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1978-04-20 第84回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 美濃 政市君    理事 加藤 紘一君 理事 片岡 清一君    理事 平泉  渉君 理事 堀内 光雄君    理事 金子 みつ君 理事 武部  文君    理事 中川 嘉美君 理事 米沢  隆君       愛知 和男君    鹿野 道彦君       島村 宜伸君    関谷 勝嗣君       中西 啓介君    中村  靖君       鈴木  強君    西宮  弘君       長田 武士君    宮地 正介君       田中美智子君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画政務次         官       前田治一郎君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         参  考  人         (電気事業連合         会会長)    平岩 外四君         参  考  人         (石油連盟会         長)      石田 正實君         参  考  人         (日本銀行理         事)      中川 幸次君         参  考  人         (日本瓦斯協会         会長)     安西  浩君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   三谷 秀治君     東中 光雄君 同月二十日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     田中美智子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 美濃政市

    美濃委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本瓦斯協会会長安西浩君、石油連盟会長石田正實君、電気事業連合会会長平岩外四君に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多忙中のところ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、物価問題全般にわたり調査を行っており、特に、本日は円高による為替差益消費者還元する問題につきまして調査することになっております。参考人各位にはそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鹿野道彦君。
  3. 鹿野道彦

    鹿野委員 昭和五十二年から急激なる円高現象が起きてまいりまして、とにかくアメリカが怒っておるんだ、あるいは諸外国が日本に対して大変な怒りを持っておるんだ、こういうふうなことで、これは大変だというようなことから、あれよあれよという間にもう二百二十円を割るような状態になってきておるわけであります。そこで、輸出産業の方はまことに大変だ、また一面においては何百億ももうけておるところがある。こういうふうな中において、とにかく円高ショックまた円高不況というような活字がまことに目立っておる現象でございます。  そこで、そのような中において一般的には円高というものはわが国にとってまことに不都合なものとしてだけとらえられておる傾向がありまして、何となく国民もわからないような状態にあるんじゃないか。しかし、この現象はとにかく日本経済力が強まったからこそ起きた現象でありまして、競争力の弱い輸出産業というふうなものは本当に大変な状況に追い込まれておるわけでありますが、長い目で見た場合に大きなメリットもあるわけであります。その点をこの際もうはっきりとして、そして国民に理解しやすい形で、わかりやすい形で政策面に結びつけていかなければならないんじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、そもそも円高というものは日本事情によって生じたのか、それともドル安の結果なのであるかという素朴な疑問があるわけであります。この辺の見解宮澤長官からお聞きしたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円高がどちらの事情によって生じたのかというお尋ねでございますが、基本的にはこれはいわばコイン裏表というような関係でございますから、非常に厳格にそれにお答えすることはむずかしいことではないかと思いますけれども、経緯を顧みてみますと、昨年の初めに二百九十円がらみであった円というものは、現在のわが国経済の力から言えばあるいは過小評価であったのではないかというふうに思われます。しかしながら他方で、この二月中旬以降の急激な円の変動というものは、どちらかというと私は相場的な様相がかなりあったのではないかと考えております。  その背景として考えられますことは、わが国経常収支黒字が相当大きくなっておった。しかし、そこへこの円高が趨勢として起こりましたので、いわゆるJカーブと言われるような現象、つまり輸出を急ぐ、輸入をおくらせるというような典型的なJカーブ現象が二月ごろにはもうはっきり出てまいりましたし、また、年度末で船積みを急いだこともあるかもしれませんし、夏ごろには米国で西海岸の港湾のストライキがあるというようなこともあるいは原因であったかもしれません。しかし、根本的にはこれはやはりJカーブの典型的な形が出たものと考えておりまして、それがまた翌日の円高を呼ぶというようなことであったと思いますので、どうもここは相場的な要素が相当濃かったのではないだろうかと見ております。恐らくは今年の遅い夏あるいは秋の初めごろにはわが国経常収支黒字幅というものが縮小の傾向に入ってまいると見ておりますので、そういたしますと、そのときあたりにやや落ちついた円の相場というものが生まれてくるのではないだろうか、こんな見方をいたしております。  他方で、米国側主張から申しますと、現在の大きな貿易収支赤字というものは、エネルギープログラムが成立しないということに関係がある。これが一番大きな原因であるというふうに申しておるわけでございますから、エネルギープログラムがやがて成立いたしますと、その一つ要因は除かれる。それは米国側主張によれば、それによってドル価値は強くなるはずである、こういう主張。この点は、エネルギープログラムができましても急に石油輸入が減るというふうには期待できないところでありますけれども、かなり長年放置されておりましたこの問題が法的に片づく体制を整えるということで、心理的にドル価値を増進するのに役立つということはあろうかと考えます。恐らく数週間あるいは一、二カ月でございましょうか、米国エネルギープログラムが何かの形で成立するというふうに期待していいのではないかと考えております。
  5. 鹿野道彦

    鹿野委員 いま長官から、コイン裏表だ、こういうふうなお話がありました。確かにこの円高、またあるいはドル安というものはいろいろな要因があると思います。しかし、私は、アメリカ考え方というふうなものについてまことに疑問に思っておるわけであります。要するに、貿易赤字というふうなものは、石油輸入の急増あるいはEC日本との間の景気のずれなどからであって、要するにアメリカ国際競争力の低下で、ドルの弱さを反映しているのじゃないんだというような公式見解、また、経常収支赤字を補うのに十分な資金が自動的にアメリカに還流してくる仕組みになっているから、決してドルは弱いということではないんだ、こういうふうなことでありますが、私は、ここに問題があると思うわけであります。確かにアメリカから流出したドルというものは自動的にアメリカに還流してくる仕組みにはなっておりますが、その還流する過程において円買いやあるいはマルク買いに向けられるとドルは下落するわけでありますので、経常収支赤字であるということは、結局見合いのドル需要がないというふうなことになるのではないか、こういうふうに思うわけであります。そこで、アメリカドル防衛に対する姿勢というふうな問題、やはりわが国米国に対してもっと積極的にその対策を求めるべきではないか、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども鹿野委員と同じような感じを持っておりまして、従来からアメリカに対してその呼びかけはいたしておるわけでございます。それはわが国ばかりでなく、西ドイツにおいても、ECにおきましても、同じような考え方は基本的には存在しておるわけでございます。ただ、結局この点は基軸通貨としてのドルを出しております米国の国際的な責任ということに帰着するわけでございますけれども、御承知のようにこの問題は、米国大衆はもとよりでありますけれども政府議会指導者の中でもなかなか基軸通貨に伴う責任というものは十分に理解されていないうらみがございます。ことに大衆はほとんどその問題に関心を持っておりませんから、国内の政治問題として取り上げられる場合が非常に少のうございます。私どもがいま米国に申しておりますことは、基軸通貨国としての国際的な責任ということを自覚してほしいということを申しておりますので、最近になりまして識者はそのことについて少しずつ認識を深めておるようでございますけれども、しかし、それに対しまして返ってまいります答えは、やはり基本的に、米国ドル価値を弱めているもの、すなわちそれはエネルギープログラムが成立していない、あるいは米国国内的なインフレ農産物等関係で多少進行しておるというようなところに根本的な原因があるのであるから、それについてまず自分たちが適当な処置をとりたい、まずそれが優先する問題ではないかと、議論はいつもそのように展開をいたしてまいります。私どもとしては、その基本的な問題もさることながら、その解決に時間がかかる、その間にわが国のような国はやはり被害を受ける、そこのところが問題であるのだというような議論をやりとりをいたしておる。少しずつ米国側にもその認識は深まってまいったと思いますし、そのような形で、先般大領統が演説で言われましたように、エネルギー法案あるいはエネルギープログラムの早期の実施、国内インフレ対策等々に着手をするというふうに米国としては動いておる。でございますから、もしボン頂上会談までに米国エネルギープログラムをつくり得ないということになりますと、これは、頂上会談参加国は、わが国を初めとして、やはり相当米国に対して物を言わなければならないことになると思いますが、そのことは米国承知であろうと思いますので、その段階までに議会によって、あるいは場合によっては行政府によって、何かのエネルギープログラムが成立するであろうというふうに考えておるわけでございます。
  7. 鹿野道彦

    鹿野委員 円の急騰というふうなものを何とか抑制しようというふうなことで、昨年からいろいろ手を打っておられるわけです。内需拡大策を中心とした超大型予算とか、あるいは円の急騰の真っ最中に公定歩合を引き下げるとか、あるいは日銀の介入等、いろいろやられておるわけでありますが、これといってなかなかうまくいかない。いろいろな手を打っても円は急上昇した、こういうことであります。こういうふうな段階に来ますと、もはやわが国としては、ある程度円高というものを容認するか、あるいは輸出というものに対して何らかの直接規制を加えるかというような、二つの道をどちらか選ぶきりないのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。それとも、お聞きするところによりますと、宮澤長官は、通貨安定策ローザ構想よりももっと緩やかないわゆる管理フロート制というふうなものを積極的にお考えになられておる、こういうふうに聞いておるわけでありますが、その辺の御見解をお聞きしたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、先般御審議いただき成立しました予算に示されますような財政主導型の公共事業、それによって内需を起こしていくということが、やはりわが国としてとるべき基本策であると思います。それと同時に、しかしこれらの施策が効をあらわしますのには多少の時間がかかりますので、緊急輸入等もやる、あるいはまた、好ましくないことではありますけれども所管大臣におかれて、ある程度主たる品目の輸出を前年度並みぐらいに数量行政指導をしていくというようなことも、やはりあわせてやりつつございます。それは、多少の時間はかかりますけれども、やがてわが国輸出入の傾向にいい影響をあらわすであろうと見ております。  私がルースな意味での各国の共同介入というようなことを申しました主たる目的は、どういう構想をとるかということが大事なのではなくて、少なくとも米国基軸通貨国としての責任感というものがもう少し明確にならないと、相手国は非常に迷惑をしておるということを米国政策当事者に呼びかける必要がある、こう思いまして、何かの形でそれを伝えたい、それが主たる動機であったわけでございまして、具体的に、いつ、どういうことをしたいということを申したわけではございません。日米首脳会議から七月のボン会議までを見通しまして、基軸通貨国としての米国責任というものを注意を喚起したいというのが、主たる目的であったわけでございます。
  9. 鹿野道彦

    鹿野委員 そうすると、五月の福田総理カーター大領統との会談において、いわゆる宮澤構想というふうな問題が取り上げられることになるというふうなことはどうでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私としては、ああいう発言をいたしました目的の大半はいまの段階ではほぼ達したというふうに実は考えておりまして、したがって、福田カーター会談でその具体策について議論があるということは期待をしておりませんけれども他方で、日本側がこの二月中旬以降、ことに非常な円高フラクチュエーションに遭いまして、むずかしい問題に遭遇しつつあるということは、米国政策当事者もかなりいまの段階になりますとよく知っております。したがって、そういう認識が向こうにありさえすれば先方としてもとるべき対策を急ぐということであろうと期待をしておりますし、また、それが十分でないときには、延長線上で、ボン先進国首脳会議でまた通貨の問題が問題にならざるを得ない、大体そういう雰囲気と申しますか、空気をほぼ醸成しつつあるつもりで私としてはいるわけであります。
  11. 鹿野道彦

    鹿野委員 そこで、このように円高というものが急ピッチで進んでおるわけでありますが、世の中で為替差益還元というものをぜひ促進すべきであるという声が非常に強まっておるわけであります。なぜ還元されないのだろうか、早くやってくれよ、こういう気持ちが非常に国民の中にまた産業界の中においても強いのじゃないか、こう考えるわけであります。  そこで、きょうはお三人の参考人の方がお見えでございますので、まず平岩会長さんにお聞きしたいのでございますが、電力会社の五十二年度における為替差益はどの程度であるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  12. 平岩外四

    平岩参考人 五十二年度の為替差益は大体九百二十五億円程度だと考えております。
  13. 鹿野道彦

    鹿野委員 この九百二十五億の差益をどのようになされようとしておるか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 平岩外四

    平岩参考人 現在、電力事業が抱えている大きな問題というのは三つございます。それは一つ需給の問題でございまして、もう一つ収支の問題、もう一つ資金の問題だと思います。  それで、いまわれわれが一番深刻に考えておりますのは、近い将来需給逼迫をして、その逼迫を何とか解決するために設備投資をやってどうしてもそれを切り抜けなければならない、こういう切実な問題を抱えております。しかしそれは、同時に設備投資を行わなければならない、こういう状態であるわけでございますが、その設備投資需給の問題とやはり反する関係にあると思います。需給逼迫解決するために設備投資を行い、それは収支を同時に悪化させていくという結果になるので非常に矛盾した関係になって、その辺が経営上非常に切実な問題でございます。したがいまして、今後続けていかなければならない大きな設備投資に対して、それをいかに有効に使うかというような問題がやはり一番重要な問題であると思います。できれば自分資金で一番効率のいい設備投資を行うようにすべきだ、こう考えております。  そういう意味から申しまして、本当はこの為替差益の問題、これは計算上出てくる問題でございますけれども、これを本来なら皆さん還元するという方法一つ非常にわかることでございますけれども、われわれといたしましては、一番いい還元方法といたしましてはそれを将来のために使って少しでも長く料金を安定させていく、これが私ども経営者が将来に対して負わされている責任の最大の解決方法だ、こういうふうに感じて信念を持っておるわけでございます。
  15. 鹿野道彦

    鹿野委員 需給の問題、収支の問題、資金問題等から一番いい方法還元をしたい、こういうお話であります。そこで、私たちを含めまして一般国民には、それだけの差益があるならば料金を引き下げたらどうか、こういう素朴な考えがあるわけであります。結局、このような差益をどのように還元していくか、やはり料金を下げるか、あるいは据え置きという形で将来のためにとっておくか、この二つのどちらかを選ぶ選択の問題であると思いますが、会長さんといたしましてはその辺のところをどのようにお考えになられておるか、ひとつわかりやすくお聞かせいただきたいと思います。
  16. 平岩外四

    平岩参考人 ただいま申し上げましたように、これを皆さんに返すということは、われわれとしても一番割り切れますし、よくわかる考えでございますけれども、それをやった場合にまたすぐ収支の悪化という現象を生じまして、返し、また値上げ、こういうようなことを繰り返さざるを得ないという心配があるわけでございます。返した場合に、近い将来、すぐまた収支は極度に悪化してまいりますので、これはなるべくそうしないで、長く安定させるということが最良の方法だ、そう考えておるわけでございます。
  17. 鹿野道彦

    鹿野委員 私自身もいまの平岩会長さんのお考えと同じように、公益事業としてはいかに長期的に料金を安定させるかということが大変重要な問題だと思うわけでございます。  そこで、たとえば産業界の中におきましても構造不況、その中で大変電力を消費するところのアルミなんかに対しては、特別な措置というふうなものができないのか、あるいは生活保護世帯に対して何か特別な措置ができないのかというふうな国民のまた産業界考え方もあるわけでありますが、それに対していかがでございましょうか。
  18. 平岩外四

    平岩参考人 ただいま御質問の構造不況業種及び生活保護世帯に対する配慮の点でございますけれども、この構造不況業種あるいは生活保護世帯というものに対しましては、われわれも公共事業として当然社会的に配慮をすべき問題でありますので、いろいろな面でできる限りの努力はいたしておりますけれども、これを料金の問題として処理をするということは、現在の料金のたてまえ上できないことであるわけでございます。たとえば構造不況業種アルミの問題でございますけれども、確かにわれわれは、同じ産業界として、いろいろの面でできるだけの御協力はいたしております。しかし料金でということは、たてまえ上これはなかなかできないことでございます。  特に一言ちょっと申し上げておきたいことは、これはよけいなことかもわかりませんけれども、たとえば構造不況業種であるアルミ産業、これは私ども電力会社から大体二割程度電気を買っておられまして、その八割は自分会社でつくっておられるわけでございます。したがいまして、私ども電気料金が高いということも一つあるかもわかりませんけれども、その八〇%程度自分会社でやっている事業でございまして、これは私ども料金の問題で解決するということは、いまの料金のたてまえ上これはできないことだと御理解いただきたいと思います。
  19. 鹿野道彦

    鹿野委員 そこで、料金据え置きの方向をとられるということでございます。ここで仮定といたしまして、五十三年度におきまして、OPEC値上げもなし、また二百二十円というレートで推移した場合にどの程度差益が出るか、そしてまたその差益が出た場合に、たとえば二年料金据え置きということをお約束していただけるかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 平岩外四

    平岩参考人 ただいまのお話の、現在の為替相場が続き、OPEC値上げが行われなかったという前提のもとでどの程度料金の維持ができるか、また、五十三年度でございますか、どの程度為替差益が出るかという点でございますが、九電力についてはまだはっきりとつかまえておりませんけれども、私ども東京電力といたしましては約八百億程度為替差益、これは前提が先ほどの前提としたらでございますが、そういうことになると思います。それから推定いたしますと大体二千億程度ぐらいが九社のあれかと想像いたしますけれども、これは私まだはっきりつかんでおりません。しかし、一方において大体六兆円の中の二千億なり、あるいは一兆八千億程度の八百億円という状態でございますし、また一方においてコスト増要因が非常にたくさんございますので、先ほどの仮定におきましては私ども五十四年度までは一部の会社を除きまして何とかがんばっていきたいと考えております。しかし、五十四年度というのは現実には非常に苦しい状態であるということを申し上げておきたいと思います。
  21. 鹿野道彦

    鹿野委員 とにかく国民にわかりやすく、理解できるような形で、いま会長さんがおっしゃられた実態というものをぜひお示ししていただきたい、そういう点に御努力をしていただきたい、またサービスの向上等に努めていただきたい、このようにお願いを申し上げる次第であります。  次に、石田会長さんにちょっとお聞きしたいと思います。  五十二年度における石油産業為替差益はどの程度でございましょうか。
  22. 石田正實

    石田参考人 お答えします。  石油連盟の方では、実は公取の問題がございまして価格関係の問題は余り扱っていないのでございまして、統計などもはっきりした数字を実は持っていないわけでございます。  なお、御承知のとおり各社決算はいろいろありまして、年末の決算もありますし三月の決算もあるのですが、三月の決算が大体主でございます。また、いまわれわれの石油会社は全部で三十六社ございまして、そのうち石油連盟に加入しているのが二十九社でございます。そういうことで、三月決算がそろいますと大体連盟で集計いたしまして毎年公表するということをやっておるわけでございますが、まだ三月末の集計ができておりませんし、それから各社の発表がまちまちでございまして、恐らく全部そろうのは六月の初めごろではないかと予想しているわけでございます。
  23. 鹿野道彦

    鹿野委員 民族系外資系でも大分違う、こういうふうなことを聞いておるのでありますが、外資系の方は差益が余っておりまして、民族系の方は逆にマイナスである、こういうふうに聞いておるのでございますが、その辺のところはいかがなんでございましょうか。
  24. 石田正實

    石田参考人 お答えします。  いまの石油販売数量から見まして、大体半分が民族系、半分が外資系でやられておるわけです。最近は外資系が少しふえておるようでございます。ところが、新聞紙上等で外資系の方が非常に利益が出ているというようなことが盛んに報道されているわけでございます。これにはいろいろ原因がございまして、これが果たして外資系民族系というような区別でいいかどうか、問題でございます。ただ、いわゆる外資系と言われる会社は古くから日本に出ておりまして、このガソリンの販売率が非常に高いわけでございます。ところが、御承知のとおりガソリンというのが石油の中では一番販売利益が多いわけでございまして、そういうわけで利益が相当出ているのではないかというのが主な原因ではないかと見ております。御存じのとおり、石油ショック以後ガソリン高重油安というような行政指導の価格になっておりますので、そういう点でそういう格差がかなり出ているということです。そのほかにも設備投資とかいうのが、いわゆる民族系と言われる中には石油ショック前ぐらいから設備を急にふやしているような問題もございますので、そういう点で金利償却がかかるというようなコストアップの要因も抱えておるというような点が重なり合って企業格差といいますか、そういうものが出ているのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  25. 鹿野道彦

    鹿野委員 昭和五十三年度におきます為替差益の見通しはいかがなものでしょうか。石油新税六月一日から、またOPEC等の値上がりというようなことも予測されるということでありますけれども、その辺の見通しをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  26. 石田正實

    石田参考人 これは非常にむずかしい御質問でございます。いまのレートがどういうふうに動いていくか、これが非常に大きな問題でもございますし、それからいま先生もおっしゃいました、OPECがどういうふうに動いていくか。御承知のとおり、この六月十五日に総会がジュネーブで開かれることになっておりまして、果たしてこれがどういうふうな動きを示していきますか非常に疑問でございます。一時、ことしは値上げしないんじゃないかということを考えておりましたけれども、最近どうもドル価値がかなり下がってきたというようなことで、一部に値上げをしたいというような動きがあるものですから、予断は許さないということでございます。それと同時に、御承知のとおり石油新税ができる、それから為替レートがどういうふうに動いていくかというような非常に不安定な要素をたくさん抱えているものですから、これからどういうふうに展開いたしていきますか、ちょっと私どもで予測がつかないというのが現状でございます。
  27. 鹿野道彦

    鹿野委員 時間もございませんので、いろいろな問題を抱えておるのが石油産業の中身ではないか、こういうふうに思うわけであります。特に、灯油の問題を一つ取り上げてみましても、下げろ下げろ、こういうふうなところから実際に下がっております。ところが、過日のIEAの理事会で日本への勧告ということで灯油の価格をもっと引き上げろ、こういうふうなことも言っておるわけであります。いろいろとむずかしい問題がある。また、先ほどの会長さんのお話のとおりに、外資系民族系というふうな格差等、やはりこのような差益というふうな中において、その還元というふうな中においてもっとしっかりとしたひとつの価格体系の是正というふうなものをやってもらわなければ困る、こういうふうに私は考えるわけであります。ひとつ政府側におきましてもその点十二分にお考えいただきまして、それに取り組んでいただきたいと思います。  なお、電力あるいは石油等、そのほかの差益還元の問題でありますが、とにかく国民はまことに素朴な疑問を持っておるということをぜひ知っていただきたいと思うのであります。なぜ還元されないんだろうか、還元されないような事情、そういうふうな点をもっとはっきりと国民に示していただき、そしてたとえば電力料金なんかも据え置きでいくというふうなことがすなわち還元にもつながってくるんだよというふうなことをやはり示していただきたい。そして国民に理解をしていただく、このような手の打ち方をぜひ政府側にはしていただきたい。このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  28. 美濃政市

