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1978-04-18 第84回国会 衆議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)     —————————————  議事日程 第二十号   昭和五十三年四月十八日     午後一時開議  第一 日本国アメリカ合衆国との問の犯罪人     引渡しに関する条約締結について承認     を求めるの件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  久保三郎君の故議員丹羽喬四郎君に対する追悼   演説  行政監理委員会委員任命につき同意を求めるの   件  日程第一 日本国アメリカ合衆国との間の犯   罪人引渡しに関する条約締結について承認   を求めるの件  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提   出)  刑事事件公判開廷についての暫定的特例を   定める法律案内閣提出)の趣旨説明及び質   疑     午後一時六分開議
  2. 保利茂

    議長保利茂君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 保利茂

    議長保利茂君) 御報告いたすことがあります。  議員丹羽喬四郎君は、去る三月三十日逝去せられました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。  同君に対する弔詞は、議長において去る四月五日贈呈いたしました。これを朗読いたします。     〔総員起立〕  衆議院は多年憲政のために尽力しさき建設委員長公職選挙法改正に関する調査特別委員長要職につきまた国務大臣の重任にあたられた議員正三位勲一等丹羽喬四郎君の長逝を哀悼しつつしんで弔詞をささげます     —————————————  故議員丹羽喬四郎君に対する追悼演説
  4. 保利茂

    議長保利茂君) この際、弔意を表するため、久保三郎君から発言を求められております。これを許します。久保三郎君。     〔久保三郎登壇
  5. 久保三郎

    久保三郎君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、茨城県第三区選出議員丹羽喬四郎先生は、去る三月三十日逝去されました。まことに痛恨の念にたえません。  ここに議員各位の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)  丹羽先生は、明治三十七年、東京赤坂青山に生をうけられ、長じて旧制水戸高等学校を経て東京帝国大学経済学部に進み、昭和五年に同大学を御卒業になりました。  そして、高等文官試験に合格された後、翌六年内務省に入省、群馬県警察部長内務省外事課長などを歴任された後、昭和二十年には警視庁官房主事として、終戦前後の混乱期にあって、首都の治安確保に御苦労を重ねられました。  戦後、官界を去られた先生は、雌伏七年、この間中小企業経営の苦悩を身をもって体験されたのであります。  やがて、昭和二十七年講和条約発効後、先生は、先輩、友人の勧めもあって、新生日本発展に貢献すべく、同年十月に行われた第二十五回衆議院議員選挙に、自由党公認候補として茨城県第三区から立候補されました。先生の真摯な姿勢と温かいお人柄に魅せられた郷土人たちは、先生に力強い支持を与え、みごと初当選の栄を担われました。  自来、本院議員に当選すること九回、在職二十二年五カ月の長きに及び、この間国政に残された功績はまことに偉大なるものがありました。  本院に議席を得られた先生は、政治家としての研さんを大いに積まれ、各方面に活躍されたのでありますが、とりわけ内務省時代に得られた豊富な経験と卓越した識見を縦横に駆使して、地方自治建設行政分野においてその手腕力量を遺憾なく発揮され、その存在はひときわ光彩を放っておりました。  昭和三十四年には、自治庁の政務次官に御就任、自治省への昇格問題に尽力されてこれを実現に導き、また、地方財政の窮状を救うため、住民税の減税による減収分補てん措置あるいは国の直轄事業地方負担金に対する財源措置を講ぜられたのであります。  次いで、昭和三十八年には、推されて本院の建設委員長に挙げられましたが、先生の誠実にして信義に厚いお人柄と高い見識とは、与野党委員の信望を一身に集められたのであります。  時に建設委員会におきましては、治水、利水の両面にわたる河川総合基本体制の確立が問題の焦点となっておりましたが、先生は、これまでのうんちくを傾けられ、明治二十九年に制定された河川法全面改正と取り組み、この実現を果たされたのであります。  かくして、国政の各分野に着々と業績をおさめてこられた先生は、昭和四十六年、第三次佐藤内閣運輸大臣に任ぜられました。  先生運輸大臣就任された同年七月には、東亜国内航空の「ばんだい号」の遭難事故、続いて全日空機自衛隊機との接触事故と二つの大きな航空事故が発生し、先生就任早々事故対策本部長としてみずから現地に赴き、直接遺体収容等の指揮に当たられました。  相次ぐ悲惨な航空事故を目の当たりにした先生は、「運輸行政の根本は、安全輸送確保にある。人命尊重がすべてに優先されなければならない。これこそが自分に課せられた使命である」とかたく決意されました。そして、航空行政機構整備拡充航空保安体制整備など、安全確保措置を強力に推進される一方、同年九月に行われた第八回日米貿易経済合同委員会に出席して、米運輸長官と会談し、わが国航空管制要員訓練について米側の協力を要請するとともに、欧米各国航空保安施設をつぶさに視察して、多大の成果をおさめられました。  また、海上交通安全確保にも重大な関心を持たれた先生は、東京湾、瀬戸内海などの過密海域における航行の安全を図るため、海上交通安全法の制定にも尽力されました。  第六十八回国会における最重要法案でありました国鉄運賃法改正案審議の際には、先生担当大臣として、国鉄再建法案成立を期して心血を注がれました。この審議は連日深夜に及び、先生は極度の疲労から白内障を患い、痛みをこらえて病院から登院し、答弁に立たれたのであります。あのときの先生のお姿をいまこの壇上において想起するとき、いかに職務とは申せ、ただただ頭の下がる思いがいたすのであります。(拍手)  私は、この審議を通じ、幾たびか先生と鋭く論争を闘わせながらも、先生のお人柄には強く心を引かれるものがありました。そして、いつの日にか先生と、山積する運輸行政の諸問題について、虚心坦懐に意見を交わしたいと念願いたしておりましたが、いまとなってはそれもかなわず、悔やまれてなりません。  このように、先生は、運輸大臣として安全輸送確保という原点に立ち、じみちに粘り強く諸施策を推進されたのでありまして、その功績はまことに大なるものがあります。(拍手)  過ぐる一昨年十二月の総選挙後、初の国会において、先生公職選挙法改正に関する調査特別委員長選任され、本年一月まで在任されましたが、その後半において健康を害され、入院のやむなきに至りました。しかし、先生は強い責任感をもって病院から委員会に出席し、その職務を遂行されたのであります。  一方、自由民主党にあっても、道路調査会長総合交通調査会長選挙制度調査会長等要職につかれて、党の重要施策の立案、決定に大きな役割りを果たしてこられました。  また、先生は、調和のとれた豊かな郷土づくりのため、骨身を惜しまず尽瘁されました。豊富な経験と練達なる手腕を駆使して、県、市町村財政の改善に助力され、また、茨城県の後進性解消のため、道路整備河川の改修、開発の促進等々に労苦をいとわず奔走し、今日の茨城県の発展に大きな足跡を残されたのであります。  先生逝去の日の三月三十日には、くしくも、先生が長年にわたり尽力してこられた国道六号線の土浦バイパス開通式が行われました。この開通式に当たり、先生は病床から心のこもったメッセージを送り、その全面開通実現を期してがんばりたいと切々たる心境を述べられたのであります。  大衆の心を心とし、きめ細かな温かい配慮のもとに、郷土のために献身してやまなかった先生に対し、県民は絶大なる信頼と期待を寄せたのであります。御逝去のいま、先生を惜しむ声がほうはいとして県下にあふれておりますのも、けだし当然のことと申せましょう。  「徳は孤ならず」とは、先生が好んで揮毫した言葉でありますが、その言葉そのままに名利に恬淡とし、栄達を追わず、常にほぼ笑みを絶やさず、その私生活は清廉、清潔そのものでありました。  思えば、昨年七月に行われた参議院議員選挙に際し、先生は、自由民主党候補者選挙事務長として、苦しい選挙を闘っておられましたが、そのさなかに、長年苦労をともにされた最愛の奥様を亡くされたのであります。しかし、先生は最後まで選挙戦の陣頭に立ってその責任を果たされました。先生の苦衷はいかばかりであったでありましょうか。公事の前におのれをむなしゅうする古武士の面影をほうふつとさせるものがあり、改めて先生の嵩高な政治姿勢に心を打たれるものであります。(拍手)そして、私は、政治家の一人として、政治に携わる者の厳しさを痛感せずにはおられないのであります。  うそのない政治国民と血の通う政治を信条とされ、ひたすら国を愛し、郷土を愛し続けてきた先生は、七十四年の生涯を静かに閉じてゆかれました。もはや、その端正なお姿も、微笑をたたえた温顔もこの議場に見ることはできません。寂寥の感ひとしおなるものがあります。  いまや、わが国内外の情勢はきわめて厳しいものがあり、かつてない重大な時局に直面いたしております。このときに当たり、嵩高な人格と深い洞察力を持った練達の政治家丹羽喬四郎先生を失いましたことは、ひとり自由民主党のみならず、本院にとりましても、国家にとりましても、この上なき大きな損失であると申さねばなりません。  ここに、謹んで丹羽先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼言葉といたします。(拍手)      ————◇—————  行政監理委員会委員任命につき同意を求めるの件
  6. 保利茂

    議長保利茂君) お諮りいたします。  内閣から、行政監理委員会委員市川誠君、稲葉秀三君、大槻文平君、林修三君、宮崎輝君及び八木淳君を任命したいので、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 保利茂

    議長保利茂君) 起立多数。よって、同意を与えるに決しました。      ————◇—————  日程第一 日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件
  8. 保利茂

    議長保利茂君) 日程第一、日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  委員長報告を求めます。外務委員会理事奥田敬和君。     —————————————  日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔奥田敬和登壇
  9. 奥田敬和

    奥田敬和君 ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  日米間には、現在、日米犯罪人引渡条約がございますが、締結以来九十余年を経過しており、引き渡し対象犯罪殺人罪等の伝統的な犯罪に限定されているため、最近の事態に適合しなくなっている面があり、これを改善することが望まれておりました。このため、一昨年一月以来、日米両国政府の間で、現行条約を全面的に改定するための交渉を行ってまいりました結果、案文について合意に達しましたので、本条約は、昭和五十三年三月三日東京において署名を行ったものであります。  条約の主な内容は、各締約国の法令により死刑または無期もしくは長期一年を超える拘禁刑に処するとされている犯罪について、刑罰等を行うために他方締約国からその引き渡しを求められ、自国領域で発見された者を、他方締約国に引き渡すことを約束しております。また、引き渡し請求犯罪政治犯罪である場合は引き渡しは行われず、自国民の取り扱いについては、被請求国は、引き渡しの義務を負わないが、裁量により引き渡しを行うことができることを定めております。引き渡し請求は、逮捕状の写し、証拠資料等の必要な資料を添付して外交経路により行いますが、緊急の場合、他方締約国より要請があったときは、一方の締約国は、仮拘禁を行い得ることとなっております。さらに各締約国は、第三国から他方締約国に引き渡される者を自国領域を経由して通過護送する権利を、他方締約国に認めること等が定められております。  本件は、三月十日外務委員会に付託され、三月十七日園田外務大臣から提案理由説明を聴取し、三月三十一日、四月七日及び十二日の三日間にわたり質疑を行いましたが、その詳細は会議録により御承知を願います。  かくて、四月十四日採決を行いました結果、本件全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  10. 保利茂

