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1978-02-22 第84回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十二日(水曜日)委員長の指 名で、次のとおり分科員及び主査を選任した。  第一分科会皇室費国会、裁判所、会計検査  院、内閣総理府経済企画庁国土庁を除  く)及び法務省所管並びに他の分科会所管以  外の事項)    主査 塩崎  潤君      小此木彦三郎君    谷川 寛三君       中野 四郎君    松野 頼三君       井上 普方君    大出  俊君       近江巳記夫君    林  孝矩君       小林 正巳君  第二分科会(外務省、大蔵省及び文部省所管)    主査 正示啓次郎君       奥野 誠亮君    片岡 清一君       坊  秀男君    渡部 恒三君       藤田 高敏君    横路 孝弘君       二見 伸明君    大内 啓伍君       寺前  巖君  第三分科会厚生省労働省及び自治省所管)    主査 笹山茂太郎君       海部 俊樹君    栗原 祐幸君       住  栄作君    古井 喜實君       川俣健二郎君    小林  進君       広沢 直樹君    不破 哲三君       大原 一三君  第四分科会経済企画庁、農林省及び通商産業  省所管)    主査 伊東 正義君       澁谷 直藏君    田中 龍夫君       中島源太郎君    山下 元利君       安宅 常彦君    石野 久男君       岡田 利春君    権藤 恒夫君       竹本 孫一君  第五分科会国土庁運輸省、郵政省及び建設  省所管)    主査 藤田 義光君       加藤 六月君    金子 一平君       村田敬次郎君    毛利 松平君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       兒玉 末男君    瀬野栄次郎君       河村  勝君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十三年二月二十二日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       笹山茂太郎君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    白浜 仁吉君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷川 寛三君    中村  直君       藤田 義光君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       渡部 恒三君    井上 普方君       石野 久男君    岡田 利春君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       上坂  昇君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    池田 克也君       大橋 敏雄君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    西田 八郎君       寺前  巖君    松本 善明君       安田 純治君    大原 一三君       小林 正巳君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         法務省民事局長 香川 保一君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省行政局公         務員部長    塩田  章君         自治省財政局長 山本  悟君  委員外出席者         参  考  人         (全国中小企業         団体中央会会         長)      小山 省二君         参  考  人         (日本労働組合         総評議会事務局         長)      富塚 三夫君         参  考  人         (全日本労働総         同盟書記長)  前川 一男君         参  考  人         (中立労働組合         連絡会議事務局         長)      岡村  恵君         参  考  人         (全国産業別労         働組合連合書記         長)      富田 弘隆君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     片岡 清一君   田中 正巳君     村田敬次郎君   根本龍太郎君     中村  直君   松澤 雄藏君     住  栄作君   石橋 政嗣君     上坂  昇君   浅井 美幸君     池田 克也君   坂井 弘一君     林  孝矩君   矢野 絢也君     大橋 敏夫君   河村  勝君     西田 八郎君   荒木  宏君     安田 純治君   東中 光雄君     松本 善明君   大原 一三君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   中村  直君     中島源太郎君   上坂  昇君     石橋 政嗣君   池田 克也君     権藤 恒夫君   大橋 敏雄君     瀬野栄次郎君   西田 八郎君     小平  忠君   松本 善明君     寺前  巖君   安田 純治君     不破 哲三君   中馬 弘毅君     大原 一三君 同日  辞任         補欠選任   小平  忠君     河村  勝君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  この際、御報告をいたします。  長らく本委員会委員であられた川崎秀二君が、本日、逝去されました。  ここに、謹んで哀悼の意を表し、御報告をいたします。      ――――◇―――――
  3. 中野四郎

    中野委員長 昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  本日は、雇用失業中小企業問題について、関係参考人各位からそれぞれ十分ずつ御意見を承った後、質疑を行うことといたします。  それでは、小山参考人からお願いをいたします。
  4. 小山省二

    小山参考人 最近の中小企業現状問題点につきまして意見を申し述べたいと存じます。  中小企業は、いまさら申し上げるまでもございませんが、わが国経済上、社会上きわめて重要な地位を占めております。その企業数は五百四十万を数え、そこに働く従業者は三千百五十万人で、これはわが国従業者総数の七九・五%に当たります。また、出荷、販売、貿易等においても高いウエートを占めておりますことは御存じのとおりであります。  中小企業は、わが国経済担い手とも言うべき重要な地位を占めておりますが、一方、個々の中小企業状態は、その経営基盤がきわめて薄弱で、経営体質の弱体なものが圧倒的多数であります。それだけに、今回の長期不況による打撃はきわめて大きくかつ深刻であります。昨年一年間の企業倒産史上最高の一万八千五百件を記録したことが、この間の状況をよく物語っていると思います。  最近、鉱工業生産が、わずかながらでありまするが上昇傾向を示し、また、公共事業関連業種において在庫調整が着実に進むなど、マクロ的には景気回復に幾らか明るさが見えてきたようであります。しかし、中小企業環境条件は依然として厳しく、その経営は一段と困難となる様相を見せております。一月における企業倒産は、昨年十二月に比べてやや減少しておりますが、依然として一千百四十二件の高水準に推移しております。特に、手形決済期が集中する三月には、円高影響が著しい輸出関連中小企業造船業等のいわゆる不況業種中心に、企業倒産多発化が懸念されます。  これはほんの一例でありますが、造船下請企業で組織しております日本造船協力事業者団体連合会が、昨年来から発生しております造船所倒産に伴う連合会傘下下請企業被害総額を調べてみますると、一月十八日現在で九十社、三十六億二千七百十二万円に及んでおります。私どもは、これら下請中小企業関連倒産を深く憂慮いたしておるところであります。  このような事態を打開するため、われわれは景気刺激型予算と言われる五十三年度予算が早期に成立し、これが導火線となって景気が多少でも回復軌道に乗ることを強く切望いたしております。  さて、最近の中小企業問題で特に注目しなければならないのは、円高問題、下請問題、大型店進出問題ではなかろうかと思います。  まず、円高問題について述べたいと思います。  最近の中小企業庁調査を見ましても、主要産地のほとんどが円高影響を受けており、その八割までが新規成約が落ち込み、受注残が徐々に減少して、いわゆる食いつぶしの傾向にあります。  また、私ども全国中央会が昨年十二月、円の採算レートについて、円高影響を受けている協同組合を対象に調査をいたしましたが、それによりますると、二百五十円未満でも採算がとれると答えたものはわずかに二・五%にすぎません。現在の二百四十円前後のレートでは、ごく特殊な業種は別として、ほとんどの輸出関連中小企業においては採算がとれないと見てよいと思います。  なお、円高問題は、ただ輸出関連中小企業だけにとどまる問題ではなく、大企業輸出競争力を確保するためのコスト引き下げ下請中小企業等にしわ寄せするといった深刻な問題があります。  私は、このたびの政府の講ずる円高対策が、円滑な運用と相まって必ず大きな効果を挙げるものと期待をいたしておりますが、しかし、国際通貨情勢は依然として多くの不安定要因をはらんでおり、円相場が再び急騰することも十分予想されるところであります。政府は、異常に円が高騰することのないよう万全の措置を講ずる必要があると思います。  次に、下請問題について申し述べたいと思います。  下請中小企業における問題もまた、他の中小企業におけると同様、仕事量の増大と確保が最大緊急の課題であります。状況が悪ければ悪いほど、立場の弱い下請はますます弱くならざるを得ないわけであります。幸い技術的にかなり高いレベルの有力な下請は、新たなる発注先開拓して依存度の分散を図っているものもありますが、二次、三次の下請となりますと、そう簡単に新市場開拓というわけにはまいりません。また、仕事は確保できたところでも取引条件の問題があります。何よりも仕事が欲しいという情勢の中にあっては条件悪化は避けられないところで、下請をめぐる情勢の厳しさはかつてないものがあります。  しかも韓国、台湾等発展途上国における技術レベルの向上は、低廉なる人件費を前提としているだけに競争力が強く、さらに円高が進み、これを国内の下請では吸収できないということになりますれば、親企業下請を国外に求めないという保証はないわけで、いまや、わが国下請企業の置かれている立場はきわめて困難な状況にあり、これに対処するため下請企業振興対策拡充強化が強く望まれるところであります。  次に、大型店進出問題について申し述べたいと存じます。  消費需要伸びが鈍化している状況下にあって、小売商業における競争はますます激化の一途をたどっております。特に大型店舗進出により中小小売商業者経営は困難をきわめているものが少なくない状況であります。  大型店中小小売商に与える影響調整については、すでに大規模小売店舗法が制定されており、最近の国会において小売商業調整特別措置法の改正も行われたところでありますが、さらにその整備強化が必要なことは商工委員会附帯決議にも指摘されておるところであります。  大型店の集中豪雨的な進出により中小小売商が大きな打撃を受けることも、流通近代化のためにはやむなしとする意見はほとんどないと思いますが、大型店規制強化についてはなお慎重論もあるように聞いております。消費者の利益はもちろん確保されなければなりませんが、自営業者地域経済社会発展に果たす役割り雇用の場としての中小小売商の大きな地位にかんがみ、その経営を困難に陥れる事態が続発することは、やはり国民経済的に見て大きな損失であると言わなければなりません。  もちろん、中小小売業者は、すべての場合において大型店を拒否するというものではありません。大型店中小小売商が共存できる方策を見出すことが何よりも肝要と存じます。  最後に、昭和五十三年度の中小企業予算案について簡単に意見を申し述べたいと思います。  政府案によりますと、五十三年度の中小企業対策費は総計二千五十六億九千三百万円で、前年度に比べ一九%の伸びであります。一般会計予算伸び中小企業関係予算を上回っておりますが、これは景気対策である公共事業費が大幅に伸びているためであります。一九%の伸びは、他の部門に比べて決して少ないものとは思いません。内容的にも中小企業倒産防止共済制度中小企業経営安定資金助成制度あるいは活路開拓調査指導事業といった諸制度の創設など、いままでにない思い切った中小企業対策が盛り込まれており、私どもはこれを高く評価してあります。  中小企業倒産防止共済制度の成果については今後にまたなければなりませんが、中央会の会員を初め多くの中小企業者は、この制度に高い関心と大きな期待を寄せております。  また、活路開拓調査指導事業組織化対策一つでありますが、事業転換、新分野への進出、新商品・新技術及び新市場開拓等中小企業の新たなる活路開拓することを目的とした事業であります。これからの厳しい経済環境の変化の中にあって、中小企業が新しい発展をしていく上に大きな役割りを果たすものと期待をいたしております。  もとより、私は、中小企業予算がこれで十分であると申し上げているものではありません。冒頭に申し上げましたように、中小企業わが国経済の重要な担い手であり、また社会安定的勢力でもあります。しかし、わが国には世界に類を見ないほど数多くの中小企業対策がありますが、その裏づけとなる中小企業対策費予算全体の一%にも満たない状態であります。これでは真に強力な中小企業対策を実施しているとは言えないと思います。  私は、今後、中小企業対策を画期的に拡充し強化することを強く要望し、意見の具申といたしたいと思います。(拍手
  5. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、富塚参考人お願いをいたします。
  6. 富塚三夫

    富塚参考人 昭和五十三年度政府予算案では雇用創出ないしは拡大は十分期待できないのではないかという観点から、幾つかの考え方、問題点を申し上げたいと思います。  私が政府予算案に注目いたしますのは、差し迫った国の政策の対応いかん経済危機からの緊急避難のかぎを握っているからでありまして、日本経済中期的方向もそれによって決まっていくものではないかと思います。  新年度の予算案を一口に言いますと、旧来の財政構造はそのままで、単にそれが量的に拡大されただけであり、アメリカからの強硬な景気刺激の要請や不況深刻化に伴う大企業収益悪化に驚いた、場当たり的な政府の態度にしか見受けられないような気がいたします。  したがって、政府原案内容を見ると、所得減税の見送り、投資減税土地税制の緩和、大型プロジェクト中心公共投資拡大といった点に置かれ、福祉は相対的に圧迫されているように思います。  私が申し上げるまでもなく、日本経済がいま内外の不均衡に陥った原因は、個人消費福祉的財政支出が抜け落ちたまま、民間設備投資輸出に偏った成長構造にあったことは、国民の常識になっております。  低成長に移行したからには、民間設備投資の停滞は避けられません。また、これらの成長をリードしてきた輸出国際秩序を破壊するような急増テンポは許されるはずがないと思います。  今後は、わが国経済起動力個人消費とか社会的消費社会的投資拡大に求める構造に転換すべきだと思います。  政府は、大型予算によって景気浮揚雇用創出を図ると言っておりますが、大型プロジェクト中心による公共事業発注だけでは雇用拡大期待することができないのではないかと思います。特に、これらの対応は資本間の取引となり、省力化方向が強く出でくることが想定されますし、そのことは高度成長時代と同じパターン、体質になっていくのではないかと心配されます。  また、公共事業推進に疑問を持ちます。五十三年度予算に盛られている公共事業が一体地方自治体で十分消化できるのかどうかということに疑問を持ちます。  発注に至るまでの手順も心配ですが、職種別に見て、私ども労働組合技術者が少ない、あるいは頭脳労働者の数が少ない。つまり特定労働者一般労働者との間に矛盾が出てくることは必至ではないか。特定労働者のオーバーワークによって偏った対応に迫られ、そのことは雇用につながっていかないのではないかというふうに考えられます。  また、われわれの雇用創出の総合的な対策は、もちろん中期的な一つの展望に立たなければなりませんが、多くの方がいま内外で言われておりますように、もはや二次産業では限界である、三次産業私的分野ではだめで、公的またはそれに準ずるサービス部門雇用をふやすことを考えるべきだと思います。具体的には、教育、医療あるいは社会福祉など公的サービス部門の改善を考えるべきではないでしょうか。  さらに、地域ごと雇用創出方法を考えてみるべきだと思います。御存じのように、失業者地域における状況はいろんなケースが出ておりますが、根本的に地域ごと雇用創出を考えないと十分な対応はできないと思います。すなわち、地域経済開発地域改造の方針というものを積極的に打ち出していただいて、中央集権的予算地方に分権させる、すなわち大幅に予算や権限を地方に移譲させるということを考えてみるべきだと思います。そして、地方自治体に積極的な対応を求めるように努力してみたらいかがでしょうか。また、地方雇用創出推進委員会等の設置を図りまして、地方自治体経営者側代表労働側代表の三者の構成で、企業倒産未然に防いで、あるいは失業者未然防止をして、雇用創出対策を一丸となって考え出す方法を検討すべきだと思います。  もう一つ観点は、不公平労働基準が問題であります。御存じのように、欧米諸国からも直接指摘されていますように、日本労働時間の問題について真剣に時間短縮、週休二日制を考えるべきだと思います。私は、当面、週休二日制を立法化していただいて、全国民的コンセンサスを得るように踏み切っていただきたいと思います。日本現状昭和五十一年度の統計を見ますと、週休二日制を採用していますのは就労人口の四三・四%その中で完全が四・八%、月三回が二・七%、隔週が九・二%、月二回が一三二%、月一回が一三・七%となっていると発表されています。これを見ますと、大企業中心のピラミッド型で、頂上三〇%程度完全週休二日制となっており、まだまだここには問題があるように思います。日本就労人口平均週労働時間は四十六・八時間となっており、ヨーロッパは製造業全体が三十五時間ないし三十六時間となっており、完全週休二日制が採用されています。そういった観点に立って、雇用創出方法について積極的に打ち出していただきたい。  以上、私の立場から問題点を提起をしておきたいと思います。  終わります。(拍手
  7. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。  次に、前川参考人お願いをいたします。
  8. 前川一男

    前川参考人 同盟前川でございます。  昭和五十三年度の実質経済成長率七%前後、内需を中心とした景気拡大という基本認識については評価をいたします。その中で、雇用対策税制、その他若干の意見を述べたいと思います。  まず第一に、雇用問題についてでありますけれども雇用情勢悪化しているという認識に立つべきであります。一月二十四日の閣議決定におきます五十三年度経済見通しの中で、就業者数一%程度増加見込みを示しておりますが、仮にそのとおり推移したとしましても、雇用情勢は改善されません。それは、付帯資料としてついております主要経済指標見通しを参照すればその内容がわかります。同時にまた、構造不況がますます進行をしてまいりますので、そういう面では雇用情勢悪化をするという認識に立つべきであります。  雇用情勢改善のためには景気回復がその前提でありますけれども、並行して、完全雇用を目指す体制確立のための国民合意の線を基本的方向として明示すべきであります。そのために、本国会におきましての特別決議の採択あるいは雇用憲章の成立を求めたいと思います。この提案は、雇用に対する産業企業国民諸階層を包含する社会的責任を応分にそれぞれが遂行できるような社会環境の整備をねらいとするものであります。したがって、雇用吸収力の顕在化の追求に通ずるものでございます。  雇用吸収力を顕在化するためには、政策並びに労使間においての諸問題があります。また、今日この不況の中で比較的業績が順調と思われる企業の協力こそが必要ではなかろうかと考えるわけでございます。しかし、実際のムードは沈滞化し切っておりますし、その活力の回復こそが今日求められていると考えるからであります。  二つ目は、就職促進手当について一言申し上げます。  今度の予算案におきましては、最高日額三千百円ということで、現在までのものを一〇・三%増の提案がされておりますけれども、さらに増額をお願いしたいと思います。その理由は、特定不況業種の離職者対策の、昨年の臨時国会におきます衆議院社会労働委員会の附帯決議の中におきまして「給付水準の改善について、来年度予算の実施を期し、一層努力すること。」となっておりますけれども、私は、当時の経緯から見まして、一〇・三%増というのは他に比較をしてことさら一歩も前進をしていない、かように考えます。同時にまた、この附帯決議がつきましたのは、いわゆる失業給付五千四百六十円の日額との関係においての水準是正であると考えるからであります。同時にまた、他の諸問題とこの就職促進手当のあり方は関連を持つでありましょうけれども、特定不況業種は一定期間に限っておりますので、若干増額をしても差し支えがないと考えております。  なお、富塚さんの意見にも関連をしますけれども、銀行の週休二日制、あるいはまた公務員の週休二日制の問題につきまして、一気にはできませんけれども、一歩前進を図るような努力をぜひともお願いをしたいと思います。  次に、二つ目は税制並びに社会保障関係費について申し上げます。  第一に税制問題については、不公正税制の是正、所得減税としての物価調整減税を行うべきであるということを主張いたします。  不公正税制の是正につきましては、特に社会保険診療報酬課税の改正と利子配当課税の総合課税への移行を主張いたします。  現下の国の財政事情の悪化のもとにおきまして、不公正税制と言われるものが許されてよいはずはありません。社会保険診療報酬課税については、税制調査会で連続四年間にわたって是正を答申しておりますけれども、いまだに見通しは必ずしも明らかではありません。利子配当課税の源泉分離課税制度は廃止すべきであります。この制度は、現行税制の給与所得に比較をして、不労所得を優遇する特別な措置であります。税制調査会でも、その基本的な方向については大方異論のないところでありましたけれども、実務としての取り扱いが事実上の大きな制度改変であるということから、今後の検討事項になっております。この点明らかにされまして、早期に不公正を是正すべきであります。  次に、物価調整減税の実現について申し上げます。  インフレ下においては、少なくとも物価調整減税は実施をすべきであります。そうでなければ事実上の増税になります。特に不況下においては、税制面からの実質賃金の低下を防ぐべきではないかと思うわけでございます。内需拡大型の景気回復のためには、個人消費支出に対する意欲を減退せしめてはならないはずであります。そのぎりぎりの限界というのが物価調整減税なのであります。私どもとしてはそれ以上の大幅減税を主張しないのは、現下の財政事情を考えるからでございます。  次の問題は、社会保障関係費についてでございますが、社会保障関係費の伸び率は予算として一九%と、資料には書かれております。そして、国民生活の安定と福祉の向上に資する見地から重点的に充実を図るという考え方が示されております。考え方は結構ではありますが、その内容は必ずしもそうはなっておりません。五十一年度予算に対して五十二年度のいわゆる補正第1号後の予算との比較をいたしますと一八・八%になります。そして、同時にまた、五十二年の第1号補正後の予算に対しまして五十三年度の今回の予算というのは、その比率において一八-七%になります。こうして考えますと、果たして政府の方が主張しております考え方に立脚をしたいわゆる社会保障関係費の予算がとられているのかどうか、大変に疑問であります。むしろ伸び率というのは、見方はいろいろあるでありましょうけれども、数字だけで見れば、この数字は昭和四十六年に近いような状態になっている伸び率でございます。そこで、一つの例を申し上げるわけでありますけれども、生活扶助が一一%になっております。児童手当は一〇%増であります。老齢福祉年金は一〇%増でございますが、これらをもとにしまして、さらに大幅な増額をぜひともお願いしたいと思います。  終わりに、今度の予算の考え方が、いわゆる十五カ月予算の考え方をとっております。したがいまして、五十三年度は、財政事情の悪化の中におきましても格別な配慮をしながらこの予算を組んできたという考え方に立つならば、一月から六月くらいまでの半年間くらいの経済動向を十分に踏まえまして、臨時国会を従来よりも早期に開催をして、五十三年度後半以降の展望をさらに国民の前に明らかにしていただきたいわけであります。今日までの景気の回復のおくれその他につきましては、やはり政策のおくれという問題が大きく関係をしたように思われるからでございます。  以上で意見を終わります。(拍手
  9. 中野四郎

    中野委員長 ありがとうございました。  次に、岡村参考人にお願いをいたします。
  10. 岡村恵

    ○岡村参考人 岡村でございます。  まず、雇用問題を考える場合に、経済政策との関係を無視することはできません。日本経済がかなり大幅に成長しない限り、雇用の安定を図っていくことはむずかしいという状況にあります。その経済成長という点でいきますと、輸出並びに民間設備投資は行き詰まっておりますので、公共投資並びに個人の消費拡大という二つの側面から考えていく以外にありません。この個人の消費の拡大という点を考えてみますと、一つには賃金の上昇、もう一つ雇用の安定、二つの側面がございます。  個人消費につきましては政府予算が一一・九%の拡大を見込んでおりますけれども、現在の賃金の上昇とか、あるいはそのほかの個人消費の動向等を見ますと、果たしてこの一一・九%という数字が可能な数字であるのかどうか、これはひとつ政府としてもう少し明確にすべき内容ではないかというふうに思います。  さらに、個人消費拡大につきましては減税問題がございますが、この予算の中で不公平税制の是正と、それから野党が合意をされている減税については少なくとも実現をしていただきたいというふうに考えております。  次に、社会保障の問題ですけれども、老齢福祉年金については二万円までは増額をしていただきたいし、そのほかの、昨年来社会保険料等の値上げがむしろ先行しておりますけれども、給付の改善の方を先行させるということをひとつ考えていただきたいものだというふうに思います。  次に、雇用の安定と、それから現在の失業の救済並びに失業中の生活の安定、こういった面で失業保険の改善ということを考えていただかなければならないというふうに思います。  さて、雇用の創出の問題ですが、現在経済成長が七%というふうに予定をされておりますけれども、たとえば経済が七%成長されましても、雇用の増大が一体どの程度になるのかということが明確ではありません。すなわち、各企業の減量経営ということで、生産性の向上によってむしろ人員を削減するということが起っております。これでは経済成長の部分を雇用増大に結びつけることはできません。そこで、雇用増大に結びつけるためには具体的な幾つかの施策が必要です。  その具体的な内容といたしましては、労働時間の短縮、週休二日制の実施、時間外労働の規制、定年の延長、これらの項目についてぜひ基準法の改正あるいは国会決議等によりましてこの一歩前進を図っていただきたいというふうに考えています。特に週休二日制の問題につきましては、金融機関、それから国家公務員の週休二日制は今年度実現をし、今後三年間くらいの間にすべての民間企業週休二日制を実現できるように適切な施策をしていただきたいというふうに考えます。  次に、摩擦的失業の問題でございますけれども労働力の移動をスムーズにするために訓練の強化ということが必要かと思います。しかし、この訓練の強化を考える際には、どの産業が今後縮小され、どの産業が今後拡大をされるか、その産業について一体どれだけの雇用の増大が可能であるか、こういうことを明確にしない限りは適切な訓練が行えるということはできません。そういった意味で、一定の見通しの上に立って訓練計画を立て、さらにはその訓練につきましては、企業の職場における訓練等も含めて考えていただくことは結構でございますけれども、いずれも公的な資格、そして賃金、そういったものに結びつけてこの訓練というものを考えていただきまして、訓練が特定企業企業内の訓練の枠の中に国家がサービスをするという形をぜひ防いでいただきたいというふうに考えます。  それから、この不況状況で、地域によって失業が集中をしています。たとえば二百海里規制によって北海道あるいは沖繩の失業状況、こういったものを考えてみますと、それぞれの地域に具体的な雇用をつくり出す対策というものが必要かと思います。  そこで、たとえば水産の問題で言えば魚礁づくりであるとか、あるいは農業基盤の整備であるとか、あるいは地方自治体のサービスの強化であるとか、こういったものを地方自治体を通じて雇用の具体的な創出ということを図っていただくことをお願いいたしまして、私の意見といたします。  どうもありがとうございました。(拍手
  11. 中野四郎

    中野委員長 ありがとうございました。  次に、富田参考人にお願いします。
  12. 富田弘隆

    ○富田参考人 新産別の富田であります。  すでに三人の労働団体の代表から意見が述べられておりますので、なるべく重複しない形で、今後の予算あるいは政策展開に当たってとっていただきたい姿勢について、若干意見を述べさせていただきたいと思います。  雇用問題は、改めて触れるまでもございませんが、さまざまな政策、経済活動の一つの集約点ということが言えようかと思います。したがって、雇用問題に対処するに当たっては、総合的ないろいろな角度からの対処、施策というものが必要だと考えます。すでに述べられておりますように、定年延長あるいは週休二日四十時間制、有給休暇の完全消化、残業の規制など、一連の広義の労働時間短縮は、その中でも最も有効かつ即効的な雇用対策ではないかと確信をいたします。したがいまして、これらに関連して何らかの立法措置というものが早急に図らるべきではないか、このことをまず第一点申し上げたいと思います。  さらに、この際意見として述べたいのは、雇用問題にかかわる生産性の問題について一点、意見を述べたいと思います。  戦後、日本において生産性の向上運動が展開され始めました初期のころに、生産性の向上、合理化による雇用とのかかわり合いを心配する声に対して、簡単に申し上げますと、その当時は生産性を上げていくことによって逆に新しい雇用拡大の機会がふえる、したがって全体として雇用拡大するのだ、こういう論理で、こういった心配に対応されたと記憶しております。高度成長の過程では、まさにこの論理が妥当したわけでありますけれども情勢が一変いたしまして、経済減速、低成長下の今日では、明らかにこの主張は妥当しなくなったと言えようかと思います。厳しい減量経営のもとで、雇用が減少しながら逆に生産性は上がっていることは明白な事実だと思います。この生産性の向上と雇用の維持確保という相反する状況下に入ったと私たちは受けとめざるを得ないわけであります。一方、無資源国の輸出を重要な一つの柱とせざるを得ないわが国にとりまして、一定の国際競争力を維持するということもゆるがせにできないことだと思います。だとすると、この明らかに相反する二つの事柄をどのように調整し、あるいは何を基準に対処していったらいいのか、こういう問題になると思います。t  私は、その際の最も重要な基準として取り上げるべきものは、ILOの場で条約または勧告として決定されます国際文書、各種の国際的労働基準であると考えます。このILOの場で決議をされる国際労働基準を踏まえた上での生産性の向上、このことがこれからの姿勢であるべきではないか、このように考えるわけであります。そういう意味から申し上げますと、わが国労働時間に関する実情は、すでにるる述べられましたとおり、先進工業国の中では大きく立ちおくれている、こう言わざるを得ないと思うわけであります。  若干飛ばしまして、この際、年金の問題について若干意見を述べたいと思いますが、現在なかなか個人消費拡大せずに、したがって経済活動が不況を脱し得ず、さらには雇用機会の拡大というものが、なかなか図れない、こういった一連の経過についてはほぼコンセンサスが成り立っていると私は考えるわけであります。このことに関連いたしまして、年金水準の引き上げ、それも非常に困難な作業が伴うとは思いますけれども、たとえば、向こう三年間ないしは五年間に、現時点の物価水準を基準にしてこれだけ計画的、段階的に年金の水準を引き上げるというような展望を打ち出していただけないものだろうか、このことをぜひ積極的に御検討願いたいものだと考えるものであります。消費の拡大がなかなか思うように伸びず、貯蓄率が高いというのは、だれの目から見ましても雇用不安、先行きに不安がある、生活展望が持ち得ない点に最大の要因があるということについてもほぼ一致した見方だと考えますので、年金水準の段階的、計画的引き上げ構想がこの際大きなこういった支えになる、このように考えるわけであります。  この点についてあわせて、私見でございますが、一点つけ加えておきたいと思いますのは、その際の年金の原資負担の問題であります。国の負担をいまよりより多くしていただきたいということは当然のことだと思いますけれども、われわれ自身の負担増もまた、当然検討すべきものだと考えております。特に昨年、特定不況業種離職者臨時措置法に関連いたしまして労働四団体が統一案を作成いたしました際に、各種の失業給付の引き上げに際しては、われわれの側も保険料の負担増について検討の用意があるということをうたったわけであります。政府の今後の積極的な雇用対策、施策の展開に対しては、労働側もいま述べましたような姿勢で対応する用意があるということを申し上げて、私の意見を終わりたいと思います。  以上であります。(拍手
  13. 中野四郎

    中野委員長 どうもありがとうございました。     ―――――――――――――
  14. 中野四郎

    中野委員長 これより質疑を行います。藤田義光君。
  15. 藤田義光

    藤田(義)委員 きょうは雇用問題、失業問題の集中審議であると承知いたしておりますが、この国会の論議を通じまして、国家防衛の問題に関しまして、公明党にきわめて重大な政策の修正が行われたやに理解いたしております。特に公明党の福祉トータルプランは、われわれ政府・与党としましても非常に参考になるポリシーでございますが、最近、日本社会党がきわめて重大な中期経済政策を発表いたしております。この問題に関しまして富塚さん、お読みになっておるかどうかお聞きしたいと思います。社会党の中期経済政策。
  16. 富塚三夫

    富塚参考人 一通りは読ましてもらっておりますが、まだわれわれ総評としてのこれについての見解、対応は目下相談中であります。
  17. 藤田義光

    藤田(義)委員 私は、これを一読いたしまして、社会党の経済政策にもきわめて重大な修正、現実化が行われつつあるということを承知いたしたのでございます。従来の教条主義が非常に弱くなっておる、資本主義の枠内で漸進的に、漸次将来の社会主義経済に向かおうという、率直に言って、私はこれは真摯な努力の跡を見受けるのでございます。その中で特に注目すべきは、相互扶助というイデオロギーが加味されております。たとえ実質賃金の収入が多少減っても、労働者同士お互いに相互扶助によってこの経済危機を突破しようという重大な政策が盛られております。この相互扶助という理念に関して富塚さんあたりの考えが何かあれば、お聞きしておきたいと思います。
  18. 富塚三夫

    富塚参考人 日本経済が厳しい環境のもとに置かれておるという状況認識のもとで、これからいわゆる中期的な経済政策の展望を考えるときに、われわれは福祉国家の建設なり、あるいは労働者、勤労国民の生活と権利を守るということを基本にしながら、国民的な全体のコンセンサスを得ていくような努力をしていくということには、基本的にそういう考え方は賛成であります。しかし、税の公平負担問題ないしは不公平税制の是正といった課題にありますように、あくまでも社会的公正を貫くという基本的理念の上に立って相互扶助という関係を考えておるのでありまして、そこのところをぜひ御理解をいただきたい。  以上であります。
  19. 藤田義光

