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1978-08-11 第84回国会 衆議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年八月十一日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 羽田野忠文君 理事 濱野 清吾君    理事 保岡 興治君 理事 山崎武三郎君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 高橋 高望君       上村千一郎君    田中伊三次君       原 健三郎君    西宮  弘君       飯田 忠雄君    長谷雄幸久君       正森 成二君    加地  和君       鳩山 邦夫君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    宮島 壯太君         警察庁刑事局捜         査第一課長   加藤  晶君         警察庁刑事局保         安部保安課長  佐野 国臣君         警察庁警備局公         安第一課長   三島健二郎君         防衛庁長官官房         法制調査官   小谷  久君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   加藤 和夫君         法務政務次官  青木 正久君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省保護局長 常井  善君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         大蔵省銀行局中         小金融課長   吉居 時哉君         厚生省薬務局麻         薬課長     山田 幸孝君         自治省行政局行         政課長     中村 瑞夫君         最高裁判所事務         総局刑事局長  岡垣  勲君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   西田  司君     篠田 弘作君 同月十六日  辞任         補欠選任   鹿野 道彦君     木村 武雄君   玉沢徳一郎君     原 健三郎君   中島  衛君     前尾繁三郎君     ————————————— 六月十六日  一、刑法の一部を改正する法律案内閣提出、   第八十回国会閣法第七六号)  二、刑事事件公判の開廷についての暫定的特   例を定める法律案内閣提出第五三号)  三、犯罪被害補償法案沖本泰幸君外二名提出、   第八十回国会衆法第一二号)  四、刑事補償法及び刑事訴訟法の一部を改正す   る法律案沖本泰幸君外二名提出、第八十回   国会衆法第一三号)  五、政治亡命者保護法案横山利秋君外六名提   出、第八十回国会衆法第四〇号)  六、刑法の一部を改正する法律案横山利秋君   外五名提出、第八十回国会衆法第四一号)  七、民法の一部を改正する法律案横山利秋君   外五名提出衆法第二二号)  八、裁判所司法行政に関する件  九、法務行政及び検察行政に関する件  一〇、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人  権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所岡垣刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 米谷さんの再審事件について先にお聞きをいたします。ただ、これは経過をずっと聞いてまいりますと非常に長くなって、これだけで時間をとってしまいますので、要点だけをお聞きすることにしたいと思います。  一つは、長内という人が本所署に勾留中に自供をしたのが四十一年四月七日ですね。それから四十二年の二月二十一日に本件で逮捕した、こういうことになっておるわけですが、この間の捜査経過についてひとつ説明を願いたい、こういうふうに思います。
  6. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいまお尋ねの、長内氏に対する捜査関係でございますが、御指摘のように、米谷氏に対する有罪判決確定しまして約十二年たちました昭和四十一年の四月七日に、当時脅迫と窃盗という罪名で東京地裁起訴されまして本所警察所に留置されておりました長内芳春氏が、例の事件真犯人自分であるというふうに申し立てたのでございます。  そこで、警察から報告を受けました東京地検におきましては、特に殺人事件捜査に関して実績のあるベテラン検事主任検事に指名いたしまして、これは当時東京地検特別捜査部でこういう重要事件を扱っておった時期でございますので、そのベテラン検事主任検事に指名しまして、同検事に命じまして、まずもって白紙の状態で長内氏からの自白を十分聞かせますとともに、その後に米谷関係確定記録を取り寄せて、これと供述とが符合するかどうかというような点を吟味するなどいたしましたが、その後五月ごろから年末までにかけまして八回にわたって長内氏の取り調べを行いますとともに、長内氏の自白現場状況に符合するかどうか、あるいは長内氏の自白のとおりの行動によりまして被害者の死体に認められましたいろいろな所見等と合致するかどうか、こういう点を中心としまして地元関係者の取り調べ、あるいは現場の検分をいたしますとともに、さらに東京大学法医学部教授ほか一名に対しまして、自白被害者の創傷の原因、性状あるいは姦淫の痕跡等との関係につきまして詳細な鑑定を依頼いたしております。そういう鑑定の結果等が出ましたのが年が明けてからでございます。  ところで、鑑定の結果等を勘案いたしますと、長内氏が本件事件真犯人である疑いが非常に濃いという結論に当時東京地検では達したわけでございますが、いずれにいたしましても、ここ一発という決め手のない事件でございました。  そこで、いろいろ立証上の方法について考慮を重ねておりましたけれども、間もなく時効期間が完成するという関係もありまして、昭和四十二年二月一日に逮捕し、時効寸前である同月二十三日に東京地裁公訴を提起した、こういう経過になっておるようでございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その起訴をするのが四十二年の二月二十三日ですね。その過程で東京地検としては、当時米谷さんはもう仮出獄していたわけですね、三十三年二月十八日に秋田刑務所を仮出獄をしておる。それで米谷さんに会って事実関係について確認をしておるわけですか、それはどうしたのですか。
  8. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 米谷さんには当たっていないようでございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはどうして当たらなかったのかな。
  10. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 米谷さんの犯行当時から起訴に至るまでの供述あるいは起訴後の公判における供述その他は、諸般状況確定記録の中で必要な限りにおいて十分把握できるということで、米谷さんに当たってみても確定記録以上に得るものはないであろうというような観点から当たらなかったのではないか、これはまあ想像でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この起訴は、本当に長内氏が犯人であるということの強い証拠があって起訴したというのか、あるいはともかく長内氏が自分がやったというふうに自供しておるということから見て事が重大だからその結果については裁判所判断に任せよう、こういうことで起訴をしたのか。よくそういう場合がありますね。証拠関係はどうもはっきりしない、危ないところがあるけれども、検事のところで不起訴にしてしまうとかなんとかということではこれは世間の誤解を招きやすいから、この場合には起訴をして裁判所の公正な判断を仰ごうというやり方もなきにしもあらず、それは世間に発表しないけれどもそういうこともなきにしもあらずです。そういうことはいま言ったはっきりとした有罪確信があってしたのか、あるいはそれははっきりしないけれども、とにかく裁判所判断に任せよう、はっきりしないというのはあれがありますが、そういうことだったのですか、そこはどうなんですか。
  12. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 この事件と申しますのは、米谷さんが裁判を受けた関係におきましても、長内氏が裁判を受けた関係におきましても、いずれにしましてもいわゆる任意自白があり、これを補強する証拠が同じ程度にあるという非常に微妙なケースでございまして、結局帰するところは事実認定上の問題だけであるわけであります。  ところで検察といたしまして、最高検察庁高等検察庁以下検察幹部を含めましていろいろな難事件については協議を重ねることが多いわけでございますが、法律問題でありますとか立証上の技術でありますとか、そういう点につきましては衆知を集めて決定するということが非常に有効でございますけれども、およそ事実の認定という問題につきましては、主任検事心証というものを最大限に尊重する、こういうことが検察の伝統であるわけでございます。そういう前提に立ちまして、長内氏を起訴します当時、東京地検のいわゆる本部事件と申します強盗、殺人等事件主任検事でございますベテラン検事がやはり米谷さんの確定記録を十分精読し、かつ自分で一年近くにわたって諸般の事実の調べをしてみて、長内氏こそ真犯人だ、こういう心証を抱いておったわけでございます。したがいまして、検察としては、とにかく長内氏が真犯人であるという主任検事心証、これは十分に尊重すべきでありまして、ただ欲を言えば、もっと時間をかけて何か決め手になるような証拠が発見できれば、さらに公訴維持には完全を期し得るわけでありますけれども、すでに時効寸前というような状況でございまして、主任検察官心証というものを最大限に尊重して控訴を提起した、こういうことのようでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その主任検事の名前も私は知っておりますし、会ったこともあります。いまその人はやめて公証人をやっているから、まるでその人の責任だけだというふうに何かあれしちゃっているような感じを受けるのですが、それはそれとして、そうすると、すでに片方確定判決、服役、仮出獄している、その事件についてまた起訴するわけですから、単に主任検事心証とかなんとかというだけではなくて、これは恐らく東京高検なり最高検刑事部相談をしたのではないですか。その点はどうですか。
  14. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 当時検事総長まで報告をしまして、そして主任検事心証形成が不自然ではなく、無理がない、こういう点の吟味は十分したようでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると公判の中で——これは自供の点については録音をとっておりますね。約六時間にわたって録音をとっておるわけです。その録音証拠能力はいろいろ問題があるといたしましても、自供任意性というか信憑性ということに絡んで、その録音東京地裁法廷へは出たのですか、出なかったのですか。
  16. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 地裁法廷に出しておるそうでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、四十二年の八月二十五日に、米谷さんが青森地裁に対して再審請求をしておるわけですね。これは刑期満了よりも四年くらい前に出ておるわけですが、再審請求をしておって、それに対して、ぼくは再審のことをやったことがないのでよくわかりませんが、検察側意見を求める、こう思うのですが、その検察側意見を求めたのはいつなんですか。
  18. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 手元に記録がございませんのではっきりした日は申し上げられませんが、恐らく再審請求がなされて間もなくであったろうと思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、そこが非常に重大なんでね。ぼくの言うのは、東京地検起訴して、一審の無罪判決戸田弘さんのところであったのが四十三年七月二日、それ以前に検察側再審請求に対する意見が求められておるかどうかということです。
  20. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 先ほど私の早合点で間違ったことを申し上げましたので訂正しますが、四十二年八月に青森地裁に対して再審請求がなされましたが、当時からしばらくの間、長内氏の裁判関係記録青森地裁にございませんでした。昭和四十五年になりまして東京高裁で、長内氏の死亡によって控訴棄却ということで終結をいたしまして、その終結しました記録青森地裁へ回付されまして、その後に検察官意見を求められ、検察官意見を出しておる、したがってその時期は四十八年までずれ込んでおる、こういうことのようでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その地裁判決は、戸田さんの判決ですが、これは無罪になっておるわけですね。いろいろなことがこの判決には書いてあるのですが、判決内容を批判するわけではありませんけれども、起訴された事実について有罪無罪かを認定すればいいので、ほかのことまで書く必要があるのかどうかということは私は疑問に思うのですが、どうもこの判決はいろいろなことが書いてあるように聞いておるわけです。そうすると東京地検としては、四十三年七月二日に東京地裁無罪判決があったというのですが、その前からこの事件無罪になるだろうということは大体わかっていたのですか。
  22. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 もちろん検察官としては、長内氏について有罪判決が得られるものと信じて公訴維持をしておったようでございます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 しかし、途中の公判経過、これは公判はどうしたの、捜査検事が立ち会ったのですか、別の検事が立ち会ったのですか。
  24. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 公判に立会したのは公判部の別の検事でございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは東京の場合は分かれておるけれども、重要な事件で、特に有罪無罪を争う——これは、起訴する前にたしか否認したのですか。ですから公判でも否認しておった、こう思うのですよね。そうなってくると、非常に重要な事件だからというので捜査検事が立会するのが、東京はちょっと違うかもわからぬけれども、普通はそういう形をとるのじゃないですか。公判検事ではなかなか捜査の微妙な段階がわからぬし、また、それは一長一短で、客観的に見られるといういい点もあるかもわからぬけれども、私は、捜査検事が立ち会うべきでなかったか、こう思います。  それはそれとして、そこで無罪判決があって、最終日検察官控訴をしておりますね。検察官控訴をしているのですが、これはなぜ検察官控訴をしたのかということがまず一点ですね。どういう点で検察官控訴をしたのか。
  26. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 要するに、きわめて自然な形で行われた長内氏の自白というものにつきまして、もう細かく申し上げるまでもなく、東京地裁判決は、自白が措信できないということを中心にし無罪を言い渡したわけでございます。一方、その時点では米谷氏が再審請求をしておられるわけでありまして、そういう関係を総合的に勘案いたしますと、やはり長内氏の事件の一審判決は、余りに明快に自白信用性を切り捨てて、かつ米谷氏が真犯人ではないかというようなところまで触れた判断をされておるわけでございまして、そういう観点から、やはり検察としては、事実審の最終でございます控訴審においてもう一度よく自白内容等吟味していただきたい、こういう観点から控訴したもののようでございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 自白内容検討してもらいたいということは、結局一審で起訴した長内氏の有罪確信して検察官控訴をしたんだ、こう思うのです。検察官控訴というのはむやみやたらにするのでなくて、恐らくこれは高検検事部の決裁を経なければできないわけでしょう。最高検にも相談したのではないか、こう思うのですが、その点はどういうふうな形で検察官控訴をしたのかということ。それから、控訴趣意書はできて、提出されたのですか。
  28. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 もちろん長内真犯人という確信に基づいて起訴をしたところが、一審判決できわめて意外な判決があった、こういうことでございますので、最高検察庁まで上げまして十分吟味の上、やはり長内氏が真犯人ではないか、こういう確信に基づいて控訴をした、したがって、控訴審でこの自白信用性についてもう一回よく吟味していただければ自白信用性が認められるのではないか、こういう確信に基づいて控訴をしたようでございます。なお、控訴審におきましては、もちろん控訴趣意書提出いたしまして、現に何回かの公判を開いておった後に長内氏が突然自殺された、こういうことでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 自殺されたのは四十五年の五月五日ですね。審理はどこら辺まで行ったのですか。
  30. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 控訴趣意陳述等が終わりまして、それから若干の証人調べをし、現場検証をやり直した、その段階でございます。四回ぐらいやっております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、いま言った青森再審棄却決定は、四十八年三月三十日に再審請求棄却決定が出ているのですが、その前に検察官の方で意見を求められて意見を述べているわけですね。その意見は、いつごろで、どんな意見を出しておるわけですか。
  32. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 青森地方検察庁青森地裁に対しまして米谷氏に関する再審請求についての意見を出しましたのが昭和四十八年一月二十六日でございまして、再審請求は棄却されるべきである、こういう意見を出しております。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 棄却さるべきであるというのは結論であって、どういう理由から棄却さるべきであるということを述べておるのかということが一つと、それから、その青森地検の方の再審請求棄却意見には、長内氏の東京地検検察官控訴中であるということは一体含まれておるのですか、含まれておらないのですか。
  34. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 この意見を出しました時点と申しますのは、長内氏がすでに死亡をされて、そして控訴棄却長内氏に関する裁判が終わってしばらくたった後でございます。当時青森地検がこの再審請求は棄却されるべきであるという意見を出しました理由としましては、青森地検仙台高検協議を遂げました結果、米谷氏に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠がないということ、もう一つは、むしろ米谷氏が本件真犯人であるという蓋然性が高い、この二つ考え方で意見を出しておるようでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、いまの青森再審に対する検察側意見は、仙台高検だけで終わってしまって、なぜ重要な、片方控訴棄却になっているとしても、検察官控訴をして片方の人が真犯人だということを主張している段階ですから、だから当然最高検で統一をしてやるべきでなかったかと、こういうふうに思うのです。一方においては検察官控訴をして片方有罪であるということを主張しながら、片方においてはそうではないということを言っておるというのはおかしいので、これは当然最高検で統一すべきではなかったかと、こういうふうに私は思うのです。それは、もし同じ東京高検の管内でこの二つ裁判が進んでおったとするならば恐らく高検で統一したと思うのですが、仙台高検東京高検で違うから意見が食い違ったのかもわからないのですが、どうしてそういうふうな不一致というか、それを出してそのままにして、最高検で統一した検討をしなかったわけですか。
  36. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 当時の事情が必ずしも的確ではございませんが、仙台検事長が、その判断におきまして、最高検相談するまでもないということで青森地検を指揮されたようでありまして、その間の事情は、関係者がもうおりませんでどうもよくわからないのでございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いずれにしてもそういうふうなことで、片方において長内氏が無罪だということで検察官控訴をしておいて、それは自殺してしまって公訴棄却になったとしても、検察官控訴は最後まで恐らく公判が続けば維持しておったのではなかろうか、こう思うわけですが、それと違う判断青森地検がしているというのは非常におかしいことになってくるので、私はここら辺に一つ問題点があるのではないか、こう思うのです。  それはそれとして、大臣がおいでになりましたので結論的なものをお聞かせ願いたいと思うのですが、この米谷さんの事件は七月三十一日に再審無罪判決があって——だから確定は八月十四日ですね、きょうは十一日ですからまだありますけれども、すでに最高検との間の協議なども遂げておられるということを聞いておりますし、それから何と言っても二十七年に起きた非常に古い事件であって、今後これ以上の新しい証拠が出るということも考えられないという点を考え、そしてこの無罪判決というものを尊重して、これ以上裁判を長引かせないで終わらせるといいまするか、そういう意味において本件については常識的に解釈をして事件を終わらせたい、こういうふうに大臣としてはお考えになりませんか。
  38. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 その前に、委員会がありますのに閣議等で遅くなりましたことをお許しいただきたいと思います。  いまのお話でございますが、私も再審判決があってからこの事件模様を知ったわけでございますけれども、その後説明を聞いて、私の立場からしても、国民の一人として、同じ一つ事件両方起訴されておった、これはいろいろ事情があるわけでございましょうが、共犯ならいざ知らず、全然独立犯のようなかっこうで起訴されておったということはちょっと異様に感じたわけでございます。  それはそれとして、再審裁判がありましたが、これについては私いままだ状況模様を聞いておりません。当然検察庁としては、証拠その他から慎重にいま検討しておることと思います。また仙台高検あるいは最高検察庁とも相談をして十四日までに最終の手段をとる、こういうことになると思いますが、いま私は、これをどうしなければならぬという見解を持っておらないわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 刑事局長、これはいまもう仙台高検最高検との間なり、青森地検との間の協議は済んだわけですね。
  40. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 最高検は、一応仙台高検及び青森地検を呼びまして報告を詳細聞いておるようでございまして、現在最終的な結論を出すための検討作業を続けておるようでございます。  先ほど大臣から御答弁がございましたように、どういう結論になるか、これはまだ全く検察庁から聞いておりませんけれども、この米谷さんの再審関係につきましては、検察としても長内氏がもう亡くなられた今日、米谷さんの再審を通じてしかこの事柄の真相というものを裁判所に究明していただく機会はないわけでございますので、資料の提供その他十分な協力をしたつもりでおるわけでございまして、そういった諸般事情を踏まえまして、先ほど御質問にありましたような良識に沿った結論が出されるものではないかと私ひそかに思っております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、別のことなんですが、いま日中条約の成立の時期に来ておるわけで、一部では何か日中に関連して恩赦があるのではないかというようなことが言われているやに私もちょっと聞くわけですが、そのことについては大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  42. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 日中条約は、情報等で御承知のとおりあと一両日中に妥結に至るのではないかと観測をしておる状況でございますが、その問題について、私は法務当局として恩赦のことを考えたことは全然ございません。いまそういう考えはございません。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、恐らく大臣の方から聞いてもらいたいのではないか、こう思うのですが、あなたが鹿児島でいろいろ言われておられますね。これは新聞に出たことですからどの程度あれだかわかりませんけれども、あなたがおっしゃったことと、記者会見で向こうから質問が出て答えたことと両方があってごちゃごちゃになっているようにもとれるのですが、どういうようなことをどういうような気持ちでお話しになられたのでしょうか。
  44. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 今月の八日であったと思いますが鹿児島の検察庁記者会見をやりまして、こちらから記者会見で申し上げる事項はなかったわけでございますが、たまたま記者諸君の方から、まず第一にいわゆる刑事裁判の特例法についての質問がございました。これは今後も成立を期する考えかどうかという質問でございます。もちろんわれわれとしては、この前の国会ではいわゆる時間切れということになって成立に至らなかったけれども、これはかくかくしかじかでぜひ必要な手段といいますか方途であると考えておるから、これは国会のことであるけれども、今後慎重に審議をしてもらって必ず成立をさせてもらいたいという考えでおるのだ、私はこういうお話をいたしました。  それに対して記者団の一部から、弁護士会といいますより日弁連の方では反対をしておられる、それでも成立を期するという考えか、こういう質問がありましたから、日弁連が反対されておることは十分承知しておるけれども、日弁連も、形の上では日弁連全体として反対をしておられるようだけれども、私の推測、観測では、全部が全部反対というふうに私は見ていないのだ、日弁連には事情があって反対の態度をとっておられるのが、私は率直に言って遺憾に思っておる、こういう話をしました。  それから、やや細かい話になりますけれども、弁護士さんの中でもこれに反対する弁護士ばかりでないのだという激励の手紙も私いただいております。また直接、こういう過激派のああいう無法な裁判に対する態度に対してはやはりこういう手だてをすべきである、ぜひ成立を期してもらいたいと言ってきておる弁護士さんもある、そういう際に、激励してもらうのはありがたいけれども、弁護士会の内部で、日弁連で、ひとつ皆さんそういうことで努力をしてもらいたい、こういうことを私が申し上げると、なかなか日弁連ではそういうことを取り上げて必要性を説くという雰囲気ではないのだということを聞いております。いわゆる過激派暴力事件に関する裁判がこういうふうになっておるのに、それを正さなければならぬ、これが法治国家の裁判として正しいといいますか必要性がある、こういうたてまえでやっておるのであるけれども、たとえばこういう裁判の被告に対する弁護については、過激派の主張、行動と同調する弁護士さん以外には依頼をしないような状況になっておる、あるいは国選弁護人をつけることになっても、率直に申して、身の危険性を感じてなかなか国選弁護人に応じないという状況がある、さらにまた、たまたま応じた人には弁護士会から生命保険を描けてやるというような状況である、私から見ると暴力に屈しておるような状況に見える、こういう話をしておるわけでございます。まあ新聞ではいろいろ受け取り方があると思いますから、文章にはいろいろ出ておりますが、そういう解説をした。きわめて遺憾である、こういうことを申し上げたわけでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か記事によりますと「全国一万一千人の弁護士のうち、三分の二は心の中で本当は賛成している。」というようなことをあなたはおっしゃったのですか。それは賛成している人もいますよ。私も幾らでも知っています。幾らでもというか、それは古い人が多いですけれども。三分の二は心の中で賛成しているというようなことは言われましたか。
  46. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 それは当委員会で私の推測として申し上げた記憶はあるのですが、三分の二と私が勘定したわけではございませんけれども、この前のあの決議をされたときの日弁連の大会といいますか総会には、これは私は記憶が定かでないところがあるかもしれませんが、二千数百人が集まられたと思います。それに四千数百人がいわゆる委任状である。意思決定をみずからされるというかっこうでなくて、委任状を出しておる。一万一千人のうちに、委任状と、それから直接参会された方二千人余り、そういう状況で、他は出席をしておられない、委任状も出しておられないという状況である。そういう姿の中であれが決議されております。そういうことを推測いたしまして、それからいま申し上げましたように、いろいろ励ましてくださる方あるいは手紙をくださる方、私がたまに会う弁護士さんの話を聞いておりますと、まあ三分の二ぐらいは賛成してもらっておるのじゃないかという、これは私の推測を申し上げておるのです。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 おかしな算数というか、何だか変な計算で、また自分に都合のいいように解釈しておりますね。これはいまここでやると、あなたのペースにはまってしまって、時間をかけてもつまらぬし、別の機会にゆっくりやりますが、そのうち解散になってしまうかもしれませんね。いまの計算は非常におかしいです。これは、委任状も出していない人はまるで全部賛成のように自分でとっているようなあれだし、問題があります。  それからもう一つ、この法案に賛成を言うと、本人のみならず家族まで必ず脅迫を受ける、こういう意味のことをおっしゃったのですか、それはいま言った国選弁護人の選任の問題についての話なんですか、どっちなんですか。
  48. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 率直に申し上げて、いま日弁連がああいう決議をしてあらゆる運動をしていらっしゃいますから、おれはこれに賛成だという旗を上げるといいますか声を上げることは、ここの委員会ではそういう方はいらっしゃいますけれども、なかなかやりにくいのじゃないか。さっき申し上げましたように、いや日弁連の総会、大会などでそういうことを言える雰囲気でないということを現におっしゃっておる弁護士さんもいらっしゃいます。それがだれかの脅迫であるとは私は考えないのです。しかしそういう雰囲気がある。  脅迫の問題は、たとえば東京弁護士会あたりでもそういう事態があったわけですが、これは被告人というよりもいわゆる支援団体というのが御承知のようにありますが、生命保険まで掛けて三人の国選弁護人を選ぶ、こういう状況でございますから、そういうことを挙げて、いわゆる暴力に屈したかっこうになっておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは別の機会にやりますけれども、それはいわゆる過激派の事件というのとは別の事件のことじゃないのですか。あなたの言うのは、過激派の事件とは別のある事件のことと法務省の言っている過激派の事件とごちゃごちゃにしてしまって言っているのじゃないですか。これは法務省の出した資料の中にも、いまのあなたのおっしゃったものは入っていませんよ。これは過激派の事件ではない別の事件のことですよ。  そうすると、家族まで必ず脅迫を受けるとかなんとかと言ったかどうか、これは記事ですからあれですが、日弁連が反対をしているから、この法案に賛成を言うと家族まで脅迫を受ける危険性がある、こういう意味のことを何かおっしゃったのですか。
  50. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、これに賛成の意見を出すと日弁連等で脅迫がある、そういう意味ではございません。それは先ほど申し上げたとおりでございます。  こういう事件について、たとえば過激派と同調しないような弁護士さんが国選弁護人に選ばれるという、そのことは当委員会でもずっと前に私はどこかの学者の書かれた文章を紹介したことがあります。そういう家族まで脅迫を受けるという状況の中で、たとえばドイツ方式みたいな制度をとっても、わが国ではその機能を発揮することはできない状況になっておるという趣旨の論文といいますか意見発表が、日弁連の雑誌「自由と正義」ですか、それに書いてある、そういうことをお話ししたわけでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは法案の審議のときに、慎重審議してくれと言うのですから、慎重審議して、ゆっくりやります。  そこで問題は、もう一つ別の話になりますが、いわゆる有事立法ということが近ごろ言われておるわけです。この前の閣議で福田さんからそういう話があったとかいうのですが、それは具体的にどんな話が、閣議は秘密かもわからぬけれども、あなたはよく勇気を持ってほかでしゃべられる方だからお聞きをするわけですが、一体どういう話があったかということが一つと、一体有事というのは何なのですか。有事立法という話があったときに、それはどういうふうにお考えになりましたか。
  52. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 最近防衛問題について、有事という言葉が使われますが、私もこれは所管外でございますから、申し上げることが適当であるかどうかもややちゅうちょするところがありますけれども、こういうことだと思います。わが国が万一どこからか侵略を受ける、侵奪の形が出る、攻撃を受ける、こういうことを言っておるのじゃないか、私は、非常にラフな考えでございますが、そういうことを言っておると思うのです。  そこで、閣議の内容について細かく申し上げることは控えなければなりませんけれども、あの話が出ましたのは、前の栗栖統合幕僚会議議長の問題で金丸防衛庁長官から、かような事態で議長から辞表を出された、諸般事情考えて、やむを得ないものとしてこれを受理することにした、有事という問題についていろいろ検討しなければならないことは事実である、しかし、統幕議長の世間に誤解を受けるような発言は遺憾であった、そういうお話がありまして、議長の辞表を受理することを閣議了解を求められた、こういうことでございます。これは所管大臣がそういう見解を述べられましたから、閣議でも了解をした。その後で総理から、有事の問題について従来からいろいろ問題があると言われておるから、これは今後と言わず、いま現在防衛庁長官の指示に従って検討しておるようでありますが、有事についてどういう措置をとるべきか、どういうふうにすべきかということは大事なことであるから今後も検討を続けてもらいたい、これが総理の発言でございます。  そういう次第でございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは防衛庁の方にお伺いしますが、この有事というのは一体何かということと、それから現在そういう有事立法を必要とするような状況に一体あると考えているのですか。その点はどうなんですか。まず、そこら辺から……。
  54. 小谷久

    ○小谷説明員 お答え申し上げます。  まず有事とは何かという点でございますが、これは、私どもの作業におきましては主に自衛隊法七十六条の規定による防衛出動が下令されるような事態ということで考えております。  それから、有事立法と有事立法の勉強ということを区分けして考えておりますけれども、立法化の問題につきましては、いわゆる政治レベルと申しますか、内閣レベルの判断にまつこととしておりまして、現在立法化につきまして差し迫った必要があるというふうには必ずしも考えておりません。しかし、仮に立法の方針が示されました場合に、防衛庁としまして何も勉強がされておらないということではいかぬからということで、昨年八月、三原長官から特にはっきりした指示もございまして、事務当局で勉強を続けておるものでございます。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いずれこの問題は、十六日に内閣委員会があって、防衛白書なども出ておりますから、それを中心にやることであって、本委員会の守備範囲かどうかちょっとあれですから要点をしぼりますけれども、そうすると、これは、この前問題になった三矢研究というのがありますね、三矢研究というものを参考にするというか、基礎資料としていわゆる有事立法というものを研究していくというか、そういう態度に結局ならざるを得ないということになるわけですか。
  56. 小谷久

