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1978-02-09 第84回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月九日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    白浜 仁吉君       田中 龍夫君    田中 正巳君       根本龍太郎君    藤田 義光君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       渡部 恒三君    井上 普方君       石野 久男君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       藤田 高敏君    横路 孝弘君       坂井 弘一君    田中 昭二君       谷口 是巨君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       河村  勝君    米沢  隆君       安藤  巖君    寺前  巖君       大原 一三君    小林 正巳君       中尾 弘毅君  出席公述人         日本大学教授  名東 孝二君         国債引受団代表         者       村本 周三君         全国障害者解放         運動連絡会議事         務局長     楠  敏雄君         日本経済研究セ         ンター理事長  金森 久雄君         一橋大学教授  大川 政三君         専修大字教授  鈴木 浩次君  出席政府委員         内閣官房副長官 森  喜朗君         総理府総務副長         官       越智 通雄君         行政管理政務次         官       藤川 一秋君         北侮道開発政務         次官      阿部 文男君         防衛政務次官  竹中 修一君         経済企画政務次         官       前田治一郎君         法務政務次官  青木 正久君         外務政務次官  愛野興一郎君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         文部政務次官  近藤 鉄雄君         厚生政務次官  戸井田三郎君         農林政務次官  今井  勇君         運輸政務次官  三塚  博君         労働政務次官  向山 一人君         建設政務次官  塚田  徹君         自治政務次官  染谷  誠君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     田中 昭二君   矢野 絢也君     谷口 是巨君   河村  勝君     米沢  隆君   藤原ひろ子君     安藤  巖君   小林 正巳君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   田中 昭二君     浅井 美幸君   谷口 是巨君     矢野 絢也君   安藤  巖君     安田 純治君   中馬 弘毅君     小林 正巳君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件について公聴会を行います。  この際、御出席公述人各位一言あいさつを申し上げます。  公述人各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昭和五十三年度予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存します。それそれのお立場から忌憚のない御者見をお述ベいたたくようお願いを申し上げます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず名東公述人、次に村本公述人、続いて楠公述人順序で、お一人約二十分程度ずつ一通り御意見をはお述ベをいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存します。  それでは、名東公述人お願いをいたします。
  3. 名東孝二

    名東公述人 ます最初に、結論から申し上げます。  負の所得税、すなわちネガティブインカムタックス、課税最低限を上げるかわりに年収二百万円以下の人たち補助を与える、こういう考え方であります。その負の所得税一兆円と、最低生活保障のための、曲拠出、金を出さない方々福祉年金アップのための一兆円と、黒字減らしのためにも開発途上国のため、政府開発援助GNPの一%、別枠として確保するようお願いいたします。  あわせて、国債管理円滑化のために、赤字国債の償還十五カ年計画を示したいと考えております。  まず、理由から申し上げますと、現在の失速しかねない日本経済安定軌道に軟着陸させるためには、やはり七%成長を必要とします。しかし、いまの見込みでは五%程度でありますから、その差二%、すなわち名目で計算すると、GNPで大体四兆円ということになりますか、貯蓄率の逆数である乗数を小さく見て二といたしますと、二兆円の追加でよいということになります。  その次は、二兆円の使い方でございますか、基本的には、行財政抜本的改革行財政整理を含む歳出節減合理化を必要といたしますか、不況インフレの共存する長期停滞のもとでは、公平なる痛み分けか最も大切であると考えます。したがって、格差の拡大に泣く低所得者のために、負の所得税最低生活保障のために使うことをお願いします。  まず、負の所得税でございますか、年収二百万円以下に負の所得税補助いたしますと、二千二百万人か助かります。これは課税最低限アップで潤う人は、二百一万五千円以上の約千五百五十万人よりも六百五十万人ほど多くなります。一兆円をこの二千二百万人に補助いたしますと、一人当たり四万五千円少しになります。これはほとんど消費に充てられ、低所得者方々はほとんど貯蓄しませんから乗数効果が高くて、景気のてこ入れになると考えます。  次は、年金問題でございますが、御存じように、厚生年金における賦課方式への移行の問題がございますが、西ドイツの先例にかんがみて、積立金の取り崩しはやはり慎重にやった方がよいと考えます。国民年金抜本的改正も必要でございます。しかし、基本的には、各種年金の間のアンバランスの是正、それから最低生活を保障する基礎年金制、すなわちナショナルミニマム年金制、それと所得比例年金制を確立する必要がございます。  ここでは、他の年金への波及問題を一応おいて、最低生活中心に、最低額の支給、すなわち無拠出福祉年金受給者に限って現在の月額一万五千円プラス一万九千円、したがって一二万四千円とする。差額一万九千円に無拠出受給者四百四十一万人を掛けますと、大体一兆円の追加補助となります。  厚生省は、七十五年度には社会給付費国民所得の約一九%にまで激増すると言っておりますが、しかし、現状よう国民一律の国民皆保険とか国民年金制洗い直して、悪平等を避けて福祉重点化を図ったらいかがでしょうか。ばらまき福祉ではいけないのではないかと考えております。  ちなみに、大蔵省批判に対して反批判を加えておきますと、昨年の戻し税はほとんど効果がなかったというお説でございますが、実施のやり方がまずかったと考えます。せっかくやる以上は、ボーナス以前に大袋入りで手渡すとか、そういうふうにきめ細かくやっていただきたい。三千億円では小出し過ぎる。すなわち、個人消費支出の〇・三%にすぎない。公共事業にしましても、何回となく追加を打ち出してこそ、やっとある程度効果が出るのではないでしょうか。減税でも、毎年連続してやるからこそ、安心して個人消費に回すことができるのではないでしょうか。欧米各国とも、個人消費を刺激するため大幅な減税を実施しつつあることを忘れてはいけません。日本の為政者の方々は、世界的停滞の実態を少し甘く見過ぎておるのではないでしょうか。公共投資拡大は、下手をすると調整インフレを誘発するとともに、これまでの生産中心輸出主導型の産業構造を温存して、再び行き詰まることになるのではないでしょうか。  もし財源に制約があるというのであれば、捻出可能な範囲で最下層から実施すれば、相当以上の効果があるのではないかと考えます。  また、担税率が低いということを大蔵省は言っておるようでございますが、これに対しては、治めやすい日本行財政費はアメリカの三分の一、すなわち三〇%の三分の一の一〇%でよい、現在の約二〇%をさらに節減の要あり、これは私が言っているのではなくして、あのおえらい松下幸之助さんがそういうことを言っておりますので、これを引用いたしておきます。  それから、今度は二兆円調達の方法でございますが、一般消費税よう一般増税ではなくして、選択増税の問題であると思います。何を選択するかといいますと、行財政の行き詰まった今日、緊急の課題は、この際原点にもう一回戻りまして、総合申告制総合課税制に立ち戻るということじゃないかと思うのです。すなわち、だれもが平等に申告できて、現在サラリーマンであれば年末調整でおしまいというわけでありますが、漏れなくすべての所得を上乗せして累進税率を適用する。現在御存じようにタックスイロージョン、税の浸食が非常に多く行われております。そういったように、すべての所得を上乗せして累進税率を適用する、このやり方に復元するといいますか、復帰することであると思います。  一般消費税については、消費社会的恩恵によるから消費課税は当然であるというお話もございますが、御存じように直接税中心英米系の国では、すなわち日本もこれに入りますが、まず所得課税の不公平を是正して、資産課税を行って、しかる後に消費課税という順番になるのではないでしょうか。  それで、利子所得配当所得譲渡所得等総合課税化を図るためにも、まず富裕税の新設を行います。西ドイツ御存じようにすでにやっておりますし、わが国の高い貯蓄率を低めるという効果もあるのではないでしょうか。ここでは余り金額を取る必要はなくて、金額よりも洗い直すことによって資産を把握する、脱税を把握するということがねらいじゃないかと思うのです。そうして有価証券売買益金課税とともにすべての総合課税化を行う。すなわち、原点に戻りまして、この際あか落としをやったらどうかということでございます。同時に、租税特別措置の総洗い直しを行います。さらに、法人税実効税率国際並みにする。いま大体二%ほど低いと考えますので、これをやはり国際水準に並べた方がいいのじゃないかと考えるわけです。これらの一連措置によって、一時的な税収の落ち込みを考慮しましても二兆円の増収となろう。この試算内容はもし御質問があればお示ししたいと思いますが、これらの一連措置によって二兆円の増収となろうと考えています。これを五十三年度から徐々にやりまして、五十六年度からフル回転する。余りショックがきついといけませんから、徐々にやっていくという考えであります。  他方、特例赤字国債の累計を見ますと、政府案の振りかえに伴う一兆五千億円増と仮定しますと、五十三年度末で十六兆二千億ほどになります。これに五十四年度、五十五年度、五十六年度と、やはり赤字国債を出さざるを得ないと考えますので、これが合計が九兆七千億円追加されるといたします。それからまた、経済審議会大蔵省財政収支試算にならいまして、それとの比較対応のために五十七年度からは赤字国債発行はなしといたします。それで赤字国債合計は約二十六兆円ということになりますが、前に申し上げました増税措置が発効いたし始めますと、五十七年度末には二十兆円程度になります。したがって、以後十年ほどすれば、これで大体償還できるんじゃないかということになるわけです。細かい数字は時間の関係で省略いたしましたが、御質問があればお答えしたいと思います。  それで、最後に要望を二つほど申し上げたいと考えます。  一つは、なぜ勤労者にだけ必要経費を認めないかということでありますが、これは理論的にも非常に根拠が薄弱だと言わざるを得ないわけであります。また、生活費非課税の原則からしましてもおかしいし、また、費用がかからない問題じゃないかと思うのです。何億円なんて金はかからないと思うのです。そういう意味で必要経費の実額控除制ですね、かかった費用申告する、その申告の併用ですね。別に源泉徴収制を否定するわけじゃございませんので、せめて申告するぐらい認めてくれたっていいんじゃないか。なぜならば、現在総合申告制ですから、申告の自由をなぜサラリーマンからだけ奪うかということであります。なぜサラリーマンにだけ必要経費を認めないのかと旧いうことを申し上げたい。  第二番目は、行政整理等からはみ出た者には技能習得をさせて、海外協力隊に参加していただいたらどうか。現在のように帰ってきた者は就職の口にも困っておるというようなことでは困るのでありまして、大いに優遇してあげたらどうかと思うのです。開発途上国援助を本格化するため、まずもって政府開発援助、これを現在の〇・三%なんということじゃなくして、GNPの一%にまで高めることをお願いしたいと思うわけであります。こういうような、いわゆる第二の開国だと思うのでありますが、幕末、明治以来の第二の開国をしてこそ最も望ましい黒字減らし対策である、こういうふうに考えるわけであります。  時間は少し余ったようでございますが、大体の要旨を申し上げた次第でございます。どうも失礼しました。(拍手)
  4. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、村本公述人お願いをいたします。
  5. 村本周三

