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1978-06-01 第84回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 美濃 政市君    理事 加藤 紘一君 理事 片岡 清一君    理事 平泉  渉君 理事 堀内 光雄君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君       愛知 和男君    鹿野 道彦君       島村 宣伸君    関谷 勝嗣君       中西 啓介君    中村  靖君       鈴木  強君    馬場猪太郎君       藤原ひろ子君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    田中誠一郎君         国税庁間税部酒         税課長     大橋  實君         国税庁間税部鑑         定企画官    川島  宏君         運輸大臣官房首         席審理官    和久田康雄君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部財         政課長     林  淳司君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部業         務課長     吉末 幹昌君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   西宮  弘君     馬場猪太郎君 同日  辞任         補欠選任   馬場猪太郎君     西宮  弘君     ————————————— 五月十一日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願(金子み  つ君紹介)(第四八四六号)  円高差益消費者還元に関する請願草野威君  紹介)(第四八四七号) 五月十二日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願宮地正  介君紹介)(第五四〇三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 美濃政市

    美濃委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平泉渉君。
  3. 平泉渉

    平泉委員 初めに、今通常国会会期もそろそろ終盤に近づいてまいりましたので、この際、せっかく宮澤長官も御出席でございますから、経済政策全般について主として長官にお伺いしていきたい。  それに当たりまして、これは委員長にもお願いをしたいし、本日御出席同僚委員の方にも——この際国会側として私ちょっと考えることがあるのですが、政府演説というのが従来あって、それがいつか四演説になったわけですね。私はいつだったかちょっと記憶しておりませんが、経済企画庁長官経済演説というものが政府が新たな国会会期を召集した場合の重要な演説一つになったのはわりあい最近だと思います。最近と言っても十年ぐらいだと思いますが、ところが、その経済演説というものに対する質疑をする適当な場が国会にないのじゃないか。大蔵大臣演説に対しては予算委員会及び大蔵委員会がある。外交演説に対しては外務委員会がある。それぞれ従来からあるのですが、この経済演説という非常に大事な問題についてどうも適当な質問の場がないのではないか。本委員会物価対策特別委員会ということになっておりますが、これは将来国会のあり方としても、経済政策というものが整合性を持って全般的に考えなければならないということで経済企画庁が置かれておるわけだし、経済演説ということも政府側国会に対する、つまり国民に対する意思の表明として非常に重要視されておるのに、どうもそれに対する国会側の対応がうまくいってないような気がするのです。きょうは現在の物価対策特別委員会、この委員会をそのまま拝借しまして、経済政策全般ということで、物価対策に限らずひとつお伺いをしてみたいと思うわけでございます。  そこで初めに長官経済企画庁というのは総理府の中に置かれておる役所である。その長は総理大臣である。総理府の長としての総理大臣である。そこに経済企画庁があって、同時に総理府の中には国土庁あるいは環境庁というような同じように経済全体に関係する役所がある。その辺のお互い関係、さらには政府部内で大蔵を初め通産、農林さまざまの経済官庁がある。そういう横の省との調整の御関係がかなりあるのではあるまいか。  また、言うまでもなく住宅問題一つを例にとりましても、年次経済報告の方では、住宅問題は非常に大きなスペースで取り上げられておるわけでございます。他方国民生活白書、これも同じ経済企画庁が取り上げておられる。国土の利用に関する年次報告国土庁で大変大きく取り上げておられる。建設省住宅局関係とする建設省報告にも出てくる。こういうふうに、たとえば住宅という現下わが国経済の大きな問題についてもこういういろいろな問題があるわけですが、経済企画庁の権能でその辺の調整はうまくいっておられるのかどうか、国民としてその辺は非常に期待をしておるとともにいささか心配もいたしております。ひとつ長官の御所見伺いたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経済企画庁というのは何をすべき役所かということは、私も幾たびか務めをいたしておりますのでいろいろに考えておるわけでございます。設置法には一定仕事内容が書いてあるわけでございますけれども、過去二十年ぐらいの間を見ておりますと、そのときそのときの国民あるいは国のニーズというものが少しずつ変化をいたしてまいっておりますので、したがって、経済企画庁役割りも、設置法に書いてある言葉そのものは無論変わっておりませんでも、おのずからどこに重点を置くかということがそのときそのときで変わってまいっておるように思います。  先ほど国土庁環境庁についてのお話がございました。この二つ役所は比較的最近つくられた役所でございますけれども、環境問題であるとか、国土についての総合開発にいたしましてもあるいは土地等の問題にいたしましても、新しい国民の意識の高まりがあって、その結果としてああいう役所が生まれてまいったのであろうと思っております。したがいまして、そうであります限り、そういう役所経済企画庁が特に緊密に連絡し合うことは、当面の国民のそのような要請にこたえるものである。その限りにおいてそうしなければならないということを私ども特に重要に考えなければならない役所であるというふうに考えております。
  5. 美濃政市

    美濃委員長 平泉君の委員長に対する御意見につきましては、理事会で検討してもらうようにしたいと思います。
  6. 平泉渉

    平泉委員 ぜひ国会の方としても、どうも国会の方が少し行政改革がおくれているというようなことにならないようにしなければいかぬと思うので、私も議員として大いに進めたいと思うわけであります。  いま長官からお答えがございましたけれども、私どもまさに経済演説政府演説としてあるというような状況、また経済政策というのが各省庁の縦割りの従来のような体制だけではいかない情勢だというところに経済企画庁の本当の意味があると思いますので、閣内においても、いま長官経済関係閣僚会議でしたか、そういう方面で特に全体の調整については意を用いておられると伺っておりますが、政府側としてお考えになる経済政策の大きな目的をいま一体どういうところに置いておられるのか。経済白書を見ますとなかなかむずかしい言葉が多いのです。たとえば今度の五十二年度を見ますと、第一部は分析である。第二部の政策的な部分が出てくると、「均衡回復への道」だ。均衡回復というのは近代経済学言葉かもしれませんが、国民全般から聞くとちょっとわかりにくい。具体的に考え経済政策の大きな目標を何に置いて調整考えられ、また指導を考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 当面の問題といたしましては、申し上げるまでもなくこの不況を脱出して国民生活安定感回復したいということでございますけれども、私は終始、経済政策あるいは経済というものは人間あってのものであると考えなければならないと思っております。したがいまして、現在わが国経済政策にとりまして一番大切な目標は、いかにして雇用状況を改善するかということであると思います。お互い政治に携わっておりまして、政治の大切な目標の中でも大切なものはやはり国民おのおの仕事を持って、そうして飢えることがないということであると思っておりますので、ただいまのように百数十万人の完全失業者があるという状態、これはどうしても解決しなければならない最大の課題であると考えております。ただいま不況克服を図っておりますのも、もとを正せば、かつてわが国は一度は完全雇用を達成した経験を持っておりますが、何とかして雇用状況を改善したい、これが最大目標であろうと私は思います。しかる後に、あるいはそれと並行してでも、国民の一人一人の生活水準と申しますか生活内容と申しますか、そういうものが日を追って向上するということを目標としていかなければならないというふうに考えておりまして、要するに経済政策というものは国民の一人一人の福祉に奉仕をするものであるべきだというふうに考えております。
  8. 平泉渉

    平泉委員 その辺のところが最近の日本政府一つの大きな特徴ではあるまいか。国民としても大いにその辺を推進していただきたい。長い間産業優先であるとか、産業優先でないとか、福祉がなおざりとか、いろいろ議論がありましたけれども、いま長官が言われたような、完全雇用を通じて国民生活の基本的な向上を図りたいということで大変意を強くしますが、その完全雇用に一番関係がある景気動向、これはきょうの日本経済新聞の第一面にも、どうも後半失速のおそれがあるというOECD側の観測がある。他面、長官はやはり三日ほど前の日本経済新聞の第一面で、今回は本格的であるということで、最近ちょっとコンフリクトしたニュースが伝えられておりますが、改めて長官から最近の景気動向及びその見通しについての御所見を承りたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十三年度の経済見通しを立てました際に、御承知のように七%程度成長政策遂行目標にいたしておるわけでありますが、その際、昭和五十二年度がどうなるかということにつきまして、これは昨年の十二月の初めでございますが、やはりこの見通しをしっかりしておきませんと、その上に立っての昭和五十三年度の見通しがぐらつくという状況でございましたので、五十二年度の経済成長見通しを五・三%と設定いたしたわけでございます。この点は一月−三月期、五十二年度の最後の四半期の成長が統計的にまだ明らかになっておりませんので、五・三%という目標がどのように達成できたかできなかったかということは、実は今日現在ではっきりしておりませんが、私の感じでは、恐らく五・三%という成長は達成できておるというふうに考えております。そういたしますと、七%成長の土台に使いました基盤はまずまず間違っていなかったということになろうかと思っております。  その後、一−三月以降四月、五月まで生産関連の指数はまずまず順調にまいっておりますし、消費関連は昨年の十、十一月ごろに非常に心配状況でございましたが、ことしの三月ぐらいになりましてやや回復をしてきたというふうに見られますので、全体として昭和五十三年に入りましてからの経済の今日までの動きは、私どもの予測していたところにほぼ沿っておるか、あるいは多少スピードが速いのかもしれないという印象を持っておるわけでございます。  今日までのところはまずさようなことでございまして、問題でありました在庫の有無、在庫調整の遅い早いということも、ほぼ春に一巡したということは大方の認めるところであろうと思いますので、その点もここまでの見通しはまず間違っていなかったというふうに考えております。  そこで問題は、昨年も最初のスタートはよかった、後半になってそれがいわばぽしゃったということではないかという批判と、もう一つは、経済全体をマクロで見ればそのような動きであるにしても、いわゆる構造不況業種といわれる幾つかのものの中にはなかなか簡単に対応できない、対策のとりにくいものがあるではないか、こういう部分が残るではないかという二つの問題の指摘がございます。これは両方とも予断を持たずに謙虚に検討してみなければならない問題だというふうに考えております。したがいまして、昭和五十三年度の公共事業を中心とする予算執行状況と、ここに至りますまでの間幾たび経済対策閣僚会議で決定いたしました対内、対外施策のその後の実施状況等々を、六月二十日前後の機会経済対策閣僚会議を開いて一度総点検をいたしてみたいと考えております。  と申しますのは、経済のこれからの見通しにつきましてその機会に従来の総点検をいたしますとともに、関係閣僚あるいは党の役員等と十分に、おのおの考え方を自由に議論いたしてみまして、大体このままでよろしいのか、あるいは何か追加対策を必要とするのか、特に結論を出そうとは思っておりませんけれども、やはり一遍その段階で自由な立場から検討してみることが前車の轍を踏まないゆえんであろう、こう思っておりますので、そういう機会を設けまして、ただいま平泉委員が一部に表明されておると言われました危惧については、十分慎重に検討いたしてみたいと考えておるわけでございます。
  10. 平泉渉

    平泉委員 私のところにはまだ五十二年度の経済報告しかないわけでありますが、五十三年度のは恐らくもう間もなくお出しになるのだろうと思うのです。そこで、その後の動きはわかりませんが、五十二年度の経済報告一つの大きな特徴は、私が今度もう一度読んでみましたところ、デフレギャップの問題を非常に取り上げておられるわけであります。そのデフレギャップ解消方法として、どうも貯蓄率の低下が必要だという議論がなされておるように私は受け取ったわけであります。これは非常に重大な問題ではないかと私は思うのであります。日本人は貯蓄が多過ぎるのだ。高度成長のときにはそれに見合う高度の民間投資が行われたのだから、それは非常に見合ってよかった。しかし、現在のように民間投資の盛り上がりがないときに相変わらず高貯蓄が続くということは、過少消費になって経済均衡を失わせるのだということを繰り返し白書は力説しておられる。  これは昨年の白書でありますけれども、現在はこれしかない。そういうふうに言っておられるのですが、この辺のところは、私は個人としてははなはだ疑義を持つわけであります。もしそういうことであるなら国民の側から見ても異様に思うことが出てくる。たとえば郵便貯金を非常に推進しておられる。政府郵便貯金を大いにふやして、今度は幾らにするのだということでやっておられる。一方、経済企画庁の方では、貯蓄が多過ぎるのははなはだぐあいが悪いのだというふうに解釈をされる面が多い。これから先の日本経済において、この国民貯蓄率の高さというものは困ったことだと理解すべきものなのか、それとも、自由な資本主義経済といいますか自由経済を基礎とする限り、国民がいつもみずからの手において財を蓄積して、それを何らかの形で投資していこうという姿勢をとることが基本的に重要なことであり、それは非常に歓迎すべきことなのか。この辺は最近西ドイツの貯蓄関係の団体の報告にも、どうもこのごろ余り貯蓄されるので消費が進まぬで困るという議論をされる者があるが、これは根本に反するのだという論争がありましたが、とうもこの議論は、経済白書でこれだけ保守党の政府がはっきり言っておられるということはいささか異様ではないかと私は思うのですが、私の方に誤解があるのか、とりあえず長官からひとつ御所見を承りたいと思うのです。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もし国民の自発的な貯蓄によるところの貯蓄率が高いということは残念なことである、批判さるべきことであるという意味でありましたら、私はそれには賛成いたしかねます。平泉委員の言われるような考え方に、どちらかと言えば私としては傾いて考えたいと存じます。  ただ、恐らく白書で言おうといたしましたことは、このようにわが国だけが先進工業国の中で貯蓄率が高いということは、そのよってきたるゆえんは何であるか、場合によっては国として施すべき施策のうち何がしかが諸外国に比べておくれている、あるいは不十分である結果としてそういうことが起こっているとすれば、その不十分な部分は別途改めていかなければならないであろうし、またもう一つ、現在の経済景気局面において非常に貯蓄率のみが高く、それが有効に利用されない結果デフレギャップが大きくなっているとすれば、その点はその貯蓄を有効に使う何かの方法が入り用ではないかといったようなそういう政策提起、そのいずれかあるいは両方であるとすれば別に異存はありませんけれども、自発的な貯蓄が多過ぎることは問題であるというふうなことでございますと、私自身はにわかにはそれに賛成いたしかねると思います。
  12. 平泉渉

    平泉委員 いまの長官のお言葉は大変はっきりしているのですが、白書の方ですと、私の見る限りでは三ヵ所にわたって力説しておられるわけであります。これはいわゆるケインズ経済学の理論的に非常に追い詰める一つの仕方としては、確かに貯蓄が多過ぎて投資がないのはぐあいが悪いじゃないかという議論はあるのでしょうが、国民の側から言えば、長い間貯蓄というものを推進してきた日本国、そのおかげで成長してきた。この際、国民のサイドから言うならば、民間設備投資がが十分伸びておらないということであるならば、政府がむしろ投資物件を用意すべきであるという議論が十分出てくるのではないかと私は思うのです。たとえば財政赤字という問題をめぐって、財政当局の方からは国債の増発ははなはだ好ましくないということのPRが盛んになされておりますけれども、他方国民の側から言うと、むしろ国債のような非常に安心できる投資物件があって、それが十分市場の金利の条件の中で有利に活用できる、有利に自分資金を利用できるということであるならば、これは好ましい貯蓄体系として歓迎されるのじゃあるまいか。政府側の都合で何となく自分が借金をしょっておるのは非常にいやだ、クリーンな国庫状況にしておきたいということだけお考えになるのは、国家というものの役割りを少し古典的に考え過ぎておられるのではあるまいか。むしろこれだけ大きなGNPに到達した。さっき長官もおっしゃった完全雇用ということを非常に重視して考えなければならぬ。膨大な貯蓄による資金の蓄積が一方で生じているということなら、これをぜひ政府は積極的に活用する方策として——いたずら増税増税というような安易な方法に頼られることはどうも当を得ないのではあるまいか。これは大きな問題で討論になるようでございますが、長官伺いたいのは、この際余り増税ということをお考えになると、国民は、増税ならもう一度貯蓄しなければならぬ、さらに生活水準を切り下げる必要があるというような反応を示しがちではないかと私は思うのです。その辺、経済御担当、専門の長官から、いま私が申し上げたような点につきまして御所見を承りたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債というものを平泉委員の言われますように一つ投資物件と見る、金融資産と見るということは、私は一つの見識であるというふうに存じます。したがって、国民貯蓄がその金融資産の取得に向けられるということは、それ自身としてきわめて普通のことであって、そのこと自身に問題があるとは考えないのであります。ただ、一つ二つそれについて申し上げられることがあるとすれば、そのような金融資産であればその価格というものはやはり自由に市場で形成されていることが必要である。すなわち、金融資産として持っておっても将来少しも心配がない、いっでも換金ができるというものでなければならないと考えますが、その点において現状は、必ずしも満足なものになっていないことは御承知のとおりでございます。  第二は、そのような金融資産、負債を発行する側の国として、そのような発行に何がしかの制約があるかどうかという問題、これが第二の問題であろうと思います。この点は財政がどの程度赤字で運営をしていいかという問題とともに、一国の経済がいわゆるパブリックセクタープライベートセクターにどのように分けられていることが望ましいかということにも関連をすると思います。  現在のようにあるいは五十三年度のように、とにかく公共投資が先導をしてなるべく早く経済不況を克服いたしたいというようなときには、パブリックセクターに非常に重みがかかりますし、また幸いにして貯蓄が非常に多いということでその国債の消化が比較的順調にまいる、ただいまの局面ではそれは好ましいことでございますが、もしそれが政府が期待しておりますようにやがて民間経済活動につながっていきますならば、ある時点において民間資金需要が当然出てくるはずであって、その際には、今度ば逆に定まった数量の貯蓄というものをパブリックセクタープライベートセクターが取り合う、いわゆるクラウディングアウトとでも申しますか、そういうことが今年度内でありませんでも、先々考えられるはずのことであります。そうなりますと、そのときになお、政府がどうしても大きな国債発行しなければならないというような財政状況でございますならば、それは民間経済動きを圧迫する要因になってくるであろう、こう考えます。  これは、おのおのわが国経済についての考え方、哲学にもよることでございますけれども、私は、一方でわが国のインフラストラクチュアがこの程度でございます限りは、やはり公共投資は相当のものを続けていかなければならないと考えておりますが、他方で、せっかく三十年、民間の自発的な力でいわゆる市場経済を育ててきたわが国として、そういう物の考え方、伝統は大事にしていくべきではないかというふうに考えております。したがいまして、一定貯蓄量資金量を国と民間とが争い合う、取り合うというような事態は、私はやはりできるだけ避けたい。国の立場としては避けて、そして市場経済の方で日本経済の主な部分を担っていってもらいたい。幾つかの関連した問題を取り出して申し上げますと、そのような関連の問題があるのではないかと考えます。
  14. 平泉渉

