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1978-02-17 第84回国会 衆議院 文教委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十七日(金曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 菅波  茂君    理事 石橋 一弥君 理事 唐沢俊二郎君    理事 藤波 孝生君 理事 木島喜兵衞君    理事 嶋崎  譲君 理事 有島 重武君       石田 博英君    久保田円次君       小島 静馬君    坂田 道太君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       中村  靖君    長谷川 峻君       水平 豊彦君    中西 積介君       湯山  勇君    池田 克也君       鍛冶  清君    伏屋 修治君       中野 寛成君    山原健二郎君       西岡 武夫君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君  出席政府委員         文部政務次官  近藤 鉄雄君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         文化庁長官   犬丸  直君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      大中臣信令君     ————————————— 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   小島 静馬君     林  大幹君   玉生 孝久君     山中 貞則君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     小島 静馬君   山中 貞則君     玉生 孝久君     ————————————— 二月十日  日本学校安全会法及び学校保健法の一部を改正  する法律案内閣提出第二二号)  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正  する法律案内閣提出第二三号) 同月十三日  学校災害に対する補償制度創設に関する請願外  一件(佐野進紹介)(第九〇五号)  義務教育学校建設事業費全額国庫負担等に  関する請願中野寛成紹介)(第一〇九四  号)  公立普通高校増設費国庫補助増額等に関する請  願外一件(伊藤茂紹介)(第一〇九五)  同(市川雄一紹介)(第一〇九六号)  私学の学費値上げ抑制及び教育研究条件の充  実等に関する請願有島重武君紹介)(第一〇  九七号)  同(大内啓伍紹介)(第一〇九八号)  同(渋沢利久紹介)(第一〇九九号)  同外二件(湯山勇紹介)(第一一〇〇号)  学校災害補償法制定促進に関する請願(伊東  正義君紹介)(第一一〇一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 菅波茂

    菅波委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。水平豊彦君。
  3. 水平豊彦

    水平委員 先般、福田内閣の改造によりまして、砂田先生が衆望を担って文部大臣に御就任になったのでございます。特に、新年度の予算編成というのは、御承知のとおり不況打開のために公共事業促進ということが積極的にとられた中に、どうしても人の問題、教育の問題、あるいはまた人の心の問題を、物や物の生産の次に、あるいはその下に置くわけにはまいらぬということで、教育に対して非常に情熱を燃やされたわけでございまして、本当に敬意を表する次第でございます。かつまた近藤政務次官もしかりでございまして、教育問題の第一人者でありますから、どうかこれからも、砂田大臣国民期待にこたえられますように、一層の御健闘をお祈りいたしておるような次第でございます。  そこで、私はまず第一に、オリンピックの問題についてお尋ねをいたします。  札幌市が、一九八四年の第十四回冬季オリンピック大会開催地として立候補いたしました。いよいよ本年の五月にアテネで開かれます国際オリンピック委員会において決定をされるような段取りになっておるわけでございます。委員大半の方は札幌に非常に好意的であるので、恐らく再び開催されることは間違いがないというふうな観測が流れておるわけでありまして、このことは、いかに国際大会であるオリンピックというものか都市の性格を変えたか、そしていかに意義の深いものであったかということをだれよりも札幌市が自覚をされたんだ、認識をされたんだ、私はこう思います。そしてまた、熱烈なる市民の熱情というものについて私は非常に敬意を表する次第でございます。  さて、次いで一九八八年開催の第二十四回オリンピックにつきましては、名古屋市を中心中部圏が実は立候補表明をいたしておるわけでございます。振り返ってみますると、わが国は大体五年から十年の単位でいわゆるナショナルプロジェクトというものを持ってまいりました。東京オリンピックしかり、大阪の万博あるいは沖繩海洋博、こうしたナショナルプロジェクトというものを持って国民が呼吸を合わせ、そして足並みをそろえて今日を迎えたわけでありますが、まさにそこにはダイナミックな民族の躍動というものがあったわけであります。ところが最近、経済不況や政治の混迷の中で、どうも国民の間で気魄が欠けているということが言われているわけでありますけれども、私も、どうもこうした大きなプログラムというものがないためではなかろうかという気がいたすわけであります。そこで、名古屋オリンピック国民に明るい希望を与え、言わずして通ずる同胞愛といいますか、日本人的共感がわくと私は信じております。名古屋を初め中部圏から誘致についての指導や協力方の要請があったとするならば、まず文部大臣はどのような姿勢で対処なさるか。この時点においての、オリンピックというものを名古屋を初めわが国誘致することについての御見解をまず承っておきたいと思います。
  4. 砂田重民

    砂田国務大臣 オリンピック規則によりますと、オリンピック競技大会開催は国ではなくて都市であることはもう御承知のとおりでございます。名古屋市でオリンピック開催するというお話を公式に文部大臣としてはまだ承っていない段階でございます。恐らく、中部圏というより、相当広い地域社会全体の行政の場にあられる方、スポーツ関係者地域社会住民の皆さんがいろんな立場で考えておられる段階であろうと承知をいたしております。公式にはそういうお話を承っておりませんが、新聞報道等でそういうお気持ちのあることは承知をいたしておるわけでございます。  ただ、たとえばオリンピック名古屋市が開催しようとなさいました場合は一九八八年であろうと私は想定をいたしております。そういたしますと、一九八一年中にIOC立候補届をお出しにならなければならないわけでございますが、事前に政府了解及びJOCの承認が必要となるわけでございます。いまの御質問は、もしもそういう場合には、文部大臣、どう対処するかという御質問でございましたけれども、その政府了解という問題につきましては、今日の段階では、国としてはスポーツ振興財政事情等諸般事情を踏まえて検討することといたしたい、こうお答えをいたしますのか、政府としてのたてまえのお答えであると思います。まさにそのとおりでございますが、もう一つ、たてまえだけではなくて、スポーツ担当大臣としての本音一言だけお答えをしておきたいと思いますが、スポーツ担当大臣としては当然、大変興味の持てる、関心の深いオリンピック中部圏におけるあるいは名古屋市における開催の問題である、きわめて関心を深く持ってまいろうということをお答えをいたしておきたいと思います。
  5. 水平豊彦

    水平委員 ただいま大臣答弁の中で、開催権都市中心というようなお話がありました。確かにそのとおりなんです。しかし、お聞きいただきたいのは、昨年の六月十八日、プラハの総会で、オリンピック開催権都市から国へ移行させようじゃないかということが原則的に一致を見ているということも伝えられておりますので、私は恐らく国が表へ出てこなくちゃならぬじゃないかという気がするのですね。ですからそうした意味においても、都市はもちろんでありますが、国の協力体制というものも私は強く要請したいと思うわけなんです。  その次に、大臣地元関係住民が考えている段階であろうというようなお答えがあったわけでありますが、もう考えの段階から一歩も二歩も先行いたしまして、さらに政財界一体でものすごい誘致運動を展開している、もうすでに活動に入っているというような御理解をいただきたいわけであります。その証拠は、昨日も仲谷愛知県知事がやってまいりまして、河野日本体育協会会長さんとお会いになって、条件さえ整えるならば河野会長賛成だということで積極的な意思表明があったわけです。実はこの問題は、昨年八月三日に仲谷知事福田首相に要請されたところから始まったわけでございまして、昨年の十月にも福田首相は何といっても地元要望が第一だということで、地元のいわゆる条件が整うか整わないかということに非常に期待をなさっていらっしゃった。それからいろいろと諸会合が設けられたわけでございますが、特に海部前文部大臣もこのことは十分大賛成であり、了解もいたしておるわけでありますし、また昨年の九月十九日にキラニンIOC会長中部オリンピック賛成の意を表明されたというように私も伺っております。しかも、中部圏知事会においては、昨年の十一月三十日にすでに基本的なことが合意されているという事実があるわけであります。しかも、名古屋当局においても、昨年の十一月からオリンピック問題連絡協議会を設置して、もうスタートを切っているというのであります。だからいまや、文部大臣指摘の考える段階から一歩も二歩も先行いたしまして、具体的な行動を起こしておるわけでありまして、まさに、福田総理が心配されておられる地元要望というものは完全にあり、高まり、整って、熱烈なる歓迎をしている、こういうことなんです。しかもまた、スポーツ担当大臣というお立場で非常にありがたい御答弁をいただきました。非常に興味のあることであり、かつまた関心をきわめて多く持つとおっしゃったわけでありますが、このことは、この問題について前向きな姿勢で対処をしていかれるというふうに私は理解をしておりますけれども、この点について再度御答弁いただきたいということと、もっと具体的に先の話をしてまいりますならば、かつて東京オリンピックが行われましたときには、正式決定昭和三十四年であった。それが、昭和三十二年という相当前の段階において、当時文部大臣主宰オリンピック招致計画懇談会というものを開催なされて、そして東京オリンピック準備委員会の組織を決定するという積極的な姿勢をおとりになったわけです。だから私は、いまの御答弁の延長線の中でこのような配慮というものをお持ちいただけるかという二点について再確認をいたしておきたいので、御答弁をお願いいたします。
  6. 砂田重民

    砂田国務大臣 オリンピック開催を、都市だけではなくて国でというお話IOCの中にあるということも承知をいたしております。また、一都市だけではなくて都市連合でという考え方もIOCの一部にあることも承っております。冬季大会は、一つの国だけではなく、二つの国にまたがって開催された前例のあることも承知をいたしております。そういうことを承知をいたしました上で、いま水平委員が御主張になりました点、考えておる段階ではないというお言葉でございましたけれども、私が先ほどお答えいたしましたのは、政府としては地元の方がまだ行政の場に乗せてきておられない、そのことを私はお答えをいたしたのでございまして、たてまえ論と本音と両方答弁したのですからここら辺で御理解をいただきたいと思うのでございますが、むしろ地元方々に私としてはしっかりおやりなさいというのが今日の答弁でございます。
  7. 水平豊彦

    水平委員 大変ありがたいお話でございまして、地元行政ベース民間ベース、すべて体制は整っておるわけでありますし、本格的には、本年六月に開かれます中部圏知事会議で最重点の最重大項目としてこの問題を決定され、具体的に政府の方へ上げてくると私は思うのです。その段階におきましては、ただいまお述べになりました趣旨に基づいて、どうかひとつしかとお受けとめをいただき、協力体制をしいていただきたい。もう一遍その点をひとつよろしく……。
  8. 砂田重民

    砂田国務大臣 御承知でしょうが、東京オリンピックはたしか一兆円近い予算がかかったと思います。したがって、名古屋市で、あるいは中部圏オリンピック開催するという、それに政府協力をしてまいらなければならない仕事量というものは相当なものがあるわけでございますから、政府としては、地元の御意向が固まって、それが政府行政ベースに乗ってきた段階検討をいたします。それはスポーツ振興その他のことを踏まえて前向きな検討をいたしますとお答えするのが、今日の場合の政府としての精一ぱい答弁であろうかと思いますが、あわせてスポーツ担当大臣としての本音まで先ほど御答弁したのでございますから、ここら辺のところをごしんしゃくをいただけたらありがたいと思います。
  9. 水平豊彦

