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1978-06-21 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月二十一日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 島田 琢郎君 理事 竹内  猛君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    大坪健一郎君       金子 岩三君    佐藤  隆君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       原田昇左右君    平泉  渉君       福島 譲二君    松永  光君       森   清君    柴田 健治君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       松沢 俊昭君    長谷雄幸久君       吉浦 忠治君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  委員外出席者         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局統計情報部長 柳井 昭司君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   堀川 春彦君         食糧庁長官   澤邊  守君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月十六日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     加藤 紘一君   前尾繁三郎君     羽田野忠文君 同月二十一日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     松永  光君   久野 忠治君     原田昇左右君   熊谷 義雄君     大坪健一郎君   倉成  正君     中島  衛君   野村 光雄君     長谷雄幸久君 同日  辞任         補欠選任   大坪健一郎君     熊谷 義雄君   中島  衛君     倉成  正君   原田昇左右君     久野 忠治君   松永  光君     加藤 紘一君   長谷雄幸久君     野村 光雄君 同日  理事馬場昇君同日理事辞任につき、その補欠と  して島田琢郎君が理事に当選した。     ————————————— 六月十六日  一、国が行う民有林野の分収造林に関する特別    措置法案芳賀貢君外十三名提出、衆法第    三号)  二、農林水産業振興に関する件  三、農林水産物に関する件  四、農林水産業団体に関する件  五、農林水産金融に関する件  六、農林漁業災害補償制度に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  農林水産業振興に関する件  昭和五十三年産麦価決定等に関する件  農畜産物輸入に関する件      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事馬場昇君より、理事辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの馬場昇君の理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、島田琢郎君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 中尾栄一

    中尾委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  6. 島田琢郎

    島田委員 大臣麦価いつお決めになりますか。
  7. 中川一郎

    中川国務大臣 あした米価審議会を開きまして諮問をし、答申をいただきまして、あさってじゅうには決めたいと思っております。
  8. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、あすの麦価米審を前にして、事務当局では大体諮問案がまとまっていると思います。今回、米審諮問いたします麦価基本的な点について、大臣から表明をいただきたいと思います。
  9. 中川一郎

    中川国務大臣 島田委員も御承知のように、昨年、麦価につきましては、従来奨励金としてありましたものも麦価に加えまして、これをベースにしてパリティをもって計算をする、将来は別としてもこういうことを当分続ける、もうすることによって麦の価格について適正を期そうということで決まっておりますので、これを採用して決定をしたい、こう思っております。
  10. 島田琢郎

    島田委員 事務当局に伺いますが、五月の農業パリティ、つまり総合パリティは幾らですか。
  11. 澤邊守

    澤邊説明員 農村物価賃金調査資料によりましてはじくわけでございますが、現在、最終的に精査をして集計中でございますので、現段階で申し上げられるところまで至っておりません。
  12. 島田琢郎

    島田委員 それはおかしいじゃないですか。五月のパリティがまだわからぬということはないんじゃないですか。
  13. 澤邊守

    澤邊説明員 例年のことでございますが、三月のパリティは二カ月ぐらい後の五月の初めにわかる、四月は六月の初めにわかるというのが通常のパリティのはじき方で、これは毎月出しておりますので、そういうやり方をしておるわけでございます。ところが、例年、六月末に麦価に関する米価審議会を開きますので、その際に間に合うように急いで出すために、五月を例年よりは一カ月早めて出すように御尽力を願っておるわけでございますが、したがって、四月と五月を本日中には何とかまとめ上げたいということで努力をしておるところでございます。
  14. 島田琢郎

    島田委員 統計情報部は、五十三年五月の農業パリティ指数をどのようにとらえていますか。
  15. 柳井昭司

    柳井説明員 五月の農業パリティ指数につきましては、六月末に出すという予定でございます。農村物価賃金指数につきましては、大体一月おくれということで、調査後一カ月後に出すということでございますので、五月につきましても、六月末に出す予定でございます。
  16. 島田琢郎

    島田委員 あすの諮問を前にしてそういう作業がまだ済んでいないというのはどうも理解ができないのですけれども、そういう点がはっきりしませんと、いま大臣がおっしゃった基本的な点が明確にならない。ということは、大臣パリティアップ率麦価を抑えるという考えですか。
  17. 中川一郎

    中川国務大臣 抑えるとか引き上げるとかということではなくて、決まったとおりパリティ数字そのもの決めたい、こう思っております。まあ、月末ということでありますが、間に合うように、早く出すようにいま鋭意指示しておるところでございまして、その一番新しいパリティ指数、これを採用したい、こう思っております。
  18. 島田琢郎

    島田委員 私どもは、四一四・七九から四二二・一かそこら辺の間だというふうに推定しているのですが、この推定は間違いありませんか。
  19. 澤邊守

    澤邊説明員 五月の推定については、私どももまだ資料を見ておりませんので何とも申し上げかねるわけでございますが、三月までの数字ならばわかりますので、お答えできると思います。
  20. 島田琢郎

    島田委員 法に基づいてパリティ麦価決めるという基本線は、いままでもそういうやり方で来ましたから、政府当局の姿勢としてはそうおっしゃるのでしょうが、私はそれだけでは、せっかく本腰を入れて麦作振興政府がおやりになっている点で、価格政策のこの面は重視をしないと、せっかくいま軌道に乗りつつある麦の生産振興がとんざしてしまう危険がございますので、ぜひ麦については、従来われわれもこの議論の中でしばしば指摘してまいりましたが、米麦生産一貫体系確立、こういう点で米と比較して余りにも差があり過ぎては麦の生産本腰が入らない、これは素朴な麦作農民の声であります。したがって、昨年、奨励金基本価格に入れる、いわゆる修正値を出して修正価格をもって麦価決定をしたという経緯からしますと、本年もかなり麦生産振興するという政策的な配慮がないと私はいけないのじゃないかと思っておりますから、そういう意味で、麦をお決めになる場合に大臣の腹としてはどういうふうにお考えになっていますかという点を次に聞きたいのであります。  私は率直に言って、最近の米麦の価格比較で言えば、その差はやや縮まりつつあることは認めますけれども、もっと縮めていって、米つくりから麦もスムーズにつくり得るような価格条件をつくってやる、こういう点も私は生産振興の大事な柱だと思っているのです。率直に申し上げますと、かつて戦前は米一俵の値段と麦一俵の値段は十対七ということもございました。それぐらいまで思い切った価格政策をお示しになることが麦づくり農民に大きな勇気を与えて飛躍的に麦の生産を伸ばす要素になるという認識を私は持っているわけであります。この点はいかがですか。
  21. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに麦をふやしていかなければならぬ。その場合、米価との比較においてもう少しがんばったらどうかという意見は、確かにわれわれも考えなければならないところである。そこで、昨年二千三百円という奨励金価格に取り込むというきわめて斬新的というか、思い切った措置を講じたのもまさにそういったことにこたえようとする措置であったわけでございます。  そこで、今後もできるだけの努力はしなければなりませんが、確かに対米価で六四、五%までいったこともありますけれども、現在もこれに裏作奨励金とか契約奨励金等を足しますと六七%ほどになって、それほど見劣りする値段ではないし、また御承知のように、麦価につきましては、消費者麦価円高の関係もあって引き下げろという要請もあるわけです。その場合、コスト逆ざやがいま七千円になっております。一万そこそこのものを七千円逆ざや政府が見て生産振興を図っておるところであって、かなり生産者麦価については国際的価格から比較しても、アメリカが一俵千四、五百円、最近値上げしても千六百円ぐらいじゃないか、その七倍からの値段となりますと、相当麦についても価格については力を入れている、こう御評価いただきたいと存じます。気持ちはわかりますけれども、対米価比にいたしましても、国際価格に比べてもいいのはあたりまえではありますけれども、相当いいところまで行っておるのではないか。しかし、気持ちは、麦をつくる意欲を増しますように、今後も価格政策について、将来また見直すときは見直さなければなりませんが、生産対策等を通じまして意欲的になるように努力を続けたいと存じます。
  22. 島田琢郎

    島田委員 大臣もお認めになっておりますように、第二次米の減反政策によって水田から転作された麦については七万円ないし集団化すれば七万五千円、こういう奨励金が当たるわけであります。これは米つくり農民にとっては決して不服を申し上げる内容ではないと思いますけれども、さすれば、畑作地帯において麦をつくっている人たちにはどんな手当てがあるのか、こうなりますと、いまおっしゃった契約奨励金だって六百円そこそこのものでありますし、裏作麦振興のために反当たり六千円出しておりますけれども、一俵当たりに直せば千円足らずのものであります。  そういうふうに麦一つとってみても、麦をつくっている農家にとっては、それぞれの立場で受ける恩恵が違う、こういうばらばらなやり方に対して、従来麦をまじめにつくってきました畑作の麦つくり農民は大変大きな不満を持っております。ですから、今度の麦価決定に当たっても、この点をぜひ直してもらいたい。水田転作麦と同じような奨励金を出せというむちゃくちゃなことはだれも言っておりません。しかし、本命は、畑作の中で転作体系を維持しながら麦をがんばってつくっている人たちが重要な日本の国産麦の柱なのでありますから、ここのところにスポットを当てて、しっかりとした基盤をつくっていくことが私は政策上ぜひ必要だと思っているのです。私は、この点に対して、今度の麦価決定に当たってぜひ温かい配慮を加えるべきではないか、こう思っているのですが、いかがですか。私の意見は間違っていますか。
  23. 中川一郎

    中川国務大臣 水田の場合は裏作奨励金のほかに転作奨励金ということでかなりのものが行きますので、畑作と比べれば水田の麦の方が有利である、逆に言えば畑作が不利であることは確かだと思いますけれども、何分にも昨年二千三百円というものを価格に取り込んで、六七%までは裏作奨励金がありませんから行きませんが、かなり接近したということで、北海道あたりでも耕作意欲がふえてきておる。北見あたりでも非常に安定した作物として伸びつつあります。価格についても努力はいたしたいのでありますけれども、多ければ多いにこしたことはありませんが、将来に向かって体質のしっかりした麦作というのは、価格だけをいじくるのではなくして、総合的な生産性を高めるという政策の方がむしろいいのではないか。価格については今後はまた今後として研究してはまいりますが、当面は昨年やりました施策基本としてやっていきたい、そして一方で構造政策を補完的にやって、しっかりした麦作を定着させたい、こういうことでやっておりますので御理解いただきたいと存じます。
  24. 島田琢郎

