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1978-02-28 第84回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十八日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 笹山茂太郎君       栗原 祐幸君    住  栄作君       井上 一成君    川俣健二郎君       福岡 義登君    市川 雄一君       岡本 富夫君    貝沼 次郎君       谷口 是巨君    津川 武一君       大原 一三君    兼務 土井たか子君 兼務 中村 重光君    兼務 村山 富市君 兼務 渡部 一郎君    兼務 古川 雅司君 兼務 伏屋 修治君    兼務 大内 啓伍君 兼務 小宮 武喜君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   藤井 良二君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君  分科員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    田中 和夫君         大蔵省主計局共         済課長     山崎  登君         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         文部省体育局学         校保健課長   遠藤  丞君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君     ————————————— 分科員の異動 二月二十八日  辞任         補欠選任   小林  進君     福岡 義登君   広沢 直樹君     岡本 富夫君   不破 哲三君     津川 武一君   大原 一三君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   福岡 義登君     井上 一成君   岡本 富夫君     市川 雄一君   津川 武一君     三谷 秀治君   中馬 弘毅君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   井上 一成君     小林  進君   市川 雄一君     谷口 是巨君   三谷 秀治君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   谷口 是巨君     貝沼 次郎君   東中 光雄君     不破 哲三君 同日  第二分科員村山富市君、大内啓伍君、第四分科  員土井たか子君、第五分科員中村重光君、伏屋  修治君、古川雅司君、渡部一郎君及び小宮武喜  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  (厚生省所管)      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    笹山主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算厚生省所管について質疑を行います。岡本富夫君。
  3. 岡本富夫

    岡本分科員 最初厚生大臣にちょっと要望を申し上げたいのです。  一つは、車いす身体障害者の方が大分県で付添人なしで航空機を利用しようとしたときに、航空会社規則だといってその搭乗を拒否されておる、こういう記事が出ておるわけでございますが、私も早速問い合わせますと、やはりこのとおりでございました。これは運輸省管轄ではございますけれども、厚生大臣として、付添人なしでは乗せないという航空会社規則についてどういうようにお考えになるか。これはできれば運輸省の方に大臣から、こういう規則を撤廃をして、身体障害者の方も航空機を利用できるようにひとつ取り計らっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 その規則の存在について私は知りませんで大変恐縮なんでございますが、いまお話を承りますと、介護者がつかなければ乗せないということについては、航空会社の方である程度サービスをして、その人の症状にもよるだろうと思いますが、できるものはできるだけサービスをして、ひとりで車いすでおいでになってもできるような体制をとるべきだと私は考えますので、どういう理由でそういう規則になっているのか早速よく運輸当局とも相談をしてみまして、できるだけ御趣旨に沿うように善処してみたいと思います。
  5. 岡本富夫

    岡本分科員 最近また四月に東京で恒例の全国身体障害者バスケットボール大会があるそうですので、早急にこれは大臣の方から注意をしていただいて、利用できるようにしていただきたい、こういうようにお願いします。  それからもう一つは、身体障害者雇用の問題につきまして、私は社労委員会で、そのときはちょうど長谷川労働大臣だったと思うのですが、御質問申し上げたことがありますが、きょう労働省が来ておりますので、ちょっと最近の状況についてひとつ簡単に御報告願いたいと思います。
  6. 田淵孝輔

    田淵説明員 お答え申し上げます。  最近の身体障害者雇用状況でございますが、実は昨年六月一日現在の状況身体障害者雇用義務のある全企業から報告をとりまして、その状況は昨年秋にまとまっております。現在民間企業雇用されております身体障害者は約十二万八千人で、その雇用率は一・〇九%となっております。これは身体障害者雇用促進法義務づけております一・五%に比べましてかなり低うございます。平均して実際の雇用率は一・〇九%ということになっております。また、法定雇用率を下回っております企業の割合は四七・二%ということで、半数近くの企業雇用率を達成していないという状況でございます。
  7. 岡本富夫

    岡本分科員 目標に対して企業は非常に低い。それから特殊法人もそうですね。特殊法人も一・八の目標に対して〇・九五。それで、これを一つ  一つ聞いておりましたら時間がありませんから、厚生大臣に、実はこれは私は労働大臣に前に細かく質問を申し上げ、また促進方をお願いしたのですが、なかなか達成できない。同時に、こういった非常に不況になってきまして、首切りだとか合理化とかというような名目で失業者が非常に出てきておる。こういうときに当たって、特に一番早くもしもそういった就職しておる人でも首切り対象になる、こういうことでありますと、非常に心配なものもございますし、西ドイツあたりでは雇用率を約一〇%、これは州とか市町村とかあるいは公益法人、こういったところでは一〇%の目標を立てておるわけですね。こういうことを見ますと、わが国では目標も非常に低いし、同時にまた雇用率を達成できないということになりますと、この方面をいろいろと促進するのは労働省でもありますけれども、厚生省の、厚生大臣の強い意見がここらで必要じゃないか、こういうふうに考えられますので、厚生大臣、ひとつこの方もよく労働省に申し入れ、監督をしていく——監督と言うとおかしいのですが、推進をしていく、こういうふうにしていただきたいと思うのですが、これもひとつお聞きしておきたいと思います。これは大臣の御答弁をいただきたいのです。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御趣旨に沿うように、私自身身体障害者福祉向上責任者でございますので、労働大臣やあるいは通産その他関係大臣に強く申し入れをいたしまして、できるだけ雇用促進目標どおりいきますように努力いたしたいと思います。同時に、私どもの方で福祉向上等制度もございますので、これらの政策の推進努力をしながら、身体障害者雇用問題の解決に資したいと存じます。
  9. 岡本富夫

    岡本分科員 最初に二点、特にこうして要望いたしておきます。  次に、厚生省児童家庭局長から「一歳六か月児健康診査実施について」という通達が各自治体に五十二年六月二十四日付で出ております。この通達を読みますと、「従来保健所等で行われている乳児及び三歳児健康診査等に加え、一歳六か月児健康診査市町村において実施すること」としてこの要目を出しておる。  これについて、大切なことはわかりますけれども、どの法律に基づいてこういう通達を出したのか、ひとつ児童家庭局長からお聞きしたいと思います。
  10. 石野清治

    石野政府委員 従来母子保健法のたてまえから申しますと、一応母子保健の健診事業につきましては都道府県知事実施主体になっておったわけでございます。三歳児健診につきましては都道府県知事となっておりまして、これは法律上の規定がございます。しかし、実際上その実態を見ますと、市町村の行っております幼児健診あるいは一歳半とは申しませんけれども一歳の段階で行っております健診もございます。それから乳児段階でも、市町村単独で行っている市町村がかなりございます。これらはあくまでも母子保健法のたてまえというよりもむしろ市町村サービス行政としてやってきたわけでございます。かたがた三歳健診は、法律上は都道府県知事になっておりますけれども、実態を見ますと、実際には市町村が実質的な主体になって、むしろ保健所の方が応援をするという実情でございます。これは法律のたてまえは都道府県知事でございますけれども、実際を見ますと市町村がほとんどの仕事を担当しておるという実態もございます。  今度の一歳半健診というのは、これはあくまでも母子保健法上の法律的な補助ではございませんで、いわば市町村がすでに行っている面もございましたので、それに対します強化策という面も一面ございます。それから同時に、乳児健診と三歳児健診の間に三年間のいわばブランクがございますので、これにつきましてはいろいろ学者の御意見もございまして、どうしても一歳半健診を実施すべきである、こういう非常に強い御意見もございました。そういうようなこともいろいろ考え合わせまして、市町村長実施主体になった方がよろしい、サービス行政でございますので市町村長がやってもおかしくない、こういう判断で実はその通知を出したわけでございますけれども、法律的に申しますと、地方自治法の第二条の第二項並びに第三項の第一号におきまして、住民の健康の確保の一環として市町村健康診査を行うことにつきましては市町村固有事務というふうにして当然行い得るものと考えておりますので、そういう意味におきましても市町村長実施について出しましたのは違法ではない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  11. 岡本富夫

    岡本分科員 自治省から見えておりますね。自治省の「昭和五十三年度の地方財政措置について」これを見ますと、「昭和五十一年八月十日の閣議決定にのっとり、地方公共団体職員数の増加」を含め、「新たに地方団体負担を伴うような施策を行う場合には、適切な財源措置を講じ、また、国庫補助負担金のいわゆる超過負担については早急に完全解消を図ることが必要」という事務次官からの通達が出ておりますが、これはそのとおりですか。
  12. 関根則之

    関根説明員 そのとおりでございます。
  13. 岡本富夫

    岡本分科員 そこで、あなたがいま、地方自治法とかいろいろもうすでに行われておるんだ、こういうような安易な答弁をなさいましたけれども、母子保健法、この第十三条によりますと、前条すなわち第十二条に三歳から四歳ということになっておりますが、「前条健康診査のほか、都道府県知事は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行ない、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない。」これは住民に勧奨しなければならないわけでありまして、そうしますと、ここの条項を見ますと、都道府県知事がやることであって、市町村長がやるべきものではないわけですね。ところが、あなたの方の通達を見ますと、この一・六歳児については市町村長がやるのだと頭から決めつけたこういう通達になっておるのではありませんか。いかがですか。
  14. 石野清治

    石野政府委員 いま先生おっしゃいましたように、母子保健法の十三条には、確かに都道府県知事妊産婦及び乳幼児について必要に応じ健康診査を行うことというふうな義務づけをいたしております。しかし、この規定自身は、市町村長がみずから健康診査実施するということを全く排除しているという規定では逆にございませんで、むしろ都道府県知事に対しまして、できるだけそういうことをできるように義務づけたという意味でございまして、反面、市町村長も全くできないという立法解釈ではございません。  かたがた、受診するように勧奨しなければならないということでございますけれども、これは健康診査を行うことと実際上保健所が中心となって健康診査を受けるように勧奨するということとは別問題でございまして、当然市町村長が行う場合におきましても、実際には都道府県知事実施機関でございます保健所長が相当の努力をもちまして勧奨するということが実態として行われなければまたこの問題は解決できませんもので、そういう意味では両方とも満足をしているというふうに考えておるわけでございます。
  15. 岡本富夫

    岡本分科員 しかも、この母子保健法を見ますと、市町村長はそれに協力をする、こういう法律のたてまえになっておりますね。協力をするわけです。この法律のたてまえからいきますと。あなたの通達、こちらの通達を見ますと、あるいは施行の通達最後の方に「経費補助」というところがありますが、「本事業に要する経費については市町村支弁とし、国は予算範囲内において別に定めるものにより補助するものとする。」あなたの方でこれを補助するというような通達になっておりますね。市町村長はこの法律を見ますと協力をするわけですよ。この補助をするという法的根拠は、これはどこにあるのですか。
  16. 石野清治

    石野政府委員 母子保健法上の市町村協力義務と申しますのは、先生御案内のようにこの法律規定する知事権限に属するものについて必要な協力をする、こういう規定でございまして、たとえば三歳児健診のように明確に母子保健法上の都道府県知事権限として規定されたものについて市町村協力しなければならない、こういう規定でございます。それと、今度の実施要綱によります最後経費補助で、本事業に要します経費については市町村支弁として国は予算範囲内で補助するものとするという関係でございますけれども、これはあくまでも先ほど申しましたようにいわば奨励的な助成という考え方をとっておりまして、いわば一歳半健診を義務化させたものではございませんで、あくまでも市町村長がそういうものについて一歳半健診を行うという状態の場合に国はこれに対して助成します。こういうことでございまして、母子保健法の第八条の協力関係といまの実施要綱によりまする補助関係というものは矛盾はしない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  17. 岡本富夫

    岡本分科員 おかしいですね。正直に申し上げますと、もとはこういった法改正というものが一番根拠になったわけですよね。ところが、それを法改正せずにこのまま通達を出してしまったから  ここに矛盾があるのです。いまあなたはこじつけたような答弁をなさっておりますが。しかも、この実施要綱を見ますと、関係機関との連携、すなわち「市町村長健康診査実施に当たり医師会歯科医師会等と十分に連携をとり計画の策定、事業実施について協力を求めること」、このように細かくあなたの方で規制しておるわけです。この通達どおりやりますと、決して市町村長が自由に選択をしてやるようになっておらない。  そこで、一つの市の例をとりますと、この通達どおり行いますと、細かく言う時間はありませんが、大体五千人を対象にして行う市の実態を調査いたしますと、個別にやるのとまとめてやるのとでは数字が違うわけですが、個別にやりますと、四千四百五十五万四千円、端数がありますけれども、大体四千四百万円かかる。それからまとめて簡易な方法でやりましても三千八百万かかるわけです。それに対してこの補助単価、あなたの方の補助金を出すということになりますと、二百二十五万円しか出ないということになっておるのですよ。こういうことを見ますと、地方自治体財政が非常に圧迫されるわけです。先ほど自治省の方一から確認をとりました事務次官通達から見ましても、四千四百五十万に対して二百二十五万しか補助金が出ない。しかも一歳半児の健診のやり方についてはあなたの方からきちっとしたやり方市町村に指示しておる。  こういうことを考えましたとき、地方自治体のうちのやるところに対して出すんだということはどうもおかしい。非常に超過負担が多い。こういった予算を国で組まずにやるところに問題があると私は思うのです。ここで私はこの一歳半児健康診断をやめろというのじゃありませんよ。母子保健法精神にのっとってもっとできるように推進をするのが大事ではないか、こういうように考えるのですが、大臣、いかがですか。
  18. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ごもっともな御意見なんですが、本米この一歳半児の健康診断については市町村固有事務という割り切り方をいたしまして、これについて指導奨励のための予算補助でございますので、したがって、率から言いまして大変少なくなっているわけでございまして、超過負担が非常に多くなります。しかし、これは市町村長が本来住民に対するサービスとして行政をやるに当たりまして、国も指導奨励のために若干補助をするという精神でございますものですから、このようになっておるわけでございます。  これは現実論として申し上げたわけでございますが、岡本委員のように、あるべき姿、そういう面から考えますと不十分だと言わざるを得ないわけでございます。したがって、この一歳半児健診というものを、その意義を認めまして、これをもっと進めていかなければいけない、また、これをやる必要が公衆衛生見地からどうしても大事なんだということになりますと、予算の面も含めてどういうふうに改善をしていったらいいか、これらの点については検討を要する問題だとは思いますが、現状においてはそういう指導奨励意味補助なものですからこのような事態になっておるのだろうと思うのでございます。  なお今後、これらの健診の実施状況それから実施した場合、しない場合の将来のいろいろな公衆衛生上の見地から考えた効果等について比較検討いたしまして、これはぜひやらなければならない、乳幼児の健康にとって必要だということがありました場合には、さらにこれを伸ばすための制度改善等も含めて検討をいたしてみたいと思います。
  19. 岡本富夫

    岡本分科員 どうもこの通達あるいはまた補助金は、このとおりやろうということになりましたら大変なことが起こるわけですから、いま大臣はもう一遍検討するということですから、これを了としておきまして、次の機会にまたお聞きしたいと思います。  時間がありませんので、もう一つだけ最後にお聞きしておきたいことは、いわゆる引き揚げ者皆さん在外資産についてでございます。  これは総理府からも来てもらっておるけれども、時間がありませんからこちらから申し上げますが、この在外資産につきまして、平和条約で放棄したんだとか、それは賠償に充当することを認めたのではないとか、こういう答弁を私いただいたことがありますけれども、議事録を見ますと、昭和二十六年に吉田元首相が衆議院の外務委員会で、日本から賠償をとらないかわりに在外資産はその諸外国においての賠償に充てるということを原則としておるというような答弁もされておるわけでありまして、四十二年でしたか、在外資産の、この皆さんに対してお見舞いというような意味か、給付金を出しておりますけれども、賠償という法的な措置が講じられておらないわけであります。もちろん最高裁で、国に賠償義務はないんだという判決は出ております。ところが、同じく二十八年に、農地改革によった農地適正価格について最高裁判所は、賠償価格は正当な補償に当たるとして合憲の判決をしておるが、その後、農地賠償法を制定して旧地主に給付金を支給しているという例もある、こういう例を考えますと、引き揚げ者の特殊な立場を考えると、在外財産の自主的な賠償に引き当てる、そういう法的措置というものをこれからきちっとしなければならぬと私は思うのです。  これは厚生省管轄ではないと大臣は逃げるかもわかりませんけれども、日本の国の将来を考えたときに、この狭い国に一億一千万の人たち、またこれからふえるであろうという日本の国が、どうしても諸外国に出ていって、農民移民というのはいけませんけれども、技術的にそういった各国に寄与をして外国との交流を図ると同時に、日本の将来というものを考えなければならぬ。そういうことを考えるときに、この引き揚げ者皆さんに手厚い法的の処置をするということは、これから諸外国に出ていく人たちに対しても、最後にはああいうことになるのだということで非常に激励の意味にもなります。  したがって、日本の国の将来のことを考えたときに、この引き揚げ者在外資産問題については、私は一つの大きな問題になるであろうと思うのです。これは厚生省管轄でないと言わずに、総理を含めて閣僚懇談会で一応再検討をする必要があるのではないか、私はこう考えるのですが、これをひとつ大臣の口から聞きまして質問を終わりたいと思うのです。厚生大臣、ひとつ前向きの答弁をいただきたい。
  20. 小沢辰男

    小沢国務大臣 引き揚げ者在外資産の処理につきましては、すでに最高裁判決もございます。しかし、置かれた引き揚げ者実態にかんがみて、昭和四十二年に一定の補償措置をやったように私も記憶いたしているわけでありますが、その後引き続いてそういう問題があることをまだ寡聞にして聞いておりませんし、私の所管でもありませんのでよく検討をさせていただきます。  どうもきょう突然の御質問なものですから、内容をつまびらかにいたしておりませんものですから、大変十分な答えができなくて申しわけないのですが、よく研究をさせていただきたいと思います。
  21. 岡本富夫

    岡本分科員 では時間ですから終わりますけれども、大臣、これは早川厚生大臣のときにも私は提案しているのです。議事録を見てください。大事な今後の日本の国の方向ということを考えるときに、どうしても諸外国日本から出ていかなければならぬと思うのですね。その人たちのことも考えてひとつ再度検討をしていただきたいことを要求いたしまして終わります。ありがとうございました。
  22. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。  次は、大内啓伍君。
  23. 大内啓伍

    大内分科員 まず、厚生大臣に単刀直入にお伺いをいたします。  いま政府の方では健康保険法改正案検討されておられるわけですが、聞くところによりますと三月中にこの検討を終了して四月早々に健康保険法改正案を出したい、こういうふうに聞いておりますが、この辺はいかがでしょうか。
  24. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのような希望を持って作業を進めております。
  25. 大内啓伍

    大内分科員 そうしますと、やはりその内容が一番問題でございます。  一つ給付水準について、一部の報道等によりますと入院については十割、外来については七割という構想がほぼ固められている、こういうようなお話も聞いております。そういうふうに理解していいのか、それともその他の案も検討されているのか、その辺を御説明いただきたいと思うのです。
  26. 小沢辰男

    小沢国務大臣 その他の案も含めまして、基本的な考え方としては各制度間の給付の公平、統一を図りたい、それから家計に非常な不安を与えるようなものは保険の方ですべてカバーをしたい、こんな考え方のもとにいろいろな案を検討いたしておるわけでございますので、現在、この給付の割合についてはどうするかということをいまここで的確にお答えできないわけでございます。
  27. 大内啓伍

    大内分科員 そうしますと、厚生省としては全然案が固まってないのですか。たとえば入院等について一部負担という問題も考えるのですか、考えないのですか。だってもうあと一カ月でしょう。
  28. 小沢辰男

    小沢国務大臣 政府・与党としての立場でいろいろ協議をしなければいけないところもございますし、また、それぞれ保険者あるいは療養担当者等の意見も聞かなければなりませんので、現在はまだ固まっておりません。
  29. 大内啓伍

    大内分科員 そういたしますと、たとえば入院十割あるいは外来七割という構想は考えていない、固まる状態ではないというふうに理解していいのですね。
  30. 小沢辰男

    小沢国務大臣 一つの有力な案として検討をしておるということでございます。
  31. 大内啓伍

    大内分科員 初めからそう言っていただくと簡単なんですが、厚生大臣はその道のベテランでございますからなかなかしっぽを出さない。  そういう案も非常に重要な案として検討している、そうしますとやはり結論としては、いずれにしてもそういうものに非常に近いものが出るということになりましょうね。つまり、それを有力な案として検討しているということであれば、それと全然別のような案が出てくると理解することの方が非常識だと思いますが、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  32. 小沢辰男

    小沢国務大臣 非常にこだわって御質問でございますが、私どもは今度の改正については、先ほど言いましたように家計に不安を与えるようなことのないように、また制度間の公平を期すように、それから将来の健康保険財政というものが国保も含め全般的に健全化が図られるように、そういう観点からいかなる給付割合にしたらいいのか、現実問題として十割給付を全部実施するということはなかなか不可能でございます。したがって、その場合に一律現在の負担割合等を前提にして計算をしてみますと、全部が大体八割ちょっと切れる給付になっておるわけでございます。したがって、現状をそのまま、外来、入院問わず、被保険者、本人、扶養家族を問わずそういうふうにした方がいいのか、あるいは入院と外来について差を設けた方がいいのか、いろいろな案が考えられるわけであります。  その場合の一つ考え方として、入院は一律にほぼ十割給付まで持っていき、外来は本人も家族も含めて公平に七割なり八割なり、あるいはそういうような一定の率にして入院との差をつけた方がいいのじゃないかという説もあり、これは一つの有力な意見と申し上げましたのもそういう意味で申し上げたわけでございまして、ここが一番大事なポイントでございますので、私どもはあらゆる角度から慎重に検討しなければいかぬわけでございますから、現在まだどちらにも決めていない。  一方、物と技術の分離という合理化に対する有力な意見もあるわけでございまして、これらをいろいろ勘案しつつ、できるだけ皆さんの合意が得られるような線で案を固めていきたいというので、本当に目下連日あらゆる角度から、こういう場合はどうだ、ああいう場合はどうだということで検討しているものですから、いまここで申し上げる段階にない、こういうことでございます。
  33. 大内啓伍

    大内分科員 そうしますと、もう一回確認をしておきますが、法案の提出については大体四月早早御提出になるという方針でございますか。法案の提案はさっきちょっとお伺いしました。もう一回確認でございます。
  34. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのように希望して作業を進めていきたい、こう思っております。
  35. 大内啓伍

    大内分科員 そこで、二月二十五日、厚生省の方から「国民医療費の将来推計」というものが発表されまして、これはいま各界でいろいろな批判、論評が飛んでおるわけでありますが、これはどういう趣旨でお出しになったわけですか。
  36. 八木哲夫

    ○八木政府委員 医療保険制度の根本的な改正を行う際に、昨年国会で御審議をお願いしました健保法の改正のように、短期的な当面の緊急の赤字対策ということではございませんで、これからの各制度を通じましての医療保険のあり方ということを考えます場合に、やはり最大の問題は給付なり負担のあり方ということが問題になろうと思います。  そういう意味におきまして、当面の赤字ということではなしに、ある程度五年くらいを見越しましてこれからの医療費がどうなるかということをやる。ある程度私どもも勉強し、それからこれから社会保険審議会あるいは制度審議会にもかけますし、関係方面の御意見も伺わなければならないわけでございますが、そういう意味におきまして、これからの医療費の見通しというものにつきましてある程度共通の基盤に立つということが必要であろうということで、そういうような資料を内部的につくりましたものを公表したわけでございます。
  37. 大内啓伍

    大内分科員 これを拝見いたしますと、A、B、Cというような選択を、むしろ国民に投げかけるというようなやり方で、この間の財政収支報告とちょっと似た方式をとって、ある意味では無責任なやり方をとっているようにも思うのであります。  その問題はともかくとしまして、この医療費の推移を見ておりますと相当の勢いで急増してくる。五十八年の段階では給付の面では二・三倍になっていく、これを現行のシステムをとったとしても政府管掌では二・二倍、国民健康保険の場合は二・一倍、これは大変な医療費の増大でございますが、この医療費の増大をそのまま受けていくと保険負担も自然にふえる。ある意味では国民の負担を大変啓蒙しているような材料でもあるわけなんですが、ただ漫然と医療費がこういうふうにふえるというような出し方は幾らか問題があるのじゃないだろうかと私は思う。つまり、医療費についてはできるだけ節約しなければならぬという面もこれまでたくさん議論をされてきた。たとえば現在の総医療費の中の薬はどのくらいのパーセンテージでございますか。
  38. 八木哲夫

    ○八木政府委員 最近の統計によりますと、料が逐次上がっておりますので、総医療費の中に占めます薬価の比率は相対的には減少しておりますけれども、現在三七%という状況でございます。
  39. 大内啓伍

    大内分科員 もちろんこの三七%という数字はきわめて日本的であり、諸外国と比べても大変高いことは論をまたない。したがって、医療費の膨張を防ごうとする場合に、当然この薬の占めるパーセンテージというものは減らす努力をしなければ医療費はなかなか減らない。つまり、総医療費の中の三割以上四割近いものが薬によって占められている。そして昨年の十一月でありましたか、政府の方で適正な医療費支出対策といいますか、そういう問題とともに実勢価格に見合った薬価基準の適正化を図りたいということを公約されたと思うのです。そうすると、薬価基準というものは早目に出されませんと、この薬の問題は解決しないわけです。この基準はいつ出されますか。
  40. 八木哲夫

    ○八木政府委員 昨年の国会に御提出しました医療保険制度の基本的な改革の方向の中でも、先生から御指摘ございましたように、実勢価格に見合う薬価基準の適正化というのを一つの大きな項目にしているわけでございます。この問題につきましては、従来からも中医協あるいは関係審議会、国会等でも御議論いただいておるところでございますけれども、この実施につきましては、私ども将来の方向というものを出したわけでございますけれども、この問題については、まず次期薬価基準の改定から逐次実施ということで、五十三年度ということではなしに、ついせんだって診療報酬の改定があったわけでございますが、その中でまず第一段階ということで、薬価につきましては中医協の従来からの御意見もございましたし、銘柄別の登載というのを初めて採用いたしまして、従来は一、二%程度でございましたけれども、先般の診療報酬の改定におきましては五・八%というような薬価基準の改定を行ったわけでございます。これは逐次実施ということでございまして、まず第一段階が先般の診療報酬の改定の際に行われたわけでございまして、今後も大きな問題としまして一層取り組んでいきたいというふうに考えておるわけであります。
  41. 大内啓伍

    大内分科員 この問題は、言うまでもなく中医協でさらに御審議をいただくということになると思います。ただ、最近の薬価基準を手直ししたのは大変に小手先で、必ずしも抜本的に行われていないように思うのですが、そうしますと、第二段は大体どのくらいをめどにして薬価基準の改定をやるおつもりですか。
  42. 八木哲夫

    ○八木政府委員 いずれにいたしましても、中医協におきましてこれから御議論いただくわけでございますけれども、先般の薬価基準の改定につきましては、薬価調査の結果に基づきまして薬価基準の改定を行ったわけでございますので、できるだけ早い機会に次のまた薬価の調査というものが行われるはずでございますので、それに合わせまして次の薬価基準の改正ということに進んでいくと思います。
  43. 大内啓伍

    大内分科員 この医療費の圧縮という問題はこれから大きな課題だと思うのであります。もちろん、これは技術料という問題をどういうふうに評価していくかという問題にもなるわけでありますが、いまの医療費の急増傾向からしますと負担というものは必然的にふえていく、そしてその負担を減らすためには、たとえば総医療費の中の薬の占めるパーセンテージも減らさなければならぬという問題とともに、たとえば組合健保でとられているような労使負担の割合というものを変更しまして、政府管掌の被保険者に対する保険負担を軽減するという措置が考えられるのであれば、総医療費の増大にかかわらずそれに比例して負担がふえるということにはならない。  政府考え方としては、医療費の増大と負担割合は比例させようというお考えなのか、それとも組合健保でやっておりますように、たとえば労使の負担割合というものについてある程度検討してもいいというようなお考えがあるのか、この問題は前から論じられてきたのでありますが、政府はその将来の方向について必ずしもはっきりした方針を示していないというふうに思われますが、これはやはり大臣にお答えいただきたいと思うのであります。
  44. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先に私からお答えさせていただきたいと思いますけれども、医療費の増高につきましては、日本だけではございませんで、諸外国とも非常に悩んでいる。最近におきましても、西ドイツあるいはフランス等におきましても、医療費の増大に伴いましてどう処理するかということで、現実の処理といたしましては、保険料の引き上げなりあるいは一部負担の増加ということで対処しているわけでございます。  いずれにいたしましても、医療費の増高が続くという際に、先生御指摘のように負担の問題がございますけれども、保険料の労使負担割合の問題、従来から出ている御議論でございますけれども、これは健康保険だけはございませんで、厚生年金その他日本の社会保険関係制度共通の原則としましては労使折半ということでございますので、この制度を変えるというのは非常にむずかしい問題ではないかというふうに考えております。
  45. 小沢辰男

    小沢国務大臣 折半の原則はやはり貫いていきたいと私は思います。ただ、今度の根本改正に当たりまして、私どもは職域健康保険関係はできるだけ早い機会に一元化をしていきたいと考えておりますので、したがってその際に折半原則を貫きつつ、やはりその上の方の一定の幅についてはそれぞれ労使の方でいろいろな協議の結果決めていただく部分が出てくるのではないだろうか。そうしますと、全体的に負担割合が折半の原則から例外的なものが総体で見ますと今度出てくるかもしらぬと思いますが、その辺のあり方についても、職域保険全体を一本化する過程でいわば全体の財政面における調整も図っていかなければいかぬわけでございますから、それらの基本方針を決めた上でどういうふうなあり方が最も適当かということをいま検討中だ、こういうふうに御認識をいただきたいと思うのです。
  46. 大内啓伍

    大内分科員 私はやはり、いい医療を実現していくためにはそれなりの負担増というのはやむを得ないと思っているのです。ただ、政府が今度出しましたこの「国民医療費の将来推計」を見ましても、たとえば五十二年度が総額八兆六千五百億円、これが五年後の五十八年度におきましては二十兆二千八百億円、二・三倍にも医療費というものはふくれていくという方向が出されているわけなんです。もし政府がこの医療費に比例して負担を国民に求めていくということになりますと、その負担割合というのは五年で二・三倍にも達するという相当大きな負担になる。  ですから、政府として心がけなければならぬ一つのテーマは、医療費の増大というのはなかなか避けられないにしても、節約できるものは最大限するということと、もう一つはやはり負担割合もできるだけ大幅にふえないように努力をする。そこで総医療費というものと負担というものと比例して考えるという原則を政府としては貫くのかということを質問しているわけで、これはもちろん保険財政その他の問題もさることながら、相当政治判断を必要とするところで、そういう意味大臣にいかがでしょうかと聞いたのですが、もう一回重ねてその原則についてはどういうふうにお考えになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  47. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ナショナルヘルスサービスの行き方をとるのでなくて、社会保険の行き方をとる場合には、やはりできるだけ保険事故を担保する範囲というものは広ければ広いほどいいと思うわけでございます。そういう意味でいきますと、これは加入者が全部で連帯的な責任を持っていくべき制度でございますから、当然必要な給付費については全部で負担をしていくという考え方を基本にしなければならぬと思うのでございますが、ただ国民の負担の限度というものも考えていかなければなりませんから、一方において医療費のむだな支出がもしあるとすればそれは排除していかなければならない。同時に、国庫負担のあり方についてもそれぞれ被保険者の態様に応じて考えていかなければならないわけでございますので、必ずしも全部保険料でという考えではありませんけれども、ことに老人保健医療というものを別建てに考えてみますと、これらについては本筋といいますか、大体基本の柱は公費負担を考えていかなければいけません。当然そうなると思うのでございます。したがって、その他の保険の部分、特に職域保険については国庫負担の限度等がございますので、できるだけそれぞれかかった費用はみんなで負担をするという考え方でいかざるを得ないのではないだろうか、それがやはり基本だと思うわけでございます。国保については所得のわりに低い方々を対象とするものでもございますので、これらについては大幅な公費負担というものもやはり現在のように導入していかなければいかぬのではないか。それぞれの制度の特性に応じて負担割合が公平にいくように決めていきたい、かように考えます。
  48. 大内啓伍

    大内分科員 老人医療制度を別建てにして考える、これは恐らく予防、リハビリに至るまで総合的な老人医療制度というものをつくりたいということから、老人について包括的医療として確立しようという意味で私は大変結構な方向だと思うのです。ただ、この負担問題と関連いたしまして、たしか私どもの知る範囲では五十三年度の老人医療費というのは大体一兆六千億ぐらいになっているんじゃないかと思うのです。そして、五年後の五十八年の計算では、今度の政府の将来推計でも出ておりますように三兆七千億円、相当膨大な医療費がかかる。そこで問題は、これを一般会計で全部負担するということになりますとこれは大変な問題になる。そうしますと、やはり老人医療についても負担、つまり住民負担であるとか事業負担であるとか、いろんな負担を考えていかなければならないのではないかと思いますが、その辺についてのお考えはございますか。
  49. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、公費で全部を賄うということは一般会計に対する負担が大変過剰になります。本来、お年寄りの問題は現在働いている者が、それぞれ考えますと自分の両親であったりするわけでございますから、これはもう現在働いている若い者が、生産年齢人口に相当する人たちがある程度負担をしていくべき問題だろうと思うのでございます。別建ての制度にいたしますと、被保険者としてそれぞれの保険者の方から持ち出しをして負担をしていただく。同時に、公費も従来のような考え方を下回らない程度というものは当然考えていかなければならない、かように考えます。  ただ、問題は、老人医療の体系につきましては、私ども少なくとも来年の二月半ばぐらいまでには国会に出したいと思うのでございますが、予算に関連する法案になりますから、したがって、鋭意検討いたしておりますので、まだその辺のところの構想は固まっておりません。だけれども、基本的な考え方としては、おっしゃるように公費だけではとうていいけませんので、それぞれの負担を求めざるを得ないのじゃないか、かように考えます。
  50. 大内啓伍

    大内分科員 私の持ち時間はきわめてわずかございますから、あとまとめてお伺いをいたしますので、まとめてお答えをいただきたいと思います。  一つは分娩費でございますが、これはいま御案内のように大体一件当たり十万円支給されているわけであります。しかし実際には、公的医療機関においても十五万円前後、民間におきましては二十万円という相場があるそうであります。これはILO百二号条約を見るまでもなく、それらについてはやはり完全に給付をし、特に現物給付を行うということが本来のたてまえでありますが、いまそういう状態ではありません。しかし、これは民間もございますので、直ちに全部現物給付を一〇〇%実現するということはなかなかむずかしい問題だと思うのでありますが、少なくとも公的医療機関ではこの分娩費については全額現物給付で見るというぐらいの前向きな措置をとることが、この百二号条約を批准している日本としての当然の政策だと思いますが、その辺はどうかという問題が一つ。それから、もう一つは難病対策であります。私も筋ジストロフィーやべーチェット等視察をさしていただいて、本当にお気の毒な立場にあると思うのでありますが、現在この難病は大体五十種類ぐらい挙げられておるわけなんであります。五十二年段階でこの難病対策の対象になっているのは十九でございます。そして五十三年においては、厚生省と大蔵省との折衝を通じてパーキンソン氏病が追加をされまして、これが十月実施でございますが、全部でも二十。少なくとも難病として対象にしながら、その対策については半分以下にしておく。これはもちろん財政上の問題がございますけれども、やはり全疾患を対象にして難病対策をやるぐらいの決意が厚生省政府になければいかぬと思うのです。しかも、一つ一つ見ておりますと、治療対策もまだ確立してないというような病気で非常に不安でございますので、この対象を広げるということについて、政府はどういう方針をお持ちかということ。もう一つは、難病の一つの特殊事情としまして、当然必要な特別のベッドであるとか付き添いの看護、これはもう筋ジストロフィーを見ておりましても不可欠なんですね。ですから、そういうものについては保険外の負担で背負わしてしまうというようなやり方ではなくて、必要なものについては保険全体で見ていくというぐらいの対策がやはり温かい対策だと思うのであります。また、べーチェットについてはリハビリテーションセンターを設置してほしいという強い要望もございますが、それら二つ三つの難病対策についての政府の確固たる言葉だけで問題をごまかす、そういう答弁は私は全く必要ございませんので、単刀直入に、政府のそうしたいということをお答えいただきたいと思います。以上をもって質問を終わります。
  51. 小沢辰男