    藤田(義)委員 これは社会党の中期経済政策案でございまして、いずれ党大会に付議されて確定すると思いますので、いずれ機会を改めてまたいろいろ勉強させていただきたいと思いますが、今回の野党の予算修正案、目下折衝中でございますので断定的なことは申し上げられませんが、私は今度のこの野党の予算修正は、ぜひとも日本経済の当面した最大の課題は雇用問題である、こういう認識から予算の修正を考えてもらいたかったと思います。公共投資一本の景気対策ではなかなか消化し切れぬではないかという野党の諸君の疑問に対しましては、私たちも一部そういう点を懸念している一人でございますが、しかし野党の予算修正案を見てみますると、たとえば住宅の公共設備の整備に対してさらに二百億円を増額しようという案もございます。公共投資はもう天井につかえてしまって消化し切れぬじゃないかという理論の一方に、こういう公共事業費増額の修正というようなことがありまして、野党の中にもなかなか問題が深刻であるように思います。  減税かあるいは公共投資かという問題はなかなかむずかしい問題で、両方やれば一番理想的である。しかし、日本の財政の現状は非常に深刻であることは申し上げるまでもない。赤字国債五兆円、来年五月までの税金の先取りを加えると七兆円、来年の年度末の赤字を一兆円以上想定すると、八兆円以上の赤字国債。大変なことになっておりますので、五十四年度から増税ということは、これはもうやはりだれが考えても、どうしても断行せざるを得ない。したがいまして、五十三年度に減税、五十四年度から増税という一貫せざる政策は、なかなか問題である。  公共投資中心予算編成、やむを得なかったと思いますが、ただ、私は、与党の一員としてもここで非常に残念に思いますことは、先ほど参考人の公述にもありましたが、医師の税制あるいは土地税制、これに関してすっきりした結論が出てない。これが野党の諸君の減税の大きな口実にもなっておる。こういう点に関しまして、ここに出ております大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  20. 村山達雄

    ○村山国務大臣 現在の医師税制につきましては、藤田さん御承知のように昭和二十九年に議員立法をもって成立いたしまして、それ以来幾多批判をいただいているのでございます。そして、その問題の出発点は適正診療との関係がございまして、しかしながら、その後それはそれとして不公平な税制であるから早く直せということでございました。  五十三年度の予算の編成に関連する税制調査会におきまして、わが党としては、とにかくこの制度は五十三年度末限りの制度にいたしまして、これに対応する諸般の対応はその間考える、こういうことを決定していただきまして、そのことを議員立法でもって明らかにするということになりまして、私は、ある意味で申しますときわめて現実的な解決方法であろうと思うのでございます。政府といたしましても、かねてからこの制度の是正については強く念願しておったのでございますので、この議員立法と対応いたしまして諸般の準備を進めてまいりたい、かように思っておるところでございます。  それから、次に土地税制につきましては、率直に申しまして非常にむずかしい問題がございまして、昭和四十八年ごろから非常に土地の価格が騰貴した。したがって、土地成金をつくるべきではない、こういう考えで現在の土地税制がしかれたわけでございます。しかし、その後経済の推移に従いまして、いまや土地価格の上昇はおさまりつつありますけれども、今度は土地の供給が少なくなっておる。したがって、再び土地成金の発生を抑えながら、しかも土地供給をふやすためには一体どの程度のことができるか、そこの間をねらったのが今度の土地税制であるわけでございます。もとより、その基本的な問題についてはなお多くの問題を残しておると思いますが、現実の問題としては、今度の措置はあらゆる点から考えましてやむを得ざる最大限の措置をとったつもりでございます。
  21. 藤田義光

    藤田(義)委員 今回の予算編成に当たりまして、素人の大蔵大臣と申し上げては恐縮ですが、主計局、主税局、理財局、銀行局、その他未曽有の緊張のうちに、本当に一人犠牲者を出すようなすばらしい苦労を重ねてこの予算編成に当たったということは、国会議員の一人として、率直に私は感激いたしております。  ここで話題を変えまして、小山さんがお見えになっておりますから、私、一言だけ、時間がございません、お伺いしたいのですが、先ほどいろいろ述べられました中小企業対策、これは大体論議し尽くされておることが大部分でありまして、下請の問題あるいは大型店舗進出の問題、特に私の熊本県におきましては一昨年県条例をつくりまして、大型店舗進出に対する阻止条例を作成いたしております。憲法違反ではないかという相当激しい論議がありましたが、現在実施中でございます。  この問題に関しましてはもう論議する暇もございませんが、ただ私がお尋ねしたいのは、農業団体の組織母体は農業協同組合である。商業者、工業者の団体は商工会議所あるいは町村商工会である。農業協同組合に関しましては信用、購買、販買という一連の総合的な業務をやっております。商圏の侵害であるというような問題が漸次次第に深刻に論議され始めておる。商工会、商工会議所あたりでも、信用事業を法律改正によって実施する段階に来ておるのじゃないか。お互い商工業者の利益を守るために思い切った、農業協同組合に対抗できるような組織化をやる段階に来ているのじゃないか。団地づくり、いろいろ通産省でも具体化しつつはございますが、根幹は弱小業者の団結を法律的に裏づけする、農業協同組合に対抗できるような職務権限を商工会、商工会議所に持たせたらどうか、この点に関する小山さんの見解を伺っておきたいと思います。
  22. 小山省二

    小山参考人 大変むずかしいお尋ねでございまして、私どもがこのような大きな問題に率直にお答えすることはどうかというふうに考えるのでございますが、御存じのとおり日本の金融機関は、大は都市銀行から小は地方の信用組合に至るまで、それぞれの業種、業態に応じて専門の金融機関等もございまして、今日商工会あるいは商工会議所が、もし許されてどのような金融機関を設置するか、私はわかりませんが、恐らく現実の状態では大変むずかしい状態ではないか。現にいま金融再編成というような声がちらほら流れておりまして、言うならば金融機関は信用度を第一の生命といたしておりますだけに、弱小の金融機関が今後どのような機能を発揮できるかということについては、相当専門的に研究をしなければならぬ課題のように私は考えております。したがって、農協等から考えまして、商工会なりあるいは地域の商工会議所等が金融機関を持ちたいというそのお気持ち、希望というものに対しては十分理解ができるような感じがいたしますが、果たしてそのようなものを持って、よほど専門的な知識を身につけません限りにおいては、往々にして金融機関の中でも過ちを犯しているようなものもございますので、これは慎重に検討、対処しなければならない課題のように考えております。
  23. 藤田義光

    藤田(義)委員 中小企業対策で普遍的な問題は、金融の問題、税制の問題が中心になっておることは御承知のとおりでございます。私は、現存の金融機関の機能の一部を移譲させるという意味でなくして、何か別個の構想で中小企業者の互助機関的な信用業務等はある程度考えていい段階に来ておるのじゃないかと思う。こういうことで、現に熊本県におきましては、商工会連合会はこの検討を開始しております。われわれの忠告を大胆に入れまして、検討を始めているということを御承知願いたい。答弁は要りません。  雇用問題、失業問題の機会に、この際、環境庁長官にお聞きしたいことは、いま熊本県政をほとんど麻痺状態に追い込んでおる水俣病の問題である。各政党から質疑があっておりますので、私はもう駄弁を弄しません。環境庁はこの問題に関して一体どういう基本姿勢を持っておるか、お伺いをしたい。
  24. 山田久就

    ○山田国務大臣 水俣病は御承知のように公害の原点である、そういう意味において環境行政の重要な課題の一つであるという認識をいたしております。したがいまして一私といたしましては、この問題については過去の経緯及び先ごろの水俣病に関する関係閣僚の申し合わせ、その趣旨を踏まえまして、ひとつ積極的に対処して取り組んでいきたい、こういう考えをもって臨むのが私の考えでございます。
  25. 藤田義光

    藤田(義)委員 この水俣病に関しまして一番の問題は、認定業務の促進ということでございます。いまだ認定を受けない者が四千五百名以上、まだ月々申請者が百名以上ずつ増加しつつある現状でございます。これは大変な問題ではないか。検診とか審査は、環境庁の配慮によりまして最近とみに能率化しておることは御同慶にたえませんが、ぜひひとつ、水俣市に建築中の国立の研究センターも三月いっぱいで完成するようでございますから、何かここで認定業務の促進に関して思い切った手を打ってもらいたい。数カ月前、新潟大学の椿博士を班長とする症例研究班というものを、環境庁が中心になっておつくりになったようでございます。これに三十名の医者を動員して一生懸命研究中である。非常におもしろい組織でございまして、この組織を利用して何とか認定業務促進、幸いに私の調べたところによれば道正官房副長官と椿博士は同期生のよしみもございますし、この際ぜひひとつ、この研究班を母体にして認定業務の促進をやってもらいたいと思いますが、長官の御意見を伺っておきます。
  26. 山田久就

    ○山田国務大臣 藤田議員御指摘のように、われわれも、関係閣僚の申し合わせ、それによってつくりました、認定業務促進ということをもってつくられました症例研究班、これを非常に督励して、ちょうどこれが動き出したのがことし初めてでございますけれども、一方、水俣病の研究所というものもできて学問的な研究によりまして、まだ未解明の点についてのいろいろな知識的な貢献というものも、あわせてこの促進のために非常に役立つのじゃないかと思っております。御指摘のように、あらゆる方法をもちまして認定業務が促進されるようにという決意を持ってやっております。
  27. 藤田義光

    藤田(義)委員 この問題に関しまして、どうしても特別立法をお願いしたい、現在の行政指導だけでは不十分であるという地元の要望が強く出されておりますが、この点に関する長官の見解を伺っておきます。
  28. 山田久就

    ○山田国務大臣 特別立法の点、いろいろそういう意見が出ておることを承知しております。この問題は他の公害病との関連、いろいろな問題がございますから、にもかかわらず研究問題としてはひとつ検討したいと考えております。
  29. 藤田義光

    藤田(義)委員 実は患者が県庁に殺到して、知事室が荒らされたり、県会議員に非常な負傷者が出たり、この問題をきっかけに熊本県政は麻痺寸前である。先般、代表政府並びに自民党三役等に陳情したとおりでございまして、事態はきわめて深刻でございます。特別立法が困難ならば、それに相応するような緊急対策をひとつぜひ考えていただきたい。幸い去年から関係閣僚会議が設置されておりまして、随時この会議が開会されておるようでございまして、ステップ・バイ・ステップ、前進の実績は私も率直に認めておりますが、いままで千名ちょっと認定を終わっただけで、四千五百名以上もいまだ認定されざる患者らしい者がおるということも大変なことでございまして、これに関連して一番問題になるのはPPPの原則、原因者負担の原則。チッソの生産実績等を調べてみますると、一般製品の実績がきわめて好調である、五十二年度の生産総額は九百億を突破しそうである、こういう点は問題ございませんが、補償費がすでに膨大な額になっております。メーンバンクたる興銀の補償に対する融資は、いまや限界に来ておる。原因者負担の原則はありますが、もしこの原因者――私はチッソということを言っておるのではございませんが、原因者たる企業が崩壊した場合はどういう措置を講ずるのか、万一の場合に備えてそういう準備も必要であろう。チッソに関してはそういう懸念はないにしましても、もしそういうことがチッソに起きた場合におきましては、関連患者が二十六府県にまたがっておりますし、少なくとも水俣を中心に騒乱状態になることはもう必至の情勢である。現場を見た石原前長官等がよく承知しておるはずでございます。したがいまして、これは一地域の問題にあらずして、やはり政府全体の問題として、ひとつ深刻に受けとめてもらいたい。  実はチッソの補償費の問題に関しまして、通産省が中心になりましていろいろ配慮しておるようでございます。しかし何分にも、どれだけ続く補償費であるかが未定のために、企業経営者も非常に不安であることはもちろんでございますし、県政におきましても非常に大問題になっておる。県の起債を起こそうというようなことに関しましても、もちろん県議会の激しい抵抗がございます。そういうことでございますが、何か三月以後の補償費の問題に関しまして多少不安も起きておるようでございますが、通産省ではどういう指導をしておるのか。金融機関に対する指導、開発銀行の融資というようなことも知事が希望したようでございますが、これは銀行設置のいきさつからして無理であるならば、何かここで考える道はないかどうか、通産大臣にお聞きしたいと思います。
  30. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 チッソの補償費を含む全般の問題につきましては、関係閣僚会議で相談をすることになっておりまして、先般の関係閣僚会議でも若干の相談はありましたけれども、現時点ではまだ結論が出ていないのです。ただ、通産省といたしましては、チッソの企業経営の面でのいろいろな指導と協力をしております。たとえば、チッソの主たる製品の価格の問題についてどうすれば安定的な経営ができるのか、こういう問題についていろいろ配慮をしたり、あるいはまた将来新しい分野開拓していこうという場合に対しては、企業経営の面から通産省としてはどういう援助ができるか、あるいはまた相談に乗れるか、こういう面での配慮は、通産政策という観点から進めてはいっております。  ただしかし、いまお述べになりましたように、補償費全体を含む問題、特に補償費の問題につきましては、これは関係閣僚会議全体の課題として取り上げることにいたしておりまして、現在のところ、結論は出ておりません。
  31. 藤田義光

    藤田(義)委員 水俣病の場合は、カネミの公害あるいは薬の害等と多少性質が違いまして、御存じのとおり、魚を通じて公害を起こしておるという特異な現象でございます。この問題に関しまして、いま通産大臣の御答弁もございましたが、県債発行に関しては大蔵省の資金運用部もなかなかむずかしい見解のようでございます。大蔵省といたしましても、昭和三十八年でしたか、山一証券の問題に関しましては相当、日銀法の解釈によりまして、日銀の特別融資ということであの局面を打開した記憶がございますが、山一証券の信用秩序の維持という問題と水俣の問題は異質ではございますが、もし万一補償ができないような段階になった場合を考えますると、非常に憂慮すべき社会不安を起こす、ならば、今日の段階で何か手を打ってやる必要があるのじゃないか。非常にむずかしい問題で、これは村山大蔵大臣もなかなか答弁しにくいと思いますが、しかし、三月二日からの熊本県議会の開会を前に、いろいろな議員が質問したことではまだ十分でない、ぜひ一歩突っ込んでひとつ関係閣僚の意見を聞いてくれぬかという悲痛な訴えがありましたので、ひとつ大蔵大臣の率直な意見をお聞きしたいと思います。
  32. 村山達雄

    ○村山国務大臣 チッソの水俣病に関する問題は、被害者側は最もお気の毒な立場にありますし、また会社側も、不注意であったかもしれませんけれども、いまとなってみれば大変な被害をこうむっておる問題でございます。のみならず、これはその地域雇用問題あるいは地域振興問題とも広くかかわりある問題でございまして、非常に大きな問題だと存じておるのでございます。  しかしながら、先ほども申しましたようなPPPの原則というものがあらゆる場面で貫かれておるわけでございまして、主力銀行も一生懸命協力しているようでございますけれども、あるいは場合によりますと、金融機関という立場からなかなかそこには限度が出てくる場合もやはり考えておかねばなりません。そしてまた、先ほどお引きになりました山一のようなことは、あれは日銀法の二十五条によりまして、信用秩序維持のためにやったわけでございますけれども、日銀法の規定から申しましてそれもできないわけでございます。また、先ほどちょっとお触れになりました県債、具体的にはその話は出ておりませんけれども、県債の発行にいたしましても、運用部資金の貸し付けにいたしましても、回収見込みとの関連におきまして、やはりどうしてもなかなかむずかしい問題になると思うのでございます。  そこで、問題になりますのは、結局はチッソの支払い能力ということが現実の問題になるわけでございまして、いまそういうことを想像したくはありませんけれども、万一支払い能力に限度が出てきたときに現行の制度の中で一体どういうふうに救済できるのか、非常にむずかしい問題でございまして、閣僚会議中心点もまさに、これから新たなる事態としてどのように対応すべきか、みんなが知恵を出し合ってこの問題を解決しなければならぬということで、新しい事態として受けとめて、それに対応する制度を考えてまいらなければいかぬのじゃなかろうかなというのが、私の私見でございます。
  33. 藤田義光

    藤田(義)委員 率直に現在の状況を認められましたので、これ以上この問題に対する質問の必要はないと思います。ぜひ関係閣僚会議を活用していただきまして、何か知恵をしぼっていただきたい、早急にひとつ結論を出してもらいたいと思います。  この問題に関連しまして、もし万一のことがあれば、雇用問題、失業問題にも深刻な事態が起きると思います。特に大蔵大臣や厚生大臣、社会党の予算部長の小林代議士の出身地の新潟にも、非常にこれは多いのです。熊本とともに非常に患者数の多いのが新潟県である。こういう現実もよく肝に銘じて、大蔵大臣、善処をお願いしたいと思います。  それから加藤自治大臣、この問題に関連しまして、熊本県は財政的に非常に窮迫いたしております。来月早々特別交付税の配分時期と承知いたしておりますが、ぜひひとつ、知事とよく相談願いまして、こういうときのための特別交付税ですから、思い切って熊本県財政にてこ入れしていただきたい、これは私、陳情じゃなくして、特別交付税の性格からいってそうである、お願いしたいと思いますが、自治大臣の見解をお聞きしておきます。
  34. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御指摘のように、地元の熊本県も、また水俣市を初めといたします関係町村も非常な負担をいたしておるのでございまして、私どもはいままでも、機関委任事務であってもできるだけ国がその経費等を負担すべきだ、かような主張をいたしてきておるのでありますけれども、たとえば認定業務につきましても、その必要といたします経費の二分の一が国の負担であって、二分の一は地元の負担だ、かようなことでありますし、また補償金支払い事務につきましても同様の負担区分になっておりまして、したがって、半額は地元の県が持っておるだけではございませんで、その他に、たとえばはり、きゅうでありますとか、介護手当でありますとか、いろいろな面でずいぶん地元が負担をいたしておるのでありまして、そこで、昭和五十一年度の特別交付税計算におきましてもさようなことを配慮いたしながら処置をいたしておるのでありますが、今年度分の特交も三月の半ばごろには確定をいたす、かようなことでございますから、県や市町村とよく相談いたしながら、できるだけの心配りをいたしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  35. 藤田義光

    藤田(義)委員 これで私の質問は終わりますが、大蔵大臣、ぜひひとつこの閣僚会議、八閣僚が関係しておると承知しておりますが、検討願いまして、五回もうすでに会議が終わっておるようですが、政治的にはこの閣僚会議で検討願い、また医学的には、環境庁が考えられました症例研究班で思い切って認定業務の推進に関する具体的方途を考えていただく、これを強く要望いたしまして、時間前でございますが、これで私の質疑を打ち切りたいと思います。
  36. 中野四郎

    中野委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。(発言する者あり)  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  37. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めてください。  ちょっと岡田君、待ってください。  この際、近江巳記夫君より発言を求められておりますので、これを許します。近江巳記夫君。
  38. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど質疑に立ちました自民党の藤田委員の発言の中で、公明党の防衛問題で政策転換をしたかのごとき印象を与える発言がありましたので、誤解のないように一言申し上げておきたいと思います。  竹入委員長の発言は、あくまで個人的見解として、わが国の八〇年代を展望しての共同政府綱領の参考として、各種の問題提起をしたにすぎないものでありまして、公明党の基本政策を変更したものではないことを申し述べておきます。
  39. 中野四郎

    中野委員長 後刻、速記録を調べた上で、理事会において協議をいたします。  岡田利春君。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、主として労働団体の参考人の皆さん、また、関連して政府関係者に質問いたしたいと思います。  特に、中小企業関係については、後から同僚の上坂君から質問がありますので、この点ひとつ御理解をまず願っておきたいと思います。  まず、質問に入る前に、おととい永大産業が、関連四社とともに会社更生法の適用申請を行った。戦後最大の倒産であります。特に、この永大産業の関連中小企業の連鎖倒産防止対策あるいはまた顧客対策、さらにはまた雇用対策が、今日注目をされておるわけです。永大産業労組は、総評の全国一般に加盟いたしておると承知をいたしておるわけです。したがって、この機会に富塚参考人から、この永大産業倒産問題に対してどういう見解をとられておるか。そしてまた、これだけの大型の倒産でありますから、当面どういう緊急対策を要望されるか。この点、ひとつ率直な御意見を承りたいと思います。
  41. 富塚三夫

    富塚参考人 いま、先生から御質問がありました点についてお答えをいたしますが、総評としては、今回の永大産業倒産については、単なる一企業の問題としてではなく、木材産業と住宅政策との関連、あるいは企業や金融資本などの社会的な責任、あるいは不況産業労働者の雇用と生活保障など、多くの点から、きわめて重大な問題だと考えています。永大労組は、全木労などといま一体となって、具体的な対応策の検討を行っている段階でありますが、これがまとまり次第、永大産業や協調融資銀行団、政府などに、具体的な問題提起をしていきたいと考えております。  現時点で、永大産業倒産についての問題点として考えていることは、木材産業に対する政府としての政策と指導が全く欠落していることを挙げなければならないと思います。永大産業の主力製品であります合板は、不況カルテルによる操業短縮を連続的に実施をいたし、五十二年は、恐らく九月を除く十一カ月間連続して操短を実施してきています。多くの合板企業は、操短分を上回る残業を行ったり、ないしは労働時間の三十分から一時間延長を業界ぐるみで行っておるなどして、政府はこういった事実を知っておきながら放置をし、行政指導の責任ということについてわれわれは考えてみなければならないだろうというふうに思います。  また第二は、中小企業安定審議会に出された資料によりますと、合板一枚当たりの製造コストは、四ミリ合板換算で、五十年一月は二百九十円、五十一年一月は二百七十九円、五十二年一月は三百十八円と、ほぼ横ばいの状態となっていますが、製造原価の中の原木代は、五十年一月の一枚当たり百四十四円が、五十二年一月では百八十八円と、実に三〇%も上昇しています。労賃は、五十年一月の合板一枚当たり七十一円でしたが、五十一年一月は五十九円に、五十二年一月は五十五円と、原木とは逆に三〇%も低下しています。このことは、原木高製品安の状況を明らかにしていますし、同時に、労賃コストの低下は、四十八年に約五万四千人であった合板労働者が三〇%程度首を切られ、労働強化や賃上げ抑制、一時金の削減などで労働者に犠牲が強いられてきているのであります。このため労働生産性も、省力化投資が全くない状況の中で大幅に上昇している。  以上のことは、同時に、商社から原木の供給を受けて、製品としての合板は商社ルートということが、明らかに完全な商社支配になっている。原木高の製品安という、そういったことに矛盾ができているのでありますが、これに何らの抵抗も合板企業ができないという実態にある。こうした矛盾という弱い立場にある状況についても考えてみるべきだったのではないかと思います。  また、第三は、木材産業は、合板だけでなくて、製材業も家具、木工など、共通して深刻な経営困難に陥っています。この原因は、言うまでもなく住宅建設の極度の低下によるものであり、政府の五十年代前期経済計画で目標として示しました、五十一年から五十五年までの五年間における八百六十万戸の住宅建設が目標どおりに進んでいたとするならば、合板や製材の需給ギャップは大幅に改善されたことは明らかだったと思います。しかし、五十一年、五十二年の二カ年間の住宅建設戸数は約三百万戸で、目標を大幅に下回っております。住宅建設の最大のネックである宅地対策などについて何らの具体策がなく、木材産業の危機は、政府の住宅政策の不在が大きな要因をなしていると思います。このような状態では、永大産業のような不幸な事態に追い込まれている企業が、木材産業では続発する危険を内包していると見ることができましょう。政府は早急に、実効の上がる抜本的な住宅対策を責任を持って確立すべきだと思います。  第四は、今回の永大産業倒産をめぐる新聞報道の特徴にもありますように、計画的倒産政府景気てこ入れ策に拍車をかけるためのスケープゴートなどという報道が広範になされておりますが、大和銀行を中心とする協調融資銀行団内部の無責任な対処を含めて、銀行や商社の社会的責任の面で多くの疑念を持たざるを得ません。また、大蔵省、東京、大阪両証券取引所による永大産業株の売買内容調査、株価形成が本当に公正だったかどうかなどの問題も次々に出てきておりますが、これらの疑問についても徹底的に解明し、すべての関係者に十分その経過を明らかにされなくてはなりませんし、問題点は厳正に出されなくてはならないと思います。私は、金融資本が産業資本への介入といいますか、もっと社会的責任を十分ここで考えるべきなのではないかという点について、政府はもちろんのこと、会社更生法の適用について判断をする裁判所でも、これらの点について関係者に明らかにするように、社会的義務を負っていただきたいと思います。  また・昨年九月期現在で、東京証券取引所第一部、第二部上場の八十一の企業が債務超過企業となっておりまして、これらの企業は銀行などに支えられているのは明らかでありますが、今回の永大産業のように、銀行などの金融機関の利害得失で、いつ倒産という最悪の事態に見舞われるかしれないというのが、現実の不安として残されているものと思います。社会的にも経済的にも重大な問題であり、そうした事態の発生を事前に防止するために具体的な対策が必要だと思います。  二月二十日、政府と日銀は永大産業倒産による連鎖倒産防止策などを決定したことが報道されていますが、関連倒産防止やユーザー対策とあわせて、永大産業と関連企業に働く労働者の雇用と生活の確保について万全の措置をとることを、緊急対策一つとして責任を持って政府は考えていただきたいと思います。  なお、いま関係組合、関係者と十分問題点については調査検討中でありまして、それがまとまり次第、政府初め関係方面にわれわれ総評の立場からの強い要請をする所存であります。  以上です
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 大蔵大臣、いま富塚参考人から、永大産業倒産に関しての一応の意見が述べられたわけであります。この点について大蔵大臣の感想を聞きたいと思いますし、同時にまた、二十五日が賃金の支払い日である、こう私は承っておるわけですが、賃金の遅欠配ということも憂慮されるわけであります。そういう意味で、当面の労働者の生活保障という意味で賃金対策を当然しなければなりませんし、また、これに関連する中小企業についても同様の問題が出てくるだろうと思うわけであります。債権者の主たる者は大和銀行を初めとする金融機関でありますから、当然その間の暫定的な的確な措置をとらなければならないものと私は思うわけです。そういう点について大蔵大臣、そして労働大臣から、見解を承りたいと思います。
  43. 村山達雄

    ○村山国務大臣 御案内のとおりに、現在は市場経済、自由主義経済をやっているわけでございます。したがいまして、企業は原則として、みずからの責任において事業経営していることは当然でございます。金融機関も非常に公共性はあるとはいうものの、やはり国民の貯蓄を円滑に、必要な方面に、資金の需要家にできるだけ良質の資金を供給する立場にあるわけでございます。われわれの考えでは、永大産業は積極的な設備投資をやった後で石油ショックを受け、その後需要構造が変わりまして、特に合板部門不況になってきた、こういったことで今日の結果を見たようにわれわれは見ておるわけでございます。しかし、ここまで参りまして、会社更生法の適用を受けるという段階になりますと、われわれといたしまして何よりも気をつけなければならぬのは三点あると私は思っておるのでございます。  その一つは、永大産業取引関係のあります中小企業、これが関連でもって倒産するようなことがないように万全の措置を講じなければならぬ。第二番目には、ユーザーがございまして、すでに建設が済んだもののアフターサービスをどうするか、あるいはまた現在着工中のもの、あるいは頭金だけ払ってまだ着工してない、こういうユーザーに対する対策を的確にやるということ。第三番目には、いまおっしゃいました永大産業雇用対策をどうするかということでございます。  大蔵省といたしましては、去る二十日、この緊急事態が発生いたしましてから、直ちに各銀行協会、金融機関の協会の責任者を呼びまして、関連中小機関の不測な波及を防止するために、大蔵省におきまして各金融機関の責任者を呼びました。また日銀におきましても同様の措置をとっております。また地元におきまして、特に大阪方面では、それぞれブロック会議を開きまして、これらの点を十分に指示をいたしたところでございます。  さらにまた政府機関に対しましては、例の中小企業倒産防止の緊急融資制度、これを速やかに発動するように要請いたしました。また通産大臣の倒産会社の指定を受けまして、保証の特例措置を早く講ずることもやっておるところでございます。  そしてまた、全く異例の措置でございますけれども、関連中小企業のめんどうを見るのはそこの主力銀行でございますので、各ブロック会議ごとに指示したのもそうでございますが、メーンを持たない中小企業をどうするか、これが実はなかなか悩みの種でございまして、これは大和の方の主力銀行に、異例の措置であるけれども、あなた方の方でめんどうを見るようにという強い指示をいたしているところでございます。  また、ユーザー関係につきましては永大が責任を持ってやる、あるいは何らかの形でそのアフターサービスあるいはこれからの建設の続行、あるいは頭金を返してもらいたいと言ったらそれは的確に返す、それの資金的援助、これもまた主力銀行にわれわれは強く要請し、指導しているところでございます。  雇用関係につきましては、いまちょうど更生法が始まりましたので、さしずめは問題はないと思いますけれども、しかし、万一賃金の遅払い、そういったことがありますならば、これまた主力銀行が中心になって、そうして支援するよう、具体的にいま指導しているところでございます。  非常に残念なことでございますけれども、こういう事態におきましては、金融機関の公共性にかんがみまして、今後もわれわれ強力に指導してまいるつもりでございます。
  44. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変残念な事件が起こりまして、労働省といたしましては早速、去る二十日に責任者を労働省へ呼びまして事情を聞き、雇用の安定、同時に労働条件の確保についていろいろ万全の指示をいたしたわけでございます。これから後、本省はもちろんでありますが、出先の機関、これが永大産業との関連下請企業の実態をよく把握し、その後の推移をよく見守りたい、このように考えておりまして、状況によっては現地に担当官を派遣する、こういったことも考えております。同時に、雇用安定資金制度の対象業種としてこれが指定をすることについても準備を進めておるところでございます。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 経済企画庁は、この永大産業倒産後、きのうあたりの一応の宮崎さんの見解として、企業倒産については、永大産業のこの大型倒産を境にして、いわば峠を越したと判断をされておるようであります。この根拠となるものは何かと言えば、五十二年十月から十二月、前年同期比、件数で七・四%倒産件数が減った、負債総額で六・九%減った、そういうような傾向を基礎にしながら、倒産は峠を越した、こう見解を述べられているようであります。  しかし、経済企画庁のこういう安易な見解というものはきわめて危険性があるのではないか。先ほど富塚参考人も述べられたように、今日、銀行管理、銀行が突っかい棒を外せばすぐにでも倒産するという企業は天下周知の事実になっておるわけであります。そういう意味で、一体どういう判断でこういう見解を述べられたのか、この機会に企画庁長官から承っておきたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 決して事態を安易に考えておるわけではございません。申し上げるまでもなく、倒産といったようなことは信用不安から起こることがしばしばございますので、私ども言動に慎重でなければならないと考えるときがしばしばございますので、この点はそういうこととして、基本的な問題を御理解いただきたいと思いますが、そういう発表をこの聞いたしましたのは、全国銀行協会が統計を出しておりまして、それによりますと、倒産件数について見ますと、十月、十一月、十二月と三月前年同期に対しまして件数としては減っております。十月が一%減、十一月が一〇%減、十二月がほぼ一〇%減、負債総額の方も十一月、十二月と、前年同月に比べまして十数%ずつ減っておるという一応の統計がございますので、そのことを御披露したということでございまして、全体として事態を安易に考えておるわけでは決してございません。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在でもなおかつ倒産旋風というものについては危機は去っていないと、世上、産業界では言われておるわけです。しからば来月、すなわち年度末の三月末の倒産傾向を一体どう判断しておるのか。昨年の三月を上回るのか下回るのか、一体どういう状況であると判断をしておるのか。一般的に、景気が底から上がり始めるときには倒産が一番多く発生するということは、経験的に言えることでもあるわけです。したがって、永大産業のような大型に限らず、むしろ中型企業、いわば二百億前後の負債を抱えておるような中型企業倒産予測というものが、銀行筋でもあるいはまた商社筋でも今日一応出されておるという問題点もあるわけであります。造船などはへたするとパニック状態になるのではないか、ここまで追い詰められておるように私は受けとめておるわけです。そういう産業の動向から考えて、これらについて一体どういう見解を持っておるか。三月の倒産傾向を一体どのように見ておるのか。そして、いわば一つ経済的な動きの傾向として、むしろ三月、タイミングを外しても四月、五月、このころの倒産件数の増大というのはほぼ常識的に判断される趨勢ではないか、こう思うのですが、通産大臣からひとつ御答弁願いたいと思います。
  48. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ここ二、三カ月の倒産件数は、一年前の倒産件数に比べまして、いま企画庁の長官がお述べになりましたように若干減っておることは事実であります。ただ、この二、三カ月の傾向で今後倒産がだんだんと減るようになるのかどうか、そこまで判断していいかどうかは、もう少し事態の推移を見ないと結論を出せないのではないかと思います。しかし、いずれにいたしましても私どもは、なお事態はきわめて深刻である、このように理解をいたしておりまして、今回もそれに対応するために構造不況業種対策としての緊急立法を用意いたしておるところでございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで私は、構造不況対策の緊急立法の関係について参考人の意見を承りたいと思うわけです。  特に雇用の関係から言いますと、設備の廃棄あるいはまた合併等によって指示カルテルが発動されていく。しかし、設備が廃棄され、合併をされれば、当然合理化が行われて労働者が淘汰をされていく。これはもう間違いのない方向であるわけです。  そこで私は、いまのこの要綱が、きのうですか閣議で決定をされておりますけれども雇用の問題については確かに、労働省と一応協議をするという体裁の法律要綱になっておりますけれども、私は、この法案に対してはもう一歩突っ込んだ、労働者のいわば同意というものを条件として求めていく、こういうことが必要ではないかと思うわけであります。これは先例がないわけでは決してないのであって、たとえば、炭鉱の閉山の場合には、これは法律はございませんけれども、合理化事業団法の業務方法書の中に、当該労働組合の同意書がなければ認められない、こういう条件が付されていますし、あるいはまた地方鉄道が合併する場合には、当該労働組合の同意書が添付をされなければ認められない、このように実はなっておるわけですから、決してなじまないものではないわけであります。そういう意味で当該労働組合の同意のもとにこれが行われる、こういう条件がこの場合に絶対必要ではないかと私は判断するのでありますが、この点、富塚参考人、そして前川参考人から、ひとつ私のこの考え方についての御意見を承りたいと思います。
  50. 富塚三夫

