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1978-02-17 第84回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十七日(金曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       白浜 仁吉君    関谷 勝嗣君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷川 寛三君    根本龍太郎君       藤田 義光君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    渡部 恒三君       井上 普方君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 利春君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       福岡 義登君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    草川 昭三君      平石磨作太郎君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       米沢  隆君    浦井  洋君       田中美智子君    寺前  巖君       藤原ひろ子君    大原 一三君       小林 正巳君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府人事局長 秋富 公正君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         北海道開発庁計         画監理官    大西 昭一君         経済企画庁長官         官房会計課長  小林  進君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済局次         長       溝口 道郎君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房長 佐上 武弘君         大蔵大臣官房会         計課長     村上 哲朗君         大蔵大臣官房審         議官      海原 公輝君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局次         長       川崎 昭典君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         文部省学術国際         局長      井内慶次郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 松本 作衞君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石炭部長   宮本 二郎君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         海上保安庁長官 薗村 泰彦君         労働大臣官房長 石井 甲二君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         住宅金融公庫総         裁       大津留 温君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         参  考  人         (地域振興整備         公団総裁)   吉國 一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     谷川 寛三君   坊  秀男君     関谷 勝嗣君   藤田 高敏君     福岡 義登君   浅井 美幸君    平石磨作太郎君   矢野 絢也君     草川 昭三君   米沢  隆君     小平  忠君   浦井  洋君     藤原ひろ子君   寺前  巖君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     坊  秀男君   谷川 寛三君     正示啓次郎君   福岡 義登君     藤田 高敏君   草川 昭三君     矢野 絢也君  平石磨作太郎君     浅井 美幸君   藤原ひろ子君     田中美智子君   正森 成二君     寺前  巖君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、質問に入る前に一点この際伺っておきたいのでありますが、きのう北京において、日中の貿易協定が調印をされたわけであります。しかも往復二百億ドル、八年間の長期にわたって、わが国からはプラントあるいは建設用の機材を輸出をする、中国側からは石油、原料炭一般炭のいわばエネルギーが輸入をされる、こういうバーター取引協定が結ばれたことは高く評価をされなければならない、私はこう考えておるわけです。そういう意味で、福田総理は日中の平和条約交渉は機が熟した、こう本委員会でも述べられておりますけれども、まさしく、この貿易協定締結と同時に日中平和条約交渉はせきを切って水が流れた、いわば水かさを増して、平和協定は水の流れるままに締結されるものと判断をされるわけであります。この際、外務大臣通産大臣に、この日中の貿易協定をどう評価をされているか、同時にまた、この日中貿易協定締結にかんがみて、日中平和条約締結交渉に対する決意を、これを受けて改めてお聞かせ願いたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 答弁に入る前に、昨日の質問関連をして発言をお許し願いたいと思いますが、委員長、よろしゅうございますか。
  5. 中野四郎

    中野委員長 どうぞ。
  6. 園田直

    園田国務大臣 では、お許しを得まして、昨日の土井たか子議員質問及びこれに関連する大出議員質問関連をして、私が昨日、事前協議平時有事を問わざる問題でありますと、こういう答弁をいたしました。この趣旨はもう御理解のとおりに、たとえ平時であろうとも無断でいろいろなことをやってもらっては困る、こういう趣旨で、平時有事にかかわっていろいろ御質問が出てきても、これは国内の問題でありますけれども、ソ連のことを恐れて平時は構わぬのだということは大変でありますから、特に発言を求めて、平時有事とも事前協議が必要でありますという答弁をしたわけでありますが、これに基づいていままでの外務省答弁の変更と申し上げましたが、後で大河原君の答弁を調べてみますると、後で自身が変更して、やはり平時有事にかかわらずという答弁をしております。したがいまして、また特にこの際米国の方に確認をする必要もございませんので、以上、劈頭にお断りをして、御理解を願いたいと思います。ありがとうございました。  次にお答えをいたしますが、昨日結ばれました日中長期貿易取り決め、これは日中友好条約に直接関係はありませんけれども、日中関係善隣友好を進める上に高く評価をし、しかも、これをもとにしていろいろまた、その他の経済問題も出てくることであります。日中友好条約締結についてもこれはよい一つのあれでございますので、こういうことも考慮しつつ、いまだんだん動き出しておりまする友好条約締結交渉に向かって前進したいという考えでございます。
  7. 河本敏夫

    河本国務大臣 昨日長期協定締結をされましたが、これは私は、今後の両国経済貿易関係が飛躍的に、この協定基礎にいたしまして拡大をしていくと期待をいたしております。したがいまして、民間協定ではありますけれども、政府といたしましても、この協定が円滑に実行されなければなりませんので、そのために積極的にこれを支援していきたい、このように考えております。
  8. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般、日本韓国の間に外相会談が持たれておるわけです。新聞の伝えるところによれば、この会談に臨むに当たって園田外務大臣は、韓国漁業のいわばわが国近海における操業秩序確立、こういう問題をテーマにして話し合われた、こう伺っておるわけです。したがって、この日韓会談で、特に日韓漁業関係についてどういう話し合いが行われ、韓国側からどういった見解の表明をされ、今後これらの問題の扱いについては具体的にどうされようとするのか、この点を含めて伺っておきたいと思う次第です。
  9. 園田直

    園田国務大臣 日韓外相会談は、この経緯を言いますと、私と朴外務長官は、官房長官時代に数回会っておりまして、朴長官アフリカ公館長会議に出張する途中立ち寄る、そこで、外務大臣になってからは初めて会うからお会いしたいという程度のことで、会談のテーブルにつかないで喫茶室で話をしたという程度でありますが、会談会談でございます。  向こうから出ましたことはたった一つ、大陸棚をよろしく頼むということでございます。私の方からは、おたくの国と私の国は仲よくしなければならぬし、しかし、近いだけにいろいろ頭の痛い問題が多いですね、こう言いながら話を出したという雰囲気から御報告申し上げまして、私の方からはまず米韓関係、それから竹島とか金大中事件も話題にいたしましたが、特に日韓関係日韓定期閣僚会議問題等でございます。  なお、私が特に言いましたことは日韓間の漁業問題でございまして、漁業協定に基づいて線引きの問題いろいろ出てくるわけでありますが、まず当面、北海道沿岸の漁民の憂慮と実情を訴えまして、韓国漁船北海道沖操業するということについて自制をしてもらわなければ不測の問題が起こる、ぜひこの点については長官の方で、帰られたら早速善処してもらいたい、こういう申し入れをいたしましたところ、韓国側では、本件については両国間で十分意思疎通を密にして、韓国側としてもしかるべき対策を講ずる所存である、こういう返答がございました。
  10. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般の予算委員会で私は、日本韓国漁業関係について質問をいたしたわけですが、どうも受け取り方が私の意に反してまちまちの面もあったのではないか、こう実は理解をいたしておるわけです。そういう意味でこの際、日本韓国漁業関係の新しい秩序確立を目指して二、三政府見解を承りたいと思うわけです。  第一点は、日本側として隣国の韓国漁業実情を今日どのように一体見ておられるか。また、韓国における水産物資源評価は一体どういう状況にあるのか。そういう実情を知るということはきわめて大切であると思うわけです。そういう意味で、農林省のこれに対する見解をまず承っておきたいと思うわけです。
  11. 森整治

    ○森(整)政府委員 韓国漁業は、近年非常に急速に発展をしております。生産量は、四十六年の百七万トンから五十一年には二百十四万トンということで非常に急速な伸びを示しておりまして、このうち特に遠洋漁業発展が非常に著しいというふうに見ております。五十一年には五十六万トンの生産量遠洋トロール遠洋マグロはえなわということで、北から大西洋、インド洋、南太平洋まで進出をしておるというのが現状でございます。ことに五十二年に入りまして、米ソの二百海里漁業水域の設定によりまして大きな影響を受けた。こういう影響から、韓国漁船北海道の沖合いに参りましていろいろ問題を惹起した、というふうにわれわれ見ておるわけでございます。
  12. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の資料によりますと、五十一年の韓国実績は、近海で百六十七万トン、遠洋で七十五万トン、このうち大体四十万ないし四十五万トンはソ連のカムチャッカ、べーリング海、いわゆる遠洋トロールであります。それ以外で特徴とすべきものは、マグロが十四万五千トン、これはほとんど日本、若干アメリカ輸出をされておる、こういう状況のようであります。  そういう意味で私は、韓国先進漁業国家である、こういう位置づけをしましたし、世界第七位の地位を占めておりますし、遠洋漁業では世界第三位の地位を占めている。したがって、韓国漁業は急速に発展をしている。昭和三十一年から始まって四十年代へ大体十年間で爆発的な進歩を遂げておるわけですが、今後もさらに、若干スピードは落ちても、ずんずん高成長の発展をしていく、このように受けとめなければならないと考えるわけです。そういうことを前提にしてわれわれは、これから日韓関係について調整を図らなければならないと思います。  また、先般中川大臣は、漁獲金額問題について触れられたわけでありますが、私はこの答弁は非常に気にかかるわけです。たとえば、今回ソ連日本の間で八十五万トンと六十五万トンの協定が結ばれた。これは別に金額的な問題をお互いに問題にしているわけではないわけです。たとえばイカのように、ソ連評価の安いものが日本で高い場合もあるわけです。あるいはまた、日本評価が安くてもソ連では高いものがあるわけです。少なくとも海洋法会議の精神から言いますと、そういう金額の問題ではなくして、余剰割当方式を原則にしながら従来の実績を尊重する、相手国経済の混乱をできるだけ避けるように配慮をする、いかなる国に対してもそういう方針でなければならないのではないかと思うわけです。そういう意味で、今後対外的な交渉をする場合に漁獲物金額を問題にするという発言は非常に支障を来すのではないか。そういう意味ではこの際前回発言を取り消されて、わが国の二百海里時代の二国間の漁業交渉に臨む基本的な態度というものをきちんと整理されておく必要があるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  13. 中川一郎

    中川国務大臣 国際間の二百海里問題は、等量主義あるいは余剰主義、大きく言って二つあり、それぞれ国によって違うわけですが、前回答弁で、大体同じぐらいの量なんだからいいじゃないかという御指摘に対して、量だけではなくて金額の問題もある――私は、金額だけの問題じゃなくて、漁家数の問題もあれば、あるいは好む魚、好まない魚、いろいろと配慮して、それぞれ国によって違った評価をしながらこれに対応しなければならないということを申し上げたのであって、金額だけ特に強く印象を受けたとしたら、それは説明不足です。単なる量だけでどうこうすべきものではない。幅広く金額、あるいは必要な魚、漁家数、歴史等々、いろいろなことを踏まえて対応しなければならない、こういう意味でございます。
  14. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国韓国水域における昭和五十二年の漁獲の量は十二万七千トンと水産庁は発表いたしているわけです。これは規制水域内と規制水域外の二百海里を区別してどういう数字になるのでしょうか。これが第一点であります。  同時にまた、韓国北海道関係における操業実態承知をいたしておるわけですが、日本海における韓国漁船操業実態については、水産庁は把握をいたしていますか。
  15. 森整治

    ○森(整)政府委員 第一点の、わが国韓国の二百海里内また規制ラインの内と外でどういう操業をしているかという点でございますが、ちょっと五十一年の数字でございますが、共同規制水域内で操業いたしておりますのが五万四千トン、その外側での漁獲量が七万三千トン、合わせて十二万七千トンというふうに承知をいたしておるわけでございます。  それから第二番目の、日本海における韓国漁船操業状況ということでございますが、これは御質問の焦点がどこにあるのかと思いますが、一応申し上げますと、北海道日本海側におきましては、操業が昨年から増加をしまして、三月から六月にかけて四隻から七隻、八月から九月にかけて三隻から四隻、主として武蔵堆付近で操業しているのをわれわれで視認をしております。ただ二月十日、一応新聞の報道がございまして、漁船の一部が一時武蔵堆で操業していたという話はございます。現在では、操業はほとんど見られておりません。  それからさらに、そのほかの日本海韓国操業状態でございますが、取り締まり船からの報告では、イカ釣り漁船が約五十隻、それから沿岸海底底びき漁船約二十隻、近海まき網漁船約三十隻、それぞれの漁期に操業しておるというふうに承知しております。
  16. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど私は、韓国スケトウのいままでの漁獲の量を申し上げたのですが、大体四十万トンから四十五万トンであります。このうち、韓国は大体四割は輸出をいたしておるわけです。これはアメリカ輸出をしておるわけです。あとの六割は韓国で消化をいたしておりますから、二十四万トンから二十六万トンぐらいは韓国で食べておるわけです。したがって、韓国側としても、いわゆるメンタイ、メンタイコというのは非常に必須な、家庭上必要な魚種であるわけです。しかも韓国人動物性たん白摂取量は、日本よりもむしろ水産物摂取量が多いわけであります。そういう数字が統計を通じて実は出ておるわけであります。そういう意味で、特にこのスケトウは歴史的に、韓国一般家庭における料理として非常に珍重がられている、こういう性質のものであります。ですから私は、単に北海道における韓国船不法操業状態から云々をするのではなくして、いまや漁業では先進漁業国である韓国実情、これからの進みぐあいというものを考える場合に、このまま放置をしておくと大きく実績に違いが出てくるだろう、このことを心配するわけであります。その時点ではもう遅いのであります。だから、いまから日韓漁業関係、新しい秩序はどうあるべきなのか。いまの規制ラインは一方的に、四十年に強制をされて協定を結んだ。しかし、時間が過ぎてきたわけですから、もうお互いに海が続いておるわけですから、情勢は変わってきた、したがって新しい秩序を築き上げる話し合いをすべき段階に来たのだ、こういう認識をお互いに一致をさせておかなければならないのではないか。そういう意味で今後日韓相互漁業関係のあるべき姿、それはもちろん、相互利益の追求の立場に立ってお互い話し合いがなされ、問題が解決をされなければならないでしょう。私はそういう立場で先般も質問もいたしておりますので、この点について、改めて農林大臣見解を承っておきたいと思います。
  17. 中川一郎

    中川国務大臣 その辺も配慮しながら今後どうあるべきか、いろいろと検討して、わが国水産水域が不利益にならないように十分配慮してまいりたいと存じます。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 韓国側北海道、特に北洋関係操業する場合には、二千トンないし大きなのは四千トンという船が来ておるわけです。最近は二千トンに抑えようという努力も評価をしておるわけです。しかし、わが国はすべて百二十四トン型で、オッターであろうとかけまわしであろうと全部規制されておるわけですから、木のこっぱと大きな船との比較のようなものですね。この関係調整しなければ、わが国の二百海里の最大持続生産量の資源を安定的に守っていくことができないという面もあるわけです。そういう意味で、ぜひこの問題については十分検討されて、日韓相互利益立場に立って問題の解決をされるように私は強く期待をいたしておきたいと思います。  特に、この機会にもう一点伺っておきたいのですが、漁船員の関係であります。十トン以上の漁船員が船員法の適用を受けて、さらに五トン以上、十トン未満五トンの場合には、それぞれ指定された漁種についての乗組員については、これまた新しい措置で船員保険法の適用を受けたわけです。ところが、これは、失業保険の適用を受けておる人数はきわめて実は少ないわけです。この関係は運輸省であり、保険の関係はこれは厚生省であります。現在、船員保険を受けている方々の中で、失保の適用は四五%、五五%は失保の適用を受けていないわけであります。したがって前浜の現状では、十トン未満であって、ほかの船に乗っておる者は陸上の失保の適用を受ける、船員保険法の適用を受けた者は一年間の雇用契約がないために失保の適用を受けない、こういう差別が実は出ておるわけであります。せっかく船員保険法の適用を受けたんだけれども、それが解決していない。しかも船員保険法は昭和十四年、わが国で民間では最も先進的な保険法であった。今日ではもう適用される人員が少なくなってきていますから、なかなか財政的に困難だ。  したがって私は、この年金とかあるいは健康保険の問題については現在の船員保険法で結構だと思うのですけれども、こういう適用を受けられない特に漁業労働者、この失業保険がもし船員保険法でどうしても処置できないとするならば、これはやはり陸上の失保だけは切り離して、そっちは三千万人の人間がおるわけですからね、こちらは二十三万七千人しかいないわけですから、そういう形でこれは整理をすべきであって、審議会でけんけんがくがく、長い時間をかけて論議する問題じゃないわけですよ。問題はこの交通整理をどうするのか、それはやはり政治のいわゆる判断、決断にかかっておる問題であって、けんけんがくがく、審議会で時間をかけて論議すべき問題じゃないわけです。私は昨年提起をしたのでありますけれども、依然これは未解決のままに放置をされておるわけです。この点について特に運輸省、厚生省、厚生大臣の見解を承って、ぜひ問題解決に速やかに対処されたいと思う次第です。
  19. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいまお話しの点につきましては、その改善に努力すべきものであると私は考えますし、私どもの方もこれに対処しているわけでございますが、詳細につきましては関係政府委員から答えさすことにいたします。
  20. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生よく御承知のように、船員保険の、一定期間、毎年離職をする人を保険に取り込むかという制度上の問題と、それから二十三万七千人しかない、したがって保険の担保能力が非常に少ない船員保険でございますので、その一定期間の離職者まで失保に取り入れるということになりますと、相当の保険料の、他の人々の増加を見なければなりません。そういたしますと、なかなかこれは問題が多いわけでございまして、審議会でも、御承知のように、どうしても結論をまだ得るに至ってないわけでございます。そうすると、御提案のように、これをひとつ船員保険から外してしまったらどうだという御提案でございますが、なかなかこれは、総合保険をやっております船員保険で一部の方だけこれから外すということは相当の問題がございますので、それらを含めまして、社会保険審議会の船員部会でよくなお検討させていただきたいと思います。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま二百海里問題でサケ・マス減船も行われたわけですね、十トン未満が。失業保険をもらえないのですよ。そういう情勢でもなおかつ、検討します。検討しますではどうなのか。もちろん、たとえば北転船の場合には一年間、六カ月間雇用されて翌年また六カ月間雇用されれば、一年間として失業保険は出すという特例もあります。一般的にはこれは適用にならないわけです。ところが五トン未満の他の漁船の場合には、これは労働省関係の保険でありますからすべて適用になるわけです。ですから同じ前浜で、もう大変な不公平、アンバランスになっておるわけなんです。せっかく離職者法をつくっても非常に大きな問題が残されておるわけなんですよ。そういう意味で、特にいま大臣が担当から答弁をさせるということでありますので、担当者の方でこの問題を一体いつをめどにして解決するのか。考え方をこの機会に承っておきたいと思います。
  22. 高橋英雄

    ○高橋(英)政府委員 保険の問題につきましては、これは厚生省の方で所管しておりますので、私どもとしても、いま先生おっしゃるような問題点はよく存じておりますけれども、これは厚生省の所管でございますので、そちらの方にお願いしたいと思います。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 船員に関しては、これは運輸省が労働省みたいなものですから、やはり物を言わなければいかぬですよ。大臣、ぜひひとつ、二百海里時代のそういう状況にあるわけですから、速やかに厚生省にも運輸省の見解を述べて解決してほしいと思います。  次に、これは運輸大臣に伺っておきたいと思うのですが、対馬海域における韓国船のいわば漁業専管水域侵犯、領海侵犯、あそこは国際海峡ですから、わが国の領海法は適用除外にして、漁業専管水域にいたしておりますけれども、本来であれば、十二海里でありますからわが国の領海でありまして、準領海、こう言わなければならぬわけであります。五百数十隻に上る侵犯船があって、十一隻が拿捕された。もちろん裁判で、執行猶予でそれぞれ解決をされておるようですけれども、かつて李ラインをわが国漁船が越えたときは、根こそぎ拿捕されたわけですね。ですから、新しい領海法あるいは漁業専管水域十二海里を敷いたこの対馬海域において、海上保安庁の取り締まりというのは国際関係を考えて配慮をしておるのか、そんな感じがしてならないわけですが、この状況について、また方針について、この機会に説明を伺っておきたいと思います。
  24. 福永健司

    ○福永国務大臣 お話しの水域では、現在のところ、巡視船艇四隻ばかりで常時、御指摘のようなことの監視等に当たっているわけでございますが、相当数の侵犯というか、その種の件があるわけであります。悪質なものについてはもちろん逮捕しておりますが、お話のように、多くのものにつきましては、これに警告を発する等の措置で向こうへ渡したり、あるいは誓約書を入れさせて帰しているというようなこと等があるわけであります。しかし、私ども考えましても、さらに厳正を期する必要があろう、こういうように思います。  そこで、新海洋秩序のもと、一層それを強化しなければなりませんので、三十メートル型巡視船艇等についても、これを強化するという方針で進んでおります。飛行機等によっても所要の監視等を行っているわけでございます。なお一層これを強化充実していきたい、そういうように考えております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 日本ソ連のサケ・マス漁業交渉が今日開始されて、きのうの夕方報道されたところによりますと、日本側が当初考えていたよりも、ソ連交渉態度は厳しかった。サケ・マスの、言うなれば沖取りの全面抑止、抑止という言葉を使っておるようでありますけれども、これはもう禁止と全く同じような意味だろうと思うわけです。もちろん、交渉がまだ始まったばかりでありますけれども、この問題は、昨年の場合にも五万七千トンから最終的に六万二千トンという形で決まった問題でもありますし、特に伝統的漁業、こういう面から言って非常に注目される問題であります。先般、中川大臣のこの問題に対する見解を承ったわけですが、今日、ソ連交渉当初の厳しい態度の回答に接して、改めて大臣の見解を承っておきたいと思います。
  26. 中川一郎

    中川国務大臣 サケ・マスにつきましては、海洋法におきましても、母船国が発言権を持つ、管理をするということで、公海におけるサケ・マスについても非常に厳しい情勢にありましたし、また、ソビエトのみならずアメリカにおいても、カナダにおいても、そういう厳しい情勢でございましたので、安易には考えておりませんでしたが、今回の第一回目からの交渉で、海上でのサケ・マスの漁獲を、両国ともにということで、日本のみならずソビエトも、自分の国もこれを差し控えるという表現であろうと存じます。したがって、これが公海だけなのか。もちろんソビエトの二百海里は海上ということでありますから、日本での二百海里内も含むというくらい、自分の国を含めて厳しい態度で出てきておる。全く想像されなかったことではありませんけれども、海上一切ということであれば相当厳しい、大変なことだ。事態の重要性を認識いたしておりまして、何としても四月から始まります操業までには、公海を含めて、昨年の実績六万二千トンに近い前後のもので、そうして減船というようなことがないように、最善を尽くして打開をしていきたい、こう思っておる次第でございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 二百海里時代漁業は、資源をいかに有効的に活用するかという問題がきわめて重要だと思うわけです。水産研究員の報告等によりますと、常識的に、わが国の沿岸で漁獲をした二〇%は海上投棄する。わが国の沖合い漁業の場合には大体五〇%を海上投棄をする。遠洋の場合には十割、一〇〇%、とる量と同じ量を海上投棄をする、こういう研究の結果のレポートがあるわけです。世界では大体一年間に一千万トンの魚を海上投棄しているわけです。価値のあるものを選別するわけであります。そう考えますと、わが国の場合には、実に七百万トン程度の魚が、一度網にかかったものが海上投棄をされている、こういうことになるわけです。一九八五年には世界で二千万トンくらいになるのではないか、こういう想定も実はあるわけです。  そういう意味では、投棄される魚の資源というものを活用していく、これが資源活用として一番重要ではないかと私は思うわけです。もちろん、これは採算性の問題もありますからいろいろ問題がありますけれども、これにもう少し研究のメスを入れることが最も資源の有効活用に通ずるのではないか。同時に、一千万トンの魚は、大体七八%はすべて何らかの手を経て水産加工されるわけですね。わが国の二百海里内の魚は大体九七%がすべて加工、人間の手を通るわけであります。IQ品目の場合でもほぼ八六%程度は全部加工される、こういう状況にあるわけですから、加工の振興ということが今日第二に重要な課題だと思うわけです。ところが加工の場合には、中小企業団体法で組織をされている組合もあれば、水協法の組合もあるわけですね。そうして非常に零細で、九人以下というのが圧倒的だ。九十数%を占めている。わが国の水産加工の近代化という問題は、そういう意味で二百海里時代に避けられない問題ではないか。そういう意味では通産、水産、両省にまたがっておるわけですけれども、水産加工の近代化を進めていくという点では、いわばその基礎になる立法の必要も今日検討されなければならないのではないか、私はこう考えておるのでありますけれども、この点についての見解を承っておきたいと思います。
  28. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生御指摘のように、海上に投棄されるものが相当あったのではないかということでございます。これは確かにトロール等で、商品価値が少ない小魚や、量的にまとまらない魚というものが相当投棄されたという事実はあったと思います。しかし、最近、御指摘のように、もっと有効に活用していかなければいけないということで、ミール原料等に活用するというようなこともいろいろ今後考えていかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。基本的に、資源の有効利用という観点から、また二百海里時代に伴いまして原料が非常に制約されてくるということからも、水産庁といたしましても新たな水産の加工の展開を図るということを考えておるわけでございまして、御承知のように、食糧としての利用度が低いサバだとかイワシだとかそういうものを有効利用する、そういうための水産の加工技術の研究開発、あるいは、たとえばオキアミのようなものの開発と普及だとかそういうこと、それから流通の加工センターの形成というようなこと、それから、新たに加工原料を転換いたします水産加工施設のための融資なり助成なりの措置を来年度予算でも計上をいたしておるということでございまして、新たな時代に対応した水産加工の合理化、近代化ということは、御指摘のとおり、さらに強力に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務大臣、運輸大臣、結構です。  次に、私は非鉄金属の問題について承りたいと思うわけであります。  先般、前の経済閣僚の中でも、特に銅、鉛、亜鉛のベースメタルなどは円高になれば安く鉱石が入って、非常にメリットがあるなどという発言をされた経済閣僚もあるわけです。これは基本的に間違いでありまして、今日不況そして円高、こういう中で、わが国の非鉄金属鉱山あるいはまた製錬事業は、いろいろな問題をいま起こしつつあるわけです。一体政府は、今日の非鉄金属鉱山と製錬事業についての問題意識をどう持たれておるのか、まず基本的にひとつ見解を承っておきたいと思うわけです。
  30. 河本敏夫

