○佐々木良作君 私は、民社党を代表して、
総理の
施政方針演説に対し
質問を行いますが、委員長としては最初の
質問でございますので、若干の
意見が入ることをまずお許しをいただきたいと思います。
今回の福田
総理の施政
演説は、何よりも、昨年一年間における失政、なかんずく
経済政策の誤りについて率直に
国民にわびる言葉から始められ、かつ新
政策を謳歌される前に、昨年の
施策に対する反省から始められるべきでありました。私は、これが激動の一年間を政権担当された謙虚な
総理のあるべき姿だと
考えたからであります。
しかるに、
総理は、
演説の冒頭に当たりまして、まず「一年前、この壇上から、世界的この難局に処するための行動原理は、協調と連帯にあると述べたが、この一年前に述べた
考え方は、一年後においても、この一年の内外の動きを見て、一層その感を深くいたしました」と、言うならば、みずからの先見的識見を誇らしげに述べることから始められました。
わが国は、昨年、アメリカを初め海外から、あのような集中砲火を浴び、急激な
円高と通商外圧に脅かされるに至ったのでありますが、それは
わが国が国際
社会の中で協調と連帯の行動をとらなかったことに対する海外からの非難であり反撃であったはずでございます。(
拍手)
総理は、みずからの先見的識見を誇られるよりは、これを国政に反映できなかった
責任をこそ反省さるべきでございます。(
拍手)
さらに付言いたしまするならば、昨年一年間の重要な
総理の発言は、ことごとくと言ってもいいほど竜頭蛇尾に終わり、あるいは著しき食言でさえございました。
まず、年頭の通常
国会において、内閣の威信をかけて断行するとまで言い切られた
行政改革は立ち往生、
経済不況問題に至っては、二月の施政
演説で、今日の
経済情勢は順調に推移していると述べ、七月には、
景気は緩やかな
回復基調にあると言い、十月の所信表明でさえ、まだ六・七%前後の
成長は実現できると思うと発言されました。
この一連の
総理の楽観的発言にもかかわらず、ついに今回の
政策転換に事実上追い込まれたわけでございます。これらは、およそ
経済政策の
修正とか転換とかの次元を超えて、明らかに内閣の
政治責任の問題でございます。(
拍手)
私は、すべての
質問に先立って、昨年一年間における福田内閣の言行不一致の
政治責任について
総理の御所信を明らかにされんことを、まず
要求するものであります。(
拍手)
私は、関連して、本当はここでも同じように、
デノミ問題についての発言をいたそうと思っておりました。
デノミにつきましては、私も
一つの
見解を持っておりまして、かつて
予算委員会で、蔵相であられる当時、福田さんともお話し合いをしたことがあるからであります。しかしながら、この問題につきましては、事実上、先ほどの
答弁でも昨日の
答弁でも、この
デノミ発言は取り消されたものと理解して、これを省略いたします。
しかし、あえて申し上げますが、いかにも話題になるように、問題があるように提起して、事実上そのたびに株価があんなに動いておるではございませんか。福田さん、その
責任はどうされるつもりです。それは
政治家のとるべき
立場ではございません。
この際、同様な
意味において、
政治責任の関連で、
行政改革の行方について御
質問を申し上げます。
先ほどの竹入さんの発言にもございましたとおり、
総理は、昨年前半、
最大の目玉
政策として行革を公約されましたが、昨年末の「
行政改革の推進について」という閣議決定によって、この問題に事実上のピリオドを打たれたようでございます。
昨年初来のたびたびの
国会発言によって、
総理は、行政コストの削減こそこの問題の
基本認識の原点であることを強調され、
民間企業、
家庭が血のにじむような努力をしているときに、
政府が率先して行
財政の