    ○小谷説明員 今回の検討作業は昨年八月以降改めて着手しておりまして、前に確かに三矢研究と言われますものの中に法制の問題が若干入っておったように私も記憶しておりますけれども、その内容を基本にしたり参考にしたりということはいたしておりません。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、有事立法ということをするためには、現在の自衛隊法に欠陥があって自衛隊法では足りないからいわゆる有事立法の研究をするということに常識的に理解をする人もいるわけですね。それはどういうふうに理解したらいいのか。仮に、どこにどういうふうな欠陥があるというふうに理解をするのですか。
  58. 小谷久

    ○小谷説明員 防衛庁としましては、現行自衛隊法に重大な欠陥があるというふうには考えておりません。しかし、なお改善する余地がないかどうかということは、有事、平時を問わず、防衛庁設置法とか自衛隊法の見直しという見地から、ただいま、いわゆる有事法制の勉強と並行して別にやっております。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その有事立法というのはこれから研究するのかしれませんけれども、そうすると、各省にまたがっていろいろ影響してくるのだろう、こういうふうに思うのですが、それは一体どことどこにどういうふうに関連してくるのですか。これからの研究課題かもしれぬけれども……。
  60. 小谷久

    ○小谷説明員 有事の際に自衛隊の任務遂行上支障となる法制あるいは逆に必要な法制ということについて勉強しておりますので、必ずしも自衛隊法に限らず、他省所管の法律につきましても、自衛隊の任務遂行上何かぐあいが悪いことはないかという見地で庁内で勉強はいたしております。現時点では庁内でやっておりますけれども、取り扱いにつきましてかなり高度な判断がございますれば、いわゆる政府の方針決定ということになりますと、それに先立ってその所管省庁とそれぞれ協議調整が必要かと考えております。現時点ではまだ特定の省庁と会議を持ったりというようなことはしておりません。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで法務省にお伺い脅したいのは、有事立法ということになると、考えられるのは集会、結社の自由であるとかいわゆる人権の制限とか、そういうふうな問題に当然発展してくる可能性があるのではないか、こういうふうにも考えられるわけですが、こういう点については法務省としてはどういうふうに考えておるのか、将来考えるのか、これはどういうことですか。
  62. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いわゆる防衛上の有事立法に関していま法務省がどういうところを研究しなければならぬと考えておることは全然ございません。ただ、防衛庁でいろいろ研究をされて、こういう点はどうかというような協議でもある場合はこれは研究をしなければなりませんが、こちらとしていま人権の問題とか、あるいは集会の判限とか、そういうものが必要かどうかと考え段階でない、全然考えておりません。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、結論として、いまそういうように国際的にも差し迫った状況にもないし、そしてこれを研究するというようなことでかえっていろいろな誤解というふうなものを各方面に与えるということは当然考えられてくるし、平和憲法との関係においても問題が生ずる余地がある、こう考えてまいりますると、そういうような研究というふうなものはなすべきではない、こういうふうに私どもは考える。逆効果が非常に多過ぎるというような点から考えてもなすべきではない、こういうふうに考えるのでありますが、このことについては、いまここに来ておる防衛庁の人に聞いても無理な話であって、それは防衛庁長官か何かに、あるいは総理に聞くべき筋合いのものだろう、こういうふうに思いますので、私どもとしては、こういうふうな研究は百害あって一利なしというふうなことで、当然やめるべきだという見解を持っているわけですが、これは内閣委員会なりあるいは予算委員会なりで申し上げる、こういうことにいたしましてこの質問は終わりたい、こういうふうに考えるわけでございます。  前にちょっと落としたのですけれども、再審の問題で、いま道交法違反の身がわりの関係再審などが出ているのはこれは別ですけれども、そうでない事件再審が起きている事件、特に戦後の混乱期からちょっと過ぎた段階、占領中ですね、そういうふうなものはどういうふうなものがありますか。簡単に御説明を願っておきたい、こういうふうに思います。
  64. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 大変申しわけないのでございますが、再審事件の統計におきまして、御指摘の交通事故あるいは道交法違反とそれ以外の事件を分けて統計をとっておりませんものですから、的確なお答えができないのでございますが、最近の主な再審事件、交通関係以外の再審事件としましては、先般ございましてよく御承知の弘前大学教授夫人の殺害事件でございますとか、あるいは広島高裁でなされました加藤老の事件、これらについて無罪判決があったことは申し上げるまでもありませんけれども、そのほか現在再審請求中のもので著名なものといたしましては、いわゆる帝銀事件、いわゆる財田川事件、いわゆる丸正事件、いわゆる名張ブドウ酒事件あるいは江津事件、こういうようなものが現在再審請求継続中でございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 終わります。
  66. 鴨田宗一

  67. 横山利秋

    横山委員 いまの稲葉委員質問に関連をして、最後のまあ有事のところから入りたいと思うのですが、福田総理大臣が指示をされたということは閣僚として瀬戸山さんもお含みの上でいま答弁をされておると思うのであります。それで、いま瀬戸山さんの話は、侵略と攻撃を受けるというお話が有事であり、防衛庁は昨年八月から事務当局でやるというが、現在の自衛隊法は瑕瑾がないと思うけれども、よりいいものをひとつ検討をする、こういう話であります。  もう一遍瀬戸山さんにお伺いしますが、有事ということは侵略と攻撃を受けるということだというのですけれども、もちろんそれは、その有事であるか否かという判断は第一線の指揮官が判断するのではない、こういうことは前提でしょうね。
  68. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 正直に言って、私は防衛関係の担当でもないし……(横山委員「常識です」と呼ぶ)知識はないわけですけれども、まあ閣僚の一人といいますかあるいは国民の一人として考えますと、防衛庁及び自衛隊があるということは意見のある人もございますけれども、やはり国土を防衛し国民の安全を守る、こういうためにあると思います。でありますから、それが侵害される、そういうときにはやはり有効に国土を守り、国民の生命財産を守るという能力を発揮してもらわなければこれは意味がないのじゃないかと思います。そういうおそれがあるときが有事ということなんだろう、こういうことを私は申し上げておるわけです。  自衛隊がそういう有事に対して行動を起こす、発動する、これはもとより部隊だけの判断でやるべきものではない。わが国の憲法なりあるいは自衛隊法のたてまえ、すべての前提はそこにあると思いますから、これは総理大臣、内閣の判断に基づいてそれに対応する行動を起こす、こういうことだろうと思います。
  69. 横山利秋

    横山委員 防衛庁に伺いますが、七十六条は瑕瑾がないというお話でしたが、もう一遍お伺いしますが、七十六条というものの防衛出動を発動する条件として外部からの武力攻撃を前提としているが、この場合、外部からの武力攻撃のおそれのある場合も含めていますね。とすれば、防衛出動に至るまでの防衛庁、国防会議、閣議、国会承認、一連の手続の時間は、しようと思えばあり得る、十分ある、そういうふうに解釈をしていらっしゃるでしょうか。
  70. 鴨田宗一

    鴨田委員長 防衛庁、帰ったか。
  71. 横山利秋

    横山委員 帰っちゃったか。もう一遍呼んでくれよ。けしからぬ。  それでは法務大臣に引き続き伺いますが、この有事ということが単に国防上の問題だけではないということは十分想像できるわけであります。  ここに、私が各国の状況をも調べてみたのですけれども、これによりますと、西ドイツを例にとってみますと、西ドイツの基本法の改正法律、いわゆる非常事態条項、この改正の経緯がいろいろございますけれども、しかしそれは省略するといたしましても、いわゆる有事立法、防衛のための有事立法というものが、むしろ軍事防衛という力点よりもそれが産業、交通、市民、経済、食糧それから付随建設とあらゆる面にわたっているわけであります。そして、国民の権利義務ということにどうしてもそれが影響をせざるを得ないことはこれはもう常識なんであります。ですから、この西ドイツのいわゆる非常事態条項の中には服務義務というものがある。それは兵役義務を負う者、兵役義務を負わない者、また女子、そういうものについても招集の問題、非軍事の衛生制度及び治療の問題、それから防衛事態前の時期における特別の知識、熟練が必要であるものの問題等々、きわめて多岐にわたっているわけであります。そしてまた、基本権の制限にも触れています。もちろんこれは基本権がいかなる場合でもその本質的内容を侵害されてはならないとくぎを刺していますけれども、やはり役務を供給する国民の義務というものが逐一うたわれていくわけでありますから、どうしても基本的人権というものに影響をせざるを得ない。いまのお話によりますと、防衛庁はまだ各省に相談をしていませんけれども、自分のところで純軍事、純粋な軍事的な立場と、それから各省に影響のありますものと両方あるけれども、各省に影響のありますものについてはいつかは相談をすることになるでしょう、こういういまの答弁でございました。こういう点について、法務大臣としては、基本的な国民の権利というものを守る立場からどうお考えでございますか。
  72. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 残念ながら私は西ドイツの緊急事態に関する法律を承知いたしておりませんが、まだ具体的にどういう措置、どういう点を検討しておく必要があるかということを全然こちらで問題にしているわけではございませんので、横山さんの御質問に答えられるかどうかわかりませんが、問題は、先ほども申し上げましたように、国土の安全と国民の生命財産と国民の安全を守る措置、こういう事態が起こらないことを希望するわけでございますけれども、そういう非常事態といいますか緊急事態が起こった場合にどうするか、どうあるべきかということはやはり研究しておく必要があるのだろうと私も思います。思いますが、それが、いま申し上げましたように、国土を防衛し、国民の生命財産、安全を守るためにどういう措置をとるか、こういうことはまだまだよほど周到に検討しなければ、どういうふうにするということはなかなか出ないのではないかと思います。おっしゃるように、そういう措置をとる、国土防衛、国民の生命財産を守る、これはまさに国民の権利義務を生かして国民を安全にするということが大目標であろうと思いますから、そういう点に欠けてはならないものである、かように現在考えておるわけでございます。
  73. 横山利秋

    横山委員 たとえば、私は、現行法で何ら差し支えない、自衛隊法の七十六条で差し支えないという立場をとるのですけれども、われわれはここで軍事論を展開するつもりは必ずしもないのです。ないけれども、しかし、有事立法の本質というものは、軍事よりもむしろ国民生活、権利、国内の政治体制すべてに影響するのですから、その角度から質問をするのですが、その前提として、たとえば盧溝橋、それからハワイの奇襲攻撃、それからミグ25の日本への飛行、この三つをひとつ考えてみたいと思います。盧溝橋は、歴史が物語るように、明らかにこれは出先の日本軍の司令官の挑戦に始まって、それに中央の軍部が引きずられていったシナ事変の勃発であります。ハワイの奇襲攻撃は、一体宣戦布告をした後であるかそれとも前であるか議論はあるけれども、まず前ではなかろうかと言われております。それからミグ25の場合は、防衛庁がてんやわんやの大騒ぎをしたのですけれども、あのミグ25が函館へ着陸した際に、少なくともこれが亡命だというふうに理解をすることができなかったわけですね。したがって、防衛庁としては、てんやわんやの大騒ぎをしたけれども、これが奇襲攻撃だというふうに判断をすることが可能なんでしょうか、そう思いますと、有事ということをわれわれが議論をしていく過程というものは、われわれがハワイ攻撃を受ける、あるいは盧溝橋のような事態を受ける、われわれがミグ25をもう一遍再現される場合に、間髪を入れずにそれに対して対処する、これが有事の論法なんではありますまいか。その点について私は非常に危険なものを感ずるわけです。現行法の自衛隊法が一体どこが悪いのか。現在の法律がどこが悪いのか。これは巧妙な有事立法論理ということになるのではないか。むしろ人権とかあるいは法秩序とかそういう点があなたの職責なんでありますから、そういう有事立法の論議が閣議に起こった場合には、あなたとしてはむしろ国民の権利義務、国家のありようについて、消極的な発言をなさって、それはいかがなものかとおっしゃるべき立場にあるのではないか、そう思うのです。瀬戸山さんはとかくタカ派だと言われています。何かといえば強気の発言をされる方ですが、あなたの基本的な職責というものは、あなたの所信表明にも、いかなる場合にでも、検察陣への訓示の場合にも出てまいりますが、法秩序というもの、それから人権の尊重というもの、そして何か事が起こった場合周章ろうばいするようなことはせずにきちんとしておるということ、そういう立場から言ってこの有事立法問題について少し法務大臣として鮮明になさる必要があるのではないか、そう思いますが、どうですか。
  74. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 御忠告いただきましてありがとうございますが、まだまだ問題が、有事立法ということでないのですけれども、有事についての検討をしておくということだけでありまして、何がどういうものであるか全然私ども想像もしておりません、具体的に提示された問題でもありませんから。申し上げるまでもなく憲法の諸原則に従ってそれに反するような立法あるいは措置ができるはずはないわけでございますから、そういう点は十分に、そういうものがもし具体化されるときには職責を果たさなければならない、かように考えておるわけでございます。
  75. 横山利秋

    横山委員 私どもは学者ではないのです。私どもは評論家でもないのです。お互いに政治の責任を持っておる、そういう点では、この有事立法の持つ政治的な意味、国民に与える政治的な影響、そしてその研究が始まることによって起こり得べき諸問題、そういう問題についての予測と洞察力と決断がなくてはお互いに政治家の職務は務まらぬと思うのです。有事立法が何であるかわからない。それはあなたもそうだろうし、私もいろんな資料で勉強している最中ですから、学問的には、定義的には定かではありません。ありませんが、お互いにこうして国会の舞台を通じて論争する上は、政治家としての責任を持たなければならない。予測、洞察力、それが国民に与えるべき心理的影響、そういうものが問題だと思いませんか。その意味で私は質問しているし、あなたもお答えを願わなければならぬと思うのです。  私どもが考える有事立法というものが日本の政治を右へ持っていくだろう、そして着々とこれが総理大臣の指示によって公然として非常の場合における——ドイツの例を引きますと、交通確保法、市民自衛法、経済確保法、食糧確保法、防護建設法、役務の提供義務、基本権の制限、軍隊出動、こういうようなところへ検討の対象が向いていくであろうということは、当然にわれわれは予測しなければならぬ。そうでなければ、自衛隊の行動だけを規制する、あるいは自衛隊の行動がしやすいようにするというだけでは、こんなものは有事立法の問題ではない。なるほどそれも大事なことであるけれども、日本全体がいわゆる有事の際にどう活動するのかということになりますと、当然のことのようにこのジャンルへすべての手が、研究が、あるいは立法活動が行くのではないか、そう予測をお互いにしなければならぬと思うのです。その点で私は先ほど言ったように、あなたの職責上そういうことについていかがなものかと言って聞いておるのですよ。  観点を変えてお伺いしますが、ダッカのハイジャックの問題をもう一遍考えなければなりません。なぜならば、それは超法規的な措置であったからであります。いわゆる憲法だとか法律を超越した措置である。それが今回限りだということでわれわれは措置せざるを得ませんでした。しかし、ずいぶんあれは悪例だったとお互いに反省をしておるはずであります。二度と再びこういうことがあってはならぬ、こういうやり方はいかぬ、あなたは所信表明で断固とした態度でそれを表明されました。このダッカの前例というものが栗栖発言に直接には関連がありませんけれども、しかし超憲法的、超法規的な前例はわれわれの目の前にあるではないかということを言われておるような気がするわけであります。その関連についてあなたはどういうふうにお考えになっているでしょうか。  私は、ダッカの超法規的な問題については、栗栖さんの場合と違う場合があると思う。それは、一つは閣議でそれを決めたということですね。前線の司令官がやることではなくて、閣議で決めたということ。その次に、国会に正式に報告をきちんとされたということなんであります。これは事が済んでからの報告でありますから、本来ならば直ちに国会を開いて、国会にこういうやり方で了承を求めるという措置がとらるべきだと思うのでありますが、一応の正式の手順はとられたと私は思うのであります。有事の際にも考えなければならぬ重要な原則があると思うのであります。そうお考えになりませんか。
  76. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 ダッカの例を引いてのお話でございますが、私は、人間の歴史といいますか、人間の知恵といいますか、あるいは政治の進め方、こういうものはやはり経験を積み上げて、こういうことは失敗だ、二度と再び失敗を繰り返して国家なり国民に損害を与えてはならぬ、こういう一つの過程というものがあるのも、これは残念ながらやむを得ない場合があると思います。これは日本だけじゃなくてよその国にもあることでございますが、ダッカのようなああいう超法規的な、二回も繰り返したのですけれども、これでは将来逆に全体に対する危険が及ぶであろう、これはとるべき道じゃないという考え方で今日おるわけでございます。いわゆる国土防衛といいますか、有事立法についてもやはりそういう観点から、これも苦い経験をわれわれ積んでおるわけでございますから、これもやはり経験を生かして、再び過去に苦い経験をしたようなことのないようにと、これを考えて、それは現在の憲法のたてまえだろうと思いますが、やはり根本はそういう趣旨で物を考え、進めなければならぬ、かようなことであろうと思っております。
  77. 横山利秋

    横山委員 参考のために大臣、西ドイツが基本法改正のいわゆる非常事態条項を定めたときの論争の中におけるコンセンサスに三つの原則があるわけであります。一つは、あくまで立法府がこれを行う、国会がこれを処置する。それから二つ目は、三権分立をいささかも揺るがせないということである。それから三つ目は、人権の尊重やスト権あるいは報道、言論、結社の自由を侵さない。まあ簡潔に御紹介をしましたけれども、この三つが基本的な理念になっておりますが、この点については国務大臣としてあなたも御賛成であろうと思いますが、いかがですか。
  78. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 そういう問題点検討しておるわけではございませんが、先ほども申し上げましたように、われわれは苦い経験の後で現行憲法を制定して、その憲法の精神に基づいて国民の幸福を図ろう、これがあらゆる政治立法の基準であろうと思います。  おっしゃるように、当然にそういう原則を守った今後の処置をとるべきである、かように考えております。
  79. 横山利秋

    横山委員 よくわかりませんが、私が紹介した三つの原則は賛成であるという意味ですか。
  80. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 横山さんがおっしゃる原則は、すべてわが国の憲法に盛られておることでありますから、私は概括的に憲法の精神と申し上げたわけでございます。
  81. 横山利秋

    横山委員 総理大臣が三月十五日に参議院の予算委員会でお答えになっておるのですけれども「立法が必要だとか、そういうようなことにつきましては常日ごろ検討しておかなければならぬことである、そういうようなことで、もう有事に際してあらゆる面で備えをあらかじめなしておくということは当然のことである、」こういうことに敷衍して政府委員の竹岡君が言っておりますことが三つあります。「まず第一に考えられるのは多くの国民の避難誘導措置があります。あるいは自衛隊に対しまして、そういう場合には自衛隊がまず出て行って戦えという国民からの強い叱咤激励があろうと思います。そういう場合におきます自衛隊の活動をある程度優先ならしめることも必要でなかろうか、あるいは自衛隊に対しまして多くの国民が協力されると思いますが、そういう協力体制が現在の法令で果たして可能かどうか、こういった点を基本的なものにいたしまして、われわれ現在勉強中のところでございます。」つまり避難という問題を先に取り上げておりますのがまことに巧妙な説明でありますが、避難、それから自衛隊の活動優先、また第三番目に自衛隊への活動協力体制、非常に軍事的な立場が優先をしております。これは遠慮しながらそう言っておるわけでありますが、しかし、最後に「ただし、これは多くは他の官庁の所管の法制等々にも関係がございますので、防衛庁といたしましては現在国民が差し迫った危機感を持っておるわけではございませんので、」「静かにゆっくりと勉強していきたいと思います。もし、いざというときに防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進めていくつもりであります。」つまり、防衛庁は総理大臣のお許しを得てあらゆることについて勉強を始めるということなんですね。それで、いざという場合にはよく勉強したとほめられるようにしたい。先ほどの話では、自分たちだけでどんどんやっていって、必要があれば他の省庁の意見も聞いて体制をつくるというわけでありますから、西ドイツの例を引くまでもなく、防衛庁は単に軍事問題ばかりでなくて、国内のあらゆる省庁に関係いたします全般の問題を有事立法研究の名のもとにおいてすべて調査研究対策を立案をする、こういうことになるわけですね。私は恐ろしいことだと思いますが、あなたは当然なことだと思いますか。
  82. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 重ねて申し上げますが、まだ内容が表に出ておる課題ではございません。問題は、見解が違うところがあるのかもしれませんけれども、自衛隊、防衛庁の仕事というものは、国民の安全と生活を守るために活動するわけでございますから、それに必要な措置がどうあるべきか、有効に国民の生命、身体、財産あるいは国土を守る、こういうためにはどうあるべきか、どういう措置をとるべきか、これを研究して備えをしておくということは私はあってしかるべきじゃないか。ただ飾り物みたいに自衛隊、防衛庁があるというだけのものじゃない、私はかような考えを持っております。
  83. 横山利秋

    横山委員 この問題の最後に私の意見を含めてあなたに伺いたいと思うのですが、防衛庁長官自身がどこかで言っておりますが、どんなにいまの国力で自衛力を高めたところで日本が独力で守れるはずがない、軍事力だけで日本が他国の軍事力に対応できるわけではない、だから安保が必要なんだ、こういう論理、安保体制の立場なのであります。恐らく瀬戸山さんもそうだろうと思います。いまここで安保体制について論争するつもりはありませんけれども、アメリカが、安保条約があるから日本がいざという場合にとことんまで守るとは、朝鮮の例を引くまでもなく、あるいはベトナムの例を引くまでもなく、そのことがいわゆる有事——突発的に起こる核時代のときに、軍事力優先で有事を考えるということに基本的な誤りがあると私は思っております。いまの平和憲法のもとで軍事力を中心に国の防衛を考える、そして軍事力を中心にして有事を考えるということがどんなに危険なものか、盧溝橋やハワイやあるいはミグ25や、われわれのさまざまな経験を考えますと、どんなに危険なものかということは、私は国民の常識ではないか。むしろその有事がないように、有事という問題がないようにするということの方が政治家として最も基本的な問題ではないか、そういうふうに考えるわけであります。  小谷さん、出席したそうですから、もう一遍だめ押しのようでありますけれども少しだけ聞いておきますが、先ほど私は自衛隊法の七十六条をお伺いをしたんですけれども、七十六条というのは防衛出動を発動する条件として外部からの武力攻撃を前提としていますが、この場合、外部からの武力攻撃のおそれのある場合も含めているんだから、防衛出動に至るまでの防衛庁、国防会議、閣議、国会承認など一連の手続の時間があるというふうに私は考えるのですが、どうですか。
  84. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 防衛庁からお答えの前に、横山さんが先ほどお話しになりましたことについて申し上げておきます。  もちろんわが国は、軍事力だけという言葉を使われましたけれども、それに重点を置いて国家、国民を守るなんという政治は現在やっておらないつもりでございます。そういうことをしたら不幸になる。先ほど申し上げましたけれども、われわれは過去の体験をやはり将来にわたって生かして国や国民の幸せを図る、これが政治の大原則であろうというように思います。現在もそういう意味において、軍事力でわが国をよくしよう、そういう考えでなくて、そういう事態に至らないために全力を挙げる、これが政治の大前提である。現在、日中条約でいろいろ言われておりますが、御承知のとおり、いわゆる全方位外交なんて言ってどこの国とでも争いを起こさないという大前提に従って、それをもって基本としてわれわれは世界の国々とつき合いをする、争いを起こさない、これが大前提であるということは横山さんも御理解いただいていると思います。  ただ、そういう中でも現在の世界情勢を見ますると、御承知のようにどこかで何かの争いが遺憾ながら起こっている。そういうことに全然関心を持たないで国家の政治をするということはいかがであろうか、そういう意味で最小限度の、何かの場合に備えるという意味で、いま自衛隊、防衛庁というものを持っておる、これは意見の分かれるところでありますけれども。しかし、それにしてもそんなことで何か本当に起こったときにとてもじゃないが間に合いそうにない。これも意見が分かれておりますけれども、日米安保条約によってそういう場合にはできればアメリカの支援を得たい、こういうことでありまして、決して軍事力によって国家を守り、国民の幸福をつくり上げよう、そういう考えでないことは重ねて申し上げておきますが、御理解をいただいておきたいと思います。
  85. 小谷久

    ○小谷説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように七十六条に定めてございます手続並びに国防会議付議等の時間を考えますと、若干の時間がかかると思います。ただ、特に緊急の必要がある場合には、七十六条のただし書きで、国会の承認を得ないで総理大臣が出動を命ずる場合がありますので、この点につきましては時間の短縮ということは一応考えられます。
  86. 横山利秋

    横山委員 小谷さん、あなたの来る前に西ドイツの例を引いたのですが、要するに防衛庁が行おうとしておるのは、国会答弁によりますと、国民の避難、自衛隊の活動優先、国民の自衛隊に対する協力体制、これは三月に竹岡政府委員が答えておるところですが、そういう体制を研究する、そして多くは他の官庁の所管の法制にも関係があるから、それもゆっくり勉強する、もしいざという場合には防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進める、こういうふうな答弁がある。私が先ほどからるる大臣に聞いておったのは、それは確かにそういうあなた方の考える有事立法でいけば、きわめて広範に、軍事力の発動の問題だけでなくて、国民の生活、経済すべてにわたるのであろう。西ドイツの例を引けば、交通確保法、市民自衛法、経済確保法、食糧確保法、防護建設法、それから必然的に人権に関係する役務提供法、そういう方向すべてを含むでしょうね、こう言って質問をしておったのですが、そういうふうに理解していいんですか。
  87. 小谷久

    ○小谷説明員 昨年の八月以降私どもが始めております勉強は、有事の際と申しましてもあくまでも現行憲法の範囲内ということが一つ。それから、日本が侵略されるという事態には国民の大多数なり関係官公署の協力は得られるだろうという一応の前提のもとに勉強しております。したがいまして、諸外国では見られるかもしれませんけれども、わが国の憲法が保障しておりますような基本的人権の不当な弾圧とか、そのたぐいのわが国の憲法上許されないことは私どもみじんも考えておりません。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  88. 横山利秋

    横山委員 それでは答弁にならないのです。憲法が保障しておる人権をどこまで制限するのかどうかという点については、お互いにその場になって争いがあると思うけれども、しかしあなた方が考える意味における有事立法は、単に軍事のみならず経済、市民生活、交通、食糧の万般にわたるのであろうな、こう言っておるのですよ。
  89. 小谷久

    ○小谷説明員 勉強の範囲といたしまして特にそういった範囲の意味での限定はかけておりませんけれども、私どもが昨年から始めましていままでいたしておる限りでは、人権にかかわるような問題あるいは憲法にかかわるような問題がいまのところ全く出ておりませんので、今後の過程でまた議論はあるかもしれませんけれども、それもとにかく憲法の範囲内で勉強していくというふうに考えております。
  90. 横山利秋

    横山委員 答弁になりませんよ。あなたわざと私の質問をそらしておるのですか。それは人権に影響があるかないかはその場の内容でなければわかるまい。私どもはなるだろうと思うが、あなたの方はならないだろうと言っている。しかし、その調査の範囲というのは単に軍事のみならず、日本における経済、生活から食糧から交通から万般にわたるであろうねと言っておるのです。純軍事的なものであるか、国民経済からすべてにもわたっているのかと言っているのです。
  91. 小谷久

    ○小谷説明員 私どもの勉強は、自衛隊の任務遂行を中心考えまして、自衛隊が任務を遂行するに当たって現行法制では支障があるのではないかとか、あるいはいまはないけれどもこういう法制が必要ではないかというような観点検討を進めておりますので、国全体の、さっき御指摘になりましたような西ドイツの例にありますような経済確保法とか水確保法とか食糧確保法の類の勉強の必要性が果たして出てくるかどうか、ただいまの時点では私何とも申し上げかねます。いまのところ私どもは自衛隊の任務遂行を中心に勉強しておるということであります。
  92. 横山利秋

    横山委員 わざとそういう点で逃げていらっしゃるかもしれぬが、自衛隊が任務を本当に遂行しようとするならば、たとえば戦争を仮定しましょうか。非常な攻撃がありあるいはそれに対する報復攻撃を仮定しましょうか。その自衛隊の任務を十二分にできるようにしようとするならば、自衛隊の出動が交通が優先されなければならぬし、それによって一時壊滅的打撃を受けた都市に対する食糧の供給はどうするかという問題が出てくるだろうし、あるいは救援隊はどうするかということにもなるだろうし、自衛隊だけでは手が足らないから国民救援隊がどうあるべきかということにもなるだろうし、あなたは自衛隊の仕事がやりやすいようにということだけであとは逃げていらっしゃるのだけれども、自衛隊の仕事がやりやすいようにということの意味というものは深遠なるものがある、私はそう思うのですよ。お答えにならなければそれでもいいですけれどもね。だから、われわれは、先ほども大臣に言ったのですが学者でないのですから、政治家ですからね、予測と判断とを的確に把握しなければならぬ。どこまでの範囲にそれがいくのであろうかという点を、最大の範囲、最小の範囲というふうに判断をせざるを得ない。勉強だと言うならば、自由に勉強をなさるのだそうですから、この竹岡政府委員説明によれば「いざというときに防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進めていく」というのだから、それだけの覚悟だったら当然のことだと思うのですが、御返事なさいますか、もういいですか。
  93. 小谷久

