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1978-02-01 第84回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       海部 俊樹君    金子 一平君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    白浜 仁吉君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷川 寛三君    根本龍太郎君       藤田 義光君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       森   清君    渡辺 栄一君       井上 普方君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 利春君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       多賀谷真稔君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    飯田 忠雄君       大橋 敏雄君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    河村  勝君       小林 政子君    寺前  巖君       山原健二郎君    大原 一三君       小林 正巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君         国 務 大 臣 牛場 信彦君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府人事局長 秋富 公正君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         警察庁交通局長 杉原  正君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁長官官房         審議官     四柳  修君         国土庁土地局長 山岡 一男君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房審         議官      加藤 隆司君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         気象庁長官   有住 直介君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君  委員外出席者         会計検査院長  佐藤 三郎君         会計検査院事務         総局第一局長  前田 泰男君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月一日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     森   清君   川崎 秀二君     谷川 寛三君   古井 喜實君     渡辺 栄一君   横路 孝弘君     多賀谷真稔君   浅井 美幸君     大橋 敏雄君   矢野 絢也君     飯田 忠雄君   荒木  宏君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     川崎 秀二君   森   清君     奥野 誠亮君   渡辺 栄一君     古井 喜實君   多賀谷真稔君     横路 孝弘君   飯田 忠雄君     矢野 絢也君   大橋 敏雄君     浅井 美幸君   山原健二郎君     小林 政子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑に入ります。  この際、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣
  3. 村山達雄

    村山国務大臣 かねてから検討してまいり、また当委員会において要求のございました五十三年度ベースの財政収支試算を当委員会に提出いたしました。今後の財政運営についての御論議の素材としていただきたいと考えております。
  4. 中野四郎

    中野委員長 この際、お諮りをいたします。  ただいまの財政収支試算につきましては、本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――  財政収支試算     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  6. 中野四郎

    中野委員長 議事の途中でございますが、ただいまK・S・ヘグデ・インド下院議長御一行が本委員会の傍聴にお見えになりました。御紹介をいたします。     〔拍手〕     ―――――――――――――
  7. 中野四郎

    中野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。多賀谷真稔君。
  8. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昭和五十三年度予算案審議に入る前に、冒頭に申し上げたい問題がございます。  国際的な最大の汚職事件として追及してきたロッキード事件裁判進行中、われわれのみならず多くの国民が疑問を抱いてきたいわゆる灰色高官名前が、三十日の東京地裁法廷大久保利春丸紅元専務の証言によって明るみに出ました。いわゆる三十ユニット、三千万円に上る具体的な贈収賄事件の内容に関するものであります。大久保証人の明らかにしたところによれば、全日空トライスター採用を決定した昭和四十七年十月三十日の前夜、全日空機種選定の過程でお世話になったいわゆる政府高官自民党議員橋本登美三郎運輸大臣二階堂進官房長官・現自民党総務加藤六月運輸政務次官・現予算委員会理事福永一臣自民党航空対策特別委員長佐々木秀世運輸大臣佐藤孝行運輸政務次官に多額の賄賂を贈ったということであります。まことに忌まわしい問題であります。  いままでの自民党幹部の言動、または当事者の一昨年十一月二日の当委員会秘密会での弁明、この行っていることについても、重大な問題が残っておると思います。橋本運輸大臣佐藤運輸政務次官は現に刑事訴追中の人物でありますが、二階堂官房長官佐々木運輸大臣加藤運輸政務次官福永代議士はすでに時効になったという人たちであります。だからこそ特に問題があります。  福田総理は、三十日のこの報道を聞かれて、六人はおかわいそうだと語ったそうでありますが、福田総理もまた、倫理観と正常な政治的道徳観が麻痛しているのではないかと思わざるを得ません。かわいそうだという意味はどういう意味であるか。私は潔白だと国会委員会弁明した人物たちが、正式な法廷での検察庁の資料に基づいた証言で収賄した事実が明らかにされた以上、福田総理は、自民党総裁としていかなる考えを持っておられるのか、また、これら関係者にいかなる適切な処置をとろうとしておるのか、明らかにしていただきたいと思います。  しかも、そのうちの一人は当予算委員会理事であり、他の一人は政府特使として、政府を代表して最近外国を訪れた人であります。この重大な事件について、かわいそうだという総理の真意は一体どこにあるのか、国民の前に明らかにしていただきたいと思います。  刑事訴追を受けていない人物についても、時効になっているからといって不問に付するわけにいかないのであります。ロッキード事件の究明について、衆議院においても道義的、政治的責任解明する決議が行われており、国会の権威、政治信頼性からいっても、明らかになった人物を当予算委員会に喚問すべきであると考えるのであります。委員長にこのことを強く要請するものであります。  さらに、ロッキード特別委員会を中心に積極的な追及を今後行わなければなりませんが、福田総理は、従来のように陰に陽に解明を妨害し、ロッキード隠しなどをしないで、政府として積極的に協力すべきであると思いますが、総理としての考えを明らかにしていただきたいと思います。
  9. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ロッキード事件は一昨年起きた事件であり、わが国民の注視の大事件であります。真実一つでありまするから、その一つであるところの真実解明せられるということを、私は切に期待をいたしております。  私が、今回の大久保証言の直後、ああかわいそうだなと、こう申し上げた、そのとおりでございます。それは、これらの関係者がああいう事実はありませんと、こういうふうに言っておるわけであります。非常に明快に言っておる。もし、それにもかかわらずそういう事実があったとすれば、これは何をか言わんであります。しかしながら、もしそういう事実が本人たちが言うがごとくなし、こういうことになりますと、この人たち嫌疑を受けたまま、一生涯その嫌疑を晴らす機会がなくて苦悩しなければならぬ、こういうような立場に追い込まれるケースが多いのじゃないかと思うのです。そうであるがゆえに、私は、ちょっとこれはかわいそうだなと、こういうような感想を直観的に漏らした、こういうことでございまして、事件事件といたしまして、真相はただ一つである、この一つ解明されなければならないということにつきましては、私は固くそう信じております。
  10. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法務大臣、これに対して法務大臣の所見を承りたい。
  11. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 法務省検察庁といたしましては、犯罪事実がありや否やを調査する任務でございます。でありますから、捜査の結果、犯罪ありと考えた者は裁判起訴をしておる。現在審理中でございます。それだけのことでございます。
  12. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二人の刑事訴追の人はそうですけれども、あとの四人の人は時効になったというので、とにかく名前がはっきり出たわけでしょう。そのことを大久保証人裁判所で認めたわけです。ですから、大久保証人からはっきりと名前が出ているわけです。ですから、これについてどういう態度でいかれるのか。  総理も、ただ、かわいそうにと言ったことの弁明だけで、私が聞いたのは、その後の処置国会において審査をする場合の協力、いままでのように妨害的行為や陰に陽に隠し立てをしない、こういうことを聞いておる。それに対する何らの答弁がありません。
  13. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、真相解明されなければならぬと、こう申し上げましたが、その解明の場といたしましては公判廷がある、それから国会調査権発動というケースもあります。  国会調査権発動につきましては、政府といたしましては、目下本件公判係属中であるという制約はありまするけれども、その制約の中においてできる限りの協力はいたします。
  14. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 その他の各位についてというお話でありますが、これは、もう過去の国会においてもいろいろ御審議をいただいておりますように、捜査段階ではさような事実が認められるが、一部においては時効等によって起訴に至らない、一部においては金銭の授受はあったと捜査段階では認められるが、いわゆる職務権限関係がない、こういうことで起訴に至らなかった、こういうことでございます。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 刑事訴追の問題は刑事訴追として裁判中ですけれども、本来はいわば灰色高官と言われる、本来ならばそういう被疑者であるけれども、時効にかかっておるとか、そういう理由でいわば道義的責任が追及される人々の問題でありますから、この問題については、総理大臣は、これは国会の問題として、ロッキード特別委員会もありますし、しかも予算委員会で最初起こった問題でもあるという経過を考えまして、ぜひひとつ自民党総裁として積極的に審議の場を与えるように努力をして、そのことが約束できるかどうか、これを御答弁願いたい。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本件公判係属中の問題であります。そういう制約がありますが、その制約の枠内におきましてできる限りの御協力をいたします。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、続いて審議に入りますが、福田総理は、昨年は経済の年と言われた。そしてその後、全治三年で石油ショックは治ると言われ、それから四月には、重傷を負ったけれどもやがて退院できると言われ、あるいは六月の参議院選挙前には、夏には目立って好転をすると言われ、そして私どもに第一次補正を提出した。その基礎になった、九月三日には、夜明けはあと一息だということで、そうしてわれわれに補正予算審議を煩わしたわけであります。ところが、補正予算審議しておるその間に、もうすでに補正予算では間に合わない状態が現出してきた。この一年を振りかえって見ますると、まあ、総理から言えば、経済の年というよりも経済失敗の年であった、あるいは経済危機を深めた年であった、こういうように言えると私は思うのです。  現実に、労働省の統計始まって以来、長い完全失業者状態が、百万人以上がずっと続いておる。そうして、この十一月には求人倍率がちょっと上がったようですけれども、要するに〇・五一という有効求人倍率は、これまた統計をとって以来最悪の状態である。中小企業も御存じのような倒産続きで、しかも大型化してきた。そういう中で農民の方々も、減反問題、そういうやさきに、選択的拡大といった目玉商品ともいうべき果樹であるとかあるいは畜産に、日米通商交渉を通じて非常な大きな打撃を受け、非常に失望をしておる。あるいは漁民も、二百海里の専管水域を設けられたことによって、これも展望をなくしておる。こういう状態である。  そこで、先般、石橋委員の質問に対して、総理は、円高が発生したという状態で実は計画が狂ったんだとおっしゃったけれども、円高というのは自然現象でもなく、天然現象でもなく、気象現象でもない。当然その時期に予想できておったのではないかと私は考えるのですが、総理はどういうように考えておられますか。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、昨年の経済を顧みてみまして、ちょうど昨年のいまごろは、いま多賀谷さんからお話がありますように、経済の年だ、そういうふうに言っておったのです。それは、経済を何とかして安定させなければならぬ、また、安定させたい、また、それができるという意味合いで経済の年というふうに申し上げておったのでありますが、顧みてみますと、どうもそういうわけにいかなかった、まあ波乱重畳経済の年であった、こういうふうに言わざるを得ません。非常に残念なことです。  その背景は一体何だと言いますと、私は、国際収支、その側面で一番見通しの狂いがあったというふうに思うのです。去年のいまごろは、とにかく経常収支が七億ドルの赤になると見ておったのです。もちろん政策努力目標という意味もあったでしょうが、そこまで見ておった。それが赤どころの話じゃない、黒も黒ですね。百億ドルを超えるというような黒になってきてしまった。それを背景といたしまして、それと関連を持ちながら円高という問題が起こってきた。その辺に私は見込み違いがあったと言えば大きな見込み違いがあったと、率直にそう申し上げざるを得ないわけでありますが、まあ、しかし、経常黒字があれだけ大幅になる、だから九月末ごろから一、二カ月の間にあれほど急激な円高現象が起こる、そういうふうな見通しは、私は不明にしていたしておらなかったわけでありますが、これは全く私が予想した限度を超えた出来事が起こった、このように見ております。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 すでに、九月に入る前、五十一年の一-三月は一億ドルの黒字ですが、四-六は九億ドル、七-九が九・八億ドル、十-十二が十億ドル、五十二年に入って一-三が八・九、四-六が二十一億ドル、七-九が三十三億ドルですからね。こういうように黒字になれば、まあ欧州であれば、私は、もっと早く円高、円買い、ドル売りの状態になったと思う。ちょっとその情勢は、ローカルと言ったら言葉は悪いですけれども、わりあいにすぐには来なかった。しかし、政府としては、十分予想できたわけでしょう。  これだけずうっと黒字基調が続いてくれば、何らか手を打たなければならぬということが当然考えられてしかるべきじゃないですか。それをなぜ野方図輸出を伸ばしてきたのか。どういうわけでしょうか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 春ごろになりますと、ことしの経常収支は、これはマイナスどころの話じゃない、これは大変な黒になるだろう、こういう予想が出てきたのです。したがいまして、春ごろから、これを是正しなければならぬという努力がずっと行われておるわけでありまして、ことに八、九月なんかになりますと、そういう努力はさらにさらに強化される。そういう努力はいたしたものの、経済流れといいますか、わが国がとにかく石油ショック後順調な経済立ち直りを示した。これは諸外国に比べてかなり成績のいい立ち直りを示したわけです。その余勢というものがことしあたりに、ことしというか五十二年度に集中的に出てきておる。こういう大きな流れもありまして、なかなか是正ができなかったのです。しかし、円高というような問題がある、これは改めて反省をしなければならぬ、こういうことで思い切った開放体制もこれを進める。同時に、これを是正するための大きな決め手は何だというと、内需振興である。内需振興、そのための財政措置ということを考えるに至ったわけであります。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 日本貿易構造を見ますると、輸出が伸びても輸入が伸びない。それはかつてよりも、いい意味では非常に付加価値の高いものが輸出されつつある。このこと自体は日本経済としては非常にいいことです。  要するに、原材料がわりあいに少ないもの、それは鉄鋼であるとか造船というのは原材料は多いのですが、自動車であるとか電気器具であるとか、あるいはまた時計であるとかカメラであるとか、これは付加価値が高いのですから非常にいい。ですから、本来の工業の伸び方から言えば、近代化の方向から言えば非常にいいことなんですけれども、これが集中豪雨となって輸出市場を荒らすことになると、やはりチェックが来るのは当然ですね。そういう配慮が、ことに変動相場制の時代になりますと固定相場制の時期とは違うのじゃないか。変動相場制になってくると、結局、黒字が出ればそれだけ円高になるわけです。ですから、円高になれば今度はだんだんついていけない産業が出る、あるいは無理をして出血輸出をする、こういうことになる。そうするとぐっと伸びていくんですけれども、ある段階まで来ると、今度は逆にそれが不況になってくる。不況の要因をつくる。そこで、そういうことをやると悪循環になっていくわけでしょう。  ですから、政府としてはどうしてもそこで手を打たなければならなかったのじゃないか。要するに、変動相場制における貿易構造というものを考えて手を打つべきではなかったか、その対応が一つはおくれておるのじゃないか、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 変動為替制のもとにおきましては、国際収支における節度は、よほどおのおのの国が考えませんと、為替相場の乱高下となって国際経済を不安定ならしめる、こういう傾向が強いわけであります。ですから、いま国際為替相場は変動為替制のもとにあり、その中において、わが国だとかあるいはヨーロッパの国々、アメリカはもとより、国際収支の節度というものに十分配慮しなければならぬ立場にありますが、さて、実際にそういうふうにいっているかというと、アメリカは御承知のように二百七十億ドルですかの貿易赤字を露呈するというような七七年度であったわけでありますし、EC諸国におきましてもかなりの赤字を露呈するというような状態である。そういう中において、非常に重要な地位を占めるわが国はどうだと言いますと、これも本当に、経常黒字というものはそう大きい状態でないことが世界に対する貢献である、このように私は考えておるわけであります。そのような努力もした一  それから、そのようになるために第一の手段は何だというと内需拡大政策だというので、御承知のような五十二年度財政の運営をやった。しかし、国際収支面ではその響きが非常に薄かったのです。それは何だと言いますると、やはりわが国の貿易構造、八割までが原材料であり、その原材料ストックがかなりまだ累積しておって、それを消すのに景気政策は手いっぱいであった。したがって、現在、その在庫を消費し尽くしてなお新しい消費を呼ぶ、つまり、外国からの輸入を招来するというようなところまで行きかねた。これがこの五十二年度における国際収支が余りにも大きな黒字を残したという一つの大きな理由ではあるまいか、そういうふうに私は見ておるのです。  いろいろ努力はしたのですよ。しかし、努力はしたけれども、とにかく、私は、一番大きな原因はやはり輸出面にあったと思う。石油ショック後のわが国の経済立ち直りが諸外国に比べてかなり順調であった、わが国の対外経済競争力というものが強化された、その勢いというものが五十二年度に集約的にあらわれてきたのだ、こういうふうに見ております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 評論家的に分析されることは一向差し支えないのですけれども、それに対してどういう手を打ったかということが問題でしょう。それはいま日本輸出がどんどん伸びている製品は、国内市場が悪いからそれがプレッシャーになって伸びておるという製品よりも、本来非常に国際競争力がついたという自動車であるとか、これは価格だけではありません、サービスであるとか、非価格競争もある。それから電気器具とかその他の物とか、あるいはちょっと問題はあるのですけれどもプラント輸出。ですから、そういう面においては、それは国内需要を高めるということも非常に必要だけれども、もう一つは、やはりガイドラインか何か設けて、ある程度規制をするという処置が早くとられる必要があったのじゃないか。輸出が伸びるのは悪いことはない。それは悪いことじゃないですよ。ただ、これが輸出主導型で景気を回復しよう、どうも国内の景気も悪いからということが逆になって円高を招き、また不況になる、こういう状態じゃないでしょうか。  ですから、経済というのは一本ではいかぬわけです。やはり、そこに非常に国際競争力がある。しかし、それは節度が必要である。そういうもののチェック制度が必要ではなかったのでしょうか。いや、あんなに輸出が伸びているからいいよ、いいよ、これで国内景気の牽引車になると、こういうことで逆に円高不況を招く原因になったのじゃないかというように思いますが、その手の打ち方が非常に悪かったんじゃないですか。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かに、五十一年度の下半期は輸出がべらぼうにふえたわけです。そこで、諸外国では集中豪雨論というようなものが起きたわけです。ところが昨年、五十二年の上半期になりますると、その形勢が一変してきております。もう業界でもそういう集中豪雨的な行き方はやらぬようにする。また、外国からの要請、たとえばアメリカとの間においてはテレビの輸出を規制するというような動きになってくる。また、これは本決まりにはなっておりませんけれども、鉄鋼の輸出について日米間に論議が始まる。その論議を背景といたしまして鉄鋼輸出を静かにするというような動きにもなってくる。  そういうことで、五十二年の経済というものは輸出には支えられておりません。輸出の影響する限度というものはほとんどないと言っていいくらいです。もとより支えはしていますよ。しかし、五・三%成長といま見ておりまするけれども、五・三%上昇させるその力には輸出はなっていないのです。何がなっているかといいますると、個人消費、これはもとよりありますが、やはり変動要因のある景気刺激要因は何だというと、財政と設備投資でありますが、設備投資はふるわない。財政が主軸となって五十三年度の五・三%成長を支えておる、こういうことなんです。  それで、輸出はそういうふうに、とにかくそう大きく伸びはしない、また成長にそう大きく寄与しておりませんけれども、五十一年度の下半期に相当高水準になった。その高水準がずっと続いておる。ですから、輸出全体としては高水準です。ところが、輸入の方はどうかといいますと、輸入の方が一向、先ほど申し上げましたいろいろな事情でふえてこないというので、経常黒字問題というのが深刻になってきておるわけであります。輸入をふやすという施策、これをどうするかというと、これはやはり基本的には国内の需要を喚起して、そして在庫を食っちゃって在庫がなくなる、あるいはなくなりそうだ、だから、早く外国から入れて積み増しをしなければならぬという状態に持っていくということだろう、こういうふうに思いますが、しかし、そういう経常収支が非常に大きな黒字を露呈した五十二年度、この年を経過いたしまして、だんだん様相は変わってきておるのです。  御承知のようにテレビの問題があります。それから鉄鋼。いずれこれは日米間で新しい規制方針が決まるでしょう。さあ船舶はどうだというと、もう注文がそう外国からない。これは激減をする。そこへ持っていって一般に円高の影響、こういうものが出てくる。そういうことで、国際収支をめぐる環境は大きく変わってくる、私はこういうふうに見ておりますが、とにかく五十二年という年は、数年間の経済、国際経済の中での日本経済流れ、それに伴う現象が五十二年という年に集中して出てきたのだ、こういうふうなとらえ方をしております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくは五十二年の話をしていて、いまから先の話は後からするわけですからね。質問は五十一年、五十二年の質問をしているのです。あなたはいまから先のお話を続けてお話しになった。それはいまから聞きますよ。一体それで景気浮揚になるのですかということは、いまから聞いていきたいと思いますが、やはり、いままでは政策を間違えたのでしょう、政策の対応を。ですから、お話しになったことは、やはり後向き後向きのお話をなさっておる。いまからはそうでしょうね。しかし私は、果たしてあなたが考えられておるように国内需要が喚起されるかどうか、残念ながら非常にむずかしいのじゃないかということをいまから聞いていきたいと思うのです。  まず第一に、七%成長が伸びる、その伸びる最大の原因は何ですか。
  26. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五十二年度を展望しますと、輸出環境は、先ほど申し上げたようにそうよくない、これに期待することはもうゼロと言っていいくらいだろう、こういうふうに思います。また、景気を支えるというか、動かす大きな要因は設備投資である。この設備投資は電力会社なんかが協力をすると言っておる。そういう非生産業における投資、これはかなり見込めますが、製造業の方はそうは見込めない、こういう状態です。そうすると、景気を上げる要因、景気を動かす力としては個人消費がありますが、これは政策手段でそうけばけばしい、上がったり下がったりというのはむずかしい。景気調整のてこといたしましては残るものは財政だというので、財政が十五カ月予算、こういう形になってきていることは御承知のとおりであります。  そこで、十五カ月というのは、三カ月が五十二年度補正なんです。それからあとの十二カ月が五十三年度総予算、こういうことになりますが、五十二年度の補正予算、これも経済効果としての影響は、大部分が五十三年度にあらわれてくる、こういうふうに私どもは見ております。これらを総合いたしまして、財政がこの主力になって経済を引きずる、こういうことです。それを償うのに電力投資、その他の民間投資があります。それからまた、そういう経済活動を受けまして在庫投資、これも経済の上昇に寄与するであろう、こういうふうに見ておりますが、-中心は何としても財政です。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、個人消費は景気を支える要因には余りならぬとおっしゃるけれども、実質成長率で五十二年度の伸びは三・九、五十三年度は五・三でしょう。これは大きいですよ。パーセンテージは少なくても、過半数、五〇%以上ですから、率としては少なくとも、金額としてはこれが一番大きいでしょう。ですから、まず個人消費が果たしてこれだけ伸び得るのか。どういう計算をされて、こんなに個人消費が伸びるように計算をされたのか、これをお聞かせ願いたい。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多賀谷委員の言われましたことは、個人消費が構成比が大きゅうございますから、数字の上でやはり寄与率としては大きい、そのとおりでございます。七%成長を分析いたしますと、寄与率で申しますと個人消費支出が二・八ございます。したがって、一つ一つのアイテムといたしますと、その次が政府支出の二・一でございますから、一番個人消費が大きい。これは国民所得の五〇%以上を占めておりますからそうなります。ただ、総理が言われましたのは、そのようなことになることの起動力は財政が担わなければならない、こういう意味を言われたのであろうと思います。  それで次に、個人消費をそのぐらい見たのはどういう理由かとお尋ねでございますので申し上げますけれども、五十二年度の個人消費を名目で一一・四と考えておるわけでございますが、五十三年度は一一・九と考えております。この考え方は、まず個人所得全体としては、五十二年度に比べてまあまあとんとんぐらいではないかというふうに考えておるわけでありますが、その中で一人当たりの雇用者所得は、五十三年度は、どうもただいまいろいろな情勢を考えますと、必ずしも五十二年度よりいいとは言えないかもしれない。しかしながら、御承知のように、いわゆる春闘と言われておりますものは所定内給与の問題でございますから、それ以外に所定外給与がございますし、特別給与もございます。また、役員等の給与、退職金等々がございますから、そのような意味で、雇用者所得の中で直接春闘の対象であります所定内給与が占めます比率は、五十一年度の実績で見ますと大体五四%ぐらいでございます。もとよりそのベースはいろいろな意味でペースメーカーになるという間接的な影響はございますけれども、まず五四%ぐらいである。  ところで、個人所得と申しますと、雇用者所得のほかに、いわゆる自営と申しますか、農林水産、商業等々、そういう自営業の所得がございますし、個人の資産所得がございます。また、政府からの移転所得もございまして、つつくるめて申しますと、いわゆる雇用者所得と言われますものは、個人所得の大体六割ぐらいになります。そこで、先ほどその中での所定内給与、いわゆる春闘等の対象になりますものが、雇用者所得の五割何分と申し上げましたので、全体といたしますと六割の五割何分、大体三割余りのものが、いわゆる春闘と言われているものの占める比率でございます。したがいまして、その点についてわれわれは余り大きな期待ができないのではないかとは思いますものの、個人所得全体としての伸びは必ずしも悪いものではない、こう思っております。それが一つでございます。  その次に、個人所得の中から可処分所得が生まれ、そうしてその可処分所得の中から消費が行われるわけでございますから、その消費者の消費動向というものがどういうものであろうかということになります。わが国の貯蓄率は、御承知のように、かつて四十年代の初めには二〇%を割っておった時代もございますけれども、石油危機を契機にいたしまして二〇%からかなり高い方に動きまして、その後ちょっと落ちついておるということでございますので、物価情勢等々あるいは経済全体の見通し等々から考えますと、消費性向というものが、大しては上がらないと思いますけれども、五十二年度に比べて多少の上昇は期待してもいいのではないか。大変長い御説明になりましたが、そのような分析から一一・九%程度の消費の伸びを見たわけでございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 きわめて政治的、作為的な答弁だったと私は思う。なぜ作為的か。春闘の方はなるべく抑えよう、しかし、数字が合わないから所定外労働が多くなりますよと、どうもその理屈が全然わからないのです。所定外労働がどんどんふえますよ、ボーナスもふえますよ、しかし、春闘の方はきわめて厳しいですよと、そういう情勢の中でどうして消費性向が伸びますか。そうして雇用不安でしょう、非常な雇用不安のときに、どうしてそのような消費性向が伸びますか。どうも私はこの点が一番数字が合わないと思う。五十二年よりも五十三年度が実質で三・九から五・三になる理由が全然わからない。これは一体どういうコンピューターでどういうようにはじいたのですか。この個人消費というのは積算をしたのじゃないんでしょう。これはどうなんですか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それで、先ほどの続きを計数的に申し上げますと、いわゆる雇用者所得の伸びは一一%程度、これは御承知のとおりでございます。それから自営業と申しますか、個人業主所得の伸びが八・九%程度、個人財産所得の伸びが一二%程度、こういうものを推計していきまして可処分所得を出し、そしてその上で消費性向を見込む、こういう計算の手順でございます。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私の手元にも国民所得の雇用者所得、個人業主所得、個人の賃貸料及び利子所得、これがあります。しかし、それは五十二年度よりも五十三年度が、一緒にしても伸びが少ないですね。この伸びがトータルしても少ないのになぜ個人消費が伸びるか。どうもあなたの頭の中には、春闘の方は抑えたいけれども、時間外もふえますよ、あるいは一部はふえるかもしらぬが、ボーナスはふえますよ、貯金はふえますよと、こういう理由はないでしょう。  私は、時間がありませんから、ゆっくりこんなのを聞いておりますと質問が展開をいたしませんから、これを少し述べてみたいと思いますが、どこも、民間でもそういう統計を出していないでしょう。どうも個人消費が五・三も伸びるというのは、作為的にやったのじゃないか。物価は上がる、賃金はそう上がらぬとすると、一体どうして上がれますか。一般的には、五十二年度よりも五十三年度は春闘は厳しいと、こう言っておる。政府だって厳しいと言っておるでしょう。そういう情勢の中で個人消費が伸びるという理由がどうしてもわからない。しかも、後から聞きますけれども、雇用不安は解消できない、こういうわけでしょう。なぜふえるのですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先日も申し上げましたが、いわゆる完全失業者の数は五十三年度中に大きな改善は見込めない、五万人程度の減ではないかと申し上げましたが、そのほかに、しかしながら新規の雇用の増加は五十万人余り当然にございますわけでございます。それから、ただいまいわばやや遊休的に雇用されておる人々の生産に貢献する度合いというものは、五十三年度中に多少上がっていくであろう。と申しますのは、せんだって申し上げましたように、稼働率指数で申しますと、昨年の九月、十月の八四、五あたりから五十四年の三月には九二ぐらいになると思うということを申し上げましたので、そういう意味では、いわゆる設備の稼働率も当然でございますけれども、それらの雇用されておる人々の稼働される度合いも高くなる。したがいまして、新規の参入の五十何万人、完全失業の減の五万人、その上にただいま申し上げましたような稼働の問題がございますから、全体としては雇用者の持つ経済に対する信頼というものは決して悪くなっていくわけではない。完全雇用が大きく残りますことは残念でありますけれども、決して悪くなっていくわけではありませんで、他方で消費者物価の落ちつきが見られますから、何がしかの消費性向の、大きなものは見られませんけれども、改善を五十三年度中に見込むということは、私はまずそんなに見当違い・ではなかろうというふうに思っておるわけであります。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも総合的に考えますと、いまの答弁は、結局、七%も伸びるから逆算をして個人消費が五・三%伸びると、こういうことですね。ほかの数字とは違うですね。  いまから聞きますけれども、民間住宅とか企業設備とは違って、個人消費の分だけは、七%伸びるから、経済がそれだけ伸びるから、個人消費も伸びましょうと、こういう計算をしておる。そういう以外には考えられないんですよ、あなたのおっしゃるのは。みんな矛盾しているのです6賃金を下げておるのにどうしてボーナス上げますか。賃金を下げるときにはボーナスの方が下がるのですよ。どうも、七%というのが達成できまずから、そのときは個人消費が伸びます。これはまさにこういう逆算をした数字だ、こういうように考えざるを得ないのです。  ですから、続いて質問を展開していきたいと思うのですが、民間設備投資ですけれども、民間設備投資は、需給ギャップが十五兆とか二十兆と言われるのですから伸びない。しかも公共投資というのは、今度の予算を見ますと、道路から始まって、かなり土木事業が多い。あとは住宅でしょう。住宅は別にしても、全体的にいうと、これはいわば高度成長の過去の産業ですね。ですから、需給ギャップが非常に多い産業です。ですから、その操業率の非常に落ちておるのが、たとえば鉄鋼が若干上がるとかセメントが上がる、しかし、こんな産業は新規投資しませんよ。いまセメントでも、フル操業をする、休んでおるキルンは全部動かす、そうして時間外作業はする、休日出勤はさす、しかし、人は雇いませんよね。本来需給ギャップが多くて万年カルテル産業ですから、設備投資をしたら大変です。次が。ですから、設備投資は製造業においては見込まれぬとこうおっしゃるが、そのとおりですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段のお尋ねでございますけれども、先ほど私が消費の伸びを一一・九名目で考えております。それに対して五十二年度は一一・四でございますと申し上げました。多賀谷委員の五・三は、これはそれから出ます実質の数字で、まさにそのとおりでございますが、五十二年度は三・九であった、しかし、五十三年度は五・三ではないかと、そのとおりでございますが、これは御承知のように、二・九と一一・四おのおのにデフレーターを適用いたしました場合に生まれる違いでございます。五十二年度の消費のデフレーターは七・二でございました。五十三年度は六・二でございますので、したがいまして、実質で見ますとかなり大きな違いがあるように数字としては出てまいります。しかし、名目では先ほど申し上げましたとおりでございます。  なお、デフレーターの違いは、申し上げるまでもございませんが、主として消費者物価の落ちつきによるものというふうに御承知を願いたいと思います。  それから次に、本体のお尋ねの民間企業設備投資でございますが、おっしゃいますように、私ども、製造業で大きな設備投資が五十三年度中に行われるとは、残念ながら見通しはできないと考えております。すなわち、五十四年三月の稼働率指数が九二くらいであるといたしますと、稼働率としては八二、三でございますから、そこから新しい設備投資が大きく起こってくるとは考えにくいわけであります。  そこで、全体九・九%の名目で設備投資を見ておりますけれども、製造業に対する期待は大体名目で三%くらいと考えております。その中でいわゆる大企業と申しますか、というものに対しては二%は見られないだろうと考えております。これに対しまして、非製造では一三・八くらい、これは電力等々でございます。それから個人金融業等等で一一くらい、合わせまして九・九になりますけれども、御指摘のように製造業に対しては大きな期待は単年度中にはかけられない、そういう方向にやがて向かっていくことを期待いたしますけれども、五十三年度の計算としては大きな期待はできない、こう考えております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 電力中央研究所が設備投資の伸びを見ているが、政府の九・九というのは、これは実質で六・七ですが、その九・九に対して五・六しか見ていない、電力中央研究所が見ていないんですよ、ほかの証券会社が見ていないのじゃないんですよ。電力中央研究所が大体名目で五六しか見ていない。ところが、政府の方は九・九見ておるというんですね。どうもこれもわからないのですね。本家本元がそんなに見ていないのに、どうしてあなたの方はそんなに九・九が見られるのですか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 電力中央研究所は民間企業設備を名目で六・二見ております。これはおっしゃいますように、私どもの九・九に対比する数字でございますが、恐らく違いは、電力投資等々から来るのではありませんで、非製造のその他の部分、個人金融等々から参っておると思います。  電力中央研究所がこのときに使いました電力の投資でございますが、この数字は恐らく三兆一千億でございますから、私どもの使っております数字とその点は同じと思います。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 三兆一千億ですね、それはどこの発電所か、ことに原子力発電所においてはどこなのか、五十三年度工事対象の電源はどこだ、これをひとつ出していただきたい。
  38. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電力投資は、この前も御報告をしたのですが、現在、発電所建設中の地点が六十カ所ございます。約二千万キロ余り工事中でございますが、近く着工予定のところが、百万キロ以上の重要地点に指定をしております二十二カ所も含めまして百五十一カ所あります。このすべてに対しまして、いま立地問題が非常にむずかしい状態になっておりますので、立地問題をそれぞれ解決するために政府を挙げていま努力をしておるところでございます。このままの状態では二、三年後に電力不足が想定をされますので、それに対する対応策もあり、また、景気対策上も相当大きな役割りを果たしますので、ぜひ立地問題が前進するように努力をしてまいりたいと思っております。  そこで、これまで、昭和五十三年度に電力業界でほぼ工事並びに繰り上げ発注が決っておりますものは約四兆円であります。四兆円強でありますが、いま申し上げますように、立地問題が前進するのに従いまして、なお一兆ばかりの上積みを電力業界に要請をしておるというのが実情でございます。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると河本通産大臣は、大体五兆円ないと七%が達成できない、こういう判断なんですか。
  40. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういう意味ではありません。数字は先ほど宮澤長官が言われた数字でありますが、私の方の考え方は、先ほど申し上げますように、二、三年先には電力不足という事態が想定されますし、それから、とにかく電力投資に牽引車の役割りを果たしていただきたい、こういうことからできるだけ多くの投資を要請しておる。別に五兆円投資目標が実現しなければ七%を達成できない、こういうことではないのです。上積みを要求をしておるということであります。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはおかしいでしょう。三兆一千億で七%ができておるわけでしょう。通産大臣は五兆円を要求しておると言う。そうすると二兆円、二兆円と言えば二百兆のGNPから言うと大体一%ですね。一%弱ですけれども、それでも八%なんだ。どうも閣内不統一じゃないか。これは実にぼくはおかしいんだよ。
  42. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 もう少し正確に申しますと、工事量は三兆一千数百億という数字が確定しておるわけです。約三兆二千億弱であります。そこへほぼ一兆円弱の繰り上げ発注が決まっておるのです。いろいろの機器類の。ですから、四兆前後ということが確定しておるということを申し上げたわけです。しかし、先ほど申し上げますような理由で、立地問題さえ解決すればなおある程度の上積みをしてもらいたい、こういう要請をしておるわけです。だから、他の設備投資計画が計算どおり進み、さらに電力需要が計画以上に進むということになりますと、予定されておる民間の設備投資というものは若干ふえる、こういうことに当然なるでしょうね。ですから、経済の成長目標も七%程度ということを言っておるのであって、だから、場合によれば七%を超える場合もあり得る、そういうことなんです。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、われわれのところにこういう資料をもっともらしく出して、しかも国際的に公約しておる話でしょう。それを今度は八%になってもいいんだと言う。そのことは逆に六%になるかもしれぬ。こういうことでわれわれのところへ審議をしろと言ってもっともらしく出してきて、しかもこの問題は何も国内だけの問題じゃないでしょう。共同声明に入っておるわけでしょう。そういう中で私は、きわめてずさんな、しかも電力会社には五兆円以上を要請しておる、一体こういうようなでたらめな数字が、あるいは行政があるだろうかと思うのです。これはどうなんです。はっきりしてもらいたい。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどの電力の投資でございますけれども、三兆一千六百二十五億、これが九・九%の積算の根拠でございます。三兆一千六百二十五億、先ほど申し上げましたとおりの数字でございます。それで河本通産大臣、私どもも御一緒になりまして、電力投資をなるべくふやしてもらいたいということは、一生懸命努力をいたしております。それで、繰り上げ発注等々のこともお願いをしたいと考えておりますが、いま私どもが見込んでおりますのは、いろいろ努力もしてもらいまして、一兆円内外あるいは八千億程度になるかもしれませんが、そのぐらいの繰り上げ発注というものは可能ではないかというふうに私自身は思っておりますが、そういたしますと、そのような繰り上げ発注は、厳密に申しますと、設備投資というところにまだ参りませんで、発注の段階いかんにもよりますけれども、設備投資の数字にはなりませんで在庫の増加になるというのが考え方でございます。したがいまして、設備投資としては三兆一千六百二十五億でございますか、これで計算をしておるということでございます。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも言葉でごまかそうとされておりますが、しかし、設備投資として要請をしておるでしょう。そうして現実に、主要電源としてリストがありますね。聞いてみますよ。北電の共和・泊、一体これが五十三年度にできますか、対象工事として。東北の女川、福島第二の一号機、二号機、柏崎、それから能登、伊方、川内、皆問題が起こっておる。私は問題の起こっておるところだけ言った。しかもまだ、中部の火力が本来稼働しなければならないのが安全審査がおくれて、渥美の三、四号機がどうも五十三年度には間に合わない。一番、五十三年度において投資が集約して行われる予定のところがなってない、こういうように言われておるのです。一体これでできますか。これは一体どういうように説明されるのですか。これをひとつ御説明願いたい。
  46. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、近く着工したいという地点が百五十一地点あるということを申し上げましたが、そのうち二十二カ所が大規模発電所になっておりまして、重点地区に指定をしておるわけでありますが、各地区ごとにそれぞれ順調に進んでおるものもありますし、あるいはまた、いろいろな問題で難航しておるものもあります。しかし、それらに対しまして五十三年度は政府があらゆる手を尽くして、総力を挙げていろいろな立地問題を解決するのに協力していこう、これまでは電力会社が中心でやっておったわけでありますが、それだけではやはり地元との話し合いも不十分でありますから、政府が側面的に話し合いに対しては援助していこう、こういうことであります。  もし必要があれば、いま御質問のございました個所ごとに詳細説明してもよろしゅうございますが、これは時間がかかりますから……。いかようにでも取り計らいます。
  47. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 ただい大臣が答弁いたしたとおりでございますが、それを補足させていただきます。  来年度の電力会社の工事額は、先ほど来お話が出ておりますように、約三兆二千億でございます。これを電源部門と非電源部門に分けますと、電源部門で約一兆一千億、非電源部門で二兆一千億でございます。ただいま御指摘になっております立地上の問題ということになりますと、主としてこれは電源部門の問題になってくるわけでございますが、この約一兆一千億の中で新規に立地する必要のある地点等の所要額が約二千億円強でございます。こういった地点につきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、個別立地点の実情に即応して促進方を進めていく、かようなことになろうかと思います。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 認知をされないところは闘争も起きぬわけですから、問題は、もう認知をしておるけれどもうまくいかない、それはいろいろ住民との調和の問題もあるでしょう、環境問題もあるでしょう。私はそれを言っているのじゃない。設備投資として予定されておるこういう非常に不確定な要因が、七%の中に入っておるじゃないですか。これを言っておるわけですよ。ですから、私は具体的な反対、なぜ反対しておるか、そんなことを聞いているのじゃないですよ。七%の中に設備投資をかなり見ておられますけれども、その設備投資の中には、一般の民間の製造の設備は、残念ながら余り期待することができない、期待できるものは電源開発であるというならば、その電源開発は確実ですか、こう聞いているのです。どうもそれが確実でないでしょう。私がいま指摘いたしました個所は、ことしは、五十三年度はなかなか困難だということを、私は電話で皆聞いてみた。一体こういう計画でできますか、こう言っているのですよ。それを急げばまた汚職が起こるでしょう。ですから、こんな重要なこと、大きなファクターになっている点が非常に不確定である。こういう経済見通しをわれわれのところへ出されても、われわれは承服できない、こう言っているのですよ。  しかも、承服できないというその見通しが困難だろうというので、初めから五兆円ぐらいに言っておれば、そのうち何とか三兆円ぐらいでおさまるだろうというのが、どうも河本さんの……。逆に言うと、あるいは、七%というのはどうも自分は不満だ、ここで努力をして八%にしなければだめだ、こう思っておるのか、いや、七%は五兆円ぐらいにしないとできないと思っているのか。どうも総理宮澤長官の言われるのと、河本通産大臣の意見が違うのですね。  そこで、まず私はこの問題について、五十三年度工事対象をひとつこの委員会へ出していただいて、一体いまの現状はどうなのか、五十三年度に設備投資のできるような状態にあるのかどうか、これをひとつ詳細に書いて、報告書を出していただきたい。
  49. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お求めの資料につきまして、提出するように準備いたしたいと思います。  ただ、補足して申し上げておきたいのでございますが、先ほど来お話が出ておりますように、民間設備投資の中では三兆二千億円程度が入っておりまして、さらに積み増し要求いたしておりますのは繰り上げ発注でございまして、これは資金効果としては出てまいらないということをお含みおきいただきたいと思います。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ひとつ全部資料を出していただいてから審査を進めていきたいと思います。  次に、パイロットモデルのSP17、これは石油ショック前のデータですね。その公共事業への波及効果、これは一体幾らになっておるのか、また石油ショック後につくられた新しいモデル、パイロットモデルのSP18、これは幾らになっておるのか、今度の七%は一体どの指標を使ったのか、これをひとつ企画庁長官からお示し願いたい。
  51. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  一番最初のSP17は一・八程度の乗数効果でございます。それからSP17は一・四程度でございます。(多賀谷委員「逆じゃないか」と呼ぶ)失礼いたしました。古い方が一・八でございまして、新しい方が一・四でございます。この差は、新しい時点の実績を入れて式を書いておりますので、したがって、在庫の動きその他によって非常に違ってきておると思います。  今回の計算はどちらも、厳密に申しまして使用しておりません。と申しますのは、全体のマクロの描き方が、財政をどれくらい追加するということによって追加需要がどれくらいあるかという計算ではございませんで、当初からほかのいろいろな前提を置きまして、マクロ的に描いた数字でございますので、今回の場合には直接使っておりません。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 総理、せっかくつくったモデルは使ってないのでしょう。そしていろいろ上手におっしゃるけれども、結局七%に合わすために一生懸命つくった、こういうことですよ。せっかく新モデルができても、パイロットモデルSPの18は使ってない。それでは17を使ったかというと、もう新しいモデルができたから17も使えないのですね。ですから、これはきわめて重要な問題ですよ。われわれはこれを一生懸命論議しているのですよ。せっかく新しいモデルをつくったと言っても、事情が変わっているわけですから、高度成長時代の乗数効果と今日の乗数効果は全然違うのですよ。ですから、投資を呼ぶときの乗数効果と、今日投資をしてもそれで消えていく乗数効果とは非常な差がある。せっかく新モデルができてもそれは使ってない、使われないのですよ。七%にならない。  ですから、民間はみんな、新しい傾向でつくっておるから全部違う。どこの民間も七%にはならない。しかも民間の場合は、一兆円ないし二兆円の減税をしているのですよ。そうして九つの研究所で発表したのが、平均が四・六です。一体これはどういうことなんですか。しかもあなたは、国際的に公約的なものを行ったとおっしゃる。重大問題じゃないですか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に申しまして、長期計画を立てますときにはモデルを使うしか方法がございません。したがいましてモデルを使いますけれども、単年度の計画にいたしますときにモデルに余り頼りますことは、実は危険な点もございます。参考にはいたしますけれども。ですから、こういう場合にはモデルに頼り切りになるということはやはり問題であって、長期計画のときにはもうやむを得ないことでございますけれども……。  それから、民間の見通し政府見通しが違っておって、政府見通しが一様に高いではないかということをどう説明するかということでございます。  すでに個人消費と設備投資については、お尋ねがございましたので政府考え方をお答え申し上げましたが、その間に水増しをしておるつもりがございませんことは、先ほど三兆一千億云々と申しましたことでもおわかりをいただけたと思います。  基本的な違いは、過去何回も政府は公共事業投資をしたけれども、それが十分に国民経済に波及効果を呼んでいないではないか、したがって、今回は相当大きな設備投資をするのではあるが、やはり結果は大差ないのではないか、そういう考え方が基本にあるのではないと私は思います。  なお、念のため申し上げますと、かなり多くの民間の見通しはこの年度、今年より前につくられましたものでございますから、このような政府の税制、財政等の努力を織り込んでいない、これは別の問題でございます。織り込んでいるものについて申しますと、その波及効果というものをどう考えるかということに違いがあるであろう、過去、波及しなかったから今度もそうではないか、こういうことが基本になっておると私は考えております。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 各研究所のは皆三十四兆、大体こういう財政規模を見ているのです。政府と変わらないのですよ。ですから、経済界やあるいはまた研究所のは、これはやはり大体三十四兆くらいだ、十兆円ないし十一兆の国債だ、こういう見込みを立てて、しかも二兆円ないし一兆円減税を入れてもこのくらいにしかならない、こう言っているのですよ。  しかもこれは、モデルを使うと非常に危険でありますからモデルは使えない、そんな危険なものをなぜ国際的な公約にするのですか。六・七%にしてもしかりですよ。あるいは七%にしてもしかりですよ。私どもは初めから、GNPでは食えないと言っているのです。ところが総理が一生懸命、GNp、GNPとおっしゃっている。そのGNPのもとは、いやこれは危険があるからモデルは使えないのだ。一体何のためにこういうことをおっしゃって国際的に約束されておるのですか。おかしいでしょう。これじゃ基本問題が全部がらがらと崩れていきますよ。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理が答弁される前に申し上げますけれども、モデルが危険云々と申し上げましたのは、三年、五年の長期計画のときにはモデルを使うしか推計の方法がございませんから、できるだけ正確なものをつくろうとしておりますけれども、一年先のことはかなり推計の資料がございますから、モデルにばかり頼り切るのはどうかという意味で申し上げたわけであります。  それから、政府の財政計画が決まりましてから出ました民間の見通しとの違いは、先ほど申し上げましたように、政府の財政、税制等々の努力がどのくらい国民経済全体に波及するかということについての見通しの違い、その主たるものは私はやはり在庫の動きにかかっておるように思いますけれども、その点の見方の違いが一番大きな原因と思います。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その在庫の動きもかなり違うのですけれども、しかし、全体のウェートは少ないのです。在庫は。率は多くてもウエートは少ないのです。ですから、ぼくが個人消費のことを言ったのは、率は少なくてもウエートは大きいのですから、金額にしては非常に大きな数字になる。そういう点、どうもきわめて不確定ないろいろな指標で、それを基礎に論議をしろ、こうおっしゃっている、それがそもそも間違っておるのじゃないか。こんな不安定なもので一体できますか。そして乗数効果を、なぜ、新しいモデルができたのにそのモデルを使わないのか、これは実に不思議だと思うのですよ。そして、いわば減税よりも公共投資の方が乗数効果があるのだ――その乗数効果を使ってないのですからね。どうなんです。これは。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど在庫と申し上げましたのは、つまり需要項目としての在庫の数量を私は申し上げたのではありませんで、公共投資が国民経済に波及効果を呼ばなかったのは各種の在庫、生産財、資本財、消費財に至るまで、各種の在庫が国民経済の各部分にございますから、そこで波及効果が吸収されてしまって、従来期待されたとおりの効果が上がっていなかった。その在庫が減ってまいりますと、今度はどうしてもそれが稼働率につながっていく、雇用につながっていく、こういう意味を申しましたので、需要項目としての在庫の大きさを申し上げたのではございません。(発言する者あり)
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、これは今後理事会で十分検討してもらいたいと思います。  時間がだんだんたっていますから……(発言する者あり)これは承服できませんから……。  そこで、今度の公共投資、しかも十一兆に上る国債まで発行して、一体労働者はどのくらい雇用されるのですか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私から概数を申しますと、就業者総数の増加は大体五十万ないし五十五万、完全失業の減は五万程度ということでございます。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は具体的に、公共事業の道路を初めとして、直接雇用がふえる分をお知らせ願いたい……(発言する者あり)
  61. 中野四郎

