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岡垣最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。
東中委員を前に置いてこんなことを申し上げるのは釈迦に説法だと思いますが、話の順序でしばらくお聞き取り
願いたいと思いますけれども、その
訴訟指揮というものは判決に至る過程全部を指しておりますから、期日の指定、それから被告人を人定質問をして、さらに次は訴状を読みなさいとか、証拠調べですとか、一切合財入るわけでございます。したがって、要は
訴訟をどういうふうにやっていくかということ、そしてそれは大体
法律に決めてございます。たとえば審理にいたしましても、
訴訟規則で、二日以上かかるときはできるだけ毎日開けというふうに書いてあるわけでございまして、
裁判所は大体
訴訟法に書いてあること、規則に書いてあることをできるだけ忠実にやろうとする。ところが、それをやらせまいとする場合にいろいろごたごたが起きる、そうすると不当だというふうに批判される、そういうケースが多いのでありまして、御
指摘のように
裁判所が何か権限を乱用してどうこうしたという数は私どもはないと思っております。
ただ、こういうことはあります。例をとりますと、
刑事訴訟法二百七十七条に、
裁判所が権限を乱用して公判期日を変更した場合には、監督権を行う
裁判所に対して
司法行政上の
措置をとるように申し立てることができるとなっておりますが、この
訴訟を申し立てたのが幾つかございます。その中で
一つの
事件を取り上げて御説明申し上げますと、それは執行猶予を本来ならばつけたいと思われるけれども、
法律上つけることができない、これは十カ月ほど先に期日を延ばしてしまえば執行猶予をつけられそうだということで、
裁判所が期日を延ばして指定されたということがありまして、それに対してこの刑訴法二百七十七条による公判期日の変更は乱用であるということで申し立てがございました。しかし、これは最高裁としては
司法行政上監督権の
措置をとる必要はないということになっております。しかし、この同じ
事件が、では
刑事事件の
事件処理としてはどうなったかと申しますと、やはりそういう期日指定は違法であるということで取り消されております。
裁判上は。ですから、
法律で決められている
訴訟指揮の各
段階、それがどこまでできるかということに対する解釈の間違いということはございます。しかし、それを乱用するとか、悪用するとか、むちゃなことをするとか、そういうことは私どもはないというふうに
考えているわけであります。
そこで、問題の面をちょっと変えまして、
訴訟指揮についての特別抗告が認容された事例はどうか。要するに、それは違法だぞと言って取り消されたものはどうか、解釈が違うということで取り消されたものはどうかいうことで申し上げますと、証拠開示に関するものが三件ほどございます。これは証拠書類等の閲覧に関して、弁護人の方で見せろとおっしゃる、検察官の方で見せないとおっしゃる、それを開示しろ、こういうふうに
裁判所が命令した、その命令が
裁判所の
法律解釈が間違っているということで取り消された例が三件ございます。もし何だったら具体的にあれですけれども、三件と件数だけでよろしゅうございますね。
それから期日指定
関係で申し上げますと、期日指定では、先ほど申し上げました公判期日の変更決定に対して、そういう十カ月も延ばしたのはけしからぬというので取り消された例が
一つございます。それから弁論の分離、決定、判決宣告期日、こういうものを追って指定というふうにしたわけでございますが、これは被告人か外国に行っているというのでそれを帰ってくるまで待とうということで延ばした、これはいかぬということで取り消されたものがございます。
これが期日指定にかかわるものでございますが、そのほかには、弁護人不在のままに審理した一審の
訴訟手続が違法であるというふうに高等
裁判所で判断されたものがございます。
一つは必要的弁護
事件に関するものでありまして、これは大阪高等
裁判所でそういう
事件が一件ございました。これは破棄して差し戻しました。それから任意弁護
事件にも一件ございまして、これもやはり破棄して差し戻したということであります。それは必要的弁護
事件、任意弁護
事件それぞれについて弁護人がいないのに
裁判所で
訴訟行為をし、判決したということについては、これは詳しく申し上げればいろいろございますが、要するに
法律の解釈の違いということに帰するものと思われます。
以上、申し上げます。