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1978-01-28 第84回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年一月二十八日(土曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    川崎 秀二君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       白浜 仁吉君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       根本龍太郎君    藤田 義光君       古井 喜實君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       渡辺 栄一君    井上 普方君       石野 久男君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    岡田 春夫君       川俣健二郎君    小林  進君       兒玉 末男君    藤田 高敏君       横路 孝弘君    鍛冶  清君       坂井 弘一君   平石磨作太郎君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    河村  勝君       荒木  宏君    寺前  巖君       大原 一三君    小林 正巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         国土庁長官官房         会計課長    佐藤 毅三君         国土庁土地局長 山岡 一男君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁次長 児玉 清隆君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省船員局長 高橋 英雄君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省行政局長 近藤 隆之君         自治省財政局長 山本  悟君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第四局長  阿部 一夫君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 一月二十八日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     渡辺 栄一君   松野 頼三君     谷川 寛三君   浅井 美幸君    平石磨作太郎君   矢野 絢也君     鍛冶  清君   瀬崎 博義君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     松野 頼三君   渡辺 栄一君     海部 俊樹君   鍛冶  清君     矢野 絢也君  平石磨作太郎君     浅井 美幸君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三件を一括して議題とし、質疑を行います。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 私は、きょうは主として経済問題をお聞きしたいと思いますが、まず初めに、原子炉衛星の問題についてお伺いしたいと思っております。  濃縮ウラン235を燃料としております原子炉を積みましたソ連軍事衛星コスモス眼カナダ北西部に墜落をする、こういう事故は、多くの問題を改めて提起をいたしたわけでございます。米ソ両国は、原子炉燃料輸出規制あるいは核拡散防止を言いながら、一方で両国は、核兵器を初め原子炉を自由に宇宙に打ち上げ、宇宙軍事利用宇宙での軍拡競争が行われている、こういう現実であります。今回の事件も大変な衝撃を世界じゅうに与えたわけでございますが、米ソのこういうやり方に対しまして、総理はどういう認識を持っておられるか、まずお伺いしたいと思うのです。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 実はあの報道に接しましてびっくりしたわけでありますが、問題は、こういうことがまた再び起こるというようなことになりますと、これは人類の福祉という高い見地から見ましても非常に大変なことだろう、こういうふうに思いますので、この機会に災いを転じて幸いとするといいますか、この機会をとらえまして、再びこういうことが起こらないように、国際社会全体が本当に真剣な努力、協力をする、こういうことにいたすべきである、これが私の基本的な考えでございます。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 国際社会全体が努力をする、それは当然のことだと思うのです。  私はもう少しお聞きしていきたいと思うのですが、この墜落した衛星につきましては、当初、大気圏突入に際しては完全に燃え尽きるように設計されている、これはソ連タス通信等が伝えておったようでございますが、その後の調査におきましては、きわめて危険な量の放射能があるという疑いも出てきておるわけでございます。現在、米ソ原子炉衛星が、伝えられているところでは、まだソ連におきましては十二個ですか、飛んでおる、アメリカにも一個ある。しかし、この実態は正確な情報がない限りまだわからぬわけでございますが、そういう点、万一の場合を考えた場合、非常に危険な状態が想像されるわけでございます。現在、地球の周りにおきましては、約四千五百個の衛星あるいは機能を失った衛星残骸物が回っておると言われておるわけでございますが、今後大規模事故が再発しないとは言い切れないわけでございます。今回のこの事故につきまして、西ドイツの宇宙観測研究所ハインツ・カミンスキー所長は、今回の事故の結果を過小評価するのは非常に危険であると警告しておりますし、カナダにおきましてはきわめて危険な放射能異常値がすでに検出されておる、こういうような状態でございます。  いま総理は、国際社会全体が努力すべきであるということをおっしゃっておるわけでありますが、まず日本として、日本は御承知のように世界でただ一つの被爆国ですね、そういう点につきましては国民全体も非常に厳しい見方をしておると思います。この国際社会全体が努力をする中で、わが日本こそが一番リーダーシップをとらなければいけないのじゃないか、このように思うわけです。今後いろいろ国際会議の日程が考えられるわけですが、たとえば国連宇宙空間平和利用委員会が来月の十二日に迫っておるわけですね。あるいは五月二十三日からニューヨーク国連本部で初めての軍縮特別総会が開かれることにもなっておると聞いておりますが、こういう国際会議の場を利用して、わが日本としてどの国よりも具体的な提案を大胆に勇気を持ってするべきであると思うのです。その点、総理のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  6. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  お説ごもっとものことでございまして、早速国連軍縮総会がございますが、これは他国の意向もございますが、この総会の開催の趣旨にかんがみて、先ほど仰せられた国連宇宙空間平和利用委員会等の方が適当かとも思われますので、すでに数カ国がここでひとつ意見を出して、提案をして、規制しようではないか、危険千万である、こういう声も出ておるようでありますから、日本はこういう国々と連絡をして、この平和利用委員会か、あるいはどちらかの国連場所においてこういうことを提案する準備をすでに開始いたしております。  なお、カナダの方には、今後詳細な情報を提供してくれるように要請をしてあり、これの了承を受けているようであります。カナダの方の被害は、最初に軍の方で発表した被害参謀総長がその後訂正をいたしまして、これは計測器の数字の誤りであったという発表をしておるようでありますが、真相はまだわからぬところであります。  なお、当の事故を起こしたソ連に対しては、本日、外務省からソ連に対して、このような事件を起こしながらわが国に全く通報がなかったことはまことに遺憾千万であるという趣旨のことと、今後これに対する完全なる安全、防止をやられたいということ、なおまた、今度の原因その他については詳細な情報を提供せられたいという申し入れをいたしました。  なお、今度は国内で問題になりますのは、この宇宙空間規制のための条約がございますが、その条約の中で日本がいま入っておりますのは宇宙条約だけでございます。宇宙救助返還協定宇宙損害賠償条約宇宙物体登録条約、これは宇宙物体の方は余り関係ありませんけれども、このような条約当事国として批准を願うことも必要でございます。国内法の措置でおくれておりますが、これも早急にお願いをして万全を期する所存でございます。
  7. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本件の処置につきましてのわが国の基本的な考え方、これは全くお話のとおりだと思うのです。わが国は核の問題、これにつきましては世界で本当にユニークな立場にあるわけでありまして、その立場を踏まえまして、ただいま外務大臣から申し上げたようないろいろな角度におきまして積極的な役割りを演じてまいりたい、かように考えます。
  8. 近江巳記夫

    近江委員 前向きに総理のお考えをお述べになったと思うのです。  それで外務大臣からは、来月十三日に迫っております国連宇宙空間平和利用委員会等において具体的な提案をしたいというお話があったわけですね。これはひとつ、原子炉のいわゆる衛星積載禁止等の、このくらいの強い大胆な提案をしていただきたいと思うのです。それについてはどうお考えであるかということと、それから、先ほど申し上げましたように、五月二十三日からのニューヨークにおきますいわゆる国連本部での軍縮特別総会、これは、こういう事件もありまして世界じゅうが非常に注目している、この中で総理みずからが行かれて、そこにおいて本当に勇気ある発言をなさるということは、私はきわめて重大な意味があろうかと思うのです。そういう点で、ぜひこれには出席なさるべきだと思うのです。この点はひとつ総理からお伺いしたいと思います。
  9. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  先ほどの御意見のとおりに、国連場所イニシアチブをとって、大胆にそれぞれの国と提案するつもりでございます。軍縮総会の方になるか平和利用委員会の方になるかは、これは他の国々との意向も一致しなければならぬところでありますから、その後検討した上で御報告をしたいと考えております。  軍縮特別総会総理が御出席になるかどうかはただいま検討しているところでありますけれども、よその国の総理大臣または大統領がどのように出席してくるのか、こういう点も考えなければなりませんので、総理の御意向はぜひこの場を利用して有効な発言をしたいというお考えはありますが、出席についてはいまなお検討中でございます。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国連総会の問題につきましては、貴重な御意見としてよく承っておきたいと思います。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 総理は、まだはっきり行くということはおっしゃらなかったわけでございますが、しかし、きわめて積極的な姿勢を示されたわけですね。外務大臣はこの軍縮特別総会には間違いなく行かれるわけですね。ここで大胆な提案をなさいますね。
  12. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 今回のこの件を踏まえましても、本当にびっくりするようなことが次々と起こってきておるわけでございますが、どうかひとつ、わが国としましては、特にこの軍縮の問題、また核の問題につきましては、今後勇気を持って、重ねてでございますけれども、イニシアチブをとって行動していただきたい、このことを強く要望いたしておきます。  時間の関係で次に移りたいと思います。  次に私は、これは緊急を要する問題でございますのでお聞きしたいと思いますが、問題になっております住宅公団値上げの問題でございます。この問題につきましては、建設委員会等でも先般質疑が行われたわけでございます。本委員会におきましても、同僚委員の質問に対しまして櫻内建設大臣は、参議院の方で委員会審議をしたい。当初伝えられるところでは、政府としては今月末ぐらいに決定するのじゃないか、そういうことも一部流れたわけでございますが、参議院委員会を待ってというような御発言もあったわけですが、これは期日的には、もしも参議院委員会が終わって、そしてそれで決めるというならば、これはただ何日かを延ばしたということにすぎないわけですね。  それで、今回のこの公団住宅値上げというものは、非常にいろいろな陳情等皆さん方の方にも来ておると思いますし、それなりの理解をなさっておると思うのですが、私は、余りにも無謀なやり方だ、このように思うのです。今回の引き上げというものは、三十六万三千戸を対象として平均五千三百円、三七%の値上げ申請ということになっておるわけでございますが、大体、公団自体経営姿勢というもの、これは、総理も御承知かと思いますが、余りにもひど過ぎるわけですね。空き家戸数にいたしましても、五十二年の十二月末で三万九千九戸、約四万戸あるわけですね。そのための収入減だけで六十六億円。使用不能地が二十二地区で千五百八十九ヘクタール、取得費用が九百七十二億円、支払い金利年七十二億円。公団長期借入金が、五十一年度末ですよ、長期借入金の残高だけで四兆三千二百億円ですね。支払い金利が年間二千七百二十億円、こういうような状態になっておるわけでございます。しかも、それだけの苦しい状態の中にあって、政府としては出資金昭和四十年から打ち切っている。ただ、四十八年に辛うじて約十億ほど入れているだけです。利子補給にいたしましても五十二年度においてはゼロですね。こういう今日の地価暴騰、そういう中で出資金利子補給も断っておる。独立採算でやりなさい。民間資金の導入である。利子が膨大になってくる。そうなってきますと、計算上からいきますと非常に高い家賃ということになってくるわけです。しかも狭い、あるいは遠い、いろいろなこういう悪条件が重なっていると思うのですが、約四万戸の空き家があるわけですね。  こういうようなずさんな経営をほうっておいて、そうして格差是正という美名のもとに、ただ値上げだけすればいいんだ、こういうやり方は、私は全く住民無視であり国民無視の姿だと思うのです。むしろ、そういうことをおっしゃるなら、政府としては、こういう空き家に対してはこのようにいたします。また膨大なこういう借入金問題等についても国として、たとえばこういう土地についてはこういう処分をしますとか、あるいは出資金の問題あるいは利子補給問題等においてもこのようにしていく、経営改善についてこのようにやっていきます。だから皆さん方理解もいただきたいというなら話はわかるのです。しかも公団といわゆる住民側との話し合いということも十分に行われていない、こういう中でこれだけの大きな値上げをしようとしているわけです。いまこれだけ不景気な中で、今年の春闘におきましても非常に低いベースアップしか恐らく出ないのじゃないか、こういうように言われておるわけです。非常に国民生活は厳しいわけですよ。そういう中でこういう引き上げをするということは、非常に私は無謀なやり方だと思うのです。個人消費自体もどうなるかということで、いま減税の問題であるとかいろいろなことが国会でも問題になっているわけでしょう。そういう中でこういう引き上げをやるということは、これはまた民間家賃にも波及していくのです。これについては私は十分考えていただきたいと思うのです。  そこで、公団としては七月一日から実施をしたい、そういう計画をお立てになっているのですね。これは七月一日から実施するということを前提としていった場合、この間櫻内さんは、若干の日にちは慎重に検討して延ばしたいという意向を漏らされておりますが、七月一日をゴールとして見た場合、大なり小なり変わらぬわけですよ。そういう点におきまして、この七月一日の実施ということは、総理、いまの時期において私はまずいと思うのです。一応、その七月一日という日にちは白紙になさるべきだと思うのです。そして、私は何点かのそういう問題を提起いたしましたけれども、そういう問題について具体的な対策をお立てになって、そしてよく住民の納得を得るように、それから私はお考えになるべきだと思うのです。いかがでございますか。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 住宅公団につきましていろいろ問題があることはよく承知しております。しかしまだ、今回のこの公団家賃値上げにつきましては、建設大臣の方から私に対しまして判断は求められておりません。いずれにいたしましても、建設大臣はこの問題は慎重に扱う、こうこの国会でも申しておるわけでありまするから、慎重に結論を出すようにしていただきたい、このように考えています。  ただ、私の感じだけを申し上げますと、いろいろ公団には問題があります。それは御承知のとおりでありますが、しかし、その公団合理的運営という問題と、いま問題になっております公団家賃値上げ問題、これは、いま問題にされておりますのは、古い公団住宅家賃と新しい公団住宅家賃と余りにも格差が大き過ぎる、これを是正しておこう、こういうような性格の話でありまして、まあどっちかと言いますれば、その合理化の諸問題が全部解決してからでなければこの不均衡是正の問題は手がつかぬ、こういう性格のものではないのではないでしょうか、こんな感じがいたします。
  15. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま住宅公団の現在の経営の状況について、未入居住宅あるいは長期保有地のことなどで御批判をちょうだいいたしました。これは私は率直に申し上げて、この批判批判として受け、改善をしていかなければならない問題だと思います。これらの問題につきましては、現在よく言われる、高い、狭い、遠い、そういう御批判にもつながる問題でございまするので、政府としては極力、関連公共事業の促進とか立地の改善とか住宅規模の拡大とか、また住宅価格の引き下げに努めて、国民の需要に応じてまいりたいと思っておる次第でございます。  家賃問題につきましては、先生御承知のように、公団発足以来二十数年にわたって据え置かれておるわけでございます。また、これは賃貸契約を結んでおりますが、その契約面におきまして、ときに値上げが必要であればするということもあり、かてて加えまして、ただいま総理からお答えを申し上げたような非常に不均衡な問題もありますので、住宅宅地審議会に諮問をいたしまして答申もちょうだいしておるようなわけでございます。一方におきまして、お住まいの皆さん方の実情を見まするに、この二十数年の間に給与の改善、その中には住宅手当とかあるいは家族手当であるとか通勤手当であるとか、関連の諸手当引き上げも行われておるのが通常のことであります。そこで、今回一月六日に値上げ申請がございますが、いま申し上げたことをも勘案しながら、さらには国会皆さんの御意見も徴しながら最後の結論を得たい、こう思っておる次第でございます。  以上でございます。
  16. 近江巳記夫

    近江委員 いままでこの引き上げの話も何回も出てまいりましたが、そのたびに政府は慎重にこられたわけですよ。それを何もこういう不景気なさなか、国民生活が非常に苦しい、経済の状態から見ましても個人消費がどうなるかというような、そういう中に水を浴びせるようなこういうやり方というのは、運営の点からいきましても非常にまずいし、政府としては、値上げをしたかった、だけれどもいままでしんぼうしてこられた、だから何もいまそんなに拙速で早く決定する必要はないわけですよ。これは引き上げをしたって百七十億でしょう。今年度予算から、総理、一度考えていただいたらわかると思うのです。こういうような大きな問題を放置したまま、そうしていまの時期にこういう値上げを決定していく、これでは国民の納得を得ることはできませんですよ。しかも、この家賃の問題についても、これはもう御承知のように原価主義で来ているわけですね。その時点ではこれだけの家賃でいきますと約束しているわけなんです。それをいろいろな経済情勢の変動もあったからということで、格差ということをいまおっしゃっているわけでございますけれども、それには、住民皆さんを納得さすためには、いま私が何点か挙げましたこういう問題に対して、政府として積極的な、具体的な計画を示して、このように私たちも努力をしますから……。そうでなければこれは納得させることはできませんですよ。これは余りにも一方的ですよ。  だから、私が先ほど申し上げましたように、七月一日から実施をする、これはぜひ白紙にしてもらいたいのです。そして政府としては慎重に考えていただきたいと思うのです。この問題は建設大臣のところで認可なさるようでございますが、これはもう公共料金と一緒でしょう。これは当然、経済閣僚の宮澤さん初め、また総理がもちろん中心になっていただいて、本当に慎重に考えてもらわなければならない問題だと思うのです。櫻内さんも非常に慎重に考えられる方だと思いますけれども、そういう点、これは全閣僚挙げて検討してもらわなければならない問題なんです。そんな、ゴールを七月一日に設定するとしておいて、いま建設省で決めるのを若干延ばすと言ったって心理状態は一緒じゃないですか。だからまず、七月一日からやるということ、これは一応取りやめますということをはっきりなさるべきですよ。そして白紙にして政府は真剣に御検討なさるべきだと思うのです。いかがでございましょうか、総理
  17. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは御理解をちょうだいしたいのでありますが、住宅公団として、従来空き家家賃につきましても一次、二次と改定をする、また家賃値上げにつきましても提案がありましたが、それがうまくいかなかった。そこにちょうどいま御指摘のような、客観情勢は悪いのでありまするが、しかも一方において住宅公団経営についても厳しい批判がある折からでありまするから、澤田総裁もいろいろ考えたあげく、御批判にはこたえる、しかし家賃についても考えさしてもらいたい、こういうことで申請をされる。申請をされるときに、いつからやる、これは当然触れなければならない問題でありまするから、私は申請書は申請書としてこれを受けて、そして先ほどから申し上げましたように皆さんの御意見をちょうだいする、またすでに審議会の方にも御意見を徴しておるという状況にある次第でございます。  それからなお、政府としては、五十三年度予算をごらんいただきますとおわかりのように、出資金百億円を新たにいたしまするし、それから建設補助金を百六十八億円、それから利子補給金は三百五十九億円を計上しておるわけであります。また、従来の利子補給が少ないということでございますが、補正の際に三百五十八億円五十二年度利子補給をするというように、おっしゃるとおりに私どものでき得る限りの努力もしつつ、また住宅公団の自主的な努力というものを見ながら、今回の値上げ申請にどう対応するかという時点にある次第でございます。
  18. 近江巳記夫

    近江委員 総理、この問題はきわめて民間家賃にも波及していく問題でございますし、これはひとつ慎重に検討していただきたいと思うのです。  先ほどのニュアンス、建設大臣お話を聞いておりましても、いろいろ慎重に検討はするけれども、私は、どうも既定どおりのレールを走るような気がするわけです。これはひとつ総理から、よく建設大臣お話しいただきまして、本当に慎重に検討していただいて、何とか政府として本当に、だれが見てもやはりこれだけ政府努力しているのか、それなら協力せざるを得ないな、むしろそういう気持ちになるような案をまずお立てになって、その上で改めてまたひとつ検討していただきたいと思うのです。慎重に考えていただきたいと思います。  もう一度総理から御決意をお伺いしたいと思います。
  19. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、住宅公団から家賃値上げ申請を受けておる、こういう段階でありまして、政府がまだ結論を出しているわけじゃないのです。したがいまして、この最終的な結論をどういうふうにするかにつきましては、当然慎重な配慮をしなければならぬ、このように考えております。
  20. 近江巳記夫

    近江委員 もう一遍、手続のことで確認しておきますが、公団から建設大臣のところへ申請書が出ているわけですね。そうですね。そこで、建設大臣は、建設大臣一人でそれは認可するわけですか。政府の経済閣僚会議にかけるとか、それはどういう手続になるのですか。
  21. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 経済企画庁との協議は必要だと思っております。
  22. 近江巳記夫

    近江委員 いま櫻内大臣はおっしゃったわけでございますが、経企庁長官は、特に国民生活を守るための調整機関として非常に重要な役目を果たしておられるわけですが、今日の経済情勢等にかんがみ、公団の内部要因のいろいろな問題点をお考えになって、これは慎重に検討しなければならない問題だと思うのです。経企庁長官のお考えをひとつお聞きしたいと思うのです。
  23. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 建設大臣もよくよく諸般の情勢をお考えいただいておるように存じますけれども、なお、よく検討を私どもとしてもさせていただきます。
  24. 近江巳記夫