    平泉委員 いまの長官お話は、もちろん大変原則的なことをお述べになって、おっしゃるとおりでございますけれども、現下事態から見て、いまの国債発行額、これはもうこれ以上そう簡単にふやすことはできないという御判断でおっしゃっていらっしゃる面があるのか、現実のこのデフレギャップという問題の解消案として、白書はもう一年近く前かもしれませんが、非常に積極的に、むしろこの際貯蓄率を減少してもらいたいという解決か、あるいは民間投資を大いにやってもらうか、どっちかしかないのだということをはっきり書いているわけですね。そうすると、現時点においてもうかなり差し迫った問題が出てくると思うわけであります。一体これはこの際のこのデフレギャップ解消の、また雇用を確保するとおっしゃる、まさに根本目的から照らして、現在の経済情勢をどうごらんになっていらっしゃるか、特に御追加をいただければと思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの現実経済についての考え方ということになりますと、私どもはある程度消費の堅調と申しますか、消費者の消費についての信頼感が戻ってきて、そうして消費が順調に伸びていくということを期待をいたしております。またその点は、わが国経済の五十三年度の運営の一つの大きな部分でございます。幸いにして物価情勢も安定してまいりましたので、その期待ができるのではないかと思いますが、その限りにおきましては、平均消費性向がやはり少しずつ大きくなることを政府は期待しておるわけでございますので、その裏になります平均貯蓄性向は多少は下がることあり得べしということだと思いますが、しかしこれはパーセンテージでいたしますと、恐らく一ポイント内外ではないか。経験的に貯蓄性向、消費性向が非常に大きく短時日に変わるということはございません。しかし一ポイント動きましてもかなり、GNPの半分以上を占める消費でございますので、影響はございます。したがいまして、もう一遍繰り返して申しますと、一般的に貯蓄が大きいということは批判すべきことかと言えば、私は一般論としてそう考えません。ただ、現在のこの局面におきまして、多少ずつ健全な消費が伸びていくということは好ましいことである、このように申し上げられると思います。
  16. 平泉渉

    平泉委員 私、五十二年度の経済白書を精読して非常にびっくりしたのですが、この経済白書は大変重要な意味がありますので、ぜひ長官、この辺を、もう一度その部分だけもしお読みいただきまして、これはいささか行き過ぎな記述であると思われるのではないか、もしそうであるならば、近く発表される五十三年度経済白書においてあるいは御修正をいただけるのではあるまいか、いまの御発言からすればそういうふうに期待をいたします。  私ども保守党の人間としましては、やはり国民が自発的に貯蓄をし、自発的にそれを資産として蓄積するということが最も好ましい経済生活のあり方である。それを全部増税で取り上げるとか、あるいはほかの形で国家が投資を配分するんだというようなにおいが余り出てくる記述がありますと、一体これは保守党なのかほかの政権なのかということで、疑問に思われるような解釈が出てくると思うのであります。  さて、最後に、いま消費性向の向上をひとつ望みたいと長官が言われたことにつきまして、この白書の中にやはり現在の物価について、企業サイドと消費者サイドの間に微妙な意識の差があるんだという記述がございます。これはまさに事実で、非常に重要な問題を含んでおるのではないか。企業のサイドから言うならば、価格がまだ十分上がっていないので、現実に利益のマージンが少ない。したがって、減量経営をせざるを得ないし、雇用も、下手をすれば、できる限り縮めていきたいという現実のビヘービアを示しておる。他方消費者の方はどうも高いと思っておるわけであります。その辺のところを白書はとらえておられるわけですが、その辺を長官、これは非常に重大な、いまの現実経済生活の実態の非常にクルーシャルな面の一面をまさにとらえておるのではないかと思いますが、どうしたらそのギャップが解消できるのか、何かその辺にミーティング・オブ・マインズというようなものがあるべきではないかと思うのですが、政府としてはこの辺どういう施策をおとりになるお考えがあるのか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 白書がそういうことを申しておりますその時点は、多分昨年の春ごろからせいぜい夏ごろまでの時点についての叙述であると思います。この点は、実は景気がまだまだ下降しつつある局面でございます。したがって、企業側は、おっしゃいますようになるべく減量経営、そして固定費を何とかして減らしていこうということで非常に苦境に立っておる。したがいまして、製品がどうしてもコスト割れになっていく。企業の経常利益というものは、したがって、どんどん下がってくるというような状況でございますから、企業としてはもう少し価格が上がってほしいという気持ちを持っておるわけです。消費者の側は、これはまたこれで、経済が突っ込んでまいりますから、ますます財布のひもをかたくして消費に出ていかない。そういったような両方の心理の開きというものを叙述をいたしておると思いますが、その後、いろいろなことがございましたけれども、金利が下がる、あるいは固定費のもう一つでありますところの賃金等についても、あるいは雇用についても、企業側としてはさらに減量経営を続けていく。そこで固定費がかなり下がってきたということは事実であろうと思います。したがいまして、操業率はもちろんまだまだ十分には上がっておりませんけれども、少しずつコストの割り掛けがやはり一単位の生産については楽になってきておるように存じます。ただいままでのところ。消費者の方も、物価がその後——昨年の夏ごろまでといいますと、消費者物価でやはり九%近い上昇があったころでございますが、秋ごろから消費者物価が安定し始めまして、ただいまのところまで来ておりますので、消費者側も物価がかなり安定をしてきた、そして経済も最悪の事態を過ぎたというようなことから、ぽつぽつ消費意欲が回復してきているのではないか。両方のことから、昨年の春から夏にかけましての意識の開きというものは、少しずつ改善されてきて現在に及んでいるのではないか。  もちろん、物の売り買いでございますから、売る方はなるべく高く売りたいし、買う方はなるべく安く買いたい、このことはどうしても残りますけれども、企業収益等々から見ましても、かなり意識のギャップは縮まってきているのではないか。それはなぜかとおっしゃいますれば、それはそれ以後とられましたもろもろの経済政策の総合的な結果というふうに申し上げることが妥当ではないかと思います。
  18. 平泉渉

    平泉委員 経済の問題としては、最終的にまだ産業構造の問題を白書は触れておられますし、また、最近のまさに重要な問題である国際経済との摩擦の問題という非常に大きな問題があるわけでありますが、ちょっとここで国民生活白書の方に問題を移します。  国民生活白書の方を見ますと、これは私は最近非常に変わってきているという話も承ったのでありますけれども、国民生活白書の第一章第一ページに、私どもを非常に心配させる記述があったわけであります。それは「サラリーマンにきびしかった実質所得」というのでありまして、まさに国民世帯の六〇%を占めるサラリーマンに特に実質所得の伸びが少なかった。消費の面においても最も伸びが少なかった、あるいはむしろマイナスだったというような記述が去年はあるようであります。ことしの白書はまだ出ないわけですが、最近の現況ですね、もしサラリーマンという国民の六割を占める職種について、生活経済の実態というものを経済企画庁は、特にこれはフォローをしていただきたい。もし何らかの異常な事態がある場合には、これは政府として持てる政策をひとつ大いに活用して、これに対する歯どめを打っていただかなくてはならないのではないかと思うわけであります。最近の現況を特に承ります。
  19. 井川博

    ○井川政府委員 昨年の生活白書で分析をいたしました五十一年度の消費支出におきましては、いま先生お話しがございましたように、全国勤労者——これは御案内のように、消費支出の調査を全国勤労者と一般世帯に分けておるわけでございますが、その全国勤労者につきましては、消費支出が名目で八・四、実質でマイナス〇・九というかっこうになっております。その原因といたしましては、その全国勤労者の可処分所得が名目で八・三、実質でマイナス一・〇という実態になっておりまして、まさに書いておりますように、非常に厳しかったという状況でございます。  しかし、五十二年に入りまして、特に最近時点になりましてこれが逐次改善をいたしてまいっております。たとえば、これを七—九月期でとってみますと、可処分所得で実質で二・七%でございますし、消費支出で実質で二・五%。それから十—十二月では、多少下がっておりますけれども、一・二%という実質可処分所得の伸びでございますし、消費の方も一・二%実質でプラスになっております。  先ほど長官から申し上げましたように、今度、各月を見てみますと、たとえば一月、二月、可処分所得で三・五、四・六の伸び、実質の消費支出で三・五及び三・〇の伸びというようなことで、最近は、このサラリーマン世帯におきます所得、消費が五十一年に比べましてはプラスに転じ、しかも徐々にその率を大きくしていっている、こういう実態でございます。
  20. 平泉渉

    平泉委員 国民生活白書で、国民世帯の家計をいまのように勤労者世帯、農家世帯、残りの一般世帯、こう分けて絶えずフォローしておられる、私はこれは非常に大事なことじゃないかと思うのです。ことに、この中でサラリーマンというのは、どうもぐあいが悪いからといって何か始めようと思っても、時間の拘束があるわけでありまして、ほかの業種とはそこがまさに非常に違うので、新しい商売を始めることもできないし、サイドワークのインカムを図るということが非常に困難です。そこにもしこういう実質上の事態——いま非常に好転しているからいいわけですけれども、好転していなかったらこれはどうするのか。  この辺のことは、政府側としても特に機敏な処置をおとりになれる手段を持っておられると思うわけであります。たとえば税法上の問題なんかもこの際、こういう事態がもし——これは仮定の問題で、いまはいいということでございますけれども、特にそういうところについて、これは民間の労使関係の問題であるということとはまた別に、たとえば、それじゃその所得についての特別な税法上の処置をすぐ機敏に講ずる、撤回可能な処置を講ずるというようなのもあり得るのではあるまいか。長官のお考えをひとつ承りたい。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費の動向には一番私ども注意を払っておりますし、ことにその中で、やはり勤労者世帯の消費動向というものは大きゅうございます。ただいまのところ比較的順調であることはただいま局長から申し上げましたが、もし大きな変化が起こりますようなことがございますと、それに即応した処置は当然考えなければならないと考えております。ただいま幸いにしてそういうふうな傾向にはございませんけれども、しかし、総理がたびたび答えておられますように、臨機応変の処置は常に考えておかなければならないと思います。
  22. 平泉渉

    平泉委員 まあ生活というのは、実体は衣食住だ。それで私、この前もこの委員会で前長官の時代に食生活について質問をいたしました。その後この生活白書が出たわけでありますが、これは非常に重要な問題で、私は与党でありながらかなり大まかなことを申し上げますが、どうも私は、食生活について、政府側は従来から楽観的な説をとり過ぎておると思うのであります。これは恐らく、その裏には理由があって、農業政策との兼ね合いがありますから、食生活の問題をどうしてもロージーなピクチュアを描きたくなる。しかし問題は、農業政策の問題をカバーするために食生活の実態を操作するというような感じがもしあるとするならば、これはかえって農業の問題の本質の解決をゆがめることになりはしないか。  私は初めにこういうことを申し上げるのは非常に失礼でございますけれども、たとえばこの記述の中を見ましても、過剰摂取の防止が大事であるなんという発言がこの国民生活白書から出てくる。これは厚生省が言うことなんですね。経済サイドから過剰摂取はしない方がいいという議論が出てくるのは、私は非常に異様な感じがいたします。経済サイドの方から余り食う必要はないぞという議論、あるいは体表面積と比べて十分過ぎるほど食っておるではないかという議論が統計まで使ってあらわれてくる。これは社会主義国でも、そういう発言は非常な政治的な問題を起こしかねないのですね。食糧が十分過ぎるぞとかいう種類の発言というのは、いささかおかしいのではないか。平衡感覚から見て、いささか異様な感じがいたします。体が小さいから余り食う必要はないんだというお話があるなら、なぜ体が小さいのかということから議論が始まってしまう。現実に、戦後わが国の青少年の体位は逐年向上を見ておるわけでありまして、それはたん白質の摂取量とかなりの相間関係にあることも知っておるわけであります。そうすると、どうも余り食わなくてもいいんだというような議論があるのは少しおかしいし、それから、エンゲル係数が非常に下がっているとおっしゃいますが、エンゲル係数は日本とフランスはほとんど変わりない。ところが、日本とフランスの現実の食物のカロリー摂取量は相当大差がある。大差があってなおかつエンゲル係数が同じだということは何を意味するかということは明らかであります。  その辺、私は、もう少し食生活の実態について率直に現状をひとつ把握していただきたいし、記述の中に、非常に食べたいというものがたくさんあるわけですね。野菜、果物、肉、牛乳、乳製品、それらのものはいずれも非常に高いわけであります。その辺がまさに最も必要であるので、物がしかも高いということであるならば、エンゲル係数が低いと表面だけ言っていて満足できることかどうか。高いから食わなくて、したがってエンゲル係数が低いのかどうか。私の演説になっては失礼でありますから、政府側から、その辺についてまず第一回の御答弁をいただきたいと思います。
  23. 井川博

    ○井川政府委員 生活白書におきまして、「第二節食生活の実態とその改善」というようなことで分析をいたしたわけでございますが、これは実は平泉先生からのサゼスチョン等をいただきまして、五十二年度の白書の中に、それでは大切な食生活の問題について分析をしたいということでやったわけですが、必ずしも期間等十分でございませんでしたので、きわめて深い分析はできなかったわけでございますが、まあああいうぐあいの、特に生活面から見たいろいろな統計というようなものを挙げて、そういう意味からは、従来の考え方にこだわらずに分析をしたつもりであるわけでございます。  エンゲル係数につきましては、確かに先進諸国にはまだ若干足りないという面があるわけでございますけれども、白書の中でも述べておりますように、たとえば昭和三十年に五一%でございました。四十年に三七・七、大分下がってきたわけでございますが、現段階で三二・四、逐次下がってまいっております。まあ大体三〇%ということになりますと、イギリスの二七・六、ドイツの二八、大分近づいてきた、こういう感じから国際並みになったという表現をいたしているわけでございます。ただ、私たちこの食生活の分析をいたす場合に大変困りましたのは、やはりその国その国としての食物の嗜好がございます。したがって、同じタイプの食事をするわけではない。ほかのものと違いまして、食事に関しましてはそれぞれ個人の嗜好もございますし、民族としての嗜好もある。そこらあたりを全体的にどう考えるかという問題がございまして、要するに充実していると考えるかどうかという意識調査を挙げましたのが、先ほど先生挙げられました食生活が充実していると答えた者が全体の八七%で、ほかの生活分野に比べて一番満足度が高いものであったということでございまして、それを掲げておいたわけでございます。ただ、そういう食生活の中身がフランス人と比べてどうかということになりますと、フランスの方の食生活の中身とわれわれ日本人の中身、しか日本人がすべてそういうタイプの食事を望んでいるかどうかという問題がございまして、これは大変むずかしい問題ではないかと思うわけでございまして、われわれとしてもそこまでの分析には至っていないということでございます。
  24. 平泉渉

