申しましょうか、強硬な取り立て方針を彼らは持っておるわけでございまして、そのための被害は全国各地に広がっておるという報告を私ども受けているわけでございます。この問題につきましては、あるいは法制上法務委員会等におきましても議論されておる、あるいは大蔵委員会の金融筋におきましても議論の対象になると思うのであります。しかし、何といいましても被害者はやはり労働者が今日では最も多いのではないか。あるいは労働者の家族というものは、このごろおかみさんも借りておるらしいのでございまして、御婦人の方も多いのではないか、こう思うわけでございます。これに対しまして一体労働省がどのような措置をとろうとしておられるのか。不幸にいたしましてきょうまでは余りそういう措置をとったということは聞いておらぬわけでございまして、この点ぜひお伺いをいたしたいと思います。
  228. 北川俊夫

    ○北川政府委員 いま先生御指摘のように、サラリーマン金融によりまして労働者の方がいろいろ被害を受けておるという事例は、私たちも把握をいたしております。なお、サラリーマン金融そのものの取り締まりあるいは監督につきましては、いま先生御指摘のように大蔵省あるいは法務省、警察等でいろいろやっていただいておるわけでございますが、私たちが行政の範囲内でやり得ますこととしましては、サラリーマン金融と同じ趣旨からいいますと、労働金庫というものがすでに存在しておりまして、労働組合員である一般勤労者に対してそういう生活金融を従来やってきておるわけでございます。ただ、現在行われておりますサラリーマン金融に比べて、保証の問題あるいは手続の問題等でいろいろ難点がございますので、そういう点の改善を行いまして、いま先生御指摘のような一般勤労者の需要といいますか、要望に対応すべく、従来もいろいろ労働金庫側と話し合いをいたしてきたところでございます。  先生あるいは御承知かと思いますけれども、たとえば福井の労金等ではスピードローンというような制度を発足をいたしておりまして、かなり利用者があるようでございます。さらに、これを模範としまして若干の労金ではそういう制度を発足させたいということで検討を始めておるようでございますので、そういう点の指導をして労金がそういうものに乗り出す。ただし、労金でありますから労働者の資金を預かっております。そういう面から安全性の確保ということも私たちとしては十分配慮をいたしておりますけれども、その調和の上に、今後新しい方向として労働金庫の活動分野を見出していきたい、こう考えておるわけでございます。
  229. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 ただいま御答弁いただいたわけでございますが、もうすでに御案内と思いますけれども、大蔵の調査によりますと、いわゆる普通の銀行が、これは三菱信託の名前が出ておりましたが、約八十億に上る金をいわばサラリーマン金融と申しますか、町の高利貸し金融機関に貸しておる。恐らくこれは一行だけではないと思うのですね。相当多量に上っているのじゃないか。銀行も商売でございますから、回収が確実ならば金を貸すというわけですね。そして、貸しておる利率はどうかと申しますと年利九・五%になっておるわけですね。それをサラリーマン金融に回しますと年利七三%に回る。これはべらぼうなものですよ。そしてそのために三百五十万の人が泣いておる、こういう現実です。これに対して労働行政がどのような手段をとるのか、どういう措置をとるのかということが私はまことに重大な問題だと思うのです。不幸にしていままで、いま福井労金のお話もございましたけれども、まだ積極的に全国を統括して行おうという方向を私は余り聞いておらぬわけでございます。これであっては労働省はだめなんじゃないか。なるほど、大蔵省からいえば、好ましくないけれども銀行が貸すものを、これはどうにもならないのですね。そうすると、これを救済するのは労働省以外にない。労働省はその気持ちを持って、勇気を持って当たっていただかなければならないのじゃないかというふうに私は思うわけでございます。  そういう点で、いまお話も出ましたが、福井県の例を申し上げますと、いまおっしゃったスピードローンでございますか、そういうこととは別に、地方自治体が、たとえば福井市が三千万なり四千万の預託をする、それに対して同じく労働金庫が三千万なり四千万なり、同額の金を出しまして、両方合わせて、福井市でいわゆるサラリーマン金融によって困っておる諸君に対して直ちに貸し付ける、こういう制度をつくっておる。それに対して各市も徐々になびいてきておる、こういう状況ですね。そして県は、まことに些少でございますが利子補給をするというような方法をとっております。しかし、私の調べたところによりますと、これはごく一部である。しかもそれは創意に満ちてやられているのであって、全国的な指導に基づいて、積極的な応援に基づいてやられているわけではないのですね。私はそこに問題を感ぜざるを得ないわけです。少なくとも労働省は、これだけ大きな問題になっておるサラリーマン金融に対して、労働者をどう救済するのかという積極的な施策がなければいかぬ。一つはかくやる、二つはかく手配しているというものをきょう今日私の前に提示されなければならぬと思うのです。それがないというところに私は大きな問題を感ずるわけでございます。したがって、これについては、指導あるいは財政上の措置といったものを含めて抜本的対策を講じていただくように私はお願いしたいと思う。だからその点、ぜひ労働大臣からこれに対する率直な御意見をいただきたいと思います。
  230. 北川俊夫

    ○北川政府委員 先生の御指摘の趣旨、私たち十分わかるわけでございますけれども、現在労金で年間約一兆円の貸し出しをしておりますが、その貸し出しの対象の約九〇%近くは勤労者でございます。そういう勤労者に対する生活金融という意味では労金は相当大きな役割りを果たしております。ただ、サラリーマンローンとどう違うかといいますと、担保の問題とか貸し出し手続の問題という点があるわけでございますが、その点の改善につきましては、いま御指摘の福井労金等の制度を一つの参考にしまして今後の指導をすることにはやぶさかではございませんが、先ほど申し上げましたように、労金が預かっております金は同じ労働者の大事な預金でございまして、それが単に簡便に貸し出すということで回収ができないという事態に陥ってはいけない、いわゆる安全性の確保というものとの調和を十分考えてやるべきかと私は思いますけれども、先生の御指摘の点も踏まえまして今後の検討課題にさせていただきたいと思います。
  231. 藤井勝志