    議長保利茂君) 採決いたします。  本件委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————
  12. 加藤紘一

    加藤紘一君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出職業訓練法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  13. 保利茂

    議長保利茂君) 加藤紘一君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。     —————————————  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提   出)
  15. 保利茂

    議長保利茂君) 職業訓練法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。社会労働委員長木野晴夫君。     —————————————  職業訓練法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木野晴夫登壇
  16. 木野晴夫

    木野晴夫君 ただいま議題となりました職業訓練法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、産業経済社会質的転換に対応するため、公共職業訓練実施体制整備等について必要な措置を講じ、職業訓練及び技能検定に関する制度を確立しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。  第一に、職業訓練及び技能検定について、事業主並びに国及び都道府県の責務を明確にすること、  第二に、職業訓練については、その多様化を図り、離転職者に対する職業訓練実施についても、他の適切な施設に委託する等機動的に運営するとともに、関係地域労働者職業の安定及び産業の振興に資するよう配慮すること、  第三に、専修職業訓練校及び高等職業訓練校の区分を改め、また、各種の職業訓練施設役割り、分担についても明らかにすること、  第四に、事業主等の行う職業訓練に対する援助等を強化するため、国は、職業訓練に関する情報の提供等を行い、また、事業主等の行う職業訓練に対して、諸種の助成等措置を講ずるほか、国及び都道府県は、認定職業訓練以外の職業訓練についても広く援助を行うように努めなければならないこと、  第五に、現存の職業訓練等に関する法人の統合を行い、中央及び地方職業能力開発協会を設立するほか、協会の行う業務及び技能検定委員地位等に関する規定整備すること、  第六に、単一等級技能検定の導入その他所要規定整備を行い、雇用保険法等関係法律について所要改正を行うこと 等であります。  本案は、去る三月二十三日本委員会に付託となり、本日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、本案は原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、附帯決議を付することに決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  17. 保利茂

    議長保利茂君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 保利茂

    議長保利茂君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案内閣提出)の趣旨説明
  19. 保利茂

    議長保利茂君) 内閣提出刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案について、趣旨説明を求めます。法務大臣瀬戸山三男君。     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  20. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案について、その趣旨を御説明いたします。  現行刑事訴訟法第二百八十九条は、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件」に関する公判弁護人がなければ開廷することができないこととしておりますが、最近、一部過激派関係等のこの種事件において、弁護人が、被告人意思を同じくして、いわゆる法廷闘争戦術として、正当な理由がなく公判期日出頭せず、裁判長許可を受けないで退廷し、あるいは法廷秩序を乱して裁判長から退廷を命ぜられ、さらには、訴訟を遅延させる目的辞任するなどしたため、当該公判期日に予定されていた審理が行えないのはもちろん、その後の手続の進行が阻止されるという事態が生じ、これが訴訟手続を遅延させている実情にあります。  このような異常な事態を放置するときは、国民法秩序に対する信頼を大きく揺るがせることとなると考えられるのでありまして、速やかにこのような事態を是正し、この種事件審理適正迅速化を図るため、刑事訴訟法第二百八十九条第一項に規定する事件について、一定の要件のもとに、弁護人がなくても開廷することができることとする特例を定め、もって刑事裁判の運営の正常化に資することとする緊急の必要性があるのであります。  この法律案は、まず、第一条において、本特例が一部過激派等事件審理に見られるような異常な状況に対処するためのものであり、また、事態抜本的解決が図られるまでの間の暫定的な措置であることを明らかにしております。  次に、第二条において、弁護人がなくても開廷することができる要件及び開廷することができる期間を定めることとしております。  まず、要件としては、必要最小限度と認められる次の四つの場合、すなわち、一、被告人訴訟を遅延させる目的私選弁護人を解任し、または辞任するに至らせたとき、二、私選弁護人訴訟を遅延させる目的辞任したとき、三、私選弁護人が、正当な理由なく公判期日出頭しないとき、または裁判長許可を受けないで退廷したとき、四、私選弁護人裁判長から法廷における秩序を維持するため命じられて退廷したときのいずれかの場合であって、当該辞任、不出頭退廷または退廷命令理由となった行為被告人意思に反すると認められないときであり、かつ、裁判所審理状況その他の事情を考慮して相当と認めるときに限るとしております。  次に、弁護人がなくても開廷することのできる期間については、弁護人の不出頭または退廷の場合には当該公判期日に限るものとし、弁護人の解任または辞任により、被告人弁護人が付せられていない状態となった場合には、新たに弁護人選任されるまでの間とすることとしております。なお、この場合、被告人は、いつでもみずからの意思私選弁護人選任するか、国選弁護人選任を請求することにより、新たな弁護人選任実現できることは言うまでもありません。  以上がこの法律案趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  21. 保利茂

    議長保利茂君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山崎武三郎君。     〔山崎武三郎登壇
  22. 山崎武三郎