    平泉委員 食生活は経済生活の基礎なんですね。ですから、これが豊かでないという感じが出るようになれば、共産圏のような国ですら暴動が起こる。為政者が非常に注意すべき問題だと私は思うのですけれども、いまの局長の御答弁、私いささか異論がありますのは、いささか楽観的過ぎる。たとえば、私の選挙区なんかで婦人会の後援者が集まりますと、私は必ず同じ質問をするのであります。魚さえ安くて豊富ならば、肉は幾ら高くてもいいと思う人と、その逆の人に手を挙げてもらうことにいたしております。皆さん、御婦人方御自身の認識も、自分が一人かと思って手を挙げてみたら全部だったというのですけれども、何回やってみましても大体同じ結果が出るのですが、百人のうち九十五人は、肉さえ安ければ魚は幾らでもいいというのが、福井県で行われている私の結果ではいつもそうなる。そのことを私は当時の農林事務次官に電話で伝えましたところが、そんなことは信じがたいという御返事でございました。私は、この食生活の実態についてはよほど前進的に見ていかなければならない、急速に変わりつつあるということをわれわれは忘れてはいかぬ。それから、ことに食生活については子供を持っている母親の意見が最も正確であろうと思うわけでありまして、おやじというのはどこで何を食べているのかよくわからない。その辺をお考えになるということは、たとえばいまの日本の農政において、牛肉の価格がいまになって急に大騒ぎになってもなかなか早急に解決がつかない。もう十年前にわかっていたらずいぶん違ったであろうという問題がずいぶんあるわけですね。そうすると、政策の先進性がないために国民に相当長期にわたって御迷惑をかけることになるわけです。私が食生活のことを言うのは、おまえは趣味的なことを言っているということではなしに、まさに農業政策の根幹は食生活から来るわけです。食わないものをつくっても仕方がないわけでありますから。農業といえばまさに非常にシリアスなビジネスだが、食生活といえば、くだらないことではなくて、逆ではないかと思うのですね。その辺ぜひよりよく見ていただきたいと思います。  せっかく長官もいらっしゃるので、私は一つ例を引きたいのですが、日本では大体ライスカレーを政務次官会議で出すことにしておるようであります。もう大分前でありますけれども、私の時分はそうでございました。政務次官会議というのはライスカレーしか出てこない。その意味は、ライスカレーが好きな人が多いからではない。ライスカレーを昼飯に食べることが非常に大衆的だと理解されているところに問題がある。そんなものしか大衆が親近感を感じないようなわが国国民の昼飯なのか、これはやはり政治家として考えなければならぬ。これほどの所得がありながら昼飯にライスカレーが大衆的だというイメージ、政務次官会議はそういうものを食べているから彼らは大衆的な政治家じゃないか、それ以外のものを食べたらもうおかしいというイメージがもしあるならば、これは世界でも有数の貧弱な食事なんです。私ども恐らくはとんどの人は昼は必要ない、食べなくてもいいでしょう。五十歳以上の人は食べなくてもいいでしょうけれども、ただ国民の間にそういうイメージがあるとするのが問題なんです。何円亭主という言葉が出てくるのもそういうところから出てくる。一体サラリーマンは昼飯に何円使えるのか、それでどの程度のものが食えるのか、それを世界のほかの国と比較してどうなのかというところを私は見たい。  そうして見ると、その次に私は伺いたかったのですが、最近日本のGNPは兆ドルの単位に入ってきた。円高の問題も含まれておりますでしょうけれども、一人当たり名目でどのくらいの所得になるのかというと、大変大きな、何千ドルという数字が出てまいります。そういう所得の国と比較してみても生活の実感が全くわかないというのが偽らざる声であろうと思うのですが、その秘密はどこにあるのか。なぜドルでそれだけの所得がありながら現実の生活が悪いのかというと、いろいろな説明があるでしょうけれども、一つの大きな問題が食生活にあることは火を見るより明らかだと思うのです。それについて伺いたいと思います。
  25. 井川博

    ○井川政府委員 生活の実感という問題になりますとこれまた大変むずかしい問題でございます。  ただ、実は私たちこの五十二年の白書の後の方におきまして、いろいろ国民生活上の問題もあるけれども、国際的に一体どの程度になっているのかということ、これも大変むずかしゅうございます。指標のとり方その他にもいろいろございましてむずかしゅうございますけれども、一応大ざっぱな感じで分析をいたしたわけでございます。  そこにも掲げられておりますように、平均寿命というのも世界のトップレベルになってきた。耐久消費財の保有ということもアメリカと並んで家庭生活の向上に大いに役立っている。住宅は大変悪いのだけれども、最近の持ち家比率とか部屋の数といったようなものについてもほぼ追っかけていけるようになった。問題はあるけれども、たとえば教育の面で進学率等を見ると、これはまさにアメリカと並んで非常に大きくなっている。治安関係は世界で一番すぐれている。社会保障というのも、おくれていたけれども制度的にはやっと先進国並みになってきたという状況にあるという分析をいたしたわけでございます。  他面、住宅を質の面で見ると、大分欧米諸国とは違うのではないだろうか。それからさらに生活環境、たとえば公園、下水道といったような生活環境に比べると、これは歴史の違いもあって歴然としている、劣っているということがある。さらには、これは食生活にも関係があるわけでございますけれども、生活のやり方、自由時間というものがまだ少ない。したがって、ゆとりのある生活というしぶりにまだなれていないという面があることを分析いたしたわけでございます。所得がある程度になりながら、実感として欧米に比べればまだというのは、理由としてはそういうところにもあるのではないだろうかという感じを持っておるわけでございます。
  26. 平泉渉

    平泉委員 いまの点について長官、どうお考えになりますか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 伺っておりまして、確かにライスカレーというのは西欧の標準で申しますとはなはだ粗末な食事である、それは私もどうも否定できないことであると思いますが、他方で、それは節約の意味でみんながそういうものを食っておるのか、つまり、もう少し昼飯にたっぷり金がかけられるのであれば、サラリーマンはかなり違う異質のものを食うようになるのであるかどうかということが、もう一つ実は私に何ともはっきり判断ができない。それは、恐らくふところさえ豊かならば、五百円より千円のものを食べるということは、それに違いはございませんけれども、そのときに西欧のようなああいう食事を毎日、毎日果たしてやるものであるのかどうかということになりますと、まさに嗜好の問題にもなりますし、それから、余りむずかしいことはよくわかりませんが、それが健康とか生命とかいうものにどっちの影響を及ぼすのかということもこのごろはずいぶん考えておられる方もございますので、何ともいまのことにはっきりお答えできませんですけれども、少なくともやはり何となく日本人の食生活というものは、西欧の水準から比べれば十分でないという感じは否定はできませんし、それから、エンゲル係数も、どうも日本程度経済になったにしては高過ぎる。その二つのことは、やはり否定がしにくいのじゃないか、きちんとしたお答えができないわけでございますけれども、何となく平泉委員のおっしゃっていることから、私も似たような疑問を感じつつ、いまお話を伺っておったわけでございます。
  28. 平泉渉

    平泉委員 そろそろ時間になってしまって、非常に困っているのですが、まさに、食生活とか、それからいま局長も言われましたが、住生活のようなもの、こういったものがやはり非常に実感的に悪い。ことに住生活はだれも否定できない状態である。それから、食生活も、いまおっしゃったように、どうも西欧と比べると大分違うけれども、なおかつエンゲル係数は西欧の多くの国よりはかなり高いというのは、単価がよほど高いのでなければそういうことにならない。そういうふうな実態を考えますと、国際経済との摩擦の部分はかなり一方、そこで出てくるわけであります。その辺、たとえば農産物の問題などについて最近非常に大きな議論が闘わされておるわけでありますけれども、そういった問題について、これは現在政府部内でも意見がなかなか簡単には一致できないであろうと思いますけれども、何かわれわれは、やはり国民全体から見て、幾つかのピンポイントすべき問題、ここに大きく違っているんだというような問題に焦点を当てていただきまして、問題の焦点を逆にそらすとかいうことでなしに、これはちっとも恥ずべきことではないので、恐らくそのときの政府の責任でもない。これは自然条件もあるのでありましょう。いろいろな条件もあるわけでありますから、まさにここがクルーシャルな問題だということを白書あたりではぜひひとつはっきりと表明をしていただきたい。だからこそ大きな議論が国内に巻き起こってくる。閣内にもぜひ巻き起こっていただきたい。そうしてこそ、国会を含めたそういう議論の中から国民的なコンセンサスが生まれなければ、逃げ回っておると、どちらにとっても余りよくないという事態が生じかねないし、他方、外圧の方は本当に待ったなしにやってくる。たとえば、経済白書の中などには繰り返し、あくまでも自給資源を活用することが大切だということが、唐突に出てくるのです。自給が大事であるという議論は、経済議論の中でいきなり出てくるのは非常に唐突な感じがするので、一般的に貿易が非常に大事であるという白書をやってくる中で、自給だ、自給だという議論が出てきますと、これはほかの議論とディフィートしてしまうわけですね。もしそれが非常に大事であるならば、これは経済の問題とちょっと離れてくるわけです。ですから、これが経済白書の中でも、ほかは非常に近代経済学議論をやっておると、最後になるといきなり自給ということがぼこっと出てくる。どう見ても、どうしてこういうものがいきなり入ってきたのだろうという感じがいたします。むしろ、そういう問題を取り上げられるのであるならば、はっきりとそこを、ここは経済外のこういう要因があるということをピンポイントされる必要がある。これは、ぜひ私は要望したいし、そうやって問題をはっきりさせることによって、逆にそれをどう解決しようかという議論が出てくる。いつまでも問題が錯雑してくるような気がする。ちょっとその辺について最後に長官の御意見を承りたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変に痛いところを御指摘のわけであります。経済白書経済企画庁が中心になってつくりますけれども、これは各省で、一々各省なりのチェックをして意見を調整して、政府白書となりますことは、平泉委員も閣内におられましたので、よく御承知のところでございます。いまの突如として自給という話が出てくる、これは、よって来るところは御承知のとおりでございます。しかし、それならその点は経済外の要因としてそうならざるを得ないのだというふうに指摘をせよということでございますが、そうしますと、白書自分で、実はここに日本経済あるいは日本経済政策全体の問題が、矛盾して解決されないままございますということを言うことになるわけでございますので、答えを用意せずにそれだけのことを言うというのは、いまの官僚機構ではなかなか困難なことでありまして、もうその辺はよく御承知のような事情でございますが、できるだけその辺も読む者にとってごまかしのないようなものにだんだん直していきたいと思います。
  30. 平泉渉

    平泉委員 もうこれで最後でございますが、私は、経済政策というのは本当に大事なものだと思います。  実は私、最近、久しぶりにヨーロッパに参りまして、フランスとスイスの国境を通過しまして、これほどの所得水準の差というか、生活水準の差というものを痛感をいたしました。ヨーロッパをよく知っているつもりでございましたけれども、今度、オイルショック後のヨーロッパに私は非常な強印象を受けたのであります。フランスとスイスは本当に隣り合っておりながら、一歩入るとけんらんたる生活水準の差がある。スイスの方がはるかに高い。資源のなさ、自然条件の悪さ、あらゆる点でわが国をはるかに上回っておるスイスが、オイルショック後のこの困難な世界経済の中であれだけの、フランスと隔絶する生活水準をメインテインしておる。さらには発展させたということは、私は、一国の経済政策というものがどれほどの価値があるものであるかということを痛感をいたしました。宮澤長官は、わが党のまさに期待を担う本当のすぐれた政治家でいらっしゃいます。長官わが国経済政策の総元締めとして、ますます御活躍のほどを心から期待申し上げまして、質問を終わります。
  31. 美濃政市