    藤井国務大臣 最近、サラ金がまじめな勤労者を食い物にしているという現実を目の当たりにいたしますと、ただいま田畑委員御指摘のような、まことにこれは何とかしなければならぬという気持ちにおいて、私は田畑委員と決して意見を異にするものではございません。ただ、いま局長からもいろいろ話をいたしましたが、金融政策、金融制度は、私から申し上げるまでもなく大蔵省が一つの中心になり運営をされておるわけでございまして、御趣旨はよくわかりましたから、大蔵省とわれわれも緊密な連絡をとって、まじめな勤労者がサラ金のえじきにならないように配慮すべき点を大いに検討させていただきたい、このように思います。ただ問題は、いま局長から答弁いたしましたように、現に労働金庫そのものは勤労者の金を勤労者の方へ十二分に還元をしているといったこと、ただ一部の不心得な者が勤労者を食い物にしておるという、これはまた法務省関係とかそういう各役所の関係の力をかりないとなかなか所期の目的を達することがむずかしいではないか、このように思いますけれども、いずれにいたしましても、勤労者の気の毒な現状に対してわれわれも十二分に今後手配をいたしたい、このように考えております。
  232. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 これは私は法務あるいは大蔵と十分協力してやっていただきたいと思いますが、私がお伺いしているのは、労働省は勤労者の保護といったものを目的としているわけでございますから、何よりも積極的にこの面に対して指導方針を出していただきたいということをお願いしているわけでございます。その点はよろしくお願いしたいと思います。  ただ、これとちょっと関連するのでございますが、ついでにお伺いしておきますと、最近企業倒産などございますね。そうすると、このごろ企業はわりと地方に進出をいたしております。経営者は都会にございますけれども、工場だけが地方にある。ある程度の熟練工を連れてまいりまして、宿舎などを建てましてやっておるわけでございますね。そうすると、その地元の労働金庫などを利用いたしまして住宅資金などを借り入れている。企業が倒産するということになりますと、労働者の方はそれぞれ自分の地元である東京、大阪にお帰りになる。そういうぐあいにしますと、労働金庫の趣旨は会員にあらざればこれを利用し得ずという原則があるわけでございますね。そうすると、企業倒産になると会員でなくなるから直ちに金を引き揚げなければならない、そういう問題が生ずるのですね。これはどうでございましょう。そういう点で労働省、何かお考えになっていることがありますか。
  233. 北川俊夫

    ○北川政府委員 労金も発足をいたしましてかなりの年月がたっておりまして、同じころ庶民金融ということで発足をしました信用金庫あるいは信用組合等が制度的にいろいろその後改善をいたしておりますのに、労金の場合は、いま先生御指摘のように貸出対象を会員に限定しておるとか、その他いまの金融事情に必ずしも適合しておらない制度上の欠陥が見受けられるところでございますので、その点につきましては、私たちいま当事者も交えましていろいろ検討をいたしております。そういう点につきましてはなるべく早い機会結論を得て、適当な時期に制度改善に踏み切りたい、こう考えております。
  234. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 次の問題、一つだけお伺いいたしておきますが、職業安定法第十一条によりますれば、「市町村長は、公共職業安定所長の指示に従い、左の事務を行う。」となっております。「一 公共職業安定所に直接申し込むことのできない求人又は求職の申込について、これを公共職業安定所に取り次ぐこと。二 求人者又は求職者の身元等の調査に関し、公共職業安定所から照会があった場合これを調査すること。」等になっておるわけでございますね。御案内のとおりです。  ところで、今日これほどいわゆる離職者対策が非常に問題になっておるにかかわらず、市町村には、この種の問題を含めました広い労働行政の末端機構と申しましょうか、機構というと大変なにでございますが、そういうことをやっていただける担当者あるいは担当係といいますか、そういうものを調べてみますと、ほとんどないのですね。だからみんなこれは労働省がやっておる。最低、県庁が労政課を置いている、こういう状況です。これほど問題になっておるのに、どこの村へ行ってもどこの町へ行っても、求人の開拓係とか職業安定所とか、あるいは今度は給付がうんとたくさんになりました、二十にも三十にもなっているのに、そういうものの係を一体なぜ置いておかないのですか。これは労働省は指導しないのですか。これはもう戦後大分たっておるのですが、いかにこういう離職者法等いろんなものをつくられても多くの人が利用できないという理由がここにあると私は思うのです。それから、中小企業退職金共済法などやっていますね。あれだって、私の県を調べましたところが事業所において六〇%、加入者において五七%しか利用しておらないという。これも県がやっているわけですね。だから、もう少し単位の町村がそういうようなものも熟知しておって、窓口を開いておればできるんじゃないかと私は思う。これに対していわゆる財政的な措置と申しましょうか、あるいは行政上の指導と申しましょうか、もうそういうものをやらなきゃならぬ時期に来ているんじゃないのですか。これがなされていないということは、全国の一番末端のところにも労働行政が生きているということにはならないんじゃないかと思うのでございますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  235. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま御指摘のように、雇用問題にしてもその他の問題にしましても、ますます市町村との連携を深めていかなければならぬ実情にある点は御指摘のとおりだと思うわけでございます。私どもとしましても、たとえば高年齢者の雇用対策についての相談員というようなものを市町村に相談室を設けて置くというやり方、あるいは御存じの出かせぎ問題等につきましても、市町村の窓口との連携を密接にしてやるというような形でいままでも市町村との連携を強めておりますが、さらに今後、先生御指摘のような情勢に対処するために、安定所とそれから各都道府県の出先機関、市町村、そういうものを含めましての対策会議みたいなものも頻繁に開催しまして、そういう情勢に対応してまいりたいというふうに考えておるわけであります。しかし、先ほど助成をしてはいかがかという御指摘がございましたけれども、この点につきましては、行政が国の事務ということになりますと、これは住民福祉の観点から御協力をいただくということにならざるを得ないわけでありまして、両方、つまり国は国で施策を強化し体制を整備していく、そのほかに市町村にも金が行くというかっこうになりますと二元的になりまして、そこのところはちょっと問題があるかと思いますが、実態的に、先生御指摘のように今後一層連携を強めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  236. 田畑政一郎

    ○田畑分科員 金は出せないということでございますが、これは、やはり交付金制度があるわけでございますから、交付税制度もあるわけでございますから、そういったものも多少何らかの形でめんどうを見るということでないと、市町村だって人員も足りませんし、財政も行き詰まっているわけでございますから、これは私、実効を期し得ないと思うのです。だからそういうこともひとつぜひ考えておいていただきたいと私は思います。御検討いただきたいと思うのです。  以上で私の質問を終わりますが、先ほどから申し上げましたサラ金対策、あるいはまたいわゆる労働金庫の制度上の改正問題、そしてまた雇用問題等に関連いたしまして労働行政の末端を市町村に置く、こういう問題、いずれもこれは私が申し上げているのじゃないのです。これは実は下の声なんですよ。私は、この声に、ぜひ今後大臣を含めまして真剣に耳を傾けて対処していただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
  237. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて田畑君の質疑は終了しました。  次に、土井たか子さん。     〔主査退席、川俣主査代理着席〕
  238. 土井たか子