    美濃委員長 加藤紘一君。
  29. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 鹿野委員に続いて、若干の補足の質問をさせていただきます。  最初に、電力についてお聞きいたしますが、電力はああいうふうな認可料金だとして、この差益の使い方について、価格凍結の方向でいくのがいいだろうというようなことがあちらこちらの新聞に、政府ないし業界の方針としてもう決まっているようないろいろな発言が散見されますけれども、通産省エネルギー庁といたしましては、その方針はもう確定済みであるのか、その辺をお伺いいたします。
  30. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 電力業界における円高メリットをどのように還元するか、いろいろかねて検討をいたしておるわけでありますが、去る一月の二十日に、できるだけ長く据え置く形において還元いたしたいということで、大臣の方から電力各社の社長に対しまして、この三月でいわゆる原価計算期間は切れるわけでありますが、少なくとも五十三年度中は据え置き、その後もできるだけ長くこれを維持するようにというふうに指導し、九社の社長がこれを受けておるということでございます。現在、さらに五十三年度に限らず五十四年度についても、どの程度各社足並みをそろえて据え置きができるかどうかを検討しておる、こういう段階でございます。
  31. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 宮澤長官にお伺いしますが、新聞報道によれば、宮澤長官も、大体六兆円の売り上げ高の中で本年度は九百二十五億だ、来年が現在の条件が続いて一千八百億程度の話ならば、自己資本を充実するとか据え置きをなるべく続けるとか、その方向でやるのがまあいいんじゃないかなという感じに思われているという発言がありますが、経企庁としても大体その御方針ですか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来当委員会で申し上げてまいりましたのは、ただいま加藤委員の言われましたような背景でございますが、将来の発電コストが上がっていくことは明白でありますし、一定の供給予備率も持たなければならない。その場合、仮に一世帯に三十円というような還付でございましたら、それよりはむしろやはり内部留保をしてもらって、将来の発電コストを幾らかでも低くして安定させてもらう、何かそういう方法の方が国民経済全体としていいのではないかと私は考えておりますという御答弁を従来申し上げてまいりました。実は今週いっぱいまでに、政府が直接間接に関係しておりますサービス、物資についての円高差益をどうするかということを経済対策閣僚会議で決定したいと考えておりますので、改めまして通産大臣にどのような御方針でいかれるかをただいまお尋ねをしておるところでございます。
  33. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 実は参考人皆さんそれから政府の方にも申し上げたいのですが、この物価問題特別委員会というのは主にPCIといいますか消費者物価の方に重点が置かれた審議がされてきた委員会です。ただ、今回の場合は消費者のみならず一般産業界からも、この問題をなぜ取り扱わないのか、この委員会委員に強烈な各方面からの話がありましてこういう集中審議をすることになったという背景がございます。したがって一般産業界からも、確かに六兆円の中の九百二十五億だ、来年度で一千八百億だといったならば一・五、六%にすぎない、来年度で三%ぐらいの話かもしれない。しかし、これはお互いに国民全体が努力して営々として築き上げてきた力ではないか、それをみんなに均てんしてもらうのがこれはパーセンテージの問題ではなくて一つの筋ではなかろうかという議論が非常に強いのだと思うのです。私たちは、結局そこは選択の問題であるし、凍結というのも一つの手だとは思うのですが、ただ、いま宮澤長官がおっしゃったように、内部留保というものが一般需要者に還元できる仕組みが本当にあるのかなという疑問が若干あろうかと思います。通産は、差益の部分はある一定別枠で取りまして、そしてガラス張りにしてその中の帰趨が一般国民にわかるようにしていこうではないかというアイデアがあるという話もお聞きしましたけれども、しかし仮に来年度一千八百億から二千億になったとして、どうもその部分はかなり租税の方に取られるのじゃなかろうか。地方税も含めまして実効税率四九・七ですか、その程度は取られてしまって、円高差益を一番得るのは実は政府になってしまうのじゃなかろうか。もちろん政府にいきましても、これは国民の財布の中に入るわけですから筋としてはまあいいのですけれども、しかし感情としては、何とかその分ほかで助けてもらう方向はなかろうかねという話でございます。内部留保をして、凍結もなるべく長期間のために使いますとか、後々のために使います。消費者還元に使いますという方法があるかどうか、ちょっとここで議論してみたいと思うのです。  大蔵省の税制一課長さんにお伺いしますけれども、一応二千億差益が出ました。そうすると、やはり大蔵省というか国家の方でちゃんといただくものはいただいていくということは事実なんじゃないでしょうか。
  34. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 御指摘のとおりでございます。
  35. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 簡単に御指摘のとおりでございますという話ですが、そうすると、本来還元されるべきものが半分は政府にいってしまいますよという話ですね。それじゃ内部留保をできるような方法を何か仕組もうかと言えば、現在のこの段階で租税の特別措置はみんな廃止しましょうという方針ですから、これをやろうと言ったらちょっと無理だし、また一般国民感情でもそれは許されない。そうしますと、この二千億を本当にいま言った趣旨で使おうとすればどうするか、外に逃げないかという議論ももう一つあろうかと思います。いわゆる配当に使うのは、電力会社の場合は一〇%を超えないようにという一つの約束事がある。それは守られていくでしょう。では春闘で職員の賃金に消えないか、本年度は五%程度各社平均だそうですから、まあまあとこう見ていく。そうすると、あとは税金に取られないようにするためには、いわゆるみずからの資本構成を高めるとか、いろいろこれまで問題のあった償却の率を上げるとか、そういう方向になっていくのではないか。そうすると、結局税金に取られるか電力会社の足腰を強くするのに使われるのではないだろうか。そうなれば、確かに電力会社はこれまでの申請でなるべく高くならないようにということで料金を抑えられてきた、償却も十分されないできた、それはわかるのですけれども、しかし一般の産業もかなり疲弊しているときに、おたくだけがみんなでかち取ったスタミナドリンクをお一人で飲むのですかというお話になってはきませんでしょうか。それをほかの産業界または一般消費者にどう御説明になるか、そこが私はポイントだと思いますが、平岩会長、いかがでございますか。
  36. 平岩外四

    平岩参考人 ただいまの税金の関係の問題は私も非常にむずかしい問題だと思いますけれども、現実には内部留保をいたしてそれを積み立てていった場合に、それを取り崩すような場合、たとえば為替差益によりまして超過利益が発生すれば、その約半分は税金に取られるというのはおっしゃるとおりだと思います。それで、残りが後期の繰越金として資金収支対策に活用されて料金の安定に資する、こういう方針がわれわれはぜひ必要だ。これはわれわれの企業体質をよくする利己的なことだけでもないと思っておりますけれども、そうした場合に、後年度になりまして収支が悪化し欠損金が生じた場合に、それを取り崩して補てんしなければならなくなってくると思います。そうした場合に、すでに支払った法人税というものは今度は還付されるかっこうになりまして、結局前に払った税金というのは払わなかったと同じような結果になる税法上の仕組みになっているとわれわれは理解いたしております。
  37. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 大蔵省にお伺いしますが、その仕組みはきちっとワークいたしますか。
  38. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 ただいま御説明ございましたように、当期は欠損が出る、前期は利益があって税金を払っていたというと、当期の欠損を前期に払いました税額を限度といたしまして当期の欠損に見合った分は還付されます。これは動いております。
  39. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 そうすると、よほど変なことにならない限り使われそうだということですね。そうしますと、先ほどの質問の後段で、ではあとは足腰対策、みずからが強くなる方向に使われるのではないか、ほかの産業、電力会社一個だけで見ればそれは正しいのだけれども、ほかの会社も、電力を消費している方もこんなに疲弊しているときに、自分たちだけが力の蓄えに使うということがほかの産業界を納得せしめられるかどうか、それについて説得的な御説明をいただきたいと思います。
  40. 平岩外四

    平岩参考人 私ども考えておりますのに、電力会社の場合に、先ほどお話がございましたように、価格をできるだけ低くするという配慮から、償却の問題なども一般の設備産業と違って低位な償却法がとられております。したがって現在不況業種を含めた設備産業その他公共企業体、そういうものと違って、内部留保率、そういうものは非常に低率に抑えられているという実態から、非常に脆弱な体質を持っているという実態がございます。その点で、私は、足腰をより強くする目的だけにこれが使われているということにはならない、こう考えております。
  41. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 それは後いろいろな人の判断に待たなければならぬと思うのです。結局電力業界がどの程度いま弱くなっているかという比較の問題であろうかと思うのですが、それはまたほかの委員からも御質疑いただくとして、とりあえず先ほどの価格凍結で五十三年は大体方針を決定した、五十四年までもできるだけやっていこうということでございますね。  それで、一部の社を除き最大の努力をするという話でしたが、その一部の社が九社全部とかなっては困るのであって、どうしてもこの社だけはどうもいまからお約束できないというのがほんの少数で済むのか、それとも五社も六社もになるのか、どの社でございますか。
  42. 平岩外四

    平岩参考人 率直に申しまして、一部の社と申しますのは、北海道電力さんが一番弱いと私ども考えております。それでほかの社はじゃ五十四年度は十分もち得るのか、こういうことに対しては、これは最大限の努力をしないと、現実には五十四年は相当苦しい状態にどこの社でもなる、こういうことになると思います。
  43. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 北海道電力ということですが、ほかの社はがんばれる。五十四年度でかなり苦しくなりましても、さっきおっしゃいましたように、一回お払いしたものが大蔵省からまた返ってくるわけですし、またかなりの努力を続けられると思うのですが、OPECの価格が現状のままであり、そしてレートがいまの二百二十円前後を維持するとすれば、五十四年度については北海道電力を除き、かなりここで約束できるぐらいの確度で凍結を確言できるか、もう一度確認したいと思います。
  44. 平岩外四

    平岩参考人 北海道電力を除きまして、そういうふうにぜひ努力をしてもらいたいと各社に要請をするつもりでございます。
  45. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 時間がありませんので、石油について一つだけお伺いします。  鹿野道彦議員もお尋ねになりましたが、結局外資系民族系の問題というのがどうしてもその背後にあると思います。片や民族系は過去の産業政策の経緯でかなり善意でいろいろなコンビナートリファイナリーというものを育成してきた、そういう経緯があって、それはわれわれ認めなければならぬと思うのです。ただ現在、石油ショック後その与件は大分変わりまして、いま民族系がかなり苦しくなる。一方外資系は、昨年十二月期の決算でモービルが六〇%の配当、エッソが三一%、東亜燃料が三五%、これは大変な配当率になる。これを吐き出させるような方向にすれば民族系が困るということで、いわゆる企業間格差や価格体系などを本当に根本的に通産の方で手をつけて見ていかない限り、この円高差益還元議論というのはとどまるところのない泥沼に入ってしまうんじゃないかという気がいたします。これはかなり大がかりな、日本の産業構造にも関連する問題だと思うのですけれども、本当にそこまで真剣に取り組む用意がおありになるのか、エネルギー庁にお伺いしたいと思います。
  46. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘のように外資系民族系あるいは一般リファイナリーとコンビナートリファイナリーの間に非常に格差が出てきておる、むしろ円高基調のもとにおいて格差は拡大したんじゃないかという懸念を持っておるわけでございます。もちろん民族系外資系を問わず日本石油を安定的に供給する非常に重要な使命を持っておるわけでございまして、そういったものが企業間格差があるために十全なる機能を果たし得ないということは国民経済的にも非常に問題であるというように考えておりまして、私たちといたしまして、いわゆる構造問題の重要性というものは一段と深まってきておるというふうにも考えております。  またコンビナートリファイナリーにつきましても、高度成長期におきましてはそれなりの貢献をいたしたわけでございますが、かような時期に入ってまいりますと、コンビナートリファイナリーのあり方そのものについても検討する必要があるんじゃなかろうか、特にコンビナートにおける需要企業あるいは元売り企業との関係等を踏まえまして個別実態的に即応した対応というものは必要じゃなかろうか。一言で申し上げますと、企業間格差、構造問題が是正されないために安定供給が阻害されることのないように今後とも努力してまいりたい、かように考えております。
  47. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 石連の会長さんとして外資系それから民族系の問題というのは余り分けて議論できないのだろうと思うのですけれども、今度の円高差益の問題を見ますと、石油というのは電力ほどどうもすっきりとしたデータもないし、また一定の料金でないのでどの程度値崩れしているかわからないので、決算を見ないとどうもぼくらもなかなか突っ込めないという側面があります。そういう条件の中で、いま申しました企業間格差や価格体系の問題について、本来どういう形になれば自分たちもこの円高の問題についてすっきりとした対処をとれるかどうか、その辺についての御意見をお伺いしたいと思います。
  48. 石田正實

    石田参考人 ではお答えしますけれども、非常にむずかしい問題でございますし、また連盟としましては、外資系民族系も一緒に私たちの会員でございまして、両方立っていくような方法考えなければならないわけなんです。しかし現実問題として最近その企業格差が非常に大きくなってきておることは事実でございまして、これを何とか是正する方法はないかというようなことで苦慮しているわけでございますが、これは先ほどちょっと触れましたけれども、やはり価格体系の問題が石油ショックを前後にしまして非常に変わっておるわけでございます。御承知のとおり、四十九年の三月十八日にああいうふうな行政指導がございまして、あのときに、ガソリンなどはぜいたく品だからできるだけ抑えようじゃないかというようなことで非常に高く設定されました。一方灯油なんというものはしばらく値上げを認めないというようなことをされましたし、また例年行政指導が行われるというような実情です。そういうふうな価格体系そのものが、やはり前から見ると、かなりいわゆるガソリン高、重油安というような体系になっておりまして、いわゆる外資系の方ではガソリンの販売シェアというのが、これは前から大きいのですが、特にこれが大きいものですから、その差益が非常に出る。一方では民族系の方はナフサだとか重油だとか、そういう価格の安い、利益の幅のないものが販売率が非常に大きいというような問題もございます。これはコンビナートリファイナリーとの関連もございますけれども……。だからそういうことでコンビナートリファイナリーをどういうふうにするかというのが一つ対策でございますし、また価格体系をどういうふうに見直していくかということが一つ解決方法じゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  49. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員 終わります。     —————————————
  50. 美濃政市

    美濃委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、日本銀行理中川幸次君に参考人として御出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 美濃政市

    美濃委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  52. 美濃政市

    美濃委員長 西宮弘君。
  53. 西宮弘

    ○西宮委員 私、経済企画庁長官に若干お尋ねをしたい。特に基本的な問題につきましていろいろお尋ねをしたいと思うのでありますが、残念ながら非常に短い時間でございまして、私はいわば総論的なことをお尋ねをいたしまして、具体的な細論は同僚議員にお譲りをしたいというふうに考えておりますので、短い時間でございますから、長官になるべく短く御返事をいただきたいというふうに考えております。  いろいろ前の質問者の問答の中で円高というのはどうして起こったのか、そういう点についてかなり長官の御説明もありましたので、こういうことを繰り返しませんけれども、いずれにしても、こういうことになりまして、勤勉な国民が営々として働いて輸出を盛んにする、こういうことで黒字をかせいだというようなことなどが大きな原因であることも明らかでありまするし、あるいはまた円高の暗い面として、その中でいわゆる構造的な不況の業種であるとかあるいは中小企業であるとか、そういうところが非常に犠牲をこうむっておるということも全くの事実であるわけであります。そういう点についてはもとより長官としても異存がないと思うのですけれども、私はそういう点をまず基礎に置いて申し上げたいと思うので、もし何か御意見ございましたら、簡単にお願いいたします。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に円高を招いたものがわが国経済の相対的競争力の強さ、価格競争力、非価格競争力が非常に強くなっておるということは御指摘のとおりであると思います。しかし他方でそれが非常に急激に参りましたこともあり、また世界貿易全体の伸びが石油危機以来、最近ことに思わしくないということもございまして、輸出関係の業界には急激な円高傾向が非常にむずかしい問題となってあらわれましたこともおっしゃるとおりであります。またもう一つわが国自身の経済構造の変化によりまして、いわゆる構造不況業種という幾つかの業種が生まれまして、これは全般的な景気対策そのものだけではなかなか対処する方法を発見しにくいという一団の業種が発生いたしましたことも事実でございますから、基本的に西宮委員の御認識のように私も考えております。
  55. 西宮弘

    ○西宮委員 今後円高がどこまで進行するかということはなかなかお答えしにくい問題だろうと思います。いろいろ思惑、及ぶ可能性もありましょうし、そういう意味ではむずかしいお答えかと思いますが、どういうふうに見ておられましょうか。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最近の二月中旬以降の急激な円の動きにはやや相場的な要素があったのではないかと考えております。  理由を尋ねますと、二月、三月ごろの輸出輸入関係等と、いろいろ先ほど御説明申し上げましたようにございますが、やや相場的な要素があったと見ております。これからということで目先のことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますし、また的確に予想もできないことでございますが、夏の終わり、秋の初めごろになりますと、いずれにしても昨年の初めに比べますと数十円、円が高くなっておりますから、このことは輸出入に影響を及ぼし、したがって恐らく円レートにも影響を及ぼしてくるのではないかというふうに考えております。
  57. 西宮弘

    ○西宮委員 西ドイツのマルクとの関連を見ますと、一ドルが二マルク弱だ、こういう相場でありますから、これで計算いたしますると、スミソニアンレートに比べますると日本の円も百九十一円程度になってもそれで結構つり合うんだ、こういう計算が出るわけですね。もちろんそう機械的に出るわけでもありませんし、あるいはいろいろその他の重要な要素がありますからそう簡単ではないけれども、そういう西独マルクなどをながめてみると、いまのようなことも想像できる、こういうことになるわけでありまして、私どもは、さらにこの円高は進行するのではないかというふうに予想するわけです。しかし長官、先のことを言うこともできない、これもわかります。政府の当局としていろいろ混乱を招くようなことはお話になれないと思いますので、私もそれをあえてそれ以上追及したいと思いませんが、しかし趨勢として私はまだやっぱりそういう傾向が基本的には残っているというふうに考えるのです。それで仮にそうでないにしても、いま現在でも、先ほど来質疑応答がありましたように、相当の差益が出ておるということは、さっきからお話のありましたような産業界においては相当なそういう収益を上げていることは事実でありますので、前の質問者も申しておられましたように、私どももぜひこれを還元をしてほしい、こういうことを強調したいわけでございます。  そのために最初、いわゆる今回の円高を招いたその原因は、要するに日本の産業人、これは膨大な労働者も含めて産業界に働いているそういう人たちの営々たる努力の結果もたらされたものであり、しかし今度円高という問題が起こってくると、その陰には大変な犠牲になっておる人もある、こういうことでありますから、その両者に対して獲得した差益還元すべきであるというふうに考えるのは私は当然だと思うので、そういう点を強く強調したいわけでございます。  この間、四月十日に長官が主宰する国民生活安定審議会が開かれたわけですが、新聞等でごく簡単に報道されておりますが、相当、やっぱり差益還元しろ、こういう意見が出ておったように思うのですけれども、これを受けて企画庁としてはどういうふうに考えておられますか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようなお話も当時の会議でございましたし、また国民全体として、円高差益という問題がはっきりした形で理解できる形で処理をされるということが大切だという西宮委員の言われましたような考えが広く国民の中にございます。もっともなことでございますから、このたび経済対策閣僚会議でこの問題を取り上げまして、と申しますのは、市場経済が十分に機能し、自由競争が行われておりますところでは、かなり円高差益還元が実現をしております。これは、私どもが二度追跡調査をいたしまして発表いたしましたところでも明らかでございますので、それはよろしいとして、政府が直接、間接に関与をいたします物資、サービスはいわば市場経済の例外になりますので、ここではそのような法則が働きにくい。働きにくいだけに、その場合に政府としてどのようなことを考えるべきかということは大切であると考えまして、できないのであればはっきりできない理由を公にしておくべきでございますし、できるものはできる程度に行うということが大事であると考えまして、今週中ぐらいには経済対策閣僚会議で結論を出したいと考えているところでございます。
  59. 西宮弘

    ○西宮委員 経済企画庁のその追跡調査の結果、市場経済の中ではたとえば輸入物価に応じて消費者物価がパラレルに動いているというようなニュアンスのお答えがあったわけですが、むろんそんなものもありましょう。しかし同時に、そうでないというのも特に最近、ことしの二月に発表された調査の中にはかなりあるわけです。あるいはまた日本銀行の発表の中にも、輸入物価の値下がりと消費者物価が並行しておらない、あるいは逆に消費者物価が上がっておる、こういうものもあるわけです。そういう実態でありまして、そういう市場機構の中で動いておる値段も十分に円高を活用させていない、そういう非常に遺憾な点があるわけでございまして、私はきょう日銀の総裁代理として中川理事においでをいただきましたので、特に中川理事に日銀の考え方をお尋ねしたいと思うのです。  と申し上げますのは、森永総裁が三月二十九日に、この円高はよろしく国民還元すべきであるということを強調されたわけです。さらに続いてその次の三十日には土光経団連会長がこれを受けて、私も日銀総裁の意見を支持する、したがって、ぜひその差益還元すべきであるということを言っておりましたので、ぜひ日本銀行のお立場としてそういう方針を堅持をし、またしたがってそういう立場で御指導もいただきたいというふうに考えるので、ちょっと意見を聞かしていただきたいと思います。
  60. 中川幸次

    中川参考人 中川でございます。  ちょっとお時間をいただきまして、総裁が記者会見で申し上げたことを正確に申し上げさせていただきますと、円高がここまで来ますとそのメリットを本格的に活用することが非常に大事なんじゃないか。具体的には輸入関連産業はコスト低下をフルに生かし、それから輸出産業円高に真正面から取り組む、その他、特に公共性の強い業種にあってはできるだけ価格安定に結びつけるよう努力を求めるなどして、消費者物価の安定を一段と推進する必要がある、こういうふうに申したわけであります。いまお読みしたところからも明らかでございますように、私どもとしては、円建ての輸入価格が三月現在で前年に比べまして一五%下がっております。そういうコスト低下の効果を、直接の輸入する業界だけでなくて広く国民還元して、それがCPIの安定にできるだけ寄与すべきであるという趣旨でございました。マクロの立場からそういうことを非常に強調しているわけであります。  幸いにいたしまして消費者物価もこのところかなり落ちついておりまして、もし全国の三月が東京並みの上昇率でございますと前年比四・四%の上昇にとどまるわけでございまして、このところとしてはかなり落ちついた動きだと言えるかと思います。先ほど来個々の業界のお話が出ておりますが、私どもといたしましては、やはり個々の業界につきましてはそれぞれ事情もございますでしょうし、また特に公共性料金につきましては政府の御指導もございますので、これをどうしたらいいということは直接申し上げかねますけれども、できるだけはっきりした形で国民還元してほしいという立場でございまして、もし値下げできるならば少しでも値下げしていただきたい。ただ、たとえば電力業界につきましては、最近非常に膨大な建設投資をしておられます。それはかなり資本費の高騰に結びついておると私ども聞いております。もし円高差益がなかりせばあるいは料金改定が必要ではないかという話もあります。したがって、それを円高で相殺して長期的に価格を安定させるということであれば、これも一つ差益還元方法ではないかと思います。いずれにいたしましても、長期にわたって消費者円高の利益を享受できるというかっこうにすることが非常に望ましいと思うわけであります。  ただ、国民の前にはそういうふうな個々の、たとえば資本費の上昇とかいった個々の事情が余りはっきりいたしませんので、なかなか納得が得られていないのが現状ではないかと思います。したがって、あるいは政府からあるいは業界からそういうふうな事情国民にはっきり説明して、こういう形での差益還元が最も適当であるという国民の納得を得られることが必要ではないかというふうに私ども考えております。
  61. 西宮弘

    ○西宮委員 ありがとうございました。  できるだけはっきりした形で国民還元をする、値下げができるならばやってほしい、さらに業界の実態に応じて検討すべきだ、当然な御意見だと思います。たとえば、先ほど来お話がありました電力等についても、料金はこれで据え置いて安定を図るということもきわめて重要な問題だということは私どももよく承知をしております。しかし、できるならば何とかしてこれを国民に直接還元する。さっき加藤委員も質問しておりましたけれども国民の感覚から言うと、そんなに差益があるならば還元してもいいじゃないかというきわめて素朴な常識的な感覚があるわけですね。ですから、それがそのままストレートに実施をされたら、恐らく国民の消費性向は非常に向上するというか増大するだろうと思うのですね。そのことが日本国民の購買力をそそり経済全体を大きく改善していく、経済成長を大きく発展させるというようなことにも直接役立っていく。ただ、残念ながらいまの据え置きというのでは何となくぴんとこないということだけは間違いがないわけですね。たとえば西ドイツなどでは、マルクの相場が変わりますと、あの周辺の国から入ってくる農産物等について、家庭の主婦がきょう行ってみたら何が幾ら安くなったというようなことで、非常にぴんぴんとはね返ってくる。こういうことは政治としてぜひ考えなければならぬ重大な問題だと私は思うのでありますが、長官、いかがですか。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 西宮委員の御質問で当然に前提にしてお尋ねであったと思いますけれども消費者物価が四%台になっているということ、卸売物価はただいまの時点ではマイナス二%をちょっと超えておるわけでございます。これはまた時間のおくれをとりながら消費者物価にもいい影響があると見ておりますので、この点がやはり円高のメリットの一番大きなものではないだろうか。これは余り指摘されませんけれども、個々の品目もさることながら、全体の物価情勢、卸売物価、消費者物価にあらわれているこの現象がやはり一番大きな円高のメリットであろうというふうに私は考えております。  そのほかに、先ほどの、市場経済では大変にうまく還元が行われておるというふうにおとりになりましたようで、ちょっと私の申し上げ方も大ざっぱで必ずしも十分ではございませんでした。ただ、政府が介入しておりますものはもっとそれがわかりにくい形になっておりますので、できるものはやっていきたい、できないものは仰せのようにできない理由を明らかにしておきたいというふうに考えております。まさに西ドイツにおきましては、生鮮食料品、野菜にしても、果物にしても、肉にしても、ECの域内あるいはアフリカあたりから毎日マーケットへ出てまいりますから、消費者としてはすぐにマルク高のメリットがわかるわけでございますが、わが国はもう重々御承知のように、農産物を中心にしてそういう体制が別の理由でとれないことになっておりまして、その点は西ドイツのようにまいらないのが残念でございますが、しかし、多少時間のおくれはあり、また品物によっては円高から断ち切られておるものも農産物のように相当ございますが、何とかできるだけの還元をしていって国民に利益を返すという努力を続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  63. 西宮弘

