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砂田国務大臣 湯山
先生のおっしゃいますこと、私にはよく理解のできることでございます。まず初めに申し上げておきたいと思いますことは、
教育の荒廃がいろいろな形であらわれている、そのことについて、
教育行政の場に非常に大きな責任があるという御
指摘に、私は全くそのとおりでございますとまず
お答えをしておきたいと思います。一番大きな責任は私
ども教育行政の場にありますものが感じていかなければならないということを、よく認識をいたしております上に立って
お答えを申し上げたいと思います。
通達だけで事が解決するかという御
指摘でございます。私は、通達だけで事が解決するとは考えておりません。
教育の荒廃を何とか立て直したいという総合的な一連の施策を講じておりますことは、もうここで申し上げなくても
先生御承知のところでございます。学歴社会打破から、
小・中学校の
学習指導要領の改定に至るまで、一連の総合的な施策ででき得る限りの
努力をいたそうとしておりますことは、もうここであえて申しません。ただ、役に立つかという御
指摘でございましたけれ
ども、この両
局長が連名で出しました通達を私は祈るような
気持ちで実は見守っております。そして、ここに書かれましたことは、事新たなものは何
一つ書いてございません。いままで
教育現場におられる
先生方が皆さん御承知のことであろうと私は思います。そのことを重ねて注意を喚起したにすぎません。ですから、この通達が、いま両
局長が
お答えをいたしましたように、
都道府県教育委員会を通じて市町村
教育委員会へ、そして
学校現場へおりたときに、何言っているんだ、それぐらいのことはやっている、自分は生徒を完全に把握している、そういう
文部省を何だとおっしゃる
先生がおられれば私はありがたいことだと思います。しかも、いろいろなところで行われている調査で、困ったことがあったら半分ぐらいの生徒は友達に相談をする、両親に相談をする生徒も少ない、教師に相談する生徒も少ない、そのことを
先生御自身で、自分たちの恥辱だと考えておられる
先生もたくさんおられるわけでございますから、この通達がそういうふうに伝わってまいりましたときに、そうだ、ここに書いてあるこのことを自分も気をつけようとお考えいただけたならば本当に幸いだ、こういう願うような
気持ちで私はこの通達を見守っているわけでございます。
それから、社会
教育審議会に諮問が出ておりますことを、私、承知いたしております。この諮問が事のスタートからつまずきましたことも承知をいたしております。五切十省のことを御
指摘になりましたけれ
ども、これを田中前総理がおっしゃったのではなくて、
小学校の
子供たちから尊敬され、愛されている校長
先生がおっしゃった言葉としてその書かれた言葉の
内容を考えてみますと、私は間違っているものだとは思いません。しかし、たまたま言われた方が言われた方であったので問題になったわけでございます。諮問を出しましたちょうどその時期と幸か不幸かぶつかってしまったことも、この
審議をむずかしくさせた原因になったということを私も認識をいたします。五十一年の十月十五日に永井文相が国会で御答弁になっておられました。永井さんは
審議会の会長に、すでに言われている五切十省との
関連で生じてきたけれ
ども、そうしたものとの
関連においてあの
審議を続けていただくということは望ましくないということを明確に言っておられる。そういうお考えを永井さんが持たれたわけでございます。しかし、青少年の徳性の涵養というテーマそれ自体について考えると、それは非常に重要なものである。私は永井さんと同じ認識を持ちます。
そして、諮問をいたしておりますことに、何か非常に急いで答申をしていただくように書いてございますけれ
ども、私としてはそれを必ずしも同じようには考えません。青少年の徳性でありますとか道徳とかいうことは、確かに教科が行われ、
先生たちが道徳の涵養についても
子供たちを
指導、
教育してくださっているところでありますけれ
ども、その
内容について、終戦後
政府全体として、あるいは
教育の場全体として明確な柱を立てたことがまだないわけでございます。青少年が持つべき道徳というものを、
国民常識的な
範囲でいまは判断をしているわけでございます。私はこのようなことは、時代の変遷とともに変わるべきものと変わらないものがあると思うのです。たとえば
一つの例示的に申し上げますれば、憲法には青年たちのための結婚のモラルについて明確に書いてございます。男女
双方の合意によって成立する。旧憲法にはなかった新しい結婚のモラルというものがここに明確に書かれているわけでございます。しかし、男女
双方の合意のみでそれではそれが幸せな婚姻になるかどうか。今日の世の中でも、日本人的感覚をもってするならば、原則的には憲法に書かれているとおりの、当事者
双方の男女の合意が一番必要である、そのことが両親から心から祝福をされるものであることをだれしもが望むわけでございますから、そこらの割り切り方が、この諮問に
お答えいただく
審議会でも非常にむずかしい点であろうかと思います。そのことを踏まえまして、
審議会の自主性も私
どもは当然尊重してまいらなければならないことでございますので、この諮問に対しまして、私、できるだけ早い時期に一度
審議会長とお目にかかりましてよく御懇談を申し上げ、御意見も承らわしていただきたい、その上でこれをどうするかを判断をいたしたい、かように考えるものでございます。