    島田委員 大臣基本的な考え方はまだよくわからないのでありますけれども、限られた時間でありますから次の点で、もう一点質問をしたいと思います。  麦の買い入れに当たって、等級は御承知のとおり一、二、三、等外上とあるわけであります。しかし、等外上以下につきましては、その都度その年の状況で非常に振れが大きいわけであります。等外上についても買い上げするかしないかというのは先に行ってから非常に議論になるわけであります。幸いいままでは等外上も政府買い入れる、こういうことでありますが、それはそのときの大臣のお考えによって決めることであって、正確にそれが、買い上げがきちっとされるという保証はどこにもない。いわんや規格外麦に至っては、これはまさにアウトサイダーでありまして、非常に不利な条件に置かれております。場所によっては、せっかく丹精を込めた麦が収穫期の長雨によって規格外の麦になってしまう。これはどうやって売るかと言えば、農業団体がA、B、C、Dとランクづけをいたしまして、それをそれぞれの実需者との間の話し合いで決める、こういうやり方でありまして、この価格たるや最低は千九百円から最高でも六十キロ当たり三千三百円という売買価格にしかなっていないのであります。しかし、実際にはこのA、B、C、Dのランクの中身、政府は把握をしておられるかどうかわかりませんが、私ども調査をいたしました中では、特AそしてA、BあるいはC、D、こうありますが、特Aというのは食用に振り向けられる、こういうものであって、その八〇%はほとんど食用として使われている。しかし価格は一俵当たり三千三百円という、九千七百円の値段からいたしますと三分の一にもならぬというありさまであります。そしてまたAにつきましては、食用えさ用に半々、これが大体一〇%くらい使われている。食用として使われているということであります。B以下は飼料用その他でありますが。そうしますと、規格外麦食用になりませんとして農家から買われた麦は、事実はそうではなくて食用もしくは準食用として八〇%ないし九〇%が振り向けられているという実態にある。こういうふうに考えますと、私は麦の規格決め方についても相当検討が必要だというふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  25. 澤邊守

    澤邊説明員 等外麦お話規格外麦お話でございますので、二点についてお答えをしたいと思いますが、等外上表につきましては、これが災害等によって発生するため、その数量もその年々によって違うわけでございますが、また一般的には食用に適しないので、従来からは買い上げ予定しないところでございますけれども、実際の扱いといたしましては、そのような麦が発生いたしました場合、災害実情に応じまして、一応食用に使用可能なものについては、等外上麦については政府買い入れを行っております。今後もそのような実情に応じた措置をとっていきたいというように思っております。  等外下の麦につきましては、食糧用に適さないというものでございますので、その発生量もまたきわめてわずかでございますので、これは買い入れ対象といたしておりません。  規格外麦につきましては、これはあるいは農蚕園芸局の方からお答えした方がいいかと思いますけれども、五十二年度に麦生産振興奨励金というものが政府買い入れ価格に織り込まれたことに伴いまして、関連措置として、買い入れ対象とならない規格外麦が大量に発生した場合、米麦改良協会に設けた全額国庫補助による基金の中から、規格外麦平均販売価格を考慮いたしまして、一定の交付単価の範囲内で価格差補てんを行うという麦の振興対策特別事業を講じたところでございます。  そこで、最後のお尋ねのございました、発芽粒穂発芽粒等の準食用として集荷されますものの相当部分が食用として販売されている例が少なくないという点についての御指摘かと思いますけれども、これは私どもの調べでは、規格外麦製粉会社買い入れは、五十一年産が約五千四百トン、五十二年産が二千トンでございます……
  26. 島田琢郎

    島田委員 発言中ですが、大臣の時間が来ましたので、私、事務当局の御説明であれば、次の私の時間帯で詳しく承ります。  これで私の持ち時間が終わりましたから、大臣に一言申し上げておきますが、私の申し上げました点は大変重大ですから、ひとつ事務当局としては追跡調査をして、われわれに報告を願いたいと思っているのですが、その取り扱いについてもぜひ御検討願いたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  27. 中川一郎

    中川国務大臣 後ほどよく連絡を取らせます。
  28. 中尾栄一

  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は麦をめぐる諸問題について質問をいたします。  まず最初に、農林大臣に、農政における麦作の位置づけということについて質問をいたしたいと思います。  食糧の問題の中で麦は生活上不可欠のものとなっているし、最近の国民の食糧状況を見ても、麦を原料としたパン、めん類等々が非常に盛んに食べられている。麦の需要は、人間の食糧としても、また加工原料としても、さらにえさとしても、重要なものになっている。そういうときに、農林省としては、麦の問題について、農政上どういう位置に麦を置いておるのか、この点をまずお伺いします。
  30. 中川一郎

    中川国務大臣 麦の占める地位は、いま、自給率からいって非常に低い。小麦については四%というようなものであり、大、裸麦につきましても九%、したがって総合食糧自給率向上ということを農政基本としておりますので、可能な限りこれを増産をするということで基本的に対処いたしておるわけでございます。  ただ、御承知のようにアメリカから入ってきておるのが中心でございますが、生産費におきましては、アメリカが千五百円前後、わが国では約一万円ということになりますと、七倍高いものになります。これにいろいろな関税あるいは輸送費等を入れまして、国内に入りました価格比較においても、四倍にも高くつくわけでございます。したがいまして、一俵については七千円のコスト逆ざやということで政府がこれを補てんをする、まあ言ってみるならば国民経済的には相当の負担でもってやらなければ生産ができないものである。でありますから、なかなか苦しいところではありますけれども、やはり食糧自給率向上、特に最近の米の過剰傾向ということに対処するのには麦が非常にいい戦略作物であるということで、転作当たりましても、これは特別奨励金を出すという仕組みの中で、麦は昭和六十年には五割以上、六十数%はふやしたい、こういう目標を立てて、厳しくはありますけれども、一生懸命対処しておる、これが麦に対する政府の、農林省考え方でございます。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま、六十年で麦をふやしたい、こういうお答えがありましたが、政府は、今日までの状況を見ると、昭和三十五年、すなわち高度経済成長所得倍増、そのときを契機にして、三十六年には農業基本法ができた。そこで麦に対しては、大体安楽死をさせる、殺してしまうという形で、麦に対して温かい手を伸べなかったということは、もう過去の統計が示しているとおりなんだ。これは認めてもらえるだろうと思う。  そこで、その状況をちょっと数字で言うと、国内生産は、三十五年に百五十二万トンの生産があったものが、昭和五十一年の段階ではわずかに二十二万トン、七分の一に減ってしまった。逆に輸入は、三十五年には二百六十五万トンが五十一年には五百五十四万トンと倍になっている。これを戦後の二十一年の七十五万トンの輸入に比べると七倍になる。このうち大麦、裸麦を除いた小麦の現状の変化、主なる原因、こういうものについて、三十五年からこういうような変化があったということについて、その考え方原因というものは、いま言われたように、外国に安い麦があるから、だからそれを輸入して、国内の麦は高いから安楽死させたのだ、こう理解をしていいかどうか。
  32. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに麦が年々減少してきたことは事実でございます。それは安楽死させようという意図ではもちろんありませんでしたが、結果として非常に悪くなった。なぞそうなったのかというと、いろいろな原因がありますが、特に大きな原因は、麦の裏作がなくなっていった。この裏作がなくなった原因には何があるかと言えば、米に重点を置いた方が収入がいいということもあったでしょうし、あるいは耕作技術で発芽するというようなこともあったでしょうし、いろいろありましたが、冬の期間はほかに働きの場を求める、こういう兼業化していくことの方が農家収入がいいということも大きな原因であったろう。安楽死させようとは思っておりませんでしたが、結果的には減ってきた。そこで、昭和四十九年、五十年ごろから、これは何とかやはりよみがえらせなければいかぬというので、いろいろな施策を講じ、価格面での改革的な、昨年の奨励金を足すあるいは生産対策についてもいろいろと機械の導入その他について努力を重ね、これを回復させたいということで真剣に取り組んでおるところでございます。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま出かせぎの問題や米に重点が置かれたという率直なお答えがあったから、私はこれを理解をする。というのは、今日、後で問題になるけれども、米が過剰になったということは、麦を殺してしまったというところに実は一つの原因があるわけなのだから、そこで農林省の六十年の展望が出された、必要な量というのは、その六十年の段階で八百四十万トンになっている。それに対して五百八十九万トンの小麦、大、裸麦が二百五十万二千トン、こうなっているが、このうちで国内生産は百四十四万三千トン、わずかに自給率が一七%である。さらに小麦については五十五万三千トン、自給率は九%、昭和六十年においてそういう状態である。五十一年の作付面積は、小麦が八万九千ヘクタール、二十二万二千トンの生産が上がった。水田転作の五十三年の作付面積は、ようやく十万ヘクタールを超して十一万二千ヘクタール。これは、六十年の展望の十七万八千ヘクタール、その目標に対して見ると、その進捗率というのはきわめて鈍い状態だと思うのですね。先ほど大臣は、六十年には自給率を六〇%上げる、こういう話をされたけれども、これに比べてみると、まさにこれは微々たるものであって、この程度の進捗率ではとうてい達成できないと思うけれども、この自信があるかどうか。
  34. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに六十年の目標をそれぞれ御指摘のようなところに置いてございます。そこで実施すべきといいますか、達成の見通しはどうかということでございますが、ことしはたしか二十数%の伸び率になると存じます。今後毎年一一%ぐらいずつふやしてまいりますと目標に達しますので、ことしのこの伸びをさらに努力をいたしまして、来年度以降も続けてその目標を達成したい、こういうふうに思っておるわけであります。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 麦を伸ばすことは私は結構だと思うのですね。これはまた後でも生産を伸ばすことについては意見を言いますが。  そこで問題は、六十年展望というものは、われわれは常に問題にしているのだが、それによると、米は昭和六十年において一千二百十万トン、こういう生産目標になっている。それがもうすでに昨年においてさえ一千三百四十万トンという形で、これは潜在生産力を持ったということで、本年から百七十万トン、四十万ヘクタールの生産調整に乗り出した。そうなると、この六十年展望というものはどうしても再検討し、つくり直さなければならない、こういうふうに考えるけれども、これは率直に大臣に答えてもらいたいと思う。やるならやる、こういうふうにしてもらわないと、われわれはいつでもこれにひっかかってきますよ。
  36. 中川一郎