    河本国務大臣 非鉄金属業界は、御案内のように長い間の不況で、現在非常に苦しい状態にあります。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 銅、鉛、亜鉛、いわゆるベースメタル、このものについて大体中期的な計画というものがあるのだろうか。たとえば、昭和五十年代前期計画というものが組まれていて、そして全般的には言えなくても、基礎物資であるベースメタルの銅、鉛、亜鉛、こういうものが、一体計画として需給の関係が組まれておるのかどうか、非常に不明確であります。そして、いままで通産省の場合でも、いろいろ検討してまいりましても、確たる計画的なものがなかったと言えるのではないかと思うのです。そういう意味で、銅、鉛、亜鉛のいわゆるベースメタルの中期的な需給の見通しというものは一体本当に持っているのかどうか、また今日、この需給の見通し、展望というものは一体どう理解をされておるのか、この点について承っておきたいと思います。
  32. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘の中期経済計画につきましては、個別品目にかかわる需給見通しは策定されておりません。ただ、その中に、非鉄につきましては、国内の探査活動あるいは海外の自主開発を進めること、あるいは備蓄制度を有効に活用することといったような規定はございます。ただ、五十一年度の産構審の報告書に「産業構造の長期ビジョン」というのがございますが、この中で、一九八〇年における需要見通しにつきましては、銅は百三十七万トン、亜鉛は百十二万トンという見通しが立てられておるわけでございますが、昨今の需要の動向からいたしまして、この数字はやや大き目ではなかろうかという認識を持っておりまして、現在鉱業審議会でさらに詰めを行っておる、こういう段階でございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近のCIPEC、いわゆる産銅国四カ国、インドネシアを含めれば五カ国になるのでしょうか、準加盟も最近は出てまいりましたけれども、銅の場合にはCIPEC四カ国が、最近のLME建て値の暴落に伴っていろいろな動きを示しておるようでありますが、この動向は一体どう把握をされておるか。同時にまた、ロンドンにおけるLMEの価格の展望についてはどのように判断をされているか、ひとつ御説明を願いたいと思うわけです。
  34. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 CIPECにつきましては、御承知のように、オイルショックの直後は一五%程度の減産を実施しておったようでございますが、七五年の半ばごろから、足並みが乱れてきたと申しますか、むしろ増産の傾向が出てまいった。特に、御承知のように、CIPECの内部には、減産を可とするグループと、減産に対して反対、むしろ増産をすべきであるというグループの対立がございまして、現状では、どちらかと申しますと増産派が非常に強硬な態度をとっておる、かようなところから、CIPEC内部での意見の調整というのは非常にむずかしくなっているのではなかろうか。端的に申し上げますと、昨今の情勢に即応した減産と申しますか、生産体制の即応というものがおくれておるのではなかろうかというふうな見方をいたしております。  それから、LME相場につきましては、一様に低い水準で低迷しておるということでございます。銅につきましては、七六年でやや立ち直りを見せたわけでございますが、七七年に入りまして低落の一途をたどっておるというのが現状かと思います。これに対しまして、アメリカ、カナダ、豪州、こういった先進の産銅国では、採算性の悪い鉱山を閉めておるといったようなところから、フォローベースで見ますと大体需給はバランスがとれてきておるわけでございますが、在庫につきまして、LMEの六十万トンを含みまして約百五十万トンございます。これは自由世界の需要に対して二カ月半程度になります。そういった事情を加えまして、銅の価格というのは一進一退しておる、近い将来に大幅な改善が見込み得ない状況にあると申し上げていいかと思います。  それに対しまして、亜鉛は一段と厳しい状況にあるかと思います。亜鉛につきましても、銅と同じく、七六年当時一時回復を見せたわけでございますが、昨年の四月には七百八十五ドル、十一月には一挙に六百ドルといったような下落を示したわけでございますが、昨今またプロデューサープライスが約五十ドル程度引き下げられるのではなかろうかといったようなことで、需要の低迷とあわせて、価格的には一等きつい段階にあるのではなかろうか。  鉛につきましては、バッテリー需要を中心にして、いままで比較的堅調に推移してまいったわけでございますが、そのバッテリー需要につきましても頭打ちの状況にございます。どちらかと言えば、今後弱含みで推移するのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 問題は、これからわが国の安定成長の中で、基礎物資である特に銅、鉛、亜鉛、このベースメタル、これをどう一体位置づけをするのか。いわば国内鉱山で産出するもの、そしてまた鉱石を発展途上国から買ってきて製錬をして供給をする、そしてまた不足分は地金で輸入をする、スクラップもあるでしょう。問題は、国内の鉱山と鉱石製錬の位置づけを一体どう考えているのか、非常に重要な課題であると思うわけです。  同時にまた、国内鉱山における銅の平均的採算コストは一体どうなっているのか。上限下限そして平均、採算コストの分岐点というものが出ておるわけですが、国内鉱山の場合は、非常に条件が悪うございますからコストが高いのであります。この二点について説明を願いたいと思うのです。
  36. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 国内の鉱山あるいは製錬所をどの程度の規模に維持するかということは非常に重要な問題であろうかと思います。特に、国内鉱山と申しますのは非鉄金属の最も安定的な供給ソースであるといったところから、一定規模の維持あるいはその目標を設定するという御指摘については私は全く同感でございますが、現実にどの程度のレベルに引くか、あるいはそれをどのようにして実行に移すか、特に非鉄金属が国際性の強い物資であるがゆえに、そういったところも配慮して決めていく必要があろうか。御指摘の点は、私も趣旨としては賛成でございます。具体論をどう展開していくかということになろうかと思います。  それからコストの問題でございますが、御承知のように、主体鉱以外に随伴鉱も副生してまいるわけでございますので、主体鉱だけを取り上げまして正確な算定というのは非常にむずかしゅうございますが、一応売上高比率を前提としてコストを試算してみますと、銅地金コストにつきましては、国内の十七鉱山につきましてはトン当たり平均約五十三万円でございます。上限が六十五万円、下限が三十八万円、かなりの差がございます。それから、同様にして計算いたしますと、亜鉛地金の場合は平均約二十五万円、上限が三十万円、それから下限が十八万円。鉛につきましては平均約十六万円でございます。上限が二十万円、下限が十四万円。それぞれ銅、亜鉛につきましては製錬費が十万円ぐらい、鉛につきましては六万円でございますので、それを差っ引きますと山元におけるコスト、こういうことになろうかと思います。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日、国内鉱山と製錬事業の置かれておる実態というのは、もはや一時的不況によるもの、あるいはまた円高によるものではなくして、これからのわが国の産業構造の転換等をも判断して分析をしますと、やはり構造的な問題になってきている、こう理解せざるを得ないのではないか。だから、国内鉱山についても製錬事業についても、その位置づけを一体どうするかということが当面きわめて重要な課題になっておる。そして、そういう位置づけを前提にして、国内鉱山と製錬事業に制度的な政策を一体どのように構築をしていくか、このことをいま政府が具体論を示さなければならない段階に来ているのではないかと考えるわけです。そういう意味で、国内鉱山のような場合には、何といってもロンドン相場が三十万で運賃諸掛かりを加えて大体製錬三十三万円ぐらい、関税は一万五千円だ、こういうような状態の中で銅の相場、市場価格が決まってくるわけでありますから、一応そういう関係で国内鉱山にも手当てをしておるのですが、いま、日本の銅鉱山なら銅鉱山を対象にして見た場合に、コスト大体五十五万円程度の鉱山は維持をしていく、コストがずっと高くなっていけばやむを得ないと思うのですけれども、大体五十五万程度の銅鉱山は維持をする。そして、どれだけの規模になる、そのためにはどういう政策、手当てをするのか。もちろん相場には変動がありますけれども、円が二百四十円台で推移をする場合には、円に換算をして六十万とか六十五万なんという時代は私は二度と来ないと思うのです。そういたしますと、やはり合理化安定のための政策といいますか、あるいはまた鉱山を合理化、近代化していく、そういう安定対策といいますか、そういうオーソドックスな政策を出さなければ、国内鉱山はすべて閉山の憂き目にさらされるのではないか、そのために地域経済では非常に大きな問題が惹起するのではないか、こう判断せざるを得ないわけであります。したがって石炭についても政府は経験をいたしておるわけですが、今日置かれておる国内メタルの鉱山についてどのように対処されようとしているのか。私は、現在の、たとえば三十二万円、これに対して、関税その他の関係で製錬でもって十二万四千円程度見て、そこにまた差がある。この差の部分は、合理化安定資金といいますか、あるいはまた近代化、合理化といいますか、そういう方向である程度支えるという政策を出す以外に鉱山を維持することはもはやできないと判断するのですが、いかがでしょうか。
  38. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほど来お話が出ております現在の国際価格あるいはその中における円高基調ということを考えますと、御指摘のように、鉱山業自体が構造的な問題として意識せざるを得ない段階に入りつつあるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。  こういった国内鉱山なりあるいは製錬所のあり方につきましては、昨年の七月以来、鉱業審議会の中に政策懇談会を設置いたしまして、すでに数回にわたって検討を続けておるわけでございます。ただいま石炭並みのというお話がございましたが、石炭と非鉄鉱山との差等といったようなことも考慮しなければならないと思います。特に反面、石炭以上に国際性の強い物資であるということも意識してかかる必要があろうかと思いますが、そういった問題を基礎に置きまして政策懇談会での審議、その結果を待ってわれわれとしても対処してまいりたい、かように考えております。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 国内鉱山には金探事業団を通じて広域調査また精密調査に対しては二分の一補助をする、中小鉱山に対しては鉱床探査坑道補助金が二分の一、今度一〇%上がって実勢は四〇%程度、こういう制度があるわけです。だがしかし、今日の不況下に置かれておる国内金属鉱山の場合は、もう精密調査をするという意欲がぐっと衰えているわけです。投資が非常に下回ってきているわけです。たとえば鉱床を発見しても、鉱山が成り立つかどうか、そういう不安定な状態にあるわけでありますから、結局ボーリングなどの投資は予想よりも、予算上見ても非常に下回ってきている。ますます激しくなっていくんだと思うのですね。そういう点から考えても、のんべんだらりと懇談会で議論をしていくというだけであってはタイミングを逸するのではないか。そして、それぞれの鉱山はそれぞれの地域社会に密着いたしておりますから、こういう不況下、しかも失業者の多い中で社会問題を大きく引き起こすだろう、こう私は心配をいたしておるわけであります。  私は、石炭並みにいま政策を出せなどとは言っていないわけであります。問題は、たとえば坑道なら坑道を近代化していくための近代化資金といいますか、いずれか、要するに今日の平均コスト程度までの面について、最低、政策的に支える、こういう措置が不可欠であって、そのことなくしてはわが国の国内鉱山の維持はもはやできない、こう思うわけなんですね。いわば、どなたが集まって議論しても、問題の焦点は決まっているんだということです。政策的にどう組み立てるかということ以外にないんだ、こういうことで、いまエネルギー庁長官は懇談会でせっかく議論しておると言うのですけれども、では、その結論は一体いつ出るのか、態度を含めて御答弁願いたいと思います。
  40. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 非鉄鉱業につきましては、もう私から申し上げるまでもございませんが、鉱量を確保していくということは非常に大切なことでございます。そういった意味から、現在、御指摘のようないわゆる三段階方式によりまして探査、探鉱補助金制度の助成を拡充しておる、あるいはスライド関税を活用いたしまして一定の補給金を国内鉱山に支給しておるといったような方途を講じておるわけでございます。ただいま御指摘のように、ただ非常に苦境にあるわけでございます。抜本的な対策につきましては、先ほど申し上げておるように、政策懇談会で検討をいたしておりまして、この春ごろまでには一応の結論を得たいということで努力いたしておるわけでございますが、その間のつなぎ、ということの表現はいかがかと思いますが、御承知のように、雇用保険法、特定不況業種離職者臨時措置法あるいは円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、こういった緊急立法の制度を極力活用することによりまして、この間を対処していきたい。また、五十一年度から実施いたしております備蓄につきましても、本年度三百億を受けて、さらに来年度百五十億円程度の備蓄の積み増しを行いたい。かような緊急的、臨時的な措置と並行いたしまして、御指摘のように抜本的な対策の確立を急ぎたい、かように考えております。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は一つの考え方を提起したわけですが、特にこれは、やはり政策を立てるためにはどうしても安定臨時措置法といいますか、そういう法律が必要だと思うのです。昭和三十八年に法律があったのですけれども、これは廃止をされたわけであります。そういう意味で、いま長官からも答弁がありましたけれども、この制度的なものを支える、そういう意味において金属工業安定法といいましょうか、基本法というのは鉱業法の関係もありますから、やはり安定法という方が一番適切でありましょう、そういう立法措置をも早急にとらなければならない問題であると思うのですが、この点は大臣からひとつ御答弁を願いたいと思うのです。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 非鉄金属の現状につきましては非常に厳しい状態にありまして、それに対応する方法といたしましては、先ほど来長官答弁しておりますように、いろいろな補助政策、それから備蓄による対策、関税による対策、また緊急対策といたしましては今回の円高対策あるいは金融対策、いろいろな対策をやっておりますけれども、何分にも国内のコストが高いものですから、なかなか思わしい効果が出てこない、こういう状態で、非常に困った事態に立ち至っております。  抜本的にこれにはどう対処していけばいいのかということであります。審議会等でいろいろ対策は議論してもらっておるのですけれども、なかなか名案が浮かんでこない。しかし、いつまでもほっておくわけにはいきませんので、一体どうしたらいいのか。やはり審議会の審議を促進をしていただきますと同時に、通産省としても、これは積極的に対応していかなければならぬと考えております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 特にこれと関連して、アルミ製錬が今日施設を破棄をして、ある程度縮小して安定をさせる、こういうことも政府は考えておるようでありますが、非鉄製錬の場合、鉱石はいずれも発展途上国から輸入をいたしておるわけです。また、融資買鉱あるいはまた自主開発も今日多面的に行われているわけであります。そういたしますと、わが国の製錬事業につきましても位置づけをして、一体どの程度の製錬規模をメタルの種類に応じて確保していくか、こういう前提が確立されなければならないことも当然であります。だがしかし、製錬経費そのものがすべてドル建てでありますから、国際競争力から見れば、製錬費に占めるコストの内容が問題になってくるわけです。相場がもうロンドンで決まってしまうわけですから、最終製錬のメタルの地金の値段がドル建てで決まってしまうわけですから、円高のメリットは何もない。むしろ、円高が急激に来たから、人件費が円に換算して非常に急上昇した、あるいはまた、石油ショック以来、電力料金が大幅に値上げをして、もはや今日、エネルギーの多消費型産業では電力そのものが構造的な問題を抱えて、川下にあるそれぞれの産業がすべて構造的な極端な不況にさらされる、これがわが国の今日置かれておる実態であると私は思うわけであります。  その中で一番問題なのは何かと言えば、電力の問題であります。アルミの場合も、地金に対して見ますと大体三五%程度が電気料金でありますが、亜鉛の場合も大体同様程度のウエートを持っておるわけです。銅の場合においても二十数%前後、二一、二%ぐらいのウエートを持っている。これを外国のドイツやイギリス、フランス等の電力費の関係でずっと比較検討してまいりますと、ずいぶん差が出ておるわけです。御承知のようにイギリス、フランスの場合には国有国営であります。ドイツの場合には、千百ぐらいのいわゆる発電電気会社があって、公私混合がそのうちの大体七百社ある。したがって、こういう特定の業種に対しては、正面価格とは違って、特定契約をして、大体五、六円程度でもって電気を送っておる、これが西ドイツの実態であります。フランス、イギリスの場合も、大体五円ないし六円程度の電気料金。カナダのごときは、水力がありますから一円ないし二円。最終価格がLMEで抑えられるわけですから、このコストの調整がある程度図られなければ国際競争力は出てまいらないわけであります。まさしく、そういう意味で、これもまた制度的に何らか対策を立てなければならない実態にあるのではないかと私は思うわけであります。  そういたしますと、いまの九電力は一つの原価主義で来ておりますから、この体系を崩すことは大変だと思います。だが、一方製錬側は、電気のピーク時については、たとえば二カ月なら二カ月製錬所を休む、こういうような措置で協力をする。あるいはまた夜間送電をふやしていく。夜間と昼間で、現在は九円ちょっとになっているわけですね、製錬の電力費は。ですから、さらにこれを強化をして、こういう面について電力会社に協力をする。そういう関係で電力会社も特定の料金を設定をしている。だが、いま国際比較でいったら、五円ないし六円まで下げることは大変むずかしいと思うのです。わが国の場合は、幸い九電力以外に電発の会社があって、これが電源だけを持っていて、九電力に卸売料金でもって電気を卸している。そうしますと、電発そのものに対して何らかの政策をとることによって、今日の九電力の電力料金体系を崩さないで、国際的に見てまあまあという電力料金が大体設定されることが可能ではないか。私は、この対策として私自身そういう判断をし、これは提言を含めて、通産省の見解を承りたいと思うのです。いかがでしょうか。
  44. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 二つの点について御指摘があったわけでございますが、まず一つは、現在の料金制度のもとにおきましても、御指摘のようないわゆる負荷調整によるコスト逓減分を料金に反映させる特約料金制度というものがございまして、この特約料金制度につきましては、非鉄業界では大幅に活用いたしております。その結果、現在キロワットアワー当たり大体八円か九円程度にまでなっておるということでございまして、これはまさに先生の御指摘になった線が現実のものとしてあるということでございます。  それから、電発を活用してさらに料金を安くできないかという御指摘でございますが、御承知のように電発は、電源開発促進法に基づきまして電源の開発と電気事業者に対する電気の供給、いわゆる卸事業をやっておるということでもございますし、あるいは公共料金の原価主義あるいは公平の原則といったようなところからの制約もございますので、御指摘のようになかなかまいらない点もあろうかと思います。ただ、非鉄金属において、電気料金のコストに占めるウエートが非常に高い。これに対して、制度的な面も含めて何らかの措置が必要だという声も非常に強くなってきておるのも事実でございますので、御趣旨を体してわれわれも検討いたしたいと思いますが、ただ、電発で云々ということは、現実論として非常にむずかしいということになろうかと思います。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 いずれにしても、たとえば発展途上国に、鉱石を採掘してそこに製錬所を建てるとすれば、政情が不安であって、わが国のベースメタルあるいは基礎物資の安定供給上問題がある。鉱石を輸入しなければ、これまた発展途上国との協力関係で問題がある。また、輸入をふやす、増大をさせていくという政策からも矛盾が出てくる。こういう点を考える場合に、一定の規模の――しかもわが国の製錬所というものは、諸外国に比べて非常に効率のいい、しかもオイルショック以前に大体整備が終わっておる製錬所でありますから、一定規模をやはり位置づけをして安定させていく、そのことによって発展途上国からも鉱石を輸入する、経済協力を高めていく、資源の安定確保を図る、こういう総合的な角度に立って製錬の問題を考える場合には、いま長官も述べられたけれども、何らかの形で、最もコストの中で、しかも最終製錬費がドルで押さえられている製錬事業については、措置だけはとらなければならぬ、何らかの対策をとらなければならぬということだけは意見が一致するのではないでしょうか。これは大臣、いかがでしょうか。
  46. 河本敏夫

    河本国務大臣 根本的には、国際競争力が非常に弱いあるいはまた国際競争力を完全に失った産業に対して、わが国として一体どう対応すべきかという基本問題があるわけですね。でありますから、鉱業審議会の結論が長引いておりますのもこの問題についての議論が分かれておるからでございます。  それから、電力の問題は確かに御指摘のとおりです。しかし、根本的には電気事業法がございましてコスト主義になっておりますが、そこはある程度特約料金というようなものもございますから、多少の工夫はできる余地はございます。それから電発は、日本の電力全体に占めるシェアが現在非常に少ないわけです。その力は非常に弱い。だから、電発にある程度工作をさせてみましてもいかほどの効果が出てくるか。それからまた法律上の制約等もございますので、急速にはまいらない、なかなかむずかしい問題がございますので、そういうことを全部含めまして、総合的に何らかの対策を考えてみなければならぬと思っております。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国のこれからの経済構造が、エネルギー多消費型の産業構造から省エネルギー構造に転換をしたい、産業転換を図っていかなければならない、これは長期的に見ればまさしくそのとおりだと思うわけです。しかし、いまの九電力の体制で、電力料金はまちまちの形で、一体産業転換や工場の適正配置やあるいはまた構造転換がスムーズにいくだろうか、必ず最後はエネルギーに問題がぶつかってくると思うわけです。電源で見ますと、東京電力が百とすれば北海道電力は十分の一ですよ。北陸それから四国電力は十分の一です。非常にアンバランスがあるわけですね。関西と東京を比べると大体三対二ぐらいですか、中部と比べると三対一ぐらい。規模からいっても、電力会社の力は非常にアンバランスになっているわけです。そうすると、わが国の産業構造を転換させていくという場合には、今日の九電力体制をそのままにして一体できるのかどうか。そういう意味で、全国一本にせいとは言わぬけれども、三つぐらいにいま電力そのものを再編成をしなければならない、そういう検討の段階に日本経済は置かれておると私は判断するのですが、特に産業構造転換に非常に熱意を燃やしておる通産大臣見解を承っておきたいと思います。
  48. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは確かに問題点なんです。であればこそ、いま電力の広域運営ということを現にやっておるわけですね。そして、その方向はますます強くなりつつあるわけでございますが、これを三社ぐらいにまとめたからといってどの程度の効果が出てくるか。そういうことよりも、現実問題としましては、広域運営をもっと活用していくことによって現時点における効果を高めていく、こういうことの方がやはり先決ではないかと考えております。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日、電源立地が非常に困難をきわめている。東京で消費をする電力を東北で電源を求めなければならないということは、幾ら広域融通電力体制をとっていても電源の配置は自分の供給範囲外にはみ出していくというのが実情でありますから、そういう住民感情等も考慮した場合に、電力問題、電力行政についてはやはりいま検討しなければならない段階に来ている、こういう理解でありますので、ひとつせっかくの御検討を私は願っておきたいと思いますし、今後のそういう基本的な対策なくして、わが国の産業の適正配置や工場の分散や、あるいはまた産業構造の転換はむずかしいのではないかということを指摘をしておきたいと思います。  この際、特に、先ほどの製錬と関係をしまして、わが国のS源の問題であります。  歴史的に、非常に過剰になってみたり極端に少なくなってみたり、波を打ってきているわけですね。今日ではS源は不足ぎみであって、台湾に輸出をされている、韓国輸出をされている、逆に市場になって今度は日本に入ってくるのではないか。そのS源の六〇%は、先ほど申し上げました非鉄製錬所が供給しているわけです。そういう意味でも、製錬所の位置づけというのは非常に重要であります。むしろ、こういうバランスのとれているときに、S源の交通整理といいますかルールをつくることが正しい。何回もやってきて、これが調子がよくなるとすぐ捨ててしまう。こういうことを繰り返しておるわけです。そういう意味で、たとえば回収硫黄は、今日の輸出の傾向に従ってそういう方向で一つのルールを敷く。国内の製錬関係については、一定のシェアについて安定的に確保させる。そうして、さらにS源がふえてきた場合には、これは輸出の方向に分担して向けていく。こういうルールをいまのうちに決めないと、過剰になったら交通整理ができないと思うわけです。そういう意味で、S源の対策をいま速やかにルールをつくるべきだ、私はこういう意見ですが、いかがですか。
  50. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 S源につきましては御指摘のように、二、三年前まで非常に過剰であって、これをどう処理すべきかということで苦心いたしておりました。それぞれの研究会等をもって検討しておったわけでございますが、幸い、ただいま先生からも御指摘ございましたように、昨年、ことしと非常に輸出が伸びまして、どちらかというと硫酸、硫黄ともに国内では需給が非常に堅調になってきておる、こういうことでございます。さようなところから、せっかく開発いたしました輸出市場を今後とも維持していくという努力も必要かと思いますし、さらに、今後ともS源も増大してくるわけでございますので、新規需要部門の開拓ということもまたきわめて重要ではなかろうかと思います。そういったことで、一喜一憂することのないような形でS源対策を進めてまいる、かように考えております。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの通産行政の中で資源エネルギー庁ができて、かつて鉱山局といってメタルの関係そして石油の関係一つの局で行政が担当されておったわけですが、今日、国内鉱山や製錬あるいは採石あるいはいまの石灰石ですか、こういうもの全般が、一つの鉱業課で把握されているわけです。そうして通産省は、基礎産業局の方で金属課というものが設けられている。かつては鉱山局にあったわけですね。だからニッケルだとかアルミニウムは全部金属課の方である。国外的に見ると、金探事業団等の担当で見るとすべて鉱山が存在しているわけですね。わが国でも自主開発をしている。これはやはり一元化すべきではないか。そうして鉱山部をつくって、いまの金属課、鉱業課、かつては鉱政課というものが存在したが、私は、資源の安定確保からいってもこのウエートは非常に高いと思うわけです。そういう意味で、いまの通産省の機構は、私に言わせれば間違っているのじゃないか。これは改善すべきだと思うし、これからのわが国の非鉄金属政策を考える場合においてもそれだけのウエートはあると思うのですが、私のこの見解について大臣の考え方を承っておきたいと思います。
  52. 河本敏夫

    河本国務大臣 確かにその問題はくすぶっておるのです。御指摘のような点がございます。  ただしかし、現在の制度ができましてから何年か経過いたしまして、まあまあいまのところ順調に動いておりますから、何もこの際機構いじりをしなくても、業務が順調に動けばいいじゃないかということで現在はやらせておりますが、一つの課題には違いございません。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 一点だけ石炭問題について伺っておきたいのですが、幌内の炭鉱の復活は、世界に類例のない水没炭鉱が今日復活して、来年の四月、そして下期になれば四千五百トン体制は一応見通しがついた、こう言えるわけです。ところが、北炭全体として見れば、いま非常に苦境に立っておるわけです。労使ではせっかくの交渉をしながら三山分離――北炭の場合には空知を入れて五山あるわけですから、わが国の大手の十四山のうち五山ですから、ウエートが非常に高いわけです。北炭の崩壊は即石炭産業の政策崩壊につながるというほどウェートがあるわけです。そういう意味で、今日北炭の問題は、石炭政策にとって非常に重要なポイントになってまいりました。  私は、北炭問題と需給の調整の問題、それから炭価の動向というものが、今年の石炭政策の課題になるだろうという見解を持っているわけですが、そういう意味で、労使のせっかくの交渉で一応の方向は出ているのですけれども、どうもその内容を検討すると、分離された炭鉱が自立してやっていけるような体制にはない。いずれ通産、大蔵が審査をして、この分離を認めるかどうかという最終判定を下すのでしょう。そして、北炭の場合に賃金の欠配をせざるを得ない、こういう状況も明らかになりつつあるわけです。もちろんこれは、さらに企業そのものの責任において検討しなければならぬ部面も非常に多いことは承知をいたしております。だからといって、タイミングはそう長く待つことができないのではなかろうか。少なくとも三月中には、いずれにしても北炭の問題については決着をつけなければならぬというのが、大体関係者の見ている、恐らく政府もそう見ているのではなかろうかと思うのですけれども、この北炭の問題について今後一体どう対処をされるのか、この際基本的な考え方を承っておきたいと思います。
  54. 河本敏夫

    河本国務大臣 北炭は、どう再建するかという大きな課題に直面しておりますが、まず労使双方で合意点を求めるということが第一だったと思うのですが、これはどうやら落ちついたようであります。  そこで、労使双方の意見が一致いたしますと、今度は主力銀行と、それじゃその方向で援助してもらえるかどうかという話し合いをまず詰めなければいかぬと思います。現在はその段階だと思うのです。主力銀行との話し合いが詰まりますと、何らかの案を通産省に正式に提示されると思います。その場合は、内容をよく検討してからの判断にはなりますけれども、現行制度内でできるだけの援助はしていきたい、こう思っております。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の暮れからの問題でありますので、通産省としても受け身ではなくして、ある程度行政指導的な面でもそういう話し合いとかそういうものを促進されるように、この機会にせっかくの努力を要望いたしておきたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、残った時間、次の質問に移っていきたいと思います。  実は私は、製造物の被害による消費者保護という問題について、残された時間、見解を承りたいと思うわけです。特に私は、厚生省ではすでに四十八年以来、食品事故による健康被害者救済の制度化研究会が設けられて、そしてこれが中間報告がなされて、それぞれ四項目にわたる一つの問題点、方向性というものが打ち出されて、そのうち、一の民間の損害賠償の責任保険制度、そして四の特定事故救済事業制度、この点を併用することが非常に有力だということが報告されたわけですが、その後、審議の内容というものはこれはもう一切未公開になっておって、審議の状況はわからないわけです。一体この結論はいつ出るのか。また、資料の公開というものはする意思はないのかどうか。結論が出れば直ちに立法化の方向になると思うのですが、この点のめどについて伺っておきたいと思います。
  56. 山中和

    ○山中政府委員 御指摘のように、食品被害の救済につきましては、四十八年以来専門家の研究会をやっておるわけでございます。ただいま、四十九年にこれの中間報告が出ておるわけでございます。御指摘のような四項目が出ておりますが、これは食品の事故ということに関して総論をやったわけでございます。  実は食品につきましては、ほかのものと違う特殊性がございます。それは、第一点は、食品は本来安全なものであるということでございます。また、第二点としまして、通常加害者が必ず特定できるということがございます。つまり、薬のように処方とかあるいは適応とか、そういうことはないわけでございます。したがいまして、加害者が必ず特定できるので、民法上損害賠償の責任の原則というのができるわけでございます。したがいまして、ほかのいろいろな被害補償と違う、非常に根本的な問題点がございます。したがって、その辺の議論がずっと続けられておるわけでございまして、なおこの検討を続けているという状況にございます。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 検討を続けられるのも結構でありますけれども、非常に長い時間かかっているわけです。できれば、大体いつごろこのまとめができるのかという点と、あわせて、医薬品被害の救済に関する法律案大綱が長年かかってようやく昨年の暮れ発表されたわけであります。  私は、この法案の内容を検討いたしますと、どうも被害者補償という原則から外れている法案だ、こういう批判を実は持っているわけでありますが、だがしかし、一月に大臣は、この法律案は今国会に提案することにならないだろうというような趣旨見解の表明があり、薬務局長の方は、その後今国会に提出の運びになるだろうというような見解を出して、大臣と局長見解が食い違っておったという経過も実はあるわけでありますが、この法律案は今国会に一体出せるのか出せないのか。そういう経過から考えて、この機会に厚生大臣から明確にひとつ答弁をいただきたいと思います。
  58. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私どもはできるだけ早く成案を得たいと思っておるわけでございますが、そういう意味から、局長が今国会には何とか間に合わせたいというような答弁を申し上げたかと思います。  しかし、堀り下げていろいろやってみますと、なかなか問題点がたくさんございまして、一つには、やっぱり薬事法の改正までいかなければいかぬかなというようなこともありますし、それから、国のかかわり合いの程度というものをどの程度一体持っていかなければいかぬのか、そういう点もいろいろございますものですから、今国会はとても間に合いません。これはできるだけ早く成案を得て、恐らく来年の通常国会には間に合わすようにしたい、もう幾ら急いで検討いたしましても、ちょっと四月、五月までには間に合いかねる、こう思います。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 せっかく国民が期待している法律でありますけれども、何か経過からかんがみると、昭和四十八年ごろには立ち往生してしまって、その後やってきてようやく成案ができるという段階で、今国会に間に合わないということについては、非常にわれわれとしても遺憾に思っておるわけでありまして、せっかくの厚生省の努力をお願いしておきたいと思います。  私はこの際、一九六五年にはすでにアメリカで製造物無過失責任の法案が成立をし、今日では一部手直しが三十州のそれぞれの州政府の中で行われているという段階を承知いたしておるわけです。しかし、EECにおいても製造物の被害に関する消費者保護という点を重要視して、活発な議論を続け、今日一定の草案をつくり、各国がこれを検討している、こう承っておるわけでありますけれども、この製造物被害による消費者保護についての最近の欧州の動向はどういう状況になっているのか、承っておきたいと思います。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 全般的な消費者の被害救済制度の問題につきましては、すでに政府の消費者保護会議におきまして制度の確立の検討を進めるという基本方針が確認されておるわけでございます。  ただいま御指摘の製造物被害の問題につきましては、昨年、政府関係省庁から外国の状況の調査をいたしました。それによりますと、ヨーロッパでは、国によりまして多少事情は異なっておりますけれども、無過失の立証を挙証責任を転換いたしましてメーカー側に負わせるという判例が確立しつつある、したがいまして、ECを中心に法的にこれをどうすべきかというようなことについての調整が行われているようでございます。先ほど岡田委員が御指摘のように、アメリカでは判例あるいは法制も進んでおるようでございますけれども、今度は責任を保険するというメーカー側の問題があるわけで、その保険料が非常に急増しているというようなことから、運用面でそれをどう是正するかといったような問題になっておるというふうに、調査団は報告をいたしております。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから……。ECの場合には単一草案を示して、各国がこれを受けてそして立法化の準備の段階に入りつつあるわけですね。そうしますと、国際貿易の関係からいっても、アメリカ、ECの面を考えますと、当然わが国も、少なくともECと同一歩調の方向で製造物被害による消費者の保護ということを立法化しなければならないのではないか、私はそういう気がするわけであります。したがって、ECと同一歩調のテンポでこれらの法律の成案を得ていくということになれば、相当わが国の場合も具体的に取り組みを開始しなければならぬのではないか。経済企画庁はすでにアメリカ、ヨーロッパ、いずれも調査をしておられるわけであります。もちろん保護立法としては、わが国の消費者保護基本法に基づくそれぞれの関係法もずいぶんあるわけでありますから、これらも十分統一的に把握できる方向で、やはりECと同じテンポでこの法制化の作業を進めるべきだ。非常にむずかしいようでありますけれども、入り口にとどまって、どうも最近動きがないわけですね。やはりECのテンポと合わせて法制化に踏み切っていくべきである。そういう努力を経済企画庁を中心にして関係各省の協力を得て、ECにおくれをとらない方向で立法化すべきではないか、こう私は思っておるわけです。  すでに、製造物の責任法研究会といいますか、我妻栄教授初め九人の法学者は製造物の責任法の要綱の試案を発表しているという、過去の経過もあるわけです。そういう意味で、まさしく、わが国における製造物被害における消費者保護の立法というものは、日中じゃありませんけれども機は熟しつつあるんだ、やはりヨーロッパと同じように、ECと同じような方法でテンポ、歩調を合わせながら立法していく認識とそういう時期を迎えているんだ、こう私は思うのですが、この法制化の問題について長官はどのように考えられておるか、この機会に決意を承っておきたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 消費者に対して利益になるような品物をつくらなければならない、不利益になるような物をつくってはならないというのは、企業の社会的な責任の基本であると私は考えておりますし、またヨーロッパにおきまして、ただいま岡田委員の御指摘のような動きが高まっておることも聞き知っておるわけでございます。しかし、その場合、企業が無過失であってもなおその責任をどのようにして、どの程度に問うべきかということに問題は帰着をするわけでございますが、そのような挙証責任のいわば在来からの観念の転換ということになりますと、伝統的な国民の物の考え方の成熟という問題が一つあろうと存じますし、それから御承知のように、民法の基本的な考え方は従来そういう考えをとっておりませんので、相当基本的な法制上の問題にもなるわけでございますので、私どもとしましては、消費者の立場というものを大事にしなければならないことは御指摘のように当然のことでございますけれども、やはり国民的なコンセンサスの成熟と申しますか、そういったようなものを忍耐強く調整していくと申しますか、何分にもあちこちに与える影響が大きゅうございます。基本の法制の問題でもございますから、やはりそういう情勢を待つということが大切ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんからこれで終わりますけれども、消費者の製造物による被害の意識については経済企画庁も調査をされておるわけですが、非常に高まっておるわけですね。製造物による被害意識というものがいま消費者の中に非常に高まっておる。こういう状況にあることは、私は大体、経済企画庁の調査でも明らかではないかと思うわけです。だがしかし、実際身体に損害を受けてこれを訴訟で解決をするということになれば、力の弱い消費者は泣き寝入りをしなければならぬ、こういう状況にあるのだと思うのです。そういう意味で、国際的な趨勢からいっても、また、わが国の貿易立国というような立場からいっても、EC・日本日本アメリカという関係からいっても、消費者の被害について適切な補償が迅速に確立できるということは国民待望している問題でもありますし、私はそういう意味でECの統一草案について非常に注目をいたしていますし、各国のこれが草案を基礎にしての立法化についても非常に注目をしなければならぬ、こう思っておりますので、経済企画庁だけではできないわけですね、各省にまたがる問題でありますが、ひとつせっかくの努力をこの機会に強く期待をし、要請を申し上げて、質問を終わりたいと思います。大変ありがとうございました。
  64. 中野四郎

    中野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、石野久男君。
  65. 石野久男

    石野委員 この際、地震の問題について各関係大臣にお尋ねしますが、地震予知観測体制の一元化という問題についての政府の考え方をまず聞かしていただきます。
  66. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 ただいま、地震予知体制の一元化という問題について政府の考えを言うようにという御発言でございますが、これに関しまして、一応現在の地震予知体制の状況について簡単に申し上げたいと存じます。  御承知でございますが、政府は去る昭和五十一年に内閣に地震予知推進本部を設けまして、地震予知の研究、観測及びこれに係る実務を総合的かつ計画的に推進してきているわけでございます。この推進本部の構成は、科学技術庁長官を本部長としまして、関係省庁八つございますが、この省庁の事務次官によってこの本部が構成されまして、関係省庁の職員で構成されます幹事がこれを補佐する形になっております。  ところで、この研究観測につきましては、文部省にあります測地学審議会の地震予知計画の建議の線に沿いまして、気象庁それから建設省の国土地理院並びに科学技術庁にあります国立防災科学技術センター等の機関及び大学が緊密な連携のもとにこれを実施しているわけでありまして、各機関、もちろんいま申し述べました大学も含んでおりますが、この観測データは推進本部の決定に基づきまして気象庁に集中されておりまして、気象庁においては二十四時間の常時監視が行われ、必要に応じまして地震情報として発表しているわけでございます。  先般の伊豆大島近海地震に際しましても、気象庁から、きわめて不十分かもしれませんが、地震情報が流されて発表されているという状況でございます。  ちなみに、この……(石野委員「わかっているのだから、一元化の問題についての意見だけ」と呼ぶ)一応申し上げまして、そういう状態でございまして、われわれとしましては一応一元化ができていると思っておりますので、これをさらに強力にひとつ推進してまいりたい、このように考えております。
  67. 石野久男

    石野委員 強力に進めるためにどういうような措置をなさっておりますか。
  68. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 いま申し上げましたように、各研究観測が行われておりますが、そういう研究観測を一層強力に推進いたしますために、ことしも予算措置におきまして、四十七億ですから、昨年より十億ほどの予算増を計上しまして、それに努めているわけでございます。
  69. 石野久男

    石野委員 長官は現状で一元化ができているというふうにお考えなのですか、それとも一元化をするために問題があるとお考えなのですか。
  70. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 一応できていると思っております。
  71. 石野久男

    石野委員 一応できている、どういうような体制でそれができているという自信を持たれるのですか。
  72. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 大変むずかしいお尋ねでございますが、研究観測はそれぞれの機関においてやっておりますから、これを緊密に連絡調整いたしまして、それで得ました情報を気象庁に一貫して集中しまして、それから一元的に情報が発表される、こういう状態にしておりますので、一応できている、このように考えておるわけでございます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕
  73. 石野久男

    石野委員 地震についての予知観測をするに当たって推進本部ができておることは、百も承知しているのです。しかし、先ほど大臣が言われておるように、内閣には科学技術庁、国土庁、自治省それから運輸省、建設省、通産省、文部省と、それぞれ地震について所管がずっと違っておるのですよ。そして、それぞれ調査したものが一元的にどのように集中されておるのかということ、また、それで十分なのかということについて、政府はもう一元化はできているというふうにお考えになるのかどうかということを聞いているわけなんですから、その点をお答えいただきたい。
  74. 園山重道

    ○園山政府委員 御説明いたします。  ただいま大臣から御説明いたしましたように、体制といたしまして、地震予知推進本部をつくりまして関係各省庁密接な協力をいたしておるところでございます。先生御指摘のように、多くの省庁がこれに関連いたしておるということは、地震予知というものがまだ確立された手法という段階ではございませんで、それぞれの機関が、たとえば気象庁は従来から地震の震源決定のための地震計の観測網、あるいは国土地理院は地図をつくるための測量といったものを持っております。こういったそれぞれ特色を生かしてやっておりますが、先生御指摘のように、データというものはやはり集中されなければなりませんので、この地震予知推進本部が昨年決定をいたしまして、それぞれの機関の観測データは気象庁に、できればテレメーターで即時に伝わるように集中するということで、現在、五十二年度及び五十三年度計上いたしております予算によって、できるだけのデータを気象庁に集中するような準備をいたしておるところでございます。  このようなデータを集中いたしまして、それぞれ協力して地震予知を推進していくという段階でございまして、いずれ地震予知の技術が完全な実用化と申しますか、そういう段階になりました場合には、先生御指摘のような何らかの一元的機関というものを考える段階も来るかと思うわけでございますが、現在はそのような状態で、各機関がそれぞれ協力してそれぞれの特色を生かして実施しておるということでございまして、大臣が申し上げた、一元化ができておるというのは、その調整を推進本部でやっております。各省庁それに協力していただいておりますということでございます。
  75. 石野久男

    石野委員 推進本部でその調整をしておるということだけでは、推進本部の実際の仕事の内容とは違うのでしょう。推進本部は情報を集めるためにいま努力しているだけであって、体制を固めるための仕事をしておるわけじゃないのでしょう。
  76. 園山重道

    ○園山政府委員 御指摘のように、実際に予知観測を行い、また、そのデータを集めましてそれを判断するということは、それぞれ機関がやるわけでございますが、地震予知推進本部といたしましては、それがどうすれば一番よく機能するかということでまず調整をいたしまして、それから現在、将来の地震予知の体制はいかにあるべきかということは、この推進本部の中で検討を進めておるところでございます。  また、先ほど大臣からも御説明ございましたけれども、文部省にございます測地学審議会が、五十四年度から始まります地震予知の五カ年計画を現在作成をしておられるところでございまして、これが近々結論が出るということでございますので、そういった結果も踏まえて、今後の予知体制はどうあるべきかということは鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  77. 石野久男

    石野委員 官房長にお尋ねしますが、地震対策推進本部は内閣総理大臣がこれを総括しているわけですね。事務の関係はこれは科学技術庁長官がやっておるわけでしょう。だから、実際には地震対策本部というのは総理大臣のもとで、総理が総括して仕事の方は官房長官がやっておるのだが、ただ、機構の一元化という問題になって、地震に対する一元化の必要性を判断するのは総理ですね。この一元化の問題についての総理大臣の意図あるいは内閣の方策、仕事というものはどのように進んでおるのですか。
  78. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま地震対策本部というのがあるわけではございません。中央防災会議で大地震緊急対策要綱をつくって、そして一元的に対処しておる、中央防災会議でそういう対応をしておるということで、本部を設けておるわけではないわけであります。中央防災会議の議長は総理でございまするから、総理が責任を持っておられることは事実でございます。
  79. 石野久男

    石野委員 そこで、地震については、これだけ各省にまたがって分かれておりますると、予知対策本部の仕事もさることながら、機構的にもこれを一元的に統括するということの必要性があるように思われるが、そういう点については、いま政府はどのように対策を持っておられるか。
  80. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この東海地震問題が起きましてから、その緊急事態というものが予測されるということで、中央防災会議で現在それを一元的に処理をしていこうと、こういうことでありまするが、この基本になるのは御承知の災害基本法だと思うのであります。その災害基本法を検討してまいりますると、きょう最初に御質問の地震予知ということについては基本法は十分対応しておらない、こういうことで、全国知事会などが地震特別立法を要望しておる。したがって、それを受けまして、また先般の伊豆大島近海地震のこともございまするので、今回地震立法をしよう。そのことによって、御質問の御趣旨の地震予知につきましては完全に一本化が図られるもの、こういうふうに私は見ております。
  81. 石野久男

    石野委員 地震に対する立法の問題は、今国会中に政府は提案する予定を持っているのですか。
  82. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 目下準備を進めておりまして、近い機会に意見調整ができ、提案の運びに至れるものと思っております。
  83. 石野久男

    石野委員 近いうちというのは、今国会中に出すという意味ですか。
  84. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 そのようにおとり願ってよろしいと思います。
  85. 石野久男

    石野委員 特に今回の伊豆地震はいろいろな教訓をわれわれに与えておりますが、特にこの地震と断層の問題はきわめて密接な関係がある。ことに伊豆の場合、この断層の被害というのは各所に出ておって、東大の伯野元彦助教授は先般、名前は忘れましたが伊豆のトンネルの視察をして、その際の実況をNHKと共同で報道しておりました。恐らくごらんになったろうと思いますが、断層が地震によってどういうような影響を与えるかということについて、鉄道の湾曲した状況が映し出されておりましたけれども、私は、この際断層問題について、政府は一日も早く調査を全国的に完備しなければいけないと思うのです。先般も断層の問題について、全国の地図を早期に完成すべきであるという要請をしましたが、ラフなものであれば年度内にはできる、けれども精細なもの、あるいは五十万分の一とか二十万分の一というのはなかなかできにくい情勢にあるやに承りました。これは、一日も早く密度の細かいものを全国的に調査、整備すべきであると思いますけれども、その問題についてどのように指導なさっておられるか、ひとつ大臣の御所見を承りたいと思います。
  86. 窪田雅男