    ○西宮委員 最後に一言だけ要望を申し上げておきたいと思うのであります。  物価の安定ということがこれからの経済成長にとって重大な要素であることは申すまでもないわけですが、ただ、気になりますのは、ことしも公共料金値上げが予定されるあるいは見通されるというものはかなりあるわけです。国鉄、私鉄、電電、郵便、医療費、公団住宅、授業料、受験料、銀行の手数料あるいは酒類等々、すでにいまから見通されるものがあるわけです。私はぜひ長官ががんばって公共料金を上げないということに努力をしていただきたいと思います。  もう一つは、これは政府並びに関係の業界の方にもお願いしておきたいと思うのですが、たとえば西独などに比べると日本国民は物価の動向について監視をするということが非常に弱い、関心が少ないということが指摘されておるので、消費者団体とか婦人団体あるいは労働組合、こういう人たちがもっと物価問題に関心を持つべきだ。したがって、そういう人がいろいろ事情を聞きに来たり話し合いに来るというときには、率先してこっちから積極的に——これは業界の方々も積極的にこれに加わって十分話し合いの場を持ってもらう、こういうことがきわめて大事なことだと考えるので申し上げておきたいと思います。  いずれにいたしましても、これからの経済成長はいわゆる旧来のパターンは通用しなくなったのでありますから、個人消費主導型ということで経済成長を図るのが当然の道筋だと私は考えておりますので、そういう点でぜひ今度の円高の問題を十二分に活用してもらいたいということをお願いしておきたいと思います。  これで終わります。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費者に対しましては消費者センターを設ける、あるいは先般いたしました追跡調査は最近もう一度やりたいと思っておりまして、これは消費者に実態を知ってもらうことによってやはり物価問題に関心を持ってもらうということでございますので、もう一度いたしたいと思っております。  それから公共料金でございますが、昭和五十二年度の消費者物価の上がりの中で公共料金が多分一・五以内ぐらいの比率を持ったのではないかと思いますが、五十三年度におきましてもまずその程度にはとどめ得る、そのようなふうに考えてまいりたいと思っております。
  65. 美濃政市

    美濃委員長 武部文君。
  66. 武部文

    ○武部委員 いま同僚議員から円高経済的な背景とかいろいろなことについて御質問がございました。私はこの円高が起きた原因であるとかそういうことについてはきょうは一切触れません。結果的に莫大な為替差益が生じた。このことについてどう国民に理解を求めるか、そのために一体どのようなことが必要であるか、こういう点について具体的な問題を提起いたしますので、そのことについてぜひ三人の参考人皆さんからも御意見をお述べいただきたいと思います。  まず、五十二年中のわが国輸入総額は六百十八億ドル、ほとんど一〇〇%ドル建てであります。この間、円レートの上昇は約二二%、したがって、差益は実に百三十六億ドルに上るのであります。これは約三兆を超すのでありまして、こういう莫大な為替差益日本の企業、商社等の、あるいは政府の一部にも該当いたしますが、入っておるわけです。この為替差益というのは、企業努力であるとか、あるいは普通の商行為であるとか、そういうものではないのでありまして、これは不労所得と言われておるわけですが、労せずして入ってくる収益であります。したがって、われわれは、当委員会において、この問題を物価の面にどう生かすか、端的に言えば、消費者にどうこれを還元するか、こういうことをずっと続けてきたわけであります。一体、この百三十六億ドルという莫大な為替差益はどこに入っておるだろうか。まず、石油業界、電力業界、ガスあるいは木材、鉄鉱石からウイスキー、洋書、果ては畜産振興事業団、政府が介入する牛肉の値段あるいは食糧用の小麦。この農林省の差益あるいは相場の下落によって、五十二年度に約九百億円という莫大な収入が農林省に転げ込んでおる。それも全然予算には計上されていない収益であります。それは勝手に自由に使うんだ、こういう答弁が農林省から当委員会で行われました。したがって、今日ほどこの円高差益の問題で国民がその実態に疑問を持っておるときはないと私は思います。新聞の投書を見ても、随所にそのような内容の投書が見られるわけであります。いま同僚委員からもたくさんお話がございましたが、このことはまさに政治に対する不信であって、これからの社会的な政治的な問題と非常に大きな関係を持っておると私は思うのであります。  そういう問題から、先日、宮澤長官がこの問題を取り上げて、円高差益の問題について政府として具体的な方法考えなければならぬということをお述べになったことが報道されておるわけですが、いま申し上げた今日の為替差益の実態、こういうものについて宮澤長官としてはどのように把握をしておられるか、最初にこれをお伺いしたいのです。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和五十二年度におきまして輸入価格が、恐らく先ほど御指摘のように十数%下落したというふうに考えておりますけれども、これはもう御承知のように、自由化され、自由経済でございます場合には、その差益輸入業者によって、いわば思わざる利益として蓄積されるわけではございませんで、自由化され、自由経済が行われておりますから、それは国内の販売価格の下落になってあらわれるべきものであるし、また事実、大部分はそうなっておるというふうに考えております。そのことが卸売物価の低落を見、消費者物価の安定につながっておると考えますが、中で、いわゆる独占輸入契約が行われておりますようなものについては、自由競争が行われない結果として、その間に円高差益がそのまま輸入業者に——そのままではないかもしれませんが、相当帰属してしまうという可能性がございます。この点は、民間の経済につきましては追跡調査でかなり明らかにすることができますが、他方で、政府が介入しておりますものにつきましては、これは自由競争が何かの理由で行われない——介入そのものには別に理由があるわけですが、行われないということになりやすうございますので、その点を経済対策閣僚会議で解明をいたしたい、大体基本的にはそのような考え方でございます。
  68. 武部文

    ○武部委員 それでは、せっかくお三人の方においでいただきましたので、石油電力、ガスの問題について具体的にお尋ねをいたしますし、また、これを所管する通産省の御意見も賜りたいのであります。わが国経済は、いま石油をおいて成り立つことができない、これは全くそのとおりだと思います。また、現在の社会に生きるわれわれにとって、電気、ガスというものは、食料品にまさるとも劣らない、そういう重要な生活必需品だと言ってもよかろうと思うのであります。去年の七月、ニューヨークであの大停電が起きたときに、私は、当時ニューヨークにおった人から聞いたのですが、ろうそくが三十倍から四十倍にはね上がったということを聞きました。ああいう大混乱を見て、改めて、電気の供給というものがとまったときには一体どういうことになるか、こういう点について、まざまざとその恐ろしさというものを感じ取ったわけです。これは商品と言えるかどうかわかりませんが、商品と見てよかろうと思います。こういう特殊な商品だけに、電力やガスは法律をもって地域独占という権利を与えられておる。同時に、供給の義務を負わされておる。一方では、原価主義に基づいて一定の利益が配慮されておるわけですね。したがって、そういう特殊な、法律によって地域独占であるとか、あるいは供給の義務であるとか、あるいは原価主義、一定の利益とか、そういうようなものが保障されておる。ということは、他の商品と違った意味を持っておる、このように見なければなりません。したがって、そこから起きてくる為替差益というものは、他の商品とは全く違った意味で見なければならぬというふうに私は考えるわけです。  そこで、電力関係に入ります前に石油連盟会長にお尋ねをいたしたいのでありますが、あなたは、去る十日の記者会見で、政府がきちんと石油政策を立てるならば差益還元にわれわれも協力する、こういうことを述べておられるわけです。これは、いままでの観点から言えば前向きだと私は評価できると思うのですが、政府がきちんと石油政策を立てるならばということは一体どんなことなのか。ということは、いままで何にも計画性がなかったのか、あるいは、この差益還元についてあなた方は何にもされなかったのか、もし差益還元について要請があるならば応じてもよいとおっしゃっておるのか、差益というものは十分あって、還元するところの用意があるというふうにお考えになっておるのか、この点、いかがでしょうか。
  69. 石田正實

    石田参考人 お答えします。  十日の新聞の記事でございますけれども、これは私の発言と少し違うのでございます。しかし、私ども石油業界は、五十二年度で見ましても為替差益が相当出たことは事実でございます。これは私どもの手元にまだ五十二年度の決算の報告がまとまっておりませんので、その的確な数字を申し上げることはちょっとできかねるわけでございますが、しかし、これは四月十五日の朝日新聞にも載っておりますし、その前の日に読売にも載っておりましたけれども、五十二年度の卸売物価指数で石油が相当下がっておるというグラフが載っておりまして、これは日銀の卸売物価指数から見まして、五十年度が一〇〇という指数でございますけれども、去年の三月ではそれが一一〇・四というふうになっておりましたのが、現在、ことしの三月では一〇一・二というような数字になっておりまして、そういう意味で相当石油の価格は還元しておる、そういうふうに考えているわけでございます。ただし、御承知のとおり、この三月末からさらに円高が急速に進んでまいりましたので、ここら辺が今後どういうふうになっていきますか、為替レートのことですから上がったり下がったりするわけでございますけれども。しかし、これは私ども、御承知のとおり石油の在庫というのが大体八十日から九十日ぐらいのものを持っておりますので、結局それが消費される二カ月か三カ月後には、いま言いました為替レートが直接われわれの商品に響いてくるというふうなことでございますので、三月のあれが大体実際は六月ごろになっていくのじゃないかというような考えでございます。ところが、三月になりますと、御承知のとおり石油新税とかあるいはさっき言った、六月十五日にはOPECの総会があるというような問題がございまして、そういうものを勘案して今後どういうふうにして還元していくかということになるわけでございますが、実はその還元するにつきましても、いま石油業界でも企業格差というものが非常に大きくなっておるわけでございます。これはいわゆる外資系民族系というものの格差と、それからもう一つはコンビナートリファイナリーというのが御承知でございますけれども、これの経営が非常に苦しくなっているというような状態がございます。石油業界は御承知のとおり石油業法というのがございまして政府の指導が非常に強く働いておる業界でございますので、そういう面からこういう為替差益還元するのは当然のことだというふうに私たち考えておりますけれども、そういう格差の問題だとか、それから構造的なコンビナートの問題だとかいうような問題をやはり十分政府としても考えていただきたい、こういうような希望を申し上げたのがああいうふうな記事になったわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  70. 武部文

    ○武部委員 先ほど同僚議員の質問にお答えになってあなたは、五十二年度中の差益のことについてよくわからぬというふうなことをおっしゃっておったわけですが、これはちょっと無責任な発言だと思います。私どもは当委員会で通産省と石油関係にどれだけの差益が出ておるかということについていろいろやりとりいたしました。その結果、一円、円が高くなれば一キロリッターで八十六円の差益が出る、したがって、この一年間に入ってきた差益は約一兆円、通産省は八千億程度と言っておりますが、われわれの計算でいけば約一兆、その中に原油の値上げが二回あった。備蓄だあるいは防災だというような費用がかかる、それは業界の皆さんの言い分を通産省がそのとおり受けて、差し引いても三千五百億程度差益がこの一年間に石油業界に出ておるということはもうやりとりの中で間違いのない数字になってきておるというふうに私ども確信を持っておるわけです。五十二年度中、そしてこれがさらに五十三年度になってくればさらに大きな利益になってくるだろう、こういうふうに理解をしておるわけです。したがって、あなたが十日の記者会見におっしゃったそのことは大変重要なことであって、これから石油業界が差益をどうするかということについて私どもは非常に関心を持っておるわけです。ところが、あなたの発言の後を受けて大手である日本石油、ここに新聞記事がございますが、この日本石油の首脳が十一日に石油製品価格の引き下げを自分の方が主導権をとる形では今後行わない、そういう意向を明らかにしておりますね。そういうためにほかの社の価格対策にもかなりの影響が出てくる、このように思うわけです。業界トップの日本石油国民の意思や政府の方針に逆行するような発言をされていることについて、しかもこういう時期にされていることについて私は不穏当だと思うのですが、石連の会長であるあなたとしてはどういうふうにお考えでしょう。
  71. 石田正實

    石田参考人 日本石油の首脳がそういう新聞会見をしたということは私も記事で読んだのでございますけれども日本石油の人の真意はまだ直接確かめておりません。しかし、先ほど申しますように、大体五十二年度の石油差益というものは、先生先ほどおっしゃいましたけれども、これはいろいろ見方がありますが、実際にいろいろそのほかに石油OPEC値上げが二回にわたったわけでございます。一月に五%と七月以降にまた五%。これはサウジとアブダビの二カ国でございますけれども、そういう二カ国の値上がりがございましたので、これが相当大きな金額でございます。政府の計算ではこれは五兆三千億というような数字でございます。そのほかにいろいろな備蓄、公害対策費だとか、御承知のとおり石油業界でいわゆる還元して値下げした分が相当の金額がございますので、私どもとしては相当還元して、五十二年度においてはもう大体原価による差益と申しますか、そういうものは還元している、そういうふうに考えております。実際の問題はこの三月期の決算がどういうふうになっていきますか、それをよく見ませんとわかりませんけれども、そういうふうに考えておるわけでございます。  あとは先ほど申しますような三月末から急にまた円高になりまして、それを受けて日石の発言だと思いますけれども、実はこの石油業界の値下がりといいますか、これがいま急速に進んでおるような状態でございまして、ここら辺はもうしばらく模様を見てみなければわかりませんけれども、そういうものを踏まえて日石の首脳がそういう発言をしたのじゃないかと考えるわけでございます。
  72. 武部文

    ○武部委員 石油業界の円高差益の点について私はさっき三千五百億ということを言ったわけですが、あるいはそれよりも多いのではなかろうかとも推定されますが、それ以上のことはちょっと言及できません。しかし、現実に石油業界が莫大な為替差益を得ていることだけは間違いないし、国民もそう見ておる。ですから、あらゆる努力をしていただいて、どのような方法還元することが合理的で国民の納得を得られるかということについて、これからも差益還元について十分努力をしていただきたい、ひとつ前向きの姿勢で対処していただきたい。石油業界の皆さんが民生用灯油の価格凍結の問題とかあるいは若干にしてもナフサの価格を下げられたということもわれわれは評価できると思うわけです。それをぜひ広めて全部の油種について還元ができるように今後もぜひ一層の努力をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  次に、電力関係についてお尋ねをいたしますが、日本の全石油利用の約四分の一が電力に使われておるわけです。そして九つの電力会社料金の原価を見ますと燃料費が平均約三七%、そういうことになっています。ガスとて大体同じことであって、原料である石炭、あるいは灯油、揮発油、プロパンガス、液化天然ガス、ほとんど輸入です。ガスについては後で申し上げることにいたします。そういう中で燃料費が三七%を占めておる電力業界が、この円高によってどういう差益を得ただろうか、こういう点について先ほど参考人平岩会長は九百二十五億とおっしゃいました。九百二十五億という数字、これは実は通産省の資料なのであります。私どもがいただいておる通産省の資料にそのように明確に書かれております。電気事業連合会から私どもに提出していただきました資料によると、九社の五十二年度の為替差益は九百十七億円です。余り違わないけれども、あなたは通産省の数字をお述べになったわけですが、あなたの方の資料は九百十七億、通産省は九百二十五億です。だといたしますと、この九百二十五億円という数字は間違いない数字だろうか、私はこのことについて非常に疑問を持つのであります。したがって、これは通産省にもお尋ねをいたしますから、私の言っていることが間違いならば御指摘いただきたいのであります。差益の実態を詳しく計算してみますと、この一年間に、五十二年度中に九電力に発生をした為替差益は総額千四百四十五億円です。その中で原油の値上がり分を差し引かなければなりませんが、これは通産省の数字が違うのであります。最初は三百三十億とおっしゃっておったが、この点が間違いなければ差益はまだふえるわけですが、三百八十億という数字も述べておられます。仮に原油の値上がり分を三百八十億と仮定いたしますと、差し引いて千六十五億の差益が九電力に入ったことになります。その計算はレートを平均して、先発四社の為替レート、あとが関西電力そして後発四社それぞれ違いますが、一円程度しか違いませんから、このレートを二百九十九円と見ます。そうして上半期の平均レート二百七十一円八十四銭、下半期は二百四十一円四十九銭、これは実態のレートであります。こういうレートで計算をいたしますと、外貨建ての燃料費の支払い分の計画値、そういうものと計算をしてみて、明らかに差し引き千六十五億円という差益が出るのであります。こういうふうに、通産省のわれわれに対する資料と百四十億も違う。さらに三百三十億という原料費の値上げということになりますと二百億も違うのであります。どうしてこういう数字になるのか。これを見ると、明らかに差益を隠そうとしておるのじゃないかというふうにすら実は疑わざるを得ないのであります。一体通産省は九電力の五十二年度中の為替差益をどういうふうに計算をして、精密に幾らと見ておるのか、また電気事業連合会はどういうふうにごらんになっているか、これをちょっとお聞かせいただきたい。
  73. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私の方では電力における為替差益を実質九百二十五億円というふうに試算いたしたわけでございます。これは、五十二年度を終わりまして年度間における為替の実勢レート平均値が確定したということで一応二百五十八円というふうに見ております。それから一方燃料費につきましても御指摘ございましたが、前回までの計算では、当初の燃料消費計画、それに伴う購入計画を前提として算定しておったわけでございますが、御承知のように、産業界の不振あるいは暖冬というようなこともございまして電力消費量が減ってきておるわけでございます。したがいまして、燃料にも影響を及ぼしてきておるといったようなことも勘案いたしまして計算いたしますと千二百五十五億という数字がまず出てくるわけでございます。その千二百五十五億の中から、五十一年の価格改定の際に織り込んでおらなかったOPECの原油価格の上昇分三百三十億を差し引きまして約九百二十五億、従来約千億程度と申し上げておったものが、実績見込み値が出てきたことによって、かような数字に試算されたということでございます。
  74. 武部文

    ○武部委員 電事連の方はよろしゅうございます。——それでは、どうぞ。
  75. 平岩外四

    平岩参考人 先ほど、九百二十五億と私申し上げましたけれども、九百十七億の間違いでございますので、訂正させていただきます。
  76. 武部文

    ○武部委員 通産省と時間をとってやりとりすることは避けたいと思います。  ただ、計算の方法があなた方とやはり違うわけですよ。われわれは燃料費を約一兆円、そして一円上がることによって三十三億五千万円、こういうやりとりは前にいたしましたね。そういうものから、上期と下期の入ってくる燃料費を全部一月ごとに統計をとって、それに為替レートを平均したものを掛けて、そして、あなたのおっしゃった三百三十億を引きますと、さっき言ったように、千百十五億円になるのです。九百二十五億円にならないのです。これは、そこでやりとりしても仕方がないから……。  そういうふうに数字が違いますけれども、現実には約一千億近いものがあるということだけはもう間違いがない。その計算でいって、五十三年度は二千億を超すだろうということもこれまた間違いのない事実だろうと思うのです。こういう中で、これからどうするかということになるわけですが、この際ひとつ同じような問題で、ガスのことについてお伺いいたしたいのであります。  通産省の試算によりますと、ガス事業円高差益は五十二年度で三ガスで約百六十億円、こういう資料が提出されました。これに対して、業界の方の日本瓦斯協会からの資料によりますと百五十五億円ですから、五億しか違いがございません。これはほぼ合っております。通産省の金額と瓦斯協会の金額とはほぼ一致をいたしますが、私は、これまた間違いがあるのではないかということを指摘いたしたいのであります。不思議なことにこの二つの数字は合っておりますが、私の計算によりますと、たとえば五十一年度のガス生産購入量に年伸び率七・六%、これは過去四年間の平均ですから、七・六%を見た場合に、東京瓦斯は三十四億立方メートルで約百億円、大阪瓦斯が二十九億で八十五億円、東邦瓦斯が六億で十八億円、合計二百三億円です。あなた方通産省の試算と四十三億円違う。協会提出の実績見込みとは四十八億円の差が出るのであります。一体どうしてこういうふうに差が出るのか、この点瓦斯協会の会長さんからひとつお願いいたします。
  77. 安西浩

    安西参考人 私は社団法人日本瓦斯協会会長安西浩でございますが、お答えする前にちょっと申し上げたいことは、都市ガス企業は現在二百五十二社ございますが、その中で、いわゆる為替差益に関する会社は、東京、大阪、名古屋三社でございます。  ただいま先生が御指摘になりました数字についてちょっと申し上げますが、七・六%ふえる、こういうお話でございましたが、実際まだ三月の集計は全部できておりませんけれども、この問題についてだけは私調べてまいりました。東京瓦斯に関する限り二十九億四千万でございます。実際は、昨年は不況と暖冬の関係で、七・六%どころでなくて、五十一年より売り上げが減ったのでございます。正確に申しますと、二千四百万立方減りました。金額にいたしますと、二十五億円の減でございます。そういう関係から、私どもは決していいかげんな数字を出したのではございません。東京瓦斯の九十億というのは絶対間違いございません。それから、大阪、名古屋についてもあいまいではないはずでございます。そういう点、間違いございません。
  78. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、七・六%という過去平均の伸び率、このことは現状には合わないというふうにあなたはおっしゃりたいわけですか。それをちょっとお伺いさせていただければ結構です。
  79. 安西浩

    安西参考人 そのとおりでございます。私が先ほど申し上げました二十九億四千万立方というのは、東京瓦斯に関しての実際の売上高でございます。
  80. 武部文

    ○武部委員 これは、三月の決算が済まなければ最終的に全く間違いのない数字は出てこないと思いますから、決算が出ればわかることですから、私の数字が誤りならばそのときに訂正をするわけです。  そこで、いま電力とガスの具体的な差益の金額を申し上げたわけですが、そこでこれをどうするかということについて、先ほど来いろいろ同僚委員からも意見が出ておるわけです。これを何とか国民還元できないものかということでありまして、最初にガスについて具体的なことをお尋ねいたしますから、お考えをお聞かせいただきたいのです。  このガス料金値上げによる料金改定の際、これはもう過去のものですが、いつも問題になるのは、生活保護を受けておるところの経済的な弱者、そういう者に対してどういうふうに配慮するかということが問題になってきたわけです。これまでには、これらの対象者には数カ月間旧料金を適用するというようなことが行われて、据え置いてそういう弱者の人を見てあげようというような措置がとられた、これは非常にいいことだったというふうに思います。そういう原資は一体どこから出てきたかと言えば、これは合理化だ、合理化によって努力をしてそれを見るということをおやりになったわけですから、この措置については私どもも評価してよかろうと思うのです。  そこで今度は、この差益というのはさっきから申し上げるように労せずして得たものですから、不労所得だというふうにわれわれは見るわけですが、その不労所得の還元方法としてどうすべきかということなんですが、まず、不労所得だから値下げをぜひしてもらいたいということを要請するわけです。したがって、前回皆さん値上げをされるときに旧料金据え置きの対象となりました東京瓦斯管内の生活保護世帯、社会福祉施設、更生保護施設、これは約二万五千軒程度ですね。家庭用のガス需要家約四百五十万軒の〇・五、六%にすぎません。仮にこれらの生活保護世帯料金を三〇%引き下げるということにいたしますと、計算をしてみると大体年間三億五千万円から約四億円程度の金額で済むわけです。これは五十二年度に発生する為替差益約百億円、あなたはさっき九十億とおっしゃったけれども、それに対して四%弱ですね、こういうわずかな数字にしかならぬわけですが、そういうことをおやりになる考えはございませんか。ぜひそれをやっていただきたいというのが私の要望であります。いかがでしょうか。
  81. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  ただいま御発言がありました過去における二回の関係は先生のおっしゃるとおりでございます。  先生は先ほどからの発言で、為替差益は不労所得だということを何回もおっしゃいましたけれども、私はそう思いません。  私はガス事業に携わること五十年でございます。日本瓦斯協会会長を十年いたしておりますが、いかにしてガス事業消費者のためにうまく経営するかということは原料の選択にあると私は考えました。先生も御承知のように、明治、大正、昭和を通じて原料は石炭でございました。ところが、御承知のように石炭の経営がうまくなくて、実は昭和二十年から二十一年、二十二年——二十二年には二回料金の改定、二十三年、二十四年、二十五年、二十六年と、この当時は物価庁が料金を改定していただきまして、石炭が上がった分をすぐスライドして値上げが行われたわけでございます。しかし、このようではとてもこれは申しわけないということで、私は重油に転換をすることを考えました。さらにその後、政府の了解を得まして原油を原料とすることにいたしまして八年間、さらに引き続きましては、三十五年から四十七年までですから十二年間ガス料金を固定いたしました。これは、私は口幅ったいようでございますが、高く評価していただきたいと思います。そうして、この原油でメリットをとりましたけれども、原油には御承知のようにサルファが入っておりますから、亜硫酸ガスが発生して、これは大気汚染の元凶であるということから、LNGを十年間研究した結果、一九六九年からLNGを導入いたした次第でございます。そういうことが今日為替差益のメリットにつながるものでございまして、決して私は不労所得だとは思っておりません。  さらに、ここで一言申し上げたいのですが、現在石炭を、国内炭を二十万トン使っておりますが、日本国内炭はトン二万円でございます。海外の同じ質の石炭は一万二千円でございまして、八千円の格差がございます。これを合計しますと、十六億円日本の石炭が高い、こういうものはこの為替差益でわれわれは補っておるわけでございまして、先生は二回、不労所得とおっしゃいましたけれども、私は原料対策上非常にそういう意味で恵まれたんだと考えております。  また、ナフサにつきましても私どもは海外から輸入しております。これは安いものを買おうと思って輸入したのではございません。御承知のように、石油価格が——ナフサの大きな消費者でございまして、玉が逼迫いたします関係から、中小ガス事業が非常に困ってまいりましたので、私どもは海外のナフサを輸入いたしました。その当時は決して安くはありませんでしたが、今日はそれがまた為替差益として出てまいりました。  そういう関係もございまして、ただいま先生が御指摘になった問題についてこれからお答えいたしますが、ガス料金は原価の公平性を基本として決定されていることは御承知のとおりでございます。したがいまして、為替差益を特定の需要家にだけ優遇するということは、料金政策上の公平性を損ないまして好ましいやり方ではないのでございます。また、本来福祉政策というものは公益事業料金を手段としてやるべきものではないと私は思います。むしろ国の社会福祉政策にお願いすべきものだ、こういうことは釈迦に説法でございますが、そう思っておる次第でございます。過去二回私どもがこれをやりましたのは、四十九年、五十一年の改定時におきましては、国の福祉関係予算が三月中に取れない、したがって半カ年間に限定してこういうことをしたいという国の要請がございましたので、御協力申した次第でございまして、今後そういう特別の配慮をする考えはございません。  以上でございます。
  82. 武部文