    中川国務大臣 六十年の見通しはかなり先のことでございまして、単年度についてそれぞれ毎年予定どおり進むかというと、ときどきの情勢によって、天候により、いろいろまた違った状況が出てまいります。この目標を大きく変更する気持ちはありませんで、その方向で最善の努力をしていきたいということは基本でございますけれども、必ずしも六十年の見通しが、五十年に立てたものでございますので、万全のものとはもちろん思いませんので、近い将来改定しなければいかぬかなという情勢が出てまいりましたら、十分検討して現実に合う目標に変えていきたいという気持ちがありますが、いますぐ、現在やっております農政の推進に大きな支障があるというふうには考えておらないところでございます。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まだ問題がありますね。米の転作対象として、やはり四十万ヘクタールについては、麦、大豆、飼料作物が中心である、その他各地においては畑作もありますが、そうなると、どうしてもこの六十年展望という閣議決定農政審議会の承認を得たものは、もうとてもこれは整合性がない、だから、そういうものについてはこの段階で検討していかなければだめだということについては、なお私はこれを強調をしたいと思うのです。どうです。
  38. 中川一郎

    中川国務大臣 ことし百七十万トンからの米の過剰、千三百四十万トンの力があるのに対して、消費の方は千百七十万トンということで、百七十万トンの生産調整をお願いし、しかも自給率の低い多々ますます弁ずる飼料作物あるいは麦、大豆、北海道等にありましてはビート等、こういった自給率が高ければ高いほどいいというものは戦略物資として奨励金も上積みをするということでやっております。六十年の見通しもそういった作物は大いに伸ばしたいということでございますので、今度の稲作転換事業がこの六十年の見通しと大きく違ったものではありません。しかし、経済の見通しその他についても長期的なものでございますから、現実とかけ離れる場合が多いわけでございますので、今後また見直しということは十分考えられますが、いまやってまいります政策の上において、六十年の見通しが支障になったり、害が出てくるというようなものではないというふうに思っております。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 六十年見通しというものについて、私は非常にこだわるわけだが、どうしてもこれは直さなければならないし、先ほど大臣農業基本法さえも再検討しなければならない、これを農業基本法から食糧基本的なものに変えていく方向が打ち出されている。農業基本法も改定すべきだと思うのですね。そういうふうに私たちは前から言っている。  そこで、麦の場合にも六十年には一七%という自給率がこの中にはある。先ほどの答弁からいくと、六割ぐらい上げようじゃないか、こういうぐあいにぐうんとなっているのでしょう。そうなると、これはもう六十年展望などというものを信用して生産をする者はだれもいない。社会党はこの前この委員会島田委員から、水田転作についての反対をするために、じゃあどういう社会党の考え方があるかという場合において、小麦自給率五七から五九%、それから作付面積においても九十九万五千ヘクタール、反収二百九十五キログラム。大麦において六七%、作付四十六万ヘクタール、反収四百キロ。その価格については対米比価七〇%として政府も検討してくれ、こういう要求をしたのです。われわれは、単に問題を提起して批判だけをするのじゃなくて、やはりこういう提案をしながらやってきているわけだから、大臣も率直に受け入れて考えてもらいたいと思うのですが、どうです。
  40. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほども申し上げましたように、麦は伸ばさなければならない作物ではございますけれどもアメリカ等国際的に比較いたしますと生産費が約七倍かかっておる、あるいは現実国内における価格におきましても四倍からの高いものについているということになりますと、四分の三は国民の税金でこれを賄わなければならぬという、非常に国民経済的にはむずかしい問題を抱えております。おりますが、自給率を高めるということは、農政の見直しというのは単に自給だけではない、あるいは農家経済だけを守る農政であってはならない。もっと農業の位置づけというものを、基本的に国家、社会構成の大事な産業であるという位置づけをしたいということで考えておりますし、六十年の見通しも、三年前、五十年に立てましたことであり、日本の経済のフレーム等も変えなければいかぬ時期でございますから、これは固定的に考えないで、検討はしてまいりますが、その中において麦の自給率を六〇とか七〇とかまで持っていけるかどうか。それじゃ一体何を減らしてそっちへ振り向けるかということになると、現実にはなかなかそうはまいらない。しかし、意欲としては御指摘になっている点は十分参考にして、改正の段階においては、あるいは改正しなくても努力目標としては十分参考にしてまいりたい、こう思う次第でございます。
  41. 竹内猛

    竹内(猛)委員 与えられた時間がもうありませんから、大臣に率直に答えてもらいたいわけですが、日本社会党としては、先ほど言ったように一つの目標を持って、そして六十年展望を批判をしながら一つの提案をしてきた。ところが、現実に問題は、米が過剰になって、そしていやがる農民に無理やりに転作を奨励した。いま田植えをしているけれども、この田植えは途中で稲刈りをする、青刈りをするということが前提になって田植えをしているところがかなりある。だから、これは刈り取るか刈り取らないかその時期になってみなければわからない。恐らくこれは実ってしまうだろうと思う。こういう状態になると、きのうかおととい、米価審議会の予備会議に、一〇三%の調整がうまくいったというようなことを大変喜んでいるようだけれども、そんなに喜ぶほどの状態じゃないということをまず第一に言っておく。  その次に、麦については、外国からこんなに輸入しているんだから、やはり麦は計画的に外国のやつを減らして国内で麦を生産していく。そしてそのためには対米比価七〇%というのはちっとも無理な話じゃないと思う。そういうようにして麦の生産について意欲を示さなければならない。そのための細かい問題については後で事務局と議論をしますが、大臣としては、麦の生産振興に対するどういう方針を持っておられるか、これについてひとつ明確に答えていただきたい。
  42. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほども申し上げましたように、麦の生産には国民経済的にいろいろ問題もありますけれども、やはり自給率向上ということが大事であり、また農村が別の意味での角度もあるということで、ただ経済的な金の計算だけでこれを処理してはならないという基本方針のもとに、今度の水田利用再編対策におきましても、麦が最重点戦略作物として転作できますようにお願いを申し上げておるところであり、大体現在全体として一〇四%ぐらいの面積的には理解と協力が得られておるようでございます。御指摘のように、飼料作物用の青刈り水稲がどの程度実現するか、私どもも心配はいたしておりますが、これもやはり消費のあるところに生産というのが農家の使命でもあり、また農政基本でもあるというところから、ぜひとも御協力をいただきたいし、特に麦については非常にいい作物でございますから、今後とも転作作物としてこれが取り入れられるように価格その他万般について努力をしてみたい、こう思っております。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 日本の過去の歴史の中で、昭和三十五年に見るように、麦の生産が非常に伸びたときがあるのだから、農家がそういう経験を持っておるのですから、農民を土から離さないように、出かせぎなどをしなくてもやれるようにしていかなければ食糧の確保はできない。こういう点について、なお大臣のそういう強い方向というものを示すと同時に、六十年展望並びに農業基本法という、いままでの農林省がよってもってきた基本になるものを大幅に見直しをしていくということについて、思い切ってやってもらいたい、こういうことを要望して終わります。
  44. 中尾栄一

  45. 芳賀貢

    芳賀委員 この際、農林大臣にお尋ねいたします。  まず第一は、一昨日の十九日と昨日、二十日の両日間、農林大臣の招集によって米価審議会が開かれたわけでございますが、この二日間の大臣招集にかかる米審において特に当委員会大臣から直接報告あるいは説明するような事項があれば、この際述べてもらいたいと思うのです。
  46. 中川一郎

    中川国務大臣 今回の米価審議会二日間は、御承知のように、前広論議といって、米価決定するに当たりまして取り巻く農政あるいは米の事情、生産消費、流通、こういった基礎的なことについて議論をするということで招集されたわけでございます。各般にわたりまして議論がありましたが、中でも特に強かったのは消費拡大、その中でも学校給食というものについて、過剰米というだけではなくして、もっと主食を利用するという考え方が長期的に必要であるという議論が非常に強うございました。また稲作からほかの作物に転換するに当たっては、稲作転換がやりやすいような農政というものを推進して対処すべきである、あるいは流通問題についてもっと前向きに小売、卸、そういったものの改革を加えて消費が拡大されるようなこういう仕組みについてという意見が非常に多かった。今回は建議その他ということはございませんけれども議論を通じましていろいろな参考になることがありましたが、そういった点が主に強かったという印象を受けてございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 世間では、この二日間の米審開催について、これは七月の六日、七日に予定される米価決定米審に対処するため、それは昨年、一昨年両年とも米価審議会大臣諮問に対して答申をすることができなかったわけですね。無答申の状態で二年連続したわけでございますからして、これにこりて事前に二日間米審を開いて、つまり地ならしといいますか、前広とか後広なんという意味はわからぬが、とにかく二日間地ならし工作をして、中川氏のブルドーザーで地ならしをまず行って、それから米価審議会に臨む、これが世間一般の適切な批判であったと思うわけでございますが、いま大臣の御説明によりますと、明日予定されておる麦価決定のための米審あるいは七月早々の米審等については、もとより価格問題というものが諮問重点になるわけでありますが、これらについては審議会委員から格別の意見は出なかったわけですか。
  48. 中川一郎

    中川国務大臣 私の不徳のいたすところで、今度の審議会が、地ならしをして政府に有利なようにしようと受け取られたとしたら、まことに残念でございます。しかし、現実はそうではございませんで、米価審議会の方から、確かに大臣は招集するものではありますけれども、前広論議をやって、米審のときには余り長く時間をかけないようにという、米価審議会からの運営についての申し入れ書というものが鈴木農林大臣の時代に参りましてやりましたものでありまして、私どもがそういった意図を持ってやったのではなくして、米審の意向を受けてやったものであり、麦価はあした審議会を開きますが、麦価値段等について議論がきのう、おとといあったかというと、これはございません。まさに前広、全体の議論が行われたというわけでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 第二点は、明日大臣が、今年度生産される三麦の価格決定のための諮問をされるわけでありますが、これに先立って、政府農林省としての基本的な麦価格決定に関する方針が固まっておれば、この際率直に述べてもらいたいと思います。
  50. 中川一郎

