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1978-03-31 第84回国会 衆議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三十一日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 菅波  茂君    理事 石橋 一弥君 理事 唐沢俊二郎君    理事 藤波 孝生君 理事 渡部 恒三君    理事 木島喜兵衞君 理事 嶋崎  譲君    理事 有島 重武君 理事 曽祢  益君       石川 要三君    久保田円次君       小島 静馬君    坂田 道太君       玉生 孝久君    水平 豊彦君       小川 仁一君    千葉千代世君       中西 積介君    湯山  勇君       池田 克也君    鍛冶  清君       伏屋 修治君    中野 寛成君       山原健二郎君    西岡 武夫君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君  出席政府委員         文部政務次官  近藤 鉄雄君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部大臣官房会         計課長     西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省管理局長 三角 哲生君         文化庁次長   吉久 勝美君  委員外出席者         文部省管理局教         育施設部技術参         事官      野村 武一君         国立科学博物館         長       福田  繁君         文教委員会調査         室長      大中臣信令君     ————————————— 委員の異動 三月三十日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     津川 武一君 同日  辞任         補欠選任   津川 武一君     山原健二郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出第二一号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 菅波茂

    菅波委員長 これより会議を開きます。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石川要三君。
  3. 石川要三

    石川委員 私は、今回のこの法案の中の教員大学放送教育開発センター、この点について二、三お聞きをしたいわけでありますが、何せ国会議員になってからまだ日も浅いわけでございますので、もういままでに触れられた点もいろいろとあろうかと思いますが、その点はひとつ御容赦をいただくとともに、御答弁をいただくときには極力わかりやすく御説明をいただきたい、こういうふうに思います。  まず、昨日いただきました法案提案理由の中に「教員研究研さん機会を確保することを趣旨とする大学院初等教育教員養成する学部を有し、全体として大学院重点を置く大学として設置し、学校教育に関する実践的な教育研究推進しようとするものであります。」こういうふうに書いてございますが、どうもこの内容というのが私は具体的につかめませんので、こういう点を特に聞きたいと思うわけであります。今回のこの教員大学創設される目的というものをこの中に書いてございますが、もう少しこれをわかりやすく再度御説明を願いたいと思います。こういう教員大学創設に対しては、当然その目的、それからさらに大臣としても何らかの大きな効果の期待というものをお持ちではなかろうかと思いますが、そういった点についてひとつ御説明をいただきたい、さように思います。
  4. 砂田重民

    砂田国務大臣 教員大学は、御指摘のように、また提案理由説明の中でも述べましたように、大学院学部、その双方を持ちまして、全体としては大学院にウエートを置いた大学として設置しようといたしております。  今日ほど教員資質の向上を期待する声が強まった時期はなかったのではないかとすら思うわけでございまして、また、現職教員の中にも、大学院におきます高度の研究研さん、そういう機会をつくってほしい、もっと勉強しなければという、現職教員の中に研さん研修気持ちが高まったのも、過去にも見られないほどその高まりを見ているわけでございまして、教員としてのすぐれた資質能力というものは、従来の方式の養成という段階だけではなくて、一度教員となってからの体験や研修、実習、このような過程を通じて本当の、いわゆる平たい言葉で言えばいい先生というものが確保される、こう考えるものでございますから、教員大学大学院は、このような現職教員専門職としての資質能力を高めようとする教員みずからの努力を助長していこう、こういうことをねらいとして創設をするものでございます。  また、教員大学は、学部におきまして、各方面からその創意工夫工夫改善必要性指摘されております初等教育教員養成を図ることにいたしております。子供たちの健やかな成長と発達を図りますためには、初等教育段階からの充実した教育が必要でございますことはもう論をまちませんし、また、近時、小学校と幼稚園の双方にわたる広い視野も要求されているところでございます。教員大学はこれらの要請にこたえまして、学部では初等教育教員養成課程のみを置きます実践的な教育研究重点を置きつつ、いろいろな工夫改善をもってすぐれた教員養成を図り、また、教員需給上の必要にも対応しよう、こういう考え方教員大学創設を、法案審議をお願いしているところでございます。
  5. 石川要三

    石川委員 そうしますと、学部初等教育教員養成ということで、大学院というものはそれからさらに進んだ、初等教育でない、それ以上の教員教育養成といいますか、そういうことでいいのですか。
  6. 佐野文一郎

    佐野政府委員 学部につきましては、御指摘のとおり初等教育教員養成課程のみを置いて、初等教育教員養成を図るわけでございます。大学院の方は、先ほどお答えを申し上げましたように、主として現職先生方を受け入れまして、現職先生方に高度な研究研さん機会を確保しようということを考えるわけでございます。大学院の方はそういう趣旨でございますので、もちろん入ってくる学校先生方をその学校の種別によって制限をするわけではございませんけれども、お入りになる先生方はおのずから小・中学校先生が多くなるということが考えられるわけでございます。この段階では、大学院で勉強したからといって新しく高度の免許状が出るとかなんとかということではなくて、大学院のレベルで高度の研さんをしていただきたいということでございます。
  7. 石川要三

    石川委員 こういうふうに新しく創設をするわけですが、そうすると、既設教員養成大学学部整備充実ということは当然必要なわけでございますけれども、これらとの関係について、既設の面の整備充実という点についてはどのように考えていられますか。
  8. 砂田重民

    砂田国務大臣 既設教員養成大学学部整備充実に努めていかなければなりませんことはもとより当然のことでございます。既設教員養成大学あるいは学部は各都道府県に従来から置かれておりまして、小・中学校教員養成を中心としつつ、それぞれその大学のございます各都道府県、その地域の実情とも関連をいたしまして、いろいろな課程の総合的、均衡的な整備充実を従来も努力しつつ進めてまいったところでございます。こういう既設教員養成大学学部に関しましても、小学校教員養成充実や、大学院におきます現職教員の受け入れ、まだ数は少のうございますけれども、こういった実践的な教育研究推進は、今後も引き続いて積極的に対応していかなければならない方向であると考えております。そして、文部省といたしましては、こういった総合的な整備充実や各専門領域教育研究充実と、従来からの実績にも配慮しつつ各大学における新しい方向、この改善努力を助長してまいらなければなりません。  なお、大学院につきましては、従来東京学芸大学と大阪教育大学の二大学だけでございましたけれども、五十三年度には愛知教育大学にも大学院を置くことにいたしまして、その他の大学学部につきましてもなお、ある程度の時日と準備が必要でございますけれども教育研究体制整備状況を勘案いたしまして、このような大学院を他の大学にも逐次置いてまいりたいと考えているところでございます。そのようにいたしまして、既設大学教員大学とが両者相まってより高度な教員養成の実を上げてまいりたいと考えているところでございます。
  9. 石川要三

    石川委員 いまも内容的のことに一部触れられておりましたけれども、特にそのように新しく創設されるものと既存のものとの並行的な整備ということは当然必要なことでございまして、この点につきましてはいま非常にはっきりした御見解を承りまして非常にありがたいわけでありますが、今回は上越兵庫という二つの創設をするわけでございますが、今後の増設していく計画等についてお聞きしたいと思います。
  10. 砂田重民

    砂田国務大臣 教員大学につきましては、これまで三カ所に関しまして、創設準備、これが兵庫上越でございます。また設置準備、これが鳴門、これを進めてまいりまして、昭和五十三年度では兵庫上越について創設を図りますほか、鳴門につきまして創設準備を行うことにいたしております。  これら三カ所以外への教員大学設置につきましては、昭和四十七年の教育職員養成審議会の建議では、現職教員のための大学院をたとえばブロックごとに配置をすることを提案しておられるわけでございますけれども、こういった経過がございますので、既設教員養成大学学部における大学院設置構想、これの進め方あるいは進み方、あるいはまた初等教育教員需給状況の今後の推移等、定数のこともまた関連をしてまいりますので、こういった推移の点を含めまして慎重にこれからも検討をしてまいりたい、かように考えております。
  11. 石川要三

    石川委員 次に、放送教育開発センター、こういうものが今回取り上げられたわけでございます。これにつきましても長い間検討されて今日になったと思いますので、本委員会におきましても過去いろいろとこれらの点につきましては活発な質疑がなされてきたと思います。  まず、この提案された内容の当面の中で、特にこの放送教育開発センター、これについての具体的な目的という点、それからまた放送教育開発センターのやろうとしている事業計画といいますか、そういったような点について具体的にお聞きしたいと思います。
  12. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部省におきましてはかねてから放送大学をぜひとも創設したいという構想を持っておりました。しかし、諸般事情から五十三年度においてはこれを見送ることといたしたわけでございます。しかし、放送大学創設をこれであきらめたわけでは決してございません。放送大学創設を目指しての諸準備を引き続き進める必要があることはもとよりでございますが、この構想推進に伴いましてその実現が期待されておりました放送を利用して大学教育に関する研究開発大学開放推進を図るとか、国・公・私立大学連携協力推進していくとか、大学一般教育充実などについては、今後大学教育発展を図ります上で早急にこれを進めていく必要がございますので、そのための機関として放送教育開発センター設置することにいたしたわけでございます。  このセンターは、国立大学におきます教育発展に資するための国立大学共同利用機関として設置されるものでありまして、放送を利用して行う教育内容方法等研究開発を行いますとともに、国・公・私立大学教員その他の者で、この機関目的であります研究及び開発と同一の研究開発に従事しているものにも利用していただこう、こういうふうなことを目的といたしております。また、放送教育開発センターは、国・公・私立大学から要請がありました場合にはその要請に応じて、その要請をなさいました当該大学教育にも協力をしてまいります。また、こういったことのために、五十三年度におきましては放送教育開発センターは、一つには放送利用高等教育におきます授業科目の編制及び印刷教材原稿作成、そういう仕事やら、放送教育実験番組の制作と放送、それから放送利用大学公開議座、あるいは学習指導方法実験、このようなことをこのセンターで行おうとするものでございます。
  13. 石川要三

    石川委員 いま大臣は、放送大学というものを従来から考えてきた。しかしこれを、捨てたわけではございませんけれども諸般事情で見送った。五十三年度においては見送らざるを得なかったという御発言がちょっとございましたが、諸般事情というのはどういうことなんですか。
  14. 砂田重民

    砂田国務大臣 端的に申し上げますと、放送法との関連がございまして、放送大学自身電波を持とうと思いますと、国営放送はただいまの放送法の許すところではございませんから、国立放送大学というわけにまいりません。やはりとるべき道は特殊法人しか考えられないわけでございます。しかし、五十三年度の予算編成に当たりまして、行政改革政府の基本的な方針の中の一つ特殊法人新設を認めない、こういうことがあったわけでございます。放送大学をつくりたいという気持ちは非常に強く持っておりましたものの、行政改革という政府全体の立場からのとらざるを得ない措置、これにはやはり協力せざるを得なかったわけでございます。そのことを先ほど諸般事情と申し上げましたけれども、端的に申し上げますとそれが事情でございます。
  15. 石川要三

    石川委員 行革関係で大局的な立場から特殊法人というものをすることができなかった、それに協力したということでございますが、そうしますと、行革という問題はきょうに始まってあしたに終わるものではなかろう、こういうふうに推察をされるわけであります。むしろ、この安定成長の中においては行革というものは非常に強く国民要請しているわけでありますので、そういう点では、この特殊法人を得るということはどうも道がだんだん狭くなるという感じもするのでございますが、そこいらの大臣見通し、そしてまた、もし門が狭くなって特殊法人というものの困難件があるとなれば、一体この念願を実現するにはどういう方法があるのか、そこいらをひとつ。
  16. 砂田重民

    砂田国務大臣 行政改革の重要な目的は、タックスペイヤーである国民が安い行政を望んでいる、それにこたえるための行政改革であると私は考えております。しかし、放送大学構想というものは、これからの大学進学希望者の将来見通しの数の変化、あるいは生涯教育というものが非常に重要視されてまいりました社会的な世相、こういうことに非常に大きな役立ちをする放送大学でございますから、特殊法人新設ということを考えましても、タックスペイヤーである国民がむしろ許してくださること、賛成してくださることである、文部大臣としてはそういう考えに立つものでございますから、特殊法人新設について懸命の努力をいたしまして政府部内の共感を得たい。そこに特殊法人放送大学というものを実現させる道が開ける。私は懸命にその道を進みたいと決心をいたしているところでございます。
  17. 石川要三

    石川委員 考え方につきましては同感であるし、その決意のほどはまことに敬服をするのですが、問題は見通しという点でございます。可能性といいますか、そういった点につきましてもう少し具体的にお聞きしたいと思うのです。
  18. 砂田重民

    砂田国務大臣 政党の方でもいろいろ御検討いただいておりますことと、やはり放送法なりあるいは電波法関連をするかもしれませんが、それとの兼ね合いの問題もございましょう。郵政省では放送大学のために波を一波確保してくれているということもございますので、私ども郵政省とも十分の連携を進めながら、見通しについてとおっしゃいましたけれども、これはもう私ども努力一つにかかっている。しかも、放送大学という、それだけ役立つものならばつくれという国民の支持のもとに私ども努力をいたしますならば必ず道は開ける、そういうふうに私は考えているものでございます。
  19. 石川要三

    石川委員 そういうような国民の背景と大臣の熱意によって必ず私も道が開ける、こういうふうには信ずるものでございます。しかし、物事というのは一〇〇%パーフェクトはないわけでございまして、最悪の事態も考慮していかなければならないと思いますので、いまのお話を聞いて大体わかるのですが、もしこの特殊法人というものがどうしても不可能な場合には、放送法を改正すれば国立放送大学でそれが可能であるというふうに認識してよろしいのですか。
  20. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これは文部省お答えをすることではなくて、郵政省お答えになることであろうと思います。ですから、これはそういう立場でのお答えであるということをまず御理解いただきたいわけでございます。  もちろん、全く形式的に申し上げれば、放送法電波法のたてまえを立法によって変えるということは形式的には不可能ではなかろうかと存じますけれども、従来の放送行政あるいは電波行政立場からいたしますと、国立大学がそのまま放送実施主体になるということについては非常に問題がございますし、法律を改正すればできるのだというふうには簡単には申し上げられないと存じます。
  21. 石川要三

    石川委員 次に、放送教育開発センターというものと放送大学、この関連関係がちょっとわかりにくいのです。いまの大臣の御説明によりまして、開発センターというものの内容についてはほぼ理解がつきますが、もうちょっとその両者関係というもの、たとえば放送大学のための一つのステップとしてこの開発センターというものがあるものなのか、あるいはそれと別に独立しているものか、そこいらをちょっと御説明願いたいと思います。
  22. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、放送大学創設につきましては、この放送教育開発センターの活動を通じまして実質的にその検討を進め、また準備を進めるということになるわけでございます。しかし、このセンターは、もちろん将来放送大学創設を考えてまいるわけでございますけれども、その放送大学の前身的な意味を持つものではないわけでございます。放送教育開発センターは、先ほどお答えを申し上げましたように、それとして積極的な意義を持った共同利用機関としてつくっていくものでございます。放送教育研究開発という事柄は、放送大学創設をされた場合におきましても十分に重要な意味を持つものとして継続をしなければならないものではございます。しかしながら、実際には両者の間に非常に密接な関係があることは事実でございますし、具体的に将来放送大学創設をされた場合にセンターをどのようにするのか、これについては私どもは、当面はもちろん両者併存をしていくことができるし、また併存をしながら緊密な連絡体制をとっていくということが考えられるわけではございますけれども、しかし、放送大学を具体に創設するという段階になりますれば、その設置形態あるいは放送大学の組織、機構等検討するに当たりまして、大学関係者の意向も十分に聞きながら、どのように対処するかは最終的に検討させていただきたいと思っております。
  23. 石川要三

    石川委員 この放送大学はどのようなものであるのか、内容構想をもう少し具体的にさらにお聞きしたいと思います。
  24. 佐野文一郎

    佐野政府委員 放送大学構想につきましては、すでに四十六年以来、大学局におきまして学識経験者にもお集まりをいただいて検討をいたしておりますし、また非常に大きな放送大学設置に係る基本計画というものがすでに関係調査会からも提出されているわけでございます。しかし、事柄が非常に重要であり、またこれから全く新しくやらなければならないことでございますので、それをどのようにこなしていくかについてはやはり文部省としての検討が必要であるわけでございます。  現在文部省で考えておることを申し上げますと、放送大学は、広く大学関係方々協力を得まして、最新の研究の成果と教育技術を集めて、新しい時代に対応できる大学教育放送を利用して広く国民に提供しようとする趣旨のものでございます。したがって、対象として考えますのは、一つには、広く社会人やあるいは家庭婦人に対して大学教育機会を提供する。それから、そういった生涯教育的な観点だけでなくて、高等学校を新しく卒業してくる方々に対しても、これまでとは違った新しい形態による大学進学機会を提供することにもなる。さらに、そうした進学者関係だけではなくて、既設大学との間の連携協力をこれによって深めることができる。単位互換であるとかあるいは教材放送番組の活用であるとか、あるいは教官の交流であるとか、そういった面を通じて既存大学に対していい意味での刺激を与えていくことができるであろうし、そういう形で大学教育、ことに大学における一般教育改善に寄与する点が多い。そういう意味では、これまで御指摘をいただいている大学閉鎖性であるとか、そういった点を改善して、大学改革を進めていく上で非常に重要な場になるということを期待しているわけでございます。  放送大学では、放送を利用した通信による教育をもっぱら行う正規大学ということに考えているわけでございます。このためにすでに、テレビのUHFとラジオのFMの電波全国的に郵政省によって確保されておりますので、それを利用いたしまして放送を行う。さらに印刷教材をつくりまして通信添削指導をする。あるいは各県に設置を予定する学習センターにおきましてスクーリングを実施する。そういったことを通じて正規大学教育を行おうというものでございます。  放送大学は、学部としては教養学部というものを置く。そして広い範囲にわたりまして授業科目を開設して、学生希望に応じて豊かな教養を養う、あるいは実生活に即した専門的な学習を深められるようにしようということを考えまして、生活科学産業社会、人文自然というような三つのコースを設けて、そうして学生がそれぞれの志望に応じて主たる専攻のコースをとれるような工夫をしようということでございます。ただ、受け入れる学生につきましては、これは放送大学設置趣旨からいたしまして、いわゆる選抜による入学というようなことではなくて、入学定員範囲内で抽せん等方法によって公正に入っていただく。その場合も、大学を卒業しようとして入ってくる方だけではなくて、特定の科目なりあるいは科目のまとまりを勉強しようという方も積極的に受け入れていく。そして広く国民の各層に学習機会を提供しようということでございます。卒業の条件を満たしました者については、学士号としては教養学士を授与するということになるわけでございます。この場合、夜間学部であるとかあるいは通信教育との単位互換、あるいは短大その他の高等教育機関からの編入学、そういったことについても積極的に考えていくというのは先ほど趣旨のところで申し上げたとおりでございます。  以上のような構想をもちまして、当面は、全国一斉に設置をしていくということが困難でございますので、これまで考えておりますのは、いわば東京タワーから電波の届く範囲、関東一円を当面対象として第一期の計画を進める。そしてその実施状況を見ながら逐次全国にネットワークを広げていく、そういう構想をこれまでは考えているわけでございます。
  25. 石川要三

    石川委員 そうしますと、平たく言って、理科系科目といいますか、学科というものはやるのですか。
  26. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど申しましたように、人文自然というコースの中に、当然自然科学の基礎的な分野については授業科目の開設があるわけでございますけれども学部考え方がいわゆる教養学部というような広い広がりを持った教養を考えます。既設大学のように、法学部であるとかあるいは経済学部であるとか工学部であるとか、そういった一つ専門を求める学部を置くわけではございません。
  27. 石川要三

    石川委員 そうしますと、資格は高等学校卒業ですか。これは大学生を募集するわけですね。当然これは入学試験みたいなものがあるのですか。そのときの資格ですね。そしてまたさらに、単位で、何単位取れば卒業できる、こういうふうになるのですか。
  28. 佐野文一郎

    佐野政府委員 入学者につきましての入学の資格は、もちろん正規大学でございますから高等学校卒業程度ということになるわけでございます。ただ、広く国民各層にわたって教育機会を提供しようということでございますから、いわゆる高年齢の方々学習をされようとした場合に、果たして高等学校を卒業程度と言えるかというような問題が出てくるわけでございます。そういう意味では、先ほど申しましたように、大学趣旨が広く国民各層に教育機会を提供しようということにありますので、これはなお大学設置審議会の基準分科会等での御検討を煩わすわけでございますが、できるならば入学資格についてもできるだけ弾力的な取り扱いができないか。たとえば、仮にお入りをいただいて、ある科目を履修して単位の集積ができれば、その時点で高等学校卒業程度と同じ資格があるという認定をして正規学生として入れる、そういったような措置が講ぜられないかというようなことが議論されているわけでございます。  入学試験を実施することは考えておりません。ただ、定員の関係がございますので、無制限に学生を受け入れるわけにまいりません。これはスクーリングの関係であるとか、あるいは通信添削関係等もございますので、もし入学定員を超えるようなことがございますれば、抽せん等何らか適切な方法を考えてお入りいただく方を決めるということになろうかと思います。
  29. 石川要三

    石川委員 スクーリングや何かをやる関係から無制限ということはあり得ないと思いますけれども、しかし、一般の大学と相当違いまして、放送というものを通じての勉強でありますから、一人や二人ふえたからどうだというようなことは当然ないんじゃないかと思うのです。そういう点で、資格が弾力的ならば、定員の方も思い切って弾力的に見られるのじゃないか、こういうふうに思いますが、そこいらはどうなのか。  そして費用、月謝みたいなものはどうなるのですか。
  30. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど申しました、私ども考えた第一期の計画の中での学生の受け入れ、私ども構想でございますけれども、予定いたしておりますのは、開設時の入学定員は一万人程度、そして学年進行に伴って在学者がふえ、あるいはいわゆるドロップをする者もいるわけでございますから、やはり一期の計画が完成した時点における在学者数はおよそ三万人程度になるであろうというようなことを見込んでいるわけでございます。  授業料はもちろん徴収するわけでございますが、これは私大の通信教育で現在徴収をしている授業料の額等を考えまして、大体それに近いものにするのが適切ではなかろうかと思っております。
  31. 石川要三

    石川委員 大体わかりました。  そこで、最後に文部大臣にひとつお尋ねいたしますけれども教員大学は、現在の先生方の質の向上というものが非常に大きく叫ばれている中で、今回の創設というものは非常に意義があるわけでありますので、ぜひひとつこの実現のために大いに情熱を降り注いでいただきたい、こういったような点のお考え、決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。あわせて放送大学、これは特殊法人とか、まだいろいろ問題が山積しておるようでございますが、とにかくいま学校に行くには入学試験の地獄だとかその他いろいろな問題が山積しておりますので、こういうような、茶の間にいて、また余暇を利用して大いに人生の生涯教育をするということはまことにすばらしいことではないかと思いますので、この放送大学の実現に向かって一層の前進を図っていただきたい。この二点についての最後に大臣の御決意をいただきたいと思います。
  32. 砂田重民

    砂田国務大臣 御主張の御趣旨、一々ごもっともでございまして、私も全く同感でございます。責任者といたしまして最大の努力をしてまいりますので、どうぞ御協力をお願いいたします。
  33. 石川要三