    山崎武三郎君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案について、総理及び法務大臣に対して質問いたします。  過日の成田空港施設に対する極左暴力集団襲撃事件は、わが国治安上きわめて憂慮すべき事態を生ぜしめたばかりでなく、わが国国際的信用をも著しく失墜せしめるに至ったのでありますが、さらに昨年のハイジャック事件を初め、彼らによってこれまで繰り返されてきた過激な犯罪行為は、法秩序そのものに対するあからさまな挑戦であり、その防遏のためには、あらゆる方策を強力に推進してこれに対処すべきであります。(拍手)なかんずく、彼らによる不法越軌行動に対しては、徹底した取り締まりと並んで、迅速にして厳正な処罰を行うことが何よりも肝要であると考えます。  ところで、成田空港開港阻止を呼号する過激派集団による不法事犯については、過日の管制塔破壊事件を除いても二千人以上が検挙され、起訴された者も五百名を超えていると承知しております。しかるに、第一審の裁判が終了した者はその一部にすぎず、四百名以上の被告人についての裁判は、いまなお延々として行われており、その多くは、第一審判決に至るまで今後十数年を要すると言われております。  そして、これらの事件の中には、昭和四十六年に発生した警察官三名が火だるまになって殺害された事件も含まれており、一方、無事の市民二百名近くを殺傷した連続企業爆破事件浅間山荘事件リンチ殺人事件等のいわゆる連合赤軍事件においても裁判は遅々として進まず、審理終結時期の見通しすら立たない状況にあると聞いております。しかも、これら事件被告人中四名が、その後発生したクアラルンプール事件及びダッカ日航機ハイジャック事件において、日本赤軍によって外国に奪い去られたのであります。  このような事態に対処するためには、これら過激派による不法事犯の検挙、取り締まりをさらに徹底すべきでありますが、いかにこれを徹底したとしても、裁判が右のような状況にある限り、彼らによる不法事犯防遏はとうてい期し得ないと思うのであります。  そこで、まず第一に、政府は、かかる過激派法秩序に対する挑戦行為に対し、どのような決意をもって臨もうとするのか、また、右のような過激派事件裁判の現状につき、どのような認識を持っておられるのか、これらの点について総理並びに法務大臣の御見解を承りたいのであります。(拍手)  第二に、本法案を緊急に成立せしめる必要性についてお尋ねいたします。  すでに明らかなように、いわゆる過激派裁判はきわめて遅延しているのでありますが、その間にあって、一部の弁護人による不当な法廷闘争戦術が横行し、これを放置するときは、わが国裁判制度自体が崩壊するおそれすらあることを指摘したいのであります。  すなわち、ただいまの政府説明にもありましたとおり、この種事件においては、弁護人裁判粉砕を呼号する被告人と一体となり、刑事訴訟法に定める必要的弁護制度、すなわち、弁護人が在廷しなければ法廷が開けない制度を逆手にとり、不出頭退廷、さらには辞任といった戦術をとって、ことさら弁護人不在状態をつくり出し、審理を阻止するのみならず、さらには、いつでもそのような戦術をとるという姿勢を示すことにより、いわば必要的弁護制度を人質にして、事件審理の進め方、公判期日の指定といった本来裁判所の専権に属すべき事項についてまで不当な要求を繰り返し、裁判所をしてその要求を入れざるを得ない状態に追い込むという方法により、審理の大幅な遅延を生ぜしめているのであります。  たとえば、さきに触れた連続企業爆破事件連合赤軍事件においては、これまでに多くの公判期日が空転し、起訴後数年を経ているにもかかわらず、いまだ事件の実質的な部分についての審理に入っていない状況であり、さらに、成田関係事件においては、一カ月にわずか一回、それも半日しか公判が開かれていない状況にあると聞くのであります。  このような一部の弁護人による法廷闘争戦術は、過激派と一体となって裁判制度を否定しようとするものであり、これが、訴訟関係者の話し合いによって解決し得るようなものでないことは明らかであると申すほかありません。  本法案は、このような異常な事態に対処し、刑事裁判をあるべき姿に戻すための必要最小限度措置であり、今回の成田事件関係でさらに百名を超える起訴がなされた今日、本法案の速やかな成立は、良識ある一般国民の強く望むところであると信ずるものでありますが、この点についての法務大臣の御所信を承りたいのであります。  第三に、本法案について、巷間これを弁護人抜き裁判あるいは暗黒裁判であるとして反対する向きがありますので、本法案の真の趣旨について重ねてお尋ねしたいのであります。  まず、本法案弁護人抜き裁判法案とする点についてでありますが、本法案は、被告人弁護人の弁護を受けることを望んでいるのに、これを排除して裁判を強行しようとするものではありません。本法案は、きわめてしぼった要件を定め、裁判所の慎重な配慮のもとに裁判の進行を図ろうとするものであり、弁護人は、いつでも法廷に戻り、弁護権を行使することができるのであります。その意味において、本法案による裁判弁護人抜き裁判などと称することが当を得ないものであることは明らかであると考えます。(拍手)  また、本法案の成立が暗黒裁判を招来するとの点についてでありますが、わが国裁判所は、常に被告人の主張にもよく耳を傾け、いやしくも、誤って無事の者を処罰することのないよう十分配慮しており、最高裁判所を頂点とするわが国裁判制度が全体として公正に運営されていることは、疑いの余地がないと信ずるものであります。  したがって、本法案が成立した場合、その運用によって暗黒裁判が招来されるようなおそれは全くないと考えるのでありますが、これらの点についての法務大臣の御所見を承りたいと存じます。  最後に、本法案について日本弁護士連合会が強く反対し、これにかわる措置と称する提案がなされているようでありますので、これらの点についてお尋ねいたします。  日弁連が、かねてから本法案に対して反対の態度を打ち出していることはすでに公知の事実であり、これに同調して本法案に反対し、あるいは少なくとも日弁連との話し合いができるまで本法案審議を見合わせるべきであるとの見解も一部に見られるようであります。  しかしながら、法律案を十分慎重に、かつ速やかに審議し、その可否について判断を示すことがわが国会の責務であることは改めて申すまでもないところであり、一部の反対により法律案審議自体をも遅延せざるを得ないことは、国会の責務からしても、とうてい許されることではありません。  また、いわゆる日弁連の主張するところは、たとえば裁判官、検察官、弁護士の法曹三者の最高責任者による話し合いにより、あるいはこれら三者による法廷対策連絡会議を設置するなどして、異常事態の解消を図るべきであるとしているのでありますが、このことは、具体的事件に関し、担当裁判所以外の第三者が裁判に介入することとなりかねず、司法の独立に関する憲法の大原則に触れるおそれもあり、一方、このような方法が、本法案で問題としているような一部の弁護人の不当な活動を阻止し得るものでないことは明らかであります。  本来、かかる不当な活動を行う弁護士については、弁護士会において、速やかに厳正な懲戒措置をとるべきであります。しかしながら、現在の日弁連及び各弁護士会は、憲法に定める三権のいずれの監督にも服さないという完全な弁護士自治の上に安住し、その果たすべき使命を十分に果たしていない実情にあると言わざるを得ません。  私は、弁護士の懲戒を含む弁護士会の運営が、国民的監視のもとに行われるよう、現行弁護士法に所要改正を加えることについても、真剣に検討を行うべきではないかと考えるものであります。(拍手)  しかしながら、この点については、検討を要する問題も少なくなく、結論を得るに至るまでなお日時を要するものと思います。  以上申し述べたような現状を総合勘案するとき、本法案第一条に明記されているように、「最近における一部の刑事事件審理にみられるような異常な状況に対処するための当面の措置として、」本法案が一日も早く成立することが必要不可欠であると考えるのでありますが、これらの点に関する総理及び法務大臣の率直な御見解を承りたいと存じます。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  23. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。  ただいま御質問の中で、民主主義を憂い、法秩序を守る、その決意を秘められての御所見、私の考え方と全く同じでありまして、その御見識に対しまして心から敬意を表します。(拍手)  法秩序が厳正に維持されることは、民主主義法治国家存立のための必要最小限度の条件であります。暴力をもって法秩序を破壊しようとする者に対しましては、国民各位の理解と協力のもとに断固たる態度をもって臨む所存でございます。  こういう考え方に基づきまして、第一には、このような破壊行動に対しましてはその検挙、取り締まりを徹底させる。これが第一。第二には、迅速、厳正な刑罰の実現を図る、こういうことであります。本法律案は、そのような考え方に基づくものでありまして、今日の社会の状態また裁判の運営、そういう状態を見てみますると、この法律案が一日も早く成立する、これは民主日本を守り抜くためのぜひ必要な要件である、このように考えております。  ぜひとも御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手)     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  24. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 過激派等の法を犯す者に対する対策、対処、これについては、ただいま総理大臣からお答えになりました。私は、その残余の問題についてお答えをいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、わが国の憲法は、平和憲法を唱え、国民の人権を規定し、そしてわが国国民の平和と安全を図って、自由濶達な活動ができる社会をつくるということを目標にしております。法治国家を維持して豊かな国をつくろうという、それに対して、法を犯し暴力によって法秩序を乱すという者は、断じてわが国において許すべきでございません。でありますから、かような者は徹底的に検挙し、責任の所在を明らかにして、処罰すべき者は処罰する、当然のことでございます。  ただ御承知のとおり、法の目的を最終的に決定するのは裁判でございます。いかに法に規定しておっても、その実効を上げるということが法治国家の本義でございますが、残念ながら、この種過激派の関係しておる事件刑事裁判においては、法を無視するという立場で、裁判を否定するという立場で、あらゆるいわゆる法廷闘争が行われておる。そして裁判がなかなか進まない。こういうことでは法治国家の意味をなしませんから、被告人弁護人意思を通じ先ほど提案の趣旨で申し上げましたような事態のときには、憲法はさようなことをねらっておりませんから、この法案をぜひ成立させていただいて、真の意味の、憲法がねらう、また刑事訴訟法がねらっておる法治国家の実を上げようという趣旨でございます。  この法案に対していろいろな御批判があります。先ほど山崎議員からも御指摘がありましたが、この法案に対して、弁護人抜き裁判だとかあるいは暗黒裁判だとかという御批判があります。御批判は自由でありますけれども、とんでもない誤解曲解であります。むしろこの法案は、先ほど提案の趣旨に申し上げましたように、裁判というものはきわめて厳粛なものであって、法治国家の最後のとりででありますから、ルールに従って弁護人はちゃんと弁護人らしくやっていただきたい、法廷にとどまって、堂々とルールに従って被告人の弁護に当たっていただきたいというのがこの法律の趣旨でございます。(拍手)  なお、暗黒裁判、こういうこともよく言われております。日弁連等でもさようなことを言われております。私は、そういう方は、一体日本の法治国家の法律の専門家であろうかということを疑ってかかっております。断じてさようなことはこの法律によって起こりません。さようなことをねらっておるわけではございません。なお、日弁連の反対はそういうことでございますが、日弁連の表面上の反対はさようでございますけれども、多くの真の法律家としての弁護士の方々は、おおよそ御賛成だと私は見ております。  それから、日弁連との協議とかいうお話がありましたが、およそ先ほど申し上げましたように、裁判は、裁判所また検察、それから弁護人、いわゆる法曹三者の鼎立の中で裁判が進行するのは当然でございます。したがって、司法については三者が相協調し、努力をするということがわが国の、法治国家のたてまえでございます。でありますから、いろいろな面で、お互い法治国家の実を上げるために努力をしなければならない。そういう意味の話し合い、協調は当然でありますけれども、事この件に関しては、話し合いができる状態ではございません。先ほどお話しのように、弁護人抜き裁判であるとかあるいは暗黒裁判であるとか、まるで過激派のビラみたいなことで騒いでおられる弁護士でありますから、そういうことでは現実に話し合いができないのである。  なお、もう一つ、何とかほかに規制の方法はないかというような、あるいは三者の協議会というようなものはどうかというお話もありました。大体、よく皆さんお考えいただきたいのであります。裁判については、裁判所、検察あるいは弁護人、この三者が足をそろえて公正な裁判をして、被告人の人権を阻害しないように、また法治国家の実を上げるように力を合わせなければならないところに、先ほど来提案趣旨で申し上げましたような事態があって、法治国家を破壊する現実が起こっておる。  こういう状態でありますが、そういう際に、もしおかしな裁判官があれば、国会に設置しております弾劾裁判所という国会の組織によって、国民の名においてこれを弾劾する組織になっております。また、検事におかしな者があれば、不適当な者があれば、そういうときには検察官適格審査会という第三者機関があってこれを規制するようになっておる。ところが、裁判の重要な一つの柱である弁護士についてはそれがないわけでございます。重要な法治国家の一翼を担う弁護士については、弁護士法によって自律権を与えられておる、その自律の機能が今日機能しないところに問題がある。できれば将来、国会等でお互いに研究をして、弁護士といえども、国民に対してあるいは国会に対して責任を負うというチェックの機関をこしらえることがきわめて重要でありますけれども、今日ただいま非常にむずかしい問題でありますから、簡単にいかないというところがございます。こういう点は、将来お互いに研究をして進めなければならないものだと思います。  以上、お答えいたします。(拍手
  25. 保利茂

