運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-02-18 第84回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十八日(土曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君     理事竹本 孫一君       池田 行彦君    大坪健一郎君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       川崎 秀二君    坂本三十次君       笹山茂太郎君    澁谷 直藏君       島村 宜伸君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       戸沢 政方君    渡海元三郎君       中村 弘海君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    森下 元晴君       森田 欽二君    渡部 恒三君       井上 普方君    石野 久男君       岡田 利春君    岡田 春夫君       金子 みつ君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       佐藤 敬治君    鈴木  強君       野坂 浩賢君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    草野  威君       坂井 弘一君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       河村  勝君    寺前  巖君       松本 善明君    安田 純治君       大原 一三君    小林 正巳君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         郵政大臣官房電         気通信監理官  江上 貞利君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省電波監理         局長      平野 正雄君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 眞弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 小林 幸雄君         自治省行政局公         務員部長    塩田  章君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     森田 松仁君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     森下 元晴君   金子 一平君     池田 行彦君   川崎 秀二君     大坪健一郎君   塩崎  潤君     戸沢 政方君   澁谷 直藏君     坂本三十次君   正示啓次郎君     谷川 寛三君   白浜 仁吉君     渡海元三郎君   藤田 義光君     中村 弘海君   坊  秀男君     森田 欽二君   松野 頼三君     島村 宜伸君   石橋 政嗣君     野坂 浩賢君   藤田 高敏君     佐藤 敬治君   矢野 絢也君     草野  威君   小平  忠君     河村  勝君   田中美智子君     安田 純治君 同日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     金子 一平君   大坪健一郎君     川崎 秀二君   坂本三十次君     澁谷 直藏君   島村 宜伸君     松野 頼三君   谷川 寛三君     正示啓次郎君   戸沢 政方君     塩崎  潤君   渡海元三郎君     白浜 仁吉君   中村 弘海君     藤田 義光君   森下 元晴君     伊東 正義君   森田 欽二君     坊  秀男君   佐藤 敬治君     鈴木  強君   野坂 浩賢君     金子 みつ君   草野  威君     矢野 絢也君   安田 純治君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     石橋 政嗣君   鈴木  強君     藤田 高敏君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 最初国際人権規約、これをちょっとこの際に念を押しておきたいと思います。  というのは、うちの方の多賀谷書記長質問に対しても外務大臣の大変前向きの答弁を、私は伺っておりました。しかし、その後いろいろと取りざたされておるものですから、気になる問題の一つであります。あの多賀谷質問は二月一日。私はその前の補正予算の一月二十八日にこの問題を提起したいと思いましたら、大変微妙な段階でありますのでという当局お話もあった。それじゃ、私の今度の出番の六日はぼつぼつ方向が出せるのか、こういうことになったら、六日ごろになったらあるいはということでありました。ところがその後、どうも一向に確定した方向が見当らないように考えます。  そこで気になるのは、外務大臣は片や、国際人になる必要が日本の国は特にあるのだ、このとおりにGNPもトップの方の国であるだけに、それから、日本にいる外国人に対する制度などもこれありですから、そういう前向きというか、理念は私らと一致しておるのでありますが、国内法との調整のためにおくれておるわけだ、こうおっしゃいます。そこで私は、こういう正式な場ではなくて、十一、二の省庁があるわけですが、一つずつ聞いてみると、そう問題はない官庁ばかりです。それじゃどこの官庁が一番がんだ、こういうことに当然ならざるを得ないわけです。ところが、どうもどの官庁も、うちの方は大体いつでも、外務省が集まれ、こう言われれば用意がある、こう言うし、そうこうしている間に、もうすでにきょうは二月の十八日。そうすると、国会にかけるとすればあと一週間か十日の間に結論が出なければ、この国会は見送るということに常識的にはなるわけだ。そうすると、何となく外務省人方がこのごろ来なくなった、これは何か足どめでも食ったのか。政党政治ですから当然与党というのを意識する必要があろうが、しかし政府としてはどう思うのだというこの辺です。  それじゃ一体、一番の問題になる省の代表はどこかと言ったら、この前は文部省に伺ったら、いや、うちの方は大丈夫。そうすると、ははあ、あの問題に絡んで自治省がかなりちゅうちょしておるのかな。しかし自治省は、いまの自治大臣というのはILO会議労働政務次官当時から行っておられるし、この問題は特にILO批准の際にも問題になった問題であるだけに、一体それが蒸し返しておるのか。その辺をちょっと自治大臣にお伺いしたいと思います。
  4. 加藤六月

    加藤国務大臣 御指摘のように、私も二回にわたりましてジュネーブに参ったことがあるのでありますけれども、当時はILO八十七号条約批准が大いに論議されておった段階でございました。  そこで、今回の国際人権規約第八条の中には、警察軍隊公務員のことなどについての規定があるので、これはA規約の場合、B規約は二十二条でありますけれども、A規約の第八条の軍隊警察公務員に関します規定と、ILO八十七号条約、すでにわが国が批准いたしておりますこの条約の第九条とには、ほぼ質的に似通ったような規定があるのでございまして、そこで現在、八十七号条約の第九条の問題をめぐりまして国内でも論議がなされており、かつまたジュネーブでも同様の議論がなされていることは御承知のとおりでございます。  そこで、今回の国際人権規約批准をするに当たりましては、この辺の労働基本権と、そして公務員の姿との関連においての議論が詰まらなければならぬという問題があったのでございますけれども、この点では、ほとんど各省庁間の意見調整が終わりまして、あとはどのようにこれを事務的に調整いたすか、かような問題のみが残されておる、かようなことでございまして、したがって、自治省が頑迷固陋な態度でありますがゆえにこの問題が前進しておらぬ、かようなことはないと御理解願いたいと思う次第であります。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 理解しました。  それでは質問の目的は、一体この国会に間に合うのかどうか、あと一週間ぐらいでほとんど期限切れになると思うのだが、外務大臣、ひとつはっきり教えてください。
  6. 園田直

    園田国務大臣 ただいま自治大臣からもお話がありましたが、各省の意見調整はほぼ終了し、ただいま与党の御理解を求める段階でありまして、国会法案提出締め切り日等もございまして、いま御指摘のとおり、ここ一週間か十日間の余裕しかないわけでありますから、必死になって、今国会で必ず提出するよう、いま努力している最中でございます。何とかして今国会中に出したい、こういうつもりでおります。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 いまの、何とかして必ず出すように努力するということで信用して、必ず人権規約は今国会中にかかるのだという感じがいたしますので、次の質問にかわります。  それから、この前の質問に立った際に、時間の関係で、例の養護学校義務化の問題をはしょって質問しました。ところが、その後公聴会というのがありまして、公述された方が全盲の方で、公立の高等学校のしかも英語の先生をやっておられるという人が切々と訴えたわけです。というのは、厚生大臣もおられるのですが、障害児障害者という側に立つ政治の側面というか、入る面が非常にむずかしいものだなということを感じました。障害者は、わが社会党の委員長もその当事者でございますが、やはりその側に立って気持ちを聞くと、議事録ももうすでにできておるのですが、かわいそうだ、大変でしょう、そして保護、そしてついに隔離というようになってしまう。ところが政治家政治家で、選挙の票もこれありか知らぬけれども、それにもっと温かい手を加えようという、この境目がやはり大変むずかしい、デリケートな問題だなというように、楠公述人の話を私はじっと聞いておりました。  ところが、いよいよ来年の四月一日から養護学校というのが義務化されます。二十二年の教育基本法に基づいて二十三年から盲と聾はもうすでに設置されておるわけですが、五十四年の四月一日から養護学校義務化されるという問題。ところが、すでに任意として各市町村養護学校をやっております。これが義務化、いわゆる国として設置義務、それから親として就学義務、こういう両建てで法律ができておるわけです。しかし、いまちょうどその準備段階で、いろいろとやはり、さっき言った当事者の側に立ってみると、ああ今度はこうなるだろうかという問題から、市町村でかなり困惑する面があるだろう。したがって、それじゃ一体どうなるのだろうか。三つばかり、こういう場合はどうするのか、ちょっと文部大臣に伺います。  たとえば、いま弟が障害児で、姉さんと同じ学校に通わせている。姉さん福祉用語で言えば健常児一般子供健常児と弟の方の障害児と一緒に学校に通わせている、こういう風景で、一般学校に入っておるわけです。ところが来年の四月一日に義務化されると、その障害児は、障害程度ももちろんありますが、文部省が決めたメジャーによってああこれは一般学校にやってはいけないということの尺度に入れば、お姉さんと切り離されて、新しくつくられた養護学校に入らなければならないのかどうか、これが第一点です。  第二点は、そうは言ったって養護学校に入るというのは、生徒比率で言うと、文部省比率だと確かに千人に五人だ、〇・五%。そうすると、東京の場合はわりあいに近いところに養護学校ができると思うのだが、地方に行きますと四十キロから五十キロ、三十キロぐらいが普通のところに一つ、こういう養護学校ができるわけです。そうすると、そこへわざわざ通わせる、宿舎に泊めて通わせるという親の気持ちは、極端に言えば、隣の隣のあたりに一般学校がある、しかも姉娘の方はその学校へ行っている、それを裂かなければならないのだろうかということです。そうなると、一体この養護学校義務化というのは、さっき申し上げましたように、政治は少し入り過ぎるのではなかったのかなと、こういうように思うのです。  それからさらに三つ目は、子供というのは、決して一足す一は二だということじゃなくて、やはりぶらんことか遊び場あるいは食事、そしていろいろとふざけたり遊んだりするというところから人間形成ができていっているわけですが、もう最初から文部省規定によって、おまえはこっちの世界だ、あんたは一般世界だというように分けることに相なるのじゃないか。  この三つ質問を、時間も余りありませんが、文部大臣から少しその辺教えてくれませんかね。
  8. 砂田重民

    砂田国務大臣 来年の四月一日から養護学校義務化をいたすわけでございます。いま先生指摘になりましたかわいそうなという気持ちではなくて、そういう残念な障害を受けている子供たちがどう発達していってほしいか、だれもが同じように願うことでございますから、そういう立場で私ども準備を進めているところでございますが、いまおっしゃいました制度といたしましては、設置義務通学義務と、この二つの義務教育基本法では明確になっているという理解のもとに準備をいたしているところでございます。  ただ、いま委員が御指摘になりました非常に例外的なレアケースのことを、こういう場合はどうなるかという御議論があったわけでございますが、障害児につきましては、その障害種類程度等政令で明らかにするわけでございますが、市町村教育委員会段階で、そして県の教育委員会段階で、それぞれ就学指導委員会を設ける努力をしてまいりまして、大体その委員会が置かれてきたわけでございます。その委員会には専門家方々が入っていただいておりますので、文部省政令で決めました障害種類程度等に応じて、その当該のお子様が、やはり通学義務という観点から、どこの養護学校へ通えばいいか、あるいはその障害程度養護学校ではなくて普通の学校特殊学級が一番いいのではないか、そういうことを、父兄のお話も承りながら、学校側とも相談をいたしながら、就学指導委員会がきめの細かい調査の上で判断をいたすわけでございます。  ですから、いま先生がおっしゃいました、きょうだい、弟さんの方だけが障害を受けていて姉さんと同じ学校へ通っている、その当該障害児につきまして就学指導委員会がつぶさな検討をいたしました上で判断をいたすわけでございます。あるいはそのお子さんにとって、いま同じ学校へ通っているということでございましたけれども、近くに非常に設備も整った養護学校があるかもしれません、またないかもしれません。どちらへそのお弟さんを、お姉さんと切り離して通わした方がいいのか、いまのまま学校へ通わせることが、学校もそれを認めることでありという例外的な認定ができるのか、やはり市町村段階就学指導委員会判定にまつべきだ、かように考えます。  いま最後に委員が御指摘になりました、小さい子供のときから遊びながらというお話でございましたが、私も先般、大田区立養護学校へ行ってまいりました。障害児たちを激励するつもりで参りまして、逆に激励されて帰ってまいりましたが、障害児たちが本当に楽しく、専門家の教師の方々のきわめて熱心な指導の中で障害児同士がやはり仲よく、またあるときには近隣の普通学校との交流もしながら、懸命に自分の障害と闘いながら、楽しく遊び、楽しく学んでおります状態を見てまいりました。養護学校へかわればそういった楽しい遊びが持てない、そういうことは絶対ない。私は、障害を持つ子供さんたちの幸せの立場から考えましても、これは自信を持って言えることでございまして、先生指摘のような例外的なことは、これは先ほど申し上げましたような市町村教育委員会に置かれます就学指導委員会が、御両親の御意見も伺い、学校側相談の上で判断判定をいたすもの、原則といたしましては、やはり養護学校義務化ということは通学義務設置義務と双方がある、そういう立場でやってまいりたいと考えているところでございます。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 大分私自身は理解しました。ただ、通達一本というのは、やはり文書というのは冷たく感じますから、絶対に感じますから、障害児でありながら一般学校に入ったって就学したことにはならない、修学証書をやらないというようにはっきり文書になっていると、はっと思ったのだが、このように地域とその学校と親とがいろいろと話しして、就学指導委員会大臣はおっしゃいますが、やはり地域の連帯の中でこういうような問題を運用でやっていくという考え方がないと、政治というものが逆に問われてくるのだろうと思いますので、あえて言いました。  それから、時間がありませんから、この問題をもう一つ厚生大臣に伺っておきたいのですが、いよいよ来年の四月一日から、いままで大きく厚生省の方の領域で努力されておったわけですが、今度は就学義務になってから、学校校門の中に入ると文部省予算、それから学校校門から出ると厚生省予算。したがって、それに基づいていろいろと施策を、大蔵大臣もおられるからよく聞いてもらいたいのですが、学校の方だけは義務化だから大変に国を挙げて、こういうことになるが、学校の門を出ちゃうと今度は義務化ではないわけですから、こういうことになりますので、その辺を十分この一年の間に、文部省厚生省というのは意思の疎通を図りながら計画していくべきではないのだろうかなというように感じておるので、その辺、厚生大臣、いかが思いますか。
  10. 小沢辰男

    小沢国務大臣 来年の四月から養護学校義務制がしかれるわけでございますので、おっしゃるように、学校外身体障害児福祉対策については一段と充実するように私ども努力をしていかなければいかぬわけでございます。同時に、施設収容をされている児童であっても、この養護学校にできるだけ通学できるような措置をとっていかなければならぬ。御承知のように、肢体不自由児施設収容者あるいは盲聾唖施設収容者のほとんどすべて、九八、九%は、現在何らかの意味で養護学校なりあるいは特殊学級通学をしているわけでございますが、問題は、重症心身児収容施設に入所をしている方々に対して非常におくれておりまして、いま就学の状況を見ますとこれが三割八分ぐらいしかないわけでございます。これらの重症心身児の在宅の方あるいはまた施設収容されている方々の同じように教育を受け得る方法をどうやったらいいか、これが一番大事だと思います。できるだけ通学をしていただくような介護員等努力をいたしますけれども、なお施設においても、文部省当局協力をいたしましてその実が上がるような方策を考えていかなければならない、かように考えますし、なおその場合に養育と養護教育というものの関連性あり方につきまして、どのような形がその子供にとって最も幸せであるかということにつきましては、目下中央童福祉審議会方々意見も聞きまして、そのあり方を探っているところでございます。何とか方向をはっきりしまして、すべての身体障害児が同じような教育を享受できるようにできるだけ努力をしてまいりたい、かように考えます。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 そうしますと、この問題は次の発言で終わりますが、文部大臣考え方を披瀝されましたが、やはりどこかで基準をつくらなければならない。どういう形であろうが、政令で定めるということにすべてなっているわけですから、その政令は決して国会にかけろと私は言っているわけではないが、その子供は必ずこっちの方の養護学校に、いま入っておっても抜いていかなければならない、これから先も交通整理して入れなければならないという考え方ではないということだけはわかったのですが、やはり問題は、その地域、親、学校、こういった三者が本当に話し合って、せっかくおたくは目と鼻の先に普通の学校があるわけだから、しかも学校もある程度施設もあるわけだから、こういうような面もあるわけでして、なかなか文部省の建物の中におって、その子供はこっちだこっちだというような態度ではいかぬのだというように理解しますが、そういうような考え方でよろしゅうございますか。もう一度……。
  12. 砂田重民

    砂田国務大臣 私は、障害を持っておられる子供さんの立場で一切考えるべきだ、この考えを貫く気持ちでございます。原則としては、養護学校義務化という問題は就学義務設置義務と双方ある、それが障害を持っておる子供さんの一番の幸せであるという私の信念は揺るぎませんけれども、個々のケースにつきましては、それぞれの市町村のその子供さんの状態が、文部省のあの建物の中でわかるわけがありません。やはり、きわめてレアケースではありましてもそういう例外があることは、当然子供さんの立場に立ってしんしゃくをしていかなければいけない問題、かように考えております。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 時間の関係がありますので、この問題はそういうことを確認して、それぞれの専門委員会で論議されていくだろうと思いますが、ただ、私の考え方はそういう基本理念に立ってあえて質問しましたので、どうか御理解願いたいと思います。この問題は結構です。  それから、過去三回にわたって、いま国を挙げて取り組まなければならない生産調整、これをずっと追ってきたわけですが、この内容について、むしろそれこそ専門の、農林委員会の同僚議員が私の時間内でもう少し聞かせてもらいたいと思います。  その前にちょっと念を押しておきたいのは、いま現に、ある村の農家に対する通知文書をお配りしましたのですが、それ以外に、いまこういうのも来ている、こういうのも来ているというので私の手元に来つつありますが、これをみんな印刷すると私のふところぐあいも関係あるものですから、一部だけ、代表で皆さん方に配りました。やはりこのとおり、決して私が飾って言うのじゃなくて、アンダーラインを引いた4に「五十三年度に実施しない、あるいは達成しない場合は、ペナルティ(罰則方式)であくまでも次年度以降に加算され限度数量も控除されます。」こういうようにうたってあることだけはお認め願いたいと思うのです。したがって、この前、農林大臣が披瀝したように、早急に、そのようなことを自治体が通達しちゃいかぬ、それは農林省の意向と大分違うぞと、いかぬやつやなと。こういうこともあったから通達をまた出すという言明がありましたのですが、これは急がなければならぬものですから、事務当局でもいいです。一体いつごろ、そして大体どういう内容なのか、せっかくの委員会ですから、ちょっとお聞かせ願えれば幸いです。
  14. 野崎博之

    ○野崎政府委員 この前、川俣先生の御質問に対しまして、農林大臣から、正直者がばかを見るような結果になる、そういうようなとられ方を避けるためであったが、罰則あるいはペナルティーとして受け取る誤解が末端にある、そういう点について解くようにいたしたい、そういう趣旨の御発言があったわけでございますが、このような趣旨をほぼ全面的に盛り込んで、早急にこれを発したいというふうに考えております。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 これはさっきの国際人権規約国会提案の期限じゃないんだが、あの場合は外務大臣は一週間、十日――私は十日以内に出せば今国会に間に合うと見たのです。ところが、これはもう種の準備をしなければならない、いろいろと準備をしなければならぬだけに、しつこいようだけれども、いつごろ出すのか。早急にと言ったって、いろいろとあるわけだから……。
  16. 野崎博之

    ○野崎政府委員 来週中にも出したいと思っております。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 それから、混乱を避けるために、もう一遍法制局長官に伺います。  権威ある法制局長官からこの問題をひもといていったわけですから、四つの項目を確認しましたその中で、四は――これは長官が手を加えたのですから、決して私の作文ではありません。「従ってこの生産調整の措置(いわゆる世に言うペナルティを含む)は協力願いであって、必ずこれに従わなければならないものではない。」こういうことで、これは法律事項でもなければ、ひとつよろしくお願いしますという精神であるということになると、いろいろな表現はあるのですが、それじゃ、うちは、とても豆なんか植えたって話にならないし、麦なんか雪の降るところで植えたって世に笑われるし、ひとつうちの方は返上するということがやはり気持ちの上ではあると思うのだが、従わなければならないものではないということから、そういうように考えてよろしゅうございますか。
  18. 真田秀夫

    ○真田政府委員 何回もお尋ねになりますので、その都度同じことをお答えしているわけでございますが、前回、ただいまおっしゃいました点について私の確認を求めるという重ねてのお尋ねがございまして、そのとき申し上げましたとおり、今回のいわゆる通達と称せられているものは、これを裏づける法的根拠、法律がございませんので、結局その性格は行政指導である、したがってこれは強制力がない、法的に拘束力がないということでございます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 そういう考え方で、さりとて、この農業問題からはだれしも逃げちゃいけない。いまの問題は、生産調整も、ただむちゃくちゃにいかぬということでもいけない。では、日本の国をどのように適地適産で自給率を高めていくかという、こういう専門的な問題は、きわめて専門的に明るい同僚議員の野坂君を私の時間内で関連質問させていただきたいと思いますから、委員長、よろしゅうございますか。
  20. 中野四郎

    中野委員長 この際、野坂浩賢君より関連質疑の申し出があります。川俣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。野坂浩賢君。
  21. 野坂浩賢

    野坂委員 いま同僚委員から、五十二年十一月十九日付の通達の確認がございました。法的な拘束力がないということが明確になったわけでありますが、法制局長官に一つだけ確認をして質疑に入りたい、こう思うのであります。  政令の性格でありますが、政令というのは、法律の範囲内でその法律の目的、性格を徹底をするために出されるものであるというふうに考えておりますけれども、そのとおりでありますか、どうでしょう。
  22. 真田秀夫

    ○真田政府委員 御説明を申し上げます。  大体のことは御存じであるだろうと思いますけれども、政令というのは内閣が制定する法形式でございまして、憲法の規定によりまして、憲法または法律を実施するためまたその委任に基づいて制定することができる。だから、憲法の委任ということは直接規定がございませんからそれは別にいたしまして、法律の委任に基づいて制定する、あるいは法律を実施するために制定するということでございまして、したがいまして、その具体的な個々の政令はそれぞれその親といいますか、根拠になっている法律の枠内で処理しなければならない、法律に違反することはできない、これは当然でございます。  ただ、特に委任をする場合に、法律の特例をつくってよろしいというように明確に規定をして委任を定めている例はございます。そういう場合には、その委任を受けた政令がほかの他の法律の特例をつくるということは可能であります。農林省の関係で申しますと、たとえば土地改良法のいろいろな登記がございますね、あの場合には、土地改良法にたしか政令で不動産登記法の特例を定めることができるというふうな規定がございますので、そういう委任の仕方をしている場合には、政令をもって法律である不動産登記法の特例をつくることができる。しかし、それはあくまでも土地改良法に基づく政令でございますから、土地改良法の立法目的の範囲内であるということは当然でございます。
  23. 野坂浩賢

    野坂委員 そういたしますと、昭和十七年二月二十一日に決定をされました食糧管理法の性格、目的というものはどういうものですか。
  24. 真田秀夫

    ○真田政府委員 食糧管理法第一条にその目的が書いてございますが、「本法ハ国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並ニ配給ノ統制ヲ行フコトヲ目的トス」、こういうことでございます。
  25. 野坂浩賢

    野坂委員 そういたしますと、これは流通規制を中心にして定められたものである、こういうふうに考えられるわけですね。
  26. 真田秀夫

    ○真田政府委員 食糧管理法は、ただいま申しましたような目的でございますので、流通を中心といいますか、流通ももちろん大事な項目として考えなければなりませんけれども、この十七年にできました食糧管理法の主要な目的は、やはりその当時の食糧事情から見まして、国民の食糧の確保及び国民生活の安定を図るということも大変大事な立法目的の一つであったというふうに言わざるを得ないと思います。
  27. 野坂浩賢

    野坂委員 国民の食糧の確保、国民の経済の安定、だから食糧の確保をするためにその流通を流してはならぬ、配給の統制等をやるということでありますから、総体的に米の食糧の確保をするための流通的な規制が全文を大体くくっておるものだ、こういうふうに考えられるわけです。目的と性格は。そのとおりですね。
  28. 真田秀夫

    ○真田政府委員 国民食糧の確保を全うするためには、もちろんその流通過程もはっきり統制をして、たとえばやみに流してはいけないとか、そういう流通過程を法定してあるということは当然でございます。
  29. 野坂浩賢

    野坂委員 それを受けまして政令は、いまその法律の目的なり性格の範囲を脱してはならぬ、こういうふうに長官からお話をいただきました。政府に売り渡すべき米穀に関する政令でありますが、この一条の二の二項は、いわゆる当該都道府県について定められる昭和五十一年産米、いまで言えば「五十二年産の米穀の生産の転換の目標を基礎として定める。」こういうふうにございます。全体をくくった目的と性格というものは、いわゆる流通規制なり国民の食糧確保、そして配給、こういうところに力点と性格があるわけでありますから、これは生産者の規制のことは書いてないわけです。法律の本来の趣旨は。これはその法律の範囲と目的を逸脱をしておる政令である。内閣が決められるけれども、法律の範囲から出てはならぬと、こうおっしゃっておるわけですから、この限度数量というものを政令で決めること自体は法律に違反をするというふうに考えられるわけでありますが、その点はどうでしょうか。――いや、私は法律の見解をいま聞いておるわけです。そういう意味で、法制局長官の方が正しく認識をされるであろう、こういうふうに考えて要望しておるわけですから。
  30. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えいたします。  政府に売り渡すべき米穀に関する政令、これはすべて食糧管理法の規定に照らして見ますと、これは管理法の第三条第一項に、米穀の生産者は命令の定めるところにより政府に米穀を売り渡すべし、と書いてございます。この命令に該当するわけでございまして、その中身として、どういう手続でどういう数量を売り渡しなさいという具体的な定めを設けている、こういうふうに理解いたします。
  31. 野坂浩賢

    野坂委員 それは一番初めに長官に確認をいたしましたように、食糧管理法というものは昭和十七年に決まっておるわけですね。当時の状況を思い起こしていただければよくわかると思うのです。できるだけ全量買い上げをして、そしてそれがやみに流れないように流通規制を行って、そして国民の食糧確保をやるというのがねらいであったわけです。いまお話があった第三条というのは、ここでこれは全量買い上げをたてまえとしておるわけです。本来この法律は。それで、政令でくくって今日そういうようなかっこうで必要限度数量ということでやっておりますが、本来法律の範囲を逸脱をしておるわけです。学者なりあるいは法律家の皆さんは、この食糧管理法という法律のたてまえは全量買い上げを原則とする、こういうふうにおっしゃっております。だから、あなたの御意見と違った法律家の解釈あるいは学者の解釈が非常に多くて、本来この政令は法律の範囲逸脱というのが多くの学者、法律家の見解であるというふうに私たち承知をしておりますが、その点については長官はどういうふうにお考えでございましょうか。
  32. 真田秀夫

    ○真田政府委員 食糧管理法は、先ほども申しましたように国民食糧の確保を図るということでございまして、昭和十七年この管理法ができました当時は、非常に食糧が窮屈でございまして、公平に全国民に食糧を分配するという必要があったわけでありますね。ですから、結果において全量を買い上げるということになったわけでありますが、その後だんだん米の生産がふえまして、現在では非常に余り米がある、その処置に困っているくらい余り米があるわけでありますが、この法律は国民食糧の確保に必要な分量を政府が買い上げるということでございますから、昭和十七年当時全量買い上げであったからといって、現在でも全量買い上げをしなければ食糧管理法の趣旨に反するというふうにはならないのだろうというのが、むしろわれわれの考えでございます。つまり、国民の食糧に必要である量以上まで政府が買い上げなければならないということは食糧管理法の条文からは出てこないというふうにわれわれはむしろ考えておるわけです。
  33. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、この法律については多くの疑義がありますということで裁判等で争うという態勢ですが、この問題はとりあえず一応おいて、お尋ねをいたします。  先ほど同僚議員からお話がありました五十二年の十一月十九日の農林事務次官の通達は、法的な拘束力がない、従わなくてはならないものではないという御見解をいただきました。そのとおりだと思うのですが、ペナルティー、罰則の問題をいまもお話があったわけでありますが、来年に科するというのですね。ことし実現ができなかったものは、来年もそれを付加するということになっております。減反の場合は付加をし、数量の場合はそれを抑えるというかっこうになっておるわけでありますが、他の農畜産物にそのようなペナルティー的な、来年に付加するというようなものがあるかどうかということを、私は非常に興味を持ってながめてみました。たとえば、輸入の拡大によるオレンジとかあるいは果汁とかそういうものがあります。過去、ミカンとかコンニャクとか牛肉とかあるいは卵とか、特に大きな工業製品で言えば自動車とかあるいはテレビとか、そういうものは自主規制がされておる。いろいろ中で自主的に話し合いはあるけれども、このたびの減反のようにこれを追い打ちをかける、ことしできなければ来年付加するぞというようなものは全然ないように私は承知をしておりますが、農林大臣、そのようなものが法的に、あるいは政府の方からそのような規制をされるものがほかにありますか。
  34. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ほかには、そういったようなものは私としても見当たらないような感じがいたします。
  35. 野坂浩賢

    野坂委員 全然ないわけです。全然ありません。すべての、果樹にしても、卵、牛肉等にしても、ペナルティー的なものは全然姿がございません。今回の米の問題については、法制局長官がお話しいただきましたように、従わなくてもよいということになっておるわけですから、あなたの言葉をかりれば農民の自主的な理解協力によってのみ成立をするということになっております。そうすれば、裏を返せば、そのようなペナルティー的な、あるいは来年に付加をするというようなことは当然やれないということになってくると思いますが、そのような措置を今度の一週間以内に通達を出される、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  36. 中川一郎

    ○中川国務大臣 翌年まで今年の分あるいはその次の年というふうに、達成されなかった分をまた協力願うということは、この百七十万トンの生産調整を行うためには最小限度必要な公平確保の措置である。もしそういう仕組みがありませんと、仮に百七十万トンが百万トンしかできなかった、さすれば翌年は百七十万トンにできなかった七十万トンを乗せまして二百四十万トンの生産調整をしなければ、国民の必要な食糧の供給という趣旨に反してくる、過剰米が出てくる。そうなってまいりますれば、その分をまじめにというか協力をして生産調整した人にまたかぶせていかなければならぬ。こういうことが果たして自主的理解のもとにやる仕組みとしていかがであろうか。言ってみるならば、協力者は、自分の分は責任を持ちますからそれぞれ皆さん責任を持ってくださいというのが、まさに理解協力から出てくる自主的なやり方であろう、こう思うものでありまして、実効あらしめるための最小限度の公平確保の措置としてはやむを得ない措置であろう、こう思う次第でございます。これが必ずしも罰則とかペナルティーというようなものではない、こういう理解のもとに生産者の皆さんに御理解、御協力をいただいておるわけでございます。
  37. 野坂浩賢

    野坂委員 いまのお話をいただいたわけでありますが、従わなくてはならないものではない、言うなれば従わなくともよろしい、法的な拘束力はありません、だから自主的に理解協力だ、こういう言葉ですね。自主的にこれだけは協力をします。しかし湿田で私たちの転作は不可能です。だからこれ以上の協力はだめなんです。こう農家の方がおっしゃる。しかし、それにも、協力をしなかったんだから、ことしのできなかった分は来年付加をするというのは余りにも非道ではないですか。そういう立場を尊重しないままに、公平の原則だ、協力をした者と協力をしない者。これだけ協力をするけれどもできないということになればこれはやむを得ない措置ではないですか、農民の立場に立てば。それを公平だ公平だといって画一主義で全部やっていくということは、農政上の大きな問題になるのではないですか。生産の意欲が著しく減退をする、こういう結果になりはいたしませんか。
  38. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに、排水の悪いところでほかの作物をつくれといってもなかなか大変だということでございますから、県に配分いたします際には、湿田の多い地帯にはなるべく生産調整が重くならないように、こういう仕組みを第一段の歯どめとしてかっております。  第二番目は、排水の悪いところには土地改良を重点的に配分をして排水がしやすいようにする。そしてまた、水田転作特別対策事業ですか、百二十億円、名前がちょっと違っておるかもしれませんが、配分をして排水ができやすいように、そういったことに手当てがしやすいようにする。それでもなおかつできない場合には農協への管理転作。  こういう二重、三重の配慮をして御協力をいただく、こういう仕組みになっておるわけでございまして、御理解と御協力があるならば私はでき得るもの、こう思っておる次第であります。
  39. 野坂浩賢

    野坂委員 二段、三段の構えだ、こうお話しになりますけれども、言うなればそれが締めつけですよ。それでは角度を変えてお尋ねをします。  あなた方が、農林省が提示をされましたいわゆる四十万ヘクタールの転作、この転作に対する基準ですね。「昭和五十三年度転作等目標面積の都道府県別配分の要素及びウエイト」こういう意味で(1)から(7)までございますね。「地域指標をもとにして求めた六十年の転作面積の要素」が百分の三十、「自主流通米比率の要素」が百分の二十、「特定作物への特化度の要素」が百分の十五、「排水条件の要素」は百分の十ですよ。覚えておいてください。それから「市街化区域等面積の要素」が百分の十、「圃場の整備状況の要素」は百分の五、これでいわゆる四十万ヘクタールの府県別の基準として計算をされて出されたわけですね。  これを出されて、各県は受け取って、どこでも問題が起きておるのです。どの県でも、この割り当ては不当である、この割り当てについては納得ができない、こう言って農家の皆さんは各府県で攻め上げておる。受け入れられない。こういうことはよく御存じだと思うのですが、この面積は、あなたの県はこれで割ったらこの百分の十はこれだ、百分の二十はこれだ、こういうふうな数字を示してもらわなければいまのように混乱が起きて、各府県はこれで割ってないのですよ。困っておるわけです。どうやって割っていいのかわからない、これが実情なんです。だから、あなたは定着しかかっておると何回もおっしゃいますけれども、これによる数字というものを各県の面積別に出していただけますか。
  40. 中川一郎

    ○中川国務大臣 排水のウエートが少ないという御意見もあります。また、市街化区域はもっと大きくしたらどうだという意見もあります。あるいは、地域指標が一番大事なのだからもっともっととったらいいだろう、いろいろ御意見がありますが、それらを総合してみると、その基準のあたりがまあまあ最大公約数ではなかろうか、こう思っております。  さて、それではそれをどういうふうにして各県別にやったのかということになりますれば、これはまたいろいろ議論の出てくるところでありまして、むしろわれわれの判断によって、まあ正しくいろいろな、そういうだけではなくて、それにまた計算したところが三倍にもなったとか、五倍にもなったとか、それでは大変だというような要素もございますから、いろいろ過去の実験や何かで練りに練った案でございますので、一々これを出して、いや、あの県はどうだ、この県はどうだと議論し始めたら、こういったことはまとまり切れるものではない。この対策を円滑にするためには、今度のような措置がやむを得ない措置である、こう思う次第でございまして、算出基礎は各県にお示しをするようなものではない、こう思っております。
  41. 野坂浩賢