    小沢国務大臣 分娩につきましては、現物給付に私どもは今度の改正でもすることはもうちょっと見送りたいと思っております。費用についてはできるだけ現実に合うように逐次ひとつ引き上げてまいりたい。また、難病につきましては、いろいろ御意見等もございますが、今後の適用拡大につきましては、他の疾患との均衡等も考えて慎重に行わなければならないというのが基本的な考え方でございます。しかし、特定疾患対策懇談会等の先生方の御意見を十分聞きまして今後も進めてまいりたいと思いますので、御意見として十分尊重をいたしたいと思います。それから、保険負担については全部これは保険で取り入れたらどうかという御意見でございますが、差額ベッドあるいは付き添いの問題については、私は保険だけでこれを解消するということは非常にめんどうだと思うのです。病院等の実態に応じまして考えてみますと、私は保険だけでなくて他の医療制度全般の政策を推進しつつ解消していかなければいかぬだろうと思うのでございます。そういう意味保険負担は、できるだけ病院、診療所の協力を得て解消する努力をしながら、一方において、医療制度保険以外の公的医療機関等のいろいろな助成策等を含めた上で解消をしていくべき問題だ、かように考えます。
  52. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて大内君の質疑は終了いたしました。次に、津川武一君。
  53. 津川武一

    津川分科員 お酒のことで若干質問してみます。私も飲むことの社会的効用は認める者の一人ですが、酒の飲み過ぎによって、本人、社会、家庭にかなり大きな損害を与えております。私も、酒の害から家庭や社会を守る民間の運動の一翼に参加してやってまいりましたが、どうしても政府に大きく出ていただかなければならない、こんな立場がありますので質問してみたいと思います。  そこで第一に、国税庁にお伺いしますが、酒の税金はどのくらいになっているか、五十一年度の実績、五十二年度の見込み額、五十三年度の予算案でお知らせ願います。
  54. 窪田弘

    ○窪田説明員 申し上げます。  五十年度九千百四十億円、五十一年度一兆百八十五億円、ここまでが実績であります。五十二年度の予算額が一兆一千九十億でございます。五十三年度の予算が一兆四千百六十億でございます。
  55. 津川武一

    津川分科員 もう一つお伺いします。  それだけの酒税を払うとすれば、国民の飲んでおる酒、このために国民が使っているお金はどのくらいになっているでしょうか。これは想定でよろしいです。五十年度と五十一年度、国民一人割りにするとどのくらいになりましょうか。
  56. 窪田弘

    ○窪田説明員 一人当たり飲んだお酒の量は五十二・三リットルと出ておりますが、金額についてはちょっと調査をしておりません。
  57. 津川武一

    津川分科員 国民が酒のために使っている全金額、後で明らかにしてこの委員会なりに教えていただければと思います。     〔主査退席、住主査代理着席〕  そこで、飲むことはいいのですが、ひどく飲むと大変になります。これは二月十一日の朝日新聞です。   十日午前三時十五分ごろ、栃木県小山市間々田、とび職日下実さんの妻久子から「夫を絞め殺してしまった」と小山署に一一〇番があった。   同署員が調べたところ、自宅四畳半で実さんがヒモで首を絞められ死んでいたため、久子と長男の県立高一年生をそれぞれ殺人容疑で緊急逮捕した。   調べによると、実さんは従業員十三人を使うとび職の親方だが、酒ぐせが悪く、日ごろから酔っては妻子に乱暴していた。九日も午前九時ごろから自宅茶の間で日本酒二・七リットルを飲んで泥酔し、十日午前宏時半ごろになって久子に殴る、けるの乱暴をした。このため久子が長男に助けを求め、長男が暴れる実さんを押さえつけている間に、久子が押し入れにあった毛糸の腰ヒモで首を絞めた。   調べに対し、久子は「乱暴があまりひどいため、発作的に殺そうと思った」と自供。長男は「殺す気はなかった」といっているが、実さんがぐったりするまで押さえつけていた。   夫婦には、四人の子がいるが、近所の人たちの話では、実さんの乱暴を恐れた久子はしばしば子を連れて家を飛び出し、実さんがオノや包丁を持って追いかけたこともあった。約十年前には、こうした家庭のいざこざを苦に、実さんの母が列車に飛び込み自殺している。昨年暮れからは、東京都内にいる実さんの姉が同居して“監視役”をしていたが、この姉は九日朝帰京した。 この間にこの惨劇が起きております。これは飲むことをほったらかしておいた場合の最悪の状態の地獄の一つの例でございます。飲む人はそれなりの事情があって飲むんだからいいだろうけれども、限度を超えていくと大変になります。  私、酒を上手に飲む運動なんか著書を書いて、いろいろな点で国民とともに闘ってまいりましたが、第一に心配なのは、酒飲み本人の人間が崩れていくこと、飲むから、二日酔いするから次の日に職場に出ていかない。飲んでお金がないから、今度職場の相手に借金する、返さない場合がある。飲むから能率が落ちる、物忘れする、そしてひがんでくる。そして、人間が荒れ果てて、妻子に対して大変人間がだめになっていく。これを、いま大蔵省が言った分だけ、一兆一千億円からの税金を取って——私の勘定では、このために国民が使う金は三兆円になります。そうしてここに来る、これをほったらかしておいている。これは家族なり、職場なり、社会なり、国家なりに何らかの対策があっていいのではないでしょうか。ここまで落ちていく者を防ぐ、国にどこかの部があっていいんじゃないでしょうか、こういうことが考えてもらいたい一つのこと。  もう一つの問題は、酒はただで飲ませてくれない、お金がかかる。だんだん飲む量がふえていく。収入のかなりの部分が酒にいく、これはまだいい方。収入のことごとくが酒にいく、これでも足りなくて女房のたんすから着物を持ち出して質に置いて、これで飲みます。友人から借金して飲む。家が貧乏になるだけでなく、借金だらけになってしまう。そんな家を私は何軒か訪ねてみた。本当に物がないんで、貧乏なんです。子供の着る物も履く物もない、靴が片方欠けている。こういう状況で一家貧乏、そして奥さんが一生懸命内職をやっている。この奥さんが相談に行っても、この奥さんに適当に指導してくれるところも、必要な対策を打ってくれるところもない。これがいまの現状なんです。ここにも何らか援助の救いの手があっていいんじゃないか、政府にどんなセクションがあるのか、これをお伺いしたいのが二点なんです。  第三点に、子供の関係です。本当に飲んでだらしがなくなるんだ。学校の先生が、あした貯金を持ってこいと言う。お父さん、貯金くれと言うと、ないと言う。それでいながら、自分が酒を買うときにはお金を出して、子供に酒を買ってこいと言う。先生は子供にうそをつくなと言っている。お父さんは子供の前でうそをつくんだな、こういうことなんです。それで大事な母親である奥さんをたたく、飲んでは電信柱を抱いて小便たれる。周りの子供が見ている。この子供が、PTAにお父さんにだけは来てくれるなと言う。社会生活の基礎である親子の関係がこれでぷっつり。これでいいのかというのです。ここに、国がほったらかしておいているところに問題がある。私は飲むなとは言いません、税金を取るなとは言いません。目的税でないけれども、何らかの対策が必要ではないかと思う。  今度は奥さん。飲み助の夫を持った奥さんと母親ほど困るものはない。母親と奥さんが一生懸命に、飲まないでくれと言って頭を下げて頼んでいる、泣いて頼んでいる。説教している。これを、飲み助の夫はぶん殴る、夫婦げんかになる。とうとう愛想を尽かして夫婦別れ。私たちの一番相談を受けるのは、夫と別れたいということ、これに適当な対策がないのだ。病院のケースワーカーの一番多く相談を受けるのは離婚なんだな。離婚の相談を受けたって、私たちにもどうにもならない。もとに戻れと説教するほかにない。こういうことに何かないのか、こういうことが私の質問なんです。  結局、国の対策がないものだから、邪魔者は殺せということになっていく。さっき読んだような日下実さんみたいに殺されてしまう。世間は、酒飲みは乱暴をして人を殺すと言っているが、酒の上での殺人は、飲んだ本人が殺されている。こういう状態なんだ。ここまで落とさなくてもいいから、だれかが何か手を差し伸べて、国の施策があっていいと思うのですが、これをどこで受け持ってもらうか、対策はどうするのか。まず、その受け持つ場面、対策があったならば、総理府から聞かしていただきたいと思います。
  58. 田中和夫

    ○田中説明員 お答えいたします。  ただいま先生から、アルコール飲料と申しますか、一口に酒と言いますが、この弊害についてるる御説明いただきまして、確かにそのようにいろいろ被害もあるし、私ども悲惨な事例も存じております。また、先生の読まれた日下事件と申しますか、この例は本当に悲惨なものでありまして、母親もそうですし、また奥さんもそうですし、場合によっては長男が尊属殺にもなりかねないような状態なわけです。本当にお気の毒だと思います。  しからば、そういうものについて政府は統一的、総合的施策があるかと申しますと、率直に申し上げて、いまの時点では、ただいままでそういうようなことについて総理府が御相談を受けたり、あるいは問題を持ち込まれたりということがございませんでしたので、そういう総合政策については検討しておりませんけれども、私どもといたしましては、そのような相談なり問題を持ち込まれたりした場合に決して逃げるようなことはいたしませんで、それに応ずるという覚悟はしております。(「厚生省で酒害局をつくるか」と呼ぶ者あり)   ただ、もう一つあえて申し上げますならば、そのような問題の持ち込まれる前に、なぜ総理府の方から働きかけなかったか、こういう問題があるわけでございますけれども、私ども総理府といたしましては、私どもは主動的に物事に対処するというたてまえよりも、むしろ各省庁から問題を持ち込まれるという例が多いのでございまして、そういう慣例になっておりますので、ただいままで扱わなかった、こういうことでございます。  なお、酒の問題につきましては、私は総理府の参事官といたしまして、どろなわでございましたけれども勉強しましたところ、酒の問題というのは非常に根が深いといいますか根が広がっているといいますか、ただいま先生が述べられたような社会的な問題もありますし、あるいは道徳的な問題もあります。あるいは医学的な問題もあります。あるいは宗教的な問題もあります。考えてみますと、民俗的あるいは風土的、いろいろに問題の根が伸びておりますので、この取り扱いにつきましては慎重な上にもなおかつ慎重に取り扱っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  59. 津川武一

    津川分科員 厚生大臣、国務大臣として——いま酒害局をつくれという話も出ましたが、総理府で言っているとおり 総理府の人が私に指摘されて初めて勉強しているのですよ。ここで国で一本の対策がないということが、私はとても不思議でしょうがない。私も日本アルコール問題連絡協議会の十団体の中の幹事になっていろいろなことをやっているけれども、どこへ持っていっていいかわからない。ほっておけない状態にあるので、ここのところを厚生省でやるべき必要なものはまず守って政府全体として、これは人間のことがあるから、教養の問題もあるし、文化の問題もあるし、労働の問題もあるし、いろいろなことがあるので、ひとつ一本対策を立てないと、アルコール医学会では二百万人くらいアルコール症の対象になる者があると言っておるし、このほかにもこういう問題を起こす人口がうんと多いので、どうしても厚生大臣小沢さんにひとつ音頭を取ってもらわないといけないと思いますが、厚生大臣いかがでございますか。
  60. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大量飲酒による中毒症状が出ますと、当然精神衛生上重要な支障が出てくる。先生もドクターでございますからよくおわかりのとおりであります。それと肝硬変の問題が起こってまいります。それから社会的な問題をいろいろ起こしてくるということは当然でありますので、明らかに酒害予防の国民運動、これは各県にも相当民間の組織もございます。私の県なんかもございます。あるいはほかの県でも、私、そういう運動の話を聞いたことがあるのでございますが、ひとつ総理府の方とそれから実際に中毒症状に対する調査研究をやっている私どもの方とできるだけ協力し合って、酒害撲滅運動を大々的に展開をする必要があると思いますので、私も総理府総務長官とひとつよく相談をしまして、この問題は放置できない——WHOの計算方式によって推計してみますと、百五十何万人という大量飲酒者という推計もできるわけでございます。これは、もうちょっと進めば中毒症状になるわけでございますから、いまつかんでおります中毒患者数は一万八千くらいでございますけれども、これはまだまだ可能性があると思いますから、ひとつ大いに努力をしてみたいと思います。
  61. 津川武一

    津川分科員 私は、これで自分がアルコール医学の専門なものだから、聞くんだが、前、渡辺厚生大臣はやってみると言ったんです。やってないんです。今度は小沢厚生大臣、やってやれますね。これは、アルコール中程やアルコール症になったのじゃなくして、その前の段階のことがぜひ必要なんで、ぜひひとつがんばってください。  もう一つは、こういうことに対する国民の世論なんだな。酒飲む人は話がわかる、男らしい、飲ままないと窮屈だと言う、酒は百薬の長であると言う。ここまでは私もある程度は正しいと思う。ところが、酒は気違い水でもあるんだな。いま言ったとおり肝硬変を起こすんだ。アルコール中毒を起こす。両面を持っておる。ところが、テレビを見てごらんなさい、新聞の酒の広告を見てごらんなさい。はんらんですよね。その広告には、飲み過ぎるとこうなるとは一言も言っていない。酒の広告の文章を見ると、酒飲みは話がわかる、英雄だと、英雄は酒を飲んだと、こういうことなんだ。したがって私は、国民の酒に対する考え方を一度集約してみる必要があると思う。これは、調査する必要があると思う。  もう一つは、酒の広告に対してこれでいいか。たばこは、ぼくらが三年前にいろいろな論議をして、とうとうたばこにはのみ過ぎるといけないということを書いたわけですね。酒の広告、宣伝の中に一言でも書いてない。酒のボトルの中に何も書いてない。私も酒は好きなので飲むのですよ。だが、そこのところはきちっとさせなければならない。  これは厚生大臣にひとつ答えていただいて、次には大蔵省から答えていただきます。
  62. 小沢辰男

    小沢国務大臣 たばこにはのみ過ぎないようにという注意の表示があるわけですね。これは、酒のボトルの上に、あるいはまた箱の中に、酒を飲み過ぎたらいかぬですよと、こういうことを書けという御意見なんですが、これは少し、酒の飲み過ぎとは何ぞやという問題になりますから、体質的に飲めない人が大量に飲めば、これは悪い。体質的に相当飲める人と飲めない人、千差万別でございます。したがって、ただ広告の中に飲み過ぎてはいかぬぞということを書くことは、いかがかと思いますね。それよりも、やはり国民運動として、できるだけいろいろな例を、たとえばヒロポンなり何なりの精神衛生対策を私は役人時代に徹底的に国民運動をやったわけでありますが、二年くらいたちましたら非常に鎮静をしてきました。そういうような方向が一番いいんじゃないかと思いますので、いま直ちにボルトや箱の上に酒の飲み過ぎはこういう弊害がありますということを、相当詳しく書かなければこれはなかなかどうも徹底できませんし、この辺はもう少し検討しなければいかぬと思います。
  63. 津川武一

    津川分科員 それは私もわかるけれども、十分に教育しなければならぬ、啓蒙宣伝しなければならぬということが一つと、もう一つ答えが落ちたのは、酒に対して国民がどう考えているのか調査して、間違って考えているのか正しく考えているのか、ここの認識が必要になってくるのです。いきなり、酒を飲めばつき合いがいい、人がいい、酒を飲まないと窮屈、これも、一部はあるけれども、うそです。この点の対策を答えていただきます。——通産省で酒の動態というのを調査しているんですが、表面上なんです。したがって、やはり日本人が酒をどう考えているか、それを見てからというわけで、それを見た方が……。どれだけいるかわからないから、これは人権じゅうりんも何もありませんから、酒に対する一つの抽出調査をやればできますので、これをやってほしいということなんです。いかがですか、どこからの返事でもいいんです。
  64. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 酒をどう思っているかというのは、何となく——先生のおっしゃる意味は非常によくわかるのですが、どうも私ども厚生省は衛生問題として考えるわけで、酒を百薬の長と考えるくらいだとあるいは厚生省かもしれませんが、実際に酒を飲む男はいい男とか話がわかる男というような意識になりますと、ちょっと私どものあれを外れてしまいますので……。
  65. 津川武一

    津川分科員 じゃ、総理府か。
  66. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 総理府が本来世論調査的なこととしてやるんじゃないかと思いますが、そちらの方にも先生の御意見をよくお伝えをいたしたいと思います。
  67. 津川武一

    津川分科員 総理府どうです。
  68. 田中和夫

    ○田中説明員 酒の飲み方と申しますか、考え方についての世論調査でございますけれども、総理府には広報室がございまして、その中で世論調査をやっておりますけれども、これは非常にむずかしい世論調査だと思います。たとえばその問題点がどこにあるかということを各省庁から出していただいて、それを検討した上で項目をつくり、そしてどういうような調査をするかということを協議したいと思います。したがいまして、私の方から主体的にこれこれこういうものについて調査するんだということはちょっとできかねますので、各省庁からの要望を待って調査いたしたい、こう思います。
  69. 津川武一

    津川分科員 それじゃ厚生大臣に、先ほど総理府総務長官と話をするというから、こう点もひとつ相談していただくようにお願いして次へ進めます。  今度はアルコール中毒、アルコール症、飲んで問題を起こす人の問題です。大臣も言ったとおり、精神衛生面がかなり大事なんです。保健所なんだな。保健所にアルコール専門のお医者さんが余りにも足りない。嘱託医がいる。去年もこれはいろいろ問題にした。嘱託医をもっとふやしたい。ところが、お医者さんなんだから一日七千円や幾らのものじゃできないんだな。嘱託医の待遇をよくして、酒のことをやっているこの嘱託医をふやしていく。この待遇改善をして、喜んでそこに情熱を燃やすようなものをつくれないか。去年の答弁からどのくらい前進しているか、これが一つ。  もう一つは、精神衛生相談員が各府県にできました。話してみましたら、一生懸命なんです。この人たちは特別講義でアルコールの講義を受けてきています。その講義は非常によかったと喜んでいます。ところが、この人たちは保健婦の仕事がいっぱいあってアルコールの相談なんかには応じておれない。したがって、保健婦の精神衛生相談員、これをもっとふやしてもっと教育して、そこに、おまえはこれをやるのだぞという、そういうことを与えていただかないといまの厚生行政ではやれません。私は弘前の保健所、黒石の保健所に入って見ていますけれども、彼女らもそう言っているので、この二点で特別にやはり施策を出して進んでいただきたいと思うわけです。これが二点。  もう一つは、厚生大臣、先ほど県庁でやっていると言う。酒の害をやるというので官庁が出て成功したためしは全国ありませんし、国際的にもありません。(小沢国務大臣「県庁と言わないよ、県に団体がある」と呼ぶ)それで、成功しているのは民間人がやっているものです。日本には日本アルコール問題連絡協議会など十団体がある。学会としてはアルコール医学会がある。ここいらにもっと御苦労をねぎらってあげなければならぬし、政府も、この間ときどき厚生省からも出ていっておるけれども、その人たちを激励する、その人たちの仕事の苦労をくんで、そこに思い切って出してやる。国が乗り出せと言っているのは、直接国が乗り出していって成功したためしがないので、こういう施策を、保健所嘱託医を、そして衛生相談員を、そして民間のこういう団体を——大臣がそれは新潟県であるというのは県庁でなければいいですよ、よかったです。そういう形で進める必要があると思うのです。この三つに対する国の施策の前進、援助、補助、お伺いします。
  70. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 まず第一にお医者さんの件でございますが、昨年先生は七千五百円でやれるか、こういうお話でございました。それにお答えするにはちょっとさびしいかもしれませんが、五十三年度では一応八千五十円ということで単価をアップしたわけでございますが、これで足りるかと言えば、まさしく私ども足りるとは申し上げるわけにはいきませんが、その心持ちだけはおくみいただきたいと思います。これは、こういうふうにしておりますのは、先生御存じだと思いますが、前にも精神関係だけじゃなく、あと結核だとかあるいは高血圧の方も皆お医者さんに御協力いただく場合にこの単価で統一してお願いしているわけでございますので、それもおくみいただきたいと思います。なお、昨年二百十二カ所の保健所で考えておったわけですが、五十三年度におきまして二百六十八カ所と個所数は逐次ふやしていくという本年度の予算になっております。  それから、第二の精神衛生相談員でございますが、これも全く先生おっしゃるとおりで、実情余り進歩がございません。もちろん相談員の資格を持てる講習会の受講者はその分ふえて、その数四千数百名御承知のとおりおるわけでございますが、先生御指摘なのは、保健所で専任にさせろ、こういうことだというふうに伺ったわけでございます。  実際現在、五十一年の時点では二百名しか専任はおりません。そして兼任でも約七百しかないわけでございまして、この点、私どもは県には専任を置きなさいという指導をしておるのですが、実際にはそうはいかない。これは先生、裏返しますと、いま先生がおっしゃったのがそのままの理由になるんじゃないかと私どもは思っておるわけでございます。と申しますのは、専任にしますとそれ以外のことを手伝ってもらえないというふうに保健所の方では考えるわけで、専任にしてしまわなければ両方やってもらえるけれども、専任にするとほかのことはやってもらえないというような感覚が働いて、かえって専任にしたくないという考え方が実際にある、それがネックになって専任ができない、こういうことになっておるのがどうもうらはらになっているという感じがいたします。  それから第三の問題で、政府が主導型のものは余りよくない、おっしゃるとおりでございまして、先ほど大臣の県にも民間団体がある、こういうふうに大臣がたしか申し上げたと思いますが、現在私どもはそういうことで民間団体の育成ということが必要だと思いまして、実際にいわゆる断酒会と申しますか、そういうものが都道府県でできております。これは全都道府県に断酒会ができておるようでございます。都道府県のもとに保健所単位ごとに地域の断酒会というものがつくられておるというふうに聞いておりますが、現在約六百ぐらい地域でできておるというふうに聞いております。そういうことで、確かに先生がおっしゃるとおり、これは政府、官庁主導型じゃなくて民間団体がお互いに助け合いながらそういう中毒になった人たちを助け合って引き上げていくということが一番いい方法だというふうに私は聞いております。  それで、現在私どもがやっておりますのは、一応アルコール中毒の対策活動費ということで精神衛生連盟というところへ補助金を、わずかではございますが、出しておりまして、それが間接的にそういった団体の方に援助される、精神衛生連盟を通じまして研修会だとかパンフレットをつくるとかいうようなことでその断酒会の方へ実際の活動の力が及ぶということでございます。この点につきましても、足りないと御指摘があればそれはそのとおりかと思いますが、考え方としてはそういう考え方でございます。
  71. 津川武一

    津川分科員 これで終わりますが、来年またこの席できょう質問したのがどのくらい前進しているか、ひとつ激励も含めてお尋ねしてみますので、がんばってください。終わります。
  72. 住栄作

    ○住主査代理 これにて津川君の質疑は終了しました。  午後一時三十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  73. 住栄作

    ○住主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  74. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私は、ここのところ毎年問題になっておりまするかぜ及びインフルエンザ様疾患の流行について御質問をいたしたいと存じます。  かぜは、インフルエンザは一見非常に軽微な症状を呈するため軽い問題として見過ごされやすい問題でございますけれども、今年の流行の様相を見ましても、決して看過すべき問題でない点がたくさんあると思われます。  そこでまず、今年のインフルエンザ様疾患の流行の状況についてお伺いをいたし、随時お話を詰めてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  75. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 インフルエンザにつきましては、少し話を戻させていただきますと、大体インフルエンザは十年を周期で別のタイプのビールスが流行しておるというふうに考えられております。  実は昨年の暮れまでにはやっておりましたの建一九六八年にいわゆる香港かぜというので流行を始めたAの3型というビールスがはやっておりました。それで、それが一九六八年から昨年の暮れ、七七年の暮れまで約十年間はやっておったわけでございます。  そこで、昨年の十二月に私ども、香港とロシアの両方からAH1型というビールスを分離したという電報を受けました。このAH1型というのは、実は一九四七年から五六年にかけてはやりました型ではないかというふうに思われております。  と申しますのは、H1型と申しましても、H1型もさらに変化をしておるということもございますので、われわれの現在の分離能力からいきますと、そのH1型というところまでの分離しかできません。あとこのほかにNの部分がございますが、それを略しまして一応Hでいきますと、四十七年から五六年にH1型、五七年から六七年までH2型、これはいわゆるアジアかぜといったものでございます。イタリアかぜ、アジアかぜ、香港かぜと、この三つが十年ずつずっとここではやってきたわけでございます。  ところで、昨年の暮れに得ました情報から、このH1型は必ずわが国にも上陸するであろう、こういうふうに考えて予定しておったわけでございます。ただ通常、従来の私どもの常識からいきますと、大体十二月ごろに新しいビールスが分離されますと、それがわが国に入ってまいりますのは、大体その次の年の春ごろというのが従来の常識でございました。ですから私どもも、こういったように交通事情が盛んになっておりますからもっと早く入ってくるかもしらぬ、しかし大体においてことしの春ごろだろうと思っておりましたところが、一月になりまして、島根県、熊本県でこの新型のビールスがあるということが分離されました。それに引き続いて神奈川県、東京都、大阪と、こういうことでございます。  これは考えますと、香港から東南アジアにはやり、それからロシアからヨーロッパの方にはやりました。そういう状況から、一つは、東南アジアと交通、いわゆる木材などを運ぶ船からと言われておりますが、そういうところから島根、熊本へ入った。さらに今度は、飛行機を通じまして東京、それからさらに大都市に及んでおる、そういうことでございます。  現在、この冬にはやりましたかぜにつきましては、新しいH1型は、本年になりまして三十四都道府県において新しい型のかぜが分離されております。多分これは間もなく全国に及ぶと思いますが、東北の一部と日本海側のところでまだ分離されておりません。  そういうことでございますので、この冬は、昨年の間は香港かぜ、それから本年に入りまして新たにH1の型が加わりまして、両方合わさって現在はやっているのではないか、特に後者の方がはやっているのではないかと思います。  現実にこの二月十八日までに私どもで把握いたしました数は約二百万人でございます。この数と申しますのは非常に微妙なんでございますが、現実にどれだけかかっているかというのは把握が非常に困難でございます。私どもが把握するやり方は、先生先ほどインフルエンザ様疾患、こうおっしゃられましたが、そういったインフルエンザ様疾患患者発生報告というのをとっております。これは、幼稚園から高等学校までの間で学校閉鎖等を行った場合に、そこにおける患者数ということで把握しておりまして、全日本で一体どれだけ患者があるかということにつきましては把握しておりません。いま申し上げた二百万というのは、ただいま申し上げましたそういう意味での患者の数でございます。  なお、二月十八日現在で二百万と申し上げましたが、最後の週が四十万、その前の週が五十三万でございまして、患者の新発生につきましては少なくなっているような感じがいたします。
  76. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 詳しい御報告はありがたいのですが、質問の時間がなくなりますから、ひとつなるべく早いところお願いいたします。  インフルエンザ流行期におけるインフルエンザによる超過死亡、あるいは合併症とみなされ、それに基づく超過死亡というものが、呼吸器疾患、心臓疾患、糖尿病、また老人病等について相当の影響が出ているというふうに伺っているわけであります。かぜといっても簡単に処置するべきではないと思いますし、厚生省としてこれに対する対策を軽視すべきではないと考えるわけですが、どうでしょうか。
  77. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 先生おっしゃるとおり、インフルエンザにつきましてそう軽視すべきではないと思いますが、実際にはこういう新しいかぜがはやりましたとき、ワクチンを間に合わせることはむずかしいのでございまして、やはり人込みに出ない、学校閉鎖を行う、あるいは無理な夜更かしなどしないというような一般的な注意を守っていただくのしかないのではないか、そういうことを大いに守っていただきたいと思っております。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 今度は答弁が少し短か過ぎます。  あと、うがいをするとか、ふだんから体力をつけておくとかいろいろあるでしょうけれども、治療の策が余り確立されていないし、適切な指導という点でまだ十分ではないのではないかと私は見ております。  こうした症状に対して確立した治療法がないことは述べられたとおりでありますが、予防法としてはワクチンが非常に大きな比重を持っている。ところがそのワクチンが、私が二年前に御省からいろいろ資料を取り寄せ調査をした際に、製造までに約十一カ月もかかっており、当年の流行にも間に合わないだけではなくて、その翌年の流行期にもどうかというほどのスピードである。これでは、本年のようにインフルエンザビールスの大変異が起こった際には、事実上ノーワクチンという形になって一年間を経由しなければならない、こういうふうに伺っているわけでありますが、その辺はどうでしょうか。
  79. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 インフルエンザワクチンの製造につきましては、この株を分離決定をいたしましてから供給されるまでの期間といたしまして、通常のところ七カ月半から八カ月半ぐらいの期間を経過しなければならないという問題がございます。  この間、これを何とかして緊急事態において、その製造過程における時間を短縮するということになりますと、その製造に当たります会社側における自家検定と国家検定を並行して行うという緊急事態の手続の促進を図りますれば、約六カ月という期間で供給可能になるというふうに考えております。それ以上の短縮というのは、株の分離決定以降最終供給までの期間としては、この六カ月よりもさらに短期ということは事実上非常に困難である、かように考えております。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 私がいま手にしておりますのは、厚生省から質問に先立っていただいたデータでありますが、通常の場合に、ワクチン製造株の決定が六十日ないし九十日、メーカーによる製造が百六日、国家検定期間が五十五日、包装、出荷、流通が七日、合計二百二十八日ないし二百五十八日。緊急の場合は、ワクチン製造株の決定が六十日、メーカーにおける製造が八十三日、国家検定期間が三十三日、包装、出荷、流通が七日、計百八十三日、六カ月余となっております。  私は、ただいまの御説明にもございましたけれども、こういうふうに縮めて発表していただけたということは、非常に大きな前進と高く評価して  いるものであります。しかし、このように緊急の事態になりました際に、インフルエンザビールス分離からワクチン製造に至るこのメカニズムの中で、ただいま述べられました百八十三日という短縮期間で、実際にみんなに接種が可能なものなのかどうなのか、ちょっと念のために伺っておきた  い。  といいますのは、学術的に六ヵ月に縮まったというんじゃ困るのであって、実際に子供やお年寄りのところにまでそういうものを接種する時間として十分なのか、ちょっと念のために伺っておきたいと思います。
  81. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 これは実際に製造にかかります段階におきましては、当初から、株を決定されて以降製造に着手いたしましたときに、もうすでに大量生産の体制になりますので、六カ月後にはその大量の範囲で供給が可能であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 これがそういうふうにりっぱにできるものでありますならば何も問題はないのですが、この製造株の種類を、本年みたいな大変異の時期に当たりましたときに、A型のインフルエンザビールスが非常に大きく変わってしまう、変わった際に、もう少し製造株をふだんから多数用意しておき決定しておくことはできないのかというふうに思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  83. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに、たとえば前に一九四〇何年からはやったあのときの株を使ったらどうかという話が実際にあるわけでございますが、現実には株自体が非常に変わっておりまして、たとえば毎年毎年、同じ香港型でも、翌年用につくりますのは、その春の最後にはやったときの株でまた分離していく。少しずつ変異をしておりますので、それに合わせていかないと、本当に有効なワクチンができるかどうかというのは疑問でございますので、最新型で合わせているという実情でございます。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そこで申し上げるのですが、ここのただいま述べていただきました緊急の場合に、こう時間がたっているのに、ワクチン製造株の決定の時間が緊急の場合でも六十日、通常の場合では六十日から九十日、しかもワクチンの製造株の、製造すべき株はこれだとお決めになるのは、最終的にはそこにお座りの厚生大臣がお決めになる、これがかかるのだと。先ほどからおかぜを引いていられるようで恐縮なんですけれども、御自分で決定しなければならない。それで、そのどれがかかるかを決定するのに当たりまして、今年のように二種類の大きいのが流行している中で、本当はどちらか一方ではないかというので、長く検討しておられる時期というものが続いている。  それを見ておりますと、私は多少当たり外れがあったとしても、初めの二、三株あるいは四、五株を製造株として、一つだけ決定するのでなく早く決定して、メーカーによる製造のシステムの中に入れて、中間でそれが流行しないとわかったら取り消すというようなこともあわせて考えられれば、もう少し時間も短縮し、被害者も減らすことができるのではないか、こんな感じもするわけなんです。ですから、製造株の種類を一種類決定するのではなく、数種類を予備的に決定することはできないかと申し上げたわけでありますが、どうでしょうか。
  85. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 実はさっき申し上げましたように、新しい株が入ってきたとき、ことしのような場合はまだなかったものでございますので、どうにもならなかったということがございます。  それからもう一つの問題としては、その株が必ず十分数がふえるか。要するにビールスがたくさん卵の上でふえてくれないとワクチンができません。その問題が一つと、それから、その株を分離して、さらにワクチンを製造いたします場合に、菌体から抽出するわけでございますが、抽出したものがうまい抗原性を持たないという場合もございます。そういうこともありまして、幾つかの株の中から、次にはやるところに最も近い、しかも大量に生え、抗原性を持ち得るというので、それを探し出しまして毎年一つという決定をしているわけでございます。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いまあなたはむずかしい点をいろいろ挙げられました。確かにそのむずかしい点はあるのだろうと思います。私は、この問題についてはむしろ素人ですから、ちょっとその辺は詳しく議論ができません。しかし、いま数種類が、あるいは一種類が流行するということがわかっているわけなのですから、今度のソ連かぜと称するものは昨年の十一月の段階でもう最初の菌株が日本側に送られてきたという経緯があるわけですから、これについての決定は早くできたのではないか。むしろその時点から製造株として考えてもよかったのではないかと思うわけですね。困難性があったり、あるいは抽出したものの抗原性とかあるいは増殖性とか、いろいろいまおっしゃいましたけれども、むしろそういう問題を乗り越えるために、いまの製造株の決定のメカニズムというのをもう一回再検討されて、その辺のところをもう少し縮める方法があっていいんじゃないか。それは御検討の余地はないですかと伺っておるのです。
  87. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 まず第一点。現在すでにもう、患者から分離しましたものを実際に生えるかどうか、抗原性があるかということを始めております。それが第一点であります。  第二点は、二つ、三つあわせて考えるようなことを考えたらどうか、こういう御指摘でございます。一つには、つくっちゃってからやめたというと、メーカー側でも非常に困るというような問題もあるわけでございますが、ただいま先生おっしゃったのも、確かにできない相談ではないかと思いますので、十分検討させていただきたいと思います。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大変前向きの御答弁をいただきましたので、ありがたいと思っております。ひとつその点でよろしくお願いしたいと思います。メーカー側が多少損害を受けるという部分については、どうせふだん大変もうけておられるのですし、そんなことは言いにくいでしょうけれども、危険負担というものはどの薬の開発のときもあるものでありまして、むしろワクチンなんかの製造の危険負担というのは本当に少ないものですから、私はそれは余り大げさに顧慮されなくてもいいのじゃないかと、念のために申し上げたいと思うのです。  さてそれでは、流行変異株の的確な予測対策として今後どういうふうな対策を樹立されていくか、その辺をひとつ述べていただきたい。今後の対策をまとめて述べていただきたい。特に、インフルエンザの株の決定が厚生大臣の認可事項である。厚生大臣は、事実上インフルエンザの前に立ちふさがる、それこそ月光仮面のように立っておられるわけでありますから、この対策については厚生大臣がお答えになるのが妥当だろうと思いますし、今後の御努力とあわせまして、この対策をまとめて述べていただきますようぜひお願いをいたします。
  89. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 御指摘のとおり、私どもできるだけ早く本当に増殖し、抗原性のある菌株を決定いたしまして、今度の冬には必ず間に合うようにという努力をいたしたいと思っております。
  90. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただいま公衆衛生局長が申し上げましたように、私も実は、そういうかぜが香港、ソ連で通報があったということを聞きまして、すぐにでも手を打てないか、こう言ったのですが、いまるる申し上げましたような事情でなかなかそう急には間に合わないのだ、こういう話でございました。したがって、今度は株の分離をやって準備に入っておりますから、私としてはその手順を見た上で早急に決定して、この秋以後には大体間に合うように努力したいと思います。
  91. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 では、非常に前向きな御姿勢をあらわしていただきましたところで、今後の御精進をお願いするといたしまして、次に、難病対策の問題に触れたいと存じます。  厚生省は、難病対策に調査研究費の配賦等非常に前向きに努力しておられるようでありますが、予算を見ますと、つけ方が少し少ないのではないかと思われます。六十個の班に対して今年は十一億五千四百五十万円で、五十一年度の九億八千万円、五十二年度の十億八千四百万円と比べましても、物価の上昇にも当たらない程度であります。金額の高さが必ずしも調査研究の質の向上とは結びつかないとは存じますけれども、これらはもっと根本的に体制を組み直し、調査研究というものに対してシステム化した方がいいのではないかと思われますが、その辺いかがですか。
  92. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 先生がおっしゃるとおりでございますが、私ども特殊疾患対策として実際には四十三の研究班、十九の治療研究をやっておるわけでございますが、班につきましても、これをさらにいろいろ再編成するということによって内容を充実していきたいと思いますし、さらに治療研究につきましては、新たにパーキンソン氏病を加えまして、従来の十九から二十ということに内容的には伸ばす予定をいたしております。
  93. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 特に私が不可解に思いますのは、がんの研究費に対して十四億五千万円がついている。しかし循環器の方については一億であである。神経センターの方には一億九千万円である。心身障害センターについては五億一千万円である。これを見ますと、最近死亡率の最高を占めるのがいわゆる心臓疾患であり、脳卒中であるとか高血圧であるとか脳溢血であるとか、私たちの周りにもう列挙するのに挙げることができないほどたくさんのケースがあるわけでありますけれども、このいまの日本人の最大の病気である循環器の問題に対して一億した費用をつけない、これは片手落ちではないか。むしろこの金額については根本的に再検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  94. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 御指摘のように、新年度の循環器病研究費は一億を計上いたしております。しかし、がん研究助成金も三十八年度に始まりましたが、最初は二千万円から始まったわけでございます。したがって私どもは、新年度の予算案では一億でございますが、これを早急にがんに匹敵するぐらい増額してまいりたいと考えております。なお、新年度の場合には、先ほど先生からもお話がございましたが、神経疾患の研究費が新たに一億九千万新設されておりますので、そのような関係もございまして循環器病の研究費は一億にとどまったわけでございます。
  95. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 いかにも累年少しずつ予算をふやすというお役所風の考え方で、元金が一億だから大分ふえるぞというふうにいまおっしゃっているわけでございましょうけれども、もはやいまの日本の国会議員の中でも、ここにいらっしゃる方々の中でも、この一年間にまたばたばたといろんな方が心臓病で亡くなられるのだろうと思いますと、こんな金額でいいのかという感じが私は素人ながらするわけなんです。むしろ素人だから私は問題意識を感じて申し上げているわけなんですけれども、どれくらいの方が亡くなられているかという統計さえわからない状況の中で、これはぜひとも大臣に政治的にお伺いしなければいけないのでありますが、今年の一億はまあ仕方がないのかもしれません。ですけれども、大臣にぜひとも御努力いただきたいのは、こうした難病対策費というのは大した金額ではない。そして、しかも日本人の中の最大の死亡率、死亡原因となっている循環器の問題に対しては、ひとつ費用を抜本的に考慮され直されまして、金額を上げると同時に、研究のシステムを考慮され直す必要があるのではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  96. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も素人でございまして、なお答えができるかどうかわかりませんが、高血圧、がん、心臓系統の三大成人病につきまして予防対策、研究対策を進めることは、高齢化社会を迎える日本の医療行政にとって最も大事なことだと思いますので、これから私もできるだけ重点的に努力をしてまいります。
  97. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 話が細かい話ばかりで恐縮なんですが、子供の病気の問題について、早期発見というのは非常に大事なので、私はここ五年来予算分科会では何回か申し上げたことがあります。それは尿検査の問題なんです。三歳児健診の際あるいは小中高の学生の身体検査の際に尿検査をするということは、内臓疾患の発見に非常に役に立つ、非常にラフな試験ではあるけれども効き目が多いということで、つとに認められていたところであります。  しかし、いまだに必ずこうしなさいという命令は、厚生省からもあるいは文部省からも出ていないため、望ましいという形で通達が行われているという程度にとどまっているわけであります。これでは病人を多くしてから治し、国民健康保険の支出高を高めるというだけで、決して賢明な策ではないし、人の幸福にとっても本質的に態度が違うのではないかと私たち思っているわけなんです。  ですから、文部省、厚生省で御分担はございますでしょうが、小中高の方に関しては文部省でございましょうからまず文部省にお伺いし、最後厚生省に締めていただきたいのですが、これらの問題につきましては、尿検査の義務づけといいますか、義務規定、あるいは義務的な行政指導というものをぜひお願いしたいと思いますが、ひとつ結論だけを聞かしていただきたいと存じます。
  98. 遠藤丞