    ○土井分科員 きょうは藤井労働大臣にひとつ現状をお聞きいただきまして、これに適切な措置を講ずることをお考えいただきたい、こういう意味でただいまから御質問申し上げますからお聞き取りをお願い申し上げます。  大臣御承知のとおりで、昭和五十一年の五月十日に労働者災害補償保険法の一部を改正するに当たりまして、衆議院の社会労働委員会で附帯決議が決議されております。また同様に参議院の方でも附帯決議がはっきりと確かめられているわけでございますが、その附帯決議の中にこういうことがあるのです。傷病補償年金制度の運用に当たっては、特に頸腕、むち打ち、腰痛などの職業性疾患者の療養の実情に即して適切に行うよう努めること、こういう項目がはっきり、したためてあるわけでございます。御存じのとおりに、頸腕、むち打ち、腰痛と申しますと、女性の職場、女性の職種に特に多いわけでございまして、私の友人でもたくさん腰痛で悩み、頸腕でただいま治療を受けている人たちがあるわけでございます。それで、昨年この予算の分科会でも私はこの問題を取り上げまして、当時の石田労働大臣に質問をいたしました。その節、石田労働大臣は「頸肩腕症候群という病気の性質から考えて、労働不能に陥ることはない。たとえば三年たった時点において、それはまだすぐには働けないとしても、もうちょっと療養すれば働ける状態になる。」「この人が労働不能にこの病気でなるということは考えられない。」「頸肩腕症候群というものに限って言うならば私はそう考えます。」という御答弁をいただいたわけです。これが昨年の三月十一日の出来事なんです。続きまして、三月二十三日衆議院の社会労働委員会の席でも、同じく石田労働大臣は「頸肩腕症候群とかあるいは腰痛症とかむち打ち症というようなものは、治療を受ければ労働不能にはならない。労災法はできるだけ多くの人々に職場復帰をしてもらうというのがその精神であります。したがって、いわゆる労働不能という認定を下す状態にはならない、」という御答弁があったわけであります。このことは桑原労働基準局長の方からの御答弁にもございまして、頸肩腕症候群みたいな方は大体お働きできる程度の方でございますから、まず年金に移るはずがないという御趣旨の御答弁もいただいているわけなんです。  このことは、要するに治る可能性、職場復帰の可能性のある被災者は年金に移行するはずがない、こういうことをはっきりお認めになった御見解として確認さしていただいてよろしゅうございますか、いかがですか。
  239. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 この年金制度をつくりました趣旨は、いまお話しのように非常に重い方で治りにくい、通常の労働ができないという方たちに対して手厚い年金を差し上げて、療養に専念していただくという趣旨でございます。したがって、一般的に頸腕等の方々はわりあいに早期に治られる、そして社会復帰をされるという状態一般にある、こういうことで私ども考えております。したがって、これから私どもとしてはいろいろな報告を受けながらやってまいるわけでございますけれども、そういう考え方には変わりはございません。
  240. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、昨年御答弁いただいた御見解のとおり、そのお考えに変わりはないということを一つ確認をさせていただいたわけでございますが、昨年三月三十日に労働大臣の官房長と労働基準局長名で出されております基発第一九二号という文書がございます。この中を見てまいりますと「次のような事例については、廃疾等級表に該当しないものとして取り扱うものであること。」という記載がございまして、その中に「労働時間の一部について補助的労働若しくは簡易な労働に現に就労しているか若しくは就労可能な状態にある者」ということを、項目について言いますとその二のところで述べられております。この解説について、労働省のお考えはこのとおりだということを確認させていただいてよろしゅうございますか。
  241. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども各出先はたくさんございますので、取り扱いがまちまちにならぬようにこういう通達を出したわけでございます。この通達によって出先が一斉に同じような取り扱いをするように指導いたしたいと思います。
  242. 土井たか子

    ○土井分科員 これは通達でございますね。指導いたしたいというふうに考えていらっしゃるけれども、現に指導はなすっているわけですね、これに従って。いかがでございますか。
  243. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 当然、この通達が誠実に実施できるように、私どもは指導する責務がございます。
  244. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、療養を開始いたしまして一年半経過した場合に年金移行の可能性が出てくるということで、その決定に伴う書類として傷病の状況等についての届けというものがございますけれども、その目的は、いま問題にいたしました同じ通達の中に出てまいりますこの「休業補償給付の受給者について傷病補償年金の支給要件に該当するかどうか、該当する場合には廃疾等級一〜三級のいずれに該当するかを判定するためのものであり、これによって「治ゆ認定、給付打切」を促進しようとするものではないので、念のため申し添える。」こう書いてある。この部分もこのとおりに考えてよろしゅうございますね。
  245. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもこの法律の施行に当たりまして、国会審議等も踏まえまして、この問題が解雇につながるのではないかという御心配がいろいろありましたので、そういったことを念のために書いて地方に通達をいたしたわけでございます。
  246. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、これから考えられるのは、もっぱら年金該当の適否と年金のランクづけのためにこういう届けが必要なのだというふうに労働省としてはお考えになっていらっしゃるというふうに理解させていただいてよろしゅうございますか。
  247. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 いまお話しのように、その方が年金に該当するかどうか、またその症状の程度について一級ないし三級、どれに格づけするか、そういうことを決定するために報告をお願いしているわけであります。
  248. 土井たか子

    ○土井分科員 ここに私はある文書を持ってまいりました。これは昨年の六月十五日に東京労働基準局から出されました、傷病の状況等に関する届け提出の必要のない者に対して誤って提出を指示したものに対する取り扱いを問題にした文書でございます。この文書で、この届けを出す必要のない人に対して提出を要求したということに対して、これは提出の必要がありませんから用紙は破棄してくださいという決定をしているわけでありますが、これは、いまのこの労働省通達からすると、まことにこの労働省通達の趣旨を体した中身だというふうに理解をされますが、そのように考えてよろしゅうございますね。
  249. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 出先の具体的なことを私ども十分に承知いたしておりませんけれども、間違ってやったものに対してはそれを訂正する、こういうのは私どもの行政としては当然とらなければならない態度だろうと思います。
  250. 土井たか子