    村本公述人 ただいま委員長から御指名をいただきました、第一勧業銀行の頭取を務めております村本でございます。  本日は、国債引受団を代表いたしまして、五十三年度予算案につきまして意見を申し述べるようにとのことでございますので、五十三年度予算案に関します概括的な考え方を申し上げますとともに、予算運営等につきましての私ども意見あるいは希望を若干申し述べさせていただきたいと存じます。  まず最初に、五十二年度予算を取り巻くわが国経済現状について見ますと、御案内のとおり、思わざる海外からの諸要因もございまして、景気回復は予期どおり進んではおりません。五十二年度実質成長率は、政府実績見込みによりますと五・三%ということであります。鉱工業生産も昨年一年間を通じて一進一退の状況にありまして、去る十一月に、ちょうど四年ぶりにようやく石油ショック時の水準回復したというありさまでございます。  こうした景気回復のおくれを反映いたしまして、昨今のわが国経済におきましては各方面摩擦現象が目立ってきております。  第一に、企業経営につきましては、このところ一段と困難の度が加わってきております。主要企業に関します日本銀行の調査を拝見いたしましても、また上場会社の決算の状況を見ましても、企業収益は五十二年度上期から再び低下を見せておりまして、構造不況業種は申すに及ばず、多くの業種企業経営はきわめて苦しい状況に直面しておると申してよろしいかと存じます。全国銀行協会連合会調査資本金百万円以上の法人取引停止処分件数を見ましても、昨年は一万八千七百件ということで、過去最高でございました。  その二は、雇用情勢の悪化であります。昨年を振り返りますと、完全失業率は二%、失業者は百十万人という高水準にありましたし、有効求人倍率は〇・五六倍という低水準でありました。ちなみに、年間を通じて失業人口が百万人を超す水準にあったということは戦後初めてのことでございますし、有効求人倍率の低さも統計開始以来のことであると承っております。  これに加えて第三に、対外的な摩擦増大ということがございます。昨年におきまして、わが国輸出の急増をめぐる欧米諸国とのトラブル、あるいはわが国経常収支黒字幅増大をめぐるトラブルが目立ってきていることは、御高承のとおりでございます。その背景にはさまざまな原因がございましょうが、やはり国内景気の不振による輸出圧力増大及び輸入の伸び悩みというところに最大原因があろうかと思います。  このようわが国経済現状について見てまいりますと、景気の速やかな回復を図り、それによって内外均衡解消を図ることが、五十三年度におけるわが国経済最大課題であるというふうに考えるものであります。  そこで、五十三年度予算案につきましても、まずこうした視点、すなわち速やかな景気回復とそれによる内外均衡解消という当面の最重要課題に、この予算案がいかにこたえているかという視点から見ることが大切であろうかと存じますが、結論を申し上げますと、厳しい財政事情の中で、景気浮揚格段配慮が加えられた内容であるというふうに存じます。  すなわち、まず財政規模でございますが、一般会計予算規模は三十四兆二千九百五十億円、前年度当初予算に比べ二〇・三%の増加となっておりまして、前年度に比較した伸びは、五十一年度の一四・一%、五十二年度の一七・四%を大きく上回っております。政府経済見通しによります五十三年度名目成長率は一二%ということでありますから、これと比較いたしますと、景気浮揚型の積極予算であるということが言えるかと存じます。こうした姿勢は財政投融資計画にも貫かれておりまして、計画規模は十四兆八千八百七十六億円、前年度に比較した伸びは一八・七%、やはり五十一年度及び五十二年度の当初計画伸び、並びに五十三年度成長率見通しを上回っております。  次に、財政支出内容でございますが、景気刺激効果が大きいと目される公共事業関係費に重点的に財源が配分され、一般公共事業につきましては、前年度当初予算比三四・五%増の五兆一千八百三十五億円が割かれております。なお、五十三年度予算案におきましては、経常部門の前年度当初予算に対する伸びを一七・四%に抑える一方、投資部門伸びは三一・七%という高いものになっておりまして、総じて景気浮揚に対する配慮がうかがわれるのであります。  以上、見てまいりましたように、景気浮揚という観点から見ますと、五十三年度予算案は、厳しい財政事情の中で格段努力が払われていると評価するものでありまして、重要なことは、五十三年度財政政策運営の中でこの予算案を有効に生かしていくことにあると思われるのであります。  そこで、潜越でございますが、五十三年度財政政策運営に関しまして若干の意見を申し述べさしていただきますと、第一に、予算の迅速な、かつタイミングのいい執行が必要であろうと存じます。さきに成立しました五十二年度第二次補正予算とあわせまして、政策当局におかれましては公共事業等につき十五カ月予算として執行に当たられるというふうに伺っておりますが、この予算に盛られた公共事業等を、物価の上昇などをもたらすことなく、迅速かつ円滑に執行していくためには相当の工夫と努力が必要であろうかと思う次第であります。  また、以上のこととも関連いたしますが、地方財政との緊密な連携が重要なポイントになろうかと存じます。特に執行面では十分なチームワークを組んでいただく必要がございましょう。  次に、マクロの経済動きばかりでなく、ミクロの動きにも十分配慮した、きめの細かい政策運営が必要であります。構造不況業種に対する取り組み、円高等により打撃を受けている中小企業に対する配慮、雇用問題に対する対策等は、とりわけ重要であろうかと存じます。  なお、この予算案によって、わが国経済を速やかな景気回復軌道に乗せることができるかという問題につきましては、御案内のとおり、五十三年度わが国経済を取り巻く環境は非常に厳しいものがございます。加えて、内外に不確定要因も多く、見通しがきわめて困難であるという事情もございます。したがいまして、これだけの予算案をもっていたしましても、わが国経済回復軌道に乗せることは必ずしも容易ではないと予想される次第でありますが、私どもといたしましては、適切な執行によりまして早期に景気浮揚効果があらわれることを期待いたしますと同時に、私どもの側面からできる限りの御協力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  以上、五十三年度予算案歳出面につきまして、もっぱら景気浮揚という観点から申し述べてまいりましたが、改めて申し上げるまでもなく、五十三年度わが国経済課題は、景気の速やかな回復のただ一点にとどまるものではなく、また、予算役割りはきわめて幅広いものであります。したがいまして、五十三年度予算案につきましては、福祉の充実という観点から、国際協力の推進という観点から、あるいはその他さまざまな観点からの見方なり評価も必要であると申せましょう。しかしながら、そういう点につきましては、それぞれ御専門の方がいらっしゃることと存じますので、本日は省略さしていただきまして、次に、歳入面の問題、とりわけ私ども国債引受団として最も大きな影響のあります国債の問題につきまして、意見を申し述べさしていただきたいと存じます。  御存じのとおり、五十三年度予算案におきましては十兆九千八百五十億円の国債発行計画されておりますが、これは前年度当初予算の八兆四千八百億円を二兆円以上上回り、また、前年度第二次補正予算の九兆九千八百五十億円をも一兆円上回るという膨大な額であります。したがいまして、五十三年度予算案における国債依存度は三二%に達しております。前年度あるいは前々年度の当初予算における二九%台を上回っておるわけであります。なお、この国債依存度につきましては、本年度から五月分税収年度所属区分変更が予定されておりまして、この変更を、織り込まない場合には三七%にも及ぶということであります。わが国の過去の歴史に照らしてみましても、また欧米諸国の実情と比較してみましても、まことに異例としか申し上げようのない金額及び比率でありまして、余儀なき事情によるとは言え、このような大量の国債発行につきましてはきわめて心配をいたしておる次第であります。  ここ数年来、各方面で盛んに議論されておりますので、私がここで改めて申し述べるまでもないとは存じますが、財政運営を大量の国債発行に依存して行うことの危険性あるいは弊害等につきましては、やはり十分に留意していただく必要があろうかと存じます。  問題の第一は、国債発行に過度に依存した財政運営の進行によって財政硬直化を招き、ついには運営自体もきわめて困難に陥るということであります。このことは、五十三年度予算案におきましてすでに国債費が三兆二千億円、歳出の九・四%に達していることを見ましても、十分に予測されるわけであります。また、国債発行に依存した財政運営が、どちらかと言うと歳出合理化効率化についての努力を鈍らし、財政放漫化を招きやすい傾向を有していることも注意しておかなければならないと存じます。  問題の第二は、国債大量発行インフレーションにつながりやすいということであります。この点につきましては、わが国経済が目下巨額のデフレギャップを抱え、卸売物価、消費者物価ともに安定した状況にあることを考えますと、当面は心配しなくてもよいかとも思われますが、巨額の国債発行による財政支出の増加によりボトルネックが発生いたしますと、一部公共投資関連資材について値上がりの懸念もございましょうし、また、将来このよう財政の体質が定着いたしますと、マネーサプライの増加を通じまして物価全般の上昇を招く危険性があることにつきましても、十分警戒しておく必要があろうかと思われます。  第三に、いわゆるクラウディングアウトの問題がございます。五十三年度におきましては、約十一兆円の国債のほかにも、一兆三千六百億円の政府保証債、六兆二千二百億円の地方債が発行される予定になっておりまして、その他借入金等を合わせますと、公共部門の資金需要は二十兆円を超すものと見込まれております。現在のところ、景気回復のおくれを反映いたしまして民間の資金需要が落ちついておりますから、まだ問題は表面化いたしておりませんが、わが国の金融構造の仕組みから見て、資金偏在という問題もございますので、景気回復が進むにつれまして、民間の資金需要が急速に圧迫される可能性は十分に考えられるわけであります。  このよう危険性あるいは弊害が国債大量発行により生じることを考えますと、基本的にはやはり財政の健全化を目指す必要があると申せましょう。これを国債発行のあり方に即して申し上げますと、財政法第四条に基づく建設国債発行に限定するという原則を確認し、いわゆる赤字国債発行は当面の応急的措置として極力抑制するとともに、できるだけ速やかにその圧縮を図る必要があるわけであります。中長期的観点から財政支出内容を十分吟味、検討するとともに、国民の受益と負担の関係についても見直しを図って、一日も早く財政の健全化を図っていただきたいと考えている次第であります。  ただ、このように申しましても、当面五十三年度につきましては、大幅な財源不足の中でわが国経済の立て直しを図るというのが緊急の課題でございますから、大量の国債発行も万やむを得ない措置であろうかと存じます。私どもといたしましては、国債の円滑な消化に最善の努力を払っていく所存でございますが、一方で、現行方式による国債の引き受けは多くの金融機関において資金の固定化を招いておりますし、また、収益面におきましても先行き大きな問題をはらんでおりまして、私どもの負担能力は限界近くに達しているというのが現状でございます。つきましては、関係御当局におかれまして、以下申し上げる諸点につきまして特に御配慮いただきますようお願い申し上げておきたいと存じます。  その第一は、国債の引き受けについてでございます。五十三年度につきましては、まことに残念ながら資金運用部引き受けの予定がないというふうに伺っておりますが、公的部門におかれましても応分の負担をわれわれの側からはお願いいたしたいと存じます。また、民間部門につきましては、個人、機関投資家を含め、さらに多様な消化層の拡充を図り、かつ引受団各員の引き受け能力の強化のためのいろいろな施策の展開もお願いしておきたいと存じます。  第二は、国債発行条件についてでございまして、適正な市場の実勢を反映することが基本でございますが、その際にも、長期投資としての妥当な水準を目指しつつ、弾力的に設定していただきたいということでございます。  第三は、国債の流動化についてでございます。国債の流動化を容易ならしめるために、流通市場の整備拡充を初めとする諸施策を展開していただきたいということであります。  これらの施策は、未曾有の規模に達することになる五十三年度国債を円滑に消化するためにはぜひとも必要なことであり、また、大量の国債発行がもたらす弊害を予防し、これに歯どめをかけるという観点から見ましても、きわめて重要なことであろうかと存じます。関係御当局におかれまして、こういう諸点について十分に御理解を賜り、応分の御配慮をしていただきたく、この席をおかりいたしまして御要望申し上げた次第であります。  以上、五十三年度予算案につきまして所見を申し述べさせていただきましたが、改めて申し上げるまでもなく、私どもといたしましては、政策の運営に十分協力し、景気の速やかな回復内外均衡解消を図るというわが国経済課題を達成するために、また、さまざまな社会的な要請にこたえ、国民生活の向上に寄与するという、私どもに課せられている本来的使命を果たすために最大限の努力を払う所存でございます。  最後に、国債引受団の中核となっております銀行の経営について一言申し上げたいと思います。  銀行といたしましては、今後とも公共債の引き受けに御協力申し上げることはもちろんでありますが、融資につきましても、安価良質な資金を広く供給することによって、企業経営内容の改善あるいは発展に寄与してまいりたいと思っております。中小企業向け融資には特に配慮いたしまして、健全な経営を行っている企業が資金繰りの圧迫のために倒産したりすることがないよう、万全の努力をしていく所存でございます。  また、住宅ローンにつきましては、国民の要望にこたえまして十分な資金供給ができるよう努めてまいりたいと思っております。  さらに、近年、銀行に対する要請は、有利な貯蓄手段の提供や生活の向上のためのさまざまな金融サービスの提供から、国際、いわゆるインターナショナルな業務に至るまできわめて広範にかつ多様化してまいっておりますが、私どもといたしましては、こうした社会のニーズに可能な限りこたえてまいりたいと考えている次第でございます。  御高承のとおり、最近におきまして、銀行経営はきわめて厳しい状況に立ち至っております。かねてから私どもは、経営の効率化につきまして最大限の努力を払ってまいりましたが、何分にも貸出金利の引き下げや公共債の保有の増加に伴いまして資金の運用利回りが低下いたしております。これに加えて、預金金利が下方硬直的であることや、やむを得ない諸経費の増大によりまして資金の調達利回りは十分に低下せず、ために利ざやは大幅な縮小を見ております。また、景気回復のおくれに伴い経営内容の悪化する企業が増加しておりますが、これにつれて銀行の貸し出し内容も悪化傾向にあることは否めません。さらに、公共債保有の増加や住宅ローンの拡大に伴い資金運用の長期化が進んでおるわけでありますが、これも資金調達とのバランスを考えれば、いささか問題ありと申さざるを得ないのであります。  これらの諸点につきましては、かねてから行政御当局にはよく御説明申し上げ、抜本的解決策といたしまして、資金吸収パイプの拡充強化や内部留保の充実等の諸施策についてお願い申し上げておりますが、皆様方におかれましても、銀行経営の現状とその果たしている役割りにつき、さらに一層の御理解と御関心をお持ちいただき、御協力を賜りますようお願いいたしたいと存じます。  申すまでもありませんが、銀行経営の根幹は、国民資産を安全に預かり、信用秩序を維持することにあります。私どもといたしましては、今後とも一層の経営努力を払い、国民の信頼をいささかも揺るぎないものとする所存でありますが、その信頼をさらに強固なものにするためには、ぜひとも皆様方の御指導、御尽力をいただきたく、一言申し添えさせていただいた次第であります。  これをもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、楠公述人お願いをいたします。
  7. 楠敏雄

    楠公述人 全国障害者解放運動連絡会議の楠です。私は現在、大阪の天王寺高校という、目の見える人たちの普通の公立高校で英語の非常勤講師をしております。  私は、満二歳で、医者の治療ミスがもとで両眼の視力を完全に奪われてしまいました。以後三十年余り、視力障害者として生活をしてきております。その中で私が自分自身さまざまな体験をしてきたわけですけれども、本日は、その私自身の体験を通して、そして私の仲間の多くの障害者の体験と切実な生き方を皆さん方にぜひとも御理解いただき、そして具体的な要望をさせていただきたいというふうに考えております。  まず最初に、私たちが現在進めております障害者解放の運動について少し述べさせていただきたいと思います。  私たち障害者というのは、これまでの社会の中で、いわばあってはならない存在、不幸な存在とされてきたと思います。周囲の人たちが口にする言葉はいつも、かわいそうに、気の毒に、大変でしょうという言葉で、それが最大限の好意でしがなかった。確かに、いまの世の中で私たち障害を持った者が生きるということは、きわめて困難でありますし、大変なことでもあります。しかしながら、それは単に私たち自身が障害を持っているから大変なんだということ以上に、社会や政治や、そして私たちを取り囲む人々が、むしろ私たちを不幸な存在、私たちが生きるのを大変にしてしまっているのではないかというふうに言わざるを得ないと思います。  私たちは、いまこういったこれまでの障害者に対する考え方に対してはっきりと、そうではないんだ、私たちが障害者として生きていく、障害者であって何で悪いんだということを言える自分たちになろう、私たち障害者がどんなに他人から醜いと言われ、気の毒と言われ、そして生きていない方がいいんだ、死んだ方がいいんだと言われても、なおかつ生き続ける、堂々と地域の社会の中で生き続けるということを、はっきりといま社会の人たちに宣言して、そこから運動の第一歩を踏み出そう、それが私たちの運動の原点なんだということを理解していただきたいと思うわけです。これはやはり障害を受けた者でなければなかなか理解しにくいことかもしれませんけれども、私たちは、気の毒だ、あるいは保護してあげる、何かをしてあげるという扱いに対して、もうたくさんだというふうに言わせていただきたい。私たちも一人の人間として生きていきたいんだということをあえて強調したいと思います。そのためにも、これまでのように、単に障害者に対して金を与えておく、あるいはどこかりっぱな施設をつくって、そこで一生安楽に暮らしたらいいんだというふうな発想に対して、そうではない、地域の社会の中でどんなにどろどろになろうとも、みんなの中で生きていきたいんだということを強く訴えておきたいと思うのです。  そういった観点から、私たちは、今年度予算及び政府の障害者に対する諸政策に対して、具体的な要望を幾つか述べさせていただきたいと思います。  今年度予算は、言われておりますように、ずいぶん大型の予算だと言われていますけれども、事福祉予算について見ると、これはきわめて小型の、私たちから見るとやはり粗末な予算でしかないというふうに言わざるを得ません。  たとえば障害者福祉年金一つとりましても、現在、私たち一級で二万二千五百円、二級で一万五千円でありますが、これが一級では二千三百円、二級では千五百円アップするというふうに伺っています。これでは一〇%にも満たない上げ幅で、きわめてこの物価高の世の中では生活の一部にするにも足りないと言わざるを得ません。しかも、この年金をもらうと、生活保護を受けている障害者の場合、収入認定をされてしまって、生活保護が非常に削減されてしまうという現実もあるわけなんです。また、御存じと思いますが、所得制限というのが大幅にしかれておりまして、このことによって、やはり障害者が生活が苦しい状態に置かれているということも事実です。ですから、こういった年金に関しても、少なくとも生活できる年金、障害者が地域の社会の中で自立していける年金をぜひとも実現していただきたい。  それと同時に、障害者に対する介護料、とりわけ重度の障害者、他人の介護が必要な障害者に対する介護料が現在わずかに支給されていますけれども、この介護料に関しても、大幅に増額をしていただかなければ生きていけないということが言えると思います。  また、障害者の介護人事業についても、現在、ホームヘルパーという形で、いわばパートタイマーの人たちを使用して、きわめてわずかの介護体制しかできていない。一週間に一度か二度、わずか二、三時間の介護だけで終わっている。これでは安心した自立生活はできないと思います。ですから、介護人を正式な公務員並みの位置づけをして、この介護人事業というものをきっちりと実現していただきたいと思います。  さらに、障害者が生活するためには住宅の問題が不可欠ですけれども、私自身もそうですけれども、障害者がアパートや下宿を借りようと思うと、ほとんど何度も何度も屈辱的な思いをさせられています。断られる。きわめて体裁のいい断り方をされて、転々とせざるを得ないわけです。しかも、普通の家ではきわめて住みにくい、生活しにくいわけです。障害者用住宅がきわめて少ない現実の中で、障害者自身が生活しやすい住宅、単独でも入れる住宅を早急に数をふやしていただきたい。それも一般の住宅の中に、こういった障害者住宅を大量につくっていただきたい。これは一般の人たち以上に、やはり生死にかかわる切実な障害者自身の要求なわけです。  こういった生活の要求を、まだまだたくさんありますけれども、重要な点を二、三述べてみました。  次に、雇用問題ですけれども、一昨年身体障害者雇用促進法が改正されまして、障害者の雇用率は大幅に伸びるだろうというふうに宣伝されましたけれども、先日労働省がお認めになったように、実際にはほとんど効果が上がっていないという現状です。とりわけ重度の障害者の雇用、労働問題というのはきわめてなおざりにされていると思います。  また、私たち視力障害者にとって、仕事はあんま、はり、きゅうにこれまで限定されてきました。盲はあんまだというふうに言われて、憲法で保障されているという職業選択の自由はほぼ奪われていました。ところが、最近このあんま、はり、きゅうにさえ、目の見える人たちがどんどん進出してきている。そして、これについては厚生省も、職業選択の自由があるのだから禁止できないのだというふうにおっしゃっている。これでは私たち盲人の生き方、生活というのはどうなるのか。ここ二、三年、今度は目の見える人たちのためのはり、きゅうの大学までできている。  こういう現状の中で、盲人の仕事そして重度の障害者の雇用、労働の問題というのはきわめて切実な問題になってきていると思います。従来のように障害者を職場に合わせる、適応させるのではなくて、職場を障害者に適応できるように、障害者が職場で働けるように職場を改善する、労働内容を点検するといった政策を根本的にとらない限り、重度の障害者の雇用の問題というのは絶対に前進しないというふうに考える次第です。  次に、教育問題に移りたいと思います。  最近、教育の荒廃ということが盛んに叫ばれる中で、ようやく私たち障害児・者に対する教育問題がクローズアップされてきたわけですけれども、そういう中で私は、これまで盲学校というところで十数年間教育を受けてきました。家から三時間ほど離れたところで、両親や兄弟、近所の子供から切り離されて教育を受けてきた私は、いつも、どうして目の見えない者は特別なところへやられなければならないのか、どうして両親や兄弟や近所の友だちと同じところで勉強ができないのかということの疑問を持ち続け、不満を持ち続けてきました。これは私だけではなく、私の仲間は多くがそういう希望を切実に持っているところです。  ところが、実際のところ、教育現場では、障害者というのはまず教育対象外とされている例が圧倒的に多い。御存じの方も多いと思いますけれども、学校教育法の中で就学猶予、免除というものがあって、そのために多くの障害者が教育を受ける権利を奪われてきたということは言うまでもありませんが、同時に、教育の場を選ぶ権利、障害児・者及び両親が教育の場を選ぶ権利さえも奪われてきているということは紛れもない現実なわけです。  そういう中で来年度、一九七九年、昭和五十四年度から養護学校の義務制化というのが実施されようとしているわけですけれども、きわめて残念に思うのは、この国会で、聞くところによりますと、養護学校義務化の問題というのはきっちりと論議されたことがない。その全貌や問題点が全く明らかにされていないということであります。私たちは、こういった現状に対して、いま一度私たちの立場から問題を投げかけてみたいと思います。  この養護学校義務化というのは、養護学校の設置義務とそれから養護学校への就学義務の二つからなっているわけです。で、とりわけこの養護学校への就学義務についてですけれども、私たちは障害児教育が一日も早く義務化されなければならないというふうには考え、主張し、運動も続けてきましたけれども、養護学校への就学まで義務化される、強制されるということに関しては反対をしているわけです。障害があるということで、なぜ、先ほどからも言っていますように、地域の中で皆と一緒に学ぶ権利がないのか。義務化は、まさに都道府県に対する設置義務のみならず、障害児・者及び親に対する養護学校への強制分類、そういった強制まで行おうとしている。このことに対して大きな怒りを抱かざるを得ないわけです。  ここで、文部省がこのいわば義務就学の強制ということに関して幾つか通達あるいは文書を出しておりますので、簡単に引用させていただきたい。  たとえば文部省の編集しております「特殊教育執務ハンドブック」という本の中にこのように書いてあります。「盲児または聾児が小学校または中学校へ就学している場合には就学義務を履行したことにならない」というふうにはっきりと書かれているわけです。つまり、障害児が教育権を認められるというのは養護学校、特殊学校でなければだめなんだというふうにはっきりうたっている。さらに、昭和三十八年の十二月二十三日に文部省初等中等教育局長の通達の中にこう書かれているわけです。盲者、聾者が小学校、中学校へ就学しているそういうケースについては、「保護者の無理解、盲者または聾者の判別の不適正、就学猶予または免除の措置の不適正、事務処理の不徹底等のため」であるというふうに断定しておりまして、その上で、このような事態は憲法、教育基本法の精神からも、また本人の幸福の上からも遺憾のことであります。というふうに述べられているわけです。  ですから、文部省の方針として、あくまで障害児・者はそういった特殊学校へ行かなければならないんだ、行かない者は教育を受けていることにはならないんだ、認めないんだというふうな姿勢を打ち出しているわけです。このことに対して私たちは全く納得できない。障害者、親の地域の中でみんなと一緒に学びたいという要求を一方的に踏みにじる、無視するものであるというふうに考えているわけです。  しかも義務化というのは、就学猶予、免除をなくするためなんだというふうに宣伝されていますけれども、実際には、たとえば五十一年の十月十四日、これは参議院の文教委員会で発言があったそうですけれども、当時の文部省の初等中等教育局長の答弁の中で、昭和五十四年度に猶予、免除の対象となるであろう子供さんは、大体現在程度、一万五千ぐらいの数だと推定されるというふうにおっしゃっているわけです。ということは、養護学校が義務化されても就学猶予、免除の数は大して変わらないということを、文部省みずからが述べられているわけです。  こうしますと、何のために義務化が行われるのか、私たちからすると、これは障害者をますます隔離するために、現在一般の学校で学んでいる障害者に対しても養護学校へ行けということを強制するためにやられるのではないかというふうに思わざるを得ないわけです。私たちは、地域のみんなと一緒に勉強をしたいという障害者自身の要求を認めていただきたい。  さらに、障害者のためだというふうによくその養護学校義務化というのが言われますけれども、ここで言われる障害者のためというのは一体何なのか。確かにあれができるようになった、これができるようになった、そういった特殊学校へ行けば専門的な設備、専門家が多いと言われますけれども、そういう中で、それでは障害者が本当に人間として生き生きと成長していけるのかということ。確かに、いまの地域社会の中で障害者が生きる、地域の学校の中へ障害者が行くということは、きわめて大変なことです。しかしながら、その大変さに打ちかたない限り、障害者が生きていくということ自体不可能になってしまう。ぬくぬくとした温室的な学校で障害者が育ったところで、決して社会では通用しないという厳しい現実があると思うわけです。そういう意味で、地域校区の学校へ障害者が行くということは障害者自身の成長にとってきわめて重要である。さらに、現在の競争、能力優先の社会の中で、教育体制の中で、いわゆる健常児と言われる一般の子供たち自身も、障害児とのかかわりを通してともに生きることの大事さ、ともに育つことの大事さというものを身につけて育ちつつあるという実践が数多く報告されているわけです。そうして、こういった健全児と障害児がともに育ち、ともに生きていく、ともに協力し合いながら教育し、学習していくということを通して、現在の荒廃した教育も徐徐にではあれ変わっていくのではないかということを、私は強く訴えたいと思います。  とりわけこの中で、先ほどからも何度も申し上げておりますように、障害児・者本人と親が自分の教育の場を選択する権利、選ぶ権利が全くなく、強制的に養護学校へやられようとしていることに関しては絶対に認めがたい。この選択権というものをぜひとも認めていただかなければ困るということを申し上げておきたいと思います。  そういった観点で、私は今後政府の障害者政策、そして皆さん方の障害者に対する認識をもう一度考え直していただく中で、障害者が地域社会の中で一人の人間として生きていくということを、その意義をはっきりとお認めいただきたいということを申し添えておきたいと思います。  最後に、これは直接予算とは関係ありませんけれども、現在、仙台の拘置所に、私たち障害者の仲間である赤堀政夫さんという人が二十四年間拘置されています。彼は二十四年間殺人犯で拘置されていますけれども、無実だ、自分はやっていないということを主張し続けておりますし、現在、新たな彼の無実を証明する証拠が次々と出てきているようです。したがって、ぜひとも関係当局の方々は慎重に調査していただいて、赤堀さんの無実を証明していただきたいということを、障害者の仲間としてこの場をかりて訴えさせていただいて、私の公述を終わらせていただきたいと思います。(拍手)
  8. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。
  9. 中野四郎

