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沢田広君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
提案されました
核原料物質、
核燃料物質及び
原子炉の
規制に関する
法律の一部を改正する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に
質問を行うものであります。
核問題を取り上げるに当たって、
わが国は
世界の唯一の
原爆の
被災国であります。多くの
国民が
犠牲となり、今日においても
被爆者援護法も不成立のまま、その
人たちは暮らしに、健康に重い
痛手を負っているところであります。
戦後三十年、
戦争の
痛手はぬぐい切れない
被爆者の叫びとなり、訴えとなっており、ノーモア・ヒロシマの声は
総理の耳に入らないのでありましょうか、お
伺いをいたしたいと思います。
日本は、この
痛手の中から
平和憲法を定め、恒久の平和を希求し、公正と信義を信頼し、全
世界の
国民が恐怖と欠乏から免れ、平和な生存を
宣言をいたしたのであります。さらに、
日本国民として誇りをもって言い得る
憲法第九条の
戦争放棄も、いまや侵されようといたしております。きわめて遺憾と言わなければなりません。
私は、まず、これらの
精神が尊重され、傷つけられないことが、将来に対する私
たちの
義務であり、また、最大限に守られなければならないものと思っておりますが、
総理は
いかがお
考えでありましょうか。
翻って、
わが国の
エネルギー事情は、
核物質による
エネルギー資源がその一部を担わなければならない
時代になっていることは、あえて否定するものではありません。しかし、そのためには、特に慎重な
対応が必要であり、
国民の
理解、
納得、
安全保障が求められており、これらについて
政府のとってきた
措置は、まさに
国民不在、
問答無用の論理であり、きわめて遺憾と言わなければなりません。
政府は、今回発生した嘆かわしい
成田の
事件に関して、改めて農民、
住民との
対話、話し合いを十二年ぶりに誠意をもって行う旨が、昨日のこの議場で述べられたところでありますが、この
精神、
姿勢は、核問題についても同様であり、謙虚に
地域住民の
意見を聞く
姿勢が持たれなければなりません。どのようにお
考えになっておられるのか、お
伺いをいたします。
そもそも
原子力、核の
開発利用は、平和の目的に限り、
民主的運営と
自主、
公開がその前提であることは言うまでもありません。これからの
施設について、この
原則は守られるのでありましょうか。また、
放射線の障害を防止し、あわせて公共の安全を
確保する所要の
措置を講ぜられるのでありましょうか。
現在、茨城県
東海村で
ホットテストとして稼働いたしております再
処理工場は、
本格操業に入りますと、
年間二百トンの
ウランと、一・五ないし一・六トンの
プルトニウムが取り出される計算であります。この
プルトニウムの量は、長崎に落とされた
原爆の約二千倍分に相当する量であります。これは当然のこととして、
米国カーター大統領の
核外交の
規制の対象になったのであります。
一方、
廃棄物の量はどのくらいでありましょうか。
再
処理工場から出てくる
放射性廃棄物は多様であります。まず、
貯蔵タンクに保管される高
レベルの
廃棄物の量は、一
年間で実に約六億キュリーにも達するのであります。このほかに、
工場内には高
レベルの
固体廃棄物、中
レベルの
液体廃棄物が貯蔵されるわけであります。さらに、常時この環境の中にまき散らされる
放射能を受ける量も膨大なものに達するのであります。たとえば、クリプトンなど
気体状のものは毎日八千キュリー、
年間二十四万キュリーにも達するのであります。海に流される
液体状のものは一日〇・七キュリー、
年間二百十キュリーにもなるのであります。
ところで、一キュリーとはどのような量でありましょうか。たとえば、セシウム137の場合、一キュリーの
放射性物質を半日ほど身にまとったとすれば、確実に死亡する量であります。再
処理工場から
いかに膨大な
殺人的放射能が出てくるか、よく御
理解をいただけるものと思います。
さらに重大なことは、遺伝的にも大きな影響を与えるトリチウムは、
気体、