    ○土井分科員 その後——出先のことはよく承知いたしておりませんがと、またおっしゃられるかもしれませんが、やはり出先のことに対して責任をお持ちいただかないと、一体労働行政というのはどうなっているかという問題にもなってまいります。したがいまして、この東京労働基準局の方がお出しになったこの文書に従って、提出が必要ないためにその結果当然破棄をしたという、この決定に基づくその処分がどれくらいの人数があったかを把握なすっていらっしゃいますか。
  251. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 東京の基準局につきましては東京の基準局長にすべて処理を任せておりますので、具体的な数字の報告を受けておりません。
  252. 土井たか子

    ○土井分科員 これは届けをすることが不必要な人について届けを要求したということが現実にあるからこういう通達をするという意味があるわけでありまして、当然これに従って、届けが必要でなかった方々に対しては、後この文書について破棄をされるというふうな事実があったわけでありますから、こういう事実、またこういうことに対しての措置を適切にやられたというふうなことについては、私ばこれは注目に値すると思っているわけであります。  ところで、このことをまず一つお聞きいただいておいて、次に昨年の十一月十六日に労働基準局長名で「「傷病の状態等に関する届」にかかる事務の促進について」という通達をお出しになっておりますけれども、これはそのとおりでございますね。
  253. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 そのとおりでございます。
  254. 土井たか子

    ○土井分科員 この届け書を未提出の被災者の方があるというふうに聞いておりますけれども、事実はどうでございますか。
  255. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 届け出をお願いする件数全体が一万二千五百五十一件でございますが、そのうちに提出いただいておる件数が一万二千四百四件、九八・八%の方から提出をいただいております。
  256. 土井たか子

    ○土井分科員 未提出の方があるというふうに聞いておりますけれども、いかがでございますか。もう一度同じ質問をさせていただきます。
  257. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 未提出の件数は百四十七件、全体のうちといたしましては一・二%というふうに承知いたしております。
  258. 土井たか子

    ○土井分科員 この届けを出すことを要求されております。提出命令と申し上げなければならないと思いますが、その対象になっている被災者の方方はどのような方々でございますか。
  259. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 詳細に分類はいたしておりませんけれども、頸腕の方とかむち打ちの患者の方とか、いろいろありますけれども、そういう方たちだと聞いております。
  260. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、頸腕、むち打ちの方々が多いと、いまお答えのとおりでございますから、頸腕、腰痛、むち打ちということになりますと、一部就労を現に行っておる被災者も多いということを考えておかなければいけないと思いますが、この点どういうように御理解なさっていらっしゃいますか。
  261. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 実態を十分分析しておりませんけれども、そういった一部軽症の方もおられるというふうにいま事務的に連絡を受けました。
  262. 土井たか子

    ○土井分科員 そういう方も含めて、年金移行しないことがもう確認されている、また、そのことは容易に判断できる被災者に届けをお出しなさいとおっしゃるのは、届け書を出すことの目的について言うならば、どうも目的を外れているというふうに考えられますけれども、いかがでしょう。届け書の目的というのは、ふるい分けに目的があるわけでございますね。その御当人からすれば、当然年金移行に対しての意思なし、また年金の対象者に当たらないという場合についてまで届けを出すことを要求なさるというのは、どうも目的を外れているように思います。いかがでございますか。
  263. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 傷病補償年金に移行するために御報告をとるわけでございますけれども、特定の病気だけはとらないでいいというふうに法律的に書いてございますれば、そういう方法もできるわけですけれども、一万数千名の方を、この方とこの方は年金に移らぬだろうということを私どもが勝手に推測をして、そういう方たちに報告を求めないということになりますと、場合によっては権利に対して制限をするという形にもなります。したがって、法律は、一様に一年六カ月たって治っておらない方に対しては出していただく、こういう前提でこの法律が構成されているわけでございます。
  264. 土井たか子

    ○土井分科員 それは、機械的な取り扱いということを果たして許しているのでしょうか。そうしますと、わざわざ通達でいろいろとこういうふうな趣旨に従って運用すべきことだという、いろいろな運用面に当たっての注意というものは意味をなさないと私は思うのです。大変機械的な取り扱いによって、当事者からすれば年金に移行させられるのではないかという不安が出てくるということを、労働省というのは本当に知っておいていただかなければならないと思いますよ。働く人たちは、労働省というのはあくまで労働者の味方だと考えています。労働省としては、労働者の権利を擁護することが仕事の大黒柱だと私は思っています。そういう点から考えますと、労働者にいたずらな不安というものを喚起するような事務処理というのは好ましくない。だから、一応は全国一律に出していただくとおっしゃる、その一律にというところが非常に気にかかるわけでございます。ふるい分けをしていくことが必要だ、しかし、そのふるい分けの対象になるかならないかという、いわゆる対象者というのは限定があるのじゃないですか。その対象から外れている人についてまで届けを出しなさいということを要求なさるというのは、筋が違っているんじゃないかと私は思う。  ここに私は持ってまいりましたが、いまの通達に従って、つまり「「傷病の状態等に関する届」にかかる事務の促進について」という局長の通達に従ってとられた一連の措置の中にこういうのがございます。「指定期日までに提出なき場合は、労働者災害補償保険法第四十七条の三の規定に基づき、保険給付の支払を一時差し止めることがありますので申し添えます。」こう書いてあるのですね。これは、四十七条の三の規定というのを見てまいりますと、その四十七条の三の規定で、正当な理由がなくて届けを出さないような場合には一時差しとめが決められているわけでありますけれども、しかし、これについては十二条の七の規定による届け出だという明文の規定がちゃんとあるのです。十二条の七の規定というところを読んでみますと、年金受給対象者を問題にしているんですよ。したがって、こういう届けに対しての提出命令というのは当たらないと思うのです。年金受給者を対象にして考えられた届けに対して、出さない場合は保険給付の支払いを一時差しとめることがありますということを年金受給対象者でない人に対して届けを要求する趣旨でお出しになるというのは、これはちょっと間違っているんじゃありませんか。いかがでございますか。
  265. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 一年六カ月たって治ってない方たちが年金受給の対象になるような症状であるかどうかということは、届け出ていただいて、そして専門家の医師に診ていただかなければ現実的には判明できないわけであります。したがって、報告はぜひお出しいただきたい。私どもは、手厚いそういった年金を差し上げるためにこの制度をつくったわけでございまして、この制度を何か乱用して不利益な扱いをする考え方は毛頭ございません。なお、法律的な細かな問題については担当課長に説明いたさせます。
  266. 土井たか子