    野坂委員 農林大臣の御答弁を聞いておりますと、いろいろ言われますけれども、結論は、全く何にも知らせないで割り当てをしたんだ、こういうことですよ。私はこういう基準で割りました、それではこの基準に基づいて、あなたの県は乾田がこれですから、排水事情が悪いからこれです。こういうふうにその数字を示さなければ、理解協力を要請をするならば、こういうふうで、七項目で割ったその数字を示さなければ、理解と納得をしようにも方法がないじゃないですか。こういうことで割ったら結論はこうなったんだ。これは一片の通告であって、あなたのところの土地は、こういうふうな将来の、六十年の展望をすればこうなります。排水はこうなります。この面積がこれだけですという説明もできぬ、説明もしてやらぬというようなことでは、理解協力ということにはならぬじゃないですか。理解とは、これによった面積がこれこれであります。百分の五の面積がこれだけです。百分の三十の面積はこれだけです。というのは、このとり方ではいろいろあるわけです。だから私は、数字を示しなさいと言っている。数字を示してもらわなくてはわからぬじゃないですか。
  42. 中川一郎

    ○中川国務大臣 その数字だけで、きちっとこれでございますからということで進むものなら出しても結構ではございますけれども、その上に、倍率で余り極端な地域になったりあるいは隣の県との格差があったりいろいろございますので、それをベースにして調整を加えなければ円滑な推進ができないということでございますから、それを出せば、いや、おれのところは切られたんだ、おれのところはふやされたということで、各県間話し合いができないわけなんです。  しかも、私は申し上げますけれども、米の余ったことは全部が政府の責任である、こういうことではなくて、農家の皆さんも都道府県も、国民全体が考えていかなければならないことであって、消費拡大については国民の皆さんの御協力もいただかなければならぬし、過剰米のできないように農家あるいは行政に携わる者皆さんで汗を流してやるべきものであって、目くじら立てて、あの県とこの県、この県とあの県ということを議論してまとまるものではない。その付近も理解協力によってこのむずかしい仕事をやり上げる、こういう姿勢が大事だろうと思う次第でございます。
  43. 野坂浩賢

    野坂委員 何としても大臣、納得できません。理解協力ということは、よく中身を理解をしてもらって、そしてその中身について十分納得して協力をするというのが筋じゃないですか。何にも教えないで、ふところの中には持っておるけれども教えないぞ、だから協力をせい、こういうのを押しつけと言うのじゃないでしょうか。やれば、どこの県も騒ぎ立ててとても協力ができない。たとえば、例が悪いですけれども、農林水産委員会でまたあなたとお話し合いをしたときに、私の出身の鳥取県と島根県とを対比していろいろとお話をしました。昭和四十六年の場合は島根県の方がずっと多かった。今回は少なかった。だからわかりません。わかりませんから、これを出していただかなければわかりませんよ。各府県が、出されなければ協力なんかできないじゃないですか。数字を示すべきですよ。それでなければ理解ができません。数字を示してそれを出せば混乱をするから出さぬ、何にも出さぬ、だからこれに協力をせい、それでは全く一刀両断的な、ファッショ的なやり方ではないですか。どうやって理解をしようとするのですか。数字もわからないのに結論だけを言って、その算式も、あなたのところはだからこうなりますよ、理解してくださいよ、農家の皆さん理解してくださいよと、なぜ言えぬのですか。これでやったから後は知らぬ、後は教えてやらぬ、こういうようなことはファッショ以外の何物でもありません。しかも法律的な裏づけもない。そして自主的な協力を要請する。この内容も示さない。一体どうやって、農民は農林省の要望にこたえる道がないじゃないですか。
  44. 中川一郎

    ○中川国務大臣 この仕組みを農林省が勝手に何の相談もしないでやったわけじゃないのです。都道府県の責任者の方々とも、農業団体の皆さんとも相談をして、こういうことでやりたいがいかがであるか。たとえば鳥取県と島根県を比較しますと、確かに面積は多いけれども、昨年の倍率からいきますと鳥取県の方が少ないわけでございます。そういうようなことで、倍率の問題だとか実態の問題だとかいろいろと苦労してやって、ようやく都道府県の皆さんにも団体の皆さんにもまあ仕方なかろうな、こういうことでやったのであって、何にも相談しないでばちっとやったことではございませんから、ファッショでも何でもない、民主的によく話し合いをさせていただいた、こう思っておる次第でございます。(発言する者あり)
  45. 野坂浩賢

    野坂委員 いや、皆さんおっしゃいますけれども、違うのです。  都道府県の首長あるいは農業団体の幹部の皆さんは、この計算の基礎と数字を知っておりますか。知っておらぬでしょう。だから各県に全部問い合わせてみました。この内容は知っておりますか。
  46. 中川一郎

    ○中川国務大臣 でありますから、先ほど申し上げたように、それだけでおさまるものならばお教え申し上げますけれども、それにプラスマイナスいろいろと、昨年度からの伸びの割合だとかあるいは隣の県との関係だとかというようなことで、特に極端なのは四倍も五倍も昨年よりやらなければならない東北地方の県のようなことがあったりいろいろありますから、それをベースにして横並びで調整をした結果がこうなります。そして、もし基礎的なことを御説明申し上げて、あなたのところはその上に何ぼ乗っかったのでございますというようなことになったときに、その県の人がいやそれならわかったというような仕組みではなかろう、その辺のところは農林省に御一任をいただいて、全体的に公平なところでいきたいがいかがであるかということで、まあ仕方なかろう、首長さんや皆さんの御納得をいただいてやったところでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  47. 野坂浩賢

    野坂委員 あなたがおっしゃっておることは、そういうことの事実はありませんね。都道府県知事と農協の責任者は、都道府県別の数字を承知しておりますか。それだけ答えてください。
  48. 中川一郎

    ○中川国務大臣 そういう調整を加えた最終の数字は知っておりまして、各県とも御納得をいただいて、大体もう町村におろしていただいているということでございまして、これを示してくれないからおれのところは協力できないという首長さんは、全国にまだ一県もありません。
  49. 野坂浩賢

    野坂委員 三十九万一千ヘクタールの配分の結果についての数字はわれわれも知っております。知事も知っております。その数字を言っておるわけじゃないのです。この七項目によって割られた数字というものは知らされていない、知らされておりませんねと聞いておるわけです。
  50. 中川一郎

    ○中川国務大臣 そのとおりでございます。
  51. 野坂浩賢

    野坂委員 だから、その数字を示さなければ納得ができません。農家の皆さんは納得はできません。だから、いま申し上げましたように、各県は、あなたのところの湿田の状況、都市計画の整備の状況あるいは圃場整備の状況、そういうものの比率というものがわからないと言っておるわけです。どの県に聞いてもわかりませんよ。いまあなたが言ったようにわからない。だから、農家に責められると、こういううその資料をつくって流さざるを得なくなっているわけです。どの県でも。その点で非常に困っておる。あなたは直しますと言ったのですね。あなたは農林水産委員会で、私の質問に答えて、間違っておったら直しますとおっしゃいました。そうですね。直すならばその数字を示してもらわなければ、反論ができない。反論をしようと思えば、その原案というものを示してもらわなければわからぬのに、それを示さないで、違っておったら直しますということは当たらぬじゃないですか。
  52. 中川一郎

    ○中川国務大臣 この間の質問で、私は、間違った数字を持っておると言うから、持っておるならば直しますと言ったのであって、持たない前提で間違っていると御指摘いただいても、それは私は訂正のしようがないわけでございます。それじゃ数字を示せと言われても、この数字を示すことは、全体の調整をやっていく上で示さない方がいいと思いますからお示しをするわけにはまいらない、こう言っておるところでございます。
  53. 野坂浩賢

    野坂委員 それでは、今度の減反の割り当てというものについては数字も示さないし――大体、農林省のだれだれが知っておるのですか、この中身は。農林大臣は数字の中身は知っておられますか。
  54. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私が就任したときにはすでに決まっておりましたから、私自身も知っておりません。
  55. 野坂浩賢

    野坂委員 知っておられる人はだれでしょうか。
  56. 中川一郎

    ○中川国務大臣 それは、担当する農蚕園芸局のその筋の人はもちろん知っておると思いますし、私も知ろうと思えば知られます。しかし、申し上げますが、あくまでも、これは知事会やらあるいは担当者の会議やら開きまして、こういう仕組みでやる以外ない、それを示して、示した上でこういう計算どおりでやればこうなります。このとおりでやってやれる県があるならばいいのですが、やはりそこは計算上三倍、四倍、五倍というような数字が出てきたり、あるいは前よりも少なくなったりするようないろいろなことがありますから、全体を実効あらしめるためにはそこで調整を行わなければならない。調整を行ったのはどういうふうに行ったんだということをお示し申し上げますと、また、いやおれの方が多い、少ない、相対的な問題でございますから議論の出るところであって、農林行政をあずかる者がまじめに真剣に、政治的にどうこうじゃなくて、全体を実効あらしめるのはこの辺がよかろうかなあということでございますので、御理解をいただきたいと存じます。(発言する者あり)
  57. 野坂浩賢

    野坂委員 農林大臣はその数字は知らない、知っておるのは農蚕園芸局長だろう、こういうことですけれども、農林大臣が知らないものが、そういうことが下で勝手に動かされておるというようなことでは納得ができません。こういう重大な、国を動かしておる生産調整の問題で、農林大臣がその数字の中身さえ知らないというようなことでは、これ以上質問できませんよ、こういうことでは、何も知らぬということでは。納得ができません。出してもらいたい。
  58. 中川一郎

    ○中川国務大臣 でありますから、この作業をしたときは前の農林大臣のときであって、私は作業に参画しておらないわけです。もう決まっておったわけです。決まっておって、もう通達が出ておったわけですから、私が知ろうと思えば知られますし、よく勉強しておきなさい、知っておきなさいというのであれば十分見ますけれども、そのことは、いまこれを知ってどう変えるという性格のものではないということでございますので、知らないことがけしからぬと言われても、私もどうしようもございません。
  59. 野坂浩賢

    野坂委員 私は納得できません。(発言する者あり)
  60. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと静粛に願います。
  61. 野坂浩賢

    野坂委員 私が就任したときはすでに決まっておった、いま、こうおっしゃいました。しかし、十一月十九日の農林事務次官の通達は「内定」と書いてありますよ、「内定」と。正式決定じゃないのです。予算委員会で審議をして予算が決まらなければ正式決定にならぬことは事実ですから。それをもう決定であるとおっしゃることは、これは重大な問題です。委員会の、この国会の軽視ですよ。しかも、大臣が数字も知らないでここで答弁をされるということについては、納得できません。だから、私はこれ以上質問することはできませんが、この数字を出すかどうか、そういう点について理事会で十分御討議をいただきたい。
  62. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと待ってください。野坂君、先ほどから私は両者の質問応答を伺っておりますが、これは相当進展しておるのですよ。たとえば来週中に通達をし直すと言うのです。そういうふうに、論議をしていけばわかるのであって、これ以上質問ができないということは、それは私は困ります。したがって、政府の答弁と、質疑をさらに続けていただいて、万やむを得ざるときに初めて理事が協議をするという段階にいくのでありますから、どうぞひとつ農林大臣の答弁を聞いてください。
  63. 中川一郎

    ○中川国務大臣 これは前から言っておりますように、案でございます。予算が決定をして初めて正式決定をし、そして、責任を持ってその段階で私の名前で文書を出すわけでございますから、その段階までに知らないなんていうことはあり得ようはずがないのでございますから、作業の段階でこれをどう調整し、微調整をやったということを、もうすでに発送された文書であって、私が……(「開会中であって知らないというのはおかしいでしょう」と呼ぶ者あり)ですから、予算が決まりまして正式文書を出すまでには、当然私の責任においてどういう内容のものの正式文書が出るか、私は当然責任を持って見もし、チェックもし、点検もし、自分で判断をして文書を出すことになるわけでございます。現在のは案でございます。
  64. 野坂浩賢

    野坂委員 私が就任するまでに前農林大臣の手で決まっておったので知らなかった、知らない、こうおっしゃったのですよね。だから、決定ではなしに、決定ではない、案であるということをいまおっしゃったわけです。だから内定だとおっしゃった。だから、知らないということはないということを――前言をはっきり取り消しをしてもらわなければ、そういうことでなければ審議は進みませんね。
  65. 中川一郎

    ○中川国務大臣 やり方、仕組みについては十分聞いておりますし、そして微調整をやったことも知っております。しかし、どの県がどうなっておるか、大臣段階で県別まで全部知っておるかと言われても、知らないものは知らないのであって、これからどの県、どの県、よく勉強しておけよ、おかしいところがあるからな、こういうことであれば、当然私は知り得る権利も義務もありますから知りますけれども、現段階でどの点をどう調整してどうなっておるのだ、鳥取県は何ぼでどうというようなことは今日まで――一、二の県はもちろん知っています。問題のある県は。問題のある県は知っておりますけれども、全般を通じてどの県がどうということについては、現在まだ知っておらないことは知らないのでございまして、御指摘ありましたから鳥取県と島根県の関係がどうなっておる、あの付近のことは十分知っておりますけれども、全体、どの県が何ぼと知っておれと言っても、いままでそういうことで、国会で全体を知っておけと言っているのに知らないというのだと怒られても仕方がありませんけれども、やり方その他これなら仕方なかろうな、やり方、仕組みについて基本的なことは知っておりますが、大臣が一県一県全部知らないからといっておしかりをこうむっても、これはひとつ御勘弁を願いたいと思う次第でございます。
  66. 野坂浩賢

    野坂委員 いま、案である、だから仕組みは知っておるけれども各府県別に知らないところもある、だからそれはさらに検討して調整をするというふうにおっしゃったわけです。調整をして正式決定をするということでありますから、その調整をするについてはわれわれも意見があるから、その中身の数字を発表してほしい、委員会に出してほしいということを要望するわけです。
  67. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、調整をすると言ったら、それは取り消しておきます。案がどういう仕組みでできたかということまでは知っておりますが、それが各県、どういう調整によって、どういう数字が微調整されてどうなっているということは、しかと勉強して、自分で納得がいきましたら通達を出したいということであって、その資料については、これは全体がバランスをとっていくためには、もう中身を言いますと、いや、この計算の仕方がおかしい、排水の率がおかしい、排水の率がおれの県に有利になっておる、不利になっておるというようなことになれば、これは大変だということで、農業団体や首長さんとも相談をして、まあまあよかろうということでやっておるところでございまして……(「農業団体も賛成していない」と呼ぶ者あり)農業団体から、これをやらなければわれわれは協力できないというような御意見は承っておりません。
  68. 野坂浩賢

    野坂委員 私は委員長にお願いをしておきたいと思うのでありますが、この生産調整は農家の皆さんにとりましては死活の問題であります。また、日本の農業の将来を展望するときに、きわめて重要であります。農林大臣お話しになりましたように、あくまでも農家の自主的な協力だ。しかも、この通達には全く法的な拘束力の根拠もない、あくまでも協力要請をするんだという法制局長官のお言葉でもあります。しかも、中身の数字は混乱が起きるからわれわれには教えないという。どうやって審議をするのかということについて、私たちは審議の先行きを非常に心配をし、このままでいくならば国会は軽視をされ、そして自治体も押しつけを受け入れさせられる、そういう状態になることを非常に恐れるわけであります。  そういう点については、委員長におかれまして、ぜひ出すように措置をされるように要望しておきますが、委員長の御見解を承りたいと存じます。
  69. 中野四郎

    中野委員長 速記をちょっととめて。     〔速記中止〕
  70. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めてください。  野坂君。
  71. 野坂浩賢

    野坂委員 いまの問題で理事会でいろいろと御討論をいただくと思いますので、それらの問題を含めて質疑を留保いたしますので、委員長の方でよろしくお願いをいたします。
  72. 中野四郎

    中野委員長 これにて、残余の分を残して、川俣君、野坂君の質疑は終了いたしました。  次に、草野威君。
  73. 草野威

    草野委員 私は、原子力発電における被曝の問題につきまして若干お伺いをいたします。  初めに、先日の新聞の報道によりますと、アメリカの国防省の核防衛局、ここで一九五七年のネバダの核実験に従事した軍人が白血病で死亡したというニュース、さらにまた、元軍人で十二人のがんの申告をした人に対しまして過去十年間にわたって医療給付をしておるという報道がされたわけでございますが、政府はこの情報につきまして確認をしていらっしゃいますでしょうか。
  74. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、今月の九日にアメリカのクーパーという軍人が白血病で亡くなりましたことを契機に、アメリカでは次のような発展がございます。  二月九日に国防総省は、一九四六年から一九五七年まで、要するに昭和二十一年から三十二年までの十一年間に行われた大気圏内における核実験に立ち会った人たちが無料で国防総省に対して連絡をとり得るような特別の電話番号をまず公表いたしました。それから数日たちました十四日には、その十一年間をさらに十七年まで広げて、要するに一九六三年、部分核実験停止条約が成立いたしました年までの十七年間において行われた核実験に立ち会った人というふうに、その範囲を広げております。さらに十六日になりますと、相当程度の反応がございまして、十六日現在では四千件ぐらいの電話連絡があった。それで、これは実は予期以上の反応であったために、電話連絡のほかに郵便でも連絡できるように、郵便のあて所書きを公表いたしております。いろいろその間にアメリカの政府当局者が新聞発表いたしておりますけれども、とりあえずの連絡数が四千件として、アメリカの国防総省で推定しておりますところによりますと、現在被曝調査の対象者として考えられる人間の数は恐らく二十万から三十万人ぐらいであろうというふうに、責任者は回答いたしているようでございます。  なお、二十一年前のネバダの砂漠の上で行われました核実験に従事したクーパーという軍人が、先般白血病で亡くなったわけでございますけれども、それが直接の被曝に基づく白血病であるのかどうか、要するに、実験に立ち会って放射能にさらされたことが直接白血病なり、がんにつながるかどうかという最終的な結論はまだ得ていないということでございます。
  75. 草野威

    草野委員 どうもありがとうございます。ただいま御説明いただきましたけれども、ほぼ新聞発表に出ているとおりのことでございますので、そういうことではなくて、放射能汚染とがんや白血病の因果関係、そういうものについてもし情報が入っていればお伺いをしたい、こういうような考えで私は質問したわけでございます。  それで、長官にもう一回改めて伺いますけれども、わが国には放射能医学研究所、いわゆる放医研というのがございます。この放医研はアメリカのアカデミー・オブ・サイエンスという機関といろいろと情報の提供がなされる、こういう仕組みになっているそうでございますが、厚生省にとりましてもまた科学技術庁にとりましても、今回のこの問題は医学上非常に重要な資料ではないか、また情報ではないか。こういう意味におきまして、できるだけ早く確実な情報の収集、こういうものをおやりになっていただきたい、このようにお願い申し上げるわけでございます。  それで、放射能とがんの因果関係、こういう問題につきまして、当委員会におきましても、また科学技術特別委員会におきましても、いままで何回となく行われているわけでございます。また、原子力発電所における被曝問題、こういうことも取り上げられてまいりました。しかし、放射能汚染とがん等との因果関係については、原子力発電所が建設されましてからもう十数年も経過しているにもかかわらず、全くその原因というものが究明されていない状態でございます。したがって、何らの不安の解消になっていない。どちらかと言いますと、究明しないことが安全であるかのようにPRされているような面もあるわけでございます。  そこでお尋ねをするわけでございますけれども、原子力発電による被曝者は一人もいない、こういうことをおっしゃっておられるようでございますけれども、果たして今日現在でも、原子力発電所における基準以上の被曝者はいない、このように断定ができるでしょうか。
  76. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  原子力発電所で働いている方で基準値以上の放射線を浴びた方は、現在一件ございまして、その一件の事件で三名の方が被曝を受けております。やや具体的に申し上げますと、昭和四十六年のことでございますが、日本原子力発電所の東海発電所におきまして、制御棒の取りかえ作業をいたしておりますときに、過ってその制御棒に近づいて、法定の三カ月三レムという規制値以上の被曝を受けた経験がございます。それ以外は一件もございません。
  77. 草野威

    草野委員 その一件でございますけれども、聞くところによりますと現在でも非常に元気である、このようなことも伺いました。しかし、昨年の当委員会におきまして、当時の宇野長官は、放射線による人身障害は全然なかった、このようにおっしゃっておられるわけでございます。果たしてどうかということでございますけれども、私、本日は、一つの実例に基づきまして若干お伺いをしたいと思います。  これは昭和四十五年の十一月十三日、日本原子力発電所敦賀発電所構内におきまして被曝事故があったということでございます。これは日本原電の下請であるビル代行社、そこの作業員の村居国雄氏がその当時被曝事故を受けた、こういうようなことを私どもは聞いているわけでございますが、科学技術庁はこの件につきまして報告を受けていらっしゃいますか。
  78. 牧村信之

    ○牧村政府委員 本件につきましては法的な報告は受けておりません。しかしながら、連絡は受けて聴取しております。
  79. 草野威

    草野委員 この日本原電の敦賀発電所は当時、第一回の定検の最中でございました。その定検の最中に、原子炉構内におきましてポンプから放射能を含んだ水漏れの事故があった。当時、村居国雄さんはその作業に従事していたということでございますが、そのときの状況につきまして、もし御存じであれば発表していただきたいと思います。
  80. 牧村信之

    ○牧村政府委員 ただいま先生は、ポンプからの放射性物質を含んだ水漏れによる汚染ではないかという御質問でございましたが、これはそうではございませんで、との原子炉の定期検査中にいろいろ作業も行われます。また若干の放射能物質で床が汚染しておりますので、その除染を行う作業がございます。この村居さん初め四名のビル代行の方が、約三時間、この原子炉建屋の二階の部屋で作業をいたしたわけでございます。その際、この二階の部屋には熱交換器室というところがございますが、ここの作業をすることになっておったわけでございます。ところが、その辺の作業の指示に若干誤りがございまして、受けた労働者の方方は、本来掃除すべきでなかった、やや放射線量の高い、通常立入禁止の場所でございますスラッジタンク室というのがございますが、そこの床も掃除してしまったというようなことで、予想された線量以上の線量の被曝を受けたということでございます。受けました放射線量は約四百ミリレムと想定されておるわけでございますが、これは法律で決められております一時立ち入り者、これの許容値でございます年間一・五レム、千五百ミリレムでございますが、それよりも下回っておるわけではございますけれども、通常予想された以上の放射線を受けたということでございます。
  81. 草野威

    草野委員 その危険な場所で三時間作業をしたということでございますけれども、この作業の指示はだれからされて行ったものか。それからもう一つは、この村居さんがその部屋に作業に入るときに、ポケット線量計であるとかフィルムバッジ、そういうものを携帯していたかどうか、その点について伺います。
  82. 牧村信之

    ○牧村政府委員 当然、原子力発電株式会社の担当者からビル代行の現場作業者にその作業依頼があったわけでございます。ここで指摘を受けましていろいろ問題になりましたことは、規定によりますと、文書によってそういう指示をするということになっておりましたが、定検の非常に忙しいさなか、終わるころだったためと聞いておりますけれども、それを口頭で行ったということで、規定どおりに行われていなかったやに私どもは聞いております。  それから、線量計を所持することにつきましては、規則によりましてポケット線量計あるいはフィルムバッジなどの、線量を受けた量を計測できる装置をつけなくてはいけないことになっております。本件の場合には、四人の方それぞれポケット線量計をつけておったわけでございます。しかしながら、そのポケット線量計は二百ミリまでしかはかれないものでございます。したがいまして、受けた被曝線量が約四百ミリ程度の被曝でございますので、当然ポケット線量計は振り切れておったということでございます。
  83. 草野威

    草野委員 ただいまのお話によりますと、第一回の定検の当時であったために非常にあわただしくて、携帯しなければならないフィルムバッジ、そういうものに対する確認だとかそういうことが十分行われてなかったというようなお話もございましたけれども、そういうことは、たとえ忙しくても人命に関する問題でございますので、これは重大な企業側の過失じゃないか、こういう点を、ただ単に忙しかったからといって済ますということは、やはり大きな問題が残るのではないかと思います。  それからもう一つは、ただいまのお話を聞きまして、私どもが調査したことと若干違う点がございますので、ここで今回の事故の背景について私の方から少し申し上げたいと思います。この村居国雄さんという人でございますけれども、この人は昭和四十五年九月にビル代行社に入社をいたしまして、当時、日本原電で定検が行われた最中でございますけれども、作業に関するいわゆる安全についての研修や説明は何も受けないまま今回の作業に入った。したがって、原子炉内で作業する際にフィルムバッジは、同姓の村居信夫氏のものだが使用してくれ、君のは後でつくる、こういうことで、もう一人の村居信夫さんという人のフィルムバッジをつけて作業に入った。  こうして定期検査の中で、いまお話のございました熱交換器室の中でポンプからの水漏れの事故が起きた。その作業について、ビル代行社の敦賀の所長の高島さんから、水漏れをしているので清掃してくれ、このように言われた。この作業は、十一月十三日の午前十時ごろから十二時前まで、福島より出かせぎに来ておった山野井さんという方と二人で作業をした。この第一次冷却熱交換器室の周辺には、立入禁止だとかそのほかの注意書きの標識は一切張ってなかった。また村居氏は、この熱交換器室の中で放射能を帯びた水をマットや布きれに含ませてビニール袋の中に入れて、熱交換器室のドアの外にいる山野井氏に渡し、それからドラムかんに入れてプレスをして運んだ。作業時間は約一時間半であった。作業中にポケット線量計を見たときに二百ミリレムの針が振り切れていた。しかし、それは故障と思ってそのまま作業を続行した。  作業終了報告と放射線検査のために原電の放射線管理室に行ったところ、事故があったということをだれから聞いて、だれから掃除をするように言われたのか、このように原電の職員から言われた。多分、原電の管理室はこの事故のあったことを知らなかったようです。そこで、原電の職員は、急いで携帯用のガイガーカウンターを持って熱交換器室に行った。そのとき原電職員に、この事故のことは絶対外に漏らさないでくれ、このように言われた。それが終わってから、職員は大変と思って、日本原電とビル代行社は、急遽この村居氏をライトバンに乗せて敦賀市内の木村病院に運んで血液をとってもらった、このようなことが言われておるわけでございます。  多分、いままでのお話と若干違う点がございますけれども、私は、この点につきまして当時の原電、そしてまたビル代行社の労務上の管理というものが非常におろそかだったのじゃないか、そのような感じがしてならないわけでございます。  一つここにこういう写真がございます。これは公表された写真でございますから、もう大ぜいの方がごらんになっていると思います。これは炉心の近くの作業でございまして、ほとんどの人が服装についても完全にきちっとしておりますけれども、この写真によりますと、この中でただ一人だけ白いマスクをつけている人がおります。こういうような作業服のあり方で果たして安全なのかどうか、こういうことがわれわれは非常に気になってならないわけでございます。ほかの人は全部完全なマスクをつけておるけれども、一人だけは白いマスクをつけておる、こういうような管理の仕方にも問題があるのじゃないかと思います。  それからもう一つは、当時この原電の敦賀発電所には、アメリカから技術者として黒人が百五十名ぐらい来て働いていた、こういうことを伺っております。これはゼネラル・エレクトリックテクニカル・カン。ハニーの日本支社の事業部長をやっておりましたエドワード・R・キルスビー氏の発言で、技術者として一九六六年から六八年ごろに百五十人の黒人が来ていた、最近では五十二年四月から五月ごろ、敦賀発電所に五、六十人ぐらい来て作業して帰った、このようにキルスビー氏は言われております。そこで、敦賀市内の住民だとか下請の人たちの話を総合して聞いてみますと、必ずしも技術者のみではなくて、われわれと全く変わらない清掃作業や、むしろ日本人の入れない場所にその黒人の人たちが入って作業させられていた。  そこで私が心配いたしますのは、このような高い汚染区域で、そして二、三カ月働いて帰国するということは、もし将来、この被曝の疑いが出た場合に大きな国際問題にもなりかねないのじゃないか、こういうような疑問が出るわけでございますが、この点につきまして、外務大臣、どのようにお考えになっていますか。
  84. 大川美雄

    ○大川政府委員 外務省といたしましては、いまおっしゃいましたようなことは存じておりませんでした。
  85. 草野威

    草野委員 では、労働省にお伺いいたしますけれども、こういう問題について御存じでしょうか。また、もし知っておりましたら、どのようにチェックをしているか、労働大臣にお伺いいたします。
  86. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 現場の事実関係でございますから、政府委員をして答弁させます。
  87. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 御質問の点につきましては、私ども承知いたしておりません。
  88. 草野威

    草野委員 外務省も労働省も、全然こういう問題について知らないということは大きな問題じゃないですか。もし、こういう黒人の人たち日本に連れてこられて、日本人が作業できないような危険な区域で作業させられて、そしてまた帰国した場合、どういう大きな問題が出てくるか。これは国際問題に発展しかねない重要な問題であろうかと私は思いますので、外務省や労働省におきましても、即刻ひとつ調査をしていただきたい。お願いいたします。  それから、先ほどの村居国雄氏の件でございますけれども、さっきからの説明によりますと、大して大きな被害を受けてない、こういうようなお話でございました。法定の被曝量以内の事故である、こういうお話でございました。しかし私は、果たしてそうであろうかと非常に心配な点があるわけでございます。もし、この村居国雄さんという人が、先ほどの四百ミリレム程度の被曝だとすれば、政府としては、このぐらいのことですから大丈夫だという判断をしていらっしゃるのではないかと思いますけれども、私は決してそうではないと思います。ということは、あの昭和四十五年から現在まで、もう七年以上経過しているわけでございますけれども、この村居国雄氏は、いまだに大変な障害を受けて、そして仕事にも満足に出れないような状態でございます。そして、この問題につきまして、私は本日ここにこういうような資料がございますので、ひとつ皆さんに見ていただきたいと思います。  この資料は、村居国雄氏と、それから日本原電の下請であったビル代行社の間で取り交わされた示談書でございます。この示談書の内容を読まさしていただきます。「示談書 第一条 村居国雄と株式会社ビル代行は、昭和四十五年十一月十三日福井県敦賀市明神町一番地日本原子力発電株式会社敦賀発電所構内で行った作業により精神的肉体的並びに経済的な損失を受けたとする甲の乙に対する申し入れについて、甲、乙双方で協議した結果、早急かつ円満に解決するため、乙より甲に対し金六百万円也を支払うことに甲、乙双方同意し、前記金額は、次の通り支払うものとする。」甲というのは村居国雄、乙はビル代行の鈴木貞一郎社長です。この内容は、第一回に、昭和五十一年十一月二十五日、金二百万円なり、第二回目、同じく十二月十日、金二百万円なり、第三回、同じく十二月二十日、金二百万円なり。「第二条甲は、前条の金額を受領の上は、以後本件に関し、乙及び日本原子力発電株式会社、その他関係者に対し、名目の如何を問わず、なんらの請求をしないものとする 以上示談成立の証として、本書四通を作成し、署名捺印の上、甲、乙及び立会人各一通を保有する。昭和五十一年十一月二十一日」このような示談書があります。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 この示談書は一体どういうことを意味しているのか。村居さんが何の被曝も受けていない、たとえ受けていたとしてもそれは微量なもので、何の関係もないということであれば、このような示談をビル代行社との間で結ばなければならない理由は全然ないわけです。一体これはどういうことを示しているのか、お伺いをいたします。この問題は非常に重大ですから、長官からひとつお答えをいただきたいと思います。
  89. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 まず局長からしまして、また……。
  90. 牧村信之

    ○牧村政府委員 私どもは、ただいま先生お話しになられたようなことは、そういう示談があったというようなことも一切聞いておりません。
  91. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 その事実は私も報告を受けておりませんが、もしそのような事実があるとしますれば、いまお話しのように十分調査いたしまして、適当な判断をいたしたいと考えております。
  92. 草野威

    草野委員 ただいま長官から、十分な調査をしてというお話がございましたけれども、この事実に関して長官は、事実関係調査して、そうして当委員会調査報告書を出していただけますか。
  93. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 報告書は、それに関しますわれわれの考えも加えまして御報告させたいと考えております。
  94. 草野威

    草野委員 参考のため申し上げますけれども、この示談書のほかに、もう一通、覚書というものがあります。この覚書によりますと、「示談書第一条の金額中には、次の諸経費が含まれることを相互に確記する。(一)甲の家族の医療費 (二)大阪大学医学部、理工学部関係に対する処置 (三)顧問弁護士に対する処置」こういうようなことが書いてあります。この中で「甲の家族の医療費」というのが出ております。甲というのは村居国雄氏です。したがって、こういうことが書かれているということは、村居さんの家族も何らかの影響が出ているのではないか、こういう疑いがございます。村居さんの御家族に、昭和四十五年のこの事故の後に、昭和四十七年の八月十二日、女のお子さんが生まれております。現在六歳です。そのお子さんは、生後一年四カ月のころから歯が欠け始めてきた。お父さんの村居さんも、現在いろいろな症状の中に、歯が欠けているという症状も出ております。したがって、これはいわゆる放射線障害の疑いがある。しかも遺伝の疑いもあるのではないか、こういう問題も含まれておるわけでございます。  したがって、私が非常に残念でならないことは、この原子力発電所の安全ということは、いま政府では盛んにPRをしております。必要以上にPRをしているような感じさえするわけであります。そういう中で四十五年、この村居さんがこのような災害を受けた。以前、国会の中でもこの問題はすでに取り上げられているわけです。当時から政府調査をされているわけです。それにもかかわらず、ただいまの答弁のように通り一遍の調査しかされていない。調査でなくて、恐らく報告を聞いておるだけでないか、私はそのように思えてならないわけです。したがって、いま長官が十分に調査をして報告をされる、このことを伺いましたので、どうぞひとつ、村居国雄さんの件に関しましては十分な調査をされて、報告を委員会に出していただきたい、お願いをいたします。
  95. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 ただいま申し上げたとおりいたしますから。
  96. 草野威

    草野委員 いまの報告書の問題ですが、いつごろまでに出していただけますか。
  97. 牧村信之

    ○牧村政府委員 できるだけ早くまとめてみたいと思います。
  98. 草野威

    草野委員 できるだけ早くというのは困るので、たとえばこの予算委員会の開会中であるとか、それともこの通常国会の終わりまでとか、その点をひとつ明らかにお願いいたします。
  99. 牧村信之

    ○牧村政府委員 直ちに関係機関に問い合わせしまして、一週間ないし十日ぐらいの間にまとめたいと思います。
  100. 草野威

    草野委員 この件に関しましてもう少し詳しく伺いたいと思いますけれども、この村居氏の現在の健康状態は、先ほどもちょっと申し上げましたように非常に大変な状態で、一カ月間のうちに一週間前後しか就労できない、こういうような状態でございますので、当然家族も大変な生活をしております。奥さんはもう毎日夜の十二時ごろまで内職をしながら何とか三人の子供を抱えて生活をしておる、こういうような状態でございます。  そこで私は、これは一つの事例でございますけれども、こういうようなケースの場合には何とかして救済の措置を講ずべきでないか、労災法におけるその認定をする場合にどういうような認定の要件が要るのか、まずこういう面を労働省にひとつお伺いをしたいと思います。
  101. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 放射線障害によります業務上の問題につきましては、御指摘のように非常にむずかしい判断が必要でございます。私どもといたしましては、昭和三十八年にこれについての認定基準をつくりまして、その後いろいろと外国の情報等を取り入れまして、一番新しいのは五十一年に認定基準を見直しまして新しいものをつくっております。これによって判断をいたすわけでございますが、いずれにいたしましても、この基準によってもなかなか素人ではわかりませんので、むずかしい問題につきましては本省に上げて、そして八人委員会というのをつくっておりますが、斯界の原子力関係障害についての専門家会議の中で御議論いただいて処理をする、こういうようなことで進めております。
  102. 草野威

