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1978-03-28 第84回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十八日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長代理 理事 武部  文君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 紘一君    理事 片岡 清一君 理事 平泉  渉君    理事 堀内 光雄君 理事 金子 みつ君    理事 中川 嘉美君       愛知 和男君    鹿野 道彦君       島村 宜伸君    中西 啓介君       鈴木  強君    西宮  弘君       長田 武士君    草川 昭三君       宮地 正介君    荒木  宏君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部長 妹尾 弘人君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    田中誠一郎君         大蔵省理財局国         債課長     平澤 貞昭君         大蔵省銀行局総         務課長     石川  周君         厚生省薬務局経         済課長     古賀 章介君         厚生省薬務局安         全課長     代田久米雄君         厚生省保険局医         療課長     三浦 大助君         農林大臣官房審         議官      佐野 宏哉君         建設省計画局労         働資材対策室長 楢崎 泰道君         参  考  人         (日本銀行理         事)      中川 幸次君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     荒木  宏君 同月二十八日  辞任         補欠選任   長田 武士君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     長田 武士君 同日  理事小此木彦三郎君同日理事辞任につき、その  補欠として堀内光雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月六日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願外三件  (愛野興一郎紹介)(第一七五八号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第一七五九号)  同(中村茂紹介)(第一七九七号)  同(美濃政市紹介)(第一七九八号) 同月十四日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願工藤晃  君(共)紹介)(第二〇四三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  物価安定対策に関する陳情書  (第二一八号)  公共料金値上げ抑制に関する陳情書  (第二一九号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 武部文

    武部委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が都合により出席できませんので、その指名により、私が委員長の職務を行います。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事小此木彦三郎君より、理事辞任申し出がありますので、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部文

    武部委員長代理 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 武部文

    武部委員長代理 御異議なしと認めます。  それでは、理事堀内光雄君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 武部文

    武部委員長代理 物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  6. 愛知和男

    愛知委員 宮澤長官がもう少ししておいでになるということでございますが、それに先立ちまして質疑を始めさせていただきます。  いよいよ昭和五十二年度も大詰めになり、昭和五十三年度の予算の成立も間近になってきたわけでありますけれども、今度の予算には十一兆円に及ぶ大量の国債発行が予定されており、いよいよ大量な国債発行していく時代に突入した、こう言われております。政府も機会あるごとに、この国債発行が大量になるというのが大問題だとしきりにいろいろなPRがなされております。確かに五十三年度の予算が成立いたしますと、その依存度は実質三七%、こういうことであり、国債累積高も大変大きくなっているわけでございまして、一日も早くこういう状態を解消しなければいけない、こういうことがしきりに言われるわけでございますけれども、一方、一般国民日常生活の面から申しますと、確かに国債が大量に発行されて大変だというPRはしきりに聞いているけれども日常生活で、国債依存度が非常に高い、あるいは国債残高が非常に多くなってしまっているということが、当面特に大きな痛みといいますか、痛痒感じていないというのが実感ではなかろうかと思うのであります。ある意味では大変危険なことだとは思いますが、そういうようなことから、ともすると、景気を回復させるためには赤字の国債をどんどん発行したらいいじゃないかという議論が出てきたり何かすることもそんなところにもあるような気がするわけでございます。大変次元の低いことになるかもしれませんけれども、ここでひとつ、国債依存度がそれほど高いあるいは残高が多くなってしまっているということが国民生活にどう困るのかということについて、ひとつこの際、もう一度御説明をいただきたいと思います。
  7. 平澤貞昭

    平澤説明員 国債大量発行が続いておるわけでございますけれども、現在のところは先生のおっしゃいますように、特に実体経済面その他にそれほど大きな影響を与えなくて、ほぼ順調に発行が続いているという実情でございます。  それでは、なぜ大量発行にもかかわらず、このような発行がほぼ円滑に行われることができるのかという点でございますけれども、一言で申しますと、それは非常に客観的な経済情勢にいま恵まれているということではないか、そのように考えます。それはどういうことかと申しますと、実体経済面では非常に巨額のデフレギャップがあるということ、それに基づきまして企業その他等はほとんど投資をしませんで、貯蓄をする。それから個人も、住宅投資その他ある程度やっておりますけれども貯蓄率が最近高まっておりますので、貯蓄超過であるということ、そういう結果として金融市場において非常に資金が潤沢である、そういうような客観情勢に支えられて、何とか大量の国債発行しているというのが実情でございます。
  8. 愛知和男

    愛知委員 実際そういうような恵まれた条件が、今度は事情の変化によりまして、逆の恵まれない状態になった場合にはどういう問題が生ずる可能性があるんでしょうか。
  9. 平澤貞昭

    平澤説明員 いまのところはむしろいかにデフレギャップを解消するかということで努力しているわけで、戦前、昭和七年から十一年ぐらいにかけてほぼ似たような状況がございまして、そのときは四年ぐらいかなり大量の国債発行を続けながら、インフレその他実体経済面にそう大きな悪影響を与えなくて過ぎてきた。したがいまして、当面は、私はいまのような状況で何とかやっていけるのではないか、そういうふうに考えるわけでございますけれども、むしろ経済政策が成功いたしまして、今後かなり経済成長が急になってきたような場合に、恐らく民間資金需要が大量に出てくるというようなときにどうなるか。それにもかかわらず、大量の国債を依然として発行し続けていくならば、民間資金需要と国の資金需要との間で競合が起こるという問題が生じる可能性があるかと思います。  したがいまして、今後そういう事態を避けるためには、まず第一に必要なことは、できるだけそういうような場合に備えて、いまから国債発行額を極力削減する努力を続けていくということ、これが一番重要なことであるかと思います。財政収支試算はそういうような考え方に基づきまして国会に提出させていただいたわけでございますけれども、それが第一点であります。  それから第二点といたしまして、そのような状況のもとでも、なお国債発行せざるを得ないようなときには、できるだけ市中消化の原則を堅持する。日銀引き受けというのは国にとって非常に容易な方法でありますけれども、そういう方法は絶対に避けていくということが必要ではないか、そのように思うわけでございます。そのほか国債管理政策面でいろいろ具体的な細かい手を打っていく必要があるかと思いますが、基本的にはその二つである、このように考えます。
  10. 愛知和男

    愛知委員 私の御質問申し上げておりますことに少し答えの方が先に進んでしまったような感じがいたしますけれども、そうすると、いまおっしゃいましたことの繰り返しになるかもしれませんけれども国債が非常に大量に発行になっている、いまの時点では確かに国民生活に大した影響はないけれども、これが一般の環境が変わってくると、国民生活に一番実際の影響があるのは物価の問題であるわけですが、インフレが起きてくる可能性がある。今日まではよかったけれども条件が変わることによってインフレになる危険がある、こういうことでしょうか。
  11. 平澤貞昭

    平澤説明員 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  12. 愛知和男

    愛知委員 そうだといたしますと、国民生活においては、特に物価状況につきましては非常に安定しているという今日でありますから、こういう事態で万が一将来この国債大量発行というものがきっかけになってインフレになっていくようなことになりますと、これはとんでもないわけでございますから、絶対そういうことにならないようにしていかなければならない、こういうことがこれからの経済政策の大きな柱にならなきゃならないと思うわけであります。  次の点もある面ではいますでにお答えをいただいておりますけれども、今日、インフレにならずになお大量の国債消化がなされているというのは、基本的には、大きなデフレギャップがあって、民間資金需要が大して強くないということがその原因だ、こういうお話でございましたが、そうなりますと、現在のデフレギャップというものがいつごろ解消するという見通しを立てられておるでしょうか。
  13. 平澤貞昭

    平澤説明員 デフレギャップがいつ解消するかという点は、私の直接の所管の話ではないのでございますけれども、長期的な意味経済企画庁その他が経済見通しの中でいろいろお考えになっておられることだと思いますが、私の個人的な感じでは、まだしばらくは解消できないのではないか、そのように考えております。
  14. 田中誠一郎

    田中説明員 企画庁の方からデフレギャップについて若干御説明いたしますが、経済全体のデフレギャップがどれくらいあるかというのは測定が大変困難でございまして、御存じのように民間機関ではいろいろ測定をしておりますが、政府としては、経済全体でデフレギャップがどれくらいあるかというのは目下のところは測定してございまません。ただ御存じのように製造業について稼働率指数がございまして、五十三年一月では一〇九・四でございます。これは五十年を一〇〇とした指数でございますが、四十八年の一月から見ますと八〇強になっているわけでございます。したがいまして、デフレギャップ自身測定がむずかしいわけでございますが、一つ参考として稼働率指数を見ることができるわけでございます。  ただ、このデフレギャップがいつ解消するかということになりますと、いま申し上げましたデフレギャップ需給ギャップがどれくらいあるかという測定が非常に困難である、正確に測定することが大変むずかしいということに加えまして、それでは適正な需給バランスはどれくらいかということになりますと、物価面から見た需給バランス物理面から見た需給バランスとが必ずしも一致しないという問題がございますし、現在でも業種別稼働率格差がございますように、需給ギャップにも業種別格差がございますので、全体として需給ギャップがいつ解消するかという時点を申し上げることは大変むずかしい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 愛知和男

    愛知委員 確かにむずかしい面もあろうかと思いますけれども、よく引き合いに出される例でございますが、昭和の初めの高橋財政から馬場財政に移っていく過程で大量の国債発行されて、そのときに、当初はデフレギャップがあって、国債発行も大して国民生活に大きな影響を与えなかった。しかし、それがデフレギャップが解消したということにもかかわらず、その把握が十分でなかったために、同じような政策が続けられていて、それだけじゃないと思いますけれども、それが一つ原因になって、国債発行が非常にインフレをもたらした原因になってしまったというような貴重な教訓があるわけであります。したがいまして、デフレギャップが解消したかどうかという把握は非常にむずかしいということは事実かもしれませんけれども、しかし、これはむずかしいと言っていて済まされない問題ではなかろうか。デフレギャップがいまどういう状況で、どの時点で解消したか、その判断というものが国債発行なり何なりを中心にした経済運営のある意味ではキーポイントになるのではなかろうか、こんなふうにも思うわけでございまして、この点につきましては、むずかしいということではなくて、ぜひあらゆる手段を講じてその把握を十二分に行っていただく必要があろうかと思うのであります。  先ほど大蔵省からの御答弁でございますと、これは所管ではないということで、私見としてはまだ当分続くのではないか、こういうように考えているというお話でございましたけれども、多少率直に申し上げますと、そういう点から申しますと若干心もとないような感じがしてならないのでありますが、その点いかがでございましょうか。もう一度お願いいたします。
  16. 田中誠一郎

    田中説明員 申し上げたように、需給ギャップ測定自身がむずかしゅうございますし、いつごろ解消するかというのは大変むずかしいわけでございますが、ただ、私ども経済見通しにおきましては、五十三年度末の稼働率指数を五十年指数で一一三と見ておるわけでございますが、一一三の稼働率指数になりますと適正稼働率にかなり近づくというふうに想定しておるわけでございます。
  17. 愛知和男

    愛知委員 民間資金需要というのは、デフレギャップが解消した時点で急に出てくるという問題ではなくて、解消していく過程においてだんだんに出ていく、こういうようなものではなかろうかと思うのでありますが、そういう点から見ますと、まだまだ民間資金需要はそういう意味では動き出していないというのが今日の姿ですか。
  18. 田中誠一郎

    田中説明員 御指摘民間設備投資は、デフレギャップとの関係もかなりございますけれども、ただ適正の稼働率の水準に近づきましても、企業家の心理がたとえば非常に将来に対する信頼を回復しているかどうか、あるいはそのときの経済情勢物価を含めてどういう状態にあるかという具体的な条件によりまして、設備投資への姿勢はかなり変わってくるのではないか、かように考えております。
  19. 愛知和男

    愛知委員 宮澤長官、御到着早々で申しわけございませんが、ただいま国債大量発行インフレということについて御質問申し上げていたわけですが、今日まで余り大きな問題がなく、国民生活においては特に大きな痛痒感じない状態国債大量発行が進んできたのは、その一番大きな理由は、デフレギャップが大きくあって、民間資金需要が余りないために国債発行が順調だった、こういうお話でございまして、しからば、デフレギャップがいつごろ解消するという見通しかとお尋ねを申し上げましたところ、なかなか実際問題としてそれを把握するのはむずかしい、こういうお話でございました。  そこで、昭和の初めの財政史なんかでよく引き合いに出されることでございますけれども高橋財政から馬場財政ですか、これに移った時点国債発行が大量に進んできたわけだけれども一つデフレギャップがどういう状態かという把握を誤ったがために、デフレギャップが実は解消していたにもかかわらず、国債発行がただ同じような形で進められていた、こういうことがすべてではないにしても、一つの大きな理由としてインフレを招いてしまったという貴重な経験があるように思うわけでございます。そうなりますと、今後インフレを伴うことなく大量に国債発行していくという状況で何が大切かといいますと、今日のこのデフレギャップがいまどういう状態で、いつどういう時点で解消されるかというような把握というのが、実は大変政策運営で大きなキーポイントになるような気がするわけでありますけれども、その点につきまして長官はどのようにお考えでございましょうか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は愛知委員の御指摘のとおりでありますし、また非常に大事な問題であると思います。ことに現在のように特例公債を出しておるというこの状況が慢性化いたしますと、デフレギャップが解消を明らかにしたと考えられる時点においても、それを取りやめることができないということになりかねないと思いますので、この点は、すでに予算委員会等々におきまして、特例国債をある段階では打ち切らなければならないということについての試算等も御審議を願っておるわけでありますけれども、これは正直を申していわゆる試算段階であって、具体的にこの試算を実行するだけの方途を基礎にしておるわけではない、いわば一つ見取り図程度のものでございますから、いま御心配のような問題は、もっと具体的に政府として考えておかなければならない緊要な問題だと考えております。
  21. 愛知和男

    愛知委員 長官は、今日のこのデフレギャップというような状態あと大体どれぐらい続くというふうにお考えでございますか。感じでも結構でございますけれども……。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 申し上げることは非常に問題の性質上むずかしいのでございますけれども、昨日でございましたか、参議院の方の予算委員会で、企業収益状況がまあまあ普通といいますか、まあまあのところになるのはどのぐらいかかると思うかというお尋ねがありまして、私は、まあ一年を単位にとりまして、あと二期ぐらいはかかるのではないかということを申し上げたのでございますけれども、ぼんやりしか申し上げられないことで、そのぐらいはかかるのではないかと思っております。ことに、いわゆる構造不況業種というものを抱えておりますから、これについては問題を別に考えないといけないというそういう要素がまた別途にございますことは御承知のとおりでございます。
  23. 愛知和男

    愛知委員 話を少々先に進めさせていただきます。  先ほど、デフレギャップが解消した、そういう時点でもなおインフレを伴わないで大量の国債発行していくために、幾つかこういう方法があるというようなことを申されたわけでございますけれども、その中に、安定した個人消化を促進していく必要があるというようなお話がございましたけれども、この点について、今日の状況はどんなような状況になっておりますか。
  24. 平澤貞昭

    平澤説明員 先ほど申し上げましたように、客観情勢が非常にいいものですから、個人消化の面でもここ一年ぐらいの間に非常に順調な消化を示しておるわけでございます。恐らく発行総額の四分の一、二五%程度証券会社を通じる販売になっております。これは五十二年度でございますが、絶対額で申しますと二兆三千億を超える金額がそういうルートを通じて販売される、こういう状況でございます。
  25. 愛知和男

    愛知委員 今後この個人消化というものをもっと推進をしていくという基本方針でございますか。
  26. 平澤貞昭

    平澤説明員 先生御存じのように、国債個人消化してもらうことのメリットの一番大きいものは、非常に安定的な富裕層であるという点がございます。したがいまして、恐らく償還期限まで大体持っていただけるということを期待していいんじゃないかと思います。そういう意味で、財政当局といたしましては、可能な範囲で個人消化を進めていくということを考えていきたい、こういうふうに考えております。
  27. 愛知和男

    愛知委員 何か今後個人消化をより推進をしていくということで具体的な方策考えておられますか。
  28. 平澤貞昭

    平澤説明員 個人消化を円滑に進めていく上で、過去においていろいろの措置をとってまいったわけであります。たとえば三百万まで国債個人保有については利子の課税を無税にするという制度もとっておりますし、去年の一月からは五年の中期割引国債発行いたしました。これはもっぱら個人向け販売しておる、こういうようなことでございます。そういうようなこともございまして、先ほど申し上げましたように、ずっとここのところ順調に個人消化が進んでおりますので、しばらくこの様子を見きわめて、それらのものがどのように定着していくかということを見た上で、また改めていろいろの政策考えていきたい、こういうふうに思います。
  29. 愛知和男

    愛知委員 そういたしますと、いま新聞などでときどき報道されておりますように、なお新しい商品として二年か三年の中期国債、そういうものを発行するとかあるいは銀行窓口販売をしていくというようなことについては、まだ当分先の話というようなことでございますか。
  30. 平澤貞昭

    平澤説明員 銀行窓口販売あるいは先生いまお話しになりました二、三年の、日本で言えば中期債、さらに貯蓄国債というようなものもございますけれども、これらを今後どのように考えていくかということについては、いま大蔵省内でも鋭意検討はしておりますけれども、いますぐという状況にはないのではないかと思います。
  31. 愛知和男

    愛知委員 先ほど、インフレを伴わないで大量の国債発行という点について、一つ条件として、いまの個人消化を強化していくのだというお話でございましたが、世上新聞その他の論評等によりますと、いわゆる金利自由化というのがそういう際の大変大きな武器といいますか、大きな方策として考えられる、こういうふうな意見がよく主張されておりますけれども、この点についてはどのようにお考えでございますか。
  32. 石川周

    石川説明員 金利自由化ということは、しばしば言われておりますし、いろんな考え方があることはよく承知いたしておりますが、ただ、金利自由化という表現の中に、実態的に何を考えておられるか、人さまざまでございます。基本的な考え方といたしましては、自由主義経済の中で、自由な市場原理競争原理をできるだけ生かしていくという方向は、金融金利世界のみならず、われわれの経済の基本的な方向でございます。したがいまして、金利自由化という考え方におきましては、基本的にはその方向に常に努力していくということだろうと思います。  ただ、金利のみならず、すべての面におきまして、野方図に自由ということはないわけでございまして、必要な規制、必要なコントロールというものはどうしても残さざるを得ない、それが現実の行政、政策だろうと思います。  現在、金利世界考えますと、特に私どもが所掌しております銀行世界考えますと、貸し出しの面におきましては現実問題といたしまして、金利は全く自由になっております。問題は、資金吸収の方の預金金利の面かと思いますが、預金金利の方の面をもし自由化するというようなことになりますと、現在あるもろもろの制度規制を本当に野放しにしてしまっていいのかどうか、たとえば郵便貯金というような制度を一体どうするのかといったような大問題もございますし、また、自由化いたしました場合には、どうしても経済原理といたしまして、大口預金の方が有利になってしまって、小口預金の方が冷遇されてしまうというような弊害が起こりましょうし、また、そのために中小金融機関などの経営が苦しくなっていく。それを黙っておるというわけにもまいりませんし、現実の政策といたしましては、あちこちにむずかしい問題があるわけでございます。  私どもといたしましては、基本的には自由化方向考えながら、しかし、金利のメカニズムをできるだけ最大限に活用していくための弾力的な運営、機動的な運営という方向に実際問題としては心がけております。預金金利も、最近におきましては、かつてないほどしばしば変更されるようになってきておりますし、金利機能を十分に生かす弾力的な運営という方向で当面の政策を運営してまいりたい。もちろん基本的には、先ほど申し上げましたように、先生の御指摘のように、自由化方向を大きな目で踏まえていくということには変わりございません。
  33. 愛知和男

    愛知委員 当面、国債発行という面から申しまして、国債発行を担当されていらっしゃる方の立場から申しますと、金利自由化するということは、インフレを伴わないで国債を大量に発行していくという、そういう上では非常にプラスだ、そのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  34. 平澤貞昭

    平澤説明員 欧米諸国の歴史を見ますと、確かに先生おっしゃるように、金利機能を活用しながら国債発行量が結果的に自然にある程度調整されるという姿がわかるわけでございます。その姿を、それではそのまま日本に持ってくるのがいいのか悪いのかという問題があるわけでございますけれども、先ほど銀行局総務課長が御説明いたしましたように、やはり日本には日本的な風土がございますので、その中でそういうものをどれだけ生かしていくかという方向考えていった方がいいのではないか、そのように思います。
  35. 愛知和男

    愛知委員 経済企画庁の、物価のお目付役というお立場から、金利自由化というのは物価政策上望ましい方向とお考えになりましょうか。
  36. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 これからの国債見通しについて、現在の大量発行というものがどうなっていくかということについては、いろんな財政収支の見通し等から数字が出てきているわけでございますけれども、私どもとしては、国債が非常に大量にたまってきまして、そしてそれがいわゆるマネーサプライの増加を招いて物価影響を及ぼすということについて非常に心配をしているわけでございます。  そういうことになりますと、それは国債発行を決めます経済情勢、さらには財政のその中の位置づけというふうなことになってくるわけでございますけれども、そういうことで、全体として国民経済とバランスのとれた国債発行というものが実現いたしますれば、かなりそういう問題は少なくなってくる、その過程国債をどうするかということについて、それはもちろん金利がある程度弾力的な運営をされまして、そうして自然に市中消化というような形で国債が吸収されていくというようなことであれば、最もいい形ではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、金利自由化といいますか、国債発行がある程度歯どめがかかるような、そういうシステムといいますか、そういうようなことができるような措置というものができ上がっていくことについては、私どもとしても、物価の面から非常に好ましいと思っております。金利自由化ということをストレートにどうこうということではなくて、国債発行経済とバランスがとれて、そうして円滑に市中の消化を背景として行われていくということが一番大事ではないか、その中で金利の問題というのは非常にウエートを占めていると思っております。
  37. 愛知和男