  32. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 五月一日から酒税も上がりましたし、そして最近、にせウイスキーだとか、あるいはお酒が本当にお米でつくられているのじゃないというようないろいろな話が雑誌で出たり、新聞で取り上げられたりしております。そういう意味で、過去二回にわたって大蔵省の方にもお伺いしておりましたけれども、引き続いて酒税の内容についてお伺いをいたしたいと思います。  きょうは、主として消費者の立場として、われわれの愛用しておる酒が、やはりもっとわれわれの要望どおりのものになってほしいという願いを込めていろいろお伺いいたしたいと思うのですが、まず最初に、公正取引委員会、来ていらっしゃいますね。  五十一年三月三十一日までの間に排除命令をお出しになった、五十年十月九日に合同酒精の新みりんに対して排除命令をお出しになりました。その内容についてまずお伺いいたしたいと思いますが、この排除命令の三、四の項目について御説明をいただきたいと思います。
  33. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  御指摘の排除命令は、「昭和五十年(排)第一〇号」 「合同酒精株式会社に対する件」の「事実」第三項及び第四項に関するものかと思います。本件につきましては、合同酒精が短期に醸造したみりん類似のものを新みりんと称して、あたかも長期熟成させたものであるかのように表示して売っておった、それが不当な表示に当たるということで排除命令を出しております。
  34. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その三の中に「長期間糖化熟成させたみりんであるかのように」と書いてありますが、「長期間」というのはどの程度見ていらっしゃるわけですか。
  35. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 本件につきまして、私どもは関係業界団体あるいは学識経験者等の意見を聴取いたしまして、みりんにつきましては、長期醸造と申しますのは三十日から六十日間というものを言うのではないかというふうに考えております。
  36. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その後の四の「短期間に製造された」というのはどの程度のことを言うのですか。
  37. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 本件につきましては、一日ないし二日間で製造されたものというふうに私どもは理解しております。
  38. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 後ずっと引き続いて同じような内容で七、八件排除命令を新みりんに対して出されておるのですが、こういう場合はどうなるでしょうか。ウイスキーの場合です。原酒がゼロなんです。そしてニュートラルスピリッツという、この前の議論ではっきりしていただいたのですが、サトウキビから砂糖を取ったその残りのかす、いわゆる廃糖みつですね、これから取ったアルコール、これを大部分加える。あとはアルコールまたはしようちゅう等とウイスキーを一部まぜたもの、そして香味料や色素等、いわば一滴も原酒らしいものが入っていないようなものをウイスキーとして売った場合にはどういうことになるのでしょうか。
  39. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  私どもはまだ、直ちにいまウイスキーとはどういうものを言うかはっきりした考え方を持っているわけではございませんけれども、一応一つの基準となりますのは、酒税法に申しますウイスキーの定義と申しますか、ウイスキーにつきましての説明から見まして、いま直ちにそういうモルト類が入っていないものをウイスキーと言ってはいけないということで排除命令をかけるというのは、少なくとも現段階では若干無理じゃないかというふうに思っております。
  40. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 排除命令を出す出さないは別として、そういうものはウイスキーと本当は言えるでしょうか、言えないでしょうか。
  41. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 ウイスキーとはどういうもの射ということにつきまして、いろいろ議論があることを承知しておりますので、私どもは昭和五十一年八月三十日に日本洋酒酒造組合に対しまして、ウイスキーの定義をはっきりするように、その他原材料表示、製造年月日、熟成年数等について公正競争規約を設定するよう検討するように申し入れております。
  42. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま申し上げました例というのは実際にずっとありましたね。こんな場合は、税法にさえ書いてあったら、ウイスキーと言っても恥ずることはないわけですか。
  43. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 私どもの基準としましては結局一般社会の通念ということになるかと思います。
  44. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 全く原酒が入ってないようなものでも通念だったらウイスキーだと言っても差し支えないということですか。
  45. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 それが好ましいかどうかは別としまして、われわれはよく例に引くわけでございますけれども、鳥を全然使ってない焼き鳥というのが出回っておりますけれども、どうもこれは焼き鳥という名前はついておりますけれども、これは鳥でないということを皆さん十分承知されておるような場合は、焼き鳥ということで、鳥が使ってないものを直ちに不当表示とは言えないのではないかというふうに考えております。
  46. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 十分知っておる場合はそうですね。知らない場合はどうなります。
  47. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 それがどの程度一般消費者に誤認を与えるかということによるかと思います。
  48. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 では、ウイスキー飲んでいる方というのは大体みんなあれはアルコールだということを知りながら飲んでいるというふうな解釈をしていらっしゃるわけですか。
  49. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 まだ十分調べておりませんですし、たまたま個人的な感想を申し上げるしか仕方がないのですが、ある程度のアルコールが入っているということは私は少なくとも承知しておるつもりでございます。
  50. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 十分承知しておらないと言われるけれども、もう十年くらい前からいろいろな角度で投書が行ったりあるいは抗議書が行ったりして、これはインチキウイスキーじゃないかというようなことはたびたび公正取引委員会にお尋ねもあると思うのですよね。そしてまた四十二、三年の議事録を見ましても、ウイスキー論の議論をしておられるのです。いまの部長はどういうふうに思っていらっしゃるかということを言っているのです。
  51. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 少なくとも私どもが日ごろ接しますウイスキーには、何%か正確には存じませんけれども、ある程度のモルトは入っておるというふうに私どもは考えております。ただ、輸入その他いろいろなウイスキーの中には全くないものもあるかもわかりませんけれども、私どもが日常接するウイスキーの中には少なくともある程度のものが入っておるというふうに私どもは理解しております。
  52. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま仮にこういう場合はと申し上げたのですが、実は三十七年の四月一日から四十三年の四月三十日までの間は税法上でそういうふうに許されておるわけですから、現実にありましたね。いろいろな名前がありますけれども、いま名前挙げません。二級はほとんど大部分そうじゃないでしょうか。そして入っておったとしてもせいぜい一〇%ぐらいで、あとは九〇%がいわゆる廃糖みつといわれるものが中心だったようですね。そして特級も二〇%は原酒が入っておるけれども、あと八〇%はニュートラルスピリッツという名前の廃糖みつだったということもこの間も間税部長からお教えいただいたわけですね。そうしたらその前の二十八年のちょっと前見たらちゃんと税法の中には必ず原酒を三〇%入れなさいということを書いてありますね。そして少なくともその原酒は三年以上醸成したものでなければいけないとかというのですが、二十八年の改正でこれ全部なくなっておりますね。その当時は公正取引委員会が活動の場所がなかったと思いますけれども、まだウイスキーや洋酒という項目なしに雑酒の中で扱われていた時分でも原酒は三〇%以上入れなさい、そして三年以上という項目があったのにわざわざ取り除かれて、ついこの十年前までそういう状態がずっと続いていった、これはどういうことなんでしょうかね。
  53. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 なぜそういうふうになったのか私はつまびらかにいたしませんけれども、その前の三〇%という基準がいつごろできたのかもよくわかりませんけれども、戦後のしばらくの間いろいろな食糧、原料事情等から清酒等にもいろいろなものがまじってきたというような時代があったのではないかというふうに私は考えております。その後非常に食糧事情等も好転しましたし、私どもの所得水準も上がってきましたので、もしそれが品質の基準として使われるのでしたら、なるべく早く上げた方がいいかと思います。
  54. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 確かにこの間の審議官のお答えでは、戦後の非常に乏しいときですから結局需要に対して供給の方がどうしても追いつかないということで、原酒不足が原因で恐らくその三〇%を削ったのだろう、あるいはまた三年を削ったのだろうというような推測のお答えだったのです。確かに二十七、八年当時はそういう食糧事情であったということもわかります。だから、それでは物がある程度豊かになってきたらやはりもとに戻るべきだと思うのですが、それが四十三年の四月末まではずっと同じような状態を続けてきたわけですね。だから、消費者の立場からすればウイスキーだという名前のアルコールを飲まされていることに対して抗議が出るのはあたりまえだと思うのですが、大蔵省の方としては酒税は税金を取ることが目的なのだから、内容については公正取引委員会が御指導いただいて、業界と相談をして中身をよくするかどうかということは自主的に図っていただくべきだ、それは私の方のあずかり知らぬことだ、税金さえ取ればいいのだというつれない大蔵大臣の御返事なんですよ。そうすると、消費者の立場としてはせめて中身をよくするような何らかの処置を講じていただきたいというお願いが公正取引委員会の方に来るのは当然だと思うのです。これはもう十年になりますが、それに対しては余り積極的に取り上げていただいておりませんが、その後どうなっておるのでしょうか。
  55. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 私どもは現在の状況が決して満足すべきものとは思っておりません。ただ私どもの役所の性質かと思いますけれども、何%から入れるべきだということを私どもが判断する力は持っておりませんので、そのためには私どもがつくっております制度は、公正競争規約という形で大多数の業者の皆さんが納得する線であって、また大多数の消費者及び学識経験者が納得する線で、そこから上がウイスキーでそこから下はウイスキーと言ってはいけないという線を引くのはきわめてむずかしいことでございますけれども、ひとつ約束事として一つの線をなるべく早く引いていただきたいということで、これは何回かいろいろお話ししておりましたのですがなかなか進みませんので、五十一年八月三十日にはっきりこの点とこの点とこの点とを検討していただきたい、そして至急公正競争規約をつくっていただきたいというふうに申し入れております。その後も、非公式でございますけれども何回かいろいろ業界に申し入れなり督促をいたしております。
  56. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いろいろ申し入れをしていただいていることは承知いたしておりますけれども、余り期待されるような進み方をしておりませんね。  それでは、前のことばかり申し上げましたから、いま現在のこともひとつ例として御感想を伺いたいのです。五月一日から混和率も上がりました。しかしまだ実際にはそれが市場に出ておることは考えられませんから、五月一日以前の基準だといえばいまの二級酒というのは原酒が七から一三ですね。ただし、法律には七と書いてないですね。ゼロから一三ですね。それを通達という形で、通達というのは何かお聞きするところによりますと業界がお話し合いになって、業界の合意に達したものを大蔵省がそれでよかろうということで認証なさって通達として出される、いわば自主的にお決めになるということで七%から一三%になっておる。最低でいけば七%の原酒率。もっとも原酒といいましてもいろいろ違うと思うのでありますが、モルトとグレーンウイスキー含めて七から一三%ということでしょうから、そうすると、大衆が喜んで消費しておる二級というのは、依然としていまでも一番最大限をとりましても八七%がアルコールだ。粗留アルコールが悪いとかいいとかは議論しておりませんよ、アルコールだということなんですが、それがやはりウイスキーでまかり通っているのですね。これはどうでしょう、どういうふうにお考えになりますか。
  57. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 私どもの公正取引委員会としてどういうふうに考えるかということになりますと非常にむずかしいのでございますが、個人的に申しますと、これほど豊かになったのですからもう少しモルトをふやしてもいいのじゃないかというふうに考えております。
  58. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 世の中が非常に窮屈な時代で原料も少ないからやむを得ずに酒税法上削った。ところが現在でもこれがまかり通っているのですね。だから世の中が戻ってある程度資源も回ってくるようになれば、輸入も自由なんです。特に麦芽なんというのはほとんど輸入しているのでしょう。外国から農産物を買え買えとやかましく長官も責められていらっしゃるわけですから、どんどんお買いになる時期なんですよ。それでもなおかつこれでずっと抑えているのです。酒税法上。そうするとだまされて、にせウイスキーとは言えません、ちょっとでも入っているのだから。でも本当はウイスキーと言えるでしょうか。一般常識としてはウイスキーというのはどういう受け取り方をされているでしょうか。
  59. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 非常にむずかしいのですけれども、たとえば私どもは正直に申しまして二級ウイスキーが中心の主力商品であるところにはもう少し入っているのじゃないのかなというふうに思っておりましたので、それで意外に低いのだなというお話をしまして、それに対して業界から聞きましたところでは、アメリカではたとえば五%以下はイミテーションウイスキーだ、それほど国際的に見て極端に低くないというお話も伺っております。もちろん私どもは正式に検討しているわけではございませんので、正式に検討する場合にはいわゆる消費者等入れた会議を開きあるいは公聴会を開いた上で判断いたしたいと思っております。
  60. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 一般の常識としてはウイスキーというのは大体スコッチ風という受け取り方でしょう。イギリスでは大体どういう決め方をしておりますか、あるいはアメリカの例でも御存じですか。
  61. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  余りはっきりしておりませんけれども、何かイギリスでは三年以上熟成と書いてあるというふうに聞いております。それからウイスキーをスコッチと考えるかどうかは、むしろ私どもはスコッチでなければウイスキーではないとは必ずしも考えておりません。
  62. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 スコッチでなければいけないとか、そういうことではなしに、大体ウイスキーが入ってきたもとというのはイギリスでしょう、スコッチ風ということで入ってきていますね。そうするとスコッチから受ける印象というのは、最低十年以上でなければもうはっきりスコットランドのウイスキーだということは表示させないとか、少なくとも三年以上五年たっていなければいけないとか、いろいろな自主規制なんかも含めてありますよね。だからアメリカのクルードラム自体、結局アルコールですよね、これでも三年以上たっていなければ使ってはいけないとアメリカでも決めているようですね。ところが日本の酒税法は、もとあったものまで全然なくしたものですから、極端な言い方をすればきょう醸造して一週間先で使ってもこれは別に違反でも何でもないということになるのですね。ですからわれわれはどんなウイスキーを飲まされているのか知る権利がある。せめて何%原酒が入っているのか、その原酒はどんなものか知る権利があるということで、そういうことをどこかに表示してもらえないかという願いがたびたび出ているのですが、それがちっとも進まない、これはどういうことなんでしょうか。
  63. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 業界からの回答をまだ正式にいただいているわけではございませんけれども、ウイスキーの定義をめぐっていろいろ業界内部に意見の対立がある、さらに輸入品をどう扱うかということについてもいろいろ問題があるというふうに伺っております。
  64. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 業界といいましても上位十社を入れますと九九・七%ですか、十社がそろえばこのくらいのことはすぐできることなんです。それが二年も三年も放置されているというのはどういうことなんでしょうね。そういう努力をしておられないのか、する気がないのか。せっかく文書を出していただいて、できるだけ自主規制をはっきりして、業界自身のためでもあるわけですから、いい酒だという世界的評価を得るためにも。本当を言えば消費者がそんなことを言わなくても、これから国際時代ですから、外に対して日本のウイスキーはりっぱなものだと言うためにもそれをやらなければいけないわけでしょう。文書を出しっ放しで、あと業界はちっとも反応がないということで置いておかれたら、消費者の立場としてはどこを頼りに行ったらいいのでしょうか。
  65. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 公正競争規約という制度は、これはもともとやや似たような制度をアメリカから取り入れたものでございますけれども、こういうふうな表示の問題とか景品の問題、これはお互いにやめたいと思っているけれどもほかがやる以上は自分だけやめるのは損だ、しかしながら皆さんがやめようと言うなら一斉にやめようということで、相互に抑制がきくということで不当表示等の問題、これは個別の違反行為といいますよりは、どう申しますか、業界全体のレベルの問題でございますので、なるべく業界がまとまって、話がつかなくても大多数の人がまとまってやっていただくというのが非常に望ましいと思っております。したがいまして、私どもとしましては相当いろいろな方面から御批判をいただいておりますので、早くするようにということは再三申し入れているわけでございますが、率直に申しまして最近までは業界の検討が進んでいなかったように思っております。しかしながら最近は、こう申し上げると失礼かと思いますけれども、国会等でいろいろ取り上げられ、あるいは品質のいい輸入品がどんどん入ってきているという情勢からやや真剣に検討しているというように聞いております。
  66. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 業界の自主的な質の向上の方が余り進まないものですから、こういう酒税の値上げになって消費者の負担が増す機会に、大蔵省という立場でもせめて何とか消費者の要望にこたえるために、あくまで税金を取るだけの角度でなしに、消費者の立場考えていただけませんかということで大蔵大臣にお伺いしたら、私の方はあくまで税金を取る立場だ、それは公正取引委員会仕事だからそっちの方でやってくれ、二遍言ったけれども二遍ともそういうお返事なんですね。長官消費者を守る立場にある経済企画庁としては、こういうふうなときにはどうすればいいのでしょう。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、大蔵大臣は免許を与えておられる立場だと思いますので、税金さえ取れればいいというようなお話で済んでいいわけではなかろうと思います。まさかそのとおりおっしゃったのではなかろうと私は思いますけれども、免許行政でございますからいまのようなことについてもやはり関心を持っていただかないといけないと思います。  私、詳しい内情をいままで存じておりませんけれども、お尋ねの趣旨はいろいろごもっとものように考えますので、私どもの役所としても関心を持たなければなりませんし、免許を付与する立場の官庁としてその品質について無関心でいいというわけにはまいらぬと私は思います。
  68. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ところが、業界の自主的なことに任せておきますと、なかなかうまくいかないようです。たとえば特級の場合も今度二七%にお決めになりました。当初の原案では三〇%くらいになるのだろうと言われておりました。私どもも個個に電話したり何かして聞きますと、各社とも全部三〇%の方がよろしい、少なくとも一流級は全部三〇%以上と言っているのです。ところが大蔵省にお聞きしますと、中小企業の保護のために二七%に抑えた、こういうふうに言われるのです。個々にお聞きするのと大蔵省でお聞きするのと違うのです。特級が三〇になれば二級も一七でなしに二〇に上げるというふうに、何年かの改正ごとに、国内の醸造が進むごとに少しずつ質をよくしていく、こうなってほしいと思うのですがそうならない。業者にお任せになると自然に低い方低い方へとついていっているのが実情なんです。ここで各官庁の中でやはり企画庁に音頭を取ってもらって——諸物価の問題について、経済企画庁にいろいろ調整役割りを果たしていただいているのです。いままで酒税問題については、経済企画庁としてはそういうことはございませんでしたか。
  69. 井川博

    ○井川政府委員 ウイスキーにつきましては、実は私たちも余り勉強をいたしておりません。ただ表示の問題につきまして、消費者の方から最低限必要な表示はもっとやってもらいたいなという声は聞いておりますし、特に生協あたりが表示をはっきりしたウイスキーを出してきているというようなことがそのきっかけになっているようでございます。  ただ、それをどういうやり方でやるかということになりますと、関係官庁でございます大蔵省、それから景表法を持っております公正取引委員会、やり方はいろいろあると思います。一番実施しやすいかっこうでやっていただくのが一番いいのではないだろうか。  私たちが承知しておりますのは、現段階では大蔵省としても何かの表示が必要だけれども、公正取引委員会の方で検討していただいてやる公正競争規約方式というようなものがいいのではないだろうか、で、公取の方は公取の方として御検討を進めていただいているというふうに聞いておるわけでございます。そこらの点につきましても、一つは、先ほどからの御議論をお伺いしておりましても、ウイスキーは嗜好品でありますだけにほかの商品とはちょっと違った面はあると思うのでございますけれども、最低限必要な表示について、業界の方の意向を大蔵省も早目にバックアップしていただいてまとめるし、公正取引委員会もそちらへ進めていただくということで進むのが一番いい方法ではないだろうかという感じがしております。なお十分両省の話を伺っていきたいと思います。
  70. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いままでそういうことは全然なかったのですか。大蔵省と話をするとか、あるいはまた直接消費者保護の行政を預かっていらっしゃる経済企画庁の方にそういう申し出があったりして、大蔵省と協議してくれということは一切なかったのですか。
  71. 井川博

    ○井川政府委員 私の承知している限りでは、むしろ生協のウイスキーがこういうことをやるといいんだ、そういう話を伺ったのでございますが、大蔵省の方、公取の方に言うというお話は、実際のところ残念ながら私の耳には入っておりません。
  72. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いまのところは結局、消費者の立場で物を言っていこうと思ったら経済企画庁しかないわけですね。ほかにどこか行くところがあったら教えていただきたいのです。あらゆるところにこの実情を知っていただいて消費者の声が反映できるようなものをつくっていきたいと思うのです。  それで、ちょうど大蔵省も来ておいでになりますので、二級酒というのはどんなものか、それから一級酒はいまどの程度になっているかということを、ひとついま現在の認識を新たにするという意味で教えていただきたいと思います。
  73. 大橋實

    ○大橋説明員 お答えいたします。  現在の二級のウィスキーでございますけれども、これにはいわゆるウイスキー原酒と言われているものは、混和率が一七%未満から七%以上、この七%というのは通達で下限値が決まっておるわけでございますが、それだけのウイスキーが入っておりまして、これはいわゆるモルトウイスキー、グレーンウィスキーでございます。そのほかのものといたしましてはグレーンアルコールそれからまたいわゆる普通のニュートラルアルコール、いわゆる粗留アルコールなり糖みつ等からつくりましたアルコール、そういったところが内容でございます。
  74. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 こういう低成長の時代ですから、いままでは特級というような高級志向型だったのですが、今後は一級、二級というものをある程度大衆のニードに合わせていかなければいかぬと思うのです。そうすると、一級や二級ももう少し質を向上しなければいけないのですが、いまおっしゃったように、まだまだモルトの率が低いということですが、その言われた、その低いうちでも七から一七、実際はいまのところまだ一三までしか出ておりませんですよね。その一三まで出ておるいま言われたグレーンウィスキーと、グレーンアルコールとグレーンスピリッツ、これは皆さんなかなかわからないのです。どの点にどれぐらいの違いがあるのですか。
  75. 川島宏

    ○川島説明員 大変技術的なお話でございますので、私から答弁させていただきます。  グレーンウイスキー原酒と称しておりますものは、いわゆる穀類とモルト、麦芽でございますが、これを原料にいたしまして糖化発酵させましたものを、普通の場合でございますと連続式の蒸留機、パテントスチルでございますとかあるいはカフェスチルといったもので蒸留いたしておるのが普通ではなかろうかと思うわけでございます。モルトウィスキー原酒というのがございますが、それとグレーンウィスキーと比較しておりますのは、片一方のモルトウイスキーの方はすべてモルトということでございまして、発酵いたしていきます場合に、いろいろ香気成分と申しますか、ここら辺がモルトの多いものはやはりいろいろ多く出てまいります。また、蒸留の方法におきましても、モルトウイスキーの方はポットスチルというようなことでまいりますので、いろいろ香気成分が非常にたくさん含まれてまいります。私どもいろいろそこら辺を検討いたしますときに、イソアミルアルコールでございますとかイソブチルアルコールというような香気成分を一つの指標として用いておるのでございますけれども、そういうぐめいに、イソアミルアルコールというような成分かモルトウイスキーの場合には非常に多く出てまいる。ところが、グレーンウイスキーの場合には、原料のモルトが二〇%以上というようなことでございまして、若干少のうございますので、糖化発酵いたしますときにいろいろ出てまいります灰分が若干少ないというようなこともございますか、蒸留方法は連続式の蒸留というようなことでまいりますので、発酵成分の一部が分離されてしまうというようなことでございまして、先ほど申し上げましたようなイソアミルアルコールというようなものがほとんどなくなってまいります。しかしながら、もう一つの香気成分でございますイソブチルアルコールというようなものはそのまま大体残りますので、その特徴はずいぶん出てまいるわけでございます。そこら辺がちょっと違うわけでございます。  その次に、グレーンスピリッツというところでございますが、グレーンスピリッツの場合は、蒸留のアルコール度数でございますけれども、これをさらに上げて精製をよくいたすというようなことをいたしますと、いわゆるイソブチルアルコールというような香気成分までだんだん薄くなってまいります。したがいまして、香味はグレーンウイスキーに比べますと、大分薄れてまいるということではなかろうかと思いますが、これは一般的な話でございます。  なお、グレーンアルコールというようなことになりますと、さらにその精製の程度がもっとよくなり、原料用アルコールに近くなるというようなことであろうと思います。ただし、いろいろやり方がございますので、グレーンアルコールの中にもグレーンスピリッツに非常に近いものがございます。また、グレーンスピリッツの中にもグレーンウイスキーに近いものもあろうかと思うわけでございます。
  76. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 余り専門的なことを言われますと、私らもわからないのです。全然わからないものが入っているわけですからね。  それじゃ、原料用粗留アルコールと言われるものとはまたどういう関係になるのですか。
  77. 川島宏