    ○土井分科員 年金は手厚ければ手厚い方が結構でございます。それは当然のことなんですが、その手厚い年金ということを御用意いただいている、自分はその年金受給対象者ではないという認識を当事者がお持ちになっている場合に、そこまで強要なさる必要はないじゃないかと私は思います。  しかも、そういう意味からいいますと、どういう状況であるかというのは診断書を出せば済むのじゃございませんか。診断書を出した場合にも、それではいけないと言って突き返されて、問題にされてないのですよ。この診断書を見ますと「症状は軽快しつつあり、一日二、三時間の軽作業は可能である。但し今後引き続き鉄灸治療等の療養を要する。」とちゃんと書いてあります。頸腕症候群という病名であります。これを出してもだめだと言われる。ちゃんと所定のそういう記載が用意された文書をひとつ出していただきたいと言われるのですが、その文書を見ますと、その文書の中には、年金対象者じゃない人に対して、年金に移行した場合払い渡しを受けることを希望する金融機関、郵便局の記入までちゃんと御丁寧に書いてあるのです。これはちょっと行き過ぎじゃありませんかね。  いかがでございますか、労働大臣。年金を受給するということに対して対象者になっていないのですよ。そして御当人も治療を続けて職場復帰ということを考えていらっしゃるのですよ。この方に対して、休業補償というものを打ち切って年金に移行するという方向に自分は持っていかれつつあるんじゃないかという不安をお持ちになってもしょうがない措置だと思うのですね。私は打ち切られてしまって、職場から、もうあしたから来なくて、年金で何とかなさいと言われるんじゃないかというふうな不安を持たれるような措置であるというふうに考えられてもいたし方のない取り扱いだと私は思います。確かに事務は煩瑣ですよ。したがって、全国一律ということをお考えになるのかもしれませんけれども、こういう問題に対して全国一律の物の考え方で臨まれるというのは、やはり機微に触れた、それぞれの一人一人の労働者に対して権利を大切に考えた労働者に対する取り扱いとは私は言えないのじゃないか、こういうふうに考えますが、労働大臣のお考えはいかがでいらっしゃいますか。——労働大臣、どうぞお答えいただきたいのであります。
  267. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろ先ほどから御熱心な調査の結果を質疑応答の中で聞かしてもらいましててこういう届け書を出すために、自分としては療養するということがいわゆる休業補償という意味で打ち切られてしまって年金に移行されるのではないかという不安を持たないような措置を何らか講じていただくわけにいかぬですか。これは、通達を出し直すとか届け書を出すときのいろいろな取り扱いの上で、いま一時期就労している、そしてまた頸腕で、あるいはまた腰痛で、療養すれば必ず職場復帰できるという状況にある人についてまで一律にいまのような取り扱いでない取り扱いというものをひとつ進めていただくことが肝要だと私は思うのです。そうすると、いま持っております不安というものもなくなりますよ。  労働大臣、この点に対してもぜひひとつ御検討をしていただかなければならぬと私は思います。いかがでございますか。
  268. 藤井勝志

    藤井国務大臣 非常にきめの細かいお気遣いといいますかそういった点で、いまの内容が私は定かでないのでありまして、判定基準の取り扱いについて労働省の方でいろいろ通達を出したとか、こういったことといまの土井委員の御指摘とがどういう関係になるのか、その辺についてひとつ担当局長から答弁をしてもらいます。
  269. 土井たか子

    ○土井分科員 これは端的に申し上げたら簡単なことなんです。いわゆる就労の意思があって、療養すれば職場復帰できるという人についてまで年金に移行することを労働省としては強要なさらないだろう、このことははっきりしています。そうですね。そのことをひとつ届けをするいろいろな手続の上でもはっきりさせてくださいということですよ。端的に言うとこういうことでございます。いかがでございますか。
  270. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御質問になっておる届け書の問題は、傷病補償年金の支給要件に該当するか否かの判断をするためのものであって、補償を打ち切るという目的のものではない、こう承知いたすわけでございまして、それが相手方に対して、補償を打ち切られるのではないかというふうな誤解といいますか心配を与える、こういうことが現にあるのだという御指摘であるならば、私、初めてお聞きした問題でありますから、御趣旨を踏まえて検討させていただきたいと思います。
  271. 土井たか子

    ○土井分科員 それはぜひ検討をしていただかなければならないと思いますと同時に、これは一律な事務取り扱いの弊害がここにも出ていると思うわけでありますが、「指定期日までに提出なき場合は、保険給付の支払を一時差し止めることがありますので申し添えます。」というのは、これはちょっと違うんじゃありませんかね。特にここの根拠になっているのは、先ほど申し上げたとおり「労働者災害補償保険法第四十七条の三の規定に基づき」となっておりまして、これは条文をよくお確かめいただいたら専門家だから御承知だと思いますが、年金受給者を対象にした条文でございますよ。これを援用いたしまして「保険給付の支払を一時差し止めることがあります」というのは、私はちょっと筋違いもはなはだしいし、行き過ぎだと思うのです。事務処理を一律にやることのための弊害というのがこういう点にも出ている。大臣、いかがでしょうか。
  272. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 法律構成としては、具体的なことをお願いし、それができなければ一応その次の段階に入るという規定の組み立てになっているわけでございますね。私ども、九九%お出しいただいていますので、やはり全体のきちっとした処理をしなければなりませんので、念のためにこういうこともございますよ、ぜひ誤解なくひとつお出しいただきたいという気持ちが先でございまして、当然に法律的にはそう書いてありまして、別におどしたわけでも何でもございませんで、そういうような仕組みになっておりますことを注意書きしたわけでございます。
  273. 土井たか子

    ○土井分科員 仕組み、仕組みとおっしゃいますが、この根拠になっている法律というのは、いま申し上げたように、それに該当しない人についてその法律を適用して一時差しとめるということをおっしゃるのは、これは場違いですよということを私ははっきり申し上げたいと思うのです。それと同時に、この取り扱いについては、いまの通達をもう一度吟味して考えるということを、大臣、お約束できますね。いかがですか。
  274. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いま御指摘の今度の通知書の内容ですが、相手方に大変デリケートというかデリカシーな女性の方とか、そういったなにも多いのではないかと思いますが、そういう面を考えて本当の真意が伝わるように検討すべきところがあればひとつ善処いたしたいと思います。
  275. 土井たか子