    ○小谷説明員 考え方の基本は、私ども現行の自衛隊法ならば自衛隊法が、有事の際の一応の法制もほとんど整っておるけれどもこれで十分に任務が果たせるかどうかをなおよく勉強しようという考え方でございますので、何かイメージとして先生のお考えのものがかなり広範に私、受けとめられますので、私どもの考え方、もちろん他省庁所管の法令の勉強もいたしておるわけでありますけれども、現行の自隊法が一応のものができておるというような感じで受けとめた上での勉強というふうにおくみ取り願えますれば、おおよその私どもの考えております範囲というのが御理解いただけるのではないかと考えます。
  94. 横山利秋

    横山委員 大臣に、先ほどあなたがお答えになったことについて少し反復をしておきたいと思うのですけれども、私はモンゴル共和国を初め各国を回ってきましてつくづく思いますが、川一つ向こうが他国である、そして国境線がどこだかよくわからないようなところすら草原の中にはあるわけであります。ベトナムでも同じ、東南アジアでも同じことなんであります。あるいはまたアフリカで起こった事例が世界でもいまあるからというふうにおっしゃっておる。しかし日本は、言うまでもありませんが、四面海に囲まれておる国なんであります。日本における有事と、それからあなたが例をお引きになったような他国の有事とは地理的環境が違う。第二番目に、われわれは世界で初めての平和憲法を持っておる。これはもう類例のない憲法であって、憲法解釈にもいろいろあろうけれども、世界のどこの国へ行っても、私どもの国は戦争はいたしませんとはっきり言える国である。そしてまたわれわれは原爆を二度ならずに三度も受けた国である。この点についてもわれわれがいわゆる平和に徹するということが十分に言える国である。一体、理論の世界であればともかく、現実の世界で本当にある日突如として、目が覚めたらよその国が奇襲攻撃をしてきたとか、そんなことがわれわれ現実政治をやっておる者として考えられることであろうか。それもまた万に一つ、億に一つ、兆に一つ、理論の世界としてないわけではないということも言い得られるかもしれませんけれども、億に一つ、兆に一つのことが中心になりつつあるような雰囲気はわれわれとしてはどうしてもがまんのならぬことであって、本末転倒のことではないか。むしろいまあなたが私の言葉に対して言われたように、基本的にはあり得べからざることよりもあり得べきこと、つまり平和に徹し、憲法に徹し、そういうことがないような事態ということに全力を注ぐべきであって、有事立法をするということが、国内はもとより他国に与える——いま外務大臣、中国に行っていらっしゃるのですが、いわゆる覇権の問題についても、中国のみならず日本も覇権を求めないということをこの際明白にするというのであるならば、その日本でいま防衛庁が中心になって有事立法の検討にかかるということの方がむしろおかしなことではないか、時宜に適さざることではないか、そう考えますが、どう思いますか。
  95. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 これは私の人間としての考えも含めてでございますが、わが国は断じて戦争をしてはならない国だと私も思っております。そういうことで、過去はいざ知らず、現在の世界情勢、世界の関係、わが国の置かれておる地位、立場、こういうことから考えますと、よその国と戦いを交えて国民の幸せ、国が成り立っていくということは断じてないと私は思っておるのです。また、そういう考え方でわが国の政治も進めるべきだ。平和に徹するということはいまから始まったのじゃなくて、戦後みんながそういう考え方で政治をしておることは、横山さんも御理解いただいておると思います。なるほど幸いにしてわが国は四面海でありますから、国境を接しておる国々よりはもっとその理想を達成しやすい立場にある。さればといって、世界は最近非常に狭くなりました。そういう中でそういうことを願うわけでありまするし、あってはならないことでありますが、全部手放しでいいかというと、それは手放しでは安心ができないじゃないか、こういう情勢もある。それに対しての備えというものは国をなしておる以上はあるべきである。これは立場の違った見解もありますけれども、われわれはそういう立場である。日本が軍事力をもってよその国と争いを始めようなんて、そういうことを考えておる人は一人もいないし、そういうことをしたら日本はだめになる、そういう国柄であるという考え方を前提にして物を進める、政治を進める、これは私のみならず日本全国民考え方であろうと私は思っております。
  96. 横山利秋

    横山委員 大事な点で意見が違うようでありますが、次の質問に移ります。余り時間がありませんが、サラ金の問題であります。  サラ金の問題を私が大蔵委員会、予算委員会それから本委員会で数回取り上げて、大臣を初め各同僚委員もよく御存じのところだと思うのであります。五十一年の春、予算委員会で大平大蔵大臣質問いたしましたところ、五十一年じゅうに何らかの措置をとるという回答をいただきました。ところが、その五十一年を越えて何ら政府としてとるべき姿がありませんでしたので、私は内閣総理大臣質問主意書を提出いたしました。五十二年であります。ようやく政府は各省庁の協議機関を設置すると回答がありました。しかるところ、この問題につても五十二年中見るべきものが皆無であったわけであります。そこで、本法務委員会で瀬戸山法務大臣に強く要望いたしましたところ、あなたは閣議でこの問題の措置を要望されました。承れば、二回にわたって閣議でおっしゃったそうであります。閣議がこれを了承して、その各省庁の審議を促進するということであったそうでありますが、承れば月に一回小田原評定を済ませて今日に至っておるわけであります。いまサラ金の問題を規制しなければいかぬということは言葉を多く尽くしませんが、天の声、地の声、人の声になっております。余りの政府の渋滞、余りの政府の無誠意に対しまして、われわれとしては現行法、議員提案でございますけれども、何とかして現実に効果的な措置をやろうというわけで、私を初め有志がこの提案をいたしました。これはもうすでに政府にも出してあるわけでありますが、それをもってしても、この問題に対する政府の取り組みは全く不誠意きわまるものだと私は痛感しておるわけであります。  ところが、これがいま新聞にいろいろな角度で報道され、あなた自身も全国庶民金融業協会の顧問なるをもって非難をされるということに相なりました。私も、申すまでもなく顧問を仰せつかっておるわけでありますが、私どもといたしましてはこの現行法、なるほど共産党は棄権されましたが、反対はされなかったのであります。そして、議員立法が認めた規制団体として全金運、各県の協会が設立され、たび重なる警察の強硬なやり方で悪質金融業者が処分され、一方では私どもの顧問各位の指導もありまして、あるいはまた信用組合、相互銀行、労働金庫等あるいはまたアブコの競争によりまして、当時二十八銭でありましたのが二十五銭となり、いまは日歩二十銭台、低きに至っては日歩十三銭のものすら出てくる状況であります。これは、現行法及び国会内外の国民世論の力が効果があったものと私は思っておるわけであります。  しかしながら、この現行法が自主規制の団体でございますので、御存じのように組織率わずか二割、あとの八割くらいはアウトサイダーでありまして、いわゆる暴力金融だとか超高利金融というものは、ほとんどそのアウトサイダーの中から出ておるわけであります。アウトサイダーを規制する権限は全金連及び協会にはございませんし、また現行法をもってしては地方自治体もこれを指導する権限も罰則も、行政能力としても予算としてもないわけです。私は、一部の新聞がそういう実態、観点を間違えて、そういう自主規制をしておる団体を指導する立場の顧問をも何か非難するがごとき報道をし、それでいてその新聞が協会や、はなはだしきに至っては悪質なサラ金業者の広告を載せておるというのはいかがなものかと思うのでありますが、いまそれを言うつもりはございません。  きょうここへ法務省を初め一庁五省の人においで願ったわけでありますが、いまに至っても政府が責任を持ってこのサラ金問題について全力を挙げて処理しようとしていない点について、私は本当にはらわたの煮え返るような憤りすらいま持っておるわけであります。きょう御出席願いました、法務省はもちろんでありますが、大蔵省、経済企画庁、警察庁、自治省等の諸官庁に一々答弁をしていただいても仕方がないのでありますが、ともあれ、政府としてはサラ金問題について一体どうなさるおつもりであるか。われわれ国会議員の有志がそういう素朴な気持ちでやっておることについて、一部の新聞が何か業界癒着のごとき扱いをしておることについて、政府は、何らおれに関係のないことだというような顔をして、知らぬ顔をしていつまでも放置するつもりであるかどうか。私は一国会議員として、約十年になると思うのですが、私が一番最初取り上げましたのは、名古屋におきまして中小企業がつぶれたときに、幾つも幾つもそれを中へ入って体験をして、いわゆる町の金融業者というものがどんな超高利でやっておるかという体験をして、何とかしなければならぬと思ったのが私の最初の導火線でございました。その前は、こういうような町の庶民金融業者は太平洋の中へでも捨ててしまえばいい、全部やめさせてしまえばいい、国民金融公庫や信用組合、信用金庫があればそれでいいんだと思っておりましたが、さて実態を調べてみますと、その当時でも十万ぐらいの届け出がございましたか、どんなことを言ったって、一定の経済社会の中で一定の仕事をしておる、需要がある。当時はサラ金は余りございません。不動産金融やあるいは手形割引でございましたが、そういうものが一定の役割りをしておる現実に政治家として目を覆うことができませんから、それならば、現実にわれわれが町の中小企業をめんどう見ておる政治家としてどうあればいいかというのが現行法をつくる機縁になったわけであります。  現行法は私は成功したと思っております。これによって全国庶民金融業連合会ができ、各県の協会ができ、その自主規制や勉強やあるいは各役所と提携をして教育訓練をやっておりますこの実績というものは、私は高く評価しています。残念ながら、協会に入ったら損、アウトサイダーにおったら得、規制も受けない、こういうことでございますので、アウトサイダーが続々と悪いことをする、それでは現行法はもうだめだというふうに判断をして今日になっておるわけであります。  私は自分がやっていることについて自信と確信を持ち、いささかも恥ずることはない。それは大臣が、この間参議院で、顧問をやっているのが何が悪いのだとおっしゃいましたが、私もまた同感で、ますます勇気を持ってサラ金規制に全力を挙げようと思っています。私も、今日まで業界法をたくさんつくったし、同僚委員とともに推進をしたことがございますが、私どもが立案をして各党で話し合っておりますこの法案というものは、一文も金融をつけてやろうという気持ちもない、一銭も税金をまけてやろうという条項はありません。すべてこれ、いかにして現実的、効果的な規制が行えるかということにかかっておるわけであります。それは人によって、もっと厳しく、許可制にしろという意見もあるでしょう。それはそれでいいのです。私は現実効果的なものは、厳しい登録制がいいと思っておるわけでありますが、その意見の相違というものはまあいいと思います。しかしながら、政府が本来やるべきことを怠慢に、じんぜん国会の約束、内閣総理大臣からの答弁書、そういうものをも一片の作文にしておいて、そして今日の事態を放置しておるという政府のあり様について、だれが一体責任を持ってくれるのだ。ここで私はあなたにも何回も言いました。あなたも閣議でも言ってくれました。しかしながらその結果は、結局今日に至るまで何にもないではありませんか。私は、法務大臣がこの法案の責任者だと必ずしも思っているわけではありません。しかし、きょうおいでくださった各省庁の皆さんが、それぞれ所管大臣に御報告を願いたい。そしてもうここまで来れば、私どもさらに努力はするものであるけれども、政府が責任を持って次の国会にこのサラ金規制の法案を提出しなければならぬ、提出する義務がある、国会で約束したことだから提出する義務がある。私どもが考えております法案が適当でないならば、十分お直しになるのは結構だ、幾らでも直していただいて結構だ。しかし、いまいろいろととかくのゆえなき批判や何かがあるときに、政府がまず一番最初にやるべきことをやらないから、私どもが見るに見かねておることであって、政府が責任を持つべきだ、そう痛感をするわけであります。  ここで各省庁と質疑応答をしたところで御弁解を聞くだけであります。こういうことをやっておりますと御弁解なさるだけで、結局何の足しにもならぬと私は思いますから、長々と私の意見を含めて言いました。ここにおいでになる中では瀬戸山さんが一番、何の効果もなかったと言ったら大変失礼でありますけれども、閣議で二回もおっしゃった方でありますから、あなたが閣議の中で三たびこの問題について政府提案になるようになさる責任があると思いますが、いかがでございますか。
  97. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 サラ金問題については、横山さんを初め各氏が非常に熱心に御検討いただいておることに私、深い敬意を表しております。  私は、この問題はいわゆる社会の需要に応じてできたものであって、半面また、実態にはいろいろな弊害がある。私、新聞報道を見るたびに率直に申し上げて心を痛めておるわけでございます。こういうものを見過ごしておってはならない、こういう気持ちで現在いっぱいでございますが、政府部内でもいろいろ検討はいたしております。放置しておるわけじゃありませんけれども、これが余りに進まないことを、率直に言って非常に遺憾に思っておるのです。  私は前にも申し上げましたが、昭和二十七年にいわゆる不動産業のための法律を議員立法でやった責任者でございますが、こういう社会現象にあらわれておるのを統一して法律にして、これは十数回改正をして今日に至っておりますが、まだまだ弊害が全部なくなったとは言えない状況でございますけれども、しかし非常に向上してきたことは事実でございます。それに非常に似ておる現象であると思っております。でありますから、各方面からもいろいろな案が出されておりますが、これは何としてでも政府としては責任を持ってやるべきものだと考えております。  この機会でありますから、私からもこれは横山さんにお願いする。各省庁きょう見えておりますから、それぞれの省庁の考え方をこの際、この委員会で披瀝をしてもらいたい、かように考えております。
  98. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 サラ金問題については私ども初め関係省庁がいろいろ頭を痛め、苦心しておるところでありますが、先般の通常国会が終わりました直後の六月の最後の週だったと私記憶しておりますが、官房長官もおいでになっておりましたが、関係省の局長が集まりましてフリートーキングをする機会がございました。その際、私からも、やはり何らかの規制措置を必要とすることはもう否定できないのであるから、何かの措置を講じて立法化を図るべきではないかというような意見を、大臣の御意思も受けまして申したわけでございます。それを中心にいろいろ意見を交換したのですが、やはり一番の問題点はこういうことであったようでございます。許可制ないし登録制にしてきちんとした規制をしていくということが望ましいということにおきましてはほとんど異論がないのです。ところが問題は、事柄の性質上、主管省になられる大蔵省、それから実際に規制、監督を行われる地方公共団体を所管しておられる自治省、この関係が一番問題であったようでございまして、要するに、法律ができても、率直に言いましてこれを実行するだけの人手がない。したがって、それらの両省のお立場からしますと、実行できそうにない立法というものはそれぞれの省の役人の立場として非常にむずかしい点がある、こういうことでございました。  そこで、一つ考え方として私も申し上げたのですけれども、登録制あるいは許可制にして一々審査をし、四六時中監督をするというようなことが、当面の段階では人手の関係、機構の関係等からして無理だとすれば、たとえばいま一番弊害が感ぜられております貸付条件の明示義務でありますとか、あるいは返済に関する領収証等の給付義務でありますとか、そういった問題につきましてはなお当面の最小限度の問題として検討の余地があるのじゃないか。地方公共団体も非常にお忙しいでしょうけれども、たとえば半年に一遍業者の店舗へ参りまして、そこに貸付条件が明示されておるかどうかを見る、あるいは必要な領収証書その他の備えつけがあるかどうかを見るというぐらいのことはおできにならないのだろうかというようなことを申し上げたりして率直な意見を交換したわけでございます。結局、その場ではもちろん結論が出ませんでしたけれども、官房長官を初め、何とか前向きでできる範囲のことをまず考えていこうじゃないかというような空気でございました。なお、従来から一体どこが主管省であるかということをいろいろ、率直に言うとおっつけっこみたいなところがあったわけでございますけれども、やはり事柄の性質上大蔵省が中心になって取り計らわれるべきものではなかろうかというのも大方のそのときの空気であったように思います。  そんな状況でございまして、いわゆる役人の立場としては、実行不可能な法律をつくれと言われても弱ったものだというようなところが率直に言って関係者考え方のように私は受け取ったわけでございますが、今後ともできる範囲ででもいいから、何もしないよりは何かした方がいいのじゃないかと思いますので、私も瀬戸山大臣の御趣旨を体しましてそういった方向で努力をしていきたい、かように思っております。
  99. 吉居時哉

    吉居説明員 大蔵省の考え方を一言申させていただきますが、先ほど先生からお話がありましたように、先生からの質問主意書の線も十分体しまして、昨年来関係省庁による連絡協議の場が持たれておるところでございます。ただいま先生から遅々として進まないじゃないかというおしかりを受けたわけでございますが、実は、先生十分御承知のように、そのサラ金を含む貸金業者の問題は非常に多岐広範にわたっておりまして、たとえば高金利の問題あるいは取り締まりの問題あるいは庶民金融のあり方等々、たくさんの問題が実はあるわけでございまして、これらを十分議論し、検討しなければならぬというところがこの問題がなかなか進まないというゆえんでございます。しかしながら、いろいろ議論している間にどうも貸金業全体の実態がなかなかよくわからないというところも一つ問題でございまして、そこで政府といたしましては、実は初めて実態調査をしようということになりまして、本年六月には都道府県知事に対しましてアンケートによる実態調査をいま行っているところです。現在貸金業者から大体回収が終わりまして、都道府県知事から私どもの方にその資料が送られてきております。何分にも十六万という多くの対象者の中からサンプルで一割を選ぶということで約一万六千という大変な数でございますし、また調査項目も行政能力の範囲内では最大限ということで多岐にわたっておりますので、これをまとめるには若干の時間がかかるわけでございますけれども、私どもといたしましてはなるべく早くこれをまとめていきたい、こう思っております。このような実態の結果をも踏まえまして、また関係省庁の間でどのようにするのが一番現実的か、また効果的かということを考えていきたいと思うわけでございますが、ただいま法務省からお話がありましたように、この問題は単に登録、許可といったような問題もございますけれども、同時に高金利の問題もございます。したがいまして、いろいろな観点から、どのようにするのが最も先生がおっしゃるように現実的でありまた効果的か、そういう問題で総合的に関係省庁間で今後鋭意詰めたい、こう思っております。
  100. 中村瑞夫

    ○中村説明員 すでにいろいろ関係省庁の方から考えが述べられておりますので、自治省の立場に特に関連する問題につきまして一言だけ御説明を申し上げたいと思います。  この問題はいろいろと複雑な厄介な問題がございまして、関係省庁の意見必ずしも現時点で一致をしておるというわけでもございませんけれども、いずれにいたしましても何らかの制度改正その他の改善措置が行われるということになりますと、具体的に仕事を引き受けるのは都道府県ということになってくるのは大方予測されるところでございます。そういたしますと、都道府県の事務処理体制なりあるいは経費財源面におきまして相当の影響が出ることが予測をされるわけでございます。そういった点を含めまして地方団体としてどういう対応が可能であるか、また地方団体が適切な対応をするためにはどのような制度の改善が望ましいかといったことにつきまして私どもも強い関心を持っておるわけでございますけれども、そういったことにつきましての判断を進めていきますためには、ともかく現在各都道府県におきましてどういう事務処理体制のもとにどのような事務処理を行っておるか、そしてまた、この問題につきましての地方団体の意向なり問題点の意識というものがどのようなものであるかということを全般的に把握することが第一ではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、先ほど大蔵省の方から説明がございました実態調査とあわせまして全都道府県にアンケート調査を行いまして、ただいま申し上げましたような事務処理体制の問題であるとかあるいは現在の処理状況、さらに都道府県の意見なりあるいは問題点の把握といったものにつきましての回答をお願いをいたしておるようなわけでございまして、その結果が出ましたならば、私どもといたしましても鋭意検討を進めまして、要すれば、さらに具体的な問題につきまして各都道府県の意向を確かめる、あるいは問題点を詰めていくといったようなことで、せっかく努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  101. 横山利秋

    横山委員 まだほかの省庁から御答弁があると思うのですけれども、もういいですよ。何がいまごろ調査だ。何がいまごろアンケートだ。五十一年に大臣が約束をしたことじゃありませんか。よく白々しくそんな答弁をぬけぬけとできるものだ。だから私はもう答弁は要らぬと言って、大臣だけに言ったのですけれども、大臣が聞いてやってくれというもので仕方がなくがまんして聞いておれば、いまごろ調査だ、いまごろアンケートだ、複雑な問題がある——あたりまえのことだ、そんなことは。二年前にわかっていることじゃありませんか。ぬけぬけとそう言っている間にサラ金で自殺をしている、あるいはまたサラ金で奥さんが売春をせざるを得ない、暴行を受けた。毎日毎日、あなた方、新聞を見ているのですか。いいかげんにしてくださいよ。よくそんなことを言えたものだ。ここへ来たら、おくれて済みませんと引き下がるかと思ったら、そんな答弁を聞いて、大臣、いま何のためにそれを言わしたのですか。あなたはみんなの意見を聞いてやってくれというのでがまんをして聞いておったのに、私は聞く必要はないと言った。そんな答弁をさせて、それで議事録に載せて、それでそんなことだからといってあなたは済ませようと思っておったのですか。どうなんですかね。私は、率直に言って、もうああいう答弁をしておる人たちは相手にしてはいかぬ。だから、閣議の問題にして、人が足らぬとか予算が足らぬという問題じゃない。これこそ有事立法よりももっと緊急性がある問題だ。国民が毎日、新聞を見て、サラ金の記事がないときはないのですからね。すぐにやってくださいよ。号令をかけて、何をおまえらやっているんだ、すぐにつくれ、予算も人も出そうじゃないか、そういうことをあなたが号令をかけなければだめですよ。次の国会に政府が政府提案としてサラ金規制法案を提出する、その約束をしてくださいよ。
  102. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 決して時間を過ごすために……(横山委員「あんなことをやっておって何ができるのですか」と呼ぶ)各省庁の意見を私は聞きたかったのです。あなたの質問の機会に、私自身が何をしておるんだという気持ちがあるものですから、公式の場で各省庁のいまの状態を私が聞きたかった。私が号令する立場じゃないのです。私は、法務大臣、法務省としては、これは社会の安定のために不適当だから、何とか社会の安定のためにこういう忌まわしいことが起こらない方策を講じなければならないという意味で、さっき申し上げたように、心を痛めておる、こういうことでありまして、私が号令したからすぐできるという状態じゃありませんから、ここで各省の現在やっておられることを私が聞きたかった、あなたにも聞いてもらいたい、そしてもっと促進をしてもらいたい、こういう気持ちでありまして、最初からむずかしいことはわかり切っておるのです。そのむずかしいことで、もう少し現在の社会情勢のあのすさまじい状態を多少でも改善するという熱意を各省とも示してもらいたい、私はこういうことを言いたかったものですから、ことさらに各省のいまの状況を話してもらったわけでございます。私が閣議で号令をかけても、やはりそれぞれの各機関が動かなければなかなか進まぬものですから、そういう状態でございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  103. 横山利秋

    横山委員 御理解できませんよ。あなたが聞きたかったとはどういうことですか。あなたが閣議で二回も発言して促進していたことは私はもう聞かぬでもわかっておる。弁解しそうだからそんなものはやめろと言ったんだ。あなたが聞きたかったとは何事ですか。あなたはこの状況を知らなかったのですか。何も知らなかったのですか。私がきょうサラ金の質問をすることはわかっている。各省から報告を聞きたかったとは何ですか。あなたはいま私への答弁に、この次の国会に規制してくれ、政府提案を出してくれと言ったら、私は号令する立場にないと言う。じゃ、だれが号令するのですか。一体だれが号令してやってくれるのですか。あなたは閣議で二回も言ってくれたでしょうが。政治家ならば閣議で言ったことに責任をとりなさいよ。あなたはたまたま法務大臣ではあろう。全部各省に号令する立場はないであろう。しかし、あなたは閣僚であり政治家じゃありませんか。閣議で一遍自分の言ったことがちっとも実行されていないなら、責任をとりなさいよ。この次の国会へ提出してください。あなたが政治家として責任をとってください。
  104. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私が聞きたかった。あなたのせっかくの御質問がありましたから、この機会に公式の場で聞きたい。おおよそのことは報告を受けておりますが、公式の場で明言をしてもらって、もっと促進の材料にしたい、こういうことでございます。(横山委員「明言をだれもしなかったじゃないですか、のんべんだらりの話ばかりしているじゃないですか」と呼ぶ)いや、実情を申し上げさせたわけでございます。私が閣議で発言したということで、私が号令しておるわけじゃありませんが、今後ともこれはどうしても進めたい、さっき最初に申し上げましたように。  この次の通常国会に間に合うかどうか、いま私が明言する材料を持っておりませんが、できればこの次の通常国会あたりではこういう立法をすべきだという立場で私は物を考えておることを御理解願いたいと思います。
  105. 横山利秋

    横山委員 くどいようですが、私はきょう、もうとにかくやっこさんたち、と言っては大変失礼ですけれども、やっこさんたちの答弁は聞きたくなかった、どうせ弁解をのんべんだらりとするだろうと思っておるから。それで、あなたに一問一答で本当にやって、やっこさんたちに黙って聞いてもらって、そして、それならやろうか、やらざるを得ぬなんという腹を決めさせようと思ったのだが、あなたが言えというものですから、それで言ったら、いまごろアンケート、いまごろ調査報告、時間がかかる、人手が足らない、そして複雑多岐だとか、そんなことを議事録に私は残したくなかったのだ。えらい済みません、おくれて申しわけない、必ずこの次に出しますからと一言でもだれかが言うかと思ったら、伊藤刑事局長に至るまで、実行性のあることを考えると、まあ契約内容の明示だ。そんなことをやろうと思ったら、二年前にできていますよ。そんなことでごまかされちゃ、私どもはかなわぬですよ。私はきょう、本当にこの御答弁をきちんとするまでは——えらい時間がおくれて委員長に申しわけないと本当に思っているのだけれども、私はこの問題については十年がかりです。あなたに何回も何回もここで言っていることですからね。政府がもうこの際腹を決めてやるというふうに言ってもらうまでは、私は引き下がりません。
  106. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 政府部内で促進したいと思います。
  107. 横山利秋

    横山委員 各省庁の中で、いま瀬戸山法務大臣がおっしゃったことに関連して何か意見があるとかこういう覚悟だという方があれば、発言をしてもらいたい。もし弁解みたいなことだったら、びんた、引っ張り出す。何か発言ありますか。——ありませんか。  とにかく、私は前から言っているのだけれども、こういう各省に関連することになると、本当になわ張り根性が逆に出て責任を転嫁、ずっと続けておる。それでもって、自分の省に都合のいいことになると全部取り合って、おれのところの省だ、おれのところの所管だと言うて取り合う。まことに官僚の悪いことがまざまざと出ておる問題がこのサラ金規制の問題なんです。  私はこれから、法務委員会で私が発言をするたびに、各省五庁を一分でもいいからここへみんな出させますから。一分でも、委員長に頼んで、私が発言するたびにとにかくここへ引っ張り出しますから、ひとつそのつもりでおってもらいたいと思うのです。  法務大臣が、とにかくあなたの全責任の問題ではないと。それはよくわかっていますよ。わかっていますけれども、あなたもこれはある意味の被害者です。顧問をやっておってけしからぬなんて言われる。被害者です。私の気持ちをよくわかっているでしょうね、法務大臣。わかっているでしょう。わかっておるならば、私が怒る前にあなたがもう少し怒ってもよさそうなものだと私は思うのであります。  委員長、どうも本当に長々済みませんが、委員長もよくおわかりだと思うのです。少なくともこの問題について法務大臣が各省庁に督励をして、次の国会に提出するようにお願いしたいと思う。私もそのためにとにかく決心しておりますから、いろいろな法律が出てまいりましても、この法案が提出されない限りは私がどんな態度に出るか、それもよく覚悟して善処してください。  えらい長いこと済みませんでした。
  108. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長代理 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  109. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長谷雄幸久君。
  110. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 初めにサラ金規制についてお尋ねをします。  本日付の読売新聞を見ますと、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、出資法と言われておりますが、これを改正する必要があるとの判断から大蔵省は法務省など関係省庁と協議を始めたとございます。そして現行の出資法の日歩三十銭、年利にしまして一〇九・五%を、十五銭、年利にしまして五四・七五%に、こういう記載がございますが、この事実関係についてお尋ねをします。
  111. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいま御指摘の読売新聞の本日の朝刊の記事を私も見まして、全く承知をしておりませんでしたので、びっくりいたしまして大蔵省へ問い合わせましたところ、大蔵省でもこういう考えは持っていないということでございまして、現在のところ全く出所不明の記事、こういうことのようでございます。
  112. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 重ねてお尋ねしますが、法務省は、大蔵省との折衝がこのサラ金問題についてあると思いますが、この出資法についてどのような改正をするかということについて何らかの関与はございましょうか。
  113. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 先ほど横山委員の御質問の際に若干述べましたけれども、現在サラ金問題については関係省庁の連絡会で検討しておるわけでございますが、問題点中心は、サラ金業者の許可制あるいは登録制による規制の問題、あるいは各般の契約内容明示義務でありますとか、そういった営業上の諸規制が中心になっておるわけでございます。  なおそれに付加して、一つの問題として、ただいま御指摘の高金利処罰規定の処罰範囲でございます日歩三十銭というのが適当かどうかということも一応の問題になっております。しかしながら、私どももそうでございますけれども、他省庁も、高金利の処罰による規制の問題につきましては、サラ金の規制にとっては第二次的な問題点であろう、こういうふうに考えられております。  いずれにしましても刑罰をもって臨むわけでありますから、日歩幾らぐらい以上取れば社会的な非難に値する、いわゆる刑罰による非難に値するものであるか、こういうようなところの見通しがつかなければなりませんので、その辺の大方の同意のある見通しがあれば、私どもも、金利の制限、刑罰を科する金利の最低限をいじるのにやぶさかではないわけでございます。ただ問題は、現在の出資法の第五条と申しますのが、たとえば友人知己間の金銭消費貸借につきましても適用のある条文でございますし、あるいは質屋さん等の非常に小口の貸し付けをされるところにも適用があるということでありますので、もしこの日歩三十銭というのをいじるということになりますと、やはり一律に幾ら引き下げるということでなく、そういった問題をきめ細かく検討する必要があろう、こういうふうに考えております。そんな状況でございます。
  114. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 それでは、利息制限法一条の規定がございますが、この一条一項に、元本十万円未満が年二〇%、十万円から百万円未満が一八%、そして百万円以上が一五%、こういう規定がございまして、これを超えた部分については無効である、こういう規定になっておりますが、この無効をめぐって、最高裁の判例が三十九年十一月十八日から一連のものがございますが、これについて法務省はどのようなお考えを持っておりましょうか。
  115. 香川保一