    草野委員 ただいま認定基準のお話がございましたけれども、現在まで認定された人は一人でもいらっしゃるのですか、これは。  それからもう一つ続けて伺いますけれども、現在の医学では、原子力発電などによる放射能汚染の被曝状況についてすぐ認定できるような状況には、恐らくこれはまだなってないのじゃないかと思うのです。そこで、そういう状態でありますと、幾らこういうものをつくっても、いわゆる空文の状態になるのじゃないか。現実に、その被曝を受けた人が大ぜいいらっしゃる。したがって、この認定をする場合に医師の認定が必要である、こういうことになりますと、それこそ十年も二十年もかかるケースが出てくるわけでございますので、事実上空文に等しいのではないかというような気がしてならないわけでございます。したがって、必ずしも医師の証明がなくとも、そこの事業者だとか設置者、こういうところで明らかにその被曝の過失がある、こういうように認めた場合にはその認定をすべきである、そのように思うわけでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  103. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 この放射線関係障害につきましては、これまで認定いたしましたのは二十二件でございます。確かにお話しのように、全国的にはきわめて少のうございます。特に原子力発電所関係のこういった補償という例はございません。  御指摘の労災の認定の問題でございますけれども、やはり法のたてまえ上、その疾病と業務とに因果関係があることが証明されるということが大前提になっておりますので、私どもといたしましては、その認定に当たってはその原則を守りたいと思っております。ただ、こういった原子力関係は非常にむずかしゅうございますので、一般の労災認定と違って、やはり弾力的に運営をしなければならぬというふうに私ども思っております。したがって、その働いている方の経験年数とかそれから曝露されたその程度とか、そういった問題を総合的に判断をいたしまして、専門家の御意見を聞いてやっていく。私どもといたしましては、そういった事業主が過失があろうとなかろうと、そういうことが原因で病気になられた方については業務上にする、こういうたてまえで処理をいたしておるわけでございます。
  104. 草野威

    草野委員 ただいまのお話を伺いましたけれども、しかし原子力発電所に働いている作業者の中には、特に下請の労務者の中には、一定のところではなくて全国あちらこちらを歩いておられる、そういうような労働者の方もいらっしゃるわけですね。したがって、そういう人たちが過去にどれだけの被曝を受けたか、こういうような事実については恐らく的確に掌握をされていないのではないかと思うのです。そういう状態の中で幾ら認定をすると言っても、これはなかなかうまくいかないのじゃないか。  先ほど私は村居さんの例を挙げましたけれども、この人の場合も、そのポケット線量計の針が二百ミリレムを振り切れてしまった。たまたまフィルムバッジは外に置いてあったものだから持ってなかった。しかし、これは推定によって四百ミリレムだ、あくまでこれは推定なんです。もしかしたら後でつくられた数字かもしれないわけですね。そういうようなこともあるわけです。したがって、そういうような事実を、背景を考えないで、なかなかその認定にすぐ踏み切れないということは、私はこれは重大な問題だと思います。したがって、この点につきましては、労働省におきましても、また科学技術庁におきましても、労務者の人たちが過去において、特に作業開始の初めごろにおきましていろんな被曝を受けても、それが事実は認定されないでそのままに放置されている。そして現在なおいろんな症状を来して苦しんでおられる、こういう方に対しまして、一日も早く労災法の認定が受けられるようなそういう措置をひとつ講じていただきたい、要望いたします。  以上で、この原電の問題につきましては終了いたします。  次に、米軍機の墜落事故の問題についてお伺いをしたいと思います。  二月の二十一日にまたミッドウェーが横須賀に入港するというようなニュースが出ております。先日のあのアメリカの海軍長官の発言によりますと、ミッドウェーが核装備されているということで非常に大きな問題になっているわけでございますが、こういう中で横浜、また神奈川の人たちは、ミッドウェーが入ってくると、また厚木間の往復ということで飛行機の訓練回数もふえてくると、いま非常に大きな心配をしているわけでございます。  そこで、昨年の九月二十七日に横浜市内に厚木基地から飛び立った米軍のファントム機が墜落をいたしまして、やがて五カ月になろうとしているわけでございますが、きょうはこの問題につきまして、補償の問題とそれから裁判権の問題等についてお伺いをしたいと思います。  この横浜の事故でございますけれども、被害者の林さん、椎葉さん、特に林さんのお子さんは三歳と一歳のお子さんが幼い命を奪われました。そしてまた、そのお母さんである林さんの奥さんも、現在まだ重体で入院をされております。現在に至るまでわが子の死も知らないで、そして全身が包帯で巻かれたまま入院をされていらっしゃいます。私は、この事故につきまして、金銭ですべてが解決されるとは決して思いませんけれども、しかし、その補償問題につきましては、どこまでやっても決して十分であるということは言えないと思います。したがって、これは最大の誠意とそして補償に当たっていただきたい、このことを特に長官にお願いするわけでございます。  まず一つ、との補償問題のことでございますけれども、こういう事故があった場合にどのような仕組みで補償額が決まるのか、その仕組みについて、これは施設庁長官にひとつお願いしたいと思います。
  105. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  補償につきましては、事故原因あるいはその責任の所在のいかんにかかわりなく、その被害の実態に応じて補償申し上げるということになっておりまして、この事務は当施設庁が担当しておるわけでございます。  その大まかな考え方を申し上げますと、これは自衛隊機が事故を起こした場合と同様の基準によるわけでございますが、人身被害につきましては、亡くなられた方につきましてはホフマン方式による逸失利益を補償申し上げる、それから傷害を負われた方につきましてはその療養費用その他を補償申し上げる、それから物的な損害につきましてはその実損相当額を補償申し上げるというのが、大きな補償の筋道でございます。個々の被害者の方々と十分にお話し合いをして、御納得をいただいたところでできるだけ手厚い措置を講じてまいりたいということで、現在鋭意進めておるところでございます。
  106. 草野威

    草野委員 私がお伺いしたかったのは、この補償額が決定されるということは、やはり日米合同委員会の中で米軍の方とも相談をしながら決定されるわけですね。この間の経緯がどういうような形で決定されるのか、その仕組みを伺ったわけです。
  107. 亘理彰

    ○亘理政府委員 補償額につきましては、当庁が責任を持って被害者の方々お話し合いをするわけでございます。それで、この補償額が決まりました段階においては、日本政府からこれをまず被害者の方にお支払いするわけでございますが、公務による場合にはそのうちの七五%を米側が負担、二五%を日本側が負担という決まりになっておりますので、米側にも連絡してその了承を得るわけでございますが、補償額の決定そのものはあくまで当庁の責任において行うものでございます。
  108. 草野威

    草野委員 そうしますと、日本政府の責任において補償額が一切決定される、そして米軍にその了承をとるだけである、こういうふうに了解していいですか。
  109. 亘理彰

    ○亘理政府委員 そのとおりでございます。
  110. 草野威

    草野委員 そうしますと、地元の防衛施設局長、この場合は横浜になると思いますけれども、横浜の防衛施設局長さんの役割りといいますか、この事故の処理に当たっての役割り、どういうことがございますか。
  111. 亘理彰

    ○亘理政府委員 今回の事故は横浜防衛施設局の管内において生じた事故でございますので、具体的な被害者の方々との補償のお話し合いは横浜施設局において進めておるわけでございます。もちろん本庁にも相談がありますが、直接のお話し合いの当事者は横浜防衛施設局でございます。
  112. 草野威

    草野委員 では次に伺いますけれども、今回の事故に当たりまして、一体その責任はどこにあるのだろうか、こういうことに私どもはいま、はなはだ注目しておるわけでございます。これは大臣に伺いますけれども、この横浜の墜落事故につきまして一体責任はどこにあるのだろうか、操縦士にあるのか、整備士にあるのか、それともアメリカ政府にあるのか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  113. 亘理彰

    ○亘理政府委員 今回の事故につきましては、合同委員会の下部機構であります事故分科委員会において日米合同の調査検討が行われたわけでございます。この合同委員会の議長を当施設庁の職員が務めておるわけでございますが、この分科委員会の任務は、同種類の事故の再発防止という観点から事故の原因を調査検討いたしまして、所要の再発防止措置について行政的に検討調査するという目的の機関でございます。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、この事故分科委員会は責任を追及する場ではないわけでございます。そういう観点から、事故分科委員会としては……(草野委員「だから責任はだれにあるかと聞いておる」と呼ぶ)それで、この責任の追及につきましては、刑事責任の問題は捜査当局の御所管でございます。それから民事責任につきましては、先ほど申し上げましたように、被害者の個々の方々に対する賠償の問題として、当庁で責任を持って進めておるということでございます。刑事責任の所在の問題については、事故分科委員会のかかわるところではないと承知しております。
  114. 草野威

    草野委員 では伺いますけれども、米軍には法律上の責任はあるのですか、ないのですか。
  115. 亘理彰

    ○亘理政府委員 刑事責任の問題は警察庁の所管でございまして、引き続いて現在なお、その観点から警察庁において調査を進められておると存じます。
  116. 草野威

    草野委員 私はまだ刑事上の問題について伺っておるのじゃありません。先ほどから補償問題について伺っておるのです。したがって、米軍の法律上の責任はどうなるのか、このように聞いておるのです。
  117. 亘理彰

    ○亘理政府委員 補償の問題につきましては地位協定の十八条五項(a)の規定によりまして、事故に対する賠償につきましては、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令により処理するということになっております。この規定の実施のためにいわゆる民事特別法が制定されておりまして、この法律によりますと、本件の場合のように事故の責任者が明らかにされなくても、原因が在日米軍の航空機の欠陥によって生じたものであるということが明らかであれば賠償措置を講ずることができるということになっているわけでございます。
  118. 草野威

    草野委員 いま私は、法律上の責任があるのかないのかというふうに質問したのですが、よけいなことを答えなくてもいいですから、その点だけ答えてください。
  119. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま申し上げました地位協定並びに民事特別法の規定に基づきまして、民事責任については日本政府が責任を持って補償を行うということになっておるわけでございます。
  120. 草野威

    草野委員 どうもはっきりしないのですけれども、この十八条の五項には、米軍が法律上責任を有する作為、不作為ということが出ておりますね。そうしますと、米軍に責任があるのかないのか、その点の法律上の責任をはっきりさせないでおいて、もし法律上の責任がないとなるならば請求権が出てくるということは、これはおかしいじゃないですか。
  121. 亘理彰

    ○亘理政府委員 この法律上の責任というのは、申し上げました日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う民事特別法という法律がございますが、この法律に基づいて、先ほど申し上げたような補償措置を講ずるということになっているわけでございます。
  122. 草野威

    草野委員 補償をするということは、これは当然のことだからいいのです。ただ、今回の事故のように、事故の原因が部品の組み立て上の問題にあったという非常にお粗末なことが原因になっているわけですね。そうしますと、当然責任は整備士であるとかまた操縦士であるとか、そういう疑いが出てくるわけです。そういうことに関しては、いわゆる責任という問題については、この間の合同委員会のときも全然明らかにされておりませんし、そのほかでもまだ明らかになっておりません。したがって、今回の事故は作為であるのか不作為であるかも明らかになっていない。しかも米軍のその法律上の責任もうやむやになっている。こういう中で補償をすると言っても、一体どういう法的な根拠に基づいて補償をするのか、こういう点をひとつはっきりしてもらいたいと思うのですね。そうでないと、同じ補償金を払うにしても、いわゆる国家賠償法に基づく補償がされるのか、単なる見舞い金で済ましてしまうのか、こういう点が非常に問題になると思います。したがって、そういう点をまず明らかにしてください。
  123. 亘理彰

    ○亘理政府委員 民事特別法の第二条によりまして、「合衆国軍隊の」「所有し、又は管理する土地の工作物その他の物件の設置又は管理に瑕疵があったために日本国内において他人に損害を生じたときは、」「国が」、これは日本国でございますが、「国がその損害を賠償する責に任ずる。」その規定に基づいて賠償責任を実施するということになっております。
  124. 草野威

    草野委員 どうもはっきりしませんので、では次に移ります。  昭和三十九年、同じ神奈川県の大和市におきまして痛ましい航空事故が発生しておることは長官も御存じだと思います。この事故のときに大和市の館野鉄工所、そこに米軍機が墜落いたしまして五人の方が亡くなられました。しかも、あれから十四年たつわけでございますけれども、この事故について、被害者の遺族はまだ事件が完全に解決されたという状態にございません。これは長官も御存じだと思います。私はいろいろな事情があると思いますけれども、何の責任もない、平和な市民が、ある日突然に米軍機が墜落してきて、わが子三人が一遍に殺されてしまった。十四年たってもいまだに苦しんで、大変な生活をしておる。一体どうしてこういうようなことが放置されているのだろうか。いろいろな周囲の条件があるにしても、もう少しやはり政府は責任を持って、誠意を持ってこういう事件のいわゆる事後処理ということになるかもしれませんけれども、当たるべきではないだろうか、このように私は考えますけれども、この点について長官のお考えをひとつ伺いたいと思います。
  125. 金丸信

    ○金丸国務大臣 この事故は私が防衛庁長官になる前の古い事件だったと思うわけでありますが、実は私がこれを知りましたのは、先般衆議院の大柴滋夫君がこの話を持ってまいりまして、私も国会の答弁等がありまして非常に忙しかったから、立ち話でお話を承って、なおその後、施設庁とその内容を詳細に調べたわけでございますが、いま裁判ざたになっておるという話も聞いておりますし、裁判ざたになっておるという以上その結果を待つということも考えなければならぬ。この問題につきましては、政府委員を通しまして詳細を説明させます。
  126. 亘理彰

    ○亘理政府委員 三十九年九月にいわゆる大和事故が生じまして、被害者の館野さんには大変痛ましい被害を受けられたわけでございます。この処理に当たりましては、当施設庁の職員が誠心誠意被害者の方々お話し合いをして、当時においては円満な解決を見たと承知しておるわけでございます。  その後、いろいろまた被害者の方から御異論が出てまいりまして、現在東京地裁において係争中の案件でもありますので、私どもはその裁判の結果を待ちたい。これも近く、そう遠からず結審になると聞いておりますので、その裁判の成り行きを見守りたいと思います。
  127. 草野威

    草野委員 昭和四十六年に裁判が開始されましてからもう七年になろうとしているわけでございます。いま、この遺族の方は、恐らく裁判の費用すら一銭もない方じゃないかと思います。こういう人が国を相手取って裁判を起こして果たして勝てるかどうか、それすらも疑問でございます。私は、こういう何の責任もない被害者の遺族に対していまだにこういう姿勢で国が当たっておるということ自体に、非常に憤りを感じてならないわけです。いま施設庁長官が、事故を起こした当時誠心誠意交渉してそして円満に解決を見た、このようにおっしゃいました。私はこれすらも疑問でならないわけです。  時間もありませんので、その例を何点か、私はこの際申し上げてみたいと思います。  一つは、補償問題におきまして財産補償というもの、それがございます。この財産の補償に当たりまして、これは細かい例かもしれませんけれども、事故で当然家屋は全焼してしまいました、家にあった物も全部焼けてしまいました。その補償についてどういうことが行われたか。いま、事故の三年以前に買った物については一切補償しない、三年以内に買った物の中でも五千円以上の物について、領収証があれば補償しよう。細かいことかもしれませんけれども、あの事故の直後にそんなことができるわけないのです。こういう例もございました。  また、館野さんが事故を起こされた、住む家もなくなったわけですよ。防衛施設庁が何をしてくれたか。お葬式のとき三百万円持ってきただけです。この人は入るところもないのです。見るに見かねて大和の市長が仮設住宅を建ててくれました。金額は約七十万ぐらいかかったそうです。そうしたら、この仮設住宅にかかった七十万円のお金について、確かに防衛施設庁はしばらくたってから払ってくれました。しかし、幾ら払ったかというと、五十何万しか払っておりません。十五万幾らは、減価償却費だということで本人の負担にさせてしまっているのです。こういう理屈が一体どこから出てくるのだ。金額は十五万かもしれませんけれども、これは非常に誠意のない冷たいやり方じゃないでしょうか。  もう一つ慰謝料。十九歳と二十三歳と二十五歳と三人の子供さんが亡くなっています。総額で千三百六十万円の遺族補償が出ております。これも計算のしようによっては私は非常に疑問でならない点がございますけれども、たとえば二十五歳の方のその当時のボーナスの支給額が一年間で一万七千円、そういう計算の基礎に立って、ホフマン計算でやられておるわけです。実際にそういうものをいろいろと調査してみますと、当時の神奈川県の実態調査によります資料から賃金計算をしてみますと、数百万円の差が出てくるわけです。こういうことについても非常に冷たいやり方だなという感じがしてなりませんでした。  また、慰謝料につきましてもそうです。百万円の慰謝料を出すということが当時の内訓で決まったわけです。その百万円の慰謝料についても、遺族の話によりますと、余りたくさん死んでしまったから一人当たり七十万円に削ってしまった。三人で二百十万円しか払われていない。こういうような事実もございました。  したがって、先ほど誠意をもって解決に当たられたとおっしゃいましたけれども、決してそうじゃない。裁判上の問題ですから私はこれ以上触れるわけにはいきませんけれども、土地の買収にしても代替地の問題にしても、かつて内閣委員会でもずいぶん取り上げられた問題です。当時の山上長官は誠意をもって努力するというような発言もされましたけれども、そういうことはいまだに実行されていない。そういうことが現在の裁判の原因になっているのじゃないでしょうか。私はこれ以上申しませんけれども、どうかひとつ大和の事故についても、できるだけの誠意をもってその解決に当たっていただきたい。そしてまた、今回の大和の事故につきましても最大の努力をしていただきたい。このことをお願い申し上げるわけでございます。  この点につきまして、金丸長官は事故の当時はいらっしゃらなかったわけでございますけれども、どのようなお考えか伺いたいと思います。
  128. 金丸信

    ○金丸国務大臣 政治は国民のためにあるということでありまして、そういう点から考えれば、あくまでも国民というものを対象に、また国民によりよかれと考えて行政というものはやらなければならぬ、そういう意味で、ただいまのお言葉かみしめてまいりたいと思うわけであります。
  129. 草野威

    草野委員 次に、刑事裁判権の問題について若干お伺いしたいと思います。  昨年の九月二十七日の横浜の事故につきまして、被害者の一人であります椎葉さんから告訴をされておりますけれども、捜査のその後の進展状況について、どうなっているか、お差し支えのない範囲で報告をしていただきたいと思います。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 昨年起きました事故につきまして、本年一月二十日に、御指摘の椎葉さんほか一名から、業務上過失致死傷の罪名によります告訴が横浜地方検察庁に提出されております。  ところで、この事故につきましては、事故発生直後から警察当局におきまして、事故原因の究明をも含めて関係資料の収集等、その他捜査上の努力をしておられますので、検察庁といたしましては警察と密接に連絡をとりながら、警察の捜査の過程を注目しながら現在鋭意検討しておるところでございまして、今後とも警察協力して刑事責任の所在について究明してまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  131. 草野威

    草野委員 そうしますと、この裁判権の問題ですけれども、公務中の事故でございますので、第一次裁判権は当然米軍にあるということでございますが、地位協定の十七条の第三項の(c)の前段でございますけれども、「第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、」云々ということがございます。この規定は、他方の国は当該事件について裁判権を行使できるのか、それとも単なる報告義務だけで終わらせることができるのか、この点について伺いたいと思います。  もう一つは、同じくこの十七条三項の(c)の後段でございますけれども、「第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、」云々とございます。このような事件におきまして、わが国はこの規定に従ってアメリカに対して裁判権の放棄を要請することは可能であると思いますけれども、これに対する地位協定上の法的な見解についてお伺いをしたいと思います。  以上二点。
  132. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘のございましたように、地位協定の十七条三項におきまして、日米の裁判管轄権が競合します場合の第一次、第二次の分別を定めておるわけでございます。その(a)の(ii)というところにございますように、「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」、これにつきましては、合衆国軍当局が第一次の裁判権を行使する権利を有するということが明記されております。ただし、このことは、第二次の裁判権を有する当局、すなわちわが国の捜査機関が捜査をしてはいけないということを意味するものでは全くないわけでございます。そこで、次に御指摘の(c)項の問題が出てまいりまして、わが国の捜査当局が鋭意捜査に努めました結果、犯罪が成立するというふうに認めまして、かつ、米側の第一次裁判権行使をしないでもらって、米側の裁判権の放棄をしてほしいというふうに申し入れるだけの重要な理由がある、こういうような場合には放棄要請ができるということになるわけでございます。  しかしながら、ただいま御指摘の事故につきましては、捜査の現段階におきまして犯罪が成立するという確信が私どもにございませんので、この段階で裁判権の放棄要請をすることは適当でないと、現在のところ考えております。
  133. 草野威

    草野委員 ただいま捜査しておる最中ということでございますけれども、もし犯罪の容疑が濃くなってきた場合には、日本政府はアメリカ政府に対しまして裁判権のいわゆる放棄について何らかのアクションを起こす、こういうことは可能でございますか。
  134. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 ただいま刑事局長から御説明したような状態でございますが、第一次裁判権を持っておるアメリカに裁判権の放棄を求めるという重大な事件、国民に大きな被害を与えた、こういうような場合にやるというたてまえを持っておりますが、この事件がもし犯罪ありと認められたときには、放棄を求める事件だと考えております。
  135. 草野威

    草野委員 次に、第十七条の十項の(b)でございますが、これは基地外における米軍の警察権の行使を限定しているところでございますけれども、今回の事故におきまして、新聞報道によりますと、米軍は一方的に日本人の立ち入りを規制したというふうになっておりますが、日本当局はそのような権限を米国当局に与えているのかどうかということが一つ。  もう一点は、今回の事故で非常に重要な証拠物件でありますエンジンを無断で米本国に一たん持ち去りました。こういうことは明らかに地位協定上の違反行為ではないか、このように考えるわけでございますけれども、このようなトラブルが起こらないためにも、日米双方の権限を明確にしておくことが必要ではないか、このように考える次第でございますが、いかがでしょうか。
  136. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘の地位協定十七条十項の問題は、合衆国軍隊警察が基地外で捜査行為を行うことができる場合の規定でございますが、恐らく、ただいま御指摘になっております問題は、事故が起きましたときに合衆国軍隊のものが現場へ駆けつけましていろいろな措置をとった、その関係であろうと思います。その関係については、昨年の当委員会におきましても御質問があったと記憶いたしますけれども、合衆国の軍用機が日本国内の、たとえば民間の財産に墜落あるいは不時着した場合には、応急やむを得ざる措置をとるためにその場所に立ち入ることができるということを日米合同委員会において合意いたしておりまして、それに基づきまして立ち入ったものである、こういうふうに理解をいたしております。ただ、捜査上立ち入ります場合には厳格に、ただいま御指摘規定の適用があるわけでございまして、また、それでなく、ただいま御説明申し上げましたような事故直後の事故現場の応急措置の問題につきましても、私有財産を侵すおそれもございますので、厳格に運用されるべきものであると存じております。昨年の国会で御指摘もございまして、直ちに日米合同委員会刑事裁判管轄権分科委員会を通じまして、米軍にこれらの趣旨の徹底方を厳重に申し入れておるところでございます。
  137. 草野威

    草野委員 最後に、今回の横浜の米軍機墜落事故のように、米軍の基地が神奈川県にある限り再びこういう事故はいつ起こるかもわからない。しかし問題は、こういう事故が起こったときに住民の権利というものがはなはだ制限されてしまう、これが現在の地位協定の実態ではないか、このように考えます。したがって、きょうは十七条、十八条と限られた問題だけで申し上げましたけれども、どうかわが国の主権を確立し、そしてまた、地位協定のこの問題につきましても日本の権利というものが不当に制限されることがないように、この際、地位協定の見直しについても政府は考えるべきではないか、私はこのように考える次第でございますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  138. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生の御指摘のような御趣旨を体しまして、個々の具体的な事態に対しては対処していくべきものと考えます。地位協定自体の見直しにつきましては、当面のところ、地位協定の規定そのものについて特にこれを再検討しなければならないというような事態はないのではないかというふうに考えておりますが、なお、今後ともその運用につきましては、その国民の権利の侵害されることのないように厳重に注意をしながらこれを行っていきたいというのが考え方でございます。
  139. 草野威

    草野委員 それでは、次の質問に移ります。  次は、交通遺児等の生活実態と寡婦雇用の促進につきまして若干質問いたします。  昨年の十二月に全国の交通遺児大会が開かれました。私も出席をいたしました。この中で母親また遺児の切々たる訴えに対しまして、私も非常に胸を打たれたわけでございますが、この大会の中で数々の要望が出されたわけでございます。この点につきましてはもうすでに御承知かと思いますけれども、ぜひともこういう遺児、母親たちの要望を実現させていただきたい、そういうことで、何点か御質問いたします。  まず初めに、労働大臣に伺うわけでございますけれども、母子家庭の母親の雇用促進法の制定につきまして、今国会でぜひとも成立を図ってもらいたい。この内容につきましては、もうすでに御承知だと思いますが、官公庁、公的機関、民間会社などに法定雇用率を定め、その枠内で母親の就職を保障するという問題であるとか、またさらに保育園の優先入園だとか、また有給職業訓練制度の充実であるとか、このようなことが強く要望されたわけでございますが、労働大臣、いかがでございましょうか。
  140. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 寡婦、未亡人の雇用対策でございますが、従来からきめの細かい配慮をしてきておるわけでございまして、特に寡婦の場合、子供の保育というような家庭生活の制約でありますとか、あるいはまた男子に比較して職業能力が乏しい、こういう面がございまして、従来から特に寡婦に対して雇用奨励手当、雇用奨励の制度を設けておりますことや、あるいは職業訓練に対する手当を出す、こういったことでいろいろ配慮しておるわけでございます。  ただいま御指摘の、雇用率制度によってこれを制度化するという問題でありますけれども、寡婦、未亡人の場合はこの身分が非常に流動的と申しますか、また再婚をするというような場合もございまして、なかなかそこに、一つの実体的また技術的に、いまのような制度をつくるということがきわめて困難である、このように考えますけれども、問題は非常に大切な問題でありますから、今後慎重に検討してまいりたい、このように思っております。
  141. 草野威

    草野委員 次に、遺児の進学に対する助成の問題でございますけれども、交通遺児の高校生の授業料減免制度についてぜひともひとつ改善をしてもらいたい、このような要望が出ているわけでございます。現在は給付の制限が非常に厳しくて、生活保護かまたは準保護の世帯の者、このようになっておるわけでございますが、年収百五十万円以下の家庭の高校生についてぜひとも取り入れていただきたい、こういうような要望でございますね。この点をひとつ伺いたいと思います。
  142. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  御指摘の交通遺児の方々につきましては、奨学資金の貸し付けであるとかあるいはまた授業料の減免ということにつきましては、この制度を設立いたしましてから逐年改善を図っておるわけであります。いま御指摘の高校の授業料の減免の問題ですが、この基準の問題になりますが、一般災害遺児とのバランス等々も考え、また、これを実施していただきますところの都道府県等々の意見も参酌をしながら真剣に考えてみたい、こういうように思っております。
  143. 草野威

    草野委員 いまいろいろとお答えをいただいたわけでございますけれども、このような答弁の内容では、私どもは非常に不満足なわけでございます。先ほど労働省の調査のことについても若干触れておられましたけれども、この労働省の調査の実態を見てみますと、たとえば人口集中地区にしぼったいわゆる都市型賃金、こういうことでかなりその実態よりも高賃金が出ている、こういう面もあります。必ずしも実情に沿わない面もあるやに私どもは考えるわけでございますが、時間もありませんので余り申し上げることもできませんけれども、どうぞひとつ、父親のいない遺児たちから、もう最後の命綱である母親まで奪うようなこういう政治だけはぜひともなくしていただきたい。これは私は、全国の交通遺児、また海難遺児、そういう人たちにかわって政府にお願いを申し上げたいと思いますので、どうぞひとつよろしくお願いをいたします。  さらにまた、自賠責の問題でございますけれども、これも要望を出されておりました。  運輸大臣にこれは伺いたいと思いますけれども、自動車事故被害者救済のために自賠責保険の限度額の引き上げについて伺いたいと思います。昭和五十年に現行の死亡千五百万円に引き上げられたわけでございますけれども、その後の物価の変動、医療費の引き上げ、こういうことを考えますと、現行の限度額の改正の時期に来ているのではないか、このように判断をせざるを得ないわけでございます。この点につきまして、運輸省の中におきまして改正の検討が現在なされているかどうか、まずこの点について伺いたいと思います。もし検討がされているとすれば、どのような内容か、こういう点についても明らかにしていただきたいと思います。
  144. 福永健司

    ○福永国務大臣 いまお話しの自賠責保険金の限度額の引き上げにつきましては、従来、裁判所の裁判例等、賠償水準の勘案等を行ってこのことをやっているわけでございますけれども、その限りにおいては、まあこんなところじゃないかというような考えもあるわけでございますけれども、お話のようなことを考慮して、被害者の保護に欠くることのないようにしなければならぬということも大いに考えなければならない。  そこで、いま政府委員から答えさせますけれども、恐らくまだその内容を、こういうように考えて、こうというようなところまでいっていないと思います。思いますが、先ほどから御主張の点については、私も大いに考えてみたい、こういうように思っております。具体的な、そういうことがあるかないか、それは政府委員から答えさせることにいたします。
  145. 中村四郎

    中村政府委員 お答え申し上げます。  自賠責の保険金額の限度額の引き上げにつきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおりでございますが、私どもといたしましても、裁判例等の賠償水準、また賃金、物価の動向、こういったものを総合的に勘案いたしまして、現在直ちにどうという結論は出しておりませんが、鋭意、被害者の保護に欠けないような検討を進めてまいっておるわけでございます。
  146. 草野威

    草野委員 鋭意努力していただきたいと思いますけれども、先ほどの大臣お話の中に裁判例云云という話もございました。最近の航空機事故の損害補償は現在二千三百万。そしてまた裁判ですけれども、全国の地裁の損害認定の判決によりますと、死亡事故で二千万円以上の例が三四%を占めておる、これが現在の実態でございます。そういうわけでございますので、この自賠責につきましては、最低保障の限度として、どうしても引き上げをしなければならないというのは、これはいま社会的な大きな要求になっているのじゃないかと思うのです。そういうことで、自賠責特別会計を見てみましても毎年の繰越額が千五百億円になっているわけでございますけれども、予算全体を見ましても、五十三年度の予算によりますと九千七百億円にも達しているわけでございます。したがって、不測の事故に備える予備費等という考え方からいっても非常に多額じゃないか。そういう意味におきまして、いろいろ計算してみましても、限度額を現在の千五百万円から、二千万から二千五百万円に引き上げたとしても、私は、この計算からいきますと、現在の保険料を据え置きにしても二千五百万円程度までは引き上げが可能ではないか、このように考えるわけでございますので、ぜひともこれはひとつ早急に検討して実現をしていただきたい、このように要望いたします。  次の質問に入ります。  自転車の駐車対策の推進の問題につきまして国鉄総裁にお伺いをいたします。  御存じのように、この自転車の問題でございますけれども、年々非常にふえてまいりまして、現在では四千三百万台にも達しておる、そのように言われておるわけでございます。そういう中で、自転車が駅前であるとか駅の周辺に放置されたような状態になって、一つの社会問題にいまなっておるわけでございますが、この点につきましてことしの一月二十三日、交通対策本部の決定としまして、関係省庁に自転車駐車対策の推進についてというものが示達されたそうでございますが、鉄道事業者としての国鉄はこれにどのように対応しようとされているのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  147. 高木文雄

    ○高木説明員 近来、駅周辺の広場等におきましてやや無秩序に自転車が置かれておるということのために、これを何とかしなければならぬという問題がきわめて緊要な問題になってきておることは御承知のとおりでございます。各地域においていろいろ御提案もあったわけでございますが、私どもといたしましても、お客さんのサービスという意味もありまして、駅前広場が無秩序になっておるということについては、ある意味では大変迷惑を感じておりましたところ、ただいまお示しのように、最近交通対策本部の決定として大体の考え方がまとまってまいりました。私どもといたしましても、その際御議論がありましたところに従いまして、従来とはやや趣を異にして、積極的にこれに取り組んでまいらなければならないという心構えでおる次第でございます。
  148. 草野威

    草野委員 これから地方自治体を初めとして大量の申請が出てくるということが予想されるわけでございますけれども、こういう件につきましてどのように対処されるのか。それからもう一つは、これは大変具体的過ぎるかもしれませんけれども、東京地区でいまいろいろ問題になっております国立、それから神奈川県の平塚市、こういうところにつきましてはどのようになっておりますか。
  149. 高木文雄

    ○高木説明員 従来からいろいろ各地域ごとに御要望があったわけでございます。その多くは、国鉄が持っております土地をそういう目的のために提供してほしいという御要請であったわけでございますが、これをだれがどういう形で管理をされるのか、また、どういう方がどういう形で負担をされるのかというあたりがどうも明確でございませんでしたので、これまで、率直に申し上げていささか消極的な姿勢であったわけでございますけれども、このように各省庁の間で議論が交わされ、方向が明らかになってまいりましたので、従来とは異なりまして、より積極的な姿勢で臨みたいというふうに思っております。  ただいまお示しの国立でありますとか平塚でありますとかいうところは、かなり混乱をしておる典型的な場所でございますけれども、なかなかどうも適当な用地もない、あるいは私どももいずれこの土地を利用する計画があるというようなことから、御要請になかなかこたえられないということで今日までまいっておりますが、いま申しましたように、大体どういうふうに今後進めていくのかという方針が明らかになってまいりまして、地方公共団体なり道路管理者なりが責任を持ってこの処理をしていくという体制で臨むべきだということになってまいりましたので、各地方公共団体なり道路管理者なりから具体的な御提案を承りまして、それに積極的に取り組んでいきたいと思っております。  いずれにしましても、道路管理者なり地方公共団体なりが具体的な計画をお立ていただき、その間においていろいろと御協議願うということをお待ちしておるということでございます。
  150. 草野威

    草野委員 これで終わりますが、簡単にひとつお願いいたします。  ただいま国鉄総裁から、非常に積極的な、自転車駐車場問題に対処することにつきまして御答弁をいただいたわけでございますが、地元の期待も非常に大きいものがあるのではないかと私は思います。  また、先ほど、基本的な考えに基づきまして対処する、このようなことでございましたけれども、国立だとか平塚以外の個所についても、具体的に明示された場合、ただいまの回答と同様に対処していくもの、このようにとってよろしいでしょうか。
  151. 高木文雄

    ○高木説明員 もちろん、いまの国立、平塚だけでなくて、ほかの地域につきましても、道路管理者、地方公共団体がきちっとした計画を立てていただけますならば、それに即応した体制で臨みたいと思っております。
  152. 草野威