    愛知委員 私たち、国民生活の立場から申しますと、やはり何といっても恐ろしいのはインフレということでございまして、この経済状態の中で、どうしても大量な国債発行をここしばらくは続けていかなければならないということになりますと、やはりそういう中でインフレが起きないように、そのためにあらゆる手段を講じていくということが経済政策の何よりの中心にならなければいけないと思います。  そういう点から申しまして、たとえばいまの金利自由化というような、全般的な金利自由化ということに最終的には波及するわけでありますけれども、とりあえず国債発行条件のいろいろな弾力化とか、実勢に合わせた姿というようなことから対策を講ずるということが、実に大きな意味があるというような御答弁だったと思うのでありますけれども、一方また、それはそれだけにとどまらないで、いろいろ金利の問題からほかの金融界の再編成にまである意味では波及していくような大問題であろうかと思うのでありますけれども、その点につきましては長官はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金利自由化ということはずいぶん長いこと言われておるわけですけれども一つ問題を取り上げますとあちこちへ必然的に波及をしていって、とめどもないというようなことになりかねないものでありますから、長年議論されていながらなかなかこれという成果が上がっていない。国が国債発行していない時代ですからこれという答えが出なかったわけでございますから、現在のようになりますとなお問題は複雑になってきているのだろうと思います。  ただ、愛知委員がこの問題をお取り上げいただいておることは、私は非常に意味があると思いますのは、実は政府部内でこの議論を徹底的にやり抜くということがいろんな事情で非常にむずかしいわけでございます。政府部内のみならず、大蔵省の内部でもやはりいろいろな立場を考えなければならないということから結論がなかなか出ませんで、そして時間だけがたっていくことがもう何年か過去において繰り返されてきているように思いますので、やはり国会というようなお立場からこの問題を取り上げていただいて、政府としてできることからやっていくことにどうもしなければならないのではないだろうかという感じが私はいたしておるわけでございます。  先ほどから国債についてのお話があったわけですが、いま現在の時点では国債というものは比較的きらわれ者ではない、金融資産として結構歓迎されているのでございましょうけれども、他方で、しかしそうであれば、金融資産として自由に処分がいつでもできるということでなければ、本当を申しますといつまでも持っている、個人だから大丈夫だろうというようなことは、市場があればむしろかえってそうなるかもしれませんけれども、やはり金融資産であれば、どうも常にクォーテーションがあって、このくらいということでなければならないのだろうと思いますけれども、そうしますと今度は発行者の立場から言えば、やはり市場の条件でしか発行条件を決めるしか方法がないことになります。私はそうなってもいいのではないかというふうに実は思っておりますので、先ほどからお尋ねデフレギャップがなくなったときになお国債が、ことに特例国債がなくならないということになれば、インフレになるではないかとおっしゃいますのはそのとおりだと思いますので、やはりそういうときの歯どめというのは、非常な悪い発行条件でしか発行できないという状況が一番自然で、かつだれも納得する歯どめではないかというふうに私は思うわけでございます。何かそういうことではなかろうかと私は思っておりますし、この節、少しずつ大蔵省なり日銀が、やはり国債というものの価格の多少の自由化といいますか、そういうふうに動いてこられたことは大変結構なことだと存じますけれども、これをもう少し大きな規模で、むしろそれが原則であるというようなことにこういう機会にしておくことがやはり大事なんじゃないだろうか。  問題が非常にあっちこっちに波及する話でありますので、恐らくここにおられます政府委員あるいは説明員の諸君と個人的に話してみますと、こういう問題もある、ああいう問題もある、ああそうかということは私はたくさんあるのだろうと思いますけれども、大筋ではやはりいま申し上げたようなことでありませんと、愛知委員御心配のような事態が将来やはり考えられるのじゃないかと私は思います。
  39. 愛知和男

    愛知委員 私ども国民サイドから申しますと、再三申し上げましたとおり、インフレという状態を何とかして避けていただきたいということが何としても大きな願望でもございますし、そのためにあらゆる方策をとっていただきたい。そして、いまお話しのとおり、確かに特に金利自由化の問題などになりますと、いろいろ波及するところが大きいということでございますが、やはりそこで最後に政治の指導力といいますか、リーダーシップを発揮していただくということがまさに大切なことだと思うわけでございまして、今後その点について長官のお力を大いに御期待を申し上げたいと思うわけでございます。  時間も余り残りがなくなりましたが、せっかく長官にも御出席をいただきましたので、現在の一般的な経済問題について、残りちょっと長官の私見を承らせていただきたいと思います。  まず最初に、福田総理大臣が、日本の経済を病気というふうなとらえ方をされて、全治三カ年、こういうふうに言われましてから三年以上たってしまっているわけでございますけれども、総理は、そういう言葉の中から推測するところ、いまの経済状態を病気というふうな定義づけといいますか、とらまえ方をしておられるのではないかと思いますが、長官、いかがでございましょうか、いまの日本の経済は病気なんでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昭和四十八年にいわゆる石油危機が起こりましたときに、世界各国がいろいろな対応の仕方をいたしたわけでございますが、私は、わが国の対応の仕方は、いまの時点考えますと非常に上手に対応した方であるというふうに考えていいのではないかと思います。つまり、あのとき最初に国民の多くが考えましたことは、これでは日本は必要とする石油が買えない、そういう貿易収支、国際収支上買えないという意識を持った人が非常に多い——私はそう思いませんでしたけれども、しかし、そういう議論が非常に多かった、その点が一点でございます。  もう一つは、それから間もなく狂乱物価という状況になった、これが第二点だと思います。それに対処して、国際収支面でこれに対応するということと、物価面でこれにどう対応するかということと二つの問題があったわけでございますが、国際収支面は現在ごらんのようなことになっておって、わが国として石油を必要量だけ買えないというような状況は、今日だれもそういう心配はしていないと思います。  物価面では、やはりあのときに福田さんがお考えになったことは、これはなし崩しで対処しよう、そうお考えになったのだと私は理解していまして、つまり一挙にこれを消費者物価、卸売物価にもう構わず反映させるか、それとも一定の時間の、うちになし崩しでこれを国民経済に吸収するか、後者の道を政府はとったと私は考えているわけでございますが、いまの時点になりまして、大体国民経済が高い石油価格というものをまずまず吸収したというふうに私は考えております。公益事業の料金に至るまでほぼ吸収したのではないか。ごく一部、石油製品の価格にまだ少しぎくしゃくしたところがございますけれども、大体吸収し終えたと申し上げてよろしいのではないかと思います。  そこで、全治三年というふうに言われましたのは、私がいまの時点から振り返って考えますことですが、これは常に外側の要因でわれわれの経済の死命が制せられるというような状態を脱却する、そういう意味での三年であったのではないか。つまり今日、われわれの経済の中にはいろいろな深刻な問題があるわけですけれども、これはわれわれ自身の努力で大体解決し得る種類の問題であって、外国の一顧一笑でわれわれの経済ががたっと動かなくなるというような状況は済んだ、問題をインターナライズしたとでも申し上げることがいいのかもしれません。そういう意味で三年という期間を使って、少なくともわれわれは問題をインターナライズすることができたということではないか。しかし、あれだけ大きな激変でございますから、いろいろな後遺症は残っておるわけでございまして、その中で一番大事なことであるし、時間がかかるだろうと私が思いますのは雇用の問題でございます。  かつて有効求人倍率が二を超えた時代があるほど、われわれは完全雇用を事実上達成した時代があったわけですけれども、有効求人倍率が今度は〇・五であるというようなことは、やはり政治の最高の目的の一つは失業のない社会をつくるということだと思いますので、そこから見ますと、これは非常にむずかしい大きな問題が残ってしまった、しかも、それをどういう方法でいつまでに解決できるかということははっきりしておらないように思いますので、やはりこの問題が一番むずかしい問題として残ってしまったという感じを持っております。それは対外経済調整も大事でございますけれども、いろいろな制度を本当に思い切って直していきますれば片づく問題だと思います。この雇用の問題だけはちょっと簡単に片づきそうもない。それを病気と考えるかどうかということもさることながら、経済政策としては、やはり最優先の問題として取り組まなければならないことであるというふうに認識をしております。
  41. 愛知和男

    愛知委員 いまの状態を病気というふうに定義づけていく場合と、そうでなく日本の経済そのものが、敗戦で生まれ変わった日本の経済が三十年ちょっとたって、そして今日、いよいよある意味で、人間でいいますと子供から大人になる間に、体のバランスや何かが崩れちゃったり、にきびができたりなにかいたしますし、精神的にも非常に不安定な時期が来る。あるいは急に大人の仲間入りをさせられて責任を負わされて戸惑うというような成長過程を私たち人間もするわけでありますけれども、そんなような状態にいまの日本の経済があるというふうにとらえるのと、やはり対処の仕方がよほど違ってくるような気がするわけでありまして、病気というふうに判断をしてやりますと、そこの病気の原因になっておるものを治すためにいろいろな薬をやる、場合によっては手術をする、それが治ればまたもとに戻るということが前提にあって病気ということが言えるわけでありまして、私は、やはりいまの経済状態というのは、病気というよりも日本の経済そのものが成長期にあった、子供のいわばそういう時期から本当に大人の時期に変わっていく、成熟した社会になっていく、あるいは国際社会の中でりっぱに大人としての役割りをしていく過程でいずれ通らなければならなかったところをいま通っているのだ、こんなふうに解釈する方がいいのではなかろうかというふうに考えるのでございますが、そういう点から申しますと、たとえば今日の為替が非常に円高ということで、非常に短期間にどんどん円が上がっていくということが問題ではありますけれども、長い目で言いますと、やはり原則的にはこれを受け入れて、そういう状態で日本の経済をやっていくような体質に日本の経済を変えていくという方が方向としてはむしろ正しいのではなかろうか、こんなふうに考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円というのがどのくらいの相場であれば適正であるかというお尋ねはしばしば国会でもございまして、私ども、それはお答えをするすべがない、また、お答えをすべきことでもなかろうと申し上げておるわけでございますけれども、しかし、御質問そのものは、実はまことにごもっともなお尋ねだというふうには、そう申し上げながら私どもはいつも考えているわけで、いまの相場が、短期的なことを別にいたしまして、高過ぎるのか、あるいはむしろそうでないのか、ちょうどいいのかというようなことは、やはり頭の中ではお互いに考えてみるべき問題だろうと思います。  それで、それはそれとしまして、しかし、毎日毎日これがこういうふうに動いていくということは、もういかなる面から考えましても都合の悪いことでございますから、これだけは早くどうかなってほしいと考えているわけでございます。総理大臣はよく、円が高くなるということは決して日本経済にとって悪いことではないと言われます。それはその限りにおいて私もそうだろうと思いますけれども、しかし、そのなり方というものがやはりございますから、こういう、ことに投機筋がそこに入って国民全体が不安になるような、いわば乱高下というようなものは早く終息させなければならないのではないだろうかと思います。
  43. 愛知和男

    愛知委員 いま政府が七%成長、こういうことを言っておられて、民間感じから言いますとせいぜい五%ぐらい、あるいはもう少し下に見る方もいらっしゃいますが、この点に関して、実は私も、たとえば地元へ参りまして、地元の公共事業関連の本当の末端の末端の業者の方ですけれども、先日お見えになりまして、実はおかげさまで大変引き合いが来るようになった、ところが、今日まで不景気の中で体質を削りに削ってきた、いまの態勢のままですととても注文に応じ切れないで、実はいま思い悩んでおる、こう言うわけなのであります。ここでひとつ体質をまた強化といいますか、増強して、人員などをふやしてその注文にこたえたものかどうか、しかし、また、そうしてこたえたはいいけれども、来年あるいは再来年になってまた大変なことになっちゃったら企業としても大変なので、非常に迷っているというようなお話をされるわけでございまして、結局私は、今日経済が思うように回復をしないというものの底にあるのはやはり政治の指導性というか、そういうものに対する不安感、信頼感の欠如というものがどうしても根底にある。円高、これまたいろいろな要素があると思いますけれども、これもまた、たとえば対外的に七%あるいは黒字幅をどれだけにするというようなことを言っても、なかなかそれを信用しないというところにやはり一つの大きな原因があるような気がしてならないわけでございまして、今日、何はともあれ経済最優先、こういうことを言われておりますけれども、私は、ちょっと見方を変えると、いまこそ何が望まれるかというと、私は政治の指導性といったようなもの、あるいは政府の力強い政策の遂行といいますか、そういうものが望まれているのはまさに今日じゃなかろうか、こんな気がするわけであります。  そういう中で、長官が今度この通貨の問題に対しても宮澤構想というようなものをお打ち出しになって非常に関心を呼んでおりますけれども、報道されるところによりますと、従来の日本の政治は、どちらかというとお役所仕事の積み上げがあって、その積み上げのもとに判断なり何なりがなされるというのが通例でありますけれども、多少それを破ったような形でなされたというようなことからいろいろ報道や何かもされておる向きもございますけれども、私は、こういうときにこそ、本当に従来のお役所の積み上げ作業に基づくいろいろな判断、決定ということもさることながら、大胆な、政治的な指導性を回復するための本当の政治家としての行動というものが望まれるときではなかろうか、こんなふうに思うのであります。その宮澤構想の内容はともかくといたしまして、私はそういう意味でも大変高く評価をさせていただきたいと思うのでございますけれども、今日のそのような課題、政治の指導性の回復、信頼感の回復ということにつきまして、長官どのようにお考えでございましょうか。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の国民の知的水準は非常に高うございますし、また日々のことがマスメディアを通じまして非常に速く報道されますので、国民は言葉よりは実績といいますか、行為を初めて信頼するという心理になっておる、私はそのことはそれでいいのだと思います。ですから、たとえば七%というものができるできないという議論は、結局、先ほどちょっと愛知委員がおっしゃいましたが、現実に国の公共投資というものがなるほど出てきた、自分の生活につながる形でそれが見えてくるかこないかということあたりが大事なところなのであろうと私は思います。確かに請負業者は、これがパーマネントなものであればそういうように対応する方法があるし、しかしいっときのことであれば人をうっかり雇ったり、機械を買ったりしてもというのはもっともなことで、恐らく当面は常用雇用をふやすのではなくて、オーバータイムとか臨時とかいうことで何とかやっていこう、しかし、それだけではちょっとやりきれなくなって、少しはどうも常用もふやす、機械も買う、そうしなければならぬかなというところへことしのある段階では来る、しかしそれでも投資側、企業側はやはりそこは非常に注意深くやれると思うんで、私はそれが本当だと思います。そういう状況が積み重なっていきますと、なるほど何かが現実に起こってきたなということで経済全体にいい影響があるのではないだろうか、こういうふうに思っておりますので、やはり具体的な、目で見える形で政府のやっておりますことが出てまいりませんとなかなか国民は信用されない、それは疑い深くなるほどそれだけ知的水準が高くて、情報がたっぷりあるということは私はいいことだと思うのでございますけれども、そういうふうに思っております。  それから対外的なことは、これは愛知委員も御承知のように、米国に長い間おられましたからよく感じがおわかりになると思いますけれども、ドルが基軸通貨であるというようなことは、米国の大衆は全く理解できない種類の、無縁のことでありますから、それ自身が政治の課題になるということは非常にむずかしゅうございます。むしろ自分たちの通貨としてのドルがインフレという形でおかしくなってきたということでないと政治の問題として取り上げられない、そういうのが米国であると思いますが、幸か不幸かそういうことが少しずつ起こりつつございますから、ドルの価値維持というのはやはりお互いに関心を持たなければならない問題ではないかということを言い始めましても、それを受け入れる雰囲気が米国側にも少しずつ出てきている。まあ余り大きな期待は実は私まだ持っておりませんけれども、そういうことから、多少時間がかかりますと何かの合意ができるのではないか、そういうことをまず呼びかけてみようというのがいまの段階だと私は考えております。
  45. 愛知和男

    愛知委員 時間も参りましたので、国内国外ともになかなか多難な今日でございますけれども宮澤長官の御健闘をぜひとも御期待を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。     —————————————
  46. 武部文

    武部委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、日本銀行理中川幸次君に参考人として出席を求め、御意見を承りたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 武部文

    武部委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、御了承を願います。     —————————————
  48. 武部文

    武部委員長代理 鈴木強君。
  49. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私はきょうは、当面の経済見通しについて、さらにおまけつき医薬品等の問題、それから牛肉、加工原料乳の価格問題、それから石油の円高差益問題、それと最近値上がりしております建設資材の問題、以上五つについて質疑をしたいと思います。  参議院の予算委員会も開かれておりまして、大臣の御都合もおありのようでございます。それから、きょうは農林省関係の方も、畜産審議会の食肉部会が開かれておりまして、全員がそれにかかっておられるようでございます。御無理を申し上げまして佐野審議官においでをいただきましたので、最初にこの問題に触れさせていただいて、次に当面の経済見通しについての質疑に移りたいと思います。  まず五十三年度の牛肉、豚肉の安定価格を決めるために、きょう畜産振興審議会の食肉部会が開かれておるのでございますが、二十九日には加工原料乳保証価格の酪農部会が開かれることになっております。そこで、この二つの部会に対して、農林大臣としては何か試案を示されたのでございましょうか。
  50. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 お答えいたします。  本日、畜産振興審議会の食肉部会が開かれておりまして、加工原料乳の関係は明日になりますが、指定食肉の安定価格につきましては、本日試算をお示ししてお諮りをしておるところでございます。  それで、その内容につきましてかいつまんで申し上げますと、指定食肉の安定価格につきましては、基準期間の実勢価格を基礎に、この間の生産費の変化を考慮して算定するという従来の方式を踏襲いたしております。それで、試算の結果、豚肉の安定価格につきましては、上下限それぞれ現行の安定価格水準に比べて三円ダウン、それから牛肉につきましては、去勢和牛のものにつき上下限とも二円ダウン、それからその他の去勢牛につきましては、上限価格で一円、下限の価格で二円下回るという試算の結果をお示しいたしました。しかしながら、こういう、ほんのわずか下がっておりますけれども、実質的には現行の安定価格とほぼ同水準の試算結果になっておりまして、安定価格は暴騰、暴落を防ぐ基準として設けられているという性格のものでございますので、円単位での改定というのは実質的にはさほど意味がなく、この際は、五十二年度の安定価格を特に変更することは必要ないのではないかという考え方でお諮りをしておるところでございます。
  51. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 従来政治加算的なものがございましたね。そういうものはことしはどうなる見込みですか。
  52. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 ただいま畜産振興審議会で御審議を賜っておるところでございますので、最終的な結論を見るまでには——審議会の御高見を拝聴しながら決心をしてまいるということになりますが、私どもといたしましては、いま申し上げましたように、五十二年度の水準のとおりに決めさしていただくことが適当であるというように考えております。
  53. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 もう一つの加工原料乳の方はわかっておりますか。わかっておりましたらひとつ知らしてください。
  54. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 明日の部会に提出をするという予定で、まだ作業中でございますので……。
  55. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 作業中だとおっしゃるが、もう決まっているでしょう。新聞等にもうすでに報道されて、これも大分ダウンするんだが、お情けで据え置き、そういう記事が出ておるではないですか。少なくとも、国会でわれわれが質問する際に、まだ作業中だなんということは、ちょっと物理的にいってみたところで、明日は酪農部会が開かれるでしょう。そんな官僚的な答弁じゃだめですよ。
  56. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 これは毎年のことでございますが、生産費調査の最終的な確定値が統計情報部の方から私どもの方へ回ってくるのは本当の直前でございまして、大蔵省等との御相談もございますので、本当にぎりぎりかかりますので、残念ながら、掛け値なしにいまの段階ではお答えいたしかねるわけでございます。
  57. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 あなたは審議官というんだな。そのくらいのことがいまここで答弁できないようなことで、審議官よく勤まるものだな、驚くね、実際。恐らく何か言われるのを恐れているんだろうと私は思う。答えられないとすれば、これはもう仕方ありませんからね。  それでは、据え置きにした理由が御説明だけでは私はよくわからない。少なくとも、生産費所得の補償方式、こういうものでいくならば、農家労賃をどういうふうに算定したのか。いま全国の農協の諸君が非常にささやかな額を決めまして、農林省にこの価格をひとつ決めてほしいと一生懸命願っておるでしょう。私は農協の要求を見ました。そうしますと、現行豚肉の上位七百六十六円を五十六円プラスして八百二十二円にしてほしい。それから安定基準価格を現行六百二十七円を、六百七十二円に四十五円プラスしてほしい。牛肉の場合でも、時間がありませんから全部申し上げられませんが、去勢和牛肉の場合に、上位千七百三十円、これは百十三円プラスですね。それから安定基準価格千三百三円を千四百十九円、百十六円プラスしてほしい、こういう要求が出ておるわけですね。これすら認められないというのはどういうわけなのか。
  58. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 お答えいたします。  一つは、農協が要求を算出なさっておられますのは、俗にいわゆる生産費所得補償方式というお考えで計算をなさって要求をお決めになっているわけでございますが、実は私どもは、これまたいわゆる実勢価格方式と申しまして、過去の一定期間の実勢価格を生産指数で修正をしたものをベースに置いて決めるというやり方をやっておりますので、そういう方式上の違いが根底にございますので、特に冷たくあしらおうと思ったわけでもないわけでございます。それで算定方式上の得失の問題につきましては、私どもといたしましては、指定食肉の価格安定制度というのは、価格帯の中である程度フレキシブルに価格が動くことを許容する前提で成り立っておる制度でございますので、そういう実勢の価格水準をベースに置いて、それを修正しながら安定価格を決めていくというやり方が価格安定制度の仕組みに即しまして妥当性を持っておるというふうに考えておるわけでございます。  それで、こういう算定方式のもとで定められました安定価格のもとで、従来から、ときにより若干の曲折はございますが、大勢といたしまして指定食肉の安定的な拡大再生産が図られてきた、そういう実績がございますので、特に不都合な算定方式であるというふうには考えておらないわけでございます。それで、こういう算定方式に基づいて計算をいたしますと、先生御高承のとおりの昨年来の配合飼料の価格の値下がりが非常に大きく響きますので、農協の皆さん方の御要求にはいかがと存じますが、先ほど申し上げたような試算の結果になったわけでございます。
  59. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 何かこう理屈を言って、私たちの要求というか考え方を静ましてしまおうという考え方なんだ。むずかしいことは要らないから、あなたのところは下がった、下がった、安くなった、だからこれでいいんだというような御答弁だが、たとえば、それでは畜産農家の労賃というものは一体どういうふうな基準でやっているのですか。そんなむずかしいことは要らない。労賃はどういうふうに計算しました。
  60. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 これは先ほど申し上げました生産指数をつくります際に、直近時点までの労賃水準のアップを反映するように物価修正をいたしまして生産指数を計算いたしておりますから、そういう意味で、労賃水準の上昇傾向と無関係に決めておるわけではないつもりでございます。
  61. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 だから、去年は幾らでことしは労賃が幾ら上がったか、それを具体的に説明してくださいよ。去年何ぼだったのですか、この中の基準は。
  62. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 お答えいたします。  実は生産指数をつくります場合にとります労賃単価でございますが、これは豚肉の例で申し上げますと、基準期間が四十八年から五十二年まででございますが、四十八年から五十二年までの指数が平均で八七・九でございます。それで、そのうち五十二年につきましては一一二・九でございます。それに対して今度の価格指数をつくります推定生産費の中に入れました労賃指数は一二一・六でございます。
  63. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 一応指数で御説明がありましたので、時間もありませんから、金額を幾らということは一応差し控えておきます。  そこでもう一つ伺いたいのは、食肉価格の推移でございますが、たとえば牛肉の場合、農家の販売価格と卸売価格と小売価格というのは一体どういうふうな状態になっておりますか。
  64. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 お答えいたします。  農家段階での販売価格は、農村物価賃金調査によって、本年の一月までの数字でございますが、本年の一月の段階で、これは農家の庭先の生体価格でございますが、キログラム当たり九百四十二円ということでございます。それに対応いたします一月の卸売価格でございますが、これが去勢和牛の中で千五百円、それから乳雄の中で千二百三十一円ということでございます。同じ月の小売価格につきましては、これは総理府の小売物価調査でございますが、一キログラムで三千百五十円でございます。
  65. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それから豚肉はどうですか。ちょっとそれを教えてください。
  66. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 豚肉につきましては、農家の販売価格は四百三十二円、それから卸売価格で、これは省令規格のもの、豚肉の上以上でございますが、これが六百七十八円、それから小売価格が一キログラムで申し上げますと千五百九十円でございます。
  67. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで私は、生産者の価格を上げてほしいということを言いますと、消費者の方からは、生産者価格が上がるとまた小売価格が上がってくる、消費者は困る、そういう誤解があってはいけませんのでこういう質問をしたわけです。  お聞き取りのように、昨年一年間の価格の推移をずっと私も調べてみましたが、実際汗水たらして一生懸命働いて牛を飼い、豚を飼ってこれをつくった畜産農家が庭先で取引する場合、生体であっても九百四十二円。それが卸に行くと千五百円、これは一キロの場合ですね。それで今度は小売が三千百五十円。四倍弱ですね。豚もそうですね。ですからこの流通段階における問題点を解決しなければいけないんですよ。あなた方はそういうところにもっと力を入れるべきだ。そうすれば畜産農家に対してもう少し上げてやっても、逆に小売価格、消費者に対しては安く肉が提供できるわけなんですね。外国から輸入する牛肉その他の、時間がありませんからちょっと触れることができないかもしれませんけれども、われわれもできるだけ安い肉が食べたい。消費者はそれを望んでおる。だけれども、生産をしていただいている畜産農家の方々のことも考えなければならないわけですから、そういう意味において、全国農協の諸君が何とかこの程度の基準価格をつくってほしいという願いを込めて、ことしも皆さんのところに陳情にも行っているでしょう。全国会議員のところにも来ております。われわれは党派を乗り越えて、そのことについては何とかしてやろうという気持ちでおるわけですね。だから生産者と消費者に一体どうしたらいいかという融合点を生み出すのがあなた方の仕事じゃないですか。流通段階でただ物を動かすだけで、三倍も四倍ももうける人たちがおるということをあなた方は頭の中に置かなければいかぬですよ。そこのところにもっと徹底的なメスを入れなさいよ。そういうことをぜひぼくはやってほしいと思う。それはどうですか。そこだけちょっと聞かせてください。
  68. 佐野宏哉