    ○香川説明員 お尋ねの三十九年の最高裁の判決は、利息制限法所定の利率を超えて支払った利息は元本に充当される、四十三年はその線上で、充当されていきまして、元本が完済になった後に支払ったものは返還請求できる、こういう判例でございました。  率直に申し上げまして、利息制限法の趣旨からいって、任意に支払ったものは返還できないことになっておるわけでございますけれども、判例の趣旨は立法論としては十分考えられることでございますけれども、解釈論としては若干無理があるのではないかという感じを持っております。しかし債務者保護の立場からそういった判例が今日定着しているということで、私どもとしては、利息制限法の趣旨をさらに拡大したものというふうな受けとめ方で、判例についてはその線は維持されていいのじゃないかと考えております。
  116. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 そうしますと、利息制限法がございまして、その超過分について無効というこの規定の解釈についていま御説明がございましたが、これについて、今後の方向としまして、この無効であるということの解釈ですが、これがさらに、無効だけでなくて違法とする考えがあるのか、あるいは逆に利息制限法を無視する方向で進めていくのか、こういうことでございます。  初めの問題点につきましてはわが党の飯田委員質問しまして、無効であって違法であるということを主張しておったわけでございますが、会議録を読みますと、民事局長は当初は、無効であるけれども違法ではない。しかしその後質疑を重ねていくうちに、違法である、こういう御答弁に変わっているように拝見をしたわけでございますが、これについてはいかがでございましょうか。
  117. 香川保一

    ○香川説明員 利息制限法違反の利息契約というのは無効だ、これは私法上無効ということでございまして、これを、法律に違反しているという意味で違法というのは言葉の問題でございまして、法律に違反していることが違法だということであるならば、無効ということと違法ということは全く同じになってしまうわけでございますが、もしも、たとえば刑事罰の対象として違法というふうなことを考えました場合には、利息制限法に違反した利息契約は違法ではない、こう言わざるを得ないわけでございまして、言葉の問題ではなかろうかと思います。
  118. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 それではお尋ねしますが、法定の庶民金融機関である銀行、信用金庫、相互銀行その他について大蔵省が所管して、金利を決めておりますが、最低の金利、最高の金利、どのくらいになっているでしょうか。
  119. 鴨田宗一

    鴨田委員長 長谷雄さん、その質問をいま調べているから、それだけは少し待っていただけませんか。続いて、ひとつやってください。
  120. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 大体七%前後から一〇%前後の状況ではないかと思いますが、そういう金利で庶民は金を借りているわけですけれども、この利息制限法の十万未満が年二〇%であるということは、庶民金融機関から見ても倍あるいはそれ以上の金利であるということからすれば、この利息制限法違反の法律行為については、単なる無効ということではなくて、民法九十条に照らして無効かつ違法である、こうするのが適切ではないか、こういう意味で質問申し上げているわけですが、そういう意味での無効と解釈はできないかどうか。
  121. 香川保一

    ○香川説明員 利息制限法違反のその利息契約が公序良俗に反するというふうには私どもとしては解釈いたしていないわけでございまして、この立法の趣旨は債務者保護ということ、つまり社会政策的な観点からそういった高金利を私法上保護しないということでございまして、直ちにそれが民法九十条の公序良俗違反というものに結びつくものではないというふうに考えております。
  122. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この議論はこれ以上進めてもむだかと思いますので、次に進みます。  ところで、刑罰の対象になっている出資法についてでありますけれども、日歩三十銭を超える場合については刑罰の対象になっているということでございますが、その出資法の目的は、この条文の第一条に「不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、」云々とありますように、不特定多数の人から金を集めて、そして金を貸すということなわけですね。ところが、現在のサラ金業者の実態というものは決してそうじゃなくて、大多数のサラ金業者は自己資金あるいはそのサラ金業者みずからが銀行等から借り入れをして、それを原資としてサラ金業を営んでいる、こういうことであるわけでございます。そうしますと、この出資法に照らしてサラ金を規制するというのはちょっと筋が違うように思うのですが、どうでしょうか。
  123. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 出資法と申しますのはちょっと一般の法律と違った形の法律でございまして、これは非常に言葉が悪くて恐縮ですが、五日飯のような法律でございまして、一条と五条とは全く関係がないわけでございます。したがって、ただいまの御質問の前提はそういう意味で必ずしも適当かどうかわからないわけでございますけれども、サラ金の規制のために出資法の中に書かれておるもので使えそうなものはほとんどないわけでございます。したがいまして、サラ金の規制を行いますためにはやはり別個の、単独の立法がどうしても必要であろう、かように考えておる次第でございます。
  124. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 いま刑事局長から御答弁があったように、私どももサラ金規制についてはこの出資法をいじるということではなくて、やはり別途の規制を設けるべきではないか、こう考えております。  その方向としましては、これは全く私の個人的な見解でございますが、利息制限法に合わせた刑罰対象にすべきではないか、こう考えております。そのことはいま民事局長にも御質問申し上げたわけですけれども、利息制限法違反の法律行為を無効とするだけでなく違法である、つまり公序良俗に反する違法行為である、したがって刑罰の対象に十分になり得る、こういうような発想から新たな立法をなすべきではないか、こう考えておりますが、いかがでしょうか。
  125. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 将来、サラ金の規制をいたします場合に、サラ金業者の金利はどれほどが相当であるかという問題は二つ観点から考えなければならぬと思うのでございます。  それはいま御質問にありました利息制限法の金利というものから余り飛びはねたものを認めるということは適当でないという観点一つございます。それからもう一つは、余りに金利の頭を抑えますとサラ金業者が立ち行かなくなって、そのために一般庶民の手軽な金融の利便が得られなくなるという問題がございます。この両方から推していきまして、何ほどの金利以下に抑えるのが妥当かということを決めていく、こういうことになろうと思いますが、その辺につきましては、これまたおしかりを受ける可能性が十分あると思うのですが、私ども法務省としては何ほどが妥当かということを判断するだけの材料がございませんので、関係省庁と連絡をして適当な線を見つけたい、かように思うわけでございます。
  126. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 その場合、お考えの刑罰の対象になる金利というのはどの辺に線を置いているわけですか。
  127. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 もともと出資法五条の日歩三十銭というのは、その法律ができました当時、大体の町の庶民金融の実態がどのくらいの金利を取っておるかということを見まして、その平均値よりも相当上回るところは処罰の対象としてもやむを得ないのじゃないか、こういうことで決めておりますので、新たにサラ金規制をいたします際に金利の問題を考えるとすれば、現在、一体サラ金業者がどのぐらいの金利で一般的にやっておるか、平均値はどのぐらいか、それを相当上回るものについては刑罰をもって臨んでもしようがないのじゃないか、そういうようなことで決めていかざるを得ないのじゃないか。何しろ刑罰で金利の制限違反を抑止するわけでありますから、余り実態を無視していたしますと、それこそやみのやみ金融というようなものが出てくるおそれもございますので、その辺は十分慎重に検討しなければならぬのじゃないかと思っております。
  128. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 そうしますと、現在、刑事局の方でその刑罰の対象となるべき金利についていかほどである、日歩幾らであるということのお決めはまだないわけですか。
  129. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在、警察検察当局におきまして高金利違反で相当数処罰を求めておるわけですが、いずれも三十銭を超えるものを処罰しておりまして、それだけでも相当な数があるわけでございます。  そこで、そういう実態を踏まえますと、三十銭から下へ幾らぐらい下げるのが適当か、これにつきましては、今後やはり外国のサラ金とかいろいろなものが入ってきて一般的な金利の低下傾向を来すだろうと思うのです。そういう趨勢を見ながら決めていかなければならぬ、こういうふうに思っておりますので、現在のところ確たる数字の持ち合わせがない状況でございます。
  130. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 先ほど刑事局長から、刑罰を科するのに三十銭をいじることにやぶさかでない、こういう御答弁があったわけでございますが、これは大いにいじってもらいたいと思うのです。そして、そのいじり方については、先ほど御指摘申し上げたように、利息制限法を超える部分については無効であるという利息制限法の規定がございますが、それと歩調を合わせて刑罰対象にすべきではないか、こういうことが私はあるべき姿じゃないかと思います。もちろん現在のサラ金の金利の実態というものは無視はできないわけでありますけれども、行政としては、あるべき姿を、理想を描きながらそれに向かって進むということでなければならぬと思うのです。ですから、誤った実態を事後的に追認するという姿勢は避けるべきではないか、私はこう思っております。  そしてもう一つは、この利息制限法と出資法との間になっている二〇%以上から一〇九・五%までのこの空間部分については、完全に締め出しをしてしまうとまさに手軽な金融の利便が庶民の立場から見て奪われてしまう。そこで、これについてはわが党もかねてから主張しておりますけれども、現在、たとえば三和銀行のクローバーローン、あるいは都市銀行の無担保個人ローン、信用金庫の個人ローン、そうしたものを拡大する方向で、つまり法定の金融機関の金利で貸し出しをする、そして庶民の利便にこたえるという方向でなければならぬと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。
  131. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在の金利に対する規制といいますか、そういうものとしましては、利息制限法の利率、それからその上に公序良俗に反することになるような利率、さらにその上に著しく公序良俗に反することとなるような利率、この三つの線がございまして、著しく公序良俗に反することとなるようなものを出資法で処罰の対象にしているわけです。  そこで、利息制限法の金利を引き上げて出資法の金利に近づけるということは、債務者保護の観点から適当でありませんから、したがって、出資法の利率をだんだん利息制限法の利率の方に近づけていくということでなければならぬと思うのでございます。そのためには、先ほど申しましたように、社会の金融の実態というものを封じてしまってはいけませんから、ただいままさに御指摘のように、市中金融機関の手軽な庶民金融というものがだんだん広がっていくようなことで一般的な金利がだんだん下がってくるということがもちろん望ましいわけで、そういう実態があって初めて出資法の金利の問題もだんだん利息制限法に近い方向に詰めていくことができる、かように思っておるわけでございます。
  132. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 それでは、いま私が申し上げた方向でぜひとも新たな立法をなるべく近い将来にしてもらいたい、こう要望して、次の質問に移ります。  次は、犯罪被害者補償制度の問題についてお尋ねをします。  この問題につきましては、すでに昭和四十九年ごろから法務委員会で質疑がございました。またわが党も、この制度を一刻も早く実施すべきであるということで、たしか昭和五十一年であったと思いますけれども、議員立法の形で提案をいたしておりますが、それが審議未了で廃案になり、また昨年は議員立法の形で公明党案を出しております。これに対して、前回、昭和五十三年四月二十六日のこの委員会において、私の質問に対して法務大臣は、初めは芽を出す程度でも実施をしたい、そして、次の通常国会には法案を提出したいという決意を述べておられました。その決意が必ず実現できるものと私は期待をしておるわけでございますが、その点について改めて法務大臣の御決意を伺いたいと思うのです。
  133. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 おっしゃるようなお答えをしておるわけでございますが、私としては、何とか次の通常国会にはこの制度の創設をする法律案を提案いたしたいと思っております。なかなか最初から理想案というものは財政の問題等からできませんが、何とか制度の創設だけはしてみたいものだ、細かいことについては刑事局長からお答えさせます。
  134. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この犯罪被害者補償制度については、すでに先進国では相当数実施しておるところがございます。たとえばニュージーランド、イギリス、アメリカでは十一州、そしてカナダ、それからスウェーデン、オーストリア、フィンランド、その他また現在準備中のところが西ドイツ、フランス、オランダ、イタリアその他多数の国がそういう方向で検討しているようでございます。わが国ではまだこういうものが全くないということで、遅きに失しますけれども、ぜひともこの立法化を目指して政府も一層の努力をしてもらいたい、こう要望しておきたいと思います。  そこで、初めてこの補償制度ができるに当たって、私は政府に対してこの制度化に当たっての基本的な姿勢を伺っておきたいと思うのです。  まず、補償制度について単なる見舞い金的なものに終わらせてはならないと思っておるのですが、その点についてはどのようなお考えでございましょうか。
  135. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 その点は御指摘のとおりでございまして、見舞い金というものでなく、やはりその人の受けられた損害について、定型的ではありますけれども補償をして差し上げるということが基本でなければならぬと思っております。
  136. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 見舞い金でないとなると、まさに補償金になると思うのですが、そうした場合に、この内容についてでありますけれども、いろいろな型がございます。生活困窮を要件として、裕福な被害者には補償を要しないといういわば生活保護型、それからまた、国民の税金による保険という形での危険を分散し合う保険型、労災型もこの範疇に入ると思いますが、さらに、犯罪者の損害賠償責任を国家が肩がわりするという損害賠償型、こうしたいろいろな型があるわけでございますが、法務省が現在考えておるのはどういう形のものでございましょうか。
  137. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいま御指摘のように、すでにできております諸外国の立法例の中には、いわゆる社会福祉施策として行っておる国もございます。そういう国では、その人の財産的な状況とかそういうものを加味していく、いわばわが国で申しますと生活保護に類した発想を入れたりしておるわけでございます。また、もう一つの対極的な、反対の極にありますような考え方をいたしますと、およそ犯罪によって人が死傷するというのは、国家が十分な犯罪防止措置をとらなかったんだという意味で、国が損害をてん補するのであるという考え方もございましょう。それからまた、犯人が本来弁償すべきものでありますけれども、これを国がかわってやるという考え方もありましょう。  現在私どもが考えておりますのは、その中間にあって、国民が税金でもってお互いに不幸な人を助け合うというような考え方、これが中心となってこの制度の創設をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  138. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 刑事局長から、去る四月二十六日のこの委員会における私の質問に対して、犯罪被害者の実態調査の締め切り期限が今年三月末日で、間もなくその調査結果が出る、それによって他の福祉施策との比較においても何らかの救済措置を要する人の数を確定したい、こういう御答弁がございました。そこでお尋ねをしたいのですが、この実態調査の結果はまとまっておりましょうか。
  139. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 若干経緯を述べさせていただきますが、前回、一度実態調査をいたしました。そのときは、故意の暴力犯罪による死亡者及び三カ月以上のけがを負われた方を実態調査したわけでございます。ところが、しばしばお答え申し上げておりますので、おわかりいただいておると思いますが、財政規模が非常に大きくなるということで、最初はいわゆる芽を出す程度でやってみたいという考えから、一応今回調査の対象といたしましたのは、故意による暴力犯罪によって亡くなられた方と、証人等の被害についての給付に関する法律の施行令にございます一級、二級、三級、これはいわば重篤障害と申しますか、古い言葉で申しますと廃疾に近い障害の方、こういう者につきまして実態調査をしたわけでございます。昨年四月一日から本年三月末日までに各地の検察庁において処理をいたしました事件の中から、この要件に当たる方々を細かくデータをとって実態調査したわけでございます。現在詳細なカードに記載されましたデータにつきまして、コンピューターにかけまして最終的な細かい分析をやっておる最中でございまして、あと一カ月程度これはかかると思います。  ただ、現在すでにわかっておりますあらましをごくかいつまんで申し上げますと、昨年四月から本年三月までに検察庁が処理しました事件の中で、暴力による故意犯によって死亡された方々は千二百七十五名で、うち親族間の犯罪によって死亡された方が六百六十三名、それ以外の方が六百十二名、それから先ほど申し上げましたきわめて重篤な障害を負われました方が七十二名、その内訳は、親族間の犯罪による者が九名、それ以外が六十三名、こういうことに相なっております。
  140. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 そうしますと、法務省が考えておられる補償を要する対象者の範囲としては、死亡者と重篤者、つまりいまの御答弁ですと一級から三級の重症の方である、こういうことになるのでしょうか。それ以外の、つまり軽症者には適用除外ということになるのでしょうか。
  141. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 結論から申しますと、当初の滑り出しは御指摘のようなことで行かざるを得ないのではないかと考えております。と申しますのは、およそ犯罪によってけがをされた方すべてに何らかの補償を差し上げるということになりますと、財政規模も非常に大きくなるということのほかに、その他のいろいろな自然災害とか学校災害とか不幸な出来事による死傷者の方々との福祉施策的な観点における均衡というものが問題になりますので、やはり実現するためには、何の罪とがもないのに犯罪によって殺されてしまった、あるいは死んだも同様な一生を送らなければならぬ人について、とりあえず国民として何らかの措置をして差し上げるということは、平たく言えば財政当局に対しても説得力があり、いろいろな自然災害その他の不幸な出来事で死傷された方にも御理解いただけるのではないか、こういう観点でとりあえずその程度で発足してはどうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  142. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 被害者補償の対象となる犯罪について、先ほど刑事局長は、故意による暴力事犯、こういう表現でお述べになりました。そうしますと、ここで除かれるのが故意による非暴力事犯、こうなると思うのですが、故意による非暴力事犯というのは財産犯以外にはないというお考えでしょうか。
  143. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 故意による犯罪とお考えいただいてもいいと思いますが、たとえば頭の中で考えますと、故意による非暴力犯罪で亡くなるというのは、人をだまして、あなた死んだ方がいいよ、ああそうかといって死ぬような人が考えられるわけですけれども、ほとんど考えられませんので、私の用いました用語は余り厳密にお考えいただかなくても、故意による犯罪によって死亡した、あるいは重篤な障害を負った、こういうふうに御理解いただいて結構だと思います。
  144. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 さらにまた、これは過失犯が除かれることになると思うのですが、過失犯については、たとえば航空機事故それから工作物の瑕疵による事故などにつきましては損害賠償制度が比較的有効に機能しております。しかし同じ過失犯の中でも、自賠責あるいは労災の適用のない過失致死傷については、いま刑事局長の御答弁によりますと被害者補償の対象とならない犯罪になると思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  145. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 考え方を推し進めてまいりますと、公明党でお出しになっております御案のように過失犯まで含めていくことも一つの理論的な帰結だろうと思いますが、ただいまも御指摘ありましたように自賠責とか労災保険といった関係でカバーされる面が多うございますのと、それから過失犯の問題につきましては、過失の犯罪に基づくものであるかどうかという認定が非常に困難な場合が多いのではないか、それからさらには、自然災害に基づきます死亡の場合とお気の毒な程度においてどういうふうに区別をするかという問題があったり、そういった点を諸外国でも考えまして過失犯を除いておるところがほとんどであるように思っておるわけでございます。将来の理想はともかくとしまして、当面は過失犯は除いて考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  146. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 補償を要する被害者について、先ほどの御答弁ですと、故意による暴力事犯により死亡した場合だけでなくて、一級ないし三級の重篤者、こういうお話でございますが、一級ないし三級の重篤者というのは、労災で等級表がございますが、あの等級表の一ないし三ということに考えてよろしいのでしょうか。
  147. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 そのとおりでございます。
  148. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 それから、こういう場合はどうでしょうか。犯人不明の場合や刑事責任のない場合でも、補償の対象となると考えていいのかどうか。
  149. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 当然そういうふうにして差し上げなければならぬと思っております。
  150. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 次に、補償の種類と金額についてお尋ねをします。  補償給付の種類につきましては、私ども公明党案では、療養補償、休業補償、障害補償、それに遺族補償、この四つの種類に分けて補償金額も出しておりますけれども、これについてはいかがでしょうか。
  151. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 将来の理想的な姿においては、四種類になりますか、そのとおりのものを完備するのが望ましいと思っております。特に遺族補償等につきまして年金制度を加味するとか、そういうようなきめ細かい措置が適当ではないかと思っておりますが、当面は、いわゆる芽を出すという施策といたしましては、亡くなられた方の遺族、それから重篤な障害を負われた非常な後遺症の残る方、この方に対する一時金という形の一本でやってはどうかと考えております。
  152. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 次に、補償金額についてでありますけれども、これも公明党案では自賠責に準じて算定をいたしております。公明党案を提出したときには自賠責の最高額が千五百万円でございました。ところがこの七月から最高額が二千万円になっております。これは死亡の場合と、死亡と同程度の障害の場合も二千万円でございますが、いま改めて公明党案を出し直すとしますと、当然二千万円ということになるわけでございます。  そこで、法務省はこの補償金額についてどのようなお考えを持っているのかをお尋ねしたいのですが、いまも御答弁ございましたように、初めは芽を出すだけでも、とにかく制度をつくりたい、こういう法務大臣それから刑事局長の御趣旨は理解できるのですけれども、形だけつくって中身がないものであればこれはやはり意味がない、こう言わざるを得ないと思うのです。  そこで、その形だけつくって中身がない、つまり先ほど申し上げた補償の形が生活保護型のような形でありますと、生活困窮の程度が生活保護法に言う要保護の要件を満たす場合には補償がないことになるわけです。しかも、要保護の状態にある人であっても生活保護を受けることを潔しとしない人も中にはおります。さらにまた、犯罪者処遇との関係で公平を失うことにもなると思うのです。そういう意味で、形はどうであれ、補償額が余りにも少ないとこうした問題を引き起こしてしまうと思います。そういうことで、前回四月二十六日にも、金額の数字はお示しにならなかったけれどもある程度の方向をお示しになっておられますが、その金額の面で御検討願っていると思いますので、この際改めて法務省の補償金額についてのお考えをお示し願いたいと思います。
  153. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 補償金額につきまして、ただいま御指摘がありましたいわゆる自賠責の金額、こういうものも一つ判断の基準になろうかと思いますが、被害者補償にわりあい近い制度といたしまして、証人被害給付法の関係、あるいは警察官に協力援助した方に対する給付法の関係、あるいは海上保安庁関係の協力援助法、こういうものがございまして、これらにつきまして現在上限が四百八十万から八百三十万になっておると思うのでございます。これが最も近い一応の基準になるのじゃないか。これらの法律によって給付を受けられる方々は、積極的に国の司法作用に協力援助したとか、あるいはたとえば警察官がおらないところで警察官のかわりをしてくださったということに起因をして亡くなられたような場合でございますので、これを上回るということは理論的に相当ではないのではないか。  そこで、現在検討中かつ立案中の問題でございますから、はっきりした金額を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、四百八十万ないし八百三十万というような数字をにらみますと、やはり五百万とか、そういった見当の数字が一応出てくるのではないかと思います。ただ、この証人被害給付法等三法の関係の給付額が上がってまいりますれば、おのずから額もまた変わってくる。さらには、この三法の給付額自体が低きに過ぎるのではないかというようなお考えもあるいはあるかもしれません。いわばそれらと連動させて考えていくべきものだろう、かように考えております。
  154. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 刑事局長の御答弁の趣旨は十分理解できますが、端的に伺いますが、死亡の場合の金額です。上限と下限をいまお示しになったのですけれども、要するに法務省として一つの希望といいますか、最小限度この段階まではできるという数字をお持ちと思うのですが、それをお示しいただければと思います。
  155. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御質問に的確にお答えすることになるかどうかわかりませんが、まあ五、六百万円というところが現在の頭の方じゃないかというふうに考えております。
  156. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 五百万と六百万では百万違いますけれども、私は善意に理解をしていきたいと思います。そうしますと、障害の場合、局長の御答弁のように一級の場合、二級の場合、三級の場合、それぞれ段階的に恐らく金額も違うようになるのではないかと思いますが、一級の場合は死亡と同じような金額になるのか、それとも別なことを考えておられるのか、お尋ねします。
  157. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 それらの点は若干技術的な面を含んでおりますから正確に申し上げることが困難でございますが、他のいろいろな補償関係の法規では、一級ということになりますと、亡くなられた場合よりもかえって給付額が多くなるということでございまして、三級ということになると幾らか下になるというような感じでございまして、その辺の見当で御理解をいただきたいと思います。
  158. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 そこで、補償金額の大体のめどをいまお話しいただきましたので、この制度の実施によりまして必要な予算というものが当然出てくると思うのです。つまり予算を伴う法律になると思いますので、この実施に当たって、先ほどの局長の御答弁ですと、死亡の場合六百十二名の方が対象になる、また重症の場合ですと六十三名の方が対象であるということです。こういう方々にいま局長の御答弁の金額を当てはめますと、初年度の必要な予算というものが出ると思うのですが、制度実施によって必要な予算はどのぐらいと考えておりますか。
  159. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいままで御説明いたしましたことに付加して申し上げますと、先ほどの数字は昨年四月からことしの三月までの一カ年間の数字でございますが、これをもう少しさかのぼって引き伸ばして大局的に見ますと、亡くなられる方が一年間大体千二百名、そのうち補償対象になる方が大体半分、こういうふうに考えていいと思うのでございます。そういたしますと、仮にお一人五百万円差し上げるということになりますと、六百名で三十億円。それから重篤なけがをされる方、これは年によって非常にばらつきがございますが、人数は必ずしも多うございませんので、一億から二億の間がこれに上積みになる。したがって、ただいままで申し上げましたような諸前提をとりますと、補償金の額だけで年間三十一億から三十二億というところではなかろうかと思います。もちろん、これにはその給付に要するいろいろな事務費でございますとか、そういうものは一切省いてございます。
  160. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 ところで、法務大臣の御答弁でございますが、先ほども次の通常国会に提案という強い御決意を述べておられますので、ここで改めて法務大臣にお伺いしたいわけでありますが、この犯罪被害者補償制度の実施の時期についてでございますが、いつと見込んでおるのでしょうか。
  161. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 今月の三十一日が大蔵省に対する予算要求の期限でございます。したがいまして、それをめどに早急に作業をするわけでございますが、御質問がございませんでしたから申し上げておりませんけれども、この三十億円余りの金を全部国が負担するのか、あるいは一部都道府県に負担願うのか、そういう問題等がございます。また御質問があれば申し上げますが、そういう問題がございまして、政府機関が大蔵省に対して要求すべき金額というものが最終的にはじけない状態でございます。したがいまして、私どもの努力目標といたしましては、明年度予算を獲得をいたしまして、明年度と申しますか、本年の暮れから始まります通常国会に法案を提出して、そうしてたとえば再来年の一月一日から施行するとか、そういうようなことを考えているわけでございます。ただ、本年度予算要求までにその辺の詰めができませんと、一年と申しますか三カ月と申しますか、再来年の四月施行というようなことも考えなければならぬかと思っておりますが、まだそこまで考える時期ではない、まあ断然がんばろう、こういうふうに思っているわけであります。
  162. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 いまの御答弁の中にもございましたが、この制度実施についての必要財源の確保についてであります。実は大蔵省の出席を求めたのですが、きょうはお見えになっておりませんので大変残念でございますけれども、法務省はどういう努力をしてこの必要財源を確保されるのか。補償給付額だけでも三十一億ないし三十二億を見込まれておりますが、そのほかの事務費を含めますと少なくともこの倍にはなるのではないか、こう私も見込んでおりますが、どのような努力をしてその必要財源を確保するおつもりなのか、その点をお伺いします。
  163. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 確かにこの三十億円余りという額は、たとえば農林省でございますとか、そういった一部省庁にとりましては余り大きな額ではないという見方もあるかもしれませんけれども、法務省でまいりますと、たとえば全国の検察庁予算の中の物件費が年間四十億円でございます。したがいまして、事務費等を入れますと、全国の検察庁で使っておる金と同じぐらいの金を投入せざるを得ないということでございまして、その実現のためには相当な努力が要るのではないか。  現在私どもいたしておりますのは、この補償の裁定の実施機関、補償の金額あるいは補償を差し上げるかどうかというそういう裁定をします機関の問題が一つあるわけでございまして、理想的な構造を考えますならば、各都道府県にこの被害者補償裁定委員会というようなものをつくり、中央に不服審査をする中央審査会のようなものをつくってやればよろしいのでございますけれども、当初の発足として、先ほど来御説明しておりますように対象者を一応しぼるということになりますと、各都道府県に全部そういう専門機関をつくるということにつきましては相当ロスがある。のみならず、現在の行政機構簡素化の傾向に明らかに逆行する、こういうことがございますので、それでは既存の機関で実施ができないかというふうに考えますと、まず、検察庁でやるかあるいは警察でやるか。と申しますのは、犯人未検挙のものにつきましては検察庁には資料がございません。また、犯人が検挙されて送検されてしまったものについては警察に資料がないというようなことで、それでは検察庁警察でやるかという考え方が一つ出てくるわけですけれども、犯罪捜査に当たるものが補償を差し上げるということは、捜査と補償というものとの間に何らかの絡みが生ずる、ないしは生ずると疑われる余地がある。したがって、捜査機関以外のものが補償した方がいいのではないか。そういうふうに考えてまいりますと、補償の実施機関としては都道府県の民政部局というようなところにお願いするのも一つの方法ではなかろうか。そういうようなこともございまして、また、かたがたこういった補償の問題につきましては、国の問題でありますと同時に地域社会の問題でもあるわけでございまして、そういった観点から警察等とも協力をしまして、あるいは自治省等ともお話し合いをして、みんなの意思が合致したところで国会等の御支援もいただきまして財政当局を説得をして実現をしたい、かような決意でおるわけでございます。
  164. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この財源についてはいろいろな意見がございまして、たとえば最近の円高差益を回すという方向、たとえば石油一社から十億円もらって十社で百億円だ、こういう単純計算をする方もございます。また、これは国民全体の合意が必要でありますけれども、国民一人当たり百円を御負担願って一億人でございますと百億円の金が集まる、こういう話も私は聞いたことがございます。そのほか、現実問題として実現可能な一つの案といたしましては、罰金による国の収入が現在三百五十億円ないし三百七十億円あると聞いております。こうした金を、当初スタート段階で人件費等もかなりかかると思いますけれども、初年度にこの予算としてつぎ込めばこの実現は可能ではないか、こんなぐあいな気持ちも私自身持っております。  いずれにしても、政府の司法に対する考え方の問題じゃないかと思っております。イギリスやその他の国では積極的に司法をよくするために出費を惜しまない傾向がございます。ところがわが国の場合は、全く逆に司法に対してはできるだけ金を出さないという姿勢が非常に強いように見受けます。そういう中で、法務省がこの予算獲得のために大変な御苦労をなさるであろうと推察をするわけでございますが、この大変な中、ぜひとも必要な財源を確保していただいて、法務大臣が決意をされているようにこの次の通常国会に法案を提案をし、その実施をなるべく早くするという方向で検討してもらいたい、こう思っておりますが、重ねてここで決意を伺いたいと思います。
  165. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 おっしゃるように、新しい制度をつくりますときには財源が非常にむずかしい。しかも、いまのような経済財政の状態では特に困難があると思います。いまいろいろな例のお話がありましたが、円高差益なんというものは臨時のものでありますから、そういうものにこだわるようではこの制度の認識が足らないということであろうと思います。制度が必要だという前提に立てば、やはり国民全体の御協力を得るという立場でやるものだと思いますから、皆さんの御協力もいただいてひとつ何とか実現をしたいものだ、かように考えております。
  166. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 いま裁定機関、実施機関については局長の方から御答弁がございました。局長おっしゃるように、確かに公正確保を配慮しての実施でなければならない。こういうことから私ども公明党案としても委員会をつくって審議し査定をすべきである、こういう方向をとっております。  そこで、もう一つ伺っておきたいのですが、遡及効の問題でございます。  これについては私も前回ちょっと申し上げたことがございますが、無限の過去にさかのぼることが不可能である以上、過去のどこかの時点で決めて遡及効を認めるということにならざるを得ないと思うのです。その場合でもボーダーラインの被害者が出てくることは避けられないと思います。その意味で、一定の時期を限る必要があるということは私も理解できます。その意味で、私ども公明党案では二十年の遡及効を考えておりますが、政府の考えはこの遡及効についてどういうお考えでございましょうか。
  167. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 率直に申しまして、さかのぼればさかのぼるほど不幸な方が救われるわけですからそうしたいわけですが、忌憚なく申し上げますと、国の財布との関係でございまして、その辺はこれから鋭意検討し、かつ折衝して、仮にさかのぼるとしてどのくらいさかのぼれるかとか、そういう問題を詰めていかなければならないところでございまして、いまお答え申し上げることのできる材料がございませんので御容赦をいただきたいと思います。
  168. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 次に、犯人に対する求償権の問題でございますけれども、この被害者補償制度の実施によりまして犯罪を助長する結果を招くようになってはまずいと私は思います。その意味で、求償権は国に留保しておかなければならない、こう考えております。そして、その補償が国民の血税によるものであることから、犯人逮捕に努力をし求償権を行使する、こういう決意で臨まなければならないと思います。  この求償権につきまして、去る三月三十日の衆議院本会議で、成田事件に関連しまして私は過激派に対する犯罪被害の求償問題について大臣の答弁を求めたわけでございますが、法務大臣は、その求償権については傾聴に値するということで、その方向で検討されているようでございますが、現在この成田事件の求償はどういう方向になっておりましょうか。
  169. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 私も明確に訴訟の提起を確認しておりませんので記憶で申し上げますと、公団側と運輸省側とそれぞれに求償のための訴訟を起こす準備をしておりました、準備をしておる段階まで私関与いたしましたので。その後どちらか一つ起こしているのじゃないかと思います。後の方もおっつけ起こすのではないか、こういうふうに記憶しております。
  170. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 せっかく法務大臣が本会議で御答弁なさったわけでございますので、法務大臣の答弁に従ってその趣旨が通るような形の行政をぜひとも進めてもらいたい、こう望んでおきます。  次に、オーストリアや西ドイツでは、この犯罪被害者補償制度が行刑法刑法の全面改正などとあわせて議論されているようでありますが、わが国でも受刑者の処遇改善を目指す行刑法の改正と、死刑制度の廃止を含めた刑法改正ともあわせて論議する見解がございます。これについて法務省はどのようなお考えを持っておりますか。
  171. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御指摘の諸外国の中で最も典型的なものがオーストリアとスウェーデンであろうと思います。  オーストリアにおきましては、一九七二年に犯罪被害者補償制度を採用したわけでございますが、これに先立つこと三年前に行刑法の全面改正をいたしております。さらに、被害者補償制度の二年後の一九七四年に刑法の全面改正を行っておる。  スウェーデンにおきましても、犯罪被害者補償制度を一九七一年に発足させておるわけでございますが、これに前後して刑法改正、行刑法規の全面改正をやっておるわけでございます。  こういうことからもおわかりいただけますように、犯罪の防止それから犯罪者の更生という面からまいりますと、やはり実体法規であります刑法、それから犯罪者の処遇のための法規でございます行刑関係の法律、それから犯罪による被害者を救済するための被害補償制度、いわば三位一体と申しますか刑事政策の三本柱という考えで諸外国でもだんだん考えられておるわけでございます。そういう意味で、現在法務省におきましても、私の所管外でございますが、監獄法の全面改正の作業が進んでおります。また刑法全面改正の経緯につきましては御承知のとおりでございます。おくればせながら諸外国に見られます風潮を追うようにいたしまして刑事政策の三位一体の実現を目指していきたい、かように思っておる次第でございます。
  172. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 時間が余りございませんので、麻薬、覚せい剤の関係について若干お尋ねをいたします。  麻薬取締法、大麻取締法、あへん法等のいわば麻薬事犯それから覚せい剤事犯、こういうものがございますが、こうした事犯についての対策の基本はどのようにお考えでございましょうか。
  173. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 簡単に趨勢を申し上げますと、麻薬事犯は昭和四十四年ころからずっといわば横ばい状態でございます。ところが、覚せい剤が非常に憂慮すべき状況でございまして、年々検挙人員もウナギ登りでございまして、本年上半期は前年上半期に比べてすでに四一%の増加を示しておるということで、私ども、いま最も憂慮しかつ何とかすべきであると思っておりますのが、この覚せい剤の問題でございます。  御承知のように、覚せい剤については、戦後一時非常な蔓延をいたしまして、いわゆるヒロポンと言われた時代でございますが、現在第二の大きな山に差しかかっておると思うのでございます。  ところで、その特徴は、戦後のヒロポン時代と申しますのは、旧軍が持っておりました薬剤原料、これが原料となりましてピークとなったわけでございますが、最近のこの覚せい剤と申しますのは、ほとんど海外からの密輸入、これが源泉になって覚せい剤の蔓延を来しておる、かつその遠因といたしましては、暴力団が好個の資金源ということにいたしまして、最近では少年でございますとか家庭の主婦にまでこの悪習慣を浸透させて、そして末端販売価格をつり上げることによって資金源を得ようとしている傾向がきわめて顕著でございます。  したがいまして、私どものこれが対策といたしましては、やはり、まず覚せい剤事犯の徹底検挙、特に密売組織の徹底検挙を図りまして、これに対して十分な厳罰をもって臨むということがまず一つ。それから、さらに大事なことは、税関でございまするとか、あるいは警察、そういったところと密接に連携をとりまして水際作戦を展開いたしまして、わが国に対する覚せい剤原料の密輸を許さない、こういう措置を講ずる必要があろうということで、そういった両面にわたって懸命に努力をじたい、かように考えている次第でございます。
  174. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この覚せい剤について、いま局長から御答弁ございましたが、この水際作戦が決め手であるという、こういう御趣旨でございますが、この水際作戦については相当御努力をなさっておると思いますけれども、いま局長の御答弁にもございましたように、決して減る傾向にはないということから、やはり憂慮すべき事態であると思うのです。その水際作戦を徹底するについて、現在隘路になっているものがあるのではないか、その点についてはどのようにお考えでございますか。
  175. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 国内の諸機関は、現在まあ相当なやはり努力をしておると思うのでございますが、これが密輸の差し出し地と申しますか、東南アジア地区等を初めといたします覚せい剤原料を差し出す、密勅出をする国、こういったところでまず注目をいたしませんと、わが国も海岸線が長うございますし、それから交通手段も非常にたくさんございますので、努力に限りがあるということでございますから、現在警察とかあるいは麻薬取締官を中心に、東南アジア諸国の関係機関と一生懸命協力をして、こちらの水際ももちろんでございますが、向こうの国の水際というものででもとめてしまうということを鋭意努力をしておる、こういうふうに承知をいたしております。
  176. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この水際作戦でありますけれども、現在のこの作戦に当たっているいわばGメンの方の数ですね、これが現状で十分であるかどうか、あるいはそのために使う船舶ですね、巡視艇、そういったものが現在の数で十分とお考えかどうか。
  177. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 どれだけあれば十分かというその判断の基準がいろいろございましょうから、足らないと言えば足らないのが現状だろうと思いますけれども、やはり欲を言えば限りがございませんので、いろんな科学的な設備でございますとか、そういうものを駆使してやっていかざるを得ない。関係省庁いずれも一番これは大事な問題と考えておられるようでございますので、来年度の予算要求等においても最重点を入れられるのではないか、かように推察をしております。
  178. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 この水際作戦を徹底することができなければ、いま局長も御答弁になったように、この麻薬覚せい剤等が暴力団の資金源に使われているということからすれば、そのもとである暴力団対策を厳重にすることが決め手一つになることは間違いない、こう思うのですけれども、その辺についてはいかがでございますか。
  179. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 まことに御指摘のとおりでございまして、暴力団がなければ運び屋がないということになるわけでございます。したがって、警察中心に、暴力団の問題についてはきわめて熱心に取り組んでおるわけでございまして、次第に成果が上がりつつあるというのが率直に言って現状だろうと思いますが、まだまだ町の真ん中でピストルをぶっ放すとか、こういう不逞な出来事があるわけでございます。法務大臣もしばしば御答弁になっておりますが、私どもに対しても大臣から、暴力団対策については徹底的にやるようにというお話もございまして、今後とも暴力団の一掃という問題を目指して大いに努力をしていきたい、かように思っております。
  180. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 麻薬覚せい剤の対策の一つの柱に治療というものが考えられると思いますけれども、この治療については、現在、治療体制について、どういう状況になっておりましょうか。
  181. 山田幸孝

