○足立
委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、今回提案された
予算案及びその
背景になっております
政府の
経済政策等全般につきまして御質問をいたしますが、私は、特に
国民がぜひ
政府の真意を聞きたいと思っておるであろう問題を拾って質問をいたします。
何せ間口が広うございますので、どうしてもこれは総花的といいますか、散発的といいますか、ということになりますので、この点あらかじめ御了承を願っておきたいと思います。
個別の問題に入ります前に、
円高問題等につきまして、まず
総理大臣の御所信を伺っておきたいと思う点がございます。
それは実は去年の十月中ごろでございましたが、私たまたま新幹線の中で読むものがございませんで、備えつけのニューズウイークを手にしたわけです。字は細こうございますし、私も横文字は得意じゃございませんで、めったにそういうことはないのでありますが、たまたま虫が知らしたのか、ニューズウイークをばらばらっとめくっておりますと、とんでもない記事が目に入ったわけです。
その見出しは、クラッキング・ダウン・オンジャパンという記事であります。しかもその記事は、ストラウスさんの談話を記事にまとめたものらしくて、三ページぐらいございました。私の語学力では、辞書も持っておりませんし、とても全般について正確に解読することは不可能でございましたが、大筋はわかりました。要するに、
日本の洪水のような
輸出、工業製品の
輸出の攻勢に遭ってアメリカの
経済は大混乱に陥っている。そして企業の倒産がふえ、失業者もふえておる。アメリカの
経済は破綻に瀕しておる。
日本の一九七七年における
黒字は恐らく百三十億ドルぐらいになると推定される。アメリカは逆にその約倍、二百五十億ドル以上の赤字が出る見込みであるどうした無謀な
日本の
輸出攻勢に対しては、アメリカは断固として戦わなければならぬ。
経済戦争という、ウォーという言葉がたくさん出ておりまして、私も、余りにどぎつい表現がしてありますので、実はびっくりしたわけでございます。
その後、訪米しました議員団が持ち帰ったアメリカの新聞等を見ましても、たとえばロサンゼルスあたりの新聞では、新聞社にこんなに大きな活字が一体あったんだろうかと思うような大きな活字で、パールハーバーを忘れるな、と大きな見出しが出ているわけですね。内容は、大体いま申し上げたニューズウイークのストラウスさんの記事と似たようなもので、
日本のこの野望を打ち砕かなければならぬというような非常に戦闘的な、まるで
日本が貿易でやみ討ちでも食らわしているようなことが書いてあるわけでございます。
正直申し上げまして、私どもも、この二、三年来、対米貿易は
日本がきわめて好調であるということは知っておりますし、また、カラーテレビや鉄の問題その他、いろいろとクレームのついておったことも承知はしておりますが、まあ
日本人全般は、私を含めて――一部の外務省の方や商社の方は別としても、こうしたアメリカのどぎつい空気といいますか、
日本に対するこれほどの反感が巻き起こっているということは、私ども夢にも感じません。われわれの方には実は罪悪感はないわけでございますが、アメリカの言い分は、まさに
日本は犯罪人だと言わんばかりの言い方でございます。ちょうど私どもは、やくざに何か因縁でもつけられたような感じを初めは持っておったわけであります。
正直言って、外務省の出先あたりがこういう空気を察知したならば、もう少し正確に情報を事前に伝えてくれるべきじゃなかったかと思いますが、まあ外務省があっても外交がないなんと悪口を言う人は、正直言って、実は
自民党の中にもおります。ですが、そのことは別として、そのころから実は異常な
円高が始まったわけですね。言うならば、これは仕掛け人はアメリカだと私は思うのです。つまり
日本の
輸出の矛先を鈍らせるためには、何としてもここで一撃を食らわさなければならぬ。円が上がればそれだけ
輸出がしにくくなるということで、しかもアメリカが一歩こういうことに踏み出しますと、世界じゆうにアメリカがたれ流したドルはどっと
日本に――これは中には投機の目的もありましょう。中には、
日本の商社あたりで、円が上がるなら早く円にかえておかなければいかぬという動きもあったと思います。いろいろな要素が重なって、
日本銀行が逆立ちしてもこれは買い支えはできないということで、あれよあれよという間に二十何%、きのうあたりが二百四十一円四十銭ですか、いまのところ小康を得ているといいながら、一時は二百三十円台まで上がる、こういうことでございまして、どうもこの動きを見ていると、カーターさんには申しわけないが、カーター大統領のドルのたれ流しという
経済政策の失敗を、
日本が犯罪人だということで、
日本を悪者にすることによって国内の目をそちらへ向けさせた
一つの政略的なものがあるのじゃないかという感じさえも私は持つわけでございます。しかも今度の