    近江委員 この問題につきましては、総理、何回も重ねて申し上げますが、本当にひとつ国民立場に立って、よくお考えいただきたい。重ねて要望しておきます。     〔委員長退席、山下(元)委員長代理着席〕  次に、私は経済問題に移りたいと思います。  今回の補正予算というものは、五十三年度予算と連動した十五カ月予算であるということをおっしゃっているわけでございますが、本委員会におきましても論議されておるわけですが、来年度七%の成長ができるかできないかという問題、こういう問題も、この基礎となる五十二年度のいわゆる経済成長、これが本当に政府がおっしゃったとおりいくのかどうかという点におきまして、私は非常に疑問を持つわけでございます。昭和五十二年度の経済成長というものは、十月の第一次補正予算、当時改定されました経済見通しをさらに改定されまして、この成長率を実質六・七から五・三、このように引き下げておられるわけでございます。  そこで、私はいろいろと検討をしてみたわけでございますが、昨年十月の政府見通しと今回の改定政府見通しを比較いたしますと、海外余剰で八千五百億円の増加に対しまして、他の項目におきましては、いずれも十月見通しよりも減少いたしております。このことは、輸出依存型の経済運営と欧米から批判を受けておるわけでございますが、そういう実態を反映した見通しの改定じゃないか、私はこのように思うわけですが、この新しく設定されました国民総生産の各項目の目標というものが、果たしてこれで適切なものであるのかどうか、これにつきましてお伺いしたいと思います。  まず経企庁長官、それから総理
  25. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五十二年度のいわゆる実績見込みでございますが、御指摘のように、前回の改定試算に比べましてほとんどの国内的な項目が減少いたしておりますことは、御指摘のとおりでございます。  そこで、私どもとしましては、最近の情勢、いわゆる在庫調整等がかなり進みつつあるやに見える。また、住宅も、夏ごろ悪うございましたが、年末にかけて着工がかなりふえております。加えまして、ただいま御審議をいただいております十五カ月予算の問題もございますので、まずこの五・三%程度の成長は、昭和五十二年度可能ではないかという考えはただいま持っております。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 宮澤さん、民間設備につきまして、こういう名目三%の伸びという問題でございますが、これは総理も演説で触れておられるわけですが、今年は生産設備の過剰という現況から、設備投資に大きな役割りは期待できないというような認識をおっしゃっているわけですね。実際、民間企業設備というものは、実質ベースで前年度を下回るおそれがあるのじゃないか、こういうことをよく実感としていろいろな人からも聞くわけでございますが、実際にこういう数値でいくのですか。どのように見ておられるのですか、経企庁長官
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに民間でそう言われる方が多うございまして、近江委員の言われますようなことを私も、いわゆる経団連等々の経済関係の方から伺います。これは主としてやはり製造業に関係の方にはそういう感じが多うございまして、私どもも名目二%のプラスを見ておりますけれども、製造業では、御指摘のように、マイナスを見ております。マイナス六ぐらいになるのではなかろうか。非製造業の方で六、七のプラスがあることは確かであろうと思いますので、通計いたしますと三%程度のものを見ておりますけれども、いわゆる工業と申しますか製造業では、御指摘のように、名目でもマイナスになるのではないかと考えております。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 政府支出が、非常に驚くべきことには八千億減になっておるわけですね。昭和五十二年度の当初の政府見通しが十月に改定された際には、十八兆二千五百億円が十八兆八千億円に増加したわけですが、今回は十八兆円、これは当初見通しからも減少しているわけですね。これは他の委員もちょっと触れられたように思いますが、私は、この点、あの時点で非常に答弁がはっきりしなかったように思うのです。これはなぜ減ったのですか。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは昨日も御指摘のあったところでございますけれども、幾つかの要因がございまして、大きな要因は地方の関係でございますが、その地方の関係のうちで、実は昭和五十一年度の地方公共団体の資本支出の実績が見通しよりもかなり少のうございまして、そこからまいりますところの本年五十二年度の見通し分の過剰が一つございました。それから、それと別に、いわゆる資金等の関係での未達と申しますか、実現不可能になった部分がございます。それから、中央におきまして、これも昨日申し上げましたが、住宅公団、国鉄等々の計画を下回った投資関係、そういう要因もございまして、これは実は分析をしておるのでございますけれども、非常に複雑な要素がございまして、一つ一つを明確にただいまの段階でお示しをすることがまだできないでおるのでございますけれども、主たる要因はただいま申し上げたようなことでございます。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 非常にそういういろいろな要因が出てきておりますね。  そこで、お聞きしますが、経企庁長官は、この第三・四半期の経済成長率はどのくらい見ておられるのですか。第一、第二はもう出ておりますね。十月から十二月までの分はまだ出ておりませんね。しかし、政府の指針として大体そのくらいはほぼ推測できるのじゃないかと思うのです。どのくらい見ておられるのですか。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 第三・四半期と第四・四半期を、計数が出ておりませんので、きちんと分けて申し上げるわけにただいままいらないわけでございますけれども、実質で申しましてまず一・四、一・四ぐらいでございますと、大体の、政府のねらっております五・三%にいくはずだと考えております。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 この四月から六月までが一・七、七から九が〇・五でしたね。これで二・二ですね。そうすると、あと三・一ということになってくるわけですね。これはちょっとアバウトな計算かもわかりませんけれども、いずれにしましても、八千億の減少のところでもまだそこまでつかみ切れていないというお話、いろいろな点からいきますと、この五・三ということが本当にできるのかどうかという、非常に私は疑問を持つわけです。これができなければ、来年度七%と総理おっしゃっていても、これはやはり絵にかいたもちになるんじゃないかと私は思うのです。  総理、自信ありますか、五・三%、いかがですか。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五・三というのは、これは大体いける、こういうふうに私は見ております。いま、とにかく個人消費をどういうふうにその際見るかといいますと、五十一年が三・九の増加、こういうことになりますが、五十二年を同じく三・九、こういうふうに見ておるわけです。実質の話です。設備投資のごときは、五十一年度では五・四%の増加を実現した、それを〇・九、こう五十二年は見るわけです。  それから、政府の支出が大変減ったという話でありますが、それにいたしましても五十一年度は前年度比、資本支出で〇・三の増加です。それが一六・一の伸びになってくるわけです。そういうことを大観いたしますと、五・三という見方はかなりかたい見方をしておる。  それから、第三・四半期は一体どうだ、こういうお話でございますが、十一月の生産指数なんかがもう数字が出ておりますが、これはかなり伸びておるのです。反動で十二月には多少減りますけれども、十一月の伸びは非常に顕著なものがある。そういうようなことを考えますときに、いま企画庁長官が申し上げました一・四、五、まあその辺は実現できるのじゃないか、そのように考えます。  いろいろ観察いたしまして五・三%成長、これは実現できる、かように考えています。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 当初六・七とおっしゃったのは、また五・三というように改定になってきた。いろいろな答弁の中では総理はよく、確信を持っておっしゃっているわけですが、非常にこれが外れるのですね。ですから、やはりこの五・三が外れますと、これは来年度七とおっしゃっている点も非常にむずかしくなるのですね。こういう点、もしもできない場合は、五・三いかない場合、これはもちろん五月かそのぐらいにならないとわからないと思いますけれども、できない場合は当然この七%目標というものについても大きな支障が来るわけですから、当然私はしかるべき処置をとらなければいけないと思うのです。そういう点についてはお考えになられるわけですか、もしもいかない場合は。いかがですか。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのところ、まず五・三というのは目標としては適切なところであろう、そういうふうに経済は推移いたしておると考えますし、また、いわゆる十五カ月予算でございますけれども、確かにその補正予算のすべてが年度内に乗数効果をあらわすわけではございませんけれども、この年度内の残りの三カ月に補正が組まれておるということ自身がやはり経済界には相当いい影響を及ぼす、そういう心理的なものも無視できませんので、まず五・三というのは、この御審議いただいております予算を成立させていただきますれば、私は達成可能な目標ではないかというふうに考えております。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 それは、もういままで私が申し上げたように、最近は見通しというものはいつも狂っているのですよ。ですから、できない場合は当然来年度の目標に対しても支障があるわけですから、もしも狂った場合はしかるべき処置をとりますねということを総理にお聞きしているのです。簡単に言ってください。
  37. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 五・三%も、これは五・三〇〇%という意味じゃないのです。五・三%程度、こういう意味でございますが、もし五・三%がそれより上回る、そういうことになれば、五十三年度の七%、これは楽になるわけです。それから、五十二年度の五・三%がそれを下回る、こういうことになれば、五十三年度の七%、これは苦しくなる、こういうことになりますが、まあ苦しくなる場合、楽になる場合、おのおのそのときの苦しくなり方、楽になり方、そういうことを見て適切な対策をとることは当然でございます。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 経常収支の問題でお聞きしたいと思うのですが、この発表を見ますと、昨年一年間、一月から十二月までで百十一億一千二百万ドル、四月から十二月までで百二億ドルですね。政府が発表なさっておられるいわゆる百億ドル経常収支、こうなってきますと、すでに四月から十二月までで百二億ドルですね、あと、この一−三月、年度末まであるわけですよ。一体これはどないなるのですか。常識的に見て百二十億ドルぐらいはやはりいくのじゃないか、大体そういう見方をしていますよ。こういう一つの数値を見ても、政府が改定、改定となさっていますけれども、でたらめばかりですよ。こういうことが国際的にも非常に不信感を招くのですよ。これはどういうようにやるのですか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる経常収支百億ドルということについてどうかというお尋ねでございますが、四月から十二月までの経常収支、これはやはり季節調整を必要といたしますけれども、大体八十五億ドル程度でございます。そういたしますと、百億ドルという目標は大体私はいいところだと考えております。と申しますのは、過般来政府がとっておりますいわゆる緊急輸入でございますが、かなりのものが年度内に実現をいたすことがはっきりいたしてまいっておりますので、それで十億ドル内外のものがいわゆる正常輸入以外に勘定できると考えられますので、まず百億ドル、多少オーバーすることがありましてもそんなに大きく見当は狂うことはなかろうと考えております。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 総理はどのようにお考えですか。
  41. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 大体いま企画庁長官お答えした辺で落ちつくのではないか、このように見ております。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 これも非常に甘いですね。総理は、大体、昨年一年間見ましても、国際会議におきましてもあれだけのいわゆるマイナス七億ドルの赤字とおっしゃって、その後また訂正され、いままた百億ドルの訂正をされる。これはだれが見たって百二十億ドルくらいになりますよ、この数字から見て。  緊急輸入だって、それではどれだけ実績があるのですか。緊急輸入、前国会で私はいろいろ質問いたしましたけれども、あの当時総理は、三十億ドル、これは願望である、しかし、それは実現していきたいという御答弁もあったわけでございます。緊急輸入の問題が非常に大きな問題になったわけでございますが、それではいまお聞きしますが、この緊急輸入はどれだけ進んでいるのですか。経企庁長官、いいですよ、もう時間がありませんから。所管官庁としては通産と農林ですね。お答えください。どのくらい進んでいるのですか。
  43. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 緊急輸入は、いまのところ、先ほど企画庁の長官から御答弁がございましたように、大体十億ドル前後だと思います。なお、そのほかに懸案のものが相当あったのですが、それはやや実現がおくれておりまして、いまなお準備中あるいは交渉中、こういうものもございますので、全体としてはややおくれておる、こういう状態だと思います。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 そうしたら、この十億ドルの中身をちょっと具体的に言ってください。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 通産関係でほぼ年度内に確実に入ると考えられておりますものが七億八千万ドルないし八億ドルでございます。農林省関係で二億ドルあるわけでございますが、そのうちでいわゆる輸入枠拡大分、現実に品物が到着いたしますのが五十三年分にずれ込むものが幾らかあるかと存じますが、全体の規模としては、大体ただいま申し上げましたような内訳のものでございます。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 そうすると、通産関係の中身と、農林省の二億、この中身を言ってください、関係大臣から。
  47. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 緊急輸入のうち、通産関係の実績につきまして申し上げます。  第一に、石油の貯油の増加でございますが、これは当初三億ドルくらいを予定したわけでございますが、案外進捗いたしまして、年内に約四億ドル増加しております。次に、非鉄金属の備蓄の関係でございますが、これが年度内に一億ドルくらいの備蓄ができると思っております。三番目のウラン鉱石につきましては、千七百二十二ショートトンの支払いをいたしまして、これは一億四千万ドルでございます。さらに四番目に、ナフサの輸入の増加でございますが、これが大体百五十万キロリットル増加いたすことにしまして一億四千万ドル、合計七億八千万ドルないし八億ドルの増加になっております。
  48. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 農林省関係の分を申し上げますが、まず輸入の前倒しを飼料穀物、飼料麦、大豆につきまして行いました。これが約二千四百二十万ドルでございます。それから、備蓄の在庫積み増しということで小麦の政府在庫の十万トンの積み増し、その飼料穀物の備蓄の十万トンの積み増し、飼料麦の三万トンの積み増しを含めまして二千七百二十万ドルでございます。なお、残存輸入制限品目の輸入枠の拡大分が一億六千万ドルでございまして、合わせて約二億一千万ドルに相なります。
  49. 近江巳記夫

    近江委員 これはこれで一応十億。総理は当時、三十億ドルの願望、しかし、それは実現をしていきたいということをおっしゃったわけですね。あのときにはウランあるいはタンカーによる備蓄、こういうことが柱になっていたのではないかと思うのですが、では、この三十億ドルと実際に計画されておる十億ドル、二十億ドルの差があるわけですね。これについての進捗状況はどうなっておるのですか。
  50. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 率直に申し上げまして、ウランの方は、なかなかこれは交渉というか話はむずかしいのです。話が完全に切れたわけではございませんけれども、なかなかこれは見通しは暗い。それから、石油の備蓄につきましてはいろいろ手配をいたしまして、いま備蓄をするタンカーの係留地、こういうことを物色しておるわけでございますが、これはそれが決まりますればかなりの輸入ができる、このように考えています。
  51. 近江巳記夫

    近江委員 これだったら、さきの国会の時点とほとんど進んでいませんね。それはそれなりにいろいろ計画なさっておると思うのですけれども、いま私が経常収支百億ドルのことを申し上げたわけですが、やはり少なくとも二十億ドルぐらいはふえるのではないかという心配が非常にあるわけですね。そうなってきますと、またこれは外圧にはね返ってくるわけですよ。ですから、政府としては本当に真剣にやはりこの緊急輸入という点を考えなければいけないと思うのです。  それでは、総理としてはこの十億ドル、いまそういう話がありましたが、それでいいのですか。あと、どういう努力をなさるのですか。どういう上積みをしたいと思っておられるのですか。もちろん、この前のウランの問題、タンカーによる備蓄の問題等、これはなかなか急速にはいかない問題ですね。いまむずかしい問題もあるとおっしゃった。現実にこのように入ってきておる十億ドルにさらに現実のものを輸入をしていくということを考えなければいけないでしょう。それについてはどのようにお考えなんですか。
  52. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは十億ドル、大体年度内に入ってくるのですよ。これは宮澤企画庁長官が申し上げた見通し、この中に大体入っておるわけです。さらに、ただいま申し上げました石油のタンカー備蓄、これができる、こういうことになりますれば、それだけ経常黒字は減る、こういうことになる。何とかそれを実現したい、こういうふうに考えています。
  53. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がないようでございますから、最後に一点だけ申し上げておきたいと思いますが、この円高の差益の問題でございます。いろいろと各省からも聞きました。経企庁からは、宮澤さんの方から資料の来たのは、この八月に調査した、それしか来てない。あとはどうなったかと言いますと、いままだ調査中です。こんなルーズなことでいいかという問題が一つある。通産省は通産省で、いわゆる各団体に対して貿易局長あるいは産政局長等から協力要請というような文書を出した。これは十月の十八日ですよ。そして、その団体にどのように傘下の会社に徹底してくれましたか、回答ください、それの回答をとっているだけなんですね。どういうようにその結果が出たか、何の調査も行われていない。  総理、いつも私は申し上げておるのですが、年間で二〇%からの円高になったのでしょう。もちろん日本の場合は八割が原材料である、製品輸入が少ないという背景もありますよ。あるけれども、政府国民に対して還元していくというその姿勢というものは余りにもずさんだと私は思うのです。そうでしょう。総理は、努力します。努力するとおっしゃるならば、各省やらせればいいじゃありませんか。そうでしょう。私がいま言ったことに間違いありますか、経企庁、通産省は。西ドイツのように、もっと流通機構の改善とかいろんなこと、もちろん向こうは努力をしていますよ、還元していますよ。わが国の場合は何ですか、こんないいかげんなやり方で、どうしてそれが国民に結びつきますか。通産大臣と経企庁長官とそして総理、もう時間がありませんから順番にお答えいただいて、終わります。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本的には、自由経済のいいところそれから遅いところというのは、やはりこういう場合に問題になるわけでございまして、私どもは、ただいま卸売物価がマイナス一・五%であるというようなことは、そういう形で円高の一つの効果があらわれていると考えております。そのことは消費者物価にもおのずから影響をいたします。また、たとえば灯油の値段がすでに七百円前後になっておるというようなこと、あるいは電力、ガス等の公共料金の値上げが行われずにおるというようなこと、あるいは配合飼料の値段が下がっている、これらはいわば自由経済のメリットであると考えておるわけですが、おっしゃいますように計画経済ほどその浸透は早くない、それは確かでございます。  それで、八月に追跡調査をいたしまして、十二月にもう一度私ども、いま調査をいたしております。これは間もなく公表することができると存じておりますが、個別の品目につきましても、実態調査、動向を調査いたしまして、公表いたしたい、こう考えております。
  55. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在約十一万の全国の企業に対しまして、円高の利益を国民に還元するように要請を徹底いたしております。それからなお、先ほど宮澤長官からもお述べになりましたが、第二回の調査を各省協力していま進めておるところでございます。それから、エネルギー面での円高等につきましても、いま長官がお述べになったとおりでございます。
  56. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 円高の国内物価への還元、これにつきましてはできる限り努力いたしますが、たとえば電力、ガスの料金ですね、これは一年間据え置きだというようなことまでいたしておるわけなんですが、工業製品が少ないものですから、工業製品の方は統制経済じゃありませんものですから、なかなかそう的確にいきませんけれども、これも実態調査をしましては行政指導をいたす、この方式を強化してまいる、かように考えます。
  57. 近江巳記夫

    近江委員 終わります。
  58. 山下元利

    ○山下(元)委員長代理 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、荒木宏君。
  59. 荒木宏

    荒木委員 早速お尋ねをいたしますが、私は、今度の二次補正予算は異常な予算だというふうに思います。予算書を見ますと、あと会計年度末まで二カ月ですね、それで一兆円を超える赤字国債を発行する。しかも、たびたび指摘されましたように、わずか二、三カ月前までは、総理は依存度三〇%を超えると大変なことになるとおっしゃっていたのが、三四%までになる。私は、この異常予算といいますか、この異常さがどこから来ているかということを明らかにしたいのでありますが、できない成長、これは主観的にはやろうと思っていらっしゃるということが言われておりますけれども、結果としてできない無理な高度成長、それを外国に約束をする。できないから今度は責められる。責められるから、勢い一層、今度はもう一つ高い成長を提案する、発表する、こういうふうなところからこの異常さが出ているんじゃなかろうかというふうに思うのですが、まず総理に伺いたいのは、五十二年度六・七%、これはロンドン会議で国際的に約束をされてきたんじゃありませんか。それを伺いたい。
  60. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 約束と言うのは、これは語弊があるかもしれません。しかし、日本は成長率六・七%を目指す経済運営をするということは申し上げてきたわけです。そして各国ともみんな言っているのですよ。そして各国とも、そこで披露した成長率の達成につきましては努力をするということを約束しましょう、こういうことになっておるのです。ドイツはどうかというと五%を約束した、約束したというか宣言をしたわけです。それが二・四%。アメリカは六%、これがはっきりしませんけれども五%を割る、こういうような状態わが国は六・七%を宣言したわけです。それが五・三%と、こういうことでございます。
  61. 荒木宏

    荒木委員 約束したのではない、成長率を言ったのだ、言ったことをやろうと約束した、こういう言い方ですよね。結局、成長率の約束になるのじゃないですか。  外務省の方から出ております「国際問題資料」にロンドン会議の訳文と正文が出ておりますが、これによりますと、「われわれの政府は、公表されている経済成長目標の達成」「の実施を約束する。」これは正文の方でも「ウィ コミット アワガバメンツ ツー ステーテッド エコノミック グロース ターゲッツ」こうなっております。「コミット」となっております。総理はこの前に、アメリカ訪問のときでありますが、三月にワシントンのナショナル・プレス・クラブで演説をなさって、そのときにも経済成長六・七%の目標を設定してこれを実施すると公表されている。それをロンドン会議で約束をした。ここに「約束」というふうに、外務省の文書にはっきり書いてある。私は、これは成長率の約束だと思うのです。それができないから、当然これは後で責め立てられる。あれ以後、五十二年度はずいぶん外国から責められたのじゃありませんか。できない無理な成長を約束されたためにもうどんどん追及をされて、追い込まれていった。総理、こうじゃありませんか。
  62. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 成長率の問題で外国からとやかく言われたということはありません。ありましたのは経常黒、これが余りにも大きいじゃないか、こういうことにつきましては、各国から日本に対しまして、これが是正方についてかなり厳しい期待があった、こういうことでございます。
  63. 荒木宏

    荒木委員 大蔵省の財務官ですね、いまお出かけですけれども、この方が大蔵省広報のファイナンスの十二月号に、「〔世銀・IMF総会特集〕世銀IMF総会から帰って」というので一文を寄せておられるのですが、この中に、通貨制度よりも景気問題、これが今年の総会の基調であった。特に総会以外のいろいろの場では異例とも言えるほどの率直さをもって語られ、語られれば語られるほど、日本のような国に対する鋭い批判となっていった。ことしの総会は、いままで十何回も出たけれども、ことしほど日本代表団の一員として心労の多かった総会はなかった、こういう印象ですね。これは、国際収支というよりも景気の問題、成長の問題で、ここにもう一段の景気振興策をとってほしいという要望をずいぶん聞かされた、来年はさらに高い成長をというふうなことで、一週間苦労のしづめであった、こういうものを大蔵省の広報誌に出しております。  私は、この経過を見ますと、ロンドン会議総理が六・七%を約束したが、これは結果としてできなかった。その後ずいぶん責め立てられていって、さらに高い成長という、そういった経過で七%というのが、事実の経過だと思うのです。出発点が狂えば、そこから出ておる二次補正には随所に狂いが出てくる。本来、成長率というものは、国際的な協議の対象にするべきことではないと私は思うのですね。  そこで、この二次補正の中に出ておりますいろいろな狂いといいますか、問題点をお尋ねしたいと思うのですが、その一つは、決算調整資金の問題であります。  昨日も論議になりましたが、予算書によりますと、二千億計上されて、そして歳入の不足に充てる、こういうことですね。しかし、年度末まであと二カ月でしょう。それで二千億というのでしたら、今度の補正の見積もりは二カ月先も見通せないものなのか。誠実にかつ良心的に正確に見積もるということが物の本に出ておるようですが、一体、二カ月見通せないなら、一カ月なら見通せるのか、一週間ならどうですか。二カ月見通せないようなことで、どうして十五カ月が見通せるか。一体どの程度までなら、確信を持って国会にこうですと報告できるのでしょう。大蔵大臣、それをひとつ納得のいくようにおっしゃってください。一カ月か一週間か一日か、どうですか。
  64. 村山達雄

    ○村山国務大臣 期間が長くなればなるほど見通しがむずかしくなることはお説のとおりでございます。  今度、決算調整資金として二千億計上いたしましたが、荒木先生は、大蔵委員会に長年おいでになりましたからよく御承知だと思いますが、税収の見積もりは、御案内のように経済企画庁の指標を基礎にしまして、特に法人税では、生産、物価、そういうものを基礎にいたしまして、そして税収ベースで計算いたしますから、年次はずれます。それを計算いたしまして、それで見込みを出しておるところなのでございます。今度、指標につきまして経済企画庁の下方修正が行われましたし、それからまた、九月決算におきまして大きな落ち込みがある、そこに円高によるデフレギャップがある、こういうことで八千六十億の減収を見込んでいるのでございますけれども、税収を確実に見通すということは非常にむずかしいのでございます。  従来の経過で申しますと、高度成長時代は、多少経済指標に変化がありましても、租税の弾性値が働きまして、結果的には何とかやりくりがついたのは御案内のとおりでございます。しかし、いまのような減速経済になりますと、少しの落ち込みが大変響くのでございまして、その変化が補正予算を計上する近くに行われればよろしゅうございますけれども、その変化というものが決算期終了後あるいは整理期間中に起きますと、大変なことになるわけでございます。そういう意味で、大体、従来の経験から言いまして総租税収入の一%くらい、これは従来の経験から出しているわけでございますが、その辺をねらいにしまして二千億の決算調整資金の元金を入れさしていただきたい、こういう趣旨で出しているのでございます。
  65. 荒木宏

    荒木委員 歳入の見積もりがむずかしい、こういうお話でありますが、しかし、それはいまに始まったことじゃないですね。もう何年、何十年、もちろん情勢の変化はありますけれども、しかし、景気のいいときもあれば悪いときもある。予算は大体このぐらい入ってくるからこれだけ使いたい、国会審議してほしい、たてまえはこういうことじゃないですかね。だから、足らずのおそれがあるときには不足のないようにする。そして、どうもひょっとして落ち込むかもしれぬというときには出入りを調節する、節約をする。これは家庭の主婦だってやっておるのじゃないですか。だって、大工さんの御家庭を見れば、どのぐらい入るかわからぬ、そのときには、あらかじめ決めただけ使いましょう、そういうことじゃなくて、やはりちょっとぐあいが悪いから締めましょうとか、やりくりをやっておるので、問題は、それでできねば補正というのがたてまえでしょう。だから、その努力をする、つまり、見込みがきっちり出るように、不足のおそれがあるなら収支調整をするような努力をきちっとすべきじゃないですか。それができなければ、赤字でございますと言って国会に報告するというのがたてまえでしょう。私はそう思います。高度成長のやりくりになれ切って、こういう時代の運営については経験では十分対応できない、これでは、努力を尽くしたことにならぬと私は思うのです。国会の補正審議機会さえ奪うことになりかねぬじゃないですか、国会軽視になるじゃないですか。大臣、どうですか。
  66. 村山達雄

    ○村山国務大臣 二つの点について申し上げたいと思うのでございます。  一つは、いまの単年度主義の財政法のたてまえで、剰余金が出たときには、その剰余金はどのように処理するかということはございます。しかし、およそ不足ということを考えていない現在の財政法のたてまえでございまして、不足はどうしてやるのかねということについては恒久立法がないのでございます。従来は、先ほども申しましたように高度成長でございまして、租税弾性値が非常に高うございましたから、何とかやりくりがついたわけでございます。しかし、現に四十九年度でございましたか、あのとき、実際上は大変なマイナスになるものでございますから、従来の、年度内に租税義務が発生して四月中に収納する分は、その年度の歳入に取り込みまして、たしか四千四百億程度調整いたしたのでございます。今度は五月分税収を前倒しにいたしますので、もう最後の弾力性を失っておるわけでございます。その点が一つございます。しかも、減速経済でございますから、ちょっとしたものが弾性値に期待できない、こういう一般的な事情がございまして、制度として恒久的なものをつくらしていただく必要がある。それが経験的にいって税収の一%ぐらいというのが適当だという点が一点でございます。  それから、それは節約でやったらいいじゃないか、こうおっしゃるのでございますが、具体的に申し上げますと、三月十五日が申告所得税の納付期限になります。これの実際の収納は、御承知のように三月末ではわからぬのでございます。いまの統計の方から申しまして、いかに国税庁がやりましても、それが全部わかるというのは三月を過ぎてからでございます。そこにはいろいろな経済条件、譲渡所得がどうなっておるか、この問題もあります。また、中小企業がその貿易によってどれだけの影響を受けたか、こういったものが全部出てくるわけでございますので、現実の問題としましても、それを見込んであらかじめ予算でやっておくということは事実上なかなかむずかしい問題でございますので、この際、ちょうど剰余金処分に関するあれと同じように一%程度の元金を入れさしていただきたい、こういう趣旨でございます。
  67. 荒木宏

