運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-02-16 第84回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十六日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       片岡 清一君    金子 一平君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    白浜 仁吉君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷川 寛三君    中村  直君       根本龍太郎君    原田昇左右君       藤田 義光君    古井 喜實君       松澤 雄藏君    与謝野 馨君       渡部 恒三君    井上 普方君       石野 久男君    石橋 政嗣君       上原 康助君    岡田 利春君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       土井たか子君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       宮地 正介君    薮仲 義彦君       米沢  隆君    浦井  洋君       寺前  巖君    大成 正雄君       大原 一三君    小林 正巳君       永原  稔君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         警察庁交通局長 杉原  正君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷れい次君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林省畜産局長 杉山 克己君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省税務局長 森岡  敞君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     片岡 清一君   塩崎  潤君     原田昇左右君   正示啓次郎君     谷川 寛三君   坊  秀男君     中村  直君   松野 頼三君     与謝野 馨君   井上 普方君     土井たか子君   石橋 政嗣君     上原 康助君   浅井 美幸君     薮仲 義彦君   矢野 絢也君     宮地 正介君   小平  忠君     米沢  隆君   津川 武一君     浦井  洋君   大原 一三君     永原  稔君   小林 正巳君     大成 正雄君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     海部 俊樹君   谷川 寛三君     正示啓次郎君   中村  直君     坊  秀男君   原田昇左右君     塩崎  潤君   与謝野 馨君     松野 頼三君   上原 康助君     石橋 政嗣君   土井たか子君     井上 普方君   宮地 正介君     矢野 絢也君   薮仲 義彦君     浅井 美幸君   大成 正雄君     小林 正巳君   永原  稔君     大原 一三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑を行います。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 最初外務大臣お尋ねをいたしたいと思います。  日中平和友好条約締結問題がにわかに日中間政府レベル話し合い再開をされたという報道がなされておりますし、また政府におかれましても、外務省あるいは総理を含めて、いよいよ条約締結の機が熟したという御判断のもとに政府間交渉を積極的に推進をしていきたいというお考えのように承っております。  そこで、外務大臣に率直にお尋ねをいたしますが、今回の日中両政府間の交渉再開によって条約締結まで近々こぎつけられるのかどうか、その見通しについて、両国国民の多年の念願であり願望でありますので、明らかにしていただきたいと存じます。
  4. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  ただいまの問題は、きわめて微妙な時期になってまいりましたので、当面は非常に慎重にならざるを得ないわけでありますけれども、いま御指摘のとおり、条約締結交渉再開に向かって逐次前進しておるものであると考えます。
  5. 上原康助

    上原委員 外交交渉でありますし、また、条約締結までこぎつけるにはいろいろな問題も関係あるいは連動していく状況にあることは、大臣のおっしゃるとおりだと思うのです。それにしても、やはりこの機会を逃してはならないと思うのですね。そういう意味で、外相の訪中も三月中にも実現をするということも言われているわけですが、この件についてはどうなんですか。
  6. 園田直

    園田国務大臣 逐次進展するにつれて必要性が出てくれば、必要に応じて直ちに訪中することも考えております。
  7. 上原康助

    上原委員 ぜひ今度こそ平和友好条約締結に至るように、特段の御努力を強くお願いをしておきたいと思います。  それといま一点ですが、これもすでに新聞なり、あるいは政府の方からもしばしば取りざたされている件ですが、日米首脳会談が持たれてまだ一年足らずですね。たしか昨年の三月にカーター大統領福田総理会談がなされておるわけですが、最近、むしろ積極的と受けとめられるほど、日本側から日米首脳会談の開催を求めておられるように見受けられるわけです。一説には、四月の下旬から五月の連休を利用してということも言われているわけですが、現段階で、日本側がなぜ日米首脳会談を持とうということにこれだけ御執心なのか、その理由なり、あるいは見通しはどうなのか、その点もぜひ明らかにしていただきたいと存じます。
  8. 園田直

    園田国務大臣 総理カーター大統領首脳者会議でありますから、外務大臣が余り言葉多く発言はできませんけれども、一年間の間に相当急激な変化も多いし、日米通商交渉どもありましたし、また、直ちに軍縮あるいはヨーロッパにおける先進国首脳会議等もございますので、この際カーター大統領の方も日本招請状を出そうと思っておった、こういうことで、こちらからもまた会って諸般の問題で相互理解を深めたい、こういう両方の意見が一致をして、ただいまそういう準備をしておるわけであります。時期については、まだ見当はついておりません。
  9. 上原康助

    上原委員 こだわるようで申しわけないのですが、日本側が五月にこだわっている理由は何かあるのですか。いま確かに日米通商交渉は大きな経済政治課題になっておりますし、私もごく最近ワシントン、ニューヨークを訪問する機会を得たのですが、貿易問題、通商問題については異常なほど関心を持っているわけですね。しかし、これは日本側経済見通しの問題なり、いま審議されておる五十三年度予算執行状況をしばらく様子を見ようというのがむしろ米側首脳のお立場考えじゃないかと私は見ているわけですね。日本側がなぜこれだけ、たとえ日米通商問題あるいはEC問題その他いろいろ軍縮問題あったにしても、五月ないしそのあたりにこだわっているということには、何か政治的な意味があるのじゃないかという判断も一部に流れているわけです。そういう点はどうなのか。また、昨日もマンスフィールド大使総理がお会いになって、この問題についての意見交換をなされたようですが、米側としては、日本側の五月上旬ということにはなかなか応じかねるという政治情勢日程だと聞かされているのですが、このあたりはいま少し、いきさつなり、政府のお考えを明らかにしておった方がいいと思いますので、お尋ねをしておきたいと思います。
  10. 園田直

    園田国務大臣 日本側の方で五月のなるべく早目がよいと言っておりますのは、全く総理国会の都合、それから国会終了後のいろんな計画等からきた物理的な考え方でありまして、アメリカの方では、五月の初めごろはよその国の総理大臣その他が相当おいでになる、そこで、それと込みにというわけじゃなくて、やはり日米だけで会いたいということで、時期はもう一遍検討しよう、こういうことになっておるわけでございます。
  11. 上原康助

    上原委員 大体、考えておられることの概略はわかったような気がいたしますが、今度の日米首脳会談の内容というのは、経済問題のみならず、いろんな案件が絡んでくる可能性があると私たちは見ておるわけです。それだけに、ただ両首脳が会って一年ぶりにいろいろなことを話したというだけにはまいらないと思いますので、十分日程が決まった段階では、会談内容なり、どういう問題について日米間でお話をなさるのか、しっかりと国民の前に明らかにした形でやっていただきたいことを付言をしておきたいと思います。  そこで、防衛問題についてこれからお尋ねをしていきたいのですが、どうも最近の政府防衛に対する姿勢というのは、私たちの方から見ると異常としか思えないほど、残念ながら高姿勢というか、あるいは本来の国家目標というか平和国家実現をしていかなければいかない立場からすると著しく逸脱した方向で、いま防衛論議がなされていることを非常に残念に思うのですね。  そこで、例のF15次期主力戦闘機あるいはP3機の問題、次期潜哨戒機をめぐる論議関連した、せんだっての防衛庁見解もありますけれども、そのことについては予算問題全体とも関連をいたすようでありますので、さらに政府も補足見解なり、あるいは政府としての統一見解をお出しになるということも話し合いがなされているようですから、一応この問題には深くは入りませんが、問題は、現在のアジア情勢あるいはわが国を取り巻く国際情勢状況下で、一体日本安全保障あるいは防衛力整備防衛政策はどうあらねばいかないかということの焦点というのが大変ぼかされている感じが私はいたすわけです。そこで、すでにこの委員会なりで問題にされてきたわけですが、在韓米地上軍撤退とかいろんなことが言われて、あるいはインドシナ半島からの米軍の敗退等々の状況の中で、アジア情勢はどう変わったと政府としては認識しておられるのか。そういう面で、さらに基盤的防衛力整備の問題と関連をさせて、今後このアジア情勢変化があるとするならばどのような防衛構想でやっていかれようとするのか、そういう基本的な面といいますか方針というものをいま一度明らかにしていただきたいと思います。
  12. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛問題につきましていろいろ御討議をいただいておりますことは非常にありがたいことだと考えておるわけであります。また、防衛限界という問題につきまして非常にその辺がもことしておるというお話、私は、その辺をしっかりすることがシビリアンコントロールだという考え方を持っておるわけであります。私が議運委員長をやっておりますとき、各党の間で、防衛なり安全保障特別委員会をつくろうというような考え方も出ております。私は、先般も申し上げたのですが、いわゆるシビリアンコントロールということは政治優先だという考え方から言えば、政治家がこれをタブーにしておるということは、これはいけない。そういう意味で、国会にそういうような場をつくって、本当にその限界というものはこういうものである――しかし、なかなか、この限界はこういうものであると断定するということは、いわゆる相手のあることでございますから相対的に考えなければならぬという問題もあると私は思うわけでありまして、そういう点につきまして本当に私は、国民にもどうなるんだろうというような考え方をはっきりしていただくことは、われわれ政治家のやらねばならぬ仕事だと、私もなお懸命にそういう面についても模索し、努力をいたしてまいりたいと考えておるわけであります。  また、いまのアジア情勢等はどういうような軍事情勢になっておるかというようなお話につきましては、在韓米軍撤退するというような話は御案内のとおりでありますが、アメリカは、撤退に当たりましては、アジアの平和と安全というものを崩さない、そういう中で四、五年かけて慎重に撤退をするということでございますから、現状情勢から崩されるようなことはないだろう、維持できるだろうという考え方を持っておるわけでございます。  また、先般アメリカ国防長官報告書によりますと、米ソ関係現状を維持することによってバランスがとれる、また在韓米軍はただいま申し上げたとおりでありますし、なお日米安全保障条約を堅持していくところに――日本は北のいかりだと言っておるわけでございますが、アメリカも、御案内のように日米安全保障条約を堅持していくことによってアジアの、西太平洋の平和を維持できるというような考え方であるわけであります。また、F15とP3Cを導入することとこれとは別だと、こういう考え方を持っておるわけであります。
  13. 上原康助

    上原委員 防衛庁長官、私がお尋ねしているのは、国会防衛特別委員会を設置をする必要性とか、あるいはそれをめぐっての政府なり各党意見についてお考えお尋ねしているわけじゃないんです。それはもちろん関連する重要な課題ではあるでしょうが、要するに、いまお答えになったことは一般論としてはそのとおりかもしれません。しかし、シビリアンコントロールとかいろんなことをおっしゃってはおるわけですが、われわれから見ると、現在まで政府が進めてきた防衛力整備というもの、防衛政策というものは明らかに憲法の精神から逸脱した戦力になっているという前提で、われわれは物を見ている。しかし、この論争を幾らやっても、皆さん皆さんなりの憲法解釈やいろんな理屈づけをやるわけで、それはそれなりに、対立点というものはこれから浮き彫りにされていくでしょうが、実際問題として、国民が求めているわが国方向性というもの、あるいは防衛力というものは、やはり文言どおり必要最小限度防衛力整備でなければいけないはずなんですね。なぜ、軍事大国になっているアメリカやソビエトと対置をした形での装備計画をやるかというところに疑問が持たれているわけですよ、F15にしましてもP3Cにしましても、あるいはその他の艦船の装備の増強にいたしましても。その必要性を私たちは論じているわけです。  そこで、いま安保条約やそういった問題について防衛バランスを崩す立場にないんだということをおっしゃったわけですが、そこで防衛局長にでもお尋ねしたいわけですが、在韓米軍撤退によって、在日米軍なり日本の自衛隊の防衛力については一体どういう関係があると判断しておられるのか、変化はあるのかないのか、そういう面はどういうふうに分析をしていま防衛庁という立場での方針なりをやろうとしておったのか、その件については余り明らかにされていないわけですね。そういう面はどういうふうにお考えになっているかということ。  もう一つ、七八年のアメリカ国防報告書もそうなんですが、今回、去る二月二日に発表された一九七九会計年度国防報告書の中でも、いま防衛庁長官がちょっとお述べになったようなことが触れられているわけですが、米国のいわゆるアジア戦略というものは、明らかに変化の兆しが出てきていると私は思うのですね。正面装備は何といってもNATOですよ。次は中近東ですよ。そして第三の選択としていま北東アジアアジアというものを位置づけている、こういう国際情勢、大枠の中で、米国アジア戦略なり安保条約体制あり方そのもの変化というものを、一体わが国がどのようにとらえて、純防衛論という立場でそういう面を位置づけようとしているのか、そのことについての御見解を承っておきたいと思うのです。  これは日米安保条約とも関連しますので、防衛局長が専門的なお立場で御答弁をいただいて、ひとつ長官外務大臣の御見解も承っておきたいと思います。
  14. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 まず最初に、国際情勢お話がございましたので私ども考え方を申し上げたいと思いますが、一昨年の十月二十九日、防衛計画大綱政府としてお決めいただいたわけでございます。そのときに国際情勢判断というものがございます。この中で基本的に、米ソ両国というのは対立しているけれどもアジアにおいては、朝鮮半島には緊張はあるが大きな紛争にならないだろうという御判断があるわけでございます。その後、在韓米軍撤退という問題があったわけでございますが、私ども米側考え方等を、昨年国務次官が韓国に行った帰り、あるいはまた、その他の場面におきましてのブラウン長官の説明、あるいはまた、昨年私は三原長官のお供をしてアメリカに参りましたときのいろいろの話し合い等を通じまして、在韓米軍撤退を実施するに当たっては四、五年間をかけて、しかも慎重に補完措置をとりながらやるというようなことを現実に確約し、それを実行するという姿勢でございます。したがいまして、この一昨年の十月二十九日にお決めいただきました防衛計画大綱国際情勢から大きく変わっているというふうには判断していないわけでございます。  したがいまして、従来の基本的な防衛力整備計画に従いまして防衛力を近代化する努力をしているわけでございまして、いま先生が御指摘になりましたように、F15あるいはP3Cというものがこの最近の情勢との関連において進められているということではなくして、こういった飛行機は、現在の勢力の中で飛行機が寿命が来て、なくなっていくわけでございます。したがいまして、防衛計画大綱でお決めいただいている勢力を維持するために新しい飛行機を採用しなければならないということでありまして、このことはすでに防衛庁といたしましては三年も四年もかけて検討してまいってきたところでございますので、いわゆる防衛力整備の従来からの考え方の上に立っているということでございます。  そこで、今度の国防報告におきまして、いまアジアを軽視するアメリカ戦略体制にこたえているのではないかというお話がございました。しかしながら、現実の問題といたしまして、この国防報告判断の中にもございますように、ヨーロッパではワルシャワ軍NATO軍現実対立をしている。そしてワルシャワ軍通常兵力というものが年々ふえているという現実の姿をつかまえているわけです。これに対してどう対応するかということが、きわめて関心の深いことであるということは事実でございますが、同時に、アジアにおける情勢分析におきましては、中国とソ連との対立状況というようなことを判断の中に入れております。したがいまして、危険がいわゆる具体的にあらわれたものとしては、ヨーロッパの方が対処しなければならない分野が多いんだけれどもアジアについても、在韓米地上軍撤退は行うけれども、そのほかの能力によっていわゆる紛争に対処できるような軍事力というものを維持していくという決意を述べているわけでございまして、その意味において、アジアにおける在韓米地上軍撤退以外の変化はないというふうに私ども考えておりますし、再三アメリカの責任者もそのことを言明しているわけでございます。
  15. 上原康助

    上原委員 私はやはり、政府のそういった情勢分析というところにも非常な疑問を持たざるを得ません。さらに、そういう既定方針を進めてきておったんだというだけの問題じゃないと思うのですね。もちろん私は、そういう論を展開をしても、もっと防衛力を、アジアから米軍撤退をしていくから、その補完的役目をわが方がもっと強化をしてやらなければいけないという立場で言っているわけじゃありませんよ、そのことは押さえておっていただきたいのですが、問題は、いま進められている装備の強化ということは、日本側が自主的に、主体的に進めていかなければいけない要件ではなくして、むしろ一貫してアメリカ側からそういう要求、要請がなされて、どんどんそれに追随をしていくという形で今日までなされてきたという事実なんですね。この点についてひた隠しに隠した中でわが方の軍備力が拡大をされてきている。ここに野党の防衛観と政府が意図的に進めてきた問題の大きな違いがあるということを指摘をせざるを得ないと思うのですね。  さらに、この実例としては、日米防衛分担の問題。防衛分担の問題で注目すべきことは、一九七七度のアメリカの上院軍事委員会会議録ですが、これをさっといろいろ見てみたんですが、やはり明らかに日本防衛分担、これは上院における太平洋司令官が、いろいろ各上院議員の聴聞のかっこうで、アジア防衛政策とか米国アジアにおける軍事、人員計画等の質疑応答の中でなされているわけですが、「日本防衛費分担」という項目では、「御存じのように、防衛費の国民総生産に占める比率は一%足らずの〇・八八%であります。私は特に空軍防衛を改善するため防衛費をふやすよう、あらゆる機会をとらえて私のレベルの人々を激励しています。国民総生産をもっと防衛に使用できない理由はありません。」こういう証言を堂々と、議員の質問に答えてやっているわけですね。その中から防衛費の、防衛分担という問題が出てきているということ。したがって空軍力や、あるいは次に出てきますが、対潜哨戒機を近代装備にしなければいけないということは、日本側の主体的な要求、ニーズではなくして、アメリカ側の西太平洋におけるそういった防衛体制、安保体制の中の補完的役目を日本側が負担をしていくための一つの政策にしかならないわけですね、こういう面からしても。そこに私たちは大きな疑問を持っているということ。これはもし本当に、アジア情勢なり韓国軍の撤退ということと関連をして、どうしてもそういう必要性安全保障上あるいは防衛政策上あるとするならば、その理由や根拠を国民の前に明らかにした中でやるべきではありませんか。そういうことについては防衛庁長官、どういうふうにお考えですか。
  16. 金丸信

    金丸国務大臣 アメリカの願望としては、自分の国は自分の自助努力によってできるだけ防衛をすべきであるという願望はあると思いますが、わが国は、アメリカの指示によってわが国の自衛力を云々するということは絶対ありません。
  17. 上原康助

    上原委員 絶対ありませんと言ったって、権威ある国会の議論の中でこういう方々が証言をし、現実にそういう方向に進展してきているのは事実じゃありませんか。私は何も事実を、根拠なくして言っているわけじゃないですよ。  さらに「日本と韓国との関係」という項でも、このウイズナー太平洋司令官・大将というのは、結局日本防衛費の問題について、結論は日本防衛費の増加に現在余り心配しておりません、あと二、三年中にはもっと国防費をふやすでしょう、その懸念は一つもありませんと、はっきり言い切っているのですね。これは何を意味するかということなんです。  こういうことは国民の前には明らかにされておりませんが、私たちがいろいろ調査をする限りにおいては、日米防衛首脳会談なりあるいは首脳会談においては、明らかにこういう問題が議論をされている。その証拠として、アメリカの議会でこのような質疑応答が展開をされているということ、この事実は否定できませんよ。ここに大きな国民的疑惑が防衛問題の中にひそんでいるということを理解をした上で、国民の協力と理解を求めるということでなければいけないのじゃないですか。この件についてどうお考えなのか。まあ、いまアメリカの言いなりになっていない、そう言わざるを得ないでしょう。  それで、その問題との関連において、最近、この装備の強化だけじゃなくして、前々から問題になってまいりましたいわゆる日米防衛協力小委員会のあり方、これなども安保条約の二十五カ年の中でこれまではやってこなかったわけですね。しかし、いまやろうというわけでしょう。やろうというわけですから、明らかに安保体制、安保条約そのものの変質につながる重大事項なんですよね。  この防衛協力小委員会の設置ということも、いま私が挙げたような会議録の流れからすると、明らかに出てきているわけですよ、日米防衛分担ということで。そこで、この問題が現在どういうふうに展開をされているかということを明らかにしていただきたいのですが、すでに六回の会合が持たれておるようですね。第一回が五十一年の八月三十日に小委員会運営について協議が持たれてから、六回目が五十二年の九月二十九日、それ以後持たれているかどうかもお尋ねをいたしますが、これはかつての三矢計画とも言われるほど重要な問題だと私たちは思うのです。  この点については、まず防衛庁長官に端的にお尋ねしていきますが、これまでのいきさつなり経過というのは、長官の方には御報告があるんですか。
  18. 金丸信

    金丸国務大臣 私の聞く範囲におきましては、いわゆる小委員会というものは安保条約を研究して、なおより一層密接な内容にしようというようなことを聞いておったわけでありますが、詳細につきましては政府委員から説明をさせます。
  19. 上原康助

    上原委員 やはり御報告はないわけですよね、いまの御答弁からすると。御報告がないということは、シビリアンコントロールはできないということになりますよ、場合によっては。  そこで、ぜひ明らかにしていただきたいのですが、まず、この防衛協力小委員会の協議事項の中で前提条件が二つございますね。たとえば「事前協議に関する諸問題、我が国の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は、研究・協議の対象としない。」いわゆる前提条件の「我が国の憲法上の制約に関する諸問題」というのは一体どういうことですか。
  20. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 わが国防衛力整備、運用の面につきましては憲法上の制約があるということは御存じだと思います。たとえば、海外派兵はできない、徴兵制はとれない。それから個別的自衛権は発動できるけれども、集団的自衛権は発動できない。そういったことについての認識というものを双方で確認したということでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 もう一つ、「研究・協議の結論は、安全保障協議委員会に報告し、その取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務らけるものではない。」わざわざ断っているんですね。これは、たてまえはこういうことになるかもしれませんが、しかし、この研究・協議事項の内容というものは、きわめて日本の存亡、存立にかかわることなんですね、国民の生命に。そうであるならば、当然両国政府の立法との関連、あるいは予算上、行政上との関連も出てくると思うのですが、これを除外条件としているところにも問題があるという点を、まず指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、協議事項の中で、「機能調整に関する問題(作戦機能、情報機能、後方支援機能等について)」と括弧してありますね。この機能調整については一体どのようになっているのか。  さらに、二項目の「極東における事態で我が国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」、三点目の「その他」がまた問題です。「(協同演習・訓練等)」、日米の自衛隊なり制服がいわゆる共同行動する、共同演習をする、あるいは訓練をするという内容は一体どういうものなのか、これもぜひ明らかにしていただきたいと思うし、きょうあたりの新聞報道によりますと、在日米軍を含めてだと思うのですが、いわゆる韓国軍と米軍の合同大演習がすぐ近々、三月七日から十一日間、大々的に行われるという報道がなされている。そのたびに沖繩なり在日米軍基地も使用されているわけですね。当然そういう問題も、この中では協議の対象になることだと思うのです。これまでも、その例はまだ幾らでもある。そうしますと、ここで言う「(協同演習・訓練)」というものは一体どういう中身を指すのか。またP3Cの給油装置を絶対外さぬとか、あるいは爆装を取り外さぬというようなことなども考えると、これはもう必然的に日米共同防衛体制というものを樹立をしていく、明らかに人的にも兵器の上においても体系化していく一つの方向じゃありませんか。そういう面はどうなっているのか、明らかにしていただきたいと思う。
  22. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 日米防衛協力委員会の発足に当たりまして、私ども大臣、当時の坂田長官から指示をいただきましたのは、日米安保体制によって日本防衛構想というものは成り立っているわけでございます。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、日米が共同して、そして日本の安全のために果たす役割りというものをはっきりさせて、そのときにそごを来さないように研究をしておくというのがこの目標でございます。したがいまして、作戦機能、情報機能、後方支援機能等で、有事に際して安保条約の第五条の発動に基づいて整合のとれた対処行動が行われるにはどういうようなやり方をすればよいかということを研究をしているわけでございまして、それぞれ自衛隊あるいは米軍がそれぞれの指揮機能に従ってこれを円滑に推進するための研究をやっているわけでございます。したがいまして、ここの中の研究の結果によりまして、いわゆるシビリアンコントロールのもとに政府としてのガイドラインを示していただきまして、整合のとれた対処行動がとれるようにするという目的で研究を進めているわけでございます。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、この共同演習あるいは訓練、これなどにつきましても、現在海上自衛隊等はしばしば行っているわけでございますが、どういう形でこれを今後実施していけばよいかということを、いま、いわゆる部会という専門家の会議におきまして研究をいたしております。その研究の結果がやがてこの防衛協力小委員会にも報告されまして、さらに議論されましてこの日米安保協議委員会に報告される。  それで、その中で、両国政府がそれぞれの判断に基づいて、ということは、これはこの結果が両国を直ちに縛るものではなく、その結果に基づいて日本の安全を守るために日本政府としてどうすればいいか、またアメリカ政府として日本の安全を守るためにどういう対策を講じておかなければならないかということは、それぞれの政府判断すべきものという前提に立っているわけでございます。
  23. 上原康助

    上原委員 共同演習、訓練の中身はどういうものなんですか。
  24. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 現在、部会でやっておりますのは、この作戦機能、情報機能、後方支援機能等でございまして、まだ、共同演習の中身がどういうものかというところの研究にまでは入っていないわけでございます。
  25. 上原康助

    上原委員 そこで、各部会の研究協議項目ということで、作戦部会、いまお述べになりましたね。情報部会、後方支援部会、この部会長はどういう方々がやっているのですか。これは制服だけですね。この部会には日米間の制服が入っているのか。
  26. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 技術的な研究作業でございますので制服が多いのは当然でございますが、外務省からは安保課長、防衛庁からは防衛課長あるいは運用課長が出席いたしております。
  27. 上原康助

    上原委員 ですから、作戦部会の担当部会長はだれですかと聞いている。それと、アメリカ側の制服もそれに入っているのですかと聞いている。
  28. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 部会長は、日本側は統幕の三室長でございます。それから、米側在日米軍の三部長でございます。
  29. 上原康助

    上原委員 明らかに作戦担当ですよね。  このように自衛隊独自の装備なり戦力の強化を図ると同時に、一方においては、日米安保体制の運用なり解釈というものを拡大していく中で共同作戦体制を着々と進めてきているというのが、現在の政府が進めている防衛の実体像なんですね。これが戦力でないなんというのは、どう考えたって理解できない。  そうしますと、これだけ重要な防衛に関する件あるいは日米安保条約の運用に関する件をいま議題として検討を進めているということですが、その取り扱いについてお尋ねをする前に、たとえば、いまさっき私が申し上げた米軍と韓国軍のいわゆる共同演習、軍事演習が展開をされている。その場合には、沖繩を含む在日米軍基地の使用はどうなっているのですか。
  30. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  ただいまお尋ねの合同演習、チームスピリット78と呼ばれる合同演習、これは米国と韓国との間の合同演習と承っておりますが、この点につきましては、アメリカ側からの説明によりますと、在日米軍につきましては海兵隊と空軍部隊の一部が参加するという報告を受けております。いま申し上げましたように、これは米韓間の合同演習でございます。先ほど来お取り上げになっております防衛協力小委員会での問題は、防衛局長から御説明がありましたように、いまだそこの作業に至っていないわけでございますが、いまお尋ねの合同演習そのものは米国と韓国との間の演習、こういうことでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 それはそれでいいですよ、その答えで。在日米空軍と海兵隊の一部が参加をするということが明らかになって。それはこれまでも、こっそりか公か知らぬけれどもやっているわけだ、こそこそと。そのとおりだと思うんです。それで、後段がいけないんだ、あなた方いつも。安保条約の運用の問題にしても、防衛問題にしても、日本立場考える場合に、朝鮮半島なり韓国ということを抜きにしては議論できないということぐらい常識でしょう。それは明らかに関連しているわけですよ。皆さんの受けとめ方がわれわれとは大きく隔たっている、あるいは百八十度違っておっても、関係のあることは事実なんですよ。それがあるから安全保障防衛をどうするかという議論をするわけでしょう。  そうしますと、明らかに、米軍と韓国の軍隊の共同演習の場合にも在日米軍基地が使用される。使用されてきたし、これからも使用させる。今度も出ていく。そういうことであるならば、この日米防衛協力小委員会で共同演習とか共同行動という場合に、在日米軍基地から韓国との共同演習でどういうふうに展開をしていくかということも話し合われるであろうことは、常識じゃありませんか。そこらはどうなるんですか。その点は全然除外した形でのことになるのか、明確にしておいていただきたい。
  32. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 韓国と米軍との演習というものは、全くこの研究の対象ではございません。日本の安全を守るために日米がどういう対処行動をするか、それに必要な訓練はどういうものであるか、そういう研究でございます。
  33. 上原康助

    上原委員 そうしますと、安保条約六条は、この協力小委員会では対象にならぬということですか。
  34. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど来防衛局長から御説明いたしておるところでございますが、先生御承知のように、この防衛協力小委員会は、一昨年の十二月六日に、その研究協議事項として何を取り上げるかという点が了解されまして、そこの第一番が、先ほど来防衛局長から説明がありました「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」、それから二番目に、それ以外の「極東における事態で我が国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」、それから三番目に、演習も含む「その他」の問題ということでございまして、ただいまの作業はその第一番のところをやっているわけでございます。したがいまして、第一番以外の「極東における事態で我が国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」という関係はまだ取り上げるに至っていない、こういう状況でございます。
  35. 上原康助

    上原委員 将来取り上げるかということを聞いているのに、取り上げるに至っていない、そんなことではいかないんじゃないですか。明らかに対象になっているじゃありませんか。  そこで、これだけ重要な問題について、いま小委員会という冠はつけてあるにしても、これは日米両国の大変な防衛委員会なんですね。しかも制服同士でやっている。これはいつごろまでに結論を出す予定なのかということが一つですね。  結論の出た段階では、もちろん日米安保協議委員会に報告をして、日米両国のそれぞれの立場判断をするというようなことが前提になっているわけですが、単に政府間でこそこそやるというしろものじゃないと思うのです。その報告については、当然国会に資料を含めて提示をして議論をさせるべきだし、また疑惑があればそれに対する問題点の指摘どもやるべきだと思うのですね。そういう御意思は当然ございますね。その点は大臣からはっきりとお答えをいただきたい。
  36. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 報告に基づきまして政府としての指針を示すことになりますが、この点につきましては御報告する考えでおります。
  37. 上原康助

    上原委員 報告書国会に提出いたしますね、大臣
  38. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま防衛局長が申し上げましたとおり、いたします。
  39. 上原康助

    上原委員 何か少しお元気がないみたいですね。これじゃシビリアンコントロールも三軍二十六万の指揮もとれないのじゃないんですか。これだけ重要な問題ですので、その報告書についてはぜひ国会に提出することを要求します。  それと、これは時期はいつごろになるのですか。それはお答えいただけませんでしたね。
  40. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 当初発足いたしましたときには、一応二年ないし三年という期間を予定しておりました。いま部会で作業をやっておりますので、ちょっとめどはなかなかつかないような状況でございます。せっかく作業を進めてまいりたいと思っておりますが、いま、いつごろということは、ちょっと申し上げられる段階にはございません。
  41. 上原康助

    上原委員 二年ないし三年というと、またなかなか気の長い話になるのですが、そうすると、当然中間報告というのがあってしかるべきですね。それはやりますね。
  42. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 できるような段階になりましたら中間報告ということもあり得ると思いますけれども、いまの段階では、いつ中間報告をするかしないかを含めまして、まだ申し上げる段階ではございません。
  43. 上原康助

    上原委員 いまの御答弁ではちょっと不満ですが、時間の都合もありますので先に進みたいと思いますが、二年ないし三年ということなら当然中間報告があってしかるべきだし、また、現段階までのことはできるだけ本予算委員会の開会中にお出しをいただきたいと思います。  委員長、そういう取り扱いでよろしいですね。
  44. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いままで開きました六回までの内容というのはつくったのがございますので、この資料は提出いたします。
  45. 上原康助

    上原委員 それは大した中身のないものなんだ。それは、単なるこれまでの一覧表ではなくて、できる範囲のものをお出しになるように要求をいたします。  それと次に、在日米軍基地の整理縮小問題について、これは時間がありませんので簡単にお尋ねしておきたいのですが、今後の見通しはどうなっているのか。十四、十五、十六あるいは十七の日米安保協議委員会でいろいろ関東計画、沖繩の那覇空港あるいは嘉手納基地への集約化計画が進んでいるのですが、前段の十四回の関東計画についてはほぼ今年度で完了するのですが、十五、十六のはほとんど達成されておりませんね。その取り扱いはどうなるのか。あるいは十七回までに合意をした以外の整理縮小計画というのは、今後どういうふうな見通しなのか、この点、この際明確にしておいていただきたいと思います。
  46. 亘理彰

    ○亘理政府委員 十四、十五、十六回の三回の安全保障協議委員会におきまして合意されました基地の整理縮小計画でございますが、現在のところ、これの進捗状況は、返還済みの面積で申し上げますと、本土につきましては約九五%が達成済みでございます。沖繩におきましては、これは面積も、全体の計画の約七割が沖繩でございますが、おくれておりまして二二%の達成状況、本土、沖繩を合計いたしまして約四四%の達成率ということになっております。したがいまして、この進捗状況は必ずしも私どもも満足すべきものだと思っておりません。主として予算の制約にかかるわけでございますが、今後できるだけ速やかにこれを促進いたしたい、予算事情とも関連がございますが、できるだけの努力をしてまいりたいと思っております。  それから、十七回の安保協というお話がございましたが、これはまだ、いつ開くとも固まっていないように伺っておりますが、当面私どもは、この十四、十五、十六のすでに合意済みのものの積み残しが多分にあるわけでございますので、まずはこれの重点順序を明らかにして促進することが先であるというふうに考えております。
  47. 上原康助

    上原委員 そうしますと、いま十六回まで話し合われ合意されたものの取り扱いを重点にやっているのであって、その先は全く見通しは立っていない、そういうふうな受けとめ方でいいですか。
  48. 亘理彰