    ○窪田政府委員 お答えいたします。  活断層と一口に申しましても、御承知のように、これは約百八十万年前以降に活動いたしたことのある断層ということでございまして、仮に活動する可能性のあるものと申しましても、その活動の平均的な時間的な間隔は約千年から数千年というふうに言われておるわけでございます。そういうことでございますが、何と申しましても活断層の図の作成につきましては、地震の予知という点から申しまして活断層の調査ということが非常に重要な意味を持っているということは申すまでもございませんので、この活断層図の作成に当たりましては、活断層等についてのデータが十分に蓄積されている地域と、それから、政府の地震予知連絡会によりまして地震発生に関する観測の強化が必要であるというふうに指定されております地域を重点的に取り上げまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。なお、作成いたします活断層図の縮尺につきましては、当該地域における活断層の分布状況などを考慮いたしまして、縮尺二十万分の一ないしは五十万分の一程度のものをつくっていくという方針で進めております。
  87. 石野久男

    石野委員 この活断層の所在の問題は、地震と非常に関係があるし、そしてまた、伯野助教授は、伊豆の調査の結果から、活断層の上に公共建築物をつくることは避けるのがよろしいと、特にこのことを声を大にして強調するというように述べておりましたが、この断層と公共施設との関係、これはもうそれが古いものであろうと新しいものであろうと、避けるべきであろうという意見について、どのようにお考えでございますか。
  88. 窪田雅男

    ○窪田政府委員 お答えいたします。  先ほど申しましたように、活断層と申しましても、それが地震との関係等で一律に危険ということではなくて、活断層の規模とかあるいは活動の可能性につきまして千差万別であるというのが実情でございます。また、その上に建てられます建造物とか施設の性格によりましてもその危険度は異なるものでございまして、結論的に申しますと、ケース・バイ・ケースで危険性の判断がなされるべきであろうというふうに考えるわけでございます。
  89. 石野久男

    石野委員 そのときの規模というのは、結局断層の幅、長さということを意味するのですね。
  90. 窪田雅男

    ○窪田政府委員 さようでございます。
  91. 石野久男

    石野委員 断層が非常に規模が大きい場合、これは公共施設については非常に重大な関係を持ってくる。当然のこととして、私は原子力発電所との関係を考えるのです。原子力発電所が断層の規模の大きい地域に設置されるということになりますと、危害が非常に大きくわれわれにのしかかってくるわけですから、その意味で、私は先般、伊方の発電所の沖合いにある海溝、いわゆるみぞの問題で、この規模は非常に大きい、長さが約二十五キロないし二十七キロにわたる、幅が五百メートルから一キロに及ぶところの海溝がある。この海溝が中央構造線に関係があるであろうという心配を地元の人がしておる。したがって、政府や、あるいは電力会社が、その海溝は中央構造線とは関係ないと言われても、地元の人々は、いわゆる断層図の中央構造線が通っているものとの関係が非常に密接に感じられるので、ぜひひとつここをボーリング調査してくれという要請をしておるわけです。  私は、先般も、中央構造線の問題は非常に重大であるので、政府や、あるいは企業、四国電力が、というよりは、むしろ原子炉安全審査会が、それは大丈夫であると言っても、地元の方々が、自分たちでその海溝の調査を魚群探知機を使ってやっているわけですから、そしてそれが皆さんも、この前私が示しましたように、魚群探知機を使って調べた結果によると、先ほど言ったように大きな、二十数キロにわたって幅一キロに及ぶものがあるということがわかっているのですから、これはぜひひとつ調査すべきであろう。調査をして、もし政府やあるいは企業の側が言うように中央構造線との関係がないということになれば、それにこしたことはないのです。しかし、もしも住民の諸君が一生懸命に調べて、これは中央構造線と関係があるという事実がはっきりしてくれば、これは大変なことになってまいります。  この際、私は科学技術庁長官にお尋ねいたしますが、この地域のボーリング調査を地元民の要請するようにする考え方を、この前は考慮すると言われましたですが、どういうふうに考慮された結論を持っておられるか、お聞かせを願いたい。
  92. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 先般来たびたび、この問題に対して先生からきわめて御熱心な御発言がありますので、その御発言趣旨を体しまして、私といたしましても連日考慮いたしましたし、それから部内でもこのことは慎重に検討いたしたわけでございます。それにつきまして、現在ボーリング調査を直ちに実施するということは適当でないと考えているわけでございます。
  93. 石野久男

    石野委員 なぜ適当でないのですか。
  94. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 少々長くなりますが、御容赦願いたいと存じます。  ボーリング調査といいますが、簡単なことで、いま地震の地形図でもはっきりしてないような中央地震帯、そういうものを探査するということはほとんど不可能に近いと考えているわけであります。
  95. 石野久男

    石野委員 地震の云々という話がありましたが、地震予知連絡会は、すでに九カ所にわたるところの地域を指定して観測をさせております。その特定観測地域と観測強化地域あるいは観測集中地域がありますが、伊予灘及び安芸灘はいわゆる観測強化地域として指定されておる地域です。佐田岬はその中にごっそり入っているのですよ。なぜ、地震について関係がないなどということを大臣は言うのですか。なぜあなたは、こういうところを観測強化地域として指定しておるのですか。
  96. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 地震に全然関係ないということは言っておりません。
  97. 石野久男

    石野委員 それでしたら、観測強化地域の中にこの地域が入っておるわけです。そして地元の諸君は魚群探知機を使って海溝を調査している。政府や、あるいは企業の側の言い分は、この海溝は潮流によってできたものだという意見です。これは裁判所でもそういうふうに言っているわけです。しかし、深さ六十メートルの地域、そういう海底で幅五百メートルから一キロにわたるところが潮流でこういうようなものができるということは、だれもそれを認めることはできない。むしろ、この地域は、地質学者の言葉をかりて言いますると、氷河時代に恐らくこの付近は中央構造線に沿うてこういうようなものができておると見るほかない。それは吉野川の流れがそうであるように、この地域は氷河時代にそういうものであったろう。それで、氷河が溶けて、いま瀬戸内海が水浸しになっておりますけれども、御承知のように佐田岬はこの中央構造線に従って、この岬の先がずっと一直線になっております。岬の入り江というのはほとんどこの中に入っておるわけです。これはほとんど中央構造線に沿っているのですよ。ですから、これに対する住民の、やはり構造線との関係があるのではないかという心配は当然のことだと思うのですよ。大臣は、その必要がないという理由をもう一度はっきり言ってください。     〔山下(元)委員長代理退席、加藤(六)委員長代理着席〕
  98. 牧村信之

    ○牧村政府委員 といの調査につきましてお答えいたします。  このといの問題につきましては、原子力委員会のもとに設けられております原子炉の安全審査を行っております原子炉安全専門審査会におきまして十分審査したところでございます。このといは、先生もおっしゃいますように数百メートルの幅で、審査会の方では、約二十二キロ程度の長さの比較的平らなみぞ状のものが原子炉サイトの海面前面にあるわけでございます。  このといの調査の仕方といたしましては、通常、海上保安庁などでも海底の活断層等を調査するに用いております音波探査の手法をもって調査をしたわけでございます。この音波探査という技術は最近比較的進んでまいりまして、海底の地形がわかるだけでなくて、海底の下の地層の状態も把握できるような技術でございます。  安全審査会は、四国電力が行いましたこの音波探査の結論を十分にそんたくして審査をしたわけでございます。その結果、この伊方のといと言われておりますものは、その様子が、地層が非常に平板でございますこと、それから断層も音波探査によっては認められていないということで、といは断層ではないということが確認されたわけでございます。しかしながら、この音波探査によりまして非常に広域の調査が可能でございまして、このといは何ら断層の心配をする必要がないと判断しておりますが、むしろ、その海面前面の七、八キロのところに断層と思われるものを発見しております。これは中央構造線の関連する断層であろうというふうに安全審査会は判断しておりますが、その活動状況につきましても、この音波探査の結果を踏まえまして、その活動度等について検討を加え、その活動度は、この敷地地盤に与えます地震の影響等も判断して、耐震設計の方に十分反映して、十分な安全余裕を持った建物であるというふうに審査をしておるわけでございます。
  99. 石野久男

    石野委員 安全審査はそのように確信を持っておられる。確信を持っておられたらなおさらのこと、地元民が要求していることについてこたえたらどうですか。もし地元民の心配が杞憂に帰するということであれば、それは非常に結構なことなんです。なぜそれを断るのです。それだけあなた方が自信があるのでしたら、地元の方々が言われるように、ボーリングをやったらいい。私はもう何度長官に話を聞いても同じだから、これだけのことを言っておきます。政府は地元民の要求していること、地元の声というものには耳をかさないのだ。自分たちの意見だけが通ればそれでもういいんだという、こういう考え方で原子力行政を進めようとしている。この態度は恐らく住民は承知しないだろうと思います。なぜ、それだけ自信があったら、ボーリングぐらいのことがやれないのですか。どれだけの金、予算を必要とするのですか。ボーリングするためにあなた方が計算している金はどのくらいと予算を踏んでいますか。そのことをちょっと答えてください。
  100. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 予算はまだ調べたことありませんが、しかし……。
  101. 石野久男

    石野委員 それじゃいい。予算を調べたことがないほど不誠意なんですよ。国民が要求していることに対して何も耳をかしていない。原子力行政に対しては全然耳をかしていない。あなた方は、自分たちが調べて、もうそれでよしとしたら、地震は起きないというふうに信じているようだけれども、そうじゃないでしょう。国民は、中央構造線に関係があるだろう、そういう心配を持っておるし、地震予知連絡会は、この地域が非常に危険だから、特殊な、いわゆる特定観測地域として指定しておるのですよ。その地域の中にこれだけのことがあるからこそ、漁民はわざわざ魚群探知機を使ってこういうような観測の結果まで出して、あなた方に訴えているんですよ。なぜそれにこたえられないのです。私はこれは解せない。
  102. 牧村信之

    ○牧村政府委員 お答えいたします。  科学技術庁といたしましては、地元に対しましてこのような安全審査の結論等は、いろいろな機会を通じてその結論について御説明をしてきたところでございます。(石野委員「それはいいんだ、わかっているんだ」と呼ぶ)はい。私どもといたしましては、先生の御指摘もいただいておるわけでございますので、地元の方々がこの不安をお持ちであるとすれば重大なことでございますので、その解消を全力を挙げて図りたいというふうに考えております。  このような観点で、現在伊方の発電所の一号炉は、設置許可に対しまして訴訟を受けております。(石野委員「もういいよ、そんな答弁はいいんだよ」と呼ぶ)私どもの考え方を申し上げさしていただきたいと思います。二号炉につきましてもいま異議申し立てを受けておるわけでございますが、このような中でも私どもはいろいろ説明してきておりますが、今後とも政府といたしましては、四国電力からももちろんのこと、私どももみずから出向きまして、地方公共団体の協力を得ながら、このといの問題につきましての安全性について十分説明をしてまいりたいと思っております。
  103. 石野久男

    石野委員 私があなた方に求めておるのは、そういう説得をしてくれということを要求しているのと違うんですよ。現場ではすでにそのことについて調査もして疑問を持っているから、ボーリングをやってくれと言っているのです。ボーリングをやって、あなた方が言うように何の心配もなければいいじゃないですか。そんなもの、すぐできるんじゃないですか。大臣、なぜやらないのです。
  104. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 ただいまボーリング調査をしないと申し上げましたことは、単なる予算関係の理由でしないと申し上げたのではございません。
  105. 石野久男

    石野委員 それじゃ、どういう理由です。
  106. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 少々長くなりますが言わしていただきますが、先ほどからいろいろ地震に対する御心配がありましたし、いろいろお話のところはごもっともであると存じます。ただしかし、問題は、伊方発電所が果たして地震に対して心配であるかどうかと、こういう点が一番問題であると考えておるわけであります。  そこで、これにつきましてはわれわれとしましては原子炉安全専門審査会に全幅の信頼を寄せましてその審査を願ったわけであります。
  107. 石野久男

    石野委員 そういう説明はいい。時間だけとってしょうがないじゃないですか。
  108. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 時間をとってと言われますけれども……。それじゃ仰せに従います。
  109. 石野久男

    石野委員 私が質問をしているのは、あなた方が安全審査会を通じて自信を持っているということはわかったんですよ。あなた方が自信を持ち、確信を持っていることはわかっている。だけれども、それでは地元の人たちは安心しないのですよ。だから、ボーリングをするかしないかという問題なんですよ。なぜボーリングをしないのかということを言っている。金じゃないと言うなら、何なです。
  110. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 ボーリングしないという理由を申し上げましたときに、途中で、その必要がないと言われましたから下がりましたが、われわれとしましてはそういう専門審査会に全幅の信頼を寄せまして、そしてその結果を得ました以上、そういう結果に対していやしくも疑念を抱くようなそういうことはしたくない、こういうことでございます。
  111. 石野久男

    石野委員 いま安全審査会が一応の結論を出したから、もうそれは疑わないんだということが政府の態度である。ところが、地震はこのようにして起きてきている。断層は、先ほどの牧村局長の話では、五キロか十キロ先には生きている断層があるということは言っているんですよ。しかも中央構造線はそのあたりを通っていることもすでに周知の事実だ。その上になおかつ地震予知連絡会は、この地域をいわゆる観測強化地域として指定している。だから地元民は心配をしている。したがって地元民は、それのために魚群探知機のようなものを使って一定の調査をしたが、そのといについては疑問を持っているので、ぜひひとつボーリングをしてほしいという要請をしているんですよ。このりっぱな筋道を通しているところのものについて、あなた方はもう、安全審査で通したのだからこんりんざい耳をかさないというこの態度であるということだけはわかりました。こういう態度は住民に安心感を与えるものにならないと思うんですよ。もしこの答弁だけで済ますというならば、恐らく私は問題は将来残るだろうと思う。何としてもこれはやはり、あなた方はボーリングをさせるべきですよ。どんなことがあってもさせませんか。させないのですか、どうなんですか。
  112. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 現在の段階では、先ほどから申し上げました理由で、ここではっきり、させるということは言えません。
  113. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 ちょっと……。
  114. 石野久男

    石野委員 いいんだよ。私は求めていませんよ。  政府の態度がそういうことであるということを国民に明らかにした。私は今後やはり、こういう問題の中でいよいよ問題の解決がむずかしくなってくるという情勢は、伊方だけじゃない、全国的にこの問題は大きくなるだろうということだけを皆さんに申し上げておく。政府としてはこういう問題について、特にいま柏崎にしましても、大臣のあなたの福井にしても、あるいは島根にしても、全部これは指定地域なんですよ。あなたはなぜこういう観測地点を指定したんですか、そのことを説明してください、大臣。
  115. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 石野委員の御質問で、いまの地震対策として御承知の強化地域とございますね。それから、一つランクが下がって特定観測地域というのがあるわけでございます。この特定観測地域について、石野委員はボーリングをなぜしないかということでいろいろ御質問があった。  ところで、この特定観測地域につきましては、建設省の国土地理院では、伊方町もそうでございますが、レーザー測距儀による土地の変動観測をやっておるのです。四十五年、四十六年に四点を設置してやっております。その結果では変動がない、こういうことになっておりますが、五十三年度におきましてもこの測量をいたしたい、こういうようなことを、特定観測地域におきましては対策としてやっておるということを御了承いただきたい。
  116. 石野久男

    石野委員 特定観測をやるほどの地域なんです。だから調査をする必要があるのでしょう。大臣、これはボーリングをすべきでしょう。危ないからこれは指定しているんじゃないですか。
  117. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 いま伊方発電所と地震との関係につきましては、十分に調査いたしまして現在の結論を得ているつもりでございますから、私としては先ほど申し上げましたように、そういう考えはありません。
  118. 石野久男

    石野委員 大臣は、住民の要望は全然聞かないということですか。
  119. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 ボーリングに対して、直ちにそのまま受け入れるということはいたしません。しかし、決して住民のいろいろな御心配を無視する、そういう原発行政をやるという意味ではありませんから、あわせて申し上げておきます。
  120. 石野久男

    石野委員 無視するわけじゃないけれどもやらない。そうすると、この地域は観測地帯であり活断層があるということは、あなた方は認めておるんでしょう。それは認めてないのですか、どうですか。牧村局長はあると言ったのですから。
  121. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 原子力発電所の敷地そのものにはないと考えております。
  122. 石野久男

    石野委員 大臣、敷地に断層がなければ、至近地に断層があってもそれは心配ないというのが大臣の考え方ですか。
  123. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 そういうことはよく専門的にわかりませんが、しかし、専門家によって調査しました点は、私は確認するものでございます。
  124. 石野久男

    石野委員 大臣、住民がこれを求めているんですよ。そうすると大臣は、住民の言うことは全然聞かないということなんですか。
  125. 熊谷太三郎

    ○熊谷国務大臣 御不安に対してこたえないという意味ではありません。
  126. 牧村信之

    ○牧村政府委員 安全審査に当たりましては、サイトの地盤あるいはサイト周辺の地盤の状況につきまして、十分調査をいたしております。それで、伊方の発電所の例で申し上げますと、先ほどといにつきましては申し上げましたけれども、中央構造線につきましても先ほど御説明いたしましたように、海面七、八キロのところに、それに関連すると思われる断層らしきものを音波探知機で見たわけでございます。その活断層であろうと推定しておるわけでございます。その活動状況につきましても判断しておるわけでございます。  先ほど先生は中央構造線というお話をなさっておられますけれども、恐らく中央構造線は、見つかりました活断層のそばを走っておるということを安全審査会を推定しておるわけでございます。この中央構造線というものは、特に四国の西北部以西は一千万年以上動いていないというふうな学者の見解でございます。ただ、それに付属いたします。関連する断層が一、二発見されておりまして、それは四国の西北部におきまして二つございまして、その活動度もよくわかっておるわけでございます。この影響につきましても安全審査会といたしまして評価いたしまして、この断層につきましてはサイトから比較的離れておるということで、このサイトの過去有史以来の地震の履歴等を調べまして、一番大きな地震が起こるであろうという想定の地震評価の中に十分入るものである。また、敷地前面の想定される活断層の状況につきましても、その伊方北東部の断層よりは小さいと判断しておりますけれども、むしろ安全サイドに立ちまして北東部の断層並みの活断層であろうということで評価をいたしまして、これは安全サイドに立った評価でございます。これを踏まえて、先ほども申し上げましたけれども、耐震設計をするときの地震波の影響というものの判断に加えてやっておるわけでございます。  なお、耐震構造をつくりますときには、すでに御存じかと思いますけれども、関東大震災のような非常に大きな地震を考えた基準法の三倍、専門的な用語で言いますと〇・二Gというのが通常の基準法でございますが、この三倍をとっておる。しかも動的な解析におきましては、ただいま申し上げましたように、この地域に考えられる最大の地震波を用いまして動解析をやって、しかも原子炉の主要部分でございます安全系に非常に重要なところにつきましては、さらにその五割増しの耐震設計をするということで万全な設計をさせておるわけでございます。
  127. 石野久男

    石野委員 炉の設計は安全性を確保するためにやっているということは一応評価しますけれども、しかし、現実に活断層が周辺を通っているということを認めており、地元の人々はそれに関連して心配をしているということになったら、当然やはりそこに対して調査すべきじゃないですか。
  128. 牧村信之

    ○牧村政府委員 先ほどもお答えいたしましたが、いま地元の方々が、といというものが中央構造線に関連ある断層であるというふうな御疑念から、このいろいろな陳情書等も含めまして不安を出されておることは承知しておるわけでございますが、先ほども申し上げましたように安全審査会の審査結果では、このといというものは何ら断層に関係ないものである、しかも全然活動性等を想定するような断層でもないということでございます。
  129. 石野久男

    石野委員 これはもう政府の態度は、安全審査会がそういうふうに断定したからというので、住民が非常に心配をしている問題については全く耳をかさない。ただ調査をしたらどうだということさえも、それをやらない。こういうような態度は、私は原子力行政上よろしくないと思うのです。  官房長官、これはぜひひとつ総理に、こういうような行政に対する所見を聞きたい。こういうようなことで原子力行政をされたら、地元の諸君は全然安心感が得られませんよ。私は長官のこの判断は間違いだと思う。私はやはり、いずれ総理にこのことについての所見を聞きたいと思います。官房長官、ひとつそれを伝言してもらいたい。
  130. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまの石野委員の御発言は総理にお伝えをいたしますが原子力開発につきまして、その大前提が安全確保であるということは申すまでもないわけでございますし、科学技術庁としてもそうした大前提のもとに立って問題を処理しておる、こういうふうに私どもは確信をいたしておるわけであります。
  131. 石野久男

    石野委員 委員長、総理に後でまた聞く機会を与えてもらいます。いいですね。  私は、こういうような態度で処理をされたら、恐らく原子力行政に対する住民の理解は進まないと思うのです。調査すればわかることなんですから、調査をするのをなぜ拒否するんだ。これは、調査をしたら事態は非常に変わってくるという危険を感じているからだと私は思っておるのです。調査をすると政府答弁しているような状態じゃなくなってくることを恐れているからやらないのだ、非常に逃げの手だと思うのです。こういうひきょうな手は許せないと思うのですよ。私はこういう点はまた後でお尋ねします。  この際私は、電力開発の問題についてお尋ねしたいのですが、先般の委員会で電発の設備投資の状況をお尋ねしましたら、十分な内容がはっきりしませんでした。その後、資料を資源エネルギー庁からいただきました。それによりますと、百五十一カ所の電源開発は総計で六千三百五十万キロワットです。現在政府が企画しておりますいわゆる設備投資三兆一千二百十九億円の内容は、ただいまお配りしました資料でごらんになっていただけばわかりますが、工事中のものが六十基、それから電調審を通過しているがまだ未着工のものが四十基、そして電調審の未通過のものが、五十二年、五十三年、五十四年を期待するものが合わせて百十一基です。     〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕 そのうち、着工が確実にできているものが、資料の一の3のところを見ていただきますとわかりますが、原子力、火力、水力を通じて全体で千三百六十五万キロワットしかありません。それは六千三百五十万キロワットに対して二一%です。全体の三兆一千二百十九億円というこの作業量の中で現在工事中のものがわずかに二九%であるということを、資源エネルギー庁、認めますね。あなたのところの資料だ。
  132. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 能力ベースで御指摘のとおりでございます。
  133. 石野久男

    石野委員 この情勢でいきますと、電調審を通っているのが百基あるわけですね。そのうちで、いま言われたように工事中のものが二九%です。あと未着工のもの、それから五十二、五十三年度、五十四年度というふうに、電調審は通っているけれどもまだ工事認可のないもの、それから電調審が五十三年度中に通るかどうか疑問であるものを含めて七一%あるわけですね。この七一%について、本年度中に工事認可を与えられるという可能性はどのくらいありますか。
  134. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいままで電調審を通過して着工準備中のものは四十地点でございますが、この中では七地点が工事計画の認可を受けております。それから五十二年度以降五十三年を含めましてこれから電調審を通そうというものについては、電調審を通過して以降工事認可をいたすことになりますので、いまの段階で幾つまでということは申し上げかねるわけでございます。
  135. 石野久男

    石野委員 恐らく今年度中に工事認可に入るものは、この表でごらんになってもわかりますように、着工準備というところで入るかもしれませんけれども、五十二、五十三年度に電調審準備中のものは恐らく工事認可にはならないだろうと思います。それからまた、五十四年度上程希望のものも、もちろんこれは工事認可にはならない。そうなってまいりますると、三兆一千二百十九億円のうち本当に工事に入るものと見られるのが、この着工準備の千三百六十五万キロワット、このくらいのものしかない、こういうことになりますが、そうではございませんか。
  136. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 五十二、五十三年度中に電調審の通過を希望しております地点は六十三地点で、二千五百十万キロワットになるわけでございますが、この五十三年度における投資額というのは、全体の投資額の中でそれほどウェートは高くはございません。ただ、将来の電気の需給というものを考えますと、できるだけ早く電調審を通過し、かつは早期着工いたしたいという気持ちでおるわけでございまして、工事資金量としてはさほどのものではございませんが、できるだけ早く着工に持っていきたいというふうに考えております。
  137. 石野久男

    石野委員 大したことはないけれども、しかし、いずれにしてもこれはまだ工事には着工できない。そうなりますと、非常にかね太鼓で騒いでおる七%のいわゆるGNPの伸び、その中の主導的役割りをする電源開発というものは、三兆一千二百十九億の中においてさえも三〇%程度しか確実な工事量は見込まれないのですよ。これにいわゆる電調審通過の四十基を含めてみても、これはささいなものですよ。こうなってまいりますと、実際に仕事はどのくらい予想されるのか、そこのところを聞かなくてはいけない。
  138. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたのは、いわゆる出力と申しますか能力ベースで三割ぐらいでございまして、投資額という点ではさようなことにならないと思います。五十三年度に予定いたしております約三兆二千億の投資のうち、いわゆる電源投資が約一兆一千億、非電源投資が二兆一千億でございます。ただいま御指摘の、今後電調審の通過を予定いたしておるものは電源関係の一兆一千億の内数でございまして、投資額としては二千億円強ぐらいじゃなかろうかと思います。それで、先ほど申し上げましたように、かような電源の開発をわれわれは急がなくてはいけません。そのための努力もいたすわけでございますが、万が一その部分の若干の工事がおくれる場合におきましても、その他、現在工事中のものにつきまして工期の繰り上げをやるといったようなことで、投資額自体といたしましては私は三兆二千億をさほど下回らない、あるいは今後の立地対策の進捗状況によりましてはむしろそれ以上の投資効果を期待しておる、こういうのが現状でございます。
  139. 石野久男

    石野委員 おっしゃるように電源工事費というのは一兆一千億そこそこですよ。非電源工事費が一兆二千億程度ありますし、その他に改良工事とか調整費、核燃料等を含めて、この資料2のいわゆる九電力の設備別資金計画の表から事業量を見ますると、おっしゃるようになっております。  そこで、いま資源庁から出された、私に答えられた電調審未通過のいわゆる発電量の問題。発電量の問題というのは、工事費と比較してそんなに逆比例するわけではないでしょう、比例しているわけでしょう。そうなってきますと、三兆一千二百十九億円というものをこの比で割っていくという単純計算ではなくて、この中で工事中のもの、それから未着工事のものをとってまいりますると――この表ですよ、九電力のこれと、そのほかに電発だとか公営あるいは共同の電源開発を含めて三兆一千二百十九億円になりますから、九電力の資金割りの比率をこの三兆一千二百十九億円で割ってみますると、工事中のものは大体六千四百九十二億円、それから未着工事のものが一兆五千八百九十二億円、そして改良工事とか調整費、核燃料に相当するもの、約二九%と見て八千三百五十五億円になってきます。したがって、未着工事費のものが、こういう現在工事に入っているものの比率から見ると、この資料3の右方に書いてあるように、一兆五千八百九十二億円になりますが、この中で、いわゆる電源工事は大体四六%、総額の中で占めるわけですから、その四六%というものを掛けてみますると、大体七千三百十億円、これはもう電源工事としては恐らく五十三年中にはできないですよ。どんなにしたって工事認可が出ないのだから、できっこないのですよ。  それから、それに関連して、いわゆる非電源工事費が先行して投資が行われるとしても、とにかく、この電源工事そのものがこれはできない。その上に、非電源工事の占める率が拡充工事の中で約五四%を占めておりまするから、この拡充工事の中の五四%というものをこれに乗じてみますると、大体六千七百億円程度になります。これらのものは恐らく五十三年中には工事にはならないと思うのですよ。少なくともこのいわゆる電源工事の四六%、それは第1表に示されておる五十二、五十三、五十四年度の希望、約五千万キロワット近いものですが、これはもう恐らく工事にならないのではないですか。額はささいだと言うけれども、とにかくこれはできないですね。
  140. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほど、出力の容量に応じて投資額がバランスをとっていくのではないかという御指摘がございました。それはまさにそのとおりでございまして、七十万キロワットのものと百十万キロワットのものでは、大体能力に応じて総投資額がふえていくというのは当然でございます。ただ、私が申し上げておりますのは、新規立地地点のものにつきましては、電調審を通りましても四月一日から投資に入れるというわけではございません。あるいは年度半ばに通過するものはさらに金額も少なくなるわけでございまして、いわゆる平年度投資に入るまで新規地点につきましては、当然のことながら、総工事量は御指摘のとおりでございますが、五十三年度で顔を出してくる投資額は必然的に小さくなってくるということで申し上げたわけでございまして、そういった意味で、総投資額としては三兆二千億というものをわれわれは確保できる、また、すべきだと考えております。しかし、反面、工事額としては小さくとも、先ほども申し上げましたように、将来の電力需給の逼迫ということを考えましたら一日も早く着工いたしたいということでございます。
  141. 石野久男

    石野委員 わかりました。着工したいという希望はわかるのですが、もう一度はっきりさせますけれども、三兆一千二百十九億円の仕事の中身は、電調審を通過したものと電調審未通過のものの割合はこういう状態になっているということは、先ほどあなたが認めたところでしょう。これは間違っているのですか。これはあなたのところの資料で出しているのですよ。
  142. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 電調審の通過の率というものは、算術的な単純な平均値で出てくるものではないと思います。やはり地元住民の理解と協力を得るための努力をし、かつ安全性あるいは立地促進交付金等によりまして地元福祉の向上を図る、またケースによりましては重要電源に指定いたしまして理解を得るための努力をいたす、そういった効果との関連におきまして、電調審の通過率というものが変わってくると思います。したがいまして、能力的に二九%、三〇%弱という御指摘は私はそのとおりだと思うわけでございますが、そういった平均値から単純に電調審の通過率は算定できないものだ、かように考えております。
  143. 石野久男

    石野委員 電調審の率を云々しているのじゃないのですよ。あなたのところで、五十三年二月十三日現在で電調審を通したものはどれだけあるのか、あるいはまだ通ってないのはどういうふうにあるのか、工事中のものはどうか、未着工のものはどうかという資料を出してもらったのがこういう集計になるのですよ。この集計でいきますと二九%が工事中のものであって、未着工のものが七一%。その中で電調審通過のものと未通過のものとがある。これらのものを今度は具体的に仕事ができるかどうかということを、地域別に百五十一カ所を全部出してもらった。その全部出してもらったものの数字が、ここに出ているこの3の数字なんですよ。この3の数字、表をずっと見ていただくとわかるように、電調審を通ったものは原子力ではもう五カ所あります。工事認可は二カ所。柏崎は昨年の暮れに受理したものだ。それから火力の問題ですると、これは全部電調審は一応通っているけれども、そのうちで工事認可は一カ所だけで、あとは松島の一号炉が昨年の暮れに受理したものだ。水力の方ではこの三カ所は全部電調審は通っているけれども、工事認可はまだ通っていません、こういう表が出ているわけですよ。この工事認可をとってないといういわゆる着工準備というもののうち、ことしじゅうに、五十三年度中に全部入るかどうかということは問題ですけれども、私は、これは全部五十三年度中に着工できるものとして計算する。私はそういう計算をしているのですよ。その計算をしました場合に、それだけのものを除くと、あと残ったもの、全工事量のうちの七九%近いものが未着工事になってくるでしょう、こう言っている。そのうち、なおまた継続工事があったり新規工事がありますから、その継続工事や新規工事、それからまた、同じものでも電源工事と非電源工事、いろいろあります。そういうものを見合いにして工事中のものと未着工事のもの、それから改良工事、調整費というようなものを九電力が工事費を分担している比率で割っていきますと、この資料第3の右方に書いているような表になってくるわけですよ。この表で見ますると、工事不可能と思われるものは、この電調審未通過であるところのいわゆる五十二、五十三年度の希望あるいは五十四年度の希望というようなものは、恐らく工事認可まで入らないだろうと私は見ておるわけだ。恐らくこれを工事認可できるという予測はつきますまいというのが私の判断なんですよ。そういうふうに見てまいりますと、結局工事不可能量というものがおよそ七千三百十億円になります。  この七千三百十億円というものは、それじゃどういうふうにGNPの伸び率に影響してくるのかということがわれわれにとっては問題になってくるわけです。私はその問題について、これは企画庁長官にお聞きしなくちゃいけない。これだけのものがもしこの工事不可能ということになってまいりますると、二十五兆六千五百億円というこの民間企業設備の中から、少なくともこれだけのものが工事に入れないわけですよ。恐らく工事認可が出ないから発注もできないと思いますので、私は、これだけのものは五十三年度中のいわゆる民間企業設備投資にはならないと見ている。これをもし比率計算でいきました場合に、恐らくGNPの伸び率は一一一・六三%になってしまいます。これは二%になりませんよ。一一二%にならないです。そう思いますが、どうですか。
  144. 河本敏夫

    河本国務大臣 宮澤長官もお答えになると思いますが、その前に私から一言申し上げたいと思いますが、いまいろいろ数字を御説明になりましたが、エネルギー庁の長官の言っておりますことは、工事三兆二千億のうちほとんど大部分のものを、約三兆円というものはすでに工事中の六十カ所から出てくる工事量である。そして、ことし着工の新規のものから出てくる工事量というものはごくわずかであって、それは二千億程度であろうということを言っておるわけです。その程度のことは十分期待できるということを言っておるわけであります。でありますから、すでに工事着工中のものは六十カ所もあるわけでありますから、そこが工事量の主体になっておるということを説明しておるわけでありますから、まずその点を十分御確認いただきたいと思います。
  145. 石野久男

    石野委員 それじゃお尋ねしますが、六十基のもので三兆一千二百十九億円、そうしますると、百五十一基をこの六十基と加えて全体でこれは二百十一基になりますが、総額幾らになるのですか。
  146. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは、いま百万キロの発電所をつくる場合には、ところによって違いますけれども、まあ大体原子力発電所はざっと四千億、普通の発電所は二千五百億くらいを想定しておりますから、大体六千数百万キロというものをつくれば二十兆以上になると思うのです。そのうち、ことしの工事量は、すでに工事着工中の六十カ所を中心として三兆一千九百億である。三兆一千六百億ですか、そういうことを言っておるわけですね。ことし新規にスタートする分から出てくる工事量というものはせいぜい二千億程度であって、その程度のことは十分可能である、こういうことを長官は説明しておるわけでございます。
  147. 石野久男

    石野委員 だから、この全体の予算は、とにかく二百十一基の予定されておる電源開発というものは、総額幾らになるのですか。
  148. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほど来のお話を若干補足しながら申し上げますと、先生の御指摘は百五十一基全体について能力別に比率を出して、それがそのままに投資額にはね返っておるという前提で計算をなさったんじゃないかと思うわけでございます。  先ほども申し上げておりますように、個別の発電所の総投資額と容量とは比例するものだと思います。しかし、年度別にその投資がどのように出てくるかということはまた別途の観点から見なくちゃいけないということが一つでございます。  それからいま一つは、百五十一地点ではございますが、このうち四十八地点は、五十四年度以降に電調審の通過を希望いたしておるわけでございますから、当然に五十三年度の設備投資額の中には入ってまいらないわけでございます。したがいまして、それを差し引きました約百地点の電源工事が五十三年度の投資額としてどの程度出てくるかということが、いわゆる三兆二千億の電力関係の投資がどこまで実現可能性があるかという判断につながってくるかと思います。  それにつきましては、先ほども申し上げましたように、一千億ないし二千億程度があるいは状況によってはおくれるかもしれない。しかし、その他の電源あるいは非電源工事でその程度の工事規模は十分にカバーできるのじゃないか。電力需給の話は別にしまして、いわゆる民間設備投資額としていかようになるかという観点から申し上げると、さようなことになるわけでございます。
  149. 石野久男