改革に取り組まなければならぬとも申されたのであります。このような年初来の意気込みに対して、十二月の閣議決定内容は、盛りだくさんのようではございますけれども、いずれも、いつまでに、どのようなやり方で実行するのか、まことにあいまいもことしており、完全な骨抜き案となっております。まさに竜頭蛇尾、公約違反のそしりを免れません。(
拍手)
わが民社党は、従来繰り返された歴代
自民党内閣の轍を踏ませてはならないと
考えて、特に注意を
喚起しながら、最も
現実的、具体的な
提案、提言を行ってまいったのであります。その
意味からも、この問題についての
総理の
政治責任を強く強く追及するものでございます。
わが国がやがて取り組まなければならない
財政均衡化
政策は、増税的な一層厳しさを
国民に
要求せねばならぬものとなるでございましょう。そのことは、
総理、よく御存じのはずであります。このためにこそ、民社党は、いまのうちに
不公平税制の是正とともに、
行政改革を特に断行して、厳しい
政策が
国民の納得を得られる
条件を整えておかねばならないと
考えているからであります。(
拍手)再度、
総理の
行政改革に対する
基本姿勢を問うものでございます。
さて、
総理は、昨春以来、
不況対策に対するわれわれのたび重なる警告に対して、楽観的
見通しをもって対応し続けられましたが、その
総理が、年末の内閣改造をきっかけに、従来の
財政優先の方針を一てきされ、借金
政策、積極的
刺激政策に転ぜられたのであります。それは余りにも唐突かつ福田
経済の変質でさえありました。
そこで、この
政策転換について、すべての
国民が聞きたいと願っておる三つの疑問にまず
お答えをいただきたいと思います。
その第一の疑問は、この積極
政策がせめて半年早かったならなあ、あるいはもう一年前に打ち出されていたらという嘆きの言葉についてであります。なぜもっと早く
政策転換ができなかったのでありましょうか、
国民に向かって率直に御説明願いたいのであります。
総理は、昨日の
答弁で、
物価が安定し、
国際収支が黒字基調になったから積極
政策に転ずることができた旨発言されまして、いかにもこのような方針が既定の事実、既定の方針に沿って、しかもやれる状態ができたからやった、このような発言をされましたが、
物価が安定し、黒字基調になっておりましたのは、そういう状態ができたのはすでに昨年の夏ごろにはまさに明らかになっておったのでありますから、あのような急激な
円高攻勢を受ける前に、どうしてこのような
政策転換が行えなかったのかという疑問は依然として残るのであります。
私は、第一次補正の時期こそ最後のチャンスであったと
考えていたのであります。あれほどに黒字基調が強まり、アメリカやECからの警告が高まっても、それほどの
円高にはなるまいと
考えていられたとすれば、
経済の福田もはなはだ頼りない認識と言わざるを得ないのであります。(
拍手)
あの状態になって初めて突然変異された
理由と動機につき、
国民は納得の得られる説明を求めているのであります。御
答弁をお願いいたします。
第二の
国民的疑問は、このような積極
政策はいつまで続けられるのか、そしていつごろから、どのようなやり方で借金
政策に歯どめをかけられるのかという率直な
質問であります。
総理がかつて国債依存率三〇%を超すそのような状態は自殺行為だと言われたことは
国民の胸にこびりついておりますから、この積極
政策に対する今後の動きに対する
国民の大きな疑惑と大きな心配が残っておるわけであります。
やがて試算的
中期計画を
国会にも提出するという御
答弁でございましたが、役所で積み上げたそういう作業で、こんな幾らわれわれでも読みかねるような、そのような膨大な書類による報告ではなしに、
国民は自分の生計と
事業の見込みを立てるために、いまあなたの口から、積極
政策は五十四年度も続けるのか、
財政健全化
政策への取り組みは五十五年ごろからになるであろうとかという、そういうおおよその
見通しをせめて説明していただかなければ、この積極
政策に対する見方が、腰が決まらないのであります。血の通った
総理の御
答弁を求めるわけであります。
第三の
