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1978-04-28 第84回国会 衆議院 本会議 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十八日(金曜日)     —————————————  議事日程 第二十五号   昭和五十三年四月二十八日     午後一時三十分開議  第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関す     る法律の一部を改正する法律案内閣提     出)  第二 道路交通法の一部を改正する法律案(内     閣提出)  第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案(内     閣提出)  第四 農業者年金基金法の一部を改正する法律     案(内閣提出)  第五 昭和四十四年度以後における農林漁業団     体職員共済組合からの年金の額の改定に     関する法律等の一部を改正する法律案(     内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  日程第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に   関する法律の一部を改正する法律案内閣提   出)  日程第二 道路交通法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第四 農業者年金基金法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第五 昭和四十四年度以後における農林漁   業団体職員共済組合からの年金の額の改定に   関する法律等の一部を改正する法律案内閣   提出)  中川農林大臣農業基本法に基づく昭和五十二   年度年次報告び昭和五十三年度農業施策、   林業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告   及び昭和五十三年度林業施策並びに沿岸漁業   等振興法に基づく昭和五十二年度年次報告及   び昭和五十三年度沿岸漁業等施策について   の発言及び質疑     午後一時三十四分開議
  2. 保利茂

    議長保利茂君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 保利茂

    議長保利茂君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  永末英一君から、海外旅行のため、五月九日から十七日まで九日間、請暇申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————  日程第一 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  5. 保利茂

    議長保利茂君) 日程第一、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。社会労働委員長木野晴夫君。     —————————————  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木野晴夫登壇
  6. 木野晴夫

    木野晴夫君 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、原子爆弾被爆者福祉向上を図るため、特別手当の額について月額三万円を三万三千円に、月額一万五千円を一万六千五百円にそれぞれ引き上げるとともに、健康管理手当の額を月額一万五千円から一万六千円五百円に、保健手当の額を月額七千五百円から八千三百円にそれぞれ引き上げようとするものであります。  本案は、去る三月二十八日本委員会に付託となり、昨日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 保利茂

    議長保利茂君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 道路交通法の一部を改正する法律   案(内閣提出
  9. 保利茂

    議長保利茂君) 日程第二、道路交通法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。地方行政委員長木武千代君。     —————————————  道路交通法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木村武千代登壇
  10. 木村武千代

    木村武千代君 ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、最近における道路交通の実情にかんがみ、交通事故防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路交通に起因する障害防止に資するため、  第一に、身体障害者通行の保護及び自転車通行の安全の確保に関する規定整備し、第二に、いわゆる暴走族不法行為を排除するため、自動車等運転者による共同危険行為等禁止規定を設け、その他運転者遵守事項に関する規定整備するとともに、第三に、副安全運転管理者設置等安全運転管理強化に関する規定整備し、第四に、行政処分制度に関する規定整備し、第五に、その他運転者対策推進を図ること等をその内容とするものであります。  本案は、三月十六日本委員会に付託され、四月七日加藤国務大臣から提案理由説明を聴取した後、慎重に審査を行いました。  昨二十七日質疑を終了し、討論申し出もなく、採決を行いましたところ、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、自由民主党日本社会党公明党国民会議民社党日本共産党革新共同及び新自由クラブの六党共同提案により、運転免許制度改善交通安全教育の徹底、自転車事故防止対策積極的推進共同危険行為等禁止規定の慎重な運用等内容とする附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 保利茂

    議長保利茂君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 郵便貯金法の一部を改正する法律案内閣提出
  13. 保利茂

    議長保利茂君) 日程第三、郵便貯金法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員長松本七郎君。     —————————————  郵便貯金法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔松本七郎登壇
  14. 松本七郎

    松本七郎君 ただいま議題となりました郵便貯金法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  本案は、預金者の利益の増進を図るため、新たに進学積立郵便貯金を設けるとともに、預金者貸し付け貸付限度額引き上げようとするものであります。  まず、進学積立郵便貯金の新設についてでありますが、高等学校大学等に進学する者またはその親族が、国民金融公庫等から進学資金小口貸し付けを受け、かつ、必要な資金を貯蓄する目的で、あらかじめ一定据え置き期間を定め、その期間内毎月一定額を預入することを内容とする貯金であります。  この貯金預金者で、国民金融公庫等から進学資金小口貸し付けを受けようとする者に対しましては、郵政大臣は、その貸し付けを受けることについてあっせんを行うこととするものであります。  次に、預金者貸し付け限度額引き上げでありますが、現在、この限度額は一人三十万円でありますのを、五十万円に引き上げようとするものであります。  なお、この法律施行期日は、進学積立郵便貯金につきましては、この法律公布の日から三カ月を超えない範囲内で政令で定める日から、進学積立郵便貯金預金者に対する郵政大臣国民金融公庫等へのあっせんについては、国民金融公庫法及び沖繩振興開発金融公庫法の一部を改正する法律施行の日から、預金者貸し付け貸付限度額引き上げについては、この法律公布の日からとなっております。  本案は、三月十四日本委員会に付託され、四月十三日服部郵政大臣から提案理由説明を聴取し、慎重な審査を行い、昨二十七日質疑を終了、討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、郵便貯金総額制限額引き上げ、適正な貸付金利長期返済方法、直接融資方式の検討などを内容とする附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  15. 保利茂

    議長保利茂君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 農業者年金基金法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第五 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出
  17. 保利茂

    議長保利茂君) 日程第四、農業者年金基金法の一部を改正する法律案日程第五、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。農林水産委員長中尾栄一君。     —————————————  農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び同報告書  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔中尾栄一登壇
  18. 中尾栄一

    中尾栄一君 ただいま議題となりました両法案につきまして、農林水産委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  最初に、両案の内容について申し上げます。  まず、農業者年金基金法の一部を改正する法律案は、年金給付の額を物価の変動に応じて自動的に改定する措置昭和五十三年度における実施時期を繰り上げるとともに、時効が完成している保険料について納付の特例措置を講じようとするものであります。  次に、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案は、国家公務員共済など他の共済組合制度に準じて、既裁定年金の額の改定退職年金等最低保障額引き上げ寡婦加算の額の引き上げ及び給付の算定の基礎となる標準給与月額の下限及び上限の引き上げ等を行おうとするものであります。  委員会におきましては、両案を一括議題に供し、四月十九日政府から提案理由説明を聴取し、四月二十六日及び二十七日の二回にわたり参考人の意見を聴取するなど、慎重に審査を行いました。  かくて、四月二十七日質疑を終了し、順次採決に入り、まず、農業者年金基金法の一部を改正する法律案については、日本社会党から提案された修正案を否決し、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  次に、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案については、日本社会党から提案された修正案を否決し、自由民主党公明党国民会議民社党及び新自由クラブ共同提案により、施行期日を改める等の修正を加え、全会一致をもって修正すべきものと議決した次第であります。  なお、両案に対し、それぞれ附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  19. 保利茂

    議長保利茂君) 両案を一括して採決いたします。  日程第四の委員長報告は可決、第五の委員長報告修正であります。  両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————  国務大臣発言農業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度農業施策林業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度沿岸漁業等施策について)
  21. 保利茂