    水平委員 ただいまの大臣のきわめて誠意のある御答弁で、私、了解いたしておきます。  次に、私は国立美術館についてちょっとお尋ねしておきます。  国立文化施設というものは極端に東西偏在しているのですね。たとえて言えば、美術館だけを例にとりましても、東京では東京国立博物館がある。あるいは国立西洋美術館がある。東京国立近代美術館がある。西の方に行きますと、京都国立博物館がある。京都国立近代美術館がある。あるいは国立民族学博物館大阪にある。いわば地域的に中部圏というのは東西谷間というだけではなくて、いわゆる文化の面においても何か谷間にあるような気がするわけであります。  そこで、中部圏文化水準の向上のために、実は国立美術館名古屋誘致要望が非常に高まって、愛知県議会においても関係住民においても猛烈な運動が展開され、文化不毛の地の汚名を返上したいということでがんばっておるわけでございます。もちろんオリンピック開催中の芸術展示場の設置の必要性は当然のことでありますけれども、それはそれといたしまして、元来この名古屋地区には、いま申し上げましたように非常に文化不毛と言われますけれども、各種の伝統的な地盤だけはあるわけなんです。だからどうしても美術館も必要とするわけでありまするし、また美術館活動というものは例外なくこの中部圏の広がりの中では名古屋市で行われており、その鑑賞人口といったものは、全国的な規模で行われる東京に相次ぐ一つ実績を持っている、盛大な実績があるということなんです。このように考えてまいりますと、幸い本年、昭和五十三年度において国立文化施設整備調査研究費というのが千五百八十一万九千円予算化されておるわけでありますけれども、これは名古屋への国立美術館誘致に対して配慮されての予算化であろうというふうに私は理解しておりますけれども、そうした意味においての大臣の御見解お答え願いたいと思います。
  10. 砂田重民

    砂田国務大臣 いま水平委員が、東京には近代美術館あり西洋美術館あり、国立美術館がたくさんある。西の方にもまたいろいろ京都等にある。名古屋はその谷間に置かれているという御発言でございましたけれども、実は私は少し見解を異にするものでございます。中部圏だけがこういった美術館等文化谷間に置かれているとは私は考えない。むしろ日本全体がそういう美術等文化谷間に置かれているという気持ちが実は私はいたすわけであります。西洋美術館あり、近代美術館あり、京都にもまた国立の近代美術館ありというお話でございますけれども、公募展をやる美術館国立一つも持っていない。現在日展東京都の美術館を借りてやっているような状態でございます。その中から梅原さんも生まれ、林武さんも生まれてきた。国が、美術芸術に志を持たれる方々のために公募展をやる美術館一つも持っていない。国際的には日本国として恥ずかしいことだという気持ちが私はいたします。そういう意味から、名古屋だけが文化谷間に置かれているということではなくて、日本全体が文化谷間にまさに置かれているという批判を受けてもいたし方ない状態にあるとい、う気持ちがいたしてなりません。  実はそういうことから五十三年度で、先ほど水平委員が御指摘になりましたような、わずかなことではございますけれども、美術に造詣の深い方々等にお集まりをいただいて委員会をつくっていただきました。名古屋市に国立美術館建設しろという御要望は私は承知をいたしております。ただ、他の方面からも、公募展のやれるような美術館をという非常に強い御要望各地から出ているわけでございます。また、日本美術界全体としてもそういう至極当然の御要望が出ているわけでございますので、美術に関する国立文化施設整備について、施設の種類、規模配置をどういうふうに進めていけばいいか、全国的な見地から調査研究を行っていただくための委員会先ほどお話しになりました費用を使っていきたい、そういう見当で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。私は、名古屋を横へどけるという意味で申し上げているのではないのでございまして、そういう公募展のやれる国立美術館というものを当然将来もっと各地に持つべきだという感じから、大変むずかしい予算編成ではございましたけれども、財政当局理解をやっと得まして委員会をスタートさせることができるようになったということでございます。
  11. 水平豊彦

    水平委員 ただいまの大臣の御答弁にありましたように、全国的な文化の低さということについては私も実は同感でありますが、私の地域でありますので大変言いにくいわけでありますけれども、名古屋だけが文化が低いというのではなくて、いわゆる東西谷間、それがあたかも文化の低さをも象徴しているような面がある。特に、名古屋はいわゆる第三の都市と言われるように大きな都市ですから、それだけに人口もたくさんある。だから社会的にいって規整力が強い。その規整力が強いだけに一層文化への熱情というものを満たしていかなければいかぬということから申し述べたつもりでありますけれども、ただいまの大臣の御答弁を伺いますと、いよいよ委員会をつくって本格的に始動されるわけでありますから、公募展のできるような美術館ということで、名古屋を初め、国立美術館建設を図っていくのだ、こういうふうに理解してよろしいか、一言……。
  12. 砂田重民

    砂田国務大臣 先ほどお話のございましたオリンピック開催いたしますときに、それと並行して美術展を必ず行うことになっておりますから、この委員会名古屋についてのその点もあわせて検討が進められることは当然でございます。
  13. 水平豊彦

    水平委員 ありがとうございました。  次に、私はもっと基本的な文教問題を幾つか取り上げてお尋ねしてまいりたいと思います。  まず最初は、幼児教育の問題であります。  幼児教育重要性はいまさら言うまでもないことでありますが、特に幼稚園というのは学校教育法の中でいわゆる学校と規定されております。幼児教育国民教育の基礎として体系化したところに実は大きな意義があるわけであります。ところが残念なことに、小学校や中学校のように国家財政の支出の道が十分に開かれてはいない。ここが問題なんです。でありますから、今日の幼稚園の実態はどうかというと、国公立幼稚園はその財政的な負担市町村に任せられておりますので、どうしても幼稚園をつくるだけの財政のゆとりのある規模市町村にかたまってしまう。では私立幼稚園はどうかと申しますと、採算が合ってなければやっていかれない。採算が合うか合わぬかということにどうしても焦点が合わされてしまう。というようなことで、いずれも偏在をしておるわけです。国公立が四〇%、私立が六〇%であるわけでありますけれども、とにかく偏在している。しかも、大半幼稚園私立でありますけれども、私立はいま申し上げましたように経営がうまくいくかいかないかということがセンターに出てまいりますので、どうしても負担が子供さんにかかってくる。しかも、幼稚園児を持っている親というのはまだ若いし、生活力も十分ではない。それだけに一月一万円も幼稚園に出るということになりますと、これは大変なことだと私は思うのです。  そういうところへもってきて、幼稚園が足らぬというところには今度は保育園が出てくるわけです。正式には保育所でありますが、保育所が出てくる。この保育所は、御承知のとおり、戦後、近代福祉の精神がだんだんと発展いたしまして、戦前における託児所保育所になった。そういうことで補助率も高いというような配慮の中で、市町村はどうしても国公立保育園ならば受けましょうということになるわけですね。ですから、これは文部省の五十年の統計でありますが、国公立保育所は六三・三%、私立は三六・七%ということで、幼稚園とは逆の現象を示している。はっきりと言うならば、幼稚園が不均等な状態であるからこそ保育所が出てきて、しかも幼稚園機能を代替している、代替的な役割りを果たしているということでありまして、また保育所そのもの偏在をしているというかっこうでありまして、非常に不均等な状態を呈しているわけであります。  こういう状況の中で、もちろんこの助成策というものも拡大していかなければなりませんが、同時に、このままの状態でいいのか、いわゆるこの適正配置というものをこれからどのように扱っていくか、あるいは幼稚園保育園の不均等をどうやってこれからうまく適正化していくか、そういうことについてまずお答え願いたいと思います。
  14. 砂田重民

    砂田国務大臣 私は、幼稚園保育所というものはその目的機能を異にするものだと考えております。当面、それぞれの目的機能に即してその普及、充実を図ってまいらなければならないわけでございますが、文部省といたしましては、入園を希望される四、五歳児すべてが就園できるように、計画的な幼稚園整備を図っているところでございます。  しかし、いま水平委員が御指摘になりましたように、保育所幼稚園大変ばらつきが出てきてしまっているという事態はまさにおっしゃるとおりでございまして、昭和五十年十一月に行政管理庁からも文部大臣厚生大臣に対しまして、幼稚園保育所整備地域的に偏在をしたり、両施設が混同的に運営されている、好ましくない問題があるではないかという御指摘がありまして、これらを検討いたしますために文部厚生両省間で学識経験者による協議の場を設けろ、こういう勧告がございました。昨年十月に幼稚園及び保育所に関する懇談会を発足させたところでございまして、先ほど御指摘がありましたような基本的な問題点について、自由な意見交換を現在この懇談会でやっていただいておるところでございます。文部省といたしましてはこの懇談会意見を伺いつつ、ひとつこれから検討してまいりたい。地域的な偏在、混同的に運営されている問題、それを解決するということを目的にして、この懇談会の御発言を尊重しつつ慎重に検討してまいりたい、かように考えているところでございます。
  15. 水平豊彦

    水平委員 一口に言うならば、今日までの幼稚園というものは福祉意味を担う保育内容に欠けていやしなかったか、保育所教育的意味を担う保育内容に欠けていやしなかったかと私は疑わざるを得ない、指摘せざるを得ない。したがって、いろいろな方法はございましょうが、まずこうした両者の欠陥を同時に補うのは、統一された、つまり一元化された幼児教育観あるいはまた保育観というものを確立することでないかというふうに私は思います。いま大臣から、行政管理庁からの勧告お話があったわけでありますけれども、なぜ私がこの二元化を一元化にすべきか、どうしてお尋ねしたかと言いますと、実は戦後、新しい教育がスタートいたしまして間もないころから、国民は、いわゆる幼児教育重要性にかんがみて、とにかく二元化を一元化に持っていけという非常な高まりがあった。それが、戦後十八年もたったその段階、つまり昭和三十八年に実は文部省二元化見解を明確にお示しになっていらっしゃったことがある。それは文部省の初等中等教育局長と厚生省の児童局長の連名で、幼稚園保育所との関係について共同通知を出していらっしゃる。二元化というものは、多様で変化に富む子供たちの活動に十分こたえられるかどうかという疑問がある、そういうことから一元化への望みがあったにもかかわらず、相変わらず二元化の基本的な態度を文部省はお示しになってきた。しかも戦後十八年目ですね。それから今日まで十四年たちますけれども、まだそういう二元化のままで来て、いま大臣がおっしゃられましたように、とうとう行政管理庁から勧告を受けなければならぬ。まことにこれはぐあいの悪い話でありまして、名誉なことではないのです。明らかに幼保一元化すべし、こういう勧告であります。したがって、それに基づいてただいまの懇談会というものが昨年できたわけでありますけれども、懇談会ができて、その意見を慎重にお聞きして配慮したいという大臣答弁でありますから、もうそうしていただきたいと思うのであります。  ただ、私はここでしっかりと確認しておきたいことは、いま私が申し上げました背景があるだけに、今回おつくりになりました懇談会というものは、単なる時間かせぎのための懇談会で終わってはならぬということなんです。違った言葉で表現するならば、いわゆる幼稚園保育所一元化へのステップになる懇談会になるものかあるいはストップになるものなのか、私はこの点、先ほど申し上げましたように、単なるその場限りのような懇談会であってはならないということからお尋ねするわけでありますが、この点についていかがですか。
  16. 砂田重民