    ○遠藤説明員 現在、学校保健法の施行規則に定期健康診断においては尿の検査を行わなければならないという規定がございます。ただし、四十九年度から実施をいたしました関係で、技術的な問題もございまして、毎学年ではございませんで、奇数学年には必ずやるようにという規則になっております。
  99. 石野清治

    石野政府委員 三歳児健診につきましては、たしか先生からの御指摘があって、四十八年度からと思いましたけれども、尿検査について新しく検査項目に入れたわけでございます。  現在の検査の状況を見ますと、三歳児健診については大体一〇〇%近く検査をいたしております。ただ問題は、三歳児健診を受けにこない方がまだ二割近くおるわけでございまして、問題はむしろ三歳児健診を受けるような努力、これがまず一番大切じゃないかと思います。  なお、検査項目につきましては、各保健所長ともそれぞれこの問題については非常に重要性を認識しておりますので、まずまず行われておるというふうに考えていいと思います。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それじゃ、文部省の方のお答えを大臣聞いておられたらおわかりのとおり、いま厚生省の方はずいぶん一生懸命やっていただいて、あともう一息だと思いますが、学校保健法に基づいて尿検査の実施が奇数年でとどまっているというのは大変まずいことだと思います。文部大臣はおいでになりませんから、厚生大臣の方からこれに対してひとつ注意を喚起していただきまして、しかるべく処理をしていただきますようお願いいたします。
  101. 小沢辰男

    小沢国務大臣 早速文部当局とよく話しまして善処いたします。
  102. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 よろしくお願いいたします。
  103. 住栄作

    ○住主査代理 これにて渡部君の質疑は終了しました。  次に、中村重光君。
  104. 中村重光

    中村(重)分科員 時間がないから端的にお尋ねし、端的にお答えをいただきます。  本会議の代表質問で触れたんだけれども、原爆被爆地域の指定の問題ですね。大臣が大変前向きの姿勢で予算編成に臨んだと思うのだけれども、残念ながら五十三年度もまた見送り。安倍官房長官にも会ったのです。官房長官も、前の園田官房長官当時に胸をたたいてやりましょう、こう言ったもので、そのことも説明をし、ぜひ地域是正をやるべきだという主張に対して、与党の中が、自民党の中がまとまればぜひそうしたいという、安倍官房長官も前向きの私に対する答えであったわけです。最終的に自民党内が、広島、長崎でなかなか話がつかない。ついに政府も踏み切ることができなくて、五十三年度は受診のための予算の計上というものがなかったわけですね。これは何としても私は不合理な話だというように思うのです。これじゃいけないんですね。これはやはり政府が決断する以外にないのではないでしょうか。大臣は私の質問に対して本会議では、いままでの地域指定は放射能の影響によるところを指定をしてきたんだから、今度千三百万円かな、その予算をかけて、さらに調査をしたいというお答えがあったのだけれども、これからやろうとする調査というのはどういう調査なのかということが一点。それから大臣、あなたに私、この図面を差し上げたことがあったんだけれども、これが十二キロですよ。そうすると、このピンク、これが被爆手帳を持っているのです。十二キロ以上、十三キロ近くまで手帳を持っているのですよ。この黄色、受診手帳ですよ、いわゆる長与、時律というところ。これは十二キロまで受診手帳、佐分利さんが踏み切って受診地域に指定をされたんです。その後、当時の佐分利公衆衛生局長は、毎年これを広げていくようにしたい、前向きの姿勢を示してきたんです。これは厚生省に対する陳情の際に、局長側が広島、長崎に行かれたときも被爆者の人たちとそういう約束をしてこられたんです。そういう約束からしても当然約束を守らなければならぬ。  大臣、考えてみませんか、第一、原爆は頭上五百メーターのところで炸裂しているんですよ。ここは十二キロ以上だ、こっちはまた受診地域が十二キロ以上です。この白いところは、これは六キロ以上だ。この白いところは被爆手帳は言うまでもなく、受診手帳だって交付してないのですよ、ここに手帳を交付してない。そしてこの地域、いわゆる六キロ以上に、これは東西ということになるんだけれども、手帳を交付しないということは公平ということが言えるのかどうか、きわめて不合理である、影響は同じように受けているわけだから。  大臣が本会議で答弁されたのは、あれは紋切り型でああいう答弁以外になかった、私はまあそういうことで伺っておったんだけれども、きょうは委員会だからそうはいかぬですね。本会議のように一方通行の答弁では済まないわけなんだから、きょうはまともにひとつ答えてもらって、そして五十一年はやって、五十二年も続けて広げるのはやはり問題だろうということで、その地域の人は涙をのんで引き下がってきたんだから、それが、五十二年、五十三年も認められなかったと言っては、これはがまんができようはずがないじゃないですか。だから五十三年、しょうがないから、補正予算でやられる必要があるということを言いたいけれども、やってもらえば、やることが本当でしょうが、もしそれがどうしても無理であるとすれば、五十四年、来年は地域是正をやる、こういうことにされる必要があると思うんで、それをそうするかどうかをひとつはっきり答えてください。
  105. 小沢辰男

    小沢国務大臣 中村委員の非常に熱心な前からのお話は、私ももう胸を打たれておるわけでございますが、大体行政区画で指定をしたために上下に長くえらい指定をしてしまいまして、これが今日それを前提にして、いまおっしゃったようにどうも不公平じゃないか。現実論から見れば、確かに矢上村の方の一部ですか、それと三重村の方等に……(中村(重)分科員「わかっているから詳しくは要らぬです。時間もないから」と呼ぶ)ええ。式見村ですか、そういう方々がいろいろ不満を持たれるのはよくわかるのでございますけれども、なかなかこれは、どうも理論的に残留放射能かどの程度にあるかということの調査をしても、なおかつそれがどうも指定に必要な結果が出てこない、こういうことになりますと、どうも厚生省としてはなかなかやりにくいわけでございまして、今年そのためにもう一度念のために調査をすることにしたわけでございますので、その結果を見て私どもは検討させていただこう、こう思いますので、これは本当にいわば先生方のお気持ちをそんたくした配慮の結果でございますので、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  106. 中村重光

    中村(重)分科員 それはどういう調査をするのかということは、局長からでもいいから後で答えてください。それから、これだけ広げたのは、地元の国会議員の意向というものを反映させた、こうおっしゃった。それを前提にして言うのはおかしい——おかしいとは言わなかったけれども、それを前提として広げろと言っているんで、その指定を受けてないところは不満があるのは無理からぬというように言われたんだけれども、いずれにしても国がやったことは間違いないんだ、指定は。いわば見識を持っておやりになったわけだから、それならば、不公平であるということを考えるならば、これまた国の見識に基づいておやりになるということでないといかないでしょう。それから大臣、いま二キロ置きに土をとって地表調査をやったわけなんです。その結果が上がる、こうおっしゃるんだけれども、二十キロも幾らもあるところに放射能の影響が出ているんだよ。そして、じゃあ現にこの手帳を交付しているところだって土をとって調査をしたのだから、影響なかったでしょう。もうそれは三十年もたっているんだから、ないのはあたりまえですよ。人体の中にあるのです。それが。いま大臣が答えたような論法でいくならば、現に手帳を交付しているところも、土をとってみたけれど影響はなかった。そして、手帳を交付していない十二キロじゃなくて二十キロ以上もあるところに出てきた、これをどうするかという問題。だから、今度出たところをまた再調査しょうとしているのでしょう。琴海村とか外海村であるとかに影響が出ているでしょう、それを再調査するということは、どういう結論を出すか。中国の核実験の影響かもしれないというようなことですりかえていくのかもしれない。そうすると、手帳を交付したところの土をとって検査したけれどもなかったというならば、それじゃそれを取り消すのかということになる。そうせぬと手帳をもらっていないところの連中は納得しないですよ、これは。政治は不公平是正、これは福田内閣の一枚看板でやっているんだ。だから、あなた方が幾ら言ってみたところで、いまのような答弁では私どもも納得をしないし、また、手帳の交付を受けていない十二キロ内にある人たちは納得しない。それから科学調査と、佐分利局長は当時私の質問に対して答えているんだけれども、この長与、時津の受診地域としての指定は、この地区は放射能の影響はほとんどないんだ、これは自然放射能に近い状態なんで、爆風と熱線によるものであると、私の質問に対してこう答弁をしている。そこへ受診手帳を交付したのだから、五百メートル以上のところで炸裂をしたその影響というものはみんな同じように大体受けているわけですよ。だから、甲の地点には交付して乙の地点には交付しないなんて、そんな不合理な話はないじゃないですか。  聡明な厚生大臣、あなたが考えてみてわかることなんだ。だから是正をしなければこれはしようがないんだよ、することがあたりまえなんだから。これはもういままでも政治的な決断ということでおやりになったんだから、こういう不合理はいつまでもほっておけないから、ここであなたが、与党の中の広島、長崎が対立しているのだとか、余りそれに気をとられないで断固としておやりなさいよ。佐分利医務局長は御存じだけれども、広島は黒い雨が降った地域、長崎はその中心から半径十二キロということでお互いに合意をして、地域拡大の要求をしてきたわけだ。広島はその黒い雨の降った地域を、二十七キロかな、そこまで広げているんですよ。長崎だけがちょっぴり二地点だけを、六キロまでで、一部七キロまでにはみ出しているんだ。広島はみずから要求したとおり、黒い雨の降った地域二十七キロまで広げて、それに長崎も文句を言わないで協力をしたのに、長崎だけが取り残されている。半径十二キロに対して広島が文句をつけるというのはおかしいじゃないですか。そこをひとつ毅然たる態度をもって、そういうむちゃを言わせないようにしなければいけないですよ。あなたがもう決断しなさいよ。それが権威ある厚生大臣としての態度だと私は思う。いかがですか。
  107. 小沢辰男

    小沢国務大臣 時津地区、長与地区の追加指定も政治的配慮だと思うのですね。どうもこれが十二キロ、北の方まで広げたのも政治的配慮だと思うのですよ。厳密に言ったらどうかなと思うような状況じゃないかと思うのですね。いろんな理屈はつけられると思いますけれども、私はそう思うのですよ。それからさらにまた、矢上村あるいは三重村の方にもどんどん広げていきましたね、これもやはり政治的配慮が多分にあった。それだけではないと思いますが……。そこで、大体その辺でがまんできないか、していただけないかなというのが率直な意見なんじゃないかと思うのですが、しかし、現実がそうなってきますと、今度は、しかしおかしいじゃないか、南の方へ行ったら十二キロまでのところがあって、その周辺が全然指定されていないのはおかしいじゃないかと言われてきますと、その面から見ればそのとおりなんですけれども、長崎市という行政区画を原爆被災地として取り上げたのでそういう結果が生まれたわけなんでございますから、どうもここで私に、今度はおまえ、政治的決断でひとつ横の方も、東西の方も十二キロまで広げろ、こう言われても、何を取っかかりの理屈にしてやったらいいのか。ここで残留放射能の何か調査をやって、ちょっとでも何か理屈がつくようなデータがあればやりたいという気持ちでやったのだろうと思うのですけれども、その結果がどうも余り実際上出てこなかった、こういうことなんで、非常に困った問題なんです。  それはおっしゃるように、やるかやらぬかの理論的な、科学的な根拠というよりは、そういう現実に住民人たちが持っている不公平な感情を政治的に取り除く決断をするかどうかの問題だと思うのです。そういう意味で、指定を迫っておられる中村委員の気持ちもわかりますけれども、同時に、原爆の問題は広島、長崎を同じような歩調でいきませんと、どうもこれが非常に、党内でも、あるいは対外的にも、広島県民についてもなかなかおさまらぬ点もありまして、この辺は私、参りまして間もなくだったものですから、どうも研究不十分な点もありました。したがって、これから十分検討してみまして、御要望に添えるかどうか検討してみますから、今日のところはひとつお許しをいただきたいと思います。
  108. 中村重光

    中村(重)分科員 大臣、単なる政治的配慮じゃないんだ。やはり事務当局は見識を持ってやっているんだ。佐分利さんが長与、時津を十二キロまで決断したのは、それなりにデータを出して、一般と比べて死亡率がどうだ、罹病率がどうだと、いろいろなことを調査をして、そして決断をしたのです。単なる政治的決断じゃないのです。そうすると、このまだ指定をしていないところの地区も同じような条件なんだから、佐分利さんが長与、時津を決断したことと同じ条件なんだから、データがはっきりしているんだから、それで当時の厚生大臣は決断をしたわけだ。ならば、それがまだ残されている、いわゆる徐々に広げるということで残されているわけだから、この徐々は、五十年に一部手直しをやって、広島は二十七キロまで要求どおり黒い雨の降った地域を決断して、そして五十二年、五十三年はやっていないんだから、だからいわゆる徐々に、条件は同じだから決断をする。むずかしくあなた考え過ぎているんだ。何もむずかしくはないんだ。そうしなければならないんだ。だから不合理なことは直すのか直さぬのか、直すならば直すように決断する、こうじゃないといけないんだ。いかがです。短く答弁してください。  それと、広島と長崎を同じ歩調でいかなければならぬ。——大体広島と長崎に落とされた原爆は性能は同じじゃないんだ。総線量からいって、広島の場合は四十一・二、長崎の総線量は八十五・七で、一・八倍なんだ。これから言ったって、長崎が広くなるのはあたりまえの話なんだ。そういう意味の足並みをそろえていけばいいじゃないですか。そして、いま言ったように黒い雨の降った地域、二十七キロまで広島は広げている、こういう事実ですよ。これは私は無理も何も言っていないんだから……。
  109. 小沢辰男

    小沢国務大臣 原爆の大きさが確かに違う。しかし、質もまた違っているということもございまして、そうなりますとなかなかそれだけで私どもは判断ができません。  いまおっしゃったように、ただ残留放射能が土の中にあるとかないとかでなくて、その住民の健康の状況等を見て決断をしたのだから、この南の方のものについてもそういうような同じ症状があったりする以上は同じ取り扱いをしろ、一遍にと言わないで、逐次やったんだからとおっしゃる意味はよくわかります。しかし、どうも私どもとして——これは何も経費の問題じゃないのです。したがって、再三にわたるお話でございますのでよく検討はいたします。結論は来年の予算のときにしていただきたいと思うのですが、検討はあらゆる角度から、今度の調査に当たってどういう理屈づけができるのか、ほかのいろいろな調査のやり方等も考えてみまして、今度は私の側でも、どっちにしても説明がつくようなデータをとって、ひとつ姿勢をはっきりしたいと思いますので、いましばらく待っていただきたい。
  110. 中村重光

    中村(重)分科員 いいです。前向きで結論を出してもらうということで。  それから調査の方法も、長与、時津に受診手帳を交付するための指定をしたときは、土をとったりなんかそんなむずかしいことを、三十年もたったいま、そういうようなだれでも首をかしげるような調査をしなかった。だから、長与、時津が指定をしたときと同じような条件で、取り残されている南北の調査をしなさい、そうするべきなんだ。納得のいくようなやり方さえすれば、だれも文句も言わないし、こんなにがたがたする必要はない。  それで局長、これからの調査をどうするのか、簡単に言うてください。
  111. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 五十一年度に行いました調査に何か不審な点が、先生も御指摘のように幾つかございます。そういう点を含めまして、私どもこれから専門家に集まってもらいまして、どういう調査が最も従来の不審な点を明らかにするのに望ましいかというようなことも含めまして、専門家にこれから検討してもらって決めよう、こういうように考えております。
  112. 中村重光

    中村(重)分科員 それでは、放射能のあったところ、そこだけをまた調査するということじゃないですね。全体的に調査をやり直すということですね。
  113. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 そういうことも含めまして検討いたします。
  114. 中村重光

    中村(重)分科員 次に、時間がなくなりましたからまとめて質問します。  原爆認定患者は非常に数少ない。認定患者だから非常に大変なんだ。それから、身障者の中の精薄児に対しての国鉄の運賃割引がないということは、これまた不合理だという不満が非常に強い。それから、いままでの身障者に対する国鉄の運賃割引もずいぶん古い話だ。百キロ未満はだめだ、特急は乗せない、新幹線は乗せない。これはひとつ厚生大臣、赤字の国鉄に負担しろと言ったって無理だから、改めて厚生大臣検討し直して、割引のことについては取り組んでもらいたい。  それから、精薄児の機能訓練、これは理学療法士とか作業療法士とかが足りなくて機能訓練が全くなっていない。だから、必要な要員はふやして、機能訓練をする施設もふやして訓練を十分にやる。そして、機能訓練をしても働く場所がない。機能訓練、職業訓練と続いても働く場所がないとどうにもならぬ。ところが、そういうような身障者の働く場所は非常に少ない。身障者の場合、大企業ほど雇用比率が低い、こんなけしからぬことをほったらかしにしておいてはいけない。それからまた、雇用しているところでも賃金が安いのだ。最低賃金の保障もなく、長時間働いて——雇っている人は奨励金をもらっているんだ。それで賃金が本当に一日三回の食事代にも足りないような低賃金で働かせている。こんなことを放置してはいけないから、労働省もお見えでしょうが、関心を持ってひとつやってもらう。  それから、民生委員と児童委員、これは大変な役割りです。児童委員は、二十二年から交付金でやっている手当が三千円据え置きですよ。民生委員は二万九千円。これは民生委員、児童委員の果たしている役割りということからすると、本当に見直してもっと待遇改善をやらなければいけない。それから、交付金を県にだけやっているけれども、市町村に責任を持たせないといかぬから、市町村まで交付金を支給をするように、この点も再検討してもらう必要があるということでございます。  まだいろいろお尋ねしたいのですが、時間の関係がありますから、以上の点についてそれぞれお答えをいただきます。
  115. 石野清治

    石野政府委員 精薄児者の問題がございましたので、まず私からお答え申し上げますが、精薄者の国鉄運賃割引の問題、これは確かに心身障害者対策基本法の中にもうたっておりますので、努力しなくちゃいけない。国鉄の方にもいろいろと御要望申し上げておりますけれども、財政状況等もございましてなかなか実現できない、こういう状況でございます。さらに努力をしたいと思います。  それから、精神薄弱児の機能訓練の問題でございますが、これはやはり全体の問題でございますが、PT、OTの職員の確保がなかなかむずかしいという点がございまして、さらに努力を続けておりますけれども、少なくとも精薄児施設におきましては、社会復帰を目標にいたしましていろいろな角度から努力をいたしておりますので、さらにこの問題につきましては努力をいたしたい、こう考えております。  それから、精薄者の働き場所につきましては、五十二年度から通所援護事業を新しく始めておりまして、これをさらに来年も伸ばしていきたい、こう思っております。
  116. 上村一

    ○上村政府委員 民生委員、児童委員の手当の問題でございますが、御案内のように、民生委員、児童委員というのは名誉職でございます。したがいまして、俸給なり給与の支給はできないわけでございますが、その活動に必要な経費というのは都道府県の負担。そこで、国でその財源として交付税の措置を講ずることにいたしておりまして、昭和五十二年度は年額三万円でございます。この交付税は毎年引き上げられておりまして、今後ともその充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  117. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 最初お話がございました国鉄の運賃割引を原爆の認定患者にという点でございますが、国鉄の運賃割引につきましては、介護をしなければ乗れないというような身体障害の方が大体考え方の基本でございまして、認定患者の中でもそういうふうな方には現実に実際に割引をされている方もいらっしゃいますが、そういう方でない方につきましては、さしあたって新しく運賃割引の対象にするということは考えておりませんので、御理解いただきたいと思います。
  118. 中村重光

    中村(重)分科員 これで終わりますが、いまの答弁で満足できない答弁が大変多い。  松浦局長、いまの認定被爆者の問題なんか、にべなくそんな答えるということはやはりいけない。検討してみて、適切であればやるというようなことじゃないといけないですよ。それぞれの答えでも満足できない点があるのです。ですから、きょうは時間がありませんから、改めてまたお尋ねもするし、委員会でなくても、直接いろいろと要請もするし、御意見も伺うということにいたします。  最後に佐分利局長、離島医療、後でお勢ねするつもりだったのだけれども、特に離島の中でも長崎県の対馬、もうあなたの頭にこびりついている。渡辺前厚生大臣もわざわざ対馬等に行って実情を調査してきている。その深刻さというものを身にしみて感じておる。眼科もなければ精神科もない。歯が痛いと一週間から十日待たされる。それでもうがまんしきれないで、飛行機でもって福岡まで行くという状態です。それと救急医療というものも話にならない。だから、もっと国立病院の定員を充足する、そうして中核病院としての役割りを果たす。  それから、いつぞや佐藤さんは官邸から羽田までヘリを使って行くというようなことをやった。だから離島には、離島医療対策という点でヘリぐらいはひとつ用意をして、そうして急患対策とし、あるいは本当に島でどうにもならないような場合にヘリを有効に使って、もっと温かみのある医療行政というものをやっていくようにしないといけないと私は思う。人口に比例してお話にならぬでしょう。本当にこれは問題なんですよ、人道問題。ですから佐分利局長、ひとつ明快な、しかも前進的なお答えをいただいて、最後大臣からも一言、御答弁願います。
  119. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 救急医療対策は、明年度の予算案では約四十億増額されて百四十一億になっております。  具体的に長崎県の離島医療でございますが、上五島、下五島、対馬につきましては、国立長崎中央病院が、その地域中核病院として医療を担当することにいたしております。そのために定員もふやしております。さらに、救急医療につきましては、本年度、いわゆる救命救急センターといたしまして現在、整備を進めております。その定員の増加も新年度、図られる予定でございます。  問題はヘリでございますが、ヘリコプターは、やはり海上保安庁とかあるいは自衛隊だとか、また県警本部、報道関係いろいろ持っております。そういったところのものを、知事の要請、時によっては市町村長の要請によって使わせていただくというのが通常になっておりまして、私が北海道におりますときにも、そのような方法で不便はしていなかったと思うのでございます。特にヘリの場合には、操縦がむずかしゅうございまして、ときどき墜落するようなことがあるわけでございますので、やはりこれは専門家に担当させるという方法がよかろうと思っております。また、そのために長崎中央病院にはヘリポートもすでに整備してあるわけでございます。  なお、特殊な診療科について現在の方式で、なお不足しているという問題が確かにございますけれども、この点につきましては、文部省の医師養成計画も計画以上に進んでおりますので、できるだけ早く耳鼻科だとか眼科だとか、また御指摘の歯科につきましても、御期待に沿えるように、少なくとも巡回診療がたびたびできるようにいたしたいと考えております。
  120. 小沢辰男

    小沢国務大臣 長崎中央病院を離島の中核医療機関として、いま局長が申し上げましたように、五十三年度も相当の整備をいたす所存でございますので、さらに、離島全体について中核病院としての医療を担当してやるという心の問題が大事ですから、この点は院長以下皆さんに、よく私どもの気持ちを申し上げて、できるだけひとつ離島の住民の各科の診療に事欠かないように努力するよう指導もいたしますし、整備も進めてまいりますので、どうぞ御了解を得たいと思います。
  121. 中村重光

    中村(重)分科員 時間が参りましたので終わります。
  122. 住栄作

    ○住主査代理 これにて中村君の質疑は終了しました。  次に、市川雄一君。
  123. 市川雄一

    市川分科員 最初に、救命救急センターの整備の問題についてお尋ねしたいと思います。  厚生省昭和五十二年度からスタートさせた救急医療対策の中に、救命救急センターの整備の推進という項目がありますが、この問題についてお伺いしたいと思います。時間に制約がありますので、単刀直入に具体的な事例でお聞きしたいと思います。  第一点は、この救急医療対策の計画の中の救命救急センターの整備の推進でございますが、各都道府県にまず一カ所、将来は複数の設置が望ましいという考えが、この中に述べられているわけですが、その都道府県が最初に置く一カ所が、本来この設置の趣旨からいいますと県の中心地に置かれることが非常に望ましいというふうにお考えだろうと思うのですが、諸般の事情から、それが必ずしも中心地ではなくて外れた場合でも、県の方の位置づけがはっきりしておれば、厚生省としては差し支えないのかどうか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  124. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 救急医療対策につきましては、各都道府県の救急医療対策協議会におかれまして、ただいま御指摘の救命救急センターを初めとして、二次センター、一次センター、また当番制、こういったものを総合的に検討していただくことになっております。したがって、結論から申しますと、たとえば大きな県で複数の救命救急センターを持つような場合、ある中心地でないブロックの救急救命センターの方が先に、諸般の情勢から着工ができるという場合には、そちらの方から先に着手するということも考えております。要するに地元の救急医療対策協議会において、そのように決まったということであれば、厚生省としては、その計画に従いたいと考えております。
  125. 市川雄一

    市川分科員 そこでお伺いしたいのですが、神奈川県の場合、神奈川県の計画の中で今後二カ所つくっていきたいという計画があるわけですが、しかも、県としては五つの設置候補地を持っておられるようなんですが、受け入れ側のいろいろな事情、というのは主に財政的な事情が大きく響いているわけですが、最初の一カ所が川崎の北部、これも県の候補地五カ所のうちの一つなんですが、聖マリアンナ医科大学病院に決まる可能性が非常に高い。恐らく来月だと思いますが、県の方で、そういう決定をされるのじゃないかと思うのですが、この場合、厚生省サイドとしては不都合ではないということですか、確認をしておきたいと思います。
  126. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 一般的に申しますと川崎ブロックには、ほかに市立川崎病院といったりっぱな病院がございます。したがって、どの病院が救急救命センターになるのかというのは大きな問題でございますけれども、先ほど申し上げましたように、県の救急医療対策協議会で聖マリアンナ大学にするのだ、また大学の方も、それを喜んでお引き受けするということであれば、県の決定であれば、厚生省はそれに従いたいと考えております。
  127. 市川雄一

    市川分科員 その場合、この趣旨ですと三分の一が国で、県が三分の一、三分の一が設置主体者という趣旨になっておると思うのですが、神奈川県の場合、主に費用負担の問題で、設置主体者と言われる聖マリアンナ医科大学病院が持つべき費用負担、約三億九千万ですけれども、これは川崎市がこれを肩がわりして負担するという、こういう事情があるわけですね。  これは神奈川県全体が、御承知のように川崎、横浜と東京のベッドタウン化して非常に人口が急増した地区であるということ。しかも、特に川崎北部と川崎北部に隣接した横浜地域には公的な医療機関というものがない。したがって、救急医療体制の設置が、非常に広域にわたって市民から強い要望が出ているという実情。市としては、かつて、そういう立場から市立病院の設置を考えたのですけれども、財政的な理由でこれを断念したという経緯がある。しかも非常に必要性も高いし緊急度もあるということで、市としては、設置者の負担を肩がわりしてでも、何とか国のおっしゃっている救命救急センターをつくっていきたいという強い意向を持っているわけですが、こういう場合に、お伺いするところによりますと、救命救急センターの整備の事業に伴う設置者に、川崎市のような自治体を含めて収入が入りますと、寄付金とみなされて、その分、国の補助額から控除される、こういう趣旨であるというふうにも聞いておるわけです。  この川崎市の聖マリアンナ医科大学病院のケースで、その控除の原則が適用されますと計画そのものが御破算になってしまう。総額で約六億九千三百万という費用が想定されているわけですが、このうち県と国で持つ分が、試算ですけれども大体二億九千四百六十三万、市の負担分が三億九千八百三十六万円という、市の持ち出し分も含めてかなり巨額な負担を市が持つわけですけれども、市が非常に熱意を持ってやろうとしている。しかし、さっき申し上げたような事情から控除が行われますと、推進者を失って当然、計画そのものが挫折してしまう、こういう事情があるわけです。この場合、こういう事情を勘案して、せっかく救急医療整備ということで救命救急センターの整備といういい制度をおつくりになったのですから、運用面でこれを殺すことのないように、こういう特殊なケースについては十分御配慮をしていただけるのじゃないかと思うのですが、厚生省としてのお考えをまず聞いておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  128. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 川崎市が負担しますものが番付金でなければ現行法令には抵触せず、御期待どおりになるものと私は解釈いたしております。また、そのようなことは、ほかの府県でも一、二計画が進行いたしております。
  129. 市川雄一

    市川分科員 寄付金というよりも施設代とか医療機械代とかいうものを総額の中で分担して負担する、本来、設置主体者と言われる聖マリアンナ医科大学が負担すべきお金を市が肩がわりして負担する、そういう形でこの救命救急センターをつくりたい、こういうことなんです。いまの御答弁は、こういう場合、国はちゃんとこの制度の予定どおりの補助をきちっとなさるということですか。
  130. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 具体的に申しますと、器付金として川崎市が支出なさるとぐあいが悪いと思いますが、救命救急センター整備の補助金という形であるならばよろしいのではないかと思っております。また審付金以外にも、川崎市からのお金の出し方としては、いろいろな方法があるわけでございます。
  131. 市川雄一

    市川分科員 わかりました。最初の一カ所が必ずしも県の中心地でなくても、県の医療審議会ですか、この位置づけがはっきりしていれば、それでいい。いまの市の負担分が寄付金でない、救命救急センターの設置を補助する支出であるならば不都合ではない、こういうことでございますね。  次に、五十二年度何カ所おつくりになる予定で予算を組まれて、いま受け入れが決まっているのは何カ所ですか。
  132. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 五十二年度は予算は十五カ所計上してございました。そのうち二カ所は国立でございます。十三カ所が都道府県立、公的ということでございますが、現在はっきり決まっておりますのは国立を含めて十三カ所でございます。つまり、あと一つ二つ、まだ話が本決まりでないところがございます。
  133. 市川雄一

    市川分科員 この二カ所は年度末までに決まりますか。
  134. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 先ほどもお話がございましたが、県の財政負担等の関係もございまして、どうも五十二年度中に決めることは困難になってきたという予測を持っております。
  135. 市川雄一