    ○亘理政府委員 大筋はそのとおりでございます。現在の積み残し分をできるだけ早期にけりをつけたいというふうに考えておるわけでございます。
  49. 上原康助

    上原委員 これは両大臣にぜひ御理解いただきたいのですが、関東計画の場合九二%を達成されているわけですね。沖繩が復帰して六年目になって、政府日米間でいろいろ話し合って合意をした返還、縮小計画にしても、わずかに二二%の達成率という状況なんですね。そういう状況下で、いまどういう具体的な基地被害が起きていますか。ここに安保条約の持つ危険性と、いわゆる平和と安全と言いながらもその基地周辺地域住民に与えるいろいろな被害なり犠牲というものが出てきているわけですね。厚木のファントム墜落事故にしたって、沖繩の県道一〇四号線、現在はキャンプ・シュワブにおける戦車道の問題も出てきているわけでしょう。しかも、簡易水源地を汚染している、あるいは水道パイプを戦車のキャタピラで踏みつぶして破壊をしている。また一方、私の住んでいる嘉手納地方ですと、昼夜にわたる爆音というものが絶えない。そういうものに対して、毅然たる態度で政府はやらないじゃないですか。  それで、この二二%しか達成していないということに対してどういうふうにお感じなのか。また、一〇〇%達成するには予算上の枠があるということでしたが、一体どれだけの予算があれば皆さん考えておられる方向で解決できるのか。その両点、明らかにしておいてください。
  50. 亘理彰

    ○亘理政府委員 前段でございますが、沖繩におきましては確かに米軍基地の占める面積も広大でございまして、地元にいろいろの御迷惑をおかけしているということもよく承知いたしております。この点につきましては、私どもとしては、従来から日米安保条約の目的達成に支障を及ぼさない範囲でできるだけ、先ほど来申し上げました施設区域の整理縮小統合計画を進めてくる、これをさらに今後一層推進すると同時に、現在の基地の運用によって生じます障害につきましては、防衛施設周辺生活環境整備法等によりまして必要な諸施策を講じて、地域住民の方々の御要望と防衛上の必要との調和を図るように、私どもとしてできるだけのことをやってまいりたいというふうに考えております。  後段の、沖繩におきまして今後の基地の整理統合計画の見通しでございますが、本土に比べましておくれております事情は、一つは、面積にしまして全体の整理統合計画の約七割が沖繩であるということで、広大であるということもありますが、土地が本土の場合には国有地で、特別会計方式でやりましてKPCP等を進めてまいったということがございますが、沖繩の場合には、御承知のようにほとんどが民有地でございまして特別会計にのらない。全部一般会計の財源でやっていかなければならないというふうな事情にも左右されている点があるわけでございます。  そこで、今後の見通しでございますが、五十三年度でいまお願いしております分が、仮に予算が成立いたしましたとしても一まだ本土、沖繩にわたりまして事業量として約千五百億くらいのものが残っておると思います。これは正確な計算ではございませんが、私ども事務的に一応推計いたしますとそのくらいのもの。五十三年度でお願いしております事業量が約二百六十億でございますので、そういたしますと、五十四年度以降現在のままの予算のテンポでありますと、六、七年はかかる。計算上はそういうことになるわけでございます。これを今後予算の増額にも努めまして、できるだけテンポを早めて実施してまいるように努力したいというのが私ども考えでございます。
  51. 上原康助

    上原委員 これは、こんなことを言うとまた笑う方もいらっしゃるかと思うが、F15の尾翼の一つ分にも足りないのじゃないですか。そういう状態なんですよ。絶えず民事を後にしているということ、ここに、いまの福田内閣なり防衛庁なり外務省の政治姿勢というのが浮き彫りにされていると思うのですね。六年たっても、日米間で決められたことさえも履行しないで、しかも多額の兵器だけを購入していく。国民の税金のむだ使い。この点もぜひ早急に解決をするように御努力をいだたきたいのですが、これは大蔵大臣予算が足りないようですよ。基地周辺、やりますね。
  52. 村山達雄

    ○村山国務大臣 五十三年度予算におきましては、基地周辺については格段の意を用いまして、十分予算措置をいたしたところでございます。
  53. 上原康助

    上原委員 そんな――。まあ御努力ください。あなたの人柄がよう出ておるが、これ以上言うわけにいかない。いまの点は聞き流しちゃいけませんよ、基地周辺のやつ。  次の質問に移りたいと思います。  次に、ぜひお尋ねしておかなければいけませんので、沖繩の交通方法変更問題で、この際もう少し政府のお考えを聞いておきたいと思うのです。  私は、第八十二回国会のこの予算委員会でも、当時の藤田開発庁長官総理長官に交通方法変更についていろいろお尋ねをしたわけですが、稻村長官も前藤田長官にまさるとも劣らない、沖繩問題に御関心があられるし、また知っておられるので、よもやと思うのですが、要するに、今回の交通方法変更というのは沖繩県民が好んで変えられるものじゃないわけですね。戦後三十二年ないし三十三年、車は右側を通行する、人は左。これを七月三十日から一瞬にして左に変えるというわけですね。私はいまでも、変える必要ないという論者なんですよ。二転三転、どうしてこういうことをやらなければいかぬかということになるわけですが、その議論は別といたしまして、いわゆる県民が好んで変えられるものでないのだから、この交通方法変更に伴うすべての費用については、財政的措置については政府が負担をすべきだというのが前長官国会における御答弁なんですね。その原則というのは、いまの稻村長官ももちろん踏襲しておやりになりますね。
  54. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  原則としてそのように考えております。
  55. 上原康助

    上原委員 そこで、原則としてということ、この原則もくせ者ですが、それは政府の財政措置でなされなければいけないというその考え方は御理解いただけますね、くどいようですが。
  56. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 それで、五十三年度予算でもいろいろ措置はされているのですが、実際問題として、まだ取り残された問題もたくさんあると思うのですね、実施された段階においては。  そこで、一つは、すでに沖繩県なり関係団体からもいろいろ御要望が出まして、交通方法変更に関する政府の実施要綱を早く出して一それに基づいていろいろな手だてを、準備を進めていかなければいかないということを県は考えているわけですね、各自治体も。今日までまだその実施要綱さえ政府は出しておられない。いつごろまでに実施要綱は発表されるのか。その中に、その実施要綱を発表する、あるいは策定をする段階においては、県側なり関係市町村から出されている要望については十分取り入れられたものでなければならないと思うのですが、そこらの点はどういうふうになっておりますか。
  58. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  交通方法変更の実施に当たっては、そのうちのできるものから、道路整備等につきましては当然できる可能性のあるところは逐次進めていきたい、こういうふうに思っておりますが、問題は、これを実施しようとするときには、県及び市町村、県民各位の理解を受けることが、きわめて大切なことだ、こういうふうに思っております。そこで、沖繩県交通方法変更対策本部としましては、一日も早く実施要綱を策定すべく目下検討中である、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  59. 上原康助

    上原委員 検討中というと、これはもちろん検討をしなければいかないわけですが、七月三十日というタイムリミットがあるわけですよ。現に刻々といろいろしわ寄せが出てきている。これじゃ、どうなんですか、実施要綱さえも――二月も、もうきょうは十六日ですよ、あと十日しかございませんよ。せんだって平良県知事が上京をなされたときには、二月半ばごろまでに実施要綱を県側に提示をするということをお約束というか、そういうことをなされたのじゃないですか。それがおくれている原因はどういうわけですか。また見通しは一体どうなのか。これじゃ混乱しますよ、この問題は。
  60. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 これは予算関係もございましたので、予算関係見通しがつきましたので今月中に――まあ見通しがついたと言うとあれですが、大体煮詰まってまいると思いますので、今月中に実施要綱を提出したい、こういうように思っています。
  61. 上原康助

    上原委員 ようやく重たい口をお開きになったようなあれで、今月中から延びると、かえって県民の協力体制なり理解を得る面ではよくないと思いますので、ぜひ各省庁の関係者が御努力をいただいて、明らかにしていただきたいと思います。  そして、その中で問題は、確かにバスとかタクシーとか、公共用の車両については――自家用は前照灯の切りかえ等も一応財政措置をやるということですが、そういった公共関係はまあまあの線まで行っている。これは私も否定はしません。まだパーフェクトじゃありません、十分とは思えませんが。  しかし問題は、現在計量できない不確定損失の問題です。といいますのは、いままで三十年間全部右側通行ですから、お店にしても、いろいろな面で営業行為は右通行を基準にしてやってきたわけですね。これが左に変わると、バス停留所の問題を含めて、反対になるわけですから、明らかに右側に営業行為をやっている人々は相当の損害、損失を受けるであろうということは推測できるわけですね。しかし、いまは右側通行ですから、七月三十日以降にならぬと、実際の問題、どれだけの影響があるかは測定できない。そういう不確定な問題について、私は前から、政府が事後調査をしながら、明らかにそのことによって受けたであろう被害や損失についてはそれなりの措置をしていただかなければいかないと思うのですね。事後処理、これは私は当然だと思うのです。しかし、このことが不明確であるということ、これはぜひ実施要綱の中に明確にしていただきたい。  もう一つ、県側から出されております特別事業の問題、これは確かに予算上は五百万の予算を計上して、どういう特別事業をやるかということを調査し検討していくということが言われているわけですが、しかし、これもやるともやらぬとも、はっきり言っていないわけですね。やる方向で検討してもらわぬといかぬですよ。これも具体的に実施要綱なり政府方針として明らかにしていただきたい。  たとえば、交通安全教育センターの設置、県側から出されている二項目は自動車専用道路の南進ですね、石川から以南の問題。あるいは三点目に交通災害医療センターの設置、これを一応県側から、たとえばこういう特別事業があるということ。しかし、私たちはこれだけでは不十分だと見ているのです。なぜならば、県民全体に、百六万の県民に共通する最後の重大な問題としての復帰処理事項なんですね。したがって、われわれはいま独自の立場でいろいろ県側とも検討して、県民の森とかあるいは県民会館、交通会館というようなことをやはりこの際、これだけの国策によって変えられていく、変更を余儀なくされていくということに対しては、こたえるべきだと思うのですね。こういうことを含めて、特別事業の内容としては、調査費が計上されている中で御検討をいただきたい、このこともあわせて長官の決意のほどを伺っておきたいと思うのです。
  62. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  五十三年度の調査研究費の中で予算を計上してございます。そういう意味から、いま御指摘のありました交通安全教育センターであるとか、あるいは救急医療センターであるとか、あるいはその他いろいろ御指摘の点については、十二分に今度の実施要綱の中に繰り入れていきたい、こういうふうに考えております。  それから、先ほど、変更することによっての利害得失、こういう問題がございましたが、この問題については、いろいろなむずかしい面もございます。そういう意味で調整措置を講ずるということは大変むずかしいことではなかろうかと思いますが、いろいろまた連絡をとり合って、御期待に沿うように努力してみたい、こういうふうに思っております。
  63. 上原康助

    上原委員 前段の、県側要求の特別事業等については、実施要綱の中で取り入れるようにしていきたいという、それはこれまでより、より明らかになった一つの政府の誠意のあらわれだと思うのですが、私が前段でお尋ねして後段でお答えになった不確定損失、いわゆる計量できない個人なり団体の損失等については、これは当然やらなければいけない問題なんですね。このことはぜひ、要綱の中でやるか、継続検討をして七月三十日までに何らかの方向づけというものをやっていただかないと混乱しますよ。私はいまから予告しておきますが、正直申し上げて、それは大混乱しますよ。それはぜひ御検討いただけますね。
  64. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 なかなかむずかしいことではあると思いますが、ぜひひとつ協力をしていただいて、何とか七月三十日実施ができるようにお願いしたいと思います。
  65. 上原康助

    上原委員 協力できることをやっていただかないと協力のしようもないのですよ。これは事務当局も御検討いただけますね。  それで次に、自治大臣においでいただいたのですが、これとの関係で消防車、これの取りかえはどうなっているのですか。あれは特殊車両で、ほとんど取りかえ方向はなされていないようですね。けれども、いまは消防署というのは、大体右側通行ですから全部右側に位置していますね。そしてまた消火栓も大体右です。もちろん右側だけ火事があるとは言えないわけですから左側にもあるわけですが、大体はそういう道路の流れに応じて立地している。この問題はいままでの対策要綱の中で、残念ながら抜けているのですね。そういう問題が新たに出てきているということ。さらに救急車の取り扱い、たとえば、すでに今年一月から、六十キロのところは四十キロ、五十キロのところは三十キロに減速になっていますね。そうしますと、火事の場合、火事だといって、これはフルスピードで行かなければいかぬわけだ。あるいは救急車だって、人命にかかわることですから、たどり着くまでフルスピードで行かなければいかぬ。しかし、とっさのことで、右から左に変わるわけですから、そう簡単にいかない、しかも減速だ。いろいろ不安を感じますよ、運転ハンドルを握っている人々も。そういう試用期間といいますか、特別の訓練もやられていない。また、そういうことは、どういうふうな財政措置をやるかも定かではない。これは今日までの対策の中で欠落していること、こういうことについてはどういう措置をおとりになるのか、あわせてぜひ、まだでしたらこれも含めて御検討いただきたい。
  66. 加藤六月

    加藤国務大臣 消防自動車や救急車も、交通方法変更の枠内で処置されることは変わりがないことでございまして、ことに消防車等につきましては、昭和四十七年に復帰いたしまして以来、新しい車はすべて右ハンドル、かようなことに相なっておるのでありますけれども、左ハンドルのものもまだ残存しておりますが、これは逐次右ハンドルにかわるべきものと考えております。  それから消火栓でございますが、消火栓は御承知のように配水管に付属をいたしているものでありまして、送水管はもとより右側だけではございませんで、左側にもその配水管があり、したがって取水口もそこにあるのでありますから、この点での不便はない、かように私は思います。ただし、取水口等を取りかえますような処置が必要であるといたしますならば、さような面につきましては交付税等で考慮してまいらなければならない、かように考えておるところであります。
  67. 上原康助

    上原委員 確かに若干というか、復帰後そういう右ハンドルになっている面もあるにはあるわけですね。しかし、復帰前からの左ハンドルだって現にあるわけだ。あるいは軍の消防車だってたくさんある。きょうは米軍のところまでいけませんでしたが、三万台余りの軍用車両、軍族の分も含めて三万前後あるわけです。そうしますと、ほかの都道府県で変えることとは、沖繩の立地条件というのは大変違うのですよ。中には、ただ右から左に変えれば事済むのじゃないのか、あるいは予算をこれだけつけてくれたから沖繩経済にプラスなんだというお役人もいるようですが、これは言語道断です。そのことによって受ける精神的不安、肉体的苦痛というのは、これは強いられる人じゃないとわかりませんよ。三十年間右を歩いたものが何でいまさらということになっちゃう。いろんな問題が出てきている。したがって総務長官、これは大蔵大臣も含めてですが、おられる各閣僚に、こういうことによって受けるいろんな精神的な肉体的な、あるいは経済的な不安ということに対しては、やはり国の政治的判断でもう少しきっぱりとやらなければいけませんよ、その御認識をぜひ持っていただきたい。  同時に、これは最後の県民全体に共通する問題なんですね。たとえばつぶれ地補償の問題、きわめて重要なことです。あるいは放棄請求権、ぜひやらなければいけないきわめて重要な問題です。しかし、これは特定の人々に限られている戦後処理あるいは復帰処理として残されているわけですね。今回の交通方法変更は、歩ける子供さんからお年寄りまで、百万余りの全県民に共通する問題なんですよ。この認識をぜひ持っていただいて、まだ足りないところ、落ちこぼれているところは、政府の責任においてこのことをやっていただく。改めて長官の御答弁を求めておきたいと思います。
  68. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えをいたします。  復帰されまして、やはりわが国の法律を遵奉していただかなければならぬ、こういう意味から、大変長い問なじまれたものを変更するということでございますから、大変その点は同情するところがございます。しかしながら政府といたしましても、そのためにできる限りの、記念事業であるとか、あるいは少しでも支えになればということで全力を尽くしておるわけでございますから、この点をぜひ御理解をちょうだいを賜りたい、こういうように思っております。
  69. 上原康助

    上原委員 少し歯切れはよくありませんが、長官の今後の御努力を御要望申し上げておきたいと思います。  最後に、時間が参りましたので、これも特殊な問題ですが、運輸大臣、航空運賃の問題です。これは全国民の問題になるわけですが、また新たな航空運賃値上げというのが出そうですか、沖繩の場合は鉄軌道がないのは御案内のとおりです。その面でも非常な不便、不利益を受けている。そこで一つは、本土-沖繩間の航空運賃値上げはわれわれは絶対反対、これは沖繩経済あるいは観光問題から考えても重大な影響を与えます。これは単に今後やろうとする航空運賃の全国ネットで考えては問題だということを指摘しておきたいと思うのです。それに対する御見解。  もう一つは、いまいわゆるパック旅行で、ほとんど航空会社とホテルとバス会社が結託をして、まるで箱に詰めてはうり出して、こういう状態なんですね。だから、中小のホテルとかいろんな企業に大変影響している。こういうことも考えなければいかない問題ですが、個人に対しても割引券を二五%ですかやるべきだということ、さらに五日間のものを一週間ないし十日まで延長してもらいたいという、これも県民挙げての要求になっているわけですね。これについてどういうお考えを持っておられるか、今後どうされようとしておられるのかということ、これが一つ。  もう一つは、那覇空港の整備の問題についても、自衛隊との共用問題もございますが、私はそれには反対であります。しかし今日、成田空港との関係とかいろんなことを考えた場合に、沖繩の那覇空港の整備というのは、いろんな面で急務中の急務だと思うのです。この点についても運輸省としては特段の御配慮をいただきたいと思います。  この点についての運輸大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  70. 福永健司

    ○福永国務大臣 まず第一点の、本土と沖繩の間の航空運賃でありますが、三年以上も前に決めたものであるし、その後物価も上がったから航空運賃もという動きが一部にございます。私は動いてはおりませんが、一部にございます。この問題につきましては、そういう動きはございますけれども、今後の物価の動向等も考えなければならぬし、先ほどからるるお話しのごとく、直ちに沖繩を本土各地と同じような考え方で律するということについては、これは慎重でなければならぬと私は考えます。ことに沖繩振興ということを忘れてはならぬ、こう思いますので、先ほど申し上げたように一部に動きはありますが、まだ運輸省は簡単には動かぬ、こういうように私は考えておる次第でございます。  それから、パック旅行等と関連して、さらに団体割引について考えろというお話でございますが、なかなかいろいろの関連でめんどうなところもございますが、これはこれで、よく考えさしてもらいたいと思っております。  それから往復割引の点ですが、率直に申しまして、本土と沖繩との間で、せっかく行けば、もう少し延ばしてもらいたいという、これはよくわかります。でございますから、すぐにというわけにもまいりませんが、一連のこの種の問題につきまして、いろいろ問題の提起等もあるわけでございますから、それらをすべて、先ほど申し上げましたような考えを念頭に置きつつ処理してまいりたい。  それから、那覇の空港整備につきましては、これはいろいろな面から考えなければなりませんが、ただいまの上原さんのお話はよく伺っておいて参考にいたしたいと思います。
  71. 上原康助

    上原委員 これで終えますが、ぜひ、いまの運輸大臣の御誠意ある御答弁を踏まえて、ひとつやっていただきたいと思います。私は何も航空運賃を、沖繩地域エゴで申し上げているわけではありません。全国的に上げるのは反対ですよ、けしからぬと思います。特に離島県である沖繩のいまの状態から、これを画一的にやるということを問題視し、取り上げたわけですから、その点を含めて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  72. 中野四郎

    中野委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、土井たか子君。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 私はこれから、与えられました質問時間の範囲内で、前半を公害対策、環境問題について御質問申し上げ、後半、外交問題に対してひとつお尋ねを進めさせていただきたいと思います。  ことしは、公害対策基本法が一九六七年八月に公布されましてから満十年を数えるわけでございます。この間、公害対策基本法は、だれでもが知っておりますように、昭和四十六年に経済発展との調和条項の削除という大幅改正が行われましたし、さらに四十八年、四十九年と続けまして一部改正がなされまして今日に至っているわけでございますが、この満十年の歩みをいま振り返ってみますと、確かに公害問題に対する国民の認識というものを高める一方で、政治行政の場においても一定の地歩を築いてきたということが言えるかと思います。  しかし、公害の改善度合いというのはどうかということが実は問題になってくると思うのです。具体的に汚染が減少した事例として何とか指摘することができるのは、典型七公害のうちでは、大気汚染を取り上げた場合にSOXであるとかばいじん、それから水質を取り上げますと例の水銀などの健康有害物質、生活項目について申し上げますとBODやCOD、PHなどがそれに当たるだろうと思うのですが、このほか最近取り上げられました悪臭であるとか、さらに騒音問題も、大変不十分とはいえ、一定限度の改善がなされてきたということが一応言えると思うのです。しかし、このSOXやばいじんによる大気汚染というのは、確かにPPmの上では大きく低下をいたしておりますのに、それにもかかわらず、呼吸器系の公害病認定患者さんというのは依然として増大をしていっているというのが御承知の現状でございます。  そこで、まずお尋ねをしたいのは、公害対策基本法に基づいて策定をされております公害防止計画の目標の中で、NO2の環境基準の数値というのはどのようになっておりますか。また、これに対しては達成期間ということとワンセットの運用であるはずですけれども、この点はどのようになっておりますか。まず、この点をお尋ね申し上げたいと思います。
  74. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御質問のございました件で事務的な点だけをお答えいたしまして、後、大臣の方から基本的なことをお答えいたすようにいたします。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、まず大臣からお答えをいただいて、後、技術的な点を担当の局長からお答えになったらいかがですか。どうもおかしいです。
  76. 山田久就

    ○山田国務大臣 NO2の環境基準の達成、これは過密地域等については中間目標の達成期限ということになるわけでございますけれども、その期限が御案内のとおりにこの五月に到来いたしますが、現在までの汚染の改善状況あるいは窒素酸化物等の低減技術の開発状況などから判断いたしますと、残念ながら、この期限までにすべての地域で環境基準または一応の中間目標というものを達成するということは困難な状況になっておる次第でございます。  環境庁といたしましては、環境基準の設定以降やられましたあらゆる新しい知見などを正確に評価いたしますために、現在NO2の健康影響にかかわります判定条件等について中央公害対策審議会に御審議をいただいておりまして、近くこの答申が得られるような見通しでございます。環境庁といたしましては、人の健康保護という、この点に関しては、これは一番大事な事項と考えておりますので、NO2の判定条件等にかかわります中公審の答申などを踏まえて、十分これを尊重し、当初の達成期限であるところの本年の五月までには五十三年度以降のNOXの対策の方針を改めて確立したい、こういう考えでございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁では、達成期限というのが大変大臣の頭の中、胸の中には詰め込まれているようでございまして、そればかりが気におかかりになっていると見えて、肝心かなめの環境基準値に対してのお答えがございませんでした。ただいま、このNO2についての基準値というのはどういうことになっておりますか。
  78. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 NO2につきましての環境基準値は、一日平均値が年間の九八%値として〇・〇二ということになっております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 〇・〇二PPmというこの数値というのは公害防止計画の目標値でありますけれども、これ自身は達成期限というのは明確になっている目標でございますから、中身から言うと努力目標という意味ではないはずだと思いますが、いかがでございますか。
  80. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御質問でございますが、努力目標ということは公害対策基本法第九条四項に示されております。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことを私お尋ねしているのじゃございませんで、いまの公害防止計画については、達成期限というのは明確になっているわけですね。したがって、それまでにこの目標に到達しなければならないということで決められているのが公害防止計画の中身なんですから、ここに言う目標値というのは単なる努力目標ということではありませんね、というお尋ねをしているわけであります。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  82. 信澤清

    信澤政府委員 公害防止計画と申しますのはあくまで計画でございます。したがって、そこで示しております達成の目標というのは文字どおり目標でございまして、それに向かって努力をする、こういう趣旨のものでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 したがいまして、単に努力をしたけれどもだめでございますというふうな中身じゃないわけですね。そのことはいまの御答弁ではっきりいたしております。よろしゅうございますね。
  84. 信澤清

    信澤政府委員 お話しのように、当然努力はいたすわけでございます。努力はいたすわけでございますが、ただ過去の例にもございますように、ある期間を過ぎまして十分それが達成できなかったという場合に見直し等の措置もやっていることは、先生御承知のとおりでございますから、そういう場合もあり得るということを御理解いただきたいと思います。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 それは最大限の努力をするというのはあたりまえの話ですから。ただ、この場合に、できる限りのことをやってみても別にこの目標値というのにこだわらなくてもいいという中身でこれは決められているわけじゃないので、あくまでこの目標値に適合すべく達成期限を守ってやりなさいというのがその内容だろうと思うのです。これはもうはっきりしていますね。  ところで本四連絡橋公団は、御承知のとおりに児島-坂出ルートの環境影響評価書案というのを昨年の十一月の十九日に公表いたしました。内容は大変大部のものでございます。本文四百五十二ページ、資料編が三百三十ページという大変分厚いものでございます。目を通すだけで、専門家でも四、五日はかかるだろうというふうな大部なものです。  この中で本四公団が環境影響評価を実施いたしているわけでありますが、この環境影響評価の実施は、昨年七月二十日に公表された環境庁の基本指針、さらに建設、運輸両省作成の技術指針及びそれに伴う実施細目に基づいて行政指導の形で行われているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  86. 信澤清

    信澤政府委員 法律の根拠でなくしてやっている、それを行政指導と申すならば、その意味での行政指導でございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 現に環境影響評価法という法律はございません。もうそれは何遍かここで今国会は提案する、提案するというお約束が続いて今日に至っている限りでございまして、そういう根拠になる法律がございませんから、したがって、この実施に当たっては、根拠になるべき法律によらず、この行政指導という形で行われたというふうに理解をさせていただいてよろしゅうございますね。
  88. 信澤清

    信澤政府委員 一般的には、いま先生お話しのように御理解いただいて結構だと思いますが、ただ本四架橋につきましては、御承知のように国立公園の中に……(土井委員「そんなことは聞いていない」と呼ぶ)関連があるわけですから。したがって、自然公園法との関連というものは法律的にはあるということを申し添えたいと思います。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 全く別の問題です。いまのは。  先ほど、一般的にはとおっしゃった点でお答えをいただいているというふうにわれわれとしては理解すべきかと思いますが、ところで、この評価書案の中の大気質、NO2に関する記述というのを見てみますと「まことにわかりにくい表現が多いわけであります。「環境保全目標」というところを見ますと、「岡山、香川両県が公害対策基本法に基づき策定した公害防止計画の目標値をもって努力目標とする。」というふうに書いてございますし、同じ「環境保全目標」のところで「なお、道路に面する地域のNO2については、WHOの専門委員会が公衆の健康を守るためのガイドラインとして示した値をも予測結果の評価にあわせて用いるものとする。」というふうな言い方が出てくるわけであります。この「WHOの専門委員会が」云々というところは、〇・〇二PPmではなくて〇・〇四PPmというものを予測結果の評価にあわせて用いるということを実はこの評価書案の中で述べられているわけでありますから、こうなってくると、環境庁がいま〇・〇二PPmという環境基準をお出しになっていらっしゃることとは全く別に〇・〇四というものを勝手にここで基準値として使われることに対して、一体これはどうなっているのかと私たちは言いたいわけであります。勝手にこの環境保全目標というものを公団側が立てて、これは建設省の行政指導もあったでしょう。当然私は環境庁としては、このことに対して全然知らないとおっしゃるはずはないと思うわけでありますが、この〇・〇四というのが出てきた由来というのをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  90. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のあった点は非常にごもっともな問題点でございますが、一日平均値の〇・〇二PPmを幹線道路のわきで達成することは、われわれはいろいろ長く調べてみましたが、これは現在不可能であるということを実は環境白書に明らかにいたしました。これは非常に苦慮いたしまして、現在不可能である基準をそれではすぐ変えるかという議論でありますが、それはやはり健康を守るという角度から、先ほどの大臣の御答弁にありましたように、審議会の専門委員会の議を経て、それに基づいて新しく方針考えるということの手順を踏むべきだということに達しました。そこで、〇・〇二を超えるということはこれはもうほとんど間違いなく明らかであるといった場合に何と比べるかという問題になるわけでございます。そのとき、現在国際的にWHOの委員会で合意をして、また国連の環境計画におきましてもその数字が用いられているという数字は、国の基準とは全く違っております。違っておりますが、国の基準を決めた当時よりも新しい時点で国際的に合意のあるものを一つの対照する尺度として用いるということは、否定されるべきことではないという立場でございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 それはまことにおかしな話なんで、〇・〇二というのをお考えになっているのは環境庁なんですよ。国のあらゆる行政機関というのは、この環境庁の基準値を無視して勝手にやっていいのですか。これは別の行政機関が行政行為として、環境庁の基準値とは違ったものを勝手に先行してつくっているというかっこうなんですよ。このことに対して環境庁自身がこれは困るとおっしゃるのは私は当然だと思うのに、いまのでは、むしろWHOがどうのこうのというふうな弁護的な苦しい、いわばあれこれと言を用いた、言いわけめいた答弁をなさるわけであります。一体、この環境保全目標というのは、日本の環境基準によるのですか、WHOの数値によって日本全国では考えるべきなのですか、いかがですか。
  92. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 公害対策基本法に基づく環境基準は、日本の環境基準の一日平均値九八%値の〇・〇二PPmでございます。WHOのは基準ではございませんで、専門機関が国際的に示した一つのガイドラインということでございまして、アセスメントにおきましては、その時点で得られる最善の科学的な知見と照合してみるということの一つとして使う。これは先ほどの先生の御指摘のように、言いわけめいたことであるということは私は否定はいたしませんが、対照すべき科学的な知見としては有用なものであるというように私は思っております。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 有用というのは、橋本局長の私見だと思います。行政機関としての環境庁がお定めになっているのは、いかに橋本局長が有用であると言われようとなかろうと、現に決められている基準値というのは〇・〇二でしょう。したがって、この環境保全目標について考えてまいりましても、この場合について当てはめて考えてみましょう。  岡山県と香川県の公害防止地域における達成期間というのを見てみると、岡山県が昭和五十六年度を超えないできるだけ早い時期に達成するという数値が〇・〇二と決められているのです。そうですね。さらに香川県の場合は、昭和五十三年度にまさに〇・〇二という目標を達成しなければいけない、こう決められているのです。したがって、このたてまえから言うと、ここの評価書案には「努力目標とする。」と書いてあるのだけれども努力目標などというふうな性格ではなくて、この達成期間が明確になっている目標値だという認識をしなければならない。問題はまずここだと思うのです。しかも、この本四架橋の中の、これはDルートでございますが、Dルートの供用開始というのが昭和六十二年のはずでございますから、そういう限られた期間というものを前提に置いて見てまいりますと、NO2の予測と評価では、WHOの数値を持ち出す前に、環境基準の日平均値の〇・〇二PPmの達成を必要条件として考えていくということがどうしても大事になってくるのじゃないか、このように思われます。  このことについて、公害防止計画というものに対してもしいまのような御答弁を局長がなさるのならば、全面的に環境庁としては公害防止計画そのものの見直しをいまなさるおつもりなのですか、いかがですか。
  94. 信澤清

    信澤政府委員 法律論だけで申しますと、環境基準の性格は、先ほど橋本局長から御答弁したようなそういう性格のものでございまするし、あの法律自体にも書いてございますように、常に新し、い科学的知見によって改定されるべきだ、こういうことも言っているわけでございます。したがって、新しい科学的知見が出た段階において環境基準を見直すかどうか、さらにはまた、環境基準が見直された場合に、それを目標としております公害防止計画というものを検討し直すのかどうか、こういう問題が出てくるわけでございまして、そういう意味でございますれば、基準というものは固定的に考える必要がない。やはりその段階段階における科学的知見によって問題の解決を図っていくという態度が望ましいと考えます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると何のための環境基準なのですか。そのときそのとき、その知見によって考えていくということになったら、環境基準を一々、大変に骨を折り、大変に研究を重ね、検討を重ねてお考えになる必要はないのですよ。現に全国の公害防止計画というのは、〇・〇二を基準にして組み立てられている計画なんです。それ自身を全部御破算になさらないとなりませんよ、そういうことをおっしゃるのなら。いかがでございますか。
  96. 信澤清

    信澤政府委員 私の申し方が適当でなかったかもしれませんが、そう頻繁に改めるべき性格のものとは考えておりません。ただ、過去にSO2の環境基準の改定をいたしたわけでございまして、改定前の基準によりますればそういう目標を達した地区はたくさんあったわけでございますけれども、その後基準の見直しをいたした結果、それに基づいて新しく公害防止計画を改定してきた、こういう経緯もあることは先生よく御承知のとおりだと思います。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 いま公害防止計画において策定されている基準値というのは、NO2について言うと〇・〇二が基準になっているということで考えてまいりまして、今回の本四Dルートについて環境影響評価書案というのがすでに出ているわけでありますから、その内容でその点がどう確かめられているかということを見た場合に、環境庁の、ただいまその地域においても考えられている公害防止計画とずいぶんずれが出てくるという現実を認めざるを得ないわけですよ。したがいまして、このずれが出てくる以上はどっちかを修正しなければいけない。Dルートに対して〇・〇四でいくというのをもう一度引っ込めて考え直されるのか、それとも、環境庁が全国の公害防止計画というのをひっくり返して、〇・〇二という基準値を御破算にされるのか、これはいずれかをはっきりさせなければならない、こういうことになってまいります。環境庁長官、いかがでございますか。
  98. 山田久就