    議長保利茂君) 農林大臣から、農業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度農業施策林業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度沿岸漁業等施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣中川一郎君。     〔国務大臣中川一郎登壇
  22. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 農業林業及び漁業の各五十二年度年次報告並びに昭和五十三年度において講じようとするそれぞれの施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、農業について申し上げます。  最近、農業をめぐる諸条件が大きく変化する中で、農業就業人口減少率の著しい鈍化、若年男子農業就業者増加農地転用減少等高度成長期とは異なる動向が定着しつつあるように見られます。  農業生産活動畜産中心として活発化していますが、農産物需要の伸びが鈍っているため、生産増加とともに需給は軟化し、農産物生産者価格上昇率は著しく低くなっています。  一方、米の過剰傾向が強まっており、その消費拡大を図るとともに、水田利用再編全力を挙げて取り組まなければならない状況にあります。  農業経営の面について見ますと、基幹男子農業専従者のいる農家等中心労働力事情の変化に対応して農業労働時間を増加させ、規模拡大経営複合化によって経営発展を図る動きが進んでいます。  このような農業動向の中で、  第一に、需要動向に即応した農業生産再編成と農産物の総合的な自給力強化を図ること  第二に、農産物価格の安定に努め、農産物需要を維持増大し、農業従事者の所得の確保を図ること  第三に、農業経営発展を積極的に支援するとともに、農業生産担い手を育成確保しつつ、農業構造強化を図ることが重要な課題となっております。  以上のような最近の農業動向を踏まえて、昭和五十三年度におきましては、わが国農業の体質を強化し、総合的な食糧自給力向上を図ることを基本とした総合食糧政策を一層強力に展開することとし、需要動向の即応した農業生産再編成、農産物価格の安定、農業生産中核的担い手の育成、輸入農産物安定確保と備蓄の実施農村計画的整備流通加工合理化消費者対策の充実、風土、資源に適合した食生活の普及農業技術開発普及等を進めることといたしております。  第二に、林業について申し上げます。  木材需要住宅建設等動きを反映して、五十一年には、前二カ年における落ち込みから若干回復する動きを示しましたが、五十二年には前年とほぼ同じ水準にとどまっております。  戦後おおむね一貫して不足基調で推移してきた木材需給は、経済基調安定成長へと移行しつつある過程で外材輸入に主導され、緩和基調に変わっており、木材価格は五十一年秋以降横ばいまたは下落傾向にあります。  このような中で、林業経営事情は悪化しており、伐採、造林等林業生産活動が停滞的に推移しております。また、製材・合板等木材関連産業の業況も不振を続けております。  さらに、国有林野事業について見ますと、その経営収支は、近年急速に悪化しており、国有林野事業に課せられた使命を適切に果たしていく上において憂慮される状況にあります。  このような林業をめぐる厳しい事態がこのまま推移するときは、林業生産活動の一層の停滞、森林施業管理粗放化、ひいては国土の荒廃を来すことも予想されます。森林林業の果たすべき国民経済上、国民生活上の役割りは、今後ますます重要になるものと考えられますので、この際、広い国民的視野に立って適切な対処の方向を見出していく必要があります。  このための当面の重点課題としては、第一に、木材需給の安定を図ること、第二に、生産基盤整備担い手確保等を通じて林業林産業に係る事業活動を活発化すること、第三に、国有林野事業改善合理化を図ることであります。  以上のような最近の林業動向を踏まえて、五十三年度におきましては林道及び造林事業計画的推進林業構造改善林産物需給の安定及び流通加工合理化林業従事者福祉向上国有林野事業経営改善等の各種の施策を進めることといたしております。  第三に、漁業について申し上げます。  五十二年の漁業生産は、二百海里規制のため、スケトウダラ等の漁獲の減少がありましたが、わが国周辺水域におけるイワシ、サバ、サンマ等が好漁であったため、総生産量ではなお一千万トン台を維持しておるものと見られます。  水産物需要高度化、多様化しつつ増加を続けてまいりましたが、五十二年前半には、二百海里関連魚種中心魚価が高騰したため最終消費量減退を示しました。五十二年九月以降は、生産増加消費減退から水産物産地価格は前年を下回る水準となっており、消費者価格も落ちついた動きに転じております。  漁業経営収益性は、五十一年から五十二年前半を通じかなり改善され、石油危機以前の水準へと回復しつつあります。  しかし、今後は、二百海里の国際規制の影響と魚価上昇の限界から、厳しい環境に立たされるものと見られます。  また、漁業就業人口減少率は最近やや鈍化しておりますが、依然として高齢化が進んでおります。  このような状況のもとで、水産物安定供給確保漁業振興を図っていくための今後の重要課題は、二百海里時代に対処するための水産外交に積極的に取り組むとともに、わが国周辺水域の活用、水産増養殖推進遠洋漁場確保開発水産物高度利用促進等を図るとともに、生産流通を通じ可能な限りコストの低減に努めることであります。  以上のような最近の漁業動向を踏まえて、昭和五十三年度におきましては、わが国周辺水域における沿岸沖合い漁業振興遠洋海域水産資源開発遠洋漁業の新たな展開、水産物価格安定、流通加工合理化及び資源高度利用促進漁業経営の安定、漁業従事者福祉向上等、各般の施策を強力に展開することといたしております。  以上をもちまして、農業林業及び漁業の各年次報告並びに講じようとするそれぞれの施策概要説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  国務大臣発言農業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度農業施策林業基本法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度林業施策並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和五十二年度年次報告び昭和五十三年度沿岸漁業等施策について)に対する質疑
  23. 保利茂

    議長保利茂君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。新盛辰雄君。     〔新盛辰雄登壇
  24. 新盛辰雄