    ○武部委員 私はもう一遍不労所得ということを言います。私はそう思うのです。あなたと見解が違うようですけれども。  原料についてお述べになりました。その原料について努力されたことについて否定するものではないのです。しかし、現実にこの為替差益というのは、何も一生懸命がんばって、五時間働くところを八時間働いて入ったものではないのですよ。そういう意味で労せずして得た金、黙っておってもこれは入ってくるのですから、あなたが知らぬ顔をしておったって、いやだと言ったって入ってくるのですから、そういうものなんだから、それは労せずして得たものだから、不労所得として、別なものとして——ガス事業とか電力というものは、先ほど私はちょっと述べましたけれども、そういう法律によって保護されておる、そういう特別なものだ、一般のものとは違うのだ。だからそのことの認識をまずした上で、いまこういう不況の中で大変困っておる人がおるのだから、ましてあなたの方は二回にわたって政府の要請にこたえて二万五千の世帯に対してああいう措置をされた。ましてやあなたの会社だけで去年一年間で九十億という差益が入ったということならば、そのうちのわずか四億ぐらいを、いま一世帯でガスは三千八百六十円ですから、これを三〇%値引きいたしますと千百五十円、一年間に二万五千世帯というのは一万三千八百九十六円の引き下げになる、九十億に対してわずか四億程度のことであっても、そういうことをおやりになることがいま国民が求めておる差益に対しての具体的な要望じゃないか。この九十億のうち八十億も出せと言うのじゃないですよ。そういう困った人に、弱者救済としておやりになることが国民の願いにこたえることじゃないかということを私は言っておるのであって、あなたは政府の要請があったからやったとおっしゃいましたが、もし政府の要請があったらおやりになりますか。
  83. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  不労所得に関する問題は先生と見解が違うので残念でございます。ただ申し上げたいのは、LNGの価格は、私が一九六九年に決めたときは、現在の四分の一の価格でございました。これは石油製品じゃないのでございますけれども、この契約に当たりましては、いかなる経済変動があろうと、アラスカの場合は二十年、さらに一九七一年に契約をいたしましたブルネイの場合は二十五年でございますが、この期間は値段を変えないという国際契約をしたのでございますけれども、実際はOPECにあおられまして、今日は四倍になってしまった、しかも毎年値上げを要請されておるわけでございます。そういうことに対しては懸命ながんばりをしておるわけでございます。それを敵の言うように、敵というのはどうか知りませんが、相手の言うようにばんばん上げていったら、為替差益なんか吹っ飛んでしまう。そういう意味で、私は大変お言葉を返したようでございますが、不労所得ではございませんと申し上げた次第でございます。  なお、為替レートの円高についての利益が上がっているということは、先生御指摘のとおり、東京瓦斯に関しては九十億円、そのとおりでございます。ただ私、先ほど申し上げましたように、戦後何回もガス料金値上げいたしましたが、いわゆる先生のおっしゃるような特別配慮は過去二回とっただけでございまして、これは私どもといたしましては料金を長期安定するという見地から申しましても、先生の御発言には賛成しかねる次第でございます。
  84. 武部文

    ○武部委員 あなたは先ほど公平の原則ということをおっしゃいました。後で電力の方で触れますが、電気事業法第十九条第二項四号に書かれておりますように、料金については不当な差別的取り扱いをしてはならぬということが書いてありますね。同じようにガス事業法でも大体そうです。この生活保護世帯とかそういう弱者に対してそういう措置をとることが一体不当なことでしょうか。私は不当な差別的行為とは思わないのです。むしろ逆にこれこそ妥当な、最もよい政策だというふうに思うので、これはあなたの方の事業法にもありますが、電力も同じことですけれども、そういうふうに物の解釈を、ちょっと差をつけて下げたら、これは不当な差別取り扱いというふうに解釈することは、これは全く棒を飲んだような考え方じゃないかと思うのです。だからあなたの方は二回おやりになった、これは皆さんが評価しておるじゃありませんか。東京瓦斯はよくやった、りっぱなことをやったと言って評価しておるのですよ。そうしたらあなたの方はお続けになったらどうでしょうか。
  85. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  ただいまお聞きしていると、先生のおっしゃることはもっともでございます。ただしかし、そういうことは国が福祉政策としてやるべきことであって、この前は予算がまだとれないから六カ月に限ってこれをのめと言われましたから、涙をのんでのんだ次第でございます。どうぞひとつそういう点を御了解願いたいと思います。
  86. 武部文

    ○武部委員 それは隣の宮澤さんに向かってひとつ言ってください。  時間の関係電力の方も言わなければいけませんから、ちょっと電力の方をお願いしたいのですが、電力の利益は先ほどから申し上げるようにガスどころの話じゃありませんね。それで私は、やはり同じように具体的な問題をこれまた提起をいたしたいのであります。  それで、弱者というものは先ほど東京は二万五千軒ということを言いました。電力の方は対象がちょっと違うのであります。これをどういうふうに還元をするか、一体その還元額はどのくらいになるだろうかという点について試算をしてみたわけです。具体的に数字を申し上げますから、それにお答えをいただきたいのであります。これもいま申し上げるように電気事業法第十九条の規定を、われわれはそのように理解をする上に立って述べるのであります。これは決して不当な差別ではない、妥当な政策だ、今日このような差益の問題が全国的に巻き上がっているということに対する社会的、政治的な解決方法だというふうにわれわれは評価していいという考え方であります。ですから、十九条の問題についてはそういう前提に立っておるわけです。  そこで、経済的弱者、これをどこに置くかということについて検討した結果、現在全国で生活保護世帯、これは母子家庭を含んで約七十二万人であります。そのほかに身体障害児、者、これが百四十一万人、精神薄弱児及び者三十一万人、原爆被爆者三十六万人、合計二百八十万人、これが俗に経済的弱者と言われる数字であります。あなた方の方は価格の据え置き、そういうことをおっしゃっておるわけですが、据え置き据え置きとして、この二百八十万人に対してガスと同様に三〇%の料金引き下げをしてもらいたい、そうすると一体どういう数字になるかということを計算をしてみたわけです。一世帯の電気使用量は、通産省は百二十キロワットと言い、電気事業連は百七十キロワットと言い、いろいろ違うのです。しかしそれをここで一つ一つ取り上げることはできませんから、平均をして一カ月百五十キロワット、こういう一世帯の電気使用量と見て、一キロワットの単価は十七円二十六銭、したがってこれを一月の一世帯平均の電気代にいたしますと二千五百八十九円になります。一年では三万一千六十八円、これを三万円一年間に使う家庭と見て、三〇%、九千円を割り引く、したがって電気の支払いは二万一千円、九千円の割引ですから、二百八十万人に掛けますと二百五十二億円になります。二百八十万人の弱者の人たちの値下げに、一千億以上の差益のある中から二百五十二億円を使ってほしい、こういう私どものお願いであります。そういう要求であります。決してこれは不当なものでもないし、先ほどから申し上げるように、ガスの方でもああいう具体的な事実があったし、中国電力はかつて三九%という値下げを四十一年にやった、そういう事例もあるわけですから、ぜひこういう問題を実現をして、為替差益国民に具体的に直接的に形のあるものとして還元できるような、ひとつそういう政策をとってほしい、こういうことを要求し、要望したいのでありますが、電事連の会長、いかがですか。
  87. 平岩外四

    平岩参考人 ただいま武部先生から、弱者救済についての御意見がございましたけれども、先生のおっしゃる意味は私ども非常に理解はできますが、私どもの立場といたしましては、これを料金の中で処理するということはいたしかねると考えております。日ごろ私ども、こういう方たちに対しましてはそれなりのいろいろな配慮をいたしておりますけれども料金の制度というのは別の問題だと考えております。
  88. 武部文

    ○武部委員 ついせんだって需要者の方たちが、差益還元の問題、弱者救済の問題でいろいろお願いなり要求に行って、その際に北陸電力が述べられた言葉を私は皆さんにお伝えしたいのであります。どういうことをおっしゃったかというと、「1為替差益で得た収益金は全部消費者還元すべきものと考えている2還元方法としては電気料金据置きの他に要求されている生活保護世帯(三県で約八千世帯)に対する三〇%割引きについてもその主旨を電気事業連合会の中に十分反映させ、みなさんの要求が実現するように最善の努力を払う(次会電気事業連合会は四月の上旬の予定であり」、これはちょっとおくれているようですが、どうも近く開かれるようなことは聞いておりますけれども、こういうことを北陸電力の、名前を言ってよろしければ言いますが、常務が言っておられます。為替差益は全部消費者還元すべきものだ、こういうことを現実に地方の電力責任者がおっしゃっておるのですよ。いま私が要求したような、具体的な事実を述べたような、生活保護世帯に対してできるだけそれが還元できるようなことを、あなた方の電事連の会合に出て積極的に発言して期待にこたえるようにする、こういうことを述べておられるのですよ。あなたの考えと大分違いますね。もう一回ひとつお伺いできませんか。
  89. 平岩外四

    平岩参考人 ただいまの北陸電力お話、私はいま初めてお伺いいたしまして、いままで全然聞いておりません。
  90. 武部文

    ○武部委員 この結果は、またそういうことを依頼してきた者に報告するというふうに答えられたようですから、恐らくまたわかるでしょう。しかし、述べたのはうそでも何でもない、事実なんですから。  そういうことが現実に地方で起きておるのです。ですから、そういう声を中央の責任者であるあなた方が吸い上げて、その差益をいかにして国民の理解、納得のいくような形で消費者還元するかということにいって、これからも鋭意努力することはあなた方の責任だと思うのですよ。電力、ガスというものがどういう形で守られておるかということを先ほど冒頭に何回も言いました。そういう中で、差益というのはほかの物と違うのだから、そういう形で具体的に形にあらわれるような方法還元してもらいたいものだ、これは国民がひとしく願っておることだろうと思うのです。  そこで、そういうことをあなた方の事業連合会やあなたがおっしゃる背景には、やはり通産省の指導が——たとえば十九条の問題とかあるいはガス関連の事業法とかそういうものに関連をして、そういうものを通産省が認めない、こういうふうにあなた方がおとりになっておって、通産省が認めないのにわれわれだけがそういうことをしてやってもいかぬというふうにお思いになっておるのでしょうか。通産省が何だろうと、あなた方としてはこの具体的な問題について、通産省の見解とは違っても自分たちはこういうことをやりたいという意思があるかどうか、それをちょっともう一回。
  91. 平岩外四

    平岩参考人 私どもは通産省の御指導をいろいろ受けておりますけれども、すべて通産省の指導によって行動しているわけでもございません。私どもの基本的な考え方といたしましては、先ほど武部先生から最初にたとえばニューヨークの停電のお話がございましたけれども、私どもがいま経営上一番危機感を感じている問題は、この数年後電力需給逼迫して需給のバランスが崩れたときどうするのか、そうしないためにどうしたらいいのか、これが一番重点に置かれている問題でございまして、そのために需給の安定と、そのための料金の安定、これこそが経営の安定のためであって、いろいろな問題はやはりそこへ集約をすべきである、こういう見解に立っておるわけでございます。
  92. 武部文

    ○武部委員 通産省にお伺いいたしますが、この間商工委員会であなたとちょっとやりとりしたので、また重複する点は避けたいと思いますが、あの十九条の問題に絡んでわれわれはああいう見解を述べるし、あなたはそういう見解ではないというふうにお述べになりました。  そこで、もう時間がありませんから具体的にお聞きいたしますが、三十円という言葉が宮澤長官の口からも出たわけですね。三十円程度の少額だ、私はそうは思っておらないわけでして、それは電灯料金だけにいたしますとぐっとふえていくわけで、本来ならば消費者の一番関心の的である電灯料金にしぼっていけば、金額をここに持っておりますけれども、莫大な金額になりますね。電力料金と電灯料金と分かれておりますから、電気料金ではなくて電灯料金にこの差益を換算していくと、一キロワット単価もぐんと上がるし、差益も、三十円などではなく、ぐんとふえていくという形でございますが、通産省の方は電気料金として計算いたしますから、平均していくと大体月三十円ぐらいだとおっしゃっているわけですね。そういうことで、三十円というようなわずかの額だ、だから還元しても大して役に立たぬ、だから据え置きした方がいい、こういう発言が何回か出ました。商工委員会でも出たわけです。それではどうしてこんな少額なのに一年も二年も据え置くということが起きるんでしょうか。皆さんも大変不思議に思われると思うのですよ。たった三十円しかない、こういうふうに何遍もおっしゃるが、二年間も据え置くということは一体どういう根拠と結びつくのでしょうか。これをエネルギー庁長官、ひとつ答えていただきたい。
  93. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず月額どの程度になるかということを、先ほど申し上げました新しい試算の九百二十五億円で申し上げますと、私たちがいわゆるナショナルミニマムの上限といたしておりますのが百二十キロワットアワーでございます。この家庭におきましては一月当たり二十八円ということになるわけです。それから九電力の平均をいたしまして一カ月の平均使用量が百七十五キロワットアワーになりますから、約四十円ということになります。私たちがこれを今後据え置きをもって消費者還元したいと申し上げておりますのは、この金額の多寡のみを言っておるわけではございませんで、御指摘のように為替差益と申しますか、円高メリットが発生しておることも事実でございますが、今後の問題といたしまして減価償却、支払い利息を中心といたしました資本費、人件費、修繕費といったようないわゆる総括原価の上昇というものがかなり大きく見込まれるということでございます。その上に、原油の価格がこの六月に開かれますOPECの総会でどう取り扱われるか、きわめて不安定な要因である。あるいは為替レートも二百二十円でこのまま五十三年度問推移するのかどうか、これも流動的である、そういった事情もかみ合わせまして、この段階料金引き下げという形で消費者還元するよりは、むしろ長期安定的に現行料金水準を維持することが必要である、またその方がベターであるという判断に立って指導してきたわけでございます。  それでいま御指摘の、一年のみならず二年までどうして据え置けるんだということでございますが、これはいろいろな前提を置いておりますが、ともかく五十三年度につきましては、先ほどの約千億弱と申しますか、九百億強の円高メリットが出ておることは事実でございます。もちろん九社の中にもかなりの企業努力を必要とするケースもあろかと思います。いずれにしても五十三年度、これは原価計算期間を過ぎておるわけでございますが、この五十三年度一年間は据え置きを指導した、こういうことでございます。これをさらに二年に延ばすかどうかという問題でございますが、それにつきましては非常に大胆な前提でございますが、今後二年度間二百二十円のレートが現状のままで推移するあるいは二年度間OPEC石油価格の引き上げが行われないという前提を置いた場合に出てくるであろう円高メリットというものを頭に置きまして、できるならば二年間、こういう考え方につながってくるわけでございます。あくまでOPECの原油価格の値上げがない、あるいは為替レートが現状で推移するという前提を置いてのことであるということは御理解賜りたいと思います。
  94. 武部文

    ○武部委員 もう時間がありませんからあと二、三でやめますが、やはり私は納得できません。公平の原則と言いながら、差益の全くない北海道電力に対して一年も二年も据え置け、これこそ公平の原則にもとるのであって、そういうことを言うのはおかしいと思うのです。ですから電気事業法の第二十三条、その根拠に基づいて——むしろこの二十三条によると通産大臣は、「電気料金その他の供給条件が社会的経済事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、」料金の「変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。」言ってこなかったら、あなたの方から行って、変更の申請をせいと言うことすらできるようになっておるのですよ。まさに社会的経済事情の変動により著しく不適当となっておる、公共の利益の増進に支障がある。これを適用して、料金について申請してきたらどうだということをあなた方がなぜ命令しないか、そういうことすら私どもは言いたくなるのです。論争すれば長くなりますからこれ以上のことは申し上げません。  そこで、いろいろやりとりいたしましたが、弱者の救済についても皆さんは前向きの姿勢をお示しになりません。大変私は残念に思います。それならば、いま電力会社がどういう資産を持っておるか、こういうことの一つの例を私は申し上げてみたいのですが、退職給与引当金を見ても、これはとてもじゃないが他の会社には見られないような莫大な金を積み立てておるのですよ。これはなるほど税法の許容限度だというふうにおっしゃるかもしれません。たとえば東京電力は、現在退職給与引当金は五十二年九月期で千二百十六億、平均年齢三十五歳、一人の積立金三百五万円。一番大きいのは中国電力、一人の積立金四百九十二万円、平均年齢四十歳。仮に半分やめたとすると、一遍に半分、そんなことはありはしませんが、仮に半分やめたとすると、中国電力は四十歳で一千万ですよ。四十歳で平均一千万の積立金ということになるのですよ。そういう莫大な金額が九電力で四千八百七十五億円も積み立てられておるのですよ。こういうことを考えたときに、それは、私はこのことが全部を支配するとは思いませんよ。しかし、他の会社には見られない、そうしてつぶれる心配がないのです。ちゃんと法律で守られておるのですから。そういう会社なんだから、たった四億や何ぼのガス料金還元やあるいは二百五十二億の電力料金の弱者に対する還元ができないはずがない。やろうと思えばできることだ。それをぜひ前向きで検討していただきたいということを私は申し上げたいのであります。  そこで、最後に宮澤長官に申し上げますが、先ほど西宮委員からもお話がございましたようにこの為替差益の問題をめぐって国民生活審議会も開かれましたし、物価安定政策会議の政策部会も開かれて、円高の効果を物価の安定に反映させるように公共料金の引き下げも含めて政府はあらゆる努力をすべきであるということを決定しておりますね。われわれは委員会で一年以上もこの差益の問題を論議してきたのです。福田総理は一年前の二月にこういうことを述べておられました。輸入原油への依存度の高い電力、ガスなどの公共料金体系について、為替相場は変動するのですぐに結論は出せないかもしらぬが、円高相場が一年程度の幅をとって定着するなら価格政策上問題も出てくるので、相場の推移を見ながら料金体系を検討していく、こういうふうに述べておられるのですよ。これは福田総理がそういう答弁をされたのです。あれから一年三カ月たっているのですよ。そうして円は二百九十円台だったものが二百二十円、こういう段階になっておるわけです。  なお、あなたの前の倉成長官とわれわれはこの為替相場差益のことについていろいろやりとりいたしました。そのときに倉成長官も、いわゆる物価担当の企画庁としてはこのことに非常に関心を持っておる、そうして消費者というのは為替相場の知識に乏しいのだ、だから輸入業者が円高によるところの利益を値段に反映しなくてもこれに対抗する手段を持たない、だから行政が厳しく監視をしてこの円高差益というものが現実に反映されるようなことをわれわれはやっていきたい、こういうことを何回も述べておられました。まさにそのとおりだと思います。しかし、残念ながら急激にこのピッチを上げてきた円高がこういう状態になっても、一向に国民の側としては納得できない、理解に苦しむ、そういう状態が起きていることは先ほど新聞の投書の例を挙げて申し上げましたけれども、間違いのない国民の意識だと思います。ですから、聞くところによると何か明日経済対策閣僚会議を開催されるようですが、その座長は宮澤長官であります。どうか私がきょうここで述べました具体的な問題、各委員からのいろいろな御意見、そういうものをぜひこの閣僚会議に反映をしていただいて、国民が納得のいく、そうしてまさに国民自体が理解できるようなそういう為替差益還元方法というものをぜひ政策として打ち立てていただきたい、このことを最後に強く強く要望しておきたいと思いますが、長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題については武部委員が従来から御関心を持って御発言のことはよく存じておりますし、ただいま参考人も言われましたように、いわゆる差益が発生しておる、その額もある程度はっきりしておるというところまでは確かなことでございます。武部委員の御発言の御趣旨もよく考えさせていただきますが、いずれにしても還元をするという還元の仕方にいろいろな方法があるのではないだろうか、何かの形で利用者が受益をするというようなことを考えなければいけないであろう。具体的に通産大臣がどのようなお考えに達せられますか明日の会議まで待たなければなりませんが、何かの形でやはり利用者が受益をする、こういうことまでは実現をしなければいけないのではないか、そういうふうに考えております。
  96. 武部文