液体の両方で一日二百キュリー、
年間六万キュリーにも及ぶ量が出てくるのであります。
このような再
処理によって発生する
プルトニウムは、また、そのまま
核兵器になることは御承知のとおりであります。これを所有することは
核保有国を目指すものと解されるわけでありますが、加えて、他の
放射能に比較にならない被害の大きな
物質でもあります。
プルトニウムが万一紛失とか、盗難とか、漏出とか、全く許されないものでありますが、加えて、今日的な課題としての
核ジャックの
対応にもなりかねないのであります。まさに杞憂であることを願いながらも、依然としてその
危険性は存在いたしているのであります。これによる警備は、単に
処理工場にとどまらず、
付近住民への自由の
侵害、
行動の抑制、
立入調査など、プライバシーの
侵害となってあらわれることも十分
考えられるわけでありますが、
いかがでありましょうか、
お答えをいただきたいと思います。
一方、今日までに発生した
事故も見逃すわけにはまいりません。これは将来に対する警告でもあるからであります。
東電一
号炉の
冷却水再
循環パイプの
故障、あるいは
炉心冷却装置パイプのひび割れ、美浜、高浜の
蒸気発生器の
故障等々、きわめて憂慮すべき
事故が連続をいたしております。
また、ここに働く
労働者、特に下請の人あるいは
臨時工など、生命に危険をもたらす
被曝量は日を追うて
増大をしている
現状にあります。
この事実をどう認識されておられるのでありましょうか。単なる手違い、設計の
ミスだ、操作の
ミスだと見逃すわけには
いかないものと存じますが、
いかがでしょうか。
要するに、
研究の不十分、実験の不足、その
段階にあるというととだと思います。さらに大
規模災害をこれから招かないとの保証は全くないのであります。少数の
犠牲の上に立つ、あるいは力で律するとかという政治は、断じて許されるものではないと思いますが、
いかがお
考えになっておられるでありましょうか。
従来は、
開発事業団と
原子力研究所だけに許されていたこの危険な作業が、今回は「政令で定める」として、
民間法人などの手によって行わせようとして
提案されましたが、現在でも、前に述べたような
事故の頻発、
不安感、
安全性などから、不適当な状態にあると思われることは当然であると思うのであります。
加えて、第四十四条第二項のような不十分な基準で果たして満足できるものであろうか。その
責任は果たして全うすることができるのであろうか。
国民は果たして
納得するのであろうか。いや、
納得しないし、危険だからやめてほしいと言うに違いないのであります。
いかがでありましょうか、その
見解を承りたいと思います。
これから
建設されるであろう
法人などについて、
建設費は六千億とも一兆円とも言われておりますが、果たして効果は約束できるのでありましょうか。
提案に当たっては当然予期したものがあってのことだと思いますが、
指定をしようとしているもの、あるいはこれから
指定をしたいと思っているもの、その
規模、
資本、資金、場所、何年着工、
土地の入手、何年完成などの
計画を明らかにすべきだと思いますが、
いかがでありましょうか。
特に
免責、賠償の
義務は負わない場合として甚大なる
災害、特に巨大なる
災害と言われておりますが、あわせて
社会的動乱が挙げられておりますが、この
社会的動乱とは
成田事件のような場合を指称するのでありましょうか、また別の状況を言うのでありましょうか、具体的に
お答えをいただきたいと思います。その他の
免責事例は想定されますか、果たしてどのような場合を想定しているのでありましょうか。
エネルギー方策として果たして今日的に正しいものかどうか、根本的に問われているものと存じます。
政府の発表した白書は、
沸騰水型原発配管の腐食で
運転停止を行い、
昭和五十二年、わずかに
稼働率四〇%を割っている
現状であります。さきに述べたように、まだまだ
研究、
経験の上でなければ実現の
段階を出ないことを示しているものではな
いかと思います。
石炭は
生産予定よりも落ち、全く熱意を欠き、
太陽エネルギーなどの
利用面も遅々として進まず、ただ
原子力がすべてであると信者のように邁進しているが、はかない夢に終わるのではな
いかと思います。夢であればよいが、
災害や
事故は現実であるだけに危惧するものでありますが、