    石川委員 終わります。
  34. 菅波茂

    菅波委員長 玉生孝久君。
  35. 玉生孝久

    ○玉生委員 先ほど大臣から放送大学特殊法人にすることについての決意を承ったわけでございますが、行政改革という問題から考えて非常に前途多難であるというふうにおっしゃいますけれども行政改革そのものは国民のためにやるのであって、特殊法人をつくるとかつくらないとか、それは方針でありまして、私はどうにでも変わるのではないかという気がするわけであります。前に医科大学設置するときに、国家定員法が立ちはだかってこの構想に対して大きな障害になったこともあります。しかし、これも世論の声と皆さん方の御支援でできたわけでありますので、今度の場合にも、ただ特殊法人をつくらないという政府の方針であるからではなくて、いま大臣のおっしゃったように、もっと強く押していただきたいと思います。開かれた大学であり、いまの大学の閉鎖社会に対して皮肉にも見えるくらいの大きな成果を上げ得るというふうにさえ私は思うわけでございますが、重ねて激励の意味で、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  36. 砂田重民

    砂田国務大臣 私どもにいたしますと、いま参議院で御審議をいただいております五十三年度予算の編成のときには、すでにこれの特殊法人ということを一度見送らざるを得なかったわけでございます。見通しということになりますと、五十四年度予算に絡んでくることでございますから、私の考えというふうにお聞き取りをいただきたいと思いますが、行政改革目的が玉生委員が御指摘になった国民の期待にこたえようということは、簡素化されて、より安い行政を行うことを目的にいたしたものでございます。しかし、放送大学が、高校生なりあるいは家庭の主婦なりすでにお仕事を持っておられる方から、生涯教育の場としてそういうものができればと考えて期待をしていただいている国民各界各層の声というものは非常に大きなものがあると私は自負をいたしますので、特殊法人放送大学ができるということは、行政上のお金はかけることではありますけれども、それはタックスペイヤーである国民の許すところでもあり、賛成をしていただけるところだ、さように考えますので、その観点に立ちまして放送大学の意義を関係方面に十分に理解をしていただく努力をこれから積み重ねてまいりまして実現を期したい、かように考えるものでございます。
  37. 玉生孝久

    ○玉生委員 十分わかりましたけれども、この放送大学につきましては国民の期待が非常に大きいわけでございます。世論調査の結果を見ましても、四〇%ぐらいの高校生が卒業したら放送大学に入りたいという希望を持つように思います。未知なものにはあこがれもあるでしょうけれども、そういう開かれた大学に対して、余暇があったら少しでも勉強しようという国民の芽をつまないように、最後まで御努力をお願いしたいと思うわけであります。  次は教員大学についてでありますが、教員大学という特殊な大学をこの際おつくりになった根拠は何か。普通は総合大学なり教育大学というものがあるわけでございますが、特に教員大学と銘打たれたのは、先ほどおっしゃいましたとおり、大学院に中心を置くから教員大学となさったのでありますかどうですか、その辺のお答えを願いたいと思います。
  38. 佐野文一郎

    佐野政府委員 既設教員養成大学は、総合大学の場合には教育学部という名称を用いておりますし、単科大学の場合には、東京学芸大学だけを唯一の例外といたしまして、それ以外はすべて教育大学という名称を使っているわけでございます。教員大学も性質としては教員養成目的とする大学でございますし、従来の教育大学と変わるところはないわけでございますけれども、御指摘のように、大学院におきまして現職教員研究研さん機会を確保する、そういう創設趣旨がございますので、そういった教員のための大学をつくるのだという、その趣旨を名称の上でもできるだけ明らかにしたいということで教員大学という名称を考えたわけでございます。  なお、創設準備の過程では、大学院にウエートを置く大学ということで、仮に教員大学大学と呼んできた経緯がございます。しかし、この大学は、先ほどもお答え申し上げましたように学部を持つ普通の大学でございますから、したがって、大学院大学という名称を使うということは適当でない。大学院大学という名称を事柄の呼び方として使ってまいりましたけれども、正式に大学の名称として考えます場合には、教員大学大学という名称をとらずに、教員大学という名称にしたわけでございます。
  39. 玉生孝久

    ○玉生委員 四十六年六月一日、中央教育審議会で、「高度の専門性をもつ者に対し、特別の地位と給与を与える制度を創設する」一環として、「そのための一つ方法」という文句がございます。教員大学がいわゆる上級教諭の導入に通じることになるという見方がある方面では盛んでありますが、これについてはどうでございましょうか。
  40. 砂田重民

    砂田国務大臣 教職は高度の専門職でありまして、そのための資質能力は、養成のみならず、教員としての経験や研修によって形成、向上していくものでございまして、教員のそのような研修を助長いたしますために、大学院におきます教員研究研さん機会を確保する必要がある、そういうことについて四十六年六月の中教審答申にも述べられているところでございます。この中教審答申は「教員のうち、高度の専門性をもつ者に対し、特別の地位と給与を与える制度を創設すること。」とし、「そのための一つ方法」として新しい大学院創設することを提案しているものではございますけれども、一般に大学院を修了した教員の給与の改善については今後検討しなければならない課題であることは間違いございません。しかし、この教員大学大学院の修了者のみに特別の免許状や、給与等の上で特別の優遇措置を講ずるということは考えておらないところでございます。
  41. 玉生孝久

    ○玉生委員 特別の給与、特別の地位は上げないと言いますけれども教員大学に学んで二年間の研さんを積んだ者は、どういう報われ方というのはおかしな話でありますけれども、俗な言葉で言いますと箔がつくといいますか、それだけのものをよけい学び取るだけの努力をしてきたわけでありますから、このことについてはどういう方法でそれに報いるということをお考えでしょうか。たとえば主任手当のように御苦労に対しては報いるべき道をちゃんと考えてあるわけでありますから、教員大学に二年間行ってきて、給与の面でも地位の面でも何もやらないというのはどうでしょうか。
  42. 砂田重民

    砂田国務大臣 そこで私が先ほど申し上げました、一般に大学院を修了した教員の給与の改善は今後の重要な検討課題だと申し上げたわけでございます。先ほどから大学局長もお答えをいたしましたが、既設教員養成課程におきます大学院もすでにだんだんふえていることでございますから、学部を卒業しただけではなくて、一般に大学院を修了なさった教員の給与の改善というものは検討してまいらなければなりません。ただ、この教員大学を出たからといって、この教員大学大学院の修了者だけを特別に考えるという、そういう考えを持っていないということをお答えをいたしたわけでございます。
  43. 玉生孝久

    ○玉生委員 たとえば大学に対しまして出願をするときに、現職教員は任命権者の同意を必要とするということになっておりますが、そのとおりでありますか。
  44. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これもこれまで何回かお答えをしたことでございますけれども大学院でございます大学でございますから、入学者についてはもちろん大学において主体的に選考をし、大学院に入る者を決めるわけでございます。ただ、現職のままで二年にわたって職場を離れて大学院で勉強されるということになりますと、やはり、そうした現職のままで入学をし勉強するということについて、あらかじめ市町村教育委員会、あるいは私立学校の場合には学校設置者の方の同意を得ておいていただくということが必要になるわけでございます。これは入試の事務の処理上から申しましても、どれだけの方が大学院にお入りになって、そして二年間現職のままで勉学をお続けになるのかということが不確定のままの形で入学すべき者を選考していくということは非常にむずかしいわけでございます。既設のいろいろな大学におきましても、教員に限らずに、一般に公務員やあるいは民間の企業の社員が大学院にお入りになるというときには、その入学の出願をする機会に任命権者等のいわば受験許可書等の添付を求めているのが現在の実態でございます。それと同じような趣旨で、やはり同意を求めていただくということを大学側としては考えざるを得ないわけでございます。ただ、教育委員会等の同意がない者につきましても大学としては受験を拒むわけではない。しかし、同意のない方は現職のままで修学をすることについての保証がないということになりますので、そういう事態にならないように、やはり、現職のままで入学希望される方については、そういう本人の積極的な勉強したいという意欲を十分におくみ取りいただいて、円滑な形で同意がなされることを私たちは期待をしておるわけでございます。
  45. 玉生孝久

    ○玉生委員 それでは、出願をされるときに、その県の中で非常に希望者が多くて、任命権者のもとに同意を与えるように非常に多くの人がそういう志願をするという場合、そういう選考に地方の教育委員会は困ると思いますが、そういう場合にはどういう指導をされておりますか。別に指導されておりませんか。
  46. 佐野文一郎

    佐野政府委員 一つは、入学者として受け入れる者のある意味での割り当てのようなものを各県別に考えるかという議論が一つあろうかと思います。しかし、この大学院は一般の大学院と同じように、全国的なレベルで大学院教育研究を受けるにふさわしい能力をお持ちの方を入学者として選抜をするという考え方を持っておりますので、都道府県別に入学枠を設けたり、あるいはそれをあらかじめ県の教育委員会の方に割り当てておくというふうなことは考えておりません。教育委員会研修計画的に行うということの必要性は十分にわかりますし、都道府県別に入学枠を設けないと特定の都道府県入学者が偏るのではないかという心配も確かにあるわけでございますけれども、それぞれの都道府県教育委員会におかれても、現職教員入学させるにつきましてはそれぞれ県内の全体の状況をごらんになった上での計画、人事計画なりあるいは研修計画等が当然立てられるでございましょうし、あるいは財政事情等によって派遣する数も決して無制限にはならないと思います。おのずから限界があると考えられますし、また、教職員の能力につきましても、都道府県別に格差があるというふうには私たちは考えませんので、先ほど申しましたような形で、特に入学枠というふうなことを設けなくても、あるいは極論をすると最初は一部の県にかなり入学者が多いところが出てくるというようなことがありましても、逐次大学院学生の受け入れ数が年次計画でふえてまいりますし、その間、都道府県教育委員会の方もそれぞれ大学院における研修ということについての計画について調整をお考えになるということもあるでございましょうから、実際上は、ある期間の経過とともに問題となるような事態は起こらないというふうに考えております。またそういう方向で広く教員の自主的な勉学の意欲にこたえていくという形をとることが、この大学院趣旨にふさわしいというふうに考えております。
  47. 玉生孝久

    ○玉生委員 各県に割り当てはしない、そういうふうなことをいまおっしゃったわけですが、後の方を聞いておりますと、おのずから限界があるのではなかろうかということになりますし、それから、県に格差がないということを信じておやりになるわけでありますが、これは試験のあり方によっては歴然とその格差があらわれる可能性がないとは言えないわけでありますし、やはり県に割り当てはしないけれども、おのずから限界があるというところ、その辺は微妙だと思うわけでありますが、その辺につきましてもこれからまたひとつ十分お考えいただきますようにお願いしたいと思います。  次に、この教員大学に限らず、教員系の大学学部等の大学院現職教員入学できるようにすべきだという意見があります。教員大学だけしか入るチャンスがない、そうではなくて、いまあります教員系の大学大学院に、東京学芸大、大阪教育大、今度できます愛知教育大、そういうようなところにも現職のままで大学院に通わせるというようなことはお考えになっておりませんか。
  48. 佐野文一郎

    佐野政府委員 この教員大学大学院に限らずに、一般に教員養成系の大学院、あるいはさらに言えば教員養成系に限らずに、大学の一般学部大学院にも現職先生現職のままでお入りになって勉強される、そういうことは非常に望ましいことであると考えております。それで、学芸大学の場合も大阪教育大学の場合も、大学院創設する際に、そういった現職教員の受け入れが望ましいということについて大学側に十分な留意を促してきているところでございますけれども、実際の姿は、現職教員はなかなか大量にはお入りになっていない。現在、両大学を通じて現職先生で在学をされている方は十名程度であろうかと存じます。そのことはもっと拡大をされていかなければならないことではございますけれども、同時に、教員養成というものの将来を考えた場合に、やはり学部レベルだけではなくて、学部からさらに修士の課程に進んで勉強をされた方が先生におなりになるということは、教員養成のあり方としても非常に大事な一つ方向でもございます。したがって、既設大学に設けられていく大学院の場合には、やはり学部から進学を希望される方にも広く道をあけておく必要があるわけでございます。そういった点を考えますと、先ほど大臣からお答えを申しましたように、既設大学整備と、この教員大学による大幅な現職教員の受け入れと、二つの道をやはりそれぞれ一緒に進めていくということが大切であろうと思っております。
  49. 玉生孝久

    ○玉生委員 この定員に、現職から二百人、一般から百人の枠ということが決まっておりますけれども、これについては、現職教員の場合と一般枠の場合と入試の方法が違うのでありますか。どういうふうな入試の方法をとられますか。それとも論文等の採用はお考えですか。どういうふうなことになるのでしょうか。
  50. 佐野文一郎

    佐野政府委員 従来の調査会等での御検討の結果、三分の二程度は現職教員を受け入れようということで計画が進められてきておるわけでございます。しかし、御指摘のように、学部から進学をしてくる者の入試のあり方と、それから現職教員を受け入れる場合の入試のあり方を、全く同じにするということは適切でないと思います。現在、創設準備室で検討していることでございますし、また最終的には大学がどういう入試の問題にするかということはお考えいただくわけでございますけれども、いま準備室で考えられている方向は、現職教員大学院への入試については別の試験問題を考えるということが適切であるという方向検討しております。
  51. 玉生孝久

    ○玉生委員 入試の問題で、ちょっとほかの問題に触れてみたいと思いますが、今度共通第一次学力テストが行われます。ことしの雪は済みましたけれども、豪雪地帯の受験生はこのことについて非常に危惧をしておるわけであります。初めはこの第一次学力テストが十二月ということで、私どももそのころなら大して雪が降らないなというふうに思っておったのですが、いろいろな事情で一月十三日、十四日に決定されたようなわけです。東北地方や北陸、山陰では、この時点が一番豪雪の時期になります。この間の交通の正常な運行はほとんど考えられませんし、ときには県内の交通が全く麻痺することさえあるわけであります。このような地方では試験場を地域的に分散させて、受験生が来場しやすいように配慮する必要があるのじゃないか。またそのような事態を考えて一週間後に追試験が行われるように一応は配慮されておりますけれども、受験生の心情を考えますと、できるだけ全国一斉の日に受験するようにするのが本当だと思います。こういうときに、会場の設置に当たっては各県教委などと密接な連絡をおとりになりまして打ち合わせをされ、地域の実情に合った会場の設置を考えていただきたいと思います。  さらに、受験生が最寄りの受験場で受験できるようにするためには、出願に当たって受験場についてどういう希望を持っているかということもひとつ調べてやって御配慮いただきたいと思います。せっかく一生に一度の受験でございますので、できるだけ不安感をなくし、同じ条件で受験させてやっていただきたいと思うわけであります。特にことしの春の入試におきましても、北海道大学等では吹雪のために時間を繰り下げて試験を行うというふうな便法も弾力的な判断で行われておりますので、こういう点につきましてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  52. 砂田重民

    砂田国務大臣 御指摘のように、入試期日を十二月下旬から一月中旬へ変更をいたしました。北海道、東北、北陸地方などにおきましては、豪雪等によります障害がふえてくるということが予想されますことは御指摘のとおりでございます。試験の実施が一部または全部不能になってしまうということも想定をして、試験開始時刻の変更でありますとか、あるいは再試験の実施等について万全の対策を講ずることにいたしております。  ただ、試験場につきましては、各大学大学入試センターと連絡をいたしながらそれぞれの判断に基づいて設定することといたしておりますけれども、一方、その試験問題の厳正な保管だとか秘密保持だとか、あるいは監督者の配置、事故発生時の緊急対策というものを準備をしておかなければなりません。そのことと試験場を分散するということの兼ね合いの問題になってまいります。そういう問題がございますので、昭和五十四年度の入試は、最初のことでもございますし、各大学が責任を持って実施し得る範囲で試験場を設定をして確実な実施をやる、それがまず当面の一番大事なことだと考えているわけであります。なお、こういった実施の経験を積み、安全性を確かめながら、御意見のような点につきましては今後の問題として検討してまいりますけれども、豪雪等によって受験生を不公正な目に遭わせない、そういうことは十分留意をしながら準備を進めているところでございます。
  53. 玉生孝久

    ○玉生委員 御配慮いただいておりますが、この上ともまたひとつ特段の御努力をお願いを申し上げたいと思います。  ついでにもう一つ、職業課程からの進学についてもお伺いしたいのであります。職業高校からの国・公立への進学がきわめてむずかしい現状にあることはよく知られておるところでありますが、職業課程からの進学者は、昭和五十一年度の卒業生を例にとりますと、全国で約七万人、職業科卒業生の約一四%にもなっておるわけでございます。また、進学を希望しながらこれを断念した者は全国的にもかなり多いと思われますが、このことはわが国の産業、文化の発展にとっては決して軽視できないという声も大きいのであります。現在の大学入試制度は、大学における教育内容との関係もあって、職業科卒業生にとって必ずしも適切であるとは思えないのでありますが、大学入試に関して、職業科における学習活動の成果が必ずしも適正に評価されていないのじゃないかとも言われております。このような現状を改善するために、一部の大学では普通教科科目にかえて職業科目を入試において選択できるようにするとか、推薦制を採用したりしているようでありますが、職業高校の卒業生のためにこのような入試制度をさらに拡充されますように、かつての東京商科大学や東京工業大学のように、そういうふうな大学をこしらえてもらうとか、特設コース設置、拡充強化を図る考えについてどういうふうにお考えでしょうか、お伺いいたしたいわけであります。
  54. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、入試の面で、できるだけ職業高校の出身者が大学に進学しやすいようにするという配慮をする必要がございます。それについては、いま御指摘の代替科目の出題ということをこれまで各大学に対して求めてきたわけでございます。それからまた推薦入学につきましても、その数は逐年増加をしております。四十七年当時、国立は十一大学が推薦入学実施しておりましたけれども、五十三年度には三十六大学、これが五十四年度の共通入試の実施の時期には四十四大学において推薦入学実施するというような形で伸びてまいっております。  いま御指摘のように、大学と職業高校の教育課程の連続性ということを考えまして、職業教育発展のために、そうした職業高校に引き続くいわば高等教育機関を考えてはどうかという御指摘が従来からあるわけでございます。私どもとしては、工業高校、工業高等専門学校の卒業生を主たる対象として、技術科学大学というものを先般二つつくっていただきましたけれども、これもそういった趣旨にこたえる面を一つ持っているわけでございます。高等学校の職業教育に接続するような教育内容を持った高等教育機関、いわゆる産業大学を新たに創設すべきであるという御意見につきましては、いま申しました技術科学大学であるとか、あるいは既設大学や短大における教育内容改善の動き等を十分に慎重に見守りながら対処していかなければならないし、当面すぐそういった形での大学をつくっていくということを考えているわけではございません。
  55. 玉生孝久

    ○玉生委員 一般質問と紛らわしいという声もありますのでもとに戻りまして、上越教員大学が五十八年で兵庫教員大学が五十五年というふうに、学生受け入れの時期がずれておるわけでありますが、これは一方考えますと、ずいぶん先の話にも見えるわけですね。この学生受け入れの計画の異なる点についてはどういうふうな理由によるものでありますか、お伺いします。
  56. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、二つの教員大学につきましては、開学から学生受け入れまでの時期につきまして、兵庫の場合には一年半、上越は二年半の期間を置いております。これは、その間にそれぞれの大学におきまして学生の受け入れ等に必要な施設、設備の整備を行う、あるいは大学創設に当たる学長以下の教員のスタッフを整えて、それぞれの大学に最もふさわしい教育研究計画あるいはそれに適合した教職員組織を整備をする、そういったことを考え、それに必要な期間を見込んだものでございますけれども、特に校舎の建築等を進めるに当たりましては、両大学設置についてあらかじめ法律上の明確な根拠を得ておくことが適当であると考えてこのような期間を置いているものでございます。  兵庫教員大学につきましては大学院が先行することになっておりますけれども、これは、教員大学大学院における教員研究研さん機会を確保するということに重点を置いているということにかんがみまして、まず大学院教育研究体制整備をして、五十五年度から大学院学生を受け入れようということを考えたものでございます。学部学生につきましてはその二年後の五十七年から受け入れる。  それから上越の場合には学部が先行いたしまして、五十六年度から学生を受け入れるというふうに二年半の期間を持っているわけでございますが、これは、新しい大学創設計画が、これまでの経緯がございまして、新潟大学教育学部の移転統合の問題と十分な整合性を持ちながら推進をする必要がございます。そういったことを考えまして、五十六年の四月に学部学生受け入れを始め、大学院についてもその二年後には学生の受け入れをしよう、そういうことを考えたわけでございます。
  57. 玉生孝久

    ○玉生委員 時間がちょっと早く終わり過ぎましたが、お昼の準備にかかっていただくことにして、この法案は四月一日の施行になっておるわけです。四月一日におくれた場合にはどうなるのですか。きょうのあしたになるわけでございますので、どういう経過措置をおとりになるつもりか、お伺いしておきたいと思います。
  58. 佐野文一郎

    佐野政府委員 法律案でお願いをいたしております事柄のうち、四月一日施行といたしておりますものは、信州大学の経済学部その他既設学部の分離、新設の課題と、富山医科薬科大学と愛知教育大学大学院創設、四十八年度以後に新設された医科大学等の教職員の増員の問題がございます。  法案の成立がおくれまして施行日が四月一日以降となった場合は、学部の改組につきましては、新入生は現在の学部で受け入れて、法案の成立後に新学部に切りかえるということにならざるを得ないわけでございます。大学院につきましてはそういう措置がとれませんので、二大学とも法律の成立までは進学希望学生を待機させなければならないということに相なります。こういった状態が続きますことは学生に非常な不安を与えることになりますので、ぜひできるだけ早く成立をさせていただきたいと存じます。  それから、医科大学等の定員につきましては、四月一日以降、学年進行に伴う学生数の増加に応じて当然に必要となる教官の増員ができないというような事柄が起きるわけでございます。こういった事態につきましては、現在の法律の附則四項に政令による緊急の増員措置をお認めいただいている規定がございますので、緊急必要な最小限の定員増につきましては政令で措置をさせていただきたいということで準備をいたしております。
  59. 玉生孝久