    ○佐野説明員 確かに先生指摘のように、牛肉を初め食肉の流通につきましてはいろいろ立ちおくれた面があることは事実でございますが、私どもといたしましては、従来から、産地における食肉センターの整備あるいは消費地における食肉卸売市場の整備、そういうことを通じまして、食肉の流通の合理化に努めてまいったわけでございます。しかしながら、実はなかなか卸売価格の値下がりが完全な形では小売価格に反映をいたさないという問題があることは御指摘のとおりでございます。先ほどちょっと先生の御質問にお答えいたしました一月段階の価格でも、たとえば去勢和牛中の一月の価格が対前年比八六%でございますけれども、同じ一月の小売価格は対前年比九八%であるというような事情がございます。こういう事情はなぜ起こるかというようなことについてはいろいろ議論があるわけでございますが、たとえば先ほど先生の御質問にお答えいたしました私の数字自体が、農家の段階では生体価格であり、卸売価格では枝肉であり、それから小売の場合には恐らくスライスをされた肉であるという形で、工場から出た同じ商品が末端の消費者に届くというものと違いまして、途中で姿、形を異にするものですから、それぞれの段階別の価格の連動性がなかなか確保しがたい。ここへメスを入れたいというふうに考えまして、五十三年度の予算におきましては、一つは、枝肉の価格と精肉の価格との間を連結するリンケージとして、部分肉の価格形成をもう少し公開の場で公正に行えるようにということで、部分肉センターを大消費地に設置するという事業を新しく始めたいと思っております。  それから、さらに生産者段階と卸売の段階あるいはそれ以降の川下の段階をつなぐ上で、その基幹となります食肉センターの整備をさらに大幅に推進していきたいというふうに考えております。それから、もう少し川下の方の問題につきましては、実はことしの一月から始めたわけでございますが、食肉小売店の協同組合の共同仕入れによりまして値下げルートを開設する。これは何と申しますか、卸売価格が下がっても、かなり安定的、持続的に下がるという見込みがない限りは小売店はなかなか正札を変えにくいということがございますので、そこのリスクを排除するということと、中間を短絡化するということと二つねらいにしておるわけでございますが、それを新しく始めて、そのルートを通じまして国産大衆牛肉をある一定幅で、安い市場価格で販売をするというふうな事業を始めさせておりますし、それから食肉小売店の共同活動を助長するための共同処理加工配送施設に対する助成、あるいは産直を推進するための食肉販売店による実験事業を助成する、そういうことで、先生指摘のとおり、私どもも問題の所在は重々心得ておりますので、せっかく努力をいたしたいと思っております。
  69. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 そういうお話は何十年も同じことを聞いているんですよ。しかしさっぱり具体化してこない。われわれがなるほど努力した、なるほどよくやってくれたという行政の面のメリットが出ておらない。非常に残念です。皆さんも一生懸命やっておられるでしょう。やっておらぬと私は言いませんよ。だけれども、もう少し具体的に実行できるような具体的な流通段階における簡素化、そういうことも考えて、ひとつ苦労する畜産農家、そしてこれを食べて栄養をとって健康を保持する消費者の立場、こういうものが両立できるようなうまいことを、あなた方は専門ですから、それで飯を食っているわけでしょう、ですからひとつ今後も大いにがんばってもらいたいと思います。  きょうはあなたに来ていただきまして私の意見も申し上げました。そこで、せっかくいま食肉部会が開かれるというさなかでございますので、また休憩時間でもございましたら、大臣にも私のこういう意見があったということを伝えていただいて、できるだけ最後まで努力をしていただきたい、こういうことをお願いしておきます。大変御無礼なことを言いましたけれども、ただただ何とかよくしたいという気持ちでございましたので、御無礼の点は許してください。  それから加工原料乳の保証価格の方につきましても、あなたはここで言えないとおっしゃる、審議官では言えないかもしれません。したがって、やはり同様に据え置きをする。しかもさっきもおっしゃったように、多少ダウンしておるということから今年度の価格を据え置くのだというふうなことでは、酪農の諸君は納得しませんよ。ですからその辺も含めて、ひとついい結論を出していただくようにお願いしておきます。  これでこれは終わります。  宮澤長官、どうも御苦労さまでございます。本当に感謝をいたしております。  ここで当面の経済見通し等について若干お伺いしておきます。  政府は二十五日に経済対策閣僚会議を開かれまして、急騰する円高に対する対応策を協議されたようでございます。七つの項目を挙げられておりますが、そういう対策を練られた直後に、きのうの市場の円の趨勢を見ておりますと二百二十五円三十銭、史上最高の円高を記録しておるのでございます。きょうは中川理事さんにも、政策委員会が開かれるお忙しい中をおいでいただきましてありがとうございますが、この問題についてもお伺いしたいと思っております。  こういうふうに円高ドル安というものが加速度を増してきておるわけでございますが、これはどこまでいくのか、一体どういうふうになっていくのか、これ以上のドル安というものに一体日本が耐えていけるのかどうなのか、いま皆が心配しておると思われます。そこでまず第一番にお伺いしたいのは、先般決めました当面の経済対策、これは決めたばかりでございますから、すぐこの効果が出てくるというわけにもまいりませんでしょう。たとえば三月十六日に外国人の円建て債券の取得禁止、あるいは同じく三月十八日から自由円預金の預金準備率の引き上げをそれぞれ実施するというような外国人に対する措置もいたしまして、為替管理の強化等もやっておられるようでございますが、いろいろな手だてをしましても、行き着くところこういう状態であって、しかもその先行きは全く見通しがつかない。財政面から、金融面からいろいろな手当てをしていただく、いろいろな苦労をされておりますけれども、こういう状態が続いている。長官として五十三年度の経済見通しもお立てになっておりますが、それと一体どういう連動をしていくのか、われわれ国民としても大変心配をしているわけでございますが、一体この円高ドル安というものはどこまで進んでいくものでございましょうか。そういうお見通しをお持ちになっておりますのでしょうか。また、それに対してさらに具体的な対策をどう立てていくとか、そういうお考えはお持ちでございましょうか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先週の土曜日に当面の経済対策についてという決定をいたしましたが、これは、五十三年度の予算の成立が間近いと考えましたので、それでやれやれということではいけないので、もう直ちに予算を執行しなければならない、できるだけ早く執行いたしますればそれだけ乗数効果も大きいわけでございますから、主として内需面を中心に、さしずめ優先的に何をいつまでにやるかということを先般決定をいたしたわけでございます。この会議は前から予定をいたしておりましたので、したがいまして、これが当面の円高に直接すぐに影響を及ぼす、あるいは直接に関係があるというものとしては私ども、もともと考えておりませんで、五十三年度の経済運営の大きな問題についてあらかじめ決定をいたしたということでございます。  それで、ただいまの円相場でございますが、これがいわゆる実勢であれば、日本としてクリーンフロートをしておる立場からいって、これは相場に任せるのが適当である、日本銀行当局も私どももその点は同じことを考えておるわけでございます。  ただ、ただいまの時期というものがたまたま年度末でございます。そうして過去何週間か円は高い方へ高い方へと動いてまいりました。それらのことをいろいろ総合いたしますと、年度末であるがゆえに企業もあるいは外国為替銀行も、やはり年度末としての幾つかの企業としての対応をしたいという心理があるであろうと思われますし、また他方で、円高に推移してまいりましたから、いわゆるリーズ・アンド・ラグズということもあるであろうと思われますので、かたがた、たまたま外国がイースターでございましたから、しばらく市場が休んでおった。いろいろなことから、この一、二日の市場というものが果たして平均的な相場であったのかどうかということは、必ずしも明らかでないのではないかと私自身が思っております。しかし、だから将来はどう予測するかということになりますと、予見することもできませんし、またすべきでもないであろうと思いますので、要するに実勢であれば、相当の時間をかけて、実勢がずっと反映してくるということであれば、これは介入をするということの対象ではありませんで、恐らく日本銀行としては、乱高下に対しては介入をするという従来からの立場を続けていかれるのではないかと考えております。  七%の成長にとりましてどういう影響を持つかということでございますが、高い低いもさることでございますけれども、何となく常に不安定であるということはやはり消費者にとっても企業家にとっても好ましからざる要素であることは、これは間違いがございません。したがって、どの水準であれ、できるだけそういう意味での不安要因が少なくなるような安定をしてほしいと考えております。ただ、まだ年度はこれから始まるところでございますので、現状から、この七%を変更する必要は私はただいまのところ感じておりません。
  71. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 どうも長官、円高ドル安の原因というものは、ドルをどんどん売っていますね、これが原因でしょうね。したがってドルを売っているのは投機的なものであって、本当の実勢ではないんだ、そういう御判断をお持ちかどうか。要するに外国筋の商社が投機買いをするということでなくて、むしろ国内の輸出業者が投機的にドルを買い込んで、何を意図しているか私は知りませんけれども、そういうことで円高ドル安が深刻化してきているんだ、したがってそういう場合に国として介入をするということはうまくない、したがって実勢に任していくんだ、そういうふうに理解していいのですか。これはひとつ日銀の中川理事さんからもお伺いしたいと思うのでございます。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過去数週間の円高の動きの中には、私は、かなりいわゆる投機筋が手を染めた部分があったのではないかと思っておりますけれども、この二、三日の状況がそうであったのか、あるいはむしろ年度末、先ほどいろいろ申し上げましたような事情から、そういう意味では実勢が中心であったのか、その点は私ちょっと通貨当局でございませんので、私からは明確に申し上げかねる点でございます。
  73. 中川幸次

    中川参考人 日本銀行の介入の方針につきましては、先ほど長官お話しになられましたとおりでございまして、私どもの総裁もしばしば国会で申しておることでございますが、従来から投機的な資金の流入とか、思惑的な要因に基づく相場の乱高下に対しましては断固介入していくという態度でございまして、これは従来もいまも全く変わっておりません。今後ともそういう方針を続けるつもりでございます。  いまお話しの、最近のドル売りが投機的なものではないかという御質問でございますが、最近ここ一週間ばかりの動きといたしましては、どちらかと言えば国内要因と申しますか、輸出業者の輸出の予約に基づくドルの供給の方が多いことは事実でございます。これを投機と見るかどうかでございますけれども、現実に輸出は非常に輸出超過になっておりまして、去年の四月からことしの二月まで大分実績が出たわけでございますが、経常収支ですでに百十七億ドルの黒字を計上している。そういう段階におきましては、やはりドルの方はどうしても供給過剰になってまいるわけであります。そういうふうな基調がありますところに、こういうふうに円高になってまいりますと、どうしても、もっと円高になるんではないかという気分が輸出業者の中に広まりまして、早く予約しておこうということが、この一週間ばかりの動きではないかと思います。そういうことを投機と呼ぶかどうか、やはり自己防衛的な動きも相当あると思いますので、私ども一概にそれを投機とは断じかねると考えております。
  74. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 表現が投機ということでもし誤解を受けるなら、要するに外国筋のドル売りよりも国内商社関係のドル売りというのがかなり多くなってきているんだというふうに理解していいですか。
  75. 中川幸次

    中川参考人 いろいろ過去の動きを見ますと、外国筋の買い入れとか、それから国内の輸出業者のドル売りとかいろいろなことがございまして、時期によって違いがございますが、ごく最近の状況で申し上げますと、国内の輸出業者の輸出予約が非常に大きくなっておることは事実でございます。
  76. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで日銀として、この実勢に任すという方法を当分とっていくのかどうなのかということが一つ問題ですね。二十七日段階でしたか、月曜日は若干の介入をしたようですけれども、さっと引き揚げたように報道されております。ですから、その介入について、日銀としての現段階における考え方というのがあると思いますから、それをひとつ示していただきたいと思います。
  77. 中川幸次

    中川参考人 為替市場への介入につきましては、その性質上、介入の時期とか金額というのは、従来から申し上げることを差し控えさせていただくというふうに取り扱っておりまして、きょうも御勘弁いただきたいと思いますが、先生御懸念のように、最近になって日銀あるいは大蔵省の態度が変わって、さっと引っ込んでしまうというふうなことはございませんで、これまでどおり、相場の乱高下あるいは投機的なものに対しましては、断固として介入していくという方針で臨んでおります。それは今日も全く変わっておりません。
  78. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それはわかりました。いろいろな相場の関係ですから、デリケートなことですからわかります。  いままで介入をしてドルを買った額というのは幾らになりますか。
  79. 中川幸次