    砂田国務大臣 この懇談会で自由な立場から意見交換をしていただいているわけでございますが、幼稚園及び保育所整備計画の調整の問題、地域的普及格差の是正及び年齢別入園・所の問題も含めて、あるいはまた幼稚園及び保育所教育保育内容の連携についても御討議をいただいているわけでございます。特に私は、教育内容をこの懇談会で自由な立場から御懇談いただいておりますことに非常に大きな期待を持っているものでございまして、幼児教育重要性はいまさら云々する必要もなく、もう水平議員も十分御存じのことであります。小学校へ行く前の幼児の教育がいかに重要であるかということは、大勢の専門家からいろいろな議論がなされてまいりましたけれども、それが、幼稚園の時分に非常に多くの漢字を覚えさせるとか字を覚えさせるとかということで、一人一人の子供たちが自分のことは自分でできるようになるとかあるいは集団規律だとか、基本的な、将来の人格形成のために一番基礎になるということがややもすれば忘れがちにされて、何か知識ばかりを幼い児童にまで押しつけてきたようなきらいがあったような気持ちがしてならない私といたしましては、いま水平議員の御指摘になりましたような趣旨でこの懇談会も運営されていることと思いますが、特にこの教育内容についての御討議に期待をしながら、この御意見を尊重して進めてまいりたいと考えているところでございます。
  17. 水平豊彦

    水平委員 そうしますと、先般文部省が発表なされました昭和五十一年度における幼稚園の就園率は、五歳児で六四%、四歳児で四八%。文部省の計画によると、昭和五十七年度を目安にして、就園を希望する四歳児、五歳児すべてを就園さすよう幼稚園整備を図っている、こういうことをおっしゃってみえた。私は、幼稚園に入れたいけれども幼稚園がないから、保育所が代替的な機能も果たしておってくれるから保育所でもいいのだという形で保育所へ行っている人も中にはあると思っておりますが、一番いいことは一元化されることであります。いまここで文部省のお立てになっていらっしゃる計画というものは、では幼稚園のみで収容されるおつもりなのか、あるいは保育所というものも含めてですか、一言お願いします。
  18. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ただいま御指摘の幼保一元化ということでございますが、これにつきましては、いろいろ具体的におっしゃる方によって考えが多少違うようでございます。先般の行管の勧告も、現行の制度のもとでいえば、幼稚園は幼児の教育をつかさどるところであり、保育所は保育に欠ける幼児の保育をするところだ。したがって、その制度の趣旨に従ってそれぞれの施設整備を図るべきであるということでございますから、おっしゃるような意味でそれが幼保一元化を言っているかというと、私は必ずしもそうではないと思うのでございます。ただ、国民の側から見た場合に、現在のように、御指摘がありましたけれども、たとえば沖繩県へ行けばほとんど幼稚園だ、あるいは兵庫県へ行けば幼稚園が大部分で保育所はほとんどない、逆に高知県へ行けば保育所がほとんど肩がわりをしている。そういう状態で、いわば幼稚園保育所というものが混同的に運営されておる、その事態は国民としては困るのだという意向は私はよくわかるわけでございます。  そこで文部省としては、そういう幼稚園保育所の関連というものはもちろんございますけれども、現在の事態は、やはり幼稚園保育所がそれぞれまだ十分設置されていないというところに問題があるわけでございますから、まず幼稚園整備計画を図っていこう、こういうことで、いま御指摘のように四十七年から十年計画を立てたわけでございます。そこでその計画の中身でございますが、具体的に言いますと、五十七年度の当初までに、五歳児につきましては幼稚園で、概数でございますが、七〇%をめんどう見る。それから保育所で二六%強をめんどう見る。そして残りの三ないし四%というものはいわば障害のある子供さんで、これは直接幼稚園保育所というわけにはいかない、こういうことでございますから、幼稚園でめんどうを見るのは七〇%。それから四歳児につきましてはちょっと数を下げまして六九%、こういう目標を立てたわけでございます。そして現在の進行状況を見ますと、五十二年度がちょうど中間になるわけでございますが、五歳児につきましては、四十七年度が就園率が六〇%でございまして、五十二年度は先ほどお話がありましたように六五%となっておるわけでございます。五十七年度当初までにこれを七〇%に持っていきたい、こういう考えでございます。四歳児につきましてはそれよりちょっと計画がおくれておりますが、大体計画に乗って実施をしておる。そのために幼稚園の設置につきまして国としての助成をやってきておる、こういう現状でございます。
  19. 水平豊彦

    水平委員 いまの現状からすればそういう答弁でしょう。私は先ほどもちょっと申し上げましたように、国公立私立の割合が、幼稚園保育園とがまことに対照的になっております。このことは、どうも都合がいいからということで、補助率の高い保育園保育所ならば市町村が引き受けましょうというようなことだ。で、父兄の方は同じような期待をしておるわけですけれども、中身は相当違うのです。たとえて言えば、幼稚園の教諭あるいはまた保育所の保母さんの資格とか養成とか、労働条件とかあるいは給料とか、そういう異質のものを含めてきております。だから、早くこれを一元化するなりして、そして一刻も早く設置基準等の調整というか再検討を図って、すっきりした形でお目見えをしていただかないと派生的な問題というものが出てくると私は思う。そうでなかったならば、なぜ行政管理庁が監察結果の勧告をするか、こういうことなんですね。もしもいまあなたのおっしゃることの方が大きな理由であるとするならば勧告を返上してもいいわけですけれども、そういうわけにはまいらぬわけですね。だから、私は何も金科玉条のごとく勧告というものをそう解釈するわけではないけれども、一応一つ勧告に基づいてお立てになったならば、明確な目標を立ててダイナミックにお進めいただきたいということを申し上げておきます。  それから、ついでと言っては悪いんですけれども、いまの局長の御答弁を聞いておって私思うのですけれども、四歳、五歳の段階幼稚園ときちっと統一をしておいて、三歳もしくは三歳以下を保育所にまとめるというような考え方というものはどうなのか。それよりも、幼稚園とか保育所ということよりも、四歳、五歳を小学校の低年の人々と合わせて、ひっくるめて幼児学校をつくるというようなことが中教審あたりからも答申されておるようなわけでございますけれども、余りこの幼児学校というものの考え方がずっと出てまいりますると、よく言われるように、選別とか競争を持ち込むことは感心しないということになるわけでありますが、この点について御所見を一言承っておきます。
  20. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 幼児を二つの段階に分けて、四、五歳児は一律に幼稚園教育、三歳以下を保育所というような意見の方もございます。私はそれも一つの考え方だと思います。あるいは、いま御指摘のように、四、五歳と小学校の低学年を一つ教育施設に収容して、現在のように幼稚園は情操教育、小学校に上がった途端に体系的な知的教育中心というようなことよりも、もう少し段階的なその年齢層の教育方法を考えたらどうかといういわば幼児学校の構想、これも相当ございます。実は私どもの局におきましても研究開発室というのがございまして、そこでそういう問題についても研究をいたしておるわけでございますが、いずれの問題も、いわば幼児段階における教育制度の根幹に触れる問題でございますので、十分に研究をしてからでないとこれはなかなか結論を出せない問題でございますが、問題の重要性は十分認識いたしまして検討を重ねておる、こういうことでございます。
  21. 水平豊彦

    水平委員 言うなれば、現在、公立の幼稚園に通っておる者、公立の保育所に通っておる者、私立幼稚園に行く者、私立保育園に行く者、無認可保育所に行く者、家庭で保育を受けておる者、他の児童施設に収容されておる者、ばらばらなんですね。このことは、一口で言うならば、こうした差別扱いというものはまさに正義の原則に反している。こうした実態というものは、幼児教育重要性にかんがみて払拭してもらわなければならぬ。これが背景にあるわけですよ。そういう意味において、牽引車としていわゆる幼稚園保育所に一役買ってもらわなければならぬ。そういう意味から私は効率的な運用を図ってもらうためにも一元化を言うたわけでありますから、御承知おきをいただきたいと思います。  幼児教育の問題から、今度は高等学校の問題についてお尋ねいたします。  私がお尋ねをしたい問題の中心、センターは何かというと、高等学校というものは義務教育なのか、準義務教育なのか、あるいは全入なのか、あるいは今日のままでいくがいいか、こういうことなんです。私が申し上げるまでもなく、教育基本法でも「九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」と言って、これは義務教育として認定している。あるいは教育制度の改革に関する答申、これは政令改正諮問委員会でありますが、これも、六・三・三・四の学校体系の中で六・三を明らかに義務と言っておるわけですね。まあ大きな根拠はこんなものでございまして、だんだんと年の経過とともに違った意見が出てくる。高校は義務もしくは準義務、あるいはまた全入というものも肯定するような意見が出てきておるわけであります。たとえて言うならば、昭和五十一年十二月の十八日に高村さんという教育課程審議会の会長さんが永井元文部大臣に出された答申、「小学校、中学校及び高等学校教育課程の基準の改善について」という中でも、いまや高校教育というものは「大部分の青少年を教育する国民教育機関としての性格を強めている」こういうことに注目すべきだ。そして小・中・高を一貫的にとらえよ、こういう意見を言っていらっしゃる。また、日教組の設置いたしました中央教育課程検討委員会において、昭和四十九年九月でありますけれども、高校の義務あるいは準義務化といった、そういう精神を唱えていらっしゃるように承っている。さらに、昭和五十一年七月十五日には全国都道府県教育協議会の第一部会においても、義務にすべきではないかという意見がなされておりまするし、あるいは、昭和五十年十二月の八日、自民党文教部会初中教育チームも、高校教育の多様化の考え方の中で、戦前の中学教育の就学率は二〇%程度にすぎなかったが、現在の高校進学率は九二%、これは昭和五十年度における統計でありますが、高校は大多数の国民のための教育機関となっている。このように義務を肯定する意見が出てきておるわけなんです。先般来、前海部文部大臣の当委員会における御答弁を承っておりますると、義務にするということよりは、行きたい気持ちを持った人が行けばいいんだ、そういう人は年々とふえてくる。だから、このふえてくる人をどうやって収容するか。いまのような状態が五年間続くといたしまするならば、少なくとも四百校増設をしなければならぬ、新設をしなければならぬ。それで積極的に受け入れていこう、こういう態勢を御表明なさったわけであります。  そこで申し上げたいのは、義務教育であるとするならば、入学することは義務でございましょうが、いわゆる授業料その他はただで、無償になるわけですね。全入というのは、行きたいという人を全部入れるということにはなるわけでありますけれども、授業料その他は有償であるというふうに本質的な見解が違う。それもそうでございますが、一応、義務とすべきか準義務とすべきか、あるいは全入が望ましいか、あるいは今日のままで進んでいくべきか、明確なる答弁一言しっかりと述べていただきたいと思います。
  22. 砂田重民

    砂田国務大臣 高等学校教育は進学率が九三・一%に達しまして、水平委員が御指摘のような状況になっているわけでございます。したがって、大部分の青少年を教育する国民教育機関としての性格を強めてまいりましたことはおっしゃるとおりでございます。しかし、この段階の青少年は、能力、適性等が非常に多様でありますことやら、わずかではありますけれども高等学校以外の進路を希望する者もあるということもまた事実でございます。しかも、高等学校の三割が私立学校の生徒である。私立学校への依存度が非常に高いことは高等学校にもまた見られる現象でございまして、こういうことを考えますと、現段階では一律に就学義務を課するということは教育上も、そしてまた、ある意味では残念だという表現を使ってもいいかと思いますが、行財政上も当面は種々問題があるわけでございます。そこで、先ほど水平委員も御指摘になりました、海部前文部大臣お答えをいたしましたように、当面は高等学校の普及とその機会均等という見地から、入学希望者に対しては適切にその機会を与えていく方向で受けとめ、準備に全力を尽くしていく。しかし、若干の選抜という制度は残っていく、こういうことで現段階におきましては進めてまいらなければならない時期でございます。
  23. 水平豊彦