    荒木委員 それはきのうもいろいろ御説明がありましたよ。  では、赤字が出たら赤字のまま報告したらどうですか。企業はそうやっているでしょう。家計だってそうでしょう。地方自治体だってそうじゃありませんか。都道府県で五%と決まっている。それで内閣の責任をはっきりさしたらどうですか。いろいろやったけれどもこれだけ足りませんでした、国民皆さん判断してください、これが責任のある政治のあり方ではないですか。財政法で認めていないというのなら、財政法はそういうやり方はいかぬ、こう言っているのだから、赤字が出たら赤字のまま報告しなさい。どうですか。
  68. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  荒木委員御存じのように、地方財政の制度におきましては、決算上赤字を生ずる場合に翌年度の歳入の繰り上げ充用といったような道が開かれております。国の財政法では、赤字決算をしてはならないと規定があるわけではございませんけれども、決算上赤字が出た場合にどう処理すべきかという規定を欠いております。再々申し上げますように、剰余金が出た場合にはどうするという規定はあるわけでございますけれども、赤字が出た場合にどう対処すべきかという規定がない、すなわち赤字決算をすべきでないというたてまえで法律ができておるわけでございます。私ども、もちろん、いままで予算を執行する段階におきまして、毎月毎月の歳入の状況を見ながら歳出をチェックしていっております。そういうふうにして赤字にならないような努力をしてまいりました。これからも、当然のことながら、赤字が出そうな場合には歳出を抑える、また、補正予算をもって国会にお諮りするということは、従来どおりやります。ただ、大蔵大臣申し上げましたように、三月末ぎりぎりあるいは年度を越えて歳入の相当巨額の不足を生ずるような事態が、昭和四十九年ごろから数回にわたって私ども経験させられておるわけでございまして、そういうような場合に対処するために今回のような制度をお認めいただきたいということでございます。
  69. 荒木宏

    荒木委員 これは事務的な処理をお尋ねしたのではなくて、私は、政治的な責任の取り方というのですか、財政法が予定していないことをあえて技術的な手だてを弄してつじつまを合わせようとする、そういったことに対する政治的な問題提起をしたわけです。赤字になれば、財政法はそれを予定していない、だからそのとおり、財政法が予定したとおりできませんでしたと国会に報告すべきだと私は思うのです。それで責任の所在を明らかにして国民の判断を受けるべきじゃないですか。それをやらないで、資金だけ別につくってつじつまだけを合わせるというのは、私は、そういう意味では無責任なやり方じゃないかと思います。きのうも論議がありましたから、この点は指摘するだけにしておいて、次の問題に行きます。  同じように、出発点の無理が、重点を置いておる公共事業にも出てきておるのではなかろうか、こう私は思います。公共事業の重点として住宅投資ということが言われています。住宅投資、公庫住宅には土地問題があり、このままでは民間の建設が公庫に移るだけ、こういう指摘もあります。返済に追われて消費抑制、かえって足を引っ張る、こういう指摘もあります。しかし、それは本予算の論議に譲るとして、一方、公営、公団住宅については、先ほども論議がありました賃料の値上げ、建設戸数の減というのがある。  賃料の値上げ問題は、いまも論議がありましたが、建設省の説明を聞きますと、今度の公団家賃値上げで大体初年度百七十億、うち百四十億は修理、あと三十億は高家賃の抑制、こういう説明を聞いておりますが、しかし、修理については、五十三年度予算で施設整備のための出資というので百億円計上されておりますね。つまり、これをこれからこの予算委員会皆さん審議をしてほしい、こういうわけです。だから、修理を含む百億の出資は、審議の結果で増額になるかもしれぬ、これは逆転委員会ですから、去年税金で例もあるのですから。増額になれば、今度値上げの方で回す予定の百三十億は、計数上当然減ってきます。もし百三十億増額されれば、値上げによって充てるべき修理用の百三十億というものは、計算上要らなくなる。しかし、それは今後の審議ですけれども……。これから審議をしてくださいと言っておいて、その結果を見ないで、上げる方だけ決めてしまうというのは、立法府の軽視につながるのじゃないかと思うのです。  建設大臣に聞きたいのですが、その点、公団の賃貸の修理を含む施設整備費等々の、予算委員会国会審議を十分尊重して、考慮の上で判断をされるかどうか、伺いたいと思います。
  70. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 五十三年度の予算に計上しておる百億円は、個々の家の修理を対象としておるのではないのでございます。住宅公団の施設の中にある家の環境整備等に充てるということで、用途が違うわけでございまして、その辺の御理解をちょうだいしたいと思います。
  71. 荒木宏

    荒木委員 私は、大蔵省の主計局の公共事業係の方に聞いてみたのです。いま建設大臣は、百億の出資は個々の修理に充てるものじゃない、こう言った。しかし、私、主計局で聞いたのでは、これはなるほど集会所、こういうのもあります。自転車置き場みたいなものもあります。しかし、外壁のひびの入ったものの修理、それから排水管が壊れておるものの修理、それから水がじゃじゃ漏りになるところの手当て、つまり基礎的な構造の修理、これももちろん入っております。いずれにしてもその細部は、外だけであって中のむねの修理とかそんなものは一切入っておりません、そんなことは決めておりませんよと言うのです。建設省はそうかもしれませんが、私は、主計局にその点はきのう、おととい確かめたのです。ここへ提案しておる、つまり予算の取りまとめの大蔵省の歳出の担当の方は言っておるのですから、そういう意味で、大蔵大臣どうですか。主計局で私が聞いた、その点間違いないかどうか。もし大臣が言えなかったら局長でいいですが、大蔵の方から言ってください。建設大臣が言っておるように個々のむねの修理に使わない、というようなことを決めてしまっておるのですか。そんなことはないとはっきり言いましたよ。
  72. 長岡實

    ○長岡政府委員 私どもも、個々の部分についての修理には使わないというふうに理解いたしております。
  73. 荒木宏

    荒木委員 むねはどうですか。むねの壁が割れたり排水管……。私が聞いたのはそれなんです。公団の取る修理費は、たとえば排水管だとか、いろいろそこにも修理として充てると言うから、ダブっておるじゃないか、こういうことなんです。局長どうですか。
  74. 長岡實

    ○長岡政府委員 建物そのものの修理には使わない、部分でありましても全体のあれでございましても、建物そのものの修理には使わないというふうに聞いておりますが。     〔山下(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 荒木宏

    荒木委員 局長、公共事業係に直接聞いたんですよ。直接聞いて、そして、それは決めておりません、しかし、私どもとしては、むねの大きな外壁修理は入れてもいいと思っておりますと、担当者がはっきり言ったのだから。
  76. 長岡實

    ○長岡政府委員 担当者に確かめますが、予算措置をいたしますときの大蔵省と建設省との間の話し合いでは、個々の建物の修理ではなくて団地全体の問題というふうに私どもは理解いたしております。
  77. 荒木宏

    荒木委員 これは直接確かめて、ひとつ大蔵大臣、はっきり返事をしていただきたい。ダブっておれば、当然その部分が直接関係をする。ダブっていなくても、審議の結果、これはそういうところまで広げてしかるべきではないか、当然国会論議があり得ると思うのですね。そういうことで将来の論議、立法府の審議を尊重されるかどうか、建設大臣どうですか。
  78. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 荒木委員の御所見につきまして、これから私が建設行政、特に住宅問題を進めていく上におきまして、貴重な御意見として参考にしてまいりたいと思います。
  79. 荒木宏

    荒木委員 私は個人の意見を言っているのではないのです。この予算委員会でこれから審議をしてくれとおっしゃっておる皆さんの予算書の中にその項目がある。その中に出てくる項目で、同僚委員の御質疑がありましょう。そういうのを尊重するかどうか。さらにまた、建設委員会では議員の提案で決議案がいま提案されております。家賃値上げについて抑制すべしという決議案が提案されておりまして、建設委員長が前向きに扱うという御意向を示されておるということを聞いておるのですが、そうした国会の論議を十分尊重し、考慮して、承認するかしないかという今度の案件の判断をなさるかどうか、これを聞いておるのです。私の個人の意見だけじゃありません。
  80. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは本委員会でも建設委員会でも、しばしば私の考えを申し上げておりますが、それらの御意見などを私としては勘案しまして、最後の結論を得たい。しかしまた、こういう委員会のような大事なところでありますから、私も先ほど来、私の考え方あるいは住宅公団の今後とるべき行き方などについてもお訴え申し上げておるのでございまして、その間にぜひ御理解をいただかなければならない問題が私の方にもあることを御了承願いたいと思います。
  81. 荒木宏

    荒木委員 それは責任者としていろいろ御意見の開陳はありましょう。しかし、最高機関としての国会における直接関連のある論議、質疑あるいは決議、こういったものを抜きにして結論は出せない、国会尊重というたてまえから言えば出せないのじゃないか、私はそう思うのです。  そこで、建設大臣、そうした国会での今後の予算質疑あるいは建設委員会の決議の扱い、そうしたものを見きわめるまでは結論は出さないということをお約束いただきたいということであります。
  82. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの御質問は、私としても十分心得てまいりたい。かねて来申し上げておるように、まだ参議院の方の建設委員会の御協議も終わっておりませんし、また、御指摘のように衆議院の建設委員会においても御意見が残っておるということでございますから、それらのことを十分踏まえて最後の決断をいたしたい。  なお、申し上げるまでもなく、国会が決議をされて意思表示をされるということになりますれば、それを尊重することは当然だと思います。
  83. 荒木宏

    荒木委員 委員長にお願いがありますが、先ほど主計局長の方から、この点の予算項目の内容、趣旨については調査をして回答する、こういう答弁がありました。そこで、その部分について回答を得た上で質疑をさせていただきたい、その部分だけは時間を若干留保させていただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。
  84. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  85. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めてください。  荒木君に申し上げますが、その点だけ後ほど理事会で相談することにしまして、残余の問題をどうぞ続けてください。
  86. 荒木宏

    荒木委員 それでは、委員長のいまの御指示のようにいたします。  さらに、公共事業の執行にも狂いが出るのではないか。いま政策面で申しましたが、執行面でも狂いが出るのではないかということをお尋ねしたいと思うのですが、このたびは年度末近くになりまして、さあ公共事業というのでどんどんどんどん積み増しをしていった。かねがね指摘をされ、新聞等でもやややゆ的な表現などもあったようでありますけれども、私は地方自治体の関係者にちょっと聞いてみたのです。公共事業執行の主たる面を担うのは地方自治体ですから。そうしますと、かなりなところから、大体やり方が勝手なのではないか、こういう意見がありました。いままではぐっと締めておいて、にわかに、さあやれ、さあやれ。だから自治体の方は、用心といいますか警戒せざるを得ない。十五カ月過ぎたらまたぐっと締めてくるのじゃないか。異例、臨時の措置というお話が出ているようであります。氷づけから温泉に入れ、こういうふうなことになったという言い方をしている自治体もありましたが、またもう一遍水ぶろにというのではかぜを引いてしまうということで、地方議会もあり、それから、工期が果たして間に合うかどうか、もしおくれたとなったら手続をとらなければならぬ、頭を下げていかなければならぬ、その点は自治省なり縦割り所管の各省が一体どういう扱いをするのか。あるいは先行取得で単価差がある分、起債が認められるか認められないかわからないという自治体も間々あるわけです。こうした点。それから、単独事業にどうしても影響を受けます。幾つかの自治体は口をそろえてそういう話をされましたが、自治大臣、この点についてひとつ自治省の見解をはっきり伺いたいと思うのです。
  87. 加藤武徳

    加藤国務大臣 公共事業の消化に当たりましては、地方団体も積極的に取り組んでまいっておるところでありまして、ほとんどの都道府県が公共事業執行のために推進本部等を設けてこれに当たっておる、かようなことでございます。  なお、ただいま御審議いただいております五十二年度の補正予算につきましては、公共事業の約五千八百億円のうち四千七百億円という相当部分のものがいわゆる補助事業でありまして、地方で実施をいたさなければならぬのであります。地方議会に対しましては、できるだけ早期にこれを予算化していただきますように要請をいたしてまいっているところでありますし、二月、三月と二カ月あるのでありますから、予定されております公共事業はその大半あるいはほとんどが消化し得るものと、かように私は判断をいたしております。  なお、財源対策等につきましても、一〇〇%起債を充当いたすのでありますが、そのうち八〇%がいわゆる政府資金、かようなことでありますから、資金調達の面でもさほど難渋はない、かように判断いたしているところであります。
  88. 荒木宏

    荒木委員 工期は間に合うとおっしゃいますが、いろいろ聞きますと、実情はかなり違う面があるようであります。  大体生活基盤重点と総理は間々言われるのですが、私は結果から見まして、決してそうではないと思うのです。自治省が出している公共施設調べというのがありますが、たとえば老人ホーム、これはいわゆる特養とそれから養老の合計ですが、昭和四十五年は、対象者に対して充足定員が一五・七%、五十年は、これが一七%になりましたが、入れない人の数は十九万から二十三万と四万人もふえておる、老人がふえておるわけですから。それから母子寮は、四十五年九・五%でしたが、五十年には八・八%に下がっておる。八万幾らの世帯も入れない。公私立の幼稚園は、二百十五万人が待機状態になっている。保育所は、いま八十三万人入れない、こういう状態であります。  私は、こういうことからたとえば老人の不安を増せば、老後に備えてどうしても貯蓄性向が高くなる、個人消費の足を引っ張る。生活基盤が重視されないで放置されている、むしろ、ある例のようにダウンしているというふうなことは、その意味では今度は景気にマイナスの影響を与えている。ですから、公共投資公共投資ということで、五カ年計画とか、道路についてはいろいろありますが、むしろこうした生活基盤実現の個別の五カ年計画といいますか、そうしたものを作成するべきではないか、こう思いますが、総理、いかがですか。
  89. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私どもの所管の社会福祉施設その他の生活関連の施設につきましては、五十三年度も大幅に増加をさしていただいております。  なお、五カ年計画を作成すべきではないかということがございますが、保育所等についてはそういう考え方のもとに逐年整備をいたしておるところでございます。
  90. 荒木宏

    荒木委員 その一方で、これは過般新聞の報道がありましたが、たとえば大型プロジェクトといいますか、関西新国際空港もその一つでありますが、景気浮揚のために浮体工法でやってはどうかと、総理と運輸大臣が話をした。運輸大臣が就任早々記者会見で発表されたのが、もう浮体工法でやることが決まったかのような報道がなされて、きわめて関係方面に大きなインパクトを起こしました。関係の自治体から政府に対して強い抗議をした。これは、大阪府泉南市議会の議決でありますが、工法論議は、無神経であると同時に地域住民の感情を無視するのみでなく、問題解決をかえって複雑にするもので、まことに遺憾である、厳重に抗議する。これはこの自治体だけじゃありませんで、関係の各団体、自治体からたくさん寄せられておるのですが、私は、この際、大臣のこれについての所見といいますか、釈明をひとつはっきり伺っておきたいと思います。
  91. 福永健司

    ○福永国務大臣 この問題につきましては、別途、荒木さんから御注意等もいただいておりまして、恐縮に存じます。  先ほどお話のごとく、これの工法につきまして四十九年八月に航空審議会から、埋め立て方式ないし埋め立て工法を主体とするという意味の答申をいただいているところであります。主体とするということは、そればかりでやるという意味ではないと思います。  あの考え方は、陸上につくるか海の上につくるか、いろいろな議論があって、専門家ないしは関係者の大変熱心な御討議をいただいたところでありますが、四十九年八月から今日まで、大分期間も過ぎておりまするし、その間においていろいろな技術開発等も行われております。  さらに、いろいろの政治情勢もございます。ただいま御指摘のようなことも、もちろん重々頭に置いていかなければなりませんが、たとえば造船などはいま不況にあえいでおります。多くの方々から御指摘のように、今度の予算等を執行していく過程においては、うんと忙しい業種等もできるのじゃないか、こなし切れるかという御注意をいただいているほどであります。その間にあって、私の所管いたしまする造船業等が非常にあえいでおりまするから、こういうような、仕事がなくて困っているようなところの連中を、こういう事態の中である程度の仕事ができるようにしてやることも、政治全体としては当然考えるべきことである、私はそういうようなことを考えまして、浮体工法ということについての私なりの関心を示したことは御指摘のとおりでございます。  そこで、私の申しましたのは、いずれにしても、この種の大プロジェクト、これはもう大変に大きなものでございますから、成田で経験したようないろいろなこと等を生かしまして、うまく進めたいと思うのでございます。そういう観点から、浮体工法もまた考慮すべきものである、こういう私なりの見解を示したことは事実でございますが、私は、何もこれのみによってということを言っておるわけではございません。答申にもありますごとく、いずれも特徴があるけれども、まああの段階においては埋め立てが主体となってやることがよかろうという意味のことが表示されておりますが、いまも申し上げたようなことでございます。  また、そのほかに、山を削って埋め立てるというようなことになりますと、いろいろな問題等もございます。まあ私は私なりにああいうようなことを考えまして、この新空港をりっぱにつくり上げる、こういうことを望んでおるわけでございます。  いずれにしても、埋め立てとか桟橋方式とかあるいは浮体工法とか、いろいろございますが、そういうものの最もいいところを組み合わせて、最もりっぱな空港をつくる、これが私の本意でございます。  伝わっておりますることについて、私が浮体工法一本やりでというかのごとき印象を与えておりますとするならば、私の言葉が足りなかった、こういうように存ずるわけでございます。
  92. 荒木宏

    荒木委員 いま大臣は、空港をつくり上げるというのが私の考えだ、こう言いましたが、つくるかつくらないかはまだ決まってない。それを決めるための調査だということを一貫して説明してきたのでしょう。運輸省としても、つくることは決めてないといままで言い続けてきたのです。大阪府にも、関係の自治体にも。公式の場でつくるのが願いだというのは、いままで自治体に説明したこととまるきり違うじゃないですか。私は、その問題は聞き逃しにはできませんから、別途委員会その他の機会に徹底的に明らかにしたいと思いますが、ここでは厳重に抗議をしておきます。  問題は、一番最初に総理が、無理な成長率をロンドン会議で約束をされた、できないから責め立てられるとさらに無理の上乗せをする、そういうところからいろいろな狂いが起こっておるという点でお尋ねしてきたのであります。公共投資しかり、住宅建設またしかりということですが、私は、生活の面でも同じく大きなひずみが出ておると思うのです。安心がなりませんから、得心のいく落ちついた生活が保障されないから、ますます景気の足を引っ張る。  時間の関係でとても全部はお伺いできませんけれども、一つ二つを言いますと、たとえば生活の大きな不安あるいは健康の大きな不安ということで、当面二月一日から医療費が改定になりますが、人工透析患者の人たちの中で、点数の計算方法が違ったがために従来の夜間透析が昼間になる、時間が延長される、こういう通知を受けたということで、社会復帰が願いである夜間透析ができなくなるのじゃないか、こういうことも起こっています。これは幾つかの問題のうちの一つでございますけれども、これについての厚生大臣の行政指導、これをお聞きしたい。  趣旨は、安心した生活を保障するために、個人消費六〇%を超えておったのが五〇%近くまで低下をしてきておりますけれども、これを六〇%に高めるという目標をいま再び取り上げるべきではないか。この点はひとつ総理にあわせてお伺いをしておきたいと思うのです。
  93. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 荒木委員、夜間の人工透析ができなくなったようなお尋ねでございますが、今度の点数改正によりまして、むしろ午後五時以降の夜間透析の点数の加算を認めたわけでございまして、したがって、昼間は社会復帰がなかなかできないから夜間に人工透析を行いたいという患者のいろいろ御要望にこたえた点数改定をむしろやったわけでございますので、御趣旨に沿うような改正が今度行われた、かようにひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  94. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 国民総生産の中で個人消費、これの歩合が多くなるということが好ましい、そういうお話でございますが、これは、自由社会におきましてはそういうことが言えると私は思うのです。しかし、自由社会ばかりではこの世の中はもっていけないのじゃないか。つまり、各人がその世帯一つ一つにおいて営む家計、それを充実するという問題のほかに、その家計の中から何がしかを共同で、いろいろ共同の施設をする、こういう考え方もまた取り入れていかなければならぬ問題ではないか、そういうふうに思うのです。そういうことを考えますと、一概に個人消費のシェアが拡大されるということばかりが好ましいのではなくて、やはり適正な社会共同投資、そういう面が適切に行われるということもまた配慮すべき問題じゃないか、そのように考えます。ですから、個人消費シェアが拡大される、それが好ましい状態であるかどうかということは、そのときどきの社会情勢、置かれておるその情勢とにらみ合わせまして判断さるべき問題じゃないか、そのように考えます。  いま、何と申しましても、生活関係の社会投資がわが国では大変おくれておる。ですから、個々の家庭の消費、それもさることながら、それが幾らか少なくなりましても、社会開発投資の方のシェアが多くなる、しかもそれが適正に行われておるという形は必ずしも排撃さるべきことではないのじゃないか、私はそのように考えます。
  95. 中野四郎

    中野委員長 荒木君、ちょっと申し上げますが、大蔵省の方から先ほどの答弁を申し上げたいという申し出がございます。ちょっとこの際……
  96. 荒木宏

    荒木委員 質問が済んだ後で……。
  97. 中野四郎

    中野委員長 どうぞ。御質問の後で……。
  98. 荒木宏

    荒木委員 総理からいまお答えがあったのですが、それがやられないから輸出ドライブということにも関係をしている。たとえば、少し話をはしょって申し上げますが、先ほどの、財務官が国際会議に出たときの話に、大体週休二日制も満足にやらないでどうなんだ、こういう指摘があったと。週休二日制も採用しないでただひたすら働いていて生産性が高いといっても、それは不公正ではなかろうか、こういうふうな不平不満にぶつかったと、こう言っておるんですが、いま国会では、大蔵委員会などを中心に、週休二日制の促進ということで決議案もつくろうかと、こういう話も出ておりますが、個人消費を高めることの一つとしても、総理は自民党の総裁としてこの決議の成立にどういう御意向ですか、お聞かせください。
  99. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 週休二日制は、その方向に向かって動いておる、こういうふうな認識です。しかし、政府がたとえば公務員につきまして週休二日制を先頭に立ってしいて、これを民間にも誘導する効果を持たせたいというようなことにつきましては、私はこれはかなり慎重にやらなければならぬだろう、こういうふうに思いますが、しかし、御意見もありましょうから、国会においては国会で御論議願う、こういうふうにし、ある線が出てきたという際におきまして私の意見を求められるということでありますれば、自由民主党に対しまして私の意見も申し述べます。
  100. 荒木宏

