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1978-03-24 第84回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 菅波  茂君    理事 石橋 一弥君 理事 唐沢俊二郎君    理事 藤波 孝生君 理事 嶋崎  譲君    理事 有島 重武君       石川 要三君    小島 静馬君       坂田 道太君    玉生 孝久君       塚原 俊平君    中村  靖君       長谷川 峻君    小川 仁一君       千葉千代世君    中西 積介君       長谷川正三君    湯山  勇君       池田 克也君    鍛冶  清君       伏屋 修治君    中野 寛成君       山原健二郎君    西岡 武夫君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君  出席政府委員         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      井内慶次郎君  委員外出席者         科学技術庁長官         官房参事官   佐伯 宗治君         文教委員会調査         室長      大中臣信令君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   小川 仁一君     新村 勝雄君 同日  辞任         補欠選任   新村 勝雄君     小川 仁一君     ————————————— 三月二十三日  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出第二一号) 同月二十二日  私学に対する助成増額等に関する請願鳩山邦  夫君紹介)(第二三二四号)  同(林義郎紹介)(第二三二五号)  同(森喜朗紹介)(第二四六〇号)  私学に対する国庫助成増額に関する請願池田  克也紹介)(第二三二六号)  同外三件(岡田哲児紹介)(第二三二七号)  同(木原実紹介)(第二三二八号)  同外二件(新村勝雄紹介)(第二三二九号)  同(田中昭二紹介)(第二三八一号)  同(春田重昭紹介)(第二三八二号)  同外一件(木原実紹介)(第二四二七号)  同外八件(新村勝雄紹介)(第二四二八号)  同(木原実紹介)(第二四五七号)  同外二件(新村勝雄紹介)(第二四五八号)  学校災害に対する補償制度創設に関する請願外  三件(嶋崎譲紹介)(第二三三〇号)  同外二件(嶋崎譲紹介)(第二四三〇号)  私学助成に関する請願草川昭三紹介)(第  二三三一号)  同(草川昭三紹介)(第二三七八号)  同(中馬弘毅紹介)(第二三九三号)  同外一件(草川昭三紹介)(第二四二九号)  同(草川昭三紹介)(第二四五九号)  私学助成に関する請願瀬野栄次郎紹介)  (第二三三二号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二三七九号)  同(小川国彦紹介)(第二四二四号)  同(岡田春夫紹介)(第二四二五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四二六号)  私学学費値上げ抑制及び教育研究条件の充  実等に関する請願山原健二郎紹介)(第二  三三三号)  私学父母負担軽減及び危機打開に関する請願  外一件(田中昭二紹介)(第二三八〇号)  私学学費値上げ抑制及び国庫助成増額に関す  る請願西中清紹介)(第二四三一号)  旧松本裁判所建物の保存に関する請願増田甲  子七君紹介)(第二四三二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 菅波茂

    菅波委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。嶋崎譲君。
  3. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私が国会に出てきまして、初めて文教委員会質問をしましたのが筑波大学法案でございました。十時に質問に立ちまして、その日は夕方の六時まで一人でやりまして、合計十七時間半にわたって、えらい長い長い質問をいたしたことをいま思い起こすわけでありますが、筑波大学ができてから、東京教育大学から筑波大学に諸先生方がどんどん移行していきました。東京教育大学は、文学部教授会の問題が長い間大学内部における紛争の種になり続けて今日まで参りました。いよいよ東京教育大学もことしで学生がいなくなりまして、先般卒業式がありましたが、筑波大学移行する先生方、おやめになる先生方等々、最後の締めくくりの時期を迎えていると思います。東京教育大学には、特に英文の関係文献や、それから歴史に関する文献など、わが国では最も貴重な文献がたくさんございました。それだけに、あそこには共同利用研究所、一講座くらいを設けて、その資料を全国の専門家が使えるようにするべきだという提案をしてまいりましたけれども、残念ながら、東京教育大学の図書は、聞くところによりますと、今月末には全部筑波大学に移るようであります。筑波大学があの資料を使えるような学風なのかどうか、私は大変疑問に思っておりますけれども、非常に残念なことだと思っております。  そういうわけで、東京教育大学がいよいよ廃校になるという情勢の中で、東京教育大学文学部教授会大学内部評議会の中では一つ外れたような位置をもって今日まで来ましたが、そういうことのために、筑波大学希望しながらもいまだ移行がうまくいっていない先生もあれば、筑波大学のあり方について批判的だった教官方々が、結局は筑波大学をおやめになって他大学に移るとか、新たな職を持たないままおやめになるというような事態がいまつくり出されているように思います。そこで最初にお聞きしますが、ことしの三月三十一日で東京教育大学教官はどのようなことになっているかについてお聞きをいたします。
  4. 砂田重民

    砂田国務大臣 東京教育大学教職員実情につきまして、大学局長から答弁させます。
  5. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御案内のように、東京教育大学移転部局関係教職員は順次筑波大学やその他の大学へお移りになりまして、ことしの三月十六日現在で実員は二百五十一名、このうち教官は百二十名でございます。その百二十名の教官のうち九十六名が筑波大学移行希望しておられるという状況でございます。この九十六名のうち、今日の時点で六十九名につきましては筑波大学の方から教育大学に対して割愛を申し出ておられますので、現在残余の二十七名について移行のための両大学における協議が進行中という状況でございます。
  6. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その二十七名のうち、文学部と他の学部とを分けますとどうなりますか。
  7. 佐野文一郎

    佐野政府委員 ただいま私の手元にございますのは、先ほど希望しておる教官の数を九十六名と申し上げましたが、その九十六名のうち文学部関係教官は七名でございます。ほかの教官教育学部理学部農学部体育学部、それから光学研究所教官でございます。
  8. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文学部と同じように、他の学部でも筑波希望しながらまだペンディングになっているという教官がいますか。
  9. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど申し上げました九十六名中には、教育学部で二十七名、理学部で一名、農学部で三十七名、体育学部で一名、光学研究所で二十三名の教官希望しながら、三月十六日の時点では移行が決まっていないという状況にあったわけでございます。
  10. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文学部は後にしまして、その他学部移行希望の諸先生方は大体みんな移れる見通しがありますか。
  11. 佐野文一郎

    佐野政府委員 最終的には筑波大学でどのようにこれらの教官を受け入れるかということになるわけでございますけれども筑波大学はそもそも教育大学移転ということを契機として創設された大学でございますし、かねて申し上げておりますように、東京教育大学教官の中で筑波大学移転希望される方につきましては、両大学協議によって円滑な移行が行われることを私たちは期待しておりますし、また両大学に対してもその旨を要請してきているわけでございます。私は、三月三十一日を控えて、両大学で非常に熱心に、また一生懸命に努力をされているというふうに承知をしております。残された期間はかなり短くなってきてはいるわけでございますけれども、この期間に両大学で最大限の努力が払われるでございましょうし、文部省としても、その状況を見守りながら、さらに両大学に対して円滑な移行が行われるように要請をしてまいりたいと思っております。
  12. 嶋崎譲

