○神田厚君 私は、
民社党を代表して、ただいま
議題に供せられましたいわゆる
農業白書、
林業白書、
漁業白書に関しまして、
福田総理並びに
関係大臣に若干の質問をするものであります。
まず初めに、
農業問題であります。
いまや
わが国は、減速
経済体制の選択を余儀なくされている現状であり、この減速
経済体制下において
農業をどのように位置づけるかが農政の最
重要課題となっております。
白書においても
農業見直し論を強調しているのであります。しかしながら、最近の
わが国農政を見ると、
白書が強調するような
農業の見直しとは逆行した
施策が強行され、農民は農政に対する強い不満とともに、
農業の将来に大きな不安を抱いているのが実情であります。
そこで、最初にお尋ねしたいのは、
政府の農政の
基本理念は何かということであり、また、この理念は、
経済の
高度成長期と今日の減速
経済期において、われわれは当然変更されなければならないと考えているのであります。
昭和三十六年に制定された
農業基本法は、
経済の高度成長路線を
農業の面から支えたものでありました。われわれは、この
基本法農政こそが
わが国農業をして今日の荒廃をもたらした元凶であると指摘し、
政府にその
改善を迫ってきたのであります。
政府は、今日ここに至るも
基本法農政を続けようとしているのか、また、減速
経済に対応する新しい理念のもとに、
基本法を
改定する用意があるのか、明確にされたいのであります。
次に、米の
生産調整の問題であります。
政府は、本年度から十カ年計画で米の転作を強行していることに対し、農民から強い不満が出され、市町村段階において反対決議まで行われているという事実を十分に承知をしているはずであります。
わが党は、昨年十一月、
福田総理に申し入れを行い、これが反対の意思を表明したのでありますが、にもかかわらず強行されたことはまことに遺憾であります。すなわち、このことは、均衡がとれた
農産物相互間の
価格体系が確立されず、かつ、外国からの
農産物輸入等
政府の無
施策によってもたらされたものと考えるが、こうした点を十分反省の上で今日の
措置を講じたのかどうか伺いたいのであります。
また、
政府は、今回の
水田利用再編対策事業をして、
わが国農業構造の体質
改善を図る大事業としてとらえております。しかしながら、その
実施体制について見れば、
政府は、ただ単に
生産調整数量を示したにすぎず、その具体的
実施は、農民の理解と協力という美名のもとに、都道府県ないしは市町村に押しつけているのが実情であり、果たしてこれが責任のある
政府の態度と言えるかどうか、はなはだ疑問なのであります。少なくとも、これが
実施に際しましては、農民の合意を得た上で、転作のための土地改良事業等を全額国庫負担で行うほか、転換作物に対し米と同様の収益を保証する
価格政策等の確立が必要と思われますが、
政府はこうした指摘をどのように受けとめ、どのように対処しようとしているのか、明確にされたいのであります。
私は、特に、集団転作によりまして、同じ農民の間で戦後営々として築かれてまいりました農民相互の融和の精神が、このことによってややもすると崩れがちな現状を深く憂えるものであります。
次に、農
畜産物
輸入の問題であります。
昨年の
農業白書でも、
農産物の
輸入拡大は困難であると強調し、
政府も公式の場で、
国内で足りない
農産物を
輸入すると言い続けてきたのでありますが、昨年来の
政府のとった態度は全くこれと逆行したものであり、今日のこうした
措置は、善良な農民の心を逆なでするものであります。
政府はこの点をどのように反省し、今後予想される米国初めEC、オーストラリア、ニュージーランド等からの農
畜産物の輸出攻勢にどのように対処するのか、明確にされたいのであります。
また、先ほど
福田総理から答弁がありましたが、日米首脳
会議に際しまして、もしも米国から、
輸入農産物の増大の要請があった場合、あるいは関税引き下げ等の要請があった場合に、どのように対処されるのか、御
見解をお聞かせいただきたいのであります。
次に、最近の
経済不況が
農家所得に及ぼす影響とこれが対応策について、御質問を申し上げます。
最近の
わが国経済をめぐる
状況は、円高問題等の発生により、著しい不況状態が継続し、企業の減量
経営等により、真っ先に兼業収入に依存する
農家に大きな犠牲が強いられてきております。このため、今後の農政を進めるに当たり大きな
課題は、不安定な兼業
農家の位置づけにあると思うのでありますが、
政府は、こうした
農家をどのような方向に位置づけようとしているのか、明確に示されたいのであります。
白書では、青年が
農業に関心を持ち、
Uターン現象が起こっていることを高く評価しております。これら青年が希望を持ち、安定的な
経営ができる
条件整備につき、いかなる
施策を用意しているのか、
農業後継者育成問題を絡めて、
政府の考え方を示されたいのであります。
次に、農
畜産物の
価格政策のあり方であります。
去る三月末に