    草野委員 以上で終わります。
  153. 中野四郎

    中野委員長 これにて草野君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十七分開議
  154. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤敬治君。
  155. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、地方財政の問題に限ってだけ御質問をいたします。  私は、ほぼ二十数年間地方財政と取り組んでまいりましたけれども、今度の地方財政計画ほどひどい財政計画というものを見たことがございません。言うならば、長い間の政府の中央集権的な地方いじめの結果、ほとんど骨と皮になってしまった地方財政を、このたびの政府の景気刺激政策でもって一挙に皮まではいでしまって、骨だけがいま残っているのではないか、こういうふうな哀れな姿がいまの地方財政の姿である、こういうふうに強く感じております。そこに感じられるのは、地方自治とは言うけれども、自治も自主という感じも何もない。地方財政というものは独立したものではなくて、政府の公共事業を遂行するための国の予算の単なる一款項目に落ちてしまった。まさに落ちるところまで落ちたという感じを持つものであります。  先日の地方行政委員会で、加藤自治大臣は所信表明の冒頭でもって、「地方自治の基盤の一層の充実を図る」、こういうふうに述べておりますけれども、とても恥ずかしくて、現在の状態で地方自治などということを口に出すような状態ではないのではないか。充実を図るどころか、崩壊のために力をかしている、こういうような感じさえ持ちました。  そこで、この地方財政計画を見まして、まず第一に強く感ずることは、来年以降、一体この地方財政というものはどうなるかということが全然見当がつかないことです。そこで、一体いつ地方財政というものが立ち直ることができるか、この膨大な借金のツケを一体どうすれば落とすことができるのか、もう皆目見当がつかない。  そこで要望したいのですが、先日の予算委員会で、地方財政収支試算を今週中には作業を終えて提出する、こういうふうに自治大臣は答えておりますが、きょうはちょうどその最終日の土曜日でありますので、ひとつ御提出をお願いいたしたい。
  156. 加藤六月

    加藤国務大臣 地方財政の収支試算につきまして鋭意その策定作業を急いでおるのでございますが、端的な言い方をいたしますならば、本委員会におきましてのいろいろの御議論も踏まえなければならぬのでありますし、かつまた、国の財政収支試算との調整が必要でありますことも御承知のとおりでございますから、さような諸事情で作業がおくれておるのでありますが、鋭意、作業を進めまして、なるべく早く提出をいたしたい、かように考えているところであります。
  157. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 非常におかしいのですよ。議論しなければ出せないということじゃなくて、それが出なければ議論にならないのですよ。逆ですよ。何にも資料ないでしょう。一体どうなるのか。それがなくてどうして議論できるのですか。議論してから資料をつくるのじゃなくて、資料が出なければ議論できないのですよ。どうです。
  158. 加藤六月

    加藤国務大臣 私が、端的に申しますと、かような表現をいたしたのでございますけれども、それは、本委員会で国の財政収支試算につきましての御論議が展開されており、そして、それに対しまして大蔵大臣が善処なさる旨の御発言のあったことは御承知のとおりでございまして、私どもはその善処の中身がいかようなものであるかは察知すべくもないわけでございますけれども、あるいは付属資料等が出されるのではないであろうか、かような予想もいたしておるのでございまして、さようなことをも踏まえなければ地方財政の収支試算がなかなか固まらないのでございますから、端的にその事情を申し上げたようなことでございます。
  159. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ますますおかしいですね。地方財政計画をつくるとき大蔵省と何かしらそういう話が、何にもなくてつくっているのですか。あれだけ新聞に喧伝されて、大蔵と自治大臣の代理戦争みたいに外野が一喜一憂して騒いでいるあの中で、ただの一度も――大蔵省のことはわからない、こう言うのですが、予想もつかない状態なの。大蔵大臣と両方にひとつ答弁を……。
  160. 加藤六月

    加藤国務大臣 もとより大蔵省とはよく話もいたしておるのでありますけれども、しかし、大蔵大臣が善処なさるその中身につきましては、最終的にいかなるものであるかは、まだ私どもうかがい得ておらぬ、かような意味を申し上げたことであります。
  161. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 では、大蔵大臣に聞きますが、それは一体いつ出すのですか。この前のあれですと予算審議中に出す、そんなこと言っておりますが、いつ出るのですか。あれは、みんな終わってしまってから出たって議論のしようがありませんよ。
  162. 村山達雄

    ○村山国務大臣 藤田委員から要求のありました具体的構想、これがなかなかむずかしいのでございまして、予算審議中に出すということで、お約束は必ず守るように鋭意やっているわけでございます。  矢野委員から御指摘のありましたケースごとの整合性という問題、これがまたなかなかむずかしい話でありまして、いま矢野委員と接触いたしましていろいろな資料を出しているのでございますけれども、御本人からなお、この付属資料、この付属資料ということで、いま資料追加が大分来ておりますので、鋭意いま急いでいるところでございます。
  163. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 矢野さんがどういうことを言っているかわかりませんけれども、あなた方の計画を矢野さんに出して、矢野さんからいろいろ批判され、あれされるのは、それは自由ですよ。しかし、大蔵省なり自治省なり、あなた方自身としての独自のあれがあるでしょう。何にも独自のものがなくて矢野さんのところへ出して、矢野さんが批判するはずがないじゃないですか。何かなければ矢野さんにだって出せないじゃないですか。矢野さんの見解はどうであろうとも、私の見解は違うかもしれませんよ。あなた方独自の計画を出しなさいよ。
  164. 村山達雄

    ○村山国務大臣 前回、独自のものを出したわけでございます。しかるところ、いろいろ御批判をいただきまして、すでに一つは出したわけでございますが、あとの二つにつきましては、矢野委員のものにつきましてはさっき言ったような事情で、御本人からいろいろな追加資料の要求がございます。鋭意、質問者の御意思に沿うべく、いま追加資料を急いでいるところでございます。  藤田委員のことにつきましては、具体的構想ということが決まりましていろいろな試算をやっているわけでございますが、この点はお約束どおり委員会の開催中には出すべく、いま鋭意急いでいるところでございます。
  165. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この問題だけやっていてもしようがありませんが、もう一つは、加藤自治大臣は、そうすると、いつ出しますか。この予算委員会をやっている間に出しますか。
  166. 加藤六月

    加藤国務大臣 大蔵省とはよく連絡を保ちながら作業いたしておるのでございますから、大蔵省が提出をされまする資料が最終的に決まりましたら、さほどの日数を経ずして地方財政収支につきましても作業が完了いたす、かように考えているところであります。
  167. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それは早く出してください。  経済企画庁長官にお尋ねしたいのですけれども、私は去年の一般質問で、ちょうど同じようなことを倉成前長官に御質問したのですが、倉成さんは経済学博士で経済の専門家なので、私は議論する意思は何もないけれども、どうも政府は、あの当時五・七%ですか、経済は大丈夫だと言ってどんどんやっているけれども、土光さんなり何なり、民間の見通しは非常に悲観的だ。そこで私は、論争する必要はないけれども、政府と民間が余りにも違い過ぎるので大丈夫か、こういうふうに質問をいたしました。そうしたら、もう絶対大丈夫だといって言い切っておるのですね。いろいろなことを並べて、例の七項目、公共事業を進めたし、国鉄、電信も工事削減四千億を取り戻したし、住宅も八百十億、電力の発注も繰り上げたし、プラントの輸出もできた、ボンドの保険もできた、中小企業に対する融資も年末まで四千八百七十億円やった、政府支出の中の資本支出も十八兆二千五百億になった、こうずっと並べ立てて、政府の経済見通しの数字は絶対達成できる、こうやって、景気がよくなると断言しているのですよ。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 ところが全く当たらないで、いまのようなみじめな状態になっている。その状態はちょうどいまと同じなんですね。ことしは七%成長だと言っているけれども、民間は四%か、せいぜい五%ぐらいしかやってない。官高民低の経済天気図である。私は同じような危惧を抱いている。  宮澤長官によると、在庫調整が問題で、これはどんどん進んでいるから大丈夫だというふうなことを盛んに言っておられるようでありますが、いまの政界で一番の経済の専門家と言われている宮澤長官の確固とした信念なり御意見をお聞きして安心をしたいのです。
  168. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が御提案を申し上げておりますように、一般会計にいたしましても財投にいたしましても、あるいは税法等にいたしましても、今回は相当異例のことをいたしておるくらい事態は深刻でございますので、私は、七%の成長というものがそうやすやすとできるというふうには決して考えておりません。事態はなかなか容易ならぬことであるということは、佐藤委員とそういう意味では同じような深刻な認識を私どももいたしております。しかしながら、本当にこれだけの財政と税制等の措置というものはかつてわが国でやったことがございませんでしたし、これが執行に遺憾なきを期しますれば、上半期にかなり財政の主導が出て、そうして下半期には民間の経済活動、消費活動にもそれなりの信頼を回復するきっかけをつくり得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。  しかし、一般に、ただいま佐藤委員が言われましたように、なかなかそう感じていないではないかとおっしゃることは、一つは、やはり政府がこれだけの措置に出るであろうということについて、昨年の暮れになされました各団体の見通しというものはこれを織り込んでいなかったということがございますことと、それから、従来財政が何度か公共投資をいたしましたけれども、その波及効果が十分でなかったから、また今度も同じことではないかというような感じ。それからもう一つは、先ほど何人かの実業家の名前をお挙げになりましたけれども、現在のわが国の、ことに設備投資を見ますと、かつての大企業と言われた製造業の持っておりますウエートはもう三割ぐらいになってきておりまして、実際には非製造であるとか個人金融といったようなところが七割以上を占めている。主に経団連等々で発言されるお方々が、したがって御自分のところの体験を中心に言われますので、事実問題としては、そのような設備投資のウエートは下がっておって、それ以外の設備投資が実は七割ほどもある。こういったようなことも多少私は影響しておるのではないかと考えておりまして、私ども、いろいろ御批判もいただき、また御支援も受けて、何とかこの七%程度というものを達成いたしたいと考えておるわけでございます。
  169. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は議論するあれは何もありませんし、予算委員会でずいぶん議論された問題ですから寸改めて地方財政を行っていく中で非常に大きな要素を公共投資が占めておりますので、一応お聞きしたまでですから、どうかひとつ実行ができますようにがんばっていただきたいと思います。  今度の地方財政計画は、総額で三十四兆三千三百九十六億に及ぶ大変な額であります。国家財政よりも大きい額でありますが、この中で非常に際立っているのは、これは御承知のように、一番先は膨大な公共投資、それから、それを賄うところのこれまた膨大な地方債、そしてさらに歳出で非常に目立つのは公債費であります。この三つを中心にして議論したいと思うのですが、この注目の投資的経費でありますけれども、景気回復の柱とされておる国の公共事業費のちょうど七〇・四%を、地方がこれを引き受けてやることになるわけです。五十年度、去年から見ますと伸び率で二六・一%、実に十二兆六千五百九十四億という膨大な仕事をこれから地方が担当してやっていくわけです。  この公共事業が順調に消化されるか否かは、いわば七%を達成されるかどうかということのキーポイントになるわけですが、この大事な公共事業の中で特徴的な三本の柱が言われております。一つは道路ですね、一つは公共下水道、一つは住宅、この三つが三本の柱だと言われておりますが、どうもこれに対する批判がある。道路は、用地費として六〇%以上地主のふところに入るから景気の足しにはならないじゃないか、こういう問題。あるいはまた、下水道をやると、いま下水道事業団しかなくて技術者が極端に足りないので、とてもこの案はやれない。あるいはまた、住宅を建てるにしては全然用地の手当てがしてないじゃないか。いまでも住宅公団はもうもてあまして皆繰り越しているじゃないか。一体どうやってやるのか。こういうような制約がたくさん見られて、非常に批判されておるわけです。これについて、建設省から、どういう体制にあるのか、お聞きしたい。
  170. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  先生いま御指摘のように、公共事業の施行ということが非常に大きな問題になっておることはわれわれもよく承知をいたしておりまして、特に補助事業につきましては、事務の簡素化でございますとか執行体制の問題につきまして、関係土木部長を集めましていろいろ論議を進めておるところでございます。  まず、事務の簡素化につきましては、かねてから建設省努力しておりますけれども、さらに関係土木部長意見も聞きまして、設計変更の場合の大臣の承認を要しないものの範囲でございますとか、添付書類の簡素化について現在検討をし、その方向で実施するつもりでございます。  さらに、施行の合理化の問題につきましては、建設省が決めております標準設計の活用でございますとか、自主施行の推進でございますとか、あるいは設計とか管理につきましてのコンサルタントの活用等を図っておるところでございます。  先ほど道路の用地の問題について御指摘ございましたが、建設省の所管事業の用地比率は、来年度は二五・一%と見ております。そのうち、道路でございますが、街路は御指摘のように用地比率は六〇・八%でございますが、街路を含みました道路整備全体といたしましては二八・三%というふうに用地比率を考えております。  それから下水道事業も、確かに御指摘のように、建設省で事業費で四三%伸びたわけでございますが、問題は、この技術者が十分であるかどうかという問題がございます。これにつきましては、私どもの推計によりますと、五十三年度は大体有資格技術者が一万一千四百人ということでございまして、一人当たりの事業量を考えますと、事業量としては大体五十二年度並みというふうに考えております。さらに下水道事業団が委託を受けましていろいろお手伝いをできる体制にもなっておりますので、その問題とコンサルタントの活用を図っていきますれば、十分対応できるものと考えております。  なお、住宅の問題につきましては、御指摘のように公営、公団につきましては、五十三年度は五十二年度より若干戸数の減をいたしておりますが、これは実際に実行できるものにつきまして積み上げをいたしておりますので、この実施は可能であると考えております。  なお、住宅金融公庫につきましては、個人住宅四十万戸のうち、実際に戸建ての住宅は三十六万二千戸でございますが、その建てられる方は大体用地の手当てがお済みでございます。われわれの試算によりますと、大体新しく用地を取得いたしますのはそのうちの五万戸程度ではないかと考えておりますので、これまた実行が可能であると考えております。  以上でございます。
  171. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 自治大臣にお聞きします。  自治省は、年来、地方自治体の人が多過ぎるので減らせというので強力な指導をしてまいりました。しかし、去年あたりから、こんな大量の公共事業が投資されてやられていますね。来年も再来年も大体そういう見通しだ。そして、この人間を減らせというのでどんどん減らしている。それと公共事業の遂行と非常に関連があると私は思いますが、どう思いますか。
  172. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来御指摘のように、公共事業の七〇%を超えますものがいわゆる補助事業でありまして、地方でやっていかなければならぬ。かつまた、五兆六千億円という膨大な単独事業をも組んでおるのでありますから、地方が大変でありますことは御指摘のとおりでございます。ただ、従来の公共事業の執行体制からいたしますときわめてむずかしいと見られるのでありますが、いま建設省からお話がございましたように、設計協議等に関しましても従来とは異なった破格のといいますか、特段の配意をいたすことになるでありましょうし、かつまた事務的な手続もきわめて簡素化が考えられておる、かようなことでございますから、私は、現在の陣容をもっていたしますならば公共事業の消化は不可能ではない、かような感じを持っておりますが、しかし、大変であることは事実でございます。  そこで、いま御指摘がございましたように、技術者等につきましても、たとえば都道府県の流域下水につきましては従来からの経験が少ないものでありますから、技術者が非常に少ないことも、本委員会でかつて指摘をされたとおりであります。かような場合には、その地元の市あたりから技術者が応援をしてくれたりいたしましていろいろ体制をとっておりますし、かつまた、全体をながめてみますと、ああ、ここは若干手厚いな、かような場所もあるのでありますから、さようなところとの配置転換等も進める等の工夫を市町村としてはしてくれるのに間違いがないと思うのでありますから、大変ではございますけれども、さような工夫をこらしながら、結構どうにか公共事業の消化は可能である、かような見通しを持っておるところであります。
  173. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 細かいことは委員会でまたあれしますけれども、いまこういうような技術的な問題と同時に、自治体の側としてはもっと大きな心配があると思うのです。単年度として見るならば、こういう借金財政でも自治体の長にとってはことしはむしろやりいい年じゃないか、こういうふうに思います。その気になれば補助金は幾らでも来るし、裏金は九五%も起債でつけてやるというし、恐らく、もううれしくてしようがないでしょう。特に来年は統一地方選挙がありますので、実績づくりのために一生懸命仕事をやるかもしれません。全体としては、政府の要請どおりに地方は一生懸命働くと思いますけれども、しかし、そこにも、そういう態勢の中に私は非常に大きな制約があると思うのです。それはさっきも申し上げましたが、地方財政というものの疲弊である、こういうふうに思います。いま政府が出したデータの中で、私それを四つ五つ並べてみますとこういうことなんです。  五十年度の決算によりますと都市圏の経常収支率、これは説明は、申すまでもなく専門家ですからわかるでしょうが、都市圏の経常収支率は自治省が危険ラインと称している七五%をはるかに上回って、もう八六・六%まで行っているのです。東京都あたりは一〇〇%に行っている、こういうふうに言われているのですね。非常に弾力がなくなっている。  それから二番目は、この間発表されました五十一年度の市町村の決算。これは赤字団体が前の年よりも百二十一団体に減ったり、単年度収支で千四百六十一億黒字になったりして、一見好調に見えますけれども、しかし、その内容を見ますと、歳入に占めるところの起債の構成比は一三・一%といって戦後最高なんです。五十二年度はもう三〇%近いものがかなりあるのではないか。ことし、五十三年度になりますと三〇%を超えるものが続々と出てくるのではないか、こういうふうに思います。国も三〇%を超えているから、地方も三〇%を超えて大したことはないじゃないかというけれども、その力から見ますと、これは非常に大変な起債の構成比だと思います。  第三番目は、歳入の決算額におけるところの同じ五十一年度の実質債務額は七七・一%になっているのです。十一兆四千二百四億円あるのです。つまり七七%は借金だ、こういうことなんです。七七%の借金というと、これは大変な借金なんですね。これはもうどんどん多くなっていっています。四十年度は四二・九%なのが五十一年度は七七%になっている。三四・二%も上昇しておるわけです。五十二年度は一体どうなるか。八〇%ラインを軽く超すんじゃないかと思うのです。  さらに五十三年度の地方債計画、これを見ますと、普通会計債が四兆百六億円です。それに対して歳出の公債費、借金を返す金が二兆二千三百八十二億円、実に五五・八%を借金として返さなければいけない。ことしは膨大な史上空前の借金財政だ、こう言っておりますけれども、実際には借りた金の五五・八%を差し引いた、わずかに一兆七千七百億円しか使いでがないのです。一万円借りれば四千四百円しか使われないということです。来年になったら一万円借りれば恐らく三千円しか使いでがなくなる、こういうような状態でいま来ているわけです。  さらにもう一つ申し上げますと、地方税、地方交付税、地方譲与税、こういうものを合わせたいわゆる一般財源に対するところの起債の割合、これが五十二年度では一〇・五%だった。これが五十三年度では一一・三%に上がっているのです。自治省では、一般財源に対する公債費の率が一五%になれば危険だ、こういうふうに言っていますね。ところが一一・七%なんだ。五十三年度は一一・七%で済んでおりますが、五十四年度では地方財政、税が伸びなかったり、こういうような状況がもしありとすれば、一三%はおろか一五%に達するのじゃないか、こういうふうに思われる。  こういうようなことをずっとこうして見てきますと、いま地方財政というものは大変な状態にあるということがよく理解されると思うのです。  そこで、地方債の問題について具体的にひとつ提案を申し上げたいと思うのです。膨大な地方債のつけを一体どうして回すかということなんですが、国債は、中期の割引国債を除いては発行十年後に満額償還するということになっていますね。それで減債基金を設けて定率繰り入れ、剰余金繰り入れ、予算繰り入れ、こういうものをやることになっていますけれども、実際には定率繰り入れの六十分の一を六回切りかえて六十年で返している。ところが、この地方債、建設国債ですね、いわゆる建設地方債は二年据え置き八年償還なんだ。十年。建設国債の六分の一ですか十分の一ですか、虐待といえばおかしいが、早く返すほど利息がよけいつかないのでいいかもしれませんけれども、片一方は六十年、片一方は十年で返す、こういうふうな非常に大きな差がある。国の公共事業をほとんど下請して地方がやっている。その地方の建設地方債が十年で、国は六十年で返しているのです。苦しくないときはいいのですが、こんな借金で身動きのならないときは、やはり国と同じように地方債の償還期間を延長すべきじゃないか、こう思います。これの根拠は地方財政法にはっきり出ていますね。「地方財政運営の基本」というところで、第二条、第五条の二、それから第五条一項三号、こういうので私は具体的にできると思うのです。これに対する大臣の見解をお聞きしたい。
  174. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、地方団体の財政状況はきわめて心配すべき状況でございまして、地方債依存度につきましても先ほどパーセンテージを御指摘でございましたし、また公債比率も次第に高くなっておる、かような状況でございます。そこで、根本的には経済情勢が好転し、または地方税収の確保を図っていかなければならぬのでございますけれども、それは当面期待すべくもない状況でございます。  そこで、いま御指摘がございましたし、また具体的な提案がございましたように、建設国債につきましては、十年ものではございますけれども、それを数回借りかえまして六十年までは可能である、かようなことでございますが、地方債におきましても、公募債と縁故債とではもとより若干条件は違いますものの、非常に厳しい状況下におきまして借金をいたしております。佐藤委員は長い地方行政の経験をお持ちでございますから、その辺の御苦労のこともよく御承知のとおりでございます。ただ、金を借りまする力のある公共団体におきましては、十年ものではございましても、これを二回、三回借りかえをいたしまして、三十年程度のところもございますけれども、そうでないところは、利息も高うございますし、かつまた借りかえが非常に困難だ、かようなことでございます。が、しかし、そういう状況下におきましても地方財政を円滑に運営してまいらなければならぬのでありますから、そこで今回の大量の公共事業を消化するに当たりましては、借金をいたします力の弱い団体には優先的に政府資金を充当いたす。ことに市町村の公共事業の地方負担分につきましては全額を政府資金で充当いたす、かような処置もとっておるのでありまして、政府資金は御承知のように、長いものは三十年が可能でございますから、さような処置等もとってまいっておるのであります。  いま地方財政法の中の条章を御指摘になられまして、対応策をという、かようなことで御提案があったのでございますけれども、私ども、できるだけ条件のいいものを確保し得ますように今後も最大の指導努力をしてまいらなければならぬ、かように考えておるところであります。
  175. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それはわかります。たとえば政府資金だけではなくて、公庫資金はいま元金均等になっていますから、これもできれば元利均等にしてもらえば非常に助かると思いますが、ただそういうような利息操作だけではとても応じ切れないような大変莫大な量なんですよ。だから、その団体、団体を指導して長くすることを、一律に六十年にしろと言うのじゃないけれども、できるだけ緩和に応じてやる、こういう姿勢が必要ではないかと思います。長くしておいて、後でよくなったら繰り上げ償還させればいいのですから。何かそういう指導が必要じゃないかと思いますので、地方からそういうものが行けば、二年据え置きの八年償還しかまかりならぬというのじゃなくて、期限を延長するのに応ずるような意思はございますか。
  176. 加藤六月

    加藤国務大臣 私は、都道府県はまず、さほどの心配がないと思います。ただし、二、三の財政力の弱い県につきましては特別の指導をいたしておりますけれども、問題は市町村であって、ことに、財政規模の小さく弱い市町村が最大の問題であろうと思います。  そこで、そういう団体等に対しましては、都道府県が十分な指導をいたしておりまするし、また、自治省も、金融情報なるものを逐次地方にも流してまいりまして、地元の金融機関とネゴをいたします際の参考に資してまいる、かような処置もとっておるようなことでありますから、今後さような指導を強めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  177. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いわば、いま申し述べましたような非常に悪い条件のもとで、この至上命令である公共事業をこれから実行するわけです。  この地方財政計画の公共事業は、補助事業が七兆円、単独事業が五兆六千億、計十二兆六千億というふうになっております。しかも、国は補助金をつけ、裏負担は九五%を借金で見る、こういうふうに言っています。しかし、実際問題として、この補助事業には必ず超過負担がつくし、関連公共投資が必ずあります。したがって、補助事業をやれば、現在のこの疲弊した地方財政では、大幅な単独事業というものがなかなか消化できなくなるんじゃないかという気がします。  さらに、来年、五十四年度以降の財政を考えれば、なるべく自己財源をつぎ込みたくない、効率のよい補助事業をやることは当然でありますが。そこで、このままで行けば、単独事業が大幅に残ってしまうのじゃないかという感じがするのですよ。特に、去年から、五十二年度の公共事業が一三%ぐらい五十三年度に繰り越されるんじゃないかという話もあります。そういうことを考えますと、どうもこの単独事業の五兆六千億というものがかなりな量残ってしまう。そうすると七%に非常に大きな影響がありますが、この単独事業を、超過負担を余りかけないようにするとか、何かそういうような手だては考えていますか。
  178. 加藤六月

    加藤国務大臣 御指摘のように、五兆六千億円という大量の単独事業をやってもらおう、かような計画でございますが、そこで、私はこういうぐあいに思っておるのであります。公共事業を行いますと、たとえば道路の場合で考えてみますならば、公共で道路の改良をやっていく。そうしますと、それと関連いたします市町村道等で補助対象にならないものがあるのでありますから、そういうものに積極的につぎ込んでもらいたいと思うのでありますし、また、河川の改修にいたしましても、公共ベースに乗らないもの等がありましょうから、そういうところを積極的に取り組んでもらおう、かような考え方でございます。  が、しかし、公共事業の超過負担の解消には努めておりましても、なおかつ相当の超過負担が残っているのが事実でありまして、たとえば学校建築にいたしましても、基準を超えますものを地元で希望いたすと、当然これは、正確な意味における超過負担ではないまでも、地元負担にかかってくることは間違いがないのでありますから、さようなことを総合して考えてみますに、五兆六千億円という単独事業は、消化は大変だとは思いますものの、反面、私ども、地方団体の声を聞いていますと、こういう機会にこそ、単独でやりたくてもやれなかったものを、起債の充当率も高いし、積極的にやろうと、かような意欲も見えてきておるようなことでございますから、五十一年度の決算を見ますと、なるほど五%を超えますような繰り越しがございますけれども、私はまず、さほど大きな繰り越しはなしに結構消化できるのではないか、かような考え方を持っておるところであります。
  179. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 まあ、ある意味では、どうせことしは借金でも何でも金がいっぱいつくのだから、あしたのことばどうでもいい、困れば国がめんどう見てくれるのだから、やるだけやれという、半分やけのやんぱちみたいな考え方があることはあると思いますけれども、やはりそれにしても大き過ぎるので、そういう単独事業に対する配慮が必要じゃないか、こういうふうに思います。  それから、この地方財政計画の歳入の構造、この中で地方税を見ますと、私は実はこれを五十二年と五十三年を比較してみて、余りその差の大きいのにびっくりして、ちょっとピックアップしてきたのです。  たとえば代表的なものを挙げますと、法人事業税で、五十二年度では二四・二%、ところが五十三年度では、法人事業税はたったの〇・五%なんですよ。〇・五%なんですよ。これは、去年も不景気だと言った、ことしも不景気だと言った。二四・二%から、ただの〇・五%になるという、こういうあれが一体あるのか。  たとえば、住民税では、法人住民税であれしますと、二三・七%、五十二年度。ことしはゼロなんです。ゼロ。ゼロですよ。こんな、幾ら不景気になったかどうかわからぬけれども、余りにひど過ぎる。  私どもは去年、法人税の二四・二%は少し高過ぎないかと、こう言って非常に論議をしました。そうしたところが、絶対に高過ぎないと。たとえばここに例を引いて、森岡税務局長のあれがありますが、こういうことを言っておるのですよ。生産が伸びるから二四・二%というものは適切だと、こう言い切っているのです。去年は五・七%、ことしは七%でしょう。生産がもっと伸びると言っているのですよ。そうしたら、この数字が出てくるはずがないじゃないですか、〇%というものが。そこは一体どうです。私はこれを責める気はありませんが、余りにもでたらめ過ぎる。この予算全体、地方財政全体に対するところの、計画自体に対する不信感が出てくるのです。こんなでたらめでは。どうですか。
  180. 加藤六月

    加藤国務大臣 必要によりましては政府委員から答弁をさせたいと思うのでございますけれども、五十二年度の法人関係税の落ち込みがひどかったことは御承知のとおりでございます。そこで、法人事業税におきましても、また都道府県住民税におきましても市町村住民税におきましても、法人税が相当減収になるということが予想されまして、その金額は約一千三百億円、かように算定せざるを得なくなったのでございます。  そこで、五十二年度の地方財政計画を策定いたしました当時のベースから五十三年度を対比いたしますと、パーセンテージが、いま御指摘になりましたように、法人事業税において〇・五%、法人都道府県税におきましてはゼロ、法人市町村民税におきましては〇・六と、かようなパーセンテージになるのでございますけれども、しかし、五十三年度の計画を策定するに当たりましては、ちょうど一年前に策定いたしました当初ベースではございませんで、一千三百億円の減収が予想されるものをベースに算定をいたした、かようなことでございますから、それで補正してまいりますと、法人事業税におきましては五・三%の増、法人都道府県税におきましては三・四%の増、それから法人市町村民税におきましては四・〇%の増、かように相なると計算をいたしておるところであります。
  181. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 時間がないので、これを議論しているわけにはいきませんから、委員会でやりますけれども、これを見ますと、何か片一方では七%成長絶対大丈夫だと言うけれども、実際に出てきている数字は、七%できませんよという数字だと思うのですよ。非常に私はおかしいと思う。いまこれを議論している時間はありませんのでやめますが、いずれ委員会でまたやりたいと思います。  そこで、地方税の問題でひとつ大臣に要請がありますが、自民党では来年から医師優遇税を撤廃する、こういうふうにあれしていますね。きのう、私どもの池端議員が、本会議で福田総理に質問いたしました。それに対して福田総理は、五十三年度をもって医師優遇税を廃止するという議員立法に期待している、これに対して善処していきたい、こういうふうに言明しておるのです。ところが、この医師優遇税というものは決して国税だけではない、地方税にもあるのです。地方税にもこれがありまして、法人事業税それから個人の事業税、この二つで、医者は社会保険診療報酬に対しては一銭も事業税がかからぬのです。産婆さんも、それからマッサージも、みんなかかるのですよ。ところが、医師は、地方税法七十二条の十四の一項によって法人事業税、七十二条の十七のただし書きによって個人事業税、これが一〇〇%かからぬのです。所得税の場合の医師優遇税は七二%だから、二八%にはかかるのです。ところが、地方税はただの一銭もかからぬ、ゼロですよ。不公平といったらこんなに不公平なものはないのです。だから大臣、たとえば最後になって、来年から切り上げるでもいいのです。この国税の医師優遇税を撤廃すると同時に、そしてもしことしこの法案が出るならば、それと同時に地方税に対する医師優遇税を撤廃する意思はないか、このことをひとつお聞きしたい。
  182. 加藤六月

    加藤国務大臣 御指摘のように、社会保険診療報酬につきましての国税段階におきましての特別措置がありますと同時に、事業税につきましても、昭和二十七年に議員立法で事業税を課さないということに相なったまま今日に至っておりますことは、御承知のとおりでございます。そこで、国税段階におきましても慎重に検討がなされておるようでございますから、さような推移を見ながら、事業税につきましてもまた慎重な検討をいたしてまいりたい、かように考えているところであります。
  183. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 もう一遍お伺いしますが、それでは、もし所得税の医師優遇税が廃止される段階になれば、地方税も同じような措置をとりますか。
  184. 加藤六月

    加藤国務大臣 国税の特例措置の進捗状況とにらみ合わせながら、事業税についても検討を行ってまいりたい、かように考えているところであります。
  185. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 さらに、地方財政計画の問題についてお伺いします。  地方財政計画の五十二年度の三兆五百億の不足額、これは一応解決したように見えます。それで、これを見ますと、わずか千五百億の臨特と七千七百五十億の政府償還の交付金特会の借り入れ、そのほかは一兆三千五百億の地方債と七千七百五十億の特交特別会計の借り入れ、これでもって合計二兆一千二百五十億という膨大な借金が地方に転がり込んできておるのですね。二兆一千二百五十億、四分の三が借金として残ってきておるのです。  五十年度から始まった二分の一方式を今度はルール化するというのですが、このルール化を、交付税のアップにかわるりっぱな措置だ、こうして自治省は評価しておるようです。たとえば、ある新聞に載っておった首藤事務次官の話によると、去年は名を捨てて実を取った、ことしは名も実も両方取ったと言って手放しで喜んでおる、こういうふうに書いておるのですけれども、しかし、実際にこの不足額の二分の一は借金、残りの二分の一もまた借金、わずかに四分の一を国が負担して、あとは全部地方の借金なんです。この四分の一と引きかえにして交付税の率の引き上げ、この率の引き上げということに自治省がみずから足かせをかけてしまっている。これは、来年からは大蔵省に対して交付税率アップの引き上げ要求ができないのじゃないか、足かせをかけたんじゃないか、こういうふうな感じがするのですが、来年もまた、ここにおられる大蔵大臣に向かって、いつもと同じように交付税率を上げろと言って迫る強い意思がありますか。
  186. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、三兆五百億円を完全に充足いたします処置といたしまして、一部は起債に頼らざるを得ないし、一部は交付税特会の借入金と臨特によって賄う、かような処置をいたしたのでございます。  そこで、法第六条の三第二項によりますと、かような事態に対応いたします処置といたしましては、交付税率の引き上げか、行財政の制度改正を行え、かようなことでございますから、行財政の制度改正のいわゆるルール化、これを行うことにいたしたのでありますけれども、これで手放しでよかりたというぐあいに考えているわけではございませんで、私どもはやむを得ざる処置であった、かような理解をいたしておるのでございます。  そこで、交付税率の引き上げを行いますことが理想的ではございますけれども、最近の流動的な経済情勢下におきましては、恒久的な処置がとり得なかったのでございます。そこで、地方財政が好転いたしますか、あるいは中央、地方を通じましての税財源の再配分等をなるべく早い機会に行ってもらいたい、このことを期待をいたしておるのでございますけれども、国税三税の三二%が現行交付税制度であることは御承知のとおりでございますが、たとえば新税等が創設されます場合には、国税三税ではなく、その対象も広げてもらうことをも私ども期待をいたしておるのでございまして、交付税率の問題もそういう中において解決を図っていかなければならぬ、かように考えておるところであります。
  187. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その「当分の間」ということが、非常に問題なんです。「当分の間」は、いつまでも続く当分の間であると非常に困るし、たったいまやめる当分の間であれば、いま大臣の言ったことは納得できるのです。「当分の間」をルール化するということは、当分の間きわめて巨額な借金を地方がしょうということなんですよ。その当分が一体どのくらいの期間かというと、これまた非常におもしろい。この「当分の間」の解釈というのがいろいろなところで使われておるのですね。いまちょっと申し上げますけれども、たとえばこういうことですね。一月六日の自治新報に首藤事務次官の「当分の間」の解釈が載っておるのですね。これによりますと、「当分の間」とは「国なら赤字国債を発行しなくてもよい時期、地方団体なら赤字債の発行や交付税特別会計の借入をしなくてもよいようになるまでの間ということだ」こういうふうに書いてある。  ところが、これを見て私はおかしいなと思った。自治省のいままで言っていることは、よくなれば直すと言っている。ところが、よくなれば直す必要はないのですよ。悪いからこそ直さなければいけない。いいときは直す必要がないし、悪くなればよくなるまで待てと言っているんじゃないですか、あなた方は。よくなっても悪くなっても直さないということじゃないですか。それは現実にいままでそういう状態をたどってきているのですよ。これはたったいまの問題じゃないのです。  それから、こういう問題もある。同じく本に載っておりますが、これは津田地方債課長の話が「地方財政」という本に載っておる。「当分の間」という言葉は、「常識的意味として受けとられる暫定的ということでなく、法律的には要するに不確定の期限を意味しておる。時間的に短かくなくてはならないという意ではない」と言っているのですよ。この意味は一体どういうことか、私は後で聞こうと思っているのですが、そうすると「当分の間」というのは一日ないし永久にということですか。不確定なんです。不確定ということはそうでしょう。日にち単位で見れば一日ないし永久ですよ。不確定なんというのはつかみどころがないですよ。  こういうようなことを重ね合わせて考えてみますと、地方債でいう「当分の間」と今回のルール化でいう「当分の間」と、この二つ重ね合わせてみなさい。今後永久に交付税や財源の再配分というのは改正を行わないということになってしまうじゃないですか。実際行っていない。どんな悪いときでも、ちょっと地方債をやって借金さしてごまかしてしまっている。そして、根本的な改正を一いままで何遍地方財政の危機があっても、必ず何かちょっとあめを与えておいてごまかして、いままでずるずると来ているのですよ。まさに、この「当分の間」ということは永久だ、半永久的なことであると言っても私は過言ではない、こういうふうに考えるのです。どうですか。
  188. 加藤六月