    ○山田国務大臣 先ほど来御説明申し上げておりますとおり、努力目標として〇・〇二というものが立てられておりますけれども、今日までとにかく非常に努力をしてやったいろいろな科学的な知見というものによってやってまいりますと、どうしても技術的にそこに非常に困難なものが出てきておる、これが御承知のとおりの現状でございます。いまちょうど答申を得るというような段階にもなっております。したがって、これまでの知見というものをもとにいたしまして、先ほど申し上げたようなところでやろうということで非常な苦心、努力をいたしておる、この点どうかひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 まことに苦しい御答弁ですね。これは苦しいのはあたりまえでありまして、現に環境庁がお決めになっている基準値と矛盾した基準値を設けた環境影響評価書案が出てきているわけでございますから、環境庁としては苦慮なさるのも当然だと思うのです。こういうことであるならば、環境影響評価書案に対して環境庁としてはどういう物の言い方をされたかということを聞きたいと思いますが、それ以前に、建設省とされては、この〇・〇四という基準値をお考えになる根拠をひとつはっきり、ここの場所で聞かしておいていただきたいと思います。
  100. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどから御意見を承っておりまして、これはなかなか処理のむずかしい点がございます。地域のバックグラウンドは、お示しのように岡山、香川ともに〇・〇二PPm、私どもの方でこれから本四架橋をやろう、そうするともう限度になっておるのですね。それで、予測、評価をどうするかということで、国の環境基準が昭和四十八年五月八日の告示のもので、これが〇・ 〇二PPm、ここへ新たにやる。現地での観測デー夕は、こういう公害防止計画による将来値、それから自動車排出ガス規制がどう実施されているか、そういうものが前提になってやらざるを得ないのでありますが、道路からの負荷量がどの程度というのが〇・〇二PPm必要である。そこでお示しの〇・〇四PPm、こういうことに予測、評価が出ておるわけであります。  そこで、私どもはこれから仕事をしなければならない。現実に〇・〇二PPmが完全に守られておる状況にあるかどうかというと、これは環境庁の方とは違って私ども現実的に見ますと、なかなかそうはいっておらない。まあいずれ、そうであれば御検討願っておるものと、こう思いますると、WHOのガイドラインが〇・〇四PPmである。そこで、その範囲内の予測、評価ということで、この範囲であれば地域の環境を守っていけるのではないか、こういうふうにわれわれの方は判断を――現実に〇・〇二PPmが守られておらない推定の上から言うと、それでは何をもって判断の材料にするかということからWHOのガイドラインを頭に置いた、こういう次第でございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいましたWHOのガイドラインは、まだ正式に決定いたしておりません。まず、そういう段階でございます。しかも〇・〇四PPmという問題に対しての御認識でございますが、WHOの場合と、先ほどおっしゃった四十八年に出ました日本の〇・〇二PPmという基準値の出し方というのは違うのでございます。端的に言えば、WHOの方は、急性影響の観点から提案をしたガイドラインというものをどのように考えたらよかろうかということで、考え姿勢を持っているわけです。日本の四十八年の環境庁の出した環境基準は、低濃度慢性影響というものをどういうふうに考えるかということですね。健康に対して及ぼす影響というものを非常に検討に検討を重ねた結果出された数値だというふうに、われわれは認識いたしております。  しかし、いまのように大臣お答えになるのならば、あえて私は申し上げますが、きょう一番最初環境庁長官が御答弁になった中で、NO2についての環境基準の設定というのはあくまで健康保護を大切に考えてやったというお話でございます。そうでございますね。健康保護というのは公害対策、環境行政においてはどこでまも基本にある問題でございますから、それは当然だと思いますが、建設省としては一度〇・〇四と基準値を設定される以上は、ひとつ、いまから申し上げることに対してどのようにお答えいただくかということをはっきりお考えいただきたいと思うのです。  それは、いま国道について言いますと、環七の問題であるとか国道四十三号線の問題などは、全国でも有数の大気汚染による自動車公害の激甚地域でございます。ここでいろいろ因果関係を調べてまいりまして、NO2といまの健康被害者との因果関係というものは、非常に歯切れの悪い言い方で、環境庁としては灰色だとおっしゃっているのです。そうですね。いまのところ灰色だとおっしゃっている。しかしながら、いま建設省としては、環境庁の基準値とは違った〇・〇四という数値を新たにお出しになるということになってまいりますと、〇・〇四を超えるような場合におけるいろいろな健康被害については、これに対する被害者補償というものを、建設省としては身をもって責任をおとりになりますか。自動車沿道では〇・〇四を超えるところの健康被害者補償をすることが必要になってまいります。いかがでございますか。
  102. 浅井新一郎

    浅井政府委員 お答えいたします。  先生おっしゃいますように、確かに現実に、幹線道路の周辺ではかなり高いPPmのNOXその他の公害現象が出ておるわけでございますが、〇・〇四PPmを超えるものについて因果関係があることがはっきりすれば補償するかどうかということでございますが、これは御承知のように、昨年、四十三号筋で因果関係ありというふうな報告が一部出まして、それに基づいてその因果関係をいろいろ検証しているような段階でございます。しかし、現実の問題として、直ちに〇・〇四以上のものを健康被害に結びつけて補償するかどうかということは非常に大きな問題ですし、直ちにそれについての結論を得るわけにはいきませんが、今後四十三号の報告等を十分見て、現実にそれによる被害ということが非常にはっきりした場合には何らかの措置を考えなければいけないというふうに考えておるわけでございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 これを超える場合の被害については何らかの措置を講ずると、いまおっしゃいましたね。〇・〇四という数値を守っていこうとすると、車の量は、一日量一体何台くらいに守られなければならないか。道路通行量について、一日の台数にしてどれくらいをキャパシティーとして考えていらっしゃいますか。
  104. 浅井新一郎

    浅井政府委員 これは車の台数に直ちに換算することは非常にむずかしい問題でして、その周辺の地形だとか気象条件、それからたくさんの物理的な条件によっていろいろ違ってまいりますので、直ちに台数でどのくらいというふうにお答えするデータは持ち合わせておりません。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 それは環境によって少しの開きはあろうかと思いますけれども、通過交通想定量最大量はどれくらいという考えがなければ、〇・〇四という数値をこの道路わきに対して想定するということも私は出てこようとは思わないのです。この点は必ず想定なさる場合の基準に置いて考えていらっしゃるに違いありませんから、これはひとつ責任をもってお答え願いますよ。いかがですか。
  106. 浅井新一郎

    浅井政府委員 たとえて申し上げますと、先ほど大臣からお答えの〇・〇二PPmというのが道路の周辺で負荷として出てくるというのは一つのデータでございまして、四万数千台、大体四車線の高規格の道路の周辺では〇・〇二ぐらいの負荷が生じる。これも大体、路側から十メートルないし二十メートルの範囲でございまして、それから先に行きますとほとんどバックグラウンド近くなるというようなことでございまして、道路の周辺に対する排気ガスの影響というのは、路側から二十メートルくらいで最高でその程度の負荷が生じるということでございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 それで、いまの通過交通想定量のキャパシティーですが、何台ぐらいということを想定なさっていらっしゃるわけですか。
  108. 浅井新一郎

    浅井政府委員 本四架橋の場合には大体四万八千台、五万台近いキャパシティーがある、そのくらいの交通が将来的には流れるというふうに考えております。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、今後道路建設については、大体一日五万台見当以上の道路を建設することは見合わせなければならぬということが、〇・ 〇四という基準値をお出しになった建設省としては念頭にあるわけでございますね。
  110. 浅井新一郎

    浅井政府委員 バックグラウンドがすでに〇・ 〇二PPmを超えているところが大部分でございますので、〇・〇二PPm以上になっては絶対いかぬということになりますと道路の建設は一切とめなければいけないということになりまして、また交通の実態を考えますと必ずしもそういうわけにはいかないのではないか、どこかその辺に妥協できる点があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 その妥協できる点というのを考えることによって、基準値がだんだん変わっていくのですよ。問題はそこなんです。これは妥協しようと思ったら何ぼでも妥協は続くわけでありますし、現にこのNO2の問題に対する基準値がどう考えられるかということがいま動いている最中でございますから、いろいろな声があっちからこっちから聞こえてまいります。わけても最近通産省の方には、大変にぎやかな声が聞こえていっているはずであると私は思うわけでありますが、もうすでに産構審の方で、部会を通じてNOXの中身を取り上げて、そうして答申が出されているわけでありますけれども、また、この基準値が御承知のとおり〇・〇五なんです。ところが、この産構審の方の〇・〇五という基準をめぐって、取り上げられたNOXの小委員会のメンバーというのを見てまいりますと、石油化学協会の副会長であるとか、経団連の環境安全委員長であるとか、鉄鋼連盟の立地公害委員長であるとか、石油連盟の環境委員長であるとか、それぞれは、いまNO2の環境基準に対して、緩められれば緩められる方がいいという考えを強く持っておられるメンバーによってこれは成り立っている。しかも、いまここに私が持ってまいりましたのは、鉄鋼連盟の立地公害委員会がまとめられた「NO2の環境基準をめぐって」という、公的発言抄録という、まことにこれは、よくもまあこれだけ集められたと思うぐらい発言の中身がここの中に収録されているわけでありますけれども、しかし、この「環境基準をめぐって」という抄録のポイントを見てまいりますと、NO2の環境基準の科学的根拠がないという発言録を取り上げて集大成したところに実は問題があるわけであります。科学的に妥当だという発言もあったわけでありますけれども、すべてその点はカットされているというかっこうになっている。こういうことが現に産業構造審議会の産業公害部会のNOx汚染防止対策小委員会の方で動いていっているわけであります。そうしてさらに今回は、このDルートについて基準値が〇・〇二ではない〇・〇四というものが使われるということが、すでにもう別の行政機関によって行政行為として先行してしまっているわけであります。こういう中での、最初環境庁長官が言われた中央公害対策審議会大気部会の専門委員会に対して諮問をしているというかっこうに、ただいまなっているわけであります。したがいまして、環境庁の出方というものは一体どういうことになるかというのは、実は大変大きな意味を持っておる。  実は、「環境保全長期計画」というのが昨年環境庁から出されているわけでございますけれども、この中身を見てまいりましても、窒素酸化物のところについては、五十五年目標と六十年目標というものに対してきちっと明記がされてございます。そうしてさらに、この長期計画の中で触れてありますところで、これは私は非常に大事なただいまのポイントであると思われる個所がございますので、それをひとつ取り上げて申し上げたいと思うのは、こういうことが書いてあるわけであります。「今後十年間に六%程度成長を想定した場合の潜在発生量は年平均一〇%程度の場合に比べて、硫黄酸化物、産業廃棄物では三-四割、窒素酸化物CODでは二-三割減少すると見込まれる。高い経済成長率は、それに応じた高い汚染除去率を必要とする。このために必要な技術の存否、そのために必要とされる公共、民間の公害防止投資の可能性について検討を加えることなく、経済成長路線が策定されるならば、再び環境汚染が増大することとなる。」と、ちゃんと書いてあるわけであります。これは成長率六%ということでこういうことを認識されているわけでありますけれども、ただいま成長率七%ということで、具体的にいろいろの政策の内容に対しての吟味が詰められているやさきでございますから、こういうことから言うと、昨年のこの認識に倍して潜在発生量に対しては抑えていかなければならないという姿勢を持つことが当然必要になってくるのです。  こういう点から申し上げますと、先ほどのあのDルートに対しての問題、産構審の答申に対しての問題、これを再度環境庁長官に、一体今後どういうふうにお取り扱いになるかということをお伺いしたいと思います。
  112. 山田久就

    ○山田国務大臣 土井委員案内のように、NOXの問題はどうも、私も素人でございますけれども、非常に複雑な、科学的にも技術的にも大変むずかしい問題を内蔵しているようでございます。でございまするので、実際問題として、私はいろいろな知見についても問題が出てきているのだと思うのですけれども、むろんわれわれとしては、この健康を保持していくという必要性、このことは、今般の七%による開発の大規模な促進ということについて私も特に発言して、環境の保全ということについては特に意を用いてほしいのだという点も発言しているわけでございまするけれども、なかなかむずかしい問題でございますから、この基準ということについての大きな責任もございまするけれども、当面の答申も控えており、最初の基準も、その当時として知り得る知見で決めたものではございまするけれども、その後実際に当てはめてみますると、なかなか技術的に困難、いや、場合によってはほとんど不可能というような事例も出てきているものですから、そういう点を勘案しながら、しかし基本原則については何とかこれを保持してという、大変苦しいことでやっている点、これはひとつ御理解いただきたいと思うわけであります。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 苦しい立場でやっているというふうな御答弁では、これはしょうがないのですよ。いま環境庁がしっかりしていないと大変なことになってしまうと私たちは思っています。環境庁はこういう産構審の答申なり、また鉄鋼連盟からのいろいろな、これは圧力と申し上げましょう、圧力なり、また、ただいまの、もうすでに他の省が、環境庁が〇・〇二という基準値を設定していることに対しまして別の基準値を設けて、行政行為として先行してしまっているというこの現実があるときに、よほど環境庁としてはしっかりしていただかぬと困るわけであります。苦しい苦しいじゃ困ります。一体今後どのようにこの問題をお取り扱いになるか、もう一度言ってください。
  114. 山田久就

    ○山田国務大臣 ただいま圧力というようなお話がございましたが、そういうことは全くございません。私が申し上げているのは、今日まで得た技術的なそういう知見からいって非常に問題が困難な点があるという、きわめて冷静、客観的なことを申し上げて、実は御理解を訴えているようなわけでございまして、なお、その点についての細部の事情は、ひとつ局長からも答弁させていただきたいと思います。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 知見から見てきわめて冷静、客観的な立場で、非常に苦しみながら、いまの〇・〇二では現実だめなので、ひとつ考え直してみたいとおっしゃいますが、これがやがて中公審からの答申が出て、恐らくこれはいろいろな物の考え方があると思うのですが、ただいま諮問されている態様からすると、人の健康保持にとって望ましいレベルと、いかなる手段を講じてもクリアすべきレベルという二通りの物の考え方でこの中身を満足される結論というものが出されるような諮問をしていられるやにわれわれは見聞をいたしておりますが、そうですか、どうですか。
  116. 山田久就

    ○山田国務大臣 私が申し上げているのは、先ほど申し上げましたように、そういう技術的な難点というものが出てきているのがいまの客観的な事実でございます。そこで現在、にもかかわらず、われわれとしては中公審にいま諮問しておりまするので、それの答申というものを踏まえてこれに対処していきたいという、そういう事実を申し上げているわけでございます。  なお、細部の点については局長から説明させたいと思います。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 いまの大臣御答弁では、私のお尋ねしていることに対してのお答えというものをいただいていない御答弁でございます。  諮問した段階でどういう諮問の仕方をなさったか、依頼したガイドラインとしてどういうふうなガイドラインを想定して諮問されているか、これをお尋ねしているわけであります。いかがです。
  118. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず、先生のいまの御質問の、諮問した段階では何を諮問したかということでございますが、判定基準等について問うということでございます。問うという中に、具体的な内容として口頭で申し上げましたことは、このような条件なら非常に望ましい、安全だ、このような条件なら健康にはまず心配ないだろうと言って受け入れることができるだろう、その二つのラインを申しております。  ここで一言、先ほどからの御質問の関連で若干申し上げることをお許しいただきたいと思いますが、環境基準の〇・〇二というのは非常に、乏しい知見の中で非常な不確定性の中で最大限度の安全率を見込んで決められております。そういうことで、どの程度までがいいのかということにつきましては非常に問題がございまして、このような不確定性が高いときにはいろんな方式があるわけでございます。一つは、不確かだから何もやらない。もう一つは、不確かだからいいかげんなことだけやっておこう。もう一つは、一回やって失敗したら後で厳しくしよう。最後が、非常に厳しいのをまずとっておこうという方針決定で決められたのが、あの基準でございます。そういうことで、不確かさの中で、どこで一体決定をするかという問題に私どもは非常に苦慮いたしておるわけでございますが、できないから、健康にぐあいが悪くても基準を緩めるというような考え方は一切ございません。これははっきり申し上げておきます。できないから緩めるというような関係は絶対ございません。現在私どもができないと言っておりますのは、努力をしないでできないと言っているのではありませんで、世界で最高の努力をいたしております。どこの国に比べましても日本は最先端でございます。また汚染の程度も、日本の汚染の程度は、世界におきましては中等程度のところでございます。そのようなことでいろいろな御批判のあることは私どもも存じておりますが、そのような形で、できないから緩めるという考え方は一切持たないということだけ申し上げておきます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 できないから緩めるということを一切考えていらっしゃらない環境庁とされては、それではどうしていまの本四架橋に対して、環境庁が考えられている基準値とはもう一つ大変緩やかな基準値をお認めになったのですか。もう別の行政機関というものが、行政行為として先行させてしまったのですよ。このことを追認するような形にいまなっているかっこうじゃないですか、黙っていれば。あと善後策としてどういうふうにおとりになります。
  120. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまの御質問の問題は、環境基準の本質論に触れるわけでございます。  公害対策基本法九条の環境基準は、「維持されることが望ましい」ということでございまして、そのような条件になっておりまして、拘束的になっておりません。そういうことで、もうできるだけ望ましい条件をやろうということで、長期の目標として置いておるわけでございまして、その間にどのように運用をしてこの達成を図っていくか、あるいは不可能な場合にどうするかということにつきまして、現在まで具体的な詰めが余りやられていなかったところにいろんな困難の根底があると思います。  ただ、その場合に、それでは批判に対してすぐさま告示を改定するというようなことができるかということになりますと、これはやはり現在の医学、公衆衛生の知見から見て、世界じゅうの知見を見て、これならばというところに来るまでは、いかに責められようともそのラインでやっていって、運用は適切に行っていく。その運用のときにどのような尺度として用いるかということの場合に、WHOというような機関で国際的に全部の人々が寄って合意した条件というのはやはり科学的に権威のあるものであるということが、私ども考えでございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 それはそれでいいんです。それは橋本局長のお考えだから、それでいいんです。そういうお考えがいま環境庁内にあるという事実も、事実として認めましょう。しかし、現にある環境基準は〇・〇二なんです。したがいまして、そういう点からすると、この本四架橋について、Dルート設定に当たってとられた環境影響評価書案の中身というのは、あくまでおかしい。このことだけははっきりお認めにならないと、環境行政として成り立たないと思います。したがいまして、いまるる御説明になった橋本局長の御見解は、御見解として承ります。いろいろそういう認識もあり、そういう検討も必要でしょう。けれども、現にまだ、環境基準というものが〇・〇二なんですよ。このことをひとつはっきり、どういう場合にも確認をしていただきたい。このことを忘れられては困るんです。だんだん他の行政機関の行政行為によってこれがゆがめられていくということを黙認されては困るんです。だから、そういうことからすると、環境庁がよっぽどしっかりしてもらわぬと困るわけです。  いまこの諮問をして答申が目の前ですが、一体いつごろ出るのですか。
  122. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 近日中に専門委員会として意見がまとまるであろうことを強く期待しております。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 近日中とおっしゃると、それは二月中であるのか三月に入ってからであるのか、いずれですか。
  124. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 日程につきましては、私は無責任なことを申し上げられませんが、私は中旬以内に何とかお願いするということを強く申し上げておりますが、最後の非常に厳しい議論をしておられる最中でございますから、それを曲げるようなことはあってはならないということでございまして、一番のキーポイントは、五月の環境基準の達成努力目標のときに環境庁として方針をはっきり打ち出せるということのデッドラインにあらゆるものを問に合わせるということでございます。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 もう現にこの環境影響評価書案というものが出されてしまっているDルートについてさらに申し上げてまいりますと、これはまず住民に対して公開するということがどうしても大事であるということが基本指針の中で述べられて今日に至っているわけですけれども、しかし建設、運輸の指針などでは全くこのことに触れられておりませんで、わずかに公団にあてた局長名の文書によって実施することを指示したにしかすぎません。このことからすると、公開などでの措置の具体的な方法については、公団と岡山県、香川県の両県の知事の協議にゆだねられるというかっこうになってしまいました。協議の過程において、公開などの措置の実施主体をどこにするかというふうな問題など、かなりの論議があったようでございます。たとえば実施主体の問題では、建設、運輸それから公団が知事との共管というものを強く要求したのに、県側は最後までこれに対して難色を示されたという事実もございます。二転、三転した後に、県側は場所の設定や意見の受け付けなどを側面から協力することになりまして、公団が最終責任を持つ形になったような状況になっておりますけれども、公開などの措置の実施内容について公団と知事の間で合意に達してやっと手順が決まったというふうな状況にあるわけでございます。しかし、公表した内容というのは必要最小限の事項を並べただけでございまして、監督所管省の建設、運輸、そして公団についても、公開などの措置についてのひな形を示さずじまいで今日に至っております。このことが事実なんでございます。  そこで、具体的に、これは公環特の方でも問題になりまして、いろいろ縦覧期間についても、いまの大部にわたる資料に対して縦覧期間が短過ぎる。そうして、時間も平日の八時三十分から十七時までというふうに限られるということに対しては、縦覧する期間を十分に確保するというふうなことができない。全部に目を通したとしても、住民側で専門の人たちにいろいろ検討してもらうにして、三週間は余りにも時間が短過ぎるということで、この期間を少し延ばしてもらうということに具体的にはなったという経過もございます。  ところが、この結果、住民側からいろいろ意見が出てまいりまして、ただいま私の知る範囲ではもう二千前後の住民意見というものが出てまいりまして、中には路線変更であるとか、地下に路線をもぐらせるというふうなことまでの要求も含めて、大変多岐にわたる意見が出ているやに私たちは聞き知っております。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そこでお尋ねをしたいのは、いま申し上げたようなNO2についての環境基準で環境庁とは違う数値の設定をされた公団側は、この意見提出期限後の対応策についてどのように考えられているかというのは、全くわからない。少なくともこのことに対しては、意見の反映方法、公聴会の開催、最終報告書の公開などの措置というのが必要であると思われますが、こういうことに対して、いま具体的な方針をきちんと決めていらっしゃいますか。いかがですか。
  126. 信澤清

    信澤政府委員 この問題は場合によったら建設省その他からお答えいただくべきことかと思いますが、私どももお示ししました指針にかかわりある問題でございますので、私から申し上げたいと思います。  お話しのように、公示縦覧をやり、住民の方の意見というものが出てまいったわけでございます。しかも、すでに岡山県あるいは香川県、両県知事を初め地元の地方公共団体の意見も出てきておる。したがって、私ども考えております段取りといたしましては、そういうものを踏まえて環境庁の意見を言う、環境庁の意見を言った段階で、いまお話しのような住民の方の意見等を具体的にどう計画の上に反映させるかということを公団で判断していただきまして、そして最終の報告書を作成し、これを公表する、こういう段取りになっているわけでございます。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その段取りについては各省庁間での詰めというのがきちんとできているわけでありますか。
  128. 信澤清

    信澤政府委員 段取りについてはそういうことで進んでおります。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 各省庁間での詰めというのは、その段取りについてはきちんとできておるわけですね。
  130. 信澤清

    信澤政府委員 事業の主体は公団でございますから、環境庁の意見も公団に対して申すわけでございます。  仮に公団がお話しのような問題を踏まえて事業の内容について手直しその他の問題を生ずるということになりますれば、公団自身で判断できるわけではございませんから、したがって、監督官庁でございます建設省なり運輸省と御相談をいただく、こういうことになるのは事の必然であろう。また、そういうことを前提にして今回の環境影響評価に関する一連の手続が行われておる、かように私どもは承知いたしております。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 最初に申し上げましたとおり、SO2やばいじんの内容に対して申し上げますと、環境基準に対する達成率というのが大変高いわけでありますが、NO2については、この基準値が再吟味されるくらいに達成率が低いわけであります。事実、これを守ることが大変むずかしいということでゆがめられていくという傾向をいま持っているわけでありますが、ただ、このSO2やばいじんについては、これだけ環境基準に対する達成率が高い中で健康被害者の数がふえていっているという現状を踏まえて、NO2に対して取り扱いを、やはり環境庁としては責任を持って果たしていただかなければ困るわけであります。  そういうことから言うと、いますでにもうDルートに対して〇・〇四などというふうな数値が出されてしまって、そしてお尋ねすれば、きょうは、ケース・バイ・ケースだというふうなお話まで環境庁から出てまいりました。いろいろな開発計画に対して環境アセスメントをやる節、それはケース・バイ・ケースで、数値というのはそのときそのときに考えるものでございますか。そうなると、繰り返しになりますけれども、環境基準というものは必要ではございません。現にいま環境庁としては、環境保全長期計画にしろ公害防止計画にしろ、それぞれの基準値はNO2に対しては〇・〇二に置いて策定をされて今日に来たわけであります。いま〇・〇二がケース・バイ・ケースでつくりかえられていくということであれば、これは全部環境庁としてはひっくり返してつくりかえされますね。つまり公害防止計画、環境保全長期計画、これに対して全部ひっくり返してつくり直す、こういうことでございますか。
  132. 信澤清

    信澤政府委員 ただいまのお話は、一つの仮定に立ってのお尋ねでございますのでお答えはいたしにくいわけでございますが、お話しのように環境基準そのものを変えるということをまだ環境庁として決めているわけでございません。したがって、変わった段階においてどうするんだというお尋ねについて、ここでどのようなことをやるのだということについて御答弁をしろというお話は大変むずかしいわけでございます。したがって、いま大気保全局長が申し上げましたように、いずれにいたしましても近日中に審議会の答申が出るわけでありますから、その答申を見た上で、いまのお話のような問題については十分適切に対応いたしたいと思います。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その答申が出るまでに現にもう策定をされた環境影響評価書案であるDルートについては、この基準値に対し再検討を迫るということが、当然、目下すべき環境庁としての役割りであろうと思いますが、この点はいかがですか。
  134. 信澤清

    信澤政府委員 先ほど来申し上げておりますように、環境庁としてまだ、この公団のおやりになりました環境影響評価書案について意見を申しておりません。意見を申しておりませんので、いずれ意見を申さなければならぬことは先ほど申し上げたとおりでございますから、その意見の中で、いま先生のお話しございましたようなことについて私ども考え方を明らかにいたしたいと思います。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 問題はそこなのであります。実はいま、答申が出るまで意見を具申することをお待ちになっていらっしゃるんじゃないかという読みを持つ人が非常に多い。つまり、この審議の結果、恐らくは、答申として出てくるのは〇・〇二をはるかに緩められた基準値に違いない。この基準値が出るまで待ってこのDルートに対しての環境影響評価に対して物を言うということになれば、いまの〇・〇二という厳しい基準値で物を言うという立場ではないから、したがって、これに対して即刻お墨つきを出すということも可能になるんじゃないか、こういう読みをする人が世の中に多いです。環境庁としては、そんなこと困りますよ。現に〇・〇二という基準値を設定された責任が環境庁にはある。この目標値に向かって、これを守らせるという責任が環境庁にはあるのです。守らせるという責任からすれば、まず、このDルートに対しての環境影響評価書案というものが出てもうすでに大分時間がたつわけでありますから、環境庁としてはこれに対して物を言われてあたりまえだと思うのです。〇・〇二に対して〇・〇四とされたことについて、環境庁としては、いろいろこの問題点を指摘してこれを行政指導するということを今回までなさいましたか、いかがですか。
  136. 信澤清

    信澤政府委員 土井先生は、環境基準ということを頂点に置いて物をおっしゃっておられるんで、これはその限りにおいて大変有益な御忠告なり御意見だと思います。ただ、地元で公開をいたしましていろいろ意見を聞きました場合には、環境基準ももちろん根っこにございます。ございますけれども、やはり住民の方の生活実感として、いまこの道路をここにつくられては困る、こちらの方に回してほしいとか、こういう御意見があるわけでございまして、やはり私どもは、実際的に事業を進めてまいります場合に基本に環境基準があることはもちろんでございますが、そういう生活実感に基づく住民の方の御意見というものを満足させることによって、それが同時に環境基準に結びついていく、こういうプロセスで環境影響評価というものは考えた方がいいんではないか。そのことがないと、いたずらに専門的な知識だけを住民の方に求めるということにもなりかねないことは、これはもう先生御承知のとおりなんでございまして、結果的には私同じことを申しているつもりでございますが、そういういろいろな対応の仕方についてまで住民の方の御意見がございますから、その中でいずれを選択するか、その結果、先生おっしゃるように、環境基準の達成のために近づく努力が一番反映できるような方法、こういうものを選んでいきたいということでございます。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは、環境庁としてはずいぶん逆立ちをした論を展開なすっていると思うわけであります。いろいろな事情を勘案した上で基準値というものを考えていく、こうおっしゃるわけでありますが、基準値に合わせるべくいろいろな状況に対して苦労なさるのが、環境庁としてはなさらなければならないことなんじゃないですか。したがってその点はさらに詰めを持って公害対策特別委員会の方に私は臨みたいと思います。  もう一つ問題があるのです。電源立地に関しての問題なんでありますが、いま、北海道の方の伊達火力発電所の一号機の操業がずいぶんおくれておりますが、このおくれは、電気事業法に言う七条に違反をするくらい長い間おくれているというのが実態でありますけれども、なぜこれは、操業がこれほどおくれているわけでありますか。
  138. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 土井委員御承知のように、伊達火力の一号機につきましては、四十八年二月に着工いたしまして、五十年の十二月に完工いたしたわけでございますが、この一号機に通ずる。パイプラインの工事がおくれております。昨年の六月から着工いたしまして、本年八月に完工する予定でございます。さようなところから一号機の本体はでき上がっておりますが、燃料油の輸送パイプが仕上がっておらないということで、稼働に至っておらないわけでございます。これにつきましては、地元住民の理解と協力を得るために時間がかかった、また電気事業者といたしましては環境ないしは安全対策に万全を期しておる、さようなところから遅延いたしたものとわれわれは理解いたしております。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 これは許可をする節、きちんと電気事業法の五条で、計画の確実性と事業開始について適切であるというふうなことが要件としてはっきり明記されております。そういう点から言うと、この五条の許可要件からして思わしくない許可が当時されたのではないか、こういうかっこうになってまいりますが、いかがでございますか。
  140. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の電気事業法の八条の許可あるいは四十一条の工事計画の認可をいたす際に、五条の基準に従って検討いたしたわけでございます。その時点におきましては、計画が確実に実行されるものという判断に立ったわけでございますが、現地住民の理解を得るために、現実論として長い期間を必要とした、かようなことになろうかと思います。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 これは現地住民の方々の御理解を得るためにというのは、いわばこれは言いわけでございまして、初めからの計画の中にこのパイプラインというのがどのように考えられてきたかということが、実は私は、いまこれだけ問題を長引かせた根源にある理由ではないかと思うわけであります。  で、これはもう言うまでもないことでありますが、電源立地に関しての法令手続からすると、まず電気事業法の二十九条で、電気工作物の設置計画の届け出をされたものを受けて、電源開発促進法に従って電源開発調整審議会が審議をするわけであります。このパイプラインというのは電源開発調整審議会が審議をする対象としたわけでありますが、いかがでございますか。
  142. 服部典徳

    ○服部政府委員 電源開発調整審議会のお尋ねでございますので、あるいは企画庁からお答えするのが適当かと存じますが、私ども知り得る範囲では、伊達火力につきまして電調審で審議を行いました際、企画庁の担当官から、口頭でございますが、燃料輸送につきましてはパイプラインを考えているという説明があったわけでございます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 それは審議対象にしておりますか、いかがですか。
  144. 服部典徳

    ○服部政府委員 審議対象にはいたしておりません。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 そこで審議対象にしてないわけですね。審議対象に初めてなるのは、これは電気事業法の四十一条に言う工事計画の認可申請のところで初めて問題になるわけでありまして、この電気事業法の八条で電気工作物の変更許可申請というものをやる中には、いまのパイプラインというのは入らないわけでありますね。なぜこういうかっこうになっているかと言うと、電気工作物の中にパイプラインというものを入れて考えていないという法的な立場からこういうことになるという関係がここにあるわけであります。  そこで、問題点はたくさんあるわけでありますけれども、はしょってきょうはお尋ねをしたいと思います。  この電気工作物の変更許可申請を電気事業法の八条でやって、それに対して通産大臣の許可がありさえすれば着工ができるということに相なっていると思いますが、この点いかがでございますか。
  146. 服部典徳

    ○服部政府委員 電気事業法八条は事業の変更の許可でございまして、その許可を受けました後で、個別具体的な電気工作物の工事関係は四十一条、電気事業法の四十一条によります工事計画の認可、これを受けませんと具体的には着工できないということでございます。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、この電調審の方で対象としてパイプラインというものは審議されなかった。しかし、最後のその電気事業法の四十一条に言う工事計画の認可申請に従って認可がされて着工が初めてできる、こういう関係になっているわけでありますね。そうすると、初めの電調審の審議会でのいわゆる認可というものがあって着手できる段階では、パイプラインに対して何らまだ審議がされていないというかっこうなんですね。いかがでございますか。
  148. 服部典徳

    ○服部政府委員 電調審及び電気事業法八条の許可の関係は、総括的、概括的な審査を行う、基本的な問題の審査を行うということでございまして、個々の電気工作物、たとえばパイプラインもその中に入りますが、これにつきましての審査、これは四十一条の認可の際に行うということでございます。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 これは、この問題点がこういうことにあると思うのです。電調審にかけるのは、電気工作物の一つとして。パイプラインを考えていなかったためにそこではかけられない。しかしながら、単独立地の場合について言うと、伊達火力パイプラインなんかの場合は卑近な例でありますけれども、単独立地の場合は、パイプラインなくしてこの稼働ができないわけであります。操業できないわけであります。したがいまして、これは全体的な立場でこの電源開発調整審議会が審議をする対象に、やはりこの単独立地の場合についてはパイプラインも含めて考えるという制度につくりかえなければいけないのじゃないか。そこで外れてしまっていることのために環境影響評価に対してもまことにずさんなあり方でこの問題が運営をされたという、この伊達火力発電所に対しての過去の経緯がございます。したがいまして、この電源開発調整審議会に対して、単独立地の場合はパイプラインをかけて考えるという考え方が一つは出てこようと思いますが、この点、どういうふうにお考えになりますか。
  150. 服部典徳

    ○服部政府委員 電源開発調整審議会の運用のお尋ねでございますので経済企画庁が御答弁すべき事項かと思いますが、私の知り得る範囲では、電調審におきましては発電所の位置とかあるいは原動力の種類、発電施設の最大出力、工事の着手及び完成の予定時期等の基本的な事項を審議するということになっておりまして、パイプラインの環境問題について付議する考えはないというふうに聞いております。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 これは、その前提にあるのは、電気事業法の二十九条で、電気工作物の施設計画を届け出なければいけないわけでしょう。この施設計画に対して、この中にもうすでにパイプラインというのを入れておかないと、これは電源立地に対しては、単独立地の場合はパイプラインは一体のものであるということは言うまでもない話でありますから、ここのところが片手落ちになってしまうということが一つは出てこようと思うのです。したがいまして、いま申し上げたように、電気事業法の二十九条の電気工作物の施設計画の中にパイプラインというものを入れて考えるか、あるいは電調審の審議対象にこのパイプフラインを入れて考えるか、両方ともの法の改正なり、制度の運用の上での改正なりを必要と迫られている事例がここにあると思いますが、この点いかがでございますか。
  152. 服部典徳