    ○土井分科員 最後に一言申し上げて終わりにします。  不況になればまず解雇されるというのは御承知のとおり女性とお年寄りなんです。そういう点からすると、ただでさえ不安な状況にただいまあるということを労働大臣よくお考えいただきたい。その中でこういう事務処理が全国一律に進む、中には該当しない人についてまでその書類の提出を要求される。このことはどういうことなのか、不安に思わない方が不思議でございます。その点を十分勘案されて、ひとつ誤りなきようにお取り扱いを進められんことを要望いたしまして、終わります。よろしゅうございますね、大臣
  276. 藤井勝志

    藤井国務大臣 はい。
  277. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて土井たか子君の質疑は終了しました。  次に、藤原ひろ子君。
  278. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 ことしの一月十五日付の毎日新聞には「強まる企業の三月危機説」という見出しで、企業倒産がふえるという見通しを述べております。また、東京商工リサーチの調べによりますと、昨年一年間の倒産は一万八千四百七十一件ということで、負債の総額はといいますと二兆九千七百七十四億円という史上最高、こういうふうに言われております。  こういう不況の中で、その影響を受けますのは下請とか孫請企業であり、一層ひどい影響を受けますのは家内労働者、こういう階層でございます。企業には産業対策の面から施策が行われます。また、労働者には雇用政策としての施策が行われるわけです。しかし、家内労働者だとか零細な業者には政府の施策はいまだ届いていないというのが今日の現状でございます。私は、きょうはこの家内労働法の問題を中心にして質問をさせていただきたいと思う次第でございます。  まず、家内労働者と言われる人たちの主な職業と人数はどのようになっておりますでしょうか。
  279. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 五十一年の数字でございますが、家内労働者の総数は約百五十万でございます。そのうち比較的多うございますのは衣服その他の繊維製品四十四万六千七百名、次に多うございますのが繊維工業の三十一万七千八百名、比較的この繊維関係が非常に多うございます。その次に多うございますのが紙、紙加工品の八万二千人、あるいは皮革製品の四万三千人、こういうような数字になっております。
  280. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 いまおっしゃいましたように、繊維関係の人々が約五〇%占めているということでございます。私が住んでおります京都には西陣織とか京友禅とか、日本では有名な、世界にも有名なこういう絹織物、和装産業がございます。これは伝統産業という指定も受けているわけですけれども、いま韓国からの逆輸入で産地全体は大変な状態になっております。  そこで、通産省にお尋ねをいたしますが、日本の絹織物の生産量はどのように推移をしてきているのか、昭和四十九年度以降についてお答えをいただきたいと思います。
  281. 赤川邦雄

    ○赤川説明員 絹の生産量は、四十五年をピークにしまして漸減傾向を追っております。そして五十二年度の実績につきましても、ほぼ五十一年同様の横ばいとなるというふうに考えております。
  282. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 私が京都の西陣織について調べましたところによりますと、昭和五十年度を一〇〇といたしまして、五十一年度には帯地では九六・一%、着尺の正絹では八四・五%、ウールは八二・五%、そして好調であったはずのネクタイまで八八・五%と落ち込んでいるわけです。このような傾向は今年度も同じように続いているわけです。  そこで、これらのことがどのように賃機と言われている中小企業や家内労働者の中にあらわれてきているのかという現状を少しお話をしたいと思います。  西陣で仕立て袋の帯を打っているというある人です。昨年の十月までは一反二千円の工賃で打っていたわけですけれども、十一月には千八百円に切り下げられたわけです。十二月になりますと千六百円だ、こう言われた。そしてことし、年が明けましてからは千百円に工賃が切り下げられているわけです。仕立て袋といいますのは表と裏を別別に織るのですから、一日に三反ぐらいしか織れないと言っているわけです。ですから一日に換算いたしますと、六千円の工賃であったものが三千三百円になってしまっているということですから、もうやっておられなくなって、ほかのアルバイトでもしようかというような状態になっております。それでもまだ仕事があればよい方なんです。  直接お話を聞いてまいりました三十八歳の赤木ひろ子さんという方ですけれども、主人に病死をされて六十歳のお母さんと一緒に織機二台を持っている。織り屋からこの織機の入れかえをせよ、こう言われまして、両六丁から両八丁に変えたわけです。融資を受けて、自己資金も一緒にして二台四百万円という機を買ったわけです。これを月月返済する。これだけでも七万円要るわけです。しかも織機を変えますということは、織り手さんたちにとってはわが子、幼子をよその家へやる、手放す思いなんです。お正月ずっと回りますと、西陣の機の上には鏡もちが供えてあるわけなんですね。こういう思いをしながら手放している。しかも現在工賃は四年上がっていないわけです。むしろ下がっているそうです。しかし、この人はどう言ったかといいますと、工賃は上がらぬでもかまへん、しかし仕事が欲しいんだ、こう切実に訴えているわけなんです。日本の絹織物、和装産業といいますのはこういう人たちによって今日支えられているわけです。  そこで、このような家内労働者というのは一体どういう性格のものなのか。つまり、お尋ねしたい趣旨は、労働者なのか、それとも自営業者なのか、それともそのまた中間なのか、これを労働省お尋ねしたいと思います。
  283. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私どもの家内労働法の定義によりますと、もし一人でも人を使って家内労働をやっておられれば、それはもう家内労働者じゃない、端的に言えばそういうことでございます。それから、非常に大規模に機械設備を設置して企業的に仕事をやっておられる場合は、それはもう労働者じゃない。結局判断の一つのメルクマールといたしましては、主として労働の対価を得るために働く、これが一つの私どもの判断基準の大きなポイントでございます。
  284. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 それでは労働者的性格と自営業者的性格と両方の性格を持っているという意味のことだと思いますが、わかりやすく言うと労働者に準ずる者というふうに理解をしてもよいものでしょうか。
  285. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 家内労働者自体はいわゆる基準法で言うような労働者ではございません。一部自分の判断で仕事するという意味におきましては、労働者的という言葉が適当かどうかば別といたしまして、先生のおっしゃるような感じの地位にあるのではないかと思います。
  286. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 感じの地位でなくて、労働者に準ずる者というふうに私は申し上げたわけなんですけれども、労働者ではないということは、労働基準法なんか全然適用されてないわけですから、それはわかるわけです。そういう中で私は先ほど仕事と工賃の点で中小業者や家内労働者の人たちがいまの不況のしわ寄せを大変受けているということをお話をしたわけですけれども、この人たちばそれだけかと言いますとそうではないのです。労働大臣や通産省の方々もぜひ理解をしていただきたいと思うわけでございますが、ほかの面でも保護を受けていないわけです。  そこで、厚生省にお聞きをいたしますが、この人たちが加入をしておられる健康保険、これはどういう健康保険なのか、まずお答えをいただきたいと思います。
  287. 黒木武弘