    水平委員 私、御趣旨はよく理解できます。私、一番気になりますことは、文部省見解は、たとえて言えば父兄に対してどういう態度をおとりになるかというと、父兄は理屈抜きにやはり義務化というものを望んでおるんですよ。そうすると、どうも父兄、社会全般にわたっては義務教育でございますよというような態度をときどきおとりになる。ところが大蔵省と予算折衝なんかなさるときには逆に、今度は義務ではないというようなことで、予算折衝上のテクニックの問題があるかどうかわかりませんけれども、常に文部省は二つの顔をお持ちになっていらっしゃるような気がしてならぬわけですね。その点、どう思われますか。
  24. 砂田重民

    砂田国務大臣 この問題は、文部省と大蔵省両省の間の予算折衝で片がつくという程度の小さい問題ではございません。非常に大きな問題を抱えているわけでございまして、わずかではありますけれども中学校を卒業して就職をしようという希望者、またそうしなくてはならない人が現実にあるという問題も否定するわけにはまいらない。そして、高等学校義務教育化するならば、きわめて多様な要素を持っておりますいまのこの時代の年齢の若者たちと申しますか、普通科へ進む中学生もありますし、また中学校を卒業して職業科へ進む青少年たちもあるわけでございます。それを義務教育ということでどう受けとめていくかということは、非常に重要な問題、非常に幅の広い深刻な問題があるわけでございまして、文部省と大蔵省の予算折衝だけで片のつく問題ではございません。そういう意味から、今後も引き続いていろいろな角度から専門家等の意見も十分承知をいたしながら、またそういう方々にも御勉強をいただきつつ将来の方向を検討してまいりたい、かように考えるものでございます。
  25. 水平豊彦

    水平委員 明治五年の学制改革以来、六・三・三・四制というものがいつまでも、つまり三十年間の長きにあたって続いたということはないわけですね。だからもうそろそろ検討したらどうだという意見がありますし、先ほど申し上げました高校の義務教育の問題とも関連すると思うのです。その点について一言……。
  26. 砂田重民

    砂田国務大臣 六・三・三がもう実際、青少年たちの変化と申しますか、それに対応できていないではないか、六・三・三・四というあり方を変えるべきだという御議論が各方面から出されておりますことは承知をいたしておるところでございます。また、中教審からも四十六年にそういう御答申をいただいていることも御指摘のとおりでございます。しかし、これもやはり、そういう学制を変えた場合に、小学校、中学校、高等学校、それぞれの年齢年齢の発達程度がどうなっていくのか、こういうことを学問的に裏づけも十分持って、きわめて慎重に事を運ばなければならないことだと思います。あるいは私の答え方が間違っているかもしれませんけれども、六・三・三という制度をアメリカの制度として占領下に受け入れたわけでございます。そのときには、従来の日本学校の制度と六・三・三というアメリカの行き方というもの、それを変えた場合に子供たちにはそれがどういう影響があるかという十分慎重な配慮、研究勉強をなされないでスタートをいたしました。それが今日まで続いてまいりまして、一応の定着はしておりますけれども、このままではいかぬではないかという御議論もまた各方面から出てきているわけでございます。占領下でありますから、十分な時間を置いて勉強、検討がなされずに取り入れた。それがもしも誤りだというのであれば、その誤りは繰り返したくない。やはりもう少し基本的な、青少年、生徒、児童たちの心身の発達状況等学問的にどう裏づけられるかということを文部省といたしましても検討を続けていることでございますので、その検討結果によって進めてまいりたい、かように私は非常に慎重に処したいと考えております。
  27. 水平豊彦

    水平委員 了解します。  次の問題でありますが、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約というのがあります。第二十一回国連総会で採択をされておるのでありますが、「この規約の締約国は、この権利の完全な実現を達成するため次のことを認める。」とある中で、いま読みますが、「技術的及び職業的中等教育を含めて、諸種の形態の中等教育は、すべての適当な手段により、特に無償教育の漸進的な」——ここのところが肝心なところですね。「無償教育の漸進的な採用により、一般に利用できるものでなければならず、またすべての者に開放されていなければならないこと。」とあるのです。  相当数の国がそれぞれの国会で批准をいたしまして、採択をしておるわけでありますが、いよいよわが国日本におきましても今国会あたりでは批准の話が出て、私は大論戦の種になるのではないかと思うのです。当面、文教関係のところについて今後のあり方を私は承知しておかなければならぬわけでありますから、文部大臣のお持ちになっていらっしゃる見解ですね、いかなる見解をお持ちになっていらっしゃるか。そのほか、人間が生きていくことでの労働権とか、いろいろな権利がうたわれておるわけでありますが、まずこのところについての明快なる御見解を承っておきます。
  28. 砂田重民

    砂田国務大臣 人権尊重規約は、全体としては一日も早く批准をするべきもの、かように私は考えて、基本的にはそういう考えを持っております。ただ、国内的にどう対応できるかということはやはり問題があることでございまして、政府部内でいまそれの検討を続けているところでございます。すでにこの規約の承認をいたしました国の中でも、一部留保をして承認をしている国もあるわけでございまして、教育の関係のことをお触れになりましたけれども、それぞれの国によって教育の制度もありようも異なるわけでございますから、国内法的にどう受けていけるか、これをただいま政府部内で検討をしているところでございますので、いましばらく結論をお答えいたしますのはお待ちいただきたい、御了解をいただきたい点でございます。
  29. 水平豊彦

    水平委員 ただいま大臣がおっしゃったように検討中でありますので、検討結果を待たなければならぬと思うのですけれども、それにしましても、大体いつごろ結論が出るか、大体の見通しがわかればお知らせいただきたいということと、文部大臣、ただいま留保というようなお話がございましたけれども、文部大臣のただいまの御見解としては留保すべきだとお考えになっていらっしゃるのかどうか、あわせてお伺いします。
  30. 砂田重民

    砂田国務大臣 私一人で事が決まるわけではございませんので、大変むずかしい、水平委員はまことに簡単に御指摘になりましたけれども、大変答弁がしにくい御質問でございまして、もうちょっと時間を下さいとしかちょっと言いようがないところでございますが、冒頭に申し上げましたように、基本的には、この規約というものはもう一日も早く、できればこの国会ででも承認をされなければならない、この規約の精神から申しましてもまさにそうあるべきだと心得ております。
  31. 水平豊彦

    水平委員 何か大臣予算委員会の方にお行きになるようですから、私も焦っておるわけですが、局長そのほかの質問は後回しにいたしまして、大臣がおられる間に、私、大学問題をひとつお尋ねいたしておきます。  それは、東大医学部の付属病院精神神経病棟についてであります。これは八年間も自主管理と称して特定なイデオロギーを持った者が占拠しているというふうに伺っておるわけでありますが、一口に言うて、この現象というのは不当なものなのか、あるいは不法なものなのか、ここが聞きたいのであります。不当なものとするなら、こんな管理体制はあり得ないし、指導者のいわゆる優柔不断というものがきつく問われるわけでありますが、去る十五日に会計検査院の立入検査もできなかったし、病院長や科長やあるいは担当教授すら占拠派の許可がないと入れぬというのはまさに異常であり、私は不法だと断ぜざるを得ないと思うわけであります。もし不法であるとするならば、正義の名において一つの権力をもって、この状況を排除するために権力行使があってしかるべきだと私は理解をいたします。先般来、大学局長は、大学の自治権との関連があって、政府も一方的には指示ができないというような御見解をお示しになっていらっしゃったわけでありますけれども、重要な問題でありますから、私は一言文部大臣お答えを賜っておきたいと思います。
  32. 砂田重民

    砂田国務大臣 まずお答えをいたしておきたいと思いますことは、私は不当な事態であると認識をしております。いかなる体制にも反対だ、このような、まさに暴徒が占拠している、私はさように理解をいたしております。一つ目的を持って国税をつぎ込んで建設し、しかもそれが、教育、研究等に利用されなければならない国有財産が正当に運用されていない、こういう意味からも、まさに不当な事態が起こっているわけでございます。  ただ大学のこういう国有財産の管理運営、その権限は文部大臣が大学学長に委譲、委任をしているわけでございまして、私と同じ考えを大学の学長も持っていてくれるもの、かように私は認識をいたしておりますが、いまおっしゃいました、不当な事態であるから権力を行使しろということですが、もう一つ考えなければなりませんことは、いま占拠されておりますあの東大の精神科病棟という一つの国有財産を管理運営する責任を文部大臣に対しまして大学学長が持っているわけでございますが、同時に、東京大学全体の管理運営についても学長は責任を持たなければなりません。そこで、具体的ないまの状態を改善するための手段方法は、やはり大学当局の考えるところによってやってもらわなければなりません。四十三年、四十四年ごろのあの大変な大学紛争のときに、国会で大学の運営に関する臨時措置法が成立をいたしました。あの紛争を解決するための手段としての臨時措置法でございましたけれども、この臨時措置法におきましても、文部大臣が与えられた権限というものは国家権力をもって大学に立ち向かうということではありませんでした。それはやはり憲法で定めております学問の自由を守る、そのことを前提にしての内容を持った大学紛争に関する臨時措置法でございました。そういう立場に立って当時の坂田文部大臣も一応大学紛争をこれだけ平穏裏にまとめてこられた。私もそのことを教訓といたしまして、大学当局に対しましては、あの不当な事態を解決するための大学当局の御努力に助言もし、指導もし、強くやってまいりますけれども、また援助もしてまいりますけれども、それは文部大臣みずからか国家権力をもって事態に介入することではない。そこのところはやはり、学問の自由ということを侵してはならないという大前提は絶対に崩すことなく対処をしてまいりたい。引き続いて、大学当局がとっております努力をより一層指導援助して、一日も早い不当事態の解決に取り組みたい、かように考えるものでございます。
  33. 水平豊彦

    水平委員 いまお述べになりました坂田文部大臣時代の教訓といいますか、お話を私も知っております。だが、どうしてもわからないのは、国有財産に対して異常な占拠というものの実態はなぜ不法ではないかということの法的な根拠が一体どこにあるか、それがどうしても私はわからぬのです。文部大臣は前向きに積極的にと、非常に配慮され、かつまた意欲のほどをお示しになったわけでありますから余分なことは言いませんけれども、不当と断ぜられた以上は、一刻も早くその具体的な方策をここにお示しいただいて、具体的なアプローチをどうやってやっていくか、そこのところを再度一遍お答え願いたいと思います。
  34. 砂田重民

    砂田国務大臣 東大におきましては先般来、特に医学部長、病院長等が占拠派のグループに積極的な働きかけをいたしてまいりました。早く事態を正常に戻すように、粘り強い交渉を続けているところでございます。会計検査院が入って中を検査してくださることを私もまた期待をいたしておりました。医学部長、病院長等も会計検査院の検査を平穏裏に受けるべきだということを強く主張し、交渉を続けてまいりました。昨日、一部の検査が終わったところでございまして、やはり大学当局がこれだけの努力をいたしてくれておりますので、私は、より一層の努力が引き続いて大学当局によって行われることを指導し、助言し、その指導助言は強くやってまいるということを御理解いただきたいのでございます。
  35. 水平豊彦