    新盛辰雄君 ただいま提起されました昭和五十二年度農業林業漁業動向に関する年次報告及び昭和五十三年度の各施策について、私は、日本社会党を代表して、福田総理並びに関係大臣に質問をいたしたいと存じます。(拍手)  これらの白書は、苦悩するわが国の第一次産業である農林漁業政策について、具体的方針展望に乏しく、観念的な官庁白書となっております。血の通った政策目標も与えず、一方的な指導や助言の羅列だけで、農漁民の理解を求めるに足りないものであり、農漁民の真髄の苦しみや悩みをともにしていく真剣な姿勢が見当たりません。  わが国の第一次産業である農業林業漁業が果たしてきた役割りは実に大きなものがあります。しかし、ここに示されている白書には将来展望がないばかりか、その位置づけはきわめて不明確であります。  政府は、この際、第一次産業重要性を再認識し、自給体制生産価格流通などの各面から、破壊されつつある農漁業全体を一日も早く見直し、積極的な生産振興を図るべきであります。こうした中で、年々農林水産予算減少の一途をたどっているのであります。  そういった観点から、私は、次の諸点について政府見解を具体的に求めたいと存じます。  農業白書では、減速経済下にあって、土地の流出は減り、帰農者はふえていると評価していますが、それが直ちに農業見直し機運が高まってきたUターン現象だと見ることは甘い観測でありまして、やがて経済が好転すれば逆Uターンが生ずることは必至で、再び農業離れが始まることは明らかであります。農村にとどまる農業後継者づくりのために政府はどう考えているのか。七〇年代から八〇年代に向かって、農業生産は大幅に減退しているとき、いかにして農村環境整備を図り、農村青年にやる気を起こさせていくかがきわめて重要なことであります。  こうした中で、過剰米理由に、水田利用再編対策として米の生産調整を押しつけることは、いたずらに農家混乱をさせ、これまでの根強い不信感から生産意欲減退させることになります。  この際、政府は、減反政策を再検討し、米の需給拡大消費に向かって全力を挙げるべきだと思うのですが、総理見解をお伺いしたいのであります。  農畜産価格問題は、生産者農家にとって死活につながる大事なことであります。農業生産を高めるには、輸入を削るか、価格を安くして需要拡大する以外にありません。これから考えられることは、農業食品関連産業において、生産性向上流通をコントロールして、安くかつ安定した価格食料品を供給する必要があります。  このことは、消費者の要請にこたえるだけではなく、需要の増大を通じて農業生産拡大条件をつくることになると思います。  今年度据え置きになった畜産物価格決定は、生産者農家に不満と不安を与えています。この際、減反や転作などの官僚的農政をやめ、農業生産振興食糧自給体制のかぎである価格保障制度を早急に確立すべきではないでしょうか。関係大臣見解を求めるものであります。  牛肉、オレンジ、果汁等輸入自由化枠拡大もまた農家を犠牲にした暴挙と言わざるを得ません。  白書では、対外経済調整のため国内農業混乱をもたらすような事態は回避しなければならないと明らかにしながら、東京ラウンドでは、無理をしてまで農産品自給率向上を目指すと国際的な摩擦を招くという矛盾した政府見解を出しているが、その真意はどこにあるのか。  明後日訪米される福田総理は、農家が心配している農畜産輸入枠拡大問題でカーター大統領と話し合うつもりがあるのか、お伺いをいたします。  また、輸入枠拡大対抗措置として、一部に輸入関税引き上げ機運や、不足払い制度による牛肉などの輸入自由化を主張する提言がありますが、政府はこれにどう対処しようとしているのか。  白書が指摘しているように、輸入枠拡大の余地がないとすれば、国内昭和六十年度への食糧需給の見通しを再検討し、地域主体農業生産体制、すなわち、地域農政を確立し、経営の改革、大幅な財政投資など、食糧自給向上こそ図るべきだと思うのですが、総理並びに関係大臣の所見をお伺いいたします。  次に、林業白書についてお尋ねをいたします。  わが国森林林業の現状はかつてない危機に直面し、まさに崩壊寸前と言っても過言ではありません。  昭和五十二年度の木材需要は、昭和五十一年度の国産材自給率三四・九%と、前年より低下しています。  一方、外材輸入量は三一%もふえ、材木の六五%を外材に依存する状態となっております。  このため、需要はだぶつき、木材価格は低迷し、経営担い手である林業就業者、労働者は年々減少し、高齢化は進み、振動病、腰痛症などの職業病、労働災害が激増しています。  このような状況にもかかわらず、政府・自民党は、民有林に対しては、林業構造改善事業、大規模林業開発事業、森林組合の大型合併を中心にした合理化を進め、国有林に対しては、造林、林道などの生産基盤の手抜き、国民の保健休養事業の大幅な後退、直営用事業の縮小、営林四局の格下げ、営林署の統廃合による一割削減や、現行の七万人体制を四万人体制へと人減らし合理化を図ろうとしております。これに関連させた農林省設置法の一部改正や、国有林野事業改善特別措置法が本国会に提出されているのでありますが、この政府案は、林業の現状認識に誤りがあり、まさに国有林の荒廃、山林地域社会の危機をさらに拡大する何ものでもないのであります。  景気が停滞をしている中で、木材需要価格は不安定となり、山林地域社会は危機状況にあると白書も指摘をしておるのでありますが、全くそのとおりだと思います。一体、わが国森林はどうなるのか。その責任は、これまで山荒らしを強行してきた林野行政にあると思うのでありますが、総理並びに関係大臣見解をお伺いいたします。(拍手)  また、木材産業及び国内林業育成の見地から、速やかに秩序ある外材輸入措置を講じ、国内木材需給体制を図る必要があります。そして、木材安定供給森林の持つ公益機能を抜本的に再検討すべきであるという観点から、わが党が本国会に提出をしている国有林野事業再建整備特別措置法案並びに国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置法案を政府は直ちに受け入れるべきであると思うが、政府の所見をお伺いいたします。(拍手)  次に、漁業白書についてでありますが、二百海里時代に入って二年目、新しい海洋秩序によるわが国漁業再編成は、当面の緊急課題であります。  今次のサケ・マス日ソ漁業交渉は、政府の努力にもかかわらず、厳しい現実の前に後退を余儀なくされ、禁漁区や漁獲量制限に伴い、水産加工業や流通機関の人々に深刻な打撃を与えています。母川国主義の壁は峻烈をきわめ、ソ連側が繰り返し主張したという「時代の変化を日本側も十分認識すべきだ」という態度に対し、事前準備や交渉技術だけに頼って局面打開を図ろうとした政府の時代認識に、大きなずれがあったのではないのか。すなわち、二百海里時代の認識と施策わが国は持っているのかということをいま問われているのであります。  また、尖閣、竹島、北方四島など、領土周辺における漁業の操業区域を確保していくための漁業外交を今後どう進めていくのか、福田総理の決意を明らかにしていただきたいのであります。  漁業生産量の約四割を外国二百海里水域に依存してきたわが国は、北洋漁業で追い詰められ、さらには、豪州、ニュージーランド、ギルバート、パプア・ニューギニアなど、南太平洋フォーラムの数多くの沿岸諸国との新たな対応を迫られております。  第三次国連海洋法会議で、いまだ結論が出ていない高度回遊性魚種であるカツオ・マグロ漁業は、沿岸国の帰属をめぐってピンチに立っています。既存漁場及び新漁場の確保、操業規制、入漁料、漁業協力など、政府はこれまでどのように対処をしてきたのか、今後また、どう対処していくのか、総理並びに関係大臣見解をお伺いしたいと存じます。(拍手)  最後に、水産物安定供給需要拡大についてでありますが、昨年の魚ころがしや魚隠しによって消費者の怒りを買い、動物性たん白質の供給量は、ついに畜産物が水産物を上回り、魚離れが生じたことは記憶に新しいところであります。  水産物の供給は、需要あっての供給であり、価格が高過ぎれば需要が離れていくことは当然であります。政府は、生産、加工、流通価格改善を図り、これらの一元化を徹底的に進め、生産流通コストの低減に努め、消費者需要をつなぐ水産物価格安定の実現に向かって、積極的に努力すべきであります。政府見解をお伺いをいたします。  政府及び関係当局は、いまこそ日本の漁業を守る立場から、これまでの遠洋、沖合い漁業から、沿岸漁業整備開発を進め、周辺水域の水産資源管理促進、種苗、養殖生産技術の向上など、永続的沿岸海域の生産力を高めながら、新しい海洋秩序での漁業再編成によって、これまでの漁業構造を変革をし、漁業の安全操業、漁業従事者の安定を図り、あわせて漁業経営をめぐる環境条件向上させるなど、当面の緊急課題に勇断をもって対処されることをここに強く要望し、私の質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  25. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) 苦悩に満ちた農林水産業、これにいかに対応するか、こういうお話でございますが、確かに、いま、日本の農林水産業は非常にむずかしい段階であります。つまり、農業部面においては米の生産過剰、こういうむずかしい問題がある。また、漁業におきましては、二百海里時代の到来という問題があるわけであります。しかし、農林水産業は、国家、国民の存立の基盤である食糧の確保、こういう重大な任務があると同時に、国土、環境の保全、地域社会の形成、そういう重大な使命も持っておる問題でございます。  