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1978-02-21 第84回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十一日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷川 寛三君    根本龍太郎君       原田昇左右君    藤田 義光君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    渡部 恒三君       井上 普方君    石野 久男君       岡田 利春君    岡田 春夫君       川俣健二郎君    小林  進君       兒玉 末男君    藤田 高敏君       細谷 治嘉君    横路 孝弘君       坂井 弘一君    坂口  力君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    高橋 高望君       荒木  宏君    東中 光雄君       大原 一三君    小林 正巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省民事局長 香川 保一君         大蔵大臣官房審         議官      加藤 隆司君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁次長   谷口  昇君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部大臣官房会         計課長     西崎 清久君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省行政局公         務員部長    塩田  章君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     原田昇左右君   白浜 仁吉君     谷川 寛三君   石橋 政嗣君     細谷 治嘉君   矢野 絢也君     坂口  力君   高橋 高望君     河村  勝君   工藤  晃君     荒木  宏君   東中 光雄君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     白浜 仁吉君   原田昇左右君     川崎 秀二君   細谷 治嘉君     石橋 政嗣君   坂口  力君     矢野 絢也君   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   川崎 秀二君     谷川 寛三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。  本日は、理事会協議により、特に福田内閣総理大臣出席を求め質疑を行います。金子一平君。
  3. 金子一平

    金子(一)委員 私は、自由民主党の立場から、きょうは減税問題を中心にいたしまして政府考え方を伺いたいと考えます。  野党五党の修正案が出そろいまして、所得税で五千五百億円、住民税で千二百億円を中心とした修正案が提出されました。  昨年の予算審議で、三千億の所得税減税による予算修正が行われました。私はこの席から、三千億の所得減税が、個人消費百七兆を予想される五十二年度において何ほどの景気刺激効果があろうか、特に赤字国債を増発しての減税でございますから、その点についての疑問を率直に申し上げたのでございますが、実際問題として、この三千億の所得減税がどれだけの効果を上げたかにつきましては今日でも大きな疑問を持っております。  今回の修正案を見ますと、この所得税住民税減税が、景気刺激目的としたものなのか、社会防衛目的としたものか、その目的がきわめてあいまいでありますし、特に新年度の個人消費百二十兆前後でございますが、これだけの減税額がプラスされることによって、一体どれだけ景気刺激効果が上がるのだろうか。また、その必要があるのかどうか。あるいは財源についても大変むずかしい問題がございます。いろいろ提案されておりますけれども、何と言おうか、場当たりで人気取りの性格がきわめて強い点に多大の疑問と危惧の念を抱かざるを得ないのでございます。  政府は、そもそも五十三年度予算編成に当たりまして、当面の不況克服景気浮揚を眼目にして七%の経済成長目標を掲げて、そのために、公共事業中心とする財政主導型の臨時異例措置を講ぜられたのでございます。それは、私は総理の大変な勇気と決断が要ったことと思います。国民の多数は、この予算が一刻も早く成立して、その効果が的確にあらわれることを待望いたしていると思います。  総理が今回の予算編成に当たって一番苦心されました点は、公債依存度が実に実質三七%に達するというきわめて異常な事態に達しておりますから、いかにして速やかにかような事態から脱却するか、恐らくこの点であろうと思います。  さきに予算委員会に提出されました財政収支試算一つ試算で、審議の過程で指摘されたように、いろいろな検討すべき問題があろうかと思います。あの試算で直ちに将来の増税をどうするとか、その時期その額をどうするかということをきめつけることはできないのは、私はまさにそのとおりであると考えます。しかし、試算の計数を離れても、わが国財政が今日きわめて憂慮すべき事態になっているばかりでなく、先行きが大変心配される。これはだれの目にも私は明らかであると思うのでありますが、私は、今日の事態ではもう甘やかしは許されないのだという現実の深刻な事態を、率直にもっと政府国民に訴える必要があろうかと思うのであります。  しかも、五十三年度予算では財源不足を補うために、こういうことはいまだかつてなかったのでございますが、五月分の税収まで取り込んで行っている。会社で言えば粉飾決算ですね、それでタコ配をやっているというのが今日の事態であります。  そこで政府は、今後どのような基本的な姿勢でこれからの財政運営を図り、財政再建に取り組むかということをまずお伺いいたしたいと思うのでありますが、しかし、同時に考えなければならないのは、民間設備投資個人消費が動いて景気が回復するためには、少なくとも二、三年先までの、先行きの明るい経済見通しが立つことが絶対に必要でございます。そのためにやはり大事なことは、財政経済犠牲にするようなことがあってもならないし、また同時に、経済財政を破綻させ犠牲にするようなことがあってもいけません。そこのバランスのとり方が、私は政府当局としては一番御苦心を願っている点だと思うのでございますが、かようなむずかしい財政事情のもとでここ数年間の経済運営をどう持っていくか、その中期の展望を、この際、総理自身の口から国民の前に明らかにしていただきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 金子さんから、財政が大変むずかしい状態である、この問題と経済をどういうふうにあわせ対処していくか、こういうお尋ねでございますが、私はやはり国の基本は経済である、こういうふうに考えます。その経済を踏まえまして財政運営されるし、その財政をどういうふうに運営していくかにつきまして、財政はまたこれに影響してくる、こういう立場にあるわけでありますが、財政がまた危殆に瀕するということになれば、われわれの願うところの経済社会、これもまた重大なる影響を受ける、こういうことになります。非常に平らかに言いますれば、財政経済も一体としてその健全性を保持していかなければならぬ、このように考えるわけであります。  ただ、ただいまこの時点の見方といたしますと、多少財政にしわがいきましてもこれは経済の方を助けるほかはない、私はこういう認識でありまして、そこで、五十三年度予算におきましてはこれは臨時異例財政措置をとる、そして経済再建を図る、このような考え方を採用するということにいたしたわけであります。  そうしますと、この臨時異例措置としてとりましたこの財政政策、そのひずみがかなりこれから先も響いていくだろう、こういうふうに思うわけであります。臨時異例と申しましても、五十三年度でその異例措置影響が収斂される、こういうことにはならぬと思う。これからかなりの期間にわたりまして、今度とります財政異例措置、それの影響というものを覚悟しなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。  そういう中で、やはり中期的な展望を、財政につきましても、またその基盤となる経済につきましても持つべきである、このように考えまするが、まず経済につきましては、この五年ぐらいを大体実質六%成長、これを目指していきたいのであります。時代の流れ、つまり資源エネルギー有限というようなことを考えまするときに、成長の高さ、これは低い方が本当は安全なのです。しかし、この国内の社会をどうやっていくか、雇用をどういうふうに維持していくかというようなことを考えますと、そう低い成長はこれは許されない。やはり高い成長が必要だ。その成長の高いことを求める要因とそれから低くあった方がいいというそういう要因と、その接点、これが大体六%というところじゃないかというふうに思うのですが、しかし、今日この時点における経済情勢、これは不況感が非常に強い。その根源は、これは企業が過剰の設備を抱えておる、つまりデフレギャップ、そういう状態にあるわけでありますが、そのデフレギャップ、つまり過剰設備状態を早く解消しなきゃならぬ、そういうことで全体のわが国経済の規模、スケールを持ち上げる。そういうことで七%成長、五十三年度はそういう体制をとりますが、しかし、その五十三年度でデフレギャップが全部解消されるかというと、多少まだ残るところがあるだろうと思うのです。  そういうことを考えますときに、五十四年度、これにおきましては五年間平均六%というものの、私はかなり高い成長目標を実現しなければならない、そのように考えているのです。私は、先般の当委員会で七%に近い六%台ということを展望しておるということを申し上げましたが、そのような考え方をとるべきだ。また五十五年度はその五十四年度の水準よりは若干低目に持っていく、だんだん低目に持っていくというようなことを考えていくべきであろう、このように考えますが、そういう成長の高さを当分維持いたしまして、同時にいわゆる構造不況業種対策、これを徹底させまして早く安定成長路線への軟着陸を実現いたしたい、このように考えております。
  5. 金子一平

    金子(一)委員 先般御提出になりました財政収支試算、あのC案D案では毎年一兆円とか二兆円の増税を予想しておられまするが、これは言うべくしてできないことであろうと私は率直に考えます。しかし、今後の財政再建考えまする場合に、やはりこれから所得税中心増税時代になるのか、あるいは政府税調で提案しておるような一般消費税創設導入というようなことを考えるのか、これは私は、政府としても一真剣に取り組んでいただきたいと思うのであります。  あの一般消費税の構想につきましては、税の仕組みその他全然輪郭が明確になっておりません。私は、速やかに政府日本的風土のもとに、こういった一般消費税ならば何とか国民の共感と協力が得られるなというような案をおつくりになって、イギリス政府がやったように、ブルーペーパーホワイトペーパーか知りませんけれども、一年なり二年の歳月を要して、これからの経済財政再建するにはこれしかないのですよというPRをしっかりこれからやっていただきたい。これは御提案ですから答弁は要りません。  そこで、公共事業減税による景気拡大雇用創出効果が当委員会の大きな議論の種になっておりまするが、重ねてでございまするけれども、この点に関する政府考え方をこの際一層明確にしておいていただきたいと思うのでございます。経済企画庁は、先般モデル計算の数字を御発表になって、いろいろ論議を呼んでおりまするけれども、企画庁長官、ひとつその点についてどうお考えになっておりまするか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつて石油危機以前につくられましたモデルでは、公共投資効果は、土地代を引きましてあと初年度で一・九ぐらいということが言われておったわけでございますけれども、その後に開発されましたモデルでは一・三ぐらいであろうか、それに対して減税効果はほぼ〇・七、八ということが言われておるわけでございます。ただ、これには、もう金子委員がよく御承知のとおり、いろいろな前提、想定がございますので、私は、モデルのとおり一概にこうこうだということは即断してはならないと存じますけれども、概してモデルによりますと、公共投資効果の方が初年度はかなり高いということは、一般論としては申し上げられるのではないかと思っております。
  7. 金子一平

    金子(一)委員 マクロ的な効果公共事業の方が大きいことは、私は疑いないと思っております。今日、日本経済で非常に厄介な問題は、諸建材部門の大きな過剰在庫製造工業における大きな過剰設備の問題であります。減税すれば消費拡大するとしましても、それはむしろサービス部門の肥大で経済拡大につながることが多いのでございまして、いま申しました二つの問題の解決には、実は余り資するところが少ないのではないかと考えておるのでございます。  そこで、公共投資拡大による景気浮揚効果を確立するためには、世間で間々言われておるような、とてもこれだけ大きな公共事業は消化し切れないぞというような疑念をこの際一掃しておく必要があると思います。そこで資材用地建設技能者確保設計発注円滑化補助金交付事務簡素合理化について、政府は万全を期しておられると思いまするが、その点重ねて明確にしていただきたい。  また、地方公共団体公共事業が円滑に消化されるための施策についても遺憾なき対策を講じておられるか、建設大臣並びに自治大臣から御答弁をお願いいたします。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 第一に資材関係でございますが、これは金子委員承知のように、生産能力に余裕が十分あるわけでございます。昨年暮れまでセメント棒鋼あるいは塩化ビニールそのほか主要な資材、皆不況カルテルを結んでおったという実情でありまするから、生産能力についてはもう心配がないのですが、価格面についてどうか、これは十分関係省庁連絡をとって監視をしていく必要がある。もしそれがどうしてもいけないということであれば、所要の措置を講ずる考えでございます。  それから労働者技能労働関係でございますが、全般的に雇用情勢というものは、百十万からの失業者もあるのでございまするからそう心配ないわけでありますが、さて技術労務者をどうするか。これは昨年の一次補正以来、公共事業でまた財政を主にして景気浮揚しようという大きな方針を立てて、もうかれこれ半年にもなるのでありますし、その間の主要業界状況を見ますと、技能者養成に相当努力しておるようであります。また、労働省とも緊密な連絡の上で、技能労務者確保には努めてまいりたいと思います。  それからもう一つ用地の方でございますが、建設省関係で大体五十三年度一万四千ヘクタールくらいな用地が必要でございますが、直轄補助あるいは公団等用地ストックがいまどれくらいあるかというと、三万ヘクタールくらいございます。また、事業実施の上には用地の準備のあるものを優先するということで、まず無難にいけるのではないか。このストックを使い切ってはいけませんから、適正な価格であれば逐次補充をしていく、買い付けていくということで、公共事業からの用地の高騰を招く要因は少ない、こう思うのであります。  それから補助金関係事務、それから設計なんかについての標準設計活用、コンサルタントの活用などいろいろ工夫をいたしまして、中央、地方を通じての設計能力不足等には対応してまいりたい、こう思っております。
  9. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方団体におきまして公共事業を消化いたしますことは決して容易であるとは言えないと思うのでありますけれども、しかし万般の措置が講ぜられつつありますので、結果的には私は消化が可能である、かような判断をいたしておるのでございます。  地方実情金子委員も御承知のように、ことしはこの道路、来年はこの河川をということで計画的に事業をずっと持っておるのでありますから、これからやらなければならぬ手持ち量が五十三年度においては大幅に消化できる、かようなことでございますから、地方団体におきましては、その団体団体でおのおの推進体制をとっておるのでありまして、たとえば推進本部を設けますとか協議会を持つとか、さようなことで総合的に事を進める、かような体制をとっております。ことに自治省といたしましては、交付税額の増額を図ってまいりまして地元負担心配がないようにいたしますとか、あるいは地方債も九五%を充当いたす、かような措置をとってまいっておりますので、まず大丈夫、消化できる、私はかような判断をいたしておるところであります。
  10. 金子一平

    金子(一)委員 きょうは通産大臣お見えになっておりませんから要望だけしておきますけれども、すでに当委員会で取り上げられております。たとえばセメント、生コンあるいは小型棒鋼、こういったものの価格暴騰のうわさが出ますと、一波万波を呼ぶ心配がございます。どうかひとつ、価格の安定と供給の面について十分な行政指導をやっていただきたい、このことを特に御要望申し上げておきます。  そこで、最近は公共事業所得減税か、さらには社会保障かというような問題を、もっぱら景気循環的な景気拡大効果だけで論議されておりますけれども、これは私は問題があると思うのであります。中長期の展望に立って、資源配分適正化という観点から公共事業の拡充をいま見直す必要があるのじゃないかという感じがいたすのでございます。  たとえば、社会資本整備状況日本では諸外国と比べてどうなっておるのか、どの水準にあるのか。また、狂乱物価抑制のために、総理承知のとおり、四十八年以降公共事業を一時抑えたことがありますが、そのおくれをこの際取り戻す必要はないのかどうか。さらには、災害国としての国土保全基盤になる治山治水投資確保することが日本としては大事なことではなかろうか。農業基盤整備水産投資はもちろんでございまするけれども、特に今日、エネルギー科学技術関係投資必要性ということを改めて考え直さなければならぬ時期に来ておると思うのでございますが、この点についての政府の御見解を承りたいと思います。簡単で結構でございます。
  11. 村山達雄

    村山国務大臣 いま金子委員のおっしゃったことは、私も空く、中長期的に見ますと同感でございます。税負担は御案内のように、国際比較をとってみますと大体三分の二くらい、特に所得税は半分くらいというところでございます。また、社会保険等に対する国庫負担の割合をとってみましても、これは非常に低位にある。それから振替所得は、まだ現在では高齢化が進んでおりませんので、振替所得そのものはいま低位にありますが、やがて高齢化になるときに現行制度でどれぐらいになるかということを計算してみますと、これはほとんど先進諸外国並みにいくわけでございます。片や御指摘のように、公共事業の方は非常におくれておりまして、特に生活関連施設等こういうものが非常におくれておりますので、国の全体の中長期的な制度のあり方から見ますと、まさしくいま金子委員がおっしゃったように、単に当面の景気ということだけでなくて、将来の資源配分という立場から考えましても、私は、今日われわれが提案している公共事業中心考え方の方が整合性を持っている、かように思っているところでございます。
  12. 金子一平

    金子(一)委員 そこで減税問題について触れたいと思うのでございまするが、所得税の問題は、課税最低限は今日世界最高水準にある、課税水準もかなり低いというようなことになっております。私は、この際大蔵大臣に伺っておきたいと思いまするのは、減税を賃上げの補完に使ったらどうかという考えに対する御意見はどうかということでございます。最近、物価は非常に安定いたしております。相当実質所得は伸びておると思うのであります。国も非常な赤字をここ数年出しております。企業も恐らくそういう状況でございましょう。日本外国と違って、国と企業で赤字を負担して国民の生活防衛をやっておるのが現在の姿であることは御承知のとおり。日銀の資料なり家計調査等で最近の実質所得の伸びがどうなっておるか、大蔵大臣、ひとつわかったら皆さんに明らかにしていただきたいと思います。
  13. 村山達雄

    村山国務大臣 いま金子委員の指摘された点も、まさに非常に大事なポイントだと思っているのでございます。雇用者所得の実質賃金の増加割合でございますが、これは四十八年を一〇〇といたしますと、五十二年で一一四の程度まで上がっております。片方、それに対しまして、企業収益は、四十八年のピークの上半期を一〇〇にいたしますと、去年の九月現在は八七くらいのところに落ちているわけでございます。財政の方は、御案内のように公債依存度だけでもってずっと見ましても、四十八年が一六・四、ことしは三二でございますけれども、前倒しがございますから三七%、こういうような状況でございまして、この辺がドイツ、アメリカに比べて非常に整合性が悪いということをわれわれは考えておるわけでございます。
  14. 金子一平

    金子(一)委員 次に教育費減税でございますけれども、教育に対する助成のあり方としては、父兄を通ずる方法の方がいいのか、それとも学校を通ずる方法がよいのかということを十分論議した上で後者をとることに決定して、五十年の私学振興助成法が議員立法をされた経緯がございます。この点は今日も変わってないと私は思うのです。こういった個々的な事情まで所得税で賄えというのは、これは一つ一つ取り上げたら寒冷地から災害常襲地帯から次々片づけなければいかぬので、所得税体系で手当てをすることは不適当であると考えます。  また住宅減税も、ことしは相当思い切った住宅ローン控除をやっております。今度は中古住宅を含めるという御要望のようでありますけれども、この住宅ローン減税は住宅の新築を促進するために考え制度なので、そこまで広げることが果たして今日必要なのかどうかと考えるのでありまするが、簡単で結構です。大蔵大臣、どうぞ。
  15. 村山達雄

    村山国務大臣 教育減税につきましては、再々申し上げているように、私はやはり、歳出でいま私立学校の助成をやっておりますが、その方が整合性があると思うのでございます。特に教育減税を仮に私学と官公立の差額をやるというようなことになりますれば、義務教育だけで終わる人は一体どうしてくれるのかというような問題にもなりましょうし、いま御指摘のように、個々の生計費の中身を分析して、そして高いものにやるということになれば、あらゆるところに響くわけでございまして、その点は課税最低限で包括的に賄っておるわけでございますから、所得税の基本的な仕組みが崩れることは委員御指摘のとおりでございます。  それから、住宅ローンにつきましては、まさに景気対策でございまして、中古住宅についてやるということになれば、それよりももっと下の階級の、家賃を払っている者の家賃を引いてくれということに当然発展するわけでございまして、これはやはり景気対策というところで限定せざるを得ないと考えております。
  16. 金子一平

    金子(一)委員 住民税減税が提案されております。従来から、所得税課税最低限をそろえるというような議論はしばしば繰り返されて行われておりまするけれども、地方財政が動かない現状で、少所得者にもひとつ組合費のつもりで分担してくれよということで今日の課税最低限が決まっておるわけでございまするけれども、この時点において住民税減税が果たしてできるのかどうか。課税事務がどんどん進行している現状だろうと思う。そこら辺の自治大臣考え方と、特に所得税減税をやればすぐ財政補てんをやらなければいかぬのですが、とてもそれは国ではカバーできませんよということもございましょう。簡単にひとつ自治大臣のお考え方を伺っておきます。
  17. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方財政がきわめて厳しい状況でありますことは金子委員承知のとおりでございまして、五十三年度におきましても三兆円を超えますような財源不足が生じますのをようやく埋めておる、かような状況でございます。ことに住民税は、所得税のような所得配分の性格を持つものではございませんで、その地域その地域に住まっておられます人が、その団体で必要といたします経費を自分たちの力で賄っていく、かような負担分任の考え方が基本に相なっておるのでございまして、したがって住民税減税はきわめてむずかしいと言わざるを得ないのでございます。ことに、いま御指摘がございましたように、住民税は前年の所得に対しまする課税でございますので、すでに事務的な手続はスタートいたしておる、かような状況でもございまして、きわめて困難だ、かように判断をいたしておるところであります。
  18. 金子一平

    金子(一)委員 次に、年金の問題について少し触れてみたいと思うのでございまするが、高福祉の実現のためには社会保障費用の増大は避けられないのが当然でございます。年金制度国民の老後生活の安定に果たす役割りはますます重要になっていくと考えられまするけれども、政府は将来の年金制度のあり方についてどのような考え方を持ち、青写真を描いておられるのか。公的年金制度全体の将来の給付費は一体どの程度の規模になると見込んでおられるのか、ひとつ二十一世紀まで見通して厚生大臣からお答えいただきたいと思います。
  19. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 年金制度の長期的な見込みをほぼ現行の五十一年度価格といいますか、そういうものでその後の物価や賃金の上昇等一定の想定をいたしまして考えてみますと、ちょうど二十一世紀、すなわち昭和七十五年、あるいは二十一世紀の初頭に当たります昭和八十五年等を考えてみますと、国民年金、厚生年金あるいは船員保険、共済組合等々いろいろ考えてみまして、国民所得に対する給付費の割合が一三%を超えることに年金だけでなる。その際には国民の負担も、現在の名目約二千七百円と考えますものが、名目で大体七万八千円ちょっとの負担をいたしませんと成り立たない計算をいたしておるわけでございまして、もちろん、そのときの給付水準は非常に高いものになるわけでございますが、私ども考えますのに、国民の負担と、それからさらに将来はともかくとしてここ当面十年ぐらいの——国民年金は発足してからちょうど十七年目でございますから、この四月から給付を受けるような人たちのことを頭に置いて考えますと、この改善はどうしてもやっていかなければならない。そういう点をいろいろ考えますと、どうしてもこの際は制度全般にわたって根本的に再検討しておかなければならぬのではなかろうか、かように考えておりますので、老齢化社会を迎え、しかも非常に急速に老齢化社会に移行する日本の国におきましては、相互の、全体の組み立てに影響するような考え方を私どもは実は軽々にとれない、こう思っております。
  20. 金子一平

    金子(一)委員 年金制度が将来とも健全に運営されていくためには、長期的な費用負担の増大について国民の合意を得ることが必要であると思います。そのためには、ひとつ早く、政府としましてはあるべき姿を描いて国民に訴えていただきたい。  それから、長期的な費用負担のこういった問題を考えますと、景気の変動という短期的な視野から年金体系を簡単に変更するということは適当でないと私は考えております。現在、野党各党から経過的な老齢年金の引き上げ、五年、十年年金の引き上げが主張されておりますけれども、こういった観点から、政府はこの点についてどうお考えになっておりますか。私は、政府は、福祉年金と生活扶助とをごちゃまぜにしたような議論がまかり通るのを整理するためにも、年金の性格なり位置づけをはっきりさせる必要があると思うのですが、この点はいかがでございましょうか。
  21. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先ほどちょっと触れましたように、福祉年金あるいは五年年金、十年年金等全体を考えてみますと、これは非常に拠出制の年金の全体に絡んでまいりますので、したがって、福祉年金だけを取り上げたり、あるいは五年年金の人たちだけが低いからというのでこれを検討いたしますと、拠出制年金の全体の体系に影響してまいります。したがって、私どもは、先ほど申し上げましたような年金制度の根本的なあり方について、しかも最低の所得保障はいかにあるべきかということを検討いたしまして方針を決めるまでは、経過年金並びに短期の積立年金の給付額をどこか一ついじるというような考え方は、どうしてもいま直ちに賛成できないわけでございまして、相当時間をかけて根本的に検討させていただきたいと思っておるわけでございます。
  22. 金子一平

    金子(一)委員 最後に、時間がございませんので、財源の問題について簡単に触れてみたいと思うのでございますが、野党各党の要求しておられる中には景気浮揚と逆行するような考え方のものも相当あります。たとえば会社臨時特別税を復活しろとか、交際費課税を強化しろとか、有価証券取引税の税率をさらに上げろとか、いろいろ出ております。  そこで私は、その根底には、やはり去る二月十五日に発表された東京都の企業税制調査プロジェクトチームの報告書に述べておるように、相変わらず、企業会計上引き当てを義務づけられておる引当金や配当にかかる所得税と法人税の二重課税の調整のために設けられておる配当軽課措置あるいは配当控除制度までも不公正税制であるかのごとく誤解をしておられる点があるのでございます。かようなゆがんだ考え方に基づいて大企業の法人税負担は中小企業のそれに比べて大幅に軽減されておるやに国民に訴えることは、これは大変国民をミスリードするものだと思うのでございますが、この点について大蔵大臣の明快な答弁を求めます。
  23. 村山達雄

    村山国務大臣 不公平税制につきましては是正をしなければならぬことは当然でございますが、何が不公平であるかということにつきましていろいろ見解が分かれ、ときには誤解があるように思うのでございます。  ただいま東京都の例を挙げられましたが、あの中には、いま御指摘のように、商法あるいは企業会計原則上当然認められ、またやらなければならないものまで不公平税制とやっているとか、あるいは法人税の基本的仕組みとして二重課税排除の立場に立っております配当軽課あるいは配当受取金の軽減、こういった二重課税の排除の点までこれは不公平税制だ、こう言っておるわけでございますので、こういう点はその議論を整理してかからねばならぬと思います。  それから、もとより不公平は直していかなければなりませんので、ここ数年来、企業の関係につきましては、おととしは千何百億、去年も四、五百億、ことしもまた五百億程度の平年度の整理縮減を図っているところでございまして、最近において負担増を求めなければならないというときに、どちらかと申しますと、政策的考慮ももとより必要でございますけれども、やはり税の基本は負担の公平ということが原則でありますので、その方に重点を置きつつ整理合理化を進めているところでございます。
  24. 金子一平

    金子(一)委員 終わりました。
  25. 中野四郎

    中野委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、主として税制問題について若干の質問をしてみたいと思います。  最初に、大蔵大臣にお尋ねいたしますが、五十三年度における税制として、酒税の引き上げあるいは石油税の新設あるいは有価証券取引税等の増税が行われるわけでございますが、まず、その金額を教えていただきたいと思います。
  27. 村山達雄

    村山国務大臣 酒税の増税額でございますが、初年度千七百七十億、平年度千九百七十億でございます。それから石油税の方は初年度千六百二十億、平年度二千百七十億でございます。それから有価証券取引税の方は、いまここに資料を持っておりませんが、三百億程度ではなかったかと思っております。——三百三十億でございます。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 いまお答えをいただいた数字を集計いたしますと、三千七百二十億円の増税、こういうことになりますが、それでよろしいですか。
  29. 村山達雄

    村山国務大臣 そのとおりでございます。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 それでは次に、減税の方はどうなっておりますか。
  31. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり、一般減税政府案に織り込まれておりません。ただ、政策減税といたしまして、住宅取得控除の拡充で、民間ローンを借り入れて家をお建てになった方に減税をすることになっております。その減収額が、初年度四十億、平年度百二十億と見積もっております。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 住宅取得控除の拡充による減収が初年度四十億、こういうお答えでございますが、国会でも問題になっておりました土地重課税についてはどういうふうに見積もっていらっしゃいますか。
  33. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 租税特別措置法によりまして、御承知の、法人が土地を売りました場合の差益につきましての重課制度がございまして、そのうちの優良宅地を供給いたします場合の適用除外要件の中で、従来適正利益というものを要件にいたしておりましたものを、今回適正価格に置きかえておりますが、これによります減収というものは推計ができない性質のものでございまして、計上いたしておりません。
  34. 細谷治嘉

    細谷委員 土地重課税について適正利益率から適正価格、こういうふうに置きかえたわけであるが、技術的に困難だということはわかりますけれども、土地税制の問題をめぐってかなり厳しいやりとりが昨年来国会で行われてきたわけですよ。にもかかわらず、技術的に困難だ、見積もりは困難だという形で土地税制、しかも土地重課税の問題について、減になるのかならないのか、数字の見積もりができないということは、まことにけげんな話と思うのですよ。私は承服できないのですが、いかがですか。
  35. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ちょっと時間をとりますので恐縮でございますが、保有税と違いまして譲渡課税でございますから、土地を売った場合に初めて負担があり、税収があるわけでございます。それで、従来は、一部で言われておりましたことは、適正価格よりは下なんだけれども、適正価格いっぱいで売ると適正利益を超えてしまうので、そこで税が重くなるから売れないんだ、それが優良宅地の供給を阻害しているんだ、そういう議論がございまして、今回、基本的な枠組みは動かさない中で、優良宅地を供給する場合には、適正価格の範囲内ならば適正利益を超えていてもいいではないかということで改正をしたわけでございますので、従来売れなかったものがこれから売られるであろうということを政策的に期待しているわけでございます。したがいまして、従来から売らなかったものでございますから、その分が減収になるという考え方に必ずしもならないわけでございまして、売ってくれれば通常の法人税はむしろ入ってくるわけでございます。二〇%の部分は今回は除外になりましたけれども、そういうケースは売ったことによって利益はあるわけでございます。それは、法人税は入ってくるわけでございまして、むしろそこだけを考えますと、今回の改正によって増収になるのかもしれない、つまり減収というふうに考えない方がいいのかもしれないという性質のものでございまして、強いて減収額を仮定計算をして推計するということをいたしておりません。ということは、そもそも土地譲渡益を重課いたしましたときにも増収を計上しなかったわけでございます。
  36. 細谷治嘉