    荒木委員 最後に、企業対策の問題について一言伺っておきたいのです。通産大臣あるいは中小企業庁長官にお尋ねしますが、いま不況で大変厳しいと言われるのですが、弱いところにますます厳しい状態になっている。ここにありますが、ある企業が下請企業全体に対して協力金をひとつ支払ってくれと、円高不況で大変苦しいので「はなはだ勝手ながら、今回二月五日お支払いの内から」「輸出協力金として赤伝票を発行させて頂きました。」私、業界で聞きますと、もういまは協力金というのはあたりまえですよ、大体相場は五%ですが、多いところは七%も八%もありますと。これは自転車のギアの部品をつくっておるところとその下請の関係です。つまりそれは、いろいろ苦しいところがありますが、全部そうやって五%、七%、八%、順番にカットしていけば、全部下にたまっちゃうでしょう。それを抜きにしておいて緊急の金融対策でござるとかなんとか言っても、なかなかそれは効果は出ない。これについてひとつ中小企業庁長官のなにを伺いたいと思うのです。高度成長下における社会的責任は言われました。低成長下においても大企業の社会的責任というものはあるのじゃないでしょうか。  それからもう一つ。中小企業金融を扱う国民金融公庫で経営改善資金というのがありますが、これが五十一年度は約三〇%枠が残りました。そして七百億円、無保証無担保で低利のこの金をどうしたと聞きますと、資金運用部へ返しましたというのです。欲しいところはたくさんあるでしょう。金融公庫には手続早くしてくれと申し込んでいるのですけれども、それだけ、三割も残して返しちゃったというのです。五十二年度はどうかといいますと、これは上半期で三割しか行っていない。まだ悪いと言うのです。枠は四千五百億余りにふえましたけれども、残る枠がもっとふえてきている。なぜそうなったかというと、商工会議所の指導員が六カ月指導するのですが、自分の知り合いのところだけ回って推薦するものだから、保険の外交と一緒で、種切れになってしまう。これは制度を再検討して、必要な人にはもっと回るようにすべきではないか。あわせて中小企業庁長官の答弁を伺って、そして大蔵省に一言伺って、終わりにしたいと思います。
  101. 児玉清隆

    ○児玉政府委員 お答えを申し上げます。  第一点の下請に対する協力金の徴収の問題でございますが、御存じのように、下請代金支払遅延等防止法の遵守ということで、公正取引委員会と中小企業庁一緒になりまして、取引条件の改善という点について指導を行っているわけでございますが、協力金が言われております分野は主として建設業が特に多いわけでございますけれども、御存じのように、下請代金支払遅延等防止法の方は製造委託及び修理委託という点を守備範囲といたしておりますので、私どもの法律と同様な法律が建設省の方にございまして、建設省でそういう点を改善、指導をやっておられますが、私どももそういう声を聞きますので、その都度建設省と連携をとりまして、事態の改善に努めているつもりでございます。  それから、第二点のマル経資金の消化率の問題でございますが、御存じのように、最近中小企業の分野におきましても、設備投資の沈滞という現象が出ております関係もございまして、資金需要が全般的に見まして若干落ちております。そういうことから、中小企業対策の重要性からいたしまして、予算の確保につきましては十分努めておる次第でございますけれども、その実行段階におきまして、その条件に合致しないものとか、あるいはまだそこまで意欲が出てこないというような事情等がございまして、消化率が一〇〇%に達していないという実情でございます。ただ、先ほど御指摘になりましたように、経営指導員の指導というのが前提になっておりますので、そういった点でもし先ほど御指摘のような点がございますれば、私ども、きめ細かく今後も指導してまいりたい、このように考えております。
  102. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  私どもの、御質問を受けました担当者の説明に若干正確度を欠いた点がございまして、申しわけなく、その点はおわびを申し上げますが、ただいま問題になりました施設整備費は、日本住宅公団に対する出資金でございます。したがいまして、当然それだけの資産価値が残る資本的支出にしか充て得ない性格のものでございまして、そういう意味において、居住棟である建物に資本的支出と観念できるほどのものがあれば、理論的には対象にならないことはないという趣旨のことを申し上げたようでございますが、実際問題といたしまして、居住棟についての資本的支出と思われる程度の投資と大修繕との差もなかなかつきがたいものでございますから、これは実施主体である住宅公団あるいは建設省等でお考えいただいて、私どもも御相談にあずかるわけでございますが、貴重な出資金でございますから、集会場、プールといったような明らかに新しい施設が新設されて、団地住民全体の受益になるようなものに使うことになろうと存じます。
  103. 中野四郎

    中野委員長 これにて荒木君の質疑は終了いたしました。午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  104. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大原一三君。
  105. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、主として今回の経済見通しにつきまして、少し数字細かく御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず、総理にお伺いしたいのでありますが、総理、いままでの経済見通しというものを見ますと、当たったことは一回もないですね。当たったことは一回もありません。そこで、四十五年から身近に五十一年までの当初の見通しと実績の誤差を見てみたのですが、三四%狂っております。マイナスの方に下方修正した誤差が八年間で六回、上方修正した年が二回であります。三四%狂っておりますから、これは当たるのがおかしいのですね、総理大臣。そういう見通しでありますから、五十二年度にしても二一%の誤差率があるわけであります。大体、社会主義計画経済においても、これは当たらない。ましてや自由主義経済において見通しが当たるというのは、これは全く八卦に近いわけであります。若干、非常に近い数字が出たことはあります。答えだけ、実質成長率だけは。しかし、中身を見ますと、まるっきり見通しの間違い。答えが当たっただけで、中身の構成要素は全く当たっていないわけであります。  どうも最近の国会での議論を見ますと、七%とか六・七%、これはまるっきり共産主義みたいな計画経済らしい議論がいっぱいありまして、そういう前提で議論していますと、われわれが余りこの数字にこだわり過ぎるというのは、そもそも政策の間違いをこれから引っ張り出してくるのじゃないか、ないしは、むだな議論を誘発するのではないかという気がするのですが、総理大臣、いかがでございますか。
  106. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 経済見通しと実績の乖離ですね、これは石油ショック前の例の高度成長期は、ずいぶん違ったと思うのです。これはつまり、実績がかなり見通しよりは上目に出てくる。現実の問題として見通しを修正したかしないかは別として、結果はかなり高く出るというような状態で、その当時も、いま大原さんのおっしゃるような見通しの権威というものについての議論が行われたことは、私もよく記憶しておりますが、しかし、とにかく見通しに沿って経済を運営していく、これは私は大事な問題だというふうに考えておりますので、今度設定いたしました七%成長、これはとにかく、いろいろの角度から検討いたしまして七%、こういうふうに決めたわけでありますので、できる限りこの数値が実現されるように努力していきたい、このように考える次第でございます。  それから、その答えの七%、これももとより大事なんですが、その構成要素といいますか、それにつきましても、ずいぶん検討いたしまして詰めておるわけでありますので、その構成要素につきましても、できる限り、この見通しというものをにらみながらやっていきたいものだな、このように考えております。
  107. 大原一三

    ○大原(一)委員 政策の一つのめどとして見通しを立てるということは悪いことじゃないと思うのであります。それはあくまでもめどであって、最後は狂うものであるという認識のもとのめどだろうと思うのですね。これはもう七%と言ったところで中身がいろいろあるのですから、七%ということは余り意味がないのであります。その真ん中のファクター、いろいろの経済要素、そういったものに対する政策手段、それに対する対応ということを考える上でのめどであろうと私は思うのであります。  ところで、その程度の蓋然性しかない、三四%も間違う可能性のあるものを、福田総理大臣になられて、ロンドンでもお約束になるし、今度はまたアメリカとお約束になったというのは、総理大臣、そういった性格の数字であるという前提がどうも忘れられていやしないかという感じがするのでありますが、いかがでございますか。
  108. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私がロンドンで約束したとか、あるいはアメリカに対して約束したとか、そうおっしゃいますが、約束はしていないのですよ。ロンドンでも、見通しをお互いの国が述べ合ったです。しかし、見通し、そのとおりにいっている国がありますか。これはありはしないのです。ドイツのごときは、五%というのが二・四%じゃありませんか。アメリカは六%と言った。これが四・幾つになりますか、五%は切る形勢だ、こういうふうに言われておる。そういうことで、見通しを述べ合った、それが国際的な約束だというようなわけのものじゃありません。  もし約束したのだということになれば、ドイツが一体、半分以下になったというようなことになれば大変なことになる。しかし、そういう見通しを述べ合って、その見通しの実現のために最大限の努力をいたしましょうや、こういう約束をいたしておるわけですが、日本日本なりに私はベストを尽くしてきたと思うのです。あれだけの変動のある中で、六・七%と言ったのが、とにかく五・三%だ、こういうことなんですから、これはかなりの努力をいたしておるわけで、そういう点につきまして国際社会からわが日本が責められるという理由は、ちっともないのです。  ただ、責められるかどうかというような点は別といたしましても、わが国が経常収支、これはあれだけの黒字を露呈しているということは、いまの国際社会に対しまして私は大変責任を感ずるのです。しかし、これを何とかして是正したい。是正するためには、やはり主軸をなすものはこれは内需の拡大だ、こういうことになりますので、私は、そのまた主軸といたしましての財政政策、これに非常に重点を置いて物事を考えておる、こういうことでございます。
  109. 大原一三

    ○大原(一)委員 私の考え結論から申しますと、そういう蓋然性しか持たない数字を国際的な文書の中へ入れるということは、やはりいかがかということが私の結論であります。あえて言われるなら、六%ないし七%ぐらいの成長と言われればいいのですけれども、それを七%、まあ程度と書いてありますからいいんですが、その程度の蓋然性しか、もともと成長率という数字にはないということを申し上げたいわけであります。  ですから、今後そういう問題がある場合には、どうかひとつその辺のことを十分御議論いただかなければ、国会での議論が七%に全部集中してしまって、そこだけいってしまって、大事な予算が、まあそんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、ということは私、むだな議論をたくさん誘発する可能性があるということを、まず総理に申し上げたいわけであります。     〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕  ところで、これも総理にお伺いしたいのですが、時間がございませんので、一五十二年度の経済見通しの誤り、これの基本的要因は何であったかというのですが、私の考見方を申し上げますと、これは企画庁経済学者も言っておりますが、在庫調整の見誤りだと思うのです。在庫調整が順調に進まなかったということに、やはり私は基本的な間違いがあったと思うのであります。  四十八年度の数字に比べまして、いまなお治癒していない、大変な企業の重荷になっておりますのが在庫指数であります。この前、申し上げまし光が、四十八年を一〇〇として在庫でもって四六%、在庫率つまり出荷割る在庫ですね、在庫率で四〇%という水準にある。これが企業の重荷になって生産が伸びない。したがって、生産は四十八年に比べて四%水準、企画庁長官もおっしゃいましたが、ようやく最近頭を出した程度であります。したがって、そういう状況にあるために雇用が伸びない。雇用は全産業でもって四%、製造業はもっとひどい十何%落ち込んでおりますが、四十八年に比べて実数が落ち込んでおるんですね。これは大変なことであります。したがって、失業にそれが影響していく。さらにまた企業倒産。倒産件数は四十八年ベースの倍、九千件が一万八千件という数字になっているのだと思うのであります。さらにまた企業収益はどうかと見ますと、また水面下に引っ込んじゃったですね、九月決算は。これは三百七十三社の数字でございますけれども、八七%と水面下に引っ込んだ。これは後で申し上げるのですが、ドイツやアメリカと違った日本のいまの企業経営の非常にいびつな姿が、はきりそこに出ているわけであります。  それで、いま申し上げた一番最初の出発点である在庫調整、これがいつ完了するのか。そして、その完了の時点を見定めない限り、五十二年度の過ちをまた五十三年度に繰り返すと思うのです。その辺のお見通しをお聞かせ願いたい。総理大臣、いかがですか。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 結論から先に申し上げますと、今年の三月ないし四月ごろに在庫調整が、ほぼ概して終わるのではないか。その場合、もうよく大原委員は御承知のように、その中でも構造不況業種という問題がございますし、また石油化学一非鉄金属等一特殊な問題を持っておりますものもございます。全部とは申すわけにまいりませんけれども、概して三月ないし四月ころではないかというふうに私どもは考えるわけでございます。
  111. 大原一三

    ○大原(一)委員 ただいまの答弁よくわからないのですが、適正在庫水準になるのはいつごろでございますかとお聞きしたわけであります。適正在庫水準から御説明願いたいと思います。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、先ほどお話の中に、五十二年度の過程で在庫の測定を誤ったのではないかという御指摘がございまして、私も実はそう思っておるわけでございます。その場合、しかし適正在庫水準とは何かというのが、やはり一番問題でありまして、景気の先行きが暗いときには、どうしても企業家の心理としては、適正在庫という、その適正の物差しを下げていく傾向があると思います。また、五十二年中にそういうことが現実に起こっておったと考えますので、そこで適正在庫水準とは何かということは、また景気の動向の結果でもある。原因でもございますが、結果でもあるというふうに申せると思いますので、先ほど三、四月ごろには概して在庫調整が終わると申し上げましたのは、まあ理屈っぽく申しますれば、企業家なり、あるいはエンドユーザーなりの立場から、在庫は補てんをぼつぼつ必要とすると判断するような、そのような時期を一応在庫調整が終わる時期と、こう考えたらいかがかと思います。
  113. 大原一三

    ○大原(一)委員 結論から申し上げますと、私、長官の見通しは大変甘いと思うのですが、そうならない限り五十三年度の、私に言わせますと非常に楽観的な、もろもろのファクターはつながってこないと思うのです。  ところが、果たして、そういうところにいけるかどうかということを、いま若干、数字をもって御質問申し上げたいのでありますが、その前に、最終需要、GNPですね、それと生産との乖離という問題を、まず第一番目に御指摘申し上げたいのであります。  どういうことかと言いますと、企画庁長官十分御存じのとおり、GNPは伸びておるにかかわらず鉱工業生産はちっとも上がらないという状態ですね。GNP、最終需要は伸びているのだけれども鉱工業生産が上がらない。幾ら公共投資をやっても、それが生産につながり、雇用の増加、有効需要の創出効果にならないという事態ですね。これが典型的な、四十九年から五十二年の経済の実態であります。  四十三年から四十八年まで見ますと、GNP成長率に対して鉱工業生産の伸びは、九・六と一一・四ですから、弾性値は一以上であります。ところが四十九年から五十二年になりますと、GNPは一四%伸びておるにかかわらず生産指数は土・四ですから、弾性値が〇・一六ですね。つまり、需要だけ空回りして、生産と雇用に波及効果がまるっきり及んでいないという実態であります。それはなぜかと言いますと、先ほど申し上げましたように、一時は四十八年に比べて水面上五六%も多かった在庫が有効需要を吸収してしまって、肝心の経済の実体にエンジンがかからなかったということであります。この辺の的確な認識が、五十三年度の公共事業を、総理のおっしゃるように七%成長に引っ張っていけるかどうかといいますか、雇用も多少伸び、さらにまた企業収益も好転するようなエンジンがかかるかどうかの分かれ目だと私は思うのです。  そこで申し上げますが、五十三年度はGNP実質成長率七%に対して鉱工業生産六・三%、完全にエンジンがかかりますとおっしゃっているのですが、それならば、先ほど申し上げました四六%ないしは在庫率四〇%という、きわめて高い数字が、どのようにして三月までに適正在庫水準に落ちるかということを計数をもってお示しいただきたいのです。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御説はよくわかりますし、実は私も、そこが一番問題のところだと思っております。すなわち、一年余りの公共投資がなぜ乗数効果を呼ばなかったか、波及効果を呼ばなかったかということは、まさしく在庫の存在であった。したがって、もし同様なことが起これば、政府がどれだけ公共投資を今回やろうと、再び同じようなことが起こらないとは保証しがたいではないか、こういうお尋ねでございますから、そこで在庫の先行きをどう見るかということは、きわめて大事なことになります。  私どもは、ただいまのところ、少しジグザグではございますけれども、ただいまの傾向というもの及び稼働率指数を含めまして、在庫としては減っていく方向、稼働率指数としては上がっていく方向に入るのではないか。ことに、先ほど言われましたのは原材料在庫についての御指摘でございました。(大原(一)委員「製品です」と呼ぶ)在庫率指数四七と言われましたが、製品在庫でございますと、在庫率指数が一二五ぐらい……(大原(一)委員「四十八年を一〇〇とした」と呼ぶ)四十八年にされましたか。はい、わかりました。  でございますから、流通などはかなり下がりつつあると思いますけれども、原材料在庫などはまだ重い。傾向としては、そうでございますけれども、まあそれがジグザグながら減っていく方向にあるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  115. 大原一三

    ○大原(一)委員 企画庁エコノミストは、この在庫調整については非常に楽観的でございますね。  若干さらにまた細かくお伺いしたいのでありますが、いま、ちょっとおっしゃいましたが、今度は在庫率指数で申し上げます。四十五年一〇〇の。在庫率は、製品在庫で、七月がピークで一三二・七、十一月が一二五・一と大変下がっています。七ポイント。在庫指数でも四ポイントぐらい下がっています。販売業者在庫も、一六二から一五四ですから、八%下がっております。  その中身を見ますと、下がっているのが資本財と建設資材であります。一六六から二三二に建設資材は落ち込んでおりますね。耐久消費財と非耐久消費財、生産財は余り動いていない、これは構造不況業種を抱えておりますから。ということは、公共投資の関係の需要の発注がこの辺に多少影響してきたというふうに考えていいのかと思いますけれども、この現在の傾向は長期的なトレンドと見ていいのかどうかということであります。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまおっしゃいましたとおりの数字でございますが、私どもは、ジグザグではあるけれども、そういうトレンドを示しつつある、大変に厳格に申しましたら、いまの段階では、と考えたいと申し上げる方が正確かもしれません。しかし、この数カ月そういう傾向にございますから、公共投資の累積的な効果、ことに、このたびの十五カ月予算を考えますと、逆に動くという要素よりは、その傾向をたどっていくという要素の方が明らかに多いのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  117. 大原一三

    ○大原(一)委員 考えたいわけでありまして、七%も、そうありたいわけですから、それはそうならないと、七%への成長は踏み出しが、まずきかないと思うのです。  ところで総理大臣、建設資材が、後の稼働率もそうでございますけれども、非常に高くなっているのです。在庫の減り方も一番激しいのです。来年度はここへ需要が集中するわけでございますね。大丈夫でございましょうか。
  118. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公共事業をやりますれば、まず第一次的に、それに直接の関係のある建設業、そういうことになろうかと思いますが、その需要するところの資材あるいは労務、こういうところにいろいろ変化が出てくる可能性があるわけですね。その徴候も出てきておるわけです。ですから、これが経済全体を乱してはまた困るのです。その辺には格段の配慮をしながら、この財政計画は進めなければならぬ、このように考えております。
  119. 大原一三

    ○大原(一)委員 次に、稼働率を見てみたいと思うのでありますが、稼働率指数が急に上がっていますね、十月から十一月に。これは私もいろいろ調べてみたのですが、これは一時的な要素か長期的なトレンドか、私はわからないわけであります。  時間がございませんので、たとえば輸送用機械、乗用車ですね、これも稼働率が非常に上がっている。四ポイントほど、十月に比べて十一月の稼働率が上がっているわけでございます。あとは一般機械、トラクター等ですね、これも工作機械は若干ふえておるというようなことでありまして、これは大変ありがたい指標でございますけれども、長官、これも大丈夫でございましょうか。上がりましょうかね。総理は私に、稼働率を九〇%水準にしたいということを、去年の臨時国会お答えになったわけでありますが、長官は、五十四年の三月に九二%程度にしたいというお見通しをお立てになりました。これが長期トレンドであるとすれば、総理のおっしゃったのは、ことしの三月でありますが、いける可能性もあると私は思うのでありますが、その辺の分析は、長官、いかがですか。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十一月の稼働率指数が八八と出ましたときに、正直を申しまして、この数字はちょっと、かなり高い、余り回復が早過ぎるという感じがいたしまして、私も、業種ごとに何か特殊な要因があるかと思って調べてみました。  一番大きいのは輸送機械でございますけれども、しかし、おしなべてプラスになっておりますものですから、余り特殊な要因とも申しにくい。しかし、そうかといって急に八八はどうも高過ぎるので、これは総理にも御報告をしたのでございますけれども、もう少し分析をしたり、あるいは様子を見ておりませんと、八八をベースにこれから先を考えていいものかどうか。むしろ、九月、十月が八四、五でございましたから、そこからスタートに考えておいた方がまあ無事ではないかと、そういうことも実は申し上げておったようなわけで、これが本当のトレンドでございましたら、これはまことに結構なことで、それを祈っておりますけれども、なおこれは、やはり用心深く見ておく必要があるのではないかと思っております。
  121. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がありませんので、次に雇用の問題に移りますが、失業統計は、ちゃんと見通しは、この「経済見通し」の中に出ているわけですね、要するに就業者を労働力人口と差し引いたら失業になるわけでございますから。来年度の失業は百十万人とお見通しになっております。五十二年度が百十五万人というお見通しでありますが、労働力人口が、伸びが落ちていますね、丁四から〇・九へ。これはどういう理由でございますか。
  122. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 御指摘のように労働力人口の伸び率は、五十二年度の一・四%に比べまして、五十三年度は〇・九になっております。  その主な原因は、労働力率が、五十一年度の六三・一四から、五十三年度には若干、六三%程度に下がっているということであります。
  123. 大原一三

    ○大原(一)委員 こんなに落ちるのですかね。〇・五%違うと、失業が二十五万人違っちゃうのですね、変な計算で恐縮でありますけれども。〇・九に落ちる点が、ちょっとわからないのであります。  それから、もう一つ次に、企画庁の数字によりますと雇用者所得というのをお出しになっておる。雇用の増が出ておる。これは割り算いたしますと一人当たりの賃金ベースが出ます。五十二年度一〇・五%アップ、五十三年度九・三%アップになっております。  ところで、いま問題の春闘ベースでございますが、一〇・五%に見合うものは五十二年度八・八%でございました。来年は一人当たり国民所得ベースで一ポイントほど下がりますが、春闘ベースはこの中で幾ら見込まれていらっしゃいますか。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 春闘のベースをどう見るかということは、労使の間で決められるべき問題について政府が何がしかの予見を与えることがあってはならないということから、従来とも実は申し上げておりません。ただいま雇用者所得として一ポイントほど落ちておるであろう、そういう計算になるがと言われましたことはそのとおりでございますけれども、御承知のように、春闘で問題になりますのはいわゆる所定内賃金でございます。それ以外に、申し上げるまでもないことですが、所定外賃金がございますし、さらに特別給付金、ボーナスでございますが、それがございます。それから、雇用者所得といたしましては、さらにそのほかに退職金、それから役員等の賞与等もいわゆる雇用者所得の中に入っておりますので、したがいまして、春闘の対象になります部分は雇用者所得全体のほぼ五〇%、五四%ぐらいにしか当たっておりませんので、春闘はいろいろな意味で大きな影響を持ちますけれども、雇用者所得全体のうちではその程度のウエートしかない、こういうことはもう御承知のとおりのことでございますけれども、つけ加えさせていただきます。
  125. 大原一三

    ○大原(一)委員 これは見通しですから、大変むずかしい問題だと思うのです。やはり七%も見通しでありますから、多少気合いをかけないとわからないところがあるわけでありますから、これはそこまで積み上げて細かく見通しをお出しになったものとも思いません。ただ、五〇%とおっしゃいましたけれども、これがほかへ連動するわけでございますから、春闘に参加する労働組合だけのベースでもってわからないというのはやはり問題だと思います。  それはともかくといたしまして、時間がございませんので、それでは、そういう環境の中で、いま企業収益はどうなっておるかということですね。これは大変な問題がございます。四十八年九月決算に対して五十二年九月で八七%、これは先ほど申し上げたとおりでございます。東証一部三百七十三社、三社に一社が赤字経営に転落したということであります。この要因は、石油ショック以来の非常に苦しい経営。プラスやはり円高ショックによるものというふうに解釈されますが、いま日本とアメリカの企業経営の実態というものを見てみますと、えらい違うのです。経済成長率は日本は非常に高いけれども、企業の収益はまた水面下に大変落ち込んだということですね。一三%マイナス。アメリカを見ますと、これは石油ショック以前に比べますと四割伸びております。水面上四割。ドイツの場合が二割ぐらい伸びておる。ちなみに、アメリカの売上高利益率というものを見ますと八・四%、九月決算で一・九%、四倍違うわけです。日本は四分の一であります。そういう条件の中へ置かれておるということですね。  これは、これからの経済政策を考える上で、十分分析していただかなければならない問題があります。たとえば営業外費用、これは主として金融費用でありますけれども、アメリカは売り上げに対して二%です。わが国は六・六%という高い水準になっております。原価、いわゆる売上原価でございますが、アメリカ九二に対してわが国九六%、ここでも四%開きがある。この売上原価、これは労働賃金や原材料なり販売費等ですが、それと金融費用の両方を加えたものが大体六%になってしまうわけですね。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、これだけ高い金融費用を負担してあくせくしている企業に対して金融面から負担軽減の方途は、今後のロングランで見た経済政策からどうお考えになりますか、お示し願います。
  126. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまおっしゃったアメリカあるいは西独とのミクロ企業の分析については、私もあなたと同様の認識を持っておるわけでございます。日本の金融費用が高いということは言うまでもない話でございますけれども、やはり間接金融が多いというところに多くの問題を求められなければならぬわけでございます。この点は今後、直接金融ないしは自己資本比率を高めるという方向で考えるべき問題でございます。  ただ、最近は御案内のように、日本の金利は世界の中でも、ドイツ、スイスを除きますれば、いま最も低い水準になっておりますから、これは漸次改善されていると思っておりますけれども、最終的にはやはり直接金融あるいは自己資本比率を高めるということでなければこれの比率は低まらないであろう、このように思っております。
  127. 大原一三

