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富塚参考人 いま、先生から御質問がありました点についてお答えをいたしますが、総評としては、今回の永大
産業の
倒産については、単なる一
企業の問題としてではなく、木材
産業と住宅政策との関連、あるいは
企業や金融資本などの
社会的な責任、あるいは
不況産業労働者の
雇用と生活保障など、多くの点から、きわめて重大な問題だと考えています。永大労組は、全木労などといま一体となって、具体的な
対応策の検討を行っている段階でありますが、これがまとまり次第、永大
産業や協調融資銀行団、
政府などに、具体的な問題提起をしていきたいと考えております。
現時点で、永大
産業の
倒産についての
問題点として考えていることは、木材
産業に対する
政府としての政策と指導が全く欠落していることを挙げなければならないと思います。永大
産業の主力製品であります合板は、
不況カルテルによる操業短縮を連続的に実施をいたし、五十二年は、恐らく九月を除く十一カ月間連続して操短を実施してきています。多くの合板
企業は、操短分を上回る残業を行ったり、ないしは
労働時間の三十分から一時間延長を業界ぐるみで行っておるなどして、
政府はこういった事実を知っておきながら放置をし、行政指導の責任ということについてわれわれは考えてみなければならないだろうというふうに思います。
また第二は、
中小企業安定審議会に出された資料によりますと、合板一枚当たりの製造コストは、四ミリ合板換算で、五十年一月は二百九十円、五十一年一月は二百七十九円、五十二年一月は三百十八円と、ほぼ横ばいの
状態となっていますが、製造原価の中の原木代は、五十年一月の一枚当たり百四十四円が、五十二年一月では百八十八円と、実に三〇%も上昇しています。労賃は、五十年一月の合板一枚当たり七十一円でしたが、五十一年一月は五十九円に、五十二年一月は五十五円と、原木とは逆に三〇%も低下しています。このことは、原木高製品安の
状況を明らかにしていますし、同時に、労賃コストの低下は、四十八年に約五万四千人であった合板
労働者が三〇%
程度首を切られ、
労働強化や賃上げ抑制、一時金の削減などで
労働者に犠牲が強いられてきているのであります。このため
労働生産性も、
省力化投資が全くない
状況の中で大幅に上昇している。
以上のことは、同時に、商社から原木の供給を受けて、製品としての合板は商社ルートということが、明らかに完全な商社支配になっている。原木高の製品安という、そういったことに矛盾ができているのでありますが、これに何らの抵抗も合板
企業ができないという実態にある。こうした矛盾という弱い
立場にある
状況についても考えてみるべきだったのではないかと思います。
また、第三は、木材
産業は、合板だけでなくて、製材業も家具、木工など、共通して深刻な
経営困難に陥っています。この原因は、言うまでもなく住宅
建設の極度の低下によるものであり、
政府の五十年代前期
経済計画で目標として示しました、五十一年から五十五年までの五年間における八百六十万戸の住宅
建設が目標どおりに進んでいたとするならば、合板や製材の需給ギャップは大幅に改善されたことは明らかだったと思います。しかし、五十一年、五十二年の二カ年間の住宅
建設戸数は約三百万戸で、目標を大幅に下回っております。住宅
建設の最大のネックである宅地
対策などについて何らの具体策がなく、木材
産業の危機は、
政府の住宅政策の不在が大きな要因をなしていると思います。このような
状態では、永大
産業のような不幸な
事態に追い込まれている
企業が、木材
産業では続発する危険を内包していると見ることができましょう。
政府は早急に、実効の上がる抜本的な住宅
対策を責任を持って確立すべきだと思います。
第四は、今回の永大
産業の
倒産をめぐる新聞報道の特徴にもありますように、計画的
倒産、
政府の
景気てこ入れ策に拍車をかけるためのスケープゴートなどという報道が広範になされておりますが、大和銀行を
中心とする協調融資銀行団内部の無責任な対処を含めて、銀行や商社の
社会的責任の面で多くの疑念を持たざるを得ません。また、
大蔵省、東京、大阪両証券
取引所による永大
産業株の売買
内容調査、株価形成が本当に公正だったかどうかなどの問題も次々に出てきておりますが、これらの疑問についても徹底的に解明し、すべての関係者に十分その経過を明らかにされなくてはなりませんし、
問題点は厳正に出されなくてはならないと思います。私は、金融資本が
産業資本への介入といいますか、もっと
社会的責任を十分ここで考えるべきなのではないかという点について、
政府はもちろんのこと、会社更生法の適用について判断をする裁判所でも、これらの点について関係者に明らかにするように、
社会的義務を負っていただきたいと思います。
また・昨年九月期現在で、東京証券
取引所第一部、第二部上場の八十一の
企業が債務超過
企業となっておりまして、これらの
企業は銀行などに支えられているのは明らかでありますが、今回の永大
産業のように、銀行などの金融機関の利害得失で、いつ
倒産という最悪の
事態に見舞われるかしれないというのが、現実の不安として残されているものと思います。
社会的にも
経済的にも重大な問題であり、そうした
事態の発生を事前に
防止するために具体的な
対策が必要だと思います。
二月二十日、
政府と日銀は永大
産業の
倒産による連鎖
倒産防止策などを決定したことが報道されていますが、
関連倒産防止やユーザー
対策とあわせて、永大
産業と関連
企業に働く
労働者の
雇用と生活の確保について万全の
措置をとることを、緊急
対策の
一つとして責任を持って
政府は考えていただきたいと思います。
なお、いま関係組合、関係者と十分
問題点については
調査検討中でありまして、それがまとまり次第、
政府初め関係方面にわれわれ総評の
立場からの強い要請をする所存であります。
以上です