国民の疑問は、先ほどもありましたが、
総理の七%
成長公約に対する不信感であります。
国際公約とか自発的
目標だとか、閣内でも党内でも議論がにぎやかであったようでありますが、
国民は、
総理のいかにも七%未
達成の場合の
責任をあらかじめ回避されようとしているかに見える態度に、不信を感じているのであります。昨年の六・七%のように、しり切れトンボになるのではないかと疑っているのであります。この
国民的疑惑を一掃しなければ、とても七%
成長は不可能であります。先ほど竹入委員長に対する御
答弁を私は承りましたが、しかし、むしろその
答弁によって疑いを深めただけでありまして、とても
国民の疑いはあれでは解けてはいないと
考えるのであります。
総理の
責任ある
答弁を重ねて求めます。(
拍手)
次に、ことしの
経済運営について伺います。
わが民社党は、昨年来、
景気回復と
財政健全化についての
中期計画概要を明らかにし、
予算審議のたびごとにこの方針に従って当面の
具体策を提示してまいりました。
今回の
政府案の十五カ月構想も、七%
成長相当の規模も、民社党がすでに秋の臨時
国会当時提示したものとほぼ同じでございます。したがって、
政府の
景気回復へ
財政主導で
総力を挙げて取り組む方針には賛成であります。しかしながら、遅過ぎたきらいもあり、
政府案に示された公共投資一本やりの
対策では、七%
成長は困難だと
考えるわけであります。
この史上空前の
公共事業費の
伸び率をつけた大型
予算を大戦末期の戦艦「大和」の出撃にたとえての批判がありますが、同感と言わざるを得ません。「大和」自体が時代おくれのものであったように、巨額の
公共事業費もすでに高度
成長時代のような強力な戦力がないのみならず、「大和」を援護する戦力も見当たりません。
民間設備投資について、五十二年度が
実質ほぼゼロ
成長だったのに、明五十三年度は
実質六%を見込んでおられますが、大規模な公共投資も、需給ギャップの解消には役立っても、追加的な
設備投資意欲をかき立てる
効果は
期待できそうにはございません。
個人消費についても、
実質的増税を行い、酒税を
引き上げ、
年金などの振替支出も低く抑制し、かつ
雇用不安は一層深刻化し、
賃上げも六、七%
程度かと言われる
現状で、
実質五・一%もの
伸びは無理と思われるからであります。
そこで、私は
一つの
提案を行います。
財政支出の節約を図りながら
景気対策を一層強力にかつ機動的に進めるための
提案でございます。
今回の
予算案は、半年はおくれて決定された
政策転換に基づいて大きく水ぶくれされたものでありますから、
政策実施当局の準備が必ずしも整ったものばかりではございません。
公共事業費に至っては、概算
要求に対して一一・二%も
上積みされております。明らかに水ぶくれ
予算であり、これをこのまま
実施当局に任せることは、あるいは国費のむだ遣いに通ずるおそれがございます。
そこで、この大盤振る舞いの水ぶくれ部分を一たん切り離して、事実上
予算案を縮小
修正して、ここから一兆円ないし二兆円の資金を保留することは不可能ではないと
考えます。そして、この保留財源を、第一に
個人消費刺激政策の財源へ、第二に都市再開発、農業、住宅
産業などへの
構造改善
対策費へ、第三に
構造不況業種、
中小企業などへの緊急
対策費へと、機動的、重点的に再配分してはどうかという
提案であります。(
拍手)
総理は博識でございますから、いろいろと諸外国のことも御存じだと思いますが、似たような
対策がかつて西ドイツにとられた例を御存じかと思います。私は、現在の状況を見まして、
円高が
影響いたしますから、この一−三月の冷え込みがきわめて厳しく、七%
成長のためには、きっと六月前後にはもう一度
景気対策を見直し、積み重ねが行われねばならなくなると予測しておるのであります。それに備える
意味からも、可能な制度
改革を急ぐとともに、そのための財源措置を配慮しておく必要を痛感しておるのであります。あえて思い切った