    中野委員長 資料は出せるのでしょう。――資料の提出は、なるべく速やかに出すように。よろしゅうございますか。
  62. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先ほど多賀谷委員より御要求のありました資料は、明後日中に提出いたします。
  63. 中野四郎

    中野委員長 多賀谷君、御要求の資料はいま答弁したとおりでありまするから、どうぞ質問を御継続ください。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから、いま私が質問をしたのは、五兆円の通産大臣の要求に対して、一方は三兆円と言われる。三兆円が七%の基礎になっておると言う。これも私は統一見解をはっきりしてもらいたいと思うのですよ。いや、五兆円というのは数字にはあらわれてこないのだと言う。そういうことばないでしょう。それは五十三年です。ですから、その点をはっきりしなければ私は質問が続かないのですよ、一番大きな基礎ですから。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 設備投資の推定の根拠になっておりますのは、三兆一千六百億円でございます。それから、先ほどエネルギー庁長官が申し上げました、いわゆる繰り上げ発注でございますが、これが資金効果にはならない云々と言われましたのは、そのとおりでございます。つまり、工場で発注された機械をつくるわけでございますから、その段階においては資金効果はない。したがって、それは設備投資とは言えませんから、私どもは設備投資に入れておりませんで、それはその限りにおいて在庫の増になると先ほど申し上げましたとおりでございます。その金額は、ほぼ一兆内外ではないかということも申し上げました。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それなら在庫増が出るじゃないですか。また二兆円の在庫増が出るでしょう。ですから、どこかが狂うのですよ、そんなことおっしゃるけれども。いや、設備投資の方は出ませんけれども今度は在庫の増がと言う。それなら在庫の増がまた数字に出るわけですよ。小さい数字じゃないのですから、大きな数字ですから、それなら在庫の増になってあらわれてこなければならない。いや、その分は考えておりませんと言うのですから、どうもぼくは理解できない、そう言っているのですよ。これはひとつはっきりした御答弁を願いたい。いまはっきりしていないのですよ。どっちかに来るのだろう。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 八千億程度のものは在庫増に見ておるわけでございます。在庫の数字に入っておるわけでございます。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 五兆円を在庫の増に見ているのですか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一度申し上げますと、設備投資になりますものは三兆一千六百億円程度、そのほかにいわゆる繰り上げ発注によりまして、八千億程度は在庫として勘定し得るであろうと考えますから、それを在庫に立てております。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 だから、私は五兆円の話をしているのですよ。あなたの方は四兆円の話をなさっている。私は五兆円の話を初めからしでいるのですよ。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。ですから、三兆一千億円余りが設備投資になり、八千億程度が在庫になり、残りの一兆円は在庫と言えるところまで恐らくいかない段階でございますから、在庫に数えることはちょっと無理ではないか、これは発注の段階いかんによることでございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いまそれを糊塗されようとしておりますけれども、私は承服できません。これはひとつよく討議をして、後ほど統一して答弁を願いたい。留保しますよ。委員長いいですか。これだけ大きな食い違いがあるのですよ。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もう一度同じことで恐縮でございますけれども、三兆一千六百億というものは、これは設備投資に勘定し得るものでございますから設備投資に勘定いたしまして、次に、繰り上げ発注のうちで在庫として勘定し得る段階のものを八千億と見ております。そういたしますと、概数五兆との間になお一兆近い差がございます。それは在庫と言えるまでにも至らないもの、つまり原材料とか仕掛かり品とか、いろいろな段階がございますから、これは在庫として勘定するわけにはまだまいるまい、それは勘定しておりません、こう申し上げておるのです。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは初めから五兆の話じゃないでしょう。五兆の要請をしたわけじゃないでしょう。通産大臣が五兆の要請をされたから、あなたがいまそれを何とか糊塗しようとされておるのですけれども、これは私は承服できない。具体的にお示し願いたい。  それから、さっきの話は、三兆一千億の中に予定をしている個所が、果たして工事が着手できるかどうかということを聞いておるのですから、それもあわせて資料を出してもらいたい。  そこで次に、いま労働力をどのぐらい見ておるか、これは私は具体的にお示し願いたいと思うのですよ。一体道路ではどのぐらい見ておるのですか、港湾の伸びはどう見ておるのですかということを具体的にお示し願いたい。なぜ言うかといいますと、どこの公共事業をやる場合にも、よその国はみんな雇用ですよ。雇用造出をするためにこれだけの予算を組みます。これはアメリカでもイギリスでもみんな雇用が前提なんですよ。こういう事業をすればこれだけの雇用が伸びます。ですからこれだけの雇用を造出するためにこの事業を行うのです。これは労働省の出した「海外労働時報」という資料ですが、アメリカで行われておる七六年の一月の公共事業雇用法に基づく計画、これは三十五万人の雇用造出を図るためとか、二十万人の雇用造出を見込むためとか、こういうように書いてある。そうして、失業率が何%以上のところにこの事業は行います。常にそれは失業率と連関をしておるのですよ。イギリスでは地方雇用法で行った地域です。投資は幾らします。そして雇用の造出推定人数は幾らです。これは全部雇用増加数というのが出ておるのですよ。ですから、どこの国も雇用が中心なんです。公共事業というのは雇用を中心としてその事業を行う。ですから総理大臣、なぜ七%にしたのですか、いや、それは外圧じゃなくて雇用増大のためですとおっしゃった。それならば、雇用というものの計画書をはっきり出してもらいたい。これをお聞かせ願いたいのです。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済計算との関連で申し上げますと、就業者人口で申しますと、五十二年度が五千三百五十万でございますが、それを五千四百五万と見ておりまして、したがいまして五十五万の就業者人口の増を見ております。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そんなマクロではだめですよ、総理府統計局のようなマクロでは。具体的にこの工事をやるについては幾ら雇用がふえるのです。これはわかるでしょう。建設省は人件費を組むのでしょう。ですから、それを積算をしたら幾らになりますと出るはずですよ。これが出ないというのが私は不思議なんです。昨年から私は質問しているのですけれども、出ないのです。また、やろうとする努力をしない。労働省はどうなんですか。
  77. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働省ではわかっておりません。これは事業所管別にある程度数字が出るかと思いますけれども、労働省としては、公共事業を拡大して、そして沖繩地域中心のいわゆる失業多発地帯並びに特定離職者臨時措置法からの離職者を、これまた特定地域に公共事業として四〇%、沖繩方面のは六〇%、こういう構えでございまして、具体的な数字を労働省としてはつかめない状況でございます。(発言する者あり)
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 国債を十一兆も出して、そうして予算を組んだ。この予算が、雇用のために組んだとおっしゃる予算が、雇用の確保推定人数がわからぬなんということでは、これは審議できませんよ。問題は物じゃないのです。人でしょう。総理はそうおっしゃっている。物の時代じゃない、人の時代でしょう。ですから、労働力が幾ら確保できるかということを具体的にここにお示しでないと、これこそわれわれは審議できない。それで、道路は幾らと出るのでしょう。道路は幾ら、三四%増です。それならば、道路では何人、これはできておるはずですよ。それをまた労働省が知らないというのは、これは不見識な話じゃないかと思うのです。これをひとつ出していただきたい。(発言する者多し)
  79. 中野四郎

    中野委員長 細野職安局長。(発言する者多し)-藤井労働大臣。(発言する者多し)ちょっと、委員長が許したのですから……。
  80. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働大臣として、また労働省として具体的に数字をつかんでいない事情を職安局長から説明をさせます。(発言する者多し)
  81. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま労働大臣からお話ございましたように、公共事業でどのくらい雇用量の増加があるかということの具体的な数字になりますと、先ほど申し上げましたように、事業の種類とか工事の期間とか、あるいは職種とか、そういうことが確定しない限り把握することが困難でございまして、そういう意味で、労働省として、具体的な数字を積み上げた具体的な数字を把握するということは非常に困難だ、こういう事情でございますので、御了解をいただきたいと思います。(発言する者多し)
  82. 中野四郎

    中野委員長 多賀谷君。(発言する者多し)――午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午前十一時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  83. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、先ほどの多賀谷君の質疑に関しまして、宮澤経企庁長官から発言を求められております。これを許します。宮澤経企庁長官
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 午前中の多賀谷委員の御質問に関連いたしまして申し上げます。  五十三年度経済見通しは、七%成長を通じまして雇用の改善を図り、国民生活安定の基盤を守ることを基本といたしております。七%成長のもとでは、マクロ的に次のような結果が得られております。  一つ、就業者総数、五十二年度の五千三百五十万人から五十三年度五千四百五万人と五十五万人増、雇用者数、五十二年度の三千七百八十万人から五十三年度の三千八百三十五万人と五十五万人増。一方、労働力人口が、この間、五千四百六十五万人から五千五百十五万人へ五十万人増加をいたします。したがいまして、完全失業者は、五十二年度の百十五万人から五万人減の百十万人になります。  今回の政府予算における公共投資の雇用効果につきましては、事業の種類、地域性等によって一概に申し上げることは困難でございますが、公共事業施行推進本部において関連データをただいま集計中でございますので、一つの参考資料として後日御提出をいたします。
  85. 中野四郎

    中野委員長 質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、いまの長官の答弁には満足できませんが、これは総理、私はなぜしつこく聞いたかと言いますと、やはりどこもこういう不況期になりますと、雇用の造出ということが政治の最大の課題です。でありますから、人を中心として、一体これだけの失業者をどう吸収するためにはどれだけ事業量を増したらいいかと、こういう計算になっておるわけです。わが国の場合は、物を中心として、あるいは金を中心として、そうして計画はできるけれども、労働者、雇用者の計画がないというところに私は非常に残念に思う。ですから、いま長官がお話しになりましたのもマクロ的な話でして、私はそういう点は今後十分注意をして、この委員会の間に、今度の公共投資あるいはこれだけの波及効果でどのくらい労働力がふえるのだということを、マクロでなくて、もう少し積み重ねの数字を出してもらいたい、このことをお願いを申し上げます。  そこで総理から、今後のこういう経済運営のあり方ですね、私はやはり労働力あるいは就業者を中心とした運営をしてもらいたい。でありますから、われわれがこう資料を出していただく場合にも一、これだけの大体推定の労働力は増加するのですというのも、ぜひひとつ資料をつけてもらいたい。このことを総理から御答弁願いたい。
  87. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 中長期にわたる経済運営につきまして、やはり雇用をどういうふうに見るかということは重要な問題でございます。いま、これから先々を考えますと、資源・エネルギー有限時代ですから、なるべくならば資源・エネルギーをそう使わない経済運営がいいのです。したがって経済成長も低い成長がいい。ところが、いま御指摘の雇用という問題を考えますときに、そう低いというわけにも一いかない。その低くなければならぬという要請と、雇用の関係から高く見なければならぬという要請、そのぎりぎりの接点を一体どういうところに求めるかという、その考え方ですね。これが重要になってくると思うのです。一応私どもは、これから近い将来における経済成長、まあその両者の角度から考えて六%ぐらいが適当じゃないかと、こういうふうに見ておりますが、雇用の問題、これはもう経済運営で非常に重大な問題ですから、この上とも雇用の立場を強く踏まえた経済運営をしていきたい、このように存じます。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもマクロの話でなくて、もう少し現実的な話をしていただきたいと思うのですがね。  そこで今日、日本経済を見ますると、四十八年から今日まで製造業は、労働生産性は上がってきましたよ。そうして労働者は、製造業において非常に少なくなった。どんどん減っているわけですよ、製造業においては。ですからこれは、聞きますと時間がかかりますから、大体四十八年から今日まで、御存じのように製造業において九十一万人減っているんですね。そうして第三次産業という、いわば非製造業において百二十万人ぐらいふえている。それは労働力もふえているのですけれども、ですから、それが外国で問題になっておるのですよ、率直に言いますと。要するに日本というのは、とにかく合理化、合理化というのは省力化である、人を減らすのが合理化である、こういう一貫した、高度成長期にそういう政策をとってきたわけです。ですから、だんだんやはり製造業では減っておりますから、自動車産業のごときは大体外国の、アメリカの二倍ぐらいの労働生産性が高い、イギリスの十倍ぐらいですよ。こういう状態です。それがやはり問題である、向こうとしては問題にしておるということをひとつ十分考えていただきたいと思います。  そこで私は、第三次産業に非常に期待をするとしいうけれども、流通経費が非常に日本では高いという。卸、小売りは大体、小売りはアメリカの方が少し高いかもしれませんけれども、卸は日本が一番高いですね、就業人口が。ですから流通経費が非常にかかるという話をしている、ここに一つ問題がある。しかし、ここは何と言っても就業のプールになっておるわけですから、簡単に減らすわけにはいかない、こういう問題がある。  そこで一体、政府は今後はどこの地域、職種に人間を吸収しようとするのか、どういうように誘導政策をしようとするのか。これはだれに聞いたらいいでしょうか、所管がはっきりしない。労働省ですか、これは。経済企画庁ですか。とにかく雇用問題は所管がはっきりしないのですから、労働省の方は、失業した者は私の方の所管ですと言うけれども、一体こういう伸ばす仕事はどこですか。所管がありましたらお答え願いたい。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 便宜、私からお答えを申し上げます。  政府として公に定めた計画と申しますか、そのようなものはあるいはないのではないかと思いますけれども、いま仰せになりました流通業務のほかに、やはり教育関係でありますとか医療関係でございますとか、そのような新しく国民に生まれております需要、これも分類いたしますと第三次ということにやはりなるわけでございますが、そういうところの方に新しい雇用の機会を求めていくのが、わが国の将来を考えますとよろしい姿ではないかと私は考えております。
  90. 藤井勝志

    藤井国務大臣 補足して私から……(「所管官庁はどこだと聞いている」と呼ぶ者あり)これは当然労働省も雇用の拡大の問題について、特に労働省というのが御案内のごとく勤労者の生活の安定と福祉の向上というところに使命があるわけですから、大いにがんばらなければなりません。  いまお話がございましたけれども、特にこれから大いに伸びていく可能性があるとわれわれが判断しているのは、まず個人家庭サービス関連の職種、それから建築サービス関連、それから老人福祉サービス関連職種、いわゆるホームヘルパー、こういった点、それから情報サービス関連職種、運輸あっせんサービス関連職種、それから機械修理サービス関連職種、それに特に技能関係あたりが求人、求職の関係が非常にアンバランスになっておる、こういうことがございますから、社会が求める人材養成に職業訓練の立場において努力したい、このように思います。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはおっしゃるように、日本の場合は就業者が、医療、保健、清掃あるいは教育あるいは公務、やはり少ないですね。ですから、この点については別にお聞きしますけれども、第三次というけれども、何か卸、小売りというのはもう限界が来ておるという感じですね。ですから、私はやはりこの点に注意をしなければ、たとえば東洋工業が五千名製造業から販売に回しても、余り日本経済としては、雇用、雇ってくれることはいいけれども競争が激しくなるだけ、雇用面においてはプラスになるけれども、必ずしも全体経済の浮揚にならないでしょう。ですから、雇用問題というのは、そういう意味できわめて行き詰まっておる、こういうように言わざるを得ない。  そこで、労働大臣に一言、これは総理府ですか、完全失業者はどういうように考えられているのか。時間がありませんから私が言いますと、完全失業者は、女子の場合は雇用保険をもらっている数字と完全失業者の数字が大体同じですね。それから男子の場合は、ここで十一月の百三万といいますと、六十六万人が完全失業者で三十五万人が保険をもらっている。これは何を意味するかというと、完全失業者が多いとか少ないとかというのは、率直に言いますと日本の統計は、保険をもらっている人が多いか少ないかなんです。ですから、保険が切れると、みな完全失業者でなくなるのです。それはそうでしょう。一月のうちの最後の一週間一時間も働かなかった者なんて、それで一時間も働かないで食える人はいないのですから。ですから、この数字を後生大事におっしゃるけれども、完全失業というのは雇用保険の数によってほとんど左右されている。こういう形でこれを統計上非常に問題にされておるが、その雇用保険が終わったら一体どこへ行くのですか。女子の場合は絶対、家庭に帰りますから来ません。男子の場合は、若干残るのと、新規に入ってくるのと二つありますから若干、三十万人くらいおる、こういう形です。そういう状態になっておりますから、西ドイツと日本と比べてみると、どうも数字が合わぬ。西ドイツは二十時間以下働いた者は完全失業者に入るわけですから、そもそも統計が違うのですよ。ですから、これは傾向値としてわかるけれども、これを数字について神経質になっておっしゃるのも、ちょっと問題だ。  ですから、問題は、求人倍率の方が問題になる。これは職安に来て仕事がありますかと、こう言う。問題は、求人倍率が〇・一五になっておりますけれども、地域別で一番高いところと低いところと、ちょっとおっしゃってください。それから年齢別に一番高いところと低いところ、これをおっしゃってください。簡単でいいです。たとえば五十五歳から六十歳、六十歳から六十五歳までの年齢層においては地域別にはこうなっています。これは非常なアンバランスになっておるのですよ。そういうことも把握せぬで雇用対策はできない。まんべんと公共事業をばらまいても役に立たない。その点どういうようになっているか、ひとつお聞かせ願いたい。
  92. 細野正