    加藤国務大臣 「当分の間」とは文字どおり当分の間ではございますけれども、私どもの判断いたしておりますのは、地方財政が好転いたしますとかような当分の間の措置が要らなくなるのでありますから、ただし、今明年中に急速に好転し得るとは考えられないのでありますけれども、しかし、いま一つの行財政制度の基本的な改正は近い機会に考えられると思うのでありますから、「当分の間」とは、私は、地方財政が好転いたします場合と、いま一つは行財政制度の基本的な改正が行われるまでの間、かような理解をいたしておるところであります。
  189. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そう言うのですよ。もう必ずそう言う。たとえば税金のことを考えてみるとよくわかるのです。増税の問題を考えますと、財政が大丈夫なときは増税しなくてもいいのですよ。ところが、不況になって金がなくなって、増税したいときには、国民も貧乏だから増税できないのですよ。だから、いいときも悪いときも、無理にやらなければ増税できないということになるでしょう。同じなんですよ。国と地方の制度の改廃なり財源の配分も同じなんだ。いいときはやる必要はないのです。ところが、よくなればやると言ったって、よくなれば必ずあなた方はやりませんよ。悪いからやらなければいけない。その悪いときは、よくなったらやりましょうと言う。やるときがないじゃないですか。これは冗談じゃないのですよ。本当にいままであなた方はそうやってきたんだ。だから、どんなときだって何にも絶対に直そうとしない。このところが非常に大きな問題だ、私はこういうふうに思いますよ。  私はちょっとあれを申し上げますが、たとえば、いつでも自治省では、国と地方の制度を改めて、それによって財源を配分してと、こう言っているのです。大蔵省とけんかするときはそう言うのです。ところが地方の方に向くと、今度は全然反対なことを言う。ジキルとハイドみたいなんだ。今度は中央統制みたいな、非常に地方を締めることを言うのですよ。  たとえば、ここに「地方税」のことしの一月号に森岡税務局長が書いている話がある。これを見て私は感心しました。こういうふうに書いてあるのです。「第一に問題となるのは、国と地方を通ずる行政の執行体制の改革の問題である。現在の行政は、権限、財源、情報のすべてが中央各省庁に集中しすぎており、このため行政運営の弾力性、機動性が失われ、地域社会の多様な要請に対して行政が適切妥当な対応をなし得ない結果を招いている。」そのとおりなんです。第二番目は「国民経済や国民生活の中で行政の果たすべき役割ないしは責任分野についての見直しを行い、行政の肥大化現象を抑止」しなければならない、これもこのとおりなんです。第三は「国と地方との間の税源配分を改めることである。現行の税源配分は国に偏りすぎており、その結果、地方行政は国の広範囲にわたる補助金行政のかさの下におかれている。このため、地方財政は著しく中央依存型の財政構造となってしまっており、地方における行政の執行体制は、自主、自律の精神を基調とし、自らの責任において行政を執行するという体制からはほど遠いものとなっている。」だからこの際「行政権限を思い切って地方に分散、委譲するとともに地方に対する税源の付与を手厚く」しなければならない、こう書いてあるのです。まことにいいことが書いてあるのですよ。ところが、これは恐らく地方向けじゃないのですよ。大蔵省に向けるときは、こうしなければいかぬから、これは金をよこせと言ってけんかでも吹っかける道具なんです。今度は、たとえば森岡税務局長でも地方債課長でも財政局長でもいいですよ、地方に行くとどういうとこになるか。われわれは長年、地方債の認可制というものをやめろと言っている。ところが、とても地方は信用できないから、こんなのはやめられないと言ってがんばっているのですよ。ここに書いてあることと全く反対のことを地方に行くと言っているのです。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕 大蔵省に行くとこんないいことを言って金を持ってきて、その金を配分するときには今度大蔵省と同じようなかっこうになって、中央統制を非常に強く主張しているのですよ。本当に地方のためにこうしなければいけない、地方分権をはっきりやらなければいけないという自治省の本当に心の底からの強い意思がない限りは、何ぼあなた方、こういうものを書いたって直らないですよ。私は根本的に言うと、自治省は本当に地方の方を向いていない、ここのところに、何年たってもよくならない根本原因があると思う。  私は昭和二十六年に市長をやっておりました。そのときは何にも金がなくて非常に貧乏で困りました。しかし、戦後の大変混乱のときで、国も戦争に負けたんだから仕方がないんだろうと思ってがまんしてきた。ところがいまはどうです。いまこんなに膨大な借金をしょって困っているときどうしているかというと、高度経済成長から低成長に変わってきているときだからがまんしなさいと言って、いま丸め込まれている。ところが、それでは高度経済成長のとき地方は金持ちであったかというと、相変わらず大貧乏なんですよ。経済成長や金のあるなしにかかわらず、いつでも地方団体というのは貧乏なんですよ。なぜかというと、金の問題じゃなくて制度論が先に来なければいけない。国と地方の制度というものをしっかりと責任を持って行政を分割しなければいかぬ。そして責任を持ったところに責任ある金をつけて、責任ある行政をやらせなければいかぬ。これをやらない間は絶対に地方は貧乏なんです。金の取り合いで一は国の方がずっと力が強いのですよ。地方は弱い。金の取り合いをしたら必ず負けますよ。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 だから、私はずっと長いこと考えて、いまの混乱の時期を考えてみますと、これは、財源論じゃなくて、制度論が先に行かなければいけない、こういうふうに思います。本当に地方のことを考えて、地方分権という根本的な態度に自治省が徹しなければ、何ぼやったってだめだ、私はこういう感じを強く持っているのです。  あと、まだ、かなり論じることがありますけれども、これは地方行政委員会で改めてもっと細かくお願いしたいと思います。きょうはこれでやめておきます。どうもありがとうございました。
  190. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 この際、金子みつ君より関連質疑の申し出があります。佐藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。金子みつ君。
  191. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、きょうは大きな二つの項目に分けてお尋ねしたいと思います。政府の御見解をいただきたいと思います。  その一つは、昨年の十一月二十二日、参議院の社会労働委員会におきまして渡辺前厚生大臣がお示しになった医療保険制度改革の抜本的考え方、十四項目あるわけですけれども、この十四項目というものが、小沢厚生大臣にかわりました今日でも変更があるかないかということについて、まず小沢厚生大臣のお考えを明確にしていただきたいと思います。
  192. 小沢辰男

    小沢国務大臣 変わりはございません。
  193. 金子みつ

    金子(み)委員 なぜそんなお尋ねをしたかと申し上げますと、小沢厚生大臣は、大臣に就任されてその後さるところにお出かけになったときに、厚生行政を担当するに当たって、自分は前の大臣とは違った姿勢で臨みたいというふうにお話しになったということを承っております。そこで私どもといたしましては、肝心な問題で大変心配になったわけでございますので、いまの件をお尋ねしたわけでございます。  同じ問題で、関連のことでございますが、この十四項目を見てみますと、そのうちの八項目、一と三と八と九と十と十二と十三と十四ですが、これらは五十三年度以降やっていくというふうに書いてあるわけですね。抜本改正は五十三年度にするというのは初めの厚生省の御方針でありましたけれども、今度一年延びまして五十四年度というふうになっているわけですね。そうしますと、五十三年、五十四年というのが抜本改正を実現させるときだというふうに理解できるわけです。そうすると、ことしは五十三年でございますから、今年度から抜本改正は具体的に手がけていかれる、こういうふうに私どもは理解したいのですが、それでよろしいでしょうか。と申しますのは、いままで何遍も抜本改正をやると国はおっしゃいました。もう私どもも耳にたこぐらいに伺いました。しかし、いかにも実際が伴っておりませんで、かけ声ばかりでした。でありますから、具体性のないかけ声はもう聞く必要はないと思うのであります。小沢厚生大臣は今度総理の信任厚くして厚生大臣になられたとも漏れ承っておりますから、その信任にこたえるためにも、国民の信用にこたえるためにも、五十三年から具体的に実施の方向に向かってお進みになる決意がおありになるかどうか、はっきり伺わせていただきたい。
  194. 小沢辰男

    小沢国務大臣 今国会中には私どもは抜本改正の成案を得まして、国会で御審議を願おうと考えております。ただ、御承知のとおり、内容の中には相当準備を要する点もあると思います。いま成案を得つつあるわけでございますが、そういたしますと、その施行の時期については、たとえば国会で御成立をいただいた、直ちに公布の日からというようなことをできるものとできないものとございますので、そういう意味で、一部は準備期間を置いて来年度から実施するものもありますし、一部は今年度から直ちに実施できるものもある、こういうことでございまして、渡辺大臣が十四項目にわたりまして国会にお約束をいたしました五十三年度からと申し上げました内容については、必ず実施、実行していきたいと思っております。実は、あの中で五十三年度と書いてありますけれども、もうすでに今度の医療費の改定をめぐって実行に移したものもあるわけでございますので、逐次実現をいたしてまいります。できるだけ早く抜本改正の成案を得て御審議をいただきたいと考えておるわけでございます。
  195. 金子みつ

    金子(み)委員 いま大臣御答弁なさいましたように、そのものの中には今回行われました医療費の改定によって歩き始めたものがあるというふうにおっしゃったわけでございますが、二月に改定されました医療費、この改定から逐次入りたいとおっしゃっておられた項目は別にあるわけですね。第五、第六、第七がその項目になっております。ですから別枠に仕立ててあるわけでございますから、必ずしもいまの御答弁が的確だというふうにも考えられません。  そこでお尋ねしたいのですけれども、二月一日の医療費の改定ですが、これによって逐次直していきたいというふうに言われたものの中の一つですが、いま一番問題になっておりますいわゆる保険外負担、自己負担になっております差額ベッドでありますとか付き添い看護でありますとかという問題がございます。これらは二月一日の改定によってどれだけ改善できるというお見通しがあるのでしょうか。
  196. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、だれが見ても不合理だと思われる差額ベッドや付き添いの強制ということは、どうしてもこの診療報酬改定を機にしましてなくしていきたいと考えて、強い決意で臨んでいるわけでございます。  詳しい点につきましては、局長からお答えいたします。
  197. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お答え申し上げます。  今回二月一日から診療報酬の改定が行われたわけでございますが、厳しい状況の中の診療報酬の改定であるというようなことで、一つの大きな問題といたしましては保険外負担の問題の解決ということで、保険外負担の大きな問題といたしまして、第一に室料差額の問題、それから第二に看護の問題、それから第三に歯科差額の問題、この三点につきましての解決というものを中心にしたわけでございます。  ただ、従来からもこの差額問題の解消につきましては通達等で指導はいたしておったわけでございますけれども、現実問題といたしまして、こういうような差額がある程度行われている実態の背景には、医療機関の経営問題もある。したがって、今回の診療報酬の改定の際に、この経営問題を解決するということに重点を置いたわけでございます。  そういうような意味におきまして、室料等の問題につきましては、入院料の室料の引き上げを行うとか、あるいはICU、CCU等につきましての費用について新たな点数設定を行うというよううなことで、さらに手術料の大幅な引き上げを行うということで、入院関係については二〇%の引き上げを行っております。  さらに基準看護におきましても、平均しまして看護料の一七%の引き上げを行う。あるいは歯科差額の問題につきましても、一番基本になります根管治療等について六〇%の技術料の引き上げを行うというようなことによりまして、保険外負担の解決のための条件づくりなり基盤整備を行うということを実施いたしたわけでございます。  そういうようなことによりまして、差額ベッドにつきましては従来の通達につきましてさらに再度通達を流しますとともに、少なくとも三人以上の大部屋からは取らないようにという指導を徹底して行いたい。それから基準看護病院につきましても、特に新たに二類についての特別の措置を設ける等もございましたので、基準看護病院におきまして付き添いを患者の意思によらないで強要されるという場合には、基準看護の取り消しも行うというようなことで指導の徹底を期してまいりたい。  それから歯科差額の問題につきましては、前歯につきましての材料差額をまず実施するというような措置をとっておる次第でございます。
  198. 金子みつ

    金子(み)委員 いまいろいろと言われたのですけれども、果たしてそれで解決がつくかどうかということは大変に疑問が残ると思うのです。たとえば、これは保険局の課長さんのお話ですけれども、今回の引き上げで室料を千円にしても室料差額が解消できるかどうかという批判をいただきましたが、私たちは今回の改定に際して室料をただ上げただけで室料差額の問題が解決するとは思っておりませんと、厚生省側でもそういう返事をしていらっしゃるのですから、今度は室料差額も上げられたし、いろんなものが上げられておりますけれども、果たして解決するかどうかということは大変大きな疑問が残るわけです。  せんだって自治体病院あたりからもいろいろと調査をして聞いてみましたら、今回の入院に関しては二〇%の値上げで何ができたかといったら、物件費のスライドをされた分がこれで何とかカバーできたのと、人件費がややカバーされたということだけであって、従来の室料あるいは付き添い看護に関して、このことが改善さるという保証は何もないからいままでと余り変わらぬだろう、こういうお返事をいただいておりますので、それでは一体何のために医療費を値上げしたのかなというふうに、その値上げの厚生省の方針と実態とが非常に大きく食い違っているということがわかるわけです。いま厚生省は、これで今度はできると思っていらっしゃるようでありますが、この点は非常に甘いと私は思うのです。  それからいま局長が言われましたが、新しく通達を出し直しをしたというお話です。その出し直された通達も拝見してみましたが、前回四十九年三月二十九日に同様趣旨の通達がすでに出されておりますけれども、いままでちっとも守られていなかった。だから今日こういう問題が起こったわけです。今度の通達では厳重にするとおっしゃっていますけれども、果たして本当に厳重に厳格に行う決意がおありなのかどうか。通達を出したからいいのだということでは、いままでとちっとも変わらないと思うのです。  それで、三床以上の部屋にはベッドの差額はつけてはならないという通達が出ております。国公立病院は一〇%、私立病院は二〇%まではよろしいと言っておりますけれども、しかし肝心の厚生省が所管して運営しておられる国立病院においてすら、基準看護特二類を持っておられる病院ですら、付き添い看護を個人負担でつけているという実態があります。ですから、こういうことを考えますと、これで通達を出したからよろしい、これだけ医療費を値上げしたから大丈夫だ、こういうふうにお考えになるのは私は少し食い違ってくるのではないかと思いますが、この点について大臣どんなふうにお考えになりますか。
  199. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、今度の医療費の改定で直ちにこれが全部やめになるとは考えておりません。正直に言いまして、全部これがやめになるかどうか。おっしゃるように、差額ベッドの点を全国平均で見ますと、病院収入全体の約四%でございます。四%くらいのものでございますので、まあ九・六%、病院は一〇・八上がっているわけでございますが、これが全部今度の医療費改定で解消できるか。四%、マクロで見ますとこれは全部やめてもいいようになるだけの、入院料あるいは手術料その他いろいろの点を見ますと、私はそう思うのですけれども、ミクロで見た場合、それぞれの病院の実態等を見ますと、保険の今回の点数値上げだけでこの問題が一切解消するというような経営実態であるかどうかという点を考えてみますと、私は全廃できるというようなことをここで申し上げる自信はないのです。しかし相当の改善が行われることは私は事実だろうと思うのです。それはただ一片の通達だけでなくて、それぞれ病院ごとに、グループごとに経営の責任者と懇談会をやっております。まず一番ひどいと言われました私立医大の付属病院の関係者の方々と会いまして、今度はひとつ協力をしてくれ、協力しましょうということでいろいろいまスタートをいたしました。さらに国立病院、療養所については、当然これは徹底をしていかなければなりません。ただ御承知のとおり、看護婦さんの定数やあるいは労働条件との問題等もございますので、したがって、本来看護業務でないもの、いわゆる療養に関する世話と書いてある以外のものについて、患者の希望があるにもかかわらず一切付き添いを認めないというわけにはいかないと思うのです。この点は専門家でいらっしゃる金子委員もよく御承知のとおりだと思うのです。そういう点もありますし、それからやはり勤務体制の問題になりますと、病院側、使用者側とそれから看護婦さんなり労働側との団体交渉等もいろいろありますので、病院によってはいろいろの関係でなかなか思うようにいかないという点もございます。そういう実態がございますので、これは保険だけの制度で全廃をするというわけにいかぬだろう。したがって、私としてはよく努力をしながら実態をつかんでみて、どこに隘路があるのか、その隘路の解決のために国がどういうことをやったらいいのか、こういう点を十分突き詰めていきまして、そしてこの完全解消にまで持っていくように努力したい、こう思っているわけでございます。
  200. 金子みつ

    金子(み)委員 いま大臣は四%という数字をお出しになったのですが、私ども一は別の数字を持っております。しかしいまそのことを議論していると時間がなくなりますので委員会に譲りたいと考えております。  そこでいま大臣がいろいろと、すぐには保険だけではできない理由をお述べになっていらっしゃいますが、そのこともまた議論する余地がたくさん残っていると思うのです。しかしこの時間には省きまして、次の機会に譲りたいと思いますが、ただ一つお願いしておきたいと思いますことがございますのは、いますぐできていないことは、この二月の改定からですからよくわかっております。そこで半年後と申しますと、ちょうど厚生省は来年度の予算を編成なさる時期だと思いますが、来年度の予算編成をなさる前に、その半年の間にどれくらい成果が上がったかどうかという報告をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  201. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それは可能だと思いますので、逐次その実績についてはできるだけ資料を集めまして、私どもつかんでおきたいと思いますから、半年後にその実施状況等について報告を求められた場合には、御提出できると思います。
  202. 金子みつ

    金子(み)委員 では、医療保険問題はそれくらいにいたしまして、次の問題に入りたいと思います。  その次の問題として厚生大臣の御所見をいただきたいと思っていますことは、今度五十三年度の予算の中で厚生省が目玉政策だとして大変大々的に報道もなさり、計画もお進めになったと承っております国民の健康づくり構想というのがございます。この国民の健康づくり構想の問題でありますが、前回、社会労働委員会で羽生田議員が質問しておられましたけれども、国民の健康づくり構想の中で栄養が大事だと盛んにおっしゃっていらしたのを聞いております。栄養も大事だと思いますけれども、栄養だけではできないし、体育の問題も挙げていらっしゃいましたが、体育だけでも健康をつくることはできない。また、個人の自主的な責任で自分の健康を守れという今度の大方針がこの構想の中にございます。それも確かにございますけれども、それだけではできないのがいまの状態でございます。要するに、総合保健指導を軸とした健康管理の体制が公的に組織的に行われなければこれは実現できないと思うわけでございます。そこで、この健康づくりの構想に関してですが、その考え方とその将来性にいささか私は疑問を持つところがございます。そこで、それらについて解明していただければ非常にありがたいと思うわけでございます。  まず、五十三年度予算で二百億円余りの予算を計上してつくられたこの構想でありますが、一番大きな金も使っておるし、そして中心的存在として構想の中に入れられたものが、市町村保健センターの設置ということです。これは健康相談とか保健指導だとかいうような住民の日常生活に密着した頻度の高い対人保健サービスを提供するのだというのが目的でつくられたようでございまして、そのことを実際に可能にさせるためには、十年間に三千二百五十六カ所、すなわち全市町村にこれを設置する、そしてそこは保健婦の活動の拠点とするのであるから保健婦を常駐させるのだ、こういうふうに私は理解いたしておりますが、その活動のために保健婦の身分を一元化する必要がある、保健婦は、保健所の保健婦、国保あるいは県の保健婦の市町村駐在などいろいろございますが、その身分を一元化する必要があるということで、まず国保の保健婦を市町村の保健婦に移管させた。言葉をかえれば国保の特別会計で賄われていた保健婦を市町村一般会計へ移す、こういうことになるのだと思いますが、これは地方交付税を使うのじゃなくて、従来どおり保健所保健婦などと同じように三分の一の国庫補助をつけたその裏づけを持って市町村へ移管させる、こういう計画をお立てになったものだと理解しておりますが、この前段、間違いございませんでしょうか。
  203. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、国民健康保険に所属しております保健婦を市町村の方へ移しまして、それにつきましては三分の一の国庫補助、それから交付税でその裏を見る、そういう考え方でございます。
  204. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。  それでは続いて、五十三年度の予算にのってきたこの構想でございますけれども、このことは、予算を編成する前年度すなわち昨年、厚生省の中で急遽考案されたものではないようでございますね。そうではなくて、いまから五、六年前になりますが、昭和四十七年に保健所問題懇談会というところが厚生省に対してその報告を出しておりますが、その基調報告の中にこのことがすでにうたわれておることを承知いたしております。それからまた、その後昭和五十一年に厚生省が自民党の医療問題調査会に提出なさった地域保健対策要綱案、この中にも具体的にそのことが示されております。ですから、それらを踏まえて考えてみますと、この国民の健康づくりという構想は、ただ単に既存の保健施設を持っていない市町村に保健施設設置しようという単純な考え方のものではないというふうに考えられるわけです。本音はそうじゃなくて、保健所の再編成あるいは保健所合理化に結びつくものだというふうに私どもは理解できるのですが、これは間違っているでしょうか。
  205. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは非常に基本的な重要な問題ですから私からお答えしますが、毛頭そういうような考えはございません。私はむしろ保健所の機能というものは強化をする必要があると思っておる一人でございますので、いまの先生のような御懸念はひとつ払拭していただくようにお願いをしたい。そういう考えを毛頭持っておりません。
  206. 金子みつ

    金子(み)委員 その問題はもう少し先に行ってからもう一度議論したいと思います。  そこで、いま国保の保健婦が市町村に身分を移管されるわけでありますが、移管される保健婦たちが非常に不安に思っていることがあります。それは何かと申しますと、五十二年の七月五日に、厚生省の保険課長の内簡でしょうか、都道府県の保険主管課長にお出しになった国民健康保険保健婦の活動に関する指針があるわけです。この指針に基づいて仕事をしなさい、こういう指針が出たわけでありますけれども、今度は身分が移管されて市町村の保健婦に全面的になりました場合には、この指針にプラスされて市町村衛生業務が加えられるのではないかということを非常に心配いたしております。そのことは大変ごく自然に、常識的に考えられることなのでございますけれども、これをもし一緒にするようなことになりました場合に、保健婦活動は非常に乱されることになるのでありますが、その点についてはどのような指導をしておいでになるのでしょうか。その指導についてはどこにも明らかにされていないのです。
  207. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、確かに国民健康保険の方に所属しておりました保健婦が身分といいますか、配置がえといいますか、市町村の衛生関係の方に配置がえをしていただくというふうに私ども予定しているわけでございます。ただ、いま先生がおっしゃいました市町村の衛生事務というところの中身が問題でございまして、私どもは衛生関係の方に移っていただいた暁にはやはり保健婦は保健婦としての仕事をしていただきたいわけで、たとえばいろいろな事務的な仕事をするとか単なる補助的なことをやる、そういうことはいささかも予定しておりません。と申しますのは、私どももそうでありますが、市町村段階におきましても保健婦が保健婦としての能力を十分発揮していただくことが本来最も望ましいわけでございますので、そういう保健婦本来の仕事を衛生関係でやっていただく。なぜ衛生関係かということはもう先生御存じかと思いますが、保険、民生、衛生関係でいろいろ流れが違うことでそご、行き違いがあるというようなことがいままでずいぶんございまして、やはり衛生関係で一本に衛生関係の仕事をしていただくのが最も望ましい、こういうふうに考えたわけでございます。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 金子みつ

    金子(み)委員 御答弁としては必ずそういう御答弁があるだろうと予想しておりました。おっしゃるとおりで、私はそれがそのままいけば本当に結構だと思うのです。しかし、実際問題としてはそうなっていかないのじゃないかという懸念がありますから申し上げたのでございまして、局長がそんなふうに本当に考え、本当にそうしようと思っておいでになるのでしたら、具体的にどういう方法をとってそのことを実現させるように御努力をなさいますでしょう。
  209. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 お答え申し上げます。  先日、私ども衛生部長の会合を持ちましたときにもただいま申し上げたような趣旨のことを申し上げましたし、また、課長会議を行いましたときもそのようなことを申し上げました。さらに今後、従来先生承知のように、保険局あるいは公衆衛生局連名でいろいろ通達が出ておりますが、改めて通達をつくり直しまして、この機会に先生のおっしゃったようなこともはっきりさせまして、そういった御懸念のあるような行動が起こらないようにということを期したいと思っております。
  210. 金子みつ

    金子(み)委員 通達でやればいい、こういうことかもしれませんけれども、その通達なるものが地方へおりましたときにどれくらい尊重されて実現されているかということは、大変に実際問題としてはここでは言いにくいぐらいの実態があるわけです。ですから、通達ではだめじゃないかと言いたいところですけれども、通達だけではだめじゃないかという言い方をしたいと思うのです。そうしてその通達の出し方も、前回出ていたのは局長と課長の通達でございましたね。しかし、同じ通達をお出しになるなら、局長は権威がないなんて申し上げるつもりはございませんけれども、もう少し権威のあると申しますか、通達が通達として生きるような形の通達をお出しいただきたいというわけなんですけれども、そういうお見込みがございますかどうか。これからお考えになるということになるかもしれませんが、それはぜひお願いしておきたいと思うわけでございます。  それから、続いて次に市町村保健センターの問題で伺いたいことがあります。これは全国市町村すべてに設置するという御方針ですが、政令市はどうでしょう。それはどうなさいますか。するかしないかだけで結構です。
  211. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 お答え申し上げます。  一部試行的にやってみたいというふうに考えております。
  212. 金子みつ

    金子(み)委員 そうすると、一部試行的ということになりますと、これはここでいまお尋ねしても回答をいただけないと思いますので、先に行ってからにしたいと思いますが、政令市に置くということになりますと、保健所と市町村センターとが同じところに置かれるというかっこうに実際問題としてはなるわけですね。そういう形も出てくるかと思いますが、そういう場合にどういう動き方をするのかということは後の問題になりますので、いまはそれを伺っただけにいたしておきます。  そこで、この市町村保健センターでありますが、五十三年度には予算上百カ所の設置が認められているにすぎないわけでありますけれども、まずお尋ねしたいと思いますのは、三千二百五十六カ所設置しなければならないのに初年度百カ所ということになりますと、十年間ということでありますから、単純な算術計算をやっても、初年度には三百カ所はどうしてもつくる形にしておかないと三千全部はできないのじゃないか、これは大変単純な算術計算だけですけれども、そういうふうに考えられますが、なぜ百カ所で遠慮なすったのですか、大蔵大臣もいらっしゃいますから後で伺いますけれども。
  213. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、市町村三千二百の中に、金子委員も御承知のとおり母子健康センターがあったり、あるいは健康増進センターがありましたりいろいろございますので、そういうところは強いていまこの保健センターを同じようにつくる必要がありませんから、そういう施設を活用して対人保健サービスをやっていく、そこで大体二千五百ぐらいじゃなかろうかといま思っております。したがって、そうしますと、百カ所ずつなら二十五年かかるじゃないか、こう言われると思いますが、そうじゃなくて、初年度でございますので百カ所で一応とどめたわけでございまして、これをやはり毎年どんどん増加していきまして、全市町村にそうした対人保健サービスが地域的に十分行き届くような施設を必ず十年以内に普及していきたい、こういう考えでございます。  それから、先ほどちょっと政令市のことがございましたが、これは御懸念のような、保健所があるのに保健センターをつくってという御趣旨だろうと思うのですが、政令市の中でも大きな政令市になりますと、保健所と一〇〇%同じ機能でなくてもいいが、もう一つ保健所をつくりたいという希望等もある地域がございます。当然、相当広範囲な地域、広い大きな人口を持つ政令市になりますと、そういうことがございますので、そういうようなときには、原則としては政令市で保健所のあるところはやりません。それから、政令市以外でも保健所所在地はやらないわけでありますけれども、そういうような特殊な事情のあるところはやはりやっていかなければ、地域的な対人保健サービスがきめ細かくできませんから、そういう意味で先ほど局長は、例外的には認めていくというお話をしたわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  214. 金子みつ

    金子(み)委員 最初の年だから百カ所でがまんして、遠慮して、これからだんだんとふやしていくのだというお話でございましたが、しかし大変でございますよ。ほかの似たようなセンターは、いろいろな種類がありますけれども、約手五百と厚生省の方から教えていただきました。そうすると残り千七百、半分いってないわけですよ。それをあと全部つくっていかなければならないとなりますと、毎年大体二百ぐらいつくらなければならないのですが、どんどんつくっていく方針であると厚生大臣はおっしゃるのですが、大蔵大臣、いかがでございましょう、協力していただけますか。
  215. 村山達雄

    ○村山国務大臣 保健所と保健センターの調整問題、ずいぶん問題になったのでございますが、厚生省の方でいまのような計画でやっていくということでありますので、今後十分協議してやってまいりたいと思っております。
  216. 金子みつ

    金子(み)委員 ぜひお願いいたします。  続いて、もう一つの問題をお尋ねしたいと思います。  それは、この保健センターに保健婦を常駐させるということが計画に載っているわけでございますが、そのために保健婦の増員要求を五十三年度に三百名余りされたわけですね。ところが実際には、これはまた大変に残念なことに、大蔵省からおしかりをいただいたのかどうか知りませんが、四十五名に査定されちゃった。三百名が四十五名です。そしてそこへもってきて、さらに定員削減にひっかかりましてこれが三十七名となりましたから、差し引き八名になっちゃったわけですね。これが実態なんです。そうするとこの大構想は、十年間という大変長い計画をしていらっしゃるわけで、気が長いと思うのですけれども、それは百歩譲るといたしましても、それにしても全市町村に置こうというのに初年度にわずか百カ所、しかもそこに常駐させようと思っている保健婦がわずか八名、これでは本当にやれるのかしらんというふうに思うわけです。アドバルーンだけ上げて、看板倒れになるのじゃないかなという心配があるのですけれども、大丈夫でしょうか、本気でなさるおつもりでしょうか、厚生大臣
  217. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全国でいま保健婦の数が、国保並びにその他の市町村が持っております保健婦さん全体を含めまして、私どもは六千五百ぐらいあるだろうと見ております。したがって、百カ所の保健センターについて、保健婦を国保から衛生部系統に移して、本当の保健サービスができるようにする体制をとるわけでございますから、十分可能だと考えております。ただ、八名だけでこれをやるという考え方ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  218. 金子みつ

    金子(み)委員 それはそうだろうと思います。ただ私は、ここでそれをやっていますと時間がかかるわけですけれども、それならなぜ初めに三百名以上も予算要求をなさったのか、話が食い違うじゃないかというふうに思うわけです。国保の保健婦を市町村に移管して、それを全部活用するのだという考えだったのだろうとは思ったのですよ。これは五千名ほどおりますが、しかし国保の保健婦は全市町村におりません。国保の保健婦のいない市町村の数というのを教えていただきましたら、七百三十五カ所あるということを厚生省から報告いただきました。ですから、いないところは優先的に置かなければならぬでしょうから、国保の保健婦を全部活用するというわけにはいかないというふうに思います。ですから、保健婦の増員はぜひ必要だというふうに思うわけなんですが、これが八名しかとれなかったということについて、これはなせこんなに小さく削られたのか、三百名ぐらいの要求をしたのを四十五名に落としちゃったということですが、大蔵大臣、御答弁いただけますか。これは余り重要でないからその程度でいいじゃないかということですか。
  219. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 最初確かに三百幾らという要求をいたしたわけでございますが、それは実は市町村保健センターの数を百二十六ということで要求をいたしました。それで、その一カ所当たり二・八人ということで、それを掛け合わせますと約三百二十数名になろうかと思います。そういうことで要求いたしたわけでございますが、現実問題として、保健センターを今度つくる場合に、すべていままで保健婦が全然未設置のところへ建てていくということではないというのが実態でございますので、現在保健婦がおりながら、しかも活躍の場としてそういうところが欲しいというところがむしろ優先的に出てくるであろう、こういうふうに考えたわけでございまして、そういうことから、その予算の要求の形式につきまして必ずしも適切でない、こういうふうに判断いたしまして、全体的なバランスとして、先ほど先生から御指摘いただきました、その程度のところへということで一応おさめたわけでございます。
  220. 金子みつ

    金子(み)委員 わかったような気もしますが、はっきりわかりません。  そこで、お願いがあります。何かこうすっきりしないものですから。何か計画を持っていらっしゃって進めていらっしゃるように思います。それは当然のことだと思うのですが、今度の分が十年計画になっているわけですから、御構想がおありになるはずなんです。その十年間の計画というものが。ですから、その青写真なり計画なりができていらっしゃるのでしたらお示しいただきたい。もしできてないのだったらば、どうしてこう十年間でするという構想をお立てになったのかは実に不思議だと思うわけです。
  221. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 まことに申し上げにくいのでございますが、それほど確固たる計画は持っておりません。そういうことでございますので、最初十年間ということで打ち出したのも、まあ腰だめ的な意味で十年間と、こう申したわけでございます。それですから、最終的な予算編成に当たりまして、百というものを一つの目安という形で置いたわけでございます。そうして、現実にそれぞれの市町村の動きがどうなっていくだろうかということを私ども十分見きわめてはっきりさせたい、こういうふうに考えております。
  222. 金子みつ