提案をいたすゆえんでございます。
予算の手続など事務技術上の問題はありましょうが、
予算のむだ遣いを厳しく査定してこられたかつての主計官的感覚からも、福田
総理には必ず御賛同いただける
提案だと思うのでございます。(
拍手)
総理の建設的な御
答弁を
期待するものでございます。
次に、私の
提案による保留財源などを背景に、整備されておらない
社会資本は、いま
政府が
景気対策として重点的に入れようとしておる大型プロジェク卜部分ではございません。世界に誇る御承知のような高速道、さらにまた新幹線、本四架橋——世界ではありませんよ、これらの
社会資本はむしろ決しておくれてはおりません。おくれておるのは学校、病院、保育所、さらにまた(「上下水道」と呼ぶ者あり)上下水道、そのとおりだ。それから、川でも直轄でないむしろ中小河川、あるいは道路でももっと田舎の地方道そのものであります。そこに入れろというのであります。
私の
提案による保留財源などを背景に、
景気対策と
構造改革のために選択さるべき
政策につき
質問を進めてまいりましょう。
最初に、総論的提言を行います。特に私は、これは
政策の選択の
基本になりますので、あらかじめ宮澤企画庁長官の御
答弁をお願いいたしたいことを申し上げておきます。
いまや諸悪の根源のように言われておる蓄積外貨は、もともと
勤労者の汗と努力の結晶であります。
円高差益を
国内物価対策に活用すべきことは当然でございますが、いまのお話にもあったとおりでございますが、私はもう
一つ根本にさかのぼって
考えなければならないと
考えるのであります。
円高とは円の価値が国際的に高まり、円の対外購買力が強まることを
意味するものであります。けれども、
勤労者が賃金として受け取る円、つめに灯をともすようにしてためた庶民の手元の円の購買力は、
円高にもかかわらずちっとも高まってはおりません。欧米先進国
労働者と日本
労働者との賃金はまだ相当の格差があると言われますけれども、仮に一ドル二百四十円計算で同額
程度の賃金をもらうとして、これをドルや円という貨幣でではなく、その国の
国内購買力に見合う物で支給される、そういうふうに
考えてみますと、多分、日本
労働者は、牛肉でも住宅でも、欧米
労働者の五、六分の一ないしは十分の一
程度しか支給されない勘定になるのであります。この円の外に強く内に弱い性格は、これまで
政府が
企業の国際競争力を付与する
政策を優先させ、そのため
国民の生活費を安くし、かつ住みよい環境づくりの
政策をおくれさせた結果にほかなりません。
国内の肉類や生鮮食料品の流通
改革、農業の
構造改善、さらに住宅の著しい高値の
原因となっている
土地政策などへの
政治の取り組み、
施策のおくれが、円の
国内購買力を不当に弱めているのであります。
また、よく例に出される日本の貯蓄率を異常に高からしめておりますものは、貯蓄の四大目的と言われる病気、老後、教育、住宅という、生涯生活上の不安が
国民につきまとっているからであり、その不安を解消すべき
社会保障、教育、
住宅政策がおくれ過ぎているからであります。しかも、これらの問題解決は、高い貯蓄率にもかかわらず、
個人的努力の限界を超えるものであることは、
政府発行の
経済白書が指摘しておるとおりでございます。
このような結果を招いたのは、まさに保守党の長期政権そのものであります。いまわれわれは、
内需拡大と対外均衡
回復のための
政策を進めようとしておりますが、それは本質的には
構造改革的な
政策転換を
意味するものであります。高度
成長への逆戻りの道を選択しまいとするならば、残された道は、これら
国民の生涯生活の不安を解消する
施策と、円の内外価値のバランスを
回復する
施策のおくれを取り戻し、強力に推し進めることであると
考えるのであります。
いま申し上げましたように、これは
政策の選択の
基本に関するものでございますから、宮澤企画庁長官の御所見を篤とひとつ承りたいと思うわけであります。
次いで、
個人消費の問題について伺います。