    ○武部委員 以上で終わります。
  97. 美濃政市

    美濃委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  98. 美濃政市

    美濃委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮地正介君。
  99. 宮地正介

    ○宮地委員 参考人皆さんには、大変お忙しい中、当物価対策特別委員会にお越しいただきまして、敬意を表する次第でございます。  現在、特に石油、ガス、電力といった、いわゆる円高に伴います為替差益国民消費者還元の問題は大きな政治的課題であり、また国民の大変期待をする、いわば社会的な問題にまでなっております。いままでもるる論議が交わされてきたわけでございますが、明日、この問題を含めまして、現在当面する円高対策としてドル減らしなど、また消費者還元の問題につきまして経済閣僚会議を開いて、一歩前進の対応策を政府として打ち出す、こういうことがすでに報道されているわけでございます。これにつきまして、先ほど来の長官お話を伺っておりますと、どうも自分自身の御意見は差し控えておるようでございまして、今回のこの電力、ガス、石油といった業界のいわゆる為替差益の吐き出しの問題、消費者還元の問題について、通産大臣と改めてお話を詰めたい、こういうようなお話でございます。しかし、大臣のお話を伺っておりますと、現在業界が持っております。特に電力、ガスの公共料金のこの据え置き問題について、将来の発電コストあるいは一世帯三十円程度という問題をおっしゃいながら、いままでは内部留保ということを中心に大臣は国会においても答弁もし、そういう意思であった。しかし、明日通産大臣との話し合いによっては、別の新たな何らかの消費者還元の方途も考えられ得るというようなニュアンスのお話を私は伺ったわけでございますが、きょう現在の大臣のこの問題に対するお考えを、通産大臣と協議ということでなくして、少なくとも経済閣僚会議の座長という、中心閣僚として大臣の所見をここでお伺いをしておきたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 明日できれば経済対策閣僚会議を開きたいと考えておりますが、その議題になりますものにつきましては、もうここ二週間近くの間、経済企画庁と関係省庁との間で議論をいたしてきております。したがいまして、ある程度の姿は私にも見当がついてまいっておるわけでございますけれども、やはり電力なら電力あるいは仮に公共事業であれば公共事業というふうに皆さん所管大臣がおいでになりますので、最終的にはやはり会議で決めまして、所管大臣責任において執行をしていただかなければならない種類の問題でございますから、私としまして概略の見当はついておりましても、それを所管大臣に先立って申しますことは、円滑に行政をやってまいります上では余り得策なことではないということを、自分の長い間の経験で思っておりますものですから、それで先ほどのようなお答えを申し上げておるわけでございます。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 概略の見当が現在胸中にある、そしていままでの考えは内部留保となりますと、ここで国民として謙虚にいまの大臣のお話を伺えば、やはり明日の閣僚会議において国民期待する一歩前進的な消費者還元対策についてのいわゆる新たな政府指針が出される、こういうふうに解してよろしいでしょうか。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお話は主として電力に関してのお尋ねと存じますが、先ほど平岩会長からも会長としての御所見がございましたし、エネルギー庁長官もいまいろいろなことを検討しておるというお答えでございました。そこらから判断いたしまして、還元というやり方にはいろいろな考え方があると存じますけれども、何かの形でこれが利用者の利益になるような行政上の、これは厳格に申せば決定とは申しがたいのでございましょう、現実に執行されるのは電力会社でございますから、行政上の、何と申しますか、考え方を決定できるのではないかと思っております。
  103. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで初めに電力とガスの公共料金という問題について、現在、業界としてはこの一、二年据え置きという方向で将来の需給ということを中心にしてお考えのようでございます。私は一歩角度を変えまして、皆さんのおっしゃることも私は決して理解できないわけではございません。しかし、昨日の大蔵委員会理事会において決定をし、本日すでに発表になっておりますが、本年度もいわゆる所得減税三千億円の実施が決まりましたこの問題について、いわゆる景気浮揚ということであれば、この三千億円の減税というものは消費、需要喚起あるいは内需喚起ということについてはそう大きな効果は私はないと思います。本来なら一兆円なり二兆円やらなければならないと思います。しかし庶民大衆は、本人六千円、扶養家族三千円、標準で一万五千円が昨年同様夏ごろのボーナスには戻し税として戻ってくるということになりまして、非常に賛成とまた喜びをもって受けとめておる国民の方々が多い。これはいわゆる生活実感からくるいまの実態であります。であるならば、据え置きにするメリットも確かにあるでしょう、しかし私は引き下げることによっての大きなメリットもあるということは理解しなくてはならないと思うのです。  ある意味では、電力、ガス業界と言えば公器であり、公共料金の最たるものであります。確かに、わずか月額三十円、そんなに大したことはないと言えばそれでおしまいだと思います。しかし、いま日本経済運営の中において最も重要なことは、私は政府の行う経済運営に対する信頼度の回復であろうと思います。言うならば、経済マインドの心理的作用を無視して現在の経済運営というものはできない。そういう立場から見ましても、たとえば五十三年度においてわずかであるが引き下げるということであれば、これは私は国民に対する経済マインドの大きな高揚にもなるし、政府並びに公器と言われる業界に対する大きな拍手も贈られるのではないかと思うのです。そういう意味合いにおいて私は、据え置くよりもむしろ引き下げた方が国民に対する経済的なマインドという面からもその波及効果は大きいのではないか、こう考えるわけでございますが、この点について幾分なりかは理解あるいはそういう考えを持ってなお今回の措置に踏み切っておられるのか、この点について電力、ガスの業界の代表の方から御意見を伺いたいと思います。
  104. 平岩外四

    平岩参考人 ただいま宮地先生から非常にごもっともな質問がありました。確かにそういう考え方というのは私もよくわかりますし、私個人といたしましてはそうした方がすっきりとした感じがすると思うわけでございますけれども、これは私の経営の良心から申しまして、これをしなくて前から申し上げましたような方法でいくべきだ、こういう信念を持っております。と申しますのは、  いま料金を下げて、それからことしまた同じように上げればいいじゃないか、そういうような論理になると思いますけれども電気事業経営の安定というものはやはり供給の安定と料金の安定というものが続くことによって経営自体が安定し、それが産業活動、国民生活の安定につながっていくものだという信念を持っております。したがいまして、確かに為替差益というのは少ないという意識は全然持っておりません。といって、その額が金庫の中にしまわれてそれが札束として残っているようなものでもありませんし、ただ計算上、計数上出てくるだけのものでございますけれども、しかしそれは小さな金額だからとかそういう意識は全然ありません。  しかし、この五兆円、六兆円という将来の設備投資を本年度二兆円あるいは三兆円、こういう設備投資を行う中でその為替差益をどういうふうに位置づけていったらいいか、こういう問題になりますと、やはり供給の安定、料金の安定、そういう問題にそれを使っていくべきだ、こういうふうに考えております。先生のお考えはお立場として私もよく理解できますし、個人としてよくわかりますけれども経営の立場から言いますと従来の線でいかざるを得ない、こういう信念を持っております。
  105. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  為替差益は、料金を可能な限り長期に安定させるために使用いたしたいと存じます。料金の値下げと申しますものは総合収支から判断すべきものでございまして、為替差益があるからと申しまして直ちにこれで値下げを論ずることは私は必ずしも妥当だとは思われません。特に資本費とか諸経費が増加傾向にある現状におきましては、値下げいたしましてもその効果は私は一時的であると思います。したがいまして、いずれまた近い将来に料金値上げを必要とするようなことになると思われますので、料金の安定という面から問題があるものと考える次第でございます。差益を最も有効に活用して現行料金を可能な限り長期に維持することによって消費者の方々の利益に寄与いたしたいと考えておる次第でございます。
  106. 宮地正介

    ○宮地委員 確かにいまお二人がおっしゃったようにお金の問題じゃないという論もあると思います。しかし、先ほど来論議されておりますように、電力業界においては五十二年度平均で九百二十五億円の為替差益が出ている。恐らく五十三年度一ドル二百二十円で推移したとすれば一千四百億円程度為替差益が出るのではないか。ガス業界にいたしましても、五十二年度平均で百六十億円、同じように五十三年度二百二十円一ドル相場で推移すれば約三百五十億円という為替差益が見積もれるのではないか、こう言われているわけであります。ましてや一般の民間企業とは違って公益事業という非常に重要な立場にある業界であります。私はそういう面においての国民に果たす役割り、責任というものは非常に重かつ大であろうと思います。また、いままで政府・自民党といたしましても、日本の基幹、中枢の企業としてあらゆる面で租税特別措置法などによってある意味では保護育成し、中小企業などから比べれば多くの恩典を受けて今日をなしてきた。もちろん企業努力にも私たちは敬意を表しております。そういう中で果たす役割り、責任というものは、逆に見るならばいまをおいてチャンスはないのではないかという論も私はあると思うのです。私は、むしろ勇気を持って国民に果たすその役割りというものを、当面する現在の経済不況、置かれた経済環境、高度経済成長下から低成長下へと変化をしてきているこの段階において——皆さん方の業界は、高度経済成長という重化学工業中心の中でむしろ守られて今日をなしてきたのではないかと思うのです。そういうことを考えてみたときに、私は、もしも金額ではないとおっしゃるならばせめて九百二十五億円あるいは百六十億円、ましてや電力であれば——九電力全部とは言いません。先ほども、北海道電力は大変厳しい内容である、聞くところによれば為替差益は二千万ぐらいであるとも言われておりますし、北海道の産地振興のため石炭を使用しているという役割りなどを負っているとも聞いております。しかし、八電力は可能である。また、ガス業界にいたしましても、大手三社においては可能である。それは中小の二百社ぐらいの業者もあると言われております。そういう中で引き下げるということは、大変大きな国民に対するメリットがあるのではないか。また、業界にとっても将来の立地の問題だとかいろいろと苦労されることについても私は知っておりますが、むしろ国民の信頼を高めるという意味からも私は決してマイナスではないと思うわけであります。  それじゃ一歩譲って、もしも引き下げができないなら、この為替差益というものについて国民に対してガラス張りの公開、公表ということを特に現在検討されていると聞いておりますが、この問題について業界としてどのように具体的にお進めになっておるのか、また、ガラス張りの経営の実態、会計の実態というものを国民に対して公表するだけの勇気をお持ちであるかどうか、お伺いをしたいと思います。
  107. 平岩外四

    平岩参考人 経理のガラス張りのお話でございますが、電気事業の経理というのは、電気事業法、電気事業会計規則、そういうものによりまして非常に厳しい枠がはめられております。そしてその内容は従来から極力公開をされておるわけでございます。今後も公益事業という性格を踏まえまして可能な限り皆様にお知らせしていく、こういう方法をとっていきたいと思いますが、ただ、公表することが公正な取引を阻害したり、関連業界あるいは該当会社に迷惑をかけるというような情報については、もちろんこれは例外になると思います。一般にわかりにくいという批判などもございますが、これは極力そういうことのないように努めていきたい、こう考えております。
  108. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  為替差益の計算上の数字につきましては今後も明らかにしてまいりたいと思いますが、しかし先ほども申し上げましたように、値下げという問題は総合収支から考える問題だということを重ねて申し上げます。
  109. 宮地正介

    ○宮地委員 先ほどから論議がありましたが、もう一面、やはり少なくとも現在特に構造不況業種に対する影響というものを見逃せないと私は思います。通産省の試算によりますれば、電気料金をいわゆる円高為替差益の分だけ改定してまいりますと、その波及は、家庭用については、先ほど金額では三十円とおっしゃっておりましたが、大体一・八%ぐらい、工業用につきましては、業種別に見てまいりますと、アルミ精練では一七・一四%、無機化学工業で七・八%、肥料は三・一二%で、いわゆる構造不況業種のトップレベルに並んでおるものにとって電力コストが下がることのメリットは非常に私は大きいと思います。そういう意味では現在政府のとっておる景気浮揚策の路線にむしろ非常にマッチした方法ではないか、私はこう思うわけであります。政府が許認可権を持っております公共料金について円高差益というものを還元するに当たって、先ほどお話がありましたが、西ドイツなどにおいては敏感に機能するものを持っております。わが国は残念ながらまだその機能がそこまで行っておりません。しかし、ある意味では電力業界においては今回の景気浮揚の設備投資部門においては先端的立場で大変に努力をされておる、これには私は敬意を表しておりますが、もう一歩、構造不況業種、いまお話ししましたアルミなどは大変な状態であります。まさにそういうところに温かい手を差し伸べていく姿勢というものがあって、むしろ国民というものは政治、経済に対する信頼というものを持つのではないか。自分の業界だけが、自分の企業だけがという余りの自己本位、将来を考えているんだからという大義名分はあるにせよ、余りにそれが露骨に出ると、かえってその反動の方が大変に厳しいのではないか、私はこう思います。そういう点について、特にこのアルミなどの構造不況業種の業界に対して何らかの措置ができないものかどうか、業界の皆さんにお伺いをしたいと思います。
  110. 平岩外四

    平岩参考人 アミル業界を中心とした構造不況業種につきましては、われわれも社会との調和という理念から、いろいろ協力できる面については極力協力をいたしてまいっております。しかし、電気料金の問題としての協力というものは一つの原価主義の限界の中にありますので、その中での処理しかできないということをお認めいただきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、アルミというのは電力会社からわずか二〇%しか電力を買っていないわけでございまして、あとの八〇%程度はみんな自分で起こしている電気でやっておられるわけでございまして、これは電力会社そのものとの関連の問題は比較的薄いわけです。しかしわれわれは、そういうものだからといって料金以外の面で協力を惜しんでいるものではないわけでございます。その点御了解をいただきたいと思っております。
  111. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が限られておりますので、次に、石油業界の代表の方に少しお伺いをしていきたいと思います。  特にいま国民石油業界の皆さんに対して為替差益消費者還元——私も通産省に、どのくらいの為替差益が出ているのか通産省のわかる段階で資料を要求いたしましたところ、いわゆる円高による為替メリットが約八千七十億円、しかし、価格の値崩れ、原油値上げ等で約二千億、OPEC値上げ分で約五千三百億、その他、備蓄、防災などで千九百億ということで、大体とんとんだというデータが来たわけであります。しかし、実際に国民が接しておるいわゆる油種別にいろいろ見てまいりますと、実際その市場においてはまだまだ問題があるようであります。私は、一つは鉄鋼などに向けられるC重油の問題であろうと思います。もう一つは、いわゆる中間製品といわれるナフサの問題であろうと思います。この価格の落ち方がまだ非常に弱いのではないかというのが率直な国民の感情であろうと思うのです。  鉄鋼向けC重油の価格推移を見ましても、ハイサルファ二・六%物を見ましても、昨年の四−六月では千円のアップで一キロリッター当たり二万三千二百円、それが七−九月で六百円落ち込み、十−十二月で三百円安くなった、一−三月で約千八百円安くなって、今日リッター当たり二万五百円である。恐らくこの四−六月は八百円ぐらい安くなるのではないかということが見込まれております。これは鉄鋼だけでなく紙パルプやセメントなど多くの業界に対する影響がある製品であります。  ナフサの価格推移を見ましても、昨年の九月までは価格変動がなかった。昨年の十月から十二月になってリッター当たり国産、輸入含めて三千円、国産だけだと二千円安くなった。この一−三月が五百円安くなった。四−六月はまだ検討中のようでございます。しかし、このナフサというのは御承知のように中間製品でありまして、国民生活に非常に影響の高い合繊などができてくるわけであります。わが国のナフサの価格は国際価格に比べて四千円ぐらいまだ高いといわれております。実際昨年の一月で円ドルレート約二百九十円台、今日は二百二十円を割ろうとする、そういう段階において、一応傾向としては下がってきている。確かに円高為替差益を吐き出しているのだと言えば言えないこともないと私は思います。しかし実態的にはもっと下げることができるのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてお伺いをしたいと思います。
  112. 石田正實

    石田参考人 お答えします。  五十二年度でどれくらいに石油の値段が推移したか、どういうふうに還元したかということでございますが、御承知のとおり昨年の一月にOPEC値上げをやりました。ただしサウジとアブダビの二カ国だけは五%値上げということで、値段変更の二重価格になったことは御承知のとおりでございます。しかしこれも七月以降はまた一〇%というようなことになりまして、大体値上がりは一〇%ということでございまして、ざっと見ますとバレル当たり一ドルくらいの計算になるわけでございます。これをいまの為替レートで換算すると大体二千円見当じゃないか、こういうふうに見ているわけです。そのほかに、備蓄、防災対策費とかいうようなものが加算されているわけでございます。ところが、実際に私どもは昨年の七月ごろまではOPECの値上がりの分を何とか値上げしたいというようなことを考えておりましたけれども、次々に為替レートが円高になるというような情勢もございまして、それで結局値上げはできないというようなことで、横ばいの状態で推移しております。しかし十月になりまして、どうも為替レートが今後円安よりもやはり円高になるというような傾向がかなり強くなってまいりまして、御承知のとおり二百四十円台というようなことで十二月末に入ったわけでございまして、そういう情勢を踏まえましてこれはやはり値下げすべきじゃないかというようなことで値下げをやりまして、大体私どもの試算では、これは全体の大ざっぱな数字でございますけれども、十−十二で千円ぐらい、それからなお一月に入りまして日本石油さんがプライスリーダーとして二千円下げるということを発表して、大体これは各業界が追随するというような状況になりまして、キロ当たり三千円ぐらい値下がりしているというのが現在の情勢でございます。しかし、この値下がりの情勢はまだまだ続いておるような情勢でございまして、これがどこら辺までいくものかというところがまだ私どもはっきりつかめないような状況でございます。  ただ、全体の数字がどういうふうになるかは御承知のとおり私ども各社決算をとっておりませんのでわからないのですけれども、三月末の決算は恐らく六月ごろにははっきりしてくるのじゃないかと見ておりますので、そうすれば全体がどういうふうにして為替差益があれし、どういうふうな経常の段階になるかというようなことがだんだんはっきりしてくるだろうと思いますけれども、それにつきましては先ほど大体の大きな流れだけは話しまして、これが結局、先ほど先生のおっしゃいましたエネ庁で発表されました数字と大体合うのじゃないか、こういうふうに見ておるわけでございます。これは結局、御承知のとおり為替差益が七千八百億くらいですね。それからOPECの値上がりが五千三百億、それから防災その他で千九百億というようなことで七千二百億、それに値下がりが十月以降二千億ぐらいということになると、結局九千億ぐらいになって逆に赤字になるような数字になっておりますけれども、果たしてそこら辺がこういうふうになるかどうか、いろいろあるものですからちょっとはっきりしたことは申し上げかねるわけであります。いずれ、この六月ごろになれば三月決算でそこら辺がはっきりしてくるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。  それから、いまナフサとC重油の問題が先生から特に御指摘がございました。C重油の問題は、これはもう昨年から鉄鋼業界との間にスライド制をしようということをしまして、結局スライド制ということはOPECの値上がりとかそれから為替レートの変動というようなものを加味しましてそして値段が決められるわけですから、これは当然為替レートに相応した還元をやっておるということが言えると思うのであります。鉄鋼業界が大体スタンダードの値段になるものですから、結局その値段が決まりますとそれがやはり紙パ、セメントその他の方向も大体それを中心にしてやるというのが従来の例でもございますし、現在もそういうふうにしてやっておるわけであります。ただ、ローサルの重油につきましてはこれは電力業界の方との間の交渉が中心になるというのがいままでの例でございます。そういう意味ではC重油については完全に為替差益還元されておる、こういうふうに申し上げていいのじゃないか、こう私は思うわけでございます。  それからなおナフサの問題でございますけれども、ナフサの見方もいろいろあるわけでございまして、昨年の暮れに結局国産のナフサを二千円、それから輸入のナフサを含めてトータルで三千円値下げしようというようなことで一応化学業界と妥結しまして、いま一−三の価格を交渉中でございまして、これがどういうふうになっていきますか。この問題につきましても国際価格の問題もございますし、それから為替レートの問題もございますので、そこら辺を十分考慮して今後話していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  113. 宮地正介

    ○宮地委員 時間も限られてまいりましたので大変申しわけございませんが、どうか簡単明瞭に御答弁をお願いしたいと思います。  最後に、私はガソリンの問題をちょっと聞いておきたいと思うのですが、特にガソリンの問題につきまして、一つは最近いわゆる元売りから系列の特約店に正規に流れないで、どうも元売りの皆さんが商社なり系列外に横流しをしているのじゃないか、そのために小売の段階でいまいろいろな摩擦が相当生じているようであります。この点について最近油が、特にガソリンの製品がだぶついておるということで商社や他系列に流れておる、こういうことで本来油というものは大体一物一価、しかしどうも実態は市場では二重に価格が動いておる、こういう点について、もしも商社だとか他の系列に横流しをして安く回すのであれば、その分安くして系列に流して消費者に正常な価格できちっとガソリンが安く手に入るようにするのがまたわかりやすい消費者還元になるのじゃないか、こう思うわけであります。しかしガソリンにつきましても、昨年の三月におきましてはキロリットル当たり約九万七千円、これが三月で大体九万一千七百円ということでございます。まあ大体三円か四円ぐらい、実態はもっとガソリンは安く消費者の手に入るのではないか。先日も参議院においては官庁では九十円台のものが出回っておるということで問題になったようでありますけれども、私は、もしも元売りの業界がそういうようなことをしているようであればこれは大変な問題じゃないか、こう思うわけでありますが、その実態をどういうふうに把握をし、また追跡調査をされているか、これが第一点。  それからもう一つ。これは社団法人の全国石油協会が昨年の十一月に実施いたしましたいわゆる石油製品販売業実態調査、スタンドの皆さんに対しての経営実態を調査した。そうしましたら、ほとんどの販売業者は経営が非常に悪化しておる、こういうデータが出てきておる。調べてみるとどうも粗利が非常に薄くなっておる。ちょうど石油ショックの昭和四十九年のころに比べて粗利が当時はリットル当たり二十一円七十銭あった、ところが今日の粗利は何と十円である、これはどうなっているのだろう、元売りが全部吸い上げちゃっているのではないか。どこにこんなことが起きているのだろうか。人件費の高騰だとか、いろいろおっしゃるかもしれません。しかし、この一年間に少なくとも円ドル相場は二二%アップ、金額にしても七十円近く円高ドル安になっておる、こういうのは、国民が素直に見るとどうも奇々怪々な出来事に見えてならない。そういう点、業界の、何といっても元売りの一番中心のリーダーシップをとっておる方でございますので、当然この点は掌握されておると思いますが、この点わかりやすく国民に御説明をいただければありがたいと思います。
  114. 石田正實

    石田参考人 実は、ガソリンの販売でございますが、元売りの十三社というのがこれに当たっておるわけでございまして、もちろんこの十三社は連盟の中のメンバーでもございます。ところが、御承知のとおり、石油連盟としては、そういう価格の問題、それからそういうふうな生産の割り当てといいますか、この問題は、目下裁判を受けておるというふうな状態でございまして、その点は連盟としていま全然やっていないような状況でございます。それで、せっかくの御質問でございますけれども連盟としてはちょっとお答えいたしかねるわけでございます。しかしこの問題は、御承知のとおり、昨年に揮発油販売業法というのができておりまして、この点はエネ庁の方で十分いま御指導中でございますので、エネ庁の方が十分な資料とまたお考えをお持ちじゃないかと、こういうふうに思うわけでございます。
  115. 宮地正介

    ○宮地委員 いま満足のいく答弁がいただけないで残念でございますが、私の限られた時間が来ましたので、これで終わりますが、いずれにいたしましても、いまわが国国民は、この円高という状態の中で、片方では、中小企業を中心とした輸出産業などはいま大変な不況、倒産に追い込まれておる。片方では、輸入差益で大変に大きな利潤を上げておる。特に石油の業界の一部には、すでに特別の賞与も検討しておられる。ちょうど昭和四十九年の石油ショックのときにも、石油業界はあの正月に一時的な賞与的なものを出した。そして、あの売り惜しみ、買い占めといういやな記憶が私たちにあるわけです。そして、あの独禁法を改正して悪徳商法を取り締まるというようなことで経過した。今回、円高という問題で、今度は石油業界の皆さんも何とか消費者還元努力してくれるんじゃないか、安くなるんじゃないか、これは国民の大多数の方々の率直な感情であると私は思うのです。どうかそういう点をよくよくお考えいただきまして、最大の努力をして、国民に信頼される好機として、また政府経済運営の指揮をとっていただきたいことを心から要望いたしまして、質問を終わりにいたします。大変ありがとうございました。
  116. 美濃政市

    美濃委員長 米沢隆君。
  117. 米沢隆

    ○米沢委員 参考人皆さんには大変御苦労さまです。  円高差益還元の問題につきましては、さきの閣議決定でやっと政府の重い腰が上がったという、まさに遅きに失したという感じは否めませんが、いまからまじめにやっていただこうというわけでありますから、前向きに評価して、同時にまた、そのことはこれから国民の監視の中で行われていくわけでありますから、積極的な取り組みをまず期待をしつつ、若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず第一に、先ほど来のお話を伺っておりますと、結論として、円高によって得た差益をだれが取るかという問題に焦点が当てられておる感じがいたします。議論の中には、この円高経済情勢ができたのは国民全体の成果であるから消費者にすべて平等に、公平に返すべきだという議論やら、あるいはまた、企業にある程度還元をして、企業が安定することによって結果的には物価の安定に資するんだから、そういう配分の仕方もあるではないか、あるいはまた、生産性本部みたいな考え方で、企業あるいは労働者、消費者、三者に配分すべきではないかという、この円高によって得た差益をどういうかっこうで配分するかによって、これから先の円高還元をどういうふうに指導していくかという、すべて基本的な考え方がまさにそこに焦点が当たってくるような感じがしてなりません。  そこで、まず第一に経済企画庁長官にお尋ねしたいわけでありますが、政府はこの円高差益をどんなかっこうで配分するのが一番ベターとお考えなのか、そのことをまず、個人的見解でも結構でありますから、お示しいただきたいと思います。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一番理想的な形を考えますならば、わが国輸出入と申しますか、主として輸入になりますが、輸入がすべて自由化されておって、そして、そこで自由競争が行われる、こういう形が私は最も理想的な形であると思います。それは、実は現実にはかなり遠うございまして、まず農産物のかなりのものが例外になっておるわけでございます。次に、政府が何かの意味で直接、間接に関与をして自由経済が自由に行われていないサービス、物資等がございます。これはそれなりの理由があって政府の直接、間接の介入が行われているのではありますけれども、その反面として、自由競争でございませんために、自由競争の結果円高還元されるという、そういう動機が薄まっておるというような分野、現実にはそのようなことになっておるわけでございますから、私どもとして努めるべきことは、まず自由競争が行われている分野について、それが十分に行われているかどうかといったような点検、これは先般来の追跡調査という形でございます。それから政府が直接、間接に関与しておりますものについては、円高還元が可能であるかないかという関係各省庁による協議、調査といったようなこと、そういう形になってまいるわけでございます。
  119. 米沢隆