    ○細野政府委員 まず地域別の求人倍率でございますが、高いところは愛知県で一・二倍、これは五十二年の十月時点でございます。低いところは沖繩県が〇・一倍、それから本土では高知県の〇・二倍というところが低いところです。  それから年齢とクロスしてというお話がございましたが、統計が年齢と地域がクロスしておりませんので、その点についての数字はない、こういうことでございます。御了承願います。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が公共事業について雇用を聞いたのはこういうことです。地域的に非常にアンバランスになっておる。もう一を超しておるのです。求人倍率が一・二という地域もある。それから〇・〇一という地域もある。そして、年齢的に見るとなお差があるのです。労働省はずるいのですよ。地域と年齢をクロスできぬはずはないのですよ。クロスしない。およそ労働省の統計というのは、本当に実態がつかめないようになっておるのです。それは五十五歳から六十五歳までは〇・一五、しかし一体どこですかわからぬ。クロスした表を出すと、この地域は年寄りが多いとか少ないとかわかってくるのですよ。ですから、これは政策がつくのですよ。幾ら統計を出してみても、残念ながら公共事業をどういうふうに振り向けるかという政策がつかない。雇用と結びつかないというのは、そういうことを言っておるのですよ。物は結びつくのですよ、鉄材が幾ら要るとか、セメントが幾ら要るとか。こういう点を十分考慮していかないと政策は空転をする。せっかく金を使っても、一方においては人が足らないという状態が出て、一方においては人が余ったという状態だ。これを総理は十分考えていただきたい。総理から御答弁願いたい。
  94. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公共事業などの執行に当たりましては、お話のとおり、その地域的な配慮、これは十分いたしておるわけであります。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そこで、私は、いまのままで日本は幾ら事業をふやしても、かつての高度成長のような時代が来ない以上は雇用の吸収はできないと思いますよ。これは七%も経済が伸びて、そして先進国で一番伸びておる経済の中で、失業者がこれだけ出て、不況で困っておるという。それはどこか間違っておるのですよ。七%くらい伸びればほぼ完全雇用ぐらい達成しなければいかぬですよ。  そこで一体どういうようにするか、と言うのです。これはもう一番は労働時間の短縮ですよ、週休二日制。人事院総裁見えていますか。-人事院は今度申し入れをされたそうですか、日本がランクは一番、と言ったら語弊がありますが、四十四時間、そして週休一日半、これは日本ですね。これは人事院はどういうように調査されておるか。残念ながら日本は非常に労働時間が長い。それからもう一つは、総理は、公務員は先憂後楽だ。ところが、物の考え方がいろいろありましてね、やはり公務員とか公企体からやるべきだという考え方があるのですよ。それがこういう場合は底上げになるのだ。労働条件についても、最低賃金をまず公務員からやるのだ、あるいは下請におろした公共事業の方からやらすのだとか、いわゆる先導をするのは、御存じのように財政の方は政府がやると言うのだから、労働条件の方も政府が先導したらいいですよ。これはニューディール政策だってそうだし、ですから、そのことを一つ考えたらどうか。不況の場合には必ず労働時間の短縮が協約になって結ばれておる。総理、一体どういうように考えるのか。その前に、人事院はどういうように考えるか、この二点、お聞かせ願いたい。
  96. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えを申し上げます。  去る二十日でございましたが、私の名をもって官房長官あてに、週休二日制の試行の再実施ということについての書簡を発出いたしたのであります。これは御承知のように、一昨年の十月から一カ年の予定で、政府におかれましては、各省庁で週休二日制のテストを実施していただいたわけでございます。ところが、この最初の試行の範囲その他につきましては、初めてのことでもございまするし、また各省庁、大変複雑な職場を多岐に持っておるという現状もございますので、それを踏まえて、それほど思い切った範囲ということをやりましてもかえって非常に混乱が起きる、その結果、公務の遂行に支障が起きて、国民の皆さんにも御迷惑をかけるというようなことになっても大変でございますので、それらの点を考慮いたしまして、大体のところは対象職員の十分の三ということの基準を示しまして、そのことを目途にして試行をやっていただくということにお願いをいたしたのであります。その結果、おしなべてのところでは、大体一年の中で三月間をその対象とするということで試行に踏み切っていただいたわけでございます。もちろん、仲には、とてもそういうようなことではできないという困難なところの官署もございました。  そこで、第一回のテストが終わりました段階で、やはりもう少し密度を高くしてやっていくことが必要ではないかということを考えまして、今回の書簡の発出ということに相なったわけでございます。大体、大まかな考え方は、第一回の試行の範囲の倍ということでやっていただくということで現在お願いをいたしておる次第でございます。  ちなみに、いまお話がございました諸外国の労働時間でございますが、われわれの手元で持っておりますものは、世界の主要三十五カ国の公務員の週休制度の調査をいたしておりますが、これによりますと、わが国の一般的な週所定勤務時間は四十四時間、これは一般でございますが、この四十四時間を下回っております国は三十二カ国でございます。パーセンテージにすると九一%になっております。そのうちで、特にアメリカを初め二十三カ国、すなわち六六%程度は四十時間以下というのが現状でございます。
  97. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 結論的に申し上げますと、いま人事院総裁から申し上げた試行、その段階をとって情勢の推移を見るということが妥当である、こういうふうに考えています。つまり、週休二日制を官庁でとりまして、そうして行政能率を維持せんとするならば、やはり人手をそれだけふやさなければならぬ、そういう理屈になるわけであります。これが行政制度としてどういうものであるか、あるいは財政負担をそれだけ伴うものでありまするから、その角度から見てどういう性格のものであるか、その辺はよほど慎重に考えなければならぬ、こういうふうに思うのです。しかし、客観的な世の中の大勢が週休二日制だ、こういうことであれば、公務員だけがその例外であるというわけにもいきませんから、客観的世の中の動きがどうなるかということを見ながら試行というような段階を経て、そしてこの問題をどうするかということを考えるということかと思います。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはどうしても将来は、労働時間を短縮する以外にはちょっとないのじゃないかと私は率直に思うのです。これだけの労働者を抱えて安定成長に入る、それならどうしても労働時間の短縮以外には事実上決め手がない、こういうように考えるわけです。ですから、この点も諸外国から非常に批判を受けておる点だと思います。  それからもう一つ、産業構造が非常に変わるわけです。いま輸出が伸びておりますけれども、必ずしもずっと続くかどうかというのは、私は疑問がある。要するに日本の技術というのは、欧米の第二次大戦前の、たとえば自動車ならモータリゼーションであるとか、そういうのが昭和三十五年から開花した。あるいはその後の石油化学であるとか電子工学、日本は一度に花が咲いた。そしてずっと日本は技術が一巡した。これは何も日本だけではなくて世界的に一巡したものですから、いま技術革新がないものですから不景気になっておる一つの原因でもある。  そこで、日本はいま、御存じのようにプラントを輸出した国から追い上げられつつある。日本輸出を伸ばそうとすると、そこにまた頭打ちが起こる。だから、日本自身が研究開発を進める以外にはないのです。ですから、それだけの研究開発にここで大きく投資をして、そうして新しい製品、そういうものを開発する以外にない。いままでの型で高度成長の後のように幾ら後追いをしてみても、もとへ返らないのです。いままでの型で行けば、どこだって設備投資をしませんよ。これは政府の責任である。ですから、日本の技術開発費で見てごらんなさい。政府の技術開発費がいかに低いか、私は数字は挙げませんけれども。政府自身の技術開発費が非常に低い。わりあいに高いのは原子力ぐらいです。あとは非常に低いでしょう。ですから、それをやる。  それから、訓練所が徹底してない。こういう訓練をする必要があるのではないかと思います。ですから、多くは言いませんが、私は一言聞きますが、労働大臣、私はかねてから身体障害者の訓練所を一年でなくて二年にせよということを言ったのです。やりますと言ってやってくれたけれども、一割なんです。五十名おれば五人。そうでなくて、そういうところはほとんど十名ぐらいですから、一人。この一人は留年をしたようです。同じ部屋に一人だけ。ですから、身障者はだんだんいやだと言って一年でやめていくわけです。就職はいい。しかし、賃金が安いですよ。たった一年で、普通の人だって一年では無理なのに身障者で一年というのは非常に無理。ですから、二年やれば安定職場につけるのです。そのくらいのことがなぜできないか。  それからまた、訓練所の機械がお粗末で、印刷機械なんかは御存じのように成人訓練をしておる。これは岐阜の訓練所ですが、事業主が見に来たのです。それが、いや、こんなところで訓練をやるんだったら、うちの方が技術が進んでおりますと言って帰っちゃった。それは数年前の話。いまだにその機械を使っておる。そういうことで一体本気でやる態勢があるのかどうか、この点をひとつ御答弁を願いたい。  いろいろ終身雇用で問題であるとか定年制問題がありますけれども、この程度で雇用問題は一応終わりたいと思います。そして、正式にこの予算に伴う雇用造出推定人員が出た際にもう一回質問をいたしたい、かように思います。
  99. 藤井勝志

    藤井国務大臣 お答えいたします。  身体障害者の職業訓練の問題につきましては、かねて多賀谷委員よりも御熱心な御発言があったように承っておりまして、労働省といたしましては現在御趣旨に沿うて検討をいたしております。そして、特に、現在御案内のような身障者の職業訓練実施の職種がございますが、その中でも特に義肢装具科、こういったところを中心に早急に結論を出して、二年課程の職業訓練を実施するように準備をいたしたい、このように考えております。
  100. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 個人消費が伸びる一つの大きなファクターは年金だ、振替所得。私は、福田さんが副総理のときに三木さんに質問し、田中厚生大臣が、大体昭和五十年になると二万円程度にしたいという話、これは軽費老人ホームの費用ぐらいにしたい、こういう答弁でした。ところが、それが一向上がらない。そのときは一万二千円でしたからね。それが一万三千五百円、その次が一万五千円、今度は一万六千五百円。これは私はひどいと思いますよ。これなんかすぐ消費につながるのですよ。この振替所得はすぐ消費につながって、そうして必ず乗数効果もある。ですから、なぜこれをおやりにならないのか。そうして、年金の制度を変えますとおっしゃるけれども、二万円にしたからといって、これは制度を変えるときに支障はないです。絶対に。まさか政府がそんな低い年金をつくると思いませんからね。二万円にしておくこと、これは二万円であったためにあれで非常に支障になったということはありません、七十歳以上二万円ですから。そうでしょう、小沢さんは専門家ですからよくわかると思うのですけれども。今度われわれは各党に聞きましたところが、大体二万円で野党の方は意見がそろいました。現予算から見ると三千五百円アップですよね。どうですか、これはおやりになるかどうか、ひとつ厚生大臣から答弁を願いたい。
  101. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 福祉年金を二万円に引き上げるということにつきまして、将来の基本的な年金の見直しの際に支障がないではないかというお説については、それは、たとえば私の方の年金問題懇談会とか、あるいは総理府の社会保障制度審議会等の御意見等を見ましても、私はそう支障があるとは思わないのです。ただ、今日現在では、やはり相当支障があるのじゃないかと思うのです。  これはなぜかと言いますと、専門家でいらっしゃいますから御承知のように、福祉年金を二万円に上げますと、当然五年年金に響いてまいります。五年年金に響いてまいりますと、これがやはり十年年金に響いてくるわけでございますので、そういたしますと、これはもう拠出制の国民年金全体の整合性といいますか、バランスとの問題もやはり考えをいたしてみなければいかぬわけでございます。それと、福祉年金は御存じのように国が全部持つわけでございますので、一万六千五百円から考えましても、大体平年度二千三百億の負担増になるわけでございますので、やはり慎重に検討していかなければいかぬのじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはお年寄りだけじゃないのです。お年寄りを抱えておる、いま一番費用のかかっている、いわば中年の家庭にひびが入るのですよ。これが助かるのですよ。ですから、お年寄りだけの問題じゃなく、これはお年寄りを抱えております家庭に非常に潤いがあるのですよ。そういうふうに考えていただけなければならぬ。五年年金に影響、それは若干ありますよ。しかし、われわれは多く無理を言っているのじゃないのです。これは六十五歳で、福祉年金は七十歳ですからね。ですから私は、上乗せを少ししてもらえばできると思うのです。  どうですか総理大臣、これは善政ですよ。一番、消費効果も上がる。ですから、これをおやりになったらどうですか。昭和三十四年に千円だったかとおっしゃるけれども、昭和三十四年から五十三年、これは予算から見ると二十四倍になっているのですよ。ですから、千円は二万四千円になってもいいのですよ。GNPで見ると大体一九・五。ですから一万九千五百円。これはちょうどいいところなんですよ。あのとき千円で発足したのが、ちょうどGNPの伸び、予算の伸び、その平均値。これは実にいい数字になってきておると私は思う。  おやりになったらどうですか。いろいろ工夫はありますよ。あなたは平年度でおっしゃるけれども、あなたのところで予算を組んで、たとえば今度一万五千円を一万六千五百円、千五百円上げるとしても、あなたのところは平年度で組まないでしょう。幾ら組むのですか。国民福祉年金はあなたのところは八、九、十、十一月しか組まない。それで十二月からの分は四月に払うようにしておるでしょう。あなたの方はちゃんとそういうふうにしてある。大体三分の一しか組まないのですから。何か工夫があるのですよ、工夫が。どうですか。これはだれに聞いたらいいでしょう。金の話ですから、厚生大臣並びに大蔵大臣
  103. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 二千三百億というのは平年度でございまして、五十三年度の予算ベースからいいますと八百億、こういうことになります。  ただ、多賀谷先生非常な専門家で、この点だけは二点考慮願いたいと思うのですが、一つは、所得制限というものについての考え方を二万円に上げた場合にどうするかということも、やはり考えていただかなければいかぬと思うのですね。いま大体月七十万の所得のある人にも支給をされているわけでございますから、この点もひとつ、二万円に上げるという案をおつくりになる場合には、社会的な全体の、その他のいろいろな気の毒な方々との整合性も考えていただきたい。  それからもう一つは、福祉年金の性格自体をやはり、私どもはかつて経過年金として出発をしたわけでございまして、そのときは千円で、生活保護の最低保障の金額が千九百円でありました。しかし、老人加算がございますと大体二千九百円の千円で、経過年金は約三分の一の比率でありたわけでございます。そうすると、今日でもそれは、多賀谷先生のおっしゃる別の比較から言いますと、おっしゃるとおりだと思いますが、生活保護の老人一人とした場合、この老人の加算を加えた金額と比較しまして約三分の一に大体均衡をとって今日まで来ておるわけでございます。これは経過年金ということでやってきたわけでございますが、この福祉年金の性格自体を根本的に見直していかなければいかぬということは私どもも考えておるわけでございますが、それはもうしばらく時間をかしていただきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 中野四郎

  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いいです。ああいう答弁なら。  所得制限の話あたりは、それは決まってからの話でしょう。それを所得制限を考えなければならぬから本体ができないなんていうのは、話が主客転倒していますよね。ですから、これは総理、いろいろおっしゃるけれども、生活保護の三分の一でいいなんていう物の考え方の年金が大体ありますか。これははなはだお年寄りに済まないけれども、われわれが制度として創設しなかったからでしょう。それはわれわれの世代の責任なんですよ。  年寄りは待っていないのですよ。でありますから、これはもう当然出してしかるべきじゃないかと思うのですよ。十年年金だってそうでしょう。いま二万四千円ぐらいになりますけれども、十年年金の人だって十年間に二万五千八百円しか納めていないのですよ、百五十円から十年間納めて。その人が月に二万四千円もらっているのですよ。それなのに、おまえは制度がなかったからあきらめい。七十歳の人に一万六千五百円であきらめいと言えますか。しかも、六十五歳と七十歳というのはずいぶん開きがあるでしょう、余命年数はそうないのですから。六十五歳以上の人の余命年数は、これは男子と女子で若干違いますけれども、大体男子が七十八歳、女子が八十歳ですから、その三分の一違うのですよ。私は、均衡的にいっても、これはやはり日本政治家、われわれの世代の政治家が責任を持たなければならぬ。しかも、これは雇用、いわゆる消費にすぐつながる、景気回復につながるのですから、これはやるべきだと思うのです。どうですか、総理
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 福祉年金は改善を要する、基本的には私、こういう考えを持っておるのです。しかし、そのテンポが問題なんですね。政府の方では五十三年度はたしか一〇%上げですか、考えておるわけですが、いま私どもが非常に問題にいたしておりますのは財政の問題なんです。これはもう先々を考えると容易なことじゃない。そういうとき、福祉年金を一〇%上げるとしたって物価水準よりはもっと高い上げ方でしょう。そういう処置をしておるわけでございますが、さらにこれを一万六千五百円から二万円にする、これは相当の財源が要る。さらに……(多賀谷委員「八百億」と呼ぶ)そうですよ。八百億といったら大変なことだ。それからさらに五年年金との調整問題、十年年金との調整問題、そういうものもある。そういうことを考えますと、これはそう簡単な問題じゃない。お気持ちは私はよくわかります。わかりますけれども、国家財政の立場から考えましてそう簡単にはいかぬ、こう申し上げたいのであります。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 案外、福田総理は親孝行でないですね。これは本当に、あなた知ったような話をされておりますが、全然知らない。将来のことを考える、将来はこれはだんだん減るのですよ。もうすでに昭和五十一年を頂点としてだんだん減っているのですよ。新しい人はみんな拠出年金の人が出てきておるのですから、だんだん減るのですよ。ですから、七十歳の人は十年たったら八十になって、二十年たったらほとんどいなくなるのですよ。だんだん人間は少なくなっていくのですよ。将来なんか全然心配ないのですよ。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 将来の財政のこと。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 将来の財政、だんだん減るじゃないですか。総理、どうですか、このくらい踏み切ったらどうですか。これは実に簡単ですよ。そして一番喜ばれる。それは家庭が喜びますからね、おばあちゃん一人じゃないのですよ。
  110. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、現在の四百二十万見当の支給対象者がだんだん、平均余命から見ますと将来はもちろんなくなっていくということでございます。ただ、私が申し上げているのは、いいことには違いないけれども、福祉年金の性格を、私どもはことしいっぱいぐらいかけまして本当に根本的に――老後保障という点からいいますと、二万円でもやはり私は足らぬと思うのですね。ところが、それにはやはり国民年金の全般的な観点から老後保障というものを、だからこそ制度審議会でも三万円の基礎年金で、これは一定の目的税で国民の負担を願って、そして基礎年金として三万円は、夫婦で五万円はひとつ支給すべきだという御意見も出されておるわけでございますから、それらの御意見を踏まえた上で、福祉年金そのものの性格もひとつ老後保障的な性格にはっきりとわれわれも考え直して、今後国民負担との関係でどうあるべきか、どの程度の額が一番いいのかということも一年かけて検討した上で、根本的に年金制度自体の改正を考えていきたいと思いますから、時期的に見て、いま直ちにこれだけを引き上げるということについては御一考願いたい、こう申し上げておるわけでございます。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 さっきから、制度改革には支障はない、あなたもおっしゃったようにそれは高くはない、それじゃ低いと思いますというのですから、しかも七十歳以上ですから制度改革には支障ない、将来はだんだん減るのですからこれもない。それで、金額だって膨大じゃないのですよ。どうせ制度を改革しても三万円ぐらいには最低なるでしょうから、やればいいじゃないですか。  総理、これはどう考えるのですか。これくらい予算委員会ではっきりさせたらどうですか。全野党がまた持ってこられれば政府としてはそれをのむ、こう言えばいいのですから、本当に簡単なことですよ。これが政治ですよ。どうですか。
  112. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 予算委員会が何のためにあるか、こう言いますれば、日本の国のために最善の予算はどういうことであるべきか、こういうことだと思うのです。ですから、十分御審議願います。政府といたしましては、いま御審議願っておる予算、これは総合的に考えましてベストの予算を出しているのだ、そう自信を持ってお願いしておるわけですから、御審議の方はひとつ十分お願いしたい、かように存じます。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは続いて各党で話し合って折衝をしたいと思いますが、ぜひ自民党ものんでいただきたい。私は、こういうことが本当の政治だと思うのです。  それから次に、所得税の重税です。これはやはり緩和したらどうですか。所得税重税というのは、ベースアップが行われますと多くなるのです。そうして昨年の戻し税等を入れますと、三千五百億と三千億ですから、それだけ大体重くなってくるわけです。ですから、各研究所が、二兆ないし一兆円の減税を行ってもまだ七%には達しない、こういうことを言っておる。そういう点を考えると、やはり公共事業一本やりではいけないのじゃないですか。そうしてなぜ、どこにあなた方は乗数効果、波及効果が少ないとおっしゃるのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  114. 村山達雄

    村山国務大臣 私から先にお答えさせていただきます。  いま日本の租税負担、特に所得税に限定いたしますと、御案内のように、日本の所得税の負担は先進国に比べて大体半分でございます。住民税を入れて約半分だということは、日本は相次いで所得税並びに住民税の減税をやってきたわけでございます。大体所得税だけでございますと、個人所得に対しまして四%、住民税を入れて七%でございます。ほかの国は大体一二%ぐらいのところでございますから、負担率でいって半分でございます。特に低所得者に関係のあります課税最低限に至りましては、御承知のように、日本は二百万円を超えておりまして世界最高であるわけでございます。  調整減税のお話、わからぬことはございません。しかし、日本はいままで消費者物価の高騰よりもはるかに課税最低限をずっと上げておるわけでございまして、国際比較をとってみましても、昭和四十年から五十一年度までの消費者物価の上げ方と課税最低限の上げ方では、日本が最も消費者物価の上げ方を超えて課税最低限を上げておるところでございます。それから、財政収支試算にございますけれども、いずれ近く何とか健全化を図るためには、負担の増加はよかれあしかれ避けられないというときに、問題を将来に残すことはどんなものであろうか。  それから第二番目は、何と申しましても、いま雇用の増加とかあるいは需要の創出、これが一番今度の日本経済に求められておるところであり、それだけに財政主導型でいっておるところでございますけれども、そういう意味の雇用造出効果あるいは需要創出効果、総じて景気効果から申しますと、公共投資の方が、これは直接仕事をやるわけでございますから、当然生産財あるいは資本財、そういうものに直接いきますし、それに伴う波及効果、これは物を通じ、あるいはその所得を通じまして波及効果が高いということは、私は議論の余地がないだろうと思うのでございます。今日の波及効果が高度成長時代より落ちる要素があった。特に過剰在庫を抱えておるときにはそういうことが言えますが、今日の状態考えますと、私はやはり常識的にもうかなり違うのじゃないだろうか。乏しい財源でどういう雇用効果を生むかという点になりますと、どうしてもわれわれは、所得減税はことしは何とかこらえてもらいたいというのが私たちの考え方でございます。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、公共事業がだめだと言っているのじゃないんですよ。公共事業一点張りで福祉欠落の予算では、個人消費も上がらないんじゃないですか、こう言っておる。一方は、総理大臣みずから言っておる。建設大臣にげっぷが出やせぬかと言っておる。そんな、消化できるかどうかわからぬような大盤振る舞いをやって、一方においては増税に現実になっていくというのは、どうもバランスがとれないんじゃないか。  そうして総理、この前、不公正税制の是正をあなたは約束されましたね。不公正税制の是正を約束されたわけですが、それは公約を履行されたんですか。  時間もありませんから、私は会計検査院に聞きたい。  昭和五十一年度決算検査報告によりますと、社会保険診療報酬の所得計算の特例について、あなたの方は報告を出しておられる。その概要と、そうして従来厚生省がわれわれに説明をしておった、たとえば薬価は三七%ぐらいですと、こう言っておったけれども、少なくとも会計検査院の報告によると、薬価は一九%ぐらいだ。一体なぜこんなに違っておるのか。  これは厚生大臣からお聞かせ願いたいけれども、どうも会計検査院の報告と従来の厚生省がわれわれに発表しておる数字とが非常に違う。これはどこからそういう原因が出たのか。私は、必ずしも全部のお医者さんが優遇されていると思いませんけれども、いま一番問題になっている点は、一応改正をして、改めて出直して、実態調査をしてから新しい便法を講ずるなら便法を講ずる、その必要があるのではないか、こういうように考えるわけです。  そこで、この問題について会計検査院から答弁を求めたいと思いますが、時間もありませんから、大蔵大臣はこの問題についてどういう態度で臨むのか、あわせてお聞かせ願いたい。
  116. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院長 五十一年度の検査報告に特記事項として掲記したわけでございますが、会計検査院は本来、違法、不当事項を指摘するというのが基本的義務でございます。その他、こういつた制度の見直しということも大いにやるべきであるという考えに立ちまして、そういう面にも非常に注意をしてまいったわけでございます。かたがた、決算委員会等でも租税措置の特別法等にもよくメスを入れてくれ、こういうようなお話もあり、また医療所得計算の不公平課税の問題についても世論が大きくなっておる、そういう情勢を踏まえまして、会計検査院のような独立機関が客観的な事態をつかんで、そしてこれを公表することは、各界のこの種の論議に非常に有意義ではなかろうかというふうな考え方からいたしまして、今回の検査報告に特記事項として掲記した次第でございます。  その数字的な内容につきましては、いま担当局長に説明させたいと存じます。
  117. 前田泰男

    ○前田会計検査院説明員 それでは、簡単に御説明申し上げます。との調査は、所得一千万円以上の個人開業医一千六百九十六人の収支報告書をもとにして出したものでございますが、それで、この方々は七二%以下の方でございまして、特例の適用を受けた方でございます。そして、その実際の経費率の平均をとりましたところが、最高七一・八%、最低一九・七%、平均五二%、その内訳は、先ほど先生のおっしゃいましたように、薬価が一九%、人件費が一四%、減価償却が二%、こういうことでございます。  それから診療科目別に見ましても、かなりのばらつきがございます。ただ、これを収入規模別にとってみますと、収入に比例して経費が上がっていくという関係はございませんで、大体平均的に収入がふえれば経費も大体平均しているということで、お金持ちのお医者さんであればあるほど優遇率が大変高い。実際問題といたしまして、この一千六百九十六人、いわゆる所得一千万円以上のお医者さんの軽減税率は一人平均約七百万円、こういうことでございます。
  118. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 ただいま会計検査院から報告をされましたように、対象人員が医師と歯科医師含めまして千六百九十六人というお話でございます。したがって、私どもはこれをもって全般を、三分の一の三分の一ぐらいでございますから、とても全般を類推するということは困難ではなかろうかと思うわけでございます。  ただ、会計検査院のおやりになったことについて私どもここでいろいろ意見を申し上げるのは適当でございませんけれども、医師課税につきましては特例中の特例であることは間違いないのでございまして、ただ、その先生方も含めた与野党一致した合意でできました経過を見ますと、御承知のとおり診療報酬との関連でこの制度がとられたわけでございますから、したがいまして、診療報酬の点から私どもも十分これをよく検討を加え、また医師医業の特殊性、御承知のように医療でも当然営利を目的とすることを禁止しておったり、あるいはまた医療法人の利益配分を禁止したりした条項等を見ますと、医師、歯科医師の特殊性というものは十分考えられますので、そういう観点も含めまして総合的にこの一年間で、どういうふうに医師税制があるべきかということは真剣に検討して、近く結論を出していきたい、かように考えております。
  119. 村山達雄

    村山国務大臣 会計検査院からただいま御報告のありました資料は、私は一つの貴重な資料として受けとめているわけでございます。また、この制度ができましたことにつきましては、いま厚生大臣が申しました諸般の事情があってできたことはよく存じているのでございます。しかし、この制度自体を何とかしなければならぬということは、大方の皆様のお考えでございまして、ことしの自由民主党における政調の結論におきましても、現在の制度は五十三年度限りで打ちどめる、そしてその後諸般の万般の対策を考える、そのために、その打ちどめについては議員立法でやりたい、こういうことを決定している次第でございます。したがいまして、政府といたしましてはそのことを踏まえ、その後諸般の事情を整えるということでございますので、それらのことを全部含みにいたしまして、政府も並行検討して善処してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはひとつ、不公正税制の一つとして非常に批判がされているわけですから、今後の税制のあり方についてわれわれがいろいろ考えなければならぬ場合に、ぜひひとつ一回洗い直してみる必要があると思います。  そこで、もう一つ、これは外務大臣にお聞きしたいのですけれども、いま人権問題というのは世界的な大きな問題になっておるわけですけれども、国際人権規約の「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、A規約と言われているもの、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、B規約と言われているもの、これは先進国では――フランスは特別の事情があって、何をいまごろそんなことを言っておるか、自由平等はわれわれの国是だということで、これはそういう意味から批准していないのですけれども。そういたしますと、批准していないのは日本だけですね。これはこの国会で批准されるわけですか、これをお聞かせ願いたい。
  121. 園田直

    ○園田国務大臣 人権規約の批准については御意見のとおりでありまして、特に私は、ありとあらゆる国々に外交を進めていくのには日本人自体が国際人になる必要があると考えるわけでありますが、この宣言を批准して日本人が国際人にならない限り、日本の国内において日本人だけが特別の人種であるかのごときことは、外交上これはきわめてよくない、こう考えております。これについては総理大臣あるいは前外務大臣等がしばしば国会で答弁いたしておりますが、ただいまこれがおくれております理由というのは、国内法との調整のために若干おくれておるわけであります。できるだけ早く批准を願うよう準備をいたしておりますが、今国会に間に合うかどうかということは、まだお答えする時期は来ておりません。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 カーターの人権提案といい、こういう時期にこそ早く、日本がいろいろな面で批判されておるのですから、日本国土におられるいろいろな国の人々の条件も差別のないようにという趣旨のものですから、ぜひこれは批准手続をこの国会でとってもらいたい。大丈夫でしょう、この国会は。
  123. 園田直

    ○園田国務大臣 いま調整中でございますと答弁しましたが、逃げているわけでは断じてありません。できるだけ早くやるように準備をいたしております。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私の時間は、残念ながら雇用の造出計画ということで中断をいたしました。私は別の機会にこの問題を中心にやりたいと思います。  そこで、委員長に確認をいたしたいと思いますけれども、ロッキード事件に対するいわゆる灰色高官と言われる四名について、これは刑事問題ではない、道義的、政治問題ということになっておりますけれども、その政治的責任を明らかにするために、従来の経緯にかんがみまして、本委員会において証人として喚問すべきである、こういうように思いますが、委員長に確認をお願いいたしたいと思います。
  125. 中野四郎

    中野委員長 御要望の点は、後刻理事会において協議をすることにいたします。  保留をした問題を残しまして、これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。  次に、足立篤郎君。
  126. 足立篤郎