    富塚参考人 総評といたしましては、雇用について何も触れない産業政策というものは認めないという立場であります。同時に、労働組合の合意のない産業政策というものは、各産業別組合としては当然認められないというふうに考えています。その点では、政府の案は必ずしも十分とは言いがたいと考えています。  また、関連融資という形にしろ、国民の税金をつぎ込むことになりますので、中小企業下請関連産業立場も十分考えなければなりません。現行の債務保証、信用保証では、銀行債務の肩がわりに終わってしまうという懸念が強いと思います。  また、独禁法の関係についても政府案で十分なのかどうか、検討したいと思っています。  産業によって置かれている現状の違いがありますので、画一的には言えませんが、産業の中期的な展望に欠けていると言わざるを得ません。これがないと、設備の廃棄だけが進んで、雇用の安定は中期的にも保障されない。すでに雇用の受けざらがない状況は指摘したとおりでありますから、転換先が明確になり得ないと、労働者にとっては首切りだけが残るという結果になります。その意味では週休二日制、解雇の規制といった問題なども、われわれは雇用安定の前提条件として提起をしており、産業政策の実施の上でも明確にしていただきたいと考えています。また、どうしても地域的に集中しがちでありますので、地域経済に責任を持つ自治体の意見も十分反映できるようにしなければならないのじゃないかと考えています。  いずれにいたしましても、労働組合との合意、この法律の中にあります内容がそこの点が抜けておることについて、われわれは非常に不満であります。
  51. 前川一男

    前川参考人 お答えをいたします。  私どもは、構造不況対策につきまして長い間取り組んでまいっております。いま国会に提案されるいわゆる構造不況対策の中身の大原則につきまして、設備廃棄もしくは凍結にかかわる指示などを中心にして問題の処理が打ち出されようとしているわけでありまして、同盟立場から私は申し上げますけれども、基本的な考え方は大変結構であると考えております。ただ、いま御指摘がありましたいわゆる労働組合の合意という問題は、法律上それを入れることがいいのかどうかという点は、ひとつ十分国会で御検討いただきたいと思います。ただ、現実の問題として考えれば、いわゆる労使の合意なくして設備の廃棄などということができるはずはないわけであります。これは労働組合があるなしにかかわらず、それは逆に一つの重要な合理化になるし、しかもその人のいわゆる生活はどうなっていくのかという問題が全部かかってくるわけですから、したがって、当然私は、法律の問題は別として、実際問題としては労使の合意というものが絶対に必要な内容である、こういう考え方を持ちます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの両参考人の意見に対して、この法案担当の通産大臣としてどう理解をされたか。  それと同時に、今度の法案の要綱は、平電炉、アルミそして合繊、造船の四業種を明示して作成されたようであります。しかし、今日の産業界の動向を見れば、これ以外に構造不況業種として指定されなければならない業種があることは当然であります。問題は、政令指定は法施行後一年間に限るということになっておりますから、一年以内にこれ以外の指定業種が決められていくだろう、こう思うわけです。時間の関係で率直に申しますけれども、たとえば綿紡、毛紡、化学肥料、段ボール原紙、塩ビ樹脂、合板、砂糖、船舶用ディーゼルエンジン、同部品関係、こういう関係は当然構造不況業種に指定されるものと理解していいかどうか。前の点を含めて通産大臣から御答弁願いたいと思います。
  53. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず最初の問題でありますが、今回の構造不況緊急対策に関係をいたしまして、まず、再建のための安定計画をつくります。さらにまた、必要とあらばそれに基づきまして共同行為なども行わなければなりませんが、そういう案をつくり、また、それを実施に移していくというその問題につきましては、関係審議会の意見を聞くことになっております。通産省の関係では産業構造審議会、また運輸省の関係では海運造船合理化審議会というのがございますが、そういう意見を聞くことになっておりまして、その審議会にそれぞれ労働側意見が反映できるように、いろいろ委員の選任等、工夫をしておるところでございます。  それから業種指定でありますが、法案はいまお述べになったとおりであります。一年の間に不況業種の指定を終わるということになっておりますが、これを四つを例示いたしまして他を例示いたしておりません理由は、これはやはり刻々に事情は変化しておりますし、現時点では構造不況業種と判断される業種でも、あるいは一年以内にもうよろしい、こういうことも考えられますし、あるいは現時点ではある程度やっておる業種でも、数カ月たちますと、これはもう何らかの対策をとらないことにはとてもやっていけない、こういう業種もあり得るわけであります。でありますから、初めから業種を指定をしてしまいますと非常に運用が窮屈になる。だから、まず、どこから見ても外れないと思われる四業種は一応例示はいたしましたけれども、他の業種につきましては、その業界の大多数の申し出があった場合には、これを構造不況業種に指定するかどうかは、一定の手続、条件を検討いたしまして決めることになっております。だから、むしろ現在の法律案の方が柔軟性があっていいのではないか、私はこのように理解しております。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 今度の永大産業の合板部門というのは、先ほどもいろいろ意見が述べられておりましたが、これは農林省の関係になるわけでありますが、合板の場合には、これは大体いままでも構造不況業種である。特に最近は、円高傾向も加えて大変な状況に立ち至っておるわけです。そういう意味で、この法律案が国会で成立した場合には、当然この合板については指定業種になり得るものと私は理解いたしておるわけです。そういう点について農林省としてどういう判断と検討を進められておるのか、この機会に承っておきたいと思います。
  55. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 お答えいたします。  いま農林省では、合板につきまして構造改善事業を進めておりますけれども、今回検討されております法案が適用されれば、合板につきましては、先生御指摘のように、当然構造不況業種として指定されるような手続をとっていきたいと考えております。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 特定不況業種の離職者臨時措置法が、各党の努力によって前臨時国会で成立をいたしたわけです。このうち特に問題なのは、三年間の期限があるわけですが、この間、雇用促進の手当がこれは政令で定めるということになっておるわけであります。たとえば一定の保険給付期間が過ぎてなおかつ職がないという場合には雇用促進手当というものを支給する。だが、すべて政令で定めるということになっておりまして、今回の対策法の基本は、三年間という期限があるから、常識的に判断すれば保険期間を過ぎた残りの期間、トータルにして三年以内、これは仕事がない場合には当然雇用促進手当が支払われる対象になる、こう考えるのが私は常識だと思うわけです。そしてまた、その先例としては、これまた炭鉱離職者臨時措置法にありますように、この場合も保険期間が切れて三年間雇用促進手当というものが保証されておるわけです。労働省としては当然、今日もうこの点については結論を出してしかるべきだと思うのですが、私の仄聞するところでは、これは大体一年で打ち切る、こういう考え方が労働省としていま非常に強い、支配的な案になっているとも承っておるわけです。この機会に労働大臣のこの問題についての見解を承っておきたいと思います。
  57. 藤井勝志

    藤井国務大臣 制度実施の問題でございますから、政府委員をして答弁させます。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの件でございますが、今回の特定不況業種離職者臨時措置法の場合の手当の考え方は、従来は、個々の政府施策そのものの直接のところにつきまして、たとえば買い上げの対象になるとかそういうものにつきまして御指摘のような促進手当等の手配をする、こういう形になっておりましたが、今回の場合には、政策の対象になっている業種全体をつかまえて、いわば業種全体の対策という考え方に立っておりまして、そういう観点から、いまお尋ねのございました促進手当等につきましても、これは現在のところ一年という考え方に立っております。  なお、訓練所に入ることができない場合とかそういう事情があります場合に訓練待期手当等もございまして、そういうものが全体として法律なりあるいは手帳の有効期間中に活用されていく、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 局長、ちょっと誤解をしていると思うのですが、もちろん石炭産業の場合も、法律が発足した当時は炭鉱の資産を買い上げる、坑道を買い上げる、鉱区を買い上げるという制度でありましたけれども、今日はもう制度が変わっているわけです。すべて買い上げしないのですよ。鉱業権を抹消させるだけで終わりなんです。そしてあとは、労働債務あるいはまた一般債務、鉱害債務、こういうものについて一定基準で閉山交付金を交付するというのがいまの制度で、すでに石炭産業の場合には変わっていても、なおかつ離職者対策については先ほど述べたように三年間、とにかく雇用促進手当が支給される、こういうことになっているわけですから、ちょっと局長認識が違うのじゃないかなと思うのです。すでに制度が変わっているわけですから。だから、これは当然弾力的に運用されなければならない問題である。もちろんその場合に、現在の法律は三十五歳以上適用でありますけれども、特に中高年齢層、こういう面などにウエートをかけるという方法もあるでしょう、これは労働統計で出てまいるわけですから。だから、画一的に一年間という考え方はどうか。そういう点で、この点は機械的に一年間で限る1原則はやはりこの法律の定めている三年ということを前提にして、そして求人動向とかそういうものをにらみ合わせながら基準を、百歩譲っても、少なくともそういう方向労働省は対処するのが当然だと思うのですが、もう一度、これは労働大臣でもいいし政府委員でもいいですが、見解を承っておきたい。
  60. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねの離職者臨時措置法案の成立の際に与野党間でのお話し合いがございまして、その際のいろいろな合意の上にあの制度が施行されてきているわけでございます。そのときの一つの考え方としまして、たとえば保険の個別延長という制度もとられておるわけでございますし、それからいまお尋ねの促進手当という制度もあれば訓練手当という制度もあり、訓練待期手当という制度もありまして、それからその対象になる産業のいわば国の施策とのかかわり合いの関係で、そういう点についてのまた適用の関係の差異という問題もございまして、そういういろいろな制度を活用することによりまして離職者の再就職に万全を期してまいりたい、こういう考え方に立っておるわけでございまして、促進手当だけをとって、これが一年でいいとか悪いとかいうふうな御議論では、成立のときのお話し合いの経緯から見て必ずしも合っていないところもあるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 この法律をつくった以降、情勢はやはり変わっておるわけですから、そういうところに余りとらわれる必要はないと私は思うわけです。  時間がありませんから、そういう点について、仕事がない場合には十分生活保障がなされる、こういう前提で検討してもらいたい、私はこう考えます。特にこの問題は、労働団体の意見もありますように、これを一つのモデルにしてこれからの失業者に対する生活保障という問題が考えられて検討されていかなければならない。先ほどの参考人の意見を聞きますと、四団体とも、雇用水準を引き上げていく、あるいはまた失業対策を十分にしていく、そういう水準を上げていくという意味については労働者側の負担の増大についても当然考えておる、こういう積極的な意思表明がありますので、そういう意見をも踏んまえて前向きで漸進的に対処すべきだ、こう思います。労働大臣、いかがですか。
  62. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在、非常に激しい経済情勢の移り変わりでございますし、雇用安定資金制度並びに臨時離職者措置法、この運用に当たりましては弾力的、機動的ということも絶えず言っておりますから、御趣旨をよく体して検討さしていただきます。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在、雇用開拓については、職業安定所がそれぞれの地域で進められておるわけです。もちろん私は、この職業安定所の機能なり、あるいはまた果たしている役割りについて過小評価するものではございませんけれども、だが体制としては非常に不十分ではないかと思うわけです。全国に職業安定所は四百八十二カ所あって、出張所が百三十六カ所、分室が六十八カ所ある。ところが、それぞれの人員の配置を見ますと、五十三年は一万五千四百八十人、確かに前年よりは若干ふえておるわけです。だが、これをいま申し上げました職業安定所に配置をすると大体一カ所二十人か三十人くらい、そして庶務課があり、職業紹介課があり、事業所課があり、調査給付課、場合によっては失対関係の労働課がある、こういう状況でありますから、特に法が定めている就職指導官といいますか、これらの配置も人員的にずっと調べてみますと、大体一安定所に一名ないし二名、実はこういう人数になるわけです。これ以外に労働省は職業相談員、労働保険相談員の配置が行われて、それぞれ予算で計上されています。これもずっと見ますと、大体一安定所一名くらいずつの配置にしかならない、こういう統計を私は手にいたしておるわけです。さらに、あとありますのは、高年齢層対策として、職業相談室が十万人以上の都市に設けられておる。五十三年は二百五人の定員である。これが大体いまの雇用促進をしていく下部の人的な体制であるわけです。  この点で、いまの雇用政策をきめ細やかに進めていく。あるいはまた、最近の第三次産業における求人の開拓を積極的に進めていく。それは地域で、特に地方都市で進めていく。こういう面を考えますと、安定所の体制だけでは今日の雇用政策に十分対応できないのではないか、私はこう考えるわけです。  この点について、労働団体として、これも総評と同盟前川さんにお聞きいたしたいと思いますが、今日、職業安定所を中心にして雇用対策を進めていく、こういう対策で一体十分だろうかどうか。もし補完をしなければならぬとすれば、補完する体制としてはどうなのか。法律上は、もちろん職業安定所以外は就職あっせんはできない仕組みになっておるわけでありますけれども、そういう点について、この機会に提言や御意見があれば、承っておきたいと思います。
  64. 富塚三夫

    富塚参考人 御指摘がありましたように、現在の雇用失業問題はきわめて広範かつ多様化しておりますので、高度成長時代の延長としての職業安定機構では十分な対応ができないというふうに考えています。また、職安問題だけでなく、労働基準と職業訓練行政も同様に、現状に有効に機能ができないような状況になっています。このため、後追い行政とかこう薬張り行政とかという言葉が実感として使われているのですが、ヨーロッパ諸国のように、安定成長時代に即応できる労働行政組織の抜本的な改善充実が必要ではないか。  私ども総評の調査では、職業安定所は増大する業務量でパンク寸前にあるような状態だと見ています。もりときめの細かい就職相談や指導ができるようにしていかなければならないだろう。  たとえば、愛媛の今治職安の場合、二十二名の職員で、連日二、三時間の時間外労働が常態となっています。最近、造船からの離職者だけでも千七百名が窓口に殺到していると言われています。そしてこの処理に追われています。しかも、離職者法による手帳の発給事務あるいは計画書審査、延長給付事務の激増など今後予想される中で、この事務処理さえおぼつかない状況だと報告を受けています。年次有給休暇の取得状況はわずかに平均で二・六日しかとっていない。体の調子も非常に悪くて医者にも行けないというようなことを、今治の職安の方々は言っています。このような例は尼崎、札幌、石巻、八戸、私どもの現地調査の中でも共通した方向として出ているように思います。  職安の現状を抜本的に改善充実することが必要でありますが、政府が決意をしたとしても、若干時間がかかると思います。効果を上げようとすれば、地方自治体が住民の生活を守るという立場で、求人の開拓と就職指導や相談に積極的に取り組むことが最も効果的ではないか。事実、こうした活動を展開している例を挙げてみますと、たとえば川崎市などはその例だと思います。川崎市は雇用労働対策本部をつくって、本部長に市長さんがなりまして、県、市代表労働側、使用者代表二十名で構成しております。四十九年二月に発足しました。そして、いま聞くところによりますと、市内の企業の実態の中で、大体対象事業所五千あるうち、四百三十二の企業から二千九百七十一人の求人希望が出されたと言われています。これは五十二年であります。この求人希望が、職安法上の制約から職業安定所の紹介ということにならざるを得ない。したがって、職業安定所に連絡をする。そして、それには、市の係員が市民と同行して職安に行くというかっこうになります。また「市政だより」などを出して雇用労働ニュースなどを積極的に出しているようでありますが、この中での活用がかなり多くなっている。五十一年は八十二件の問い合わせで三十四件の就職、五十二年は四十八件の問い合わせで十八件の就職というふうになっていると聞いています。ただ問題は、川崎市の場合でも、職業安定法の制約があるので、職業紹介ができるのは御存じのように学校のみでありまして、地方自治体が積極的に努力しようと思ってもなかなかうまく効果が出てこない、有機的な結びつきができないというふうになっていると聞いています。  このように、川崎の経験を全体のものにするためには、先ほど私から申し上げましたように、都道府県や市町村に、自治体当局との関係、そして行政機関、使用者団体や労働団体などの代表によって構成される、雇用創出を目的とする雇用創出推進委員会というようなものをつくって、自治体が担当窓口を設けることが必要であり、この中できめの細かい相談や指導が実施できるようにして就職を促進することが望ましいというふうに思います。失業多発地域には、炭鉱離職者対策の中で活躍した就職相談員の配置もぜひ考えてみるべきだというふうに思います。  まさに先生から御指摘があったとおり、いまの状況の中での労働省の職業安定機構といいますか機能といいますか、これは十分な活用ができる状況になっていない。そこに働いている人たちは大変な状況に置かれているということについて申し上げておきたいと思います。
  65. 前川一男

    前川参考人 前川でございます。  私は、職業安定業務を初めとしまして、職業安定行政というのはここ数年間で大分変わってきているというように思います。その意味では逐次充実されつつあると思うのです。ただ、この職業安定行政そのものというのは、特にこういう雇用危機であると言われた時代にふさわしいものであるのかどうかという点で考えれば、若干の疑問というものは残されております。  もう一つは、いわゆる法律という立場からいろいろな保護政策がとられてまいりました。これは雇用保険法の改正の問題であるとか、あるいは昨年の臨時国会での離職者の臨時措置法の問題であるとか、そういう面でも大変に整備されてきているのだろうと思うのです。それでもなおかつ、なぜ一体雇用情勢はよくならないのかというと、やはり根本的な問題がそこに横たわっているからであろう。これを解決しない限り、あるいはまたこれを解決するにふさわしい雇用体制といいますか、雇用解決のための体制をこの際確立していく、これを五十三年度に一番重要な政策課題として取り上げていただきたい。そういうつもりで、実は私も一つの提案として意見を述べたわけでございます。  現在の状態というのは、確かに稼働率を見ましても長い間八〇%台に低迷をしております。失業の実態というのも百万台で、ずいぶん長いことそのままになっている。これは結局、長期にわたってそういうことになっているわけですから、雇用情勢はどうして改善するのか、そこには基本的に姿勢の問題が、国民諸階層全体を含めて足りないという面があるのではないかと私は思うのです。  たとえば、先ほど来、週休二日制の問題などが出ました。きょうも実は産労懇で週休二日制問題などで労使の意見が出ますと、これは全く平行線になるわけです。一体なぜ平行線になるのかということになりますと、一般論として、あるいはごくマクロ的な意味でそこに論議が展開されるだけですから、ちっとも具体性を持たない。ですから、労使は反対の見解を述べ合っているというだけにすぎないわけです。   ところが、今日、考えてみますと、昨年のこの国会でせっかく特別決議をしていただきました定年延長問題などがあります。定年延長問題などをとらえてみると、私はその後そんなに前進をして  いると思わないのです。私の知っている範囲では、一部再雇用問題で前進をしたところもあります。けれども国会でせっかくああいうものを決議したのに、一体どうしてそういうものが具体的に進まないのだろうか。たとえば再雇用なんかで事実上定年延長をしても、どうも周りには不況企業もたくさんあるし、自分のところだけ何かいいことをやった、そう感づかれては困るというようなこともありまして、なるべく長い間伏せておこう、こういう気持ちすら実際にはあるのじゃないでしょうか。  そういうことですから、もちろん失業を出さないようにしていくという努力も必要でありますけれども、同時に、失業がやむなく出たものに対して一体どこに雇用吸収力を求めていくのかというためのいわゆる国民の合意、そういうものが労使その他全体を含めて足りないのではないかと思うのです。自分の方では、この際思い切って三人でも五人でも進んで採用していこう、こういう企業がもっと出てきてもいいのじゃなかろうか。すなわち、実際には順調な業績を持っている企業もあるわけですから、そういうところがそれを進んで受けていく、そういう努力の体制というものができ上がらない限りにおいては、この雇用問題というのは、いわゆる自由主義経済をただ謳歌してきたという感じ方の強い社会の流れの中におきまして、そのままずるずると自然に解決していくのを結果的にながめてしまうということになりかねない、そういう気持ちがいたします。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 昭和四十八年ごろから五十一年にかけての雇用の吸収の状況を見ますと、非製造業就業者数は百二十九万人ふえておるわけです。どういうところがふえているかと言いますと、第一には広告業、リース、情報処理、そういう関係の都市型のいわゆる対事務所サービス業。広告業は、四十八年の四月から五十二年まででは実に六万六千人から七万二千人と、ぴんとふえているわけです。第二には流通サービス業における技術進歩の関係。レストランチェーン、急速冷凍、自動包装あるいはまたチェーン展開、こういうところが急速に雇用がふえている。第三には都市構造の変化に伴う卸、小売業の増加。大都市のスプロール化傾向に対して変わっていく、あるいは十万人以上の中小都市の成長が非常に目覚ましい。これが大体年に四十万人ぐらいの新たな雇用吸収力を実は持っている。  そういう点を考えますと、これがずっと続くとは思いませんけれども、その傾向はやはり見通すことができると思うのです。そうしますと、職業安定所も、それぞれの地域においてこれの状況を十分把握することは困難だと私は思うのです。この点は自治体が一番的確に把握をしておると思うわけです。ですから、結局、先ほども提言がありましたように、知事さんは職業安定の機能の中間に座っているわけですから、県の段階では一つのセンターをつくる。あと市町村段階で、雇用相談室といいますかあるいは雇用対策室といいますか、そういうものを設けさせていく。そういう雇用政策の一環として、これはもう国としても財源的に見てやる、こういう点で、いま述べられたように雇用に関する国民合意というものを本当に高めていく。いま言った私の考え方であれば、これはもう全国的にずっと体制がとれていく。そういう意味では、いまの職安法についてもある程度改正してもいいのじゃないか。  地方自治団体がやられる場合、ずっと集めて安定所に持っていってもさばくことができないわけですね。そういう点からいって、自治省と労働省でこれは十分相談をされてそういう方向に持っていくべきである。ことし間に合わなければ来年度そういう点に必要な予算をつけるべきではないだろうかと私は考えるわけですが、この点、労働大臣と自治大臣から見解を承っておきたいと思います。
  67. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほどからいろいろ貴重な御意見を承っておりますが、現在の厳しい雇用情勢失業現状、こういったことを考えましたときに職業安定行政が非常に貧弱であるという、私もそのように理解いたしております。特に、これは人がなければ仕事ができないわけでございまして、この問題につきましては、やはり行政簡素化の大方針といいますか、基本方針がありまして、私は労働大臣に就任をいたしまして驚いたことは、労働関係の職員、昭和四十三年から五十二年までに約二千三百名が純減をしている、純粋に減っておる人数が二千三百名という事実でございまして、こういうことでございますから、私は、この問題に対して自分としては全力を尽くしたつもりでございます。五十二年、去年は約六十七名が純減、おととしは百二、三名でございましたか。そういったことで、労働行政は御説のとおりマン・ツー・マンの行政でございまして、職業あっせんもそうでございますし、基準法の実施もそういう面でございますが、この問題については大蔵省の理解ある、また行政管理庁の理解ある対応が示されまして、その純減のすべりどめができました。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 そういったことを背景として、やはりそれだけでは足りませんから、先ほど富塚さんからもお話がありましたが、地方自治体との密着、連携を密にする、こういったことで、すでに労働省においても職業安定所が中心になりまして、一応原則は職業安定所単位に雇用協議会というものをつくる、また失業多発地帯においては市町村単位にでもそれをつくって、自治体と密接な連絡をとって雇用対策に万全を期する。また、要すれば、臨時的には急がしいところに人を派遣する、こういったことも考えて、現在の厳しい雇用対応したい、このように考えておる次第であります。
  68. 加藤武徳

    加藤国務大臣 失業者が増大いたしますことは、地方団体にとりましてもきわめて深刻な問題であることは申すまでもないことでございます。そこで、都道府県はもとよりでございますが、失業者の多発の市町村におきましては、いろいろ工夫をいたしまして再雇用機会の増大を求めておるのでございまして、先ほど富塚参考人から、川崎市の例を引かれまして具体的なお話等がございました。自治省といたしましても、たとえば市町村等で失業者の多発しておりまするところは、できるだけ対策室なりあるいは雇用室等を設けまして再雇用機会の増大に努めてまいり、かつまた、関係機関との横の連絡も十分とり得るような体制をとり、情報の交換等も行いあるいは調整等も行う、かような指導をいたしてまいっておるところでございます。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 機を見るに敏にして、きめ細やかなることをもって最良とするということですから、この点さらに情勢に適合するように検討し合って、具体的に前進をさしてほしいということを申し上げておきたいと思います。  次に、雇用の創出ということは、なかなか三次産業もそうふえていかないとすれば、このままで堆移しますと、来年度、たとえば経済成長が七%近いものであっても完全失業者はふえるのではないか、私自身、こういう一応の試算があるわけであります。へたをすると百五十万人以上に及ぶ場合も想定されるのではないか。そういう意味では、やはり新たな角度から雇用の創出を図るということがどうしても避け得られない情勢になってきた。先ほどそれぞれ参考人からも述べられておりますが、たとえば新しい社会的ニーズ、そういう意味で社会的なサービスの面を重要視するとか、教育の問題だとか、あるいはまた、それぞれ末端においていわば雇用力を創出をする、こういう意味では自治体の果たす役割りも私は非常に大きいと思いますし。問題は、そういう雇用政策の財源が一体予算上組めるかどうかという問題に私はかかっているのではないかと思うわけです。もしこれが、政府としてそういう方向で進めるとするならば、単に開発就労するというのではなくして、それぞれの地域の要請に従った雇用の面をある一定基準で把握をして、そこで三年間なら三年間の一定雇用力を確保して、そうして次への景気回復に転換をさしていく。ずっと恒久的に固定化するというものではございませんけれども、そう  いう方向でもう一歩進んで考えるべきではないか、こういう意見を持っているわけです。こういう点について岡村さん、富田さんから、先ほども意見を述べられておりますが、御意見を承りたいと思います。
  70. 岡村恵

    ○岡村参考人 岡村でございます。  先ほど申し述べましたように、一次的に雇用を創出していかない限り、経済の七%成長だけで現在の雇用問題は解決できるとは考えられません。  そこで、地方自治体のサービスの問題を取り上げてみたわけですが、たとえば学校教育の問題一つ取り上げてみましても、現在、日本の小中学校の一先生当たりの生徒数というのは、欧米諸国に比べてかなり高いという状況にあります。これはもちろん人口のふえ方が一時点に集中をしておりますから、その山場に全部先生を合わしてしまうということになりますと、確かに将来先生が過剰であるという問題が起こるかもしれません。この知的労働者の失業問題等があるわけですが、その中には、先生の資格をお持ちになるような人たちも大ぜいいるわけですから、そういったピークを埋め、なおかつ、欧米並みの教育の一人当たりの生徒数にし、十分いま起こっている教育問題等を解決していく、こういう解決の方法もあろうかと思います。そのほか、生活に関連をする相談所であるとか、いろいろなものをつくりながら広範にわたって雇用の増大を図っていただきたい。そのためには、先生が言われましたとおり、地方自治体に対する財政措置もあわせて考えていただきたい、こういうふうに考えております。
  71. 富田弘隆

    ○富田参考人 卑近な例で一つ申し上げてみたいと思うわけでありますが、それぞれ私たちは東京なり、また、東京を中心にした近県に住んでいるわけであります。日常特に痛切に感じますのは、たとえば私の家の周辺で考えますと、下水がまだ全然ありません。つい最近も市役所の人に聞いてみたのですが、私どもの周辺に下水が引けるのにはあとどのくらいかかるのかということを尋ねましたところ、あと十年くらいかからないと下水は引けません。特に、いま現に工事をやっているわけでありますが、ちょっと多くの雨が降ると下水があふれるというわけで、わずか五百五十メートルの道路に下水管を埋設するのに三年計画だ。こういう計画で現在工事をやっているわけです。  わずかに五百五十メートルのところを三年計画でしか下水管が引けない、こういう状態で、それぞれの自治体における、労働力もあるいは金も、そういう意味では需要が潜在的に非常にたくさんあるということは、ちょっと調べればどこにも転がっているのじゃないだろうか。ただ、その際に、一つ下水道をつくるにも、設計の点で難点があるとかいろいろのむずかしい問題もあろうかと思いますけれども、ひとつここで重要だと思うのは、それぞれの自治体に対する国の財政援助あるいは交付の場合に余りきついひもをつけないで、それぞれの自治体の自発性にまつ、自由なと言うと多少語弊があるかもしれませんが、自治体の自発性に立った様々な公共事業というものを計画、企画すれば、もっともっと身近な住民サービスに結びついた需要を必要とする、したがって労働力を必要とする、そういうことが幾らでもあるのではないだろうか、私はこのように考えます。
  72. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから質問を進めたいと思うのですが、ことしの正月には福田総理のデノミ発言で話題をにぎわしたわけですが、先ほど参考人の意見をそれぞれ聞いておりますと、やはりわが国労働条件は国際労働基準にもう合わせるべきであるというのは、統一的な参考意見であったと私は理解するわけです。  私ども社会党の場合も、完全週休二日制の実現について、労働基準法の一部改正の法案要綱を実は作成いたしておるわけです。これは、労働基準法の三十五条を改正して週休二日制を実施をする、労働時間も一日八時間以内とする、時間外の規制のためには割り増し率をある程度上げる、そして施行期間を定めて、いわば必要な銀行法の改正、手形法、小切手あるいは民法あるいは一般職員給与法等の改正をずっと進めていく、環境づくりをする。私どもは、法案のこの要綱を作成するに当たって、特に第一点は、この週休二日制の宣言をまず政府がする。一応、たたき台は二年にしてありますけれども、これは弾力的に扱っていいんじゃないか。業種もいろいろありますから、そういう点も検討して結構だと思います。時間が三年になってもいいんじゃないかと思います。これは各党とも話し合いをしたいと思っておるわけです。あるいはまた時間外の割り増し率についても、どの程度上げるかということも弾力的に話し合って、要は、目的がある程度達成すればいいのではないか、こういう意味で実はこの要綱を作成をいたしたわけですが、大体先ほどの御意見では参考人の方々に、いま言った経過措置を十分弾力的に対応すれば、この宣言については同意を得られるのではないか、こういう感じがするわけですが、この点について、時間がありませんので短い時間で結構ですから、それぞれ端的なお答えを願いたいと思うのです。
  73. 富塚三夫