    水平委員 時間がありませんで、次へいきます。  次に大臣から聞きたいのは、大学の入学試験の問題でありますが、当委員会においても、いよいよ昭和五十四年から始まる共通第一次試験について、当初国公立でスタートを切られるわけでありますけれども、私立大学の参加というものが非常に望ましいというような御答弁もありましたし、また、私ども衆議院の文教委員会におきましても、昨年の十一月十六日、大学入試改善に関する決議の第五番目の中に私大の参加を強く求めておるわけであります。しかし、私大側の見解は、私のうかがい知るところでは、入学試験の改善というものは喜ばしいことではあるけれども、私学には私学独自の建学精神と誇りがあり、特色もある。そういうことで、自分のところの大学以外のところで試験が行われるということについては、これはいわゆる画一化、統制化ではないかと言って、非常にきらった意見が強いようであります。今回の共通一次にしたことのメリットというものは、機械化され手間が省けるぐらいなんだというような見解であるわけでありますけれども、この点についていかがでありますか。
  36. 砂田重民

    砂田国務大臣 私立大学に強力に呼びかけを続けてまいりましたことは御承知のとおりでございますが、また私立大学側も種々検討をしております。ただ、もうここまでまいりました現時点では、五十四年度第一回の第一次共通入試に私立大学が参加することは困難である、そう考えなければならない時期が参ったわけでございます。ただ、私立大学の中には、水平委員がおっしゃったような見解をお持ちの私立大学もありますし、また積極的に参加をするべきだという御意見もあるわけでございます。共通一次入試に私立大学が参加してくれますときはやはりグループ的な参加の形が一番望ましいわけでございますけれども、いろいろな話し合いを行ってまいりましたいままでの経過からいたしますと、五十五年度から非常に強く参加の意思表示をしております私大もあることでございますので、五十五年度からは、必ずしもグループでなければ入れないというようなことではなくて、個々の私立大学の参加を受け入れることも含めまして、国・公・私立大学を通ずる入試改善の実か上がるようになお一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  37. 水平豊彦

    水平委員 私立大学はこの問題について非常に神経質になっておるのですよ。そこで私がちょっとお尋ねしたいことは、これは局長でいいのですけれども、「私立大学医・歯学部における入学に関する寄付金の収受等の禁止及び入学者選抜の公正確保等について」という通知をお出しになっているわけなんですよ。確かに寄付金の収受等の禁止だとかあるいは入学者選抜の公正確保ということは私は正しいと思いますので否定はいたしませんが、片一方でそういうことを牽制しながら、同一通知文書の中で、今度は日本私立医科大学協会会長日本私立歯科大学協会会長にあててどう書いてあるかというと、「私立大学医・歯学部における入学者選抜のあり方についても、貴協会におかれて「共通第一次学力試験」への参加等を含め、その改善策を十分検討され、」と言って、あわせてお願いをされておられるわけでございますけれども、関係があるといえばあるし、ないといえばないわけでありますが、うがった言い方をするならば、片一方で禁止を求めて、その裏側で共通第一次に参加しなさいよと暗に呼びかけをしていらっしゃるという、こういうことですらもこれは官僚統制につながる越権行為だと言わんばかりに、あえて言うならばそのくらい私学の関係者というものは気を使っているわけなんですよ。この点について何かお聞きになってみえるかどうか。
  38. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 私立の医科・歯科大学の入学者選抜のあり方につきまして、私どもがまず大学側に検討、善処を求めましたのは、入学者選抜に際しての仕組みが、いわゆる教学側の責任体制が確立されたもとで行われていないきらいがある。よって教学側の入試に対する体制をきちっと整えてほしい。そして教学側の責任において大学に入れる者を公正に選抜してほしいということをお願いをし、また、その趣旨は両協会とも十分に了解をされて、今年度の入学者の選抜に当たって具体的にそれぞれの大学で御検討を賜り、実現を見てきているところでございます。そうした入学者選抜の公正な実施ということを考えていく場合に、やはり共通入試というものを導入して、それを活用しながら、それぞれの大学で小論文なりあるいは面接なり、いろいろな新しい工夫を加えながら選抜をしていくということが望ましいのではないかと考えて、共通入試への参加をいわば勧奨したわけでございます。もちろん、これをどのようにお受けとめになるかは両協会の御判断でありますし、あるいはさらに言えば両協会に参加されているそれぞれの大学の御判断でございます。いまのところ、私立の医科大学協会の方は、この問題については少なくとも協会としては積極的に対応方を御検討いただいております。もちろん結論が出ているということではございませんけれども、これからも両協会とお話し合いを続けてまいりたいと考えております。
  39. 水平豊彦

    水平委員 医科大学と歯科大学だけにこういうような呼びかけをされたという特別な理由があるのですか。たとえて言えば慶応大学でも、あれは総合大学の中に医学部があるでしょう。あの医学部もこの中に含まれておるのではないですか、私立医科大学協会の中に。そうすると、総合私立大学の中のそういう医学部も含めた形で行われるということになりますと、私立大学全体への呼びかけとのバランス調整の問題について何かうまくいかぬのではないかという気かするのですが、どういうことですか。
  40. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘のように、私立大学に対しましては、連盟、協会、懇話会と三つの団体がございますが、それぞれの団体に対して、共通入試へのそれぞれの団体の対応の仕方を御検討賜りたいとお願いをしているわけでございます。しかし、先ほど大臣から御答弁を申し上げましたように、やはり団体として参加するということがなかなかむずかしい状況にございます。そうした場合に、歯学の協会なりあるいは医学の協会がそれぞれのグループとして参加をするということができるならば、それは事を進める上で非常にメリットの大きいことでございます。もちろん、医大協会に参加しているものの中には単科の大学と総合大学の学部か参加している場合とございます。これらをどのように取り扱っていくかということは、それぞれの協会とそれぞれの傘下の大学との間で御検討を賜ればいいことでございますし、またそれに応じて私どもは入試センターとも相談をしながら対応を考えていく、そういうことでございます。
  41. 水平豊彦

    水平委員 それならば現状のままでいいのか、あるいは現状のままというのは一つのプロセスであって、やはり一つのまとまり、というのは私立大学が全部参加することにあるというふうに御認識なさっていらっしゃるのですか。私立大学が全部参加してこそ初めて今回の共通第一次、第二次を設けたゆえんのものがあるというふうな御理解をなさっていらっしゃるのか。あるいはそうではなくて、私立大学は参加することが望ましいという程度で、国公立だけでやっていくというような現状でいいのか。それが私学参加への前提としてお取り組みになっていらっしゃるのかどうか、はっきりしないものですから……。
  42. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 入試の改善が国・公・私を通じて実現し初めて改善と言い得るというのが、基本的に私どもがとっている態度でございます。共通一次の問題につきましても、国・公・私を通じて共通入試が実現されるということが理想の姿であると私どもは考えております。ただ連盟、協会、懇話会、それぞれに対応のされ方が実際問題として違うわけでございますし、また各団体ごとにまとまってでなければ共通入試についての参加の話し合いができないということでは事態が前進をいたしませんので、先ほど大臣からも申し上げましたように、それぞれの団体と話し合いをしながら、個々の大学であっても、共通入試を利用したいというお考えをお持ちのものがあればそれを受け入れて共通入試を御活用いただく、そういうことを考えて現在お話し合いをしたり準備をしたりしているわけでございます。
  43. 水平豊彦

    水平委員 わからぬことはないのですけれども、やはり新しい施策を断行するということは、半分は期待かあるけれどもあとは不安と心配があるわけですよ。大学の八割は私立大学が背負っておるわけでありますから、私立大学なき大学というものは考えられないわけですから、そういう意味において、一体化するならば一体化するというふうに明確に打ち出していただく必要があると私は思うのです。  これに関連して私が思うことは何があるかといいますと、大学の入学時期を九月にしたらどうかというような話が出ておりますね。そういうような問題も、いま幾ら浪人が多いからというても、六カ月間合法的に浪人を認めるというようなことは余りにも消極的なというか、逃げの現状肯定主義だと私は言わざるを得ないわけでして、何も生徒は大学へ行く者ばかりではない、大学へ行くのは四〇%ですか、あとの六〇%は大学へ行かない高校卒の生徒がおるのですから、そういう生徒のみに焦点を合わせて大事な問題を安易に表にお出しになるということは慎んでいただかなければいかぬと思うのです。それから会計年度との問題もありましょうし、あるいは高等学校の卒業との問題もあるわけでありますし、また、ただいまも私が指摘いたしましたように入学試験に非常に不安感がある。その不安感が解消されない間にまた新しい不安感を出すということは私はよろしくないと思うが、この点について御見解を承っておきます。
  44. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学の九月入学、これは大学だけを九月入学にするのか、小・中・高等学校もいまの学期の状態を変えるのか。それぞれメリット、デメリット、いろいろな問題がたくさんあるわけでございまして、大学だけをそうするのか、またできるのか、小・中・高等学校もそうするのかということもあわせて、文部省の中にプロジェクトチームをつくりまして、そのメリット、デメリットを基本的に検討をしていこうということを考えたばかりと申しますか、そういうことでございまして、どういうメリットがあるか、どういうデメリットがあるか、そういうことを勉強してみなければ、実現していいかどうか、これは問題があるところでございます。大学の九月入学をまだ決定したわけではございません。九月入学の問題は少し時間をかけていろいろな角度から、先ほどおっしゃいました会計年度のこともございましょう、また経済界の側の受け入れの問題もありましょう、また国際交流の問題もありましょう、それぞれメリット、デメリット、いろいろあるわけでございますから、考えられるメリット、デメリットを全部一遍洗い出してみよう、そういう勉強、作業をやろうということでございますので、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  45. 水平豊彦