円高攻勢、これは全くやみ討ち的なものでございまして、
日本の
輸出が真珠湾攻撃だというのならば、これはまさしくアメリカが
日本に原爆を落としたと同じようなやり方ではないかというような感じさえも私は持っているわけでございます。
そこで、その後、
福田内閣の改造により、外交の、ベテランである
牛場さんを対外
経済大臣に任命されました。
牛場さんは席の暖まる暇もなく、恐らくゆうべお帰りになって、きょうは眠そうな顔をしていらっしゃいますが、この
予算委員会に御出席になっている。お気の毒に思います。しかし、八面六暦の活躍をされていることは私は敬意を表するわけでありまして、
福田改造内閣のヒットであると思っていますが、まあ、申し上げれば、若干手おくれではなかったかと思うくらいでございます。
それはそれとして、ともかくこうなってまいりますと、
日本の貿易は非常な困難にぶつかってくるわけでございまして、
円高不況という問題が表面に出、後ほど伺いますが、
政府もこれからいろいろと手を打たれるわけでございます。
この間ストラウスさんが見えて、十三日の日に一応の日米
経済協定ができました。いまさっき申し上げたように、高いは高いなりに円も小康を得ていると申し上げていいと思いますが、しかし、これがまたアメリカさんのお気に召さぬと、いつまた抜き打ち的な原爆を落とされないとも限らぬということになると、商売は恐らく上がったりになるんじゃないか。いわゆる売り手市場の品物はそれでも出るでしょう。しかし、この売り手市場の品物で二百四十円で楽に
輸出ができるというのは、恐らく五本の指を屈するぐらいの業種しかないと私は思っているわけでありまして、大半はいわゆる買い手市場でございますから、円の相場がどうなるか
見通しがつかないということになりますと、これはもう必要以上にたたかれる心配があるわけでありまして、商売ができなくなる。一時しのぎは赤字覚悟でもできないことはありませんが、これが長期になったら、いま
日本はドルがたまり過ぎて困っているなんていい気持ちになっていますが、大変な結果になるんじゃないかというふうに思うわけでございます。
そこで、実は
国民の間に、また、正直申し上げて
自民党の有力者の中にもそういう意見がございますが、この際思い切って固定相場制に戻ったらどうだ、こういう意見があります。一応もっともでございますが……(「相手があるよ」と呼ぶ者あり)いま、やじが出たように、相手もございます。それで、
日本の都合のいいように固定相場制を
日本がもし堅持したとするならば、もう必ず諸
外国からしっぺ返しを受けることは火を見るよりも明らかであります。その場合には恐らく輸入制限を相当厳しく食う、場合によれば輸入禁止を食う、あるいは禁止に等しいような課徴金制度でも設けられれば、もう貿易以外に食っていく道のない
日本としては、全く手も足も出ません。
総理は碁をお打ちになりますが、碁打ちはよく手も足も出なくなるとやかんのタコと言います。タコをやかんの中に押し込めてふたをすると、さすがのタコも手も足も出しようがないということで、うまいことを言ったものでありますが、
日本の貿易がやかんのタコになっては大変であります。それこそ取り返しがつかないということになるわけでございますので、どうもそう粗っぽい
考えで固定相場制に戻るといっても、簡単なことではないと思うのであります。
そこで
総理にお伺いしたいのは、昨今、ローザ構想というのが表面に出てまいっております。何か大蔵省の松川財務官がそのためにアメリカに行っているとかいう話も聞きますが、やはり
総理のおはこであります協調と連帯ですか、これで基軸通貨を持っている国々、言うならばアメリカ、西ドイツ、
日本、ドルとマルクと円が協調をして、無理のない程度の幅で安定を図るという
見通しがつけば、私はやはり貿易もまた息を吹き返してくるのじゃないかというふうに思いますし、安心して商売もできる。これが
見通しがつきませんと、幾ら予算を三十四兆円組んで、さあ公共事業中心で
内需を喚起すると言ってみても、なかなか景気は出てこないのじゃないか。この二、三年これだけ
輸出貿易が盛んで、
黒字がたまっていながら、なおかつ国内では不況にあえぐというようなことは、いままでの
経済常識では
考えられないことですね。ですから、この上貿易が詰まったならば、それこそ青菜に塩というか、どうしようもないということになるのじゃないかというふうに実は思っているわけでございまして、
総理は、いま申し上げたローザ構想と言われている、まあこれはターゲットゾーンとかなんとかいうので一定の幅、目標を決めて、国際通貨の基軸になるドルとマルクと円を相互に安定させようという政策のようでございますが、どんなふうにお
考えですか。私は、これはぜひひとつ腹を決めてかかっていただかないと大変なことになる、こう思って御質問申し上げるわけであります。