    議長保利茂君) 稲葉誠一君。     〔稲葉誠一君登壇
  26. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案、俗に弁護人抜きとか、弁護人なし裁判法とか言われるものにつき、福田総理大臣、瀬戸山法務大臣に対し、若干の質問を行わんとするものであります。(拍手)  まず最初に、総理大臣にお尋ねしたいのは、本法案日本国憲法、特に第三十七条第三項の弁護人依頼権との関係であります。  およそ近代民主主義社会においては、資格ある弁護人の弁護活動を抜きにしては刑事裁判を語ることは許されないのであります。日本国憲法が保障している公平な裁判「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」憲法第三十七条第一項と、適正手続「何人も、法律の定める手續によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という憲法第三十一条のデュープロセスを実現し、かつ担保するためには、資格を有する弁護人による弁護活動を必要不可欠とすることは自明の理でございます。(拍手)  そのゆえにこそ、憲法第三十七条第三項は「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依頼することができる。」と明記しているのであります。この弁護人依頼権は、憲法が保障するところであって、いかなる場合にも奪うことを許さない基本的な権利なのでございます。(拍手)それは、事案が、社会的に仮にどう目される事案でございましても、何ら変わることなく手厚く保障されるべき権利であると考えるのでございます。  しかるに、この法案は、必要的弁護事件について弁護人なしの裁判を広く許容するものであって、明らかに憲法第三十七条第三項の本旨に反するものと言わなければなりません。  のみならず、明治十三年制定の治罪法以来ほぼ百年にわたるわが国司法の歴史を顧みても、必要的弁護事件については、被告人弁護人を希望しない場合においてさえ例外を認めず、必ず弁護人を付してきたのでございまして、かの悪名高い治安維持法時代においてすら、この法案のごとき弁護人なき裁判を認めた例はないのでございます。(拍手)ただ、昭和十七年に戦時非常立法として制定された戦時刑事特別法の第二十四条、灯火管制下等における窃盗の場合に唯一の例外を見るのみでございます。  しからば、この法案の特殊性、異常性は、右の歴史的事実に基づいて考えるとき、戦時下においてのみ例外として認められたものをここに認めようとするものでございまして、かかる歴史の事実に照らしても、われわれは賛成することができないのでございます。  しかも、規定するところすこぶる不明確かつあいまいでございまして、裁判所によって一方的に認定される危険性を多分に持っておる本法案は、右憲法第三十七条第三項との関連において、その近代憲法の精神に背くものではないか、これが質問の第一でございます。  政府は、アメリカの裁判例を引いて説明し、自己の理論の正当化を図っておるのでございまするが、しかし、アメリカにおいて弁護を受ける権利の放棄には、厳しい制限が付されておりまして、今回の法案のような推定規定といいまするか、みなし規定といいまするか、いずれにせよ、擬制によって放棄の意思を認定することは絶対に禁止されており、正常な意思を持って、権利の内容を十分理解した上でなければ、弁護人依頼権その他の憲法上の権利の放棄はできないというのは、連邦最高裁判所の確立した判例でございまして、本法案とは全く異なるのでございます。  また、西ドイツの場合も、日本と国情が違うのでございまして、日本のプロフェッショナルな弁護士制度とも異なるのでございまして、この点をもって説明するのも全く牽強付会と言わなければならないのでございまして、以上、特に憲法第三十七条第三項との関連において、総理大臣の答弁を求めるものでございます。  以下、法務大臣にお尋ねをいたします。  その一は、今日において、この法律のごとき異常なる立法を必要とするほどの深刻、異常な事態が現実の裁判において生じているかということであります。  政府当局が立法理由の根拠としておるものは、昭和四十四年当時の大学紛争発生時など古いものが多く、かつ、全国の数多い刑事事件全体の中のごく少数の事例にすぎません。しかも、これら少数事例においてすら、弁護人なしの裁判を許すべき理由が存したとは考えられないのでございます。公判期日の百回の指定あるいは月四回の指定問題等を見ても、裁判所側に、弁護士の実務に対する無理解や、事案の特殊性を無視した一方的な強行態度が見られ、それらによる裁判所の妥当を欠いた措置が、被告人弁護人の不出頭の原因ともなっていると考えられるのでございます。弁護人側が一方的に非難されるべきものではありません。現在は別段問題なく運営されているのではございませんか。政府は、かかる事実をいかに理解をしておられるのでございましょうか。  質問の第二は、本法の立案に当たって、国会意思が十分尊重されていないという点であります。  司法制度改正に当たっては、法曹三者、すなわち、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会、法曹三者の意見を一致させるよう、その調整に努むべきことは、昭和四十五年の裁判所法の一部を改正する法律案及び翌四十六年の民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する国会法務委員会附帯決議において明示されているところであります。また、最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会の法曹三者によって構成された三者協議会においても、司法制度に関する法律、規則の制定、改廃についての法案を法制審議会に諮問する場合は、あらかじめ、まず右協議会の議題に供すべきことが確認せられているところであります。  しかるに、法務省が一方的に諮問を行ったことは、明らかに右決議等の趣旨を無視し、国会の軽視ではないかと考えるのであります。この点についての見解を承りたいし、また法務省の諮問以来二カ月足らず、実質審議は法制審刑事法部会においてわずか二回、それもきわめて少時間という超スピードで答申に持ち込んだのは、法曹三者の一員たる日本弁護士連合会との協調を無視するものではないか。  去る四月十五日、日弁連の会長就任パーティーがございました席上、法曹三者でトップ会談を開くことを提唱し、これに対し日弁連会長、最高裁長官、検事総長も話し合いを歓迎する意向を示したと伝えられておるのでございまするが、一部新聞では正反対の記事も出ておりますので、この点に関して法務大臣の真意をお聞かせ願いたいと存じます。  質問の第三は、本法とハイジャック防止との関連でございます。  本法はハイジャックを防止するということで立法をせられたものでございまするが、ハイジャックを憎み、その防止と犯人の厳罰を望むことにおいてはわれわれは当然でございます。しかし、本法によってハイジャックが防止できると考えておる者はだれもおらないのではないでしょうか。政府は、ハイジャック防止のための立法として本法を考えておるのか。  質問の第四は、本法案内容規定がはなはだあいまいであって、認定いかんによっては大きな人権侵害を伴う危険性があるということでございます。  訴訟を遅延させる目的の場合に適用されると言いまするが、その認定に困難が伴うのではないか。もし審理を急ぐ余り、認定が安易に、一方的に行われるようなことがあれば、被告人の弁護を受ける権利が不当に侵害され、暗黒裁判の招来を来すのではないかと憂えるのであります。  また、被告人意思を通じて云々も、同様すこぶるあいまいな規定であり、乱用される危険性が非常に大きいものではないか。  また、暫定的とは一体いつごろまでを言うのか、時限立法なのか、時限立法でないのか、さっぱりわからないのであります。はっきりさせていただきたいと思います。  裁判所が職権的に弁護人辞任、解任の理由目的を追及したり、弁護人行為被告人意思に反するものであるかどうかを究明したりすることは、被告人弁護人との間の信頼関係や弁護人の守秘義務に介入を来すことにもなり、その意味でも弁護人制度の基礎を揺るがし、弁護人依頼権を侵害することに結びつくのであります。  以上、本法案について考察し、若干の質問を呈しました。  本年一月二十三日の法制審で、弁護士委員から、一、法曹三者の協議によって問題解決に当たる。二、国選弁護人推薦のための方策をまとめていく。三、弁護士活動に関する弁護士会内の相互批判を強め、自治能力を高める。の三点を信用して、今後の弁護士会の対応を見守ってほしいとの発言がなされました。こうした事態解明への芽が出ております。こうした事態解決の芽を大切にして育てていくべきではないか、所見を問う次第であります。  以上、要するに、本法案刑事裁判制度の根幹に触れる重要問題を含む法案でございまして、政府のごとく、いたずらに急ぐべき性質のものではないのでございます。われわれは、ひたすら冷静に、一時の風潮に流されることなく、憲法を遵守し、基本的人権を擁護することを目途として対処していきたいと考えるのでございます。  いまや福田内閣は……
  27. 保利茂

    議長保利茂君) 稲葉誠一君、申し合わせの時間が来ております。簡単にお願いします。
  28. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君(続) 円高、日中その他各方面の問題ですこぶる評判悪く、気の毒にも国民の支持を失いつつあります。かかる段階において、以上述べたごとき悪法を提案することは……
  29. 保利茂

    議長保利茂君) 稲葉君、時間が過ぎております。
  30. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君(続) 民主主義の自殺であり、断じてわれわれの容認できるものではございません。すべからく一刻も早く本法案を撤回することを要求して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  31. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) 本法案内容は憲法第三十七条第三項に違反するのではないか、そのような御質問でございますが、御指摘のように、わが国の憲法は、その第三十七条第三項におきまして、刑事被告人が弁護士を依頼する意思を有する場合におきましては、いつでもこれを依頼することができる旨を規定しておるのであります。  ところで、本法案は、このような被告人の権利をいささかも害するものではありません。被告人は、いつでも法の定めるところによりまして弁護人依頼権を行使することができるものとしておるのでありまして、憲法違反の問題は毫もないということをはっきり申し上げます。     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  32. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 稲葉さんは、この法案が憲法三十七条に反するのではないかというお話でございますが、そういうことをおっしゃる方も世間にはあります。ありますけれども、いま総理からお答えになったように、先ほども申し上げましたが、これは弁護人を排除するのじゃありませんので、どうぞひとつ刑事訴訟法のルールに従って、裁判所というアンパイアに従って、土俵の上で堂々とやってくださいという法律でございます。(拍手)全然憲法に反するわけじゃありません。  憲法に触れましたから申し上げておきますが、憲法は多くのいわゆる基本的人権を規定しております。これは尊重しなければならない、当然のことであります。そういう意味でいま弁護人選任権も権利として認められておりますが、しかし、これは、法秩序を破壊し、裁判を否定するようなために与えられておるのじゃないということをどうかよくお考えを願いたいのであります。(拍手)そういうことは憲法十三条に、国民に与えられておる基本的人権は社会福祉のために利用しなければならない、乱用してはならないとちゃんと書いてあります。  それから、過激派裁判に近来異常はないじゃないかというお話でございますが、大変な異常があって、昭和四十七年の例の浅間山荘事件などというものは、十回以上も先ほど申し上げたような事態裁判が行われておらない。開廷しても裁判が進まないのでございます。最近ようやく落ちついておることは事実でございますが、これはこういう提案の話が出てきてからおとなしくなっておるというだけのことでございます。(拍手)  それから、法曹三者の協議会を経ていないじゃないかというお話であります。(発言する者あり)まあ話を聞きなさい。法曹三者の協議によって、司法制度に関する重要な問題は、法曹三者によってよく協議をしなさいということが国会の決議に数回あります。その国会の決議に反しておるのじゃないかということでございますが、もとより、先ほど申し上げたように、裁判は三者足並みをそろえてやるということが大切でございますから、できるだけ司法制度に関することは三者がお互いに法治国家を守る。そして弁護人被告人の人権と公正な裁判を求める。検察、裁判も同じでございます。でありますから、足並みをそろえて、お互いに協議をしていくことが最も大切なことでございますが、この件に関しては最初から反対で、街頭運動をしておられるような状態でございますから、話し合いに乗らないので、そういうことを相手にしておるわけにはいかないということでございます。  それから、法制審議会の審議が二日だけで済んだじゃないか。法制審議会においては十分審議をされて、各問題点を指摘して、そして刑事法部会及び法制審議会の総会で、全員の意見を徴してから答申があったのでありますから、軽率に行っておるわけではございません。  なお、私が日弁連の新役員の披露の席で、ごあいさつの中で言ったことが新聞の一、二によって意味が違うように書いてあるが、あれはどういうことだったのだというお話でございますが、新聞はいろいろその観点によって違いますから、半分本当で半分がうそでございます。(拍手、発言する者あり)  また、私がその際申し上げたことは、先ほど来申し上げておりますように、法曹三者はお互いに重要な法治国家の三本の柱でありますから、そういう観点でやっていただきたい。でありますから、このごろ日弁連の動きを見ておると、きわめて、日本の最高の弁護士の集まりである会としては、非常におかしな行動があるということは遺憾であるということを申し上げたわけでございます。(拍手)そこで、これはこれとして、お互いざっくばらんに意見を交換して、そして国民の期待にこたえるようなことにしようじゃないかと言っただけでございます。  それから、ハイジャック防止、これでハイジャックが防止されるのかというお話、この法律をつくっただけでハイジャックを防止し得るとは考えておりません。(「関係ない」と呼ぶ者あり)関係ないというお方がありますから申し上げますが、こういう過激派に対するあらゆる対策を講ずるということが法治国家の実を上げるということでございます。こういう者を放置しておったのでは、国民は、法治国家に対して信頼が薄れるということでございますから、ハイジャックのみならず、かような過激派に対する一連のものとして考えておるわけでございます。  内容があいまいだと言われておりますけれども、それは皆さんがあいまいにしておるわけでございます。(拍手、発言する者あり)  それから、暫定的……(発言する者あり)暫定的です。これは皆さんが——私はその内容は先ほど説明してあります。弁護人の依頼権を害する、弁護人の依頼を害するということはございません。  なお、日弁連の提案については、それが本当に実効あるものであるかどうかということを見きわめなければならないのでございます。  以上、終わります。(拍手)     —————————————
  33. 保利茂