    ○山田説明員 覚せい剤中毒者の入院治療につきましては、現在、精神衛生法によりまして、自傷他害のおそれのある場合に、措置入院できるようになっております。また、同精神衛生法では、保護義務者の同意を得て行う同意入院制度もございまして、現在私どもとしては、これらの制度を積極的に活用することによりまして、覚せい剤中毒者に対する入院治療の万全を期していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  182. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 時間が余りありませんので簡単にお尋ねしますが、麻薬覚せい剤については、日本人だけでなくて外国人もこの事犯にかかわり合いが大変あるように聞いておりますが、外国人のこの麻薬についての取り締まり状況については、どういうぐあいになっておりましょうか。
  183. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 ただいまの詳細なデータを持った者がおりませんので、私の承知しております趨勢ということで申し上げますと、覚せい剤につきましては、外国人と申しましてもやはり朝鮮半島出身の方々が関与される場合が相当あるわけでございますが、麻薬の方につきましては、比較的、米軍人軍属を含めましたいわゆるアメリカ人その他の人々の事犯が多うございまして、これらにつきましては、それぞれ関係当局と連絡をとりまして、厳正に処置をするという態度で臨んでおる状況でございます。
  184. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 最後に大麻の関係についてお尋ねしますが、大麻について、アメリカでは、この大麻よりもっとひどい麻薬等についての取り締まりの方に手いっぱいであって、大麻の方まで手が回らないということから、半ば公然と大麻が認められたかのような、そういう状況にあるように聞いておりますが、日本でも大麻について一時かなりマスコミ等で騒がれたことがございます。これについて、他の取り締まりにアメリカと同じように手いっぱいで、大麻に手が回らないということになって無法状態のようなことがあってはならない、こういうぐあいに考えているのですが、この点について、大麻の取り締まり規制についてはどのように考えておりますか。
  185. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御指摘のように、アメリカにおきましては、多くの州におきまして、大麻の所持とか吸飲自体不処罰にしているところが出ておるわけでございます。これはアメリカにおきます大統領に対する報告書にも詳細出ておりますけれども、大麻が害がないということではなくて、御指摘のようにもう数千万人の人が習慣的に吸飲をするというような事態から、取り締まりが不能になったということの結果であるという面が強いわけでございまして、わが国においては、幸いにしてまだそこへ到達するに至っていないどころか、きわめてわずかな特殊な人が興味本位で吸飲等をするという状況にとどまっておりますので、やはり薬害が医学的にも立証されております以上、徹底した取り締まりをして、わが国から大麻というものを一掃するという方向で努力をすべきであろう、かように思って努力している次第でございます。
  186. 長谷雄幸久

    ○長谷雄委員 終わります。
  187. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次、西宮君。
  188. 西宮弘

    ○西宮委員 いま大臣が中座をされましたけれども、先般私ども党といたしまして、まず第一に再審制度を改善してほしい、そういう法律の改正をやってほしいということを中心にいたしまして、大臣に申し入れをしたわけでございます。したがって、私はぜひそれが実現されることを念願しながら、そういう期待を込めて、きょうはこの間行われましたいわゆる米谷事件ですか、これを中心にしながら若干お尋ねをしたいと思うのであります。  まず最初に最高裁にお尋ねをいたしますが、この間の事件に関連をいたしまして、無罪が宣告をされた、大変結構でありますが、その際に、裁判官として、要するに前に行われた裁判が誤りだったということが確認をされたわけでありますから、したがって、それについてはああいう裁判、前任者の時代にそういう誤判が行われたということに対して釈明をする、謝罪をする、こういうことが実は私は当然だと思うのです。この問題は、先般弘前大学教授夫人殺し事件というものがありましたときに私は詳細議論をいたしましたので、詳しいことを繰り返しませんけれども、本来、たとえばどんな役所であろうとあるいはどんな会社であろうと団体であろうと、前任者の間違いで迷惑をかけたというようなことがあれば、現在の人が、大変申しわけなかったというようなことを言うのが当然なのでありますけれども、裁判に関してはそういうことが行われない。かつて、いわゆる吉田岩窟王の無罪の再審判決の際に、あのときの小林裁判長が、前任者の不明をわびる、こういうことを申されまして、非常に人情味あふれる判決であったということが高く評価をされたのですけれども、それ以後そういうことが行われないというのは、私は大変に不思議なことだと思うのです。したがって、本来ならば裁判の最後にそういうことを明らかにすべきだ。ただし、私はこの間の判決は見ておりませんから、そういう内容があるいはあったかもしれませんけれども、特に新聞等には報道されておりませんので、恐らくはなかったのではないかという想像のもとに申し上げる。  私があえてそういうことを申し上げるのは、この前この問題を取り上げたときに、最高裁の方もおられたかどうか私忘れましたけれども、弘前大学教授夫人殺し事件というときには、そのことが、これは弁護士などの奔走によったと思うのでありますが、弘前市行政当局、弘前の市長が先頭に立って公の広報紙等を使って、那須隆さんの社会復帰、市民権の回復というようなことに非常に努力をされたということを伺いまして、私は大変結構なことだと思ったわけです。今度は青森市の問題でありますけれども、ぜひ何とかしてそういうことがあってほしいということを念願するわけです。なぜならば、昨年の七月に加藤新一老人の同じような無罪判決があったわけでありますけれども、その後の雑誌等を見ますると、せっかく長い、何十年もかかって、数十年かかって無罪をかち取ったというのに対して、少なくともその地域の中では、あの加藤老はほとんど祝福を受けておらない。祝福を受けておらないのみならず、依然としてその無罪判決がなかった以前と同じようにその地域からは疎外をされているという状況を読みまして、私は非常にお気の毒に考えたわけでございます。  いわゆる、一たん刑事犯罪人として断罪をされるということがどんなに重たい重荷をしょわしてしまうのかということをつくづく感じて、私は非常に心を痛めたのでございます。したがって、せっかく今回無罪判決をかち取った米谷さんに対して、ぜひそういう温かい配慮があってほしい、これは地域の中でそういうことがあってほしいということを願うわけでありますが、それにつけましても、私は、その裁判に当たった人がそういう態度をやはり明らかにするということがきっかけでなければならぬと思うわけでありまして、そういうことを考えておりますので、一言だけそれについて伺っておきたいと思います。この場所を利用して最高裁を代表してそういうことを言っていただけるならば、私は、いま申し上げたようなことが地域の中で行われていくという一つのきっかけになるのではないかということを考えますので、ぜひ心境を伺っておきたいと思います。
  189. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 いまお話の端緒になりました米谷事件というのは、この前の三十一日に言い渡しになりまして、まだ未確定の状態でございます。それで、その具体的事件についてどうかということは、よけい、ちょっと私ここで申し上げることは避けなければならぬと思いますけれども、一般に再審事件無罪となった場合、それでそれが確定したような場合に、それを担当した裁判官がどういう態度をとるかということだと思います。それは、私は、それをおやりになった裁判官のお気持ちで、またその具体的事件によってどういうふうな態度をおとりになるか、それは私どもの方でこうすべきだった、ああすべきだったとは言えないというふうに存ずるものでございます。それでは御不満かと思いますのでもう少し理由をつけ加えますと、そうすると、まあ再審事件という場合には、やはり新しい証拠が出てきて、それによって前の確定判決の事実認定が間違いではなかろうかという、そういう合理的な疑いを抱くに至った場合、その場合に再審が開始されるわけでございますけれども、その新しい明白な証拠がないという場合には、そういう状況判断をした裁判官としては、前の、今度破れる判決になるものでございますけれども、そういうふうにするはかなかった場合も当然あると存ずるわけでございます。ですから、それはその事件によって違うというふうに思いますので、私の方でここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  190. 西宮弘

    ○西宮委員 この問題で長く議論するつもりはありませんけれども、そのことならば昭和三十八年だったと思いますが、名古屋高裁におけるいわゆる吉田岩窟王の場合だって全く同様で、新らしいあるいは明白な証拠が後から出てきたということで、再審の結果無罪をかち得たわけであります。ですから、それは全く同じだと思います。しかしそのとき、その無罪判決を宣告した小林裁判長は、本当にいわば声涙ともに下がるばかりと言いたいほど、そういう点について非常な心境を率直に披瀝をしたわけであります。私はそのことは当然だと思うのですね。これ以上議論する時間がありませんから議論はいたしませんけれども、しかし仮にその新しい明白な証拠が後から出てきたとしても、それならばそういう証拠をなぜ発見できなかったのか。できなかったならできなかっただけの落ち度があったと私は思う。ですから、それはやはりそういう前に有罪判決をしたということが間違いだったということはきわめて明白なんですから、私は当然そうあるべきだと思う。ただ、この問題はまだ確定をしているわけではありませんから、そういう意味でいま意見を述べたくないと言うならば、そういうことでとどめておきたいと思います。  次は、警察にお尋ねをしたいと思うのでありますが、これは今月の八日付だったと思いますが毎日新聞の記事でありますけれども、青森県警としては格別反省の色がない、そういうものが全く見えない、こういう記事を特集記事として大きく掲げているわけであります。つまり、われわれのやったことに間違いがないのだ、あの長内という人が大変なうそつきだ、こういうことを依然として宣伝をしているということで、せっかくの今回のこれを教訓として学ぼうというような態度が見えないということを指摘しておるわけですけれども、実は青森の県警としては前にも同じようなことがあったわけですね。弘前大学の教授夫人殺し事件というときにも、すでに再審の結果無罪が宣告をされてしまった、その後に出された「青森県警史」、その中で依然として、おれが犯人だと言って名のって出た滝谷何がしをこれは大変なうそつきだ、こういうことをことさらに書いて、いかにも那須隆さんが無罪になったということをまだ否定するようなそういう記事を載せているということで、これが新聞等で問題になりましたためにその下巻は回収をしてしまったそうでありますが、私はそういう点は大変に残念なことだと思う。  この問題について、警察当局としてはどういうふうに受け取っておるのか、あるいは感じておるのか、一言だけ簡単に答えていただきます。
  191. 加藤晶

    加藤(晶)説明員 御指摘になりました事件、これは昭和二十七年に当時の国家地方警察青森地区警察署が捜査いたしました事案でございます。しかしこのたび、再審後の第一審におきまして無罪判決が出るという結果がございまして、これは先ほど最高裁の方からも御答弁がありましたようにまだ未確定ではございますけれども、警察といたしましてはこういう判決を真摯に受けとめまして、その内容を十分検討いたしまして、反省すべき点がございますれば、それにつきましては今後の犯罪捜査上の教訓として生かしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  192. 西宮弘

    ○西宮委員 そういうことであれば私も大変結構で、ぜひそうあってほしいと願うわけであります。  さっき申し上げたいわゆる「青森県警史」という歴史、大変膨大な歴史を発刊されたわけであります。上巻が昭和四十八年、下巻が昨年出たわけでありますけれども、その上巻の「刊行のことば」というので本部長の安田さんという人が冒頭に述べているわけですが、その中にはこういうふうに書いてある。  その書き出しから読みますと、「警察とは何か、そして青森県警の姿はいかにあるべきか、いつの時代にあっても繰り返し考察されなければならないこの課題は、時流激しい変化の現代社会にあっては一層重要なものとなっている。私たち治安を担当する者は、常に時代の変化に敏感に反応できる新鮮な感覚を持ち、現実を直視し、未来を大きく展望する必要がある。」こういうふうに書き出しているわけですね。大変に次元の高い表現で、私はこのこと自体は非常に結構なことだと思う。しかし私は、こういうまことに高邁な実に大きな理想を掲げておるわけですけれども、こういう高邁な大理想をうたうよりも、いままで行われたいわゆる自白を強要する——強要という言葉があなた方には当たらないかもしれませんけれども、まず自白だ、いわゆる自白第一主義だ、こういうことにきゅうきゅうとした結果がいろいろな問題を起こしていったので、そういう点を無論反省して、あるいはそういうことのないようにやってくれ、こういうことを言った方が私はもっと現場警察官に対しては説得力があるのじゃないかと思う。余りにも高邁な理想に過ぎて、しかも出てくる現象はさっき申し上げたようなことが相次いでおるというようなことでは、私は大変に残念なことだと思うのです。  そこで、これは当然なことながら、まず動かない証拠をつかまえて、証拠をもとにし自白を迫るというのであるべきなんだけれども、ところが実際は、まずとにもかくにも自白をさせる、そしてそれに基づいて証拠をつくっていく。それが無論その自白に基づいて的確な物的証拠が発見されるというようなことならばそれも結構でしょうけれども、それができないと、証言によってあるいは自白をさらに積み重ねていく、そういうことによって何とかかんとかとにかくこの事件を犯罪として断罪をするまで持っていってしまう、こういうことに力点が置かれているということが今日までの実態であります。これは決して青森だけの問題ではなくて、いままでの犯罪捜査というのがとにかく自白——今日では自白第一主義あるいは自白が必要だという主義はもうなくなってしまっておる、にもかかわらず、やはり依然としてそれが行われているということが私は実態だと思う。  たとえば今度の事件などでも、証言を頼っていったのだけれども、そして、目撃したと称する証人が登場してきたのがこの事件があってから大体二カ月ぐらい後、そしてその時点では、最初物的証拠として手ぬぐいが証拠に挙げられた、ところがその肝心な証拠だという手ぬぐいがだんだん崩れてしまった、それでその時点になって今度は目撃者があらわれてくる、こういうことで、何となく不明朗な感じがするわけであります。  今度の問題について、例の長内さんという人とこの二つはまことに対照的だと思うのですね。長内さんという人は東京でつかまって、そして取り調べを受けているその間で、この問題についてみずから臼田をしたというのは、何にもそのことを強要されたわけではなかった。ただ、私は毎晩おばが夢まくらに立ってそれで夜も眠れないのだ、こういうことを言い出したということがそもそもの始まりだったわけですね。ところが、それはうそだということで断定をされてしまって、いわばだれからも強制されないで自白をしたものがうそだということで決めつけられる。そしてその反対に、一遍自白はしたけれども、これは恐らく相当な強要をされてやむを得ず自白をしたのだと思うのだけれども、後に裁判段階ではこれを否定をしていった、ところが、そっちの方が本物だということで犯罪人になってしまった。こういうことでは、私はまことにこっけいといいますか、矛盾もはなはだしいと思うのですね。自分自白をしたものが、あれはうそつきのうそなのだということで葬られてしまう。そして、おれはそんなことはやってないということを主張したものが逆に本物だということで犯罪になってしまう。全く矛盾をしていると思うのですが、最高裁にもう一遍だけお尋ねをいたします。  これは八月二日の読売新聞の社説でありますが、「「長内自白はまったくの虚偽であり、社会に無用の疑惑と混乱を生じさせた責任は重大で、徹底的な反省を要求する」と、きつく述べている。」これは東京地裁裁判ですね。「しかし、そうした判断に至った根拠づけは、米谷さんの再審を開始した仙台高裁決定の精密さに、はるかに及ばない。東京地裁判決裁判長は、最近、最高裁裁判官になったが、裁判官の識見と能力に対する国民の不安は小さくない。」こういうふうに書いているわけですね。     〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕 私は、この点について国民がそういう不安を感ずるのは当然だと思うのです。最高裁としてはそういう心配はないのかどうか、一言だけ答えてください。
  193. 岡垣勲

    岡垣最高裁判所長官代理者 裁判においては、御承知のとおりに、裁判官の証拠に対する自由なる心証によって判断をするということが認められておりまして、そして先ほど申し上げたとおり未確定ではございますが、その判決の中でも、長内氏の供述それから米谷氏の供述自白、いずれもどちらとも措信しがたいふうに言っておられます。その判断のよしあしは別といたしまして、裁判官が目の前に出てきた証拠をいろいろな方面から検討して、結局最後に自分の胸にことりと落ちた確信に基づいて認識を述べるということはこれは当然の義務であり、それが後になっていろいろな事情で、いろいろな変わり方をしていろいろな評価をされるということがありましても、それは人間としてやむを得ないことだというふうに私は思います。ですから、いまおっしゃったようなことがありましたとしても、その前の長内に対する判決をされた裁判官の資質について疑いを持つということは私はできないと思います。
  194. 西宮弘