    嶋崎委員 過去、この四年間見ておりまして、幾たびかこの委員会でも途中で、東京教育大学内部の問題について取り上げさせていただいたわけですけれども、問題なのは文学部でございまして、文学部教授会には築波大学法案反対する教官が非常に大ぜいいたことが理由になって、東京教育大学内部文学部教授会というのはある意味では孤立をしているような状態がずっと続いてきました。そのために、正規の筑波大学教育大学連絡会議にも、文学部学部長が正規に参加していないという異常な状態がずっと続いておりました。同時にまた東京教育大学内部評議会でも、オブザーバーのようなかっこうで実際には出ていますけれども、ちょっと異常な状態でずっときたという経過がございます。  そこで、文学部以外の点については、恐らく筑波への移行希望される先生方はほとんど消化でき、希望されない方でおやめになってよそに行かれたというケースもおありなのではないかと思うが、比較的正常に事が運んでいるだろうと推測されるわけであります。そこで文学部にしぼりまして、文学部で今度おやめになる教官並びに筑波希望教官、それについての実情はどうなっておりますでしょうか。
  13. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど申し上げました教官百二十名のうち、文学部教官は十七名でございます。先ほども申し上げましたように、そのうちの七名の方が筑波への移行を御希望になっており、残りの十名の方が移行希望しておられないということでございます。そして、その十名の方のうち九名の方は他の国立大学あるいは私立大学移行される、お一人は定年退職をされるという状況でございます。
  14. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私の調査ですと、移行希望の方が七名、そのうち教授四、助手三、それから他の国立大学へ配置がえになったのは二名、それから定年退職が一名、そして辞職される教授が七名、計十七名というふうに理解しておりますが、そのとおりですか。
  15. 佐野文一郎

    佐野政府委員 定年でおやめになる方がお一人、それから他の国立大学に行かれる方がお二人、ほかの方は私立大学への就職が決定あるいは予定をされているということでございます。
  16. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、移行希望の七名の、教授四、助手三、この方については移行が実現できるでしょうか。見通しはいかがですか。
  17. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先ほど申し上げましたように、筑波大学の方でどのような手続を進めるかにかかるわけでございますけれども、これまでの両大学協議を通じて、両大学とも円滑な移行についてはできるだけの配慮を払っているということが私どもにはわかるわけでございます。もちろん、最終的にどうなるかということについて、この時点で申し上げることは文部省としてはできないことではございますけれども、私たちは、少なくとも三月三十一日現在で、いわゆる教育大学はなくなる、筑波大学あるいは他の大学へも移れないというような形にならないように全力を尽くしたいと思っております。
  18. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この間、週刊新潮筑波の問題が載りました。三月二十三日号に載りましたのをお読みになりましたか。
  19. 佐野文一郎

    佐野政府委員 読んでおります。
  20. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これは正確だと思いますか。
  21. 佐野文一郎

    佐野政府委員 非常にお答えしにくいのでございますけれども、いろいろな、たとえば文部省が弱腰であるというようなことについては私どもは承服をいたしかねますけれども、かなり状況を調べて書いている記事であるなということはわかります。そのことが、全体が正確であると申し上げるわけではございませんけれども
  22. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この取材経路と中身だけを抽象的に申し上げます。この取材を売り込んだのは筑波大学の某副学長でございます。そして某副学長が某教授の問題を書かせるために書かせたという経路をとっております。私はこの記者にもお会いをしました。この中に丁教授とかなんとかというのがいますが、そういう人物は、私も調査をしてみましたが、心当たりがありません。ですから、恐らく副学長の方の自分の言葉をT教授、何教授という形で書かれていると推測されます。  こういう記事がこの時期に載ったというのは、そういう意味一つ意味があるわけで、つまり、筑波大学移行されていく先生方の中で、希望されているにもかかわらず全員が実現しかねる、そういう条件をつくるためか、そのことによってつくられるのか、どっちかはわかりませんが、いずれにせよ七名の希望教官のうち、特に教授移行できない場合もあり得るのではないかというふうに推測をしております。その点、文部省の方は別に何もつかんでいませんか。
  23. 佐野文一郎

    佐野政府委員 筑波大学の中にいろいろな御意見があることは承知をしております。しかし、それはやはり大学として従来の経緯を踏まえて、教育大学との間で十分な協議を尽くして移行の円滑な実施ということを考えているわけでございますし、またそう考えられてしかるべきでございますから、先ほど来お答えを申し上げておりますように、少なくとも三月三十一日を越えた時点で、筑波大学に移ることができない、教育大学がなくなる、そういう形が起こらないように私たちは期待をしておりますし、さらに要請を続けてまいりたいと思います。
  24. 嶋崎譲

    嶋崎委員 教育大の校舎に小・中の学校が、付属が残っていますね。その付属に、学校教育部ないしは学校教育部センターですね、付属研究所みたいなものができるという計画はありますか。
  25. 佐野文一郎

    佐野政府委員 学校教育部を設けまして、付属学校は現地で整備をするということになっておりますので、付属学校関係の事柄を主として取り扱うことになる計画でございます。
  26. 嶋崎譲

    嶋崎委員 筑波希望されている先生が、たとえば筑波学系を現在希望されている。ところが、学系には行かないけれども、たとえばそのような学校教育部センターに籍を持つという形で、本人希望学系なのに、センターに、まあいわばたむろをさせる、表現が悪いですけれども、そこに集結をさせるというようなことはないでしょうね。
  27. 佐野文一郎

    佐野政府委員 これもこの時点では大変お答えしにくいことで、大学側がどのように御判断になるかということにかかるわけでございます。実際に筑波大学の方で逐次、移行のために学内手続を経て教育大学の方へ割愛を申し出ておられるわけでございますが、そのときにやはり問題になるのは、筑波大学の中の学系側からその教官学系に迎えたいということで発議があるかどうかということになるわけでございます。発議がないということのゆえをもって学系に所属する手続を進めることができない、そのゆえをもってその教官が三月三十一日の時点になってもなお筑波に移れないということでは私たちははなはだ困ると思うわけでございます。そういう場合にどのような対応をするかということを含めて、筑波大学側努力と工夫を私たちお願いをしておるところでございます。
  28. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、教育大学筑波大学関係というのは、筑波大学ができたときには教育大学先生方移行するというのが原則でつくり上げられたわけですから、しかも、筑波大学の設立に協力をされ、当時のいわゆる文学部の中の反対派ではなくて、教授会でもかなり積極的な派で、二つに教授会が分かれていましたが、筑波大学にかなり積極的であったにもかかわらず、またその先生学系希望しているにもかかわらず、そちらに行けずに、仮に学校教育部センターの方に移行するという強制配置転換的な性格にならないように十分に文部省の方でも、大学の中の人事ですから文部省がああせいこうせいと言うわけにもまいりませんが、まず第一に本人意思に即して移行ができるように努力をしていただきたい。これが移行措置の第一点でございますが、いかがでございましょう。
  29. 佐野文一郎

    佐野政府委員 先生指摘のように、これは筑波大学の行う教官人事でございますから、私どもの方で具体的に個々の人事に対してこうしろということを言うことはもちろん差し控えなければならないことでございますけれども移行に当たって、できるだけ御本人希望が生かされることが望ましいことは間違いございませんので、そういったことについては大学側配慮を求めるようにいたしたいと思います。
  30. 嶋崎譲

    嶋崎委員 第二番目に、筑波大学希望しているにもかかわらず、いままでの筑波大学の某副学長の発言で二、三の教官は積極的に受け入れられにくい状態がつくり出されているという実情を知っております。そこで、筑波希望していて、そしてそこになかなか受け入れができないというような方の場合について、いよいよ教育大学廃校になるわけですから、その教官身分が浮いてしまいます。そういう事態は、大学の中のことですから文部省としていい悪いの判断は下しにくいでしょうけれども、長い間の委員会での議論でお聞き及びだと思いますので私は省きますが、大学をつくるということをめぐって賛成、反対議論があったわけだし、そしてまたこの法律は強行採決された法律でありますし、それからまた同時に、でき上がった大学に賛成していたにもかかわらず、その後もろもろの経過の中から希望が実現しにくくなっている教官があるように思います。そういう場合には文部省としても、大学教官が、自分の職を探すことは自分でやることではございましょうけれども、不利益にならないように、筑波移行できなくとも、四月一日を期してよその大学に行けるように御尽力と御努力お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。抽象的な言い方ですが。
  31. 佐野文一郎