    ○足立委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、今回提案された予算案及びその背景になっております政府経済政策等全般につきまして御質問をいたしますが、私は、特に国民がぜひ政府の真意を聞きたいと思っておるであろう問題を拾って質問をいたします。  何せ間口が広うございますので、どうしてもこれは総花的といいますか、散発的といいますか、ということになりますので、この点あらかじめ御了承を願っておきたいと思います。  個別の問題に入ります前に、円高問題等につきまして、まず総理大臣の御所信を伺っておきたいと思う点がございます。  それは実は去年の十月中ごろでございましたが、私たまたま新幹線の中で読むものがございませんで、備えつけのニューズウイークを手にしたわけです。字は細こうございますし、私も横文字は得意じゃございませんで、めったにそういうことはないのでありますが、たまたま虫が知らしたのか、ニューズウイークをばらばらっとめくっておりますと、とんでもない記事が目に入ったわけです。  その見出しは、クラッキング・ダウン・オンジャパンという記事であります。しかもその記事は、ストラウスさんの談話を記事にまとめたものらしくて、三ページぐらいございました。私の語学力では、辞書も持っておりませんし、とても全般について正確に解読することは不可能でございましたが、大筋はわかりました。要するに、日本の洪水のような輸出、工業製品の輸出の攻勢に遭ってアメリカの経済は大混乱に陥っている。そして企業の倒産がふえ、失業者もふえておる。アメリカの経済は破綻に瀕しておる。日本の一九七七年における黒字は恐らく百三十億ドルぐらいになると推定される。アメリカは逆にその約倍、二百五十億ドル以上の赤字が出る見込みであるどうした無謀な日本輸出攻勢に対しては、アメリカは断固として戦わなければならぬ。経済戦争という、ウォーという言葉がたくさん出ておりまして、私も、余りにどぎつい表現がしてありますので、実はびっくりしたわけでございます。  その後、訪米しました議員団が持ち帰ったアメリカの新聞等を見ましても、たとえばロサンゼルスあたりの新聞では、新聞社にこんなに大きな活字が一体あったんだろうかと思うような大きな活字で、パールハーバーを忘れるな、と大きな見出しが出ているわけですね。内容は、大体いま申し上げたニューズウイークのストラウスさんの記事と似たようなもので、日本のこの野望を打ち砕かなければならぬというような非常に戦闘的な、まるで日本が貿易でやみ討ちでも食らわしているようなことが書いてあるわけでございます。  正直申し上げまして、私どもも、この二、三年来、対米貿易は日本がきわめて好調であるということは知っておりますし、また、カラーテレビや鉄の問題その他、いろいろとクレームのついておったことも承知はしておりますが、まあ日本人全般は、私を含めて――一部の外務省の方や商社の方は別としても、こうしたアメリカのどぎつい空気といいますか、日本に対するこれほどの反感が巻き起こっているということは、私ども夢にも感じません。われわれの方には実は罪悪感はないわけでございますが、アメリカの言い分は、まさに日本は犯罪人だと言わんばかりの言い方でございます。ちょうど私どもは、やくざに何か因縁でもつけられたような感じを初めは持っておったわけであります。  正直言って、外務省の出先あたりがこういう空気を察知したならば、もう少し正確に情報を事前に伝えてくれるべきじゃなかったかと思いますが、まあ外務省があっても外交がないなんと悪口を言う人は、正直言って、実は自民党の中にもおります。ですが、そのことは別として、そのころから実は異常な円高が始まったわけですね。言うならば、これは仕掛け人はアメリカだと私は思うのです。つまり日本輸出の矛先を鈍らせるためには、何としてもここで一撃を食らわさなければならぬ。円が上がればそれだけ輸出がしにくくなるということで、しかもアメリカが一歩こういうことに踏み出しますと、世界じゆうにアメリカがたれ流したドルはどっと日本に――これは中には投機の目的もありましょう。中には、日本の商社あたりで、円が上がるなら早く円にかえておかなければいかぬという動きもあったと思います。いろいろな要素が重なって、日本銀行が逆立ちしてもこれは買い支えはできないということで、あれよあれよという間に二十何%、きのうあたりが二百四十一円四十銭ですか、いまのところ小康を得ているといいながら、一時は二百三十円台まで上がる、こういうことでございまして、どうもこの動きを見ていると、カーターさんには申しわけないが、カーター大統領のドルのたれ流しという経済政策の失敗を、日本が犯罪人だということで、日本を悪者にすることによって国内の目をそちらへ向けさせた一つの政略的なものがあるのじゃないかという感じさえも私は持つわけでございます。しかも今度の円高攻勢、これは全くやみ討ち的なものでございまして、日本輸出が真珠湾攻撃だというのならば、これはまさしくアメリカが日本に原爆を落としたと同じようなやり方ではないかというような感じさえも私は持っているわけでございます。  そこで、その後、福田内閣の改造により、外交の、ベテランである牛場さんを対外経済大臣に任命されました。牛場さんは席の暖まる暇もなく、恐らくゆうべお帰りになって、きょうは眠そうな顔をしていらっしゃいますが、この予算委員会に御出席になっている。お気の毒に思います。しかし、八面六暦の活躍をされていることは私は敬意を表するわけでありまして、福田改造内閣のヒットであると思っていますが、まあ、申し上げれば、若干手おくれではなかったかと思うくらいでございます。  それはそれとして、ともかくこうなってまいりますと、日本の貿易は非常な困難にぶつかってくるわけでございまして、円高不況という問題が表面に出、後ほど伺いますが、政府もこれからいろいろと手を打たれるわけでございます。  この間ストラウスさんが見えて、十三日の日に一応の日米経済協定ができました。いまさっき申し上げたように、高いは高いなりに円も小康を得ていると申し上げていいと思いますが、しかし、これがまたアメリカさんのお気に召さぬと、いつまた抜き打ち的な原爆を落とされないとも限らぬということになると、商売は恐らく上がったりになるんじゃないか。いわゆる売り手市場の品物はそれでも出るでしょう。しかし、この売り手市場の品物で二百四十円で楽に輸出ができるというのは、恐らく五本の指を屈するぐらいの業種しかないと私は思っているわけでありまして、大半はいわゆる買い手市場でございますから、円の相場がどうなるか見通しがつかないということになりますと、これはもう必要以上にたたかれる心配があるわけでありまして、商売ができなくなる。一時しのぎは赤字覚悟でもできないことはありませんが、これが長期になったら、いま日本はドルがたまり過ぎて困っているなんていい気持ちになっていますが、大変な結果になるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  そこで、実は国民の間に、また、正直申し上げて自民党の有力者の中にもそういう意見がございますが、この際思い切って固定相場制に戻ったらどうだ、こういう意見があります。一応もっともでございますが……(「相手があるよ」と呼ぶ者あり)いま、やじが出たように、相手もございます。それで、日本の都合のいいように固定相場制を日本がもし堅持したとするならば、もう必ず諸外国からしっぺ返しを受けることは火を見るよりも明らかであります。その場合には恐らく輸入制限を相当厳しく食う、場合によれば輸入禁止を食う、あるいは禁止に等しいような課徴金制度でも設けられれば、もう貿易以外に食っていく道のない日本としては、全く手も足も出ません。総理は碁をお打ちになりますが、碁打ちはよく手も足も出なくなるとやかんのタコと言います。タコをやかんの中に押し込めてふたをすると、さすがのタコも手も足も出しようがないということで、うまいことを言ったものでありますが、日本の貿易がやかんのタコになっては大変であります。それこそ取り返しがつかないということになるわけでございますので、どうもそう粗っぽい考えで固定相場制に戻るといっても、簡単なことではないと思うのであります。  そこで総理にお伺いしたいのは、昨今、ローザ構想というのが表面に出てまいっております。何か大蔵省の松川財務官がそのためにアメリカに行っているとかいう話も聞きますが、やはり総理のおはこであります協調と連帯ですか、これで基軸通貨を持っている国々、言うならばアメリカ、西ドイツ、日本、ドルとマルクと円が協調をして、無理のない程度の幅で安定を図るという見通しがつけば、私はやはり貿易もまた息を吹き返してくるのじゃないかというふうに思いますし、安心して商売もできる。これが見通しがつきませんと、幾ら予算を三十四兆円組んで、さあ公共事業中心で内需を喚起すると言ってみても、なかなか景気は出てこないのじゃないか。この二、三年これだけ輸出貿易が盛んで、黒字がたまっていながら、なおかつ国内では不況にあえぐというようなことは、いままでの経済常識では考えられないことですね。ですから、この上貿易が詰まったならば、それこそ青菜に塩というか、どうしようもないということになるのじゃないかというふうに実は思っているわけでございまして、総理は、いま申し上げたローザ構想と言われている、まあこれはターゲットゾーンとかなんとかいうので一定の幅、目標を決めて、国際通貨の基軸になるドルとマルクと円を相互に安定させようという政策のようでございますが、どんなふうにお考えですか。私は、これはぜひひとつ腹を決めてかかっていただかないと大変なことになる、こう思って御質問申し上げるわけであります。
  127. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は大蔵大臣を長いことやっておりましたが、ずっと為替固定制、これを支持してきたわけなんです。しかし、これが維持できないという世界情勢になりまして、今日の変動為替制に移っちゃった。私はいまでも思っているのですが、一番好ましいのは固定為替制だと思うのです。しかし、この固定為替制をやっていくためには、主要の通貨国が国際収支につきまして大体節度ある運営というか、そう大した赤字国もない、そう大した黒字国もない、こういう状態になりませんと、これはやはり運営できない。むしろ非常な投機を誘発して、経済が逆に混乱を来すということになりかねないのです。いま現実の状況は、石油ショック以来それぞれ各国の国際収支がまちまちでございまして、なかなか固定制に返る基盤というものが出てこない。そこで、いま足立さんのお話のような中間的措置といたしまして、ターゲットゾーンというものを設定して、それの上下の幅を置いて、その辺で主要通貨国、特にアメリカ、日本、ドイツ、これらの国が通貨運営をしたらよかろうじゃないかというので、それをローザという人が提唱したものですからローザ構想と、こういうふうに呼ばれておりますが、それが提唱されておるのです。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 しかし、それとてもいまアメリカが二百七十億ドルも貿易赤字がある、こういうような状態において、さあターゲットをつくってそれが守れるかというと、私はなかなかそうはいくまい、こういうふうに思うのです。しかし、最終的には固定制がいい。しかし、そこへ行くにはなかなか容易じゃないから、中間的措置を選ぶというとローザ構想というようなことになりましょうと思います。したがって、なるべく早くせめてローザ構想くらいは実現できるような客観情勢というか条件をつくり上げたい、こういうふうに思いまして、わが国としても非常にいま重要な立場にありますから、せっかく努力をしてみたい、かように考えております。
  128. 足立篤郎

    ○足立委員 総理のお考えはよくわかりました。固定相場制が望ましいことは申すまでもございませんが、固定相場制を主張する人は、はっきり言うと日本に都合のいい固定相場制ということですから、こういうことをやればしっぺ返しで大変なことになるということですから、やはりよく世界じゆうで合意された固定相場制でなければならぬが、それはなかなか、私は、正直言ってむずかしいのじゃないかと思うのです。各国それぞれの事情がございますからね。そうかといって、さっきからくどく申し上げたように、抜き打ち的な円高攻勢に遭うような変動相場制では、安心して商売もできないということになるわけですね。  私が特にこれを急いでほしいと申し上げたのは、申すまでもなく、先般のストラウスとの対米経済協定で一応の目安はできて、いま小康を得ていますが、これがいつまで続くという保証はないわけですね。ですから、何とかこの次の手を早目に打つことを、政治の最高責任者である総理としてお考え願っておく必要があると思って申し上げたわけです。  次に、もう一つ総理に教えていただきたい問題があるのですが、それは、いま円高のために、いわゆるデメリットが表面に出まして大騒ぎになっているわけですが、考えてみますと、日本は、幸か不幸か、原料、材料の大部分は輸入している国でございますが、こうしたものが皆円高によって、入ってくるときには、円に換算すれば安くなるわけなんですね。だから、メリットも十分あるはずなんですね。だから、消費者の立場から言えば、円高メリットを還元せよというやかましい声が出てくるのも、これはまことにもっともだと思うのです。  ただ、日本はいろいろながんじがらめの仕組みがございまして、たとえば、私もその後いろいろ調べて見たのですか、鉄と油が一番大口だと思いますが、鉄なんかも、いままで累積赤字をたくさん持っているので、少々円高メリットがあっても、とても国内の製品の販売価格を下げるところまではいきませんよというような話を聞くとがっくりするわけなんです。それから、油の方も、今度は石油税の新設も行われます。それから、九十日備蓄というのは、これは業界にとっても並み大抵の努力じゃないわけですね。公害対策施設だとかいろいろな金のかかることばかりしょっているものですから、円高のメリットがあったからといって、油の製品がそれだけすぐ国内で安く売られるということはなかなか考えられない。もちろん、ストレートに値段が下がってくるものもあります。家畜の飼料などは下がっているはずでございますし、そういうものもございますが、そうした原料、材料が現実に円高で下がってくれば、日本の生産コストというものはそれだけ下がる理屈になりますから、また国際競争力はついてくるはずなんです。  ただ、困ることは、外国貿易というのは、大体半年ぐらい先を見て契約を結ぶわけでございますので、いまあるランニングストックを食い尽くす間は、高い物を使って安く売らなければならぬという理屈になるので、これは大変な円高不況になるわけでございますが、この辺のところを総理はどういうふうにお考えになっているか。  それと、もう一つあわせてお伺いしますが、外国からは、特にECあたりからも強い要求があるようで、牛場さんのお話を聞くといいですが、時間の関係上省きますが、製品輸入をふやせということをしきりに迫られておりますね。いまは二〇%ぐらいですか、輸入の中で。これを五〇%にせよと言うんだが、どうも私は、これぐらいむずかしい話はないんじゃないか、日本が軽々しく色よい返事をしますと、後から責任を追及されて大変なことになるんじゃないかと思う。私もいままであちこち外国を旅行してまいりましたが、一番最初に行ったのが、昭和二十六年、アメリカ政府の招待で、アメリカを三カ月、農業使節団として歩きました。その当時は、見る物聞く物皆珍しくて、欲しい物ばかりで、いま考えると笑い話でありますが、ビニールのふろしきをおみやげに地元へたくさん買って帰った。あれは重たいものでございまして、当時は軍用機でございましたから、なかなか文句を言われました。いま考えればばかばかしい話です。ですが、何でも珍しかった。十年たって外国を旅行しますと、欲しい物が大分減りましたが、それでもまあ万年筆とかライターとか、何だかんだいうもの、欲しい物が若干ありました。それにたばこなんかも、外国へ出るとすぐ外国のたばこを吸いたくなりました。ところが、昨今どうでしょう。専売公社はきょういるかどうか知らぬが、別におべっかを使うわけじゃないが、よく努力したと思っております。私は、ああいう専売なんという事業は本当はきらいな立場なんです。ですが、私ども、いま外国旅行するときに、かばんにセブンスターを詰めていくのですから、現実に。これは、ああいう嗜好品は好ききらいもありますよ。好ききらいもありますが、ともかくよく努力した。いま外国へ行って、欲しい物というのはほとんどありませんよ。私は、サンフランシスコに長男がいるものですから、去年の夏遊びに行きまして、私は釣り気違いなものだから、釣り道具屋へ行ってあさってみた。売り子の女の子に、この中にメード・イン・ジャパンのものはあるかと言ったら、売り子が手を広げまして、エブリシング・メード・イン・ジャパンと言う。何でも日本製だと、こう言う。なるほど、ダイワの製品なんか、スピニングリールという投げ釣りですね、それから釣りざお、高級品で通っている。  こうなりますと、いいですか、私は冗談めかしにこんなことを申し上げて恐縮ですが、本当の話を申し上げているわけです。これは製品を買えと言われたって、買う方が苦労しますな。円高で多少は安くなるにしても、本当に物がよくて格段に安ければ別として、日本の消費者に無理に舶来を使えと言うわけにもいかぬ。  ということになりますと、私は、結論としては、やはり政府の配慮で大口のものを何とか輸入して埋め合わせをつける。たとえば航空機、これは軍用機と民間機とありますが、あるいはウラン燃料もこの前から問題になっています。どういうものが、適当なものがあるか、私も詳しいことはわかりませんが、そうした政府の配慮によって何とか貿易のバランスをとっていくということをお考え願わないと、またしっぺ返しを受けるようなことになってしまう。なかなか製品の輸入はむずかしいんじゃないかと思うのです。  こうした、いまの円高メリットに対する物の考え方と、いま申し上げたような現実の問題について、総理はどんなふうにお考えになっていらっしゃるか。  なお、たびたび総理に立っていただくのは恐縮ですから、もう一つつけ加えますが、総理は施政方針演説で強調されておりますとおり、米国との協調を外交の中軸とするというお考えのようで、これは私どもも評価するところでございますが、日米関係、この間ストラウスが来まして一応の妥結は見ましたが、カーター大統領と本当に腹を割って今後の問題についてお話し合いになる、そのために近く訪米なさる、こういうようなことも新聞にちらほら出ますが、そのお考えはどうでございましょうか。それをあわせて御答弁いただきたいと思います。
  129. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円高メリット・デメリット、そういう問題でありますが、これはいまデメリットの面が強く前面に押し出されておるわけです。確かにデメリットという問題は、これはもう非常に深刻な問題だと、こういうふうに思います。それをあえて否定するわけでもないし、また、私はデメリットの面を強調し、そのデメリットに対しましては、これは政府においても中小企業対策だとかいろいろな施策を打ち出しておることは御承知のとおりであります。しかし、この際、円高のメリットの面もこれに着目し、これを生かしていくという考え方をしていくべきだ、こういうふうに考えるわけであります。  一番直接的にメリットがありますのは、これはやはり物価の面だろうと、こういうふうに思います。ところが、いま工業品、それから原材料というお話がありましたが、日本貿易構造が、輸入につきましては八割までが原材料なんです。たった二割が完成品である、こういうわけであります。それで、円高のメリットは、原材料につきましてはすぐ目に見えるように出てこないのです。完成品で言いますれば、為替が上がっただけすぐ値段に響いてしかるべきものであり、これを追跡することは可能でありますが、原材料は原材料として買って、そして何回か加工されたり何かして、転々として末端価格になっていくわけなものですから、なかなか捕捉しにくい。しかし、日本経済全体としますと、私は、この円高のメリットというものはかなり出てきておると思うのです。もう卸売物価が去年に比べてマイナスの一・五だ、こういうような状態でございますが、これなんかは私は、円高の影響、これに多く依存している状態ではないか、そのように思いますが、なお、そういう状態は生かしていかなければならぬというので、政府におきましても、たとえばことしはガス料金、それから電力料金、いわば値上げの年に当たるわけなんですが、しかし、この値上げをいたさないで、少なくとも向こう一年間は価格の引き上げを凍結しましょうということにいたしましたが、それができるゆえんのものは、やはり円高という問題があるわけであります。  また、完成品につきましては、それぞれの完成品につきまして追跡調査をいたしまして、そしてそれに基づきまして行政の指導をするというようなことにいたし、そういうものが全体として卸売物価にはね返るのはもとより、消費者物価にもまたいい影響を及ぼしておるのです。一月の消費者物価は、実に前年の一月に比べまして四・四%の上昇にとどまる、石油ショック以前の状態の数字になってきておるわけであります。そういうメリットの還元を急ぎまして、そして輸出が困難になったというが、それが困難な事情というものが早く吸収できるように、原材料の価格が安くなった、したがって売り値が安くなったけれども、その償いができるというようにぜひしたいものだ、さように考えております。  それから、日米関係につきまして大変御懸念でありますが、私もこの関係は楽観していないのです。とにかく、あれだけ巨額の対米黒字であり、アメリカから見ますれば赤字でございますね。それが回り回ってはアメリカの雇用情勢に影響もあるわけなんですから、これはアメリカとしては神経質にならざるを得ない。とにかく八十億にも及ぶ赤字だということになりますれば、これはアメリカ自身としてもかなり重大な問題であろう、こういうふうに思うのです。  しかし、そういう日米間の問題もありますけれども、より大きな問題は、アメリカは、とにかく世界で第一位の経済大国です。わが日本はそれに次いで第二の経済力を持っておる。そういう第一の立場と第二の立場の日米両国は、本当に話し合いをして、そして世界経済に対しましてはどういうふうな姿勢で臨むかということについて意見の一致を見ることは、いま先が非常に見にくいという世界情勢の中で大変意義があることである、私はこういうふうに思うのです。ですから、世界経済は一体どうする、それに対して日米両国はどういう基本姿勢をとる、また、その他世界の政治情勢につきましても、とにかく、わが国はアメリカとは特別の関係にある相手国でありますから、この国との間にいささかの理解が行き届かないというようなことがあってはならぬ。それには、とにかく年に一回くらいは首脳会談をしておいた方がよかろう、こう存じまして、国会の都合が許しますればその時期に訪米したい、かように考えております。
  130. 足立篤郎

    ○足立委員 次に、経済企画庁長官にお伺いしますが、五十二年度の経済成長率六・七%、これが五・三に修正されましたが、最近の経済情勢から、この五・三の達成は大丈夫でございましょうかという点と、もう一つは、もう先ほど来いろいろ議論もございましたが、五十三年度、今度の予算を通じまして、七%成長を政府は公約しているわけでございますが――程度がつきますか、七%程度の成長を公約しておりますが、今回提出された予算で果たしてこれが達成が本当に可能であろうかどうか。特に財政がどの程度寄与するとお考えになっているか。これは非常にむずかしい質問ですが、頭のいい経済企画庁長官にお願いするわけですが、国民に何とかわかるように、これがこうしてこうなるのだというような御説明をいただければ一番ありがたいのですが。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十二年度の五・三%の成長はどうかという最初のお尋ねでございます。  最近、足立委員も御承知でいらっしゃいますように、生産、在庫、稼働率等にまだジグザグはいたしておりますけれども、確かに動意が見られるというふうに私ども考えておりまして、そういうことから、過去の累積的な公共投資の効果が出て来始めたのではないかという判断をいたしつつございます。まだ非常に明確ではございませんけれども。そういたしますと、この五十二年度の残りの四半期、計数的にはまだ四半期が二つ分、数字が出ておりませんけれども、期待が持てるのではないかと考えておりまして、したがいまして、五・三%程度の成長は可能であろうと、ただいま判断をいたしております。  それで、次に、五十三年度の七%を国民の皆さんが御了解をされるような形で説明をしろと言われるわけでございますが、恐らく多くの方が、民間ではそういう見通しをしていない、いずれも政府見通しよりも低いのに、何ゆえに政府がそのように考えるかということが、国民各位の御関心のところだろうと思います。  その点は、一つは、政府がこれだけの財政あるいは財投、税制を通じて異例とも言えるべき努力をしたということ、その以後の時点における見通しというものはそうたくさんございませんで、いずれも昨年中に立てられた見通しが――いずれもじゃございませんが、相当多うございますから、これは政府のそのような努力を十分読んでいなかった点もあろうと思います。しかしながら、ことしに入りましてなされた見通しでも、なお政府よりも低いところを見ている、それはなぜかということはいろいろあろうと思いますが、結局、国民経済のあちこちに在庫というものが従来たくさんございました。それは資本財の場合もありますし、生産財の場合もございますし、原材料の場合もございます。また、いわゆる最終消費財、御家庭におけるこれも一種の在庫と申せるかと存じます。それらのものが工場にあり、流通過程にあり、あるいは最終消費者、エンドユーザーのところにありまして、したがいまして、財政投資が期待された波及効果を持たなかったというのが過去の事実ではないかと存じます。私どもがいま、それらの在庫、稼働率等に動意があると申し上げましたのは、過去の累積の投資に加えまして、今後十五カ月の政府の投資が非常に大きい、明るいという要素も加わりまして、それらの在庫が動き始めておると申しますか、減り始めておると申しますか、そしてそれはまた、いわゆる工場の稼働率も、したがって少しずつ上がりつつある。私どもは、したがって今回はかなり政府主導の投資が大きな影響を、在庫、生産、ひいては消費にいい影響を与えていくのではないかと考えておるわけでございます。それによりまして、もし下半期にそういうような受け取り方が一種の消費者、企業等等の常識に変わってまいりますと、これは下半期において民間経済がそれに従ってやや動き始める、下半期は民間の方が主導をとってくれるような、そういういわば点火をする役目と申しますか、そういう役割りを政府投資が果たすことが期待される。それらのことから、七%の成長というものができても別に不思議ではなかったなあというような経済運営になるということを政府としては考えておるわけでございます。
  132. 足立篤郎

    ○足立委員 次に、大蔵大臣にお伺いしますが、今後中期的に見ますと財政の再建問題がきわめて重要な課題であると思うわけであります。したがって、今後この公債発行の新たな歯どめはどうするのかということ。特に、赤字公債は申すまでもなくこれは子孫に借金を残すわけでございますから、極力圧縮すべきだと思います。  先ほど多賀谷君からの御質問の中に、減税問題それから社会福祉関係の増額等の御意見がございました。税金を減らすと言えば反対する国民は一人もいるわけはないのでありますが、しかし、きょう、いま大蔵省から配られたこの財政収支試算、五十七年度までの試算が提出されておりますが、これをざっと見ましても、もうこのまま行きますと五十七年度末では累積公債発行額は驚くなかれ百二十三兆、一二三というと数字はいいようですけれども、これは大変なことですね。これはもう国の財政は破産状態になるということが予想されます。したがって、今後良心的に財政を組むとするならば、もう来年から何らかの形で増税措置をとりながら、しかも節約を重ねながら乗り切っていかなくちゃならぬという、非常にむずかしい場面に正直言って来ていると私は思うのであります。ですから、減税をやるとすればいまのところ財源がないことはわかり切っていますから、節約をするにしても今度の予算編成は相当節約、経常費を省くということを前提にして組まれておりますから、節約と言っても例年のようなぐあいに多額なものが出てくるとはとても思えません。そうかと言って公共事業をぶった切れば、これは一番端的な効果のある景気回復にひびが入ってくるということになります。減税をすれば確かに多少の効果があることは私も認めますが、公共投資ほど端的な波及効果は出てこないというふうに思っておりますので、多賀谷君の意見とはいささか食い違いますが、この減税についてどうお考えになっているのか。この点はさっきお答えになったから大体わかっておりますが、いまの中期的な財政の再建と絡んで大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  133. 村山達雄

    村山国務大臣 いままでの財政を見ておりますと、財政の収入は、大体年率九%で税収は上がっております。歳出の方は一九%で伸びているわけでございますから、当然その間収支のギャップで、それがほとんど公債の残高の累積という形であらわれてきているところでございます。いままでにも財政の健全化を図らねばならなかったのでございますが、景気の情勢その他がございましてできませんでした。ことしはむしろ景気を早く直して、そしてミクロ経済あるいは雇用、こういうものを早く正常の状態に戻したい、そういう一念でことしは大きな財政を組ましていただいたわけでございます。  しかし一方、いま御指摘のように、財政は非常に累卵の危機にあるわけでございますので、この収支試算に示しましたように、私は、減税は将来にますます困難な問題を残すだけでもあるので、ことしはぜひごしんぼう願いたいということは先ほど申し上げたとおりでございます。  今後の財政運営につきましては、先ほど歯どめ議論がございましたが、今度の五十三年度の当初予算の特例公債の依存度は実質は二四%でございます。ですから、これはもう極力今後減らす方向はもちろんでございますが、中期的な見通しといたしましてその収支試算をお出しいたしまして、そして財政がいかに困難であるかということの御議論を賜り、できれば国民的なコンセンサスができればと、こう思いまして提出したわけでございますが、通観いたしますと、五十七年度にこの特例公債からだけ脱却するにいたしましても大変な努力を要することは、歳出の面でも、また租税負担を求める面でもその表にあらわれているとおりでございますが、われわれは念願といたしまして、何とかしていろんな工夫をこらしまして、五十七年までには歳出のカットあるいは租税の一般的な負担増を御理解願いまして、そして健全財政への基礎を築いてまいりたい、かように考えているところでございます。
  134. 足立篤郎

    ○足立委員 大蔵大臣にもう一つお伺いしますが、五十三年度の予算案は、五十四年五月分の税収の年度所属の変更を行いまして、いわば十三カ月分を歳入に取り入れているわけであります。五十三年度はそれで潤おうと思います。また、公債の発行率なんかもそれで見かけだけは下がっております。ところが翌年度になりますと、同じ方法をとっても十二カ月予算になるわけでありまして、そこでがたんと財源に穴があいてくるという問題があるわけでございます。ことしは苦しまぎれにやったと言えばそれまででありますが、これは後のことが心配になるわけでありまして、大蔵大臣は今後にどう対処するのかということであります。  それから、きのう成立しました五十二年度の第二次補正予算と合わせて十五カ月予算として、切れ目のない公共事業の執行によって景気回復を図るという政策は、まことに時宜を得た処置であると思っております。しかし、急激に前倒し、前倒しで事業をやりますと、心配になるのは物価なんです。これは建設省その他にも関係がありますが、ついでに大蔵大臣にお答えいただきたいと思うのですが、もうすでにいろんなうわさが出ております。大工の労賃が上がったとか、自動車で迎えに行かぬと大工が来てくれぬとか、セメントやアスファルトが足りなくなったとか、いろんなことも出ておりますので、先ほど総理がおっしゃったようにせっかく物価はきわめて安定してきているのに、これが契機になって物価にまたこれがはね返ってくるようなことになりますと、元も子もないといいますか取り返しがつかぬ。国民大衆が一番心配しているのは物価でございますので、その辺をあわせて御答弁いただきたいと思います。
  135. 村山達雄

    村山国務大臣 来年度の予算が五月分税収を二兆円余りとりましておることは御指摘のとおりでございまして、これは地方財政対策あるいは公債発行限度から考えまして建設国債を結果的によけいにしたい、そういうねらいでやったわけでございますが、御指摘のとおりに五十四年度には十二カ月の税収でやらなければならぬのでございます。そのことを踏まえまして実は財政収支試算が出ておるわけでございまして、それは入りませんということでいかに困難かということを中期収支試算でお示しし、御討論を願いたい。われわれとしては、五十四年度からぜひとも健全財政の道を歩かしていただきたい、こう念願しているところでございます。  それから、十五カ月予算のもとに公共事業を大幅にやったが消化が大丈夫か、特に物価、雇用に及ぼす影響が懸念されるのではないか、もうおっしゃるとおりでございまして、私は、編成以上に、この執行の方がむしろこれから大きな問題になると思っておるのでございます。そして、やはり完全消化を図るということが何より大事だと思うわけでございますので、補正予算は幸いきのう上げていただきましたが、この本予算も何とか年度内に早く上げていただきたいということが第一の念願でございまして、それによりまして早く執行ができるということが第一でございます。  それから第二番目は、何よりも早く各段階におけるいろんな手順をあらかじめ部内的に進めておきまして、そして成立しましたらすぐ着手できるということが必要だろうと思いまして、たとえば支出負担行為の承認に伴うところの設計はもういまのうちから準備しておくとか、あるいは各省庁から地方団体に対する補助金の交付の手続を簡略化することをいまから考えておく、そのときの設計はこの程度でよろしいとか、あるいはまた地方団体におりました場合に、それは恐らく入札その他でやるわけでございましょうから、その場合も十分考えておく。そうなりますと、個所づけから、それからずっと内部的についているわけでございますから、うまくいけば二カ月ぐらい促進できるのじゃなかろうか、これは私の悲願なんでございますが、そのように実は完全消化については考えているわけでございます。  片や、それにいたしましては地方財政の財源あるいは資金の裏づけが当然必要でございまして、今年度の予算におきましては、私はもう万端の配意をさしていただいたつもりでございます。  なお、中途の段階において物価がどうか、私はいまの需給の状況から申しますと、前のようなことは心配要らぬと思うのでございますけれども、それにしても一時的にあるいは地域的に仕事がかたまりますと、いま足立先生がおっしゃったようなことがないということの保証はございません。そういう意味で、いま対策本部の方におきましては、関係各省、労務の問題あるいは資材の問題、そういったものをつくりまして、さらにそれをブロック別に一つの組織をつくりまして、いやしくもそういうことがないように連絡をしてまいる。少し輸送が隘路になっているということになればすぐ輸送をやる、こういうことをいま考えているわけでございます。
  136. 足立篤郎

    ○足立委員 次に、雇用対策について労働大臣に伺います。  先ほどからもいろいろお話がございましたが、最近、雇用を取り巻く環境は厳しさを加えております。完全失業者は引き続き百万人を超えておりますし、失業率も二%台で推移をしております。有効求人倍率は〇・五一というのですから、見かけは一つの職場に二人の就職希望者ということになるが、人間というものはそれぞれ自分の志望を持っていますし、技術も持っていますし、適不適がございますから、実際問題になると、失業者が職を求めるというと、見かけは二対一であっても実際は十対一ぐらいになるのじゃないかというふうに想像しているわけで、非常に厳しい状況にあることは申すまでもございません。  さらに、今日の情勢からしますと、構造不況業種、こういうとこうから流れ出る離職者の発生が不可避であると考えております。いろいろと労働省政府におきましても対策をお考えのようでございますから、この際、国民の前にその対策を明らかにしていただきたいと思います。
  137. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、本当に雇用情勢は厳しい前途を控えております。特に円高、そして、先ほどもお話がございましたが、輸出関連中小企業問題というのは大変な厳しい環境に置かれておると思うのでありまして、その問題の解決の背景は、御承知のごとく積極大型予算、そして公共事業を中心に景気の回復をするということ、これが何といっても雇用問題の解決の前提でございます。その前提を踏まえながら、去年の十月発足いたしました雇用安定資金制度を積極的に活用するということ、同時に、去年成立を見ました特定不況業種離職者臨時措置法がいよいよ一月二日から実施されることになりましたから、これをフルに活用いたしまして、失業の予防、そして離職者の生活の安定、再就職の促進、こういったことに力を入れなければならぬ。それと、先ほど触れましたように、拡大をされた公共事業で失業者を吸収する、ひとつ満杯にする、こういったことで雇用対策をしなければならぬ。  同時にまた、円高不況に対する雇用政策として、中高年齢者の雇用対策として、それらの離職者を受け入れる方の側の事業主に対して助成をしていく。中小企業と大企業では助成の度合いが違いますけれども、中小企業に厚く、大企業にやや緩やかな助成措置によって、これはむしろ民間のいわば活力を活用して、そういった助成があるならばひとつ人をふやそう、こういう方向に誘導していきたい、一応このように考えているわけでございます。
  138. 足立篤郎

    ○足立委員 いま労働大臣から、不況対策の一環としての中高年齢者に対する対策についてもお話がございましたが、日本は申すまでもなく、もう西欧並みの高齢化社会を迎えているわけでございます。したがって、今後こうした中高年齢者に対する雇用機会の拡大ということは、単に当面する不況対策だけではなくて、恒久対策として、労働省においてもあるいは厚生省におきましてもじっくり取り組んでいただかなくちゃならぬ問題だというふうに考えております。雇用の機会の増大、新しい職場の開発、また離転職者の再就職の促進、そのための職業訓練、こういう点についてもひとつ今後とも精力的な御努力をお願いいたしたいと思います。時間の関係上、答弁は結構でございます。  それから、公共対策につきまして少し掘り下げて伺ってみたいと思いましたが、先ほど大蔵大臣からるるお話がございました。そこで、一つだけ、この公共事業の執行に当たりまして、取得する必要のある公共用地の量が非常にふえてくると思うのであります。きのう国土庁が発表した数字を見ましても、地価が少し上がり始めているようでございまして、せっかくおさまってきたこの地価が、再び今度の公共事業の活発な執行によって値上がりをするということになりますと、これはまた大変な問題でございます。しかし、土地の流動化はやはり図っていかなくちゃいかぬというので、これは今度大蔵省が土地の重課税制度の緩和を図ることになっておりますが、その辺のところにつきましても具体的にお示しを願いたいと思うのです。
  139. 村山達雄