    富塚参考人 ぜひ、この国会週休二日制の特別立法化についてお願いをいたしたい、これが最大の雇用創出になる課題であろうというふうに考えています。なお、過渡的な状況というものも十分われわれは考えておりますので、その点は弾力的に考えて結構だと思いますが、そのようにお願いをいたしたいと考えています。
  74. 前川一男

    前川参考人 私は、ただいまの一つの提案に対しまして、もちろん賛成でございます。賛成ではありますけれども、現段階においてどういう取り扱いがいいのかということになってまいりますと、やはりそこには週休二日制というだけではなくて、完全雇用を目指していく基本的な国の姿勢というものがすべて前提になって、そして当面する雇用に対してどういう対応をしていかなければいけないのか、こういう前提のもとに、たとえば事業の開発あるいはそれに係る問題であるとか、あるいは新規採用などの拡大といいますか、そういう問題であるとか、定年制問題であるとか労働時間、そしてその中にまた週休二日制が当然入ってこようと思います。あるいは残業規制などもあるかと思います。しかし、そういうもの全体を含めて、当面どういう体制を国が指導をしていくことが一番望ましいのか、こういう意味での宣言ならば大変に結構だ、こういう考え方を持ちます。
  75. 岡村恵

    ○岡村参考人 ただいまの社会党の考え方に賛成をするものであります。  中立労連としましては、長い間「労働時間の短縮等も含めて基準法の改正を求めてまいりましたが、いずれも大変むずかしい問題でございますので、当面、少なくとも本年度中に政府機関並びに金融機関の週休二日制は実現をすべきである、そうしてできるだけ早い機会にこれを、そのほかのいろいろな諸条件を整備しながら民間機関にも実現できるようにしていただきたい。あわせまして、労働時間の問題では一」0条約の中にも大変重要な条約がございまして、有給休暇の問題等もまだ日本では実現されておりません。こういったものについても早急に批准をし、実現をしていただきたいというふうに考えています。
  76. 富田弘隆

    ○富田参考人 最初に、先ほどの御質問のとおり、基本的に私どもも賛成であります。  振り返ってみますと、ILOが創立されましたのが一九一九年で、約六十年ほど前になるわけでありますが、ILOが創立されて第一号の条約が有名ないわゆる労働時間の条約であります。ここですでに時間外割り増しについては二五%あるいは一日八時間、一週四十八時間という基準が定められたわけでありますが、わが国は依然としてその当初の、六十年前の国際労働基準そのままということになっております。さらに一九三五年には、戦前でありますが、すでに週四十時間条約がILOの場で決定をされております。特にこの四十時間条約が決議されるに当たっては、一九二〇年代後半からのいわゆる世界恐慌の際に不況対策ないしは失業対策という意味合いを強く持って結ばれた、このように私ども記憶しているわけであります。したがって、そういう決議を受けて、三六年にはフランス、三八年にはアメリカですでに四十時間制がその当時からとられている。そういうことから申しますと、日本状況は、先ほども意見陳述の中で申し上げましたとおり、非常に大きく立ちおくれている。この際ぜひこれらの問題についての立法化が積極的に進めらるべきだと私どもも思います。
  77. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま四団体から参考意見が述べられたのですが、この機会に労働大臣から、この週休二日制の宣言をするということは、国際労働関係からいっても経済関係からいっても、きわめて機は熟しておると、こう私は認識せざるを得ないわけですが、そういう意味で、ただいま参考人一の御意見を聞いた労働大臣の所見をこの機会に承っておきたいと思います。
  78. 藤井勝志

    藤井国務大臣 「労働時間対策の進め方について」という題目で、実は私が労働大臣に就任直後、中央労働基準審議会から公、労、使三者の一致した建議を受けたのでございます。私は、その建議を手にいたしまして、これはぜひいずれの日にかはかち取らなければならぬ目標である、いただきであると、このように認識をいたした一人でございます。ただ、その場合、だれしも気がつくことでありますけれども、やはりお互いが何のための人生かという、やはりお互いの生活にゆとりを持つということ、そして、やはり最近の外圧の背景には日本人の働き過ぎということも作用しているというふうに内外で言い伝えられておりますし、また、安定成長に入ったのですから仕事の分量は全体的には少なくなるという、そうするとお互いが仕事を分かち合う、こういう点から言っても、私は必要なことだというふうに思うのです。  ただ問題は、現実にさてこれをすぐ実施するかということになると、いろいろな問題がここに出てくると私は思うのでありまして、まず労働時間の短縮というのはコストアップにつながるということは当然であります。そうすると、そのことを強制することによって、現在非常に経営困難である中小企業自体、倒産せざるを得ないということになる。そうすると、それだけ、雇用拡大をするどころか逆に縮小する、こういう問題もありますし、日本労働慣行において、御案内のごとく日給月給制であるということ、時間賃金制でないということ、こういった問題もいろいろございますから、それらを踏まえながら、この公労使一体の建議でも、行政指導によってひとつ当分やろうではないか、労働団体の代表も加われた場においてそういう意思表示がございますから、われわれとしてはその答申を踏まえて着実に環境整備に進みたい。それで、近々そのような公労使の会合、特に労使の会合の場をつくってひとつ土俵づくりをだんだん進めていきたい、このように考えておる次第であります。
  79. 岡田利春

    岡田(利)委員 前半の感想はいいのですけれども、問題は、政府が決意をしなければ環境はできないわけですね。だから、その環境づくりの期間、たとえば中小企業でもいろいろ業種もあるでしょう。たとえば郵政事業のような場合もあるでしょう。それは十分業種対応して弾力的に、スムーズに移行できるようにやるのだ。その一定期間はどの程度の期間がいいのか。業種的にも内容を検討していくことによってスムーズに移行できるのじゃないか。週休二日制をわが国は実施をするという宣言ができるかどうかということが最大の問題でありますので、政府の踏ん切りを私は期待をするし、具体的にはそれぞれの委員会で詰めてまた議論できると思いますので、時間がありませんから最後に、特に若干関連のある問題についてこの機会に承っておきたいと思うわけです。  それは、まず一つ大蔵省です。いまの問題を進めるためにも、まず銀行法十八条だけは労使の交渉によって、合意によって週休二日ができるように、速やかにこの部面だけは、ここだけを抜いて改正すべきじゃないのか、それくらいの踏ん切りはすべきではないのかという点が大蔵省に対する質問であります。  それから、次は運輸省に対して伺っておきたいのでありますけれども運輸省の関係では、たとえば国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法が実はできて、そしてそれぞれ申請の手続を行うわけですが、残念ながら船員職業安定所が少ないわけですね。ですから、たとえば留萌から稚内まで行かなければ申請ができない。給付を受ける場合にもそういうことになるわけです。あるいは様似から室蘭に行かなければならない。船員関係については、それぞれ労働省運輸省が話し合って、職業安定所でやれますから問題はないわけです。これは非常に大きな問題になっておるわけですが、当然船員と同じように、労働省と提携をして、それぞれの地元の職安でもこれらができるように、せっかく法律をつくったのですから、すべきではないか。この点についてどう考えるのか。同時にまた、雇用促進手当については、いずれの船員の場合も漁業者の場合にも、労働省と同じ見解に立っているのかどうか、この点、運輸省からひとつ答弁願いたいと思います。  次に、北海道開発庁長官と農林省にこれはお伺いしたいのでありますけれども雇用保険の五十日の特例給付の内容をずっと見ますと、どうしても寒冷地に多いわけですね。なかんずく北海道に非常に多いということは、しばしば国会でも議論されてきて明らかになっておるところであります。これは自然条件によってどうしても仕事ができない。もし労働省で職業訓練をしてこの労働者を移してしまうと、翌年は労働力が不足になるわけですよ。だから、毎年毎年安定した仕事があるけれども、特に一定の期間だけは仕事ができない。大体一月から三月、この期間はどうしても仕事ができないという現状にあるわけです。  たとえば、農林省で言いますと、海の関係ではオホーツクが凍ってしまう。したがって、船員の関係では雇用漁業者が仕事ができないという問題が当然出てくる。しかし毎年必要である。あるいは加工の場合では、今度はスケトウが少なくなってまいりましたから、そういう意味では、どうしても冬場は前浜が凍ってしまいますから、原魚がないから冬は仕事ができないという問題は決定的なものであります。自然条件から来るものであります。あるいは林業の雇用労働者の場合には、国土保全のために造林事業を毎年毎年安定的にやっているわけです。しかし、これは冬はできないわけですね。これは自然条件のためにできないのではないか、こういう私の認識は間違いなのかどうか。それとも自然条件を克服して仕事ができる道があると言えるのかどうか。この点ひとつ農林大臣の認識を、それこそ同じ選挙区でありますから、承っておきたいと思います。北海道開発庁長官には、いま北海道開発庁長官は就任以来努力をしておると言うけれども、たとえば公共事業の道路の関係は、治山治水を含めて五〇%を占めておるわけですね。これもまた、冬の仕事をするとすれば三割から四割の単価をアップするか、極端に言えば五割も六割もアップしなければ冬には絶対仕事はできないわけですよ、一メーター以上も凍ってしまうわけですから。だが、この労働力は毎年毎年必要なわけです。現に開発庁の場合でも、四千名以上の季節労働者を政府自身が雇用しているわけです。そして、十カ月間雇用して三カ月間休ませて、毎年毎年雇用しているわけですよ。政府自身がやっているわけです。そのことは、そういう自然条件から来る特殊なものであるということを認めておられるのではないか、こう私は思うわけです。ある程度の努力はできても、決定的にこれを克服する道はないと私は思うわけです。北海道開発庁長官としてどういう認識を持っておられるか、この機会にひとつ承っておきたいと思うのです。
  80. 福永健司

    ○福永国務大臣 お尋ねの点で、単なる失業者でございますと、失業の認定ができればそれぞれ安定所で措置することができるわけでございますが、漁業離職者等につきましては、職業指導というようなこととも関連いたしまして、これは多少趣が違うわけです。こういう点について、まさに御指摘のごとく、従来の需要等を考えて、北海道にも六カ所ばかりその種の仕事を担当する配置をいたしておるわけでございますが、いまもお話があったように、最近の情勢からいたしますと、北洋漁業関係なんかで集中的に離職者ができるというようなことで、非常に不便なことも生じているようであります。  そこで、私どもといたしますと、この漁業離職者等につきましては、いまも申しましたような特殊事情がございますので、そういうことで非常に離職者が不便を感じているというようなことにつきましては、率直に申しまして、失業手当を支給するような日は係官等もべらぼうに忙しいようでありますが、月のうち全部が忙しいというわけではありませんので、いまお話しのようなところには係官等を出張させて、できるだけ失業者諸君の不便を少なくする、こういうようにしろということですでに指令も出ておりますが、実効を上げるようになお督励をいたしたい、そういうように考えております。
  81. 村山達雄

    ○村山国務大臣 銀行の週休二日制の問題につきましては、大蔵委員会でこの問題が取り上げられましてから、定年制の延長を含めまして閣僚懇談会が設けられて、数次にわたって協議が行われております。また、銀行法の改正を含めまして、金融制度調査会の中では、労働界、産業界、中小企業関係者、それから消費者立場で、この問題が何回か論議されているわけでございます。金融制度調査会ではアンケート調査をとりまして種々分析いたしているのでございますが、残念ながら、アンケート調査中心にいたしましてこれらの審議委員の方々の間では、まだ全般的に二日制を採用すべきであるという国民的コンセンサスが得られていない、こういうことになっているわけでございます。特に問題になっておるポイントを申し上げますと、中小企業の方々が二日制をやっているのは恐らくまだ二%以下だろうと思います。その人たちが土曜日の金融、この問題が一つ問題点である。それから、最近はいろいろな消費者ローンあるいは住宅ローンの関係がサラリーマンにありまして、この人たちが土曜日にいろいろな条件変更であるとかその他、土曜日にみんな行かれる、こういう事情がやはり大きな事情でございまして、なお、この問題を現実的に解決するためにさらにいま研究を続けている、こういう段階でございます。
  82. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のように、北海道、東北もそうでございますが、冬期間非常な積雪によって、林業労働者あるいは水産や漁業労働者のように、働きたくてもどうしても働く職場がない、こういうことで非常な労働問題として地域的な重大事項がございます。お互い、この点については、冬場も仕事ができるようにということで、林業についてもシイタケ栽培とかいうようなことを林業構造改善で推進したり、あるいはまた、沿岸漁業が一番水産関係では厳しい状態にありますので、沿岸漁業の体質改善を図って、夏場のうちに冬の収入を得ておくというような努力をしたり、また、むしろ水産加工のような場合には冬場に仕事が多い、こういうところもありますが、二百海里時代を迎えて安定したものであるかどうかというようなこともこれから十分配慮していかなければなりません。このように冬場の仕事を考えることと、またもう一つは、失業保険等の運用を図りましてこの問題に取り組んでまいりたい、こう思っておるところでございます。
  83. 加藤武徳

    加藤国務大臣 北海道が積雪寒冷の地でございまして、したがって公共事業等の平年施行がなかなかむずかしい地域でありますことは御指摘のとおりでございます。そしてまた、北海道開発局におきましても四千名前後の臨時的補助的な職員を雇用いたしておる、これもまた御指摘のとおりでございます。  そこで、基本的には北海道の産業構造それ自身を高度化してまいりまして、安定的な雇用の場をふやしていくということが望ましいことでございますけれども、それがなかなか一朝一夕にできることではないことも、これまた御理解願えると思うのであります。そこで公共事業発注にいたしましても、たとえばトンネル工事でありますとか橋脚の下部構造でありますとか護岸工事でありますとか、さようなものは冬期間も施工が可能でありますから、かような公共事業等につきましてはできるだけ冬期間に工事がやり得るような体制をとってまいりますことと、また、建設省を中心にいたしましていま技術的な研究会が設けられておるのでございます。この研究会は、工法等の改善によりまして冬季の施工が可能になってまいりますことも研究課題の一つでありますと同時に、また、どの程度の単価アップになるか、かようなことも研究課題である、かように理解をいたしており、北海道開発局もまたこの研究会に参加をいたしておる、かようなことでございます。  かつまた、労働施策といたしましては、御承知のように交付金制度が設けられまして、冬期間に雇用いたします方に七万八千円の雇用奨励金が出る、かような制度もとられておるのでありますから、さような活用等によりましてできるだけ平年施行が可能になりますように今後も努力をいたしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  84. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから終わります。
  85. 中野四郎

    中野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後一時五分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  86. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上坂昇君。
  87. 上坂昇

    上坂委員 参考人の皆さん、御苦労さまであります。貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございます。  先ほど、わが党の岡田委員の方から雇用問題について詳しい質疑が行われました。したがって私は、雇用問題、特に雇用安定、これ以上失業を出さないあるいは失業のおそれを防いでいく、こういう立場から質問を展開してまいりたいと思いますが、したがって、主として政府の方への質問になるだろうと思いますので、その点、参考人の皆さんには御了承をいただきたいと思います。  初めに、参考人の方々に対しまして一つだけお伺いをいたしておきますが、いま各労働組合のナショナルセンターとしての立場から御意見をいただいたわけでありますが、時間の都合もありますので、総評と中立労連の方に少しお聞きをいたしたいと思います。  まず、労働組合の立場から言いまして、今日の中小企業の置かれている状況から基本的には一体何が問題となっているのか、この点について御意見をいただきたいと思います。
  88. 富塚三夫

    富塚参考人 総評は労働組合でありますので、やはり出発点は中小企業に働く労働者の問題を非常に大事に考えようといましています。中小企業労働者も、同じ労働者として大企業労働者と同じような水準の労働条件で働き、同じ水準の生活を営む権利を持っていると思います。とはいいましても、直ちにすべての面で同一にできるとは考えておりません。それは、中小企業労働者の悪条件の根底には中小企業経営基盤の脆弱さがあると考えるからであります。したがいまして、私たちが中小企業問題を考える立場は、中小企業に働く労働者にも大企業並みの労働条件、生活を保障し得る力を中小企業につけなければならないという立場であります。  そういう観点から見てみますと、中小企業問題の基本問題は、第一には独占禁止法の強化、第二には下請企業の保護具体的には下請単価の適正化、手形サイトの短縮などであり、第三には、昨年成立しました分野法の立法の精神を生かした運用と拡大であります。  以上の三点は大企業との関係ですが、金融上の問題としては、まず第四に歩積み両建ての是正、第五に中小企業向け金融枠の拡大であります。第六には、中小企業の近代化のための財政資金をかなりの長期にわたって投入することだと思います。そして一番大切なことは、中小企業者中小企業団体の意見中小企業政策、経済政策に十分に反映をさせていただきたいと思います。  私ども総評も、この三月二十四日には中小労働者デーというものを設定をいたしまして、とにかく中小企業をどう守って、そこに働く労働者の立場を大事に考えて、そして雇用と生活を守るということに全力を挙げていきたいと考えています。  以上の観点から国会で十分に取り上げていただきまして、いろいろな施策を講じていただきたい。  以上であります。
  89. 岡村恵

    ○岡村参考人 岡村でございます。  中小企業問題としましては、中小企業を大体二つに分けて考えなければいけないというふうに考えております。その一つは、全く大企業の系列下にない独立の中小企業で、相互に、中小企業同士の競争の非常に激しい分野の部分です。これに対しましては、下請関連の中小企業と共通の部分もございますが、主として近代化のための資金であるとか技術の提供であるとか、こういった経営基盤を強化するような援助、指導、こういったものが必要ではないか。あわせまして、両方の、大企業系列下の中小と共通する部分といたしましては、金利の引き下げ、特に歩積み両建てのようなことが事実上まだ残っていると思いますが、こういった部分に対して大企業並みの金利の提供が行われるように計らっていただきたい、こんなふうに考えます。  それから、大企業系列下の下請企業の問題ですが、これはまず一番最初に、不況のときに下請発注を切ってしまう、そして大企業の方の操業率を落とさない、こういうようなことが行われているように思いますが、一定の下請企業仕事に対して大企業が保障すべきではないか。あわせまして、手形のサイトを余り延長しないような規制措置が必要であるし、単価についても中小企業採算のとれる単価の決定が行われるような指導が必要ではないか、このように思います。  いずれにしましても、中小企業企業経営が成り立ってまいりませんと雇用の安定ということはできません。われわれは、中小企業でも大企業並みの労働条件ということを前提として運動をやっておりますが、その前段といたしましては、中小企業経営が成り立つようにしていただくということが前提条件として必要だと考えております。
  90. 上坂昇

    上坂委員 もう一点お伺いをしますが、不況が非常に長引いております。したがって、大変組合傘下の労働者の皆さんが困っておられるだろうと思いますが、いわゆる地方労働者の中から具体的な問題としてどんなことが提起されているのか、この点についてもいまのお二方にお伺いをいたしたいと思います。
  91. 富塚三夫

    富塚参考人 いろいろな例がありますが、私どもがつかんでおります二、三の具体的な例を挙げますと、一つ下請単価の問題であります。これは下請企業労働者の賃金、労働条件に直接響きますので非常に深刻であります。  それから、手形サイトの問題ですが、下請代金支払遅延防止法で六十日以内と定めているはずですが、これは空文となっています。これは御出席の中小企業関係の方々も百も承知であります。  また、親企業発注減もありまして、親企業自体が仕事が減った割合に応じてなら弁解もできるでしょうが、それ以上に、従来下請でやっていた仕事を親企業が取り込んでしまうような状況があるように思います。  また、官公需の中小向け発注増加という問題では、ある県では、要求したら県自体がどれだけ中小企業発注しているかを把握していなかったという報告も受けています。  歩積み両建て問題も多く指摘されていますが、これらの問題についても、たとえば手形サイト、歩積み両建てについて是正を総評は政府に要求したことがありますが、そのときの返事は、具体例があれば報告してほしい、調査して是正をするという程度のものであって、具体的には実は事例としてはたくさんあるのでありますが、なかなかこの問題について前進を見るに至っていません。  いま私どもは、官公需の中小向け発注についても、地方自治体で官公庁並みに量を把握して発注率を高めていくような指導をして、ぜひ行ってほしいと考えています。  たくさんの例はあるのでありますが、主にそんな例についていまわれわれは報告を受けて、具体的に検討しているという状況であります。
  92. 岡村恵

    ○岡村参考人 岡村でございます。  富塚参考人が述べられました内容につきましては、重複を避けまして省略をさしていただきます。  ほとんど触れられておられるわけですが、一つだけ指摘さしていただきたいと思いますのは、企業の連結決算が行われるということから、いままで比較的業績が思わしくない大企業の場合に、下請企業の方にその赤字を回して、そして親企業の業績をある程度維持してきた、ところが連結決算になるということになりますと、その辺が全部表面化するということもございまして、いままで全部しわ寄せをしてきた中小企業を一気に整理をする、こんなような動きも出ているように思います。そのために系列企業倒産あるいは大幅な規模の縮小というような問題も、私どものところで起こっているように思います。  以上です。
  93. 上坂昇

    上坂委員 それでは政府にお伺いしますが、きのうの閣議で、いよいよ構造不況産業対策として法案を提出するということが決定したようでありますが、構造不況問題に対しては法案審議のときに詳細に触れたいと考えますので、ここでは一つだけお伺いをいたしておきたいと思います。  法律の対象業種として当面平電炉、アルミ製錬、合繊あるいは造船に加えまして、永大産業倒産の例にも見られるように合板、さらに砂糖も指定されるようでありますが、構造的な不況は、このほかに、わが国産業の実に広範な分野に及ぶと思うのであります。  そこで、この法律が実施になるとしますと、企業自体、業界ぐるみの自主努力ももちろんでありますが、行政的な介入というかあるいは指導となるかは別といたしまして、過剰設備の廃棄や体質改善に伴って失業問題、雇用問題が大きくクローズアップされることは必至だろうと思うのであります。政府案では、設備廃棄に伴いまして失業問題が起きないように企業が配慮をすること、あるいはまた国は雇用安定に必要な措置をとるとしているようでありますけれども、これは非常に困難な問題だと思うのであります。地域的には失業問題での、言うならば激甚地域も出てくるのではないかというふうに思います。また、中小企業分野では、産地ぐるみの倒産失業問題が起こってくるおそれがあると思う。そこで私は、この構造不況の法案と同時に、不況地域の再建を目標とするところの特別立法措置を考える必要が出てきているのではないか、こういうふうに思うのであります。こうした特別立法措置によりまして、財政金融あるいは地方自治体役割りというものを大きくクローズアップさせまして、ここで雇用の問題あるいは倒産未然防止の問題に取り組むべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、この件について通産大臣の御意見を承りたいと思います。
  94. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ただいまのところ、とりあえずこの構造不況業種の緊急立法で対策を講じまして何とか切り抜けたいと思っておりますが、いまお話しの地域ぐるみの地域指定ということのための緊急立法、そこまでは現在考えておりません。
  95. 上坂昇

    上坂委員 構造不況法案が準備された段階でありますから、なかなかそこまではいかないと思いますが、私は前向きに検討していただきたいというふうに思うのであります。  いま中小企業庁がいろいろ中小企業問題と取り組んでいるわけでありますが、予算で言いますと、まさに防衛費の一〇%にしかならない予算でありまして、なかなかこれでは五百万の企業、三千万人の従事者を持つ中小企業対策というのはうまくいかないのではないかと私は日ごろから考えているのでありますが、同時に、全国的に広がっている中小企業、五百万事業所、そうした大きな事業所を把握するということはまた非常に困難であろう、こういうふうに思うのであります。したがって、これは地方自治体においてこの実態をつかめるような状態が必要ではないか、私はこう考えます。そのためのいわゆる組織的な問題あるいは財政的な措置、あるいはもっと地方自治体に中小関係の職員をふやして、そこで中小企業の実態をつかんでいろいろな対処をしていく、そのことがまた雇用対策にとっては非常に大きな足しになる、こう思っております。そしてまた、その職員をふやすということもやっぱり一つ雇用対策でありますから、そういう面でも二重の利益があると私は思っております。こういうような形で地方自治体に大きな権限を与えて、そしていろいろな施策をしていくというところにまで今後の行政として踏み切っていく必要があるのではないか、こんなふうに私は思うのでありますが、この件についての通産大臣の御意見をいただきたいと思います。
  96. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中小企業予算は、いまお述べになりましたが、一般会計ではそう大きな金額ではありませんが、財投関係で、御案内のように中小企業三機関に対しまして五十三年度は約四兆円という資金を用意いたしております。これを全部合計いたしますと、相当な金額になります。  それから、中小企業地方的な特色が非常に強いわけでございまして、いわば地域産業の形をとっております。したがいまして、現在は、通産省の出先機関である通産局、全国で九カ所ございますが、そこが中心になりまして、各府県と連絡をとりながら地域地域中小企業の実態について現状を把握いたしておりますが、なお府県との連絡をもっと密接にせよ、こういうお話はごもっともなお話でございます。その方向に努力をしていきたいと思います。
  97. 上坂昇

    上坂委員 時間の制約がありますから、これらについてはなお商工委員会等でいろいろお話をしたいというふうに思います。  次に、中小企業円高緊急対策でありますが、今日の産業調整政策といいますか、そういうものは経済政策の一つの焦点となっていると私は思います。企業事業転換もその一つであると思いますが、いわゆる産業構造の改善とか事業転換とか言われる産業調整の部面におきまして、政府の果たすべき役割りは何であるかということをひとつお聞きをしておきたいと思うのであります。  それから、本来企業間の競争によって市場経済産業調整役割りを果たすことが基本でありますが、なかなかそれができません。したがって、行政の力をこれに加えていくということが必要になってくると思うのでありますが、今日のような深刻な不況下におきましては、財政、金融などの政策の適当な運用や対応によって需給ギャップを早急に埋めなければなりません。雇用と物価を安定させることが必要であると思いますが、そういう政策について私はまだまだ不足をしているというふうに考えるのであります。これらについてもひとつ充実を図っていただかなければならないと思うのであります。  それからもう一つ、二月十四日に円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法が公布となりまして、同法の第三条第一項及び第二項の規定によりまして、指定業種百八及び十七地域の指定業種が告示をされたのでありますが、中小企業庁調査によってみますと、調査をした七十九産地の中で、昨年の十月中に輸出向けの新規契約が激減をして、対前年同月比で三十五産地が五〇%以上、十五産地で八〇%以上の減少を来しているのであります。このような非常に深刻な状況におきまして、いろいろ処方せんは書かれているようでありますが、この状況は果たして回復する見込みがあるのかどうか、あるいはいつごろまでにこうした回復の方途が見出せるのか、それらについてお伺いをいたしたい。通産大臣、お願いいたします。
  98. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず前段の中小企業に対する対策でございますが、御案内のように、ここ一両年の間にずいぶんいろいろな中小企業対策の法律ができました。たとえば事業転換を援助するための法律とか、あるいは大企業との事業分野を決めるための法律、あるいは倒産防止のための共済制度、それから今回また円高の緊急対策制度、幾つかの法律をつくっていただいておりますが、こういう幾つかの法律ができましたけれども、なお中小企業現状というものはきわめて深刻な状態であります。特にいま御指摘の、最近の円高から非常な影響を受けておりまして、通産省の最近の調査でも、幾つかのごく少数の例外を除きまして、ほとんど全部の輸出中心とする産地産業というものが致命的な打撃を受けております。いま、その数字はお述べになったとおりでございます。  そこで、現在の円レートの水準で中小企業輸出産業が立ち直るのはいつごろか、こういう御質問でございますが、この見通しを立てるということは非常にむずかしい要素があろうかと思うのです。そこで、確たる見通しをいま申し上げることはできませんが、しかし現状は放置しておくわけにはまいりませんので、幾つかの法律を基礎といたしまして政府としてもできるだけの支援を続けてまいりたい、現在の窮状を救っていきたい、このように考えております。
  99. 上坂昇

    上坂委員 回復の見通しというのは非常にむずかしいということは私もわかりますが、この法律は五十五年の三月までの時限立法でありまして、三年間でなくなるわけであります。したがって、この三年の間に大体回復をするという見込みを立てているのではないか、こう考えざるを得ないわけでありますが、その辺のところの考え方。  それからもう一つは、四十六年の特恵関税実施の際の臨時措置法、それから四十六年のドル対法、また五十一年の中小企業事業転換臨時措置法、そうした、ここ数年来非常に事業転換が進められてきているわけでありますが、この事業転換の成果が一体どのぐらい上がっているのかということについて御説明をいただきたいと思うのであります。  また、時間がありませんからずっと申し上げますが、事業転換中小企業者の意欲や先見性などでみずから行う、それを行政的に援助していくということが私は望ましいと思うのでありますが、今日のような経済の混乱期や先行きの見通しが非常に困難な時代におきましては、いろいろ判断の資料を持っている政府の指導というものがどうしても必要になってくると私は思うのであります。そこで、指定をされました業種あるいは個々の企業あるいは産地などが事業転換の指導を政府に求めてきた場合、一体これにこたえられるのかどうか、この点についてひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。
  100. 岸田文武

    ○岸田政府委員 中小企業が、変わりいく経済情勢の中でこれから何としても生き延びていかなければならない、こういうことが課題になっておると思います。中小企業の声をいろいろ聞いてみますと、一方では、この際思い切って近代化を進める、あるいは新製品を開発することによって発展途上国に負けない企業を育てていこうという希望もございますが、他方では、やはりいままでの仕事にしがみついているよりは転換をしていこうという声もございます。私どもは、そういうような二つの方向について最後の決断をするのは個々の中小企業であろうと思っておりますが、それらの決断をするにつきまして必要な情報を提供したり、あるいは金融面、税制面等の応援をする、これが政府に課せられた課題であろう、こう理解をしておるところでございます。  事業転換法ができましてからその後の経過を振り返ってみますと、当初はいろいろ計画をつくったりあるいは相談をしたりということで、必ずしも多くの数の申請が出ておりませんでしたが、去年の後半以降、転換計画の認定を受けるケースが非常にふえてまいりました。ごく最近までの調査によりますと、府県の認定を済ましたものが四十六件というふうに報告をされておるところでございます。
  101. 上坂昇

    上坂委員 もう一点、政府にお伺いしますが、政府が為替変動緊急対策円高緊急対策等をやります。そうしますと、県によっては単独事業でこういう融資制度を設けている県もあります。ところが、国が金利を下げますと、それに準じてやはり県も下げなければなりません。この場合、県の負担がふえることになります。出捐金であるとかあるいは預託金であるとかいろんな面でふえてまいりますが、それが地方財政を圧迫していると私は思うのでありまして、この分を国は見るべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点について通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  102. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、国の制度と並行して地方公共団体においてそれぞれ独自に、地域的な産業等を対象とした円高緊急融資制度を用意しておられる事例がございます。私どもの手の及ばない面をカバーするという意味でそれなりに成果を上げておられると私は理解をいたしております。これに対する応援の問題でございますが、実は御承知のとおり、中小企業信用保険公庫において融資基金という制度がございます。これを配分いたします際に、県で特別の応援をされたというような実績を頭に置いて配分をするというようなやり方をやっております。なおそのほかに、今年度の特別交付税の配分においても、いま御指摘のような問題を頭に置いて配分が行われたというようにも聞いておるところでございます。
  103. 上坂昇