    佐野政府委員 御本人の御意向もあることでございましょうけれども、本来は筑波希望しておられるけれども諸般の情勢でそれがなかなか実現がむずかしいということで、ほかの大学に三月三十一日を前にして移るというようなことをお考えの方があれば、それについてはできるだけそういう方向で事が運ぶように、私たちもその関係大学に対しても協力方要請をしてまいりたいと思います。問題は、それぞれの大学教授会なりあるいは評議会の議を経て教官の採用は決めてまいりますので、時期的にかなり学内手続をするのに時間が不足をするという問題があるいは生じてこようかと思います。そういう場合であっても、その人が三月三十一日で身分が宙に浮くということのないように、たとえば筑波大学で暫定的に受け入れてもらうとか、いろいろな努力の仕方もあろうかと思いますので、そういったことを含めて筑波大学なり、あるいはそういう関係大学があればその大学に対して私たち努力要請をしてまいりたいと思っております。
  32. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大変人事というのは微妙ですから私は名前も申し上げませんけれども局長の方はずいぶんわかって御努力をされていると判断をいたしますので、移行教官について、途中で身分が浮いてしまうようなことのないように最大の御努力お願いしたいと思います。大臣にはいまの局長の答弁の趣旨でひとつまた御努力お願いしたいと思いますが……。
  33. 砂田重民

    砂田国務大臣 もう残された日にちも短うございますが、両大学とも非常な努力をしてくださっております。私ども文部省といたしましてもさらに要請を重ねまして努力をしてまいります。もう、三月三十一日のことでございますから、そう遠いことではなくて最終的な御報告ができるものと考えております。
  34. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その点はどうぞよろしくお願いをいたします。  そこでもう一つお伺いをしますが、ことし辞職でおやめになった教授たち辞職願はどういう理由になっておりますか。
  35. 宮地貫一

    宮地政府委員 廃学のためという理由になっております。
  36. 嶋崎譲

    嶋崎委員 廃学のためというのは、法律条文でいきますと何を適用されて退職金をお支払いになりますか。
  37. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的な退職手当法適用につきましては、勧奨退職によります第五条の適用をいたしております。
  38. 嶋崎譲

    嶋崎委員 これは三月三十一日付ですね。四月一日じゃありませんね。
  39. 宮地貫一

    宮地政府委員 三月三十一日付でございます。
  40. 嶋崎譲

    嶋崎委員 三月三十一日付で退職をされる七名の方、助手が一名いますから教官は事実上六名ですけれども、この人は、国家公務員等退職手当法の第五条の、長期勤続を前提にした上で、「二十五年以上勤続し定年に達したことにより退職した者又はこれに準ずる理由その他その者の事情によらないで引き続いて勤続することを因難とする理由により退職した者」、つまり、ここで言っている二十五年以上勤務した人で退職した者「又はこれに準ずる理由その他その者の事情によらないで引き続いて勤続することを困難とする理由により退職した者」これの適用になりますか。
  41. 宮地貫一

    宮地政府委員 具体的な条項といたしましては、国家公務員等退職手当法施行令の第四条第二項第一号でございまして、「二十五年以上勤続し、その者の非違によることなく勧しょうを受けて退職した者」の扱いをいたしております。
  42. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本文は五条ですね。そうしますと、これは一種の退職勧奨適用になりましたね。
  43. 宮地貫一

    宮地政府委員 そのとおりでございます。
  44. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、いわゆる分限免職に相当する国家公務員法七十八条四項、つまり「官制若しくは定員の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合」これの適用ではありませんね。
  45. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘方々についてはその条項適用した退職とはいたしておりません。
  46. 嶋崎譲

    嶋崎委員 国家公務員法の職員の分限免職に相当するこの条項に対して、教育公務員の場合には、教育公務員特例法によってその身分はかなり厳格に位置づけられていることは御承知のとおりだと思います。教育公務員法の六条の、教員の降任については本人意思に反して免職されることはないという意味で、特に教育公務員の場合は守られていますね。したがって、公務員法一般ではいかない。さてそうかといって大学廃校になる。そういう情勢の中でこの退職手当法の五条を適用された、こう私は理解いたしますが、そうですか。
  47. 宮地貫一

    宮地政府委員 御指摘のとおりと思います。
  48. 嶋崎譲

    嶋崎委員 したがいまして、これは退職勧奨ですから、かなり有利な条件退職金をいただけたと思うのです。  もう一つお聞きしますが、昨年の四月一日、昨年ですが今年度です。四月一日で文学部をおやめになった先生がいらっしゃるわけですが、その先生方は何名で、その人のおやめになった理由は何ですか。
  49. 宮地貫一

    宮地政府委員 教授助教授につきましては、御指摘のように昨年三月三十一日、具体的な日付としては五十二年四月一日付でございますが、おやめになりました文学部教授助教授は九名でございます。なお、その退職理由自己都合によるということになっております。
  50. 嶋崎譲

    嶋崎委員 つまり今年度、昨年の四月一日から今年の三月三十一日まで、同じ時期に同じ大学教官がおやめになるときに、四月一日付でおやめになった人は自己都合、三月三十一日付でおやめになった人は廃校によりと、辞職の願いが違っている。  さて、四月一日付で昨年おやめになった先生方退職金適用条文は何ですか。
  51. 宮地貫一

    宮地政府委員 国家公務員等退職手当法の三条及び四条でございます。
  52. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ことし三月三十一日は東京教育大学廃校ですね。去年の四月一日は自己都合で三条、四条ですね。ところが、昨年の四月一日というのは、事実上廃校を前にして、五十二年度は東京教育大学文学部定員はゼロ定員ということになっていたと思いますが、いかがですか。
  53. 宮地貫一

    宮地政府委員 定員上の措置としては御指摘のとおりでございます。
  54. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、去年の四月一日付でおやめになった人については、それ以前の教授会で、三月末の教授会で、いよいよ四月一日からは東京教育大学文学部定員はゼロになる、残っていても定員がない、したがってどこかの大学に行かなければならないというようなことが大学議論されたかどうか、御存じですか。
  55. 宮地貫一

    宮地政府委員 その議論については十分承知しておりません。
  56. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だとしますと、事実上、四月一日付でおやめになった人は、もういよいよ東京教育大学は来年でなくなる、定員はない、したがって、自分はいても定数の定員ではないわけだから、どうしてもどこかに移らなければならぬというふうに考えざるを得ない事態が生じたと考えますが、いかがでしょう。
  57. 宮地貫一

    宮地政府委員 ただいま先生からお尋ねのとおりの事情であったかどうかにつきましては、なお私ども承知をいたしておりませんが、御指摘のように昨年四月一日付で退職された方々につきましては、上申といたしましては自己の都合による退職ということで、退職手当法適用大学でいたしておるというぐあいに承知いたしております。
  58. 嶋崎譲

    嶋崎委員 四月一日でおやめになった教官については、いま言った昭和五十二年四月一日には文学部の教員の定数はゼロになる予定だ、これがまず見通しとして一つある。第二番目には、四月一日には、文学部の学生が残留し、またはその教官のために文学部が存続することにはなっていても、教官そのものは筑波大学の併任かもしくは非常勤でやらざるを得ない、こういう事態になっていた、これが第二番目の条件。第三番目に、筑波大学希望しない先生は四月には退職すべきであると考え、四月以降は定員がなくなって、筑波や何かと併任教授でしか、学生もいないのですから、定員がないものと判断をして、それぞれよその大学の招聘に応ずるようになった。そしてそのために私立大学に転じて十一名の先生移行した、こう考えられると思います。したがって、四月一日によその大学に移ったこの先生方について、今年の三月三十一日付で廃校によりというかっこうで退職金の手当法が適用されたのと同等に取り扱うべきだと思うが、いかがですか。
  59. 宮地貫一