    ○玉生委員 終わります。
  60. 菅波茂

    菅波委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  61. 菅波茂

    菅波委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。湯山勇君。
  62. 湯山勇

    ○湯山委員 いま教育の問題は非常に重要な問題だということは、大臣の所信の御表明にもございました。なお、いまの教育について、教育の崩壊というようなこと、これも真剣に心配されているし、これが国会でも取り上げられて、それに対する大臣の御答弁も会議録等で拝見いたしまして、私も大臣と同じように考えます。  ただ、しかし、教育内容あるいは教育の制度、そういうものと同時に、教育行政というものも考えてみなければならないのではないか。教育が崩壊の状況にあるということ、あるいは児童、生徒のいろいろな問題行動の問題、そういうのがあるときに、さて、教育がいまのような憂慮すべき状況の中にあってひとり教育行政だけは万全である、完全であるということは私はあり得ないというように思いますので、きょうはひとつそういう教育行政の問題点を、特徴的なものを幾つか取り上げて、そして私から教育行政について御要望申し上げることは御要望申し上げ、また教育行政の面で御配慮願うところは御配慮願いたいという気持ちで質問をさせていただきたいと思いますので、ひとつ気楽にお聞きいただくし、率直に大臣あるいは政府委員の皆さんもお答えいただきたいと思います。  そこで、何を取り上げるか、いろいろたくさんあり過ぎるのですが、最近の問題で、初中局長と社会教育局長と連名で「児童生徒の問題行動の防止について」という、これは「通知」となっていますが、通知が出されております。恐らく各県の教育委員会等に出されたもの、こう考えるのですけれども、これは両局長連名になっていますが、大変細かいことをお聞きして恐縮ですが、どちらが発議されてどちらが合い議されて、あるいはいつごろ出そうということをお考えになってこれを出されたのか、その点、まず伺いたいと思うのです。
  63. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 最近の中学生高等学校の生徒の非行問題というのはいろいろなところで議論をされておりまして、その中の一つとして先般の滋賀県における野洲中学校の事件のようなものもあったわけでありますが、そういう事態を踏まえまして、従来もこれらの生徒指導の問題についてはいろいろと通達等を出しておるわけでございます。しかし、ああいう事件が起こったりしますと、やはり重ねて関係者の一層の注意を呼び起こしまして、指導の徹底を期してもらいたい、こういうようなことで、二月の半ば過ぎからでございますか、初中局におきましてもどういう点に一層の注意を払っていただきたいかというような内容検討いたしまして、その素案を、現在の児童、生徒の指導という面から考えました場合に、単に学校だけでなしに、やはり社会教育の面からも協力してその指導を徹底していただく必要があるという観点から、社会教育局長にもお願いをいたしまして、両者でこの内容検討して、三月七日付で通達を出した、こういう経緯でございます。
  64. 湯山勇

    ○湯山委員 それによりますと、いまおっしゃったように「最近生徒間の殺傷事件、自殺等社会的に反響の大きい児童生徒の問題行動が目立つことは、誠に遺憾なことであります。」とある。滋賀県の野洲町の事件はいまお話がありましたが、これはほうっておけないというような大きい事件、これを出すに至ったそういう事件というのはどんなのがありますか。
  65. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 そのほかの問題として一々具体的に申し上げればまたたくさんあるわけでございますが、一般的に申しますと、最近の中学生高等学校生徒の非行の具体的傾向でございますが、これは先般も予算委員会で警察庁の方がおっしゃっておられましたけれども、われわれが見ておりますところでは、一つは、中学校高等学校の生徒について、窃盗とか万引きとかいうような、特にそのうちでもオートバイとか自動車をかっぱらう、自転車をかっぱらうとかあるいは万引きするとか、これは遊び型非行と言っているようでございますけれども、そういうものが多い。あるいは学校の中における暴力事件でございます。これは生徒同士あるいは教師を対象にした暴力事件。それから女子の非行の問題としては、性の逸脱といいますか、それがさらにエスカレートして女子高校生の売春であるとか家出であるとか、こういうのが目立ってきておる。それから、校の内外にわたっていわゆる暴走グループに参加をして、そのグループ間の粗暴行為が多いとか、あるいはそういった行為自体が中学生段階までかなり下がってきておる。それから、そういう行為をする子供の家庭というものが、従来かなり経済的に困難な、つまり親御さんの目の十分に届かぬような家庭が多かったのでございますが、最近いろいろ聞きますと、経済的にも中流の家庭の子供がそういうのに参加する、そういうような傾向があるようでありまして、全体的な非行の件数というようなものを年度別に見ますと、そう飛躍的にふえているわけではございませんけれども、徐々にふえつつあるというような傾向でございます。
  66. 湯山勇

    ○湯山委員 それで、この通知の主文の終わりには、「貴職におかれては、特に下記事項に御留意の上」というので下記六項目を挙げてございます。そして「問題行動の防止について十分な措置がとられるよう、周知徹底をお願いします。」とありますが、だれに周知徹底を呼びかけておるのでしょうか。
  67. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 御指摘がございましたようにこれは連名でございますが、初等中等局長立場で申し上げますと、これは都道府県教育委員会を通じて市町村の教育委員会、そして市町村の教育委員会を通じてさらに管下の小・中学校の校長、校長を通じて末端のそれぞれの先生方、それから直接は県立高校の校長先生方に県の教育委からということを考えておるわけでございますが、社会教育の方から言えば、県及び市町村の社会教育関係者、こういうことになるわけでございます。
  68. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで両局長にお尋ねしたいのですが、これでこの問題行動は防止できるとお考えになりますか。
  69. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 私は、この通達を出したからいま申し上げたような数々の問題行動が直ちに防止できるというふうには考えておりません。おりませんけれども、しかし、やはり一層関係者の注意を喚起して、さらに努力をしていただく、こういう趣旨でございます。
  70. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 ただいま初中局長からお答え申し上げましたように、この通知ですべてが解決するわけではございませんので、こういう問題を契機にいたしまして、社会教育関係者立場でもさらに一層子供たちの健全な育成のために配慮をし努力をしていく、こういうことを期待するということでございます。
  71. 湯山勇

    ○湯山委員 私がお尋ねしたのは、いまこういうのを出さなければならないようなそういう問題行動が具体的にありますか。そうしたらこういう問題がある。そこでこれを出したけれども、それじゃこれでなくなりますかと言うと、そこまでいかぬけれども努力はしてくれるだろう。はて、そんな程度のものですか、通達、通知というものは。この点ひとつお考えおき願いたい。後でもう少し詳しくお聞きします。  そこで、この中の第一項、次のようなことを周知徹底せよという一項ですが、「創意工夫を生かし豊かな教育活動を展開すること。教育課程を編成し、各種の教育活動を展開するに当たっては、十分創意工夫を生かし、個々の児童生徒が学校生活に生きがいを感じ、豊かで充実した生活の場となるよう努めること。また、教師は、あらゆる機会を通じて一人一人の児童生徒との心の触れ合いを持ち、一層の信頼を得るよう努力すること。」全くそのとおりと言えばそのとおりですが、これはどうせいというのですか。
  72. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 このくだりのところは、私が考えましたのは、一つには、今日非行に走る子供が多い原因としてやはり学校そのものが子供にとって魅力ある場でなくなっている。それは何かと言えば、学校へ行っても勉強することがよくわからぬというような場合もありましょうし、あるいは指導が十分徹底してないという場合もありましょうし、また、学校はやはり教師と子供の人間的な接触の場でありますが、その十分ないわば精神的なつながりというのもないというような場合もあろうかと思いますし、いずれにいたしましても子供が学校に魅力を感じない、学校へ行くことが喜びにならないということは、やはり一つの非行に走る原因になるのではないかということが考えられますのでこういうことにしたわけでありまして、しからば具体的にどういうふうにしたらよろしいか、こういう御質問でございますが、われわれが考えておりますように、学習指導要領自体をかなり改善いたしまして内容の精選を図ったというようなことも一つのあり方でありますが、そういう改善方向というのを踏まえていただいて、先生方が一人一人の子供にできるだけ配慮をしていただいて、いわゆる落ちこぼれと言われるような子供がないようにしていただく、そしてそれぞれの子供がやはり学校というものを楽しい——楽しいという表現は適当かどうかなんですけれども学校に行くことを進んでするというような学校の体制を一層つくっていただくということをこれは願ったわけでございます。
  73. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの落ちこぼれの問題とか学習指導要領の問題なんというのは、この六項目の中でどこにも書いてないのです。これを読んだら、こんな学校ができたら理想的でまことにいいだろうなと思いますけれどもね。  それから第三項、あとありますけれども、第三項、「個々の児童生徒の実態を十分に把握すること。」これはもちろんです。「学習意欲の低下、遅刻や欠席、粗暴な言動、服装の乱れ、喫煙・飲酒、無断外泊、仲間集団の動き、盛り場徘徊等については、早期に実態を把握して適切な措置をとること。」これも別に異議があるわけではありませんが、これはできますか。盛り場徘徊をしておるのは、出ているか出ていないかわからないけれども先生はとにかく盛り場へ行ってみないといかぬ。それから飲酒、喫煙。先生の前で飲酒、喫煙はまずないですから、これは、局長は中学のころにポケット検査というのをやられたことがありますか、どうですか。
  74. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ございます。
  75. 湯山勇

    ○湯山委員 そういうことをされながらどう思いましたか。ポケット検査をやって、細かいたばこのくずをつめでほじり出してやる検査をされながら、ああこれで先生との間に一層心の触れ合いができた、一層の信頼が得られるようになったとお思いになりましたか。
  76. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 そのことにまともにお答えしますとどうも変な方へ行きそうなんですけれども、私は、中学校のときポケット検査をやられて余りいい感じは持っておりませんし、ここは、喫煙、飲酒あるいは盛り場徘徊等について早期に実態を把握してと言っておりますが、ポケット検査をやれとか盛り場に行って調べるということを具体的に指導しているわけではないのでございまして、子供がたばこを吸うかどうかというようなことは、これはちょっと私も教育の経験がないのであるいは言い過ぎかもしれませんけれども、教師が一人一人の子供というものをよく見ておれば、どうもあいつはこのごろ少したばこでも吸っているのじゃないかというようなことが、本人自身からでなくてもいろいろなところから情報として入ってくる。それから盛り場の問題なんかにしても同じようなことが言えるわけでありまして、今日、教師が子供を指導する場合に、昔のようにいわば物を扱うように、ポケット出してみろとか、あるいは子供の後をついていって一々指導するというようなことが適当かどうかといえば、それは場合にもよりましょうけれども、一般的には必ずしも妥当しないわけであります。そのやり方はいろいろあると思いますけれども、やはりそういう点についてできるだけ実態を把握してもらう。要するに非行の糸口になるような行為については早くからそれを教師が知るように努力をしてもらいたい、そういう趣旨でございます。
  77. 湯山勇

    ○湯山委員 局長、それは無理なんです。長い間の教育の経験からなるべく早く見つけようというのが、ポケット検査になっておるし、服装検査になっておるし、それから盛り場だって、言われるようにそうやってわかるようなときはもう遅いのです。だからこういう無理なことを通達で出しても……。私は、これを出しても余り効果がないと言われたのは正直でよろしいと思ったのです。こんなもので問題行動が防げると思った人は大変じゃないですか、私はそう思うのです。  そこで、こうやっていけば皆そうなんで、四番目には、これは後でも言いますけれども、「生徒指導に関する校内組織と責任分担を明らかにし、学級担任、学年主任、生徒指導主事等の間の連携を緊密・円滑にし」とありますけれども、これはどうなんですか。生徒指導主事なんか手当をもらうのでしょう。そうすると、盛り場を歩くのは指導主事が歩け、ポケット検査も指導主事がしなさい、あなた手当をもらっているんだから。四番はこういう体制をつくれということですか。そうじゃなくて、指導主事は学年主任や担任に、こうやってやれよ、また各教員にこうせよというようなことを連絡指導する。盛り場を歩くときには喫茶店にも入らなければならないし、そっちの方はお金が要る。命令したり言いつけたりするのはちっともお金は要らぬのですよ。ここらも考えておいてください。もう答弁は求めません。これは後できちっと行政の姿勢の問題で大臣にお尋ねします。  それから、大臣にお尋ねしたいと思うのですが、青少年の徳性涵養について社会教育審議会に諮問しておられる。これは大臣は御存じでしょうか。
  78. 砂田重民

    砂田国務大臣 承知をいたしております。
  79. 湯山勇

    ○湯山委員 社会教育局長にお尋ねします。いつ諮問なさったのですか。
  80. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  諮問をいたしましたのは昭和四十九年の六月二十四日でございます。
  81. 湯山勇

    ○湯山委員 何年前になりますか。
  82. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答えいたします。  三年九カ月くらい前です。
  83. 湯山勇

    ○湯山委員 そうですね。緊急に青少年の徳性涵養について社会教育審議会に諮問なさった。答申はもうとっくに出たのでしょうね。
  84. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  答申はまだ出ておりません。
  85. 湯山勇

    ○湯山委員 約三年九カ月前に、これも今度と同じように書いてあると思うのです。「青少年の徳性のかん養について」という諮問ですね。「しかるに最近では、青少年に対する道徳教育の不十分さが指摘されており、」いまと似ておりますよね。そこで緊急に諮問したので、この諮問はゆっくり時間をかけて慎重審議して答申を出してくれ、こう書いてあるのですか、早くしてくれとありますか。
  86. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 諮問には特に書いてございませんけれども、当時審議をお願いいたしましたときは、問題が重要でもございますので、できるだけ一年ぐらいのところで御答申をいただければそれにこしたことはないということは申し上げたわけであります。
  87. 湯山勇

    ○湯山委員 申し上げただけじゃなくて、諮問の理由でちゃんと書いてありませんか。
  88. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  私の承知しておるところでは、理由には特に具体的に年数を定めてなかったと思います。
  89. 湯山勇

    ○湯山委員 これはコピーですから間違っておったら……。これによりますとこう書いてある。「したがって、この際、青少年の徳性のかん養について、早急に検討を進め、その具体的方策を明らかにする必要がある。」こう理由に書いてございます。早急と書いてある。最初お聞きしたのはそれなんです。今度の場合は、二月半ばごろに諸澤初中局長は、これはほうっておいてはいかぬというので作業に着手して、一カ以内の三月七日にはもうちゃんとこういう通知を出された。一方、同じような条件のもとで諮問されたこの青少年の徳性涵養についての、しかも大臣の諮問は三年九カ月たってなおそのまま眠っている。いつ答申が出る見込みでございますか。
  90. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のございましたように、諮問に当たりましてはできるだけ早く御答申がいただければということは申し上げたわけでございますけれども、社会教育審議会では、この問題は大変重要であるし、また取り扱いのなかなかむずかしい問題でもあるということで、慎重に御審議を続けられまして、総会を六回、その間に青少年教育分科会を十数回開かれまして、そして五十一年十月に青少年教育分科会からの中間報告が総会になされたわけでございます。御承知のように、この問題はなかなかいろいろな方の御意見あるいはお考え方が交錯する問題でございますので、総会では青少年教育分科会の中間報告をいただきまして検討に入られたのでございますけれども、いろいろな御意見が出されまして、そこで現在のところその取り扱いについて審議会でなお御検討中であるというのが状況でございまして、答申がいつ出るかということは、まだこの段階で私の方からはっきり申し上げかねるという状況でございます。
  91. 湯山勇

    ○湯山委員 答申は出ますか。必ず出るというお約束ができますか。
  92. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 審議会での御審議でございますので私がお約束申し上げるというのはちょっといかがかと思いますけれども、大変真剣に討議をされた課題でございますし、青少年教育分科会で熱心に御討議をいただいた結果についていろいろ御意見も出されているということでございますので、私どもといたしましては、審議会でさらに御審議もしていただけるものと思っております。
  93. 湯山勇

    ○湯山委員 なぜその答申がそんなにむずかしいのですか。いまのように、問題行動については文部省内で一カ月足らずでちゃんとこんな作業ができて、しかも末端の教員にまで周知徹底させるというのが出るのに、これだけ重要な、しかも大臣から社会教育審議会に出した、緊急だから早くやってくれというものが、いまも出るか出ないかわからないというようなこと、私はこれは正常じゃないと思うのです。異常だと思うのです。かなりむずかしい教員養成の問題についての審議会の答申、それが六月ごろに出るという御答弁が先日この委員会でありましたね。そんなのでももうこの六月ごろには出るというのに、この答申が、しかも青少年の緊急を要するものが一体いつになったら出るかわからない。その理由は、かなりいろんなものがあると私は思います。具体的にはどういう問題があるのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思うのです。
  94. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  青少年教育分科会から中間報告をいただきまして、その御報告を総会で御審議をいただいた際に、やはりこの中間報告では生涯教育というような観点からの議論がまだ不十分ではないのか、あるいは大人の問題をもっと取り上げたらいいんではないか、そういうことが必要であるのではないか、あるいは、より青少年の実態に近づくためにはさらにいろいろ細かい具体的な調査をした上で、もっと具体的な取り上げ方をしたらいいんではないか等々の御意見があったように承知をしておりまして、そういうことも踏まえまして総会ではさらに検討を続ける、こういうことになったように承知をしております。
  95. 湯山勇

    ○湯山委員 当時の総理はどなたでしたか。
  96. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  諮問をした際の総理は田中総理でございます。
  97. 湯山勇

    ○湯山委員 そうでしたね。ですから、当時の田中総理から三木総理、そして今日の福田総理と、三代かわっております。それから文部大臣は多分奥野文部大臣だったと思うのです。それから永井文部大臣、そして海部文部大臣、今日砂田文部大臣と、文部大臣は四人かわっておられます。それだけ重要な問題をそこまでほうっておいて、それでいいかどうかですね。悪いのは決まっておるのですから、いい悪いの判断は別として、私はもっと別に理由があると思うのです。こういうことはざっくばらんに言われたらいいんじゃないですか。というのは、諮問が四十九年の六月二十四日でしょう。五月の十三日、この諮問される四十一日前に似たような問題で何かあったのを、局長、御記憶ないですか。
  98. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  具体的な日にちを示しての先生のお話でございますので、これは想像で、違っていたら申しわけございませんけれども、田中総理が「五つの大切、十の反省」ということを提唱なさったという日ではないかと思います。
  99. 湯山勇

    ○湯山委員 そのとおりです。そうすると、五月十三日の田中総理の、五つの大切、十の反省というものとこの諮問とは関係はないとお考えになりますか。
  100. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  先ほども先生にお話し申し上げましたように、四十九年の六月二十四日に社会教育審議会に対してこの問題につきまして諮問をいたしました。その諮問の趣旨といたしましては、先ほど先生も御指摘のございましたように、次代を担う青少年の知、徳、体のすべての面にわたる円満な発達を図る上で、道徳教育の不十分さが各方面で指摘されていたことにかんがみ、学校教育における道徳教育充実を図るとともに、社会教育においても青少年の徳性の涵養についての具体的な方策を明らかにする必要があるという観点から諮問をさしていただいたわけでございまして、先生も御承知のように、四十八年の十一月二十一日に小・中・高の教育課程の改定につきまして教育課程審議会に学校教育につきましては諮問申し上げておりますので、やはり省内でもかねてから、社会教育につきましてもそういうことを学校教育と並んで考える必要があるのではないかという御議論はあったわけでございます。ただ、先生おっしゃったように、当時総理大臣が、五つの大切、十の反省ということを提言されたこともまた、先生も御承知のように事実でございます。
  101. 湯山勇

    ○湯山委員 大変、何というか、回りくどいというのは失礼ですが、慎重な御答弁ですけれども、もっとざっくばらんに、それはそうだというようにおっしゃってもいいと私は思うのです。というのは、この理由、お持ちでしょうか。
  102. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 持っております。
  103. 湯山勇

    ○湯山委員 持っておりますね。その理由、私が申してみます。読みます。おっしゃるように「青少年が知・徳・体の調和のとれた発達を逐げ、次の時代をになう国民として心身ともに健全に育成されることは国民がひとしく期待するところである。しかるに最近では、」いまのようなことで、そこでそのすぐ後です。「その対策として簡単で明白ないくつかの道徳律を掲げてその徹底を期することなどが提唱されている。」これまさに、五つの大切、十の反省じゃないでしょうか。もう一度言いますと、「その対策として簡単で明白ないくつかの道徳律を掲げてその徹底を期することなどが提唱されている。」これは四十一日前の五切十省。それから終わりの方、今度はこういうふうにやれというところもそうです。「例えば、青少年団体等が独自に当面強調すべきいくつかの実践目標を掲げて、その生活化を図ることを奨励したり、あるいは教育委員会が地域の伝統や現状を考慮して青少年の徳性のかん養に必要な実践目標を提唱したりすることなどが考えられる。」こうありますよね。したがって、私はこの答申は三日あったらできると思うのです。まことに親切に、こういう方法と、いま簡単明瞭な道徳律、目標を掲げてそれをやっていけと、こういうことですから、たとえば物を大切にする、あるいは交通規則を守る、そういうことによって徳性を涵養していく、これが大事だというので、それがいまずっと進行中ですよね、審議中。  ところが今度出されたのはどうかというと、それとは全く逆な方向です。一つの簡単な徳目を掲げて、それの徹底、生活化を図るというのじゃなくて、さっき申し上げましたように、とにかくまことに行き届いておるような、わかるかわからないか、創意工夫を生かせ、学校生活に生きがいを感じる、それから教師は一人一人の子供と心の触れ合いを持って信頼を得るようにする。逆ですね、行き方としては。三年九カ月前にこの方向でと諮問したものと、いま出されたものとは全然逆なんです。一体こういうことで本当に問題行動がなくなる、徳性涵養ができるかどうか、このことについてどうお考えになっておるのか、お聞きしたい。五つの大切、十の反省、そういうものはいまはもう教育の中にはないのでしょうか。これはどうお考えですか。
  104. 望月哲太郎

    ○望月政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のように、この諮問の理由におきましては、どちらかと申しますときわめて端的に実践目標などを定めて、これを反復訓練その他を通して身につけさせることが青少年の道徳教育、徳性の涵養に役立つということを掲げてございます。それで、今回の通知はきわめて包括的ではないかという御指摘でございますが、私どもは、今回の通知は主として学校教育の問題につきまして重点を置いて通知をし、かつそのことを社会教育関係者にも十分認識し、理解をしてもらうという趣旨で理解をしておりまして、学校教育と社会教育との対比は、学校教育はやはり組織的、体系的な観点からやや包括的、羅列的にならざるを得ない点がどうしてもございますので、そうではなくて、端的にいろいろな実践目標を定め、それを具体的に反復訓練その他を通して身につけさせるというところにむしろ社会教育の特色があるのではないかという趣旨で、この諮問の理由はそういうことを具体的に申し上げたわけでございまして、たとえば、地域によっておはよう運動をやっているとか、いろいろなことをやっていらっしゃる地域の例その他もたくさんございますけれども、そういう観点で、むしろ社会教育の特色をここに考えるという意味でこの諮問の理由は書かれたわけでございまして、先生指摘のように、これと今回の通知との間に違いがございますけれども、それは決して矛盾ではなくて、それぞれの特色という観点で御理解をいただければと思うわけでございます。
  105. 湯山勇

    ○湯山委員 それは残念ながら理解できません。というのは、この対象の青少年というのは学校を除外したものじゃないのです。それから、当時学校へ行ってみると、ちゃんと五つの大切、十の反省、こういうのが張ってある学校もありますし、今週は物を大切にする、あるいは約束は守るというようなことをそれぞれかけてやっている。まだ答申も何も出てないが、総理大臣が五つの大切、十の反省、それだけ言って、それがぱっと広がるとそういうのをやっている。やっている校長さんは、はあまあよくやっておるというような調子で、指導主事なんか回っていくと、あのとおりみんな一生懸命やっておりますよということなんです。総理もいまのようにおかわりになるし、文部大臣もおかわりになったけれども学校先生というのは、当時から四年たって、三十年くらい勤務するとして、かわっているのはせいぜい一割か二割、あとの八割、あるいは七割でもいいし六割でもいいです。それはかわっていないのですよ。そこへ今度はまたこれが行って周知徹底、こういうことでしょう。しかも、先生もそうですけれども、子供だってまだ、五つの大切なんて言われた当時の子供は、小学校の子は小学校や中学校へ残っておる、中学校におった子は高校でいま教育を受けています。  こういうことを考えると、そんなに、それはそれ、これはこれでというものではない。余り効果を期待しておられないから余り言わなくてもいいようなものですけれども、私は、ここの行政の姿勢が、教育というようなものにそういう一貫性、しかも現在審議中というようなものをどう踏まえてどうするかというようなことがなくて、ただ局長がひょっと思いついて、新聞にたくさん事件が出る、そうするとすぐ驚いてこんなのを出して、しかもそれができるかできないかわからない、まあ余り大した期待もしないというようなことをするのは、私は、非常に厳しい言い方かもしれないけれども、やはり無責任だ、ある意味教育行政の無責任あるいは責任回避というにおいがする。そうとられても仕方がないというように私は思うのです。が、大臣、いかがでしょうか。
  106. 砂田重民