    ○川島説明員 原料アルコールでございますけれども、これは原料が何でございましても、非常に分離能力のよろしい蒸留機、たとえばスーパーアロスパスというようなもので蒸留をいたしますと、原料由来の特性がほとんど失われます。要は非常に純粋なアルコールになる。日本のアルコールの蒸留技術は世界一だという話を聞いておりますほど、大変いいアルコールになるということだと思います。
  78. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 じゃ、グレーンアルコールと粗留アルコールとはほとんど差はないわけですか。
  79. 川島宏

    ○川島説明員 グレーンアルコールの場合、普通はグレーンからの特性を生かすべく各社で努力していると思います。ただ、蒸留の仕方によりましては、純粋のアルコールに非常に近くすることは十分可能でございます。
  80. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そういう専門的なことはわかりませんけれども、それじゃ原酒と言われるものの中にも、いま言われたように、いわゆる穀類を主とした、麦芽を主としたモルトと、そしてグレーンアルコールあるいはグレーンスピリッツやグレーンウイスキーやいろいろあるが、二級にもこれはもう全部グレーンウィスキーは入っているのですか。あるいは二級程度は、あるいは一級程度は、グレーンアルコールどまりなんですか。それともグレーンスピリッツどまりなんですか。
  81. 大橋實

    ○大橋説明員 お答えいたします。  ウイスキーの二級でございますけれども、これには一般的にモルトウイスキー、それからグレーンウイスキー、いずれも使用されているようでございます。それから、そのほかグレーンアルコールが使われております。なお、グレーンスピリッツは、一般的にはまだ余り入っていないようでございます。
  82. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 じゃ、特級の場合は、グレーンウイスキーだけですか。
  83. 大橋實

    ○大橋説明員 特級の場合でございますと、モルトウイスキーとグレーンウイスキー、それに、メーカーにもよりますけれども、グレーンスピリッツ、こういったものが入っております。グレーンアルコールはいまのところ余り該当がないようでございます。
  84. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 ある程度専門家である皆さんでもなかなかおわかりにならないような内容だと思うのですね。ですから、グレーンアルコールと粗留アルコールというものとどれだけ違うのかと言ったって、こんなものわかりませんよね。そうして、そういうわからないものをわれわれは飲用しておって、それが日本のウイスキーだと言われておるわけですが、しかしわれわれの立場に立ったら、せめて出所ぐらい、これはどれぐらいのものかと知りたいという欲望は、普通じゃないでしょうか。この点は……。
  85. 大橋實

    ○大橋説明員 現在の酒税法の規定でございますと、非常に技術的にわたるわけでございますけれども、そういうことである程度——先生のお立場から見ますと、その辺がやや枠としては大き過ぎるんじゃないか、こういうお考えだろうと思うのでございますけれども、この点は一つ考え方として、私どもも十分よく理解できるわけでございます。この中で、それじゃどの程度のものを規定すべきであるか、こういったような点になりますと、私どももなかなか一概にすぐに結論づけることはできないわけでございます。ただ、そういう枠の中でございますけれども、特級製品などにつきましては、相当外国からの輸入もございますので、その辺との競合の中で国産のウイスキーというものが伸びていく。伸びていくための、あるいは少なくとも外国品と競合していける、そういうためには一体どういう消費者の嗜好に合ったものにしていかなければならないか、そういう枠の中でそれぞれ業者の方が相当努力しながら、現在のお挙げになる水準になっているというようなことでございまして、これを原料の面から規定をすれば中身が決まるのか、あるいはできました製品の分析をすることによってそれが決まってくるのか、これはまた非常にむずかしい議論がございまして、たとえば輸入のウイスキーでございますと、でき上がった製品の中に、では幾らモルトが入っているのか、あるいは幾らグレーンウイスキーが入っているのか、これは実はわからないわけでありまして、その辺が、全体としての製品として皆さん方の消費者選択の中で現在需要がなされているというのが実情でございます。
  86. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 それでは、モルトウイスキーは大体どれぐらいが普通だと言われるのですか、モルトウイスキーと言われて世間的に通るのは。
  87. 大橋實

    ○大橋説明員 一般的には、モルトウイスキーというものでございますが、これはそれぞれウィスキーの級別によりまして若干貯蔵期間等が違っておりますけれども、モルトウイスキーは、特級なんかでございますと大体三年から十年ぐらいの間、それから一級ですと三年から六年ぐらい、それから二級でございますと二年から四年、大体そんなところが使われておるのが主である、そういうふうに聞いております。  以上でございます。
  88. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 適当なエージというのは大体どれぐらいなんですか。
  89. 川島宏

    ○川島説明員 私どもも確かなところはあれでございますが、イギリスにおきましてはたしか三年以上という貯蔵期間を義務づけているようでございます。それからアメリカにおきましては二年以上というようなことであるようでございます。ただ、日本の風土、気候、温度とか湿度というようなことをいろいろ考えますと、外国のようなことが果たしていいのかどうか。これは大変大ざっぱな感じでございますけれども、熟成は日本では大体倍ぐらいの速さで進むのではないかというような感じがいたしておるわけでございます。一般的に言われておりますのは、グレーンウイスキーのような香気成分の少ない、あっさりしたタイプのウイスキー原酒の場合には比較的貯蔵期間を短くするのが普通でございます。数年、それ以上たちますとかえって悪くなるということが言われております。香気成分の多いモルトウイスキーのような場合にはもう少し長く、六、七年以上、それも限度があると思いますが、こういうことが言われております。これは外国の例でございますので、日本ではその半分ぐらいのところでも十分にいくのではないかというふうに考えております。
  90. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 モルトの方は重いし、少し年数か長い。外国では六、七年ですか。五、六年ですか。その半分というと三年ぐらいですか。グレーンの方は、数年というのは何年ぐらいが適当だと見ているのですか。
  91. 川島宏

    ○川島説明員 三、四年ぐらいで十分使える状態になるのではないかと思います。
  92. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 グレーンも三、四年ですか。そうすると一、二年で使っていたらどうなるのですか。
  93. 川島宏

    ○川島説明員 一、二年、あるいはもっと短くても使えるような状態になることはあり得ると思います。
  94. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 原酒というのはモルトとグレーンだと言われるわけですが、それでは、三、四年ぐらいのものでなければいけないものもあれば、一、二年のものもある。そういったものは区分けしてわかるわけですか。
  95. 川島宏

    ○川島説明員 実際の検査、取り締まり上は貯蔵期間等を決めてございませんので、はっきり把握いたしていないと思います。
  96. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 なぜいまの時点で貯蔵期間というのは決められないのでしょうか。
  97. 大橋實

    ○大橋説明員 先ほど御説明がございましたように、ウイスキーにつきましては、その原酒につきまして、その貯蔵期間の条件とか、温度、湿度、たるの状況、いろいろ熟成に影響を及ぼすというよりなことで、わが国の場合には若干短時間でもウイスキー原酒としての品質を維持することは可能であるとか、あるいは米国のコーンウイスキーのように貯蔵を義務づけてない、こういったものもあるようでございまして、この点については今後の研究課題であるというふうに考えておりますけれども、いま実はそこまでの検討には至っておりません。
  98. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 至っておらないのはわかっているのです。なぜそういうふうな状況に至っていないのでしょうかと言っているのです。お聞きするところによると、特級も、モルトとグレーンと入れたらほとんど一〇〇%使っているというんですね。そして事実大体三年以上のものは皆使っているだろうということなんですね。モルトについては一年のものも二年のものもあるから、平均したらほぼ使っているというんですね。そうじゃないんですか。一級、二級はまだまだそんなものは使ってないわけですか。適当なのはどうですかということをさっきお聞きしたのです。しかし、適当であっても、原酒の量が不足する場合もあるでしょうし、現在つくっている状況はどうですかということをお聞きしているのです。
  99. 大橋實

    ○大橋説明員 先ほど申し上げましたモルトは、貯蔵期間でございますけれども、これは平均的に大体そういうところが使われているということを申し上げたわけでございます。なお、グレーンウイスキーにつきましてはもっともっと短期のものも現実に使われているのが実情でございます。もちろん特級だとか一級につきましても、たとえば三年未満のものも一部は使われているわけでございます。ただ非常にウエートが低いということのために、主なところは、先ほど申し上げたような年数のものが重点的に味の主流をなしているといいますか、モルトの主流をなしている、こういうことでございます。
  100. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 結局、そういうモルトの年数なんて決められないのは、端的に言えば、絶対量が足りないからそういうことを決められないということですか。
  101. 大橋實

    ○大橋説明員 モルト等につきまして、特に現在輸入についても自由化されておりますし、特に私ども、現在モルトウイスキーの原酒が不足しているということは聞いておりません。
  102. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうしたら、モルトは国内だけで十分足りるわけですか。
  103. 大橋實

    ○大橋説明員 これは、量的な補完と、それから質的な補完と両方あるかと思いますけれども、現実に相当程度のモルトの輸入もございます。したがいまして、それなしで全部できるというような形までは質的、量的、両方をあわせますといっていないのではないだろうかと思いますが、現実に特級のウイスキー等につきましては、モルトウイスキーそれからグレーンウイスキー、両方あわせますと、平均いたしますと九〇%というような割合までいっておりますので、ウイスキー原酒という概念で申し上げるならば、現在の状況で原酒が不足しているということは言えないのではないだろうか、かように考えております。
  104. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 そうすると、いまモルトを輸入しているのはどれくらいですか。
  105. 大橋實

    ○大橋説明員 現在ウイスキーモルトの輸入数量でございますけれども、五十二年でおよそ二万六千キロリットルでございます。
  106. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 国内的には、モルトもグレーンも入れて、十分足りるというのでしょう。その上さらに輸入しているということはどういうところに意味があるのですか。
  107. 大橋實

    ○大橋説明員 先ほどもちょっと御説明申し上げましたけれども、輸入をしているので、量的、質的な意味で充足がなされているということであります。したがいまして輸入がなければ、現状では足りないということになるんだろうと思うのです。
  108. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 先ほどの答弁は、国内で足りるということだったのですよ。
  109. 大橋實

    ○大橋説明員 先ほど申し上げましたように、あるいは御説明が十分でなかったかと思いますけれども、輸入を入れまして十分足りているということでございます。
  110. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その輸入量は、二万何ぼと言われましたね、それは国内産と比べて、大体どれぐらいの割合になるのですか。
  111. 大橋實

    ○大橋説明員 ちょっといますぐ計算ができないのでございますが、現在モルトウィスキーで、百度で製造が三万キロリットル、それから五十度といいますと先ほどの数字になりますので、国内の製造しているのは相当多くはなっているだろうと考えます。
  112. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 割合はどうなんですか。——結局、三分の一輸入に頼らないと原料は足りないということなんでしょう。計算してみたらほぼ三二、三%ぐらいですよ。だからエージの表示ができないのでしょう。国内のものが余っているのだったら、十分充足できるのだったら、九〇%以上全部国産のウイスキーを使っているのだ、何年物使っていますということを、三年物でもはっきり表示できるわけでしょう。それができないのは、結局国内産が足りないから三分の一近く輸入している。その輸入しているものについては年代も何もわからないから表示ができないということなんでしょう。
  113. 大橋實

    ○大橋説明員 現在輸入しておりますモルト、ウイスキー原酒はやはり三年以上のものが入ってきているのだと思います。それから入ってまいりました輸入原酒は、そう長いこと貯蔵しなくても使用可能であるという状況にあるわけでございます。  それで、現在の特級の定義で申しますと、先ほど申し上げましたように二七%以上の原酒の混和がございますれば特級ということでございます。もちろんどこまで入れるかというのは業者の企業努力といろいろなコスト、価格構成との関連で決まっているわけでございますけれども、現在の九〇%というような状況で混和をする場合には、先生おっしゃいますように、これは考え方でございますけれども、あるいはそれは足りないとおっしゃられればそのようでございますし、それが仮にない場合に、こちらの方に、それであればそれなりのまた製造上の問題とか、そういう形での調整も行われるかと思いますが、これはまた製造コストの問題とか価格の問題、輸入のものと国内でつくったものといろいろなそれぞれの条件がございまして、一概に一挙には決められないのでございますけれども、現状で、法律上足りないというほどのことではないと思います。
  114. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 どうも説明がわかりにくくてしようがないのですが、最初は、国内産で、モルト、グレンも含めて大体充足できるということだったのですよ。それは言い間違いかどうかわかりませんが、そういうふうにお聞きしたのです。ところが途中から、輸入もしておる。結局は、その輸入も入れて大体原酒で賄ってとんとんいっているということなんですね。その輸入の量は、国内産と比較してみてどれぐらいかと聞きましたら1私三〇%と言ったけれども、四二%ぐらいですね。全体の量の四二%を輸入に頼っておりますね。そして、その四二%に相当する輸入のものは全部三年以上だとおっしゃるわけですね。そして、国内産のあとのものも大体全部三年以上たっておるということであれば、いつでも、日本のウスイキーは三年物以上の原酒を使っていますよということを言うにちっとも支障ないじゃないですか。
  115. 大橋實

    ○大橋説明員 確かに先生のお考えも十分よくわかりまして、この点につきましては今後の研究課題ではないだろうかと考えております。論理的な杉でお詰めいただきますと——現状におきましては中心は三年以上のものが含まれておりますけれども、それ以外のものをいろいろな割合で、短いものは非常に低いウエートになるかと思いますけれども、そういう形で使用もされておるということもあわせて付言させていただきたいと思います。
  116. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 研究課題だと言われるけれども、メーカーは全部、私のところはもう三年以上のものを使っていますと言っているのですね。全部問い合わせてみましたら、全部三年以上のものだと言っているのです。量もあるのですよ。輸入も三分の一以上でしょう。研究課題にしなくたって、皆さんが、早く三年以上という表示をしてくださいとか、もう一歩前進して次はパーセンテージをもう少し上げてくださいとかいろいろな要望があるわけでしょう。三年以上のウイスキーを使うということを一定——これは通達でも結構ですし、もちろん法制化できれば一番結構でしょうけれども、そういうことで支障がちっともないのにちっとも進まないのはどういうことなんでしょうか。
  117. 大橋實