    中川国務大臣 麦作につきましての基本考え方は、昨年麦価決定の際に、当委員会等の議論も十分に受けまして、過去奨励金としてあいまいであったものを価格に取り込む。そして価格については、いろいろ議論はあるが、それを取り込んだ上で、これにパリティ方式で農村における物価、労賃の上がった分を適正に導入していくということの基本方針が、昨年、かなり長期的というか、余り長い意味では、また先では検討しなければなりませんが、当分の間はそれでいくという方針が厳然と決まっておりますので、この方針に従ってことしの麦価決定したい、こう思っておるわけでございます。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 昨年の麦価決定に当たって、従来の買い入れ基準価格に毎年継続された生産奨励に支出した費用を合算して、それをもって昭和五十二年度の政府買い入れ基準価格決定した。これは当委員会の長年の指摘でもありますし、政府としてもその判断に基づいて決定したわけでございますので、それによって麦価水準というものが以前よりは安定したということは言えると思うわけでございます。したがって、その基礎の上に立って、昭和五十三年度の麦価決定というのは非常に重要な意味があるわけです。  まずその一つは、麦価決定については、食管法の規定に基づいて、昭和二十五年、二十六年の政府買い入れ価格を基準として、それに価格決定年までのパリティの上昇指数を乗じて得た答えを下らない価格で基準を定めて、それに毎年の麦生産生産事情、経済事情等を考慮して、麦の再生産が確保されるように決定しなければならぬということが食管法に明確に規定されておるわけであります。だから、その中で、パリティ計算をしなければならぬということは決定上の基礎になっておるわけでありますから、この点については政府が行政的にパリティを左右することはできないわけです。  そこで、今回の麦価決定について用うべきパリティの変動係数というものはどうなっているか、これが一つ。それを用いた場合には昨年の物価というものはどの程度値上げ結果を生むかという問題と、食管法の麦価格決定の後段に規定されておる生産事情あるいは経済事情の勘案ということについては、もちろんこれは農林省が行っておる昨年の麦の生産費調査の結果等が最大の勘案すべき資料ということになると思うわけでありますが、この二点についてどういうような方針を固めておるか、農林大臣がつまびらかでなければそばにいる食糧庁長官からでもこれはいいです。
  52. 澤邊守

    澤邊説明員 ただいま正式に公表もし、わかっておりますパリティ指数は三月まででございますが、二十五年、二十六年の二カ年間を平均いたしまして、それを一〇〇といたしまして、四一四・七九の数字がわかっております。これは、昨年に比べて約二・九%のアップという数字になっております。私ども、明日審議会をやるわけでございますけれども例年のことでございますが、農村物価賃金調査というものをデータにしてパリティ指数をはじくわけでございますが、鋭意統計情報部にお願いをしまして、四月の分と五月の分とを一緒に作業を無理してやっていただきまして出しておるわけでございます。ある程度見当は、全くついていないかとおっしゃられればそういうわけではございませんが、いま最終的に精査をやっておりますので、それが決まりましてから、最終的に大臣と御相談してあしたの審議会に間に合わせるというような、綱渡りのようなことをいつもやるわけでございますが、そういう点からいたしまして、ただいま申し上げられるのは三月の四一四・七九、その際二十五、二十六年という古い基準年次を基礎にしておるのが果たして妥当かどうかという議論は、米価審議会の小委員会におきまして昨年の六月まで検討していただいた際にも議論になりましたけれども、これは、種々問題はあるけれども、品目のウエート等につきましては五年目ごとに改定をしてやっておるので、この際、従来どおりの方法で基準年次をとってやっていくのはいいのではないかというような結論になりまして、昨年新しい方式で初めて算定をいたしまして四四%以上の引き上げになったということで前進をしたわけでございますので、今年は、先ほど大臣申しましたように、引き続きその方式でやりたいというように考えておるわけでございますが、三月の二・九%前年に比べてアップというのは若干下がるというような傾向がうかがわれますが、正確な数字は現在まだ申し上げられる段階ではないので、御容赦いただきたいと思います。  なお、パリティ価格だけでいいのか、パリティ価格を下らなくて、しかもその他の事情を参酌して生産米価をきめるということに法律はなっております。その点につきましては、これはもちろん価格そのものじゃございませんけれども、契約生産奨励金というものを出しておりますし、また、裏作を中心とした生産振興を図る必要があるという観点から、現時点におきましては反当六千円の裏作麦奨励金を出しておるというようなこと、あるいはまた米の転作奨励につきまして、御承知のように特定作物として最も高い生産奨励金を出すというようなこと、あるいはまた基盤整備なりその他の生産対策につきましても、従来力の足らなかった点をできるだけ強化するということでやっておりますので、それらの総合的な対策の中で価格決めていくべきではないか、かように思っておるわけでございます。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 前段のパリティの変動については、われわれも毎月の農林省パリティに関する広報によって承知していますが、その後段の勘案事項については、いまの食糧庁長官説明では全くあやふやで、何を言っているかわからぬですね。  そこで、大事なことは、政府が行政的に麦の買い入れ価格決めるわけでありますが、これは当然食糧管理法第四条ノ二の規定に基づいて、厳密に検討を加えて決定しなければならぬことは当然なわけですね。そこで、忘れておるといかぬですから申しますが、第四条ノ二は、「政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ麦ヲ」、これは三麦ですが、「其ノ生産者又ハ其ノ生産者ヨリ委託ヲ受ケタル者ノ売渡ノ申込ニ応ジテ無制限ニ買入ルルコトヲ要ス」。第二項では、「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ昭和二十五年産昭和二十六年産ノ麦ノ政府ノ買入ノ価格ヲ平均シテ得タル額ニ農業パリティ指数ヲ乗ジテ得タル額ヲ下ラザルモノトシ、其ノ額ヲ基準トシテ麦ノ生産事情其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ麦ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」ということになっておるわけでありますから、もちろん基本パリティ方式によるわけでございますが、大事な点はパリティの欠点とされているような点は後段の規定これを補完しなければ完全な価格決定ができないわけですから、その点を私が指摘したわけです。  そこで、これは大臣が存じておれば大臣から答弁をしてもらいたいのですが、昨日、農林省統計情報部昭和五十二年産麦類生産費を公表しておるわけです。公表に先立って当然大臣が決裁されておると思いますが、そこで、大麦、裸麦小麦等の三麦のそれぞれの一俵当たり生産費その額と、昨年政府が、農林大臣決定、告示した三麦の買い入れ価格というものを数字を挙げて比較した場合にどうなっておるか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  54. 澤邊守

    澤邊説明員 昨年の生産費生産者麦価との比較のお尋ねでございますが、小麦六十キログラム、第二次生産費で九千百五十三円が生産費でございます。それに対しまして、二類二等の生産者麦価は九千四百九十五円でございます。六条大麦は八千三百六十八円が第二次生産費、それから三類二等が標準になっておりますが、生産者麦価は七千五百四十九円でございます。それから裸麦につきましては、第二次生産費が一万五千八百六円、生産者麦価が三類二等で九千七百八十三円。それからビール大麦、第二次生産費が八千二百六十二円、生産者麦価が二等で八千九百六十七円でございます。それに対しまして、これは価格そのものの比較でございますが、先ほど申しましたような契約生産奨励金なり、別途の水田裏作に対する奨励金が出ておる、かようなことでございます。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、まず小麦については生産費が一俵当たり九千百五十三円と、政府買い入れ価格が九千四百九十五円、これは五十一年の買い入れ価格にそれまでの生産奨励金等を合算して決定した結果というものが昨年の買い入れ価格になっておるわけですから、これを生産費価格比較した場合において、小麦の場合にはそれほどの不同は——これはようやく去年の決定によってこういう数字が得られるようになったわけです。しかし、それ以外は、六条大麦にしても裸麦にしても生産費買い入れ価格との間に相当格差があるわけですね。特に裸麦の場合には生産量も少ないわけでございますが、一俵当たり一万五千八百六円の生産費ということになっておる。買い入れ価格はこれよりも約六千円低い買い入れ価格ということになっておるわけですね。だから、やはり食管法の規定に基づいてパリティを基礎にした算式でやることになりますが、そのパリティにはもとより長所とする点もあるが、欠陥とする点もこれは農林省自身がよくわきまえておるわけでありますからして、そういう場合には一年おくれになるわけですけれども、毎年毎年の農林省自身が行っておる麦類の生産費の結果等というものは重要な判断資料として、そして次年度の麦の適正な価格を定めるというようなことにしなければ、何のために農林省が熱心に農畜産物生産費調査を行っておるかという、その調査に対する期待がどこにあるのか、結果をどうするのかということも危ぶまれるわけでありますからして、こういう点については、今回の政府麦価試算、さらに決定に当たっては、十分な反省の上に立って農林大臣として善処さるべきであると思いますが、その点はいかがですか。
  56. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに裸麦におきましては生産費に比べて買い入れ価格が低い、御指摘のとおりでございます。この点につきましては、裸麦というものの生産の実態が非常に零細性が強く、また調査の内容も問題があるようでございますので、この点についてはもうちょっと検討させていただきたいと思いますが、御指摘の点につきましては、御指摘のとおりでございますので、少し研究をさせていただきたいと存じます。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 また、六条大麦についても一俵当たり約八百円生産費よりも去年の買い入れ価格の方が低いということになっておるわけですから、生産費の結果と買い入れ価格は別だというような主張は通らぬわけです。やはり法律の定めてある後段の勘案事項というものは、この生産費調査の結果というものを最も重視した勘案が必要になると思うわけですから、何でもかんでも安くすればいいというだけが能ではないと思うわけです。これはわれわれとしても期待を持って見ておる点ですからして、十分な配慮をして決定すべきであると思います。  それから、これは大臣に申し上げておきますが、われわれが感ずることは、最近の米価審議会のあり方、それから運営というものは、年々閉鎖的になっておるのではないかというふうにわれわれは痛感しておるわけです。これは大衆性のある大臣から見てもそういう感が強いと思うわけですが、こういうことになると、米価審議会というものは単なる農林省設置法の中の食糧庁の附属機関ということになっておるわけですね。食糧研究所の次に米価審議会というものが法律に書いてありまして、これは食糧庁の付属機関である。米審の運営とか所掌事務等については政令をもって定めるということになっておるので、厳密に言えば食管法と米価審議会というものは制度的に何らつながりがないのですね。端的には食糧庁長官諮問機関でもいいじゃないかというようなことも、政省令を見る限り感ぜられるわけでありますが、この点は、米価審議会委員の選任は大臣の権限で行われるわけでありますし、招集、運営についても大臣の意思によって行われるということになっておるわけですからして、余り米価審議会がからに閉じこもって閉鎖的になる、生産者とも消費者とも隔絶されておるというような状態の中では、国民から期待される米価審議会の運営とか結論は出ない。ただ単に農林大臣の従属物として、大臣に選任された御用委員が中心となって唯々諾々と政府諮問に対して賛成をする、反対をする場合にはけしからぬというようなことになるので、この点は大臣が絶対の主導権を持っておるわけですからして、そういうことのないように、あるべき姿に回復するように、これは十分指導を加えるべきと思いますが、その点はどう考えておりますか。
  58. 中川一郎

