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嶋崎委員 東大の海洋研はいいんですよ。たとえば東北
大学だとか、それから九大だとか北大の場合は、地球物理学の中に海洋学というのが入っているんですよ。だからそれは確かに新しく動き出している
一つの方向なんだと思うのですよ。
ところが、やはりこれから考えなければならぬのは、確かに
大学院レベルの海洋研究家を育てなければならぬということと、それからその基礎になる、
学部卒のいわば海洋の技術者をつくっていかなければならぬと思うのですね。そういう
意味で、さっき水産大の場合だとか商船
大学の場合を挙げましたけれ
ども、みんな海は魚に結びついているし、運航なので、やはり海洋研究じゃない。海洋だと、海洋化学、海洋物理、海洋資源、海洋開発、そして基礎になる海洋のサイエンス、そういうものを全体としてやれる研究者や勉強した者をつくっていかなければいけないわけです。物理の物性をやっていて、地球物理学の中の海洋というだけでは、そういう広い
意味のグルントを持った海洋研究家というのは育たない。
専門家は育ちますけれ
ども、広い海洋研究をやるのに必要なアシスタントであったり、学士程度のものを持っていて
協力できるような人
たちというものをつくっていくときには、もう少しそういう
意味で広い範囲の、いわば
学部的なものをどう考えるかというのはかなり重要になってきていると思うのですよ。
だから、その際に
一つ参考に申し上げますと、スウェーデンとフィンランド、それからソ連の共同研究ですが、あそこに御
承知のようにボスニア湾というのがありますね。下にバルト海というのがあるでしょう。あれはちょうど日本海みたいなんですよ。ちょうど島に囲まれて、大きな湖になっているんです。あれはどうしているかといいますと、あそこの海の共同研究というのは、結局一カ国じゃなくて、スウェーデンとフィンランドとソ連の海洋学がそれぞれ共同で研究して、海の中で養増殖をどうするか、それからこの海を汚染させないためにはどうするかということでやっている
一つの典型的な例です。
そういうふうに考えますと、わが国の場合には日本海というのは非常に重要になってくるわけです。どうしてかといいますと、日本海は数億年前までは湖だったんです。それがどかんと沈んだんです。だから、海域を見ますと、深さは大体百五十メートルから二百メートルで、太平洋の深海とつながっていないのです。魚を見ますと、日本海の場合には一千二百メートルの底に魚がおらぬのです。太平洋には一千二百メートルの底に魚がいるのです。アリューシャンは底が連なっているのです。北は太平洋と。ですからこれは行き来がありますけれ
ども、日本海と太平洋は、敷居が高いものですからつながらないわけです。つながらないということは、生けすなわけです。この生けすというのは、漁業の観点から見ますと、とりっ放しにしたら将来資源がなくなるということは明らかなんです。
同時に、戦後は日本は太平洋の方ばかり向いていましたから、ソ連や中国や北朝鮮との
関係がないものだから、日本海研究家というのは、日本の科学者の中では京都
大学の河合
教授を中心にして数人しかいないのです。ですから、私は北陸で日本海漁業者
会議というのを私の地元の新聞主催で集めまして、養増殖の問題や、日本海を今後どうするかという
議論を進めているわけです。この間モスクワに行きまして、ソ連の海洋学の研究者に日本に来てもらう。それから北朝鮮の科学者や漁業
関係者に来てもらう。南朝鮮からも来てもらう。そして、たとえば日本海というものはどういう物理的性質を持った海なのか。先ほど言いましたように、海の場合には下の方へ行くと栄養のある水なんです。上の方は栄養がないわけです。だから、今後資源というものを考えるとき、海をかき回さなければだめなわけです。つまり、栄養のある水を上に上げながら、かき回しつつ、養殖や栽培漁業やいろいろなものを考えていかなければならぬ時代に入っているのです。その海の物理的性質、たとえば酸素の含有量がどうなっているのかとか、そういうことについての
調査研究が全然行われていない。片一方で栽培漁業と言ってみたって、海の性質がわからないでは魚がどういうふうに育っていくかわからない。いままではすんでいたという経験的認識だけであって、これから育てようという場合には、海の持っている性質というものをつかまなければ、たとえば栽培漁業という場合でもとても問題にならない。
そうなりますと、たとえばいま東大の
研究所でも岩手に
研究所がありますが、日本海側はないわけです。だから日本海側にどうしても日本海
研究所、ないしは日本海研究、海洋研究に必要な
センターの拠点をつくらなければいけません。これは瀬戸内海も要ると思う。それから私は、天草、熊本の方も要ると思う。岩手も要るし、北海道も要ると思うけれ
ども、少なくとも日本海沿岸側に、日本海というものを前提にして今後研究
センターないしは
研究所、将来は日本海研究に必要な、できれば
学部か、そういうものをつくらなければならない。これは
研究所を先につくってから
学部をつくるのがいいのか、
学部ができてから
研究所をつくるのがいいのかわかりません。どっちがいいのか科学者の意見を聞かなければならないことでありますが、いま金沢
大学の中に日本海
研究所という看板だけが出まして、徐々に動き始めています。これは金沢
大学だけの問題じゃなくて、日本海沿岸の
理学部の地球物理学などをやっている
先生方、それからまた太平洋側の海洋学を研究している人、東大とも結びつけながら、そういう
センターを今後つくっていくべきだという提案を永井文部
大臣の時分からしているのですけれ
ども、なかなか動き出さないでいるものですから、この際に、こういう日本と世界の現状の中で今後の課題として要望を申し上げたい。これはもちろん
大学が動き出さなければだめだし、研究者が横断的に、職能的につながってプロジェクトをつくって共同研究をやっていくという体制ができてこないとできません。そんなものは、
文部省がこうせい、ああせいと言って予算をつけたからできるものじゃないと私は思いますけれ
ども、金沢
大学に小さな産声を上げようとしておりますから、日本海側にそういう海洋
研究所並びに日本海研究に関する拠点を設定するようなことをまず最初に
希望しておきたいと思います。その点、
大臣や
局長の方で、いままでやった
議論について、いまから海のものとも山のものとも言えませんけれ
ども、御
努力と決意のほどをお聞かせいただければ大変幸いだと思います。