    議長保利茂君) 飯田忠雄君。     〔飯田忠雄君登壇
  34. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま提案理由説明がありました刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案について、総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。(拍手)  この法案が、刑事訴訟における必要的弁護制度の存立基盤を揺るがすとともに、刑事被告人弁護人依頼権を定めた憲法の趣旨に触れる重大な内容を持っておりますことは、各方面から強く指摘されているところであります。  ところで、今日までに、衆参両院の法務委員会において、しばしば次の附帯決議を行ってまいりました。すなわち、司法制度改正に当たっては、法曹三者の意見を一致させて実施するように努めるべき旨の附帯決議であります。しかも、この決議を契機に発足しました最高裁判所、法務省、日本弁護士連合会の三者協議会も、同様の確認を行っているのであります。     〔議長退席、副議長着席〕  しかるに、この法案国会提出に当たりましては、法曹三者の十分な話し合いが行われていなかったと聞いております。国会のたび重なる決議について、政府はどのように受けとめ、またどのようにこれを生かしてこられたのか、まず初めにお尋ねいたします。(拍手)  次に、この法案とハイジャックとのかかわり合いに関する見解をお尋ねいたします。  ハイジャック犯人が、機内の旅客、乗員を人質として、裁判所に係属中の未決犯人の釈放、引き渡し要求した場合、行政機関が裁判所に係属中の被告人を釈放することは、行政機関による司法権侵害にならないかどうか、また、裁判所が、裁判所に係属中の被告人の釈放、引き渡し要求に応じて釈放することは、裁判による行政への介入であり、許されることではないと解すべきものではないか、こうした見解から、政府裁判所のいずれも責任をとることができず、そのため、人質釈放交渉が順調に行われず、その生命が危険に陥ることになる可能性が生ずるでありましょう。  それゆえ、右のような事態の発生をできるだけ避けるためには、人質をとった犯人によってなされる裁判所に係属中の被告人の釈放要求の機会をできるだけ少なくすることも理由のあることであります。こうした理由から、釈放要求目的となる被告人事件裁判をできるだけ早く終わらせる必要性が出てきたと考えられますが、この問題について政府はいかなる見解をとっておられますか、お尋ねいたします。  次に、刑事訴訟法必要的弁護制度は、憲法の根本原理の一つである基本的人権の保障を一層完璧なものとするために設けられたものであります。憲法的要請である人権保障を後退させる結果を招く特例法の立法化は、きわめて問題が重大であると言わざるを得ないのであります。政府があえて人権保障を後退させてまで、この法案を立法化すべきものと判断された理由は何であるのか、お尋ねいたします。  人権保障と裁判の公平を期するという重大な意味を持つ必要的弁護制度の円満な遂行を保障するため、刑事訴訟法は、裁判長に職権による弁護人選任を義務づけております。いわゆる国選弁護人選任であります。この法案規定している弁護人の解任、辞任公判期日出頭、無許可退廷などの事態が生じたときでありましても、現行の刑事訴訟法により、裁判長国選弁護人の職権による選任義務を負うているのであります。  しかも、判例によりますと、「現行制度の下においては、裁判所によって選任せられた国選弁護人は、裁判所の解任行為によらなければ、原則として、その地位が消滅することなく、また、正当な理由がなければ辞任申し出をすることができないものであって、しかも、その正当の理由の有無の判断は、選解任権を有する裁判所がすべきものである。」とされています。  それゆえ、どのような要因によるものでありましょうとも、弁護人が在廷しない事態が生じた場合には、裁判長国選弁護人選任を行えば足り、しかも裁判長国選弁護人の解任を行わない限り、弁護人が欠けることは生じないはずであります。すなわち、弁護人を欠くため裁判ができない場合が生ずることは、法のたてまえからはあり得ないことでありますから、刑事訴訟法が法律どおり実施されておりますならば、特例法の立法は必要がないと言わざるを得ないのであります。この点について、総理大臣並びに法務大臣の御見解をお伺いいたします。  問題は、被告人またはその支持者が、国選弁護人を脅迫あるいはその他の方法でその地位にとどまることを困難にする事態に陥れ、辞任させ、そのため一時弁護人を欠くに至る場合が生じたのではないか、ということであります。  過去において、このような理由から国選弁護人が次々に被告人に対する弁護行為を拒否して辞任し、後任の国選弁護人を得ることが困難となった事実が、これまでにあったのではないか。このような事態が生じた場合には、事実上、弁護人を得ることができなくなり、公判廷を開くことができないことは明らかであります。  そこで、法務大臣及び国家公安委員長にお尋ねいたしますが、このような事態の発生が過去において実際にあったのかどうか。また、その他、国選弁護人選任手続が順調に運ばなかった理由は、具体的にどのような理由に基づくものであったのか。警察力でもって弁護人の身辺の危険を防止できなかったものかどうか、お尋ねいたします。  また、そのような事態の発生が、今後もあり得るとの判断をしておいでになるのかどうか。そうでありますならば、その判断は何を根拠にしておられるのか、お答え願いたいのであります。  国選弁護人選任の可能性が暴力により全く確保できない事態でありますならば、暫定的特例法の立法も必要であり、やむを得ないことであります。しかしながら、必要的弁護制度に例外を設ける制度は、他に何らの方途もない場合に考慮すべきものであり、安易に採用すべきものではないと考えられます。たとえば、弁護士会の責任において、国選弁護人選任の可能性を保障する制度を確立し、あるいは法曹三者による共同機関を設置して、国選弁護人選任確保する方途もあると思われますが、いかがでございましょうか。  政府は、この法案の立法以外に、確信犯人の裁判において発生する事態の防止は不可能であると考えておられるのか。もしそうでありますならば、それはいかなるわけがあってのことでありましょうか。  この法案の立法は、現行の刑事訴訟法の円満な実施が保障されておりまするならば、何ら必要とする理由のないものであります。法廷での種々の問題は、あくまで事実問題にすぎませんから、法曹三者の話し合いによって解決するのが適当であると思われますが、いかがでございましょうか。法曹三者の間で率直に話し合えない何らかの事情があるのでありましょうか。総理並びに法務大臣の率直な御見解をお尋ねいたします。  最後に、この法案が提出されました背景には、被告人が憲法体制を否定する確信犯人であり、弁護人被告人法廷における政治闘争を支援する行動に出て、極端な裁判の遅延を生じたことがあり、これさえ防止できるのであれば、あえてこの法案を成立させる必要はないのであるから、このような行動に出る弁護士の懲戒を第三者機関にゆだねる制度をつくれば足りるとの意見もあると聞いております。このような意見についてどのようにお考えでありますか、総理並びに法務大臣の御見解をお尋ねいたします。  以上をもって質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  35. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  確信犯人の裁判で発生する事態の防止は本立法による方法以外によい方法はないのか、このような趣旨の御質問でございますが、いわゆる過激派裁判、これの進行状態がまことに異常であるということは御承知のとおりでございます。この異常な状態にどういうふうに対処するか。法曹三者会談だとか、いろいろ御指摘がありましたけれども、こういう異常の事態に対しましては、現実的で、かつ効果的に対処しなければならぬということでありますが、政府におきましてはいろいろ検討いたしましたが、そういう方法といたしましては、本法以外にどうも現実的なこの対策というものは発見できない。ぜひともこの法案を早急に成立するために御協力願いたいとお願い申し上げます。     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  36. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 飯田さんにお答えいたします。  国会で決議された司法制度に関しては、法曹三者でよく協議するように、それは非常にもっともなことでありまして、従来からいろいろ三者で協議をしてきておることは、飯田さんも御承知だと思いますが、先ほど申し上げましたように、この件でももちろん御協議を始めました。始めましたけれども、途端に反対の声明を出されて、協議ができないような状態になっておることを御理解願いたいのであります。  それから、憲法三十七条あるいは刑訴法の二百八十九条、いわゆる弁護人選任の権利、このことについて、先ほども申し上げましたが、その被告人の人権の保障を後退させるという気は一つもありません。先ほど申し上げましたように、いつでも弁護人選任ができる。できますけれども、こういう場合の弁護人選任は、そういう過激派被告人と同じような、意思を通じて行動するような人ばかりでありまして、その他の弁護士は、御承知かもしれませんけれども、時間がありませんから細かく言いませんが、こういうのを依頼しないわけであります。そうして共同で行為をされて、先ほど申し上げましたような事態になってくる。  それから国選弁護人云々の話もありますが、そういう際に国選弁護人を弁護士会に依頼いたしますと、なかなか弁護士会から出していただけない。うかつに国選弁護人になりますと、その御本人のみならず、家族の生命身体に危害を及ぼすというようなことで、これは弁護士会の内部でそうおっしゃっておるのですから、つけ加えておきたいと思います。そういう事態でありますから、簡単ではないのでございます。とにかく裁判を否定しようという闘争の場に使っているのが前提でございますから、どうか御理解を願いたいと思います。  それから、弁護人選任について法律どおり実施しておればこういうことは要らぬのじゃないか、そのとおりでございます。そうあっていただきたいのです。どうかひとつ、先ほど来申し上げておりますように、正々堂々と、刑事訴訟法に定めておるルールに従って被告人の黒白を明らかにし、責任のありや否やを明らかにする立場で被告人の弁護をしてもらえば何にもこういうことは要らないのでありますが、それができないような状態になっておる。それでは、先ほど来申し上げましたように、わが国裁判制度は非常な危殆に瀕する、ひいてはわが国の憲法その他の法律に定めておるいわゆる法治国家が崩壊する。ほかの裁判じゃないわけですから、数万とある刑事裁判の中でこういう過激派の少数の関係弁護人あるいは被告事件だけでございますから、これをどうか御理解を願いたいのであります。  それから公設弁護人的なことはどうか、こういうことも、先ほど申し上げましたように、今後の対策としては検討しなければなるまいと思いますけれども、これはやはり司法制度全般の根本に触れる問題でありますから、そう簡単にまいらない。今後各方面の意見を聞いて、この法律が要らないようにするためにはどういうふうにしたらいいかということは、これこそ国会でもあるいは法曹三者でも真剣に検討して、道があればそれを開くべきであると考えております。  それから法曹三者での話し合い、これは先ほども触れましたが、そういう事件があったときに、特定の裁判事件について他の第三者的な人々が集まってこの裁判をどう進めるかというようなことは、これはやはり裁判独立との関係もありますから、慎重に検討をしなければならない問題だと思っております。  まあ以上だと思いますが、これで終わりたいと思います。(拍手)     〔国務大臣加藤武徳君登壇
  37. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 極左暴力集団事件公判に当たりましては、従来からのいわゆる法廷闘争等にかんがみまして、今後もいろいろのケースが予想されるところでございます。  そこで、警察といたしましては、裁判所内におきましては裁判長法廷警察権をお持ちでございますから、その要請に基づいて対処してまいるつもりでございますし、また裁判所外におきまして、弁護人等に不法行為がございましたり、あるいはまたそのおそれがありますような場合には、関係者とよく緊密な連携を保ちながら警察措置をとってまいる、かような所存でございます。(拍手
  38. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 高橋高望君。     〔高橋高望君登壇
  39. 高橋高望