    細谷委員 いまのお答えについて、私は了解できないのですよ。税というものは、所得税にしても何にしても、すべて仮定を前提として一年間の見積もりをしているでしょう。同様のことで、土地重課税では売ってみなければわからぬ、それはそのとおりでしょう、確定は。そのとおりでしょうけれども、たとえば五十一年度では四百八十億円の収入があっておる、こういうことでございますから、一年間の想定、そして私も思うのでありますし、また専門家も言っておるわけでありますけれども、今度の適正利益率から適正価格に変えたことによって税収は減りこそすれふえることはないというのが一般的な見方ですよ。そうでしょう。ですから、これほど問題になったことについて、技術的にむずかしいから、仮定の問題がありますから見積もりできませんということは、これはおかしな話です。私は了解できません。  時間がありませんが、この辺については、やはり皆さんがみんな関心を持っている。しかも現に、数日前に発表されたように、土地はじりじりと上がってきているじゃありませんか。しかも、この土地税制の、お言葉にありました特別土地保有税とこの重課税の緩和によって土地の値上がりを促進するのではないかということが懸念されておるわけですよ。総理大臣は、土地税制の基本は変えないと言っておりますけれども、手直ししたことは間違いない。手直ししたからには、どの程度税収に移動があるということは見積もってこれを国会に示す、国民に示すということは、私はぜひやっていただきたいと思う。きょうお答えできないなら、ひとつ大蔵大臣、その辺を見積もってその資料を出していただきたいと思います。
  37. 村山達雄

    村山国務大臣 ごもっともな御要求なのでございますが、また非常にむずかしいということを御理解いただきたいと思うのでございます。今度、二〇%の土地重課をやっておりますが、そのうち、いま主税局長が申しましたように、適正利益率要件を外したわけでございます。税制調査会で一番問題になりましたのは、一体外す必要があるかどうか。言いかえますならば、適正利益率で計算した場合の供給価格は一体幾らになるのか、それから公示価格によるものは一体幾らになるのか、その公示価格から下の場合のところだけが促進されるわけでございます。そこで、デベロッパーその他にその点を明らかにしてもらわない限り土地税制の仕組みを変えるわけにはいかぬというのが政府の税制調査会の立場であったわけでございます。しかし、残念ながら、一番よく知っているはずのデベロッパーが実はそういう計算できませんということなのでございまして、まだそれは実際に売っていないものでございますから、なかなかわからぬわけでございます。したがって、私は理論的には、確かに二重の制限があるよりも一つの制限にした方が促進になる、効果について疑わぬのでございますが、この量的な数字を出せと言われますと、肝心のところのデベロッパーがまだ売ってもみないものでございますから、適正利益率なんか計算できないわけでございます。そういうことが一つ。  それからもう一つ、いま主税局長が申し上げたのは、これによって土地供給が、理論的にはよけい出るはずでございますが、その場合には当然法人税収の方で一般に出てくるであろう、そういうことを考えますと、この点は減収幾らというふうに、理論的にはよくわかるのでございますけれども、そしてまた、私たちもそれはぜひ計算したいのでございますけれども、もとの方がわからぬものでございますので、特に減収を見積もらなかった、また、それによって法人税の増収もまた見込まなかった、こういうことでございます。御理解いただきたいと思うのでございます。
  38. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣のお言葉でも理解できない。少なくとも今度の予算の大きな柱としては住宅政策というのが立てられておるわけですよ。住宅は土地の上に建つわけですから、その土地がどうなってくるかということは、住宅政策が予定どおり進むか進まぬか、こういう問題ですね。しかも、そういう問題をめぐっての土地税制というのは、いま私が議論を提起したわけじゃなくて、問題のものですよ。確かに大臣おっしゃるように、普通の法人税や所得税の前提よりももっとフロートしている、やわらかいということはわかりますけれども、少なくとも専門家である人が、初めての税でありませんから、これは私はやはり、どの程度の減収になるかということは提示するのが良心的であろうと思います。したがって、いま大臣の説明では私は理解できません。しかし、この問題で余り時間を費やしてもなんですから、その辺、留保して先に進みます。  土地の問題が出ましたから、この土地税制に関連いたしまして、特別土地保有税が手をつけられます。これによる減収は幾らになりますか。
  39. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、特別土地保有税は昭和四十四年以降取得いたしました土地に、それが利用されておりますとそうでないとにかかわらず一律に課税されておったのでありますけれども、いまおっしゃいましたように、今回納税義務を免除すべき一定の範囲を決めようといたしておる、かようなことでございまして、これによります減収が四十九億円、かように算定をいたしております。
  40. 細谷治嘉

    細谷委員 四十九億円減収だということでありますが、改正による減収は、おたくの資料では六十五億円と理解するのが正しいのじゃないですか。いかがです。
  41. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、納税義務の免除につきましては、市町村長が審議会を設けましてそこに諮って決めますので、実は正確な数字がなかなか把握しにくいのでありますけれども、ただいま課税いたしておりますもののうち、恐らく九〇%を超えますものが農地なりあるいは山林ではないか。そして、一〇%足らずの宅地がどの程度これに該当するかは正確な算定は困難でありますけれども、八百三十億円程度予想されておりましたものが、ごくラフな計算ではございますが、いま私が申し上げました数字が減税額として予定されておる数字でございます。
  42. 細谷治嘉

    細谷委員 先ほどお答えいただいた四十九億円というのは、この改正によりまして減収見込みが六十五億円とおたくの資料で見込まれておるわけですよ。そのうち、恒久的な建物等にかかわる納税義務の免除措置の創設による減収見込み額というのが四十九億円となっておるわけですよ。したがって、特別土地保有税の減収、いわゆる改正、改悪ですね、それに基づく減収は六十五億円と理解するのが正しいのではないか、こう言っております。簡単にお答えいただきたい。
  43. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御指摘のように、六十五億円の三角が立っておりますけれども、これは特別土地保有税でほかに含まれているものがある、かように考えたのでありまして、もし詳細なものが必要でございましたら政府委員から答弁させます。
  44. 細谷治嘉

    細谷委員 四十九億円か六十五億円か明確でありませんけれども、時間の関係で次に進みます。  税の問題についてはさらに質問をしたいのでありますが、その前に、今度の予算に関連いたしましてたくさんの値上げが行われる内容がありますし、また行われようとしております。  そこで、最初に文部大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、国立学校の授業料あるいは受験料等を一斉に値上げを行おうとしておるわけでありますが、その金額を少し個々の内容も含めてお答えいただきたいと思います。
  45. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えいたします。  昭和五十三年度の国立学校の授業料改定をいたしましたその増収分が四十七億三千七百万円、検定料の改定によります増収分が十三億七千四百万円、合わせますと六十一億一千一百万円の増収を予定いたしております。
  46. 細谷治嘉

    細谷委員 大体文部省関係で国立学校の授業料、検定料、おおよそ六十一億円程度の増収が見込まれているということが明らかになりました。  次に、厚生大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、国民年金あるいは医療保険関係が一斉に値上げになっておるわけでございますが、それが五十三年度にどれだけの増収になるのか、お答えいただきたいと思います。
  47. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 年末の国会におきまして御協賛を得ました健保法の改正の実施がことしの一月からでございますので、これを五十三年度分の財政影響をとらえますものと、それから過般医療費引き上げに伴いまして料率を弾力条項の発動によって千分の二引き上げましたことを加えまして、五十三年度は総額七百四十八億円の財政効果を見込んでおる、それだけ増額になる、こういうことでございます。健康保険の関係では。  それから、国民年金では保険料の引き上げをいまお願いをいたしておるわけでございますが、月額二千二百円から二千七百三十円に引き上げられますので、これを御承認いただければ、この保険料の増収の見込み額は五十三年度で千五百十億円でございます。ただし、これには給付費の増が逆に千九百八十六億ございますし、同時に、先ほどの健康保険の増収七百四十八億円を見込んでおりますが、一方、傷病手当金等で二百四十億見当のものが給付増として行われる、こういうことになります。
  48. 細谷治嘉

    細谷委員 いま厚生大臣のお答えで、国民年金保険料を二千二百円から二千七百三十円に五百三十円上げることによって千五百十億円の増収を期待しておる。  医療保険関係では、ボーナス保険料が二百十五億円、初診料百五十七億円、入院料の一部負担二十億円、標準報酬月額の最高限度の引き上げで百九億円、政管健保保険料で本人分のアップが二百四十七億円、合計七百四十八億円、この数字でよろしいですね。
  49. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 間違いはございません。そのほかに医療費改定分の給付費全体についての増加がございますけれども、これはいま申し上げました負担増には一応関係ありませんで、一般の医療費の自己負担分その他に関係が出てくる、あるいは保険財政全般に影響が出てくる、こういうことだけでございます。
  50. 細谷治嘉

    細谷委員 運輸大臣にお聞きしたいのですけれども、国鉄の運賃が、大体予算上からは六月一日に一四%前後引き上げられるということになっておるわけですが、これの増収といいますか、逆に国民の負担増、これは幾らになりますか。
  51. 福永健司

    ○福永国務大臣 五十三年度の国鉄予算の中では、いまお尋ねの点は二千五百五十億円という数字になっております。
  52. 細谷治嘉

    細谷委員 六月一日から予算上国鉄の運賃引き上げは二千五百五十億円の国民負担の増だ、こういうお答えをいただきました。  これに関連して運輸大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、新聞等では、たとえば私鉄、バス、タクシーあるいは公共料金、こういうものが引き上げられる、こういうふうに言われておりますけれども、これはわからないという言葉が返ってくるかと思いますけれども、どうも全般的な趨勢としては八、九月ごろに値上げが起こるのではないかと思いますが、これについて運輸大臣の見込み、お考えをお聞きしておきたい。
  53. 福永健司

    ○福永国務大臣 お尋ねの点については、民鉄等からまだ申請が出ているわけではございませんし、将来出るか出ないかわかりませんけれども、お話しのように、おっつけそういうものが出てくるのじゃないかという風評はあるわけでございますが、私どもといたしましては、これは仮定でございますが、出てきたときには、この問題にはきわめて慎重に対処したい、こういうふうに考えております。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  54. 細谷治嘉

    細谷委員 この種の料金の引き上げについては運輸大臣としては慎重に対処したいということでありますけれども、不確定でありますけれども、従来の経験からいきますと、どうも秋口にそういう値上げが起こってくるのではないか、こういうふうに私は思います。お言葉のように、ぜひ慎重に対処していただかなければならぬ、こう思います。  農林大臣にちょっとお尋ねしておきたいのですが、この予算委員会でも大変な問題になったわけでございますが、米の過剰ということに絡んで水田の総合利用対策、こういうものが進められております。全国的にいきますと四十万ヘクタール、五十二年度では十九万ヘクタールぐらいと承っておるわけでありますけれども、米はつくれないわけですから、これによる農家の減収が起こってまいります。それに対して、転作するのですから、野菜なりあるいはまた大豆なり麦なりをつくる、その収入が一部あるでしょう。それに政府の方の負担助成という形がプラスされるわけでありますけれども、この辺で農家の所得、こういうものは五十三年度にどういうことになるのでしょうか。
  55. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御承知のように、農作物によりまして収益性の高いもの、低いもの、いろいろあるわけでございます。そこで、一般的な奨励をしてお願いしております大豆、麦と、米をつくった場合とどれぐらい差があるかというと、約七万円ぐらい米の方が有利である。そこで、こういった作物に対しては基礎の四万円——いままで四万円でしたが、五万五千円、それにいろいろな加算金をつけまして七万円から七万五千円は、転作奨励補助金として農家にまいりますし、これらについては、議員立法ではございますけれども減税措置もしていただく、こういうようなことをあれこれ総合的に考えると、全体的にはプラスのものもあればマイナスのものもある、そう差はない、こういう判断のもとに奨励金を計算して転作を容易ならしめる、言ってみればそう損はない、こういう判断でございます。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 農林大臣のお言葉によりますと、転作をする、大豆か麦かつくる、大体において野菜等との差額七万円ぐらいを見てやるから農家としてはマクロ的には——マクロ的にはということだろうと思うのですが、大体損得なし、こういうお言葉でございます。本当ですか。そういうことであるならば、いま全国各地でこの水田転作の問題は起こってこないのじゃないですか。それば、米の方が連作はきく、そして価格は安定している。ところが、野菜やったら、七万円ぐらいの差があるけれども、豊作貧乏と言われております。大豆にしても麦にしても同様ですね。そうなってまいるだけに、しかも野菜等になりますと連作がきかぬ、こういう問題がありますから、そういうものはきわめてアンステーブルなんですよ。こういうことでありますから、農家のこれからの自分の家計、日本の農業、こういうものからいって全国的に強い反対が起こっているでしょう。私は、間違いなく、農林大臣の言うようにはならないと思うのですよ。もう一遍簡単にお答えいただきたい。
  57. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いま申し上げたように、これはマクロの計算でございますから、作物によって、場所によって、収益性のないものもある。ただ、農家の方々が生産調整に協力しないのは、収益性の問題も頭の一方にありますが、もっと、むしろ、米は昔からつくってなじんだものですし、つくったことのない作物をつくるということには、技術的な問題もあるし農機具の問題もあるし土地条件もあるし、あるいは価格政策のないものは価格心配もあるでしょう。いまお話のあった大豆、麦、飼料作物、甘味資源作物等は豊作貧乏のない仕組みになっておりますから、幾らつくっていただいても一定の値段で買い上げる仕組みになっておりますから、これは価格の不安はないわけです。ただ、野菜とか果樹等になりますと、価格の問題もありますから不安がある。そういうものもありますが、マクロ的に収益性は下がらないという仕組みではございますが、いま言ったような、なじみがないとか農機具の問題だとか栽培技術がわからない、こういうようなことでございますので、政府としても、土地条件を改善するとか価格対策を充実するとか、さらには改良普及員等によって技術の指導をする、こういうようなことで全体的に御迷惑をかけないように、また農家の方々も、過剰生産、これは異常なことでございますので御理解と御協力を願う。こういうむずかしい仕事、いろいろ問題はありますけれども、何とか解決をして円滑に処理をいたしたい、こう思ってやっておるところでございます。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 言葉は、なかなか厳しいけれども何とかうまくやりたいということであります。これはそうはならないですよ。そう私は思っております。農家の方は、米は過剰ですから転作はしたいといっても、ずばり言いますと、政府の農政の方針にのっとっておったら飯は食えない、その反対をやると立っていく、これが農家の実感ですよ。こういう農政じゃ困ると私は思うのです。しかし、時間がありませんから、これ以上は入りません。  そこで、次に自治大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど大蔵大臣から国税関係をお聞きしたのですが、地方税はどうなりますか。地方税はどういうものについて増税をし、どういうものに対して減税をする、こういうことなのですか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  59. 加藤武徳

    加藤国務大臣 地方財政がきわめて厳しい現況にかんがみまして、減税を行いますものはごくわずかでございまして、先ほど特別土地保有税の御質問がございましが、そのほかに若干の是正措置をいたしておるのでございますけれども、増税の面では、御承知のように、都市計画税が相当の増収になる、かように考えておりまして、御承知のとおり市町村においてその判断をいたし条例で決めることではございますけれども、千分の二から千分の三に引き上げる条例を制定して徴収が可能である、かようなことにいたしておりますのと、いま一つは、住民税につきまして、法人住民税の御承知のようないままでの段階割りを幾つかにふやしまして、そして資本金等の大きいものに対しては相当の金額を御負担願う、かようなことでありますから、増税面では、いま申します都市計画税とそれからいま一つは法人住民税、この二点が増税中心でございます。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 これによって地方税全体としての増減収は幾らですか。
  61. 森岡敞

    ○森岡政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、法人住民税均等割りの税率の引き上げと都市計画税の制限税率の引き上げ、それぞれ前者が五十五億円、後者が五百十一億円でございます。それから、ガス税の免税点の引き上げ、料理飲食等消費税の基礎控除額の引き上げによりまして三十一億円の減収でございます。特別土地保有税の合理化が、先ほど大臣から申しましたように、免除制度を含めまして六十五億円の減収を見込んでおります。なお、このほか租税特別措置の改善合理化によりまして七十五億円の増収を見込んでおりますので、差し引き初年度におきましては五百四十五億円の増収というふうに見込んでおります。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 地方税全体としては差し引き五百四十五億円の増収ということが確認されました。  次にお尋ねしたいのですが、使用料、手数料が地方財政計画上ではかなり大きく伸びております。その最たるものは高等学校授業料であろうと思うのです。五〇%引き上げる、こういうことでありますから、それであろうと思うのですが、そのほかに省令なりあるいは地方交付税土地方団体が値上げをせざるを得ない、こういうものが多々あると思います。それを具体的に数字でお示しいただきたいと思います。
  63. 加藤武徳

    加藤国務大臣 ただいま御指摘のございました高校授業料の値上げに伴います使用料、手数料の増が一番多うございまして三百十七億円の増、それから幼稚園保育料が二十五億円の増、その他で八百七億円で、トータルいたしまして、地方財政計画に組んでおりますものの使用料、手数料等の増が一千百四十九億円、かようなことでございます。  なお、法案に盛り込みまして御審議をいただいております十二の項目につきましては、政府委員から答弁させたいと思います。
  64. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 今回、地方交付税法等の一部を改正する法律案におきまして、十二の法律の手数料の限度額を改定をいたしている案を提出いたしているわけでございますが、これにおきますところの平年度において満度まで各団体が取ったといたしましたときの金額は、約百十八億円というように想定をいたしております。
  65. 細谷治嘉

    細谷委員 地方団体が徴収すると予定される使用料、手数料の増は千百四十九億円だ。その中で、高等学校の授業料を五〇%引き上げることによって三百十七億円の増がある。幼稚園保育料等の増。その他として、いただいた資料を拝見いたしますと、風俗営業等取締法に基づく風俗営業の許可手数料、これは現行一千円というのが改定されて十倍の一万円。それから漁船法のものも上がる。建築基準法も上がる。都市計画法による開発行為許可申請手数料が十万円が三十万円と、かなり大幅に上がってきておりますね。この総額が百十八億円だ、こういうことですね。確認してよろしいですね。
  66. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御指摘のとおり、交付税法の一部改正法案の中におきまして一括して出しました十二法案の分が、平年度で満度まで各団体が取ったとしたときの金額を推定いたしまして百十八億でございます。したがいまして、法案の成立の時期その他におきまして明年度はそこまでは達しないというようなことに相なろうかと存じますけれども、一応平年度としての推計をいたしました数字が百十八億である、かようなことでございます。
  67. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一点お尋ねしたいのです。  負担をする住民側からいきますと、所得税も過酷であるけれども、それ以上低所得者に対しては住民税が過酷である。それ以上に過酷なものが国民健康保険税だ、こう言われております。その国民健康保険税は五十三年度にどの程度の収入見通しか、お答えいただきたいと思います。
  68. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、国民健康保険は、医療費の引き上げ等がございますと急速に大量な支出が予想されますし、かつまた受診率の変更等もございますので、なかなか正確には算定しがたいのでありますけれども、保険税は、五十二年十月一日現在の調定額が五千百九十六億円でございましたものが、五十三年度におきましては六千四百六十五億円、かように算定をされておるところであります。
  69. 細谷治嘉

    細谷委員 いまお答えいただいたように、五十二年度の調定額五千百九十六億円、五十三年度の見込みは六千四百六十六億円、四捨五入して六億円でありますが、これを見ますと、前年比、五十二年度と比べますと千二百六十九億円の国保税料の増加になるわけです。前年比二四・四%の伸びなんですよ。これは大変な伸びですね。これが全部、国民健康保険に入っておる人の負担になるわけです。しかも、これがものすごい上薄下厚ですね。大変な驚くべき伸びだと私は思うのですよ。医療費に基づいてこうなったというのですけれども、これはいまや、自治大臣承知と思うのですけれども、国保の問題については、市町村も財政上パンクしておるのですよ。国保の加入者も、これはもうどうにもならぬという事態に来ておるわけです。これ以上言いませんけれども、大変な事態であります。そういうことを認識しておりますか。どういうふうに根本的に対応しようとするのか、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  70. 加藤武徳

    加藤国務大臣 私は、私的なことで恐縮でございますが、県の国民健康保険連合会の理事長を長い間やっておりまして、今日の市町村国保が大変であります実情をよく承知をいたしておるのでございます。それは、御承知のように、職域で勤務しておりました者が定年退職等で地域に帰りまして、その方々が国保に入り、そして若い時分にはお医者にかからなくてもよろしかった者がお医者にかからなければならないようになりますのと、また、いろいろの条件等が総合されまして、今日、国保財政がパンク寸前、かようなことでございます。厚生省もこの点に非常な配意をいたしまして、一千百億円を超えますような臨時調整交付金を支出をいたしましたり、また、市町村も一般会計から相当金額を繰り入れておるのでありますけれども、なおかつ大変な事態でございます。  そこで私は、医療保険制度の抜本改正を行いまして、たとえば老人医療を別の医療保険体系で組み立てていきますとか、さような根本処置をいたさなければ、市町村の国民健康保険はじり貧の状態になる、かように考えられてならないのでありますから、要は医療保険制度の抜本改正、このことに大きな期待を持っているところであります。
  71. 細谷治嘉

    細谷委員 抜本改正、抜本改正と言いますけれども、もうこの言葉は古いのですよ。しかも、事態は改善されるどころか一段と深刻になっていっておる、これが実態であります。厚生大臣帰りましたけれども、この問題については、総理お聞きですけれども、国民健康保険は大変な事態です。言葉だけではなくて、抜本的な御検討をいただきたい。  そこで、いま各大臣に、建設大臣からは聞き落としましたけれども、大体百七十億程度の公団家賃の値上げ、こういうことを私は承っておるわけです。いまお聞きしたのを全部私は加えてみました。まあ、これから国会の審議予算なり法案という関係がありますけれども、加えてみましたら、確定したものだけで、政府が意図した五十三年度の制度改正による国民からの増収というのは一兆一千七百二十三億円になるのですよ。総理大臣、いま電算機で私は入れたのですが、そういう数字なんですよ。これは大変な負担でしょう。総理大臣、どうお考えですか。
  72. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 それは大変な負担とは思います。思いますが、税は格別でございまするけれども、その他手数料だとか料金だとか、そういうものは、その負担に見合いましてサービスが充実をされる、こういう側面があるわけでありまして、一方的に負担がふえるというものばかりではない、このように考えております。
  73. 細谷治嘉

    細谷委員 サービスがふえる、受益者負担だ、こういうことであります。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 少なくとも国民のふところからは一兆二千億になんなんとするものが五十三年度では余分に取り上げられる、こういうことになることは間違いないですよ。大蔵大臣、そうでしょう。
  74. 村山達雄

    村山国務大臣 それだけ支出がふえることは間違いないと思います。
  75. 細谷治嘉

    細谷委員 これは大変な負担です。一兆一千七百億円を超える負担が五十三年度で増として起こってくる、こういうことを確認をしておきたいと思います。  そこで、税に戻るわけでございますけれども、税制調査会の中期答申、それから五十二年度の答申、こういうものを受けまして、先ほど大蔵大臣から答弁のように、租税及び印紙収入の増としては全体として三千四百八十億円の増、こういうことになっております。  そこで、次にお尋ねしたいのは、いつも問題になっております租税特別措置ですが、租税特別措置というのは五十三年度でどうなるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  76. 村山達雄

    村山国務大臣 推計でございますが、租税特別措置による減収額のお尋ねかと思いますが、四千八百億程度になるのではないかと推定されます。
  77. 細谷治嘉

    細谷委員 五十三年度の租税特別措置は、表面上からは、企業関係の租税特別措置の整理合理化をやりますと言っておりましたが、たったの十億円、そして住宅取得控除の拡充等がありまして、初年度で四十億円のマイナス。全体としては、租税特別措置の整理合理化が叫ばれておりますけれども、実際は三十億の減収、こういうことになるわけですね。  それで、全体として、いま大蔵大臣は四千八百億円程度、こういうことでありますが、私が持っております資料によりますと、租税特別措置は五十三年度が四千七百九十億円です。ところが、この表を見て不思議に思うことは、まあ税制上そうだと言えばそうでありますけれども、五十三年度は、租税特別措置では八千九百五十億円の税の軽減が行われているわけですよ。これに対して、交際費課税の特例が四千百六十億円入ってくるから、差し引いて四千七百九十億円、こういうふうにお答えいただいたと思うのでありますけれども、租税特別措置は八千九百五十億円も軽減しておいて、交際費課税をここへプラスで働かせている。まあ、税法上そうなっているんだということであります。ですから、いかにも租税特別措置を小さい数字に見せようと、悪く考えますとごまかしておる、こういうふうに言えると思うのでありますけれども、これに関連して、自治大臣、五十三年度の地方税は、国税のはね返り分が幾らで、地方税自体の非課税分の減が幾らか、お答えいただきたいと思う。
  78. 森岡敞

    ○森岡政府委員 各種の非課税特別措置等によります減収額につきましては、五十三年度分は現在計算中でございますので、五十二年度で申し上げたいと思います。総額三千六百二十九億円でございます。それで、国税におきます租税特別措置に伴います減収見込み額が七百八十二億円、地方税法自体の非課税措置等による減収見込み額が二千八百四十七億円でございます。いま計算いたしておりますところでは、五十三年度ではほぼ三千九百億円前後になるのではないか、かように見込んでおります。
  79. 細谷治嘉

    細谷委員 交際費課税の特例を除きますと、国税の租税特別措置地方税へのはね返り、それから地方税自体の非課税は、五十二年度では前者が七百八十二億円の減、それから地方税自体が二千八百四十七億円、合計して三千六百二十九億円の減です。これだけ取るべき税を取っていないわけです。交際費課税の特例を除きますと、私の計算では、五十二年度、国税八千四百億円の減、そして地方税の減免が三千六百二十九億円、加えますと一兆二千二十九億円の租税特別措置なり地方税の非課税規定はね返りがあるわけです。まさしく莫大な金額と申さなければならない。ですから、日本の税制は不公平である、企業優遇の税制だと言われるゆえんだと思うのでありますが、いま私が申し上げた数字は確認できますか、五十二年度、大蔵大臣
  80. 村山達雄

    村山国務大臣 おおよそ、いま先生がおっしゃったような数字になっておると思います。
  81. 細谷治嘉

    細谷委員 おおよそとは何事ですか。あなたの方の資料と自治省の資料とを私は計算しているのですよ。おおよそなんて、あなた方のこの数字はおおよそですか。冗談じゃないよ。
  82. 村山達雄

    村山国務大臣 国税に関しまして四千七百九十億、交際費課税で取り返している分が四千百六十億でございますから、もしそれを委員のように合わせれば八千九百五十億になることは事実でございます。
  83. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣の数字、五十三年度分については自治省がまだ数字を出しておりませんけれども、おおよそ三千九百億円程度になると言いますから、そうしますと、一兆三千億円ぐらいの減収が租税特別措置地方税自体の非課税規定、減免規定によって起こっておる。まさしく、これは大変だと私は指摘しておきたいと思うのです。  そこで、こういう問題に関連して、かねてから問題になっております不公平税制、これはこういうところから起こってきているわけですから、ひとつ具体的にお尋ねしたいと思います。  社会保険診療報酬の所得計算の特例、これは大蔵省の資料によりますと、五十三年度減収額が二千二百六十億円であります。よろしいですか。
  84. 村山達雄

    村山国務大臣 数字のことでございますから、政府委員から答弁させます。
  85. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がかかってしょうがない。あなたの方の数字を拾えばそうなんですよ。二千二百六十億円、確認しておきましょう。  これに基づく地方税の事業税なり県民税なり市町村民税の減収分は幾らになりますか。
  86. 森岡敞

    ○森岡政府委員 これも五十二年度の数字で申し上げさせていただきたいと思いますが、総額六百八億円でございます。事業税が百七十七億円、県民税が百四十二億円、市町村民税が二百八十九億円という数字でございます。
  87. 細谷治嘉

    細谷委員 社会保険診療報酬の所得計算の特例は、大蔵省の資料によりますと、国税において千八百九十億円、地方税において六百八億円、合計して二千四百九十八億円、おおよそ二千五百億円の減収が起こっておるわけですね。確認できますね。
  88. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいま細谷委員が最後におっしゃいました数字は五十二予算ベースでございまして、その中での所得税分は、おっしゃいましたように千八百九十億円でございますが、五十三予算ベースでは、お出ししてございますように、国税は二千二百六十億円にふくらんでおります。
  89. 細谷治嘉