    水平委員 私はそういう理解の仕方をしておりますけれども、いま申し上げましたように、新しいものが完璧にルートの上に乗っていかないうちにまた新しいものが起きるということはよくないことなんですよ。要するに、あなた方の方では試行錯誤的でいいかもしれませんけれども、当事者、社会、いろいろ関係者がいるわけです。だからこういうような問題は慎重に配慮していただきたい、こういうふうに私強く望んでおくわけであります。  大臣が間もなく御退席でありますから、最後に大臣、国大協がこの共通第一次あるいは二次に対してどういう見解かということはもちろん御承知だろうと思います。第一次については一般学習の達成評価、第二次については学部学科の特性に対する適性と思考力の評価とする。この第一次と第二次の組み合わせということで国大協が意見の統一をしておられるわけであります。そこで、たとえば東大が、共通第一次に参加はするけれども、第二次は従来どおり論述式を改める意思はない。そして共通第一次を、いままで足切りに使っている一次試験の代用にするんだ。まさに共通第一次の骨抜きだと言われているというふうに考えられるわけでありますが、これは一体どういうことか。他の大学でも、受験者数の見込みを全くつかめない、場合によっては足切りに使うかもしれないということも言っているのです。さらにまた、東大教授の湊さんが、一次でかなり綿密な学力を調べることが可能である。これは当文教委員会の小委員会でも述べていらっしゃるわけでありますが、今度は東大の入学主幹の堀津さんが、一次ではまだ効果の未知の部分があるから二次は従来どおりの科目でやるんだと言って、同じ東大の中でも意見の食い違いがあるというような状況なんですね。しかも、国会でも昨年の四月二十一日に参議院は、足切り使用は避ける、二次の科目を減らして調査書を活用する、第二志望を生かす道を考えようというような附帯決議を出しておるわけでありますが、この附帯決議というものがことごとく無視されるような方向へ流れていくような気がして仕方がない。やがてまた国会でも論議を呼ぶことではあろうと思いますけれども、文部大臣のこれらに対する御見解を承っておきたいと思います。
  46. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学入学者の選抜の改善というのは、学歴偏重を是正をしていくとか、有名校偏重の社会的風潮の是正であるとか、大学間の格差を解消していくとか、いろいろな問題を総合的に進めていかなければならないことでございますけれども、入試のいまの現状を改善するということもまた欠くことのできないと申しますか、中心的な重要問題でございます。その趣旨は、毎年毎年試験問題をそれぞれの大学でお考えになって、だんだんだんだん試験問題がひねくれてきてしまった。高等学校で教えられる高等学校の授業内容を一〇〇%マスターしてみても、それだけでは大学の入試に及第点がとれないというような事態にまで行ってしまった。高等学校の授業内容だけでは足りないので、外へ出ていって塾その他で受験技術などということをマスターしなければ大学入試にたえられない。こういう事態を文部省もまた大学当局も反省の材料になさり、これではいかぬということからスタートされましたのが共通一次試験でございます。したがいまして、共通一次試験は高等学校の授業内容を十二分にマスターしていればそれだけで及第点が必ずとれるという試験を出すわけでございますから、二次試験なんかでその根本的な趣旨に逆らうような試験が行われることは、これはもう大変な間違いでございまして、そのことは大学当局も国大協の場で皆さん十分御承知のことでございますので、いまちょうどその準備を国大協で進めておられるところでございますから、いま一つの例にとられました東大の二次試験の科目数等、これは実施までにはまだ改善の余地があると私は思いますし、大学の学長みずからテレビでこれはまだ検討の要があるということをおっしゃっているくらいでございますから、私は、国会のあの附帯決議に反対の方向を向いて走っているとは実は思いません。やはりあの国会の附帯決議というものは各項目とも非常に重要な意義のあることでございますから、あの附帯決議のあります方向に向けて、国大協の場で二次試験のあり方等についてもなおまだ改善、検討が進められていくもの、文部省もそういう方向で国大協と十分な話し合いを持っていこう、こういう考えでおります。
  47. 水平豊彦

    水平委員 一般論をお述べになったわけでありますが、これからこの委員会におきましても私どもは具体的に詰めていきますから、それに対して大臣もそのように対処していただきたいということを申し上げておきます。どうぞお帰りください。  いま大臣が一般論をお述べになったにとどめてお帰りになったわけでありますけれども、先ほど私が申し上げましたように、参議院あるいは衆議院における附帯決議に対して決して反対する方向には行ってないというような大臣答弁があったわけであります。しかし、私がちょっと述べた事例だけでも、本当に反対の方向へ向かっていくような傾向がうかがわれて仕方ない。これは大変なことでありますから、今後本当に十分注意をして配慮して、対処してもらいたいと思うのです。  そこで、どういう現象が起きるかということを私は一つ申し上げておきます。それは何かといいますと、共通第一次は、難問、奇問というものに対する特別ないわゆる受験技術がなくても入学ができるようにという配慮の中で生まれたはずであります。それはわかるけれども、共通第一次はそういう共通第一次でありましても、大学入学者の得点によって大学の格差というものを露骨に表示することになると私は思うのですよ。だから、自分の受けたい大学にふさわしいだけの共通第一次の試験結果というものをとっておかないと受けられないでしょう、もしも足切りなんかに使われた場合に。極論かもしれませんが、たとえば東大ならば東大を受けるということになると、東大、京大クラスの者が上の方へ行く。浪人するならばいいけれども、じゃ私学へ行きましょうということになると、早稲田、慶応へ行かざるを得ないことになるという一つの現象が予測されますね。そうすると、東大、京大、早稲田、慶応という一つの全国区グループ、参議院の選挙区じゃないが全国区グループができる。その次には今度は東北大学、九州大学というような地方ブロックという単位ができる。その下に地方大学ができるのですよ。これを地方区というわけですが、そういうことになると、同一線上に三つの階層に分かれたかのごとき大学というものが形成される気配がしてならぬ。いま私が申し上げたように、格差というものはこういう形でますます拡大し、入学試験競争を一層激化させる心配がありはしないかということが考えられるわけでありますが、局長はどう思われるか、御答弁願います。
  48. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 入試センターを設置する国立学校設置法を御審議いただく際にも非常に御指摘のあった点でございます。あの際に国大協側の参考人も述べていたことでございますけれども、共通入試の実施というのは、むしろ一期、二期制の廃止と相まって大学間の格差というものを解消していきたい、そして全国的に特色のある大学がそれぞれ発展するような方向に資するような形で共通入試というものを進めていきたいというのが私たちの願いでございます。それぞれ大学に入った者の点数が明らかになることによって序列がつく、格差がつくということを御指摘になりましたけれども、そういった点を考えまして、それぞれの受験生に対しては第一次共通入試の得点は公表しないわけでございます。そのかわりに正解例を明らかにし、それから科目別の平均点なりあるいは最高点、最低点を明らかにする。あるいは、今度の試行の結果にかんがみまして、平均点、最高点、最低点だけではどうにも本人の自己診断がむずかしくなるかもしれないから、もう少しそこのところを手厚く、それぞれの段階別に得点分布というものを出すことができないかというようなことをいま検討しております。そういったことによって、それぞれの受験生が自分の適性、特性に合った大学を選んで進学をしてもらうということが実現する、そういうことを通じてそれぞれの大学がより特色を持った発展を遂げることができる、そういうことにこそこの共通入試は役立てていきたい、そう考えているわけでございます。
  49. 水平豊彦

    水平委員 足切りが全くなければいいですよ。ところが、自分のとった得点がわからぬ、また自分が受けようとする大学の大体の範囲というもの、いわゆる点数がどの程度かということの条件がわからないと、あの大学だったならば受けさせてもらうことができたかもしれぬけれども、この大学だったからこそ受けられなかったという現象が起きやしないですか。
  50. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 確かに二段階選抜については問題がございます。共通一次の趣旨というのは、共通一次の成績と各大学の行う二次試験の成績と高校における調査書の結果、そういったものを総合的に判断をして合格者を決めていきたいというところに一つの大きな意義がございます。そういった点から第二次の学力試験において非常に工夫をする。従来のやり方とは違って、きわめて綿密な面接なりあるいは小論文なりを課しながら試験をしていく。そのためにどうしても三倍程度まで足切りをしなければならないという、そういういわば積極的な意味を持ったものである場合は別として、一般的には、従来と同じようなペーパーテストをやるのであれば安易に足切りをやっては困るということでございます。その点はわれわれも指導しておりますし、国大協も同意見でございます。現在半分くらいの大学が足切りをやることを検討すると言っておりますけれども、この数は実際にはずっと減ってくるのではないかと考えております。
  51. 水平豊彦

    水平委員 時間もあれですが、委員長、もうちょっと御了解いただいて次へ進みます。  次に、義務教育の問題についてお尋ねしてまいります。  今日の教育の実態は、量的には拡大されたが質的な向上が伴っていないと言われるわけですね。特に義務教育というものは学校教育の体系の中の根幹をなすものでありますだけに、私は非常に重要なことだと思うのです。それを具体的に表現いたしますならば、一つは落ちこぼれ教育あるいはまた置き去り教育、この置き去りと落ちこぼれをどうして救うかという問題について一向に明快な具体的な方途が示されていない。余りにその落ちこぼれに焦点を合わせ過ぎますと悪平等だと言われる。そうすると今度は能力のある者はどうするかという問題が起きてくるのです。世界的なレベルでこれからの学問、研究というものを向上してもらわなければいかぬのですから、能力のある者の足を引っ張るということはよくない。こういう二つの現象が出てくる。したがって、どうしても平均的なところに焦点を合わせざるを得ないということになる。とするならばそれは画一的な教育ではないかということになってしまう。平均的な教育ということになる。ここのところが非常にむずかしいし、私はどえらい重要な問題だと思うのですね。だから、たとえて言えば、落ちこぼれだということで塾だとかあるいは補習授業で救っていいものか、あるいは能力のある者に対しては特別クラスを編制するということも考えられるかもしれませんけれども、ぱっとしないと思いますね。問題解決に当たらぬと私は思う。この基本的なことについて、重要な問題でありますから私はこれは大臣に承りたかったくらいでありますけれども、お答え願います。
  52. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 落ちこぼれと言われるものの実態でございますけれども、これにつきましては、たとえば国立教育研究所が数年前にやりました小・中・高等学校の生徒についての学力の到達度という調査がございますが、これなどを見ましても、本来ならば小学校の高学年でやるような書き取りであるとかあるいは四則の計算であるとか、こういうものが高等学校段階でも十分できない子供がいるというような実態、また現に高等学校の校長などの意識調査をしましても、自分の学校の生徒のうち相当部分が、小学校で、本来身につけるべき基礎、基本が十分ついてないというような意識を校長さん自身が持っておられるという調査もございます。そこで私は一つの問題として、やはり小学校段階における基礎、基本というものはしっかり身につけさせるということが非常に大事であろうと思うのでありまして、そういう意味で、昨年の小・中学校の学習指導要領の改定に当たりましては、特に国語、算数等の基礎についてはできるだけ内容を精選して、本当に基礎、基本になるものは確実に身につけられるように精選すると同時に、配当時間等についても工夫をする、こういうようなことをやったわけでございます。それが一つの方法だろうと思うわけであります。そういたしましても、本来子供の能力、適性というものはなかり多様化しておるわけでありますから、学力が上の段階に進むに従ってそこでおのずから差が出てくる。御指摘のように、非常にできない者あるいは非常に進度の速い者、どちらを中心にしても適切な授業ができないという問題がございますので、そこで一つは先生の指導能力といいますか、そういう点につきましてもやはりいろいろな面での研究、研修を積んでいただくことが必要と思うわけでありまして、そういう点の配慮もさらにしてまいらなければいけない。  それから、実際の教育方法なりそういうものにつきましては、能力別編制の問題であるとか補習の問題とかございますが、従来も言われておりますように、教育について、できる子供、できない子供を差別してはいかぬのじゃないかという御指摘でございます。私はその点につきましては、本来それぞれ能力が異なるわけでありますから、必要な子供には補習をするということもあり得るだろうし、あるいは学級編制についてもそういう配慮をするということもあっていいのじゃないかと思うわけでございます。ただ、教育活動でございますから、そういう際につきましても十分教育配慮をする。すなわち、非常にできない子供であっても、それがいろいろの勉強、努力の結果能力が伸びてくれば、従来の扱いを常に固定的にするのではなくて、弾力的な扱いをしていくという配慮はもちろん必要でございますが、そういう配慮をしながら、能力に応じてできるだけそれが伸ばせるような教育をしていただく、そういう配慮も必要であろう。そういうことをいろいろ総合的に考えながらいまの落ちこぼれの問題に対処してまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  53. 水平豊彦