    宮地政府委員 昨年四月一日付でおやめになりました方々につきましては、先ほど来御説明いたしておりますように、自己の都合による退職という取り扱いで、大学当局においてそのような決定をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘のように本年三月三十一日付でやめた者と全く同一の事情にあったかどうかにつきましては、なお今後調査の上検討させていただきたいと思います。
  60. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私の調査によりますと、昨年の四月一日でおやめになった先生と、ことしの三月三十一日でおやめになる先生で、五十九歳ぐらいから六十歳前後の方々退職金にして大体七百万円少ないのです。多い人は八百万円少ないのです。したがいまして、昨年の四月一日以降ゼロ定員という情勢の中で他大学に移らざるを得なかったということであるとすれば、実質的には今年の三月三十一日でおやめになる先生と同じ退職勧奨適用退職金を出すべきだと私は判断いたしますが、いかがでしょう。
  61. 宮地貫一

    宮地政府委員 先生指摘の点でございますが、具体的な退職手当の決定につきましては一応文部省訓令で大学学長に委任をいたしておるわけでございます。したがいまして、大学学長がそういう決定をいたしたわけでございますから、私どもそれについて、いまここでそれが正しかったかどうかというようなことについては申し上げられる点ではございませんが、御指摘の点についてはなお調査させていただきたいと思います。
  62. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その際に、調査するときに検討しておいていただきたいのは、二十一年以上勤務の方々退職手当法の五条適用、それから十一年以上二十年以下については三条じゃなくて、三条は自己都合で一般的ですから、四条適用というふうにいたしますと、昨年おやめになった先生方のうちの五人の先生は大体五条の適用、そして三条一項でおやめになった先生を四条適用というかっこうで退職金の算定をするのが合理的だと私は判断をいたします。その点について、私もよく存じておりまして、大学内部人事については大学で決めることでありますから文部省がああせいこうせいと言うわけにはまいりませんが、昨年の四月一日付でおやめになった先生とことしの三月三十一日でおやめになる先生については、条件は同じと判断がされます。特につけ加えておきますと、昨年の三月の終わりにありました教授会の申し合わせ事項、学長の申し合わせ事項がございます。それはもう明確に、四月一日以降は定員がないので他大学に移れるものなら移ってほしいということが、学長の要望として教授会に伝えられております。それだけに、それだと本来ならば退職勧奨なわけですから、そういう経過も十分にできれば御調査いただきたい。大学でお決めになったことをひっくり返すというのは文部省の本来やるべきことではございませんけれども、六十を越してここで七百万、八百万の退職金の違いというのは、長いこれからの先を考えますと、若い先生方はこれから二十年、三十年また大学で仕事をされますけれども、もう定年前でありますだけに、ことしおやめになった人に比べて七、八百万の差があるというようなことはどうも不合理に思えてなりませんので、どうぞその点、文部省の方で大学側と話し合いをいただき、御調査をいただきまして、善処方をお願いしたい。  ちょっとお聞きしますが、きょう一般質問をさしていただいたんで、ちょうど今年度内でよかったのですが、あれは年度内でなくて明くる年にいっても過年度で支出することは可能ですか。
  63. 宮地貫一

    宮地政府委員 予算上の措置としては可能でございます。
  64. 嶋崎譲

    嶋崎委員 予算上の措置として可能であるとすれば、ひとつできれば今年度内、もう一週間そこそこしかございませんから、ここの委員会は幸い今年度内で取り上げたということにさしていただいて、即効的な対応をよろしくお願いをしたいと思います。大臣、この辺についての御意見をどうぞ……。
  65. 砂田重民

    砂田国務大臣 いろいろ経過もあったようでございますので、十分調査をいたした上で検討さしていただきたいと思います。
  66. 嶋崎譲

    嶋崎委員 できるだけいい結論になりますように、またいずれ御報告をお願いしたいと思います。  もう一つ、事務職員について、筑波大学移行その他について問題は残っておりませんか。
  67. 宮地貫一