そういうような見地から、今後とも食糧の総合的な自給力向上を図る、これはもちろんでございますが、国政の基本として、生産基盤と生活環境整備生産担い手と後継者の確保、構造、価格政策の充実などの政策を強力に進めていきたいと同時に、水産業につきましては、特に二百海里時代に対応いたしまして適正に対処してまいりたい、このように考えております。  減反政策をやめろと、こういうお話でございますが、これは、目先のことを考えますればそういうこともあるいは言えるかもしれない。しかし、これをやらずにおいたら、米は生産過剰になってしまう。これが長く続くという状態になったら、その過剰の米を一体どうするのですか。そういうことを考えますと、これはもう、農家の本当に希望しておるところの食管制度の維持なんということはできません。農家が本当に待望していることは、食管制度を維持して、そして米の安定的な耕作ができるようにということなので、親身に、長い目で農村のことを考えれば、いまここで、多少農家にはつらいことであるけれども、減反政策をやるということ、これが本当に農村を愛するゆえんである、このように考えているのでありまして、減反政策をやめるという考えはありません。  私の訪米の際に、農産物輸入枠の問題なんかが出ると思うが、というお話でございますが、これは、私はそういう日米間の問題では余り話をしないのです。世界の問題、世界を踏まえて、日米が一体どういう役割りをするか。いまとにかく、皆さん、世界の政治の中で一番大きな問題は、これは経済問題なんです。一体、世界のいまの経済の状態をほっておいたらどうする。そういう中で、アメリカは世界第一の経済大国だ、わが日本は第二の経済規模を持っておる国なんです。その第一のアメリカと第二の日本、これが一体どういう態度をとるかで世界の動きというのは変わってくるのです。それくらいな重要性を持つそういう日米でありますので、短時間の話し合いでありまするから、日米間の農作物をどうするというような話は私はしないつもりでございます。もうすべてそれらの問題は牛場・ストラウス会談において話が済んでおる、この牛場・ストラウス会談を忠実に実践をしていく、これが私の考えでございます。  なお、林野の荒廃の問題等に触れられましたが、この間もお答え申し上げましたように、緑の山河を保存しなければならぬ。最近は木材資源の供給という林野問題、そのほかに環境の保全、治水の問題、いろいろ林野の持つところの重要な課題があるわけでありまするから、それらを踏まえまして一生懸命取り組んでいくというつもりでございます。  漁業の問題につきましては、これは先ほども申し上げましたが、二百海里時代が到来したんだ、そういうことを踏まえまして、思いを新たにしてわが国の二百海里水域の開発、これに取り組んでいきたい、かように考えておる次第でございます。(拍手)     〔国務大臣中川一郎登壇
  26. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まず第一番目に、後継者について触れられましたが、農業生産中核的担い手を育成し、農業生産の安定的な拡大を図り、よってもって、後継者に魅力ある農村を築くことがまず後継者問題だと考えております。  このため、生産基盤と生活環境整備あるいは農業投資の増大、生産対策、構造政策あるいは価格政策等、総合的に実施いたしまして御期待にこたえたいと存じております。  水田利用再編につきましては、総理から答弁がありましたので、省略をさせていただきます。  農産物価格、中でも畜産価格について御指摘ございましたが、農畜産価格につきましては、従来から大部分の農畜産物を価格安定制度の対象としており、また、その運営に当たりましては、それぞれの特性に応じた価格支持の仕組みと、これに即した算定方式に基づきまして生産需給事情や物価、賃金その他の経済事情等を勘案して、適切に決定してきたつもりでございます。  特に、本年度の畜産価格据え置きは、飼料価格の非常な値下がりや生産性向上を反映して決めたものでありますが、その際、農家生産意欲にも配慮いたしまして、加工原料乳の限度数量の枠の拡大、肉牛等の生産対策の充実を図って対処したつもりでございます。  次に、自由化の問題について触れられましたが、何といってもわが国農業は自給率の向上を第一といたしておりまして、国民に安心して食糧問題を任していただく、それでもなおかつ足りない分につきましては、安定的にこれを輸入して、全体として国民に食糧を供給することを旨として施策を講じておるところでございます。  なお、これに関連いたしまして、地域農業振興せよということでありましたが、昨年十一月、農業生産の地域指標の試案を作成したところでありまして、これに基づきまして、地域ごとに各般の施策を講じてまいりたいと存じております。  また、林業についてお触れでございましたが、確かに最近の林業をめぐる諸情勢はきわめて厳しいものがあります。  原因といたしましては、第一に、伐期に達しない若齢林が圧倒的に多いということ。二番目に林道等の生産基盤整備の立ちおくれが理由でございます。第三は、経営規模の零細分散性等によりますほか、特に最近の経済基調の変化を反映いたしまして、住宅建設等木材需要の伸び悩み、外材輸入に主導されました需給の緩和と材価の低迷等が影響しているものであります。  このため、政府といたしましては、木材需給及び価格の安定対策として、短期的な需給見通しの策定、在庫情報をも加えた情報機能の強化、これらに即した安定輸入のための関係業界への指導の徹底などを進めておるところでございます。  また、国内林業に対しましては、造林、林道等の生産基盤整備促進し、林業構造改善促進するとともに、担い手対策を強化しておるところでございます。あるいはまた、国有林の合理化等もぜひともやらなければならない施策であり、加えまして、木材流通消費改善等、総合的に林業政策を進めてまいるつもりでございます。  これに関連いたしまして、社会党から提出されました二法案もよく承知いたしておりますが、国有林野につきましては、国有林野事業改善特別措置法案及びこれに関連する農林省設置法の一部を改正する法律案を御提案申し上げておりまして、これによりまして国有林を改善することが一番得策と考えておるところでございます。  また、民有林の造林の推進につきましても、せっかくの御提案ではございますが、林業基本法の精神にのっとり、林業者及びその組織する団体の自主的な努力を助長する方向でこれを進めることを基本として、助成の充実、強化に努めているところであります。  また、自然的、社会的条件等から、自主的努力のみでは造林が進めにくい地域につきましては、従来からも森林開発公団、都道府県の造林公社等による分収造林の推進を図っているところでありまして、これらの施策強化することによって、この事態を乗り切りたいと考えておりまして、残念ながら社会党二法案については賛成しかねるところでございます。  次に、漁業問題についてでございますが、このたびの日ソ交渉に当たりまして、資源の保護、強化について、日本はあるいは母川国主義について考えが及ばなかったのではないかということでございますけれども、われわれといたしましても、昨年すでに母川国主義というものを原則的には認める立場に立っておりましたし、サケ・マスの資源等についても十分知っておったのでございます。  そこで、このたびは資源あるいは母川国主義に配慮するとともに、わが国の伝統的な操業、それによって社会的、経済混乱をもたらさないという立場から、今回の交渉におきましてもサケ・マス資源の保存、漁獲を維持することができたわけでございます。もちろん厳しい規制措置はございますけれども、今後資源の保護に努めまして、この漁獲を継続的にとり進めたいと考えております。  なお、南太平洋諸国に対する漁業交渉と入漁料等についてお話がございましたが、南太平洋諸国との漁業交渉に当たっては、これらの国々の漁業振興のための漁業協力を推進しながら、漁業実績の確保に努めていきたいと考えております。また、入漁料につきましては、漁業者自身が操業経費の一部として当然負担すべきものでございますが、相手国が高額な入漁料を要求することもありますので、政府といたしましては、漁民の大きな負担にならないよう、相手国とも十分話し合いをしつつ、最善の結果を得たいと存じております。  なお、消費者の魚離れのお話もございました。五十一年から昨年にかけまして、確かに多獲性魚の不漁、あるいは日ソ交渉の長期化、こういうことによりまして魚価が高騰をしたのでございますけれども、その後ようやく落ちついてまいりましたし、今後もそのようなことのないように、消費者対策についても万全を期したいと考えておるところでございます。  最後に、このたびの日ソ交渉を通じましても、さらに沿岸漁業を大事にすべきである、これは私も再認識をしたところでございまして、わが国周辺海域の水産資源の維持、培養、その高度利用を図ることが重要であり、このような観点から、いま進めております沿岸漁場整備開発計画に基づきます沿岸漁場の整備開発、あるいは国や県の栽培漁業センターを中核とした水産生物の種苗の生産、放流等を積極的に推進して、資源確保してまいりたいと存じます。  このほか、また、国及び県の試験研究を中心として、新たな技術開発もあわせて積極的に取り入れたいと考えておるわけでございます。  以上、厳しい農林水産業の諸問題にお答えいたしましたが、何分にも国際的にも、あるいは国内の地理的自然環境から言いましても、厳しい農林水産業でございますので、この上ともの御指導と一層の御協力をお願いいたしまして答弁を終わります。(拍手)     〔国務大臣園田直君登壇
  27. 園田直