    中野委員長 これより各公述人に対する質疑を行います。  質疑は、お一人、答弁を含めて十分程度お願いを申し上げます。  申し出順がございますから、加藤六月君。
  10. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 公述人の皆様には大変貴重な御意見を開陳していただきまして、私たち予算を審議する上について大変参考になりましたことをお礼申し上げます。  時間が限られておりますので、私は主として村本公述人に二、三点お伺いさせていただきたいと思うわけでございます。  ことしの予算がねらっておるものは、第一点として、七%の成長をどうしても達成しなくてはならないということでございますが、当委員会においてもいろいろ議論になりましたのは、民間研究団体の経済成長率というものと政府が言っておる七%の間に相当な違いがある。ある研究団体は五・六%ぐらいだろう、あるところは五・三だ、あるいはあるところは六・一ぐらいになるんじゃないか、まあいろいろの数字が挙げられております。私たちは、総理が所得表明にも申されたように、民間資金まで総動員して七%経済成長を達成したい、こういうことでございますが、村本公述人の第一勧銀関係の研究所で、もしそういった問題についての調査研究が行われて、五十三年度のこの予算を見た上で七%達するか達しないかの調査研究が行われておるならば、ひとつその点についての御説明をお伺いいたしたい。これが第一点でございます。  それから第二点は、私たちは七%経済成長の中核としては、民間個人消費増大というのが非常に叫ばれております。ところが反面、資源有限時代という言葉が石油ショック以来大変厳しく言われました。消費の奨励ということと貯蓄の奨励ということについて、七%経済成長する場合には民間個人消費が活発になってくれなくては困る。しかし、それが過去の高度経済成長時代と同じよう消費のパターンで消費増大するということは好ましくないのじゃないだろうか。ここら辺については、率直に申し上げましていろいろ悩んでおります。村本公述人の、消費というものと貯蓄というものとの関連、それから考え方等についてお教えいただきたい、こう思うわけであります。  その次は、国債引受団代表者としておいでいただいたわけでありますが、私たちまだ子供であったのですけれども、大東亜戦争中に戦時国債をずいぶん引き受けました。それが戦後のああいう一連の処置で有名無実になってしまったわけでありますが、最近、国債の膨大な発行をいたしておりますときに、年寄りの方に聞きますと、あの後遺症が残っておるようでございます。君たちが景気振興策にいろいろ国債制度をやるけれども、われわれはこういう苦い経験があるのだということを、お年寄りから聞くことがございます。今回、昭和四十一年以来いろいろなかっこうで国債を引き受けていただき、これを消化していただいておる代表団として、何かそういう大東亜戦争における戦時国債の打ち切り問題というのが今日の国債の消化に影響、後遺症があるかないか、もし後遺症があるとするならば政府はどういうPRをしなくちゃならないか、ここら辺についてお教えいただきたい。  以上、お願いします。
  11. 村本周三

    村本公述人 ただいまの加藤先生の御質問についてお答えいたしたいと思います。  第一点は、七%成長率ということについてどう考えるかということでございますが、第一勧業銀行といたしましては、成長率がこうだという数字を別に公表いたしておるわけではございません。しかし、もちろん内部で研究はいたしております。  率直に申し上げまして、一人のエコノミストとして考えますと、このたびの政府の七%成長という目標はなかなか並み並みならぬ努力を要するものだと考えております。  私どもがさように考えます点、特に政府のお見通しとの違いの一番大きな点は、設備投資それからまた個人消費がどのくらいふえるか、そして第三番目には住宅投資があれほどふえるであろうか、ふえることは申すまでもないけれども、あれほどふえるであろうかということの三点であろうかと思います。  私ども、設備投資につきましては、現在の需給ギャップということを考えますと、そのままにしておいて設備投資がふえていくとは思えないわけでございます。しかし、一方で現在、需要の拡大ということが国家として必要でありますならば、その需要がわれわれだけでなく、子々孫々に至るまで利益をもたらすようなことに使われるならば、それは結構であろうと思います。これが現在の、たとえば民間の電力がこれからだんだん必要になっていくことは明らかでございますから、需要を起こしても矛盾の起きないいまのうちにそういう設備投資をしっかりしておくのがいいということについては、私どももまことにそうだと思います。ただ、それだけで、ことし政府が目標としておられるような一〇%近い設備投資の増加が可能であるかどうか。われわれといたしましては、先ほどもお願いいたしましたように、予算執行なさる過程におきまして、そしてまた、電力のそういった設備投資を実際に行っていく過程におきまして、いろいろな問題点があろうかと思いますが、そういう問題点に政府もお力をおかしいただきまして、何とかそういう点を克服していきたい、かように存じておるわけであります。  しかし、現在のいわばエコノミストとしての感じはそうであり、昨年の恐らく秋ごろまでの経済の推移を一応延長してお考えになった民間の見通しの発表が大部分であろうかと思いますが、そういう意味で、今回の五十三年度予算に対する政府の御決意、その円滑な執行による影響というものが、そういった民間の経済見通しをおつくりになった段階においては、まだそれほどはっきり感じておられなかったという面もあろうかと思います。しかし、金融界といたしましては、いまの見通しはと聞かれますれば、現在、日本にとって需要の拡大、そういった七%成長ということが非常に大事なことであります限り、それに対するいわばエコノミスト的な批判よりも、総理が言われるような、われわれもできる限りの御協力をして、何とか七%の成長に持っていきたい。  それには、現在まだ潮の流れが変わっているとは言えないと思います。潮はやはりいままでの悪い方向でございますが、昨年の暮れからの補正予算執行その他に伴いまして、風の中に浮かんでおるストローと申しますか、それはあちらこちら、少しいままでの方向と違った風の吹き方もいたしております。たとえばセメントあるいはその他の公共事業関係の資材は、かなり在庫投資も進んでまいりましたし、状況が好転してきております。そういうことが全般的な景気の上昇に結びついて、政府がお考えになるような七%になれるかどうかということは、ここで在庫投資がどういうふうに進んでいき、在庫調整がどう行われるか、それとうまくつながって、十五カ月予算執行が、中央政府として、また地方自治体と御一緒になられて、そして前倒しに行われて、みんなの気分が明るくなる、企業家の気持ちが明るくなれば、個人といたしましても、雇用の問題についてはるかに楽観的になれば、個人消費増大していく、そういういいパターンの方に向かって変わっていける、そういうような現在の情勢であろうかと思います。  第二点は、先生御指摘の、一体個人投資はどのぐらいがいいのかという問題、これは大変倫理的な問題も含んでおりまして、どちらか申せば、われわれの方が先生方からお教えをいただきたいというような感じのことでございます。もちろん、日本は残念ながら資源に乏しい国でございます。しかしながら、勤勉な人間を持っておるという点で、われわれは世界の中でりっぱにやっていけるだけの力を持っておると思います。そういったりっぱにやっていけるだけの力の中で、できるだけ個人消費を向上さしていきたい。ただ、それはぜいたくな消費、使い捨てということではなくて、国民全般の福祉が上昇するという形で個人消費が進んで拡大していくのが望ましい、かように考えておる次第でございます。  第三番目の、戦時国債の後遺症はどうだろうかという御質問でございます。私、加藤先生よりも大分年をとっておりますので、戦争中は兵役にも徴集されましたし、それから、帰ってくるやたちまちいわゆる軍事国債の破棄ということでいろいろ苦労をした次第でございます。確かにそういったわれわれから上の年齢の方々の中には、戦争中は戦時国債を毎月毎月隣組経由で買わされて、結局パアになってえらい損したなあという思いが残ってないとは言えなかろうと思います。  ただ、現在の国債と当時の国債との問題は、当時は、一方で非常に多額の国債発行いたしました。たしか昭和二十年におきましては、国家予算の公債依存度は四〇%を超えたと思います。そういうふうな巨額なインフレの種をまきながら、一方では物を非常にむだに戦争のために使っていた、どんどんぱちぱちで使っていたわけでありますから、その戦争が終わって、物と金というものの残りを計算いたしましたときに非常なアンバランスが生じていた、それがインフレーションのもとになったということが言えるのではなかろうかと思います。  それに対して、現在は原則として建設国債でございます。これはわれわれが子々孫々に至るまでその利益が残っていくような物を片一方で残しながらの国債発行でございますから、そのこと自体は、私は戦争中のインフレ要因とはまるで違うと思います。  ただ、今回も出ておりますような特例国債、これはやはり経費として、いわば経常的支出として消えていくものでございますから、これが余り大きくなってはどうかと存ずる次第でございます。  政府は、昨年の補正後の最高二〇%をちょっと超えたのに対して、今後はそれ以下ということを歯どめとして、財政の節度を守り、かつ、なるべく早く赤字国債から脱却したいという御計画ように承っておりますが、その国債をわれわれとしてはお引き受けをし、また国民方々に買っていただいて、しかし、その国民方々が決して将来損をしたとお感じにはならないようにいたしたいというのがわれわれの社会的責任でございますから、どうか政府、国会の皆様方におかれましても、以上のようなつもりでこれからの国債政策、国債管理政策を進めていただきたい、かように存じておる次第でございます。
  12. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうもありがとうございました。
  13. 中野四郎

    中野委員長 藤田高敏君。  公述人の方にちょっと申し上げますが、実は十二時から本会議がありますので、本来はもっと懇切丁寧に伺いたいところですけれども、できるだけひとつ御協力を願いたいと存じます。
  14. 藤田高敏

    藤田(高)委員 三人の公述人の方には、すでにきわめて適切な御意見を聞かせていただきまして、私どもといたしましても非常に予算審議の参考になりましたことを、まずお礼を申し上げたいと思います。  きょうは非常に限られておりますので、私は名東公述人に限りまして質問をいたしたいと思います。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕  その一つは、順序不同でございますが、先ほど公述されました御意見の中にもありましたが、いま五十三年度予算審議を通じまして非常に大きな問題点の一つになっておりますのは公債償還の問題であります。なかんずく、この問題は、村本さんからも先ほど御指摘がございましたが、特に特例公債、赤字公債の具体的な償還をどうしていくのかということが一つの大きな問題になっております。  そこで、名東公述人にお尋ねをいたしたいのでありますが、この赤字国債を償還していくための具体的な条件あるいは基本的な財源というものは何に求めるべきであろうかということが一つであります。特に政府財政収支試算表も出しておりますが、すでに御案内のとおりでございまして、これによりましても公債発行額累計額が五十三年度で赤字、建設両方合わせまして四十三兆円。これがいろいろなケースで試算をいたしておりますが、たとえばAのケースで言えば百二十三兆円、Eのケースで言っても九十兆円、これに対して赤字国債が累計額におきまして、赤字公債に依存した場合には五十三年度で累計額が十六兆円でありますが、これが五十七年度には六十兆円、増税依存型でいきましてもこれまた五十七年には三十兆円というような、そういう非常に大きな累積赤字ができるわけでありまして、この赤字公債を確実に消化していくということが、わが国国家財政の健全化のためにも非常に大事な問題だと思います。  そういう点で、いま申し上げた償還計画の柱ともすべきものは何であろうかということをお尋ねすると同時に、先生の方で、先ほどちょっと私聞き落としたのですが、十カ年か十五カ年計画で償還できるというような具体的な資料まで御用意であるかのごとく拝聴したわけでありますが、そういう適切な資料につきましては、簡単な説明を含めて、後ほど当委員会に対して資料を出していただきたい。このことを要望いたしておきたいと思います。  二つ目の問題は、これまた、先ほどから村本公述人を含めまして御意見のあったところでありますが、このたびの五十三年度予算審議の中でこれまた一つの大きな柱になっておりますのは、今日の不況をいかにして解決するか、今日の不景気をいかにして解消するかということで、政府の方としては、言うまでもなく公共事業中心景気浮揚策を講じていきたい、私どもとしては、公共事業ももちろん大事だ、しかしながら、あわせて減税効果というものもこれまた重要視すべきではなかろうかということで、減税問題につきまして私ども、並行的に景気回復策のてことすべきであるということを主張しておるわけであります。  そこでお尋ねいたしたいことは、最近、公共事業景気に対する波及効果乗数効果が、かつての高度成長時代とは違って下降カーブをとってきておるということが言われておりますが、この波及効果公共事業減税と比較してどういうものであろうか、このことをひとつ専門的にお教え願いたい。  この問題に関連する二つ目の質問は、政府は七%の成長率を目標にしておるわけですけれども、単純に考えましても、去年とことしを比較いたしますと、ことしは大学や高等学校、私立学校の授業料の値上げであるとか、あるいは社会保険また医療保険等の負担がふえるとか、あるいは国鉄料金の値上げとかという形で、相当負担増になるわけですね。そうすると、その分が個人消費に影響をしてくる。さすれば、この七%の目標を達成するためには個人消費の枠を拡大していくということが、これまた有力なてこにならなければならないわけでありますけれども、そういう負担増から来る個人消費に対するマイナスの影響といいますか足を引っ張る影響ですね、これを克服するためにも、やはりことしの場合は所得減税中心とする減税がぜひ必要だと思いますが、そのあたりに対する見解。  いま一つは、これは全く党の方針というよりも私個人の意見でありますが、物価がたとえば五%以上、たとえば定期預金の利子以上上昇する場合には無条件で所得減税を行う、そういう一定の減税のルールを最低のールとしてつくるべきではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、そのことに対する見解を教えていただきたいと思います。  三つ目の問題は、不公正税制の問題を先ほども御指摘になりましたけれども、私は、この不公正税制の問題は、増税か、しからずんば不公正税制の是正かという次元で議論をする以前に、今日の税体系のもとにおいて政治の基本は公平の原則、社会正義の原則によって貫かなければならない、そういう立場からも、たとえば政府財政的に不如意だ、したがって、昨年の税制調査会が答申をいたしておりますような形で、たとえば一般消費税というような形で非常な大衆課税的な性格で増税をやろうといたしておりますが、その増税を抑えるための単なる手段ではなくて、それ以前の問題としてこの不公正税制の問題は取り上げられるべき課題ではなかろうか、こう思うわけでありますが、それに対する見解。  あわせて、先ほどの国債償還の問題とも関連をいたしますが、政府は、いまのこの赤字財政を建て直す有力な手段として、一般消費税中心とする増税計画を考えておるわけでありますけれども、不公正税制の是正の中で具体的に何と何と何は何としても是正しなければならぬという、たとえば医師優遇税制の問題であるとか、利子配当の分離課税の廃止であるとか、あるいは交際費とか、各種準備金、引当金の是正の問題であるとか、そういう具体的な問題について御指摘いただければありがたい、こう思います。  最後に、いま一つの問題は一般消費税の問題でありますが、この一般消費税は、今日の経済的な条件の中でこの種の物価上昇の原因になり、そのことがひいては個人消費の足を引っ張るようなことになる、こういう個人消費税はデフレ的な効果はできても、いまの国が、私どもが求めようとする景気回復の方向には逆行する、そういう点からもこの一般消費税というものは新しくつくるべきでない、いわんや税の逆進性という税本来の矛盾からいっても採用すべきでないと私は思うわけでありますが、このあたりに対する見解を聞かしていただきたい。  以上でございます。
  15. 名東孝二