    宮地政府委員 事務職員の移行については問題が残っていないものと承知いたしております。
  68. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大半はないけれども、二名問題があると知っております。この二名の場合も非常勤職員の問題に関連しておりますので、大学でいろいろむずかしい問題もあろうかと思いますが、事務職員についても移行に当たりまして不当な取り扱いにならないように、ひとつ御調査の上最大限の対処をお願いしたいと思います。どうぞよろしく。筑波大学の問題はこれで終わります。  次のテーマは、海洋研究と教育というテーマで少し問題を出さしていただきたいと思います。  時間もありませんからいまさら長々と申し上げませんが、二百海里時代を迎えて、わが国は御承知のように海洋国日本でございます。世界一の水産国を誇り、漁獲高も世界最高でございまして、魚をとることに関しては世界一でございます。それだけに、日本の学術体制の中で海というのは水産という観点から主としてアプローチされてきたことは、皆さん御承知のとおりであります。ところが、最近は、二百海里時代の背景は単に漁業資源だけの問題ではなくて、海底資源その他海洋開発を含めまして、地球の中の海という問題が大きな政治の対象になってきていることは、これまた御承知のとおりだと思います。  さて、わが国の海洋研究というものを国際的にまず最初ちょっと比較してみたいと思いますが、たとえば海洋についてことしの予算は、ここ三年ほど見ましてどのぐらいの伸び率になっているか、わが国は。
  69. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 御説明いたします。  わが国におきます海洋開発関係費、これは関連予算を含めまして、五十一年度が百六十七億円、五十二年度が百九十九億円、五十三年度予算では三百八億円計上しております。
  70. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その中で農林省関係、要するに魚に関係している部分を除くと幾らになりますか。
  71. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 先ほどの数字の中で魚だけを除くのはいまの点でやっておりませんので、それ以外に多少運輸省の海上保安庁の水路業務、これは大したことございませんが、そういったものを除きました純粋な科学技術関係の予算といたしましては、五十一年度四十三億円、五十二年度三十六億円、五十三年度五十億円、こういうことになっております。
  72. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの統計のとり方を少し科学技術庁の方でも考えてほしいと思うんですけれども、たとえば五十三年度の海洋関連の経費の概要を見ましても、北海道開発庁で沿岸漁業整備開発費というのが入っている。これは純粋に水産庁に関連してくる問題。それからまた、科学技術庁は別としまして、環境庁で水質汚濁防止対策経費、こんなのは直接海洋研究ではありません。また同時に、農林省は、この海洋開発経費総額の中の三分の二を大体農林省が占めている。あれは補助金が大体多過ぎるんだな。自民党の基盤になるのか知らぬけれども。いずれにしましても、農林省の関係で言いますと、海洋新漁場開発費だとか沿岸漁場整備開発費、それから栽培漁業推進費、こういうのは海洋研究の予算ではございません。そういうものはのけなければなりません。それからまた水路業務の運営費これはもう運輸省ですね。これは海洋研究とは関係ありません、極端に言えば。切り離して考えなければならない。海洋の気象になりますと、これは比較的ぼくは関係があるんじゃないかと思います。しかし、こういうふうに見ますと、海洋開発関係経費というのは、総額にすると確かに二倍ぐらいにここ二年ほどの間にふえてきておりますけれども、こういうものを除いて見ますと、先ほど数字を挙げられたように五十一年が四十三億、五十二年が三十六億、五十三年が四十九億、大体そんなところだろうと思います。  もちろん、この場合に考えなければなりませんことは、日本は、二百海里時代で、いままで水産国でありますから、当然水産対策という意味で予算がふえるということは日本の特色であります。たとえばフランスやイギリスなんかの場合には、天然ガスなら天然ガス一本決めて、すべての研究をそこにプロジェクトで集中しますから、他の海洋研究が非常に生きるわけであります。しかし、日本の場合には水産国ですから、今日のような二百海里時代になったときに、水産に思い切って、たとえば魚礁の問題だとか、それから栽培漁業に関する問題だとか沿岸整備だとか、そういうところに金をかけているという意味で、日本の確かに特徴はあるという意味で私は否定しているわけではありません。それが日本の今日の海洋問題を考えるときのいわば特徴なんだというふうにメリットの方を評価した上で、しかしそれにもかかわらず、世界の水産国であった日本が、水産関係というものには膨大な予算を使っているが、さて海洋というものについてはほとんど伸びがない、こういう実情がここに示されていると思います。ただし、わが国の場合は他国と違いまして、予算を組む場合に、文教関係の予算とそれから科学技術庁関係の予算が切り離されております。これは科学技術会議以来の課題で、学術会議の問題でもあることはよく承知しております。  そこで、いまの科学技術庁の海洋開発に関連する予算にプラスして文教予算を足してみるとどのくらいになるか、ちょっと数字を出してみたいと思いますが、日本における大学の海洋学並びに海洋研究に組んでいる予算は、昨年、ことし、どのくらいですか。
  73. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいまお尋ねの、文部省関係で海洋科学に関連をいたして計上しております予算額は、五十二年度十億一千八百万、五十三年度十億一千九百万、約十億でございます。なお、補足をいたしますと、先生御存じのように、科学研究費で海洋関係の方に経費が入るわけですが、五十二年度の海洋関係に配分をいたしましたのが五億九千万円、これが文部省関係の経費でございます。
  74. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、科学技術庁関係の三十六億にプラスして十億、四十六億、それから五十三年度でいきまして大体六十億近く。ちなみに、フランスをとってみますと、フランスは七六年度、ドル三百円くらいの換算ですべて計算して、百五十七億、ドイツは、私のもらった統計では七五年度ですけれども、百七十八億、アメリカは、軍事研究と特に関連がありますし、相当大型プロジェクトでやっていますからけたは違いますが、仮に最近の軍事研究に突入しなかったとき、前から突入していまして、最近特にひどいのですが、それでも二千二百三十一億、西ドイツが七五年度百七十八億というぐあいであります。世界各国に比べて、わが国の漁業というのは確かにさっき言ったように意味がありますけれども、海洋という観点から見ますと、わが国の予算というのは海洋に本当に目が向いていないと言わざるを得ないと思いますが、科学技術庁並びに文部省、どう思っていますか、こういう予算のあり方について。
  75. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 確かに、御指摘のとおり諸外国は非常に多額の海洋開発予算を組んでおりますが、ただし、この中でアメリカの場合は国防予算が四割程度、あるいはフランスを除きましてその他の国についても、統計の中身と申しますか、集計方法が完全に一致しておりませんので必ずしも比較は簡単にできませんけれども、それにしましても、わが国の海洋開発関係費は決して多いものではないと思います。
  76. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文部省に調べてくれと言ったけれどもぼくよりは調べ方が悪くて……オーシャン・リサーチ・インデックスという、世界の研究のインデックスがあります。大体この表題を見ればわかりますよ。ヨーロッパ、外国先進国の場合は全部オーシャン・アンド・フレッシュウォーター・リサーチで、それが中心であって、インクルーディングとしてフィッシャリーズ・リサーチなんですね。日本は水産国ですから、水産が前に出たってちっとも構わない、ぼくは否定はしていないのです。しかし、今日の世界の物の考え方というのは、まさに海洋、海の研究というものが前にあって、その中に海洋資源の問題として漁業の問題が位置づけられているわけです。  そういう意味で、このインデックスのとり方一つ見たって、この中にも日本が、ジャパンの分があります。ところが日本で挙がっているのは東大の研究室だけです。よその国は、これはぼくは全部各国調べてみましたが、たとえばイギリスの場合は大学の数にして二十九、海洋学に関係のあるのを持っているのは。それからアメリカの場合には八十三、フランスの場合には十七、西ドイツの場合は十七、日本の場合は二十と出ています。ただし、この二十は水産が絡んでおりますから二十という数になるわけです。もちろん、アメリカやイギリスの場合でも海洋学部というようなファカルティーがあるのは別で、そういうのはなくて、インスティチュート、研究所があります。そしてそのほかに、理学部の中の地球物理学の中に、物理だとか地学の中にそういうものが入っていくというかっこうをとっています。しかし、ヨーロッパのどこの大学でも今日は大体主任の教授がおりまして、そして海洋学に関するものを持っています。フランスなんかは非常に進んでおりまして、フランスの場合ですと、海洋学科並びに海洋学という講座を持っている大学が大体十八ございます。そういうふうに見ますと、フランスは非常に海洋研究が進んでいる国でありますが、フランス、イギリス、アメリカ、ソ連、それぞれの国に特徴がありますが、いずれにせよ海洋というものの位置づけが非常に国際的にクローズアップしてきている。  わが国は海洋国日本でありますから、いままでは列島改造にしても、日本の高度成長の考え方というのは全部陸から海を見ていたわけです。つまり、陸を改造することに重点があって、海は対象とされていなかったのでありますが、これからは逆に海から陸を見なければならぬ時代に入っているわけであります。地球というのは大半は海なんです。だから海の気象、海のあり方というものが陸を規定している、こういう観点から発想の転換をしなければならない時代に来ていると思います。資源有限の問題もありますし、それから海底資源の今後の開発問題もありますし、エネルギー問題もある。有限のエネルギーでなくて無限のエネルギーということになりますと、海を使わなければならない時代に入ってくるわけであります。それだけに、わが国の海洋研究というものが、国際的に見て非常におくれているということをまず前提として御確認願いたいと思うのです。もちろん、大学における研究、教育というのは、文部省がああせいこうせいと言うのではなくて、大学自身が自主的に決めながらつくり上げていかなければならぬというのが本来のたてまえでありますから、予算をつけたから研究が進むものだとはぼくは思いません。しかしそれにしても、余りにも国際的な今日の水準に日本がおくれ過ぎているという意味で、まず国際的な違いというものを頭に置いて議論をさせていただきたいと思います。  たとえば、科学技術庁、日本では海の底に人間がもぐれるのはいま何メートルですか。
  77. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 現在百メートルでございます。
  78. 嶋崎譲

    嶋崎委員 フランスは……。
  79. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 六百メートル程度であります。
  80. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今度は船だ。船は日本はどこまでもぐれるのですか。
  81. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 昨年までございました潜水調査船の「しんかい」は六百メートルでございます。
  82. 嶋崎譲