    ○米沢委員 大変むずかしくお答えいただきましたけれども、けさほど来の議論を重ねて申し上げますが、円高によって得た差益というものは最終的にはどこに所属をすべきか、この議論なんですね、先ほどからの議論は。そういう意味で、簡単にお答えいただきたいのでありますが、円高差益というものは消費者還元すべきだという議論なのか、消費者にも返さなければならぬけれども、企業にもある程度返して企業体質を強化するために使っても、それは何もおかしくないというふうな論に立たれるのか、どっちですか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと根本論を申し上げました意味は、私は、自由競争の中で消費者、利用者に還元されるべきものであると、そう考えておりますので先ほどのようなことを御説明申し上げました。
  121. 米沢隆

    ○米沢委員 いろいろな新聞報道によりますと、今後政府円高差益消費者還元する策を検討したい。その結果いろんな策が出始めておるんでありますが、その政府見解というものをいまから示されるその中身についてでありますけれども、今後円高メリットについて、それぞれの業界ごとに円高差益還元のルールみたいなものまでつくろうとなさっておるのか。ということは、長期的な一つのルール、長期的に拘束するであろうという一つ還元策のルールをつくろうとされておるのか。それとも、当面五十二年度に差益が上がった、五十三年もいまの調子でいったらある程度差益が上がるであろう、だから、当面の円高差益をどう還元するかというところに焦点を置いて対策を練られるのか、どうなんでございましょうか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども経済政策の哲学から申しますと、企業に対してこういう問題のあり方を政府が標準を設けたり、指示をしたり、指導をしたりするのは決して上策ではないと考えているわけです。つまり自由競争があって、その中で差益還元が行われていくということが最も上策の上たるものであると思っています。ですから、政府としていたしますことは、そのような自由競争を阻害しているものがあるかどうか。あればこれをできるだけ除いていくということ。それから、もともと自由競争が行われないような仕組みになっております業界については、業界の内情を政府もよく調査をする、また業界の様子も聞いて、政府としてある程度の指導方針は持たなければならない。これは上策の上ではございませんけれども、何かの理由で自由競争が行われないという体制になっておりますものは、どうもそういうことしか方法がないのではないかと思っております。
  123. 米沢隆

    ○米沢委員 といたしますと、たとえば石油については、いまは標準価格という名前はありませんけれども、一ドル三百二円ぐらいで標準価格が設定をされた、電力については二百九十八円から三百円ぐらいで設定をされた、あるいはガスについては約三百円前後で決定をされた。そして現在ドルは、一ドル約二百二十円前後で推移しておる、そういう事態が続く限り常にこの問題は出てくるわけですね。ですから、もし換算の仕方、たとえば電力、二百九十八円から三百円で計算したものを、ある程度現在の円の相場が確定したときに価格を再決定なされる、その後はまたいろんな議論がありましょうけれども、そうなされない限り常にこの議論はつきまとうわけで、同時にまた、政府がこういう価格の決定にいろいろと介入といいましょうか、指導までされておるわけでありますから、この際、政府見解として、円高差益が出た場合にどういうかっこうで還元するかという長期的なルールをつくるべきだと私は思うのでありますが、いかがですか、
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま仰せになりました業種のうち、電力、ガスにつきましては、これは公益事業でございますから、政府料金の決定について責任の一半を持っております。現実にコスト計算をいたすわけでございますから、その上にフェアリターンを乗っけて料金を認可するわけでございますから、これはもう政府責任がある問題であります。したがいまして、仰せのように原価計算のときに使われたレートが変わってくれば、その問題にどう対処するかということは、政府として責任を持たなければならない問題でございます。まさしくそのような問題として、私ども電力料金、ガス料金については議論をいたしておるわけでございます。  石油については事情が異なっておると存じます。と申しますのは、石油業法がございますので、それに基づいて政府はいろいろな行政をいたしてはおります。おりますが、本来から言って、価格を決定するとか認可するとかいうことは政府責任であるわけではございません。狂乱物価のときにいっときそのような行政指導をいたしましたけれども、本来そういうものではないであろうと思います。しかし、それ以上のことは、実は行政の方針にかかわりますので、私が余りかれこれ私見を申し述べますことはいかがかと思いますが、本来から申せば、できるだけ自由な形で価格も形成せられるということが望ましいのではないかと考えております。
  125. 米沢隆

    ○米沢委員 電力とガスの参考人の方にお伺いしたいのでありますが、ガス料金電力料金につきましては、現行料金を二年間据え置こうという通産の指導がある。それに大体業界の方も賛同されておるやの新聞報道がなされておりますが、五十四年度といいますと、五十五年の三月三十一日までですね。確実に料金を据え置くという業界の意思はあるのですか。
  126. 平岩外四

    平岩参考人 申し上げます。  据え置く前提条件がございまして、一つ為替の変動が現在程度であるということ、もう一つOPEC値上げがない、そういう条件のもとに、一部の会社を除きまして五十四年度まで据え置くよう努力したい、こういうことでございます。
  127. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  五十三年度につきましては、ただいま仰せのとおり決めておりますが、五十四年度につきましても、ただいま平岩会長からも申されましたが、為替の問題が現状のとおりであり、しかもOPEC値上げがなかりせば、五十四年度におきましても据え置くように目下前向きに検討中でございます。
  128. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど来の議論を聞いておりまして感じますのは、電力にいたしましてもガスにいたしましても、安定供給をするということが結果的には消費者円高差益のメリットをある程度還元するものだという論に立っていらっしゃるような感じがしてなりません。そういう意味で、たとえば料金を下げるということよりも、料金を据え置いて、ある程度円高メリットというものは安定供給をする方向に使いたい、こういうふうに聞いたわけでありますが、もしそうであるならば、本当に電力の安定供給、ガスの安定供給というのは、料金を据え置いて、出たメリットで安定供給の方向にいろいろ対策を練られる、そういう意味で、確実に責任を持って安定供給されるという見通しはあるのかないのか。特に電力の場合には企業間格差がかなり大きい。ですから、据え置きできるところとできないところというものがある。そうなりますと、たとえば電源開発にいたしましても設備投資にいたしましても、資金の調達という意味では格差が企業間で出てくる。そうなりますと、地域的にまた電力の供給体制というのは、格差が結果的には出てくる、そういう心配をするわけでありますが、いかがなものでしょうか。
  129. 平岩外四

    平岩参考人 安定供給を前提といたしていると申しますのは、やはりそのとおりでございます。と申しますのは、安定供給をするために今後設備投資を多くやらなければいけない、こういう前提、これは先ほど来お話がありましたように、メリットとそれからそれにかかるコスト、これとの関係でございまして、円高メリットというものをそれよりもより多く増加するコストに充当しようということで、それによって安定を高めていこう、こういう考えでございます。そうした場合、地域格差が出てきた場合にどうするのかというお話でございますが、地域格差は、ずっと歴史的に見てまいりまして現在、一時よりも格差は縮まっておるのが実情でございます。北海道は一時早く値上げの必要があるという状態があるかもわかりませんけれども、しかし、全体的に九社を比較した場合、過去の地域格差というものは逐次減少してまいりまして、現在縮小しているのが現実でございまして、地域格差は減っております。その計数につきましては後でもう一度申し上げたいと思います。
  130. 安西浩

    安西参考人 お答えいたします。  ガス事業につきましては安定供給、確信を持っておる次第でございます。なお、私、午前中に申し上げましたが、為替レートに関する問題は、東京、大阪、名古屋の三社でございまして、他は関係がございませんと申し上げましたけれども、この機会にガス事業その他の事業の問題について簡単に触れてみたいと思います。  昭和五十二年度中にガス料金が改定された事業者は七十一事業者ございまして、現在料金の改定を申請しておるものが十九ございます。今後のガス料金の改定の見通しにつきましては、大手三社以外の事業者につきましてはそれぞれ主要原料、経営規模に差異がございますのと、前回の料金改定の時期も異なっておりますので、それぞれ置かれている経営環境は異なっておりますので、一律に予測をすることはきわめて困難でございますが、御案内のように資本費の高騰、人件費の上昇、保安対策等の諸費用が増加しておる現状でございますので予断は許されないと思いますが、各事業者がそれぞれの状況に応じまして合理化を進め、可能な限り料金の安定に努力するよう協会の会長といたしましても指導してまいりたいと思います。  以上でございます。
  131. 米沢隆

    ○米沢委員 それからガス業界、電力業界、通産等の指導を受けられまして事業内部に留保する為替差益についてはその額を公表することはもちろん、不当に社外流出をさせず、料金の安定化に活用する趣旨を明確にするために為替差益を中心とした利益を別途積み立てて、これを将来の原価上昇に充てるよう処置する、そういうことをいまから、これは詰めが残っておりますけれどもされようとしておるのでありますけれども、たとえば経理の実態面を考えたとき、理論的には差益あたりは計算できましょうけれども、実際は金に色がついておるわけではありませんから、それがどういうかっこうで使われたなんということはほとんどわからないわけですね。差益については理論値でほぼ素人でも大体計算値が、基礎がわかればわかるのでありますけれども、たとえば原価の上昇なんかについては各企業内部の主観的な判断、そういう意味では客観性を確保しにくいという一面があるわけですね。したがって、為替差益が上がったであろうという理論値が出てきて、それを何とか企業内部に留保してそれを原価上昇に充てるのだ、こう言われても、国民には、先の方はわかりましても後の方はほとんどわかりません。そういう意味で、たとえば電力会社あたりが利益をちょっと伸ばしたりしますと、為替差益を利益の方に回して、本当は料金据え置きの原資あるいは料金を下げる原資にできるはずのものがみんな利益に回ったのじゃないか、逆に、こういう制度をとることによって、常に国民からは差益があるではないか、差益があるではないか、どうして還元できないのだ、なぜ料金の方に原資が回らないのだ、こういう議論をずっと続けていくことになるわけですね、実際は。そういう意味では、そういう論を断つためにはやはり積み立てる。しかし、実態上は無理だと私は思いますね、積み立てるなんというのは、口では言えましてもこんなのは経理上出てきませんね。こういうものを実際本当にやられるのかどうかというのが一つです。それから、先ほど言ったような論を断つためには、本当に国民にわかりやすいように、その差益がどういうような動きをしていくかということを電力業界、ガス業界の方が言われるよりも、政府そのものが第三者として正確に述べていただくことが納得性という意味では非常に重大ではないかという感じがするのです。そういう点、どういうようなお考えでしょうか。
  132. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まさに御指摘のように、為替差益あるいは円高メリットというものはコスト計算上、特に企業会計として非常に出づらいものでございます。しかし、反面理論的には計算できるわけでございますので、午前中来お話が出ておりますように、九電力については約九百二十五億円、ガスにつきましては約百六十億円の為替差益が出てくるというふうな、これは私たちも理論的に計算したものでございます。したがって、各社ごとにも特別経理することは非常にむずかしい問題でございますが、理論的に計算することはできるはずでございます。したがって、各社ごとに理論的な計算を決算段階で発表するとかといったようなことも指導していきたいと思いますし、私たちの立場といたしましても、随時必要に応じて全体あるいは各社ごとの円高メリットなるものを理論的に計算して必要のつど発表してまいりたい、かように考えております。
  133. 米沢隆

    ○米沢委員 というのは、中身は理論値を計算して公表するというだけですな。理論値で計算して、実際それが内部でどう使われたかというのは、口ではいろいろ理屈は立てられても、実際わからぬですね。何しろ高く出して、石油を安く買えるというだけでは、経理上いろいろ色をつけたりして、この金はどの分だ、その分設備投資に何ぼいって、何%はこっちにいったなんて、何もできないわけだから、いまおっしゃるようなことを考えますと、もし実情面で実現したとして、理論的な為替差益をただ公表するだけにすぎませんね。いままでも電力でもガスでも経理内容あたりはかなりシビアに監督されてきた。この円高差益還元について何かそれ以上に監督するものがあるのですか。そういうものを考えておられるならばこの制度というものは有用だと思いますね。それがなかったら、ただ理論値を公表するだけ、こんなものは各新聞でもやってくれます。何もわざわざこんなことを言う必要はないのです。いかがですか。
  134. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まさにおっしゃるとおり、理論的に計算した数値、その金額がどこに何がし使われていくかという片方が理論的数値でありますから、片方の現実的な支出とは結びつかないということは全く御指摘のとおりだと思います。しかし、私は少なくとも二つ意味があると思います。一つは、不当に社外流出しているかいないかというものを判断するときに、その理論的な円高差益額との関係はどうなるか、もう一つは、より積極的にそれが、たとえば電力業界では多額の設備投資を今後とも続けていくわけでございますが、それに対する内部留保資金、借入金によらない自己資金によってどの程度賄われていくかということも判断し得るわけでございまして、そういった面で直結するものではございませんが、積極、消極両面からしてそれなりの意義はあるというふうに私は思うわけでございます。
  135. 米沢隆

    ○米沢委員 不当な社外流出という中に適正な利益というものも概念としてあるのですか。不当な社外流出をさせずというこの言葉の中に適正な利益という利益計上というものが含まれておるかどうかということです。
  136. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御承知のように、電力料金を査定する場合にいわゆる原価主義に基づいておるわけでございますが、その際に適正な事業報酬というものをそれに加えて決定していくわけでございます。その限りにおいて適正な報酬が確保されるということは、当然のことであろうかと思います。
  137. 米沢隆

    ○米沢委員 この論は、大変むずかしいものですから、ちょっと残しておきたいと思います。  それから、電気、ガス料金につきましては、御案内のとおり、原価主義に守られた政府の認可料金である。その前提一つであります為替に大きな変化があった以上、原価の変動に対応して料金を見直すというのが筋だ、この論は、私は正論ではないかと思うのですね。ちょろちょろ上がったり下がったりするものを計算するのはむずかしいでありましょうけれども、かなり大きな為替の変動等があった場合には、やはり原価を見直して、料金を見直すという、そういうものが筋ではないか、私はそういうふうに思うのです。ちょうどいまガス料金電気料金も原価計算の期間が切れるころですね。ですから、もし為替差益がどうのこうのという議論がなかったならば、電力業界の方も、ガス業界の方も、今度の料金について大体計算をして、政府にどうだこうだと、こう言われる段階に私はあると思うのですね、時期は少々のずれはありましょうけれども。しかし、なぜこの段階において原価主義にのっとって料金をこう改定しようという動きではなくて、即料金据え置きという決定をなさったのかというところに国民は非常に不信を持っておるのですね。どなたかお答えいただけますか。
  138. 平岩外四

    平岩参考人 為替の変動が非常に異常な変化があった、こういうお話でございますけれども、現実には、収入の中、経費の中の一・六%を占めているものでございます。したがって、異常なという中には入らないと考えております。  それから、先ほども一つ後でお答え申し上げると申し上げました各社間の格差の問題でございますけれども、これは現実には格差がいろいろな点で縮まっているという実績が出ていることを一、二御報告を申し上げたいと思います。  たとえば、財務体質を示す自己資本比率でございますけれども昭和四十年度、全国で平均が三一・四%の自己資本比率でありまして、そのときに最高の会社が三七・九%であり、最低の会社が二七・一%であったわけでございます。そして、その三七・九%と最低の二七二%の格差が一〇・八%あったわけでございます。それが昭和五十一年度では、平均の自己資本比率が一六・七%でありまして、最高の会社が一九・八%、最低の会社が一五・一%で、最高、最低の差が四・七%に縮小いたしております。  それからまた、地域の特性から生ずる原価格差を反映した料金水準から見ましても、昭和四十年度は、最高と最低では約一・六倍の格差がございましたけれども昭和五十一年度では一・二五倍に縮小しておりまして、昭和四十年度から五十一年度に至る歴年逐次縮小を続けておる、こういう数字が出ておりますので、先ほどのお答えにあわせて申し上げます。
  139. 米沢隆

    ○米沢委員 それから、五十三年中、一ドル二百二十円前後で為替が続いたときに、約千八百億から二千億ぐらい電力業界では差益が出る。国民の立場からしたら、こんなに千八百億も差益が出て、何で料金の値下げに回すことができないのであろうか。料金据え置きがぎりぎりで、値下げの原資にし得ないという、電力には何か特殊な事情でもあるのですか。御説明いただきたいと思います。
  140. 平岩外四

    平岩参考人 それは為替差益の金額だけを取り出すと絶対額が一見大きいように見えますけれども、それと増加するコストの増高、これがそれよりもはるかに上回って上がっている、こういうことでございます。  一例をとってみますと、たとえば他の設備産業の場合には、構造不況業種及び公共企業も含めまして、一般に定率償却が実施されておりますけれども電力の場合定額でございまして、その差が毎年大体二千億出ております。そういうことを比べましても、為替差益絶対額よりもコスト増になる部分の要素というものが非常に多く出ております。
  141. 米沢隆

    ○米沢委員 公共料金をある程度安定させるということで、償却方法電力だけ違う。定額でやっておられるから、もし定率になったら、かなり回せるわけですな。  次に、石油の問題につきまして、石田会長にちょっとお尋ねしたいと思います。  先ほども社会党の先生から御質問がありましたが、いわゆる記者会見でおっしゃった、これは朝日新聞の記事でありますが、「政府がきちんとした石油政策を立てるならば、差益還元にわれわれも協力する」という。先ほどの御説明では、企業間格差だとかいろいろな話が出ましたが、「政府がきちんとした石油政策」とは何を望んでおられるのか、個条書きで言ってください。
  142. 石田正實

    石田参考人 第一、総括的に言いますと、企業の体質と言っていいと思いますが、その中には、石油ショック後に決められました石油の価格体系というのが——現在は、これは自由なんですけれども、それが尾を引いて、まだ国際的に見るとひずみが残っているわけでございまして、これを是正していただきたいということが一つでございます。もう一つは、例のコンビナートリファイナリーというのがございまして、これがナフサと重油を生産するのが主になっております。したがいまして、この二種の値段の利益率が少ないというようなことで非常に不況な状態でございます。こういういわば一つの構造的な不況の状態にあるわけでございまして、こういう点を至急に是正し、また、指導していただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  143. 米沢隆

    ○米沢委員 細かいことで大変恐縮でありますが、いまおっしゃったような条件が満たされない場合には、円高差益に絡んだ政府行政指導は受けないということですか。
  144. 石田正實

    石田参考人 これは先ほども申し上げてきましたけれども、どうも新聞の記事の方がちょっとそういうふうにとられておるような状況でございまして、私どもとしましては、為替差益というものは当然還元すべきものだということで従来もきておりますし、今後もいかなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。ただし、そういう場合に、こういうふうな企業の体質が非常に弱っている面が、いま申し上げたような点がございますし、こういうものがこのまま残っておるということは、将来のやはり石油の安定供給ということに非常に問題があるわけでございますので、その点を特に要望したというわけでございまして、それは特にそれによって還元するしないということではございません。
  145. 米沢隆

    ○米沢委員 たとえばナフサの値下げ交渉等については、政府考え方は一貫して民間の話し合いによって決めるべきだという基本方針が貫かれてきたわけでありますが、こういう円高差益という問題が出てきた段階で、今後ナフサを値下げするとかC重油を値下げするという、特に円高差益に関連してそういう交渉がなされたときには、今度は行政の方はちょっとぐらい介入されるような予定ですか、予定でないのですか。
  146. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 介入という言葉が適当な言葉であるかどうかという問題はございますが、たとえばナフサの問題につきましても、実は昨年の秋口以来、できるだけ早く両当事者で話し合いをつけるようにということで、これは口頭ベースで指導してまいったわけでございますが、昨年の十二月に入りまして、文書でもってできるだけ早く解決するようにというふうに指導してまいったわけでございます。特に交渉が長引くといったような段階に入りまして、側面から、私の方は石油業界、基礎産業局の方では石化業界の方に対して内面指導したと申しますか、そういったことの結果として、実質三千円のキロリッター当たりの引き下げが行われた。一方で私の方も、当初七百五十万キロリッターのナフサ輸入考えておったわけでございますが、百五十万キロリッターふやしまして九百万キロリッター、両当事者の交渉が円滑にまた円満に解決するように、そのような対策も打った、こういうことでございます。
  147. 米沢隆

    ○米沢委員 今後円高差益に関連してはどうなんですか。
  148. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 本来、価格というものは、需給両当事者で市場における需給関係を反映して決めていくのが適当であろう、それが最も好ましいことであるというふうにも考えておるわけでございます。円高差益還元につきましても、いわゆる価格形成過程においてそれが適正に反映されていくというのが好ましい、これは原則的な姿勢でございます。ただ、ケースによりましては、たとえば家庭用の灯油等につきましては、昨年の十二月に消費者還元するようにという指導をいたしまして、御承知のように、それが十二月一日にさかのぼりまして、元売り仕切り価格が引き下げられ、ことしの一月から浸透してまいった。まだ三月時点での結果は出ておりませんが、二月時点では、十八リットルかんが六百九十二円と前年に比べまして一かん三十円程度値下がりしておる。そういった経緯もございますので、今後全く関知しない、あるいは指導しないということじゃございませんで、その必要度の情勢に応じまして、われわれとしても指導していきたいというふうに考えております。
  149. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど来の御答弁を聞いておりますと、閣議決定で円高差益還元消費者に何とかやるためにいろいろ検討をして、政府見解を示そうという、その言葉どおりには全然いかぬという感じですね。これは従来とほとんど変わらないですね。いままでの、こういう事件が起こらなかった以前のときでも、私は同じような説明をされたのじゃないかと思いますね。そういう意味で、いまから政府がいろいろ検討されて何かしようなんというのは、もうちょっと期待が持てませんね。何かそんな感じがしてなりません。  それから、石油ショック後の石油価格決定、先ほど石田会長の方からも一つの矛盾であるというふうにおっしゃいましたけれども石油ショック後五年を経過したわけですから、そして、それなりの矛盾もそれぞれ指摘をされているわけです。同時に、御案内のとおり、石油業法で標準価格みたいな指導がなされて、標準価格という言葉はなくなったけれども、実際は需給いかんによって価格が決定されるという状況に石油製品はない。そういう意味では、ここらで、あの一ドル三百二円ですか、標準価格を設定された、ああいうものも含めて、新しいルールで石油製品を価格決定する、現在までの矛盾も少々手荒く抜本的に改正していくという方向にも取り組んでいく時期じゃないかと思うのですね。いつまでもこの議論は続きますね。いかがなんでしょうか、通産の御見解を聞きたい。
  150. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまの御指摘には二つの点があったと思います。  一つは、需給関係が全く価格に影響のないような御指摘であったわけでございますが、私はそうではないと思います。ことしの一月に一部の元売り企業が各種石油製品平均してキロリッター当たり二千円の引き下げをするという発表をいたしたわけでございまして、それが一般に浸透してまいったわけでございますが、特に昨今需給が非常に緩慢になっておるといったようなことからいたしまして、平均の引き下げ額、価格の下がりの程度が二千円を超えておる、三千円近くまで値下がりしておるのじゃなかろうかと見ております。これは一方で、直接の契機は二千円の引き下げの発表ということになろうかと思いますが、それをさらに促進していったのは、需給がその背景にあるというふうに見ておるわけでございます。  なお、御参考までに、石油の販売量は月約二千五百万キロリッターでございますので、各油種平均して二千円の値下がりあるいは値下げということは五百億円、三千円の場合には七百五十億円の値下げ、石油企業にとっては減収、消費者にとってはそういった形における円高差益還元されているということになろうかと思います。  それから、二つ目の価格体系の問題でございますが、これは俗に重油安のガソリン高というふうに言われておるわけでございますが、そういった価格自体につきましては、それぞれを消費する需要サイドにとっても大きな問題であります。先ほどナフサについて御指摘がありましたように、非常に影響度の高い問題であると同時に、石油産業自体としても、その構造問題につながってくる問題である、こういう意識のもとに、昨年来石油価格問題等懇談会の場におきましていろいろと検討を続けております。一言に価格体系の是正というものの現実の問題は、理論的にも、またそれを実際に適用する場合にも非常にむずかしい問題があります。しかし、価格体系の是正に積極的に取り組んでいきたいということで、現在作業を続けておるということでございます。
  151. 米沢隆