    村山国務大臣 御案内のように、従来、デベロッパーが開発します土地につきましては土地重課制度がございまして、一定の要件に適応したものについては二〇%の重課税をかけないが、それを外れたものは課税します。だから普通の法人税のほかにかけることにしておったのでございますが、その一番大きな要件は、いわゆる適正利益率二七%を超えたらそれは根元からかけますよ、こういうことなのでございます。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、現在は、国土利用計画法によるところの最高価格制度というものが一方にありながら、同時に、税の必要からきました適正利益率二七%という、二つの縛りがあったわけでございます。そこで、デベロッパーが、われわれはせっかく開発した宅地を出そうと思うのだが、そちらの方の関係で出せなくなる、それを外してもらっても国土利用計画法の最高価格はあるのだから、その分だけは促進できるならぜひ外してくれ、こういう御要望でございました。その点を率直に認めて、適正利益率を今度外すことにいたしました。  なお、公募要件等についても緩和しましたが、細かい問題でございますので省略いたしますが、これによりまして相当促進できるのではなかろうかと思っているのでございます。  なお、御承知のように、従来、特に人口急増地域になりますと、宅地をつくって住宅をつくったりしますと、いわゆる公共負担ということで、土地を相当地方団体に出さねばならぬ。その分は、当然のことでございますが、宅地を売る人にとっては全部原価にはね返るわけでございまして、これが土地の取得を妨げるということがございました。そういったことからいたしまして、今度新たに宅地をつくるようなところにつきましては、関連公共施設につきまして約三百億程度のものを、市町村、特にそういうところに配賦いたしまして、少しでも公共負担を減らすことによって結果的に宅地の供給をやすくしていきたい。また、公益施設につきましても立てかえ施行をいたしまして、これは後で徴収するわけでございますが、この幅をふやしまして、少しでも宅地の供給がよけいになるようにということ。なお、小さなものでございますが、地方でよくある宅建業者の分につきまして、従来は、事実上売買でありますけれども、相手方の要求によりまして形だけ売買形式をとっておる、これが土地重課税の対象になっておりますので、それが売買手数料の範囲と認められる売買差益におさまれば、これは土地重課税をかけません。これは地方ではかなり有効ではなかろうか。大体そんなことをやりまして、いま土地政策を進めておるわけでございます。
  140. 足立篤郎

    ○足立委員 次に、建設大臣に伺いますが、住宅対策であります。  今度の予算案目玉商品は、住宅対策費の飛躍的な増額にあると言われております。特に住宅金融公庫の貸付枠の拡大、貸付条件の緩和を図っていることは、庶民の立場から喜ぶべきことだと思うのでありますが、やはり制度が変わりますと国民の間には不安もございますので、次の諸点についてお伺いをしたいと思っています。  まずお伺いしたいのは、住宅金融公庫の個人住宅に対する貸付枠及び土地購入費の貸付額の増額、それとあわせて、今回無抽せん方式をとることになっておりまして、すでに一月から始まっているようでありますが、その具体的なやり方について御説明を願いたいと思うのであります。特に、この住宅金融公庫の貸し付けば、土地を保有していることが条件になっているわけでございまして、そのために土地購入費の一部の貸し付けも認められているわけでございますが、この土地をあらかじめ用意するということが一番の難点のように私どもは思うわけでありまして、これに一段の工夫はないものかどうか。  それから、貸付金に対する償還期間の延長措置が今回とられました。しかし、これは計算してみますと、借り入れする者にとっては必ずしも有利とばかり言い切れません。長く引っ張られて、総計ではよほど元利、よけいの金を払わなければいかぬということになるわけでありまして、これについては借入者の希望を聞くような選択的な措置がとられるかどうか、こういう点もまず明らかにしていただきたいと思います。
  141. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 最初に無抽せん方式について申し上げますが、この一月に三万戸の前倒しをして七万四千戸を募集いたしますときにその方式をとりましたが、十日ほどで申し込み戸数が充当されまして締め切ったわけであります。五十三年度におきましては、大体、年数回に分けて、そして到着順でやりたい、こういう方針をとっておる次第でございます。  それから、今度、御承知のような四十万戸を消化するというわけでありますから、各種の条件緩和をいたしました。その中には、お尋ねのように償還につきまして、従来木造が十八年でございましたが、これを二十五年に延ばすとか、あるいは簡易耐火建物につきまして二十五年を三十年に延ばすということにいたしております。  なお、五十三年度の新規貸し付けにつきましては、当初一年の据え置きということにいたしておりますが、後からお尋ねでございました、償還や据え置きについての個々の借入者の希望に応ずるかどうかという問題でございますが、一年の据え置きにつきましては、これは応ずる考えでございます。それから、償還期限の途中の返済についても、これは考慮いたしたいと思っております。  それから、貸付限度額につきましては、個人の場合四百五十万円を五百万円に引き上げる、また、マンションにつきましては六百五十万円を七百五十万円に引き上げました。  さらには、土地のことについてお尋ねでございますが、土地を購入した場合、従来いろいろ制限がありましたが、今回は、優良な宅地開発のそういうものを取得する場合におきましても借り入れを認めまして、百九十万円が三百五十万円の限度になっておる次第でございます。  大体お尋ねにお答えしたと思います。
  142. 足立篤郎

    ○足立委員 もう一点、建設大臣にお伺いしますが、正直に申し上げますと、住宅公団の住宅というのは余り評判がよくないのですね。その理由は、まあ大体鉄筋コンクリートの狭い家で、マッチ箱みたいなところへ住むのは、人間、本来、好む者はいないわけでありますが、だんだん生活程度が上がってくると、そういう現象は当然起きてくるわけです。それに対する対策と、もう一つは、職住分離という問題があるのですね。公団の方は適地を選んで勝手に公団住宅を建てる。すると、職場と住宅が非常に離れまして、そのために、なかなか環境整備もできませんと通勤にも困るという問題がありまして、せっかくつくった公団住宅が空き家になっているという例がたくさんあるようであります。したがって、今後公団住宅を建てるときにはもっと考えてやったらどうかというふうに思うのです。  たとえば、最近は中小企業がいろいろな団地をつくります。卸商団地とか鉄工団地とか木工団地とか、団地をつくりますが、そういう団地計画があるときには、公団の方が積極的に働きかけて、その団地で、その場所で住宅をどの程度必要とするかという見通しをつけて、その団地の敷地を買うときには公団の住宅敷地も、これは農地転用等が伴う問題が多いのですから、一緒に買ってしまう、そして、そこに公団住宅をつくれば、みんな喜んで入るわけでございますね。それから、相手が大企業であっても、大企業だからといって私は遠慮する必要はないと思うのです。大企業の工場ができるときに、そこに働く作業員の家族の構成その他の状態を調べて、そこに必要な公団住宅を建ててあげる、そうすればきわめて安定をする、また喜ばれるということになりますので、もうちょっと弾力性のある運営を公団は考えたらどうか。  もう一つは、公団住宅や地方自治体のつくる公営住宅ですね、こういうものは希望によって思い切って払い下げをやったらどうかと思っているのです。これは私は政治の要諦だと思います。つまり、自分のものになればそれだけに家に対する愛着も増しますし、そこに安住感も出てくるということを考えますと、いままで地方の公営住宅なんかも、建設省等から補助が出ていると、たとえば木造では二十年たたぬと払い下げてはいかぬとか、何かいろいろな制約があるようで、私どもよくわかりませんけれども、そういう制約をひとつ思い切って取ってしまって個人のものにしてあげたらどうかというふうに私は考えておりますが、建設大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  143. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いろいろ私の参考になる御意見をちょうだいしたわけでありますが、第一の、公団住宅の狭い点につきましては、現実に問題になっておる空き家、未利用のものを見ますと、まさにそのとおりでございまして、この点は今度就任された沢田総裁も、二戸を一戸にするとか、今後の新しいものにつきましては需要に応ずるものを建てていこう、こういう方針を示されておるようでございます。  それから、いま批判のある狭い、その次は高い、遠い、こういうことでありますが、その遠い点で、通勤の不便なところにつくるのはどうか、こういうことでございました。これも現在の住宅公団の未利用のものの実態でございます。したがって、今後におきましては相当建てかえを要するものなども出てくるのでありますから、その場合に通勤の便のよいところから中層、高層のものを建てるように努力したらはどうか、このように考えます。  それから、各種の団地ができる場合に、それに乗って考えてみたらどうか。これは考えられることだと思いますので、住宅公団の方にも私からもよく指導をしてみたいと思います。また、工場の場合も同様であろうと思うのであります。  それから、払い下げの問題でございますが、現在、公営住宅などを調べてみますと、年間五千戸程度譲渡しておると思うのであります。使用年数十年ぐらいになりますと、希望によって譲渡をするようにしておりますが、これにつきましては地域の需給状況なども勘案して、これは公営の場合ですと地方公共団体に対しての指導ということになりますので、この払い下げにつきまして私異論はございませんので、そういう指導をいたしたい。  それから、大都市の低層公営団地などはどんどん建てかえる時期に来ておりますし、そういう場合に、本人が買いたいという場合、場所が違っておっても、買いたいことについては便宜を与えるようにしたいという考えを持っております。――それは大体公団の場合ですね。公団の場合に、いままで賃貸であったものを、今度新しく募集があるからそっちへ行きたいというようなときの優遇措置を考えておるわけであります。ただ、公団の場合に、現在住居しておるものを払い下げるについては、管理上のことを十分考えませんと、くし抜きといいますか、くしのすいたようなかっこうになると管理上のこともございますから、それらのことは勘案しながら、御意見の御趣旨に沿ってまいりたいと思います。
  144. 足立篤郎

    ○足立委員 いまの払い下げの問題につきましては、建設大臣、どうぞ積極的に考えてください。どうもお役人さんというのは、いまおっしゃったようなくしの歯を抜くようになるとか、ああのこうの言ってなかなか払い下げなんかきらうのですが、やはり国民の立場になると、この際はひとつ持ち家にかえていくというような積極的な政策をとっていただくように、重ねてお願いを申し上げておきます。  なお、ハウス55だとか木造住宅の在来工法の改善普及だとか、いろいろお伺いしたいと思ったのです。ですが、時間の関係上省略いたしますが、これは農林大臣に申し上げるまでもないことですが、日本人は何といいましても木造住宅に非常な愛着を持っております。一種の郷愁とも言えます。ところが、さっきも申し上げたようにこれはなかなか手間暇かかりまして、建築もなかなか大変だということでございますが、いろいろといま林野庁が中心になって在来工法の改良について研究をしてくれていますし、予算もある程度認められて、展示その他の普及の方法もとられているようでありますから、これは今後とも積極的に進めていただきますようにお願いを申し上げておきます。  次に、通産大臣に中小企業問題、構造不況、円高不況、こうした問題について、ごく要点だけお伺いいたします。  長期にわたる不況と急激な円高によりまして、適応力の弱い中小企業は全くまいってしまっているわけでございます。この当面する中小企業の不況を乗り越えまして、引き続き健全な発展を遂げていくことは、やはり将来の国民生活にとりましてきわめて重要な課題であると思うわけであります。したがって、この中小企業経営安定のための積極的施策を、特に当面打撃を受けている中小企業に対する救済策をどうされるかという問題と、それから、いま新聞だねになっていますが、大企業でありましても、平電炉とかアルミ製錬とか合繊、化学肥料、その他段ボール原紙とかいろいろなものがあるようでありますが、そうしたいわゆる構造不況業種の抱える過剰設備は、通産案に対して公取がどうのこうのと、いろいろなことが出ております。アウトサイダーの規制は官僚独裁だというような非難もu出ているようでありますが、しかし、これは何とか急いでやらないといけない問題だと思うのですが、通産大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。
  145. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま二つの問題について御意見がございましたが、第一は中小企業対策であります。  長い不況のところへもってまいりまして昨年の秋の急激な円高ということがありまして、中小企業は大変な打撃を受けております。とりあえずは、円高に対しましては、昨日、円高の緊急融資を中心とする幾つかの総合対策、法案を通していただきましたので、至急にこれを実施に移したいと考えております。  それからなお、昨年秋に、やはり臨時国会で倒産を防止するための一つの方法といたしまして倒産防止共済制度というものをつくりまして、これも四月からスタートさせることになっております。  そのほか金融面、それから信用補完制度、高度化事業、幾つかの対策をいろいろ用意をいたしまして、総合的に中小企業対策を強力に進めていく準備をいたしております  、  それから、この中小企業問題のほかに、御指摘のありました構造不況業種対策、これが非常に大きな課題でありまして、とりあえずは不況カルテルで一時しのぎをしておる状態でありますが、これでは抜本的な対策になりませんので、やはり余った設備、相当な余った設備がありますので、これをスクラップにする、廃棄する、これはどうしても必要であります。あるいはまた一部凍結をする。こういう構造改善事業が必要でありますが、これをどう進めるかということで、いまいろいろ法律を準備しておるところでございますが、実は内容につきましては関係方面と調整中でございまして、できるだけ急いで調整をしたいと考えております。
  146. 足立篤郎

    ○足立委員 もう一つ通産大臣に具体的な問題で伺いますが、中小企業の中で構造不況のモデルのように言われている繊維産業がございますが、これはいままさに発展途上国の追い上げによりまして、文字どおり気息えんえんたる状況でございます。実はこの繊維製品の輸入関税の問題でございますが、先進諸国と比べますと、わが国の輸入関税は余りにも低過ぎて非常にアンバランスになっているわけです。通産大臣、前に大臣をおやりになったときに私も大臣室で陳情した覚えがありますから御承知くだすっていると思いますが、綿製品の輸入関税を申し上げますと、いま日本は五・六%です。特恵国についてはその二分の一ですから二・八%。いま日本を近い上げてきている韓国とか台湾とかいうところはみな特恵関税の適用を受けるわけですから、二・八%の関税で日本に綿製品をどんどん売り込んできている。特に縫製品が多いわけです。ところが、アメリカはどうかといいますと、たとえば別珍では二五%、コールテンでは三八%、その他の綿織物が一七・一一%、化合繊が二八%。ECは、別珍が一七、コールテンが一七、一般綿織物が一五、化合繊が一九という数字です。  これをごらんになってどう思われますか、通産大臣。これは構造不況だ構造不況だと言いますが、こういう国内産業を保護すべき役割りを持っている関税について、日本がきわめて繊維について強かった時分そのままになっているわけですよ。かつては、アメリカから自主規制を迫られて、私どもここで憤慨したことがあるのですが、私も一般質問でやったことがありますが、しかし、そのアメリカの立場と、いま日本の立場は全く同じになっちゃった。むしろアメリカの方はさらに安定をしてきていると言われていますが、やはりこうした関税障壁によってこの被害を防いでいる面が多分にあると思う。日本は二・八%ですから、これはもうアメリカの方に向けば関税障壁でぶつかるというのは日本へどんどん向けてくるということになりますから、日本の構造不況と言われる繊維産業は、このためにはかり知れざる損害を受けているということでありまして、むしろ、これは通産省も大蔵省も関税の何たるかを忘れたような、怠慢のそしりを免れないと、私は実は個人としては憤慨しているわけでありまして、東京ラウンドの問題は通産省の所管じゃありませんけれども、東京ラウンドのときに、少なくとも先進諸国を下げさせるか、日本は非常にむずかしい情勢ではあるが上げるか、何かバランスをとってもらわなければ、幾ら共同廃棄をやって織機をぶっつぶしてみても、いつまでもこの問題は解決しない。いや、つぶせばつぶすほどつけ込まれて、どんどん後進国から入ってくるということに結果はなりますから、何とかひとつ通産大臣、救ってやってください。これは大蔵大臣の御答弁も求めなければいかぬが、時間もございませんから、通産大臣が、国内産業の保護の立場、振興の立場から、この御所信を御披瀝いただければ結構です。
  147. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 繊維の問題は、いま御指摘がございましたが、長期不況による需要の減退、それから近隣諸国の追い上げ、それからさらに関税問題、いろいろ諸問題が山積をしておるわけでありますが、特に、この関税問題は東京ラウンド、ことしじゅうには当然妥結すると私どもは期待をしておりますが、関係各省と十分連絡をとりまして、この際調整をしたいと思います。
  148. 足立篤郎

    ○足立委員 次に、文教関係についてお伺いしますが、実はいろいろ用意はしておったのですが、なかなか間口が広いものですからさばき切れません。いまの教育の詰め込み主義、競争第一主義、もっと人間性豊かな人間形成を図るということで教育の刷新を図りたいという点。今度の予算は公共事業に重点を置いていますが、文教施設にも相当その予算を割いておるという、実態について、政府から御報告いただきたいというふうに思っておりましたが、残念ながら時間の関係上、省略をさせていただきます。特に、私学教育の振興等についても相当予算を計上しておるわけであります。  そこで、二つだけお伺いしますが、文部大臣に伺いたいのは、いま問題になっている共通第一次学力試験ですね、これはどうもはっきり内容がわからないのです。国大協がやっていると言えばそれまででありますが、文部省は当然これは相談にも乗るし、指導もしていらっしゃると思います。これは来年から本格的に実施されるわけですが、聞けば、東京大学あたりは余り関心がないといいますか重要視していない、最終的な入学の採否について余り参考にしないようなふうにも聞いているのですが、果たしてそうでございましょうか。そうとすれば、国立を希望する者、私学を希望する者、それぞれ学科も違いますので、これは、一律にこういうものを課せられるとかえって負担がふえるという父兄の悩みもあるようでございます。それが実際に効用を発揮して、その結果、いい成績をとった者はいい大学に入れるというのなら、これはみんな進んで参加もするし努力もすると思いますが、その辺がどうもあやふやで私にはよくわかりませんので、この点を国民の前に明らかにしていただきたいということが第一であります。  もう一つは、例の大学紛争が依然として続いているということで最近新聞をにぎわしています東大医学部精神科ですか、警察庁から調べてもらいますと、それ以外にも、京都大学にも五カ所ばかりあるそうであります。もちろんこれは、京都大学は総長が一大決意をして警官も導入して排除に努めていると言いますから努力はしていることは認めますが、なお熊本大学の学生会館も占拠されている、こういうのであります。私どもは、大学紛争というものは、坂田文部大臣のときに思い切った英断をもっておやりになったので、もう片づいていると思ったら、東京大学の医学部なんかは八年間も占拠されたままだというので、あきれ返っているわけなんですが、その辺の事情、時間もございませんから、ひとつ現状と対策について明確にお答えをいただきたいと思います。
  149. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えをいたします。  共通第一次学力試験のことをまずお答えいたしますけれども、文部省が書いておりますむずかしい言葉を使わないで御答弁をしたいと思います。  入学試験の異常なゆがみということがどこから起こってきたか、高学歴社会でありますとか、いろいろなほかの要素もございますけれども、何年も繰り返しておりますうちに、受験者が多いものでございますから、だんだん試験の問題がひねくれてきだした。高等学校で勉強しております高校生が、高等学校の授業内容だけを完全にマスターしても、それだけでは解き切れないような問題が大学試験の問題に出てきだした。これはいかぬという昭和四十六年あたりからの反省から生まれたのが共通一次試験でございます。ですから、第一次の試験の問題の内容というものは、いま申し上げましたように、高等学校の授業内容をしっかり把握をして理解をしておりましたならば及第点がとれる問題しか出ない。そういう効果は、まさに高等教育に波及をしていくわけでございます。  東京大学がいいかげんに扱っているではないかという御指摘がございました。これは第一次の学力試験、ほとんどそれだけで、第二次の試験は論文と面接だけで一人一人の生徒たちの性格も見きわめて入学を許していこうという学校もありますし、二次試験で学部なり学科なりの特色を持たせて、そこを希望している生徒たちにそれだけの資格があるかどうか、そういうことを判定をしたいという学校もあるわけでございます。後者の例が、東京大学もその一つでございます。  ですけれども、第二次試験にいたしましても、国大協で申し合わせをいたしましたことは、一次試験で試験の内容をここまでに限るという申し合わせをした、そのことは守っていくわけでございますから、やはり二次試験が、東京大学のように幾つか科目がたくさんございますけれども、効果はまさにあると私どもは考えております。ただ、東京大学自身が、国大協で相談をいたしまして決めた二次試験の学科数のガイ下ライン、それを上回っているということを東京大学自身反省をしておりまして、大学長が先般テレビで話をしておられましたように、もう一遍検討をし直す、そういう姿勢でおりますので、実行されます間にはこれが改善されるもの、また、そういうふうに改善されるように文部省といたしましても指導、助言をしてまいりたい、かように考えているところでございます。
  150. 足立篤郎

    ○足立委員 その第一次学力試験の成績というのは、全然顧慮しないのですか、そのファイナルの決定には。
  151. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えいたします。  一次の試験に二次の試験を加味して両方合わせ、しかも高等学校の調査表等も入れて総合的な判断をするわけでございます。一次の試験の結果は、正解の答案内容と、それから最高の点数、最低の点数、平均点、あるいはグループごとの受験者の結果等を発表いたしますので、問題集は受けた学生が持って帰れますから、その発表された問題集に合わせて、自分が何点取れたか、自分はどの辺に位置するか、そういう判断が自分でできるわけでございます。その自分で判断した結果に基づいて、あるいは二次試験を志望する学校が、高等学校の生徒によっては変わってくるかもしれません。しかし、それなりに、大学の入学定員というものはもう初めから決まっていることでございますから、二つの一期校、二期校の国立大学を受けて、両方受かって片っ方捨ててしまった、入学希望者はたくさんいるのに欠員のままの大学があるということは、これでなくなるわけでございます。そういう効果も出てくるわけでございます。  大学紛争の問題、まず事実を御報告をしておきたいと思います。  国立大学の施設が不法に占拠されておりますところは、東京大学及び京都大学の二校でございます。このほか熊本大学におきましては、熊本大学の学生の生活協同組合に対する施設の明け渡し問題があると承知をいたしております。  東京大学は、同大学付属病院の精神神経科病棟が、医学部の紛争以来の経緯によりまして、授業再開等に反対をいたします東大病院精神神経科医師連合によって、昭和四十四年九月以来占拠され、今日に至っております。この間、大学側は、占拠に伴う学生の教育や患者の診療等への影響を、他の保健学科の教授等による分担や他の病院の協力をかりまして教育は一応行われているわけでございますが、事態の正常化を図るべく努めてまいっております。ただ、遺憾ながら事態の改善がまださほど進んでもおりませんし、決着を見た状態でもございません。しかしながら、昨年末から一昨日、一昨晩にかけまして、大学当局の非常に熱心な病棟側との話し合いが行われてまいっておるところでございます。  京都大学は、元経済学部助手の竹本信弘の分限免職処分等に起因いたしまして、現在、経済学部長室等の五カ所を一部の学生によって不法に占拠されております。けさ午前零時に一カ所奪還いたしましたので、四カ所になりました。大学では、これまでも、この事態の解決のため、必要に応じまして機動隊の導入による学内の秩序維持、学長名をもってする施設の不法占拠等中止の警告、あるいは各学部の学生部員等によります占拠学生の説得が精力的に行われてまいっております。その結果、いま申し上げましたように教養学部及び工学部、こういったところの占拠は解かれております。  このように、両大学におきまして、占拠されております施設の態様に応じながら各般の努力を行っているところでございまして、文部省といたしましては、必要な指導、助言を行い、大学側の努力を引き続いて促してまいりたい、かように考えるものでございます。  なお、熊本大学におきましては、光熱費を不当に支払わない生活協同組合に対しまして、貸与施設の明け渡しの訴訟を起こしているところでございます。  以上三点でございます。  対応についてということでございましたが、引き続いてお答えしてよろしゅうございましょうか。
  152. 足立篤郎

    ○足立委員 対応についてお答えになる前に、私ちょっと申し上げておきたいのですが、大学の自治は尊重しなければいけないことはよくわかっていますが、私どもの認識では、大学における学問研究の自由であるということは理解しているのです。ところが、どうも大学の教授なんて――なんてと言うと失礼ですけれども、学者はどうも世事に疎いという面もあって、いままで大学紛争を起こしているのは大体そういうところが原因じゃないか。つまり、大学を運営する自治能力に欠けているのじゃないかというふうに思うわけなんです。だから、こういう点について文部省としては、いままでのいきさつがいきさつですから、そう簡単に答弁はできないと思いますが、国民もこの点を非常に懐疑感を持っているわけですから、どうかひとつ文部大臣のはっきりした御答弁をいただければ、ありがたいと思います。
  153. 砂田重民

    ○砂田国務大臣 お答えいたします。  まさに、大学の施設は国有財産でございます。目的あって建設された国有財産がその目的どおりに利用されていないということにつきましては、設置者としての文部大臣の責任は重大でありますことを正しく認識をいたすものでございます。同時に、文部大臣は、大学長にその国有財産の管理運営を委譲をいたしております。したがいまして、大学長が私と同じ責任を感じておりますこともまた同様でございます。ただ、これに対応いたしますのに、先生御承知のように、四十四年当時のあの大学の大変な紛争のさなかに国会で成立をいたしました大学運営に関する臨時措置法、マスコミ等では強硬手段というようなことを書かれたのでありますけれども、あの法律の中にも明確に、あの法律の精神は、これは国家権力による大学の自治の侵害ではない、大学による自主的な努力によっての解決を目指すのであって、政府はそれを援助するのだという精神が貫かれているわけでございます。まさに、当時の坂田文部大臣は、その趣旨に従ってここまでの収束をしてくださった。その実績を、私は教訓にしてまいりたいと思います。同時に、東大の態様は、実は大学紛争という名前では呼べないと思うのでございます。学生による占拠ではございません。学生は、一名もあの占拠の中に入っておりませんから、期限の切れた臨時措置法ではございますけれども、あの臨時措置法の中で定義をいたしました大学紛争の中には、学生が行った場合ということが明確になっているわけでございます。そういう事態ではありませんので、大学紛争とは考えません。ただ政治的な意図を持った、いかなる体制にも反対だという、いわば暴徒のような者が占拠を不法にいたしておる、こういう状態でございますから、一昨晩も、三時間半もかけて学校当局が、占拠をしております側と懸命に折衝いたしておりますので、その経過を見まして、坂田文部大臣がとってこられましたあの気持ちそのまま、私の決心で学校側を支援をしてまいりたい、かように考えます。
  154. 足立篤郎

    ○足立委員 私も、実はいま文部大臣が口にされた四十四年の立法、俗称大学紛争法、正確に言うと大学の運営に関する臨時措置法、生きているか死んでいるか、法制局長官に確かめようと思ったのですが、いまの文部大臣の見解では、少なくとも東大医学部における占拠事件は、学生ではないから、この大学紛争法の対象にはならぬということであります。これは法制局長官にお尋ねするのはやめます。恐らくこれは、生きてはいるが動かない、相撲で言うと死に体みたいな法律じゃないかと思う。やるのなら、この間の原子力船開発事業団法のように、はっきり立法をして延長をするということでなければ政治的な効果はないのじゃないかというふうに私は理解しているわけであります。再度立法の必要があるかどうかということは、今後の推移にかかっていると思っているわけでございます。  ただ、この際、法務大臣に伺っておきたいのは、いま文部大臣からお答えがあったとおり、東大のこの異常事態というのは、石川という講師が先頭に立って、しかもこれは東大から月給をもらっている人ですよ、看護婦その他とぐるになって、暴力で占拠しているわけです。これは全く大学の自治とも何も関係ない、それを排除しているわけです。いわば国有財産の不法占拠でございますね。これは何も大学の自治とかなんとかいうことに関係なく、刑法によって処罰すべきものじゃないかと私は思うのですが、それについての法務大臣の御見解をお聞かせいただきたい。
  155. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 足立さんから、大学の問題についていろいろお話がありました。私は率直に申し上げて、この問題を国会で取り上げられたことに深く敬意を表します。といいますのは、実は、わが国の遵法精神がだんだん薄れていくことについて、私は平素から懸念をしておるものでございますが、どうも大学の問題が非常に不明朗になっておる、こういうことを感じておりましたから、私は就任後間もなく、事務当局に命じて全国の大学の模様を調査さしております。そして、その結果を文部大臣にも申し上げ、また文部当局にもその資料を渡して、文部省は文部省なりに、治安当局、法務当局が調査したものがそのとおりであるかどうか、こういうこともいま御相談中でございます。  そこで、いまいろいろお話がありましたし、お尋ねにありませんでしたけれどもちょっと申し上げておきますが、私の方で調査させました結果によりますと、かような事態になっております。  昭和五十二年中の大学構内における不法事件は二十五大学、国立八つ、公立が二、私立大学十五、五十件に及んでおります。その内訳は、大学教職員に対する暴力行為や大学施設の破壊等であります。詳細なことは、時間がかかりますから省きます。これに対して、二十四件の事件について三百六十二人を逮捕、監禁、公務執行妨害、暴行、傷害、不退去、暴力行為等処罰二関スル法律違反等によって検挙しております。ほかに逮捕状の発付を受けて、現在追跡中の者も一人おります。  それから、大学がまさに無法地帯みたいになっている状況がありますが、それについて簡単に報告かたがた説明しておきます。  調査によりますと、全国五十四大学、これは国公立、私立を含んでおります。これらの大学の一部施設が極左暴力集団の活動の拠点になっておる。そして御承知のように、鉄パイプやあるいはこん棒その他の武器を蓄えてここを拠点にしておる、こういう状況になっておる。私立は国の経費は余り出ておりませんけれども、これも相当出ておる。まさに国民の税金で最高学府を建てておる。その中が暴力集団の拠点になっておる。しかも、学校の講堂では教育はできないという学校もあります。こういう問題について直ちに検察なり警察が踏み込んでいくということは、私はそう単純には考えていないわけです。  先ほどお話しのように、大学の自治ということは法律にはないわけでございますけれども、やはり憲法の学問の自由というところから自治を認めるということが慣習的にできている。それが望ましいわけでありますから、違法な事態がありましても直ちに警察権力で踏み込むという事態は必ずしも適当でない。そういうことで、大学当局といろいろ折衝し、いま申し上げましたような程度の措置をいたしておる。しかし、これも、率直に申し上げて大学当局からなかなか協力を得られない学校がある、こういう事態でございますから、これは警察や検察だけで解決つく問題ではありませんので、先ほど申し上げましたように、文部当局とよく御相談をし、また大学当局とも話し合いの上で、こういう無法地帯が現に多数存在する、これは世界にない例でございますから、こういうことに対して善処していきたい、かように考えております。
  156. 足立篤郎

    ○足立委員 社会福祉、医療問題等につきまして、厚生大臣にいろいろ伺ってみたいと思っておったのです。先ほど多賀谷君の質問に対して、厚生大臣は所信を披瀝されて御答弁がありました。あえて同じことを御答弁いただく必要はありませんから、省略をさせていただきますが、私は、どうも多賀谷君の意見とは若干違っておりまして、やはり社会福祉というのは横並びの関係がございますから、思いつき福祉では、かえって害があって益がない。将来にかえって不公平を残す。継ぎはぎ福祉といいますか、こういうことは、政府としては厳に慎まなければいかぬ。また、厚生大臣からもお話があったように、下に厚く上に薄いという社会保障の見直しをやるべき時期に来ているというふうに思っています。医療保険制度の問題は、抜本改正が叫ばれてもう久しいことになりますが、やはり抜本改正と言えば、何といいますか、取り扱いを一本にする。これはいろいろな種類がございますが、特に国民健康保険が一番格差があるわけです。これはもうおしなべて一体にして問題を解決する、そして国も、めんどうを見るものは思い切って見る、そして公平な扱いをするということでないと、本人給付が七割しかもらえない、家族給付もそうだ、ところが、ちょっとした大きな会社なんかだと、いろいろな名目で家族までただになるような仕組みになっておるそうであります。詳しいことはともかくとして、それでは同じ社会保障の中で不公平過ぎるというふうに思いますので、前から野党の諸君なんかもみんな抜本改正と言うのですが、さて、この保険制度を一本にまとめて同じ扱いにしたらどうかという意見は、余り国会に出てこない。これは私非常に残念に思っておるので、どうか厚生大臣、勇気を持ってこれにぶつかっていただきますようにお願いをして、質問は省略させていただきます。  それから、外交問題につきましても、日ソ関係は、外務大臣非常な御努力で、あの迫力でおやりになったのだから、もっといい成果が出ると思って内心期待しておったのですが、実はなかなか敵も頑強であるということがよくわかりました。しかし、これは、あきらめてしまっては元も子もありません。当然のことでありますが、粘り強くソ連との折衝を続けていただきまして、固有の領土の返還に成功するように、うまず、たゆまず努力されることを期待いたします。  日中の問題につきましては、わが党の政調会長の江崎さんが、先般本会議で代表質問をなさいました。私は、いままで問題になった覇権条項、これも、うっかりするとやはり将来に禍根を残しま子から庫裏要しまするけれども、しかし、もうずいぶん時間もたっておりますし、水かきの話をしては恐縮ですが、表面に出ないいろいろな動きもあるやに聞いておりますので、もうぼつぼつ方向、腹を決めてお進みになったらどうかというような感触を持っております。私、これは党議決定しておりませんから、個人の意見は申し上げません。  それからもう一つ、実は私、静岡県のことを申し上げて恐縮ですが、この間の伊豆大島沖地震で大被害を受けまして、あの犠牲者の方には本当に哀悼にたえないわけでありますが、総理も御承知と思いますが、いま発生が予測されている東海地震というのは大型のものだそうでございまして、神奈川、静岡、山梨及び愛知の四県で震度六以上というのです。この間の伊豆大島の震度は五というのですが、それ以上、五以上の地震が予想される県が、東京から大阪まで十四府県あるわけであります。あの大騒ぎになった伊豆の東海岸や伊豆の大島で起こった五以上の地震が予想される、こういうことでございますから、これはまあ大変なことでございます。  したがって、知事会が要望しています大地震対策特別緊急措置法の制定ということでございますが、これはぜひやっていただかなければなりませんけれども、地震の予知観測及び警報体制の確立、それから警報に伴ってとるべき緊急措置の制度化、第三には、地震対策特別事業の実施等の諸対策を法定する必要があると思っております。  ただ、正直に申し上げまして一番むずかしいのは、警報を出したが誤報であったという場合、これは不測の損害を与えておりますから、国家補償の問題が出てくると、これはなかなかむずかしくなる。知事会の方はそれを割り切って、これは補償はしないという立法をしてくれという要望が出ておりますが、この辺が、正直申し上げて非常にむずかしい問題だと思っております。この立法をなさるかどうかという点、一言だけ、総理、恐縮ですが……。
  157. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ただいまお話しの特別立法につきましては、いま政府で検討中でございます。できたらこの国会に提案をいたしまして成立させていただきたい、かように考えております。
  158. 足立篤郎