    ○高橋高望君 私は、民社党を代表して、ただいま上程されました刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案につき、総理大臣並びに法務大臣に対し、若干の質問を行うものであります。  本法案提案理由説明によりますと、現行刑事訴訟法はその二百八十九条において、一定の重大事件について弁護人がいなければ裁判が開けないという必要的弁護制度を定めておりますが、一部の過激派事件裁判弁護人と被告が一体となって、いわゆる法廷闘争戦術としてこの制度を逆用し、正当な理由もなく弁護人が不出頭退廷辞任等を繰り返して裁判をストップさせ、おくらせているという実情にあり、このような異常な事態に対処するため、本法を制定する必要があるとしております。  確かに、たとえば著名な事件を見ると、浅間山荘事件など連合赤軍事件裁判では、弁護人の不出頭退廷で合計十回の公判が流され、三菱重工本社爆破などの連続企業爆破事件でも、弁護人の不出頭退廷で六回の公判が開かれず、また弁護人辞任により、半年の間裁判が開かれなかったとも伝えられております。このような状態を放置しておくことは、これら弁護人被告人のまさに裁判の否定に等しい行動を容認することになり、法の支配を基本理念とする民主主義の破壊にもつながるものであり、このような異常な事態が現にあるとすれば、それに対処する当面の方策として本法を検討することもまたやむを得ないことと考えるものであります。(拍手)しかし、一方、これらの過激派事件審理も最近では大体平穏に推移していると主張する向きもあります。  そこで、まず法務大臣にお伺いいたしますが、最近のこれらの事件審理の実情と、このような特例法の立法の必要性についてどのように考えておられるのでしょうか。  続いてお尋ねいたします。最近の成田空港開港阻止闘争における過激派の行動はまことに目に余るものであります。これに迅速適切に対処し、かかる犯罪行為を厳重に取り締まらなければ、法治国家の根幹を揺るがしかねないゆゆしい問題であると考えます。  ところで、警察当局や検察当局がこれらの犯罪者を逮捕し起訴にまで達するには多大の労苦を伴うものでありますが、起訴した後、迅速かつ厳正に裁判が行われず、その審理弁護人らの不当な活動により遅延するようであれば、いかに法を整備し、取り締まり体制を強化いたしましても、法の支配を貫徹するとの見地からすれば、絵にかいたもちに等しくなってしまいます。この法案は、その意味でハイジャック対策にとどまらず、広く過激派の不法な活動に対する有力な対策となり得るものであると考えますが、いかがでしょうか。総理の御見解を承りたいと思います。  また、本法案については、過激派事件以外の一般刑事事件にも無制限に適用されることとなるとの批判があります。実際にこのような乱用の懸念をどう説明なさいますか。私は、本法案の適用対象は過激派事件過激派の支援するような事件で、その審理において、過激派事件と同様の法廷闘争戦術がとられるような特殊な事件に限るべきであると思いますが、このように理解してもよろしいか、お考えをお伺いしたいと思います。  この法案に対する反論の一つとして、最近の裁判所はその審理の迅速を望む余り、必要以上に弁護人の意見陳述等その活動を制約し、これに従わなければ退廷命令を頻発する等、その訴訟指揮が強権的に過ぎ、本法が制定されればそれがますます激しくなって、弁護人の正当な弁護活動に大きな圧力をかけるおそれありとする見解があります。そこで、本法施行後、適切な運用が確保されることが必要であると思いますが、大臣のお考えを承りたいと存じます。  さて、必要的弁護の例外規定を設ける本法と憲法との関係についてお尋ねいたします。  憲法第三十七条は、刑事被告人の権利の一つとして、その三項に「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、國でこれを附する。」と規定しております。この規定の意義について、最高裁判所は、これまでの判決で被告人弁護人を依頼する機会を与え、その自由な行使を妨げてはならないことであるとしております。この法解釈が生かされ、かつ本法案の運用が適切に確保されても、この法をつくること自体が憲法に違反するという向きがありますが、この法律と憲法との関連をどのように説明なさるのかお伺いいたしたいと思います。  さて、この際、私は、ここで弁護士法について考えたいと思います。  すでによく知られるように、弁護士法によると、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」となっております。過激派弁護人が被告と一体になって裁判拒否闘争を行っているのであれば、被告人の人権を守ることになるかもしれませんが、社会正義を実現するという使命も考えねばなりません。また、一万一千人を超える会員を持つ日本弁護士連合会は、弁護士登録から懲戒処分まで、責任と権限を持つ、民間ではただ一つの公的機関であります。  現行弁護士法は、世界に類を見ない内容を持つものであり、大多数の弁護士の方はその趣旨を生かして活躍を続けておられますが、一部のかかる事犯を扱う弁護士の中に、ややもすると弁護士自治の趣旨に照らして問題ある行動をとる者があり、弁護士法の自治を形骸化する可能性を指摘せざるを得ません。(拍手)検察官には検察官適格審査会が、裁判官には弾劾制度がありますが、弁護士に対しては、ほかに第三者的チェック機関はありません。したがって、その自律性はまことに大きなものであると言わねばなりません。  今回、この法案を検討せざるを得ないのは、その自治性に限界があることとうらはらの関係にあるのではないかと考えますが、いかがでしょう。(拍手)そして、諸外国では自治性を認めながらも第三者機関の懲戒権を認めておりますが、わが国としてもこの方向に向かうべきではないかと考え、本法に言う暫定的特例期間内に、弁護士法を初め所要制度の抜本的検討、整備を行うべきであると考えます。特に、国選弁護制度のあり方等を見直す必要ありと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)  以上、総理並びに法務大臣の所見をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  40. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答えを申し上げます。  いま御提案申し上げております法律案は、これは単にハイジャック対策ばかりじゃなくて、広く過激派対策としてきわめて有効であると考えるがどうか、このようなお話でありますが、高橋さんのそのような御認識に対しまして、深く敬意を表します。(拍手)  政府といたしましては、法秩序にあえて挑戦する過激な集団暴力行為に対しましては、まずその検挙、取り締まりに全力を尽くします、また、迅速で厳正な刑罰の実現を図る、このような二つの考え方を骨子として対処してまいりたい、このように考えますが、今回のこの法案は、このような基本的な方針の実行、そのための手段である、このようにお考え願いたいのであります。過激派裁判が今日のような実情であるということは、法治国家としてのわが国といたしまして、まことに情けないというか、面目ないことでございます。どうかこの法案、その正常化というためのものでありますので、ぞひともこの上とも御協力を願いたいとお願いを申し上げまして、お答えといたします。(拍手)     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  41. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 高橋さんにお答えする前に、先ほど飯田議員にお答え漏れがあったそうであるので、失礼いたしました。  それは、前に二回ありましたハイジャック事件の際に、裁判に係っておる刑事被告人を釈放するような事態になったのは裁判に介入したことになりはしないか、適当ではないじゃないかというお話だったと思います。まさにそのとおりだったのです。法秩序を維持するという、特にいまのような法案まで提案をして御審議を願う事態にかんがみますと、そういうことは適当でない、やってはならないという考えであります。御了解をいただきたいと思います。  それから、高橋さんにお答えいたしますが、いま総理からお答えになりましたほかの問題について、私からお答えいたします。  立法の必要性はどうかというお話でありましたが、これは前にも他の方にも申し上げたわけでございますけれども、御承知のように、刑事訴訟法二百八十九条には、死刑無期または三年を超える体刑のものについては弁護人を付さなければならないということになっております。これは当然のことであります。いわゆる弁護人の立場を擁護し、人権を尊重するという意味からでございますが、そのためにそれを阻害さえすれば裁判が進まないんだというふうに、そのことが逆手に使われて今日混乱をいたしておる、そういう特殊な場合には——憲法も公正、迅速な裁判ということを規定しております。刑事訴訟法も御承知のとおり、公正、迅速な裁判ということを求めております。でありますから、憲法及び刑事訴訟法裁判制度目的からして、法治国家としては、そういう法律を逆用して法治国家の根本を崩すような場合には、これに手当てをするのがあたりまえだという考え方で出しておるわけでございます。  それから、こういう立法が仮にできた場合に、成田事件等のああいう過激な行動にも適用されるのかというお話がありましたが、いま申し上げましたように、とにかく現在の日本の憲法その他に定めてあるものを破壊し、そして裁判に服さないという態度に出るような場合には当然に適用されますけれども、さような事態は、先ほども申し上げましたように、数万件もある刑事事件の中できわめて少数のものでございまして、そう何もかにもこういう事態が起こるということは考えられもしませんし、またあるべき問題ではないと御理解をいただきたいと思います。  それから、こういう制度ができるといわゆる裁判官の訴訟指揮権が、これを盾にとって強固になって、強権的になって、弁護人の弁護活動が非常に制約されはしないかというお話でございます。もちろん、裁判はそういうことがあってはならないわけでございますが、これは私が裁判するわけではございませんけれども、日本の裁判所でそういうことは、現に先ほど申し上げましたように、多数の刑事事件をやっておりますが、そういう事態は全然起こっておらないのですから、それは御信頼を願いたいと思います。  また、仮にそういう法律に反するような異常な訴訟指揮をして裁判が進められます場合は、そのために間違ったことを起こせば第二審、第三審ということにちゃんと改める組織が出てきておるわけでございますから、そういうことは御心配にならないでもいいのではないかと私は思います。  憲法三十七条の問題は触れましたが、それから弁護士の使命云々ということでありました。これは御承知ではありますけれども、弁護士の使命は、人権を擁護し、社会正義の実現に尽くすのが弁護士の使命とされておるわけでございます。そのために法律を研さんし、品位を高めなければならないということになっておるわけでございますが、なかなか今日ではそういうことにふさわしくないような人がおられるというところに問題がある。そういうことでございますので、これはきわめて少数のように見受けますけれども、実はそういう方には失礼でありますが、日本弁護士連合会でも困っていらっしゃるのが実情でございます。でありますから、第三者機関でチェックする機能をしたらどうか。先ほどお話しのように、弁護士は高度の法律知識を持ち、高い教養を持っておられる方々ばかりということでございますから、昭和二十四年に弁護士法が議員立法でできました際に、そういう高い見識を持ち、素養を持つ法律家の集団であるから、まず自律権であらゆる問題を処理していいじゃないかということで決まっておりますけれども、それが今日は機能されないという状況になっておる。これは弁護士会の方がそう認めていらっしゃるのですから、私が特に誹謗するために申し上げておるわけではございません。  そこで、何か第三者機関のチェック機能、先ほども触れましたが、裁判官には国会弾劾裁判所あるいは訴追委員会とありまして、国民の代表としてこれをチェックする機能がある。一本の柱である検察官についても、検察官適格審査会というのがありまして、これも国民の代表として国民にかわってチェックする機能がありますが、残念ながら、趣旨はいいのでありますけれども、現在は三本の柱の一つの弁護士についてはそういうチェック機能が機能をしておらない。でありますから、説をなす人は、第三者の立場の国民的監視の機関をつくるべきであるという御意見もありますが、これは先ほど申し上げましたように、事弁護士会の自律権に関係する重要な問題でありますから、相当慎重に協議をし、また検討をしなければ結論がそう簡単に出るというものではない、かように考えております。  国選弁護人選任の方法も、これはいまのものでいいのかどうか、これもまた検討を要することでございますが、これもやはり弁護士会との関係がありますから、簡単にすぐ結論の出るというものではないということを御理解願いたいと思います。     —————————————
  42. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 正森成二君。     〔正森成二君登壇
  43. 正森成二