    中川参考人 それも申し上げるのを御勘弁さしていただきたいと思います。
  80. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 新聞などで私どもはよく金額を拝見するのでございますけれども、その辺がちょっと、私どもも国会に席を置いておって経済について大変心配をしておる者の一人として、全国会議員が大変いま心配しておるわけですから、そういうところに出せないというのもちょっとおかしな話でございますね、過去の買ったものでございますから、また扱いについてでございますから。しかし、ここで御無理を申し上げてもどうかと思いますので……。  そこで長官、いままでずいぶんあなたも御苦労されてきておられますし、政府としても、国の財政を傾けて公共投資をうんとやって、何とかその面から景気を刺激し、不況をなくそうという努力をしておられるわけですね。  せんだっても何かアメリカの方にミッションを送って、二週間も、ひとつ輸入をさせてくださいと言ってあっちこっち回られたようでございますけれども、けさの新聞なんか見ると、あんなことでというようなむしろ冷たい反応がアメリカから返ってきておる。あれやこれや手を尽くしておるのだがお先真っ暗、長い長いトンネルをいまくぐって、やがて光明が差すというような、そんな状態じゃないでしょうか。これはまだまだ長いと思うのです。ですから、そういう段階で、果たしてこのまま実勢に任せておいていいのかどうなのかということですね。一体国際基準通貨としてのドルが安くなった原因はどこにあるのか。ですから通貨問題にも発展をしていくでございましょう。きょうのニュースを見ますと、原油価格の引き上げにかなり慎重であるサウジアラビアの王様までが、ドルがこれ以上下落したら、もうどうしても原油価格を上げなければならぬ、こういうことまで言い出してきていますね。そうなりますと、これは日本経済に大変大きな影響を与えてくると私は思うのでございます。だから、実勢に任せておくということもこれは一つ方法でございましょう。しかし、その見通しなくしてやった場合に、一体タイミングを逸してしまったらどうなるかという心配が出てまいります。ですから、二十五日の閣僚会議でも、輸出制限というようなことまで爼上に上ったように私たちは聞いております。村山大蔵大臣もそういう考えを強く持っておられるように私たち新聞報道でも見ておるわけですね。ですから何か思い切った対策を立てなければ——七項目の対応を見ましても、公共事業の上期前倒しとか、住宅金融公庫個人向け住宅の金利の引き下げとか、わかり切ったことじゃないですか。何が目玉なんですか。しかしわれわれが一番重視するのは内需の拡大、これでなければいかぬと思うのですね。これに本当に国民が一体になってやれる体制ができるかどうか、そういう施策が果たして出てくるかどうか、私はここに一番注目をしているわけでございます。ですから、恐らく日本の経常収支の黒字が百四十億にもなって、また来年も、政府では六十億と言っておりますけれども、そんなことでとどまるかどうか、これは私はわかりませんけれども、いずれにしても、そういう黒字基調が続く限りはこういうふうな状態が続いていって、二百二十円から二百十円台にあるいは二百円台に入っていく、そういうふうなことも予見できるじゃないですか。そうなったときに一体わが国経済はどうなるのでございましょうか。ひとつそこらのしっかりした見通しをお立てになって、国民にも協力する点は協力してもらうというような、やはりいま政治がイニシアチブをとる一番大事な時期に来ていると思うのでございます。そういう中で、元締めとして長官御苦労されておるわけですからわかりますけれども、私たちもこの際は党派を乗り越え、政治休戦をしても、われわれ一体になって、この不況に向かっている日本経済を立て直すためにやらなければならぬ時期に来ていると私は思うのです。政党は国民のためにあるのでしょう。国民のために政治があるのでしょう。だから政党政派を乗り越えて、いまこの不況克服のために立ち上がる時期に来ていると私は思う。重大なる問題だと思いますよ。その認識を一体全国民が持てるのかどうなのか、そうなりますと、必ずしもそうでない。そこいらにやはり政治の問題点があるように私は思うのですね。だから内需の拡大と言ってみたところで、具体的に一体どうするのか。日本の国民の預貯金は百何十兆ですね、郵便貯金だけでも三十七兆貯金しておる。一体これをどういうふうにして解決していくのですか、長官
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ドルが安くなっている原因はどういうところにあると思うかという基本的なお尋ねでございまして、アメリカの説明するところでは、それは石油の輸入が非常に大きくなっておる。しかもその間に、エネルギー法案はなかなか成立をいたさない、炭鉱ストライキがある、冬に非常に雪が降った、いろいろな説明をアメリカとしてはしておるわけであります。私は、そのことは別に間違っているとは思いませんけれども、そのほかに、アメリカ経済の成長がなかり早いので他国の成長との間のすれ違いがあって云々、したがって、カーター大統領は、こういう条件がある程度除去されればドルはむしろ過小評価をされておるはずだ、そういう説明であると思います。私はそのことが何も間違いだと言っておるわけではございませんけれども、もう一つ、基軸通貨国としての米国のドルの、いわばアメリカにとっては対外価値とでも申しますか、そういうものについての十分な意識が米国の政治の中に存在していないということに関係があるのではないかと思っております。  わが国との関係で申しますと、確かにわが国は相当大きな経常収支の黒を積んでおりますので、そこから円がなお高いという見方が出るのはもっともなことです。しかし、それならばマルクはどうであるかと申しますと、恐らくドイツとアメリカとの貿易関係は最近までドイツ側の赤字であって、多分七七年になりましてドイツ側が黒字になりましたが、その幅というのは十一億マルクとかなんとか、その辺のことだったと思います。つまり、ドルにいたしますと五億ドル程度のことでございます。それでもなおマルクは上がっている。ですから、そうなりますとやはりドルの側にいろいろな問題があるのではないかと思わざるを得ない。ただ、わが国の円の相場で申しますと、円がなぜ上がっておるかといえば、それらの原因のほかに、多くの人が上がると思うから上がっておる、こういう要素はまた否定できないと思います。  それらのことを総合して考えますと、結局基軸通貨であるドルというものの米国の政治の関心というものを高めてもらいませんと、円にしてもマルクにしてもなかなか先高感というものはやまないのではないだろうか。これはアメリカに十分意識していないことを政治の意識として持てというのにはなかなか手間のかかることでございますけれども、私は、やはりそのことを問題にしなければ、国際的な通貨不安というものはなかなか終わらないというふうに考えておるわけでございます。
  82. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで、時間も余りないのですけれども、問題は、アメリカの国内事情についてはそれぞれ見方もあるでございましょう。いずれにいたしましても、円に対するドルの価値というものは下がっていることは間違いないと思います。  それでは、そういう中で、いまちょっと私触れましたけれども、日本政府が五十三年度の経済見通し、成長七%ですね、こういう目標に向かってこれからおやりになるわけですけれども、もちろん、いま今日の段階でお決めになりました実質成長率七%、卸売物価上昇率二・七%、消費者物価上昇率六・八%、この目標をいま長官がお変えになるというようなことを言えない立場にあることは私はよくわかります。しかし、ドイツではすでに三・六%という経済成長率を修正しましたね、これらのドル安の状況から見まして。私は、非常に政治家として勇気があると思いますね。国民に示した目標が少なくともいろいろな経済情勢の中でむずかしいというときには、率直にそれを修正して、そして国民に協力を求める、こういう政治のプロセスというものは私はりっぱだと思いますよ。日本の場合も、余りこだわって七%がいいとか悪いとか言っておりますけれども、これは正直言ってやってみなければわかりませんでしょう。それぞれの立場の方々がそれぞれの専門的な立場で検討して意見を出しておるわけですから、それも一つの貴重な資料でしょうけれども、それをどう扱うかは政府、政治家の決断でございましょう。そういう意味においてはさっき申し述べられましたように、いまの段階宮澤長官が七%を云々ということは考えておらないというのはそのとおりでございましょうが、私たちから見ると、こういう状態がもっと深刻化していった場合、原油価格でもまた上がるというようなことになりましたら、一体どうなるかという心配をするわけです。  そこで、具体的に、さっき愛知委員からも郵便貯金の話が出ました。金利引き下げをずいぶんやりましたね。公定歩合の引き下げを三回やりましたね。預金金利の引き下げもそれに連動してやっておりますよ。今度は郵便貯金までやろうというので、三十日ですかの郵政審議会にかかるようでございますが、一体、庶民大衆から見るともう踏んだりけったりです。特に郵便貯金なんかの場合は零細な貯蓄でございまして、これがまた今度〇・五か〇・四かわかりませんが下げられるということになりますと、もう貯蓄意欲というものをなくしてしまいます。物価は上がる、貯金をしてもどんどん目減りはする、たんすの引き出しに通帳を入れておけば、いつの間にかどろぼうが来まして持っていってしまう、そういう目に遭わされているわけです。だから、一面円高というものが現実にある、輸入もかなりしておる、その円高のメリットというものが国民大衆に還元されるということがもっと顕著に出てこなければならぬと私は思うのです。ところがそういう動きはほとんどない。あったら、これとこれとこれはこういうふうになったということを国民の前にひとつ明らかにしてもらいたいと思います。  私は、そういう意味で具体的に円高のメリットを国民に還元してほしい。そうすることによって国民も経済政策に対して、たとえば郵便貯金金利の三度目の引き下げに対しても、ある程度不満はあってもまあやむを得ぬという気持ちになるでしょう。しかし、現状におきましてはそんななまやさしいことではないのですよ。これは政府を恨んでいますよ。おかみさんたちが一生懸命、病気になったときとか将来どうするとか、学校の子供の教育とか、これも政治が老後の保障なり社会保障についてまだ十分でありませんから、いろいろな意味において心配がありますから、日本は世界で二番目と言われる貯金高を持っている国だと私は思うのであります。そういう意味において、もう少し国民に対して、物価に対する関心が強いときだけに、そのメリットをわかっていただく、そしていま持っておる個人の貯金を消費の面で実際に使っていただけるような方策考えなければうそじゃないですか。国債発行、いずれまたこれは個人にも回るのかもしれませんけれども、それも一つ方法でしょうけれども、そういうことでなくて、たとえば社会保障の面でもう少ししっかりしたものをつくってあげて、そして、おじいちゃんやおばあちゃんが七十歳になって年金を無拠出の場合一万五千円もらっておりますが、これをもう少し上げてもらえれば、おばあちゃんたちはもう末は短いのですから、何も貯金しておくよりも、その貯金をおろして旅行に行く、何か買う、うまいものを食べる、そういうことをやるでしょう。そうすれば結局内需の拡大につながっていくわけです。そういう何か一つでもいいから具体的な政策を示して、国民の協力を得るというようなことがいまの政府には欠けている。たくさんできないでしょうから、私はただ一つそれだけでもやったらいいじゃないかという気がするわけです。  そういういろいろなことを考えまして、何とかひとつこの際、ここまで落ち込んだ経済を国民の力と一緒になって盛り上げていくという体制をつくらなければとつくづく思うのでございます。そういう意味において、何か長官として国民に協力をしていただけるような具体的な問題を取り上げてほしいと私は思うのです。どうでございましょう。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ドイツ人がマルク高のメリットを感じます感じ方とわが国の場合とで一番違いますのは、ドイツの場合でございますと、野菜にしろ果物にしろ肉類にしろ、毎日マーケットへ域内あるいは域外から品物が出てまいります。そういたしますと、マルクが高くなりますともうすぐに外国から輸入したそれらの生鮮食料品、肉等が安くなる。こういう仕組みが、ドイツ人はマルク高というものを必ずしも一方的に見ていない、消費者にとって利益だと考えている、それが一番わが国と違うように存じます。これはしかし、わが国の農業政策に関係することでございますから、簡単にまねていいことでもありませんし、まねられることでもない。そのほかに、近くに外国がございますから、すぐによそへ行って買い物をする点のメリットも、ドイツ人にはわれわれよりよけいあることも事実だと思います。しかし、この点はなかなか簡単にわが国がまねをするわけにはまいらないわけです。したがって、円高のメリットというのはわが国の場合製品輸入が少ないこともあって、まず原材料を通じて徐々に経済にあらわれる。卸売物価が現在前年対比でマイナス一・六とか一・七とかということは、企業活動の沈滞もありますけれども、やはり円が高くなっておることが大きく影響をいたしております。それがしたがって循環的に消費者物価に返ってくる、どうもこういうプロセスをとらざるを得ない。たまたま、たとえば灯油のように、輸入したそのものと消費が比較的すぐにつながるというところへは早く出てまいりますけれども、全体としてはやはりかなり時間がかかっておりますことは事実であります。しかしそれにいたしましても、何がしかの製品も輸入されておることでございますから、この輸入された製品にはもう少しはっきり円高のあれがすぐ出てこなければならないわけでありまして、昨年以来二度ほどこれについては調査をいたしました。それを公表もいたしました。国民にこれを知ってもらうということは消費者が賢くなるということでありますから、公表もいたしましたし、納得いかないものについては追跡もいたしておるわけでございます。やはり製品輸入が比較的割合が小さいということが、円高が国民経済に返る、ことに消費者に還元される度合いあるいは時間の長さということに影響するということはどうしても避けられませんけれども、それにいたしましても、もう少しこの点は私どもが行政上努力をして、そして円高のプラスのサイドというものはもう少しはっきり国民にわかるようなことを努力いたさなければならないと痛感をいたしております。
  84. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 長官のお時間があるようですから、最後に一つだけお伺いしておきたいのですが、一つはスタグフレーション、不況下の物価上昇、これが心配になる。三十四兆円という予算を組みまして、建設省関係でも建設投資が九兆七千億ぐらいですか、これは地方自治体を入れますと大変な額になると思います。したがってすでに建設資材などは大幅に値上がりをしております。これも後でお伺いしますが、長官にお願いをしておきたいのは、物価の上昇を大きな目で監視をしていただきたいということです。いま六・八%という数字をお示しになっておりますけれども、なかなか至難であろうと私は思いますよ。ある程度刺激をしますと物価はどうしても上昇機運になるでしょうから、そういうことを思うと安心ができない。もうすでに三十四兆円予算が動き出すということを想定して買い占め売り惜しみみたいなこともやり出しておるのですね。ですから、契約も四月以降のやつはやらぬ、そういうようなところまで業者が値上がりを見越してやっているわけです。そういうこともありまして、一般的な物価の問題を含めまして大変心配しております。国鉄運賃一九%、いずれまたバス、私鉄、そういった公共料金も上がってくるのではないでしょうか。野菜その他はある程度安定しておりまして、ことしなんかよかったですけれども、気候によってはどうなるかわかりませんし、そういった天候次第の価格もあるわけです。その点も含めまして、少なくとも、大型投資によってまたぞろ物価が上昇したということになりましては元も子もなくなるわけですから、その辺の十分な配慮をしておいていただきたいということでございます。そこをぜひしっかりやっていただきたい、それだけお願いしておきます。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねの点は、私どもも十分注意をしなければならないと思っておることでございます。現在のところ、セメントにいたしましても、丸棒にいたしましても、普通鋼鋼材にいたしましても十分生産の余力がございます。また木材などは自由化されておるということでございますので、品不足というような状態になる心配はないと私は思っておりますけれども、ただ地域的に輸送の問題がございましたり、あるいはまた別の意味で自由競争が十分行われていないというようなことになりますと、御心配のような傾向が出てくることも、まずあるまいと思いますが、しかし考えられることでございますから、その辺は行政でも十分注意をいたしております。物価担当官会議というものがございまして、その中で建設資材について特別な部会を設けて、定期的にチェックをいたしておるわけでございますが、十分注意をいたしてまいりたいと思います。
  86. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大変恐縮ですが、あと一分だけ。  二十五日の七項目の当面の経済政策、これによって現状を乗り切っていくということでございましょう。しかし長官、その効果ですね、いつごろから出てまいりまして、それが波及をしていくかという問題があると思います。総理と佐々木民社党委員長との会談の際に、当然予想される次の対策というものが何か出てくると思いますが、たとえばまたある程度大型の予算というものを考えなければならぬだろう。さっき私はちょっと抜かしましたけれども、たとえば減税なども内需刺激のための一つの材料ではないかと思いますが、そういったような問題を含めまして、いまの七項目の経済政策というものを積極的にやってみて、なおかつ情勢がどう動くかはわかりませんが、次の手を打たなければならぬような気が私はしますが、そういう心配はないとあなたはお考えでございましょうか。それだけ伺って長官に対する質問を終わります。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回の場合は、昭和五十二年度の第二次補正をすでに御承認を得て執行をいたしておりますし、その上に間もなく五十三年度の予算を執行することができますので、私は、いつからというお尋ねでございますが、すでに切れ目なく継続している公共投資の主導がわが国の経済に効果をあらわしつつあると考えております。先般会議をいたしましたのも、この五十三年度の予算を成立とともに早く執行したい、日限を切っていつまでにどれだけというようなことを考えておりますので、すでに従来からの路線上で公共投資がまず相当大きな額で国民経済に出ていって、投資の波及効果をあらわしてくるであろうと私は考えております。  後段のお尋ねでございますけれども、総理大臣がすでに国会において、もちろん必要があれば大胆に、機動的にその事態に対処するということを言っておられることは私どももよく存じております。が、ただいまといたしましては、成立いたしましたならば、この予算をとにかくできるだけ早く周到に執行するというところへ当面の努力を集中してまいりたいと考えておるわけでございます。
  88. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 日銀の中川理事さんにちょっとまたお伺いしたいのですが、公定歩合を三回引き下げましたね。それから預貯金も連動して下がりました。それで、一つ郵便貯金のことですけれども、それらについては日銀の権限内のことではないでしょうけれども、しかしこの経済見通していろんな対策を立てられるわけですから、預貯金の連動引き下げということは当然のことだと皆さんはお考えのことだと思いますね。郵便貯金はさっき私申し上げましたから繰り返しませんが、こういうものまで一緒に引き下げなければならないのかどうなのかという疑問が一つはあるわけでして、その辺に対する理事さんとしての考え方がありましたらひとつ教えていただきたい。  それからもう一つは、いろいろむずかしい立場ですから見通しその他も言いづらいようでございますが、私たちはさっきから申し上げているように、これだけの手だてをしてもなおこういう状態になっておりますが、先行きどうなるかという心配をやっぱりしなければならぬのです。二百二十五円というようなところが出てきているのですから、したがってさらに今後この公定歩合の引き下げというようなことが考えられるのかどうなのか、そういう点についてはどうでしょうか。
  89. 中川幸次

    中川参考人 郵便貯金金利の引き下げの問題でございますが、私どもといたしましても一人三百万円以下の零細といいますか、少額貯蓄が、こういう物価段階のときに金利を引き下げねばならないかという点、大変心を痛めておる問題でございますが、ただ私どもといたしましては、やはり金利政策の効果を上げるためにはどうしても連動していただきたいというふうに考えでおるわけであります。と申しますのは、第一には、やはり郵貯は零細貯蓄ではございますけれども、すでに今日三十何兆の貯金残高になっておりまして、たとえば都市銀行、地方銀行等を合わせました全国銀行個人貯蓄に比べましてかなりのところまで近づいてきておるわけでありまして、非常に大きな金額になっております。全体としてそういう額が、民間金融機関から見ますとそれが高くて、民間金利が低い場合には、さらに郵貯の方にシフトするのではないかという心配がございまして、どうしても郵貯といえども金利体系の一環として全体の金利の動きに連動していただきたい。郵貯法第十二条の後段だと思いますが、そこに金利水準のことを考えるというふうになっておりますのはその趣旨かと思っております。  もう一つ、たとえば都市銀行、地方銀行のほかに民間にも農協あるいは信用金庫、信用組合、こういった零細の中小金融機関がございます。そういう金融機関とは郵便貯金はもろに競争しておる段階でございまして、特にそういうところで金利が、仮に郵貯が下がらなくて下がるということになりますと、そういうところの経営が非常にむずかしくなるという問題もございまして、私どもとしてはあくまでもやはり金利全体がこういうときには下がる必要があると考えます。零細貯蓄といえどもその例外ではないというふうな考え方でございます。  公定歩合の点につきましては、御指摘のとおりすでに昨年来三回、ことしにかけまして四回下げまして、現在の水準は三・五%になっております。三・五%と申しますと、戦前に日歩九厘のときがございましたけれども、もうほぼ過去最低の水準になっておるわけであります。諸外国と比べてみましても、スイスの一%あるいはドイツの三%という例はございますけれども、きわめて低い水準でございます。特に日本の場合におきましては、先生がいま御指摘されましたけれども、公定歩合に連動して預貸金金利が全体として動くというふうな慣行になっております。ところが、外国の場合にはそういう預貸金金利というのはかなり自由化されている面がございまして、公定歩合が下がったからといっても直ちに貸し出しも下がる、預金も下がるということが直ちに追随するということがない場合がございます。したがいまして、そういう点から申しまして、日本の貸出金利水準が今度プライムレートで三・七五%になったわけでございますが、これは世界で最も——スイスははっきり統計がわからないので確言いたしかねますが、ほかの国に比べましては短期金利は日本は最も低い部類でございます。したがいまして、私どもとしては現在の状態ということから考えますと、いまの金利政策は非常に緩和政策と申しますか、相当なレベルまで下がってきておるので、これ以上当面下げるべきでないし、下げるつもりもございません。ただ、金利政策というのはそれじゃこれでおしまいかと言われますと、それは何と申しましても、全体の日本経済がどういうふうなかっこうで動くかという先の問題との関連がございまして、金利政策というのは決心したらその日に動かせるということが最もメリットがあり、その点が財政政策と違う点でございまして、もう永久にこれ以上下がらないということも申し上げかねますが、同時に下げるということも申し上げかねまして、今後の情勢次第であるというふうに考えております。しかしながら今後の情勢次第ではございますが、先ほど来くどくど申し上げておりますように、いまの金利水準はほぼ世界で一番低い金利水準であるというふうなことを念頭に置いて、将来の金融政策考えてまいりたいというふうに思っております。
  90. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 前段の郵便貯金の利子の引き下げは、残念ですけれども中川理事さんと私は見解を異にするわけです。郵貯法十二条のただし書きも私もよく存じておりますが、少なくとも大企業、大資本のために犠牲にさせられているのは零細な郵便貯金だと言っても過言でないと私は思う。これはまあ見解の相違ですから、ひとつ私の意見だけは申し述べておきたいと思います。  それからもう一つ伺いたいのは、全国の信用金庫あるいは信用組合ですね、こういうものがございますが、公定歩合が何回も何回も下がりましても貸出金利というものは余り下がらない、歩積み両建てというものも依然として行われておる。実際庶民の立場に立ちますと不合理ばかりあるわけです。こういうものは大蔵省銀行局、理財局、それぞれわれわれは鞭撻をしまして実態調査もしてもらっているわけですけれども、私の選挙区あたりでも具体的に先般ございまして、私たち、その問題について財務部長ともお会いして状況説明をし、意見も聞きましたけれども、何か感じとして銀行に対して若干弱腰ですね。そういうことを感じました。ですから、日銀としてそういう実態を全国的にお調べになっているかどうか私はよくわかりませんのですけれども、そういう点ももう少し考えてほしいと私は思いますよ。そういうことを全部整理して、そしてさあということであればまたわかるわけでございますけれども、その辺にやはりジグザグがあるということも事実でございますからね。その点、これは日銀の関係じゃないのでございますが、そういう実態は御存じですか。
  91. 中川幸次

    中川参考人 私どもは信用金庫の中で取引しておるところとまで取引してないところがございますが、取引しておる約六十信金の金利の動きを見ますと、まだ一月までの数字しか出ておりませんけれども、去年の八月来ことしの一月までに貸出金利の平均で〇・七五%下がっております。信用金庫全体としては、私どもちょっと数字がつまびらかでございません。これは公定歩合を二月までに下げましたものの三四%に当たるわけでございまして、全国銀行はこの間におきまして一・四%下がっておりまして、公定歩合引き下げ幅に対する追随率は六二%になっております。  こういうふうに信用金庫の金利の下がり方が遅いということは私どもも了承しております。ただ、この点につきましては従来から、信用金庫あるいは相互銀行の場合は、緩和のときにも余り下がらないけれども、引き締めのときにも余り上がらないというビヘービアがございまして、どちらかといえば、金融政策のらち外とまでは申しませんけれども影響の及ぶ範囲が少し程度が弱くなっているという事実がこれまでございます。いまここに、この前のたとえば引き上げのときにおきまして、貸出金利がどれだけ上がったかという統計を持っておりませんので、上がるときどのぐらい、下がるときどのぐらいという比較ができませんけれども、いままでの動きとしては、どちらかといえばそういう傾向にあるということでございます。
  92. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 もし実態の御調査がありましたら、後ほどで結構でございますから、お手数ですが、資料としてちょっとお出しいただけますでしょうか。
  93. 中川幸次

    中川参考人 承知いたしました。特にどの点のですか。
  94. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 貸出金利です。
  95. 中川幸次

    中川参考人 承知しました。
  96. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 きょうはお忙しいところありがとうございました。  次に、建設省に伺います。  公共投資の大型のあおりを食いまして、建設資材がはね上がっておることはさっき私が申し上げましたが、私の選挙区の山梨に県民生活課というのがございますが、そこで三月二十日現在の建設資材の価格調査をいたしました結果が出ております。それを見ますと、合板、鉄筋、鉄骨を中心にして資材の値上がりが目立っております。たとえば具体的に、鉄筋の場合は、この一カ月間で九ミリ丸形が、規格品でございますが、トン当たり五万九千円から六万七千円に、約一二%値上がりをしております。十ミリ形につきましては六万四千円から六万七千五百円、鉄骨の角形がトン当たり九千円から九千二百円、H形が八万五百円から八万千五百円、合板で厚さ二十ミリ一枚平均千百円が千二百円、セメントはバラ積みで現在トン当たり一万一千五百円ぐらいですが、これが五百円から千円の値上がりが予想されております。それから砂利は四月以降一立方メートル当たり二百円が三百円に上昇が予想される。塩ビパイプは四メートル当たり平均千二百円が五%ぐらい上がる、こういうふうな資料が出ておるわけでございます。特に山梨県は砂利の生産県でございますから、県外から業者が大量に買いつけをしておりまして、そういうことで品不足を生じ、値上がりをしているということも事実問題としては出ていると思います。特に五十三年度の公共事業は建築関係がかなり多いので、鉄筋、鉄骨、合板などの資材の値上がりというものは大変痛いわけでございますから、こういう点について建設省としては十分な監視体制をつくって、値上げを抑えていただくようにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  97. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 いま先生指摘のとおりに、公共事業を執行するに際しまして、建設資材の安定的な供給と価格の安定ということが非常に重要な点でございます。先ほど経済企画庁長官からお答えがございましたように、建設資材全般について見ますと、生産能力的にはなお十分余力があるということでございますが、ただ、一つの地域に、そして一時期に需要が集中した場合には一時的な摩擦現象が起こる可能性もある、こういうような状況でございますので、建設省といたしましては、内閣に設けられております公共事業等施行推進本部というものを中心にいたしまして、省内でも公共事業施行対策本部を設置いたしておりますが、そういった地域的な問題に対処するために、地方建設局単位と申しますか地方ブロック単位に各公共事業の発注官庁、これは公団、県、土木その他を含めまして、それに資材の供給を担当しておられます通産局の御協力を得まして、公共事業施行対策地方協議会というものを設置いたしております。その地方協議会の場でそういう需給関係の事前の予測を行いまして、それに基づいて生産、流通に万全を期していただく、こういうことで対策を進めておるところでございます。
  98. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 建設省関係の公共事業投資額というのは九兆七千億くらいでございましたか。
  99. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 具体の数字をちょっと持ち合わせておりませんけれども、十兆という数字は一般会計の数字でございます。
  100. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それは補助事業の分も入ってのことでございますね。
  101. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 私がただいま申し上げましたのは、五十三年度の建設省関係の当初予算九兆七千億と第二次補正を含めました、いわゆる十五カ月というものでとらえますと十兆ということでございますが、これは補助事業を含めた事業費のベースでございます。
  102. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 地方の県単の分はわかりますか。
  103. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 ちょっと数字の持ち合わせがございません。
  104. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 いまあなたが最後にお述べになった公共事業施行対策地方協議会、ここで公団、県、通産局、それぞれの御協力を得て需要がどうなるかということをちゃんと決めてやられるとおっしゃった。私はそこが一番のポイントだと思うのです。従来、どうも建設省の場合には、通産なり経企の方に聞いてみるとかなり資材がある。ところが、いまあなたがおっしゃったように地域的にばらつきがありますからね。ある地方で事業が起こった場合に、資材の調達でいろいろな要素から値上がりが出てくるということは事実ですから、全国的に需要計画を立てて、それを通産、建設、それから経企庁にも入ってもらえばいいじゃないですか、そこでコントロールして、資材の輸送体系というものを万全な配置をしておけばそういうことは起こらぬと私は思うのです。それが従来欠けておったような気がする。もしそうでなかったらお許しください。私はそう思っておりますからね。あなたがいまおっしゃったので非常に感心した。問題はそこですよ。そういうことをやればかなりのセーブになるわけですから、ぜひそこに力点を置いて、全国の需要予測の計画を立てて、資材の円滑な配給ができるように、そしてその面から値上がりを防げるように万全の対策をつくってほしい、これをあなたにお願いしておきます。
  105. 楢崎泰道