    金子(み)委員 やっぱり何もないわけですね。困りました。大変困りました。十年間という大変幅の広い期間をお立てになっていますから、十年の間にはいろいろな社会的な情勢が変わりますから、十年前に立てたものを最後まで押し通すというようなことはあり得ないと思いますし、途中で変わるのは当然のことだと思いますから、そのことは認めるにやぶさかではありませんが、最初にこの構想をお立てになるときに、何もなしで十年と踏んだと、大変正直にいま局長はおっしゃったのですが、大変私も不思議に思います。  しかし、このことだけをいまここで議論できませんので、不思議に思っているままでこの問題は保留させていただきます。  そこで、この問題に関連があるのですけれども、保健所の問題を少し伺いたいと思うのです。  今度の方針によりますと、保健所における対人保健サービスは市町村に移管させるのであるということでございますね。そうすると、市町村に対人保健サービスを落としていく、落とすという言葉は悪いかもしれませんが、移管していくということになりますと、まず考えられることは、その対人保健サービスを担当していた保健婦、これも一緒に市町村に移管されていくということを、常識的にごく自然に考えるわけでございます。だからこそ八人の増でもできるのではないかというふうに勘ぐりたくなるわけです。八人しかもらえなかったけれども、大丈夫だ、国保の保健婦もいれば保健所の保健婦もいるわいということなんじゃないかしらと想像がつくのでありますが、その点をひとつ伺いたいのです。  これは、そういう構想が厚生省からお出しになった資料の中に何にもないかというと、実はそうではないのですね。保健所問題懇談会の基調報告の中にはこのことは載っております。だから、保健所問題懇談会の基調報告を土台にしてお立てになった今度の構想だとすれば当然入ってくる考え方だと思いますが、それ以外に、先ほど申し上げた国保保健婦の活動指針をお出しになった、特に保険局の方ですけれども、この指針の中に別紙としてついているのですね。その中に「保健所保健婦の市町村保健婦への身分移管を促進すること」というふうになっておりますと、どうしても、これはそうじゃないと幾ら厚生省がおっしゃっても、やはりそうなのかというふうになってくるのです。この辺をどうしてもはっきりさせていただきたいのですけれども、これはどうでしょうね、いかがでございますか、大臣
  223. 小沢辰男

    小沢国務大臣 まず基本的な考え方を私から申し上げて、細部については担当局長から申し上げますが、保健所を保健センターに切りかえていくようなつもりはないのです。対人保健サービスの中で、地域に密着した頻度の高いサービスについてはやはり保健センターの方がよかろう。で、保健所の方は非常に広域的な機能を持っておりますので、したがって保健所はそれに対する技術や指導の問題をいたしましたり、あるいはまた広域的にまたがるような問題を処理しましたり、そういう保健所の機能と保健センターの機能というのはそれぞれ別個に考えておりまして、保健所の充実は充実として進めていく、こういうことでございますから、誤解をしないようにしていただきたいと思います。  なお、細かい点で御質疑があれば局長からお答えいたします。
  224. 金子みつ

    金子(み)委員 誤解しないでくれとおっしゃいましたが、誤解かどうかちょっと疑問だと思うのです。  それでは一つ申し上げるのですけれども、最近保健所の運営が大変変わってきました。大臣が考えていらっしゃるような保健所と違ってきたかもしれません。一つ二つその例を申し上げてみますが、そのもとにこういうのがございます。社会、産業構造の変化に伴って過疎、過密、公害問題など、保健所に対する要請は多種多様になってきました。昔と違ってきたわけですね。ですから現行の保健所がそれらに対応しなければならなくなったのですけれども、対応し切れなくなったという分析もあるわけでございます。そういう分析に立ちますと、日本医師会が言っておりますようないわゆる包括医療体系の中で保健所の改革を考えていくべきであるという考えが出てきているわけですね。その考えに基づいて今度の保健センターの構想も生まれたのだと私どもは考えているわけでございます。  そこで、ある県の保健所ですが、「母子保健事業を中心に市町村へ業務が移され、四六年から保健婦駐在所をターミナル(医療保健情報収集所)の一つとして、全県に網をはるME広域医療システムの検討と実施が着手されました。」そして、保健婦は何をしているかと申しましたら、「診療所や駐在所におかれた携帯用モニターテレビを持参して訪問し、「保健婦による医療活動の充実が図られ、医師の機能を保健婦が代行できる」」と言って、得々と学会に報告しておられるわけですね。こういうかっこうになってしまっている。  あるいはまた、ほかの県でも、「保健所業務が市町村に移されつつありますが、同時に、県立保健所二一を一三に統廃合し、」このようにいたしております。その結果、「保健婦は情報の集め屋になり、コンピューターに振りまわされる」というような形になりつつあるという報告があるわけでございます。こういうようなことを一方で見まして、実際に保健所がどうしているかと言えば、いま対人事業、対人サービスですね、対人サービスであるところのいろいろな事業を民間の団体に移していっている。委託している。委託という言葉はいい言葉なんですが、押しつけているか任せているかわかりませんが、たとえばがん検診の問題なんかは対ガン協会、結核の問題は結核予防会、あるいは成人病の問題は成人病センター、そして各種衛生検査に関するものは検査センターをつくってそちらへ回すというふうなぐあいに、要するに保健所によるサービスというものをだんだん減らしてきて、そして何をしているかといいましたら、さっき申し上げましたような広域医療システムの実施を図っていこうというふうになっているように見受けられます。  戦後一貫して財政と人員の問題で保健所は弱体化してまいりました。このことは事実でございますから大臣も御存じだと思いますが、だんだんとそうなってきた保健所が、先ほど来何遍もお話が出ますように、身近な、そして頻度の高いというような言葉が使われて、そういう理由で、いま保健センターにその本質が乗りかえられるようなかっこうになっている。大臣は先ほど移り変わろうとしているのではないとおっしゃいましたけれども、実態としては、保健所の中の大部分の、と申しますか、保健の本来の機能である対人保健サービスはなくなっていこうとしているわけですよ。保健センターに切りかわっていこうというふうになっている。こういうふうな実態があるということをお認めにならなければいけないのじゃないかと思うのです。だから公衆衛生学会の保健所問題委員会なんかでもこんな中途半端な、健康診断のスクリーニングもできないような保健センターじゃなくて、同じ移行させるのなら市町村に保健所の機能を持たせたらどうかという意見も出ています。もちろん財政的な援助をした上でですけれども。そうすれば、スクリーニングだけでなくて本格的な身近な頻度の高い健康管理が可能になるのじゃないかというふうなことも言われているようでございます。そんなようなことをいろいろと考えてまいりますと、どうも保健所が弱体化され、形骸化されてきたような感じがいたします。  そこで、てこ入れをして、保健所を強化拡充するということが必要なのじゃないか。せっかくつくられようとしているこの保健センターですが、これの指導をどこがするのかというのは問題なんです。いまの状態では、保健所には指導、援助の能力がない。今度の構想を拝見いたしますと、保健センターの指導につきましては地区保健推進協議会というものをつくって、それが運営をやっていくのだということでありますが、この推進協議会というのはいろいろな人たちが入って協議会をつくるらしいのですけれども、中心的な指導的な役割りを持つのが包括医療の名のもとに営利医療をやっておられる医師会のようでございます。そういたしますと、その枠の中で地域保健活動をしていかなければならないようなかっこうになりますから、言葉をかえれば保健所は医師会の下請機関みたいになるし、保健婦は民間医療機関の手足にさせられてしまって、本当に住民が要求している、ニードに応じた保健活動というものはなくなってしまうのではないだろうかという心配をするわけです。そこで、そういうようなことにならないために、そうさせてはならないために、ぜひともここでしなければならないのは、公衆衛生の公共性を失わないためにも、保健所の充実強化ということだと思うのですが、保健所の充実強化に対してはどんな考えをお持ちでいらっしゃいますか。充実強化をなさるおつもりですか、どうですか。
  225. 小沢辰男

    小沢国務大臣 金子委員はさすがに専門家でいらっしゃいますから、いろいろな問題点を指摘されまして、まさに私どもはそういう点をいろいろと、保健所の機能と保健センターの機能、つながりのあり方、これは十分よく検討を進めてまいらなければいかぬ点でございまして、いやしくもそこに混乱の起きないようにしていかなければならない。私は、保健所はやはり公衆衛生のあくまでも中心的な存在として地域全体の保健サービスというものに徹底をしていかなければならぬと思います。  ただ最近は、御承知のとおりいろいろな社会的、経済的な変化によりまして仕事はふえてまいっておりまして、そのためにいわゆる保健所本来の目的の保健サービスというものが、時間的にもあるいは人員的にもあるいは予算的にも、だんだん縮小の傾向にあることは事実だろうと思うのです。私、着任しましてから、保健所の機能というものを本来の原点に立ち返ってもう一遍よく検討し直してみて、そしてうんとこれを充実する意味の対策を今後考えていかなければいけないというふうに考えております。したがってこれから、保健所の最近の機能等をもう一度全部洗ってみて、これでいいのか、あるいはどういう点が不足なのか、もっと保健所の本来的な機能を発揮せしめるためにはどうしたらいいかということを真剣にひとつ検討していきたい、そして保健所はあくまでも縮小でなくて充実の方向でやっていきたいと考えておりますから、御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  226. 金子みつ

    金子(み)委員 大変にいい答弁をいただいたわけでございます。それをそのとおり、額面どおり受けとめて、そしてそれが実現できるものだと信じたいと思っているわけでありますが、保健所を拡充強化するにつけましても、何よりもやはりこれは人も必要でありますし、それから運営の経費も必要になってくるわけでありまして、直ちにこれは予算にはね返ってくる問題だと思います。  そこで、大蔵大臣、いまの厚生大臣の構想でありますが、これをぜひ力強くバックアップをしてくだすって、そして予算を削るなどということのないように、厚生省が出してきた予算は認めるという方針で進めていただきませんと、国民の健康が守られない、大臣も含めて国民の健康が守られないということになる可能性も起こってまいりますので、その点をぜひお願いしたいと思いますが、御決意を伺わせてください。
  227. 村山達雄

    ○村山国務大臣 健康の問題は最も大事な問題でございますし、厚生省が真剣に取り組んでいる問題でございますので、今後引き続き厚生省と十分協議して、そして善処してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  228. 金子みつ

    金子(み)委員 お二人の大臣から大変にいい御答弁を最後にいただきましたので、来年度の予算編成をなさるときにそのことが実現できるかどうかというのを、私たちははっきりと見せていただきたいと思いまして、厳しくその点を見せていただきたいというふうに考えているわけでございます。  細かい問題もまだいろいろございますが、時間がございませんので、きょうはここで失礼させていただきますが、国民の健康が大事ですからと簡単に口に皆さんおっしゃるのですけれども、本当に健康が大事だと考えてやっていらっしゃるかどうかというのは、その動きには決して見られない。その点を大変残念に思いますが、憲法二十五条に約束してある国の責任と義務ということを忘れないでいただきたい。国民の生きる権利だけは大変強く主張されていますけれども、その生きていくための国の責任と義務というものを必ず果たしていただけますように強く要望いたしまして、終わりたいと思います。
  229. 中野四郎

    中野委員長 これにて佐藤君、金子君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木強君。
  230. 鈴木強

    鈴木(強)委員 私は、お許しをいただきましたので、最初に服部郵政大臣砂田文部大臣にお尋ねをしたいと思います。  モスコーのオリンピック大会の放送権の問題についてでございますが、御承知のとおり次期モスコー・オリンピック大会はあと二年後の一九八〇年七月十九日から八月三日までの十六日間、モスコーで開催されることに決まっております。  ところで、この大会の放送権の問題につきましては、すでに昨年の三月、日本の場合はテレビ朝日とモスコー・オリンピック組織委員会との間で契約が成立しています。まだ放送権料が幾らになるのか明らかにされておりませんことは非常に残念です。  そこで、特に問題になっておりますのは、わが国におきましては、従来放送権の問題につきましては、NHKと民放各社とが相談をいたしまして、およそNHKが代表者となりまして開催国の組織委員会との間で契約を締結して、円満に放送してまいっておるのでございます。前回のモントリオールの場合もこの例にならっております。  ところが、今回の放送権の確保につきましては、この方法によらず、テレビ朝日が単独で契約をいたしましたために、今日、テレビ朝日と、NHK、その他の民放との間で、多少これは、全部とは言いませんが、トラブルが出ておりまして、険悪な様相を呈していると言えましょう。  私は、今日まで両者の意見もお聞きしまして、民族の祭典であり、四年に一度開かれますオリンピック大会の状況が、わが国のすべてのテレビ、ラジオを通じてすべての国民がこれを見聞きすることができますよう、両者がよく話し合いをされて、国民の期待にこたえられるよう強く望むがゆえに、いろいろとアドバイスもしてまいったのでございます。しかし、いまだに解決点が見出されず、多くの国民はどうなることかと不安な気持ちで見守っているのが実情だと思います。きょうはNHKの坂本会長、民放連の小林会長、テレビ朝日の高野社長にもおいでいただきたかったのでございますが、都合でそれができませんことを残念に思います。  そこで、私は服部郵政大臣にお尋ねしますが、この件につきましては、前郵政大臣小宮山さんからもお話を聞いておられると思います。大臣はこのトラブっております放送権の問題について、どういうようにして解決をされ、国民の期待に沿おうとしているのか、その御所信を承りたい。
  231. 服部安司

    ○服部国務大臣 お答えいたします。  まず、お答えする前に一言御了解を得ておきたいのでありますが、答弁の内容は余りにも事務的、官僚的ではないかというおしかりを受けるかもしれません。また、かゆい足をくつの上からかくような答弁をするなというおしかりを受けるかもしれませんけれども、事ほどさように、いま非常に微妙な問題でありまして、私は、性格的に言うならばずばりと答えたい気持ちも十二分にあるわけでありますけれども、先生専門家で御承知のとおりに、法律で、ある程度放送権の規制というものもございますし、どうぞこの点ひとつまず御理解を願っておきたいと存じます。  オリンピック競技は民族の祭典であり、国民大多数の大きな関心を有する行事であることは申すまでもございません。その放送につきまして、いま御指摘のとおりに、いろいろと問題があるやに私も仄聞いたしております。ただ、その放送権の契約の経緯については、残念ながら私はつまびらかではございません。ただいま御指摘のとおりに、前大臣からもいろいろと引き継ぎのときにもある程度お話を聞くことができました。ただ私は、結論から申しますと、どの地域に住む国民も、すべての国民がこの民族の祭典である、国際的な行事であるオリンピックを十二分に満喫する状態に持ってまいりたいということが、心から念願をいたしているところでございます。ただ、劈頭におわび申し上げたとおりに、放送事業者が自主的に措置すべきものでありまして、できれば各社が自主的に話し合いの上、放送を実施するのが最も望ましいところでございますが、この問題に関する放送事業者の話し合いで解決のあっせんなどを求められた場合には、私は喜んでこの問題と取り組みたい、かように考えておりますので、どうぞこの点いま少し事態を見守ってまいりたいと考えておりますので、御理解を願いたいと存じます。
  232. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大臣はおわびらしいことも言いましたけれども、現行の法制下における大臣の権限、それから放送法上の報道の自由、これは憲法も加わりますが、そういう点から、確かに慎重な態度で臨まれることはわかりますが、いまあなたのおっしゃった中に、少なくともNHKもございますね。公共放送です。仮にこのオリンピックの大会の状況が全国にあまねく放送できないということになれば、恐らく放送の存亡にかかわることになると私は思うんですよ。これは、民放も同じですよ。したがって、これは決して放送番組に介入するとかなんとかということではなくて、政治的にとらえて、われわれは国民の代表として、われわれも党派を乗り越えてこの解決に当たりたいと思いますが、大臣もそういう意味において、余りかた苦しい権限なんかにとらわれないで、大胆に勇気を持って、われわれと一緒に解決に努力してほしい、こういうことを私はお願いするわけです。
  233. 服部安司

    ○服部国務大臣 お答えいたします。  全く同感でございまして、モスクワ・オリンピック開催の時点には、御指摘どおり、すべての国民が十二分にごらんいただけるように、私は最善の努力を払うことをはっきりとお約束いたします。
  234. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そこで、文部大臣一つ私は提案をして、御協力をお願いしたいのでございますが、いま申し述べましたように、放送権の問題につきましては、IOCの規約によりまして、開催国の組織委員会と、それから他の国の一社との間で契約を結ぶ。結んだ社は、この放送権は独占ですから、したがってこういう問題が出てくるわけでございます。日本では清川さんがたしかIOCの理事としてお出になっていると思いますので、できますれば大臣に、今後のことでございますが、適当な時期にこの規約の改正をお願いしたいと思うのです。というのは、やはり複数局がある国におきましては、どうしてもこういう問題が出てきますから、複数局の放送事業者があるときには、あらかじめ相談をして、代表を立てて、それと相手国の組織委員会で結ぶとか、そして結んだものは今後当然公平にやられるわけですね。もしいまのような形で契約がなされるとするならば、その場合には、規約によって契約を結んで放送権を獲得した事業者は、必ずこの国の他の放送事業者にも公平に電波が使えるようにやるべきであるというようなことを、委員会の規約の中で改正していただいておけば、私は問題がないと思います。単数局の国では問題ありませんけれども、わが国のように公共放送、民放五社、キー局がございますような国では、どうしてもこういう問題が出てきますので、ぜひひとつ文部大臣に御努力をいただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  235. 砂田重民

    砂田国務大臣 まさに民族の祭典でありますオリンピック、できるだけ大ぜいの国民の皆さんが、放送を通じて見てくださることが望ましい、この点は、全く同感でございます。  ただ、いまIOCの規約変更のお話がございました。大変残念なお答えをしなければなりませんけれども、IOCというものは、ノンガバメンタル・オーガニゼーションと申しますか、いろいろな規約を持っておりまして、非政府的と申しますか、非行政的と申しますか、私どもが、日本政府がIOCに規約のことについて何か話しかける、働きかけるということ自体が、またIOCの規約違反になるわけでございます。そして、清川さんなどのお話がございました。IOCは規約の中で明確にしておりますことは、たとえば清川さんは日本オリンピック委員会から出ているのではなくて、IOCが任命したIOC委員であって、日本代表ではないということも明確にIOCはいたしておりまして、世界じゅうのどこの国の政府でもが働きかけることができない、こういう規約もIOCが持っておるものでございますから、いますぐ政府自身がIOCにその規約の改正について働きかける立場にございません。ただ、重要なことでありますので、重大な関心を持ってまいりますということしか、この段階ではお答えができないのでございます。
  236. 鈴木強

    鈴木(強)委員 政府の答弁というのは、大体そんなものですね。私は、大臣のおっしゃることは全部知っています。ノンガバメントであることも知っています。そんなことは百も承知ですが、清川さんがたまたま日本の国民の中から出ておられるわけですから、いろいろな機会を通じて――もっともじゃないですか、この私の意見は。間違っていることならあれですけれども、どこの国へ行ったって、実情を話せばよくわかってくれることですから、大臣も一機会あるごとにそういう話をしていただいて、清川さんがそういうような提言をする。たまたま日本におるわけですから、そういうことをしていただきたいということを申し上げたわけですから、どうぞその点、よろしくお願いします。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕
  237. 砂田重民

    砂田国務大臣 IOC規約の変更について政府が何かの働きかけをという御質問でございまして、それはIOCの規約からして、できませんということをお答えをいたしました。重大な関心を持っておりますことは、政府立場からも、私個人としても当然のことでありますから、そういう話は、またいずれ場所を改めてお話ができるかと思います。
  238. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、次に、放送大学の創設について、砂田文部大臣にお尋ねします。  教育の機会均等、生涯教育、学歴偏重の是正という大きな文教政策の使命を果たすために、放送大学を創設しようという構想が話題になりまして、もう十年の歳月が流れております。この間に十二億円の国費を使いまして準備を進めてまいっておるのでございますが、大学がすがるところのテレビチャンネル、ラジオは、すでに郵政大臣の方で確保していただいておるのでございます。ところが、どうもわれわれ見ておりますと、基本計画が決まったように思うのですが、それがまたずるずると一年ごとに延びていってしまって、ことしも何だかへんちくりんな放送大学開発センターというようなものを、国立大学の設置法まで変えてやろうとする動きがある。これは社会教育審議会が当初から御検討を賜り、最終的に、財団法人、要するに特殊法人で行くという、この方針と相反するものだと私は思う。さっぱりどうなっているかわかりませんから、最初にその概況を説明していただきたいのでございます。
  239. 砂田重民

    砂田国務大臣 お答えいたします。  放送大学の概況をまずお答えをいたします。  昭和四十四年にその調査検討に着手をしてまいりました。四十六年度からは予算措置を講じてまいりました。これまでの間に放送大学の基本計画の取りまとめ、実験放送の実施、教育課程の編成、教務事務の電算化方式の開発、用地の調査設置基準の検討等の準備を行ってまいりました。五十二年度には創設準備室を省内に置きまして、準備室長に広島大学の前学長の飯島教授を迎えまして、特に教育課程について具体的な検討を推進してまいりました。  しかしながら、放送大学構想につきましては、もう鈴木委員承知のとおりに、放送法との関係がございまして、検討すべき課題がございますので、五十三年度におきましては、放送利用の大学教育に関する研究開発を推進いたしますとともに、放送大学の準備を兼ねてやろう、こういう目的をもちまして、新たに放送教育開発センターを創設することとしたわけでございます。  このセンターは、放送利用の大学教育にかかわります授業科目の編成、放送教育の実験番組の制作及びそれの放送、放送利用の大学公開議座の実施等の事業を行うことにいたしておりますが、これらの活動を通じまして、放送大学の準備がなお一層進められることになるわけでございます。放送大学創設の具体的な目途につきましては、今後におきます諸般の情勢を考慮いたしまして、積極的に検討をいたしてまいる決意でございます。
  240. 鈴木強

    鈴木(強)委員 いま私、ちょっと質問の中で述べましたが、まず経営主体ですね、これは特殊法人でなければならぬと私は思っているのですね。いろいろ検討いたしましたが、国営になりますと、放送法上の問題が出てまいります。したがって、特殊法人が一番いいということでございます。この開発センターというものができましたが、これは要するに官制ですね、設置法の改正になるわけですから。ですから、これが放送大学を今後運営する法人として設立をせよといったものにすりかわった、こう理解されるわけですね。だけれども、私はそうでないと思うんですね。ですから、何か政府の方針で特殊法人はつくっていかないというようなことから、皆さんの計画が、これは大蔵大臣の方で削られてしまって、また昨年と同じような形になったと思うんですね。ですから私の聞きたいのは、経営主体というのは、あくまでも特殊法人で行くのかどうなのか、この辺をはっきりしてもらいたい。そして開発センターというのは、とりあえずの準備室的なものであるという解釈でいいかどうかですね。
  241. 砂田重民

    砂田国務大臣 従来の放送大学構想では、放送大学がみずから放送を行いますために、放送の実施主体、大学の設置主体となるものは特殊法人である、特殊法人の新設でいこう、こういうことで来たわけでございます。そこはもう先生の御指摘のとおりでございます。  しかしながら、特殊法人の新設ということは行政改革の基本的な考え方ともかかわり合ってまいりましたことも、また現実問題としてそういう壁にぶつかったわけでございます。特殊法人が大学の設置主体となりますことは、やはり従来にない新しい方式でもありますので、放送大学の設置主体のあり方につきましては、今後放送法との関係をも含みまして諸般の情勢を考慮しながら積極的に対処をしていく、こういう決意でいるわけでございます。  なお、センターが放送大学にすりかわったわけでは毛頭ございません。放送大学が何らかの形で公式にスタートをいたしました場合に、このセンターをその中に取り入れるか、またあるいは公私立大学の放送講座等にこのセンターが役立っていくか、それはいま少し時期を待ってから検討させていただきたい。すりかわったことでないことだけは明確にお答えしておきます。
  242. 鈴木強

    鈴木(強)委員 その点は安心をしました。  そこで、これは一般質問ですから総理もいらっしゃらないしするので残念ですけれども、特殊法人の設立について政府がお決めになっている方針は、今日たくさんの特殊法人がございます。その中にはもう大体使命を終わってなくしてもいいようなやつもありますね、そういうものをどんどんと廃止したらいいでしょう。また、統合できるものは統合して国費の節約に資することは私も大賛成。しかし、必要なものをやらぬというのはどういうわけですか、これは。私はこれは必要だと思うのですよ。必要なものに金を使うことは、国民は何も文句を言いませんよ。そういう選別をしてもらわないと、一律に何でもかんでも反対だというのは、つくらないんだというその考え方も私にはわからないのですよ。ですから、もう少し大臣がんばって、この放送大学の必要性、十年以上慎重に検討してきて、いまや国民が待望しているんだ。周波数は全部郵政大臣がとってくれている。にもかかわらず、ことしはいいぞと思えばまた来年、五十四年学生受け入れ、今度は五十五年、いつになったら一体これが理想的な設立の目的に沿ってスタートしてくれるのかということを皆さん不満に思っていますよ。だから、そういう点はひとつ大いにがんばっていただいて、将来はこの特殊法人として設立をされ、そして大学が設立をされ、学生の受け入れる時期を決めていく、こういうふうに私は理解して、いまの大臣の答弁を了承しておきます。  そこで、やはり心配されるのは、この教育ということになりますと、NHKの第三チャンネル、教育放送もございます。当初から、この問題との関連もずいぶん論議をしてきましたが、問題は十チャンネルを見てもそうですし、十二チャンネルの科学放送もそうでしょう。いつの間にか、これが教育放送、科学放送が姿を消しちゃって、総合放送になっているのですよ。こんなばかなことは私はない。こういう点を考えると、これからの経営主体と同時に、この運営をどうしていくかということをちゃんとしておかないと、またこの二の舞をすると私は思うのでございます。  そこで、いま想定されておる全体の建設費、こういったものはどの程度になっているのか。それから、今後の運営は一部国費、そしてもちろん授業料といいますか、聴講料といいますか、こういうものを取られると思うのですが、その点は大臣、どうなっているのですか。
  243. 砂田重民

    砂田国務大臣 放送大学の具体的な財源措置につきましては、今後財政当局とも当然協議しながら検討することになるわけでございますけれども、大学創設のための資本的経費等は別といたしまして、大学運営のための経費については、学生として登録された者に応分の負担を求めていくことになると思います。  それは五十年の十二月に取りまとめられました「放送大学の基本計画に関する報告」におきましても、「放送大学は、放送その他の媒体によってすべての国民に広く高等教育の機会を開くものであるから、大学創設のための資本的投資及び放送内容の制作とその伝達その他の一般的な経常費は、すべて公費負担とする。また、大学の研究活動についても、同様とする。」「学生として登録され、単位又は資格の取得を目標として学習する人々のために必要な経費は、学生の負担とする。」そう報告でも明らかにされておりまして、この趣旨で私どもは進めてまいりたい、かように考えております。
  244. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、時間がありませんので大臣、放送を開始する場合、その放送のエリアですね。何か東京タワーから電波を発射して、それがカバレージできる範囲内からスタートしていこうというようなお考え方のようです。ですから、これは当初はやむを得ないでしょう。しかし、少なくとも特殊法人としてスタートするからには、一日も早く全国カバレージができるように御配慮をいただかなければなりません。そういう意味から東京タワーに続いて大阪、名古屋地区、こうやっていくのでございましょうが、そういうものが何年計画くらいで全国カバレージをしていこうとしているのか、これが一つですね。  それから、卒業した場合の資格、それから教育課程、カリキュラムの問題を含めましてこういう問題。それから、放送衛星が打ち上がります。したがって、これの利用ということも当然考えなければなりません。これが利用されますと全国放送の場合には非常に私は便益だと思いますから、こういう点では非常に希望を持っていいと思います。ですから、そういうものもどうしていくのか。  それから、イギリスのオープンユニバーシティー方式でなくて、独自のカリキュラムをつくり教程をつくって番組を作成していくという方法でございますから、大変なことだと思いますよ。ですから、技術者その他の職員をどの程度ここに雇って理想的な放送ができるようにするのか、そういう点もわれわれとしては知りたいわけです。  それから、どうしたってこれは将来NHKとか民放等とかの御協力もいただかなければならぬことも出てくると思いますから、これは郵政大臣とも十分御相談の上で、またいろいろとやっていただきたいと思いますが、そういったふうな点をひとつ後ほど資料としてぜひお出しをいただきますようにお願いしておきますが、いかがでしょう。
  245. 砂田重民

    砂田国務大臣 大変幅の広い御質問でございますので、後ほど資料としてお出しをいたします。
  246. 鈴木強

    鈴木(強)委員 ちょうどいい機会ですから、私が聞きたいことがあったものですから、ひとつ文部大臣に、お尋ねしたいのですが、実は未熟児網膜症児というのがございまして、いま全国でも相当の数がおると思いますが、この子供たちが四月の入学期を迎えて、親たちはぜひ普通学校へ入れたい、こう願っておるのですが、なかなかそれぞれの県教育委員会等ではその願いを入れてくれない。トラブルが出ております。私の選挙区の山梨などにおきましても三名おりますが、三名とも普通学校に入りたいという子供さんと親御さんの願いがありますが、県教委の方ではこれはだめだというので、盲学校への就学通知を出しているのですね。ところが、これを父兄は拒否しているわけですよ。一体どうするのか。これは文部省としても県教委に任すというのが原則かもしれませんけれども、何か御配慮していただかないと困ったことだと私思っているものですから、ちょっとお尋ねしたかったのです。
  247. 砂田重民

    砂田国務大臣 未熟児網膜症が原因であろうと、あるいは他の御病気が原因であろうと、不幸にしてそういう障害を持っておられるお子様のことですが、それはやはり障害程度と申しますか、それによって就学指導に当たります委員会あるいは最終的な決定をいたします教育委員会等で個々のケースとして判断をなさるべきだと思うのです。  ただ、障害程度がある程度軽いものでございましたならば、弱視特殊学級というようなものも一般学校にもあるわけでございますから、そういうところへお通いになれば、友だちもたくさんできるでしょうし、いいかと思うのですが、     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 視力が全く衰えてしまっておられるお子様などは、一般学校に行かれるよりも盲学校へお通いになった方が、点字のことも専門的に御勉強できるでしょうし、器材等もそろってもおりますし、専門家先生もついていることでございますから、そのお子様のためにはどちらが幸せであるかという立場から、私は専門家委員会なり教育委員会なりが個々のケースとして御決定になるべき筋合いのもの、かように考えます。
  248. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。全国的な実態がどうなっておりますか私よくわかりませんですけれども、ある県教委の方では普通学校に入学を認めたということも聞いておりますけれども、その実態はわかりますか。
  249. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 未熟児網膜症が原因で完全失明した、あるいは視力が衰えた子供さんが盲学校の中で何%いるかというような原因別の調査が実はございませんものですから、私のところでは正確につかんでおりません。  ただ、一般的な専門家の話等を聞きますと、大体全盲の子供さんの五%ぐらいじゃなかろうか、推定でございますが、そういう調査はございます。
  250. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで普通学校に入ったものはわかりますか。
  251. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 普通学校に全盲あるいは非常に視力の弱い子供で入っているというケースがあるのかないのか、あればどのくらいか、これも調査はございません。  ただ、そういうケースがまれにあるということは聞いております。その場合は、これはそういう障害のある子供さんを普通の学校へ入れるわけですから、本人なり、あるいは父兄のそれに協力する態度、あるいは受け入れる学校側の校長、教員等の協力体制というものが完全にできませんと、やはりうまく教育はできないわけでございますので、一般論としてそういうことを私どもは進めるというわけにはいかないのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  252. 鈴木強

    鈴木(強)委員 だけど、それは文部省としてどんなものでしょうね。未熟児網膜症がどのくらいおるか、その実態をつかんでおらない、またどこの県で普通学校へ入ったか、それをつかんでおらぬというのは、ちょっといただけませんね。組織を持っておられるのですから。そのために皆さんはお仕事をされているのでしょう。われわれが真剣に考えておるのですから、われわれ以上に行政の府に携わる皆さんは真剣にやってほしいと私は思います。答弁できないということは非常に遺憾ですが、してないならこれは仕方ありませんから、速やかにひとつ、組織を持っている文部省ですから、総動員して可及的に調査して、別途教えてもらいたいと思います。いいですか。
  253. 砂田重民

    砂田国務大臣 調査をいたします。また、障害程度等についても調査をいたします。
  254. 鈴木強

    鈴木(強)委員 もう一つ学校図書館法のことでちょっと伺っておきたいのです。  せっかくこれは議員立法でできまして、もう二十四年たっているのですけれども、ちっともこの法律の内容が生かされておらぬ。山梨県の場合なんかは、司書教諭が一人もおらぬのです。事務職の方々も、たとえばこれは例でございますが、中小学校は三百三十ありますが、図書館司書というのですか、そういうふうな名前をつけてやっているのが百二校あります。このうちで公費負担が五十四校、残り四十八校はPTAの負担ということで、身分保障はされておりませんし、給料も平均六万円ぐらいしかもらっていないですね。これはどうかと私は思いますので、速やかにこの法律の改正をしてもらいたい。第五条の精神を否定するような附則がありますが、もうこれは二十四年たっているのですから、「当分の間」とは一体何年なのか、その辺をひとつ答えていただいて、速やかに改正してもらいたい。せっかくの議員立法が、死んだとは言わないですけれども、効果をあらわしていませんから、これは議員立法ですから粗末にしないようにしてもらいたいです。
  255. 砂田重民

    砂田国務大臣 議員立法でできました法律になかなか追いついていない実情はもう鈴木委員指摘のとおりでございます。いままで教員定数、児童自然増による定員増、法律に基づく定員増、それに応対することに手いっぱいになっていたという言いわけ程度しか、率直に申し上げてお答えする種を持っておりません。ひとつこれは検討させていただきたいと思います。
  256. 鈴木強

    鈴木(強)委員 ぜひその効果が出まして図書館法の立法の趣旨に沿いますように、一段の大臣の御協力をお願いいたします。  次に通産大臣にお尋ねしたいのでございますが、郵政大臣にもちょっと関連をしてお尋ねします。  特定電子工業及び特定機械工業振興臨時措置法というのがございます。これは通称機電法と言っておりますが、本年三月三十一日で失効になるわけです。そこで通産省の方では、これにかわるものかどうかわかりませんけれども、機械情報産業高度化促進臨時措置法、通称機構法案と言っておるようでありますが、この法案を今回国会に提案するということで御準備を進めておるようでございます。私はまだ内容をよく見ておりませんが、非常に重要な問題がございます。この法案の定義に、機械情報産業というのは、機械を製造する事業と情報処理サービス業及びソフトウエアの事業というふうに規定しようとしておるようでございます。もちろん機械を製造する事業については何ら異議がございませんが、情報処理サービス業とソフトウエア業の場合、非常にこれは私は問題があると思うのでございます。したがって、もしこういうふうな内容だとすれば、私どもは絶対に賛成できません。むしろこれは絶対反対しなければならぬという立場にあるのでございます。  この点につきましては、昭和四十五年五月二十二日に公布されました情報処理振興事業協会等に関する法律、この審議の際にも大変論議になりまして、私も当時参議院におりましてその論議に加わりましたが、結局結論として、通産省の事務次官と郵政省の事務次官との間で覚書を結んでいただきまして、一応この問題に対する決着をつけたはずでございます。にもかかわらず、こういう覚書に反する立法をしようとするようなことを私は聞きましたものですから非常に心配をいたしまして、たまたま河本通産大臣は郵政大臣の御経験もあるわけですから、私以上にその実態は御理解いただいておりますので、よもやこの覚書に反するような筋の違った法案をお決めになって国会に提案するとは私は思いませんけれども、念のためにこの点についてひとつ大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  257. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しの機電法は三月で期限が切れますので、あとそれにかわるべき法律を用意しなければなりませんので、いま準備中でございます。御指摘の点につきましてはいま郵政省と調整中でございます。
  258. 鈴木強