    ○西宮委員 今回の米谷事件に大変類似をした事件がたくさんあるわけでありますが、いま再審を請求したりあるいは自分は無実だというようなことを主張している人たちはほとんどが同じようなケースだと思いますけれども、私は二、三の問題を取り上げてその共通性を明らかにしていきたいと思うのです。  そこで私が、同じような似通ったケースだとして取り上げますのは、いわゆる丸正事件と言われる昭和三十年に起こった事件でありますが、そこに刑期十五年を満了いたしましていまは外に出てきた、出獄した鈴木一男さんという人がおるわけでありますが、この人なども外には出たけれども、そういう事件関係した——関係したというか、要するにそういう意味での犯罪人だった、殺人の共犯者だということで、きわめて世間を狭く暮らしておるわけです。ほとんどだれにも、一人の姉さんがおるのですけれども、その姉さんに対しても自分の居所も明かさないというようなことで、全く世間を逃げ隠れて、それがばれるとせっかく就職してもすぐ首になってしまうというようなことで、全く世間を逃れ逃れて暮らしてきたというので、私は、本当に一遍そういう目に遭った人がどんなに苦しい生活をしなければならぬかということをつくづく感じさせられるのですが、ごく最近になりまして私もようやく彼に会うことができたわけです。  そこで、それを例にしながら若干申し上げたいと思うのでありますが、たとえばこの米谷四郎さんは五十戸ばかりの部落の中に、一年半ほど前に来た人であります。いわばよそ者だという点について、この米谷さんとそれから丸正事件の李得賢、この人は韓国人でありますからこれは完全なよそ者、それからいま申し上げた鈴木一男さん、この人はよそ者ではなかったようでありますけれども、しかしこの取り調べの過程でも全く侮辱をされて、トラックの助手をしておったので、おまえたちは昔なら雲助なんだ、こういうことで、しばしばそういう雲助という言葉を浴びせられておったようであります。そういうふうに、世間からは疎んぜられておった人、そういう人がまず見込み捜査の対象に挙げられてしまうというのが共通した点。  それからその次には、いわゆる別件逮捕という点でありますけれども、この米谷さんも、当時の昭和二十七年の地元新聞がありますけれども、それを見ると、別な容疑で留置をされた。それがちょうど事件が起こってから一週間後であります。それには極秘にしてありまして、名前も書いてない。しかしその次の日には名前が上がっておって、そしてこれは絶対に間違いがないと自信のほどを警察が示しておるというのだけれども、自信を持っていることは結構でしょうけれども、ややもすると、その絶対に間違いがないというようなことを言ってしまうと、後は真実の発見ということが目的ではなくなってしまって、とにもかくにもそれを犯罪人に仕上げなければならぬ、そういう意識の方が強くなってしまう。したがって、とにもかくにも白状させろ、自白をさせろということに追い込んでしまうということが行われる。そしていわゆる落とす、つまり自白をさせることができると、警察では万歳を唱えるあるいは乾杯をする、こういうこと。どの事件についても地元の新聞を見るとそういう記事が載っておりますが、どうですか、いまでも自白をさせたときには万歳をしたり乾杯をしたり、そういうことが行われますか。
  195. 加藤晶

    加藤(晶)説明員 警察は、御承知のとおり事案の真相を解明する職責を負うているわけでございますが、同時にこれはその過程におきまして人の基本的人権を侵害することの絶対ないようにというつもりでやっておるわけでございます。  それで、見込み捜査がまだ行われておるのじゃないか、あるいは被疑者を自白させた場合に万歳を唱えるのじゃないかというふうなことでございますけれども、私ども、御指摘のとおり捜査証拠に基づいて行うべきものだ、証拠第一主義を徹底させるべく努力しているわけでございます。それで、普通考えますると、調べる者、調べられる者ということで全く相対立するというふうにとられがちでございますけれども、そのことの事案におきましては対立する立場にあるかもしれませんが、その前提として、やはりお互い人間として共通するものがあるわけでございます。したがいまして、調べにいたしましても、そういう一方的に自白を強要するというようなことは絶対行わない、そういうことでやっておるわけでございます。そのために組織をもっていろいろな証拠を収集するということでございます。また、調べをやりまして被疑者が自供いたしましたというふうなときに、むしろそういう事案の真相に到達したということにつきましては、これはやはり仕事でございますので、そのことにつきましての意義を認めますけれども、そのことの意義をもって、被疑者を落としたからというふうなことで無遠慮なそういう乾杯をやるというふうなことはいまの捜査ではやっておらないと私は思っております。
  196. 西宮弘

    ○西宮委員 ぜひそうあってほしいのでありますが、警察最高幹部のそういう考え方が末端には必ずしも徹底してないというのが現実だと私は思う。私はその点は後から申し上げたいと思うのです。  これは後で結構ですから刑事局からでも伺いたいと思うのですが、たとえば憲法三十六条に違反する事案あるいは刑訴法の三百十九条に違反する事案あるいは刑法百九十五条に違反する事案、そういうのが一体何件ぐらいあるのか。恐らく資料もお持ちじゃないと思いまするし、後で結構ですけれども、せっかく新憲法になり、あるいは刑事訴訟法も改正になりしておるわけですから、そして自白に頼ってはならぬというようなことをいずれもうたっているわけですから、そういう新しい法制ができたにもかかわらず、それに背反していると見られるような事案がどの程度にあるものか、ぜひ聞かしてもらいたいと思います。  それから、いま私は別件逮捕ということで申し上げたのですが、たとえばさっきの丸正事件の李得賢あるいは鈴木一男、この両君の場合などは文字どおり別件逮捕で逮捕された。しかし、これなどは余りにもこっけいというか実にくだらぬことで逮捕しているわけです。さっき申し上げた鈴木一男君などというのは、三年前に別れた細君のゆかたが一枚残っておった、それでそれは窃盗だということで捕らえたわけですね。その鈴木一男君の言っているところを聞くと、これはそのかわりにほかの物をやったとか、別れたもとの女房にもちゃんと話してある、そういうことで、そのゆかたを自分の寝巻きに使っておった。その三年前の事件をそれは窃盗だということで取り上げた。それから李得賢の場合は業務上の横領だということで逮捕した。これは運賃を二重取りしたという事件なんだそうでありますが、しかしそれは間違いであることがわかって、とっくの昔に金を払っておる。そういうのを、何年もたった後に、それも横領罪として別件逮捕をするというようなことで捕らえている。ですから、捕らえてもそういう点についてはほとんど取り調べもないし、あるいはその結果がどうであるかということについては、判決の中にも全然うたってないわけです。そういうことになると、そもそもその別件逮捕は不当な逮捕であったということで、だから、そこでなされた本来の事件、つまり強盗殺人というその事件に対してそこで得られた自白とかそういうものはおよそ証拠の能力がないというふうに考えるのが当然だと思うのですけれども、これは一般論で結構ですが、刑事局長、そういうときの解釈はどうなんですか。
  197. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 現在、別件逮捕と言われておりますもので、憲法あるいは刑事訴訟法の精神に合わないとされますものは、こういう場合だと思います。  その別件と言われるものが本来起訴価値のないものであり、逮捕勾留する価値のないものであるという場合に、いわゆる本件調べる目的でそういうものについて逮捕勾留する、こういうことを悪い意味での別件逮捕、こう言うのだろうと思います。さようなことは、捜査のテクニックとしてやりたいことですけれども、やってはいけないことで、厳に慎まなければならぬことだ、かように思っております。
  198. 西宮弘

    ○西宮委員 さっき、犯罪容疑者としてつかまえてきた人、あるいは逮捕した者もあろうし、あるいは任意出頭で調べる者もありましょうけれども、それに対して自白を強要する、そういうことは絶対にありませんという御答弁でございましたが、それならば問題は全くないのでありますけれども、現実は決してそうではない。  拷問といっても、昔のような古典的な形における拷問というのは今日ははやらないと思います。そういうものはないと思いますけれども、私は、本人にとっては精神的、肉体的に非常に大きな苦痛を強いられる、そういう取り調べを受けているということがまさに現実の姿だと思う。拷問というのは、有斐閣の法律学辞典によりますと、「被告人・被疑者に自白を強要するため、肉体的苦痛を与えること。」というふうに書いてありますが、恐らく、その肉体的の苦痛といっても、昔のような、あるいは治安維持法時代のようなああいう拷問が今日なされておらないということはわれわれも認めますけれども、たとえば正座をさせる、座らせるという点でも、一つの大きな肉体的な苦痛であることは間違いがありません。これは後に何にもその痕跡が残らないからそういうことをするのだと思うけれども、たとえばここに、これは当時の地元新聞の写真でありますけれども、部落の集会所で出張裁判を受ける米谷さん、後ろ向き正座した姿というふうに、正座をしているのが米谷さんだということを書いているわけですけれども、あとの取り調べをする人は皆あぐらをかいているわけです。この長い時間正座を強いられるということがどんなに苦しいか。たとえばいまの丸正事件における被疑者なるものは、一人は韓国人でありますし、一人はトラックの運転助手、そういうことで、正座の経験などは全くないという人であります。それが朝五時半に連れていかれて、それからもうほとんど夜まで取り調べを受けた。そうしてその間完全に正座をさせられて、少しでも崩すと、あるいはひとりでに両足が開いてくると、ぎゅうっと力を入れて押さえつけられるというようなことで、いかに苦しかったかということを大変に長々と書いているわけです。そうして、おまえだけが座っているのじゃないのだ、われわれも座っているのだと言うけれども、取り調べる方は、座ってはいても、これは始終立ったり座ったりしているので、そう長い時間座っているわけではない。ところが彼の場合などは、朝から夜までぶつ通し、朝飯も食わせないし、あるいは湯茶も一杯も飲ませない、ちょっとしりをもじもじしただけでどなりつけられる、こういう状態だったということを書いてあるのだけれども、こういうことになると、これはまさに現代の拷問だと言ってもよろしいし、特に人権問題として私は問題にする価値が十分あると思う。ことにいまの二人などは、ちょっと聞きたいことがあるから来てくれというので連れていかれて、直ちにそういうことに遭わされておるわけですから、そのとおりだと思うのでありますが、およそ、そういう取り調べを受けている本当に平凡な庶民、そういう人にこういうことを強要していくということはまさに人権の問題だと考えるのだけれども、きょうは人権局長にも来ていただいておるので、一体、この問題に限らず、正座に限らない、いろいろそういう問題について、取り調べの過程においてそういうことがほとんど日常的に行われているということは、これは隠すことのできない現実だと思うのですよ。そういう点について人権局として、決してこの問題に限定いたしませんから、そういう問題について人権局が何か取り上げている、あるいは発言しているというような事件があるかどうだか、ちょっと答えてください。
  199. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚説明員 一般論として申し上げるしかないのでございますけれども、公務員による拷問というものは、御指摘のとおり、これは憲法三十六条によって絶対にこれを禁ずるとなっておりまして、これが人権問題であることは疑いの余地はございません。戦前のような拷問ということでなくても、やはり肉体的苦痛を伴うような自白強要ということは、これも人権問題であることは間違いございません。したがいまして、もしも捜査に従事する公務員から、取り調べの際に自白を強要した、あるいは暴行を受けたというような申告が人権擁護機関にございました場合には、これは人権擁護機関としては、やはり人権侵犯事件として調査、処理いたしております。
  200. 西宮弘

    ○西宮委員 私は、そういう点について、さっき申し上げた鈴木一男君が、ごく最近でありますが、私も初めて会えたわけあります。彼は、大変に長い長い、これは大変な分量でありますが、こういうものを書いて、これは上申書のつもりで書いたのでありましょう。あるいは上申書として出したのかどうか私わかりませんが、それを見ると、彼がどんなにそういう点で苦しめられたか、あるいはまた、頑強に否認をしておったのが、いつとはなしに自白に追い込まれてしまっていくという過程がよくわかるわけであります。  そこで、私は若干その点を披露させてもらいたいと思いますが、これは大変長いので、これは刑務所の中で書いたのでありますから、非常に不自由な中で、しかもその筆記の許可を求めてもなかなか筆記をさせてくれない。そして許可してくれない。そしてその刑務所の看守が「俺も長い間此の仕事をして居るが、お前の様にめんだうをかける者は無い、」こういうことで、筆記の許可を願い出てもなかなか応じてくれないというようなことなども書いております。そういう非常に不利な状況の中で、これだけ長いものを書いたのですから、したがって相当な時間もかかっておりましょう。最終的には三十四年の六月二十日に書き上げておりますけれども、相当な時間もかかっているとみえるので、前後したり重複したり、そういう点がたくさんあるわけであります。ちょっとこっけいだと思うことを御紹介したいと思う。たとえば、  警察の化学で調査をしたら貴様達の車が極東商会の前に車を停止をして有った姿が写真に写つて居た  (余り化学々々と振り回す様に私に話した者は稲葉刑事部長、鈴木亀吉の二人です) と、こういうことを断っておりますが、  貴様達二人の姿と一緒に使用をした日野ヂーゼル車が極東商会前に停止をして居る様子が皆写つているからお前達と判ったと私に警察官達は言うので、其の様にすばらしい写真が有るなら是非私に見せて呉れと言つたら、私の周囲に居る者達と共に鈴木亀吉、稲葉の二人が大声を揚げて怒鳴りながら此の野郎警察の化学を馬鹿にするのか 此の野郎飛でも無いやつだ、きさまたち二人でやったに間違いない、こういうことを言った、と書いておりますけれども、その警察の化学化学と言われておる相手の鈴木一男君は、残念ながら子供のときに脳膜炎などを患ったというふうに言われておる人でありまして、そういう人に化学の権威をもって迫っていく。そういう点も少し読み上げますから、お聞きになっていただきたいと思います。  全々して居無い事特に強盗殺人等と恐ろしい事を署員達は、私達二人が犯した事に仕様として、やつきになつています。私は此の様な恐しい事を聞かせられただけで、気持が昂奮をして仕舞い、話す言葉も上手に言えず、頭が大変混乱して此の様な場合には、どの様にして話をしたら私の話を取り上げて呉る事かさつぱり判りません、午前も午後も同様にずーと私は正座をして居ますので、足の痛い事と此の様な出鱈目な恐しい強盗殺人事件を私達二人がした事に仕様としている事を、私は思いますと本当に恐しくて、頭が混乱をしてぼーとして、何が何やら物を考える事が出来ません、思えば思ふほど気持が乱れて来ます警察官達は私が此の様にして気地違の様になる事を待つて居た様に、後で私は思いました   私は余りひどい事なので、くやしくつて泣けて来ました、私が涙を流して泣て居たら警察官達は、よく泣たもつと泣けと言って私がくやしくつて泣た事を大変によろこんでいました。 つまり、自分の罪を反省をしている、あるいは良心に苦しんでいるというふうに恐らくとったのだろうと思いますけれども、  大変に混乱をして居る頭巾で種々と考えていますが、私が考えている事をわざと、わざわざぢやまをして、おい鈴木俺達が貴様に尋ねて居るが何故返事をせぬかと私に言いながら、私を側より強く突飛ばす私は足が痛いのでがまんをして座つて居る所を突かれるから、速かに元の座に座つて居た姿にはなりません、すると今度は反対の側の者が私を突飛ばす私の前に居る鈴木亀吉が私の頭の後に手を掛けて、自分の方に私を強く引き無理におさえ付けて、おい早くお前の前に居るはぎり部長様に申訳有りませんとあやまれ、あやまれと言って私の頭を前におさえて力を入れておさえ付ける、ずーと正座をさせられて居るから足が痛いし、無理に私を前におさえ付けるので、私は亀吉警察官の手を自分の手で私の頭より取りましたら、亀吉警察官は大声を張り上げて怒鳴り警察官に手向をするのかと、私に言ふと、周囲の者が私に此の野郎飛でも無いやつだと、又大声で怒鳴りたてる。 こういうことであります。     〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕  先ほどの青森県の米谷さん、私は正確な書面を読んでおりませんからわかりませんが、新聞によりますと、「連日捜査官から、おまえがやった、おまえがやった言われ、精神状態がおかしくなった。」と米谷さんはこの判決があった後に語っております。これは米谷さんの談話であります。  同じようなことが、つまりこういういま読み上げたようなやり方の中で、いつとはなしにその犯人にだんだん仕上げられてしまうという経過が、私にはよくわかるような気がいたします。続けて、この鈴木一男君の書いたものを読みます。  私を半気地違の様にして仕舞つて私がみとめた様にしてしまったのです。私の周囲の者が互いに実演して見せました。 これは詳しい説明がありまして、ほかの警察官がいろいろ犯人を、殺したときの状況その他をやってみせるわけであります。そして、しかもその調べている場所は警察署ではなしに、警察署長の官舎の子供の勉強部屋、狭い子供の勉強部屋であります。   あのせまい子供の勉強室にて種々と実演をして見せ、私におぼえ込ませ様として居ました。余りな事に私は普断気が弱いものですから、此の様な事を眼前に見て居て署員が大勢で殺人を私達がした事にして居ますので、恐しくつて、恐しくつて頭も心の中も大変に混乱して仕まつていたので、署員が大声にて何かを私に話をしたが、私にわ何の事やら昂奮をしていましたので、署員達に何時返事をした事やら判りませんが、首を二人で絞て居る時に署員達が私に というのは、警察官がいわゆる実演をしているわけですね。  お前此の様にしてたのだらう、とか、他の者は「さうだ、さうだ」と、言つて、此の時に私は之をみとめて返事をしたおぼえは有りませんが、私が之をみとめた事に調書を造り上げて有ります。   余りの事に頭も心も混乱をして仕舞つたので私の思ふ事が其の儘に話が出来無く、唯気がせくので私が話す言葉も「ドモリ、ドモリ」に話すので余計に私の立場が悪く受け取られていました。   署員達はそれ見ろ貴様の話すことわ俺達にうそを話しているから、言葉が皆ドモリながら言つているではないか貴様が本当の話しを申上げるなら決してドモル事わないだらう、と私にきめ付けるのです。 というようなことを言っておるのでありますが、こういうことで、要するにそういう混乱した状況の中で、いつか自白したもののように調書がつくられてしまう。こういう状況は、その青森県の米谷さんの場合、連日捜査官がおまえがやったと言われて精神状態がおかしくなってしまったというのと全く共通だと思うのですね。そういう点が長々と鈴木一男君の場合には書いてあります。ですから、そういう環境の中でいつか犯人にされてしまっているということを、私はまことに重大問題だと言わざるを得ないと思うのであります。  ですから、外国にありますように、こういう自白をとるという場合には、弁護士が立ち会っていなければそれは自白として認めないというようなことが日本の制度として行われるということになれば、私はいまの冤罪事件なんというのは恐らく起こらずに済むのだろうと思うのですが、そういうことがないと、全く密室のことでありますから、皆さんからお聞きになると、それは勝手なことを言っているのだと恐らく言われるだろうと思います。つまり、だれも証人になる人がいないのですから、そういうところで自白が行わせられるということは実に私は重大問題だと思います。そうしてこういう状況の中に置かれると、これは当然に調べられた人間は非常に弱い立場ですから、もうどうしようもないのだ、そういう気持ちになっていくだろうと思います。一言だけそこのところを読んでみます。   唯々どうしようか、どうしようと、自分で一生懸命で考えて居ますが、私の味方は誰もして呉ません、回りに居る者は皆で敵で有る。回りに居る者達は自分勝手に、私が承知をした事にして仕舞つたのです。   大勢で私に無理無たいな事を言つて、私の心が乱れて居る所を見計らつて「窃盗と強盗殺人をして居るから、お前を此処で逮捕する。」と、私に口で言った切りで最初から現在迄も、私は自分の逮捕状わ全然本当に見せて呉ませんでした。  こういうことなんですが、とにかく何を言っても相手にしてもらえない。もうとにかくだれも聞いてはくれないのだ、こういう気持ちに追い込まれてしまうということが、私は、本人が全く絶望感に陥って、だんだんだんだん警察官の言うとおりにそれに従っていってしまうということになるのだろうと思います。ですからこれはそういう状態の中で、要するに何を言ってもまともには受け取ってもらえない、もうどうしようもないのだというそういう絶望感が本心と違ったいわゆる自白に追い込まれてしまうということになるに違いないので、私はそのことが、恐らくこの点はいまでも同じようじゃないかと思うのですけれども、どうですか。  これは刑事局長にお尋ねいたしましょうかね。たとえば捜査の、あるいはそういう取り調べの途中で、いや私はそういうことをやりませんと言うと、一体きさまはここをどこだと考えているのだ、このやろうとぼけるなとか、このおれたちをだませると思っているのか、しらを切る気か——これはこの中の拾った言葉でありますが、そういうことを取り調べ警察官が言う。警察官の指摘することを否認をすると、このやろう生意気だというようなことを言うということは、私はいまでも恐らくは改まっていないのじゃないか。無論、その被疑者になった人が相当な社会的の地位を持っているとかあるいは知識程度の高い人であるとか、そういう場合にはそういうことはしないと思いますけれども、いま問題になっております再審を請求している人たちというのは、全部ことごとくこの米谷四郎さんのような、あるいは鈴木一男君のような、あるいは李得賢君のようなそういう人ばかりなんですよ。そういうたぐいの人ならばこういうことで威圧をされるということは、恐らく今日でも改まってはいないのではないかと思うのだけれども、どうですか。
  201. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 私、不幸にして強盗とか窃盗というような、あるいは強盗殺人というような事件はほとんどやったことがございませんで、もっぱら贈収賄と会社犯罪ばかりやってきた検事なものですからよく存じませんが、また警察調べを見せてもらったことも余りないのでわかりませんけれども、いまおっしゃったような言葉というものはまことに品のない話でございまして、やはり捜査官も人の子ですから、町へ出て再び自分調べた人と出っくわしたときにこちらからこそこそ横町へ逃げなければならぬというような調べをしたのでは、おのずから自分の社会が狭くなるわけでございますから、その辺はやはり良識を持って調べておるのではないかというふうな感じを私は持っております。  なお、事のついでに一言だけ申し上げておきますと、七月三十一日に一審の無罪判決のございました米谷四郎さん、これは先ほど来承っておりますと、長内氏の方はすらすらと自白をし、米谷さんの方はある程度強制されて自白をしたという事実関係ではなかろうかということを前提にいまお尋ねでございましたけれども、今度の再審無罪判決でも米谷さんの自白任意性のある自白であるということは明記しておりまして、それだけに今度の事件は非常に不幸な事件と申しますか、二人の人がいずれも任意自白をした、私ども捜査官にとって遺憾な事案でございました。そういうことを考えるにつけ、やはり自白というものはまず横へ置いておいて、科学的な捜査の結果とかあるいは十分な客観的状況証拠、そういったものを厳密に科学的に判断をして、自白なしでもきちんと認定できるというようなことで対処しないと、幾ら自白任意でありましてもそういう危険性がある。いわんや一般論として申し上げますと、強制脅迫が縁由となりましたような自白捜査の参考とすべきでないことは言うまでもないことでございます。そういう感想を持っておるわけでございます。
  202. 西宮弘

    ○西宮委員 捜査現場等を見せてもらったことがないというようなお話だったが、仮に見せてもらっても、恐らく法務省の偉い方が来たということになればそんな状況は現出をしないでしょうから、見に行かれてもそういう実態はわからないと思います。これはむしろそういう取り調べを受けた人から聞く以外に私は手がないのじゃないかと思う。だからさっき申し上げたように、弁護士が一緒にそこに参加をするというようなことでもなければ、私は恐らく現在でも、きさまとかばかやろうとか、そういうことで調べられていると思う。ことにいま局長は、余りひどいことをして、後で外で顔を合わせたとき、こっちが逃げなくちゃならぬというようなことはやりたくない、そういう心理だろうと言われたけれども、いま申し上げている例はことごとく殺人犯として扱われているわけですよ。もしこれを犯罪者として決定できれば、断罪ができれば、再び町でばったり顔を合わせるという心配の全くない人です。ですから、そんな配慮とか懸念とかいうものは恐らく全然ないと思います。そして、いま申し上げたように、偉い人が行ってもそういう実況などは見せてはくれないと思います。  と申し上げますのは、たとえば彼の場合でも、急に留置場から出されて、通路の入り口の右側にあります刑事室に入れられた。そのとき、鈴木亀吉警察官がいままでにないようなそぶりでやさしく言って、気を楽にしろ、鈴木、いまおまえ何か食べたくないか、おれがリンゴを買ってあげると言って、私が何も言わずに黙っていると一方的に自分で決めてしまって、リンゴを三個買ってきて私に無理にくれた。そして後でわかったのだが、この日は沼津の裁判所から初めて検事が来る日であったというようなこととか、あるいは、同じように初めて裁判所に呼ばれて行ったとき、黙ってコッペパンを三つ自分にくれた。こういうことで、何のためにくれたか全然わからなかったけれども、コッペパンをくれた。そして、きょうは裁判所に行くのだと言った。そして、おまえは検事さんに会ったら、いままで言ったとおりのことを言え、よけいなことを言ったら承知しないぞというようなことで、大変におどかしをかけられているわけですね。一たん沼津に行っても、おまえがどのようなことを沼津に行って申し上げたかすぐおれたちにはわかるんだ、いいな鈴木、わかったなと言ってきつくきつく私に言いました、というようなことで、検事とか裁判官とかいう人の前に出るときには、ことさらにリンゴをくれたりコッペパンをくれたりする。こうなると私は、取り調べをする人たちもまことに卑しいというか汚いというか、実に不愉快な感じがいたします そういうことで、とにかくよけいなことを言うなということをしつこくしつこく言う。私はこういう点から見ても、いまの警察の留置場が代用監獄に使われていることに重大な問題がある。ですから彼はたびたびこの中に書いていますが、一刻も早く別の場所に移してもらいたい、検事に会って、あるいはまた裁判所に行って、そういう話をして帰ってくれば、もう徹底的にやっつけられるということは余りにも明瞭だ、だからもうここにはいたくないから一刻も早く外にかえてもらいたい、そういう気持ちだったということをるる書いておりますが、当然だと思う。  どうですか。代用監獄を直すということはできませんか。
  203. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 矯正局長がお答えするのが所管からいっていいかと思いますが、私も現在法務大臣の諮問に基づいて行われております法制審議会の監獄法改正部会の委員としてずっと出ておりますので申し上げます。  代用監獄というものの長所短所というものが部会でいろいろ真剣に議論になっておりまして、弁護士会推薦の委員の方々は、ただいま先生のおっしゃいましたような点を力説しておられるわけでございますが、現実問題として、代用監獄を一遍に廃止するということは技術的にも財政的にもできないことでございましょうし、警察の方におかれましても、代用監獄である警察の留置場の改善にずいぶん意を用いられておるようでございます。そういった点もこれから法制審議会の場で十分議論されることと思いますので、良識的な妥当な結論が出るのじゃないかと私どもも思っておる次第でございます。
  204. 加藤晶

    加藤(晶)説明員 御指名ございませんけれども、先ほど来警察のことが大分出ておりますのでお答えさしてもらいたいと思います。  調べの過程において非常に無理をするのじゃないかということで、正座をさせるというような御意見、推察がございましたけれども、私どもそういう無理な調べをするというふうなことは、少なくとも新刑訴法が施行されましてからは絶無を期してそれぞれ努力をしておるところでございます。正座をするというふうなこと、これはもう物理的にできないように、調べ室は机をはさんでいすでやるというように改めております。またそのほか、文字どおりの強制拷問じゃないのだけれども、それに近い、それに類したようなことということでございます。これまた、捜査はすべて終局的には裁判所に顕現するわけでございますので、その過程にそういう憲法違反とか刑訴法違反とか、あるいは公務員の暴行凌虐に当たるような行為があれば、おのずからその過程でそれが明らかになるわけです。そうしますれば、これは仮にそのときに自重して捜査を遂げたと言いましても、結果的に非常にマイナスであり、根本的に覆るわけです。そういう考量からいたしましても、決してそのようなことを刑事がやるということは私はないと信じておるわけです。  それから、具体的な例で申し上げますけれども、このたび再審開始後の一審で無罪判決が出ました米谷さんのことでありますけれども、これもそのような取り調べを行ったのじゃないかというような御推察でございます。私どもの方で調査いたしましたところ、それから裁判判決の中でも、そういうふうなことはないということを明白に書かれてあるわけです。この前の判決での「被告人自白検討」という項目が設けられてございまして、その一に「任意性」ということで、「関係証拠によると」ということで一、二、三点ほど特に主なことを挙げまして、「以上の事実が認められ、これらの事実から考察すれば、任意性を肯定できる。」というふうな最終的な判断を下しておられるということでございます。  それで、その過程でございますけれども、二十七年の二月の二十五日ごろに事案が発生しております。そして三月二日に通常逮捕状でもちまして自宅で米谷さんを当時の被疑者として逮捕しておるわけですけれども、その二十七年の三月三日に検察庁に送致いたしております。そして同日勾留がついたわけでございますけれども、三月四日に検察庁におきまして金員強奪の点を除いて犯行自白という形でございます。この間わずか二日ぐらいしか間にはさんでおらぬ。したがいまして、物理的にもそれほどの追い詰めた調べができるような状態ではなかったと私は思うのです。それで、警察調べに対しましてはこれは否認しております。それでそのとおり否認調書ができておる。調書は、御存じのとおりそれぞれ書きまして被疑者に読み聞かせる、あるいは閲読を経た上で、納得をした上で署名押印をもらっておるわけでございますので、そこに反することが書いてあるということはないというふうに私は思うのです。したがいまして、この米谷さんの事件につきましては、再審以前の裁判におきましてもこういうふうな自白強要ということ、任意性に疑いを及ぼすような事実はなかったというような判断を得ているわけでございます。ひとつ何とぞその辺のことは私どもの申し上げますことも御信用をいただきたいと思うわけでございます。
  205. 西宮弘