    中川国務大臣 審議会のあり方について申し上げます前に一言だけ、先ほどの裸麦あるいは六条大麦ですか、生産費と違うことについて御指摘がありましたが、実は法律の定めるところがパリティを下らないところを基準として生産事情ということになっております。パリティにつきましては昨年の生産奨励金を入れることによってかなり大幅に上回っておるわけでございまして、生産事情、経済事情をどの程度入れるかでございますが、生産費は全部見なければならぬというものでもない。その辺のところは弾力的に配慮していかなければなりませんが、御指摘の点はわかりますので、検討させていただきたいと思います。  審議会の運営でございますが、私はどこへでも、来いというところに自分の意思として参ってお話し合いは十分したい、こう思っております。  ただ、審議会は確かに農林大臣の選任によって決まるわけでございますけれども、運営につきましては、民主的に審議会にお任せしませんと、いや話し合えと言うからおまえ話し合えやというわけにもちょっとまいりませんで、生産者代表を含めまして屋外での交渉は行わないということを決めましたものを、これはけしからぬと言うわけにもいきません。そこできのうも屋外では話しておりませんが、屋内で代表者と話し合うというようなことになっております。私の命令その他はできません資格ではありますけれども、御指摘の点はよくわかりますので、なるべく生産者の皆さんとも話し合いをしたい。ただ、生産者の皆さんも、交渉するに当たって、ばかだ、あほだ、何だかんだというようなことでなくて、実りある話し合いができるようにお互い接近していったらいいのではないか、こう思う次第でございます。
  59. 中尾栄一

  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十三年産生産者麦価問題について農林大臣質問いたします。  私も質問に先立って大臣にお伺いいたしますけれども、六月十九、二十日の両日、東京九段南の分庁舎で、七月上旬の本格米審に先立つ事前の米価審議会を開かれたわけであります。生産、消費、流通、集荷、配給の現状などを説明されて、幅広い意見を求められたということでございますが、われわれは、この米価審議会はまさに米過剰を理由にした米価据え置き、いわゆる外堀どころか内堀を埋めると言われている事前米価審議会であって、据え置きの地ならしを策すところの異例の事前米審、こういうふうに見ておるわけでございます。昨年の米価審議会の結果を踏まえていろいろ検討した結果、今回初めて異例の措置としてこういうふうな事前米審が行われたわけでございますけれども農林大臣は最初から最後までおられたわけではありませんが、おとといときのうの事前米審の結果については詳細御承知になっておるのか、大臣が欠席した分については食糧庁長官初め関係者から十分お聞きになっておるのか、特に今度の事前米審に当たって、大臣としてはどのような成果があったか、その点御報告を承りたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  61. 中川一郎

    中川国務大臣 今度の米価審議会が、何か政府が地ならしをするようにということで受けとめられておるようでございます。この点は芳賀委員からも先ほど御指摘がございまして、不徳のいたすところだなと反省もいたしておりますが、決してそういった性格のものではございません。米価審議会みずからが昨年決定をいたしまして、そういった米価そのものの審議をする以前に、生産、流通あるいは消費等について幅広く議論をしておくことが、米価審議の上にいいことであるという申し入れ、審議会みずからの意思によっての正式の文書による申し入れにこたえて、前広論議をやることといたしたものでございまして、決して政府が地ならしをしようというような魂胆をもって開いたものではないということだけははっきり申し上げておきますし、ぜひともそう御理解をいただきたいと存じます。  なお、内容につきましては、二日間でございますから非常に幅広くなっておりますが、総じて言うならば、消費拡大についてもっともっと積極的にやるべきだ、中でも学校給食、特に弁当持参というようなものについても十分研究すべきだ、これは農林省だけの問題ではなくて、文部省等も含めて調査研究機関をつくって、超国家的にひとつ議論をしてもらいたいというような集約された意見がございました。あるいは流通段階についても、いまの流通というものがいいのだろうか、ひとつ改革をしてもらいたいという意見も大勢を占めたように存じます。また、生産調整はいたし方ないとしても、生産調整がやりやすくなるような構造政策、たとえば排水等を思い切りやらなければなかなか転作がスムーズにいかないであろう、こういうような意見も非常に強くあったということで要約されると思います。  したがいまして、米価を地ならしするとか、米価そのものについての議論は一切いたしておりません。若干触れかかったのですが、それも関連として出ましたが、その米価そのものについてはやめておこうということで、米価を除く全体についての農政基本の問題等々について議論がございました。  もしそれ以上必要があれば事務当局から答弁させますが、私からは以上のことを御報告申し上げる次第でございます。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五名の生産委員の皆さん方一人一人の意見をというわけにはまいりませんでしょうが、総じてどのような意見が二日間を通じて出たか、大臣は二日間出席なさったわけだし、先ほど申しましたように、朝から晩までおられたわけではございませんが、十分報告も受けておられると思いますけれども、主として生産者代表の意見はどういう意見であったか、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  63. 澤邊守

    澤邊説明員 終始出席しておりましたので、私が大臣以上に全体の経過はよく存じておりますので、お答えしたいと思いますが、生産委員の方々から出ました意見は、細大漏らさずいますぐ記憶しておりませんけれども、主として、消費拡大について自分たちも積極的努力をしておるけれども、さらに一層全体として努力すべきである、学校給食の問題、先ほど大臣が申し上げたような問題を初め、販売努力の問題等について議論があったように記憶をいたしております。  それからまた、その消費拡大の一環といたしまして、流通機構について現行制度の範囲内において運用を弾力化し、販売努力が行われ、消費者にもサービスができ、消費者の品質表示等についての信用も得られるような努力もすべきである、かような意見が全般的に多かったように記憶をいたしております。
  64. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、今回の二日間の事前米審において、生産者代表からもるる意見が出たことはもう当然でございますが、今回農林大臣は、特に過剰米についての問題を前面に打ち出して、据え置きをまさに当然視するようなことが報道されております。真意は違うという大臣意見でありますけれども、けさの新聞等を見ますと、過剰米に対する、古々米の処理について農林省当局は構想を発表しておられるようでありますが、この席でその点も明らかにしてもらいたい。きのう、おとといの事前米審の後を受けて早速そういった構想を出しておられるということは、かなり自信を持ってのことであるのか、こういうふうにわれわれも勘ぐりたくなるのですけれども、それとの関係はどういうふうに理解すればいいのか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  65. 中川一郎

    中川国務大臣 過剰米があるから米価据え置きだということを前提にしてということですが、据え置きの諮問になるかどうなるかまだ決めておらないということであって、どうなりますかは、来月早々までに皆さんの意見を聞いて、どうすることが農政推進上一番いいことである、こういう判断に立って決定をいたしたいと思います。  過剰米につきましては、昨日、どう処理するのか、こういう御質問がございましたから、昭和四十四、五年ごろの七百万トン余りました際の処理の仕方はこうである、また生産者団体からも、早く過剰米を処理してはいかがかという意見もありました。早く処理はしたいのでございますけれども、財政の問題もありますし、来年度予算等から逐次これを処理していきたい。そういった過去からいけば、また過去をそう大きく逸脱することはできないであろうが、家畜のえさ等に行ったのが非常に多かった、あるいは外国への援助物資として出したものが多かったが、最近は外国も当時に比べてわが国の米に対して関心が薄いというような情勢は申し上げましたが、処理方針を明らかにしたというものではございませんで、質問がありましたので、前回をベースにして、こうこうこういうことであったということを申し上げましたが、御指摘のような処理方針を明らかにしたという内容のものではありません。来年度予算等から逐次古米処理をしていかなければいかぬという気持ちを申し上げたところでございます。
  66. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 十年間の新生産調整を行う、まず第一期として、五十三年度から三年間の生産調整、周知のとおりでありますが、ことしはその初年度に当たるわけです。政府の先日の事前米審の報告等を見ると、全国で一〇四%の達成率だということが言われておる。農家がこのように協力をした。しからば私は、これは据え置きということにはならぬであろうと思いますし、また、大臣も据え置きということはいまのところ考えていない、米審の結果を待ってというただし書きがついておるのですけれども。初年度のこの本年に当たって、農家のこの協力した姿勢に対してこたえるということで米価の値上げを図っていかなかったならば、初年度の最初にこれが据え置かれると、またぞろ十年間据え置かれるという不安がある。最初のボタンをつけ間違えると最後まで狂うという理屈と同じで、初年度が大事である。また、農民を守るためにも、消費者側のことも当然考えなければなりませんが、いわば米というものは国の安全のための物資であります。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そういった意味から、古米の処理は別途考えると同時に、農家を守り、国民の食糧を確保するためには、国は米価決定に当たっては、何としても十分再生産の伴う決定をしていくということでなかったならば、農家は不安で応じられない。麦についても同じです。そこで大臣は、その辺を十分考慮して今回の諮問には当たってもらいたい。と同時に、先日からたびたび、公開の席でも、据え置きということについていま考えているわけではないという意味のことをおっしゃっておりますが、その点についてもさらに本席でひとつ明確に御答弁をいただいておきたいと思います。
  67. 中川一郎