    石野委員 そうしますと、電源工事の実際の、通産大臣は四兆円とか五兆円ということを盛んに言われました。そうすると、四兆円、五兆円というのはどういう意味がこの予算との関係であるのか、あるいは景気振興に対してどういうふうに影響するのか、そこのところをちょっと説明してもらいたい。
  150. 河本敏夫

    河本国務大臣 工事としては三兆二千億ということは御理解いただいたと思うのですが、そのほかに五十四年度以降には、先ほど申し上げましたように非常に膨大な電力投資計画があるわけでございまして、その一部を、機械類が中心でありますが、その一部を繰り上げ発注する、こういうことでございまして、その繰り上げ発注を大体いまのところ各電力会社から事情を聴取いたしましたところ、一兆円は可能である、こういう報告を受けておるわけであります。しかしながら、なお電力事業全体について政府を挙げて促進をいたしておりますので、繰り上げ発注をなお若干追加できる可能性は十分あると私どもは考えておるわけです。  それで、確定しておりますものは、工事と繰り上げ発注を合わせまして四兆二千億でありますけれども、なお今後の努力によりまして繰り上げ発注を若干ふやして、ことしは五兆円くらいの目標にしたいということを言っておるわけでございまして、どうかその点を御理解賜りたいと思います。
  151. 石野久男

    石野委員 この表をつくっているのが、もしこれが全体のいわゆる二百十一基の予算に見合わないものであるというならば、これに見合うような表をつくってほしい。それは出してもらえますか。
  152. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 電源と申し上げましてもいろいろ規模の差もございますので、十万キロワット以上のものについては試算ができるかと思いますので、準備いたしたいと思います。  それから、建設費がどれくらいかかるかというお話でございましたが、将来長きにわたるものについての総投資額というのは、なかなか算定困難でございます。  御参考のために、五十八年時点で運転開始する設備につきましては、キロワット当たりの建設費でございますが、原子力につきましては約二十四、五万かかります。したがいまして、百万キロワットのときには二千五百億程度。水力につきましては約五十万、石炭につきましては約二十二万、石油火力につきましては約十三万、五十八年運開を予定した場合のキロワット当たりの建設単価でございます。
  153. 石野久男

    石野委員 それでは委員長、いま私のこの資料に対して、見合う資料をつくってもらってからまた論議したいと思います。
  154. 中野四郎

    中野委員長 その資料は、先ほど長官の言うた資料は出せるのですか。――そのように取り計らいます。
  155. 石野久男

    石野委員 お願いします。  外務大臣にお尋ねしますが、原子炉衛星の問題で、ソ連のコスモス954号が非常に問題になりました。先般、国連でソ連の大使がいろいろと演説しているようでありますが、その演説の内容に対する大臣の所感をひとつ聞かせていただきたい。
  156. 大川美雄

    ○大川政府委員 ソ連発言いたしましたことは、主にこういうことでございます。  まず、事故の原因は不明であるということが第一点。ソ連は落下地点をアリューシャンあたりと予測して、その旨アメリカに通報した。その後アメリカソ連の懸念を理解して衛星をモニターした、ところがその予測に反してカナダの地上に落ちたものであるということをアメリカから知らされた。人工衛星に強力な動力源が必要であることはだれも認めるところであろう。いかなる人工衛星であっても落ちれば危ないのだ。特に原子力を使用しているから違うのだということではないではないか。いずれにしても、これは局地的汚染は起こり得るけれども、核爆弾ではないので、その点は大分違うのだ。事故が起こる可能性があるとしても、それを防止する余り、科学技術の進歩を差しとめるような措置をとるべきではないではないか。それから、事故の際の補償問題についてはすでに協定がある。落下地点の正確な予測は技術的に困難な問題だ。そういうことであるから、パニック状態を惹起するような通報を世界各国に知らせることは無用ではないか。人工衛星の場合よりも原子力の危険のある場合は幾らでもある。核兵器の方が危険がはるかに大きく、核実験の方が汚染の程度が高い。いずれにしても、要するに既存の取り決めや措置によってすべてカバーされているから、新たな規制を行う必要はなく、また、それを検討する作業グループをつくる必要もない。これがソ連の演説の骨子でございます。  これはいろいろ問題がございまして、わが国といたしましてこれにとうてい満足するわけにいかない、やはり日本としての国民感情からしても、何らか具体的な規制措置を講ずべきであるということを各国で国連の場において協力して進めていくという態度をとり続けるつもりでございます。
  157. 石野久男

    石野委員 大臣の所感をひとつ聞かせてください。
  158. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  いま申し上げましたとおりでありまして、ソ連の演説は私の頭では理解するに困難であります。アリューシャン群島に落ちる予定であったと言ってみたり、どこに落ちるかわからぬと言ってみたり、通報そのものも、アメリカに通報した場合にはどこに落ちるかわからぬという通報でありますから、この演説の論旨は、なかなか私は理解は困難でございます。
  159. 石野久男

    石野委員 理解ができないので、それでは大臣はこれに対してどういうような対処をするお考えでおられますか。
  160. 園田直

    園田国務大臣 御承知のとおりに、ただいま開かれております宇宙空間利用小委員会で、わが方は、打ち上げ禁止の可能性も含み、あらゆる安全性の規制をやるために委員会の設置を要求し、各国に強く訴えているところでございます。
  161. 石野久男

    石野委員 ただそれだけですか。
  162. 園田直

    園田国務大臣 それに対してソ連の方では、これまた御承知のとおりに、これは打ち上げ国で検討を尽くしておるところであるから、その委員会の設置は反対である、こういうことでありますが、わが方は、打ち上げ国よりも打ち上げ国じゃない方が数が多くて、その安全性を願望するものはわれわれの方でありますから、打ち上げ国だけで検討されたからといってこれを任せるわけにはまいりません。したがいまして、さらに、それであるならばその情報を全部提供し、打ち上げ禁止の可能性も含めて検討することは当然ではないか、こういうことで、この主張は主張し続けるつもりでございます。  なおまた、現地の代表団には、私のただいま申し上げました趣旨に基づきソ連にも改めて申し入れろ、われわれは政治的キャンペーンをやっているのじゃない、本当に人類の生命、わが国の生命の不安を感じてやっておるのだからこれを理解されたい、なお東欧諸国初めもろもろの国には理解と説得に努めろ、こういう指示を与えているところでございます。
  163. 石野久男

    石野委員 その指示に従って出先の皆さんの代表が他の各国との間に折衝した感触は、どんな状態ですか。
  164. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  電報を打ちましたのは昨日でありますから、まだその返電は来ておりませんから感触はわかりませんけれども、あくまで主張を変えずにやれ、こう言っておるところでございます。
  165. 石野久男

    石野委員 この問題は、率直に言って、総理が先般も言いましたように、原子炉衛星というようなものはこのままほうっておいたのでは地球が消滅するかもしれない、こういうように言っておられる。(「オーバーだ」と呼ぶ者あり)オーバーであっても、これは総理大臣がそういうように言っている。それほどに私たちは重大視をしなくちゃいけない。大臣はいまいろいろと指示をされておられるようですが、まだその感触は手元に届いてないようですけれども、いずれにしましてもわが国は、この問題については主導的な役割りをしなくちゃいけない。それが一つ。それから、どんなことがあっても、現在こういうさなかにおいてさえも居直り状態で原子炉衛星を打ち上げるということは、やはり早急にやめさせるようにしなければいけない。それに対する方策は講じておられますか。
  166. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりでありまして、その方針で逐次進めております。
  167. 石野久男

    石野委員 それでは最後に。その点は後で総理にも、時間が来ましたようですから私はおきますが、総理も含めて、政府はひとつ積極的にソ連――特にもう一つ聞いておきたいのは、ソ連アメリカとがこの問題について歩調を一つにするということがある可能性がありますね。その点はどうですか。
  168. 園田直

    園田国務大臣 ソ連アメリカは、現状ではわが方の主張に対して態度は違っておりますけれども、やはり利害は同じでありますから、そういうことも考慮の中に入れつつ主張を続けます。
  169. 石野久男

    石野委員 終わります。
  170. 中野四郎

    中野委員長 これにて石野君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十分開議
  171. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  172. 草川昭三

    草川委員 草川でございます。私は、時間が短いのでございますけれども、約四十五分ぐらい、雇用の問題にしぼって御質問をしたいと思うわけであります。  まず最初に、宮澤経済企画庁長官にお伺いをするわけでございますけれども、御存じのとおり失業というのは非常に深刻になってまいりまして、やがて百三十万から百五十万の失業者を出そうという、こういう時代になってまいります。われわれもその前途については非常に心配をするものでございますけれども、一方、七%の経済の成長という問題が先ほど来からいろいろと論議になっておるわけでございますが、民間の心理だとか消費性向というものが、一方では非常に低下をしてきておると私は思うのです。特に日経連という日本経営者連盟の方は、初任給据え置き、あるいは新入社員の方々は一年間は賃上げをゼロにすべきではないだろうかという、こういう発言もあるわけであります。あるいは東京商工会議所等では、賃下げということもことしはあるのではないだろうかと、非常にマイナス要因の発言があるわけであります。しかし一方、製造業の中でも自動車産業はかなり好況でございますので、財界の中でも日産自動車の社長さんなんかは、業績に応じてある程度は払いたいという、また反対の意見もあるわけでございます。非常に相矛盾をするような状況があるわけでございます。さらにまた、稲山さんという経団連の副会長さんは、業績がよくてもベアというのはやはり慎むべきではないだろうかというような御発言も、新聞等ではあるわけであります。そういうように冷え込む一方に、さらに追い打ちをかけるように、製造業というのは減量経営に乗り出すわけでありますけれども、必要以上に減量経営ということをこの際、藉口というのですか、この機会を利用して、非常にオーバーに過剰ぎみな減量経営ということを訴え過ぎておるのではないだろうか、こう思うわけであります。こういうような風潮が続くと、七%というものは達成されないのではないかと思うのですが、長官の御意見を賜りたいと思うわけであります。
  173. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる減量経営と言われるものの目的が固定費をできるだけ減らしていこうということにあることは、ほぼ想像のつくところでございますけれども、その気持ちの中に、やはり経済の先行きが非常に不安であるというときには、どうしてもそういうことを幾らかオーバーと申しますか、現実の必要以上にかた目にやるという企業家心理は確かにございますように思います。昭和五十三年度におきまして私どもねらっておりますのは、そのような、先がさらに悪いという企業家心理を、事実によってもはやそうではないということを企業家にもわかってもらうような経済運営を、まず政府が主導してやりたい、こう考えておるわけでございまして、ことに先行きが悪いというときには、いわゆる適正在庫といったような物差しもふだんよりはさらに低くするというのが企業家心理でございますから、だんだんそうではないという形の経済運営をまず政府が先に立ってやってみたいと考えているわけであります。
  174. 草川昭三

    草川委員 では、いま長官はそういうようにおっしゃられたわけですが、今度は通産大臣にお伺いをしたいと思うのでございますし、あわせて労働大臣にもお伺いをしたいと思うのですけれども、いま産業界の中で、日本の場合は終身雇用でございますから、非常に過剰雇用というものを抱え込んでおるということが盛んに言われております。というような中で、産業界の方もいろいろな御発言があるわけでございますが、通産大臣として、一体日本の製造業で過剰雇用というものがどの程度抱えられておるか、御意見を賜りたいと思います。
  175. 河本敏夫

    河本国務大臣 詳細は労働大臣からお答えになると思いますが、いま御案内のように、産業全体の操業率は八割を相当割っておると思います。七十数%だと思います。そういう状態で各企業は、かつてのフル生産に近い状態の人間を依然として抱え込んでおるというのが原則であります。中には二、三年前から雇用調整にかかりまして、ある程度調整作業を終えたところもありますが、終身雇用制でありますから、大部分の企業は終えていない。こういうことを考えますと、相当大量の過剰労働力を企業は維持しておる、操業率から判断してそのように私どもは理解をいたしております。その数につきましては、はっきりしたことは言えませんが、民間などで言っておることを総合いたしますと、大体二百万ないし二百五十万ぐらいは過剰労働力があるであろう、このように言われております。
  176. 藤井勝志

    藤井国務大臣 企業におきます過剰労働がどれだけあるかというこの状況判断は、なかなか把握がむずかしいというふうに考えざるを得ないのでありますが、ただ、生産と雇用との対比から考えますと、一般的には、最近の企業における過剰労働の状況は、五十年が底で、それからややよくなっておるということを、客観的な数字が示しております。ただ、先ほど通産大臣からお話がございましたように、現在の稼働率、それに大変な平電炉、そのほか構造不況業種の現状を考えますと、企業間において過剰労働力が非常に多いという感じはぬぐい去ることはできない、非常に厳しい状況である、こういうように判断せざるを得ないと思うのであります。
  177. 草川昭三

    草川委員 いま通産大臣の方からは、大体二百万から二百五十万だ、労働省の方からは具体的なお答えがないわけでございますが、実は私は社会労働委員会で、前労働大臣にも過剰雇用の実態はどうだ、こう申し上げたのですが、労働省は、不況業種の方々を呼んでおる、せいぜい五、六十万もいかないじゃないかということをおっしゃってみえるわけであります。これは前回の、前労働大臣のときに私が質問をした内容であります。通産省はいま言いましたように、二百万とか二百五十万という数字を出してみえる。先ほど宮澤経済企画庁長官は、七%の経済成長ということを考えてみると、もう少し心理をやわらげたいと言われるわけですが、いま三人のそれぞれの所管の大臣のお話を聞きましても、過剰雇用という問題の実態というものは明確につかまれていないわけですね。そういうような状況の中で、いたずらに下向きなマイナス要因の御発言が世論の風潮となっていくということは、基本的に七%の経済成長達成というものは、まずその前段で雇用という面から言ったって私は不可能だと思うのです。同時に、労働大臣は若干就業数がふえたと言っておりますけれども、明らかにふえておるのは女性ですよ。おかみさんのパートなんです。そして日雇いなんです。いわゆる常用労働者はふえていないじゃないですか。そういう数字があったら出してください。
  178. 細野正

    ○細野政府委員 常用労働者の増につきましては昨年一年間で、いま手元に数字はございませんので大ざっぱな数字で恐縮でございますが、約五十万ないし六十万の労働力調査による雇用増の中で、六割くらいが臨時日雇いで、残りが常用であるというふうに理解をいたします。
  179. 草川昭三

    草川委員 いま六割が臨時日雇いだということを認められたのですが、大体五十万というのは、新規労働力が生まれてくるわけです。毎年学生だとか学校を出た、そういう方々を含めても、さらにその方々が全員常用労働者としてふえていないというところに雇用の不安があると私は思うのです。ということは、よくお考えにならないとこれからの基本的な難局は乗り切れないのではないだろうか、こう私は思うわけであります。  次に、私は労働大臣にもう一つ、時間短縮と残業の問題について御質問をしたいと思うわけであります。  実は、昨年の十月に労働省は非常に強い態度で、これは特に労働基準局が、監督官が、雇用拡大の阻害要因になっている残業を規制したい、残業時間が時に多い事業場を緊急に立入調査したいという、非常に強い姿勢で臨まれたわけであります。そして、全国でいろいろと残業時間の多い産業を立入調査をされておるわけでございますけれども、その調査がいま集計中だと言われております。私はもっと早く調査を発表してもらいたいのでございますけれども、当初の意気込みに比べますと、実態はかなり悪いと聞いております。悪いものですから発表が急いでやられていないというような状況ではないだろうかと思うのです。  たとえば五十二年上半期を見ますと、製造業の男子の一カ月の平均残業は十七・六時間であります。出版・印刷は二十六・八、自動車産業は二十二・五、食品は十九・一であります。製造業の残業が非常にふえておるわけです。本来は、製造業の中でも一部の産業は雇用を拡大しなければいかぬのですけれども、それがされていない。労働白書だとか、中央労働基準審議会でも問題が提起されているわけでございますが、しかも年休の返上率が多い。休暇の取得率が日本の労働者は非常に悪い。こういう問題があるわけですが、労働大臣、まず、労働時間の短縮は雇用の拡大につながるのかどうか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  180. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働時間の短縮が雇用の拡大にすぐそのままつながるということでは必ずしもない、こう認識せざるを得ない現状ではないかと思うのでございます。  ただ、やはり労働時間の短縮というのが労働者の福祉の向上、あるいは国際協調の問題、こういった関係ないしは国際的な公正確保という、日本人は働き過ぎだ、こういったことからの外圧、こういうことを考えますと、やはり労働時間の短縮は長期的に努力していかなければならぬ目標だというふうに思いますし、特に私は、労働大臣に就任直後、労働基準審議会の公、労、使一致した建議を受けまして、前向きでこれに対処する構えでございますから、御趣旨はよくわかりますが、ただ、いますぐ雇用と労働時間短縮とを結びつけるということは、厳しい現在の情勢ですからむずかしいということだけは御理解いただきたい、このように思うのであります。
  181. 草川昭三

    草川委員 そうしたら、昨年の十月に労働基準局の局長全部を集めて、どうして緊急調査ということをやられたのですか。労働省は、かなり強い姿勢で時間短縮の実態を調べようということを言われたのですけれども、その答えになっていないのじゃないですか。
  182. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく監督的調査を現在やっておる最中でございまして、決してこの結果を恐れて怠けているという状態ではございまん。一応四月ごろにはおおよそまとまるのではないか。これは相当精密な資料を集めて作業をしておる最中でございますから、しばらく時間をかしていただきたい、このように思います。
  183. 草川昭三

    草川委員 四月といえば一番失業者がたくさん出る時期でしょう。時期というのは、一応予想されるのは三月、四月に一番たくさん失業者がふえるという時期。だからこそ、逆に昨年の十月に基準局は立入調査までやろうじゃないかということを言われて、そうしてそのことの効果というものが、残業時間が少なくなる、新しい労働者を少しでも雇おうではないかという雇用機会の均等という意味合いが出てくると私は思うのです。だから、方向だけでもいいですから、私は膨大な資料を全部出せということを言っているわけじゃないのですけれども、少なくとも残業時間の調査だけは中間報告ができると思うのです。ただいまの集まったところだけでもいいですから、御発表願いたいと思います。
  184. 藤井勝志

    藤井国務大臣 時間短縮についての方向は先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、とりあえずの調査の結論をいつごろ出すかということの答弁は、事務当局をして回答させます。
  185. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 お答えいたします。  いま先生は十月の調査とおっしゃいましたけれども、十月一日現在から一カ月間の実態を調べるべく十二月中にやったわけでございます。一部いろいろ監督計画を変えなければいけませんものですから、一月にずれ込んだ分もございます。対象が六千もございますので、いま鋭意集計中でございますが、先生の御指摘でございますので、工夫をいたしましてできるだけ早く取りまとめていきたい、こういうふうに思います。
  186. 草川昭三

    草川委員 先ほど言われましたけれども、労働省の方で毎月勤労統計というのが出ているのですが、昨年十二月の所定外労働時間指数というのはもう労働省の方から出ているのですよ。五十二年十二月には、所定外労働時間指数は三・八対前年度伸びておるわけなのです。だから、伸びているということは明らかなのです。だから私は、これからの雇用の拡大ということについては、この労働時間の短縮ということを真剣に取り入れていくということをしないと、なかなか雇用の機会均等というわけにはまいらないと思うのです。  同時に、たとえば一般の労働者の方々の年休の返上率はほとんど半分、五〇%の方々がいわゆる有給休暇というのを返上しておるわけです。ILOは、休暇は三週間まとめて取りなさいと言っているのです。ヨーロッパでは。日本人のように、腹が痛いとか用事があるからといってちょこちょこ休むのは本当の休暇じゃないと言っているのですよ。だから、まとめて取るような社会的な条件もつくるというようなことで初めて国際的な公正な輸出競争に参加をすることができるわけです。そういうような公正な労働条件ということで国際的に交流をしない限り、私は、円高問題というのは基本的に解決しないと思うわけであります。そのことだけを篤と労働省はお考え願いたいというように思います。  私は時間が短いわけですから、次に中高年齢問題に行きます。  中高年齢対策で、人口の高齢化というのは英国の三倍、米国の四倍のスピードで進んでいるということは間違いのない事実であります。総理府がこの前、老後アンケートというのをとったら、定年延長の希望者は七六%もあったという統計数字が出ております。しかし、事態は明らかに逆行をしておるわけでございまして、通産大臣も先ほど申されましたけれども、製造業独自の立場になりますと、減量経営をしたいというので、これは大手の物産会社ですけれども、早目の定年制導入、あるいはある有名な機械メーカーは三十五歳で年功型賃金を停止する。そのほか大手商社は、もう新聞で連日のごとく減量作戦をしておる。すべて中高年齢に選択定年を求めておるわけであります。こういうように定年制が下がるというような動きというのは製造業で、一般で出てくるわけでございますが、そういうことになりますと、昨年六月閣議決定をしたところのいわゆる雇用対策基本計画というものはどうなるのですか。雇用対策基本計画は、六十歳まで定年を延長しようということを言っているわけですね。その点についての労働大臣の御見解を賜りたい。  同時に、これは私、本当に率直な意見ですけれども、いま大臣の方々の平均年齢は幾つですか。一般の民間の方々に比べての差ですけれども、それもついでに一遍お聞かせ願いたいと思うのです。――わからなければ結構ですから、前段の説明をしてください。
  187. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御提言の計画策定でございますけれども、これは、いま雇用情勢が産業構造の移り変わりとともに非常に変化いたしておること、御案内のとおりでございまして、したがって、経済計画との整合性を考えて、今後できるだけ早く策定を急ぎたい。このためには雇用対策研究会でありましたか、馬場さんが会長をしておられます。その答申を得て結論を出したい、このように思っております。
  188. 草川昭三

    草川委員 大臣の平均年齢は六十四歳ですね。そうでしょう。さっき言われたとおり六十四歳。総理は七十二歳です。もう皆さん、顔色がつやつやとして、元気いっぱい働いておみえになるわけです。民間は三十五歳だとか四十ぐらいから早期定年という事態ですよね。私は、そういう実態は笑いごとじゃないと思うのです。やはり真剣に考えていただかないと、日本の国全体の立場の上に立って政治ということをやってもらわなければ困ると私は思うのです。政治家だけは七十二でも第一線でがんばれる、民間の働く労働者は四十過ぎで定年をどんどん強行されていくということではどうにもならぬと思うのです。そういう意味で、アメリカは定年制を七十に引き上げたというわけでございますが、年齢差別禁止法案、これは私どもの党でも、年齢差別禁止法案というのを一遍つくろうじゃないか、上限は六十になるのか、六十五になるのか、七十になるのかは別でございますけれども、少なくとも年齢差別禁止法案ということを提案したいと思うのです。労働省の中でも一部このことについての御相談がなされたと聞いておりますけれども、労働大臣から御意見を賜りたいと思います。
  189. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく、現在の日本の職場の年齢の状況を見ますと、高齢者社会に入ってきました今日、現状は当てはまっておらない、このように私も考えております。  ただ問題は、日本には、御案内の年功序列制の賃金体系になっておるという、こういった一つのネックもございますから、やはりこういった問題を含みながら、定年制は一応厚生年金の給付年齢である六十歳を目標に、できるだけ早い機会に、環境整備と相まって実現するように努力をいたしたい、私はこのように考えております。
  190. 草川昭三

    草川委員 いま労働大臣は、私の質問に対して、六十までとにかく何とかしたい、あるいは先ほど申し上げました雇用対策基本計画についてもある程度見直していきたい、馬場委員会にも答申を求めたいという御発言があるわけであります。  では、一回ここで厚生大臣にお伺いをしたいわけでございますけれども、私は昨日の社会労働委員会で厚生大臣にもお伺いをしたわけでございますが、一体六十歳になったら老後保障ということを年金で受け入れられる条件にあるかどうか。厚生年金の将来見通しは行き詰まらないのかどうか。同時に、制度審議会というのはこの一月にも答申をいたしておりますけれども、その制度審議会の中では、やがては六十五にならないと、受給年齢を引き上げないとやっていけませんよということを言っておりますね。そのことについて厚生大臣の御答弁を願いたいと思うのです。
  191. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 今日の厚生年金の支給開始年齢は六十でございますから、これを将来引き上げなければならぬのではないかという御意見も審議会の中にございますし、私どもも、給付改善等が進んでまいりましたり、あるいは被保険者の保険料の負担の限度等をいろいろ考えてみますと、やはり近い将来ではないけれども、将来は支給年齢を六十五歳ぐらいまでに上げていかなければ、内容を充実して健全な経営をやっていくということから考えますと、そうせざるを得ないような時期がやがて来るのではないかなという、いま、感じでございます。ただ当面は、いまのままの現状でずっと見通していった場合に、厚生年金がやれないというような計算ではありませんけれども、給付内容の改善なりあるいはその他いろいろ考えていきますと、やはりその辺のところは考慮をしていかなければいかぬような時期が来るのではないかなという、今日ではそういう感じでございます。
  192. 草川昭三

    草川委員 いま厚生大臣は感じという言葉を使われたのですけれども、将来展望は明らかに近日中に六十五歳に給付年齢を引き上げなければいかぬという、こういう御発言があるわけであります。定年は下がり、六十歳定年はほとんどまだ実施をされていない。年齢がどんどん引き下げられていく。年金は将来は六十五に引き上がっていく。その空白期間は一体だれが埋めるのですか。一体だれがどういうようにすれば、われわれはその年代の間生活をすることができるのか、これはもう雇用計画の基本的な問題だと私は思うのですが、労働大臣から御見解を願いたいと思うのです。
  193. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この問題は、先ほどもお話がございましたように、急激に高齢者社会に入ってきた日本の雇用問題、これをどうやるかということでございまして、高年齢者に対する雇用対策というこの一環から考えなければならぬ大切な問題だと思います。  そのためには、御案内のごとく高年齢者雇用率制度というのがございますが、これがともかく着実に完全に実施されることによって高齢者の生活の安定を図るということ。それから特に高年齢者の失業給付の個別延長、これはことしの二月一日から一年間また個別延長する、こういった当面の対策でございます。それともう一つ、やはり高年齢者に対して雇用促進という意味において、受け入れ事業主に対して、中小企業の場合は従来の賃金の三分の二、これを支給する、こういうことによって受け入れやすい体制をつくって高年齢者の再就職の道を開く、こういったことも努力しながら定年延長の問題を実現していくということが必要ではないか、私はこのように思うわけでございます。
  194. 草川昭三

    草川委員 いま、たまたま特別の高齢者の問題を言われたわけでございますけれども、実は大企業では三・九%より高齢者の促進法のパーセントを消化してないのですね。実施してないわけですよ。中小企業だって八%なんです。だから、いまの労働大臣がおっしゃられたようなことでは、私はこれはなかなか進まぬと思うのです。  そういう点で、私はこれは一つの問題提起でございますけれども、いま労働省は職業転換給付金だとか雇調金だとか、いろいろな給付金がたくさんあるわけでございますが、こういうものを実施をしていないと、達成をしていないと、これからのいろいろな給付金だとか補助金なんかの受給条件にならぬというような、一種のペナルティーというのですか、締めつけというのですか、非常に厳しい条件を何かお考えになっておるかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  195. 藤井勝志

    藤井国務大臣 定年延長の問題につきましては、もう一つつけ加えて、いまのお答えに関連をして申し上げますと、定年延長奨励金制度を、五十三年度におきましては、従来は十二万円でやったものを中小企業の場合十八万円にことしはやっていく、こういったことによって、とりあえず中小企業の場合、大企業の場合、延長を実現する間は逐次定年延長奨励金制度によってこれが高齢者の就職の場を確保するという、こういう配慮をやりながら、全体的に日本の社会が環境が整備されるということによってだんだんに積み上げていかざるを得ない、このように思うわけでございまして、定年延長ということと今度は雇用の確保という問題は、部分的には矛盾する面もございますから、そこら辺を調整して、現在のような中高年齢が途中で仕事を失うということは、これは非常に社会的にも問題だ、これはひとつスムーズに制度をつくっていかなければならぬ、制度化しなければならぬ、このように私は思います。
  196. 草川昭三

    草川委員 いま大臣のお話を聞いておりますと、先行きがますます不安になってまいります。だから、先行き不安になるから、お互いに乏しい中からでも貯金をしながら消費を抑えていくという生活になっていくわけですから、基本的な解決にならぬと思うのです。  そこで、しかし時間がないので、ひとつ今度、具体的に雇用をつくり出すという面でこういう矛盾があるということを、運輸大臣にお尋ねしたいと思います。  造船の話であります。造船は今日でも非常に条件が悪い。瀬戸内では六十社のうち二十社が倒産をしておる例があります。その中でも下請労働者は、ただいまのところ、三十七億円の不渡り手形を中型造船所に受けておるわけです。損害を受けておる。三万人近い下請労働者が職を失っております。彼らは仕事をつくりたいというので、昨年のこの予算委員会でもずいぶん問題になったわけでございますけれども、船舶解体業ということを提案しました。古い船を買ってきてスクラップにすることによって雇用を拡大しよう。だから、これは運輸省の五十二年度の予算でも、船を買ってスクラップにして雇用がふえるということは非常にええことじゃないかというので、一億四千六百二十五万円という予算がついたわけです。事実、運輸省は十二年間の長期展望のシミュレーションまでやって、促進方を昨年この予算委員会で御答弁なさってみえるわけなんです。田村運輸大臣から。そして、全国でこういうことをやると、約三千三百二十五人の造船の労働者の仕事がふえるということが決まったわけですよね。ところが、スクラップの値段がちょっと下がったものですし、下請の連中ですからなかなか仕事が進まないということになって、今度五十三年度でようやく仕事をやれるという段階になったら、運輸省は五十三年度の予算がゼロじゃないですか。ようやく運輸省の指示のもとに仕事をやろうと思ったら、五十三年度、予算がない。どうしてくれるのですか、どうされるのですか、一体。
  197. 福永健司

    ○福永国務大臣 お話しのごとく、解体業というものは日本でも、やりようによっては仕事になると私も確信をいたします。外国ではそれを仕事にしているという例も幾つかあるわけでございますが、日本の場合、これをやろうということで、すでに九つぐらいの組合でそのことを始めておりますが、率直に申しまして足踏み状態というか、余り伸びていないことは事実でございます。そこで、五十二年度についてもその予算が全部消化されなくて、かなり残っているわけではございますが、五十三年度につきましては、実態が、いまお話しのように解体業に向かう人が相当多いというようなことになりますとするならば、私はさらに考えて、解体技術の改善等の理由のために適切な方法で補助金を出すようなことを考えてみるべきじゃないかと思います。それ以後については動向をやや見なければなりませんが、しかし、この種のことである程度雇用が創出されるとするならば、われわれとしては大いに考慮すべきものである、こういうように考えます。
  198. 草川昭三

    草川委員 いま運輸大臣の方から、五十三年度の予算にはついていないけれども、せっかくのいい話だから前向きの形で考えていい、こうおっしゃってみえるわけですね。わかりました。  では、そういうことで下請の労働者は非常に喜ぶと私は思うのです。一億四千万で、一千万しか使ってない、中小企業だから。一億三千万残っておる。普通の予算だったらこれはもらえぬけれども、まあ前向きの形でやれると言えば、これで三千三百人の人の仕事がふえたわけですよ。  この前も、公共投資によって十七万人の仕事がふえる、これは大蔵省から発表されたわけですけれども、お金だけで人はふえぬと思うのです。現実にどの地域で、どの年齢が、あるいはどういう職種の人の仕事が足らないから仕事をつける、そのために予算をつけるということをやっていかないと、雇用の創出にはなりません。これがアメリカのカーター大統領の雇用創出の方法、やり方なんですよ。そういう点でまだ運輸省は――二十五年以上の中古船がもう何と、全部で三十数杯もおるというじゃないですか、官公庁船だけでも。だから、十五年以上の船齢、十五年以上の古い官公庁船だけでやるだけでも、約五千五百人の中小造船の労働者の仕事はふえると言っているのですよ。中古船を直ちにスクラップにして新しい船をつくったら、これだけでも四%の操業度が伸びるというのですよ。具体的じゃないですか。  さらに、北海道へ行ってごらんなさいよ。北海道では、巡視船わずか四隻でしょう。ロシア語がしゃべれる人はわずか四人しかいないじゃないですか。中高年齢で、シベリア帰りの人でロシア語がしゃべれる人なんかわんさといるですよ。そういう方々を船に乗せたって、幾らでも、今日の漁業問題だってトラブルは少なくなる。いま、北海道のあの漁船に乗っておるロシア語というのは、人じゃないのですよ、テープレコーダーを回しているだけですよ、ここへ入っちゃいかぬといって。そんなテープレコーダーだけで、通訳が不足するなんというばかなことはない。これだって、やろうと思えば雇用をつくり上げることができる。  四%の操業度がアップするというのは非常に大きいと思うのです。私は、その官公庁船の受注の問題について運輸大臣の御見解を賜りたいと思うのです。
  199. 福永健司

    ○福永国務大臣 従来、余り人が言ったことでない、新しい、まことに興味深く、かつ有益な御発言でございました。私もそれを大いに研究さしていただいて、前向きに、かつ活用するように、雇用の創出につきましては特にそういう方に向けるように考えたいと思います。
  200. 草川昭三

    草川委員 そこで労働大臣に、最後になりますけれどもお伺いをしますが、労働省というのは、この前の建設省のあの十七万人の発表でも、後手後手だと私は思うのですよ。本来は労働省がイニシアチブを握って、私が先ほど触れたように、失業者がこうふえてくるのだから、あなたの部署ではこういうように雇用の創出をしてもらいたいということを、労働大臣がイニシアチブを握らなければだめだと思うのです。建設省に発表されてから数字がどうのこうの言っておっちゃだめだ。雇用センターをつくったらどうですか。雇用対策推進本部をいわゆる全閣僚の上に立てて雇用というものを見直していけば、少なくとも三十万だとか四十万の雇用の拡大というのは具体的にできると私は思うのです。労働大臣の見解を賜りたいと思います。
  201. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいまの御意見は、一つの意見としては見識のあるお考えの一つだと私は思うのです。ただ、われわれ、現在政府がとっております雇用対策は、すでにしばしば申し上げておりますように、やはり公共事業を拡大をして、そして雇用をこれに吸収する、こういったこと。あるいは雇用安定資金制度を活用する、特定不況業種の離職者臨時措置法をこれまた弾力的、積極的に活用していくということ。それから新しい雇用創出としては、中高年齢に対しては、雇用の場を特につくり上げるために民間の企業の力をかりてやっていこう、こういったことを考え、同時にまた職業訓練を、この際積極的に新しい雇用を見つけるために再訓練をする。このためには、十年前につくりました職業訓練法では間に合わない。したがって、職業訓練法の改正も現在準備をしておるわけでございまして、そういう面において事柄を前進させたい、私はこのように思うわけでございまして、やはりこの仕組みが、おっしゃるような仕組みも一つの行き方でしょうけれども、われわれは、ただいま申しましたような線で雇用の安定を図りたい、雇用の確保を図りたい、このように考えておるわけであります。
  202. 草川昭三