    ○黒木説明員 大部分は国民健康保険の加入者だと思います。
  288. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 この国民健康保険に加入をしている人たちの所得は、他の組合健保などに加入している人たちと比べますと低いと言われているのですけれども一般にはそのように理解をしてよいものでしょうか。
  289. 黒木武弘

    ○黒木説明員 先生御存じのように、国民健康保険の加入者は、年金受給者だとか、低所得の方とか零細の企業に勤められている方もございますし、あるいはお医者さん、弁護士のような自営業者の方もおられるので、極端に言えば低所得の方から高い所得を得られている方までおられるわけでございますけれども、総じて申し上げれば健康保険の被保険者よりも低いと私ども思っております。
  290. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 それでは、国民健康保険の給付内容といいますのは、他の健康保険と比べてどうなっているのか、どこがどう違うのか、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  291. 黒木武弘

    ○黒木説明員 国民健康保険につきましては医療費の給付割合が七割でございますけれども、健康保険の方は本人が十割で家族が七割ということで、国民健康保険の方はすべて七割という意味においては給付割合が低いということでございます。  それから、どう違うかという点で申し上げれば、その他の給付につきまして、被用者保険の方には傷病手当金が出る、国保の方には先ほど申しましたようにお年寄り、低所得者、農業の方、いろいろな職種の方がおられます関係上、傷病手当金がなじみにくいということもございますので、任意給付にはなっておりますけれどもほとんどの市町村が実施してないという点等がございまして、かなりの格差があるものと思っております。
  292. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 医療給付が現在は七割ということで、一〇〇%ではないということなんですね。そして他の健康保険では行っております傷病手当の支給、こういうものはないというお話ですけれども、それでは先ほどから述べておりますような今日の状況の中で、これはほんの一、二の例でございますが、いま大多数のこういった階層の人たちが非常な危機の状態にいる。そうすると厚生省はいま、七割ということで一〇〇%支給していないという状態を変えようとしているのか、そして傷病手当につきましてもそういったような改善をする意思があるのか、準備なり検討しておられるような、そういった実態があるのかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  293. 黒木武弘

    ○黒木説明員 医療保険制度につきましては、大変な財政的な危機と申しますか、逼迫をいたしておりまして、国民健康保険のみならず政管健保においても同様でございます。そういう中でどういうふうに給付改善をしていくかというのは大変むずかしい点でございますけれども厚生省といたしましては各制度間の給付の是正あるいは負担の公平ということで検討をいたしておるわけでございます。  そういう意味で、被用者保険と国民健康保険の医療給付水準はできるだけそろえたいということで検討はいたしておりますけれども、その他の先生御指摘の傷病手当金等につきましては、国民健康保険が財政的に非常にきつい、実施しております市町村の一割近くが赤字を出しているというような逼迫した状況にございますし、あるいは国民健康保険の被保険者の構成が、病気即所得の停止というようなものを伴うようなものとか、年金受給者とか無料の方等もまじられているということで、傷病手当金等を含めました給付改善を直ちに実施することは大変困難だと思っておりますけれども、最初に申しましたように、できるだけ被用者保険と給付水準をそろえていくということでは検討いたしておるわけでございます。
  294. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 いま検討中ということですけれども、この医療給付七割というのが一〇〇%になるというふうなことで検討され、しかもそれは大分進んでいるのか、いつごろそういったことが具体化してみんなの中に入っていくのか、その点いかがでしょうか。
  295. 黒木武弘