    ○西宮委員 時間が来たそうですから終わりにいたしますが、米谷さんの事件は、私さっき途中でお断りをしたように、正確な書面を読んでおりませんから新聞の記事だということを申し上げたので、新聞には、この判決があった後の談話ですけれども、「連日、捜査官から「お前がやった」と言われ、精神状態がおかしくなった」こう書いてあったので、恐らくこの丸正事件の鈴木一男君などと同じような状態だったろうということを私は想像して申し上げただけですから、事実がそのとおりであるならば、私は正確にはそういう根拠になる書類を持っておりませんから、それ以上反論できません。しかし、たとえば正座の問題もそういうことはやらせないようにできているということなんだけれども、それはいつからそうなったのか知りませんけれども、少なくともこの丸正事件の当時は静岡の三島の警察署では李得賢君も、彼は韓国人です。正座なんというのは生まれてからやったことがない、そういう人間が毎日毎日正座をさせられて非常に苦労したということを彼も言っております。いま彼は仮釈放として仙台におりますからしばしば会うわけです。あるいはその鈴木一男君なども、これは昭和三十四年に書いた書類ですから、恐らくまだ本当にその事件があって間もないときに書いたものですから、間違いないと思う。彼は非常にそれで苦しんだということを書いておる。だから、少なくともその当時、あるいは僻遠のそういう警察署等では行われておったのではないかということが想像できるので、私は、いまはやっておらないとしても、少なくともそういうことで自白をさせられたというような人たちにはぜひ再審の門を開いてもらいたいということを願わずにはいられないわけです。冒頭に申し上げたように、私は、再審制度を改めて、再審請求する人にその門がもっと大きく開かれるようにという願いを込めてきょうの質問をするのだということを申し上げたので、ぜひ今後の問題として再審の問題等は真剣にお考えいただきたいと思います。  そこで、これで終わりにいたしますが、実はこれ大変に膨大な資料なので、大事なところ何カ所か御披露して——たとえばいろいろこっちから言っても、いや、それはおまえ違うのだというようなことで、さっきの供述の強制の問題ですね、それは違うといって片っ端から訂正されてしまうというようなこととか、あるいは検事録音したときにも同じようなことなどがるる書いてあるわけです。そこで、時間がありませんから、その御紹介ができないので、これは後で最高裁にもあるいは刑事局長なり人権局長なりあるいは警察なり、差し上げますから、一遍ぜひ読んでもらいたいと思います。しかし最高裁にそういうことを申し上げると、いや、われわれはそんなものを読んだって裁判の指揮はできないのだ、こう言われると思います。ですから、私は決してそんな非常識なことを考えてもおりませんし、お願いもいたしません。ただ少なくとも彼が心魂を傾けて書いたこういう書類ですから、多少は皆さんの御参考にもなると思うので、ぜひ読んでいただいて、そういう被告人あるいは犯罪確定者になってしまったわけだけれども、そういう人間の心境などもぜひお察しを願いたいというふうに思うので、お願いいたします。  法務大臣はお忙しいでしょうから、これ全部読んでもらいたいなんということは申しませんが、ところどころ大事な点を拾い書きをいたしますから、ひとつこれも法務大臣、目を通していただくようにお願いしたいと思います。  いま私が最後にお願いしたことも含めながら、全体を通じて、法務大臣、何かありましたらひとり……。
  206. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 西宮さんが、きょうに限らず一つの無実も出してはいけない、これは当然なことでございます。人間のやることでありますから、絶対間違いがないとは私も言い切れないわけでありますが、一つの無実も出してはいけない、捜査段階でもあるいは裁判段階でもそういう心がけでやるべきだという立場からああいう詳細な御議論をなさるのだと私は拝聴しておるわけでございます。  ただ、これは、それがそうであるというわけじゃありませんけれども、刑事被告人なりあるいは有罪判決を受けた人はまた別な異常な精神状態になることもあるわけでございまして、そういう人たちの一方的な記述が全部また真実だと受け取ることも間違いを起こす場合があると思いますが、しかしそういう西宮さんの御指摘、これはやはり間違いがないと思っておっても各種捜査段階で間違いを起こしかねないことでございますし、裁判でも現に無実がたまにあるわけでございますから、十分に反省をし注意をしながら捜査裁判をやるべきものだ、大きな反省材料といたしたいと思います。
  207. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、正森君。
  208. 正森成二

    ○正森委員 きょうは最初にサラ金問題について若干聞かしていただきたいと思います。  すでに警察検察庁の方に依頼しておきましたが、サラ金関係で、たとえば出資等取締法違反等についての五十一年度、五十二年度の違反あるいは検挙状況について簡単に説明してください。
  209. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 必ずしも全部がサラ金であるかどうかわかりませんけれども、相当部分がサラ金ではないかと思いますが、出資法五条の高金利違反で受理しました事件数が、昭和五十一年度全国で一千百二十八、そのうち起訴しましたものが六百七十六でございます。五十二年度におきましては、受理をいたしましたのが一千十七、起訴しましたのが七百八十九、こういう状況でございます。
  210. 正森成二

    ○正森委員 警察では五十二年の十一月一日から十一月三十日まで一カ月間、特別の取り締まり強化月間をおやりになったようですが、その期間一カ月における出資法違反及びそれ以外に詐欺、恐喝あるいは暴力行為等についての検挙件数を御報告ください。
  211. 佐野国臣

    ○佐野説明員 お答え申し上げます。  昭和五十二年に金融関係法令違反、特に十一月の取り締まり強化月間にやった数字だけでございますが、申し上げますと、出資法違反が七百五十件、それから相互銀行法違反五件、証券取引法違反が一件、自主規制法違反一件、計七百五十七件。人員といたしましては八百二十五名という数字になってございます。  それから、この種の金融にまつわる暴力行為と申しましょうか、その周辺の刑法犯その他を御参考までに申し上げますと、詐欺事件が二十三件ございまして、あと恐喝四件、その他暴力行為とか傷害、脅迫、その種のものを含めまして六十八件で、合計九十五件。以上総合計いたしますと全体で八百五十二件の違反検挙が行われております。  それからなお、出資法違反だけに限りましてその態様をさらに細分して申し上げますと、預かり金の禁止、いわゆる二条違反関係が二十五件、それから高金利、いわゆる五条関係違反、これが四百九十二件、それから無届け業、七条違反でございますが、これが百九十六件、それから脱法行為、十一条関係、これが四件、その他三十三件となっておりまして、トータル七百五十件。  これをさらに率的な面で申し上げますと、七百五十件のうちの六五・六%、一番多いのが高金利事犯でございました。二番目に多いのがいわゆる無届け、これが二六・一先、次に預かり金の禁止違反、これは三・四%、その他が四・四%で、いわゆる脱法行為は〇・五%というふうな数字になっております。
  212. 正森成二

    ○正森委員 さらに、サラ金苦ということで行方不明というか、蒸発ですね、そういう事例が非常にふえておりますが、私の手元にある新聞の記事がありますが、警察庁の調べでは、家出人捜査願が昨年全国で十万件近く出ている、サラ金に絡むものも年々ふえていると推定されるが、動機別の内訳に借金とかサラ金といった項目がないので実数はつかめない、ただ大阪、京都府警、愛知、石川県警では特にサラ金絡みの家出を抽出して調べている、こういうぐあいになっております。この新聞によりますと、大阪では昨年一年間でサラ金による苦痛から家出をした家出人の捜索願は四百九十六件、捜索願全体の一割近くを占めておる、京都では二百五十六件がサラ金絡みである、本年も五月末までですでに百四十一件を数えておる、愛知県ではことしに入って五月末までに男が七十人、女が二十八人サラ金絡みで失跡した、こういうことになっておりますが、この数字はほぼ間違いありませんか。それともお手元に、警察庁全体としてはないけれども、大阪、京都、愛知等からの報告を受けているというのがあれば簡単に説明してください。
  213. 佐野国臣

    ○佐野説明員 手元にはただいま御指摘の数字がございませんし、そういった角度から調べたものはございません。  概括的に申し上げればこういうことは言えようかと思います。全国の出資法違反のうち、いま御指摘の大阪、京都、兵庫、これだけを抽出してみますとどのくらいの件数になるか、こういったアプローチはしてございますが、これでいきますと全国分の大阪、京都、兵庫分が一一・七%、それから人員で言えば約八%でございます。にもかかわらず詐欺、恐喝、その他の事案が全国分の幾つかと申しますと、件数で言うと二六・三%、それから人員では三一・六%というふうなことで、違反件数の割りにその他事案が非常に多いのじゃないかという感じはいたします。ただこれも、基礎になりますこの三県の違反件数が十件単位程度のものでございますので、これで将来を完全に占えるかというとまだ若干疑問があろうかと思います。
  214. 正森成二

    ○正森委員 いま保安課長が言いましたような傾向は西高東低型といいまして、業者の貸し付け等に比べると、西の方に追い込みと呼ばれる取り立てに関する違反が非常に多いというように言われているわけであります。  そしてサラ金の悲劇というのは非常に深刻でありまして、これもある新聞の調査によりますと、ことしに入って六月の二十六日までにサラ金が直接の原因になっての自殺と心中事件が全国で七十九件発生し、九十一名が死んでおります。その中でも特にいま保安課長が言いました三つの県が非常に多くて、大阪だけで心中が十二名、それから兵庫が九名、京都が八名、こういう非常に高い数字を示している、こういうことになっているわけですね。私はこれを後で詳しく分析したいと思います。  そこで大蔵省に伺いたいと思いますが、四十七年に貸金業者の自主規制の助長に関する法律というのが国会でできました。その中で、庶民金融協会、こういうものを都道府県ごとに一つつくり、庶民金融業協会連合会というのを全国につくるということになっておりまして、ここに加盟した者は庶民金融業者という名称を使うことができる。そのかわりに、ここに加入する者は貸金業を行うに当たって悪質または著しく不当な行為をしたときは退会しなければならぬとかあるいは会員の欠格事由というものが定めてありまして、それに該当した場合には退会させなければならないということで、いわゆるサラ金業者のうちの比較的善玉を庶民金融協会に入会させ、かつその名称の使用を許すというようなたてまえになっているようでありますが、それはそのとおりですか。
  215. 吉居時哉

    吉居説明員 ただいま先生の御指摘のようなことでございまして、若干詳しく申し上げますと、昭和四十七年にいわゆる自主規制法ができまして、各県にいま御指摘のような庶民金融協会ができました。これは各県ごとに一つつくりまして、ようやく去年の初めに全国全部にそろった、こういう状況でございます。なおそのいわば上部構造としまして、全国版としまして全国庶民金融協会ができております。それぞれの協会には定款がございます。それぞれの県によって定款の内容が多少違うとは思いますけれども、大体共通して言えますことは、いま先生御指摘のように、それぞれ定款の中に退会の規定あるいは脱会の規定というものが規定されているところでございます。
  216. 正森成二

    ○正森委員 一応私の指摘を肯定する意味での答弁であったというように思いますが、その組織率ですね、サラ金業者のうちこの庶民金融協会に組織されておる組織率というのは大体どのくらいであるか、つかんでおりますか。
  217. 吉居時哉

    吉居説明員 最近の数字で申し上げますと五十三年三月現在でございますけれども、いわゆる届け出しておりますサラ金を含む貸金業者全体で約十六万七千軒くらいでございます。そのうちいま申し上げました各県の協会に加盟しております会員の数は約一万三千軒くらいでございますので、約一割足らずという状況でございます。もっとも私ども実態をよくつかんでおりませんけれども、届け出はしておりますものの、実際にどのぐらい営業しておるかという点につきましては、よくわかりませんが、全部が営業してないと見込まれますので、実際の加盟率というものはもっと高いものではないかと思っております。
  218. 正森成二

    ○正森委員 そこで次に伺いたいと思いますが、私は検察庁に、各県全部のものをとるというのは大変でございますから、昭和五十二年度に京都で出資法違反で罰金刑等に処せられた者の氏名、商号、刑、それから大阪で同様の処分を受けた者の氏名、商号、刑というものを調べてもらって手元に出してもらいましたが、恐らく法務省の手元にあると思いますが、その中で大体五十二年度で処分された者が何名であったか、京都、大阪それぞれ答えてください。
  219. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 昭和五十二年中に出資法の五条違反で判決あるいは略式命令のあった者は、大阪地検管内が二十七人、京都地検管内が二十八人でございます。
  220. 正森成二

    ○正森委員 私が手元にいただいている数字とほぼ符合しております。ほぼというのは、恐らく法人と個人とが両罰されているのがございますから、多少数字が相違するのであろうというように思われます。  そこで、私は大蔵省から庶民金融協会の会員名簿を取り寄せまして、こういうように明白な出資法違反を犯した者の中に、いわゆる善玉とされている庶民金融協会に入っている者がどれぐらいあるか調べてみました。京都の場合には、三名がこの会員名簿と符合いたします。大阪の場合には二名がこれに符合いたします。そういたしますと、ほぼ一割ないし一割強ということになるわけですね。そうしますと、組織率とちょうど見合っただけの違反が出ておるということで、検挙率からいいますと、庶民金融協会に入っている者だけが善玉であるというようには決して言えない。サラ金業者の通常の違反率に従ってやはり違反を犯しておるということは統計上非常にはっきりしているのではないかというように考えるわけであります。  そこで、法務省に同様お願いしておきましたが、単に高金利の限度額以上に取ったというだけでなしに、業者の間では追い込みと言われておるようですが、利息を払わないとか元金を払わないという場合に、電話をかけ、あるいは職場へ押しかけ等々で取り立てを厳しくするわけですね。それがある一定以上の限度を超しますと、検察庁でもほうっておけなくなって起訴をする、有罪になるというケースがあるわけであります。  そこで私は、昭和五十年に名古屋で起こりました事件で、栗田盛義という男、これはMMリースに所属しておる男だそうでありますが、この人物がある女性に対する強要罪、それからもう一人の中学生に対して、強要、未成年者誘拐、強姦、道路交通法違反という罪を犯しまして、それぞれ非常に重い刑に処せられております。時間がございませんので、この件のそれぞれのごく簡単な概要について御説明ください。確定しているはずであります。
  221. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 御指摘の事件は、昭和五十年十二月二十六日に名古屋地裁で宣告のありました事件で、罪名が、強要、未成年者誘拐、強姦、道路交通法違反であります。  ごく簡単に内容を申し上げますと、判決によりますと、被告人はMMリース名古屋駅前店に管理課員として勤務しておりますうち、昭和五十年一月から八月までの間に、一、顧客に貸し付けた貸し金の取り立てに当たり、当該顧客の先妻を脅迫して借用証書の連帯債務者欄に同女の住所、氏名を自署させて、もって義務なきことを行わせたということの強要罪、二、やはり顧客に貸し付けました貸し金の取り立てに当たり、顧客の長女である十四歳の少女を甘言を弄して連れ出して誘拐したという未成年者誘拐罪、三、同少女を自動車に乗車させて連行の途上、自動車内において暴行脅迫を加えて同女を姦淫したという強姦罪、四、さらにアパート内において同女に対して暴行を加えて姦淫したという強姦罪のほか、五、酒気帯び運転をしたという道路交通法違反、これが事実でございまして、以上の関係で主文の刑が二つに分かれまして、強要、未成年者誘拐、強姦の関係で懲役四年、道路交通法違反の関係で懲役二月に処せられておるようでございます。
  222. 正森成二

    ○正森委員 もう一つ、この男はほかの二つの業者と共謀をしながら強要罪をやっているはずであります。それについて簡単に説明してください。
  223. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 関連のほかの会社の関係で申しますと、阪神リース名古屋支店の近藤某という者がおります。これが強要行為をいたしまして、昭和五十一年三月二日、やはり名古屋地裁で懲役一年二月、三年間執行猶予に処せられております。それからもう一つ、マルイト株式会社名古屋店の永坂某という者が同じく強要で昭和五十一年三月二日に名古屋地裁で懲役十月、三年間執行猶予に処せられておりまして、いずれも確定しております。  なお、先ほど申し上げました未成年者誘拐の関係で、MMリースの井上某というのが共犯者におりまして、昭和五十年十二月二十五日懲役一年、三年間執行猶予の判決を受けて、これも確定いたしております。
  224. 正森成二

    ○正森委員 お聞きになってもわかりますように、このMMリースの栗田という男は、借金をしたのと関係がない前妻のところへ出かけていって——もう離婚しているのです。だから法律上も全然関係がないのに、払え払えと言って、払わないとなると、今度は十四歳の女子中学生を、しばらく家から出せば心配して払うだろうということで連れ出し、しかも連れ出す途中で強姦をして、自分の内妻のところへしばらく監禁といいますか同居させておる、そこでまた強姦をするというとんでもないことをやっておるわけです。  いまマルイトというのが出ましたが、マルイトというのは新聞にもよく出ておりますように、業界でも第一と言われる大手のサラ金業者ですね。ここは主力銀行が三菱信託銀行で、去る二月の大蔵省の調査で、同行のマルイトに対する融資額は約七十八億円に達しているというのが新聞に出ておるわけであります。私は、これは本筋ではありませんからその融資額が正確であるかどうかということを大蔵省に聞きませんけれども、私が申したいのは、いま名前が出ていたような業者は、当時いずれも庶民金融協会に入っておったと言われておることであります。事実MMリースというのは庶民金融協会に入っておりまして、この事件が起こりましてすぐ社名を変え、代表者を変更するということをやって悟然としておるということになっておるわけです。そういたしますと、庶民金融協会は、貸金業者の自主規制の助長に関する法律という国会の法律に基づいてできた社団法人である、だからこれは非常にいいのだというようなことは言えないので、その協会自身にも非常に問題点を内包しており、そしてこれをさらによくしていかなければならないという性質のものであろうというように私は考えるわけであります。  そこで私が申したいのは、私はこの間大阪のサラ金被害者の会というところへ行ってまいりました。そこでそのサラ金被害者の会にいろいろ聞いたのですが、そこには、時間がございませんから申しませんけれども、いろいろ相談事がある。これは去る七月五日にわが党の沓脱議員もその一定の数字を出したと思います。私もそれ以外の数字をいろいろ聞いてまいりましたが、その会長が言うておりますのでは、われわれのところへ相談に来る件数のうち約三割から四割が、庶民金融協会に入っておるサラ金業者に追い込みと称する取り立てを食って相談に来るんだ、そのやり口というのは庶民金融協会に入っておらない業者と何ら変わるところがない、こういうように言うているわけであります。  また、このサラ金問題が非常に悪影響を及ぼしているというのは、この間広田という巡査部長が、京都府警におきましてピストルをみずから盗み、そのピストルを使用して強盗をするということが起こりましたが、その件についてこの男を調べてみますと、報道によれば、一千万円のサラ金の借りがあった、それを返すということも一つの動機になって、また上司に対するいろいろな恨みもあってああいう犯行を行った、こういうように報道されておるわけであります。また新聞報道によりますと、この男は自分の同僚の警官を八名まで保証人にした、そのうち四名がサラ金関係である、こういうように言われているのですね。これは非常に重要なことだと思いますので、これらの点について、現在捜査中でございましょうから、強盗の内容がどうであったかこうかというのは聞きませんが、その点に限って事実はどうなのか、答弁してください。
  225. 佐野国臣

    ○佐野説明員 広田のサラ金からの借金額及び件数について御報告をします。  サラ金業者からの借入金額は、四十七件で約千二百五十万円であります。現在の未済額が約一千万ほどございます。  それから保証人の関係につきまして申し上げますと、保証人に同僚警察官がなっていたということは事実でございます。しかし借財全部について警察官が保証人になっているというものではございません。それからサラ金関係だけで申しますと、保証人は四名が保証人になっておるという状況になっております。
  226. 正森成二

    ○正森委員 いま保安課長からおおむね私の質問を肯定する答弁があったと思うのですね。  そこで、私はサラ金被害者の会に参りまして、つぶさに実情を聞いてまいりました。その聞き取りもここにございますけれども、こう言うておるのです。警察の態度が非常に悪い、追い込みで非常に無理な取り立てに遭うたときに電話をしましても、忙しいのに一々呼ぶな、借りたものは返すのが当然だ、借りても返さぬから来られても仕方がない、こういうように、非常に違法な刑事事件にもなるようなことをやっておりましてもそういう態度をとる。そこで、被害者が今度は警察を呼ぼうといたしますと、そのことをサラ金業者が知って、あんなひどいことをするなら警察に電話をすると言うと、サラ金業者は、呼ぶなら呼べ、警官なんて全然こわくない、警官にもよく金を貸している、警官はわしらが飼うてやっておるようなものだ、こう言うのですね。私は、これを調査したときには、まだ広田がサラ金でそんなに金を借りており、警察官が保証人になっておるということが新聞に出る前でしたから、多少オーバーではないかと思っておったのですが、この新聞を見るとこれは当然だな、こう思うのですね。現に広田はサラ金から一千万円以上金を借りて、警察官の同僚に保証してもらっておる。そういうことなんですから、こういう警察官が、サラ金業者の取り立てで困ると言われても、おい、そうかというわけで飛んでいけるわけがない。だからサラ金業者は足元を見ておって、呼ぶなら呼べ、警官なんか全然こわくない、警官にもよく金を貸している、警官はわしらが飼うてやっているようなものだ、こう言うのです。そんなことで、一体国民の権利が守れますか。  民事不介入だとかなんとか言うけれども、取り立て方法等が一定の限界を超えれば、これは強要罪、恐喝罪あるいは先ほど法務省からお答え願ったように未成年者誘拐罪、強姦罪あるいは暴力行為、いろいろな犯罪になるのはあたりまえであります。それが、金を借りて返さぬのが悪いというようなことを言って突き放すというのには、やはり警察官の態度にも非常に問題がある、こう言わなければならないのですね。  あなた方は、綱紀粛正のためにどういうことをするつもりですか。
  227. 佐野国臣

    ○佐野説明員 警察といたしましてはい違法行為に対しましてはあくまで厳正公平を旨として対処してまいる所存でございます。  ただ、いま御指摘がございましたような、警察官の中にもこの種の借金をしておったというふうな者もございまして、まことに遺憾でございます。私どもといたしましては今後の指導といたしまして、サラ金に限らず、およそ他人から借金をする場合には、自己の収入から見て返済可能な範囲内に行いなさい、そういった形での指導を今後とも徹底するということで対処してまいりたい。もちろん法律違反に関しましては、最初申し上げましたとおり、あくまで厳正公平を旨として取り締まりに当たるということを今後いかに徹底していくかということで、その徹底を期してまいりたいと思っております。
  228. 正森成二

    ○正森委員 まことにのんきなものであります。厳正公平にやると言いましても、厳正公平にやろうにもやれないような条件をつくられていっているから、そこのことを問題にしているのです。また返済可能な限度の金を借れという、まことに道理にかなったようなあれだけれども、サラ金というのは、当初は返済可能な額なんです。それが年に一〇九・五%というようなとんでもない利息だから、おまけに利息を前引きしているとかあるいは書きかえ書きかえで、利息がまた元金に入って、それにまた利息がつくという状況だから、初め五万円、十万円とかあるいは数十万円のが、見る見るうちに何百万円。一番ひどい例は、ある一流会社の社員で二、三百万円を借りたのがついに億を超えたという例がある。だから、それをどういうぐあいに取り締まらなければならないのかということがいま問題になっているわけであります。  そこで私は大蔵省に伺いますが、大蔵省はこの自主規制の助長に関する法律の主管官庁であります。大蔵省では、銀行とかあるいは相互銀行とかいろいろな企融関係についての主務官庁でありますが、従来国会議員がそういう銀行協会等の顧問とか役員とかをしておった場合に、大蔵大臣に就任した、自分はそこを監督しなければならぬという立場になったときに、大蔵大臣は、おれは国会議員のときに顧問になったのだ、あるいは役員になったのだということでそのままにするのですか、それとも大蔵大臣であるときには、一応、李下に冠を正さず、ということでそれらの役職を一切引いてもらうのですか、どちらです。
  229. 吉居時哉

    吉居説明員 お答えいたします。  いままで相互銀行協会であるとかあるいは全国銀行協会といった金融機関の協会の顧問に国会議員がなられたという例は、いままでもないようでございます。したがいまして、いまの御質問のようにそういうふうな国会議員の方が大蔵大臣になられた場合にどうなるかという話につきましては、ちょっと私お答えしがたいのでございますけれども、仮にそういうふうになった場合にも、それは恐らくその方の個人的な御判断ということではないかと思います。もちろん個々の金融機関という場合には、これは恐らく余り密着な関係という点からそういうことにはならないと思いますけれども、協会という場合にどういうふうなことになるかということは、恐らく個々のケース・バイ・ケースの御判断かと思います。
  230. 正森成二

    ○正森委員 個々の金融機関の場合はどうなんですか。私は事前に大蔵省の役人を自分の部屋へ呼んで聞いていますよ。
  231. 吉居時哉

    吉居説明員 私の知っている限りにおきましては、個々の金融機関の、たとえば顧問をしておられたという場合に大蔵大臣になられたという場合には、その職をやめておられます。
  232. 正森成二

    ○正森委員 それは当然のことであろうと私は思います。  そこで法務大臣に伺いたいと思いますが、あなたは庶民金融業協会連合会の顧問をしておられます。それで過日国会で、参議院で質問をされたときに、善導をするのでおれはやめないという意味の答弁をされたようであります。私は、国会議員として顧問になっておられるという場合には、その方のお考えに賛成するかどうかは別として、それぞれの政治的立場でなっておられるのでしょうから、ここでとやかく申そうとは思いません。しかしながら、たとえば自主規制の助長に関する法律を見ましても、厳然と罰則があります。協会自身が違反したら、それを検察官起訴し、その検察行政を法務大臣は統轄しなければなりません。ところが、その統轄する立場の法務大臣が庶民金融協会の顧問であり、予算書によれば顧問料をもらう立場になっておるということは、李下に冠を正さずという原則から見て、決して好ましいことではありません。私は、あなたが宮崎県選出の国会議員、衆議院議員としてならとやかく言おうとは思わない。しかし、福田内閣の法務大臣としての地位にある限りは、そういうように国民の疑惑を受ける顧問というのはおやめになった方がいいと思います。現に、私が大阪のサラ金の被害者の会に参りまして、そこで会合をいたして意見を聞きました。こう言っております。ああいうひどい追い込みをしている庶民金融協会の顧問をしているような法務大臣がわれわれ被害者の気持ちをわかるはずがない、言語道断であり、決して公平な処分や取り締まりが行われるなんということは考えられないと言っております。こういう気持ちを国民に持たせるということは法務大臣として厳に慎むべきであり、それでは、下で一生懸命、厳正公正に検察行政をやっている検察官に対しても、上にある者として非常にまずいことになるのではないかというように私は思います。ですから、私は、ほかにもいろいろ申し上げたいことがございますが、その点についてまず法務大臣の御意向を承りたい。その御意向いかんによっては、あとの質問はやめさせていただいてもいいと思います。
  233. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 御忠告はありがたく拝聴いたします。しかし私は、実際顧問というものにあったのかどうか、実は意識していなかったのです。連合会というものの顧問にはまだ本当はなっていないのですが、なったことになっておるそうですか、それは、そういう言いわけはいたしません。宮崎県の庶民金融協会から、そういう事実も記憶にはっきりいたしませんが、依頼があったから、自主規制をするよい協会であるということで顧問になっております。そのために、違法を働いたり、国民の他の皆さんに迷惑をかける犯罪その他を捜査、処分するについて影響するとは思いませんが、私は、この庶民金融協会のみならず、それより、一般のいわゆるサラ金の被害——被害といいますか、非常に迷惑しておる場合があるということを、率直に申して非常にけしからぬ行為だという考えを持っております。何とか立法措置でもしてこの業界の粛正を図らなければならない、こういう強い考えを持っておりますから、別にあえてこれに執着するわけでも何でもありません。また個々のサラ金業者、いわゆる庶民金融業者、どういう人がやっておるかもつまびらかにしておらないのです。ましてや、これによって利益を得ようなんて全然考えてもおりませんし、またそういうこともありませんが、そういう考えで、あえて、これをおっしゃったからすぐ引くのがいいのかどうか、実は考えておるという状況でありますが、もし私が法務大臣の立場でサラ金、庶民金融協会の顧問をしておることが支障があるということを私意識いたしますと、引くのにやぶさかでありません。
  234. 正森成二