    ○正森成二君 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま提案のありました刑事訴訟特例法案について、政府の見解をただしたいと思います。  最近、政府。自民党は、憲法第九条を拡大解釈しつつ、国会の場で公然と戦時立法の研究を口にしています。また、一連の裁判は、司法の反動化が一層進行していることを示しており、刑法、少年法の改悪作業が引き続き推し進められています。君が代や教育勅語の礼賛など、危険な政治反動の強まりと軍国主義復活の動きの中で本法案が提出されてきたものであり、わが党は断じて容認することはできません。(拍手)  政府は、ハイジャック等の防止対策の一環として本法案を提出したものでありますが、裁判の遅延とハイジャック事件が全く関係がないことは、ダッカ事件の際、裁判の未決と既決とにかかわらず、収監中の凶悪犯罪人政府みずから釈放し、国外に脱出させた事例を見るだけで明白であります。  今回の成田事件についても、結局は、いわゆる過激派暴力集団の盲動を許し、空港の心臓部である管制塔の占拠、破壊をほしいままにさせたのであります。このように、政府が現行の法律で尽くすべきを尽くさず、警備すべきをしないところにまさに問題の根源があるのであります。  福田総理は、わが党議員の追及に対し、学園暴力が温床となっていると答弁しましたが、一体政府が本当に学園暴力や内ゲバ事件など、にせ左翼暴力集団の犯罪を徹底的に取り締まり、暴力集団か根絶する意思があるのかどうか、また、従来の姿勢についてどのように反省をしているのか、私はまず最初に総理の明快な答弁を求めるものであります。(拍手)  第二に、この法案が提出されるに至った経過についてであります。  裁判制度のあり方とその運営については、法曹関係者の意思の疎通が重要不可欠であります。ところが、司法制度改正に当たっては、法曹三者の意見を一致させるという昭和四十五年五月以来三回にわたる国会附帯決議や、これと同趣旨の法曹三者協議会の合意事項に反して、日本弁護士連合会との事前の協議もせず、一方的にこの法案を提出したことは重大であります。  これは、本法案が一方的かつ、強権的な性格のものであることをみずから証明するものにほかなりません。ことわざにも「過ちては改むるにはばかることなかれ」と言います。いまからでも遅くはない。法務大臣は、本案を速やかに撤回ないし凍結して、直ちに法曹三者で協議すべきだと考えるが、総理並びに法務大臣の見解を求めるものであります。(拍手)  第三に、この法案は、憲法三十七条三項に定めた刑事被告人弁護人依頼権を侵害する、憲法違反の立法であるということであります。  そもそも、弁護人抜きの裁判などというものは、およそ近代の裁判制度のもとでは考えることのできないものであります。憲法三十七条三項は、絶対に奪うことのできない国民の権利として「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する辯護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、國でこれを附する。」と定めていますが、これは戦前のいわゆる暗黒裁判に対する深刻な歴史的反省から、刑事裁判において被告人の利益を実質的に保障するためのものであります。それゆえ、憲法で被告人に保障されている権利は、単に弁護人を依頼する権利といった形式的なものではなく、弁護人援助を受ける権利という実質的なものであって、とりわけ必要的弁護等重大な事件の場合には、みずから放棄することも許されない、絶対的な性質のものであります。  そして、事実、戦後の例を見るだけでも、すでに無罪が確定した八海事件や松川事件など数多くの事件は、被告人の正当な権利を擁護した弁護人の十数年にわたる粘り強い努力の結果、初めて権力の誤りと真実が発見され、無罪の判決がなされたのであります。(拍手)このような無罪の判決を、被告人弁護人援助なしに、巨大な国家権力を相手にしてかち取ることは、とうてい不可能であったのであります。  権力によって、ただ一人の無辜も罰せられてはなりません。近代の弁護人制度は、真実の発見と裁判の公正を確保するために、近代刑事裁判の構造上欠くことのできないものであります。政府は、このような歴史の教訓をどのように反省しているのか、また、戦前の暗黒裁判の教訓から生まれた弁護人依頼権という制度を、憲法上どのように位置づけているのか、明確な答弁を求めるものであります。  第四、法務省は、この法案必要性を裏づける資料として、二十二の裁判例を示しています。しかし、たとえば十分間法廷外で打ち合わせをしたいと許可を求めた被告、弁護人側の要請に対してすら、裁判長はこれを認めないなど、後に上級審で訴訟指揮に妥当性を欠くものであるとか、弁護士という職業に対して配慮を欠くものだと指摘されたものも含まれているのであります。したがって、このような一部の事例は、特例法の必要性を根拠づけるものではありません。われわれは、裁判解体論などを唱える一部の弁護士の主張を厳しく批判するものでありますが、これは弁護士会の自律権によって解決すべきであるし、また、それは可能なのであります。何万件に一件というこれらの特殊な事例も、弁護士会などの努力によって、現在は訴訟が順調に進んでいることは何人も否定できない事実であります。  そこで質問しますが、被告人意思を通じた弁護士の行為により、現在、訴訟の進行が不可能となっているケースは一体あるのかないのか、あるとすれば何件あるのか、その理由は何か、緊急に立法する必要性はどこにあるのか、政府の答弁を求めるものであります。  第五、近年、訴訟促進の名のもとに、一部裁判官による強権主義的な訴訟指揮が目立つようになり、「弁護人の顔を見れば何を言うかわかるから異議理由は聞く必要がない」などと公言して、発言を禁止することまで行われているのであります。本法案は、このような裁判官としての適格性が疑われるような裁判官に対して、弁護人抜きで裁判を強行することを容易にするものであり、そうなれば、裁判官と検察官しかいない法廷で、警察や検察庁の密室でつくられた調書などの証拠だけで、死刑の判決さえできるという、まさに暗黒裁判につながる重大な事態が現出されることになるのであります。  それだけではありません。弁護人は、被告人弁護人抜きで裁判を強行されることを避けるため、自己抑制を強いられる結果、原告官たる検察に対し、真に対等の立場に立った正当な弁護活動ができなくなるのであります。これは、日本国憲法が諸外国の憲法に例を見ない国民の公平な裁判を受ける権利、証人に対する審問権など、十カ条にわたる刑事被告人の権利を基本的人権として保障している根本精神の圧殺につながるものではありませんか。これらの点につき、総理の所見を求めるものであります。(拍手)  最後に、私は、戦前のわが党を初め、多くの民主主義者に対する弾圧が、法廷における刑事被告人の権利を次々と奪い、ついには弁護人抜き裁判を現出することによって推し進められていったという歴史の経過を、いま一度振り返ってみたいと思います。  かつて政府は、戦時中の昭和十六年に治安維持法の大改悪を行い、治安維持法の被告人については、弁護人の数を二人に制限し、しかも、あらかじめ司法大臣の指定した弁護士の中からのみ選任することを強要するなど、弁護人制度の空文化を行いました。このような被告人の権利侵害はさらに進み、治安維持法の被告、弁護人は控訴できないという、およそ近代刑事訴訟制度では考えることのできない圧迫、権利侵害を受けたのであります。この治安維持法による弁護人制度の改悪が、翌昭和十七年、戦時刑事特例法によって広く国民全体に拡大されたのであります。  戦前、戦後を通じて、一貫して侵略戦争に反対して、平和と民主主義を守り、国民の基本的人権を擁護し発展させるため、命をかけて闘い抜いてきたわが党が、戦前の弁護人抜き暗黒裁判を今日によみがえらせるこの悪法に対して、断固として反対するのは当然のことではありませんか。(拍手)  政府が、本法案を速やかに撤回することを要求して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  44. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) いわゆる過激派暴力集団に対しまして、従来の政府のとっておる態度、これは何か反省を要するところがないか、その反省はいかん、こういうようなお話でございますが、共産党の皆さんは、よく政府が泳がせ政策をとっておるというようなこともおっしゃる。あるいは政府が現行法で尽くすべき手を尽くしていないというような御指摘かもしらぬというふうに思いますが、要するに政府は、極左暴力集団による暴力行為に対しましては、従来とも厳正な取り締まりに努めてきたところであります。さらに、厳正かつ徹底的な検挙、取り締まりを行い、国民の不安を解消するように最善の努力をいたしてまいりたい、このように考えるわけです。しかし、それが実りあるものとなるためにも、今回の立法は必要である、欠くことのできないものであるというような認識でございます。  また、一部裁判官に見られる強権的訴訟指揮は、本法で一層進められ、弁護人抜き裁判は暗黒裁判につながるおそれがあるというような御指摘でございますが、それは全くの誤解であるということにつきましては、先ほど来法務大臣からるる申し上げておるところでございますが、決して今回の法案が憲法第三十七条違反になるというようなことはないということは、私からも先ほど申し上げたとおりであります。憲法の保障するところの被告人の権利は、いささかも侵害するところじゃない。そうじゃなくて、今日横行しておるあの異常な裁判を正常なものとし、もって法治国家の実を守り抜こう、これが政府の考えておるところでございまして、決して裁判を暗黒にするとか、憲法に規定されておる基本的人権を障害するというようなことはいささかも考えておりませんから、誤解のないようにお願い申し上げます。(拍手)     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  45. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほども他の方からお話がありましたが、この法案作成の過程において、いわゆる法曹三者が協議をしなかったじゃないか、それはしばしば決議しておる国会の決議に反しはしないか、こういうことでございますが、前に申し上げましたけれども、御相談をしても御相談にならなかったということでございまして、こちらは、もちろんそういうやり方が一番よろしいと思っておりましたけれども、真っ向から反対で、先ほど申し上げましたように、街頭に出て反対運動をされるという状況でございます。  それから、憲法三十七条というお話でございました。これもしばしば申し上げました。憲法三十七条の意義をどう考えておるか、こういうお話でございます。もちろん、十分、これは非常に大事な規定であるという考えを持っておりますが、これと刑事訴訟法の二百八十九条、それを逆用して裁判が進まなくするというようなことは、憲法も、刑事訴訟法も望んでおらないということも明確でございます。これは先ほど申し上げたとおりでございます。でありますから、それによって被告人の権利を排除するとか、あるいは弁護人を排除するということでなしに、できるだけ正常のルールに従って、そして十分に被告人の立場、権利を擁護してください、それが裁判というものでございます。ところが、出てこない、退席、騒ぐ、そして裁判の実際の審理が進まないということは、決して憲法やあるいは刑事訴訟法の望むところでないということは、これは正森さん、専門家でありますから、よく御理解のことでございます。  それから、弁護士会の自律によって解決できるとおっしゃる、そういうふらちな弁護士は。それができないところに問題があるわけでございます。それができれば、何を好んで皆さんに、こう忙しいところに手数をかける必要はないわけでございます。自律ではそれができませんから、弁護士会ではそういうことは現在の状態ではできない、それは弁護士会長さんたちが言っていらっしゃいますから、私は信用しておるわけでございます。  現在、裁判が支障なく進んでおるではないか、現在は比較的、先ほど申し上げましたように進んでおります。これは、この提案の話ができてきてからずっとおとなしくなったということでございまして、それほどこの法律が必要だということを裏から証明しております。(拍手)  暗黒裁判につながるかどうかということについては、先ほど総理からもお話がありましたが、これはどうでしょうか。杞憂に過ぎるのではないでしょうか。戦前の治安維持法時代の裁判を引例されておっしゃいますけれども、いまやわが国はまさに新しい時代に入っております。新憲法のもとにおいて、この民主主義のもとで、ああいうことができると思いませんし、また、大事な裁判の中でさようなことを私どもは全然想像することはできないのであります。  それから、この法律ができると、また裁判官の訴訟指揮によって、自己抑制になって正当な弁護ができないのではないかというお話がありましたが、そういうことでなしに、一生懸命弁護に努力してくださいというのがこのねらいであるということをどうかひとつ、たび重ねて申し上げますから御理解願います。(拍手)     —————————————
  46. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 加地和君。     〔加地和君登壇
  47. 加地和