    名東公述人 まず最初国債の問題でございますが、御指摘のように、五十三年度末の国債残高四十三兆円を含めまして公共債の予定九十五兆円でございますね。九十五兆円ということは、一億一千万で割ってみますと、子供、老人全部含めまして一人当たり九十万円の負担だと思うのです。そうしますと、九十万円としますと、四人家族であると仮定すると三百六十万円の負債ということになるわけです。いま現在の一世帯当たりの貯蓄額が大体三百万くらいだと聞いておるわけですが、そうしますとプラス・マイナス若干赤字じゃないか、国民の皆さん貯金したような気持ちになっているけれども、実際は赤字じゃないかと思うのですね。そういうことを考えますと、これは非常に大きな問題たらざるを得ないと考えるわけであります。したがって、私の見るところ、やはり調整インフレ、失礼な言い方かしれませんが、調整インフレにならざるを得ない。どうも村本さんがおって失礼でありますけれども日本の財界というのは、やはりどうもインフレを好む体質があるんじゃないか。そういう過剰流動性のもとに、これから公共料金を初めとしていろいろなコストプッシュが起こって、やはりインフレ的になっていくことによって何か、実際は景気は上がってないのに、インフレのために上がった——いまそういう現象が出かかっているわけですが、何か物が上がってきてインフレになってくると助かったような気になるんじゃないか。そうすると、しばらくすると、これがまたがくっとくるんじゃないかということを心配しているわけです。いまここで喜んでいますと、またがくっとくるということを非常に心配しておるわけであります。  それに関連しまして、やはりこれから消費は多様化してまいりますね。多様化しますから、少なくとも今までの大量生産、大量販売というような形で産業界が伸びていくことはむずかしいですね。昔のように、大きいことはいいことだというわけではないので、スモール・イズ・ビューティフルで、やはり小さいことでないと、これからは産業界もなかなか生きていくことはむずかしいのではないでしょうか。  それから二番目の、ミックスポリシーですね。ミックスポリシーは、やはり常識としてあらゆる手段を誘導、動かすということになれば所得減税をやらざるを得ないということになるわけであります。御指摘のあった乗数は、いろいろな説がありまして、もちろん階層とか、たとえばいろいろな人々によって違いますし、業種によって違いますので、一概には言えませんが、大蔵省あたりは二五・一%が貯蓄率だということを言っています。ということは、貯蓄率の逆数でありますので、波及効果なんでありますから、波及効果ですから逆数になるわけです。だから、大蔵省ように二五%だということは、四分の一だということは、逆数の四倍だということになるわけで、かなり高くなるわけですね。大蔵省の御見解を私新聞で拝見しますと、どうもおかしいんですね。片っ方、公共投資は一兆四千億円以上、消費の方は一年度最初の年というふうに限っておりますが八千億円、こういうふうに差別しておられるわけですが、しかし、二五%だということ自体は、もうすでに四倍の四兆円になるということを前提としていると言わざるを得ない。これは経済学の常識なんでして、大蔵省の言い方は、うまく最初の一年目というふうにちょっと逃げていますけれども、あればごまかしじゃないかと思うのです。  それから第三番目、不公平税制の問題でございますが、これは三つございます。私はきょう最初に、二兆円が何とか出るのではないかと申し上げたわけです。それは、個々に掲げまして、委員長さんに事前に提出しておきましたのですが、国民税調というのがございまして、これの作成したもの、昨年の末でございますが、これに私、一部手直しをしたのでございます。たとえば有価証券譲渡所得の、いわゆるキャピタルゲインの課税が入っていませんので、それを入れたり、多少手直ししたわけでございます。もちろん、社会診療報酬の廃止、それから有価証券取引税の引き上げとか、こういったようなもの、土地増価税は、非常に大きなものになると思うわけであります。御存じように、大体いま土地の評価は四百三十兆円と言われていますから、三百兆値上がりしたとしたところで一%で三兆円ございますね。しかし、これは余り大き過ぎるから除外いたしまして、やはり内輪に見て、というのは、かなりこれを実施するとがくっと税収が減るんじゃないかということが言われていますので、かなり用心して控え目にとっているわけでございます。具体的には、最初申し上げましたように、やはり名目的にせよ、西ドイツのやったよう富裕税を導入しまして、それで資産洗い直してそれから優遇措置をかける、それから分離を直していくというふうにすれば、国民背番号なんというようなことをしなくたって済むのじゃないかと思うのですね。それで、大きなところさえ押さえてしまえばそれで事足りるんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。それで、優遇措置、分離課税、それから法人税はもちろん国際競争力がやはり必要なんでありまして、いまのように黒字のときは結構でありますが、万一赤字になり得ることもあるわけであります。そういたしますと、やはり国際競争力並み、国際並み法人税にするということが各国の納得を得る道だ、こう考えております。  それから二番目は、徴税上の不公平でございますが、これはちょっと小さい声で言った方がいいと思うのですが、トーゴーサンピンと言われておりまして、トーゴーサンピンのピンは政治資金でございましてね。もちろんいろいろな不公平が言われておりますが、しかし、どうもわれわれみたいな素人の方からしますと、はなはだ言いにくいわけでありますが、やはり政治資金がいろいろな名目がつけられ、りっぱな、通過理論だとかいろいろな名前の理論がつけられて、まことに結構だと思うのです。しかしその点は、やはりお手本を示していただく。お手本を示していただくということが大事なんでありまして、私なんか多少雑所得をいただいて、半分ほど持っていかれるわけでございますので、どうも皆さん方も御協力を願った方がいいのじゃないか。こういうふうに、失礼でございますが……。  第三番目は、税金使途、使い道でございます。これはやはりかなり産業優先生言われております。したがって、生活優先というのは少しどうかと思いますけれども、やはりアンバランスをだんだんとなくしていただくということが重税感をなくする道じゃないかと思うのです。そういう意味で、課税上と徴税上と税金の使い道、この三点が重税感の出どころである、こういうふうにわれわれ考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。  それで、時間の関係で、最後の一般消費税の問題でございますが、これはいま御指摘のように確かに逆進性がありますし、かなりいろいろな問題があるわけでございます。ところが、私の調べたところによりますと、これをやりますとかなり簡単に取れるんですね。たとえば五十一年度全産業の粗利益、いま大蔵省が考えておりますのは粗利益に課税しようという考え方ように思いますが、粗利益の合計額が五十五兆円、といいますのは、年間の売上高が五百兆ございますので、それの一一%、これは三菱総研の企業経営の分析からとったわけです。そうしますと、五十五兆円の粗利益に対しまして一〇%の課税の税率にしますと、それで五兆五千億、これはかなり巨額の金が出てくるので、それで、やはり大蔵省さんを初めとしてこういったような大きなものが完全に取れるということ、それから、いま私が申し上げていますように、大企業とか、別に恨みはないのですが有資産方々、お金持ちの方々の抵抗ということを考えますと、どうもよほどしっかり為政者の方々にがんばっていただかないと、やはり誘惑に負けて、簡単に取りやすい方から取ろうということになるおそれがないとはいえないと考えているわけであります。しかし、きょうはおかげで発言させていただいておりますが、一般には、物言わない消費者とか大衆の利害というものは、これを長く阻害いたしますと、必ずやそういったような制度は崩壊するということは、これは歴史の教えるところであると思います。そういう意味におきまして、このりっぱな、非常に得がたい日本の民主主義を長く永続するためには、やはり言葉の単なる意味の革新じゃなくして、実際上のイノベーションをやっていただく、これは単なるイデオロギーにとらわれずに、やはり着実なイノベーションをやっていただく以外には民主主義は生き残っていくことはできないのじゃないか、こういうことを特にお願い申し上げたいと思います。  失礼しました。
  16. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一言だけ。要望ですけれども公述人からお話がありましたように、委員長の手元に何か試算を出された資料があるようでございますが、これはぜひひとつ全委員に配付していただくようにお取り計らいを願いたい。  そして、もう時間がありませんので、これは公述人に対する要望でありますが、公述人として自主的に専門家の立場で赤字公債の償還についての一つの試算的なもの、そういうものがございましたらひとつお出しいただければありがたい。よろしくお願いしたいと思います。  委員長、前段の方はよろしいですね。
  17. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 はい。  川俣君。
  18. 川俣健二郎

    ○川俣委員 皆さん、御苦労さんでございました。  私は特に、目の不自由なところを大阪からわざわざおいでくださいました楠先生に端的に伺って終わりたいと思います。  障害者、障害児、これは大変長い間社会労働委員会を中心にして論議し、制度化されて今日に来たわけですが、特に点字でその当該者に訴えられると、かなり認識も新たにしましたし、何かさっき込み上げてくるものを感じたわけです。  そこで、先生の訴えの一貫して流れる思想は、世間の目が、社会が、同情から始まって、隔離し、そして保護に終わって恵みで終わるという、一般との取り扱いの差別に強く抗議を含めたような訴えでありました。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、時間がございませんから、生活保障、いわゆる生活権と雇用保障、労働権については、全く先生のおっしゃられる方向で私たちも主張しておるわけでございます。そこで、障害者の教育、それから障害者と交通、その他と三つに分けて伺います。  御案内ように、この間も総括質問で、わが党の多賀谷書記長から国際人権規約について聞かれ、私自身も文部省の考え方をそれに絡んで伺ったわけです。というのは、一九六二年にもう効力を発したユネスコ条約の教育における差別待遇の防止に関する条約がなぜ日本で批准できないのか、こういう問題と非常に絡みがありますから、あえて伺うわけです。日本の国の戦後の学校教育法が二十二年四月一日に施行されて、早くも翌年の二十三年四月一日には、盲学校、聾学校は政令で決められて実施しておるわけです。ところが、どういうわけか養護学校だけはついつい延び延びになって、いよいよ来年の四月一日から施行する。先生が、何ら国会で論議されてないんじゃないか、こうおっしゃるのですが、文部省の言い分は、もう四十八年十一月二十日に政令決定、直ちに通達ということで出しておるということで片づけようとしておるわけでございます。私たち政治の場において制度をつくる者から言わせると、教育の義務化ということであるから、養護学校というものを障害者、障害児にそれを開校するのだ。ところが先生のおっしゃるのは、義務化はわかるが、一般の学校に行っている障害者、障害児まででき上がった養護学校の方に追い出すというのは分類就学の強制ということで、これはちょっと義務化との関係がかみ合わないんじゃないかと訴えられておるようですが、その辺、いま少し聞かしてもらいたいと思います。  さて、教育の二つ目ですが、とは言うものの、それじゃ一般の私たち、特に制度をつくる場にいる者から言わせれば、重度の障害児、寝たきりというか重度の障害児を一般の教育の場に入れる方が社会福祉的な政治なのか、その辺なんです。そして、それまでやはり義務化した方がいいのかどうか。その辺、特に先生は全国でただお一人だと思うのですが、目が不自由で国公立のしかも語学の先生をやっておられるというから、当該者で一般の人方に教えられておる、その触れ合いを述べていただきたいと思います。  それから二つ目ですが、障害者と交通、これはかなり社会問題化してまいりました。車いすの問題でも、金沢なり川崎なり横浜、ついこの間も横浜で、バスの乗車をめぐるトラブルがございました。いまどき職安が障害者用のトイレをあえてつくる。上野駅なんかもぼつぼつ出てきたわけですが、国会なんかは、その当該者が議員になると直ちにさっとやる。ところが一般はなかなか普及できないというのを訴えようとしておるのか。それから、先ほど申し上げました車いすとバスの乗車をめぐる自治体との競合の関係だろうと思うのですが、その辺、もう少し聞かしてもらいたいと思うのでございます。プラットホームで転落して亡くなったというのはここ三年で、私の記憶では八人から九人も数えるようでございますから、その辺も含めて……。  それから、いろいろと伺いたいのですが、時間がございません。本会議もあるようでございますので、もう一点、その他ですが、特に先生は、これは予算とは関係ないがと、仙台の仲間の赤堀さんのことを訴えられましたが、その問題は大変大きな問題ですから、この場ではそう簡単に片づかないと思います。ただ、この予算委員会なり予算委員長の裁量でできる、たとえばさっき点字で——一般の人方と違うところは点字で国会に陳述される。それじゃ仲間の皆さん方はどういうことを訴えられて、どのような場面であったかということを知りたいのだと思います。それに対する何か要望などありましたら……。  以上、大きく分けて三つ、それぞれ中身も含めると六つになるわけですが、もう少しお聞かせ願いたいと思います。
  19. 中野四郎

    中野委員長 大変恐縮ですけれども、本会議の時間がかなり詰まっておりますから、御協力いただくように。
  20. 楠敏雄

    楠公述人 まず一点目の教育の問題ですけれども、私自身が目が見えない者として初めて国公立の教壇に立ったわけですけれども、この場合、最初まず、教員採用試験を受けるという段階で教育委員会でシャットアウトをされたわけです。目の見えない人は採用できない、採用するはずがないので試験も受けさしてもらえないということで拒否をされたわけです。また受け入れる際にも、たとえば現場の先生方の間からいろいろと、目の見えない人がちゃんと教育できるのか、あるいは自分たちの労働強化にならないかというふうな形で反発も出たわけです。私自身も、目の見える人たちの前で教壇に立つことの不安ということは非常に大きかったわけですけれども、そういう中で、教育の現場に立ってみてつくづく感じているのが、小学校あるいは中学校からの教育がきわめてお粗末であって、その中でいわば落ちこぼされてきた、落とされてきた生徒たちがたくさんいる。私のクラスにも、高校二年、三年でまだABCが書けない生徒もいるわけで、それは決して本人の責任ではないし、やはりごく一部の人たちだけに焦点を合わせてきた教育の結果ではないか。それは私自身が目が見えないという立場で、この置いてきぼりの教育、人をけ落とす教育のいやらしさというものをつくづく痛感しているわけです。現在私は、生徒たちに協力してもらいながら、たとえば黒板に字を書く、板書ですね、これに関しても、生徒に協力してもらって書いてもらう、あるいは送り迎えをしてもらうという関係で、ともに教育を進めていくということを通じて多少なりとも教育のあり方を変えていきたいというふうに考えているわけです。  さらに義務化の問題で、とりわけ重度、重症と言われる子供たちの問題はどうなのかということですけれども、もちろん、何人たりとも義務教育の義務があるとしなければならないはずです。これは憲法にも教育基本法にもうたわれていることですし、これは絶対に実現されるべきだ。  もう一つは、それでは養護学校へ行かなければならないというふうに義務化するのかどうかという問題です。現在大阪ではすでに、車いすの障害者や寝たきりの障害者が十名以上、地域の普通の学校でみんなと一緒に勉強している。ある教室では、教室に畳を敷いて寝たきりの障害児の場を確保している。そういう中で一般の子供たちが、たとえば、早く算数の計算ができた子供がこういった重度の障害児に協力して、一緒になって計算をしようとする。そのことですぐにその障害児が数を覚えるということではないにしても、彼の表情が非常に生き生きとしてきている。こういう報告が数々出てきているわけです。そういう中で、行くべきであるとか行くべきでないという規定を法律や行政がするのではなしに、本人や親の希望というもの、地域でみんなと一緒に生きていきたいという希望をやはり尊重すべきだということを、あえて追加して申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので簡単に申し上げますけれども、交通の問題です。  車いすに乗ってバスに乗車すること、電車に乗車することに対して、さまざまな拒否が起こっています。この問題が起こったときに、問題を起こした障害者の側に、とんでもない障害者だ、乱暴なことをしているというふうな批判として返っていますけれども、なぜああいう行動をとらざるを得なかったのかという背景をむしろ深刻に考え直していただきたい。障害者が一人の人間として、映画を見たい、外へ出たいといってバスを利用しようとした、タクシーでは乗車拒否をされるということでバスを利用しようとしたときに、車いすは乗るなとか折り畳んで乗れというふうな決めつけをされてくる、こういうことに対する怒りのあらわれであるということをぜひとも受けとめていただいて、一日も早く関係当局で障害者の乗車を認める、そのための具体的な施策に関しても早急に講じていただきたい。  さらに、目の見えない人が二人に一人は駅のプラットホームから落下している実例があるわけなんです。実際に、先ほども言われましたように、もう十人近くが生命を奪われている。私も落ちた経験がありますけれども、幸い電車が来なかったので現在ここにこうしています。そういう、われわれにとってはいわば欄干のない橋を歩いているに等しいプラットホームの現状に対して、一日も早く安全対策を講じてもらわなければならないわけですけれども、国鉄は、赤字だ、あるいは障害者に対する設備はサービスでやっているんだという発言をしかせずに、一向に抜本的な対策を講じようとしないということに対して、われわれは本当に命がけでプラットホーム、交通機関を利用しているんだということを、ここで強く訴えておきたいと思います。  簡単ですけれども、終わらしていただきたいと思います。
  21. 中野四郎