    中川国務大臣 米価をどうするかという基本的な考え方についての御指摘でございますが、据え置きは考えたことはないということではなくして、据え置きだと言ったことはない、どうするかはすべて今後議論をした上で決定をしたい。そこで決定するに当たりましては、何といっても食管法に言う再生産が確保されるいわゆる生産費所得補償方式を旨として定める。ただし、このような雪給状況は度外視してこれを決めるわけにはまいらない、需給状況も勘案しなければならぬ。そこで御指摘のように、生産調整は一〇四%やったのだから需給状況はよくなったので、しかるべく、もう需給のことは考えないでやれというような御意見ではございますが、まさにこれは外科手術による相当無理な生産調整によって生産調整ができておるわけでございます。体質的には非常に過剰傾向にある。そこで、また米価で刺激をいたしますと自力開懸等が、過去も相当、年間一万五千町歩もあるというようなことで、今後もそういったようなものが——きのうも、自力開懇、開田は法律によって規制できないかという議論もありました。その点につきましてはずいぶん議論をいたすのでございますが、自分のものを食べたいという自分の土地で生産するものまで、そういったことを理屈にして開田されますと、これを規制するのは憲法上問題があるということで、そういう強制措置は、政府としては奨励金あるいは共済金の支払い等についてできるだけのことはいたしますが、開田そのものを法律によって縛るというわけにはなかなかまいらない。とすれば、今後また生産意欲が強くて、そういった生産調整とは全く逆の方向が出てくるならば、これは食管そのものもおかしくなる仕組みでございますので、やはり需給事情は十分価格の中に勘案をしなければならない。しかし、その場合でも、もう再生産ができない、現在水田をつくっている人がもう米はいやだということで、食糧自給率、主食が足りなくなる、こういうような価格は断じてとってはならない。再生産が確保されつつ所得が補償され、しかも需給事情を勘案したところがいかほどにあるかというところが、これから腹を決めなければならない大事なポイントだと思って、真剣に検討しておるところでございます。
  68. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに私は、きのうの事前米審のことで米価審議会の運営について、昨日通告しておきましたように一点大臣にお考えを伺っておきたいと思います。  五十二年の十月二十四日、米価審議会会長武田誠三氏から、農林大臣に対して、「米価審議会の運営について」の要望が出ております。その中で、一の(4)に「会長は、屋外でのいわゆる大衆会見は行わないこと。また、各委員は、情勢報告は別として、屋外でのいわゆる大衆会見は原則として差し控えること。」ということがあるわけです。このことできのうはずいぶん長時間交渉もし、また問題が紛糾したわけです。  もちろん大臣が絶対の主導権を持っておられるわけであり、これは農林省設置法の付属機関で委員の選任は大臣が行っておられるわけでございますので、私はあえて申し上げるわけですが、生産者と国民から隔離したいわば密室での米価審議会ということになりかねない。だんだん米価審議のあり方というものが国民から離れていく。もちろん、一方に言わせると、静かなところで冷静に検討していきたい、いろいろ理由もあるようですが、国民の側からいくと、国民にとってはまた大変な問題であるということで、従来から整然とやってきたわけだし、われわれもまた仲介の労をとって五団体等の意見を十分伝えながら交渉に当たってきた経緯がございます。そういったことで、運営については当然民主的にやるべきであり、今後こういった屋外での会見というようなことを行わないというようなことでなくて、一米審のその会のときに、大臣はもちろんですが、米価審議会の会長等は状況を報告するなりいろいろ要請を受けて、さらに国民の声を聞きながら全部の米価審議会の取りまとめに当たるというようなことは当然のことであると思う。そういった意味で、直接大臣が任命されるいわば主導権を持っておられるわけでございますから、こういった要望を受けたならば、大臣としても、それに対して、ひとつ米価審議会を十分冷静にそして民主的に運営するように、自分の方もまた五団体にもお願いするが、ひとつ会長としても十分、意見はわかるけれども、できるだけ協力的なことであってほしいというようなことをおっしゃっていただくなり、いろいろ懇談の中で話をしてもらいたい、私はこう思うわけです。任命したけれどもあと一切民主的に任しておくから何も物を言えないということではないと私は思う。その点の認識はどうなのか。早速七月六日ごろから予定される本番米審において、さらにいろいろな紛糾があった場合には、われわれももう責任を持てない、こう思うし、また、今後運営次第では不測の事態も起きかねない、こういうふうに憂慮するがゆえに、あえてこの件についても本委員会からも大臣に御意見を承っておく、かような次第です。御答弁をいただきたい。
  69. 中川一郎

    中川国務大臣 この点につきましては、せっかくの御指摘ではございますけれども、確かに農林大臣が任命する審議会ではございますが、その運営はまさに民主的に会長が委員に諮って決めたことでやっていただく以外に、私の方から、こうあるべきだあああるべきだと言うべき性質のものではない。これは生産者代表の人も多くの人が参画をされて出た結論でございますので、そういう中で話し合いでやっていただくより方法がない。私から、こうあるべきだあああるべきだとは残念ながら言うべき立場にもありませんし、言う資格もありませんし、また言うべきではない、こう思っております。  ただ、私としては、円満な運営とまた円満な生産者の皆さんとの話し合いの場が持たれることは希望はいたしますが、そのやり方について、屋外でやるのはいい、どうこうというようなことについては、残念ながら私から委員会に口を出すというわけにはまいらないということだけははっきり申し上げざるを得ないわけでございます。
  70. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そんなことはよくわかっているのだ。わかっているのだけれども、問題が本番米審でいろいろとまた紛糾したり何かすると大変であるから、何も文書でこれを回答せよとかどうだというのではなくて、大臣が任命するのだ、そういういわば米価審議会のあり方というものはわれわれもよくわかるけれども、紛糾が起きたならばこれは米価審議会に問題がかかってくるわけですから、大臣としても懇談の中で、いろいろな話の中で話が幾らでもできると思うのです。そういった意味で、米価審議会委員の皆さん方の良識ある、世話人代表もおるわけですから、御判断を願いたいとわれわれも思うわけです。そんなことを言うと、大臣はもっと米価審議会のメンバーにきちっとした者を任命してくれとわれわれ言いたくなるわけです。いろいろ言いたいことを差し控えて、場内、場外の今後の不測の問題が起きないために、きのう、おとといの状況を見ながら私たちは心配をして大臣に申し上げるわけですが、あなたのおっしゃることはわかるけれども、真意がどうも伝わっていないような感じがするので、あえて追加して申し上げます。  そこで、時間があれですけれども事務当局に一点お伺いしておきます。  昭和五十三年産麦の作付面積と、前年対比どのくらいのパーセントになっているか、ひとつ公開の席で説明願いたいと思います。
  71. 柳井昭司

    柳井説明員 お答え申し上げます。  五十三年産の四麦の作付面積でございますが、四月一日現在で調査しております。これは都府県でございますが、都府県におきましては、四麦合計で十六万三千四百ヘクタールでございまして、前年対比一二二ということになっております。小麦につきましては、七万ヘクタールで一二一%、六条大麦につきましては、一万一千六百ヘクタールで一一五、それから二条大麦につきましては、六万六千二百ということで一三一、それから裸麦につきましては、一万五千六百ということで一〇三というふうなことになってございます。  なお、北海道の四麦の作付面積につきましてはかなり増加しておるようでございまして、これにつきましては八月以降結果が出るものと考えておる次第でございます。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いま報告がありましたように、四月一日現在で、四麦、十六万三千四百ヘクタール、前年対比一二二%ということでございます。二二%増ですが、これは六年ぶりに増加した、こういうように私は理解しますけれども、このたびの作付増というものはどういう理由でなったか、大臣はどういうふうに理解しておりますか。
  73. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年の価格決定においてかなり思い切った策を講じたこと、それ以上に、やはり稲作転換政策に協力していただいた、その結果であろう、こう見ております。その他にも理由があろうと思いますが、大きな柱はこの二つだろう、こう見ておるわけでございます。
  74. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これは水田利用再編対策の実施によってもたらされたものである、こう思うのですけれども麦作振興し定着さすためには、どういうふうな対策を今後講じられるのか。先ほどもちょっと申しましたように、今後十年間の生産調整の処理に当たって麦作振興が最重要課題になる、こういうように私は思うのですが、その点を大臣から伺っておきたいと思う。
  75. 野崎博之

    ○野崎説明員 先ほど大臣からお話もございましたように、五十二年において米価審議会での審議の結果を踏まえまして、麦の生産奨励金価格に織り込む、それから水田裏の作付奨励金を増額をした、そういうようなこともございますし、また、生産対策といたしまして、高度麦作集団事業等、そういうものを入れまして、期間借地等による中核の担い手の育成、それから簡易な営農排水、そういうこともできるようにいたしたわけでございます。  それから五十三年度は、さらに、先ほどお話もございましたように、裏転作も含めまして麦を特定作物にして水田再編対策で位置づけた。さらに、畑麦作に対しましても、中核的担い手あるいは合理的な輪換体系、そういうものの目的のために畑麦作集団育成事業というものを設けたわけでございます。  こういう事業をこれからますます拡充強化をいたしまして、麦生産の増大を図り、麦の定着を図りたいというふうに考えております。
  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣の時間が限られておりますので、以上で大臣に対する質問を総括的に終わりまして、午後改めて細部の問題は質問をいたすことにして、質問を終わります。
  77. 中尾栄一

    中尾委員長 瀬野君に一言申し上げますが、食糧庁長官の方から一言つけ加えたいという申し入れがありますので、これを許します。食糧庁長官
  78. 澤邊守

    澤邊説明員 先ほどお尋ねの、きのうの審議会において生産者代表の五人の意見がどういうことであったかということにつきまして、米に直接つながる問題についてお答えいたしましたが、大事な点をちょっと漏らしましたので加えたいと思います。  一つは、農業について長期ビジョンを持てというような趣旨の御発言がかなり出ておりました。  それから第二点は、輸入問題につきまして、国内の農業に悪影響のないようにしっかりやれ、こういう趣旨の御発言がございました。  それから、特に転作に関連する基盤整備についてもしっかり強化をすべきであるという点が、一般論、農政論の中でございました。  落としましたので、つけ加えておきます。
  79. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一応了解しました。
  80. 中尾栄一

  81. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず農林大臣にお尋ねいたしたいと思います。  わが国の農政では麦作対策というものは従来余りやってなかった、四、五年前から急に麦作振興対策というものに政府は取り組んだ、御承知のとおりでございます。何がゆえに四、五年前急に麦作振興対策をやらなければならないようなことになったのであるか、その点の事情がありますならば、この機会にまずそれを承りたいと思うのでございます。
  82. 中川一郎

    中川国務大臣 四、五年来麦作に力を入れるようになった理由はいかんということでございますが、幾つか理由があると思います。一つは、国際的に穀類の長期的、安定的な輸入ができるかどうか。最近ずいぶんと肉に飼料が使われるということになってくれば、長期的には不安定な面もあるのではないかというところから、自給率を高めたいということもあるでありましょう。あるいは、米が余ってきたということになれば、この土地を有効に使うのにはやはり麦に転換することが一番いいのではないか、こういうような点もありますし、特に裏作などについて力を入れますのは、資源の少ない日本が冬場麦をつくらずに遊ばしておくということももったいないことである、資源の有効利用ということもあるでありましょう。こういったような、総合的に農業経営を考え食糧自給率考え、国際環境を考え、だんだん減退しつつある麦を見直そうということで、価格政策なり生産対策に相当力を入れ、特に六十年見通しにおいては七割近い増産を図ってみようという目標も立てまして、意欲的にやっておるところでございます。
  83. 稲富稜人

    ○稲富委員 私、いろいろまた聞きたいことがありますけれども、私の与えられた質問時間がわずか十五分でございますので、二、三問で終わりますので、簡略に私もお尋ねしたいと思います。  それで、そういうようなことから麦作振興対策というものを当然やらなければいけないようになったのでございますが、まず、本年度の麦作生産目標、大麦、裸麦小麦、こういうことに対してはどういうような目標を立てておられるか、その点承りたいと思うのでございます。
  84. 野崎博之