    ○楢崎説明員 需要予測を行うことは非常にむずかしい問題でございますけれども、建設省といたしましては、やはりそれが基本であるということで、地域別、四半期別にあらかじめ先まで需要予測をして、それを生産、流通につないでいく、こういうことを一生懸命やりたいと考えております。
  106. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それでは、次に医薬品のことでちょっとお伺いします。  時間が大分なくなってまいりましたから、いずれまた突っ込んでいろいろお伺いしたいのですが、先般医師向けの医薬品の効き目と安全性を見直すために、中央薬事審議会が開かれまして、そこで七つの品目が医薬品としての資格を失って、製造、販売禁止になったということがございます。その七つの品目、製造会社等は時間の関係がありますから私はここで申しませんが、厚生省が薬事審議会の議を経て、この七つの医薬品を許可した日はいつだったのか、それからきょうまでどれだけの薬を生産したのか、そういうことを教えてもらいたいのです。帝国臓器、北陸製薬、吉富製薬、三共、そういうところですね。どうぞお願いします。
  107. 代田久米雄

    ○代田説明員 ただいま先生の御質問の件でございますが、三月二十四日に薬事審議会におきまして、医薬品の再評価の第十四次の答申がございまして、その中で、先ほどのお話にございました七品目の医薬品につきましては医療上の有用性を認める根拠がない、こういう答申でございました。この医薬品の再評価につきましては、すでに御承知と思いますが、いわゆる医薬品の有効性、安全性につきましては、その評価を判定した時代と比べ学問が非常に進歩しておりますので、そういう学問の進歩に合わせて現在の承認内容をマッチさせていきたいという関係から、医薬品の再評価を始めておるわけであります。  先ほどの七品目でございますが、ちょっと申し上げますと、エンカプラ錠というのがございますが、これは四十二年九月に承認になっております。それからインシュリン「オルガノン」ターダムは三十二年十月に承認になっております。それからインシュリン「オルガノン」エキストラターダムは三十二年五月に承認になっております。プロラクチンにつきましては三十六年一月に承認になっております。エストルモン錠は三十八年七月でございます。それからカクテリンH注、二五ミリカクテリンH注の二つにつきましては三十二年四月に承認になっております。  製造につきましては、細かい数字ははっきりはわかりませんけれども、先ほど申し上げました最初の三つ、エンカプラ、インシュリンの二品目については現在全く販売されておりません。インシュリンにつきましては全く販売している実績がないそうでございます。許可を得ただけで全然その後の販売はございません。ですから、そういう承認をとっておったということの事実だけしかございません。  プロラクチンにつきましては、最近の数字しかございませんが、たとえば五十一年の数字は、推定でございますが、年間約七千万ぐらいの販売高でございます。  それからカクテリン二品目につきましては、やはり五十一年の推定の数字でございますが、約二千五百万ぐらいの販売高でございます。  エストルモン錠につきましては、最近数年間全く販売がございません。
  108. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 私の言ったことにちっとも答えてくれないんですよね、委員長。プロラクチンはどうですか。
  109. 代田久米雄

    ○代田説明員 プロラクチンは五十一年、五十二年の数字は大体七千万ぐらいの販売高でございます。
  110. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 そうしますと、薬としての効能がなくなったとか、あるいは許可した基準に合致しないものがあって失格したとか、こういうものではないのですね。要するに当時認定した基準から見るともっと優秀なものができて、これは古くなったというものでございますね。そういうふうに理解していいわけですか。
  111. 代田久米雄

    ○代田説明員 七品目の有用性を否定されました理由につきましては、有効性がデータの上からはっきり確認ができない、いわゆるデータが不十分であるというようなものもございます。承認した当時は、それなりにデータがあって承認されておりますけれども、現在の進んだ学問レベルから考えますと、どうもそのデータでは有効性を認めるまでに達しないのではないか、こういうものもございます。  それから安全性と有効性の総合評価といたしまして、有効性はもちろん認められるけれども、安全性とてんびんにかけて総合評価をした結果、よりすぐれたもの、あるいは有効であっても安全性の面からやめた方がいいのではないかというようなものもございます。  それから配合剤の場合には、これは二つ以上の成分をまぜ合わせているものでございますが、そういう成分をまぜ合わせて使う根拠に乏しいのではないか、個々の単味の成分をそれぞれ必要に応じて使えばいいじゃないか、こういうふうな考え方のものもございますし、あるいは一回投与量を決めた結果、それを上回って入っている、いわゆる含量がオーバーしているというような錠剤、こういうものもございます。  そういうふうなそれぞれの理由によりまして七品目あるということでございます。
  112. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 全然販売もしないものを許可しているというのも正直言っておかしな話ですね。薬事審議会というのは一体どういうのかな。  それで、この安全性の面についてもし疑いがあるとすればこれは重大問題じゃないですか。要するに、審議会が審議をして認めたときは安全性については合格しておった、ところが後で調べてみたら安全性に疑義があるということになると、インチキなものをつくっておったということになるから大変なことだと思うのです。これはどういうことですか。
  113. 代田久米雄

    ○代田説明員 まず、安全性に問題があるからインチキだ、こういう御指摘でございますが、安全性というのは、絶対的に安全性というのはなかなか無理な話でございまして、たとえばこの例で申し上げますと、女性ホルモンの配合剤がございます。女性ホルモンというのは現在では幾つかの成分が使われておりまして、それぞれ特徴ある成分という形で認められておりますが、その中で今回アウトになりましたものは比較的古い時代に開発されたもので、どちらかというと、最近の新しい女性ホルモンに比べてたとえば副作用の発現率が高いというような面からやめた方がよりベターではないか、こういう判断から、もちろん有効性はありますけれども、よりすぐれた製剤に切りかえていく方が望ましいのだという、こういう意味での再評価でございます。
  114. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それではその点は、ちょっと時間がありませんから、もう少し詰めたいのですが次にします。  それからもう一つ、これもお医者さん向けの医薬品でございますが、おまけつき販売というのがございましたね。事もあろうに武田製薬というトップメーカーがそういうおまけつき販売をやった。この事実がわかりまして厚生省としては薬価基準から落とした、こういう事件がございますね。これの概略を簡単に最初に説明してください。
  115. 古賀章介

    ○古賀説明員 いま先生の御質問でございますが、ことしの二月十三日に匿名の投書が厚生省あてに送られてきたわけでございます。この投書の中身は、武田薬品工業株式会社が卸に添付を指示しているということが記されておりまして、その指令文書、指示書とも言うべきものの写しが同封されておったのでございます。この投書の情報に基づきまして、厚生省は直ちに調査を開始したわけでございます。その結果、本件は、武田薬品工業の大阪営業所の金沢出張所の富山県担当チームがことし一月九日に販売会議を開きまして、センセファリンカプセル五百ミリグラムの販売を促進するために指示書を作成した、こういうことが判明したのでございます。  その指示書の中で、センセファリンカプセル五百ミリグラム五本——一本はセンセファリンカプセル百カプセル入りでございますが、これを一箱で一本と言っておりますが、五本以上では一本、十本以上では二本のおまけをつける、すなわち二割の添付をつけるということが記載されておったのでございます。この指示書に従いまして、富山市内の医薬品の卸売業者が同市内の病院にことしの一月末、すなわちこの指示文書が卸に参りましたその直後でございますけれども、五箱の販売に対しまして一箱を添付したという事実が確認されたのでございます。  なお医療機関への納入価格は一箱一万二千円、すなわち一カプセル百二十円でございますが、五箱に一箱の添付をいたしますと一箱が一万円、すなわち一カプセル百円になるということでございます。  そこで、このようなセンセファリンカプセル五百ミリグラムの添付の事実が明らかになりましたので、去る三月十五日の告示で、四月一日薬価基準から削除するという処分を行ったものでございます。
  116. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 実際あきれますね。そこで、どうでしょうか、これはただ単に金沢地域だけでなくて、全国的にこういうふうな売り込みをやっておったのではないでしょうか。聞くところによりますと、この種の銘柄をつくっている会社は二十七社あるそうでございまして、大体二千億くらいの年商があるそうでございますが、業界では最も販売競争が激しい品目となっておる、そういうことでこのような手段に出たのではないでしょうか。  そこで、薬九層倍と昔から言いますが、薬は本当にもうけるものだというふうに国民は考える。こんなことをするならなぜもっと単価を安くできないのか。これは公取の方がいらしていたら一遍調べてもらいたいのです。これは廉売もはなはだしいと思うのです。ですから、原価が幾らか、卸が幾らなのか、だからそれが幾らで売れるのか、そういう点の価格の推移はわかりますか。
  117. 古賀章介

    ○古賀説明員 わが国におきます薬価基準、すなわち先生御承知のように、薬価基準と申しますのは社会保険で使います薬の範囲と種類と価格を決めたものでございますけれども、この薬価基準の価格の決め方は市場価格主義をとっておるわけでございます。市場価格というものを薬価調査という調査によりまして正確に把握をいたしまして、それで一定の算定方式、すなわち中央社会保険医療協議会でお決めになりました九〇%バルクライン方式を用いまして算定をした、その価格をもって薬価基準に登載をするということをやっておりますので、原価主義につきましてもいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、わが国は現時点におきましては市場価格主義をとっておる、こういうことでございます。
  118. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 だから問題は、卸売価格が幾ら、これはわかるでしょう。それから小売価格が幾らなのか。さっき小売の方はちょっとわかったが……。
  119. 古賀章介

    ○古賀説明員 いま先生のおっしゃいましたのはセンセファリン五百ミリグラムでございますか。——これは先ほど申し上げましたようにメーカーから医療機関には……(鈴木(強)委員「これは一カプセル四百三十五円五十銭だ」と呼ぶ)薬価基準の収載価格は一カプセル四百三十五円五十銭でございます。それが百二十円で売られていた。それに添付をつけますと百円であるということでございます。それは卸が医療機関に販売した価格でございます。メーカーが卸にどのくらいで売ったかということにつきましては、これは今回の事件につきましてははっきりした確証はございませんけれども、しかしながら、一般の例は、後からメーカーが卸に対してリベートを払うというのが一般のシステムでございます。
  120. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 いずれにしても、回りくどいことはいいですが、完全な廉売ですね。ですから、これは公取の方で原価が幾らか一遍調べてみてくださいませんか。
  121. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  私どもとして原価を調べる場合は、何か独禁法上違反の容疑がないと、単に原価を出せというわけにはいかないかと思います。  それからもう一つ申し上げますと、こういう薬のような商品の場合、一つは薬会社の決算表から見ますと、いわゆる製造原価と売り上げ原価は、製造原価は売り上げ原価の半分くらいになっているわけですね、これは全部の話ですけれども、全体の決算表から見ますと。そうなりますと、原価という場合、何を原価というのか、かなりむずかしい問題が起きてくるかと思いますし、それから医薬品のような、恐らくそう数多くない機械でいろいろな種類のものをつくる、一つの原料からいろいろな種類の試作品をつくるということになりますと、単品の原価をはじくというのは技術的にもかなりむずかしいものではないかと思います。
  122. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 現実に完全にこういう廉売をしているわけです。したがって、こういうやり方についてはやはり公取として調査する権限があると私は思っている。だから、そういう権限を発動して原価を調べてくださいよ。
  123. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えします。  私ども考えとしましては、価格は需給関係で決まるのが一番正しい方向だと思っております。もしその商品に対して需要が非常に減ったとか、あるいは非常に需要以上の生産をした場合には、これは価格は下がるのがあたりまえでありまして、場合によったら原価を割ってもやむを得ないかというふうに考えております。
  124. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 そうすると、要するに自由競争ですからその点はわかりますけれども、しかし、原価を割って安く売るようなものがあったとすれば、これはやはり問題じゃないですか。それもあなた、構わぬと言うのですか。
  125. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 私どもの問題としますのは、本来は需給関係で決まるべき価格が人為的に、たとえば競争者を排除するためとか、そういうために人為的な低い価格がつけられるというような場合には独禁法上の問題として調べることもできると思いますけれども、これは調べたわけではございませんので、いまのケースは恐らく需給関係その他から価格が下がったのではないかというふうに考えております。
  126. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それでは時間がないですから、経過はわかってくれましたから、一度公取としても厚生省と連絡をとって実態的に調べてみてください、次にまたお伺いしますから。  きょうはエネルギー庁の皆さん、本当に済みませんでした。時間がこういうわけでなくなりましてお待たせしてしまったのですが、申しわけありませんが次にまたせていただきますから、お許しいただきたいと思います。  では、これで終わります。ありがとうございました。
  127. 武部文

    武部委員長代理 午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  128. 武部文

    武部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  物価問題等に関する件について質疑を続行いたします。草川昭三君。
  129. 草川昭三

    草川委員 お許しを得まして、きょうは医薬品の問題を中心に御質問をさしていただきたいと思うわけであります。  医療保険制度の抜本的な見直しが進んでいる中で、薬価基準制度全体が大きな変革を迫られていると思うわけです。それだけに、昨年の十一月に採用されまして、ことしの二月一日より実施をされております銘柄別の収載制度が採用されたというのは、私は、そういう意味では一つの契機ではなかろうかと思うわけです。従来の統一限定例記方式では、市場価格と薬価との乖離というもの、差というものが非常にひどかったわけでございますが、優良な医薬品が安定的に供給されることを目的にした銘柄別というものが、二月からわずかの日にちではございますけれども、一体どういう状況になっておるのか。まず第一に、薬価基準と市場価格との差は、従来に比べて縮まっておると見られるかどうか、お伺いをしたいと思うわけであります。
  130. 三浦大助

    ○三浦説明員 今回の薬価改正から銘柄別になりまして、その結果私どもは、銘柄別にいたしましたことによって、従来よりも引き下がったというふうに認識しております。
  131. 草川昭三

    草川委員 従来より引き下がったということについての具体的な事例を挙げて後ほど少し意見を申し上げたいと思うのですが、続いて第二番目に、現在の医薬品市場の流通機構というものは、私は、従来の統一限定例記方式時代はかなり混乱をしておったと思うのです。この銘柄別収載によって、医薬品市場の流通機構も安定するということが当初いろいろ関係者から言われておったわけですが、流通機構の混乱というものはなくなっておるのかどうなのか、第二番目の質問をしたいと思います。
  132. 古賀章介

    ○古賀説明員 いま先生申されましたように、銘柄別収載方式がわが国で最初に採用されましたのが二月の一日でございます。従来の統一限定方式でございますと、同一規格、同一成分でありますれば価格は一本でございましたものが、今度銘柄ごとに薬価が決まるということになったわけでございます。したがいまして、医療機関がどのような医薬品の選択をするであろうか、それから、流通、生産の状況がどのように変わるであろうかということを私どもは注意深く注目しておるところでございますけれども、やはり二月一日に実施されましてからまだ日も浅うございますので、これからなお十分注目しながら対応してまいりたい、このように考えております。
  133. 草川昭三

    草川委員 いま経済課長の古賀さんの方から、二月一日から実施をされたので注意深く見守っておるというお話がございましたが、当初かなり銘柄別になって、流通機構というものの混乱というのは落ちつくだろうという見通しがあったわけでございますが、これも後ほど申し上げますように、かえって非常に混乱というのでしょうか、ひどさが広まるのではないだろうか、こんなようなことがあるわけでございますので、きょうはその点をひとつ中心に問題を提起してみたいと思うわけでございます。  その前にもう一つ質問をさしていただきたいわけでございますが、今回の薬価改定によって薬剤ベースは五・八%引き下がったわけであります。これは皆さんの方がお詳しいわけでございますが、この五・八%の中でいわゆる抗生物質の薬の下げ幅というものがどの程度下がっておるのでしょうか、まずその下げ幅、全体の平均的な薬価基準からどの程度抗生物質が下がったのか、過去の統一限定の時代から。そして同時に、五・八%の中での寄与率というものは何%ぐらい改定率全体で抗生物質が下がっておるのか、下げたウエートというのですか、要素があるのか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  134. 三浦大助

    ○三浦説明員 今回全体として五・八%引き下げられましたけれども、抗生物質は約二七%引き下げられております。
  135. 草川昭三

    草川委員 この二七%抗生物質が下がったというのは、五・八%全体ではもっと高い、たとえば抗生物質の販売量全体をウエートで掛けますと、半数近くの寄与率になるのじゃないですか。
  136. 三浦大助

    ○三浦説明員 これは計算してみませんとその寄与率はわかりませんので、後ほど計算いたします。
  137. 草川昭三

    草川委員 じゃ後で結構です。私ども一般論的には、抗生物質掛ける販売量、いわゆる量的に、五・八%の引き下げ率に対しては五〇%ぐらい抗生物質の下げ幅があるのではないだろうか。あるいは薬価基準については、先ほどおっしゃられたように、二七%と言われたのは大体そういうことだというふうに私どもも聞いておりますが、二七%の抗生物質全体では、今度の薬価の引き下げでは半分ぐらいのとにかくウエートを占めておるんだというわけであります。それだけ実は抗生物質というものが薬価の中に占める位置、影響力というのはいずれにしても強いということを私はいま三つの質問の中で申し上げたかったわけであります。  そこで、今度は調査方法というのがあるわけでございますが、御存じのとおり、薬価の調査は定例的に行われるわけですが、問屋だとかあるいは医療機関等でみずからが書き込む大調査、自計調査というものと、もう一つは、厚生省が後で追跡調査をするような経時変動調査というのがあるわけであります。今回は、五・八%の薬価を引き下げる位置づけというんでしょうか、問屋さんなり医療機関が書き込む大調査方式のウエートが大きいのか、これは約五十万件、四千七十六店の方々が協力してくれたわけですが、もう一つ、厚生省の他計調査、みずから厚生省がやった調査、五・八%のうちどの程度の振り分けになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  138. 三浦大助

    ○三浦説明員 先生のおっしゃいます自計調査というので二・八%下がっておりますが、その後行いました経時変動調査を加えまして五・八%引き下がったということでございます。
  139. 草川昭三

    草川委員 いまおっしゃられたように、いわゆる本来の大調査方式だけだと二・八%しか下がらない。そこで厚生省の方が独自に調査をする経時変動調査というものを加えて五・八%になったわけですから、私は、薬価の調べ方全体については、独自の——従来の大調査方式というものは現在の市場価格というものを適切に表示し得ない、あらわすことができないという点をここでまた一つ指摘をしなければいけないのではないだろうか。結局、厚生省独自のヒヤリングのウエートというのはだんだん深まりつつあるのではないだろうか。だったとするならば、抜本的に、薬価問題については現在やられているところの九〇%バルクというこの引き方自身に問題がある、これは常に私が主張しておることでございますので、きょうはそのことはさておきまして、意見だけここで申し上げておきたいと思うわけです。  そこでもう一つ、今度は、三月一日に新しく薬が収載になりました。これは新製品ですから結構ですが、四月一日に、何か聞くところによりますと、千品目以上の同一規格分、いままでと同じ規格ですね、あるいは同一組成分、いままでと同じ薬について新しい薬が収載をされるのではないだろうか、いわゆるぞろぞろメーカーの新しい収載が追加をされるのではないかと言われておりますが、そのように承って結構でございますか。
  140. 三浦大助

    ○三浦説明員 お答えの前に、先ほどちょっと数字を間違えまして、二・八%と申し上げましたが、二・六%でございます。おわびいたします。  それから四月一日に、先生おっしゃった、ぞろぞろ薬品と言っていますが、約千六百品目収載の予定でいま作業を進めております。
  141. 草川昭三

    草川委員 その中に、非常に問題になってまいりますいわゆるセファレキシン系もやはり入るわけですか。入るとするならば、何品目ぐらい入るわけですか。
  142. 三浦大助

    ○三浦説明員 セファレキシンも入っておりますが、何品目かは、ちょっといまここに数字がございませんので、後ほど調べて御報告いたします。
  143. 草川昭三

    草川委員 いわゆるいまから申し上げますのが、セファレキシン系抗生物質の代表的な問題としていつも例に出るわけでございますが、現在でも、セファレキシン系の薬価収載といいますものは、御存じのとおりAグループが三社、Bグループも三社、Cグループということになりますとずっとたくさんございまして、非常にたくさんのものがあるわけであります。こんなようなことの中に、さらにぞろぞろという製品が収載をされることになりますと、かえって最初に私が質問を申し上げましたように市場の流通機構は混乱するのではないか、あるいは、薬価基準と市場価格の差は縮まると課長先ほどおっしゃいましたけれども、かえって差がひどくなるのではないだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  144. 古賀章介

    ○古賀説明員 いわゆるぞろぞろ品につきましては、競争をさらに激化させるのではないかという御指摘もございます。しかしながら、これはやはり薬事法に基づきまして承認をされたものでございまして、これが薬価基準に収載されることによって、やはり価格を引き下げていくという作用をもたらす一面もあるわけでございます。したがいまして、今度さらにセファレキシンが加わることによりまして市場価格が下がっていく、それが次回の薬価調査によって正確に把握されますならば、やはり薬価基準における薬価というものが引き下がっていく、こういうことに相なろうかと思います。
  145. 草川昭三

    草川委員 そうすると、ぞろぞろを約千六百品目追加することによって価格はさらに下がるであろうということを厚生省は認めてみえるわけですか。
  146. 古賀章介

    ○古賀説明員 一般的にそういう趨勢をたどるだろうと思います。しかしながら、次回の薬価調査にどのような実勢価格が反映されてくるか、これはやはり次回の薬価調査をやった上で判断いたしたい、このように思います。一般的な趨勢としては、先生のおっしゃるとおりでございます。
  147. 草川昭三