    ○服部政府委員 御意見のような考え方もあり得ると思うわけでございますが、私どもとしては、先ほど来御答弁申し上げておりますように、電気事業法の四十一条の段階でパイプラインについては十分チェックが可能であるという法体系になっておりますので、現行法で十分対処できるというふうに考えております。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 これは実は可能ではないので、いろいろ環境影響評価の点について、後々、電調審でなされた調査の中身がずさんであったというふうなことが具体的に出てまいっております。  現に私は、ここに公害対策特別委員会の方でこの問題が取り上げられた節、小沢元環境庁長官が、「私は、伊達火力の全体的な印象を環境庁から見ますと、環境影響の事前評価については、不十分だと思うのです。」とはっきり言われているとおりでありまして、この辺は、制度の運用の上で改めてお考え直しを必要とされているのではないかという問題、さらには一歩進んで法改正を必要とされているのではないかという点、この点での御検討をひとつここで申し上げておきたいと思います。  それからさらに、いま二号機について言うならば、環境影響調査というものが電調審で行われたと言われる日から、八号許可、四十一条許可に対して申請をされるまでの期間、これはずいぶん年月がたっております。これは電調審での認可があって、五年もそのまま放置されたかっこうになっていたわけでありますが、電調審が影響調査をやってから五年の間に、あたりの環境も変わってこようと思うのです。この八号許可についても、四十一条認可についても、電調審の影響調査を受けての許可であり認可でございますから、この点、五年の間にずいぶん条件が変わり、環境が変わるということであっては、環境影響調査の中身もその状態に合ったものとは言えません。したがって、五年間も経過した問題に対しては、もう一度やり直すとか、時を限ってもう一度やり直す、三年経過したものに対しては無効とする、もう一度やり直すというふうな制度がこの節必要であると思われますが、いかがでございますか。
  154. 服部典徳

    ○服部政府委員 伊達二号につきましては、御指摘のとおり電調審後五年以上経過しているわけでございまして、御指摘の点はよくわかるわけでございます。電調審四十七年の際に、基本的な問題につきましてはそこで支障ないというふうにされたわけでございますが、その後の期間の経過ということもございますので、私どもとしては、できるだけ新しい資料を補足してとりまして、そこの資料を十分検討して、支障ないという判断に到達したわけでございます。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 もう一度、この伊達の場合もそうでありますけれどもあたりで、いろいろ環境影響調査というものを電調審がされてから日時がたったために、環境や条件が変わったという例がございます。一度それを点検して――五年も六年も放置したままで許認可を受けずにいるというのはどうかと思われますから、環境影響評価をして、三年たってまだ許認可を受け得ないという場合にはもう一度環境影響評価をやり直して、そうして電調審でのそれに対しての認可を受けた上でなければならないというふうな制度につくりかえるという検討をひとつここで申し上げたいと思います。再度それに対して御答弁をいただいて、私は外務の問題に入ります。
  156. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点につきましては、予定されておる地点によって事情も異なるかと思います。補足的なデータによって判断し得ることもあろうかと思いますが、余りにも画然たる変化を起こしているような場合には、状況によっては御指摘のようなことも必要かと思います。そういった方向についてわれわれも検討いたしたいと思います。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 さて、外務の方に歩を移しますが、最近、ミッドウェーの問題を取り上げまして、核に対しての論議が再燃をいたしておりますが、従来より外務省は、事前協議がない限り核持ち込みはないと信ずるというふうに言われてまいりました。それでは、事前協議という問題に対して原点に返ってひとつ考えてみなければならないと思われるわけであります。事前協議に当たっての政府の基本態度というものはどういうものか。これに対しては、日米安保条約上事前協議というものが行われる事態というものをきちっと決めているわけでありますが、ひとつ外務省から、この点に対して事前協議が行われる事態というものを御説明願いたいと思います。
  158. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 この問題に関しまして造詣の深い土井先生にこういうお答えをするのはどうかという気がいたしますけれども、御承知のように、事前協議を予想している事態を言えという御質問になりますと、お答えといたしましては、安保条約の第六条の実施に関する交換公文に定めておるところの事前協議の対象が三つ挙げられておる、このことを申し上げる以外にいたし方ないのではないかと思います。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、安保条約六条に従って日米安保上の事前協議について挙げられている三つの場合、そこで事前協議が行われる時期というものはいつ行われるのか。なぜ私はこういうことを言うかというと、昭和四十八年の十月九日に、大出俊議員の方からの御質問に答えまして、当時大河原アメリカ局長の答弁がございます。これは、事前協議は平時にはないという御答弁でございます。これはいまでも生きているかどうか。ここに御当人はいらっしゃいますから、ひとつ心してお答えいただきたいと思います。
  160. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまの大河原答弁につきまして、私、いま詳細を心得ておりませんので、必ずしも十分な把握をいたしておりませんけれども、いま言われた平時という言葉はきわめて明確でないのではなかろうかという気がいたします。そして、たとえば配置における重要な変更ということは、配置自身はいわゆる通常の状況においても変更が行われ得るわけでございますから、そのような意味におきましては、そのような重要な変更を行おうと思えば事前協議にかけてくることはあり得るだろうというふうに考えます。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 大河原答弁というのは、はっきり、ここに議事録もございますけれども、事前協議という問題に対しては、平時、非平時という分け方はされてないように思いますけれども、背景といたしましては、平時でない事態において事前協議の問題が発生してくる、こういう考え方であろうと思います。平時でない事態において事前協議の問題が発生してくる、こういう考え方であろうと思いますと、明確に答えられているのです。したがいまして、事前協議というのは非平時でしかないというふうなことをおっしゃるのなら、先ほどの事前協議がない限り核がないというふうなことについては、核の有無の前に事前協議すら行われないということになってしまうわけでありまして、この点の確認をひとつはっきりさせておいていただかなければならないと思いますが、大河原発言に対しては確認させていただいてよろしゅうございますね、この御答弁。
  162. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 まことに申しわけございませんが、先生のいま御紹介いただきましたところによりましても、大河原答弁の真意を私実は明確につかみ得ない状況でございます。ただ、先ほども申し上げましたが、配置における重要な変更というのは通常の事態においてもあり得るし、また何らかの緊急的な事態が発生した後においてもあり得るであろうというふうに考えます。それからまた、戦闘作戦行動の発進基地として使用する場合に、施設区域を使用する場合の事前協議というものはその戦闘作戦行動を発進させるような必要のあるような、異常な事態において行われるものであろうというふうに考えます。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、平時において事前協議はあり得ないというこの大河原発言については、変更されるわけでありますか。
  164. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 大変申しわけないのでございますが、これは先生もよく御承知のように、国連憲章下における現在の国際法におきまして、いわゆる平時と戦時という区別は基本的にはないわけでございます。したがいまして、その平時という言葉を使った答弁があろうといたしましても、それは常識的、一般的な意味で使っているのではなかろうかという気がいたします。
  165. 中野四郎

    中野委員長 この際、大出君より関連質疑の申し出があります。土井君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大出君。
  166. 大出俊

    ○大出委員 これははっきりしておかぬと困るので、当時のやりとりというのは第七艦隊中心の議論なんですけれども、海の場合、配置の変更、タスクフォースという単位で変更した場合に事前協議の対象になる。タスクグループというのはありますけれども、空母が一ついて周りに何隻かの船がいる、タスクグループ、それは対象になりませんから、タスクフォースといったら何十隻という大変な船になる。そんなものが平時には入ってこない、はっきり言い切っているわけですね。それから陸上の場合一個師団、これが事前協議の対象です。一個師団が出たり入ったりするなんということは平時じゃない、だから平時には対象にならない。戦闘作戦行動、これも平時にはない。つまり事前協議というのは平時でないという言い方なんですよ、大河原さんのは。これははっきりしている。それは明確にしておきます。だから、いまの答弁ならその答弁の変更です。
  167. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 いま大出先生から御説明のありましたようなこと、たとえば軍事的に見て、いま平時、戦時とおっしゃいましたけれども、私はまず第一に、平時と戦時と二つに分けてその事態を表現することは必ずしも適当ではないだろうというふうに考えるわけでございます。しかし、その前提に立ちまして、その大出先生が御指摘になりましたような大きな規模の部隊の変更が、全く通常の場合にあり得るかということになれば、軍事的には、蓋然性の問題としてないであろうということはよくわかります。  ただ、私が先ほど来申し上げておることは、事前協議の、たとえば配置における重要な変更は、そのいまのような意味で用いますところの平時であろうと戦時であろうと起こり得ることであるということを、先ほど来申し上げているわけでございます。
  168. 園田直

    園田国務大臣 私の在任中ではございませんので、大出委員から言われましたからそのとおりだと思いますけれども、少なくとも平時においては事前協議の対象になる事項は少ないとは思いますけれども、しかし、これは当然、平時、有事を問わず事前協議をやるべきものであり、それは間違いない。  なお、念のためにこちらは、私の答弁に沿って米国の方にもその点をはっきり明確にいたします。  なお、外務省の答弁を変更します責任については、後でまたお謝りをいたします。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 大臣の御答弁によって、この点は変更されたということがただいま明確にされたわけでありますが、この六条の実施をするために事前協議というものが、先ほど来御答弁のとおりございます。しかし、核については、事前協議があっても、非核三原則の見地からノーと言うことは、従来から外務省としては明らかに言われ続けてきたところであります。  それでお尋ねをいたしますけれども安保条約第五条の発効がございました場合、戦闘作戦行動というものは事前協議の対象になるのでございますか、いかがでございますか。
  170. 中野四郎

    中野委員長 土井君に申し上げますが、申し合わせの時間が過ぎておりますので。
  171. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 交換公文にございますように、事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動からは安保条約第五条の規定に基づいて行われるものが除かれております。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 あとこの六条についての事前協議の内容に対してお尋ねを進めたいと思いますが、時間が参りましたから、先ほどの外務大臣答弁を受けまして、あと残っている質問に対してはその御答弁を受けての再質問という形でさせていただきたいと思います。
  173. 中野四郎

    中野委員長 これにて土井君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後一時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十五分開議
  174. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。浦井洋君。
  175. 浦井洋

    浦井委員 まず私は最初に厚生大臣にお聞きをしたいわけであります。  大臣もよく御承知のように、最近寝たきり老人であるとか、あるいはひとり暮らし老人が非常に大きな社会問題になってきている。たとえば火事で焼け死んだり、あるいは肉親が看病や介護に疲れ果てて心中をするとか、非常にテレビや新聞で暗いニュースが続いておるので、私も非常に心を痛めておるわけであります。とりわけ寝たきり老人、非常に不況が続いておるので介護者のいないような寝たきり老人が最も悲惨な状態に置かれておるというふうに私は思うわけであります。  さらにその上、わが国状況を見ていきますと、急速に高齢化している。こういう老人に対する福祉対策というものをいまのうちにしっかりしておかなければ、これは千載に悔いを残すだろう。いまやまさに将来に対して悔いを残すだけでなしに、緊急に解決をしなければならぬ問題でもあるだろうということで、まず老人福祉の問題を最初に取り上げたいのであります。  私が知っておるあるケースワーカーからの報告をちょっと読み上げてみたいと思います。いま大臣に写真をお渡しをいたしましたけれども、それを見ておっていただきたいと思う。これはひとり暮らしの寝たきり老人の実態の一端であります。本人は生活保護を受けておるところの七十五歳の女性であって、昔海女の仕事をしていた。海にもぐるわけですね。その仕事をしていて十一年前に潜水病というのですか、ケーソン病にかかって左半身が麻痺しておる。それで寝たきりの生活をしているわけです。子供さんは四人あったんだけれども、小さいときに四人とも死亡されておる。御主人は三年前に病気でこれまた死亡されて、現在はひとり暮らしである。その写真にありますように、三畳の部屋にベッドを置いて天井からロープをつるしておる。それにつかまってやっと座るというような状況であります。そしてベッドの右側には電気こんろと茶わんとかま、こういうものを置いて足もとにはテレビあるいはバケツ、このバケツというのは、トイレに行けないために汚物をバケツに捨てておる、そのためのバケツであります。それからまた便器も置いておる。こういうふうに生活必需品を身の回りに集めておいて生活を何とかやっておる、何とか生き続けておる。そして、めいごさんは近所におるんだけれども、一日一回来てお米を洗ったり、あるいは排せつした大小便を捨てたりする。お米を洗っておくと、今度はそれを電気こんろにかけると御飯ができ上がって本人が食べる、こういうことになるわけです。しかし、めいごさんにも自分の生活があるし、仕事も持っておるために、また毎日一回といえどもかなり長期の介護をやっておるために疲労も重なって、ついとぎれがちになる。だから、ある病院の看護婦さんが訪問をしてみると、いつ行っても部屋は悪臭が立ち込めておって、ベッドの上はふけや髪の毛で汚れておるというような状況であります。定期的に訪ねてくるのはヤクルトのおばさんだけである。だれも来ない。非常にさびしい。だから特に夜なんかになるともう非常にさびしいので眠れないし、いっそ死んでしまいたい、こういうふうに思うことが毎晩のようにあるというふうに切々と訴えられるわけであります。  そこで、最初大臣お尋ねしたいのですけれども、厚生行政のトップにおられるわけでありますが、こういうようなお年寄りに対して、というよりもこのお年寄りに対して、大臣は一体どうしたらよいと思われるか、ひとつお尋ねをしたいと思う。
  176. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 こういう方々には、もし御希望があれば、病状等を判断いたしまして特別養護老人ホームに収容する方法が一つ。それから、いまお伺いしますと、めいごさんがたまにおいでになるということでありますが、当該市町村でホームヘルパー制度等もございますので、あるいはまた介護人制度等もございますから、これらをひとつ活用いたしましてお世話を申し上げる。この二つの方法があろうかと思います。
  177. 浦井洋

    浦井委員 確かに形の上では名答になっておるわけであります。ところが、六十五歳以上であるし、それから寝たきりであるし、介護を要する。この方も特養ホームに入所を希望されておるわけでありますけれども、簡単に入れない。ここに問題があるわけなんです。  これも実態を予算委員会で報告をしておきたいわけでありますけれども、ある診療所のケースワーカーの報告であります。これは八十四歳の御婦人のお年寄りであります。同居しておるのが水商売の手伝いをしておる五十八歳の娘さん。だから、もちろん生活保護を受けておるわけなんです。娘さんは寝たり起きたりしておる母親の介護をしながら働いていたけれども、最近母が寝たきりの状態になって、しかもときどき娘が毒を盛るとか、娘がいじめるというようなことを口走るようになった。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕 そこでその娘さんは、長期にわたる介護と不規則な仕事で、これまた精神的にも肉体的にも非常に疲れられて、とうとう寝込んでしまった。ある開業医の先生が母親を往診したところ、これといって悪いところがあるわけではない、こうなるわけだ。そのケースワーカーのところに娘さんが困り切って相談に来たので、一緒に福祉事務所に行ったところが、申請してもらってもよいけれども、二、三十人待っておる。これは神戸市の話であります。二、三十人待っておる。特養ホーム、特別養護老人ホームは年に二、三人入ればよいぐらいですという冷たい返事しか返ってこなかった。公立病院であるとか民間病院、いろいろ連絡をしたけれども、どこも断られてしまった。弱り果てて娘さんに、仕方がないからひとつ精神病院にでも入るようにしてはどうかというふうに持ちかけた。その日は一日黙って帰ったんだけれども、明くる日に来て、精神病院に母親を送るのはどう考えても忍びない、やはり老人ホームがあくまでがんばって待ちます。こういうようなことで、ぽつんと非常に言葉少なに言って帰られたわけであります。こういう例がある。  それから、これもある病院のケースワーカーの報告でありますけれども、これは八十九歳の男性であります。右足の骨髄炎のために八年間ある病院に入院していたところが、余りにも長期的過ぎるというので、帰ってほしい、一カ月問を薬をもらって退院をしてきたところ、退院先というのは、そこには七十三歳の息子の嫁が一人で待っているだけなんです。その嫁ももちろん年齢が高いし、動脈硬化がある、病院に通っておるというので、その八十九歳のおじいさんをもう一度入院させてもらうか、あるいはいま大臣の言われた特養ホームに入れてもらえないかということで福祉事務所に行かれた。そうすると、福祉事務所の方も、病院がだめだというので仕方なく退院してもらったんだ。特養はむずかしいけれども、予約をしておきましょうというように軽くいなされる。当面やはりお嫁さんに介護してもらうより手がないというようなことで、まあ悪く言えば逃げられてしまったわけであります。で、この病院のケースワーカーの方では何とか福祉事務所に働きかけて、介護手当を出さしたりあるいはトイレの改造などの対策を打っておるというような状態。だから、生活保護はもらっておるけれども、非常に不安で仕方がない、こういうことなんです。  こういうように特養ホームに入れない。これはもう実情の一端であります。入れないために、お年寄り本人さんたちも、あるいは家族も、あるいは病院も、それから福祉事務所の人たちも弱り果てておるわけなんです。これが実情なんです。特に大都会では。  そこで、厚生省にちょっと尋ねておきたいのですけれども、特別養護老人ホームの現在の収容定員というのは一体何人なのか。それから、こういう特別養護老人ホームに入りたいと申請をしておる人が全国でどれくらいあるのか、また、実態から見て入らなければ、入った方が適当だというふうに考えられる人は、推定でも結構であります。実数でも結構であります。一体どれくらいあるのかということをまず最初お尋ねをしておきたい。
  178. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 特養の現在の施設数は、たしか六百二十七カ所でございまして、約五万人の収容能力を持っているわけでございます。  待機といいますか、もうぜひ入りたいがまだあかないからという待機の方々がどれぐらいあるかということは、どうも的確な数字をまだつかんでおりませんが、各施設の入所の現況等からいろいろ判断いたしますと、とにかく待機と考えられる、もうすぐにでも入りたいという方々がこの収容者の約二割はあるのじゃないかという推定をいたしております。  全国的にこの特養の施設に入所をしなければならない、また希望するという方々がどれぐらいあるかということについては、遺憾ながら今日まで正確な調査をいたしておりません。これはいろいろな抵抗等がございまして調査がなかなかできない面もございまして、五十年度で身体障害者を含めまして要施設収容の人員をつかみたいと考えたことがあったのでございますが、いろいろ差別とかあるいは強制収容的な感覚で、どうも若干感情的に反発する向きもございまして調査ができなかったのでございます。しかし、私は事務当局に、最近各県や市町村とよく連絡をとってどの程度の必要性があるかということの調査を、おおよその推定でもつけまして、そして施設の整備の計画をつくり、これを計画的にひとつ補助をしまして整備をしていきたい、かように考えているところでございます。
  179. 浦井洋

    浦井委員 言葉の上ではなかなかきれいな答えが返ってくるわけでありますが、しかし、やはりいろいろな事情があるにしろ、その具体的な実態の数字はつかんでおられない。そうすると、一体国はどういうような具体的な数字に基づいて計画を立てて施策を推進していくのか。その誠意というか熱心さというか、そういうものが私、疑われても仕方がないんではないか。それなら県や市、地方自治体でつかんでおらないのかと言いますと、いまの大臣の言葉から推測されるように、住民に直結しておるものですから、これはもうつかまざるを得ないというところに追い込まれておるわけなんです。  私、一つ報告をしておきたい。神戸市で言うならば、収容定員が三百二十名。現在待機をしておる申請者を含めた対象者が三百五十人。これはいま大臣が言われた区分けでいきますと、ケースワーカーであるとか民生委員が掌握をしたところのいわゆる保護を要する人たちの数であります。これに比べて兵庫県では、収容定員が千二百名。そして現在申請中が、これは申請中というぽっきりした数字ですが、五百八十六名。大臣が言われた二割よりはやはり兵庫県でも多いわけなんです。問題は、たとえば神戸市は九つの区がありますけれども、各福祉事務所で大体待機者が二十名から三十名ぐらい。早くても三カ月から半年間、長い場合には一年半も待機させられるというのが実情であるわけなんです。だからこういうふうに県や市は数字をつかんでおる。ところが国は明らかに立ちおくれておる。国はその数字を集めて方向を打ち出す、計画を立てて方向を打ち出す、こういうこともやっていないと言われても仕方がないじゃないですか。どうですか、大臣
  180. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 社会福祉施設の整備五カ年計画というものをつくったことがございまして、それから見ますと総体的には大体この五カ年計画の目標を達成をいたしておりますが、実は個々に内容別に検討いたしますと、いまおっしゃいました特養施設、それから重度の身体障害者の施設、それから身体障害者、精薄等の方々の授産施設、これがどうもまだ足りておりません。したがって、非常に重点的に整備を進めてまいりまして、五十二年度で考えますと、約六年前と比較してたしか約倍、倍まではいきませんが、約倍近い数字の整備率になっておるわけでございます。なおこれからもできるだけ努力をして、特養については大体府県なり市町村で希望する場合は余り厚生省でこれを断っておらぬのでありまして、できるだけ予算上のおつき合いをするということになっております。ただ、老人の実態等から見ますと、先ほどちょっと例に挙げられました、別にこれといった身体的、医学的な欠陥ではないが精神的にいろいろ問題がある、最近非常にそういう傾向が多いのでありまして、これらは特養に値するのか他の施設がいいのか、あるいは在宅の方がよりいいのか。現在のところは在宅指導という面にもあわせて力を入れていきませんと、ただ収容するだけで果たして老人の福祉のためになるかどうかという問題もありますので、在宅対策と兼ね合わせまして私どもとしてはできるだけの推進を図っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  181. 浦井洋

    浦井委員 大臣に要望しておきたいのですけれども、余り手ぬるいことを言っておったらだめであるわけでありまして、五十一年に福祉施設の整備計画が終わったのだというようなことでみずから慰めておっても仕方がない。また地方から要望が来にくいということをちょろっと言われたわけですけれども、それも制度的に、あるいは地方自治体がどういう点で困って、それがネックになって出てこないのだというようなところまで、かゆいところに手の届くような指導をやって、そして特に特養なんかは早急に実態をつかむ。単に申請者を集計するだけではなしに、いろいろな配慮をしながら、どういうような実態にあるのかという数字をつかんで、そして年次計画なら年次計画を立てて、積極的に地方にもPRをして進めていくということを私は要求しておきたいと思うわけであります。私が特養ホームをしきりに強調するのは、特養ホームの不足ということがいままで私が言ってきたところ以外にも非常に複雑な、しかも悪い影響を及ぼしておる、このことを指摘をしておきたいわけであります。  もう一つちょっと例を引いてみますと、これは神戸市の福祉事務所のケースワーカーの話でありますけれども、特養ホームに申請者があると、引き取ってくれる病院を探すのが仕事の大半だ。特養ホームはどうせ満員なんだから、いま大臣言われたように、老人になるとどうしても動脈硬化が出てきますから、頭は確かにぼけてきます。これは精神的にもそうだろうと思う。しかし、だからといってそういう人を入れてくれる病院がなかなかないので、その病院を探すのが老人福祉係、ケースワーカーの仕事の大半だ、こういうことを私に訴えておられるわけであります。七十三歳の男性が寝たきりでふろにも入れず、皮膚病にかかっておる。息子の嫁が世話をしておるけれども、体が弱くて倒れてしまった。特養ホームへ入所申請が出されたので、ケースワーカーが駆けずり回って、ある病院にやっと糖尿病を治療するという名目で入院可能になった。ところが次々と新たに介護者のいない申請者が出てきたものだから、だんだんとその七十三歳の男性は後回しになって、一年半たつけれどもまだおうちで待機したままでおるのだ、これが典型的な例であります。だから、いま老人医療が無料化された。そして大蔵省あたりでは病院のベッドが老人で占有されておるというようなことをしきりに宣伝しておるようでありますけれども、もしも一部にそういうような現象があったとしても、そういう現象が起こる原因の大きな一つは、やはり需要に対して特養ホームの供給が余りにも少な過ぎるということが案外大きな原因になっているのではないか、私はこういうように思うわけでありますが、大臣、どうですか。
  182. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 ですから、特養は私どもとしては重点施策といたしましてこれからも大いに整備努力をいたしまして、これらの方々の収容に遺憾なきを期したい、こう申し上げているわけでございます。それは一遍に全部できればこれにこしたことはございませんが、府県なり市町村あるいは医療機関との連携を図らなければなりませんので、ただ収容すればいいというわけにはいきません。医療管理もいたさなければなりません。そういう面で苦千おくれている点がございますけれども、できるだけ整備努力をしてまいります。
  183. 浦井洋

    浦井委員 特養ホームでかなり力を入れておるというような厚生大臣お話、というよりも、これから力を入れていきたいというふうに私理解をするわけでありますが、たとえばすでに厚生大臣、ちょっとお渡ししておるこの数字のメモ帳があるでしょう。これを見てみますと、老人ホームや保育所を含むところの福祉施設の整備費というのは、高度成長の四十八年、四十九年、これがそれぞれ対前年の伸び率が五五・一%、四〇・四%。これがピークで、その後むしろ抑えられてきておる。五十三年度は、なるほど少し回復をして二四・一までいっておるけれども、これは景気対策。それからこの数字を一般会計の伸び率あるいは社会保障関係の伸び率に比べてもやはり差があり過ぎると思うし、一番最後に書いてある特養老人ホームの収容人員の伸び率を見てみますと、実数はふえてきておるけれども、しかし対前年度比伸び率はやはり落ちてきておる。そうすると、なるほどここでは大臣はこれから一生懸命やりますと言われたけれども、果たしていつまで大臣をやられるのかわかりませんし、それをまともに信用してお年寄りの皆さん方に報告することができないのが非常に残念でありますが、大臣、どうですか。
  184. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私はいま正確な資料を持っておりませんが、頭の中に入っている数字では、四十六年の社会福祉施設整備費が総額でたしか八十一億だったと思うのですよ。五十三年度は五百億になっておるわけでございますから、毎年の伸び率をいろいろ取り上げられまして、一時四〇%までいったのに最近は二十数%じゃないかとおっしゃいますが、これは相当の伸びを示しているわけでございます。私はもちろんいつまで厚生大臣をやっているかわからぬと言われればそのとおりでございます。しかし、やっている間に、先ほど申し上げたような府県や市町村と連絡をとりまして、おおよその見当がつくぐらいの整備計画をつくり上げてみたい。そして、それを毎年計画的に、施設整備費を重点的に、先ほど言いましたようにいまおくれている施設はどこかと言いますと、特養と重症心身児の施設、それから精薄等を含めました授産関係の施設でございますので、この施設に重点的に配分をすれば相当希望にこたえ得ることになるのじゃないか、かように考えておるわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  185. 浦井洋

    浦井委員 しつこいようでありますけれども、老人福祉はいまの間は特養ホームだと思うわけです。そして、老人問題というのはまさに国民的な課題になっておる。だから、ことしは景気対策だということで予算のつけ方も非常に物を建てていくというようなところに多く配分をされておるようでありますけれども、やはり国民の一番苦しんで、一番求めておるところに施策の具体的な矢が向くという形を強く私は要求をしたいわけであります。  さらに言うならば、これは先ほどから申し上げているように、特養ホームがたくさん設けられて、それがきちんと整備されたならば、本人さんであるとか家族であるとか、あるいは福祉事務所、病院の方も非常に助かる、それぞれの仕事に励むことができる。そうなれば、これは民生安定ですよね。いま求められておるところの消費の拡大にもつながるわけなんです。それだけでなしに、特養ホームを整備することによって地方に仕事を発注できて、中小企業の仕事がふえるわけなんです。そうすると、雇用の上でも、労働大臣、非常にプラスになるのだ、こういうことを私は申し上げておきたいわけなんです。だから、地方にもきちんとしたかゆいところに手の届くような指導をして、いまおおよその整備計画を立てて、重点的にそういうような特養ホームを初めとしたおくれていると思われるところの整備をやりたいというふうに言われたわけでありますけれども、それだけではまだ不十分で、やはり特段の努力を私は要求をしたいわけですが、最後に決意を一言。
  186. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は先生と同じような考えで進めていくつもりでございますから、決意はもう何遍も申し上げているように、これから社会福祉施設としてはおっしゃるような、先ほど申し上げましたような施設に重点的に非常な努力を払ってまいります。  ただ、つくればいいということ、景気対策というようなことをおっしゃいましたが、私どもはそうじゃないので、その中の、これは当然経常費も含んでいきますから、そういう面で今後とも大いに決意を新たにいたしまして努力をいたしますことは、もう本当にはりきり申し上げておきます。
  187. 浦井洋

    浦井委員 それでは次に建設大臣お尋ねをしたいわけなんですけれども、いまの話を聞いていただいて、老人福祉の重要性というのはもう建設大臣もよく御承知だと思うのですけれども、具体的には公営住宅の単身入居を認めよという議論がかなり前からあるのは、これは建設大臣もよく御承知だろうと思う。  そこで、これも私、少し数字を報告をしておきたいのですけれども、つい最近の「エコノミスト」という雑誌に、政府の社会保障制度審議会の委員をやっておられる籠山京という方が論文を書いておられるわけなんです。それを見ますと、川崎市の川崎区で悉皆調査がやられておる、その生活水準であるとか居住水準について。それをずっと見ていきますと、老人夫婦の生活保護を受ける比率というのは七・五%であるわけなんです。悉皆調査です。すべての調査です。ところが、老人単身ということになりますと、老人単身の中で三〇・三%の方が生活保護を受けておられる。  今度は居住水準からいきますと、一間ふろなしのいわゆる民間木賃に住んでおられる老人夫婦が二〇・一%である、単身の老人が何と六一・六%も一問ふろなしの木賃民間に住んでおられる、こういう報告が書かれておるわけであります。  建設大臣はすでにもうよく御承知だろうと思うのですけれども、三年前の昭和五十年の八月に住宅宅地審議会がこの問題について、老人、寡婦等の中高年層から検討せよ、この公営住宅の単身入居の問題についてこういう答申を出しておるし、同じ年の十月の十八日の衆議院の本会議では、わが党の青柳議員の質問に答えて、当時の三木総理が、公営住宅の入居について「今後、老人や寡婦などの単身世帯も対象とするよう検討することにいたしたい」、こういう答弁があるわけなんですけれども、一体これがどうなっておるのか。これは私も建設委員会におったときに何度も建設省と歴代の建設大臣に聞いたわけでありますけれども、調査中であるとか検討中であるとかということでなかなからちが明かぬわけでありますけれども、櫻内建設大臣の御決意をひとつ賜っておきたいと思うわけです。
  188. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 決意を申し上げる前に、私がいまの問題をどのように受けとめ、あるいはいろいろ報告を聞いているかということを御参考に申し上げておきたいと思いまするが、この答申を受けて実態調査をしよう、それから学識経験者の御検討を願おう、それぞれ措置をしたことは御承知だと思うのです。そこで、現在、東京都中野区及び広島市に委託して、単身の老人及び身障者の住宅状況等の調査を実施しておる、こういうことであります。それから、学識経験者の御検討を願っておるのは、日本住宅協会に委託してやっておる、そういうような状況下にございまして、私は就任後にこの判断をすべき十分な調査結果とかあるいはこの研究の模様とか、そういうものをまだ受けておらないわけであります。  そこで、ただいま五十年八月に答申があったじゃないか、またその年の十月に国会での三木首相の「検討する」という答弁があったじゃないか、それはそのように受けとめるわけでありまするが、しかし、その後行われておることはただいま私が申し上げたようなことでございまして、いまここでその結論を言うとか、決意を言うとか、これはなかなか問題だと思うのであります。
  189. 浦井洋

    浦井委員 それでしたら、建設大臣、これは歴代の建設大臣と同じことでありまして、わざわざここで取り上げる意義が私は非常に薄くなったというふうに一面思うわけであります。  こういう話がある。これも一つの具体的な例でありますけれども、七十四歳の女性、四畳半の一問を借りておるけれども、家主が火が危ないということでガスの元栓が切られておる。大体お年寄りの賃貸の場合には、火の始末が悪いということを理由にして民間木賃を断られるケースが非常に多いわけであります。この場合もガスの元栓が切られておる。炊事のときだけ電熱器の使用が認められておる。しかし、行く先がないので家主に文句を言うこともできずに、逆に毎日廊下の掃除も押しつけられておる。暖房がないので、冬は日当たりの悪い部屋でふるえながら座り込んでじっとしておるので、指は凍傷、しもやけで赤くはれ上がっておるし、毎日の食費が二百五十円で、でき合いのものを買ってきてそれを三等分してかじっておる。これが決して誇張でなしに、いまのこういう立場に置かれておるひとり暮らし老人の実態だというふうに私は思うわけでありますけれども大臣のそういう答弁では納得がいかない。年老いて、それでもなおかつ何とか一人で暮らしていけるというようなお年寄りに単身でも安い家賃の公営住宅を提供してあげる、こういうことをやることが私はいまの政治経済情勢の中で建設大臣のやるべき非常に大事な仕事だと思う。調査中であるとかあるいはまだ申し上げる段階でないというようなことでなしに、ひとつ法改正を目指して早急にがんばりますというような約束でも大臣できないですか。
  190. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私がお答えしておるのは、調査あるいは研究をしておるそれらの結果が出ておらない、だから私として判断がなかなかできにくい、こういうことを申し上げたわけでありますが、ただいまは七十四歳の女性の方の例を取り上げられてのお尋ねでございます。  この御質問を聞いておりますと、いまの公営住宅法からいきまして、これはなかなか、一層むずかしいという気がするのですね。なぜかといいますと、公営住宅にお入り願うということになりますれば、いまのような実態に即応する、対応する姿勢がなくて、ただお入り願いましょうか、そういうものではないと思うのですね。やはり管理体制というものが十分でなければならぬし、法律改正をして公営住宅に入れる、それはそれだけの責任を持たなければならないことだと思うのです。そういうことでありますから、したがっていまの実態調査とか研究というものがわれわれは非常に必要である。またいま御指摘の点は、先ほどからるる御意見を交えて御質問があって、厚生大臣お答えになっておって、それにはそれに対応すべき施策も別途あるのじゃないか、こういう気もいたしますから、そこでいまにわかに決意はどうかと言われてもちょっと困ると申し上げておる。
  191. 浦井洋