    ○大橋説明員 私ども現在業界からモルトの貯蔵年数を三年以上にぜひしてもらいたいというお話は、陳情とかその他の形でお伺いしてはおりません。したがいまして、今後業界の皆様方が実際どういうふうにその点についてお考えになっているかにつきましてもよく状況を把握いたしまして、また表示という問題も現在公正取引委員会の方でいろいろと御指導をいただいておりますけれども、そういったものをあわせ含めまして研究させていただきたいと思います。
  118. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 公正取引委員会にお尋ねしますけれども、いま私言っていましたようにどこも支障がないのですね。消費者の方は、せめて一つずつでも表示していただきたい、こういう要望を出しておるわけです。それで量もあるのです。別に輸入がいいとか悪いとか言わぬで、輸入も含めていいじゃないですか、必ず三年以上だとおっしゃっているのですから。税金の関係でこれは間違いないでしょう、きちっと押さえておられるでしょう。それに、その通達を出されても、表示について一項目も進まないのはどこに原因があるのでしょうか。どういうふうにお考えになるのでしょうか。
  119. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 先ほど申し上げましたように、従来必ずしも業界の方でそれほど熱心でなかったというふうに解せられる節があったと思います。  それから、先ほどちょっと言い忘れたのですけれども、公正競争規約というのは、実際はこの業界に限らずかなり長くかかるものでございまして、これを早くやったらいいという——早くやったらいいというよりも早くやるべきだ、もちろんわれわれも早くやるべきだと思っておりますけれども、私どもはこれが公正な競争を促進するため適切なものであるかどうかということと、一般消費者の利益保護のために適切なものであるかどうかという観点から出てきた案を審査するわけでございますけれども、その場合に、水準を低くすれば早くできる、こちらとして毅然として説得を続けて、より高い水準に持っていこうとすればかなり時間をかけざるを得ない、これがいままでのいろいろな公正競争規約の場合の実情でございます。酒類につきましては、このたび法案等の改正もございましていろいろ御指摘いただきましたので、私どもとしましても、国税庁ともいろいろ相談しておりますし、どの辺までという水準の問題も一つあるかと思いますけれども、何とか早急に規約に持っていきたいと考えております。  ただ、非常に技術的な問題でございますけれども、国税庁の方で酒税法上ウイスキーの範囲をなるべく広げられる、といいますのは狭くしますと税金の対象外になるおそれがありますので、国税庁の方はなるべく広げたいというお気持ちのあるのはよくわかるのです。そうしますと、いろいろ考えますと、われわれの方はなるべく狭くしたい。もし違う名前を使うことができましたら非常にいいのですけれども、同じウイスキーという形でやろうと思いますと、その辺を技術的に一体どうするかということもちょっと考えている問題でございます。いずれにしろ、国税庁とよく協力いたしまして、なるべく早く、そんな遠からない時期に何とかしたいと思っております。
  120. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 時間が参りましたけれども、いまお二人の意見を聞いていますと、業界が要望がないから——業界のことはちっとも言っていないのですよ。消費者の立場から言っているのです。むしろ業界の方は受け身の立場でしょう。できるだけ中身は明らかにしたくないですよ。あたりまえの話ですよ。しかし、いまのところ日本の酒税法では、たとえばグレーンにしてもモルトにしても、さっきから論議があったように年限規定もなければ何も規定がない、製品を保証する規定が全くないわけです。あくまで税を取るという角度の法律しかない。消費者の方から見れば、税金は持っていかれるけれども、それではせめてその中身はいいものにしてくれるという保証がどこにもないわけでしょう。いまのところ、保証は各メーカーごと、それぞれのメーカーごとのキャッチフレーズにだまされていると言ったら過言かもわかりませんけれども、それを信用してやっているだけでしょう。共通のものはないわけでしょう。上位十社共通の物差しはないわけでしょう、ウイスキーのよしあしについては。結局、モルト率がいいとか、あるいはまた年数が長いとか、どこかに基準を求めなければ、消費者としてはいいウイスキーであるという判断基準がないわけでしょう。それを一遍につくれと言えば、いろいろ業界の皆さんにも支障はあるでしょう。ですからひとつ、たとえ年次だけでも、かつてはあった法律だから、三年以上にするとか、あるいはそれがだめなら三〇%以上にするとか質をよくするとか、あるいはまた、これはどこそこで生まれたウイスキーですよとか、一つずつでもその中に取り入れていただけませんかというのが消費者の立場ですよ。しかもそのうちの、いまたとえば三年というとこで一つの要望を申し上げたら、業界も十分量もあると言っているわけですよ。使うのも三年以上のものを使っている。どこも支障がないのに、いやだというので業界は積極的にならないということは、三年間も四年間もほったらかしということは、どこかにうそがあるというしかとれないじゃないですか。うそがなかったら、その言葉どおりだったら、これ一つだけでも表示の自主規制ができるのじゃないでしょうか。  長官、いまお聞きいただいて、どこも無理なことがないのに、業界が何も言ってこない、むしろ大蔵省も公取も業界ばかりにらんでいらっしゃるけれども、消費者の方にはちっとも顔をお向けになりません。これは皆、消費者が言っているのですよ。
  121. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 業界の方である案がまとまりましたら、これは酒の規約だけではございませんけれども、今度はそれを消費者の代表との、どう申しますか、われわれは連絡会と申しておりますけれども、そこにかけます。そこである場合には五回、十回と議論していただきます。それで、その両方の意見が出尽くしたところで、私どもとしての腹づもりを決めまして、それをさらに公聴会にかけまして、それで最終的にそれを認めるかどうかを決めるという形をとりますので、ただ、手順としまして、公正競争規約という制度の性格上、まず業界が少なくとも案をつくってきてくれ、それを今度は消費者の意見にさらすという形で順序を考えております。
  122. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 繰り返しても仕方がありませんけれども、経済企画庁の方だけが消費者側の方に顔を向けていろいろ行政をやっていただいているのですから、公正取引委員会もあるいは大蔵省にしてもこういう実情をもう少しお調べいただいて、どこも無理のないことだったら早くこれを取り上げてやれというぐらいのことをせめて経済企画庁も言っていただきたいと思うのです。醸造学の先生の坂口先生なんかのおっしゃっているのは、酒によって法律をつくりなさいと言っているのでしょう。法律によって酒をつくってはいけませんよと言っているのですが、いまはそうなっているんじゃないですか、いまの日本の酒税法は。法律によって全部酒の質を悪くしていっていると醸造学の泰斗も言われているのです。  きょうはもう時間がありませんけれども、長官、ひとつ経済企画庁が中へ入って、業界もあるいは消費者も納得するような方法というのを、値段だけでなしに、質の面も消費者保護の立場で何らかのアクションをひとつ起こしていただけないでしょうか。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今日お尋ねを伺っておりまして、確かに一つ盲点があるというふうに感じております。それは、公正競争規約でございますから、業界が案を出すということではございましょうけれども、しかし本来それは業界側のインタレストではなくて、消費者側の利益が問題なのでありますから、幸い業界でもそういう動きが少しずつ早まっているそうでございますから、それをまず急いでもらうように行政としてはいたしまして、その上でまた公正取引委員会消費者との対話をやっていただく、こういうふうに私どもとしても一緒に努力をしてまいらなければならない問題だ、私はおっしゃるとおりだと思います。
  124. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  125. 美濃政市

    美濃委員長 午後一時四十分から再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  126. 美濃政市

    美濃委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  127. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私は、まず経済成長関連をした御質問を行いたいと思いますが、七%成長ということについて、まず長官の御所見伺いたいと思います。  十五カ月予算の執行によりまして、公共事業関係を中心にようやく変化が見え始めたとか、あるいは在庫調整がやや進展を見せている、このようなことが言われておりますが、一方では民間最終需要、これに力強さが見られない。そのために対外不均衡の是正という問題が進まないわけでありまして、このことは、今後円高によるいわゆるデフレ効果が浸透をして、再び景気の足かせになるのではないだろうか。また、雇用情勢を見ても、三月の完全失業者は百四十一万人、このようにふえ続けておりますが、景気の先行きの不透明感というものはどうしても払拭されていないと言わざるを得ないと私は思います。長官は今後の景気見通しをどのように見ておられるか。午前中、平泉委員に対しましても長官から御答弁が行われたようでございますが、私が申し上げたようなこういった景気の不透明感というものを踏まえて、いま一度お答えをいただきたいし、また先ほどの御答弁は、あくまであの御答弁自体が結論ではなくて、さらに検討が加えられるのか、いま一度この点もあわせて確認をいたしたいと思います。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 七%成長の基礎になっております五十二年度の成長率五・三%というものは、ただいまのところ一−三の数字が出ておりませんので確言を申し上げることはできませんが、まず達成されたのではないかというふうに考えております。したがいまして、その上に立っております。%でございますが、その後三月以降今日までのもろもろの指標、まずまず順調でございますので、私どもが想定いたしました軌道の上に経済が動いていると考えております。  ただいま仰せのいわゆる設備投資でありますとかあるいは雇用でございますが、これは予算委員会でも申し上げましたように、もともと製造業の設備投資には五十三年度中に大きな期待をすることは無理であろう、稼働率の上昇というところで次の年度に引き継がざるを得ないと考えておりましたし、雇用につきましても、完全失業の改善はせいぜい五万人程度ではないかと考えておりましたので、この二つは確かに問題として残っております。残っておりますが、これは私どもが当初残るであろうと考えておったところと別段異なっているわけではないわけでございます。したがいまして、七%を予測いたしました想定というものは、ただいままでのところほぼ順調に満たされつつある、かように考えております。
  129. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいま、今後の見通しとして必ずしも結論を出すべきものではないという立場からお答えをいただいたように思うわけですが、既応設備の操業度、これは三月で八割程度、また民間設備投資にも電力を除いては動意が見られない、そして民間最終需要の停滞というものは依然として続いているわけでございます。今後わが国経済を安定させるためには、これ以上輸出に依存するわけにはいかないわけですから、当然今後の経済運営としては、内需の拡大以外にはもうないということになるのではないか。そこで注目されるのが、GNPの五割を占める個人消費ではないか。政府は、この個人消費の伸びを五十三年度名目で一一・九%、このように見込んでおられますけれども、その算定の根拠を明らかにしていただきたいと思います。
  130. 田中誠一郎

    ○田中説明員 個人消費の推計につきましては、可処分所得の推計をいたしまして、そこから過去の消費の動向、すなわち消費性向等を勘案いたしまして、消費支出を推計しているわけでございます。可処分所得につきましては、いわゆる雇用者所得、個人業主所得があるわけでございますが、いずれもマクロ的に推計した上、個々の傾向をとるという形で推計をしておるわけでございます。
  131. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この一一・九%ですが、実質に直した場合、CPIとかあるいはWPI等から判断をして五%強ぐらいではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  132. 田中誠一郎

    ○田中説明員 御指摘のとおりでございます。
  133. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 この個人消費の伸びというものは、今年度七%成長の重要なかぎを握るものと言っても過言ではないと思います。そして日本がこの七%成長を達成するかどうか、これは世界じゅうが注目して見守っているわけですが、家計調査による消費支出を見ますと、五十三年三月の前年同月比、これは全世帯で五・一%増、実質でいきますと〇・六%の増、勤労世帯を見ますと六・八%増、実質は二・二%の増、この程度であって、春闘の賃上げ率も定昇込みで五、六%程度、このような状態では、とても美質五%強の伸びは期待できないのではないかというふうに考えるわけですけれども、これについてはいかがでしょうか。
  134. 田中誠一郎

    ○田中説明員 家計調査等の実質の伸びは、先生御指摘のとおりでございますが、ことしに入りまして実質の可処分所得の増及び個人消費支出の増かかなり明るい面を持っているわけでございまして、そういった傾向が今年度も続くというふうに私ども見ておるわけでございます。したがいまして、実質五%程度の個人消費支出の伸びは達成できるものというふうに考えております。
  135. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 家計調査による消費性向で見ましても、四十五年には七九・七%、四十六年が七九・九%、ほぼ八〇%に近い水準であったものか、五十一年には七七・四、五十二年には七七・二というふうに減少傾向を示しているわけですね。勤労者の実収入、これも四十八年までは六、七%の伸びを示していたわけですが、四十九年以降急速に低下をしておる。最近では五十一年が〇・一%、五十二年が二・五%の伸びにとどまっているわけです。本年は春闘が非常に低率であった、こういうこともありまして、あるいは実質これがマイナスに転ずるかもしれない、こういう状態にあるわけです。たとえば、物価が落ちついているからというような意見もあるようですけれども、四月には前月比で見まして一・一%、五月も東京区部で見まして〇・七%と非常に騰勢が続いている。それに今後構造不況業種などの再編成も本格化されてくるであろう。そういうことから雇用不安というものがさらに進むのではないだろうか。また、そういったことで消費者の財布のひもも非常にかたくなる一方じゃないか、こういった点について、私はいまだに疑問が晴れないわけですけれども、これらの点についてどのように見ておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  136. 田中誠一郎

    ○田中説明員 最近の経済全体の動きを見ますと、生産の面あるいは出荷の面、非常に明るい面か出ておるわけでございます。一方物価は、先生御指摘のような数字の動きでございますが、基調としては大変落ちついた基調にございます。したかいまして、今後の物価の動きには注目する必要かございますけれども、消費者物価は落ちついた動きを示すものと思われますし、一方雇用面につきましては、必ずしも大幅な改善というのは望めませんけれども、一応安定した傾向をたどるのではないか。したがいまして、消費者心理も前向きに見まして落ちついたものになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、消費支出は、消費性向といたしましては必ずしも大幅な伸びということは期待できませんけれども、わずかながら消費性向は高まるものというふうに考えております。
  137. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 非常に楽観的な御答弁に私には響くわけですけれども、完全失業者、これなども五十三年一月が百二十六万、それから二月が百三十六万、三月が百四十一万、先ほど申し上げた数字ですけれども、このようにふえ続けている。こういった数字が雇用不安というものを物語っているのではないだろうか。さらに、住宅着工増といった点を見ても大したことはない現状にいまあるわけですけれども、五十二年度の個人消費の実質の伸びというものはどれぐらいになりますか。一説では三%程度という話もあるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  138. 田中誠一郎

    ○田中説明員 五十二年度の実質の個人消費の伸びはまだ数字が出ておりませんけれども、三%の上の方になるのではないかと想定されるわけでございます。
  139. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 長官にも一言関連して伺いますが、結局この個人消費の不振とか、あるいは民間設備投資の不振、こういったものなどで輸出に頼る経済というふうになって、それが昨年来の円高となってあらわれてきたのではないかと私は思うのです。この点はいかがでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年の円高ということのお尋ねでございましたら、それは確かにわが国の産業の価格、非価格面における競争力が非常に強くなっておりますところへ内需がふるわなかった。内需と申しますと、仰せのようにまさに設備投資あるいは消費でございます。その結果としてかなり輸出に向かって圧力がかかった。しかも、その輸出力に競争力がある。そういうことからわが国経済の力といいますかについての評価、並びに非常に累積いたしました貿易黒字、それを反映いたしました円高であったことは仰せのとおりだと思います。
  141. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 石油ショック以降の政府経済見通しの達成率、これを見てみますと、四十九年度が二・五%の見通しに対して実績がマイナス〇・二%、五十年度は四・三%の見通しに対して実績が三・四%、このように両年とも実績が見通しを下回っているわけですね。この年は民間設備投資とか在庫投資がマイナスを示した。景気が後退をしたわけですが、個人消費は四十九年度には実質三・二%、五十年度も五・七%と、いずれも経済成長を上回る伸びを示して、大幅な、いわゆる景気後退の下支え役と言ってもいいと思いますが、こういった役割りを果たしたわけです。しかしながら、五十一年度からは逆にこの消費の伸びが経済成長率を下回っている。このことはやはり民間設備投資、あるいは輸出、在庫投資に依存する経済成長というものを意味するものと思うわけです。しかしながら、民間設備投資が低迷をして、景気の先行きの不透明ということから在庫投資にも動意を示せない現状で、こういう現状ではやはり輸出に頼るところの経済成長にならざるを得ないとなるわけですけれども、再び円高という国際摩擦、こういったものを招きかねないのじゃないかと私は思うわけです。景気回復して経済を安定成長の路線に乗せるために現在求められている政策というものは、先ほど来申しております内需の拡大ではないか。そのために公共事業を中心とする景気浮揚策がとられているわけですけれども、個人消費はGMPの半分以上を占めているわけですから、これを拡大することはきわめて重要ではないか。七%成長のために五%強程度消費の伸びというものはぜひとも必要ではないかということであります。  長官は、個人消費の伸びに心配が出てきたとき新たな消費刺激策として大幅な減税などを行うお考えがあるかどうか。景気浮揚の追加策、これはどのような時期に行うのか。こういった時期というものをやはり逸してはならないと私は思うわけですけれども、これらを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては今国会におきましてもいろいろ御議論がございまして、私どもは減税よりはその他の施策でというふうに申し上げてまいりましたけれども、しか国会の御判断として多少の減税ということも必要ではないかということであれば、もちろんそれに従わなければならないというふうに申し上げてまいったわけでございます。  そこで、ただいまの時点で考えますと、まず公共事業につきましてはかなり前倒しの、しかも準備を十分整えまして早くスタートをいたしました。上半期に七三%ぐらいの契約を終わってしまおうということは恐らく十分可能だろうと思っております。その場合下半期に息が切れるのではないかということに対しましては、公共事業予備費を二千億円なお放出せずに持っているわけでございますので、そういう意味公共事業追加する補正というものは当分話題にならないのではないかと考えております。ただ、構造不況業種の中にあるいは措置を要するものがあるかもしれないということは一部で言われておるようでございます。いずれにしましても、それらのことを全部踏まえまして、今月の二十日過ぎには全体のレビューをいたしてみたいと考えております。  しかし、問題はやはり中川委員の言われますように、消費の動向というものは成長の成否を決定するきわめて大きな要因でございます。ただいままでのところは、先ほど田中審議官から申し上げましたように、まずまずであると存じますし、また経済が最悪期を脱したということからくるところの消費者の心理的な好影響、物価の安定等々何とかこの路線でやっていけるのではないかと思っておりますけれども、まだしかし年度が始まりまして二月過ぎたばかりでございます。もし仰せのような事態になってまいりましたら、総理大臣がかねて言われますように、適宜の措置はとらなければならないところでございますが、ただいまのところは、そのような措置が必要だという全体の動きにはなっておりません。ただ、重ねて申し上げますが、まだ先が長いことでございます。必要があればそのとき必要な措置を、また国会の御意向も伺いながら考えていくことが必要であることは原則論として申し上げるまでもないことでございます。
  143. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 適宜な措置あるいは必要な措置というふうにお答えをいただきましたけれども、先ほど私が申したような大幅な減税というようなことも当然その一つであるというふうに考えておいてよろしいかどうか、この点はいかがでしょうか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのところそういうことが差し迫った事態と思っておりませんので、政府部内でもそのような相談をいたしておりません。したがいまして、私限りでそれを申し上げるわけには、可能性の問題といたしてではございますけれども、ちょっと申し上げにくうございます。
  145. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは一応、経済問題については本日のところはこの程度にいたしまして、国鉄の運賃の値上げ問題について若干御質問したいと思います。  国鉄は、去る五月十一日に旅客、貨物合わせて平均一五%値上げ案をまとめて運輸大臣に申請をしたわけですが、このように大幅な値上げというべき一五%、この申請の根拠ですけれども、これについてまず御説明をいただきたいと思います。
  146. 吉末幹昌

    ○吉末説明員 お答え申し上げます。  先般国鉄から申請が出ました運賃改定でございますけれども、五十三年度におきましては、前年度に国鉄は運賃改定を行っておりませんので、昨年末に改正されました国鉄運賃法の規定によりますと、いわば二年分の経費増加見込み額というものの範囲内で運賃改定が行われる、こういうことになるわけでございますが、五十三年度予算を策定するに当たりまして、昨年の国会におきます審議の状況とかその他諸般の情勢等を勘案しまして、おおむね一年分の経費増加見込み額というものの範囲にとどめるというふうな考え方から、運賃改定の増収予定額というものを二千五百五十億ということで予算をつくっているわけでございます。これに基づきまして国鉄は、最近の輸送需要の動向でございますとか諸般の状況を勘案しながら、国鉄としての経営判断のもとに具体的な改定案というものをつくって、先般申請が出されたわけでございますが、その申請の中では、五十三年度における増収見込み額として二千五百三十九億円というものを計上してきておるわけでございます。これが運賃改定収入に対しまして一五%に相当するということから一五%の改定申請というふうにいたしているわけでございます。
  147. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 その申請等は今後運輸審議会に諮問されて、審議会で検討するということになるものと思いますが、運輸審議会の委員の構成についてこの際お尋ねをしておきたいと思います。
  148. 和久田康雄