    上坂委員 いまのは信用補完制度や特別交付税でいろいろ前向きに検討するというお答えだと思うので、その点はぜひ早急に対策を立てていただきたいと思うのであります。  次に、中小企業倒産防止対策についてお伺いをいたしますが、緊急融資として通常のもののほかに別枠が設けられて、金利も七・六%に引き下げられております。しかし、中小企業にとってはいまなかなか金を借りる気持ちが起こらないと私は思うのであります。というのは、既往の貸し付けの負担にたえかねているというのが実情ではないかというふうに思うのですね。政府の方では、既往の貸し付けの分についてはケース・バイ・ケースで、ある程度引き下げるというようなことを考えているようでありますが、九%以上、一〇%にもなるような大変な金利もあるわけでありまして、これが非常にむずかしいと思うのであります。  そこで、いま円高関連融資で三年間五・五%、四年目から六・二%に金利が引き下がるということになったわけでありますが、今度の金利の引き下げについて中小企業倒産関連では、やはりここまで引き下げるということが必要ではないか。いま倒産の寸前に来ているような状況のときには、どうしてもこうした金利の引き下げ措置が必要であるというふうに私は思っているわけでありますが、この点が一点。  それから、倒産防止共済制度が四月から発足するわけでありますけれども、この発足に対しまして、社会党は、この法律の審議の過程で保険制度の導入ということを提案をしてきたわけであります。いますぐと言うわけにいかないということで、共済制度だけで一応納得したわけでありますが、どうしても将来保険制度というものを導入していかなければならないと思うのであります。  この二点について、これは全国中央会小山会長にお伺いをいたしたいと思いますが、いま申し上げたような件についてどんなふうにお考えになりますか、ひとつ御意見をいただきたいと思います。
  104. 小山省二

    小山参考人 御承知のように、中小企業がいま大変不況で苦しんでおります。中小企業が転換をするということは、その事業に行き詰まりを感じたとき以外には、従来やっておる企業を転換するということは容易な決心ではございません。したがって、その転換に当たって有力な情報を、私どももお手伝いをしながら提供をするというような方策を従来とっておるわけであります。  いずれにしても、中小企業がそこまで決意をしなければならなかったその背景というものがどこにあるかということを的確に受けとめませんと、いまでさえ不況のところへ、しかも長年熟練をした、相当の関係者を持っておる企業というものを放棄して転業するわけでありますから、それに対する十分な用意がありませんと、むしろ転業することがさらに大きな致命的な打撃になるというようなおそれが非常に多いわけでございまして、したがって、私どもは転業に当たっての十分な資料、情報等を提供して、そうした過ちのないような対策というものを相談しながら確立するというような方向で御協力をいたしておるようなわけでございます。
  105. 上坂昇

    上坂委員 先ほど、金利の問題で参考人の方々からお話を承ったわけでありますが、私は、政府がどんなに金融措置をとって金利を引き下げてお金を用意しても、いま中小企業は借りたくないと思うのであります。なぜならば、前の負担にとてもたえかねているわけでありまして、借りたものは返さなければならぬ、しかも利子をつけて返さなければならぬのでありますから、なかなか借りられない。そこで問題は、借りられるような条件を整備するということでなければならぬというふうに思っておるわけであります。その条件とは一体何かということで、減税の問題やら雇用の問題やら、それから賃上げの問題というようなものが出てくるだろうと私は思うのであります。そういう点で逆さまな政府のいまの金融措置だ、こういうふうに私は思っているわけであります。  それにしても、逆さまであろうと何であろうと、とにかく、いまの金利の負担をなるべく軽減してもらうということがどうしても必要になってくるわけです。そこで既往の借り入れ分に対する利子というものをもっとぐっと下げていくということを断行していかなければだめだ、私はこう思うのです。そして、たな上げするというところまではなかなかいかないと思うのでありますので、既往の分に対する返済の期間をずっと先に延ばしていく、こういう形の政策をとらなければ、とても中小企業を救う道はない。どんな政策を立てても、それは絵にかいたもちに等しくなってしまうのではないか、私はこう思うわけでありますが、この点について、これから前向きに検討することができるかどうか、これはひとつ通産大臣にお伺いをいたしたいと思うのであります。
  106. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 既往の金利のうち構造不況に属する企業につきましては若干の引き下げをすることになっておりますし、現にやっております。ただ、いまのお話は、いま程度の引き下げでは不十分ではないか、もっとしっかりやれ、こういうことだと思いますが、いろいろのいきさつ等もございまして、現時点ではなお私どもから見れば不十分な水準にあります。これは当然、さらに引き下げの努力をいたします。  それから、そういう企業現状ではなかなか新規の金が借りられないではないか、こういうお話もございましたが、これに対しましては、事業転換の場合には特別有利な金融制度も一ございますし、それから事業を廃棄する場合には、特に共同廃棄の場合には無利子の融資制度とか、こういうものもありまして、この点については特別の配慮を払っております。ただしかし、これに対しても不十分であるというお話だと思いますので、なお今後十分配慮をいたしてまいります。
  107. 上坂昇

    上坂委員 時間が迫ってきておりますから、次に建設大臣にお伺いをいたしますが、先ほど参考人の御意見にありましたように、従来の下請企業の置かれている条件というのは、法律の保護があるといいましても、これは本当に名目的でありまして問題が多い。最近の不況下では、ますます親企業不況対策のしわ寄せを受けておって、大変な状況に来ております。契約単価の引き下げ、あるいは手形サイトの長期化、親企業下請企業からの仕事の吸い上げ、これらがあるので、私はこの辺で抜本的な法の見直しをする必要があるだろう、こういうふうに考えているのであります。たとえば契約の届け出あるいは報告仕事量と支払いの報告義務等を含めた法制化をしてきちんとしていくということが必要だろうと思うのであります。こうした点についての御意見。  それからもう一つは、公共事業景気回復の刺激策として大型プロジェクトで進められるわけでありますが、南は沖繩から北は北海道までいま不景気なんでありますから、部分的なところにお金をばらまいても日本全体の不況の回復にはならないと私は思うのであります。したがって、公共事業のやり方を地方自治体に移していかなければならぬ。そのための背景としての財政措置というものが必要になってくる。これが雇用創出にとっては一番私は大切な問題だろう、こう思っておるわけであります。したがって、こうした方向にこれはもう建設大臣勇気を持って取り組んでいくように私はお願いをしたいと思うのでありますが、そういう勇気があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。  それから地方建設業界でありますが、これは最近非常に力をつけてまいりました。特に事業協同組合もできまして、共同受注というのもかなり大型工事を受けることができるようなふうになっております。直轄工事やあるいは公社、公団等の仕事については依然としてランクづけが行われて、中央で注文が発注されてしまう。したがって、なかなか地元の業者がこれをとることができない。お金を用意してもこれができない。これではいつまでたったって地方経済を振興させることはできないし、特に地方の中小建設業を中心とした公共事業の中で雇用の創出を図ったり、あるいは経済の復興を図るということはできないと私は思うのです。そういう意味で、こうしたいままでのランクづけに対して、これは再検討をする必要がある、こういうふうに思うのであります。これが第一。  それから地方仕事を渡す場合、大体中央で仕事発注いたしまして、いまのところジョイント方式をとっているようでありますが、これの活用と同時に、下請あるいはジョイントベンチャーに対する官公需等の前払い金のいわゆる配分の方法というものをこれは考える必要があるのじゃないかと思うのです。親企業やあるいは元請だけが前払いをもらっちゃって下の方へ行かないという状況もあるわけでありますから、これらについてひとつ是正をしていく、このことについて建設大臣の御意見をいただきたい。
  108. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御質問の第一は、下請にいろいろ問題がしわ寄せになっておる、下請のことをよく考えるようにと、こういうことでございます。これにつきましては、現在親企業下請企業の間にしっかりした契約がない、そういうことが原因でしわ寄せを受けておる面も認められますので、こういう点につきましては標準契約を示して、そしてそれによってやらせるように努めておるわけでございます。そういう指導をしております。  それからランクづけの問題、これにつきましては手元に資料がございますが、一般土木工事あるいは建築工事などにA、B、C、D、Eの五等級の区分がございます。ところで、この入札の実績を一方においてこのランクから見てまいりますと、大体このAのランクにおいてはそのAの者がとっておる、BのランクのものではBの者がとっておるというふうにパーセンテージが出ております。こういうランクづけを見直せということにつきましては、四十九年の八月にこの現在のものが改定されておりますので、その後の物価、賃金の上昇などを勘案して見直す考えではおります。しかし、このランクづけそのものにつきましては、工事の内容に応じ工事種別ごとに等級区分を設けておるというそのこと自体が建設業の分野調整の機能を果たしておるのではないか、中小の受注機会をつくっておるのではないか、こう思うのであります。  それから公共事業についてできるだけ地方自治体の方にやらせるように、こういう御所見でありましたが、現在、公共事業の、建設省としては七〇%ですが、その他の公共事業も含めて全体の七〇%は地方自治体中心で行われておるということは御承知のところだと思います。  それからジョイント形式についてのお話がございましたが、これもあくまでもジョイントが大企業と中小でも、中小と中小でも、それぞれこれは対等の立場にありまするから、前払い金などにつきましても当然対等の立場で処理されておると思うのであります。しかし、もし何か不当な事実がございますれば、これはどうぞ御指摘を願いたい。ただ、前払い金が親から下請へ行く場合ですね、これについては非常に御批判がございます。これは調べてみますると、親企業の方が材料の手配をする、あるいは飯場をつくる、ほとんどを親企業が見ておるという場合が多いのでありまして、もし下請の方に前払い金が当然行くべきその要素がありますれば、それは親企業は見るべきものだと思います。
  109. 上坂昇

    上坂委員 これはここに資料がありますが、最近大企業公共事業の依存が非常に高くなっているわけでありまして、四十九年の建設省の発表でも、官公庁の工事で三兆一千九百六十九億円、二六%の増加を示している、こういうふうに言われておりまして、非常に大企業の部面がふえております。したがって、なかなか建設大臣の言うような形には行っていないので、そこのところがやっぱり問題なので、これは本当に再検討して、そしていま申し上げたようなことをもう一度前向きで取り組んでもらいたいと私は思うのであります。これにばかり取りかかっていることができませんから、この辺でとめておきますが、非常に重要な問題だと思うのであります。この点を十分心にとめておいて、また機会がありましたら、今度はじっくりひとつ質問を展開してまいりたいと思うのであります。  次に、いわゆる中小企業小売業界に対する大型店あるいは大企業進出の問題についてひとつお伺いをしたいと思うのでありますが、最近、大企業やいわゆるナショナルスーパーと言われるようなものが中小企業分野に無差別に進出をしております。さきの第八十国会で、中小企業の活動の機会を確保する法律が制定をされ、同時に分野法の適用から外された中小小売業についてはいわゆる商調法が改正をされたわけであります。しかし大企業やスーパーは、依然としてこれらの法律の盲点をついてその進出の度合いを高めているのであります。  ここで私は一つの例を取り上げたいと思うのでありますが、大手建設業者である鹿島建設が東京の八重洲五丁目に、東京のど真ん中でありますが、地下二階地上八階の約五千平米のビルを利用いたしまして、千七百平方メートル以上のブックセンターを開業することになっているのであります。これは東京のみならず、全国の書店業界に大きな衝撃を与えております。この中央区の進出地点から五百メートルの半径に約二十六店、一千メートルの半径のところに七十四店書店があります。この書籍販売業というのは定価販売でありますから、これはだれでもできます。素人でもできます。それから売り場面積の拡大をいたしますと、品物は豊富に並べることができますから、競争力がついてきます。それからお客を非常に集めやすいのでありまして、スーパーなどがこれに取り組んでいるということば御承知のとおりであります。しかも委託販売でありますから、売れないときにはこれは返品することができる。しかも文化的なにおいを持つことができる、こういうようないろんな問題がありまして、大変目玉商品としてはいい商売であります。  そこで問題でありますが、この鹿島建設といえば日本代表するところの大手建設業者、これがしかも他業種へ大型進出をしていくということはどうも納得がいかない。書店業をやって、従来の商圏からこれは吸い上げてしまう構想でありまして、新しい顧客層のいわゆる開発でもない。こうしたことを許しますと、もうこういう例は全国的に飛び火して続々と出てくると思うのであります。この鹿島建設の予定している面積が千七百平米以上、ところが中央区の書店数は現在約五十店あります。五十店ありますが、その面積が千五百四十平米であります。年商が五十億円であります。鹿島のブックセンターは初年度では大体三十億、将来は五十億を見込んでおるようであります。そうすると、これはみんなひっさらわれてしまう。こんなものができたら大問題で、それこそ倒産は続出し、未組織労働者はどんどん失業の憂き目に遭ってしまう。  こういうことを許さないようにするためにいわゆる分野法ができ、あるいは商調法が改正されたのであります。ここのところを踏まえて指導してもらわなければ困るのです。というのは、大店舗法でこれを縛ると言っているのでありますが、大店舗法というのは四十九年にできたのです。ところが、分野法と商調法は五十二年に制定され、あるいは改正されたのだ。そうすると、新しく近い年度で改正された精神というものは古い法律の中に生かされていかなければならない。それでなければこの法制の改正の意味がないわけであります。こういう点で、私は、分野法あるいは商調法の精神に基づきまして、こうしたものに対しては断固としてこれを取り締まる、規制をするという形が必要だろうと思うのです。  時間がありませんから話をさせていただきますが、一つは大企業進出であるということ、これが一つです。それから特定物品の販売であるということです。したがって、これは商調法の範疇に属するものだ、こういうように思うのです。ところが、東京通産局なんかでは、店舗が一千五百平米以上だから、これは大店舗法の範疇に入れる、こう言って、大店舗は商調法あるいは大企業分野から抜けておりますから、そこで商調法にはひっかからない、こういうようなやり方をして、届け出から六カ月たったら、あるいは五条の届け出で四カ月たったら自動的にこの開設ができるような状態にしてしまおうという魂胆が見え透いている。これではとてもだめだと私は思うのですね。このことを私はぜひとも、いま大店舗法あるいは商調法の整合性ということが問題になっておってその結論が出ていない、こういう時期ではこれは許可すべきではない、こういうふうに思うのです。したがって、いまの問題は手続の問題じゃないのです。ここのところをひとつ十分踏まえて、通産大臣はこれに対するところの対処をしてもらわなければ困る、私はそう思います。  同時に、これは建設大臣にもお伺いするのでありますが、こういう大企業がこんな他業種の、しかも中小企業分野にまで進出するということは言語道断でございますから、こういうことについては建設大臣として十分にこれを指導していく、そういうことをやらせないようにする、これでなければ、幾ら雇用対策を云々しても、中小企業の振興を図るようなことを言っても、これは絵にかいたもちになってしまう。こういうふうに私は思うので、その辺のところに対しての両大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  110. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は詳しい経過を存じませんが、至急実情を十分調査いたしまして、どうすればいいか、判断をしてみたいと思います。
  111. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 建物は鹿島建設でございますね。八重洲ブックセンターは、故鹿島守之助氏の御遺族等の個人出資によって設立されておるので、お話の趣旨は私によくわかりますが、建設大臣としてどうこうということについては、ちょっとお答えしにくいと思いますね。
  112. 上坂昇

    上坂委員 こういう企業をいわゆるダミーと言うのでありまして、これはもう明らかに鹿島建設であることは間違いがないのです。というのは、これは社長をとってみたってわかる。社長の経歴あるいは持ち株、いま時間がないから余り詳しく言いませんけれども、そういうものをとってみてもわかるし、それから鹿島とはそこの賃貸契約を結ぶようでありますから、権利金なり賃貸料なり、そういうものを見ても大体見当がつく。それから、鹿島守之助元社長は非常な文化人で、いろいろ蔵書もたくさんある。それらのものについてこれを活用したいというような年来の考え方があったということは聞いております。それならばそれで、私は、図書館のようなものにすればこれは一番いいのじゃないか、こういうように思うわけであります。ところが、中小企業分野に来てこれを荒らし回ってしまうというような考え方では、私は、故鹿島守之助氏の遺志というものは本当に生かされてこない、こういうように思うのですね。そういうことぐらいでも、建設大臣は建設省では偉いのだから、大企業、大建設業者であっても指導できると私は思うのです。その点で、建設大臣、もう一度、ダミーで、その背景はそうなんだということをしっかり身につけて、あなたは調査をし、そしてそういう事実がもしあるとするならばこれを指導する、このぐらいの回答はいただかなければならぬと私は思うのです。
  113. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御質問の御趣旨はよくわかりました。私がいまのお話の点をよく調べまして、また鹿島建設の人と懇談する機会があれば、御趣旨を体して懇談をしてみたい。これは権限がないことですから、だから懇談をすることにはやぶさかではありません。
  114. 上坂昇

    上坂委員 これは通産大臣の方とよく連絡をとって、調査の結果、ひとつ対処をしていただきたいということを要望いたしておきます。  次に、ガソリンスタンドの問題でありますが、北海道や東北で非常に混乱状態が出てきまして、ガソリン戦争というような状態ができております。特に農協があっちこっちに百三十店ぐらいガソリンスタンドをつくるという話があります。それでこれについては、通産の関係ですと、五十二年度中で大体七百五十カ所つくってもいい、それが適正規模だということで、その中で全農関係で百三十カ所設けるというような状態があります。いままで農村地帯のいわゆる過疎地帯におきまして、農協が非常に犠牲的に、組合員の利用を図るという意味で採算をあるいは度外視したこともあるかもしれませんけれども、そういうガソリンスタンドを設けたということについては私は了とするものであります。しかし、一般商営の段階に踏み込んできてこれをやっていくということは、これはやはり員外利用の問題もあって、余りいいことじゃない。したがって、これは規制をしていかなくちゃならない。もちろん、その背景に元売りのいわゆる乱売ということもあるわけでありまして、この二つが相まってこういう形のものが出て、いわゆる混乱状態が出てきている。こういうものを早急に秩序の回復を図っていく、そして過当競争を排除していく、そして倒産を防いで雇用の安定を図っていくということがやはりどうしても必要だと私は思うのですね。  そういう点でどういう指導をされるか、通産大臣の御意見をいただきたいと思う。
  115. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいまお話のございました農協のガソリンスタンドは、全国で五千、全体の九%ぐらいになっておるかと思います。地域によりまして、この農協のガソリンスタンドが過当競争の誘因になっているとか、あるいはガソリンスタンドを新増設する段階におきまして地元で問題が起こっておるといったようなことも承知しております。そのような事例につきましては、関係の通産局におきまして関係当事者を招致いたしまして指導いたし、円満な解決に持っていくようにいたしております。  先生も御承知のように、ガソリン業界というのは本来過当競争的性格を強く持っておる業界でございまして、ただいま御指摘になりましたような、元売が販売拡大の姿勢を余りにも過度に出してくるといったようなところからさらに過当競争を激化しておる、あるいは農協スタンドの新増設が非常に多くなってきておるといったような傾向もございますので、われわれといたしましても、さような元売各社につきまして個別に招致いたしまして、それぞれに指導いたしておる、現に昨年の七月、九月にも強く協力を要請したわけでございます。その後情勢改まっておったところ、最近また問題が悪化してきておりますので、現在時点でそれぞれの元売各社に対しまして強く自粛を求めておるということでございます。
  116. 上坂昇

    上坂委員 あともう一点残っておるので、この点については深く申し上げませんが、ただ一つだけ。当事者間の話し合いをさせるというのだけれども、あなたたちは集まって話をしなさいというようなやり方では、これはとても解決するものじゃないのですよ。お互いにだめなんです。やはり通産省が仲に入って両方呼んで、そこできちんとした形のものをつけなければとてもだめです。その点を十分考えてひとつ指導をしていただきたい、こういうように思います。  次に、スーパーの地方進出でありますが、私はここに例を三つばかり持っておるわけでありますが、福島県の保原町というところでは、人口が二万三千人でありますが、そこに一万四千平米に達する二店進出、それから本宮というところでは一万八千五百人のところに二つ合わせて二万平米を超すスーパーが出るわけであります。こういう非常にめちゃくちゃな進出というものをやっている以上、これはとても中小企業はたまったものじゃありません。  そこで、どうしてもいまの大店舗法を改正をして一これを許可制にしてもらわなければだめなんです。どんなうまいことを言ったってこうした実態を防ぐことができません。ですから、これは通産省としてはこの許可制にするということに踏み切って、そしてこうした過当競争を防いでいく、あるいは大スーパー、大型店舗地方進出というものを制限をして、そこで雇用の安定、倒産防止ということに全力を挙げてもらうことを私は提案をしたいと思うのです。その点について一点だけ通産大臣の御意見を承って私の質問を終わります。
  117. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 スーパーを中心とする小売問題を一体どうしたらいいかということは非常に大きな問題点でございまして、先般来通産省にも小売問題懇談会を設けまして、ようやく最近意見をまとめてもらいました。これを中心といたしまして、いまどう対処するかということを至急相談しておるところでございます。
  118. 上坂昇

    上坂委員 終わります。
  119. 中野四郎

    中野委員長 これにて上坂君の質疑は終了いたしました。  次に、大橋敏雄君。
  120. 大橋敏雄

    大橋委員 参考人の皆様には朝早くから本当に御苦労さまでございました。きょうは大変貴重な御意見をお伺いしまして、われわれも皆様の御意見、貴重な参考として今後の審議に生かしていきたいと思いますが、この際、総評の方にまず一、二点お尋ねをしてみたいと思います。  わが国輸出のあり方が国際的に問題になってきているわけでございますが、その受け入れ国といいますか相手国の労働組合も、雇用機会の喪失という観点から対日批判が大変強まっていると聞いているわけでございますが、国際労働運動の連携という見地からどのように考え、対処なさろうとなさっているのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  121. 富塚三夫

    富塚参考人 御存じのように欧米諸国から、日本の、相手の立場を考えない集中豪雨的な輸出あるいは自由化に対する消極的な態度、あるいは後進国援助の出し惜しみといったようなことなどについてかなり批判を受けていることを私どもも承知をしています。これに対して世界の各国間では、相互依存度を強めまして、失業なりインフレなりあるいは通貨不安、ハイジャックなど、欧州では民主主義全体の共通の脅威というふうに受けとめているように思います。  そこで、私ども労働組合、総評といたしましては、たとえばイギリスのTUCとCBIという産業連盟、経営者団体が輸入品の問題について日本を直接やり玉に上げている覚書を結んでいる、あるいはAFL・CIOのミー二-会長が直接名指しで日本を批判をしている、こういった欧米の側は対日批判を政労使が一体になって行っている、対応しているということに対しまして、わが国では政府が一本立てで、現実に労働側対応がおくれているように実は思っています。  そこで、円筒や保護貿易主義の台頭は国内の不況倒産を通じて労働者の生活を脅かすということを午前中も申し上げましたように、このままの事態を放置すれば、国際間における労働者連帯が損なわれるということを考えまして、総評としては定期大会に、たとえばアメリカのAFL・CIOあるいはイギリスのTUC、西ドイツのDGBなどの資本主義国の労働組合の代表を招待いたしまして、日本現状をつぶさに見てもらおうと思うのです。そして労働者の置かれている状態、労使関係、わけても国際間における、午前中申し上げました公正労働基準、労働時間問題、週休二日問題あるいは社会保障制度問題、こういったものについて積極的にわれわれは国際間の労働者間の交流を深めていくことを考えたいというふうに思っています。また、ジュネーブとパリに駐在員を配置いたしまして、OECDの労働組合諮問委員会やEC諸国との交流ということについても理解を深めるために、こういうこともいま積極的に検討中であります。労働組合として可能な限りの対応について積極的に検討いたしておりますことをお答えをいたしておきます。
  122. 大橋敏雄

    大橋委員 それではもう一点、これは総評の方と同盟の方にお尋ねしたいと思うのですが、雇用調整のやり玉に上がるのが何といっても下請企業であろうと思います。日雇いあるいは臨時、パートの人々がその犠牲になるわけでございますが、その分が本工の皆さんにもしわ寄せされてくる、要するに下請雇用調整調整弁になっているのが現状でございます。労働組合としましても、当然未組織労働者への配慮、対応が必要だと考えるわけでございますが、総評としまして過去にどのような指導、対応をなさってきたのか、同盟の方には、今後どのような対応、指導をなさろうとお考えになっているのか、簡単で結構でございますので、よろしくお願いします。
  123. 富塚三夫

    富塚参考人 いま私ども国民春闘を展開をしたいということで努力中でありますが、何と申しましても組織労働者だけの雇用や生活を守ることだけでは不十分でありまして、二千数百万以上おると見られております未組織労働者の方々に積極的に地方なり地域における対応、これは直接未組織労働者の方々の生活を守るための地場賃金をどういうふうにするのか、あるいはその最低賃金制の位置づけをどうするのか、あるいは失業防止して雇用問題をどう考えていくのかということについては、大企業の組合なりあるいは経営者の方々にこれを包んでもらうといいますか、そういうふうなことなどについて積極的に取り組んでいきたいと実は考えています。幸い私ども、地区労という組織ないしは県評という組織を持っておりまして、いろんな地域条件の異なることはありますけれども、未組織労働者の方々に具体的に温かい手を差し伸べて、組織労働者と同じような雇用と生活を守るという方向に向けて努力を続けておるところであります。
  124. 前川一男

    前川参考人 お答えいたします。  現在の労働組合の組織率は三四%程度ということで約千二百五十万人ぐらい、こういうことでありますから、実際には七〇%近くの未組織労働者がいるということであります。御指摘のとおり、その大部分は、いわゆる小企業あるいはまた零細企業労働者が大部分である、こういうことでございます。  したがってこのことは、第一に、まず労働組合の組織化との関係というのが一つあるわけであります。私どもが未組織労働者と直接に十分接触できる機会というのは、いわゆる組織化の活動ということになります。すでに毎年のように、定期的に一年間のうちの約三カ月ぐらい組織化の運動を提唱し、現地の地方同盟中心にしまして、各産別の力もかりて現地で組織化の努力をしています。しかしその組織化の努力というのは、単に同盟に入れというだけではこれは進むはずがありません。そういう意味におきまして、私どもはあらゆるそのときの重要な問題、賃金の問題、雇用の問題あるいはその他の問題提起を行いながら、これからのあり方についていろいろ民主的に相談をしていくというやり方をとっているわけでありまして、今後におきましても、この活動というものをより強化をしていきたいと思います。たまたま、現情勢同盟の組織は民間が大変に多いということから、一部の組織では、倒産その他の事情によりまして組織人員はずいぶん減っておりますが、総体としては余り人員は減っていないというのは、逆に組織化のいわゆる成果があったものというように考えております。  二つ目の問題は、そういうことで組織化されていない労働者は一番弱い立場にすべての点で置かれております。したがって、当然そこには、国としてあるいはまた地方自治体としての政策という問題が一番重要な問題になりますし、あわせて行政の強化ということが国並びに地域においてどういうように行われるかという問題に対して、私ども組織労働者が精いっぱい意見を反映をしていく、こういうことの活動というものを従来以上に強めたいと思います。
  125. 大橋敏雄

    大橋委員 それでは次に、政府の方にお尋ねいたしますが、ただいま話題に上っております永大産業のことですが、会社更生法の申請をめぐりまして種々取りざたされているわけでございます。私も若干疑問を抱いているわけでございますが、特にこういう場合、一番どろをかぶるのは中小企業あるいは下請業者であろうかと思います。多大の悪影響を受けるわけでございますが、私はこうした中小企業を守るという立場からの質問に入りたいと思うわけでございますが、初めに法務大臣にお尋ねをいたします。  会社更生法の適用というものはどのような目的で、どのような場合に認められることになっているのか、お願いいたします。
  126. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 会社更生法を、どういう場合にどういう目的でというお話でございますが、大橋さん御承知のとおり、会社更生法の第一条にその目的が書いてあると思います。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 会社が債務が多くなって経営が非常に悪くなってきておる、そのままに放置しておくと破産といいますか、つぶれるといいますか、そういう状態に近づきつつある、法律ではこれを窮境に陥っておるということを言っております。えらいことになっているということでしょう。そこで、そのままにしておきますと会社がつぶれる、そうすると債権者なり株主なりあるいは雇用者その他に大変迷惑をかけて経済の混乱を来すおそれがある、こういう状態の場合に、これを適当に調整をし、管理をし、うまくやっていけば生き返る見込みがある、まあ蘇生するというのでしょうか、これを生かしながら、いま申し上げましたような債権者なり株主なりあるいは働く人たちその他の損害を少なくしていこう、これを防いでいこう、こういうために裁判所が関与して、裁判所の管理のもとで生き返らせよう、生き返らないと判断すればこれはもうやむを得ませんが、やりようによっては生き返る、こういうことになれば生き返らせた方が、その会社のためのみならず、債権者なりあるいは株主なり、雇用者その他の利害関係者に有効である、こういうねらいを持ってできておる法律だと思います。
  127. 大橋敏雄

    大橋委員 要するに倒産の再建を図って、企業解体による社会的損失の防止の機能を果たしていることは事実だ、こう理解したわけでございますが、その反面、利用にうまみのある制度であることも事実ですね。どうでしょうか。
  128. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 うまみのある制度という意味がどういうことかわかりませんが、これはまあ破産の場合、再破産といろいろありますが、これを利用して逃れようということがなきにしもあらずと思いますけれども、法律の目的で申し上げましたように、裁判所が管理をいたしまして、審査をして、こういうふうにやれば生き返る可能性があるというときにやるわけでございますから、どういう点を指摘されたのかわかりませんが、弊害ばかりと言うわけにはいかないのではないかと思います。
  129. 大橋敏雄

    大橋委員 私は、うまみがあるというのは弊害ばかりだと言っているわけじゃございません。これは「自由と正義」という日弁連の機関誌でございますが、五十一年度に発行されている、会社更生法の特集号なんです。これを拝読いたしますと、そういう問題点が明らかに示されているわけでございますが、きょうは時間の関係もございますので、通産大臣にこれに関係してお尋ねします。  昨年倒産しました波止浜造船の場合でもそうでありますが、大口債権者である銀行等が、言うならば取れるだけ取って計画的に会社更生法の申請に踏み切る、いわゆる計画倒産であるということが評判になっておりました。また今回の永大産業の場合もさらにそれは明確になってくるような感じがいたします。主力銀行の大和銀行から社長まで派遣して、一生懸命努力しても今回の結果でございます。言うならば計画倒産の標本みたいなものではないかと思われるわけでございますが、この点などは各新聞報道等も指摘しているところでございますけれども、この日弁連の資料を見ましても、石油ショック以後急激に申請件数が増加しているわけです。会社更生法の適用の可否というものは裁判所の判断によるといたしましても、問題は申請の段階から保全処分の発令、弁済禁止の保全処分によりまして下請の中小零細企業は債権の取り立てが不能になります。従業員の工賃も払えずに倒産に追い込まれた例は数多くあるわけでございますが、言うならば、子供を殺して親が生き延びる、このようなうらみが出てきているわけでございますが、こういう事例に対して通産大臣はどのような考えでおられるのか。  また、あわせまして法務大臣にもお尋ねしておきたいのですが、このような会社更生法の申請がいわゆる安易に利用されたり乱用されることは問題だと思うわけでございますが、何か歯どめになる方策がないものか、これは法務大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  130. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ここしばらくの間、倒産件数が千五百件を毎月超えるという非常に高い水準が続いておりました。一月は少し季節的な要因等もありまして減っておりますけれども、そして全体としてここ二、三カ月は若干減っておりますけれども、千五百件をずっと超えておるという高い水準でございました。それだけの倒産が出ておるわけでありますから、したがって、その中で会社更生法の適用申請を求める案件も相当ふえております。現在裁判所が審査中の案件等につきましては、私から言及することは差し控えなければなりませんが、いずれにいたしましても、こういう高い水準の倒産は何としても防がなければならぬというのが、いまの一番の大きな課題でありますと同時に、それから不幸にして大企業倒産となった場合には、中小企業下請に対する波及をできるだけ最小限度に抑えなければいかぬ、こういうことが大きな課題だと思います。そういう観点に立ちまして、今回の永大問題につきましても、中小企業対策それから下請対策、それからユーザーに対する対策はこれまでにないようないろんな配慮をしておるわけでございます。
  131. 香川保一