    草川委員 いまのお話だけでは、やはり先ほど少し横からお話がございましたように、私は、労働省の位置づけというのは非常に弱いと思うのですよ。だから、もっと本当に労働省が意欲的に雇用をつくり出すという意味での行政をやってもらいたい、こう思うわけですね。  最後になりますが、通産大臣にもちょっとお伺いしますが、特定不況産業臨時措置法というのがきのう発表されました。この中で私が非常に残念なのは、解雇の歯どめがないということなんですね、あの文章の中では。いろいろな問題がございますけれども、その解雇の歯どめというものを労働省と相談をなさって、この特定不況産業臨時措置法の原案というものが作成をされておるのかということについてお伺いをしたい、こういうように思います。
  203. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種再建のための緊急立法は、目下最終の調整作業をしております。けさほど労働大臣から、雇用問題について十分配慮をするように、こういう要請を受けまして、それをどう具体化するか、いま検討しておるところでございます。
  204. 草川昭三

    草川委員 最後になりますが、私は、いま言われましたように、これからの不況産業の解決は、もちろん設備の消却だとかあるいは廃棄だとか、カルテルとか、いろいろな問題がございますけれども、まず働く労働者をどうすべきかということを前提に、あらゆる施策の根本ということをぜひつくっていただきたい。公共投資の場合もそうですけれども、お金からくるのではなくて、いわゆるどの地域からとかいう、先ほど触れたような具体的な問題というものを基礎に政治の運営をしていただきたいということを強く申し入れまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  205. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 この際、平石君より関連質疑の申し出があります。草川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平石君。
  206. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、非常に持ち時間が少ない関係で、関係大臣にお聞きしてまいりますが、簡明直截にひとつお願いをしたいと思います。  まず稻村長官にお聞きしたいのですが、元従軍看護婦、これは、戦争中日赤によって召集を受けて戦地に行かれた、そして兵隊と同じような苦労の中で、終戦後中共に、あちこちで、外地で抑留を受けた、こういった悲惨な状態で引き揚げてこられております。私もこのことについては昨年の国会において取り上げてまいりましたが、そういった法的なものはまず差しおくとしまして、昨日も関係者が陳情に参りました。稻村長官もお会いになったわけですが、昨年の長官の話では、政府としてはできるだけ皆さんの要望に沿うよう、先ごろからいろいろと調査をして、何とか知恵をしぼっているところでありますが、なかなかむずかしい、五つの方法を考えておるけれども、これについてはいろいろ問題もあり苦慮しておるが、この現状を考えたときには何とか方法を見出したい、そして、少なくとも五十三年の春ごろにはある程度の方向を見出そう、こういうお話があったわけです。それを期待して昨日は長官にお会いしたわけですけれども、多少その面から見ますと後退しておるではなかろうかという心配が出ております。  そういうことで、稻村長官が昨日の中でおっしゃったように、いわゆる恩給ということの枠をある程度超えてでも、こういった人たちの救済について検討を政府部内でしてまいりたいというような温かみのある御返事をいただいたわけです。それで私としても、また関係者としても、これについて望みを持ったわけですが、昨日の面接の際にも、各党ともに先生方も参加をしておられました。そういうことで、長官はどのように今後していかれるか、お聞かせをいただきたい。
  207. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  日赤の看護婦の方々が長い間戦地で御苦労されておられましたことは、よく私も承知をいたしております。いろいろむずかしい点もありますけれども、各機関と連携を取り合いまして、一つ一つ詰めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  208. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま、いろいろと詰めてまいりたいというようなお話ですが、この看護婦たちは、ここにもございます。これは陸軍大臣発で、「陸密第四五五七號 日本赤十字社救護班派遣ノ件達 日本赤十字社長殿」「大東亜戦争ニ於ケル軍衛生勤務幇助ノ爲別紙要領ニ依リ其ノ社ヨリ救護班ヲ内地陸軍病院ニ派遣スヘシ」こういう陸軍大臣の命令があって、そして、日本赤十字社条例という明治三十四年に公布されております勅令、この中に兵に準ずという規定があります。この兵に準ずという規定の中で、こういった元従軍看護婦は兵隊と同じように使われて、そしてこの陸軍大臣の日赤社長に対するいわゆる命令に基づいて充員召集状という赤紙を発行しておるわけです。この赤紙によって皆さんは召集を受けて戦地に行かれた。こういう法的な根拠があるわけです。  だが、これについては、公務員でないから、あるいはもとの恩給法で言えば官吏でないからいけない、こういう話です。いわゆる身分が確立してないというのが、いままで運動をしてきた大きなネックになっておるのです。だから私はこれを示して、皆さん方にお考えをいただきたい。これについては、さらに恩給法の枠を超えてまでと、きのうおっしゃった。そうしますと、身分があるかどうかの判定は厚生省になるわけです。厚生大臣は、このことについて総理府とひとつ協議をして、窓口をつくってやられるお腹があるかどうか。いままで厚生省へ行ってけられ、そして総理府へ行ってけられ、どこへ行っても取り合うてくれないという現実があったわけです。だから、どこかで窓口をつくって、これらの身分がどうなのかということを厚生省は判断すべきである、こう私は考える。したがって、そのことについてお答えをいただきたい。
  209. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように、厚生省で取り扱っておりますのは、軍人軍属と準軍属、それから日赤の救護員につきましでも、戦傷の方々または戦没の方々についてわが方で援護の手を差し伸べている、こういうことになっておるわけですね。したがって、それ以外の方、元気でお帰りになって現在も元気で生活を続けておられる方については、これは私ども援護法のたてまえあるいは援護局の救済をいろいろやる対象にはなってないわけでございます。したがって、委員のおっしゃるのは恐らく、軍人と同じように赤紙で召集をされた人たちだから、軍人が受けている軍人恩給制度の関連で見て、何らかの妥当な措置をとったらどうだ、こういうことだろうと思うのですね。したがって、これは基本的には恩給局系統の方で処遇をどうするかということをいろいろ検討されて、いろいろ関連の他の軍人軍属やその他の方々との問題もあろうかと思います。相当困難な問題だろうとは思いますが、そちらの方でもし何らかの措置を考えられるということになりますと、今度は私の方で、戦傷者あるいは戦没者等について傷害年金や遺族給付金をやる際には、日赤に全部原簿がありまして、それを厚生省が、監督指導の団体でございますから、そちらから全部いただきましてそしてやっておるわけでございますから、原簿は十分そろっておりますので、それによって総理府に御協力を申し上げる、こういうことになるわけでございますので、方針が決まれば私どももできるだけ御協力申し上げたい、かように考えます。
  210. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの答弁はどうもはねかけ合いのことに聞こえました。したがって、方針が決まれば御協力を申し上げる、こういうことですが、これは政府の内部においてやらねばならぬことであって、こっちへ言うべきことでない。したがって、稻村長官のきのうのお話にもあり、さらに昨年の国会での私の質問の中で藤田長官が、ここ二、三年待つ必要ありません、もう早急に手当てをいたします。こう言明された。そして、こういった陳情の方に対しても、来年の五十三年のこの通常国会には何らかの方向、めどを立てて、こういう話があったのです。いまの御答弁では、ただ身分についてそういう事務的な経過でございます。そういうことでありますので、というようなことですが、それでは前進になりません。だから、きのう稻村長官がおっしゃったように、恩給の枠を超えてでも身分の関係を研究して、そして何らかの処置をとる、こういうきのうの発言を実行していただきたい。  ここに私が持っておる上野さんという人、このことでずっと来ております。この人は、ちょうど昨日手術をしてみますと、がんで、そしていま電話が入りましたが意識不明だそうです。きのうも長官にお会いした中に七十二歳というおばあちゃんが来ていますよ。だから、これはいつまでも待つわけにはいかぬ。今年のうちには少なくともめどを立てていただきたい。そういうように必死に皆さん方がやっておられ、しかもこの人はきのうがんで開腹手術をして意識不明、もうもたぬじゃないか、こんなに言っておる現実ですから、稻村長官、いまの答弁ではどうも私は不服でございますので、ひとつもう一回御答弁いただきたい。
  211. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  軍属という考え方でいきますとなかなかむずかしい点がありますけれども、しかしきのういろいろ御意見をちょうだいいたしましたし、また戦地で参画された方々らの意見をも聞き、また物的証拠と申しますか召集令状等々をいろいろ拝見をさせていただきまして、むずかしい点ではあろうけれども、これはひとつ何らかの形で問題点を詰めていくということをきのう申し上げておりまして、きのうとは前進こそしておれ後退をしておるものではない、こういうように御理解をちょうだいしたいと思います。
  212. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がありませんので深く論議ができませんけれども、もう一回厚生大臣にお聞きします。  厚生大臣、いまのはただの事務所管の問題を言っただけのことですが、稻村長官とともにこのことについては総理府と一緒のテーブルに着いて研究をし、話し合いをするということをやりますかどうですか、そのことだけ答えてください。
  213. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 厚生省の立場で私が先ほど言いましたのは、恩給関連の問題で処遇の方針が決まれば私どもはできるだけの協力を申し上げると言ったので、それは厚生省の立場は戦傷病者、戦没者だけの関係をやっておるものですから、私の方の所管でない問題ですからそう申し上げたのです。手続には大いに協力しますし、それが決まれば、そのときにはどうせ私どもも窓口にならなければいかぬわけでございますから、できるだけのことをしますと申し上げたのです。  一方、国務大臣として、そういう気の毒な方々もいっぱいいるのだからひとつ大いに協力せいというお尋ねであれば、総務長官と大いに協力をして私もできるだけの努力をする、これはもう当然のことだと思います。
  214. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの御答弁で大体了解しました。それで、非常にむずかしい問題があることは私も承知です。だからこそ今日までかかったのですから、ひとつ知恵をしぼっていただいて、いまおっしゃったように負傷したとか死亡したとかいうことで、できないのだけれども、元気な人をやるということで、ひとつ誠意をもってやることを要望しまして、この問題については終わります。  さて次には、消防庁長官おいでになりましたか。――まだですか。それでは厚生大臣にお伺いをします。  私はここに一枚の新聞の記事を持っております。これは七十二歳になるお年寄りです。しかもひとり暮らしのお年寄りが、生活に苦労をしいろいろな中で、とうとう自殺をしたという悲劇の記事です。これは今年の一月二十一日、「四-五カ月前から食生活にこと欠く状態で電気、ガスを止められたことが一因となり、将来への希望をなくして自殺を図った」、これが警察の検視調書です。それで亡くなったこの方は、百円に当せんした宝くじがたった一枚、米が一・五キロ、一升、イモが六個、「支払い能力なしとして電気は止められ、冬に電気コタツで暖をとることもできなかった。水道も使えずふろにも入れない。ガスも止まって裏山から拾ってきた木をいろりに燃やして食事をしていた。」そしてとうとう生活に疲れ、将来をはかなんで自殺をしたということです。これを厚生大臣は政治家としてどう考えますか。
  215. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 そういう事実があるということはまことに悲しいことでございますし、同時に私どもとしては、いろいろな方法があるのに、民生委員その他いろいろな手当てをどうしてできなかったのかなということで、大変遺憾に思います。恐らくそのお話でございますと、当然生活困窮でございましょうから、生活保護の道があり、また必要ならば養護老人ホームへ入れますし、また病気の場合は特養という問題もございますので、はなはだ残念だと思うのでございますが、できるだけ民生委員あるいは市町村等の監督指導を十分にいたしまして、そういう事例が起こらないように対策を十分とってまいりたい、かように思います。
  216. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ありきたりの御答弁ですが、厚生省の資料によりますと、こういうひとり暮らしのお年寄りというのは、全国で大体六十万、そして寝たきりのお年寄りというのは三十四万と言われておる。私もよく田舎でお年寄りに会うのですけれども、お年寄りの言葉は、平石さん、どうも私は長生きをし過ぎた、長生きをして皆さんに迷惑をかけた、早く迎えが来ればいいけれども、迎えも来てくれぬ、こういったようなお年寄りの言葉です。こういったお年寄りに、国民総生産において二百兆、予算規模において三十四兆、そして一億国民の中でわずか三十四万や五十万ぐらいの方にこういうような悲劇を全国各地で起こさすということは、政治家として考えていかなければいかぬじゃないかと私は思うのです。今度政府が提案されておる老齢福祉年金は、一割引き上げて一万六千五百円にしようとしております。この根拠を示してください。
  217. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 物価の上昇率等を勘案いたしまして、それだけでは相済まぬわけでございますので、それ以上の引き上げをひとつやろうということから、千五百円増額をいたしておるということでございます。
  218. 平石磨作太郎

    ○平石委員 物価調整という形でやっておられるということです。わからぬでもありませんが、これで生活はできますか。私がいま御紹介したようなこんな事例が起きるということは、全く働く道もないひとり暮らしの老人がふえてきた、田舎でひとり暮らしがふえてきたというのは、自然発生的に生まれたものではないです。やはり、いままでの経済の歩んだ後にこういうものが出てきたのです。だからこういった人たちに、少なくとも老齢福祉年金一万六千五百円、これでごしんぼういただきたい、それでは余りにも温かみがないのではないか。したがって、この間の社会保障制度審議会でも答申が出ております。  さらに、厚生省が老人ホームに渡しておるお年寄りの一般生活費は幾らですか。
  219. 上村一

    ○上村政府委員 現在、甲地の場合、養護老人ホームで八万一千九百七十円、特別養護老人ホームで十三万六千六百七十円でございます。(平石委員「そのうちの生活費」と呼ぶ)まず甲地について申し上げますと、養護老人ホームの生活費が二万五千三百七十円、特別養護老人ホームの生活費が三万二千七十円でございます。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま生活費で、少なくとも甲地において二万五千三百七十円、乙地において二万四千、こういったような形で出ております。そういう施設におられる方の一般生活費、食べ代が二万五、六千円出ておるのですよ。そして生活保護で、これも最低生活の基準という扶助基準を見てみましても、東京で大体一人のお年寄りが五万一千円、それから乙地と言われる田舎の方で四万何がしですよ。これを考えたときに、一万六千円五百円でごしんほういただきたい、これはどうかと私は思う。それから、総理府の家計調査によるところのお年守りの一カ月の消費支出が九万六百幾らです。これは二人世帯で九万円はかかるのですよ。私はそれを引き上げないと、まあ物価調整、物価調整という形でやってまいりますと、十年年金とかあるいは拠出制のものにしろ厚生年金にしろ、一番底のそういった人たちの、同じように物価調整をしていきますと、だんだんと格差がついてくるのです。だから、これを始めたときと現在の時点での格差というのはひどいものになっております。モデル年金と言われるそのときの一カ月のものといまの一万六千五百円とを比較してまいりますと、倍違いますよ。そういうように拡大していくが、政府はこれを引き上げようともいたしませんけれども、その考え方の基礎一つ私がお聞きしたいことがある。  それは、いままで経済と福祉というものを二元的な考え方でやっておられた。だから、経済発展をして、そこに摩擦が生まれ、そういったお年寄りのようなものが出てきたら、仕方がないから社会保障費を回そうか。こういう形で経済がしぼんでまいりますと、いまのような不況になると、福祉の方も仕方がないというので下がる、停滞する、あるいは伸びが鈍化しております。そういう二元的な考え方があったから、こうなっていくのじゃないか。いま経企庁長官にもおいでいただいておりますが、そういう考え方でなしに、社会保障に使うお金というのは経済の足を引張るものでもないんだ、これはむしろ消費を拡大していく一つの手だてになっておる、だから経済の中に社会保障といった――いまも論議がありました、雇用の問題、年金の問題、いろいろありましたが、そういう形に経済を担当せられる大臣も考えていただかなければならぬ。ここに経済と社会福祉というものは一体のものである、トータルなものであるという認識に立っていただかなければならぬ。そういうことで、大臣は今度の経済見通しの中に七%の成長、そして一一・九%の個人消費の伸びを見ておられます。この中に、いわゆる振替所得と言われる社会保障関係費がどのように消費に回って、それが個人消費の伸びにどれだけ役立っておるのか、私はこのことをひとつ経済企画庁長官にお聞きしたいと思います。
  221. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 その前に、一言だけ私から申し上げさせていただきますが、福祉年金の御意見等をいろいろ承りました。私、ひとり暮らしの老人の数字その他、そのとおりだろうと思うのです。ただ、その方々は、私ども福祉年金だけで老人対策をやっておるわけじゃありませんので、老人福祉対策については先ほど申し上げましたような万般の政策をとっております。これをひとつぜひ御理解をしておいていただきたい。  それからもう一つは、福祉年金は、先ほどいろいろお尋ねがありました軽費老人ホームあるいは養護老人ホーム等の生活費と比べますと、なるほど少ないわけでございますけれども、これはいわゆる措置をして、生活保護等の関連の方々の施設と、それから生活保障全部をカバーする年金という概念ではなくて、所得保障という点から見ますと、したがって、生活保護の老人、七十歳以上の方々の一人当たりの五万円と福祉年金は考え方が違うものでございますから、その点も御理解いただいて、ただ、福祉年金は今日の一万六千五百円でおまえたちはもう十分か、こう言われますと、それは私どもも決してそれで満足しているものではないのでございます。ただ、この経過年金についてはいろいろな角度から検討しなければいかぬ問題がたくさんあります。性格自体もどういう取り上げ方をするかも考えていかなければいけませんので、一年間いろいろ検討して、りっぱな考え方を来年はひとつ基本方針としてお示ししたい、こう申し上げて、いませっかちにそういうことについて私どもが同意できない、こういう考えで申し上げているわけでございますので、これだけ御理解をしていただきたいと思うわけでございます。
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 個人所得のうちで、ただいまお話しの振替所得に当たる部分は大体一〇%前後というふうに推定をいたしております。それでそれが全体の消費の中にどういう寄与度を示すかということは、これだけを分けて消費の計算ができませんもので数字で申し上げることができませんが、ただ、御承知のように家計を所得の低い方から高い方へ五分位に分けてまいりますときに、所得の低い方が消費性向は高いということが言えますし、いわんやこの振替所得のようなものは、したがいまして普通の所得よりは消費性向が相当高いと考えることが相当であろうと存じます。
  223. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまお答えにありましたように、五分位を見ましても、社会保障関係に使われるお金はほとんど消費に回るということ、だからたとえば医療保険の問題にしましても、医療支出は全部一〇〇%消費に回っておるわけですね。だから年金におきましても、お聞きしてまいりますと、九〇%以上は大体消費に回る。それから生活保護は、当然のこととしてこれは一〇〇%消費に回っておるわけです。だから私が先ほど申し上げたように、経済の中で社会保障費というのは経済の足を引っ張るのではない。こんなものにお金を使うのはもったいないというような考え方があったとは言いませんけれども、経過から見たときにそのような感じがするわけでございまして、長官、社会保障というものが今度の予算を見ましても鈍化しております。構成比においても伸び率においても鈍化しておる。佐藤元総理は福祉なくして成長なし、こうおっしゃった。私はこの福祉なくして成長なしということが、いま大臣にお聞きした、やはり経済を支えていく大きな一つの手だてなのだ、こういう認識を持っていただきたい。どうですか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私ども経済経済と申しますけれども、実際は人間のために経済があるのであります。ことにわが国程度までまいりましたら、やはり国民が幸福になるために経済というものがあると考えることが至当であろうと思います。したがいまして、働く意思がありながら実際働けないというような方々に対しては、これは経済成長が速いから、大きいから小さいからということでなくて、やはり最低限のものは確保をしなければならないし、それができるというわが国経済になりつつあるというふうに考えています。まだ完全にそれができるというところまでまいりませんけれども、しかし福祉国家というものはやはりそういうことを理念に進んでいかなければならないものだというふうに考えております。また、そのような振替所得は消費性向が高いではないかとおっしゃいますことはそのとおりでございますから、それはやはり大きな消費購買力となって動くということもそうだと思います。
  225. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま通産大臣もお見えいただいておるわけですが、先ほどの同僚の草川議員の論議の中にもありました。日本の行政は縦割りですから、雇用の問題になると労働大臣、こうなってきます。私はいまお話し申し上げたように、やはり産業というもの、これも、いままでの日本経済発展の中で社会保障というものを考えてまいりますと、そこに突き当たる問題はそういった産業の政策の問題へ突き当たる。だから経済発展をしてきて、そして社会問題を引き起こす、自然をある程度破壊するという形にもなってくる。だから、経済の論理、企業の論理だけで物事を判断してまいりますと、そういうサイドでの行政のみでは――社会保障、これからの人間の生活、いま長官が答えられたようなことを実現するためには、通産大臣としてもそういう姿勢でやっていただきたいと私思っておるわけです。だから、この社会保障費の中の医療につきましても、これは今年もうすでに十兆円を超そうかというような状態、これはほとんど医療器械メーカーだとかあるいは薬剤メーカー、こういったものの企業、産業の支えになっておるわけです。そういう立場から考えたときに、雇用の問題や年金の問題、そういったことについて、やはり人間の生活ということも経済の論理の中に考えて行政を通産は進めてほしい、私はこう思って大臣に来ていただいたのですが、大臣の考え方、姿勢をお伺いしたい。
  226. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお述べになりました幾つかの課題は、相互に相関連しておるということは十分理解できます。
  227. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もっと論議を進めてまいりたいのですが、時間がございませんのでこの程度でおきます。なお、いま厚生大臣のお話の中でありました長期計画へ私は入ろうと思っておりましたが、時間もありません。この長期計画については、前期経済計画の中に「社会保障長期計画を早期に策定する。」こうなっておるわけですね。それについての準備は進んでおられるようなお話ですが、これは大体いつごろをめどにしていますか。
  228. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 ことしに入りまして、しばらく休んでおりました社会保障の長期計画策定のための私の諮問機関でございます懇談会、これを開いていただきまして、これから五十三年度中には何とか一つの考え方を示していただきたいと私、お願いをいたしたわけでございます。長期計画と言いましてもその主体は、医療保障と所得保障の二本の柱がやはり主体になっていくだろうと思うのでございます。これらについては、私、一つの方向だけは実は近く出し得るのじゃなかろうかと思っております。しかし、いろいろ国会の中でも、社会労働委員会を中心にして与野党一致の御意見で小委員会等もできてございますから、それらの御意見等も十分承りながら、一緒になってひとつつくり上げたいという考え方のもとに私どもとしては鋭意準備を進めておる、こういうことでございます。
  229. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお話で大体了解できますが、ただ、さっきの一万六千五百円ということと関連して申し上げてみますが、この長期計画をつくる場合に、やはり社会保障制度審議会が昨年末の二十日にいわゆる建議がなされております。この中に、年金の「給付水準」というところで生活基盤に対応する水準、こういうことが建議の中に出ております。だから一万六千五百円というものにはそれなりの、あるいは生活保護については、またそれなりの考え方で進んでおると思うのですが、長期計画をつくる、その中では少なくとも生活基盤に対応する水準ということで建議がなされておりますが、それに沿う意味においても、私は少なくとも今年は二万円に引き上げをすべきである。二万円で生活できるかと言うたら、それはできませんけれども、それに対応するためにも今年二万円に引き上げたい、引き上げてほしい、私はこう思うのですが、大臣いかがですか。
  230. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、福祉年金が一万六千五百円で十分でないという観点からいろいろ御議論されることは私もよく理解できるのです。ですけれども、御承知のとおりこの拠出制年金をつくりましたときの、補完的な役割りで出発しましたこの福祉年金、さらに五年年金等を考えますと、この経過的措置の年金については、おっしゃるようにこれは根本的に考え直していかなければいかぬのです。だけれども、この前も申し上げましたように、これは他の一般の拠出制年金とのかかわり合いなり、あるいはいま所得制限は相当高いところまでいっております。こういうようなものなり、あるいはまた将来の国民年金の給付水準のあり方なり、あるいは拠出制の場合の国庫負担との均衡を考える考え方とか、そういういろいろな面に関連をして考えていかなければいかぬものでございますから、したがって私どもは、最低の生活を保障する大体何割程度が基本的に老後の所得保障としては必要なのかという点を考えまして、そしてこの経過年金等については基本的な方向を見定めた上で改正をしたい、年金懇談会でもそういう意見でございますし、そういたしますと、一般の拠出制年金の方のぜい肉を落とすものを落としながら、この経過年金の改善というものも、しっかりした金額で、これが二万円がいいのか三万円がいいのか、あるいはいろいろお話にありますような、老人ホームに入り得るような額でなければいかぬのか、こういう点を慎重に一年間検討させていただきたいと申し上げておるわけです。お年寄りの老後の所得保障として、現在の福祉年金が十分であるとは思っていない、この発生の経過から見ても、経過的措置でございますから、補完的な役割りを果たしているわけでございますので、これで所得保障、老後保障が十分かと言われますと、十分とは考えていません。  ただ、いま申し上げましたように、そういう基本的ないろいろな問題に絡んでくるものでございますから、ひとつもう少し待っていただきたい、そして一つの私どもの考え方を国会にお示しいたしますから、それによっていろいろ御論議をいただきたい、こう申し上げておるわけでございますので、私どもはせっかちに上げることについては、物価が、大体後追いでいきますけれども、七・何%でございますので、それを一割以上上げておることはまあまあの線ではないか、こういうことでごしんほうを願っておるわけでございます。
  231. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ひとつ大臣の努力を期待いたします。  次に、消防行政についてお伺いしたいのですが、長官にお伺いをいたします。  日本の消防というのは、ほとんどが非常勤の公務員である消防団員、いわゆる義務消防と言われるものによって行われております。ところが、この義務消防の職員が、台風とかあるいは火災、こういったところに出動するわけですが、その際に負傷をせられるということになりますと、この人たちのいわゆる療養的なものも補償がありますし、さらに仕事ができなくなった、入院加療をせなければならなくなったというような際には休業補償ということがありますが、その中で、消防団員が失業中であったということから、これが補償がなされないということがあるわけですが、これは私は不合理だと思うのです。災害に出動する義務的なこういった消防団員がそこで補償がない、失業中であって補償がないということになりますと、今後の団員の確保とか、あるいは出動時におけるところの命令でも、あなたは失業中ではございませんか、非常に危険度の高いところへ出るのですから、その任務がありますから、団長としては、失業中の者はお控えください、こういうことを言わなければならぬという事態、私はこれでは今後の消防を考えたときに非常に危惧されるので、なぜ失業中の場合に支給がないのか、ひとつお答えをいただきたい。
  232. 林忠雄

    ○林政府委員 お答えいたします。  ごもっともな御指摘でございまして、どうあるべきかということについてはわれわれも実は同じような意見を持っております。現在は被災したときにおいて得ていた収入がなくなるということで補償するというたてまえになっておるので、それを機械的に読めば、まさに失業しておったら得ていた収入がないからというようなことで、言ってみれば冷たい扱いのような形になっておりますけれども、ただいまの御指摘のように、本当のボランティア活動、自分の身を捨てて公のために尽くすというこの消防団の活動を円滑に行いますためには、いま御指摘のような改善が加えられるのが実は至当であろう、私も全く同感でございます。  現実には、そういうことを考えまして、失業中の者も、何かもう就職が決まっておったというような取り扱いで支払っているというケースもいままであるようでございますので、御指摘の線に沿いまして前向きに検討してみたい。警察官の協力者とかその他との均衡もあると思いますから、なお多少問題があるかとは存じますが、全く同感でございますので、御趣旨のような解決に至るよう前向きに努力してまいりたいと思っております。
  233. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま前向きの御答弁をいただいたので非常に喜ばしい限りですが、実は高知市で、まあ高知県は非常に災害の多いところでして、連続パンチで大きな被害も受けました。おととし十七号台風の際に消防団員がこういう事態に立ち至った、そしていま私が御指摘申し上げたような状態で長らく出なかったのです。それがどうにか再就職についての内定があったということから配慮をいただいたわけですが、制度の上からいいますと、いま指摘申し上げたようなことを早く是正をしていただいて、そしてそういった団員が災害に遭えば、休業も直ちに、就職中であろうとあるいは失業中であろうと、長い時間がかからずにそのまま制度の上ですらっと補償ができるように早く改正をしていただきたい、こう思うわけです。  そして、私もこの間いろいろとお聞きをしてみますと、指摘申し上げたように、今後の消防についての確保の問題等、責任者としての消防長とかあるいは消防団長とかいったような者も、その点今度初めてわかったということで非常に心配をしておりますので、ひとつ早急にこれの政令の改正をお願いいたしまして、私の持ち時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。
  234. 中野四郎

    中野委員長 これにて草川君、平石君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  235. 米沢隆

    米沢委員 私は、構造不況産業対策と、それのうらはらの関係にあります雇用対策につきまして、時間の許す限り質問をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、目下政治の課題の中で最優先すべき問題は何かと問われたら、それは景気の回復と雇用の不安というものにどう対応するか、そういうことではないかと思います。  政府は、この課題に対処するために五十三年度の経済成長率の目標を七%と定められまして、公共事業を初めとして各種の行政努力でその目標達成を図ろうとなさっておるところであります。その目標達成の成否はいろいろと異論のあるところでありますけれども、そのためには何としても、マクロ的な景気回復策の充実とともに、特に今日的な課題といたしまして、ミクロ面での配慮、ミクロ面での抜本対策というものが必要であることは言うを待たないところであります。その一つがこの構造不況産業対策でございまして、いまや循環的な景気の後退に加えまして、石油ショック後のコスト構造あるいは需要構造の変化、昨今の円高、国際競争力低下に伴う発展途上国の追い上げ等々、そういうもののラッシュで、構造不況産業というものは、巷間伝えられておりますように、同時にまた通産省の資料等でもわかりますように、まさに水面下で青息吐息の状況の中に呻吟しておると言っても過言ではございませんで、その対策は目下の急務と言わねばならないと思います。  そこで、まず最初に経済企画庁長官にお尋ねをしたいわけでありますが、政府が景気回復という宿題を果たして七%の成長を達成しなければならないというそういう意味からは、構造不況業種の存在はきわめて重い存在であるはずでございます。したがって、まず伺いたいのは、この構造不況産業というものが景気の回復を果たす意味でいまどれだけ足を引っ張っておる存在になっておるのであろうか、特に経済成長率七%設定の際、この構造不況産業のマイナスに作用する部分がどう織り込まれておるのか、できれば計数的に説明を願いたいと思います。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 仮に七%の成長が達成されましたといたしましても、それによって構造不況業種が立ち直るというわけではございませんので、したがいまして、これはいまの日本経済が抱えておりますもう一つの大きな問題でございます。それなりの対策を必要とする問題であると考えております。それで、七%の足をどれだけ引っ張っているかということを計数的に実は計算ができないわけでございますが、たとえばある最近の時点においての一例を申し上げますと、統計の出ておりますところで、昨年の十一月の鉱工業の生産動向を一年前の十一月に比べてみますと、全体としては三%の伸びでございますが、その中で繊維はマイナス〇・一、製材合板はマイナス〇・二四、塩ビ樹脂はマイナス一九・六、苛性ソーダはマイナス三・七といったように、かなり全体の生産動向を下へ引っ張っておることはただいまのような一例でおわかりいただけるかと存じます。
  237. 米沢隆

    米沢委員 いま御答弁いただきましたように、この構造不況業種というものはいま大変な状況の中にありまして、特に現在、それでなくとも大変内外ともに厳しい経済環境、いつまでも続いておりますこの不況感の中で、この不況産業の安定化、立ち直りを図ろうとする対策はまさに重要課題であろうと思います。  そこで、通産大臣にお伺いしたいのでありますが、大臣は、景気回復という時代的な要請、あるいは安定経済成長へ移行していかねばならぬという時代的な要請との関連で、この不況産業対策をどの程度に頭の中に位置づけられて、行政をやっていかれる中の位置づけというものをどういうふうに考えておられるのか、そしてそのためにどういう方針で対処されようとなさっておるのか、まずその基本認識を伺っておきたいと思います。
  238. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず第一には、景気全体の回復を図っていくということが一つの大きな目標であると思います。ただしかし、現在日本の産業が非常にいい業種とそれから非常に悪い業種が混在している、こういう状態であることを考えますと、この非常に悪い業種、つまり構造不況業種に対しましては特別の対策が必要である。同時にまた、わが国は中小企業が非常に多いわけでありますから、中小企業に対してもこれまた特別の対策が必要である、このように理解をしております。
  239. 米沢隆

    米沢委員 そこで、構造不況になった要因をいろいろと調べてみますと、確かに業界そのものの責任に帰するものもたくさんありますけれども、同時に、業界の責任以外に、外的な要件として、たとえば石油ショック後のコスト高とか、あるいは最近のべらぼうな円高とか、それゆえにまた国際競争力がどんどん低下し始めておるという、そしてまた一般的な景気の後退状況の中で民間の設備投資が沈滞をしているという、予測もしない、企業の責任に問われない部面でのいろいろな要因がたくさんあるわけでありまして、そういう対策もあわせて行っていかない限りこの対策は全うできないという感じがするわけでありまして、そういう意味では大変むずかしい一面がありますけれども、しかし少なくともいまからこの構造不況業種の対策を通産省の大きな柱として練っていただくとするならば、今後こういう構造不況産業がこの苦境を少なくとも脱したという感じが持てる時期は一体いつごろであろうかという、そういう意味では将来的な展望をどういうふうに描かれながら対策を練ろうとしておられるのか、聞かせていただきたいと思います。
  240. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお述べになりましたように、構造不況業種はたくさんあるのですが、みんなそれぞれ理由が違うと思います。ただ、共通をしておりますことは、非常に深刻な事態に立ち至っておるということ、それから不況が相当長期間にわたっておるということ、そのために過剰設備をいずれも抱え込んでおるということ、こういう共通点がございますから、こういう立場から不況対策を考えていきたい、こう思っております。
  241. 米沢隆

    米沢委員 おっしゃいましたように、いまからこの不況業種対策というものを大きな柱にしてやっていただく。しかしその場合にも、各業界ごとに設備廃棄等がいまから進んでいくと思いますが、そういう意味で、業界任せあるいは業界のまとまりぐあいにかかる部面もありますけれども、政府としてあるいは通産大臣として、今後この構造不況業種というものを大体いつごろまでに設備廃棄なんかをさせて、ほぼ需給均衡できるようなものにまで持っていくのだという大きなめどみたいなものをお示しいただいて、その中で精力的に行政努力をしていただく、そういうものが必要じゃないかと思うのでありますが、重ねて将来の展望についてお聞かせいただきたいと思います。
  242. 河本敏夫

    河本国務大臣 わが国は自由主義経済でございますから、やはり事業活動の中心はそれぞれの企業、個々の企業でございます。したがいまして、政府がどこまで手伝いできるかということでありますけれども、それはやはり構造不況業種の立ち上がりのきっかけを政府の方ができるだけお手伝いをする、こういうことでなかろうかと思います。何から何までお世話するということはむずかしい、そういうことでありますから、業界自身がどう対応されるかということが先決でございまして、政府がいつまでにこうすると言うことはなかなかむずかしい。業界の御意見を聞きながら、政府が、その再建の取っかかりをつくっていくことに対して協力していく、こういうことだと思います。
  243. 米沢隆

    米沢委員 いまそれに対応して法案が作成される過程にあると聞いておりますが、その法律の成立を待たずに、すでに各業界で過剰設備の廃棄処理問題が具体的に動き出しておるやに聞いておりますが、その進行状況、あるいはその構造改善事業等に動き出す前段階のいろいろな業界の話し合い等を通じまして構造改善を推進していくに当たりまして、共通の多くの問題点があるはずだと思います。そういう意味で、いまの時点で通産省としてどういう問題点があるのか、そのあたりをちょっと聞かしてほしいと思います。
  244. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず、現在非常に深刻な事態にありますから、不況カルテルとかあるいはまた減産指導等を政府が行いまして緊急避難をさせる、こういうことが一つの当面の課題であります。そして、緊急避難をさせながら設備の共同廃棄をしていくということだと思いますが、設備の共同廃棄をするにいたしましても相当な資金が必要であります。その資金調達をどうするかということも大きな課題だと思いますし、あるいはまた設備の共同廃棄をいたしますと、当然雇用問題が起こってまいります。それに対してどう対応するのかということも非常に大きな課題だと思います。そういうことを中心といたしまして、緊急対策の法案を最終的にいま調整をしておるところでございます。
  245. 米沢隆