    ○加地和君 私は、新自由クラブを代表して、ただいま議題となりました刑事事件公判開廷についての暫定的特例を定める法律案について、福田総理並びに法務大臣に対して、四点にしぼって質問を行います。  第一に、この法律をつくっても、ハイジャック事件を防止するのには何の役にも立たないのではないでしょうか。すなわち、昨年のダッカでの日航機ハイジャック事件によって、国民世論がハイジャック事件防止へと沸き上がったのをきっかけとして、突然にこの法律案の構想が政府より発表されました。しかし、この法律を国会でつくっても、過激派人たちが海外へ連れ去られていくのを防止することはできません。なぜなら、この法律がつくられても、裁判確定までに数年の年月がかかり、また、死刑に処せられる者以外は刑務所におり、常に奪回される可能性があるからであります。  第二に、この法律をつくっても、過激派裁判審理の進行に余り役に立たないのではないでしょうか。たとえば、連合赤軍事件公判の第一審判決が出るまであと何年ぐらいかかるのでしょうか。最高裁判決が確定するまで何年ぐらいかかるのでしょうか。この法律が成立すればどのくらい判決が下される時期が早くなるのでしょうか。すなわち、連合赤軍事件が弁護士の裁判に対する非協力によって遅々として進んでいないかのように言われておりましたが、裁判官の独断と偏見が訴訟の進行を妨げていた面も多くあったと言うべきであります。(拍手)  すなわち、連合赤軍事件の第一回公判期日前の準備において、検察官は週二回の開廷を主張し、弁護人らは月一回開廷を主張して、意見の調整が見られませんでした。弁護人法廷でしゃべる言葉数の多い少ないにかかわらず、膨大な記録を公判前に読みこなし、メモをとり、頭にたたき込み、参考文献をあさり、関係者との打ち合わせ等のために、月一回開廷であっても四日も五日も準備に時間を費やすでありましょう。また、連合赤軍事件被告人や家族が基準どおりの弁護料を支払えたとは考え得ません。弁護人としては出血サービスで、義侠心から出た弁護の引き受けであったであろうと推察されるのであります。そうすると、この事件を引き受けた弁護士は、事務員の給料を支払い、自分の生活費を捻出し、いままですでに引き受けている他の事件責任を持って処理するためには、一カ月のうち二十日ぐらいは連合赤軍事件以外に時間を割かなければならないのは当然であります。  ところが裁判官は、一カ月につき六回ないし七回開廷の百回にわたる公判期日を指定したのであります。弁護人はこんなむちゃくちゃな公判期日の指定の取り消しを求めたが、なかなか聞き入れられませんでしたが、弁護士及び弁護士会の努力と、現実に公判が開かれないために裁判官もその非を悟り、百回期日の指定は取り消され、証拠調べは最小限月二回開廷ということになったのであります。連合赤軍事件審理にもし数カ月の空転があったとすれば、それは余りにも一方的な裁判所の期日指定そのものによることは明らかであります。(拍手裁判所みずからが百回指定についてこだわりを捨てたとき、審理は円滑に進行を始めたのであります。  裁判所が弁護士の業務の実態を無視し、連合赤軍事件の百回期日の指定のような誤りを犯し、弁護士が法廷出頭することを不可能にしておきながら、この法律案に盛られているように、正当な理由なく公判期日出頭しないときであると裁判所が認め、審理を強行していたならば、弁護人不在のまま、いや恐らく被告人もいないまま、裁判は終わっていたかもしれません。それが公正な裁判であろうはずがありません。(拍手)  第三に、いかなる大事件も一年ないし二年ぐらいで判決が確定するのでなければ、裁判の教育的効果はなくなるのではないでしょうか。  すなわち、この法律が成立しても、連合赤軍事件の判決が確定するまで十年も二十年も期間を要するものと思われます。その原因は、単純な事件と比べて、証拠によって立証すべき事実が通常の刑事事件の数百倍にもなるからであります。この法律案のような小手先細工でなく、現在の裁判のあり方に根本的な発想の転換を図らなければ、訴訟遅延を解消することは不可能であります。世間を騒がした連合赤軍事件が、事件発生後二十年も三十年も経過してからしか判決が確定しないのであれば、裁判の教育的効果もなく、法の威信も低下してしまいます。  また、裁判の前提ともなる事実関係について証人調べをしても、十年も二十年も前のことを証人が正確に覚えているはずもなく、真相究明という点からも訴訟の遅延は大きな問題を抱えているのであります。  また、特に、政治家などが政争によって不当に罪をかぶせられ起訴された場合に、五年も十年も経過して無罪が確定しても、政治生命あるいは青春時代は長年月の経過によって失われてしまい、回復不可能な打撃を与えてしまうでありましょう。  現在の裁判だと、裁判官も検事も一人で百件以上事件を担当しているでありましょう。弁護士も一人で百件ぐらいは担当しているでありましょう。きょうAという事件裁判の準備のために膨大な記録を読み、準備したとして、一カ月後にまたAという事件裁判があるときには、一カ月後にもまた同じ記録を読まなければならないでありましょう。一カ月間に他の九十九件の記録を読んだり、関係者と会って話をしたりしているうちに、一カ月前に読んだ事件の記録の内容は相当記憶から抜けてしまっておるでありましょう。  仮に、連合赤軍事件の場合に、一カ月に二回ずつ、二十年間裁判が行われるとすれば、四百八十回公判が開かれることになります。もし、連合赤軍事件を担当する裁判官も検事も弁護士も、他の事件連合赤軍事件が終了するまで一切担当しないようにすれば、雨だれのようにぽつりぽつりと記録を読むむだが省け、毎日Aという事件のみが頭の中にあり、四百八十回公判も半分ぐらいの回数で済むかもしれません。この方式で一週間に三回公判を開けば、一年半ほどで連合赤軍事件の判決は、最高裁判所ででも確定してしまうことになるはずでございます。  これを実現するためには、大事件にのみ没頭することのできる裁判官や検察官制度国選弁護人制度をつくることは、私はそうむずかしいことではないと思います。現在の裁判官、検察官の数を二割か三割ぐらいもふやせば可能でありましょう。また、裁判終了までその大事件のみに没頭する弁護士は国選弁護人として、一被告に二人ぐらいとし、また、その弁護士は、その事件を抱えている間の生活の問題もありますので、現在の国選弁護料ではとても足りないでありましょう。それ相応の、やはり政府としての措置が必要でありましょう。  現在のように、訴訟の遅延によって裁判の教育的効果、法の威信が失われ、実体的真実の発見が妨げられ、訴訟関係者に不当な苦痛を与えている数々の問題点を解消するためには、ただいま提案したような方法しかなく、総理の決断力によってのみ解決し得るのではないでしょうか。福田総理の大胆な答弁を求めます。  第四に、わが国を法と秩序の支配する真の民主主義国家にするつもりがあるのでしょうか。  すなわち、昭和三十七年に臨時司法制度調査会設置法により臨時司法制度調査会がつくられ、瀬戸山法務大臣も同調査会委員となられ、昭和三十九年八月に臨時司法制度調査会意見書が出されています。この中でも、裁判官、検事、弁護士らの法曹人口の増加が強調されています。「わが国の法曹人口は、全体として、諸外国に比べて著しく少なく、試みに、最近の主要各国における人口十万人当たりの法曹の数を見ると、アメリカの百六十二人を最高とし、西ドイツの六十二人、イギリスの四十六人、フランスの二十六人に対し、わが国ではわずか十人にしかすぎません」と、同意見書では書かれています。その後、わが国において、人口十万人当たりどの程度法曹人口は増加しているでしょうか。  最近では、東京大学法学部において、大学四年で卒業せず、司法試験等の勉強のため、さらに一年、二年と留年をしている者がふえているようであります。現在の司法試験制度、特に論文式試験においては、果たして有能な者を公平に選抜できる制度かどうか、疑問に思います。最高点も、平均点も、最低合格点も発表されないという秘密主義的なものであり、論文式試験の採点基準も明確ではありません。帝国主義時代の遺物とも言うべき制度のままでございます。どの試験でも、合格最低点の周辺に多くの者がひしめいているものであり、毎年の司法試験合格者の数を二倍にした場合、いままでの最低点がどれだけ下がるものか。合格者数を二倍にしても、合格者の質的低下はそれほど顕著とは思えません。  現在の秘密主義的司法試験の論文式試験の採点基準を明確にして、法曹志望者の勉学の努力目標、指針を明らかにすることによって、能力と熱意を有する者を法曹界に吸収することは重要でございます。  この点について、法務大臣の決意と考えをお聞きしたいのでございます。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣福田赳夫君登壇
  48. 福田赳夫

    内閣総理大臣(福田赳夫君) お答え申し上げます。  連合赤軍事件などの重大事件は、専属の裁判官、検察官また国選弁護人で構成する特別裁判部を設置したら迅速にいくのじゃないかというような御所見でございますが、この問題は最高裁の所管の司法行政問題なんです。政府としてこれに対しまして意見を申し述べるということは妥当でない、このように考えますので、答弁は差し控えます。  また、加地さんは、終始、今日の裁判が長くかかるということを指摘されて嘆いておられましたが、私どももその気持ちは一緒なんです。今回の立法は、長くかかる裁判をもう迅速に、厳正に処置したい、そういうふうにしたい、こういうことを念願してのものでありまして、ひとつ私どもの気持ちもよくおくみ取りくださいまして、御賛成あらんことをお願い申し上げます。(拍手)     〔国務大臣瀬戸山三男登壇
  49. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 法曹人口が足らないじゃないか、少ないじゃないか、それはまさにそのとおりであります。そのとおりでありますが、残念ながら日本はまだ法治国家と言っても百年足らずでございまして、そういう点になかなかアメリカみたいにいかないところがあることは、加地さんも御承知のとおりであります。われわれも、民事、刑事の裁判はできるだけ国民の期待にこたえられるように速やかにやるということで、人員を増加したり、いろいろ改良を加えておりますが、裁判官、弁護士、検察官というのは、何でもかんでも持ってきて据えればいいというものじゃありませんから、なかなかそう簡単にまいらないというところにむずかしさがあるわけでございます。これはもちろん努力をしなければなりません。  それから特別裁判部のことは、総理からお答えになりましたから、私は触れません。あのとおりであろうと思います。  司法試験制度を改良したらどうか、改善を加えたらどうか。この点はいろいろ意見がありますから、それこそ各方面の意見を聞いて、適切に改良すべきところは改善したいと思っております。(拍手
  50. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  51. 三宅正一

    ○副議長(三宅正一君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         国 務 大 臣 加藤 武徳君  出席政府委員         行政管理政務次         官       藤川 一秋君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君      ————◇—————