    水平委員 ただいま答弁の中で新学習指導要領のことをおっしゃった。大体あれは二つの、人間性を豊かにするとか、充実した学校生活とかありますね。授業時間が約一割削減されている。その削減された結果自由時間が余っているはずでありますが、その自由時間を何に使うかということも明確でない。かつまた、教育内容の精選というお言葉をお使いになったけれども、確かに精選されたかもしれない。その精選されたということは、かえって学力低下につながりはしないかというような不安もあるわけです。だから、本当にこの学習指導要領というものはさらにこれだけの問題じゃなくて、最近の少年の非行というものが低年齢化してきたし、かつまた残虐な非行が行われてきている、こういった問題にもどうやって対処していくかということで大きな期待を寄せておったわけでありますけれども、本当にここらあたり、よほどの対処の仕方をしていかないといけないとぼくは思うのです。  それはどういうことかというと、結局は、小学校という段階になりますと私は一にも先生、二にも先生だと思うのです。先生お一人お一人の自覚なり努力なりが大事だと思う。そのために人確法等で一生懸命待遇のこともやってきたわけでありますけれども、そう考えてくると、そこで一つ、時間がないですからどんどん先に行きますが、小学校の教諭の免状は大体教育大学と国立大学の教育学部で取っておるとか、あるいは検定で取ることもありましょうが、私立大学ではほとんどやられないですね。そういう背景もありますが、どうも最近、中学校の教科免許を持っておる方が小学校へ行く。つまり中学に籍を置いて小学校に勤務するから、それを中籍小勤という。この中籍小勤の実態を明らかにしていただきたいと思う。感心したことではないと思うが、いかがな御見解ですか。簡単でいいです、明確に。
  54. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 御指摘のように、小学校の免許状というのは国立の教員養成大学とごく一部の限られた私立大学しかもらえません。そこで、教員の需給関係から言いますと、中学校、高等学校の先生志願者の方が非常に多いという実態がございます。そこでいま御指摘のように、一部の学校で中学校の免許状を持っている、小学校は助教諭免許状で勤めるというような実態もあるようでございます。その実態の実数につきましては、私どもいまちょっと手元にございませんので申し上げられませんが、そういう実態につきましては、できるだけ小学校の免許状を持っておる方を採用するようにということで、全体的な数字から見ますと必ずしも非常に不足しているという実態ではないですけれども、採用の地域なりその他の問題がございますので御指摘のような点もあるわけで、なおそういう養成、採用の問題について配慮をいたしますとともに、実際にそういう先生があります場合には、小学校の先生として必要な能力の伸長といいますか、そういう面での研修等につきましても配慮をしてまいりたい、こういうふうに思うわけであります。
  55. 水平豊彦

    水平委員 私が特に申し上げたいことは、少数ならば、いたし方のないこともありますけれども、いわゆる教員の定数が不足しておる場合には検定制度ということでちゃんと法律にも認められておるわけですね。それがそうじゃなくて、中学校から、中学ではちょっと採用するわけにはいかぬからということで小学校へどんどん回している。しかも、どういうような研修態度であるかというと、年齢からいっても相当特殊な、よほどの教育研修を受けなければならぬ、そういう小学校でありながら、こういう人々に対する研修はというと、夏休みのほんの数週間の間、玉川大学だとか国際基督教大学ですか、そこらに行って臨時的に訓練をしておる。これはまさに即席のインスタント教師ですね。だから、やれ人確法だ、教師の資質の向上だと言っても、こういう根本的なことが放置されておるということは断じて許されぬと私は思うのですよ。  しかも、これとの関連において、大学を出てくる皆さん方はとにかく資格さえ取っておけば何かの役に立つであろうというだけのことで、実際は就職する人も少ないし、そしてまたその人たちの実習形態ということになると、大学の卒業間際に二週間か三週間押しかけて、学校側ではえらい迷惑だと言っている。正常化というものが阻害されると言っている。それならば卒業間際でなくて、もっと手前で基礎実習というかっこうで充実させたらどうだという意見がある。しかも、実習の状態というものを大学当局か現実を現認するということができないわけですね。だから一定の期間を終えただけで、はい実習ということで免許認可をするということ自体まことにずさんである。こういうところからも資質の向上ではないということになるわけであります。  時間かないので一遍に言いますけれども、無免許運転と言われるような、無資格者が、中学の英語の教師が数学を教えてみたりあるいはまたほかの科目を教えるという事例がたくさんある。臨時免許証もたくさんある。本当の資質の向上というものを図っていかなければならぬ。短大卒で小学校に勤めておられる先生だけでも、四十八年の統計でありますが、二千七百人もおるわけですよ。この実態を明らかにして私の方にお示しをいただきたいと思います。またこの中籍小勤のあり方というもの、あるいは実習の実態というものにこれから気をつけていただきたいと思いますか、決意のほどを一言承っておきたいと思います。
  56. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 初任者、特に先生の初任者につきまして、現在の養成制度ですと、いま御指摘のように教育実習という面においてはきわめて不十分な実態がございますので、そういう点を含めまして、従来からも初任者研修というのをやっておりましたか、五十二年度から特に先輩の指導による授業研修というのを小・中学校の先生を中心に十日ほど実施いたしております。明年度はこれを幼稚園、高等学校の先生等にも拡充する予定にいたしておりますが、御指摘のように、確かに初任者につきまして、初任者だけではございませんけれども、特に初任者につきまして十分研修をするという必要かございますので、今後ともその拡充にあるいは整備に努力してまいりたいと思います。
  57. 水平豊彦

    水平委員 では、ただいま私が御指摘申し上げました中籍小勤を初めとする、少なくとも正常ではないという方の免許と現実に勤めていらっしゃる勤め先の一覧表を提出していただきますように求めておきます。委員長、お願いいたします。
  58. 菅波茂

    菅波委員長 よろしゅうございますか。
  59. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 はい。
  60. 水平豊彦

    水平委員 では次へ移ります。最後の問題でありますが、私は私学の振興についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  私学の振興というのは非常に大事でして、これは中学と高等学校と連係して起きておる問題でありますが、昭和五十年の九月に文部省から各都道府県あてに「公私立高等学校協議会の設置について」の通知をなされた。いわゆる公私協調体制をうたっておるわけでありますけれども、全国でこういう協議会というものを設置した都道府県がわずか二十だと言われている。せっかく通知をお出しになりましても、こうした状況では本当の公私の協調体制かとられていかないということでありますので、関係私学はみんな心配をしている。私がいまさら御指摘申し上げるまでもなく、公立と私学との連係プレーというのは、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の中にもきちっと言われておるわけでございますし、いよいよ第二次急増期を迎えておるということでもあります。昭和五十七年にはいわゆるひのえうま対策と言われるように、ひのえうまの年ごろの人は落ち込んでいるのですよ、それの前後でこの異常現象をどう受けとめていくかという問題もあるわけでありますから、そういう点、ひとつうまく進んでいくように配慮されたいと思うわけでありますけれども、この点について御答弁をお願いします。
  61. 三角哲生

    ○三角政府委員 いま御指摘になりました公立学校私立学校の間のいろいろな意味での調整の問題それから連係協力の問題、大変重要なことでございます。それで私どもも、教育委員会サイドの会議もございますが、それとあわせて知事部局の私学担当の部課長の会議もいたしておりまして、その都度そういう点については十分に配慮して遺憾のないように指導いたしております。特に急増の現象のありますようなところについては非常にこれは重要でございますので、御指摘のような協議会というものをしっかり設けておるわけでございますけれども、なおそういう点について不十分なところにつきましては、今後とも一層指導助言をしてまいりたいと思っております。
  62. 水平豊彦

    水平委員 それから、国の私立高等学校等経常費助成費補助金というのがありますね。これは都道府県における私学助成の道をどんどんやってくださいという一つの誘導策というか、奨励策ですね。そして、都道府県の実態にかんがみましてAランク、Bランク、Cランクとある。昨年の統計だと、Aランクは三十七都道府県なんですよ。恐らく本年は全部このAランクぐらいではないかと私は思うわけでありますから、この際補助金の交付要綱というものを改正されて、再検討されて、抜本的な私学に対する財政措置をおとりいただきたいと私は思うわけでありますが、この点、いかがですか。
  63. 三角哲生

    ○三角政府委員 私学に対します国からの高等学校以下に対します助成の措置も年次を加えまして、かなり充実を図ることができるようになってまいりまして、明年度は国としては四百四十億、それから交付税措置といたしまして千五百四十九億ということで、前年度に対して二六・三%の増額になっておりますが、こういった手当ての対応とも関連いたしまして、それから先生御指摘になりました各都道府県におきますいろいろの努力もかなり実を結んできておりますので、そういう状況を勘案いたしまして、関係省庁、大蔵並びに自治当局とも協議をして、明年度の補助要綱をどういうふうに改善してまいりますか、なお検討をさせていただきたいと存じます。
  64. 水平豊彦

    水平委員 いま申し上げましたように、私立高校生一人当たりで計算しますと経常費の四分の一だし、本年度の予算でも公立の五分の一ですよ、国庫補助分と地方交付税分を足しても。そういう現状であり、片一方では都道府県の学納金抑制措置というものが相当講ぜられている今日でありますから非常に私学は苦しい。だからそれにあわせて申し上げたわけでございます。  では、最後の最後になりましたが、私立大学の問題についてひとつお尋ねをいたします。  御承知のとおり、私立大学というものは全大学規模、学生数の約八割です。国立大学は二割。これはちゃんと統計を持っておりますからおわかりだと思いますが、これを予算との兼ね合わせでお話をすると、国立大学に対する国費の支出の総額は昭和五十三年度は一兆三千億。だから二割弱しか担当していない国立大学には一兆円ですね。八割近くを担当している私立大学には六千七百九十億。言うならば、二割の国立大学に八割が支出され、八割の私立は二割の補助しか受けられない、こういうことが言えるわけなんですよ。そういうことで、このことは何を言っておるかというと、教育の機会均等の実現を不可能にしているということと、不公平な政策が許されていいかどうかという疑問か起きてくるわけなんです。  そこで、高等教育への国費の支出状況をながめてみますと、いま申し上げましたように一兆九百八十三億が国立なんです。付属高校、付属中学等の経費を除きますと、国立大学は一兆円と考えていいわけです。そうすると学生一人当たり約二百五十二万五千円。前年度は二百二十万円だった。二百二十万円に対して三十二万円がふえたわけです。私立大学に対しては一千九百九十七億、一人当たり平均十一万三千円。昨年は九万三千円だった。昨年とことしでは二万円ふえたわけです。国立の方は三十二万円ふえたが私学の方は二万円しかふえていないということでありますから、今日まで国大と私立大学との格差は大きいと指摘されたことが、一年たっただけでもさらにその格差が広がったと指摘せざるを得ないわけです。三十二万円増と二万円増との穴埋めをしようとすると、三十万円つぎ込まなければならぬということは大変なことなんです。授業料値上げでやったら大変なことです。それはなかなかでき得ない。そういう状況で、いわゆる高等教育に対するところの政策の不公平だとか、いま申し上げました国立私立研究条件の格差というものは拡大するばかりだと私は思うわけでありますが、この現実を何と受けとめていらっしゃるか。
  65. 三角哲生

    ○三角政府委員 先生いま御指摘になりました数字はそのとおりであろうと思いますが、しかしまたいろいろな分析もございまして、国立大学には各種の研究所がございましたり、それから大きな医学部の付属病院を抱えているとか、そういったこともございます。しかし、やはり国立私立とを比べました場合に、教育の内容は別としまして、いろいろな人的あるいは物的な条件面にいわゆる格差と申しますか、私立の側においてなお改善を要する点が非常に多いということは御指摘のとおりであると存じます。こういったことにかんがみまして、御承知のとおり、私立学校振興助成法に基づきまして、まず経常経費の半分までを国としての努力目標として援助をしてまいろうということで、そちらの方からの手当てに努力をしてきたわけでございますが、私どもとしましては、大学あるいは高校以下につきまして、従来のそういった線で極力目標に近づくように今後とも努めてまいりたいと存じます。あわせて育英奨学事業面についても工夫をしていく。それから私学自身においても、私学はみずから運営し、自主的に経営をし、努力をするということが設立の基本でございますので、私学自身の努力にも期待をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  66. 水平豊彦