    浦井委員 それは、建設大臣の答弁は在来よりも後退をしておりますよ。私が例として挙げたのは、火を出すから危ないほど日常の動作がいわゆるぼけてきた人ではなしに、老人一般がそうだからというふうに、民間木賃の家主がそういうふうに老人にしむけておるわけなんです。だからそういう人たちを救うということ、これが当面はやはり単身入居ではないか、こういうことを私は主張しておるわけなんで、変な言いがかりで大臣、後退した答弁をやってもらうとこれはバッテンであります。これはもう答弁は要りませんから、私は時間がないから次に進みますけれども大臣としては法改正を目指してがんばるということを要求をしておきたいわけであります。  そこで、次に医療の問題に移りたいと思うわけでありますけれども、これはよく厚生大臣は御承知だと思うのですけれども、二月の一日に医療費が改定された。その医療費の改定の名目としては、いわゆる保険外負担――室料、差額ベッドであるとかあるいは付添看護料、こういうものを解消するために医療費を一つは引き上げたんだということになっておるわけでありますが、それに伴って保険局長名で通達が一月の二十八日に出た。いままでの経過から見て、私も通達を持ってきておりますけれども、こういう一片の通達だけで――差額ベッドや付添看護がいま非常に国民の悩みの種になっておる、健康保険を持っておっても入院をすれば健康保険のほかにお金がかかるのだという一つのこれは国民の悩みの種、苦痛の種になっておる、これが一片の通達で本当に改善されるのか、ひとつ大臣意見を聞いておきたい。
  192. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 一片の通牒で完全に解消するということを思って通牒を出しておるわけじゃありませんが、そう簡単ではないことは百も承知でございますけれども、しかし、やはり完全看護をやっているところは、患者の希望しないような付き添いの強要をするなりすればそういうような施設は完全看護の取り消し等もやるぞという姿勢を示しまして、これはひとつ付き添いの問題は解決をいたしたい。何といいますか、相当決意を新たにした通牒でございますから、私はこの問題については相当前進をしていくものだと思いますし、医療機関側でもこれに協力をする。しかも個々に私ども懇談をいたしております。一片の通牒だけで済ましているわけでありませんで、それぞれの医療機関別に懇談をいたしまして、このゆえない差額徴収というものが正当の理由なくして行われないように必ずひとつ実効を上げてまいりたい、かように考えます。  ただ付き添いの問題につきましては、御承知のとおりいろいろな問題があるわけでございます。これはたとえば私なら私が家族を入院させて、完全看護のところだからそれじゃ付き添いを全然自分が希望しないかというと、そうはいかない点があります。私が常時国会に出入りしたり役所で仕事をしたりして、また家内も忙しいという場合、年寄りを抱えているような場合に、もう一人入院した場合には、連絡その他等もございますから、いわゆる療養の世話以外の要求によって自分が希望してつけさせてもらうということは実態としてあり得るわけでございますから、そういう面はこれはひとつ認めていかなければならぬだろう。しかし完全看護の病院で、そういう患者の希望もないのに付き添いをつけてくださいよ、つけなければ困りますよというような病院のあり方はこれから私は正していけるものと思っております。  差額ベッドにつきましても、大部屋についてはこれは取らないように厳重に指導いたしますから、この点も必ず私は逐次改善をされまして、被保険者の負担の軽減に役立つ、かように考えております。
  193. 浦井洋

    浦井委員 まあ、必ず逐次というような表現でありますけれども、私はきょうは付き添い看護の問題は少しおいでおいで、差額の問題についてお聞きをしたいわけなんですが、昭和四十九年の三月に、今度より少し緩いのか重いのか知りませんが、通達が出されたわけなんです。その結果、効果があったのですか、どうですか、厚生省。
  194. 八木哲夫

    ○八木政府委員 お答え申し上げます。  差額ベッドの割合につきましては、私ども、国立病院につきましては一〇%、それから、民間病院につきましては二〇%という基準を設け、さらに三人部屋以上の大部屋からは取らないようにという指導を四十九年にいたしたわけでございます。  そこで、四十九年の差額ベッドの比率で申し上げますと、一九・二%、それから五十年は一八・三%、五十一年七月は一八%、五十二年七月は一七・六%ということで、逐次改善の効果はあらわれておりますけれども、やはり医療機関の経営の問題があるわけでございます。そこで、今回の診療報酬の改定の際には、相当そういう面につきましての配慮というものを設けまして、入院部門につきまして室料を上げるとか、あるいはICU、CCUの特別加算を設けるとか、手術料を上げるとか、入院分につきましては、こういうような苦しい時代の中でございますけれども、相当思い切った配慮をしたというようなことから、三人部屋以上の差額については、今後一切ないような指導を厳重に行いたいというふうに考えておる次第でございます。
  195. 浦井洋

    浦井委員 確かに、逐次改善されているという厚生省側の表現もそれはうなずけぬことはない、三年かかって一・六%減少しているわけですから。しかし逆に言えば、三年かかってやっと一・六%しか改善をされておらない。まさに遅々としたものではないかということになるわけであります。  それから、いま局長が言われた数字を分類をしてみますと、これがまたいろいろ問題がある。五十二年の七月一日現在の差額ベッドの比率でありますけれども、国立が五・五、公立が一・二、その他の公的が一七・九、医療法人が一八・三、その他の法人が二七・五、個人が二一・七、合計して一七・六、こういうことになるわけであります。これでずっと一覧をしてみますと、その他の法人二七・五というのが異常に高いわけでありますけれども、これはどういうことですか。
  196. 八木哲夫

    ○八木政府委員 確かに御指摘のように、全体は一七・六%でございます。国公立病院関係につきましてはかなり改善しているわけでございますけれども、御指摘のように、その他の法人というのは、全体が二〇%という基準を示しておるわけでございますけれども、二七・五%ということは異常に高いわけでございます。しかも、その他の法人の中で最も問題が多いのは、私立大学の付属病院でございます。私立大学の付属病院につきましては、一般の病院と異なりまして、研究とか教育とかというような特殊な役割りというのがあるにいたしましても、やはり私立大学の付属病院が相当大きいというのは問題があるのではないかということで、私ども、私立大学の付属病院につきましては、特に今後の指導について重点を置いてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  197. 浦井洋

    浦井委員 厚生省の言われることは正解でありまして、やはり私も、差額ベッドで一番問題なのは私立大学の付属病院だと思う。ベッドの八割、九割、こういうところから差額を徴収をする。だから、かなり金を持っておらなければ入院できない。一月の二十八日に通達を出して、私もその後ずっと私立大学を調べてみましたけれども、事態は一向に改善をされておらない。ひとつ、私、文部大臣に聞いておきたいわけでありますけれども、私立大学の所管はもちろん文部大臣でありますが、その私立大学の付属病院を、患者が安心をして治療を受けられるような病院にするのか、それとも大金を積まなければ私立大学の付属病院には入れないのだ、入院できないのだというようなものにするのか、文部大臣としては、一体どちらを考えておられるのですか。
  198. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 私立大学の付属病院は、やはり教育、研究を私どもは主力と考えております。しかし、それでは診療は全く重要視しないのかと言えば、それはそうではない。やはりこれは御理解いただいていると思いますが、教育、研究、診療それぞれ相絡み合っていることでございまして、文部省といたしましては、教育、研究に重点を置いて指導助言をしているわけでございますけれども、病院の経営面に絡んでまいりますような差額ベッド等のことについては、厚生省に御指導いただいているところでございます。
  199. 浦井洋

    浦井委員 厚生省の責任だということで文部大臣は逃げるわけでありますが、ひとつ具体的な例を申し上げてみたい。  これは東京女子医科大学の実態であります。ここで統計をとってみますと、心臓研究所というのですか心研、それから消化器、脳外科を合わして五百六十六床ある。その中で、室料を取っておらないベッド数が三十一床であります。五・五%。ということは、逆に九四・五%が差額ベッドであるということ。厚生省が四十九年三月に通達を出して、その中で、大学の付属病院については特殊な事情を考慮するというようなことを言っておられるわけでありますけれども、やはり全保険医療機関は二〇%以下を目指しておるわけなのです。だから、いまだに九四・五%が差額ベッドであるということは、これはもう通達の趣旨を踏みにじるのもはなはだしいと私は思う。論外だと思うわけです。その上に、さらにその内容を調べてみますと、三人以上の大部屋は取ったらいかぬということになっているわけですね。これに三百五十七床が差額ベッドになっておる。六三%。その上に、六人部屋、八人部屋で一日二千五百円を取っておるベッドが百十六床もある。六人部屋で二千円を取っておるのが七十二床ある。九人、十一人部屋で千円を取っておるのが六十床ある。差額ベッドの指導は厚生大臣でございますというようなことで文部大臣は済まされるわけですか。やはり教官の人件費であるとかあるいは学生の教育費のようなものを含めて、かなり多額の国費が注ぎ込まれておるわけなのです。そして一方では、もうここ数年新聞をにぎわしておるように、私立の医科大学に入ろうと思えば一千万円以上入学金が要るんだ、そういうようなことで、かなり世人のひんしゅく、批判を食っておるような状態であるわけなのです。これは、やはり文部大臣としても、いかに教育、研究、それに診療を合わせるんだというようなことであっても、やはり入院患者、そこで診てもらおうと思えば、保険を持っておれば無料なんだ、国民皆保険だ、そういうようなことからいって、私は、これは社会的に許されないというふうに思うわけでありますが、それは厚生大臣にお任せしておりますというようなことでは私は承知いたしません、文部大臣
  200. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 現在、東京女子医大の例をお引きになったわけでございます。その実情を私も承知をいたしました。私立の医科大学の付属病院、差額ベッドの状態は、現状、平均をいたしますと六二・八%でございます。厚生省が基準を示しておられます二〇%と比べても大変な差があるわけでございまして、現状のままでいいとは毛頭考えておりません。やはり厚生省が基準を決めて指導していただいております二〇%に近づく努力は当然しなければならぬことでございますし、なぜそんなに、六二・八%の高い差額ベッドがあるかということは、私立大学にすればいろいろ事情もあるかもしれませんけれども、それはそれとして、診療報酬の改定も行われましたこの機会に、私大側の努力を強く要請をしていこう、こういうことで厚生省自身も今月の初めに私大側と接触を持って指導をしてくださっておりますし、私大の側もそれを受けて具体的な改善策を練ろうとしているところでございますから、文部省といたしましても、文部大臣といたしましても、厚生省の指導に協力をすることは当然のことでございます。その努力を文部大臣もしてまいります。
  201. 浦井洋

    浦井委員 たとえば文部大臣として、そういう点で有名になっておる私学の付属病院の事務長クラスを集めて、ひざ詰め談判で説得をして、そして改善をさせていくというような具体的な努力をしますということをひとつここで約束してもらわなければいかぬ。
  202. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 すでに厚生省がもうそのひざ詰め談判を今月の初めに終わっております。文部大臣といたしましてはそれに全面的に協力をしていく、同じ姿勢で向かっていくというふうに御理解をいただきたいと思います。
  203. 浦井洋

    浦井委員 それでは、これはひとつ文部大臣姿勢を私は監視をしていきたいと思うわけであります。  その次の問題、もう一つ医療の問題でありますが、高額療養費の支払いの方法であります。これは厚生大臣もよく御承知だと思う。いま健康保険で一部負担を持っておる国保であるとか社保の家族の人、やはり入院でもして三万九千円以上になれば、三万九千円以上はとにもかくにも立てかえて病院の窓口に払っておかなければならぬ。そうすると、二カ月たったら三万九千円から上が返ってくる、こういうような仕組みになっておるわけでありますけれども、これが低所得者にとっては耐えられないわけだ。だから、どうしても病院へ払うときに一時どこかから融通してきたりしなければならぬし、苦労しなければならぬし、二カ月たたなければそれがもとへ返ってこない、こういうことで困っておられる。そういうような住民の要求に押されて、いまたくさんの地方自治体、市町村では貸付制度などをやっておられるわけであります。そしてさらに、貸付制度だけでなしに、ここで尋ねたい中心の問題でありますけれども、受領委任方式をやっておる自治体もぼつぼつ出てきておるわけでありますが、まず厚生省に、貸付制度などなどをやっておる自治体がどれくらいで、受領委任方式をやっておる自治体がどれくらいあるのか、ちょっと御報告をしていただきたい。
  204. 八木哲夫

    ○八木政府委員 市町村におきまして、現在貸し付け等の措置を行っております市町村数といたしましては五百三十二市町村がございます。それから受領委任方式をとっております市町村につきましては四市でございます。
  205. 浦井洋

    浦井委員 これはやはり必要は発明の母といいまして、国の制度がまずいからこうなっておるわけでありますけれども、自治体としては苦労をして受領委任方式をやっておるということで、これは私はよいことだと思う。これをやれば、どんなに高くかかる自己負担分であっても、三万九千円以上は自分が直接病院に支払わなくてもよいということになるわけであります。  そこで、私ども共産党は、高額療養費が発足したときからこれは現物給付にすべきだというふうに言っておるわけなんです。これはこれから抜本的改革の話が出てきたときに問題になるわけでありますが、ここで質問をしたいのは、一つは、受領委任方式というのを昨年の十月の三十日付で厚生省はとにもかくにも認めておるわけです。だからその認めておるのをなぜ国保だけに認めたのかという点をまず第一点として質問をしておきたい。
  206. 八木哲夫

    ○八木政府委員 受領委任方式につきましては、お医者さんが本人にかわりまして受領委任するということでございますので、医療機関という立場から申しますと相当事務的にも大変でございます。それから三万九千円というのをどこで線を引くかということになりますと、やはり国保の場合には地元の住民との結びつきというものが非常にあるというようなこと、それからさらにある程度地域を限ったというような問題がある、あるいは地元の医療機関との協力関係ができるというようなことで、例外的にこの方式を認めているわけでございまして、ほかの保険の場合には国保というような地域性に着目しますよりか、むしろ被保除者のいろいろな範囲になる、あるいは他の市町村にも影響する、あるいは都道府県にもなるというようなことから、現実問題としてはなかなかむずかしいというふうに考えております。
  207. 浦井洋

    浦井委員 私はこれは要求として申し上げておきたいわけなんですが、市町村でやっている受領委任方式というのは、これによって非常に助かっておる家庭が多いわけでありますから、低所得者という点でいけば、これは国保だけにかかわらず日雇い健康保険もあるし社会保険もあるわけでありますから、すべからく私は厚生大臣に要望したいわけでありますが、やはり受領委任方式というやり方を当面社保にも認めていくべきではないか、私はそういう方向で要望をしておきたいわけであります。金もこれ以上要らぬ、あるいは人手もいま以上には要らぬわけでありますから、やる気があればやれるわけなので、ひとつ大臣、やるという方向でお約束願いたいと思う。
  208. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 遺憾ながら余り満足のいくお答えができないのであります。これはなぜかといいますと、高額医療の問題はどうも現物給付にはなかなかなじまないわけでございまして、それはいま局長が御説明申し上げましたように、特に社会保険関係、国保以外の被用者保険になりますと必ずしも市町村だけではないわけでございます。いろんな通勤体制、勤務体制等から見ますと。そこで、一体どこで押さえ得るかということがなかなか把握できないのでありまして、どうもこの点だけはまだ――国保は先ほど言いましたように地域的なつながりも非常に深いし、そういう意味である程度実現可能なものですから、療養担当者との問の理解、協力を得てやっていくことについては厚生省は認めておりますけれども、現物給付になるような形でこれを社会保険に適用するような、いわゆる立てかえ方式といいますか受領委任方式は、しばらくはひとつ勘弁していただきたいのです。根本改正のときに高額医療をどういうふうにするかということについては目下検討中でございます。
  209. 浦井洋

    浦井委員 私たちは現物給付を要求するわけでありますが、いまは現物給付をもろに要求しているわけではないわけなんです。必要から発明された方式であるその受領委任方式というものを国保でやれるのなら社保でもやりなさい、金も物もこれ以上かからぬわけなんだから、このことを私はは要求をしておるわけなんです。これはぜひやる方向で検討していただきたいということを申し上げて、厚生省関係の質問を終わりたいと思いましす。大臣、よろしいですね。  そこで、次に雇用問題でありますけれども、雇用の問題でやはりいま一番大事な問題というのはこういうことなんです。これは労働大臣とそれから通産大臣お尋ねをするわけでありますけれども、鉄鋼の大手五社が三月の末までに高炉五十九基のうち二十基の火を消して生産を縮小する、これに合わして新日鉄などの各企業は、三月から余剰人員を対象にして雇用保険法による職業訓練休暇を実施する、このことを計画をしておる。一方労働省では、すでに二月一日付で景気変動等雇用調整事業の業種指定に高炉製鉄業であるとかあるいは同製鉄関連業を対象業種に指定をしておるわけでありますが、まず、労働大臣お尋ねしたい。これは非常に現下の日本の雇用失業問題にとっては大きな影響を及ぼす大問題でありますが、この問題についての事情についてどういうように把握をしておられるのか、労働大臣からお聞きをしておきたいと思います。
  210. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のように大変長い不況と、特に製鉄関係では輸出が制約を受ける、こういったことでやむを得ず減産体制に移らざるを得ない、こういったことでございまして、この二月の一日から七月三十一日までとりあえず高炉製鉄業については景気変動に伴う雇用調整事業の支給対象にいたしました。そして現在事務を進めておりまして、これは休業でなくて訓練支給、こういったことでやるわけでございまして、どの程度の金額になるかといった問題は、今後の生産の推移を見て結論がはっきりすると思います。
  211. 浦井洋

    浦井委員 河本通産大臣にひとつお聞きしたいのですけれどもわが国の粗鋼の生産能力年間約一億四千万トンだというふうに言われておる。そして需給ギャップが三〇%あるという。こういうような、いま労働大臣の言われたような、いま労働大臣の言われたような高炉の休止などを含めた鉄鋼の減産体制というのは、通産大臣としていつまで続くという見通しを持っておられるのか、いつごろ回復するという見通しを持っておられるのか。新聞報道によりますと、五十三年度の生産量というのは、粗鋼にして一億二百万トンぐらいだというふうなことが言われて、やはり三〇%需給ギャップは続くのだという新聞報道も見るわけでありますけれども政府の要路におられる通産大臣にひとつ見通しを聞いておきたいと思います。
  212. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ここ数年の鉄の生産の動きを見ておりますと、史上最高の水準にございましたのは御案内のように昭和四十八年の第三・四半期であります。年率に換算をいたしまして一億二千八百万トンという水準でございました。その後、オイルショックによりまして激減をいたしました。昭和五十年の初めには一億トン水準まで落ち込んでしまったのでありますが、昭和五十年度、第一次から第四次にわたる景気対策を行いました結果、だんだんと回復をいたしまして、昭和五十一年の第三・四半期には再び一億一千五百万トンという水準まで回復をしたのであります。ところが昨年の景気の冷え込みによりましてまた落ち込んでまいりまして、残念ながら現在の水準は、年率に直しまして約九千四百万トンという水準でございます。いま一億二百万トンということをお述べになりましたが、これは一年間を通じた場合は合計で一億二百万トンになります。しかし、現在の生産水準は九千四百万トンという、ここ数年間における最低の水準に落ち込んでおるということでございます。  そこで、五十三年度には積極的な経済政策を実行していくことが決まりましたので、今後ある程度は順次回復すると考えておりますし、また回復しなければならぬと思いますが、それではどういう順序でいつごろに回復するかということにつきましては、いまのところ残念ながらはっきりした数字を申し上げる段階ではございません。
  213. 浦井洋

    浦井委員 時間がありませんから私から言うておきますけれども、いま大手鉄鋼五社で、労働省からいただいた資料によると、現在、四月まで月間四千百三十人の訓練調整給付金を受ける人数が出てくる。そういうことですね。これを私問題にしたいのですけれども、四千百三十人という膨大な訓練つきの一時帰休ですよね。これが出てまいりますと、私が一番恐れるのは、その人たちは雇用関係があるわけなんです。しかし十八万鉄鋼労働者、大手五社で十八万、その関連下請が十万八千人もある。これは河本通産大臣もよく御承知だと思うのですけれども、その関連の労働者が、企業倒産であるとか、あるいは人員縮小というようなことで首を切られないかという心配があるわけであります。  新日鉄広畑には本工が九千百人、それで五千人の下請労働者が働いておる。しかも非常に低賃金で過重労働で働いておる。本工の給料が平均十六万七千三十五円である。社外工は十二万九千四百二円である。残業は本工が月に七時間であるのに、社外工は残業は月に二十七時間というようなことで、その点首切りが起こらぬかということで非常に心配をしておるわけであります。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで私が、実は私のところで直接電話をして、新日鉄広畑の一次下請の十二社、これはかなり大きな企業であります。その抱えておる労働者の数が二千五百人、この一次下請の十二の会社の総務部長またはその代理にいろいろ話を電話で聞いて、アンケートをとってみました。それをちょっと紹介をしておきたいと思う。  この鉄鋼大手の生産縮小によって、果たしてあなたのところの仕事量の変化はあるのかというふうに聞きますと、仕事の性質上変化なしというところが三社であります。新日鉄以外の仕事もあるので影響がないというのが二社であります。大幅に仕事が減少して、もう困っておるのだというのが五社であります。十二社のうち五社。  それから次の質問は、仕事が減ることに対する対策はどうするんだ。再下請に休んでもらっておるというのがすでに二社であります。残業を減らしたり休日をふやしたりしておるというのが五社であります。本来の仕事以外の仕事を探してやりくりしておるというのが二社であります。  いま労働大臣、問題になっております雇用安定資金制度、この利用についてどうだというふうに聞いてみますと、制度の利用を検討しているというのが二社であります。この雇用安定資金制度は利用しないというのが何と三社もあるわけであります。  そうしたら雇用安定資金制度をなぜ利用しないのかというふうに聞いてみると、いま通産大臣が言われたように、五カ月後に仕事がある見通しが全然立っておらぬから利用しようにも利用しようがないというのが一つであります。それから、企業の賃金負担が二分の一、あるいは三百人以下であれば三分の一自分のところで負担をしなければならぬ、休んでおる労働者にそれだけの賃金を出す余裕がないんだというのが理由の二つ目であります。三番目には、訓練休暇、訓練調整給付金ですね、これをやろうとしても、企業には設備も体制もないと言う。  だから、それならあなたのところで当面政府に何を要望したいのですかと聞いたら、二次、三次の下請に地元の公共事業をやらしてほしい。あるいは首切りをしなくともよいように、何でもよいから仕事をくれ。  これが新日鉄広畑の第一次の下請の十二社の総務部長の答えであります。労働大臣よう聞いておっていただきたいと思う。この結果を見てみてもわかるように、第一次の下請企業でさえも雇用安定資金の利用はなかなかできないということがここではっきりしておる。結局、資本力があって企業内の雇用調整が可能な大企業は、国から多額の助成を受けて、そして一応は解雇の防止ができるかもわからぬ。しかし、中小企業では、一次下請でさえもそれは不可能だ、困難だ、こういうことであります。  そこで、私は労働大臣と通産大臣お尋ねをしたいわけでありますけれども、いま新日鉄関連の下請五千人の労働者の話をしましたが、いまこういう生産縮小をやろうとしておる大手鉄鋼の関連下請の労働者の雇用を守るために、政府として、新日鉄などに対して、下請事業主と十分に相談に乗って、そこから解雇を出さないように、こういうような指導をやっていただきたいというふうに思うわけでありますけれども、まず労働大臣お尋ねをしておきたいと思います。
  214. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく製鉄関係には、非常にすそ野が広く、関連した下請、外注、こういったものがあるわけですから、それが減産体制に入ることによって雇用面において重大な影響を受けるのもまたやむを得ない事実でございます。それに対しましては、もうすでに御指摘のごとく雇用安定資金制度を活用し、これが業種指定にはできるだけこれに関連した企業を対象にする、これが第一段でございまして、そして訓練給付金制度についても、とりあえず半年でありますけれども、また必要によって半年追加の延長もできるという、こういったこともございます。同時に、やはりこれからの日本の産業、経済社会の方向というのは新しく雇用をつくり出すという、こういった配慮もしなければならない。特に、製鉄関係で離職のやむなきに至る人たちというのは中高年齢層でございますから、この中高年齢層の雇用対策としては、これを受け入れる事業主に対して助成をしていくという新しい雇用政策を打ち出しまして、そして民間の力を活用しながら新しい雇用へひとつつながるように配慮をする。それと、御案内の失業吸収率制度、法の定める失業者吸収率制度を活用いたしまして、特に失業者の多発地帯、造船業あたりのある地帯はそうですけれども、その吸収率制度を活用してこれが雇用の確保を図る、こういったことを考えておる次第であります。
  215. 浦井洋

    浦井委員 私の言ったことに端的に答えていただきたいのであります。新日鉄などに、下請事業主と十分に相談に乗って、その下請企業から解雇を出さないように、そういうふうに労働省指導してくれ、こういうふうに私は質問をしておるわけなんです。その次の質問の答弁をいま言われておるわけなんです。
  216. 藤井勝志

    藤井国務大臣 安定資金制度の活用を十二分にやるように親企業に対して行政指導をやっていく、こういったことであります。
  217. 浦井洋

    浦井委員 通産大臣に同様の質問でありますが、通産行政の立場からもひとつ努力をしていただきたいと思うのですが、どうですか。
  218. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 一つは景気の回復によりまして操業率を高めるということでありますが、しかし、現時点ではどうしても三分の一の溶鉱炉の火が消えておるという状態でございますから、いま下請関係十万八千人というお話でございましたが、これは調査の方法がいろいろございまして、通産省の調査では大体十四万人という数字になっております。しかし、いずれにいたしましても、現時点ではこの十四万人に対しまして相当大きな雇用問題の影響が出ておりますので、高炉メーカー五社に対しましては、雇用調整事業を進める場合には十二分に配慮するように指導をいたします。
  219. 浦井洋

    浦井委員 私どもは、下請の中小企業が一時休業なんかを行うときには、元請が休業中の下請労働者の賃金についても肩がわりするという措置を前から要求しておるわけなんです。だから、ここで言うのはそこまではいかないけれども、改めて政府に対して要望しておるのは、元請の新日鉄そのものから首切りを出さないようにするということはもちろんだけれども関連の下請企業の雇用も、政府が元請を指導して、全面的に雇用を守るように積極的に努力せい、こういうことなんですね。だからもう一遍、通産行政の立場からもうちょっと的確にお答え願いたいと思う。
  220. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 雇用調整事業の対象に親企業がなるという場合も当然ありますが、そういう場合は非常に不景気で仕事がなくなるということでありますから、下請に対しても相当大きな影響が出ることは当然であります。そういう場合にも下請に対して適切な協力指導をするように、こういう行政指導をしていきたい、こういうことを申し上げたわけであります。
  221. 浦井洋

    浦井委員 失業問題について、労働大臣は私のこれから質問をすることをすでに答えられたわけでありますけれども、いま政府のやっておる雇用保険法による広域延長給付という制度があるわけですが、これが一向に役に立っておらないわけです。ちょっと労働省にお尋ねしますけれども、去年の九月現在で、広域延長給付に指定されておる地域というのは職安単位で何管内地域あるのか、そこで受給者が何人あるのかということを数字だけ一遍答えていただきたいと思うのです。
  222. 細野正

    ○細野政府委員 お尋ねがございました昭和五十二年の九月現在で、雇用保険の広域延長給付の対象地域となっておりますものは、二十七公共職業安定所の管轄区域でございます。  それから、現在その受給者の数がどのくらいあるのか、こういうお尋ねでございましたが、一般的に広域紹介の対象になっておりますものが約一万一千人ほどございますけれども、この中で、いわゆる地域の指定外から戻ってきている、そういう人はなじみませんので、それを除いた残りの人ほとんどが所定給付内に就職しておられる。したがいまして、いまお尋ねの九月だけをとりますと受給者は一人、それから五十一年度においては十四名、こういう状況でございます。
  223. 浦井洋

    浦井委員 労働大臣、聞いていただいたと思うのですけれども、いまある制度の広域延長給付がほとんど作動しておらない。失業者の生活保護、生活保障として役に立っておらない。ところが一方では、これは大臣もよく御承知のように、完全失業者が百十万人になる、有効求人倍率が〇・五前後になるということ。しかも私が言いたいのは、地域的なばらつきがあるということです。有効求人倍率を比べてみますと、沖繩が〇・〇七六、ということは千人の求職者に対して求人はたったの七十六人ということなんです。高知が〇・二一、百人の求職者に対して求人が二十一人、同じく青森が〇・六、秋田が〇・二八。だから、こういうところに広域延長給付があるではないか、それなら広域延長給付はどうなのかというと、いま細野職安局長が言われたように、九月段階で受給者が一人だというようなことで、作動しておらないわけなんで、私が要求をしたいのは、その地域で求職活動をする失業者にも、失業給付の給付期間を延長するようないわば地域延長制度をつくれ、こういうことであります。いま職安局長言われたように、現在の制度では、指定地域内の保険受給者が他の府県に出ていって就職活動するときに限って適用されるわけでありますから、九月でたった全国で一人ということになるので、やはりこれは地域延長制度というものをつくらなければならぬというのが私の意見であり、要求であるわけでありますが、大臣どうですか。
  224. 藤井勝志

    藤井国務大臣 地域延長制度という考え方は、かつて失業救済事業、これが改正をされまして、再就職の促進、こういう線に雇用政策を進めておるわれわれといたしましては、地域を延長することによってそこに失業者が滞留してしまう、こういった過去の苦い経験がございますから、この地域内での延長ということについては適当でない、このように考えておる次第であります。
  225. 浦井洋

    浦井委員 それは答えにもならぬし、また間違っておるわけなんですよ。それなら、九州で失業した人が東京や大阪に出てきて、前みたいに雇用にありつけるか。有効求人倍率を見てみても、そうではないわけなんです。だから、いま緊急にやらなければならぬのは、失業した地域でそういう制度もつくり、そこで雇用をつくり出していく、こういうことが大事なんだ。だから、地域延長給付をつくれ、そういう制度をつくれ、こういうふうに私は主張をしておるわけなんです。これが第一点。  それから、もう一ついま必要なことは、そういうような失業者が多発しておるところに、先ほども言いましたように、新しい雇用をつくり出すことなんです。そのためには、失業給付を延長するとともに、政府みずからが失業者に就労の機会を保障することなんです。民間任せにするのではなしに、それも大事だけれども。だから、その一つは、もう日雇い労働者の皆さん方がいつも運動されておるように、中高年雇用促進法の附則二条、これを撤廃して、いまの緊急失業対策法をもっと拡大する道を、まず政府みずからの手によって切り開かなければいかぬと思うが、どうですか。
  226. 藤井勝志

    藤井国務大臣 当面の厳しい雇用情勢に対応いたしまして、政府は、御案内のように、公共事業を大きく伸ばしていくといういわゆる十五カ月予算におきまして、公共事業に失業者を吸収するというこの制度をフルに活用し、その吸収制度によって失業対策をやるということは、現在、地域を指定するやり方も、いままで一年に一回でありましたけれども、これからは、弾力的に、機動的にやることによって、公共事業への失業者の吸収ということで対応し、片や、先ほど申しましたような、中高年齢者に対してこれを雇い入れる事業主に助成をしていくという新しい制度もこれに加える、こういうことによって対応していきたい、このように思います。
  227. 浦井洋

    浦井委員 大臣、わかってないわけですよ。一々反論するのはあれですが、公共事業をやる、生活基盤、生活関連の公共事業も必要ですよ。しかし、公共事業をやれば、そこへ失業者が吸収できるかといったら、いまあるそこの民間企業の労働者を追い出すようなかっこうになるわけですね。それもやらなければならぬけれども、私が言っているのは、国なり自治体なりが、みずから新しい失対事業みたいなものを起こしていく、こういうことであって、そのきっかけが中高年法の附則二条の撤廃なんだということを言うておるわけなんですから、ひとつじっくりと後でかみ分けていただいて、対策を考えていただきたいと思います。  最後に、だからそういう意味で、国がまずみずから雇用をつくり出すと同時に、自治体もつくり出さなければならぬ。それにはやはり国が財政援助をしなければならぬ。現在の失業対策事業では、これはかなり役には立っておるけれども、まだまだ幅が狭いわけなんです。いろいろな生活基盤の整備であるとかあるいは医療、福祉サービスの仕事、こういうところに国が援助をして、自治体が仕事をやって失業者の雇用をふやしていくことは可能なんだ、それをやりなさいということを私は最後に強調いたしまして、労働大臣の答弁は要りませんから、私の質問を終わります。
  228. 中野四郎

    中野委員長 これにて浦井君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  229. 宮地正介

    宮地委員 初めに、本日正午、日中長期貿易取り決めが北京で正式調印されました。この問題につきまして、今後政府といたしましてどのように取り組んでいくか、通産大臣にお伺いしたいと思います。
  230. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 本日、現地時間十一時、日本時間で十二時、かねての懸案でございました日中の長期経済協定が調印を終了したわけでございます。  私は、日中の今回の長期協定というものは、日中間の今後の経済関係、貿易関係に非常に大きな影響を及ぼすだろうと思っております。飛躍的に経済関係と貿易関係が拡大される、このように確信をいたしております。日本側は民間が中心の協定でありますので、政府といたしましては側面的に、この協定が円滑に実施されるように、かつまた、将来拡大できるような方向で、積極的に支援をしていきたいと考えております。
  231. 宮地正介

    宮地委員 また昨日、福田総理は、日本記者クラブにおきまして五十四年度の経済見通し、これにつきまして、七%に近い六%台の成長と、大変に強気の発言をされております。五十三年度の七%成長につきましても、国民の間では大変に危惧をされているわけでございますが、この段階においてこの強気の発言、これにつきまして、特に経済運営のかなめでございます経企庁といたしまして、この福田発言に対しましてどのようにお考えになるか、長官の御見解を伺いたいと思います。
  232. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣から直接に実はお話を承っておりませんので、ニュアンスはわかりませんけれども、大所高所の立場からそのような政策意思を持ってわが国経済の運営に当たられるということを言われたものと考えております。  もう少し具体的に、私どもの方の作業との関連で申し上げますと、先般御報告をいたしましたように、昭和五十年代前期計画の見直しの試算をいたしましたときに、五十年から五十五年までの平均の実質成長率は大体六・三%であろうというふうに申し上げております。すでに五十一が五・七、五十二が五・三でございますので、五十三を七といたしますと、あと五十四、五と二年残りますが、六・三で平均ができ上がると考えますと、五十四あたりはやはり七%に近い六%台ということに、計算をいたしてまいりましてもそうなりますので、総理の御発言のニュアンスは直接伺っておりませんけれども、私どもの試算から言いましてもそのような近い答えは出るように存じます。
  233. 宮地正介