    国務大臣(園田直君) 外務大臣の所管に関するものをお答えをいたします。  二百海里時代を迎えて、南太平洋諸国は、本年に相次いで二百海里地域を設定するものと想像されますので、こういう国々とは緊密に連絡をいたしております。こういう国々は、自国の漁業振興というものを希望いたしておりますので、資源の保護、増殖、こういう点から、わが国はこういう国々と漁業協力を積極的に推進しつつ、わが国漁業の実績を確保するため、こういう国々と漁業協定を結びたいと考えております。  次に、カツオ・マグロ等の高度回遊性の魚種につきましては、一般魚種とは区別をして国際管理にゆだねるべきであると考え、海洋法会議も大体この方向で議論が進められております。東太平洋や大西洋においては、すでに国際機関のもとに管理が行われておりますが、南太平洋水域においては、このような既存の国際機関がありませんから、ややもすると沿岸国がそれぞれ規制を行う懸念がありますことは事実でございます。わが国としては、有効な資源保存の見地からも、南太平洋においてもこのような国際協力が進められるべきであると考えており、今後ともこのような方向で努力をする所存でございます。(拍手)     〔国務大臣牛場信彦君登壇
  28. 牛場信彦

    国務大臣(牛場信彦君) 農産物輸入に関しまして、若干御答弁申し上げます。  私も、農業白書に出ておりますとおり、日本の農政の基本の一つが総合的な自給力強化にあるということはよく存じておりまして、これは対外折衝の際にも常に申しているところでございます。  先日、私の発言が、自給率向上の点について十分配慮してないかのように伝えられましたが、私の申しましたことは、実は、たとえば、欧州共同体のことでございますが、これは御承知のとおり、非常に強い農業保護をやっておりまして、その結果、小麦、牛肉、バター、脱脂粉乳、砂糖、あらゆるものについて非常な過剰生産になりまして、大きなストックを抱えておる。その結果、伝統的な輸出国であるオーストラリアなどとの間で非常な摩擦が起こっているということを指摘申したわけでございまして、この点、もし誤解を起こしましたら大変遺憾だったと思うのでございます。  そこで、わが国の場合におきましては、需要動向に対応して、農産物の総合的自給力強化するための適切な対策が必要と考えられますが、同時にわが国は、ほかの先進国に比べまして、どうしても農業関係におきまして、安定的な輸入に依存する度合いが強いわけでございますから、この輸入につきまして、安定的なソースを見つけていくということが非常に必要になってくると思う次第でございまして、その配慮が必要である。  また、消費者に対しまして、低位に安定した価格を常に提供するということが、農産物需要拡大し、したがって農業振興するゆえんでもございますので、この価格の安定につきましても、輸入という問題を利用して配慮してまいるということが必要だろうと考えておる次第でございます。(拍手)     —————————————
  29. 保利茂