    鈴木(強)委員 郵政大臣、オンラインによるデータ通信はあなたが主務大臣として監督指導されておるわけです。日本のデータ通信というものは、スタートが遅かったものですから多少のジグザグがございますが、私はかなりいい線で伸びていると思うのですが、現状はどうなのか、もう一つは今後の見通し、こういう点についてぜひひとつ聞かしてほしいのです。
  259. 服部安司

    ○服部国務大臣 お答えいたします。  御承知のとおりデータ通信が始められましたのは昭和四十六年からでありまして、この間数年経過したわけでありまするが、現在では民間と電電公社のサービスを合わせまして、昨年の調査ではおよそ八百五十億円程度の売上高を達成するまでに発展しております。このような状態でいろいろと外国のこういった情報も収集いたしておりまするが、将来に大きな期待をかけていま大いに努力を続けている状態でございます。
  260. 鈴木強

    鈴木(強)委員 通産大臣、この情報処理振興事業協会等に関する法律ですね、この法律ができましてから日本のコンピューター産業は、かなり財政的な援助も得まして、IBMに負けないだけのいろいろな勉強もしていただいておりますし、最近も大型コンピューターについてもりっぱなものをつくっていただいたわけでございますが、わが国は、そういう政府の支援もあって、とにかくIBMに対して堂々と四つに組んでやっている国だと思います。ヨーロッパのようにほとんどもうIBMにやられてしまったところと違いまして、かなりその点では政府指導もよかったと思います。したがって、これは大蔵大臣にもちょっとお尋ねしたいのですけれども、今度租税特別措置法の中で電子計算機に対する減価償却の特別措置を外しましたね。これからIBMは、ソフトもハードも大分自由化されておりますから、農畜産物とあわせてコンピューターを日本にがっと持ってこようとする動きが出ております。そういうときに、日本の国産コンピューター業界がやっと体制をつくって、まだまだこれからやらなければならぬときに、そういう特典をなくすというようなみみっちい考え方をなぜ持ったのですか。
  261. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま先生から御指摘のございました電子計算機に対します特別償却の措置につきましては、期限未到来ということでございまして、あと一年存続をさせていただく、こういうふうになっております。
  262. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで、情報処理振興事業協会ができましてから企業に援助、支援をした額というのはどのくらいになっていますか。
  263. 森山信吾

    森山(信)政府委員 わが国の情報処理サービス業及びソフトウエア業は約一千社ございまして、ただいま御指摘のような情報処理振興事業協会等を通しまして毎年助成をしておるわけでございますが、大体一年間に十七、八億円の補助金を投入しておるところでございます。
  264. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、この法律をつくるときに、私ども附帯決議をつけました。情報化社会に完全に突入しておりますので、一面においては確かに情報過多というくらいに情報がたくさん流れてきます。だが一面、また基本的人権、プライバシーの保障ということが今日大事なことでございます。したがって、このプライバシーの保障について早急に法律化すべきだということを、国国も望んでおりますし、国会の、これは参議院でございますが、附帯決議もついておるわけですけれども、こういう点を全然考えないで、そして筋違いのようなことをやろうとする、これはどういうことなんでしょうか。これは通産大臣の所管になりますかね、このプライバシーの方の問題。この法案につけてある決議は、「政府は、」としてこの法案につけてある。
  265. 森山信吾

    森山(信)政府委員 ただいま御指摘のございました情報処理振興事業協会等に関する法律の附帯決議は、重々私どもも承知いたしておるところでございます。した、かいまして、このプライバシー関係の法律等につきましては、通産省もその一員でございますけれども、関係する省庁が多数にわたりますので、相協議をして進めてまいりたいというふうに考えております。
  266. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、厚生大臣、大変遅くなりまして恐縮でした。小沢厚生大臣に、がんの絶滅対策、撲滅対策といいますか、これについてちょっとお伺いをしたいのでございます。  たまたま二月はがん制圧月間になっておりまして、いま日本国民が何をしてもらいたいかといったら、やはり私は、がんを治すために何とかひとつ国を挙げてその研究と治療方法を見出していただきたいということだと思うのでございますよ。お医者さんががんだという診断をしますと、そのときにすでに死の宣告を受けたのだというように言っておりますね。近代医学の発展している中で、まだがんの治療対策というものが見出せないことは、まことに残念でございます。私はすべての国民が、どんなに金を使ってもいいから、どうかひとつ研究をしていただいて、そしてこの不治の病だと言われるがんを治すためにやってほしい、こう望んでおると思うのでございます。そういう国民の願いを私は全身にしょいまして、小沢辰男厚生大臣にお伺いをしたいのでございますが、今日までいろいろな御研究、御苦労をいただいていることはよくわかっております。にもかかわらずまだこれがうまくいかないということはどこに問題があるのか、それも私もおぼろげながらわかりますけれども、あえてもう一段の御努力をひとついただきたいということでお尋ねをするわけですけれども、現在わが国におきまして、がんにかかる方は概略どのくらいおるものでございましょうか。そして、そのうちでもって不幸にして亡くなっていかれる方がどのくらいあるのでございましょうか。最近のデータで結構でございますから、できましたら年齢別ですね、年齢をある程度区切っても結構でございます。それから、がんにもいろいろございますが、そういうことがおわかりでしたらちょっと説明をしていただきたいと思うのでございます。
  267. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全国推計のがん患者数というのは、全体を正確にはなかなか把握できておりません。ただ、最近五年間の患者の調査によりますと、病院等で把握いたしましたがんの患者と考えられる者が昭和五十一年では七万七千人、こういう調査がございます。それから死亡者数は、人口動態統計によりますと、五十一年で十四万人でございますが、恐らく推定では、この倍はがんのための死亡と推定していいのじゃなかろうかと考えられます。  年齢別には、細かい数字は場合によったら局長から言いますが、大体六十五歳以上がやはり非常に多い、こういうのが現在の趨勢でございます。詳しいことは局長から申し上げます。
  268. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 ただいま厚生大臣からお答え申しましたとおりでございまして、約二十年前から国民死因の第二位を占めております。また最近では、三十歳から六十五歳の年齢層では死因の第一位を占めております。  それで年齢階級別でございますが、五十年の状態を申し上げますと、十四歳以下が千六百人、それから十五歳から六十四歳が三万九千人、それから六十五歳以上が二万六千九百人となっております。また年齢階級別の死亡者数と死亡率でございますが、これも五十年で、十四歳以下が死亡者数は千四百七十二人、人口十万単位の死亡率が五・四人、十五歳から六十四歳は死亡者数が八万二千三百七十八人、死亡率が百八・六人、六十五歳以上は死亡数が五万二千五百二十七人、死亡率は五百九十三・〇人となっております。
  269. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それはわかりました。  そこで、がんを治療するための、制圧するための研究体制というものは一体どういうふうになっておりましょうか。  それから、今日までこの研究のためにどの程度の国費が使われておりますか。
  270. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 がんの研究につきましては、私ども厚生省を初め文部省も科学技術庁も大いに力を入れております。  現在の厚生省のがん研究助成金の制度昭和三十九年度から始まったものでございまして、それから現在までの研究費の総額はただいまちょっと手元に資料がございませんけれども、明年度の予算案では、厚生省のがん研究助成金は十四億五千万となっております。  また、これは応用研究の部門でございますが、基礎的な研究は文部省の方で助成金をお出しになっておりまして、これはおおむね同額の十四億七、八千万円ではないかと思っております。  また科学技術庁の方は、先生よく御存じの放射線医学総合研究所といった施設がございまして、そこを中心といたしまして五億二、三千万円の予算で研究を進めております。
  271. 鈴木強

    鈴木(強)委員 まあこれでは、三十四兆の予算の中で厚生省の基礎研究も少ない、文部省も少ないように思うのですよ。  大蔵大臣、もうちょっとこれは、こういうところへお金を出していただいて、そして国民が願っておる抜本的な治療方法の研究のために最も前向きな姿勢でやってほしいと思うのです。厚生省の要求がどのくらいであったか私わかりませんけれども、もう少し、なるほどこのくらい出して一生懸命やってくれているのかという気持ちが持てるようなものをひとつ出してもらえませんでしょうか。ことしは一応査定が決まっておるのですけれども、来年もう少し思い切った予算を投入して、これは本当にみんながそう思っているのですから、やっていただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  272. 村山達雄

    ○村山国務大臣 私が持っている資料では、がん全体で出しておりますのは約百八十億でございます。もちろん治療、それから予防、それから研究と、こういうふうになっております。恐らく治療もまた一つの臨床でございましょうし、予防もまた研究になると思うのでございます。しかし、おっしゃるように、詳細はわかりませんけれども、がんの問題は一番大きな問題であることは間違いございません。十分措置してまいっておると思いますけれども、不十分な点がございましたら十分に配意してまいりたい、かように思っております。
  273. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから医務局長さん、十五歳以下の子供さんが千六百人ですか、それで小児がん、あるいは幼児がんといわれるような方はどのくらいおるものでしょうか。そしてその中で、一年に不幸にして亡くなっていく子供さんはどのくらいおりますか。この辺はどうでしょう。
  274. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 いわゆる小児がんでございますけれども、ゼロ歳児におきましてもすでにがんの患者さんが出てくるわけでございます。順位はたしか四位ぐらいになっていたと思うのでございます。そうして一歳、二歳、三歳とだんだんふえてまいりますけれども、その主ながんの種類は白血病、急性白血病でございます。十歳前後になりますと、死因の第一位が交通事故でございますけれども、二番目が白血病になる、そういった状態になっていると考えております。
  275. 鈴木強

    鈴木(強)委員 小児がんに対する治療の方法というのは、私ども、よく先生に伺うと、やはり早期に発見していけばそう心配しなくてもいいというようなことも言われるのでございますけれども、この点はどうなんでございましょうか。小児がん、幼児がんに対する治療の適切な方法があるのですか。
  276. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 ただいまのところでは余り適切な方法がございません。先ほど申し上げましたように、小児がんは急性白血病が多うございますので、突然発病して急激な経過をとるというのが普通でございます。したがって厚生省といたしましては、母子保健法などに基づいてゼロ歳児の健診とか一・五歳児の健診、三歳児の健診、そういったものをやっておりますし、また文部当局は、学校保健法に基づいて学生、生徒の健康診査をやっておりますけれども、そういった方法ではなかなか発見できないのが普通でございます。将来は、もっと血液分析検査等が進んでまいれば、そういった白血病の早期発見、あるいは白血病を起こしやすい人のあらかじめの発見、そういったことができるようになるかもしれませんが、現在のところは余り的確な方法はございません。
  277. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、胃がんと肺がんではどっちが多いですか。
  278. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 日本では男女とも胃がんがトップの死因でございまして、肺がんは確かにこの二十年の間に七、八倍にふえてはおりますけれども、実数はそれほど多くはございません。
  279. 鈴木強

    鈴木(強)委員 たばこを吸う人にがんが多いということですが、こういう研究はどんなになっていますか。
  280. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 たばこと肺がんの関係につきましては、ただいま先生指摘のとおり、たばこをたくさん吸う方については肺がんの発生が多い。また、肺がんでなく、ほかの臓器のがんにも悪い影響を与えるようだ、こういうことが世界の医学界の通説になっていると思います。
  281. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そういう通説があるのに、たばこをどんどんと国が出して売っているじゃないですか。それならば、もう少し厚生省では的確に研究を進めて、たとえばこの程度ならいいとか、こういう点ならどうとかいうのを国民にもう少しわかりやすく研究をしてもらえませんかね。悪いと言って、同じ国の方で税金を取るためにたばこを売っている。私はたばこを吸いませんけれども、たばこを吸う人のために。私も七十本吸ったのですよ。七十本吸ったのだけれども、健康上やめました。健康上やめた方が非常にいいです。私はそういう経験者ですから言うのです。したがって、たばこが肺がんの原因になるというならば、もう少し、その肺がんを治すにはたばこをどうしたらいいかというぐらいのことは勉強してくださいよ。  何か、東京都の新宿に財団法人東京都予防医学協会というのがございまして、これは会員制ですけれども、ここでもって、二十年くらい吸った人に集まっていただいて研究しておられるようです。こういうことは国がもっと先にやるべきですよ。民間に先を越されてしまっている。これが厚生省行政というものです。これではだめですね。このぐらいのことは政府が先駆けておやりになるべきではないでしょうか。そういう点で厚生大臣、どうですか、これはもう少し国民が納得するような研究体制をしてくださいよ。
  282. 小沢辰男

    小沢国務大臣 たばこの肺がんに及ぼす影響等については、それはいろいろ世界各国にもデータがございます。ただ、たばこを吸った人が必ずしも肺がんになるとは限らない。また、吸わない人は肺がんにならないかというと、やはりなっている事例が相当出ておりますので、そういう点から言いますと、必ずしも必然的な因果関係というものは学問的にはまだ証明できていないわけでございます。しかし、悪いということはこれは定説でございますから、したがって専売公社にもお願いをしまして、吸い過ぎないようにという注意を特にたばこの中には書いていただいておるわけでございますので、できましたら、健康保持のためにできるだけたばこは吸い過ぎないようにしていただきたいと思います。
  283. 鈴木強

    鈴木(強)委員 最後に、時間が来ましたからこれはお願いですが、お願いというかひとつやってほしいのですが、いま結核はおかげさんで結核になっても心配ないんですよ。昔は結核は死の病だったが、いまはよくなりました。  そこで、各県に国立病院がございますね、その結核病床があいているんですよ。この実態調査をしていただいて、できればそういうところにその県の患者の方々収容して、そこでもって徹底的な治療をやれば、これがすなわち研究にも通ずるわけですよ。いまのように普通の病院に、結核は別だとしても、こっちには腹の痛い人がいる、こっちにはがんの人がいるというので、同じ部屋の中で五人か六人を一緒にして、そこをお医者さんが診ているのですが、そうでなくて、一カ所に患者を収容して専門の先生に来ていただいて、金をかけても、そういういまあいている各県の国立病院の病床等を大いに利用したら、私はみんな喜ぶと思うのですよ。そのくらいの才知を働かして、小沢大臣どうでしょうかね、あなたが大臣になったから、みんな期待しているんですよ。そのくらいのことは大臣、やってくださいよ。そうすれば名が残りますよ。
  284. 小沢辰男

    小沢国務大臣 総括のときに、どなたかの御質疑に私答えたわけでございますが、がんの分布状況をいろいろ研究班によって調べてもらいますと、非常に高い地域とそうでない地域等がございます。  そこで、私どもは各都道府県別にがんの診断機能を保有する施設を置かなければいけないという数字を持っております。それについて現在の整備された個所数というものを出しまして、その結果、整備計画としてこれぐらいやらなければならないというデータも持っておるわけでございまして、そのデータに基づいて逐次これを解消していくように最大の努力をしているわけでございますが、どうも私ちょっと見ますと、東日本だけで見ましても、実は私の新潟県あるいは山梨県あるいは岩手県等は整備を要する個所がまだ相当ある、こういう結論になっております。そこで、できるだけこれらの地区については国立病院、療養所等を利用いたしまして、この機能を与えるようにやっていきたいと思います。  たとえば、鈴木委員のところを見ますと、必要個所数が八カ所だと考えられておるにもかかわらず、実は一カ所しかその機能を持ってない、こういうようなこともございまして、そういたしますと、これは、国立療養所等があった場合にはどうしてもこれを整備していかなければいかぬだろうと思っております。ただ、同じ県でも地域的に片寄っておりますので、国立病院でもあるいは県立病院でも、がんの診断治療機能を有する施設が、たとえば山梨県で言いますと甲府に集中している、こういう状況がございますので、国立療養所でそういう同じ地区に整備をしていっていいものかどうかという点もございます。しかし、十分足しになることは事実でございますから、それら整備計画ともあわせて、国立療養所の利用、活用ということを考えていきたいと考えておるわけでございます。
  285. 鈴木強

    鈴木(強)委員 どうもありがとうございました。
  286. 中野四郎

    中野委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、寺前巖君。
  287. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、きょうはまず第一に、日韓関係の中に発生しております一億ドル借款をめぐる問題について関係閣僚にお聞きをしたいと思うのです。第二番目に、この間うち問題になりました自衛権をめぐるところの問題あるいはロランCの問題、その他幾つかの問題がありますが、時間の都合でできなくなったときには関係者の皆さんには御了承をお願いしたいということを最初に申し上げたいと思います。  まず第一に、一九七〇年七月二十一日から二十三日にかけて行われた第四回日韓定期閣僚会議で、韓国側が一億ドルの新規借款を要望したのに対して、日本側が前向きに対処することを約束されております。こういう文章がコミュニケの中にあります。「韓国側は両国の農業の近代化、輸出産業の育成および中小企業の振興のため、日本からの機器、資材の輸入を確保するため、日本側から一億ドルの新規借款を受けることを要請し、日本側はこれに対し前向きで対処することを約束した。これに関して両国事務当局の間で協議することが合意された。」ということに基づいて、一億ドル新規借款というのが進められることになります。  一九六五年の日韓条約締結と同時に結ばれた対日請求協定に基づかない初めての新規借款というところで、これは注目をされました。この閣僚会議には、愛知外務大臣、福田大蔵大臣、倉石農林大臣、宮澤通産大臣、橋本運輸大臣佐藤経企庁長官が出席をしておられたわけですが、この閣僚会議のコミュニケに基づいて、その結果、外交ルートの交渉を通じて検討が重ねられて、五千万ドル、当時の日本円にして百八十億円の円借款を行うことが適当であると判断されるに至って、結果としてそういうお金が出ていくことになるわけですが、一九七一年、そこの表を見てもらったらおわかりのとおりです。農水産業近代化の借款額七十二億円、使用期間二年の交換公文に署名されております。続いて、同年六月二十九日には、輸出産業育成及び中小企業振興借款をおのおの五十四億円ずつ、合計借款額百八億円、使用期間三年の交換公文に署名をしておられます。  ところが、こういう交換公文に署名をしておかれながら、実際にはどういうふうになっていくかといいますと、農水産業近代化借款の交換公文の署名後、機材分の十八億円については二年間に貸付契約が結ばれない。そして一九七三年になって一年間延長する交換公文の署名をされる。そして一九七四年にまた一年間再延長する交換公文を結ばれる。そしてその間に十八億円の貸付契約を締結するという事態か、農水産業近代化借款の内容としては出てくるわけです。  それから一方、輸出産業育成中小企業振興借款の方は六月二十五日に貸付契約をされるわけですが、中小企業の五十四億円の分については、これは三年間に貸し付けの締結がやれずなって、そして九カ月間延長するという事態になったというのが政府借款の姿であったと思います。  私は、まず最初に、これは関係当局の方にお答えいただいたらいいと思います。この事実に間違いがあるのかないのか、これが第一点です。  それから第二点に、こういうふうになぜ農水産業の場合だったら二回も延長しなければならなかったのか、あるいは中小企業の振興借款については、なぜ五十四億円を延ばさなければならなかったのかという理由を御説明いただきたいと思うのであります。
  288. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 武藤でございます。  ただいま政府借款の分につきまして先生がおっしゃいましたことは、これは事実でございます。  それから、交換公文の効力を延長しなければならなかった理由につきましては、まず農水産業近代化借款を七三年二月十六日に延長いたしました理由は、借款契約につきまして韓国側の国会承認の手続がおくれたためであり、また、それを七四年二月十六日に再度延長いたしました理由につきましては、その後韓国側におきまして最終需要者の募集に予定以上の時日を要したためであると承知しております。また、中小企業振興借款の延長を七四年六月二十六日に行ったわけでございますが、その理由につきましては、わが国資金ぐりの都合及び韓国側における使用計画作成スケジュールのおくれによるものであると承知いたしております。
  289. 寺前巖

    ○寺前委員 私は二月十七日付でもって、外務省からその理由を文書でいただきました。その文書を見ると、農水産業近代化借款の延長の理由の中に、「使用計画の確定、実施に鋭意努力したが、最終需要者の募集に予定以上の時日を要した」、すなわち、使用計画というものがしつかり確定しないままに交換公文が結ばれておったということが文書上うかがうことができるのであります。あるいはまた、中小企業の振興の借款の分野を見ても、使用計画の確定、実施が予定よりもおくれたというふうに、計画がないままに交換公文がなされたということをここに指摘をしているのですが、それは間違いございませんね。
  290. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ただいま先生がおっしゃったこと、私ども説明で申し上げたとおりでございますが、その理由につきましては、本件が請求権に基づかない初めての円借款であったために、韓国側の手続がふなれのためにおくれたものであると理解をいたしております。
  291. 寺前巖

    ○寺前委員 ですから、政府借款について計画のないままに、なぜあわてて一九七〇年にそういう計画もないものを、よろしいと言って交換公文をその後結ばなければならなかったのか、これは非常に疑惑に富むところの内容を感ぜざるを得ないのであります。  一九七一年、この第四回の日韓定期閣僚会議がなされた明くる年というのは一体どういう年かというと、朴政権が命運をかけた大統領選挙、国会議員選挙が激しく戦われ、与党民主共和党が莫大な選挙資金を使ったと言われる時期であります。新聞にも「チェックの手段なし 政府系資金の対韓経済協力商社のかせぎ場に」とまで書かれたあのソウル地下鉄問題は、このときに起こった話ではありませんか。日本の政財界が一役買ったのではないかという疑惑が今日問題になる。こうした政治情勢の中で初めての新しい借款が、政府借款においてこういう無計画のままでどんどん進められるということが行われておった。これは実に奇妙な話だと言わなければならないのであります。  当時の新聞を振り返って開いてみますと、こういうことが書かれています。いま問題になってきております金大中氏の記者会見で、民主共和党は選挙資金に三百六十億円を調達するために、特恵を与えた業者から政治献金を受け取っていると発表。また四月二十九日には、同記者会見で、民主共和党は法定費用の数十倍使用、国家予算が選挙運動に流用されたとまで発表されるような事態が韓国に起こっておった。こういう政治情勢の中におけるところの借款であったわけであります。  ところで政府にお聞きしたいわけですが、一億ドルの新規借款の要求に対して前向きで検討する、こう言われたけれども、政府借款としては五千万ドルであった。そうするとあとの五千万ドル、それについては日本政府としてはどういう考になったのか、そういうものは要らないという見解に到達したのか、一体そこはどうであったのかということをお聞きしたいと思うのです。
  292. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 韓国側からの一億ドルの借款要請に対しまして、閣僚会議におきまして前向きに対処方を約束をしたわけでございますが、その後の交渉を通じまして、結局、円借款といたしましては五千万ドルしか供与しなかった、こういうことでございます。
  293. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ重ねてお聞きをしたいのですが、一九七一年の五月十四日、日本為銀七行、韓国外換銀行に四千九百五十万ドルのバンクローン協定書調印という事実があると思うのですが、これは間違いかどうか。そして、これはその日韓定期閣僚会議関係して行われたところの民間借款というものに当たるのかどうか、これを御説明いただきたいと思うのです。
  294. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいま御指摘のありました四十六年の五月十四日に御指摘のような調印が行われたということは聞いております。ただし、この協定書につきましては政府は関知いたしておりませんので、この日韓関係の閣僚会議のコミュニケとは関係がございません。
  295. 寺前巖

    ○寺前委員 外務省はどうですか。
  296. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 外務省といたしましても、ただいまの大蔵省からの答弁と同様の理解を有しております。
  297. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、この全国銀行協会が発行しております一九七一年六月の「金融」という雑誌を調べてみました。こういう記事が載っております。「為銀七行、韓国外換銀行へ五千万ドル協調融資為銀七行(富士・日本勧業・日本興業・三菱・第一・東京・日本長期信用の各銀行)は昨年開催された第四回日韓定期閣僚会議の席上韓国側より要請のあった一億ドルの新規借款申込みに対し、民間ベースでの対韓経済協力の一環として韓国外換銀行へ四千九百五十万ドル(百七十八億二千万円)の協調融資をすることとし、五月十四日協定書に調印した。」という文章があります。これを見ると、対韓経済協力の一環としてやったということを指摘しているわけです。また、この当時の新聞をひもといてみますと、その当時の新聞にもこぞって、政府借款五千万ドル、民間借款五千万ドルという記事が各紙によって書かれているのであります。政府指導のもとに一億ドルの新規借款のこの要請に基づく、コミュニケに基づくところの内容としてこれらの新聞が報道しているし、また銀行協会が発行しておる中身にもそういう指摘がある。にもかかわらず、政府はこれに関知しないという態度をとられるということになると、ここになぜそういうことになるのかという疑惑を持たざるを得ないのであります。私は銀行関係者に、こういう書かれておる事実についてどういうことになっているかということを聞いたら、全部渋った物の言い方をされますけれども、銀行協会の発行である「金融」というのは権威ある雑誌でございますということを言います。ということは、そのこと自身は肯定をしておられるという内容だというふうに理解することができる、私はそういうふうに思います。外務大臣が改めてこの問題について関係なかったと言い切れるのかどうか、私は外務大臣からその点についてお聞きをしたいと思うのです。
  298. 旦弘昌

    ○旦政府委員 この「金融」という雑誌の文言でございますが、その中でこの「民間ベースでの対韓経済協力の一環として」外換銀行へ云々と書いてございますので、これはあくまで民間ベースの経済協力の一環であるということでございまして、政府ベースの経済協力の一環ということは申しておらないのでございます。
  299. 寺前巖

    ○寺前委員 その前段に何と書いてありますか。「第四回日韓定期閣僚会議の席上韓国側より要請のあつた一億ドルの新規借款申込みに対し、」とこう書いてあるのです。申し込んだことに対してどう取り扱うか、それは民間ベースで取り扱ったということだけじゃありませんか。あなた、前の方を隠してしまって後ろを読んでおったって何にも全体の流れにはならないじゃありませんか。
  300. 旦弘昌

    ○旦政府委員 これは民間の団体の出しました文書でございまして、政府文書ではございません。その民間の中にそういう文言があるのは確かでございますけれども、一億ドルの新規借款申し込みに対し、民間ベースでの協力の一環としてということを書いてあるのはそうでございますが、この文言につきまして政府はその責任はございません。
  301. 寺前巖

    ○寺前委員 ですから、当時の新聞関係全部見たってそういうふうに書かれているのにもかかわらず、あくまでも関係がないということで言われるならば、疑惑を感ぜざるを得ないということになってくる。  そこで、さらに突っ込んで聞いてみたいと思うのですが、そのバンクローンの協定というのは、フィリピンに次いで第二番目に日本で外国との間に結ばれた協定だそうであります。ところで、そのバンクローンの協定書の中身でありますが、ここに私は図表の中に書いておきましたけれども、この中身で間違いがないのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  302. 旦弘昌

    ○旦政府委員 この契約書の中身等借款の内容につきましては、個々の契約当事者間の問題でございますので、その回答は差し控えたいと思いますけれども、本件の借款の幹事銀行によりますその当時の新聞記事によりますと、期間六カ年の条件で合計四千九百五十万ドルの借款を行ったということが発表されております。その他のことにつきましては、私から申し上げる立場にございません。
  303. 寺前巖

    ○寺前委員 協定書の骨子について「金融」という雑誌にはこう書いてあります。「融資総額四千九百五十万ドル、融資期間は二年据置き期間を含めて六年、金利はユーロダラー金利に連動し、融資実行時のユーロダラー六カ月もの金利に一・二%上乗せしたもの、となっている。」という指摘があります。これに対しても、関係する銀行の方々に聞いてみました。そうすると、やはり先ほどと同じように、権威のある雑誌でございますという返事をしてきます。ということは、こういう内容であったということを確認することが私はできると思うのです。  そうすると、その当時これだけのお金を外国に回すのですから、私の理解に誤りがなかったならば、大蔵大臣の承認事項であろうと思うのです。これは外為法に基づいて承認をしなければならないということになっていると思うのです。そこで、そういうことを知った上で大蔵大臣はこれを承認をされたのだろうと思いますが、それではその当時の韓国国内における金利というのは一体どういう状況にあったのか、私はその当時の金利状況について外務省に聞いてみました。資料をいただきました。韓国銀行主要貸出金利という表を見ますと、一九七一年六月二十八日の金利状況を見ますと、一般の場合二四%という金利になっております。非常に高い金利であります。それから預金銀行の預金利率の方を見ますと、定期預金の場合は二一・三%、定期積み金が二一%と、やはり一九七一年六月二十八日にはなっている。このいただいた資料に基づいて、それでは四千九百五十万ドルというお金をまず日本関係銀行から向こうの銀行に貸した、ユーロダラーのプラス一・二%ということで計算してみる、大体一〇%というふうに踏んで計算してみると、そのお金は十七億八千万円になる。四千九百五十万ドルを、たとえば二一%の金利で一年間預託をしておいたということになると三十七億四千万円ぐらいになります。そうすると、一年間そのお金を預けておいただけでも差し引き十九億六千万円、約二十億円の利ざやをかせぐことになるではないか。そうすると、そういうことを知った上において直接関係ありません、銀行間のことでやったのだと言われるけれども、大蔵大臣の承認事項であって、そしてその前段として日韓定期閣僚会議で一億ドルという問題提起がされておって、そこで動かす金というものが一年間寝かしただけで二十億円になる、これは結構なやり方だなと思わざるを得ないではありませんか。私の提起している問題に間違いがあるならば訂正をしていただきたいと思います。
  304. 旦弘昌

    ○旦政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、この民間借款四千九百五十万ドルが貸されましたのは、これはドルで貸されたわけでございますので、当然ドルの金利でございます。先生がただいま申されました韓国の国内の金利といいますのは現地の通貨での金利でございますから、その間に差がありますのは当然のことでございます。  それから、ただいま数字を挙げられましたのは、ただいまいただきましたばかりでございますので、その計算をするいとまがございませんでしたが、そういうことで伝えられるようなプラス一・二ということで計算いたしますと、あるいはそういう数字になるかもしれません。ただ、その計算をするいとまはなかったわけでございます。その金利の通貨別に、同時点におきましても通貨によりまして金利の差があるということは現在でもそうでございますし、その当時でもそうであったわけでございます。
  305. 寺前巖

    ○寺前委員 計算の時間がなかったというふうに御指摘であります。ぼくもそうだろうと思いますが、ちょっと簡単に計算しただけでもそうなるということを私は御指摘をしたのでありまして、当時の韓国の国会においてもこのことが問題になって、こういうような問題が指摘されております。韓国政府により金利の高い他の対外国への債務返済のために使用されたことが韓国の国会で取り上げられて、そうして韓国政府もそれは認めざるを得ないという内容の議事録が当時の韓国の国会にもあります。というほど、その当時の韓国におけるところの日本が果たした役割りというものは、さきも申し上げましたが、あの韓国大統領選挙や国会議員選挙に金の面での重大な影響を与えたということはきわめて明確だと思うのであります。  そこで私は、外務大臣なり大蔵大臣に、この際はっきりしていただきたいというふうに思うわけです。ソウルの地下鉄の問題についたって、外国へ貸した金についてそれが一体どういうふうに使われたのか、その明細書も何もなしにどんどん金を貸しておったということが、チェック機構なしにやっておったということが対韓経済問題として批判の対象になってきている。ところが、それに対してどうメスを入れるかという制度的なメスまでまだ明確になっていない。私は昨日、外務委員会でこのことは外務大臣に申し上げて、外務大臣は積極的に検討したいということをおっしゃっておりましたけれども、地下鉄の問題でもそういうふうになっている。この分野においても、政府借款の分野においてもずさんな、計画書なしにやっておった。あるいは民間のバンクローンの場合においても、ちょっと預けて一年間置いておくだけでも金利だけで莫大な利益を上げられるというような、こういう金融関係が存在しておる。これで、あの韓国におけるところの政界の動きに対して日本は関与していなかった、日韓の政界におけるところの腐敗関係がなかったとどこから言えるだろうか。私はこの際に、外務大臣大蔵大臣、それぞれの所管のところにおいて、当時やったことの全面的な分析を一回やって、どこに問題があったのか、こういうふうに疑惑を持たれて当然であったのかなかったのか、明確にされる必要があると思います。特に私がこのことを指摘するのは、福田総理が、日韓癒着のにおいもしないということを国会で公言をしておられるだけに、当時の大蔵大臣は福田総理です。それだけに、私は、大蔵省の所管であったこの内容について、問題点はなかったのかということを調査をされて公表される必要がある。疑惑を持たれるとすればどこを改善したらいいのか、ちゃんとこの委員会に報告をしてもらいたいと思うのであります。大蔵大臣いかがでしょう、外務大臣いかがでしょう。
  306. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまの借款の場合に大蔵省で問題になるのは、果たして元金の回収が十分であるかどうか、そこに重点を置いて審査するわけでございまして、その条件がどうであるかということは、これは個別契約の問題でございます。損をする場合もあるでしょうし得をする場合もあると思うわけでございまして、これは私企業の取引の関係でございまして、大蔵省が監督しなければならぬことはその元金の回収が確実であるかどうか、そこを審査するわけでございます。恐らくこれはもう回収ができているのだろうと思うのでございます。
  307. 園田直