    細谷委員 社会保険診療報酬は、税制調査会もかねてから答申ごとに指摘しておる。不公平税制の最たるものだ、こう言っておるわけでございますけれども、依然として五十三年度においては、税制調査会の具体的な一つの試案まで出ておるにかかわらず、是正されておりません。まことに私は遺憾に思います。これでは税の不公平問題の解決なんて糸口もつかめない、こう申さなければならないと思うのであります。  総理、どうなんですか、不公平税制の是正を本気でやる気があるのですか。
  90. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 不公平税制と言われる税制、これにつきましては、是正をしようという与野党間の了解になっている。これは五十二年予算審議の途中そういうことになっていることをよく承知しております。そこで、五十三年度の予算編成に当たりまして、それを思い浮かべながらその趣旨を実現するということで、ずいぶんいろいろ努力をいたしたわけであります。  ただ、言われるところの不公平税制というものには、税制のたてまえからそういうことになっているものもあれば、あるいは本当に不公平という実態を備えたものもある、こういういろいろな種類があるのです。あるいは、是正しようと思いましても、それがかえって新たなる不公平を招く、こういうようなものもある。たとえば不公平税制と言われている中で大きな部分を占める貯蓄の関係の税制ですね、これなんかになりますと、これをやめまして総合化する、こういうことにいたしました場合におきましては、今度は名寄せを一体どうやってやるのだというような問題がありまして、それが着実にできなければ、これまた大変な不公平になってくるのです。そういうようなことがあって、一挙にはまいりませんけれども、私は、不公平税制といって本当に不公平の実があるものにつきましては、これは是正しなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、ちょっとお触れになりましたが、診療報酬の問題、これは御承知のとおり歴史の長い困難な問題でございます。もう二十数年来の問題であります。そこで、いろいろ世間でも議論されておる。また、政府の税制調査会でも議論があり、そうして一つの方向が調査会では出てきておる、こういう問題でございまするが、何せその処置、解決の非常にむずかしい問題である。これは細谷さんもよく御理解願えるところだろうと思う。しかし、不公平税制という問題もある、そういうことで、政府といたしましては何とかこの問題を処理したいという努力を続けてきたわけでございまするけれども、自由民主党の方でこの問題を重視いたしまして、社会保険診療報酬の税制上の特例措置は、五十三年度はしょうがない、これを続ける、しかし、それに伴いましていろいろのことを考えなければならぬ、そういうようなことを検討する、そうして、とにかく自由民主党で議員立法としてこの問題を処理したいという一つの構想を打ち出しておるわけであります。自由民主党ではこれを総務会の決定まで持ち込んでおるわけであります。そういうようなことで、私は、それを見ておりますと、まことにこれは現実的な考え方だ、このように考えるわけであります。一挙に五十三年であれをどうする、非常にむずかしい。しかし、五十三年度においてはこれは存続するが、ひとついろいろな対処策を考えて議員立法化という考え方、これは非常に私は現実的な対処案だというふうに考えまして、私は、この行き方を高く評価し、そしてこの行き方を見ながら政府におきましてもその対応の処置を講じていきたい、このように考えております。
  91. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題に関連して、せんだっての予算委員会でも私どもの方の佐藤敬治君が取り上げたわけでありますが、医師であるために事業税は一文もかからないという、昭和二十七年か八年に法律が決まっておるわけですよ。これもまたおかしなことだと私は思うのですね。あんまさんとか、そういうものについては事業税がかかっておって、お医者さんについては事業税が一文もかからないというこの特例も、これは大変な問題だと思うのですよ。ところが、自治大臣のせんだっての答弁によりますと、これもあいまいですよ。これもやはりあんまさんでも払っておる、はりきゅうさんでも払っておる、そういう事業税を、医師が一文も事業税の課税の対象にならないということも大変な問題だと私は思うのです。大臣、これについて取り組む意思があるのかないのか、簡単にお答えいただきたい。
  92. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御指摘がございましたように、昭和二十七年に議員立法といたしまして、事業税を免除いたす。かようなことに相なって今日に至っていることは御承知のとおりでございます。そこで、国の段階におきましての処置がいまなされようとしておる、総理の御答弁のあったとおりでございまして、事業税は御承知のような前年所得に対しまする課税でございまして、私といたしましては、国の税制改正を見守りながら慎重に検討いたしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  93. 細谷治嘉

    細谷委員 これは不公平税制として国会でも何遍も取り上げられていることでありますから、いわゆる国税における不公平税制という診療報酬の特例、もう一つ私がいま指摘した問題も、これは大変な問題です。ぜひひとつ、やはり税制の公平さということが一番の出発点であり、原則でありますから、早急に是正をしていただきたい、こう思います。  次に、利子配当所得についてお尋ねしたい。  大蔵省にお尋ねいたしますが、利子配当所得者の課税最低限というのは、五十三年度幾らになりますか。
  94. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 利子所得の場合は、通常の事業所得と同様の課税最低限になるわけでございますが、配当所得につきましては、配当控除がございますので、それを計算いたしますと、夫婦子供二人の場合に、配当だけの所得者につきましては四百四十万三千円まで所得税は納めないで済むという制度になっております。
  95. 細谷治嘉

    細谷委員 いま、四百四十万という数字をお示しいただいたのですけれども、私は、ちょっとこの課税最低限の数字は小さ過ぎるのではないか、こういう気がいたします。後で時間があれば議論したいわけです。  そこで、利子所得、配当所得について、大蔵省の資料によりますと、利子所得の特例で八十億円、配当所得の特例で三百五十億円、合計四百三十億円。この数字、よろしいですか。——よろしい。  地方税はどうなっておりますか。これは答えられないでしょう。答えられますか。
  96. 森岡敞

    ○森岡政府委員 配当所得者につきましては、御承知のように、県民税と市町村民税で配当控除率が違うものですから、それを用いましたいわゆる課税最低限を計算いたしますと、県民税が百四十六万一千二百五十円、市町村民税が二百二万三千八百八十二円、こういうことに相なります。
  97. 細谷治嘉

    細谷委員 利子配当所得は総合課税をしろということで、すでに御承知と思いますけれども、東京都の財源構想委員会等でも試算をしております。それによりますと、国税当局が把握しておる税収というのは、東京都財源構想の大体三分の一程度、これは総合課税ということでありますけれども、きわめて捕捉率が悪い。こういうことだけを指摘いたしまして、次に入りたいと思います。  大蔵省にお尋ねしたいのでありますけれども、五十三年度において、夫婦と子供二人、あるいは独身者、夫婦二人——私は時間がありませんから申し上げますが、独身者の場合は、百五十万円の所得の人が、仮に政府の個人所得の伸び率等を、一一・九でありますけれども、これを一一として計算いたしますと、独身者の場合は前年度より二万四千五円ふえるわけです。これを増税にならないように、具体的には税の弾性値がゼロになるようにするといたしますと、一万五千五百三十五円の減税をしてやらなければ、税は、弾性値はゼロにならない、ふえていく、こういうことであります。夫婦と子供二人の人で仮に三百万円の人がいたとしますと、これでモデル計算をしてみますと、五万二千六百七十九円の減税をしてやらなければ弾性値はゼロにならないのですよ。五十三年度の予算の中には所得税減税が織り込まれておりませんから、まさしく大変な増税だ、こういうふうにこの数字から言って差し支えないのでありますが、いかがですか。
  98. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 突然のお尋ねでございますので、実は一一%という計算を私ども持っておりませんのですが、手元にございますのは、仮に一〇%ということで計算いたしたものはございます。また、年収も、先ほど独身者百五十万円とおっしゃいましたが、実は百五十万じゃなくて百六十万円で計算いたしてみたものがございますが、その場合には、所得税住民税、合わせまして九万四百四十四円から十万七千八百八十円にふえるということでございますので、差し引き一万七千四百円強ふえるという計算が一つございます。  それから、夫婦子二人で三百万円で同じく一〇%増、給与が伸びたということになりますと、税額は十一万四千円から十五万二千百八十円になりますので、差額は三万八千円という計算がございます。  ただ、これは当然のことでございますが、年収三百万円の場合は、三十万円収入がふえて税が三万八千円ふえる、独身の場合は十六万円収入がふえて税が一万七千円ふえる、そういう計算でございます。
  99. 細谷治嘉

    細谷委員 いまお答えいただいたのですけれども、かなりの増税ですね。間違いなく増税ですね。私どもの方で一応試算いたしたのは、仮に所得税で五千億円、住民税で五千億円程度の減税をした場合にどうなるかということを計算してみました。そうしますと、独身者の場合に、五十三年度においては、大体においていま私が申し上げました所得税五千億、住民税五千億円やったと仮定いたしましても、これは五十二年度と五十三年度では、八千六百円の増税、税をよけい納めなければならぬという数字になります。  それから、夫婦と子供二人では、仮に三百万円の所得の人が、小さく六%程度の給与所得の増、こう見積もっても一万二千四百五十二円、前年より負担増になるわけです。所得税五千億円、住民税五千億円やっても、なおかつこういう状態ですよ。大蔵大臣、いま私が専門家とともに計算した数字、こういう状態だということは御理解をいただけますか。
  100. 村山達雄

    村山国務大臣 いま主税局長が答えたとおりでございますが、それをいま細谷委員増税だというお話でございますが、私たちは、それは負担の増になります——増税という言葉の使い方でございますけれども、これはやはり税制改正によって増税をするか、減税をするかというところで使っておるわけでございまして、所得が伸びますと、当然のことでございますけれども、累進税率の構造がございますから、それに見合った負担増が出てくることは当然であろうと思うのでございまして、その意味で負担がふえるなとおっしゃるならば、そのとおりであろうと思うのでございます。
  101. 細谷治嘉

    細谷委員 だから、私が申し上げたように、所得がふえていけば所得税がふえることは、超過累進税率をとっているわけですから、これはあたりまえです。  そこで、所得がふえた場合でも、いわゆる税の弾性値というのが一、したがって前年と比べて二%とか三%とか伸びておらない、一・一とかなっていなければ大体において調整減税がなされておる、こういうふうに私は考えて物を申しておるわけです。そういう考えに立って言っても減税をやりませんと、いま言ったように、五十三年度の政府考え方では間違いなくこれは増税になっているのですよ。負担増じゃないのですよ。増税になっているのですよ。これをお認めいただけますか。
  102. 村山達雄

    村山国務大臣 残念ながら非常に所見を異にするものでございまして、財政は御案内のように、いままで相当伸びておるわけでございまして、名目の成長率よりもかなり伸びておることは御案内のとおりでございます。そこで、それを賄うためにどのような税制を組むかということがございまして、それであるものは消費税、あるものは比例税率、あるものは従量税率、あるいは累進税率を盛っておるわけでございます。もし細谷先生が言われるように、累進税率を盛っているものの弾性値を一にしなければそれは増税だということになるのなら、歳出を絶対に賄う財源は出ないわけでございます。したがいまして、一国の税制というものはその辺を考えまして、そしてそれぞれ価格に対する比例税率、累進税率あるいは消費税率を盛っておるわけでございますけれども、それにもかかわらず今日の普通歳入は全体で言うと弾性値がずらっと下がってまいりまして、ここ十年間とりますと、普通歳入の伸びは九%、それに対して歳出の伸びが一九%、その差額はほとんど公債によっておると、こういう形になっておるわけでございまして、残念ながら、細谷さんがおっしゃるように、所得税の弾性値が一でなければそれは増税だという見解にはくみしがたいのでございます。
  103. 細谷治嘉

    細谷委員 所得税の弾性値が大きいときには、たとえば二くらいあるいは一・七とか、まあいろいろその景気によって、状況によって変わることは知っています。しかし、そうならないように物価調整減税とかいろいろな措置が講じられてきたわけですね。ですから、実質所得から見ますと、いわゆる実質所得というのは所得税に食い込まれていっているというのが五十三年度の姿じゃないですか、減税をやらないわけですから。そう思いませんか、総理大臣。
  104. 村山達雄

    村山国務大臣 その点は税制調査会でも何遍も申し上げておるわけでございますけれども、現在の日本課税最低限は世界一高いことは御承知のとおりでございます。そして四十年からこの方、消費物価の上昇率と課税最低限の引き上げをずっと比べてみますと、実に一・五倍上げておる。ほかの国は、もちろんやはり消費物価の高騰によりまして一種の調整減税のようなものをやっておりますけれども、ほとんどは、消費物価の上昇よりも課税最低限の引き上げがずっと下である。あるいはちょっと上がっておっても、アメリカでせいぜい一割か二割くらいしか上でない、こういうことでございます。したがって、今日の財政需要を考えますと、税というものは毎年毎年動かすという性質のものでもございません。そしてまた個人の負担を考えましても、所得税だけでいくわけではございませんし、消費税もまた納めているわけでございますので、世界で最高に高いということ、それからまた物価騰貴との関係で十分見ておるということを考えまして、今回は何とかひとつごしんぼういただきたい、こういうことで御提案申し上げているわけでございます。
  105. 細谷治嘉

    細谷委員 しんぼうしていただきたいという言葉の裏には、ことしは減税やってない、去年は政府案も出した、国会でも三千億円の追加減税が行われた、今度は一つもやらないわけでありますから、間違いなくこれは増税。単なる負担増と言うよりも、増税という結果を招来している、こう私は主張しているわけです。そうなりますと、先ほどのいろいろな負担増というのは税も加えて一兆二千億円。ことしは減税がないわけでありますから、たとえば去年の政策減税の三千億を加えれば一兆五千億を超すじゃないですか、去年と比べまして、国民の負担の増というのは。これは大変なことですよ。大変なことです。それにもかかわらず、依然として財政赤字ということを盾にとって、そうして、言ってみますと、今度の予算を通じて、住宅は、国民には金を貸してやるから公庫でやれとか、あるいは公共事業をやるのだという形で問題を進めようとするのは大変な問題じゃないですか。各国の例を見てごらんなさい。イギリスにおいても、アメリカにおいてもみんな、こういう今日の経済問題の解決のためには、主たる問題として減税を取り上げているじゃないですか。公共事業一点張り、それがどういうものであるかということについては、いろんな人が政府のこの施策に対して厳しい批判をしていることは事実じゃないですか。現に、私がずっと積み上げて指摘したように、負担増が一兆二千億を超している。そうして減税もやらないわけでありますから一兆五千億円以上の負担増を、五十三年度間違いなく国民に強要している、これが予算の内容じゃないですか。総理、そう思いませんか。頭を縦に振っているのですが、どうなんですか。
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いろいろ承りますが、仮に三百万円の所得の人が一〇%賃金が上がりました、そうしますれば、累進税制、これは望ましい税制なんですが、そのもとにおきまして納税額がふえる、これはもう当然のことなんで、これをもって増税増税だと言われるその細谷さんの御議論には、承服できません。ただ、それとは別の問題でありますが、物価が上がった、そうすると、それだけ、課税最低限一つを見てみましても、国民の負担がふえる、こういうことはそのとおりだと思います。そういう際に課税調整減税物価調整減税という問題が起こる。起こりますが、いま大蔵大臣が申し上げましたように、非常に財政も窮屈な際だ、それから景気という問題もある、そういうことを考えると、減税よりは公共事業をやった方がいいと、決定的に私はそう考えておるわけですが、そういうことを考えまするときに、調整減税も五十三年度の段階におきましては御勘弁を願いたい、ひとつごしんぼう願いたいというのが政府の態度でございます。
  107. 細谷治嘉

    細谷委員 総理は、いまとにかく財政が苦しいから物価調整減税もやらないのだ、国民はしんぼう願いたい、こういう形で、五十二年度と比べると一兆五千億円以上の負担増が間違いなく出てくる、これを見て見ぬふりをしておいて、そして七%の実質成長率を実現するのだと言う。その七%の実質成長率の五五%というのは個人消費支出でしょう。個人消費支出を一一・九%も伸ばそうとして、そうして初めて七%が実現するにかかわらず、国民からは一兆五千億円以上を昨年よりもよけい、適当な言葉でないかもしれません、収奪しておいて、そうしてそんなことが実現できますか。私は、いろいろな人が言っているように、とてもじゃないが、この個人消費支出というのは、言っているように、春闘の成果というものもいろいろ厳しい状態にある、こういうことになってまいりました。あなたの経済見通しの中で個人消費支出は五六・九%あるのです。ふえる分の二十二兆六千億というGNPの伸び、これのうちの個人消費支出は十二兆七千億あるわけです。五六%あるのです。こんなことをしておいて個人消費支出が伸びますか。いろいろ問題がありますけれども、個人消費支出のこの問題からいっても、GNPは目標まで達成できぬ。言葉をかえて言いますと、七%の実質成長率は達成できない、こういう結論に常識的になるではありませんか、どうですか。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府考え方は、景気をひとつとにかくことしはここで刺激しよう、そういう考え方です。そうなりますれば、物の需要も起ってくる、また、いままで職がないというような人に対しましても職が与えられる、こういうことになる。そういうことで経済活動全体が進みまして、そこで反射的というか、その影響という形で個人の所得も伸びていく、こういうことなんです。  恐らく細谷さんのお話は、公共事業よりは減税だ、減税をして、そして消費をふやしたらいいだろうというような、そういうことが腹にあってのお話だと、こういうふうに思いますが、さあ、減税して、去年は三千億円の減税だ。これは一世帯につきまして月千円程度の減税なんです。それで一体景気に何がしかの影響がありましょうか。いま求められている国家的な大変な課題は景気をよくすることだ、そういうことを考えますと、減税によって個人のふところをふやすことはいいけれども、その前に、そのふところのふえる根源であるところの経済活動の活発化、これを考えなければならない。それを考えるという立場から言いますれば、公共事業、これにまさる手法はない、このように確信します。
  109. 細谷治嘉

    細谷委員 時間が迫ってまいりましたが、私は、総理公共事業がだめだと言っていないのです。公共事業一点張りでは、列島改造、四十八年の二の舞を演じますよ。あなたは安定成長論者として、列島改造論に批判的な立場をとってきた人でしょう。ところが、今度の予算を見ますと、四十八年の予算構造とそっくりですよ。予算構造、財政構造を見ますと、そっくりですよ。そうして公共事業一点張り。こういうことでは、とてもじゃないが、今日のこの経済状況から出口を求めることはできないのだ。だから減税をやらなければならない、こういうことですよ。  そこで、最後にお尋ねいたしますが、野党各党いろいろ検討いたしまして、公共事業を切るなんということを言わないで、政府が出した予算規模はひとつ守っていこう、そういう中においてひとつ、より確実な道を歩んでいこうということで、システム化という意味において減税をまとめ上げたわけです。これについて総理はどういうふうに取り組むつもりであるか、その腹をぴしゃっとひとつお答えいただきたいと思う。
  110. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本委員会におきましても、私は前々から常々、政府提案の予算案、これがベストのものである、こういうことを申し上げておるのです。しかし、まあ野党の皆さんからの御意見もありましょう。そういう際に、私どもが御提案申し上げておる原案ですね、これをメンツだ、提案者のメンツにかけてというような、そういう考え方はとりません。皆さんの御提案もよくひとつ承ってみましょう。そして、どの考え方日本の国のためにいいのかという、そういう立場でこの問題の決着をつけましょう、こういうことを言っておるわけなんです。しかし、るる申し上げておりまするとおり、私どもはいまこの財政状況、ことしばかりじゃない、来年ばかりじゃない、末々の日本社会日本経済、こういうことを考えるときに、われわれが提案しておるこの予算案以外に行く道はないのじゃないかな、このように考えております。
  111. 細谷治嘉

    細谷委員 時間が過ぎましたけれども、あなた、メンツにこだわらないと言われた。こだわっちゃいかぬですよ。あなたは出したものは最上と言っているでしょうけれども、これだけのたくさんの人が議論して、やはり減税もやっていかなければ今日のこの状態を抜け出すことはできないということから、野党がこぞって一つの案をつくったわけですから、それに真剣に取り組んでいただきたい。これを強く要請して、私の質問を終わります。
  112. 中野四郎

    中野委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  113. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  114. 横路孝弘

    ○横路委員 総理は先ほどの答弁でも、景気回復、景気対策という面ではやはり公共事業投資の方がはるかに効果があるんだ、こういうお答えを繰り返しているわけです。もちろん、財政や税制は、景気回復というばかりでなくて、資源や所得の再配分という機能もあるわけでありますが、それはさておき、一体、減税公共事業かという場合に、公共事業の方が景気回復には効果があるという御答弁は繰り返しておられるけれども、その根拠については総理は一度もお述べになったことがないわけです。  大蔵省が「所得税減税に対する考え方」として、これは国会で問題になったものでありますが、ことしの一月に発表いたしました。「所得税減税を行わなかった理由」の「景気刺激効果」というところの中に、経済企画庁モデルによって試算をすると、一兆円の所得税減税の場合は一年目で創出される有効需要効果は八千億だけれども、他方、公共投資の場合には一兆四千億以上の有効需要を生むことになるのだ、こういうのがこの一つの根拠として述べられているわけでありますが、総理の従来の、減税よりも公共事業投資の方が景気回復の効果があるのだというのは、やはりこういう数字に基づいてお述べになっていたというように理解してよろしいでしょうか。
  115. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう数字に基づいてであります。  それから同時に、常識的に考えましても、納税者だけに対しまして幾らかふところがよくなるという場合と、公共事業によりまして物の需要が直ちに起こってくる、また雇用の需要が直ちに起こってくるという場合とを比べてみますと、これは相当違いがあるのじゃないでしょうか。むしろ私のそういう常識的な判断よりは、ああいうふうにモデル計算なんかで出てくる数字は低いなと、こういう感じであります。
  116. 横路孝弘

    ○横路委員 最近は雇用創出効果自身も、まあ減税というよりも広く振替所得、支出というように考えた方がいいでしょうが、その方がむしろ効果があるのです。これは後で議論いたしますけれども一。  そこで、大蔵省にお尋ねしますが、減税の一・八倍だというのは、経企庁のどのモデルを使ったのですか。
  117. 長岡實

    ○長岡政府委員 SP17でございます。
  118. 横路孝弘

    ○横路委員 その後のモデルでSP18というのがあることは、大蔵省は御存じだったのでしょうか。知っていたかどうかだけで結構です。
  119. 長岡實

    ○長岡政府委員 存じておりましたが、まだ未発表の段階でございました。
  120. 横路孝弘

    ○横路委員 SP18についてお尋ねをしたいのでありますが、これの政府投資効果が一体どうなのか、一年度どう、二年度どう、三年度どうということで、お答えを経企庁の方からいただきたいと思います。
  121. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  SP18と申しますのは、モデル自体は五十二年の七月に出ておりますが、内挿期間が四十年から五十年ということで、前のSP17に比べまして最近時点をカバーしております。  それから、乗数でございますが、SP18は一・三四になっております。
  122. 横路孝弘

    ○横路委員 二年度、三年度……。
  123. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 初年度が一・三、二年度が二・三でございます。
  124. 横路孝弘

    ○横路委員 三年度は。
  125. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 三年度は、ちょっとお待ちください。
  126. 横路孝弘

    ○横路委員 ない……。  そこで、もう一つちょっと——いいです。数字は私の方からお示ししますから結構ですが、いま言った乗数ですね、これはいわゆる政府投資の場合であって、公共事業投資とは違いますね。つまり、用地費は入っていないのでしょう、この計算には。
  127. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 土地代は入っておりません。  なお、第三年度は二・七六でございます。
  128. 横路孝弘

    ○横路委員 用地代は入ってないのですね。
  129. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 入ってございません。
  130. 横路孝弘

    ○横路委員 用地代が入っていないのです。いまの数字は。そして、便宜上いまちょっと資料をお配りいたしましたが、SP18の場合、一〇〇の投資に対して政府投資の乗数効果が一年度平均で一・三四、つまり一三四です。二年度平均で二三一、三年度平均で二七六です。そうすると、公共事業投資一兆円という場合には、これは用地費が入っていますから、公共事業投資の場合の用地費は平均で大体二〇%だというように理解していいと思うのですが、いかがでしょうか、大蔵大臣
  131. 村山達雄

    村山国務大臣 大体われわれの方もそのように計算しております。
  132. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、減税効果幾ら、公共事業投資効果幾らという場合に、政府投資の乗数をそのまま持ってきてはいかぬわけですね。  そこで、公共事業投資の場合は、用地費を二〇%としますから、その乗数に〇・八を掛けなければいけないわけです。そうすると、一年度の平均は、これは答えてもらっている時間がありませんから私の方で計算をいたしましたが、一〇七、一・〇七ですね。一・〇七なんです。〇・八を掛けますと。二年度の場合は一・八五です。つまり一〇〇の投資だったら一八五だ。三年度は二二一ということになるわけですね。  さらに、たとえば道路投資の場合、事業費中の用地補償費というのは幾らなのかということを私、調べてみましたら、五十二年度見通し、これは大体そんなに違いはありません。やや最近、下がってきていますが、それでも二七・七%。  住宅投資の場合は、事業費中の用地補償費は大体三一・三%。これも年々下がってきて、五十二年度見通しでそういう見通しだということになっています。  これは大体よろしいですな、大体の傾向として。細かいことはどうでもよろしいです。
  133. 村山達雄

    村山国務大臣 傾向としては……。
  134. 横路孝弘

    ○横路委員 総理、ちょっと聞いておってください。そうすると、道路投資や住宅投資というのは、今度の公共事業投資の中でウエートが高いわけです。この用地費二七・七%ということは、政府投資の乗数に対して、一〇〇から二七・七引いたものを今度は掛けてやりますと、一年度で九七・一とさらに下がるわけです。住宅投資の場合は九二とさらに下がるわけですね。これが、厳密にはあれですよ、概算ですから、いろいろな問題がありますし、条件がありますよ。傾向として私は指摘しておきたいと思うのです。  それに対して、減税、この場合は、SP18の場合は、一年度、二年度、三年度、どうなっているでしょうか。
  135. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 SP18によりますと〇七二でございます。
  136. 横路孝弘

    ○横路委員 二年度、三年度、これが大事なんです。
  137. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 第一年度が〇・七一で、二年度が一・七五、三年度が二・三七でございます。
  138. 横路孝弘

    ○横路委員 総理、いまお配りした数字は、いろいろ前提や何かで議論を始めたらどうにも議論が発展しませんから、概略としていま政府の方でお認めをいただいたわけであります。  そうすると、ちょっと比較をしていただきたいのですが、公共事業投資、平均の二〇%でいきましょうか、二〇%と減税で比べてみますと、初年度は確かに差がありますね。公共事業投資の場合は一兆円。ところが減税の場合は七千億だ。この七千億だというのも、どうも単純に消費性向だけから計算したみたいな感じが私はするのです。ともかく一年度でも、差が、この大蔵の試算の一八倍だなんてものでは全然ないわけですよ。大蔵省、知らなかったと言うけれども、SP18のことを大蔵省が、これを発表時点で知らないなんてばかな話はないわけですよ、いまの宮崎さんの答弁だと。これはもうすでにできていた。したがってそれを承知で、その宣伝のために、これをインチキとは言いませんよ、インチキとは言わないけれども、前のモデルを使ってやったというのがはっきりしているわけです。それと同時に、第二年度を見てください。二年度の数字を見てもらうと、公共事業投資減税の場合と数字がほとんど変わりないでしょう。三年度を見てください。三年度の場合は公共事業投資よりもむしろ減税の場合の方が効果があるということは、数字の上で明らかになってきているわけです。この数字、それが何を意味するかは別にして、数字そのものは、総理大臣、認めるでしょう、これは。この数字そのものは。
  139. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 数字については私は検討はいたしておりません。おりませんが、傾向はそういう傾向があると思います。
  140. 横路孝弘

    ○横路委員 一番初めに総理にお伺いしたのですが、総理は、この大蔵省の所得税減税に対する考え方、これに基づいていままでの答弁は、景気回復のためには公共事業投資の方が、減税よりあるいは社会保障を含めてその効果というのはあるんだと、大体これに依拠して御答弁なさったということだったわけです。ところが、いま経済企画庁が明らかにしたように、それは古いモデルの話なんであって、新しいモデルでは、総理答弁の根拠、こんなに一・八倍も開きがあるんだということじゃなくて、その差はきわめて小さいということと、二年度ではもうほとんど同じになり、三年度の場合にはむしろ減税の方が効果があるんだということが、傾向として明らかになった。つまり、従来の総理答弁の根拠というのは古いものに基づく御答弁だったわけです。これをお認めいただけますね。——宮澤さんの答弁じゃないんだ、総理に最初の答弁宮澤さんには後でお答え願いますから。
  141. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国民経済計算はこの乗数効果表でやっているわけじゃないのです。これはマクロ的に見まして、そしてああいう七%成長という結論になり、また、それの構成の各項目についての成長率というものが出てくる、こういうことでありまして、私が申し上げておりますのは、とにかくこのモデル計算からいきましても、また達観的な常識論といたしましても、減税公共事業、これが経済に及ぼす波及度は比較にならぬ、こういうことであります。
  142. 横路孝弘

    ○横路委員 結局、いまの総理答弁は常識論に逃げられたわけですよ。経済というのは動いていって変化するのです。SP17とSP18とどうして違ってきているのか。そこに高度経済成長時期の投資効果と、それから今日の経済状態、石油ショック以後の状況が入っているSP18の——だから、たとえば個人消費効果だってSP17の方が高いでしょう。SP18で効果が減っているでしょう。それはやはりそういう構造に変わってきているのですよ。家計も企業行動もみんな変わってきている。だから、常識論でこの予算の御答弁をいただくのは、総理大臣、経済福田さんとしてはちょっといかがなものか。つまり、数字としてはこの傾向をやはり認めてもらって、私、実はまだそれから先に議論したいのです。先に議論したいので、総理大臣として率直に、傾向としてはこれを認めていただく、総理大臣、どうですか。
  143. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 傾向といたしましては、減税効果、これは先へ行ってよけいに出てくる、こういうことは言えると思います。しかし、私どもが当面問題にしているのはそんな先のことじゃないのです。ことし五十二年度であり、五十三年度であるわけです。その五十二年度、五十三年度をとって比べる場合におきましては、新しいSP計算におきましても格段の違いがある、このように考えております。
  144. 横路孝弘