    米沢委員 いまおっしゃいましたように、通産省と公正取引委員会の間で、この法案をめぐりまして調整が大変難航いたしておりました。その問題につきましても、大体大筋におきましては合意ができたというふうに聞いておるわけでありますが、あとは二十一日ごろに閣議決定をされて、国会に提案をされる。先ほどおっしゃいましたように、この法案が緊急の時限立法という性格を持った法律でありますがゆえに、その成立がどうなっていくのかというのは、大変大きな意味を持つのではないかと思います。  聞きますところ、この法案の議論の過程におきましても、あるいは各党ともにいろいろと問題を持っておるというふうに判断をされておりますので、かなり国会でも論議されて、もめ抜くという感じがします。そういう意味で、緊急立法、緊急避難的な立法であるという観点からして、今後この法律がどういうような時期に成立をするか、非常に問題があるような感じがするのでありまして、もし、この法案成立がおくれていった場合、具体的にこの対策についてどういう影響が出てくるのか、今国会中に終わりさえすれば大体うまくいくのか、それとも本当に急を要するのか。そのあたり、法案成立の日程と絡んで、いわゆるおくれた場合の影響がどう出てくるのか。そのあたりどういうふうに判断されておるのでしょうか。
  246. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種は、それぞれ事情は違いますが、よく御承知のように非常に深刻な状態に立ち至っております。したがいまして、これに対する対策というものは緊急を必要といたします。調整に若干時間がかかりましたが、来週早早にはぜひ閣議決定をいたしまして、国会に提案をいたしたいと思っておりますが、その節は、何分にも事態が深刻でございますので、国会に、一刻も早く成立するようによくお願いをしていきたい、こう思っております。
  247. 米沢隆

    米沢委員 そこで、この法案に関連しましてお尋ねを進めていきますが、まだ法案はでき上がっておりませんので、何とも細かいことは言いようがありませんが、しかしすでに大筋につきましては、大きな柱につきましてはほとんど合意されて、あとはそれが法文に変わるというだけのことでありますから、その大きな柱、またこの法律の物の考え方等について、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。  一つは、通産省原案というものが、御案内のとおり大変大きな修正がなされてしまいました。たとえば、もう御案内のとおり、企業合併、営業譲渡の独禁法適用除外というものも、アウトサイダー規制あるいは業界の相当数というこの数の問題も、あるいは指示カルテルの独禁法適用除外というものも、かなり大幅に修正をされたわけでありまして、通産省が初め意図されていた法案の趣旨というものは、言葉は悪いのですが、ずたずたに切り裂かれた、そういうものにいま終わっているわけであります。しかしながら、そういう話し合いが進む中におきまして、通産省の方でも、たとえば企業合併、営業譲渡の独禁法適用除外をおろされる前後におきましては、そういうことでは対策の一貫性が保てないのだという御主張もなさっておりましたし、あるいはまた指示カルテルの独禁法適用除外の問題につきましても、設備の規模等は産業政策的に判断すべきであって、業界の自主性だけでは計画が進まぬようなときには、指示カルテルという一面統制的なものも必要なのだという、そういう議論もいろいろとなされてきたわけでございます。  そこで、こういうかっこうで大幅に修正されたこの法案というものが今度国会にかかってくるわけでありますが、その法律が成立をした時点におきまして、通産省といたしまして所期の目的をこの法案で達成できるかどうかという問題があるわけでありまして、特に法案の効果という点におきまして問題が残るというふうに考えていらっしゃるのか、いらっしゃらないのか、そのあたりを聞かしていただきたいと思います。
  248. 河本敏夫

    河本国務大臣 世の中にはいろいろな意見があるわけでありますから、私は法案調整の過程におきまして、各方面の意見を謙虚に聞いて調整していきたいということを繰り返し言っておったわけでございますが、当初通産省の考えておりました原案とは、内容は相当違っておることは事実であります。しかし、違ってはおりますけれども、過剰設備を廃棄する、そのための資金を政府が協力して手配をしていくというその基本は変わっておりません。若干変わった点もございますけれども、それはいろいろな面での努力によって補っていきたいと思っております。
  249. 米沢隆

    米沢委員 それでは、通産原案はああいうかっこうで大幅修正されたけれども、今度出されるであろう法案で十分に対応できるというふうに判断してよろしいわけですね。  そこで、次に公取委員長の方にお伺いしたいと思うのでありますが、あの通産原案が発表されまして以来、大変な御活躍はりっぱでございました。結局妥協というものが成ったわけでありますが、二月八日の記者会見で、新聞に書いてあったとおり書いてきたのでありますが、「合併を独禁法の適用除外あるいはアウトサイダー規制が削除されても、なお通産案には基本的な欠陥がある。公取委としても特定不況産業安定法の立法化は必要と考えているが、ただし独禁法の存在が否定されず、かつ独禁政策が産業政策のしもべにならない形にしなければならぬ」こういうような発表をなされておるわけでありまして、ぜひお聞かせいただきたいことは、今度の大筋で妥協成りました法案について、いまどういう御感想を持っていらっしゃるのか。あるいは、この法律が成立した後、運用される場合に、公取として特別な注文があるのかないのか、最終的には公正取引委員会として独禁政策は守り得たという判断に立っていらっしゃるのかどうか、聞かしていただきたいと思います。
  250. 橋口收

    ○橋口政府委員 いわゆる構造不況業種についての現状の認識、それから構造不況業種の事態の改善のための何らかの立法的措置が必要であるという認識につきましては、通産当局といささかの意見の相違もなかったわけでございます。  一月十八日にお示しをいただきました通産省原案には、大変広範な内容の問題が含まれておったわけでございまして、いまお話がございましたように、独占禁止政策との調和を要する問題が幾つかあったわけでございます。  折衝の過程におきましては、率直に忌憚のない意見の交換をいたしまして、相互に歩み寄りができてまいったわけでございますが、いまおっしゃいました点につきましては、当委員会藤田委員の御質問にもお答えをしたわけでございますが、私どもは独禁政策をいわば守るという立場にあるわけでございますし、また、独禁法の番人という資格を持っておるわけでございます。ただ、そうは申しましても、独占禁止政策だけですべての問題が解決するとも考えておらないわけでございまして、これだけ高度に発達した工業国家でございますから、財政金融政策も必要でございますし、産業政策というものも必要であるというふうに考えております。要は、いかに独占禁止政策とそれらの諸政策とのバランスをとるかということでございまして、申すまでもないことでございますけれども、独占禁止政策というのは、自由経済社会を持つ社会体制と申しますか、あるいは企業組織と申しますか、そういうものの運営の基本的なルールを決めたものでございますから、したがって、財政金融政策、産業政策を含めた各種の政策との調和というものが不可能なはずはない、そういう信念を持っているわけでございまして、そういう立場から通産当局とも意見を交換いたしまして、いまお話がございましたような形で最終的に決着を見たわけでございまして、私自身は、別に勝利感を持つとか、敗北感を持つとか、そういう感じは全くないわけでございまして、何とかして構造不況業種の過剰な設備の整理が円滑に進むことを心から念願しておるものでございます。
  251. 米沢隆

    米沢委員 この構造不況業種の設備廃棄、そのためのカルテルの規模が適切かどうか、そういうものについては産業政策的な観点から見直すのがあたりまえであるという、そういうものは私は正論だと思うのです。しかしながら、先ほど来の議論でわかりますように、この産業政策と独禁政策というものの調整というものが非常にむずかしい。そういうかっこうで議論がなされて、最終的に公正取引委員会として、構造不況業種については独禁法を弾力的に運用するという方針が示されたやに聞いておるわけでありますが、この趣旨というものをもう一回御説明をいただきたいと思います。
  252. 橋口收

    ○橋口政府委員 自由経済社会でございますから、その中のいわゆる私企業が設備投資をどうたうふうにやるか、それから、持っている設備をどういうふうに処理をするか、あるいは設備の運用を制限するかという問題は、まず第一次的には当該事業者が判断すべきものであるというふうに考えております。その次の段階として、単一の事業者だけでは問題の解決がうまく進まないということで、共同して設備の制限ないし、あるいは廃棄を行うというような共同行為をしたいという合意ができましたときに、独占禁止法はどういうふうに対応するかというのが、実は問題意識の原点でございまして、昨年の十一月に公正取引委員会といたしましては、昭和二十八年の改正独禁法によって生まれました不況カルテルの運用方針を転換いたしまして、従来は、設備の制限という用語を狭く運用方針として採択をいたしておりまして、設備の格納とかそういうもののみに限定したいという方針でやってまいりましたのを転換いたしまして、設備の廃棄についても業者間で共同の合意ができた場合には、そして不況要件に該当している場合には、これを受けて立とうではないかという方針を出したわけでありまして、その発想の原点は、いま申し上げましたように、まず第一次的には事業者が判断をし、事業者が合意した場合には、これはやはり政府としても協力すべきではないか。これは、必ずしも独占禁止法の弾力的運用というふうに私は考えておらないのでございまして、むしろ独占禁止法の厳正な適用の領域をふやすべきではないか、こういう考え方から、そういう運用方針を出したわけでございます。
  253. 米沢隆

    米沢委員 それから、今回のこの論争の中で、もう一つ大きな問題になりましたのは、企業の自己責任と行政のかわり合い方というのが大きなテーマになったのではないかと思います。理由はともあれ、こういう構造不況に陥った業種そのものにも企業の責任があるはずである。特に、景気のいいときなんかに、シェア競争あたりで過当競争に入っていった、そしていまになってその分が余っているという、そういう実態も出てきておりますし、あるいはまた、相当の金額をいままで投入してきておるにもかかわらず、一向にその成果が上がっていないではないか、何回となくこういう対策を練ってきたにもかかわらず、お金を使ったにもかかわらず、いまだにまだ構造不況業種にあるというのはおかしいではないかという、そういう御意見がありましたし、行政にはそれぞれの限界がありましても、そういう意味では一端の行政責任というものも問われていいはずだという、そういう議論もございました。あるいはまた、あくまで自由企業体制の中であるから、業界あるいは企業そのものの責任でいろいろな面は対処すべきである、いたずらに行政介入は厳に慎むべきであるという厳しい理論展開もあったわけでありまして、こういういろいろな御意見を伺う中で、これほど企業の自己責任と行政の介入のあり方というものをいろいろな面から議論されたことはなかったのではないかと思います。そういう意味で、今後もこの構造改善事業を進めていく際に、この問題は常に出てくる問題でありまして、今後、通産省の行政指導というものでも、あるいは公取の判断の仕方におきましても、常に国民の批判の中にさらされる。そういう意味で、この企業の自己責任、自助努力、そういうものと行政のかかわり合い方について、通産大臣は今後どういうようなかっこうで考えていかれるおつもりなのか。同時に、公正取引委員会委員長の御所見も伺っておきたいと思うのであります。
  254. 河本敏夫

    河本国務大臣 繰り返して恐縮でありますが、日本は現在、自由主義経済という仕組みで経済運営がされております。したがいまして、すべて主導権を持って行動するのは企業であります。政府は、その企業が行動しやすいような客観的な条件をできるだけつくり出していく、こういうこと。また、時と場合によりまして、行き過ぎが生じまして、社会的に、あるいはまた国際的にトラブルを惹起しそうだ、こういう場合にはガイドラインを示して、それが脱線をしないように指導していく、こういうことも時にはありますけれども、原則は、やはり企業の判断ということがあくまで中心でなければならぬと思います。
  255. 橋口收

    ○橋口政府委員 通産大臣からお答えがございましたのと全くの同じ意見でございますが、多少敷衍して申し上げたいと思いますのは、一九七〇年代になりまして、日本と同じような経済体制を持ちます先進諸国は、おしなべて独占禁止政策の強化をやっておるわけでございます。独占禁止政策と申しますよりは、競争条件維持政策と申しますか、あるいは競争奨励策と申しますか、そういう、つまり競争によって経済社会なりあるいは産業社会の活力をよみがえらせよう、こういう発想に立って実は独占禁止政策の強化をやってきたわけでございまして、いろいろ考えてみますと、日本と同じような経済体制を持つ国がいろいろな財政金融政策とか産業政策とかもろもろの政策をやりまして、それは先生のおっしゃるような政府なりあるいは行政の、民間経済への介入度を深めるという面を持っているわけでございますが、そういういろいろなことをやりました結果として、やはりもう一回原点に立ち返って、競争政策に活路を見出す、こういう考え方が先進諸国の政策当局の思想を支配しているのじゃないかと私は思うわけでございます。  そういう点から考えますと、同じような先進諸国の中でも、経済の自由度の高い日本それからアメリカ、西独が経済的な優者になっているということを考えてみましても、やはり余りにも混合経済的な方式をとるということが反省の段階に来ているということを、競争政策奨励のための政策当局の努力というものが如実に反映しているのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  256. 米沢隆

    米沢委員 それでは、法案の問題点につきまして、ちょっと細かい点を聞いていきたいと思います。  まだ最終的に法案ができておりませんので、詳細な点についてはお答えできない面があるかもしれませんが、考え方については大体意思の統一ができているはずでありますから、そういう趣旨に基づいて御説明いただきたいと思います。  まず最初は、安定基本計画というものを定めて、過剰設備を廃棄する、そういう段階になっていくような法律でありますが、この中には当然業界の意見が反映される。いま問題になっておりますのは、結果的にはこの構造改善をやって、イコール離職者を出していくという不離一体の関係にあるわけでありまして、この安定基本計画を作成する段階で関係審議会というものに諮られるというふうになっておりますが、この中に当然労働者の代表が入るというふうに考えてよろしいわけですね。
  257. 河本敏夫

    河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、けさほども労働大臣から、雇用問題について特別に配慮をするように、こういう申し出がありまして、それにどう対処するかということをいま相談をしておる最中でございまして、そのような、他と調整中の個所が幾つかあるわけです。したがいまして、全体のことについていま申し上げるわけにはまいりませんが、実は各方面と折衝の衝に当たっております政府委員が来ておりまして、その政府委員から、調整の終わった点だけを、いま御質問に答えて述べさせるようにいたします。
  258. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  第一に、将来いわゆる特定不況産業という指定業種になりまして、その業種の安定計画をつくる場合には関係審議会の意見を聞くことになっておりますが、私どもといたしましては、将来の運用といたしまして現在あります審議会に小委員会あるいは部会をつくりまして、そこにただいま先生御指摘のように関係の労働者の代表の方も加えて十分意見を拝聴する、こういうことにいたしたいと考えております。  それから第二に、ただいま大臣御説明のように、この法律につきましては、やはり雇用問題というのが非常に大きな問題でございまして、労働省当局とも法案作成の過程で緊密な連絡をとっておりますし、今後、こういう基本計画の策定という際に労働省当局と十分協議をしてやっていきたい、かように考えております。
  259. 米沢隆

    米沢委員 あとは、この指示カルテルの問題ですが、また最終的に自主努力してもだめだった、業界同士の話し合いもうまくいかない、独禁法による不況カルテルも無理だ、最終的に通産省が指示をしてカルテルを結ばせる、その場合の、指示カルテルを指導される場合の指示の内容の問題であります。この指示の内容についてどういうかっこうで指示がなされるのか、それによってはいろいろ問題が発展するわけでありまして、たとえば量だけ示してあとは業界任せにするのか、基準みたいな、あるいはルールみたいなものをつくって、あとは業界任せという形になるのか、それとも具体的に細かにどこの会社のどの部分をというそういうところまで指示の内容が広がっていくのか、そのあたりどういうふうな考えでありましょうか。
  260. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  指示カルテルと申しますと、大変いわゆる強制的な感触を受ける言葉でございますが、これはただいま現行法の中にも幾つか前例がございまして、国が一定の計画をつくって、それを最終的に担保をする仕組みとして前例も幾つかございますが、御指摘のように、この指示カルテルと申しますのは、個々の会社、個々の業者に個々の数量等を指示をするわけではございませんで、今後、業種、業態によって内容には若干の違いがあるかもしれませんが、基本的にはただいま御指摘のような量の全体の総量、あるいはその量をどういう期間にやるべきであるとか、その他一定のルールを内容といたしまして、これを全事業者に、共同行為によってその設備の処理をするようにという共同行為をすることの指示でございまして、決して個々の企業に対する具体的な数量の指示というようなことではございません。
  261. 米沢隆

    米沢委員 次に、アウトサイダー規制の問題でありますが、これもかなり大きな論争を呼びました。私はこのアウトサイダー規制の問題につきまして、指示カルテルで何かをやろうとする場合アウトサイダーを外すというのは、うまくいったらそれはよろしいのですが、最終的には不況を認定しないということと、不況だから設備廃棄しようというそのために政令指定するわけでありますが、そういう指定がないことと同じようなことになる可能性が十分あるのじゃないかと思います。議論の中では、アウトサイダーというものは確かに優良企業もたくさんありますし、もう少し自由主義経済の中で自主的な判断で今後の設備計画あたりを考えていくのは当然であるという、それもまさに正論でありますけれども、ただ業界ぐるみとして何か設備廃棄をしない限り、この業界は将来的に本当に救う道がないのだというときに、アウトサイダーを残して、それを勝手にどうぞということは、大変効果の面で問題を残すような気がしてなりません。優良企業がアウトサイダーであると同時に、結果的にはずるいところも残るわけでありまして、結局設備廃棄のための出資なんかしたくない、市況が回復したらそのメリットだけは受けたい、しかしそういう意味でアウトサイダーとして残るという、そういう一面もあるわけでありまして、アウトサイダー規制について何らかの歯どめ措置というものを、独禁法に触れない範囲内で何かできるはずだ、そう思うのでありますが、いかがなものでございましょう。
  262. 河本敏夫

    河本国務大臣 アウトサイダーの規制をすべし、こういう有力な意見も確かにありました、いまお述べになりましたような理由でありますが。しかし同時に、アウトサイダー規制を外せ、こういう有力な意見もございました。その二つの意見がいろいろ甲論乙駁、総合的に検討いたしました結果、アウトサイダー規制は外そう、こういうことに最終的に決定をしたわけであります。
  263. 米沢隆

    米沢委員 この問題は大変むずかしい問題でありますから、後ほどまた商工委員会の方に残して議論させてほしいと思います。  それから次は、この法案というものをながめてみますと、過剰設備を廃棄するという、構造不況に悩んでおるものにどう対応するかということでありますから、確かに後ろ向きの議論が多い。そしてまた、この構造改善をやっていく際に離職者がたくさん出るであろうという予想から、これも何か後ろ暗いものが多い。そういう意味で、最終的にはその雇用対策等にも関連するわけでありますが、雇用の創出というものが一面でなされていかない限り、この法律がうまく運ばないという、そういう関連になってくるのじゃないかと思うのです。そういう意味で、この法案そのものには雇用の安定だとかあるいは事業者の努力だとか、そういう一面、それからまた資金の確保等々、大きな精神規定みたいなものもたくさん入っておりますが、加えてこういう法案を具体的に実施していく場合、最終的には、雇用の拡大あるいは雇用を創出していくという国の責任を、もう一回この中で明記するということが、バランスのとれた法案になるという感じがしてならぬのでありまして、そういう意味で、雇用の創出義務みたいなものを私はこの法案にぜひ入れるべきだと思うのでありますが、通産大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  264. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種というのは、その業種の大部分の企業がまさに倒れる寸前にある、こういう非常に深刻な事態にあるわけであります。でありますから、過剰設備を廃棄して、そして再建のきっかけをとにかくこの法律でつくっていこう、こういうことであります。  幸いにいたしまして再建ができれば、その企業は、またその業種は、再び活力を回復して大きく伸びていくわけでありますから、一時的には雇用の面にはマイナスになりますけれども、長い目から見れば雇用面にプラスになる、こういう両面を備えております。しかしながら、法律案に雇用を創出せよという趣旨のことを織り込むということは、これはなかなか技術的にもむずかしい、このように判断をしております。
  265. 米沢隆

    米沢委員 議論するわけじゃありませんけれども、構造不況業種そのものの改善がなされていって、結構また健全な企業として生きていく、健全な業界として生きていくという。同時に、もうその業界そのものを維持できないという部分がたくさんあるわけでありまして、結局事業転換をしなければならぬという、そういうものもこの中に含まれてくるわけであります。そうなりますと、事業転換というのは新しい仕事が何かということでありまして、やはり確かに構造改善をしてそのままその業界で生き延びていくというものと同時に、新しい産業分野に転向して生き延びていくというものがあるわけでありますから、最終的にはスムーズに法案によって構造改善事業を行われていく、その前提は何しろ雇用をどうするかということでありますから、雇用となりますとやはり新しい仕事をどうするかということになる。そういう意味では、やはりこれを推進していくと同時に、国の責任で雇用の確保あるいは雇用の創出、仕事場をつくっていくという、もう少し積極的な一面が入っても当然おかしいことではない、そう思うのでありますが、いかがでしょう。
  266. 河本敏夫

    河本国務大臣 ただいままでの考え方は、とにかく構造不況業種の最大の共通の課題は過剰設備の廃棄である、これをやればとにかく再建のきっかけがつかめるだろう、こういうことを中心にいろいろな施策をやっていこうということでありまして、さてしからば、別にそれと並行して事業転換を積極的にやっていくということは、これはおのずから別の課題でありますので、同時に、そこまで織り込むことがいいのかどうか、またそこまでやろうとすればなかなかこれは大変な作業になりますので、とりあえずはいま申し上げましたように、再建のきっかけをとにかく与えていこう、つくり出していこう、そういうことを中心とする法律で整理をしたい、こう思っております。
  267. 米沢隆

    米沢委員 この問題も残しておきたいと思います。  次に、債務保証基金の問題であります。  これは本当にいまから煮詰める部分がたくさんあると思いますが、まず一つは、基金の規模が一体どうなっていくのかということです。いま五十三年度の予算案に提起されておりますのは財投で八十億、民間が出資すれば百億にするというものであります。しかし、こういう提案がなされたときには、通産省所管の業界、そういうもののための基金でございましたから、聞きますところ、造船あたりが入ってまいりますとまた膨大なお金が要る。そういう意味で、今後の基金がどういう形で伸びていくのか、あるいはその都度業界から話がまとまって相談があったときには自動的にこの基金は積み増しされていくのか。まず大蔵大臣に、積極的に積み増す用意があるのかどうか、同時に通産大臣には、最終的にどれくらいの規模になっていくのかということを聞かしてほしいと思います。
  268. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま仰せのごとく、当初予算では百億を予定しているわけでございます。この基金は民間との共同出資を前提にしております。今後この種のものがいろいろな業種が加わることによってもっと需要がふえてまいりますと、その場合はやはり民間出資の増加を条件にいたしまして必要額だけ積み増してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  269. 米沢隆

    米沢委員 いまのお話ですと、いまから業種がふえていく、民間だけで積み増していく――じゃないですか。そうおっしゃったんじゃないですか。
  270. 村山達雄

    ○村山国務大臣 民間にもある程度、まあ共同積み立ての方式でございます。したがいまして、いま百億用意しておりますが、これが足りないということになりますと、その追加分についても、民間の積み増しを条件にいたしまして一般会計の方も応分の負担をしてまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  271. 河本敏夫

    河本国務大臣 実は、この問題は大蔵大臣のお述べになりましたような方向で進んでおったのでありますが、その後、造船なども今回入ることに急遽決定をいたしました。そういうこともありまして、初めから金額を書くのはいかがなものだろうか、それよりもある程度流動的に考えていけるようにした方がいいのじゃないか、こういう議論も最近出てまいりまして、それでいま関係各省で調整中でございます。まだ結論は出ておりません。
  272. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま一般会計と申しましたが、これは開銀の出資でございますので、訂正さしていただきます。
  273. 米沢隆

    米沢委員 大体わかったのでありますが、あとは民間から出資させるというこのことですね。最終的には民間がどれくらい負担をするのかわかりませんけれども、どういう趣旨で民間にこういう協力をさせることができるのか。特にその規模におきましては別な面での問題が出てくるやに考えるのであります。同時に、聞きますところ、最終的には債務保証基金を借りる場合には、裏保証をほかの銀行だとか商社とか親会社等にさせて、その話し合いがつかない限りこの債務保証基金は貸さない。そういうことになりますと、裏保証の負担というものもどういう仕組みでなされていくのか、だれがそれを負担するのか、そのあたりがどうもわからぬのでありますけれども、教えてほしいと思います。特にこの債務保証基金を借りて焦げついた場合に一体だれがその責任を負うのか、説明してほしいと思います。
  274. 河本敏夫

    河本国務大臣 実はその問題もまだ最終的には決まっておりません。いま調整中でございまして、ここ数日中にはおよその方向は明らかにしたい、こう思っております。
  275. 米沢隆

    米沢委員 説明員の方の説明はないですか。
  276. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  まず先生御質問の最初のなぜ民間出資を求めるかという点でございますが、最初に大臣の御答弁にもございましたように、構造不況問題の解決、これはもう第一義的には当該業界企業の方々の自主的な解決の努力なり相互の協力ということを大前提にすべきだと考えます。その場合に、やはり従来日本の産業は金融機関あるいは関係業者、たとえば商社というような方々のいろいろな協力、援助の上に運営をされているわけでございまして、今回構造不況業種対策として政府の保証基金制度を設けるといたしましても、こういう従来の関係の中で今後この構造不況問題を片づけていきますためには、そういった関係の方々も同時に従来の協力態勢を続けていくということがやはり必要ではないか。そうなりますと、民間の資金もどこから集めるということは今後の問題で、大臣の御答弁のとおりまだ決まっておりませんが、やはり従来の方式で民間側の御協力も得ていくということがたてまえではないかと考えております。  それから第二に裏保証の問題でございますが、これはいわゆる保証をどういう仕組みでやるかという点でございまして、私どもこの法案を早く政府提案として国会の御審議をお願いする、同時に、この保証の仕組み、やり方等につきましては、それぞれ専門の金融機関の方も入れまして、どういう仕組みが一番実際的であるかというような点についての検討を今後なるべく早い機会に固めていきたい、こういうことでございまして、大臣の御答弁のとおり、現在のところはまだ決まっておりません。
  277. 米沢隆

    米沢委員 あとは、構造改善を進めていく場合に一番大事なものはやはり金ですね。こういう債務保証基金等を利用して、一般金融機関から業界ごとにあるいは企業ごとに金を借りて手当てをしていく、そういう筋でありましょうけれども、御案内のとおりいま中小企業向けには、たとえば円高対策の融資だとか、あるいは中小企業の事業転換融資とか、中小企業振興事業団の融資だとか、政府系でも開銀の事業転換融資等々ありますけれども、問題は、中小企業はこういうもので救われたとしても、また大企業は自分の信用力で調達できたとしても、ちょうど中小企業すれすれの中堅企業が一番金に困るわけですね。日本の場合いままでの中小企業体系の中で中堅企業と言われるものが一番対策的には陥没をしている部分でありまして、ぜひ体系的にもそういう中堅企業をどうするかということは見直す必要があると思っておるのであります。特にこの構造改善事業をやっていく場合に、自分で金を調達するのに、信用力も大企業ほどではない中堅企業が本当にどういうかっこうで資金を調達できるのであろうか。そういうことを考えますと、政府そのものは資金の調達にはかなり努力するというようには書かれておりますが、特に中堅企業の金融対策について、政府系金融等の積極的な融資なり、あるいは金利負担なり、そういうものを考えていただく、そういう方向で考えてほしいのでありますけれども、通産大臣の御意見を聞かしてほしいと思います。
  278. 河本敏夫

    河本国務大臣 中堅企業に対する対策は、この構造不況業種とは別に、事業規模、従業員、資本金、こういうもので中小企業を少し卒業した程度の企業が大体八千ないし一万あると私どもは想定をしております。いまお述べになりましたように、大企業は資金力がありますし、中小企業は非常に広範でかつ手厚い対策がありますから、これは何とかなる場合が多いのですけれども、このいわゆる中堅企業は非常にやりにくい。そういうことから私どもは、地方の通産局等を通じまして中堅企業の動向を常に掌握をいたしまして、そして緊密な連絡をとりながらいろいろお手伝いをしていっておりますが、今後ともその方向は強化していかなければならぬと思っております。
  279. 米沢隆

    米沢委員 それからもう一つ申し上げておかねばならぬことは、特に金融という面で、この構造不況業種の最大の特徴は商社の信用供与というもので支えられておるという一面ではないかと思います。そういうことで、民間なんかに金を出せというのも、調子のいいときに過当競争なんかのバックアップをしてきたのは商社であり銀行なんですから、そういう一面での過去の責任というものを問いつつ協力させようという、そういうものも含まれているのじゃないかとぼくは思いますが、先ほど申しましたように、この構造不況業種というものが商社金融なんかの信用供与でかなり支えられてきた面があり、同時に現在、商社そのものも売り上げの伸びが大変鈍化しておりますし、また財務内容もかなり悪化しておる関係で商社金融そのものが限界に来ておるわけでありますから、そういう意味で金融対策もかなり問題を残してくるのではないかと思います。そういう意味でも金融対策の充実というものは大変重要でありますから、その点よろしく御検討をいただきたいと思います。  それから次は、この構造改善事業を行うに当たって、設備の廃棄、そういうものを通じて改善をしようというものと、同時に業界あるいは企業の責任に問われない円高だとか石油ショックとか、東南アジア等を中心にした国際競争力が日本が弱くなって、逆に追い上げられておるという、業界の責任外の原因というもの、そういうものにやはり対応していくということで初めてこの構造改善事業がまた生き伸びていく道が開けてくるわけでありまして、そういう意味で原因別の対策というものの必要性は非常に重要ではないか、そう思うのでございます。こういうかっこうで設備を廃棄していく、一律に廃棄するかどうかわかりませんけれども、結果的にはそれが国際競争力を下げていくという一面も持っているわけでありまして、それゆえにまた、設備廃棄だけではなくて、その他の構造不況になった原因を突きとめて、その対策というものを並行的に行っていくということが、この対策を万全を期す意味で非常に重要ではないかという気がするわけであります。  そういう意味で、たとえて合繊業界というものを取り上げて、ちょっとこの原因別の対策につき御質問を申し上げたいと思うのでありますが、たとえばいま合繊業界は、増加の一途をたどる輸入というものに対して業界ぐるみで大変大きな障害に直面をしておるわけであります。御承知のとおり繊維製品には他の製品と違いましてガットの場で多国間貿易協定が結ばれて、欧米諸国はこの協定に基づいて輸入規制している例がほとんどであります。日本はこれまで自由貿易の原則を堅持するというたてまえからこの協定を活用したことがない。先進国の中では輸入制限をしてないのは日本だけでございます。繊維製品は発展途上国の唯一の輸出工業製品でありますから、一次産品の輸入と工業製品の輸出というものが不可欠な日本にとりましては、できるだけ輸入制限を避けるべきである、これは当然であります。ただ輸入の追い上げ等で文字どおりの危機に直面しておりますこの繊維業界で過剰設備の廃棄を始めたやさきに市況が安定をし、それゆえにまた輸入が急増をしてくるということになりますと、せっかく構造改善事業をやりましても何のためにやっているかわからぬという結果になって、過度の混乱が起こるのは目に見えて明らかなのでございます。  こう考えました場合、最悪の場合、構造改善事業を進める過渡期につきましては、輸入急増による市場の撹乱を防ぐために、きめの細かい方策を積み上げて、秩序ある輸入を保持していくことはやむを得ないのではないか、そういう感じがするわけでありまして、通産大臣に、特にいま合繊業界、繊維業界が直面をしております東南アジアからの急激な追い上げ、昨年と比較しまして相当の輸入の急増でありまして、それゆえに逆に倒産に瀕するというものがたくさん事例がございますので、秩序ある輸入、とりわけ多国間協定をなぜ発動されようとしないのか、そのあたりをちょっと聞かしてほしいと思います。
  280. 河本敏夫

    河本国務大臣 もし海外からの輸入というものが日本の繊維産業に非常に大きな致命的な打撃を与える、こういう事態が発生をする、市場も大混乱をする、こういうことが起これば、緊急対策を発動する場合も当然あると思います。ただしかし、ここ一両年の動きを見ますと、全体として海外からの輸入は一応落ちついておると思うのです。それからいま合繊の輸入状態についてお話がございましたが、なるほど最近は若干はふえております。しかし全体の合繊の生産量から見ますと、さほど大きな数量ではありませんし、その輸入は日本の合繊業界に非常に大きな致命的な影響を与えておる、そういう事態まではなっておらぬことは御承知のとおりであります。しかし将来万一そういうことになれば当然特別の対策を考えますけれども、しかし根本的には、日本は自由貿易体制という原則が堅持されまして初めて世界経済の中で生きていくことができるわけでありまして、しかも最近の輸出輸入製品に限って考えてみますと、むしろ輸入よりも輸出が方が多い、こういう状態でもございますから、これに対処する方策はよほど慎重を要する、このように考えます。
  281. 米沢隆

    米沢委員 弱みは輸出の量が輸入よりも多いということでありましょうが、しかし構造改善をやっていくというさなかにおいて、全体的にはトータル論議はそうでありましても、ミクロの目で問題を見ますと、業界的には大変大きな危機に直面をする。それゆえに倒産した企業もあるわけでありまして、そういう意味でこの多国間協定等を発動するという条件が日本の場合には非常に厳しい。先進国等でもそんなに大きな被害が出ていないにもかかわらず適当に――何も多国間協定を発動することは自由貿易に反するわけではありませんので、そういう意味では先進国そのものは非常に気楽にこういうものに頼って繊維業界を守っていく、そういう傾向にあるとぼくは思うのですね。そうした中で特に日本だけが、繊維だけは関税も諸外国に比べまして大変低うございますし、それから完全に自由でありますから、たとえばこの前MFAの協定を議論する中でアメリカ、欧州なんというのは逆に多国間協定の条件を厳しくしましたね。したがって韓国とか香港なんかは、いままでアメリカに入っておった、欧州に入っておったやつが入れなくなったものだから、その分がまた日本に、自由であるがゆえに入ってくるという、私はこれは事は緊急を要しておるような感じがするわけであります。しかしながら輸入の急増がどれだけ繊維業界に影響を与えるかというのは、価値観の相違でいろいろと議論の分かれるところでありましょうけれども、少なくともわれわれの立場としては、これは大変大きな事態を招く輸入急増ではなかろうか、私はそういうふうに思っておるわけでありまして、いま、もし急激な影響が出てきたならばそれは考えねばならぬとおっしゃいましたが、では、このMFA協定を発動される場合は、一体どういう条件が整ったならばこういうものを発動されるのか、私は具体的に教えてほしいと思うのであります。
  282. 藤原一郎

    藤原政府委員 お答え申し上げます。  MFA協定関係でございますが、いま先生からお話ございましたように、昨年末切れるところを、若干その運用を厳しくするという意味合いの含みを持ちまして延長したということはお示しのとおりでございます。この発動に際しましては、一応ルールといたしましては、特定の製品の輸入が急激かつ相当な量で増加しており、かつこれらの製品が輸入国市場における価格よりも相当低い価格で提供されているということのために輸入国市場に市場撹乱またはその危険が生じ、国内業者に重大な損害を与えておる、あるいはそのおそれが存する場合というのが大体発動の条件になっておるわけでございます。現在は、一部の合成繊維につきまして輸入の増大しているものもあるわけでございますが、その量につきましては、先ほど大臣からも御答弁ございましたように、量としてはまだ国内生産量に対しまして非常に僅少でございますし、重大な損害を与えるおそれがあるというところまでは現在のところは行っていないというふうな認識でございます。
  283. 米沢隆