    砂田国務大臣 湯山先生のおっしゃいますこと、私にはよく理解のできることでございます。まず初めに申し上げておきたいと思いますことは、教育の荒廃がいろいろな形であらわれている、そのことについて、教育行政の場に非常に大きな責任があるという御指摘に、私は全くそのとおりでございますとまずお答えをしておきたいと思います。一番大きな責任は私ども教育行政の場にありますものが感じていかなければならないということを、よく認識をいたしております上に立ってお答えを申し上げたいと思います。  通達だけで事が解決するかという御指摘でございます。私は、通達だけで事が解決するとは考えておりません。教育の荒廃を何とか立て直したいという総合的な一連の施策を講じておりますことは、もうここで申し上げなくても先生御承知のところでございます。学歴社会打破から、小・中学校学習指導要領の改定に至るまで、一連の総合的な施策ででき得る限りの努力をいたそうとしておりますことは、もうここであえて申しません。ただ、役に立つかという御指摘でございましたけれども、この両局長が連名で出しました通達を私は祈るような気持ちで実は見守っております。そして、ここに書かれましたことは、事新たなものは何一つ書いてございません。いままで教育現場におられる先生方が皆さん御承知のことであろうと私は思います。そのことを重ねて注意を喚起したにすぎません。ですから、この通達が、いま両局長お答えをいたしましたように、都道府県教育委員会を通じて市町村教育委員会へ、そして学校現場へおりたときに、何言っているんだ、それぐらいのことはやっている、自分は生徒を完全に把握している、そういう文部省を何だとおっしゃる先生がおられれば私はありがたいことだと思います。しかも、いろいろなところで行われている調査で、困ったことがあったら半分ぐらいの生徒は友達に相談をする、両親に相談をする生徒も少ない、教師に相談する生徒も少ない、そのことを先生御自身で、自分たちの恥辱だと考えておられる先生もたくさんおられるわけでございますから、この通達がそういうふうに伝わってまいりましたときに、そうだ、ここに書いてあるこのことを自分も気をつけようとお考えいただけたならば本当に幸いだ、こういう願うような気持ちで私はこの通達を見守っているわけでございます。  それから、社会教育審議会に諮問が出ておりますことを、私、承知いたしております。この諮問が事のスタートからつまずきましたことも承知をいたしております。五切十省のことを御指摘になりましたけれども、これを田中前総理がおっしゃったのではなくて、小学校子供たちから尊敬され、愛されている校長先生がおっしゃった言葉としてその書かれた言葉の内容を考えてみますと、私は間違っているものだとは思いません。しかし、たまたま言われた方が言われた方であったので問題になったわけでございます。諮問を出しましたちょうどその時期と幸か不幸かぶつかってしまったことも、この審議をむずかしくさせた原因になったということを私も認識をいたします。五十一年の十月十五日に永井文相が国会で御答弁になっておられました。永井さんは審議会の会長に、すでに言われている五切十省との関連で生じてきたけれども、そうしたものとの関連においてあの審議を続けていただくということは望ましくないということを明確に言っておられる。そういうお考えを永井さんが持たれたわけでございます。しかし、青少年の徳性の涵養というテーマそれ自体について考えると、それは非常に重要なものである。私は永井さんと同じ認識を持ちます。  そして、諮問をいたしておりますことに、何か非常に急いで答申をしていただくように書いてございますけれども、私としてはそれを必ずしも同じようには考えません。青少年の徳性でありますとか道徳とかいうことは、確かに教科が行われ、先生たちが道徳の涵養についても子供たち指導教育してくださっているところでありますけれども、その内容について、終戦後政府全体として、あるいは教育の場全体として明確な柱を立てたことがまだないわけでございます。青少年が持つべき道徳というものを、国民常識的な範囲でいまは判断をしているわけでございます。私はこのようなことは、時代の変遷とともに変わるべきものと変わらないものがあると思うのです。たとえば一つの例示的に申し上げますれば、憲法には青年たちのための結婚のモラルについて明確に書いてございます。男女双方の合意によって成立する。旧憲法にはなかった新しい結婚のモラルというものがここに明確に書かれているわけでございます。しかし、男女双方の合意のみでそれではそれが幸せな婚姻になるかどうか。今日の世の中でも、日本人的感覚をもってするならば、原則的には憲法に書かれているとおりの、当事者双方の男女の合意が一番必要である、そのことが両親から心から祝福をされるものであることをだれしもが望むわけでございますから、そこらの割り切り方が、この諮問にお答えいただく審議会でも非常にむずかしい点であろうかと思います。そのことを踏まえまして、審議会の自主性も私どもは当然尊重してまいらなければならないことでございますので、この諮問に対しまして、私、できるだけ早い時期に一度審議会長とお目にかかりましてよく御懇談を申し上げ、御意見も承らわしていただきたい、その上でこれをどうするかを判断をいたしたい、かように考えるものでございます。
  107. 湯山勇

    ○湯山委員 大臣から非常に誠意のある、そして率直な御答弁をいただいて、その点、私もよく理解します。ただ、おっしゃったように、当時、総理がああいうことを言う。文部省は平たく言えばそれに迎合する。そして今度は地方の教育委員会文部省に迎合する。いまも局長からありましたように、この通達はどういう順序かといえば、校長から教員と、逆を向いていくわけです。文部省も総理の方を向いている。教委もそう向いている。そうすると、末端の先生は、校長とか今度できた主任、そっちを向いていなければならない。同時に一人一人の子供と。体が幾つあっても足りません。つまり、通達行政は、できないようなことをやって、やらない方が悪い、しかもそれでできるように思っている。これは諸澤局長が悪いのじゃないですよ。望月さんが悪いというのじゃなくて、たまたま私が質問するときにあなた方お二人が局長をしておるから、大臣と同じように飛ばっちりを受けるような形で申しわけないのですが、これは私、長い間来ておる、むしろ戦前的な文教行政の体質だと思うのです。これを改めなければいけない。  だから、この通達がどう向かなければならないかというと、現場の先生が一人一人の子供たちと本当に提携して、いま三%ぐらいしか相談しないのが少なくともみんなが相談できるようになるように校長は努めい、教育委員会先生方がそうなるように努力せよ、そういう通達ならいいのです。そうなっていないところに、まだまだ行政が本当に抜け切っていない。ですから迎合的だということになる。皆さんに言わせれば主任制というのはいいことだとおっしゃるけれども、現場の先生にしてみれば、校長さんの言うことも聞かなければならぬ、教頭の言うことも聞かなければならぬ、また主任もどうやら言う。これでは子供の方を向いていくエネルギーがそっちへとられるのですよ。そういう通達なんです。それで一体いいかどうか。この辺もやはり、反対の強い問題についてはその現場の先生の声を聞く、意見を聞くという姿勢でなければ本当の教育はできないし、大臣が言われたような、先生が本当に子供たちの相談相手になれるという教育はできない。そうなれば、幾らこれへ書いても第一項にあるような教育の場はできてこない、このことを申し上げたいのです。  だから、もっと一貫性を持って、一番大事なことは、だれに聞かしたい、どうしたい、それがやりやすいようにしていくことで、通達行政が責任逃れととられたり、あるいは言いわけととられたり、そういうことにならないように、もっともっと真剣にやってもらいたい。これらの点で、私は今日までの教育行政には残滓が残っていると考えますので、ぜひこういう機会にそれを払拭するように御努力を願いたいと考えまして、あえて失礼をも顧みずいまのお尋ねをしたわけです。  時間がないようですし、ちょうど切りも来たようですから、ここで一段落いたします。
  108. 菅波茂

    菅波委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  109. 菅波茂

    菅波委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。湯山勇君。
  110. 湯山勇

    ○湯山委員 先ほどに続いて、次に、教育が異常であるということを感じられる問題の一つは入試の問題、特に私立の歯科・医科大学入学の問題でございます。どう考えてみてもわれわれの常識では納得しかねる面もありますので、これを通して、教育行政というのは一体どういうふうにあるべきかということをお尋ねしたいと思うわけです。  そこで、五十三年度の入学と絡んだ寄付金というのはなくなったというように判断しておられますが、五十二年度は一体どういう状態であったか。つまり、私立の医科・歯科大学入学に伴っての寄付金、それはどの程度の額であったか。このことについてまず承りたいと思います。
  111. 三角哲生

    ○三角政府委員 昭和五十二年度の私立の医科・歯科大学におきます入学時寄付金の状況でございますが、まず、医学部について申し上げますと、全体で二十八学部ありましたうち二十六学部において寄付金を徴収いたしておりまして、寄付者数は二千六百八十四人、これは入学者の八二%でございまして、寄付金総額が五百四十四億円となっております。これを入学者一人当たりの金額にいたしてみますと千六百六十二万円、寄付者一人当りの平均が二千二十九万円でございます。  それから歯学部について申し上げますと、十六学部のうち十五学部が寄付金を徴収いたしておりまして、寄付者数二千四百九十四人、これは入学者の九三%に当たっておりまして、寄付金総額は三百六十三億円、入学者一人当たりの金額といたしますれば千三百五十五万円で、寄付者一人当たり金額が千四百五十六万円というふうになっていたわけでございます。
  112. 湯山勇

    ○湯山委員 五十三年度はそれがどうなったということになるのでしょうか。
  113. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十三年度におきましては、御存じのとおり昨年来いろいろな遺憾な事態が発生いたしまして、文部省の方でも各大学に対する指導助言をいたしてまいりまして、それから医科大学、歯科大学当事者側におきましても、両方のそれぞれの大学協会というものを中心に対策の検討を重ねられまして、そうして両協会を中心にそれぞれの学校が態度を決められまして、入学の条件となるような寄付金はこれを廃止する。これは文部省の方でも昨年九月七日付の通達で強く要請したところでございますが、その線で今回の入試選抜が実施されておるはずでありまして、私どもは、そういった個々の大学が自主的にお決めになりまして、そして私どもが強く要請いたしました線が確実に守られて実施されるということを強く期待しております。ただ、入試後の入学手続がなお続行中な学校も残っております関係で、事実関係が果たして真実どうであるかということについてはまだ正確に把握いたしかねている状況もございますが、私どもは注意して見守ってまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  114. 湯山勇

    ○湯山委員 五十三年度の募集要項によって、私立の医大、それから歯科大、これらの、いろいろな名目をつけておりますけれども文部省指導によって納めさせる授業料以外の金額、平均どれだけになっておるかというのはおわかりじゃないでしょうか。
  115. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十三年度におきましては、いわゆる大学で授業を受けます関係で必要とする納付金はすべて募集要項に明示するという指導をいたしておりまして、なおその大学によりましては、何らかの特別の事業をいたしましたり、施設を建設するといったような必要、あるいは長い期間での一種の投資的な活動に対応するための資金需要、こういったものに応じますために、たとえば学債でございますとか、あるいは本当の意味の任意の寄付金というものを募集するということは、これは入学決定後に、あれば個々の学校事情によってあるわけでございますけれども、そういうものを別にいたしまして、いわゆる正規学生納付金としてすべて必要経費は募集要項に明示して、いわば非常に明朗にやっていただくということが基本線になっておりますので、それ以外の経費についてはないはずでございますし、私ども承知もいたしておらないわけでございます。
  116. 湯山勇

    ○湯山委員 昨年の五百四十四億と三百六十三億、合計して大体九百億ですか、私立の医大、歯大の寄付金の合計はそうなりますね。私立の医大の方が二十六大学で五百四十四億、それから歯科の方が三百六十三億ですから、大体九百億。これに当たる五十三年度の金額はどうなっておるでしょうか。
  117. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、必要な学生ないしその父兄から納入させる納付金、すべて明示するということで、従来寄付金の形で取っておりましたものによって支弁されていたようなものも、少なくとも経常的経費に充てるようなものについてはすべて学納金の方に入れて計画を立てる、そういう経緯があったわけでございますから、そういう意味合いで学納金が上がっておりまして、その学納金を計算してみたものでございますが、これはとりあえず入学定員で計算いたしまして昭和五十三年度の推計を下しますと、医学部につきましては百五十五億円、歯学部につきましては百四十億円というような概数が出てまいりますので、これを両者合計いたしますと二百九十五億円ということになるわけでございます。なお、先ほどもちょっと申し上げましたように、施設面あるいは投資的な経費のものにおきましては、将来、学校によりましては学債その他の方法で財源を求めるということもあり得ます。でございますから、昨年度入学寄付金で賄ったものすべてがこの二百九十五億円に取ってかわったということでもなかろうかというふうに考えております。
  118. 湯山勇

    ○湯山委員 いまの計算は入学定員で計算したということですが、定員と実入学人員との間にどれくらい開きがあると見ておられますか。
  119. 佐野文一郎

    佐野政府委員 五十二年度におきます医科・歯科大学入学定員に対する入学実員の割合は、医学部の二十八学部平均で一・二倍、歯学部十六学部平均で一・二一倍でございます。過去においてはこれよりもはるかに高い水増し率のときがございましたけれども、逐年改善をされてまいりまして現在はこういう状況でございますが、五十三年度はこれをさらに水増し率は下回るように指導をいたしておりますし、またそうなることを期待しております。
  120. 湯山勇

    ○湯山委員 文部省は今度は非常にいまのように強力な指導をなさったということですが、学生募集要項というのは点検になられましたでしょうか。
  121. 佐野文一郎

    佐野政府委員 各医科・歯科大学学生募集要項につきましては、事前に私どもはチェックをさせていただきました。
  122. 湯山勇

    ○湯山委員 私は資料をもらって調べておって、ちょっと疑問が出たのでその点をお尋ねしたいのですが、五十三年度定員増になる三つの歯科大学、鶴見、岐阜、城西、この三つの募集要項がお手元にございますか。
  123. 佐野文一郎

    佐野政府委員 ございます。
  124. 湯山勇

    ○湯山委員 それをちょっと見ていただきたいのです。一番重要なのはまず募集人員なんですが、どうなっておりますか。
  125. 佐野文一郎

    佐野政府委員 鶴見の場合は募集人員は百四十名でございます。それから城西の場合も百四十名。それから岐阜の場合には百六十名と訂正をされております。
  126. 湯山勇

    ○湯山委員 いまおっしゃったのが正しいのでしょうか。きのうですか、文部省からいただいたのでは三校とも百六十となっているのですけれども
  127. 佐野文一郎

    佐野政府委員 三校とも百六十が正しいわけでございます。この募集要項が印刷された時点においてはなお認可になっていなかったという事情があったものと思います。
  128. 湯山勇

    ○湯山委員 そこで非常に不思議に思うのは、一校は百六十で定員を発表しております。いまおっしゃったように岐阜ですね。ところがあとの二つは、五十三年度は百六十であるべきものが百四十となっている。これは私は両方が正しいというわけはないと思うので、どちらかが間違っておって、どちらかが正しいと言わざるを得ないのですが、これはどうなんですか。
  129. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、これらの大学については、五十二年度におきまして百四十名から百六十名への入学定員の増が行われておりますから、百六十名と書かれているのが正しいわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、この募集要項を印刷する段階においてはまだ認可がおりておりませんので百四十と書いているわけでございます。ただ一校は、紙を貼付して百六十という訂正をしているものをいま手元に持っておるところでございます。
  130. 湯山勇

    ○湯山委員 それはどちらですか。
  131. 佐野文一郎

    佐野政府委員 岐阜歯科大学でございます。
  132. 湯山勇

    ○湯山委員 岐阜歯科はちゃんと印刷が百六十になっています。募集人員は百六十名とし、二期に分けて合格発表する。ところが、同じように百六十名を申請して認められていながら、城西と鶴見とはごらんのとおりです。募集人員百四十と、こうなっている。これは全受験者に行っておりますね。さっき局長はチェックしたということですが、これはどういうチェックをしたのですか。
  133. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど来申し上げておりますように、これらの歯科大学について百六十名への定員増が認可されましたのは十二月の二十一日でございます。私どもがこれをチェックしている段階におきましては、もちろん申請は出ておりましたし、実地調査もすでに手続としては進行いたしておりましたけれども、なお認可にはなっていなかったわけでございます。また、定員増の認可については設置審議会できわめて厳しい審査を行っている途中でございますから、私どもはその点について直ちに百四十名を百六十名に訂正をするという指導はもちろんできないわけでございます。ただ、手元に持っておりますこの岐阜歯科大学の募集要項におきましては、私の持っておりますのは、募集人員は百六十名とするというのを、紙を上に張りつけて補正をしているものがございます。恐らくは城西の場合にあってもあるいは鶴見の場合にあっても、そういった募集人員について認可後はできる限りそれを受験生に周知する方法はとっていると思いますけれども、その点の確認は、申しわけございませんがいまの時点では私はいたしておりません。
  134. 湯山勇

    ○湯山委員 学校にとって募集人員というのは非常に重要です。ところが、いまのように、今回増員になった三校については、本来、本当の入学定員というのは百六十でしょう。だから手続がどうあろうと、十二月にそれができておるならば、当然、百六十募集する、あるいは百六十の見込みとか、そうあるべきで、チェックしていながら百六十があり百四十がある。どっちかが正しければどっちかが間違いなんでして、私はちょっとルーズじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  135. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおり、これは百六十の方が正しいわけでございますが、この印刷の時点ではまだ百四十の方が正しかったわけでございます。これは事の性質上、注書きで現在申請中であるけれども百六十名になる見込みというのが書いてあれば、むしろ私の方は落としてくれということを申し上げる以外になかろうと思います。ただ、十二月の末の段階では認可になったわけでございますから、その時点でできる限り、募集要項をその後で配るものについては張るなりあるいは直すなりして徹底すべきであるし、あるいは学内に掲示する等の措置をもってできるだけの周知を図らなければならないことは当然のことでございます。それは恐らく両大学とも私はやっていると思いますけれども、それを確実にいまお答えができないわけでございます。
  136. 湯山勇

    ○湯山委員 やったかどうか確かめていませんね。私はその辺にやはり、今日私立の医科大学、歯科大学が、言葉は厳しいですが、乱脈をきわめている原因がある、そう言わざるを得ないのです。というのは、この三校の申請が出たのは九月以前でしょう。もうその当時、この三校は言ったとおり認可になるということが周知の事実だったわけです。そういうことを御存じないですか。
  137. 佐野文一郎

    佐野政府委員 三校の認可申請が提出されたのは御指摘のように六月末でございます。この三校について定員増が認可をされたのは十二月でございますから、それまでの間は、これらの三校の定員が百四十名から百六十名になるということはもちろん不確定だったわけでございますし、当然に百四十が百六十になるということが周知であったというふうには私どもは考えておりません。
  138. 湯山勇

    ○湯山委員 それは局長としての御答弁はそうだと思うのですけれども、実質はもう言ったとおりなるというのは既成の事実であったということです。その理由はいろいろありますけれども、この審査に当たる歯学部の部会長というのですか、そういう人、これはどなたが部会長であったか、おわかりですか。
  139. 佐野文一郎

    佐野政府委員 大阪歯科大学の学長である日数先生でございます。
  140. 湯山勇

    ○湯山委員 その先生はこの三校に御関係はありませんか。
  141. 佐野文一郎

    佐野政府委員 認可について審査をしている時点におきまして、白數先生は城西歯科大学の学長を兼務し、岐阜歯科大学理事をしておられます。現在は城西歯科大学の学長はすでにやめておられます。  なお、念のため申し上げますけれども、こういう城西歯科大学なりあるいは岐阜歯科大学の役員であるというような、そういう当該認可申請に係る大学関係のある委員はもちろんこれらの大学の審査には参加できないわけでございます。
  142. 湯山勇

    ○湯山委員 その御答弁はそうだと思うのです。しかしながら、審査に当たる人はまず十六、七名でしょう。白數という先生が非常にりっぱな方だということは知っておりますけれども、もうすでにこれが出たとき、九月ころには、認可になるということは、手続的に事務的な処理はおくれておったかもしれません、おっしゃるとおりだと思いますけれども、もう既成の事実だというようになっていたことも事実です。それにしても、そういう人が関係しておる大学というのがいまのように募集人員を、実際には百六十とるのに募集要項では百四十で出している、これは私はやはりルーズ過ぎると思うのです。  そこで、ついでですからこの三校について特にお尋ねしたいのですが、五十二年度、本年度、この三校の定員は何名で、実入学者数は幾らになっているか。
  143. 佐野文一郎

    佐野政府委員 本年度は、岐阜歯科大学は百四十名の定員に対して入学者数は百八十三名、城西歯科大学は百四十名の定員に対して入学者数は百八十名、鶴見大学は同じく百四十名の入学定員に対して入学者数は百五十九名でございます。
  144. 湯山勇

    ○湯山委員 本年度あるいは昨年度、文部省はこの入学者数については厳重に届け出制から認可制にしたんじゃなかったですかね。
  145. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、五十一年度から従来の届け出事項を認可事項に改めております。
  146. 湯山勇

    ○湯山委員 今度は認可でありながら、五十一年も岐阜では百四十に対して百八十四、五十二年は百四十に対して百八十三。それから城西は同じく百四十に対して百八十三、百八十。岐阜は百四十に対して百五十九、百五十九ですから、これはまあ比較的少ないのですが、文部省は百八十四、百八十三というのは認可したわけですか。
  147. 佐野文一郎

    佐野政府委員 認可をしているのは入学定員の方の認可をしているわけでございまして、入学者の実数については、それが入学定員を超過をしているということについて厳しく是正を求めてきているわけでございます。
  148. 湯山勇

    ○湯山委員 五十一年、五十二年、厳しく是正を求めてもどちらもほとんど変化ありませんね。それはどういうわけでしょう。
  149. 佐野文一郎

    佐野政府委員 かつてのこれらの大学の実員は、多いときには百二十名の定員に対して二百七十七名を入れたり、同じく百二十名の定員に対して二百八十八名を入れたりしていた時期があるわけでございます。それらについて、大学設置審議会あるいは私大審議会の先生方、あるいは視学委員先生方から厳しい御注意を申し上げ、私たちも入学定員を守るように指導してまいっておるわけでございます。御指摘のように、まだその改善状況が十分でないのはきわめて残念でございますけれども、五十三年度の認可に当たってはこれらの大学についてはその点をさらに強く指導をし、また各大学からは入学定員厳守についての誓約書も徴取をするところまで私たちは念を入れております。  ことしの、五十三年度の入学者選抜の状況は、城西歯科大学は現在入学手続が完了している者は百五十九名、それから鶴見大学の歯学部は百四十三名でございます。岐阜歯科大学は、これは先ほど御指摘のように一期と二期に分けて実施をいたします。一期で入学手続が完了している者の数が七十二名でございます。いずれもこれは入学手続の締め切り日の数字でございます。国立二期校の発表によってはこの中からまた抜ける者も予想されます。いずれにしても、大学としては順次成績に従って補欠合格者をもって補充をしてまいるわけでございますけれども、ことしは絶対に百六十名を超えてはいかぬということを各大学とも考えておりますので、五十三年度は入学定員を守ってくれるものと期待をしております。
  150. 湯山勇