    ○足立委員 これは農林大臣になりますか、地震に関連して伺いますが、昭和四十一年に制定されました地震保険という制度があるのです。これは損保会社が新潟地震の後非常に希望が強くて、大蔵省が踏み切った制度でございますが、損保会社が地震を保険の対象に引き受けますと、一定限度を決めて支払いが認められて、しかもそれは国の再保険制度につながっているわけであります。ところが、農業団体がやっている農家の保険、共済制度と言っていますが、これはそういう制度がございません。実は、これは詳しく言うと時間がかかりますが、農業団体がやっているのは、農業災害補償法によって農業共済組合がやっている短期の保険と、それから農協が自力でやっている、これは全国組織でありますが、長期の建物更生共済というのと二色あります。農協は全国プールでございますから、局部的な地震が起こってもある程度支払いができるというので地震を一部含んでおりますが、農災法に基づくこの保険の方は、これは県の任意事業でございますから、その県でちょっと大きな地震が起きれば、とてもじゃない、破産してしまいますので引き受けられないということでございます。このいま申し上げた損保会社、営業保険会社にも国の再保険制度ができているのでありますが、それには実は農家はほとんど入ってないのです。今度の伊豆の地震でも、被害を受けたのはほとんど農家ですが、この損保には入っておりません。でございますから、これについてもぜひひとつ国の再保険措置をとっていただいて、農家も安心ができるようにしていただきたいというのが私の希望なのでございますが、農林大臣どうですか、お答えいただけますか。
  159. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の点、農林省でも検討中でございますが、先ほども年金のときにお話がありましたように、横並びの問題として、地震保険の場合と農業共済が行う保険では掛金その他が差がついておりますので、その辺をどう対処するか研究さしていただいて、できるだけ趣旨に沿うようにしたいと存じます。
  160. 足立篤郎

    ○足立委員 農林大臣、くどくは申し上げませんが、横並びと言いますが、全然仕組みが違うのですから。しかも、いまの農業共済がやっている保険というのは世界一安い掛金で、農家が助かっているわけなんです。それを損保会社と同じ料率その他にしなければならぬなんというやぼなことを恐らく大蔵省は言うのじゃないかと思うが、これは断じてひとつ農林大臣は、自主性を持って大蔵省と折衝していただくようにお願いを申し上げておきます。  なお、農政それから水産等につきましては、私も専門でございますので、申し上げたいことはいつばいあります。肉の問題も、その他生産調整の問題、それから今後農地の用途別指定といいますか、やはり地域農政を確立する必要がある。そうでないと、どうも混乱に陥っていまして、単作地帯あたりでは、もうフルに米をつくれ、いろいろめんどうを見てやる、逆に、そんなに米に打ち込まぬでもいいようなところについては蔬菜の基地にしたりいろいろしまして手を下して、そして経営ができるように持っていけばいいじゃないかというふうに考えておるのです。詳しく申し上げたいと思うが、いよいよ時間がなくなってしまいました。  それで、国鉄関係は、総裁、申しわけありませんが、きょうはやめます。国鉄の再建で少ししぼろうと思ったけど。  防衛庁も、それから自転車対策も、いろいろ通告はしてありますがやめまして、最後に、デノミについて総理のお考えを伺っておきたいと思います。  デノミというものは、本来これは経済に対して中立性のものだと私は思っておりますが、総理のお考えはいかがですか。
  161. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そのとおりでございます。これは通貨の呼称変更で、実体経済には何らの影響がないものであります。
  162. 足立篤郎

    ○足立委員 そこで、総理にお言葉を返すようですが、本当にこれは経済に対して中立性のものであるならば、総理が先般伊勢神宮でお話しになってからいろいろ意見も出まして、総理はそれに弁解して、あれは記者会見のときでしたか、物価が安定しなければならぬということ、それから景気が回復でしたか、それから国際収支も改善されなければいかぬとか、バランスがとれなければいかぬとか、いろいろなことをおっしゃいましたね。条件は三つですか。  それで、私は、このデノミと物価の問題は不可分だと思っています。うっかりすると便乗値上げ等が起こると大変ですから。やり方によってはそういう心配は実はないのでありますが、それはともかくとして、おそれはありますから。しかし、本当にデノミが経済に対して中立であるならば、いまおっしゃった景気の回復とかあるいは国際収支のバランスとかということは無関係だと思うのです。だから私は、総理の腹一つ、決断の問題だというふうに思います。それは御答弁要りません。というのは、実は私は、このデノミの推進論者なんです。ただ、自民党で別に党議決定しているわけではありませんから、いまここで申し上げるのは私個人の意見でございますから、誤解のないように願いたい。  実は、過去のことを申し上げますと、昭和三十六年でしたか、私が大蔵委員長をやめた後、大蔵委員会理事で、社会党からは堀昌雄君も一緒に行かれたのです。佐藤観ちゃんも一緒に行ったと思ったな。観次郎君、お父さんの方。それでぐるっと欧米を回りまして、たまたまフランスへ行きましたらデノミ進行中なんです。私どもは財政関係をやっていましたから、非常に興味を持ちまして、見たり聞いたりしました。大体うまくいったように思いますね。ほとんど混乱はなかったと思います。そういう私の体験から、デノミというものは決して恐ろしいものじゃない、うまくやれば全く支障を来さずに、経済にはほとんど影響なしにできるものだという、私は実は信念を持っているわけであります。その後、フランスの実績を見て、フィンランドが上手にやったようです。  大蔵省からこの資料をもらいましたが、率直に申し上げると、このやり方で一つ心配なのは、一年ぐらいの準備期間を置いてデノミを実施すると言うのです。そのときにはまだ新しい札が、用意はされておるかもしれませんが、流通していませんね。何にも新しい、つまり新円が流通していない段階で、百分の一なら百分の一にしてしまう、零を二つ取ってしまう、株は百株を一株にしてしまうということになると、やはりそこに不安、動揺が起こってくると思うのです。というのは、日本人は終戦直後の新円切りかえ、証紙を張ったり、封鎖されて預金が使えなかったり、苦い経験があります。これとは全く関係がないのだが、混同しやすいわけですね。ですから、総理のあの一月四日のデノミ発言以来いろいろな風説が飛ぶわけでして、第一、日本経済の記事に、株式欄にデノミ買いという言葉があるじゃないですか。デノミ買いなんというばかな話はないと思うのです。また、株式だけでない、不動産屋はこれで生き生きとして、デノミだから不動産を買っておきなさいというようなことをやる。これは、私は全く詐欺行為だと思っておるのです。  そこで、私の考えというのは、はっきり申し上げると準備期間一年ぐらいは必要だと思います。その間に法律を制定しなければなりません。そして、いま申し上げたような、便乗して金もうけをしようというような者は厳罰にするということを決める必要があります。ただ私は、この切りかえは一年半くらい後になすったらどうか。つまり、法律を決めて、強制通用力を持った新しい札を、並行流通をまずおやりになったらどうか。なぜかというと、デパートに行きましても、旧円のまま正札が掲示されております。そうして、たまたま新円の百円札があればいままでの一万円の物が買えるということでずっといきますと、大体御承知のとおり札の寿命というものは、たかだか一年半、短いのは六カ月ぐらい、千円札で八カ月ぐらい、それは右から左へ出る人は別としても、札の寿命がそうなんです。たんす預金は真新しいやつが何年たってもありますが、ともかくそうですから、現在でも日本銀行は古い札をどんどん焼き捨てて、新しい札をどんどん出しているわけですね。ですから、デノミで並行流通が始まりますと、古い札はどんどん回収されて、気がついてみると新円だらけになってしまうわけです。  そこで、大蔵省も考えているようでありますが、日本の札はちょっと大き過ぎますが、やむを得ません。札の交換機なんかもいまはできていますから、これが使えなくなっては気の毒だから、結局、一万を百に切りかえて、聖徳太子はそのままで、大きさも品質も全く同じ札をつくる。硬化も、一円銀貨は百円硬貨と同じものをつくる。そうすれば自動販売機も何にも支障はありません。そうして一年半たったある日の午前零時を期して預金は零を二つ取りますよ、株は百株を一株にまとめますよとあらかじめ言っておけば、全然混乱が起きない。それで便乗値上げの起こるはずがないんです。最近新聞に出る学者なんかの意見を聞きましても、これは大根やニンジンは多少上がるだろうなんて言っていますが、これは全く知らぬ人の意見ですね。ですから、いまの並行流通を先におやりになる、そうして終点は一年半ぐらい先、こういうことにおやりになれば、全く混乱は起きません。  ただ、さびしがる人があるのです。百万円銭をためて、おれは金持ちになったと思ったら、それが一万円になっちゃうのか、さびしいなと言う人がありますが、これは申すまでもなく購買力は全く同じ、財産価値は全く同じなんです。ただ数字の魔術にひっかかっている。いま三十四兆二千九百五十億と言われても私ども見当もつかぬような、大体、兆という数字は天文学しか使わなかった数字を、いま予算書に使っているのですからね。これははかり知れざるむだをやっていると私は思います。また、円の価値も、それだけに国際信用も高まってくる。私は、これは決断をもってやるべき時期へ来ていると思っていますが、総理に答弁を求めると、また、よく検討しますぐらいでは、これは答弁になりませんから、言いっ放しでやめます。どうもありがとうございました。
  163. 中野四郎

    中野委員長 これにて足立君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  164. 小林進

    小林(進)委員 私は、第一問といたしまして、日ソの問題について総理大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。  ソ連との平和条約交渉に行かれた園田外相に敬意を表します。  私は、一九一七年、ソ連の社会主義革命が成功したときは満七歳でありましたが、世界で初めて労働者、農民の国家ができたということで大変喜んでいる大人の姿を見て、子供ながらにも感激をした、その記憶がいまでも気持ちの中にあります。そして、中学の三年ごろから社会主義の研究に入り、ますますソ連邦に興味と敬意を感じてきたのでありまして、いわば、だれよりもソ連派でございます。したがいまして、私のこれからの質問は、決して反ソ的な気持ちで物を言っているのではないのでありますから、この点ひとつ誤解のないようにお受け取りを願いたいと思うのであります。  しかし、私は、この愛するソ連でありますが、国家として日本に対してきたいろいろの点では、どうも国民の側では理解しがたい問題が幾つかあるのであります。いま日ソ平和友好条約交渉が始められようとしている現段階において、これは私だけではない、国民全部が抱いておりますこれらのもろもろの疑点をここに明らかにしておく、そして国民政府の間に理解を深めておくことがいま大変必要なのではないか、これが近代的な外交の正しい行き方ではないか、こういう立場で質問をいたしたいと思うのであります。  それで、第一問でありますが、政府は、この日ソ平和友好条約に関して四つの島、四島一括返還ということを言われておるのでありますが、その北方領土四島というのは何島と何島を指されるのか、お伺いをいたしておきたいのであります。
  165. 園田直

    ○園田国務大臣 歯舞、色丹、国後、択捉を申しております。
  166. 小林進

    小林(進)委員 そこで私はお伺いいたしますが、歯舞、色丹ということをいま外務大臣はおっしゃいましたが、一九五六年、昭和三十一年になりますね、鳩山総理大臣がソ連へ行かれて、一九五六年十月十九日、そこで日ソ共同宣言というものを締結をせられました。その共同宣言の第九項で、いわゆるこういうことが決めてございますね。「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。」こういうことが書いてあります。したがいまして、われわれの理解に基づけば、いまおっしゃった四島のうちの二島は、これはこの共同宣言によって問題は決着している、ただ、返ってくる時期が平和友好条約の成立した後ということで、その時期の問題だけであって、日本に返ってくることは私どもはもう了解済みだと思っている。だから、平和友好条約で領土の問題の交渉をされるとするならば、まだ未解決でいるあとの二つだ。択捉、国後。もっとも、われわれ社会党に言わせれば、そんなけちなことは言わない。得撫島から占守島まで、これは全部わが日本の固有の領土であるという原則に立っておりますが、これは政府とわれわれとの、島に対する見解の相違は別にいたしまして、いま言われた四つの島といったところで、未解決のものは二つじゃないか。国後、択捉だけをひとつ返してもらいたいというのが私は交渉の本筋じゃないかと思う。それをなぜ一体、歯舞、色丹まで入れて四島と言われるのか。そうすると、一体この共同宣言は効力を発生しないのか、あるいはもうこれは消滅したのかどうか、こういう問題が一つ出てまいりますが、政府はこれをどのようにお考えになっておるのか、お伺いをいたしておきたいのであります。
  167. 園田直

    ○園田国務大臣 仰せのとおりでありまして、共同宣言で二つの島は平和条約締結後に返すということになっております。わが方は共同宣言の当初から、二つではだめであって、四島一括返還ということを主張いたしております。したがいまして、その二島を含めた四島一括返還、こういうことを主張しているわけでありまして、共同宣言の効力は、当然これは発効しているわけであります。
  168. 小林進

    小林(進)委員 どうも、こういうことで時間を費していると問題の本質へいきませんから、私も残念ですけれども、二つは解決したのでございましょう。解決したのに、それを入れて一括四島、一括四島と言うのは、少し話が合わない。  そこで、改めて私は御質問いたしますが、それでは、ソ連側はこの共同宣言以後今日に至るまで、あなたも行かれたときに、彼らの方は、一括して領土は一切解決済みであると言っておられますね。そこで、外相訪ソの際もコスイギン首相及びグロムイコ外相ともに解決済みと言っているこのソ連側の主張は、二つは解決してそれは日本へやりますが、あとの二つはこれはソ連に残しますよ、二つはソ連のものだ、それで四つの島の問題は解決したのだという言い分なのか。一切は解決したというのは、この共同宣言に盛った歯舞、色丹も含めて四つの島は、終戦に基づいてソ連に帰属した島だから日本へは返しません、こういう意味なのか。ソ連側の言う解決済みというその内容は一体どれを指しているのか。総理大臣に――ああ、そうですか、それじゃ外務大臣でしんぼういたしましょう。
  169. 園田直

    ○園田国務大臣 グロムイコ外務大臣の言葉をそのまま言うと、島の数の問題ではない、解決済みである、こういう言葉を使ったわけであります。そこで私の方では、歯舞、色丹は返すという約束済み共同宣言、しかし、これはまだ返還が実行されていない、したがって四つを一括返還、こういう主張をしてきているわけであります。
  170. 小林進

    小林(進)委員 これは私は重大問題だと思うのでありますが、あなたの言い分は別にいたしましても、そうすると、ソ連側は、この共同宣言は無視いたしまして、無視という言葉がいいか悪いか存じませんが、いわゆる歯舞、色丹、国後、択捉、四つの島は一括して日本へは返しませんよ、返さないことに一切が解決済みなんだ、こういうふうに言われたと解釈してよろしゅうございますか。
  171. 園田直

    ○園田国務大臣 小林委員と同じ意見でありまして、共同宣言で二つの島は返すということを約束されておるわけでありますから、これについての議論を私の方から出す必要は、むしろ逆に逆行するおそれがありますから、この二つの島については議論はいたしません。四つ一緒に返しなさい、こう言っているわけであります。
  172. 小林進

    小林(進)委員 あなたの思惑で、一番さわりたくないところにさわらないで、そして一括四島の返還を要求したとおっしゃるならば、言葉としては、実にこれは不確定であります。実に不確定な交渉のやり方でありますが、それはそれでいい。そればそれでいいが、それに対してソ連側が、先ほど来繰り返しておりますけれども、四つの島の問題はもう一括して解決したのだ、もう返さないのだ、こういうふうにソ連側は、グロムイコもコスイギンも全部そう言ったんだ、こう受け取ってよろしゅうございますかと、これを私は聞いているのだ。
  173. 園田直

    ○園田国務大臣 コスイギン首相との間では、その問題は全然出ません。返せと私は主張しただけであります。これができなければ一切のものはできない。グロムイコ外務大臣は、私が執拗に四島返還を迫り、これを解決される以外は平和条約を結べない、平和条約を締結される以外は一切の条件をのめない、こう主張したのに対して、ひとり言みたいにつぶやいただけでありまして、四島は返さないとか、二島は返すとか、そういう議論はいたしません。
  174. 小林進

    小林(進)委員 これは今後の日ソ問題の根幹でありますから、これは明確にしておいていただきたいと思うのであります。当時の報道せられたところでは、コスイギン首相はけんもほろろに、領土の問題は一切解決済みだと言ったと報道されましたけれども、あなたは、コスイギン首相には一切その問題には触れなかったとおっしゃるなら、あなたのおっしゃることを信頼いたしましょう。しかし、いずれにしても、このたびのグロムイコ外相だけではありません。ここ数年だ。しばしば――これはもう数年じゃありません。もっと古きをたずねれば、一九六〇年、昭和三十五年の安保闘争以来、ソ連側は、領土の問題は一切解決済みだ、こう言ってきておるわけです。その解決済みというのは、四つの島全部を返さないということなのか、二つは平和条約が済んだら返す、あとの二つだけは返さないということなのか、これはわれわれにとっては重大な問題でありますから、外務大臣、ひとつきちっとしたソ連側の意向をわれわれに伝えてください。
  175. 園田直

    ○園田国務大臣 共同宣言によってすでに両方が合意をし、すでに声明しておる二つの問題をいまさら議論することは必要ない、これはもう当然返ってくるべきもの、平和条約さえ結ばれれば返ってくるべきもの、こう解釈しておるわけでありますから、この点について主張する必要はない、私はこのように考えております。
  176. 小林進

    小林(進)委員 私どもはあなたの意見を聞いているのじゃありません。ソ連側が一切解決済みだとしばしば繰り返し、明言をし、言明をしている、この一切解決したという言葉の中に、四つの島が入っているのか、二つだけに限られているのかということだけをお尋ねしているのでございますから、ソ連のそのお考えをお聞かせ願いたいのであります。
  177. 園田直

    ○園田国務大臣 いま申し上げましたのは、私の感想や意見を言っているわけではありません。すでに証文を取り交わして、二島は平和条約締結時に返還する、こう言っているものを、いまさら、これは間違いないか、これはどうだ、これは変わったことはないか、こう確かめることは私は必要はない。あとの二島を含めて四島を返せ、こう言うだけでございます。
  178. 小林進

    小林(進)委員 それでは改めてお伺いしますが、外務大臣は、歯舞、色丹という二島は共同宣言によって間違いなく日本に返ってくる、ソ連側もそういう意向である、ソ連側も忠実に共同声明の線を守って、この二つは日本に返すことはもう了解済みだ、残された択捉、国後だけは一切解決済みなんだから日本へ返さないという意向だ。神かけてこの解釈は間違いないと、あなたはここで言明されますか。
  179. 園田直

    ○園田国務大臣 共同声明と共同宣言は違いまして、共同宣言は条約にも類する問題でありますから、これに明記されたことは当然のことである、このように解釈をいたします。
  180. 小林進

    小林(進)委員 おっしゃるとおりで、私はいま共同声明と言いましたが、これは取り消しましょう。共同宣言です。その共同宣言は条約と同一の効果がある、これは亡くなられた、当時の重光外務大臣もそう言われた。それほど共同宣言は条約に準ずべき効果があります。しかし、いまソ連側は歯舞、色丹を言わないで、こっちは四つの島を返してくれと言う、向こうは四つの島は全部解決済みだということは、これは国民の常識やわれわれの考えから見たら、四つの島ともに返さないのだというふうにしか私はとらざるを得ない。国民の側からはとらざるを得ない。そこを、いまあなたがおっしゃるように、いや、二つはもう共同宣言で決まったのだから、これは解決済みで日本へ返すんだ、残っているのは国後、択捉だけだとおっしゃるならば、本当にあなたに間違いないならば、なぜ一体、未解決の二つの島を解決してくれとおっしゃらぬのか。一括して四島、四島とおっしゃるから、われわれの側から見れば、歯舞、色丹もみんな含んでまだ未解決だと解釈せざるを得ない。非常に大きな誤解があるのでありますから……。間違いありませんか。これは何回も念を押しますよ。
  181. 園田直

    ○園田国務大臣 私は、コスイギン首相にもグロムイコ外務大臣にも、四島を返してくれとは言っておりません。四島一括返還と、このように言っております。
  182. 小林進

    小林(進)委員 この問題は、いまの外務大臣の御答弁で私はまだ理解が足りませんが、これは手練手管で、宮澤さんのことを例に出して悪いけれども、この国会の中は何かテクニシャンで物を処置していこうというような、ああいうようなことで解決する問題ではありません。これからの日ソ交渉の基本でありますから、総理大臣もひとつここで、この問題について明確に御所見をお述べいただきたいと思います。  一括していわゆる解決済みというこの四島の問題は、二島だけは、歯舞、色丹だけはもう間違いなく平和条約が成立すれば日本へ返ってくるので交渉の余地はないのだ、残された国後、択捉の二つの島だけはいわゆる領土の問題として交渉に残っているのだ、こういういまの外務大臣の答弁ですから、これを正しく総理大臣が裏づけをされるならば裏づけをしていただきたいと思います。
  183. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 歯舞、色丹両島は、これは平和条約が締結されたらその後で日本に引き渡す、こういうことになっているわけですね。ところが、その平和条約を締結をするということにつきましては、わが方といたしましては、これは四島一括返還だ、こういうことを言っておるわけでありまして、そういう立場、これはもうわが日本の国策と言ってもいいくらいな大きな外交方針でありますから、これを堅持していくほかはない、かように考えております。
  184. 小林進

    小林(進)委員 私は、この問題は将来とも、日ソの交渉が続く限りずっと続いていく問題だと思います。将来とも尾を引く問題でありますから、きょうのこの御答弁をひとつ政府は深く胸にとどめておいていただきたいと思います。  くどいようでありますが、いま一回申し上げます。共同宣言に盛られた歯舞、色丹は、これはもう解決済みで日本へ返ってくるのだ、平和条約ができればその以後に返ってくるのだ、未解決なのは国後、択捉の二島だけだ。けれども、日本は国後、択捉も含めて四島一括返還をしてくれという交渉をしているのだ、こういうことで理解いたしましてよろしゅうございますね。
  185. 園田直

    ○園田国務大臣 歯舞、色丹の処置については合意が出ているわけでありますが、返還はまだされていないわけであります。いま小林議員の言われたことは、腹の底に秘めて、十分今後の交渉で留意する必要はありますけれども、こちらから持ち出して確かめる筋合いのものではない、このように考えます。
  186. 小林進

    小林(進)委員 大分これで時間を食いまして予定が狂ったのでありまするけれども、あわせてこの際、国民の側から、一体ソ連がなぜこの四つの島を、まあ歯舞、色丹は除きましょう、国後、択促を日本に返さないと言うのか、その理由に非常にわれわれは理解に苦しんでいるわけであります。日本側の言い分は、これはもう繰り返し言われておりまするからわれわれの記憶に新たでありまするけれども、ソ連の言い分がわからない。私はあらゆるところで資料を集めてきたのでありまするが、その中で、ややソ連側の主張が明らかにされたと思われる資料は、池田総理大臣に対してフルシチョフ氏が書簡を寄せている、その書簡の中に、なぜ一体北方領土がソ連の領土であるかということを九項目挙げて述べられているわけでございます。これを全部読み上げたのでは大変でございますが、これはやはり歴史にも残る問題でありますから、ちょっと読み上げましょうかな。   一九六一年一二月八日付の  池田総理あてフルシチョフ首相書簡に、領土問題に関するソ連政府の法律的見解がかなり明確に現われているが、その要旨は、(1)日本の降伏条件の基礎となったポツダム宣言は、日本の主権を本州・北海道・九州・四国と若干の小島に局限している、(2)日本は、降伏文書でポツダム宣言の条項を誠実に履行することを誓約したが、千島列島が日本の主権の下に残された領土の中から除外されている限り、日本政府の側からの千島諸島に対する現在の要求は、右の誓約に反する、(3)千島列島の放棄を定めた条約にその帰属が記載されていないという理由で、日本はこの問題を未解決であると主張しているが、日本が千島をいかなる場合にも要求しうるものでないことが周知のとおりであるのに、日本は一体何を求めるのか、(4)ヤルタ協定は、南樺太・千島の帰属問題を明確に決定しており、これらの領土は、無条件かつ、無留保でソ連に引き渡された、 これはヤルタ協定で渡したということです。  (5)日本政府日本がヤルタ協定の当事国でないこと、従って同協定が日本関係がないかのようなことを引合いに出しているが、日本は降伏して連合国の決定した条件を受諾しており、連合国はこの点についてヤルタ協定を含む既存の連合国間の協定を出発点としている、(6)南樺太及び全千島諸島のソ連帰属問題については米国とソ連の間になんらの一致もなかった、(7)ヤルタ協定中にも一般命令第一号中にも対日平和条約中にも、千島の区分はされておらず、全体としての千島が問題となっていたのであるから、国際諸協定がソ連に全千島諸島でなく、単にその若干の島のみを譲渡するものとしているという日本側の試みは根拠がない、(8)国後・択捉が千島諸島中に含まれるということは、一九三七年に日本海軍省水路局が出版した水路誌や観光局が一九四一年に出版した公的な日本旅行案内書などでも明らかであり、また、日本政府が戦後も一再ならず認めているところである、(9)日本は一九〇四年の背信的攻撃により樺太の半分をロシアから奪取したので、日露通好条約と千島樺太交換条約を破り、これらの条約を引合いに出す権利を失った、また、二〇年代の初め日本は一九〇五年の条約を破って北樺太等を占領した、 云々、こういうことが大体ソ連側の言い分を集約していると思うのであります。  これを読んでみまするというと、やはりヤルタ協定がどうも中心になっているようでございますが、このソ連側の言い分に対して、外務大臣、いかが交渉をおやりになったか、伺いたい。
  187. 園田直

    ○園田国務大臣 ソ連の言い分はそのとおりでありましょうけれども、サンフランシスコ条約第二条で、千島列島を放棄したからといって、ソ連がこれを占領し、またば自分の領土と言う権限は全然ないわけであります。わが方が四島返還を求めておるのは、当時の連合国、ソ連を除く他の国々の了解を得てこれを要求し、またポツダム宣言その他は、今度の戦争によって、領土的野心を有しない固有の領土は取り上げない、こういうことが根本になっているわけでありますから、ソ連の言い分は全くこれは理屈にならない理屈であると私は解釈をいたします。
  188. 小林進

    小林(進)委員 それが政府の統一見解であるとおっしゃるならば、私はひとつそれだけを承って、領土問題は、まだ幾つもお尋ねをしたいのでありますが、時間がありませんから、残念ながらこれでとどめます。  第二番目として国民側がお聞きしたいのは、古い話ながらソ連の参戦の理由であります。日本とソ連の間には当時日ソ中立条約がありました。もっとも一、その日ソ中立条約は、一九四五年の四月の五日、日本が負ける昭和二十年の四月の五日にソ連から一方的にこれを廃棄するという通告はありました。通告はあったが、この日ソ中立条約はいずれか一方が廃棄したその後一年間この効力を有する、お互いにこの条約を守る厳正な責任と義務がある。一年を通過するといちと昭和二十一年の四月の五日であります。そこまでこの中立条約をソ連は守る責任があった。にもかかわらず、八月の九日、連合国側にくみして参戦をいたしました。日本に宣戦の布告をいたしました。一体この中立条約とソ連の参戦、これをどういうふうに解釈すればよいのか、政府側はどう解釈しているのか、これが一つであります。  いま一つは、この参戦をいたしますときのソ連側の宣戦布告の文書といいましょうか、モスクワにおいては当時の佐藤駐ソ大使、日本には当時、大使としてはマリク大使が当時の外務大臣東郷氏に向かって、それぞれいわゆる国交断絶宣言、この通達をしたわけであります。その通達の理由、この関連を外務大臣はどう解釈しておるか、これは国民が知りたがっているところであります。
  189. 園田直

    ○園田国務大臣 これも御意見のとおりでありまして、一年前に廃棄通告をするという取り決めでございますから、この日ソ不可侵条約は当然一九四六年四月五日までは有効であり、両国はこれを遵守する義務があるわけであります。にもかかわらず、一年前の四五年四月五日に突如として一方的な利害によってこれを破棄することは、これは国際条約に対する遵守の義務を破ったことになっておって、何ら理由はない、このように解釈をいたします。
  190. 小林進

    小林(進)委員 それは外務大臣、ばかに明快な答弁をいただきましたが、それほど明快な御答弁をいただくなら、当然これは日ソ交渉のいずれかの場に、いまおっしゃったことは出てこなければならぬ。けんかをすることではありませんけれども、これは永久に残る問題でありますから、是は是、非は非、言うべきことはきちっと言わなければなりませんから、これはおっしゃいますね。
  191. 園田直

    ○園田国務大臣 いままで戦後の日ソの交渉において、その点は発言されておると記憶いたしております。  なお、今後交渉の段階においてそれが必要であり、また平和条約締結のために有効であると考える場合には、ちゅうちょしないでこれは主張いたします。
  192. 小林進

    小林(進)委員 これは私は、個人の気持ちで申し上げていないことはしばしば申し上げました。これは全部国民が知りたいことであり、言いたいことなんだ。  次に、私はお尋ねいたしますが、一九四五年八月十日です。日本では。マリク大使が日本政府に、日本の外務大臣に突きつけたその言い分でありますが、ここに若干資料がありますから申し上げますけれども、  ヒットラー獨逸ノ壊滅及ヒ降伏後ニオイテ八日本ノミカ引続キ戦争ヲ縫績シツツアル唯一ノ大國トナレリ、日本兵カノ無條件降伏二關スル本年七月二十六日附ノ亜米利加合衆國、英國及ヒ支那 当時は「支那」でございます。  三國ノ要求ハ日本ニヨリ拒否セラレタリ、コレカタメ極東戦争二關シ日本政府ヨリソ連邦二封シナサレタル調停方ノ提案ハ網テノ根撮ヲ喪失スルモノナリ  日本カ降伏ヲ拒否セルニ鑑ミ連合國ハ戦争終結ノ時間ヲ短縮シ、犠牲ノ敷ヲ減縮シ且ツ全世界ニオケル速カナル平和ノ確立二貢献スルタメソ連政府二封シ日本侵略者トノ戦争二参加スルヤウ申出テタリ  総テノ同盟ノ義務二忠實ナルソ連政府ハ連合國ノ提案ヲ受理シ本年七月二十六日附ノ連合國宣言二加入セリ  斯ノ如キソ連政府ノ政策ハ平和ノ到來ヲ早カラシメ今後ノ犠牲及ヒ苦難ヨリ諸國民ヲ解放セシメ且ツ濁速力無條件拒否後體験セル如キ危険ト破壊ヨリ日本國民ヲ免ルルコトヲ得セシムル唯一ノ方法ナリトソ連政府ハ思考スルモノナリ これが日本に対する宣戦布告の言い分でございましたが、これに対して、総理大臣、あなたにひとつお尋ねをいたしましょう。  こういうソ連側の言い分に対して、私は腑に落ちないことが二つある。  一つは、ここにも資料がありますが、日本はもはや敗戦の色濃くなって、昭和二十年の六月三日、四日から、これは広田元首相がマリク大使と会見、それから六月二十四日広田・マリク会談、あるいは六月二十九日広田、マリクを訪問だとか、東郷外相、近衛氏に平和依頼のため訪ソを依頼とか、ともかくソ連側に、モスクワにおいて、日本において、戦争終結の調停を依頼する往復をしばしばやっている。これに対して何らの返信も受けなかった。受けずして、突如として宣戦の布告をされたということは、これは国際あるいは中立条約、不可侵条約のたてまえ上、こういうことが一体正当な行為であるかどうか、やはりこれはやむを得ざる行為であるのか、それが一つであります。どういうふうに国民はこれを解せばいいのか。  第二番目は、この宣戦に対するソ連の言葉の中に、同盟国の義務に忠実なるソ連という言葉がある。ソ連ほど同盟国の義務に忠実なる国はないとおっしゃる。一体われわれの不可侵条約というものも、ある限りは日本も同盟国の一つでございましょうが、これに対するソ連のおっしゃる忠実さというものは、これはどういう形になっているのか、こういう点、私は総理大臣にお尋ねする。
  193. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は当時の文献についての勉強はしておりませんが、当時私が日本国民とし、て受けた印象を申し上げますれば、あの当時は、わが国はソビエト連邦に対しまして、日本、連合国間の停戦についてのあっせんを依頼をしておったのです。その依頼に対する返事がああいうソビエト連邦の戦争に対する参戦という形で来たのだ、こういうふうに私どもは理解をし、非常にこれは不可解な行動である、こういう印象であったわけでございます。
  194. 小林進