    米沢委員 余り時間もありませんが、しかし、糸は品目ごとに二国間協定を結べるわけでありますから、そういう意味で、全体的な議論をされるよりも、品目ごとに検討されたら、たとえば六%以上伸びたら結べるのでしょう、これは。六%以上伸びたものは何ぼでもありますね。そういう意味では品目ごとに、そう厳しいものではなくても、日本政府もある程度、業界が輸入急増で苦しい時点に達したならば守ってやるのだぐらいの姿勢も私は必要じゃないかと思うのでありまして、この点はまた後で議論させてほしいと思います。  そういうことで政府が一向に腰を上げない。その結果、業界が何とかして立ち上がろうということで、新聞報道にもありましたように、関税定率法に基づいて提訴をしたいという動きがいま繊維業界にあります。繊維業界は一月三十一日、韓国、台湾などからの合繊輸入急増に対処して、安値輸入品にガットでも認められておりますこの関税定率法九条による、不当廉売関税というのだそうでありますが、ダンピング提訴で対処する方針を決定して、いろいろと準備をされておるやに聞いております。  そこで大蔵大臣、もしこういう準備が整って調査の要請があれば素直に応じる用意があるのかどうか。特に自由貿易がどうだとか、文章で書いてあるものは解釈論がいろいろあるわけでありまして、解釈の仕方によってはどうでもとれる。そういう意味では政府の姿勢そのものにすべてがかかっておるわけでありまして、もし調査の要請があれば素直に応じる用意があるのか、大蔵大臣に一点だけ聞いておきたいと思います。
  284. 村山達雄

    ○村山国務大臣 利害関係者からその申し出があれば、もちろん取り上げて調査をいたすわけでございます。ただ、その要件といたしましては、繰り返しになりますけれども、相当の損害があること、並びにダンピンであること、ダンピングというのは、その輸出国が自分の国内で販売している価格に比べて日本に不当に安い価格で売っておる、こういう二つの要件が必要なのでございます。
  285. 米沢隆

    米沢委員 はい、わかりました。  この定率法はいままで発動した事例がないのでありますが、法的には欧米のこのような法制度に比べて発動要件について特に著しい差異があるのですか、ないのですか。大体似たようなものですか。
  286. 海原公輝

    ○海原政府委員 お答え申し上げます。  定率法九条に定めております要件は、国際的に採択されておりますダンピングコードに基づいて定められておりまして、特に厳しいということはないと理解しております。
  287. 米沢隆

    米沢委員 次に、この原因別といいましょうか、ナフサの問題ですね。この論議ももう昨年からしょっちゅう行われておりますので、そう敷衍はいたしませんけれども、現在の二万九千円というキロリットル当たりの価格は、やはり世界的には最高の価格であり、それがコスト増に占める割合というのは非常に大きいという認識は通産大臣も一緒ではないか、そう思います。そういうことでいまホットな論争がずっと続いて、年末ぐらいまでには大体業界同士の話し合いがつくのではないか、そう思っておりましたけれども、またこじれておりまして一向に解決の方向に向かわない。いま約二千円ぐらい下げようということでありますが、それではどうしても納得できない。特に円高差益というものの還元を求めて非常にまたこじれておるのでありまして、そういう意味では通産大臣も早急に調整に入って決着をつける、そういう姿勢を示していただきたいわけであります。特に申し上げたいことは、五十年時点におきますナフサの標準価格を設定したときは、ドルのレート一ドル当たり三百二円、このときに標準価格二万九千円でありますから、現在のように一ドル二百四十円前後、これが安定していくかどうかわかりませんが、少なくとも二百五十円前後には安定するはずだ。二百五十円で計算し直しますと、相当にまた標準価格はダウンをする。そのダウンした額くらいは、今度のこの石油価格交渉の中で認めさせるということが私は行政の責任としても必要ではないか。なぜなら、輸入ナフサあたりが石油業法との関係で全然入ってきませんので、ナフサそのものが需給を反映して値が下がったり上がったりしないという、こういう形になっておりますから、そういう意味では一面行政の責任もあるのではないか、私はそう思うのでありますが、今後の調停に入られる姿勢につきまして、通産大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  288. 河本敏夫

    河本国務大臣 この問題はいまお話しのように非常に大きな問題なんです。そこで、六カ月ぐらい前から両業界で話し合いに入っておりましたが、その最終の解決が長引きまして、いま最終段階に来ておるのですけれども、なお調印というところまで行かない、こういう状態であります。しかし、いよいよ最終段階でありますので、何とか両業界でもう一工夫してもらいまして、そして六カ月の長い交渉に一応終止符を打ってもらいたい、こう思っております。もちろん抜本的な解決ということが望ましいわけでありますが、このためには相当な時間がかかりますので、とりあえず第一段階として、とにかく両業界の合意による第一段階の妥結、この解決を期待しておるわけでございますが、いよいよ最終段階でございますから、もうしばらくすれば目鼻がつくのではないかと私どもは期待をしております。
  289. 米沢隆

    米沢委員 最終段階であり、大変微妙なところでありますから、これ以上深追いはしませんけれども、せめて国際価格というものが、また業界同士ではそんなのはスポット的でどうだこうだという議論はありますけれども、一応国際的に認められる平均価格みたいなものはあるのですから、そういうところまで下げさせる、そういうことで御努力をいただきたい、そう思っております。  それからもう時間もなくなりましたが、次は雇用問題について質疑をさせていただきたいと思います。公取、もう結構ですから、どうぞ。  厚生大臣がえらい急いでおられるそうでありますから、厚生大臣の方からまず最初にお伺いしたいと思います。  この構造改善事業をやっていきますと、結果的には離職者が雇用調整という形で出てまいる。したがって法案そのものも首切り法案ではないかという一部のいろいろな御批判があるわけでありますが、しかしここで構造不況業種をそのまま放置しておきますと、ますます事態は深刻になって、枕を並べて産業そのものがなくなってしまう。そのときは、労働者に与える影響というものはいまよりもずっと大きいのでありまして、そういう意味ではどうしても乗り越えていかなければならない非常に大きな関門であるがゆえに早目に乗り切るべきであるという、そういう感覚を私たちは持っておるのでありまして、そういう意味ではこういう業界の構造改善を進めながら、一方ではできるだけ失業を食いとめる策をどうするのか、万一の場合、その救済の方法をどうするのか、安易に首切りさせないという歯どめをどうここでとるのか、そういうことが問題になってくるのではないかと思います。  そこで、相前後しますけれども、そういう意味では、これから先何としても雇用の場が大きくならない限り、実際はこういう対策も全然進まないという意味で、今後の雇用の創出というものを考えたときに、やはり公共サービス部門での雇用の拡大というものが、何としてでもこの安定経済成長の中では職場を確保する最大の場所ではないか、私はそう思っておるのでございます。特に予算の編成も、今度は公共事業等を中心になされて景気の回復を図ろうとされておりますが、こういう時期でありますから、単に景気を回復させるための努力だけではなくて、雇用も大変な問題になっておりますから、雇用効果の高い公共サービス部門にも配慮された財政運営がなされてしかるべきだ、そういう感じがするのです。同時に、そういうことになりますと、福祉関連の雇用の増大というものが大きな焦点になってくる。ちなみに、たとえば老人ホームあたり、いま田舎の方でつくりますと一億から二億あれば老人ホームができる。新しくできますと、そこには十人から二十人の新しい雇用がふえる。そういう意味では、たとえば寝たきり老人が四十八万人くらいおられるそうでありますが、それに対する家庭奉仕員なんかは一万五、六千ですか、そういうものを短期的に訓練して家庭奉仕員をふやしたら、それだけでもやはり雇用の場につながる。そういう意味で、こんな景気の調子でありますから、企業が新しい職場をつくるというよりも、公共サービスを通じて大きな雇用を拡大さしていく、そういうことが必要になってくるのではないか、そう思います。  そういう意味で、厚生大臣の分野においては新しい雇用の創出がある唯一の、または一番有望なところでございまして、労働大臣を兼務するような気持ちで公共サービスを充実さしていく、そのための新しい雇用をつくっていく、私はそういう努力をしていただきたいと思うのであります。その気持ちがあるとは思いますが、積極的な御見解を聞かしていただいて、お帰りいただいて結構であります。
  290. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 医療にしましても社会福祉にしましても、比較的専門的な知識、経験が必要な職場でございますので、雇用創出という観点から社会福祉を考えるということは、私どもの立場から言うと、どうもそれだけではなかなかそうは――社会福祉というものは国民の福祉増進に役立つ面から取り上げていくわけでございますが、しかし、結果的には非常に雇用増につながっていることは事実でありまして、大体過去の統計をとってみますと、社会福祉と医療を含めましてほぼ三万人近い新規雇用の増が見込まれてきております。ただ、最近は医療関係でも、医療供給体制の整備が比較的進んだりいろいろしておりますので、若干それがスローダウンしていると思いますが、来年度、私どもが民間その他いろいろ公共団体等を含めて社会福祉関係だけで見積もりましても、約二万二、三千人の雇用増につながっていると思います。そのほかの医療関係で、医師、看護婦その他を考えますと、ほぼ二万五、六千人ぐらいの新しい雇用増につながっていけるのじゃないかと考えております。  おっしゃるように、社会福祉はどんどん進めなければいけませんので、結果的に雇用創出に非常な効果があるということになりますと、私どもとしてもできるだけ御協力を申し上げまして、積極的に施策を推進していきたい、かように考えます。
  291. 米沢隆

    米沢委員 雇用の増大を図るために社会福祉をやれというのではなくて、いまおっしゃったように、結果的にかなりの雇用拡大につながっておりますので、社会福祉に熱心になっていただくことがそういうことでありますから、ぜひ今後の御健闘を祈りたいと思います。  それから、次に労働大臣にお尋ねしたいと思います。  いま、それでなくても景気が悪くて、いつ何どき首になるかわからぬという情勢でありますけれども、こういう雇用不安の解消というものに一番大事なことは、まず労働大臣そのものが雇用不安の実態を正確にとらえることだと思います。同時に、万一そういう形がかなり出てきた場合には適確にそういう事態に対応できる体制をつくるということ、いま雇用保険法とか雇用安定資金制度とか離職者法案とか、さまざまな法律がありますけれども、現在手持ちのその法律で、あるいは機動力のある行政の対応で、あるいは予算的な面で、もしそういうものがあったならば適確にわれわれは対応してやるのだという、そういうものが必要ではないかと思います。だから、いま体系的には日本の中にもそういうものはそろっておるやに私は思っておるのでありますが、あとはその運用いかんにかかっておるわけであります。そういう意味で、今後新しい離職者等が大幅に出てくる予測が立っておりますので、そういうものに対して本当に万全にやっていかれる体制にあるのかどうか、まずお伺いをいたし、同時に、いま特に構造改善事業をやっていく場合に、日経連の下川さんという方が社労委員会の公聴会で、構造不況業種から約七十万から八十万の過剰労働力を排除せざるを得ないであろう、そういう話まで出てくる昨今でありますから、この対策は本当に急を要するという感じがしますので、万全な対策で臨めるような法体系の中にあるのか、そういう運用の面でも積極的に対応する意思があるのか、そのことをお伺いし、同時に、下川さんのお話では七十万とか八十万という過剰労働力が出るという話でありますが、経企庁として、現在、企業の過剰労働力は一体どれくらいあり、構造改善事業を進めていった場合に大体どれくらい吐き出されるのか、そのあたりの数字をどういうふうに把握されておるのか、ちょっと聞かしてほしいと思います。
  292. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働省といたしましては、特に最近、御案内の円高不況という状態が重なりまして大変厳しい雇用情勢でございます。したがいまして、そういった情勢を踏まえ、緊急雇用対策を踏まえまして、これが対策としては予算的にも万全を期しております。合計約一兆五千億円ということでこの雇用対策に予算的にも備えておりますが、その中で、先ほど御指摘の雇用安定資金制度の積極的活用のためには七百億円余を計上しておりますし、また、特定不況業種の離職者対策等については約百五十億円、それから失業給付金としては、これまた九千三百億円近いものが計上されておりまして、そういう予算的な面においても万全を期しておりますと同時に、これが対策としては、地域別にも、産業別にも、年齢別にもいろいろ考慮しておりまして、地域別には、御承知の沖繩等の失業多発地帯とか、従来からあります産炭地域、引き続きこの対策としては域外への雇用奨励金制度、あるいはまた公共事業への失業者吸収率制度をフルに活用する、あるいはまた積雪寒冷地帯に対しては通年雇用あるいは冬季就労に対する援助対策、こういったものをやっておりますし、また産業別には、いま申しました雇用安定資金制度と特定不況業種の離職者臨時措置法を積極的に活用していく。年齢的には、特に最近高年齢者社会に入りましたから格別な配慮をいたさなければならぬというので、新しい雇用政策としては、高年齢者を雇い入れる事業主に対して新たにこれが助成制度を導入する、こういったことでいろいろな角度から万全を期しておるつもりでございます。
  293. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この法律に定めます制度を受けます業種、企業がどのくらいあるかということが現在わかっておりませんので、したがいまして、どのくらいのいまお話しの数字が出てまいりますか、はっきりいたしませんが、私どもといたしましては、できるだけこの五十三年度の経済の運営を予期のとおりいたしまして、環境を少しでもそういう方々のためによくしてまいりたいというふうに最善の努力をいたしたいと思っております。  それから、いわゆる余剰雇用の問題でございますけれども、私ども内々ではいろいろな分析を実はいたしておりますのですが、労働省のお立場として、もともと定義そのものも実ははっきりいたさない点もございますかして、そういう数字というものを的確に把握できないというお立場というふうに私どもも存じておりますので、そういうことでひとつお許しをいただきたいと思います。
  294. 米沢隆

    米沢委員 確かにそういう意味ではむずかしい把握でありましょうけれども、しかし構造不況業種約四百万、一割余って四十万、二割余って八十万、真ん中とって六十万という、そういう意味では相当量の潜在労働力というものが企業に抱えられておる。そういう意味では、現在の雇用を維持させていくという対策を練る場合には、やっぱり雇用の奨励策というものが強化されていかねばならぬ。企業の手持ちの分が吐き出されないようにどうしたらできるのかという、企業に肩がわりして持ってもらうという、そういう意味で、出てから、失業者になって失業対策として金を使うよりも、それ以前の段階で雇用を奨励していく、この対策の充実というものが非常に必要ではないか、そういうふうに思います。  しかしながら、御案内のとおり定年延長奨励金とか、継続雇用奨励金等の助成がありますけれども、補助金が余りにも低いので結果的には余り使われていない。よく例に出されますように、定年延長奨励金につきましても、三十億用意しても使う人は二億四千万ですから、中高年齢対策として施策がうまくいっておるなどというのは、これは冗談だ、そう思うのであります。そういう意味では、こういう奨励金の問題も見直してもらわなければいけませんし、PRそのものにもいろんな問題があるのかもしれません。いろいろ聞きたいのでありますが、総論は聞かしていただきましたので、この分は時間がありませんので御意見だけ申して、後で御質問させていただくような形にさせていただきたいと思います。  それから、時短だとかあるいは高年齢雇用の拡大とかいろいろありますが、特に時間短縮というのは、高度経済成長の時点におきましては、もう少し労働時間を少なくして楽になりたいとか、楽にさせてやりたいという感じでの時間短縮が進んできたのでありますが、今後日本の産業を長い目でながめたときに、そう簡単に雇用をたくさん抱えて産業が発展するという、そんな仕事は余りありません。企業の近代化とか生産性の向上とか、また航空機、コンピューターがこれから先の産業だと言われても、ほとんど人を使わない産業でありまして、人間はたくさんおるけれども、実際は雇用の場はなくなっていくという、そういう状況の中においては、いままでの時間短縮ではなくて、これから先は、時間短縮をすることによってみんな仲よく働く場を持とうという形での時間短縮というものが必要でありますから、そういう意味では、今後の労働省の対策としても別の観点から、いままでの時間短縮とは別の観点からの対策というものの強化をぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、最後にお願いを申し上げたいことは、御承知のとおり、いま構造改善事業等が進められていく、あるいはまた、現在まで倒産をした事例なんか見ますと、特に地域にぴしゃっと密着した企業が倒産する、閉鎖されるということになりますと、地域ぐるみでこれは大変な問題になるわけです。だから、単に産業別、規模別で対策を練るというよりも、地域ぐるみ産業対策もせなければいかぬ。業種対策もしなければならぬ。同時に、地域ぐるみで雇用の安定なり事業の振興なり産業の誘導なり、一連の事業をやっていかない限りこういう現在の状況には対応できない、そういう状況が出てきておるのではないか、そのように思うわけでございます。特に、ある企業が倒産をする、そうしますと、その倒産したところに働いておる人だけがほうり出されるのではなくて、八百屋さんの売り上げまでこれは影響してくるわけでありますから、そういう意味で、では、そうだからといって新しい企業を持ってこいといっても、幾ら工場再配置法なんかを使ってやっても、そう簡単に企業なんか出てこない。結果的には、ある企業がつぶれると同時にその地域社会が埋没していくという、そういう関係にありますから、そのためには新しい雇用を何かつくってやらなければならぬ。それにはやっぱり短期的には、公共事業をふやして特別に国がその土地だけで何かやってやろうという、そういう制度化みたいなものも必要でございましょうし、地方自治団体そのものも含めて私は対応の仕方というものを考えてもらわなければならぬのではないかと思います。その意味では、構造不況の業種を指定するというよりも、その都市そのものを不況都市として指定をして、そして対策を練っていく、機動的に行政が対応する、銭もめんどう見る、そういう形の対応の仕方というものを私はとっていく必要があるのではないかと思います。  産炭地が斜陽産業となりまして衰退していった時代に、国が特別法で各種の救済策をやりました。そこまではいかぬにしても、ぐるみで、各省庁の壁を越えていろいろな対策を練ってほしいというお願いがあるわけでありまして、地方自治団体を管轄される自治大臣、それから特に財政の問題がありますからこれは大蔵大臣、それから地域振興の関係通産大臣、雇用の安定という意味で労働大臣、それぞれお答えいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  295. 加藤六月

    加藤国務大臣 中央段階におきましては、業種別、産業別の対処がなされておりますけれども、都道府県や市町村におきましては、不況企業と運命共同体とも言えますような非常な密接不可分の関連の公共団体がずいぶんございます。ことに市町村におきましては、その企業に関係します者が五〇%を超えておりますようなところもあるのでありますから、そういうところは非常に深刻でありますことは、ただいま御発言のあったとおりでございます。そこで公共団体におきましては、さような体制をとってまいりますために対策本部を設置いたしましたり、そして協議会なり審議会等を設けまして、十分に横の連絡をとり合いながら対処してまいる、かような団体がどんどんふえてきておるのでありまして、自治省といたしましてもさような状況をいま鋭意調査をいたしておるのでございますが、私どもは、中央段階におきますいわゆる補助事業の補助につきましても、各省庁にお願いをいたしまして、不況産業、不況業種を抱えておるところには重点的に配分願いたい、かような強い希望を持っておりますことが一つと、幸いにいたしまして、五十三年度ではいわゆる単独事業を大幅に組んでおるのでありますから、その市町村の実情に応じまして、たとえば道路の改良でありますとか、あるいは河川の改修でありますとか、その他、できるだけ吸収し得ますようなそういう体制をとっていかなければならぬ。ただ、この町は、この市は不況に非常な影響があるからそれを指定しろという御意見のようにも承れたのでありますけれども、さて、私どもがさような指定をいたしますことについては問題があろうかと思うのでありますが、しかし、実際上はさような考え方のもとに諸施策を実行していくべきだ、かように考えておるところであります。
  296. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま、この不況対策というものは地域ぐるみで考えていかなければならぬというお話がございました。不況対策としての地域対策、これは幾つかの対策がございます。各省ごとでやっておりますが、しかし、この横の連絡ですね、これがありませんと効果が上がりませんので、いま御指摘のような、関係各省十分連絡をとりまして御趣旨に沿うようにしなければならぬと思っておりますが、ただ、不況都市指定ということは、これはただいまのところは考えておりません。
  297. 藤井勝志

    藤井国務大臣 特に失業多発地帯に対する雇用対策、これはやはり現在労働省といたしましては、地域雇用協議会というのを府県単位にお願いいたしまして、しかも市町村と地方自治体と密接な連携を持って、これが事務的な衝は職業安定所、ここら辺がとりまして、また現在そのような事態の発生をしている地域には近々、この予算委員会中でありますから政務次官を現地に派遣いたしまして、いろいろ対策を具体的に検討する、同時に、特定不況業種の離職者臨時措置法の地域指定をやるという、この法にのっとる地域の指定をいたしまして、この地域指定も、従来は年に一回というやり方でありましたけれども、臨機応変にやっていく、このような考えでございます。地域指定を受けますと、先ほど自治大臣からお話がございましたが、公共事業への失業者の吸収率制度というものを活用してやっていく、これはあくまで臨機応変な緊急措置でありますが、最終的には、やはり地域に密着した職業訓練センターというのを地域ぐるみでやっていく、公立の職業訓練施設ということでなくて、民間的な力も動員してやっていくような構想も積極的に進めていきたい、このように考えておる次第であります。
  298. 村山達雄

    ○村山国務大臣 構造不況業種につきましては、ただいま御注意がありましたが、通産当局と密接な連絡をとりまして、できるだけ今後とも配慮してまいりたいと思います。特に公共事業は、本委員会におきましても非常にたびたび御注意いただいたわけでございますが、構造不況業種の集まっているところ、そういうところに実施計画において重点的に配分するようにとしばしば御注意ありましたので、その点に十分留意して、少しでもその構造不況業種によって悩んでいる地域が軽減されるように、できるだけの配慮をいたしてまいりたいと思っております。
  299. 米沢隆

    米沢委員 では終わります。
  300. 中野四郎

    中野委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、井上普方君。
  301. 井上普方

    ○井上(普)委員 建設大臣にまずお伺いいたします。  昭和五十一年から始まりました第三期住宅建設計画は、公共賃貸住宅が非常に建設がおくれる反面、一方においては民間自力建設あるいはまた住宅金融公庫の住宅がたくさん建つ、根本的にもう変わってしまっておると思うのであります。言いかえますならば、金融公庫の金を使った民間自力の伸びはもうすでに七四、五%を第三年度で示しておる。これで恐らく一〇〇%近くになるのじゃないかと思います。片方、公共賃貸住宅の方は五十一、五十二、五十三、この三年間で恐らく四四、五%になるのじゃないか、このように考えられるのであります。しかも、その地域的な配分は、これも細目において書かれておるのでありますが、これまた、大都市圏における住宅の建て方というものが非常におくれてきておる。しかも、その住宅の質におきましても、第三次五カ年計画がもくろんでおった質よりはるかに低い住宅がつくられつつあるように思われるのであります。したがいまして、この第三次五カ年計画をこの際もう一度見直してみる必要があるのじゃないか。特にこの五カ年計画は閣議で決定し、各地方団体にまでもこの旨を示し、これに従えという指示を出しておる以上は、変えなければならないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  302. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 第三期住宅建設五カ年計画、毎年毎年の平均戸数百七十二万戸ぐらいのところですね。それに対して五十一年、五十二年を考えてみると、まあ百五十一万、五十二年は百五十二、三万、五十三年は百六十万というような心組みでおるわけでございますが、これは井上委員承知のように、着工戸数を一応百五十一、二、三万とか百六十万見当とか申し上げておるわけでございまして、実際上の改築数なども加えてまいりますと、平均に対してそう大きくおくれてないのではないか、こう思うのであります。しかし、着工戸数がえらい減っているじゃないか、こういう御指摘を受ければ、そのとおりでございます。  また五十三年は、繰り返し申し上げておるような住宅建設を大いに進めようというためにいろいろな施策を盛り込んでおる折からでございますので、また百六十万程度は実現しなければならぬという状況にございますので、いまにわかに五カ年計画をさあ変えるかどうか、こう言われることについては、私、もう少し模様を見ていいのじゃないか、こういうふうに思います。
  303. 井上普方

    ○井上(普)委員 との五カ年計画というのは、この表でおたくが示しておりますように、公営住宅を幾らつくるのだ、公庫住宅を幾らつくるのだ、公団住宅を幾らつくるのだ、公的資金による住宅を幾ら、民間自力建設を幾ら、こういうことを決めておるのであります。そのほかに、昭和五十一年の七月一日にはこのように、関東地方においては幾ら、北海道においては幾らというような決め方もしておるのであります。しかも、その質の面におきましても、これは目標を書き示しておるのであります。しかし、このいずれもが、計画全体が、計画の中身が狂ってきている以上はこれは変えるべきではなかろうか、改めて考え直す必要があるのではなかろうかと私は考えるのであります。大臣のおっしゃるような総戸数で言っておるのじゃございません。質を言い、かつまた公共賃貸住宅と民間自力住宅との比率、あるいはまた各地方における建設戸数のあり方、これを決めておるのが第三次五カ年計画であります。それが全部狂ってきている以上は、私はもう一度これを見直す必要がある、このように考えるのですが、いかがです。
  304. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 計画の中にいまお示しのような地域あるいは民間、公的、皆はっきりしておることは事実でございます。それについて、御指摘のようにいままでの実績が十分でない点も了承いたしますが、まあ私、検討はいたします。しかし、私としては、いまここで思い切って景気浮揚のために住宅施策をやろう、そしていろいろな施策をお願いしておるというこの段階で、気持ちの上ではいまは検討はどうかなということでございますが、しかし、御指摘のような実績と計画との差が相当あることは認めますから、この際よく省内で検討してみます。
  305. 井上普方

    ○井上(普)委員 特にこの点は政府の計画の達成が、内容がともかくがらりと違うというのでは困ると思います。特に公共賃貸住宅につきましては、これは建設戸数が計画よりも非常に低うございます。これらの問題につきましては、関連して同僚の福岡議員が後ほど質問することになっておりますので、私はこの程度にとどめたいと思いますが、ぜひとももう一度見直していただきたいことを強くお願いいたしておく次第であります。  続きまして、先般、私が総括質問におきまして、勤労者財形住宅貯蓄につきまして公務員等々のやっていない省庁が多いではないかということを質問いたしましたところが、労働大臣は、共済組合の住宅融資の方が財形住宅貯蓄制度よりも有利だ、こう明言せられたのであります。私はこれに対して反発しようと思ったのですが、時間がなくて、その次に金利の話もとうとう答弁もいただかずに済んだのでありますが、これはまことにもって労働大臣の言葉というのは不届き至極だと私は思うのです。この財形制度というのは労働省がつくった。労働省がつくっておるのでございますから、ここでひとつ労働大臣に確認したいと思うのです。先ほどのように、国家公務員の共済組合制度の方が財形住宅貯蓄制度よりも有利だということになりますならば、公務員が民間労働者よりも有利な取り扱いを受けておる、こう私は理解するのでありますが、それでよろしゅうございますか。また、これが福田自民党政府の方針であるのかどうか。そして、この法律の第四条の定めるところの「勤労者財産形成政策基本方針」もその方針で貫かれておるものと理解してよろしゅうございますか。いかがでございますか。
  306. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私が先般お答えをしたことはきわめて不十分な、私のまだ認識不足でございまして、まず公務員にこの財形住宅貯蓄制度が普及していない理由は次のような状況でございまして、決して公務員共済組合の融資があるからということでなくて、その公務員の共済融資制度がある、これを踏まえてなおいろいろな条件がこれに加わっておる。その条件とは、まず財形住宅貯蓄には長期、短期、短期の場合は三年、長期の場合七年以上、この貯蓄が前提であるということ、それから長期積立期間終了後二年以内に建築をするという予定がなければならぬ。そして同時に、積立金の二倍半の融資を自分でまた調達する、こういったことがあるために一般的に公務員に普及が十分でない、こういう認識を私はその後改めて確認をしたわけでございまして、共済組合制度が有利だから云々という私の前回答弁は訂正させていただきます。
  307. 井上普方

    ○井上(普)委員 いま労働大臣が訂正せられましたが、私は、この主務官庁である労働大臣が、福田内閣が住宅政策をこれほど目玉商品にしておるにもかかわらず、それほどの認識が労働大臣になかったことにつきましては、私ははなはだ遺憾に存ずるのであります。そのことは私はこれ以上追及しようと思いませんが、しかし、ただいまのお話の共済組合の制度と住宅貯蓄制度との差が、それほど大きいものがありましょうか。あるとするならば私は大変なことだと思うのでお伺いしたいのです。もう一度おっしゃっていただきたい。
  308. 藤井勝志

    藤井国務大臣 現在、御案内のごとく、住宅を建てようという場合、建築費だけでなくて土地代というのが相当要ります。したがって、一軒の家を建てるのに共済組合の融資だけではとても賄い切れない、そういうことで別途財形住宅融資を利用する、こういうことになりますから、そこら辺の全体のトータルが住宅建築資金として手当てをされるわけでありますから、そういう意味で私は先ほどの事情を申し上げたわけであります。
  309. 井上普方

    ○井上(普)委員 労働大臣、あなた、この財形住宅貯蓄制度というのを御存じないのじゃございませんか。それではひとつお伺いいたしますが、共済組合の制度はどうなっておるのか、あるいはまた住宅貯蓄制度を併用した場合にどうなるのか、お伺いいたしたいのです。
  310. 藤井勝志

    藤井国務大臣 詳細につきましては後ほど政府委員から答弁させますけれども、住宅貯蓄制度は、毎年全体の額において五万円、これが税制上の優遇措置を受ける、こういうことを前提に七年間積み立てる、こういったことで勤労者の財産形成の一翼としてこの貯蓄制度というものを設けておる、このように理解しております。
  311. 井上普方

    ○井上(普)委員 労働大臣が先般、共済制度の方がはるかに有利なんだ、だから各省間において広がらないんだ、こういうお話だったので、私は調べてみますと、実は大変なことであります。この住宅貯蓄制度というのは、総理大臣並びに自治大臣は、各地方公務員、国家公務員並びに政府機関の職員に対しましてこれは普及させなければならない義務を負っておるのです。これはそういう制度になっています。ところが、やっておるところの役所というのは一体どこどこなんだと言って聞きましたら、一週間前に私が労働省に聞いた数字と三日前に持ってきた数字とが違うのであります。それほどまでに無関心なままいま勤労住宅というのはやられておる。労働省が主管官庁か、あるいは総理府が主務官庁かと言って聞きましたところが、いや、それはわかりません、こうおっしゃる。  法制局長官、公務員の勤労者財産形成貯蓄についてはどこが主管なんです。
  312. 真田秀夫

    ○真田政府委員 勤労者財産形成促進法の法律がどこの所管かということであれば、これは労働省の提案にかかる法律でございますし、主務大臣として労働大臣があちらこちらの条文に出てまいります。それから公務員、特に国家公務員について普及させるのはどこかということになりますと、これはどうも総理府の人事局あたりではないかというふうに考えます。
  313. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、そのとおりに理解いたしておるのであります。総理府、どうですか。いまのような普及の状況のもとにおいて、一体あなたの責任はどう考えられますか。ひとつお伺いしたい。
  314. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  法律上の問題でなくして、公務員の福祉厚生、こういう面から総理府が各省の調整機能の役割りを果たしておる。そこで、なぜ公務員がこの財形住宅貯蓄に加入しないか、こういう御指摘でございますが、私といたしましては、この住宅貯蓄制度というのは一般の財形貯蓄と違って、税制の面におきましても、またその他公務員の福祉向上という観点から考えても、大変有効な制度ではないか。それでは、なぜ入ってまいらないのかという点については、先ほど労働大臣も一、二指摘があったとおりでありまして、調整機能の役割りを果たす、こういう意味からも、私といたしましては、公務員に徹底普及させて、御意見を十分承りつつ、加入促進に努力をしてみたい、こういうように思っております。
  315. 井上普方

    ○井上(普)委員 この法律の第十五条の第四項には何と書いてあります。「内閣総理大臣又は自治大臣は、国家公務員又は地方公務員の財産形成について、」この財産形成は、もちろん住宅貯蓄を含んでいるのです。「第四条の規定に基づき定められる勤労者財産形成政策基本方針の趣旨が生かされるように配慮しなければならない」あるいはまた第五条にもきちっと書いてあるのです。  ところが、各省の実施状況を見てみますというと、さあ大変なんだ。これは、この前持ってきたのと違うんだ。けれども見てみますというと、できておるのが、衆議院、参議院、大蔵省、国税庁、最高裁、通産省、運輸省、建設省、外務省、行政管理庁、公正取引委員会、これだけしかできてない。何年にできたと思っているんだ。  そこで、私はひとつお伺いいたしたい。こういうようにつくった責任官庁の労働省においても、このような不備があるならば、あなた方はなぜ直さない。この法の精神からいくならば、全国家公務員並びに地方公務員に及ぼさなければならない責任が総理大臣並びに自治大臣にはあるはずだ。やってない。そこで、ひとつお伺いするのだが、法を守るべき最も大事な法務省、まず法務省だ。法律を守らなければならない法務省、それから続いては、法を守ることを旨とすべしと言って生徒に教えることを強要いたしております文部省、なぜやってないのです。
  316. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 勤労者の住宅について、法務省としては、現在までのところ加入しておる人はおりません。これはどうでしょうか。こういう法律を守らなければならないのは当然でございますが、それを公務員の人がこれに入らなければならない義務はないと思うのです。財産形成をして家を建てるために便宜を図ってやっただけのことで、これに入らないのはけしからぬというのは、私はちょっと理解できないのです。
  317. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えいたします。  文部省におきましては、一般の財形貯蓄は行っておりますけれども、財形住宅貯蓄は現在のところ行っておりません。これは職員たちに宣伝もいたしましたけれども、職員の中から希望が出てまいりませんでした。なぜ希望が出てこないかということも調べたのでございますけれども、一般財形貯蓄を行っておりますと、そこから持ち家融資が受けられる、住宅金融公庫からの融資も併用して受けられる。財形住宅貯蓄は、先ほど労働大臣が答えましたような、積み立てが終わってから二年以内ということに縛られるのがいやだという意見が職員の中に大変強いようでございます。そういうことから、別の融資を受けて、この財形住宅貯蓄に対する希望者がなかったということでございます。ただ、これからなお一層、職員の間にこれの検討方を進めまして、検討してまいりたい、かように考えております。
  318. 井上普方

    ○井上(普)委員 法務大臣、あなたのお考え方は法律の精神を御存じない。使用者側は従業員に対して理解を求め、これを奨励しなければならないということが書いてあるのです。  いまおっしゃるように、そういうような理由で、ともかく二年間、なにがあるというのであれば、労働大臣は各官庁から意見を聞いて、これを手直ししなければならぬと書いてある。法律事項として書いてありますよ。あなたがそういうのをお気づきであるならば、各官庁にそのことを聞いて、そうして手直しをされる努力をいままでされたことがございますか。どうです。
  319. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 お答えいたします。  財形住宅貯蓄は、税制上きわめて優遇措置がございます。先生御承知のとおりであります。特に、長期の住宅貯蓄をやりますと一〇%の控除がございますので、非常に有利でございます。そういった関係もありまして、一般との関係でそういった要件が決まっておりますが、そこら辺は私どもは、税の優遇がある以上はある程度それは必要な面があると思います。  ただ問題は、やはり私ども施行の責任がございますが、一般のそういった職員に対して、住宅貯蓄の有利さというもの、それから、いろいろな融資と組み合わせて非常にうまく使えば家ができるというような、普及徹底が不十分であるということを私ども反省いたします。また、私どもは、こういったいろいろな手続的な面についても十分検討はしていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  320. 井上普方