いまや
個人消費は、
国民総
需要の六〇%にも達せんとし、この動向は、
景気に決定的な
影響を及ぼすものであります。
景気対策として積極的な消費
刺激策を考慮すべきであります。その
対策は、
一つは言うまでもなく
減税、二つは
国民生活の不安要因を解消する
施策を推進することであります。
減税が消費に結びつかないように見えるのは、
減税の規模が小さ過ぎるからであります。某アンケート調査によれば、昨年の
所得税減税を貯蓄に回した者はわずかに八・三%、三十五歳以上の主婦では五・六%にすぎません。大型
減税でも、少なくともその七、八割は直接消費に結びつくと見るべきであります。
減税は、少なくとも一兆円以上でなければ
効果は目立ちがたいと思いますが、とりあえずの措置としては
実質増税となる部分だけにとどめて、大幅
減税をさらに次の
対策へ保留することも
一つの案と
考えます。
次に、
社会保障の
充実政策の中で、老後の不安解消を明年度の重点
政策に掲げ、
年金改革に本格的に取り組むことを主張するものであります。
ナショナルミニマムに達するプロセスを明確にした
中期計画を
政府の
責任において
国民の前に明示し、その初年度として
国民年金、
老齢福祉年金の飛躍的
引き上げを行うべきことを
提案するものであります。直接増額分が一〇〇%消費に回るほか、
政府のナショナルミニマム保障
計画が老後の不安を解消させ、貯蓄性向に
影響を与える
効果はまさに重大であります。
総理の御
見解を承ります。
なお、今回
政府が重点
政策とされております
住宅建設について伺います。
景気対策から見ましても、
構造改革の
立場から見ましても、住宅を重点
政策に選択されることには賛成でございます。しかし、先ほどの
総理の御
答弁からもうかがえますように、
政府案の発想が当面の
不況対策に終始しており、
わが国の
社会経済の
構造的
改革を目指す長期的
対策としての本来的取り組み
姿勢に欠くるところがあるのは遺憾であります。そのためか、竹入委員長の
質問も具体的であったのにかかわらず、御
答弁はあいまいな状態でございましたので、重ねて私は、次の三点の
提案と
質問を行います。
第一に、
政府は、公庫の融資枠の
拡大などによって、公的資金住宅の大幅増加を柱に、百六十万戸建設を目指しておりますが、五十二年度実績
見通しから推定いたしますと、公庫融資の
拡大改善だけでは、自力建設住宅を公的資金住宅に振りかえる結果を招くだけで、全体の
建設戸数の増加は
期待薄と見ざるを得ませんし、少々の
条件改善では、目下一番の住宅希望層となっておる年収二百万円台の人々には手が届きません。したがって、このままでは
政府の目的
達成はきわめて困難であります。竹入委員長も指摘されたとおりでございます。
持ち家
政策は、中間層安定化のために最良、緊急の
対策であることにかんがみまして、
政府は、この際、思い切って公庫貸出
金利の
引き下げとともに、
民間住宅
ローンについても国の
利子補給制度を
創設し、住宅資金
金利の飛躍的低下を図るべきであります。(
拍手)同時にまた、割り増し財形制度の採用に踏み切るべきことをも
提案するものであります。私は、時宜に適した重要
提案であると思いまするので、どうか
総理の決断を求めるものでございます。
第二に、持ち家
政策が
住宅政策の
基本であるといたしましても、だからといって公共賃貸住宅の役割りを軽視してはなりません。
公営住宅入居希望者にして基準該当者がなお二百五十万世帯も存在すると言われるのに、先ほども指摘がありましたように、明年度
計画はわずかに七万五千戸にすぎません。しかし、実績から見て、近年この
公営住宅の建設は遅々として進んでおりませんし、本当はその
理由も明確なのであります。
なお、その傾向はむしろこの
必要性が最も高いと見られる都市部において一層しかりであります。東京都内ですでに老朽化した木造平屋建て
公営住宅が約六十二五尺その