    ○横路委員 五十二年度であり、五十三年度であるというよりも、午前中の議論は、総理、五十四年度であり、五十五年度であるということで、あなたは、五十四年度についても経済成長実質七%に近いところでやらなければいけない、五十五年度だってかなり高目に見なければいかぬという答弁をしたばかりじゃありませんか。つまり二年度、三年度の景気効果考えれば、ことしだけの視野ではなくて、三年くらいのバランスで物を見る、これが大体、もともと福田さんの経済についての考え方だったと思うのですよ。リーディングセクターをつくって、そこで無理やりに集中して経済拡大強化していくということではなくて、バランスをとらなければいかぬというのがあなたのもともとの持論だったじゃないですか。だから五十二年、五十三年でなくて、五十三年、五十四年、五十五年と先を見るのが、われわれの審議しているいまの予算の立っている時点だと思うのです。  そうすると二年度、三年度にむしろ効果があるということをお認めになった。やはりこの際、減税ばかりじゃありませんよ、社会保障給付などの政府から個人への移転支出というものを多くしていくということが、まさに景気回復の面からも、将来展望した場合にむしろバランスのとれた、つまり短期じゃなくて、ちょっと中期と短期とのバランスをとったやり方になるんじゃないですか、経済考え方として。違いますか、予算考え方として。
  145. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 われわれの考え方は、これは五十二年、五十三年ということもありまするけれども、先のことも考えているのです。しかし、いま当面われわれが問題にしているのは、どうして景気浮揚のきっかけをつかむか、こういうことなんです。そういうことから言いますと、これは減税その他の個人消費刺激ということよりは、公共事業の方がはるかにすぐれた効果がある。五十四年、五十五年を待っているいとまがないのです。そんな悠長な気持ちじゃありません。とにかく五十三年度において七%成長を達成する、こういうことでありまするから、それに向かって最も有効なる手法を採用する、こういうことであります。
  146. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、われわれが主張しているのは、公共事業投資だけではなくて、減税とか、あとはまあ景気回復のために金利引き下げ、こういう手段をどうやって使うかということになろうかと思うのです。しかも問題は、ことしだけでなくて、来年、再来年があって、来年度や再来年度についても、先ほど午前中お答えになったばかりでしょう、かなり高く行かなければいかぬと。だから、総理の方にもし答弁を教えるとすれば、私は財政の問題に触れていませんから、財政を理由にして言えばそれはまた一つの議論になるでしょう。これは一つ答弁なんです。ところが、そうじゃなくて、景気回復の効果だけで議論するならば、私は効果だけにしぼって議論している、効果だけに限って議論するならば、しつこいようですけれども、この数字の傾向はお認めになって、やはり方法としては、バランスされた一つの方法として、やはり減税とか社会保障給付というようなことも景気回復の効果があるんだな。もちろん所得再分配の機能もそっちの方があるのです。だから、そんな意味でバランスということを考えた場合には、この数字の傾向から見て、景気回復という点からもむしろ減税とか社会保障給付というのも一つの方法としてある。いまの時点考える方法の一つだということは、こういう数字が出た以上——大蔵省の古い数字に基づいていままでは答弁されてきたから、いままでの答弁はそれでよろしいです。しかし、いまこの新しい数字が総理の頭の中に入った段階では、やはりそういう方法があるということをひとつ、もちろんこれは御認識されているのだろうと思いますけれども、そこを今日の時点でも認識を改めてもらわなければいかぬと思うのです。それはいかがでしょうか。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 理論的、観念的に見るときに、減税だとか、あるいはその他振替所得を増額するとか、そういうことが景気に何がしかの影響がないなんて、そんなことは申し上げておるわけじゃないのです。横路さんがいみじくも申されましたが、財政論というものがある。この財政論という問題を考えるときに、これはとても採用するわけにはいかぬ、こういうことなのです。
  148. 横路孝弘

    ○横路委員 本当は財政再建ということと一緒の議論をすると一番よくわかるのですが、その上でなおかつ減税を初めとする景気回復効果というものを考えていかなければいけない。とりわけ五十四年度、五十五年度というものを考えた場合に私はそうじゃないかと思うのです。経企庁長官、どうですか、一言。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵省がSP18を使いませんでしたのは、その時点でSP18がまだ公のものとして完成しておりませんでしたから使わなかったので、これは故意に使わなかったわけではない。これは事実でございますので、私の方から申し上げておきます。  それで、いま言われましたことは、SP18の方が公共投資の波及効果が低くなっている、減税効果も少し低くなっていますが、それはそのとおりです。  それから、別途言っていらっしゃることは、しかし三年ぐらいの時点をとれば減税の波及効果というものはやはり公共投資の波及効果に近いものがあるではないか、それはそうだと私は思います。ですが、いま問題になっておりますのは、この際の、五十三年度の経済をどうするか。この際、やはりひとつ大きな波及効果を求めることが入り用なのではないだろうか。そうしますと、その後の経済運営はそれだけやはり楽になってまいりますから、そういう点が一つと、それから、減税ももちろん国民福祉に貢献しますけれども、公共投資によって生活関連施設がつくられていくということの便益も見逃すことができませんから、財政論にいきます前にそういったようなことが幾つか申し上げられると思います。
  150. 横路孝弘

    ○横路委員 いまの宮澤さんの答弁に関連した質疑をこれから続けていきたいと思うのですが、ちょっとその前に、最近の家計の動向はどうですか。消費動向です。私が調べている範囲では、まだまだ冷え切ってさっぱり上向いていない。民間部門は、家計も企業の方もどうもまだまだのようですが、最近の個人消費並びに家計支出の動向はどうでしょうか。概略で結構です。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、概略申しまして、家計の方の動向があんまりよくございません。これは十二月の数字は出ておりませんけれども、十一月の自営世帯の所得傾向がどうも思い切ってもう一つよくないというようなふうに、大数的には申し上げることができると思います。  数字で申し上げますと……
  152. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、数字は結構です。  つまり、いま経企庁長官がお認めになったように、個人消費の傾向、家計支出の傾向というのはなかなか厳しいものがあるのです。これにはいろいろな要因があると思うのですが、ひとつ労働大臣、この二月、三月の失業者の実数はどうですか。いまここに来て、二月、三月、どんな見通しを立てられておられますか。
  153. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この一月から三月、毎年季節的な、雪が降ったりそういった要因と、特にことしは景気の上向きぐあいがどうなるかということが影響いたしますことは御案内のとおりでありまして、そこら辺がまだ十分把握できておりませんから、ただ非常に厳しい情勢であるということと、去年の三月は御案内の百二十七万人、こういう三月末の失業者状況でありましたから、去年よりは厳しいと、上向くと、こういう認識を持っております。
  154. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、雇用状況というのは毎年いつも三月は厳しいのでありますけれども、百二十七万より多い。推計によると百四、五十万とも言われておりますね。やはり場合によったらそういうぐあいになり得る可能性もありますか。
  155. 藤井勝志

    藤井国務大臣 われわれの現在の手元での推定は約一割、したがって百三十万台という考えでございます。
  156. 横路孝弘

    ○横路委員 昭和五十二年度の国民生活白書を見て、ここでこういう指摘があるわけです。つまり、家計の消費支出は何によって決まるかというので二つの要因を挙げている。一つは、その家庭の収入のかたい部分、つまり定期収入ですね。皆さんの方で言うといわゆる所定内給与というのですか、あれによって決まる、それからもう一つは、将来の見通しという心理、心理状況、この二つによって大体家計支出というのが規定されているのではなかろうかということを、この五十二年度の国民生活白書で推定されているわけです。  そこで、話は去年の減税効果ありやなしやというところに飛ぶのでありまして、これは私の一つの推計なんですが、皆さんの方は、減税が実施された六月以降の数字を見て効果はなかったと言われておる。ところが、経企庁が出している「日本経済指標」の中の家計支出の平均消費性向というのを五十年、五十一年、五十二年とずっと比較してみると、ここに非常に大きな特徴があると私は思うのです。これは私の見方ですから合っているかどうかわかりませんけれども、その五十年、五十一年とどこに違った変化があるかというと、四月に変化があるのですね。それは四月は例年実収入の伸びが若干停滞して、消費性向の向上がそれによって見られるのですけれども、マイナス・プラスを三月、四月、五月と比較してみますと、去年の四月の伸びが圧倒的に高いのですね、過去三年間で。これは何かというと、この国民生活白書の心理的状態。去年の国会でもって皆さんと一致して追加減税が決まった。そして新聞で報道が行われて、大体一つの世帯当たりどれだけの減税額になってこれは戻ってきますよというのが、三月の末から四月にかけてずっとキャンペーンが張られたわけです。新聞でも報道された。つまり、この国民生活白書の傾向から言うと、その減税が決まって、しかもあれは具体的に各家庭に幾らだという金額まで明示された。われわれのところにもずいぶん問い合わせが来たわけです。これは大蔵省にも、税務署に去年なんか本当に大変な問い合わせが殺到したというふうに私は聞いております。つまり、そういう心理的な効果がこの四月の支出を、平均消費性向を従来と違った形でぐっと伸ばして、七・八でしょう。つまり、そういうことが言えるのじゃないかと思うのですが、これは宮澤さん、いかがでしょうか。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の減税消費性向にどういう影響を与えたかということを私ども一生懸命いろんなところからやってみましたけれども、どうもそれらしいものが実は出ていない——いや、否定する意味ではありませんで、何かこう変化が出てこないかと思って見ておりましたが、どうも出てこないのですね。  それで、いま横路委員が言われますのは、なるほど、その五十二年の四月にぼこっと消費性向が高くなっておりますね、これが減税期待による四月の消費ではなかったか、こういう御議論だと思います。御着眼には敬服いたしますけれども、さあ、そうであったかどうか、ちょっと私、何とも申し上げかねます。
  158. 横路孝弘

    ○横路委員 去年は、一つは支払いが六月のボーナス時期に重なったということも私に言わせればけしからぬ話で、総理大臣、ことしは六月は外してもらいたいと思うのですがね。そのうち与野党でまとまるでしょう。まとまったときは六月は外してもらいたいと思うのですが、話としては、つまり経企庁で言っている心理というのは私は非常に大事だと思うのですよ。だって、企画庁長官民間設備投資を言うときには企業の心理、心理と言うわけでしょう。家計だって同じですよ。失業がどんどんふえると、労働省の見通しで百三十万台と言っているときに、やはり明るい心理を与えてやるというのは、去年の傾向から見ても個人消費拡大することになると思うのですよ。まあ物の見方はいろいろありますけれども、つまり減税が実施されたときでなくて、決まったときで見なければいけない。特に去年のような決まり方をしたときには、そこに家計の心理的な動向が始まって、四人家族だから幾らだという計算をして、ではいまその部分を支出しよう、こういうことになったのではないかというように私は考えるわけです。そういう見方もぜひ視点として入れて、そればかりじゃなくて、たとえば全民懇などの二万人調査を見ても、ほとんど貯蓄には回っていなかったという数字も出ているわけであります。そのことを少し指摘をしておきたいと思うのですが、先行き不安だという中で、雇用者所得の伸びは大体一一%という数字ですね。それから個人の可処分所得の伸びも大体二%くらいでしょう。そうすると、過去十年間をとってみて、この所得の伸びというのはいままででもって一番低いわけですよ。過去十年間で見ると、雇用者所得の伸びは猛烈に低く見ているわけでしょう。ところが、国民所得ベースの平均消費性向はどうなっているかというのを調べてみると、これはことしは過去五年間で一番高く見ているでしょう。これはどういうことなんですか。
  159. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まさに、昭和四十年から石油危機くらいまでは消費性向が八〇を超えておりまして、八二くらいまでいっておりました。それが石油危機でずっと大変に落ちまして、その後少しずつ回復しておる、こういう状況でございます。でありますから、今回も大きな消費性向は見ておらないわけでございますけれども、五十二年度よりは少しぐらいは見てもいいかな、どっちみち、貯蓄性向にしましてやはり二三前後のものはどうしてもやはりあるだろう。その逆数になります。
  160. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり雇用者所得、可処分所得の伸びは、ことしは十年間の中で一番低く見ているわけです。ところが平均消費性向そのものは、わずかのポイントずつですけれども、ずっとこの五年間で見ると、来年度見通しが一番高くなっているわけですね。その根拠というのは何かということになるわけです。どうしてもそこで伸ばすためには、いま言ったような心理的な要素が必要だ、これは減税だ。あともう一つは、いわゆる雇用者所得の中の、先ほど国民生活白書で指摘している所定内給与の割合を高めていかなければいかぬということです。これも調べてみると、いわゆる雇用者所得のうちの賃金俸給部分というのがだんだん下がってきていますね。そして社会保険雇用主負担やその他給与部分というのが上がっていっている。しかも、その賃金俸給部分の中で、定期給与のうちのしかも所定内給与というのはさらに下がってきているわけでしょう。これは全体のうち、たとえば所定内給与の割合、賃金俸給部分のうちで大体何%くらいですか、来年度見通しで。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大体、総個人所得の三二、三%になると思います。全体の個人所得を一〇〇といたしまして、雇用者所得が六〇くらいでございます。そしてそのうち、まず五〇くらいが所定内。ですから全体の三〇%ちょっとくらいです。
  162. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、これの傾向を見ているとだんだん下がってきているわけですね。そこで、やはりここのところが個人消費拡大につながるということになると、これは経済理論的に言ってお尋ねしたいのですけれども、余りベースアップが低いと経済拡大のためには困りますね、理屈の上から言うと。
  163. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、やはり国全体の経済がよくなりまして、企業もまずまずのベースアップをすることができる、また働く人々もそういうベースアップを獲得することができるという、そういう経済になっていきたい、そういうときに経済はより成長するものだ、それはもうそのように思っております。
  164. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、過去三、四年のペースを見ていますと、やはり個人消費はどうも拡大してない。政府が見ている数字よりも現実問題としてやや低めにいっている。この所定内給与のところが余り低くいくと困るのじゃないですか。理屈の上から言うとそうでしょう。それは確かにバランスの問題ももちろんありますよ。厳しい経済情勢とは百も承知です。しかし、来年度七%成長にかける部分からいうと、個人消費の割合が高いという意味からいっても、そこの、つまり国民生活白書で言うかたい収入の部分というのがやはりある程度ふえないと、これはやはりちょっと経済成長七%といっても実現しなくなるのじゃないですか。私の言っているのは理屈の問題です。
  165. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはやはりコンスタントの収入が高まっていくということが消費性向を上げるゆえんであるということば、言われますとおりでございます。
  166. 横路孝弘

    ○横路委員 所定内給与のさっきの五〇%ぐらいということから推定して、政府がどのくらいベースアップを考えているかというのが大体推測つくのですけれども、私はやはりそこのところが上がらぬとこれは個人消費拡大ということにいかぬのじゃないかということだけを指摘し、最近の冷え切った家計を少し消費に回すためにも、何といったって貯蓄過多なんですから、減税が必要だ。これは総理大臣、どうですか。
  167. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 貯蓄過多というお話ですが、私は貯蓄に過多ということはないと思うのです。現実の財政ということを考えてみましても、これだけの赤字を出し、公債を発行しということになると、ある程度の貯蓄がなければ公債が売れませんよ。ですから、やはり、消費をふやす、それだけが能ではない、私はこのように思います。
  168. 横路孝弘

    ○横路委員 それは総理、違うのですよ。いまは家計と民間部門が大体貯蓄が多いのですよ。今日の構造的不況と言われている問題は何かと言えば、消費と生産、あるいは投資と貯蓄というものがバランスがとれてないところに問題があるのです。だから、政府が公債を発行しようというのは貯蓄が多いからそれを財源にしてというのも、一つ経済の理屈ですよ。しかし問題なのは、いまのお答えというものはだから逆なんであって、今日の経済危機の問題がどこにあるのかというところから言うと、それは総理、全く違うのですね、私から言わせれば。つまり、そこのところのバランスがとれてないところに今日の経済の大きな問題があるのですよ。そこは総理、ちょっと認識が違うのじゃないかということを指摘して、そこを議論すると時間だけつぶれてしまいますので、もう一度後にそこのところを指摘したいと思うのです。  そこで民間設備投資、これから今度はまた常に減税公共事業の議論に返るのですが、議論したいと思うのです。  二十五兆六千五百億の内訳、製造、非製造、金融、個人に分けて、幾らになっていますか。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十五兆六千億を比率、名目で申しますと(横路委員「金額で幾らですか」と呼ぶ)金額で申しますと、製造業の合計が六兆九千億、非製造業の合計が十一兆、個人が七兆三千億、あと残り、調整等々が数千億の単位でございます。
  170. 横路孝弘

    ○横路委員 そして寄与率が、大体製造業が一〇%、非製造が六〇、個人が三〇ということですから、ことしの場合は民間設備投資は、その予測で見てどこに期待をしているかというと、かなりのところ個人のところに期待をしているのですね。それから非製造でしょう。つまり小売、卸、あるいは電力も入るでしょうけれども、電力は別にしても、いわゆる個人と非製造部門にかなり依拠して、製造部門はほとんど見てないというように考えてよろしいですね。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうでございます。製造業にはもう大きな期待はちょとかけられないというふうに考えております。
  172. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると総理減税の場合は、減税をすると個人の消費がふえる、そして増産になって投資になる、大体こういうパターンだろうと思うのです。波及度はどうかというと、減税がどの程度消費に回るのかどうかですね。それからさらに、消費財の投資増設にどの程度回っていくのかということですね。こういうことに依存しているわけです。減税の場合の効果ですよ。そうすると、政府みずから、流通、小売でしょう。消費財部門の方が、生産財よりもいまはるかに高い投資意欲があるというように見ているから、こういう計算をされたわけですね。数字合わせのためには個人を高くしたという要素があるのかもしれませんが、率直にこの数字を受けとめて考えれば、製造部門よりは、そうでない部門に投資意欲が強いというように見たから、こういう民間設備投資の大体の内訳を考えられた、こういうぐあいに見てよろしいでしょう。どうですか。これは河本さんからもちょっとお答えください。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり傾向的に見まして、製造業の比率というのがこの数年ずっと下がってきております。ですから今度も、ことに稼働率がこんなことですから、大きなものを見るのは無理だ。それに対しまして、やはり第三次産業、これは非製造の電力は御承知ですから議論のほかにおきまして、個人とか金融とかいうところは、何といいますか、まあまあ毎年ある程度の投資をしておりますし、それは比率としては、ウエートとしては、数年前に比べますと、どうしてもいわゆる大企業等の製造業よりは高くなってきているということが事実でございます。
  174. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、これも個人消費拡大をするというところに実は民間設備投資も依存しているのです。かなりのところ。  製造業の方はどうかということで、ちょっと河本通産大臣にお尋ねしたいのですが、公共事業投資の場合は、在庫が減って稼働率がアップする、それから投資ということに回るわけですね、波及は。波及度はどこで見るかというと、在庫がどのぐらいあるかでしょう。そして、それが生産財設備投資への誘因にどのぐらいなっていくのか。在庫がまずはけなければいかぬわけですね。そうすると現状では、セメントや一部鉄鋼以外はどうですか。それ以外は増産になっていないでしょう。それからさらに、セメント、鉄鋼でさえ設備投資にはつながらないのじゃないですか。そこに来年の経済の厳しさが私はあると思うのですよ。これは通産大臣はいかがお考えでしょうか。
  175. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十三年度の設備投資全体の中で、製造業の設備投資は大体二六、七%になっておると思います。ただ、いまも長官から説明がございましたが、その大部分は前の年からの継続分、それから公害投資、省エネルギー投資、そういうものが主力でございまして、新しく生産をプラスするための投資、生産拡大のための投資というものはきわめて僅少であります。
  176. 横路孝弘

    ○横路委員 この前、予算が決まって、執行されて、それから在庫の動きで見よう、こうおっしゃられたわけでありますが、いま適正在庫水準を超える過剰在庫というのは、大体GNPベースでどのぐらいあるというように通産省で見ておられますか。なかなかわからぬですか。
  177. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 その数字につきましてはむしろ企画庁の方からお答えになるのがいいと思いますが、全体の動きとして申し上げますと、最近、ある程度在庫の調整は進んでおります。これは、私は大変いい傾向だと思います。その中から再び力が生まれてくるわけでありますからそれはいいのですけれども、ただ、生産水準が非常に低い。その中から在庫調整が行われておる。ここにまだ若干の問題があろうと思います。
  178. 横路孝弘

    ○横路委員 これは経企庁の方でわかりますか。わからぬですか。何か民間の調査によりますと、五十二年度で、GNPペースにして三兆円程度の過剰在庫はまだあるのじゃないか。総理総理、眠っていないでちょっと聞いてもらいたいのですが、公共投資効果というものは、建設機械、一次金属などの投資関連産業の伸びですね、いまも河本さんからあったように、鉄鋼や何かの設備投資にはやはりまだつながっていかない。いまわりとよくなってきたセメントや鉄鋼にしたってそういう状況ですね。景気がいいという自動車だって、来年度を見てみると、設備投資を大幅にするなんということに全然なっていないですよ。そうすると、せいぜいいいのは何か。道路といったって、砂利とアスファルトぐらいなものでしょう。それは景気回復のために、ケインズかだれかですか、ともかく何でもいいから穴をほじくるだけでも、それは確かに景気回復の効果というものはあるんだ、こういうことを言った人がいるけれども、どうも極論すると、いま言ったように、政府民間設備投資に期待しているのは製造部門ではなくて、むしろ個人消費に依拠している。そちらとつながりのある部分を設備投資としては見ている。いいですか、製造部門はともかく在庫がありますから、稼働率を少し上げるかというところまで行っても、新規設備投資なんかまで行かないというところで、道路で穴を掘るようなことばかりやって一体景気回復になるのか、これはかなり極論でありますけれども、私は考えるわけですが、いまの民間設備投資をめぐる現状、実態ですね。これを見て、一体総理大臣、どう考えているのか。余り常識だけで判断してもらったのでは困るのです。
  179. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度は数字を申し上げます。  ただいま、わが国の企業の操業度は一体何だ、こう言いますと、製造業稼働率指数で言いますと八五ないし八六の程度のものじゃないか。そうすると、実際の操業度、全産業の操業度ということから見ると、七六−七%程度のところではあるまいか、そのように見ておるわけであります。  そこで、すべての問題というか、すべてというと語弊があるかもしれませんけれども、これは、いまの経済困難を克服する、そのかなめは一体どこにあるのだと言いますと、やはり操業度を適正なところまで持っていくということにあるだろう、このように思うわけであります。その操業度の適正なところというのは一体どの辺だというと、これはいろいろ説があります。説がありまするけれども、大体八五という操業度、そこまでいけばまあまあというふうに言われるわけですが、製造業稼働率指数でこれを換算いたしてみますれば、これは九五−六というところじゃないか、そのように思うのです。  そこで、とにかく操業度にいたしましても、稼働率指数にいたしましても、どっちでもいいのですけれども、とにかく設備の過剰状態をなくするということに観点を置きまして、そしていま諸政策を進めておる。それにはとにかく物の需要を起こさなければならぬ。そこで、物の需要を喚起するには一体どうする。輸出に期待することはなかなかむずかしい。企業の設備投資、そういうことは、これは操業率が問題になっておる今日におきまして、設備投資が起こるはずはない。そうしますと、どうしても政府が需要を造出をするということに焦点を当てるほかはないのだろうというので、今後の臨時異例措置という予算編成、こういうことになったわけですが、これによりまして大体私どもが展望しておりますのは、製造業稼働率指数にいたしまして九二程度のところまで、五十三年度末、来年の三月ですね、その時点の数字を持っていこう。そういたしますと、操業度で言いますれば八三、まだ、とにかく操業度で言いましても二ポイント、また製造業稼働率指数にいたしましても、まだ二ポイント程度の不足はある。  そこで私は、一体五十三年度の経済展望はどうだというと、トンネルが、出口が見えるというところまでだ。出たとまでは言わないのですよ。そういうことを……(「トンネルを出たら雪国だった」と呼ぶ者あり)そういうことを言っておるわけですが、そういう考え方を基本にいたしまして、予算編成もいたし、財政の、また経済政策の運営もいたしておる、このように御理解願います。
  180. 横路孝弘

    ○横路委員 いま後ろの方で、「トンネルを出たら雪国だった」なんという話がありましたが、本当に、出てみたところどうなるのかということも、総理、それは一律に言えないのです。この前、私、一般質問のときに少し議論したのですが、日本の産業というものは、部門間格差が非常に異っているわけですね。ですから、稼働率で言ってみても、いいものは、乗用車、バス、トラック、電気機械でしょう。それから最近はセメント、機械工業、輸送機械、こういうところはいいのですね。悪いところになると四〇、五〇なんというのだってあるのですよ。つまり、そういうばらつきがたくさん出てきているわけです。そして道路投資、といってもせいぜいアスファルトで、では、そこからいろいろな機械生産にまでつながっていくのか。機械を発注して、そしてそこから機械生産にまでつながる、あるいは設備投資につながるかというと、最近はリース業なんというのが大変はやってますね。これはもうみんな見ているから、景気の変動に対して余り物を持っていても仕方がないから、そういう形で企業というのは対応するようになってきているわけですよ。総理が言うように一律に物を見ていくというような状況ではないのです。  だから、公共事業投資ということだけではなくて、バランスを持ってもうちょっと個人消費拡大をする。個人消費というのは全国あまねく行えば、地域的なアンバランスはないわけでしょう。一斉にできるわけですね。しかも、いまの経済というのは地域ごとに大変大きなアンバランス状況になってきているわけでありますから、そういう意味でも、私は公共事業投資ばかりではなくて個人消費というものも考えるべきではないか、これは理屈に合った考えだと思うのですけれども、どうですか。
  181. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 減税などが景気影響ないなんというふうには申し上げていないのです。理論的、観念的に考えるときにですね、それはもう影響はあるのです。あるのでありまするけれども、いま財政状態はどうだということを考えますと、公共事業をずいぶんやる。そうして、とにかく財政公債依存度は三七%になる。そういうような状態でありまして、そう財源に余裕というものがない。その乏しい余裕財源をもって何をやるかという選択にわれわれは迫られておる。そういう際に何を選択するかと言えば、効率のいい景気対策、それをひとつ見詰めなければいかぬということになるのは当然じゃないか、このように思うのです。  同時に、飲み食いで使ってしまうというか、あるいはその他のいろいろな消費生活に使ってしまうというよりは、いまわが日本の国は世界でも社会資本が大変な立ちおくれをしておる。そういうものをこの際、つまり国民財産を後に残すというためにこれを使う、こういうような考え方になるのは、私はこれはもうどなたもが受け入れてくれそうな考え方である、このように考えます。
  182. 横路孝弘

    ○横路委員 やはり総理考え方日本の現状というものをよく見ていないと思うのです。公共投資効果というのは、さっき言ったように建設とか機械とか一次金属などの投資関連産業、この三部門だけで全体の六〇を超えるぐらいの割合じゃないですか。これに対して振替所得の場合は、サービスとか軽工業、さっき飲み食いにとおっしゃったけれども、さっきの個人業といって投資の寄与率三〇%を見ている中にはそういうものも入っているんですよ。軽工業の消費財関連産業への影響が大きいわけですね。  したがって、これはちょっと通産大臣に聞いておきたいのですが、公共投資だけを選択すれば、投資関連のみが需要と生産というものを増大させて、いまの先進国間調整、南北間調整という中でもって国際分業をどうしていくのか、産業構造を大きく変えていこうということにはならないと思うのです。私はそれをしていくためにも、バランスをとった景気回復対策というものが必要だろうと思うのですが、これは通産大臣、いかがですか。産業構造を変えることにならぬですよ、こういうことをやっていたのでは。
  183. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気対策には、一つだけではなく、いろいろな総合政策が必要だと思います。それはお説のとおりであります。  ただしかし、財源が限られておりますから、全部にまんべんなく金を使っていく、資金を使っていくということば不可能である、何らかの選択が必要である、こういうことではないでしょうか。
  184. 横路孝弘