    中野委員長 次は、広沢直樹君。
  22. 広沢直樹

    ○広沢委員 公述人の皆さんには、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、大変御苦労さまでございます。  多岐にわたっておりますのでいろいろお伺いしたいことがございますが、時間がございませんので、私はまず村本公述人に一、二点お伺いしたいと思います。  本日は国債引受団の代表という立場でございますし、また一方では金融機関の代表の立場にいらっしゃるわけでございます。  そこで一つは、いわば国債を抱いた経済から国債に抱かれた経済大蔵省の先ごろ出されました試算を見ましても、五十七年度にはGNPに対する依存度が約二八%程度になるということですから、大変な状況であります。こういう問題は金融構造に相当大きな影響を与えてくるだろうと思いますし、こういう大量国債発行が不可避な情勢の中で、財政と金融あるいは国債と金融構造だとか、あるいは金融市場の問題、あるいは国債の引き受け、市中消化の問題、こういったたくさんの問題がございます。  中でもきょうお伺いしておきたいのは、いわゆる大量国債がどんどん出されていくことについては、国会の論議の中でも、何らかの歯どめが必要じゃないかという話がありました。その歯どめとして、政府はこれまで、政府財政運営の節度として、予算に占める割合は三〇%程度、こういうことだったんでございます。しかし、それはそれなりに運営の節度としては結構なんですが、そうそれが大きな意味合いを持っているものではございませんで、今日のよう経済情勢ではこれの枠はとうに超えてしまうということになりました。そこで、公述人もちょっと触れておられましたように、赤字の国債については二〇%以下と政府は言っておるからそれをめどの運営が必要じゃないか、こうおっしゃるのですが、しかし、これはあくまでもめどでございまして、実際の運用上は、今日の経済に見られるようにこれを超えてしまうわけですね。  そこで、国債の節度として最も大事なのは、市場メカニズムを活用しなければならぬということであります。そうなりますと、諸外国でも取り入れられておりますように、いわゆる競争入札方式というのもございましょう。一遍には持っていけません。きょうは議論できませんので簡単に申しておきますが、そこでまず、無理なくやっていくとすれば段階的にやらなければいけない。その一つが、公述人も触れておられた市場実勢を反映した発行条件、これを設定することである、これはそのとおりでございます。それからもう一つは、国債の種類の多様化を図っていかなければいけない。いわゆる商品の多様化でございますね。これについてはどういうふうにお考えになっておるか。わが国は御承知のように二通りしかございません。そしてまた、割引国債についても発行限度が三千億というふうに一つの枠が入っておりますね。そういうことで、これを市場の自主性に任していこうというのも一つ問題であろうかと思います。  それからもう一つは、流通市場の多様化の問題にも触れておられましたが、これもやはり窓口を広げていく以外にないだろうという議論がございます。この点もシ団の中でいろいろな御意見がおありなようで、その方向はどうなるか。まず段階としては、こういったところから市場のメカニズムに任した形を進めていく以外にないのじゃないかと思いますが、この点、どうお考えになるか。  それからもう一点は、今度は金融機関の立場でございますが、先ほどもお話がございましたように、政府経済見通しが出ております。それで各民間経済機関の見通しが出ておりますが、いつもお出しになる金融機関の経済見通しが、今度は発表されておりません。いろいろなお気遣いがあったのかもしれませんけれども、今回の政府見通しの七%あるいは経常収支を減らすという問題についても、これは単なる見通しというよりも、いまは内外ともにどうしてもやっていかなければならない一つの目標になっているわけでございます。したがって、今度の予算委員会でもそのことが一つの大きな焦点として論議されているわけでございますが、やはり経済動きについては、当然金融機関としても適切な判断というものを持っていらっしゃらなければならない。そういう意味で経済見通しをお出しいただけないだろうか、こういうことでございます。もしそれをお出しいただけないということになれば、何かの御配慮があるのかどうか、この点も重ねてお伺いしておきたいと思います。簡単でありますが、よろしくお願いいたします。
  23. 村本周三

    村本公述人 広沢先生の御質問に対してお答え申し上げます。  時間がございませんので、大変恐縮でございますが、大変大きな問題をちょっちょっとお答えするようになるかと思いますが、お許し願いたいと思います。  第一の問題は、国債発行について歯どめが必要であるし、片や、歯どめと同時に市場メカニズムの活用が必要ではないかという御意見だと思います。私ども、これに対しては全く賛成でございます。  それでは、現在の国債をもっと多様化してはどうか。これは国債発行高がふえ、かつまた国民の側にそれを消化しようという、国民の側から見た自分の金融資産の多様化という観点から、もう少しいろいろな国債があった方がいいという声がある限り、私ども、多様化していくべきであろうと思います。  ただ、きょうは時間がないから申し上げられませんが、そういった多様化を進めていく過程の中では、一つの国の財政政策あるいは国債管理政策としてどういうふうな措置が適当かということは、一種の金融秩序と申しますか、国債あるいは大きな債権の中の秩序と申しますか、そういう問題として慎重に考えていっていただきたい、かように考えておるわけであります。  もう一つは、国債シンジケート団の中で、そういった個人消化をふやしていくということについていろいろ意見があるのではないかと大変鋭い御指摘でございまして、私きょうは引受団の代表として来ておりますが、そういったいろいろな意見を消化するのは私一人がしては多少フェアを欠くかと思いますので、私どもの、いわば全国銀行協会連合会としての考え方というものは、これだけ国債発行がたくさんになってくれば、やはりそれを消化する方法も広げていかなければならないだろう、それがまた、先ほども申しました国民の金融資産の多様化というニーズにもマッチするものではないか、かように考えておる次第でございます。  さてもう一つ、見通しをどうして出さないのだという御質問でございます。これもお答えしておりますと大変長くなるのでございますが、最も大事な点は、私、昨年、経済同友会の年頭見解の作成委員になりまして、そのとき、現在は、英語で申しますとアンサートンティーといいますか、なかなか訳がむずかしいので、不透明と申しますか不安定と申しますか、その両方が一緒になったような感じの言葉だと思いますけれども、現在はそういった非常に不透明な不安定な時代である。そういうときには、一方に長期的な見通しをつくることは必要であるけれども、その長期的な見通しが余り数字にこだわると、今度はその数字自体がひとり歩きをする危険がある。現在のわれわれの見通しとして一番必要なことは、どうやら全体としてはこういうふうになりそうだけれども、その中には非常に不安定な点があり、現在見通しがたい不透明な点がございます。ですから、本年の経済運営におきましては、われわれ実業界といたしましては、いつでも変わり身が早くできるような弾力的な態度で市場の実勢に適応していくのが適当であろう。そのためには、第一勧業銀行はこういう見通しだという見通しだけがその前提なしにひとり歩きをするような危険は避けておく方がよろしかろう、かように考えておる次第でございます。
  24. 中野四郎

    中野委員長 次に、安宅常彦君。
  25. 安宅常彦

    ○安宅委員 楠先生にぜひ伺っておきたいことがございまして、大変簡単なんですが、いろんな前提を抜きにして申し上げますから御了承願いたいと思います。  一つは、私どもも身体障害者の問題についていろいろな局面に遭遇するのですけれども、たとえば脊椎損傷者などは、労働災害でほとんど足腰が立たなくなってしまう、こういうこともあるわけです。そうでない人もおりますが。そのときに、いろんな介護、あんた、もっと介護料をふやしてもらえないかなどという、たとえばそういう話が出る。そういう介護をするときに、私どもの事務所は車いすですっと入れるようにつくりかえをしたり、大変苦労しているのですが、介護をしてくる奥さんですね、農家の奥さんで、そして田も畑もやらなければならない。御主人の便の始末から皆しなければならない。そしてまた会議なんかやる場合でも、そういう会議のためには袋をつけてきたり、あるいは全部あと出ないように食事もしないでそういう会合に出るとか、大変なことだということを、私ここ十年間などやっておりながらそう感じておるのですが、国の介護料の低さというものは、私どももふんまんにたえないと思っているのです。県によっては地方自治体でそれに少し足してみたり、いろんなことをやっている県もあるようですけれども、こんな金額で聞くというのは失礼なんですが、またいろんな立場、立場の人によって違うでしょうけれども、こういう意味で言うならば、介護料というのは一体、そういう運動に参加されている先生ですから、いまの制度にどれくらい足したならば最低できるのじゃないか、こういう御意見があったらばぜひお聞きしたい、こう思いましてこの壇に立ったわけです。  それから第二番目ですが、川俣君の発言の中で先生に、あと何かないでしょうかというお話がございましたが、もし思い出された点一つでもございましたら、ぜひひとつ御発言願えないかというのが二番目であります。  三番目ですが、赤堀政夫さんのことについては、私は大変勉強不十分で、そういうことがあるということはいろんなところで聞いたり文書で見たりしているのですが、詳しく聞きまして打ち合わせをしながら、人権の問題ですから、必死になってこの点については一緒に闘っていきたい、こういうことを意思表明して、私の質問を終わらしたいと思います。
  26. 楠敏雄

    楠公述人 一点目の介護料の問題ですけれども、現実に介護人制度の確立ができていませんその段階で、当然、家族及び周囲の人たちによる介護というものが必要になっているわけなんですけれども、現在、そういった介護をすることによって介護をする側の生活というものが保障されていないという中で、介護料に関して最低その介護に当たる人の生活を保障できるだけの額、すなわち、現在たとえば他人介護というので二万円ほど出ているようですけれども、やはり平均的な賃金並みの介護料というのは最低一人につき保障してほしい。ですから、そういう介護料の考え方というものを確立していただきたいというふうに思います。  それから二点目ですけれども、この間、裁判の証人に立ちまして、そのときに私が点字でいわば署名、捺印をしたわけです。点字で宣誓書を読み上げて、それを裁判長が認められたわけですけれども、やはり点字が公の文字であるという認識の上に立って、この国会、この委員会でも、たとえば点字の速記録といいますか、議事録といいますか、そういうものも用意していく、そのためにはやはり点字のできる障害者本人を、たとえば国会なんかが積極的に受け入れていくというふうな形で、障害者の文字、点字の保障及びそのことを通じた雇用の前進というものを図っていただきたいということを要望しておきたいと思います。
  27. 安宅常彦

    ○安宅委員 それで、ぜひ委員長お願いしたいことがあります。この点字の議事録の問題については、そういう点字のやれる人が要員としていなければこれはどうにもならぬわけですし、そういうことも含めてぜひ実現できるように、あなたから理事会に相談するなりそういうことをやっていただきたいことをお願いしたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  28. 中野四郎

    中野委員長 大変貴重な御発言でありますので、委員長において適当なる処置をとるよう努力をいたします。
  29. 安宅常彦

    ○安宅委員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  30. 中野四郎

    中野委員長 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べをいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手)  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後、零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  31. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  各位には、大変御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  昭和五十三年度予算に対する各位の御意見を拝聴し、予算審議の貴重な参考といたしたいと存じますので、それぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いを申し上げておきます。  次に、御意見を承る順序といたしましては、まず最初に金森公述人、次に大川公述人、続いて鈴木公述人順序でお一人約二十分程度ずつ一通りの御意見をばお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、金森公述人お願いをいたします。
  32. 金森久雄

    ○金森公述人 日本経済研究センターの金森でございます。  きょうここで、昭和五十三年度予算についての意見を述べる機会を与えてくださいましたことをありがたく存じております。私は、特に景気政策との関連で私の考え方を申し上げたいと思います。  政府は、五十三年度につきまして七%という比較的高い成長目標を掲げましたけれども、これは私は非常によかったと考えます。この程度成長しませんと、日本経済は国内の不況から脱出もできませんし、また国際収支の黒字不均衡の縮小もできないと思います。そして、日本経済は七%成長いたしましても、現状では、石油にも工業の生産設備にも労働力にも外貨にも、すべての面でまだ十分な余力がございます。したがって、私は、日本経済が七%成長ができないはずはないと確信をしております。  政府は、五十三年度予算では、これまでの国債依存度三〇%という枠を捨てて、国債増発によって資金を調達し、公共投資を大幅に拡大する、こういう政策をおとりになったわけでありますけれども、私は、これは大変結構なことだったと考えるわけです。政府見通しでは、公共投資の前年度に比べました増加率が一六%強ふえる。これまでの公共投資の増加率を見てまいりますと、五十一年度はわずかに一・一%でございました。それから、五十二年度の当初の計画では九・九%だったわけです。これを今回は思い切って一六%と拡大いたしましたことは、これはかなり大きな景気刺激効果を持つと考えます。しかし、現在の政府の対策だけで十分かと言えば、これは私は疑問に思うわけです。問題は、今回の政府景気対策が公共投資一刀流だという点であります。国民総生産中の公共投資の比率というのは約一〇%でありますから、これが一六%伸びましても、十六掛ける〇・一でありまして、直接的な効果といたしましては、国民総生産を一・六%高めるだけにとどまるわけです。したがって七%成長のためには民間経済活動も同時に活発化するということが必要だと思います。  ところが、民間の投資意欲や消費意欲というのは非常に低いというのが現状だと思うわけです。この点で私は政府見通しは過大だと考えます。民間設備投資につきましては、政府は実質七%弱の増加を予想しておいでになるようでありますけれども、このところ設備投資意欲は非常に低調でございます。機械受注調査、これを私たちはよく投資の意欲をはかるために使うわけですけれども、これを前年と比較いたしますと、五十二年七−九月は一五%前年を下回っている。それから十月が八%減、十一月が九%減、十二月が二二%減になっておりますね。これで来年の機械の設備が名目で約一〇%、実質で七%ふえるだろうかというと、これは非常に疑わしいように思われるわけであります。  私は、民間投資の意欲につきまして非常に注意を払っておりまして、昨日経済企画庁で発表なさいました投資動向調査の結果を待っていたわけでありますけれども、この投資動向調査によりましても、来年の上半期はさらに投資が減る、こういう結果が出ておりまして、非常に弱い。政府は、これに対して、電力の設備を非常に期待しておられるようでありますが、確かに電力の設備投資はこのところ年々二〇%程度ふえておりまして、民間設備投資の落ち込みを下支えする重要な力になっているわけです。しかし、さらにそれを大きく伸ばすということは、立地問題、環境問題等があり、やはり容易ではないように思うわけです。  それから、次に消費でございますけれども、これも政府見通しは少し過大ではないかと思います。  政府は、実質五%強の上昇を予想しておられるわけですけれども、ことしの春闘の賃上げ、これがどれぐらいになるでありましょうか、私は六%強ぐらいじゃないかと思うわけですけれども、そうしますと、仮に消費者物価上昇率を五%といたしましても一、実質賃金の上昇率は一%であります。実質賃金が一%しか上がらないのに実質消費が五%上がるということが合理的に予想されるかというと、どうも疑問に考えられるわけです。現在わかっております消費の統計で一番新しいのは家計調査ですけれども、家計調査が、十月、十一月と二カ月見ますと、これはいずれも前年よりも実質消費で下回っているという結果になっているわけです。もちろん、消費は春闘のベースアップだけで決まるというわけではなくて、ボーナス、残業手当、雇用者数の増大あるいは中小企業主とか農家の消費の増加、消費者物価の安定によって消費性向が上昇する、いろいろな要因によって影響を受けるわけでございますけれども、こうした点を考慮しましても、政府消費見通しの達成はなかなかむずかしいのではないか。春闘のベースアップの現状から考えますと、よほど急激に消費性向が上がるとか、あるいはボーナス、残業手当がふえないと実現できないわけでございますけれども、これはやはり景気の先行きが好転をするということがあって初めて可能になるわけでありまして、政府見通しでは、景気回復の手段となるべきものに景気がよくなった場合の結果を先取りをしているというように思われまして、どうも論理的に少しつじつまが合っていないと考えられるわけです。  さらに、五十二年度に比べまして、五十三年度にマイナスの要因と考えられますのは輸出であります。石油ショック以後も輸出はしばしば国内の不況を支える要因として働きましたけれども、五十三年度は円高の影響があらわれてくる。それから、輸入制限がだんだんきつくなるということがございますので、余り期待できない。要するに、余り長い間低成長が続きましたために投資や消費が自分の力で伸びる力をなくしているわけです。一方、生産調整を続けておりましたために在庫調整は順調に進行しているように思います。しかし、それは政府が期待しているほどの大きな景気浮揚効果を持つかといいますと、それは私は少し過大な期待ではないかと思うわけです。政府の説明していらっしゃるところを新聞等で伺いますと、在庫調整が終わっただけで国民総生産が三%も伸びるというようなことが出ておりますけれども、現在のGNPの中に占める在庫投資の比率は一・五%、これがいかに動こうとも、それだけで実質の国民総生産を三%も上げるということは理解できない点であります。こういうことから景気対策といたしましては、私は公共投資拡大一本でなく、投資と消費とを刺激する政策を併用するというのが正しいのではないだろうかというように考えるわけであります。  投資刺激政策としましては、ことしの予算を拝見しますと、設備投資減税が千二百億円含まれております。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 これは私は非常に結構だと思うわけでありますが、やはり規模がまだ不十分である。それから対象も省エネルギー、公害防止、中小企業ということでありますけれども、たとえば流通の合理化等の投資減税の対象範囲をもっと拡大をするということが望ましいように思うわけでございます。  それから民間の設備投資に関連いたしましては、直接予算とは関係ございませんけれども、長期金利をもっと引き下げるということが必要だと思うわけです。現在、公定歩合は四・二五%で、確かに戦後の最低になっておりますけれども、しかし物価が下がっておりますので、実質金利は高くなっている。かつてのインフレ時代には、高い金利で借りましても、返すときにはお金の値打ちが下がっておりますから、実質負担は低くなっている。現在のように幸いにも物価が安定をしたという場合には、同じ金利で借りましても返済の負担が非常に重くなるわけであります。したがって、私は、公定歩合を現在の四・二五%から三ないし三・五%程度に引き下げる、そうして長期の貸出金利、預金金利、すべての金利をいま少し低い水準に持っていくことが望ましいように思うわけであります。このいうようにいたしませんと、もっぱら財政だけに景気の刺激の手段を求めてまいりますと、これは財政を非常に拡大しなければいけない。それが財政のアンバランスを拡大するという結果になるのではないかと考えるわけです。  次に、このようなことをするときに、当然郵便貯金の預金金利の引き下げということが必要になってくるわけでございますけれども、幸い消費者物価が非常に安定している。これは私は政府の政策として非常に成功であったというように思うわけでございますが、一月の東京の消費者物価が四・四%の上昇にとどまっている、前年比の消費者物価の上昇が四%であったということは非常に珍しいことでありまして、このときこそ私は預金金利、貸出金利をともに下げるべきチャンスではないかと思います。金利を下げましても、設備過剰がひどいから投資はふえない、こういう説もありますけれども、企業にはいろいろな種類がございまして、やはり設備が余っているところは金利の効果はないでしょうけれども、金利が下がれば投資をしよう、こう考えている企業というのは常に存在をしていると思います。  次に、消費の問題でありますけれども、私は消費拡大といたしましては、もっと政策的に有効需要をふやしてやる必要がある。私たちの考えでは、政府の実質消費五%ということに対しまして、せいぜい実質三%伸びれば、まあいまの状況ではやっとのところではないかというように思うわけであります。現在の民間の消費規模は幾らかと申しますと、約百兆円であります。したがって、政府見通しの五%それから私たちの見通しの三%、この差二%を金額に換算いたしますと二兆円不足をしている。したがって、総額二兆円の需要を拡大する、そのよう所得減税とそれから老齢福祉年金の増額等をすべきではないか、こういうように考えるわけです。  所得税減税につきましては、新聞等で拝見いたしますと、政府は強く反対をしておいでになるようでありますけれども、どこの国でもやはり減税政策は景気対策の本命でありまして、日本よう減税に対して非常に消極的であるというのはきわめて例外的な状況であります。  減税反対論拠というのはいろいろ挙げられているようでありまして、たとえば減税消費をふやすよりも、公共投資で下水をよくするとか学校をたくさんつくる方がいいのだとか、あるいは減税をしても貯蓄に回って消費がふえない、また減税をすれば赤字公債を増発しなければならないから財政が破綻してしまう、いろいろな点が挙げられております。しかし、こういうような問題がありましても、私は減税が望ましいというように考えるわけであります。  まず公共投資を伸ばす、これは日本の社会資本の不足の状況から申しまして賛成でございますけれども、それだけではやはり工事能力にも限度がある。それから公共投資効果というのはどうしても地域的にもまた受け取る人にも偏ってしまうわけであります。ですから、所得減税によりまして国民全体に恩恵を均てんさせるということは非常に望ましいのではないかと思うわけです。  それから、減税をしても消費はふえないという意見でありますけれども、やはり減税をすれば、これは減税やり方にもよりますけれども、まず消費者は月給袋の中身がふえてくるわけであります。ふえた場合に、私たちは、これは賃金が上がった分だから消費をするよと、これは減税でふえた分だから貯蓄をする、こういうように分けて行動するでしょうか。私はこれは非常に疑問ではないかというように思うわけです。やはり減税をして税引き後の所得、いわゆる可処分所得がふえれば、それに応じまして、それに消費性向を掛けた程度消費というものは行われるのではないか、こういうように思うわけでありまして、減税消費刺激に役立たないという議論は、私たちの日常の経験から申しましても、どうも納得できないように思うわけです。  それから最後の赤字国債が増加するという点は、これは確かに将来に問題を残すことでありますけれども、私は財政のバランスよりも経済全体のバランスをまず重視するというのが本来の考え方ではないかと思うわけでありまして、現在のように全体の購買力が足りないというときに財政バランスの方を優先して公債発行をおくらすというのは、どうも現代の経済学の考え方と非常にかけ離れた見方のように思うわけです。まして、すぐまた増税が必要になるというようなことでもって、せっかくの減税効果を減殺してしまうというような行き方は非常に望ましくないと思います。それにやはり、まずここでは、短期的には財政のアンバランスが拡大いたしましても、景気を刺激して長目にわたって税収がふえるというような手段をとらなければ財政バランスの改善ということ自身も不可能ではないかというように思うわけでありまして、短期のアンバランスを恐れて控え目な政策をとっておりますと、次第に財政はアンバランスがじわじわと拡大していく結果になるように思います。  不況克服もそれから七%成長の実現というのも私は決して困難ではないと思うわけでありまして、それには特に珍しい奇策、新しいアイデアというものは必要はないのではないか。堅実的な正統的な景気政策、すなわち公共投資をふやす、金利を引き下げる、減税を行う、この三つが正統的な手段でありますけれども、これを併用することによって十分に達成できるのではないかというように考えるわけであります。政府公共投資だけを重視いたしまして、金利政策や減税政策を使うことをためらっているという理由は、どうも私には理解できないわけです。  このほか、民間住宅ローンの利子補給でありますとか、こういう景気を助ける政策はもちろん望ましいわけであります。  日本経済は、仮に政府成長目標である七%を突破して成長いたしましても、現在少しも困ることはありません。むしろ私は大いに歓迎すべきことではないかと思うわけです。逆に成長が七%に達しないときには、国内では失業が増大する。それから、国際的には国際収支の黒字不均衡増大をして各国から非難を浴びる。前よりも大きな問題を発生するのではないかと思うわけです。私も、こういう景気観測というような仕事を長くやっておりまして、予測というのは非常にむずかしいということは知っているわけでございますけれども現状では行き過ぎるという方の危険というのは非常に少ない。逆に足りないというときのマイナスは非常に大きいわけでありますから、こういうよう状況では、公共投資だけでなく、各種の政策を動員して、積極的に需要拡大に努めるべきではないかと私は考えるわけでありまして、この点で、私は、現在の予算につきまして、部分的には賛成でありますけれども、かなりの不満を持っているものでございます。  以上で私の意見の開陳を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  33. 栗原祐幸