    議長保利茂君) 武田一夫君。     〔武田一夫君登壇
  30. 武田一夫

    ○武田一夫君 私は、公明党国民会議を代表し、ただいま報告のありました、いわゆる昭和五十二年度農業白書並びに林業白書漁業白書に関し、内閣総理大臣並びに関係大臣に対し、基本的な問題にしぼって質問いたします。  まず第一に、わが国農業の位置づけと、その再建、発展のための基本的方途についてお伺いしたい。  今回の白書は、マスコミ等でも、内憂外患の中の農業白書と言われているように、第二次減反という内憂、そして農産物輸入圧力という外患に象徴される厳しい環境の中で公表されたものであります。  本年以降の減反では、転用可能な水田はすでに転用され尽くしたにもかかわらず、約四十万ヘクタール、実に全九州の水田面積をも上回る減反を強要しているものであり、まさに農家にとっては死活問題であります。  また、農産物輸入についても、今日まで生産農家は大変な犠牲を払いつつ、政府の方針に協力を余儀なくされてまいりました。しかるに、依然としてとどまることを知らない激しい輸入攻勢に直面し、茫然としております。  加えて、現在のわが国経済の減速化は、農産物需要減退や兼業機会、農外収入の縮小など、農業を取り巻く情勢を一段と厳しいものにしているのであります。まさに、わが国農業は未曽有の受難期を迎えていると言っても過言ではないのであります。こうした窮迫した状況の中で、いま全国の生産農家は、農業の行き先に大きな不安を抱いているのが実情であります。  そこで、福田総理にお尋ねいたしますが、あなたは生産農家のこのような窮状と不安を解消するために、わが国農業わが国産業経済の中にどのように位置づけし、また農業の将来に対してどのような展望を描いておられるか、そしてそのためにいかなる基本施策を講ずる用意があるのか、その所見を明確に示していただきたいのであります。  第二に、農地制度の見直しの必要性についてであります。  今回の白書も、「農業経営発展に意欲的に取り組もうとしている農家に農地の利用を集積し、減速経済下の諸条件に耐えうる発展性ある農業経営を数多く育てていくことが、農政の当面する最大の課題である。」と指摘しております。  近年における農業の著しい構造変化並びにスケールメリットの大きい畑作物の自給生産拡大等を考慮するならば、現在、このことはきわめて重要な意味を持つに至っていると言えるでありましょう。政府は、いまこそ、このような新しい局面に対応した農地制度のあり方について、真剣な検討を行うべきであろうと考えるものでありますが、どのように対応なさるつもりか、しかと承りたいのであります。  ただ、この場合、画一的に零細農家を切り捨てるというものであっては断じてなりません。あくまでも借地農発展への道を開くという性格のものとすべきであることも、ここに強く申し添えておきます。  第三に、農産物価格政策についてお伺いいたします。  今回の白書は、価格政策についてはまことに冷淡な位置づけに終わっております。農業基本法第十一条は、農産物価格政策について、政府が定期的な総合的検討を行い、これを公表すべきであることを義務づけております。しかるに、政府は、昭和四十年に一度検討結果を公表しただけにすぎないではありませんか。農業の内外において、経済は著しい変化を見せていることから見ましても、当然、政府は、この際、価格政策の抜本的再検討を行うべきであると考えるわけでありますが、政府の明快なる答弁を求めるものでございます。  第四は、減反政策農産物輸入問題についてであります。  政府減反政策への対応を見るとき、水田において水稲や牧草などを組み合わせた輪作や、田畑輪換方式を導入する施策等に対する取り組みがはなはだ弱いと言わざるを得ません。輪作や田畑輪換方式を積極的に導入し、それを確立させることこそ、生産農家から歓迎され、白書が言う、需給動向に合わせて農業生産再編成を進めるとともに、総合的自給力強化を図ることに通ずるものと考えますが、政府見解を伺いたい。  これとあわせて、農産物輸入については、今後の外圧の見通しと、これに対する政府の対策について、その所見をお伺いしておきたいのであります。  第五に、林業問題、とりわけ林野行政についてお伺いいたします。  森林の持つ経済的機能と公益的機能を十分発揮させるためには、その基礎に健全な林業経営が存在すべきことは、言うまでもありません。しかるに、現在のわが国林業は、経済の減速化の影響も加わり、国有林、民有林を問わず、深刻な経営難に陥り、山村は荒廃化の様相を強めております。  こうした中にあって、現在わが国は六五%を上回る木材を海外に依存しております。それだけに、木材については秩序ある輸入体制の維持が必要であります。さらにまた、林業関係者の一層賢明な対応が迫られているとも言えるでありましょう。これなくしては、わが国林業の活性化はあり得ないと考えるものであります。  海外の先進国では、技術指導を中心とする林野行政を展開することによって、林業経営の健全化に努めているということも注目しなければなりません。したがって、政府は、いまこそ外材については秩序ある輸入措置を講ずるとともに、じみちではあっても、生産、加工、流通にわたる技術指導体制の強化に、より一層重点を置く林野行政を本格的に展開していくべきではないかと思うのでありますが、政府の所見を伺いたいのであります。  第六に漁業政策についてでありますが、当面する北洋サケ・マス漁業の救済についてお尋ねいたします。  本年度の日ソサケ・マス漁業交渉は、わが国漁獲割合が四万二千五百トンとなり、また、新たな大幅禁漁区が設定されるなど、きわめて厳しい内容で決着したのであります。これは、昨年の日ソサケ・マス漁業交渉並びにさきの日米加漁業交渉に引き続く厳しい措置でありまして、二百海里時代を迎え、その対応に適切な措置を怠った政府の責任は責められて当然であります。  この決定によって、関係漁業者は昨年に続く大幅減船を余儀なくされることは必定であり、残留するサケ・マス漁業者の割り当てが急激に減少することから見て、共補償の上積みには大変な無理があります。また、新たな禁漁となる海域から見て、中小のサケ・マス漁業者への集中的な減船措置はその命取りとなるだけに、絶対に回避すべきでありました。やめるも地獄、残るも地獄という漁業者の悲痛な声をしかと受けとめていただきたい。  政府は、減船措置については、こうした実情を十分考慮するとともに、同じく損害をこうむる陸上の中小関連業者、離職者も含めて十分なる救済策を講ずべきであります。政府基本的方針と具体的対策を明確にお示し願いたいのであります。  さらに、今回交わされました議定書の内容を見ますと、ソ連側の監視体制、取り締まりは一段と強まることは明らかであります。いままでも頻繁にトラブルが発生し、漁民にしわ寄せされてきたのでありますが、今回の措置について、日本側としては漁船間のトラブルを未然に防止するための体制は万全を期しているものかどうか、この点についてもあわせて政府見解をお尋ねいたします。  以上、六項目について質問いたしたわけでありますが、いずれも日本の農林漁業にとっては重要な問題であります。総理並びに関係閣僚の誠意ある御答弁をお願い申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  31. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  農家がいま非常に苦しい不安な状態にある、そういうことを認識した上で、農業経済の中での位置づけをどう考えておるか、また、その将来をどう展望しておるか、さらに、いかなる基本施策を講ぜんとするか、こういうお尋ねでございますが、私は、まあここ十数年来の農家というものは非常に不安な時代にあった、そのように率直に思います。つまり、昭和三十年代、その前は、私はわりあいに農家というものは活発な暮らしをしておられた、こういうふうに思いますが、その後、高度成長時代に入る。この高度成長時代というのは、何と申しましても工業中心ですから、工業に従事する国民と農業に従事する国民との間に大きな格差が生ずるという状態になり、所得の高い方を求めて農家の人口が続々と流出をするという状態、そういうようなことで、農村はまさに荒廃せんとする、そういう状態でありますから、私は、大変農家の状態というものは不安な状態であった、こういうふうに思うのであります。  私はかねて、とにかく早くそういう状態がいわゆる安定成長路線に転換するといいな、こういうふうに思っておったのですが、しかし、この高度成長、これもわが国といたしましては、大変大きな足跡をわが国のために残した、こういうふうに思います。思いますが、しかし、農村の立場から言うと、大変農村にお気の毒な状態であったということは、率直に私は考えるのであります。しかし、好むと好まざるとにかかわらず、いわゆる安定成長路線、その減速経済体制をとらなければならぬ時代にわが国は追い込められておるというか、そういうふうになってきておるのです。そういう中で、私は、二十年近く以来、初めて、農家とそれからその他の階層が肩を並べて同じ所得に均てんするという基本的体制が整ってきた、こういうふうに見ております。  同時に、いま少し長い目で世界を展望いたしますと、今日の四十億人口は二十一世紀初頭には八十億、倍になろうとしておる。それに一体食糧が追いつけるかという重大な、大きな問題が出てきておるわけです。その中で食糧小国であるわが日本を一体どうするか、こういう問題も出てきておるわけであります。  そういうことで、私は、まさにわが国農業問題は曲がり角に来た、見直しをすべき時期に来た、こういうふうに考えておる次第でございますが、これに対しましては、さきに策定いたしました「農産物需要生産の長期見通し」、とにかくそういう基本的な考え方があるわけですから、これを粘り強く推し進めていきたい、こういうふうに存じます。  とにかくそういう基盤、背景ができたのでありますから、ここで政府といたしましても、その生産、構造、価格、各方面にわたりまして、そういう新しい段階に応じた対策を推し進め、生きがいのある農村を再現いたしていきたい、このように考えております。(拍手)     〔国務大臣中川一郎登壇
  32. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 第一番目に、農地制度のあり方について御指摘がございました。  確かに、経営規模拡大のために、第一には、取得資金の融通等によりまして所有権による規模の拡大があり、これを促進しなければなりませんが、あわせまして、借地による規模の拡大を図ることも、農政上きわめて重要だと考えております。このような観点から、賃貸借の規制の緩和や農用地利用増進事業の実施によりまして、御指摘のとおり、借地によります規模拡大推進を図っていきたいと思っております。  今後とも、五十二年度から実施しております地域農政特別対策事業や、今年から発足しました新農業構造改善事業等を通じまして、農業経営改善に意欲的な農家への農地の利用の集積に努めてまいる所存でございます。  次に、価格政策についてお話がございましたが、安定的な国民食糧を確保していくためには、生産及び構造に関します各種の施策とともに、価格政策がより一層有効に機能することが必要と考えており、今日まで作目間の相対価格関係の調整等について改善を加えてまいったところでございますが、今後とも所要の検討を進めてまいりたいと存じます。  次に、減反政策に関連いたしまして、輪作や田畑輪換が可能なように農業基盤整備を行うべきだ、こういうことでございますが、これはまさに必要なことで、耕地の汎用化を進めるために圃場整備事業や土地改良総合整備事業などを積極的に進めまして、食糧総合政策の遂行の背景をつくり上げたいと存ずる次第であります。  次に、農産物輸入についてお話がありましたが、しばしば申し上げておりますように、わが国総合食糧自給度の向上、こういうことに第一点を置きまして、しかる後、不足分を安定的に輸入いたしまして、全体として国民に食糧を確保していく、こういうことを基本といたしておりまして、輸入を優先するようなことは農政上許されることではないと考えます。  次に、外材を初めとする林業問題についてお話がありましたが、確かに最近のわが国林業並びに林産業はきわめて厳しい状況にあります。外材の輸入に当たりましては、国内需要に見合った秩序ある輸入が行われる必要がありますので、従来からこの趣旨に即して関係業界等を指導をしてきたところでありますが、さらに、需要に見合った安定的供給が図られるよう、短期的な需給見通しの策定、在庫情報をも加えた情報機能の強化、これらに即した安定輸入のための関係業界への指導の徹底等を図りまして、木材需給及び価格をより安定していくよう努力するつもりであります。  また、生産、販売、加工、流通にわたる技術指導につきましても御指摘ございましたが、この指導体制につきましても、都道府県に林業普及指導職員を配置する等、所要の措置を講じてまいりたいと考えます。  次に、漁業関係について御指摘がございましたが、まず、北洋サケ・マスの補償問題でございますが、減船あるいは乗組員あるいは関連業界等に対する救済対策につきましては、昨年の措置に準じまして、誠意を持って検討し、遺憾なき対策を講ずる所存であります。  さらに、共補償につきましては、二年連続の減船でありますことも十分承知いたしておりますので、業界とも話し合いの上、対処してまいりたいと存じます。  なお、それに関連いたしまして、監視体制、規制の問題についてお話がありましたが、これは資源増大にとりましては、ソビエトから言われるまでもなく、わが国自体の問題であり、漁民の問題でありますので、そうしたことについては批判のないよう、そして安全な操業ができますように最善を尽くしてまいりたいと存じます。  なお、今後、日ソ、あるいはソ日協定もございますが、今回の五年間にわたる継続的な協定によりまして、わが国とソビエトの漁業関係は、日ソ友好という観点からも、将来安定的に、しかも友好的に継続されるものと存じます。  以上で答弁を終わります。(拍手)     〔国務大臣牛場信彦君登壇
  33. 牛場信彦