    ○湯山委員 過去の例から言いますと、いまお話しのように百二十名のところで二百七十七名も入れている。これは大学の施設の関係がありましてそうむやみに入れるものじゃないわけです。こういうものを認可したところから問題はスタートしている。百二十で二百八十八とか二百七十七とか、八十名の定員で百七十九名とか、これでは本当の教育はできないと思いますが、いかがですか。
  151. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおりでございます。ことに医学あるいは歯学の教育というのはマン・ツー・マンで十分な教育をしなければならないものでございますから、こういった水増しの状況というのはきわめて望ましくない状況でございます。
  152. 湯山勇

    ○湯山委員 では、十分な教育ができないで卒業して国民の医療に当たる、それは国民全体を健康不安に陥れるとか、あるいはそれによっていろいろな損害を与えている、その責任はだれが持つのでしょう。
  153. 佐野文一郎

    佐野政府委員 歯学部あるいは歯科大学の場合には、水増しの数、つまり入学者の実員に応じた施設と設備については大学は用意をいたしております。したがって、事柄として、入学定員をこのように上回って入れるということは望ましくないということと、それからもう一つ、もともと歯学部の場合にはそんなに大規模な学部であること自体が問題がございます。やはり標準規模として、百四十とか百六十というものが適正な規模としてあるわけでございますから、いかに施設、設備が整備されていたとしても三百名近い者を入れるというふうなことは望ましくない。しかし、これらの入った学生に対する大学側の責任を持った施設、設備面の配慮あるいは教員組織の配慮というのは私たちも強く求めてきておりますから、これらの大学を出る者がいわゆる無責任な教育のもとで診療に当たる結果になるということではございません。しかし、事柄として望ましくないことは御指摘のとおりでございます。
  154. 湯山勇

    ○湯山委員 誤診とか間違った治療をしたという事故件数、お調べになったことがありますか。
  155. 佐野文一郎

    佐野政府委員 歯学部についての誤診あるいは医療過誤等の件数については、ただいま承知しておりません。
  156. 湯山勇

    ○湯山委員 これもいろいろ厚生省でお調べになってみてください。相当なカーブで上昇しております。だから、その教育に当面の責任のある文部省がそういうことについて無関心であるということが、いまのような実態から見ても許されないと思うので、ひとつお調べになって対処していただきたいと思うのです。  いまきちっとしていただきたいのは、本年は定員を厳重に守るということ、このことはお約束できますか。守らなかったらどうするかということもあわせて御答弁願いたいと思うのです。
  157. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、この三歯科大学とも、今年度は入学定員の厳守については大学自身がきわめて厳しく自粛をし自戒をしようとしておりますので、百六十名の定員を守ってくれると期待をしております。
  158. 湯山勇

    ○湯山委員 守らなかった場合は。
  159. 佐野文一郎

    佐野政府委員 守らないということは起こらないと考えて現在指導をしているわけでございます。
  160. 湯山勇

    ○湯山委員 本当にそうお考えなんでしょうか。過去のいきさつから私はそんなに甘くないと思うのです。だから九月の通達には、ペナルティーでもないでしょうが、もし入学金を入学試験と結びつけて取るような場合には国の方の助成はどうこうするというのがありましたね。定員オーバーしたのはもう国の助成はやらないというような強い態度には出られないのですか。もし局長が絶対それだけ自信があるなら、そのことのお約束もできてしかるべきだと思うのですが、それはいかがですか。
  161. 佐野文一郎

    佐野政府委員 一般的に、御案内のように学生はかなりの大学をかけ持ちをして受験をいたします。したがって、最終的に当該大学入学手続をして、そしてその大学に就学することとなるものの数と、大学が当初合格発表するものとの数の間には一般的にはかなり開きがどうしても出てくるわけでございます。そういったことではあっても、公正な補欠の制度を活用する等の方法によって入学者の数が定員を著しく上回ることのないように、ほかの、医科、歯科以外の大学を含めて指導をしてきているわけでございます。それで、従来一・八倍近かった水増し率も、全体としてはいま一・五倍をやや超える程度に是正をされてきているわけでございます。医科・歯科大学の場合にはきわめて規模が小さいわけでございますから、普通の大学よりもそういった実員と定員との開きをなくす努力はよりやりやすいはずでございます。そういった意味で、できる限りの指導を従来からしてきているわけでございます。ですから、百六十名を仮に一名超したということによって直ちに補助金の交付が問題になるということでは必ずしもないと私は思いますけれども、しかし、先ほど来申し上げておりますように、これらの大学については定員増の認可についてきわめて強い指導をしてきておりますので、ことしは百六十を超えるということはないと思います。
  162. 湯山勇

    ○湯山委員 この問題は私は余り時間をとりたくないのですが、ただ、普通の大学でオーバーしておる問題と、それから医科、歯科でオーバーしておるのとは違うのです。何が違うかというと、やはり入学のときの納付金、これは名目はどうにしても、それが違うわけです。歯の方であれば八百万ですか、八百万。そうすると、文部省の補助は来年度は平均すると一人当たり大体百八十万ぐらいじゃないですか。これはちょっと御答弁を。
  163. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいまの推算では、歯学部につきましては定員当たり九十五万程度というふうに踏んでおります。
  164. 湯山勇

    ○湯山委員 そうしますと、一人ふえるということは、月謝とか当然経費以外に仮に八百万としますか、そうすると八、九人分のいまの国の補助と対応するわけです。この金があるから私は厳重に申しておるので、一般の大学の文科系とかなんとかが二割多く入っておるとかあるいは一割よけい入っておるとか、それとこれとは異質なものだという観点で申し上げておる。こういう何百万という金がつかないのなら申さないのですけれども、それで言っておるわけですから、局長のように一般論では律し切れないと思うのですが、いかがですか。
  165. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のとおりだと思います。先ほどもお答えしましたように、入学させる者の数が少ないわけですから、それなりに一般の大学とは違った工夫ができるわけでございますから、その努力を求めているわけでございます。
  166. 湯山勇

    ○湯山委員 で、そういう水増しが多い場合、やはり普通どおりの助成をなさるお考えですか。管理局長、いかがです。
  167. 三角哲生

    ○三角政府委員 収容定員を超える数の学生を在学させております場合には、やはり私学振興助成法の規定に基づきまして、しかるべく補助金を減額するという措置を従来も講じておりますし、それからその状況が非常に著しい、五十二年度の場合は三倍以上ということで決めておりますが、これは発足のときは七倍以上というのをカットしておりましたが、現状では三倍以上のようなものについてはもう補助金を交付しないというようなことで、やり方はいろいろ段階的にやっておりますが、平たく申しますと、定員オーバーの状況が通常の平均を上回っておるようなものはやはり減額していくというようなことで、そのやり方を年々厳しくして改善方向に向かわせよう、こういう措置を講じておる次第でございます。
  168. 湯山勇

    ○湯山委員 それでは助成対象にならないのは何%オーバーが限度ですか。
  169. 三角哲生

    ○三角政府委員 現在のところはこれは総定員で計算するわけでございますから、入学だけではなくて、これまでに入学して在学している学生も全部くるめまして、それで三倍以上になりますところは、全体共通のシステムでございますが、文科系の学部等も含めました措置として、三倍以上は不交付の措置をとるということにいたしておるわけでございます。
  170. 湯山勇

    ○湯山委員 定員の三倍ですか。
  171. 三角哲生

    ○三角政府委員 さようでございます。
  172. 湯山勇

    ○湯山委員 ではこれで言えば、百六十定員ならば、四百八十以上でなければ助成対象にしないということは適用にならない。
  173. 三角哲生

    ○三角政府委員 これはさっき申し上げましたように総定員で計算をいたしております。ですから、一学年分について平均的に申しますと先生のおっしゃった数字になりますが、総定員で全部押さえておりますので、改善が進みましても既往において非常にたくさん学生をとっておりますればそれもそのカウントの中に入れて検討するわけでございます。それで三倍以内の場合には、先ほど申し上げましたけれども、一定の率で減額の措置を講ずるというふうな対処の仕方をしておるわけでございます。
  174. 湯山勇

    ○湯山委員 減額は三倍以上でしょう。
  175. 三角哲生

    ○三角政府委員 三倍以上は全然交付しないということでございまして、三倍以下の場合に減額の措置を講ずるということでございます。
  176. 湯山勇

    ○湯山委員 私が聞いておるのは減額を受けない限度、オーバーの限度は幾らかというのをお聞きしたいわけですよ。
  177. 三角哲生

    ○三角政府委員 平たく申し上げますと、当該学部の種類によって異なりますが、たとえば歯学部なら歯学部の全部の大体平均の実員率と申しますか、それがどれだけあるか。たとえば先ほど大学局長の御説明で申し上げますと、五十二年度においては一・二一倍。ただこういう状況がコンスタントになりまして、全体数も一・二一倍というふうにもしなりますれば、一・二一倍のところは平均値でいく。一・二一倍よりもよけいに実際に学生をとっているところ、たとえば丁三倍とか一・三二倍とかいうところはその状況に応じて減額がされるわけでございます。それから実員の平均よりも定員に近くやっているところは逆に、平均よりも傾斜をつけまして、減額じゃなくていわば増額というふうな形で補助金を配分するということにいたしておるわけでございます。
  178. 湯山勇

    ○湯山委員 わかったような気がしますけれども、非常にわかりにくいです。それから、率直に感じを言えば、甘過ぎる。私は、これは本当にやっていこうとするんならば五十三年度はもっと厳重にやるべきだ、いまの基準も改めて。それはいまのように学校によっていろいろありますけれども、特に医科、歯科等については厳重にやるべきだというように考えますが、率直に言って、細かい数字は別として、大臣のお感じはいかがでしょう。
  179. 砂田重民

    砂田国務大臣 御指摘の御趣旨はよくわかります。私の手元に四十五年から五十三年までの定員並びに五十二年までの入学実数が出ておりますが、だんだん改善をされてまいっておりますし、特に五十三年につきましては審議会も相当厳しくこれに対処をいたしておりますし、五十二年度の先ほど申し上げました一・二一倍というような実数の数字が五十三年では相当改善されてくることを期待をいたしておりますが、いまの私学振興助成につきましては、やはり医・歯系に重点的に配分をいたしますので、配分も重点的でありますし、いままでのこともいままでのことでございますから、きわめて厳しく対処をいたしてまいります。
  180. 湯山勇

    ○湯山委員 数字で大変時間をとりましたのですが、国民医療全体の立場からも一層厳しくしていただきたい。  それから、もうちょっと時間をいただいてお願いしたいのは、この金額の問題です。いまの国民生活全体の立場から言って、授業料等は別としても、入学時に七百万とか八百万とかという金が要るという実態は一体異常と言えないでしょうか。どの階層、国民の何%がこういう金を平気で出せる、あるいは若干努力して出せるということになっているか、こういうことをお調べになったことがあるでしょうか。
  181. 三角哲生

    ○三角政府委員 私ども、これは非常に大変な、なかなか容易ならぬ金額であると思っておりますけれども、お金のことでございますから、どういうぐあいにこれを調達するかということは、個々具体にはいろいろなやり方もあろうと思います。でございますから、一概にどういう階層がこれにあるということを調べるのはむずかしいことじゃないかと思っております。
  182. 湯山勇

    ○湯山委員 時間がないから結論的なものを申し上げたいのですけれども局長、ひとつあなたの局の中で課長以下をお集めになって、諸君の中でこれで私立の医大へ子供をやれる自信のある者は何人あるか、お聞きになってみてごらんなさい。恐らく一人もないと思うのです。それはいろいろ募集要項にも書いてありますよ。優秀な者についてはこれを減免することがあるとあるけれども、試験を受けてみなきゃ該当するかどうかわからない。受ける以上はそれだけの金を覚悟しなければならない。卒業までには約二千万です。その覚悟ができて子供をあえてやれるというのは一体、局長、あなたはどうですか、失礼だけど、平気で行かせられますか。
  183. 三角哲生

    ○三角政府委員 なかなかこれは調達するのにもそう簡単ではない金額であるということは感じておりますし、私自身、無理をしていろいろあちこちと手を尽くしますればできないこともないとは思いますけれども、しかし私自身は、もし当該年齢の子供がいても、その子供がよほど希望しない限りは試験を受けさせないであろうというふうに思っております。  ただ、前からもいろいろ御説明は申し上げておるのでございますが、今回のこういう状況を非常に明朗にしようということで、従来寄付という形でいたしておりましたのを正式の学生納付金にいたしましたこともありまして、特に私どもといたしましてはその分割納入というようなことを学校で丁寧にやってほしい。それでその場合に、日本私学振興財団の方で用意をいたしております財政投融資資金を原資といたします長期低利の貸し付けというような形で、なるべくその調達の方法を広げていくという措置をいたしたのでございます。
  184. 湯山勇

    ○湯山委員 長期低利も、内容も聞いております。そのほか金融機関のも調べてまいりました。しかしそれは申しません、非常に率直な御答弁ですから。ですけれども、決してこれはよくなってないんですよ。というのは、いままでは寄付金取るのは何か悪いような気持ちでやっていましたけれども、今度はどうなんです。文部省公認です。七百万、八百万取るというのは。文部省の御指導によってと、公然と言っている。そうすると出せないのはそこであきらめなければならない、こういうことです。だから、狭い視野で見ればよくなっている、少なくもなっている。それから国の方の助成、これも多くなっていると言うけれども、国の助成というのは、こんな学校へ行けない、局長は行けるかもしれぬが、課長以下の人たちの出した税金の中から補助は行っておるんです。このことを忘れちゃいけない。そうすると、国民の九十何%の税金でこれは立っていっておる、そこへ焦点を向けて、そこの中が幾らかよくなったかどうか、そういうことで教育行政というのは進めるべきじゃなくて、むしろ行けない、それが対象でなければならない。だからこういうのを認可した文部省に重大な責任がある。寄付は自由寄付なら幾ら集めてもいいし、学債なら幾らやってもいいです。ただ、入学した者に、というのは人質をとっておるようなものでしょう、それに出させる、それに学債に応じさせる、そのやり方を変えなければ私はちっともよくならないと思うのです。  そこでこれはもう一遍検討してもらう。そして、教育基本法あるいは憲法にあるように、能力に応じて教育を受ける、その機会を保障する、これが文部省の役目で、この私立医大の学納金が、二千万取っておったのが六百万になっから、七百万になったからと、それではちっともよくなっていない。ここの目のつけどころです。局長も含めて、こういう学校へやれないその人たちの子弟が一体教育機会均等が保障されているかどうか、それに目をつけなければ教育行政行政でない。したがってこんなふうに、いまのように定員の三倍も入れておったり二倍も入れておったりするようなものが医科、歯科でさえ出てきているということになるわけですから、教育行政のあり方としては、やはり常に国民全体への奉仕、そこから物を見てもらいたい。これは教育基本法十条にあるとおりです。しかもそれを人質になっている学生から取るのではなくて、これも教育基本法三条にはそのことが明記してあります。三条に「国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」だから国がやる、地方公共団体がその受験生にやってやるということをまずやらなければならない。ここの視点を忘れると、せっかく苦労してよくなった、よくなったと言うけれども、それは決してよくなっていない。ですから、この問題はことしはこれでやむを得ないとしても、来年はやはり抜本的に改めるべきだ。そうしなければ、こう並んでおる皆さんの九割以上、後ろはわかりませんけれども、とにかく前へ並んでおる皆さんは全部被害者です。たくさんの所得税を取られて、それがこういうところへ行っておる。こんなことは許されないし、教育崩壊の大きな一つの原因をつくっていると私は思いますので、最後にこれについて大臣の御所見を伺いたい。
  185. 砂田重民

    砂田国務大臣 医科でありますとか歯科でありますとか、そういう教育の場合に、高額な教育経費を必要といたします現実、これに応じて学納金の額もある程度高額になりますことは、受益者負担という立場で考えればある程度やむを得ない点もございます。ですけれども入学時に要します経費が今日のように非常に高くなってまいりまして、実質的に国民の一部の者しか入学機会が与えられない、この姿は、教育機会均等の原則の趣旨からも、また教育の知的水準の維持の観点からも望ましいものだとは決して思いません。それだけの金を払える人たちが知的水準が高いのだとは決して思わないからでございます。今後さらに学校法人の経営努力を強く要請いたしますとともに、先ほど御指摘のありました経常費助成の実行も十分厳重に努めてまいりまして、さらにまた国庫補助の拡充に今後も努めまして、学納金の額の抑制を図ってまいりたいと存じます。  さらに、いま御指摘がございましたけれども、成績優秀で経済的に困窮している者に対する学納金の減免や分割納入、あるいはいろいろなローンがありますけれども、やはり私学に私どもがやっております奨学金の貸与制度を利用してほしい。また私学の側も、卒業してから十年ばかりの間大変な事務量がふえましょうけれども、それだけのことをおやりになる義務があるとすら私は考えますので、これの活用、奨励を私学にも強く働きかけまして、こういった面での学生負担の軽減を図ってまいる努力を続けてまいりたいと存じます。きょうの湯山委員の御指摘の点、十分心に置きまして対処をしてまいりたいと存じます。
  186. 湯山勇

    ○湯山委員 では終わります。
  187. 菅波茂

    菅波委員長 伏屋修治君。
  188. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私はこれから、私の地元の岐阜大学の統合について何点かお尋ねしたいと思います。  まず最初に、岐阜大学の統合についての文部省の御見解等をお聞きしたいと思います。
  189. 三角哲生

    ○三角政府委員 岐阜大学は現在、教育学部、工学部、農学部、医学部と、四学部が三カ所の地区に分散しておるわけでございます。このために教育研究及び管理運営上も支障がございます。それから現在地はそれぞれやはり狭いという事情にございますので、医学部とその付属病院を除く三つの学部を岐阜市の黒野地区というところへ移転統合することいたしまして、そして新しい敷地を分割購入してまいったわけでございますが、建設省所管の、敷地周辺の新堀川という川の改修工事の完成を待ちまして施設整備に着手するということにしていたわけでございます。最近この新堀川の改修工事とそれに関連して必要なポンプ場の設置工事等が具体化の運びになりましたので、昭和五十三年度から敷地造成の一部についてその工事に着手するという予定で方針を立てておるわけでございます。  なお、ちょっとつけ加えますと、全体の施設整備計画でございますが、これは明年度の概算要求をまとめます時点にいろいろ試算をした上での数字でございますが、約百七十億円弱を予定いたしまして、この工事は順次行うわけでございますが、全体の細かいところまで全部済ませるところまで含めますと、昭和五十三年度からおおむね八年計画で施設整備を進めたいというふうに予定いたしております。
  190. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いま文部省の見解をお聞きしましたところ、三カ所に分かれておる、そのことにおいて管理運営上に支障がある、とりわけその所在地の地域が非常に狭隘である、こういうことが理由になっておるわけでございます。  文部大臣にお尋ねいたしますが、この岐阜大学の現地へ赴かれたことがありますか、どうですか。
  191. 砂田重民

    砂田国務大臣 ございません。
  192. 伏屋修治

    ○伏屋委員 この統合に関しまして、医学部が除外されておるわけでございます。この医学部を除外したというその考え方、これをお尋ねしたいと思います。
  193. 佐野文一郎

    佐野政府委員 岐阜大学の医学部は、御案内のように、昭和三十九年度に岐阜県立の医科大学を国に移管いたしたものでございます。この移管に伴いまして施設の整備が図られたわけでございます。そしてそれを受けまして、この大学の医学部は現在の土地において引き続いて整備をしていく、そういう方針を岐阜大学が決定をされております。それを受けて四十六年度以来、医学部と付属病院の施設、設備の整備を国も現地において鋭意進めてまいりまして、ようやく完成に近づいているところでございます。そういう理由で医学部は現在地において整備をするという方針を立て、そのもとで進められてきたことでございます。
  194. 伏屋修治

    ○伏屋委員 とりわけ医学部先生方とも私どもお話し合いをしたわけでございますけれども教育、工学、農学、この三学部学校所在地が狭隘であるというのが理由になっておりますが、かなり学校形態としては整備されておると私は思います。なかんずく医学部だけが学校形態を全くなしておらない。いま大学局長から御説明がありましたように、県立医大から国立医大に移管された。そうして大学希望があったからそこに残すのだというお話でございますけれども、医学部の現在地というのは、大臣御承知ございませんので説明いたしますと、旧県庁の横にございます。そして病院に寄生しておるかのごとく医学部がございます。そして医学部の事務局は県会議事堂を使っております。全く、学校の校門がどこにあるやも探せどもわからない、こういうような状況でございます。狭隘であるがゆえに大学を統合するとするならば、まず医学部こそ真っ先に統合しなければならない、このように私は考えるわけでございます。また、その統合に要する費用は、いま管理局長から御説明ございましたように百七十億になんなんとするような膨大な費用でございます。簡単に大学をつぶしてまた建てるということはできないだけに、統合に対する文部省の長期展望に立った指導性というものを発揮して、現在の統合地の中に敷地を求め、そこへ医学部を設立するのが私は妥当ではないか、このように考えますけれども大学局長、御見解をお願いします。
  195. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、移管以来の経緯がございまして現在地で整備をしようということで、国費を投じて整備を進めてきておるわけでございます。ただ、現在地の状況が御指摘のように非常に狭いということについては承知をしているわけでございます。医学部先生方の中に、統合予定地を含めまして、できれば適地を求めて移転をしたいという希望をお持ちの方があるということは私どもも承知をしておりますけれども、これまでの岐阜大学の統合についての方針あるいは移管以来の経緯がございますので、これを御希望に沿って具体化をするということはきわめて検討すべき問題が多いことでございまして、現在私たちは従来の考え方に従って現地における整備を極力進めたいと考えているわけでございます。
  196. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、大学局長の御見解は、やはり医学部の統合というものは除外して、そして統合を推進していく、こういうお考えでございますか。
  197. 佐野文一郎

    佐野政府委員 そういうことでございます。
  198. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、いまの御見解のとおり、統合しない、そして現在の医学部を残す、こういうことになりますと、現在の医学部を今後どのような形で学校形態を整えていくのか、その辺の御計画等があればお聞かせ願いたいと思います。
  199. 三角哲生

    ○三角政府委員 いま御指摘のことにつきましては、まず大学でいろいろと検討いたしてもらいまして、そして私どもも協議を受けまして将来の方向につきまして考えていきたいと思っておりまして、現在決まった具体的なプランというものをここで御説明申し上げる段階にないわけでございますが、考えられますのは、やはりでき得る限りいろいろな施設を集約化し、可能な限り高層化を図るといったようないろいろな方法があろうかと存じますが、いずれにいたしましても、まず大学でいろいろと検討を深めていただきたいというふうに考えております。
  200. 伏屋修治