    ○香川政府委員 技術的な点でございますので、私がお答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、一部の大口債権者に事前に弁済等をいたしまして、それから会社更生の申し立てをするというふうな場合がございますと、これは極端な場合にはいわゆる詐欺更生罪を構成することもございますし、そういった罰則で取り締まる点が一つ。それから、他の債権者が否認権を行使いたしまして、逸脱した財産を会社に取り戻すというふうなことも認めておるわけでございます。  それから、よく言われるものでは、債権をカットいたしましてまた出直す、会社の役員が地位保全を図るためにそういったことをやるというふうなことも言われるのでございますが、これは現在、裁判所の運用におきましては、更生計画におきまして思い切った減資をいたしまして、そして既存の役員を退任させまして、そして新たに新株を発行することによって、公正にその会社が経営できる人を役員にするというふうな措置もとっておりまして、こういった裁判所の運用によりまして、御指摘の懸念されるような弊害は相当防止されておるものと考えるのであります。  法律改正によって歯どめをすべきではないかという御意見とも思われますが、先ほど大臣が答弁いたしましたように、会社更生の目的は、株主、債権者あるいは使用人等の利害を調整しながら、できることなら会社を更生させる、そういったつぶれることによる社会的損失を防止しようということでございますので、門戸はできるだけ広く広げておきまして、そして御指摘のような弊害は裁判所の運用によって防止していくということが一番望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  132. 大橋敏雄

    大橋委員 問題は、会社更生法を申請する以前に大口債権者等で話し合いが実はなされて、先ほど言ったように、取れるものは取れというような感じで進められるケースが多いわけですね。  そこで、通産大臣にお尋ねしますが、今回の永大産業の更生法の申請でも、恐らく通産省などには当然事前に何らかの相談があったと思うのでございますが、一体どのような指導をなさったのか、あるいは中小零細下請のことなどもそういうときに配慮なさった上での話し合いをなさったのかどうか、二つ問題点があるわけですが、いかがでしょうか。
  133. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 通産省に正式の連絡がありましたのは当日のことでございます。
  134. 大橋敏雄

    大橋委員 これだけの大手の会社が、それこそ人間で言うなら一身上なげうって考えなければならぬ会社更生法の申請でございます。そういう大きな事柄にぶつかったときに、その関係省庁に何も相談がなかったというのは疑わしいことでございます。今後こういう危なっかしい会社が幾らも出てくると思うのですけれども、相談があれば事前に相談に乗る意思があるのかどうか、お伺いしておきます。
  135. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 事前に相談があれば、関係各省とも十分相談をいたしまして万全の対策をとります。
  136. 大橋敏雄

    大橋委員 そのような場合、先ほどからもくどいように言っておりますが、中小零細下請の皆さんがそういうことによってどのような苦しい状況になっているかということを配慮した上で、しっかりした相談に乗っていただきたいということを要望しておきます。  労働大臣にお尋ねしますが、造船業の下請企業が親企業倒産によってその影響を受けて経営が困難となります。賃金の未払いが生ずることがあるわけでございますが、それに対する救済措置はどうなっているのかということですが、労働者の立場からお尋ねします。
  137. 藤井勝志

    藤井国務大臣 倒産企業の賃金未払いにつきましては、昭和五十一年七月の、御承知の、賃金の支払の確保等に関する法律が施行されておるわけでございまして、この法律に基づきまして、万一そのような事態、特に御指摘のように、昨今下請企業の多い造船業あたり、しかも下請企業は零細中小企業という、これが事実上の倒産をするという状態になった場合には、未払い賃金の立てかえ払いという制度を活用いたしまして労働者の救済に当たりたい、このように考えております。
  138. 大橋敏雄

    大橋委員 賃金の支払の確保等に関する法律が施行されて、それ相応に機能しているという話でございますが、とにかく、その親会社が会社更生法を申請したとなると、債権が不良債権になってしまう。一方では労働者に賃金を払わなければならぬ。まさに下請業者とその労働者というものは踏んだりけったりの状態に置かれているわけでございます。そういうことですので、特に労働者を守るということで、単なるそういう法律があって何とかなっているだろうというような考えじゃなくて、その実態をしっかりと見守った上で、労働者の皆さんにも、こういう制度がありますよともっとPRを強めていっていただきたい。  こういう実例があります。これは特に通産省、運輸省に関係すると思いますので、よく聞いておいてもらいたいと思いますが、昨年の例で言えば、中小造船会社が二十二社倒産をいたしております。そのうち十三社が大口の負債を抱えて倒産したわけですが、この十三社の関連下請企業は九十社ございます。倒産したこの十三社が抱える下請九十社の不良債権というものが私の調査では三十六億二千七百万円にも及んでおります。こんな状態でございますので、その下請会社は従業員に工賃も払えないで次々と倒産していくわけでございます。こういう実態に対してまず通産大臣はどのようなお考えを持たれているかお尋ねします。
  139. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま通産大臣に答弁の御要求がございましたが、お挙げになりました事例は運輸関係でございますので、私の足らざるところは通産大臣にさらに補っていただくことにいたしまして、まず私から申し上げます。  造船所倒産に伴う下請造船業者に対する金融措置といたしましては、通例の場合、中小企業倒産対策緊急融資制度あるいは中小企業信用保険法による信用補完措置、こうしたことの活用を図っておりますが、特に運輸省といたしましては、財団法人日本船舶振興会を指導いたしまして、運転資金の緊急融資等を実施させております。五十二年度五十八件について十二億八千六百万円というような報告等も受けておりますが、こうしたプロパーの方法も、またその他と関係する一般的な方法も極力講じて、御指摘のようなことが少ないように、ないしは絶滅、ということは希望でございますが、現実はそう行っておりませんが、せいぜい努力いたしたいと存じます。
  140. 大橋敏雄

    大橋委員 先ほども私が申し上げました下請九十社の不良債権三十六億二千七百万円のうちに、ではどれだけ緊急融資がなされたかおわかりですか。
  141. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 ただいま先生御指摘の倒産造船所に関連します日造協関係分でございますが、現在までの私ども調査で主なもので十六社九十九企業で、三十九億四千三百五十一万円でございます。そのうちで船舶振興会を通じまして融資をしました分が、先ほど大臣の答弁にありました十二億八千六百万円でございまして、その残余については中小企業一般に関します信用保険制度の活用、緊急融資等によって対応しております。
  142. 大橋敏雄

    大橋委員 正直言って下請の皆さんにはほとんどその融資の実例は見られない。全くないとは言いませんけれども、非常に少ない。  次のような実例がございますので、よく聞いておいていただきたいと思います。  もうすでに倒産しております三重造船の下請をしていた、Y工業と言っておきましょう、Y工業の方が、何とか中小企業倒産関連緊急融資を受けたいということで、運輸省所管の船舶振興会に申し込んで、年利六%の融資が何とかかんとか許可にはなったわけです。ところが、この融資の窓口に当たっているNという相互銀行から、返済が大変だろうから借りない方がいいよ、借りるなら今後の融資はしないというように非常に圧力がかかったらしいのです。このN相互銀行はY工業さんにとってはメーンバンクになっている関係上、非常に都合が悪くて、せっかくの緊急融資をあきらめて、結果的には自分の家屋を処分して急場を切り抜けたという事実があるわけです。これは指導の問題だろうと思うのですが、大蔵省は今日行われております緊急融資制度の実施に当たりまして、これらの窓口になっている銀行等に対してはどのように指導なさっているのかお尋ねをいたします。
  143. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  倒産関連の融資につきましては、このような倒産のような事情が生じた場合に関連の中小企業の健全性を確保することは非常に大事でございますので、最も重点を置いて実施するようにこれを指導してございまして、現在までの実績は、四月から十二月でございますが、八千百九十四件、四百五十二億円の融資が行われております。  なお、いま先生御指摘のような点につきましては、具体的にそのようなことがあれば非常に問題でございますので、具体的な問題について御指摘がございましたら、調査の上指導したい、このように考えております。
  144. 大橋敏雄

    大橋委員 これは事実で、間違いない話でございますので、この具体的な事例をまともに受けられて、今後の銀行指導を徹底していただきたいということを強く要望しまして、大蔵省の方は結構でございます。  そこで、通産省にお尋ねしますが、こうした倒産関連緊急融資は、すでに目いっぱいの借金を抱えている中小企業には貸さないのかどうかという問題をお尋ねしたいのですが、緊急融資の性格をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  145. 岸田文武

    ○岸田政府委員 まず実績でございますが、実績につきましてはただいま銀行局長からお答えしました数字にもう少し新しい状況まで加えて御報告いたしますと、一月までの十カ月問の実績につきまして件数で八千五百八十四件、金額で四百七十五億円というふうに報告されております。それにつきまして、実際問題としては担保等が問題ではないかという御指摘でございますが、窓口になっております政府系三機関のうち国民金融公庫の場合でございますと、いままでの貸し出し実績の中で九〇%以上が無担保で行われておりまして、実情に応ずるような相談に応じておるところでございます。中小企業金融公庫になりますと、かなり金額がかさみますので、無担保ということがなかなかしにくい場合もございますが、この場合にも極力弾力的に担保査定を行うようにという指導を行ってまいりました。さらに場合によっては信用保証協会の保証を得て信用補完を行うというケースもございますが、この場合にもかなり弾力的にやっておりまして、無担保保険が八百万円までが限度になっております。特別小口保険、これは無担保無保証でございますが、二百五十万円まではこのような形で処理しておるところでございます。
  146. 大橋敏雄

    大橋委員 とにかく制度としてはあるけれども、実際には生きてないということなんですよ。たとえば中小企業関連倒産防止のための緊急融資制度は確かにあります。しかしこれは取引率五〇%以上の第一次下請業のみに適用でしょう。第二次、第三次という一番苦しく困っている人は対象外とされているというわけです。肝心の弱い立場にある者はこれでは救済できない。何か特別に対策を考え出さなければならぬのじゃないかと思うのでございますが、どうですか。
  147. 岸田文武

    ○岸田政府委員 倒産関連緊急融資につきましては、倒産企業と直接取引関係にある第一次下請だけではなくて、孫企業まで対象とするというように措置をいたしております。
  148. 大橋敏雄

    大橋委員 しかし取引率が五〇%という要件があるわけでしょう。造船界の下請が五〇%以上その仕事を持っているという会社がどれほどいますか。ここが問題なんですよ。仮に五〇%の条件を満たしているものがあったとしましても、現実は担保を持っておりません。これは担保が要りますから、もうつぶれていく以外にはない、こういう現実にあるわけです。全国で一千万円以上の倒産が毎月千五百件も千六百件も出ております。一千万円以下の倒産は数限りないと思いますが、いま言ったような要件が実情に合っていないということなんですよ。これを改める考えはないかというわけです。
  149. 岸田文武

    ○岸田政府委員 正確に御報告を申し上げますと、中小企業倒産対策緊急融資におきましては、倒産企業に対して五十万円以上の売り掛け債権を有するか、あるいは取引依存度が五〇%ではなくて二〇%以上、どちらかの要件を満たしておれば対象となる、それに加えまして、孫下請についても対象とするというように措置をいたしております。  それから、担保の点についていろいろ問題があることは、私どもも承知をいたしておりますが、なるべく弾力的にということで、個別に相談をいたしておりまして、一般的に申しますと、国民金融公庫の場合でございますと、公庫の貸し付けの中で、件数で九四%、金額で八八%が無担保貸し付けになっております。また、保証協会の保証についてその間の事情を見ますと、件数で八〇%、金額で六〇%が無担保で措置をいたしておるということでございます。私どものところにも、いろいろの業界の方々からいろいろの相談が参りますが、私どもも個別に相談に乗りながら、極力うまくいくようにということで指導いたしておるところでございます。
  150. 大橋敏雄

    大橋委員 特にいま下請、孫諸等は取引率は二〇%でいいんだというお話を伺ったので、確認しておきます。  それで、仮にその率でもって融資対象になったとしても、いま言ったように担保がない、いわゆる倒産状態までつき合わされているわけですから、下請企業に担保などあるわけがないわけです。現実には借りられない。そうした方々ばかりだということを、ひとつ現場に行って見てほしいと思います。よろしいですね。
  151. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私ども、いまお話に出ております造船問題に関連しまして、波止浜の問題が起こりましたときに、早速中小企業庁から二回にわたって現地に人を派遣し、実情の調査を行っておるところでございます。  なお、先ほど申しおくれましたけれども、いま御指摘のような問題もございまして、昨年の秋に倒産防止共済制度というものを発足させ、さらにそれを充実させようという措置も講じた次第でございます。
  152. 大橋敏雄

    大橋委員 私の質問したことは、こういう現状は現場に行って見てもらう以外にわかりませんということを言ったのです。現場調査をなさるかどうかということ。
  153. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私どもも大きな倒産が起こりますと、早速、各通産局に本部を設けて、そこで関係者が集まって対策を講ずるという措置を講じておりますし、さらにその中で特定のケースにつきましては、中小企業庁から人を派遣いたしております。今後ともそのような措置を講じていくつもりでございます。
  154. 大橋敏雄

    大橋委員 答弁を避けられているようでございますし、時間の関係もありますので、労働者の失業の予防と雇用安定資金の活用についてお尋ねしてみたいと思います。  現下の不況雇用不安に対処していくためには、雇用対策の基本には三つあると私は思います。その一つ失業未然防止する努力、二つは離職者の生活の安定を図ること、三つは離職者の再就職、雇用の場を確保するための対策を確立するということであろうと思います。  参考人の御意見も、大体雇用確保については皆意見が一致していたようでございますが、そこで、第一の対策として、失業の予防でございますけれども、昨年の十月に発足させました雇用安定資金制度というものがございますね。これがどの程度活用されているのか、その実績について労働省にお尋ねするわけですが、まず初めに、特に給付金の種類別に事業所数、労働者数、金額について説明を願っておきたいと思います。
  155. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねがございました雇用安定資金制度でございますが、これは十月一日から発足をいたしておりますので、十月一日以降の数字で申し上げます。  まず、景気変動等雇用調整事業でございますが、これは十二月末までの状況でございます。その雇用調整給付金でございますが、支給対象の事業所数が三百六十二カ所、休業対象の被保険者数が三万八千人、支給決定金額が六億七千二百万円でございます。次に、訓練調整給付金でございますが、訓練実施計画の届け出受理の件数が二十三カ所でございます。三番目に高年齢者の雇用安定給付金でございますが、これは十一月二十日から発足しておりますので、その以降の数字で申し上げますと、受給資格の決定件数が二百五十六件、対象高年齢者数が二百七十人でございます。  それから大きな区分の事業転換雇用調整事業でございますが、これにつきましては五十二年十月から五十三年一月末までの状況で申し上げます。まず、実施計画の受理件数が八件でございまして、休業の予定延べ日数が一千四百人目、出向予定労働者数が六十六人でございます。なお、この事業転換事業規模の縮小を余儀なくされた場合に教育訓練するというのが、出す方でやるのがなかなかむずかしいという側面がございますので、受け入れ側において、つまり雇い入れる方で教育訓練をやる場合につきましても、その事業主に対して助成を行うという制度を新たに設ける等によりまして、この制度の活用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  156. 大橋敏雄

    大橋委員 いろいろと御説明なさいましたけれども、要するに雇用調整事業だとか雇用改善事業などは、いま私が申し上げました雇用安定資金が発足する以前からあったわけでございますから、これは多少の実績があっても当然のことですが、問題は、いま申し上げました雇用安定資金の制度をつくるときに、失業防止する目的でつくりましょうということで、新たに事業転換等の給付金の問題が取り上げられたわけですが、いまの説明の中では、この事業転換等給付金の活用実績がほとんどない。これは私は問題だと思う。もうすでに発足して、まあ年数とまで言わなくても、半年たったわけでございまして、昨年この関係の予算としては三百八十億、五十三年度は六百十億の予算案が組まれているわけでございまして、それにさらに百億円の積み立てを行うということになっておりますね。そうしてみると、いまのような事業転換給付金の活用実績であるならば、これはもう宝の持ちぐされじゃないか、私はこのように感じられてならないのですが、これは大臣、どう思いますか。
  157. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のように、昨年の十月に発足した雇用安定資金制度の活用の問題は、これがまだ発足日が浅く、企業における教育訓練あるいは事業転換の計画というものが具体的に煮詰まっておりません。これが煮詰まって準備ができましたら、この資金の制度の効果を発揮すると思うのでありまして、その時期をわれわれは期待しておるわけでございます。
  158. 大橋敏雄

    大橋委員 この資金制度を審議するとき、私どもは、とにかく失業防止のためには重要な制度だということで、さんざん議論した上に賛成して通したわけですね。それがまだ事業転換の計画ができていないというようなことで、その予算の執行がほとんどなされていないということになると、私はこれは残念でなりません。  これは事業転換のことですから通産省とも関係すると思うのですね。通産省としては事業転換対策としていろいろと打ち出していらしゃいますけれども、一体どういうふうになっているのですか、通産省の立場から説明願いたいと思います。
  159. 岸田文武

    ○岸田政府委員 一昨年の暮れに事業転換法ができましてから後の運用状況でございますが、いままでに事業計画の認定をいたしましたのが四十六件でございます。ほとんど大部分がいま計画を進行しておるという最中でございまして、実際に仕事が動き出したケースはたしか七、八件であったかと思っております。  なお、いまの御質問に関連してでございますが、私ども各県から認定状況についての報告を受けました際に、一体雇用状況はどうなっておるのかということも尋ねてみましたが、むしろ私どもに参りました報告では、転換に際して雇用をふやした事例が減らした事例よりも多いというような実情になっております。
  160. 大橋敏雄

    大橋委員 とにかく、通産省の事業転換指導の実績も本当にうまくいってないと私は見ております。現実に私の地域に直方市というところがございますが、そこは鉄工所の業者がたくさんいらっしゃいます。従来は炭鉱の関係で仕事をなさっておりましたけれども、炭鉱がつぶれてしまった、その後は新日鉄の仕事、それがいよいよいまなくなったということで、本当に仕事が全くなくて事業転換をしたいというのです。地元の通産局に行って指導を受けるけれども、さっぱり明確な指導はないのです。こういうことですから、私は、労働省でせっかく予算を組んでみてもこれが活用されないという結果になっているのだろうと思う。  私は労働省にも言いたいのですが、こうした事業転換の計画のめどもないのに予算だけ積み上げていっても、全く見せ金じゃないかと思うのです。どのような事業転換が可能なのか、通産省と労働省と、これは本気になって協議されて、具体的な内容を、計画を国会に示してほしいというぐらいの気持ちが私はあるのですが、この点、通産大臣と労働大臣から御意見を伺っておきます。
  161. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大橋先生の御意見、全く私も、最近の状況、いわば産業構造が変化しておるというこの時代の進行を目前にして、何とかいい転換すべき事業はないかということで、とつおいつ考えておるわけでございますけれども、ともかく第三次産業の中でも新しく伸び産業として、すでにいろいろな問題が取り上げられておりますから、こういう問題に対する事業転換、通産省とよく連絡をとって、われわれとしても早く事業計画が固まって制度の活用ができるように努力したい。同時に、今度新しい雇用政策として中高年齢者を受け入れる事業者に対して助成する、こういう制度も打ち立てておりますから、こういった受け入れ側の体制と相まてば、ある程度前進をする、御期待にこたえられるような方向に行くのではないか、われわれも努力いたしたい、このように考えております。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 大橋敏雄

    大橋委員 昨年、御承知のとおり、この不況下において法改正をしたわけですが、そのときに、事業主からではございますが、千分の〇・五の保険料アップをしたわけです。その事業を推進するための特別の予算として、失業予防の充実を期しての保険料アップであったわけでございますが、それが失業の予防に結びついていないというのは、これは大きな問題だろうと私は思います。法改正を審議した一員としまして、実施の責任を追及せざるを得ないのでございますが、このままで十分活用され失業の予防に役立つ自信があるのかどうかという問題に対して、いま大臣はあれこれとおっしゃいましたけれども一つ私は提案しますけれども、いま問題になっております永大産業ですね、これは事業転換事業の中に大型倒産の指定がございますけれども、この永大産業を指定なさる気持ちがあるかどうか、お尋ねをいたします。
  163. 藤井勝志

    藤井国務大臣 永大産業につきましては、雇用安定資金制度の対象業種として指定すべく、現在事務的な準備を進めておるわけでございます。
  164. 大橋敏雄

    大橋委員 指定するというふうに理解していいですね。
  165. 藤井勝志

    藤井国務大臣 おおむね条件がそろっておるようでございますから、指定できるものと私は判断をいたしております。
  166. 大橋敏雄

    大橋委員 これは必ず指定していただいて、永大産業自体あるいはその下請の皆さんが一日も早く再建が図られるように強く要望しておきます。  時間の関係がございますので、次に移ります。  失業給付についてでございますけれども失業者の生活の安定というものはきわめて重要なものでございますが、さきの国会で特定不況業種離職者臨時措置法を成立させました。その関係の離職者は九十日延長の道が開かれてその恩恵に浴しているわけでございますが、問題は、就職の困難さという点からいえば、特定不況業種からの離職者も他の産業からの離職者も同じであると私は考えるのであります。  ところで、史上最大の雇用危機だと言われている今日ですが、私はこの際、労働行政の全知全能を発揮して労働者を守っていかねばならぬという立場にあろうかと思います。制度的には、失業給付の延長として個別延長あるいは全国延長措置があるわけでございますけれども、このような危機状態にこそ全国延長措置を発動させるべきだと私は考えるのでございますが、労働大臣の考えを伺いたいと思います。
  167. 藤井勝志

    藤井国務大臣 雇用保険の全国延長基準について先ほど御意見がございましたけれども、この発動基準というのは、基本手当の受給率の四%ということで、これは従来の二倍になりまして、この問題につきましては、去年以来中央職業安定審議会で十回にわたる慎重審議をした結論として、この程度でやむを得ないというのが大勢でございまして、せっかくの御提案でございますけれども、御提案の趣旨に賛成するというわけにはまいらない、このように御了解を願いたいと思います。
  168. 大橋敏雄

    大橋委員 いま大臣のお話では、発動要件を満たしていないからだめだというようなお話でございますが、二倍というのは二・〇ということでございましょうが、確かに基本手当の給付率四%ということにはなっておりますが、私、労働省の資料を取り寄せますと、五十二年の七月からもうずっと、ほとんど二・七%を示しているわけです。十一月だけが二・六にちょっと下がりましたけれども、あとずっと四カ月、五カ月と二・七%を位置づけております。この基本手当四%にこだわると、これは私はもう発動はやはりできないと思うのですけれども、現実問題としまして、短時間労働者、一日のうちに一時間とか二時間とかというような労働者がもうすでに百四十一万人もおります。潜在失業者その他の条件を考慮すれば、実態的には四%をはるかに超しているのではないか、私はこう考えるわけです。したがいまして、この際運用基準を緩和して実施に踏み切ったらどうかということでございますが、いかがですか。
  169. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほども申し上げましたように、この発動基準四%と申しますのは、過去の平常時の基準二%の二倍に当たっておる、こういうことでいろいろ専門家の、先ほど申しました中央職業安定審議会の審議を経た結論が大勢としてこの線でやむを得ないというふうに落ちついたわけでございまして、重ねて御了解を得たいと思います。
  170. 大橋敏雄

    大橋委員 大臣、それでは、いまの失業状態が大変な騒ぎになっているわけでございますが、いまの基準からいくと、現在の倍の失業者があらわれてこなければ発動しないということは、これはもう本当に日本全国パニック状態になりますよ。そういう状態での発動なんというものは考えられないことです。ですから、私はこの運用基準を緩和してでもと、こう言っているわけです。これはこれ以上進めそうもないので、私は私の気持ちとして訴えておきますが、必ずや、私の気持ちが通ずる日が来るだろうと思います。  そこで、雇用創出の問題についてお尋ねしますけれども、このような大量失業の救済というものには、まず公共事業への吸収義務を強化するとか、あるいは地域によって即効性のある特別の事業を起こすことが最適だと私は考えているわけでございますが、大臣の考えを聞きたいと思います。労働大臣。
  171. 藤井勝志

    藤井国務大臣 雇用の確保というのは、何といっても一日も早く景気が回復してくるということが大前提であることはお話し申し上げるまでもないと思うのですが、そういうことを考えまして、政府大型予算を組み、公共事業を積極的にやる、こういう政策を打ち出して予算案を御審議願っておるわけでございます。したがって、そのような公共事業に対して失業者吸収率制度というものを活用して、これに緊急避難的に失業者を吸収する、こういうことも考えなければならぬ、このように思います。
  172. 大橋敏雄

    大橋委員 確認しますけれども、要するに民間の活力を活用してということだろうと思うのですけれども、具体的にどのような業種、どのような企業にどのくらい雇用が見込めるのか、大体予想はついているのですか。
  173. 藤井勝志

    藤井国務大臣 民間企業にどの程度雇用が吸収されるかということは、なかなかこれはむずかしい問題だと思います。ただ、一般的な考え方としてお話をさせていただくならば、これから伸び業種や職種として、たとえば対個人、家庭サービスとしては、家庭営繕サービス工あるいは植木職あるいは造園師、こういった問題、あるいはビルサービスではビル管理者、あるいは老人福祉サービスではホームヘルパー、あるいはまた情報サービスとしてはシステムエンジニアあるいは市場調査専門職員、こういったいわゆる第三次産業というものが、中高年齢を中心にして新しい雇用造出の対象業種ではないかというふうに思いますし、そのために中高年齢者を新しく雇う事業主に対して助成もする、こういったことを総合的にやって雇用の造出並びに雇用の確保をいたしたい、このように思います。
  174. 大橋敏雄

    大橋委員 話にならない話ですけれども、話によれば民間企業の活力を活用するために助成金制度をつくる用意が労働省にあるやに聞いたのですけれども、十分活用される見通しがあるのですか。
  175. 藤井勝志

    藤井国務大臣 これからの新しい試みでございますから、われわれとしてはそれを希望し、期待いたしておりまして、新しく中高年齢者を雇う場合には、中小企業の場合、支払う賃金の三分の二、大企業の場合は二分の一、これを助成いたすわけでございますから、そのようなことを迎え水にして新しい雇用の場が広がってくることを期待いたしたい、このように思います。
  176. 大橋敏雄

    大橋委員 時間が迫ってまいりましたので次に移りますけれども、かつて公害問題が議論されましたが、あの議論の後には公害防止産業というのがどんどん起こってまいりました。このたび雇用不安の問題がこれほど議論されてきたわけでございまして、福祉問題も論議されているわけでございますので、今後福祉産業というものを起こしていく必要があろうと私は思うのですが、これは労働省あるいは通産省等で協議しなければならぬ問題だろうと思いますけれども、私のこの提案についてどのようなお考えであるか、一言で結構ですから……。
  177. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大橋委員の御指摘の福祉産業というものの中身がどのような中身であるか、私自分なりに判断いたしまして、先ほども申し上げたような福祉関係の仕事、あるいはまた省エネルギーとか環境を害さないようにやっていく産業であるとか、いろいろ工夫しなければならない。こういう問題につきましては、実は雇用問題の研究会を再開いたしまして、専門の委員の先生方の衆知を集めて、いい雇用拡大のできる業種開拓をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  178. 大橋敏雄

    大橋委員 通産大臣にお尋ねしますが、いま申し上げました福祉産業の問題の中身は、正直言って、私もこれという具体的なものがあるわけじゃございませんが、産業構造審議会にこの問題を諮っていただくということはいかがなものでしょうか。
  179. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 安定成長時代を迎えまして、さらにまた近隣諸国からのいろいろな産業面での追い上げが続いております。そういうさなかにありまして、今後の産業構造をどうするかという問題でありますが、実は昭和四十九年に、産業構造審議会からそれについての長期のビジョンの答申を受けております。毎年見直し作業が行われておりまして、ここ二、三年引き続いてローリングプランの報告を受けておるわけでございますが、ここでは新しい転換対象としての産業開拓、たとえば情報処理産業とか原子力の分野産業、あるいは海洋開発の産業、こういう幾つかの新しい産業分野開拓のほか、高度の機械工業の開拓振興、こういう方面への転換等についての意見を受けておるわけでございますが、毎年ローリングプランが出されますので、いまお話しの福祉産業、よくわれわれの方でも内容を検討いたしまして産業構造審議会と相談をしてみたいと思います。
  180. 大橋敏雄

    大橋委員 期待をいたしておきます。私も産業構造審議会の答申の内容をずっと見てみましたら、いろいろ述べられている中に公害防止産業という項がきちっとあるわけでございますが、いま言った福祉産業という名前はどこにも出てきておりませんので、ぜひこれは実現してもらいたいと思います。  時間もたってきましたので、もうはしょって質問いたしますが、高齢者雇用率の問題でございますけれども、いま法律でもって六%の、努力義務ではございますが、雇用率が設定されておりますが、非常に大企業がその雇用率が低いわけですね。問題になりません。百人から二百九十九人は八・三%も行っているのに、千人以上の大手の方は三・九%程度だという。大企業ほど企業責任が重いにもかかわらず雇用率が低いというのは問題だと私は思います。  そこで、労働大臣にお尋ねしますが、大企業については、雇用率未達成の場合にペナルティーを科する考え方を導入すべきだと思うのでございますが、この点についてお伺いいたします。
  181. 藤井勝志

    藤井国務大臣 高齢者社会になった今日、高齢者の雇用対策というのは、雇用対策の中でも非常に大切な柱でなければならぬと思います。そういう面から言って、高齢者の雇用制度六%、これは一応努力義務になっておるわけでございまして、御指摘のごとくこれをいわゆる義務規定にして、義務に違反した場合には罰則をという、こういうことでありますけれども、この問題はやはりそのような規定をつけてやらないで、定年延長の問題とも絡めまして、そして高齢者の雇用奨励金の問題とかいろいろなこの援助措置と結びつけて、そしてしかも労働者と使用者との自主的な相談で徐々に積み上げていく、こういうことが適当ではないか、このように考えるわけでございまして、これがペナルティーをということは、ちょっと私は制度の趣旨からいって適当ではないではないか、このように思います。
  182. 大橋敏雄

    大橋委員 もう一点だけお願いします。  これは話はずっと変わりますけれども、最後に、先ほど全国延長もだめだ、あれもだめだということでございますが、いま広域延長給付の適用がありますね。これは地域状況によってなされるわけでございますが、たとえば北海道、北九州、沖繩など、集中的にいま失業者が発生しているわけでございますが、この広域延長制度はこれは考えるべきじゃないかと思うのですけれども、いかがですか。
  183. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  広域延長につきましては、その地域の中で延長することにつきましては、かえって滞留を招くという意味で私ども問題が多いと思いますが、しかし、先生御存じのように、現在、広域紹介に伴う場合の延長自体につきましても余り活用されてないという側面がございまして、その点の運用面の改善につきましては私ども十分検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  184. 大橋敏雄