    ○栗原委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、大川公述人お願いをいたします。
  34. 大川政三

    ○大川公述人 ただいま御紹介いただいた大川でございます。  私は、昭和五十三年度予算を構成している骨組みについて、総括的なことについての意見を述べさしていただきます。  私の基本的な立場と申しますのは、国民経済における政府予算の資源配分機能を重視する。政府予算には所得分配機能とか景気安定機能というのがほかにあり、もちろんこれは重視しなければなりませんけれども、やはり予算といいますか、政府財政の最も基本的な機能は資源配分機能にある。資本主義の初期から現在に至るまでこの基本的な点は私は変わってないというふうに思っております。  それでは、効率的と一言で言うわけでございますが、その効率的の意味というのは、簡単に言えば、限られた資源で最も大きな社会的効用を実現する、政府予算を通じて政府は民間部門から資源を吸収して、その資源を公共的な用途に使っているわけでございますが、そういうような資源の移転、資源の使用を通じて社会的効用を最大にする、言うまでもないことでありますが、これが政府予算の資源配分機能、資源配分の効率性を高めるという最も基本的な機能であろうと思います。  こういう効率的予算を編成するという必要性は、財政規模がふくらんでくるのにつれてますます重要になってきておるというふうに考えます。と申しますのは、GNPなんかに占める政府予算規模拡大するということは、他の資源の用途との競合性が非常に鋭くなってくる、ある場合には摩擦が大きくなってくるということでございますから、そういうような資源の競合性を前提とした場合には、政府予算というのはよほど効率的な形で編成されなければならないというふうに考えております。  それでは、予算効率化といっても、言うはやすく実現するはなかなかむずかしいわけでありますが、その予算効率化を図る方法としてはどういうことを考えたらよろしいのかという問題になるわけであります。言うまでもなく民間企業などがいろいろ支出をし予算をつくるわけでございますが、民間企業の支出の効率性というのは、これは利潤率を計算するということで比較的客観的に計算しやすいわけです。民間企業の生産する品物というのはとにかく値段がついて売れるわけでございます。その価格と費用とを比校することによって効率性が測定できるということになります。ところが、政府の提供するサービスは、これは売れない、売りにくい品物、値段をつけてはなかなか販売できないサービスを提供するのが政府の本来の役割りであるわけです。したがいまして、政府の提供するサービスには値段がつかないわけですから、それではどうして政府の提供するサービスの効率性を判定するのか、どういう手段でやったらいいのかという問題が出てくるわけであります。基本的には政府サービスの効率性を測定するということは大変困難な事情があり、厳密にそんな効率性なんということは測定できないということはあるとしても、重要なことは、国民経済資源利用上の現在の政府部門のウエートといいますか重みを考えれば、困難だからといって効率性評価の努力を放棄するわけにはいかないと思っております。そういう努力はますます強めなければいけないというふうに考えております。  それでは現実にもっとそういうような効率性あるいは効率性評価を考える手続としてどういうような仕組みを考えたらよろしいのかということになりますが、いまある特定の政府サービスを考えて、その特定の政府サービスからいろいろな便益とか効用が出てくるわけでございますが、そういう特定の政府プログラムを考えた場合に、それではどういう費用がその裏側に発生するのか、経済学の言葉で言えば機会費用と申しますが、ある政策プログラムを実施するために資源なり資金を使う、その裏側においてどういうプログラムが犠牲になるのか、どういう支出が減らされるのか、そういう意味での機会費用を絶えず意識することである、これが効率性を評価するための基本的な枠組みであろうと思います。何らかの政策を実施すればだれかが利益を受けるということは言うまでもないことで、そういうようなあるプログラムをただ一つだけ孤立的に取り上げるのではなくて、私の言葉で言うと絶対的に評価するのではなくて機会費用と相対的に評価する、こういうような仕組みを政府予算の編成の中で考えていくべきではないか、そういうふうに考えております。簡単に言えば、私は、やはり政府予算の場合でも費用意識を持つべきである、費用意識を高めるべきであるということを私の基本的な立場としているわけであります。  ところが、現実の政府予算の仕組みの中でそのような効率性評価を行うのに便利にできているであろうか、そのような手法が現在のわが国予算編成技術の中で生かされ、あるいはそういうような効率性評価という観点から予算というものが表示され、国民に知らされているであろうかというようなことにつきましては、かなり疑問を持っております。本委員会での議論の中でも、アメリカ連邦政府のゼロベース予算のことについて質疑応答があったように記憶しておりますが、そのゼロベース予算というのは、言葉の名前から申しますと、いわゆる増分主義ではなくて、前年度の実績いかんにかかわらずゼロの水準から全部経費を洗い直す、不用なものがあったらどんどん落としていく、これがゼロベース予算の名前から見るとそういうことに重点があることは事実でありますが、ゼロ・ベース・バジェッティング、この本当のねらいは、私が最初に申し上げたような相対的な評価をしやすいような仕組みを考える、これがこのゼロベース予算の本当のねらいであろうと思います。これはアメリカ大統領府の予算管理庁から各省庁長官に出された通報を見ても明らかでございます。そういうようなゼロベース予算方式のねらいという点から見ると、わが国予算の表示方式はどちらかと言えば絶対的な評価方式に近いのではないか、それも不完全で説明不足な絶対的評価方式ではなかろうかというふうに考え、そのためのこれからの改善を、できるだけ私の立場としても考えていきたいと思っております。  そういうような、これは基本的な立場でございますが、具体的な問題としては、先ほどの問題にもありましたが、有効需要を喚起する方策として公共事業費の増加がよいのか、あるいは減税がよいのかという問題設定が行われているわけでございますが、相対的な評価法という立場から言えば、こういうような問題の設定の仕方自体は私は大変結構なことであると思います。やはり一方の方策をとれば他方が犠牲にされるという意味での機会費用がそこで明らかにされるという意味では、問題の立て方自体は大変結構なことだと思っております。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 しかし私がやや不満に思っておるのは、その場合、公共事業費の増加をとるか、あるいは減税政策をとるかという選択をする場合、比較すべき内容が、それらによって喚起される有効需要の大きさが主として取り上げられておる。どちらの方法をとったら有効需要喚起効果が大きいか小さいか、そういう点の比較がむしろ非常に表面に出ておるというふうに思います。もちろん、そういうような有効需要効果の大小、これは現在の不況下においては重要な問題には違いありませんが、そのために公共事業費を増加し政府投資を増大させた場合の社会的効用と、減税によって民間消費を刺激した場合の社会的効用、そのどちらが大きいのかという意味での相対的評価という点ではまだ余り議論されてないような感じがいたします。もちろんどなたもそういうことは当然頭に置いた上での有効需要増大効果の議論だという考えもあるでしょうけれども、その割りにしてはちょっとその資源配分効果といいますか、どちらがより大きな社会的効用を上げられるのかという問題についての議論が少し影が薄いように思っております。  そういうよう観点からしますと、すなわち資源配分効果という点に着目して公共事業費の増加をとるか、あるいは減税をとるかという問題を設定した場合、二つのケースに分けられると思います。  その一つのケースは、支出規模増大を含むケースと、支出規模は一定として減税というものを考えるかという二つのケースに分かれると思いますが、まず初期の議論としては、支出規模も動かし得る、そういう枠の中で公共事業費の増大をとるか、あるいは減税をとるかというような対策が対立的に考えられているわけであります。まず公共事業費の増加をとり、政府投資を増大させる、この政策をとった場合には、当然財政規模拡大するわけであります。その財源としては、建設公債の発行の増加で賄われるというのが一つの対策として考えられる。それに対して、特別の政策目的を持たない一般的な減税という方法が考えられる。この場合は、政府支出の規模は不変にしておいて一般的な減税政策をとる。この場合は収入補てん措置としては、赤字公債の発行増加という形になって、この場合の減税に伴う公債は政府の経常支出の財源というふうに考えなければならないわけであります。  そういう二つの対立した中でどちらを選択するかということを考える。そうしますと、予算上はいま言ったような形での選択になりますが、これを遊休資源の利用法という立場から見ますと、一方は社会資本の充実という、いわば公共的な集合的な消費に重点を置くという立場であります。他方は、減税により民間消費、私的な個別的な消費を充実するという立場かと思います。まあ私なりに整理すると、一方は集合的な消費、個人の手ではなかなかできないような集合的消費に重点を置く、他方においては個別的な消費に重点を置くというような組み合わせになろうかと思います。  もちろん、これについてはまた後で問題があろうかと思いますが、いろいろなニューアンスは別として、原則的に言いますと、集合的消費か個人的消費か、どちらを選ぶか、国民生活の、消費生活を高めるためにはいまどちらが必要かという立場に立てば、私はいまの段階では集合的消費に重点を置くべきではなかろうかというふうに考えております。  かつて、テレビをとるか下水道をとるかという問題がもう大分前にあったわけでありますが、その当時は大部分の人はやはりテレビをとりたいわけです。テレビという独占的に利用できるような私的な利益をとりたいわけですが、それに対して、下水道というような非常に一般的な便利を与える、そういうようなものはとかく後回しになりがちであります。そういうような集合的消費の特質を考えますと、どちらかと言えば、現段階、たとえば現在のように下水道普及度も低い、あるいは職場と住宅が非常に遠隔化していて通勤上非常に不便を感じている、まあ私自身もそういう一員でございますが、あるいは道路が狭くて危険である、そのほか一般市民のための運動施設とかレクリエーション施設がない、非常に貧弱である、公園などがほとんどない、あるいは災害とか公害予防のための施設が不十分である、そういうような点をそれぞれ考え合わせますと、原則的には現在の段階では集合的消費の充実のための公共事業費、もちろんまた多少コメントしなければいけないところがありますが、基本的にそう考えております。  時間でありますから、一応陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  35. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、鈴木公述人お願いをいたします。
  36. 鈴木浩次