    ○伏屋委員 先ほど大臣に現地の視察についてお伺いいたしました。管理局長は現地へ赴かれましたか。
  201. 三角哲生

    ○三角政府委員 まだ現地は拝見いたしておりません。
  202. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は、時間がありますればその写真を撮ってまいりまして、どれほど学校形態を備えていない、病院に寄生した学部であるかということを局長に見ていただきたかったわけでございますけれども、その時間的な余裕もございませんでした。ちなみに、岐阜大学学部の周辺というのは最も自動車の量の混雑する地域でございます。とりわけ病院の外来者の車、またすぐ隣接して合同庁舎がございます。職業安定所もございますということから、その周りはもう車の無軌道な駐車場になっておりました。県がそのことを見かねまして、パーキングメーターを備えて整理をしておりますけれども、なおかつもう駐車の飽和状態でございます。そういうような自動車の混雑した中に大学の医学部があるということを局長はよく現地を視察される中で、何でもかんでも大学先生に任せるんだというのではなくて、今後巨額な国費を投じて医学部を設立するということであるならば、やはり現地に赴いてそういう実情をつぶさにつかみながら現地の教授方との話し合いを進めていくのが妥当ではないか、私はこのように考えますが、どうですか。
  203. 三角哲生

    ○三角政府委員 現地の諸条件についてはよく調べまして研究をいたしたいと思います。ただ、医学部の問題になりますと、当然付属病院の関連が出てくるわけでございまして、先生もその点について御指摘があったわけでございますが、病院の移転というようなことについては、いろいろな大学自身の都合あるいはその地域の状況のみならず、患者その他の関係もございますので、至極慎重に検討を要すべき事項であろうと思っております。
  204. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は現地出身だけにその現場は毎日のように見ておりますので、今度の統合地のところにこそ付属病院を建て医学部を建てることがより以上に市民の交通混雑の緩和にもつながるし、また、現在ある病院は病院として残し、統合地の中に医学部を設立し、付属病院を設立することの方が、むしろ長期展望に立って後に悔いを残さない統合ができるのではないか、私はこう考えるわけですが、再度局長の御見解を伺いたい。
  205. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御指摘のように、岐阜大学の医学部入学定員が八十人でございます。そして病床の数は六百床ということで、これまでのいろいろな経緯を捨象して考えれば、医学部の適正規模としてはむしろ入学定員はもっと多い方が望ましいわけでございますが、現地においてそういった形での整備をするのはきわめてむずかしい状況にあるということはよくわかります。これまでの経緯がございますので、この時点で従来の大学の方針を変更するということは、考えられないわけではございませんけれども、なお大学側ともあるいは医学部先生方ともよく話をしてみたいと思います。
  206. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いま重ねて御見解をお聞きしましたけれども文部省の方針として無医大県を解消したい。前海部文部大臣もそうおっしゃってみえました。そういう無医大県解消のためのこの岐阜大学の便宜的な総合、そういうような色彩が私は強く感ぜられるわけでございます。それだけに、そのような便宜的な医学部の存続というものを考えないで、もう一度改めて岐阜大学の統合についての計画練り直しをするぐらいのお考えを持っていただきたい、このように思いますが、大臣、どうですか。
  207. 砂田重民

    砂田国務大臣 いま大学局長からお答えをいたしましたが、私、残念ながら現地の事情を存じません。的確なことが申し上げにくいのでありますけれども、少なくとも文部省だけで計画を決めて押しつけるべき筋合いのものではないと思うのです。やはり大学計画を承りながら意見の一致を見たところで進めるべきものだと思いますから、いま大学局長がお答えをいたしましたように、大学当局とも話し合いをさらに進めてまいりたい、かように存じます。
  208. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、いま大臣の御答弁から私の解釈をいたしますと、岐阜大学統合については医学部を除くという決定的なことでなくて、現場の大学先生方ともよく検討しながら医学部の統合ということをもう一回再考してみる、こういう御見解と解釈してよろしいですか。
  209. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学御当局が御計画を持たれて事が始まったわけでございますから、大学当局と十分に話し合ってみて、できますならば文部省からも現地を認識させてその上で考えたい、その話し合いを進めてまいりますと申し上げております。
  210. 伏屋修治

    ○伏屋委員 何度もくどいようにお尋ねして申しわけありません。それは岐阜大学の現地の教授の中にも、医学部を除く統合に対する反対の御意見もかなりありますので、その辺を文部省側も柔軟にとらえていただきまして、ただただ一部の大学統合の意見だけを取り上げるというのじゃなくて、長期展望に立った総合大学という形での統合というものを今後お考え願いたいと思います。五十二ヘクタールの予定でございます。相当広大な地域でございます。まだその中には余剰地もかなりあります。そういうことから考えれば、いまこそ統合のための手を打っておかなければならない、このように私は考える次第でございます。  医学部の問題についてはそれで終わりたいと思いますけれども、現在の大学の統合の進捗状況は先ほど管理局長の方から少しお話がございましたが、再度御説明願いたいと思います。
  211. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど申し上げましたように、五十三年度から取りかかるということで、五十三年度は敷地造成の一部を行う、着手するということでございます。なおもう一つ用地の関係でございますが、五十二ヘクタールのうち、五十二年度までに約二十ヘクタール余りを取得しまして、残りは五十三年度に取得をするという計画で取りかかっていくというのが現在の段階でございます。
  212. 伏屋修治

    ○伏屋委員 現在黒野に予定されております統合予定地でございますが、ここは全くの低湿地帯であるということは御存じでございますか。
  213. 三角哲生

    ○三角政府委員 承知いたしております。
  214. 伏屋修治

    ○伏屋委員 このあたりは一昨年、岐阜における長良川の河川堤防決壊における洪水におきまして、軒下水浸しというような状況の非常に低い土地でございます。そういうことを御認識になりながら、これは文部省の方から先ほど大臣もおっしゃったように一方的に押しつけるものでないということはよく私も理解できますけれども、これからの大学の当局との話し尿御参考までにそういう面もよく含んでおいていただきたいと思います。  統合予定地の中には農場敷地というものが組まれております。この農場敷地がいま申し上げたような遊水地、低湿地帯で、ここに農場敷地を設けることが妥当であるかどうか、この辺のお考えはどうですか。
  215. 三角哲生

    ○三角政府委員 大学局長が答弁なさる前にちょっと低湿地の関係について一般的な御説明を申し上げますが、御指摘のようなことが予想されるわけでございます。移転統合用地を選ぶに当たりましては、移転統合計画大学自身がまずお考えになり、方針をお立てになるべき事柄でございますので、昭和四十五年七月ごろ大学におきましては三つの候補地を持っておったわけでございますが、立地条件でございますとか、面積がしっかり確保できるかどうかといったような可能性について学内で慎重に丹念に検討されました結果、この黒野地区を第一候補地というふうに選定されたわけでございます。ただいま御指摘のような問題があったわけでございますが、これに対しましては河川改修等の工事によって敷地の状況改善されるということでございましたので、最終的にこの黒野地区を移転統合地とすることに決定いたしたわけでございまして、低湿地帯であるということに対する対策といたしましては、先ほど申し上げましたこの地区に隣接しております新堀川の改修、それからこれに伴いまして必要な揚水ポンプ場の設置を県と国の事業で実施するということが具体化しているわけでございます。その工事によりまして敷地の従来の条件が改善されるということを見込んでおるわけでございます。  なお、農場問題につきましては大学局長から……。
  216. 伏屋修治

    ○伏屋委員 その前に、いま管理局長は新堀川ということをおっしゃいましたけれども、これは今度排水用につくる河川です。現在はそういう川はございませんので、やはり現地を見ておられないととんでもないことをおっしゃるなと私は思っておるわけでございますけれども、伊自良川でございます。その伊自良川の河川改修をやるということでございますので、その辺の御認識をしっかりしていただきたいと思います。
  217. 佐野文一郎

    佐野政府委員 統合予定地に新しく農場九万六千平米を予定をいたしております。そこへ水稲、それから蔬菜、果樹園、茶畑等を設ける予定があるわけでございます。現在の予定地は水田、それからカキが植わっている畑、ほかは原野でございます。低湿地という条件は御指摘のとおりでございますけれども、いま管理局長から御答弁を申し上げましたように、土地の整備を行うことによって十分農場用地として使えるという判断を農学部はしているわけでございます。
  218. 伏屋修治

    ○伏屋委員 土地の整備ということになりますと、低湿地帯ですから勢いそれは土盛りになると思いますけれども、これは現地の人と、ということでお答えになると思いますけれども文部省としては土盛りに対してどういうふうな考えを持っていますか。
  219. 三角哲生

    ○三角政府委員 約一メートルか、それより若干上回る程度の土盛りのようでございます。
  220. 伏屋修治

    ○伏屋委員 一メートルぐらいではとてもそれは農場敷地には適さないと私は思います。その一帯は、いわゆる軒下一階はまるで水につかるような低湿地帯ですから、一メートルそこそこの土盛りで農場敷地に適しておると考えることはまことに甘いと私は思います。特に農学部が農場敷地をそこにつくるということは、いわゆる研究用の種苗をそこに植えて、そしてそれによって研究の材料を収集する、そういう貴重な敷地でございます。そういう敷地が、一メートルの土盛りで、少し雨量が多かったならば冠水するというようなところでどうしてその研究推進できるか。こういうことを考えるときに、一メートルそこそこの土盛りでは不適当と私は思います。その辺、どうですか。
  221. 三角哲生

    ○三角政府委員 先生御承知だろうと思うのでございますが、先ほど申し上げました新堀川河川改修によりまして当該地区は水につからないということが前提になっておりますので、その前提で工事の計画を立てていきたいというふうに考えておりますが、農場のようなところ、特にまたさらに普通のキャンパス内のその他の場所と異なる配慮をしなければならない必要があります場合には、それに応じた計画実施いたすことになるというふうに考えます。
  222. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういうような非常に特殊な地域でございますので、もっと土盛りを綿密に。やはり何と言いましても管理局長さんが現地に赴いていただくことがまず第一要件だと私は思います。そして現地をつぶさに見ていただきながら、大学当局の方々と綿密な打ち合わせをする中で進めていただきたい。これがもう大前提になってくると私は思います。そういう面でひとつ管理局長、よろしくお願いしたいと思います。  次に、その農場の土盛りによって農場が一応確保される。またそういうような特殊な地域であるだけに、やはり校舎の建築様式も、そういう好条件に恵まれた普通の大学の建築様式とはやや異なる建築様式を考えなければならないと私は思うわけでありますが、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
  223. 三角哲生

    ○三角政府委員 建築の様式につきましても、大学側の計画希望等と文部省の考えとを十分に突き合わせまして決めてまいりたいと思います。これはどこの場合も当然のことでございますが、いま御指摘にもありました敷地が持っておりますいろいろな条件を十分に考慮しながら、大学としての諸機能が十分に展開されますような計画をつくっていきたいというふうに考えております。
  224. 伏屋修治

    ○伏屋委員 このような黒野地区の地域性、そういう特殊な条件によく似たような他の地域で大学を建てたということはございますか。
  225. 三角哲生

    ○三角政府委員 この黒野地区と非常に似た事例は、これまでまだないのでございます。
  226. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私はその大学統合の教授にお話を伺いましたところ、埼玉大がそういう低地帯に見合った建築様式で建てておられる、こういうお話を教授から聞いたわけでございますが、その辺はどう御認識になっておりますか。
  227. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま専門の技術参事官が出席しておりますので、技術参事官から答弁させていただきたいと思います。
  228. 野村武一

    ○野村説明員 お答えいたします。  先生からお話が出ました埼玉大学、あれも大体、大久保と言いまして、少しくぼ地になっておるような土地でございました。そのために排水関係に非常に問題があるというようなことで、特に排水関係を、地下に十分浸透させるとかポンプ場を設けるとかというような、敷地全体についてそういう計画を立て、また建物自身といたしましても、実は若干失敗したところがございますが、地下の工作物をなるべくつくらないとか、ある程度床を高くする、こういったようなことで処置をしております。建物敷地と申しますと、そこだけを上げましてもその周りが必ずまたつかってくるというようなことになりますので、今度の岐阜大学の場合にはかなりの湿地帯でございますのでその辺を十分考慮して、建築関係では失敗のないようにということで現在計画を練っております。
  229. 伏屋修治

    ○伏屋委員 やはり校舎建築でその地域だけを特別土盛りするということはできないだけに、従来の建築様式を改めていかなければならないということはいま御説明あったとおりでございます。その建築様式には、私は専門外でございますのでいろいろなものはわかりかねますけれども、ピロティー方式というような方式もあるということを聞いております。雨量の多少によって冠水した場合、ピロティー方式であれば直接授業には差し支えないというようなことで、ピロティー方式なんかはどうなのかということを、私もいろいろ教授と話し合っておりましてそういう話が出たわけでございますが、そういうお考えはあるかないか。
  230. 野村武一

    ○野村説明員 いまお話のありましたピロティー方式は、結局床を高くしようという方式でございまして、私たちの方もそれを考えております。
  231. 伏屋修治

    ○伏屋委員 次に、この大学の取りつけ道路でございますが、全部で五十二ヘクタールという広大な地域の中に取りつけ道路がたった一本しかございません。今後のいろいろな支障を考えていくときに、先日もありましたような極左暴力学生による集団のそういういろいろな問題等も最近ございます。とりわけその温床が大学であるということになってまいりますと、大学紛争がまた今後起こらないとも限らない。そういうときに、この取りつけ道路一本でありますと、大学紛争が起きたときに、この道路を学生に占拠されたときにはもう一切合財学校には入れない、こういうようなこともございます。そういうことからも、この取りつけ道路を一本でなく、もっと複数以上にしていかなければならない、このように考えますが、どうですか。
  232. 三角哲生

    ○三角政府委員 いまお話しのように、現在公共事業として昭和五十年度から着工されましたものが進入路としてございまして、これは工事用道路として使用可能なわけでございますが、大学ができますまでには、先ほども申し上げました河川の改修に関連いたしまして、大学のキャンパスの両側に河川に並行いたしました道路ができる予定になっております。それらができますれば、大学が発足までには交通上その他の問題の上でも差し支えない程度に道路関係整備されるというふうに見込んでおるわけでございます。
  233. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ここに簡単な図がございます。そちらからちょっとわかりにくいと思いますが、この取りつけ道路一カ所を複数にするということになりますと、先ほど管理局長がお話しになりましたように河川改修と同時に取りつけ道路を一本つけるということと、それからさらに、地図でごらんになりますと、ここが一本の取りつけ道路でございます。これ全体が学校の敷地になっております。そうなると、ここを封鎖されれば完全に学園紛争で中へ入れないということになります。したがって、これが川でございますので、これを河川改修しながらもう一本こちらの方に取りつけ道路を取りつける必要があると私は思いますし、またこちらばかりに取りつけ道路でなくて、こちらの方にも取りつけ道路をつけることが今後の学生の通学においてもいろいろ便利である、そういうことを考えるわけでございます。こちらに一本取りつけ道路をつけようとしますと、現在岐阜市内に産業道路というのが建設中でございます。建設省でまだそれが遅々として進んでおりませんが、その産業道路ができ上がって、それの延長に取りつけ道路をつけますと、非常に交通の緩和、通学の便宜も図れる。こういうことを考えるわけでございます。そういう面からも建設省の方へ文部省の方から、大学統合に関連してその産業道路の工事を急いでくれということを管理局長の方からも強力に申し入れをしていただきたい。そういうことによって取りつけ道路を複数にしていただきたいというふうにお願いしたいと私は思いますが、その辺はどうでしょうか。
  234. 三角哲生

    ○三角政府委員 御注意をいただきました点を十分に踏まえまして、関係当局と協議をしてまいりたいと思います。
  235. 伏屋修治

    ○伏屋委員 ついででございますけれども、私とこの大学教授と非常に話し合ったのですが、その大学先生は非常に数学がお好きな先生でございまして、今後ここに統合大学ができたときに、一体一時間にどれぐらいの通学バスが走るのかということをいろいろとデータをとられたわけでございます。そうしますと、岐阜市街地からこの統合地へ通うには、現在忠節橋という橋が一本ございます。それから金華橋というのがございますけれども、この統合地に近いところは忠節橋でございます。その忠節橋というのは架設されましてからかなり古い橋でございます。そこを一時間に五十台バスが通るという計算をされたわけでございます。そういうことからすると、一分間に大体一台の割りで学生を乗せたバスがそこを通るわけでございます。それに加えて、その方面に今度新しく高校が増設されました。その増設された高校の通学生もそれに便乗するということになりますと、現在の交通が繁雑であるそれにさらに加えて繁雑さを増す、そういうことも考えられます。現在のその取りつけ道路へ入るまでの道路自体が二車線でございますので、普通でもラッシュになりますとそこはもう非常に混雑する道路でございます。そこへもってきて統合ということになってまいりまして学生が通学することになると、さらに交通が繁雑になることは間違いございません。そういう問題についてもひとつ現地の大学の教授の方々とよく打ち合わせをされながら、総合的ないろいろな細かい配慮を施していっていただきたい、こういうことを要望する次第でございます。  次に、統合予定地の中に、野鳥保護ということのために一万坪ぐらいの計画があるように聞いておりますが、それはどうですか。
  236. 三角哲生

    ○三角政府委員 黒野地区には従前からバンという野鳥がおりまして、バンが池という池になっております。これの保存については、地元の野鳥の会というところからもすでに四十八年三月に大学当局に対しまして、この池の保存と申しますか、バンの保護と申しますか、それにつきましての強い要望もございまして、自然保護というたてまえと、施設計画を生かすということで支障もそう大きくならないということでございますので、約三ヘクタールでございますが、このバンが池をこのまま保存しておこうという計画にいたしてございます。
  237. 伏屋修治

    ○伏屋委員 野鳥保護という趣旨でそういうふうに残されるわけですけれども、現地の方々は、環境が変わって野鳥がまたそこへ来るのかどうかという疑問を持っております。野鳥がもし仮に来ないとするならば、そこの一万坪という広大な地域を遊ばせることになってしまうというところから非常に御心配になっておられるところもございます。そういう点、文化庁の方ですか、その辺はどうですか。野鳥保護は環境庁ですか、きょうは来てみえませんですか。
  238. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 野鳥保護は自然環境の保全ないしは文化財とも関係が深いわけでございまして、私ども立場からもできる限りの善処をお願いできればありがたいと思うわけでございます。
  239. 伏屋修治

    ○伏屋委員 まあ、野鳥の問題はそれぐらいにしておきましょう。  次に、統合大学を建設することによって、その地域の方々はやはり大変御心配があると思います。そういう面において、その統合予定地の周辺の方々にどういうような福祉的な配慮を文部省としては現時点ではお考えですか。ちょっとわかりにくいようなお顔をしてみえますのでもう少しつけ加えますと、たとえば寮を統合地の中に建てるのではなくて、統合地以外のところに寮を建てまして、その近辺の母子家庭の方々にそのお仕事をやっていただくとかいうような、一つの例でございます。こういうような福祉的な配慮その他、私がいま申し上げた以外にあるかどうかということでございます。
  240. 三角哲生

    ○三角政府委員 計画内容といたしましては、まずは大学がどうするかということを考えてもらわなければなりませんけれども、一般的に基本的に申しますと、やはりできるだけ大学がキャンパスの中に閉じこもったというスタイルではなくて、開かれた形にした方が望ましかろうということで、現時点では学生の寮をキャンパス内につくるという計画はございませんで、できるだけ民間のいろいろな施設と申しますか、民間から提供いただける諸条件を生かして学生が勉学できるようにというところを基本的に考えておるのでございます。
  241. 伏屋修治

    ○伏屋委員 まだ着工の緒についたばかりでございますので、そういう面の具体的なことについてのお考えをいま余りお持ち合わせでないようでございますが、そういう面も強く配慮する中で、現地の人ばかりというのでなくて、やはり文部省一つ指導性を保ちながら、現地の方々に、総合大学ができてよかったなという強い印象を与えるような細かい配慮をよろしくお願いしたいと思います。  これは一つお尋ねでございますが、統合地の中に教育学部の付属の幼稚園あるいは養護学校を建設しようという計画は、現地の方から出ておりますか、どうですか。
  242. 佐野文一郎

    佐野政府委員 養護学校につきましては、大学側はまだ明確に設置予定年度を固めているところまではいってはおりませんけれども、できるだけ早く設置をしたいということで検討をいたしているということは聞いております。設置した場合の生徒の確保の見通し、あるいは生徒の通学の利便が大丈夫かというふうな点に留意して検討してほしいということを私どもはお願いをいたしております。実際問題として養護学校の用地を大学の統合予定地以外に求めることは非常に困難だという判断を教育学部は持っているようでございますし、教育学部の方あるいは大学の方の計画ができるだけ早く固まるように、そしてその計画に対応して私どもも養護学校設置について検討を進めてまいりたいと思っております。  それから幼稚園につきましては、養護学校と同様に付属の幼稚園を設置したいという意向を持っておられます。ただ、この大学教育学部には現在幼稚園教員養成課程がございませんので、この幼稚園教員養成課程をどうするかということとも関連をして検討しなければなりませんし、いずれにしましても大学側の具体的な計画を待って私たちもそれに対応してまいりたいと考えております。
  243. 伏屋修治

    ○伏屋委員 とりわけ、養護学校昭和五十四年度から義務化になるわけでございますので、それに即応するように、他の施設の建設に先駆けて養護学校の建設に早期着工していただきたい、こういうことを要望いたしておきたいと思います。  次に、問題を変えまして、専修学校の問題についてお尋ねしたいと思います。  八十国会の本委員会におきまして、海部前文部大臣に専修学校についてその基本的なお考えを私はお尋ねしたわけでございます。専修学校というのが、学歴に偏重いたしました社会の中で果たす役割りというものは大きなものがある、そういう面で専修学校の振興に対して大臣のお考えをお尋ねしたわけでございますが、砂田文部大臣の見解をお尋ねしたいと思います。
  244. 砂田重民

    砂田国務大臣 専修学校は、今後の学校教育の中で非常に大きな位置を占めるものと私も期待をいたしております。海部文部大臣が御答弁をいたしましたこと、よく御承知でございますから繰り返しませんが、同じ考えに立つものでございます。また、一般課程も含めて、専修学校は生涯教育のためにも非常に重要な教育機関一つでございますので、いわゆる学歴偏重の打破という大仕事といま取り組んでおりますけれども、これにも大きな役割りを果たすものと考えますので、専修学校教育充実についてなお一層努力を積み重ねてまいりたい、かように考えております。
  245. 伏屋修治

    ○伏屋委員 その専修学校の振興について懇談会を持ち、それに国の予算もつけて、そういう振興策についての懇談、審議会というのですか、そういうものを持ってこられたということを聞いておるわけでございますが、どのような現状であるか、お聞かせ願いたいと思います。
  246. 三角哲生

    ○三角政府委員 御指摘の懇談会と申しますか、調査研究の協議のための集まりを昭和五十二年八月から開始をいたしておりまして、専修学校教育の役割りということをまず第一にいたしまして、もろもろの基本的な事項につきまして、学識経験者あるいは専修学校の当事者と申しますか関係者にも御協力をいただきまして現在運んでおるところでございます。  現在までの状況でございますが、まず最初はフリーなディスカッションを二回ほどやっていただきまして、それでその後実地に都内ないしはその周辺の専修学校を、いろいろな学校の種目別と申しますか専門別に幾つかを選びまして視察をしていただきました。それからその後、ただいまのところ、専修学校のそれぞれの種類別に、学校を実際に運営しておられる責任の関係方々から実情とか問題点とか、そういった事柄についていろいろとお話を順次承るということを各委員先生方にやっていただいておりまして、こういったことを経ましてさらに総合的な観点からもう一度自由討議を行うというようなことをいたしました上で、専修学校が持っておりますいろいろな課題を整理してまいりたい、こういうふうな状況でいまやっておるところでございます。申すまでもなく、専修学校はいろいろな分野にわたって、また教育の仕方も非常に多様でございますので、従来の学校教育との関係などにつきましてもいろいろと検討すべき問題が多うございますので、今後もなお十分に時間をかけましてこの調査研究を続けてまいりまして、そして結論として、専修学校教育充実振興のための今後の施策に役立てられるような結論を出していただければというふうに考えておるわけでございます。
  247. 伏屋修治