    小林(進)委員 総理が当時の感想として不可解な行動であるということをお述べになりましたが、これはやっぱりこれからの日ソ交渉、平和条約をおやりになるときに、そういう感想だけで済む問題じゃないのであります。しかし、いまあなたのおっしゃった感想は、国民が全部抱いている感想でもあるのです。けれども、感想では交渉にならない。やはり交渉の場にはこういう問題も一つの資料、議題として提供されなければならない。しかし、われわれのこの感想が間違っておるというならば、間違っているという相手方の正当な言い分もちゃんと受けとめて、そして冷静かつ理論的に道理にかなった条約交渉を進めなければならぬと思いますので、いま申し上げたわけであります。  この点もひとつもっと勉強していただいて、ソ連側の意向もその都度国民に知らせるようにして、私はりっぱな冷静な交渉を進めていってもらいたいと思います。  また、この問題に関連して、これも私は、日本国民の感情を代表している意見だと思いますから申し上げます。これは国民の意見じゃないのであります。当時のアメリカの国務長官であったダレスさん――ダレスじゃありませんよ、ダレスです。ダレスさんが、ソ連が日本に宣戦を布告したのが一九四五年八月九日、日本は十五日に降伏した、参戦の期間はわずかに六日間だ、しかも、その六日間に日本軍はほとんど無抵抗だった、しかるに、ソ連はこの六日間で莫大なもうけをした、こう言っている。莫大なもうけをした。  これは、もっとその出所を明らかにいたしますと、一九五一年、アメリカ、ホイッテオア大学――これはどこにあるのですかな。そこで、ダレス氏が速記をつけて講演をしている。その講演の中で「ソ連は日本に突きつけるべき道義的請求権を持たない。なぜなら、わずか六日間名目的な交戦関係にあったにすぎないソ連が満州、旅順、大連、南樺太、千島と、膨大な収穫を得ているが、元はすでに千倍になって返っているからである。」元は千倍になって返っているからである、こういうことを、ダレス国務長官です。日本にサンフランシスコ講和条約を締結をした巨頭じゃありませんか、彼がこう言っている。その上に、日本人をほとんど無料、ただに近い形で五十七万人も使い古しているのだから、「笑いのとまらぬほどソ連は戦争でもうけた。」こういう演説をされているのであります。これは日本人の演説じゃありません。ダレスさんの演説であります。これに対して政府の見解はいかがでありましょうか、総理。これはダレスさんが間違っているのかどうか、あなたの所見を承っておきたい、重要なことでありますから。
  195. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その演説の要旨をいま承りまして感慨無量なるものを感じます。
  196. 小林進

    小林(進)委員 私はここで政治を論じているのでありますよ。外交を論じているのです。いま当面する日ソ条約の問題の一つ一つ詰めていかなければならぬ資料を提供しているつもりでありますから、どうかひとつ大衆の笑いを買うようなことをもって総理大臣満足せず、やはりこれを外交交渉の場にどう一体活用されるのか、あるいは無視されるのかということを私は承っているのでありますから、ひとつそういう政治家の立場で私は御回答をいただきたいと思うのであります。
  197. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 平和条約交渉上の重要な資料にいたしたい、かように考えます。
  198. 小林進

    小林(進)委員 時間がありませんから、私は次へ次へと参りますが、私は次にお伺いいたしたいのです。これも国民はわからない。  それは終戦後における日本人のいわゆる抑留に関する問題であります。俘虜に関する問題であります。八月十五日に日本が降伏をいたしました。その後においてソ連が、旧満州、樺太、千島、朝鮮における日本軍人及び日本人、これは軍人でない日本人を拉致するといいましょうか、俘虜で連れていくと申しましょうか、その作業に入ったのでありまするが、大体、持っていくやり方は、一千名ないし一千五百名単位で作業大隊というものをつくって、それで旧満州、いまの東北の北部からソ連領に運んでいったわけでございまして、大隊数は五百六十九大隊、強制です。強制移行された人員は五十七万五千人と、これは日本政府の記録の中に残っている。その内訳は、旧満州、北朝鮮から五十万人、樺太、千島から六万八百人、主として送られ先はシベリア、シベリアに送られた。で、長い者は十一年間の強制作業に服している。この中で死亡した人員が大体五万五千人。五万五千人というと、昔の軍隊で言いますと五個師団か六個師団ですね。六個師団全滅だという数であります。五万五千人、これはいまの東北地方、旧満州に持っていかれた者だけで死んだのが五万五千人。これには樺太、千島で抑留をせられ、あるいは死んだ者は数に入っていないのでありますが、これを加えればもっとふえるはずだというのであります。  こういう実数を、これは偽らざる事実であります。この事実の上に基づいて私はお伺いするのでありまするが、戦争が終結した、終わったその後で強制拉致するとか、強制労働に服せしめるという国際法上の根拠は一体どこにあるのか、どの法律とどの根拠に基づいてこういうことが行われたのか。総理大臣あるいは外務大臣、これは残念ながらお知りにならぬと言えば、どこか外務省の条約局長でも結構でございますが、なるべく時間を節約するようにお答え願いたいと思います。
  199. 園田直

    ○園田国務大臣 戦後、戦争犯罪人、捕虜、反ソ活動、スパイ容疑等の理由で抑留をされておりますが、その中には理由が明確でないものもあるわけであります。  なおまた、当時抑留された方々に対する非道な仕打ちというのは、これは何ら正当化する法的根拠はないわけでありまして、亡くなられた方、苦労された方、人生の大半を過ごされた方の心中を思うと、まことに胸詰まる思いがいたします。  しかしながら、これを法的に申し上げますると、日ソ共同宣言第六項で、日ソ両国は、戦争の結果として生じたすべての請求権を相互に放棄するという旨の規定があり、両国間においてはすでに決着済みの問題でありますから、これが今後の日ソ平和条約交渉で取り上げられる筋合いのものではないということを付言しておきます。
  200. 小林進

    小林(進)委員 私の問わないこともあなたはお答えになりましたが、私は、いまの共同宣言の第六項は、第九項の領土の問題に関連して実はお聞きしたがったのでありまするが、この領土の問題がもし約束どおり返ってこなければ、第六項の、日本の、相互の請求権も消えるわけにはいきませんから、これはやはり両方を考えておかなければいかぬが、私はその前に、五十七万人も、軍人にあらざる者を、一体どんな法律の権限に基づいて戦勝国のソ連領土へ拉致したのかという、その法律問題を私はお尋ねしているんですよ。これは、ポツダム宣言の中には何と書いてありますか。見てくださいよ。それぞれ兵隊は、平穏無事にふるさとへ帰されると書いてありますよ。これは、第一、ポツダム宣言違反じゃありませんか。平穏無事にそれぞれのふるさとへ帰される、そして、あなた方の生産的活動につけしめる、これが峻厳なポツダム宣言の原則です。われわれは、その原則に基づいて降伏したのでありますよ。行われていない。しかし、さすがに南方あるいは中国等は、一年もたたないうちに、二十一年のうちに、よその国はほとんど全部帰してくれた。ひとりソ連のみだけがこれを持っていった。これは、ポツダム宣言を受諾した敗戦国日本に対する違約行為じゃないか。  それから、いま一つ、私は、国際条約のことをお聞きしたが、あなたはおっしゃらなかったから、私は読み上げます。俘虜待遇に関する国際法というものがちゃんとある。一九〇七年十月にヘーグで成立した俘虜の待遇に関する条約がありますよ。強制労働させてはいけない、殴ってはいけない、けってはいけない、飯も食わせなければならぬという、りっぱな条約ができている。そのヘーグの条約というものは、日本もソ連も、これはちゃんと調印もし、批准もいたしております。ヘーグ条約の違反じゃないか。そのヘトグ条約を受けて、一九二九年、これは、第一次世界大戦が済んだ後です。そのときの捕虜問題にまた一つの問題があるということで、ジュネーブで、このヘーグ条約を受けて、俘虜の待遇に関する条約というのが成立をいたしました。日本は調印もいたしましたし、批准もいたしております。ソ連も調印はいたしております。それでもなおかつ不満足だというので、今度は、第二次世界大戦の済んだ一九四九年八月十二日、ジュネーブでまた成立した俘虜取り扱いに関する条約があります。この条約は、ソ連は調印までしました。けれども批准はしていない。きっと顧みて、あっ、これは日本のこの問題にあるいはひっかかると考えたかどうか知りませんけれども、調印までしましたけれども、批准はしていないが、これは条約を批准すると否とにかかわらず、各国家は慣習的国際法の拘束を免れることはできないと私は思う。この問題は、いま外務大臣が言われたように、鳩山共同宣言の中に、相互に請求権を放棄するということがあるから、われわれはもう何も言えないのだというお言葉であるというと、これは将来に向かって世界に大変悪例を残すことになると私は思う。ヘーグ条約違反、ジュネーブ条約違反です。こういう問題を、一体政府はどういうふうにお考えになるのかどうか、この際……。
  201. 園田直

    ○園田国務大臣 私が先ほど申し上げました日ソ共同宣言第六項は、小林議員がおっしゃられたとおり、第九項との関連であって、平和条約締結に発効すべき筋合いであることは同意見であります。  なお、ソ連が抑留をし、いろいろなことをやったことは、私も一、法的根拠は全くない、こう申し上げましたが、ポツダム宣言及びヘーグの陸戦規定その他のことに違反していることは、おっしゃるとおりであると考えます。
  202. 小林進

    小林(進)委員 いみじくも外務大臣は、国際条約にもポツダム宣言にも違反をしている、こういうことをお認めになりましたから、私はそれで結構だと思いますが、これは、日本国民の中に深く巣くうている問題であります。外交は、先ほども申し上げました、国民を基盤とし、国民とともに外交を進めるという姿勢がもしあるならば、やはりこういう、国民の言わずして語り得ないその気持ちを正しく受けて外交をやっていただかなければならないと私は思いまするから、あえて申し上げますが、この中に、日本政府が、当時の外務大臣の吉田さんが、日本人抑留問題と言って、国連に提訴された問題があります。「一九五一年六月十九日 外務大臣吉田茂 国際連合総会議長ナスロラ・エンテザーム閣下」こういうことになっているのでございますが、この付帯書の中に、時間がありませんから私は詳しくは読み上げませんけれども、これは実にいまこれをながめていても涙さん然としてぬぐうのを知らぬような文面が飾られているのであります。この中にはいわゆるソ連における日本人捕虜の待遇だとか、取り調べ中の捕虜の取り扱いだとか、あるいは在監者、監獄に入られた者の取り扱いだとか、これは実に惨たんたるものでございまするが、こういうことは単に日本、ソ連だけじゃない、これは人類の上に再びこういうことを繰り返しちゃいけない。私は、そういう意味で申し上げているのでございますが、この一節だけちょっと申し上げますと、  取調中の捕虜の取扱   一般に取調べは、密告制による容疑事実の蒐集を以て開始される。かかる密告制は一九四七年から特に活溌に用いられだした。 これは負けた二年後です。   容疑者は脅迫、絶食、殴打、睡眠妨害、その他の拷問によって供述を強要される。例えばある者はソ連将校に拳銃で威嚇されつつ、木銃で数十回も殴打された。気絶すると水をかけられ、蘇生すると再び拷問を受けた。更に裸体にされた上、電線で束ねた鞭で殴打された。またある者は陰部を蹴られ、頭をコンクリート壁にうちつけられて失神させられること数度に及んだ。水を浴びせられて蘇生すると、更に背部や腹部を何度も蹴られ、出血して昏倒した。 まあ、ほんの一節でありますが、これは民間の書類じゃないんですよ。外務大臣吉田茂氏が国連に正式に出したこれは文書ですから、こういうような事実をみんな、今度の日ソ交渉の中に正しくやはり受けて、そして私はやっていただきたいと思うのでございまして、まあ余分なことかもしれませんけれども、いま、われわれが平和友好条約をつくらなければならない大国は二つであります。ソ連と中国であります。私どもは、社会主義国家としての二つの国に差別を設けようなんというような気は一つもありません。しかし、わが社会党の北山副委員長が本会議場でも総理に述べたように、われわれは中国に対しては、いかに公平に見ようとも、われわれが侵略した。われわれが戦争をしかけた。そして、われわれが一番あの本土を荒らしまくった。一千万有余の中国人を虐殺した。一億に近い中国の領土を焼き払った。あらゆる暴行、脅迫をした。その中国が、過去のものは一切水に流して、一切の賠償金も取りません、一寸の領土も取りません、昔のことはいまからあきらめて、将来はひとつ子々孫々に至るまで仲よくやりましょう、こう言って手を差し伸べている。その国と、ダレスさんじゃないけれども、まさに一千倍の巨万の富を戦争でもうけた。そうして五十七万の人たちを抑留者に並べて、まあただで使ったとは言いませんけれども、長いのは十一年も強制労働に服せられて、いわゆる戦勝国のその国の建設のために働かされてきた。同様に考えられますか。考えるとおっしゃるならば、それは国民の気持ちを無理に土足でけって、白を黒と思わせるようなやり方、それは外交になりません。どうかそういう事実を事実として明らかにして、そうして日ソの平和条約、いま私が申し上げた問題を国民が納得するように、まず国民の側にひとつ納得させていただきたい。納得させていただいて、そして私は誤りなき日ソ交渉を続けていただきたいと思いますが、総理大臣、時間もありませんからソ連問題これで終わりますけれども、あなたの最後のひとつ決意を承っておきたい。
  203. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 日ソ問題につきまして、将来の交渉上非常に貴重な資料となるべき御所見を承らせていただきました。御所見も踏まえまして、ひとつ粘り強く日ソ交渉を進めたい、かように存じます。
  204. 小林進

    小林(進)委員 時間がありませんから、私は総理の決意、これはあくまでも鉄の決意でやってもらいたいと思う。  ただ私は、ここで宮澤さんのことなんか言いたくないのだけれども、ちょっと言っておきますけれども、ともかく、私は予算委員をやってこれで六年ばかりになりますけれども、あなたにだまされること実に山ほどある。その中の一つでありまするけれども、北方領土の問題についても、やはり千島などの歯舞、色丹、択捉、国後はあのヤルタ協定の中に入っていないということをちゃんとアメリカは言っているのです。これは資料がここにあります。アメリカの対ソ宣言の中に、ソ連に対する書簡の中にちゃんとアメリカは言っているのですから明確です。しかも、インドもそのとおりです。日本の固有の領土だ、その領土を返さないようなそういう条約は間違っているという、あのインド国が代表して明らかにアメリカの政府に抗議を申し込んでおりますよ。そういう幾つかの事例をながめて、早くひとつ国際司法裁判所に提訴するなり、世界の世論にこの事実を訴えて、外務省は外務省らしい行動をひとつ起こしてくれと言った。あなたはさわやかな返事をしたけれども、返事をしたきり、それ、何やってくれましたか。何にもやっていない。その何にもやっていない話は、私はこれを読み上げると、勧進帳を読み上げるように幾つも出ますけれども、時間がないからやめますけれども、いけませんよ。立法府を軽視すること宮澤に過ぐる者なしだ、これは。こんなことじゃいけません。  私はそこで言いますが、いま一度また言うのです。これは。どうか、こういうことは条約交渉とともに、正義は正義なんですから、いいですか外務大臣、ちゃんとそういうふうに、われわれの日本の主張が正しいことはアメリカも保証してくれる。インドも保証してくれる、連合国の中で。イギリスだけだ、あのヤルタ協定を結んだりポツダム宣言に加入した中でうんともすんとも言わないのは。そのイギリスなんというものはやはり説得して、世界の世論に訴えながらわれわれの正当な条約交渉をやるというふうな、そういう勇気と決断がなくちゃならぬと思うのです。おやりになりますか。宮澤さん来たってだめだから、今度は新しい外務大臣決まったから、おやりになりますか。
  205. 園田直

    ○園田国務大臣 ソ連を愛せられる小林議員から数々の御意見を賜ったわけでありますが、しかし、小林議員がおっしゃったとおり、日本国民の心中には胸つぶるる思いが満積をしているわけであります。しかし、この日本国民の胸つぶるるような思いを集めて、これを四島返還、平和条約を締結することによってこの霊を慰め、こういう方方にお慰めをしたいと考えておるわけであります。そういう決意で、勇気と確信と決断を持って努力することを申し上げます。
  206. 小林進

    小林(進)委員 ソ連問題は、まだ私は幾つも問題を持っているのでありますけれども、残念ながら時間がありませんので、きょうのところはこれを割愛いたしまして、次の問題に移ります。  日中平和友好条約締結の問題でありまするけれども、これはひとつ文章を読み上げます。   日中共同声明を基礎として着実に発展している中国との善隣関係を揺るぎないものにすることは、アジアにおける平和な国際環境をつくる上からも、特に大きな意味を持っておるものと考えます。日中平和友好条約に関しましては、できるだけ早期に締結を図ろうとする熱意において両国は一致しており、政府は双方にとって満足のいく形でその実現を目指し、一層の努力を払ってまいる所存でございます。 総理大臣、これはあなたのお言葉ですが、これはいつおやりになったか御記憶ありますか。御記憶にありませんければ、あわせていま一席また申し上げます。   日中両国の関係は、国交正常化後五年を経て、着実かつ順調に発展しております。わが国といたしましては、日中共同声明を誠実に遵守することが両国関係の基本であるとの認識に立って、両国間の友好関係をさらに強固で永続的なものとするよう努力してまいる所存であります。また、このことがアジアの平和と安定にとってきわめて重要であると考えるのであります。   このような観点に立って、日中平和友好条約に関しましては、双方にとって満足のいく形で、できるだけ早くこれが締結されるよう、真剣に努力してまいりましたが、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますので、さらに一段の努力を重ねる決意であります。 これはいつごろおやりになったかおわかりになりますか。どうぞお答えを願いたいと思います。
  207. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この間、施政方針演説でいたしたわけであります。
  208. 小林進

    小林(進)委員 おっしゃるとおりであります。前に読んだのは去年の第八十国会にあなたが施政方針で、五十二年の一月三十一日に本会議場でおっしゃった。もうあなたはお忘れになっているけれども。後のは、今度の本会議であなたが日中問題に対してお読みになったものです。どこに違いがありますか。私も一生懸命に見た。できるだけ早期に締結を図ろうとする熱意において両国は一致しており、双方の満足のいく形でその実現を期します。これが去年。ことしも、双方にとって満足のいく形でできるだけこれを速やかに締結するよう真剣に努力してまいります。同じだ。たった一言違うのは、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますというのが、これが去年とことし、たった一言違う文章だ。私どもは、あなたが日中交渉をいまおやりになるか、いまおやりになるか、それだけを気にしながら一年間も待たされた。この一年間、双方の満足で努力します。努力します。あなたは朝となく夕となく、あらゆる機会で論ぜられた。その結果は去年と同じ文章、機はここに熟したりの一言を加えただけで終わってしまった。これで一体、総理、あなたは本当に日中国交条約をやるのか。国民の前にその誠意を疑われても、あなたの方でそれに対して言いわけがありますか。あなたの誠実を本当に誠実と理解しない国民の側に非があるとあなたはおっしゃれますか。お答え願いたいと思います。
  209. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度、いまお話しのように、施政方針演説におきましては、条約交渉を進める機が熟した、こういうふうに申し上げているのですが、これは相当大きなことですよ。とにかく五年間、共同声明以来平和友好条約問題は未解決で来たわけです。その間、交渉が始められたりストップしたり、いろいろいきさつはありましたけれども、とにかくこの交渉は実らない。それが交渉再開の機が熟したというのですから、私はこれは相当のことだと思います。私はその文言の後につけ加えておる。なおさらに一段の努力をする、こういうことでございますが、誠実にそういう考え方でこの問題を処理したい、かように考えます。
  210. 小林進

    小林(進)委員 ともかく総理、できるだけ速やかに締結するように真剣に努力するというのは、去年の言葉ですよ。早期に締結する、真剣に努力をするというのと、ことしの機は熟した、これは一体どれだけの違いがあるのです。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 機が熟したから、またこのままで一年間これを全然突っ張ろうとするのか。去年の言葉をとるわけじゃないが、まさにあなたは真剣に早期に解決、努力すると言って、その一年間で一体何をおやりになったのですか。私どもは、残念ながらその一年間で、いまの政府のおやりになった日中交渉の実績というものを何も見ることができない。私の知っているのは、この一年間で、国連の総会があったときに鳩山前外相がニューヨークヘ行かれて、国連の場で中国の黄華外相と儀礼的に話し合いをされた。でも、そのときに日中国交の糸口も出るかというので私は念には念を入れて聞いた。何もやってない。これは儀礼的なあいさつです。それが一つあとは、中国の小川大使が佐藤君にかわった。大使の更迭をした。それだけであります。それ以外に一体、何の話をやっていますか。  私は北京に何回も行きますよ。私は佐藤大使にも会いました。彼の言質をここで述べようなどということは思いませんけれども、しかし、北京へ行っても東京へ来ても、対中国交渉に対しては何ら具体的な動きはありませんでした。あったとおっしゃるなら、うそだ。単なる言葉だけだ。早期に締結するように真剣に努力をする、言葉だけだ。機は熟した、カラスが鳴くがごとくさえずってだけいるけれども、何も実際の行動はない。あるのならば、具体的などんな動きがあったか。どんな小さな動きでもありましたか。あったらひとつお聞かせ願いたいと思います。総理、お聞かせ願いたいと思います。
  211. 園田直

    ○園田国務大臣 総理が発言されたとおりでありますが、まさに両国の環境は整備されつつあり、逐次熟した機は迫りつつあるわけでありますので、ここでどうやって何をやったかということば、この条約締結交渉を進める上にかえって障害になると思いますので、御勘弁を願いたいと思います。
  212. 小林進

    小林(進)委員 機は熟したとかそういう言葉を、国民は一年間聞かされてきたのですよ。私は、ここで政府にひとつ反省していただきたいことは、まだ、外交というものは秘密でやるべきものだという一つ考え方があるのじゃないかというふうに見ているのです。昔の宮廷外交ならいいですよ。天皇の外交ならそれでいいのです。いまは国民外交だ。大衆の基盤の上に立って、大衆とともに、だからさっきから私は繰り返している。大衆とともに外交をやらなければ、外交はやっても本物の外交じゃない。しかし、何回も総理大臣は去年一年間、やります。やります。機は熟しておりますの真剣でございますと言うけれども、それ以上のことは一つ国民に語らない。完全な秘密外交です。外交というものはかくなければならぬとおっしゃるなら、私は重大なる間違いだと思う。基本的な姿勢の間違いだと思う。けれども、相手国もあることでありまするから、何もオープンにしてすべてを国民の前に明らかにせよなどと、そういう無鉄砲なことを私は言おうというのではありません。けれども、基本的な姿勢としては、外交交渉の喜びも失敗も悲しみも国民に投げかけて、国民とともに歩むという姿勢が、どこかに出てこなくちゃいけない。何もないじゃないですか。おれに任してくれ、言わぬでくれ、なるべくさわらぬでくれ、そういうような姿勢は改めてもらわなくちゃいかぬ。大変な間違いであります。でありまするが、それでもまだ、国民の側は、一年間素直でいたのです。さわってくれるな、弱いこと言わぬでくれ、まとまりそうな話もまとまらないとおっしゃるから、さようでございますかとまだ信頼をしたから、信頼をしながらわれわれは黙っていた。しかし、この九月にはおやりになるのではないか、九月も、五年目の九月二十七日もつれなく過ぎていきました。今度は、十二月にはひとつ何とか手をお出しになってやるのじゃないか。その十二月も、風の便りとともに去ってしまった。今度はこの一月だ。せめてこの休会中の国会の再開に至るまでの間に何か中国へでも行くのじゃないか。その中に、それはまあ外務大臣の勇み足だかどうか知らぬけれども、一月の下旬にはおれは中国へ行くなんて出たもんで、ああこれはしめた、ようやく本物になったか、まことに国民は喜んだにもかかわらず、おまえ余分なことを言わぬでおけと総理にしかられたかどうか知りませんけれども、直ちにそれを取り消した。またもとの貝の中で、おれは貝だからと口をつぐんで物をしゃべらない。今度は三月じゃないかというと、もう三月という声は国民にはなくなっちゃった。ようやくだまされた、憶測をし期待しても何もこれはだめじゃないかということで、いまは国民の中には大きく失望がみなぎっております。  繰り返して言いますけれども、ソ連との国交回復に対しては、国民の中にはまだいろいろ意見がありまするしなんでありまするが、この対中国については、これほど国交を回復すべきであるというコンセンサスのできているものはいまありません。そういう国民的な大きな背景の中に、とうとう、あの因循な外務省までが、日中問題については国交に踏み切っている中に、外務大臣も勇んでいる、ひとり、ゴーのサインがないと彼が嘆いているがごとく、総理の腹一つだ。その腹はだれにもわからない。これが一体、外交のあるべき姿勢なのであろうか。ようやく、総理に対する失望と疑いが濃くなってきたのであります。  そこで、お伺いいたしますが、一体、総理、まだ今日――機は熟したなんてそんなことはもういいです。しかし、まだ外交にスタートできない、その障害がどこにあるのか。今度はひとつ正直に言ってください。障害がどこにあるか。
  213. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、条約交渉を始めるその上におきまして、別に大きな障害があるというふうには考えておりません。まあしかし、もう機が熟してきた、それだけにいま、私の言動というものは慎重であった方がよろしい、それが条約交渉がスムーズに行くゆえんである、そういうふうに考えるわけでありまして、いま、これから手順、段取り、これを決めるわけですが、これはもう日中両国、両方の気合いがびしゃっと合ったそういう瞬間、それが手順、段取りということになるのだろう、こういうふうに思います。
  214. 小林進

    小林(進)委員 これは園田さんにお伺いしますが、総理のおっしゃる段取り、手順というのは何のことですか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  215. 園田直

    ○園田国務大臣 交渉を再開するいろいろな手続、段取りその他でございます。
  216. 小林進

    小林(進)委員 いや、交渉するためのその段取りというのはいかなることだとあなたに聞いているのですよ。
  217. 園田直

    ○園田国務大臣 一年前といまと状況が違うことは、小林議員もよく御了承だと思います。もうしばらくだまされていただきたいと思います。
  218. 小林進

    小林(進)委員 私は禅問答しているのじゃないのですよ。外交交渉をするための手続だとか段取りというのは具体的にどういう行動を言うのですかと聞いているのですから、教えてくださいよ。それは言われないのですか。教えてください。
  219. 園田直

    ○園田国務大臣 相手のあることでありますから一こちらと相手とそういうことについて話し合うことであります。その内容については申し上げられません。
  220. 小林進

    小林(進)委員 そこで、いま私どもの間で言われている、国民をこれほど一年間、いまやります。いまやりますよと言ってだまし、失望させてきた、その原因がどこにあるかということをいま国民は皆分析している。大体四つぐらいある。申し上げますよ。一つは、総理の周辺におる特殊な者の圧力に総理が決意をしかねている。不決断のそういうのは、周辺の言葉にやられている。これが一つですよ。第二番目は、中国の国内事情による。第三番目は、台湾、韓国の状況による。第四番目は、やや理由は薄らいでまいりましたけれども、この平和条約の条文の内容、共同声明の第七項目の覇権条項に関することがまだ両者の間に完全な一致点を見出し得ないという、大体四つの条項を挙げている。  その第一の、総理の周辺におけるというのは、いわゆる、総理の周辺には、名前を挙げればなんでありますけれども、灘尾さんだとか船中さんだとか岸さんだとかいう、こういう方々が慎重論、反中国主張を並べてやっている。あるいは矢次一夫さんだとか。これなんだ。総理は、ちょっと総理批判をやりますけれども、あなたは総理大臣になられるときに、三カ月ばかりで脱兎のごとく決断と勇気でおやりになった。三木内閣の二年間でぬるま湯に入ったような気持ちでいた国民は、今度は福田さんは決断と勇気、ぱっぱとやるわい。ところが、三カ月たち五カ月たち六カ月たつと、だんだんその迫力がなくなってしまいまして、一年間のうちに総理、非常にお変わりになられましたよ、あなたは。大変変わられた。だから、最近のジャーナリストも、不決断の福田総理という言葉がどの新聞にも出てきた。日中はどうなった、あるいは円高はどうなった、デノミはどうなった、みんな不決断でばらばらと残っていくじゃないか。あの勇気と決断、かつては池田総理に抵抗し、かつては三木内閣引きおろしに断固と闘った、あの勇気ある面影が、一年もたたないうちに変わってしまった。これを言うと、やはり総理というのは奥座敷なんで、奥座敷に入ってしまうともう大衆の空気がだんだんわからなくなって、側近のそういう人たちの意向に、総理気づかれると否とにかかわらず、あぐらをかかれてくる。これが恐ろしいのです。最高権力を持った者の恐ろしさはここにあるのだ。自分では気がつかないけれども、だんだん大衆から離れていってしまう。そうすると、あなたの周辺に、大衆の前に言えないようなそういう理屈をささやくような人の声がやはり強くなってくるのですよ。先ほども言うように、いま国民の側には、日中平和友好条約を阻止しようとか、やめなさいとか、慎重になさいという声は一つもないんだけれども、そういう国民の声を無視して、あなたの前にしわしわと小さな声、それは国民の前に出せない声なんだ。その人たちの声にいつの間にやら総理が毒せられているというのが、最近の物の見方なんです。  その毒せられた言い分の一つは何だ。第一番目に言った中国の国内事情だ。総理お急ぎになりなさんな、まだ華国鋒体制はできておりません、人民大会が済んでみなくちゃわかりません、あるいは鄧小平さんがまたかわるかもしれません、革命が起きるかもしれません、四人組がまた出てくるかもしれませんから、お急ぎになることはありません、こういう声がことさらにあなたの耳に入っているのではないかということが一つの理由だ。  いま一つの台湾、韓国の状況というのはそのとおりです。わが日本は蒋介石総統に大変世話になったのです。総統が亡くなられてことしは三年だ。そうして、五月にはその跡継ぎの蒋経国氏が総統の地位につかれ、盛大なお祝いをやる。やはりお祝いを見て、蒋介石総統の三周忌のその霊前に総理の花束をささげて、彼の高恩にお報いした後でなければ日中平和条約は結ぶべきでない、こういう声が総理の耳に届いてくる、それではないか。それはみんな国民にも大衆にも縁もゆかりもない話だけれども、そういうことのために総理の正鵠な判断が毒せられているのではないかというのが世論です。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 あなた、私をうらめしそうな顔をして見たってだめだ、私が言っているのじゃない、世論です。  それから第四番目は、これは覇権条項でありまして、覇権条項なんて、こんなものは第七項目の先頭に書いてあるんだから、これは「第三国に対するものではない。」と書いてあるんだから、いまさらこの条文を真ん中に持っていこうと後ろに持っていこうと、こんなことは問題の中心ではないのでありますから、もはや問題は覇権条項ではない。もっともそこに宮澤さんがいて、宮澤四原則などと言って、とんでもないことを言い出して、日中平和条約を半年も逆転さしたという方もおりますけれども、そんな宮澤四条件なんというものは、あれは宮澤私見であると言ってすぱっとはねたときの、あの福田総理の勇ましさ、園田当時官房長官の勇ましさは、いまでも面影にあるけれども、だんだんどうも後退してしまって、いまは見る影もないのでありますけれども、こういう問題も、これは世論ですから、この世論にこたえて、いま少し明確な、なぜこれを延ばしていかなければならぬのか、その明確な理由をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  221. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 小林さんがいまるる御見解を述べられましたが、大体これは当たっておりませんね。私は大変なゆがんだ見解である、このように思います。  いま条約交渉がおくれておる、こういうゆえんのものは、条約交渉を始めましたら、これがなるべく順調に進むようにするには、慎重に手順、段取りを考えなければいかぬ、こういうのでおくれておるのでありまして、いまお話しのような事情ではないということははっきり申し上げます。
  222. 小林進

    小林(進)委員 私は、総理は決してうそをおっしゃっているとは思いませんが、そのお言葉はもう旧年何回も聞いたことです。これは鄧小平氏が、そんなこと、やろうと思えば一秒でできると言ったときに、あなたもあのときも言われた。条約となれば一秒じゃできない、それはやはりいまおっしゃったのと同じように、慎重にやらなくちやならぬ、語尾の訂正もしなくちゃいかぬと言われたが、その言葉を繰り返されたにすぎない。聞いているわれわれには新味も何もありません。  そこで、今度は外務大臣に質問しますけれども、あなたは一月二十六日、自民党の外交調査会に出席されまして、日中平和条約の交渉再開に当たっては、私自身が訪中し、日本側の基本姿勢と主張を明確にすると発言をされておる。これは一体いつ再開になる。その、あなたが訪中されるというのは一体いつなんだ。交渉再開というのはいつなんだ。国会もあるのでありますから、ちゃんと準備もしていられると私は思う、思いつきで言われたのじゃないと思いますから。再開に当たっては私自身が訪中して、そうしてちゃんと姿勢と主張を明確にするとおっしゃるのだから、もはや、この国会を抜きに行かれるなら、その予定日数ができていると思いますから、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  223. 園田直