    ○大原(一)委員 これは大変むずかしい問題でありまして、わが国の自己資本構成比率を高めて景気不況に対する経営弾力性を強くするということは、言うべくしてなかなかむずかしい問題であります。せっかく大蔵大臣は金融財政の専門家でありますから、いままでの行きがかりにこだわらないで、証券、銀行さらにまた税制面で、ひとつ思い切った政策を展開していただきたいと思うのであります。これまた、時間がございませんので、別の機会に譲ります。  ところで、こういう企業所得の落ち込みを前提に、ことしの三月さらに税収に影響のある九月決算の利益は、対前期でどういうお見通しをお持ちになっていますか。
  128. 村山達雄

    ○村山国務大臣 詳しいことは主税局長から申し上げますが、御承知のように、われわれは、法人税の見方につきましては、企画庁の方の生産、物価、それからわが方で計算する所得率でやっておるわけでありますが、御案内のように六カ月以上法人税税収では、ずれがあります。したがって、それを全部税収ベースに置き直さなければならぬ。しかも、中間納付がございますから、ずっと落ちていく過程では、実際の算出年税額が落ちる以上に当然その年度の税収は落ちる、この二つの要素があるということは御承知のとおりでございます。  詳しいことにつきましては主税局長から答弁させます。
  129. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がございません。問題点だけ御指摘申し上げますが、生産、物価でひっかけてしまって——所得率が問題であります。こういうような落ち込みが一体いかなる要因によって起きたかということですね。そこらを考えますと、やはり来年度税収見通しの中で相当ゆゆしき問題をこの八七%というのは提供していると思うのです。その辺十分御分析願わないと、また大きな穴があいたりする可能性があると思うのであります。  それから、話が変わりますが、来年度の経済成長率を総覧いたしまして総理大臣にお聞きいたします。  五十二年度と五十三年度を比べてみまして、成長に対する寄与率、財政に対する期待が非常に強くなっておりますね。五十二年度財政の成長寄与率、五・三%に対する成長寄与率二四%、五十三年度はそれが二七%に高まっております。私は外生要因だけ申し上げます。次に住宅が四・九から八・〇と、倍の期待感をそこへ寄せていらっしゃるということになりますね。ところが、住宅の方はさっぱり伸びてないのです。政府金融何万戸にかかわらず、現在まで出た指標というのは、昨年度、民間住宅を合わせて横ばいの建築戸数しか出ておらぬわけですね。だから、住宅金融公庫の枠をふやし、いろいろなことをやっちゃっても、民間資金で済むものが住宅金融公庫、政府金融に振りかわっていくということが行われているんだろうと思うのです。戸数がさっぱりふえてない。これはウエトトが小さいから問題にいたしませんが、総理大臣、この財政に対する期待感がこういう形であらわれているわけです。  どういうことかと言いますと、来年度のGNPの伸びは二十二兆六千億。それに対して財政は六兆一千億でございますから、三・七倍。GNPの伸びが財政の伸びに対して三・七倍という関係に相なっております。これは五十二年度も全く同様であります。三・八倍ということになっております。そういう財政の働きかけ、これが私が先ほど申し上げましたような幾つかの経済の引っ込み、たとえば在庫調整のずれ込み等々企業収益の状況の悪化、まあ二百四十円は一応二百四十円として考えてもいいんだと思いますけれども、この辺の見通しの誤りがありますと、総理、この財政期待感というものが失敗しやしないかという問題でございますが、いかがでございますか。
  130. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 御説のとおり五十三年度は七%成長、その中で財政が寄与すべきことを期待されているということ、これは非常に大きいわけです。二・一になりますか。これがどうなるかということは七%に非常に影響しますけれども、しかし、これだけで決定的だというわけではないのです。やはり個人消費はどうなるか、民間住宅がどうなるか、企業設備投資がどうなるか、在庫がどうなるか、これもまた十分注意してフォローしていかなければならぬ問題である、こういうふうに存じます。しかし、財政は政府のかじの取り方で、これは一番動きやすいところでございまするから、これが目標のとおりにいくように全力を挙げなければならぬ、このように考えています。
  131. 大原一三

    ○大原(一)委員 いまの有効需要だけの空めぐり現象というもの、これを物離れとおっしゃっていますが、物離れという表現は間違いだと思うのです。物についているけれども、生産につながらない。中間在庫で有効需要が吸収されるという形が物離れ。物は離れていないのです。ちゃんと物はついているけれども、生産指数に結びつかないという形で物離れ現象が起きているわけです。それが直らない限り、われわれの期待する財政、財政、財政というのは、なかなか最後の生産、雇用まで火がついていかないということを基本的に私は申し上げたいわけであります。  それと、企画庁長官、いまデフレギャップをどれぐらいお考えになっておりますか。時間がございませんので私から申し上げますが、まず、失業で〇・七%平均水準を上回っておりますね。一・三と二の差。それから設備稼働率で名目、つまり四十五年基準で八八%といいましても、実際は四十五年のげたを差し引きますと七八%程度の水準だろうと思うのです。二割、ここでやはり不均衡がございます。経常収支、政府の見通しを正しいとして六十億ドル、これを円に換算して、輸入性向でぶつ掛けますと十四、五兆円の有効需要相当の輸入に相当しますね。黒字六十億ドルを全部輸入したとする。輸入要因を国内経済で吸収するということになりますと、十四、五兆円のデフレギャップに相なるわけであります。先ほど宮澤長官は、国際均衡と完全雇用ということをおっしゃいました。これは確かに経済運営の理想でございます。国際均衡を達成するということであれば、いま申し上げました十四、五兆円のデフレギャップ、さらにまた労働と設備のいわゆる不完全雇用、これ全部吸収するために、私の計算でございますけれども、やはり二百兆円に対して七、八%のデフレギャップがあることになろうと思うわけです。ですから、永久に輸出急増のおそれは残るということを申し上げたいわけでございます。ですから、有効需要政策だけで果たしてわれわれのいま当面の国際的期待を充足できるかどうかということは大変問題があるわけであります。  そこで、私は総理に申し上げるのですが、やはり年間経済をずっと見通して、金利政策、需要政策の弾力的運用ということを特に御要請申し上げたいわけであります。その点について総理考え方を一言お聞きしたいと思います。
  132. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 景気調整のてこといたしましては財政と金融がかなめでございます。これが両々相機能していくということでなければならぬと、このように考えております。当面、五十三年度予算につきましては、財政面を相当強く打ち出しておるわけであります。金融面におきましても、これからの経済情勢の推移を見まして機動的に対処していきたい、かように考えます。
  133. 大原一三

    ○大原(一)委員 だから、七%が大事じゃなくて、国際均衡が大事なんですね。だから、七%を数字にするということは、表に出して国際の話に入れるということは間違いだと私は思うのです。やはり国際均衡を達成するような経済的努力をするということでありまして、七%でも、いま申し上げたように、十四、五兆円のデフレギャップがあるとすれば、これは七%で足りないかもしれないのです。そういった努力をしていかなければならない。  私は、本予算の際にまた為替政策、金融政策その他、それに関連してお伺いしたいのですが、最後に申し上げたいのは、われわれ日本経済の円有利のメリットの活用が十全ではないんじゃないかということを申し上げたいのであります。いまは、水ぶくれ経済と言ったら大変悪いのかもしれませんけれども、それをきちんと整えるには絶好のチャンスであろうと思うのです。そういった、つまりふくらすだけではなくてきめの細かい、いわば整理作業を経済政策の中に、総理大臣、はっきり打ち出していただく絶好のチャンスだと思うのです。そのために構造不況対策その他おとりになっているわけですが、単に後ろ向きの対策だけではなくて前向きの政策をとっていただきたいと思うのです。  そこで、一つ最後に、通産大臣にお聞きしたいのであります。  為替差益の還元という問題について、石油についてお伺いしたいのであります。石油業種の今度の決算を見ますと、円高差益を含めて上期だけで約一千数百億の利益が出ております。一千二百億、これは上期だけですよ。この計算には二十円のドルの減価が計算の基礎になっている。それに見合ったものだと私は思うのです。ところが、二百七十円からいま二百四十円ぐらいですか、三十円下期に下がった分を延長しますと、単純に計算して千八百億、合計四千億の石油企業の利益に相なります。これの還元でございますけれども、これについてどのような手だてをして消費者並びに五万のガソリンスタンドへの還元をお考えになっているか、数字でもってお教え願いたいと思うのです。
  134. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 石油業界には、円高のために相当大きな為替差益が出ておることは事実でございます。昨年の年末OPECの総会がございまして、幸いに、そのときに値上げが延期になりました。そういうこともありまして、もうしばらくの間この為替差益は続くと思います。そこで、さしあたりは若干は値下げの余裕はあるわけであります。石油会社におきましても、その点を十分配慮をいたしまして、ある程度の値下げの方向に進んでおります。  ただ、石油業界全体を見ますと、企業内容がまちまちでありまして、非常に内容のいいところと、現在でもなお赤字経営のところがございます。そういう二つのグループがあるということが一つと、それから過去三、四年の間に相当大幅な赤字が累積されておるということ、こういうこともございますので、そういうことを全部総合的に判断をいたしまして、今後の石油価格のあり方を検討してまいりたいと思います。
  135. 大原一三

    ○大原(一)委員 数字が出ないわけでありますが、現在二千円値下げというようなことも巷間うわさされております。次の本予算の審議の際で結構ですが、ひとつその数字を出していただきたい。お見通しで結構でございます。  それから、きょう農林大臣にお伺いする予定でございました飼料価格の円高メリット、これは農林大臣、なるほど、よく下がっております。これは全農主導型の下げ方でございますから。これもまた、時間がございませんので、大変申しわけございませんが、次の機会に十分審議さしていただきます。  ありがとうございました。
  136. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 これにて大原君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  137. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は、せっかく経済論議で関心を集めているさなかでございますが、どうしても避けて通れない農業問題、減反にしろ、余り米処理にしろ、生産者米価の問題にしろ、魚の問題にしろ、林業の問題にしろ、これは農業と一口に言っても、長い歴史というか経験を積まなければできない産業でありますから、したがって、机の上で鉛筆で事足りるという産業じゃございませんし、そういった面を伺わしていただきたいと思うわけです。     〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕  せっかくの予算委員会ですから、総理大臣もかつては農林大臣として、農民をだれよりも愛すというせりふを残してきた記録があるわけですが、それから、いまや農林水産省と名前を変えて、大変な期待を受けて北海道から登壇した中川農林水産大臣等に、やはり姿勢を伺いたいわけです。  そこで、この予算委員会という財政措置をする委員会に対しては、初めておととい大蔵大臣から、十五カ月予算という線でこれから十年間水田利用再編成というものに取っ組むつもりである、したがって二千百二十億というものをさしあたって承認してほしいという提案が、農業のランクに入っておるわけでございます。したがって、この財政担当委員会である予算委員会としては初めてこれを論議するわけでございます。  ところが一方、政府もそうでしょうがここにおられる委員諸公は、これは現地ではかなりいろいろとそれぞれの分野から、団体から個人から相談を受け、農民の苦悩というものを訴えられたということは、まず間違いないだろうと思います。そこで、実際その水田利用再編成に当たる農民は、いま雪解けを待って、ちょうどこの国会の周辺で夜や昼やと、ヘルメットをかぶり、つるはしを持ちながらビル、地下鉄工事、道路工事というところに、東京、大阪を中心にして、おるわけです。したがって、残っておる母ちゃん方は、物事を決めるいわゆる親方がいないところでありますだけに、各議員諸公は、いろいろな面で大変に相談を受けたと思います。ところが、おととい大蔵大臣から財政措置をしてほしいということでこの予算委員会に、国会に初めてかかるわけですが、先立つものはと思いまして、私は、これはいつ国会提案になるのだろうか、こういうように思っておった一人であります。  そこで、農林水産省は、通達なるものでこの一年間にいろいろと、知事会の小委員会である農林協議会とかあるいは各県の農政部長会議とかに行ったり来たり、補助金も含めて、もしこれに協力してくれるならこれだけの補助金を上げますよ、協力しなければ来年にその取り残し分を加算して減反してもらいますよ、こういうことで各町村では、各農家でいやとかオーケーとかということがなくても大体割り当てが完了しつつあるというところに、この二千百二十億というのが提案されたわけです。  そこで、まず、総理大臣等に伺う前に事務当局から、一体この水田利用再編成対策というものをいつごろから考えて、どのような経過でこの一年間日程を追ってきたかということを、詳しくここで聞かしてもらいたいと思います。
  138. 松本作衞

    ○松本政府委員 水田利用再編対策につきましては、米の需給計画の動向を従来から把握をしてまいったわけでございますが、五十一年米穀年度、五十年の十一月から五十一年の十月末まででございますが、この間の消費動向なり生産状況を検討いたしまして、その結果、需要の減少が続き、一方稲作志向がさらに強まるということが予想以上に実態として出てまいりましたために、そのような実態にかんがみまして、昨年の八月以降、内容の検討をいたし、地方公共団体、農業団体等からもそれぞれ数次にわたりまして御意見を聞いてまいったわけでございますが、そのようなことをもとにいたしまして対策をまとめまして、昨年の十一月十九日、農林省としての基本的な考え方を具体的方針として、地方公共団体を通じて明らかにしたところでございます。
  139. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、せっかくですから、その通達を出して、いま現在における、皆さん方が言う下部、末端の様子というものをちょっと聞かしてください。
  140. 野崎博之

    ○野崎政府委員 昭和五十三年度の転作等の目標面積三十九万一千ヘクタールの都道府県別配分につきましては、昨年十一月十九日、農林省として各県に内定通知を行いましたが、各県にありましては、この目標を厳しいものとしながらも、推進協議会を設けて、積極的にその推進に努めておるところでございます。したがいまして、都道府県から市町村への内定配分についてはほぼ完了をいたしております。  それから、県からの転作の目標面積の内定配分を受けた市町村、農業団体も、一様に厳しいものと受けとめてはおりますが、大勢といたしましては、現下の米需給事情にかんがみ、転作条件の整備のための措置が強化されることを前提といたしまして、本対策をやむを得ないものとして、関係機関が一体となってその推進に努力しなければならないという対応姿勢が出てきております。  なお、市町村からの農業者別内定配分につきましては、現在集落座談会等を通じまして、大方の市町村で配分作業が進められている段階でございます。
  141. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私もざっくばらんに聞いていますから、この程度の質問にはメモを読むのじゃなくて、いまの空気を知らしてくれという質問であるだけに、一字一句読むという答弁じゃなくて、どういう状態であるかということをわれわれも聞きたいわけだ。  それでは、通達なるものを私らは初めて見せてもらうわけだから、委員長にあらかじめ承認を得ておりますので、ちょっと配ってもらいます。これが初めてこの予算委員会に見せられる書類なわけです。  そこで、私が思うには、どうでしょうかね、これから十年間、水田利用再編成という新しい米の政策というものを提案するということなんです。ところが、いま財政措置をしなければならないから予算委員に初めて聞かされたということなんです。一体これだけ大きな、十年間をやろうという問題を事務当局の権限である通達で、正直に言えば、これだけいる政治家がつんぼさじきになって、果たしてできるだろうかということを私は疑問に思っておるわけです。そこで、事務当局がどんどん進めてきて、新しい農林水産大臣を据えて、そしていま今日になっているわけですから、新しい大臣が座ったときには、もうほとんど下へ流れて配分に大騒ぎをしておるという状態であるわけですから、したがって、この通達というものに対しての考え方を、これは後で法制局の方へ伺いますけれども、通達を出した御本人が通達というものをどう心得ておるか、ちょっと聞かしてください。
  142. 野崎博之

    ○野崎政府委員 五十三年度におきます水田再編対策の内容は、もちろん予算の成立を待って正式に決定をいたすわけでございますが、自治体や農業団体から農家の営農計画等に支障を来さないようにという強い要望がございましたので、早期に内容を示して協力を求めることにしたものでございまして、そういう意味で農林省としての考え方を通達として出したわけでございます。
  143. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから棒読みするなと言うんだよ。私の質問は、何で早目に出したかと言っているんじゃないのだよ。雪解けを待つのは大変だということぐらい私だって知っていますよ。それだったら去年のうちにこの国会をやればよかったじゃないですか。これだけの大きな農業国会をやったっていいじゃないですか。私の言うのはそうじゃないよ。あなたが通達を出したのなら、通達行政というのがあるわけだから、通達というものをどういうようにあなたは解釈しているかというんだよ。大臣質問を早くしたいから、言ってごらんなさいよ。これは通達を出した方でなければわからないよ。大臣ではだめなんだよ、大臣の権限じゃないんだから。
  144. 野崎博之

    ○野崎政府委員 農林省の考え方を下部に示しまして、下部の地方団体等を指導するための一つの基準というふうに考えております。
  145. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そう。各官庁の指導のうち、書面をもってやる訓令が通達とある。これは指導じゃないよ。後で話をするけれども、予算をつけてこれからやれという法律事項だよ。  そこで、私はここにいる先輩、みんな先輩の委員ですが、ちょっと調べたところを申し上げますと、内閣法制局の第一部長をやられた山内一夫先生、いま大学の先生をやっておりますが、こういう解説をしておる。「通達」とは「書面をもって送付された訓令」である。「したがって、通達は、上級行政機関が指揮命令権に基づき下級行政機関に対して発する」、すなわち代理権を与えることである。たとえば建設大臣は河川行政で通達を出せるというのは、河川法五十一条があるからです。したがって「法律は最も民主的な法の形式であり、通達は、法律に違反しない限りにおいて」初めて有効である、したがって通達行政は法律がなければならない、こういうように教えてあるのだが、法制局どうですか。これは皆さんの先輩だか同僚だか知りませんが、第一部長をやった方。どうですか。
  146. 真田秀夫

    ○真田政府委員 通達ということについて御説明いたします。  通常、通達といいますのは、行政部内におきまして、上級行政機関が下級行政機関に対しまして、その有する指揮監督権の発動として、書面によって一定の行為あるいは不行為、まあ作為、不作為といいますか、あるいは法令の解釈、政策の基準等について命令を出す、これが通例、通達という形で行われるわけでございますが、ただ、通達という名前のついているそういう文書は全部、いま申しましたような指揮監督権の作用としてのあらわれの場合ばかりかというと、必ずしもそうじゃないのであって、いわゆる行政指導の実体を持っているものについても通達という名前で下部へ流しているという例も間々あるわけでございますので、名前だけから判断するのじゃなくて、その通達を出した実体の基礎にそういう指揮監督権があるかないかということによって、実はおっしゃったような定義が当てはまるということになるわけでございます。
  147. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私の大事なところは、通達行政というのは許されているわけだ、もちろん常識的にね。ただ、通達行政というのは法律がなければ通達行政ができないんだという山内先生の解釈は間違いないか、それを言っているんだよ。どうです。そこだけひとつ。
  148. 真田秀夫

    ○真田政府委員 お答えしますが、その点をただいま申したつもりでございまして、通例は指揮監督権の発動のあらわれなんですから、指揮監督権は法律に基づくわけなんですから、それの範囲内で、指揮監督権のあらわれとして、下級の行政機関に対して上級行政機関が書面をもって基準を示す、これが通達なんです。それが一般通常の場合なんです。そのほかに、行政指導を内容とするものであっても、通達という名前で、関係方面へ文書で行政機関がある事項を示すということもあり得るということです。
  149. 川俣健二郎

    ○川俣委員 行政指導という以外に出せる権限は、いま言われたのは遠回しに裏の方から説明してくれたのですけれども、だれしも感じられることは、通達と法律の違いは、通達行政は許される、法律がなければだめですよということだけは納得しているようですね。  そこで、いまの通達というのは、何といったって、農業には農業基本法があるわけです。皆さんの力作、労作、三十六年ですか、社会党と民社党からも対案が出て、政府案が出て、約半年かかって、北海道だ、仙台だというふうに公聴会もやりながらつくった農業基本法というのがある。この農業基本法に、なるほどくしくもと言っちゃ悪いのですが、「農業生産の選択的拡大」、いわゆる皆さんがやろうという水田利用再編成という事項があります。それが皆さん承知のように第二条にあります。ところが、その四条に、この二条の事項を実施するときには、「必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」と書いてある。これはどうでしょうかな。この辺はどうですかな。これはどなたでもいいです。
  150. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに四条でしたか、書いてございますが、第二条第一項では、「需要が増加する農産物の生産の増進、需要が減少する農産物の生産の転換、」ということで、減少する場合の転換も法律に義務づけられております。四条では「必要な」ということがあって、必要のある場合と必要のない場合とがありますから、この際は必要がないのではないか、法律になじまないのではないかということで、法的措置をとらないということでございます。
  151. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ちょっと大臣、それは本会議でも、その問題なんだ。いいですか。「第二条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」というのですよ。実施するときには必ず法制上も一必要だ、財政上も必要だということじゃないの。だから予算を提案しているのじゃないの。そうじゃないの。だと思いますよ。この解釈でいくのなら、いよいよ農業からは代議士は永久につんぼさじきです。これは自民党とか社会党じゃないですよ。減反の問題とかあるいは余り米の処理というのは代議士は避けて通れないということは、われわれも知っていますよ。だけれども、一応国会で論議すべきじゃないですか。十年かかってこれからやろうという大きな事業でしょう。しょうがないから予算のときだけ、これが連帯と協調の政治家か。総理どうです。どう思いますか、これ。
  152. 中川一郎