    ○井上(普)委員 この法律ができて何年になるのですか。大々的に財産形成をやるんだなんと言ってぼんぼん金を集めて、何年になりますか。ところが、民間におきましてはこれは非常に発達しています。ところが公務員の場合は(「公務員は違うんだよ」と呼ぶ者あり)同じようにしているのですよ。わざわざ共済組合についての例を書いてある。そうして共済組合のこれに入った方が有利だなんと言われるのだから、それじゃ民間の諸君はこういうような不利な条件で家を建てさせられるが、お役人ばかりはいい条件で家を建てられるのか、こういうことになる。直したらどうです。直しなさい。  なぜ、公務員の共済組合はやらないかという一つの理由を申し上げると、こういうことがある。私はこれから住宅貯蓄をいたしたい、こう申しますと、共済組合は、七年後にはそれだけの金を予約せられたものになってくる、だから共済組合はこれを望まないのです。これが公務員の共済組合に住宅貯蓄が普及してない理由であります。  それでは、集めた年金の短資は一体どこが扱っているんだといったら大蔵省が握っている。大蔵省の認可がなければこの金は自由に使えない。この共済組合の原資というものは大蔵省がなかなか言うことを聞いてくれないので、労働者側の共済組合の役員の諸君はやりたいのだけれども大蔵省の方から原資を押さえられてしまう。五年先、七年先、八年先、九年先の予約をとられてその金を全部使われてしまうからやらないんだ、こう言うのです。これが実態なんです。片一方ではやらなきゃならぬ、やらなきゃならぬということを盛んにこっちの法律にしておきながら、大蔵省の方は財布を握ってやらしていない。これが公務員の住宅貯蓄ができぬ原因であります。それは労働者側の諸君も敏感に知っている。どう思いますか。
  321. 村山達雄

    ○村山国務大臣 実はそれが原因であるということをいま初めて伺うわけでありますが、篤と調べまして、そのようなことがないようにやってまいります。
  322. 井上普方

    ○井上(普)委員 それは完全にやっていただかねばならぬ、このように思います。  その次に、まだたくさん私は質問したいのでございますが、時間がございませんので、一つ二つ例を申し上げて質問いたしたい。  財形の金利です。――銀行局おいでになってますな。実は昭和五十一年の八月から家を建てようと思って毎月五万円ずつ貯金をした、ボーナス時期には二十万円貯蓄した、そして三年間やって五十四年の八月二十五日になったら金利はどれくらいになるか調べてみますと、これは銀行で調べてもらったのだから間違いないのですが、第一勧銀によりますと、元本合わせて三百二十六万六千六百七十三円になります。大和銀行で計算させますと三百三十五万三千八百九十円になる。九万五、六千円違うのです。金利の自由化、自由化というときですが、こんな差があっていいのだろうか。どうでしょう。銀行局はこれらについての監督はどうしているのですか。
  323. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  財形貯蓄の貯蓄手段はその銀行固有の貯蓄手段を使っているわけでございます。したがいまして、同じ貯蓄手段を使っているのであれば御指摘のような金利の相違はないはずでございます。ただ、その間に、たとえば大和銀行でございますと、金銭信託というものがございますので、その点であるいは違いがあるかもしれませんが、その辺は調査させていただきたいと思います。
  324. 井上普方

    ○井上(普)委員 家を建てようと思って、こつこつと毎月五万円ずつためていって、三年したら約十万円の差がついてくる。これは直さなければいけません。大臣、どうですか。
  325. 村山達雄

    ○村山国務大臣 おっしゃる点はここの違いじゃないかと思うのでございます。財形貯蓄は言うまでもなく金融機関は全部扱っておりまして、証券会社も生命保険会社も全部やっております。そこで、みんな条件がそれぞれ違うわけでございます。つまり商品が違うわけでございます。私が知っている限りでも、たとえて申しますと、普通銀行で三年以上積み立て三カ月据え置きの場合は五・五%です。それから信託銀行は、これは金銭信託でございますが、当然信託の性質上三年以上積み立て二年据え置き、この場合は六・五三%、それから証券会社でございますと公社債投信でございますが、三年以上積み立てだけでございます。したがってこれは六・九三%。ですから、それぞれの金融機関なり、あるいは機関投資家というのは、自分のところのそれぞれの貯蓄形態がある。言いますならば、そのお客のニーズに合わせまして商品をたくさんそれぞれつくっているわけでございます。したがって投資家の方から言いますと、どの方に投資をしたらいいかというのは、一つは採算の有利性あるいは換金性、安全性、こういうことで選択しているのではなかろうかと思うのでございます。
  326. 井上普方

    ○井上(普)委員 これは大臣、幾ら投資家とか、信頼性とかなんとかおっしゃっても話になりません。ここに、おっしゃるとおり財形の信託の積み立て、そして住宅貯蓄があるのです。片一方は普通のやり方でやって、ここで十万円差が出てきているのです。受け取りもございますので見せてあげます。よく御検討願いたいと思います。  それで、私は制度それ自体について無関心な層が多いと思うのであります。特に労働組合の諸君が共済組合の代表に参加していない。警察あるいは消防庁の職員には特に労働条件、福祉施設というものを考えてやらなければならないと思うのであります。  そういう面から、国家公安委員長並びに自治大臣にお伺いするのですが、警察並びに消防庁に対しましてはこの財形貯蓄はやっておりますか、やっておりませんか。実情をお示し願いたいのです。
  327. 加藤六月

    加藤国務大臣 警察官や消防職員は団結権がないのでございますから、特別に心を配っていかなければならぬことは御指摘のとおりでございます。  そこで消防職員の場合でございますが、御承知のように市町村の職員でございまして、他の一般職員と同じような扱いがなされておるのでありますから、消防職員だけについての特別の処置はなされておらぬのでありますが、数で申しますと、四十七都道府県のうち十九都府県が実施をいたしております。それから市町村の普及率は非常に高うございまして、計算いたしてみますと二千二百八十一市町村共済で実施をいたしておる。かような数字でございますから、都道府県の場合よりも市町村の場合の普及率が非常に高い、したがって当然その中に消防職員も含まれておる、かように言えようかと思うのでございます。  それから警察官の場合でございますが、一管区十五都道府県で実施をいたしておりまして、市町村の場合よりも若干まだ普及率が低いと考えられるのであります。先ほど自治省は配意しなければならぬ、かような御指摘もございましたが、まさにそのとおりでございまして、今後自治省といたしましてはこれが普及のために努力をいたしてまいりたいと考えておるところでございます。
  328. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、先ほど申しましたことを常に念頭に置きながら国家公安委員長並びに自治大臣としては行動していただきたいことをお願いするのであります。と言いますのも、この法律ができてもう五年になる。それでこのていたらくなんです。労働省の努力の不足ということはこれまた目に余るものもありますけれども、皆さん方責任を持っておられるのだから、ひとつお願いいたしたいと思うのであります。  そこで、もう時間もございませんので、私は端的にお伺いいたします。  近ごろ建設資材が非常に値上がりをいたしております。特に公取の委員長にお伺いするのでありますが、公取は、あるいは小形棒鋼にいたしましても、あるいはまたセメントにいたしましても、かなり長い間不況カルテルを結ばせて監視をしてきたはずであります。ところが、ことしになりましてからセメントはぼんぼんと上がっております。おたくからいただいた資料によりますと、一月には一万六百円と言っておられましたが、私の調べましたところによりますと一万一千五百円になっております。これはきのう調べた数字です。一月と二月との間で早くも九百円上がっております。これは生コン業者が手に入れる値段です。それからバラ売りの場合、トンに直しますと、都内におきまして一万七千五百円になっております。不況カルテルを認可したことについては、私はとやかく申しません。しかしながら、もうすでに非常な暴騰を示しておるこの状況について、公取委員長としては、適正在庫数というのを誤ったのではなかろうかという気がしてならないのであります。セメントの場合は、二百万トンを適正在庫量としてあなたはお認めになってきた。そして十一月に解除しました。解除しますと、この二カ月の間に大体三、四百円上がっている。あるいはセメント袋に入れておるのでありましたならば、一万七千五百円というはるかに高いセメントの値段になってきている。  また、一方棒鋼にいたしましても、これもひどいものです。やがてもうトン当たり五万五、六千円から六万円になろうとしておる。これも不況カルテルをやらしたところでありますが、これは適正在庫量を公取としては間違ったのではないだろうか、このように私は感じられてならないのでありますが、いかがでございます。
  329. 橋口收

    ○橋口政府委員 井上先生から御指摘がございましたのは、セメントと小形棒鋼であったと思います。セメントにつきましては、昨年の六月から十二月まで二回にわたって不況カルテルを行ったのでございますが、ただいま御指摘がございました在庫の見方の問題について、見通しに誤りがあったのではないかということでございまして、これは昨日宮地委員質問にもお答えをしたのでございますが、当初に認可をいたしました第二回分は九月からでございまして、八月のデータをもとにして推定をいたしまして、確かにおっしゃいますように、十二月末の在庫を二百万トンというふうに評価をいたしたわけでございます。もちろんこれは、通産御当局とも御相談の上でそういう見通しを立てたわけでございます。ところが、その後の九月以降の在庫の趨勢を見てまいりますと、実は大変不思議な動きをしておるわけでございますが、九月末の在庫は二百一万トンでございますが、十月末は二百四十二万四千トンと四十二万トンばかりふえまして、今度は十一月に二百三十四万七千トンで、ところが問題は十二月でございまして、十二月に大変な需要が出てまいりまして、実は生産もカルテルの制限数量を突破して増産をいたしたのでございますが、それでも在庫が百六十二万二千トンというふうに、当初の二百万トンに対して四十万トン近く違ったわけでございまして、これはきのうの宮地委員に対するお答えでも申し上げてあるわけでございますが、これは十二月十日から三十日ぐらいの出来事でございまして、なかなか的確に情勢の把握ができなかったということでございまして、この点はいまにして思いますと、十二月二十日ごろ思い切って不況カルテルの打ち切りをやった方がよかったのではないかという多少の心残りを持っているわけでございます。  それで、価格の問題につきましては、十二月でカルテルが打ち切りになりましたから、一月以降はおっしゃるように値上がりがございますけれども、稼働率等から見ますとまだまだ生産余力はあるわけでございますから、これはできるだけ増産をして、それによって価格を鎮静させるようにしていただきたいと思います。  それから小形棒鋼の問題は、これは途中まで不況カルテルをやっておりましたが、十月からは通産大臣の認可にかかる中小企業団体法に基づく調整事業をやっておるわけでございます。これも実はいまおっしゃいましたように、われわれの調べでも、二月十一日には五万七千円という数字が出ておるわけでございまして、大変な勢いで上がっておるわけでございまして、最終的にはまだ通産御当局と意見調整いたしておりませんが、この小形棒鋼の団体法上の調整事業もそろそろ再検討すべき時期に来ているのではないか。それで、これは法律の規定によりまして、公正取引委員会に措置請求権という、適当な措置をおとりいただきたいということを要請する権限が与えられておりますが、別に法律的な権限を行使するというまでもなく、通産御当局と御相談して、これはそろそろやめにすべき時期に来ているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  330. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は時間がもうございませんので、最後に申し上げておきます。  いまのセメントのこの高騰ぶり、あるいは小形棒鋼の値上がりの状況、これは、ちょうど昭和四十八年のあの狂乱物価の最初を思わせるような状況になっておると思います。これをひとつ経企庁の長官、十分に注意していただきたい。そうでなければまた家が建ちませんよ、建設大臣。あなたの方は建設資材対策本部なんというものをつくられたようでございますが、いまのセメントの値上がりというものはものすごいものがある。あるいは小形棒鋼の値上がりもひどいものがある。これらについて適切なる手段、方法を講じていただきますよう強く望んで、終わります。
  331. 中野四郎

    中野委員長 この際、福岡義登君から関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。福岡義登君。
  332. 福岡義登

    福岡委員 環境庁長官、何か御予定があるようですから、その方から先にやらせていただきたいと思います。  御承知のように、瀬戸内海環境保全臨時措置法が本年十月で五年の期限が来るわけであります。後継法につきましてわれわれも勉強しておるところでありますが、環境庁といたしましてはどういう方針でおられるのか、お伺いをしたいと思います。
  333. 山田久就

    山田国務大臣 御指摘のように、本年十月いっぱいということが期限になっておりまするから、したがって、その後継法につきましては、目下関係方面とも連絡しながら鋭意成案中でございます。この法律の機会に、いろいろな観点があるわけでございまするけれども、後継法にとどまらず、この法律自身の中に総量の規制というようなこともありまするので、同じような閉鎖性水域、東京湾、伊勢湾というようなものにも、これはいろいろ環境関係ということでは、相違はありまするけれども、水質保全という見地に立てば同じような問題がございまするので、でき得ればそういうものも加味して、総量規制の観念も入れて一つの法律として出さないかということで、目下鋭意検討中でございます。
  334. 福岡義登

    福岡委員 わかりましたが、臨時国会を開けば別でありますけれども、この国会に出しませんと十月の期限切れに間に合わぬわけであります。いまおっしゃいましたような内容を含めて、この国会にぜひ提案をしていただきたい、こう思うのです。  なおその際に、政府提案になるまでに、われわれといたしましても党内でいろいろ勉強しておるところでありますから、事前にわれわれの意見を反映できるようにひとつ配慮していただきたいと思いますが、いかがですか。
  335. 山田久就

    山田国務大臣 どうしても本年中に出さなければならぬということで鋭意立案中でございます。ことに瀬戸内海は、いろいろな観点から地元各方面の関心も深い問題でございますので、できるだけ地元関係者、皆さん方の御要望等も十分加味して取り入れて、そして適切な案を生み出したい、こう考えて努力したいと思います。
  336. 福岡義登

    福岡委員 ぜひ善処していただくようにお願いをしておきたいと思います。  次は、基本計画の策定についてであります。  現行法の第三条の規定に従いまして、瀬戸内海の環境保全に関する基本計画というものをいま策定されておるようでありますが、どういう段階にあるのか、お伺いしたいと思います。
  337. 山田久就

    山田国務大臣 基本計画につきましては、これに関連する、特に下水道の問題なんかを中心に、その問題についてはさらに細かく対策を立てるつもりでおりますけれども、細部について政府委員からちょっと御説明いたさせたいと思います。
  338. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先生からお話しございましたように、現在の臨時措置法第三条の規定がございまして、政府は速やかに基本計画を策定しなければならないことになっております。したがいまして、現在この基本計画を速やかに策定をしたいということで案をつくりまして、各省の方と具体的な調整を取り進め中でございます。
  339. 福岡義登

    福岡委員 この基本計画につきまして、御承知のように審議会から答申が出ておるわけであります。この答申を尊重されて基本計画を策定されると思うのでありますが、幾つかの問題点が指摘されておるわけであります。  そこで、ここで全部の点についてやりとりをする時間がございませんが、一、二の問題についてお伺いをしたいと思うのでありますが、一つの問題は、下水道整備を非常に重要視いたしておるのであります。その下水道整備に関しまして幾つかのお伺いをすると同時に、意見を述べたいのであります。  現在、瀬戸内海地域の十一の府県の下水道整備の実情を調べてみますと、全国平均よりは少し高くて三〇・五%の普及率であります。しかし、その実情をさらに分析してみますと、たとえば一番普及率が悪いのは、先ほど質問しました井上委員の徳島なのであります。五十の市町村がございまして一つの市町村しか実施していないのであります。以下、愛媛、大分、和歌山、岡山、広島、香川と続くのでありますが、総合計で申し上げますと、この十一府県に七百二十五の市町村があるのでありますが、その中で下水道事業に着手しておりますのは六十六でしかないのであります。普及率から言いますと三〇%で、人口集中地域であれば普及率は伸びるのでありますが、市町村数で申し上げますと九%でしかないのであります。七百二十五のうちの六十六でありますから、わずかに九%でしかないのであります。これは特に瀬戸内海という閉鎖性水域実情を考えますときに、抜本的な対策を考えていかなければならぬと思いますが、環境庁長官、いかがですか。
  340. 山田久就

    山田国務大臣 瀬戸内海の水質保全を図る観点から申しますと、特に、やや野放しになっている生活排水の負荷量が相当大きくこれに作用しているという事実にかんがみまして、下水道の整備が最も重要な点であることは御指摘のとおりでございます。  普及率の点でいまいろいろ御指摘があったわけでございまするけれども、今般の予算に際しましても、そういうような観点から下水道の整備には特に大きな重点を置いて、建設省で五〇%以上の伸び率でそれをやっていただくことになっておりますけれども、なおいまの瀬戸内海の環境保全の重要性にかんがみて、これの実施の部面については、いまはなはだ、いろいろな不満があるという事情にもありますので、この方面について、特に瀬戸内海に影響のある地域について、下水の整備に特に力を入れていただきたいということで、建設省の方ともいろいろ折衝、連絡をいたしておるような現況でございます。
  341. 福岡義登

    福岡委員 建設省にお伺いいたしますが、第四次下水道整備五カ年計画が五十五年に終わるわけでありますが、全国平均の下水道の普及率は四〇%と想定されておるわけです。その場合に、瀬戸内海水域はどのくらいの普及率になりますか。
  342. 小林幸雄

    小林(幸)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、第四次五カ年計画の終了時点におきます全国平均の普及率は四〇%になる見込みでございますが、この瀬戸内海水域におきましては四八%に達すると見込んでおります。
  343. 福岡義登

    福岡委員 四八%にいくかどうか、いま三〇・五%ですからね、約二〇%近く上げなければいけない。  そこで、問題は、下水道整備に対する補助関係が非常に弱いということなんであります。公共下水道に例をとりますと、補助の対象となる事業は六〇%しかない。指定都市の場合で四五%、一般の都市で七五%、平均して六〇%でしかないのです。あとの四〇%は地方公共団体が独自でやらなければならぬ。そういう仕組みになっておるわけです。  さらに、今度、その補助対象事業に対する補助率を考えてみますと、同じく公共下水道の場合でありますが、管渠で六〇%、十分の六であります。終末処理場で三分の二であります。先ほど申し上げましたように七百二十五の市町村のうちで六十六市町村しかやってないということは、非常に財政が苦しいという事情もあるでしょうし、さらに下水道には金がかかるのですね。ですから、いま都市局長小林さんがおっしゃったように、五十五年度で四八%という見込みをされておりましても、いまの補助対象の範囲あるいは補助率ではとうていできないと思うのです。  そこで、この基本計画を策定されるときに、瀬戸内海のみならず閉鎖性水域のその他の湖沼地域ですね、そういうところには一定の補助対象の拡大と補助率の引き上げをする必要があると思うのですが、いかがですか。
  344. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 閉鎖性水域関連する下水道事業というものの重要性は考えなければならないところでございまするが、実はこの下水道予算について、先般来いろいろ御指摘がございましたが、ただいまもお話がありますように、この普及が五カ年計画の終末で四〇%、どうしてもこれをもっと上げなければならないということで、現在事業費の確保の方を相当重点に考えてまいりまして、いまお話しのようにどうも補助が少ないという御指摘でございますが、他の諸事業を比較しますと、下水道の補助率はそう悪くないと思うのですね。そこで、いまの特殊性は私も認めなければならぬ、またそのためには予算配分などで考えていかなければならぬと思うのですが、他の比較からいって、補助率を引き上げるということについて、むしろ大蔵大臣の方へお聞きする方がいいかと思いますが、なかなか無理な点があると思いますが、御意見はよく承っておきたいと思います。
  345. 福岡義登

    福岡委員 主管大臣の建設大臣がそう消極的では困ると思うのですね。もう少し積極的になっていただきたいと思いますが、諸般の事情を考えてみますと、この下水道整備五カ年計画は改定せなければならぬところに来ていると思うのであります。このまま五十五年までやっていくということでは、とうてい事業の達成はできないと思う。ぜひここのところは、きょうは時間もありませんから、これ以上詰めませんけれども、ぜひこの五カ年計画の改定をやっていただくように強く要請いたします。その中で、いま申し上げましたような閉鎖性水域を中心にした補助率のかさ上げなり、あるいは補助事業の対象範囲を拡大するということを積極的に検討していただきたい、要望いたしまして次の問題に移りたいと思います。  次は、下水道事業の中で一つの大きいネックになっておりますのは、汚泥処理の問題であります。  現在、建設省の方で調べていただいた資料によりますと、三百十六万トン五十一年度で発生汚泥があるわけであります。もしこのまま五十五年度まで下水道整備、さっき言いました計画どおりいくといたしまして、四〇%の普及率ですが、その時点で六百万トンの年間の汚泥が出てくるわけであります。この汚泥をどう処理をしておるかということをちょっと調べてみましたら、三百十六万トンのうちで百八十二万トンしか処理されていないのであります。どこへどう処理されておるかといいますと、陸上の埋め立てに百十四万トン、海面埋め立てに三十七万トン、海洋投入が十六万トン、有効利用、窒素、燐などがありますから、肥料その他にという意味だと思うのでありますが、有効利用が十五万トン、合計百八十二万トンで、百三十四万トンというのはどこへ行ったかわからぬ。もしこういう状態で推移いたしますと、環境、特に水質に与える影響は非常に大きいものがある。  そこで、結論的に提案を含めて意見をお伺いしたいのですが、長期的に、しかも広域的に、計画的にこの汚泥処理対策を考える必要があるだろう。できるだけ自然に還元するということがこれは望ましいわけでありますが、全部還元することは考えられぬわけであります。そこで、たとえば、一つの例を言うのですが、瀬戸内海のしかるべきところに、あるいはその他の地域でも結構でありますが、大きな人工島でもつくる、そこに処理し切れない汚泥を埋め立てるというような長期的な計画が必要だと思うのですが、建設大臣、いかがですか。
  346. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 今後の下水汚泥の処理についての長期的な計画というものは、私も必要だと思います。そこで、先ほどちょっとお挙げになりました点について、なんでしたら担当者から説明させますが、水分を含んでおりますから、差が全部どこへ行ったかわからぬというのでなくて、お示しになった数字は水分除去後の処理立米だと私は思うのですが、もしなんでしたら説明させます。
  347. 福岡義登

    福岡委員 水分がどれだけ含んでおるかということは、それぞれによってケースが異なるようであります。しかし下水で処理しておる総発生量を計算しますと、五十一年度で一億トン近いのですね。だから、いろいろ計算の仕方があると思うのですが、いずれにしても相当の汚泥が発生しておって、追跡調査をした結果、どこに処理されたかわからぬものが百三十万トン余りあるということだけは間違いない。細かい数字は別にいたしまして、将来さらに多くの汚泥が発生するということだけは間違いないのですから、その処理の対策を長期的に計画的に立ててもらいたい、こう言っているのですから、そうすると言われれば話は終わりなんです。いかがですか。
  348. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 そういたします。
  349. 福岡義登

    福岡委員 そこで、この第三次処理についてであります。  現在の技術水準では、BODとSSは三次処理で完全に近い処理ができる。ところが、窒素とか燐というものはそう簡単にいまの技術水準では除去できないということになっておるわけであります。これは技術的な開発をやっていかなければなりませんが、さてそこで問題になりますのは、窒素の半数は合成洗剤から発生する、こう言われておるわけであります。  合成洗剤がどれだけいま生産されておるかといいますと、相当の量が生産されておるわけであります。ちょっといま量の資料を持ってくるのを忘れましたが、結論的に申し上げたいのは、そのほかにも燐とか窒素の発生源は、家畜であるとか人間の屎尿であるとか、あるわけでありますが、ここで申し上げたいのは、通産省お見えになっていますね。――合成洗剤の脱燐ですね。燐の削減といいますか、そういうものは当然研究されておると思うのですが、将来できるだけこういう燐を含んだ合成洗剤は使用しないように指導するべきである、場合によってはこの下水道整備が完全にできるまでは発売禁止をするくらいのことも考えていかなければならぬのではないか、こう思いますが、時間がないので簡単に……。
  350. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 閉鎖水域に含まれております燐の源につきましては、合成洗剤、農業用の肥料、あるいは屎尿等があるわけでございますが、合成洗剤につきましては、その燐の含有量、トリポリ燐酸ソーダの含有量を削減するように、業界に強く指導をいたしております。その結果といたしまして、昭和四十九年におきましては、トリポリ燐酸ソーダの使用量、合成洗剤のための使用量は十二万トン強でございましたが、現在はこれが半分の六万トン強くらいまでに削減されており、さらに今後ともこういう燐の使用量を削減するような努力を、業界に指導いたしておるところでございます。
  351. 福岡義登

    福岡委員 ただいまの答弁では満足できませんが、時間がありませんので別の機会に譲りたいと思います。  次は、住宅問題でお伺いをしたいのでありますが、結論的に申し上げますと、公共賃貸が非常に少ないということを一つは申し上げたいのであります。現在の住宅ストックを見ますと、昭和四十八年の住宅統計によりますと、総戸数二千八百七十三万戸であります。その中で公的賃貸はどれだけあるかといいますと、約七%であります。六・九%であります。昭和五十年の国勢調査によりますと、住宅の総ストックは三千九十九万三千戸であります。その中で公的賃貸がどれだけあるかといいますと、七・四%であります。諸外国の例を見ますと、たとえばイギリスは、一九四五年から一九七一年の間に公営住宅の供給割合は五四%であります。全体の住宅建設の五四%を公営住宅として供給をしておるわけであります。フランスを見ましても、標準家賃住宅の建設割合は全体の三〇%であります。ドイツの社会住宅を見ますと、六四・九%であります。非常に日本の公的賃貸が少ない。もう話にならぬほどけた外れに少ないということを言わざるを得ないのであります。大体住宅建設の五カ年計画を見ましても、それが非常に少ないのであります。一体この事実をどう考えられるか。建設大臣、いかがでございますか。
  352. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 現在、お示しのとおりに、公営住宅、公的賃貸住宅の戸数が各国に比べて非常に低いパーセントである、これは認めざるを得ない、そのとおりであります。それで、どうしてそういうことになるのか。いまお願いしておる五十三年度の予算で、そういう状況下になお減らしているじゃないかというおしかりを現に受けておるわけですが、これは、ここ二、三年の情勢を見ますると、どうも公営住宅も余る、社会経済情勢にマッチしておらない点があるのじゃないか、これは率直に言うと、いつも言われることですが、高い、狭い、遠いというようなことで、需要者に向かない、こういうことでありますから、向くようなものを建てればいいじゃないか、こういうことになろうかと思います。といって、それでは三大都市圏の状況を見ますると、用地の取得難であるとか、あるいは地方公共団体や居住者との折衝がうまくいかないとか、いろいろな隘路があるわけであります。また、特に財政負担の問題があります。今度公共施設整備については新制度をつくったということは御承知のところだと思いますが、今後とも、いまのような実情ではいけませんから、われわれもせいぜい努力をしてまいりたいと思います。
  353. 福岡義登

    福岡委員 いろいろ事情はわからぬわけでもありませんが、政府が考えておる住宅政策の基本に問題があることも間違いないのであります。公共賃貸住宅がいかに不足をしておるかということを、入居者の募集人員に対する応募者をとってみますと、昭和五十一年度で全国の公営住宅の募集戸数は、これは建設ベースでありますが、五万六千戸、それの申込者は二十一万八千人であります。約四倍であります。公団賃貸が非常に人気がないことについては後で問題提起しますが、空き家入居の希望者は、競争率は二十五倍から三十八倍であります。いかに公共賃貸が不足をしておるかということは、この事実をもってすれば明瞭だと思うのです。どうしても公共賃貸をふやしていただきたい、こう思うのです。確かに今度住宅金融公庫の一般個人向けの枠をふやされましたが、これは、持ち家政策に私どもは元来反対をしてきておるのでありますが、全然反対という意味ではなくて、基本は公共賃貸を全体の三〇%ぐらいは持つべきだ、こういう意味ですが、住宅金融公庫が昭和五十二年の第一回の募集をしましたときの五分位の階層別の応募者状況を見ますと、所得の低い方、第一分位の二百万円以下の人は、申し込みは全体の一五・九%であります。二分位になりまして、二百万円から二百六十一万円までの人が二五・二%であります。合計いたしますと約四〇%、それ以上の分位はもう二百六十万円以上の所得の人でありますから、低所得者層はこれ以上申し込むこともできない、つまり返済のめどが立たないというわけであります。ですから、持ち家を幾ら進めていかれましても低所得者の住宅対策にはなっていない。  そこでお伺いをしたいのでありますが、われわれ社会党は、去年住宅保障法という法案を提案をしておるわけであります。政府は住宅基本法を早急に提案をされるべきである。これは審議会の方からも答申が出ておるところであります。いろいろ作業をされておると思うのでありますが、結論的にお伺いをいたしますが、この国会に住宅基本法を提出されますかどうか。
  354. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 福岡委員承知だと思うのですが、昭和五十一年五月に住宅宅地審議会に対して、前の答申を受けて、現行家賃制度をいかに改善すべきかという諮問をいたしまして、そして現在その審議会の住宅部会の小委員会で御検討いただいておるわけでございます。この審議会の模様を聞いてみますと、はっきりしたことはわかりませんけれども、秋ぐらいには答申ができる、こういう情勢じゃないかと思うのです。そうなりますと、諮問をしておって、そしてそれも見ずにというわけにはなかなかいきかねることでございまして、その小委員会の方の答申がありますれば、速やかに最終結論を得たいと、こう思います。
  355. 福岡義登

    福岡委員 ぜひ促進をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それから住宅問題で一つ厚生省年金局長、住宅金融公庫は御承知のように今度一年の据え置き制度を導入しようとしておるわけであります。ところがあなたの方の所管であります厚生年金の還元融資の中の転貸制度がございますね、住宅金融公庫と抱き合わせでやる場合が多いのでありますが、これはどうも、お伺いするところによりますと、一年の据え置き制度が導入されてない。これは、私がちょっと推測をしたところでは、住宅金融公庫なり、大蔵省なり、あるいは建設省と厚生省の連携が十分とれなかったために、後で気がついてそのままになっておるというように推測をしておるのでありますが、いろいろ詳しい説明は必要でないのであります。時間がありませんから。結論として、一年の据え置き制度を検討してもらいたいということはいかがですか。
  356. 木暮保成

    ○木暮政府委員 年金からお貸しします住宅資金につきましても、住宅公団と歩調を合わせて元金の据え置きをいたす予定にいたしております。それで、いま先生お話のございましたように、住宅金融公庫に委託してお貸ししている分につきましては住宅金融公庫と全く同じ方法でやりたいと思っておりますし、それから年金事業団を通じましてお貸しする分は、住宅金融公庫と違いまして元金均等半年賦償還でございますので、半年賦を据え置きしたい、いずれも十万円強の当面の負担軽減になる予定でございます。
  357. 福岡義登

    福岡委員 ありがとうございました。  次に、住宅公団の問題についてお伺いをしたいのでありますが、住宅公団が今日の状態になった、これはそれぞれ責任が私はあると思うのであります。直接指導いたしました建設省の責任もあるでしょうし、あるいはその事業に当たりました住宅公団の責任もあると思うのであります。しかし、その責任の追及をするということは別の機会に譲って、ここで私が取り上げたいと思いますのは、これから一体どうやって住宅公団を再建するかということなのであります。  再建をするために第一の問題点は、何といいましても千六百ヘクタールに及ぶ未利用地、これをどうするかということが一つの問題だろうと思うのであります。これは取得価格をお聞きいたしますと、九百七十一億円かかっておるわけであります。この取得価格に対する年間の利息は幾らかといいますと、七十二億であります。  さらに次の問題は空き家であります。これも住宅公団から聞きますというと、未入居分が一万五千六百一戸、保守管理中のもの、つまり募集できないもの、これが二万三千四百八戸、合計三万九千九戸ある、こうなっておるのであります。この建設費が幾らかかっておるかということを聞きますと、千七百二十四億であります。これが未入居の分ですね。それから保守管理中のもの、つまり募集できないものの住宅の建設資金が二千五百二十六億かかっておるわけであります。合計いたしますと四千二百五十億であります。これに対する年間の利息が幾らかということを計算しますと、百六十二億であります。  以上申し上げましたように、千六百ヘクタールの未利用地と三万九千戸の未入居住宅をどうするかということが一つの住宅公団を今後再建する大きなポイントだと思うのであります。  そこで、一つの提案を私はしたいと思うのは、未利用地につきましては将来当分使えそうにないものがほとんどであります。一部は使えるかもしれない、それはわずかなものだと思うのであります。使えるものは使うにこしたことはないのでありますが、使えないものにつきましてはたとえば国でこれを買い上げる、こういう一つの……(「競売にしろ」と呼ぶ者あり)競売に付することも一つの方法であります。それから三万九千戸のいわゆる空き家住宅はこの際ひとつ公共団体に公営住宅として切りかえていったらどうか。御承知のように公営住宅の場合は二種で三分の二の補助であります。一種で二分の一の補助であります。この空き家になっておるものは二種というわけにいかぬでしょうから一種ということになる。そうすると建築費の二分の一を補助するということになるわけであります。そういたしますと二千億か二千四、五百億あれば、これを公営住宅に切りかえることが可能であります。  以上、二つのことを提案いたしますが、大蔵大臣、建設大臣、いかがですか。
  358. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま、未利用地を国で買ったらどうかというお話でございますが、これは使用目的の明らかでないものについては国で買い上げることは不適当だと思います。で、おっしゃるいまの千七百ヘクタールですか、あれは大体いま私の聞いたところでは二十二地区ございまして、すでに処分が決まっているものが二地区、あと九地区が大体いま話が進んでおる。残りの十一地区についても地方公共団体等といま話しているということでございますので、その線で進めさせていただきたいと思います。  それから、いま空き家になっております公団住宅、これを公営の方に払い下げたらどうか。いろいろな両方の条件が違いますけれども、せっかくの御提案でございますので、建設省とも十分協議してまいりたいと思います。
  359. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お台所を受け持っておる大蔵大臣がお答えになりまして、私どもの考えと大体一致しておると思います。千六百ヘクタールの中の二地区はすでに処分が決まり、九地区は計画がもう進んでおります。十一地区につきましても、これは市街化調整区域などにございまするが、いよいよ使用するということになりますると比較的立地はいいと思っております。  それから空き家の方の公営について考えるようにということは、いろいろな諸制度の関係もございますが、検討するということはかねて申し上げておるところであります。
  360. 福岡義登

    福岡委員 未利用地の問題につきましては、早急に使えるものとそうでないものの見通しをつけていただきたい。その段階でまたわれわれの意見を述べたいと思います。  それから、いまの公営住宅に切りかえる問題なんですが、大部分は公営住宅に切りかえれば入居者が出てくると私は思うのであります。それは安くなりますからね、家賃が、二分の一の建築費を補助するわけですから。土地代は賃貸にするか、あるいは特別起債を起こして手当てをするか、いろいろ考えなければなりませんが、公営住宅に切りかえてもいいという根拠があるのであります。といいますのは、第三期住宅整備五カ年計画で公営住宅は四十九万五千戸計画されておるのであります。五十一年度に七万六千戸建ったのであります。ところが、計画は九万二千五百戸だったのです。ここで一万六千二百戸計画どおりにいっていないのです。五十二年度に同じく九万二千五百戸の計画で、いまやっておる最中でありますが、見通しを聞きますと、うまくいけば八万戸いくかもしらぬ、まあ七万幾らじゃないかというところであります。そうしますと、ここに一万五千戸からの計画が達成できない戸数が出てくる。五十三年度九千戸ダウンいたしまして八万三千五百戸が予算に計上されておるわけであります。これだけを三年分合計いたしまして四万二百戸であります。さっき申し上げましたのは三万九千九戸ですから、切りかえてちょうど戸数は合うのであります。ぜひこれは公営住宅に切りかえていただきたいということを強く要望いたしまして、時間が参りましたので終わりたいと思います。
  361. 中野四郎

    中野委員長 これにて井上君、福岡君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十分散会