    ○伏屋委員 専修学校が発足したのは五十一年でございます。ことしは五十三年でございます。その間、自由討議でお互いに参考の意見を聞くだけであるということで、前向きに何をどこから手をつけていくかという話題が、少しもその中から私はいまうかがい知ることができないわけでございます。大臣が専修学校に対して、学歴偏重社会を打ち破るためにも必要であるという前向きの姿勢を示しておられるならば、やはり審議会ももっと内容的に充実した話し合いを積み重ねて、そして一つでも二つでも前向きの施策がその中から生まれてこなければならないのではないか、このように私は考えるわけでございますが、あくまでも自由討議で参考にさせていただく、そして実態を知る。いつまでかかって実態を知るのかわかりませんけれども、もうすでに発足している専修学校に対する具体的な施策を真剣に討議していただきたい、このように思うわけでございます。そういう面において、何か前向きな施策が施されるような話題がその中からあったかどうか、お尋ねしたいと思います。
  248. 三角哲生

    ○三角政府委員 やはり十分にいろいろな実情を、まずこの懇談会の委員と申しますかメンバーの方々に正確に、また深く認識していただきまして、その上で何らかの施策に関連しましたような結論も出していただこうということでございまして、目下のところはまだそういうふうに特定の方策にしぼってこの議論を運ぶということでなく、先ほど申し上げましたように実情を十分に認識し、それからさらにその上で、直接に学校を運営しておる方々あるいは関連する団体の方々等から問題点等につきまして指摘をしていただいて、それを整理していこうということでございます。でございますから、やはりかなり腰を据えまして御審議をいただくという態勢でいま研究会議が進められておるわけでございます。
  249. 伏屋修治

    ○伏屋委員 私は八十国会で、五十二年の本委員会でそれを御質問したわけでございます。それで、いま管理局長が御答弁になったようなことを犬丸前管理局長お答えになったわけでございます。一年たっても一歩も前進しておらないという印象が強いわけでございます。そういう点で、先ほどの大臣の専修学校に取り組む積極的な姿勢と全く反するのではないか。その辺、管理局長どうお考えですか。
  250. 三角哲生

    ○三角政府委員 昨年の八月からこの研究調査を始めていただいておりますので、やはりもう少し時間をかけて十分に御協議をいただきたいと思っておりますが、私どもとしましては、これまでもやってまいりました日本私学振興財団によります融資の措置でございますとか、税制上の優遇の措置といったものにつきましては、そういった審議の結果を待たずにこれを適用する専門分野の範囲の拡大というようなことで、五十三年度も若干の改善の措置を講じた次第でございます。それからあわせまして、これは国のレベルで初めてのことでございますが、専修学校に対します補助金という形で、これは金額は千二百万円という金額でございますが、専修学校関係の団体が教員研修事業を行います場合に、これに対して補助を行うということを明年度計画いたしまして予算案の中に計上させていただいたというようなことで、少しずつでも前進をさせ、専修学校に対する施策を充実させていきたいというふうに考えてやってまいっているわけでございます。
  251. 伏屋修治

    ○伏屋委員 専修学校に対する振興財団からの融資の増額とか、あるいは税制上の措置とか学生に対する措置、いろいろな面で配慮していく、こういうふうにおっしゃってみえますけれども、まず何よりも専修学校の経営基盤というものをしっかりとしていかなければ人材もそこからは育ってこない、このように私は考えるわけでございます。そういう面におきまして、現在のところでは専修学校は私学振興財団からの融資に頼って学校経営をやっておる、これは一途でございますけれども、その財政上の裏づけというもの、文部大臣の前向きの姿勢に対応する財政的な助成の裏づけというものは私は必要じゃないか、このように思います。さきに私が質問いたしましたときには、そういう私学振興助成法によるところの経常費補助のところまではまだ考えておらないということでございますが、現在、私学振興助成法には専修学校というものは準法人として認められておらないということから、勢い私学振興財団の融資のみに頼っておる。そういうことからも、財政上の今後の助成の方法、そういうものに対して、私学振興助成法をこの専修学校にも適用させる、そういう法改正をする考えがあるかどうか、その辺、お尋ねしたいと思います。
  252. 三角哲生

    ○三角政府委員 いま御提案になりました事柄につきましては、私どもとしてはいろいろまだ非常に問題が多うございまして、非常に慎重に検討し、考えていかなければならない事柄であると思っております。御指摘のように、専修学校はまだ発足して約満二年を経たばかりの新しい制度でございますし、それから、いわば実質的にその母体になりました各種学校以来の状況を考えましても、これはやはりある面では非常に社会の需要に応じて、その需要に対応してやってこられて、そのことゆえに非常に魅力のある実質的な教育を展開することができたということでございまして、いわば非常に自主的な力強さと申しますか、たくましさということがまた一つの魅力の源泉でもあるわけでございます。それから、やはり専修学校というふうに一つの総括名詞で呼ぶわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、その教育形態なりあるいは教育内容がきわめて多様でありまして、これはまた一つの専修学校の特色であるわけでございますが、そういうことでもございますので、従来の施策もやはり専修学校一般にどうこうということでは必ずしもございませんで、専修学校のやっております中身に着目して充実強化を図ってきたというようなこともあるわけでございまして、そういうようなことから申しますと、やはりいまやっていただいております調査研究を進めていただきまして、私どもはその調査研究の結果を見てなお助成の策の充実に努めたいとは思っておりますが、御指摘のいわゆる一般的な経常費に関する助成ということにつきましては、現在の段階では、ここ当面のところ考えておらないというのが実情でございます。
  253. 伏屋修治

    ○伏屋委員 何度も言うようですが、大臣の前向きの姿勢いわゆる学歴に偏った社会を打ち破るための専修学校の果たす役割りというものを考えていけば、やはり何としましても財政的な裏づけが必要である。いま管理局長の御答弁によりますと、組み入れて私学振興助成法によるところの経常費補助をするという考えは当面はないということでございますが、せめて、地方交付税交付金の中から、いま現在の私立高等学校以下助成を受けております。そういう形ででも助成をするという、そういうお考えがあるかないか、お尋ねしたいと思います。
  254. 三角哲生

    ○三角政府委員 その問題につきましても、率直に申し上げましで現在のところそういう考えは持っておらないわけでございますが、御指摘でもございますので、先ほどからお話に出ておりますこの調査研究会議でも十分検討していただきまして、私ども文部省自身でも検討をいたしてみたいと思います。
  255. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そのことはぜひお願いしたいと思います。その大臣の姿勢からも、財政的な裏づけがなかったならばそれは絵にかいたもちである、ただ観念的な学歴偏重社会の打破であるというようなことにすぎないと私は思います。本当に大臣がそれを打ち破って、そして能力に応じてそれぞれが社会で適応した職場でがんばっていける、そういうような社会をつくるためにはどうしても専修学校にも力点を置いて、力点を置くということはすなわちそういう財政的助成の裏づけというものをはっきりしていかなければならない、このことが私は一番憂慮されるわけでございますので、大臣もそのことには鋭意御努力をいただきまして、早い時期に財政的な裏づけの方途が明確にされることを強く要望いたしたいと思います。  次に、個人立幼稚園の問題に移りたいと思います。  文部省は個人立幼稚園に対する学校法人化の推進を図っておられるように聞いておりますけれども、現在どのような進みぐあいなんですか。
  256. 三角哲生

    ○三角政府委員 昭和五十一年五月一日現在の私立幼稚園の数は八千六園でございます。そのうち四二・五%の三千三百九十九園が学校法人立となっておりますが、一年後の昭和五十二年五月一日現在では、幼稚園総数八千二百三十一園中四五・二%の三千七百十九園が学校法人立でございまして、私立幼稚園のうち学校法人立の占める割合は、若干ずつではございますが年々増加いたしております。なお、学校法人立以外の幼稚園の学校法人化の数で申しますと、四十九年度中は五十、五十年度中は六十八、五十一年度中は七十一園と、徐々にではございますが増加をしてまいっております。
  257. 伏屋修治

    ○伏屋委員 学校法人化が現在大体四十何%ですか、いまお答えになりましたけれども、非学法の幼稚園、それが学校法人になってきたというのは、五十年から五十一年、五十二年度で四%しかないわけでございます。ということからしますと、非常に遅々として学校法人化は進んでおらない、このようにしか私は解釈できないわけでございます。そのような進み方で、私学振興助成法にうたっておる、申請をして五年後にというお考えが文部省にあるようでございますけれども、それができるのかどうかということでございますが、その辺、お尋ねしたいと思います。
  258. 三角哲生

    ○三角政府委員 私学振興助成法では、御指摘のように、五年以内に、経常費の補助を受けました場合には学校法人立となるような措置が行われなければならないというふうになってございますが、やはりこれは、個人立幼稚園を経営している方々の御用意なりあるいは決心なり、あるいはその他の諸条件なりが絡んでまいりますことでございますので、私どもだけでこれはどうこうするというわけにもまいりませんので、その辺のところは必ずしも明確に先生に、こういうぐあいにというふうに言い切れない問題であろうというふうに考えております。
  259. 伏屋修治

    ○伏屋委員 これはあくまでも風聞でございますけれども、その国庫補助、経常費の補助は受けるだけ受けておけ、そしてそのときに、五年後に学校法人化に踏み切らなかったらその時点でまた考えればよいではないかというようなことを、あくまで風聞としてでございますけれども、私も漏れ聞いております。さきの経緯といたしましては、文部省学校法人化のためにということで、いろいろ予算的な配慮をしたにもかかわらず学校法人化に踏み切らなかったがために、十億七千万というような予算を余したという経緯もございます。今年度、五十三年度の予算を見ますと、そういうような学法、非学法、その二本立ての予算でなくて、一本化の予算で出ておるようでございますけれども、そのようなことはどうお考えになっておられますか、その風聞についてでございますけれども
  260. 三角哲生

    ○三角政府委員 私もやはり、学校法人化の努力をするということで補助を行う、これはまあ申すまでもなく都道府県が行うわけでございますが、それに対して国の補助を出すということにいたしておるわけでございますので、そういうような風聞があるとすれば大変残念でございますが、やはりそういう努力をやっていただきたいというふうに思う次第でございます。
  261. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そのように努力を積み重ねていっても、最終的に学校法人に踏み切らなかった場合は文部省はどのような措置をとられるのですか。
  262. 三角哲生

    ○三角政府委員 その場合には、五年たちましてもそういう努力をしていただく場合もありましょうし、しかしながらいろいろな諸条件でできなかったという場合もありましょうけれども、補助金はその後は打ち切らざるを得ないというふうに考えております。
  263. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いま管理局長お答えによりますと打ち切らざるを得ない。ということになりますと、その学校法人の申請をして国の補助を受けて、そして五年後にはできなかったと言って開き直る、そして後の経費は補助は受けないということになりますと、その間受けてまいりましたその補助というものは結局はもらい得である。そしてそれ以外に、学校法人のために鋭意努力しておる、そういう非学法の幼稚園もございます。そういう方々と比べるとまことに不公平がそこに生じてまいります。その辺はどうお考えですか。
  264. 三角哲生

    ○三角政府委員 私学振興助成法の解釈の上からは、私が先ほど御答弁申し上げたようなことになると思っております。ただし、やはり学校法人化の努力をしていただくのが本旨でございますから、私どもとしては、そういった努力の過程がどうなっておるかということは各都道府県当局にも十分に把握をしていただいて、その概況につきましては御報告を受けることにいたしております。やはり、幼稚園といったような、幼児を指導する責任ある立場方々であるわけでございますから、できるだけ努力をしていただくというふうに私どもはお願いもし、都道府県を通じて指導もいたしたいというふうに考えております。(発言する者あり)
  265. 伏屋修治

    ○伏屋委員 お隣の藤波先生はそうなってからというようなことも言われましたけれども、そうなってから全く不公正を生んで、まじめに努力した人、それからもらい得で、そのときに考えて学校法人をお断りすればいいではないかというような、そういうような開き直った幼稚園も出てくるでしょうし、また一生懸命まじめに学校法人化に努力しておるというような幼稚園もございます。そういうような不公正を生ませないためにも、ただ報告を聞きおく候だけではなくて、やはり文部省も今後、申請を受けたその幼稚園に対する指導監督を、文部省直接はやらないとしましても、細かい指導監督の指示というものは今後続けていかなければならない。それをやらない限りにおいては不公正が不公正で終わってしまうということになりますので、その辺、お聞かせ願いたいと思います。
  266. 三角哲生

    ○三角政府委員 経常費の補助金でございますから、不公正ということの考え方をどういうふうに考えたらいいかという感じがいたします。これは当該園といたしましては当該園の教育なり保育なりにこれは充てられるわけでございまして、究極は園児の教育の上にそれが生かされていくわけでございますので、そういう意味で、その期間有効に補助金としては活用していただけるものと思っておりますが、ただ、私学振興助成法のたてまえから、学校法人化に努力するという前提で交付されておるものでございますから、やはりそういうことが実質的にもできるだけ実現いたしますように、それはいろいろな不可抗力的な事情でそれができないという場合もあり得ようかと存じますが、できるだけ学校法人化の努力が続けられ、かつこれが実りますように、私ども都道府県を通じて指導助言をしてまいりたいと思っております。
  267. 伏屋修治

    ○伏屋委員 あくまでも国費の乱用を監督するという面で、厳しい文部省の細かい配慮、指導というものを強く要望いたしまして、次に私の同僚委員関連質問がございますので、よろしくお願いしたいと思います。
  268. 菅波茂

    菅波委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。池田克也君。
  269. 池田克也

    ○池田(克)委員 一昨二十六日にお尋ねしました分を若干残しましたので、遅くなりましたがお許しをいただいて若干質問をさせていただきたいと思います。文化庁次長、科学博物館長には何度もおいでいただいて恐縮でございます。  いままでの質疑で明らかになりましたことは、白金の自然教育園、ここは太古の自然がそのまま残されておるということで、東京ではたしかここと皇居内の吹上御苑、この二カ所くらいである、きわめて貴重な自然のなりわいである、こういうふうに理解をしております。そこに科学博物館の付属施設として運用をされているわけでありますが、最初に確認をさせていただきたいのですが、昭和二十四年に「旧皇室苑地整備運営計画に関する件」という、旧皇室苑地運営審議会会長から総理大臣あてのこうした文書がございます。それによりますと、白金御料地は「自然教育園として原状の保護、保存をはかるとともに、学校及び社会一般の利用に供すること。さしあたり教育上必要な資料、標本等を展示し、実験、実習用の施設を設けること。なるべく速に休憩所、管理所、水呑場、便所等公開に必要な諸施設を設けること。将来は野外教室、教材植物園、教材小動物園、実験実習用圃場および児童遊園を設けること。」と、かなり整備をして一般公開をし、戦後国民のそうした教養あるいは慰楽に供しなさい、こういう要望が出ております。いま私が申し上げた幾つかの中で、実現をしておるものはどれとどれか、博物館長からで結構ですが、教えていただきたいと思います。
  270. 福田繁

    ○福田説明員 昭和二十二年に「旧皇室苑地の運営に関する件」という閣議決定がございまして、その中にただいま御指摘のような事柄が挙げられております。ただし、この要綱の中身は白金御料地だけに関するものではございませんで、旧皇室苑地全般に共通の問題もかなり含まれております。  白金御料地の問題といたしましては、「国立自然園として自然科学研究及び自然観察の場として利用する傍ら、動物園及び小運動場の設備をすること。」ということと、それから「適当な箇所に簡易な野外休養施設を整備すること。」というような事柄が掲げられておることは御指摘のとおりでございます。ただし、この前も申し上げましたように、その後、この旧皇室苑地の中で白金御料地については、武蔵野の自然を残す非常に貴重な植物相がございますので、したがって、この学術的な価値を保存するために文部省に移管するということが昭和二十四年に決まったわけでございます。それと前後いたしまして、昭和二十四年に旧皇室苑地の整備運営計画に関する審議会が設けられまして、この審議会の会長から時の総理大臣、吉田総理に対して運営について報告がなされました。     〔委員長退席、唐沢委員長代理着席〕 この中で、簡単に申しますと、白金御料地につきましては「自然教育園として原状の保護、保存をはかるとともに、学校及び社会一般の利用に供すること。」これが第一の主眼でございます。また、そのために「教育上必要な資料、標本等を展示し、実験、実習用の施設を設けること。」そういうようなことも書いてございます。したがって、二十二年当時の決定と二十四年当時のこの審議会の答申とは少し趣が変わっておることは御承知のとおりでございます。したがって、文部省に移管されましてからは、この運営審議会の基本方針にのっとりまして、原状の保護、保存を図ると同時に、学校教育あるいは社会教育の場として、観察、実験の場としてこれを利用していくという趣旨でやっております。したがって、標本、資料等の収集も若干いたしましたけれども、もちろん休憩所、管理所等、入園者に対するサービスに必要な施設はその後年々やってまいりまして、園内の諸施設も、不十分ではございますけれども、できる限り教育活動の場としてこれを大いに活用していく方向で現在は鋭意運営されておるわけでございます。  以上でございます。
  271. 池田克也

    ○池田(克)委員 いろいろと御説明があったわけですが、結論として、保護と、それから社会一般の利用に供する、二面性を持ったものだと思うのですね。  この間の御答弁で、使っている人数が四十九年には九万三千、五十年が八万七千、五十一年が七万八千と、毎年六千人から九千人ずつ減っています。一日にするとたしか三百人というようなお話だったと思います。あれだけ広いところで三百人。たしか一時に三百人入れてはいかぬという計算をされておる。ですから、三百人以上同時に園内に入っておったら、これから入りたい人は待ってもらう、だれかが表へ出てきたら入れるというようなことまで計画をされておる。ところが、一時じゃなくて一日で三百人ですね。微々たるものです。本当に広いところです。この東京の中で白金の自然教育園を知っている人は何人いるか、非常に少ない。自然が愛され、公園をつくれという声が多い中で、せっかくこれだけの国の財産というものを活用してない。これについて、科学博物館もそうなんでしょうし、文部省としてももっと関心を持っていろいろと運用すれば喜ばれる。あの大阪の万国博の跡地にも民族学のりっぱなものができましたし、これから千葉の方にもつくろうという計画も私たち承知をしているわけであります。新しくつくることも結構でありますが、すでにあるこうした自然の恩恵というものをもっともっと多くの国民に開いて活用させるべきだ。しかも、いま館長さんのお話では、いま私が読み上げたのは一般的な皇室苑地というふうにお考えかもしれませんが、ここにはっきりと白金御料地をこうしなさいということが出ている。皇居外苑は「国民広場として公開」、もうだんだんとそうなってきております。新宿御苑は「国民庭園として広く国民の利用に供する」。これもなっております。京都御苑もそうです。要するに白金御料地が特段立ちおくれているように私は思うのです。これは率直な感想として、現状認識、いままで保護、保護という形できた、公開についてはそういう意味ではどちらかというと守りの側であったと私は思うのですが、私のそういうような観測、感想というものは間違っているかどうか、一遍館長さんからお伺いしたいと思います。
  272. 福田繁

    ○福田説明員 この前申し上げましたのに少し誤解があったかと存じますけれども、年間の入園者の平均をとりますと一日に大体三百人前後ということを申し上げたつもりでございます。したがって、日曜、祭日などの、シーズンにおけるそういう休日には一日に二千人もそれ以上もおいでになるわけでございます。したがって、そういう込み合うときに三百人以上は一時に入れては困る、そういう制限公開をしているということを申し上げたつもりでございます。誤解のないようにお願いしたいと思うのでございます。  ただ、いろいろな施設を中にすることは、やはり自然保護の関係から制約がございますので、私どもの運営審議会の専門先生方も、なるべく施設は最小限度にして、いままで人手が入っているような部分についてはこれはある程度の施設、設備をすることは当然でございますけれども、それ以外の、いわば聖域と申すような、絶対に自然の保護をしなければならぬという区域が相当面積が広うございますので、そういうところには施設はしないという方針でまいっております。したがって、そのかわりと申しますか、野外教室だとかあるいは各種の講習会とか観察会とか、そういうものは年間を通じて非常に頻繁に実施いたしております。そうして、手を入れていいところには植物教材園だとか水生植物教材園だとか、実験、実習に役に立つような若干の施設をもって運営されておるわけでございます。
  273. 池田克也

    ○池田(克)委員 いまいろいろお話しございましたが、同時に三百人を限度とする。私、趣旨は了解しているつもりです。この一時に園内に三百人の人が限度だというふうに判断された基準とか背景とかいうのはどういうことですか。
  274. 福田繁

    ○福田説明員 これは余り科学的な根拠はございませんけれども、二十四年に文部省がここを自然教育園として開園いたしました当時、中の状況から考えて大体三百人程度が一時に入る入場者としては適当であろう。これはつかみでございますけれども、そういうことからこれが決まったわけでございます。
  275. 池田克也

    ○池田(克)委員 建物を建てることは保護のために余り感心しないというお話でしたが、これはどういう理由ですか。
  276. 福田繁

    ○福田説明員 これは現在文化財保護法によって天然記念物に全域が指定されております。したがって、建物その他の施設を設けることは現状変更になりますので非常な制約がございます。しかし、参観者の便利を図らなければなりませんので、若干の休憩所とか便所だとか水飲み場だとか、そういう最小限度の施設はもちろんやらなければなりませんが、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  277. 池田克也

    ○池田(克)委員 隣にホテルが建とうという御時世の中で、ホテルの方は構わない。しかし、中に本当に人々を入れて公開する、そうして自然に親しませて、国民にそうした教養の場を与えるための施設についてはどうか。私は、本旨と取り違っているところがあるのじゃないかという気がするのです。少しこの問題についてお伺いをしたいと思うのですが、大変弱い自然といいますか、大事に扱わなければならない。よくわかります。ですから人数も制限をする、施設を建てぬ、こういうふうにして、総理大臣あてにこうしたきちっとした要望も出ているのにもかかわらずそれを手控えて、大事にしてこの自然を今日まで保護してきた文化財保護というたてまえは私はよくわかります。それならそれを貫くべきであって、その周辺に押し寄せてくるさまざまな開発というものに対しては断固たる処置をとるべきだ、私はこう考えるのですね。  そこで、前回の繰り返しに若干なりますが、昭和五十年の九月一日には西武不動産が臨接地にホテルを建設するということについて許可を求めてきております。これに対して昭和五十二年の十二月に吉久次長名で、影響が軽微であるから文化財保護法八十条に該当しない、構わない、こういうふうな答えを出しておりますが、それは事実でしょうか。
  278. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 そのとおりでございます。
  279. 池田克也