用地面積三千五百ヘクタールと言われております。これを中高層への建てかえによってその近代化と収容能力を増すことは当面の急務だと
考えられるのでありますが、全然進捗の見込みはなさそうでございます。一体この
責任はだれが負うべきものでありましょうか。(発言する者あり)
景気ではございません、
公営住宅でありますから。よろしいか。
景気の問題ではない。話を間違ってはいけません。
公営住宅であります。
機内建設大臣、一体公営
住宅建設がどうしてこう進まないのか、だれが
責任を負うべきか、ひとつはっきりと御
答弁をいただき、今後どのように指導し、対処されようとするのか、確固たる方針を伺いたいと存ずるわけであります。(
拍手)
第三に、
住宅建設の
最大のネックが宅地難にありますことは言うまでもございませんし、その
最大の
原因が
地価にあることも衆目の一致するところでございます。櫻内大臣は
地価対策に熱心なようでありまするし、先ほども話がありましたように、宮澤長官は
平河会提言の形において、建設的な
土地対策を
提案されております。しかし、宮澤
提案の一部
地価凍結案は、すでにわが民社党において、
昭和四十二年に
地価抑制臨時措置法案として
国会提出さえ行っているものであります。問題は、
政府自身の本格的に取り組む
意思の有無にあります。いまやその
必要性とチャンスは熟していると
考えるのでございますが、
総理を初め、櫻内、宮澤各大臣、その用意ありや、承りたいと存じます。
なお、宅地問題に関連して、明年度
予算案中に、「住宅宅地関連公共施設整備促進
事業費補助」という、とっても長ったらしい新項目によりまして三百億円が計上されております。わが民社党の宅地
政策に、造成費の中で公共施設関係の整備費が五〇%にも達しつつある
現状にかんがみ、これを二五%以下に抑えるため、それを超える部分については自治体発行の
地方債に負担せしめ、これに対し国が
利子補給を行うべしとの構想がございます。新
予算案の三百億はこのような
考え方に基づくものと
考えてよろしいか、建設大臣の御
答弁を求めます。
構造不況業種及び
中小企業の緊急
対策、さらに農政のあり方につき伺います。
まず、
構造不況業種、
中小企業の
対策は緊急を要するものがあります。長期
不況で体力が弱っている上での
円高圧力は、
中小企業の集中倒産、地場
産業の崩壊など、直ちに
社会不安につながる危機状況にあります。
構造不況の
原因はさまざまでありますけれども、共通しておりますのは設備過剰であり、たとえ
内需拡大というマクロ
対策が額面どおりの
効果を生んだといたしましても、それだけでは救済不可能なものであります。端的に
過剰設備の大胆な廃棄
対策が必要でございましょう。しかし、このこと自身
雇用不安の
拡大に結びつき、かつ
実施面においても各種の困難を内包しているものでございますが、最近、倒産、一家心中など、三月危機説の前兆的現象もあらわれつつあることにかんがみまして、
対策の遷延は許されません。特別立法の方針を含め、
政府の
対策を明らかにされんことを
要求するものでございます。
次いで、農政のあり方について伺います。
国際貿易のしりぬぐいと
財政のしわ寄せの間に漂う場当たり農政は、農民にとってまさにお先真っ暗、迷惑千万と言わざるを得ません。(
拍手)
すでに過去八年間、
生産調整と過剰米処理にそれぞれ一兆円余の国費が費やされておりますが、米の過剰の再燃はその
効果がなかったことを物語っておるのであります。
昨年の約二倍に当たる今回の減反
計画も、農民にとっては米にかわる確実な作物もなく、農民をより一層困らすだけでありまして、
構造改革への決め手などにはなり得ません。先ほどの
生産調整に対する御
答弁を伺いましたが、むしろ私は、
総理が農政の本質について配慮を欠いておられることを暴露された感をさえ受けたものであります。
また、しきりに畜産のコスト低下の
必要性が最近強調されますが、飼料、えさ問題に対する
構造的
改革を行わない限り、その
可能性もございません。