    市川分科員 せっかくいい制度をつくっても、結局、県の負担が大きいということと、それから救急医療懇談会で意見を出された中でも書いてありますけれども、国立に設置されることが非常に望ましいということですよ。本来、国がお金を出し県がお金を出す、しかし結果としてできた建物なり物は、その設置者の病院の財産になってしまうわけでしょう。そういうことも考えますと、これは国立に設置するのが望ましいのですが、なり県立なりという関係が、なかなか財政的な負担をきらって受け入れないという事情があるわけですよ。県立ですと、まるまる三分の二県で持つようになるわけでしょう。国が三分の一、県が三分の一、設置主体者が三分の一ということは、県立の病院ですから県が三分の一持ったほかに、また病院として持つわけですから、そうなると県は三分の二持たなければならない。こういうことでは、せっかくいい、こういう重症患者のたらい回しをなくしていこうということでおつくりになったものだと思うのですけれども、本来、国がもっと本腰を入れてやるべきことだとぼくは思うのですね。     〔住主査代理退席、主査着席〕  この救急医療懇談会でも指摘しておりますが、結局、救急医療というのは採算が合わないわけです。持ち出しになる。ですから資本主義的な採算ベースということだと、なかなかできっこないわけでしょう。しかし、救急医療に対する要求は非常に高いし、たらい回しという問題もあったわけですから、やらなければならない。しかし採算が合わない。こういう公共的な性格を非常に強く持っているわけですね。そういう意味から考えますと、やはりこれは国がもっと積極的に財政的な裏づけを持ってやっていかなければいけないのじゃないか。  それから、制度そのものは考え方としてはいいものを打ち出しておきながら、三分の一しか持ちませんよということで、なかなか進まないのじゃないか。ですから現実に五十二年度十五カ所の設置計画を持っていながら二カ所決まらない。神奈川県でも五カ所の候補地があるのですけれども、その中には公のものもありますし、国立のものもあるのですが、結局、財政負担が厳しいので逃げ腰なんですよ。みんなやりたいけれども応分の負担ができないからできない。たまたま川崎市が人口急増で救急医療対策ができてない、これは何とかしなければならぬということで、設置主体者の肩がわり負担をやろうという決意を持ったから、この受け入れが何とか固まってきたという実情があるわけです。  そういうことを考えますと、今後の問題として救急医療が採算がとれないということもよくわかっておられるし、また、やらなければならないということもわかっているのですから、もっと財政的な裏づけを、国の負担すべき部分をもっと拡大してでもやっていこうというぐらいの積極的な厚生省の考えがほしいのですけれども、その辺どうでしょうか。
  136. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 五十二年度から始まっております第一次救急医療対策三カ年計画におきましては、厚生省の国立病院が担当する救命救急センターは各ブロックに一カ所ということで八カ所を予定しております。また、文部省の方も、これは差し出がましいことになりますが、国立大学付属病院で救命救急センターのようなものをつくっていただく計画が進んでおります。それで国としても関係名君大いに努力をしているのでございますけれども、こういったものは県民の福祉、健康の問題でございますから、やはりりっぱな県立病院のあるところは県立病院でもやる、またりっぱな市立病院があるところは市立病院でもやる、総力を挙げてやるべきものではないかと考えているわけでございます。  なお、確かに救急部門は人の配置も多うございますし診療時間も長うございますから、非常に経費がかかりますけれども、二月実施の健康保険の診療報酬も救急部門については二割の値上げがございました。また、先ほど来お話のございました補助金のほかに、自治省としては交付税交付金を配っているわけでございます。また、マリアンナ大学のような場合には医療金融公庫の特別融資もいたしております。そのような総合的な対策をもって官民、力を合わせて救急医療対策のネットワークをしいていってはどうかと考えております。
  137. 市川雄一

    市川分科員 そんなことではできないとぼくは思うのですよ、実際問題。県や市は、いま持っている市立病院に救急を設置しようなんというゆとりがないくらいの財政圧迫を現実に受けているわけですよ。ですから、これはもっと国が本気でやらなければならない問題だと私は思います。ぜひそういう認識と今後の対策を御要請申し上げたいと思います。  時間がありませんから、次に、産業廃棄物の問題をお尋ねしたいのですが、いま、この産業廃棄物の最終処分地がなくて非常に困っているわけです。厚生省はよく御承知だと思うのです。神奈川県でいろいろ調べてみたのですけれども、都市化が進んできて、そういう産廃の最終処分地を確保する場所がなかなか見つけがたい。それから水道の水源の確保もあって、産廃の処分地をつくりますと、どうしても河川の汚染につながるということで、それも配慮しなければならないし、自然環境の保護ということについての住民の関心も非常に高くなっている。あるいは海洋埋め立てということでは相模湾しかないのですが、相模湾は海水浴場が多い。こういうことで、県としても非常に頭を抱えているわけです。県自体の対応では、もうどうにもならない。それから、神奈川県下の産廃処理事業者の所有する県内埋め立て処分地の現状ですね。二十八社のうち今後使える処分地があると答えているのが六社しかない。この六社も、あとせいぜい一、二年で処分地がなくなってしまう。こういうことなんですね。警察庁の調べでも、公害関係法違反事例の総件数二千八百五十六件、このうち産廃処理法違反事例が千六百四十五件で五八%を占めているわけです。これはやはり最終処分地がないということから不法投棄という問題が起きているのじゃないかと思うのです。  こういうことはもうすでに厚生省はよく御存じだと思うのですが、この東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、こういう関東圏で、全国そうですけれども、年間の産廃の廃棄量というのですか、中間処理を含めて最終的にどのくらいの量が出るのか。その最終処分地がどのくらいのスペースがあって、いまのベースで進んでいくと今後どうなるのか、どういう対策を打たなければならないか。厚生省として、いま現時点で、こういう実態把握をお持ちですか。あるかないかということだけ簡単にお答えください。
  138. 国川建二

    ○国川政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お話のありました全国的な産業廃棄物の詳細なデータということでありますが、五十三年度で現時点での実態調査を確実に把握したいと思って準備している段階でございます。  なお、排出量そのものは、数年前のデータではございますけれども、一応、年間三億二千万トンということで出ておりますが、調査の時点の相違等がございますし、最終処分の量そのものが確実に把握できているとは申せない段階でございます。
  139. 市川雄一

    市川分科員 国としては結局、実態把握をいまの時点ではしていないわけでしょう。きわめてこれは無責任というか対応がおくれたと思うのです。やはり生産第一主義、高度成長政策という政策をずっとおとり続けになって、産業活動が活発になれば産業廃棄物は必然的にふえてくる。その場合に処分地がなければ困るということは当然わかるわけですから、もっと以前に対処していなければいけなかった問題だと思うのですが、全然対処ができていない。第一、今日高度成長が終わって低成長がどうのこうのといっている時点でさえも、まだその実態が把握されていない。  国は都道府県に計画を立てさせようとしているわけですが、しかし都道府県も、立てているとはいうものの保管、収集、運搬、中間処理、最終処分にわたっての解決策をしっかり持っている都道府県なんというのはないのじゃないかと思うのです。一応の基本計画を持っているものが四十七都道府県の中で三十県程度あると言われておりますが、しかし、それだって内容を突っ込んでよく聞いてみますと、そういう最終処分地までの解決策を持っていない。こういう意味で国がPPPの原則の陰に隠れて何となく公共関与を怠ってきたんじゃないかという感じがしてならないわけです。法律は一方では厳しくする。ですから処理業者は非常に法律違反におびえているわけです。しかし最終処分地はない。これは自治体に、ただ計画をつくれと命じていて解決する問題じゃないと思うのです。  実態把握をしっかりするとともに、広域にわたって最終処分地を確保するための国としての確固たる財政的な裏づけと法的な裏づけを持った施策が必要だと思うのです。こういうことについてどういうようにお考えですか。
  140. 国川建二

    ○国川政府委員 先生よく御存じだと思いますけれども本来、産業廃棄物の対策は、最終処分地の確保対策も含めまして、いわゆる事業者処理の原則にのっとって行われるべきものだというように私ども考えているわけでございます。ただ従来、個々の事業者が単独に行うことが大変むずかしい、特に最終処分地の確保が大変むずかしいということで、近年は業種別あるいは地域別で共同で処分地を確保するという方向がとられているわけでございます。  私どもといたしましては、そういう方向が最も望ましい姿であるというように考えているわけでございまして、その方向で指導し、そのために必要な措置、と申しますのは、たとえば公害防止事業団などの財政面の融資制度とか、そういう形で公的資金の融資や税制上の優遇措置を講じているわけでございます。しかし、すべてが一挙に短期間の間に解決するのは大変むずかしい実情があるわけでございますので、私どもといたしましては、そういう各都道府県での広域的な対策の計画づくり、あるいはそのために必要な物の考え方などの調査研究を行うとか、あるいは技術開発を進める、そういうことを逐次進めているわけでございます。  まあ問題は、廃棄物の減量化そのものもあわせて配慮していかなければいけないという考え方でございますので、私どもとしては、そういう観点から、さらに全国的な問題というぐあいに認識しているわけでございます。それから、首都圏であるとか近畿圏であるとか非常に人口が稠密な地域におきましては単独に広域的な最終処分地が必要ではないか。そのための計画あるいは構想を立てるための検討を五十三年度は行いたい、そういうことを準備しているところでございます。
  141. 市川雄一

    市川分科員 どうも抽象的なんですけれども、  フェニックス計画という計画がおありになって五十二年度調査するというのですが、それができるまでに五、六年かかってしまう。その五、六年をどうするかというのが、いま切実な問題なんですよ。だからもっと緊急的な処置も必要なんです。将来に向かっての中期的な計画も結構ですが、同時に、厚生省で調査している間に起きてくる問題をどうするか、そういうことも含めてぜひやってもらいたいと思うのです。  次に、家電製品の廃棄物の問題なんですけれども、日本鉄屑工業会の調べですと、家電製品の廃棄台数は昭和五十年度で千百三十九万台。冷蔵庫、洗たく機、テレビ、ルームエアコン、これが昭和五十五年には恐らく千五百五十三万台になるんじゃないか。このうち自治体で処理しているのが昭和五十年度で二七%、処理業者が処理しているのが七三%。費用に換算しますと自治体負担は二七%で十二億八千七百万。これはもし一〇〇%自治体でありますと三十四億八千万かかるわけですが、結局これは処理業者に七三%任されている状況なんですね。  ところが最近一月、関東地区では、平電炉品質改善委員会から鉄屑工業会に対して、家電製品の廃棄物はそのままでは受け取らない、鉄の品質を悪くしますから受け取らない、分けて持ってこい、こういう申し入れがあったので、鉄屑工業会では、中間処理業者に対して分けて持ってこい、いままでみたいに一本では受け取らないぞ、こういうふうに言い渡しているわけですね。  いま中間処理業者は一番困っているわけですよ。結局、引き取ってきて鉄と非鉄金属とごみに解体作業をして捨てるわけですが、捨てるときは今度は廃棄物で、ごみの部分は二トン車一回当たり一万五千円とか取られるわけです。その往復輸送運賃だとか、あるいは処分地を確保するための権利金を年間五十万支払うとか、そういうことで困っているわけですね。家庭から引き取ってくるわけですから、家庭のごみは一般廃棄物で、自治体が清掃で処理しているわけですけれども、一たん家庭から引き取った家電製品が処理業者に渡って解体されて、ごみと鉄に分けられた場合、このごみハ産廃扱いになって、いま言ったような費用がかかってしまうわけですね。そうして、いままでは解体しなくても受け取ってくれたのが、もう製鉄会社も受け取らぬ、その中間にある鉄屑工業会でも受け取らぬぞという通達を出している。処理業者がいま一番お手上げ状態にあるわけですね。立川市なんかでは、しょうがないから町の中にほっぽり投げてあるということが、この間NHKでも放映されておりましたけれども、これハ将来大きな問題になるということは、この工業会も警告しているわけですよ。  ですから、自治体にも厚生省にも、所管庁が働きかけをしてくださって、こういう廃棄家電製品から出たごみは一般廃棄物扱いにして無料で処分できるように、中間処理業者の負担を軽減するような何らかの措置をとってくれないと、恐らくめんどうくさいからぶん投げろ、こういう事態が起きるということを警告しているわけですが、このことについて問題が起きてから対応するのではなくて、これは問題が起きそうだということがはっきりしているわけですから、国としても自治体に何らかの基準を持って働きかけるなり何なり、そういう指導性を発揮していただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  142. 国川建二

    ○国川政府委員 ただいまの先生のお話の中の、中間処理業者が解体して、その結果出てくるいわゆるごみ様のものを一般廃棄物扱いすることは、いささか問題があるんではないかというように思います。
  143. 市川雄一

    市川分科員 一般廃棄物扱いをする、これは法律的に問題が出てきますが、一般廃棄物扱いに準じて、それだったら中間処理業者に助成をするなり何なり、そういう手を打って、将来それがぶん投げられて放棄されるような状態にならないようにすることが、いま必要じゃありませんかということを申し上げているのですよ。法律がああだこうだということを申し上げているのではなくて、下の方では、いまそういう事態になっていますよ、このままこれを放置しておきますと、めんどうくさいから、採算ベースに合わないから投げちゃえということになりますよと申し上げているわけで、そういうことに対して厚生省として十分認識をお持ちになって対処していただきたいということです。
  144. 国川建二

    ○国川政府委員 先生よく御存じのように、家電製品のそういうものが廃棄物として一般家庭から出る、これは市町村の清掃事業の廃棄物にも入りますことは御承知のとおりでございます。私どもとしましては、こういう粗大廃棄物の処理施設をできるだけ市町村が整備する、そういう際には、それに対して補助金を出して整備を促進するという形で行政としては進んでいるわけでございます。  いまお話にございますように中間処理業者が引き取る場合、あるいは市町村が行う場合、個々の市町村によりましていろいろな形態があると思います。市町村によりましては、そういう中間処理業者の処分につきまして、ある程度の援助、助成というようなことを行っている例もあります。それは収集を市町村がやりまして再利用の方を業者がする、そういうようないろいろな形で援助している例もあるわけでございます。私どもの方としましては、いわゆる廃棄物の有効利用そのものが実態的にどういう形で行われているか、現在全国的な調査を行っているわけでございます。そういった過程におきまして得られた情報やその他を市町村に提供するだけではなくて、そういう指導を今後積極的に進めていきたいというように考えております。
  145. 市川雄一

    市川分科員 以上で終わります。
  146. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて市川君の質疑は終了しました。  次は、古川雅司君。
  147. 古川雅司

    古川(雅)分科員 厚生行政の一般的な問題の中から若干質問を行いたいと思います。まず最初に、診療放射線技師及び診療エックス線技師法第二十六条第二項第二号に係る運用上の問題点についてお伺いをしてまいります。  私は、昭和五十二年四月二十三日に、政府に対してこの問題点について質問主意書を提出いたしました。以下がその内容でございますが、   本法第二十六条第二項第二号とは「2 診療放射線技師又は診療エックス線技師は、病院又は診療所以外の場所においてその業務を行なつてはならない。ただし、次に掲げる場合はこの限りでない。」「二 多数の者の健康診断を一時に行なう場合において、医師又は歯科医師の立会いの下に百万電子ボルト未満のエネルギーを有するエックス線を照射するとき。」なる規定である。   右条文中の「医師又は歯科医師の立会いの下に」の運用上の見解について実態に合わない現状があり、昭和四十七年四月二十四日に参議院予算委員会分科会で塩出啓典君が、同じく同年八月八日衆議院社会労働委員会で古川雅司政府の見解を求めたところ、いずれも、当時厚生省医務局長であった松尾正雄及び滝沢正両説明員から「検討する」旨の答弁を得たものである。   しかるに現在に至るも未だに結論を見ていないと思われる。   従って次の事項について質問する。  一 レントゲン車又は移動レントゲン装置のそばに医師又は歯科医師が立会うということは、現実には、ほとんど行われていない。これは本法の右規定に抵触しないかどうか。  二 現実に「立会い」が行われていない状態が継航しているが、今日まで支障が生じあるいはその危険は生じているか。  三 本法にいう技師は、本法規定の拘束と現況との間で苦慮しているが、政府は本法を現実に即した規定に改めるべきであると思うが如何。   右質問する。  これに対して、同五十二年五月四日に政府から答弁書が出ました。その内容は、一から三までについて    病院又は診療所以外の場所において多数の者の健康診断を一時に行う場合に、診療放射線技師又は診療エックス線技師がエックス線を照射するときは、診療放射線技師及び診療エックス線技師法第二十六条第二項第二号の規定により、医師又は歯科医師の立会いの下に行うこととされており、その遵守については、今後とも関係者を指導してまいりたい。当該規定を改めることについては、診療の補助者としての診療放射線技師及び診療エックス線技師の業務の基本に触れる問題であるので、今後とも慎重に検討してまいりたい。   なお、エックス線撮影に伴う事故の発生については、これまで特段の報告を受けていない。というものであります。私はこの答弁書についてはきわめて不満足であります。ことに、この私の質問主意書の第三項に掲げました「本法にいう技師は、本法規定の拘束と現況との間で苦慮しているが、政府は本法を現実に即した規定に改めるべきであると思うが如何。」ということに関しまして、移動レントゲン車等によりまして集団検診等に当たっているエックス線技師の皆さんが、心ならずも違法行為を重ねているわけでございまして、そういう現場の実態に照らして、これは速やかに法改正に踏み切るべきではないか、このように思うわけでございますが、いかがでございますか。
  148. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 これまで御答弁いたしましたように、この診療放射線技師さん、あるいは医療補助者の方々の業務のあり方について改正することは、他の関連制度との関連もあり、非常に慎重に考えなければならない、検討しなければならないことでございます。したがって、私どもはやはり現在行われておる巡回診療等の際に医師ができるだけ同乗する、立ち会う、そのような方向で指導を強化してまいりたいと考えております。
  149. 古川雅司

    古川(雅)分科員 大臣に伺いますが、現実には医師の立ち会いというのは行われていないわけでありまして、その点を私は重視して質問しているわけであります。したがって、非常に長い間検討が重ねられてきたわけでありますが、この辺で厚生省当局、大臣みずから医療関係者あるいはエックス線技師会等の関係団体と調整をして、この法改正についての決断に踏み切るべきではないか、このように思うのですが、大臣、いかがでございますか。
  150. 小沢辰男

    小沢国務大臣 実は、わが国の医師法、医療法のたてまえというのは、あるいは先生方から見ますと、かたくなにまでという印象があるかもしれませんけれども、医師というもの以外は医療行為というものについての責任と権限はないのだ。したがって、医師、歯科医師を取り巻くいろいろな医療担当者というのは、すべて医師の指示、指導のもとに行うのだ。こういう立て方に一貫してなっております。したがって、このエックス線技師あるいは放射線技師等についても、法律上その原則を曲げていくということは非常に困難な問題でございます。  これは相当他にも影響する大きな問題でございますので、現実には先生のおっしゃるように医師がなかなか同乗できないというケースが多いのかもしれませんけれども、包括的な委任等あるいは指示等、指導等が行われているというたてまえでやっているわけでございますので、どうも、ここでいま私が法体系全体に影響するような問題を現実論だけで、やはり責任ある厚生大臣として先生の御説に従うわけにはちょっといかない。いま局長が申し上げたように、医師が同乗して指導、指示をするように、できるだけ厳重に指導していく以外にはないだろうと思うのです。しかし包括的な指導あるいは監督ということもございますので、これらについては適宜、集団検診等の実施に非常な支障を来さないような配慮はしていっていいだろう、こう思うわけでございます。
  151. 古川雅司

    古川(雅)分科員 大臣の御答弁でございますが、まだまだ現場で直接従事をしている集団検診等におけるエックス線技師の心情は十分御理解いただいていないのではないかという所感を私は持つ次第でございます。  次に、旧陸軍大久野島毒ガス工場従事者に対する援護措置についてお伺いしてまいります。  問題を四つに要約いたしまして、まず最初に大蔵省と厚生省にあわせてお伺いをいたしますが、いわゆる障害者の援護対策について、窓口またその処遇を一元化できないかという問題であります。御承知のとおり全国には、いま健康管理手帳を持っている者が昭和五十一年現在で三千七百二十七名、うち広島県に三千二百二十六名いるわけでございます。いわゆる旧令に係る旧陸軍共済組合員に属する者が、これは大蔵省所管でありますし、また厚生省所管では動員学徒、女子挺身隊、勤労奉仕隊、人夫、そういった方々が厚生省所管で、その援護の処遇の対象になっているわけであります。厚生省所管はこの中で全国千五百六名、広島県で千三百六名いるわけでありますが、この一元化ができないかどうかということ。と申しますのは、厚生省所管になっている側につきましても、これはいわゆる国家総動員法に基づいて徴用された人たちでありますし、実際に製造に携わっていないとはいえ、この毒ガスの運搬等によりまして毒ガスに触れまして、現に障害を残しているわけでありますし、因果関係の論点だけでは議論できないものがあると思うのであります。そういった点で窓口の一元化並びに処遇の一元化はできないか。  第二点として、対象疾病の拡大についてでありますが、現行は慢性気道炎、気道がん、その二つの病気に基づきまして併発した心臓病と呼吸器感染症といったものが認定疾病として挙げられているわけであります。しかし昨年の五月三日、厚生省の委託研究によりまして広島大学医学部第二内科が、毒ガスが原因と思われて死亡した人について報告をいたしまして、これを男子五百八十九名、女子九十七名挙げております。その中で消化器系統によるものが二一%を占めております。したがってこの報告書では、毒ガスの影響が強いと認めた消化器系、それから皮膚がんからの併発というものを認めているわけであります。こういう研究報告に基づいて対象疾病の拡大を図るべきではないか。これは厚生省にお伺いいたします。  第三点に、同じく厚生省に伺いますが、指定医療機関の拡大であります。これは障害者が非常に老齢化をしてまいりましたし、地方に地域的に居住が拡散をしてまいりました。したがいまして、現在指定されている医療機関では非常に不便を来している。年一回巡回の健康診断班が回っているということでありますけれども、これもどうも障害者の意には十分に沿っていない現状であります。したがって、医療機関を拡大すべきであると思いますが、この点いかがですか。  第四点は、これは大蔵省にお伺いいたしますが、旧陸軍広島兵器補給廠の忠海分廠の従業員等に対する援護についてであります。これはすでに現状調査を済ませまして、五十二年度予算に処遇が予算として盛り込まれているわけでありますが、その内容が非常に不明確でありますし、今後、昭和五十四年以降の計画についても、その内容が明確でありません。この点お示しをいただきたいと思います。  以上、四点であります。
  152. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 最初の御質問でございますが、窓口を厚生省一本にならぬか、こういうことでございます。この毒ガスの障害者につきまして、いわゆる旧陸軍共済組合関係の身分を持っておられる軍人、軍属、雇員等、大蔵省が事業主であったという方々につきましては大蔵省において措置をいたしております。私どもの方は、その対象外になりましたいわゆる動員学徒等の方々を援護しておるわけでございまして、そういうところから、ちょっと中身が違っている。それも御指摘でございますが、そういう点からいいまして、現在は私どもは私ども、大蔵省は大蔵省ということで進めさしていただきたいと思っております。もちろん、大蔵省とできるだけ密接な連携のもとに行うということは、当然進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから対象疾病を拡大する考えはないかということでございますが、この対象疾病問題につきましても、大蔵省がずっとガス障害者に対する疾病の範囲に対する研究をやっておられて、私ども、その結論に従って大蔵省に合わせるというやり方をやっておりまして、そういうふうな行き方でいこう、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから第三の指定医療機関という問題でございます。これも先生御承知のように、指定医療機関を定めます場合には、いわゆる障害者から自分はあそこにかかるのだから、ここを指定してほしいということでお申し出を受けまして、そのお申し出を受けた医療機関を県が指定機関として契約するわけでございまして、特にここは困るというようなことがなければ、できるだけ、その障害者の方に御便宜のように指定するわけでございまして、そういう点、さらにもっと広げろ、こういうお話がございますれば、当然のことながら県に話しまして、そういうふうに措置をするよう善処したいと思います。
  153. 山崎登

    ○山崎説明員 まず第一点の一元化につきましては、厚生省と全く同じでございまして、旧令の共済組合につきまして、ガス以外にいろいろ年金その他を全部義務を継承して連合会がやっておるということでございまして、現在その限りにおいては私ども何ら支障はないというふうに考えております。  それから第四点の忠海分廠の範囲の拡大でございますが、現在、確かに大久野島関係のガス障害者に対しまして救済措置をとっておるわけでございますが、五十三年度におきまして、忠海分廠関係のガス障害者に対しましても範囲を拡大するということになっておりまして、これは一応事務的な問題もございますので、五十三年の十月から大久野島と全く同様な救済措置を考えております。
  154. 古川雅司

    古川(雅)分科員 時間の関係で次に移ります。  成人病対策と老人医療について大臣にお伺いしたいのでありますが、御承知のとおり健康づくり対策の一環として脳卒中、がん、心臓病等の成人病に対する対策を政府も進めておられるわけでありますが、依然として総死亡の非常に多い割合を占めているわけであります。昭和四十七年が五七%、五十年になって五八%、五十一年は六〇%という数字が挙がっております。私は、かつて昭和四十七年の衆議院の予算委員会におきまして、当時の齋藤厚生大臣に対して成人病の予防に対する対策についてお伺いをしたことがございます。そのとき私は、仮称でありますが、成人病予防法といったいわゆる法制化によって、この対策を強化すべきではないかということを申し上げたのでありますが、齋藤大臣は、まず専門医であるとか、あるいは保健所医あるいは施設の充実強化が先だ。その後で法制化というのを考えるべきではないかという所見を示されました。以後、私、がん等の成人病対策費の推移等を見てまいりますと、確かに予算の額ではふえておりますけれども、いまだしの感が非常に強いわけであります。  これはやはり、いわゆるこういう予防法といった法制化によって、きちんとした体系をつくるべきではないか。したがって、施設が先だということについても非常に疑問があるわけでありまして、現在も国立がんセンターにいたしましても、あるいは全国都道府県がん軍門診療所あるいはセンターにいたしましても、これは十二というような数しかございませんし、非常に立ちおくれが目立つわけであります。ことに、対策費の中身を見てまいりまして、がん研究助成金であるとかあるいは専門技術者の養成訓練費等につきましては最近ほとんど横ばいの状態でありますし、中には予算が減少しているものまであるわけであります。こういう点は非常に私、疑問に思いますし、もう少しこの対策を強化すべきではないかというように考えております。  さらに、老人医療になりますと、よき老後の生活、健康な老後の生活ということについては、やはり青年の間、壮年の間に健康づくり、また健康対策というものを十分に考えなければならないわけでありますが、現状の老人医療についてはしばしば多くの問題が提起されているわけであります。ことに、御承知のとおり国民健康保険は従来、地域住民の医療を守るために、非常に幾多の制度的な矛盾を抱えながら、臨時的な国庫の補助金と大幅な保険税の増徴によって辛うじて運営を続けてまいりました。しかし、最近は老人医療費等の無料化制度に至りまして医療費の増高が著しく、低所得者層に負担増を強いているわけであります。ことに、地方財政を圧迫するところから、この老人医療の医療費等の無料化制度に対して、老人の負担をふやし、あるいは制度の実質的な後退という形で、この制度がいま非常に危機に瀕しているわけであります。  老人保健医療問題懇談会から五十二年の十月二十六日に「今後の老人保健医療対策のあり方について」という報告がなされまして、その内容を踏まえて大臣は、この老人保健医療制度の創設を五十四年度から別建てで実施したいということを表明されております。しかし、この点についても、どういう方式で、どういう内容で行われていくのか、あるいは診療報酬等の抜本改正を絡めているだけに、それがもしおくれた場合この老人医療の問題も先へ延ばされていくという非常に大きな不安があるわけでございまして、むしろ私は診療報酬等の抜本的な改正よりも先立って、この老人保健医療制度の別建て創設については踏み切るべきではないかという意見を持っているわけであります。  そういう点を踏まえまして、いろいろお伺いをしてまいりましたが、成人病対策、そしてまた老人医療の実態、そして将来の対策、その点にわたってひとつ大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  155. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も実は老人保健医療体系をむしろ早目にやりたいということで事務当局からいろいろ聞きましたところ、五十五年ぐらいからようやく実施できるかな、こういうことでございましたが、ぜひひとつ来年の少なくとも秋には実施に踏み切るように、その前に法律を制定をして、早めるべきだというので督励をいたしまして、ようやく来年の秋には実施体制に持っていくような手順を考えるというところまでいきました。そういうことで老人保健医療サービス関係の別建ての法体系をいま鋭意検討を進めているところでございます。  それから成人病予防法制定の御意見があるのですが、これは、結核予防とか精神衛生の面と違いまして、がんの本体あるいは循環器疾患の成因、病態というものについて、まだ明確な科学的な結論を得ておりませんし、しかも診断治療に関する研究が、いまその途上にあるわけでございまして、これを一つの結核予防法みたいな形で法律をつくるということはなかなか困難ではないか。それよりも、条件整備をできるだけやって、知識の普及を図るなり、あるいはまた早期発見、早期治療のための検診事業推進をやるなり、あるいはがんセンター、循環器病センター等の医療施設の整備充実を図るなりということの方が、まだ手おくれでございますので、これらに重点を置いてやっていく方がいいのじゃないかという考えでございます。
  156. 古川雅司

    古川(雅)分科員 成人病の方につきましては、私も諸外国の事例を幾つか取り寄せまして、こうした法制化から出発をして成人病対策に取り組んでいるということを見ておりますので、大臣のいまのいわゆる対策の強化を優先させるという点については、それが非常におくれているだけに私は疑問を持つわけであります。  なお、老人医療の件について、先ほど私がお伺いをした診療報酬等の抜本改正との絡みについては、大臣、御答弁がなかったわけでありますが、その点どうなっているのか、お答えをいただきたいと思います。  さらにもう一点加えまして、かつて昭和四十七年の予算委員会で、老人専門病院の設置をもっとふやしていくという提言を私いたしました。当時の齋藤厚生大臣は、特別養護老人ホーム等の充実がまず先であって、このホームの近いところ、また同じところに老人専門の病院を置きたいというふうに答弁をしておられるわけでありますが、以後、国あるいは自治体におきまして、齋藤大臣の、厚生省の確約をどれだけ果たしてこられたか、実態がおわかりであればお示しをいただきたいと思います。
  157. 上村一

    ○上村政府委員 寝たきり老人等を対象にいたしまして特別養護老人ホームの整備に鋭意努めてまいりまして、もうすでに七百を超しておるわけでございます。引き続きまして特別養護老人ホームの整備には努力してまいりたいと思うわけでございますが、こういった特別養護老人ホームと、それからそれと連携をしました老人専門の病院の数につきましては、事例的には把握はできるわけでございますけれども、老人病院そのものの形態というものが明確ではございませんので、全国でどのくらいあるかにつきましてはつかみ切っておるわけではございません。
  158. 小沢辰男

    小沢国務大臣 古川先生の御意見ですが、老人の専門病院というのはどうももう少し考えてみなければいかぬのじゃないかと思うのです。やはり一般総合病院であらゆる機能を駆使して診療に当たる方がより合理的だと思うのでございまして、特別に老人だけの病院というものを考えていくのは、まだ私どもとしてどうも軽々に賛成しがたいのでございまして、ただ、特別養護老人ホームについては、一般総合病院で診療をやりまして、いわば慢性化したものについてこれを収容するという方向をいまとっておるわけです。また、この行き方がまだ当分の間本当じゃないかなというふうに考えております。  老人保健医療のサービスの別建ての法案を来年の通常国会に御提案を申し上げたいという意味で準備を進めておるわけでございますが、抜本改正の方はこの国会でぜひ御提案申し上げたいと思うのです。ただその際に、本当の意味での抜本改正のあるべき姿全体を想定しまして、それが全部いま直ちに間に合うかといいますとなかなか間に合いかねる面もありますので、老人医療保健サービス、どういう名前になりますかわかりませんが、そういう法案を来年出しますときには、また一つの総合的な考え方を織り込んだものが同時にやはり皆さんの御批判を仰ぐ、御審議を願う、こういうことになっていくんじゃないかなというふうにも考えておりますので、抜本改正と老人保健医療法の関係というのは、実はそれを総合した意味の抜本的な改正の考え方を提示しまして、その中でとりあえずこれとこれを抜本的にまず改正をしていきたい。それでその次に、できましたら引き続いてその考え方をさらに推し進めるような成案を得たい、こう思っております。
  159. 古川雅司

    古川(雅)分科員 老人専門病院についての御答弁は私は非常に疑問であります。と申しますのは、老人医療の無料化制度でいま一番ネックになっておりますのはやはりその受けざらでありまして、そういう意味では、老人を十分収容して、安心して治療が受けられる老人専門病院というような構想をもって進めるべきではないかと考える次第であります。  あと一分足らずになりました。最後に一言、大臣の所見を伺いますが、原爆被爆者に対する援護措置であります。  最近の大臣の御発言を伺っておりますと、被爆者のいわゆる援護法制定という悲願とはうらはらに、非常に後退した発言が目立つのではないか。時間の関係で一々申し上げませんが、その点につきまして私は非常に疑問に思っております。昨年の特別措置法の審議に当たりまして、その附帯決議に「国家補償精神に基づく」という一項を挿入いたしました。この一項を大臣はどのように受けとめていらっしゃるのか、一言御答弁をいただきまして、私の質問を終わります。
  160. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、国家補償精神に基づく特別立法、御提案のあれもよく承知いたしておりますが、戦争による被害者の全体のバランス等を考えますと、どうもそういう考え方にずばりいくことについてはちょっとまだ賛成できないのでございまして、放射線の特別な被曝という面をとらえて他の方々よりはより手厚く援護をしていくという現在の考え方がやはり素直に言っていいんじゃないか、こう思っておりますので、遺憾ながら国家補償精神に基づく原爆被爆者の援護法一本でという御提案のような考え方にはどうも政府はまだ同調できない、そこまではいけないわけでございますので、御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  161. 古川雅司

    古川(雅)分科員 終わります。
  162. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて古川君の質疑は終了しました。  次に、福岡義登君。
  163. 福岡義登

    福岡分科員 私は精神病対策についてお伺いをしたいのであります。  まず、精神障害者の実態についてお伺いしたいと思います。厚生省でお調べになりました精神障害者の実態は百二十四万という推計になっておるわけであります。しかし、これは昭和三十八年に御調査になったものでございます。自来十五年の歳月が流れておるのでありますが、その後、精神障害者の実態調査はなされていないようであります。確かにこの精神障害という特殊性にかんがみまして調査がいろいろむずかしいという事情は十分理解できるのでありますが、さりとて実態が把握できないのに対策は講じられない、こう思うのであります。そこで、何とかしてこの実態を把握するべきではないかと思うのですが、いまも申し上げましたように昭和三十八年の調査の推計で百二十四万人でありますから、その後、人口もふえておりますし、社会的な変化もあることを考え合わせてみますと、相当この精神障害者の数というのはふえておると思われるわけであります。その辺につきましてどういうお考えをなさっておるのか、まずお伺いをしたいと思うのであります。
  164. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生御指摘の百二十四万というのは昭和三十八年の調査でございまして、それでその後、十年後の昭和四十八年に再度精神衛生の実態調査を企画したわけでございますが、これも先生御承知かと思いますがいろいろな反対がございまして、結局人権問題と絡むということから始まりましてどうしてもその調査が十分できなかった。結局全国的な実態の把握は失敗したわけでございます。不十分な調査しかできませんでした。そういうことで、そういうふうな過去の経験から見まして、現時点におきましてもその調査をやるということは非常に困難、私はもう現実には不可能であろうかと思うのでありますが、そんなようなふうに考えておるわけでございます。ただ、その百二十四万という数字は、人口当たり十二・九、約十三、人口千人当たり約十三の精神障害者がいるという数になっておるわけでございまして、まあ大体そういった率につきましては、似たような率でも現在あるのではないかというふうに考えております。
  165. 福岡義登