    大橋委員 終わります。
  185. 中野四郎

    中野委員長 これにて大橋君の質疑は終了いたしました。  次は、西田八郎君。
  186. 西田八郎

    西田(八)委員 まず最初に、冒頭陳述のございました参考人の方にお礼と二、三質問をいたしたいと思います。特に、最近の雇用問題は、民間企業が集中的に問題が生じておるわけでありまして、そうした意味から、富塚参考人並びに富田参考人には失礼でございますけれども同盟前川参考人と中立労連の岡村参考人にお伺いをいたしたいと存じます。  前川参考人から、企業雇用吸収率を高める方法を考えるべきではないか、その中で労働時間短縮あるいは時間外労働の廃止というような問題も出てまいりましたが、実際に現在の企業状態雇用を吸収する能力が潜在するのかどうかという点が一点であります。  私は、そうした点から考えまして、現在の企業の中で実際に吸収する、時間外労働を廃止したり休日をふやしたりすれば別でありますけれども、実際は先々が非常に不安でありますから、そういう中で本当に雇用を吸収することができるかどうか、疑問を持つわけであります。そういう観点に立った場合に、一体新しい雇用開拓といいますか、創出をするような何か新しいものはないか、そういう点について検討をされておるかどうかということをお聞きしたい。  また、岡村参考人に対しましては、中立労連、比較的現在好況の産業がお集まりになる、特に電機労連等におきましてはそうした問題は少ないのではないかと思いますが、しかし、それにしても、カラーテレビ等の輸出規制であるとか^あるいは現在の家庭電化製品、飽和状態というような点を考えますと、過去のような生産増強というわけにはまいらないだろうというふうに思うわけであります。そういう面で、果たしてそうしたような産業の中で新しい雇用を求めることができるのかどうか、その辺についてひとつお答えをいただければ幸いだと思います。
  187. 前川一男

    前川参考人 お答えいたします。  統計によりますと、現在の完全失業者は百万台になっておりますけれども、いわゆる好況と言われた時代の数字は大体六十万台、こういう数字であります。もちろん、構造不況その他の進行がありますから、そんな簡単なものではもちろんないわけでありますけれども、果たして日本企業なり産業なり国民各階層が、本当の意味で国民合意をして、そのための努力を一つでも二つでもやっていったならばその程度のことができないものかどうかということについては、大変疑問でございます。  そこで申し上げますと、いわゆる能力ありやなしやという問題ですが、たとえば例を挙げてみますと、もちろん、事業の新たな開発という問題があります。新たな開発の問題としては、これは景気回復政策に関連する課題もたくさんあります。住宅の問題であるとか、あるいはまた公共事業を行うといっても、生活関連のいろんな事業を行っていくという、事新しい部分にやはり関係すると思います。  それからもう一つは、いわゆる新規の事業開拓という問題も一つ産業の中で考えられるのではないかと思います。もちろん、私が申し上げることは、まだまだ先行きわかりませんが、たまたま造船などにおいては空港の浮体工法といったようなものが検討されて、恐らく今度の予算では若干の調査費ぐらい入っているのではないかということを耳にしておりますが、これらも一つの例かと思います。  それから、先ほど来論議されております産業構造転換の問題というのは、大変重要な問題になります。これが一つあると思うのですが、もう一面のものとしては、たとえば定年延長問題一つをとらえてみましても、先ほどの意見交換にもございましたけれども、大企業の場合には定年延長が余りされていないのですね。五十五歳から大体五十七、八歳どまりのところが大部分である。中小企業の場合には六十歳まで相当程度いっているところがあります。半分にはいっておりませんが、相当いっております。六十以上を雇っているところも相当あります。したがって、こういうことが、逆に言えば先ほどの雇用率六%を達成できない、できるという問題があるのですから、定年を延長しょうという企業は定年延長すればいいと思うのですよ。ということは、逆に言えば、いま御指摘があったように、本当に困り切っているところはできないと思いますよ、その能力がないと思うのです。これは認めざるを得ません。しかし、日本企業産業が全部そうなっているのではなくて、比較的順調な企業産業も相当あるわけですから、そういうところは一つでも二つでもひとつやろうということになれば、たとえば銀行の週休二日制を考えてみますと、現実に銀行の週休二日制というのは、実態報告によれば、少ないところでも月に一回、多いところは月に三回やっております。平均約二回です。この平均二回を平均三回に上げてみたらどうか、これだけでも大変なものなのではないか。波及効果があります。  こうやって考えますと、事業開発の問題と並行して定年制の問題、労働時間、週休二日制などの問題がやりやすくなる社会環境をつくっていくための国としての指導といいますか、そういう体制確立がいま一番求められているのではないかと思うのです。あるいはまた、大学を出る人がずいぶん多くなりましたけれども、家族ぐるみで就職の心配をしてもまだまだ決まってない人もたくさんいる。したがって、たとえば高年層が比較的いるところは、新規採用を三人でも五人でも十人でもいいからよけいふやす、こういうことを本当の意味でもし日本中挙げてやったとすれば、これは可能性が十分にあると考えられるわけであります。
  188. 岡村恵

    ○岡村参考人 先ほど御質問いただきましたように、中立労連の傘下の産業別組織は、比較的不況影響の少ない産業が多くございます。しかし、いずれも影響を受けていないわけではございませんで、たとえば、そのうち比較的安定していると言われている電気機器の産業におきましても、民間設備投資が不十分であるということから、重電部門等は非常に不況産業でございます。また、家電部門につきましても、各国の輸入の規制が非常に強くなってまいりました。これ以上輸出拡大するということが大変むずかしいという状況にありますと、ここで雇用量を増大させるというのは大変むずかしゅうございます。そういった状況ですから、国内の景気が回復をして、あるいは住宅等がたくさん建てられるということになりますと、家電部門等はそれなりの影響を受けますから、国内景気の動向いかんによって雇用量も影響を受ける、こういうふうに見ていただければいいのじゃないかと思います。
  189. 西田八郎

    西田(八)委員 そこで、労働大臣にお伺いするわけでありますが、いま前川参考人からもお話がありましたし、私もいろいろな労働統計をとってみますと、まさに、そうした意味で、週休二日制あるいは残業の廃止というような問題が大きな問題になるのではないか。たとえば五十二年十一月の労働統計によりますと、所定外労働時間というのが一人について十三・八時間、製造業が千三百二十六万労働者がいるわけでありますから、延べにいたしますと実に一億八千二百九十八万時間、一人の一カ月の労働時間を百六十五・四時間、これも労働統計による時間でありますが、百六十五・四時間で割り返しますと百十万人分ということになるわけであります。しかし、これは全廃するわけにはいかぬでしょう。二交代のところの交代勤務時間のオーバーラップする部分であるとか、あるいはどうしてもという部分があると思います。しかし、それにしても三分の一減らして、四時間減らすだけで約三十万人分の労働時間がここで計算上は浮上してくるわけであります。したがって、この労働時間というのは三六協定によって、労基法三十六条によって協定されるものでありますから、労働省が直接介入することはできないという問題であるかもわからぬけれども、少なくとも、残業を少なくするだけでもこれだけの雇用開拓ができるのではないか。逆に言えば失業防止ですね。そういうことができるのではないかというふうに思うわけであります。  一体そうした問題について、これは基準法上の重要な問題で、先ほど社会党の岡田委員からも御提案がありましたが、現在の労働基準法は昭和二十二年にできたもので、その後一部改定はされておりますが、大綱についてはほとんど改定なしのままで来ております。そういう観点からいって、高度経済成長期を過ぎて安定成長期、しかも日本が世界の先進国の仲間入りしたという現時点において、現行法がそのまま残されるということにはいささか問題があるのではないか。もちろん、労働時間だけの問題ではありません。私はこの中に規定されております二十四条、労働協約と法律とそうして就業規則、あるいはまた七十何条でございましたか、寄宿舎規定等がございます。こうしたことも全くいま実情に沿わない実情になっておるわけでありますが、そうした労働基準法の改正について一体どのようにお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  190. 藤井勝志

    藤井国務大臣 雇用の確保という観点、同時に経済が高度成長から軌道修正をせざるを得なくなって、いわゆる安定成長でお互い仕事を分け合うという、こういう考え方から、労働時間対策の進め方というのはこれからの重要な労働政策の一環だと私は思います。したがって、けさ方もお話を申し上げたとおりでございますが、これをこの基準法で結びつけてやるということについてはいろいろの問題があるということも、先ほど午前中にお話したとおりでありますが、労働基準法そのものを検討して見直す、これは必要だと思うのです。現に労働基準法研究会というのがございまして、すでにこの研究会は次々成果を上げておりまして、御承知の労働安全法、この成立を提言をいたしましたし、賃金の支払い関係の改正、これもまた提案をしました。この研究会の場を通じて、基準法がもう十年も、いや、むしろ成立以来そのままになっておりますから、日本経済社会情勢雇用情勢というのは非常に変わってきておりますから、見直すということの必要性は私も痛惑をいたしております。したがって、そのような場は、とりあえず労働基準法研究会において引き続き検討していただく、このように考えておるわけでございます。
  191. 西田八郎

    西田(八)委員 大臣、大体検討検討で、昨年のこの予算委員会で石田労働大臣も同じ答えだったのですよ。もうすでに一年たっておる。しかもその間に、こういう雇用不安状況というものもますます深刻化してきておるわけです。これは、先ほどから参考人の方々も異口同音におっしゃっている要望事項なんです。めどとしていつごろになるのか、お答えいただけませんか。
  192. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働時間の問題につきましては、これは別途部会を設けまして、これは行政指導によってやるということが公労使三者一致の建議でありますから、その線に沿うてやらせてもらう。そして、労働基準法そのものの研究は、先ほど申しましたように労働基準法研究会において、これをどう取り扱うかということ自体もいま研究会にお願いをしておりますから、その回答を待ってこれの進め方を考えたい、こう思います。
  193. 西田八郎

    西田(八)委員 時間がないのでこの問題だけ余り突っ込んでおられないので、またいずれ労働大臣に社労委員会ででもお伺いすることにして、次に宮澤経済企画庁長官にお伺いしたいわけでありますが、いま前川参考人等からも生活関連事業、あるいは、たとえばということで造船関係の浮体工法というような問題も取り上げられました。また、先ほどから公害産業というような問題も出てきておりますし、省エネルギーのための機械の構造改革ですか、そういうような点等についてもありますけれども、それは現在ある産業でその業種を転換するか、あるいは目標を変えることだけで済まされることであって、総体的に日本構造不況と言われるオーバープロダクション、生産過剰になっているものを全部吸収するというわけにいかないと思うのですね。そこで、やはり新しい雇用機会というものを創出してこなければならないと思いますが、そういう新しい雇用機会の創出について、経済企画庁としてどういうようなものをもくろんでおられるか、お聞かせいただきたい。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和五十三年度を例にとりまして申し上げますと、雇用の増加は五十五万と先般来申し上げておりますが、そのうち製造業雇用増は恐らく差し引きゼロであろうと思われます。建設業に何がしかのプラスがあろうと思いますが、残りの部分ば、大ざっぱにその他と申しますが、第三次産業中心としたものになってまいる、これは昭和五十二年度もそのような傾向があったように存じます。それでその中で、けさほどからいろいろお話がございますが、私どもやはり国民福祉に関する新しい職能、それから医療に関するもの、あるいは健康産業と称せられるもの、教育関係の新しい産業、情報処理、あるいはコンサルタント、先ほど労働大臣もおっしゃっていらっしゃいましたが、そういったような新しい職種ではなかろうかというふうに私どもは考えております。
  195. 西田八郎

    西田(八)委員 そこで、そういう考え方を持っておられながら、本年度の予算の中で公共事業費が五兆幾ら、その中でたとえば道路全体の整備費というのが一兆六千五百二十四億円計上されておるわけですね。その一兆六千幾らの膨大な予算で、大体現在の建設省の予算の計上の基礎からいけば、一キロ一億円と計算をすれば一万六千二百四十キロ程度のものになってしまうわけであります。それも大半が補償費であるとかいろいろな形にも回っていくのではないかというふうに考えますし、また、それだけの道路を整備したって、工事が終わってしまえば、あとは道路だけが残って人は残らないわけであります。しかし、いま厚生省調査をなさっておる全国の小学校就学前の児童で二十五万人の人が待機をしているというか保育を必要とするとみなされておるわけであります。政府の発表されておりますこの青少年白書によりますと、三歳児で現在幼稚園ないし保育園へ入園もしくは入所している子供の率は二五・七%と非常に低いわけであります。これが、ほとんどの主婦に聞いてみますと、みんな三歳から入れたい、それはやはり集団生活に早くからなじませたい。最近の子供は情報の発達によって成熟度が非常に高まってきておりますから、もう親の手に負えぬ場合もあります。そういうことを考えますと、保育園を建てる場合、厚生省予算でいきますと、一平米について十万円、大体原則として収容人員九十人の保育所を建てるということになると五千四百万円、これが基礎計算になる。そのうちの二分の一が補助でありますから二千七百万円。現在保育を必要としている二十五万人の幼児を全部収容するとすると二千五百カ所保育所を建てればいい。仮に地方の財政負担も全部合わせて一カ所一億円と計算した場合、二千五百億円で済むわけであります。それの半分で済むわけでありますから、国の負担はもっと軽くなる。しかもそこには一カ所について大体最低十一名の保育要員を、いわゆる給食を含め、園長を含めて必要とする。そうすると、この数だけでも約三万人そこそこの人を新しく収容することができる。あるいはまた、小学校、中学校がいま一クラス四十五名というふうな限界になっておるわけですが、三十五名に改めることによって、これは算術計算だけでありますけれども、約十万名。小学校で六万八千人、中学校で三万人の教師を新たに必要とする。クラスがふえれば、ただそれだけではないだろう。そのほかに用務員とかいろいろとふえてくるわけでありますから、そうすれば十万人を超す新規雇用開拓することができる。最近、特に問題になっておりますのは、夫婦共働きの家で、小学校低学年の子供たちが、三年生までは大体昼一時か二時ごろに終わるわけでありますが、帰ってきてから母親が帰ってくるまで待つ間に学童保育というのが行われております。その学童保育を必要とするのが、学童保育連盟の調査によりまして現在百六十万人、その学童が放置されているといわれております。せんだって、私の選挙区でありますけれども、中学三年生の子供が高校入試を前にしてあるいは職業訓練所の入所を前にして殺生事件を起こしました。こうした問題はやはり学校教育のあり方を根本的に変えなければならぬのではないか。特に親しい先生方とお話をしておりますと、四十五名とても持ち切れるものではないというのが異口同音の御感想であります。せめて三分の二にしてもらえれば落ちこぼれ生徒をつくることなく十分な教育ができるというようなことも言われておるわけであります。  そういう点から考えますと、これから漸次われわれの生活が安定し、経済が安定する中から求められるものは、福祉ではないかというふうに思うわけであります。また、現在勤労者の貯蓄性向が非常に高まってきておるといわれておりますが、その貯蓄性向の高まってきた大きな原因は、やはり先行き不安であります。まず、雇用不安。いつ首切られるかわからない。ただし、現在の雇用保険では最大いっても三百九十日しか保障してもらえない。それに就職促進手当その他がついたとしても、どうしても三年で打ち切りであります。その後どうするか。あるいは高齢者社会に入ってくるのに対して、だんだんと企業は定年を延長するどころではなしに、延長した定年をまた逆に引き下げようとさえしておる動きがある中で、非常に雇用不安が増大をしております。加えて年金が非常に低い。生活すらできない年金状態にあるというようなこと。あるいは一つ間違って病院に入院すれば、健康保険があるからと思って安心しておれば、差額ベッド料であるとかあるいは付添看護料だといって膨大な費用を請求される。いろいろなそういう不安が、今日のそれに備える貯蓄性向として、貯金という形になってあらわれてきておると思うのです。したがって、それが消費に増大することにはつながらない。そうだとすれば、当然そこには、景気の回復というのはまたおくれるのではないか。政府がかねや大鼓で公共事業公共事業とおっしゃっておりますけれども、その公共事業も積み残されるということははっきりしておるわけで、都道府県、市町村長の皆さん、市町村長がそう言っているのですから、これは間違いないでありましょう。  というようなことから考えますと、ここで新しい時代に入る日本産業構造の中の一つとして、福祉関連事業というものを、三次産業の中に含めるのではなしに、やはり新しい四次産業として福祉事業を行うべきではないか、そうすれば、当然そこに少なくともいま申し上げました数だけでも、二十万人ないし三十万人の人たちを吸収することができる、そういうようなことを考えるのですが、そういう点についていわゆる方向の転換を図る、そうした面に重点を置いて、ここ三年なら三年、五年なら五年のうちにこういうふうにしていきたいというような考え方を持っておられないかどうか、聞かしていただきたいと思います。
  196. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変広範なお尋ねでございましたので、部分的にしかお答えを申し上げられないかもしれませんが、先ほど申し上げましたように五十二年度におきましても、また五十三年度の見込みにおきましても、いわゆる第三次産業の就労が相当大きいということは疑いのないところでございます。同時にこの点は、多くの先進国が三次産業雇用が現にわが国よりも高うございますし、また年とともに大きくなっていくということ自身は、脱工業化社会と言いますと少し言葉が未熟でございますけれども、何かそういう、いままで三次産業と考えていたのでない、新しい社会福祉でありますとか、教育でありますとか、健康でありますとか、医療でありますとかいうものの専門家、それに対する消費者側のニーズというものが大きくなっているということを明らかに示しておりますから、わが国としてもその方に進んでいく大きな趨勢にあるのではないか。政府がただいまそういうことを意識的に頭に描きまして、どのように、どういうものをということはいたしておらないと私寡聞ですが存じますけれども、そういう方向に行くことはもう確かでございますから、私どもとしてもそういうことをもう少し具体的に、私どもの役所ですとマクロでございますけれども、考えていくべきではないかと思います。
  197. 西田八郎

    西田(八)委員 そこで、大蔵大臣お見えになっていますが、大蔵大臣、厚生省からもいろいろと要求があると思いますが、思い切って上半期にそういう施設関係の予算をどっと使わして、あと残りの分は――どうせ公共事業費は余ってきますよ、消化し切れない。それを無理やりに上から金を流したら、これはインフレが起こりますよ、必ずインフレになる。これは大変なことが起こると思いますから、ひとつその時期に補正しょうという考え方で、どうですか、そっちの方に力を入れていただけませんか。
  198. 村山達雄

    ○村山国務大臣 今度景気回復中心にいたしまして、公共投資あるいは住宅投資、さらには構造不況の手当て、こういったところに中心を置いたことは御存じのとおりでございます。しかしその反面、経常的経費はできるだけ節減いたしまして、特に官庁経費等につきましては横ばいでございます。その中にありまして、社会福祉関係は特段に力を入れまして、去年の伸びが一八・四でございますが、一九・一になっているわけでございます。  ただいま御質問のありました点につきましても、厚生省の方と十分連絡いたしまして、社会福祉施設整備費については二四%ふやしております。また、国立病院、療養所、こういったものにつきましては、財投を含めまして三五%の伸びでございます。それから運営費でございますが、これは大体人件費系統のものでございます。御案内のように通常は七・六ぐらいのところでございますが、これは一一・一%伸ばしておるわけでございます。  なお、福祉施設関係の増員につきましても特に意を用いまして、三千人程度ふやしまして二万一千人ぐらいにいたしておるわけでございます。このようにわれわれは福祉関係については今後とも力を入れてまいるつもりでございます。
  199. 西田八郎

    西田(八)委員 大蔵大臣、じきに数字で物を言うて、三〇%だから一九%だからと言うたって、もとになる金額が低ければ、こんなものは何にもならないのですよ。ですから、もう思い切ってどさっと金を使いなさいよ。やはりどこか集中的に政策をやらなければ、これは話になりませんぞ。そういう点、いまこういうふうに予算修正でいろいろ話のあるときですからなにですが、強くそれを補正の中でやるようにぼくは要請をしておきたいと思います。  次に労働大臣、このようなことになってくると、職業訓練というのを考え直さなければいけませんね。もう現在の職業訓練所の状況では、りっぱな技術者や、あるいはそういうことに適時対応できる人を養成するようなことにはならない。現在は待期期間が長過ぎるし、そういうようなことから、やはり訓練法の抜本的な改正、需要に即応ぜられるそういう方法を考えなければならぬと思うのですが、どうお考えでしょうか。
  200. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御指摘の職業訓練のあり方、制度の改正の問題、御指摘のとおりと私ども考えております。もうすでに十年前に改正されて今日に来ておりますから、産業構造の変化、先ほどからいろいろお話が出ておりますが、そういう時代の要請にこたえて、訓練の仕方、入校時期、これも多様化していく、そしてまた訓練種目の内容も思い切って改廃をしていく、あるいはまた、公立の訓練施設だけでなくて民間の訓練施設もフルに活用していく、また緊急な技能労働者あたりの不足は八十万ぐらい不足しておるという数字が出ておりますから、こういったところに対して、速成の二、三カ月で訓練ができるような対応もしなければならぬ、こういうことで訓練法の改正について目下精力的にやっておりますから、案ができましたら御審議を賜りたい、このように思います。
  201. 西田八郎

    西田(八)委員 引き続いて労働大臣にお伺いします。  せんだってある会合に出ましたところ、特定不況業種離職者対策特別措置法に基づく――これは議員立法でありましたから、しかも一回通りかけて流れたという経過もあったりして、準備をなされておったのだろうと思いますけれども、末端の安定所の窓口で、該当する労働者が非常に迷惑をしているというようなことを聞きました。したがって、こうした法律ができたら直ちにそうしたことについて細かい指示をなさっていただきたいし、またそういう人たちに対しては親切に応対していただきたい。先ほど岡田委員から、職安の職員の数が足りぬと言っておられましたが、まさにそのとおりで、もう十人も二十人も待たされるという状態が各安定所に起こっておるようであります。したがって、これはそうした手不足もありますし、人間、忙しくなればどうしても殺気立ちもしますし、いら立ちもしますから、応対が厳しくなるだろうと善意に理解をしたいと思いますが、そういうことのないようにぜひとも注意をしていただきたいし、現在どういうふうな指導をしておられるか、これは大臣でなくても、局長でもいいのですが、その辺のことについてお伺いをしておきたいと思います。
  202. 細野正

    ○細野政府委員 特定不況業種離職者臨時措置法の施行につきましては、確かに御指摘ございましたように早々に施行され、しかもさかのぼったというような状況もございまして、施行当時すぐに全国部課長会議あるいは課長からの各安定所長への伝達等をいたしたのでございますけれども、十分伝達し切れなかった点もございまして、いろいろと利用者について不便な点もあったと私も存じますが、その後この法律の解説書もでき、それから何回かそういう点についての事務打合会もやっておりますので、逐次改善されつつあると思いますが、なお一層その努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  203. 西田八郎

    西田(八)委員 最後に厚生大臣にお伺いをしたいわけでありますが、大蔵大臣もあのような答弁があったし、私は理解されたものだ、こう考えておりますし、さらに宮澤経企庁長官も将来の展望としてそういう方向へ行かざるを得ないであろうという見解を表明をされました。そこで私は、厚生大臣として、こうした保育所の新設、増設の問題、あるいは先ほど申し上げませんでしたが、最近老人ホームが非常に満員状況で入れない老人が非常にたくさんおられると伺っております。実は、せんだってある一人の人を頼まれて四つほど老人ホームを手配いたしましたところ、その四つの老人ホームともに、これは養護老人ホームのことでありますが、どこの老人ホームも十名ないし十五名の待機組がある、したがってだれかが死ぬか長期入院でもしてくれることにならなければかわりが入れられないというような返事でございました。これは老人ホームで死ぬのを待つというような、こんな情けないことはないと思うのですね、私は。したがって、これこそ本当に重要な課題であると思うのです。ましてや核家族化が進んでいくし、そういう中でやはり老人対策というのは年金とあわせて万全を期していかなければならない問題である。まして、その身寄り頼りのない人たちに対して手厚い対策を立てるということ、これは私は厚生大臣の職務のきわめて重要な部分だというふうに思うのですが、今後そうしたことについてどのように対処していかれるのかということを一点お伺いをしておきたいと思います。
  204. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 現在、養護老人ホーム、普通の老人ホームでございますが、これには千七百カ所で約十三万人収容されておるわけでございますけれども、まだまだ不足のことはおっしゃるとおりでございます。今後できるだけ私どもも力を注いでいきたい、かように考えます。
  205. 西田八郎

    西田(八)委員 厚生大臣もあるいは経企庁長官も、最後に私は意見だけ述べてこの質問を終わりますが、本当にいまそうした面に重点を置いて福祉関連施設を拡充し、そこに新しい雇用を求めるということになれば、私どもが、これは試算でありますけれども、少なくとも五年後に入りたい人が老人ホームに入れる、入れたい保育所に入れる、子供の教育も大体三十五人ぐらいということになりますと、少なくとも新しく八十万人近い従事者の雇用拡大することができるようになるわけであります。この点が、いま私は世界の各国に比べてみてもわが国の最も劣っておる点ではなかろうかというふうに思うわけでありまして、そういう面で今後十分留意をされまして精力的に、しかも思い切った決断を持って対処していただきたいということを要望いたしまして、まだ一分ばかり時間が残っておるのですが、これで終わります。
  206. 中野四郎

    中野委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。  次に、安田純治君。
  207. 安田純治

    安田委員 私は、雇用失業問題にしぼって質問したいと思います。  いま問題になっている雇用拡大失業防止の政策を進める上で見過ごしてはならないきわめて重要な問題に婦人労働者の問題があります。婦人労働力人口は、わが国労働力人口の三七・四%、約四割を占めておりまして、そのうち既婚者が六四%を占めているわけです。自営業種などを除いて他人に雇われているいわゆる雇用者の数で言えば千二百三万人。この千二百万人余りに及ぶ婦人労働者こそ、大資本、大企業の激しい収奪を受けてまいりまして、今日不況期ともなれば真っ先に犠牲を押しつけられているわけであります。総理府労働調査によりましても、従業員百人未満の企業では、昭和四十八年以降女子労働者は三十一万人ふえて、昨年度で五百五十五万人。しかるに従業員五百人以上の大企業では、十八万人も減らされて二百二十九万人となっているわけであります。また常用と臨時雇いの構成比で見ますと、五十一年、常用は構成比が〇・六%下がっておりますけれども、臨時雇いが〇・六%上がっておる、こういうことが政府調査によっても明らかになっているわけです。こうして社外工、下請中小企業と並んで日本経済構造の暗い部分となっておる。したがって、雇用拡大失業防止観点からもこの部分にこの際思い切ったメスを加える必要があると考えます。そこで私は、雇用失業問題のうち、いままですでに同僚議員によって論ぜられておりましたことと重複を避ける意味で、婦人労働者問題を中心に伺いたいと思うのであります。  さて、一九六七年第二十二回国連総会で、婦人に対する差別撤廃宣言を採択いたしました。その第一条において「男子との権利の平等を事実上、否定または制限する婦人に対する差別は、基本的に不正であり、人間の尊厳に対する侵犯である」、こういうふうに高らかに宣言しているのであります。またわが国会においても、一九七五年六月には衆参本会議において「婦人の社会地位の向上をはかる決議」を全会一致で採択しているのであります。この決議においては、賃金、雇用の機会を初め、社会生活における事実上の男女の不平等を是正する適切な方策がとられるべきであることを明確にうたっておるのであります。  さらに内閣総理大臣を本部長とする、十一省庁の事務次官を構成員とする婦人問題企画推進本部は、昨年、国連婦人の十年宣言を受けて国内行動計画を決定して、重点事項として、雇用における男女平等を位置づけております。そして昨年六月十四日には「婦人の政策決定への参加を促進する特別活動推進要綱」も決めておるわけであります。この中で政府として推進する事項、地方公共団体や民間団体に協力を要請する事項として、女子公務員や婦人の採用、登用及び職域の拡大並びに積極的能力開発を明記しております。言うまでもなく内閣総理大臣を本部長とする推進本部の方針でありますから、これを貫徹する上で国や地方自治体など行政当局みずからがまず率先して実行していくことが必要であります。しかるに地方自治体において雇用時、採用時においてすでに女性であるがゆえの差別が次々と問題になっているのであります。  私の出身の福島県においても残念ながらしかりでございます。たとえば、私ここに昭和五十二年度、本年度の福島県の職員の採用に関する公告、これは昭和五十二年六月二十四日付の福島県の県報で公告されておるわけでありますが、この募集要項を見ますと、一般事務A、約二十名、これは中身は「一般行政の書記的事務ですが、その内容が行政指導、調査、監督、監査、対外折衝徴収等の業務で男子をあてるにふさわしいものです。」こうなっております。一般事務B、若干名、これは人数も決まっておりませんが、「一般行政の書記的事務ですが、その内容が文書事務、計算事務、受付事務、秘書的事務等のように、女子をあてるにふさわしいものです。」こういうものが堂々と福島県の県報に載っておるわけでございます。自治省はこうした、あってはならない男女差別を解消していくために当然このような実情を調査し掌握していると思うのでありますが、全国的に地方自治体のこの面での実情はどうなっているか、その概要を伺いたいと思います。
  208. 加藤武徳

    加藤国務大臣 雇用につきましての男女平等でなければならぬ原則は、地方公務員につきましても当然その原則が適用されるのでございまして、ただいま福島県の模様のお話がございましたが、個々の事案につきましては必ずしも正確にはつかんではおりませんけれども、しかし概括的に、自治省といたしましてもできるだけ雇用の平等であるべきことを指導してまいっておるところでございまして、実情を把握しているか、かように申されますと、ある程度は把握をいたしており、できるだけ平等の原則に近づくような指導をいたしてましいらなければならぬ、かように考えております。  ただし、地方団体の実情といたしましては、たとえば夜間勤務の多い職種でありますとか、あるいはまた災害等に対応いたしまして緊急の出動を要しますような職種につきましては、これは女子の就労がきわめて困難な職場だ、かように見られざるを得ないのでありますから、採用等につきましても、さようなことを考慮いたしながら採用いたしますことは合理的な一個の理由ではないだろうか、かような判断をいたしているところであります。
  209. 安田純治

    安田委員 自治大臣、それでは福島県の場合にいまおっしゃった合理的な区別といいますか、差別に当たらない合理的理由があるというふうにお考えでしょうか、どうですか。
  210. 加藤武徳

    加藤国務大臣 手元に福島県公報に登載されましたものを持っておりませんので、詳細には吟味いたしておりませんけれども、しかし合理的な理由といたしまして、かようかような職種は男子に適しておる、かようかような職種は女子に適しておる、かような区分けをいたしますことは、私は合理的な理由に基づいてさような判断をいたしておるのではないか、かように考えております。  ただし、最初申しましたように、個々の公共団体におきましていろいろ事情が違っておるのでございますから、さような実情等もよく把握をいたしてまいりまして指導よろしきを得たい、かように考えております。
  211. 安田純治

    安田委員 いま申し上げましたように福島県の場合、一般事務Aの場合、行政指導、調査、監査、徴収などの業務は男子を充てるにふさわしいのだ、それ以外の文書事務、計算事務、受付事務、秘書的事務は女子を充てるにふさわしいのだ、これは一体合理的な理由に基づいてやったと推察できますか。  それで、たとえばこれは昭和五十一年十月五日の当時の浦野労働大臣の談話も出ておりますけれどもわが国でも勤労婦人の数は著しく増加して、その経済社会に果たす役割りは増大しつつあります。しかし婦人の能力に対する偏見や男女の役割り分担に関する固定観念がまだ強く残っており、これはまことに遺憾であるというような談話もございます。  それから推進本部が決めました国内行動計画の中でも、「婦人が従来のいわゆる女子向き職種という固定観念にとらわれず能力・個性に応じて専門的技術的職業その他幅広い職業分野進出する」ということを助けなければならぬというふうに決めてあるわけであります。そういう点から見まして、一体福島県のこの分類は合理的とお考えかどうか、承ります。
  212. 加藤武徳