    ○園田国務大臣 私が外交部会で発言いたしましたのは少し違うわけでありまして、質問がありましたから、それに答えて、私は当初、交渉再開になれば私が行くこともなかろうと考えておったが、その後考え方が変わってきて、場合によっては訪中すべきであると考えておる、こう申し上げたわけでありまして、いつ行くかは交渉再開後の状況によって判断をして、国会中であれば皆さん方に御相談をして参る所存でございます。
  224. 小林進

    小林(進)委員 これも大変重要なことでありますから、ひとつ確認をしておきたいと思いますが、いつ再開になるかわからない、しかし交渉が再開になれば、あなたは初めは行くつもりはなかったけれども、考えが変わって、再開になれば行くこともある。それは、再開の当初ですか、もはや煮詰まって調印をするときですか、そのあなたの行く場合もあるというその場合は、いずれの機会でしょうか。
  225. 園田直

    ○園田国務大臣 劈頭に行くか、あるいは交渉が始められて政治的解決をする必要があるときに行くか、あるいは順調にいって最後に行くか、それはその後の状態によって決まると存じます。
  226. 小林進

    小林(進)委員 まあ、外務大臣がおいでになることだけはこれで明確になりましたが、それは再開の当初に行かれるか、もう行くことはいまの答弁で明らかですから、どうぞお行きください、おいでください。いまからでも結構です。おいでください。われわれ野党、と言ってはなんでありますが、社会党は、あなたがこの国民の要望している日中平和友好条約交渉再開のために中国へいらっしゃるというならば、われわれは双手を挙げてお見送りいたします。賛成いたします。私も羽田の飛行場まで見送りに行きますから、どうぞ、その点は早急にやっていただきたい。  国民はもうしびれを切らしておる。本当にしびれを切らしておる。いやしくも、人、伝うるところによれば、私はこんなことは言いたくないが、いま一つ抜けたのでありますけれども、全部当たっていないとおっしゃったから、私は最後に総理に言いますけれども、総理は、どうもことしの十二月の総裁選挙を視点に置いて、この日中友好条約を、党内派閥掌握のため、次期総裁選挙に勝利を得るための最も重大なてことしてこれを活用される御意向なのではないか。そのために寂として動かず、この日中友好問題を延ばされておるのではないか。どうもこの民族重大な問題を、党内のこういう派閥次元、総裁選挙の問題に活用されては、これは国民ははなはだ迷惑ぞ、こういう声があります。これは総理のとうとい真情を何か低めに見たようで失礼でありますけれども、そうでなければないとひとつお答えを願いたいと思います。
  227. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その御見解もまた、大変ゆがんだ見方のように思います。私はそんなけちなことは考えておりませんです。
  228. 小林進

    小林(進)委員 私は、この日中平和友好条約に対するいままでの質問に対しては、私ども一つも満足を得る回答を得なかったことを非常に遺憾に思っておりますけれども、事はやはり微妙な段階にありますから、これ以上、むしろ言ってはなんであります。最後でありまするけれども、どうかひとつ気持ちを新たにし決意を新たにして、それこそあなたのおっしゃる、早く両国で花火を打ち上げ合って喜ぶような平和友好条約を促進されることを、心から私はお祈りいたします。どうぞひとつ、大いにやっていただきたいと思います。  時間もありませんからだんだん言っていきますけれども、次は韓国、朝鮮問題について私は質問をいたしたいと思います。  これはもう駆け足で言うしかありませんが、この暮れの国会予算委員会で決定をされまして、十二月の十六、七日でございましたが、いまニューヨークにおる韓国の元中央情報部長金炯旭氏を日本国会に招請をしてひとつ証言を得たいというこの問題は、その後どういう経過になりましたか。これは予算委員長にお尋ねをいたしたいと思います。
  229. 中野四郎

    中野委員長 ただいま小林君のお尋ねの件についてお答えをいたします。  私の承知しているところでは、派遣議員からは議長並びに前予算委員長に口頭で報告をいたしたとのことであります。また、本日の理事会において伺ったのでありますが、その要旨は、予算委員会理事会の申し合わせのとおり、金炯旭氏に会った上、本委員会が同氏を証人として招致すべく決定した場合出頭の意思があるか否かについて尋ねたところ、金炯旭氏からは、検討して改めて返事をする旨の回答があったそうであります。  以上であります。
  230. 小林進

    小林(進)委員 いまの理事会のお話で、私もいわば状況はわかってまいりましたが、金炯旭氏がまだ回答を留保されているということにはいろいろの場合が考えられるのでありますが、それは時間がありませんから省略をいたしまして、仮に金炯旭氏が日本の衆議院の予算委員会に出頭することを了承された、承諾をされた場合には、これは立法府予算委員会の長として、委員長はこれをお迎えになる決意があるかどうか、お伺いをいたしておきたいのであります。
  231. 中野四郎

    中野委員長 各党の理事と十分御協議をしまして、適当なる処置をするつもりでおります。
  232. 小林進

    小林(進)委員 各党の理事と御相談いただくことは非常に結構でありますが、私も仮の話でまことに失礼でありますけれども、出頭するというような承諾が来たときに、うちの理事会の話がまとまらぬからというようなことになりますと、なかなか仕上げが非常にまずい結果になりまするので、この点をあえてお伺いをしておきます。  いま一つの問題は、これは総理でありますが、この前も、そういうことになれば警備その他行政府としてもできるだけのことはしたいというお言葉がございましたが、その点もここでいま一言確認をしておきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  233. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国会の国政調査権の行使につきましては、政府はできる限りの御協力を申し上げます。
  234. 小林進

    小林(進)委員 それでは、この問題は打ち切りまして、次は、第二番目の金大中氏の拉致事件、実に古い話でございますけれども、この問題について私どもは、この一月の初めに実に思わざる情報を明らかにして、びっくりいたしたのでありますが、それによると、金大中氏が拉致されたのは、いわゆる九段のホテル・グランドパレスから、いままでの、大阪経由で船に乗せられて瀬戸内海から釜山に上陸したというのを真っ向から否定をいたしまして、これは日本海側、新潟または富山港から高速艇を使って蔚山に上陸した疑いがある、この線に従って、この方面に捜査の重点を置いているということを、これは警視庁特捜本部が発表をされたという大きな記事が載せられておるのでございますが、もしこれが事実とすれば、いままでわれわれがここで論じてまいりましたことも、金大中氏がみずから供述をいたしたことも、これは全部うそになるわけでありまするが、一体こういうことを特捜部は捜査をされたのかどうか、どういう意味でこういう発表をされたのか、お伺いをいたしておきたいのであります。
  235. 三井脩

    ○三井政府委員 御指摘の報道は一月三日、読売新聞の報道だと思いますが、警視庁のこの事件の特捜本部におきましてはそのような発表をいたしたことはございませんので、独自の取材によって報道されたものと思うわけでございます。  なお、内容について申しますと、私たちは今日までの捜査におきまして、金大中氏の拉致の経路はかねて御報告もし、また言われておりますように瀬戸内海経路、こういうふうに考えております。  ここで言われておるような点も、事件発生当初からこういうことの可能性については捜査をいたしました。余り長くなって恐縮でありますから簡単に申しますが、金大中氏が言っておられますのは、いわゆる金大中氏の供述として韓国政府から私たちが正式にもらっておる捜査の内容でございます。それからまた、新聞報道等で報道されましたように、テレビ等で彼が語った内容がございます。その中に、この報道に言われておるような、北海道のような気がしたとかということもありますが、他の部分では、徳島というような声も聞いたしというようなことで、あの北海道云々と言っておるのは、寒さの程度が北海道みたいに寒かったということでありまして、コースとしては徳島というようなことで瀬戸内海コース、それからまた五、六時間高速道路らしいものを走って大津、京都というような話を聞いたということですが、当時五、六時間走って新潟、富山へ行く高速道路はありませんし、また、その辺で高速道路以外の一一般道路でも、京都、大津というような分かれ道を捜査しましたけれども、ございません。それから一また、長野で車を見たというような情報もあったやに書かれておりますが、捜査上そういう情報があったということはつかんでおらないわけでございます。なお、一番の問題は、あの事件当時日本から韓国へ向かって出た船、これを調べました。約四十隻あるわけで、新潟、富山方面から出た船も二隻わかっておりますけれども、いずれもこれは事件との関係はないということは捜査上明らかでありますので、そういう捜査のプロセスで、来たコースがあるのではないかということを捜査上つぶしていくといいますか、そういう着眼があったことは事実でございますけれども、今日到達した捜査の結論といたしましては、私たちはそういう説をとっておらないというのが現状でございます。
  236. 小林進

    小林(進)委員 懇切なお話がございましたが、ここにもありますように、これは八段抜きの大記事です。新聞の名前は言わなくてもいいが、いま三井局長が言われましたから言いますが、これはなるほど読売新聞の記事であります。しかし、これは読売とおっしゃいましたが、読売だけではありません。共同も同じ記事を流しております。間違っておりましたらお許しをいただきたいのでありますが、だからニュースはこの一社だけではないのであります。なぜ一体これが出たか、私は私なりにその出どころも調べております。だから、この中に言われている特捜本部というのは決して私はゆえなしとはしない。しかし、いまここであなたと論争していると、これは議論が尽きません。またほかにも影響することでありますから私は終わりますが、あなたの答弁には了承できない。いま一回調べてください、いま一回。このソースの出どころ、あなたも特捜本部と言われているのですから、私どもは全く関知しないとか、富山ではない、石川でない、新潟でない、大津でない、気候の寒さは北海道なんて、とうていだめだ。どこから一体この記事は、この情報は出たかということを私は聞いているのでありますけれども、全然関知しないというあなたの答弁は私は了承できませんから、いま一回ひとつ、この問題に対する正確な回答をお願いいたします。それでも自信があるとおっしゃいますか。それは言わない方がいいです。言わないで、ひとつ改めていま一度私のところへ、ニュースソースを調べた上でお届けを願いたいと思います。よろしゅうございますな。
  237. 三井脩

    ○三井政府委員 当時、私たちもその報道を見て、われわれの捜査の内容と違いますので、警視庁特捜部についてその辺調査いたしました。特捜本部が発表したということはございません。そうすると、特捜本部はだれかしゃべったのか、こういうことになるわけでございますが、その点についても調査いたしましたが、だれが話したかという点は今日に至るも明らかになっておりません。
  238. 小林進

    小林(進)委員 あなたが公式に発表したことでないということだけは認めますけれども、だれが発表したか、いままで調べたけれどもそれがわからぬということは、私は了承はできません。これはできないです。それだけで、あなた、この幕を引こうと思ったところで、それは済ませるわけにはまいりません。よろしゅうございますか。そこで私は先ほどから言っております。いま一度調べてみて、そして正確な情報を持ってきていただきたい。それをやりますかどうか、それを聞いている。
  239. 三井脩

    ○三井政府委員 先生の御質問、御指摘をまつまでもなく当時調べましたけれども、わかりませんでしたので、また調べてみますけれども、果たしてわかるかどうか、その辺ははっきりいたしかねるということでございます。
  240. 小林進

    小林(進)委員 私もここで速記をつけて確信を持って言うのですから、いままで調べたからもう調べぬということでは了承できませんけれども、私の発言を尊重してこれからまた調べ直すというなら、その点において了承いたしましょう。そういうふうに私は理解いたしまして、次へ移ります。  次は、最近の金大中氏の情報ですが、これは皆さん方御承知のとおり、いま韓国のソウルの病院へ入院をされておりますが、日本政府といたしましては、この金大中氏に何かサウンドと言ってはなんでありますけれども、何か刺を通ずるとか、話をするとか、見舞いに行くとか、そういうことをおやりになったかどうか、私はお伺いをいたしておきたいのであります。外務大臣、いかがでございますか。
  241. 園田直

    ○園田国務大臣 金大中氏は、まだ第三者の面会を許されてないと承っております。
  242. 小林進

    小林(進)委員 私は、日本政府は非常に薄情だと思います。何といっても、日本の国の法律のもとに平穏に暮らしている者が、この日本の法治国家の中から拉致せられて、これほどの苦しみを受けている。あなた方はその人に対していままで何をしました。いいも悪いも、後宮君が韓国の大使をやっておるときに一回、彼に面会に行った。それは見舞いでも何でもない、事情聴取に行った。あとは何とかという外務省の参事官が、これは一回だ。これも国会の要請に基づいて様子を見ながら行った。それだけだ。いやしくも野党の党首でもあり、大統領選挙も争った、これは韓国におけるやはりしっかりした人だ。その人が、いまは面会を禁じられようと、病院で監獄と同じような生活をしていようと、病人は病人なんだ。前後を通じてたったこれだけしかやらないという、それが一体日本政府としてのあり方ですか。あなた方の姿勢自体が間違っていないのですか、これは。一体それでいいのですか。政治として、政府として、そんな姿勢でいいのか悪いのか。いいのならいいと言ってくださいよ。
  243. 園田直

    ○園田国務大臣 面会が許され、しかるべき時期が来たら検討したいと思います。
  244. 小林進

    小林(進)委員 面会だけではありませんよ。これほど迷惑をかけているのですから、あらゆる手を通じて、せめて慰問するとか、慰めるとか、あいさつをするとか、それが人の道じゃないですか。総理大臣も、今度は施政方針演説で、大分、人道問題やら人の道をお説きになりましたけれども、まず隗より始めよです。政府みずからがこういうことからひとつ姿勢を示してください。何をおやりになっておる。何事ですか、それは。この国会が終わるまでにひとつ改めて、何をやったか、いま一回お聞きすることにいたしましょう。これは留保いたしておきますから。  次に、金相根元駐米韓国大使館参事官、それから李在鉉元駐米韓国海外公報館長、これは全部アメリカの下院のあるいはフリー討論会あるいは倫理委員会に出られて、米韓癒着の問題もあわせて日本の問題もずいぶんここで証言をし、発言をされている。これに対して日本政府は一体どういう受け取り方をしているのか、その資料を全部入手されておるのか、入手されたらわれわれの方にも当然資料を回してもらってしかるべきだと思うが、これについて外務省、いかがですか。
  245. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御質問の金相根、李在鉄、この両氏の証言につきましては、現在のところは市販の非公式の速記録は入手しております。町で売っている非公式のものはございますが、これは大体六百ページ前後の膨大なものでございますので、その中の関係部分についてでも、参考にしていただくために速やかに御提出いたしたい、こういうふうに準備しておるところでございます。
  246. 小林進

    小林(進)委員 どうも対韓国の問題になると熱意がない。そんなのは早く精力的に翻訳して、われわれの調査のために資料を提供するのが行政府としてあたりまえです。おやりにならなければだめだ。  それから次に、時間もないから急いでいきますけれども、一体、金在権元駐日公使から――これは総理大臣みずからも、事情聴取したいためにあらゆる手を打つとおっしゃった。まだ、金在権氏から事情聴取をやったとか、あるいは日本に来るとか、あるいはアメリカ以外の聴取に応じてもよろしいとかということに対する結果を何も聞いていない。これがどうなったのかが一つ。  それからいま一つは、金東雲氏だ。この事情聴取の件だ。これなんかも宮澤さんが外務大臣のときなんだ。金東雲が日本国会に出頭するなり、日本に来て事情聴取に応じてくれというこの問題については、ずいぶん予算委員会でもめた。そのときに、あそこにいる荒舩さん――ちょっとこっち見なさい。あなた、そのときは予算委員長をやっていられて、あなたみずからも発言して、それは当然だ、それは外務大臣として、この予算委員会の要請を受けて、金東雲氏がわれわれの聴取に応ずることに対して外務省は最善の努力をすべきであると、あなたみずからも要求されている。記憶にあるでしょう、あなた、頭がいいのですから。(荒舩国務大臣「あります」と呼ぶ)そうでしょう。そういう要請をされて、いま証言をされた。それに対していままで一体何をやりました。宮澤さんにだまされたというのはこれなんです。そのときには宮澤さんも「国会の御審議を尊重し、ただいまの委員長の御発言」――委員長というのは荒舩さんです。「委員長の御発言の御趣旨を体し、責任を持って委員長の御要望が実現するようお約束をいたします。」今日まで何をしてくれました。何も出てこないじゃありませんか。これが一体、国会を尊重した、立法府に対する行政府のあり方ですか。どうしました。いまの問題、答えてください。金在権、金東雲。
  247. 中江要介

    ○中江政府委員 まず、金在権元駐日公使からの事情聴取の問題でございますが、御指摘のように、政府といたしましては、この国会で事情聴取を行うことが必要だということで行動を起こしましてから、アメリカ国務省を通じて金在権に対する接触を試みまして、一度、二度反応がございましたけれども、実現するに至らなかったのは、本人がアメリカでは事情聴取に応じたくないということでございましたので、ではアメリカ以外のどこでなら、あるいはどういう条件なら応じるのかということについて、重ねて国務省を通じて照会しております。ところが、なかなか返事が参りませんために、外交チャンネルを通じましてすでに四回くらい催促に催促を重ねておりましたところ、最近に国務省の方から、いままでは手紙を送るとかそういうことで連絡をしておりましたが、今度は直接接触してみることにするからいましばらく待ってもらいたいということでございましたので、私どもはその結果を待つという状況でございます。  第二点の金東雲書記官の点は、当時の宮澤前外務大臣が、政府として、外務省として努力をいたしますと言われて、そのままほうってあるわけではございませんので、努力をされました結果は、昭和五十一年一月三十一日の予算委員会において御報告されております。  その内容は、この問題につきましては、予算委員会における審議の経過を詳細に韓国側に伝えて、要請の趣旨について詳しく話をした、これに対して韓国側は、それをどのように受け取るべきかはすぐには決めかねる、こう言っておりまして、その後数日いたしまして、韓国側は、その問題については韓国側としては取り合い得ないことなのでお答えする限りではない、こういう返事でありました。これに対しまして当方より、もう一度考え直していただけないか、どうしても取り合い得ないということなのかということを確と念を押しましたところ、先方はこの問題についてはさらにまた話すことはない、こういうことであるという趣旨のことを御報告されました、というのが経緯でございます。
  248. 小林進

    小林(進)委員 私は、いまのこの問題をお聞きして、実に情けなくなるんですよ。いま日本もアメリカも、韓国に対しては同一の問題に遭遇している。米韓癒着の問題、日韓癒着の問題、内容は同じです。それに対して一体アメリカはどうですか、あなた方の尊敬するアメリカは。この米韓癒着の解明のために行政は、司法局長ですか、司法部長ですか、次官ですか、韓国へやって、何回も交渉し交渉し、あらゆる朴政権の反対も排除しながら、ついに朴東宣をああやっていま共同で事情聴取をいたしております。それをせなければ起訴もする。起訴文の内容も示した。あの熱意とあの努力。同じ行政省じゃないですか。こっちの方は何だ。アメリカの国務省で、手紙一本で、ああ能事終わりだ。われわれの目から見ますれば、国会に対する言いわけをつくっているとしか考えられない。  しかも、一体アメリカの立法府はどうですか。この米韓癒着の問題について二つの特別委員会を持っているじゃないですか。下院の倫理委員会あるいは外交小委員会、二つの委員会が精力的にこの米韓癒着の問題、朴東宣の問題の真実を追求するために、委員会を挙げてやっているじゃないですか。それに対して一体議会はどうですか。アメリカの上院も下院もこの米韓癒着の問題、朴東宣がアメリカの議会に証人として出頭しなければ、公述に応じなければ、あのアメリカの韓国に対する軍事援助、十八億ドルだか八億ドルだかその軍事援助も打ち切ってしまうぞというその決議をしようではないか一まだ、決議をしたとは聞いておりません。決議をする寸前まで行った。行政といい、司法といい、立法府といい、国民といい、国を挙げて米韓癒着のために闘っているじゃないか。  日本は何ですか。だれが一体動いているのか。何も一つも動かない。むしろ、はたから見れば、日韓癒着を隠そう隠そうとしているとしか思えないくらいやらない。これで日本が清潔な国なのですよ、これで国民の負託に沿え得ると、一体皆さん方はお考えになりますか。本当に尊敬するアメリカなら、せめてこの問題についてもアメリカの十分の一ぐらいの熱意を示してくださいよ。そして国民の要望にこたえてくださいよ。新聞だって見てください。日韓癒着の問題だけはあくまでも徹底的にやれというのが世論です。それはあたりまえです。やらなくちゃいけない。私はいままでの答弁では断じて了承することはできません。しかも、けさの新聞を見るというと、この朴東宣氏も行政府のこの尋問を終わると、とうとうアメリカの国会に出て証人に応ずるということを承諾したということが出ておりました。今度はアメリカの議会に問題が移されている。これは国民の負託を受けた民主的な議会としてはあたりまえのやり方なんだ。なぜ日本でそれができないのですか。私は了承できません。  時間がないから残念ながら詰めていけませんが、国税庁いますかっこの地下鉄二百五十万ドルの税法上の処置については、実際を調査した上において適確な処置をとりますと約束をしているのだから、もはや、真実を追求したし、適確な処置をとったと思う。  あわせて言いますけれども、あのロッキードに関する五億円の問題も、国税庁はしばしばここで、適当な課税措置をとりますと言ったんだ。だが、その後見ていると、何か異議の申し立てが出て問題がふわっと消えちまったというような話になっていますけれども、あわせてひとつこれは御答弁願いたいと思います。時間がないですから急いでやってください。
  249. 磯邊律男

    磯邊政府委員 まず日韓の問題で、ソウルの地下鉄に関する商社の経理の問題でありますが、これは昨年の十二月の十七日の当委員会におきます参考人に対する質問で、参考人がお答えしたとおりでございます。そのうちのいわゆる二億二千二百万円の手数料の問題、これにつきましては、それぞれの会社の経理内容に従いまして私たちはこれを認容しております。それから同時に、そのときに言われましたいわゆる二百五十万ドルの問題でありますけれども、これは現在調査中でありまして、(小林(進)委員「まだ調査中か」と呼ぶ)さようであります。  それから、その次のロッキードの五億円の課税の問題でありますが、これは田中角榮氏に対する課税かと存じますけれども、これは御承知のように昨年のたしか三月の十二日でございますか、更正処分いたしまして、それに対して本人の方から異議の申し立てがございました。それから現在、われわれの方としては三カ月経過した後で審査請求することができる旨の教示をやっております。そういった段階で、一方におきます刑事裁判の推移を見ながらこちらの方で処理するということで、現在ペンディングになっております。
  250. 小林進

    小林(進)委員 私は、地下鉄二百五十万ドルのこの実態調査、今日なお調査中という昨年度の答弁と同じなのはまことに遺憾といたします。どうも国税庁は強い者には弱い、これは世評でありまするけれども。何もそれは逡巡しているところはないですよ。こういうものは早くやって、コミッションかあるいは寄付金かあるいは交際費か明らかにして、それを課税すべきなら課税しなければならない。不景気で金に困っている。こんなに四十兆円も五十兆円もこっちは借金を背負わされて、国民は困っているんだ。その借金政策で国を運営しなければいかぬときに、取るべき金をなぜ取らないんだ。怠けている。了承できません、それは。この予算が終わる前にこれはいま一回またお尋ねしますから、それまでにひとつきちっと報告をしていただきたいと思います。  この韓国問題はいろいろありますけれども、これは警察庁にもちょっとお伺いしますが、一体、金大中氏の特捜本部はまだ存在しているのかどうか。存在しているならば、これは四年も五年もたつが、一つくらい成果を上げたんだろう。何ぼ聞いたところでゼロだゼロということはないだろう、特捜本部があって。それが一つ。  それからいま一つは、柳春国、これが、あなた方も事情によっては聴取をしてもよろしいと言っているんだが、一体その後聴取されたかどうか、その問題が一つ。  それから、横浜の副領事の劉永福、これは例のグランドパレスから自分の、劉永福の自動車で運んだことをあなた方は知っているんだ。その自動車で運んだことを知りながら、その自動車を押さえることもサボタージュしてしまったんだし、その劉永福が運んでいったこともあなた方はサボタージュして調べていないんだが、彼はその後、ロサンゼルスにいる柳春国に会うためにソウルを行ったり来たりして、そのついでに日本に寄ったという情報があるんだけれども、もし日本に寄ったとするならば、当然捜査当局はこれを押さえているだろうし、当然私は調べるべきだと思うし、事情聴取もしたんだと思うが、この問題がどうなっているか、以上三つの点をお聞かせいただきたい。
  251. 三井脩

    ○三井政府委員 金大中氏拉致事件の警視庁特捜本部は、ただいま体制は縮小して約二十名でありますが、捜査を継続いたしております。  その成果ということのお話でございますが、最大のものは金東雲を被疑者として割り出したということであろうと思います。  なお、お尋ねの劉永福の車は、現在なお韓国大使館員の外交ナンバーによる公用車といいますか、外交ナンバーのついておる車として他の館員が利用しておる、使っておるというように承知しております。  それから、劉永福自身でありますが、彼は事件後、四十八年九月にわが国を離日して以後、今日に至るもわが国に来ておらないというように承知をいたしておりますし、また、柳春国につきましては、本件事件との関連性、容疑性については捜査上把握するに至っておらないというのが現状でございます。
  252. 小林進

    小林(進)委員 あなた、この前の予算委員会で、柳春国も必要によっては聴取することも考えているとうまいことをおっしゃったけれども、何もやっていない。もうお聞きのとおり、対韓国問題、金大中事件については何一つ成果も上がっていなければ、効果も上がっていない。ただ国会における答弁だけにあなた方は終始していられる。しかし、そんなことでこの日本の韓国問題がおさまると一体お考えになっているのでございますか。そのように考えたら、大変物の考え方が甘いということを申し上げておきます。私どもはまだ幾つかの情報も資料も一持っておりますけれども、これは時間がありませんから、もうこれでこの問題は残念ながら留保にいたしておきます。  用意した問題全部やるわけにいきません。最後の一つの問題を申し上げますが、これは日本の戦力の問題だ、軍縮の問題。これはわが党の石橋前書記長が補正予算に投げて、それから本予算の中でもこれは私はほんの火口でありまして、これはまたずっと続けてやりますが、いずれにいたしましてもこの戦力の基準というものについて、参議院のわが党の野田君の質問にお答えになった真田法制局長官の答弁が、非常に問題を大きくしているわけであります。時間がありませんから、私はこれを申し上げます。  戦力の問題に対しては、政府が一九五二年の十一月二十五日、内閣法制局見解として政府の統一見解というものを発表された。私は、あなたが参議院の予算委員会で答弁せられたのも、この統一見解に基づいてお出しになったんじゃないかと思う。この統一見解によると、戦力とは、人的、物的に組織された総合力である。したがって、兵器そのものは戦力の構成要素であるが、戦力そのものではない。その次なんです。戦力とは、その国の置かれた時間的、空間的環境で変わるもので具体的に判断しなければならぬ。したがって、戦力に至らざる自衛力も時間的に環境的に変わってくる。これが政府の見解だと私は思うが、いま一度念を押しておきます。これはいかがですか。総理にお答えいただけば一番いいんでありますが。
  253. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいまお読みになりました戦力の定義については、法制局といたしましては、これは公表したということは私は聞いておりません。聞いておりませんが、憲法第九条第二項に言う戦力というのは、結局日本が独立国として有する固有の自衛権、これは憲法が否定しているわけではございませんので、その固有の自衛権の裏づけとしての実力部隊、つまり自衛のために必要な最小限度の自衛力、それが憲法が保持を許している実力組織でございまして、その範囲を超える実力、それが憲法第九条第二項で保持を禁止している戦力である、これが私たちの考えでございます。
  254. 小林進

    小林(進)委員 わかりました。  そこで、いまあなたのおっしゃるところは、憲法第九条によって持てない戦力とは、自衛のため必要最小限度以上というのが政府の――そうでございますね。最小限度以上、そうですね。そして、これに対して一月三十日の参議院の予算委員会で、これはこっちの質問なんです。端的に言えば、仮想敵国の装備によって憲法解釈が変わるのか、こういう質問をしたことに対して真田法制局長官は、外国の軍備状況によって自衛力の限度は変わると答えていらっしゃるな。いいですか。そして具体的にはF15、次期主力戦闘機も戦力ではない、こう言って答えている。これは間違いありませんか。
  255. 真田秀夫

    ○真田政府委員 参議院の予算委員会における私の答弁に対する釈明でございますから、実は参議院の予算委員会で行う方がふさわしいと思いますけれども、お尋ねでございますので、この機会に釈明させていただきますが、結局、その時代、その時点時点における諸般の情勢、軍事科学の進歩の状況、環境等によってわが国の持てる自衛権の範囲は変わってしかるべきだということ、その趣旨のことは申し上げましたが、しかし、先ほどの定義、つまり自衛のために必要な最小限度という制限を突き破ってまで変わってよろしいのだというようなことは毛頭申し上げておりません。つまり九条第二項に言う戦力の定義そのものについての解釈はちっとも変えておらないつもりでございます。
  256. 小林進

    小林(進)委員 それでわかった。兵器の進歩の状況によって自衛権と自衛力は変わってくると言うんだ。これが問題なんだ。だから戦力とは、政府の解釈によれば総合力であるから、大砲も戦車も、それから飛行機も、これはみんな兵器であって、しかし、これは戦力の構成要素ではあるが戦力ではない。これはこのままでいいんだ。そして、いまの近代的な相手方の装備、いまの装備に基づいて、いま私が言った次期主力戦闘機のF15も対潜哨戒機のP3Cも戦力ではない。これは相手方の近代的な装備によって違ってくるんだから、ない。あなたはこう言っている。  もう時間がないのだから、P3CもF15もこれは戦力でないと言うあなたのことだ、本当に戦力でないのか、戦力であるのか、これだけ言ってくださればいいのです。
  257. 真田秀夫

    ○真田政府委員 参議院の予算委員会で私が申しましたのは、戦力の政府の見解、定義は、先ほど申したとおりそのことを申しました。そして、従来その定義をさらに説明するために、個々の兵器について言えば、他国に脅威を与えるとか攻撃的とか、いろいろ表現はそのときどきによって違った言葉を用いていることはあるけれども、要するにそれは自衛のために必要な最小限度を超えるかどうかがポイントである、そこでF15がいまのその自衛のために必要な最小限度を超える、つまり憲法九条二項で保持を禁止されている戦力に当たるかどうかということは、それは私たちは実は軍事科学の専門的知識がございませんので、では従来のF4はよかったが今度はどうであるとかいうようなことになりますと、これは私よりもむしろ、専門家である防衛庁の方にお聞き取りを願いたいと思います。私の方はそういう定義を申し上げまして、つまり原理原則を申して、それに該当するかどうかを判断する能力は実は私たちは持ち合わせておりませんので、それは専門家の方からお聞き取りを願いたいと思います。
  258. 小林進

    小林(進)委員 もう時間が参りましたから、私は残念ながら言いませんが、この問題は、参議院においては、ともかく次期主力戦闘機のF15も、対潜哨戒機P3Cも戦力ではない、時代の兵器の進歩に従って、これは戦力でない、兵器ではあるけれども戦力ではないと答えているのであります。しかし、いまのお話は原理原則を言ったんだというのでありますけれども、これは実は重大問題なんです。この政府の解釈でいけば、今日もはや兵器の中で戦力と言い得るものは、足の長い戦略爆撃機と核兵器だけが憲法第九条で禁ずる戦力であって、それ以外の兵器は全部戦力でないという勘定になる。同時に、今度はまた、相手方の兵器の進歩に従って戦力の定義は変わってくるんだから、いまは核兵器も戦力であるが、また相手側の国の兵器が進歩していけば、いつの日か日本においても、核兵器も足の長い戦略爆撃機もこれは戦力でない、兵器だ、こう言って備えつけられるという危険がこの回答の中にもぐっているのであります。きょうのところは、F15とP3Cだけは戦力でない、兵器であって戦力ではない。今日わが日本段階では足の長い戦略爆撃機と核兵器だけが戦力だから、これは持ってはいけない、こう言っているが、相手側が変われば、あしたからまた核兵器も戦力にあらずして兵器なりという論が出てくる、大変恐ろしい問題であります。  そこで私は、いまの法制局長官の回答では満足するわけにはいきません。F15、P3C、今日の世界的な兵器の上昇、進歩の中で、これが本当に戦力なのか戦力でないのか、これはひとつ改めて文書で提供していただきたい、よろしゅうございますか。文書でこの問題は明確にしていただきたいと思います。  委員長、よろしゅうございますか、文書をもって回答していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
  259. 中野四郎

    中野委員長 伊藤防衛局長、文書で出ますか。出せるなら出せるということを言ってくれればいいのです。出せますね。――文書で出すようにいたします。
  260. 小林進

    小林(進)委員 それでは、たくさんの質問が残りましたが、残念ながら時間が参りましたから、これで失礼をいたします。
  261. 中野四郎

    中野委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  次回は明二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時六分散会      ――――◇―――――