    福岡分科員 先ほども申し上げましたように、おっしゃるように人権問題などがありまして調査が非常にむずかしい。四十八年に御苦労なさった経緯も知らぬわけではないわけです。しかし、何かその方法を考えまして実態の把握に努めていただきたい、こう思うのであります。  そこで、千人に対して十三人。そうしますと、いま人口一億一千八百万人ですか、そこから逆算いたしますと、大体百二十四万という推定というのはそう大きく変わらぬというように考えていいわけですか。
  166. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 いろいろ定義はあろうかと思いますが、いまの十三でございますと一億に対しまして百四十何万かになろうかと思いますが、大体そんなところじゃなかろうかというふうに考えてよろしかろうと思います。
  167. 福岡義登

    福岡分科員 それでは、障害者数の調査については今後いろいろ検討をしていただくという要望をいたしまして、次に治療問題についてお伺いしたいのですが、これも厚生省の資料によっての話でありますけれども、昭和五十二年の六月三十日現在、昨年の六月三十日現在で、精神病院の数が全国で千四百七十六病院、これに対しまして病床の数がどれだけあるかというと二十八万七千三百五ということになっております。それから在院患者数は二十九万五千三百三十一名であります。病床数よりもこの在院患者数の方が多い。一〇四・二%くらいになるんじゃないかと思います。八千人余りの人が病床数よりも多く入院しておるという状態なんであります。この実態を考えますと何らかの対策を必要とする、こう思われますが、入院を必要とする者あるいは入院を希望しておる者というようなものをさらに勘案をいたしますと八千人以上、相当の人がまだ病床が足りないということになると思うのです。その辺はどのようにお考えになっておるでしょうか。
  168. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに、先生おっしゃいますように、病床利用率を全国的に見ますと一〇二・八ということになっております。要するに一〇〇%より二・八%オーバーして患者が入っておるということになっております。これは見ますと、全国的に都道府県によりましてこの差がいろいろございます。そういうふうな都道府県の差は一体どういうことかというふうに見ますと、たとえば社会復帰の方へもっと送れるのがなかなかうまくいかないというようなことでやはり病院にとどまっているというようなことがあるのではないかということが一つ考えられます。それからまた病院の管理上オーバーして入れちゃっているというようなこともありますので、一概には言い切れないわけでございますが、全般的に見まして、やはり一方では社会復帰の促進をもっと考えるとともに、また病院の管理についても私ども十分指導を徹底していくべきである、こういうふうに考えております。
  169. 福岡義登

    福岡分科員 そういう抽象的な言い方でなく、もうどんずばり言えば病床が足りないということははっきり言えると思うのですよ。ですから、今後どういう病院をどう建てていくかというのは別にいたしまして、病床数が不足をしており、したがってその対策を必要とするということは率直にお認めになられたらいかがですか。
  170. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 御指摘のとおりでございまして、私ども、病床の新設ということは必要な限りにおいては望ましいことではないかと思います。
  171. 福岡義登

    福岡分科員 そこで、少し具体的になるのですが、厚生省の資料によっていろいろ計算しておるのですが、さっき言いましたように病院の総数が千四百七十六であります。その内訳を見ますと、いわゆる国公立が一八%であります。民間の法人であるとか個人の病院が千二百二で八二%であります。その国公立の内訳を見ますと、病院の数で国立が七十四、千四百七十六の総数に対しましては五%であります。それから都道府県立が六十七でありまして、これも総数に対して四・五%でございます。市町村立が八十二ありまして、これが五・五%であります。それから公的医療機関五十一病院ございまして、三・四%であります。合計いたしまして一八%になるわけです。あと残りが、申し上げましたように八二%が民間法人なり個人の精神病院である、こういう実情になっております。それから、病床数でそれを今度見ますと、国立全体の入院患者数は二十八万七千三百五、さっき申し上げたとおりであります。そのうちで国立に入っております患者は、国立の病床数は八千八百六十三であります。全体の三%であります。これを都道府県で見ますと一万六千八百九十二で五・八%であります。市町村で見ますと七千九百六で二・七%であります。公的医療機関が五千八百八十三で二・〇であります。合計いたしますと三万九千五百四十四で、一四%が国公立のいわゆる病床数である。これに対しまして民間の方は二十四万七千七百六十一で、八六%が民間の病床の数である、こういうようになっておるわけであります。どう考えてみましても国公立の病院が少ないのじゃないかという気がしてなりません。この辺についてどういう御認識を持っておられるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  172. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 先生御指摘のとおり、国公立の精神病院あるいは精神病床というのが全体の中で占める割合は少ないわけでございます。しかし、全体を見まして、大体法人立あるいは個人立におきましても十分精神障害者に対する治療というものを引き受けていただいておりまして、それでもって現在カバーされているという実情でございます。やはり、その実情は実情として、そういうふうな姿で行われているという、わが国の実態がそうであるということで、私どもは日本一つの姿であるというふうに理解しております。
  173. 福岡義登

    福岡分科員 治療が不十分になっておるということを言っておるのじゃないのですね。これは後で時間があればやりますけれども、余りにも公的病床が少ないじゃないか、病院の数が少ないじゃないか。われわれは、本来医療というものは公的医療機関を中心にするべきであるという考え方を持っております。医療の社会化といいますか、そういうものを考えておりますけれども、その議論はさておくといたしまして、精神障害というこの実態を考えると、もう少し国なり都道府県なり、そういうものが、いわゆる国公立の医療機関があっていいのじゃないか。もう少なくとも五〇%以上は国公立にして、そうして足りないところを民間がこれを補完するというような方針があってしかるべきだと思いますが、大臣、その辺はどう考えられるでしょうか。
  174. 小沢辰男

    小沢国務大臣 実は昭和三十八年の第一回目の精神衛生の実態調査、これは私がやったのです。私のときに、ヒロポン対策を徹底的にやるために民間の精神病院に初めて補助制度をつくったのでありますが、当時から、またあるいはそのずっと前から調べてみますと、歴史的に大体精神病院というものは民間の比重が非常に高かったのです。それで公立をつくりたいというので、大分各県の知事なり衛生部長とも相談をして公立の推進を図ったのですが、一般県民、一般市町村民の医療対策で一般病院をつくる方が先で、特殊な専門病院をつくるということはなかなか受け入れが少なくて、今日なおその形態が残っておって、先生御指摘のように国公立が圧倒的に少ないという現状なんです。  これは恐らく先生は、相手が精神障害者であるがゆえによけい公的な施設が必要なのではないだろうかという御意見だろうと思いますが、しかし、法律によって措置入院をやり、いろいろな法的な指導監督等も進めておりますから、必ずしも、すべてを公立でといいますか、公立の比重が高まらないからいま精神障害者の対策に事欠くというようなことでも私は現実問題としてないような気もいたします。やはり公共団体というものはどうも、一般病院が大体できてくる、そうすると住民のニーズにこたえるためには救急医療なりあるいはがん対策なり成人病対策なり、そちらの方に力を注いでいただくという方向にいま来ておりますものですから、精神病院について、精神障害者の収容施設についてこれから特に県にまた力を入れてもらうということについては、成人病等の対策、老人社会を迎える今日、どうもそちらの方にやはり重点を置かざるを得ない点もありますし、救急医療、僻地医療等の役割りも果たしていただかなければいかぬものですから、改めて厚生省が、精神病院についての設置主体である府県なり市町村指導して、そしてそれを進めていくという対策は特別どうもまだ取り得ないような気がいたします。ただ、中身について不足なものを放置しておくわけにもいきませんから、この点については進めてまいります。また一方、病院の中身の監督指導については、十分ひとつ国公立と同じような気持ちで運用をしていただくように指導してまいりますので、この点のアンバランスについては御了承をいただく以外には今日のところはないのではないかというふうな気がいたします。
  175. 福岡義登

    福岡分科員 了承をせよとおっしゃるのでありますが、どうも了承できないのです。おっしゃいますように、総合的に医療施設というものを整備していかなければならぬということは私どもも当然だと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、この精神障害という特殊性を考えれば、自分で治療する判断とかあるいは自分の疾患の具体的な説明なり、そういう能力に欠けるわけでしょう。普通の人ならば問診にでも十分答えられる。しかし、こういう精神障害の人は、答えられる人もあるでしょうが、大部分は答えられないと見なければならぬ。そういうふうなことを考えますと、やはり公的医療機関というものを整備していく必要があると思います。さっき言いましたように、治療上特段の支障はいま来しておるとは思いませんが、しかし病床が足らぬということはさっきもお話し申し上げて肯定されたとおりなんですから、今後これを重点的に整備をしていただきたいということを強くお願いをしておきたいと思うのであります。  そこで、今度は具体的に法律問題なんですが、精神衛生法、これは昭和二十五年の五月、法律百二十三号で施行されておるわけであります。自来二十八年の月日が流れておるわけであります。その精神衛生法第四条によりますと、都道府県知事精神病院の設置を義務づけておるわけであります。まだ相当の都道府県がこの精神衛生法四条にいう精神病院を設置してない、こう聞くのですが、それはどこどこでございますか。
  176. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 現在、都道府県立で単科の精神病院を持っているのが三十ございます。それから、単科ではないけれども県立の総合病院に精神病室を持っているというものが九つございます。それですから、どっちもない、いわゆる全く都道府県のベッドがないというのが八つでございます。その八つを申し上げますと、秋田、埼玉、千葉、滋賀、鳥取、愛媛、佐賀、大分の八県でございます。
  177. 福岡義登

    福岡分科員 お伺いしますが、総合病院の中に幾つかの精神病の病床を持っておれば法四条にいうところの精神病院を設置しておることにみなされるのですか。
  178. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに先生のおっしゃるように、厳密に法四条を読みますと「都道府県は、精神病院を設置しなければならない。」ということでございますので、正確にいきますれば確かに単科の病院というふうにこれは読めるのではないかと思います。ただ、総合病院の中に病室を持っておれば、まあ灰色であろう、こういうふうに考えてよろしかろう、こういうふうに考えているわけでございます。
  179. 福岡義登

    福岡分科員 そこが問題なんですね。法四条は、おっしゃいますように、単科の精神病院をつくりなさい、こういうことになっておるのに、行政指導する立場にある厚生省が、灰色とか三角とか、そんなあいまいなことを考えられるところに間違いがあるのであって、法律上解釈をしていけば、三十が要件を満たしておって、あと十七都道府県は精神病院を持ってないことになるじゃありませんか。広島の場合は、私は具体的に知っていますが、総合病院の中に精神障害者の病床があるのは五十床ですか、それで灰色だ、そういう認識をされ、行政指導をされるから問題が進まないと思うのですが、どうですか。
  180. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに灰色と申し上げたわけですが、ただその条文の後ろに、その次の第五条の規定によるところの指定病院がある場合には「設置を延期することができる。」こういうのがついておりますので、一応全く法律違反ということではないということでございますが、しかし、いま申し上げましたように、単科の精神病院を本来持つ筋というのは先生おっしゃるとおりだと思います。
  181. 福岡義登

    福岡分科員 ただし書きによりまして、指定病院がある場合には「延期することができる。」と確かに書いてあります。それは無期限に延期できるのですか。先ほど申し上げましたように、法施行後二十八年たっておるのですよ。指定病院があれば無期限に延期できるのですか。常識的に言うならば五年や十年、あるいは場合によっては十五年、二十年もあるかもしれませんが、立法の当時に考えたのは二十五年も三十年も無期限に設置を延期できるということで立法をされておるとは思いませんよ。どうですか。このただし書きは、指定病院があれば無期限に延期できるわけですか。
  182. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 法律に特に時期を定めてございませんし、「延期することができる。」ということでありますれば、無期限であったとしても、どんな長期間であってもそれは法律違反ということにはならないわけでございます。
  183. 福岡義登

    福岡分科員 厳密に法文から言うと法律違反ではないという言葉が使えるかもしれません。しかし、立法の精神から言うと、無期限に、指定病院があれば精神病院をつくらなくてもいいということではないと思うのですね。そこに行政指導というものが働かなければならない。厚生省は一体どういう考え方指導されておるのか。いまおっしゃたようなことではこの立法の精神を踏みにじると言ってもやむを得ぬのじゃないですか。
  184. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに先生おっしゃるとおりでございます。ただ、こういうことがございます。現在、医療法に基づきまして、精神病床というのは大体、人口万単位に二十五というのが一つの標準になっております。実際問題としまして、確かにそういう単科病院を持っているのが望ましいわけでございますが、現実に民間に相当程度ベッドがある場合に、その上にいわば過剰につくられるというようなことはまたいろいろ問題を起こすことがあろうかと思います。私どもはそれに対して、都道府県がつくる場合には補助金を出すわけでございますから、思想はそうでございますが、いろいろな都道府県の実情がございますので、その実情に応じまして私ども対処すべきだろう、このように考えております。
  185. 福岡義登

    福岡分科員 説明が少し違うと思うのですね。広島県の例を調べましたら、許可の病床数は六千六百四十二ですよ。入院患者数は七千五百八十九人ですよ。利用率は二四・三%なんです。実情に応じて設置するように指導するとおっしゃいますけれども、広島は全国平均をはるかに上回って病床の利用率があるわけですよ。その広島が病院を設置していない。恐らく十七の未設置の県を調べてみると同様なことが言えるのじゃないかと思うのですよ。厚生大臣にお伺いしたいのですが、お聞きのとおり、ここで大切なことは、十七の都道府県が精神衛生法四条に基づく病院を持っていないのですから、早急にこれを設置させるという方向で指導するとおっしゃっていただきたいですね。過剰になったら困る。過剰にはなっていないのです。先ほど来ずっと数字を挙げてやってきましたように、病院は足りないのですよ。特に地域的に言うと、広島県の場合は一一四・三%の病床利用率ですから足りないのです。だからここで厚生省は毅然として、精神衛生法四条に基づく病院設置について積極的にこれを推進するということを言われなければならぬ立場じゃないでしょうか。
  186. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生御指摘の広島県の場合でございます。現在私ども広島県で聞いておりますのは、広島県で、医療基本計画ということで広島県医療基本問題連絡協議会という協議会をおつくりになっているようでございます。そうしてその意見を徴しまして昭和六十年度を目標に策定をされることになっておりまして、それに基づきまして精神病院の設置等を含めた政策の根本的な検討を広島県の精神衛生審議会で審議する、こういうふうに聞いております。そこで当然県では精神病床の問題をこれから審議していくということでございますので、私ども、その県の計画に従いまして、これを援助し、さらに指導していくということは進めていきたいと思っております。
  187. 福岡義登

    福岡分科員 広島県の実情は私なりにも聞いて承知しているのですよ。いま私がお伺いしておるのは、厚生省として今後どういう態度をとっていかれるのか。未設置の県には設置するように積極的に指導してもらいたいということを言っているのです。大臣、いかがでございますか。
  188. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それはおっしゃるように、基本的にはそのとおりでございます。私は、この法律改正をみずから精神衛生の担当課長のときにやったわけでございまして、その際は、都道府県に一カ所ずつはどうしても設置をしてもらった方がより精神衛生対策の推進にはいいだろう、こういうことで第四条を実は決めました。ただ、それを一挙になかなかできないものですからただし書きを置きまして、そのかわりに指定病院制というものを設けまして、そうしてこれにかわる機能を果たしてもらおう、こういう構想であの四条、五条というものを書きかえたわけでございまして、精神衛生法を、たしか私のときに一部改正、その後全面改正をやったと思うのでございます。したがって、延期できるというのはあくまでも設置しなくてもいいということではないことは法文上明確だと思うのです。したがいまして、精神衛生対策の面から見まして、足りないところにできるだけ指導をしまして、逐次設置を勧奨していくという行政努力は当然していかなければいかぬと思っております。ただ、現実問題として一挙になかなかできないことは御了承を願いたいと思います。
  189. 福岡義登

    福岡分科員 余り言いたくないのですが、法施行後二十八年たって十七の都道府県が病院をつくっていないというようなことは、どう考えても理解できないです。一つだけ警告といいますか、老婆心といいますか、申し上げておきますと、ここに資料を持っておりますけれども、所得番付を見ますと、精神病院の所得は非常に高いところにありますよ。ベストテンの中に必ず何人か入っている。だから、そういうところに県病院をつくったら困るというような遠慮などがもしあったとすればこれは大変なことなんで、先ほど大臣の言われるように、法四条に基づいた病院をぜひ設置していただくように重ねて要望いたしまして、終わりたいと思います。
  190. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて福岡君の質疑は終了しました。  次に、谷口是巨君
  191. 谷口是巨

    谷口分科員 私は、短時間で質問いたしますので、ひとつ答弁も簡略にお願いをいたしたいと思います。  最初に、病院薬剤師の定員に関して聞きたいと思いますが、医療法施行規則の十九条の第三号に「薬剤師」として、調剤数八十又はその端数を増すごとにことなっておりますけれども、この条項は現在も生きておりますか。
  192. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 生きております。
  193. 谷口是巨

    谷口分科員 答弁も、もたもたしないで答えていただきたいと思います。  次に伺いますが、この施行規則規定するところのいわゆる八十剤の一剤とは一体どういう基準を示すのか、明確に伺いたい。
  194. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まずその八十剤の一剤でございますが、その一剤については日数を問いません。三日分であろうと一週間分であろうと一剤でございます。
  195. 谷口是巨

    谷口分科員 いまこの一剤については目薬も病薬もあるいは厚生省医師会も解釈が現実に一致してないのですね。これはやはり明確にしなければいけないということがまず一点。なぜかならば、たとえば、これからだんだん処方せんがふえてくる傾向になってくるでしょう。そういう場合にこれが明確になっていかないといろいろな悶着を起こしやすい。そのためにもこれは明確にしなければならないわけです。いまの答弁でこれはもうはっきりした政府の統一見解ですね。
  196. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 厚生省の統一見解でございまして、医療監視の要綱等でも示してございます。
  197. 谷口是巨

    谷口分科員 そうなりますと、一枚の処方せんの中で、たとえばうがいみたいな水剤、あるいは錠剤、軟こうみたいな外用剤、こういうときにはそれぞれ一剤という解釈になるのですか。
  198. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 たとえば散剤と水剤を一剤ずつ調剤した場合には二剤とするという基準になっております。
  199. 谷口是巨

    谷口分科員 それは同一処方の場合でもですか。
  200. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 いろいろな処方があろうかと存じますが、原則はそうでございます。
  201. 谷口是巨

    谷口分科員 このことについて、実はこれを制定された時代といまの時代を比べてみますと相当周囲の状況に差異があると思うのです。たとえば現状の場合、内容的に非常に複雑化しているということ、あるいは非常に神経的に疲労度を増すような効力のシャープ化、あるいは処方日数が以前は三、四日だったけれどもいまは大体十何日、十四日まで増加をしている。あるいは錠剤も種類が多くて非常に紛らわしくなっている。あるいは勤務者のオーバータイムも見逃せない状況であろうと思います。したがいまして、毎日帰るのが遅くなっておるし、あるいは年休の消化も十分できない。また患者の側から見ると、もらうために一時間も待っている、こういうふうな状態。あるいは、昭和四十二年ですか、厚生省がモニター制度制度化されまして、この情報分野が現在の薬剤師の肩に新たに重くのしかかってきておるし、将来非常に大きな部門を占めるだろうと思う。こういうような面から、実は大臣に伺いたいのですけれども、現在八十剤となっているのは、いろいろなことを考えたら六十剤くらいに訂正していくような必要があるのではないかと私は思うのですが、大臣の見解を伺っておきたい。
  202. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 技術的なことについて先にお答えいたします。  確かに、医学、薬学の進歩によりまして、先生がおっしゃるように、八十剤またはその端数を増すごとに一人という基準をもっと厳格に増員するという考え方もございます。しかし、一方においては、昔のように散剤を調剤するということは少なくなってまいりまして、錠剤で投与することになってまいりました。またいろいろな省力機器もその後進歩して出てきたわけでございます。したがって、そういうところを総合勘案いたしますといま直ちに八十剤という基準を変更する必要あるまいと考えております。
  203. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いま局長がお答え申し上げましたことのほかに、国立病院、療養所、全体を通じ、あるいは他の公的医療機関でも人の問題というのは大変な問題でございますから、ひとつ他の客観条件を整備させまして能率を上げる、こういうことでしばらくは努力する以外にないだろうと思います。
  204. 谷口是巨

    谷口分科員 それでは、きょうは時間がございませんからこれ以上突っ込みませんが、現在すでにこの八十剤という基準をはるかにオーバーしているところがたくさんあるように私は承知しております。それについては行政指導の必要があると私は思うけれども、大臣答弁を重ねて伺います。
  205. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これはそのとおりだと思いますので、できるだけ指導を徹底いたします。
  206. 谷口是巨

    谷口分科員 できるだけじゃなくて、きちっとやるべきだと私は思いますが、覚えておいてください。  次に、私は医薬分業について伺いたいのです。  最初に、非常に大事なことですから大臣に一言伺っておきますが、本当に政府としては医薬分業をやる決意なのか、それをただ一言伺いたい。
  207. 小沢辰男

    小沢国務大臣 医薬分業が推進されることを私どもは望んでおります。
  208. 谷口是巨

    谷口分科員 望んでいるじゃなくて、これは国民医療上の大きな問題としてやるべきではないかと私はいま一度お聞きしておるわけですが、推進したいじゃなくて、やるのかやらないのか、決意を聞いているのです。
  209. 小沢辰男

    小沢国務大臣 決意がありましても客観情勢が——分業推進のための客観的な条件というものを整えなければいけませんし、国民の側に立った十分な理解と協力が必要でございますので、そういう条件を整えてから私どもは進めていきたいと思います。
  210. 谷口是巨

    谷口分科員 時間がないので実は申しわけないのですが、私は決意だけでいいのです。決意はあるのですか。
  211. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど言いましたように、私どもは希望をいたしておりますから、その希望な実現するための努力をいたしたいと思います。
  212. 谷口是巨

    谷口分科員 希望と決意は全然違うのですよ。何かあなたは非常に先々のことを考えておるようだけれども、やるかやらぬか、日本の大きな医療行政の根幹をいま私は尋ねているのですよ。決意があるのといろいろな客観情勢とは別ですが、どちらですか。
  213. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私の答弁から、決意を持っていることは御推測を願いたいと思うわけです。
  214. 谷口是巨

    谷口分科員 それでは、決意があったと表明でございますからそれで納得いたしますが、どうせなら初めからそうおっしゃっていただきたい。  四十九年でしたか、厚生省は処方せん料を五十点に引き上げられた。そのときに、もう五年後には五〇%の医薬分業をやるんだ、できるんだと発表したのですが、その実施はいまほど遠いわけですね、これは昨日の質疑のやりとりの中にも出てまいりましたけれども。これは非常に大事なことでありまして、薬剤師の専門的な技術を社会に提供する、そういうことにより医療の高度化を図って、医薬品の安全有効な使用を推進する上からも、医薬分業というのは社会全体の要求であると私は思うのです。またすでに法律的には、医師法にも歯科医師法にも処方せん発行の原則が明記されておる。そして、日本医師会を初め関係団体、皆、分業の推進に賛成をしておる現状です。これはやはり政府の取り組み方に問題があるのじゃないかと私は思うのですが、簡単にひとつ答弁願います。
  215. 小沢辰男

    小沢国務大臣 特別問題はないと思いますが、客観情勢がまだそこまで成熟するに至ってない点がございますから、その客観情勢の整備のために一生懸命に努力をしたい、こういうことでございます。
  216. 谷口是巨

    谷口分科員 私はそれを一々いまから反論をしたいと思う。  まず、このような段階に来ておってなお実施が遅々として進まない、それはなぜか。まず一つは国の積極的な努力、PR、これが必要じゃないかと私は思うのですが、この面についてはどうでございますか。
  217. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのとおりでございまして、これは担当薬務局の方で相当やっているつもりでございます。
  218. 谷口是巨

    谷口分科員 相当やっていると言うけれども、私に言わせると、実情は相当やってないということです。どういうことかといいますと、たとえば、幾つもあるが時間がないから簡単に言いますが、医師会、薬剤師会への話し合い、これを全国的に進めるためには努力しなければならぬわけですが、国は非常に積極的な役割りという面において努力が欠けていると私は思うのです。それならば、厚生大臣はこれについて日医の武見会長らと話し合いをしたことがございますか。
  219. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御承知のとおり、歯科医師会医師会も医薬分業には原則的に賛成をしておられますから、いま改めて医師会長とこれについてどうするかということをお話する必要はない、ただ進めていけばいいと思っております。
  220. 谷口是巨

    谷口分科員 そういうことだから進まないのじゃないでしょうか、私に言わせれば。本来なら、国は医療行政の一番根幹を、責任を持たなければならぬのでしょう。それを周囲が助けなければいけないのでしょう。そういう面からいくと、いまの弱々しい態度ではいけない。もっと積極的にやるべきだと私は思うのです。  そのことに関連しまして、いま三師会がありますね。三師会と厚生省を含めて、この四者会談を定期的に開かなければいかぬと思う。開いてどういうことをやるかというと、問題点の積極的な解決、それから具体的な推進方策の設定あるいは国民へのPRの方法、こういうことを検討してその推進を図るべきであると思いますが、厚生省意見はいかがですか。
  221. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変いいことだと思いますから、できるだけそういう方向で努力をいたしましょう。
  222. 谷口是巨

    谷口分科員 私はどうも大臣、できるだけということはへずってもらいたいのです。決意をひとつやっていただきたいのですよね。  時間がないから、また次に進みます。  国民は、医薬分業や処方せんがどのようになっているのかということはほとんど知らないわけですよ、現状、知らされていないわけです。たとえば国立病院なんかへ行きますと、どうすれば処方せんがもらえるのか全然わからないまま患者はその薬をもらっている。しかも、忙しいから、一時間くらいも待たされているのがあちらこちらに見られるわけであります。もっと患者の意思を尊重するということは非常に私は大事だと思う。それならば、本来の法律からいくとどうかと思う面があるけれども、処方せんをもらいたい場合の具体的な方法をもっと掲示し、PRしなければいけないと私は思うのです。たとえば国立病院の待合室やらあるいは会計窓口あるいは薬局窓口あるいは診察室などに、処方せんをもらいたい患者の申し出などの説明を掲示して、患者にいろんな知識を与え、便宜を与えることが必要だと思うけれども、これについて回答を求めます。
  223. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、谷口先生に一つ御理解をいただきたい点があるのです。医薬分業は進めなければいかぬと思いますが、それには先ほど私が申し上げましたように、いかに決意を持ちましても、推進のための基盤整備や国民の十分なる協力を得なければいけない。ただ患者さんに、処方せんというものはもらえますよという張り紙を病院に出すだけでは、私はいろんな意味で慎重にしなければいかぬ場合もあると思うのですね。これは病名等の問題や、医師の診療上の実はいろんな機密保持等の問題もありますし、患者に与える精神的ないろんな問題もございますから、そういう面についての十分な配慮をした上でないと、かえっていろいろ患者さんのためにもならぬ場合もありますから、一概に、そういうことをやれ、やりましょう、こういうわけにもなかなかいかない。(谷口分科員「簡単に」と呼ぶ)やはり簡単に答弁できないですね、こういう問題は周辺の問題をいろいろ申し上げないといかぬわけですから。
  224. 谷口是巨

    谷口分科員 苦しい大臣の立場は私はよくわかるのです。わかって質問をしているのです。またいろいろ挙げますが、実は私、政府委員から答弁をいただいた後大臣に決意を聞こうと思ったら、全部あなたが言ってしまうんだ。困っているのですけれども、医薬分業推進関係予算額を例にとってみますと、ことしは金額は、計上されているのはわずかに千六百六十七万八千円ですよ。昨年が千六百四十六万九千円。ことしの伸びはわずかに一%ですよ。こういうことだからPRもできないんじゃないかと私は思っているわけです。伸び率は非常に小さい。これだけでもやる気が乏しい。また、薬局に対するそういう問題に対する陣容といいますと、わずかに二人でしょう。しかもいま一名は何か次に来るのを待っているのでしょう。いままで大臣答弁でしたが、こういう状態から判断して、国がぜひやるんだという決意があなたの口から出てこないのは全部こういうところにあるのですよ。だから、いわゆるできるだけなんかではなくて、あなたは日本の医療行政の最高責任者で絶対の立場にあるわけですから、もう一度改めて医薬分業についての決意を簡単にひとつ述べてください。
  225. 小沢辰男

    小沢国務大臣 医薬分業を推進するために最大の努力をいたします。
  226. 谷口是巨

    谷口分科員 決意を伺いました。では次に、時間がないからぼつぼつ急ぎますが、薬事法なんかの改正について、時間の関係でひとつまとめて全部やりますから、一応まとめて答弁してください。薬事法の第四十九条に「薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付又は指示を受けた者以外の者に対して、厚生大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。」となっていますね。これは要するに要指示医薬品の問題でございますが、これがいま品目は幾つあるのですか。
  227. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現在の医療用医薬品の品目は、概算で約一万八千あるというふうに言っておるわけでございますが、そのうちの要指示薬の品目は、正確な数ではございません、概算で約四〇%を占めるというふうに考えております。
  228. 谷口是巨

    谷口分科員 四〇%というのはずいぶん数が多いですね。一万八千のうちの四〇%。私は二百何ぼというのを途中で聞いたことがあるのですけれども。
  229. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 恐らく、成分その他で考えますと先生の仰せのようなことになると思いますが、いわゆるブランドで考えまして約四〇%、こういう意味でございます。
  230. 谷口是巨

    谷口分科員 実はこのことについて私はいろいろ考えるところがあるわけですが、この指示ということについては、当時分業が進んでいない、いろいろな意味で指示という制度ができた経緯は私よく知っているわけです。だけれども、医師の指示、これについては医師法にも実は具体的規定がないのですね。患者から見ると、処方せんならば保険がきく、だけれども指示だったら保険がきかないのですね。要指示医薬品の制度は、従来処方せんが出なかったという実情に基づいてできたことはよくわかって質問しているわけですが、やはり問題が非常にあるだろうと思うのですね。したがって、これは私は具体的な提案でございますが、ここを将来、どうせ薬事法を改正する時期が来ているようですから、処方せん薬と、要すれば薬局だけで販売できるような、あるいは薬局でなければ販売できないような要注意薬、仮称ですか、そういうものに分けていく意思はないのか。それから、そのほかに法の改正、いろいろございますが、安全性の面あるいは使用管理の面、薬剤師職能の面あるいは経済性の面あるいは薬価基準の面、いろいろあるわけでございますが、試みに添付の禁止について私は申し述べてみたいと思います。医療費は五年後に二十兆円になると推定されているわけですね。薬価基準の価格が実勢価格と大幅に差がある、そういう品目が多いことは、これはもう広く認められているわけです。厚生省では、添付行為など含めて、薬価基準価格を適正に決めることを妨げるこういう行為を禁止していると言うけれども、実際の薬価調査それ自体が何ら法律の裏づけがなしに行われている現状で本当に正確な価格調査ができるのでしょうか。
  231. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御指摘のとおり、実勢薬価の的確な把握ということにつきましては、現在薬価調査において最大限の努力をしているところでございますけれども、現実問題といたしまして実勢薬価の把握が非常にむずかしい。その結果としまして薬品の価格と実勢価格の間に差が生じている、これは紛れもない事実でございます。
  232. 谷口是巨

    谷口分科員 先ほどの要指示の問題の答弁がまだ出ておりませんけれども、要するに、いまの話を聞いていて、これは調査を依頼する。そして相手にお願いして書いてもらう。書いてこられた数字については、相手がどういう根拠で書いたかも実は問うこともできない。したがって、もし虚偽の報告がなされた場合でも何ら罰則がないわけですね。しかも一カ月の予告調査。そうじゃなくて、年間通じた調査、あるいは調査員による立ち入り調査、こういうような法的な根拠がなければならないと私は思うのです。今度は別の質問ですが、現在の医薬品の流通は乱れておりますね。したがいまして、医療機関からの医薬品が現金問屋に逆流している例も聞いているわけです。そこで、流通の適正化を図るためには、たとえば卸業の法制化、こういうものも検討すべきことの一つじゃないか。また、小売流通機構の整備。医薬品の小売段階についても、薬局、一般販売業あるいは薬種商、配置販売、特例販売など多くの形態があるわけです。こういうものについても将来どういう方向づけをしていくつもりなのか。また、薬局が調剤を主体に行うようになると、軽微なセルフメディケーションは将来薬種商にも医薬品販売によりその役割りが非常に重くなってくるのじゃないか。そのためにも、医薬分業を早期に実施して、医薬品の流通販売の役割り、分担を明確にする方向に努力すべきではないかと思うわけですけれども、そのことについて、時間がありませんのでひとつ簡単に答えてください。
  233. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先ほどお答えが漏れました要指示医薬品の件につきましても、その歴史的経過その他は先生のおっしゃるとおりであろうと理解いたしております。それから流通関係のいろいろな問題、これも、その問題点ということにつきましてはまことに先生の御指摘のとおり、いずれもそれぞれわれわれとしての課題であるというふうに理解いたしております。現在、薬事法の改正についてある程度幅広く事務当局といたしましては鋭意検討中でございます。それらの検討を通じまして、できる限りの対策をとってまいりたい、かように考えます。
  234. 谷口是巨

    谷口分科員 いま厚生省は、本当は法律事項によらなければならないことを行政指導でずいぶんやっていますね。薬価調査、いろいろなものがありますよ。こういうことは私ははっきりと法制化すべきだと思うのですね。最後に時間があればもう少し大臣に直接伺いたいのですけれども、原爆被爆者の問題です。原爆被爆者の問題については、たびたび請願、陳情なされている、いわゆる地域拡大の問題、これは地元としては非常に強い要望があるのですが、これに対しての取り組み方を簡単に伺いたい。
  235. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 原爆医療法による対象地域の拡大についてでございますが、これについて、来年度残留放射能の精密調査をやることによりまして、その結果を見た上で検討するというふうに考えております。
  236. 谷口是巨

    谷口分科員 広げていく方向性なのか、そうでないのか、簡単にもう一つつけ加えてください。
  237. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 それは、広げろという御要望をいただいておりますので、一体広げるべき根拠があり得るかどうかということで放射能の調査をしたい、こういうことでございます。
  238. 谷口是巨

    谷口分科員 非常に強い要望でございますので、これはひとつ何とか考慮をしていただきたい。最後大臣に聞きたいのですが、実は昨日お話を聞いておりましたらちょっとおかしい点が二つあるのですよ。第一は、余った薬品は病院に持っていけと大臣おっしゃいましたな。持っていってどうするのか、それを私は先に聞きたかった。一番の責任者大臣が、私があなたの立場なら病院に持っていきます。戻しますという発言でしたな。それならば、あなた、単なるうっぷんの吐き場所をそこへ持っていけじゃなくて、含みがあった言葉だと思うのです。では保険を計算し直して返してくれるのか、あるいはそれをまたほかの人に使うのか、あるいは病院がそれを廃棄するのか、考えられることはこういうことであります。  それからもう一つ、処方せん発行について、あなたは昨日、病気のことについて患者が非常に問題だとおっしゃった。確かに重大な問題がある。だけれども、いま国立病院では処方せんを患者に渡しているじゃないですか。渡して、薬でもらって帰るかあるいは処方せんでもらうかは患者に任せておりますな。これで何も問題は起こってないじゃないですか。もし問題なら、国が考えて、薬剤師に対して守秘、秘密を守る義務を負わせればいいじゃないですか。これは明確に答えていただきたい。
  239. 小沢辰男