    嶋崎委員 フランスは……。
  83. 佐伯宗治

    ○佐伯説明員 一万メートル程度まででございます。
  84. 嶋崎譲

    嶋崎委員 問題にならぬじゃありませんか、これだけ周りに海があって。先進国は大陸棚はみんなもぐれるのです。日本はまだ大陸棚に行かれはしないのです。深海に至っては、いま二千メートルから三千メートル行かないとマンガンというものはないのですから、まだ三けた台くらいのもぐりをやっているのでは全然問題にならぬ。そういう意味では、いかにわが国の海洋科学というものの科学技術がおくれておるかということがその一事をもってして明らかだと思う。  さてそこで学術局長、大変御無礼な質問ですけれども、海を研究するときに一番大事なものは何だと思いますか。
  85. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 ただいまいろいろ嶋崎先生から海洋科学に関しまして、現状ではきわめて不十分ではないか、海洋科学を推進していくのに何が一番大事なのかというお尋ねであったかと思いますが、実は文部省におきましても、海洋科学の全般的なあり方につきまして、従前のやり方ではいろいろと問題が処理できないのではないかということで、学術審議会の中に海洋科学の特別委員会の設置を五十一年の十二月にいたしました。この秋に一応建議をいただくということで、目下いろいろと作業を取り急いでいただいておるところでございます。  その基本とするところは、海洋科学は、賢明な海洋の利用と、海洋環境の保全などにも指導的な原理を提供し得るということを目標とすべきではないか。そのためには、海洋の特性というものの科学的基礎をあらゆる角度から明確に把握すべきであるということが議論のまず基本に据えられておりまして、そしてその際、海洋科学が一体いまどれだけの研究領域を持たなければならぬかということで、ただいま審議中ではございますが、ただいま議論されておりますことは、海水運動系、波浪、潮汐等を中心とする海水の運動系。それから流入物質、堆積物等の物質循環系。第三に生物の回遊、移動、それから赤潮等を含みます生物生態系。第四に海岸、大陸棚、それから深海底域、海溝域等の地質過程系。それから第五の問題といたしまして、こういった分野につきましての科学研究を促進するに当たりましては、土木、機械、化学、計測等の関連工学がこれをフォローアップし、提携していかなければ計器その他がどうしてもうまくいかないという点。それから最後の点といたしまして、海洋はまさに国際的である、その意味で海洋科学における国際共同計画というものにより積極的に日本も参加し、いろいろな寄与もし、研究もすべきではないかという、ただいま申し上げましたまず全体の幅と申しましょうか、深さと申しましょうか、それを共通理解として根っこに置きまして、今後文部省といたしまして学術研究の面で海洋科学をどのようなところからどう推進していくか、今秋を目指しましてただいま鋭意御検討願っておるところでございます。
  86. 嶋崎譲

    嶋崎委員 緒につき始めたということは私も認めております。しかし、緒についたときに何よりも大事なのは何でしょうか。わが国の場合には、さっきの予算の関係で言えば科学技術庁と文部省関係ないわけです。極端な言い方をすると。つまり、科学技術庁の科学研究費は文部省とは別なわけですね。文部省は独自に科学研究費を組みますね。ところが一方では、シートピア計画にしたって、それから深海にもぐる新しい船をつくる計画にしても、そういうものが科学技術庁の関係で科学技術センターを中心にして進んでいく。そこではある意味で一定の目標を立てて、短期間に成果を上げなければならない課題を追求していくわけですね。ところが、そういうものを追求するときには、当然それに必要ないわば基礎的なスタッフが要るわけですよ。わが国はたしか、いまから十五年ほど前、東海大学の海洋学部ができる前までは、それ以前二十年をとってみたら、海洋専門家というのは東大と京大合わせて三百人つくってなかったんじゃないでしょうかね。東海大は毎年千人つくります。千人、と言ったって水準は高いかどうか別として、とにかく専門家が出てきた。ところが、東海大学の海洋学部をつくるときは文部省は物すごく抵抗したわけです。何か海洋学士なんてものはねえとか。これは松前学長はえらく怒っていましたね。それは見通しを誤っていたわけだけれども、いずれにしても、わが国の国立大学には、そういう意味での海洋学というものを中心にしていく体制が早急につくり出されていかなければならぬと思うのです。現在わが国で、国立大学で海洋学という講座を持っている大学はどこどこですか。
  87. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 研究所の方をまずお答えさせていただきます。研究所の問題につきましては、先ほども御意見の中に出ました、昭和三十七年度に東京大学共同利用研究所としてつくりました海洋研究所、これが学術研究ではやはり一番中心になっていようかと思います。この海洋研究所は研究船白鳳丸と淡青丸を中心とし、さらに四十八年に岩手県に臨海研究センターを設置いたしまして研究体制の整備充実を図ってきておるところでございます。なお、国立大学におきましてはこのほか、学部付属の臨海実験所、水産試験所のほか、各種の海洋に関連する研究施設を持っておるわけでございます。たとえば北大の海藻、東京商船大学の船舶運航、神戸商船大学の船貨輸送、北大の北洋水産研究施設、東京水産大学の水産資源研究施設、九大の応用力学研究所の津屋崎海洋災害実験所、こういったもの等も持っておるところでございます。  いつも嶋崎先生から共同利用研究所のあり方につきましてはいろいろと御注意もいただいておるところですけれども、ちなみに、東大の海洋研究所の五十二年度の状況をちょっと御報告申しますと、大学院の学生、修士二十二、博士二十八、計五十名、大学教育協力をまずしています。それから共同研究員といたしまして人員七百七人、国立四百四十七、公立七、私立六十八、その他百八十五という共同研究員の共同利用をやっておる。それから受託研究等を電電公社、水産庁から受けておる。こういったところが研究所の方の大体の状況でございます。
  88. 嶋崎譲

    嶋崎委員 東大の海洋研はいいんですよ。たとえば東北大学だとか、それから九大だとか北大の場合は、地球物理学の中に海洋学というのが入っているんですよ。だからそれは確かに新しく動き出している一つの方向なんだと思うのですよ。  ところが、やはりこれから考えなければならぬのは、確かに大学院レベルの海洋研究家を育てなければならぬということと、それからその基礎になる、学部卒のいわば海洋の技術者をつくっていかなければならぬと思うのですね。そういう意味で、さっき水産大の場合だとか商船大学の場合を挙げましたけれども、みんな海は魚に結びついているし、運航なので、やはり海洋研究じゃない。海洋だと、海洋化学、海洋物理、海洋資源、海洋開発、そして基礎になる海洋のサイエンス、そういうものを全体としてやれる研究者や勉強した者をつくっていかなければいけないわけです。物理の物性をやっていて、地球物理学の中の海洋というだけでは、そういう広い意味のグルントを持った海洋研究家というのは育たない。専門家は育ちますけれども、広い海洋研究をやるのに必要なアシスタントであったり、学士程度のものを持っていて協力できるような人たちというものをつくっていくときには、もう少しそういう意味で広い範囲の、いわば学部的なものをどう考えるかというのはかなり重要になってきていると思うのですよ。  だから、その際に一つ参考に申し上げますと、スウェーデンとフィンランド、それからソ連の共同研究ですが、あそこに御承知のようにボスニア湾というのがありますね。下にバルト海というのがあるでしょう。あれはちょうど日本海みたいなんですよ。ちょうど島に囲まれて、大きな湖になっているんです。あれはどうしているかといいますと、あそこの海の共同研究というのは、結局一カ国じゃなくて、スウェーデンとフィンランドとソ連の海洋学がそれぞれ共同で研究して、海の中で養増殖をどうするか、それからこの海を汚染させないためにはどうするかということでやっている一つの典型的な例です。  そういうふうに考えますと、わが国の場合には日本海というのは非常に重要になってくるわけです。どうしてかといいますと、日本海は数億年前までは湖だったんです。それがどかんと沈んだんです。だから、海域を見ますと、深さは大体百五十メートルから二百メートルで、太平洋の深海とつながっていないのです。魚を見ますと、日本海の場合には一千二百メートルの底に魚がおらぬのです。太平洋には一千二百メートルの底に魚がいるのです。アリューシャンは底が連なっているのです。北は太平洋と。ですからこれは行き来がありますけれども、日本海と太平洋は、敷居が高いものですからつながらないわけです。つながらないということは、生けすなわけです。この生けすというのは、漁業の観点から見ますと、とりっ放しにしたら将来資源がなくなるということは明らかなんです。  同時に、戦後は日本は太平洋の方ばかり向いていましたから、ソ連や中国や北朝鮮との関係がないものだから、日本海研究家というのは、日本の科学者の中では京都大学の河合教授を中心にして数人しかいないのです。ですから、私は北陸で日本海漁業者会議というのを私の地元の新聞主催で集めまして、養増殖の問題や、日本海を今後どうするかという議論を進めているわけです。この間モスクワに行きまして、ソ連の海洋学の研究者に日本に来てもらう。それから北朝鮮の科学者や漁業関係者に来てもらう。南朝鮮からも来てもらう。そして、たとえば日本海というものはどういう物理的性質を持った海なのか。先ほど言いましたように、海の場合には下の方へ行くと栄養のある水なんです。上の方は栄養がないわけです。だから、今後資源というものを考えるとき、海をかき回さなければだめなわけです。つまり、栄養のある水を上に上げながら、かき回しつつ、養殖や栽培漁業やいろいろなものを考えていかなければならぬ時代に入っているのです。その海の物理的性質、たとえば酸素の含有量がどうなっているのかとか、そういうことについての調査研究が全然行われていない。片一方で栽培漁業と言ってみたって、海の性質がわからないでは魚がどういうふうに育っていくかわからない。いままではすんでいたという経験的認識だけであって、これから育てようという場合には、海の持っている性質というものをつかまなければ、たとえば栽培漁業という場合でもとても問題にならない。  そうなりますと、たとえばいま東大の研究所でも岩手に研究所がありますが、日本海側はないわけです。だから日本海側にどうしても日本海研究所、ないしは日本海研究、海洋研究に必要なセンターの拠点をつくらなければいけません。これは瀬戸内海も要ると思う。それから私は、天草、熊本の方も要ると思う。岩手も要るし、北海道も要ると思うけれども、少なくとも日本海沿岸側に、日本海というものを前提にして今後研究センターないしは研究所、将来は日本海研究に必要な、できれば学部か、そういうものをつくらなければならない。これは研究所を先につくってから学部をつくるのがいいのか、学部ができてから研究所をつくるのがいいのかわかりません。どっちがいいのか科学者の意見を聞かなければならないことでありますが、いま金沢大学の中に日本海研究所という看板だけが出まして、徐々に動き始めています。これは金沢大学だけの問題じゃなくて、日本海沿岸の理学部の地球物理学などをやっている先生方、それからまた太平洋側の海洋学を研究している人、東大とも結びつけながら、そういうセンターを今後つくっていくべきだという提案を永井文部大臣の時分からしているのですけれども、なかなか動き出さないでいるものですから、この際に、こういう日本と世界の現状の中で今後の課題として要望を申し上げたい。これはもちろん大学が動き出さなければだめだし、研究者が横断的に、職能的につながってプロジェクトをつくって共同研究をやっていくという体制ができてこないとできません。そんなものは、文部省がこうせい、ああせいと言って予算をつけたからできるものじゃないと私は思いますけれども、金沢大学に小さな産声を上げようとしておりますから、日本海側にそういう海洋研究所並びに日本海研究に関する拠点を設定するようなことをまず最初に希望しておきたいと思います。その点、大臣局長の方で、いままでやった議論について、いまから海のものとも山のものとも言えませんけれども、御努力と決意のほどをお聞かせいただければ大変幸いだと思います。
  89. 砂田重民