    園田国務大臣 外務省は有償と無償によってチェックする場所が違いますが、有償については外務省は交換公文決定までがチェックする段階でございます。  そこで、これは有償、無償にかかわらずやはり国民の税金から出される金でありますから、いまの起こっている事件が正しいか不正か、これはいま捜査中でありますから別として、今後こういう疑惑は受けないように、交換公文の場合においてそういうことがないように何らかの方法がないか、これは研究したいと考えております。
  308. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、大蔵大臣が金さえ返ってきたらいいんだという態度では、いま問題になっている政治的な肩入れという問題、日韓の癒着の問題が疑惑になっていながらそれを解明することはできないと思います。福田総理が日韓癒着のにおいもしないとおっしゃっても、そこにメスを入れようという積極策がなかったならば、言われても仕方がないことになると言わなければならないと思うのです。当時のことを考えてみると、たとえばガルフ社の不正献金事件というのがアメリカのマックロイ報告の中にあります。朴政権の事情がはっきりそこには示されております。たとえば、一九七〇年ガルフ社に不正政治献金を強要した金成坤民主共和党財務委員長は、今度は重大な選挙戦で、本格的な反対党があり、大衆的な宣伝の必要があるとして三百万ドルの献金を要求している。まさに一億ドル借款と同じ時期にこのことが起こっておるのであります。加えて、岸信介氏を会長とする日韓協力委員会が一億ドル借款と前後して行われておりますが、この日韓協力委員会にも、金成坤民主共和党財務委員長が韓国側の会長代理と出席をして、そしてこのような疑惑のような話が出てきておるわけであります。私は、そういうふうなことを考えてみる場合に、本当に真剣に、疑惑のないようにするために、どこに問題があったかということを改めて全面的に調査をし直して、そして当委員会の前に明らかにされることを要求して、この問題はおきたいと思います。  次に、自衛権の問題についてお聞きをしたいと思うのであります。  ベトナム戦争後のアメリカの極東戦略は朝鮮半島に照準が当てられ、同盟国日本などへの軍事分担を一層迫りながら米軍の再配置を図ろうとするものであるが、日本国民にとって重大なことは、カーター戦略の中で自衛隊の協力問題が危険な方向で進行しておること、さらに在日米軍基地の自由使用が当然のこととしてアメリカの側に受け取られるところまでに至っておることなどによって、朝鮮に対するアメリカの戦争準備政策に深く巻き込まれようとしておる、そういうことが今日きわめて重要であると思うのです。  そこできょうは、自衛権の問題、時間があったら事前協議の問題にまで入りたいと思うわけでありますが、これまで憲法の解釈改悪によってすでに自衛隊の認知を図ってきた政府であるが、十四日に当委員会に説明された「F115及びP-3Cを保有することの可否について」という見解は、憲法九条を無制限な変質に導いていく非常に重大なものだ、私はそういうふうに思います。断じて容認することはできないし、大出議員からも撤回を求められたと思いますが、当然のことだと思うのであります。以下、具体的に質問をしたいと思います。  まず最初に、二月十四日付のこの文書に基づいてお聞きをしていきます。     〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕  この文書の中にこういうことが書かれております。「右の憲法上の制約の下において保持を許される自衛力の具体的な限度については、」その次です。「その時々の国際情勢、軍事技術の水準その他の諸条件により変わり得る相対的な面を有することは否定し得ない。」こういう立場でいったら自衛力の限界というのはどういうことになるのだろうか。アメリカとソビエトの関係が悪化をしてくる、緊張が激化をしてくる、朝鮮半島で紛争が起こる、そういうことになると、国際情勢の変化によって変わっていくのだということになったら、憲法で示しておるところの戦力がどんどん変わっていくことになるのじゃないか、そういうふうに理解をせざるを得ない提起だと私は思うのですが、防衛庁長官どうでしょう。
  309. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 国際情勢の変化というものはそのときどきの情勢によるわけでございますが、現在私どもが国防会議の御決定をいただいております防衛計画の大綱に示されておりますように、現在のような国際情勢というものの中で自衛隊の持つべき規模あるいは体制、そういったものをお決めいただいているわけでございます。したがいまして、あの中にも示されておりますように、国際情勢が緊迫してまいりますならば、それに対応した必要な防衛力というものが持てるということでございます。
  310. 寺前巖

    ○寺前委員 えらいことになってきますよ。変化によってどんどん変わるのだということになりました。さらに進めて聞いてみたいと思います。  「もっとも、性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器(例えばICBM、長距離戦略爆撃機等)については、いかなる場合においても、これを保持することが許されないのはいうまでもない。」という、この指摘の項についてであります。  そこで、まず最初に「国土の潰滅的破壊」というのはどういう状況を指すのでしょう。
  311. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほど国際情勢の変化と申し上げましたが、その前に「憲法上の制約の下において保持を許される自衛力の具体的な限度」、これは当然のことながら必要最小限度の防衛力の中のことでございます。その中で考えられますことは、「他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器、(例えばICBM、長距離戦略爆撃機等)」と書いてございますが、「潰滅的破壊」というのは、いわゆる戦闘状態に入ったときに、防御するよりは攻撃的に相手に大きな損害を与えて戦意をくじくというような考え方を持っているわけでございまして、核攻撃機などによって都市やあるいは工業地帯などが壊滅的な破壊を受けるような状況を指しているわけでございます。
  312. 寺前巖

    ○寺前委員 もう一つ壊滅的破壊の状況というのが描けないのですが、もう少し説明をしていただきたいと思います。  さらに、括弧の例示の中に「等」という言葉がついていますが、「等」というだけでは明確でありませんので、そんなにいろいろ種類のある兵器ではないので、「等」というのは何を具体的に指しているのか、お教えをいただきたいと思います。
  313. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 「等」の中に入りますのは、ここに例示してございますICBM、長距離戦略爆撃機というのは、たとえばアメリカのB52のような戦略爆撃機のことでございます。またICBMは、たとえばアメリカにございますミニットマンというような大型のものでございます。さらに、この「等」の中に含まれておりますのはSLBMといいますかポラリス潜水艦のような型のもの、あるいはいわゆるICBMほどの距離はないにいたしましても、IRBM、中距離弾道弾のように壊滅的な破壊をもたらすようなものというふうに考えております。
  314. 寺前巖

    ○寺前委員 それではさらに具体的に聞いてみたいと思いますが、広島に落とされた原爆、これはここに書かれているようにもっぱら国土の壊滅的破壊のみの兵器、こういうように言えるのですか、それとも言えないのですか。
  315. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは御承知のように一発で二十万人の犠牲者が出るというようなきわめて破壊力の大きいものでございます。したがいまして、原子爆弾、水素爆弾というものはまさに壊滅的な破壊力を持った兵器だというふうに考えております。
  316. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっと細かく聞きますが、それでは戦術核兵器というのが言われますが、戦術核兵器というのはどういうことになるでしょう。
  317. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 戦術核兵器という中にもいろいろございまして、かつては核兵器というものが非常に小型化されていって鉄砲の弾も核兵器になることもあるのではないかというようなことも言われたことがございます。しかしながら、この戦術核兵器というものの大きさにもよるわけでございますが、以前、国会政府の答弁の中に、完全にその防御的な戦術核兵器というものが存在するならばそれは憲法に触れるところではないけれども、日本は非核三原則によって持たないということでございますから、戦術核兵器の中にも大きな被害をもたらすものもありましょうし、またきわめて局限された威力というものを発揮するものもあると思いますので、一概に戦術核そのものがどうだというふうな判断はできないと考えております。
  318. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、最近巡航ミサイルという地上低いところを飛んでぐうっと誘導していくというものが開発されているようです。これはどういうことになるでしょう。
  319. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 巡航ミサイルの中にも二種類ございまして、長距離を飛びましていわゆる大きな破壊力、現在の核兵器というものは広島の当時に比べますときわめて大きな破壊力を持っておりますから、そういったものは壊滅的な破壊を与えるというふうに考えられます。しかしながら、核弾頭をつけないで比較的短距離を飛行する兵器もございます。こういうものは壊滅的な破壊力というよりは、目標に正確に到達する兵器だというふうに考えております。
  320. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、中性子爆弾というのはどういうことになるでしょう。
  321. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 中性子爆弾というのは、その威力というものがどうもまだ私どもにははっきり把握されておりません。したがいまして、これがどういう壊滅的破壊を与えるものなのか、あるいは非常に局限されたものかということは、現段階では私どもは承知をいたしておりません。
  322. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、いまお話を聞いておったら、広島に落とされたようなものはこれはちょっと大変だ。だけれども巡航ミサイルで短距離のようなものとか、戦術核兵器でもなるのとならぬのとがあるというぐらいですから、かなり強力なものでない限りもっぱら国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる兵器とは言わないのだというのですから、これは相当なものだと思うのですが、そうすると逆に言いますと、そういうものを除くものは自衛力として持ち得る兵器だということと解釈していいのですか。
  323. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いわゆるその自衛の限度の中で有効に防衛機能を発揮できるような装備品、こういうものは当然許されるというふうに考えております。
  324. 寺前巖

    ○寺前委員 大変な段階まで兵器としては持ち得るのだという解釈が憲法上提起されたように思いますが、ちょっとこの際に一言聞いてみたいと思うのです。  衆議院内閣委員会で、三十四年三月十九日に防衛庁長官の答弁でこういうのがありました。「攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」、だから憲法上許されないという指摘がここにはあります。  それから、四十八年三月十三日の田中内閣総理大臣の言葉の中にも「攻撃的な兵器であるということが、第一に、持たないという憲法に背反をするという、」云々、そういう言葉が出てきます。そうすると、今回の政府見解は、「専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」としたことによって、従来言っておった、「攻撃的な脅威を与えるような兵器」は保持できないとしておった、この「攻撃的な」という分野が今度の見解の中になくなっているわけです。だから「攻撃的な」ということについては、今度はもう考慮の外に置くのだというようにこの見解の内容を理解していいのですか。
  325. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 従来からしばしば御説明申し上げておりますように、攻撃的兵器の具体的な例としてICBM、長距離爆撃機というものを挙げているわけでございます。もともと、兵器そのものが攻撃的であるか防御的であるかということはきわめて分類しにくいものでございます。したがいまして、当然、こういったICBMとか長距離戦略爆撃機というものは攻撃的兵器であるということでございますので、その攻撃的兵器の典型としてこういう書き方をしているわけでございますが、攻撃的兵器というのは、相手に大きな被害を与えること、そのことをもってそれを抑止力とするようなもの、こういうものを攻撃的兵器というふうに呼んでいいかと思いますが、その代表的なものとしてここに「ICBM、長距離戦略爆撃機等」という表現をしたわけでございます。したがいまして、攻撃的兵器というものは当然、従来の考え方と変わっていないわけでございます。
  326. 寺前巖

    ○寺前委員 先ほどからのお話を聞いておりますと、戦術核兵器の大きな分野はだめだ、あるいは巡航ミサイルの長距離に飛んでいくようなものにも問題はある、広島型はだめだ、しかしそれの一歩手前までだったらいいということになったらかなり大幅な力になると思うのですが、加えて、何らこの見解には量的な規制がない。だから量をふやしていくということになったら、たとえば今日、戦略核兵器はアメリカ、ソビエト、イギリス、フランスあるいは中国あたりが持っていると思いますが、量的にうんと拡大していったならば、これに伍すところの兵器を持てるということになってしまうのじゃないか。これが憲法上の戦力でないということを言っても、一体世界のだれが信ずることができるだろうか。この段階にまで目標を設けて日本の自衛力を考えていこうということに今日のこの見解は進んでいくことになると私は思うのですが、大臣どうですか。この考え方でいったらそうなると私は思うのです。
  327. 金丸信

    ○金丸国務大臣 そこにシビリアンコントロールという、いわゆる政治が優先するということでありますし、いま一つ、いままで、自衛隊創立以来、総体的にいわゆる戦闘機が近代化されてきておるという姿。また、先生がおっしゃられるように、相手が三千機持っておる、それじゃ日本は二千機持て、それは量という点で考えなければならぬけれども、いま自衛隊が持っております対空戦闘機その他を含めまして、実際に使えるのは四百機程度だということであります。またいま一つ、GNPの一%以内というそこにも当面一つてこがある、こう私は考えております。
  328. 寺前巖

    ○寺前委員 当面とかいろいろなことを従来からも言いながら、解釈として、論理の到達点としてどこまで可能かということになってくると、世界の最強のこういう国々の兵器の水準まで追求していくことができるではないかということに論理の到達点がなる。それじゃ世界のだれに向かっても憲法上戦力でないということを言ったって通用しなかろうと思うのです。  次に、この文書の三番目を聞きたいと思うのです。三番目には「F-15は、要撃性能に主眼がおかれた、専守防衛にふさわしい性格の戦闘機であり、その付随的に有する対地攻撃機能も限定的なものであること等から、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものでないことは明らかであり、F-4の場合のような配慮を要するものではない。」と、わざわざF4との比較を提起しておられます。  そこでお聞きをしたいのですが、F4とF15の行動半径と対地攻撃の能力について御説明をいただきたいと思います。
  329. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま行動半径というお話でございましたので、行動半径について御説明申し上げます。  F4にいたしましてもF15にいたしましても、要撃戦闘機能というものが主目的でございます。そこで、要撃の仕方といたしまして、いわゆるアフターバーナー等を使いまして必要な地点にできるだけ早く行く。この場合には燃料を非常にたくさん使います。そういった要撃戦闘といたしましては、F4は約百海里でございます。F15は約二百五十海里でございます。これは標準兵装をして飛んでいく場合でございます。  それから、やり方に長距離要撃というのがございます。これは、レーダーで早くつかまえましたときには、なるべく燃料を節約しながらある一定の高度に達しまして、その高度で最も速いスピードまで出しまして、それからまた上がっていくというやり方でございますが、こういった長距離の要撃性能といたしましては、ファントムが四百五十海里でございます。F15が八百二十海里になっております。     〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つの任務といたしましては、対地支援の行動があるわけでございますが、この場合に、標準兵装で、ファントムの場合には、二百五十キロの爆弾を八発搭載いたしまして約二百五十海里でございます。これに対しましてF15の方は、同じく二百五十キロの爆弾を十二発積みまして約二百八十海里でございます。
  330. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、去日、防衛庁の担当者から、行動半径と対地支援の状況についてヒヤリングをしてきました。そうすると、F4の場合は長距離要撃で約四百五十海里、F15では八百二十海里で、それは、そこで三分間の活動をやって、そして帰ってくる行動半径なのだということを聞いたわけです。そこで実際に地図を開いて、それではそれだけの海里というのはどこまで行けることになるのだろうと調べてみたのです。給油装置なしで調べてみると、沖繩の那覇の基地から言うならば、香港、広州、長沙、武漢、南京、そして朝鮮民主主義人民共和国のピョンヤンに行って帰ってくることができる。福岡県の築城の基地から言うと、北京や天津、上海はもちろん、全朝鮮民主主義人民共和国に影響を持つ。石川県の小松基地からは、ハバロフスク、ハルビン、長春、上海、旅大、青島を飛んで帰ってくることができる。これは給油装置なしですから、これに給油装置をつけたら、明らかに関係国は、能力が非常に高まったということで一つの脅威を感ずる段階に来ておるということは、この性能から見たら間違いなく言えることだと思うのです。  そこで、従来どういう態度を防衛庁はとっていたのだろうか、振り返って議事録を見てみました。たとえば昭和四十年の段階に、当時の松野防衛庁長官はこう言っています。「相手方から見るならば、日本が脅威を与えるような戦力を持つこと」、相手側が言うなら「日本が侵略する能力とか侵略する兵器とかいうものをそろえ得ない」というのが限界だ、これが自衛権の限界だということをその当時言っています。脅威を与えるという、そういう能力の段階になることを指摘しています。また、昭和四十七年の十一月七日の件については、大出議員からも指摘しているところでありますが、増原国務大臣が「距離の短いものは、いわゆる許されるもの。周辺諸国の領海、領空深く入っていけるものは、許容されざる足の長さ」だという指摘をやっているわけであります。さらに、四十八年三月二十二日に増原防衛庁長官は「給油によって長距離まで足を延ばすという場合の目的は、私はやはり爆撃にあるかと思います」ということで、足を延ばすということに対して重要な指摘をやっておられる。攻撃的な力を発揮するような使い方、それになるから、だからF4の場合にそういう装置をさせないのだという指摘までやっている。そうすると、昭和四十年代の議事録を見ても、四十七、八年の段階議事録を見ても、自衛権の限界というのは、足がどこまで行くかということは、重要な能力の問題として限界を指摘しているわけでありますけれども、この限界については、それじゃ態度を改めるのだということをおっしゃるのかどうか。これはずっと歴代防衛庁長官が言っておられるのですから、大臣に聞きたいと思うのです。
  331. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 当時ファントムの採用のとき、すなわちFXの採用のときの状況というものをひとつ振り返らせていただきたいと思うわけでありますが、いわゆる戦闘機の発達の過程におきまして、御承知のようにF104Jというものを航空自衛隊が採用した時期と、それからファントムを採用した時期と、いわゆる戦闘機というものに対する世界の、それこそ軍事技術の趨勢の中で違った考え方があったわけでございます。すなわち、F86Fの後に出てまいりました飛行機というものは、主目的によって飛行機の型というものが変わっておるわけでございます。ところが、ファントムの時代になりますと、私どもが当時の選定の対象といたしましたほとんどの飛行機というものは、いわゆる多目的の飛行機に変わってまいっておったわけでございます。多目的というのはどういうことかと申しますと、空中における戦闘、すなわち要撃戦闘と、それから爆撃機の、いわゆる攻撃性能、こういったものを同時に重視して開発されてきた時期であったわけでございます。したがいまして、御承知のようにファントムも核爆弾も搭載できますし、また遠距離からの誘導ミサイルというものも発射できるというような能力を持っていた時代でございます。その後飛行機というものはさらに進歩いたしまして、そういった両方の機能をあわせ持つような飛行機では片一方の機能として必ずしも十分でないということでございまして、現在私どもが対象にして選びますときの飛行機には、明らかにいわゆる空中戦闘と申しますか要撃戦闘能力、それを重視した飛行機と、それから攻撃性能を重視した飛行機というふうに分かれてまいってきているわけでございます。したがいまして、足の長さはファントムよりもF15の方が長いわけでございますが、いま申し上げましたのは長距離の要撃ということでございまして、八百二十海里飛んでまいったところで要撃戦闘などを航空自衛隊がやるはずはないわけでございます。そしてまた、この要撃戦闘をやっておりますときにも、足の長いということは、一度あるいは二度その攻撃戦闘機に対応できるという利点がある、わけでございまして、この空中における行動が長くできるということは、要撃戦闘にとりましてもきわめて有効なことでございます。したがいまして、この足の長いということがファントムのときに特に注意が払われ、あるいは脅威を与えるかもしれないという誤解を与えるというようなこともないというふうに私どもも考え、国防会議でも御説明いただきまして、御決定をいただいた次第でございます。
  332. 寺前巖

    ○寺前委員 長距離に行くはずがないと言う。はずがないでは、相手国との関係においては、脅威を与えるはずがないと何ぼ言ったって、それは主観的なものですよ。だから、そうであってはならないから、足の問題というのを歴代防衛庁長官は重視をしてきた問題でしょう。大臣どうですか、歴代の大臣がそのことを重視してきたのに、金丸防衛庁長官になってこの問題については態度を改められるというのかどうか。私は、これは大臣としてはっきりしてもらわなければいかぬと思うのです。
  333. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先ほど来から防衛局長が申し上げているとおりでありまして、増原長官の考え方と私は変わっておるものではないと、こう思っております。
  334. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、改められるのですかと聞いているのです。歴代の防衛庁長官のおっしゃることを改められるというのだったら、改められると、こうおっしゃったらいいのですよ。改められるのですね、それじゃ。
  335. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私は改めると言ってない。変わりはないと、こう言っているわけであります。
  336. 寺前巖

    ○寺前委員 これは私は、大出議員と同じように、この件については了承できません。これは従来のとってこられた態度とは明らかに違うのに、同じであるということを言われるということは、これは国会の審議にとっては重大な問題になると思いますよ。このまま、はいわかりましたと言うわけにいかぬですよ、これは。明らかに違うのだったら、変えましたというのだったら、変えましたとはっきり言わなければいかぬですよ。いいかげんなことを言ったらいけない。ですから、これは私は留保します。  そこで、改めて私は防衛庁長官にお聞きをするのですが、こうなってくると、憲法制定の段階のことを言わざるを得ないと思うのです。昭和二十  一年の六月二十八日の衆議院の本会議場で、当時吉田総理大臣はこういうことを言っておられます。「近年ノ戦争ハ多クハ國家防衛権ノ名ニ於テ行ハレタルコトハ顕著ナル事實デアリマス、故ニ正當防衛權ヲ認ムルコトが偶々戦争ヲ誘發スル所以デアルト思フノデアリマス、又交戦権抛棄ニ關スル草案ノ條項ノ期スル所ハ、國際平和團體ノ樹立ニアルノデアリマス、國際平和團體ノ樹立ニ依ツテ、凡ユル侵略ヲ目的トスル戦争ヲ防止シヨウトスルノデアリマス、併シナガラ正當防衛ニ依ル戦争が若シアリトスルナラバ、其ノ前提ニ於テ侵略ヲ目的トスル戦争ヲ目的トシタ國ガアルコトヲ前提トシナケレバナラヌノデアリマス、故ニ正當防衛、國家ノ防衛權ニ依ル戦争ヲ認ムルト云フコトハ、偶々戦争ヲ誘發スル有害ナ考ヘデアルノミナラズ、若シ平和團體ガ、國際團體が樹立サレタ場合ニ於キマシテハ、正當防衛權ヲ認ムルト云フコトソレ自身が有害デアルト思フノデアリマス、御意見ノ如キハ有害無益ノ議論ト私ハ考ヘマス」とまで言って、この憲法九条問題を吉田総理は言われておるのであります。あなたの先ほどからのこういうような発想でいったら、そうしたら正当防衛権を認めることすらこれは危険なんだ、歴代の戦争はそうだったのだからということまで言った憲法九条です。そういう性格です。一切の軍備と国の交戦権を認めないというこの立場に対して、国際情勢の変化によって自衛力の限界は変化が起こっていくというような解釈をやったりし出したら、私は大変なことになるなと思うのですが、改めて憲法九条の問題について、あなたは最近のこの提起された問題についてどういうふうにお考えになるのか、お聞きをしたいと思うのです。
  337. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先ほども申し上げたのですが、いわゆるエスカレートしてどこでとまるのだということでございますが、総体的に飛行機が近代化していくとき、いわゆるこの飛行機に相反するわけにはいかぬ、こういうような姿で行くということで、いままでの状況は、先ほど言ったように、自衛隊の創設以来戦闘機等が飛行機が近代化していくから順次近代化してきているということは、予算の上でも認められてきたということを考えてみても、私は今日の戦闘機というものは近代化しておる、その近代化にある程度ついていかなければ防衛にはならぬじゃないか、こういう考え方であります。
  338. 寺前巖

    ○寺前委員 何を言ったのかよくわからぬけれども、こうなって、それで九条がどうなったのです。こうなったのだから……(「そっちじゃない、こっちだよ」と呼ぶ者あり)どっちでもいい、こっちか。こっちでいい。それで九条はどうなったのです。大臣、こうなったというやつは、九条はどうなったのです。関係ない話だよ。九条はどうなっていったのだということを私は聞いているのだよ。私は吉田総理の話を提起して聞いているのだよ。
  339. 金丸信

    ○金丸国務大臣 おっしゃられるように、現在の日本の防衛は必要最小限度の防衛力を持つというその範囲であるということで私は申し上げておるわけであります。
  340. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ、あなた、私の質問の答えにならぬじゃないですか。吉田総理がわざわざここまで言ったのでしょう。正当防衛権を認めるということすら、これはえらいことになるのですよということまで言った。そうしたら、これでいったら、正当防衛のためには国際情勢の変化によってどんどんやりますのやということになったら、もう吉田総理が提起した九条問題というのは吹っ飛ぶことになるのじゃないだろうかということになりませんか。あなたは九条なんというのはもうこんなふうに変わってきたのだから変わったらいいのだ、こうおっしゃるのですか。それだったらそういうふうにおっしゃったらいいですよ。どうです。
  341. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私はそういう意味のことを言っているわけじゃありません。私も日本人ですから、日本憲法は守らなくちゃならぬ、当然だと思っております。
  342. 寺前巖

    ○寺前委員 守るためには、その前提としてのこういう解釈ではだめだということをもう少し研究される必要があると思いますが、この際にちょっと聞いてみたいと思います。  大臣、戦前の軍隊は侵略のために存在した軍隊か、自衛のために存在した軍隊か。
  343. 金丸信

    ○金丸国務大臣 戦前の軍隊というものは、自衛のためばかりじゃなかったというように私は解しております。
  344. 寺前巖

    ○寺前委員 ほほう。侵略のために準備した面もある軍隊なんだということでいいですか。
  345. 金丸信

    ○金丸国務大臣 戦前の軍隊お話でしょう。
  346. 寺前巖

    ○寺前委員 そうです。
  347. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私は現実にそういう姿はあったと思うのですよ。
  348. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、明らかに当時の軍隊というのが侵略の役割りをしたという大臣のおっしゃったことはそうだろうと思うのですよ。しかしそのときの軍隊にしても、言ったことは自衛のためにという言葉を言ったと思うのです。私も軍隊に行ったことがあります。それでも侵略のためにと言って教育を受けたことはなかったです。日本の平和と安全のためにという言葉をいつも教えられた。(「そんなことを教えたか」と呼ぶ者あり)教えましたよ。あなたは知らないのだ。やはり自衛ですよ、基本は、教えたのは。だけれども指導者がやった役割りというものは、侵略のために使ったということは間違いのない事実だと思うのです。だから、吉田総理がここで提起されたこの正当防衛権という名のもとにやった戦争だというところに危険性があるのだということを繰り返し指摘した。そうしたら今日自衛のためにということで、やはり際限なくやっていくという、国際情勢を基準のもとに置くというのは、この憲法九条を提起したときの問題との関連でいうと、やはり危険性があるということにならざるを得ないじゃないか。あなたはそういう意味で危険性を感じられないのかどうか。
  349. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 大臣が御答弁申し上げる前に御説明申し上げたいと思いますが、憲法の中で禁止されているものとして私どもが強くみずからに課しておりますのが、海外派兵ができないということでございますし、またいわゆる徴兵制度もとれないということを申しているわけでございます。いま先生がおっしゃいました当時の自衛というのは、いわゆる生命線ということで、非常に国外とかそういったところも含めた意味の自衛でございましたが、現在の憲法のもとにおきます自衛というものは、そういう点できわめて厳格に、私どもはこの憲法の精神に従っているわけでございます。
  350. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣にしゃべらせたらまたどこへ行くかと思って心配して局長は飛び出してきたのか、それは知りませんけれども、一月八日の日に金丸防衛庁長官が千葉県の習志野市の陸上自衛隊第一空挺団の降下初めを視察されて、そこで訓示をされた。自衛隊は外国に脅威を与えてはいけないという人がいるが、敵に脅威を与えなくて何の防衛か、私は新聞で読んだのですから、正確にどう言われたか知りませんが、そういう趣旨の発言をしておられます。その後、上陸してくる敵に脅威のない防衛はないのだというふうに国会でも言いかえをしておられるようでした。  そこで、私は不安でかなわないので、この際に、大臣に改めてもう一度この点についてお聞きをしたいと思うのですが、大臣、こういうふうに言い切れますか。相手基地をたたく能力を持つことが相手にとって脅威となる、そういう自衛隊であってはならない、そういうふうにあなたは訓辞することができますか。
  351. 金丸信

    ○金丸国務大臣 新聞は前段を抜いておるわけです。私はいわゆる平和憲法を踏まえてということを前段に置いて言った、こういうことですから、いまおっしゃられたことについて私はそのとおり同感であります。
  352. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、相手基地をたたく能力を持つことが相手に脅威となるということを御承認になったら、従来の防衛庁長官が言われた話と一緒になってくるので、この見解にはまた矛盾が出てきた。F15はだめだということになりますよ。  私はこの問題について改めて委員長に要求したいと思うのです。こういう見解がばらばらのままで提起された方針を認めておくわけにはいかないから、改めて当委員会においてもこの防衛の問題については検討する場をつくっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  353. 中野四郎

    中野委員長 私に言われてみてもどうも……。まあひとつ大いに論争をしてください。質疑応答を進めてください。――ちょっとこれ、検討する事情と違うのですな。だから質疑応答をもっと続けて、実際上に協議をしなければならなくなれば協議をいたします。(寺前委員理事会で協議、いいですか」と呼ぶ)いや、そこはわかりません、この論争については。協議をすると言って、何を協議するのですか。(寺前委員「いや、だから話が違うと言うのだよ、私は」と呼ぶ)いや、もっとただしてください。
  354. 寺前巖

    ○寺前委員 相手基地をたたく能力を持つことが相手にとって脅威になる、そういう自衛隊であってはならない、私がそう言ったら、そうだと言うのだ。そうしたら先ほどから出ているF15の問題については、相手方をたたく能力を持つ、脅威を与えることになる、だから明らかにこれは出された文書と見解が違うじゃないか。だから私は、見解の違うままですっすと予算委員会が通っていくことではぐあいが悪いので、予算委員会としても特別に防衛について御検討なさる場を設けていただきたい。ですから、それは理事会において御検討なさるのだったらそれで結構です。
  355. 中野四郎

    中野委員長 もう少し明らかにしてから……。
  356. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先ほど来から防衛局長が申し上げておりますように、F15は要撃戦闘機であって、いわゆる相手国に誤解を生じたり、あるいは脅威を感じさせるものではない、こう言っておるわけでありますから、私の発言は何も間違っておらないと私は思います。
  357. 寺前巖

    ○寺前委員 相手方に脅威を与えるかどうかは、相手方が判断する問題です。はずがないではあかぬのですよ。こっちが何ぼはずがないと言ったって、相手側が判断する問題だから問題になるのですよ。だから私は、相手基地をたたく能力があるのか、ないのかということを重視したのですよ。相手方をたたく能力を持つ段階に来るではないか、だから問題になるんだということを私は何度も言っているのですよ。だから、その名前を要撃機だとか何とつけようが、そんなことは別の話ですよ。相手基地をたたく能力を持つことがその重大な分かれ目だ。
  358. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 相手基地をたたく能力ということで私は御説明しておりません。私が御説明いたしましたのは要撃、いわゆる長距離の要撃能力でございます。これは何も相手基地をたたくということは全く違うわけでございまして、この対地支援能力から申し上げますと、二百五十海里と二百八十海里というふうに御説明申し上げた次第でございます。
  359. 寺前巖

    ○寺前委員 この問題は理事会で御協議いただけないでしょうか。
  360. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと申し上げますが、理事会で協議をする事項とは違うのです。いま事務当局から明確に言っておりまして、金丸長官の言葉は、これは山梨だから語尾が幾らかわからぬかもしれませんが、心構えはもう間違いないのですから……。さらに事務当局から説明しなさい。もう一度明確に答弁をしなさい。伊藤防衛局長
  361. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、違うのです。委員長、ちょっと待ってください。
  362. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと伊藤君待ちたまえ。
  363. 寺前巖

    ○寺前委員 私の提起しているのは、大臣に言い切れるか、相手基地をたたく能力を持つことが相手にとって脅威となる、そういう自衛隊であってはならないと言い切れるかと言ったら、そうだとおっしゃったから、それでは、おっしゃったのだったらここへ出された見解との間に違いが生まれるではないか。だから私はこのまま過ぎていくわけにはいかないから理事会で御協議ください。この問題については私はもうそれでおきます。何度も同じことを言っておっても始まりませんから。
  364. 中野四郎

    中野委員長 寺前君に申し上げますが、先ほどから事務当局から明確に答弁をしておるのですから……。長官の気持ちは同じなんですから。もし語尾に間違いがあるとすれば、幾らか山梨弁が出ておるだけのことで……。だから私は、率直に事務当局からさらに答弁をさせていただきたい。
  365. 寺前巖

    ○寺前委員 いや、大臣の答弁について聞いているのだから……。
  366. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  367. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。  ただいまの寺前君のお話は、一応理事会でまたいろいろお話をすることにいたしまして、どうぞ質疑を続けてください。
  368. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは私は、その問題は委員長がおっしゃるように残します。  もう時間もあれですから、この間、私の党の不破議員が提起した問題でちょっと一言だけ聞いておきたいと思うのです。  ロランCの基地について、これが軍事、非軍事を問わず航空機あるいは船舶の支援をするということが主眼だと金丸防衛庁長官がおっしゃったのですね。私は、これではちょっと聞き捨てにならないと思うので、外務大臣にお聞きします。柏のこの施設はだれに貸しているのか、何の目的に貸しているのか、簡単なことですから、お答えをいただきたいと思うのです。
  369. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  柏の施設は、日米安保条約に基づきまして、合衆国軍隊のために提供された施設、区域の一部でございます。
  370. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは金丸長官、これで明確じゃありませんか。合衆国軍隊に安保条約に基づいて、軍事目的のために貸してあるのだ。そうすると、軍事、非軍事を問わず航空機あるいは船舶の支援をするということが主眼だということは、この間おっしゃっていましたけれども、誤りですね。
  371. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 いま先生が柏の施設についてのお尋ねでございましたので、私は地位協定との関係を申し上げたわけでございます。その施設の中にありますところの特定のロランCなるものがいかなる機能を営むか、だれが利用し得るかということはまた別の問題でございまして、それは金丸長官がお答えになられておるところでございます。
  372. 金丸信

    ○金丸国務大臣 軍事的にアメリカが利用するということでありますが、現在はいわゆる民間も、飛行機も船舶も使っておるということは現実の事実であります。
  373. 寺前巖

    ○寺前委員 使っているということと、だれに施設を提供して、何の目的に従ってその施設を貸すのかという問題は、またそれは安保条約で明確だと思うのです。主眼は軍隊に対して提供したものなんだ。そうでなかったら、私は、何のために基地を提供したのか法的基礎を明らかにしてもらわなければならぬことになる。主眼は軍事だ、それをどうほかの者が使うかという問題はまた別の問題としてあるというだけのことだと思う。そうすると、この前おっしゃった軍事、非軍事を問わずということは、これは言葉足らずであったのか何か知りませんよ、私はそこは改められるべきだと思うのですが、いいですね、大臣。――あなたはいいよ。私は大臣に聞いているのだ。大臣が言われ言葉だから、大臣に聞いているのだよ。
  374. 中野四郎

    中野委員長 亘理君からひとつ説明を聞いてください。
  375. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  前回も申し上げておるわけでございますが、ロランCの利用の態様について大臣仰せられたわけでございます。これは軍用、民事用を問わず、またいかなる国でもこれを利用し得る形になっておるわけでございます。提供施設として提供いたしておりますのは、米軍が国防省の費用によって設置する施設でございまして、これは軍の施設として提供しておる。その利用の形態については、軍用、民用を問わず一般的に使われておるということを大臣は申し上げたわけであります。
  376. 寺前巖

    ○寺前委員 もう私はやめます。そんないいかげんなことを長々と、質問をしていることと違うことを言ってもらう必要はないですよ。安保条約に基づいてアメリカの軍隊に基地を提供しました、きわめて明確な話ですよ。軍隊に貸したら軍事目的に決まっています。それがそのほかにも使わせてもらいます。それは起こるでしょう。だが、主目的は軍事のために提供したのだ。そうでなかったら、日米安保条約のつじつまが合わないじゃないですか。私はそのことを言っているのだ。私の言っていることに大臣も御賛成になるだろうと思う。それだったらそれで私はよろしいと言ってもらったら、私はこれで引き下がりますよ。
  377. 金丸信

    ○金丸国務大臣 私の管轄でない、それは外務省の管轄でありますから、私がそう申し上げましたことについて、その一部の発言がいわゆるそういうものとあなたがおっしゃられておる。私も速記を見まして、その上で御返事をいたしたいと思います。
  378. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、それではいまの大臣がおっしゃったことをもう一度ちゃんと見て、訂正されるものは訂正をきちっとしていただきたいということを要望して、この件については、それだけに不破議員が提起した問題というのは重要な意味を持っているのだということを指摘し、先ほどの件がありますので、私は残して、これで終わります。
  379. 中野四郎

    中野委員長 寺前君、残しても時間は認めませんよ。私は訂正をしておる時間を余分に差し上げたのだから、残したと言ったって、私は残しませんよ。  これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  次回は来る二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十六分散会