    ○鈴木公述人 鈴木でございます。時間の関係がございますので、早速公述に入らせていただきます。  私は、まず本年度予算の一般的な方針、性格というようなものについての所見を申し述べ、次に国債管理問題、国債管理政策と申しますか、この問題について若干、二、三点申し上げてみたいと思います。  本年度予算政府の説明書を拝見しましても、臨時異例の予算財政方針であるというふうにうたわれておるように、非常に困難な、苦悩に満ちたと申しますか、そういう性格の予算であろうかと思う。それだけに問題も多い。しかし結局この予算に期待されるものは、長引いた不況を打開して対外的な不調整を是正する。この対外的な不調整拡大が、私は、これは結局は昨年秋以来問題になった対外不調整の根本原因だと思うわけであります。したがいまして、この不況克服、これは一両年あるいはそれ以上もかかるプロセスかと思いますが、これのコースを誤りますと、対外不調整というものがいつまでも残り、それに対する外国からの反応というようなものも起こってくる。円高、そういうようなものが悪循環となって将来の経済発展をますます阻害していくという、非常にむずかしい、それだけに予算の編成、執行というのは重大な局面にあろうというような感じがいたしますわけでございます。  したがいまして、対策としましては、当然財政主導型の内需の拡大ということで、かねての懸案であった財政再建の課題を若干先へずらしてもこれをやろうというこの基本方針については、私、全面的に賛成でございます。  ただ、予算内容について拝見しますと、予算案内容でございますが、金森公述人が言われましたように、確かに一刀流である、公共投資一刀流である。まあ一辺倒と申しますか、少し肩に力が入り過ぎている。情勢が複雑なだけに、経済関係する者ならだれでも申しますとおり、多様な政策手段でもって対処するというのが現代経済分析あるいは政策論の常識であろうかと思う。もちろん減税公共投資と考えた場合に、需要創出効果というものを紙の上で議論すれば、当然結果ははっきりしておりますが、現在の情勢でこれだけの急激な公共投資伸びが、消化能力が果たして十分あるのか。私ども見ておりまして非常に心配するのは、たとえば土地政策のごときがその問題の一つであります。住宅を拡充する、その他生活環境、道路、港湾、学校、あらゆることで土地問題が前面に出てくる。これに対して適切な措置がとられているのかどうか、その辺の整合性についてかなり問題があるのではないかという感じがいたします。これは一例でありますが、政策の多様化という観点から見るといろいろ申し上げたい点も出てくる。ごく簡単にいたしますけれども、たとえば福祉関係にしても老人の年金のごとき、これは非常に消費性向の高い部門であります。これあたりに力を注ごうという考えは当然であろうかと思う。  私が特に申し上げたいのは、対外経済援助といったような費目であります。いかんせん、これは余り政治のレベルでは議論の対象になっていないようでありますが、今回非常な努力伸び率も大きい。たしか二千六百億円でございますか、ということであったと思う。しかしこれも目標は、DACの目標であるODAでGNPの〇・三%に、ようやく人並みの線に到達できるかどうかという線である。こういう対外経済調整の非常な困難な局面に直面している日本が、後進国に対してどういう姿勢をとるかという政策の宣明としてははなはだ不十分であり、自分の哲学の乏しい予算配当ではなかったかというような感じがいたします。  これらの点を述べればいろいろございますが、もう一つ行政機構改革の問題が、新聞等によりますと、実態的には、実質的にも見送られた、先に繰り延べられた、非常に残念なことだと思う。この困難な両三年の経済調整過程において、企業といい家計といい大変な調整努力であろうかと思う。そういった国民に対してこの予算を納得してもらい、協力をしてもらう、で、将来は当然これは税負担の増加といったような展望もはっきり出ておることでございます。政府がみずから機構を改革し、行政機能をもっと効率化し、冗費を省き、しかしこれは公務員の人員整理というようなものは雇用問題にも衝突いたしましょうが、配置転換、より生産性の方向への人材の再配分、そして特に申し上げたいのは、過剰な行政関与、過剰な統制の廃止、縮小、見直しといったよう一連の意味での行政機構の合理化というものが、どうもこの予算と並行しては進んでいなかったというのが、私の、率直に申し上げて批判点でございますし、御注文でもございます。  予算の性格、方針についての一般的な所感はこれぐらいにしまして、次の国債管理の問題に移りたいと思います。  国債大量発行が必至になったということは、当然のプロセスであったと思う。国債発行が歳入予算の三二%になり、実質三七%だというようなこと、これも重大な問題であります。また、予想によりますと、地方債以下政保債、政府関係機関債を含めた公共債という概念でとらまえますと、本年の発行予定は二十兆円に上るだろう、年度末の残高は恐らく九十五兆円であろう、これはGNPの残高にして四五%になるというような数字が伝えられております。そのような方向で事態は進んでいるかと思います。非常に驚くべき数字であります。  ただ、私は、この数字で財政が破綻に瀕しているとか、したがって減税ができないとかいうように簡単に処理すべき事態ではないというような感じがいたします。と申しますのは、経済拡大するに従って、資本主義経済であります以上は、投資主体と貯蓄主体とは、これは当然分化しておりますから、その間をつなぐものは金融であり、証券の発行であります。つまり、経済発展にほぼ即応しましてパラレルに、並行して金融資産の蓄積というものは進む。債権債務の累増は進んでいくのであります。恐らく昨今の経済情勢の大きな転換、つまり高度成長から安定成長への転換、公共部門の拡大、そしてそれに対応いたしまして、企業の資金調達のパターンの変化、それから貯蓄主体としての家計のより多様な金融資産に対する需要の増大、これらを一体のものとして考えますと、経済発展にほぼパラレルに進むであろう金融、債権債務の蓄積というものの内容が変わっていく。従来は、高成長時代は、これは民間債務が中心であった。端的に言って銀行預金といったような間接金融と申しますか、国民貯蓄の過半が、大半が銀行へ集中する。それからローンの形でこれが投資部門にファイナンスされたというプロセスが、ここに大きく公共部門というものの出現によって変わっていく。国民経済の発展に伴って債権債務の増大は当然である。そのうち公共債だけを中心にしてGNPに対して四五%、これが六割にもなりましょう、七割にもなりましょう。それ自体が危険だということにはならないというのが私の感じであります。  では、このままほうっておいていいか、決してそうではない。私は別のところに問題があると思うのです。それが私が申し上げたいこの債務管理、国債管理の問題であります。  教科書流に言いまして、赤字国債発行には二つの側面があるということはだれでも言っております。一つはフロー効果と申しますか、端的に言って需要創出効果だろうと思います。つまり事業をふやして、支出をふやして、それに対応して税金をふやさないというものでありますから、それだけ購買力の造出効果がある、これがフロー効果、これは一時的な効果であります。もう一つ金融効果あるいは資産効果というものがあります。これは、発行された国債なり民間債務なりが償還されるまでの間長期にわたって市場に残る、つまり家計の金融資産かあるいは企業の金融資産、あるいは金融機関、広い意味での金融機関のバランスシートの債権債務勘定となって残る性質のものであります。  これをどう管理するかというのが国債管理政策、債務管理政策の重要な課題であろうと思います。従来は民間債務の陰に隠れて国債というものは非常にウエートが小さかった。過去十年来公共債は漸増傾向にありましたけれども、過去の高度成長期においては日本銀行の買いオペレーションというものがあった。成長に即応して銀行券の発行増大に対応して日本銀行がこれを買いオペで賄うということは、これは引き締め緩和に関係ない中立的な金融政策でありますが、幸いにしていままでの国債発行のうちの八割以上は発行後金融機関に保有されて、一年たてば日本銀行の成長通貨の買いオペの対象となって市場から姿を消していったということで、この問題が少なかった。  問題と申しますのは、前後しますけれども国債発行政策というものは、あるべき適切な債務管理政策の観点から見るとはなはだ不備であった。これはいろいろないきさつもあって、財政当局としては国債金利を低利に固定したいというようなことで、いろいろな形での、露骨に言えば強制保有制度というようなものがあり、金融機関にやや強制的にこれを持たす、したがって、金融機関はこれを処分できないというような事態が長く続いておった。そういう矛盾も先ほど申し上げた日本銀行の買いオペレーションによって隠蔽されて表面化しなかった。ところが、今後はそういうことはできないということだろうと思います。  昨年一年間の公社債市場での売買総額は百十三兆円というふうに記憶しておりますが、このうちすでに地方債、縁故債も含めましてなんですが、最近急に売買量がふえております。たしか地方債の場合には全体の四分の一ぐらいになっているはずだろうと思います。流動性のない、回転の少ない国債でさえ一〇%強の比重を占めてきた。これが恐らく一年、二年の間に公社債市場での売買証券の中で公共債が中心になっていく、六割、七割が公共債だという事態がすぐ目の前に来ている。これに対して今後とも不自然な金利の固定化、それから流動を阻害するような政策をとってまいりますと、その結果は非常に憂慮すべき事態になる。  一、二例を挙げて申しますと、たとえば市場性を無視した国債を金融機関に保有させた、その結果何が起こるのか。ごく短期的に考えますと、それによって国債費が節約されたと考えるのは私は非常な短見であろうと思います。つまりそれは日本銀行に買い取られる国債でありますから、日本銀行の政府に対する上納金がそれだけ削減される。ネットでは決して財政の削減になっておりません。その上問題なのは、これは決して金融機関の肩を持つわけではありませんけれども、金融機関に採算上無理な資産を持たせる結果、金融機関もこれは私経済でありますから必ずそれを転嫁する。転嫁する先はどちらかと言えば弱い者に転嫁される。消費者ローンの金利が高くなり歩積み両建て預金になってくる。これは国債金利だけではない、金利統制全体の弊害だと思います。この段階で情勢は急速に変わってきておるので、この問題についてはひとつ抜本的に考えを検討され——私は端的にその結論を申しますと、いろいろ技術的な問題はあろうかと思いますが、いまの情勢で国債は短期債、中期債、長期債を含めて入札発行へ一歩踏み出す絶好の機会だと思う。この機会を逃すと非常にむずかしくなってくると思うのです。なぜできないのか。従来この金融正常化論とか金利自由化論はいろいろ議論の展開がございました。十数年来の議論だろうと思います。しかし、今日に至るまでなぜ国債の金利の自由化ができないのか、私は十分な納得のいく説明をどこからも伺っていない。これは重大な問題だろうと思うのです。  で、金融の秩序とか金利体系論というものがある。これは自由な公社債市場があり、そこに価格機能が働いておのずと形成されるものが金利の体系であろうと私は思いますし、情勢の変化に応じて体系の内容が変わっていくのが当然である。それを行政的にあるいは統制的にあるべき金利体系はこうであるというようなことは非常におかしいことだ。最近の金利情勢がやや行き過ぎがあったようでありますが、事業債の流通利回りが非常に下がりまして、この二月からその金利の引き下げ改定が行われた。しかし、国債金利を最低にするがためにその金利の下げ幅は最小限度にとどめられ、例の〇・一%の二畳半、四畳半の中にたくさんの公社債が並んでしまった。この結果を見て、地方債あたりでは公共債でありながら事業債を上回る金利を払うのはけしからぬというような議論があるやに聞いておりますが、これは金融市場の情勢、論理というものを無視した議論であろうかと思うのです。統制をするとそういう次から次に実情に即さない議論に発展していく。  私のこういった国債金利の自由化論から言えば、これは公社債市場の金利にとどまるものではないのでありまして、当然金融市場全般の金利に及んでいく。金利の全面自由化論、実は私はそうでありますけれども、もちろんそれには順序がある。が、まず預金金利等についての言われております弾力化、金融制度調査会もそういう結論を出しておりますので、これを一層促進していただきたい。先ほど金森さんから金利の引き下げの必要というようなことも言われました。私も賛成であります。いま預金金利、公定歩合と連動というシステムには問題がありますが、公定歩合をてことして預金金利の引き下げを図るべき時期だ。これがないから先ほど申し上げたような金利体系論の無理な金利序列論と申しますか、そういうむだな論争があり、むだな混乱があるというふうに考える次第でございます。  もし時間がありますならばもう一つ……。  したがいまして、この金融面との関連において今後の予算中心とした経済政策の運営についていろいろ問題があろうかと思います。  その一つは、財政投融資計画がこのように年々膨大になってくる。いまや全国金融機関の中で郵貯の占める比重というものは非常に高くなっている。これは統計のとり方にもよりますが、出がけにちょっと調べてきたのでは、やや重複計算がありますが、全金融機関の預貯金の中で郵貯の比重はもう一八%になっている。伸び率は銀行の預金よりも高い、税法上は先生方御案内のいろいろ矛盾した問題がそこにある、こういうことであります。この財政投融資機能を全体として考えますと、これを持っておりますことは日本財政制度に非常な弾力性という妙味を与える制度かと思いますが、と同時に、昨今のようにこの財政投融資の財源である資金運用部資金の比重が高まってまいりますと、どうしてもこれは金融制度全体の観点から、その合理性というようなものを見直さざるを得ないという情勢に直面しているように思う。今回もいろいろ資金操作の必要もございましたでしょうが、財投資金の一部、資金運用部資金の一部が地方財政にああいう形で運用されて、一兆五千億という数字があったと思いますけれども……。先進諸国でこれに関連した制度を見ますと、私も詳細は承知しておりませんが、アメリカにはもちろん財政投融資制度自体はありません。ヨーロッパに若干似た制度があるように思いますが、日本ほど大きな、特に郵便貯金制度というものを日本ほど大きなウェートを占めた形で持っている国はない。しかも末端では、金融市場で民間金融機関と競合をしております。いまのままですと、民営圧迫という非難も当たるという事態にある。これは預貯金利子所得に対する税法上の優遇、マル優制度、それから預金の名寄せの問題、あらゆる問題が関連してくる、慎重な検討を要する問題だと思います。私もそう簡単にこういう解決があるとは、容易にあるとは申しませんけれども、ぜひこれはしかるべき機関を通じて真剣に検討さるべき事項ではなかろうかと思います。  一応私の公述はこれで終わらせていただきます。(拍手)
  37. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  38. 中野四郎

    中野委員長 これより各公述人に対する質疑に入ります。  質疑は、お一人答弁を含めて十分程度——もう少しよろしゅうございますが、どうぞひとつ適宜お願いをいたします。質疑のお申し出があります順序に申し上げます。山下元利君。
  39. 山下元利

    ○山下(元)委員 各公述人におかれましては、大変有益な御意見を承りましてありがとうございました。一々お伺いしたいところでございますが、ただいま委員長の御注意もございまして、時間の制約もございますので、私は大川公述人にお伺いしたいと思っております。  先生には、予算の持つ資源配分機能というものを重視されまして、限られた資源で大きい社会的効用を期するという予算の機能について、私はまさにそのとおりだと思います。その点につきまして、特に昭和五十三年度予算につきまして一番問題になっております。公共事業減税かという問題の設定についてはいいがか、ただその比較すべき内容について、単に有効需要の大小だけを取り上げている点に問題がある、むしろそうした資源配分機能から見ますところの社会的効用というもの、これについての比較がされるべきではないか、私はまさにそのとおりだと思うわけでございます。その点につきまして、いまお話のございました公的な社会資本の充実という、それを先生は集合的消費と言われた。それからまた、一般的減税とかいうふうなものの個別的な消費というものと対比せられまして、現段階においては集合的消費の方にも重点を置くべきではないかというような御所説だったと思います。先生の現段階においてはというお言葉は、これは昭和五十三年度予算についての御所説でございますけれども、私はこの点は長期的に見ましてもこの方向をとるべきではないかというふうに思うわけでございます。その点について、先ほど時間がないために、多少いろいろなケースについて十分な御所説を承れなかったのですけれども、そうした長期的な見通しにおいても、その社会資本の充実というものを日本においては図るべきだという観点からいたしまして、いましばらくこの点について御所説をいただきたいと思うのです。  それからもう一つ、公共事業減税かというふうな対比でございますけれども、私は、ここでそういう集合的消費というものを進めるという観点からいたしますならば、どうしても租税負担率の問題にぶつかってくると思うのでございます。先生は資源配分機能というものを重視されましたが、どうもいまの、これは五十三年度予算やむを得ないとは思いますけれども景気調整機能というものが余りにまた多く出過ぎている面もあると思います。それについての御所説もお伺いいたしたいのでございますけれども、一体いまの租税負担率においてそうした公的な社会資本の充実は期し得るのかどうか。単に公共事業減税かという対比は、いまの当面する問題における問題でありましょうけれども、租税負担率というものの増大を図るべき時期が来ているのじゃないか、そうしないと、いわゆる社会資本の充実も期し得ないのではないかという点において、私はさらにそうした集合的消費という問題を取り上げていきたい。先生の御所説に大賛成でございますけれども、その租税負担率との関係において、私はいましばらくお話を承りたいと思うわけでございます。  限られた時間でございますので、以上についてお伺いしたいと思っております。
  40. 大川政三

    ○大川公述人 山下委員から大変要領よくまとめていただきましたが、一つの御質問の要旨は、現段階で集合的消費に重点を置くというような説だったけれども、もう少し長期的な見方に立った場合、一層そういうことが要求されるのではないかというような御質問でございました。  私は、先ほど挙げたわれわれの生活環境が非常に荒れておる、あるいは不十分なところがある、これがやはり解決されない限り、これはそう短期間にできる問題ではないというふうに思っております。  ただ、個人的消費に対比して集合的消費を優先させるべきであるというような私の原則的な見解に対して多少コメントをつけさせていただければ、減税によって個人的消費を高めることも、私は先ほど一般的な減税と申したわけでございまして、ある特殊な政策目的に出る、あるいは非常に福祉的な目的を考えるとか、ある特殊なプログラムを考えた上での減税の余地がもしあるとすれば、それまでも否定するわけではございません。私は一般的な減税という形で申し上げた。しかし、そういうようなある政策効果を加味した減税の場合も、その減税だけをとれば、先ほど言ったようにだれかが得するのに決まっているわけでございまして、やはりそういうある政策効果を伴う減税の場合でも、その政策効果を上げるための他のやり方との関係で御判断していただきたい、そういうことです。これは個人的消費についての一つのコメントでございます。  それからもう一つ、集合的消費というのは、これはもうなかなか、道路とか橋とか等々の社会資本というのは、個別的に利益が帰属しません。したがって、自発的に国民費用を負担してくれる関係にないものですから、その限りにおいて政府はよほど相対的評価の上に立って促進していただく必要があるわけでございますが、その意味で集合的消費を充実すべきだということを申したのですが、ただ、五十三年度予算の中における公共事業費全部が、果たしてそういうような厳密な査定といいますか、吟味の結果出てきているのかどうか、この点については少しまだこちらの国会で厳しく審査していただきたいように思います。本当に減税ということをやらないで、しかもそういう社会資本の充実によって集合的消費を高めるのであれば、いかなる点においてそういうような必要性があるのかということは相当厳しく議論すべき余地は残っているのではないかというふうに、ちょっとコメントとしてはそういうふうに申し上げさせていただきます。  御質問の要旨の長期的に考える必要があるということは、これは先ほど申し上げたように、そう一年や二年で片づく問題ではないということでございます。  それから第二点の、そういう集合的消費という場合、それを充実するとすれば、現在の租税負担率、国民所得対比で中央、地方を含めて約二〇%程度かと思いますが、そういうような租税負担率で足りるかどうかということでございますが、これは一つは、集合的消費というのはかなり長期的な便益を与える筋のものでございますから、このすべてを現在世代の負担で税金でやるということまでは私は考えません。ある程度建設的な公債を利用すべき負担公平上の点から言っての論拠はあろうかと思っております。ただ、今後予想される財政の姿としては、こういう集合的消費を充実することだけではなくて、いろいろ所得再分配効果を目指した福祉的な支出というものが将来の増大要因になろうかと思いますが、その場合にはそれを公債で賄うというのは少し理屈が通りにくいということで、やはり同じ世代の中で分け合う、助け合うというような形での相互愛といいますか、現在世代の者が多少消費を節約して、大変困っている方、救うべき方に差し上げる、そういうようなことは今後やはりもう少し強化すべきではないかということでございます。
  41. 山下元利

    ○山下(元)委員 終わります。
  42. 中野四郎

    中野委員長 広沢直樹君。
  43. 広沢直樹

    ○広沢委員 公述人の皆さんには大変御苦労さまでございます。貴重な御意見を拝聴さしていただきました。多岐にわたっておりますけれども、一応時間の関係で二、三点にしぼって御意見を伺いたいと思います。  まず鈴木公述人にお伺いいたしますが、御説明の中で、対外調整の問題と予算の問題に触れられておりました。御承知のように、当予算委員会におきましても、いわゆる対外調整の問題は一つの大きな問題として取り上げられております。と申しますのは、昨年のいわゆる円高、通貨と通商という問題がわが国経済に与えた非常な影響からこれらの問題が取り上げられたわけでございますが、スミソニアン以後、いわゆる変動相場制になってきた。クリーンフロートでいかなければならぬということで、その当時は大変議論がありました。ダーティーフロートでは困るというような話もございましたのですが、最近の情勢から見ると、どうしても世界不況から脱却して安定的な体制に持っていかなければならない。そのためにやはり通貨が余りにも急激な変動をするということは経済に与える影響というものが大きいのではないか。その典型的な例が昨年のわが国の一つの経済の円高不況という、ああいう深刻な事態が出てきた、こういう問題にあったのではないかと思うわけであります。したがいまして、その間にわが国の方からアメリカ並びにその他の国々に対して、この際やはり通貨をある程度管理するといいますか、管理されたフロート、こういったことも必要ではないか。しかし現実的には経済の実態が通貨の動きとしてあらわれてくるわけでありますから、それに何らかの制約を加えてしまうということが必ずしも妥当であるとは言いがたいと思いますけれども、やはりアメリカにおいても、ローザ構想といいますか、ターゲットゾーンの話が持ち上がってきております。国際金融問題について御専門であります先生の御意見をひとつお伺いいたしたいと思います。  それともう一点は、金利の自由化の問題に触れられておりましたが、私は金融制度の改革の問題についてひとつ御意見を承りたいと思います。  去る四十六年か七年、当委員会におきまして、いわゆる金融機関の土地の投機あるいは狂乱物価を助長したというようなことで、企業の責任とともに金融機関の社会的責任が取り上げられたわけでございます。それを契機にして、金融制度調査会におきまして、こうした問題を含めて安定成長時代における銀行並びに金融制度のあり方についていま検討が行われております。昨今の新聞にもその経過が出てきておるわけでございますが、特に今日、不況の長期化、それから低成長下における経済環境の悪化によりまして、金融機関の経営環境も非常に悪化してきております。昨日の経済新聞のトップにもそういった問題が取り上げられておりますが、こうした変革期に対する金融制度のあり方、改革の目標、これは早急に示す必要があるのではないか。もちろん、産業構造が変わっていきますから、当然金融制度もそれに対応して変わっていかなければならないと思うわけでありますが、それに対しての御意見をひとつお聞かせいただきたい、このように思う次第でございます。
  44. 鈴木浩次