    ○中川国務大臣 生産調整はことしに始まったものではございません。御承知のように、昭和四十五年、四十六年から生産調整をやってまいりまして、この方法でやってそう大きな矛盾はなかったということで、ほぼ目的を達成してきたものであって、急にこの国会だけに、法律によらない仕組みを持ち出したものではございません。約七、八年定着したことでございますので、議論は議論としていただきますけれども、けしからぬというところまでいくのかどうか。いままでも予算委員会もあったことですし、農水委員会その他で十分議論をしながらやってきたことでございますから、法律上の議論は議論として承りますが、私どもとしては従来も、第四条に「実施するため必要な法制上及び財政上の措置を」という意味は、必要があればという解釈でやっておるわけてございまして、やらないから法律違反だということではないし、そしてまた、過去六年も七年も法律違反をしてきた、勝手に私どもがやってきたことではございませんで、毎年予算もお願いをして、本委員会でも毎年御議論なく通過してきたことでございますので、これは農林省だけが急にやったことではなくて、国会全体で今日まで来た経緯があるということだけは申し上げておきます。
  153. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは大臣、ずいぶん無理して回答していますけれども、成果を得ていないと書いてあるんだよ。やってみたけれども成果がない。したがって、今度は心を新たにして十年計画を立てるという。だから新しい名前なんだ、水田利用再編対策というのは。でなかったら、いままでの減反政策のそのままでいいんだよ。二千百二十億つければいいんだよ。そうじゃないんだ。だから、大蔵大臣の説明の中に、農林水産省の項目にはこれだけが大きく入っているわけだよ。これから新たな提案なんだよ。  それから、農林委員会にかけたと言うけれども、農林委員会は、もうすでに十一月十九日の通達その他全部終わった後なの。  それからもう一つ、財政担当委員会としては知らなくたっていいのかな。全部終わりましたから、割り当ても終わったから。割り当てというのは、金額がいったから割り当てが終わったのであって、それじゃ、あと予算だけ承認してくれという提案なのかよ。その辺どうですか、これ。  それからもう一つ、むしろ福田総理、いまの農業というのは、生産者米価といったら各党全部武道館に集まる、よしよし、上げてやろう、がんばろう、こういうことで農民に約束する。そして分室の審議会で十九対五で決まってしまう。これの繰り返しよ。しかし、与党とか野党とか言わずに、米価の問題は、ただ高ければいいというものじゃないのだ、高いというだけじゃだめなんだ。余り米ないだろうと言ったって、余り米あることは現実なんだ。もう少し国会の場で論議さしてみたらどうかと私は言っているのだよ。そういう意味において、連帯と協調の精神の福田内閣としては、もう手続踏んでしまいましたから結構です。予算だけ承認してくれという提案ですか。それなら私、この予算委員会は農業の質問なんか何も要らない、そういうことですよ。どうです。総理大臣
  154. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 本件は、農林水産委員会で農林省から経緯等は十分説明して今日に至っておる問題である、このように承知しております。今度のこの対策は農家には厳しい問題でございますが、しかし、これを法律をつくりまして、そしてその法律に基づいてこうしなければならない、こういうような措置をとるよりは、やはり連帯と協調ですよ。これは話し合いいたしまして、そして政府と農家、その間には地方自治団体も入りますけれども、これらの関係者がずっと話し合って理解と納得の中で行われる、この方が、法的に一方的に政府はこうするんだと言うよりは、行き方としていいのじゃないか。そういうようなことから、地方公共団体、また農業団体、農業団体はまた農家、そういうふうに話し合いをずっとしておる。こういうことで、その方がむしろ事の性質上民主的というか、そういうことじゃないか、こういう考え方に立っておるわけであります。
  155. 川俣健二郎

    ○川俣委員 連帯と協調と言ったって、相談かけられないものは、連帯も協調もないでしょう。この委員会には相談かけてないのでしょう。とても雪解けを待っていられない、予算委員会が終わるのを待ったら大変だというなら、去年のうちにやればいいでしょう。あるいは理事会にかけてもいいでしょう、二千百二十億というものを出すわけだから。そうじゃないですか。それじゃ、もう少し法律論争やりますか。
  156. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まず最初に、これは成功したか失敗したかの論議がございましたが、失敗したから、まずかったから今度やったのではないか、こういう御意見でございます。昭和四十五年からやりまして、おととしぐらいまでは効果が上がって、需給のバランスがとれてうまかったのです。しかし、おととしあたりから生産の事情と消費の事情とに食い違いが出てまいりまして、さらに一段の過剰傾向になってきたということで、法案でやらなかったからやったからの問題とは違って、需給の動向から出てきたことでございますので、成功の面もあれば、またそうでないものも出てきたというところからやらせていただいたところでございます。  次に、国会審議をと申しますが、そして先ほど、通達を出してからとおっしゃいましたが、通達を出す前に十一月二日、十六日、十七日、十八日と専門の担当委員会で十分御議論、集中審議をして、その上で出したものでございます。もちろん、予算委員会で御必要があるということであれば十分御審議をいただかなければならないところでございますから、この上とも十分御審議賜るようお願い申し上げる次第でございます。
  157. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたは効果が上がったと言うけれども、県への説明書、通達その他付属書類によると、御苦労かけたけれども効果がなかったのでというのだ。いままでの減反政策は効果がなかった、今度は心を新たにして新しい政策を提案します。これはこういう大綱だよ。よく読んでごらんなさいよ。  それからもう一つ、では数字で言いますか、あなた効果があったと言うけれども。農林省、あなた方が出した「食料需給表」という速報です。これは効果があったかどうか、ちょっと数字でみんなに見てもらいましょうや。十二ページ。いわゆる自給率を試算してみたというのだ。大豆を試算してみたら四十八年は三%、四十九年、五十年は四%、五十一年は三%と下がったのだ。これは効果があったのかな。
  158. 中川一郎

    ○中川国務大臣 個々の作物について言えばいろいろございますが、要は過剰米をおこさないという、生産調整は四十七年、八年から四十九年、五十年ぐらいまでは効果を達してきて、まあまあよかったということでございまして、転作をやった趣旨、目的にはまあまあ効果があった、こういう意味を申し上げたわけでございます。
  159. 川俣健二郎

    ○川俣委員 事務当局、もう少し数字で言ってくれよ。効果がなかったのでしょう。なかったから農林大臣に頼んだのじゃないの。新しい農林大臣に頼んだのでしょう。今度は十年計画で本腰でやってみる、こういう提案だったでしょう。それぐらいは知っているから私は聞いているのだ。数字で言ってごらんなさいよ。効果があったのなら見せてくださいよ。効果があるなら何も新たな提案しなくたっていいじゃないか。効果がないから新しい視点に立って提案するのでしょう。効果があるならいままでのとおり続けなさいよ。効果がないのでしょう。何をおっしゃるのですか。
  160. 松本作衞

    ○松本政府委員 先ほども大臣からお答えいたしましたように、米の生産調整につきましては、計画に対する達成率が、四十六年におきましては九八%、四十七年につきましては一〇八%、四十八年につきましては一一二%、それから四十九年につきましては九八%、五十年は一一一%ということで、いわゆる米の生産調整という目的につきましてはほぼ目標を達成したということを申し上げておるわけでございますが、五十一年以降、需給関係が変わってまいったということを、先ほど大臣も申し上げたところでございます。  ただいま先生のお話の、それでは食糧需給全体が、国内の自給度が下がっておるではないかということにつきましては、大豆、麦等につきまして生産対策を講じておりますけれども、全体の需要の中での割合は必ずしも伸びておらないということは御指摘のとおりでございますが、このことは必ずしも生産調整がうまくいかなかったから自給率が伸びなかったということとは別の需給関係による点もある点を御了解いただきたいと思います。
  161. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理、こういう感覚ですよ。一〇〇%達した、一〇一%達した、あるときは九五%しか達しなかった。これは言うことを聞いた減反の割合よ。目的はそうじゃないのでしょう。目的は、米以外のものをいかにしてつくって自給率を高めるかというのが目的じゃないの。私はびっくりしたな。今回の提案は、米をつくるのを抑えるという提案かね。そうじゃないでしょう。アメリカから買ってきたり方々から買ってくるものの自給率を高めるというのが目的じゃないの、あなた。違うかね。どうも論議がちょっとおかしいよ。
  162. 中川一郎

    ○中川国務大臣 前回の生産調整は、緊急避難として、過剰米が七百万トンも昭和四十五、六年ごろございましたので、何とかこの過剰米を処理しようということだけが中心でございました。したがって、あのときは減反政策もやむを得ないというので、休耕までして緊急避難、需給のバランスをとることを主眼としてやったものでございます。今回は、総合食糧政策として、米をやめてほかの自給率の低いものに重点を置くということでございまして、過去のことについては、そういった総合食糧政策がなかったという点を反省して、今度は総合食糧政策というふうに乗り出したのでございますから、過去のものが失敗であったか成功であったかは、その辺の政策目的が違っておったということも御判断願いたいと存じます。
  163. 川俣健二郎

    ○川俣委員 過去のあれはいまの大臣がわからないでいいのだ。総合農政ということはあるのではないですか。減反政策というのは、ほかのものに転作するというところから始まったのだよ。草ぼうぼうではだめだ、底なし田ではだめだ、何とか畑作にしてやるべきだということから始まったのではないの、総合農政というのは。いまのように、ただ米だけを減らして転作を考えたのではなかったということを言われると、これはめちゃくちゃではないかな。これはどうなんです。これはちょっと問題だと思うよ。こういう提案なら、とても農業という——少し事務局が言いなさいよ、事務局はずっと長いことやっているんだから。
  164. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昭和四十五年から始まった生産調整は、たしか四十五、四十六、四十七、四十八、四十九の五年間でしたか。その後三年——それまでは休耕も相当入っていたわけなんです。ですから、草ぼうぼうというような姿でスタートをした、そして需給のバランスはとれた。その後、食糧総合農政という言葉で自給率も上げる工夫はしてまいりましたが、今回こそは本気で、そのために名前も変えて、姿勢を変える意味で総合食糧政策ということで再スタートをした、こういうことでございます。(「水田再編だろう」と呼ぶ者あり)水田の面から言うと水田再編ですし、それから食糧の面からいくと総合食糧政策、こう二面があるわけでございます。
  165. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう少し農林省の皆さん方から聞いてごらんなさいよ。米をつくるのをやめさせるということではだめなんだ。米以外のものをつくらせて農家の所得を上げることを考えなければ米は減らないのだということからスタートをしたんじゃないの、そうでしょう。それはどうですか。
  166. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私はそのように申し上げたつもりでございます。自給率も上げて、農家の生活もよくするということに力点を置いた、土地から言うと水田利用再編成政策でございますし、食糧の面からいくならば総合食糧政策、こういう二面を持っておるわけでございます。
  167. 川俣健二郎

    ○川俣委員 水田利用再編対策ですから。私の方から農林大臣に言うのはおかしいですけれども、水田利用再編対策という今度の政策ですから、農林事務局の提案は。  そこで、農業基本法の問題は、これは法制局どう思いますか、二条と四条の関係は。聞いておったでしょう。
  168. 真田秀夫

    ○真田政府委員 農業基本法四条第一項の問題だと思いますが、「政府は、第二条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」なるほどこのとおり書いておりますが、この第二条第一項、八号まで並んでおりますけれども、これを見ますと、必ずしも法律がなければ動かないというようなものに限らないのですね。(「何言っているんだ、法律に書いてあるじゃないか」と呼ぶ者あり)ええ。それで法律は、国民の権利を制限し、義務を課するというような事項は、これはもう法律がなければならない。しかし、行政指導なりあるいはお話し合いで十分達成できるという政策については、これは必ずしも法律をつくらなければならないというものではないというふうに四条は読めるだろうと思います。
  169. 川俣健二郎

    ○川俣委員 法制局長官というのは、もう少し期待しておったのですけれども、こういう解釈なら、とてもじゃないけれども——山内先生も法制局におられたと思うのですが、この面もあります。解釈は。これはだれが読んだって選択的拡大ですから。こういう言葉も政治家は全部使っているわけですから。選択的拡大やるから協力してくれ、これがいま、代議士の演説ですよ。そのためには法律上、財政上の措置を講じなければならないと書いてあるんですよ、農業基本法に。それが支障ないというのはどういうわけですかね、あなた。どういうことですかね、それは。
  170. 真田秀夫

    ○真田政府委員 法律論を申し上げます。第二条に掲げてあることのすべてについて法律が要らないんだと私言っているわけじゃないのであって、第二条に八号まで掲げてありますその事項を実現するのが、これが農業基本法の眼目なんですが、そのうち法律を必要とするというようなものについては、その法律を早く出しなさい、つくりなさいということなんであって、法律事項も何も含んでいないものについてまで法律をつくれというふうには、法律論としてそういう読み方は必ずしも私はとらないということでございます。
  171. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう解釈でいきますかね、いまの福田内閣の法制局長官の解釈は。これは恐らく客観性ないんじゃないですか。あなたの仲間はみんな法律学者だろうけれども、ちょっと首かしげられるんじゃないですか、この条項は。  それはなぜかと言うと、この問題でどうしてもそういう解釈をとるのなら、問題は現実なんですよ。たとえば農地法にひっかかる面がかなりあるわけですよ。ひっかかるというか、農地法を通らなければできない面がかなりあるわけですよ。それから農業委員会というものにかけなければだめなわけですよ。これは素通りだ。急ぐというので素通りだ。それから土地改良も——この土地改良というのはいままでどのぐらい使ったと思いますか、時間がないから聞かないけれども。この土地改良というのは、暗渠はやったわけですよ。だけど用排水はやっていないわけですよ。それを畑にして大豆植えろといったって無理なんですよ。こういう法律条項も土地改良法にひっかかるわけですよ、そこへ大豆を植えると。国会審議してつくった法律なら、土地改良法であろうが農業委員会の問題であろうが農地法であろうが、この国会で論議して法制化すればそういうことはないわけですよ。一片の通達で出してやらせるところに混乱しているわけですよ。  まあ、事務局には聞かないけれども、あなたに聞かせますわ。たとえば小作人契約です。小作人契約というのは絶対です。法律ですから。そうすると、地主は契約どおりに小作料を払いなさいと言ってしまうと、小作人は減反に協力できないのです。こういう問題があるのですよ。小作人契約というのは絶対なわけですから。それから農業者年金の法律もありますよ。これはおやじから息子だけじゃない。他人に譲ったときも、譲った人は農業者年金をもらっている。その場合にも抵触する面が出てくるのだ。それから耕土培養法というのがある。御存じですか。大豆を植えるなら、大豆を植えるような肥料しか使えないというものがある。それから農薬の取締法というのがある。総理大臣、こちらは水田、こちらは大豆、こちらはキャベツ、空中散布している。去年やったわけですから。大豆に効くであろうというので薬をまいた、稲がだめになってしまった。それから農薬取締法にひっかかるわけなんだ。だから、連帯と協調の精神で立法の機関に相談すべきではなかったのかと言っているのだ。これはどうです。私の提案は無理かな。どうですか。
  172. 中川一郎

    ○中川国務大臣 逆説的に申し上げますと、第二条第一項はずいぶん多くの内容を含んでいるのです。農産物の生産の増進、需要が減少する農産物の生産の転換、外国産農産物と競合関係にある農産物の生産の合理化、農業生産の選択的拡大、これには農林行政、予算上でやっているものは幾らでもあるわけです。これを一つ一つ、北海道のジャガイモが多くなってきたからなるべく少なくしてください、これも法律、野菜が少し多くなりましたから法律ということであっては、全部法律によらなければならないという、規定することすら大体無理があるのではないか。確かにこの問題は非常に大きな柱でございますから、法律でやる方がいいかどうかの議論はありますけれども、第二条第一項で行うものは全部法律でやれというようなことを規定すること自体がまさにむずかしいことではないかと思うのです。  そういう意味で、「必要な」というのは必要なものについてはやらなければならぬと解釈するのは当然ではないかと思うのです。農業の増産あるいは転換、全部法律でやるということになったら、これはもう農林省の政策は全部法律ということになってくるわけでございますので、どうかひとつ、いままでも支障もなかったことでございますし、こういう問題は法律よりは、むしろ先ほど総理からお話があったように、団体や農家の方々とこういった事情をよく話し合って、そして話し合いの上に従来もやってきた仕組みをやっていこうということでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  173. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはどうかひとつと言ったって、どうかひとつというところに問題があるわけでしょう。これは大体補助金じゃないと思いますよ。ずっと精神を読むと補償金ですよ。食管法で米をつくらしているところに、こういう指示でやりなさい、これは性格的に言えば補償金ですよ。法制局長官は補助金でも結構ですという解釈をするであろうから聞きませんけれども、これはりっぱな補償金です。そして、二千百二十億ですから、十年計画ですから、二千百二十億なんというものではないですよ、来年からは。まず三年間は固定的にやれと言うのでしょう。大臣、これはもう少し真剣に、まじめに取り組むべきだと思いますよ、と私は思いますね。法律になじまないといったって、従わなければ法律を使うのでしょう。この指示に従わなければ来年の分にそれを繰り越しますよということでしょう。これをマスコミはペナルティーと言いました。あなたの方はペナルティーではないと言う。農民から言えば、これは罰則でないの。どうです。  町村長の言うたものをちょっと読んでみますか。−これはこういうふうに青刷りでやっているのです。こういう色違いまでやって各町村長は大ごとにやっているわけだ。普通の文書ではないですよ。この文書の中に「五十三年度に実施しない、あるいは達成しない場合は、ペナルティ(罰則方式)であくまでも次年度以降へ加算され、限度数量も控除されます。」これは町村長の知恵で書いたのではないですよ。こういうことです。これをどう解釈しますか。
  174. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ペナルティーと見る人もあろうと思いますけれども、私どもの考え方としては、公平を期さなければならない、やらない人が有利になって、やった人は損をするということではいけない、公平確保の最小限度の措置である、こう思っておりますので、どうかひとつこの点も、何かやらなかったからといって特別の措置を講じたりするわけではありませんで、ことしできないならば来年もひとつ責任を持ってくださいということで、ほかの人がやったことにベースを合わせていただく、最小限度の公平措置である、こういうことでございます。
  175. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理大臣、そこがかみ合わないのですけれども、私らは、これはいいというものだったら、与野党通じて決めてかかってペナルティーをとるべきだと思いますよ。これはいいというものだったら、法律規制にしてやるべきだと思います。そのかわり、どういうふうにやるか論議すべきだと思います。そうじゃないのだ、いまの大臣の話だと。やってもやらなくてもいい、ただ村全体の協調性がなくなるからやってもらうようにしましょう、こういう程度なんだ。それじゃ、やらなくたっていいんだな。
  176. 中川一郎

    ○中川国務大臣 やっていただくための公平確保の最小限度の措置である、こういうことでございます。
  177. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農協に入っていない農民、出荷業者の組合員が、大臣御存じのようにいますね。この出荷業者の組合は農協に入っていない。よし、自主流通米皆つくれ、おれ買ってあげるから、こういう混乱もあるわけだよ。こういう農政でいいのかと私は言っているのだ。総理大臣、どうです。  総理大臣がかつて農林大臣をやっているころの抱負を拾ってみましたよ。伊勢湾台風でことしの農産物は大変だと思ったら幸い米が増産になってよかった、今後もこの生産性向上とほかの農産物もやるように皆さん協力してくれという予算委員会のあいさつがやはりあります。記録はさすがに。いまのような論議をずっと聞いて、総理大臣どうです。混乱ですよ、地元は。
  178. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 今度の施策は農家には大変厳しいことをお願いするわけなんです。それを法律で強制的に、強権的にやるのがいいのか、あるいは話し合いで理解と納得のもとにやるのがいいのかという政治判断の問題であろう、こういうふうに思いますが、これはこういう性格のものであるから、何と言っても農民の理解、納得のもとにやるのがよかろう、こういうことで法を用いない、そういう行き方でいくことにしたのだろう、こういうふうに思います。やはり今度の施策は法で強制するということにはなじまないのじゃないか、そのように思います。御理解を得る、こういう努力をとことんまでいたしまして、そしてそのもとで実行するということがいいのじゃないか、法律で一方的に押しつけてやるというようなことをやっても、理解と納得がなければ実効を上げ得ないし、また、法律がなくとも理解と納得があればこれでやれる問題だ、また、その方がいいというふうに私は思います。
  179. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは総理大臣、私は違うと思いますね。農政は私は余りわかりませんけれども、政治というのはそういうものじゃないと思います。やはりこれでいこうと政府提案したものを国会が決めてかかった場合には、政治家として責任と権限を持って指導すべきだし、やらせるべきだと思いますよ。ほかの方は法律でがんじがらめにしておいて、この米は指示に従わなくたっていい、従ってほしいけれども、従いたくなかったら、なるべくおまえには補助金もやらないしいろいろと便宜も図らないぞ、村人にもつまはじきさせるように持っていくよというのが農政かな。これは違うと思うね。総理大臣、もう少しその辺……。  とにかくいま混乱していますよ。七%が公約から目標になったとか、日中は片っ方はもうエンジンを吹かして待っているとこう言うし、デノミはただ言うたまでだと、こういう論議をやっている間に、もっと、国民の生活、農村は大変なんですよ。どうですか。この論議をやりましょう。どうですか。それとも二千百二十億だけ承認してくれればいいという提案なら、私はこの質問をやめます。二千百二十億円でいいというならこの論議はやめます。農業問題やらなくたっていいのなら。どうです。総理大臣
  180. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 二千百二十億円につきましても御承認を願いたいし、同時に減反政策につきましても、総合政策ですね、これにつきましてもひとつ御協力を願いたいとお願い申し上げます。
  181. 川俣健二郎

    ○川俣委員 相談かけないで協調と連帯、都合のいいときだけどうかひとつと言う。本予算のときはこうはいかないと私は思うがね。  時間的にあれだから内容に入りたいのだが、もう一つ。各県知事を集めてとこう言うのだけれども、県知事を集めてこれをやらせるというのはどこから来たのですか。機関委任事務ですか、どうですか。
  182. 加藤武徳

    加藤国務大臣 水田利用の再編成は機関委任事務ではないのでありますけれども、しかし、非常に大切な仕事であることは申すまでもないことでございます。そこで地方団体におきましても、これを理解いたしまして協力をいたしておるところであります。
  183. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、自治大臣、機関委任事務ではないとおっしゃった。自治省もそのように受けとめておるようです。しかも、自治省の方でレクチュアをやる場合に、余り相談もなかった。ところが、県知事や農政部長をじゃかすか集めて、自治省を通さずに、これはいいのかな。そして、一月二十日の閣議に初めてかけてしゃんしゃんです。通達は。あしたから本会議を開くというときに、総理大臣を初めみんな本会議の方に頭がいっているだろうし、このときに初めてかかった。自治省は正式に相談をかけられたのはそのときだと言うのです。機関委任事務じゃないと言うのだけれども、これはこういうことで各県の農政部長を集めて、農政部長は反対だとは言えないでしょうな、農林大臣に来いと呼ばれたら。こういう場合に自治省の方々はどう思いますか。好ましくないと思いますか。今後はやはり自治省も含めて論議検討すべきだと思いますか。
  184. 加藤武徳

    加藤国務大臣 自治省に正式に協議のあったものではないのでありますけれども、先ほども申しましたように、非常に大切な仕事であることはよく理解をいたしておるところでございます。そこで、国家組織法によりまして、各省庁はその所掌事務につきましては指導監督をなすことができるのでありますから、当然行政指導に応じて協力をいたしておる、かようなことでございます。
  185. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから総理大臣、こういうやり方で、手法で今後もいくのですか。それとも今回は時間その他の関係で……。とにかく農業という問題は、やはり財政担当も含めて大きな国会委員会にすべきじゃないですか、論議すべきではないですか。どうですか。
  186. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 確かにこの種の問題は重要な問題でありますので、これは国会で大いに御論議願う、こういうことはもう重要だと思います。ですから、農林水産委員会におきましては、これはもうずいぶん御論議を願っておる問題なんです。ただ、これを実行するための一つの手段である財政措置、これが今度予算案として御審議を願う、こういうことになっておるわけで、これもまた御審議を願う、こういうような性格のものでございます。
  187. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農林水産委員会のあれも知っております。私は議事録も見ました。全然すれ違いよ。財政が伴わない委員会でやったってどうにもならないでしょう。農業従事者の方は、農民の方は財政を割り当てられているわけだからね。皆さんの解釈では予算が通らないうちにやってもいいのだろうから、全部割り当てられているのですよ、各家々にもうすでに。だから、はいと手を挙げてわかりましたというわけですから。そして、いまこの予算委員会で財政問題を論議しているわけだからね。こういう状態です。こういう考え方でいいでしょうか、予算委員会というのは。さっき公団家賃の問題もありましたが、こういう先取り行政、特に初年度は二千百二十億ですが、しかも三年ごとに十年計画でやっていくと、こういう提案だから、私は農業としては大きな、総理大臣挙げて農業をこれからどうするかという提案を、財政委員会も含めて論議をすべきではないだろうかという考え方なんだけれども、この状態でよろしいということでありますか。今後のことも聞いておるのです。
  188. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 農林水産委員会の方は御協力をお願いしておるわけでございますが、御協力をお願いする前提といたしましては、補助金といいますか、財政手段が伴わなければそれが実行できない、ですからそれが前提になってお願いをしておる、こういうわけでありまして、時間的に先後することはこれはやむを得ない、そういうことでございますが、財政担当委員会たる当予算委員会においても十分御審議をお願いしたい、かように存じます。
  189. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この農林委員会で本当にそういう問題を論議しているのじゃないのです。すれ違っておるわけよ。これはもっと総合的に、法律的に、制度的に論議すべきではないだろうか、本会議でも質問があったように。いや、これは法律とはなじまないから政府が一方的にやる、政府ベースでやっているわけだ、いま。国会は全然関係ないわけだ。これは責任も権限もないわけだ、これだけの大きな問題を。そうですよ。そういう考え方でいいんだろうかと言っているのです。もう一度どうですか。
  190. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほどから申し上げておりますが、これは要するに政治判断の問題だろうと思うのです。法律事項として立法に基づいてやるのか、つまり国家権力としてこの減反をやるのか、あるいは協調と連帯で理解と納得を得まして、そうして法律を用いないでやるのか、こういう問題だろうと思うのです。政府の方では法を用いることはこの仕事になじまない、こういう見解で法を用いないわけですよ。ですから、政府の判断が間違っているという、院の御意思がそこへいくということになれば、政府考え直さなければなりませんけれども、政府といたしましてはぜひ、この方がいいのだ、法を用いないで納得づくでやっていただいた方がいいのだということでお願いをしておる、こういうことでございます。
  191. 川俣健二郎