    ○和久田説明員 運輸審議会は、御承知のとおり、広い経験と高い識見を有する七人の委員から構成されております合議制の機関でございます。ただし、その七名の委員のうち一名は運輸次官が就任することになっており、他の六名につきましては、両院の同意を得まして内閣総理大臣が発令するという非常に厳重な手続のもとに選任されておる、りっぱな方々で構成されている委員会でございます。
  149. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いまお答えいただいた構成ですけれども、官僚であるとか元官僚であるとかあるいは産業界等がほとんど占めているのではないだろうか。利用者の代表が入っていないわけですね。特に法定制が緩和されたこの機会に利用者の代表を委員に選んでもいいのではないか。私は以前、たしか運輸委員会との連合審査か何かの際にも、この件について発言した覚えがあるのですが、このように法定制が緩和されたこの機会に、いわゆる利用者の代表、これを委員に選んでもいいのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  150. 和久田康雄

    ○和久田説明員 運輸審議会は、運輸事業の運賃の認可でございますとか事業の免許と申しますような運輸大臣の行います個々の行政処分につきまして諮問を受け、これに対して公平かつ合理的な決定を行って答申するとかあるいは必要な勧告を行いますというふうに、非常にいわば中立的な、いわば準司法的な機能を果たすものでございます。そのために、その委員と申しますものは特定の立場を代表する方が当たるというのは必ずしも適当ではないということで、あくまでも厳正中立な立場の方を選任するということでございます。そういう方として、またこの国会にも選任に際してお諮りし、ほとんど満場一致でもって、りっぱな方としてお認めをいただいて、御選任いただいておるわけでございます。  ただ、ただいま先生御指摘の、国鉄運賃の法定制緩和に伴います利用者の声の反映策につきましては、ただいまの委員構成は委員構成といたしまして、そうした委員の公正な審議の際にさらに利用者の声が十分に反映するためには別途の新しい制度を設ける必要があろうということが昨年の国会で再三議論なされまして、その結果を踏まえて今回、国鉄運賃の法定制緩和部分にかかわる審議につきましては国鉄運賃専門調査員という制度を設けました。それは、そういう御趣旨を踏まえまして、できるだけ国民各界各層の方々、いわゆる利用者の方も含めたそういう方々を代表に加え、そういう方々に十分運輸審議会の審議に参画していただき、そしてそういう方々の御意見をただいま申しました運輸審議会委員の決定の際に十分参考にさしていただくという、そういう制度で今回審議が始まったところでございます。
  151. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 理屈としてはわかるのですが、やはり値上げ分を負担させられるのは利用者であり国民である。これを入れることは中立を欠くように響いてならないわけなんですが、広い経験それから高い識見というようなお話、また、りっぱな方々というようなお話がありますが、何といってもこの利用者はもう大半が国民である。そういった値上げによる痛みを直接感じるのは国民である。その声がこの中に何も入ってこない。いま後半の御答弁で若干そういったニュアンスも感じないわけでもないわけですけれども、このような利用者が全くその委員の一人だに入っていない、この点に私は若干いまだ疑問を抱かざるを得ないわけです。中立的なればこそ私はそういう利用者も当然委員として入れるべきではないかという点において、ただいまの御答弁では最終的には納得がいかないわけですけれども、今後利用者代表を何とか委員に選ぶという、たとえいまおっしゃった後半の御答弁を仮にワンクッション入れたとしても、最終的にそのような委員にひとつ選んでいくということをぜひとも御検討をされるように、ここで強く要望をしておきたいと思います。  次に、運輸省の意見のとおり値上げの時期というものが申請案よりもずらされた場合、国鉄では二百五十億円の減収になるということを言っておりますが、運輸省では、特急あるいは急行等の料金値上げ、あるいは通学定期そのものの割引率、この引き下げ時期をおくらせたことによって申請案よりも利用客の増加が見込める、このように言っておるわけですけれども、そんな簡単なものなんだろうかと私は思うわけです。単に特急とか急行等の料金値上げとか、繰り返しますが、通学定期割引率の引き下げ、その時期を単におくらせただけでもって利用客はふえるなんというのは私はとても考えられない。それでも、減収となる場合には経費の節減であるとかあるいは営業努力で吸収させるというふうに言っておりますけれども、果たしてこの計画のとおりに実行できるのか、この点も私は大変疑問に思うわけです。  国鉄財政は五十年、五十一年の両年度でそれぞれ九千百四十億円余りの赤字を計上している。五十二年度も同程度赤字です。これは予想されているわけですね。さらに五十三年度も当初予算段階で値上げによる増収分が約二千五百五十億円を見込んでもなおかつ八千百七億円もの赤字が計上されておる。今回の三段階値上げの修正によって赤字額はさらに膨大になるわけですけれども、この点についてどう考えておられるのか。また、経費の節減とか営業努力、こういうもので減収分を吸収すると言っておられますけれども、一体具体的にどのようにするのか、この点についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  152. 林淳司

    ○林説明員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘がありました運輸大臣の意見表明でございますけれども、今回の運賃改定は法定制緩和後初めてのケースでございます。そういうことで、改定内容につきましては利用者への影響ということについて十分に配慮する必要がある、こういうことで特に運輸大臣からこの運輸審議会の諮問に際しまして、三段階に分けて実施した方が妥当ではなかろうか、こういう意見表明を行ったものでございます。仮にこの意見表明どおりの変更が最終的に行われることになるかどうかわかりませんけれども、仮に行われたという場合には、ある程度の減収が生ずるか、あるいは結果的に乗数効果があらわれて増収になるか、その辺のところはわかりませんけれども、仮にある程度の減収が生じたといたしましても、現在の経済情勢から見ましても非常に物価等が鎮静しておるという状況から見まして、今年度の国鉄予算の執行に特段の支障を生ずるということはないであろうというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  153. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これは、物価の面で鎮静しているから運賃の値上げ云々がそれほど影響ないような御答弁ですけれども、こういった公共料金の値上げというものは諸物価のつり上げに関連することぐらいは百も御承知だと思うわけです。  きょうは、国鉄の方、お見えになっておられないと思いますが、運輸省の立場からひとつお答えをいただければと思うのですが、国鉄再建の基本方針ですね。最近、自動車とかあるいは私鉄、航空機の急激な普及とかあるいは過疎化の進行、こういったことによって、国鉄が独占企業でありながらも、その輸送量は旅客あるいは貨物ともどもに年々減少の傾向をたどっている。こういったことから国鉄財政というものは累積赤字増の一途をたどっているわけですけれども、毎年このような運賃値上げとか、財政を中心としたいろいろな取り決め、それに応じて法律をつくるとか、あるいは改正するとか、いろいろな手段によって現在の経営を維持しているという現状であるわけですが、果たして来年度以降もこうした形の値上げを続けようとするのか。私は、運賃の値上げによる経営改善というものは限度があるのではないかと思うわけですけれども、本来ならば国鉄当局のお答えをいただきたいところなんですが、運輸省として、これまで国鉄がどのような施策赤字解消のために努力を積み重ねてきたと理解しておられるのか。また、五十三年度以降の国鉄再建に直接つながる経営のあり方はどのような経営であるか、これらについて具体的にお答えをいただければと思います。
  154. 林淳司

    ○林説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、国鉄の再建につきましては、昔から三本柱とよく言われますけれども、利用者の負担、それから国鉄自身の経営努力、それから国の財政援助、この三つの柱を適切に組み合わせていくということで再建を図ってまいってきたわけでございます。  それで、昨年の法定制緩和の際に、衆議院の運輸委員会で各党御相談になりまして、国鉄再建の基本方向というものが出されました。それを踏まえて、昨年の暮れに、予算編成の時期に、新たに閣議了解といたしまして、今後の国鉄再建の基本方針というものを決めたわけでございます。その考え方は、いま先生もちょっと御指摘になりましたが、今後の国鉄運賃値上げというものはある程度限界があるのじゃなかろうか。ある意味で、国鉄運賃というのは現在競争関係が非常に厳しくなっております。したがって、無制限に値上げをして、値上げによって国鉄再建を達成するということはもはや不可能であります。したがって、この際、三本柱の役割りというものをしっかりとつかむ必要がある、こういう考え方でございまして、そのうち、まず運賃値上げ、すなわち利用者負担というものは、毎年の客観的な意味における物価等の上昇による国鉄の経費増というものを吸収するのを限度とする。今度の法定制緩和法では、その限度において運輸大臣の認可にゆだねられたわけでございまして、その範囲内で運賃値上げを図っていく。そうすれば、当然のことながら、国鉄の収支は改善されません。いわば赤字体質というものは並行移動していく、こういうことになりますので、それについてはあとの二本柱、すなわち国鉄自身の経営努力といいますか、国鉄経営の抜本的な改善、それからそれに対応する国の財政援助、この二つの柱を適切に組み合わせていく必要があろう、こういうことで、今度の基本方針、閣議了解におきましても、五十三、五十四、この二カ年間かけて国鉄経営を抜本的に見直してみよう、その結果、国鉄として自立できる分野はどういう分野であるか、さらに、自立できないけれども、社会的要請その他の面でどうしても自立しなければならない分野というのはどういう分野であるか、そういう分野から発生する赤字というのはいわば構造的な赤字であるというふうに観念して、これは国が財政援助をしていく、こういうふうな考え方で今後二年程度をかけてじっくりと国鉄経営を見直してみよう、こういうふうになっております。私どもとしては、そういう方向でこれから本格的な作業を開始するということにいたしております。
  155. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまいろいろと再建についてお答えをいただいたわけですが、特に四十九年からの毎年の運賃値上げは、利用者にとって、国民にとって大変な影響を受けてきたわけであります。また、国鉄に対する国の財政援助措置、これも五十二年度は約四千四百五十七億円の予算措置が講じられているにもかかわらず、国鉄の財政というものは一向に健全な経営方向には推移していない。もうすでに手おくれの感さえあるわけなんです。最近、一部の学者とかあるいは公共企業体等基本問題会議、これらで提言しているいわゆる赤字線の多いローカル線の民営化、これについて真剣に検討してみる時期に来ているんじゃないかなと思うのですが、この問題についてはどのような見解を持っておられるか、お考えを持っておられるか、赤字路線民営化についてお答えをいただきたいと思います。
  156. 林淳司

    ○林説明員 お答えいたします。  赤字ローカル線の問題につきましては、基本的には、私どもは、国鉄の構造的な欠損部分一つであろう、こういうことで、これを一体どういうふうに将来持っていったらいいかということについて、すでに一昨年の秋でございますが、運輸政策審議会にお諮りいたしまして、現在、運輸政策審議会に小委員会を設けていただいておりまして御審議をいただいておるという段階でございます。昨年の一月に中間報告をいただいたわけでございますが、基本的には、できるだけ地方の意向、地元の意向というものを尊重して、各ローカル線の身の振り方を考えていただくという方向でものを決めたい、こういうことで中間報告をいただいたところでございますけれども、いずれ近いうちに最終答申をいただきまして、その上で五十三、五十四年の二年間に国鉄再建の見直しの一環として地方交通路線対策というものを考えてまいりたいというふうに考えております。  それで、いまちょっと御質問ございました点につきましては、各界でいろいろと議論が行われておりますが、現在、公共企業体等基本問題会議で三公社五現業の経営形態というものが審議されておりまして、その結論等について新聞紙上でいろいろ伝えられておりますけれども、まだ結論が出ておりません。近々出るというふうには聞いておりますが、その結論を得た上で、そういう問題についてはどう対処したらいいかということを考えてまいりたいというふうに存じております。
  157. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 地方交通線の問題ですけれども、五十二年度の予算では、地方交通関係線の補助として約三百億円を計上しておるわけですが、一方では三十一線区千三百五十キロに及ぶ赤字線というものを建設しようとしている。こういう計画ですと、赤字を補助する反面、赤字を生み出す、こんな経営を進めようとしていると言わざるを得ないのですけれども、こういう矛盾に対して関係当局の見解というものはどうなのか、この点をお答えをいただきたいと思います。
  158. 林淳司

    ○林説明員 恐らく、御指摘はAB線と呼ばれる地方新線であろうかと思いますけれども、これにつきましては、現在のところ、毎年約三百五十億程度予算をもってぼつぼつ建設を進めておるということでございまして、やはり将来どう考えたらいいか。一方において地方の要望が大変強い、しかし一方において赤字が出ることはわかっておるというようなことで、少なくともそういう線をつくることによって国鉄の負担がふえる、要するに、国鉄の財政が悪化するということがあってはまずいだろう、そういうことで、すでに現在動いておる地方交通線の対策の一環、これと同じような考え方で、それに準じて赤字を何らかの形で解消する。少なくともできるだけ国鉄の負担にならないような方向で、既存の地方交通線と同じ次元でこれに準じた措置を考えるというふうにしたいと考えております。
  159. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 赤字を補助する反面、一方で赤字を生み出すと私は言ったわけですけれども、こういう矛盾は絶対にあってはならないと私は思います。お答えの中に、赤字を何らかの形で解消するという表明もありましたけれども、この何らかの形というところに問題があるわけで、私が先ほど指摘したように、赤字とわかっている路線の建設自体に問題があるわけですから、いまここではこの問題だけを詰めるわけにいきませんので、別の機会にまた詰めることとして、次の問題に移ってまいりたいと思います。  ことしも労働者のベースアップが、円高あるいは不況等が影響をして例年にない低額ベア下において、今回の国鉄運賃値上げ案が申請どおり七月一日から、運輸大臣の裁断による三段階方式で、平均一六・六%値上げをされて、また私鉄等も秋には追随する動きのようですけれども、こういうことでは運賃主導の公共料金アップ、民間諸物価追随インフレの繰返しが恒常化してしまうおそれがあるのではないかと私は思います。特に国民の家計に与える影響は過大である。運賃値上げによる消費者物価へのはね返りというものを果たしてどの程度と見ておられるのか、消費者物価指数に占める運賃のウエート、これらについてもこの際伺っておきたいと思います。
  160. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 国鉄から申請のありました運賃値上げについて、消費者物価へ与える影響を計算いたしますと、およそ〇・二%程度になるのではないかと思っております。
  161. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 〇・二%という数字が果たしてどのような生活実感と結びつくのか、言いかえれば、生活実感からもとてもそのようなものではないのではないかと思うわけですけれども、きょうはこういう基本的な問題だけについてとどめておきますが、そのほかの公共料金について今後の値上げをどのように予想しておられるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  162. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 五十三年度の公共料金につきまして現在申請が出ておりますのは国鉄運賃でございます。今後どういう公共料金の改定が出てくるかについては、いろいろの話がなされておりますけれども、具体的な申請の段階を迎えませんと私どもとして明確なことを申し上げることはできないわけでございます。  ただ、全体の消費者物価に対する公共料金の寄与度と申しますと、五十二年度の実績が先般出てまいりまして、全体として大体一・三%台の数字になってきたわけでございます。五十三年度につきましては、ただいま申し上げました国鉄運賃の問題、それから国立学校授業料が予算関連の公共料金として出ております。その他についての見通しというのはなかなかむずかしいわけでございますけれども、全体として公共料金からの消費者物価へ与える影響については、大体五十二年度の範囲内、そういうところが一つの目安になるのではないかと考えているわけでございます。
  163. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、貨物部門の赤字解消について触れたいと思うのですが、国鉄の貨物というのは長年にわたって、公共負担の名のもとに多くの採算割れの輸送を強いられるなどして、近年になってからの設備投資の不足による輸送近代化のおくれとか、あるいは経済高度成長に伴う産業立地条件の変化とか、さらには産業構造の変化等の要因が重なって、利用者は年々減少をして、収入の伸び悩みが続いているわけでありますが、この国鉄の赤字の大半がですから貨物輸送である。五十年度を例にとってみても、赤字総額は九千百四十七億円。そのうち貨物の赤字額は五千百四十一億円。これは全体赤字の五六・二%を占めているわけです。また五十一年度以降の決算においても膨大な赤字が予想されていますけれども、今回の値上げ案でも、トラックとの競争の関係上、旅客運賃の方は二八・六%、特に通学定期は四〇・八%の値上げである。これに対して貨物運賃はどうかというと、五%という値上げ率である。国鉄が公社制度になって以来、旅客あるいは貨物合わせて一兆八千億円余りの財政措置等を講じてきているにもかかわらず、貨物部門の赤字は年々増大するばかりである、こういうことなんですが、国鉄としては赤字解消のために、いままでどのような合理化諸施策を立ててこれを実行してきたのか。先ほど申しましたように国鉄の方がいらっしゃらないわけですけれども、当然将来の展望があってしかるべきだと私は考えるわけですが、先ほどからお答えをいただいておりますので、運輸省の方から御意見として、将来の展望についてどう考えられるか、ぜひこうあるべきじゃないかというところを聞かせていただければと思います。
  164. 林淳司