    ○鈴木公述人 お答えいたしたいと存じます。  最初の、対外調整の中における為替の安定の問題、なかんずくローザ構想についての御質問でございましたが、ローザ構想、私も読んでみましたけれども、一番最後にこういうことを言っております。通貨はみずからを管理しないのだ、こういうことですね。端的に言うと、結論は、いまのフロート体制の動きが必ずしも理想どおりいっていない、変動し始めるといろいろ投機的な要素が働いて、必要以上に、つまり国際収支の不均衡是正として期待される為替機能以上に乱高下してしまう、その意味で現在までの為替相場管理に問題がある。その一つの打開策として、西ドイツマルク、日本円、ドル、三極通貨間のターゲットゾーンのようなものを、これは何という言葉を使いましたか、バリアブル、つまり変動的な政策基準というようなもので非常にフレキシブルに考えておるようですが、こういうのが欲しいというのが彼の考えのようであります。  ただ、ローザの考え方をずっと読んでみますと、やはり為替の安定は国内経済均衡なくしてはあり得ないというのが基本でありまして、あのローザ構想は、昨年のたしか十一月にアメリカの上院の専門委員会で彼が述べた公述なんですけれども、アメリカの経済政策に対する提言なのでございます。アメリカのとるべき対策としては、まずコンフィデンスの改革、エネルギー対策の推進ということが基本だということを言った上で、しかしいままでのフロート体制の実績を見ると、どうも為替に対する、数量で見た輸出入量の調整が弾力性が低い。それから日本とドイツについては所得弾力性、つまり経済変動による輸出輸入に対するはね返りの度合いがやや弱い。これにはその国の経済構造なり制度という問題があるのであろうというようなことで、大変行き届いた、バランスのとれた見解であるように思うわけであります。  先生いま御質問にお触れになりました、昨年の非常な大激変という円高のプロセスは非常に遺憾なことであって、これが国民経済に与えた打撃というのは非常に重大である。事ここに至った政策当局の責任も大きいと私思いますが、私もその一端に並ぶ民間の観測者、研究者の責任もはなはだ重大であったというふうに思うわけですが、しかし私、最初の公述で申し上げたように、あの急速な円高という形での対外調整を強いられたかっこうになったわけですが、それはつまり国内不調整というものが基本にあって、それをむしろ為替面へのあらわれを、いまから思えばやや為替安定の方向に力の入り過ぎた方向で調整ようとしておった、その無理が結局はああいう形で調整を強いられたということではないか。これは今後にとっても非常な教訓なのでありまして、今後、ターゲットゾーンを中心とした主要通貨の通貨当局相互間で話し合いを進めて、できるだけ相場の乱高下を避け、相場を安定に持っていくという考えは非常に結構なのでありますけれども、もし、国内経済に不調整が残り、不調整に対する政府の政策がおくれ、あるいは政策処理能力が不十分であるという認識が内外の為替市場、金融界の認識として定着するというような情勢では、必ずや為替変動がまた起こる、これはとてもターゲットゾーンを中心とした介入政策で防ぎ切れるものではないというのが私の考えであります。その意味で、ローザ構想を求めてお互いに話し合いを進めていくのは大賛成でありますが、ここでわれわれは幻想を持つべきではない。国内に対外的な不調整が残る限りは、為替は変動する。それを不自然に抑えようとすれば、ターゲットゾーンであれ何であれ、必ずもっと大きな形での変動という形ではね返ってくるというような感じがいたします。  時間もございませんが、金融制度についてお触れになりました。おとといかきのうの新聞に、若干の中小金融機関における経営内容の悪化というような指摘がありました。ああいうことも、昨今の時世でありますから必ず起こる。四百五十ございますか、信用金庫は。相互銀行は七十幾つというような多数の金融機関の間で、いろとそれぞれに経営上の誤算等もあり、ああいう形の問題が内在していくということは当然であろうかと思います。そのままほうってはおけない。  ところが、問題を深く掘り下げてみると、実は大銀行にも大きな問題があろうかと思う。そういうような意味で金融制度の改善強化ということ、どういう対策がいいのか。資本の充実とか銀行検査体制の強化とか、あるいは中小金融機関に対しては特に預金保険制度の拡充とか、いろいろ問題があろうかと思う。  ただ、私が申し上げたいのは、対外金融もそうでありますが、国内金融は行政干渉の非常に強い分野であり、これが行き過ぎているというような感じがするのであって、こういう新事態に対して、またぞろ言われます当局の行政干渉がふえていくと、それが過保護というような形で悪い結果をもたらすというのは避けなければいけない。やはり金融機関も私企業であります。基本的には、自己責任で、企業努力がこの金融制度改善の基本でなければいけない。私はその点では金利自由化論の自由主義者でありますが、そういう意味でのマーケットメカニズムというものはあらゆる問題を考える場合の基本でなければならないというふうに考えております。それを基本としての経営基盤の強化というようなこと。  というのは、最近の情勢変化で、大銀行といわず中小金融機関といわず、消費者ローン——教育ローンを含めまして、の工夫なり新商品の開発というものは大変な努力である。あの芽を摘み取ってはいけない。ああいう動きを伸ばしていかなくてはいけない。過保護をして、そして、問題が起きたから政府がそのしりぬぐいをするというのではいけない。そういうことではなくして、経営努力の行き着くところ、ある限界があって、あるいはその必要があって、積極的な業体間の合併強化というようなものが進んでいく、統合というようなことが進むというのは自然の成り行きではなかろうか、それを上手に誘導するのが政策であろうというような感じがいたします。
  45. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、金森公述人にひとつお伺いしたいと思うのですが、金森公述人は、ケインズ政策、これを活用して円高不況を克服すべし、こういう文献を出しておられるといいますか、随所にそういうお話をなさっております。その意味においては、福田経済政策というのは間違っているのではないかという御批判をなさったこともございます。  確かに、昨年の状況を見ておりますと、財政再建と景気対策と、こういうような二本立てで最初出発しておった。というよりも、むしろ予算の編成状況から見ると、財政再建にウェートが置かれておったのではなかろうかというよう状況でありました。したがって、経済見通しあるいは経済情勢から言うと、これでは不況脱出はできないということで御意見を述べられておったと思うので、私どももその意見には賛成なのでございます。需要を拡大していくための財政役割りあるいは金利あるいは減税政策、きょうもいま公述されましたけれども、私もそれは、これまた当然であろうと思います。しかし、その需要を拡大していくためには、財政役割りというのは、今日の財政事情から言えば大きく借金政策によらなければならない。その中でも、赤字国債発行が膨大になってくる、こういうことでございます。私たちは、緊急避難的に、いまの場合は、いいの悪いのという議論よりも、これはいたし方がないという形で物を見ておりますけれども、やはりこれは、赤字国債そのものは認めるわけにはいかないだろう。したがって、これまでの政府財政運用を見ておりますと、やはり公債依存型の財政運用をやってきた。これは四十年から公債政策を取り入れているわけでありますけれども……。その間、多少の弾力的な運用はしておりましたけれども、その後はやはり公債依存型の財政である。したがって、財政法で認められたいわゆる国債の弾力的な運用が、景気対策としての活用というよりも赤字国債財政法に認められていない赤字国債の運用で、いわゆる財政景気に対する一つの対応という形にならざるを得なくなってくる。いま予算委員会でもいろいろ議論になっているのは、赤字国債からいつ脱却するかということが最大の問題で、予算委員会が混乱するという一幕もあったぐらいでございます。  したがって、公述人は、財政法と今日の赤字国債を含んだ公債政策のあり方、この面について基本的にどういうようにお考えになっていらっしゃるか、この点に関しては、鈴木公述人国債問題に触れておられますので、御意見がありましたならばお聞かせいただきたいと思います。
  46. 金森久雄

    ○金森公述人 大変財政学上議論のある点の御質問でございますので、私のお答えが一般的に認められるものかどうか問題がございますが、率直に申し上げたいと思います。  私は、国債依存度がどれだけであるべきかというのは、国全体の需給バランスがどうであるかということを基準にして考えるべきであって、財政に対する国債依存度が何%であるかということを基準にして考えるべきではないと思います。そういうように考えれば、財政の再建とそれから国民経済全体の再建とは必ず矛盾する場合があって、実現できない。ですから私は、もともとその両者を一気に追うというのは矛盾した考え方であるというように思うわけです。したがって、当初国債依存度三〇%という線で出発しながら、結局それは実現できなかったというのは、必ずしも政策のやり方が誤っていたということではなしに、基本的な考え方において違っているのではないかというように思うわけです。  次に、それでは国債依存度は、建設公債ならばよくて、そして赤字公債はいけないか。これは一般の意見でございますけれども、私はそれも正しくないと思います。全体としての国民の需要を投資で埋めた方がいいかあるいは消費で埋めた方がいいか、これは先ほど大川さんが言われましたように、どこの需要が不足しているかということによって判断をすべきものでありまして、もし消費を増加するということ、これが国民経済上必要であるとすれば、その財源はいわゆる赤字国債、特例国債に依存するという形になるケースがあるわけでありまして、これは少しも差し支えないと思うわけであります。  で、これも鈴木公述人が言われましたのと同じことになると思いますけれども経済が発展すれば必ず国民に貯蓄が累積してまいります。いわゆる金融資産がたまってくるわけですね。この金融資産がたまるということは、その反面、借金が発生をするわけであります。借金のない資産というものは、これは存在し得ない。ですから、従来は、国民資産というものを企業が借りていた、こういうことでバランスをしておりましたけれども、企業の借金、企業の投資意欲が減りまして企業の借り手がなくなる場合には、国民の金融資産は当然国債の増発ということによって見合うわけであります。これが建設国債であるかあるいは赤字国債であるか、これはそのときどきによるわけでありまして、どちらの方が正しくてどちらが間違っている、建設国債はいいけれども赤字国債は困るということは、原理的にはないと思うわけであります。問題は、そういうようにして累積して、ついに国債発行する必要が経済全般の変化の結果としてなくなったという場合に、果たしてうまく対処できるかどうかということでありますけれども、これは非常にむずかしいわけですが、その対処がむずかしいからということで不況期にも赤字国債発行を遠慮する、赤字国債発行を差し控えるということは正しくない。むしろそういう必要が出る。国債を減らさなければいけないという事態ができた場合に、それを減らせるようなメカニズムをつくっておくというのが正しいわけでありまして、これは鈴木公述人が言われましたことに賛成でありまして、金利のメカニズムをしっかりとつくっておく。金利機能がよく働けば、経済全体が過熱をして国債発行が必要でなくなった場合には、自然に発行ができなくなるというような自動調節力が働くわけであります。  以上のことでもって、赤字国債の増発ということを恐れるという一般的な考え方は誤りではないかと思うわけであります。
  47. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうもありがとうございました。
  48. 中野四郎

  49. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 時間も制限されておりますので、金森公述人に限って三点ほど質問させていただきます。  国家運営の目的は、国民が豊かな生活を享受できる高度文明社会を築くことだ、そして経済はその手段だと思いますが、どうも最近は経済の方が目的のようになっております。来年度予算にしましても、七%という経済が何か目的化しているようなことでございますが、それに関しまして先行きに一つの目標がない、安心感がないということで貯蓄性向も高まっているような要素があろうかと思います。老後の問題、それから教育の問題、住宅の問題、そういったものが完全に保障されるならば、国民は安心して財布のひもをほどきましょうし、あるいは企業も何かはっきりした目的があるならば活発に投資を行う、そういう心理的な要因がまずは必要じゃないかという気がするわけでございます。金融を緩め、金利を下げても投資が行われないというのはそのことでございますので、それにつきまして金森公述人に、安心して消費性向が高まり、あるいは活力を持って企業家が企業マインドを発揮するといった心理的要因にどんなものが考えられるか、どういうことが考えられかというようなことを、ちょっとお答え願いたいと思います。  それから第二点は、最近の日本経済の構造の問題でございますが、投資が投資を呼ぶ状態でないことは現在ははっきりいたしております。しかし、その経済構造そのものが変わったのかどうか。これは産業連関表あたりで見ましても、四十五年当時生産誘発係数二・一三六が、四十八年二・〇三五、四十九年二・〇三〇、五十年一・九七というぐあいに下がってきておりますけれども、これは在庫があって圧迫しているから、あるいは需給ギャップが大きいからといったようなただ短期的なものなのか、一つの構造変化なのか、この辺の御認識を少しお聞かせ願いたいと思います。  それから、第三点は土地の問題でございますが、今度の予算では、政府の方は民間住宅九・八%と非常に高い伸びを見込んでおります。また、公共投資は御案内のとおりの大幅なものでございますが、民間住宅にしましても、四十八年以降ほとんど伸びはございません。それがここに来て一〇%の伸びを見込んでいるわけです。公共投資もしかりでございます。そうしますと、あの石油ショック以降大きな伸びがないために、土地問題は抜本的な改正をしておらないにもかかわらず問題が起こってなかったのが、ここに来て大きな問題を生じはしないか、そのために一つの制約が起こってこやしないか。これはちょうど土地政策のないままに列島改造をやりまして大きな破綻を来したと同じことが心配されるわけでございますが、その点についての金森さんの御見解をお願いしたいと思います。  以上、三点でございます。
  50. 金森久雄

    ○金森公述人 第一番目の、心理的な要因が非常に経済を萎縮させているのではないかという点でございますけれども、私はそのとおりだと思います。ですから、単に金利を下げるあるいは減税をするというだけで活発な計画経済は起こってこない。  私、一つぜひお願いしたいとかねがね考えていることでございますけれども、明確なビジョンを持った中期的な計画というのを出していただきたい。現在、政府には昭和五十年代前期経済計画というのがございますけれども、これを見ましても、果たして五年後にどういう日本ができてくるかというのは国民の目にはっきりと浮かばないわけですね。ですから、企業もどういう設備をふやしたらいいかという考え方ができません。  それから、いま一つは消費性向でありますけれども、教育あるいは社会保障等の充実ということがありませんと、国民も安心して消費ができないという問題もございます。ただ、日本国が非常に貯蓄率が高いということ自身は少しも悪いことはない。やはり国民貯蓄率が高いということが個人の生活を安定する基盤になっているわけでございますから、私は、個人の貯蓄を活用して、そうして社会資本を充実する、こういうことが大切だと思うわけであります。  それから第二番目の、生産誘発係数の問題でございますけれども、私は、これは主として全体の設備が余っているということに依存しているのだと思うわけです。現在のように、鉄でも化学でも膨大な生産の余力がある場合には、公共投資がふえたからといいまして、それが民間の投資活動を誘発するはずはない、これは当然のことでありまして、必ずしも長期的な経済構造の変化ということは考えられないとは言えないというふうに思うわけです。しかし、生産誘発係数が下がったということも、これは少しも心配すべきことではないと思うわけでありまして、それはより多くの公共投資を行っても経済全体に過熱をもたらす心配がないという方面から見ればかえって余力がある、民間の方に余力があるということは、私はプラスの面と評価してもいいと思うわけです。  それから、三番目の土地の問題でありますけれども、確かにこの狂乱インフレに先立つ時点におきまして非常に土地が上がってまいりました。したがって、今回、非常に大きな公共投資が土地の価格の上昇というものを引き起こしはしないかという心配があるわけであります。ただ、幸いに現在は非常に土地全体が余っておりますから、そういう形の懸念というものは少ないとは思いますけれども、やはりボトルネックで部分的に上がる、余り急激に財政政策が変わってまいりましたから、ボトルネックで部分的に上がるという懸念はございます。したがって、こういう面からもなるべく需要拡大政策をいろんなものに分散する、公共投資もやるし、商品もやるし、民間の土地投資もやる、こういうことをやりまして、土地だけに負担がかからないようにするということが望ましいように考えるわけです。  それから、いま一つ私が土地につきまして考えておりますことを申し上げさせていただきたいのでありますけれども、狂乱インフレの土地の急騰の緊急対策といたしまして土地価格を抑制するという方向が非常にとられまして、これはそれなりに効果を上げたわけでございますけれども、反面、その結果新しい土地をつくるという方の活動がとまってしまう。長期的に見ますと、単に価格を抑えるというだけでは土地の価格は安定しないわけでございまして、土地の造成をする、そうして住宅が建つようにするという積極的な考え方が必要ではないか。土地政策も、抑えるということでなしに、土地をふやしていくという方向にもう少し力を入れるべきではないか、こういうふうに考えているわけであります。  以上で終わらせていただきます。
  51. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 どうもありがとうございました。
  52. 中野四郎

    中野委員長 他にございませんか。——以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く委員長よりお礼を申し上げます。  次回は、明十日午前十時より公聴会を開会いたします。  本日は、これにて散会をいたします。     午後三時十分散会