    宮地委員 ただいまの問題につきまして、基本的にいわゆる七%に近い経済成長ということを総理が御発言になったということは、五十三、五十四年に当たりまして、やはり相当な強い景気刺激策といいますか、そういう路線の延長線上に立った経済運営が今後政府で行われる、このように解したいのでございますが、長官としてはいかがでございましょう。
  234. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般ごらんいただきました財政試算によりましても、いろいろな要素をいろいろに変えて計算をしましたいろいろな計算例をお目にかけたわけでございますが、政府の固定資本形成につきましては一貫してどの試算でも同じ数字を入れております。これでもおわかりいただけますように、基本的にはただいま御指摘のような姿勢であると御了解をいただきたいと存じます。
  235. 宮地正介

    宮地委員 そこで私は、本日の本題に移りたいと思います。  最近、建設資材の値上がりが大変急速に高まってきているわけでございます。特にセメント、生コン、小形棒といった製品につきましては、通産省からいただいた価格動向のデータによりましても、セメントにおきましては、いわゆる標準でございますが、昨年の八月以来異常な高値で、現在は一万五百円から一万一千円前後と言われております。生コンにいたしましても、昨年に比べまして多いところで四〇%ぐらい、約一万七百円、一立米。小形棒にいたしましては昨年の七月が五万五百円でございましたのが、いまではトン当たり五万三千五百円。大変政府の景気刺激予算あるいは昨年来の第一次補正、第二次補正ということで公共事業を中心に景気の刺激策に手を打ってまいりました。そういう中におきまして、現在のこのいわゆる建設資材の値上げりというものが、今後あらゆる分野の値上げの呼び水あるいは引き金になってはならないと思います。  そういう意味合いにおきまして、この建設資材の値上がりにつきまして、まず経企庁長官にお伺いいたしますが、国民生活を守るという立場から、この傾向に対してどのように御判断なされているか伺いたいと思います。
  236. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、セメント、生コン、丸棒等々、昨年の夏ごろに比べますと市況がかなり回復をしておりますと申しますか、高騰をいたしておりまして、いわゆる政府の公共投資主導の経済運営を反映しつつあると存ぜられます。  ただ御承知のように、セメントについて申しますと、本来生産能力が一億トン以上あると存じますし、丸棒につきましても長い間コストを割るような価格が続いておりまして、かなりの操業短縮をいたしておるといったような事実がございます。生コンにつきましては、一部地域的な協同組合といったようなものができまして、御承知のように、これは運転時間に制約のあるものでございますので、地域的に多少問題があるとは聞いておりますけれども、全般の問題ではないように存じております。したがいまして、先行きをひどく心配しておるわけではございませんけれども、しかし物価担当官会議におきまして、すでにこのような問題に対処いたしますための部会を設けまして、関係各省と、いわゆる便乗と言われるようなことのございませんように、十分に注意をするように、実はもうそのような部会を設けて検討いたしつつございます。
  237. 宮地正介

    宮地委員 さらに、建設大臣にお伺いしたいのですが、五十三年度におきましては住宅建設を四十五尺住宅、道路を中心にいたしまして、今後の公共事業が刺激をするように、その一番重要なかなめにあるわけでございますが、このような建設資材の高騰が、たとえば住宅建設を促進するといいましても、セメントやその他二次製品などが上がってまいりますと、結局は国民の底辺におきまして、たとえば最近、分譲など私の住んでおります埼玉などでは、坪当たり建築コストが三十万円ぐらいと言われております。こういうものが値上がりをしてまいりますと、国民は、結果的になかなか住宅の供給にブレーキをかけられる。また地方自治体におきましても、御存じのように設計単価の見直しなどをしなくてはならない。私はまず建設大臣に、そういうような国民の生活、住宅、道路、こういった問題に対して非常な建設資材の値上がりというのが大きな影響を与えてくると思いますが、その点について、大臣としてはどのような御見解を持っておられるか伺いたいと思います。
  238. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 大変大事な点だと思います。いま経済企画庁長官がお答えしたように、建設省はちょうど同じような気持ちでこの資材類の価格高騰につきまして警戒をしておるわけであります。十分監視をしていかなければならない。地域的に、時期的に偏在してもいけない。将来におきまして、しばしば申し上げましたように、建設省自体の対策本部、あるいは各地建におけるそれぞれ関係の向きとの横の連絡会議でこれ努めてやっておるわけでございまするが、またわれわれとしてできる隘路は打開したいと努めておりまするが、お示しのように、すでにある程度の値上がりを来しておる。私はこの値上がりにつきまして、昨年あたり不況で非常に冷え切っておった、したがってある水準まではがまんができる面もないか、しかしそれ以上になればこれは大変であるということで、資材の担当である通産省の方にもそのことをお願いし、独禁法に触れざる範囲の行政指導といいますか、特別な手段を講ずる前のあらゆる努力をして、この値上がりを抑えながら所期の目的を果たしたい、かように考えております。
  239. 宮地正介

    宮地委員 ただいま経企庁長官も、便乗値上げにならないように注意をしたい、建設大臣も、監視をしていくために通産省と業界の行政などにつきましてできるだけ連携をとっていきたい、またお願いをしていきたい、こういう発言がありました。  そこで、公取委員長に伺いますが、たとえばこの建設資材の値上げの問題が、いわゆる政府の公共事業を中心とした景気刺激策という名をかりて、あの昭和四十九年度当時石油ショックが起きた、あのとき石油業界などが、いわゆる便乗値上げあるいは悪徳商法と言われる、国民のひんしゅくを買ったようなやり方がありまして、大変に大きな問題になったわけであります。この政府の景気刺激策という名のもとにセメントや生コンが、独禁法に抵触するようなことがもし行われていたとしたら、これは悪徳商法である。そういうことが現実にどうなっているか、これは重大な問題であろう。国民生活に与える悪影響が大きいと私は思います。そういう点について、公取としてはどのようにお考えになっているか御見解をいただきたいと思います。
  240. 橋口收

    ○橋口政府委員 お示しがございましたように、建設関係の資材につきまして、セメント、生コン、丸棒等につきまして値上がりの傾向がございます。そういう点につきましては公正取引委員会としましても従来から関心を持ち続けておるわけでございまして、それぞれ理由があることでございますし、いまおっしゃいましたような、仮にも独占禁止法違反というような事態があれば十分調査をし、また善処すべきものというふうに考えております。
  241. 宮地正介

    宮地委員 そこで、私は具体的にこの問題について、少し関係当局にお伺いをしてまいりたいと思います。  まず第一に、セメントの業界につきましては、いま大手業者が二十二社あると言われております。昨年通産省は不況カルテルを、六月から十二月まで延長を含めまして二回行いました。第一回は五十二年の六月から九月、これは日本経済も冷えておりましたし、また在庫の面、生産量の面、価格の面を見てまいりますと、不況カルテルを認可するに至っては国民の合意を得られると私は思います。しかし第二回目の十月一日から十二月三十一日の三カ月間の延長認可につきましては、たとえば生産量につきまして調べてまいりますと、認可する九月の時点におきましては前年度比が九八・二%、ほとんどとんとんである。在庫量は七八・六%、価格は一〇二・九、やや上向きになっております。ところがこれが十月、十一月、十二月と、生産前年比でいきますと一一〇・五、一一〇・八、一二二・七、生産量は急激に上向いてきております。在庫量におきましても、前年度比八〇、七九、六八まで落ち込んでまいりました。価格は逆に一〇二から一〇七に上がってまいりました。私はこの傾向から見まして、いわゆるこの第二回目の不況カルテルの認可は少し甘かったのではないか、こういう感じがしてならないわけです。特に需給見通しについては大変な誤測があったと思うのでございます。これについて、まず通産大臣並びに認可した公取委員長から御説明をいただきたいと思います。
  242. 橋口收

    ○橋口政府委員 セメントにつきましての不況カルテルを認可いたしましたのは公正取引委員会でございますから、私の方から御説明を申し上げたいと思います。  いまお話にございましたように、第二次の不況カルテルは十月一日から十二月いっぱいでございまして、在庫率とかあるいは価格、生産量等につきましては、今日の時点で考えてみますと、まさにおっしゃるとおりであったと思います。ただ、認可をいたしましたのが九月三十日でございまして、九月現在で入手し得る材料ということになりますと、これは八月時点でございます。八月時点の価格動向あるいは生産費の状態、それから需給の状況、在庫等から見ますと、独占禁止法二十四条に定めます認可の要件に該当しているということで認可をいたしたわけでございます。  多少敷衍して申し上げますと、第一次カルテル実施後のCIF価格はほぼ横ばいで推移いたしておりました。繰り返しになりますが、八月現在のことで申し上げておるわけでございます。それから第二点といたしましては、セメント全体としての操業率は約六割弱でございまして、依然として低い水準にあったわけでございます。それから第三点といたしまして、販売価格は平均生産費を下回っておったわけでございます。そのほか各社は設備の改良により燃料原単位の引き下げ等の企業努力をしておったわけでございまして、独占禁止法に定めます不況要件に該当するということで認可をいたしたわけでございますが、ただ、いまお示しがございましたように、その当時から多少価格について上向きの傾向が出ておったわけでございますし、それから従来からセメントにつきましては、地域別に見ますと、ときに品薄というような問題がございましたから、この認可をいたします際にも、生産限度数量につきましては、第一次カルテルが千六百万トンに対しまして千八百万トンの生産限度数量に上げたわけでございます。また、認可に際しまして、地域的に品薄が生じないよう、業界全体として善処するようにセメント協会長に要望もいたしたわけでございます。  さらに、その後の経過を申し上げますと、十一月になりまして増枠が必要だ、こういう認識に立ちまして、十一月二十六日に国内向けの生産限度量を八十五万トン増枠をいたしたわけでございます。それから十二月十六日になりましてさらに四十万トンの再増枠をいたしたわけでございます。そして十二月三十一日にカルテルが終了したわけでございます。  その後になりまして当時の事態を振り返ってみますと、合わせて百二十五万トンの増枠をいたしたわけでございますが、実際の生産数量はさらにそれを突破するという状況でございまして、いまお示しがございましたように、十二月末の在庫量というものは百六十万トンまで減っておったということでございます。そういう点で考えますと、十二月二十日現在当たりですでにカルテルは事実上なくなっていた、崩壊していたということでございまして、今日の時点に立って考えますと、あるいはそのときに思い切って打ち切りの措置をとった方がよかったのではないかという多少の心残りは持っているわけでございます。
  243. 宮地正介

    宮地委員 十二月末の在庫見通しにつきましては、公取が二百万トンと踏んでいたわけじゃないですか。それが百六十二万トンにいわゆる実績が落ちたということは、これは完全に需給の見通しの誤りじゃないですか。あなたはその一番大事なことを隠していま言わなかったじゃないですか。私は、公取の認可に対しましては当然通産省の協議事項になっております。そういう立場から大臣の御見解を伺いたいと思います。
  244. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 セメントに関係する一連の御質問は、これは私は非常に大事な質問だと思うのです。昭和五十三年度の公共事業全般にも関係する大きな課題だと思います。  そこで、実は、五十二年度後半のセメントの動き等につきまして詳細に数字を挙げてお話しをするつもりでおりましたが、その内容はいま公取委員長がお述べになりました数字そのままでございますから、これは重複いたしますから省略をいたします。ただ、ここで考えなければならぬことは、今回政府が第一次補正、第二次補正、さらにかつてないような大規模な五十三年度の公共事業、これだけの仕事をやりますと、現在は悪くても数カ月先には非常によくなるという業種もあるのではないか、こう思います。でありますから、今後はそういう面にも十分配慮をいたしまして、昨年末のセメントのようなことがないように気をつけていかなければならぬと考えております。
  245. 宮地正介

    宮地委員 通産省には若干反省の色がありますけれども、公取に再度お伺いします。  二百万トンの見通しに対して百六十二万トンに終わった、この需給見通しの誤りを認めますか。
  246. 橋口收

    ○橋口政府委員 先ほど申し上げましたように、八月現在で推定をいたしまして、十二月まで二百万トンというふうに見込んだわけでございますが、各月末の在庫の状況をちょっと申し上げますと、八月末は二百五十七万一千トンでございます。九月末が二百一万トン、十月末が二百四十二万四千トン、十一月末が二百三十四万七千トンでございまして、まさに十二月で大変なさま変わりを示したわけでございまして、百六十二万二千トンになったわけでございまして、そういう点から申しますと見通しについて誤りがあったということでございます。
  247. 宮地正介

    宮地委員 傾向としてといいますか、要するに第二回目の不況カルテルについては、今後不況カルテルを組んでいく場合にも大きな反省材料にしてもらいたいと私は思います。また現実に若干の当局の甘さがあったと私は思います。  そこで具体的に、現在生コンの工業組合というのが全国に三十九団体ございます。その中に関東中央生コン工業組合というのが東京、埼玉、神奈川、千葉、一都三県を中心に組合ができております。この関東生コン工業組合につきまして、昨年十月三十一日付で通産大臣が、いわゆる調整規程を認可いたしました。これは俗に言う不況カルテルでございます。そして本年の四月三十日までという期限になっております。ところが、この認可に際しましては、当然、関東でございますから東京通産局長が権限を委譲されて決裁をしたようでございますが、その当時に大阪においても、あるいは愛知におきましても、同じような調整規程を認可してほしい、こういうお話があったようでございますが、なぜこの関東中央生コン工業組合だけを認可して、他の工業組合においては留保されたのか、その点について大臣の御見解を伺いたいと思います。
  248. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これも非常に大事な問題だと思いますので、少し詳しく申し上げます。  関東中央生コン工業組合の調整事業につきましては、昨年の十月二十四日に申請がありましたが、当該地域の生コン業者は過剰設備が存在し、稼働率が低いこと、生コン価格は、過当な受注競争により平均生産費を著しく下回り、生コン業者の経営が悪化していること等の理由によりまして、十月三十一日付で、十一月一日からいまお話しのように六カ月間の調整事業の認可を行いました。  通産省といたしましてはこの認可に際しまして、生コン製品価格の暴騰または需要の急激な増加などの事態が発生するおそれが生じた場合には調整事業を廃止する旨の指導を当該工業組合に対して行っております。  調整事業実施後の需要の動向を見ますと、五十二年十一月から本年一月までにつきましては、当初想定した調整数量の範囲におさまりましたが、二月につきましては、公共事業の前倒し発注の効果等により当初見通しよりかなりの需要増が見込まれ、特別枠の割り当て、翌月分の繰り上げにより需要に対応するとともに、当省といたしましては二月末をもって調整事業を打ち切るべく関係業界に対して指導を行っておるところでございます。
  249. 宮地正介

    宮地委員 私は、なぜ愛知と大阪、当時は滋賀も出ていたようでございますが、そちらを留保して関東を認可したのか、これが一つです。大臣は早合点しましてその先をまた言ってくれました。二月二十八日付で関東については調整事業を打ち切る、これは重大な発言だと私は思います。それは結構でございます。私たちは一日も早くというふうに願っておりました。しかし、その前段の御回答がないので、別にいじめるわけじゃございませんが、これは明快に克明にお答えいただきたいと思います。
  250. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 政府委員からお答えいたします。
  251. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  生コンの調整事業につきましては、実は関東地区が一番最初お話がまいったわけでございます。また需給状況が地区別によって非常に異なっておりまして、需給の乱れといいますか、それが関東地区が一番はなはだしかったということでございます。愛知、大阪地区につきましてもお話はあったわけでございますが、需給の見通しからいいまして、必ずしも必要でないのではなかろうかということで正式の申請には至らないまま終わったわけでございます。
  252. 宮地正介

    宮地委員 次に大きな重要な問題は、ここで大臣の御発言によりまして関東中央生コン工業組合におきましては二月末で一応打ち切る、中小企業団体法に基づく調整規程がここで取り除かれます。しかし、三月一日から依然として協同組合法は生きているわけでございます。いわゆる関東中央生コン工業組合の傘下に協同組合法に基づく協同組合というのが十七あるわけでございます。この十七の協同組合はいわゆる協同組合法で運営、運用してまいりますから、当然独禁法においては数量制限あるいは共販という、これは聞こえは悪いかもしれませんが、一般で言う言葉では価格制限、協同組合法では共販と言われているようでございます。これは現実に行われるわけでございます。言うならセメントメーカーが十二月三十一日まで不況カルテルを組んでおった。十一月、十二月はそのもとの関東中央生コン工業組合は調整規程で四月末まで数量制限ができる。さらに、その業者は工業組合員であると同時に今度は協同組合員ということになる。三番目には、協同組合法によって数量制限も価格制限も法律で認められている。でありますから、その業界に参りますと、おれたちは法律で守られておる、独禁法などこわくないんだという発言が非常に強い。  そこで、三つ目のたがのこの協同組合法に基づく協同組合である関東中央生コン傘下のもの、あるいは全国的にもまだたくさんございますが、特に埼玉県におきましては、埼玉中央生コン協同組合というのと埼玉北部生コン協同組合という二つの協同組合が関東中央生コン工業組合のもとにございます。中央の方は四十四社、五十五工場、北部の方は十社、十二工場ございます。この組合に対して今後どういうふうに通産省として行政指導を三月一日以降やっておいきになるのか。この辺は非常に大事な問題でありますので、伺いたいと思います。
  253. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまお話しのように、これは大変大事な問題でございまして、要するに二月末をもって生コン工業組合の調整事業を打ち切った場合に、共販制度は継続するではないか、そこで共販において不当な値上げや不公正な取引が行われたら一体どうするのだ、こういう御質問でございますが、通産省といたしましては、生コン製造業の経営の安定化のためには、協同組合における共販は適切な方向であると考えております。その方向で業界を指導してまいりましたが、調整事業が終了いたしましても共販制度は継続をいたします。その際、生コンの建設資材としての重要性にかんがみまして、関係ユーザー筋への説明を十分に行い、不当な値上げあるいは不公正な取引が行われないように引き続いて十分指導してまいりたいと存じます。
  254. 宮地正介

    宮地委員 公正取引委員長はどういうお考えでしょうか。
  255. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止法第二十四条の規定によりまして、協同組合の行います共同経済事業につきましては独禁止法の適用が除外をされておるわけでございます。ただ、いまお話がございましたような問題につきましては、私ども関心を持っておるわけでございますし、それから生コンにつきましては協同組合の共販事業というものが大変な勢いで広がりつつあるわけでございまして、それに関しまして販売業者とかあるいは中小の土建業者からいろいろな苦情も来ておるわけでございます。したがいまして、いま通産大臣からお答えがございましたように、原則として独占禁止法の適用はございませんけれども、ただ不公正な取引方法を用いるとか、あるいは不当に価格を引き上げる場合につきましては独占禁止法が働くわけでございますから、十分事態を監視してまいりたいというふうに考えております。
  256. 宮地正介

    宮地委員 私は、いまの独禁法第二十四条のただし書きをどうか厳重に公取はチェックをして監視をしていただきたいし、またそのような不当な価格の値上げあるいは不公正な取引がないように、通産大臣もぜひ業界を行政指導していただきたいと思うのです。  そこで、なぜ私が、こんなに心配するかといいますと、私もいろいろと地域の皆さんとお会いをしてみたりしてまいったわけでございますが、たとえば協同組合が共販事業を行うために、昨年の夏ごろは生コンが一立米八千円くらいだったのが、いま一月で大体一万五百円から七百円、約四〇%近く値上げになっておるわけでございます。通産省もつかんでいると思いますが、この二つの協同組合が実はこういうことをやっておる。大手のメーカーの債務保証、いわゆる保証人です。のもとに、大体旧契約分と言われまして、去年の古い単価で契約したセメントの量はどのくらいあるだろうと、埼玉県下でこの二つの協同組合が調べたんでしょう。三百二十万立米くらいある。それに対して、何とか昨年の夏は八千円で旧契約したからということで、一立米当たり千円組合員にバックといいますかお金を回すために、銀行から三十二億円の融資を受けている。それも将来三年間でその分は返せばいい、こういうような実態がございます。これについて通産省つかんでおられるか。
  257. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  共販事業を実施いたしますため、協同組合のみで銀行から必要資金を借り入れるということが困難である場合がございまして、関係セメント会社で債務保証を行っているということはございます。
  258. 宮地正介

    宮地委員 いまの件について、私の言った数字を挙げたこの件、具体的な問題なんだ。そんな一般論を聞いているのじゃないですよ。
  259. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いまお話しになりました数字については、私ども承知いたしております。
  260. 宮地正介

    宮地委員 この問題は実は非常に大事な問題。それはなぜかといいますと、一つは、将来の値上がりを見込んで、その値上がっていたところで利益が出たら、その段階で三年間でその分はお返ししなさいという意味が含まれているということが一つ。  もう一つは、いわゆる旧契約をしている業者とは一体どういう業者なんだ。これはほとんどが大手の建設業者です。すなわち、大手の建設業者は大体四月ごろに一年契約で結んでおりますから、八月の旧単価でもって契約をしているのはほとんどが大手の建設業者。では中小企業の建設業者はどうかと言えば、一月の時点の新契約、新単価の高いところで事業ごとに契約をしているのが実態なんです。ということは、建設大臣に後でお伺いしますが、いま大体生コン一立米当たりの設計単価というのは九千円台と言われております。新契約を結ぶ中小企業の人たちは、一立米当たり最低千五百円から千七百円、契約をしても赤字を背負い込んでしまう。いま年度末でありますから、非常に仕事が出ている。しかしその仕事だって、とるときには相当厳しい条件で中小企業の建設業者は入札を受けている。ところが生コンにおいてその契約をするときは実勢の一万五百円か七百円で契約させられる。設計単価は九千円台だ。ところが大手の大建設会社の方は夏のいわゆる旧契約の旧単価ですから、逆に一立米当たり設計単価より千円ぐらいもうかる勘定になる。それをいわゆる穴埋めするがごとくに何か大手セメントメーカーが保証人になって、生コン会社を言うなら助けているという言葉でしょう。これが実態だと私は思う。  最初に建設大臣にお伺いしますが、最近の生コンの設計単価、私は九千円台と承知しておりますが、間違いがないかどうかお伺いしたい。またそういうような実態に対しまして通産大臣、どのようにお考えになるか伺いたいと思います。
  261. 粟屋敏信

    ○粟屋政府委員 お答え申し上げます。  埼玉県の生コンの設計単価は財団法人建設物価調査会の物価欄によって積算をいたしておりますが、二月段階では九千九百五十円でございます。(宮地委員「一月は」と呼ぶ)一月、二月とも同様でございます。
  262. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昭和五十三年度の経済運営の中心は、公共事業を中心とする財政主導型の経済運営が上半期特に中心になると思います。その場合に一番大事なことは、公共事業に必要な物資の需給関係、特に価格動向だと私どもは必得ております。もし価格が計画どおり動きませんと、公共重業計画全体が円滑に遂行されなくなりますので、いまいろいろ具体的な価格を挙げて御指摘がございましたが、十分気をつけまして、今後価格面からことしの、五十三年度の公共事業がそごを来さないように、各省とよく打ち合わせをいたしまして、万全の配慮を払っていきたいと思います。
  263. 宮地正介

    宮地委員 私はもう一つの例を申し上げておきたいと思うのです。それは、いわゆる共販価格の設定に対しまして、昨年の夏から異常なといいますか、速いテンポで生コンが値上がりをしてまいりました。八千円台からいま一万円台に上がってきている。それに対しまして、中小の建設業者から見るとこれはたまったものではない。設計単価を超えて値上がりが続いておる。そこで生コンの協同組合に対して、なぜこんなに一方的に値上がりを通告してくるんだ。たとえば組合からは五十二年の十月から十一月には一立米一万三百円、そして十二月から三月までは一万七百円、そしてこの四月からもさらに一万二千円台という原価を公表して、示してきた。ところが、昨年の七月の原価の公表を見ると、どうも水増しというか作文というか、そんな感じがしてならない原価を公表されまして、大変に困っておる、こういう実態も一つあるわけでございます。これについては通産省も承知しているようでございますが、この問題についてはどのようにお考えになり、また、今後こういう問題についてどのように行政指導をされるのかお伺いしたいと思います。
  264. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  共販価格の設定につきましては、いま先生からお示しのように、埼玉県の例でございますが、五十二年七月時点におきまして算出いたしました原価をユーザーである建設業者に説明して設定をしているようでざごいます。原価の算出に当たりましては、その大部分を占めますところのセメント、骨材等の原材料費につきましてはいわゆる「建設物価」に掲載されております当該地域の価格にほぼ等しゅうございまして、水増しとか作文というふうなものはないように思うわけでございますが、なお実情につきまして業界から事情をよく聴取してみたいと考えております。  なお、五十三年四月からの共販価格につきましては、現在ユーザーと交渉中と聞いておりますが、当省といたしましては、原材料等の価格動向を見つつ、それが不適当な価格とならないよう十分注視してまいりたい、このように考えております。
  265. 宮地正介

    宮地委員 私は第二のテーマを抱えておりますので、この問題につきましては終わりにしたいと思いますが、ただいまの論議を通じまして、一つは大手メーカーに組んだあの不況カルテル、これは甘さがあったと私は思う。いまたがの締められている調整規程、特に関東中央生コン工業組合は二月末で打ち切る、そして三月一日以降においては独禁法二十四条のただし書きの、いわゆる不公正な取引や不当な価格引き上げをさせないように公取委員長または通産大臣も全力で対応していく、こういうお話を伺いまして、今後につきましてそれがどういうふうに浸透されるか、私も監視をさせていただきたいと思うわけでございます。そういう点で、このセメント、生コンの問題につきましては、確かに一面は石油ショックによって大きな打撃を受けて経営体質が弱くなっていることも私は承知をしております。あるセメントメーカーの山も登ったこともあります。現実に炉が一本しか動いていないのを見たこともあります。しかし公共事業という名のもとに経営が、体質が弱いから、苦しいからという名のもとに、なぜこの急激な異常な値上がりをしなくてはならないのか。そこは私は、不況カルテルという枠、あるいは中小企業団体法に基づく調整規程という枠、あるいは組合法という一つの枠、特にこの調整規程の四月三十日というタイムリミット、このタイムリミットに一つの線を結び、いわゆる四十五度直線に向かって値上げが行われていると言っても過言でないやり方であります。しかしセメントや生コンの建設資材の値上がりが国民生活に与える影響は大変なものでございます。すでに他の二次製品であるU字溝だとか、あるいは生コン業者が必ず行うところであります打ち込み料だとかポンプ車のリースといったような問題が現実に上がってきているのであります。私はここで、その実態というものにつきまして、少し私の調べた数字を申し述べてみたいと思います。  これは、埼玉県下における建設資材、機材等のいわゆる第二次製品の値上がりの状況でございますが、たとえば打ち込み用のポンプ車などは、リース代が昨年八月には一日六万円でありました。それがいま二月になりますと七万円と、一万円上がっております。また、コンクリートの二次製品と言われるパイルなどにつきましては、一本二万四千円のものが二万七千円、あるいはブロックなどは二千八百円から三千百円、先ほどお話がありましたが、小形の棒につきましては、トン当たり五万円から六万円、ヒューム管に至っては一本当たり四千四百円から五千五百円。こういう二一次製品に大きな値上げの実態がいまあるわけであります。これが国民生活に対しまして、建設資材を中心としたセメント、生コンというものが大変な引き金になっておる、あるいは呼び水になっておる。こういう実態につきまして、まずどういうふうに政府考えているか伺いたいと思います。
  266. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほども申し上げましたように、資材関係の値上がりが、建設省関係で申し上げますれば、目標としておる工事量の減少に響くことも当然あり得ると思うのであります。そういうことでありまするならば、経済目標七%へ持っていくのになかなか厳しいものがあるのじゃないかという気がいたします。それとともに、一般の国民生活に対する影響も考えますると、これはよほど腹を決めてかからなければならないという気がいたしまして、実はこれは私が省内で検討をしてもらっておるわけでございまするが、まだ関係省庁の方に御相談したわけではありませんけれども、御承知のように、石油ショックのときに狂乱物価で、国民生活安定緊急措置法をお願いいたしました。それによって、生活関係品目については、価格についてストップをかけるという措置をもとったことは、御記憶にあると思うのであります。これは、国民生活に、関連する物資と国民経済上重要な物資について適用ができることになっておりますので、また、当時の法案の説明書などを検討してみまするに、建設資材等が入るということも明白でありまするので、現在私どもの受けとめておりますのは、先ほどちょっと申し上げたように、非常に冷え切っておった価格が順次適正化し、そして、その適正化を超えて非常に悪い影響を与える、いま適正な価格へ戻って、それから行き過ぎという方向にあるのではないか。したがって、われわれの方としては、工事に大きな影響がありまするので、関係省庁にできるだけそういうことのないようにしようという監視体制、横の連絡をとっておるのでありまするが、それが効果が上がってこなければこの国民生活安定緊急措置法に頼らざるを得ないのではないか。これはいま建設省内での検討でございますが、そういう心組みでおる次第でございます。
  267. 宮地正介

    宮地委員 いま建設大臣からはからずも、適正価格を超えて行き過ぎになっているのではないかというお話がございました。  最後に、経企庁長官にお伺いします。  先ほども御答弁になりましたが、便乗値上げがないように注意したい。しかし、現実に引き金になって、このように二次製品に大きな波及を及ぼしております。今後さらに他の製品にこれが火がついていったのでは、国民生活は大変な事態になると思います。この点について、国民生活を守る立場の経企庁長官の御見解を伺いたいと思います。
  268. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、セメントにいたしましても、丸棒にいたしましても、十分生産能力がございます。したがいまして、恐らく操短の時代からいま一部需要が出てきているその時間的なおくれというもの、生産能力からいえば十分にあるわけでございますから、時間的なおくれを克服することができていくのではないか、私は基本的にはそう考えておりますけれども、しかし、もし櫻内大臣の言われましたようなそういう心配がございますればございますところの措置は速急にとらなければならないというふうに考えておりまして、物価担当官会議でも先ほども申しましたような部会を設けまして、注意深く事態を見ておるところでございます。
  269. 宮地正介

    宮地委員 大蔵大臣にお伺いします。  あなたは公共事業の推進本部長であります。公共事業推進本部長として、公共事業の推進の裏といいますか、その足を引っ張るようなこういう建築資材の高騰をどのようにお考えになるか、お伺いしたい。
  270. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま委員のおっしゃいましたように、公共事業を円滑に推進していく一つの大きなかなめでございます。したがいまして、いま各大臣から申しておりますように、いやしくも不当な便乗値上げ等のことがありました場合には、これは厳重に取り締まっていく必要があること、同感でございいます。(「政府が調査するんだよ」と呼ぶ者あり)
  271. 宮地正介

    宮地委員 ただいま同僚の近江委員からも激励の言葉が飛んがおりますが、政府としてぜひこの問題について、先ほども申し上げましたように、十分な対応策をしていただきたい、このことを要望する次第でございます。  時間の関係上、第二の問題に移らせていただきたいと思います。  国民生活をしてまいる中におきまして、いわゆる食品衛生の問題は大変重要な問題でございます。最近ちまたの中にも薬づけ畜産とか、聞き捨てならないいやな言葉があるわけでございます。また最近は抗生物質の残留、こういう問題につきましても、すでにWHOでも勧告をしておる。私たちも食品衛生法第七条で、食品についての使用については大変厳重に規制をしておるわけでございますが、国内の生産に伴う問題、もう一つは輸入に対しての問題と、二つあるわけでございます。  そこで私は、この問題につきまして、まず食品衛生法に基づいて、輸入食品がどういう経過、また検査、チェックによりましてわれわれ国民の口に回ってくるのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  272. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 輸入食品の安全につきましては、全国の主要港に配置されました国の食品監視員によって厳重に検査を行ってから輸入をいたしております。それからなお、輸入食肉や魚、ウナギ等に対して抗生物質等の残留検査、これもそれぞれ、輸出港における抗生物質の使用規制等に関する情報を得まして、適宜抜き取り検査等の方法によって監視をいたしておるところでございます。
  273. 宮地正介

    宮地委員 言うならば、空港やあるいは港で、食品衛生監視員事務所というところでいわゆる抜き取りということでチェックしているようでございます。抜き取りで実際どの程度チェックができるのだろうか、これは大きな問題であろうと思います。検査を要するものとなれば、国立衛生試験所に持っていって調査をするようでありますが、大部分の食肉や生鮮魚介類やそういうものは、検査を要しないものの部類として処理をされているのではないでしょうか。いわゆる税関に回してチェックをする、それで済まされているのではないか。いかがでしょうか。
  274. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 大体、輸入されてまいります各国の制度等に対する情報等がわが方に入っておりますから、それぞれの国において食品に含まれる抗生物質等についての規制、こういうものがわかっておりますので、輸入の主要港における抜き取り検査で十分だというふうに判断をいたしておりますが、なお詳しいことについては局長から答弁させます。
  275. 山中和

    ○山中政府委員 お答えします。輸入食品は十六条によりまして届け出をすることになっております。特に、いま先生御質問になりました食肉につきましては、相手国の衛生証明書をつけてもらうことになっております。現在はすべての相手国から政府発行の衛生証明書をつけてもらいまして、向こうの法規と照らし合わせまして、それがこちらの法規と合っておればそれで検査なしということで、検査なしの方へ入れております。
  276. 宮地正介

    宮地委員 簡単に言えば相手方次第ということでございます。食肉や生鮮魚介類については、どうも抜き取りチェックがポイントである、あとは相手方の衛生証明書、これに頼る以外にない、これがいわゆる厚生省のお話であります。これはまことに監視体制が甘いと私は思います。  それでは、時間がありませんので、国内の食肉や生鮮魚介類、これはどういうふうにやっているのでしょう。
  277. 山中和

    ○山中政府委員 国内の食品につきましては、食品衛生法にのっとりまして食品衛生監視員が、国内の食肉、魚、そういうものでありますれば収去検査をいたします。特にこれには、畜産物中の残留物質の検査法を昨年設定いたしまして、これにのっとりまして食肉の収去検査を行っております。特に食肉は屠畜場から来るわけでございますから、これも食品衛生法にのっとりまして屠畜場で効率的に検査するということもいたしております。それの検査法も、ただいま全部、都道府県に通達をしております。これにつきましては、昨年、いままでのいろいろな検査法あるいは国際的な検査法、そういうものがまとまりましたので、一冊の印刷物にしまして全部やっておるわけでございますが、特にことしも、現在、屠畜検査員講習会を開いておりまして、これの徹底方もいたしております。
  278. 宮地正介

    宮地委員 特に抗生物質の検出についてはどのようになっておりますか。
  279. 山中和

    ○山中政府委員 抗生物質につきましては、残留物質検査法の中でこれをしております。この場合には特に屠畜場における食肉の問題があるわけでございますから、そこで検査をするということになっておりますが、現在都道府県におきまして、機関委任事務としてそれを行っております。一般の食肉におきましては抗生物質の含有はほとんどないわけでございますが、病畜におきましてはしばしば含まれていることがあります。
  280. 宮地正介