    草川委員 じゃ、次回の薬価調査は一体いまいつごろ予定されておみえになるわけですか。
  148. 古賀章介

    ○古賀説明員 先ほど先生指摘のように、三月一日に新薬が収載され、近く四月一日にぞろぞろ品が収載される予定でございます。これらの医薬品が薬価基準に収載されまして市場に流通されますと、やはり三カ月以上たたないと市場価格というものは形成されないというのが一般の情勢でございますので、やはり少なくとも三カ月以上たった後に薬価調査を実施するということに相なろうかと思います。少なくとも五十三年中に次回の薬価調査を行いたい、このように考えております。
  149. 草川昭三

    草川委員 そうすると、夏過ぎにやるということになりますか、大体は。
  150. 古賀章介

    ○古賀説明員 これは薬価調査時点の選び方でございますけれども、季節的な変動の激しい時期はやはり避けるべきだろうと思うわけでございます。そこで、通常四月ということになっておったわけでございますが、ことしは、先ほど来申し上げておりますように新薬、ぞろの収載等の事情がございましたので、四月の実施というのは無理になりました。それから先ほど申し上げましたような期間を置かなければいけないというような事情もございます。したがいまして、次回の薬価調査を具体的にいつにするかということにつきましては、現在私どもで詰めているところでございます。  なお、これは後ほど先生の方から御質問があろうかと思いますけれども、五十三年度から新たに薬価調査の方式が若干変わると申しますか、特別調査というものを実施する予定でございますので、それらもあわせながら、次回の薬価調査の時期を決めたい、このように考えております。
  151. 草川昭三

    草川委員 次回の調査からバルクの引き方をある程度変えるとかいろいろなことを考えておみえになると思うのですけれども、とにかく、変わるということがこれで明らかになったわけですね。  では続いてもう一回、セファレキシンのあり方についてさかのぼりますけれども、いわゆるセファレキシン系はA、B、Cという三つのランクにくくられたわけです、今度の収載で。ところが、これは二百五十ミリグラムのカプセルはそのようになったわけでございますが、五百ミリグラムのカプセルというのは一本にくくられて四百三十五円五十銭ということになっております。片一方の二百五十ミリはたくさんのA、B、Cというようなランクにくくる。BだとかCはたくさんのメーカーがあるわけですけれども、五百ミリだけはどうして一律になったのか。これはバルクが結局引けなかったから一律になったのか。簡単で結構でございますからお答え願いたいと思います。
  152. 三浦大助

    ○三浦説明員 二つか三つのバルクが引けますと、バルクの引けなかった品目はその一番下の安い品目に合わせるということで線を切っておるわけですが、五百ミリグラムはちょっと手元に資料がございませんのでわかりませんが、恐らく一、二品目しかバルクが引けなかったんじゃないだろうかというふうに思っております。
  153. 草川昭三

    草川委員 ですから私は、後でいろいろな具体的な例が出るのですが、五百ミリグラムというのはたくさんのメーカー、現実には五社収載になっておるわけですし、本気で調査をしようと思えば幾らでもできるわけですよね。問題は、B、Cにランクされた銘柄は五百の方がもうかるといって、ある程度言葉は悪いのですけれども、濃厚診療を誘発しないのかという問題があるわけであります。御存じのとおり、Aランクは二百二十円五十銭、Bランクは百七十円、Cランクは百二十円です。これは二百五十ミリですから、倍にしたって二百四十円、三百四十円あるいは四百四十一円、こういうことになるわけです。それよりも五百ミリはワンカプセルで五百七十三円から今度四百三十五円五十銭になっておるわけでございますけれども、こういうような位置づけになっておるわけですから、私は非常にこの五百ミリが一くくりになっておるということについてはおかしいと思うのです。同時にまた、五百ミリグラムの許可をとっていなかったメーカーは決定的な打撃を受けるのではないだろうか。非常にこの薬価の銘柄別の収載に当たって問題があるような気がしてなりません。その点について答えてください。
  154. 三浦大助

    ○三浦説明員 今回初めて銘柄別収載に踏み切ったわけでございますけれども先生おっしゃいますようにいろいろ問題点は出てきておりますので、これはなるべく次回の薬価調査の際にはそういう問題点を検討いたしまして、適正な薬価が反映しますようにやっていきたいというふうに考えております。
  155. 草川昭三

    草川委員 私ども文句を言うつもりはございませんけれども、きょうお見えになっています経済課長なり医療課長は実際の当面する課長さんですから、実際の責任者ですから、もっと歯切れのいい御答弁を願いたいと私は思うのです。実際私は全く薬については素人ですから、現場で働いておる一労働者にすぎぬ男でございますけれども、薬というものに少し関心を持ちますと、なぜこういうような調査が行われているのか、われわれに非常に納得しづらい問題が多いわけです。ただいまのような五百ミリの問題についても非常にこれが問題になってくるわけであります。  そこで、時間がどんどんたっていきますから簡単にいきますが、国家検定というものを通らないと薬は収載をされないことは当然なことです。品質の格差というものは国家検定の場合にわかるのでしょうか。薬というものに、たとえばA社の薬は非常に品質がいい、C社というのは悪い、こういうような結論が国家検定で出るでしょうか。あるいはもっとわかりやすいことを言うならば、国家検定は品質に関係なしに、一定の条件さえそろえばどんどん認定をされる、こういうものでしょうか。
  156. 古賀章介

    ○古賀説明員 医薬品は薬事法の規定に基づきまして、成分、分量、用法、用量、効能、効果などを審査しまして、安全性、有効性などが必要な条件を満たしておれば製造承認が与えられるわけでございます。これは先生御承知のように、昭和四十六年七月からさらに生物学的有用性をチェックするという方法も講じておるところでございます。したがいまして、二つの医薬品の間で薬効上大きな差を生ずることはほとんどないと考えておるわけでございます。  しかしながら、医薬品は生命関連商品という特質がございますので、常によりすぐれた製品を医療に供給するということが強く要請されておりますために、同一成分同一規格の医薬品でありましても、効果が発現するまでの時間とか、それから副作用の発現などにつきまして若干の差を生ずるということがあり得るわけでございます。有効成分以外の成分の改良など、これは審査基準に直接影響しない分野ではございますけれども、製剤技術の改良などの努力が行われておるということでございます。これに生産とか流通段階での品質管理の違いも加わりまして、銘柄ごとの微妙な品質上の差を生ずるということがあり得るわけでございます。
  157. 草川昭三

    草川委員 差が若干あることはあっていいと思うのですけれども、市場価格でこんなにひどい差があるのはおかしいじゃないかということを私は言いたいわけであります。たとえば上下で四五・六%の差がある、ひどいのになると二倍近い差がある、こういう問題であります。だから私はどう考えても国家検定という国の検定を通ったら、もっと近い、いかに差があったにしても市場価格は上下の幅が狭いのが普通じゃないか、差があり過ぎるじゃないか、こう申し上げたいわけであります。  そこで、国立病院だとか自治体病院で一つの例があると思うのですが、A、B、Cというようなランクがあったときに、もし患者から、私は一部負担をしなければいかぬから安い薬を使ってくれというような要求があった場合に、国立病院はどうするのか、あるいは自治体病院でもし理事者側から、議会側から、同じ成分があってわずかの差だったら安い方がいいじゃないか。ところがそこのお医者さんが、いや私の方はAランクの高い薬を使いたいと言った場合どういうような指導をされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  158. 三浦大助

    ○三浦説明員 実際に国立病院あるいは自治体病院等でどういう使い方をしているか、私どもちょっと調べてみないとわかりません。
  159. 草川昭三

    草川委員 皆さん方は厚生省の医療担当の課長さんですよね。ですから銘柄別収載になったら、当然こんなことは素人で考えたって予想されることですよ。A、B、Cとこう分かれていくんだ。しかも二百ミリ、百二十五ミリ、五百ミリという薬があって、それぞれ同じ単位だけれども、二倍にしたら二倍にした値段が違う。二倍じゃない。こういうような場合に一体何を使うのか。当然利用者にしてみれば一部負担だから、同じ内容だったら安くしてくれという声が出ますよ。そのときにお医者さんが、いや、うちはそんなこと関係ないんだ、私はこれがいいと思う。高いじゃないか。高いか安いかという問題が出るわけです。これは物価局長の方からもお聞かせ願いたいのですが、これほど明らかな食い違いの数字を一般市民が、国民が問いただしても、いま厚生省は余りはっきりしないのです。こういうことについて、物価の面から考えて一体どうお考えになられますか。
  160. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 現在の消費者の家計の中で医療費は非常にウエートも高くなっておりますし、その中でやはり薬の値段のウエートも上がってきているわけでございます。そういう意味で薬価基準が下がっていくということは、物価の面から非常に好ましい影響を持つものと思っております。現在の薬価基準は、市場価格を調査いたしまして、それを薬価基準に反映させるという形で決められておりますけれども、ただいまお話がありましたように、そのやり方についていろいろ改善されてきておりますし、また格差も縮まってきているというふうにも伺っているわけでございますが、私ども物価という観点から、これからいまのような需給で決まっている価格というものが的確に調べられて、そしてそれが薬価基準に反映するということを期待しているわけでございます。
  161. 草川昭三

    草川委員 物価局長のそういう御答弁は答弁になっていません。厚生省が主管のことでございますから、私は一遍また別の機会にもやりますけれども、そういう答弁は話にならぬですよ。実際、現実にはそういう声がこれからどんどん出てくるわけですから、少なくともそれは医療上かくあるべきだというふうにするのか、経済的な問題にこたえなければいかぬのか、はっきりしておいてもらいたいと思うのです。  時間がございませんから次に移りますが、問題は、いま私が取り上げましたこの抗生物質の問題をめぐりまして、御存じのとおり添付販売という問題がいま出ておるわけでございます。これはすでに大騒ぎになって新聞に出ておりますし、厚生省も処分をした事件でございますが、いわゆるセンセファリンの五百ミリグラムのカプセルを厚生省は四月一日より薬価基準から武田の場合削除をいたしました。武田は業界のリーダー格でございますし、当時の会長でもあったわけで、医薬品の不正販売は過剰投与の原因にもなりかねないという社会的な責任が非常に大きい事件だと思うのです。  そこで、これは武田だけなのか、ほかの業界もこういうことをやっていないのかいるのか、あるいは証拠がないからこの一社だけの処分になったのか、まずお聞かせ願いたいと思うのです。
  162. 古賀章介

    ○古賀説明員 添付販売につきましては世上いろいろうわさがあることは事実でございます。しかしながら、なかなかその確証をつかむことがむずかしいために処分に結びつかないという事情がございます。しかしながら、添付販売の禁止というものは業界周知の事実でございますし、それを行うことは業界の自己否定につながるということでもございますので、従来からもその業界に強く自覚を促してきておりましたけれども、今後ともそれを続けますが、添付販売の確証が得られた場合には、厳しく処分をするという方針で臨んでまいりたいと思います。
  163. 草川昭三

    草川委員 削除は五百ミリグラムだけですか、二百五十ミリは削除をしなかったのですか、お聞かせ願いたいと思います。
  164. 三浦大助

    ○三浦説明員 実際に添付の実例がございました五百ミリグラムだけを削除いたしました。
  165. 草川昭三

    草川委員 私も武田の添付の内容がしかじかかくかくだという資料をここに持っておるわけでございますけれども、これは皆さんももう御存じのとおり、二百五十ミリを売る場合でも、普通なら百七十円なんだけれどもこれを五十円にまけますよ、そうすると六個入れますと七百二十円もうかりますよと。一日の話ですけれども。だけども五十円で悪ければまたさらに三十円にまけてもいいですよということで、八百四十円になるというような具体的な数字がこの資料の中には書き込まれておるじゃないですか。これは皆さんの方へ来た資料だと思います。特にここはまたおかしいのですけれども、この文書を読みますと、セールス各自五百ミリの方のセファレキシンを売れという指示なんですが、本当はセールスという言葉をメーカーは使わぬと言うのです。メーカーならプロパーという言葉を使うのだ、ほかの会社だとデテールマンとかという言葉で、セールスという言葉を使うのはこれは卸の人が書いたのじゃないかという説もあるのですけれども、その内容がいいとか悪いとかは別といたしまして、センセファリンの五百ミリだけではなくて、二百五十ミリも当然この資料の中には一つの具体的な数字を挙げて書いてあるわけですから、確かに添付ではないかもわからぬけれども、具体的にこんなに差があるということを言っておるのですから、こちらの方の指導はどうされたのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  166. 古賀章介

    ○古賀説明員 先生指摘のように、確かに指示文書の中にはそういうことがうたわれております。したがいまして、次回の薬価調査におきましてこれが十分把握できるものと考えております。
  167. 草川昭三

    草川委員 次回の調査でこれが反映するというお話でございましたけれども、実はこの書類なりデータなんかをいろいろとやってまいりますと、これはことしの一月の販売計画にはなっておるわけでございますけれども、この武田のセンセファリンの前回のいわゆる自計調査あるいは厚生省の経時変動調査で、この薬はどういう形でバルクが引かれておったのか、あるいはまた経時変動調査のこのリストに挙がっておるのか、幾らの金額になっておったのか、もしいますぐ答えられるなら答えてください。
  168. 古賀章介

    ○古賀説明員 現在、資料を持ち合わせておりません。  それともう一つは、この薬価調査それ自体は、先生先ほど申されましたようにこれは自計調査でございます。これは他に公表しないということを前提にして調査の協力を求めておるという事情がございます。  経時変動調査につきましては、これは現在資料を持ち合わせておらないということでございます。
  169. 草川昭三

    草川委員 発表しないというのですが、いま資料を持っておみえになりません厚生省の経時変動調査の方も、これは発表できないのですか。
  170. 古賀章介

    ○古賀説明員 これは本調査と一体と申しますか、本調査の持つ欠点を補正するための調査でございますので、やはりこれも御容赦いただきたいと存じます。
  171. 草川昭三

    草川委員 厚生省が今回出した処分というのはぼくは厳しい処分だと思うのです。非常に厳しい処分をしたわけですが、なぜこういう処分をせざるを得なかったのか。添付をしたからだ。添付をして、しかも同時に、その資料を見ると、五十円にします、三十円にしますというようなかなり激しい資料が出ておる。だったら、そのときの調査はどうなのかということをわれわれが調べてほしいと言ったら、答えるのが当然だと私は思うのですよ。答えを出してもらわなければ困ると思うのです。それでも厚生省はその資料を拒むのですか。
  172. 古賀章介

    ○古賀説明員 いままで経時変動調査も含めまして一切公表していない、薬価算定のためにのみ使うということでまいったわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  173. 草川昭三

    草川委員 そういう答弁で、出さないということならここで押し問答しても仕方がないので、また私ども別の機会にこの問題については取り上げていきたいと思うのですが、一体この五百ミリは永久に薬価収載から外すのか、あるいはまたいつ解除をするのか。もし撤回をするとするならば、どこに位置づけをするのか。これは五百ミリが一本ですから一本しかないというのか、あるいはこれだけ明らかになったら、別にA、B、Cというようなものを引き直して、もう一回Bランクにするのか、Cランクにするのか、そういう考え方なのか、お聞かせ願いたいと思います。
  174. 三浦大助

    ○三浦説明員 今回の処分に当たりましては、非常に薬に対する世論の厳しいときでもございますし、ともかく外そうということで削除をしたわけでございます。ただ、前回ルセルのときに三カ月という一つの事例はございました。今回、ある時期にはまた申請が出てきて恐らく復活ということになるということを私ども予想はしておりますけれども、しかしそのときにどういう位置づけをするかということは、これからの検討課題になっておるわけでございます。
  175. 草川昭三

    草川委員 ルセルの場合は三カ月だったけれども、今度の場合は、まだ未定だけれども、かなり世論が厳しいということはわかっておる、こういう答弁です。だけれども、いま言ったように五百ミリグラムが一本にくくられておるわけですから、素直に五百ミリのところに復帰をするということに厚生省が踏み切るかどうか、これは私、非常に重要な問題だと思っておるのです。ただいまのところを、その撤回をするときの位置づけについては、担当の課長ですからもう少し踏み込んだ御意見を賜りたいと思うのです。
  176. 三浦大助

    ○三浦説明員 今回処分をしたときのその値段が百二十円という値段でございまして、実際この薬価は四百三十五円五十銭という薬価でございますが、薬価調査では九〇%バルクで引いておりますので局地的にはそういう定価もあろうかと思いますけれども、実際にかなりな安い値段で売っておるということも考慮いたしますと、先に行きましてその復活という話が出たときには、ある程度これは検討しなければいかぬのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  177. 草川昭三

    草川委員 ある程度考えなければいかぬというのは、一くくりではないというふうに私どもは受けとめます。  そこで、次に問題を移します。  公取の方に御質問させていただくわけですが、薬の乱売の実態がこのように明らかになったわけでございますが、いま五百ミリの四百三十五円五十銭が百二十円だと言われておりますが、添付を入れますと百円になるわけです。一般の国民の感情から言えば安くなることは問題ないけれども、薬価というものが決まっていて、その高いところで保険組合が、支払い側がお金を払うわけでありますから、非常に差額が出てくるわけであります。特にいまのような具体的な例を申し上げますと、不当廉売ということになるのではないだろうか。私が不当廉売として具体的にこのような事例を挙げて申告をしたいと思うのですけれども、一体公取はどういうように受け取っていただけますか。
  178. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  確かに独禁法は、不当な低い価格で物資を供給することを不公正な取引方法として禁止しております。しかしながら、一体どの程度のものが、どのような場合に不当な低い価格となるかということにつきまして、残念ながら審判決例がほとんどございません。審決例としましては、昨年十一月二十四日に、中部読売の事件につきまして行いました同意審決があるだけでございます。ただ、この場合は、新聞という一種の単品の商品の場合でございまして、しかもこれは同意審決でございますので、廉売問題一般につきましてはっきりした見解を示されたものではございません。  したがいまして、まことに恐縮なんですけれども、学説等を参考にしながら、若干ある程度の私見を申し上げるという形しかやむを得ないか、と思いますけれども一般的に申しまして、商品の値段というのは独禁法の立場としましては、これは需給関係で決まるものだ、したがいまして、需給関係で決まった値段ならば、これはたとえ原価を大幅に下回っておろうともやむを得ないのじゃないか。たとえばある商品が需要が減りまして売れなくなった場合には、これはもう幾ら下がってもやむを得ないのではないかと思っております。  そこで、問題は人為的に不当に低い価格を設定する場合でございますが、その水準と申しますと、抽象的に言えば、競争者がとうてい対抗できない価格ということでございますが、通常は、いわゆるコスト割れということになるかと存じます。ただ、そのコストという場合に、問題は、いわゆる製造コストなのか、あるいは販売経費その他の間接経費まで含めるのかという問題もございますし、さらにもう一つ申し上げますと、競争者という場合には、必ずしも現実の競争者じゃない、たとえば新しい技術が開発されまして、その結果、開発したメーカーが非常にコストダウンできた、他の古い技術を使っているメーカーはその価格ではとてもやっていけないという場合でも、そういうふうな正当な理由がある場合にはもちろん差し支えないということかと思います。さらに、その結果公正な競争を阻害する、あるいは公正な競争を妨げるというふうな意思が必要です。具体的に申しますと、たとえば競争者を排除するとか、あるいは顧客を不当に誘引するとか、そういうふうな場合じゃないかと思います。さらに換金処分だとか、あるいは競争に対抗するためやむを得ないというふうな正当な理由がある場合もいいのじゃないかというふうに思います。  それで、問題の医薬品でございますけれども、具体的なケースにつきましてわれわれは意見を申し述べることは禁じられておりますので、やや抽象的に申し上げますけれども一般的に申しまして、従来、これは経験則でございますけれども、赤字で売る、原価割れで売っている商品というのは御案内のようにたくさんあるわけでございますけれども、それに当たるようなケースは、メーカーの場合には比較的少ないのじゃないか、大体赤字割れの原因というのは需給のバランスが崩れているというのが実情じゃないかと思います。  したがいまして、この医薬品等につきましても、現実に原価が割れているかどうかはわかりませんけれども、恐らく需給関係がバランスを失し——これは供給過剰なのか需要が減ったのかは存じませんけれども、そういうことが原因じゃないかというふうに考えます。  もし需給関係のバランスを失したために価格が下がったということであれば、独禁法上の不当な低い対価とはならないかと存じます。
  179. 草川昭三

    草川委員 私は、いまの公取の見解が、非常に薬の場合はむずかしい、明らかに原価を割って売っていると思われる節があったとしても、それが需給関係だとか公正な競争を害しなければというような一般論のお話がございましたけれども、私はいわゆる不当廉売という面と、あるいは不公正な取引という問題の具体的な問題提起があるならば、違反事実の申告をしたとするならば、公取としてもそれを受けとめなければいかぬのでしょうということを、ひとつ簡単で結構ですから……。
  180. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 違反事実につきまして、違反の疑いがあるとして報告がございましたら、私どもとしたら調査する義務がございます。
  181. 草川昭三

    草川委員 だから、私どもが違反事実として具体的な例を申し出れば、それはやはり公取としても審査をしてもらいたい、このことだけ確認を申し上げておきます。  二番目に、実は私、ここにことしの二月の薬の特別価格見積書というのを持ってきたのです。これは、薬価が幾らですか、現在幾らで入れますかという内容になっておるわけでありまして、いまのセファレキシン系なんかも三十円を割る、ひどいのになると二十円近いところのぎりぎりの問題もあるわけでありまして、私、これも神田の現金問屋でケフレックスとオロキシンの具体的な伝票を持っておるのです。非常に安い価格の伝票を持っておるのです、現実に買ってきたという。  それはそれでさておいて、いま私が取り上げますのは、ここにこういうのがあるんですけれども、一カ月間三十万円以上薬を買っていただいたら特製銀製洋食器ワンセットをやります、来月はまたほかのものを渡しますよというので、ドイツ製の電子計算機だとか、やれ何とかだとか、二十万円以上だとおたくの病院のスリッパに名前を入れたものを全部出しますよというようなものがついて販売をされておるわけでございますけれども、これは景品表示法に触れないのかどうかお聞かせを願いたいと思うのです。
  182. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 景品につきまして、通常そういうふうな形で懸賞以外で渡す景品につきましては、われわれは二つの規制の手段を持っております。一つは、一般消費者に対するものでございまして、一つは、事業者に対するものでございます。  ところが本年の場合は、相手が病院等でございますから、事業者に対する景品の制限に違反するかどうかということかと思いますけれども、その場合問題になりますのは、一つは、私どものこの事業者に対する景品の規制は、その事業者を販売業者に限っておりますので、病院等が事業者になるかどうかはむずかしい問題でございますが、少なくとも病院等は販売業者とは言えないのではないのかということで、ちょっと事業者に対する景品類の規制にはかからない、もちろん消費者に対する景品規制にもかからないのではないのかという、やや現在の景表法に基づく規定で取り締まるというのはむずかしいのではないのかというふうに考えております。
  183. 草川昭三