    ○横路委員 私が言っているのは、つまり、こういう投資のやり方をしていると、産業構造を変えないで従来の形に依存してやろうということでしょう。しかし、乗数効果は従来の形でやると上がらないというのが、さっき示した数字なわけです。いろいろな選択の道があるという通産大臣の御答弁でしたけれども、私はそんな意味でそのことをもう一度指摘しながら、時間がちょっとなくなってきましたので、最後に一、二問御質問したいと思うのです。通産大臣と労働大臣、結構でございます。  貯蓄が高い、どうも減税を行っても消費に回らない、こういう議論がありますが、日本の場合貯蓄が高いのは、これはもう総理大臣も御承知のように、消費が満足されているとか十分に余裕があってのストックではないのです。そうじゃないのです。むしろ、やはり将来の不安だとかいろいろな要素があるわけです。たとえば貯蓄に関する世論調査というのを日銀の貯蓄増強中央委員会というところでやると、大体第一に、病気になったときどうするかという健康の問題、第二に子供の教育、三番目が住宅、四番目が年金、老後の心配というのが貯蓄の目的です。そして、たとえば経済企画庁でやっているさまざまな国民生活白書や国民の選好度調査などを見ても、傾向として大体出てくるのはこれですね。教育、年金、住宅、こういうことになるわけです。つまり問題は、満足しているからじゃなくて、むしろ不安があるから高いのだ、こういうことじゃないですか。  総理大臣、貯蓄が高いことについてあなたはどういう認識をされているのですか。
  185. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いまお話を聞いておりますと、広い意味で言いましてわが国社会保障体制が低いからどうも貯蓄ということにはね返ってくるのだというようなお話でありますが、私はそうも思いません。わが国社会保障体制、これはもうかなり高度のものですよ。老後対策にいたしましても、あるいは医療対策にいたしましても、あるいはその他の所得保障体制にいたしましても、そう諸外国に比べて私は遜色あるとは思いません。  それから教育の問題ですね。これは教育に一体国家がどのくらい関与しているかというと、わが国の教育に対する公共の関与、これはもう大変なものです。そういうようなことを考えると私は、教育が他国に対しておくれておるから貯蓄の方が他国よりも進んでおるのだという観察はいたしておりません。  私は、そうじゃなくて、わが日本人というものは、とにかく国が保障するところのナショナルミニマムというか、そういうものは歓迎だ、それはそうだ、しかし、それ以上にプラスアルファで子供の教育はもっとやっていきたい、充実さしていきたい、あるいは老後は、最低限のこと以外にああいうこともしたい、こういうこともしたい、こういう先々に対する期待、展望というものを持っておる。長い間の国民の歴史の中からそういう風潮というものが生まれてきたんだ、こういうふうに思います。貯蓄性向が高い、それを私は決して悪いことであるとは思いません。これはまあ大変尊重すべき風潮である、そのように考えております。
  186. 横路孝弘

    ○横路委員 私は悪いとかいいとか言うのじゃなくて、高くなっている原因は何かということなんです。総理大臣がいまのような認識だとするとこれは大変大きな問題なんで、本当はここからまた各論の議論をそれぞれ展開しなければならぬことなんですが、ちょっと一つだけ指摘しておきます。  貯蓄を所得別に見てみても、年間百五十万未満というような人だって苦労して貯蓄しているんですよ。何も余裕があってのことじゃないんですよ。  教育の現状だってどうなのか。じゃ、みんなが教育に満足しているか。たとえば年間の収入の五分位、所得階層別に大学の進学率がどうなっているかというのを見ると、私立では第五分位で五四・六%、第一分位、第二分位では進学率がわずか六%ですよ。公立大学になるとややその差は縮まってきますが、第五分位では四五%、第一、第二分位では九%に下がる。国立大学になるとさらに縮まります。第五分位では三四%、第一、第二分位で大体一三%程度。国立、公立、私立、所得階層でもってこんなに進学率が違うんですよ。そのためにみんな親は必死になって教育のために貯金しているのです。だからこれは、たとえば私立の大学が十分できるとか、授業料の格差がなくなるとか、入学金が安くなるとかいうような政府の政策によって、そこのところというのは本来ならば直ってくるはずなんです。それがないから貯蓄をしているのであって、教育も十分行き届いているのだ、やれ何もかも不満がないのだというのではないですよ。住宅だって、所得階層別に言えば同じような傾向が全部出てきます。だから総理、そこのところは政治の基本的な部面ですよ。あなた、そういう認識だったのですか、私も初めて聞いてびっくりした。そこは改めてもらわなければならぬ。
  187. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 教育のお話がありましたが、わが国は、とにかく進学率はアメリカと並んで世界最高なんですよ。ですから、進学率一つをとらえてみましても、わが国がよその国におくれておるというような状態はありませんよ。私はそれを言っているのですよ。そうじゃない、わが国は、教育としては制度はかなり進んでいるのだ。おくておるから貯蓄の方が多くなっているということを横路さんがおっしゃるものですから、それはそうじゃありません、こういうことを申し上げておるのです。
  188. 横路孝弘

    ○横路委員 おくれているからじゃなくて、国内においてみんながやはり不満を持っているからですよ。それは日本は世界に比べて教育制度をさらに高くしていかなければいけないでしょう、それしか将来の道はないのですから。技術の開発をやっていかなければいけないということになるわけだ。人材を養成しなければならぬということになるわけですよ。  そこで問題は、最後に一つ、ちょっと宮澤さんにお尋ねしたいのですが、今度の不況、つまり構造的な性格を持っている。需給のいろいろなバランスがとれてないということが一つありますね。これはどういうことかというと、国民が必要としている需要に対して資本の方が提供する供給というのはたとえばずれがあるとか——ずれがあるというのは、ある意味で言うと、需要と供給のアンバランスなどという問題もあるわけです。それから、いま言った、貯蓄が高いというのもそこにあるわけですね。バランスがとれてないわけでしょう。つまり、私が言いたいのは、今日の不況問題を考える場合に、消費と生産、これはいま言ったように、国民が要する需要がやはりきちんと民間サイドからも出てくるような形にしていかなければいけない。  それからもう一つは、投資と貯蓄のアンバランスという問題もあるわけです。これをやはりきちんと正して、少し素直な形に日本経済全体を、いまのように民間の部門が貯蓄が多いから、政府の方は財政赤字だ、そこに依存して国債を出して、そこでバランスをとるということではなくて、もうちょっと自然にこのバランスがとれるような形にしていかなければいけない。そのためには私は、貯蓄性向が高いということの原因に手をつけていくことが長い目で見た場合には必要だと思うのですね。いま私が申し上げた貯蓄性向が高いという原因のところに手をつけていくのが政治がやるべき方法じゃないですか、違いますか。
  189. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 貯蓄性向が高いということは、アンケートをしますといまおっしゃいましたような答えが出てくるわけでございますけれども、これはしかし、もっとそれ以外に、やはり日本人の持っているいろいろな伝統とか物の考え方とか私はあると思いますので、一概にそう申せますかどうか、ちょっとにわかに申し上げられません。
  190. 中野四郎

    中野委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  191. 坂口力

    坂口委員 いまも貯蓄の問題等が議論をされましたが、私も幾つかのそうした問題を提起しながら議論を進めていきたいと思います。  まず最初に、先日も若干議論をいたしましたが、大蔵省の「所得税減税に対する考え方」、このパンフレットの中に、先ほども議論の出ました個人貯蓄性向というものが日本が非常に高いという数字が載っております。日本は二五・一%という数字が載っているわけです。いま個人消費支出の五分位階層別の動向を見てみますると、第一分位のところは、昭和五十一年におきましては八二・九%、平均消費性向でございます。それから第五分位は七四・九%、こういうことになっております。ここに貯蓄性向が載せられておりますが、しかし分位別で見ますとかなりなばらつきがございます。したがいまして、第一分位、第二分位でも八〇%でありますから、第一分位、第二分位ぐらいなところであればそれほどここに書いてあるような顕著な形にはならないわけであります。  したがって、私は大蔵大臣にまずお聞きをしたいのは、今回野党共同の減税の問題が煮詰まりましたが、その中で特にたとえば年金等の修正でございますとか——その中で老齢福祉年金もあればあるいは五年年金、十年年金もございます。こういった特に年金をおもらいになるような方々あるいは生活保護をもらわれるような方々、この辺の皆さん方は大体第一分位、第二分位、そこへ行くか行かないか、ここへ行かない人もあるわけでありまして、この辺の少なくとも第一、第二分位以下ぐらいなところの皆さん方は決して貯蓄性向が高いということではないわけでありまして、その辺いかがでございますか。
  192. 村山達雄

    村山国務大臣 おっしゃるように、一般的に申しまして消費性向はやはり可処分所得が少ないほど大体高いということは従来から言われているわけでございます。所得税の納税者と申しますと、かなりの課税最低限でございますので、現在高いということもありまして、今度はしんぼうしてほしいと言ったわけでございますが、いま坂口さん御指摘なのは、その辺は消費性向は高いのだから年金についてはどうか、こういうお話でございますが、これは厚生省の方がむしろ所管でございますが、われわれの常識として考えておりますのは、一体そういう年金というようなものは本来景気政策として考えるべきものなのかどうなのか。それはもちろん消費性向が高いということはよくわかります。しかしいまの年金はやはりいろんな将来の老齢化のことを考えますと、その財源確保しながら、やはり国際的水準で、できれば高い方がよろしゅうございますけれども、そういうふうに先々を見通してやっていくのが一番大事じゃないか、そういう見通しなくして、当面の必要のためにたとえばあるところをふやすということには非常な問題が多いのじゃないか、私は特に専門家じゃございませんが、財政を預かる者としてそういう感じが深いのでございます。
  193. 坂口力

    坂口委員 私は年金問答をいま実はしているわけではございませんで、「所得税減税に対する大蔵省の考え方」、この中で日本の国じゅうの人を一括して、そうして個人貯蓄性向が高いということを述べておみえになる。しかしいま私が申しておりますのは、第一分位、第二分位あたりの人々は決してそうではない、このことはお認めにならざるを得ませんねということを申し上げておるわけでございます。
  194. 村山達雄

    村山国務大臣 それは他の第三、第四位の人に比べれば消費性向が高いということは事実でございます。
  195. 坂口力

    坂口委員 そのことをひとつ前提条件にいたしまして議論を進めていきたいと思いますが、先ほども総理は、公共投資かあるいは減税かという二者選択的な立場で意見を述べられまして、常識的に考え公共投資の方が乗数効果というのは大きい、こういうふうな御議論をなすったわけでありますが、横路委員からも出ましたように、これはモデルのとり方によって非常に違うわけであります。先ほどの御意見では、まだしかし、なおかつ最後ごろになってまいりますと、公共投資の方が効果が大きいんだということに固執をしておみえになるわけでありますが、先ほど出ましたSP17と18の比較がございます。私の手元にこの経済企画庁経済研究所編集の「経済分析」なるパンフレットがございます。この中にいろいろのことが書かれておりますけれども、この中で述べられておりますのは、いろいろのモデルのとり方によってこの数字は当然違ってまいりますが、このモデルの結果から出てくる数字によって比較をするということは非常にむずかしいことだということが述べられているわけであります。多分私もそうであろうと思うのです。したがいまして、今回出ましたこのモデルに従えば、先ほど発表のありましたような結果になるのであろうと思うし、SP17のモデルに従えば、福田総理がおっしゃるように公共投資、17ないし18という数字が出てくるのでありましょうし、モデルのとり方によってかなり違ってくる。だから、一つモデルを基本として、それだけによって公共投資の方がこれは効果が大きいんだと総理がお言い切りになるのは間違いじゃないか。今回のこのモデルのように、そうではないという逆の結果も出てくるわけであります。  読んでみますと、「乗数をみる場合には、常にその基になっている計量モデルとワンセットで考えなければならず、乗数だけを取り出して大小を論じたり、政策効果の分析に使うことはあまり意味がない。」こう述べておるわけです。ですから、私も固執はいたしませんが、総理もそれは絶対そうなんだといういままでの言い方はひとつ引っ込めてもらいたい。どうですか。
  196. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この考え方は簡単に引っ込めるわけにはまいりませんです。これは学者だとかそれから政府の研究機関でありますとかが、公共投資の方が減税よりははるかにすぐれた景気波及力を持っておる——異論はありますよ。ありまするけれども、大体定説化しておる、このように私は考えております。
  197. 坂口力

    坂口委員 経企庁長官はどうですか。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かにモデルそのものにはいろいろな前提がございますので、それがもうオールマイティーだというふうに考えるわけにはまいりませんけれども、ただ一般的に公共投資の乗数効果減税の乗数効果とがどっちが高いかというようなことでございますと、これはやはりどういうモデルでも公共投資の方が、ことに初年度において高いということは言えるのではないかと思います。
  199. 坂口力

    坂口委員 総理、きょうの新聞にも載っておりますが、たとえばアメリカは日本との貿易におきまして、日本が対米貿易黒字を六十億ドル以下に減らすということの方が、日本が七%成長をしてくれることよりも先なんだということを言っているということが出ておりますけれども、外圧というものはこれからもかなり厳しくのしかかってくるだろうと思うのです。それからまたきょうの新聞は、一ドル二百三十六円という円高状態を報じております。こういったことを考えました場合に、日本はさらに一生懸命輸入にも励まなければならない。そういうことになってまいりますと、輸入をどんどんふやしていくということはとりもなおさず公共事業の乗数効果というものに対して決していい影響を与えるものではありません。これは足を引っ張る作用をするものであります。このほか企業の利潤率を見ましてもしかりでございますし、また先ほどから出ておりますような消費性向の問題をとりましても、この消費性向が低いということ、そのことは公共事業の波及効果ということをとりましてもやはり足を引っ張る要因ではないのか、こういうふうにいろいろ条件が変わってきている。総理は一遍信じ込んだらそれを一生変えないみたいな決意を表明しておみえになりますけれども、世界は刻々変わっているわけであります。ですから、これらの条件を新しく加味していくならば、私も決して公共投資がだめだということを申し上げているわけではありません。公共投資にはそれなりの効果があることを認めるわけでありますけれども、しかし公共投資だけがという、余りにも固守されるその態度というのは、余りにもかたくなにわれわれには聞こえるわけであります。いかがですか。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済の発展にはいろいろな影響する要素があるのですね。個人の消費態度もありますれば、企業の設備投資の動向というようなこともあるし、また政府がどういう投資を行うかという政府投資の問題もあるし、また輸出、輸入がどういう状態になるかという要素もあるし、これはいろいろあるのです。あるのですけれども、今日のわが国の置かれておる環境下において何が一番景気対策として重要な要素になるかということを考えますと、政府財政だ、こういうことを申し上げているのです。その政府財政のやり方、これも公共投資、それ以外にちょっと考えられない、こういうことを申し上げているのです。個人消費の動向ということをおっしゃいまするけれども、これは減税というような手法、また社会保障諸施策、そういうようないろいろなことがありましょう。ありましょうけれども、それと公共投資を比べてみる、こういうことになりますと、公共投資の方がはるかに景気対策としてのすぐれた面は強いということは否定できない、私はこういうふうに思うのです。いろいろな要素がありまするけれども、今日、日本経済日本財政が行われておるこの時点におきましては、これは減税とかそういう手法でなくて公共投資だ、こういうことを申し上げておるわけです。
  201. 坂口力

    坂口委員 もう一つだけお聞きをして進めていきたいと思いますが、それでは総理は、この公共事業というものと減税というものとの相乗効果ですね、公共事業なら公共事業単味で使う、減税なら減税を単味で使うというのではなしに、二つを複数で使うということの相乗効果ということについてはどうお考えになりますか。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ですから先ほどから申し上げておるとおり、輸出を伸ばすこともよかろうじゃないか、あるいは設備投資もいいことだ、いろいろいいことはあるわけですよ。個人消費が伸びることもいいことだ。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 しかし輸出といったって、それはもうとても環境が許さぬ。あるいは設備投資といったって、いま企業は設備過剰の状態投資は起こらぬ。そこで何をやるかというと、これは財政しか道がないんだ、こういうことなんです。  そこで、いま財政、つまり公共投資、そのほかに個人消費を伸ばすための減税、これを両方やったらいいじゃないかというようなお話でございまするけれども、いま財政状態考えますと、非常に窮屈なんです。ですから公共事業減税による消費収益もという、とても二つを一緒にやってのける状態じゃない。限られた財源の中で何をすることが一番妥当であり、効率的であるかということの選択を求められておる、そういう状態だ。そういう中におきましては、私は公共事業しか道はないじゃないか、こういうことを申し上げておるわけです。
  203. 坂口力

    坂口委員 その選択の仕方でありますけれども、常に総理公共事業減税かという二者択一の方針をとられる。私が言っているのはそうじゃなしに、公共事業減税と二つを寄せたときの相乗効果はどうか、個々の場合と、二つを一緒にやったときとはどうかということをいま聞いておるわけです。  つづめていきましょう。それじゃ建設大臣、今回公共事業が非常に多くなりまして、そうしてあちこちで材料不足だとかあるいはまた人が足りないとかというようなことがいろいろうわさをされておるわけです。特に骨材、砂でありますとか砂利でありますとか、こういったものが極度に不足をして、そして値段も昭和五十年度には一立方メートル当たり千八百円ぐらいなものが、最近では二千五百円ぐらいになっているというように非常に不足をしてきておりまして、たとえば韓国あたりから輸入をしようじゃないかというような話も出ていると聞いている。こういうような現在の状態を見たときに、果たしてことし組まれた公共投資をやり切っていくだけの材料があるのかどうか、簡単で結構ですから、お答えをいただきたい。
  204. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、御指摘のような情勢が全然ないとは申し上げません。かねて来、五十三年年の公共事業遂行の上にそういう点は問題だということを私も認識しておるわけでございますが、それに対応すべく、政府政府として大蔵大臣中心対策本部、それから建設省は建設省独自の対策本部、また地方の地建におきましては、それぞれの関係との連絡会議を持ちまして、地域的にも時期的にもいま御指摘のような問題が起こらないよう、鋭意努力をしておるわけでございまして、私はその努力の成果は上がるものと思っております。
  205. 坂口力

    坂口委員 それじゃ自治大臣にお聞きいたしますが、地方自治体は現在の公共事業をこなしていきますのに大変に事務量がふえてきておる、こういうことが叫ばれておる。その九〇%は国に出さなければならない書類である、こういったことで完全消化するためには対応が大変だということが言われております。これは簡単にお答えいただきたい。
  206. 加藤武徳

    加藤国務大臣 従来の考え方からいたしますと、大変であろうことが考えられるのでありますが、いま建設大臣がお答えをいたしましたように、各省庁でいろいろ研究をいたしまして、設計協議等につきましても、できるだけこれを簡易に、たとえば継続事業等については協議は必要でない、かような簡素化をいたしておるのでございますから、そのほかにいろいろ処置をとっておりますので大丈夫だ、私はかように考えております。
  207. 坂口力

    坂口委員 法務省、お見えになっておりますか。  四十万戸に及びます住宅を建設するということで、登記所は昭和五十二年度あたりでも大変な仕事量であったと聞いております。さらに四十万戸住宅を建てるということになりますと、一軒当たり大体十件ぐらいの登記書類というものをつくらなければならない、そういうことになりますと、これは算術計算で合うかどうかわかりませんけれども、四百万件の書類をつくらなければならないということになるわけです。少ない人数の中で果たしてこれがやれるのかどうかということが問題になっていると聞いておりますが、ひとつお答えをいただきたい。
  208. 香川保一

    ○香川政府委員 四十万戸の住宅が建設されますと、大体通常の場合で考えますと、建物一戸につきまして土地、建物の登記の出てまいりますのが四件から八件ぐらい出てまいります。四十万戸ということになりますと、約二百万件から三百万件ぐらいの登記事件が増加するわけでございます。従来、大体四十九年をピークにしまして、それ以来年々減っておったのでありますが、五十一年ごろから建物新築の関係が約百万戸ぐらい登記所に出てきております。  今回の四十万戸、これがそのまま上積みになるとは計数上は出てまいらないと思いますけれども、約百二十万戸ぐらいの登記事件として反映されてくるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、来年度予算におきまして、大蔵省にもこういうことを含めましていろいろの点をお願いいたしまして、私どもとしては、精いっぱいの措置を講じていただいたということで、何とかしのげるだろうという見込みを立てております。
  209. 坂口力

    坂口委員 各分野ともいろいろむずかしい問題を抱えておりながら、しかし、表面上は何とかやりくりができるという言い方で表明をしておみえになりますけれども、現場はこれは大変なんです。総理、これらのことを考えますと、今回とられました公共事業一本やりのこの方針というものが、非常に大きないろいろの影響を与えている。われわれの目から見ますと、いささか限度を超えているのじゃないかという感さえするわけでありますけれども、総理はその辺をどうお考えになるか。これを一歩譲って、限度を超えているということではないにしても、とにかく今回の公共事業のこの出し方というものは限度であるというふうに少なくともお考えになっているのじゃないかと思いますが、どうですか。
  210. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私、日本の国づくりということを考えてみますと、工業力は確かに拡大された。しかし、われわれの生活環境がいかにも立ちおくれておる。これのおくれの取り戻しをしなければならぬという立場にあるということを考えておったわけであります。しかし、それをやろうといたしましても、なかなかそう急速というわけにはいかぬ。ちょっと心に焦りを感じておったというような状態でございますが、たまたまこういうような経済情勢の沈滞という時期になった。さてこれを、普通ならば輸出、設備投資で盛り上げるわけでありますが、それができない。そこで財政がこれを支えなければならぬ、こういうことになる。財政景気浮揚の重要な役割りを演じなければならぬ。それには財政としてずいぶん危ない橋も渡るわけでございますけれども、しかし、国づくりという最初に申し上げた問題、これと取り組むいい機会でもあるのだというふうに考えておるわけであります。ですから、ここで公共事業を、つまり社会投資をやっていくということは景気対策にもなる、しかも景気対策としては最もすぐれた手法である。同時に、おくれた社会体制の取り戻しにもなっていくのだ、こういうので、一石二鳥の公共投資である、このように考えております。
  211. 坂口力

    坂口委員 どうも議論が同じところをぐるぐる回るわけですけれども、私も決して公共投資というものを否定しておるわけではありません。それを認めておりますが、しかしそれだけでいいかという議論をしているわけであります。  先ほども減税効果というものは公共投資に比べて低いという強い御意思を大臣は表明になったわけでありますけれども、しかし、減税効果が高いか低いかということを決定をするのは、その減税が行われるときの他の政策との絡みによってこれは決定されてくることだと思うのです。あるいはその減税を受け入れる社会状態によってこれは違ってくるわけであります。これは計数的にモデルを出すまでもなく、そういうことだろうと思うわけです。先ほども貯蓄の問題が出まして、総理は、それは国民一つの習性みたいな形で日本人は貯蓄に励んでいる、あるいはまた、日本社会保障の政策がいろいろあるけれども、しかし、それよりももうひとつ豊かなもの、ゆとりのあるものというので個々人がやっている、こういうふうな感じで発言をされましたけれども、しかし、そうではなくて、先ほどからもいろいろ反論が出ておりますように、この貯蓄というものをやらねばならないだけの理由があるわけであります。先ほども御指摘になりましたように、何のために貯蓄をするかという目的の一番大きいものは、これは現在のところ病気や災害のときのために、二番目が教育であり、三番目が住宅取得のためであり、四番目が老後のため、これで大体八五%を占めているわけなんです。  先ほど教育の問題が出ましたが、もう一つ、それでは別の角度からこれを述べてみますと、たとえば、この老後のためにというのを取り上げてみるといたしますと、この老後のために貯蓄をするという人をいろいろの角度から分析をして見てみますると、たとえば農林漁業だとか自由業の人たちと、そしていわゆるお勤めになっている人たちとはうんと違うのです。差が。老後のために貯蓄をするという人のパーセントは、これは農林漁業や自由業の人たちを例にとりますと、大体二〇%がそう答えておみえになる。ところが、いわゆるホワイトカラーの人たちはそうではなくて、約一〇%なんですよ。この差がどこから出てきているかということをずっと分析をしていきますと、私どもは、これは年金の差である、そう思わざるを得ない。年金が、厚生年金なり共済年金なりに入っておみえになる方と、国民年金に入っておみえになる方との間の差というものがそこに明確に出てきている。国民年金にお入りになっている方々のところはうんとやはり老後のためにという貯蓄額が高い。こういうことから見ましても、総理がおっしゃるように、そういうことはないんだという議論は当たらないのであって、これはやはりその辺の政治の政策のあり方が、国民のどこに貯蓄をするか、何のために貯蓄をするかという行動を規定している一つの事実だと思うのです。この辺のところを私は総理によく理解をしていただきたい、こういうふうに思います。  それならば、現在貯蓄を進めておみえになる皆さん方が、現在はそういうふうで非常に将来が不安だ、しかし五年後なら五年後になれば、これはもう安心していけるのだということであるならば、国民の皆さん方はもう少し、それじゃ必要最低限のものを購入する方に使おうか、こういうふうに方向転換がなされてくるのではないか。現在のように、現在も非常に不安がいっぱいで、そしてまた五年先、十年先、二十年先もまた不安がいっぱいであるというのでは、これは消費性向というのはなかなか高まってこないのは当然であります。  私は、厚生大臣あるいは文部大臣等に簡単で結構でありますから、一つずつお聞きをしたい。  厚生大臣は、いままでにもこの予算委員会で、年金のことにつきましてはかなり詳しく述べておみえになりますので、きょうは医療保険の方を取り上げたい。  貯蓄の目的で一番多いのは、これは災害や病気のときのためにというのが多いわけでありまして、そういたしますと、現在のような、もしも大きい病気を患ったら大変なことになる、貯金の全部はたいてもなおかつやっていけないというようなことをなくするためにどうすればいいか、五年なら五年の間に少なくともどの辺のところまでそれを解決していきたいというふうに青写真を描いておみえになるか、ひとつお答えをいただきたい。簡単で結構です。
  212. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 老人医療の別建て制度を、私は来年国会に成案を得て御審議を煩わそうと思っております。  それから被用者保険は、いわゆる高額で、自分の生活に不安を感ずる程度の高額のものは、今度の根本改正においてはできるだけ個人の負担のかからないような仕組みをとりたい。国保の方につきましてもそういうつもりでいま成案を得つつございますので、したがって病気に対してある程度といいますか、非常に低額なものは、これは全部そういうものも含めまして十割給付というのはとうていできませんけれども、したがって若干の負担というものは、これはもう将来とも私はどうしても解消できないと思うのです。全国民を十割給付に持っていくためには国民の負担というものは相当の負担をお願いしなければいけなくなりますので、それはできないと思いますが、少なくとも自分の生活に脅威を与えるような高額のものは保険で全部見れるような根本的な改正を考えておりますので、この点は私としては、そう病気に対する不安の、中身にもよりますけれども、いま申し上げましたような生活に相当脅威を感ずるような高額の医療については全部保険で見るようなシステムを何らか打ち立てたい、かように考えておるところでございます。
  213. 坂口力

    坂口委員 それでは建設大臣にもう一つお聞きをいたしますが、たとえば住宅の問題につきましては、この予算委員会でも非常に今度は議論が多くされましたけれども、マイホームを取得いたしますのに、日本は年収の六、七倍どうしても用意をしなければならない。欧米の二倍ないし三倍というところにははるかに及ばないわけであります。こういうふうな状態が今後続くということになるならば、国民はどれだけ貯蓄を続けていってもなかなかこれは解決できないわけであります。この辺のことについて、何とかもう少しこれを、住宅を取得するために、国民の手に住宅が近づくような方針をどうしたら打ち立てることができるか、このことについて抜本的に考えておみえになることがあったら、ひとつお示しをいただきたい。
  214. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この平均勤労者の賃金に対して現在どれぐらいの取得価格になっているか、宅地を含んで五倍ぐらいだ、したがって、いまお示しの英米の三倍とか四倍に比較して相当高いものになっておりますから、そこで低所得者層に対しましては、御承知のような公営住宅を供給する、あるいは中堅所得者層に対しましては公団住宅を考える、それから持ち家志向の強い面におきましては、今回住宅金融公庫を通じまして大幅な条件緩和をしておる、こういうことでございまして、このことによりまして私は国民の多くの人々の要望に沿って施策をやっておるもの、こういうふうに確信をするものであります。
  215. 坂口力

    坂口委員 総理、お聞きいただきましたとおり、この五年後ぐらいを見ましても、現在の不安というものはそう簡単に解消しそうにない。こういうふうな状態が続いていきますと、これはかなりいろいろ理解をしておりますわれわれでも、いまの大臣のいろいろのお話を伺っておると、これはやっぱりまだ不安だな、貯蓄をもう少しやらなければいかぬなという気が起こるわけでありまして、ましてや一般の国民の皆さん方はそういう感を強く持たれるのは、これは当然だろうと思うわけですね。  そこで、こういうふうな不安をなくしていきますためには、やはり総理自身が、この五年後なら五年後の日本の福祉はこうあるということをはっきり示し、現在低所得で悩んでいる人たちやあるいはまた年金をもらっておみえになる皆さん方に、少ないけれどもこれだけの手当てはいたしますぞという実行を見せて初めてその人たちは、やはり国もいろいろのことをやってくれているんだな、こういうことを私ははだで感じるのであろうと思うのです。その辺のところの、ひとつどうですか、決意をお聞かせいただきたいと思います。
  216. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、政府として国民に対し、未来はこうなんだということをなるべく具体的に展望を示すべきである、示さなければならぬ、こういうふうに考えております。ですから、いわゆる三全総という展望もあり、また五十年代前期五カ年計画という展望もあり、それから、それらに基づくところのいろいろな長期諸計画が具体的にはあるわけであります。そういうことでございますが、欠けておる面があります。たとえば、いまお話しの年金の問題だとかあるいは医療制度の問題でありますとか、これは長期計画というものがいま展望が示されておりません。そういうものにつきましてもなるべく速やかにそういうふうにいたしたい、このように考えております。  ただ、坂口さんはどうも、日本だけが将来に対する諸施策が整っておらぬ、こういうようなニュアンスのお話でございますが、日本社会状態というものは住宅並びにそれをめぐる生活環境、これは確かにおくれておる。しかし、その他の諸制度は大体かなり進んでいると思うのです。社会保障制度、これもかなり高いところに来ておるし、医療の問題にいたしましても、これはこれからさらに整備はいたしまするけれども、今日この段階においても相当なものですよ。その証拠には、とにかく日本人の平均寿命が、男では世界一だというのだ。女にいたしましても世界第三位だ。ここまで来ておるわけなのですから、決して日本だけが先々が悪いという状態でない。また教育の問題、先ほど横路さんから御指摘がありましたが、就学率、そういうことを見てみますれば、これはアメリカと並んで世界第一だ。それから国の財政から教育にどんな金を投入しているのか、これだって大変な金を投入しているわけです。世界最高水準にいっているわけであります。  そういうことを考えると、どうも坂口さんは、日本が先々に対しての施策がおくれているからそこで貯蓄をするのだとおっしゃいますが、それは私は間違っておると思う。日本人というものは、長い民族の歴史の中から、とにかく貯蓄というような習性を身につけておる。これは大変大事なことなんです。これがなかったら一体どうなりますか。経済成長発展にしたって設備投資は必要でしょう。その金は何だと言えば国民の貯蓄ですよ。いま公債を出している。公債が消化されなかったらどうなりますか。これが消化されるゆえんのものは国民の貯蓄なんですから、貯蓄が高過ぎる、これはどうもよくないことだ、そういうような考え方を持ったらこれは大変間違ったことになるのじゃないかということもつけ加えます。
  217. 坂口力