    小沢国務大臣 第二点からお答えしますと、医薬分業をやるためには、おっしゃるように薬剤師、薬局等については厳密な守秘義務を課していかなければならない、これは当然でございます。  それから、私が昨日お答えを申し上げましたのは、手を広げられて、何か大きな箱を、いっぱいもらったようなお話がありましたので、時間もありませんから、一体どういう原因で、どういう指示を得てそれをいただいたのかということを聞く間がなかったのですが、これをどうしますか、私はもう飲む必要もないのだから捨ててしまうというようなことで、これはもらったものを全部捨ててしまうということはよくないのじゃないか、そういう意味で、私がもしそうであれば、病院に持って行って有効に利用してもらった方が、貴重な医薬品ですから、活用してもらった方がよりいいという意味でお答えをしたのでございまして、その結果、その病院がその薬をどういうふうにするかということについて、あるいは保険の請求の時期との問題もありますね。二カ月おくれで請求をするものですから、そうすると、今月診断を受けてその薬をもらってくれば、これはお返ししてあるいは診療報酬の手直しをやっていただくことも当然可能かもしれませんね。今月の診療のは翌月までに請求を整理するわけですから、それは間に合うわけですね。ただ、先生が忙しくてできないということで請求が終わった後に持っていった場合にはどうなるかとか、いろいろな問題でそこはそう簡単にはいかないのですね。そうしますと、私としては、薬をむだにしてはいかぬからその病院に返すのがあたりまえだ、こう申し上げたのです。
  240. 谷口是巨

    谷口分科員 最後に、先ほどの医薬分業については強力な姿勢で臨んでいただきたい。  ただ、あなたが最後におっしゃったことは重大な意味を含んでいる。一たん患者に渡した薬を病院が受け取る。受け取るか取らぬかわからないけれども、取ったとする。取って、あなたの話だと、請求していないからそれは次の患者に渡すという意味ですね。もしそうなったら大変なことになりますよ。こういうことについての昨日の発言は非常に重大な意味を含むので、私はこれは簡単にこの時間でできないが、問題を後に残すことを言っておきます。
  241. 笹山茂太郎

    笹山主査 これにて谷口君の質疑は終了しました。  次に、伏屋修治君。
  242. 伏屋修治

    伏屋分科員 日本の経済の高成長と軌を一にしまして、化学物質がいろいろに形を変えてわれわれの生活の中に非常に入り込んでおります。そういうことから、食品添加物の被害あるいは農薬の被害あるいははまた薬害による被害というものが多発しております。その種類は二千種類あるいは数千種類とも言われております。その化学物質の厳密な成分の分析あるいはそれの規制というものは非常に緩やかであります。そういうところから、先日の新聞報道によりますと、薬害による被害者を守る、そういうような法案を今国会に提出する予定であったけれども、いろいろなトラブルがあって今国会は見送るということが記事として報道されておりました。その薬害による被害を私は云々するわけではございません。それと並行しまして、その化学物質を多様な形で含有しておりますところの化粧品について私は質問いたしたいと思っております。  昨年の七月に大阪におきまして、十二人の被害者が化粧品における被害として黒皮症にかかったということで、A、B、C、D、E社、五社を取り上げまして集団訴訟を起こしておる、こういう事実があるわけでございますが、厚生省はどのような認識をしておられるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  243. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 黒皮症の訴訟につきましては、先生御指摘のとおりに、五十二年に実は二件損害賠償が事件として提起されておるわけでございます。一件につきましては七月十八日、他の一件は十二月二十六日でございまして、それぞれの請求額を合計いたしますと一億七千万程度の訴訟ということでございます。これは現在の段階におきましてはメーカーとその被害者との間の訴訟という形をとっておりまして、原告側も国を直接関与さして争っているということではございません。しかし、いずれにいたしましても、この種の化粧品の安全対策につきましては国としては万全の努力を払ってまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  244. 伏屋修治

    伏屋分科員 その認識の仕方は少し甘いように私は思います。企業側と被害者との間の解決策ということにお任せしておるというような形でございますが、先ほども申し上げましたように、数千種類に及ぶ化学物質がそういういろいろな形をもって被害を及ぼしておる、そういうことから考えるときに、やはりもう少し厳しい認識を厚生省が持たなければならない、こういうことを思いますが、もう一度その辺の認識をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  245. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御指摘のとおりに、黒皮症の訴訟そのものについては、これは国は直接は関与いたしませんが、一般論として、その他化粧品の事故報告を見ておりますと、昭和五十年度に二十件、五十一年度に十二件、五十二年度に十一件ございまして、こういう状況把握は厚生省としては最大限に努力をいたしておるところでございます。この化粧品につきましては、従前とも厚生省といたしましては製造許可に絡みまして事前承認体制をしいておりまして、その化粧品の安全について事前承認体制というのは実は日本だけがやっている制度でございまして他に例を見ない制度でございますけれども、最大限努力をいたし、またその基準面につきましても、化粧品の品質基準あるいは化粧品の原料基準等を作成いたしまして、ちょうどこれは局方に当たるようなものでございますけれども、最大限の努力はいたしておるところでございます。今後ともこの問題については最大の努力を引き続き払ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  246. 伏屋修治

    伏屋分科員 化粧品によって美を追求する、美に対する憧憬というものは、これは女の人のさがと言ってもよいぐらいの、そういう執念にも近いものがございます。それだけに、原料基準に対するチェックというものは厳しくやらなければ、ますます被害が拡大されていくということでございます。そういうように、ここで集団訴訟を起こしました十二人の方々は黒皮症という決定的な症状を呈した、そういうような方でございますが、一過性の症状、被害を受けた人を含めるならば、もっとたくさんの被害者が化粧品によって起こっておる、このことは事実であると思いますが、どれぐらいの被害状況なのか、厚生省の把握状態をお聞きしたいと思います。
  247. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先ほど申し述べましたように、都道府県から報告のあった事故の件数といたしましては、五十年度に二十件、五十一年度に十二件、五十二年度十二月末までに十一件、かような状況でございます。
  248. 伏屋修治

    伏屋分科員 受けた被害率というものはどのように掌握しておるのですか。件数ではなくて、その比率は。
  249. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御指摘のような、としてその使用がどれぐらいのものであって、その分母に対してどのぐらいの率であるという、いわゆる化粧品による事故の発生頻度ということについては、残念ながら現在把握はいたしておりません。
  250. 伏屋修治

    伏屋分科員 私の掌握しておる範囲におきましては、国民生活センター、これの被害率、あるいは名古屋市大の衛生学教室における化粧品被害の被害率、あるいは名古屋大学皮膚科あるいは川西市消費生活課あるいは経済企画庁もこれをつかんでおるようでございます。その辺は厚生省は認識が甘いのではないか。このようなデータは厚生省は認識しておらなかったのか、把握しておらなかったのか、その辺、もう一度お聞きしたい。
  251. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 ただいま申し上げました事故の件数は、いわば化粧品によりますところの事故の重篤なものにつきまして、都道府県を通じて正規のルートで報告がまいっておるわけでございます。ただ、先生のおっしゃるような厳密な意味での、いわば分母、化粧品の使用頻度を分母に置きましてどれぐらいの被害率かということにつきましては、正確な資料は現在時点ではないというふうに考えておるわけでございますが、なお先生の御指摘も含めまして、その問題について十分検討いたしたい、かように考えております。
  252. 伏屋修治

    伏屋分科員 私は厚生省の非常な怠慢であると思います。このような被害をもう少し厳しく認識をし、その被害状況を緊急に把握していただきたいと思います。化粧人口三千万と大体言われておりますが、その大体二割から三割が何らかの形において化粧品の被害を受けておるという事実を私たちの方でつかんでおるわけでございます。  そこで、ここにお示ししますが、ちょっと遠いのでわからぬと思いますが、これは何を示したグラフか、おわかりでしょうか。
  253. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 私はちょっと目がよくないものですからあれですが、化粧品の出荷額のグラフが上にあったように思いますけれども、その下にいま先生御指摘のあるいは事故の件数があるのか。
  254. 伏屋修治

    伏屋分科員 点線と実線、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、説明しましょう。この青い実線が黒皮症の罹病率ですね。それから赤の点線、これはしみです。軽度な症状でございますけれども、それを示しております。ここに参考文献がございますが、皮膚医学会が、名古屋大学の三人の先生、小林先生、滝川先生、早川先生の名古屋大学における患者のところをグラフにとったものでございます。三十九年から五十年の推移をグラフにとったものでございます。こういうように、大体このような出荷額に対していわゆる被害者が同じように比例してふえておる、こういう事実でございます。こういう事実を厚生省も厳しく認識してまいらなければならないと思います。そして、ただ被害者と企業側との話し合いだけにその解決をゆだねるということではなくて、厚生省もそれ以上に何らかの行政的な指導を考えてまいらなければならない、このように私は思うわけでございますが、その辺の見解はどうですか。
  255. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 このようなものに対する施策といたしましては、先生御承知のとおり、たとえばアメリカにおいて最近実施されました成分表示の問題あるいは使用上の注意の義務づけというようなことがあるいは具体的なその柱になろうかというふうに考えております。これらの問題につきましては、現在すでに使用上の注意につきましては記載を指導しておるところでございますけれども、その二つの問題について十分な検討を加えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  256. 伏屋修治

    伏屋分科員 確かに、そのような厚生省指導のもとに、全国化粧品工業連合会等がその注意事項等を明示するようにはなりました。ということは、これを逆に考えてまいりますれば、一つのそういうものを添付することによってそういうような被害の予見性を立証することになるのではないかということも私は考えるわけでございます。時間がございませんので次へ進んでまいりますが、このような被害が多発しておるということからしまして、薬事法には一体どのように化粧品というものが取り扱われておるのかということを、私も薬事法をひもといてみたわけでございますが、薬事法の二条三項で化粧品を定義しておるわけであります。その薬事法の定義によりますと、体を清潔にして髪とか皮膚の老化を防ぐように保っていく、そして人体に緩和な作用でなければならないというような定義がしてございます。と思いますと、今度は薬務局長通達におきまして、その化粧品の成分要素の一々につきましてその効能をはっきりと明細にしておるようでございます。薬事法の二条三項、それから薬務局長通達、これを見る限りでは、全く化粧品を使うことが皮膚を健全にする、あるいはそのことが髪を保つことでもある、そのようなふうに私は受けとめるわけでございます。これを見る限りにおいては、多くの方々はそのような認識に立つことは間違いがないと私は思います。けれども、このような認識に立って女性の方々が美を求めて化粧をされた、その結果被害が起こってきた。このようなことから考えてみますと、薬事法そのものが私は問題になるのではないか、そういうふうに考えるわけでございますが、薬事法が示しておるように、清潔を保ち、皮膚とか毛髪を保っていく、そういうようなことを立証する科学的根拠というものは一体どのような根拠に基づいているのか。栄養クリームについてはこういう効能、あるいはこれについてはこういう効能、一々たくさんのことを薬務局長通達で効能書きが書いてあります。ぼやっと読んでいきますと、これはまるで化粧品会社の宣伝をしておるような錯覚さえ覚えるような文言でございます。それに対して、それをはっきりと断言できる、そういう医学的な根拠があるのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  257. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生の御指摘の通達は、いわば範囲を決めた通達でございまして、先生の御指摘のような、それが適当かどうかという御疑念があるいはあろうかとも存じます。しかしながら、現在、先生御承知のとおりに、化粧品をめぐります薬事法上の仕組みといたしましては、ホルモン含有品目については製造承認の申請制度になっておりますし、その他のものにつきましても一一事前の許可制あるいはその更新という手続をとりまして、その安全性についてはわれわれとしては最大限の努力をしておるところでございます。なお、現行の法制そのものがそれで十分であるかどうかということについては、先生御指摘の問題も含めまして十分検討を加えてまいりたい、かように考えております。
  258. 伏屋修治

    伏屋分科員 現在の皮膚科医等の言葉をかりますれば、化粧品が皮膚の健康のために必要だという根拠はない、医者の立場からこういうようなことを明言しておられます。人間の美容というものはやはり、栄養分を吸収することによって血液をきれいにし、そして睡眠をとることによって内から美容を高めていくんだ、これが常識であると思います。それが、上へ塗ることによって美容が保たれるという、薬事法第二条三項にある項目はそのように解釈できるわけですが、医者のそういうものを無視してまでなぜ薬事法にそういうようなことをうたわなければならないのか、そこが私は問題であると思うのです。そこら辺の見解をもっと明快にしていただきたいと思います。
  259. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生の御疑念につきまして、私としては、そのような表現が適当であるかどうか、これについては多々問題のあるところであろうとは考えております。
  260. 伏屋修治

    伏屋分科員 という薬務局長答弁は、薬事法を改正するという意思ありと、そういうふうに解釈してよろしいわけですか。
  261. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 薬事法の改正問題につきましては、もちろん化粧品についてのたとえば定義あるいはその取り扱い、行政上の取り扱いを含めて幅広く検討を加えるつもりでございます。
  262. 伏屋修治

    伏屋分科員 これは厚生大臣にもお尋ねしますが、その一番根本をなすところの薬事法に問題がある。薬事法を信頼して多くの女性方が美を求めて化粧品を使用した、それによってたくさんの被害がいま続発しております。そういう面からも、大臣といたしましてどのような薬事法に対する改正決意を持っておられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  263. 小沢辰男

    小沢国務大臣 薬事法の改正はいろいろな面で検討を加えなければいけないと思いますが、その中の一つに、使用者に対する十分な安全性を確保するに足るような、法律内容の中での充実を期していくのが一つの大きな目的であろうと思います。
  264. 伏屋修治

    伏屋分科員 申し上げるまでもございませんが、薬務局長通達なんかを見ますと本当に腹立たしく思うわけです。被害状況の拡大から考えていきますときに、一つの項目を挙げれば、「肌荒れを防ぐ、キメを整える、日焼けを防ぐ、肌をひきしめる」これはみんな薬務局長通達なんです。化粧品メーカーが宣伝するような文言がそこにあるわけです。これは薬事法の第二条第三項に基づいて薬務局長通達を出しておるわけです。このようなものを撤回するのかどうか、そこら辺をはっきり決意を言っていただきたい。
  265. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 表現の適、不適の問題を含めて検討させていただきたいと思います。
  266. 伏屋修治

    伏屋分科員 薬務局長検討させていただきたいというような逃げの答弁のようでございますが、決意を私は聞いておるわけでございまして、どうするんですか、その辺は。
  267. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 化粧品はもとより、先生も御指摘のように、人間の自分を美化したいという本能的な欲求に基づく機能が一つございます。それ以外にもちろん、先生御指摘のような、化粧品の中をごらんいただければ、皮膚の清潔とか、そういうふうな機能も十分果たす面もございます。両々相まっているわけでございますが、たとえば先生のおっしゃいました化粧品屋の宣伝まがいという点も含めて十分検討いたし、不適切なものがあればこれは改めてまいりたい、かように考えております。
  268. 伏屋修治

    伏屋分科員 何遍もそのことを繰り返すようで申しわけございませんが、いわゆる化粧品の定義あるいは薬務局長通達根拠になる医学的なはっきりした根拠がないのに、そのようなことを一国の法律の中に盛り込むということ自体にぼくは問題があると思います。医学上、乳液を塗ることがどのように根拠があって、それがはだの栄養あるいはきめを細かにするのか、そういう一々の医学的根拠も何もないのにこのような事細かい薬務局長通達が出るということに私は問題があると思います。そういう面におきまして、その薬事法に基づきまして企業はいろいろな宣伝をしておるわけでございます。そういうことから考えますと、薬事法の第六十六条に違反しておると私は思います。栄養をはだに与えるというはっきりとした医学的根拠も何もないのにそのような誇大宣伝がかなり行き渡っておるようでございます。もうすでに皆さん御承知のとおり、テレビを見ればいろいろな化粧品会社の宣伝が入ってまいります。それから女性週刊誌あるいは婦人雑誌、こういうものにすべてそういうものが入っております。そういうような、いわゆる根拠もないのにあたかもその化粧品を利用することがはだに栄養を与え、美しくするのであるというような錯覚を覚えさせる、このようなことは、この第六十六条の、明示的にせよ暗示的にせよという条文がございますが、その条文に違反すると思いますが、その辺の見解はどうですか。
  269. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 繰り返しになりますが、化粧品の本来の機能といたしまして、一言で言えば、人間の美しくなりたいということに化粧品というものの本質の一つがあるわけでございまして、繰り返しになりますが、わが国の場合、この化粧品の規制というのは諸外国に比べて最もきつい事前承認制をしいておりまして、この安全性の確保ということからいいましても最大限の努力を尽くしておるつもりでございますが、先生の御指摘の、たとえば本来科学的に期待できないようなものも広告をしているということがあるといたしますれば、それはそれなりに検討しなければならない問題だというふうに考えております。
  270. 伏屋修治

    伏屋分科員 抽象的なやりとりをしておりますと問題ですので、少しその一つの文言をはっきりしたいと思います。たとえばA社が出しておりますその宣伝文句ですが、「あれやすい肌の方に」あるいは「栄養を肌に与えてくれます。」「いつも若わかしい」「しなやかな素肌がいつのまにかあなた自身のものになってしまっているからです。」という宣伝文句がA社から出ております。これは掲載雑誌は「ミセス」という雑誌でございます。けれども、医者の立場からこれを考えていくときには、そのクリームを上に塗りつけていきますと、本来出る皮脂の分泌能力は衰える、かえって皮膚が荒れる。ところが、荒れやすいはだが治るような錯覚を覚えさせる、そういう宣伝文句でございます。     〔主査退席、川俣主査代理着席〕 医学的に何も根拠がないということから考えれば、こういうものに対する宣伝というものは薬事法の第六十六条に違反しておる、私はこのように考えます。それをいち早く消費者連盟の方々が察知されまして、大臣あてにその誇大広告表示、虚偽の表示ということについていろいろな要望書を出しております。あるいは公取にも出しております。それから、メーカーにも出しております。そういう事実はあったかどうか、御認識ですか。
  271. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 事実と承知いたしております。
  272. 伏屋修治

    伏屋分科員 ということは、そういうものに対して、第六十六条の面からどう解釈されるのですか。それを塗ることによってはだに栄養を与え、美を保つ、根拠がないところにそのような宣伝をするということは、明らかに薬事法の六十六条に違反しておると私は思いますが、再度その辺の認識をお伺いしたいと思います。
  273. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 その事実につきましては、現在のところ業務局としてはまだ最終的な結論に達しておりません。  いずれにせよ、先生の御指摘も含めまして速やかに的確な結論を出したい、かように考えております。
  274. 伏屋修治

    伏屋分科員 前に戻りますけれども、取り扱い上の注意事項につきましても、被害が起こってからそういうことをやっております。五十三年、ことしになりましてから、体質によってという文言で取り扱い上の注意を記載するように、特に基礎化粧品についてはそう取り扱うべきだという厚生省指導はやりました。そして、その次には、それだけではいけない、すなわち次のような場合、しみができたとかあるいはかぶれたとか、そういうときにはひとつ使用をとめてもらいたいという、もう少し掘り下げて具体的にそういう指示をしておるわでございますが、そういうことから考えましても非常に根拠があいまいなんですね。被害が起こってきたらそうするというような考え方、そこらは、先ほど申し上げましたように、医学的な根拠が何もないという一つの証左だと私は考えるわけですが、その辺はどうお考えですか。
  275. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御承知のように、黒皮症にしてもそうでございますが、いわゆる個体差と申しますか、体質の要因あるいはアレルギーという要素で起きている被害、黒皮症についてはそのような被害であろうと思います。これにつきましては、非常に個々人の差が大きいために、医薬品におけるような一般的な副作用、その使用注意というようなことが、化粧品の場合には皮膚のアレルギーという問題で非常にむずかしいというふうにわれわれとしては聞いておるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、使用上の注意を、化粧品の安全性ということからいたしましてさらに的確にかつ消費者にも御納得のいくような形に改善をしていく方向については、われわれも当然そうあるべきだというふうに考えておりますので、さらにその使用上の注意をどのようなものに改善をいたしていくかということをひとつ今後の課題として検討してまいりたい、かように考えております。
  276. 伏屋修治

    伏屋分科員 いま、くしくもおっしゃいましたけれども、体質論で逃げるというのは、もういままで企業側と被害者の側との話し合いにおいて出てくる常套の言葉なんです。あなたは特異体質ですからもう少し上のこの化粧品を使えば治ります。こういう形で次から次へと高価な化粧品を使わされた。それによって解決したかといえばさらに黒皮症になった、決定的に黒皮症になった、こういう事例だってあるわけでございます。だから、そういう特異体質で逃げるということはいけない。もっとその化学成分というものの分析を厳密にして、そしてそれを規制していかなければ、さらにこの被害は拡大されると私は考えます。そういう面におきましても厚生省の原料基準、そういうものの厳密な分析、しかも原料成分がいろいろ複合することによってどのような毒性を発揮するのか、そういうことまでも詳しく分析していかなければならないと思います。  年間およそ二万何千件というような新しい化粧品がつくられていくという現在でございます。そういうときに、いまの答弁を聞いておりましても原料成分について非常にあいまいであります。そういう面で、原料成分について何を基準にして検討し、分析をしようとしておるのか、そこら辺をお伺いしたいと思います。
  277. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生先ほどちょっと触れたところでございますけれども、厚生省といたしましては、繁用されておる化粧品につきまして品質基準、化粧品原料基準、さらにタール色素を定める省令というものをすでに持っております。その新規成分につきましては、現在、化粧品の製造許可にかかわらしめる場合におきまして、中央薬事審議会の御意見を承って、新規成分については安全性の観点に十分配意するという手続をとっておるところでございます。  なお、従前のたとえば品質基準あるいは原料基準等につきましての問題は、もちろん厚生省の立場といたしましても、日用品あるいは化粧品のいわば安全性問題について常にチェックを行っておる。そこで判明したものにつきましては、あるいは他からの事故報告等も含めまして、この問題について厳しく対処していくというのが現在の仕組みでございます。
  278. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういうようなあいまいなところからいろいろな問題が起こっております。もう時間も迫ってまいりましたので、これから申し上げることについてやるかやらないか、単刀直入にお答え願いたいと思います。  そういうような原料基準についての分析、それに対する安全テスト、その安全テストを企業義務づけるかどうかという問題、医薬品については副作用のモニター制を採用いたしております。そういうものについて今後やる意思があるかないか、その辺をはっきりお答え願いたいと思います。
  279. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 原料基準、品質基準等につきましては、いわば医薬品において行われておりますところのたとえば再評価というふうなものがございまして、かようなものとのにらみ合わせにおきまして、従前からの化粧品の成分等についての安全性の再確認というようなことを行うことにつきましては、先生の御指摘のようなことの解決策の一つであろうかというふうに考えるところでございます。ただ、新規成分につきましては薬事審議会との御相談もしておるわけでございますし、現在の原料基準等につきましては、現段階では経験的に十分安全な品質であるというふうにわれわれとしては信じておるわけでございますけれども、なおその再評価の類似の仕組みを働かせるかどうかということについては検討させていただきたい、かように考えております。  それから、モニター制度につきましては、先生御承知のとおりに、医薬品についてはモニター制度を完備いたしまして、一般用の医薬品につきましても薬局におけるモニター制度を採用するということで、五十三年度において予算も計上されておるところでございますけれども、化粧品を扱っておる店を通じての化粧品についてのモニター制度ということにつきましては、先ほど申し上げましたいわばアレルギー問題というようなことがございまして、扱っておる店におきまして事実の確認、分類等が果たして正確にでき得るかどうかという問題がございます。諸外国でも、化粧品についての安全性をめぐるモニター制度を採用しておるところはいまのところないようでございます。  先生の御指摘は一つの御提言として十分に検討させていただきたいというふうに考えております。
  280. 伏屋修治

    伏屋分科員 最後に、いわゆる使用上の注意というものは、厚生省指導のもとに五十三年からもう少し掘り下げたものを化粧品全製品に行き渡るように、そういう指導をされておるようでございます。その使用上の注意もさることながら、いままで成分表示は企業秘密であるというような形で、成分の情報は流しても、成分表示というものはほとんどされておりませんでした。しかし、アメリカにおいては一九七三年にそれは義務化されております。しかも、日本からアメリカに輸出する化粧品については成分表示を行っておるという事実がございます。  そういうことからするならば、企業秘密という隠れみのをいまや取り外して、成分表示を明らかにしてそれを義務づける、そして一たんかぶれとかしみができたときにはその成分を持ってすぐさま皮膚科へ飛んでいく、その成分によって医者が対症療法を考える、こういう方向を進めてまいらなければいけないと私は考えるわけでございますが、成分表示を義務化するかどうか、そこら辺の意思をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  281. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現在、先生御指摘のとおりに、成分表示をしているのはアメリカのケースが唯一のケースでございますが、アメリカにおきましても、御承知のように、FDAの案の公表がございましてから実施に移るまでに相当の時間をかけておるところでございます。また、この表示につきましては、いろいろな成分の化学名みたいなものを小さい化粧品の箱にあるいは容器それ自身にどのように表示するかという問題もございまして、いろいろ工夫をしなければならない面もあるかと思いますけれども、成分表示そのものにつきまして、またそれの必要性そのものについては、私どもといたしましては前向きの姿勢でこの問題に取り組んでまいりたい、かように考えておるところでございます。
  282. 伏屋修治

    伏屋分科員 最後に、大臣にお願いを申し上げて終わりたいと思います。
  283. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 時間をお急ぎください。
  284. 伏屋修治

    伏屋分科員 いわゆる薬害における被害者の救済法を考えておられると同じように、化粧品による被害が拡大されておる今日、その化粧品による被害者を救済する法律を薬害による被害と並行して御検討いただきたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  285. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて伏屋君の質疑は終了いたしました。  次に、村山富市君。
  286. 村山富市

    村山(富)分科員 私は消費生活協同組合の問題について二、三お尋ねしたいと思うのですが、ことしは消費生活協同組合法が制定されてちょうど三十年になるわけであります。この間、生協関係者みずからの努力はもとよりでありますが、生協運動過程を振り返ってまいりますと、組合員数も四十八年度に三百七十九万あったものが毎年一〇%前後確実に増加してまいりまして、五十一年度は五百万に達する数になっております。  こうした生協活動の動きから考えられますことは、生協運動が多くの消費者の支持と期待を得ているということを証明していると思いますし、同時にまた、この間果たしてまいりました生協活動の役割りは大変大きなものがあったと私は思うのです。日本経済が異常に発展をする高度成長の時代には大変な激しい物価高があった、あるいは有害商品がはんらんする、不良商品がはんらんする、そういう事態の中で消費者の生活と健康を守るという立場から生協の果たした役割りは評価できるのではないかというように私は思っております。  こうした生協運動をとらえて、政府も五十一年五月十四日の閣議で「昭和五十年代前期経済計画」というものが決定をされております。その中で、第二部に「目標達成のための政策体系」「安定した生活の確保と住み良い環境の形成」という中に、6として「消費者政策の推進」というのがあります。具体的な施策として「消費者対抗力の強化」という中で、「国民の消費生活の安定向上のためには、消費者側における努力、対応を通じて、社会的対抗力としての消費者の地位が確立されることが重要である。このため、消費生活協同組合等の消費者による自主的組織活動を一層助長するとともに、生活を巡る環境の変化に十分対応した消費者教育の充実を図る。」こういうことがうたわれておるわけでございます。  こうした過去三十年間の生協活動の実態やあるいはいま申し上げました経済計画における閣議決定の中身等々を体して、政府は現在までこの生協活動の育成のために具体的にどのような政策を講じてこられたかについてお尋ねしたいと思うのです。
  287. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、消費生活協同組合、現在千二百八十六ございまして、組合員は千九百万という数に上っておるわけでございます。御質問の中にもございましたように、消費生活協同組合自体が消費者保護の推進と物価の安定に果たしてこられた役割りというものは評価するところがあるわけでございまして、厚生省としましても従来から、一つは、消費生活協同組合資金の貸付に関する法律というのがございまして、この貸付に関する法律に基づきまして設備資金の貸し付けを行っております。それから、日本開発銀行なりあるいは年金福祉事業団等政府関係の機関の活用の指導を通じまして育成を図っておるところでございます。  ただ、そういった育成を図っておりますけれども、消費組合自身は、消費者みずからがその生活の安定と向上を図るための自発的な組織でございますから、側面から援助をするという域を越えるわけにはなかなかまいらないのじゃないかと考えておるわけでございます。
  288. 村山富市

    村山(富)分科員 生協の趣旨、たてまえからして、みずから自主的に運動をやっていくということがたてまえですから、それはよくわかるのですけれども、ただその生協活動が、いま申しましたように、一定の評価ができる。同時に、政府も経済計画の中で生協を位置づけて育成するという方向を決めている、こういう考え方からしますと、やはり厚生省として生協育成強化のために具体的な施策があっていいのではないか。  いま話を聞けば貸付金制度がある、あるいは開発銀行その他の公庫等の融資がある、こういうお話ですけれども、私は、そういうことではなくてもう少し積極的な、生協を育成していく施策がありていいのではないかと思うのですが、それは貸付金以外には何もないわけですか。
  289. 上村一

    ○上村政府委員 こういった協同組合活動に対する政府の助成といいますのは、消費生活協同組合に限りませず、低利資金の融資によって設備の整備なりあるいは施設の整備に当たるということでございまして、過去の数字をながめましても、消費生活協同組合の貸付関係法律ではすでに十億七千万の貸付金の累計額があるわけでございますし、それから日本開発銀行からは五十一年度三十七億円の融資も受けておるわけでございます。それから年金福祉事業関係は主に住宅でございますけれども、二百七十六億円の融資を受ける。  こういった金融制度上の融資措置、それからあと税法上の優遇措置でございまして、法人税法なり地方税法上、その他の企業と違うような優遇措置を講ずるようにこれまで努力してまいったわけでございます。
  290. 村山富市

    村山(富)分科員 まあ一応生協のたてまえからして施策は限定されると思いますけれども、ただその資金の貸付等にいたしましても、いまお話がありましたように、たとえば資金の貸付に関する法律があって、生協には特別の融資をしている。五十三年度は八千五百万円の予算計上がされておる。これは八千五百万円政府予算を組めば、これを受け入れる各県もこれと同額のものを予算措置をして、そして生協に貸し付ける、こういうことになるわけでしょう。開発銀行のお話もございました。  ただ、いままでのこの資金の貸し付けの状況はどうなっていますか。
  291. 上村一

    ○上村政府委員 五十三年度は、お話しになりましたように、国の予算案としましては八千五百万円計上しておるわけでありまして、それで四十八年三千五百万から毎年毎年千万ずつふやしてまいっておりまして、先ほど申し上げましたように、その五十二年度までの貸付金の累計額が十億七千万円、それから五十二年度末の貸付残高が二億七千万円でございます。そして、毎年貸しておりますのが、五十一年、度が三十一件、五十二年度が二十七件でございまして、これは主に設備でございますから、店舗に備えつけます大きな冷蔵庫でございますとかあるいは店舗の陳列だな、そういったたぐいのものでございます。
  292. 村山富市

    村山(富)分科員 開発銀行から五十一年に三十七億円というお話ですけれども、ところが生協の場合、全国的に見ますと、その規模からして開発銀行の貸し付けの対象にならない規模の生協が大変多いわけです。したがって、資金の貸付に関する法律に基づいて厚生省が貸し付ける資金に頼る面が多いと私は思うのですね。これは話を聞きますと、省令で限度額が百万円ということになっておりまして、実際いま運用されている面では最高限度五百万円くらい貸しているというお話ですけれども、そのとおりですか。
  293. 上村一

    ○上村政府委員 百万円を限度にいたしておりますけれども、必要な場合には増額をするということでございまして、お話しのとおり五百万円まで貸すような場合もございます。
  294. 村山富市

    村山(富)分科員 これは一つ注文をつけておきますけれども、そして皆さんの見解を聞きたいと思うのですが、省令で百万円と決めておって、実際には五百万円くらいまでいっているわけでしょう。これは省令の百万円というものがちょっと無理があるのじゃないかと思うのです。だから、これは改める必要があるのではないか。そして、五百万円という限度額もいまの実情からすればもう少し上げてもいいのではないかというふうに思いますし。原資である八千五百万円という予算計上額ももう少しふやしていく必要があるのではないかと思います。  同時にまた、話を聞きますと、せっかくできておる制度であるけれども、貸し付けをしていただく手続がめんどうで困るという声もあるわけです。具体的にどういうところにめんどうさがあるのか私はよくわかりませんけれども、そういう声もありますから、そうしたものも含めて資金対策全体をもう少し前向きに今後も検討して努力してもらうことを要請をしておきたいと思うのですが、どうですか。
  295. 上村一

    ○上村政府委員 貸付金の限度額は、さっき申し上げましたように百万で、いま五百万くらいでございますけれども、これにつきましては五百万で頭打ちというつもりはないわけでございます。  ただ、御指摘になりましたように、資金に一定の限度がございます。県と合わせましても五十三年度の場合には一億七千万円ということでございまして、これまでの実績にもございますように毎年増、額をしてまいりましたので、今後も一層努力してまいりたい、このように考えるわけでございます。
  296. 村山富市

    村山(富)分科員 そういう点は、生協育成のたてまえから、誠意をもって前向きに検討していただきたいと思います。  いま一つの問題は、いま全国的に生協育成と生協法改正の請願活動が行われております。先般も私のところに生協の組合員の御婦人の方がお見えになりまして、いろいろお話を開いたわけですけれども、特に最近、大企業が経営する大型スーパーが地方に進出する、そして小売店舗と競合し合う、大変な被害を受けるというので問題が起こっております。分野法ができたり、それから通産関係ではいろいろ議論があっていると思うのですけれども、このスーパーと生協が混同されて、生協にも規制を加えよという声があるように私は聞いております。その御婦人の方が言うには、私どもは生協法に基づいてあくまでも組合員利用を原則とするというたてまえを堅持して、そして組合員証を発行したりあるいはまたメダルチェックをしたりなんかして一生懸命努力しています。それになおかつこんなことが問題になるなんということは実に理解できません、こう言って嘆いて訴えるわけですね。今度の請願運動の中にもやはりそういうものも含まれていると私は思うのです。  スーパーと生協と違うのはいまさら申し上げるまでもありません。スーパーというのは営利を目的によそから進出してくるわけです。ところが、生協というのはそこに住んでいる人たちが自主的に消費生活を守っていくというたてまえでつくられていく組織ですから、これはたてまえが違う。したがって、その生協がつくられる根拠法もまた違っておるわけですね。そういうたてまえを守りながら、いまの厳しい状況の中でお互いの生活安定のために消費生活活動をやっていこうという努力をしているわけです。しかも、冒頭に申し上げましたように、生協活動の一定の社会的評価というものもあるわけですから、したがって、私はそういういわれなき規制なんというものは受け入れるべきではないと思いますし、むしろ逆に、たとえば農協とか類似団体等に対しては二〇%くらいの員外利用を認めているわけでしょう。ですから、なぜ生協に認められぬかという不満が中にはあるくらいです。  そういう状況ですから、仮にいまの体制の中で員外利用を認めるとかなんとかいうことはできないにしても、生協自体が本来の趣旨にのっとって一生懸命に努力しており、一定の成果も上げているし、経済的、社会的にも評価をされている、これをさらに育成する必要があるというたてまえに政府も立っているわけですから、したがって、今後積極的に生協育成のために努力をする、同時に、そうした規制ということに対しても、いまの生協法を守っていくという意味大臣の決意を聞いておきたいと思うのです。
  297. 小沢辰男

    小沢国務大臣 生協の意義というのは十分認めていかなければなりません。したがって、育成強化を図っていかなければいかぬわけでございますが、ただ、員外利用の面についてもし乱に流れるようなことがありますと、せっかく孜々営々として努力をしている多数の中小企業、零細企業の方方の商権を非常に侵害をすることになります。同じ国民でございますので、とにかく組合員の福祉向上のために大いにやられることは結構でございますけれども、そういう点は十分気をつけてやっていただきたいと思っておるわけでございます。本来の純粋の消費生活協同組合の活動自体はわれわれとしては大いに伸ばしていかなければならぬし、場合によってそれが誤解を受けて大企業の進出、営利企業と同じような取り扱いを受けることにならぬようにはしなければいかぬと思いますが、特に員外利用について乱に流れる傾向を間々私どもも見受けまして、そのために零細な個人商業、販売業等に非常な影響を及ぼす事例もございますので、これらをお互いが気をつけて、お互いの使命達成に向かって努力をしていただきたい、私はかように考えております。
  298. 村山富市