    草川委員 景品表示法というのは、いわゆる相手が販売事業者でなければいかぬ、こういうお言葉ですから、病院だとか医院というのは販売事業者ではないと思うのです。じゃ一般消費者かというと、一般消費者は患者さんでございまして、患者さんが現実には薬を受け取るわけですから、非常にこの関係が——私は別に取り締まれという立場で申し上げておるわけではなくて、やはりこんなことは過当競争に入っていくのではないだろうか。事が人命に関する薬物というものを売買されるわけでございますから、よほどこれは慎重かつ神聖な領域で営業活動を営んでいただきたいと私は思うのです。余分なそういうものがあるならば、研究開発費に回していただいても結構ですし、お医者さんの技術料の値上げになっても結構ですし、あるいは今日の高額医療費の方へ回していただいて結構なんです。私は、何もお医者さんがどうのこうのとか薬屋さんを責めるわけじゃないのですけれども、いまの売り方というものが、明らかに私は公正取引委員会の従来の考え方でも何か触れない点で非常に乱売ということがやられているような気がしてなりません。  もう一回私は本法に戻りますけれども、景品表示法でなければ不公正な取引方法というものにこれがひっかからないのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  184. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 確かに景表法に基づく規制というのは、若干医薬品の場合は特殊な流通形態からむずかしいかと思いますけれども一つやや近いものといたしまして、教科書の販売に伴う金品の贈与、これは独禁法に基づきまして不公正な取引方法として一応指定しておりますし、そして違反として取り上げたケースも、相当前のことなんで正確な年を覚えておりませんけれども、ございます。そういうことで、あるいは非常に過大なものであれば、独禁法上の不公正な取引方法として取り締まれるかどうか検討する必要があるかと思います。  なお、その場合にも確かに先生の御指摘のように、教科書もやや似た商品かと思いますけれども、特に通常の商品以上に厳正な販売方法が要求される商品じゃないかというふうに考えます。
  185. 草川昭三

    草川委員 では、もう一つ最後に公取にお伺いしますけれども、たとえば今度はメーカーがある程度の経費というものを持って問屋さんに景品を与えた場合は、やはりいまのような不公正な取引方法になるのですか。
  186. 長谷川古

    ○長谷川政府委員 メーカーが問屋に対して過大な景品を供与した場合、年間十万円以上でございましたら、これは不当景品類及び不当表示防止法に基づく事業者に対する景品類の提供の制限に違反すると考えます。
  187. 草川昭三

    草川委員 ここで私は厚生省の医療課長、経済課長にもお願いをしたいわけでございますが、事がここまで来ますと、私は、ざっくばらんに業界の方に一回原点に戻れという指導をしなければいかぬと思うのです。そういう意味で、薬務局長名で都道府県の知事あるいは製薬団体連合会長、医薬品卸業連合会長、日本薬剤師会長へそれぞれ通知を出しておみえになりますけれども、これは私は医療機関にも中野局長は出さなければだめだと思うのです。そして、この文書の中にも「銘柄別収載方式に移行したことに伴い、非価格競争が激化するのではないかとの懸念がもたれたため」という文章があるのです。あなたが一番最初に、銘柄別になったから混乱をしないというのはうそなんですよ。明らかにここの文章では、薬務局長が各都道府県の知事とそれからいま言うような関係の団体に、この問題をめぐって激化するのではないかといって通知を出しているのですよ。ですから、同じ局長の担当の下の課長さんが銘柄別になったから縮まりましたなんという答弁をされているからこそ話は混乱してくるわけですね。国会でうるさいから少しぐらい適当にやっておけということになってしまうわけですよ。そうではなくて、問題は、事は命にかかわる商品なんだから、安けりゃ安いでいいじゃないですか。あるいは、乱売があるなら、もう少し一定のメーカーの原価に対する適正利潤というものはこうだと行政指導したっていいとぼくは思うのですよ。そして本当の意味でヒヤリングしたっていいじゃないですか。そうして正当な形でお医者さんも薬を使い、われわれも安心して使うときに、いわゆる副作用という問題もなくなっていくわけであります。経済性からいって真の意味での薬とは一体何ぞやという原点に取り戻してやっていただきませんと、問題は進まぬと私は思いますね。きょうは時間がございませんけれども、ここにも供試品というのを持ってきております。供試品というのはずいぶんお医者さんのところに来ております。しかしこれなんかも、ばらすと普通の袋と同じような取り扱いになるわけです。錠剤に供試品とは書いてない。ひどい場合だと、単にレッテルだけ張ってそれを取れば一般のものに使える、これがいわゆる現金問屋に回る場合もあるわけです。私はここに一つの例としてオロキシンとケフレックスの錠剤を持ってきておりますけれども、これだって分包機に入れて渡していけば、百二十円のものか二百二十円のものか全然わからぬですよ。よほど顕微鏡で見てどこかの小さなマークでやあというようなことがなければ、これはまず普通じゃわかりませんでしょうね。ですから私はそういう意味でも、いまの薬の問題というのはどう考えても抜本的な見直しをしないとだめだと思うのです。  さらに、これも非常に問題がある言葉でございますけれども、ことしの三月十一日の新聞に、ある精神病院のロボトミー訴訟で、その病院は裁判に備えて、どうせ裁判に負けるから脱税をしようというので、一億一千三百万円の架空操作をしたという記事が出ております。これは検察側が発表しておる手口ですけれども、薬の卸売業者に頼んで、使ってもいない薬を大量に仕入れたことにする。こういうことがあるわけですよ。脱税額の大半は薬の架空仕入れによるものであったということであります。こういう事件というのは非常に残念だと私は思うのです。本当にまじめに薬の効果というものを研究開発しながら、そういう成果がこういう間違った形に利用される。一体こういうでたらめなものについては薬価調査というのはどういうように反映されるのか。この薬の問題を取り上げればきりがないわけでございますけれども、ひとつ本気になって実勢価格が反映するようにバルクを変更してもらいたい。いま経済課長から、バルクの変更はある程度考えるというような御答弁があったわけでございますが、私は、実際はただ九〇%バルクを七〇%に下げてもだめだ、本当の意味での加重平均をやらなければだめだと思うのです。加重平均というのは統計学の基礎です。もうバルクを採用する時代ではない。しかも、私はきょうは触れておりませんけれども、二倍の法則というものがあります。小さな分包の方を優先的に取り上げて、いわゆるお徳用品の大きい安い単価の方は薬価に収載をされないという一つのタイプもあるわけです。私は、いずれこの二倍の法則のあり方について厚生省にひとつ基本的に物を申し上げるということをこの際申し上げておきます。  非常にきょうは不満足な御答弁より得ませんので、私は決して納得をいたしておりませんけれども、事が薬の問題できわめて重要な時期であるだけに、厚生省当局あるいはまた物価局長の方からもひとつ真剣な対策を立てられることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  188. 武部文

    武部委員長代理 次に、荒木宏君。
  189. 荒木宏

    荒木委員 最近、新聞報道によりますと、三月期決算の模様を見て大手私鉄の運賃改定が申請されるような報道がありますが、私はそういったことにも関連をいたしまして地方鉄道の運賃問題について若干お尋ねをしたいと思います。特に中小の地方鉄道、なかんずく最近新設をされました中小地方鉄道の運賃が諸般の事情から非常に割り高になっているということでございます。  そこでまず運輸省に伺いますが、ほぼ最近十年間をとりまして、新設をされた中小地方鉄道の運賃が既設の大手私鉄の運賃に対してどのくらいの比率格差にあるか、これをまず明らかにしていただきたいと思います。
  190. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 最近十年間ぐらいで新設いたされました中小民鉄と申しますと、北大阪急行と大阪府都市関発、こういったものしかないわけでございます。関西大手私鉄にもいろいろ運賃格差がございますが、大体関西系の大手私鉄というものの運賃を見ますと、仮に十キロぐらいで幾らくらいになるかというところで見ますと、大手私鉄が十キロで百円から百二十円くらい、それから先日認可をいたしました大阪府都市開発の運賃が十キロで百五十円くらい、大体そんな見当でございます。
  191. 荒木宏

    荒木委員 十キロという話ですが、利用者が一番よく使っているのは何キロぐらいですか。先ほど言われた二つの例がありますけれども、いずれも新線だけで輸送の目的を達しているんではなくて、片や地下鉄、片や南海の高野線。利用者が居住地から都心部へ通う平均的なキロ数というのがあるはずなんです。つまり、ほとんど使わないようなところのキロ数を例示に挙げて倍率を出したって論議をする意味が余りない。一番よく使われているのは、乗客の利用率からしていま大体二十キロぐらいではなかろうかと思います。しかもそのうちほとんどの乗客が通勤定期、通学定期を使っていると思うのですけれども、こうした場合に、二十キロで通学、通勤を比較した場合に倍率はどのくらいになりますか。
  192. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 大阪府都市開発の場合、全キロで十二キロというふうに承知しております。二十キロと申しますと、恐らく南海電鉄と乗り入れた場合のキロ数になるのではないかと思います。
  193. 荒木宏

    荒木委員 実際の利用形態というのは余りよく知らぬのですか。たとえば大阪府都市開発の場合は、一番多いのが泉ケ丘から難波まで行っている。中百舌鳥で降りる人なんておりますか、通勤や通学で。私はゼロとは言わないけれども、しかし年間の利用率の七割から八割、たとえば都市開発の場合には泉ケ丘から難波まで行っているので、一番利用形態の多いキロ数で、一番利用の多い形態である通勤と通学ですか、これの格差がどのくらいかと聞いているのです。
  194. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 いま大手私鉄と中小との格差ということで御質問がありましたので、大阪府都市開発の場合、全線で十二キロしかございませんので、大阪府都市開発の十キロというところで申し上げたわけですが、先生のおっしゃるように難波まで乗り入れるということになりますと、大阪府都市開発の賃率で十二キロ行って、それにあと南海電鉄の八キロ、これは南海の賃率でございます。それを計算した運賃、こういうことになるわけでございます。
  195. 荒木宏

    荒木委員 それでどのくらいですか。
  196. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 大阪府都市開発、端から端まで全部乗ったといたしまして、十三キロが百七十円、それに南海電鉄のたとえば七キロというもの九十円を足しますと、百七十円の九十円で二百六十円、こういうことになると思います。
  197. 荒木宏

    荒木委員 部長、もう少しよく聞いてから回答してもらえませんかね。私は一番よく使っている定期でどうかと、こう聞いているんですよ。百七十円とか百数十円とか、定期でそんなになりますか。つまり、利用者の圧倒的多数を占める定期客、通勤、通学で泉北高速線の利用者が一番よく使っている区間は泉ケ丘から難波が一つの典型例ではないか、これが二十キロ余りですね。最近十年間で全国で新設された中小地方鉄道というのは二つしかないという話です。関西の大手五私鉄と比べて二十キロで通勤、通学でどのように違うか、こう聞いているのです。
  198. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 先ほど申し上げましたように、定期でも同じことでございまして、大阪府都市開発のたとえば通学定期の十三キロを買いますと、これが四千八十円、それと、難波まで行きますと南海電鉄の七キロの定期運賃千五百三十円、これの合計というものが大阪府都市開発と南海と乗り継いで難波まで行った場合の定期運賃でございます。
  199. 荒木宏

    荒木委員 私は、比べて格差がどのくらいかと聞いているのです。これは確か四日ほど前に改定が認可されたはずですが、それに当たって関係地域の自治会の代表の人たちが、大阪府都市開発の泉ケ丘から難波まで、通学の場合を見ますと、同じ期間で京阪に比べて三・二倍になる、阪急に比べて三・一倍になる、南海、近鉄、阪神に比べていずれも二倍以上だと、数字を細かく書いて対比をして、そしてそういう現状にあることを十分認識してほしいという上申書を運輸大臣あてに出したはずですが、あなたはこの書面を見ましたか。また、それに書いてある数字は間違っているかいないか、この二つについて答えてください。
  200. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 私は、まだその陳情書は見ておりません。  それから、いま申し上げました数字は、南海電鉄だけでたとえば二十キロというものを乗りますと、通学定期の場合二千七十円になるわけでございます。それから、大阪府都市開発の路線でたとえば十キロ乗りますと、通学の定期が三千六百円、これと南海電鉄の十キロが二千三十円、これの合計という数字になるわけでございます。
  201. 荒木宏

    荒木委員 ちょっと部長に御注意いただけませんか。倍率は幾らかということを聞いているのですが、そのことにちっとも答えていない。むしろ私の方で、関係者が調査した数字を示してその真偽を聞いているのですが、これにも答弁をそらすということですから、少し御注意いただきたいと思います。——もし答弁の用意でしたら、その間に企画庁にお尋ねをいたします。数字は後刻、運輸省から認否の回答があると思いますけれども、私ども調査によりますと、同じキロ程を運送するのに、同じ地域で、たとえば通学の場合に三倍以上の違いが出てくる。もちろんそれにはそれなりの理由があると思うのです。しかしながら、結果として大、中、小の間に運賃のそうした非常な格差があり、それが今回の認可によって再び拡大をされるということが、価格体系の上で果たして望ましいことであろうか。もちろん地域的な関係でも格差はありますし、またコスト計算の上ではそれなりのいろいろな積み重ねがあるわけですけれども、しかし、そういう割り高の抑制あるいは価格是正のための政策運営というものも一方では必要だと思うのですが、企画庁のお考えをお聞かせいただきたい。
  202. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 現在の特に輸送関係の公共料金について、やはり各路線それから各企業体の能率、それから沿線の人口とか設備の新しさ、古さとか、いろんなことがそれぞれの企業体の経営に対して非常に異なった影響を与えているわけでございまして、一応それぞれの企業体が独自の経営を目指して運営しているものでございますから、それらの事業に必要なコストというものを賄うということによって、その運営を健全なものにしていくということがやはり必要なことではなかろうか。その場合、当然のことでございますけれども、経営の合理化について徹底的な努力を払うということはその前提としてあるわけでございます。そういうことでございますと、ただいま御指摘のような問題が地域によって起きてきているということは、私どもよく承知しております。ただ、その中小関係の私鉄についてはそういうこともありますので、従来から政府としてもその助成についていろいろ考えてきた。その一つのやり方としては、御承知のことでございますけれども、都市近郊のニュータウンについての建設費というのが非常に割り高になるので、その一部について国と都道府県が補助をするという形がございます。また、安全関係の設備についての助成とか、また開銀その他の融資ということもあるわけでございます。さらに過疎地域の私鉄については、欠損補助ということで経営費の補助もする。まあ現在いろいろな形でやっている。それがその企業体の一つの原価算定の根拠に入りまして、一応利用者負担の軽減にも役に立っているように思うわけでございます。そういういろいろな対策を講じながら、それぞれの企業体の適正な原価を反映した運賃体系というものは、現在の段階ではやむを得ないところではないかと考えております。
  203. 荒木宏

    荒木委員 最近十年間における新設中小私鉄は、いずれもニュータウン建設にかかわる新線建設でございますが、いま局長の方から財政補助についての話もありましたから、関連して伺っておきますけれども、このニュータウン建設について、国は現在どういう態度をとっているか、企画庁としてはどういうようにごらんになっていますか。
  204. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 ニュータウンにつきましての政府政策としては、一つのやり方は、事業主体に対して建設費の一部を補助する、その設立以来、補助率の引き上げをするというようなことをいたしておりますし、もう一つ民間の事業主体としてやる場合には、鉄道建設公団がかわりにつくって、それを長期にわたって経営譲渡していくというような形をとっているわけでございまして、現在のニュータウン鉄道の持つ事業の性格からいいまして、やはり建設費が非常に高いとか、またその乗客の乗り方が非常に偏っているというようなこともあって、いずれにしてもそういう面からの負担がかなり大きなものになりますので、財政的にストレートに助成して、少しでもその運賃を安くしようというような努力をしているというふうに私ども考えております。
  205. 荒木宏

    荒木委員 御承知のように三全総によりますと、ニュータウン名をいろいろ列挙して、そして居住環境の整備ということでニュータウンの建設促進を推進しておるところですけれども、そういうふうな点からすると、建設費補助ということで果たして足るのであろうか。先ほど運輸省の方では明確な答弁をしませんでしたけれども、結果としては三倍を超える大きな格差が生じている、それがますます拡大をしていくということでございまして、しかも、こうしたいま例として挙げております泉北ニュータウンの場合には、臨海工業地帯の造成ということに伴っての居住環境の整備ということが言われておりますが、この海の方は、産業立地の関係では、国家財政の補助が港湾設備の建設、維持、運営ということにまで及んでなされておりますけれども、居住環境、居住立地の方は、それの交通設備の関係については建設の補助だけで、あとは運営に任せっぱなしというのでは、いささか片手落ちではなかろうか。そうした建設の後の償却に伴う大変な費用を全部特定の業者にだけ負担させるということでは、これは格差の拡大が通常考えられる程度をはるかに超えているというところから、そうした運営補助の充実を求める声が非常に強く出ておりますが、それについて、これは必ずしも経企庁だけではありませんけれども物価の点から局長答弁されましたが、関連してもう一言伺っておきたいと思います。
  206. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 やはりニュータウンの鉄道というのは新設路線でございますから、従来の路線との経営の比較で言いますと、やはり資本費が非常に高いということが非常な特徴です。資本費といいますと減価償却と利息だと思いますけれども、それが原価に占める割合が非常に高いというのが特色かと思います。そういう点から見ますと、やはり助成のあり方としては資本費に対する助成ということが最も適当ではないか。経営費までという話になりますと、これは他のいろいろな事業との関係もあって、そう簡単にはいかないのではないかと私ども想像するわけですけれども、そういうことで、現在できておりますニュータウン関係の建設補助というものはそれなりの効果を果たしているというふうに思うわけでございます。その率の方も、四十八年度にスタートしたときから二年目にすぐに補助率が大幅に上がるというような形で、そういう意味での姿勢としては、ニュータウン建設促進に対する助成としてはかなり前進をしてきているのではないかと思うわけでございます。私ども物価の立場から申しまして、できるだけ低いことが望ましいというふうに考えておりますけれども、現在のこういう助成制度というものは、それなりの効果を持ってニュータウン線の経営に寄与しているのではないかというふうに思っております。
  207. 荒木宏

    荒木委員 答弁の準備ができたようでしたら、運輸省の方に一言御注意いただいて、答弁を求めたいと思います。
  208. 武部文

    武部委員長代理 妹尾政府委員に申し上げますが、委員からの御質問に対しては的確にお答えください。
  209. 荒木宏

    荒木委員 運輸省に答弁を求めたいと思います。
  210. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 先ほども申し上げましたように、通学定期で大阪府都市開発を経て難波まで乗り入れるということになりますと、大阪府都市開発の賃率は幾らだというわけにまいらないわけでございます。それで大阪府都市開発の通学定期と、それから南海電鉄の中百舌鳥以遠難波までの定期とを合わせて購入する必要がある。そしてその合わせた金額というものはたとえば光明池、都市開発の一番端でございますが、そこから中百舌鳥までが四千八十円、それと中百舌鳥——難波間の南海電鉄の定期券、その合計の六千九十円というものを払う必要がある。それから難波から南海電鉄のみを使いまして光明池まで行くのと同距離の南海電鉄の定期を買いますとそれは二千百四十円、こういうことになります。キロ数にしまして二十七キロというものだけで、その二つを併算したものと南海電鉄だけの運賃と比較しますと、六千九十円と二千百四十円、こういう差が出てまいる次第でございます。
  211. 荒木宏

    荒木委員 いま、幾つかの前提を置いてですけれども約三倍といいますか、そういった格差があるということを認められたと思うのですが、そこでそういった格差拡大を是正するための運輸省の指導、これはどういうふうにやられておるのですか。
  212. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 先ほど先生もいろいろの事情があるという御指摘があったわけですが、新しく建設された鉄道線路とそれから戦前からずっとやってもう償却が済んでしまったような鉄道というもの、そしてその路線も非常に長くて、大都市付近の乗車効率の非常に高い線を持っているというような線との間には、どうしても原価的に差異が出てくるということはやむを得ないと思うわけでございます。しかしながら、最近における新しく開発された団地というものの輸送をできるだけ低廉に確保するという見地から、先ほど経済企画庁局長からも御説明がありましたように、ニュータウン鉄道等に関しまして一定の助成を行っている次第でございまして、資本費の三六%についてこれを四年に分割して補助している。さらには低利の資金の融通というようなことを行いまして、できるだけ新規路線の資本費負担を軽くしていくというようなことを行っておる次第でございます。
  213. 荒木宏

    荒木委員 しかし、そういうことをしているにかかわらず、三倍以上の違いが出ているということですから、そういう程度のことだけでは格差を縮めるという効果を生むに至っていないということが言えると思います。  そういう点で、私は問題提起をした点について、なお引き続きいろいろな機会に討議はしていきたいと思いますけれども、同時に並行して企業の面での努力、これについてどういったようなことが進められているか。特にいま例示しております本件の場合には業務が管理委託をされている。そうすると、委託会社と受託会社の間の委託料の計算によってその運賃の計算も大いに異なってくる。ほとんど全部を委託しておるわけですから、そういう点で委託料の計算に対する運輸省の行政指導、どういう基準でどういった項目についてどのような認可の判定をしているか、その抑制のためにどういった指導をしているか、これを明らかにしていただきたい。
  214. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 委託料につきましては、委託契約は両者の間の話し合いで行われるわけでございまして、委託契約そのものをチェックしているわけではございませんけれども運賃認可の際、特にこの場合ですと委託者の運賃を認可する際に、その委託料について受託者のコスト計算が適正になされているかどうかということは、十分人件費その他の経費全般にわたりまして計算しているわけでございます。ただ、受託料はやはり受託者が受託し得る金額でなければならないわけでございまして、受託者のオプションというものは尊重せざるを得ない。しかし、その平均といたしまして受託者自身が経営している経費の平均、たとえばこの場合で言いますと、南海電鉄の経費の平均を上回るということはないように、それぞれの項目にわたって審査している次第でございます。
  215. 荒木宏