    坂口委員 どうも一言いつも余分なものがつくものですから話が先に進まないので、また戻らなければならないわけでありますが、その政府が言っておみえになりますのが、どうしても貯蓄性向が高いから、だから減税という施策はいけないと申しますか、公共事業よりもこちらの方が効果が少ないのだ、こういうことを言われるから申し上げているわけなんですよ。それで、その貯蓄というものに対して、これこれの目的で皆さんは貯蓄をしておりますよ、だから減税による効果というものを上げようとするならばこういう施策をセットして同じにやったら、そうすればこの貯蓄というものはもっと減っていくじゃないか。減税効果がないというのは、減税プラス福祉政策と申しますか、あるいはまた不安解消政策と申しますか、そのものと減税とがセットになって初めてこれは効果を発揮すべきものであって、減税効果がないというふうに総理はおっしゃるけれども、その減税効果をなくしているのは総理、あなたの政策がそうなんですよということを言っているわけですよ。そのことを私は主張しているわけであります。  この問題、何遍言っておりましても総理はかたくなに変えようとなさいませんので時間がありませんから少し進みますが、先ほどの、建設大臣から出していただきました住宅の問題です。これだけ多くの、年収の六、七倍もあるいはそれ以上もお金をつぎ込まないことには買えないというその原因をさらに見ていけば、それはやはり土地代ですよね。日本の場合には六〇%が土地代であり、アメリカの場合にはわずか二〇%なんですね。この差が、日本の国をして家を持つことを非常に困難にさせているわけであります。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで土地の価格でありますけれども、関係をいたしますので簡単にだけ触れておきたいと思うのです。  最近、土地の価格が非常にまた上がってきているわけなんです。ところが、国土庁がお示しになりました地価公示価格というものを見てみますと、さほどでない。ところが、東京宅建業協会がお示しになったものを見ますと、同じ土地でありましてもかなり高い。中には、国土庁が示されたものと比較すると宅建の方は倍ぐらいになっているものもあるのです。たとえば品川区の南大井でしょうか五の十八の十二、ここは国土庁が示されたものは十四万五千円、ところが東京宅建業協会が示されたものは二十七万三千円というふうに一・九倍になっているわけです。こういうふうな例がたくさんある。大体一・五倍から二倍近くに宅建協会のものはなっている。国土庁の地価公示価格というものは非常に低く抑えておみえになるのではないか、こういうふうな感じがいたしますが、どうですか。簡単に触れていただいて次の質問をいたしたいと思います。
  218. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 平たく言えば、売り手買い手に片寄らない客観的な交換価値を示しておるとおり願ったらいいのじゃないか。これは独立性を有する土地鑑定委員会が、経済社会の実勢に即応した正常な価格を判定いたしておるわけでございますから、私はそれなりの公示価格の価値というものはあるのではないか。それがために、公共用地の取得価格とか収用委員会の補償金の算定基準とかいうものにこの公示価格が使用されておるわけでございますから、いまお示しのような実際上の取引の上におきましてある程度の差がある場合もございますが、公示価格は公示価格としてのやはり大きな価値があるものと思います。
  219. 坂口力

    坂口委員 減税論議から若干離れますので、詳しくやるのは避けたいと思いますが、しかし、いま建設大臣国土庁長官としていろいろお答えになりましたので、もう一つだけ言っておきます。  公示価格を決定しますときに、国土庁の鑑定官と不動産鑑定士による事前の打ち合わせというのがございますね。そのときに、大体地域別の地域変動率が国土庁から事前に鑑定士の方に示され、そして地域要因の変化が多いところは別として、上げ幅を事前に決定する。鑑定士が実勢価格の上げ幅を主張しても国土庁は極力それを抑えようとする。あるいは取引事例に基づいて鑑定士が価格を算定しても、国土庁の意見価格というものが出されてしまう。鑑定官に対して反対の意見を述べるとすぐマークをされて、次回からその鑑定士に依頼しない例がかなりある。これは昭和五十一年から五十二年にかけてその傾向が強いということ、われわれはいろいろの資料を得ているわけであります。もっと詳しく言えと言われればここにございます。  こういうふうなことで、そうしてこの実際の土地の価格よりもより低い値が示される。そのことは、二月十五日に国税庁が発表しました最高路線価によるものが出ておりますが、これを見ましても全国平均四・三%の上昇であります。中でも福岡あたりでは一〇・四%、非常に高いものがございますが、平均して四・三%。それが国土庁が一月三十一日、だから十五日違いでございますけれども、発表いたしております五十三年の地価の公示動向速報というものを見ますと、全国平均で二・六%の上昇であります。宅地だけに限って見ましても三・三%というふうになっております。税金を取ります方は、四・三%上昇していますから高目に税金をいただきますぞ、こういうことになっている。しかし、国土庁の方はわずか二・六%でございます。こういう差がここにも、国がおやりになっているものの間にも出ている。先ほどのは宅建業界とのあれだからそればということを言われると思いますから、あえて申し上げますが、同じ国の機関が出しておるのにこういう差がある。これは一体どういうことですか。
  220. 村山達雄

    村山国務大臣 いま国税庁の路線価価格の話が出ましたので、ちょっと申し上げます。  これは相続税の課税標準を決めるために最高路線価価格を決めているわけでございます。したがいまして、税の対象になるだけにどうしても、たとえば四十九年とか四十八年に地価が暴騰しているわけでございますけれども、それを直ちに課税の基礎にするというようなことは、激変緩和の関係がございまして、ある程度はそれは調整しているのでございます。したがいまして、片方は相続税の課税標準というもので、実際は財産から徴収するわけでございます。その辺でかなり安定的な評価をしておる。水準で申しますと、恐らく公示価格の六割くらいじゃなかろうかと私は思うのでございます。公示価格の方は恐らく時価に並行してやっておられるのじゃないか。大分低いかもしれませんが、そこの辺が、相続税の課税価格をとる場合と公示価格の場合の違いではなかろうかと思っておるわけでございます。
  221. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 土地鑑定委員会のあり方についての御批判があったわけでございますが、私どもは御指摘のようなことを遺憾ながら承っておらないわけでございます。もしさようなことがあればよく調査をしてみたいと思いますが、御承知であろうと思いますが、公示価格は、標準地の近傍類地における実際の取引の事例の中から特殊な事情を補正した取引価格を基準とする、これが一つですね。それから土地の収益から計算をした価格あるいは土地造成価格の各要素を織り込んでの判定をしておる、こういうしっかりした方針のもとに鑑定委員会が行われておるのでありまして、何か一部の圧力によってこの判定が非常に曲げられておる、そういう事実は、遺憾ながら私は承知しておりません。
  222. 坂口力

    坂口委員 それではまた追って詳しくお示しをすることにしたいと思いますが、こういう土地の議論をいたしましたのは、これは特に最近、公共投資が進むということで非常にあちこちで土地の値上がりの状態が出てきているわけであります。こういった動きに対する一つの問題点として取り上げたわけでありまして、この問題そのものを取り上げたわけではございませんので、きょうはさらにこの問題を議論することは差し控えたいと思いますけれども、このように、総理、土地の問題がまた非常に大きな問題になりつつあるのです。現実問題といたしましては。  こういうふうなことが起こってきます背景を考えましたときに、余りにも公共投資一本やりでという形になりますと、またこういうふうなことが起こってくる。ですから、この十年間を振り返ってみましたときに、最初は非常に急激な高度経済成長が続きまして、それによっていろいろインフレが起こった。これを今度は抑えようというので、四十九年から五十年、銀行の窓口規制でありますとか総需要抑制というものが急激にまた行われた、そしてまた、今回それが冷え過ぎたからというので、今度は非常に思い切った公共事業という一本やりがここに登場してきた。こういうふうに、のこぎりの目のように上がったり下がったりという余りにも急激な変化というものが、多くの業者をして不安を与え、そして引っ込み思案にさせているということも言えると思うわけであります。また今回、多くの公共投資がここにどんとやられるという形になりますと、そうすると一部の中には、それ、いつか来た道がまた来るぞというので、非常に物をつり上げていこうとする人たちもここにあらわれてくるわけであります。こういったことが繰り返されてきております。  公共事業関係費、いまさら挙げるまでもございませんが、昭和四十八年には、予算の中で三二・二%が公共事業関連費でございました。四十九年はこれはマイナスになりました。五十年は二・四%と、うんとここで落ち込む。今度はまた五十一年が二丁二、五十二年が二一・四、そしてまた五十三年度が二七・三と、また急激にこう上がる。こういうふうないままでの過去を振り返ってみましたときに、この公共事業一本やりによる操作というものが続いてきた、このことに対する国民の反応というものはやはり謙虚に大臣も受けとめていただかなければいけないと思うわけです。そういう言い方をいたしますと、また総理は、この冷えた景気を上げるのに、これはやはり公共事業がいいのだという言い方をされると思いますが、そのことはもうよくわかっているわけでありまして、ただ公共事業一本やりの行き方がいろいろの問題を起こしている。もちろん、総理がおっしゃることを認めたとして、一歩譲って、あるいは百歩譲って、公共事業効果が一番よかったといたしましょう。たとえそうしたとしても、そういうふうに効果がある公共事業であるならば、逆にまたデメリットも幾つか挙げることができるということなのです。ですから、そのいわゆる乗数効果だけを見れば、あるいは大臣がおっしゃることも一理あるかもしれませんけれども、しかし、それだけではなしに、ほかの減税だとかあるいはまた福祉の面だとか、そういったものを総合的に考えました場合に、メリットとデメリットを比較し、総合的に判断をしました場合に、この公共事業一本やりの行き方が必ずしもいいとは言えない。むしろ多くの問題点を残しているということを実は指摘をしているわけであります。その一つとして土地の問題をいま取り上げましたことをつけ加えておきたいと思うのです。  文部大臣、ちょっと一つ先ほど抜かしましたので、後であわせて御答弁をいただくことにいたします。  こういうふうな問題が起こっておりますし、そのほかにまだ雇用の問題でいろいろの問題がいま起こっておりますね。これも急激な公共事業の盛り込み、そしてまたこの冷え込み、これによって大変混乱が起こっているわけです。  たとえば、ことしの春大学を卒業になる方の就職率、大体七〇%ぐらいはということを聞いておりますが、約三〇%の人はいわゆる職のない人たちであります。昭和六十年には、中卒や高卒は減りまして、大学卒が五十一年に比べて約二十万人ふえるわけであります。いまでも、大学を卒業なすった方が非常に就職がなくてお困りになっている方が多い。これが六十年になればさらに二十万人もふえてくる、こういう現実があるわけであります。また、中高年齢者の場合を見ましても、職につけない人、また解雇された人たちがたくさんお見えになる。また逆に一方、技能労働者の方を見ますと、五十一年六月の労働省の調査によりますと、建設業で十九万五千五百人、製造業で五十万九千五百人、合計いたしまして七十九万三千六百人に達している、約八十万の技能労働者の不足の実態があるわけであります。こういうふうに、一方においては非常に不足し、一方においては余る、こういう現実がここに一つ出てきているわけです。これもどうしても早く解決しなければならない問題でありますし、これをたどっていくと、やはり政府の政策、姿勢というものに近寄ってくるわけであります。  労働大臣、簡単にひとつお答えいただきたいと思いますが、これをどうするのかということ。また、文部大臣にも、どんどんこれはふえてまいりますが、総合的な政府の今後の政策とにらみ合わせてどうするのか。簡単にで結構でございますが、お二人にお答えいただきたいと思います。
  223. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ことし三月の大学卒業生の就職の状況は、おおむね去年の三月のときの状況と同じようにわれわれは判定をしております。ただ、まだ就職が決定してない人たちというのは、大企業ないしは管理部門といったところに行きたいというようなことをあきらめて、むしろ中小企業では求人の数はふえておるという状態でございますから、その方向へ、特に学生職業センターというのがいろいろ情報を提供いたしておりますが、こういう機能を大いに活用して、いまのような問題に対応したい。  今後の問題のお話がいまございましたが、職種の選定というものを、やはり時代が求め社会が求める方向に学生の就職あっせんをするために、文部省あるいは学校当局と密接な連絡をとって、アンバランスの調整を図っていくということで対応しなければならぬと思います。  それから、技能労働者は御指摘のごとく八十万近いものが不足していることは現実でございます。特に建設関係の技能者、配管工、鉄筋工といったのが非常に不足しておりますから、これは積極的に公共の職業訓練施設の訓練科目を新増設する、また改廃をしていく、民間の訓練機関に訓練を委託する、あるいはまた、いままで半年かかっておったものを三カ月くらいで速成の訓練をする、こういったことで訓練の内容を充実していく、このためには、いずれ成案を得まして御審議を願う予定にしているのが職業訓練法の改正でございまして、時代の要請にこたえた職業訓練の体制に万全を期したい、このように考えておるわけでございます。
  224. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 御指摘の点が二つございました。  一つは、三割近い大学卒業生の就職がことしもできてないではないかという点でございます。これは文部省が今月、二月に大学卒の就職率を七二%と発表したわけでございます。しかしその残りの二八%と申しますのは、進学者が四・八%、家業を継いでいく、外へは就職しないというが方一一・一%、学校等に就職の希望等の申し出がない、あるいは死亡した方、そういう方が一二・一%ございまして、本年の大学卒業生は、昨年同様就職希望をなさる方はほぼ全員就職が可能な状態、かように見ているところでございます。  将来の大学生の増のお話がございました。昭和五十七年まで十八歳人口が横ばいを続けてまいります。そこで文部省といたしましては、高等教育の規模につきましては、昭和五十五年度までは大学の新増設を抑制をして、むしろいまある大学の質の向上を図る政策をとってまいります。最近二年間大学への進学率が停滞を見せておりますので、そのこともあわせ考えながら、昭和五十六年度以降の高等教育を受けて立つ方の規模等について、ただいま慎重な検討をしているところでございます。
  225. 坂口力

    坂口委員 もう一つだけ労働大臣にお聞きをしておきます。  造船関係労働者が特に職業難にあえいでいるわけでありますが、この造船関係の方々の中には技能職の人たちもたくさんおるわけであります。いま一方において公共投資が盛んに行われて、その中で技能職の人たちが非常に少ないわけでありまして、できることならばその方に造船界の技能職の人たちを一時的に何とか回すような方法がとれないであろうか、こういうことが言われておりますが、いかがでございますか。
  226. 藤井勝志

    藤井国務大臣 造船業は特定不況業種指定をされてこなければならぬ地域が出てくると思いますし、また構造不況業種であり、雇用安定資金制度といったものと関連いたしまして、再就職の促進のためにいまお話しのような技術を持っておられる労働者の再就職の道は、御指摘の方向も一つのいい案でございますから、われわれは積極的にこのような方向に配置転換ができるように職業訓練においてお手伝いをする、こういうことも考えておるわけでございます。
  227. 坂口力

    坂口委員 現在の公共事業が例年になく大きかっただけにいろいろのこういった問題が出てまいっておりますが、土木あるいは建築等の仕事をなすっている皆さん方も、ことしはこうして多いけれども来年は一体どうなるのであろうか、あるいは再来年はどうなるのであろうか、こういうことを心配なすっているわけであります。だから、何とかしてもう少し設備投資もしたい、あるいは人も雇い入れたいとは思うけれども、しかしそれをやりますと来年がくっとまた減ってしまったらいかんともしがたいのではないか、こういったことで非常に不安を抱きながら現在仕事をおやりになっているのが事実であります。こういうようなことを考えましても、政策の急激な変化というものが多くの混乱を起こさせることだけは紛れもない事実でございます。  したがいまして、総理がおっしゃる公共事業が最も効果があるという言葉を信じるといたしましても、しかしそれ一本やりでいくことがいかに多くの影響あるいは悪影響を与えているかということをひとつ理解をしてもらわなければならないと思うのです。ですから、また繰り返しになりますけれども、公共事業だけという形ではなしに、他のものとの合同、他のものとの組み合わせによる政策というものが、より大きな結果を生む。だから、メリットを互いに高め合い、デメリットを互いに薄め合う、そういう政策的な組み合わせがより大事ではないかという意味で、野党五党はこの減税の問題に真剣に取り組んでまいりましたし、そしてその一致点を見出して、昨日発表になったわけであります。これらのわれわれの要求というものは決して無理なことではなしに、本当に現在の国民の生活を憂えての結論であります。  このわれわれの結論に対して総理も決して自分たちの言い分だけを通そうというわけではないという意味のことを前にも述べられておりますけれども、私は、より謙虚にわれわれの意見を取り入れてもらいたい、どうしてもわれわれの意見を取り上げていただいて、そして国民がより安心をして生活ができるような方向に持っていっていただきたいと思うわけであります。最後に総理大臣にもう一言御答弁をいただきたいと思います。
  228. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五党におきましていろいろ検討されまして、統一意見をこの予算案に対してまとめられたことにつきましては、私も粗筋について承知をいたしております。  これに対して政府はどうするか、こういうお話でございますが、政府はとにかくこの予算案を御審議をお願いしておるわけですから、これをどうこうするという応待はできません。これはベストなものである、こういうふうに信じまして、そしてこれを御可決してくださるようお願いするばかりでございます。  ただ、意見が出た場合におきまして、それに対して、政府が提案者という立場に立って、そのメンツのためにこれは何が何でもというような考え方はいたしません。皆さんの御所見もよく承ることにいたしたいと思いまするし、また同時に、政府立場につきましても幾らでも御説明申し上げまするから、これも修正案を出したのだからそのメンツだというような立場ではなくて、お互いに天下国家のためだというところで結論を出すべきものである、このように考える次第でございます。
  229. 坂口力

    坂口委員 天下国家の立場から総理が決断されることを希望いたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  230. 中野四郎

    中野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、竹本孫一君。
  231. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、この国会の経済財政の論戦を見ながら、あるいは聞きながら非常に痛感しておりますのは、日本の国にバックボーンになるような中期経済計画のしっかりしたものがなければならないという、その必要性を非常に痛感をいたしたのであります。一日にどういう結論が出るのか楽しみにいたしておりますけれども、財政の収支試算にしても、あるいは償還計画にしても、その基本になる経済計画があれば、取ってつけたような収支試算や償還計画は出てくるはずがない。そういう意味から中期経済計画というものをもう一遍その重要性を考え直したいと思いますけれども、その中期経済計画が、御承知のようにあるがごとくないがごとく、いろいろまた欠陥を暴露しておるわけですけれども、それについて、経済企画庁長官にまず、中期経済計画を見直される御意思があるのか、見直されるとすれば、どういう考え方の上に立って見直そうとしておられるのか、その結論はいつごろまでに出されようとしておるのか、その点を伺いたいと思います。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお尋ねの中期経済計画は、昭和五十年代前期計画をお指しのことと存じまして、お答えを申し上げます。  間もなく五十三年度を迎えるわけでございますが、この前期計画に想定いたしましたことの中で、国際収支でありますとか、生産でありますとか、雇用でありますとか、あるいは成長そのものにつきましても、実は最初の二年間でかなり違った動きをいたしておりますことは御承知のとおりでございます。したがいまして、せんだって、この計画に定めた路線あるいは目標とするもろもろの要素が果たして現状で達成が可能であるかどうかという試算をいたしました。その結果は、なお残りの五十三、五十四、五十五において経済運営のよろしきを得るならば、ほぼ目的としております幾つかの目標の達成は可能であろう、ただし、御承知のように財政のバランスというものが非常に外れてきておるというのがせんだっての試算であったわけでございます。  そこで私どもは、この計画が頭に置いております雇用でありますとか、社会保障でありますとか、物価でありますとか、国際収支の問題でありますとかは、目標としては誤っていない、われわれがいずれにしても達成しなければならない目標でございますから、それはこの際放棄する必要はない、試算によれば、なおこれからの経済運営でその達成はほぼ整合をした形で可能であるというともかくの試算でございますので、この際この計画を変えるということは、その必要がないのではないかとただいま考えておるわけでございます。  なお、もう一つつけ加えて申し上げますならば、いずれにしてもわが国経済が激動をいたしておるさなかでございますので、かつてのように計数的にきちんと規制をいたしますような計画はなかなか困難であって、数字はむしろバックデータとして、大局的に見てそれらの幾つかの目標の達成が可能なような経済運営をするためのガイドとする、そのようなものとして中期経済計画を私どもとしてはただいま考えておるわけでございます。
  233. 竹本孫一

    ○竹本委員 御答弁が複雑でありまして、端的にわかりにくいのですけれども、中期経済計画というものは一応成功をおさめておるというふうにお考えなのか、あるいはこれはもう一遍見直さなければならないと考えておられるのか。結論だけ、ひとつはっきりと聞きたいと思います。
  234. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 端的に申しまして、最初の二年間歩みました路線は、計画が考えておった路線とはどうも一緒ではない。しかしながら、これから三年間においてなお計画がねらっておる目標の達成は、今後の経済運営において可能である、こういうようなのが試算の結論であると思います。
  235. 竹本孫一

    ○竹本委員 最初に考えたものと一緒ではないということは当然だと思うのです。もし一緒であったならば、今日の不景気を初めから期待し、計画をしておるということになりますから、そういうことは許されない。  そこで、総理、この中期経済計画というのが数字がアップ・ツー・デートであるかないかという問題以上に、基本的にどうもわれわれから考えて不十分な点が多い。それを私はふとした機会に自分で発見したから、ちょっとこれを申し上げて、もう少し真剣に取り組んでもらいたいと、こう思うのです。  これは総理も御関係があったと思うのですけれども、昭和五十一年一月二十三日に昭和五十年代の前期経済計画というものが閣議了解をされた。同じく五十一年の五月十四日に閣議決定になっておるのですね。確かにこの一月から三月ごろまでの第四・四半期においては経済が少し上昇線をたどっておりましたから、少し考え方が変わるということは理解できないでもないのですが、基本的にこういう大きな、インチキかごまかしかと言うと言葉が悪くなるのですけれども、言葉の表現が変わっておるのですね。恐らく皆さんお気づきにならないと思うからぼくが申し上げる。  まず第一には、閣議了解のときにはあったものが閣議決定のときにはなくなったもの、訂正されたもの、しかも訂正したのは悪く訂正されておるということを一つ指摘したいのです。たとえば「不況が長期化し、我が国経済は大幅な需給ギャップをかかえ、企業採算、雇用情勢も悪化している」という文章が閣議了解にあるのです。今度は閣議決定のときには「大幅な需給ギャップ」というところを変えまして「かなりの」という言葉に変わっている。かなりの工作が行われているわけですね。次には「経済の各種バランスの改善と企業や家計の自信の回復を図ることが必要である」と書いてある。これは、きわめて正直に、政治家の見識として、この自信の回復、マーシャルが言うように、経済経済心理学ですから、国民が心理学的に自信を持たなければだめだと思うのですね。その「自信の回復を図ることが必要である。」とはっきり閣議了解では書いておるのに、いつの間にか閣議決定には「図ることとする。」という、きわめて事務官的な表現になっておる。政治決定というものがぼかされておる。これも重大な問題だと思うのです。さらに重大な問題は、「しかも、現在のような低成長が今後も続くのではないかという不安感もあり、企業や家計が先行きに対する自信を失っており、それがさらに需要の停滞を招くという悪循環が生じている。」と、これはきわめて端的にわが国のいまの経済の痛いところをびしっと突いていると思うのです。ところがここは全部削除されているのです。だから、文字の問題ではなくて、政府の基本認識の問題として私はこれを問題にするのです。  この中期経済計画あるいは前期経済計画というものがうまくいくためには、この前も私が四ない政治と言って皮肉を申しましたけれども、現実を正しく理解する、過去をまじめに反省するということがなければならぬのに、この認識は、一応は「現在のような低成長が今後も続くのではないかという不安感もあり、企業や家計が先行きに対する自信を失っており、それがさらに需要の停滞を招くという悪循環が生じている。」と、いまの経済そのものじゃないか、そういったやつをすっかり消しちゃって、文書の上だけ消していたって、現実はますます拡大されている。そういう科学的な、基本的な認識が欠けておるということを出発点に置いて、矛盾を持っておるのだから、こんな計画はうまくいくはずがないというのが私の考え方です。  そういう意味から言って、たとえばこれからの経済を論ずる場合には、何と申しましても柱になるのは中期経済計画、これは経済企画庁も本気で取り組んでもらわなければ、これをもとにして経済の動きがわかって、その上に立って財政の収支試算ができる、その財政の計画ができた中で償還計画が考えられるのでしょう。その大前提が全然崩れたようなかっこうでできておって、まともなものが出てくるはずがないのですよ。だから、この国会では皆さんお気づきのように、何回か国会がストップして、あれは野党が勝手にストップしたのじゃないかというような新聞記事もありましたけれども、本当は収支試算の計画だって、償還計画だって、まあ一日を楽しみにしますけれども、本格的なものが出るはずがないんだ、基本がないんだもの。そういう点をどれだけまじめに反省されるかということを私はひとつ皆さんにまじめに考えてもらいまして、これからはもう少し基本的な経済展望の上に立った、きっちりした案を出し、きっちりした試案あるいは資料を出してもらいたいということを強く要望しておきたいのです。  ついでに企画庁長官に申し上げますが、わが大内君がこの間質問をいたしました。これでも「昭和五十三年度国際収支の見通しについて」というこの資料をいただきましたが、これは資料という名に値しない紙切れだ。どうして値しないかといいますと、これを見ると、その中に輸出は八百五十億ドルだろう、輸入は七百十五億だろう、貿易外収支もありますが差し引き百三十五億ドル黒字になって、その貿易外収支も入れて七十五億ドル引けば六十億ドルが残るだろう、これがこの資料ですよ。あとは二、三年前の思い出の数字を並べてあるだけだ。これは全然五十三年度の国際収支の見通しというものじゃないですよ。これは過去の見通しというよりも思い出だ。しかも予算委員会における議論を聞いておると、どなたもお気づきになると思いますけれども、輸出はどうなる、これもいろいろ国際的な情勢もあるし、円高もあるし、見通しがむずかしい、不確定要素である。輸入はどうなるんだ、内需の動きもよくわからないし、設備投資もよく決まらぬからこれも不確定要素である。不確定要素、不確定要素を全部足したら最も確定的な六十億ドルの黒字が出るというのはどういうことですか。まるでマジックみたいだ、これは。こういうような無責任なやり方はないとぼくは思うのですね。あとは結局政府を信じてくださいということ以外には何もない。信ずる者は救われるといいますけれども……。われわれは経済を論じているのですからね。この見通しと言われるなら見通しをもう少し科学的に、なるほどとわれわれが一応思うだけの資料を出してもらわなければ、これは本当だったらやはりストップものですよ。ただ私は予算を余りストップばかりさせたのでは、年内暫定予算を組まなければならないようになっても困るし、また、余りこの数字はアメリカに対して黒字が何億ドルだというようなことを宮澤さんに答弁してくれと言えば、いろいろ国益に反する面も出るだろうと思うから、われわれは涙をのんでストップをかけないのですよ。そういう意味で今度は予算審議を続けていきますけれども、はっきり言っておきますが、この次の国会ではこんな資料ではわれわれは絶対承知しませんから、その点はひとつよく留意しておいていただきたい。国の経済をもう少し真剣に、貿易の問題にしても国内経済の問題にしても考えてもらいたいということを強く要望いたしておきます。  そこで、公共事業の本論に入るわけですけれども、私は、国土庁長官もいらっしゃるから、まず一つ伺いたいのですが、公共事業というものの位置づけが、何だか予算が足らないとか不景気で困るからという穴埋めに公共事業を次から次へと考えるというような傾向があるやに思うのです。ところがそうではない。私は、政府考えられておる三全総というものは、これはある意味において内容次第では非常にすばらしいものだと思うのですよ。田中さんの列島改造に負けないか、それ以上の、ビジョンもあり、国土の再編成ということについての大きな構想があるはずなんだ。したがって、これはそのビジョンとともにこれからの公共事業の軸にならなければいかぬ、中軸に据えなければならぬ。その位置づけが行われていないので、三全総というのはどこか別な部屋のすみの方に資料ができておるというような感じですが、そこで櫻内さんに聞きたいことの一つは、三全総というものはもう少し真剣に取り組んで、公共事業の軸心、真ん中の軸に据えるべきではないか、その位置づけについてどういうお考えであるか。同時に、そのためには三全総そのものの持つビジョンと歴史的な意義と役割りというものをもっとPRしなければいかぬ。第一、国土なんというものは、国土庁の国土というのはぼくはこれは非常にいい言葉だと思うのですよ。単なる物理的、地理的な表現ではなくて、われわれの祖国の国土なんだ。そこには郷土愛も祖国愛も貫いておる。新しいわれわれの精神のよりどころをつくろうという願いも込められておる。そういう意味から言えば国土庁とか国土というものは、考え方は非常にすばらしいのですよ。それを単に失業救済の穴埋めみたいな考え方公共事業を取り扱うということは間違いだと思う。  私はずっと前にドイツに行きましたときに感心したのを思い出しますが、いまのシュミットさんと一緒にハンブルグに行きまして、そして彼に案内してもらいまして、日本で言う住宅供給公社、そこを見に行ったことがあります。行ってみて驚いた。名前がノイエハイマートと書いてある。すなわち住宅供給というのは馬小屋、人間小屋の人間小屋をつくるんじゃないのですよ。われわれの心のふるさとをつくるんだ、新しきふるさとづくり、心のよりどころをつくるんだ、こういう意味で住宅供給公社なんという次元の低い表現でなくて、ノイエハイマート、こう言うのですよ。そういう点から考えると、国土庁の国土という意味はそういうものを持っていると思うのですね。そういうサムシングがなければいかぬと思うのです。いかがですか。
  236. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 竹本委員のいまのお話を聞いておりますと、まことに私もうれしく、激励をされたような気がする次第でございます。  私はこの三全総が昨年の十一月に閣議決定が行われた後に就任をいたしておるわけでございまするが、ずっと読んでみまして、本当の大枠のところは正直にお示ししておると思うのですね。計画はおおむね十年、そして大体年成長率六%ぐらいで二百四十兆の公共投資をしよう、この定住圏構想を進める上におきまして基盤整備が肝心でございまするから、こういうふうな社会資本を必要とする、こう思うのであります。ところが、五十三年度の予算に当てはめてみますると、これは現在の景気状況から、まず景気の回復を図ろう、そしてその後はひとつ自律的な回復を望もうというところのねらいがありまするから、したがって’全体の枠組みの上からいいますと五十三年度の公共投資が少しオーバーではないかということにもなりまするが、そのねらいがあります。そして、その自律的回復が望めない限りは二百四十兆も望めない、こういうことで、おっしゃる大きな理想のもとに、また五十三年度の当面する施策について、私もこれはやむを得ないものである、そして大いに景気回復をまずやろうということで国土庁に建設大臣を兼務しておる次第でございます。
  237. 竹本孫一