    加藤国務大臣 婦人に対しまして偏見があってはならないことは申すまでもないことでございますし、かつまた、婦人の能力開発に努力していかなければならぬこともこれまた御指摘のとおりでございます。  そこで、福島県におきましては、いま伺いました範囲では、かようかような職種は男子に適しておる、かようかような職種は女子に適しておる、かような大まかな区分でございまして、そして女子の適しておらない区分としましては強制的な仕事云々ということがございました。たとえば県税の徴税事務等に参りまして個々の納税者に強制的に納付せしめますような、説得をいたしますような場合には、あるいは女子は適当ではないのではないか、かように思えますし、また内部的な仕事、たとえば文書の整理でありますとかあるいはタイプでありますとか、さようなことは女子に適しておる、かように私も判断をいたすのであります。しかし、そこではかようかような職種には女子をつけてはならぬ、かようかような職種には男子をつけてはならぬ、かような明確な区分ではございませんで、おおむね合理的と考えられますような概括的な区分でございますから、その職種へ女子をつけてはならぬというような、さような取り決めではないと思うのでありますから、私は、さような区分は合理的な理由に基づいて一般的な考え方として示しておるものだ、かように判断いたしているところであります。
  213. 安田純治

    安田委員 自治大臣、そういう考えがまさに固定観念として遺憾であるというふうに言わざるを得ないと思うのです。たとえば税金の徴収事務はなぜ女子が不適当なのか。たとえば強制権力を使う場合ですと、女子の警察官もいるわけですよ。りっぱに勤まっているじゃないですか。なぜ税金の徴収事務だけが女子では不適当なのか、まさにそれこそ固定観念の言わしめるところではないかと思うのですよ。そういう政府の姿勢だから、こういう女子労働の問題についてなかなか改まらないというふうに言わざるを得ないのですが、もう一度徴収事務はなぜ女子に不適当か、お答え願いたい。
  214. 加藤武徳

    加藤国務大臣 福島県の公報を手元に持っておりませんから、あるいは明確ではない答えになるかとも思うのでありますけれども、それは税の徴収、ことに強制徴収等に関しては男性の方がよろしいという概念の区分だ、かような考え方でございまして、女子がその職についてはならぬという明確な拒否の規定ではないのでありますから、一般的な傾向として、一般的な考え方としてさような区分をいたしておりますことは、私は不適当だというぐあいには考えておりませんけれども、しかし女性の中にもなかなかの豪傑がおりまして、そういう第一線でやろうというような者がおりますと、当然さような職種についても適当である、こう私は思っておるのであります。
  215. 安田純治

    安田委員 いまの自治大臣のお答えは、固定観念をあらわしたものとして非常に遺憾だと思うのですが、それにしても先ほど具体的な実情を余りつかんでおらないような御答弁がございました。推進本部の活動方針が決定されてからすでに八カ月も経過しております。いまなおそういう具体的な中身について調査もしていない、把握されていないということは怠慢に過ぎる、こういうふうに言わざるを得ません。この際いつまでに全国都道府県、市町村を調べるのか、はっきりさせていただきたい。採用時におけるこうしたやり方ですね。
  216. 加藤武徳

    加藤国務大臣 いままでも採用時におきます試験要項でありますとか、さようなものはできるだけ取り寄せて分析をいたし、不適当でありますものにつきましてはその是正方を指示いたしておるのでございますが、これからもまたあらゆる機会を通じまして実情の把握に努めてまいりまして、よろしからざる点は勇敢に是正をさせる、かような努力をいたしてまいるつもりであります。
  217. 安田純治

    安田委員 それではいままでに都道府県で幾つそういう事例があって、どれだけ勧告されたのか、お答えいただきたい。
  218. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  現在都道府県で採用に当たりまして、五十二年度の採用でございますが、いま福島県の例で申されましたような男女区別をつけておる県が十九県ございます。それから男女を全く区別してない県が十八県ございまして、その間に混合と申しますか、いまの福島県の場合は恐らく混合に当たるのではないかと思いますが、そうでない職種というものでまさっているのが九県ございまして、合計四十六県、一県だけまだ調査がわかっていないという状況でございます。
  219. 安田純治

    安田委員 こういう福島県の区別は、私どう考えても区別ではなくて差別である、好ましくないというふうに言わざるを得ないと思うわけであります。  ところで、この問題ばかりしておりますと時間がなくなりますので、国家公務員についてはどうでしょうか。  私ども調査によりますと、政府みずからが国家公務員採用試験において女性であるがゆえに受験すら認めないという差別を続けております。しかも、数年前に社会労働委員会などで問題になりまして、昭和五十年九月十二日に労働省婦人少年局長が文書で人事院任用局長に対して改善の申し入れをしております。それによりますと、女子であるというだけで受験が制限せられているのが十一種もあって、すなわち国税専門官、航空管制官、国家公務員初級行政事務B、郵政事務B、税務、皇宮護衛官、入国警備官、刑務官、気象大学校学生、航空保安大学校学生、海上保安大学校学生、こういうふうにあるわけです。この中には必ずしも合理的理由の明らかでないものも見受けられまして、就業上の男女平等の見地から問題があって、政府の最高方針と矛盾するとして婦人少年局長が改善を申し入れた、こういう事実があるわけであります。それ以後三年たった今日、行政事務Bだけが女子にも受験が認められましたけれども、あとはそのままに至っているのであります。  労働大臣に伺いますが、これはきわめて重大な問題であると考えますが、昨年六月、こうした女子の採用における職種ですか、こういうものの見直しをすることを決めておりますけれども、この際、いっこうした不当な差別を撤廃するのか、明確にしていただきたい。ことに婦人少年局長がそういう申し入れをしておるわけですから、そういう意味でひとつお答えをいただきたい。
  220. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御指摘のような局長名で各官公庁にこちらの意思表示をしております。この線に沿うて、現在改善について各省庁間で協議をしてもらっておりまして、この問題は、公務員の場合は総理府所管でございますから、総理府の長官からお答え願うのが適当ではないかと思います。
  221. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  表向きは人事院ということでございまして、ただし女子の受験、こういったものについていろいろ制限が加えられておる、そういう意味から職種の見直しということで、先ほども労働大臣が答えておられましたが、六月決定をされまして、そこでこれを婦人参加という意味から特別活動と申しまして、国内行動計画の中にこの問題を実施をするという意味に繰り入れまして、ただし先ほど申しましたように、人事院とよく協議をして御指摘のとおりやっていきたい、こういうふうに思っております。
  222. 安田純治

    安田委員 明確にいつ撤廃をされるのか伺っておるのでして、そういうお答えでは答弁になっていないと思うのですが、もう一遍お答え願いたい。
  223. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 いま申し上げたように、人事院とよく協議をいたしまして、できるだけ早く決定をいたしたい、こういうふうに思っております。
  224. 安田純治

    安田委員 もう婦人少年局長が申し入れてから三年たっておるわけですね。いまやっと人事院とよく協議をしてと言って、撤廃の時期も明確にできない。政府がこのような姿勢でありますから、民間大企業における女子労働者への差別攻撃がまさに集中的であるということになるわけです。  冒頭に申しましたように、総理府労働調査によっても、中小企業労働者は三十一万人女子労働者がふえておって、五百人以上の大企業労働者が十八万人女子が減っておる、こういうような状態となっておるし、また、減量経営の名による雇用調整、人減らしは中高年婦人労働者がねらい撃ちされておる、こういうわけです。  たとえば関東経営者協会が作成した「雇用調整はどのように行なったらよいか 考え方、対策の進め方など実務上のポイント」という印刷物がございます。いわば人減らしとらの巻ということになりますけれども、これによりますと、希望退職者を選ぶ人選のめどとして「退職基準」を示しております。この中に、「家計を支える責任のないもの。」とか「有夫の婦人で子女のあるもの。」という基準が明記されているわけであります。実際にもこの人減らしとらの巻とも言うべきものが実行されておりまして、たとえば私の福島県における福島信用金庫の場合には、結婚すると嘱託になるというようなことが行われておるし、あるいは東芝系列の会社と言われる北芝という会社がありますが、ここではいま希望退職を募っておりまして、夫婦でその会社に勤めておったところが、奥さんが呼び出されて、だんなの地位を守るためにおまえやめてくれというような意味の、これは希望退職を募るというよりは強要ですね。そうして即日退職願に判こを押させる、こういうような状態が生まれておりまして、まさにこの人減らしとらの巻は実行に移されているわけであります。  このようなことは、先ほど来申し上げてまいりました政府の方針に照らしてどう考えられるか。「有夫の婦人で子女のあるもの。」こういうだけで、これは一項目ちゃんとそういうふうに載っているわけです。人減らしとらの巻に。そのほかの条件は載ってないわけですね。一項目わざわざ独立に起こしている。こうなりますと、「有夫の婦人で子女のあるもの。」というだけで退職を強要されるというのは明らかに男女差別であります。中には、この規定を逃れるために擬装離婚までする例さえあらわれている。こういう人道上の問題がございます。こういう経営者協会のような主要団体がこのような指導書をつくって、不法、不当に失業者を増大させている。この点についてまさに企画推進本部長の総理大臣に伺いたいわけですけれども、本部長いませんので、いま出席されている副本部長の総理府総務長官に、一体こういう状態をどうお考えか、御答弁をいただきたい。
  225. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 総理府といたしましてもその点はよく承知をいたしておりまして、婦人対策室を中心といたしまして、婦人の地位向上、婦人の参加ということで最善の努力をいたしておるところであります。
  226. 安田純治

    安田委員 こういう人減らしとらの巻の中身は適当であるかどうか。どうですか、ずばり答えてください。
  227. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 いろいろな理由があると思いますが、婦人であるがゆえに、結婚をすると退職が早められる、あるいはまた受験の制限、あるいは職場のいろいろな問題等々の御指摘の点については、今後は努めてそのようなことのないように努力をしてまいりたい、こういうように思っております。
  228. 安田純治

    安田委員 冒頭でも述べましたように、婦人労働者への低賃金や過酷な労働条件の押しつけなどが、全体としてわが国労働者の低賃金構造をなしているわけであります。また、最近では、夫の収入だけでは生活を維持していけないということから、中高年婦人労働者がふえております。ところが、大企業は、女性であるというだけで真っ先に婦人労働者を正社員から外し、パートとして再雇用したり、実際の労働時間は一時間程度短いだけで、残業も休日出勤もさせる、そして賃金はうんと低い。このようなやり口も含めて、要するにあらゆる方法でコストダウンを図っているのであります。雇用確保、拡大失業防止という場合に、日本労働者の四〇%近くも占めるこの婦人労働者を切り捨てる、ここに犠牲を集中するということは、本当に国民生活を守ることにはならない。そしてまた、男子労働者の賃金アップや労働条件の前進もかち取れない。まさにこの不況期こそ大企業はその社会役割りを発揮すべきであって、地方自治体、国の政治としても、婦人労働者を守る政治を実行していただきたいわけです。このことが国民経済の安定にとって欠くことのできない問題であると考えるわけであります。政府は、婦人の地位向上の国内計画とか年次計画を作成し、進めていくと言っておりますが、しかし残念ながら法的根拠のない行政指導でやっていくということになっている。しかも、いまの自治大臣のお答えや総理府総務長官のお答えだと、まことに及び腰である。御自身偏見を持っていらっしゃるのではないか、自治大臣の場合にはそう考えられかねない言い方をされておるわけであります。こういうことを考えますと、労働省が勧告をしてもそれに従わない企業に対してどうするか、この点についてももっとはっきりした方針が必要であります。  以上、婦人労働者問題について述べましたけれども、このことは男子労働者についても不当な解雇、たとえば不当労働行為に当たる解雇はもちろんですが、そのほかに公序良俗に反する解雇、あるいは労働者の抵抗を少なくするために擬装解散をやりまして、似たような会社を今度は別に立てて、仕事はちゃんとやっておる。会社が解散しますから、その間に実質上の解雇になるわけです。そういうような不当な、社会的にも不公正な解雇が行われるということになりますので、立法の検討ということももちろんありますけれども、いますぐ実行可能な行政措置として少なくともこの程度のことはやるべきだという三つの提案をしたいと思います。  こうした婦人労働者に対する差別という不当、不法な行為を含めまして、労働者に対する不当、不公正な解雇に対する政府の指導や勧告に従わない悪質な大企業に対しまして、第一に、企業名を公表すること。このくらいはできるのじゃないか。第二に、職業安定所でのあっせん、紹介を打ち切る。第三に、政府系金融機関の融資を打ち切る。このくらいの覚悟をもってやらなければ、この不当な解雇というものをなかなか規制できないのじゃないかというふうに思うわけです。  以上三つの措置をとることにつきまして、きょう参考人の労働四団体の方が見えておりまして、われわれにおつき合いいただいて大変感謝しておりますけれども、時間の関係で富塚さんに、ことにこの婦人労働者の問題、私の三つの提案についてどういうふうにお考えか、御意見を承りたい。  時間の都合で、あと政府に対する質問も言ってしまいます。  まず、婦人労働者について、推進本部の副部長である総理府総務長官に、この三つの提案についてはっきりしたお答えをいただきたい。  それから労働者全体の問題として、労働大臣からこの三つの提案についてお答えをいただきたい。
  229. 富塚三夫

    富塚参考人 婦人労働者の国内行動計画にわれわれも非常に強い関心を持って積極的に取り組んでいます。いまお話がありました三つの点ぐらいについて、企業に対してそういうことを積極的に求めていくという立場は、われわれも当然支持していきたいというふうに思います。
  230. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 御指摘の点は平等の原則にのっとって対処してまいりたい、このように思っております。
  231. 藤井勝志

    藤井国務大臣 女子なるがゆえに不利な扱いをするというこの線は改めなければなりません。改まるように行政指導をしなければなりません。もし改まらない場合、具体的なケースケースによって行政指導を一層強めていきたい、このように思います。(安田委員「三つの点についてはどうですか」と呼ぶ)三つの御提案については検討させていただきます。
  232. 安田純治

    安田委員 終わります。
  233. 中野四郎

    中野委員長 これにて安田君の質疑は終了いたしました。  次に、中馬弘毅君。
  234. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 昨年来の総理の強気の発言とはうらはらに、この不況はますます深刻化してきております。企業倒産件数は期末を迎えるに従って増加傾向にございますし、しかも負債額が大型化してきております。また、完全失業者数は月を追って増加し、新卒者の就職決定状況は非常にはかばかしくございません。そしてこれらの青年は、投げやりな気持にすらなり始めております。特にこの新卒者の、大学は出たけれども仕事がないという人たちに対して、政府はどう対処をされていくか。これは社会不安すら起こす一つの問題でございます。この人たちはもちろん勤めていないわけですから、失業保険ももらえないわけでございますが、この点に関しまして労働大臣どのような施策なり青年に夢を与えることをお持ちなのか、まずはお伺いしたいと思います。
  235. 藤井勝志

    藤井国務大臣 若年労働者の就職というのは、中高年齢者と違いまして、現在でも就職しようと思えばできない雇用状況ではございません。したがって、この問題は労働省所管と言うよりはむしろ教育問題、こういったことでまず心構えをしっかりしてもらう、その上で労働省としては、就職あっせんは特に学生職業センターといったようなもので情報を提供して、適材が適所に就職ができるように全力を尽くしたい、このように思います。
  236. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 青年の気持ちといいますのは、やはり大学を出て、大学を出なくても高校でも結構ですが、一つの教育を受けて社会の場に出て、何か国家的に有為な仕事にでもつきたい、自分の能力を生かしたいということで社会に羽ばたくわけでございますから、それに対して政府は何の施策も持ってないということでは、その人たちは先ほど申しましたような投げやりな気持ちすら起こして、そして社会不安の一因にもなるような行動に走ってしまうことが十分考えられるわけですね。いまの御答弁ですと非常に無責任な、政府として何の施策もしないということにつながるかと思うのですが、その点いかがでございますか。
  237. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御意見、確かに重大な社会問題であることは私も十分承知いたしております。ただ、いままでの教育のあり方が、どっちかというとホワイトカラー、管理職、大学といった方向へ、父兄もそうだし、若い青年諸君もそういう考え方で進学をしていく。本当に社会が求める人材とは一体何か。特に現在、技能労働者あるいはまた技術を身につけた働き手というのを社会は求めているわけでございますから、そういう方向に全体の社会、仕組みが向かっていく、こういったことが総合的になされなければ、ただ労働大臣がしっかりしなければいかぬじゃないかと言われても、簡単に問題は解決しない、私はこのように思いますから、お互いに、大きな社会問題であるという認識においては御説ごもっともでありますけれども、この問題大いにひとつ今後努力してやっていきたい、このように思います。
  238. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 ついでと言ってはなにでございますが、今後労働組合にも入ってくる若い青年たちでございます。それに対しまして、いまの問題に対しましてどのように御判断になっておるか、どなたに聞いてもよろしゅうございますが、一応中立労連の岡村さんにひとつ御意見だけでもお聞かせ願いたいと思います。
  239. 岡村恵

    ○岡村参考人 やはり学卒者が大ぜい出てくるわけですから、その人たちに対して一定の職場が保証される、こういうことが必要かと思います。ただ、職場の選択につきましては、たくさんの新卒者と多くの職場とを結びつけていかなければいけませんから、これはそれぞれの採用試験、こういったものを通じまして結びつける以外にない、こんなふうに思っておりますが、どちらにしましても、それだけの雇用量がまず保証されませんと新卒者を採用することはできませんので、私ども先ほど来申し上げておりますように、雇用の場を創出をしてもらいたい、そして失業者も出ないように、新しい卒業者も全部そこに採用できるように、そういった経済政策なりあるいは企業の施策なりを求めたいと思います。
  240. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 次の問題に移りますが、このように倒産がふえ、失業者がふえるという状況を踏まえて、一般の消費者は、物を買わず、遊びにも行かず、わずかな給料の中からせっせと貯金をするという状況でございますが、景気というのは計数的に組み立てた理論だけで動くのではなくて、社会的、心理的要因が大きく作用すると思います。将来に展望が開かれておれば、企業家は積極的な経営を行いましょうし、消費者は財布のひもを緩めるはずでございます。是非はともかくといたしまして、政府が国際的に約束した七%成長国民挙げて達成しなければならないいまの状況のときに、このたびの永大産業倒産、これは会社更生法の申請でございますけれども、これは景気の先行きに対して、特に心理的なマイナス要因になろうかと思います。それだけに、放漫経営の一企業の責任を云々するだけではなくて、政府は、関連部門に対する施策等、景気対策上、場合によっては緊急異例の措置を講じなければならないのではないか、このような気がいたしております。この観点から、永大産業問題に対する今後の対応策について質問したいと思います。  まず、大蔵大臣にお聞きいたしますが、大和銀行初め関係金融機関が永大に対しましてこのような不良貸し付けを行っていた現状を、監督官庁として大蔵大臣はどのように責任をお感じになっておるか。また、永大がたまたま表面に出ただけでございまして、不良貸し付けとなっている例は非常に多うございますし、またそのようなうわさが飛び交っております。それを今後どのように指導していかれるか、その点についてお答えをお願いします。
  241. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私たちが大和銀行その他融資先銀行から聞いたところによりますと、永大は、大型な設備投資後に石油ショックを受けて、そのために需要構造が非常に悪くなり、特に最近における合板の不況によりまして、とうとうここまで来てしまった。大和を初めとする五行は懸命な努力を続けて、その後債務利子の軽減、さらには追加融資のてこ入れ、何とかして改善したいと思って、それで社長まで送ってぎりぎりまでやりました。しかし、ここに来まして通常の手段ではとうてい再建の道はめどは立たないということを最近になって決心をして、そこで更生法にかけて、そして最後のチャンスをねらう以外にない、こういうことでございます。もちろんその場合における関連中小企業に対する手当て、あるいはユーザーに対する手当て、さらには永大の雇用者に対する手当て、こういったものにつきましては、金融機関としては最大限の案を持ってきておりますし、われわれもまたそれを強く指導しているところでございます。したがいまして、本来、取引というものは企業並びに金融機関が私的に行うものではあるけれども、それぞれが最善を尽くすという意味において、今度私は、金融機関側に放漫経営があったとは思わないのでございます。  それからさらに、もう一つお聞きになっている点は、ちょっと不明でございましたが、これがずっと連鎖的に金融界に不測の影響を及ぼすのではないかという御質問ではないかと受け取ったのでございますが、そうではございませんですか。
  242. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 そういった不良貸し付けになっている例は、永大産業だけではなくて、この問の大和ランド事件でも表面に出ましたように、裏に隠れてかなりあるような気がいたしておるわけです。これはもう、実際に調べれば数はあるわけでございますし、またうわさもあるわけでございまして、そのようなことに対して大蔵省はどのように指導されるかということでございます。
  243. 村山達雄

    ○村山国務大臣 御案内のように、高度成長時代から石油ショックを契機にいたしまして減速経済に移り、しかもまだ調整過程が経ていないわけでございます。しかもこの現象は、わが国だけでなくて世界的にそうでございますから、いうところの実体経済においては大変な問題を内蔵しているということは想像にかたくないのでございます。そういった意味におきまして、従来の債権でいまはなかなか回収がむずかしくなるというような意味の債権がかなりふえているということは恐らく想像にかたくないわけでございますが、そのためには、当然今度できましたあらゆる構造不況対策であるとかあるいは金融政策、緊急輸入政策等、あるいはさらに今度の最大の目的であります景気の急速な回復を目指す来年度の予算、こういったものを通しまして、民間経済の活力を取り戻し、そして雇用をふやすということに主眼を置いてやっていることは当然でございますけれども、万一同様のケースが出た場合には、私は、やはり金融機関の公共性という観点から、万全の措置をとってまいるつもりでございます。
  244. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 この永大産業一つの原因としまして、合板業界の問題点があろうかと思います。設備が業界で過剰能力になっておる。それからそれに対する需要が現在、将来ともかもしれませんが、ついていかない。また、韓国その他発展途上国の追い上げがあるといったようなことがございます。この合板業界の実態を踏まえまして、ただ合板だけに限らず、造船あるいは繊維もそうでございますが、たとえば発展途上国の追い上げの問題に対しましては、わが国がリーダーシップをとって、それらの国々と分野あるいは数量についての調整といったようなことをやっていく意図があるかないか、その点について農林大臣お答え願います。
  245. 中川一郎

    ○中川国務大臣 合板業界は、永大だけが厳しいのじゃなくて、一般的に厳しさがありますので、設備廃棄等を、構造改善基金というようなものを国の助成によって処理をする、そして健全なものにする、のみならず今度の不況業種にも指定をいたしまして体質改善の強化を図りたい。  なお、外国からの輸入、韓国等から一時期、昭和四十八年には一三程度もあったのですが、現在は一・五%程度に落ち込んでおりますが、今度の成長率七%の住宅対策等においてまた外国から入ってくるというようなことが予想されますので、体質の強化を図ってこれに対処するよう合理化その他を進めて、そのようなことのないように万全を期してまいりたい、指導もし、業界もそういうつもりでしっかりがんばっておりますので、まずまず心配はないのではないか、こう思っておるところでございます。
  246. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 また同社は海外投資、現地生産といったようなことを行っておるようでございます。この点に関しまして国際信用の失墜の問題、それから相手国の雇用の問題、それに関連しまして対日批判が出てくるというようなことも考えられるわけでございます。この海外投資などにつきまして、認可当局であります大蔵省はかなり慎重でなければならないと思いますが、その点についての反省はいかがでございますか。
  247. 村山達雄

    ○村山国務大臣 わが国は、マクロの立場に立って考えますと、当然自由貿易を前提にし、あるいは資本交流を前提にして初めて成り立つ国でございまして、もし保護主義が台頭してそのことがなくなれば、恐らく世界のうちで一番打撃を受けるのは日本であるに違いないと思うのでございます。そういう意味におきまして、資本交流につきましては、今後とも原則として自由の立場をとらなければならないと思っておるところでございます。しかしいろいろの場合がございます。いまお話しのような永大に関係するような問題もあるわけでございますけれども、個別的の問題は、対外的にいろいろ影響を及ぼすので、もちろん差し控えさせていただきますが、原則としては、流入につきましてもまた流出につきましても、やはりできるだけ自由の原則を今後ともとってまいりたい、かように思っておるところでございます。
  248. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 また、永大の関連下請の関係でございますが、これは大阪市の東住吉区で永大産業の一〇〇%下請をしておった会社でございますが、そこから少し陳情もございましたので、そのことも含めてお聞き申し上げるわけでございますけれども、ここは八千万ほどの債権がある、そして手形は三月五日が決済期日だということでございます。しかし、いまの倒産関連企業融資その他ではせいぜい三百万か五百万借りられるくらいなものである。そうしますと大工や左官に対する支払いも十分にできないし、また将来の仕事が保証されてなければ借りても返すめどがない、こういった声が現実の声でございます。また奈良での永大産業下請でございますが、これはそういった融資を受けられるということすら知らない。四十四年からずっと永大の下請に入っているわけでございますけれども、そういった融資が受けられることも知らない。ただ、いま二百万円の手形がひっかかっておるけれども、これはパアですわという話です。  そうしますと、たとえばいろいろな制度をつくりましても、それが下に届いていなかったら、そういう制度があるということすら知らされていなかったら、これは大変なことになるわけでございます。いままでの行政の態度というのは、何か制度さえつくったらそれで事足れりだということでございましたが、やはりもう少し下におりた対応が要るのではないか。特にきょうは全国中小企業団体中央会小山さんが来ておられますので、その点での御感想をいただきますとともに、それを指導する立場にあります通産大臣の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  249. 岸田文武

    ○岸田政府委員 一つ企業倒産いたしますと取引先が非常に大きな打撃を受ける、御指摘のとおりでございます。私どもも従来、たくさんの経験を経てまいりまして、その辺については万全を期するように努力することが必要であると痛感をしておるところでございます。  私どもは、大きな倒産が起こりますと、各通産局に本部をつくりまして、そこで情報の収集及び事態解決のためのあっせんを行うという措置を講じてまいりました。たとえば波止浜造船の場合にも同様でございます。今回の永大産業の場合におきましても、大阪に早速本部をつくりまして、いま申し上げたような仕事をやっておるところでございますが、その間におきまして、一方では金融の円滑化を図って何とかつないでいかなければならない、他方ではとりあえず、仕事がなくなる、これに仕事を与えなければいけない、この二つのことを課題にして、できるだけ問題が少なく処理できるようにしていきたいと思っておるところでございます。  従来、諸般の制度を知らなかったという向きがございましても、この際、そういう制度をうまく利用していただけるように今後とも十分指導していきたいと思います。
  250. 小山省二

    小山参考人 中小企業立場から考えますと、永大産業のように非常に信用のありました、言うならば今日までは大企業の中でも優秀な企業というふうに考えられておりました企業、それだけに今後におきます関係企業の考え方というものは、私ども非常に慎重に対処してやらなければならぬというふうに考えております。恐らくこの企業に、相当数の中小企業関係者が全面的に協力をしておるというふうに考えております。したがって、私ども、単にこれを永大産業という巨大企業倒産というふうに考えない。これを取り巻くたくさんの中小企業者を、将来どういうふうな形で善処させていくかということについて、今後いろいろの面から情報を入れながら、関係企業と協力をして対処していきたいというふうに考えております。
  251. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 先ほど来何度も申しますように、制度をつくりましても、その利用の仕方すら知らない零細企業の方々がおられるわけでございまして、そこに積極的に行政側から手を差し伸べるといったきめの細かさが、特にこういう時代には必要じゃないかという気がするわけでございます。  また、向こうの従業員の組合の執行部から伺ったのでございますが、永大グループとしましては四千名ほどの従業員がおられるようでございます。そして昨年の七月に、合理化ということで希望退職を募られて、これは非常に円満な形で千名ほどが退職されておるようでございます。今後のことについてのことでございますけれども、会社更生法で、たとえば大王製紙あるいは山陽特殊製鋼が労使話し合って、むしろ非常に好ましい形で再建ができております。また逆の場合もあることは御存じのとおりでございます。  そういうことで富塚総評事務局長に少しお聞きしたいと思うのですけれども、この執行部の方々が、今後のわれわれの生活も含めて総評の方に指導を仰ぐのだということをおっしゃっておりました。総評の責任者としましてどのように御指導されるか、その点をお伺いしておきます。
  252. 富塚三夫

    富塚参考人 私ども総評に組織をしている労働者は、約千八百名というふうに承っています。午前中冒頭に社会党の岡田先生の質問にお答えをいたしましたように、目下全国一般、全木労という組織の機関を通じて十分調査をいたしておりまして、問題点を鮮明にいたしまして、労働者全体の雇用を守っていく、そして十分いろいろな角度から話し合いを深めていくという観点に立って対処していくようにいたしたいと思います。必要によっては、先生方の方にも御協力を仰ぐような、いろいろな要請に伺いたいということも考えております。
  253. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 通産大臣にお伺いしますが、このプレハブ業界、特に住宅部門のユーザーの救済の問題でございます。  政府がいろいろな施策をいたしておられるようでございますが、このような大手でない場合、ユーザーが泣き寝入りするケースがあろうかと思います。今後、これを機に、業者間の共済制度あるいは保険制度を設けて、そのユーザーを保護するといったお考えをお持ちかどうか、その点についてお答えをお願いいたします。
  254. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回の永大問題の処理の中で、政府として一番気を使っております点は、約六万を超えるユーザー対策であります。メンテナンスを含めまして、心配のないようにやっていかなければなりませんので、それに対して十分配慮をいたしております。  それから同時に、建築中の住宅、これが千五百戸ばかりございますが、これに対する対策も十分配慮していくつもりでございます。いま関係各省と連絡をとりまして、万般の手配をしておるところでございますが、お尋ねの問題は、これからの課題としてのお尋ねだと思いますが、住宅政策を円滑に進めていく意味におきましても、やはりユーザーの心配のないようにすることが大事だと思いますので、その点につきましては、これを機会に関係各省で十分に打ち合わせをいたします。
  255. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 大蔵大臣にお伺いいたします。  これも先ほどの新聞に出ておりましたことでございますが、金融機関あたりが住宅ローンの延長を行うというような意向が出ておりました。これはそれだけローン支払い者の負担を軽くするという意味でございましょうが、さらに進めて一年支払いを猶予する、これこそまた緊急異例の事態かと思いますので、そうするようなことが考えられるものかどうか。これをやりますと、銀行はいま貸出先がなくて困っているわけでございますから、その間それだけ金利がかせげることになりますし、またローンの利用者も、いまのボーナスも残業代も低いときに、非常に助かるという形になりまして、それが一つの消費景気にまでもつながってくるかという気もするわけでございますが、この点について大蔵大臣の御意見をお伺いしておきます。
  256. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  住宅ローンの返済の猶予のお話かと思いますけれども、現在行われております住宅ローンにつきまして、すべて一年間返済を延期いたすことになりますと、資金にして約四兆円がショートすることになるわけでございます。したがいまして、いま金融機関は多額の国債の引き受けその他もございますので、資金繰りからいって非常に困難でございます。したがいまして、とりあえず来年度から、新規の貸し出しについて一年間返済を猶予するという制度をつくりまして、お借りになる方の選択によってそのような道を選んでいただく、このような措置をとることにいたしました。
  257. 中馬弘毅

    中馬(弘)委員 時間が来たので終わりますが、このように、これを機にしまして、将来に対しての不安を取り除く、そのためにもこの永大産業問題は、ただ一企業の問題としてではなくて、日本景気問題として、事後処理をちゃんとやっていただきたい、このように願うわけでございます。  以上のことを申し添えまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  258. 中野四郎

    中野委員長 これにて中馬君の質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたりまして審議に御協力をいただきまして、ありがとうございました。謹んでお礼を申し上げます。  明二十三日から分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十五分散会