    ○林説明員 御指摘のとおり国鉄の貨物というのは大変な赤字を出しておりまして、国鉄の赤字要因の中で一番大きな問題であるということでございます。従来から貨物部門につきましても一般的な合理化施策はいろいろとられてきておるわけでございますけれども、その一般的な合理化程度ではとても間に合わない、こういうことで、現在国鉄の方では当面固有経費で収支均衡する——固有経費と申しますのは、先ほど五千億の赤字とおっしゃいましたのは実はこれは共通費の配分が入っております。共通費の配分のうち一部は入っておりますけれども大部分は除外して、少なくとも貨物の部門だけで把握できるいわゆる個別費というものを中心とした固有経費というのがございますけれども、その固有経費においては少なくとも収支均衡させるということを当面の目標といたしまして、国鉄の方で五十五年度を目標として新たな合理化計画を現在進めておるところでございます。ことしの十月、それから五十五年十月の二段階に分けて、最終的には五十五年度中に固有経費を収支均衡まで持っていくということで、たとえば列車キロを約二五%削減するとか駅の集約とか操車場、ヤードの集約とかいうふうな諸般の合理化施策を五十五年にかけて実施をしていく、こういうことで現在進められておるわけでございます。
  165. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは競争面における不公平の是正について一つだけ伺いますが、国鉄は税制面においても、たとえば固定資産税負担が挙げられます。市町村納付金という名目で、五十二年度においても百九十二億円、五十三年度予定が二百六億円、こういった金額を路線等の保有のために支払っているのに対して、一方道路については、道路公団の高速道路でもこのような負担はないわけです。特に自動車との関係について、運賃制度、経費分担方法あるいは税制等といったものは著しく異なるわけですけれども、こういった公正を欠くというか、監督行政そのものについてやはり改善を図る必要があるのではないかと私は思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  166. 林淳司

    ○林説明員 市町村納付金でございますけれども、これは国の場合も同様でございまして、国の場合は所在市町村交付金というのがございますけれども、大体普通の固定資産税の半額程度のものを国あるいは公社として払うことになっております。これつきましても、私どもとしては、やはり国鉄の経営が非常に苦しい、こういうことで毎年度税制改正に際しましては自治省と十分改正についてのいろいろな御相談をいたしておりまして、全面的にこれをやめてしまうということはなかなかむずかしいと思いますけれども、いろいろ理由があることについては、市町村納付金をさらにまた軽減していく、二分の一よりさらにまた軽減していくというふうな措置も幾つかとられておるわけでございまして、今後もそういうことで自治省とも十分相談してまいりたいというふうに考えております。
  167. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 国鉄関係はこれで終わりたいと思うのですが、最後のところで宮澤長官に一言御意見として伺いたいのですが、いまや値上げだけでは今後対応できないと私は考えるわけですね。国鉄の運賃を値上げしていればいいというだけのものではない、競争条件はますます悪くなってきているわけですが、こういった実態に対して政府の今後の対応策というものを明確に示していくべきではないか、十分そういった対応を講じていかなければならないのではないか、このようにも思うわけですが、大臣としてこの問題についてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国鉄財政の再建につきましては、従来からしばしばいろいろ各方面の知恵を集めながら御議論があったところでございます。他方で、しかし先ほど仰せになりますような、また新線についての需要もあるということで、容易なことではないのであろうと思いますけれども、とにかく従来から考えてこられましたような線の上で政府としても国鉄としても努力をするということに尽きるのではないかと思っております。
  169. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは次に、輸入代理店契約と並行輸入の問題に関連をして伺っていきたいと思います。  公取ではこの並行輸入に関して昨年来調査を進めてこられて、その結果を昨年十二月十三日に発表したわけです。また、本年三月には独占禁止懇話会にも報告が行われたようでありますが、これによりますと、輸入総代理店ルートの品よりも並行輸入の品物の方が三割前後、ひどいものになりますと五割以上も安くなっていることがわかったわけですが、並行輸入品が輸入品全体の価格に対してどの程度の影響を与えていると公取では判断をしておられるか、物価問題にかなりの好影響をもたらしているとも判断をしておられるかどうかですね、この点をお答えいただきたいと思います。
  170. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 並行輸入と輸入品の価格水準の関係でございますが、これにつきましても私どもは端的に申し上げますと、価格水準そのものを直接問題にするわけではございませんで、要するに商品が自由に流通できる、値段と品質によりまして公正に競争できる条件を確保するということが眼目でございまして、並行輸入を不当に阻害する行為というのはそういう自由な流通、公正な競争を妨げる行為であるということで取り締まっておるわけでございます。  それで、影響の点につきましては、これはやはり輸入元の方で輸入総代理店制というものを、特に日本に対してだけではなくて大体主要な輸出先に対してとっておるようでございまして、外国の輸出元が外国におきましてそういう政策を決めてやること自身はどうしようもない。ただ、わが国にやって参りまして、わが国の販売業者に対しましてそういう並行輸入が自由に行われないような拘束をかけるということになりますと、わが国の独禁法との関係で問題になるということでございます。したがいまして、やはり流通のパイプといたしましては、この並行輸入ルートというのはあくまでもサブでございまして、サブがメーンにとってかわるということは客観的にはなかなかむずかしい、期待しがたい状況があるのではないかと考えられるわけでございます。したがいまして、その並行輸入の洋酒につきましても調査を行いまして、オールドパーにつきまして並行輸入を不当に阻害する行為があったということで、そういう行為をやめるように審決を出したわけでございますけれども、これも直接の効果として期待でき得ますのは、要するにオールドパーの日本の輸入総代理店でございますオールドパー株式会社に対しまして並行輸入を不当に妨げる行為をやらないようにということでございますので、結局オールドパーにつきまして安い並行輸入物がそれだけ自由に扱えるような状態がつくり出されたというところが直接の効果ではなかろうかということでございます。  末端の価格を本年一月と五月に私どもちょっと調べておりますけれども、末端の価格については動いてないという結果でございます。  ただ、この措置をとりました結果、この商品につきましては数量的には自由に扱えるようになっているはずでございますので、出回り量はふえているんじゃなかろうか、それだけ消費者にはその効果が及んでいるのではなかろうか、こういうふうには考えております。
  171. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 確かに、並行輸入品の割合はまだまだ少ないのではないか、それだけに市場価格を支配するだけの力がないということにもなると思いますが、物価の見地からすると、これは当然育てていかなければならない、このように思います。そのためには並行輸入の阻害要因があってはならないということで、ただいま御答弁にもいろいろあったようですが、円が三〇%も切り上がっているのに輸入品価格が目に見えて下がらない、実感として円高効果が物価に生きてこない、こういった不満が消費者には強く出ていることは言うまでもないわけです。そういった中で、ただいまお話のあったオールドパーの問題、昨年暮れにオールドパーの独禁法違反事件が公取によって摘発をされたわけですけれども、公取の並行輸入調査ではオールドパーの価格はどうなっていますか。総代理店ルートのものと並行輸入のものの価格をこの際聞かせていただきたいと思います。
  172. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 私どもで調べましたところでは、先ほどもちょっと触れましたが、本年一月に総代理店ルートのもので末端価格七千五百円が本年五月におきましてもやはり七千五百円、それから並行輸入物につきましては、これもやはり一月、五月、値段は動いておりませんで、五千四百円、こういうことになっております。
  173. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと大体七〇%程度、七三%ですか、言いかえれば並行輸入物の方が大体二割五分と言っていいかと思うのですが、この程度安いわけですね。  そこでこのオールドパー株式会社ですけれども、このオールドパーの価格を維持するために、特約店に対して、並行輸入品を取り扱っているところの小売店、こういった者にオールドパーを納入してはならない、こういう約束をさせて、もしこれに違反したら出荷を停止するというような威圧をかけてきたということ。そこで伺うわけですが、このオールドパー株式会社はオールドパーの輸入総代理店として輸出国の会社との間で国際契約が当然結ばれていると思いますが、公取の方への届け出が行われているのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  174. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 オールドパーの関係の輸入代理店契約でございますが、イギリス側の当事者はマクドナルド・グリーンリース社でございまして、日本側がオールドパー株式会社。この輸入代理店契約は四十九年八月二十日に締結されております。私ども委員会の方へ届けられましたのは昨年、五十二年の十二月二十六日でございます。
  175. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま伺ってみますと、締結された時期が四十九年八月の二十日ですか。
  176. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 そうです。
  177. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうすると、届け出まで五十二年ですから三年間ですね。年間五千件にも上る国際契約ですから、国内業者そのものが行うところの国際契約すべてを公取において把握するということは非常に困難であります。もう不可能に近いということかもしれませんが、そのために、独禁法六条二項において業者に契約成立の日から三十日以内に届け出る義務等も課しているわけなんです。先ほど御答弁いただいた中から見ますと、オールドパー株式会社が届け出たのは契約締結から三年以上もたっている。三十日以内に届ける義務を課せられながらも、三年以上もたってやっとこの届け出が行われた。届け出のおくれた理由が何かあるのじゃないか。当事者はこれについてどのように説明しているかわかりませんが、おくれた理由についてどのように理解しておられるか、御説明をいただきたいと思います。
  178. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 実は、このオールドパーの国際契約の届け出は、私どもは昨年十二月十三日に、並行輸入を不当に阻害している疑いがあるということで立入検査を行ったわけでございます。その後におきまして、会社側で届け出をしていなかったということで届け出があったという経過がございます。どういう理由であれされたかということにつきましてはちょっといまつまびらかにはいたしておりませんが、とにかく法律の規定からいたしますと大変おくれた結果になっておる。ただこの届け出につきましては、届け出義務の遅滞がございますと罰則の規定もございますけれども、罰則規定を設けましたのはあくまでも届け出を励行させるという趣旨でございまして、その事実を承知いたしまして督促して届け出があれば一応目的は達成されますので、故意の非常に悪質の場合は別といたしまして、私どもといたしましては、一応届け出があれば従来の扱いとしてはそれを不問にいたしておるということでございます。
  179. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、たとえば事務上の手違いか何かで届け出がおくれた、仮に事務上の手違いだとしてもそんなものは理由にならないわけですけれども、いまの御答弁からいきますと、いつまでたっても出てこないものに対して一応は指導した。それに対して初めて届け出をしてきた。届け出をした以上は、特に悪意がなければそれは構わないというふうに解釈されるわけですね。これじゃ一体何のための三十日かわけがわからない。この点どうですか。
  180. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 まさにそのとおりでございまして、私ども日ごろから機会あるごとに届け出義務のあることを周知いたしまして、届け出の必要がある会社には法律の規定によりまして届け出てもらうように指導いたしておるわけでございます。  洋酒につきましては、実は昨年九月七日に日本洋酒輸入協会に対しまして届け出の励行方について要請をしたという背景もございまして、その後本年三月末までに四十七件ばかり届け出がなされておるわけでございます。まあ、他の部分は期間を経過した後になされたものでございます。いろいろ注意をいたしておるのでございますけれども、会社の方も関係者におきまして届け出義務があることを知らなかった、あるいは末端の事務上の手違いであった、あるいは契約そのものが届け出義務の対象となることについて誤解しておったというふうなことで届け出をしていなかったケースが多いようでございます。
  181. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 三年後に届けられた事実に対して、オールドパーが全くそういうことを知らなかった、だから届け出なかったというふうに私はどうしても解釈できないし、故意にそういった届け出を行わなかったと見ていく方が間違いがないのじゃないか、こんなふうにむしろ思うわけです。そしてオールドパーは、さきに公取によっても指摘された独禁法違反のほかに、いまおっしゃられた届け出義務を怠ったという独禁法違反も犯しているわけで、こういうことは私は断じて許すべきでないと考えるわけです。  国内業者がいろいろな国際契約を結ぶ、それを一々全部公取が把握するということはあるいは不可能に近いと言われるかもしれませんが、洋酒の輸入業界全体に対してどのような指導が今日までなされてきたのか。届け出だけじゃなくて日ごろどのような指導をしておられるのか。四十七件ですか、何か届け出があったように先ほど伺いましたけれども、オールドパー以外の主なブランドで届け出があった中で、いつごろその指導に対して届け出を行ってきたか。この状態では三十日以内ということは当然考えられません。どのぐらいの期間届け出を放任していたか、その辺についてわかる範囲でお答えをいただきたいと思います。
  182. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 洋酒の関係につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、昨年の九月に業界の団体に対しまして届け出義務の励行方について会員に周知徹底をするように要請したわけであります。その効果がありましてかなり届け出があったわけでございます。それとはまた別途に私どもの方で主要な銘柄につきましてチェックも行ったわけでございます。その場合に、私どもチェックいたしました時点で、指導方要請後届け出がなかったものが若干ございました。二、三挙げますとジョニーウォーカー、これはコールドペックという会社が総代理店でございます。あるいはカティサーク、これはカティサーク・スコッチウィスキーという会社でございます。こういった有名な銘柄についても届け出がないというあれがございましたので、早速こういったケースにつきましては会社の責任者に来ていただきまして、届け出が行われていなかった事情につきまして厳重に問いただしまして、今後こういうことのないよう会社側の書面によりましてきちんとしたお約束をいただいておるということにいたしております。
  183. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ジョニーウォーカーと言われましたが、これは私の方の資料によりますと、契約の締結時期は四十九年十一月、カティサークの方が四十六年五月ということになっているわけです。くどいようですけれども、この二つのものについて、それではそういった指導に対してどういう結果をもたらしたか、いつ届け出が行われたのか、何か資料があればお答えをいただきたいと思います。
  184. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 この届け出義務を怠った事例につきましては、先ほど申し上げましたように厳重にその事情につきまして調べまして、その理由、今後の措置についての会社側の態度といいますか考え方というものを、いわゆる始末書といいますかそういうふうな形で出していただいておる。そして先ほど言われました件につきましてもそういう形で措置をとっておるはずでございます。
  185. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 恐らく四十九年とか四十六年の契約時期ですから、そのような始末書云々ということをもってかえるに仮にしても、大変な期間がたっていると言わざるを得ない。輸入洋酒の業界で約五十件も国際契約の届け出がおくれていた、独禁法に違反していたということでありますが、まことにけしからぬ話だ、このように私は思います。  それでは、この五十件の国際契約の中に競争制限的なもの、これはなかったか、また、独禁法に触れるおそれがあるということで、公取が修正な指導したものはなかったかどうか。この点はいかがでしょう。
  186. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 届け出られました契約書を審査いたしまして、その結果問題の条項、不公正な取引方法をねらいとする事項であるとか、あるいは不当な取引制限に該当する事項でございます。この関係で問題があるということで指導した件数が若干ございます。その中には並行輸入の阻止の条項をつけたものあるいは競争品の取り扱いの制限を禁止しておったもの等がございます。
  187. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 大変くどいようですけれども、独禁法違反して届け出もしない。しかもその契約の内容に独禁法違反のおそれがある。そのようなものが二年も三年もして公取の指導があるまで放置されているということ、これはもう許してはならないことだと私は思います。  輸入総代理店は、昭和四十五年に大阪地裁におけるパーカー事件判決ですね、これが出るまでは当該商品の輸入というものを独占をして、したがって、当該商品に関する限りは国内市場というものを独占をしていたわけで、いまでもそのころの体質というものが残っていると言わざるを得ないわけです。だから、オールドパー事件も例外ではないと私は思うわけですが、公取は今後とも国際契約等の届け出義務違反についても甘く見るようなことのないように断固たる処置をとるべきである、このように思いますが、一言お答えをいただきたいと思います。
  188. 妹尾明

    ○妹尾(明)政府委員 まさに御指摘のとおりでございます。ただ、大変件数が多いのが実情でございまして、なかなか手の回りかねる点もございますけれども、あくまでも法律に定められているとおりに厳重に届け出の励行方を図りまして、それで提出されました契約書につきましては、並行輸入の不当な阻害の禁止条項等、独禁法違反に該当するような内容のもののないよう十分に指導、是正するように努めてまいりたいと思います。
  189. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、この問題で最後に企画庁長官伺いますが、並行輸入、これは先ほど述べましたとおり物価の見地からしても物価の安定に好影響を与えるという意味で、やはりこれを育てていかなければならない、このように思います。これを積極的に育てるということについて経企庁が中心となって進めていかれるべきではないか、このように考えますが、いかがでしょう。この点を伺って、一応これに関しての質問は終わりたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる円高になりましても、取引が自由であります場合には、比較的円高が、競争関係の自由な場合には反映されやすく、そうでない場合には反映されにくいことが一般に見られておりまして、反映されない一つは、やはりいわゆる総代理店契約によるところの独占的輸入の場合が競争の自由でないというケースの一つでございます。これにつきましては、公取にもいろいろ努力をしていただいておるわけでございますが、先般経済対策閣僚会議を開きました際にも、円高の利益還元の問題の一つとして並行輸入あるいはそれに準ずるような取引の競争化について、十分政府としてもその実現に向かって行政上の努力をする、また、公取に対しても従来からの努力を引き続きお願いをするということを決定いたしましたようなわけでありまして、私どもとしても御指摘のように大切な問題と考えまして行政の努力を続けてまいりたいと思っております。
  191. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 もう一つのテーマについて御質問を行おうと思いましたが、ちょっと時間的に恐らく中途になるのではなかろうかと思いますので、きょうはこのところでひとつ質問を終えておきたいと思います。大変ありがとうございました。
  192. 美濃政市

    美濃委員長 次回は、来る六月六日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時六分散会