    ○竹本委員 ひとつこれからはもう少しすばらしいビジョンに裏打ちをされた三全総をもっと強力に前面に押し出していただくようにお願いをいたします。  これから少し次元を下げまして、具体的な問題に入らないと時間がなくなりますから、簡単に申し上げます。  まず第一に自治大臣公共事業公共事業と言って、私は片肺予算と言っておるんだが、これで一生懸命やっているわけですけれども、だれが具体的に担当するとなれば、出先の府県、市町村だと思うのです。その府県、市町村は財政上の制約あるいは土地の問題あるいは技術者の不足、いろいろと隘路があると思うのですけれども、政府の膨大なる三四・五%の公共事業を地元において完全に消化できる自信と見通しがありますか、その点だけ聞きたい。
  238. 加藤武徳

    加藤国務大臣 結論的に申しますと、なかなか大変な面がございますし、ただいま御指摘のような技術者の問題でありますとか、あるいはまた財政的な裏づけでありますとか、いろいろ苦労な面がございますけれども、結論的には私は消化が可能である、かような判断をいたしております。
  239. 竹本孫一

    ○竹本委員 非常に困難があるというお話もございましたから、その辺で了承いたします。  そこで、総理ひとつ。私が計算してみますと、最初の予算編成のときに、公共事業に対する概算要求というものがあるのですね。ところが、どこの役人でも、主計局長さんもいらっしゃるけれども、どうせ少しは削られるだろうというので、いわゆる切られ料というのを若干予算の中に入れておる。そういうことを仮に五%ぐらいと見て、その五%下げて、それから後に積み増しされた最後の予算の承認された額とを比較すると、計算しますと約七千億円の水ぶくれがあるのですよ、時間がないから細かいことは言いませんが。  そこで、私が心配するのは、公共事業公共事業だということで総理も号令をかけられるから、いまも自治大臣も言われるように、本気でやりましょうと言ってやる。その熱意は大いに買うのですけれども、結果は予算の消化を焦り過ぎたために大事な国民の税金のむだ遣いになる心配はないかということを私は真剣に心配する。  そこで総理にきょうはひとつ約束を二、三いただきたいのですが、その第一は、むだ使いは絶対にさせない、会計検査院のごちそうもさせないということを非常に厳しく指令をしていただく。絶対むだ使いはさせないというお約束ができますか。
  240. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これはお約束申し上げます。
  241. 竹本孫一

    ○竹本委員 厳粛なるお約束をいただいたとして、次に進みます。  これは通産大臣の方か経済企画庁になるのですか、すでに公共事業をやるのだということでセメントも生コンも小形棒鋼も値上がりをしておるようでございますけれども、いままで企業というのは物すごい生産制限をしておる。稼働率はうんと悪い。そこで少しこういう需要の面が出てきたということになれば、業者としては当然のことながらすぐ値上げを考える、便乗値上げを考えるということになると思うのですけれども、これは企画庁においても通産省においても、絶対にそういう便乗的な値上げはやらせないように、あるいは場合によっては独禁法も必要であるかもしれませんが、いずれにいたしましても勝手な値上げはやらせないということで、そのためには国民生活安定緊急措置法なんというものもなかなかいいことが書いてあるのだから、ああいう法律も適宜、独禁法もあわせて活用しながら、むちゃな便乗値上げ的なことは一切許さないというお約束がこれまたいただけるかどうか、お伺いしたい。
  242. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今度の公共事業に関連をいたしまして一番大事な問題が一つございますが、それは公共事業に必要な物資の需給関係だと思います。それからそれに関連しての価格の動向、この問題が最大の課題だと思います。  いまのところは、若干値上がりしたものもございますが、何分にも需給ギャップというものが非常に大きゅうございます。大体セメントにいたしましても、なお十分な余力がありますし、小棒についてもしかりでございます。それぞれ緊急の対策を立てまして、不当な値上がりがないように万般の手配をいたしております。したがいまして、不当な値上げは絶対に起こらないように十分な配慮をしてまいります。
  243. 竹本孫一

    ○竹本委員 昭和四十八年十二月にできたこの緊急措置法は、需給の調整についても、価格の問題についても、ある程度行き届いた法文上の規定ができておる。しかしこれは死んでしまった活用のないやり方ではどうにもなりませんから、これを活用していただいて、いまのお話のとおりに国民心配のないようにしていただきたい。強く要望いたしておきます。  時間の関係がありますから急ぎますが、公共事業でもう一つ心配なことは、公共事業というのは、これは大蔵大臣、建設公債ということとの見合いにおいていろいろ言われておるのだが、最近の議論を聞いておると心配な点が一つあるからお伺いするのだけれども、公共事業、建設公債であれば幾ら出しても心配ないのだというような考え方があるような傾きもあるのですね。いかがですか。
  244. 村山達雄

    村山国務大臣 そのようには考えていないわけでございます。やはり特例公債を早くなくしたいことはもちろんでございますけれども、全体としての依存度はやはり財政を預かる者としてはよほど考えていかなければならぬと思っております。
  245. 竹本孫一

    ○竹本委員 公共事業の乗数効果なんというものがだんだん少なくなって、半分近くなってしまった。時間がありませんから、余り議論しませんが、こういう情勢景気を刺激するということはなかなか困難だ。特に民間の設備投資というものは昔と型がまるきり変わりまして、需要が先行してその後へついていくのですね。昔は投資投資を呼ぶといって下村君が大いに池田内閣をあおったのだけれども、いまどこかへ行っちゃったけれども、とにかく投資投資を呼ぶというような時代ではないのですよ。そういう設備投資の動き等を考えた場合に、私が一番心配することは、公共事業は去年もあるいは一昨年も、ことしも、来年もというように大いに力を入れてやられる。それも一つ考え方ですから、全部反対ではありませんが、しかし結果において景気の回復ができない場合にはどうなる。公債だけが残るのです。だから、この公共事業中心主義というのはケインズの初めの考え方のようなもので、いまはそういう時代ではない、経済状況は変わっているということで、公共事業中心主義がインフレを招くという心配が非常にある。  そこで私は端的に伺いますが、建設公債はウエートで大体何%ぐらいまでをあなたは目標にしておられるかということが一つ。時間がないから簡単に結論だけでいいです。  もう一つは、赤字公債はことしは、五十二年度は実質三七%ですけれども、財政収支試算ができ上がって何とかができるまでは、何年になったら解決するかわからないという考えであるか、少なくとも福田内閣大蔵大臣の決意は何年をめどにして赤字公債は解消させようというお考えであるか。その二つを伺いたい。
  246. 村山達雄

    村山国務大臣 まず、特例公債の方から申し上げますが、この間は試算ということでございましてお出ししたわけでございますが、またわれわれの願いであるわけでございまして、五十七年までには何とかなくしたいと思っております。  それから建設公債でございますが、これはもう竹本委員御案内のとおりでございまして、これももしできれば一般財源で賄うことができればそれにこしたことはございません。それはそのときどきの経済情勢に応じて対処してまいりたい。(竹本委員「何%までか、建設公債なら何%でもいいのかと聞いているのだ」と呼ぶ)絶対の限度、いまのようなこんな高い全体の依存率は考えておりませんが、できるだけ縮小してまいりたいと思っているわけでございます。
  247. 竹本孫一

    ○竹本委員 これも信じておけというような結論でちょっと困りますが、時間がないので、三つ四つ急いで聞きたいのですけれども、総理、いままで総理の言われることを私は非常に高く評価する面もあるのですけれども、しかし先ほど来申している現実の不安感が拡大再生産されているような状況の中では、ちょっとまずいのではないかという心配をしているわけですね。たとえば総理は、公共事業は七五%繰り上げる、あと補正予算はなし、追加はなし、こう言われる。しかし事業というものは上半期に七五台動いて、下半期は二十五台しか車を動かさないなんというばかなことはできないのですから、やはり安定的な幅が要る、結局追加がある、追加をやった。追加をやるくらいならむしろ民間企業に活を入れる意味で、心配するな、後はちゃんと埋めていくということを言われた方が経済効果はもっと大きいのじゃないかと思うのです。  そういう意味で、私はここで伺いたいことが二つばかりあるのですが、一つは、この七%成長にいま、公約であるか公約でないかは別として、総理はすべてをかけておられると思うのです。当然なことだ。われわれもそれは期待している。しかしこれがうまくいかないというときは一体どうなるかということについて、うまくいかないような様子が来月わかるわけじゃありません。ある程度時間の推移というものを見なければならぬが、その推移を見た上で、うまくいかないという場合は、今度は補正とか追加は一切やらないなんというみえを切らないで、七%が達成できるまでは必要に応じてあらゆる手を打ちますというお約束はできないものか、その点はいかがですか。
  248. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 七%成長、これは内外の期待に対するものでございまするから、これはもう私は責任を持って実現をする。そのためにはあらゆる努力をする。十五カ月予算もやっとスタートしたばかりでありまするから、これから先どういう動きになってくるか、これは世界の情勢とも大きくかかわるわけでありますから予断を許しませんけれども、そういう決意を持って経済財政運営に取り組んでまいる、こういうことでございます。もちろんこれを実現するための政策手段、これは機動的、弾力的にそのときどきの情勢に応じてやっていく、こういうことでございます。
  249. 竹本孫一

    ○竹本委員 あらゆる努力の中には、必要に応じては追加、補正ということの措置も講ずるのだ、もちろんそのほかに金利の引き下げとかなんとかいろいろあるでしょうけれども、そういうことも含めてのあらゆる努力ということになるのかということをもう一度伺いたい。  さらにこれに合わせて、五十三年度だけ幾ら勢いよくやってみても、五十四年度はぺしゃんこになるというのでは、設備投資は起こりませんから、総理がすでに言っておられるように、五十四年度も七%に近い六%台、なかなか微妙な表現だけれども、そういうむずかしい言い方ではなかなか大衆にはわからない、やはり思い切った積極施策によって、とにかく七%成長、内外に期待されておるその成長だけは必ずやるからついてこいと言うだけの気魄と信念を示していただきたいと思うが、いかがですか、五十四年度についても……。
  250. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はことし、五十二年度に七%成長ということになりますれば、これは民間活動の方もかなり調子がついてくる、こういうふうに思うのです。それを受けての五十四年度でございます。  五十四年度におきましてはどういう経済要目が指導的役割りを演ずるか、これはなかなかまだ断定しにくうございますけれども、とにかく民間経済活動がかなり活発な動きを示してくるだろうということが展望されます。そういう中で五十四年度におきましては、ただいまお話もありましたけれども、私はとにかく七%に近い六%台の成長をぜひ実現をしたい、このように考えております。  それから、そういう展望の手始めといたまして五十二年度、これは七%成長を実現できないということでは困るのですから、情勢に応じましてあらゆる手段を講じてその目標を実現をする、このように、御理解を願います。
  251. 竹本孫一

    ○竹本委員 通産大臣は、時期を見て大胆かつ機敏なる対応策を考えなければならぬということをときどき言っておられるようだけれども、その大胆かつ機敏なる対応策を講じなければならぬというのは、稼働率の面について、あるいは構造不況について、失業率について、在庫調整についでどういうことを大体前提にして物差しを考えておられるか伺いたいし、またいつごろその判断を下そうとしておられるか伺いたい。
  252. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 このことにつきましては、すでにこの委員会で何回か議論になりましたので、若干重複になりますが、政府といたしましては、今回の積極予算、これを上半期に集中して実行に移しますならば、やはり相当大きな効果が出てくると思うのです。それにつれまして民間の経済活動にある程度の活力を呼び戻すことが可能だと考えております。ただしかし、経済というものは国際情勢の変化も大きく影響いたしますし、不測の事態も起こる場合もあるわけでありますから、絶えず計画どおりいっているかどうかということをフォローアップいたしまして、万が一にも計画から外れておる、こういう場合には、いま総理もお答えになりましたように機動的に対処する、ということは、その情勢に応じて機敏でかつ大胆な対応策をとっていく、こういうことが当然必要になると思います。  しからばその具体的な内容は何ぞやと言いますと、やはりそのときの情勢いかんによると思います。
  253. 竹本孫一

    ○竹本委員 通産大臣経済の問題についてあなただけはピントが合っていると思うのだ。ひとつピントの合ったところで機動的な対応を講じてもらいたいと思います。  減税問題は最後に一口だけになりましたけれども、総理、最近号の東洋経済に西武百貨店の社長が、減税効果は確かにあった、去年の六月から八月におけるところの可処分所得あるいは消費支出というようなものは一昨年に比べて非常にふえておった、ことしもぜひひとつ減税をやってもらいたいし、これが消費動向の明暗を決めるかぎである、こういうことを言っているのです。私は人間の心理というものは、フォードさんがアメリカで、景気回復のかぎは減税であると言った、そういう心理学的作用は日本国民にもあると思うのです。  そこで私はひとつ、これは大蔵大臣に言わなければならぬことかもしれませんが、去年減税をやりましたね。あれがだめだ、だめだと言う。いま西武百貨店は違うことを言っていますけれども、大蔵省の皆さんはそうおっしゃるのだが、去年の減税のやり方が実にでたらめであったということを反省されたことがありますか。どういうふうにでたらめというか、少なくとも不親切であったということを、野党の出した減税案に対して誠実なる協力がなかったということの例を私が一つ申し上げる。いいですか。  同じ一万五千円なら一万五千円の金を渡すときに、別の時期に別の袋に入れて渡したところがこれが一番成績がいいのです。別の時期に別の袋に入れた。  今度は、同じ時期にボーナスと一緒に渡したのだけれども、一万五千円は別の袋に入れた。同じ時期に、ただし別の袋に入れた。これが二番目です。  三番目は、同じ袋に入れて同じ時期に渡したのだけれども、一万五千円は野党の努力ですよとは書いてなかったけれども、赤インキでこれは減税分ですよと言って意識にはっきり上るように書いて渡した。  一番悪いところは、同じ時期に同じ袋に入れて渡して、同じインクの色で書いてある。これでは刺激効果ありませんよ。アメリカの場合には、減税のときはわざわざチェックを、小切手を家へ送ったというのでしょう。なるほどこれは臨時収入だ、少し何か使いましょうというような気持ちを起こさせるように三千億円の金は使ってもらわなければ効果がないのはあたりまえですよ。どこへ行ったかわからないように書いてある。そういう意味で、やり方自体も反省してもらわなければならぬという点、これは強く要望を申し上げておきます。  最後に、予算の修正の問題について。  修正権については先ほどもお話がありましたが、予算提案権を損なわない範囲内においてこれは可能であるというお考えが去年の統一見解として示されておるし、ことしもそれがいま具体的な問題になろうとしておる。  そこで、これはひとつ総理に提案でありますけれども、いま世界の大勢を見ると、ほとんどの国が連合政権なんですね。西欧では十七カ国のうちで十一カ国がすでに連合政権になっておる。私は政権ビジョン委員会をやっておりますので、調べてみましたが、過去五十年の平時における政権は、ヨーロッパでは実に七五%までが連合政権です。四十カ月以上の長期政権というのは、八〇%までが連合政権ですよ。だからもう連合政権時代というのは、日本はどうかは別として、ヨーロッパではもう常識になっている。八〇%まで、連合政権こそがむしろ安定政権だ、そういう時代になってきておるのに、日本だけはどういうことかさっぱり動きがないのですが、いま予算の修正の問題、たとえば減税の問題にしても、三千億円くらいの減税で、私はあめ玉三つと言っているのですけれども、あめ玉三つもらって予算に賛成なんていうわけにいきませんよ、これからは。そんなことなら、むしろやらぬ方がいい。だから私は、この予算の修正という問題については、別の角度から一つの意見を持っている。それは、政府がベストだと信じてやったなら、それは押し通されたらいい。もし困ったら解散をやればいい。そのぐらいの信念がなければ、ベストだということの信念がないじゃないですか。われわれもまた、われわれの案を組んだ以上は、解散覚悟で、組み替え動議を出すか何を出すか知らぬが、徹底的にやったらいい。中途半端な妥協というものはお互いのためにならぬ。そういう意味において、予算の修正というもののあり方について、この辺で再検討しなければならぬのではないかということを私は一つ思っている。  しかし、同時に、連合政権時代でございますし、日本経済困難も一党一派で片づく問題とも思いませんから、そこでイギリスの例を一言だけ申し上げて終わりにするのですが、イギリスにおいては、五十二年の三月に合同政策協議委員会、ジョイント・コンサルタティブ・コミッティーというのができました。これは、労働党が政権をとってはおるけれども、自分だけではうまくいかないので、自由党に協力を求めた。しかし、日本の場合のように、自由党につまみ食いだけをやるというような失礼なことはやらないで、とにかく協力をしてもらいたい、協議委員会を一緒につくりましょう。「委員会は、下院提出前における政府の政策、その他の問題及び自由党の政策提案について審査するものとする。」「委員会は、政府が自由党の見解を受容すること、または、自由党がいかなる問題についても、政府を支持することを約定するものではない。」お互いに自主性は持っているのです。しかし、いま日本政府予算は、これは福田さんのときから誠意の片りんは認めますが、野党の政審会長を呼んで、一時間ぐらい大蔵省でちょっと話をして共同合作ができたなどと思うのは大間違いですよ。この複雑な大きな予算を、三十分や一時間で理解できるはずがない。ですから、平時においてこの協議委員会みたいなものをつくって、お互いに意見を交換する場を持ったらどうか。しかもこれは「自由党は政府とともに進むが、政府の構成メンバーに入るものではない。」ということも書いて、自分の自主性はあくまで守るが、そしてお互いの自主性はあくまでも尊重するけれども、いまは連合時代、みんなの力を合わせなければならぬのだから、その共通の場を持つ。第一、あなたは連帯と協調なんて言われますけれども、あれも私は本当は逆だと思うのですね。総理もお読みになったと思うのでありますが、ジスカールデスタンの「フランス・デモクラシー」という本を読んでみると、どうもおかしいと私は思ったので調べてみると、「協力と連帯」と書いてある。この方が本当ですよ。連帯と協力というのは気分の問題であって、総理が自分で勝手につくられた。一人がつくった案を、一時間ほど話を聞いて連帯感を持てなんて、それは無理だ。だから、いまは参加の時代でもありますから、初めからみんなが一緒にやろうという協力があって初めて緊密なる連帯感が生まれるのです。ジスカールデスタンはちゃんと書いてある。協力そして連帯なんですよ。だから、そういうことも含めまして、私は、これからは予算のあり方、あるいは予算の修正のあり方についても、中途半端なことはむしろ反対、それよりもお互いの信念でいきなさい。しかしながら、それだけでは片づかない問題がありますから、そういう問題については、それこそ国家国民のためなんですから、お互いが胸襟を開いて、謙虚にお互いの意見を述べ合い、話し合い、協力し合うという協力の場をつくる、そこに初めて美しい連帯感が出てくる、こう思うのですが、そういう努力をされる御意思はありませんか。
  254. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算修正についての御見解を感銘深く承りました。  それはそれといたしまして、国会はとにかく六党があるわけでありますから、その間においてまさに協調と連帯というか、逆でもいいです。連帯と協調でも結構ですが、その精神でやってまいりたい、このように考えております。
  255. 竹本孫一

    ○竹本委員 終わります。
  256. 中野四郎

    中野委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  次に、荒木宏君。
  257. 荒木宏

    荒木委員 野党の共同で提出をしました修正案について、私は、減税とそれから財源の問題を主としてお伺いしたいと思います。  早速お尋ねをいたしますけれども、五十二年度の給与所得総額の伸びは、減収の見積もりによりますと、当初一三%とはじかれまして、結果、個人消費は、実績見込みは一一・四%ということになりました。もちろん給与総額即個人消費ということは言えないかもしれませんが、しかし密接な関連があることは間違いのないことでありまして、このたびは、五十三年度一一%というふうに見ておられます。それで一一・九という昨年を上回る個人消費確保できるのであろうか。一三%で一一・四、一一%で一一・九とは一体どういうことなのか、国民は素朴な疑問を持っていると私は思うのです。これをまずお尋ねしたいと思います。
  258. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 個人所得の中には、御承知のように、給与所得以外にいわゆる自営業の所得、農林水産、商工等を含めまして自営業の所得、それから個人の資産所得、これらがございますので、これらは税法で申しますところの給与所得ということではないと存じます。その点が一つでございます。  それから次には、可処分所得の中でどれだけが消費されるかという消費性向の問題が一つあろうかと存じますので、それらが税法上の給与所得と、私どもが考えております個人消費支出との違いになろうかと思います。
  259. 荒木宏

    荒木委員 それはちょっとお答えにならぬと思いますね。別の項目があるということは私も当初申し上げた。直に連動するものでは決してありません。しかし、個人消費項目の中の相当部分を占めることは間違いないし、別にあると言われるその項目の中で、逆に個人消費がふえるという増強要因について何ら示されないままで結論を異にされるということは、いささかうなずけないと思います。  現に、五十二年春闘の賃上げは八・八%、これは民間平均であります。今度は、先日の自民党と財界の懇談会、これは新聞報道でありますが、公務員の五%ベア分が含まれているということが一つクレームの対象になっている。そういう点からいきますと、春闘の賃上げも昨年よりもまだ抑え込もうとしている。そういうことで、長官、この給与所得の部分で昨年よりもなお伸びるという要素は一体どこにあるか、これをひとつお示しいただきたい。
  260. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お時間を短くしょうと思って申し上げませんでしたが、申し上げます。  雇用者所得につきましては、五十二年度の対前年伸び率は一二・一でございます。五十三年度は一一でございますから、お示しのように、五十三年度の伸びが小さくなります。個人業主所得につきましては、おのおの六・四に対して八・九、個人資産所得につきましては、一一・四に対して一二でございます。
  261. 荒木宏

    荒木委員 問題は、いろいろな指標の中で、私はいま給与所得について言っておりますけれども、たとえば雇用状態がどういう状態であるか、完全失業者数、それから失業率、有効求人倍率、勤労者消費支出、これは五十二年度に比べて五十三年度はどういう状態になるか、五十二年春闘に比べて五十三年春闘はどうなるか、労働大臣から見通しを伺いたいと思います。
  262. 藤井勝志

    藤井国務大臣 五十三年度の春闘の見通しでございますが、現在、大変厳しい経済環境でございます。これは私の見通しというよりも願望でございますが、労使関係、この厳しい環境の認識の上に、賃金の決定は御案内のごとく、労使がそれぞれの立場で自主的な交渉で決定をされるという、この基本的ルールの前提の上に、われわれはむしろ物価の安定、景気を一日も早く回復するという、こういったこと、そして雇用確保、こういう環境の整備に全力を尽くしていく、こういうことで臨みたい、このように思います。  それから現在の失業者、これは百万台を超えておりまして、去年の暮れ百十一万人というのがわれわれの数字で見たところでございます。求人倍率は〇・五一、それが最近、五四にちょっとなっておる、こういう状況でございます。
  263. 荒木宏

    荒木委員 大臣、私はそういうことをお尋ねしたのではないのですよ。去年の給与所得の伸び、それから個人消費の伸びという、この見通しを、実情に照らしてうなずけるかどうかということをまず伺っているのです。ですから、五十一年十二月、それから五十二年十二月、ちょうど五十三年度の予算編成されたときの時点ですね、それが一年前と比べてどうであるか、この雇用情勢を伺っているのです。ですから、大臣の将来に向けての決意だとか、そういうことをお尋ねしたのではなくて、いまは五十一年の暮れと五十二年の暮れと比べて雇用情勢はどうでしたかということを伺ったのです。
  264. 北川俊夫

    ○北川政府委員 お答えいたします。  一昨年の十二月の完全失業者は大体百五万程度と思います。昨年十二月、先ほど大臣がお答えしましたように百十一万でございます。  それから求人倍率は、昨年の十二月は〇・五四でございます。一昨年の十二月は〇・六程度、こういうふうに記憶いたしております。
  265. 荒木宏

    荒木委員 完全失業者をもう一遍言ってください。
  266. 北川俊夫

    ○北川政府委員 一昨年百五万程度と思います。昨年は百十一万でございます。
  267. 荒木宏

    荒木委員 失業者数も、それから求人倍率も悪くなっている。大臣、いまお聞きのとおりですね。  そうしますと、長官の方は、ほかに二つ項目があるということでおっしゃったけれども、だがしかし、これはウエートが違うのですね、占めるシェアといいますか、構成比率が違う。一番大きいここのところで、雇用問題で増枠をしていて、そして個人消費がなおかつ伸びるというのは、私は常識的に言ってうなずけないと思うのです。労働大臣は直接所管のその分野で、雇用が一年前に比べてより悪化していて、そして消費が伸びると思っておりますか。大臣、どうですか。
  268. 藤井勝志

    藤井国務大臣 消費の伸びの推定は直接私の所管ではございませんが、やはり景気が上向いてくるという、先行きが明るくなるということになると、ここに消費者のマインドといいますか、いままで始末をしておったけれども、少し使ってみようか、こういうことにも関連してきますから、やはり何といっても景気の回復ということに、現在政府は、御案内のごとく公共事業中心に積極大型予算を組んでおりますから、それがよき方向に迎え水になることを私は期待をし、いい方向へいくであろう、こう考えております。
  269. 荒木宏

    荒木委員 いや、労働大臣、私はあなたの所管の外の景気の見通しについて伺ったんじゃないのです。所管をしておる労働の問題の分野で失業者数も失業率も悪くなっている。予算編成時に比べてもまだ悪くなっている。予算編成をしたときにはっきりしていた数字は去年の十一月の数字でしょう。十一月、十二月、この一月とどんどん悪くなっている。その分野で見ていて、そしてあなたの見通し、こんなに雇用が悪くなっているのに消費が伸びるというふうに思いますか。そういう期待が軽々に持てますかね。私はいまお答えになったらそれ以上重ねては聞きませんけれども。お答えになりますか。
  270. 藤井勝志

    藤井国務大臣 最近の東京の消費物価、これは前年度との比較は四・四%、全国平均が四・九%、こういうふうに物価が安定してきておるということ、それを背景に景気が回復するということになれば、やはり私は消費者のマインドは前向きになるであろう、こういうふうに期待をいたしておるわけでございます。
  271. 荒木宏

    荒木委員 私はどうかと思いますね。大臣、首を切られて、それで、物価の上がり方が少し全体の数字から、指数からして下がってきたからといって、物を買おうという気になりますか。どうですか、常識的に言って。あなたは解雇ですよ、こう言われて、それで、ああそれじゃ、物価が安定したなら物を買おうかという気になるでしょうかね。私はいまのような答弁ではとても納得ができないと思いますが、さらに去年は、もう朝から論議がありましたように、その上に六千五百億の減税をやったわけでしょう。それで一一・四%だったんです。ことし全然やらない。一番ウエートを占める雇用状態は悪くなっておる。それでいてなお去年の上を行く一一・九だということは私はどうしてもうなずけないと思いますが、総理はどうお考えになりますか。
  272. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねに対するお答えは、就業者数をやはり問題にしなければならないはずでして、五十一年の十二月は五千二百四十一万です。それから五十二年の十一月は五千三百十四万ですから、就業者数がもう非常に違っております。それでお答えになっておると思います。
  273. 荒木宏