    ○正森委員 まだ最終的な結論ではございませんが、含みのある御答弁をいただきましたので、私もこれからは、申し上げることは申し上げますが、御参考に申し上げるという姿勢になりたいと思います。  御参考までに伺いますが、法務大臣は、最高裁が利息制限法違反の事案についてどういう判例の態度をとっておるか、重要な判例が大体二つないし三つあるわけでございますが、御存じでございましょうか。法務大臣は非常に高い地位の方でございますから、存じておらないというのであれば、補佐する事務当局がお答え願いたいと思います。
  235. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 私も法律家としての常識として存じておるわけでありますが、まず最初の判例といたしまして、利息制限法違反の部分は元本にまず充当されるというところが一つ。それからもう一つは、画期的なものだったと思いますが、返還請求の対象になる。この二つが大きな柱だと思います。
  236. 正森成二

    ○正森委員 伊藤刑事局長がお答えになったとおりであります。つまり、利息として入れたものでもそれは元本に充当していくということと、それから利息制限法違反で払ったものは、あたりまえなら不当利得として返還請求できないはずなんですけれども、昭和四十三年の判例でそれは返還請求ができるということになりました。まさにこれは画期的だ、こう言われておるわけであります。  そこで、私は法務大臣に伺いたいと思いますが、この判例を変えなければならぬというような団体があるといたしましたら、その団体に法務大臣が力をかすということは、これは法務大臣の立場から見て、三権分立のたてまえから好ましいことでしょうか、それとも好ましくないことでしょうか。
  237. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 その判例の趣旨を変えるという運動があるかどうか私は知りませんが、それはできない相談だと思っております。
  238. 正森成二

    ○正森委員 それでは、ここに全金連会報の一九七八年六月号があります。それの四十八ページに、昭和五十二年度第二回正副会長会議録、日時 昭和五十三年一月二十二日日曜日午後一時、場所 熱海温泉つるやホテル、構成員は七名で、会長一名、副会長六名、議長丸山慶蔵、こういうぐあいになっております。ここで第一号議案として「顧問委嘱の件」等々がありますが、その前に議題としていろいろ議長が懇談をやっております。その中に、これは文字どおり読みますが、「先ず最初に最高裁の判例を覆えす為にどうしても良い判例を作って行き度いと思います。」こういうように言っております。この「最高裁の判例を覆えす」というのは、いま刑事局長が言った判例であります。「良い判例」というのは、利息制限法違反のものでも、元本に充当せずに利息は利息なんだ、一たんもらった以上は不当利得返還請求なんかできないんだという判例にしようという意味であることは非常にはっきりしております。そして、こういう議論をして、すぐその後で「顧問委嘱の件」こういうぐあいになって、「全金連としましては、一〇人程度に止め度いと思います。何か御意見ございますか。」そして「各協会から御推薦して頂いてそれを一応参考にして一〇名程決め度いと思います。」そして九州ブロック代表ということで瀬戸山法務大臣、こういうことになっておるわけであります。いいですか、大臣。ですから、大臣自分では御存じではないと言われるかもしれませんけれども、全金連会報では、この最高裁の判例を変えさせる、そのためにいい判例をつくっていきたい、こういうことを言うた後で「顧問委嘱の件」こうなっておるわけであります。顧問というのは全部国会議員です。しかし、私は他の国会議員についてはとやかく言おうとは思いません。しかし、法務大臣としてはこういう団体の顧問をやるということは厳に慎まなければいけない。最高裁に対する三権分立のたてまえからいっても、そういうことは法務大臣在職中だけはやめなければならないというのは当然のことであろうというように私は思うのです。  ついでに大臣に御参考に申し上げますが、ここに庶民金融業協会連合会の定款があります。その定款の二十四条に「顧問」という項目があります。どういうぐあいに書いてあるか御存じですか。
  239. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 全然知りません。
  240. 正森成二

    ○正森委員 御参考に読みます。この顧問に法務大臣がなっているわけです。「第二十四条 連合会の事業の遂行に関する重要事項について、会長の諮問に応ずるため連合会に顧問若干名を置くことができる。」いいですか。会長の諮問に応じるのです。決して会長を指導するとか会を指導するということではないのです。そして、その重要事項の中に最高裁の判例を変えさせるということが入っているということは、議事録から見てきわめて明らかであります。そして顧問になる者の資格にはこう書いているのです。「顧問は、学識経験のある者又は庶民金融業界若しくは連合会に特に功労のあった者のうちから会長が総会の同意を得て委嘱する。」こうなっている。非常に失礼ですが、瀬戸山法務大臣は庶民金融業界にどのような功労があったと考えておられますか。
  241. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 庶民金融業界、どういう人が庶民金融しておるか、私は具体的に知らないのですから、功労などを及ぼす、まだそういう時期じゃありません。
  242. 正森成二

    ○正森委員 大臣のいまの御答弁は非常に率直な御答弁だと思うのです。しかし、私がここできわめて短い時間、三、四十分申し上げた中でも、業界全体として非常に違法行為がある、そして、庶民金融協会というのはそのうちの善玉であるということになっているけれども、組織率相応の違反件数がある、重大な、十四歳の中学生を強姦するというようなことも会員の中でやっておる、しかも、最高裁の判例を変えさせるということが重要議題であるということもはっきり議事録の中で言っておる。そういうものに現職の法務大臣が顧問になるということは、私は福田内閣のために、あるいは第一線で働く検察陣営の士気のためにも絶対にやってはならないことであるというように思います。  私は大臣に切にお願いしたいと思うのですが、これは日本の政治を憂える者同士としての話であります。私は、大臣が内閣改造でもございまして法務大臣をおやめになったときに、どのような団体の顧問をなさろうと、御自分の政治責任でなさることについてとやかく申そうとは思っておりません。けれども、法務大臣に在職中だけはお慎みいただきたいというのが私の政治家としての念願でございます。それについての御答弁を再度承って、この問題についての私の質問は終わります。
  243. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、私、連合会の顧問に正式にはなっておらないのです。そういうふうになっておるそうですか、私の意識では、さっき申し上げたようにこれは口頭ですから、宮崎県の庶民金融協会というのに顧問を頼まれてまあいいでしょう、こう言っただけであります。でありますから、連合会に私の名前があるそうでございますが、実はそれは正式のものではないと思います。さっき申し上げましたように、いまあなたがおっしゃったからそれでは私は引きますとはここでは申し上げません。そういう政治家には率直に言ってなりたくない。しかし、弊害があるかどうかよく考えてみたい、かように考えます。
  244. 正森成二

    ○正森委員 前の答弁だけでなしに、いまの答弁はまだ自分の意地にこだわっておられるようですから私はやむを得ず言いますが、あなたは正式に顧問になっていないなどと言われますが、私どもが庶民金融業協会連合会から正式にいただきました書類には、瀬戸山法務大臣は五十三年の三月から正式に顧問になっておるということになっておるのです。そしてまた、大臣の御答弁を聞きますと、連合会の顧問になるのはいけないけれども、宮崎県なら構わないかのごときニュアンスですが、しかし、宮崎県の庶民金融協会もやはり全国のものと同じ傾向を持っているわけですから、私は善処されるのが当然だと思います。そして、あなたは私に言われたからすぐやめるような政治家にはなりたくないととれるような、あるいは私の耳の聞き違いかもしれませんが、答弁をなさいました。しかし、私が失礼も顧みずあえて言わしていただきますなら、過ちを改むるにはばかることなかれということがあります。ですから、だれか同僚議員から言われたからといってやめるような政治家にはなりたくないと言われるよりも、国民はこのような協会の顧問になるような大臣になってほしくない、こういうぐあいに思っておるというのが本当ではないでしょうか。また、法務省の事務当局も心ひそかにそう願っておるであろうというように私は思います。これについての答弁はいただきません。しかし、大臣が静かにお考えいただきまして、メンツにこだわられることなく、国民全体の法務大臣として、李下に冠を正さず、こういう姿勢をおとりいただくことを切に期待いたしまして、この問題での私の質問を終わらしていただきたいと思います。  次に、非常に失礼ですが、大臣にもう一つ伺いたいと思うのです。  あなたは鹿児島県に視察に赴かれたときに、八日の夕べに鹿児島地検記者会見をして、「暴力のさばる日弁連」という発言をされたそうであります。ここにはサンケイ新聞を持ってまいりましたが、「一万一千人の弁護士のうち、三分の二は心の中で本当は賛成している。」しかし「堂々と賛成を言うと本人のみならず家族まで必ず脅迫を受ける」「信用されない一部の弁護士の暴力に多くの弁護士さんたちが屈している。」「こんなことを許している国は世界でも日本だけだ」こう言った後、次の国会で同法案は必ず通す、こういうぐあいに言われたという内容になっておるわけであります。サンケイでは「通るでしょう」こうなっておりますが、読売新聞では必ず「通したい」こうなっております。どちらが本当かわかりません。しかしながら、日弁連で弁護人抜き裁判に賛成の意見を言えば「本人のみならず家族まで必ず脅迫を受ける」というのは実に容易ならざる発言であります。もしそういうことであれば、犯罪として立件しなければならないことになるのです。また、賛成を言えば「本人のみならず家族まで必ず脅迫を受ける」現に受けてきたというようなことをあなたはいかなるルートから入手されたのですか。こういう発言によって日弁連が著しく名誉を棄損されたし実情に合わないということで、すでに単位弁護士会等ではこれに対する抗議決議をしておると私は聞いておりますが、この御発言は本当なのかどうか、もし本当だとすれば、その真意のほどはいずこにあったのか、伺いたいと思います。
  245. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 その件について、お聞きであったかどうか知りませんが、稲葉委員からの御質疑もありました。まあ新聞記事ですから、それが本当である、うそであるということは私は申し上げませんが、短い記事になっておりますから、いろいろ総合して書かれたのだと思います。私は日本弁護士連合会が脅迫を受けておるなんというようなことは考えてもおりませんし、そういう話はいたしておりません。このことは、前に当委員会で申し上げたことでございますが、三分の二云々というのは私の推測で、先ほども申し上げましたけれども、あるいはずっと前の当委員会で審議中でも申し上げたことで、これは私のおよその推測で、そうじゃないかという感想を持っておるということ。  それからもう一つ、脅迫云々ということも、これも当委員会でさきに申し上げたことでありまして、今度の特例法で何らかの措置をしなければならないといういわゆる過激派、暴力犯罪に関係する裁判について、たとえば裁判所が困って国選弁護人を選任する、こういうときに過激派の主張あるいは行為となかなか同調できないような弁護士さんが国選弁護人に選ばれる、これを非常に回避しておることは事実であります。たまたま選任された場合には、弁護士会で生命保険をつけておるという事態もある。  また、これも前の当委員会で弁護士連合会の機関誌に載っておる学者の論文を私が引用したことがありますが、日本では、過激派の裁判について国選弁護人を選ぶといっても、本人はもとより家族まで脅迫を受ける、こういう状態では、仮にある制度をつくっても、ドイツのような制度をつくっても意味がないだろう、効果はないだろうという趣旨の学者の論文、これは日本弁護士会の機関誌に載っておる。この論文御承知だと思います。そういう話をして、そういう国は世界じゅうにないと思う、こういう話を向こうから問われたからやったわけでございます。弁護士会が反対しておられるから、まだこれをやるつもりかという質問に対していろいろ実情を話した、これが実態でございまして、日弁連が脅迫を受けておるなどという頭もありませんし、そういう解釈はしておらないということでございまして、国会が通るかというと、国会は国会の考え方だから慎重審議をしてもらって、この前時間切れになったが、これはどうしても国会には通してもらいたいという考えを持っておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  246. 正森成二

    ○正森委員 新聞記事に大分取り違え等があるようであるということはおおむねわかりましたから、この問題についてこれ以上御質問することは差し控えさせていただきたいと私は思います。  そこで、警察庁に若干伺いたいと思います。  私の方の調査によりますと、栃木県警の栃木署に高橋考一という栃木市川原田千六百六十九番地に自宅がある警察官がおるようでありますが、そういう警察官は栃木署に勤務しておりますか、少なくもここ二、三年勤務しておりましたか。
  247. 三島健二郎

    ○三島説明員 お答えいたします。  ただいまの高橋という名前の警察官についての御質問でございますが、御質問内容は、恐らく五月三十日の日に栃木県の共産党の方々が栃木県下の警察署においでになって、警察に対して告発をしたいと言ってきて、告発をせずに帰ったケース……
  248. 正森成二

    ○正森委員 課長、要らぬことを言わぬでよろしい。そういう警察官がおるかと聞いておるのだから、おるならおる、おらぬならおらぬと言えばいいので、そういう内容のことはこちらから順次聞いていくから。
  249. 三島健二郎

    ○三島説明員 この問題につきましては、警察としては、警察法の命ずるところによりまして公共の安全あるいは秩序の維持ということで、その責務を果たすために共産党あるいは日本民主青年同盟につきまして重大な関心を払っているわけでございます。そのために必要な警察活動をしているわけでございます。
  250. 正森成二

    ○正森委員 委員長、ちょっとやめさせてください。何ということを言うのだ。
  251. 鴨田宗一

    鴨田委員長 やめさせるから座ってください。  あなた、ちょっと……。
  252. 三島健二郎

    ○三島説明員 そのような警察活動を適法妥当に行っているわけでございます。(正森委員委員長の言うことも聞かぬのか、あなたは」と呼ぶ)
  253. 鴨田宗一

    鴨田委員長 いまの正森君の質問は、そういう名前の者がいるかということだけだから、いるのならいます。いないのならいないと答えればいい。
  254. 三島健二郎

    ○三島説明員 はい、わかりました。  この警察官の名前を申し上げることにつきましては、今後の警察活動に支障があるということでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。(正森委員「何を言うている」と呼ぶ)
  255. 鴨田宗一

    鴨田委員長 正森君、余り興奮しないで。興奮しちゃだめだよ。
  256. 正森成二

    ○正森委員 興奮はしませんけれども、とんでもない話であります。こういう警察官がいるかと言って聞いてみたら、いるかいないかも、名前を言うのは差し控えたいというようなことを言う。この警察官がどんなことをしたか、あんなことをしたかということは私は全然言うてないのですよ。この警察官がわが党に対してどんなことをやったとかやらないとか全然言うてないのですよ。それなのに先走りして、きのう事前にこういう内容で聞くと言うておきましたけれども、いろいろ言うて、あげくの果てにはその警察官の名前を言うことはできないなんて言うたら、初めから何も質問できないじゃないですか。その警察官がいるとかいないとかいうことになれば、これは質問になりますけれども、その警察官がいるとかいないとかいうことさえ、日本共産党や民主青年同盟に対して重大な関心を持っているので、その内容は言えないのだと言う。そのくせ、自分の言いたいことだけは一方的に言おうとしている。いいですか、ここは法務委員会で、国会議員が政府職員に質問するのですよ。何も警察庁が演説をしたり、共産党に対して質問するところじゃないのです。
  257. 鴨田宗一

    鴨田委員長 だから、私がとめたからいいじゃないですか。
  258. 正森成二

    ○正森委員 とめたからいいですけれども……
  259. 鴨田宗一

    鴨田委員長 あなた、私に何か言うのですか。
  260. 正森成二

    ○正森委員 いやいや、言うてないです。言うてないですけれども、それじゃ質問にはならないということを言うているのです。名前さえ答えないのですから、そういう態度なら、その次聞いても、自分の言いたいことだけは演説して、肝心のこちらが聞きたいことは答えないということになる可能性がありますから、私は自分が本来聞きたいと思ったことをこれから簡潔に述べるということだけにさせていただきたいと思います。
  261. 鴨田宗一

    鴨田委員長 はい。
  262. 正森成二

    ○正森委員 それについて、場合によりましたら法務大臣なり検察庁に御答弁を願うというようにしたいと思います。しかし、警察庁にも聞くかもしらぬから、これで言いっぱなしにできるからと思って帰ったらいかぬよ。  この高橋考一という男は、私の方では証拠を全部持っておりますけれども、栃木県警の栃木署の警備を担当している警察官であります。この警察官が昭和五十年十一月ごろに、名前を申し上げてもいいのですが、当時その少年は未成年でございましたからKということにしておきますが、未成年の者のうちへ参りまして——この未成年の人物は栃木の工業高等学校に在学中の生徒であります。この生徒が警察官の試験を受けたわけであります。本人の供述によりますと、私は成績が悪いので、ほかはどこもだめだろうから、警察官でも仕方がないと思って受けた、こういうように言うておりますが、警察官の試験を受けて、結局採用にならなかった。そうすると間もなく、高橋考一という人物がこの少年を訪れまして、この少年は日本民主青年同盟に入っておったのですが、日本民主青年同組の情報を提供してほしい、協力してほしいということを依頼したわけであります。言葉を早く言いますとスパイにするということをやったわけであります。そして一番最初に、自分の所属している栃木工業高等学校の民青班の人員の名前、これを全部教える、教えると俸酬として三千円ほど与えるということをやりました。さらにまた、翌年の春でありますが、栃木県下の高等学校における民青同盟員の名前、住所等を教えるということで、各学校の卒業者名簿を持ってまいりまして、それを示して全部情報を提供させるということをやりました。このようにして、このKという未成年の男が警察官に情報を提供した人物の名前は数百名に上ると言っております。  それだけでなしに、昭和五十一年三月十八日に、満十八歳になる前にぜひ日本共産党に入党してほしい、入党して民青同盟員の情報だけでなしに共産党あるいは労働組合等の情報も提供してほしい、こういうことを言っているわけであります。そしてスパイ活動の方法や日常生活のあり方についてまで、この未成年の少年の指導をしておるわけです。  どう言っているか。一、まじめに活動して共産党や民青の幹部になるように。会議や大会には必ずきちんと出席する、積極的発言をして認められるようにしろ。二番、職場の労働組合や労音その他の大衆団体に幅広く関係してその情報を提供するように。三番、共産党や民青の事務所にふだんからよく出入りするようにして情報を持ってくる。それだけじゃなく、持ち出せる文書があったら持ってきてほしい、こう言って文書を盗み出してこい、こういう指示をしております。四番目に、民青や共産党の幹部に個人的に親しくなって、幹部の自宅を訪ねて、資料や文書があればそれを見るだけでなしに持ち出してきてくれ。事務所だけでなしに個人宅における窃盗を教唆しております。  そのほか職場での生活についても注意を与えておりますが、こういうことをやって、情報の提供を受けるたびに最初は二、三千円、それから五千円ぐらいに上がり、一番多いときには一万五千円支給する。それだけでなしに、高橋の自宅において情報を提供させたときには、仕出し屋の料理をとるあるいは奥さんが豪華なごちそうをするということで、本人を、悪い言葉で言いますが手なずけるということをやっております。  このKという少年は、当初は、物心つかないころでしたが、共産党は悪い団体だ、こういうように言われて協力しましたが、そのうちに自分のやっていることがスパイだというように気がついた、やめようと思ったけれども会うたびにごちそうを食べさせてくれる、お金をくれるということで、やめようと思ってもやめられなかったと言っているわけであります。  それだけではありません。この人物が、民青のある地区委員会の地区委員という中堅幹部でありますが、その地区委員になりますと地区委員会の事務所に出入りするようになりますから、地区委員会の合いかぎを入手しろ、また別の神部の自宅が事務所になっておるところでは番号であけるかぎの番号を覚えてこい、覚えてまいりましたら人のおらぬときに入って、その中のふだんはなかなか見ることのできない資料を見て書き写して持ってこい、あるいは持ち出せる資料を持ち出せ、こういうことで選挙関係の資料等を窃盗によって持ち出させております。  いやしくも警察官ともあろう者が未成年の子供に食事の供応を行い、会うたびにお金を渡し、そうすることによって事実上支配下に置き、単純窃盗だけでなしにかぎを入手しての窃盗、そういうものまでも指図するというのは一体何事ですか。われわれはこの問題について昨日すでに質問をすると言いました。そしてこの問題については現地の共産党がすでに抗議をしておるということもはっきり申しておきましたから、これらの事実は知っているはずであります。あるいは否定するかもしれませんが、ここに私は、弁護士が本人の同意を得て作成した供述調書を持っております。本人の署名、押印もあります。私はこういうことは絶対にやってはならぬことだと思います。特に、この青年がスパイとされたときはまだ満十七歳であります。  そこで、伊藤刑事局長に伺いますが、児童福祉法という法律があるはずであります。児童福祉法という法律では、満十八歳以下の者を少年とするというようになっているはずであります。それは間違いありませんか。
  263. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 十八歳未満の者を児童とするということになっております。
  264. 正森成二

    ○正森委員 第四条によりますと、「小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者」を少年とするというようになっているはずであります。
  265. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 もし児童と申し上げたとすれば、言い間違いでございます。
  266. 正森成二

    ○正森委員 この法律の三十四条一項の九号はどのようになっておりますか。そしてそれに違反した場合の罰則はどうなっておりますか。
  267. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 十八歳未満の者を心身に有害な影響を与えるような行為に使用してはならないということで、体刑を含む罰則があったと思います。
  268. 正森成二

    ○正森委員 こうなっております。「児童が四親等内の児童である場合及び児童に対する支配が正当な雇用関係に基くものであるか又は家庭裁判所、都道府県知事又は児童相談所長の承認を得たものである場合を除き、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為」をしてはならぬ。こういう行為をした場合には、六十条で「一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。」となっております。  そこで、十七歳の少年の時代から、会うたびに食事を与え、三千円、五千円の金を渡して、公然として国会に議席を持っておる政党やその関連団体の情報を提供させる、時にはどろぼうしてもよろしい、合いかぎを入手して人のおらないときに入って名簿等を持ち出してくるあるいは写すということをすればそれに対して報酬を与えるというようなことは、児童の心身に対して有害な影響を与える行為であるということは言うまでもない。私はそう思うわけであります。もってのほかではありませんか。  そこで、私は警察庁に伺いたいわけですが、あなた方がいま初めに私が聞いたこと以外のことを答えようとしましたが、そういうことは聞こうとは思いませんから、いま私が挙げましたいろいろの事実のうち思い当たる点があれば、そういうことはした、あるいはそういう事実はないということだけ答えてください。
  269. 佐野国臣

    ○佐野説明員 お答えいたします。  警察といたしましては、憲法に定められました責務を遂行するということで御協力をいただくことがあるわけでございまして、そのような御協力をしていただいた方との関係等の細かい具体的な問題を個々に公にするということは今後の警察の職務執行の上に非常に障害がございますので、これはいたすことができませんが、ただいま先生の御指摘がございました各点につきましては、たとえば未成年であったという点を御指摘でございますが、すでに本人は社会人として社会的な活動をしておる、あるいは民青同といったふうな組織の活動もされているということでございまして、社会的に十分判断をされる能力をお持ちの方でもありますし、あるいはまた、入党を強制するとかあるいは窃盗を教唆するとかあるいはかぎを渡すとかいうふうなことは、これは全くそういうことはございませんし、それからまた金を渡したということでございますけれども、警察といたしましては、協力いただいている方に必要な、たとえば旅費であるとかあるいは実費弁償的なものをお渡しすることはございますけれども、それは社会通念上妥当なものをお渡ししている、こういうことでございますので、いま御指摘ございましたような点につきましては、警察としては、調べた結果そういうものはございませんということでございます。
  270. 正森成二

    ○正森委員 いまの答弁を聞くと、本人はあたかも児童福祉法に言う少年ではなかったかのような印象を与えておりますけれども、しかし、少年ではなかったとは喜べておらないのですね。民青同盟に入っている、社会的常識を持った人だ、こういうような言い方をしておるのです。しかし、児童福祉法では、満十八歳の者は少年だということで、民青同盟に入っておればあるいは社会的常識を持っておれば、この法律に言う少年でないということは全然ないわけですね。また、その都度実費弁償、交通費というようなものを渡していると言いますけれども、そうではないのです。私どもの調べでは、百万円に達する金額をこの少年に渡しておる、こういうことを本人としては供述しておるわけですね、週に二、三回会ってその都度金をもらったというのですから。憲法に従った責務を実施するために御協力をいただいておると言いますけれども、一体憲法にそのようなことがどこに定めてあるか。思想、表現の自由とか、言論の自由とか、基本的人権とか、そういうことは定めてありますけれども、憲法上そういうものを破壊してもよいというような規定は、これはないはずであります。その他の非常にきわどい法律にしましても、いやしくも憲法で定められた基本的人権を侵すようなことがあってはならぬというような留保条項は国会においてつけられているというわけであります。  そこで、法律の専門家である法務省に伺いたいと思いますが、憲法上のどういう規定が、いま言うたような警察官の行為を妥当にするような条項ですか。参考までに教えていただきたい。(三島説明員「委員長、訂正します」と呼ぶ)いや、あなた方には聞いてない。憲法上、どういう規定があるのですか、法務省はどう思っていますか、法務省、まず答えてください。
  271. 鴨田宗一

    鴨田委員長 伊藤局長が答えてから訂正してください。
  272. 伊藤榮樹

    伊藤説明員 私も、いま御質疑、答弁を聞いておりまして、ちょっとポイントをつかみかねておりますので、ゆっくり考えてからお答えしないと間違うおそれがあると思うのです。
  273. 三島健二郎

    ○三島説明員 お答えします。  まことに申しわけございませんでした。私の言い違えでございました。警察法の間違えでございます。
  274. 正森成二

    ○正森委員 結局、答弁を聞いてもわかりますように、憲法上の根拠はない、しかし、警察法上根拠があると考えておるというだけであります。しかし、その警察法上もそういう根拠法規はないのです。たとえば、警察法の冒頭のところに、犯罪の予防、鎮圧とか、そういうような条項がありますけれども、この条文によってこういうことは許されるということは絶対にないはずであります。つまり、警察法を憲法に優先させるということをいまはしなくも答えたも同然であると言わなければなりません。  私は、同僚議員から時間であるというような御注意もいただきましたので、これでやめさしていただきたいと思いますが、ただ、一点申し上げたいのは、個人名は差し控えますけれども、この人物を民青同盟のある地区委員会の地区委員としておりましたが、何しろスパイと二足のわらじですから、余りまともな活動はできない。そこで、民青の地区委員としてとどまることができないという状況が五十二年の秋ごろから明らかになったわけであります。高橋という男はどうしたかというと、この人物と同じような地域でりっぱに活動している民青の地区委員、それを不当に配転するとかあるいは弾圧して、民青の地区委員としての任務ができないような職場に移しかえる、そうすることによって、このスパイの男が地区委員にどうしても選ばれざるを得ないようにするということで、二名の民青同盟委員の、あるいはそれ以上の同盟委員の職場へ出かけて、そうして職場と連絡をとって、弾圧をして、はるか遠隔の地に配転をするということをやっているのです。そして、現にこのKという人物に、そのときには十八歳以上になっておりましたけれども、おまえはこれほどおれが一生懸命地区委員にとどまれるようにやってやっているのに、結局民青の地区委員から一年だけでおろされてしまった、実にしょうがない、だらしのない男だということを言っているのです。まことに言語道断であると言わなければなりません。  私は、委員長やあるいは同僚議員に申し上げたいわけですが、わが党に対してあるいはわが党と関係のある団体に対してこういうことが行われていることに対して、私が憤激の気持ちを持つというのは御理解いただけると思います。もし、自由民主党に対してこういうことが行われたらどう思われるでしょうか。自由民主党といえども永久に政権の座にあるとは言えません。政権の座になくなったときに、自民党に対してこういうことを権力側から行われたとすれば、これは民主主義とはもはや言えないとおっしゃるに違いありません。ですから、相手が何党であろうとも、いやしくも国家の予算で養われている警察当局や公安調査庁がこういう卑劣なことをやってはいけません。そうでなければ憲法は滅びてしまうし、民主主義はなくなるに違いないということを私は申し上げて、時間でありますから、私の質問を終わらしていただきたいと思います。  最後に、もし法務大臣に所感があればお聞きをして、終わります。ございませんでしたら結構です。
  275. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 特別の所感はありません。
  276. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会