    村山(富)分科員 これは私は前もって前提を置いているわけです。生協というのは生協法に基づいて組合員の利用を原則とするということを踏まえて、組合員証を発行したりメダルチェックをしたりしてみずから努力している。そういう努力をしている生協運動を育成させることは必要なんだから、そういうものを前提に踏まえて必要以上に規制を加えたりするようなことはしてはならぬと思うのだが、この点は大臣どうですか。
  299. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほども申し上げましたように、正しい消費生活協同組合の活動については、私どもとしてはできるだけこれを伸ばしていくように育成をしていきたいと考えております。
  300. 村山富市

    村山(富)分科員 時間がないからまた今度別の機会にやりますが、ひとつそういう意味で生協の育成のために今後一層の努力をしていただきたいということを特に要望しておきます。  次に、医療問題について少しお尋ねしたいと思うのです。  これは現状認識を一致させる意味で聞きたいのですが、五十一年度の総医療費はどのくらいになっていますか。
  301. 八木哲夫

    ○八木政府委員 五十一年は七兆六千億でございます。
  302. 村山富市

    村山(富)分科員 ずっと聞いていきますが、その中で薬剤費の占めている率はどの程度か、これは推測でいいですから。  もう一つは、薬剤を患者に投与する医療機関のマージンはどの程度あると推定していますか。
  303. 八木哲夫

    ○八木政府委員 現在、国民総医療費に占めます薬剤費の比率につきましては、最近の推計でございますと、三七%台ではないかというふうに考えられます。  それから、第二点の現実の薬価基準と購入価格の差のマージンはどのくらいあるかということでございますけれども、最近の調査というのはございませんので、いまの段階ではわからぬわけでございます。ある程度のマージンがあることは事実でございます。四十五年の医療経済実態調査の際に、二〇%程度ではないか、これははっきりした数字はちょっと手元にございません。
  304. 村山富市

    村山(富)分科員 私が承知しておる範囲では、二五%ぐらいあるんじゃないかというふうに言われておりますけれども、これはあくまでも推測ですからわかりません。  医療費が非常に伸びている。減速経済の中で総医療費だけが高度成長を遂げている。これは幾ら医療費がかかっても、このことで国民の命と健康が守られておるということであれば、文句の言いようがないわけですね。しかし、そうして医療費がふくらんでいく反面、これはもういつも言われるように、医療の荒廃があっちこっちで叫ばれておる。しかも、各党挙げて医療の抜本改革というものがいままでずっと要請されてきている。しかし、毎年毎年赤字解消策を講ずるだけで、抜本改革というものは余りなされずに来ているわけですね。  これは私は厚生大臣に聞きたいと思うのですけれども、世間で言われている医療の荒廃という言葉を耳にするでしょう。お聞きになりますね。雑誌なんかにも医療の荒廃ということが書いてあります。医療の荒廃というのは一体どういうものを指して医療の荒廃と言っておるのか。大臣はどういうふうに認識されておりますか。
  305. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは一概には言えないと思うのですね。医師会の方々からの、医療が今日荒廃しているという場合の内容と、それから他の方々の言う内容と、それぞれいろいろ違った認識のもとでおっしゃっておられますので、私どもはいわゆる荒廃という言葉が、本当に現実に厚生省が医療は荒廃しているという認識に立つかと言われますと、私どもは医療が荒廃しているとは思わないのでございまして、国民皆保険以来、また世界各国と比べてみても、こんなに自由に医療機関を選択できて、しかもサービスが非常に行き届いたところはなかなかないのじゃないかと思いますし、一方負担の面からいいましても、各国との比較でそんなに高くはない、むしろ低い方だと私は思います。  そう考えていきますと、どうもその医療の荒廃というのは一体何だろうかということを、いろいろ言われていることはわかりますけれども、私どとしてこの面は今度の根本改正に当たって、医療の荒廃と言われている原因が果たしてどこにあるかということを私自身もっと勉強してみなければいかぬなという感じでございます。
  306. 村山富市

    村山(富)分科員 これは時間がないからまた別の機会に議論をしたいと思いますけれども、ただ荒廃する医療というものの中で、日本の医療というのは売薬医療だ、あるいは薬づけ医療だ、こういう言葉が使われておりますね。これはもう私は否定し得ない事実だと思うのですよ。現にお医者さんに聞いてみましても、それは確かにそういう面はあるかもしれません、しかしお医者さんもやはり商売ですから、薬を売ることによって幾らか利潤が上がれば、それは薬を出します。こういう率直な意見を吐かれた方もあるわけですね。これは私はやはり否定し得ない事実じゃないかと思うのであります。  そこで、先ほど薬のマージンがどのくらいあるかということもお尋ねしたわけですけれども、やはり実勢価格と薬価基準とが乖離している。これは毎年若干ずつ是正しておりますけれども、それは否定し得ない事実があると思うのです。いっかプロパーが持って歩いているマル秘文書なんかも私ども見て知っておりますけれども、相当な開きがありますよ。こういう開きがあって、これは時間がないから率直に申し上げますけれども、しかももらっている患者さんは薬を全部飲んでいるかといえば、ほとんど飲んでないのですよ。私どもの調査した範囲でも、半分飲んで半分は捨てているという方が非常に多いのです。これは医療機関だけに責任があるとは言えません。もらう方もお金を払わないでもらうものですから、安易に扱うという面もあるかもしれません。しかし、必要以上に患者さんに薬が与えられているということも私は間違いない事実だと思うのです。そういう面からしますと。  そこで、薬価基準を決める実勢価格の調査というものをやはり検討し直す必要があるのではないか。たとえば、卸業者から四月なら四月と月を決めて納入価格を報告してもらう、それから医療機関に対してこれは幾つか数を限定して報告してもらう、こういう調査だけではやはり相手に依存した調査ですから、私は的確に実勢価格を把握することにはならぬのじゃないかというふうに思うのですが、そこらはどうですか。
  307. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現行の薬価調査の方法につきましては、先生御指摘のとおりに、問題があろうかと考えておるわけでございます。そこで、何分にもこれは法規上の根拠のない、いわば販売業者あるいは購入者サイドの調査でございますので、これをさらに改善する方策といたしまして、たとえば五十年の四月に前回調査をしたわけでございますけれども、人為的な価格操作を防ぐ意味におきまして、当方におきましてその前後に特別の調査を行い、いわばサンドイッチのような形で価格調査を行いまして、人為的な価格形成あるいは記入を防ぐようにという案を持ちまして、五十三年度予算におきましては、そういう特別な調査もさらに加えた形で実施できるよう予算上の手当てがいたしてあるところでございます。
  308. 村山富市

    村山(富)分科員 もう時間がないから多く申しませんけれども、そういう意味では、私は医療荒廃の一つの問題点だと思いますよ。しかも、保険財政は皆赤字でしょう。赤字で大騒動しているわけでしょう。その赤字になる原因の一つにそういうものがあるとすれば、それはやはり私は是正する必要があるのじゃないかと思いますね。実勢価格の調査の方法についてもやはり改善をして的確につかんでいく、そして適正価格を決めていくということは必要なことですから、ぜひその方向でがんばってもらいたいと思うのです。  もう一つは、医療機関は、公的医療機関なんかは領収証を出しますけれども、一般の開業医なんかはほとんど領収証はないのです。だから、領収証を発行してくれという声が大分強く高まっていますけれども、それとあわせて、私は薬を投与する袋に薬品名ぐらい書いたらどうかというのです。なぜかといいますと、これはもうスモンの判決があるらしいけれども、スモンの患者さんなんかが訴訟を起こすのにカルテを聞き歩くのに大変な苦労をしています。ですから、薬の副作用の問題、薬害の問題を何かいろいろやっていますけれども、患者さんが薬を知ることが一つは大事だ。そのためには、薬名を知らしめる必要があるのではないかということですね。それからもう一つは、自分はどこが悪いのだ、この薬はだからこういうふうに効くのだということを知っておれば、やはり私は心理的にも薬効は違うと思いますよ。ですから、そういう意味でやはり薬名を書くことの方が親切ではないか、こういうふうに思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  309. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 結論から申しますと、なかなかむずかしいことだと思います。  その理由は二つございます。  一つは医学的理由でございますけれども、やはり薬の種類を本人に教えて恐怖感を与えたり、病気の経過に悪影響を与えてはいけないというような場合がございます。そのほか、暗示的な意味で薬を与えるような場合もございますし、また診断とか治療が決まっておりませんで、試みにやる場合もございます。また、特殊な薬品を投与する場合もございます。したがって、医学的には患者に薬の内容を教えない方がいい場合が少なくございません。  もう一つは事務的な問題でございますが、薬袋に一々内容を記載するということは、現在の国立病院においても、あの職員の数ではとてもできることではないと思っております。  要するに、内容は患者さんが主治医に聞いていただけばいいことであり、主治医がケース・バイケースで判断をして、教えるべきものは教えると思います。
  310. 村山富市

    村山(富)分科員 領収証の発行もそうですけれども、請求すれば領収証を出しますと、こう言うのです。だけれども、医師と患者の立場とは違うのですよ。その医師に対して領収証を下さいなんということも言えぬ。まして、これはどういう薬ですかというようなことを聞くなんということはなかなかできることではないのです。常識的に考えて。ですから、これは副作用の問題なども、それは薬の使用を誤ったりなんかして起こるわけですから、したがって私は、副作用をなくしていくためにも患者が薬について知っておるということが非常に大事ではないか。それはたとえば特殊な疾病については患者に知らせ得ないものもあるかもしれませんよ。そんなものはまた扱い方を考えればいいのであって、一般的にはそうすべきではないかというように思いますから、これはもう時間がございませんからまた議論します。  ただ、最後大臣にお尋ねしますが、医療の荒廃という問題の中で、薬剤の問題はいま若干議論しましたけれども、そういう問題があるわけです。したがって、医療の荒廃、特に薬剤の問題等についても、私は、出来高払いという仕組みが若干問題があるのではないか。それは薬を患者にたくさんやればもうかるわけですから、収入があるわけですから、全部のお医者さんがそうだとは申しませんけれども、やはり中には誤ったお医者さんもあるのではないか。そのことがいろいろ問題を起こすのではないかと思いますから、そうした問題も含めて、今度健保の改正案も出るようですけれども、どういうふうな点を一呑大臣は重点に考えておられるか、大臣考え方を若干承って質問を終わりたいと思うのです。
  311. 小沢辰男

    小沢国務大臣 今度の抜本改正につきましては、衆議院における社会労働委員会あるいは参議院における社会労働委員会でいろいろ御議論がございまして、現在の保険制度の中で検討を要すべき事項、約十四項目ばかりいろいろと厚生省も提示をした問題がございます。これらを要約いたしました患者負担の公平の問題なり、あるいはまたおっしゃるような薬価の適正な決め方なり、あるいは老人の医療についての特別な制度の確立なり、そういう面を一応私どもの頭に置きまして、これらが十分盛り込まれていくような案にしたいということで考えております。  ただ、薬価の場合は、これは法律の今度の抜本改正の中で、たとえば薬価のあり方についてという規定を設けるわけにいきませんので、これはいまお話しのように、現実に患者あるいは医療担当者両方の側におけるむだを排除する最善の方法はどこにあるのかということをいろいろ検討しまして、できるだけこれを行政上の指導あるいは健康保険の取り扱いの面で十分御趣旨に沿うような改革ができるような方向で努力をしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  312. 村山富市

    村山(富)分科員 質問を終わります。
  313. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて村山君の質疑は終了しました。  次に、土井たか子君。
  314. 土井たか子

    ○土井分科員 先日、厚生大臣予算委員会の席におきまして、健康保険法の改正の柱に、高額医療費の負担については全額給付という線で考えたいという大変特筆すべき御答弁を公にされたわけであります。  いまから申し上げますような例はどういうふうに取り扱われるかということが実は大変に具体的に切実な問題を抱えておりますので、お聞かせをいただきたいと思うのですが、一部新聞紙上にも掲載をされましたので、あるいは厚生大臣はよくこの具体的な事情に対して御存じでいらっしゃるかもしれないと思います。  兵庫県の宝塚市で、全国でも大変こういう例が少ないと言われる腸重積症の十三歳の少年がただいまございます。この腸重積症というのは、小腸を切り取りまして胃と大腸を直結する大変難儀な手術を受けなければ実は命を長らえることができないわけであります。腸の中に腸が二重、三重に入り込んで、そこが腐っていくわけでありますから、この小腸の部分を全部切り取ったということで、小腸がないとたん白質などの消化ができません。そこで、絶えず栄養剤を静脈に入れる点滴生活ということを強いられるわけであります。ただいま病院で連日この点滴を受けながら療養を続けている十三歳の少年がいるわけでありますが、実はこれに要する費用が莫大なものでありまして、一日一万円を下らないと言われております。御両親はこの少年の一命を取りとめるまでの生きた心地もしないような心配は言うまでもなく、一命を取りとめて後も、一時は子供を道連れにして死ぬことも考えたと言われるくらいに、やはり今後の生活を考えてまいりますと、この子供を抱えて暗たんたるものがあるわけであります。  ひとつこういう例に対して、いま厚生省としてはどのような取り扱いが制度の上であるかということをまずお聞かせいただけませんでしょうか。
  315. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 結局、健保の家族あるいは国保に加入されておられる方であろうかと思いますが、やはり一義的にはそういった健康保険の家族であっても、あるいは国保であっても、まず健康保険が働き、そしてそれに対して高額医療のいわゆる払い戻しということが働くのではないかと思います。
  316. 土井たか子

    ○土井分科員 ただ、その高額医療の払い戻しが働くとおっしゃるのは、やはり机の上でのいろんな議論のもとにお考えになっている問題でありまして、果たして実態に即してそのとおりになるかどうかというのは疑問なしとしないのです。  実は、ここで使用される点滴用のこの種薬品というのは保険対象になっておりますか、いかがでございますか。
  317. 八木哲夫

    ○八木政府委員 ちょっと手元に資料がございませんけれども、普通、医学上必要なものにつきましては保険対象にすべてなっているはずでございます。
  318. 土井たか子

    ○土井分科員 ただ、これは現実に保険対象になっていないということらしゅうございますよ。この内容は、大体ブドウ糖であるとかビタミン剤など六種類混合いたしまして二千四百ccは一日に必ず必要だというようでございまして、この点滴に必要な時間というのは一日七時間から十二時間を要するわけでありますから、睡眠時間を除いたほかは大体もう点滴を受けながらの生活を余儀なくされるというふうな悲惨な状況なわけでありますが、この点滴というのが保険対象にはなっていないという実態があるようでありまして、したがって、このことに対して高額負担というものを自動的に強いられるということ、これをどういうふうに考えたらいいかということで、これは私立の病院で治療を受けながら、病院自身も大変悩まれたし、そうしてこういう実態というのは数が少のうございますけれども、全国の国立病院にもいろいろと連絡をとって、そしてこういう患者救済のための呼びかけを展開しようという動きが出たようでございますから、この点はひとつちょっと調べてみていただけませんか、どうですか。
  319. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生からいまお話がございましたけれども、私ども初めて聞いたお話でございますし、通常行われております医療につきましては、当然保険対象になっているということでございます。  それから、高額医療の問題につきましては、従来につきましては、被用者保険の場合に家族の場合、あるいは国民健康保険の場合に本人、家族含めまして三割は自己負担だったわけでございますけれども、高額医療費制度ができましたので、現在三万九千円を超えます部分につきましては、保険ですべて見るということになっております。  先生のお話でございますが、ほとんど考えられないケースだと思いますけれども、一応調べさせていただきたいと思います。
  320. 土井たか子

    ○土井分科員 これは実態についていろいろと地元で見聞をいたしてまいりました結果をここで簡単に申し上げますと、入院費はこの場合、手術を含めまして四十八万八千円かかっているんですが、ところが保険を使っても、一口に一万円近くはどうしても必要であるという結果が出てまいります。この問題に対して何とかならないかと種々悩まれたわけでありますけれども、現在の制度の上ではどうにもならない、公費負担による医療扶助というのはこれ以上どうにもならないという、こういう問題がどうもあるようでありますので、ひとつこの実態をぜひお調べいただきたいのです。できたらこれは現地に厚生大臣がひとつお出向きいただいて、これは非常に珍しい例ではあるかもしれませんけれども、これは難病の一つでありますから、こういう実態に対して、最近大臣がみずから高額負担に対して、国の方が公費でこれを賄っていくという貴重な姿勢をお出しになったやさきでございますので、こういう実態を現地でどういうふうな事情であるかということをお調べいただくというのは、どうしても私は大切な問題だと思うのです。大臣、お忙しいわけでありますから、強いて大臣と申し上げたのは先日来の課題を踏んまえての問題でありますので、どなだか係の方がぜひこの実態を調査していただくということをここでまずお約束をいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  321. 小沢辰男

    小沢国務大臣 病院の名前、それから患者さんの名前等ひとつ教えていただきましたら、直ちに明日でも私の方で詳細に調査をいたしまして、どこに欠陥があるのか、対策を至急講じてみたいと思います。
  322. 土井たか子

    ○土井分科員 いま厚生大臣の方からそういう御答弁がございましたから、ひとつそれに従って鋭意御努力の方をお願い申し上げたいのです。  ただ、特定疾患対策懇談会というのが厚生大臣の私的な諮問機関としてございますね。この懇談会の中で取り上げるいろんな難病、奇病の中に、これは実はいままで全然問題にされてまいっておりませんが、ここで懇談会に取り上げていただくというふうなことは、私もこれは大事な問題だと思いますが、この点はいかがお考えでいらっしゃいますか。
  323. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 現在厚生省で特定疾患として取り上げておりますのは、一つは原因不明、それからもう一つは治療方法の未確立ということで懇談会で取り上げるわけでございます。この場合、先生いま御指摘の患者さんにつきましては、これは腸重積症でございます。これは原因不明、治療法未確立というのには実際には当たらないわけでございまして、通常の場合でございますと、腸重積は手術で普通完治いたします。ですから、先生のいまの御指摘の場合は、特別な何か腸重積の患者さんの一つの例でございまして、一般的な腸重積というのは、それはそれなりに原因もわかっておりますし、それからその治療法も確立しておりますので、一般的な意味で腸重積を特定疾患に入れるということはちょっとむずかしいのではないかと考えております。
  324. 土井たか子

    ○土井分科員 ただこれは、今後のこの治療について考えてまいりますと、点滴がどうしても不可欠な問題になってまいりますが、米国やフランスなど数カ国の場合を見てみますと、点滴器具というのは、家庭で点滴ができるような開発がすでになされているやにわれわれは見聞をいたしております。日本では一切このことに対してはまだ開発がされておりませんために、ただいま取り上げました十三歳の少年につきましても、これは恐らく闘病生活というのは病院で余儀なくされる。考えてみると、生涯を病院で過ごさなければならないというふうな状況が考えられるわけでございますね。この点滴なんかについて家庭でできるような方策というものを考えてみる必要があるのじゃないかなどというふうなことも問題としては出てまいりますが、この点はどのような御理解をいま持っていらっしゃいますか。
  325. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 確かに家庭で点滴できれば相当便利なこともあろうかと思いますが、ただ点滴と申しますのは静脈へ直接注入いたすものでございますから、静脈にストレートに薬剤を流し込むということは、開発は可能だと思いますが、非常に危ないのじゃないかという感じがいたします。
  326. 土井たか子

    ○土井分科員 いや、それはやはり点滴をするのは医師でなければなりませんが、病院であるか家庭であるかということによって療養生活のあり方もずいぶん違ってこようと思うのです。したがいまして、いま申し上げているのは、それは危険であるか危険でないかというふうな問題以前のこととして、家庭でそういう点滴が受けられるような器具の開発というのがアメリカやフランスあたりではされているという実態があるわけでありますから、したがってそういう意味で私はお尋ねをしているので、少し御答弁の方の観点と、とらまえ方が違われたのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  327. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 現在の場合でも、針を刺すのはお医者さんでなければ危険だろうと思います。そういう意味で、病院でやっておるのと同じその道具を家庭にお医者さんが持っていってお使いになるということは、現時点でも可能ではないかと思います。
  328. 土井たか子

    ○土井分科員 これは一般の家庭でおっしゃったようなことはなかなかむずかしいのですよ。これもひとつそれならば、少しの時間を私が費してここで申し上げるよりも、足をお運びいただいたときに実態を少し見ていただく必要があるように思います。これはいずれ、先ほど厚生大臣の方からの御答弁の中でもうすでに実態を調査して、これに善処方を御答弁いただいておりますから、ひとつその中に含めてお願いをすることといたします。  さて、三月の一日に、もう公になっておりますとおり、スモン訴訟に対する判決が出てまいります。この判決を前にして、ひとつ厚生大臣に私は特にお尋ねをしたいのは、去る五十二年一月十七日に東京の地裁から出されました和解案の中でも触れられているわけでありますが、厚生省当局の公式の見解として、昭和四十三年五月七日の参議院の社労委員会で当時の厚生大臣であられた園田厚生大臣から述べられておりますこの薬務行政に対しての基本姿勢と申しますか、お薬に対する取り扱いの厚生省としてのとるべき態度、責任ある措置というものはこういうものでなければならないのじゃないかという御見解がございます。これはもう小沢厚生大臣は御存じのとおりだろうと思いますが、この中で種々述べられておりますけれども、「何か事件があった場合には直ちに生命に関することでありますから、製造中止なり販売中止を命じてからその上で検討するということに考えなければ、薬というものが、一般の薬ではなくて、人間の生命につながるものであるというもっと深い精神的な愛情をもって今後処置するということをここで深刻に厚生省並びに担当官は考えなければならぬ。」と述べられているわけでありますが、この三月一日、判決が恐らく出るでありましょう。このスモン訴訟の判決を前にして、いま厚生大臣とされては、当時のこの園田厚生大臣の御見解をどのように受けとめて考えていらっしゃるかという御所見をひとつお聞かせいただきたいのです。
  329. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 昨年のあの和解の際、厚生大臣は前大臣でおられましたこともございまして、私から大臣答弁の前に一言申し述べたいと思いますが、御指摘の可部所見に引用されましたところの園田厚生大臣のお述べになりました厚生大臣としての見解、これは厚生省のいわば薬務行政についての行政上、道義上あるいは政治上の責任を述べられたものでございまして、それはそれなりに厚生省の現在の見解であることは間違いございません。
  330. 土井たか子

    ○土井分科員 いまお述べになったとおりに大臣もお考えになっているというふうに理解をいたしましてよろしゅうございますか。
  331. 小沢辰男

    小沢国務大臣 園田さんのおっしゃったことは、基本のわれわれのあるべき姿勢、これを申し上げたわけでございますから、当然私も同感でございます。
  332. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、これはいろいろないきさつがいままでにございました。そして、現にそれに対して万事すんなりとこの解決の見通しが立っているとは言えない問題も種々あることは百も承知で、私は特に小沢厚生大臣に申し上げたいわけでありますが、小沢厚生大臣は、環境庁長官当時におきましても、一連の公害訴訟について、この判決の出たその次の瞬間、上訴するかすべきでないかという問題に対してずいぶん苦悩されたということもわれわれはよく存じております。  そういうことからいたしますと、今回のこの判決の持っている意味というのは、私は、大変に大きい意味を持っているということを言わざるを得ません。しかし、何としても、スモンの被害者の方々の立場を考えますと、これはもう小沢厚生大臣に申し上げるまでもないわけでありますけれども、この被害者の方々の苦痛というのは私たちの想像の及ばぬ苦痛であります。各地方でも、被害者が寄ってスモンの会をおつくりになるときなど、一人の自殺者も出さぬということをお互いが言い合って、励ましていこうということを約束されるようなことも必要であるまでに——決して年少の方が多いわけじゃありません。それぞれが非常な肉体的な苦痛と闘いながら、場合によったらもうこれは自殺した方がよほど楽だということで自殺者も出たというふうないきさつがあって今日まで来るくらいに、その苦悩は私たちのはかり知ることができないくらいの中身を持っているわけであります。  この判決が三月一日に出ましたときに、ひとつ厚生大臣とされては、これはいろいろないきさつはあることは百も承知で、したがって私は申し上げるわけでありますが、判決の中身がどうあろうと、国としては上訴すべきではないということを私は申し上げたいと思いますが、厚生大臣としてはどういうふうにただいまお考えになっていらっしゃるか、お考えのほどをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  333. 小沢辰男

    小沢国務大臣 予定どおり判決が出るとすれば明日ということになるわけでございますので、明日の判決を前にして、事裁判に関する問題を行政府の私が、どうもここで所見を申し上げるのはいかがかと思いますので、お許しをいただきたいと思います。  ただ、私ども、東京、岡山において和解に応じましたのは、御承知のとおり国の民事上の責任を認めた上ではございませんで、患者さんの救済を中心に考えまして、これを考えるがゆえに和解の座に着きまして、そして患者さんの救済にできるだけひとつ国も善処をしていこう、こういう態度であったわけでございます。  また、金沢の訴訟につきましても、和解でひとつ患者救済をできるだけ急ぐ、こういうようなこともむしろ私どもの方から申し出たわけでございますが、原告の方々から拒否されたといういきさつもございます。われわれは、終始患者さんの立場に立って、この救済ということに主眼を置いてまいりましたことだけは、ひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  334. 土井たか子

    ○土井分科員 患者さんの立場に立って終始いろいろといままでこの問題に対して対処されてきたということであればあるほど一いま私は、あすの判決について、判決の予測をまさか厚生大臣から伺おうとはみじんも思っておりません。判決内容に対しては、何人も予断は許されないところであります。しかしながら、判決はどうあろうと、国としてはあくまで患者さんの立場に立ってこの問題に対処しようという姿勢をお持ちになるのならば、上訴すべきではないということが私は当然出てこようかと思う。そういう気持ちでお尋ねしておるわけですから、ひとつ厚生大臣として、あすを控えたお気持ちのほどを、小沢厚生大臣個人の見解でお聞かせいただきたいと思うのです。いかがですか。
  335. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、患者さんの立場に立った考え方で、この種のものはやはり和解でやるものが適当だという見地から、原告にも裁判所にも和解を申し出たわけでございますので、それ以上、明日の訴訟判決内容等を想像しながら、いま行政府の立場で見解を述べるということは、大変御熱心な、また長い間いろいろこういう問題にお互いに取り組んでまいりました土井委員のお尋ねでございますけれども、お許しをいただきたいと思うわけでございます。
  336. 土井たか子

    ○土井分科員 これは恐らく患者さんが聞かれましたら、泣くに泣けない気持ちだろうと思うのです。国の方がどういうふうな気持ちであすの判決を受けとめられるかということは、一つは、今後どういうふうにこの被害者の方々に対する対処の仕方が展開されるかということの一つの目安にもなるわけでありますから、ここでできたら——厚生大臣はいろいろないきさつがあり、いろいろな配慮がしたがって必要だということは私はよくわかりますけれども、個人としてのお気持ちというものはひとつ披瀝しておいていただきたい、このように思います。いかがでございますか。
  337. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変恐縮でございますが、きょうはお許しをいただきたいと思います。
  338. 土井たか子

    ○土井分科員 それならば、いままでいろいろと取り組んでこられました厚生省とされては、あの裁判所の方からの和解案に基づく中身では、諸問題を被告製薬会社とともに解決する責任がおありになるはずであります。国とされては、最終的に会社側に対しても一定の話し合いを進めておられると思うわけであります。昨年九月十五日でございましたか、渡辺厚生大臣はジュネーブでチバ社の首脳と会見をされたといういきさつもあったりいたしますが、この被告製薬会社との間で一体どういうふうな話し合いが今日まで動いてきたかという内容について、ひとつそれならば御説明を賜りたいと思うのです。
  339. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御承知のとおりに、昨年の六月、前厚生大臣とされましては若干の留保条項を残して和解のテーブルに着くという見解を表明されまして、その後、各被告製薬会社との間で、厚生省といたしましても政府の基本方針に従って可部所見に基づく和解の調印に最大限の努力をしたわけでございます。特にこの場合にチバガイギー社という外国の会社が関係をしていることでもございますので、その国際的な意思のそごということも避けなければいけないということもございまして、ジュネーブで前渡辺厚生大臣がチバガイギーのプランタ社長と会見をしていろいろ意見の交換をされたことも事実でございます。おおむね武田、チバガイギー社との関係におきましてはこのようないわば共同歩調が保たれているわけでございますが、その製薬会社の一つである田辺製薬に対して、従前、公式、非公式に政府の方針に同調し、患者救済の実を上げるよう呼びかけてまいっているわけでございますが、現在の時点では、いかに具体的にそれを実現するかということについての具体的な段取りと申しますか手順と申しますか、それがまだ残念ながらはっきりしたものが得られていないというのが実情でございます。
  340. 土井たか子

    ○土井分科員 与えられました時間が経過をいたしましたから本日はこれで質問を終えたいと思いますが、今国会で恐らくこれに対して厚生省としてはとらねばならぬ一つの対策に薬事法の改正があったはずであります。厚生大臣は、先日、薬事法の改正は残念ながら今国会では見送りであるというふうな御見解を公にされておりますが、薬事法の改正が見送られた最大の原因はどの辺にあるかということをひとつお聞かせいただいて終わりにいたします。
  341. 小沢辰男

    小沢国務大臣 新聞で断念と書いてありますが、間に合えばぜひやりたい。ただ、健保の抜本改正もございますし、御承知の薬害の被害者に関する救済制度も、薬事法の改正だけでなくて別の立法も考えておったわけでございますので、これらを全部ひっくるめて今国会中に、いろいろ検討はいま進んでおりますが、五月十何日でございますか、この閉会までにどうも間に合いかねるのじゃないか。事務的にまだいろいろ検討しなければならない、詰めなければいかぬ問題点がございますので、間に合わないのじゃないかなという意味で今国会にはなかなか無理だと思うということを申し上げた。これはもう今国会のみならず、できるだけ早い機会の国会に間に合わすように鋭意薬務局を中心にして努力をいたしておる、こういうことでございますから、被害者救済法案に関連して薬事法という問題がどうしても手をつけていかなければいかぬ点がいろいろございますので、その意味で両方の関連性から薬事法の改正も少し延びるのじゃないかな、こう申し上げているわけでございます。
  342. 土井たか子

    ○土井分科員 これで終わりますが、被害者というのは本来出してはならないのです。被害者救済というのは被害者を予想した法律であります。したがいまして、そうではなくて、やはりどこまでいっても薬事法の被害者を出してはならないという意味での改正がこの節必要なのだということを強く申し上げたいと思います。厚生大臣、よろしゅうございますね。
  343. 小沢辰男

    小沢国務大臣 よく了解します。
  344. 土井たか子

    ○土井分科員 終わります。  ありがとうございました。
  345. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて土井君の質疑は終了しました。  次に、小宮武喜君。
  346. 小宮武喜

    小宮分科員 厚生省は医療保険制度の抜本的改正案を今国会に提出する準備を進めておるということが報道されておりますけれども、この抜本改正に当たって、古くて新しい問題ではありますけれども、入院時の保険負担の軽減、薬剤の乱用防止、診療報酬体系のあり方、現物給付、出来高払い制度、これらの現行医療制度全体にわたってこの改正案の中ではメスを入れるのかどうか、その点ひとつお考えを聞きたい。
  347. 八木哲夫

    ○八木政府委員 昨年の健保法の審議の際にも衆議院、参議院で御説明申し上げましたけれども、私ども今度の国会に基本的な改正案を提出したいということでございますけれども、基本的な問題といたしましては、十四項目にわたりまして私ども取り上げるべき問題ということを考えているわけでございます。しかし、その中には法律改正を伴うものと、それからほかの行政措置なりほかの措置によって行うものということがあると思います。  そういう意味で、先生御指摘の中で保険負担の問題でございますとか、あるいは薬価基準の問題でございますとか、そういうような問題につきましては、これは直接法律改正につながる問題ではないわけでございますけれども、当然基本的な制度改正の一環としましてこれらの問題も検討していかなければならないということでございますし、すでに先般の診療報酬の改定におきましては、その第一段階といたしましてこの問題に着手したというような次第でございます。
  348. 小宮武喜

    小宮分科員 私は具体的に中身についてお聞きしておるわけですけれども、いま申されたように、やはり保険負担の最たるものは何といっても差額ベッドと付添看護料の問題でございます。厚生省は四十九年三月、またその後もこの差額ベッドに関して、国立病院は一〇%以内、他の公私立病院は二〇%以内という通達を出されておりますけれども、なかなか守られておりません。今回さらに通達を出したということを聞き及んでおりますけれども、実態はどうなっておるかということと、もう一つは、やはりこの差額料金もいろいろ調査してみますと、安いところで千円から三千円が全体の三九・一%、三千円以上一万円以下が一六・七%、それ以上が〇・九%で、最高は二万五千円ぐらいになっております。それに最近では個室だけではなくて、大部屋でも取られているわけです。したがって、長期入院した場合に数十万円の費用負担を強いられているということをわれわれは聞いておるわけですが、厚生省はこの差額ベッドの問題、それから差額料金の問題について、それでは抜本改正の中でどういう考え方で取り組んでおるのか、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  349. 八木哲夫

    ○八木政府委員 基本的な制度の改正の中の一つの問題といたしまして保険負担の解消の問題があるわけでございますけれども、これは前国会でもお示しいたしましたように、次期診療報酬改定からこの問題を取り上げるということで、先般の二月の診療報酬の改定の際に、確かに先生から御指摘のように、四十九年の通達ということで医療機関に対します指導は行っておったわけでございます。しかし、現実問題としまして、ある意味では先生からお話ございました差額ベッドの問題これは医療機関の経営の面にある程度役立っているという問題もあるわけでございますので、やはり経営上の問題もあるということから、今回の診療報酬の改定におきましては特にこの部分に重点を置きまして、入院料の引き上げ、室料の引き上げ、あるいは手術料の引き上げ、あるいはICU、CCU等に対します特別の加算というようなことで、全体として九・六%の引き上げ幅ではございますけれども、入院部門につきましては二〇%というかなり大幅な引き上げを行った。  そういうことで、差額問題を一挙に全部解決するというのはなかなかむずかしい問題があろうかと思いますけれども、その解消をいたしますための一つの大きな前進になるというような意味で、今回そういうような解消問題のための基礎整備と申しますか、条件づくりという意味で診療報酬の改定につきましてこの問題につきまして大幅な引き上げを行った、そういうようなことから、私どもも新たにもう一遍通達を出しまして、さらに全国課長会議等でも指示いたしまして、従来の線を守りますとともに、少なくとも本人からの希望がないにもかかわらず大部屋から取るというのは、これはなくしたいという強力な指導を准行いたいというふうに考えておりまして、現在その指導に入ったという段階でございます。
  350. 小宮武喜