    荒木委員 ですから私は、その就業者数について、雇用のいまの推移を指摘しておるわけなんです。つまり人数がふえればそれだけトータルの消費がふえる、こうおっしゃるわけですね。それはしかし悪くなる方向にある、こう言っているのですよ。いずれにしても、個人消費が全体のGNPの回復に向けての横綱格であるということは、もういま数字その他を申し上げるまでもないと思うのです。  ただ、それだけではなくて、私どもが特に強調しておりますのは、特に指摘していますのは、政府の企画庁のあの暫定試算によりますと、五十七年には四八%にまで中期の見通しでは低下をさせている、個人消費を。GNPに占める比率、これは長官御承知のとおりですね。一方、設備投資といいますか、あるいは財政支出が絡む公共事業、これは資本の装備率が高いわけです。ですから、労働集約という点から言いましても、個人消費の方がそういう点では雇用にプラスになるということは間々指摘をされたところでありますし、ことに個人消費の方はいわば安定的な需要でありまして、公共事業のように金をつけて、もう無理に下痢を起こすぐらいに詰め込もう、そういうのに対応して設備投資が一時期急増する、今度はそれが需給ギャップにつながっていく、国際的には競争力が大変強くなり過ぎるというかっこうで国際摩擦、批判が強まるし、しかも、もてあましたこの需給ギャップを何とか当座解決しようというので腐敗構造に結びつきやすいということも、また一部識者が指摘しておるところであります。福祉がおろそかになる、こういったような面から、私どもは政策手段としてそういう意味で個人消費を高める、それから福祉を伸ばす、野党の共同要求で提起をしておりますところから、購買力、個人消費、そして景気打開ということを主張しておるわけでありまして、そういったことについての総合した点での総理の見解を伺っておきたいと思います。
  274. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 財政問題を度外視してこの問題を論ずることはできないと思うのです。財政が大変豊かである、そういう際にはもう非常にバラエティーの多い政策手段が使えるだろう、こういうふうに思うのです。ところが、財政状態が御承知のように大変厳しい状態になっている、そういう際でありますから、どういう施策をこの際とることが最も効率的であるか、また最も有意義であるかということを考えざるを得ないのじゃないか、そのように思うのです。そういう立場から事を見てまいりますれば、結論はおのずから明らかである、このように考えております。
  275. 荒木宏

    荒木委員 私は、総理の口から財政を理由にした御答弁を伺おうとは思っていなかったのですね。いま国債の問題、特例公債の問題が大変な問題になっている。それは見方によりますと、公債は財政運営一つの手段、方便という点もありますから、これは適時適切な時期に活用すればよろしいということもあるいは指摘をされる向きがあるかもしれません。だがしかし、それならそれで財政がいわば少し楽なときにきちっとけじめと始末をつけておくべきことでありまして、高度成長で自然増収がある、そうすれば財政の点も公債依存度をうんと解決していくような方向に向けるべきだと思いますけれども、それがそのままの状態で今日になって依存度三〇%を超えている。そういうのが延長していくとどういうふうになるか。  いまたまたま総理から財源のお話がありましたから、それに触れてお尋ねしておきたいと思うのですが、若干の数字の試算がありますので、質問の便宜上、総理大蔵大臣にごらんいただきたいと思いますので、お許しを願いたいと思います。  これは昭和六十年、六十一年、六十二年、六十三年、いずれも予算書に添付をされました償還計画表に記載をしてあります償還予定額をもとに計算をしております。  まず、昭和六十年度は五十年に発行いたしました特例公債がまるまる償還に回ります。六十三年まで以下同じ計算であります。それから償還表に記載をされました普通国債、これは特例公債を除いて残額に対して大体六分の一、期限が十年でありまして、大体建設公債六十年と見ておりますから、六分の一を掛けた分が当該年度の償還分と見て差し支えないかと思うのです。それに先日の財政収支試算で発表されました公債の残高、大体五十七年で百兆ということになっております。利子は六・六%というのが主計局のはじいておるそろばんでありますから、六兆六千億というのが利子になります。で、特例公債の償還分と、普通国債の特例公債を除いた分に対する六分の一を掛けた分と、さらに利子概算を合計しますと、昭和六十年度には九兆三千億、六十一年には十一兆八千億、六十二年には十二兆二千億、六十三年には十二兆五千九百億円が返済しなければならない分として数字が出てまいります。  これをごらんになって総理どうお思いになりますか。あるいは大蔵大臣、これについてひとつ御所見を伺いたいと思います。十何兆というのが二年も三年も返さなければならない分として続いていく。借金を返すのに借金をしなければならぬということが数字の上から目に見えておるんじゃないでしょうか。
  276. 村山達雄

    村山国務大臣 この前の藤田委員のいわゆる償還財源について、それに基づきましていま試算しております。いろいろな計算をしておるわけでございますが、ここで返さねばならぬ金額がこのとおりであるかどうかということは、なお精査を要しますが、相当巨額のものになることはもう間違いないと思っております。  片や償還財源といたしましては、この前の試算で、五十七年までずっと負担増を求めていくということで、あとずっと百分の一・六を積み上げたときの公債償還財源、減債基金がどうなるか、そういったものをいまずっと計算しているわけでございます。  いまここへ出されたのは、要償還額の概算だろうと思います。この数字が的確に合っているかどうかわかりませんが、相当巨額のものになるということは間違いないと思います。
  277. 荒木宏

    荒木委員 大蔵大臣、特例公債、それから普通国債のそれを除いた六分の一、それから利子概算ですね、数字は精査していただけばいいですけれども、こういう考え方によって十兆を超えるのがずっと続いていく。総理、これはもう全体の財政運営にかかわりますけれども、こういう状態をごらんになって、この上まだ国債の増発というようなことが考えられますか。この上、財源を国債増発に求めるというようなことが考えられるかということを総理に伺っておきたいと思うのです。
  278. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まさに公債が今後累増していっては困るということを私は心配をしておるのです。そういう国債についての心配ごとが起こらないようにどういうふうにこれから財政運営をするか、結局試算で大体大きな傾向が出されておる、こういうふうに思うのでありますが、景気が常道に立ち直るというそういう際には、これは歳出面また歳入面、その両面にわたって根本的な処置を必要とする、このように考えております。
  279. 荒木宏

    荒木委員 景気の問題、個人消費の問題、兼ねて雇用問題、あわせて財源とともに若干お尋ねをしたのでありますけれども、時間がぽつぽつ参りますので、私、最後に、いま問題になっております永大産業、これは本社も、それから下請工場その他も大阪南部にございますけれども、職場の勤労者、それから下請関係の人たちから、操業の継続、職場の確保という要請を強く受けました。新聞報道によりますと、政府も五省庁、現地の通産局に対策本部を設けているということでありますけれども、私は、政府の責任はいかがなものであろうか、時間はもうありませんけれども、一言伺っておきたいと思うのです。  それは積立式宅地建物販売業法というものがありますが、それによる販売は、同法の三条によりまして、広域販売は大臣の許可が必要だということになっております。  建設省の局長に伺いますが、永大産業の場合には、この法律で決められた大臣の許可はありましたか。
  280. 大富宏

    ○大富政府委員 お答えいたします。  御案内のとおり、積立式宅地建物販売業法というのは四十六年の十二月から施行されているわけでございますが、この附則の二項によりまして、法律の施行の際に、すでに業を行っておりましたものは許可とみなすということでやっておりまして、お尋ねの永大産業は許可業者ではございませんけれども、許可業者とみなす扱いで監督をいたしております。
  281. 荒木宏

    荒木委員 これは日本相互住宅のケースなどでも当該委員会ですでに問題になったところですが、従来の政府の指導といいますか監督といいますか、こういう点についての指摘もされておる折からでありますし、特に下請の、たとえば第一合板というところ、これは新聞報道にもありますが、原木がすでに三万石ある、まだ船が一そう二そうと入ってくる、職場の方ではそういうことでどうしても操業を継続したいということでありますから、特にそういう点で五省庁にまたがりますので、総理の方から、雇用確保のために、また生活防衛のために、景気打開のためにも、この職場の要求あるいは下請業者の要求について全力を尽くすということをはっきりとお約束いただきたい、それを伺って質問を終わりたいと思います。
  282. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 永大産業の善後措置につきましては、これはあらゆる角度から検討しております。特に利用者といいますか消費者、この人たち、それから関連企業の立場、そういうものをできる限り政府におきましても援護しなければならぬし、また雇用につきましては、これはいろいろの法制がありまするけれども、その法制の中におきまして、これにつきましても働く人たちに御迷惑が最小限にという配慮のもとに、これは政府におきましてもできる限りの協力をしてまいりたい、このような方針でございます。
  283. 荒木宏

    荒木委員 大蔵大臣、先ほど国債の試算表をごらんいただいておりましたが、大体の数字はどうですか。
  284. 村山達雄

    村山国務大臣 多少違いますが、大体元本の方は合っておるようでございます。おおよそあれでございますが。ただ利払いの方でございますと、これは一般会計から繰り入れるということでございますが、元本償還の方は、御案内のように減債基金で積んでおりまして、それプラス運用利益が出るわけでございます。ですから、これはもし利払いをここに乗せておるとすると、これは一般会計の方の問題、それから元本の方の問題は国債整理基金の方の問題こういうことになります。
  285. 荒木宏

    荒木委員 この会計処理の技術的な点からいいますと、確かに財布は幾つか分かれておりますから、一般会計、特会、それぞれの出どころはあると思いますが、大きく国庫とそれから国民として国の財政に対して一体どう見ていくかというふうな点から見ますと、右のポケットであり左のポケットでありますね。出ていくことは間違いないわけであります。そういう点から見て、元金は大体このとおりだとお認めになったわけですが、利息の方はどうですか。
  286. 村山達雄

    村山国務大臣 やはり元本が合った程度によって合っておるようでございます。
  287. 荒木宏

    荒木委員 時間が参りましたから……。そういう十兆円を超える償還の年度が歴年続いていくというふうな事態にあるということを、ひとしく厳粛に認識しなければならぬと私は思うわけです。申し上げるまでもないと思いますが。共同要求の中で財源が一応それぞれ指摘をされておりますけれども、私どもはそういう意味から、国債の増発に求めるべきではないということで別途財源も指摘をしたわけでありますから、そのことを明らかにしておきまして、質問を終わりたいと思います。
  288. 中野四郎

    中野委員長 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。  次に、大原一三君。
  289. 大原一三

    ○大原(一)委員 三十分しかありませんので要点だけお伺いしたいと思います。  企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、最近の経済指標をずっとながめてみますと、私、四十八年度ベースで申し上げますが、生産は四十八年度を一〇〇にいたしまして五%水面上にようやく浮かび上がったというところでありますし、稼働率は四十五年基準で実質大体八〇%ということになっております。一方在庫率は、四十五年基準で二五%まだ上回っている、一二五%。それから企業収益、これはまだ水面下にずっと沈んでおりまして、四十八年基準で八〇%という数字が出ております。なお、最近の指標は、この二、三カ月を見ますと、企画庁長官がおっしゃいましたように多少上向いております。生産にも動意が見られますし、稼働率も若干上がっておる、在庫率も多少好転しておるということでありますから、その中で一番マイナスと言いますか厳しい数字が出ておりますのが雇用でございます。これは四十八年基準で五%まだ沈んでおります。最近の雇用指数も月別を見ましても全然好転の兆しが見られない。したがって、それが失業の増加という形であらわれているのであります。  そこで企画庁長官に数字の確認でございますけれども、私は、いつもこれを見て気になってしょうがないのでありますが、五十二年度の実績見込みの失業は百十五万と計算されてあります。ところが、十二月までの数字でございますけれども、四月から十二月までずっと平均いたしますと百六万になってしまうのです。そうしますと、百十五万という今年度年度平均の失業が出ることになりますと、一月二月、三月で百四十一万の失業が出ることになります。その計算は間違いでしょうか。
  290. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 なまの数字で申しますと、一−三月には百四十万人程度に達する時期があるかもわかりません。
  291. 大原一三

    ○大原(一)委員 ところが、一月は大体さっきの見通しのとおりでありますので、労働大臣が三月百三十万とおっしゃったですね。ところが企画庁の数字とは大変違っておりまして、企画庁の数字、この見通しによりますと、一、二、三で百四十一万に上がってしまうという数字になるのでありますが、三月は恐らく百五十万オーダーの数字にならないと、企画庁の見通しの数字に合わないということになりますが、いかがですか。
  292. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 完全失業者の数は、原数値で見ます場合と季節調整がございます。私どもの見通しはもちろん一年間ですのでどちらでも結構ですが、十−十二月と一−三月で季節パターンが非常に違います。したがいまして、現在の状況は十−十二月がなまの数字で百五万人、季節調整で百十三万人でございます。したがいまして、五十二年度の見通しのとおりにまいりますには一−三月の原数値が百三十五万人、その場合には季節調整で百十二万人でございます。したがいまして、この一−三月が百三十五万人でございますけれども、月によってはかなり高く出ることもあり得るというわけでございます。
  293. 大原一三

    ○大原(一)委員 その他の指標に比べて雇用指数というのは大変深刻な指標が出る可能性がある。いま総理大臣、おわかりになったと思うのであります。しわ寄せが雇用問題に顕在化しつつあるという実態、この辺がこれからの政策の重点になろうかと思うのであります。  ところでお伺いしたいのでありますが、企画庁長官経済の軟着陸ということがしきりに言われるわけであります。ソフトランディング。私は企業収益の好転が見られない限り経済の安定はあり得ないという考え方でありまして、幾つかの指標を並べてみました。在庫率の数字は、四十五年基準で一二五%でございますけれども、一応四十八年以前の在庫率を見ますと、一〇〇%内外という数字になっております。その一〇〇%内外の水準に戻らないと企業経営は安定しないのではないかというのが一点でございます。  第二点は生産でございますが、いまここに発表されております。これは通産省だと思いますが、設備能力指数というのがございますね。これは四十八年を基準に計算しますと、二二%多いということになっております。一二二%。したがって、現在持っている指数でもまだ生産を二二%伸ばせる余力があるということでありますね。したがって、今年度政府の見通しの六・八%を差し引きましても、残りが一六%出ちゃうんです。ということは、六・八%の生産見通しではまだまだ企業の操業度が満足に動かないという指標だと私はこれを考えております。もしこの生産がフルに、一六%になりますが、二二%余力がありますので、企画庁の見通し六・八%を差し引きますと、大ざっぱに見て一六%残っちゃうんですね。この一六%がフル稼働されるとして、生産指数と雇用との弾性値大体〇・二でございますが、これが全部動いて二十五万人程度の雇用の吸収力になるだろう。これは私の数字でございますから間違っているかもしれません。雇用だけではございません。これは就業者にぶっかけてございますから、ほかに連動すると見て、それぐらいの雇用の増加になるであろう。  以上三つの数字から見まして、五十三年度中に経済の安定、俗にいわゆるソフトランディングが達成されるであろうかということをお伺いしたいのでありますが、いかがでございますか。
  294. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 以前にも申し上げたことでございますが、政府は五十三年度中に七%程度の経済成長を目指しますけれども、それでもなお昭和五十四年三月における稼働率指数は九二程度ではないか、稼働率にいたしますと八二、三というところでございます。その程度でございますから、したがって製造業を中心にした設備投資を呼ぶには至らないということを前回申し上げました。また、完全失業者の数もなお残念ながら百十万、五十五万の新規雇用がございますけれどもなお百十万という失業者数を年度末に見込むということでございますので、これらはいずれも七%の成長が達成されましてもなおわが国経済が正常な拡大均衡的な姿には五十三年度中には戻っていかない、単年度にはそこまでいかないということを意味しておると存じますので、大きな見方としては、私は大原委員のごらんになり方が正しいように存じます。
  295. 大原一三

    ○大原(一)委員 そういう条件の中で、総理は英断をもって七%成長目標、私はいいことだと思うんです。目標を高くお立てになって、それに勇敢にいろいろの諸施策を集約されて、できるだけ七%に近づけるという努力目標設定は評価したいと思うのであります。ところが、いろいろ考えてみますと、この問題は五十三年度だけの問題ではなさそうだという前提から、われわれは円高傾向をも踏まえまして、ひとつ総理大臣に一兆円の減税をお願いして有効需要の喚起をそちらの方でも図ろう、百兆円に対して一%、GNPに対して〇・五%であるけれども、そういう政策もあわせ行っていただきたいということで、最初は減税考えなかったのでありますけれども、勇躍減税論に転換をいたしたわけであります。  ところが、一兆円の減税ということはなかなかむずかしい。われわれの主張はあくまでも緊急避難的一兆円の減税でありまして、所得税をいつまでも減税をしろという要請に立っておるわけではございません。そういう意味で、今回の野党各党の要求につきましてもひとつ天下国家的立場から御判断願いたいと思うのでありますけれども、私はその問題は一応さておきまして、先ほどの委員もおっしゃいましたが、これからの財政再建という問題について御所見を承りたいと思うのであります。  と申しますことは、大蔵省の試算Aというのがございますけれども、これ、何も施策をしなかったらこういうかっこうになりますというまことに深刻な数字が展開されてあるわけであります。これを見ますと、公債の発行二十四兆円に対して国債費が八兆七千億、三六%近い数字を償還していかなければならない。まさにこれ国家財政の破産状態の指標であります。私はやはり将来のことを考えていきますと、国債が民間金融にどういう影響を与えておるか、さらにまた財政の硬直化、こういった問題を今後長い目で打開していくにはどういうことが考えられるであろうかということを考えてみますと、やはり何らかの形で国民負担の増加は免れないというふうに考えるものであります。  ところで、過般の税制調査会におきましては一般消費税の導入ということが提案されているわけでございますけれども、この一般消費税の導入をするまずいろいろの前提条件があるだろうと思うんです。いま宮澤企画庁長官は、経済の軟着陸、いわゆる現在のようなノッキングがある程度静止をして、企業の経営が低成長になれるまでには、やはり本年度限りでは終わらないだろう、来年度に持ち越すかもしれないというような見通しと消費税の導入とは、これは私は非常に重大な関係があると思うんです。つまり、経済が軟着陸しませんと、新しい税目をその経済の上に乗っけて軟着陸させることができない。現在のノッキングを大きくするだけでありますから、その辺を判断するために、企画庁長官にいついつごろになったらそういう時代が来るであろうかということをお伺いしたわけでございます。  私はこの指標を見せていただきまして、A案を見ましても、これはちょっとA案でもっても振替支出は、過去五年の成長二八・四に対して一五・七しか伸びておりません。振替支出は抑え込んであるわけでございます。一方公共投資は、いままでの一五・一に対して一六・七ずつ、これはすべての案を通じて伸ばしてあるわけでございます。これから振替支出、特に社会保障制度でございますが、いわゆる国民年金を中心とするところのナショナルミニマムの要請に対して、どういう形で一体これからわれわれが全体として負担を伸ばしていったらいいであろうかというようなことを考えてみますと、何らかの形で国民負担の増加は私は避けられないと考えるわけでございます。  ところで、経済の軟着陸がそういうふうに見通しがまだはっきりしない、今年度中でも無理だというようなお考え方でありますから、この財政収支試算全体を通じて前提されておるところの一つの問題がございます。それは何かといいますと、五十七年度に赤字公債をゼロにするという前提であります。ところが赤字公債は御存じのように十年償還でございますから、経済先行きによっては、赤字公債発行をゼロにする段階を償還が開始される六十年度ぐらいまで弾力的に延ばして物事を考えるということも私は一つの方法ではないかと思うのですが、いかがですか、大蔵大臣
  296. 村山達雄

    村山国務大臣 そういう考えもあろうかと思うのでございますが、先行きのことを考えますと、増税をおくらせればその増税額は少なくなるという性質のものではございません。私は、逆に多くなる、要増税額は大きくなってくるだろうと思うのでございます。また一方考えますと、六十年から特例債の償還が始まるわけでございます。先ほど荒木委員からちょっとお示しがありましたように、いま要償還額を六十年以降考えてみますと、これは膨大な額になるわけでございまして、これはすでに法律でお約束申し上げているように、借りかえのきかないものでございます。そうだとすると、できるだけ早く脱却しまして、そして将来に対する償還財源のいわば余裕金を持つ必要があろうかと思うのでございます。そういったことを考えますと、六十年までいいじゃないかという考えも一方では景気局面で言われますけれども、同時にまた、その償還のことを考えますと、一刻も早く脱却した方がいい、こういった考えで五十七年度に一応めどを置いたわけでございます。  なお、五十七年度にめどを置きまして、そして試算をいたしましたが、大体経済企画庁のフォローアップの数字とまずまず整合性が保てる、こういうことでございます。  問題は、それなら各年度に一体どの税でどうやるのか、これはなかなか大きな問題と思いまして、それはそれで今後また検討してまいりたいと思っております。
  297. 大原一三

    ○大原(一)委員 私申し上げておりますのは、いままで振替支出が二八%伸びてきたのに、赤字公債依存型でやっても一五・七%にしか振替支出の伸びがならないということは、これはこれからの老齢化とそれから年金制度、いわゆる基礎年金体系へ渡り移っていく過程での非常に大きな財源を必要とするわけですから、やはり何らかの形で増税は必要だろう。その税源というものは一体何かといいますと、やはり一般消費税の導入以外にはちょっと見当たらない。その前提として幾つかの問題を申し上げているわけでありまして、増税を延ばす議論ではないわけでありますけれども、どれを見ましても、非常な無理な計算になっているわけです。やはり五十七年度に赤字公債をゼロにするという前提がどうしてもぎくしゃくしているわけなんです。  それで、弾力的にその辺の考え方をおとりになって、漸進的な導入というものは考えられないかということをこれから申し上げるわけでございますけれども、しかし消費税が逆進税であることは申すまでもないのでありまして、その前提に私はやはり所得税の見直しが必要であろうと思うのです。低所得者には減税問題が出てまいりますけれども、わが国所得税体系というものをじっと見てみますと非常に問題があります。それは、累進度の表がございますけれども、各国と比較してみまして、一千万円から五千万円の、これは高額所得者でございますね、累進度がわが国の場合は非常に低くなっております。たとえば一千万円前後で見ますと、日本の給与所得者の実効税率は二一%、西独は二七%、アメリカ三二%、イギリスは何と四九%であります。この一千万円から三千万円ないし五千万円内外までの所得に対する累進カーブを高くしていただきたい。時間がありませんので問題点だけ申し上げますが。  それともう一つは、不公平税制の是正、この問題はたくさん御指摘がありましたので一々申しません。ただ私は、現在の税体系の中で、資産所得重課の思想、これは何とかして所得税の体系の中へ取り込んでいかなければならないという考えを持ちます。それと同時に、富裕税の導入ができないかどうかということを考えます。こういうことを所得税で体系整備をしておいて初めて消費税への転換を図って国民の納得と理解が得られるのではないかと思うわけでございますが、その点簡単にお答え願いたいと思うのです。
  298. 村山達雄

    村山国務大臣 その点につきましては、大原委員承知のように、税制調査会で真剣に検討がされまして、そして昨年答申が出されたわけでございます。わが国の租税体系を考えます場合に、どうしても一番欠けているものは一般消費税である、そしてまた、消費税のウエートが各国に比べて格段に低い、何らかの意味で大きな財源を求めるとすればやはり一般消費税というものを考えていく必要があるであろう。そこまでは出たわけでございますが、その抽象論でなくて具体論、具体的に計画を出して、そして国民の批判を仰げ、こういうことでございますので、鋭意やっているわけでございます。  それから所得税関係につきましては、もう御案内のようなことで、わが国課税最低限が非常に高い。それから中堅のところまではずっと低いわけでございますが、それからずっと上がりまして、それで確かに、一千万か二千万か知りませんが、かなり上の方に行きますと累進カーブが少し鈍っているということは言えます。全体としては、もう非常に累進度が高いことは御承知のとおりでございます。  いま資産税の話が出て、そして資産所得を重課せいということと、それから勤労所得の上の方を上げろというのと、実はその辺が一番大きな問題点であろうと思うのでございます。資産税につきましては消費税とあわせて考えるということ、あるいは給与所得について一体他の資産所得とどういうふうに見ていくか、この辺が、いま大原委員が出された問題自身の中に実はあるわけでございまして、そういう点をこれから具体的に検討してまいりたいと思っておるのでございます。
  299. 大原一三

    ○大原(一)委員 消費税によって現在の財政硬直化を打開する大前提として、私は所得税体系の見直し作業、これがどうしても必要であると思うのです。第一番目は経済のソフトランディング、このぎくしゃくした経済の中でいきなり税金へ持っていくということは大変乱暴な話でありますから、その辺のお見通し、つまり増税の時期と経済のソフトランディングの接点、その辺の御判断が非常に大事だと思います。  いま申し上げたことのほかに、消費税の導入をやられる場合の幾つかの問題点を私は指摘したいと思いますが、段階的導入、一応経済が現在の低成長になれて、何らかの形で増税ができるという段階での判断でございますけれども、段階的導入はどうであろうか。それも、五%を最終目標にするならば、一%から五年間で五%に持っていくとか、あるいは一〇%を目標にするならば、二%から始めて五年間で一〇%へ持っていくというような段階的適用の方法はないであろうかということ。それから、中小企業に対してはこれをとりあえず適用除外にする、そして大企業のみに適用することはできないか。さらにまた、売上高に応じて段階税率をつくることはできないか。  最後に、これは食料品等の一般消費には課税しないということが前提でございますが、輸出課税には戻し税を適用することになっておりますけれども、いまの輸出状況の中で、輸出課税の効用をこれに期待することはできないか。たとえば戻し税を適用しないということであります。戻し税を適用しないで、輸出で景気のいい企業に対しては納めっ放し、ただし、これは中小企業には課税しないのですから、そういう配慮を行うことはできないか。いかがでございますか。
  300. 村山達雄

    村山国務大臣 これから一般消費税について具体案をつくりまして、種々御検討いただきたいと思っておるわけでございますが、いま大原委員が申されたことも千分踏まえましていろいろ考えてみたい、貴重な御意見として承っておきたいと思います。  なお、先ほどの所得税のところで、ちょっと訂正させてもらいますと、わが国の累進税率のカーブを見ますと、大体一億円まで、一億円ちょっと上まではかなり累進度がきつうございます。それから上が少し緩和されているということでございます。したがいまして、財源としては大して期待できないということは、もう御案内のとおりだと思います。
  301. 大原一三

    ○大原(一)委員 財源は、ですから消費税の議論がぶっかかっていくわけで、たださっき申しましたことは、一千万から五千万までの間での累進度が、イギリスは比較になりませんが、ドイツ、アメリカに比べて非常に低いということを申し上げているわけでございまして、その辺のカーブもひとつ御検討をされたらいかがですかと申し上げているわけであります。  総理大臣、先ほどいろいろおっしゃいましたけれども、やはり日本人の貯蓄率が高いというのは、先ほどのお二方の意見に私は賛同せざるを得ないわけであります。これは教育、医療、住宅、老後問題、これはもう学界の定説でありまして、諸外国税負担とそれから社会保険負担と貯蓄率でございますね、これをトータルしてみますと、大体五〇%以上、六〇%のところに横に並んでしまうのです。ということは、これは政府の税金も考えてみれば貯蓄でございます。そういう意味で、社会保険制度の充実ということと、それに大きな税負担を期待しなければならないということと、個人の貯蓄率がそれに応じて相対的に低いということは、各国の事例を見ても出ているわけなんですね。  ただ申し上げたいのは、わが国は幸いにしてと申しますか、税金と社会保険負担を合わせて二五%、貯蓄は別でございますよ。貯蓄率が逆に二五%で五〇%、アメリカは三七%、イギリスは四八%、西独四九%、フランスは五一%でございますね。とにかく働いた所得の五割は取られてしまうという国なんです。ところで、これらの国は社会福祉は非常に充実しておりますけれども、経済成長力は弱いですね。その辺の兼ね合いは、総理大臣、どのようにお考えになりますか。余り税金の負担が高過ぎると成長力が鈍ります。まあ安過ぎるのも社会福祉が充実されない。だから、何らかの形で社会負担を増加していかなければならない。現在、国民年金、厚生年金等で一兆七千億ぐらいの負担をしておりますが、これを基礎年金へ持っていくにはあと二兆円ぐらいの負担が必要ですね。そういうことを考えてみますと、税負担の増加は必要でありますが、これが余り高過ぎると経済成長力を殺すのじゃないか。その辺の兼ね合いが非常にむずかしいと思いますけれども、総理大臣、その点の御所感を承りたいと思います。
  302. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういう考え方につきましては、絶対ということは私はないと思うのですよ。やはり国際社会を広く見て、どういう行き方がすばらしい行き方であるかというふうなことをよく見定めて、そしてわが国の行き方を定めていく、こういうことだろうと私は思います。どうも活力のない社会というもの、これは私は余り見習いたくないような感じがいたします。最小限の生活保障、こういうことは必要でございますけれども、余りまた生活保障という社会的な保障というものが行き過ぎまして、もう個人の努力は何も必要ないのだというようなところまで行ってしまうと、また世の中の活力というものにもダメージがあるのじゃないか、そのような感じがしますが、これはどれがいいという絶対的な、頭から決めてかからぬで、どういう行き方が一番いいんだろうなということをよく広く見て、わが国の行き方の参考にすべきである、このように考えます。
  303. 中野四郎

    中野委員長 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十七分散会