いかがでありましょうか。
最も近い例は、
原子力船の「
むつ」に表現されます。
事故によって放浪の旅を続けたこの「
むつ」、一たんは
幽霊船のごとくなったではありませんか。この
責任、損害は果たして明らかにされたでありましょうか。
国民に
安心感を与えたでありましょうか。ノーであります。ますます不安の
増大につながったことは事実であります。御
見解があるならば
お答えを願いたいと思います。
なお、法に触れて
民間法人が行う場合の罰則の
規定は、果たして妥当なものであろうか。今日の
政府機関の
責任と異なるがゆえに、監視の問題、事態の
重大性、
社会的責任、
災害の
規模などから
考えて、
責任者が一年以下の懲役、十万円以下の罰金というような短絡的なものであってよろしいのでしょうか。
民主と
公開と
自主原則のもとに総合的な性格を持った
規制が必要であると思いますが、
いかがでありましょう。
以上、
提案された
法案について
質問をいたしましたが、われわれが
資源を
石油に依存し、省
資源、
有限資源と言い、二十年で枯渇するなどの説が横行し、せっかちにこれらの
代替としての
核物質に、
原子力に依存する風潮はきわめて危険と言わなければならないし、はなはだ遺憾とするものであります。(
拍手)
安全を確認し、狭い国土に
建設をすることを
考えるならば、石橋をたたいて渡る気持ちが必要であろうかと思います。
円高のときには
後手後手になって不況になり、何でこのときだけ急いでやるのか、全く不可解と言わざるを得ないのであります。
成田空港に要した十二年の足跡は、急ぐことが必ずしも
国民の
利益、安全、福祉に寄与したものでないことを示しているではありませんか。(
拍手)「急がば回れ」という言葉もあります。
政府は、この
法案によって、
国民を
犠牲にし、
政府みずからの
責任を回避し、
民間法人の
責任に転嫁し、ときに
寡占資本に膨大な
利益をもたらそうとしているものではな
いかと
考えますが、
いかがでありましょうか。
最後に、核に関する
外交の方針、
対応についてお
伺いをいたします。
今回の
提案が、昨年八月十二日の
日米交渉により、その
協定第八条
C項に基づき、
米国からの
濃縮ウラン、
使用済みの
核燃料九十九トンに限り、二
年間すなわち
昭和五十四年九月までとされ、
プルトニウムの核不
拡散上重大な
危険性を有し、軽水炉でのそのリサイクルは現時点では
商業用に供する
段階でない、尚早の
商業化は避けるべきであるとの
見解に押し切られ、二年後は全く白紙という
現状であります。
民営に移すことと
カーター外交との
対応は一層むずかしいものとは思いますが、
いかがでありましょうか。
また、常時の査察、
保障措置が厳重に
義務づけられ、
米国国内法に縛られるという実情のもとで、
民営移管はますます
核拡散に対する不信を買うことになるが、
いかがでありましょうか。(発言する者あり)このときの
交渉では
カーター大統領、
バンス国務長官ともおいでになれなかった、お会いになれなかったということでありますが、果たして、どうしてそういう結果になったのでしょう。
核拡散に対する、
日本に対する
信頼感の欠如によるものではなかったのでありましょうか。
福田総理は、
自衛のためと称し、
憲法第九条をねじ曲げておられますが、戦力の
相対性に応じ、核を持つこともあり得ると、きわめて危険な
考え、
行動をとられておられますが、
いかがでありますか。また、
総理は、絶対に
核武装はあり得ないと先般断言されましたが、そのとおりでありましょうか。(発言する者あり)
今後、
国際間の合意の上に立って、
循環禁止の項目について、再
処理に
硝酸プルトニウムの
処理について、
軍事転用、
核爆発を行わない、
防護措置、
保障措置を明らかにする等の提起が求められておりますが、
政府の
見解を
伺いたいと思います。
なお、
ウラン輸入について、カナダによる
わが国の
保障措置不全による
輸入停止、オーストラリアの同様の
措置は、
わが国の
対応水準の低さを物語るものではな
いかと思いますが、
いかがでありしょうか。明確な御回答を賜りたいと思います。
以上をもちまして、
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣福田赳夫君
登壇〕