    ○池田(克)委員 この、影響なしとするに至った経過でありますが、前回私が予算委員会の分科会でお尋ねをいたしましたときに、吉久次長からは、国には調査機能がない、このように御答弁がございました。福田館長の方からは、実は国でも調査中であるという答弁がございまして、両者食い違っております。どちらがどう本当であるのか、お伺いをしたいと思います。
  280. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 私がその際、国には調査機能がないと申し上げましたのは、文化庁そのものについて、つまり許可する権者である文化庁自身に調査機能はないということを申し上げたばかりでございます。
  281. 池田克也

    ○池田(克)委員 そういたしますと、あのとき吉久次長からの答弁によりますと、二つの調査があった。一つは西武不動産が調査をした。もう一つは生越忠という学者の方が民間の方の依頼によって調査をした。二つの調査があった。しかも、福田館長さんのお話では、その調査の金はどこから出たのですかと私も聞きましたら、事業者の負担でございます。つまり西武不動産、ホテルを建てたいと申し出ている側の負担で調査をさせたという答弁でございました。私は不思議に思うのです。建てたい人間の調査というものは、これは当然有利な方向に持っていく。私は、独自で全く公正な調査というものを国の機関でやって、それによってこれが影響ないというのならばないで判断を下すことができると思いますが、この経緯というものは私は若干おかしいところがあるのじゃないか。この二つの片っ方の生越先生の方の調査は反対という結論です。こういうような答弁がありまして、私ちょっとその辺、時間もありませんで釈然としなかったのですが、もう一遍この点について明らかにしていただきたいと思います。
  282. 福田繁

    ○福田説明員 この前は時間の関係上詳しいことを申し上げられなかったのでございますが、私ども、四十九年の七月に西武不動産からあそこにホテル建設をするという申し出を受けまして、その段階でプランを見ますと、十四階建てで地上四十五メーター、それから地下一階で十一・五〇メーターというような、そういう大きな計画でございました。これは相当、やはり隣接地でございますのでいろいろ自然教育園の方に影響があるのではないかということで運営審議会にも諮りまして、その結果、これはやはり西武不動産に環境アセスメントをまずやってもらう必要があるのだ、こういう結論に達しましてやっていただいたわけでございますが、しかし、これはいま御指摘のように西武不動産が勝手に独自にやったものではなくて、われわれの側の専門家の指導によって、こういう点はああいうようにしてもらいたい、こうして調査してもらいたいと、調査方法まで詳しく指示をいたしまして、その約束のもとに環境アセスメントを実施してもらったわけでございます。第一回の調査は四十九年の十二月に出てまいりましたけれども、それを見ましても非常に不十分でございまして、さらに専門家によってこれを分析、検討した結果、第二次の調査をやってもらいました。さらにそれに続いて第三次までやってもらいまして、一応の結論は、西武不動産側のアセスメントの結果は出たのでございます。ただ、それだけに終わったのではなくて、私どもといたしましてはなお不十分な点、それからなおその西武不動産のやりましたアセスメントの調査の結果を深く追及する必要を認めましたので、そういうことから、四十九年から私ども独自の立場で調査をいたしました。五十一年、五十二年と調査をいたしましたということを申し上げたわけでございます。
  283. 池田克也

    ○池田(克)委員 西武が科学博物館等の指導のもとにアセスメントをした。それで四十九年には一応の結果が出た。その結果によればこのホテル建設はオーケーだったのですか、だめだったのですか。
  284. 福田繁

    ○福田説明員 ただいま申し上げましたように、四十九年の十二月に出ました調査の結果では不十分だということを私どもは認めたわけでございます。     〔唐沢委員長代理退席、委員長着席〕
  285. 池田克也

    ○池田(克)委員 不十分だというのは判断の材料にならぬという意味ですか。
  286. 福田繁

    ○福田説明員 そうではなくして、たとえば水の問題にいたしましても、地下水の問題は非常に微妙なものがありますし、またあの園独自な地下水の問題もございますので、そういう点をさらに詳細に追及していく必要があるということで、その上で結論を出すべきだということでございました。
  287. 池田克也

    ○池田(克)委員 ですから、地下水の問題もさらにいろいろと調べなければならない。つまり、その四十九年の西武プラス科学博物館の指導のもとにやったアセスメントでは、ホテルを建てていいか悪いかという判断には至らないということではないのですか。
  288. 福田繁

    ○福田説明員 先ほど申し上げましたように、一回だけでなくて三回継続して、五十年の五月ですか——環境アセスメントというのは、御承知のとおり年間の一時期だけではいけませんので、年間を通じてすっかり調査結果を見るということが必須でございます。そういう意味で第三回の調査までいたしました結果、若干の問題はあるにいたしましても、大勢においては支障ないというような判断を私どもはその段階でいたしたわけでございます。
  289. 池田克也

    ○池田(克)委員 若干の問題があるにせよ、大勢においてはホテルを建てることは支障はないと判断したわけですか。それはいつですか。
  290. 福田繁

    ○福田説明員 五十年の大体夏ごろでございます。と申しますのは、その間に先ほど申し上げました建築の計画を西武側はいろいろと検討いたしまして縮小してまいったのでございます。それで五十年の段階では、最初の十四階案を十階案にいたしましたし、それから地下も、地下水の関係を考慮して地下一階を七・七メーターぐらいに縮める。高さは三十二・五メーターぐらいでございますが、大分規模を縮めてまいりましたので、したがって影響はほとんどなかろうというような専門家の意見になったわけでございます。
  291. 池田克也

    ○池田(克)委員 それはいつの時点ですか。
  292. 福田繁

    ○福田説明員 私の記憶では五十年の九月ごろであったと思います。
  293. 池田克也

    ○池田(克)委員 五十年の九月に構わないという案ですか。五十年の十二月十五日に自然教育園運営委員長の談話で、五十年七月と十二月と二回にわたってホテルの建設は影響があると思われるので好ましくないという意見を出している。おかしいじゃないですか。四十九年、五十年と、確かに西武を中心として、御助力をしてアセスメントをされたことは私も承知しております。その時期では好ましくないという意見が出ていると私は承知しております。
  294. 福田繁

    ○福田説明員 時期が少し前後いたしておるようでございますが、運営委員会で好ましくないという意見を出しましたのは五十年の三月でございます。
  295. 池田克也

    ○池田(克)委員 今度は五十年の三月に好ましくないという意見だったと言う。さっきのお話によれば五十年の夏に、アセスメントをやって、いいとなった。たった半年の間にどうしていいことになったのですか。
  296. 福田繁

    ○福田説明員 それはただいま申し上げましたように、アセスメントの調査を進めてまいりまして、第三次までの結果が出たわけでございます。それと同時に、西武側も建築計画を変更いたしまして、地階の問題、それから階高の問題等いろいろ考慮した設計案に変更した関係からでございます。
  297. 池田克也

    ○池田(克)委員 西武が正式に許可を求めてきたのは五十年の九月ですよ。それ以前に、西武と科学博物館が本当に毎日毎日協議をして、どういうことなのだ、どういうことなのだ、どうすればできるのだということを一体となって協議している。館長に許可を求めてきた、それに対していいとか悪いとか言って一遍突き返す、こういう案だったらどうですかと言ってくる、またアセスメントをやって、いいとか悪いとか判断する、館長というものはそういうふうにしていくべきだと思うのです。それを事前に西武と科学博物館が協議して、これならどうですか、これならどうですかというので、西武側にたくさんのお金を出させて調査さしているのです。このアセスメントの費用は一億と言われております。西武側も、それだけの費用を使ってアセスメントを延々とやって、そのアセスメントが捨て金になるようなことは企業としてしませんよ。当然のこととして、五十年の九月に公式に西武側が文化庁に対して許可を求めてくる以前に、西武と科学博物館の間がきわめて癒着して、企業側に有利なように判断が流されてきているのですよ。そうでなければこんな話は出てこないのです。現に五十年の九月に正式に、こういうのを建てたいのですが許可をしていただけますかということを文書で出しているのです。いままでいろいろあって見込みがあったから出したのかもしれません。ただ、いずれにしても私は今回のこの件についてはどうも不明朗なものがある。いかがですか、私のそういう疑問について明確に、これはこういうことなのだ、全くそういうような、なあなあみたいな話はないんだ、毅然として、この貴重な自然の森を、江戸時代、徳川時代から残されている東京では貴重な自然を守るために、そうしたものを厳密に判断をしたのだ、科学博物館としてこういうふうな御確信ありますか。
  298. 福田繁

    ○福田説明員 お言葉を返すようでありますけれども、私どもはそういう癒着などということは絶対にございません。その間に西武側といたしましては四回にわたって計画を修正しております。それはなぜかと申しますと、当初の計画についてはいろいろ問題があるので、私どもといろいろ話し合った結果だんだんに計画を縮小してきたわけでございます。ただ、御承知のようにあの地域は商業地域でございますので、われわれとしては建築の許可とかそういう問題については何ら権限を持っておりません。しかし、当時の状況としては西武側は非常に建築を急いでおりましたので、万が一、その商業地域に建てる場合、都の方に建築の確認の申請をなされた場合にわれわれとしては防止する方法はございませんので、したがって、ある程度話し合いによってこれを最小限度の影響に食いとめるということが第一の必要な課題でございました。したがって、私ども、同時に、もし申請を出されるならば、天然記念物の隣接地でございますからまず文化庁にいいか悪いか判断してもらって、文化財保護法に抵触するかしないかをまずやるべきではないかということを勧奨したわけでございます。そういうことで、西武側はいやいやながら文化庁にその申請書を提出したといういきさつになっております。
  299. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは驚いたことを聞きましたね。いやいやながら文化庁に申請した。あたりまえのことじゃないですか。文化財保護法によって、影響があるかもしれない地域に対しては許可を求めなければならぬことになっていると思いますよ。それじゃ科学博物館として、この問題は文化庁にそうやって法に基づいて許可願を出しているのですか、それ以前に何の根拠で西武側と話し合いをしたのですか。
  300. 福田繁

    ○福田説明員 われわれの方は何も法的な根拠は持っておりません。ただし、向こうからあそこへ建てるので了解してほしいという相談があったのに基づいて相談を始めたわけでございます。
  301. 池田克也

    ○池田(克)委員 了解してほしいとは、何の了解ですか。
  302. 福田繁

    ○福田説明員 これは一般の建築の場合でもそうでございますが、自然教育園はホテル側にとっては地元でございます。したがって、地元の意見を聞くということは当然であろうと思います。
  303. 池田克也

    ○池田(克)委員 地元といっても、その辺の商店や住民とはわけが違いますね。御承知のとおり、科学博物館は法のもとに自然を保護するという役目をしょっていると思うのです。したがって、明らかに法の根拠のもとに西武と話し合う、法のもとに判断をする、これが当然じゃないかと思うのですね。しからば、科学博物館としてはこれの設置者かといえば、これは国ですよね。文部省が所管している国有財産です。その財産の隣に物を建てることについて、科学博物館として、近所だから話し合いましょうという形で、きちんとした法の根拠がないのにそういう接触をして、こうしなさい、ああしなさいというような話し合いがあるということは癒着じゃないですか。言葉は過ぎるかもしれませんが、われわれそう見たくなっちゃうのです。どうですか、この辺については法のもとに、きちっとした権限のもとに接触をするのが民間の業者に対する本当のあり方じゃないかと私は思うのですが、どうでしょう。この問題については、大臣、いかがですか。
  304. 砂田重民

    砂田国務大臣 白金の自然教育園は、今日では武蔵野の自然をそのまま残している学術的意義の非常に高いものであって、外部からの環境への悪影響はできるだけ防がなければなりません。ですから、できるだけ多数の方に入っていただいて自然に親しんでいただきたいとは思ってもそれが許されない実情にございます。ちょうど、尾瀬が開かれてはいるけれども大変な制限のもとに開かれているように、環境に対しての悪影響ということを考えますと、西武からそういう話を持ち込まれた科学博物館が、建築がいいとか悪いとか言う権限はありませんけれども、この自然教育園に悪影響があっては大変だというところから、そういうものは困ります。こういうことは困りますということを検討をいたしましたことを、私が、癒着した、悪かったと責めるわけにはまいりません。
  305. 池田克也

    ○池田(克)委員 癒着と私は申しましたが、金銭の授受があったなどという意味で私は言っているのじゃないのです。要するに、昭和五十年の九月一日に西武不動産が法に基づいて許可を申請している。形としては二年間かかって昭和五十二年の十二月に、先ほど来申し上げているように吉久次長名で影響なしと判断が出た。この間二年間あるわけです。二年間にわたっていろいろと協議をした。このことは前回も吉久次長から私に対してるる御答弁があったところであります。「約二年ばかりの日月を費やしまして十分な調査をいたしたわけでございます。」こういうようなお話でございました。  ところが、私の手元にあるこの資料によりますと、昭和五十年の十二月四日に「白金プリンスホテル建設について国立科学博物館と西武不動産株式会社との間で協定した内容の要旨」という、「国立科学博物館」という名の入ったけい紙に書いたこういうものがあるのですね。要するに、五十年九月一日に申請をしてまだ三月しかたたない間に、この答弁によれば二年かけていろいろと協議いたしまして五十二年の十二月にようやっと結論が出ましたと言っているのに、もう申請をした三月後に協定ができているのですよ。科学博物館と西武不動産の問で協定ができている。「建築物の高さは三十二・五メートルを超えないものとする。」いわゆる十階建てと言っている高さです。どう見たって癒着と思っちゃうですよ。  公正にやるのだったら、九月一日に申請をして、二年間かけてずっとやって、構いませんよという答えが出て、その構いませんよということを運用するのについて、これから鳥も来るだろうし、いろいろな自然もあることだから、明かりのつけ方についても、向こうの森には余り明かりを向けないでくれとか、さまざまな協定ができる。オーケーが出てから協定を結ぶというならわかりますが、申請を出して三月後、五十年の十二月四日にこういう協定ができているということは、この問題がフェアな形で、自然を守るために国として十分に調査をし、十分に協議をしたということだろうか。業者の方々も、そうしたお金もうけをしようとされるのは業者だから当然でしょう。そういうふうなことに対して、ぎりぎりいっぱい、法のもとに自然を守ろう、国民の共有財産を守ろうという行動であるべきだったと私は思う。五十年の十二月四日、三月後に早々と協定を結んで、結果から見るといま協定どおりになったわけですね。言うならば、その間のアセスメントは要らなかったのじゃないですか。どの程度だったらオーケーがとれますか、この程度ならとれるという話をして、そのとおり案を出してきているわけです。これは許可を求めるという姿じゃありません。初めから、なあなあで打ち合わせして、まあこの程度なら何とか認めましょうという形で手を打ってから届けを出している。私はこういうようなことでは自然は守れないと思うのですが、大臣、どうですか。
  306. 福田繁

    ○福田説明員 誤解があるといけませんので一言補足さしていただきたいと思います。  私ども五十年の十二月に西武不動産と協定をいたしました。それは御指摘のとおりでございます。その趣旨は先ほど申し上げましたように、西武不動産はどうしても十階建て三十二メーター半の計画で進めたいという意向が強うございました。そしていまにも建築の確認申請をするような状況が迫っておりましたので、私どもといたしましては、商業地域であります関係上、その影響を最小限度に食いとめるためにはその対応としてどうした方策が必要かということをいろいろ考えまして、一応暫定的でもその段階において影響を最小限度にするための事項を西武側に了解してもらって、そして一応覚書をつくっておく必要があるだろうと考えまして、西武不動産と、一応の歯どめとしてそういう内容のものをいたしたわけでございます。しかし、幸いに西武不動産は建築確認の申請をその後やりませんでしたので、したがって、その後も継続して、文化庁、それから私どもの方、それから西武不動産と種々協議をいたしまして、五十二年九月の文化庁の判断になったわけでございます。
  307. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は全然納得できません。要するに、いろいろ話し合いをした、西武不動産はどうしてもここへ建てるんだとおっしゃいますけれども、建てると言ったって、文化財保護法のたてまえからいけば、影響があるというふうに文化庁が判断をすれば建たないのですよ。それは確かに民有地で買ったかもしれませんよ。しかも東京都が四十七年にこの地域指定を住専から商業地域五〇〇%に変更しています。この陳情者はだれかというと西武鉄道です。この土地をこういうふうに使いたいために、最初近隣商業だったのを商業に変えさせておる。東京都に対してさまざまな運動をしています。そして何としてもここへ建てるというふうに言ってきたのですが、ホテル側は、ホテルはここでなくても構わない、こう言っているのですよ。ホテルはあの土地でなくてもよい、国や都で買うと言えば売る、代替地でも結構だ、こう言われました。こういうふうにして、西武側は必ずしもあそこへホテルを建てなくてもいいという柔軟な姿勢があった。かなり最近までそうだったのですよ。にもかかわらず、どうしても建てるというので、話し合って、じゃこの程度しか、ぎりぎりいっぱいこの辺ですね、そうして協定を結んで、それからずっと後になってオーケーを出している。二年かかった。しかも文化庁次長ははっきり、二年の歳月、慎重に審議いたしましたと言われる。冗談じゃありません。あそこに建つのだという結論は申請が出てから三カ月後に出ちゃっています。協定が結ばれていますよ。こういうことで本当に文化財が守れるかなという危惧を私は抱く。これは答えを出すのが早過ぎたと私は思うし、また、この問題について非常に多くの人たちから心配の声が上がっている。オリンピックでもってあの道路がついた。自然がかなり削られて高速道路がついています。私はどうもこの点について納得できないのです。
  308. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 文化庁の立場から、私の方から若干補足させてもらいたいと思います。  科学博物館の方で協定書を結んだということは私ども伺っておりまして、いろいろ西武側との交渉につきましては文化庁みずからも当たりましたし、科博との間の話し合いの経過等も私ども聞いておりましたが、実は私どもが許可した場合にはその協定書よりもさらに改善したものになっておるわけであります。  たとえば「地下部は七・七メートルを超えないものとする。」ということで協定書はできておりますが、御承知のように関東ローム層が約五メートルありまして、その下が渋谷粘土層で不透水性が高い。したがって、第一帯水層は地下五メートルでございまして、その第一帯水層が自然教育園のいわゆる植生を涵養している最大のものでございます。したがって、地下部七・七メートルでもだめである、これでもまだ影響があると認めざるを得ないというのが私どもの判断でありまして、最終的にはそれでは三メートルにしたいというようなことであったわけです。したがって、その協定書よりはさらに改善をされております。  さらに地下水につきましては、その協定書を先生お持ちでございますからごらんいただきたいと思いますが、「雨水の浸透を図るため、」その周辺の「不透水性地域を透水性地域に変えるとともに、ホテル周辺の地域を極力透水性を保つよう努めるものとする。」この趣旨は私どもはわかりますが、非常に漠然としておって、これでもって影響なしと判断することはできないというのが文化庁の立場でございます。したがって、数字的に申し上げますと、二千九百平米の建物がホテルとして建つわけでございますが、約九千平米のところを建物を撤去する、ないしは舗装をはぐというようなことによりまして透水性のある地域にするということに、協定書をつくった後で先方はいろいろ改善をいたしまして、その結果、私どもとしては、透水性の問題については若干従来よりもさらに改善があるものだというふうに認めたわけでございまして、その協定書が五十年の段階ですでにできた後二年間そのままにしておって、二年後、影響なしとようやく認めて通知をしたものでは全くございません。その協定書から出発しましてさらにいろいろな支障点を問題にし、それについての先方の改善というものを見届けた上で、影響なしと最終的な判断をいたしたわけでございます。その点、補足させていただきたいと思います。
  309. 池田克也

    ○池田(克)委員 要するに、役所のやることというのは、結論が出る前にこういう協定書をつくったり、それからいろいろな打ち合わせをして、最後になって役所として許可ができるようなかっこうに業者を誘導していっているのですよ、そういう姿は役所としてよくないと私は言っているのです。その後いろいろ改善されたことも承知しております。しかし、毅然として、こういう案だ、だめ、次にこういう案だ、それならいい、いろいろときちっとしてやるべきであって、話し合いとか協定なんというものはやるべきじゃないと私は思う。どういう権限でこの協定を結んだのか、私はそれについていまのお話では納得できない。  時間がありませんので最後にしますが、しかもこの場所は避難場所に指定をされております。ホテルが建った場合、避難場所としての機能が喪失をいたします。このことについてもどのように対処するか。これは避難場所のことですから東京都のことでしょう。また、自然教育園に飛んでくる鳥。日米、日ソ、日豪の各国で批准された渡り鳥条約によって保護育成が約束されています。ホテルが建ち、明かりがともればさまざまな影響が出てまいります。こうした点について西武側は知らなかったと言っております。  こうした問題、さまざまな要素がこの問題をめぐってまだまだございます。時間がありませんのでこれまでにいたしますが、私が指摘したこと、官庁に許可を求めてきた場合に、その許可について事前に内々で話し合いをするということは本当の姿じゃない。大臣は先ほど、気持ちがわからないでもないというような御理解を示されておりましたが、自然を守るということに関しては厳然とやるべきじゃなかったか。大変失敬なことを申し上げたかもしれません。癒着という言葉を私は使いたくないのですけれども一つの表現として使わしていただきましたが、ぜひこの点について今後とも慎重な配慮と、できれば白紙撤回も含めてもう一遍検討をし、十分なアセスメントの上で結論をお出しになるように私は求めたいと思います。大臣お答えをいただければと思います。
  310. 砂田重民

    砂田国務大臣 確かに、自然を守るためには最善の努力を尽くさなければなりませんことは私も同感でございます。ただ、自然教育園の外にありますいわば人様の土地の上に私企業が何か計画をする、そのことによって、自然教育園のせっかく努力を積み重ねて守っております自然が破壊されること、侵害されることは許されることではありませんから、いろいろ厳しい条件をつけた、注文をつけた。その間に法律にも基づかずに博物館がという先生の御指摘がございましたけれども、博物館にしてみれば懸命だったと思うのです。そして、お言葉を返すようですが、協議であるとか話し合いであるとかというお言葉で御指摘になりましたが、私は博物館のその行動を善意に解したいと思うのです。博物館が話し合いをしたり協議したりしたのではなくて、注文をつけた。これでは困りますよ、こういうことがあってはなりませんよという注文をつけたと、私は博物館の行動に対して善意で実は受け取りたいと思うのでございます。文化庁も大変努力をいたしましたし、いろいろ各方面からこういう問題点があるではないかということも十分文化庁はお聞きしておりまして、そのこともまた爼上に上げて文化庁もみずから西武側に注文づけをして、それを西武側が一つ一つ改めてきた、こういう経緯があったろうと思うのですが、基本的に、この自然教育園というものを懸命になってこれからも守り続けてまいりますことは、最善の努力を尽くしてまいります。
  311. 池田克也

    ○池田(克)委員 最後に一言。いま白紙撤回を含めた検討を私要望したのです。この気持ちは私は変わりがありません。この問題は当該港区からも、区の議会の決議として、文化庁に対して反対だという声が出ております。単なる反対ではなくて、古垣鉄郎さんとか、かなりの知識人等も周辺で心配されておる。かなりの署名も出ております。そして自然を守るという住民の熱意、そういう意味で、ぜひぜひ慎重な検討の上に納得のできるような処置をしていただきたい。私はそのことを最後に要望いたしまして、大変遅くなりましたが、終わらせていただきます。
  312. 菅波茂

    菅波委員長 次回は、来る四月五日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会