    砂田国務大臣 大変なお勉強、成果をお聞かせいただき、わが国の海洋科学研究の立ちおくれております現状を肝に銘じさせられました。学術審議会の特別委員会で検討も続けていただいておることでございますので、きょうの嶋崎委員の御発言、審議会の特別委員会での審議結果等を踏まえまして、積極的な検討をさせていただきたい、かように考えます。
  90. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ありがとうございました。御検討をよろしくお願いいたします。  そこで、最初に聞きました、海を研究するときに何が要るかというと、一番大事なのは船なんですよ。調査船なんですよ。さて、調査船の予算のつけ方を聞きます。私学助成に際して、東海大学の船に予算がついていますか。
  91. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 所管でございませんが、建造費自体には補助金はついていないようでございます。
  92. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それじゃ東大の場合、船をつくるときに、もちろん予算はつけますね。機械が新しくなったときに予算がつきますか。たとえば観測の機械。技術革新が進むでしょう、そうすると船の中の取りつけが変わりますね。その予算はどうなっていますか。
  93. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 設備の更新あるいは新しい設備を購入というふうなことで、設備費ということで国の場合には予算措置をいたします。
  94. 嶋崎譲

    嶋崎委員 国はつきますね。それなら私学の場合に、新しい器具を購入したときに予算がつきますか。そういう予算の項目はありますか。
  95. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 私立大学につきましても研究設備の助成ということはやっておりますけれども、研究設備の対象として、たとえばいま先生指摘のようなところまでは恐らく現実には行っていないのじゃないか、かように思います。
  96. 嶋崎譲

    嶋崎委員 海を調査するときの船はりっぱでなくていいのです。中古でいいのです。ぼろで。というのは遠いところまで行きはせぬのですから。船はおんぼろでもいいが、中の設備が物すごく大事なんです。ですから、予算のつけ方としてまず今後検討していただきたいことは、そういう国立の場合であれ、私学助成に際しての関係機器のつけ方の場合であれ、海洋研究の一番中心になる船というものの予算のつけ方について考えていただきたい。東大の船はいま二隻、あれは二千四百トンと三百トン、大体あの二隻で海洋の調査、日本で足りていると思いますか。文部省は考えたことないのじゃないでしょうか。
  97. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 その点も恐らく先ほど申しました特別委員会で審議に相なると思います。
  98. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま日本では、各大学の地球物理学の関係の人たちが海洋研究に東大の船を申し込むのですよ。大体二割借りられればいい方ですね。だから、いま海洋研究に乗り出すためには船を大体七、八隻準備しなければだめです。そういう意味でまず船をふやすことを考えなければいけません。これが一つ。  そして今度は、船をつくるときは、アメリカはこうしているのです。中古の船、たとえば北陸でいいますと能登半島の小木なんかには九十九トンのイカ釣りの船があります。ところが、今度漁業問題で、二百海里問題で漁業資源がシャットアウトされてきていますから、減船という問題が起きてきて、船が要らぬようになるのですよ。そうすると、九十九トンぐらいの船というのは非常に役に立つのです。九十九トンの中古の船で、中に調査の機器を入れさえすればそれで十分調査ができるのです。だからアメリカでは、新しい場合はもちろん船に予算をつけますけれども、年じゅうやっていることは、中古の船で利用できる予算をつけるのです。つまり、維持をして、設備をし、動かす費用をつけるわけですよ。そうしますと中古の船でフルに使えるわけですから、でかい予算は要らぬわけですね。だから、海洋研究に必要な船というのは、入れ物をりっぱにするのではなくて、その調査に必要な科学技術の機械と、それを動かす人間と、それに必要なエネルギーや労力というものを予算としてどう考えるか、こういうふうに問題を立てなければいかぬと思うのです。  ちなみに、一つ例を申し上げますと、いま東海大学に七百トンの船と一千二百トンの船と二つあります。この東海大の、七百トンの船はいいのですけれども、千二百トンの船はもう中古になって、ぼろになったのです。そこでいま下関かどこかの中古の船を買って何とかしようかと言っていることを聞いています。ところが、東海大学の二隻の船はどこが借りるかというと、環境庁、それから水産庁、東京大学の気象の研究所、みんなあいてるときはチャーターして借りるわけです。なぜかと言ったら、国では船が足りないわけですから、東海大学の二隻の船をいわばチャーターして、それでまた大学は維持する金にしているわけよ。片っ方はそういうプラスもあるのですけれども、要するに、船を考えたときに、まず第一は、入れ物をりっぱにするのじゃなくて、調査に合理的な、実情に合った船の利用の仕方を考えること。そうすると船をつくるための予算じゃなくて、維持費の予算。たとえば東海大学の千二百トンの船を一日動かすと大体幾らかかるかというと百万かかるのです。ですから、船を動かしたときに必要なことは、その維持管理を予算的にどう見るかが非常に重要になってくるのです。これは文化の芸能でも同じです。お能の堂を建てる施設費は国は援助するけれども、着て踊るお能の衣装には援助しないのですよ。ところが大事なのは、その衣装はつくりかえていかなければならないので、これに補助したり援助したりすることが必要なわけです。それと同じように、国の予算の中では施設補助という観点の考え方はあるけれども、その施設を動かしていくという、維持管理に関連する費用をどんなふうに予算化するかを考えないと、海の研究にとってはどんなりっぱな船をこしらえたってしようがないので、その点の配慮が要るということであります。したがいまして、ことしの予算はいま審議中ですからあれですが、まず国立、私立含めて、海洋調査研究に必要な船の予算のつけ方、補助について今後の検討課題にすべきだと思いますが、いかがですか。
  99. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、今後の海洋科学の研究の基本的な方向、あり方、今秋までに建議をいただくことに相なっておりますし、いろいろそこでの御意見等も出ておりますので、ただいま嶋崎先生からいただきました御意見も御意見として承らせておいていただきます。
  100. 嶋崎譲