    小宮分科員 四十九年三月に通達を出しながら、守られていないから再度また今度通達を出したということになるわけですね。だから結局、一片の通達だけで果たしてまた守られるのかどうか、非常に疑問だと思います。特にいま申されましたいわゆる負担給付関係についてはまた後で質問しますけれども、時間の関係がありますから先に進ませていただきます。  基準看護病院でも、看護婦不足という問題もあってか、基準看護料を取られた上に一日五、六千円から八千円の付添看護料を負担しているわけです。その付添看護料の出費だけでも一月二十万円くらいになるわけです。その差額ベッドの負担まで加算すると余りにも膨大な出費を強いられて、いろいろ家計に影響を与えておるわけですが、それがひいては健保の不信にもつながっていく。そこで、入院費を見ましょうという民間保険会社の私的医療機関が生まれるような結果も生んでおるわけですが、この問題についても抜本改正の中でどう取り組むのか、ひとつ明確にお答え願いたい。
  351. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生お話しございましたように、保険負担の問題でもう一つ大きいのは付添看護の問題でございます。この問題につきましても、今回の診療報酬の改定におきまして、特に付き添いの問題につきましては一挙に解決するというのは非常にむずかしい問題がございます。特に看護婦さんの養成等の問題があるわけでございます。しかし、こういう厳しい中で、やはりこの問題を解決するということはぜひとも必要であるというふうなことから、基準看護関係につきましては特に重点的な引き上げを行いまして、平均いたしまして一七%、特に一類、二類につきましては一九%、一八%という引き上げを行いますとともに、二類看護につきましては五人に一人でございますから、医療法にも満たないということでございますので、新たに二類につきましては病院の責任におきまして必要な場合には特別の二類加算という制度を設けまして、必要な付き添いを行うという措置を講ずることによりまして一歩大きく前進したというふうに理解しておりますし、私どもも少なくとも基準看護病院につきましては、普通看護病院と違いますから、その分で特別な加算をしておるのでございますので、患者さんなりあるいは本人の希望ということがなしに病院の方から強制するというような事実がありました場合には、基準看護病院の指定を取り消すというような強い姿勢で臨むようにという通達を出しておる次第でございます。
  352. 小宮武喜

    小宮分科員 看護基準の問題についても、私は社労でも余りにも厳し過ぎるではないかという意見を申し上げたこともございますけれども、それはそれとして、大臣は二十一日の予算委員会で、健康保険法の抜本改正案の中で高額医療費を全額給付とし、低額医療費には自己負担をふやすことを大きな柱とする、このように答弁されたとわれわれは新聞報道で見ているわけですが、現行の高額医療費制度は同一月内で、同一病気で、同一病院で、しかも同一家族内で一人にしか適用されないという不合理があるわけです。したがって、大臣は、この制約を外して高額療養費の全額給付ということを考えておるのか、またそういうように制約を外すということを前提にして言われておるのか、その辺いかがですか。
  353. 小沢辰男

    小沢国務大臣 基本方針だけ私から申し上げて、あと保険局長から説明をいたしますが、私が予算委員会で申し上げましたのは、まず質問者の方から挙げられましたのが、要するにいまの貯蓄性向が日本で高いのは、一つには病気になった場合の家計の不安、それから老後の不安、それから教育の不安、住宅の不安、この四つが非常に大きいぞというお話がありまして、それで健保の改正については今後どういうような考え方でいくかとお尋ねがありましたので、家計に不安を与えるような負担保険で見るように今度の根本改正では必ずいたしたいと思うというふうに申し上げたわけです。したがって、誤解をしないでいただきたいのは、重い病気、軽い病気という疾病によって私が申し上げたわけじゃないので、要するに家計負担が非常に多くなって困るようなことは、保険である以上、やはり保険というのはそれぞれ患者さんの経済を見ていく保険でございますから、したがってそういうようなものは必ずひとつ今度の抜本改正では解消していくということを申し上げたわけでございますので、この点をまず御理解を願いたいと思うわけでございます。  あと詳しい、いまのレセプトが一疾病、一件当たり、一カ月ごとのあれによって出ております。そういうことで、いま先生のおっしゃるようなものを全部これがそういう面では解決できるかというと、いろいろ請求のやり方等の問題等もございますので、これは保険局長から答弁をいたさせます。
  354. 八木哲夫

    ○八木政府委員 確かに現行の高額医療費支給制度の中でレセプト単位でやっているという点について問題があるのじゃないかという御指摘が前からあるわけでございます。先生からもいただいております。社会保険審議会等でもいろいろ議論していただいているわけでございますけれども、現実の事務処理の体制を考えますと、レセプト単位でこの問題を取り扱うという以外にはなかなかむずかしいのではないか。  ただ、大臣お話しございましたように、レセプト単位という問題と角度を変えまして、給付のあり方としまして高額医療をどう取り扱うかというのはこれからの制度改正の問題でございますので、そういう問題の中でこの問題と取り組んでいきたいと考えております。
  355. 小宮武喜

    小宮分科員 それでは、いまの高額医療費負担の三万九千円、これはそのまま据え置くということですか、それともこれにも改善のメスを加えるということですか。
  356. 八木哲夫

    ○八木政府委員 給付のあり方を各制度を通じて考えるわけでございますし、特に現在の高額医療費制度につきましては健保の家族それから国保についての問題でございますので、全体の高額医療についてのあり方をどういうふうにとらまえるかという点につきまして、これからの制度の中で考えていくということでございます。
  357. 小宮武喜

    小宮分科員 時間がございませんからいろいろ討論するわけにいかぬですけれども、低額医療費の自己負担をふやすということは、具体的にはどういうことになるのか。たとえば、外来時の投薬の一部負担だとか初診料とかあるいは再診料の引き上げとか、こういうことにもつながるのかどうか、その点いかがですか。
  358. 八木哲夫

    ○八木政府委員 制度の改正を考えます場合に、やはり本人と家族との十割、七割の給付差なり、あるいは国保の七割給付という問題があるわけでございますので、その際に、給付のあり方を考えるという際に、本人の現在の給付の問題、この辺につきまして一部負担の問題、先生からいろいろ御指摘ございましたけれども、そういう問題を含めまして本人の給付のあり方につきましてもこれから制度改正の中でどう取り扱うか考えていく問題だと思います。
  359. 小宮武喜

    小宮分科員 なかなか具体的な回答がないわけですけれども、大体いつごろ抜本改正案を国会に提出するのですか。
  360. 八木哲夫

    ○八木政府委員 早急に現在厚生省案を固めているところでございますけれども、社会保険審議会、制度審議会等の御諮問も経なければなりませんので、私どもといたしましては四月には国会に提出いたしたいと考えておるわけです。
  361. 小宮武喜

    小宮分科員 先ほども話が出ました国民健保の給付は、他の保険給付が本人十割家族七割ということに対して、国保の場合は本人も家族も七割ということで、制度間に不公平があるわけですけれども、これはこの抜本改正案の中で是正しますか。
  362. 八木哲夫

    ○八木政府委員 基本的には、各制度を通じましての給付なり負担というものにつきましての不均衡というものにつきまして、この不均衡をなくすというのが方向でございますから、そういうような方向のもとに考えていかなければならない問題であるというふうに思っております。
  363. 小宮武喜

    小宮分科員 次は、厚生年金について質問しますけれども、厚生大臣は、厚生年金の受給開始年齢を六十五歳からにしたいということを予算委員会答弁されたというように伺っておりますけれども、事実そうですか。
  364. 小沢辰男

    小沢国務大臣 将来はそういうようなことも考えていかなければならぬような厚生年金の状態になるだろう、こう申し上げたわけでございまして、いま、ここ数年内にやるような考えはありまん。
  365. 小宮武喜

    小宮分科員 近い将来ではなくて遠い将来で、数年間はやる考えはない。私は、これは遠い将来であろうと、やはりこの問題はいまの年金制度全体の整合性の中で考えていただかぬと、ただ厚生年金だけ六十五歳に引き上げて、それで国民年金とそろえるというようなことはやるべきじゃないと思います。したがって、この問題はいろいろ審議会あたりでも論議されるでしょうけれども、やはり年金制度の全体的な抜本改正の中で検討していただかぬと、六十五歳からということで非常に皆さん厚生年金受給者からはいろいろ問い合わせも来ておりますので、その点はやはり十分慎重にやっていただくように、私は特に要望しておきます。  それでは、厚生年金積立金は五十二年度末で幾らありますか。
  366. 大和田潔

    ○大和田政府委員 五十二年度末の積立金の額は十七兆七千九百九十二億円と見込まれております。
  367. 小宮武喜

    小宮分科員 特に最近厚生年金受給者からいろいろな意見が出てくるわけですが、確かに私も、これは厚生年金と共済年金との比較から見て、非常に厚生年金受給者の中で不満が起きております。それは、厚生年金は退職前所得の六〇%保障が基本でしょう。しかし、他の共済年金は、退職時の所得を基準にしたり、あるいは退職前一年間の所得を基準にして年金を払っておるわけですから、それに比べて厚生年金は被保険者期間を基準にしてやっております。だから二十年、三十年の人は当然下がっていくのがあたりまえで、しかも六〇%ということで、共済年金との格差を非常に大きくするということで、いま厚生年金受給者から不満が非常に出てまいっておりますが、こういう制度間の不公平をなくするために、少なくともいまの厚生年金の六〇%の保障ということは、他の共済年金との見合いの中で、私は少なくとも八〇%まで引き上げるべきだ、こういうふうに考えます。  これは財政上の問題がいろいろあろうかと思いますけれども、十七兆円あるわけですからね。それは国が大きな財源に、資金運用部資金に使ってみたり、財政投融資に使っているから、一番大きな財源ですから、なるたけこれを減らしたくないという気持ちはわかりますよ。しかしながら、こういった厚生年金受給者に対しては、もっともっと優遇すべきだ。たとえば、五十五歳で二十年以上あれば受給資格が出るわけですが、実際は六十歳からしか支給しない。そういうことで、その間に亡くなる人も多いわけですから、そういう意味では、私は、厚生年金の退職前所得の六〇%保障というのは、少なくとも八〇%に引き上げるべきだというふうに強く主張したいと思いますけれども、なぜ八〇%にできないのか、ひとつ納得のいく説明をしてもらいたい。
  368. 小沢辰男

    小沢国務大臣 局長から御答弁申し上げる前に、私、基本的にちょっと申し上げますが、先ほどおっしゃったように、六十五歳、支給年齢引き上げの検討も加えなければならぬ時期が来るではないかと申し上げましたのは、先生もおっしゃるような年金制度の基本構想全体を固める中での問題である、これは同意見でありますから、誤解のないようにしていただきたい、当面やるような印象を持ったとすれば、これはもうぜひ払拭していかなければならぬ点だと思います。  それと、官民格差の問題については、これは当然今後われわれとしては重大な関心をもっていろいろ検討していかなければならないと思っております。  以上、基本的な考えを申し上げまして、あとは局長から答弁させます。
  369. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいまの厚生年金、先生のおっしゃるとおり、直近の標準報酬の六割程度を二十八年間の資格期間のある人に保障するというような水準が設定されておるわけでございます。これは五十一年の大改正のときに、社会保険審議会等の御意見を踏まえ、また一方では、ILOの基準等の被保険者期間三十年で従前所得の四〇%を確保すべきであるというような点を踏まえているわけでございます。ILOで言います三十年の四〇%というのは、ボーナス等の問題もございますので、わが国の二十八年で六〇%というものと見合うだろうというふうに思っておるわけでございます。  これはモデル年金の水準でございますが、現実に出ております厚生年金の場合、先進国と比べましても遜色のないところに来ておるというふうに考えておるわけでございます。この基準につきましては今後ともそれで参りたい。八割に引き上げるということになりますと、非常に大きな給付が必要になりますし、また、一方では現役よりもむしろ高い水準になるというようなことで、現役当時の給与とのバランスも悪くなるというようなことが起きてくると思うわけでございます。私どもといたしましては、現在の水準を将来とも維持していくべきではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  370. 小宮武喜

    小宮分科員 現役のときより高くなるということは絶対ありませんよ。  それで、もう一つ申し上げたいのは、受給資格がありながらも六十歳に達しなければ受給できない。しかも、受給できても、いわゆる在職老齢年金で、所得に応じて、やれ二〇%、五〇%、八〇%というふうにランクを設けて支給制限をやっている。なぜ厚生年金だけ支給制限をやるのですか。
  371. 木暮保成

    ○木暮政府委員 在職老齢年金の制度はむしろ日本の独特の制度でございまして、ある意味では外国に比べましてそれだけ被保険者に対するサービスをしておるというふうに申し上げることもできるかと思うわけでございます。  日本の場合には、六十歳で、退職をしておるということ、二つを条件にして年金を出しておるわけでございますが、現在の雇用状況等を勘案いたしまして、退職しない場合でも、六十歳になった場合には、一定の条件で年金を支給するという措置をしておるわけでございます。外国でも減額年金というようなやり方をしておるところもございますが、その場合には実際に退職した後も減額がそのまま引き続いていくということでございます。したがいまして、今後ともこの制度をやっていきます場合にはいま程度の支給制限を置くということはやむを得ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  372. 小宮武喜

    小宮分科員 厚生省は、都合がいいときは外国の例を引いてみたり、都合が悪くなればこれは日本独得のものだとか言ってみたり、いろいろ自分の勝手に引用しながら正当化しようとしておるわけですが、この受給制限の問題は、一挙に受給制限撤廃までいかなくても、たとえば上限を引き上げる、今度は十三万四千円か八千円に引き上げたという話を聞きますけれども、やはりそういう意味では改善努力をしなければ、私は社労時代にも言っておるように、一挙にそれを撤廃するということは無理にしても、少しでも改善していくという前向きの考え方がなければ、いつも同じような答弁をやっておるわけです。その意味では、この問題はゆっくり社労あたりでもやりたいと思いますけれども。  それから既裁定年金者の平均受給額は幾らですか。
  373. 大和田潔

    ○大和田政府委員 五十三年度の見込みということで推定いたしましたところが、五十三年度のスライド後の退職者の平均年金額、これは月額八万三千円というふうに見込まれておるわけでございます。
  374. 小宮武喜

    小宮分科員 時間がおいおい迫ってまいりましたので、私は長崎出身でございますから、ここでもすでに原爆の問題が質問の中にあったようですけれども、重ねて質問します。  かねてから長崎の被爆者団体及び関係地方自治体から強く要望されておる被爆地域の十二キロ拡大については、厚生省はどうしようと考えておるのか、その点お尋ねします。
  375. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 昭和五十一年度に残留放射能調査という調査をいたしました。その調査をいたしました結果、幾つか残留放射能の高い地域が出ておったわけでございますが、それはすべて現在指定した地域内に高いのが出たわけでございまして、それによりますと、この十二キロまでいまの時点で広げなければならないという理由は見当らないということで、いまのところは拡大する気はない、こういうことでございますが、さらに高い地域がございましたので、その高い地域がまんべんなくあるということではなくて、ある地域ある地域ぽんぽんと飛び飛びに高い地域が出ておるわけでございます。そういうことから、原爆のそういった残留放射能が一体どうなっておるのかということが明確でないので、さらに私どもは五十三年度にそういう問題も含めた精密な調査をいたしまして、その結果もう一度考えてみたい、こういうことでございます。
  376. 小宮武喜

    小宮分科員 局長はこの問題については前向きに取り組むという答弁をされたやに聞いておりますけれども、いまの答弁は前向きとは言えませんね。その調査をすることが前向きに取り組むということですか。
  377. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 前向きに取り組むとどこで申し上げたか私存じないわけでございますが、いずれにいたしましても、やはり広げるなら広げるなりに、なぜ広げなければならぬかということがはっきりしておりませんと広げられないわけでございまして、そういう意味から、五十三年度の調査の結果を見たい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。
  378. 小宮武喜

    小宮分科員 前回どういう調査をされたのかよく知りませんけれども、部分的には非常に高いところがあったということで、それをさらに詳細にまた調査をやろうということのようですが、結局は、それはいわゆる十二キロ拡大をしたくないものだから、時間かせぎをしようと考えておるのじゃないですか。前回の調査でそういう問題が出ておれば、調査しなくても大体この辺までは広げていいとかいう大体の見当はつきそうなものです。また前回もかなり時間をかけて調査をやったわけですから、今回やればまた二年ぐらいかかるのじゃないですか。その点だけお聞きして、もう時間が来たようですから、私の質問を終わります。
  379. 小沢辰男

    小沢国務大臣 実は私どもから考えると逆でございまして、どうも調査の結果ではこれ以上拡大するのは理論的に無理じゃないかなと思っておったのですが、先生方のたっての要望もございますし、現地の方々が予算編成期に何回かおいでになりまして、るる現地の実情等も申されましたので、したがって、私の方がもう一度念を押して、その必要性の有無を、あるいはまた拡大する場合の条件を探るために、さらにそれではもう一年やってみましょう、こういうふうになったわけでございまして、どちらかというと前向きではなかったのは事実であります。事実でありますが、たっての御要望等もありますので、いろいろひとつ検討さしていただこう、こう思っているわけでございますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。
  380. 小宮武喜

    小宮分科員 質問を終わります。
  381. 川俣健二郎

    ○川俣主査代理 これにて小宮君の質疑は終了しました。  次に、井上一成君。     〔川俣主査代理退席、住主査代理着席〕
  382. 井上一成

    井上(一)分科員 まず大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですが、今国会に提出を予定されております国民年金法等の一部を改正する法律案によれば、第四条によって無年金者に対する対策として特例納付が認められることになったわけであります。無年金者の救済措置としては私は一定の評価をいたしたい、こういうふうに思うのですが、しかし、今回の措置によると、特例納付の総額が最高の場合五十六万二千五百円、大正七年四月一日から五月一日生まれの方々に対してはそのような高額になるわけであります。しかも、これらの対象者は一括納付をしなければ年金の受給資格を失う。もちろん二年間の期間があるわけでありますけれども、せっかく特例納付の制度を設けられたわけでありますから、その趣旨が十分生かされるように、救済措置を講じられたのでありますから、ひとつこの一括納付に必要な金額の貸付制度を国においてお考えいただけないであろうか。もちろん年金局当局としてはいろいろ相矛盾する点があるかもわかりませんけれども、私は、厳しい生活に対応していかなければいけない社会問題として、高額の一時支出を何らかの形で救済する制度をさらにお考えいただけないでしょうか、厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  383. 木暮保成

    ○木暮政府委員 今度の無年金対策におきまして、昭和三十六年に制度ができて以来一遍も保険料を納められないという方につきましては、最高の場合五十万円を上回る額を二年間に納めていただかなければならないということは事実でございます。この無年金対策につきましては、実は過去二回特例納付をやってまいったわけでございますが、さらに無年金対策を講じるようにという御希望が多かったわけでございます。  私ども、三回目の特例納付をやりますのは非常にちゅうちょをいたしたわけでございますが、ちゅうちょをいたしました理由は、厚生年金の場合には保険料を事業主に徴収していただきますのでその点の問題がないわけでございますが、国民保険の場合には、二千五百万人もの被保険者の方々に自主的に保険料を納めていただくというようなことがございまして、その被保険者の方の保険料納付意欲に支障が出るということを非常に恐れたわけでございます。しかし、実態を調べますと、やはりかなりの方が年金に結びつかないということがわかりましたので、今回三回目の特例納付に踏み切ったわけでございますが、前二回とのバランスもございまして、後になればなるほど条件がよくなるということでは、被保険者の保険料納付意欲に非常に支障ができるということでございますので、今回こういう制度をとりました場合にも、貸付金制度というものは考えないでまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  384. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、この問題については十分救済措置が生かされるようにさらにお考えをいただいて、永遠に受給資格がなくならないように再考を願いたいと思います。  さて、私はここで、従来から非常に問題になっております差額ベッド及び基準看護病院における付き添い費用の廃止については、もう何回となく論じられてきたわけでありますけれども、今回の医療費改定においても重要な課題の一つであったわけであります。それで、具体的には支払い側の条件整備と要望事項、七項目にわたって列記されておるわけでありますけれども、その詳細については私から申し上げる必要はないかと思います。  さらに、この支払い側の要求に対して、厚生省が一月九日付で回答を出しておるわけであります。もちろんこの回答についてももう私からるる申し上げる必要はないかと思いますが、さらに、医療費のむだを排除するための方策として、六カ月をめどに検討していこうという覚書まで締結をなさっていらっしゃるわけであります。そして、それによって今回の医療費の改定という問題が取り上げられたわけでありますが、このことについてのこの支払い側のいわゆる要望事項、そしてそれに対する厚生省の回答、そして両者間の覚書、このそれぞれの約束事については十分尊重をされる、また尊重しているというお考えであるのかどうか、大臣からまずお答えをいただきたいと思います。
  385. 小沢辰男

    小沢国務大臣 その点は、だれが見ても常識的に当然なことでございますので、これは今後とも守っていかなければならないと考えております。特に診療報酬の中にお互いにむだがあれば、むだを承認する者は診療担当者側にも被保険者側にもどこにもないはずでございますので、むだを排除するという当然のことを私は今後努力するというふうに申し上げておりますので、これは今後とも大いに努力をして実現を図っていきたいと思っております。
  386. 井上一成

    井上(一)分科員 そこで、とりわけ入院料の差額徴収の改善については、過去昭和三十九年及び四十九年の二回にわたって保険局長から通達が出されたわけであります。しかし、実際にはその実効はなかったという受けとめ方をしておるわけでありますけれども、そういうことが今回さらに取りまとめられて、一つのいわゆる一月二十八日付で「入院料の差額徴収及び基準看護病院における付添看護について」の保険局長通達が出されたわけであります。この通達保険医療機関に——もちろん大臣がお答えになりましたように、趣旨を徹底させるために、当局、厚生省はどのように対策を講じられたのか、そしてまた、各都道府県の対応はどのような対応であるのか、具体的にお聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  387. 八木哲夫

    ○八木政府委員 保険負担の問題の解決というのは、今回の診療報酬の改定の際の一つの大きな柱であったわけでございます。従来、先生から御指摘ございましたように、四十九年の通達等で指導を行っているわけでございます。確かに改善の実は毎年、逐年上がってはおりますけれども、必ずしも改善のテンポは早くないということであったわけでございます。現実問題といたしまして、なぜできないかという点につきましては、やはり医療機関におきます経営上の問題もあるということから、今回診療報酬の改定の際に、九・六%という幅ではございますけれども、思い切って入院部門につきまして二〇%近い、室料の引き上げとかそのほかのいろいろな要素を含めまして大幅な引き上げを行いましたので、そういう意味で、保険負担解消のための条件整備なりあるいは基盤づくりというものができたのではないかというようなことから、この通達を出したわけでございます。  なお、この問題につきまして、そういうようなことから、現実問題としましては、各県の指導ということがあって動き出すわけでございますので、各県にまずこの通達を出しますとともに、地方技官を集めましてこの趣旨を徹底し、さらに先般、今月の十五日だったと思いますけれども、全国の保険課長会議を開きまして、従来の通達とは違って今度は強力に指導するんだということで、各県に対します指導方を要請したというようなことでございます。そういうようなことで、現在各県はこの指導ということについて動き出しているということでございます。  それからもう一つ、現実に差額問題が一番大きいのは、私立大学の付属病院が非常に差額ベッドの比率が高いというようなこともございましたので、特に私どもとしましては、私立大学協会の責任者の方にお集まりいただきまして、私立大学としてもこの問題に真剣に取り組むように協力要請をしまして、現在話し合いを続けているところでございます。
  388. 井上一成

    井上(一)分科員 今回の改定で、確かに室料及び入院看護料等の面では二〇%の引き上げをした。そして特別な配慮を行ってきたんだということはよくわかるわけですけれども、その通達が、各都道府県の側で、あるいは厚生省のいわば徹底した指導というものが十分なされてない。  そこで、具体的に、いま二月十五日に関係者の会議を持ったとおっしゃられるわけでありますけれども、二月六日に日本病院会から厚生大臣に対し要望書が提出をされているわけであります。この要望書を受け取られた厚生大臣は、いかように受けとめ、そしていかように対処されるのか、ひとつお考えをいただきたいと思います。
  389. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、病院経営における差額ベット——付添看護はちょっと違うと思うのですが、差額ベッド問題については、保険だけですべて解消しようというのは少し無理じゃなかろうかと思っておるのです。それは入院料、室料その他をもっともっと上げていけば別でございますけれども、そういうことになると、これは患者負担が相当の負担になってまいりますから。しかし、少なくともかつてはこんな状態でなかったことは事実なんですね。私は十九年前に健康保険課長をやめたのでありますが、三年間ぐらいやっておりましたけれども、あのときは、差額ベッドは今日のような状況ではなかったのです。私は、医療機関の整備、医療行政全般の中で協力をしていきませんと、この差額ベッドというのは病院経営の面からしてなかなか、保険だけで解決しようと思いますと非常に大きく保険負担が高じてくるのじゃないかと思いますので、そういう意味で、保険だけでは完全に解消することはできないと思いますけれども、しかし、一歩も二歩も三歩も前進することだけは今度は確実にしていきませんと、診療報酬の引き上げによって料率等も引き上げた今日でございますし、被保険者のことやあるいは保険料を出す経営者の側等も考えますと、これはひとつ病院側でもよく御理解を願って、今度の解消の実を上げるように協力を願わないといかぬと思うのでございますので、この前と違って、いろいろ話し合いの中で説得しつつ強力に指導していきたい、かように考えて、必ず成果を上げていきたいと思っておるところでございます。
  390. 井上一成

    井上(一)分科員 大臣、さっき局長のお答えで、医療費については十分配慮した、そういうことの中で差額ベッドの解消をするんだということですが、しかし、いまのお答えでいかがなんですか。もちろん、病院の経営それ自体には、いろいろ病院側として運営に苦しいということはわれわれもわからないことはないわけです。しかし、今回の改善でそういうことが全く解消されないとするならば、いつ解消できるんですか。
  391. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は全く解消できないと申し上げているのじゃないのですね。完全に解消できるまでに、診療報酬の入院料その他が十分であるかというとそうでもない。したがって、あの通牒にありますように、少なくとも三人以上の大部屋からは差額ベッド料というものは取らぬようにしてもらおう、こういうことでやっておるわけでございます。その他自分の希望等で個室に入りたいとかいろいろな問題があろうかと思いますから、そこまでは病院経営の実態等も知っている厚生省としては強制できないけれども、少なくとも、三人以上の大部屋については差額ベッドを解消して、被保険者の負担を軽くしていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  392. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、さらに、二月六日に大臣あてに出された日本病院会の要望書に対する大臣の見解を先ほどからお聞きをしているわけですけれども、大臣、この点についてはいかがなんですか。この要望書を受け取られてどのように考えていらっしゃるのですか。
  393. 小沢辰男

    小沢国務大臣 要望書について私どもは一々まだ回答をいたしておりませんが、そのうち日本病院会の責任者の方々に集まっていただいて、趣旨をよく徹底をして、相ともに患者の負担が減るような方途をひとつ見出していきたい、かように考えておりまして、目下のところはそれぞれの項目についてまだ回答をいたしておりません。検討中でございます。
  394. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、厚生省の姿勢それ自体に非常に大きな矛盾と疑問があると思うのです。こういう要望書が出されて、そして素早い対応がなされないと、あるいは強い指導がなされてないと、そういうことがさらに他に波及をする。  ある病院の団体では、入院時の室料差、額徴収については当局と折衝中である、当分の間現行どおりとするようにと、二月上旬に通達を出しておるわけなんです。こういう事実があるのです。大臣、いかがですか。
  395. 小沢辰男

    小沢国務大臣 率直に言いますと、文書を持って、どこへ持ってこられたかわかりませんが、私のところには病院協会の代表は来てないのですよ。そうしてこの後の、参考としていただきましたのを見ますと現在交渉中だというが、代表がちゃんと来て最高責任者にもう少し話をすべきですね。そういうこともしないで、現在交渉中であるという、事務的にあるいはやったのかもしれませんが、これははなはだ不穏当な文書だと思いますね。
  396. 井上一成

    井上(一)分科員 いま、日本病院会が大臣あてに出されたのは不穏当な要望書である、しかしながら……
  397. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いや、要望書じゃないですよ。こっちの方の、後の、交渉中だから云々とおっしゃいました追加の資料について……
  398. 井上一成

    井上(一)分科員 日本病院会からは受け取っておられるわけですね、この要望書については、大臣
  399. 小沢辰男

    小沢国務大臣 文書が参っておることは事実なんです。病院会の幹部の方が最高責任者の私のところへ来て、こういう実情だと訴えて、それでどうだこうだという話し合いをしたことはないのです。だから、私が申し上げるのは、その後の、いただきました資料を拝見しますと、「引続き現在なお各方面と接渉中であります。」やわらかい文章にはなっております。また大阪府の、二月八日ですか、「当局と接渉中でありますので、」とありますが、最高責任者の私に対して折衝中という事実はないので、そういう文章を、もしこういうような気持ちがあって、また、無理だからということを管内の病院にいろいろ指導をするなら、いろいろと折衝中だというなら、責任者が少なくとも最高責任者の私のところへ、来ておる事実があればいいけれども、ないのにこういう文書を流されるのは、私ははなはだ遺憾にたえないと申し上げておるわけです。
  400. 井上一成

    井上(一)分科員 しかし、大阪府でこういう文書が流されているのは事実なんです。都道府県に十分な対応策を講じている、十五日に話し合いをしたと、いま答弁したじゃありませんか。片面でこういうことが現実の問題として起こっておる。大臣いかがなんですか。厚生省として、厚生大臣として、この問題についてどう考え、どう善処されるのですか。
  401. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この問題とおっしゃいますのは、大阪府の病院協会の会長、大阪府の私立病院協会の会長の各会員あての通知についてどういう措置をするかということですか。私がいま申し上げましたように、「当局と接渉中でありますので、」とありますが、まだ最高責任者の私に折衝がない。それで私にどうするんだと言われますと、私どもは三人以上の大部屋については差額ベッドを解消するようにそれぞれの立場の方々とよく交渉をして、そして実を上げていきたい、これが方針でございます。  ただ、基本的に言いますと、保険だけで解消するというのはなかなか困難な実情にあることも事実だ。したがって、他のいろいろ医療行政の面からも厚生省としては協力をし合いまして、そしてこの差額ベッドの解消にまで持っていくように努力したい、こう申し上げておるわけです。
  402. 井上一成

    井上(一)分科員 私の尋ねているのは、この文書云々ということについては大臣は不穏当であるということを言われているから、それは私は、大臣の答えに対してさらに問い返しているわけじゃないのです。こういう事実があって、末端では一月二十八日付の通達趣旨が徹底をしておらない、この事実をどういうように善処されるか、方策をお持ちなんですか、これを聞いているんですよ。
  403. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど局長が言いましたように、都道府県知事、それからその担当の保険課の担当者、保険課長、これらの打ち合わせも十分いたしました。したがって、もしこういうものがあるとすれば、大阪府の方に指導いたしまして、私どもの趣旨が通るように、管内の病院、診療所等についてよく伝達をし、意思の徹底を図って協力を求めるような措置をしなさいという行政指導を強力に、再度いたしたいと思います。
  404. 井上一成

    井上(一)分科員 私は、病院側団体にも確かに問題があると思います。しかし、いままで厚生省が一片の通達だけですべての問題が解決するんだというような甘い認識、そして実情を把握して実態の中に飛び込むんだという意気込み、意欲、そういうものが十分見受けられなかったと私は思うわけです。そういうことであれば、保険負担を解消しようとする厚生省の姿勢に非常に問題があって、そして保険負担が解消できないということは、まさにこれは厚生省の責任が非常に大であると私は思うわけなんです。  だから、いま私は、大阪府の病院協会なりあるいは私立病院協会——先ほど局長は私立大学の病院にも十分な話し合いを持ったという中で、こういう通達を無視した、厚生省に対して、いわば一種の挑戦といいましょうか、そういうような文書が流布されているわけですね。こういうことについて、即刻、大阪府はもちろん、関係都道府県に十分指導を強化されるのかどうか、重ねて私は大臣からお答えいただきたい、こう思います。
  405. 小沢辰男

    小沢国務大臣 指導の徹底を期したいと思います。
  406. 井上一成

    井上(一)分科員 さらに私自身は、大阪において先般、生活保護を受けていらっしゃる患者に対しては保険点数が低いという大きな要因で、医療を拒否する動きがあるかのように聞き及んでいるわけです。このような事態がもし起こったとしたら、あるいはあったとしたら、その医師に対して、医師法を適用してでも強硬な措置を講じられるお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
  407. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、生活保護患者の診療を拒否するということばまだ全然聞いておりませんが、そういう事態が起こらないように、私どもとしては努力をしなければいけないと考えております。
  408. 井上一成

    井上(一)分科員 具体的に、さらに先般二月十四日あるいは二月十六日付で、大阪堺市においてそのような事例が報道されているわけです。それじゃ、この件については厚生省としては調査をされた上で善処をされる御意向をお持ちですか。
  409. 小沢辰男

    小沢国務大臣 生活保護の医療扶助について拒否する動きがあるというお話でございますが、私どもは承知いたしておりませんけれども、そういうことがあるとすれば重大でございますので、早うことがあるとすれば重大でございますので、早速調査をしてみたいと思います。
  410. 井上一成

    井上(一)分科員 与えられた時間がもう残り少ないわけでありますけれども、最後に、医療法第七条は、医師及び医療の公共性をうたっているわけであります。特に医療法第七条第四項では、「営利を目的として、病院、診療所又は」云々、開設の「許可を与えないことができる。」と、営利性を制限しているわけであります。そこでこの「営利を目的として、」という意味は、一体どのように理解をしていいのか。あるいは七条四項で開設の許可を与えなかった例があるのかどうか。また、  一たん開設をされた病院だとか、医師、歯科医師でないものの開設した診療所、あるいは助産婦でないものが開設した助産所で、営利を目的とすることが明らかになった場合、この七条四項の趣旨を徹底するなら、その許可を取り消しし、または期間を定めてその閉鎖を命ずることはできないのかどうか、お尋ねをいたします。
  411. 小沢辰男

    小沢国務大臣 医療法の七条の営利目的の禁止条項ですね、私もかつて医療法の改正に取り組んだ一人でございますが、最近のデータは担当者がおりませんのでわかりませんが、これは営利を目的としてたとえば一般の人が病院事業として開設をする、あるいは診療所を開設するということは、そういう申請があった場合には許可しない、私どもの厚生省の方で許可しないことがあり得るということを書いた規定でございまして、一般的にこういうような規定が医療法の中にありますのは、医業というものは、営利を目的とした他の産業、企業のような行き方は、国民医療上いろいろ弊害があるからこれを認めない、そういう趣旨の立法でございます。  あそこに書いてありますように、営利を目的とするということをどういうふうに認定しているかという問題がいろいろございますので、大体いままでのやり方としては、医師が責任を持って運営をする病院、診療所でなければ、なるべく認めないようにするということでやってきました。それで、もし明らかに営利を目的とするようなものがありました場合には、開設の許可をしない。  それからまた、現に開設後の病院、診療所の運営等について、営利追求の実情があった場合にどうするかということは、これはまた現実の具体的な例を見まして、非常にめんどうな問題ですね、法律上は、営利を目的とするかしないかという点は、非常に判定の困難な問題でございますので、他のいろいろな要件等を勘案した上で、取り消しをするなりあるいは医業停止処分をするなり、その辺は、ただ単なる営利性だけの認定でなくて、いろいろな要素を全部入れまして、総合的に判断をしてきた。かつて一回か何か例があったか知りませんが、私は、いま覚えておりません。
  412. 井上一成

    井上(一)分科員 営利を目的としての意義と、それからそういう七条四項に基づいて開設の許可を与えなかった例があるのかどうか、取り消した例があるのかどうか。
  413. 小沢辰男

    小沢国務大臣 この条項は、株式会社みたいな形で病院、診療所を設けようとするものは認めないよということが大体趣旨でございます。  そういう例があったかどうか、開設の許可をしなかった例、あるいは開設後にそういう判断から取り消しをした、あるいは医業停止処分にした例があるかというお尋ねについては、私はいま正確に記憶がございません。いま医務局なりあるいは担当の局長課長おりませんので、正確にお答えできませんので、いずれまたお答えを申し上げます。
  414. 住栄作

    ○住主査代理 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三月一日午前十時より開会し、労働省所管について審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十三分散会