    宮地委員 病畜にはしばしば含まれていることがありますと、つかんでおりますか。
  281. 山中和

    ○山中政府委員 食肉の抗生物質のほかに細菌の検査とか、食肉にはいろいろな検査がございます。これは一括して都道府県に機関委任として移譲をしております。したがいまして、都道府県におきましてこれはまとめておりますので、国としては特にこれをとってはおりません。非常にある事例が広範囲にわたった場合には、これは国として集めるということも考えております。
  282. 宮地正介

    宮地委員 そこが問題なんです。都道府県にやらすだけやらせておいて、国はその報告もとっていない。これは行政の怠慢じゃないのですか。抗生物質が食品衛生法で第七条、何と書いてあるか、読んでくださいよ。何と書いてある。
  283. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように、食品衛生法では抗生物質を含まれてはならないと書いてあります。その含まれてならないことの検査その他の業務については、国が機関委任事務として都道府県に任せておるわけでございます。したがって、国で一本でそういう体制をとって、直接いろいろな情報を集めているということはいたしませんが、これは都道府県知事と国が機関委任事務として一体に、しかもその基準は国で決めてやらせているわけでございますから、この点はひとつ、そうかといって国が責任を全く逃れているというようなことではございませんので、これはやはり事務のやり方でございますから、御了承いただきたいのです。
  284. 宮地正介

    宮地委員 非常にこれは、厚生大臣として問題であろうと思う。すでに英国のいわゆるスワンレポートにおいてさえ、抗生物質が畜産物の中に残留物質として残った場合どういう影響が出るか、もしそういうような肉を国民が食したとしたらどうなるか、抗生物質の耐性といって、たとえばわれわれがかぜのときに抗生物質を飲んだって効かなくなる、こういう危険だってあるのだ、こういうスワンレポートが出て、農林省の所管の飼料安全法というのが検討されて新規立法がつくられてきたのじゃないですか。そして五十一年から、いま施行されているじゃないですか。そういういわゆる警告が全世界に発せられていながら、厚生大臣が都道府県に任しておいて報告もとらない。事務の手続だという問題で済まされるのですか。もっと厳重にチェックをして報告をとるぐらいの姿勢をすべきじゃないですか。どうなんですか。
  285. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 食品監視員の全国に配置をいたしておりますのが約六千三百人おります。これがそれぞれ消費市場に回ったときには適宜検査をいたしまして、安全の確保に努めているわけでございます。やはり事務の中にはそれぞれ都道府県知事が厚生大臣の機関委任事務として責任を持ってやるという体制は、これはやはりそうでありませんと、唐場に参りまして以下消費者までのものについて私どもが責任を持ちますわけでございますから、国で、中央で一本でやるよりは、やはり都道府県の機関委任事務として知事の責任においてやってもらう、もちろん情報は、これはもう各所管の衛生部長等と年に何回かの会議をやっておりますし、それぞれ基準等については厚生省から指示をいたしますし、密接な連絡のもとに安全の確保に努めているわけでございます。私ども、最終責任は負うつもりでその体制をとっているわけでございますので、この点のやり方については、これはもう事務のやり方でございますから、責任を私どもは逃れているというような考え方ではないわけでございます。  ただ、監視員の人数が不十分ではないかという御指摘等もございますので、年々逐次増強してこの体制をとっていきたい、かように考えます。
  286. 宮地正介

    宮地委員 ここに一枚の写真があるのです。厚生大臣、こういう写真がある。この写真は、厚生省が各都道府県に検査の方法などを教えて、都道府県が検査をしたデータ、これは抗生物質残留の検査です。これは大臣わかりますか。時間がありませんから私がやりますけれども、これは五十三年一月二十四日、牛についてやった。これはやったところは言いません。しかし、これは腎臓と肝臓だ。この広がりの大きいのは、抗生物質の残留がたくさんあるということなんですよ。こういう重大なことを都道府県だけでいいのですか。事務的な問題だからといって済まされますか、こういう問題。こういうのだって、あなた方、手に入っているのですか。伺いたい。
  287. 山中和

    ○山中政府委員 申し上げます。  食品のこういう検査につきましては、一つの検査体制を組まないといかぬわけでございます。都道府県は衛生試験所を持ち、それから保健所を持って、それでそこに監視員がおるわけでございます。そこで収去したものを保健所で検査をし、さらに必要な場合には衛生研究所で検査をし、さらにこれが非常にわからないものであるということになれば、国へ持ってきまして、国の衛生試験所、そういうところでやる、こういう体制になっておるわけでございます。県に任せておくということではございませんで、県の衛生部、そういうものと厚生省は一体になりまして、そういうシステムでやっておるわけでございます。
  288. 宮地正介

    宮地委員 では、私が具体的にそういう問題を調べたが、あなた方は知っているかどうか、私は確認しますよ。  一つは、これは名古屋市です。名古屋市の食肉衛生検査所が四十九年十一月から五十二年の四月に牛と豚について検査をした。検査頭数が、牛は五十一頭、そのうち陽性が十三、陰性が三十八頭。豚については、検査頭数二十、陽性三、陰性十七。比率は二五・五%と一五%という結果が出た。明らかに残留は出たという、こういうデータがある。  もう一つは、これはまことに残念ですけれども、これも私は一部であろうと願いたい。これは東京都の衛生研究所が、消費者から、たとえば五十二年の四月九日に武蔵調布保健所管内で、消費者が肉を買って食べた、苦い、こういうようなことで検査を依頼した。そうしたら、クロラムフェニコールというのが約二千四百マイクログラム、抗菌性物質が認められた。都衛研です。  それから、昨年の七月五日、やはり消費者から、同じくクロラムフェニコールというので、一部の地域でやはり苦味があった。そして、昨年の九月六日にも消費者から、ちょっと食べておかしいというので保健所に持ち込まれて、都衛研に持っていって調べたら残留が出た。  この実態を厚生省は、体制だからとか事務手続だからといって済まされない。では知っているのですかと私は伺いたい。
  289. 山中和

    ○山中政府委員 先生御指摘になりました一番最初の、名古屋の情報は知っております。これは、こういう検査の結果、陽性率二五・五%という陽性のものは廃棄をしておるわけでございます。その検査の結果でございます。  それから、あとの数例につきましては把握をしておりません。
  290. 宮地正介

    宮地委員 要するに把握をしてない。これがいまの実態なんですよ。  経企庁長官、消費者保護という立場から、この点についてどうお考えになりますか。
  291. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それらの問題は、消費者保護会議で一番大切な問題として従来いろいろに検討されているところの問題でございますが、私ども、厚生省あるいは農林省等とさらに連絡を緊密にいたしまして、消費者に迷惑のかからないように努力をいたさなければならないと存じます。
  292. 宮地正介

    宮地委員 そこで問題は、農林大臣に伺いたいと思う。では、こういうような残留が出てくるその原因はどこにあるか、ここが問題なんです。えさ法という飼料安全法あるいは獣医師法に基づいて、薬事法に基づいて、御存じのとおり要指示薬、この指示書が薬のメーカーやディーラーやあるいは農業団体などから非常に乱発されている、ある地域においてはそういう疑いもある。それどころか、まことに私は残念なんですけれども、私の秘書に、あるところの薬局に買いに行かせました。そうしましたら、ネオテラミックスという抗生物質の入ったもの、これは要指示薬の指示書がなければ買えない、これが買えたのです。聞いてみれば、後から来るのだ、いつ来るかわかりませんと言う。大量投薬やあるいは飼料に混合した中の医薬品、そういうものが実はいま大変に残留という形で出てきているのです。この実態をどのように考えておられるのか。早急に総点検などやる腹があるのかどうか、伺いたいと思います。
  293. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生御指摘のように、要指示医薬品は、その使用について獣医師の特別の指導を必要とするものとして、薬事法の四十九条によって指定されているわけでございますが、これは現在、抗生物質等八十九成分が指定されております。これの使用につきましては、薬事法四十九条の規定によりまして、獣医師の処方せんまたは指示を受けた者以外には売ることはできないということになっております。それからまた、それを売った販売業者は、それについての記録を記帳して後に保存するということを義務づけられておるわけでございます。それがきちんと行われておればそのような話にはならないわけでございますが、中には、飼料メーカーあるいは薬品メーカーが売りたい一心の余り、獣医師にいろいろ指示書を乱発させるというか、不必要な薬を投与するような処方せんを出させるというような話があるやに聞いております。ただ、全般的な話としては、どこでもがそういう話があるわけではなくて、一部極端な事例としてあったのではないかと思います。ただ私ども、そういうことがたとえ一例でもあることは残念な話でございますので、特に昨年の夏、名古屋においてそういうような話が顕在化いたしましたことにかんがみ、厳重な指導をするように県当局を通じていろいろ措置をいたしたところでございます。さらに国におきましても、これは関係者の良識といいますか責任感、今日の事態を十分認識しての節度ある行動ということが必要と思われますので、そういう関係者を集めての研修を行う等、十分その考え方についての普及徹底を図ることといたしているところでございます。
  294. 宮地正介

    宮地委員 時間がありませんから、この問題について、国民の間に薬づけ畜産などという物騒な話が出ないように、その原因者であり、またその行政の立場にある農林大臣の誠意ある答弁を伺いたいと思います。
  295. 中川一郎

    ○中川国務大臣 国民の大事な食糧、中でも肉製品について、御指摘のようなことがありますれば社会問題でもございます。そこで、飼料安全法の改正なり薬事法の適正化を図って、そのようなことがないようにやってまいりましたが、一、二御指摘のような不心得な者がありまして迷惑をかけた事例もあります。今後はさらに一段と、この両法のねらいとするところをしかと関係方面に指示をいたしまして、万が一にも間違いを起こさないように最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  296. 宮地正介

    宮地委員 厚生大臣、検査について大臣見解を伺いたいと思います。
  297. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先ほども申し上げましたように、食品衛生監視員の強化等を図りまして、できるだけ努力をいたしてまいります。
  298. 宮地正介

    宮地委員 この問題は大変重大な問題であろうと思います。どうか厚生省、農林省、また消費者保護の立場にある経企庁、密接な政府内の連携のもとに、国民の生命を守る立場からも、本当に健康にして安全に生活できるよう最大の配慮を要望いたしまして、本日の質問を終わります。
  299. 中野四郎

    中野委員長 これにて宮地君の質疑は終了いたしました。  次に、大成正雄君。
  300. 大成正雄

    大成委員 私は、まず第一に、合繊業界の再編成の問題とその問題点について承りたいと存じます。  すでに御案内のように、昨年来の構想でありますが、大屋構想とも言われるような合繊業界の統合整備が着々と進められております。昨年の十一月に、先発グループとして東洋紡と三菱レイヨンがアクリル繊維の共販会社をつくりまして発足をいたしました。さらに続いて、去る二月七日には旭化成と鐘紡が販売提携をする。また昨日、帝人、ユニチカの間におきまして、生産面まで踏み込んだ一つの再編体制の研究に入ろう、こういった情勢下にあります。一方、国といたしましては、特定不況産業安定臨時措置法の立法化を控えまして、その業種指定の中に合繊を位置づけて、安定基本計画を立て、そうして設備廃棄なり人員の整理なり合理化なりを進めていこう、こういった状態にあるわけであります。  申し上げるまでもなく合繊業界は、デュポン社のような巨大企業は別といたしまして、世界的な不況、構造的な体質の困難な問題を抱えておるわけであります。ひとり、わが国だけではございません。原料高の製品安であるとか、過剰な設備、人員を抱えるとか、円高、発展途上国の追い上げであるとか、さまざまな構造的な要因を抱えておるわけであります。  さて、そこで私は通産大臣に承りたいわけでありますが、このような世界的な合繊の環境下におきまして、わが国の化合繊工業が生き延びるために、産業政策上の位置づけとして今後この構造改善対策をどのように進めていくのか、こういったことについて承りたいわけであります。現在進められておりますこの構想、グルーピングといったものは、単に各社の安定、競争防止が可能となる、あるいは販売面の相互補完であるとか、ノーハウの活用であるとか、あるいは管理費の削減になる、こういったことが真のねらいではないだろうか。いわばお互いの傷口をなめ合っていくような、やみカルテル的な発想もうかがえる、こういうふうに理解をいたすわけであります。  そこで、政府考え方を聞く前に、国際競争力の強化に果たしてこのようなことがつながるのかどうか、あるいは過剰設備廃棄や人員整理がうまくいくのかどうか、あるいは、さらに帝人、ユニチカのように生産、研究開発といったそこまで踏み込んだそういう再編整備ができるのかどうか、こういったことについて通産大臣のお考えを承りたいと存じます。
  301. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 合繊業界は非常な不況が続いておりまして、昨年の十月から十二月まで、不況カルテルが業界の事情でできませんので減産指導をしてきましたが、さらに引き続きまして、現在も一月から三月までの間、減産指導をいま続けておるところでございます。そういう中にありまして、業界におきましても現在の情勢に対して深く心配をいたしまして、自主的にいまお述べになりましたような方向で再建計画が進んでおるということは、私どもはこれを評価いたしております。まだ具体的な内容が最終的に詰まっておりませんから、いまの段階で最終的なことを申し上げるのは早計でありますからこれは避けますけれども、いずれにいたしましても今回の再編がさらに効果的に進むことを私どもは強く期待をしておる、そして、そのことがまた国際競争の強化につながる、このように理解をいたしております。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕
  302. 大成正雄

    大成委員 大臣のおっしゃる効果的な方向という解釈でありますが、通産大臣としては、いま進められておるような、そういう販売面の統合といった、そういったグルーピングが効果的ということと理解しておられるのか、あるいは帝人、ユニチカのような生産面まで踏み込んだ、そういう効果的なところを期待しておられるのか、産業政策上の位置づけとして好ましい方向として大臣はどのように理解をしておるのかという点が第一点。  第二点は、この安定基本計画というものは、いずれこの業界には確立されるでしょうが、その安定基本計画の中での現在のような方向のグルーピングというものはどのように理解しておられるのかをもう一回承りたいと思います。
  303. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは、提携企業の内容によりまして、それぞれ評価は違うと思います。しかし原則的に申し上げますと、ただ単に販売面だけの提携強化では効果が薄いわけでありますし、やはり本当の効果を上げようと思えば生産面までの提携ということが望ましいと思いますが、これはあくまで原則論でございまして、もう少し各企業ごとの提携内容をよく見ませんと、最終的な判断はできないと思います。
  304. 大成正雄

    大成委員 であるとするならば、こういったグルーピングの実質的な内容というのはさらに深められる、こういうふうに理解をいたすわけでありますが、公取の委員長に承りたいわけでありますが、いま大臣がおっしゃったような、あるいはまたいま進められておるような合繊各社のグルーピーングに対しまして、再編整備の許容限界というものがあるだろうと思うのです。この限界というものは、いわゆる独禁法のたてまえ上の許容限界というものがあるだろうと思うわけでありますが、この点について公取の見解をお聞きしたいわけであります。特に第十五条の合併の制限、届け出の義務、こういったことでありますが、この十五条にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」場合、こういったことがあるわけでありますが、このガイドラインに対しては、いま公取はこの許容限界としてどのように理解をしておられるか。  次に、さらにこのグルーピングあるいはその統合整備が進められていった段階で、あるいはこの特定不況産業安定法のこの業務が進むに従いまして、いわゆる改正独禁法の第二条第七項あるいは第八項の同種の商品の独占的な状態、あるいは一ないし二の事業者の市場占拠率、こういったことに該当するということもあり得る。あるいは第九条の二の、この株式保有制限に該当するといったおそれもあり得るのではないか。あるいは第十八条の二の価格の同調的な引き上げといった問題にもつながってくるというふうにも理解をするわけでありますが、以上申し上げたような、第十五条は別といたしまして、以下それぞれの項目について、杞憂であるかもしれませんが、公取の見解をこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  305. 橋口收

    ○橋口政府委員 お尋ねのございました合繊業界の再編成の構想につきましては新聞紙上等で承知をいたしておりますが、現実公正取引委員会で審査をいたしましたのは、昨年十一月の、御指摘になりました三菱レイヨンと東洋紡の共販会社の設立でございまして、いま審査の態勢に入っておりますのは旭化成と鐘紡との共販会社の設立でございます。  いまお話がございました企業の集約化なり合併の場合の許容限度でございますが、これは第十五条の合併を受理する一つの基準として内部的な取り扱いの方針を持っておるわけでございますが、これは端的に申しますと、一定の事業分野における市場占拠率が二五%というのを一つのガイドラインといたしております。ただ、これはガイドラインということでございまして、二五%をオーバーした場合には絶対に認めないという趣旨ではございませんで、たとえば三菱レイヨンと東洋紡の共販会社の場合も、生産シェアは四一%でございますが、実際にマーケットに出ますシェアで申しますと二八%でございまして、これは二五%をオーバーしておりますが、その他の種々の条件、たとえば代替商品があるかどうか、輸入圧力があるかどうか、新規参入の可能性があるかどうかということを実質的にいろいろな要素を組み合わせて最終的に判断をいたしておるわけでございまして、決して市場占拠率だけで是非を決めるという態度はとっておりません。  それから、お話にございました独占的状態の関係でございますが、諸外国等は、独占的状態の認定基準と合併の認定基準をおおむね一致させておるのが実情でございます。したがいまして、私ども考え方といたしましても、合併の許容限度とそれから独占的状態の認定基準とはほぼ合致することが望ましいというふうに考えておるわけでございまして、逆に申しますと、合併を許容いたしました結果として独占的状態の市場構造基準に該当するというようなことになっては、これはある種の自己矛盾ではないかと思うわけでございますし、改正独禁法で独禁政策が強化されたという事態を考えますと、その辺も十分あわせ考えて処理すべきものと考えております。  そのほか、いろいろな問題について、たとえば高度寡占市場状態における同調的価格引き上げの場合の報告徴収義務に該当するかどうか等々のいろいろな問題があるわけでございますが、これはやはり合繊業界の将来の再編成の結果がどうなるかによって判断すべき問題でございまして、あるいはその再編成の仕方いかんによってはおっしゃるような問題も出てくるのではないかというふうに考えております。  また、第九条の二でございますが、大規模会社の持ち株の制限とか、あるいは第九条の二項の持ち株会社を設立してはいけないというような規定との関係ももちろん出てくると思います。
  306. 大成正雄

    大成委員 いま合繊業界は、この三月期の決算の見通しからいたしますと、約四百四十億からの実質赤字の見通し、こういった状態であります。昨年の十月二十六日商工委員会の参考人意見聴取の中で、日本化繊協会の会長である宮崎さんがお述べになっておられましたが、好むと好まざるとにかかわらず自主的な企業整備を現在進められております。このことは、この膨大な人員整理につながってきておるわけであります。  宮崎さんの参考人としての意見からいたしますというと、繊維全体の労働者が二百七十五万人、昨年の時点ですが、今日まで二十万人もうすでに減っておる、ゼンセン同盟傘下でも十五万人は減っておる、こういうことであります。また、設備廃棄を仮に二〇%ないし三〇%とした場合に一万数千人の労働力が過剰になる、こういうことであります。これらの問題は、特定不況産業安定法やあるいは雇用特別立法等において処理していくべき問題だと思うのでありますけれども、今回の景気浮揚とも重大な関連を持つことでございまして、設備廃棄やあるいは人員整理、こういった深刻な事態に対して、通産大臣は産業政策上どのように理解をしておられるか、承っておきたいと思います。
  307. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の末に、構造不況業種から出てくるであろうと考えられます離職者に対しまして、緊急措置を講ずるための立法がされたことは御案内のとおりでございます。しかし、これはあくまで消極的な受けざらをつくったということであります。しかしながら、現在のような深刻な構造不況業種の状態をほうっておきますと、共倒れになってしまうというおそれも多分にあります。そこで、何とかその被害というものを最小限度にとどめなければならぬ、そしてその業種が立ち直るきっかけをつくらなければならぬというのが今回の構造不況業種に対する緊急立法ということでございまして、昨年末の離職者対策法と、今回のこれからお願いしようとする法律は表裏一体の関係になっておる、このように考えます。今回の場合は過剰設備の廃棄ということが中心になっておりますが、当然失業問題、離職問題ということが考えられますが、そのことにつきましては労働省からも強い要請がございますので、十分打ち合わせをいたしまして、できるだけのことはしていかなければならぬと思っております。
  308. 大成正雄

    大成委員 いま、この種業界に対する政府の対策としては、ともかく世界に生き残れるわが国の合繊業界といった理想像を描きながら、思い切って知恵も金も使っていこう、こういうことでありましょう。しかしながら一方、いまわが国に対して台湾あるいは韓国から、ポリエステルの加工糸であるとか布団綿用のポリエステル短繊維であるとか、あるいはポリエステルの長繊維薄手織物がきわめて安い値段で、しかも最近急激にその輸入量が増大をして、わが国関係業界の市況を悪化させております。もちろん、いま進められておる操短によって、ポリエステル等については一部市況は相場を回復しつつあるものはありますけれども、これは容易ならざることでありまして、いわばバケツに穴のあいたような状態においてこの構造対策を進めようとしても、これは何にもならないわけであります。関係業界はこれを提訴しよう、こういった動きもあるわけでありますし、関税定率法第九条の不当廉売関税の適用をしてしかるべき事態であるというふうに理解をいたすわけでありますが、政府は、いま韓国や台湾から流れ込んできているこういったダンピング的な関連商品を、量的な、価格的な面についてどのように認識をし、どのように対処していかれようとしておるのか、承りたいと存じます。
  309. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに最近韓国と台湾から輸入がふえております。しかし全体の数量から見ますと、さほど大きな数量でない。それから価格も、日本の価格よりも相当安い価格であります。ただしかし、これがダンピング価格であるかどうか、にわかに判定がしがたい、こういうことでありますので、もう少しいま様子を見たいと思っております。
  310. 大成正雄

    大成委員 いまの大臣の御答弁は、ちょっと何か軽く見ているというか、甘く見ているような感じがしてならないのであります。たとえば韓国からの輸入を見ましても、昨年十二月現在でポリエステルの薄手織物等については五倍にも量がふえておる、しかも値段は半分だ。こういったことで、たとえばわが国のスーパー等の衣料仕入れ担当者あたりはもう直接韓国へ行って仕入れてくる。暖冬異変で市況が悪化しておるに加えて、そういったことがいま公然と行われておるわけでありまして、関係業界にとっては深刻な問題であります。どうかひとつ、この点はそう甘く見ないで真剣に、これだけ思い切った構造対策を進めようとしておるのですから、一方においてやはり私たち日本日本の産業を守るのだ、そこで働く人たちの職場を守っていくのだ、こういう考え方で、たとえ韓国、台湾といえども打つべき手は打っていく、これは当然のことじゃないか、このように思うわけでありますが、大蔵大臣、この関税定率法第九条の不当廉売関税のここに書いてある項目にいまの状態が当てはまらないというふうに理解をされますか、もう一回、両大臣に承りたいと思います。
  311. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ダンピング関税には二つの法律要件がございまして、一つは、不当に廉売しているということでございます。もう一つは、わが国の産業に損害を与えておる、この二つの要件でございますが、その不当な価格でやっているかどうかということは、わが国の国内価格と比較するのでなくて、たとえば韓国なり台湾なりが問題になった場合には、その台湾なり韓国で売っておる値段と比べて日本に売っているのが不当であるかどうか、そこの判定になるわけでございます。  それから、わが国に損害を与えているかどうかという問題でございますが、私たちの方の貿易統計で見ておりますと、これは繊維全体でございますけれども、昨年の暦年で申しますと、前年に対して韓国はたしか五%程度の上昇、それから台湾は三%程度の上昇、四十八年を一〇〇にしますと、四十八年よりやや少し切っておる、九九ぐらい、あるいは台湾の方はもうちょっと下ではないか、そういう状態のもとでどういうふうに判断するか。これは価格の問題ももちろんありますけれども、需給関係については、この前の繊維構造改善の提案に係る需給調査部会というのができまして、そこで調査をすることになっておりますので、そういったところの判定等をまちまして慎重に検討すべき問題だろう、かように思っております。
  312. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 ちょっと数字的な補足説明を申し上げます。  韓国、台湾からの輸入数量に関しましては、いま大蔵大臣からお話がありましたように四十八年がピークでございまして、それ以降、五十年には一応非常に減りまして、現在四十八年の水準までまだ回復していないというふうな数字でございます。ただ、円高の影響もございまして十二月以降ふえる傾向がございますので、厳重に監視をしてまいりたい、このように考えております。  なお、ポリエステルの加工糸等の輸入の比率から申しますと、現在、国内生産に対しまして全輸入品の比率が〇・四%というぐらいの数字でございます。
  313. 大成正雄

    大成委員 次に、私はナフサの価格問題について政府の所見をただしたいと思います。  政府は、昨年九月の景気対策の一環としてナフサ価格の値下げのための調整方針を発表いたしました。自乗五カ月半経過をいたしたわけでありますが、この間百五十万トンの輸入ナフサの増枠、こういったことと、それから企業者間の自主的な交渉、こういったことのまま推移をしてまいりました。ことしになりましてから、たとえば一月九日ですか、通産大臣あるいはエネ庁長官等が経団連の首脳との会談におきまして二段階調整、こういった一つの方針を打ち出しておるやに承っております。第一段階は企業者間の交渉である程度の線を出し、第二段階で適正価格の設定をする、こういったことであります。現在石化側といたしましては、いわゆる仮払いといった強硬措置を二カ月も続けておる、こういうことであります。仮払いの価格は二万四千ないし二万四千五百円、まあ段階が相違があるようでございますけれども、とにかく五カ月半も経過した今日、これだけ関連業界の不況の大きなファクターになっておるナフサ価格がこのまま推移されておる。要するに、政府みずからが決めた標準価格二万九千円のまま今日まで推移してきておるといったことはきわめて重大であり、いわば政策不況というか政治の貧困というか不決断というか、これはもう政府の責任が問われてしかるべき問題だと私たちは理解をいたすわけであります。  まず第一に承りたいことは、いまこの二段階値下げ方針などということを打ち出しておるようでありますが、政府自身がこの現状をどのように打開しようとしているのかを承りたいと思います。
  314. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の円高がございましてから急速にナフサの内外における価格差が拡大をしております。そこで、いま御指摘がございましたような経過をたどりまして両業界の交渉が行われております。私どもは、この両業界が一日も早く、とりあえず第一段階の結論に達することを期待しておるわけでございますが、最終段階になりまして若干もたついております。そこで、両業界に対しまして、もう少し誠意をもって速やかに第一段階の妥結を図るように、わが方からも要請したいと思っておるところでございます。
  315. 大成正雄

    大成委員 新聞等で承るところによりますと、その企業者間の自主的な交渉の中で、すでに二万五千円とか二万五千五百円とかといった水準である程度了解が得られつつあるといったふうに承っているわけでありますが、中には二万四千円台で妥結した事例もあるやに聞いておるわけでありますが、そういったことに対して大臣はどのように理解をしておられますか。
  316. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま第一段階の交渉の最終段階でございますから、もう近く解決すると思います。そこで、現在交渉の目標になっております数字を申し上げるのはいかがかと思いますので、もうしばらくお待ちをいただきたいと思います。
  317. 大成正雄

    大成委員 去る一月九日の財界との懇談の中で、エネ庁の長官が、政府としてこの問題に関してやれることとやれないことがある、こういうことでありますが、エネ庁長官、おいででいらっしゃいますか。――この政府の言う、やれることやれないことというのはどういうことを言っておられるのですか。  それからもう一つ、ついでに次の質問をさせていただきますが、第二段階の価格の指標というものは政府自身としてなければならないと思うのです。これは言うならば、わが国の石油化学が生き残る基本的な条件として国際的な視点から申し上げるわけでありますが、私は現在の輸入ナフサ価格というものを指標にした第一段階の価格指導でなければならぬと思うのですが、その点について承りたいと思います。
  318. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ナフサ価格の問題を考えるに当たりましては、一つには、石油化学工業の国際競争力への影響という観点がございます。他方、石油企業特にコンビナートリファイナリーあるいは民族系企業の経理の実態、両者を踏まえて判断しなければいけないというところにポイントがあるわけでございます。さようなところから、私たちとしては需給両当事者で話し合いをしていただきたい、かような立場で対処してきておるわけでございます。特にコンビナートリファイナリー等におきましてはなお累積赤字を持っておるわけでございますので、そういった中において両当事者が納得のいく形と申しますか、むしろ黒字の分配という問題であればいいわけでありますが、一方では赤字を追加するといったようなことにもなる可能性のある問題でございます。そういったところから、われわれとしては側面からいろいろと指導はいたすものの、直接的には両当事者の話し合いをもって価格を決めるべきである、こういう立場で物を申しておるわけでございます。  それから、二段階の問題ということでございますが、現状の価格交渉といったものは両当事者でできるだけ早く決着を得たいということで指導いたしておるわけでございますが、御承知のように、現在の各種石油製品の価格につきまして、ガソリン高、重油安といったようなことが言われております。そういったナフサも含めて石油製品の価格全体をどのように考えていくか、あるいは見直していくかという問題があるわけでございます。昨年の暮れ、石油価格問題等の検討のための懇談会を設置いたしまして、その場におきまして、長期的な観点に立ち、かつはただいま御指摘のような国際競争力といったような問題も踏まえまして、あるべき価格体系の見直しの検討に入っておる、こういうことでございます。
  319. 大成正雄

    大成委員 従来、商工委員会等に対する長官の御答弁等の中に、ナフサ価格がなかなかそう自主的な妥結を得られない理由として、また政府としてそういう指標価格を示すということが困難な理由として、いわゆるコンビナートリファイナリーの構造的な要因を指摘されておったことは長官自身が御存じのとおりであります。  しからば今日、このコンビナートリファイナリーなるものが、お手元に資料として差し上げてあるはずでありますけれども、この資料をごらんいただきましてもわかりますように、このコンビナートリファイナリー九社の実態を資料で見ましても、要するにガソリン等の配分が少ない。お手元の資料の一番左の下でありますが、日本平均として一三・一に対して九・三、こういった数字、確かにこれはあるでしょう。しかしながら、ナフサが原因であるかどうかといったことに非常に問題があるわけであります。全国日本平均一二・五ということに対してコンビナートの合計が一三・六というシェアでありますから、そんなにも違っておらない、こういったことでありましょう。  同時にまた、累積赤字を残しているということは事実でございますけれども、コンビナートリファイナリーの九社の五十一年度の実績を見ましても、十社でそれぞれ三百三十五億も利益を出しておる、こういう状態であります。またこの石油各社の三月期の予測を見ましても、たとえば石油精製七社の見通しからしても、為替差益を六百八十九億も予定しておる。また通産省の内部からの資料を見ましても、五十一年度の決算で見ましても、為替差益だけでも七百七十八億、これに加えて円高差益が九百八十九億、こういった状態であります。石油産業は決してもうからない産業じゃない。むしろもうけ過ぎるくらいもうけておるし、政府の言うその差益の還元は、灯油は現状のまま据え置くのだ、それが還元だといったような受けとめ方では国民は納得しない、このように私たちは理解をしておるわけであります。  また、コンビナートリファイナリーそのものの収益状態を見ましても、たとえば鹿島石油において当期の利益が三十二億八千万、関西石油が百三十四億七千万、西部石油が、これは小さいのですが四千二百万、富士石油が二十二億三千六百万、極東石油が三十八億九千七百万、そういうのが以下ありますが、本当にコンビナートリファイナリーで欠損しているという会社よりはむしろそれ以外の精製会社、たとえばお手元の資料で言うならばアジアとか東亜とか、そういったところがそれぞれの理由があって累積赤字を出しておる、また大きな欠損を出しておる。一例を挙げるならば、この東亜あるいは東亜共石といったところは割り高な過剰な用船によってその負担が大きな赤字になっておるとか、あるいは東亜がガス化の脱硫装置を七百三十億もかけて投資をした、これが少しも稼働しない、これが全くむだになっておるといった、そういうことが企業の収益を悪化させておる、こういうことであります。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕 要するに、エネ庁長官が言うようにコンビナートリファイナリーの累積赤字がナフサ価格の値下げの足を引っ張っているということではないというふうに私たち現実の資料を見て判断をするわけでございますが、長官はどのように理解をいたしますか。
  320. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただいまいろいろと御指摘があったわけでございますが、まずコンビナートリファイナリーなるものの業績はどうか、ごく簡単に申し上げたいと思います。  四十九年度において四百二十四億、五十年度において百四十七億の赤字を計上いたしたわけでございます。五十一年度においては二百七十四億の黒字を計上いたしたわけでございますが、なお百三十五億円の繰り越し損を持っておるということでございまして、コンビナートリファイナリーにつきましては、一つは先ほど先生が御指摘になりましたように、採算油種のウエートが低いということもございますが、そのほかに新増設の設備を抱えておるといった点から減価償却、支払い利子といったいわゆる資本費が高くついておること、それからオイルショック以降の産業活動の停滞に伴いまして稼働率が低下しておるといったことも大きな理由になっておるかと思います。  それから、いわゆるコンビナートリファイナリー的な理由でなくして経営が悪化しているのじゃないかということで二、三の企業について御指摘がございましたが、私たちがコンビナートリファイナリーと申しておるものの中に、いま御指摘のあったようなものは入っておりません。九社のコンビナートリファイナリーの中で実質的に七社までが繰越損を持っておるというのが現状であるわけでございます。  それから、石油業全体としての為替差益の問題にもお触れになったわけでございますが、私たちがざっと計算いたしましても、円高メリットとしては五十二年度で七千九百億ぐらい出るのじゃなかろうかと思います。ところが一方、原油代の値上がりなるものが約五千五百億、その他備蓄、防災、保安関係の経費の上昇などを含めまして、コスト上昇要因として七千億ぐらいカウントされるわけでございまして、そういった点からいたしまして、この一月以降キロリッター当たり二千円程度の値下がりの現象を示しておりますが、これは月にすると大体五百億円程度になろうかと思います。そういった形の値下がりにおいて円高メリットを消費者に還元しておるというのが実情であるというふうにわれわれは認識しております。
  321. 大成正雄