    国務大臣(牛場信彦君) わが国農産物輸入拡大につきましては、ASEAN諸国、アメリカ、オーストラリアないしはECなどからも、いろいろ要望の出ていることは事実でございまして、これに対していかにして対処していくかということが、いま政府におきましても非常に苦心をしておるところでございますが、いずれにしましても、農業白書にも出ておりますように、自給率の向上でありますとかあるいは農家経営の安定というようなことを主眼といたしまして、それに害を及ぼさない範囲におきまして輸入を認めていく、こういう方針には変わりはない次第でございます。  もちろん、これから先、日本にとりまして対外経済調整ということが非常に大事になってまいるということはよく御存じのとおりでありまして、ことに現在行われておりますガットの東京ラウンド交渉、これは、これから先、世界の保護主義を抑えていくというためにも、世界的にも非常に重要なことでございますので、われわれといたしましてもできるだけの貢献はいたしてまいらなければならないと考えておる次第でございますが、その際におきましても、農政の基本には触れることのないように十分な配慮をいたしてまいりたいと思っておる次第でございます。  私どもといたしましても、対外関係におきまして、日本の農産物輸入の能力というものがそれほど大きなものでないんだということはよく説明をいたしております。また、現在、農産物につきましてはいろいろな法律がございまして、その範囲内でわれわれ考えざるを得ない。したがって、政府としてやれる範囲というものは外国が考えているほど大きくないんだということもよく説明しているところでございまして、こういう点につきましては、漸次外国の理解も深まってきていると存じておりまして、今後なお一層努力をしてまいりたいと思っております。(拍手)     —————————————
  34. 保利茂