    水平委員 いま育英というお話がありましたけれども、後でじっくりと思ったのですが時間がありませんから……。  教職課程というのは大体国立大学に多いのですよ。教職課程に配せられる育英資金というものは、一定の業務につけば返さなくてもいい。だから国大の生徒というのは借りるんじゃなくてもらいたいという意思が強いですよ。だから育英を望む生徒数は国大に片寄っちゃって、経費のかかる私学にこそ育英の恩典というものを当てなければならぬけれども現実は反対なんだ。しかも、昭和四十年から育英の割り当てがたった一人しかないという大学があるのですよ。そういう事実というものを放置しておって、育英で手だてするなんという答弁は的を射てないんだ。この事実というものを明確にしてもらわぬといかぬ。育英奨学資金の貸与率というものは私立国立では三十対六なんです。こういう事実の改善を望みたいということが一つ。  それと、私立大学等の経常費補助金について一言申し上げると、昭和四十五年から三年ないし五年間で二分の一補助を達成するよう国会においても政府が全国民に約束したのですよ。本年、五十二年度は第八年次に当たるわけでございますけれども、千六百五億でありますから二七%にしか満たなかったんだ。五十三年度はどうかというと二九%、千九百七十五億ですから二%上がっただけです。しかも、経常費所要総額というものは六千七百九十億円。だから国立大学並みにしようとすると、国立大学の一兆円が二割の生徒に対してでありますから、単純な算術計算しただけでも、八割の私学の六千七百九十億円というものは、レベルを合わせるためには四兆円要るということになるわけなんです。だから補助金もさることながら、もともと私学はいわゆる母数が、絶対費用というものが少ないのです。こういうことを考えてまいりますと、この経常費補助金のあり方もやはり二%の増加にすぎないということだけで済まされていいかという問題も二番目に起きてくる。  三番目に、父兄の学費負担の格差というものがあるのです。これはどれだけの学費負担の格差があるかという実態をながめてまいりますと、私立は四十九万四千円で国立が十四万六千円、大体四対一か三対一なんですよ。これもますます広がってくるのです。だから、国立の方は三十二万円増額して一人当たり二百五十二万円としたし、授業料は九万六千円が十四万四千円に四万八千円のアップで一応充実した形がとられておるわけでありますけれども、私立大学に通う学生を持つ父兄は、二〇%にしか満たない国立大学の学生の教育費二百五十二万円の税負担をした上に、わずか十一万三千円の還元を受けるだけで、五十万円以上の自己負担によって自分の子弟の教育を行っている。しかもその割合は八〇%にも達しているというこの事実を指摘せざるを得ないし、無視して通るわけにはまいらぬと私は思うのです。学費負担の軽減というものは、教育に要する費用のうち父兄負担割合を減らすことであると私は思うのでありますけれども、そのためには学費以外、なかんずく国費補助の割合を増大させることが一番大事だと思うわけでございます。これらの点を三つ強調して申し上げましたが、最後に御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  67. 三角哲生

    ○三角政府委員 私立大学の全体の経費は先生御指摘になりましたような金額でございますが、一つには、国公立私立との間の学部学科の構成ぐあいの問題もあろうかと思います。必ずしも私立大学のすべてが非常に低い経費でばかり運営しておるということでもなかろうかと思いますが、しかし全体的に見ますれば確かに私立の方が経費的には充実をしておらないということは事実であろうかと存じます。そのことにもかんがみまして、今年度経常経費面につきましては、非常に厳しい財政状況の中ではございましたが、私立大学等経常費補助金といたしまして、前年度に比べて二三・一%増額の千九百七十五億円を計上して、少しでも経常費に対する助成の充実を早めようという努力をいたしたわけでございます。明年度の私学の経常費の総金額の推計は、まだ確実な金額は出すことができないわけでございますが、しかし、仮に推計した数字で計算をいたしました場合には、先生御指摘のように、前年度は補助金が経常費に対して約二六%弱でございましたが、明年度は二九・一%強になるということで、少しでも半額助成の方向に努力をいたしたい。それによりまして教育の充実を図ると同時に、父兄負担の軽減にも寄与してまいりたいという気持ちで努力をいたしたいと思っておるわけでございます。
  68. 水平豊彦

    水平委員 私、余りたくさん質問しまして、時間か大分たってしまってあわてて、一つ忘れてしまった問題があるのですよ。それは専修学校の問題ですけれども、これは政務次官でもいいが、お答えいただきたいと思います。  昔、各種学校制度における各種学校は「学校教育に類する教育を行う」ということで非常にあいまいだったのですよ。それが今度、専修学校目的は、不明瞭な点がもう積極的に改善されて、はっきりと「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図る」というふうにしゃんとしてきたわけですよ。だから私は、学歴社会の打破の先兵であり、能力社会を象徴するものとして社会からも歓迎されておると思う。ただ問題は、いわゆる現行の職業高校との関連をどうするか、さらには高等専門学校やら大学へ通ずる道を開いておいていただきたいと私は思うわけです。これは生涯教育への中核をなすものでもあるというふうにまず私は思うわけなんです。ところが、高校の方の職業学校、職業高校というものは、予備隊だとか二軍だとか、いろいろと言われておりますけれども、そこらの問題もあるわけなんですよ。その問題を忘れましたので、政務次官から、ただいまの私学の大学についての局長の答弁以外のことで答弁される点があったらあわせてお答え願っておきたいのです。
  69. 近藤鉄雄

    近藤(鉄)政府委員 いま水平委員から教育、文教政策全般について大変重要な諸点の御指摘がございましたし、また大変貴重な御意見がございました。非常に参考になったわけであります。  実は、例の落ちこぼれ、英才教育にもちょっと関連するわけですが、私思うのですが、私も実は三人の小学生の父親でございますから思うのですけれども、小学校、中学校ぐらいまでは、人間に能力の差もありますし、頭のいい人、悪い人、体も大きいの小さいの、声のいいの悪いの、いろいろあるわけですが、世の中というのは、そういういろいろなタイプの人間、できる人もできない人も、能力のある人もない人も、才能の違う者も一緒になって世の中に育っていくんだという基本的な人間としての考え方、これは私は教える必要があると思うのです。したがって、小・中学校段階で余りえり分けをして、おまえは優秀だ、おまえはだめだという形でえり分けをした教育をすべきではないので、できる者もできない生徒と一緒になって勉強もするし、場合によってはできない子をできる子が教えるというぐらいのことをまず義務教育で教えていかなければならない、こういうふうに考えるわけです。ただ、と言っても、中学校、高校、大学と上がっていきますと、それぞれ才能の違いも出てくるわけですし、またいろいろな意欲も違ってきますから、そういうものを一律に高校に持っていき、大学に持っていく、しかもいわゆる一般教育でいくということは私は穏当を欠くと思います。ですから、先ほど高校についても義務か準義務か、全入かどうかという御指摘がございましたけれども、私はむしろ、ある程度能力に応じて、また本人の意欲に応じて、それぞれの道にそろそろ分かれていいのじゃないか、かように考えております。ですから、全部高校に行かなければならないということは、必ずしも本人の将来を考えてないのじゃないかというふうに個人的に考えます。その段階で……(「大臣と違うな」と呼ぶ者あり)個人的に考えていますから。ですからその段階で……(発言する者あり)ちょっと先生、最後まで聞いてください。  そこで専修学校の問題それから職業高校の問題が出てくるわけでありますが、私は前に労働省の秘書官をした経験がございまして、この問題をよく考えてみたんですが、やはり職業高校じゃなくて専修学校の方が、実際の教育の内容を考えますといい面もあると思うのです。ただ、やはりいまの子供たちだって高校卒という資格がいろいろ本人にも望ましいということもございますので、その辺はいろいろ考えていかなければならないと思うのです。私はあえて申しますが、たとえば工業高校を出た人が東京工大でもいいし東大工学部でもいいですよ、商業高校を出た人がたとえば慶応経済学部でもいいし一橋でもいいですし、そういう職業高校で勉強したことの試験で大学教育まで行けるような道を開いてやる必要が絶対にあるので、さっきも共通一次試験の話がございましたけれども、どういう絡みかわかりませんが、私はやはり、いわゆる一般教養からずっと最高学府まで行く道だけじゃなしに、高校ぐらいからよしんば商業高校に変わったってもとへ戻れる道をもっともっと開く必要があるのであって、たとえば今度の大学入試なんかでもそういうことを一流大学でぜひやってもらいたい。これまた個人的な見解で恐縮でございますが、私自身も実は海軍兵学校から高等商船に入って、そしてまた一橋に戻った男でございますし、先年まで総理大臣をやった三木武夫さんは商業学校の卒業生ですからね。商業学校を出てちゃんと総理までなるわけですから、やはりそういう道が日本国に開かれていることは大変必要なんで、文部省としても十分に考えなければならないと思うわけであります。  小学校の先生について、私も繰り返し申しますように小学校の子供の父親ですから、できるだけいい先生に来ていただきたい。これは私の持論なんですが、教育は試作品をつくれないところですよ。テレビだとかステレオだとか机だとかいすとかは、少々間違ってつくったってどうってことはないですよ。だけれども、人間の一生は一回しかないのですから、たまたま悪い先生に習って試作品をつくられて、この先生が五年、十年たったらいまにりっぱなものをつくりますよでは間に合わぬ。ですから私は、学校の先生の養成について、また資質の向上について、何よりも大事だ、かように考えておりますので、ただいまも局長から話がございましたけれども、文部省として万全の措置を期してまいりたい、かように考えます。  私学の問題につきましては、いま水平委員の御指摘のとおりでございますので、文部省としても管理局長から話をいたしましたようにいろいろやっておりますが、私はまだまだ不十分だと思いますので、この点、いろいろな意味の格差の是正、負担の是正については努力をしてまいりたい。ただ一言申し上げたいのは、現在の私学の現状は、水平委員からいろいろパーセントの議論もございましたけれども、いわば戦後の急激な教育需要を国公立で完全にカバーできなかった、カバーできなかったものを不当に、不当というか、急激に私学に、しかも内容が必ずしも十分じゃなしに任せてしまった、こういうことだと思うのですね。ですからそういう意味で、私は、私学教育が本来の個性ある教育じゃなしに、いわば国公立をただ水増しした形になってしまう、負担だけが非常な格差がついた、こういう状況になっておることを大変憂慮しておる一人でございまして、そういう意味負担の格差の是正に私は努力いたしますが、同時に、私学は、高校、大学、さらに小学、中学、あるわけでありますが、私学本来の姿に返って、私学らしい個性ある教育を各それぞれの教育段階でしていただけるように、私学当事者にもいろいろ御配慮いただきたい、かように考えるわけであります。  いまいろいろ御指摘があった点につきましては、大臣がいなくて申しわけございませんが、帰って大臣に話しまして、できるだけ御希望に沿うようにいたしたい、かように考えております。
  70. 水平豊彦

    水平委員 終わります。
  71. 菅波茂

    菅波委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会