    嶋崎委員 たとえば東海大学の海洋学部の二つの船を一年間動かしますと、金が大体四億五千万かかりまして、これは一文の補助もありません。四億五千万もかかるのに補助がないものだから、したがって、この船を環境庁やそこらじゅうに貸しては金を取って歩いているわけよ。こんなアブノーマルな形ではなくて、船の絶対数が足りないところへもってきて利用しているわけですから、そういう利用については維持管理に関連して補助すべきだと思う。これは予算項目としてはなかなかむずかしいと思う。防衛庁の予算には、環境整備に関連して学校なんかつくったり公民館をつくりますと、維持管理費を補助するのですよ。ところが、必ずしもこういう項目でいけるかどうか、ぼくは非常に問題があるのじゃなかろうかと思います。細かなことはわかりませんけれども。したがって、海洋研究における観測船の持っている意義を考えますと、施設だけの費用の問題じゃなくて、維持管理を含めてどうするのかということ、補助として考えられるのか考えられないのか、その点の検討をして、つまり発想の転換をせぬとだめなんです。というのは、アメリカでやっているように、中古の船を借りて、維持管理に関する費用を国からもらって、大学はその船で研究しているわけです。そういうふうに発想の転換をして、事実上海洋研究ができるような予算のあり方を、たとえば国立の東大の海洋研究所の船については検討する。そして私立の補助には、そういう要求が出てきた場合には予算の項目としてどういうふうに生かすか検討してみる。海というのは特殊ですから、一般的に予算を取り扱うのじゃなくて、海洋研究という観点から船についての予算のつけ方、たとえばいま言った維持管理費みたいなものを含めてぜひ検討していただきたいと思います。大臣、どうですか。
  101. 砂田重民

    砂田国務大臣 従来の予算編成のあり方の習慣的なことを考えますと非常にむずかしい点もあろうかと思いますが、まさに発想の転換をいたしませんと海洋科学研究ということは充実発展をしてまいりません。大変貴重な、重要な御発言でございましたので、積極的に検討させていただきたいと考えます。
  102. 嶋崎譲

    嶋崎委員 最後に、文部省の方の学術審議会の中の海洋ですね。このときにも予算をつけて動かしていくのでしょうから、ぜひ検討しておかなければ、そして十カ年計画くらい立てなければだめですね。文教関係では、海洋研究について十カ年間ぐらいの目標を立ててやらないとだめだと思います。ぼくは科学技術特別委員会でまたやるけれども、日本の海洋研究がどこがおかしいかというと、ばらばら研究というか、総花的なんですよ。たとえばフランスが三百メーターまでもぐるのならさあ日本も早くもぐろうとか、向こうが二千メーターもぐろうと言ったらまたもぐろう。つまり先進国のまねをして追っかけておるだけなんです。そうじゃなくて、日本は海洋国なんですから、海というものの中で日本はどこから攻めるのか。たとえば、さっき言った栄養のある下の海水と上の海水とをかきまぜながら、養増殖をやるに必要な畑をつくるにはどうするかというところに研究の力点が当面かかるようなプロジェクトをつくるとか、また黒潮の持っている資源はすごいのですから、これの持っている資源をどんなふうに活用するかというところに特別のプロジェクトを設けるとか。フランスやアメリカがやっているもぐることだとかそういうことばっかりまねするのじゃなくて。総花的ないまの科学技術庁の海洋のあれでいくと日本の特色が出てこない。それでは自主開発にならないと思うのですね。ちょうど原子力みたいな過ちを犯すことになると思う。  そういう意味で、海洋国日本の持っているこの周りの海の特性をつかまえて、日本の海洋研究というのはどこに力点を置くべきなのかという観点から予算のつけ方やプロジェクトの組み方みたいなものを、これは科学技術庁と文部省と、予算の問題はなかなかうまくいかぬところがあるのだけれども、やはりどこか国レベルで議論しなければいけないのじゃないかと思うのですね。たとえばイギリスだと天然ガスとか石油という一つのテーマを決めるわけですね。それに大学から研究者からすべてがだあっと動員されて、大型プロジェクトをぐあっと組んでいくわけですよ。またアメリカなんかの場合ですとこのごろは連邦予算でもって、あそこは海洋の省を持っているのですから、その海洋省のでかい予算でもって、軍事研究が半分近くありますけれども、やはりでっかいプロジェクトを組んでだあっと走るわけです。そういうふうにして、フランスにしてもイギリスにしてもアメリカにしてもそれぞれの国の特徴があると思う。だから、日本のこれからの海洋というものを考えたときにも、そういう日本の持っている特殊性というか、そういう条件の中で、日本海を生けすとしてどんなふうに考えるかとか、太平洋の養増殖をどう考えるかとか、地質の調査をどうするかとか、そういうことを含めて、日本列島の地球物理学的な地位みたいなものを客観的にとらえてどこから攻めるのかという点が、ぼくは日本の科学者にもちょっとおくれていやしないだろうかという気がしてならないわけであります。  ですから、今後ともそういう観点でいくときにぜひお願いしたいのは、科学技術庁の審議会もそうですし、学術審議会もそうだけれども、メンバーが年をとり過ぎている。年配の人が悪いとぼくは言わぬけれども、こういう新しい研究というのは若い研究者がやっているわけですから、ただベテランでありさえすればいいというものではない。年配の人は悪いという意味じゃありませんよ。ありませんが、大体審議会のメンバーは年をとり過ぎています。そういうところで、もう少し若い研究者の意見を聞くような機構の改革も必要なんじゃないかとぼくは思います。  それで、科学技術庁と文部省関係で、そういうテーマを設定したときの予算のつけ方はどういうふうに考えたらいいか。確かに学術会議と科学技術会議の問題もあるし、科学研究費の文部省と科学技術庁の違いみたいなものもあります。そういう日本の国家構造の中にあるセクショナリズムというか、むずかしい問題があっても、そこをどこか越えながら、重要な国際的課題に対して、文教の関係ではどういく、それから科学技術の関係ではどういくかというようなことが議論できるような、そういう方向に向けて閣議や何かでも出して議論していただきたい、こう思うのです。そういう意味で、今後ともそういう方向に向けて、日本の海洋研究というものが大いに発展していく方向に向けて大臣も御努力願いたいし、文部省の方でも御努力願いたい、そういうことを申し上げたいと思います。最後に大臣の意見を聞かしてください。
  103. 砂田重民

    砂田国務大臣 きょうは大変いい勉強をさせていただいたわけでございますが、学術審議会の特別委員会の審議結果を行政の上にどう乗せていくか、大学でどうこれを受けとめていくかということは、これはもう文部省だけで事が済むことではないと思います。これは政府全体として真剣に検討しなければならない問題でございますので、政府部内におきましても積極的に意見を述べて進めてまいりたい。きょうの嶋崎委員の御提言を私自身は十分心にとめて、ひとつこの仕事に打ち込んでまいりたい、かように考えます。
  104. 嶋崎譲

    嶋崎委員 どうもありがとうございました。
  105. 菅波茂

    菅波委員長 次回は、来る二十九日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時一分散会