    ○黒木説明員 厚生省のスケジュールといたしましては、この国会に被用者保険の制度改正、俗称抜本改正と申しておりますけれども、基本的な見直しの結果の法案を出したいということで鋭意検討を続けております。その中で、すべて十割にするかどうかというのは検討中でございますけれども、現在の非常に厳しい財政状況下においては、すべて十割にするということは大変困難があるものと私は承知いたしております。しかし、高額な医療と申しますか、大変な出費のかさむような医療については手厚い保護を、そうかからない軽微な医療については何がしかの負担をしていただくというのを基本にして検討をいたしておりますので、すべて十割というのは大変無理かと存じております。
  296. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 先ほどからも述べました状況の中で、ぜひ十割にしていただきたいということを強く要望しますとともに、傷病手当につきましても福祉予算、このために、いまちまたにあふれる国民の声をぜひとも取り上げていただいて、実現できるように御検討いただきたいと強く要望をしておきたいと思うわけです。ぜひ御検討いただきたいということで先に進みたいと思うのです。  私は、いま健康保険の面から問題を提起したわけですけれども、これは健康保険の問題というだけにとどまらないわけです。家内労働者や中小業者は、社会保障という点から見ますと全く谷間に落ち込んでいると思うわけでございます。たとえば昭和五十一年の厚生白書を見ましても、新しく生活保護を受けている人々の七四・八%がけがや病気によるものだ、こういうふうに述べております。これは国保以外の健保加入者は傷病手当、こういうものがありますし、医療給付も、たてまえは一〇〇%ということになっておりますから、ここで言いますけがであるとか病気というのは、国保の加入者だということが言えると思うわけです。奥さんが内職程度にやっているという人だけなら、家内労働者といっても余り影響はないかもわからないわけです。しかし、先ほどから話をしております。たとえば織物の場合は、一家の柱が国保に入っているわけですね。こういう状態ですから、この人が倒れたら一体どうなるのか、いままたどうなっているのかと言いますと、生活保護を受けなければならない状態、なりかねない状態、これが起こっているわけです。これが、この家内労働者や中小零細企業がいま置かれている状態であるわけです。しかも、不況になれば、真っ先にしわ寄せを受けるということになっているわけですから、本当にこの人たち、毎日、毎日、大変な状態にいるわけなんです。  そこで、労働省お尋ねをするわけですけれども、いまの不況のもとで、この苦しみあえいでおります家内労働者、この人たちを保護する対策として、どんなことを考えていただいているでしょうか。対策はどんなものがありますでしょうか。
  297. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 何と申しましても、不況のしわ寄せで仕事がなくなり、あるいは工賃の不払いになるということが、現象として一番大きいのではないかと思います。したがって、私どもは、特に工賃が不払いにならぬように、やはり私どもの出先を通じて十分な指導、監督をしていかなければならないというふうに思っております。現実に不払いが起こりましたものにつきましては、できるだけ委託者を集めまして、その支払い方について厳重な指導をいたしておりまして、その関係でうまく解決する場合もございますが、なかなか労働省だけでもいかない場合もございますので、通産関係の機関等と連携をして、いろいろな制度の活用等によってこれを救済していくというようなことを考えておるわけでございます。
  298. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 いまの労働省状態では、一体すぐに救えるのかどうかという点で大変不安になるわけです。他の省庁とも連携してと、こう言われますけれども、やはり一番最初、労働者に準じるこういった家内労働者の人たち、これを救うために何らかの方法を講じていただきたいし、ぜひとも前進をさせていただきたいわけですけれども、不払いにならないように、工賃が最低よりかうんと下がらないように、そのために手帳も交付したりして、それを完全に記録せよという御指導を熱心にやっていただいているということも、先日伺ったわけでございますけれども、指導、監督だけではなくて、一層、何とか早く手を打てないものかどうか、お考えはいかがでしょうか。
  299. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども基準局の所管といたしましては、先生御承知のように、たとえば、けがその他お仕事関係で起こりました場合には、労働者的な性格がある方々につきましては特別加入制度で救うというようなこともやっておりますが、いずれにいたしましても、中央家内労働審議会というのがございますので、そこで、あすでしたか、また会議を開きますけれども、基本的な問題についてまた審議をいただこう、こういうような段取りにいたしておりますが、そういった中で、今後この問題の前進のために努力をしてまいりたいと思います。
  300. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 家内労働者というのは、どこの省庁も余り手を差し伸べてくれないわけです。辛うじて労働省が家内労働法というものをつくって、そしてやっておられる。しかし現実には、これで家内労働者の権利と生活が守られているということにはなっていないわけですね。  そこで、ことしの二月十四日でしたけれども、家内労働者の方々も含めて、全国の中小企業者団体連絡会が、営業と生活を守る諸要求実現全国中小業者行動集会、この集会を行いまして、その後、政府の各省庁に話し合いをされたわけです。私もこの労働者の方々と一緒にお話し合いに参加させていただきまして、この人たちを何とかしなければならないということを一層深刻に考えたわけでございますけれども、このときに言っておられましたのは、家内労働者の代表の方々も含めて、休業補償、こういいますか、そういう言葉で言わないなら失業補償といいますか、とにかくそういった制度をぜひつくってもらいたい、これが繰り返し繰り返しの大変強い要望であったわけです。これらの方々は、雇用保険に特別加入の制度をつくってもらいたい、こういうことも言っておられたわけですけれども、これは一つの方法として、みずからが困難の中で一生懸命考え出された知恵だと思うわけですけれども、こういう方法は適用されるのかどうか。  基本は、この人たちに適用される社会保障の制度の改善強化、場合によっては制度の新設というふうなことも考えることが必要な時期に来ているのじゃないか、こう思うわけです。先日、室長さんにもわざわざお部屋へお越しいただいて、この点でいろいろお話し合いをしたけれども、なかなか進まない。そうすれば、制度の改善強化、または新設、こういうことを考えていただかないと動かないのではないか、こういうふうに私は感じたわけでございます。家内労働者の対策について抜本的な検討をしてもらいたい。これはもう大臣にその気になっていただかないと動かないというふうに私は先日感じたわけですが、いかがでしょうか。
  301. 藤井勝志

    藤井国務大臣 不況が大変長く続いております。そういう経済社会情勢のしわ寄せを最も受けやすい立場の方々として、家内労働者の存在というものは忘れることはできないと思います。  いろいろ御意見を拝聴いたしましたが、専業的な家内労働者の場合には、中小企業対策としていろいろ融資面で手配をしておることは御承知だと思うのでありますが、そのほか、現在の時点でどういう政策が、手を差し伸べることができるかということについては、家内労働審議会、現在この審議会の場でひとつ分別をしてもらおうというので、御提言の趣旨を踏まえて検討させていただきたい、このように思います。
  302. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 昔から、織るや西陣おさの音、これは京都をあらわす言葉だと思うのですけれども子供たちもがっちゃんがっちゃんといいますあの機の音がとまりますと、赤ん坊が目がさめる。機の音を子守歌として聞いてきたわけですね。朝から晩まで、ある地域などは、もう町ぐるみ機の音がしている。こういうのが京都の西陣の特徴だし、顔であったわけですね。ところが、いま、織るや西陣おさの音ではなくて、この機をぶち壊すハンマーの音が聞こえてくる。機がぶち壊されているというふうな状態にあるわけです。中小業者の営業と生活というのは西陣、京友禅の労働者だけではなく、すべての中小零細企業が戦後最悪ともいわれる不況と円筒、大企業の横暴のもとで、かつて経験したことのないような危機に今日見舞われております。そして、その中で必死の努力をしている。それにもかかわらず倒産が起こる、転廃業しなければならない、こういうところに追い込まれ、そして痛ましい犠牲者が相次いでいるという状況があるわけです。  五十一年の十月一日の調べで、先ほど百五十万人と言われましたが、家内労働従業者数として見ますと、もっと多くて百六十一万九千六百人という人たちが今日日本におられる。そうしますと、この人たちの暮らしを守り、危機を打開していき、命を本当に真剣に守っていくというためには、先ほど家内労働審議会、ここできようの意見もくみ上げて検討するというふうにおっしゃっていただいたわけですけれども、ぜひとも一日も早くこの人たちをこの困難、危機から救い出していただきたい。これのためにぜひとも大臣が先頭に立って御検討いただく、ぜひともこれを促進するように審議会の方にも労働省を挙げて提言をしていただくということを強く要望して、終わりたいと思います。
  303. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて藤原君の質疑は終了しました。  以上をもちまして労働省所管の、質疑は終了いたしました。  次回は、明二日午前十時から開会し、自治省所管について審査いたします。本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会