このままでは、日本の農業生産と消費
需要との乖離はますます
拡大するばかり、やがて
社会問題の
一つの発火点ともなり得ましょう。
農業は長期的なものであり、同時に、現在の国際的広がりの中で変動する情勢に対して、直ちに農業者自身が対応し得るものではございません。したがって、国の
責任において
国民経済の中での農業の位置づけを明らかにし、農業の保護水準を確実にして、これに到達するためのプロセスを、その
財政裏づけとともに提示すべきであります。その上で積極的に農業者の協力を求め、日本にふさわしい農業の近代化、合理化を進めるべきであります。
日本経済の
構造改革に当たって、日本農業のあり方は忘れられてはならない重要
課題であります。
総理とともに最も元気な中川農林大臣の積極的な
答弁を求めるものであります。
あわせて、海洋分割時代の進展に伴い、
漁業及び海洋開発の問題は、
わが国にとって死活に関する問題であります。
わが党は、すでに三年前から、今日の事態を予想し、
政府の根本
対策を
要求し続けてきましたが、
自民党内閣は何らの
対策も講じないまま後手後手に回り、今日の事態に追い詰められました。この際、
政府は、
わが国の
漁業及び海洋開発に関する
基本方針を示すべきであります。いまや水域内における
安全操業問題も重要化しつつありますが、これも含め、中川農林大臣の勇気ある
答弁を
期待するものであります。
最後に、外交、防衛の
基本姿勢についてお伺いいたします。
私は、東西問題に対する平和共存の
姿勢と、南北問題への積極的取り組みを基調とするわが党外交の
基本方針に照らし、ようやく積極に転じた
政府の
経済援助
姿勢が、一時的なドル減らし
対策に終わらぬよう注意を
喚起するものであります。
そしてさらに、日中平和条約締結への
条件はすでに整ったと判断し、条文づくりの技術上の問題解決のために、速やかなる
交渉再開を要望するものでございます。このことは、当然に流動的なアジア情勢の中で、特に北東アジア情勢に新たな局面を迎えることになることを十分留意し、対処に誤りなきを期するよう強く要望するものであります。
さらに、昨年来、福田
総理は、国防
会議のあり方につき検討を指示されたと承りますが、いまなお同
会議は兵器調達についての論議に終始し、専守防御の
立場に立って、
国民の合意を得る防衛のあり方についての最高方針の討議の場とはなっておりません。また、わが党年来の主張であり、
自民党歴代内閣の約束にもかかわらず、防衛に関する
国民的合意の場としての
国会における防衛
委員会設置は、いまだに実現いたしてはおりません。
これらわが党の主張に対し、
総理の
責任ある
答弁を求めるものであります。
終わりに一言つけ加えます。
いま
日本経済が直面している危機的状況の
乗り切りと、
構造改革を進めながら安定
成長経済へ軟着陸させることはなまやさしいことではなく、
経済の福田の自信をもってしても、
国民的協力なしにこの大事は行えるものではございません。この
意味で、私は、むしろ超党派的取り組みこそ絶対必要だとの認識に立つものであります。
しかし、目下の
政治情勢において挙国一致内閣的なものを誕生せしめることは不可能でありましょうから、これにかわって、これに準じた取り組み
方法を
総理は虚心に
考えらるべきであります。
現在の情勢のもとでは、
政策選択の幅はそれほど広くはありません。
総理は、野党の
考え方をも大幅にのみ込む形で時局
対策を
考えらるべきでございます。難関であるがゆえに、また
政治家たる
総理にとって千載一遇のチャンスとも
考えられます。
私は、民社党が
責任野党としての必要な協力と厳重な監視とを続けることを改めてここに申し上げ、
総理がすべての私心、すべての党派心を捨て、一段と高次元に立って、難局に直面した
わが国政に取り組まれんことを重ねて要望し、御所見を承って、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣福田赳夫君登壇〕