    ○川俣委員 政治判断でやるだけに、政府だけの一片の通達でやっちゃいけないのだと私は言っているのだ。どうですか。政治判断でやるだけに、一片の通達じゃだめなんだ。これは大きな問題だと思いますがね。さっきから一つずつ——全部やったら大変ですけれども、あらゆる法律にひっかかるわけだよ。小作人法律、農地法、全部かかるのだから。そんなこといいのかな。
  192. 中川一郎

    ○中川国務大臣 担当委員会でございます農水委員会でこれは法律でやるべきであると、こういう御決定があったにもかかわらず政府がやらないならば、これは指摘を受けてあれしなければならぬと思いますけれども、その方の専門委員会でございます委員会では法律でやるべしという御決議もいただいておらないわけなんです。しかも、従来もこういうことでやってまいりましたし、第一回目の四十五年のときにも、いまより多い面積の生産調整をやってきたこともあるのです。でございますので、われわれとしては、過去の実績から見ても、また農民のことを考えてもこの方がいいと。それからもう一つは、農家の人にただ単に押しつけているのではなくして、やはりそれなりの補助金を出して、反四万から最高七万までということで、米からほかにかわってもまずまず農家経済、稲作農家経済には支障がないだろう。あるいはまた、稲作転換するに当たっては、土地条件を整備しなければならぬというものについても転作奨励金として百二十億という、知事が独自で使えるきわめて弾力的な予算もそこに併用をして、それ以外にも幾つかあります。圃場整備事業から飼料作物の導入等々きめ細かくやりまして、そして話し合いでやっていこうということでありますから、法律に基づかないからこれは絶対いかぬのだということでなくて、やってみていただきまして、また法律上問題があるということであれば御議論は賜りますけれども、法律でなければならないというのを、農水委員会でも御決議があって私どもが従わないならば、おしかりこうむってもでございますが、いまここで急におしかりなく、今後とも十分話し合って、法律がいいということになれば法律にもかえますし、ひとつその点は御理解と御協力を願います。
  193. 川俣健二郎

    ○川俣委員 農業の本論を聞きたいのですけれども、農水委員会でそういうことを大臣、言わせませんよ。議事録ずっと読んでごらんなさい。それから本会議の代表質問も聞いてごらんなさい。代表質問は衆議院も参議院も、法律をつくってやらなければだめなんじゃないのですか、このままやったら法律違反じゃないのですか、行政権が侵害しているんじゃないのですか、こういう質問まで出ているのに——私が初めて言っている言葉じゃないですよ、これ。本会議でも出ているんじゃないのですか。そういうことだと思いますよ。
  194. 中川一郎

    ○中川国務大臣 本会議でも意見がございましたし、委員会でも意見があったようでございますけれども、それが委員会の全体の空気ではないということでございますので、全体の空気がそういうことでありますならば——もう一回申し上げます。本会議でも委員会でも御意見のあったことはよく知っておりますけれども、それが委員会全体の意見であるならば、これはあるいはしなければなりませんけれども、意見があったからといって全部それに対応しなければならないというものではないのではなかろう、こう思うわけでございます。
  195. 川俣健二郎

    ○川俣委員 だから総理大臣、いま担当大臣だからそう言わざるを得ないのだろうけれども、問題はこれだけ大きな問題だから、そしてこれからさらにこの問題を、一年じゃないわけだ、十年やるわけだよ。きのうまで米を植えるように土地改良をやって、米に合うように土壌をつくって、消毒もして、そういう経験のあるところへ、がらっと今度は水はけがよくなければいけない大豆を植えるという。これが一カ所じゃないわけだ。大豆だけじゃないわけだから、つくる方の農民から言えば、政治的判断だとか、そんななまっちょろい調子じゃちょっとうんと言えないよ、これは。言ってみたところでできやせぬ。こういう声がある。それじゃ秋までみんなつくってみるか、ただし食管、あれで買わないだろう、買わない場合はすぐにもみがら、粉にして飼料にでも売ろうか、こういう相談まで出るくらいだから、それに対して、それもやむを得ないという言い方なんです。おたくの方は。そういう言い方なんですね。従いたくなかったら従わなくたっていい、しかし、買う場合には規制しますよ。そうすると、農民の対抗手段として、それじゃ、サイロからすぐに精米の方へ、粉にして、そうして飼料なりその他に売ろうか。それから農協に入らない出荷業者組合は、よし、何ぼでも持ってこい、うまい米だから、すぐ今ずり米と称して、縁故米と称して都民に売った方が得だ。古米の話に入っていきたいのだけれども、いま都民の古米というのは、三五%対六五%で食わされているわけだ。古米三五%で食わされているわけだ。そういうような大きな問題も含めて、生産者だけじゃなくて、消費者も含めて、米というものに対して国会がもう少し全責任を持って論議すべきではないかと言っているのだ。それがわからぬかな、総理大臣。連帯と協調とは口では言うけれども、いま初めて二千百二十億円にちなんで提案されているだけなんだ。
  196. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに米の生産調整は大変な仕事だと思うのです。神代以来とも言ってもいいぐらい昔から米をつくっていたものを、全国で一三%強、一四%近く休んでいただくわけでございますし、少ない県でも五・九、多い北海道においては三五%協力願っているわけでございます。したがって、大変なことではございますけれども、生産者の間にも、消費のないところに生産はないという考え方もありまして、ともどもに政府と生産者とが一体にやっていこう、こういうことでやっておることでございますから、どうぞひとつ、しかもいま急にこれをやったことではなくして、十年に近くやってきたことを、さらに一段と総合食糧政策ということで再発足することでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはまた場所をかえて、バッターもかわって論議が残ると思います。これは論議は残ると思います。いままでと同じだと言うけれども、いままでと違う提案だから。そうでしょう。いままでと同じだったら、何も大蔵大臣の説明になくてもいいわけだ。新しい提案なんだから、予算委員会に対して。そうですよ。新しい提案だという認識がなければだめだと思いますよ、この米の問題は。米を抑えるだけじゃないわけだから、ほかのものをつくれというのがうらはらにあるわけだから。だから二千百億出すわけでしょう。いままでこれに一兆五百億かけたのでしょう。一兆五百億かけたけれども効果はなかったという文章になっているじゃないですか、中身を読んでみると。だから、これは新しい提案じゃないの。この辺どうだろう、会計検査院でもちょっと論客になってもらおうか。
  198. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私はすべてが同じだとは言っているのじゃなくて、生産調整というものをいままでもう約千億近くつくっておったと思います、単年。(「超えている」と呼ぶ者あり)超えておりますか。そうすれば、そういう仕組みもいままであったことでもございますしという意味であって、決してこの問題が軽い問題だとは思っておりません。消費者対策もあれば一いろいろとまた古米を食べております。三五%食べておる。これもやはり備蓄米というものがなければいけないというので二百万トン備蓄するならば、やはりそれはローテーションで古い米も食べていただかなければ備蓄はできないわけでございますから、そういうことをいろいろきめ細かくやっておりますし、国会の場においても必要があれば幾らでもひとつ御議論いただいて、よりよいものにしていきたいと存じます。
  199. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あるべき備蓄米を食わせて、その備蓄米を古米と言っているんじゃないのだ、私は。古米をいま聞いてみましょうか。四十二年からの古米があるわけですよ。ちょっと説明してください、古米を。それを食わせているのはなぜ食わせているか。大臣、こういうあれもあるのだ。私は、だれそれが言ったとは言わないけれども、新米だけ食わせると国民が味を覚えちゃう、こういう意見もあったのだ。だから、われわれとしては、国民サイドから見れば、どうせその米は一生食わないのでしょう。一生食わないようなものなら、欲しいところへ援助でも何でも——東南アジアでも、こういう提案もあった、かつては先輩方から。そうしたら、日本のジャポニカは食わない、インディカというぼそぼそ米しか食わないとこう言う。食わしてみたら、うんと食う。食うから援助米を出したわけだ。そうしたら農林省は何と言いました。トン三十二、三万もする米を五万円ぐらいの国際価格のところへ売ったら損だ、こう言う。それじゃ、とっておけば得するかと言うんだよ。とっておけば利子と倉金で、だんだんとそれが資産評価されていくのでしょう。評価損が何十億と毎年かけているわけでしょう。それは、きめ細かく心配しているのは大臣だけじゃないですよ、私らだって心配しているから質問しているんですよ。それじゃ古米の話聞かしてください、どのくらいか、数字を。
  200. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の十月末現在で、新米穀年度に持ち越しました古米は三百六十七万トンでございます。さらに詳しく申しますと、そのうちの約三百万トンが古米、約七十万トンがいわゆる古古米、五十年産米でございます。
  201. 川俣健二郎

    ○川俣委員 金額は。——それでは、その程度のあれならよろしい。  会計検査院いますか。——いま会計検査院張り切っているところで、四十二年からの在庫数量を五十一年で締めるとどのくらいのトン数で、年度別は時間がないから要らないですが、それからいまの評価額の総金額はどのくらいになっているかということです。それから、あなたの方から言えないであろうが、どうせこれはためておいたって処理できないものだ、稼ぐのは倉金と金利だ、これは全部国民の税金で払わなければならないものだ、それを早く処理する方法を考えた方がいいという、会計検査院はまだそういう所見を出してないかもしらぬけれども、いま会計検査院は張り切っているようだから、ぼつぼつ出すのだろうと思うが、その辺の数字も、もしわかったら詳しく教えてくれぬかな。
  202. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 第一点の御質問でございますが、五十一年度末の在庫数量を年産別にという御質問かと思いますが、合計でよろしゅうございますか。五十一年度末で主食用米穀の在庫数量は、合計六百六十九万トン余りでございます。
  203. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それから金額。
  204. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 金額は一兆二千五百五十三億五千六百七十二万円余りでございます。新米も入っております。
  205. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いつからのものですか。
  206. 阿部一夫

    ○阿部会計検査院説明員 四十二年産米から五十一年産米まで、全部の合計でございます。  それから古米の問題につきましては、従来から関心を持って検査に当たっておりますが、従来、この古米をどうしろという直接的な意見表示などはしたことがございませんけれども、過去に検査報告の記述の中で、年度末の在庫のうちに古米がどのくらいあるというような記述をしたことはございます。今後の問題でございますが、確かに大きな問題でございますので、先生御指摘のような趣旨も踏まえまして、この問題について前向きに検査をやっていきたいと思います。  それから、もう一つの御質問の管理経費がどのくらいかということにつきましては、この古米の分の管理経費が幾らというはっきりした数字は出ないわけでございますが、これは仮に一つの試算をやってみますと、というまことに自信のない数字でございますが、そういう仮の数字でございましたら申し上げることができますが、余りはっきりした数字は申し上げられないわけでございます。  以上でよろしゅうございますか。
  207. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、こういう大変だという声もあるし、デノミをやらなければ舌かむという数字にまでなった。しかも果たしてこれは、総理大臣、売れば国際価格に太刀打ちできないから倉に入れておく。倉を貸している人は得するだろう、それは倉料が入るから。どこだろう、倉を貸しているところは。倉を持っていて倉料金が入る団体は。これは国民はかなわないわ。一兆二千億、四十二年度米からだ。これはとてもじゃないけれども、法律になじまない、通達でやります。連帯と協調という姿勢がそこにあらわれますか。やっぱりわれわれとしては、農政というのは政府だけでやればいいのかということになる。どうです総理大臣、最後に。——いやいや、あなたに聞いてないですよ。
  208. 中川一郎

    ○中川国務大臣 聞いてないと言っても、数字だから……。四十二年の米を一兆円もいま持っておりませんから、それを前提にして答弁しろと言われましても、担当大臣としては困るわけですよ。四十二年の米を一兆円も持っているようなばかなことはいたしておりません。(発言する者あり)いや、いまの質問はそういうことです。
  209. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、政府の再編計画を法に基づいて強権でやっていくか、あるいは農家との間の理解と納得でやっていくのか、こういう選択の問題だろうと思うのです。政府の方は理解と納得に基づいて、法に基づかないでやっていく、こういう姿勢をとっておるわけでありますが、私はそれは妥当な考え方である、その方がこの計画の性格になじむ、このように考えるわけでございます。  それから、国会における御論議の問題、これは農林水産委員会において御論議を願いたいし、また財政的側面におきましては当予算委員会において御論議を願いたい、このように考えます。
  210. 川俣健二郎

    ○川俣委員 本論に入る前に時間がありませんから、本予算のときまたいたしたいと思います。
  211. 中野四郎

    中野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田高敏君の昨日の保留分の質疑を行います。藤田高敏君。
  212. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、昨日の質問の中で二つ、重要な問題について留保させてもらいました。その一つは、言うまでもなく決算調整資金制度の問題であり、いま一つは、十五カ月予算と言われておりますこの二次補正予算並びに五十三年度の本予算、さらには将来に向けてのわが国財政全般に重要なかかわり合いを持ちます赤字公債の現金償還に向けての具体的な償還計画、これについての計画案を直ちに提示をしてもらいたい、この二つであったわけであります。  このことに対する政府、特に財政当局の見解をまず聞かしていただきたいと思います。
  213. 村山達雄

    ○村山国務大臣 まず、決算調整資金の創設問題についてお答え申し上げます。  財政の運営に当たりましては、歳入歳出の動向に十分に注意を払いながら、年度中途の段階で税収の減少等が見込まれる場合には、従来と同様に経費の節減等により対処し、また、経費の節減等により対処し切れない場合は補正予算によって国会の御審議をお願いすることになります。  しかしながら、最近の経済情勢の推移にかんがみますと、仮に補正予算等によって年度中途に見込まれる税収の減少等について対処しても、税収の動向については予見しがたいいろいろの不確定要因がございます。そのために、年度末間際あるいは年度経過後に決算上の不足が明らかとなる事態も常に考慮しておかなければならない状況にございます。  このような状況に対処するためにいかなる措置を講ずべきかにつきましては、財政制度審議会にもお諮りいたしまして、十分検討したところでありますが、恒久的制度として、決算調整資金制度を五十二年度内に創設する必要があるとの結論に達したものでございます。  ただ、御指摘のように、新しい制度の創設でございますので、法律上、制度上、種々御説明いたすべき面がありまして、この点については今後なお関係委員会で御審議をお願いいたしたいことと考えておりますが、補正予算につきましては、その緊要性にかんがみ、早期成立について何とぞよろしくお願い申し上げる次第でございます。  続いて、特例公債の償還計画についての考え方を申し上げます。  特例公債の償還計画につきましては、各年度の特例公債法に基づきまして償還計画表を国会に提出していることは御存じのとおりでございます。  しかし、御指摘のように将来の具体的な償還財源見通しを示せということでございますので、これは将来の経済、財政の見通しを立てることが当然前提になるわけでございます。  今回、経済審議会企画委員会で五十七年度までの経済フレームを参考として示してもらえる見込みがありますので、これを手がかりといたしまして、五十七年度までに特例公債から脱却することを目途とした財政収支試算をいま作成中でございまして、でき上がり次第、五十三年度予算の審議に間に合うように提出する予定でございます。  それから先の財政収支の見通しを立てるためには、その年々の経済、財政の状況を見通すことが前提となりますが、現段階ではそこまでの見通しを立てることはきわめて困難な事情にございます。  大蔵省といたしましては、将来の特例公債償還を支障なく行うためにも、まず特例公債に依存しない財政に復帰することが先決と考えておりまして、近く提出する財政収支試算をもとに、財政の展望について十分御論議をいただきたいと考えております。
  214. 藤田高敏

    藤田(高)委員 あと残された七分少しで私自身のこの問題に対する結論を出さなければいかぬわけですから、非常に制約がございます。したがって私は、まず決算調整資金制度の問題につきましては、昨日私どもが主張しましたことについては、若干私どもの考え方も考慮するような御発言がありましたが、結果としては同じ回答であります。  そこで、私は昨日も主張したわけでありますが、この決算調整資金は、今回の提案されてきておる趣旨を見ましても、政府のずさんな財政見積もり、なかんずく税収のずさんな見積もりによって大きな歳入欠陥が生まれた、そうして年度末までまだ二千億の歳入欠陥が出るかもわからない、こういう歳入欠陥を補てんするための措置として現実的にこの資金制度が生まれてきたということは、否定できない事実であります。そういう性格から申しますと、今日の財政法のたてまえから言って、これは補正予算を編成をして、そうして、臨時国会を開いて国会結論を出すというのが、私は財政法の基本的な立場だと思うわけであります。そういう観点からいいましても、私たちはこのような措置に直ちに賛成するわけにはまいりません。その立場を明確に申し上げておきたいと思います。  いま一つは、そうかといって現実的にそういう歳入欠陥が生まれるという事態を迎えておることも事実であります。そういう事実に対処するために、それではどういう法律をつくり、どういう制度をつくることがよりベターであろうかという観点からいきます場合に、今回の場合は恒久立法として出してきておるわけであります。財政法の根幹にかかわるということは憲法の基本的な精神にもかかわる問題でありますから、それだけに私は、憲法を尊重するという立場に立ってでも、もっともっと時間をかけて、この種の問題については国会としての権威ある結論を出すべきであろう、こういう観点から、これは仮定の意見でありますが、もし制度をつくるにしても恒久立法ではなくて、ことしは臨時的な、そういう特例立法というか、臨時的な措置によって、そうしてさらに時間をかけて、恒久立法がいいか臨時立法で措置するか、そういう結論を出すべきであろうという私の見解を申し上げて、この調整資金制度に対する私の意見をなにしておきます。  二つ目の赤字国債償還計画の問題でありますが、これまた、答弁を聞いておりますと時間がかかりますので、時間を食われてしまいますので、私は私の見解を申し上げます。  私は昨日も強調しましたように、政府は財政収支試算を、これは昭和五十五年までに赤字公債を入れない財政収支見積もりを出す、こういうことだったわけですが、どうもこれは二年間ずれて五十七年になるようであります。ただ、後で一言答弁を願いたいわけでありますが、五十三年度の本予算の審議までには出すというのだが、何日に出すのだということを明確に答えてもらいたい、この財政収支試算の問題は。それが一つ。  そこで私は、この財政収支試算と、六十年が来れば五十年度に発行した二兆何がしかの赤字公債は、これは現金で支払うということを国民に約束をしておるわけなんですね。約束をしておる。したがって五十年、五十一年、五十二年、五十三年と、ことしを含めて赤字公債を出すという計画があるわけですから、これは私は、個人の貸借関係からいっても、現金で支払うというのであれば、何年先にどういう方法でその借金を返済するかということを出すのは当然だと思うのですよ。そういう立場からも、前段指摘いたしました財政収支試算と一体のものとして、この赤字償還計画というものは当然この国会に出されてしかるべきものである。むしろこれは、政府が義務的にこの国会にそういう資料は出すべきものである。しかも、十五カ月予算と銘を打ってわれわれに審議を求めている以上は、この二次補正の段階で私はそれを出すべきだと思うのです。しかし、出せない、こう言うのですね。時間がないですから出せないということになれば、これは私は遺憾ながら時間切れということで、継続してこの問題は本予算の中で、審議する、このことを留保しておきたいと思います。  そして、この三つ目の問題は、率直に申し上げて、政府がこの計画を出し渋っておる最大の原因は何か。これは、その償還計画を具体的に出していきますと、いま問題になっております一般消費税、こういったものを中心とする政府の増税計画というものが現実のものになってこざるを得ない。そういうものが現実のものになってくると、国民にかなり大きな批判が出てくる、そのことを恐れて出さぬのじゃないかと私は思うのです。これはまさにこそくな、無責任な政治のあり方だと思う。要るものは要る、節約するものは節約する、不公正税制である医師優遇税制であるとか利子配当の特別措置であるとか、こういうものは全般的に洗い直しをやるものはやる、こういうことで、私は今日時点においてこの償還計画を出すということが、国民に対するきわめて親切な態度ではないかと思うわけであります。そういう立場から言いまして、私は、この償還計画が今日ただいまのこの段階で出ないことをきわめて遺憾に思います。したがって、この問題につきましては、前段申し上げたように本予算の審議、この中では、ぜひ私は政府としてさらに努力をして出してもらうことを強く要求します。  なお、重ねてのなんでありますが、この段階でどうしても出せないのかどうか、ベストを尽くして出すとすれば、いつまでにこの赤字償還計画が出せるかどうか、このことについてお尋ねをし、私の時間が参りましたので以下の問題については留保したいと思いますが、私自身の持ち時間もございませんので……(発言する者あり)ただ、理事の方からああいう御注文もありますから、答弁を聞いた上で、最後に一言要求するかもわかりません。
  215. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいま直接御質問のありました点についてお答え申し上げます。  一つは、五十七年度までの財政収支試算をいつまでに出すか、このお尋ねでございますが、当委員会におきまして五十三年度の予算の審議を開始する前に提出するつもりでございます。  なお、償還計画……(藤田(高)委員「何日になりますか」と呼ぶ)いま、恐らく一日でございましょうから、一日に出すつもりでございます。(「一日の何時だ」と呼ぶ者あり)審議が始まる前に出すつもりでございます。  それから、いまの償還計画でございますが、いま出せない理由につきまして私申し述べたつもりでございます。恐らく収支試算をごらんになった上でいろいろ御議論が出るだろうと思います。ただ、実際は、さっきも申し上げましたように、試算を出しますと、それまでの間のいろいろな歳出の節減とか、あるいは一般的負担の増加を求めざるを得ない、こういう姿が非常に出てくるわけでございます。したがって、その後の償還計画というものは五十八年度以降の問題になると私は思っているのでございますけれども、それにつきましては、いま、そのときの経済あるいは社会の情勢がどうなるか、これについての実は見通しが立たないのでございまして、またいろいろな御意見を承った上でわれわれの方で善処してまいりたい、御審議の上でまた善処してまいりたい、かように思っているわけでございます。
  216. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一言……
  217. 中野四郎

    中野委員長 申し合わせの時間が来ておりますから、一言だけ。
  218. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、結論的にはきのうと同じ回答だと思うのですよ。  これは大蔵大臣だけの、財政当局だけの責任でない、内閣全体の責任にかかわる問題だと思うのです。そういう観点から、まだこれは二次補正の予算審議が終わったというわけではないわけですから、そういう意味で、私はこの問題を続けてまた、どういう形でやるか知りませんが、最後に総理から、やはり総理はそういう点では財政の権威者でありますし、いまやこの問題の最高責任者ですから、総理の口からひとつ最後の答弁を求めたいと思うのです。
  219. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 特例債の償還財源をどうするか、こういう問題でありますが、これはただいま大蔵大臣からお答えしたとおりの方針で対処したい、かように考えます。
  220. 藤田高敏