    ○野崎説明員 五十三年産につきまして、われわれは昨年度から約二割程度ふやそうという一つの目標は立てておったわけでございますが、先ほどお話もございましたように、本年の四麦合計を見ますと、都府県の方ははっきり出ておるわけでございますが、北海道の方はまだはっきり統計が出ておりませんので、正確な数字は申し上げられませんが、北海道も入れまして全国的に見れば約二十万ヘクタールを超す。いま先生おっしゃいました小麦、二条大麦、六条大麦、裸麦別に申し上げますと、推定が入っておりますが、小麦では十一万二千ヘクタール、二条大麦では七万ヘクタール、六条大麦では一万二千ヘクタール、裸麦では一万六千ヘクタール、そういう数字になっておるわけでございます。  収量につきましては、統計の方ではまだ把握いたしておりませんので、はっきりいたしません。
  85. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうしますと、たとえばいま政府が立てておられます目標をオーバーした場合といえども、これは先刻芳賀君が質問いたしておりましたのですが、食糧管理法第四条ノ二によりますと「政府ハ命令ノ定ムル所ニ依リ麦ヲ其ノ生産者又ハ其ノ生産者ヨリ委託ヲ受ケタル者ノ売渡ノ申込ニ応ジテ無制限ニ買入ルルコトヲ要ス」ということになっておりますが、その目標をたとえオーバーした場合が生じたといえども、これは食糧管理法の定めるところにおいて無制限に買い上げるということ、さらに、その価格の問題につきましても、この第四条ノ二にありますような食管法の精神に基づいて価格決定する、こういうような立場をおとりになるのであるか。この点は先刻質問がありましたけれども、重ねて念を押しましてお尋ねしたいと思うのでございます。
  86. 中川一郎

    中川国務大臣 米の場合は、必要な米を買い入れる、こういうことになっておりますが、麦の場合は、申し出のあったものはすべて全量買い上げるということでございますので、いかほど増産になりいかほど面積がふえましても、食糧として必要なものは申し込みがあれば全量買い入れるということでございます。
  87. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、麦の生産量がそういうことによって予定よりもふえる、こういうような状態が生じた場合に、今日政府は外麦を買い入れておりますが、この外麦の輸入抑制というものをなされるのであるか、これに対する見通しまたは政府の決意、この点をこの機会に承りたいと思うのでございます。
  88. 中川一郎

    中川国務大臣 輸入は、不足する物を輸入するわけでございますから、国内生産されればそれだけ必要量が減ってまいりますので、自然に輸入量が減って、特に抑制に力を入れませんでも必要のない麦は輸入してこないということでございますので、実質は抑制という形かわかりませんけれども輸入量が減るという形になってくることははっきりいたしておると存じます。
  89. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣は、輸入は必要に応じた物を輸入する、要するに足らざる物を輸入する、こういうことをおっしゃいます。しかしながら、それは食糧全体から考えなければいけない問題であると私は思うのであります。  わが国の食糧は麦及び米もそうでございますが、米が生産過剰を来しているとき、いわゆる過剰米があるときに、日本の食糧というものは十分ある。それならば、必要に応じたときに輸入をするとするならば、米を生産調整までやって麦を買い入れなくちゃいけないということは、食糧対策から言うならば、ただいま大臣の言われた意思とは非常に反すると思うのです。麦のときは、どれだけでもふえた場合は、あるいは輸入は抑制するとおっしゃる。しかしこれは、ただ麦という問題だけではなくて、食糧全体として国策としては考えなくちゃいけないと思う。麦だけではなくて、米が生産過剰であるとすれば、やはり同じ食糧である外麦の輸入を抑制することもこれまた当然でなくちゃいけないと思うのでございます。この点をどういうように政府の方としては考え方を変えておられるか、その点を承りたいと思うのであります。
  90. 中川一郎

    中川国務大臣 米が余っているときだから麦は輸入抑制したらどうかという意見が非常に強いわけなんです。しかし、麦が必要で百万トンあるところへ九十万トンしか入れないということになって、九割しか麦が入らなくなった場合、一体これを十割必要な人にどう配分していくかという非常に厄介な問題が出てくるわけでございます。配給統制でもして必要な量の九割しかやらぬという、その一割足りない分を一体どこで削っていくかという実際上むずかしい問題が一つ出てまいります。それから、消費者が麦が食べたいのに何で輸入制限するのですか、無理して米を食わせるのですかという消費者の要望に一体どう説明していくかという問題も出てまいります。  そこで、政府としては、米をたくさん食べていただくということを誘導して、結果として麦が入らなくなってくるという策以外に、国家統制によってことしは何トンしか入れない、そしてどこどこの商社に割り当てて、それはどこどこの製パン業者、製めん業者に割り当てるんだというようなことはなかなかでき得ないところで、われわれも頭を痛くしておるところでございます。麦ならば、余っておりますからもう買いませんで簡単にできるわけですし、消費者に御不満もないということで麦ならできます。米と麦を一緒に必要な人に米を食べろというわけにはなかなかいかぬということで苦しんでおるわけでございます。
  91. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうおっしゃるならば、日本の麦と外麦とおのずから性質が違うんでしょう。日本の麦は外麦のようなパンにはならない。そういうような解釈でもっていくとするならば、日本の麦そのものもやはり外麦のような品種改良をやるとか、そういうふうにしなければ、日本の麦と外麦との使用の方途が違うわけなんです。種類は同じ麦であっても違う。それを混同して考えられることに一それを混同するならば、米と混同しても同じことになってくるのであって、ただいまの大臣の御答弁によりますと、麦ならばいいとおっしゃるが、それならば、麦ならば外麦と日本の麦とは性質が違うのですよ。用途が違うわけです。この点をそれじゃどういうように考え方を変えていかれるか、この点を承りたいと思う。
  92. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに外国麦と国内麦との性質が違う、用途が違うという御指摘もあると思いますが、いまのところ国内麦は主としてうどん等に使われております。これらは多々ますます弁ずるでございまして、それがふえていけばふえていくだけ外国の座敷が少なくなるということで、これがふえて、行く先がない、消化される座敷がないという状況にはないようでございます。これはもし必要があれば専門家にまた御説明させますが、概して言えばそういうことになっておるようでございます。
  93. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣の答弁はどうも何か場当たり的な答弁のようでございますけれども、そうなれば麦の品種の問題から考えて、外麦に相当する日本の麦でなければ、大臣のただいま御答弁なさったような見分け方は出てこないと私は思う。  さらに、ここで考えなくちゃいけないことは、麦を非常に奨励される、麦作奨励、これは非常に結構なんです。ところが今度は、日本は麦作奨励によって非常に麦ができますと、またこれは当然価格決めなくちゃいけない。そうしますと、今度はおのずから国内において、一方においては米の消費拡大を図りながら、麦が生産されたことによって米の消費拡大を阻害するというような、こういう問題もまた起こりはしないかという憂慮が生じてくると思うのでございますが、ここまで政府考えておられるのであるか、この点もこの機会に承っておきたいと思うのでございます。
  94. 中川一郎

    中川国務大臣 麦につきましては、御承知のように国内生産の占めるウエートというものは非常に少ないわけでございます。したがいまして、これがふえましても、外国麦の座敷はこれを取り返すという作用はありましても、国内の米の生産を抑制といいますか、そういったことに支障を与えるというようなことはない、米の消費拡大に国内産がじゃまをするというようなことはない。国内生産は外国麦の座敷にストレートに影響していく、こういうことだろうと存じます。
  95. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、最後に重ねて念を押しておきます。  麦の生産が十分増大してくれば、麦の生産が増大した分だけは外麦の輸入は減らす、こういうことははっきりいたしておる、こう解釈して差し支えないのでございますか。
  96. 中川一郎

    中川国務大臣 そう理解願って全く差し支えはないと思います。
  97. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでありますならば、なおさら麦の生産振興対策というものはやらなければいけないと思いますが、そうしますると全麦価の問題があるんです。どうしても麦をふやそうとすれば、その生産費を償い得る価格、すなわち、麦は労力に引き合わないからつくらないというのが一般の農民の概念でございますから、麦価決定するに当たりましては、これは十分農民の労賃を、労働力を評価して、そして麦を生産することに対する農民が希望の持てるような価格決定するということ、これは非常に重要なる条件であらなければいけないと思いますが、これに対してはそういうような考え方麦価決定をなされようとしておるのであるかどうか、この点をひとつ念を押して承っておきたいと思うのであります。
  98. 中川一郎

    中川国務大臣 麦価決めるに当たりましていろいろ配慮しなければならぬことがありますが、一つは、厳しい方から申し上げますと、国内産の消費者麦価というのは外国の麦を中心にして決まっていくわけです。大部分が決まっておりますから。そういたしますと、外国麦は非常に安いわけなんです。どのくらい安いかと言うと、生産費におきましては約七分の一なんです。日本が七倍でございます。それが運賃なり関税なりかかって国内で流れましても、四分の一ぐらいで入ってくるわけです。したがいまして、四分の三のところは——日本の一俵分に対して外国では四俵入る、値段で。ですから三俵分は奨励金なり何なりで国がこれを補てんしていかなければいかない。価格補てんです。でありますから、麦一俵つくっていただきますと、実に七千円の財政負担という非常に厄介な問題があるわけです。約一万円のうち七千円は食管でもってめんどうを見ていかなければいかない。でありますから、麦をつくることによって大変な国の財政負担が伴う。  それじゃ麦価は対米比価からいっても安いんだから、上げたらどうか、そしてそんなばかなことにならぬように、しかるべき値段で売ったらどうだという議論がありますが、これがまた厄介でございまして、消費者サイドから言うならば、外国麦が円高等で非常に安くなっているんだから、もっといまの麦価を下げろというこれまたかなり強い有力な意見があって、据え置きをせざるを得ないということになっております。それでも価格が大事だというんで、昨年、御承知のように奨励金を入れまして四十数%の値上げでございますが、約一万円になる。そして対米比価も、その他の奨励金も入れまして約七〇%に上げるようにした。今後もこれをベースにしてパリティでの価格の引き上げは行っていくということで、価格は一応決着をして、そしてそのほかに排水であるとか、品種の問題だとか、コンバインの問題だとか、いろいろと生産対策も行って、麦は多々ますます弁ずるという方向でいきたい。価格についても汗をしぼりながら最善を尽くしておるんだということを御理解いただきたいと存じます。
  99. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後になりましたが、何と申し上げましても、麦価の問題ではいま言うような外麦との価格の問題があると思いますけれども、やはり日本の農業というものをわれわれは滅ぼしてはならない。日本の農業を考える場合には、やはり日本の生産費によって農民の希望の持てるような、こういうような農政を確立するというこの基本的立場において、これは無視するべきものじゃないという考えを持ってひとつ決定をしていただきたい。  最後にお尋ねしたいと思いますのは、飼料麦に対しまして、政府は六十キロ当たり二千四百六十一円の奨励金をお出しになるようになっております。この飼料麦の奨励金の問題で、もしもいま予算の目標とされておる予算金額をオーバーするように飼料麦がたくさん生産された場合、この場合でも、この奨励金でございますか、これに対しては従来の方針どおり全額補償をする、こういうような目安をつけておられるのであるか。ことしは飼料麦の生産が雨のために非常によかったわけですから、この点に対しての考え方をひとつ最後に承りたいと思うわけでございます。
  100. 杉山克己