    荒木委員 そのときに受託者の方の利潤、配当あるいは納税額、こういったものも受託料の中に含めて認めておるのですか。委託会社の方は累積赤字で格差が三倍を超えておるにかかわらず、なおかつ受益者に負担させようという、受託者の方はそこへ受託料の適正計算だということで利潤、配当、納税額、その他を含めることを認めておるのかおらぬのか。
  216. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 項目としては利潤というものを入れてございません。計算いたしておりません。総コスト、細かく申しますと、人件費と経費、人件費の中に線路保存費、電路保存費、車両保存費、運転費、運輸費、それから保守管理費、厚生福利施設費、経費の中に水道光熱費、車両清掃料、駅共同使用料、修繕費、一般経費というような項目で入れております。したがって、特に利潤という項目は算出はいたしておりません。
  217. 荒木宏

    荒木委員 利潤という項目があろうとなかろうと、問題は配当に見合う額だとかあるいは事業報酬に見合う額だとか、そういうことが一般経費というふうな項目で実質的に算入されておるのかどうか、つまり、コスト分だけの受託料になっておるのかあるいはそこに上乗せした受託料になっているのか、その点はどうですか。
  218. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 この場合は、コストだけでございます。
  219. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、前回大手私鉄の一斉の運賃修正認可があったときに、南海電鉄の認可に対して泉北高速と通しで運送する場合は十円値引きだ、こういう審議会の答申がありました。そうすると、いま部長の話のとおりだと、コストだけで請け負ってやっている。そのコストだけで請け負ってやっているほかに、まだ十円だけ切り込んで出血サービスをする、そういう認可になったのですか。その十円に見合うものはメリットとして受益しておるからということで、十円切り込みという認可になったのじゃないですか。
  220. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 これは相互乗り入れの場合に、特に南海電鉄と大阪府都市開発というような場合に、大阪府都市開発がその奥地からお客を集めてくるというような関係を考慮して、併算割引を行ったということではないかと思います。
  221. 荒木宏

    荒木委員 その奥地からお客を集めてくることは、南海にとって、つまり受託会社にとってどういうインパクトを持つのですか。
  222. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 それだけ南海電鉄に乗るお客が集まってくるというような関係、それを考慮されたものと考えられます。
  223. 荒木宏

    荒木委員 つまり平たく言えば、同じ車を走らせておって、いわばぬれ手でアワでそれだけお客をたくさん集めてきてもらえるから、メリットがある。そういうことで十円値引きサービスをするということになったのじゃないかといまの答弁を聞くと思うのですけれども、だとすると、その事情が当時も、前回の認可のときもあるいは現在も同じである以上は、今後大手私鉄の運賃改定が問題になったときに、その事情は引き続き考慮されるべきだと思いますが、どうですか。
  224. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 併算の場合に、ある程度の値引きを行うということは、もちろんケース・バイ・ケースでございますが、今後も行われ得ることであると考えます。
  225. 荒木宏

    荒木委員 あのときに十円という数字をはじき出したのはどういう根拠ですか。どういう数式で十円切り込みということになったのですか。
  226. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 特に十円ということについての特定の計算をしたわけではございませんが、関西においては山陽電鉄、神戸高速、阪神あるいは阪急との併算というような例がございまして、そのときにやはり十円を引いているというような例がございますので、十円という前例を尊重した、こういうことだと思います。
  227. 荒木宏

    荒木委員 しかし、それぞれの私鉄経営は事情が違うわけでしょう。対キロ区間の運賃も違いますね。事情も違い、計算も違うのに、ほかが十円だからこれも十円だというのはどういうわけですか。それによってどれだけ乗車効率が高まっているかという計算をして、それが二十円、三十円になればその切り込みの率、額をもっとふやすということだって当然じゃないでしょうか。それこそ、そんなつかみ金で十円という話になるのだったら、これはある意味では合理性がないということになります。それだけメリットを受けておるなら、そのことを計算して、この十円が二十円、三十円になることも場合によってはあり得ることではないのでしょうか。
  228. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 併算の場合の割引について、十円が適当なのかどうか、あるいは二十円あるいは三十円というのが適当なのかどうかというようなことにつきましては、確定的な計算をしたわけではないわけでございます。ただ、全体としての収支バランスを見ました上で、十円程度の割引というものについては、全体の収支バランスに影響するところがないというところで十円というものを選んだのだ、こういうふうに考えます。
  229. 荒木宏

    荒木委員 どうも余りはっきりせぬ話ですね。全体の収支計算に影響するかせぬかというところからこの総計算の金額を決めているのですか。これはやはり修正認可という権限をもって査定をして、その処置が必要だからというのでやっているのでしょう。また、それはいま部長の話のように、お客をずっと寄せてくるから、いわばぬれ手でアワと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、それによるメリットがあるからそれだけ切り込んでいるという話でしょう。だとしたら、その受益分をそれなりに計算をして、それが二十円、三十円になるなら、当然そういう処置をすべきじゃないですか。そんなつかみ金の、アバウトの全体に影響のないようなところの金だけ十円をぽっとつけるという、そういう認可の仕方であったのですか、というふうにも見られなくはないと思うのですけれども、大手の私鉄の運賃の改定ということが言われておりますけれども、そのときはひとつ、これが十円が適当なのかあるいは二十円、三十円というところまで行けるのかということは、さらに詰めて検討するということをはっきりしていただきたい。
  230. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 十円につきましては、先生はぬれ手でアワとおっしゃるのですが、いわば気は心というような感じになっているわけでございまして、がっちりした収支計算をした上で、ある程度の切り込みというものにつきましては当該企業企業努力に期待するというようなところで十円というものを決めたのだ、こういうふうに考えております。  それで、大手私鉄の運賃改定の際には、併算の場合どういうふうにするかというのはこれからよく検討さしていただきたい、このように考えております。
  231. 荒木宏

    荒木委員 その、ある程度の切り込みは企業努力に期待するということになると、かなりアバウトな面があるような感じがしますね、いまのお話を聞くと。そうだとすれば、今回の、いま例示として伺っております申請も二五・一%の申請を無修正で認めたわけですが、これは関連する改定の認可申請、これと比べてどうですか。このニュータウン住民の足は、南海のバス輸送がありますけれども、これの認可率、修正の認可率ですね、それから国鉄の今度行われる改定率、そういった当該居住者の改定率から見て、率はやはり高いのじゃないですか。バスが一六%、国鉄が十数%、それから見ると一〇%以上も率としては高い。しかも、もし年内に大手私鉄の改定があれば年度間に二回ダブるになって五割近くになる。もし部長が言うように十円くらい切り込みができるんなら、今度のときだってそういう修正認可したってできるということになるんじゃないでしょうか。これは後からの話だから何ですが、そういうふうな指摘すらできるということですから、ひとつ、次の認可のときには、その点は十分にいまの趣旨を踏まえて検討するということを重ねて答弁を求めたいと思います。
  232. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 今回の大阪府都市開発の二五%という数字がバス等の値上げ率に比べて高かったということは事実でございますが、これは新たに延長の新設工事を行ったというために、非常に償却費が割高についたという特殊な事情があるわけでございます。併算割引の件に関しましては十分検討さしていただきたいと思っております。
  233. 荒木宏

    荒木委員 この答申を見ますと、利用者の負担能力を考えて適正だ、こういう話があります。ここの居住者の負担能力、生活能力、これはどういう資料でどういう認定をしたのですか。
  234. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 これは運輸審議会の答申でございますが、一般的な国民の消費水準というようなところから考えたものと推定いたします。
  235. 荒木宏

    荒木委員 皆さんも答申を受けて行政処分しただろうと思うのですけれども、利用者といえば当該の地方鉄道の利用者という意味でしょう。だとすれば、もちろん一般的な負担能力の問題はありますけれども、当該地域の当該利用者の負担能力という問題が同時に随伴するはずですから、生活保護の受給率、ここに幾つかのブロックがありますけれども、同じ府下、同じ市内に比べてもずいぶん高い数字が出ています。今後はそういった地域の利用者の特別の事情ということも考慮するという方向で検討しますか、それともそういうことは一切構わずに決まり文句で、全くここを利用しないような階層の人たちのことも含めた利用者の負担能力ということでやるつもりですか。私は、その地域の特別の事情があれば当然考慮すべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  236. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 地域の特別の事情と申しますが、私どもとしてはその沿線各地域における民度あるいは生活水準といったものを考慮して、低い運賃にするとかいうようなことはちょっとできかねることであると思います。と申しますのは、そういう沿線を持っている事業者は、そうするとその適正な運賃が確保できないということになりますと、永久に赤字を重ねていくより仕方がない、こういう関係になりますので、むしろ生活困窮者というようなものについては、別の法体系からそれぞれの生活援助というものはなされるべきではないか、かように考えます。
  237. 荒木宏

    荒木委員 それじゃ、こういう判で押したような利用者の負担ということは書かなければいいじゃないですか、同じことなんだから。いろいろな運賃改定の検討の資料があると思いますけれども、いま部長、それを考慮すればとてもまともな経営ができはしない、そういう趣旨のことをおっしゃいましたが、そういったオール・オア・ナッシングのような極端なことを私は言っているんじゃないのですね。やはりそういう地域におけるそういった事情は、経営の中に当然経営者自身も考慮するでしょうし、そういうことを行政指導の中で反映するということも必要ではないかということで、これは答弁がそういう趣旨になりませんでしたから、引き続き別の機会に求めたいと思います。  そういうことを踏まえて、先ほど資本費がずいぶんかかったので、それによる償却ということがあるという答弁がありました。そこで、いままで公表された当該の鉄道の資料から見ますと、むしろいま部長の言った資本費負担は将来に向けて経営が好転していくということを示しているんじゃないか。つまり、ある一時期の運賃改定によって、そのときの利用者、そのときの居住者にかけるというよりも、先の見通しから、長期にわたってそのことの負担を求めていくという方がより適正ではないかというふうに思うのです。たとえば収入の対比で見ますと、四十七年、これは年度間通しての開通をした年ですけれども、四十七年と対比して公表されている一番新しい資料である五十年ですね、先ほど部長が言った大阪府都市開発と北大阪急行、南海、それから近畿地方の十五私鉄の平均、これらを比べて、運賃の収入の伸び率、それから営業の収支比率、キロ当たり運賃の伸び率、キロ当たり平均通過人員の率、営業外収支の収益率、兼業の収益率、これはどういう傾向になっていますか。
  238. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 いまここに数字を持ってきておりませんので、推定で申し上げますと、もちろん新しく開業された路線というものは当初は当然非常に悪い。しかし、年を経るとともに、ずっとやっていた——伸び率だけから申しますと、これは当然新しいものは伸び率は、開業からたとえば十年くらいの間というものは非常に伸び率は高いものであろう、このように推定されることは当然だと思います。
  239. 荒木宏

    荒木委員 それで、ここはまだ七割くらいしか完成されていないのですが、その高い伸び率は今後も続くと思いますか。
  240. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 当分、ある程度の期間は人口の張りつけもだんだんふえてまいると思いますし、続くのではないかと思います。
  241. 荒木宏

    荒木委員 そうだとすれば、収支は非常に速いスピードで改善をされ続けている、こういう一般的な姿になろうかと思うのですが、一体今度の改定の認可に当たって何年くらい先を見通して認可をしたのですか。入居完成予定と言われる五十五年の収支まで見通したのかどうか。
  242. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 一応五十六年まで推定いたしております。
  243. 荒木宏

    荒木委員 そうしますと、公表された資料による計算では、四十七年対比で五十年が、運賃の収入で、いま指摘しておりますところが三・一九倍、先ほど部長が言われました北大阪急行が一・八六倍、十五私鉄平均が一・六二倍、南海が一・五三倍。つまり、ほかの二倍以上のスピードで伸びておる、こういうことになりますね。ほかの詳しい数字は省略をいたします。いま五十六年までその線を延長して、そして累積の欠損は一応長期に解消していくというふうにしますと、容易に単年度収支は黒字に転化するのではないか。また、そこへ企業努力を求めれば、いまこの時期に先ほど指摘したような高率の運賃改定は必ずしも必要ないのではないか、むしろ将来にわたっての入居者の負担ということともあわせ考えると、かえって適切を欠くということも言えるのではないかという指摘もあります。  そこで、そうしたことも踏まえて総合的に、今後企業努力として、このたびの改定による据え置きといいましょうか、運賃の継続といいましょうか、それをどのように行政指導をし、求めているか、これが一つであります。  もう一つは、この改定を機会に乗客へのサービスという問題があります。たとえば冷房化率、それから身体障害者割引が余り利用されていない、このPRの問題、それから終着駅のエスカレーター設置の問題、それから栂という駅がありますが、ここのITV設置の問題、それから泉ケ丘駅を除く風よけの問題、それからなお運賃改定に伴う乗客に対する協力を求めるPRの問題、これらについてどういう行政指導をされていくか、ひとつ総合的に答弁をいただきたい。
  244. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 まず収支の見通しでございますが、これについては長い目で見れば確かに運賃収入は増加していくということでございますけれども、たとえばいま推定いたしました五十六年という時点をとってみますと、むしろ率は悪くなっていく傾向にあるということでございますので、運賃の据え置きが何年続くであろうかということについて、いまここで楽観的な見通しを申し上げるわけにはまいらないと思います。  サービスの改善の問題でございますが、いま先生指摘のようなエスカレーターの問題とか防寒設備の問題については、十分地元の要望等も勘案して前向きに検討させていきたい、このように考えております。  それから、PRの問題でございますが、運賃改定等につきまして地元の利用者とできるだけ話し合いの機会を持って、納得ずくでやっていく、少なくとも理解を得ながら鉄道を運営していくことは企業者として当然であると思いますので、今後とも地元との接触に努めるよう業者を行政指導していきたい、そのように考えております。
  245. 荒木宏

    荒木委員 冷房の問題、身障割引、それからITVの問題ということを言ったわけですが、それも同じく前向きに指導する、こう伺っていいわけですね。
  246. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 身障割引につきましては、五〇%の割引というものを現に行っているわけでございます。冷房の問題につきましても、できるだけ前向きに冷房化の進捗を図っていきたい、このように考えております。
  247. 荒木宏

    荒木委員 それから、定期の割引率がほかの大手私鉄に比べて相当低いということですが、このことが格差を生む大きな原因一つになっているわけですけれども、割引率一般についてはいろいろなことが言われております。いずれにしてもこういった同じ地域で、同じ地方鉄道で、こういう大きな格差があるということについての是正をしていく方針について伺っておきたいと思います。
  248. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 定期の割引率につきましては、企業によって非常に割引率の差があるわけでございます。確かに南海電鉄とその大阪府都市開発との割引というのは相当の開きがあるわけでございます。しかしながら、定期の割引率について私ども考え方と申しますのは、まず全体としての経費に対してどれだけの収入を図らなければならないかということで、その収入の金額を決めまして、それを普通運賃旅客にどれだけ負担していただいて、定期旅客にどれだけ負担していただくか、むしろこういう割り振りの問題であるわけでございます。一部に八〇%を超えるような割引率というものが学生定期に行われておりますけれども、これはコスト的に見ますと、当然学生の通学のコストを一般旅客がより多く負担しているというような関係にもなるわけでございまして、定期割引率を通勤、通学それぞれどの程度にするのが妥当なのか、その負担の公平を期するものであるかということについては、われわれいろいろと検討して、ある程度の私どもとしての考え方も持っておりますけれども、まだ決められたものでございませんので、何%が適当であるというようなことは申し上げかねます。  現在、大阪府都市開発が行っている学生六〇%、通勤三五%という割引率は必ずしも低過ぎるものではないと考えております。ただ、そのすぐそばに、南海電鉄がもっと高い割引率で運営しているというような実態もございますので、もちろんこの辺の通勤、通学者の感情というようなものも考慮しながら今後の調整を進めていかねばならないということは、一つの要素としては考えられると思っております。
  249. 荒木宏

    荒木委員 最後にもう一言、申請の当事者の問題について伺っておきます。  この運送契約は、私が調査しましたところでは、難波の駅で定期乗車券の申し込みをしまして、運賃を払って定期乗車券を受け取る、いずれも南海電鉄という表示になっております。この場合の運送契約の締結当事者は利用者と南海電鉄、そしてその路線は高野線並びに泉北高速線、こういうことになると思うのです。そうだとすると、この契約の中に決められた運賃が改定されるわけですから、改定する運賃の申請当事者は、地方鉄道業者としては、少なくとも契約当事者である南海電鉄も申請をするのが適当ではないか、こう思いますが、その点についての意見を伺っておきたいと思います。
  250. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 私どもの地方鉄道法あるいは鉄道営業法の解釈、現在の運用と申しますと、難波の駅で通しの切符を買われるという場合、定期でも同じでございますが、これはやはり利用者と南海電鉄との契約、それから利用者と大阪府都市開発との契約、二つの契約がなされたものであると解釈いたしております。それで、難波の駅で大阪府都市開発の路線の分の切符を売る南海電鉄の職員は、大阪府都市開発の委任を受けてその契約を行っているのだ、このように解釈しております。したがいまして、契約当事者は、南海電鉄の路線の部分については南海電鉄であり、大阪府都市開発の部分の路線については契約当事者は大阪府都市開発である。したがって、大阪府都市開発の運賃につきましては、大阪府都市開発単独で申請すべきものである、かように考えております。
  251. 荒木宏

    荒木委員 もう一問だけお聞きしたいと思いますが、申し込み書と定期の写しを部長に示したいと思いますが……。
  252. 武部文

    武部委員長代理 どうぞ。
  253. 荒木宏

    荒木委員 営業規則によると、申し込みをして運賃を払ったときに契約が成立する、こうなっています。そこに都市開発あるいは泉北高速という表示がどこにありますか。つまり、申し込み者は南海に申し込んで、そして受け取る定期券は南海の定期券なんです。その契約から、一体どこに当事者が大阪府都市開発、泉北高速になるという結論が出てきますか。
  254. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 確かに申し込み書の様式あるいは定期券の様式に南海電鉄、発行者の社名しか書いてないということは事実でございますが、これにつきましては、私どもとしては、南海電鉄が都市開発のレールを利用して、大阪府都市開発のある駅からある駅までという切符を売る、あるいはそういう契約をするという行為、能力は持っていない。したがって、それはあくまでも大阪府都市開発の委任を受けて、代理行為として切符を売っているというふうに考える次第でございます。
  255. 荒木宏

    荒木委員 代理と言うけれども、どこに代理名義がありますか。法律上の代理というのは、本人名義を表示して代理名義で契約するのでしょう。そこにあるのは南海だけしかないじゃないですか。南海と契約をして南海の切符をもらって、それで都市開発が当事者であるというのはどういう理屈なんですか。代理名義の表示もない。ちょっと答弁が納得いきませんから、もう一度はっきりしてください。
  256. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 確かに、申し込み書に大阪府都市開発の名義が載っていないわけでございますが、利用者としては大阪府都市開発の路線を利用するのに、南海電鉄と契約するということが可能であると考えていないわけでございまして、当然、大阪府都市開発と契約しているというふうに考えているとしか考えられないわけでございます。これは大阪府都市開発と南海電鉄の場合に限らず、たとえば国鉄と営団というような切符を買う場合でも、やはり発行者の名前しか書いてございませんが、あくまでも二つの契約であるというふうに運用してきている次第でございます。
  257. 荒木宏

    荒木委員 まことに恐縮でございますが、もう一つ示したいと思うのです。ここに南海電鉄の路線案内図というのがありますが、いま部長は、南海が泉北高速線を運送することは不能だから申し込み者も当然そのことは予想していない、こう言いましたけれども、その車内に掲示された南海電鉄路線図というのを見ますと、高野線、南海線、泉北高速線、三つありまして、全部南海電鉄が運送しますということを表示しているわけですよ。だから、乗客の方は、当然、南海が泉ケ丘まで運ぶのだというふうに思っているのです。だから、利用者は南海に申し込みするという意思を持っているのです。南海もまた泉北高速をみずから運行してますということを表示しているのです。それでいてどうして都市開発が契約当事者になるのです。重ねて答弁を求めたいと思います。
  258. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 この点につきまして、確かに契約が行われている場所の状況あるいは名前の表示といったような点から、南海電鉄と契約を結んでいるというふうに考える利用者もおられるかもしれませんけれども、私どもとしては、あくまでも鉄道というものはみずから運営している鉄道について契約を結ぶもの、運送契約というものはなされるしか法律行為が成り立ちようがない、南海電鉄が人の路線について契約をするということはあり得ないというふうに解釈しております。
  259. 荒木宏

    荒木委員 時間の制約がございますので、私、質疑はこれで一応終わらせていただこうと思いますけれども委員長、お聞きいただきましたとおり、全く他人の地方鉄道なら別としまして、営業の委託を受けて、運転はもとより、駅務、営業関係も受託している会社が、みずからの名義でもって乗客と運送契約を結んだという場合に、そういうことができないのだと部長は一方的に言うわけです。私は、一般の法律行為は、仮にそのことが履行可能かどうかは別として、契約としては十分いまの法治国家で成り立っておるのが一般の民事法の解釈であり、運送契約も当然そうした扱いを受けるものだと思いますけれども、しかし、時間が参りましたので、この点は部長の当初の答弁もずいぶんと前後いたしましたし、いまの答弁もとても納得できるものじゃありませんので、委員長の方から、重ねて答弁を明確にするようにということを一言おっしゃっていただいて、質疑を留保しておきたいと思います。別の機会にさせていただきます。
  260. 武部文

    武部委員長代理 それでは、ただいまの荒木委員質疑に対する答弁については明確を欠く点がありますので、留保ということでございますから、そのようにいたします。  それでは、次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十分散会