政府が
畜産物政策
価格を据え置いた
措置は、まことに遺憾であります。御承知のように、
畜産物政策
価格の決定は、
農産物政策
価格決定の先陣を切るものであり、
政府が示した
措置に対しては、ひとり
畜産農民のみならず、全農民に強い失望を与え、その
生産意欲にも大きな悪影響を与えているのであります。
そこで、今後続く米麦等の
生産者価格の決定については、いかなる考えのもとに、どの程度
引き上げを行おうとしているのか、明示されたいのであります。
また、一部商系企業による養鶏の大規模なやみ増羽が問題となっておりますが、
農家養鶏を守る立場から、これに対処する
政府の方針を明らかにしていただきたいのであります。
次に、
輸入農
水産物の差益の問題についてお尋ねをいたします。
政府は、四月二十一日の
関係閣僚
会議で円高対策の大綱を定め、これが差益の
消費者への還元を
促進する旨を決定したと承知しております。さて、
政府資料によって五十二年度の
輸入実績を見ますと、総額の七百八億ドルに対し、食用
農産物品の合計
輸入額は百一億ドルになっております。国際
農産物価の大幅値下がりと円高による値下がり分を考え、大蔵、農林、日銀などの統計資料を分析して
食料品の
輸入差益を試算してみると、優に一兆円余りの金額になるのであります。したがって、これが小売
価格の値下がりという形で
消費者に還元されれば、一世帯当たり三万円以上の収入
増加と同じことになるわけでありますが、
総理府の物価統計を見ますと、軒並み値上がりしておりまして、値下がりの品は皆無に等しいのであります。
その原因は、一つは
流通機構の前近代性にあることは確かでありますが、それと同時に、
政府関与物資の
輸入差益が全く国民に還元されていないという事実があります。
政府は、その円高総合対策の中で、「主要な
政府関与物資等について円高に伴う差益の発生
状況及びその取扱いについての考え方を明らかにする。」と述べておりますが、その骨格を御明示いただき、
政府が率先して、
政府関与物資、特に重要
食料品の
輸入差益を国民に還元するという姿勢を強く打ち出すべきであると考えますが、いかがでありますか。御答弁をお願いいたします。
次に、
漁業白書に関連して若干質問をいたします。
今回の
漁業白書は、いわゆる二百海里元年の
白書でありますが、最近の二百海里設定に伴う二国間
漁業交渉の成り行き等から見て、厳しさ、切実さの面で現実認識が甘いと言わざるを得ません。年間漁獲量一千万トンのうち、約四割を外国の二百海里内に依存している
わが国にとりまして、今度のソ連との交渉を見てもわかるように、将来の
展望に欠けていると指摘せざるを得ないのであります。
二百海里時代に対応した
漁業政策、特に対ソ連との来年度以降のサケ・マスを初め北洋
漁業の見通しについて、お答えをいただきたいのであります。
次に、尖閣列島問題と日中
漁業協定について御質問を申し上げます。
日中
漁業協定は、一九七二年に結ばれましたが、尖閣列島周辺はいわばたな上げになっております。条約の趣旨から言えば友好と安全操業が柱になっているわけでありますが、この海域への侵犯が中国漁船によって続けられている事実を重視しなければなりません。本年十二月に条約の期限切れになるわけでありますが、これが更新に当たって明確に日本の態度を主張すべきであると考えますが、
福田総理の御
見解をお聞きしたいのであります。
次に、魚の
流通、
価格対策であります。
今日、昨年末の冷凍品の在庫は百万トンに及んでおります。いまや冷凍品が主体となっている現状から、従来の行政と違った
流通なり
魚価の安定化対策がとられるべきだと思いますが、その具体策を伺いたいのであります。
また、昨年一年間の
水産物輸入総額は六千六百四十億円余りでありますが、マグロなどの
魚価の高騰が目立っております。これらの
輸入差益の
消費者還元が図られなければならないと考えられますが、その点をお伺いいたします。
また、漁船乗組員の離職者対策についてでありますが、昨年に引き続きことしもサケ・マス漁船三割減船等により、多くの漁船乗組員が失業にさらされようとしております。現今の
経済情勢と特殊な職業柄大変な問題でありますが、減船補償も含め、これらの対策についてお聞かせいただきたいのであります。
最後に、
林業問題についてお尋ね申し上げます。
林業をめぐる
状況はまことに厳しいものがありますが、昨年の
外材輸入は総額一兆一千八百八十億円余りであります。国産材を大きく上回っているのでありますけれども、
国内林業振興の立場からこれをどのように考えるのか。また、これらの
輸入外材の差益の
消費者への還元が進んでいない、この点についてどう考えるのか。さらに、一部国有林の荒廃が問題となっておりますが、財政問題を含め、国有林の健全な
経営について御
見解をお伺いいたします。
以上各点につきまして、
政府の責任のある答弁を求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