    ○米沢委員 いまの話をちょっと敷衍するかもしれませんけれども、けさほども加藤委員の方からちょっと質問がありましたが、民族系石油業界というのは、円高差益が出てもまだ赤字だというところがたくさんあります。外資系は有史以来の好決算ということで、石油業界といってもますます企業間格差が拡大しつつございますね。いまナフサ価格は、御承知のとおり下がって二万六千円。ところが外国の場合、長期契約ベースで、たとえばヨーロッパあたりで化学メーカーが入手しているナフサは、二万円から二万一千円、アメリカあたりでは一万九千円から二万円ですね。この開きというものがやはり国際競争力にいろいろ影響して、早う下げろという議論になっておる。そういう意味で、この開きを是正していくためには、先ほど来の石油製品の価格体系をぜひ是正しなければなりませんし、もし、いま民族系黒字だったら、円高差益はじゃ返しましょうという簡単な議論になるんだけれども民族系赤字であるがゆえに、円高差益は結局還元できないという隘路にぶつかっておる。外資系の方はぼろもうけをしているということですね。そういう意味では、やはりこの石油製品の価格体系の是正を早くするということと、民族系外資系合わせて石油業界の再編成みたいなものまで突き進んでいかないと、実際は日本経済が強くなって円が高くなっても、国民には還元されないという、この長期的な対策というものにぜひ通産、石油業界もろとも一緒になってがんばっていただきたい。  質問したかったのでありますが、時間がありませんので、御要望だけ申し上げまして、私の持ち時間を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  152. 美濃政市

    美濃委員長 依田実君。
  153. 依田実

    ○依田委員 本論へ入らせていただく前に、きょうはちょっと宮澤長官にいろいろと円高に関する前提の質問を少しさせていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  第一番目は、最近の過剰流動性、つまりこれがインフレになるのではないか、こういうようなことの心配についてちょっとお尋ねをさせていただきたいのであります。  御承知のように、円高の中で日本銀行が介入をいたしました。言われているところは、市中に二兆円ぐらいの金が流れておるのではないか。例によりまして株式市場も相当に活況を呈しておる、そしてまた四十七年のときのように土地のインフレ、そこまではまだ行っていないという話があるようであります。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕 しかし、実態、われわれの町のいろいろな土地の動きを見ておりますと、もうすでに土地にも相当金が流れ込んでおりまして、昨年の十一月からこの三月あたりまでの価格の上昇を見てみますと、私のうちの近郊ですと六十万円の土地がすでに七十万円になる、四カ月で十万円ぐらい上がる、こういうような暴騰を示しておるわけであります。前のとき、つまり四十七年のときにも日本銀行が介入をいたしまして大変な過剰流動性を生んだわけであります。前車の轍を踏むな、こういう教えがありますけれども、どうも政府のやっていることを見ると、前車の轍をまんまと踏んでおる、というよりも、こうやって見ると意識的にやっているのではないか、こういうような気もするのであります。ちょうどむね上げ式のときに二階から銭をばら巻く、下におってその銭を拾わせる、これと同じようなことでございまして、企業の赤字、そのツケを政府がしょってやろう、これから日銀が介入するからさあ寄っといで、こういうようなことをやっておるのではないかと疑いたくなるほど政府のやり方についてはいろいろ批判があるのではないか、こういうふうに思うわけであります。長官ひとつ、過剰流動性、それがインフレに結びつく、この心配がわれわれはあると思うのでありますけれども、お答えはいかがでしょうか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は日銀総裁も私も、ただいまのところ過去一度ございましたようなことは現象としてはあらわれてはいないということ、しかし、もしそういうことがあれば日本銀行としても資金を吸収する方途をいろいろ考えているということは日銀総裁も言われております。ただ、依田委員が言われますように、事実相当な金が日銀の介入の結果出たことは疑いがありません。自由円預金等々いろいろな形になっておると思いますけれども、それだけのものが町に出ておることは確かでございますから、過去のようなことがございませんように十分注意をしなければならない。潜在的にはそういうものが町にあるということは確かでございますから、十分注意をいたしますが、ただいまのところそれが過剰流動性となって経済の攪乱要素になるというふうには見ておりません。
  155. 依田実

    ○依田委員 土地に関する限りは、私が先ほども例を申し上げましたように、相当にこれを高騰させる原因になっておるのではないか。銀行などの話を聞いてみますと、土地を担保なら、つまり昔のように山奥の土地じゃ貸しませんけれども、宅地に関する限りはもう幾らでも貸しましょう、こういうふうにいま実際の貸し出しの窓口はなっておるわけであります。そういう意味で、私は、これから先、必ずインフレになる。それも、いままでのようにインフレになって国民皆さんが多かれ少なかれインフレで潤う、というのは非常におかしい表現でありますけれども、果実の一端にありつける、こういうことはいいのでありますけれども、これからのインフレは私は日本の社会を二極分化するインフレになってくる、つまり企業で言えば石油であるとかあるいは外食産業だとかあるいは薬品メーカーとか、そういう潤う企業、一方では造船であるとか鉄鋼であるとかアルミであるとかいろいろ底辺にへばりつかなくちゃならぬ企業、そういうふうに分極するわけであります。また一般の個人も、日本の戦後は、みんなが中産階級、こういうようなことで安定しておったのでありますけれども、これからはどうも、今度のインフレはそういうインフレじゃございません。一部の方だけが非生産的な部門で非常に金をもうけていく、こういうことになるんじゃないか。前ですと、工場をつくったり、そしてまたそこへ人を雇ったりしてその金をある程度天下の回りものにしたのでありますけれども、これからは、不況でありますから、そういう過剰設備がありますから、そういうところへは金を使わない。つまり株式市場であるとか土地であるとかそういう非生産的な部門へ金を動かしまして利益を追求する、こういう社会になってくるんじゃないかと思うのであります。そういう意味で、日本の安定社会というものは下手な政策を打ちますと非常に不安定な二極分解をする、そういう世の中になる。つまり戦前財閥と東北の農村との格差があったような、そういう社会になってきて、政治不安というものが助長されるのじゃないか、こういう意味で、長官インフレだけはぜひ防いでいただきたい。今度のインフレは前のインフレと違うインフレになる、こういうことをぜひひとつお心にとめていただいて政策を打っていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ごもっともな仰せだと思います。もともと私どもが今年度やろうとしております非常に大きな公共事業にいたしましても、物価が安定しておりますからその成功が期待できるのでありますし、また期待しております消費の回復にいたしましても、物価が安定しておりませんとなかなか消費というものは安定的にふえていかないのであります。そういう意味から申しましても、この際インフレ的な傾向というものは私ども自身の経済回復策そのものに実は非常な障害があると考えておりますから、重々気をつけてまいります。
  157. 依田実

    ○依田委員 ところで、長官は国際派として知られておるわけでありますから、ひとつここで長官独特の御意見を伺わせていただきたい、こういうふうに思うのであります。  きょうは目先の為替差益をいかにして還元するか、こういうようなお話で論議が進められておるわけであります。目先の利益を戻す、これも大事でありますけれども、一番大事なことは、日本の円が強い、こういう時期にこそ日本人そしてまた日本の国をもっと国際的な金の流れ、為替の動き、そういうものの中へ裸で押し出すべきじゃないだろうか、私はこういうふうに思うのであります。外国では、御承知のように為替の変動幅というものに対して国民皆さんが大変な関心を持っておるわけであります。もうずいぶん前になりますけれども、あるときに外国へ旅行しまして華僑のお宅へ参りました。だんなさんと奥さんがけんかをしておる。何をけんかしておるのか。後でよくお話を聞かせていただきますと、その日の朝の為替相場をだんなさんが奥さんに知らせなかった、それで奥さんがある程度の損をした、こういうことでけんかをしておる。これは極端な例かもしれませんけれども、これほどに外国人というのは金の動き、国際的な変動、そういうものに非常に関心を持っておる。われわれ顧みますに、日本は、国も国民もそういうものに少し関心度がないんじゃないか。というよりかは国が、日本人が金の上で海外と自由交流をする、そういうものを閉鎖しておるところがあるんじゃないか、こういうふうに思うのであります。先般海外送金の枠が大幅に認められました。しかしながらまだ額が決まっておるわけでございまして、いまの常識から、ヨーロッパの感覚からしてみますと、経済がこんなに安定している、発展している国で個人の財産を自由に処分できない、こういう国はないのでありまして、そういう感覚は外国人から非常に奇異に見られる。日本人はなぜそういうものを黙っておるのか、一種の人権の抑圧じゃないか。自分の財産を自由に処分できないのでありますから、つまり人権の抑圧じゃないか、このくらいのことを言われるわけでございます。そういう意味で、外国では経済大臣なども、国の経済の話をしていて、一方自分の財産はスイスへ送る、これは常識になっておるわけであります。われわれ日本人の明治時代の愛国心から言うとそれに抵抗があるのでありますけれども、しかしこの際、これから日本が大きくなるには、そういうようなことを一切かきねを取っ払わなければならぬ、こういうふうに思うのであります。  そういう意味一つ提案を申し上げますけれども、いま日本は三百億ドルの外貨準備がございまして、借金も入っておるようでありますけれども、しかしこれだけの外貨がいまのままでは毎年目減りをしていくわけでありまして、われわれの汗と涙の外貨がそれだけ減るというわけであります。先般河本さんでしたか、金を買ったらどうだ、こういう御意見があるようでございますけれども、私はもう一つそれを積極的にいたしまして、日本のたくさんあるドルで外国から金を買いまして、これをひとつ、いま金貨じゃないですから、金メダルか何かに直しまして、国民皆さんに売って差し上げたらどうだろうか、こういうふうに思うのであります。と申しますのは、そういうふうにして政府発行の純金ですから、国民皆さんは必ず、こういうような将来インフレが来るというのでありますから、そういうものを買う、つまり外貨もその分だけ国民皆さんのために減りますし、また逆に言えば過剰流動性もそれだけ吸い上げられることになるのでありまして、河本構想の金を、国家が持っておってもしようがないのでありまして、それを国民に分散させる、そのぐらいのことをやらないと、日本という国はこれからの国際的な為替の変動の中で生きていけない、こういうふうに思うのでありますけれども、こういうような考え方というのは長官、いかがでございましょう。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ヨーロッパの国のように、子供のときから修学旅行は隣の国であるとか、あるいは自動車に乗っていると自然に隣の国に行ってしまうという場合には、確かに通貨というものに対して、もう子供のときからむしろそれが当然であるような、外国の通貨自分通貨という観念を持っております。わが国の場合にはそのような地理的環境になかったということが一つ問題のもとにあると思います。  それからその次に、終戦後に何と言っても外貨不足でございましたから、厳重な為替管理をしてまいった。そしていま依田委員が言われましたようなこと、当時の感覚から言えば資本逃避というような考え方になって今日に及んでおります。ですからこのことは何とか改めなければなりませんで、そこで為替管理の体制を実は原則許可から原則自由に改めたいということを先般総理大臣も国会で申し上げまして、私ども今年の末、少なくとも来るべき通常国会にはそういう提案を申し上げたい、いま各省で準備をいたしております。この姿勢の根本的な転換をいたさなければならないと考えております。しかしその場合にも、最終的に私ども考えておかなければならないのは、円というものが非常に大きな国際的な役割りをしょうことになりますと、その結果としてわれわれ自身の経済運営がどうしても対外面から相当の制約を受けるということになりかねませんので、ある程度はやむを得ないことでございますが、その辺は見きわめておく必要がある。ただしかし、そうではあっても、為替管理等の体制は原則自由、例外許可ということの方がよろしいのではないかと考えております。  金のお話がございまして、ただいま金の輸入は自由化されておりますので、国内にいろいろ金の需要が起こりますことは、もう政府としてはこれをとめようという考えは少しも持っておりません。ただ相当大きく金を買うかどうかということでございますが、たとえば仮に十億ドルの金と申しますと百五、六十トンになりますので、世界の新産金の一割をちょっと超えるということになります。そういたしますと、そのようなことは金の価格に影響を及ぼさずになかなか短時間にできるものではございません。その辺は注意深くやってまいらなければならないであろうと思っております。
  159. 依田実

    ○依田委員 さて少し本論に入らしていただきますけれども、きょうの各委員議論の成り行きをいろいろ見てまいりますと、要するに電力もガスも石油も、きょうは話題が出なかったかと思いますけれども、小麦もあるいは牛肉も、大体みんな、要するに為替差益を直接国民皆さんに返して差し上げることは無理だ、こういうお話になってくるようでございます。確かに経済理論といたしましては私ももっともだろう、こう思っております。後でちょっと電力のことを通産に伺わしていただきますけれども、確かに電力もなるべく料金を長い間安定さしておきたい、こういうことになると、これは至極もっともでございます。そういたしますと、この円高が直接消費者還元されてない、何とかしてその突破口を開いてもらいたいのだ、こういう感情が国民感情としてあるわけでありまして、やはりこれにこたえるというのが私は政治じゃないだろうか、こういうふうに思うのであります。いままでは円高というのは疫病神、こういうふうに思われておったのが、最近は、いや案外これは福の神かもしれない、こういうように国民皆さん考え出してきておるわけでありまして、ぜひひとつ、国民皆さんに福の神であるという証明を政府がしていただきたい、こういうふうに思うのであります。  最近は町にもドル建てで輸入品を売っておる百貨店がございます。なかなかの盛況だ、こういうことでありまして、国民皆さんも何とかして安い外国製品を直接手に入れたい、こういう希望が強くなっておるわけであります。この二十一日に経済対策閣僚会議が開かれる予定になっておるようでございますけれども、どうも先ほどから話を聞いていると相変わらず目玉政策というのはない、こういう感じがいたすわけであります。ぜひひとつ長官に、この閣僚会議で、いまの国民のいらいらの感情に何とかしてこたえるために、経済理論を外して、一つだけでいいから政治的にこの目玉をつくっていただきたい、こういうふうに思うのが国民みんなの考え方だろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円高の一番大きな国民に対する現実の寄与というのは、やはり卸売物価が実はマイナスでございますし、消費者物価が安定しておって、卸売物価のこの低位な水準というのは、やがてまた消費者物価に反映していく、わが国は自由経済が基本でございますから、何としてもここのところが一番大きな現実に起こりつつあるメリットだと思っておるわけでございますが、政府の関与しております物資、サービスには自由競争が行われにくいということがございますから、そこを点検いたしたいと考えておるわけでございます。  いずれにしても、その結果として、できるものは下げていきたいと思いますし、理由があってむずかしいものは国民にその理由をひとつ御説明をする、こういうことだけはいたしたいと考えておりますが、その経済理論を外して目玉商品をということは、いっときだけのことでございませんのでなかなか簡単にまいりません。やはり私は、一番大きいのは物価水準の安定ということ、これが現実にいまわれわれが円高から受けつつあるところの一番大きな恩恵ではないかというふうに思っております。
  161. 依田実

    ○依田委員 いまの長官のお答えにいまの政府考え方というのが端的にあらわれておるのじゃないか、こういうふうに思うのでありまして、卸売物価が安定しておることが為替差益還元方法である、こういうふうにわれわれ聞いたわけでありますけれども政府のお答えはいつもそうでございまして、たとえば牛肉の問題、いわゆる畜産振興事業団が取り上げております調整金、これを生産者のために使う、そうすれば生産が安定するのだからやがて消費者のためにもなるのだ、こういう論理であります。小麦、これも食管の赤字を埋めるために使うのだから、米の方が赤字なのだから、その分だけ皆さん方の税金が浮くのだからこれも直接小麦の値段を下げなくていいのだ、こういうふうにすべていまの政府考え方というのは、ワンクッション置けば消費者のためになるのだ、こういうことだろうと思うのであります。私は、そこがいまの政治の旧態依然たるところだろうと思います。そこをひとつ国際派の宮澤長官に、旧来の仕組みをきゅうきゅうと守るということではなくて、この円高という未曾有のチャンスをぜひ日本経済機構の、流通機構の近代化のインパクトとして使っていただきたい、こういうふうに思うのでありまして、これが福田さんの中に宮澤経済企画庁長官がいらっしゃる唯一の頼みだと私は思うのです。長官、ぜひ思い切ってやっていただきたいというふうに思うのでありますが、いかがでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば政府が食糧を管理する必要はない、牛肉も管理する必要がないというところまで仮にいけるといたしますと問題はきわめて楽になるわけでございますが、政府が物資やサービスに関与をしているのには従来からのそれなりの理由があるということでございますので、なかなか円高の問題だけから問題をひっくり返してしまうわけにはいかないようなところがございます。しかしそうは申しましても、従来の惰性のゆえに残っておる制度というようなものもあり得るわけでございますから、こういう機会に実はそういったようなことも少しずつ私たち議論をしておりまして、円高というこれだけ大きな問題が起こりましたのですから、それを契機に改めるべきものはやはり改めていかなければならないと考えております。
  163. 依田実

    ○依田委員 時間が十分ぐらい残っておりますものですから、少し電力の方の具体的な提案をさしていただきたいというふうに思うわけであります。お答えの方は通産省で結構でございます。  先ほどからの議論の中に、電力料金においては、なるべく長期にわたっていまの料金を据え置くということで差益還元をしたい、こういうお話がございました。確かに、ここで差益が出たからということで電力料金を改定して下げますと、今度は逆に円安になってきたようなときにまた料金改定をして、今度はすぐ上げなければいかぬ、こういう弊害にもなるわけでございます。そこで、料金の改定というのはしなくてもいい、しかし何とかして一部差益還元してもらえないだろうか、こういう世論が強いわけであります。その一つの折衷案といたしまして、料金を下げると一戸、月に大体三十円だとか四十円という試算が出ておりまして、それだけ下げても余りぴんとこないだろう、こういう意見もございます。そういうものを織りまぜまして、折衷案で部分的還元ということをしていただけないだろうか。つまり、所得税の減税が戻し税でこの六月にございます。去年もございましたけれども、それと同じように、一律一定の金額で結構です。二百円でも三百円でも結構ですから、その月のある時期を見まして一回だけ料金から一律に二百円なり三百円、これは消費者への差益還元ですよ、こういうことで還元できないものかどうか、ひとつこの提案はいかがか、通産省、ちょっとお答えをいただきたい。
  164. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 一つの折衷案として御提案いただいたわけでございますが、先ほど来お答えいたしておりますように私たち据え置きをせざるを得ないという立場は、金額の問題もございますが、それ以上に今後におけるコストの上昇要因石油価格あるいは為替レートの不安定性といったようなところがまた大きな問題でもあるわけでございますので、毎月安くするか、一度に安くするかという点については、ある意味においては同じ問題じゃなかろうか。  特に、私たちがいろいろ考えた末、据え置きということで指導いたしておりますのは、やはり電力というものは安定供給をしなければいけない。安定の意味二つあると思います。一つは質と量だと思います。質というのは価格をできるだけ長期的にいまのレベルで維持したいということでございますし、量的な意味は、電力需要というのは非常に増大してまいります。昭和六十年までにかれこれ七千万キロワットほどの電源を開発しなくちゃいけないわけでございます。とりあえず本年は三兆二千億の投資をやり、あるいは本年度中に六十カ地点、二千万キロワットの電源について電調審に上程したい、さように考えておるわけでありまして、先ほど来のお話、私もよくわかるわけでございますが、電力を長期的に安定供給するという立場からは、当面できるだけ長く現行料金を据え置くということが最もいい方法ではなかろうか、最もいい還元方法ではなかろうか、かように思っておるわけでございます。
  165. 依田実

    ○依田委員 差益の益金を将来のために消費者のために使うのだというお話でございますけれども消費者としてはそれがうやむやのうちにほかのところに使われては困る。こういうことでけさほどもある委員から、特別会計なり基金なりをつくってみたらどうだという話があった。ところが大蔵省の方では、そういう利益金の蓄積については税金をかけるという非常に冷たいお答えだったものですから、これもだめだということになるのでありますけれども、先般ある新聞のインタビューに平岩会長が、「電力会社としても消費者に納得のいく公開方法を検討している。通産省や電力各社と話し合って、円高差益の基準、使途、公表方法などについてガイドラインを作りたい。」こういうふうに言われておるわけでありますが、通産省はガイドラインをいかなる方法でおつくりになる予定なのか、その辺を聞かしていただきたい。
  166. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 せっかくの円高メリットでございますから、御指摘のようにこれがうやむやに使われることがあってはならないと考えております。したがって、一月の二十日に少なくとも五十三年度中据え置きという指導をした際にも、不当に社外に流出しないようにあわせて指導をしておるわけでございます。ただ御承知のように、為替メリット、円高メリットと申しますのも、これは電力の場合は燃料の購入費が円ペースで安くなってくるという形で出てくるわけでございますので、どれだけが円高メリットであるか厳密な意味で企業経理的に抽出することは事実上困難でございます。ただこれは理論値として一定の前提を置いて計算は可能でございますので、私たちは、電力会社に対しましても各社ごとにそういった理論計算値を決算の場合等にあわせて公表する、当方はそれを前提として指導をしていくようにいたしたいと思っております。
  167. 依田実

    ○依田委員 料金を凍結ということで、あとのことは余り期待できないことになったわけでありますけれども、そうなりますと、電力というのはいまの不況の中でただ一つ、そしてまた最大の設備投資をできる余力を持っておる企業でございまして、そういうことで今度は電力会社に強力果敢な設備投資をしていただいて、少なくとも不況打開の牽引車になっていただく、この仕事をお願いする以外になくなるわけであります。  そのほか、こういうこともひとつ御検討いただきたいのでありますけれども、ウランの備蓄買い、こういうことなども企業のリスクにおいて、ひとつこの際国のために金を使うのだというぐらいの考え方でぜひ電力会社にやっていただきたいと思いますが、この辺せっかく平岩さんお出ましいただいておるのですからいかがでしょうか。通産省でも結構です。
  168. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 一つ考え方だと思いますので検討させていただきたいと思いますが、何分ウランを購入するということになりますと、日本の立場だけではなくて、相手国事情といったこともございますので、こちらがいいからといって相手方が応じてくるかどうかという問題がありますが、一応検討課題にさしていただきます。
  169. 依田実

    ○依田委員 最後に、もう一回長官に伺いますけれども、今週の経済対策閣僚会議ではわれわれが期して待つべきものは何も出てこない、こういうふうに考えておいてよろしいでしょうか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかく各省とよく検討いたしまして、政府としてできるだけのことを決めたいと考えております。
  171. 依田実