    大成委員 ともかく石油会社が大変もうかっているということだけは事実です。同時にまた、一部の企業で累積赤字を持っていることも事実であります。しかしながら、今回政府は石特会計に百億のコンビナートリファイナリーの構造改善対策費としての予算をつかみ金として持っておるわけであります。この百億は何に使う金ですか、承りたいと思います。
  322. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 御指摘の点はコンビナートリファイナリー等構造改善等対策費補助金のことかと思います。この場合コンビナートリファイナリーに「等」をつけておりますのは、通常われわれコンビナートリファイナリーと言っておりますが、九社でございますが、そのほかにもナフサのウエートの高い企業がございます。そういったものを意識いたしまして「等」という言葉をつけてあるわけでございます。それから「構造改善等」の「等」でございますが、いわゆる構造改善のほかに生産流通の合理化あるいは品種転換、言うなれば将来の構造改善に結びつくような、その前提となるような事業についても助成いたしたい、かような関係から「等」をつけたわけでございます。  私たちの意識といたしましては、石油の安定供給のためにはどうしてもこういったコンビナートリファイナリーあるいは民族系の石油企業の経営基盤を強化していく必要がある。先ほど来御指摘のナフサ価格問題が当事者交渉で難航いたしておりますのも、そういった経営基盤が弱いというところに本来的な原因があるというふうに私たちは理解いたしておりまして、そういった問題点に対して対策を集中してまいりたいということで百億の予算を計上いたしておるわけでございます。
  323. 大成正雄

    大成委員 これだけもうかっている石油業界に石特で百億ものつかみ金でめんどうを見てやろうといった考え方は納得できない。しかも「等」というその字は、コンビナートリファイナリー以外の、企業みずからの経営の失敗とか責任に帰すべきものに関してまでその金が使えるといった道が開かれるというふうに私たちは理解をするわけでありまして、引き続き商工委員会等でこの百億に関しては、さらに十分審議を詰めさせていただきたいと存じます。  次に、これは大臣に申し上げておきたいと思いますが、ともかくいまの国際市況とのギャップは、お手元にありますような直近の資料においても九千円も値段が開いておる。しかも政府の官民調査団の調査結果から見てもこれは明らかなんです。こういった状態で、政府自身が決めた標準価格が廃止をされましても、そのままいままで続いてきておる。そして企業間の自主交渉で第一段階とか第二段階とかといったようなわけのわからぬようなことで、政治的な決断ができない。そういったことが今日の不景気の大きな原因になっておる。このナフサ問題ではもうそろそろ大臣も決断をすべき時期だ、これは私の意見ですから御答弁は結構でありますが、このように申し上げておきます。  最後に、本日、日中長期貿易協定の正式調印がなされたわけであります。すでに公電としてその内容は外務省にも通産省にも入っておると存ずるわけでありますが、時間がありませんので簡潔に申し上げますと、今回中国から日本が受け入れる石油、石炭の内容はすでに公表をされておるとおりでありまして、五年間で、五年目に千五百万トン、最終的には四千七百十万トンを受け入れるということでありますが、御承知のとおり中国原油はろう分が多い、いわゆる重質油である、こういったことでいま関係業界はどっちかといえば有利な軽質油に集中しがちでありますが、そういったハンディを克服するために通産省はナショナルプロジェクトとして重質油の分解設備をつくっていこう、承るところによりますと、年間三千万キロリットルくらいの処理能力をナショナルプロジェクトとして持ちたい、こういうふうに言われ、今年度調査費一億を計上しておるわけであります。この、きょう妥結をしました中国原油の年次ごとの受け入れ体制にそごはないのかどうか。保温タンクその他の現状等からしまして通産大臣の御意見を承りたいと存じます。
  324. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中国からの本年以降五カ年間の買い入れ数量はもうすでに御案内のとおりでございます。この五カ年のうちで飛躍的にふえますのは第五年度でございまして、ことしから四年目まではごくわずかずつしかふえない、こういうような内容になっております。この程度のものでありますと、もうすでに一昨年も八百万トン以上消化をしたわけでありますから、私は別に何らの支障はないと思います。  ただしかし、世界全体の石油が重質油の傾向になりつつあるということ、特に日本政府間べースで長期契約をいたしております油なども重質油が大部分であるということ、それからまた中国も重質油が非常に多いということ、インドネシアにおきましてもしかりでございます。そういうことから日本としてはもっと積極的に重質油に取り組んでいく必要があるのではないかということで、五十三年度予算で重質油の分解装置のフィージビリティースタディーをするための調査費を計上いたしておりまして、できるだけ早くこの結論を出したい、そしてわが国といたしましていかようにも対応できるという体制をとっておきたい、このように考えております。
  325. 大成正雄

    大成委員 中国炭を受け入れる石炭火力の場合ですが、現在どことどこを予定しておられますか、承りたいと思います。
  326. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 発電用の一般炭につきましては、電源開発会社の受け入れ予定量を基礎として算定いたしております。五十三、五十四年度は、現在、混炭用あるいは試験用に使っておる程度のもので考えておるわけでございます。問題は五十五年以降、松島火力の発電所、これは五十万キロワット二基でございます。それから竹原火力発電所の三号、七十万キロワットでございますが、こういったものの運転開始を見込みまして、五十五年以降の需要を五十ないし六十万から、将来は百五十ないし百七十万トンまで考えておるわけでございます。なお、この電発のほかに二、三の電気事業におきましても中国炭の輸入を考えておる、そういったことを前提として一般炭の受け入れ数量を算定いたしたわけでございます。
  327. 大成正雄

    大成委員 一方、日本から中国側に対して各種の技術プラントを七、八十億ドル、あるいは建設用資材、機材等が二、三十億ドル、百億ドル前後の協力をするということが約束、調印されたように承っております。ともかくこの成果は日中両国の子々孫々に至る永遠の友好と平和のために私は偉大な成果だと存じます。同時にまた、この調印された内容は、中国側の期待と信頼にこたえて十分そごのないようにしていかなければならないと私たち考えるわけであります。いやしくも日韓間のようなああいう不明朗な問題になるようなことがあってはならないし、この取引額が大きいだけに、国としてはこれらのプラントや機材、資材等の契約の実行については十分意思の統一を図り、またそごのないような手段、方法をとるべきであると考えるわけでありますが、大臣として、その取り扱いの機関、窓口、あるいは商社の選定、こういったことに対してどのようにいま考えて、この調印の裏づけをしようとしておられるか承りたいと存じます。
  328. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今回の長期協定に調印をいたしましたのは民間でありますが、しかし政府といたしましても、相手が中国政府の代行機関でありますから、十分これに注意をしなければいかぬと思っております。そしてこの契約全体が円滑に推進するように、政府としても側面的に援助をしていこうと思っております。それからあわせて、この契約を基礎といたしまして将来さらに大きぐ発展するように、これまた積極的にいろいろ援助していきたい、こう思っております。
  329. 大成正雄

    大成委員 終わります。
  330. 中野四郎

    中野委員長 この際、永原稔君より関連質疑の申し出があります。大成君の持ち時間の範囲内でこれを許します。永原稔君。
  331. 永原稔

    永原委員 きょうは総理大臣が御都合悪いようですので、また大蔵大臣に伺うことになりますけれども、昨日の大蔵委員会において、大蔵大臣のお考えは伺いました。そういう中で出た御意見ですけれども、この減速経済の中でやはりいまばらつきがあるのだ、これを何とか安定させなければならないのだというお話が出てまいりました。民間主導で整合性のある経済成長こそ必要だ、そういうことをお話しになったのですけれども、対応策として、同一の財源の中ではやはり公共事業が一番有利だ、こういうようにおっしゃっております。しかし、公共事業が関連する産業というのは偏っているわけです。昨年も一昨年も公共事業中心であっただけに、民間企業における経済成長のばらつきというのがどうしても出てしまったのではないか、こういうように思いますが、それが一点。  さらに、公共事業によって雇用拡大がなされる、十万人程度の人がふえる、こういうことを言われておりますけれども、いわゆるブルーカラーにすぎない、特殊な人たち、労働力にすぎないと思います。しかもそういう中で財政の寄与率は国民総支出に対して二七%だ、それを分けて、財政の中では投資部門と経常費部門投資部門は拡大してそして景気を刺激するようにするのだ、こうおっしゃっていますが、経常部門については抑制ということを強くお話しになります。しかしこの経常部門も、人件費や扶助費だけではございません。やはり産業政策の経費が入っている。これは一つの投資だと思います。いたずらにただ抑制抑制ということではなくて、この不況対策としてばらつきのない経済成長を図るためにも、やはりこういう面にもう少し力を入れていくべきではないかと思いますが、その点大臣のお考えを伺いたいと思います。
  332. 村山達雄

    ○村山国務大臣 きのうは今年・度予算の公共投資に限って御質問があったものでございますから、その点お答えしたわけでございます。  いままでしばしばお答えしましたように、公共事業は主体でございますけれども、そのほかにも住宅関連のあるいは土地の問題、これは財投あるいは税制を通じてやっていることは御承知のとおりでございます。そして、先ほどから問題になっております構造不況業種につきましても予算措置を講じているところであり、また円高によって困っております中小企業につきましても、十分なる予算の措置を講じていることは御存じのとおりでございます。  そこで、全体として考えているわけでございますが、特に公共投資についての御質問でございますので申し上げますと、なるほど公共投資というものは、実際上は建設業者を通してやっていくことになりますが、それはすなわち、やはり最初は基礎資材の方に需要が向いていきますから、その波及効果がずっと出ていくであろうということでございます。ですから、前の高度成長期のときには、大体一・八くらいの効果があるということは、当然全経済に及ぼす効果を見ているわけでございます。  なお、その執行の方法につきましては、当委員会でいろいろ御注意をいただきまして本当にありがとうございました。われわれも全くそうだと思っているわけでございまして、雇用効果の高い生活関連施設の方にふやす伸率を大きく掛けているわけでございます。なお、雇用情勢の悪いところ、あるいは、さらにはいま有効求人倍率の低いところをやったらどうであるかとか、あるいは元請の業者には前渡金がいくけれども下請にはいかないから、そこは注意しなさいとか、いろいろ御注意を受けておるわけでございますので、そういう点を執行の面でもあわせやっていきまして所期の目的を果たしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  333. 永原稔

    永原委員 この場で公共事業論議はもうやめまして、いまお話の出ました構造不況業種、しかし構造不況業種だけではなくて、行政指導によって不況に陥っている業種もあるということを御指摘したいのです。  その端的な例がソーダ工業に見られます。ソーダ工業は非常に関連部門が多いのは御承知のとおりですけれども、鉄が産業の骨であり、石油が血であるならば、ソーダ製品工業はまさにビタミンであるとさえ言われるくらい関連企業が多いわけですけれども、そういう中で、ソーダ工業は約柱千億の出荷額、それが各産業にはね返って二十兆から三十兆まで達するのではないかというような出荷額に結びつきます。そのくらい素材提供の産業であり、また、基礎産業と言ってもいい性格のものだと思いますけれども、その現況はどうかといいますと、製法転換によりまして非常に企業の体質が悪化してしまった。国際競争力を喪失してしまった。また、メーカーの倒産というような事態が予測できる。そういう中で、関連部門に多くの悪影響を与えていますので、雇用問題にも波及し、それが社会問題に発展するおそれがある、そういうパターンで現在進んでいると思います。これをもたらした原因は何かといえば製法転換、この行政指導であった、こういうように思います。これは背景としては水俣病がありますので、あの当時の状況を忘れているわけではございません。また、のど元過ぎて熱さを忘れるわけではございません。しかし、あの時点をもう一度振り返ってみたいと思うのでありますが、四十八年十一月に、その前にできました水銀等汚染対策推進会議において結論が一つ出されました。五十年九月までに能力的に大体三分の二の苛性ソーダ工場を水銀法から隔膜法に転換させるというようなことが決まり、五十三年三月末を目途に残りの三分の一を転換させる、そして、それまで水銀法を使っているところについてはクローズドシステムを四十八年十二月までに完成させる、こういうような結論で行政は進んでいったと思います。  そういう中で行政はかなり無理をされたという実態があるわけです。融資をストップするとか、あるいは操業停止を命ずるとか、あるいは転換についての念書を取るというようなきつい御指導があって転換を余儀なくされたという会社もあるように聞いております。これは、五十年九月達成というのが目標でございましたけれども、多くの会社、三分の二の会社が転換するということになれば、機械の集中的な発注によりまして納期が遅延いたします。また、その間にオイルショックをはさんでおりますので、資材の高騰によりまして資金需要が非常に膨大になり調達に困難を来した、そういう理由もございましたでしょう、約半年おくれて五十一年三月には大体三分の二近いものができたように聞いております。企業は非常に努力したと思うのです。一体この目標が本当に三分の二近く達成したのかどうか、この点をひとつ伺いたいと思います。  また、そのときの転換基準が一応定められていて、工場の施設が建設されてからかなり長期間たっているもの、また水銀の使用量が業界の平均使用量よりは高いもの、こういうものを転換させるのだという方針で御指導なさったというように聞いておりますけれども現実の問題は、たとえば千葉の新鋭工場は建設されて経過期間はまだ三、四年しかたっていなかった、それが第一期の転換計画の中に繰り入れられ、また、北陸地域の工場は経過期間が長かったけれども第二期転換の方に繰り入れられた。こういうような、一応転換基準が守られないような状況が見られましたけれども、どういう御指導をなさったのか、これは通産御当局に伺いたいと思います。
  334. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 転換の経緯につきましてはいま先生が御指摘になりましたとおりでございますが、若干補足をさせていただきますと、昭和四十八年二月でございますが、通産省の産業構造審議会の化学工業部会におきまして答申をいたしておりますが、この答申によりますと、今後新設する苛性ソーダの工場につきましては隔膜法を採用すべきこと、こういうことになっておったわけでございます。ところが、現在では、通産省の行政指導に対しまして過剰介入であるとか、あるいは統制的であるとかいう御批判が強いのでございますが、当時は逆でございまして、通産省の介入の仕方が足りな過ぎるという御批判が非常に強かったわけでございます。そういう批判、世論を反映いたしまして、いま御指摘になりましたように、四十八年十一月には、十二省庁から成っておりますところの水銀等汚染対策推進会議、議長は環境庁長官でございますが、この会議におきまして、いま御指摘になりましたように、既存、新設を含めすべて隔膜法に転換すべし、そして昭和五十三年三月以降は日本から水銀法の工場がなくなるような行政指導を通産省がすべきである、そういう方針が十二省庁の会議におきまして決定をされたわけでございます。その決定に従いまして通産省は行政指導を進めてまいったわけでございまして、その結果といたしまして、昭和五十三年三月末におきましては、日本の苛性ソーダの全能力四百五十一万トンのうち六一%が隔膜法に転換をし、残りは水銀法として残っておる、現在こういう状況になっております。  その過程におきましてどういうような基準でもって転換を進めたのかという御質問でございますが、これにつきましては、先生御指摘のような点ももちろん勘案をいたしましたけれども、具体的には各企業と通産省の間で一々相談をいたしまして、あなたのところは一体どのくらいの転換ができるのかというようなことを、すべて個別にやりまして、結局その企業で、そういう大きな転換を遂行するような財務的な能力のあるなし等を特に勘案をいたしまして、企業の希望等も入れ、転換を実行してきたわけでごいます。したがいまして、この転換は一応通産省の行政指導でございますが、そのバックには十二省庁の決定というものがございます。  それからまた、業界の方におきましては、この行政指導に対しまして、これは法律じゃございません、行政指導でありますから、もちろん拒否する権利もあるわけでございますけれども、実質的には、全部この行政指導を受理するということで、合意の上で進められてまいったものでございます。しかも、当時の景気情勢を反映いたしまして、転換を実施した企業は、百の設備を廃棄して百四十の隔膜法設備をつくるというようないわば大幅な転換をやっておるというようなことが今日裏目に出ておる、そういう状況もございます。
  335. 永原稔

    永原委員 いろいろ事情があったことはわかりました。しかし、能力的に目標達成にかなり無理をされていた、かえってそれが弱気だったという当時のいきさつがあったということもありましたけれども、実態を伺うと、かなり強力に転換をさせられた、背後に十二省庁があったというようにお話しになりますが、そういうような気がいたします。  六一%の転換、こういうことですが、いまのお話ですと、能力差、能力の有無とか、あるいは希望とか、いろいろ考えられて、その転換の割合はそれぞれ各社によってばらつきがあったと思います。  いま苛性ソーダの製法として、水銀法、隔膜法、それから開発実用化の近いイオン交換膜法、この三者がありますけれども、同一規模で生産に従事した場合にどの方法が一番安くて、どの方法が一番高いでしょうか。また品質の点においてどうでしょうか。
  336. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 まずイオン交換膜法でございますが、これにつきましては、専門家を集めまして技術委員会をつくり検討していただいたわけでございますが、その結論によりますと、イオン交換膜法の技術的、経済的な性能の判定をするのには、なお今年いっぱい程度操業の結果を見ないと判定はできない、こういう結論になっておりますので、いまのところ判定をいたしかねる次第でございます。  次に、水銀法と隔膜法でございますけれども、これにつきましては、隔膜法はほとんど償却ができておらない工場であるのに対しまして、現在存在するところの水銀法工場はほとんど償却済みの工場でございます。それからまた、隔膜法の工場はフル操業する場合にはかなりコストが下がってくるのでございますけれども、現在は御承知のような不況の状況でございまして、繰業率が非常に低いということもありまして、隔膜法のコストは著しく高く、まあ大ざっぱに申し上げまして、現在動いておる隔膜法と水銀法のプラントを比較いたしますと、トン当たりおおむね二万円ないし二万五千円の格差がある、こういうふうに一応業界で言われております。
  337. 永原稔

    永原委員 柴村羊五さん、こういうような方々の御本を見ますと、やはりイオン交換膜法は品質的には水銀法と変わらないような良質のものができる、しかし隔膜法では品質が非常に悪いので、それを濃縮するためにさらに重油もたいてスチームでやらなければならないというような指摘もございまして、順位からすると、水銀法とイオン交換膜法、それから隔膜法、そういうような順序で能率的にあるいは効率的になっているのだということが指摘されておりますけれども、イオン交換膜法についてはことしいっぱい検討しなければわからぬ、こういうようにお逃げになりましたが、実際はわかっているのじゃないですか。――これは時間が食いますので……。  とにかく、そういうように先発組に非常に無理を強いたというのは否定できない事実だと思うのです。いま局長お話しになりましたように、昨年の五月二十五日の水銀等汚染対策推進会議を受けて、そこでは第二期転換が延期されましたけれども、それを受けていまお話の出ましたイオン交換膜技術評価専門委員会、またクローズドシステム調査専門委員会、こういうものが設けられ、いろいろ検討が加えられたということを承っております。そして昨年の十月二十八日に一応その報告がソーダ工業製法転換推進対策委員会に出されておりますが、それを拝見いたしますと、一応イオン交換膜法は工業化可能な水準になっているけれども、いまお話しのように二年間程度は実証データを求めるために続ける方がいいのだということが報告され、また水銀法についてクローズド化システムが非常に進んで、大気並びに水質について地域住民の健康に影響を与えるおそれはない、こういうような報告がなされたように聞いております。  そこで、まず第一番目に環境庁に伺いたいのですが、第二期転換を昨年の五月二十五日に延期なさった。これは四十八年十二月までにクローズド化システムを確立せよ、その状況を見た上で御判断になって水銀法の転換も延ばしてやむを得ない、こういうような御結論になったのかどうか、それが一点。  また、クローズドシステムのこの通産省の方の調査専門委員会の報告にありますように、地域住民の健康に大きな影響を与えるおそれはない、こういうように現段階の技術水準は進んでいるのかどうか。  それから、公害の観点からしますと、第二期転換はどうしても推進しなければならないものであるかどうか。  その三点についてまず伺いたいと思います。
  338. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  まず、第一点でございますが、一つはクローズド化の関係でございます。このクローズド化の方は、先ほど先生からもお話しございましたが、四十八年の十二月までということが一カ月ずれまして、四十九年の一月、これで完全にクローズド化は完了をしたわけでございます。そこで問題は、あと残っております面は、五十二年度末までに隔膜法への全面転換ということでございましたが、この面につきましては、先ほども通産省の局長から答弁いたしましたように、大体六割ぐらいまでしかいかないだろうということでございまして、その面につきましては、いわゆるアスベスト法によります製品は、品質的にも若干低品位のもので、セロハンとか化繊等には使えないということもある。したがいまして、その分につきましてはイオン交換膜法、これを開発して、そういう需要にもこたえ得るそういう技術を確立をしたい、それまでひとつ延期をしたいという話がございまして、それで第四回の推進会議におきまして十二省庁集まりまして相談をいたしました結果、延期やむなしということで延期をしたという経緯でございます。  それから第二点でございますが、第二点は、クローズド化をいたしました、その結果につきましては、実はただいま先生からもお話がございましたように、昨年の十月に通産省の方で調査を依頼されましたクローズドシステム調査専門委員会、この報告が昨年の十月なされたわけでございます。それによりますれば、各工場は全般的に良好なクローズドシステム化を行っており、安全性についてはクローズドシステムが現在の水準で維持されれば、水質汚濁等を来すおそれはないという趣旨の報告でございます。  そこで、環境庁は環境庁といたしまして水質等につきまして県等を通じまして調査を現にやっております。その結果によりますれば、苛性ソーダ工場及びその周辺の水域の調査の結果でございますが、これにつきましては未転換工場の、まだ水銀法でやっておる工場でございますが、工程排水で特に問題になっているものはない、工場排水そのもので問題になっているものはない。それからまたその周辺の公共用の水域の水質につきましても、未転換工場に起因して現在特に問題になっているという地点はない。したがいまして、簡単に言えば、そういう環境保全上特に問題は生じておらないというのが第二点に対するお答えでございます。  第三点は、そういうことであれば、クローズド化をしておることでもあり、現在環境汚染といいますか、環境上問題がない、そうだとすれば、何で製法転換をさらに進めなくちゃならぬのかというのが第三点のお尋ねかと思います。これにつきましては、いままでの経緯その他につきましては、先ほども通産省の局長から申し上げたとおりでございますので、それは既定方針でいくという一般論は、これは当然でございますが、そのほか、環境庁の観点からいたしますと、やはり水銀の問題、水銀公害といいますのは、これは四十八年当時も非常に大きな社会問題にもなったわけですが、現在でもまた、水俣なら水俣にいたしましても、あそこの汚泥のしゅんせつの問題等をめぐりまして、いまでもいろいろ問題が出ておるわけでございます。したがいまして、事水銀という問題につきましては、これは蓄積性汚染の公害というものでございますから、その点は、今後とも工場の排水なりあるいは公共用水域の水質というものにつきましても、念には念を入れて十分監視も続けていくということが必要でございますし、さらに、わが国は台風なり地震なども非常に多い、災害に襲われる場面の多い国でもございますし……(「答弁が長い」と呼ぶ者あり)そういう面からいたしましても、単にクローズドというだけでなしに、さらに既定方針に沿って進めていきたい、こういうふうに思っております。  以上でございます。大分長い答弁になりました。
  339. 永原稔

    永原委員 通産省の方に伺いますけれども、いまのようなお話で、環境庁とすれば、水銀を使用することは台風とかあるいは地震とか、そういうことで危険だ、なるべく転換を図るようなお気持ちでお話がありましたけれども、イオン交換膜法が実用化されるかどうか、今年末に検討なさるようなお答えが先ほど出ました。一体第二期転換はイオン交換膜法でやらせるのか、そして五十三年三月末というのをいつまでに延ばそうとされるのか、その辺のお考えはどうでしょうか。
  340. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほど申し上げましたように、水銀法の転換に関しましては、現在行政指導の指針になっておりますのは、昨年五月の第四回水銀等汚染対策推進会議で決められた方針でございます。この方針は変わっておりませんので、われわれとしてはこの方針に従って転換の指導を進めていきたい。具体的に申し上げますならば、イオン交換膜法の技術評価が確定した段階におきまして、もしそれが使える技術であるということでございますならば、イオン交換膜の転換を可及的速やかに進めていきたい、こういうことでございます。
  341. 永原稔

    永原委員 いろいろお話を承りました。行政的な面が非常に多かったものですから途中でひやかされましたけれども、国の指導に忠実であった企業、それが二千数百億の投資をしたように聞いております。その七割程度は開銀資金であって、自己資金はわずかしがなかった。開銀資金がその当時七・七%、七割方が融資されたわけです。オイルショックをはさんでおりますので、高金利の市中金利がそのまま借りられております。約九%、歩積み両建てなどを入れますと一〇%近い金利を払わざるを得ない状況になってきております。  また品質純度が非常に低くなっていますので、先ほど言いましたように濃縮用のスチームもたかなければならない。特別に重油の使用があるわけです。原料塩も隔膜法の方がより多く使われるというような情勢がございますし、先ほど天谷局長が言われましたように、水銀法と隔膜法との生産価格差が二万円から二万五千円ある。こういうようなものを業界の自主調整に任せていますけれども、いま五千五百円、これについて余りにも差が大き過ぎるのではないだろうか、こういうような気がしてしようがないのです。  そういう中で、昨年の六月八日、商工委員会において民社党の玉置委員が御質問にもなりました。決済金のことについて、あるいは稼働率の問題についていろいろ御質問なさっていますが、それについて天谷局長、検討なさるという返事をなさっておりますけれども、一体どういうような状況で進んでいるのか、その辺を承りたいと思います。  いろいろ挙げてあるわけですけれども、まず決済金の問題です。これは業界ベースで転換組と未転換組の意思の疎通を図って決めるべきだ、こういうようなことをお答えになり、最後にどうしてもうまくいかない場合にはわれわれも依頼を受けて調整するというようなことですけれども、もっと積極的にこれをやっていかなければ、行政指導によって先発した転換工場と、指導を受けても結局変わらなかった工場との格差が非常に大き過ぎる、こういうものを取り除かなければ行政に対する不満というものが出てくると思いますけれども、そういう点についてはどうでしょうか。
  342. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 コスト差決済の問題に関しましては、これが事の性質上、どうしても業界ベースの合意がなければ成立しない問題であるというふうにわれわれは考えております。当時コスト差決済の額は五千円でございましたが、その後業界の話し合いもあり、通産省の指導もございまして、五千五百円まで訂正をされております。しかしながら隔膜法転換がおくれておる関係もございまして、この不均衡が長く続くことになりますので、業界ではさらにこの不均衡を是正するよう、現在話し合いを続けておるところでございます。わが方といたしましては、この話し合いを見ながら、さらに不均衡の是正に努力をいたしたいと思っております。
  343. 永原稔

    永原委員 たとえば固定資産税の減免などについても玉置委員は触れております。また重油の輸入関税の問題についてもいろいろ触れていますけれども、こういう問題はやはり税制にかかわる問題であるので、税務当局とよく相談をしていきたいというようなお答えが出ておりますが、こういうものについて、大蔵省の事務当局はどういうように御検討になったでしょうか。
  344. 森岡敞

    ○森岡政府委員 いま御指摘の隔膜法による電解装置につきましては、コストの面、品質の面でいろいろ問題があるわけでございます。そのようなことから、現在は通常の負担の五分の三に軽減をいたしております。取得後三年度問その軽減措置を講じておるわけでございます。この点は、租税特別措置法によりまして法人税の特別償却が認められております機械装置について、固定資産税も同様の軽減措置を講じておるというわけであります。  毎年度、税制改正につきましては各省庁から御要望が出てまいります。それに応じて私ども十分協議をしてやってまいっておりますが、この対象装置は五十三年三月末までに取得したものについて特別償却を認め、かつ固定資産税、三年度間軽減をする、こういう措置でありますが、その五十三年三月末以降どうするかという問題につきましては、先ほど来いろいろ御意見のあるところも含めまして、関係省庁と十分意見調整をした上で適切な措置を講じたい、かように考えております。
  345. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 原重油関税の問題だと思いますが、御承知のように、原重油関税は、エネルギー対策なかんずく石炭対策の財源として現在徴収しているものでございまして、隔膜法で重油を使っていくというのは、燃料として使っていくわけでございますので、そちらの面で税をまけていくということは困難だというのが私ども考え方でございます。  先生御案内のように、一定の規格の、A重油で漁業用に使うというものについては、漁業の特殊性に着目して、原重油関税であってもまけているというのが唯一の例でございます。
  346. 永原稔

    永原委員 余り進んでいるお答えが出ないのは残念ですけれども、開銀の金利などについては七・七%が適用されておりますが、これについて今後とも引き下げに努力をする、こういうように天谷局長はおっしゃっています。これについては、どういうお見通しでしょうか。
  347. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  開発銀行の既応金利の引き下げにつきましては、一般に不況業種に属する企業であり、かつ赤字のものについては、これを実施しているわけでございますけれども、ただ、その場合にも八・九%を超えるものについて八・九%まで下げているわけでございます。ところが、この苛性ソーダ会社に対する貸し付けは、八・九%をかなり下回った金利で貸し出しが行われておりますので、当面、金利の引き下げは困難かと考えております。ただ、いろいろ資金繰りその他でかなりむずかしい事情にある会社もあると考えられますので、このような会社につきましては返済猶予という形で対応してまいりたい、このように考えております。
  348. 永原稔

    永原委員 検討されても、なかなかいい答えが出てこないようですけれども、市中銀行も非常に高金利だということを先ほど申し上げました。やはり行政指導によって転換を余儀なくされている、こういうものについて、金融当局は、通産省ひとりで苦しんでおりますので、協力してめんどうを見る必要があるのではないでしょうか。そういう点はいかがでしょうか。
  349. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  市中銀行の貸し出しでございますが、これは長期信用銀行を除きましては、長期プライムレートが下がるのにその都度応じて、既応の金利も引き下げを行っております。ただ、長期信用銀行は調達手段が固定金利でございますので、貸し出しも引き下げを行っていないわけでございますけれども、先生御指摘のように、個々の会社につきまして非常に実情を見まして、ケース・バイ・ケースで引き下げあるいは返済猶予等の措置は考えられると思っております。
  350. 永原稔

    永原委員 行政的な措置によっていままでいろいろ運営されてまいりました。私はここで思い起こすのですけれども、年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず、こう申します。そういう中で行政当局もどんどん変わってまいります。そういう中で大臣もどんどんおかわりになります。昨年の田中通産大臣お答えを見ますと、行政官として十分反省しているというようなことまでお答えになっていらっしゃいます。行政指導で企業間に非常にばらつきが起こっているのです。しかも、あの社会的な混乱した背景を受けて、経済的にあるいは技術的に十分な検討がなされないで、政治的な判断によって隔膜法への転換ということが急遽決められた、そういうように思います。  それで、窓口になる通産省、これは十二省庁にしりをひっぱたかれているのではないかと思いますけれども、ひとり苦労して転換について飛び込んでおるのです。やはり関係する省庁がこれを守り立てていくような措置が必要だと思いますけれども、私は、このソーダ工業の意義というものをあえて申し上げたのは、大蔵大臣にも関係大臣にも聞いていただこうと、これは河本通産大臣は専門家ですので私はあえて顔を見ないで、大蔵大臣の顔を見ながら申し上げたのは、このソーダ工業の持っている意義というのが非常に大きい、それが国際競争力を失うような状態になってきている。それも行政指導が非常に先行したため、しかも全面転換はいつになるかわからないような状態で、非常にアンバランスが出ている。こういうようなものを見ますと、やはり開銀の資金とか、あるいは市中金利とか、あるいは重油関税の問題にいたしましても、大蔵当局にお考えいただきたいし、また、固定資産税、こういうものについては自治大臣にお考えいただきたいと思うのです。  そのほか、あえて言うならば、隔膜法に転換したために多くの路線が余っている。これを抱え込んでいる。これは簿価価格にしますと二千五百トン、約百二十五億になるというように聞いております。そういうものを遊ばせざるを得ない状態になっている。また、繊維産業ですと、スクラップにする経費について政府はめんどうを見ます。しかし、水銀法から隔膜法にかわる場合に出た電解槽のスクラップ化については何もめんどうが見られていない、こういうのが実態です。また、これは利用の方法があるという意見があるかもしれません。しかし、こういうような事務当局、行政当局だけの話し合いでは、いままでのお答えを聞いてもわかりますように、何ら進展が見られないのです。行政ベースでは解決ができない問題だと思います。これは出発点を見れば、政治的判断によって行われたことだと思いますので、もはやこういう段階になりますと、大蔵大臣、通産大臣の政治的な判断によって、いま申し上げたような点について前進を図っていただきたい。こういうようなものが一つの不況業種になっている、ああいうソーダ工業、特にこれが基礎産業であるのです。素材提供の産業であるのです。それだけに、しかも行政は強力に指導した、そうしてこういう状態になっているというのであれば、当然政治的な判断でこれを救うべきではないか、こう思いますが、大蔵大臣、河本通産大臣お答えを最後に承りたいと思います。
  351. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほどから永原さんのお話を聞いて、非常に大きな問題だと思うのでございます。しかし、政府機関の金融あるいは金利、こういったものは、ケース・バイ・ケースの問題は違いますけれども、金利その他につきましては、大体法律で裏づけのあるものに従ってやっているわけでございます。不幸にいたしまして、苛性ソーダ業界が不況産業にまだ指定されていないわけでございますので、それがもし主務官庁によりまして指定されるということになれば、その線で動く面がたくさんあるだろうと思います。  なお、市中金融の問題につきましては、やはり金融機関は零細な預金を預かって健全に運用しなければなりませんけれども、同時にまた、金融機関というのは公共機関でございますから、できるだけそういったような産業界のニーズに合うように公共的使命を果たしていくということは、私は当然だと思うのでございます。そういう意味で、市中金融機関については十分指導してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  352. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この問題は、非常に複雑で困難な問題なんです。ただ、昭和四十八年に水銀法ではだめだ、余りにも公害が大きいではないかということから、政府が指導をいたしまして隔膜法に一〇〇%全部転換させようという、その過程で技術上に問題があるということで転換が六割でとまった、こういう経過等もありますので、企業間の格差もありますし、それから転換をした隔膜法による製品の品質の問題等もございまして、なかなか複雑でありますけれども、しかし、このために転換したところは非常に困っておられるということは事実であります。重要な産業のことでありますから、なお、さらに関係者と十分相談をいたしまして、できるだけのことはしていきたいと思います。
  353. 永原稔

    永原委員 ぜひ善処をお願いして、質問を終わります。
  354. 中野四郎

    中野委員長 これにて大成君、永原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十九分散会