    議長保利茂君) 神田厚君。     〔神田厚君登壇
  35. 神田厚

    ○神田厚君 私は、民社党を代表して、ただいま議題に供せられましたいわゆる農業白書林業白書漁業白書に関しまして、福田総理並びに関係大臣に若干の質問をするものであります。  まず初めに、農業問題であります。  いまやわが国は、減速経済体制の選択を余儀なくされている現状であり、この減速経済体制下において農業をどのように位置づけるかが農政の最重要課題となっております。白書においても農業見直し論を強調しているのであります。しかしながら、最近のわが国農政を見ると、白書が強調するような農業の見直しとは逆行した施策が強行され、農民は農政に対する強い不満とともに、農業の将来に大きな不安を抱いているのが実情であります。  そこで、最初にお尋ねしたいのは、政府の農政の基本理念は何かということであり、また、この理念は、経済高度成長期と今日の減速経済期において、われわれは当然変更されなければならないと考えているのであります。  昭和三十六年に制定された農業基本法は、経済の高度成長路線を農業の面から支えたものでありました。われわれは、この基本法農政こそがわが国農業をして今日の荒廃をもたらした元凶であると指摘し、政府にその改善を迫ってきたのであります。政府は、今日ここに至るも基本法農政を続けようとしているのか、また、減速経済に対応する新しい理念のもとに、基本法を改定する用意があるのか、明確にされたいのであります。  次に、米の生産調整の問題であります。  政府は、本年度から十カ年計画で米の転作を強行していることに対し、農民から強い不満が出され、市町村段階において反対決議まで行われているという事実を十分に承知をしているはずであります。  わが党は、昨年十一月、福田総理に申し入れを行い、これが反対の意思を表明したのでありますが、にもかかわらず強行されたことはまことに遺憾であります。すなわち、このことは、均衡がとれた農産物相互間の価格体系が確立されず、かつ、外国からの農産物輸入政府の無施策によってもたらされたものと考えるが、こうした点を十分反省の上で今日の措置を講じたのかどうか伺いたいのであります。  また、政府は、今回の水田利用再編対策事業をして、わが国農業構造の体質改善を図る大事業としてとらえております。しかしながら、その実施体制について見れば、政府は、ただ単に生産調整数量を示したにすぎず、その具体的実施は、農民の理解と協力という美名のもとに、都道府県ないしは市町村に押しつけているのが実情であり、果たしてこれが責任のある政府の態度と言えるかどうか、はなはだ疑問なのであります。少なくとも、これが実施に際しましては、農民の合意を得た上で、転作のための土地改良事業等を全額国庫負担で行うほか、転換作物に対し米と同様の収益を保証する価格政策等の確立が必要と思われますが、政府はこうした指摘をどのように受けとめ、どのように対処しようとしているのか、明確にされたいのであります。  私は、特に、集団転作によりまして、同じ農民の間で戦後営々として築かれてまいりました農民相互の融和の精神が、このことによってややもすると崩れがちな現状を深く憂えるものであります。  次に、農畜産輸入の問題であります。  昨年の農業白書でも、農産物輸入拡大は困難であると強調し、政府も公式の場で、国内で足りない農産物輸入すると言い続けてきたのでありますが、昨年来の政府のとった態度は全くこれと逆行したものであり、今日のこうした措置は、善良な農民の心を逆なでするものであります。政府はこの点をどのように反省し、今後予想される米国初めEC、オーストラリア、ニュージーランド等からの農畜産物の輸出攻勢にどのように対処するのか、明確にされたいのであります。  また、先ほど福田総理から答弁がありましたが、日米首脳会議に際しまして、もしも米国から、輸入農産物の増大の要請があった場合、あるいは関税引き下げ等の要請があった場合に、どのように対処されるのか、御見解をお聞かせいただきたいのであります。  次に、最近の経済不況が農家所得に及ぼす影響とこれが対応策について、御質問を申し上げます。  最近のわが国経済をめぐる状況は、円高問題等の発生により、著しい不況状態が継続し、企業の減量経営等により、真っ先に兼業収入に依存する農家に大きな犠牲が強いられてきております。このため、今後の農政を進めるに当たり大きな課題は、不安定な兼業農家の位置づけにあると思うのでありますが、政府は、こうした農家をどのような方向に位置づけようとしているのか、明確に示されたいのであります。  白書では、青年が農業に関心を持ち、Uターン現象が起こっていることを高く評価しております。これら青年が希望を持ち、安定的な経営ができる条件整備につき、いかなる施策を用意しているのか、農業後継者育成問題を絡めて、政府の考え方を示されたいのであります。  次に、農畜産物の価格政策のあり方であります。  去る三月末に政府畜産物政策価格を据え置いた措置は、まことに遺憾であります。御承知のように、畜産物政策価格の決定は、農産物政策価格決定の先陣を切るものであり、政府が示した措置に対しては、ひとり畜産農民のみならず、全農民に強い失望を与え、その生産意欲にも大きな悪影響を与えているのであります。  そこで、今後続く米麦等の生産者価格の決定については、いかなる考えのもとに、どの程度引き上げを行おうとしているのか、明示されたいのであります。  また、一部商系企業による養鶏の大規模なやみ増羽が問題となっておりますが、農家養鶏を守る立場から、これに対処する政府の方針を明らかにしていただきたいのであります。  次に、輸入水産物の差益の問題についてお尋ねをいたします。  政府は、四月二十一日の関係閣僚会議で円高対策の大綱を定め、これが差益の消費者への還元を促進する旨を決定したと承知しております。さて、政府資料によって五十二年度の輸入実績を見ますと、総額の七百八億ドルに対し、食用農産物品の合計輸入額は百一億ドルになっております。国際農産物価の大幅値下がりと円高による値下がり分を考え、大蔵、農林、日銀などの統計資料を分析して食料品輸入差益を試算してみると、優に一兆円余りの金額になるのであります。したがって、これが小売価格の値下がりという形で消費者に還元されれば、一世帯当たり三万円以上の収入増加と同じことになるわけでありますが、総理府の物価統計を見ますと、軒並み値上がりしておりまして、値下がりの品は皆無に等しいのであります。  その原因は、一つは流通機構の前近代性にあることは確かでありますが、それと同時に、政府関与物資の輸入差益が全く国民に還元されていないという事実があります。  政府は、その円高総合対策の中で、「主要な政府関与物資等について円高に伴う差益の発生状況及びその取扱いについての考え方を明らかにする。」と述べておりますが、その骨格を御明示いただき、政府が率先して、政府関与物資、特に重要食料品輸入差益を国民に還元するという姿勢を強く打ち出すべきであると考えますが、いかがでありますか。御答弁をお願いいたします。  次に、漁業白書に関連して若干質問をいたします。  今回の漁業白書は、いわゆる二百海里元年の白書でありますが、最近の二百海里設定に伴う二国間漁業交渉の成り行き等から見て、厳しさ、切実さの面で現実認識が甘いと言わざるを得ません。年間漁獲量一千万トンのうち、約四割を外国の二百海里内に依存しているわが国にとりまして、今度のソ連との交渉を見てもわかるように、将来の展望に欠けていると指摘せざるを得ないのであります。  二百海里時代に対応した漁業政策、特に対ソ連との来年度以降のサケ・マスを初め北洋漁業の見通しについて、お答えをいただきたいのであります。  次に、尖閣列島問題と日中漁業協定について御質問を申し上げます。  日中漁業協定は、一九七二年に結ばれましたが、尖閣列島周辺はいわばたな上げになっております。条約の趣旨から言えば友好と安全操業が柱になっているわけでありますが、この海域への侵犯が中国漁船によって続けられている事実を重視しなければなりません。本年十二月に条約の期限切れになるわけでありますが、これが更新に当たって明確に日本の態度を主張すべきであると考えますが、福田総理の御見解をお聞きしたいのであります。  次に、魚の流通価格対策であります。  今日、昨年末の冷凍品の在庫は百万トンに及んでおります。いまや冷凍品が主体となっている現状から、従来の行政と違った流通なり魚価の安定化対策がとられるべきだと思いますが、その具体策を伺いたいのであります。  また、昨年一年間の水産物輸入総額は六千六百四十億円余りでありますが、マグロなどの魚価の高騰が目立っております。これらの輸入差益の消費者還元が図られなければならないと考えられますが、その点をお伺いいたします。  また、漁船乗組員の離職者対策についてでありますが、昨年に引き続きことしもサケ・マス漁船三割減船等により、多くの漁船乗組員が失業にさらされようとしております。現今の経済情勢と特殊な職業柄大変な問題でありますが、減船補償も含め、これらの対策についてお聞かせいただきたいのであります。  最後に、林業問題についてお尋ね申し上げます。  林業をめぐる状況はまことに厳しいものがありますが、昨年の外材輸入は総額一兆一千八百八十億円余りであります。国産材を大きく上回っているのでありますけれども、国内林業振興の立場からこれをどのように考えるのか。また、これらの輸入外材の差益の消費者への還元が進んでいない、この点についてどう考えるのか。さらに、一部国有林の荒廃が問題となっておりますが、財政問題を含め、国有林の健全な経営について御見解をお伺いいたします。  以上各点につきまして、政府の責任のある答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  36. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  もう時代が大変変わってきたので農業基本法を改正したらどうだろう、こういう御所見でございますが、農業基本法の理念は、それは時代が大分変わってはきておりまするけれども、現在においても十分適合性を持っておる、このような見解でございます。したがいまして、これを改正するという考え方は持っておりません。しかし、運用の方では、時代の流れに、そのときどきの動きに応じまして弾力的にやってまいるという考えでございます。  また、今回の日米首脳会談におきまして、農産物輸入問題、関税問題、どのように対処するかというお話ですが、そういう日米間の問題につきましては、私は話し合いはいたさないというつもりです。しかし、ガットの東京ラウンド交渉、こういうような問題は概括的な議論としては出ると思いますが、そういうものが出た場合におきましては、わが国農業という立場を踏まえまして善処してまいりたい、このように考えております。  さらに日中漁業協定、これは本年十二月に期限切れとなる、今回の中国漁船による尖閣列島の海域侵犯事件とひっからまりが出てくるのではないか、その更新に際しまして明確に日本の態度を主張するべきであると考えるがどうか、こういうお話でございますが、尖閣列島周辺の水域は日中漁業協定の対象水域外であります。これは尖閣列島の領有権問題とは全く別個の考慮になっておるのであります。尖閣列島は、申し上げるまでもございませんけれども、わが国の固有の領土である、これは一点の疑いも私は持ちません。皆さんもそうであろう、このように存じます。現にわが国の実効的支配が及んでおる、そういう地域でございます。  今後、中国との間にいろいろな接触があろうと思いますが、この漁業交渉の際におきましてもこの立場は堅持してまいりたい、このように考えますが、しかし、日中間には現在漁業協定に基づくところの円満な漁業秩序が保たれておるんです。協定更新に当たりましては、かかる円満な漁業秩序を維持することの重要性、それを踏んまえて対処いたしたい、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣中川一郎登壇
  37. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まず最初に米の生産調整水田利用再編対策についてお話がありましたが、私どもも決していい政策だとは思っておりませんが、今日の過剰の状態ないしは消費の現状等を見ますと、これは政府の責任であるばかりではなくして、都道府県、市町村、農村を含めました一体の問題であろうと存じますので、政府は、理解と協力のもとに、そしてまた関係農民の協力を得まして、どうしても避けて通ることのできない政策だとして遂行いたそうといたしておるわけでございますので、御理解をいただきたいと存じます。  その場合、土地改良については全額というお話でございますが、やはり補助率は、農業者の負担能力等を考えながら適正な水準で考慮してまいりたいと存じますし、また、価格政策につきましても、それがために転作奨励金というものを交付いたしまして、他の作物とのバランスをとるよう二千億に近い財政支出をいたしまして対処することといたしておるところでございます。  次に、集団転作につきましての御意見でございますが、安定的な転作を進めますためには、水の引きぐあいや、あるいは営農の効率等を考えまして、転作田の集団化を図ることがどうしても経済的に不可欠でございまして、このような見地から、転作困難な条件を持つ農家を含めまして、相互融和の精神に立って、集落ぐるみの話し合いを積み重ねまして、計画的に転作を進めることが必要でありまして、今回の計画転作の仕組みはこのような取り組みを取り入れたものでございまして、これまたぜひとも御理解をいただきたいと存じます。  輸入問題についてお話がありましたが、いつも私申し上げておりますように、わが国農業は、まず自給度の向上、肉につきましても、国際需給というものは決して安定するものではありませんので、わが国のものをできるだけ伸ばして、そしてなお足りないものを外国に仰ぐという、その結果、国民全体に喜んでいただく安定供給、こういうことをやるのでございまして、農民を圧迫して輸入するというようなことは考えていかないことを重ねて申し上げておく次第でございます。  なお、兼業農家について触れられましたが、今後相当期間、兼業農家農業生産の相当部分を担っていかなければならないと考えられますので、各地域の実情に応じ、兼業農家の安定的な就業機会の確保を図りますとともに、中核的担い手中心として、兼業依存度の高い農家を含めた形で集団的生産組織を育成いたしまして、こういった兼業農家に対して、各種きめ細かい施策を通じていきたいと存じております。  なお、Uターン現象があると聞いておるが、条件整備を図るべきであるがどうであるか。農村青年については、やはり私は、農村を魅力あるもの、住みよいものにすることがまず第一番の条件であると思いまして、このために生産基盤整備、生活環境整備、その他万般の農業政策を講じまして、高度経済成長から安定成長に、そして農村が落ちついたものとなって農村青年がuターンできるような、あるいは農村から青年が出ないような施策を講じたいと存じます。  次に、米麦、農産物価格の米麦について、どの程度に価格がなるのかということでございますが、これはまだ何も決めておりませんが、食管法の規定に基づきまして米価審議会等の意見を聞き決定いたしたいと存じますが、需給が大幅に過剰の事態にありますので、この辺なかなか容易でない事情であることも御理解いただきたいと存じます。麦価につきましては、五十二年度から麦はパリティー価格を採用する、そして生産奨励金を含めた水準をそれに加えまして決めるという新しい方式によっておりますので、これによるものと考えられるわけでございます。  商系によるやみ増羽が問題となっておることでございますが、私どもも十分承知いたしておりまして、生産者等の理解と協力のもとにいろいろ施策を講じておりますが、さらに、これを徹底するため、五十三年度から市町村需給調整協議会による調査を拡充する等、同協議会を中心として指導を強めるとともに、いわゆる増羽の是正指導についても一層の徹底を図りたいと存じます。  二百海里時代に即した漁業政策を講ずべきでないかということでございますが、もとより厳しい二百海里時代でございますので、漁業外交を強力に展開するとともに、前庭沿岸漁業を一層整備を図りまして、国民の期待にこたえたいと存じます。  最後に、来年度以降ソ連との交渉はどういうことであるかということでございますが、今回参りまして、あすから日ソ漁業条約がなくなるという向こうからの通告ではございましたが、きょう参議院で成立をさしていただきまして、五年間の協力協定ができたわけであり、かなりの操業区域あるいは漁獲量は減りましたが、今年度も引き続きサケ・マス漁業が継続されることとなりました。私は、交渉経緯を見まして、このサケマ・ス漁業のみならず、日ソ、ソ日、二百海里の中の漁業についても、お互いに理解と協力のもとに今後ともでき得るものと、こう確信しておる次第でございます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  38. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府の関与しております農産物資の円高差益はどうなっておるかというお尋ねでございました。  麦について申し上げますと、食管会計のうち輸入麦に関する差益、そのうちで円高差益分と思われますものが昭和五十二年度に百七十億円ございます。これにつきましては、農林大臣が、食管法の規定により、また現在、米について作付転換を行い、なるべく米の消費を奨励したいという大事な方針を持っておられまして、それとの関連もあって、麦の価格を据え置くことが適当だと考えるというお話がありまして、私も、それはごもっともなことだと考えまして、それに同意をいたした経緯がございます。  次に、牛肉につきましては、畜産事業団の差益のうち、円高差益と考えられるものが昭和五十二年度に三十億円程度ございます。しかし、この場合、御承知のように国産の牛肉の卸売価格が安定帯によって操作をされておりまして、輸入牛肉の売り渡しは、その国産価格に見合った時価で行われるということでございますから、そして、その差益を徴収するということでございますから、輸入価格が仮に下がりましても、それが売り渡し価格に影響を与えるということにはすぐにはならない仕組みであることは御承知のとおりであります。  そこで、農林大臣の御判断はそういうことであるので、消費者の利益になるような事業にこの円高メリットの還元をしたいという御判断であって、私としてもこれはやむを得ないのではないかと考えまして、先般同意をいたしたわけでございます。  次に、魚について、これは政府関与でございませんマグロ等についてお尋ねがございました。  これにつきましては、二百海里ということがあまり喧伝されましたために、消費者自身が輸入の魚は上がっているものだという先入観があったように思われます。  先般、追跡調査をいたしましたところ、マグロ等々について、実は円高の結果もあって輸入価格が下がっている。それにもかかわらず、小売価格が上がっているということがわかりましたので、このことは直ちに公表をいたしまして、消費者に役に立つ情報を与えることになったと考えておりますけれども、同時に、農林大臣に対しまして、生産側の行政指導をお願いをいたした次第でありまして、こういう自由経済の分野につきましては、比較的、差益の還元が行われやすい、またそうなければならないと考えております。(拍手
  39. 保利茂

    議長保利茂君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  40. 保利茂

    議長保利茂君) この際、暫時休憩いたします。     午後三時二十二分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         外 務 大 臣 園田  直君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         郵 政 大 臣 服部 安司君         国 務 大 臣 加藤 武徳君         国 務 大 臣 牛場 信彦君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         農林大臣官房審         議官      角道 謙一君      ————◇—————