    藤田(高)委員 反対であることを申し上げて、私の質問を終わります。
  221. 中野四郎

    中野委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  以上で昭和五十二年度補正予算三件に対する質疑はすべて終了いたしました。     —————————————
  222. 中野四郎

    中野委員長 これより昭和五十二年度補正予算三件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  223. 加藤六月

    加藤(六)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十二年度一般会計補正予算外二件に対し、賛成の討論を行います。  わが国の当面の緊急な国民的課題は、一日も早く景気を回復し、雇用の安定を確保して、国民生活の安定向上を期することにあります。  最近の経済情勢は、昨年秋、補正予算を柱とする総合経済対策等、一連の景気刺激策が実施されたにもかかわらず、その後の急激な円高の影響もあって、遺憾ながら、景気回復の足取りは依然として弱く、雇用情勢は一段と厳しさを増しております。また、対外均衡の回復も容易ならざるものがあります。  このような事態から脱却する方策は、財政支出、特に景気浮揚効果の大きい公共投資を大幅に拡大し、内需を喚起することであります。民間需要が停滞している今日、財政が景気回復の起動力として主導的役割りを果たすことは当然であると申さなければなりません。  このような情勢を背景に、今回、政府は、来年度七%経済成長を目標とした、いわゆる十五カ月予算の考えのもとに、公共事業の追加を中心とする補正予算を編成し、五十三年度予算とあわせて切れ目ない経済政策の運営を行わんとしており、これは時宜を得た賢明な措置であると確信するものであります。  以下、補正予算の内容について、簡単に所見を申し上げます。その第一は、公共投資の追加についてであります。  公共投資は有効需要を喚起し、景気回復を速める強力な手段であります。今回の公共投資の追加は、国庫債務負担行為の追加を含めて、事業規模で約一兆三千四百億円に上り、国民生活の安定に役立ち、かつ、景気刺激効果の大きい部門に重点を置き、下水道など社会資本の整備を一層推進するものであって、適切妥当な措置であります。  第二は、中小企業対策についてであります。  中小企業は、長期にわたる不況と急激な円高によって非常な苦境に陥っております。この事態に対し、政府は、さきに中小企業円高緊急対策を決定したところでありますが、今回、さらに補正予算において、商工組合中央金庫出資金三十億円、中小企業信用保険公庫出資金九十億円等、総額百二十五億円を中小企業特別対策費として追加計上し、中小企業の円高緊急対策を格段に充実させております。  第三は、地方財政対策についてであります。  地方財政は、税収の落ち込み等によって財源難に悩んでおります。公共事業の完全消化が至上命令となっているとき、これを放置するわけにはまいりません。今回の補正予算では、所得税と法人税の減収によって当然減額されるべき地方交付税交付金について、第一次補正後の金額を減額しないこととしております。また、公共事業の追加に伴う地方負担の増加に対処するため地方債の大部分を財政資金で引き受けるなど、手厚い措置が講じられております。  第四は、決算調整資金制度の創設についてであります。  最近のわが国の財政においては、景気のわずかな落ち込みでも税収不足を招くおそれが大きく、一般会計において、決算上、歳入不足という事態が年度末間際になって見込まれる場合や、年度経過後明らかになる場合には、現行制度上では、適法に処理する方法がありません。  このような事態に備えて、今回、決算調整資金制度を創設するわけでありまして、これは、財政処理を適法かつ適切に行うため必要不可欠なことであります。  五十二年度については、現在見込まれる税収不足に対処してもなお決算上の不足が全くないとは言えない状況にあると考えられ、五十二年度から決算調整資金が機能し得るよう資金に財源を繰り入れることは緊要であって、財政処理に責任を持つ政府の当然の措置として賛意を表するものであります。  一方、歳入につきましては、景気の停滞等によって生じた税収不足を補てんするための財源措置として、既定経費を極力節減するほか、公債の追加発行が予定されております。  公債を一兆三千六百六十億円増発するため、結果として、五十二年度において公債依存度が三〇%を超えることとなったのでありますが、当面の国民的課題にこたえるための財政支出の拡大等を勘案すると、緊急措置としてやむを得ないものと思うのであります。  しかし、今後も節度ある財政運営に努め、財政の健全化の回復のため努力することは、政府の責務であり、その実行を強く要望するものであります。  以上、今回の補正予算は、当面の緊急な課題に十分こたえ得るものとして賛意を表するものであります。厳しい経済情勢の中でも、最近発表された十一月の製造工業の稼働率指数が上昇するなど明るい面も見られるのでありまして、これをさらに定着させるためにも、補正予算の速やかな成立と実施を期待して、賛成の討論を終わります。(拍手)
  224. 中野四郎

    中野委員長 次に、岡田利春君。
  225. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)、昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)の三案に対し、反対の意思を表明し、討論を行うものであります。  私は、以下簡潔に、第二次補正予算案の問題点について指摘をしてみたいと思います。  まず第一に指摘をしなければならないことは、今年度予算の第一次補正予算に引き続き、第二次補正予算案の提出となったことであります。  政府は、第一次補正の理由を六・七%の実質成長の達成のためと、もっともらしいことを言っておりましたが、今次第二次補正は、これが五・三%に下方修正され、その達成と来年度景気対策のためと位置づけしている点についてであります。これは明らかに福田内閣の経済政策の失政によるものでありますが、その反省と責任については、一切ほっかぶりで押し通そうとする政治姿勢については、国民の名において断じて容認することができません。  政府は、ともすれば、経済政策の失敗の責任をすべて円高に転嫁しようとする傾向を強く見せておりますが、これは無責任きわまりない態度であります。福田総理は、当初経常収支マイナス七億ドルが六十五億ドルの黒字に修正を余儀なくされ、ついにこれが百億ドルを超す黒字となり、円の続騰から高騰を招くことになった点については、きのうの予算委員会において、かかる予測のできなかったことは私の不明のいたすところと認める羽目となりました。総理はその政治責任をどうしようとするのか、きわめて不明確であります。  第二には、本予算案は今年度税収等の見込み違いによるいわば穴埋め補正であり、粉飾補正予算であることであります。八千六十億円に達する落ち込みと、これを補てんするものでありますが、これは今回の補正の最大の重要目的となっておるのであります。十月の第一次補正では、赤字国債を一千百二十億円も減額しておきながら、景気浮揚のための十五カ月予算などと称し、公共事業等について三千六百六十四億円を計上し、一兆百九十億円の赤字国債を増発しようとするもので、全く無責任な財政運用であると言わなければなりません。  第三には、決算調整資金制度の創設の問題であります。  これは、税収の落ち込みなどによって歳入欠陥が生じ、赤字決算の事態を回避するため二千億円の決算調整資金を充て、これを取り崩して補てんしようとするものでありますが、これは財政の厳格な運用と財政の単年度主義の原則を崩すことになりかねない重大な問題を含んでいると言わなければなりません。  もちろん、赤字決算については財政法に明文規定はないものの、赤字決算を禁ずるという解釈は確立をいたしております。赤字財政と無節操な財政運営を続けてきた歴代政府・自民党は、財政の計画的運営という根本的な改革に触れようともせず、赤字決算回避という安易な対策で赤字決算調整のための資金をつくろうとする態度であって、財政民主主義の立場からもこれを認めるわけにはまいらないのであります。  かつて産投会計に設けられた資金と同様に、その繰り入れに国会のチェックの機能が働いても、繰り入れ後の資金運用及び管理などは、資金の性格という大義名分で大蔵省の自由裁量に任されることは明らかであり、これが拙速主義的な創設には強く反対するものであります。  第四点は、昭和五十二年度予算がまだ消化し切れない状況で進んでいる今日、十五カ月予算の名においてさらに公共投資を一点集中主義で三千数百億円を上乗せをしている点についてであります。  すでに国会に提出されている昭和五十三年度の予算案は、公共投資の集中投下を目指している内容になっていることは周知のとおりであります。これが運用に当たっては、原材料高などボトルネックインフレと呼ばれるインフレへの道が現実のものとなりつつあります。  公共事業費の内容は、相変わらず道路中心で一千六十三億円で三二%を占め、社会福祉施設等の整備費はわずか十九億七千六百万円にすぎないのであります。このような著しく均衡を欠く生活、福祉軽視の態度に私は強く抗議するとともに、政策の転換を強く要求するものであります。  第五点は、今年度予算の公債依存度が、赤字公債の大量の追加発行で三四%となった点についてであります。  政府は、財政の健全化のため、三〇%の依存度がその限度と言っておったのにもかかわらず、いとも簡単にその依存度を上昇させ、昭和五十三年度予算の依存度実質三七%への序曲となったのであります。  しかも、中期経済計画も財政計画も示さないまま、七%成長達成をにしきの御旗として、これに反対する者は賊軍であるかのごとき姿勢ですべてを押し通そうとする態度は、断じて見逃すことができないのであります。  以上、私は、本案に反対するわが党の考え方について述べてまいりましたが、政府の言ういわゆる十五カ月予算の方向は、経済危機の暗いトンネルを抜け出て明るい日差しを仰ぐという展望を持つものではなくして、不況とインフレを内包し、経済の混迷をさらに深め、財政破綻への道をたどる本質的な性格を持つものであると指摘せざるを得ません。  私は、わが国経済の行方を案じながら、政府が速やかにその経済政策の一大転換を図り、国民本位に立脚した新しい発想に基づく生き生きとした経済政策を展開することを強く求め、私の反対討論を終わります。(拍手)
  226. 中野四郎

    中野委員長 次に、坂井弘一君。
  227. 坂井弘一

    ○坂井委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算第二号三案について、賛成の討論を行います。  私どもが第二次補正予算三案に賛成する理由を端的に申しますならば、当面するわが国経済は、財政による追加措置を講じなければ、不況のどろ沼へと陥る危険を強く感ぜざるを得ないからであります。  遺憾ながら、本年度の実質経済成長率の見通しは、二度の補正予算措置を講じて、なおかつ六・七%から五・三%へと修正を余儀なくされました。わが党のかねてからの懸念が現実のものとなってしまったのであります。  直面している深刻な不況は、個人消費、民間設備投資が極度に冷え込み、それが回復の見込みすらありません。暗く、そして長い不況のトンネルは、なお続くと見なければなりません。そればかりでなく、わが国経済は縮小均衡への不幸な道へと進む危険性すら存在しているのであります。  こうした状況下にあって、いまや国民は失業、倒産の不安に神経を使い果たし、また生活防衛に疲れ切っていると言うべき実情ではないかと思います。まさに不況克服は急務であり、この実現は昭和五十三年度における国民的至上課題であることは、多くを論ずるまでもないのであります。このためにも、本年度の景気がこれ以上に落ち込むことを絶対に回避しなければならないのであります。  この見地から私どもは、本年度内における財政による景気刺激のための追加措置は、緊急避難的措置として認めざるを得ないと考えるものであります。  かかる非常の状況判断に立って、次善の策として補正予算に賛成するものでありますが、それが直ちに福田内閣の経済政策を認めることでないことは言うまでもありません。したがいまして、私はこの際、福田内閣の経済政策の誤りを厳しく指摘せざるを得ないのであります。  政府の本年度当初の経済見通しは、今日に至り大幅な修正を追られました。すなわち、さきに述べた実質経済成長率やマイナス七億ドルの赤字から百億ドルの黒字に修正された経常収支を初め、個人消費名目一三・七%から一一・四%、民間設備投資に至っては一二・三%から四分の一の三・〇%、民間住宅も一六・五%から半分以下の七・五%にそれぞれ伸び率を修正したのであります。  これらは、政府にしてみれば不本意な修正であり、私どもにしてみれば、かねて懸念していた事態が起こったということであります。そして、その原因が決して昨年九月末から起こった円レートの急騰によるものだけではありません。  政府は本年度当初予算において生活関連公共投資の拡充を怠り、個人消費を喚起する十分な対策を欠いた上に、われわれが昨年六月の段階から補正予算の編成を要求したにもかかわらず、これを無視し、十月に入ってようやく深刻な事態を認識し、景気対策に乗り出すという後手後手の対策に終始したことは周知の事実であります。こうした政府の経済政策の失敗こそ、経済見通しの大幅修正を余儀なくされ、不況をさらに深刻化させた原因であると断ぜざるを得ないのであります。  しかも、不況をさらに深刻化させている円高も、国内需要の喚気を怠った政府の経済政策の誤りから引き起こされたことを政府は篤と認識すべきであります。  福田首相は昨年の年頭、本年を経済の年とみずから称し、国民に期待を持たせながら、実際はきわめて甘い予測によって、経済政策不在の年としてしまったと言っても私は過言ではないと思います。  国内的には国民を大きな不安に陥れ、政治に対する不信を高め、対外的にも諸外国の対日不信を増幅させた福田内閣の責任は、まさに重大だと言わなければなりません。  私どもは、本補正予算案の問題点も決して少なくないことを承知いたしております。公共事業の追加三千六百六十億円に対し、租税印紙収入の減収八千六十億円、赤字国債の追加発行一兆百九十億円という内容は、十五カ月予算の一部であるという政府の宣伝にはくみすることはできません。また、補正予算案に突如計上された決算調整金につきましても、五十三年度税収と関連して政府が予定している国税収納制度の改正とあわせ、財政民主主義の観点から疑問を呈さざるを得ないのであります。これらの法案に対する態度は、法案審議の段階で別途明らかにするつもりであります。  しかしながら、私どもは、そうした問題を知りつつも、さきにるる述べましたように、失業、倒産がさらに激増さえ予想される今日の経済危機にあって、不十分とはいえ、本補正予算案を速やかに成立させ、五十三年度において不況克服を実現させるという道を選択することが、国民の期待にこたえるものと確信をするものであります。  最後に、五十三年度こそ不況克服の年としなければならないという立場から、その経済運営についてこの際要望したいのであります。  経済運営の柱となる五十三年度予算案は、実質七%成長を掲げながら、不況克服のすべてを公共事業の拡大にゆだねてしまっていることは、すでに指摘されているとおりであります。  不況克服のためには、高度成長期の中の景気循環と質的に大きな違いがあることから、個人消費を喚起させることが絶対の条件と言っても過言ではありません。その意味から、福祉予算の拡充及び所得減税等の実施を中心に、予算修正に前向きに応ずることを強く要求しておくものであります。  また、本年度の失敗を繰り返さないために、景気動向を見きわめながら、絶えず機敏に対応できる用意を整えておくことを重ねて求めるものであります。  以上で賛成の討論を終わります。(拍手)
  228. 中野四郎

    中野委員長 次に、大内啓伍君。
  229. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、民社党を代表し、ただいま議題となっております昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)外二件について、一括して賛成の討論を行います。  今回の補正予算は、昨年九月末から急激に展開された円高によるデフレ効果が生じたことにより、現状では公共事業の追加、拡大によって対応せざるを得ない緊急の要因に端を発するものであります。  わが党は、すでに明らかにしたように、こうした事態を招来せしめた政府の見通しの甘さ、政策運営の誤りについては、厳しく糾弾してやまないところでありますが、同時に、長引く不況のもとで深刻化する雇用不安問題、史上類例を見ない規模の倒産に見舞われている中小企業等の窮状解決を図るとともに、ぬぐい切れない暗雲の中にあって生活不安をますます高めつつある国民生活の実態にいささかなりとも明るさをもたらすことが緊要な課題だと考えます。この立場に立つならば、明年度予算の成立まで空間をつくることは絶対に避けなければなりません。  わが党は、ただいま申し上げましたような昨年秋以来の変化に対応するためには、何よりも財政の継続的な拡大措置を講じ、実質的な十五カ月予算とすることが必要であるとの立場から、昨年十一月二十八日に開かれた臨時党大会で真剣な討議を経て、政府に対し強くこのことを申し入れてきたところであります。  これに対し、内容においては必ずしも十分とは言えませんが、政府もこれにこたえて、公共事業の前倒し実施等切れ目のない財政執行に踏み切ったことは、これを評価するにやぶさかではありません。  また、国民の要請が強い下水道の整備、環境衛生の整備、農業基盤整備など生活関連を含む公共事業に三千六百六十四億円の追加を行い、特に、さきの総需要抑制策ではなはだしく工期のおくれていたこれら生活関連事業の促進を図らんとすることについても、私どもは一応の評価を惜しむものではありません。  次に、本補正予算の中で創設される決算調整資金についてでありますが、昨日来、本委員会でも多くの疑問が提起されましたが、政府は、これまで税収の減が七千五百億円から八千億円も見込まれると公表し、それを本補正予算において八千六十億円も減額補正措置を講じながら、なお二千億円もの決算調整資金を創設するということは、論理的に一貫性を欠くとともに、余りにも後ろ向きな制度と言わなければなりません。  私は、昨日、わが党の竹本議員が提起したように、この資金の性格をこの際、景気調整資金とし、今後の流動的な経済変化に対応する財政の体制をつくることがこれから必要であり、すでにそのことは、西独の経済運営においても成功的に実施されていることは周知のとおりであります。したがって、政府は、この際、同資金のあり方についても根本的にこれを再検討し、わが党が提案する方向で再吟味するよう強く要請しておきたいと存じます。  以上、きわめて簡単に賛成の理由と政府への注文を申し述べたのでありますが、問題は、この補正予算が適切かつ効果的に執行され、国民の期待にこたえることが重要であります。  この意味から、わが党は、政府の機敏にして効率的な予算執行を厳重に監視することを申し添えて、賛成の討論を終わる次第であります。(拍手)
  230. 中野四郎

    中野委員長 次に、寺前巖君。
  231. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和五十二年度第二次補正予算案に反対の討論を行うものであります。  日本経済と国民生活は、四年来の不況に昨年九月末からの円高危機が加わり、失業、倒産の激増、不況の一層の深刻化により、かつてない重大な危機に直面しているのであります。このような深刻な危機は、アメリカの対日圧力とともに、鉄鋼、自動車、家庭電器などの大企業が、低い賃金と労働強化、下請中小企業への低単価の押しつけ、政府の財政、税制、金融などのあらゆる面での手厚い助成策のもとに集中豪雨的な輸出を行ってきたからであります。  ところが、政府の政策は、危機を生み出した低賃金、低福祉という経済の仕組みにはメスを入れるのではなく、反対に、大企業本位の従来型政策を一層露骨に押し進めようとしているのであります。  すなわち本補正予算案、五十三年度予算案を含めた十五カ月予算案は、第一に、大企業本位の景気刺激に役立つものは、たとえば一般公共事業費のように三四・五%増と、各省の要求以上に大盤振る舞いで予算をつけるが、社会保障費は一八・六%増というように極力圧縮し、健康保険料や保育料値上げに導き、第二に、政府がみずから定めた国債依存度三〇%の危機ラインを大幅に超えた国債大増発を行い、第三に、経済危機がこれだけ深刻化しているにもかかわらず、アメリカのカーター政権の要望にこたえ、ロッキード疑獄絡みのP3C対潜哨戒機やF15戦闘攻撃機導入などに見られるように、大幅な、憲法違反の自衛隊予算を組んでいるのであります。  さらに重大なのは、国会審議を軽視し、財政民主主義を形骸化させるやり方を強めようとしていることであります。  本補正予算案に新たに導入した決算調整基金なるものは、政府の説明によると、この二月、三月の税収の見込みが立たないので、もし歳入不足が生じた場合、政府の自由裁量で決算調整ができるようにするというものであり、従来、歳入不足が生じた場合、補正予算を組み、国会審議するやり方をなし崩し的に突き崩そうとする許せないものであります。この二月、三月の歳入予想すらつかなくて十五カ月の予想がどうしてつくでありましょうか。この点でも、政府の見通しが国民に責任を持ったものでないということをみずから暴露したものと言わなければならないのであります。  このような基本的性格を持つ十五カ月予算の先発としての本補正予算案には断じて容認できないのであります。  異常な円高のもとで、深刻な不況を打開し国民の生活と経営を守るために、いまこそ大企業本位の従来型予算を根本的に転換すべきであります。  そのために少なくとも本補正予算案には、第一に、国債の一層の増発を招く公共事業の上積みを避け、住民の強い要求がありながら著しく立ちおくれている地方自治体の単独事業を前進させることに力点を置くべきであります。今次補正予算案で公共事業予算がついても、必要な裏負担を捻出することができず、返上しているところもすでに出ているのであります。そのために、単独事業そのものを緊急不況対策事業として位置づけ、その地方債の政府資金による引き受けや一般会計からの利子補給を積極的に行うべきであります。  第二に、公団住宅家賃値上げをやめ、国民の強い願いである低家賃の公営・公団住宅の建設を進めることであります。今年度当初予算で組んだ、公営・公団住宅について、それぞれ一万二千五百戸、二万戸もたな上げになっていますが、新たに用地取得の補助対象化や関連公共施設整備の特別の補助制度を設けるなどして、当初計画どおり建設すべきであります。  さらに、第三に、不況と円高に苦しむ中小業者を救うため、気楽に借りられる無担保、無保証による長期、低利の駆け込み融資など、必要な措置を打つべきであります。現在行われている政府系金融機関による小企業経営改善資金は、多額の融資枠を残しています。貸し出し条件を改善するなど、現行制度が十分活用できるようにすべきであります。  これらの施策は、国民生活を防衛する立場に立った景気浮揚策として大きな効果を持つことは明らかであります。  さらに、最後に指摘せねばならないことは、本補正予算の財源として、未執行分の不要不急経費の削減などは一切行わず、一兆三千六百六十億円もの国債大増発を行うことにしていることであります。これによって、五十二年度一般会計予算の国債依存度は、政府の危機ラインを大幅に上回る三四・〇%となったのであります。これは国際的にも異常な高さであり、また、わが国においても、戦前、戦後を通じて最高の依存度であります。このような借金財政は、やがて国民への大増税となって大きな犠牲を強いるばかりか、地方財政を圧迫し、インフレを激化させ、日本経済と国民生活を破壊することは明らかであります。  以上の立場により、本補正予算案に反対の態度を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
  232. 中野四郎

    中野委員長 次に、大原一三君。
  233. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、新自由クラブを代表して、ただいま上程されております昭和五十二年度補正予算案外二件について、賛成の討論を行おうとするものであります。  賛成の理由は、景況の動向が、政府の見通しにかかわらず依然として低迷し、雇用、生産、企業収益等に好転が見られず、早急にその対応を行う必要があると考えるからであります。  政府のこれまでの対応は、正直に言って後手に回り、必ずしも適確な姿勢が示されなかったことは、まことに遺憾であります。現に企業の倒産件数は月千五百件を下らず、企業内失業を合わせて優に三百万人を超える状況で推移しております。われわれとしては、つとに政府にその速やかな対応を迫ってきたところであるが、政府は、十五カ月予算の名のもとに、急遽二次補正の提案を行うことになりました。経済運営の妙は、臨機即応の対策を講ずることにあります。  われわれは、さきの第一次補正の際、円高を予想しつつ、これらの措置が不十分で、事態の改善が行われない場合は、われわれの要求を待たず、追加の補正を行うべきであると提案してきましたが、政府は、適確な予算の執行に万全を期すべきであります。  なお、政府は、今回の補正予算案において決算調整資金を創設し、二千億円の繰り入れを行っていますが、従来、歳入欠陥の不足についての補てんの制度がなかったことが問題であったので、将来は財政法の本則に取り入れてしかるべき制度であります。  なお、予算の執行に関し、全国知事会初め地方公共団体から、中央省庁及びその出先機関の事務の簡素化の強い要請が出されておりますが、事実、各末端地方公共団体に過剰な事務を要求しているきらいなしとしません。私は、この点に関し、来年度予算の早期執行を含め提案を行い、第二次補正予算案に対する賛成の討論を終わります。(拍手)
  234. 中野四郎

    中野委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  235. 中野四郎

    中野委員長 これより採決に入ります。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和五十二年特別会計補正予算(特第2号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三件を一括して採決いたします。  右三件に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  236. 中野四郎

    中野委員長 起立多数。よって、昭和五十二年度補正予算三件は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  238. 中野四郎

    中野委員長 次回は、来る二月一日午前十時より開会し、昭和五十三年度総予算について総括質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時九分散会