    ○依田委員 終わります。
  172. 武部文

    ○武部委員長代理 田中美智子君。
  173. 田中美智子

    ○田中(美)委員 きょうは、電力を中心にしまして為替差益を中心に質問させていただきたいと思います。  通産省の資料によりましても九電力で五十二年度は千六億、このときはドルが二百五十八円のときです。それから五十三年度の予測としてドルを二百四十五円で換算して千四百億円というふうに資料が出ておりますけれども、現在は二百二十円ということですので、この数字はもっとずっと膨大になるというふうに思うわけです。国民の中からこの差益電気代を下げるという形で返してほしいという声が日増しに高まっているわけですけれども、それに対して、政府の資料によりますと、平均的な月間電力使用量というのは百二十キロワット時だから大体月三十円になるんだ、こんな少額を返しても余り効果がないというふうなことを言っておられますけれども、これは非常にごまかしであり、またできるだけ少なく見せるという計算がなされているというふうに私は思います。電気事業連合会の資料で見ますと、五十一年度の一般家庭の全国平均月間使用量は百七十キロワット時というふうに出ておりますのを百二十キロで計算しているとか、それから千六億で計算しているとか、ドルは二百五十八円のところでしているということで、やはりこれはためにする、いかにも少ないというふうにしているというふうに私は思うわけです。  それで、仮にいま二百二十円で推移していくとしますと、中部電力だけで見てみますと、OPEC値上げ分を差し引いても五十三年度は手取りで三百六十億円、一日一億円だということで、これは三月三十日の中部読売新聞ですけれども、「中電ニコニコ日銭一億円円高差益、それでも「値下げ考えていない」」中電のビルの写真がありまして、この下に「巨額の差益で笑いの止まらぬ中電本店」というふうな新聞なども出ているわけです。こういうものを国民が見ますと、一体政府の資料はどうしてこんなごまかしを出すのだろうというふうな疑惑が出てくるというふうに思います。  それで、宮澤さんにお聞きしたいわけですけれども、あした閣議がある、そこで何らかの方向を出すというふうなことを聞いておりますけれども、どういう方向で差益還元していくのか、そういう考え方をいまお聞かせ願えませんでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 明日通産大臣から御提案がございますはずですので、私、最終的にどういうお考えであるか、まだ承っておりませんけれども、先ほど来エネルギー庁長官などがお話しになっていらっしゃることから推察いたしますと、この円高差益というものは、今後とも電力会社料金を据え置くという形で、将来必ず上がるであろう発電コストを何とか内部留保の形で少しでも下げていく、上がらないように、上がり分を少なくするというようなことをお考えではないかと私推察をいたします。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕 私自身従来申し上げてまいりましたことは、従来私も似たようなことを考えておりましたが、今後発電コストが下がっていくというのでございましたら、この際円高差益をそのままお返しするというのも一案だと思いますが、そうでない、明らかに上がっていくということ、そして仮に三十円でございませんで、四十円でありましても七十円でありましても、これだけの金をまとめていたしましたら相当国民経済に有益な仕事ができますが、百円以下の金になってしまった場合に、無意味だとは申しませんが、それほど大きな国民経済的な意味があるだろうかどうだろうかというようなことを私としては従来考えておりますわけでございます。
  175. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま百円以下であればというふうに言われましたけれども、中電の日銭一億円、三百六十八億円、これを中電関係だけで電気代を下げるというふうに私計算してみますと、月百四十円の値下げができる。これは百四十円以上になっておるわけです。これは原油だけなんですね。それに重油の分というのがあるわけです。電力会社は商社から買うということですけれども、国全体で考えたときには、重油も同じようにいっている。電気は原油と重油を大体半分くらいずつ使っておるわけですから、百四十円は半分だ。そうすると、約三百円近い数字が、私が計算しただけでも中電の場合出るわけです。愛知県の消団連でも五・五%を引き下げることは可能だというふうにいろいろな計算をして出しておりますし、全国の消団連でも大体一〇%、三百円は月に返すことができる、値下げできるのではないか、こう言っていますので、宮澤さんのおっしゃるように百円以下ならばということは、先ほど申しましたように、計算の仕方が非常に少な目で、重油の問題も入れないでおるというふうに私は思うわけです。そういう点で、これを還元する方向であしたの閣議ではぜひ検討していただきたいというふうに思います。  次にお聞きしたいことは、宮澤さんは内部留保にしておくというようなことをいままで言っておられますし、また政府のいろいろな方が、そうしただぶついてもうかったお金というのは外には出さないとかあるいは預かっておくのだ、こういうことを言っておられるわけです。先ほどからいろいろな議員が言われたように、これがちゃんと使われるのか。そちらのおっしゃるように結果的には国民還元されるように、いますぐ電気代の値下げでないにしても、きちんとまともに使われる保証があるのかどうか、まず、政府がそれをきちっと監督できると宮澤さんは思っていらっしゃるのかということをお聞きしたいことと、もう一つは、資源エネルギー庁長官は直接の監督の任に当たられる方だと思うのですけれども、きちんとそれを監督する自信がおありなのか、それをお二人に簡潔にお答え願いたいと思います。
  176. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 先ほどもお答えしたことでございますが、私たちは、差益によってどの程度家庭に還元できるかという金額の多寡、もちろんそれも大きなポイントでございますが、それ以上に長期的に料金を安定させたいという立場で据え置きを決定し、指導いたしておるわけでございます。したがいまして、一月二十日に少なくとも五十三年度中は据え置き、それ以降もできるだけ長く据え置くように大臣から要請いたしました際にも、特に不当に社外に流出しないようにということも言っておるわけであります。したがいまして、せっかくの円高メリットでございますから、私たちといたしましては、あらゆる機会を通じまして、うやむやに使われないように、電力の安定供給にあるいは料金のできるだけ長期安定に活用し得るように電力会社がこれを使っていくという方向で指導したいと思っております。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 電気事業は、公益事業として電気事業法による通産大臣のきわめて厳格な監督を受けておりますので、その点心配ないと思います。
  178. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、心配ないということですけれども、私は、いろいろなニュースで聞くわけです。これは中部電力の事例で、恐らくほかの電力もそういうことをやっているのではないかと推測するのですけれども一つの例を挙げたいと思います。  非常にむだ遣いや不適当な支出をしているというニュースを聞くわけです。ですから、宮澤さんは、自信があるとおっしゃるし、長官も、絶対にうやむやには使わせない、不当に出さない、こういうわけですけれども、お金には色がついておりませんので、このお金は差益の金だとかついておりませんので、そこまで自信を持って言われるということが非常に私はおかしいなというふうに思うのですけれども、預かっておくというなら、国民のお金ですから、きちっと預かって正しく使う。その結果は、国民還元される。こういうことに対しては、いろいろなうわさや事実、そういうもので国民は不信感を持っているわけですね。ですから、預けておいても気がついてみたら、据え置くだなんだと言っているけれども、何かつまらぬことに使ってしまったり、不当なことに使ってしまっているのじゃないかというふうに思うわけです。それで、国民は疑惑を持つわけですね。だから、それがむだに使われないうちに、いまあるものをちゃんと国民還元してもらえば安心だ、自分の手にこれをもらえば安心だということなわけです。  その一つの事例ですけれども、いま私ここにいろいろな資料を持っています。これはほんの一例です。これは日本青年連盟という行動右翼、この右翼の名前で、中部電力株式会社殿ということで五万円をくださいという請求書が出ているわけです。ですから、ふだんからこういうおつき合いを中部電力はしていらっしゃるんだな、こういうふうに思います。そうしますと、それについて五十一年十月一日、五十一年十月十九日に承認票というのを、社内の資料ですけれども日本青年連盟へ秘書課として五万円を出しています。そして、ここには部、店、所長承認と、それぞれの中部電力の方の判こが押してあるわけです。そして承認している。そうすると、今度はそれが十月二十五日という日付で領収証として五万円、日本青年連盟、中部電力株式会社殿、こういうふうなものが出されているわけですね。どうしてこんな金があるのか。どんどん電気値上げをしているのに、これは使わないのだ、きちっと使うんだというのに、こういうふうなお金が使われている。  それから、まだあります。たくさんあるわけなんですよ。それで疑惑を持つわけですけれども、これはお葬式の香典なんですね。これは二万円ということで防共挺身隊総隊長福田進という方が、五十一年の十一月二十五日の日付で、中部電力株式会社殿という形で、隊員が亡くなったのでお葬式に来てください。これに中部電力が香典を二万円贈っている。こういうふうに反共右翼とのおつき合いが非常にあるということは、やはり国民にとっては、宮澤さんがおっしゃるように、お金が正しく使われていないのじゃないかという疑問があるわけです。  まだ、次々やっていきますけれども、まず、こういう右翼とのおつき合いというのは一体どれくらいやっているのか、これはほんの中部電力の一部ですので、どれくらいやっているのかということを調べていただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか。調べて、私に報告していただきたい、どれくらいの金が使われているか。
  179. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 企業といえども社会的存在であるわけでございますから、社会的通念で許される範囲としからざる問題とあろうかと思います。具体的に、ただいまの御指摘でございますが、いま私初めてお聞きしたわけでございますので、どのような実態になっておるのか、早急に調査してみたいと思います。
  180. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、社会的通念としてこれはいいのか、中部電力としていいのかどうか、他の八電力としても、これがいいのかどうかということを早急に調べていただきたいと思います。  それで、平岩さんにお聞きしますが、こういうことはどこの電力会社でもやっていらっしゃるのでしょうか。御存じでしょうか。
  181. 平岩外四

    平岩参考人 やっているかどうか、ちょっとわかりません。
  182. 田中美智子

    ○田中(美)委員 全然御存じないわけですね。
  183. 平岩外四

    平岩参考人 わかりません。
  184. 田中美智子

    ○田中(美)委員 次に、これは値上げのときの公聴会で明らかになったもので、社会に出たものですけれども、これを見ますと、いま中部電力の例を一つとしてとっているわけです。ですから、私としては、いま調べてみますとおっしゃったのは、中部電力だけを調べてほしいと言っているのじゃありません。九電力全部調べていただきたいと思います。  これも中部電力ですが、反共教育をしているというふうに言われております。御殿場ですかにあります富士社会教育センター、ここに七百三十五万円の寄付をしている。これは一般に報道されたものですね。こういうお金が社会的常識として、公共的な事業をしている中部電力が、そこに寄付金を七百万以上もしているということは社会通念として正しいのかどうか、国民はこれをむだ遣い、むしろ不当なお金の使い方であるというふうに感ずるというふうに私は思うわけです。  それから、その次に、これも一つの例です。中部電力の社内のものですが、労務対策というふうに書かれておりまして、ここには交際費と書いてあります。一つの伝票が五十万円ずつしか切れないということで、五十万円ずつ切って四枚あるわけです。領収証もついているわけです。こういう使途不明の、どこに回ったかわからない金ですね。これは社内ではいろいろなうわさをしています。しかしそれはうわさですので、いまここで申しませんけれども、こうしたお金が、果たして電力料金を下げるために当然使われるべきお金がこういうことに使われていいのか、これは二百万円という金が使われています。  それから、次にありますのは渥美火力発電所ですね。これの地域協力費、発電所の建設費じゃありませんよ。地域協力費ということで約四億八千万円のお金が支出されておる。これがそこの近辺にばらまかれるわけですね。それで、たとえば発電所の被害を受けて——このお金の中には、キャベツが被害を受けたから、これに中部電力が補償をした、これは私はいいと思うのですね。しかし、その中にはお稲荷さんを建てる神社協力費なんというものもありまして、これが適当かどうかということは、町議会で非常に紛糾し、これは大きく新聞に報道された。よく御存じだと思います。これは新聞で報道されたことですので。  その次に、もう一つあります。これは限りなくあるわけですね。時間がありませんので、一部を持ってきたわけですけれども、芦浜地点原子力開発調査、これはまだ何もできてないわけですね。そこへつくるのだという調査費ですね。これが五十一年に、やはり会社の資料ですけれども、これに九億七千万円というお金が計上されています。この後どれぐらい使われたかというのはまだわかりませんけれども、ここまでのところで九億七千万円の予算を計上して、これを使っている。そして小さな地域に金をばらまいている。結局買収やいろいろなものに使われている。これも宮澤長官も御存じだと思いますけれども、この中の一つに、この中に出ているわけですけれども、ここのところに二億三千八百万というのが出ています。これが有名な紀勢町ですね。三重県の紀勢町で、この小さな人口の地域に、地域開発協力金と称して二億三千万のお金が投入されているということが、結局あそこの町長であった、その当時の吉田町長、これは中日新聞ですけれども、大きく出ておりますけれども、「中電取締役から聴取 芦浜原発事件で三重県警」「吉田前紀勢町長に新たな疑惑 中電に売った土地担保に借金」「横領・背任で吉田追及」というような見出しで、写真も出て大きく報道されております。これを読んでいただきますと、中電とぐるになっているわけですね。中電と町長さんが一緒にぐるになってこうした犯罪的行為までを中部電力がやっている。この小さな町に二億三千万、四千万の金が投入されるというようなことを聞いて、厳重に監督いたしますので大丈夫ですと宮澤さんがおっしゃっても、国民が疑惑を持つのは当然ではないでしょうか。その点、宮澤さんと長官に重ねてもう一度、本当に自信を持ってこういうことがないようにできるのかどうか。こうしただぶついた金があるからこそ、金をばらまき、買収し、そしてそこの町長やらいろいろな人を巻き込んで犯罪者にしていっている。そういうお金を使っていながら、これは還元しないのだ、それはその金じゃないと言っても、金に色目はないわけですから、ちょうどこういう時期からこういうことが盛んにやられているということは、どう考えても電力会社にこうしたお金を預けることはできないという国民の気持ちが出るのは当然ではないかと思うのですけれども、これに対する宮澤さんと長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  185. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまお聞きした事項につきまして、いずれにいたしましても事情聴取してみたい、かように考えておりますが、ただ、その中に一、二、電源立地に関連するやにとれる事項があったと思います。  私は、電源立地をするに当たりましては、地元の理解と協力を得るために、電力事業者が誠心誠意地元と話し合いに入る、状況によってはその地元の福利厚生に資するようなものについて協力すること自体は悪いとは言えないと思います。その場合に、会社内部での経理手続が正規に踏まれているかどうか、あるいはそれを受け入れる側において正式に手続を踏んでいるかどうかといったような点をこそチェックすることであって、一概にそういったものをすべて否定するということも必ずしも適当ではないのではなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、差益のあるなしの問題ではなくて、電力企業として社会から指弾を受けることのないように、行動すべきであると思います。  いずれにいたしましても事情を聴取してみたいと思います。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまエネルギー庁長官の言われましたように、よく事情調査していただきたいと思っています。
  187. 田中美智子

    ○田中(美)委員 自信があるとおっしゃって、こういういろいろな事実が出てくると、調査してみます。長官のお答えは——私のお聞きしているのは、こういう不正事件についてどうしている、どうなのかと聞いているわけです。私は九億円とか四億円とかという金が全部悪に使われたとは言っていません。そういう意味での地域の協力を得るというためにいろいろ福祉の問題とか町に協力をするということは悪いとは言っていません。しかしこんな大きなお金をだぼっと入れて、そうしてそこでこういう犯罪的な行為が起こって、このお金がどう使われているかわからないということでは、国民の信頼というものは、お預かりしますと言ってもお預けできない。もともとこの金というのは、差益というのは税金とは違うと私は思うのです。最初電力料金値上げしたいと申請したときには、ドルは二百九十八円だったのですからね。そのときのことで電力料金を計算して、それで国民から取ったわけですからね。ということは取り過ぎたということで、これは国民のお金なわけですね。税金というお金は、国民自分の収入に合わせて税金を国に払って、そうして政府をお信じ申し上げて、政府と国会とで話し合って、このお金は国民のために上手にお使いくださいという形で出したお金ですね。しかしこの為替差益というのは、電力料金の見積もりを間違っていたわけですから、これは故意とは言いませんけれども、ですから取り過ぎた金ですので、決して国民はどうぞお使いくださいと出した金ではないわけですね。ですから完全に国民の金です。ですからお預かりするというのは自分で勝手に決めるべきではないと思います。国民にちゃんとこれをどうしましょうと聞いて、いま世論は日に日にこれを返してくださいと言っている。それを幾らお預かりしていいことに使いますと言っても、ほんの一部のものでも、こうした怪しいことがたくさんあるわけですので、そういう点でこれはお預かりするなどということを勝手におっしゃるのは、非常に傲慢だというふうに思います。これはぜひ国民に返していただきたいと思います。  次に、重油の問題にさっきもちょっと触れたわけですけれども石田さんにお尋ねしたいのです。石油業界にも差益があるわけですけれども、これは電力各社にどの程度重油を安く売っていられるのでしょうか。差益があるわけですから、どれぐらい安く売っていらっしゃいますか、電力に。
  188. 石田正實

    石田参考人 石油連盟の方では、ちょっと具体的には知りませんけれども、しかし先ほどから申しておりますように、電力重油、鉄鋼重油とも、大体為替のレート、それからOPECの値上がり、それからいろいろなコストの問題も入れまして、そしてスライドしていくという方法をとってきておるわけでございますので、そういう意味では私どもとしては、大体為替差益還元はしておる、そういうふうに考えておるわけでございます。
  189. 田中美智子

    ○田中(美)委員 為替差益電力会社還元しているということですか、重油で。私は重油を聞いているのですよ。電力会社に重油を売るときに還元している。どのくらい還元しているか……。
  190. 石田正實

    石田参考人 重油の値段で還元しているわけでございます。
  191. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、一キロリットルどれぐらい安くしているのですか。
  192. 石田正實

    石田参考人 ちょっとその点、具体的な数字はいま持ち合わせておりませんですけれども電力業界さんとは、従来から半年ぐらいおくれて実際に決済をやっておるような状態でございます。しかし筋としましては、そういうようなスライド制でやっておりますから、当然過剰の差益があるものは還元しておるわけでございます。
  193. 田中美智子

    ○田中(美)委員 石油連盟会長さんが資料がなければおわかりにならないということは、御存じでも言いたくないということだというふうに思いますけれども、千円安く売ったとしても、中部電力一社で見ますと四十五億円にもなるという形ですので、中部電力は、電力会社というのは、重油でも為替差益還元されているわけですので、こういう点で、先ほどの三十円なんという金額がいかにうそっぱちか、国民を欺瞞するものであるかということがわかると思います。  それから、その次に行きますけれども、ことしの春闘で中部電力の賃上げというのは、大体約五三%という回答があったわけです。この回答があったときに会社側はどう言っているかといいますと、人件費が高騰しているということと、それからいま国民の声として、差益を返してくれ、電気料を値下げせよ、こういう攻撃が非常にかかっているときであるから、労働者の賃金は、五・三%にしたが、還元せよという声が高まっているときだから、ここで賃上げをするということはがまんしてくれ、こういう応対をしているわけなんですね。それから消費者なんかに対しては、人件費が非常に高騰しちゃってコスト高になっているから、差益があったとしても人件費にかかってなかなか返せないんだ、こういうふうに言っているわけですね。そうしますと、言っていることが、こっちの人とこっちの人と言うことが違うわけですね、同じ電力会社が。  それで、ちょっと人件費を見てみますと、昭和二十六年には、中部電力では、総収益の二六%が労働者の賃金に回っていたわけです。現在、五十二年度で見ますと、二%ということになっています。これは、必ずしもパーセントだけで低くなったからとはいえませんけれども、非常にパーセントでは下がっているということは、一つの目安として人件費が高騰しているなどと消費者などに言う中部電力の姿勢というのは、非常に誤っているというふうに思います。  たとえば一つの例をとってみますと、中部電力の、四十歳で子供二人と夫婦の四人家族、これと中労委が出しております四十歳で四人家族、これを比べてみますと、中労委の方は、全産業の平均として四人家族で二十四万九千二百円という数字を出しています。それが中部電力の方では二十三万二千五百円ということで、全産業の平均よりも、現在、中部電力は賃金が低いわけですね。それなのに、差益を返してくれと言えば人件費高騰と、こういうふうに言うし、労働者に対しては、差益を返せと言われているから、大変だから、このときには賃金を払えない。これでは電力会社というのは、まさに、怪人二十面相などという言葉がありますけれども、怪人二面相だ。私はこういう、明らかに、すぐにわかるようなことを平気でやっているということはけしからぬことだというふうに思います。その点、平岩さんはどのようにお考えになりますでしょうか。
  194. 平岩外四

    平岩参考人 中部電力経営の内部のことですので、私は電気事業連合会の会長でございますけれども、企業経営の内部には立ち入ることはできないと思いますけれども、いま伺った段階お話では、賃金の話は恐らくそのとおりの状態であろうと思います。大体、公益事業であるために一般の水準よりもやや低いところのベースアップというのは実態に合う数字だろうと思いますし、それがまた人件費、要するに企業としての、相当大きな企業でございますので、人件費の絶対額というのは、率は少なくても相当大きな金額であることも事実だと思いますので、言い方によっては両面とも正しい、と言っては語弊があるかもわかりませんけれども、そういう言い方はあると考えています。
  195. 田中美智子

    ○田中(美)委員 平岩さんも怪人二面相だということですね。人件費高騰などと——高騰はちっともしていないわけですからね、全産業より低くなっているわけですからね。そうしておいて、還元をせよという声があるから賃金を出さないと言うのですから、還元するおつもりなんですか。もう一度おっしゃってください。
  196. 平岩外四

    平岩参考人 先ほど来申しておりますように、還元するよりも、内部留保して料金をできるだけ長くもたせる方が一番いい還元方法だと思っています。
  197. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、私は、電気事業法の第二十三条、これによって通産大臣が命令権を発動することができるわけですので、ぜひ命令権を出して電気料金の値下げをしてほしいということを強く要請したいというふうに思うわけです。いろいろ言われておりますけれども、このお金というのは、勝手に電力会社でお預かりするとかこれを据え置いてどうする、据え置くということはお預かりするということですからね、そういうことというのは基本的に中身が違っているというふうに思いますので、早急にこの二十三条で通産大臣の命令権を発動していただきたいというように思いますが、その点ではいかがでございましょうか。
  198. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いまお話しの二十三条というのは、経済的社会的事情の変動によって料金が著しく不適当云々ということだと思います。問題は、著しく不適当であるかどうかの判断だと思います。先ほど来お話が出ておりますように、円高メリットということが出てきていることも事実でございます。その反面、何度も繰り返すようで恐縮でございますが、資本費が非常に増高しておる、それから修繕費あるいは、ただいまお話のあった人件費、いずれにしてもこれは上昇要因につながっておるわけでございます。そのほかにも、石油の価格がこの六月のOPEC総会でどのように取り扱われるかという問題がございます。あるいは円為替のレートがどのように推移するかといったような不安定、流動的な要因もございます。そういったことも含めて考えますと、著しく不適当であるということは断定できないんじゃないか。仮にここで引き下げを図りましても、五十三年度中にも再度引き上げなくちゃいけないような事態も予想される。少なくとも五十四年度においてはいずれにしても引き上げざるを得ないような事態も考えられるわけでございます。そういったことを考えますと、できるだけやはり現状レベルで据え置いておく、公共料金の安定性という意味からも必要かと考えるわけでございます。
  199. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そういう点では見解の相違だというふうに思います。私はいまこそ、これは国民から取り過ぎた金である、国民の金である、そういう点では絶対に電気料の値下げという形で返していただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  もう一度重ねて申し上げますが、こうした右翼とか反共教育をしている学校、特定の思想教育をしている学校、そういうものに寄付をしたりしている問題、これを早急にお調べいただいて、私のところに、防共挺身隊とかこういうものですね、これをお調べいただいてどれくらいあるかということを御報告願いたいと思います。それに対しては、平岩さんの方でぜひ協力をして、九電力の中でどうなっているかということをお調べいただきまして、長官を通して私に御報告していただきたいと思いますが、お二人よろしいでしょうか。最後に確認しておきたいと思います。
  200. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 いずれにいたしましても調査はしてみます。企業の秘密にわたらない範囲について御報告いたしたいと思います。
  201. 平岩外四

    平岩参考人 橋本長官と相談していたします。
  202. 田中美智子

    ○田中(美)委員 質問を終わります。
  203. 石田正實

    石田参考人 先ほど武部先生に対するお答えの中で、政府の試算によるOPECの原油の値上げ額を約五兆三千億と申し上げたようでございますが、これは約五千三百億の言い間違いでありますので、訂正させていただきます。
  204. 美濃政市

    美濃委員長 これにて委員質疑は終わりました。     —————————————
  205. 美濃政市

    美濃委員長 この際、委員長として特に政府に対して一言要望をいたしておきたいと存じます。  当委員会におきましては、かねてから円高差益還元問題がたびたび取り上げられ、また、委員会決議でも政府に対しすでに数次にわたってこれが実現を求めてきたところでありますが、今日まで必ずしも満足すべき結果の得られていないことは、まことに残念に思っているところであります。  円高輸出産業等に及ぼすデメリットもありますが、一方、資源の大半を諸外国に求めざるを得ないわが国にとって、そのメリットは大きいわけであります。円高による輸入価格の下落及び卸売物価の鎮静を消費者物価の一層の安定につなげるとともに、輸入物資の流通機構の見直し、円高差益還元について積極的に取り組み、国民生活の安定に努めるよう要望いたします。  前田経済企画政務次官。
  206. 前田治一郎

    ○前田(治)政府委員 ただいまの委員長の御要望に対しまして、宮澤長官から所見を述べさせてもらうはずでございますが、御承知のとおり先ほど退席いたしました。政務次官の私から宮澤長官の所見を代読いたしますので、御了承お願いいたします。  政府といたしましても、円高の効果を物価に反映させることは、当面の物価対策の重要な課題であると考えているところであります。これまでの当委員会における御審議の結果も踏まえまして、現在具体的対策について鋭意検討を行っているところであり、明日の経済対策閣僚会議において決定する予定でございますが、今後とも円高効果の物価への反映のためには全力を尽くしてまいる所存でございます。  以上、御了承お願いいたします。     —————————————
  207. 美濃政市

    美濃委員長 なお、参考人各位には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会