    ○杉山説明員 本年度の飼料麦の生産につきましては、途中でもって、見込みといいますか、計画量の変更を行って、二万三千トンというように決めておったわけでございます。しかし、実績を見ますと、これを相当大きく上回る、多分二万五千トンくらいになるのではないかというような状況になってまいっております。そして、この価格差についての補てん、その財源につきましては、財政負担の分もございますが、同時に業者、関係者の積立金による部分もあるわけでございます。そうなりますと、政府だけでその財源負担をどうするかということは決められないということが一つと、それから増産された飼料麦の中で、良質なものは当然食用にも供し得るものという規格のものがあるわけでございます。そういうものはできるだけ、食糧庁の方とも相談いたしまして、食用麦に回せないものかということでの扱いも含めて、全体的にこれを検討してまいるということで、いま関係者寄り寄り相談をしているところでございます。
  101. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間がありませんので、これにて終わります。
  102. 中尾栄一

    中尾委員長 次は、津川武一君。
  103. 津川武一

    ○津川委員 時間もないので、基本的なことを三つばかり大臣質問して、そのことでまた、問題があれば、お昼過ぎに質問を続けさしていただきます。  生産者麦価のことでございますが、政府は昨年基本麦価奨励金を繰り入れ、二千三百円も上げた。それはやはり非常によかったと思います。それは生産者麦価に対する基本的な態度としてよかったと思いますが、それでも北海道などでは麦専業の畑作の耕作面積は減っております。依然として、麦の増産体制に対してその点ではまだ問題があります。  一体、生産者麦価がどうしてこんなふうになったかについて、私たちは私たちなりに意見を持っておりますが、それは、昭和二十五、六年、アメリカの占領下で、当時としていたし方なかったかもわかりませんが、占領下で押しつけられた非常に低い価格、それが二十五、六年の平均価格、それを基準にその後の農業パリティ指数の上昇率を乗じて算定してまいりました。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 この算定方式は、麦の生産に要した費用とは関係なく決められ、しかも基準年次が低価格の上に、その後の都市での労働者の賃金の上昇分が反映されていない、こういうかっこうであります。そこで、私たちもこの間、政府に、今度決め生産者麦価については、こうしたこれまでの低価格押しつけの根拠となってきた算定方式を改め、再生産を補償する価格という農民の要求にこたえることなしには、いま極端に低下した自給率を引き上げることはめんどうだと思っております。そこで政府は、都市勤労者並みの労働報酬が得られるように、再生産費が補償されるように、自給率が急速に高まるように必要な水準に決めるべきだと思うわけでございます。この点での大臣の端的な所信を聞かしていただきたい。ことしはパリティ指数でやるけれども、何らか考えて、さらにはこういうことに対して根本的な考慮を払うべきだと思うのです。これが一つ。  時間がないので、全部続けてしまいます。第二の質問は、今度利用再編対策、いわゆる新減反で、麦、小麦転作にかなり大幅な奨励金を出してまいりました。これも私はそれなりに評価するにやぶさかでないのですが、いままで小麦を守ってきた人、つくってきた人、この人たちは非常に宝物だと思うのです。転作でいくと有利で、いままでやってきた農民に不利な形になる。同じ小麦をつくる人でなぜこんなふうに差をつけるのか。転作の場合国政の要請もあったろうけれども、いままでつくってきた農民こそ小麦生産の宝物だと思うのです。ここのところに報いなければならないと思います。行政における不公正も是正されなければならないと思います。この点でやはり修正の必要があると思いますが、この点の大臣の見解を伺わしていただきたい。こうなっておるからこそ、農民の側からは、その不足分を補う意味もあって転作奨励金を交付するようにという要求が出ております。この点を聞かしていただきます。  三つ目、最後の問題は、一生懸命やっていますけれども、やはりいろいろな点で規格外のあれが出てくることでございます。等外規格外の麦はかなり出てまいっております。これは、非常に雨に弱い、これからまた局地に出てくる、いろいろな点で出てきますので、この点で、補償金の金額ももう事切れているような状況でありますので、これに対してかなり施策が必要になってまいりました。農民の要求から申してみますと、五十三年度産麦以降、規格外麦の発生は気候によって左右されるし、しかも地域に集中的に出てくる傾向も見込まれますし、作付面積の増加に伴う発生量の増加も見込まれます。そこで、等外規格外麦の常時買い入れを行う、検査規格の改善を図る、それから麦振興特別基金の増額を図る、こんなことがいまかなり要求されております。  この三つの点で大臣の所信を伺わしていただきます。
  104. 中川一郎

    中川国務大臣 麦価が、米価比較してもあるいはその他に比較しても安いという議論がありまして、昨年、奨励金麦価に入れる、いろいろ議論がありましてそういうことの措置をとったのも、まさにそれにこたえるためである。かくて、麦価としては、米価に比べても、その他の奨励金もありますから、まあまあいいところへいっておるのではないか。もちろんパリティその他農村の経済事情を勘案しまして、プラスしなければならぬものはプラスしてまいらなければなりませんが、根本的な問題は、昨年の奨励金価格に入れるということでまずまず解決したのではないか、こう思います。  二番目の、転作農家との不公平の問題でございますが、これは、麦のみならず、北海道などでも、ビートをつくっておりますと、畑でつくれば二万円にしかならない、水田でつくれば四万円になる。同じものを何でそんなに差をつけるのだという議論もあるわけでございますが、何といっても、いままで水田をつくってそれだけの収入のあった人が収入の少ない方に転向するわけでございますから、そして国の政策に御協力をいただくということで出す特別のものであって、それまでも畑作農家の人のめんどうを見るというわけには、麦をやればほかのものもみんな出てまいります。これは野菜についてもみんな言えることでございます。そこまで踏み切ることはできない。そういうこともありましたので、先ほどの奨励金も、いよいよ転作をやらなければいかぬ、こういうときに、麦作農家初め、ビートもそうですし、大豆もそうですか、奨励金価格に取り込むということもありましたことも含んでおるかと存じます。  また、規格外の麦についての取り扱いでございますが、これは、政府としても最善、できるだけのことをやっておりますが、詳細については長官の方から答弁させたいと存じます。
  105. 澤邊守

    澤邊説明員 等外上麦が発生いたします場合は災害の場合が多いわけでございますが、従来、その発生の状況を見まして、必要があれば買うということをやっておりますので、そういう事態に応じまして買うように努力をしたいと思っております。等外上は、これは他の等級のものと混合利用すれば食用として使えるということでございますので、ただいまのような措置をとるわけでございます。ただ、規格外麦につきましては、混合加工を行っても食用には向かないということでございますので、政府買い入れ対象にはいたしておりません。ただこれにつきましては、農蚕園芸局長からお答えしますような別途の措置を講じておるわけでございます。
  106. 野崎博之

    ○野崎説明員 価格差補てん金の基金の問題でございますが、これは先生御承知のように、五十二年度に麦の生産奨励金価格に繰り込まれましたことに伴いまして臨時的措置として設けられたものでございます。全国米麦改良協会に十八億円の全額国庫補助による金を出しまして、全国的に五%の規格外麦が出たときにこれを出すということで、現在は約五億支出いたしておりますが、まだ十三億残っておりますし、従来からの例を見ましても全国的に大体一、二%程度しかそういう規格外麦は発生をしない。そういう情勢から考えますと、いまこの金をまたふくらますというような性格のものではないというふうに思っておるわけでございます。
  107. 津川武一

    ○津川委員 細部については午後にもう一回詰めますが、大臣パリティ指数生産者麦価決めていくときの基準になったのが昭和二十五年、六年、このときに占領下で仕方なかったけれども小麦価格が非常に低かった。それにこうパリティをやっているから、やはり昨年やったことは非常によかったけれども、一回だけで事を片づけないで基本的に算定方式を検討してほしい、このことを強く大臣に要請しておきます。  もう一つは、生産調整をやった人と、いままでやってきた人の差は、これから十年計画を皆さんおやりになる、われわれは押しつけは反対だけれども皆さんおやりになる。この十年計画の基本のスタートになってきますので、この不公平はどうしても考え措置していただきたい。この二つのことを要請して質問を終わらせていただきます。
  108. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  109. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  110. 島田琢郎

    島田委員 先ほどの大臣質問に続きまして質疑を進めさせてもらいます。  先ほど食糧庁長官からお答えをいただいておりましたものを引き続き承りたいと思いますが、最初からちょっと言い直してください。——じゃ、もう一回質問します。  先ほど私がお尋ねをしましたのは、麦の規格についてであります。大臣に、考え方といいますか、事実認識をいただくという意味で、私は大臣の見解を求めたのが主なる私の考え方であったわけでありますが、せっかく専門的な数字的なお話も長官からありましたから、この際ですから、後ほどの質問でやろうと思っておりましたが、引き続きその点お尋ねをしておきたいと思います。  先ほど私が申し上げましたのは、御承知のように、規格につきましては一、二、三、等外上と、こうあるわけであります。等外上については、先ほどもお答えがありましたが、これはそのときの実態に応じて政府買い入れをする、こういうことをその都度決めているわけでありまして、絶対に等外上は政府買い入れる責任があるというふうにはこれはなっていない。しかし、現実には毎年相当量の等外上と言われる麦が発生をしている。そのたびに農民の側としては非常に不安を持っておりますし、制度的には買い上げが義務づけられているわけでないですから、一回一回長官のところに陳情要請をいたしまして、何とかことしもよろしくお願いいたします。買ってください、こういう方式でやっとこ認められて等外上の買い入れが決まる、こういうふうなことであります。このために農民が持っております不安というのは非常に覆い隠せないものがありますし、しかも、そのたびに運動をしながら、東京にも来て、長官に直談判でお願いをするというようなことでありますから、これは経費だって容易ならぬ。こういうふうなことをやめて、少なくとも一、二、三、等外上は当面買い上げを義務づけするというぐらいの考え方がないのか、こういうことでありますし、さらにまた、規格外麦の発生に伴いまして、先ほど私は申し上げましたが、A、B、C、Dという販売ランクで、全農が窓口になっておりますが、販売ランクによって実需者を探しながらこれを売っていく、こういうことに実はなっている。しかし、その追跡をしてまいりますと、私の調査では、規格外麦と言われて食用に供することには問題があると言われているような麦が、現実には八〇ないし九〇%食用に供されているという、そういう実態があるのでありますから、こういう点を野放しにしておくというのはいかぬじゃないか。第一、農民はそのことによって大変大きな実害を受けているわけであります。買いたたかれる。昨年の例ですけれども、これは飼料用から始まりますが、飼料用は千九百円です。御承知のように、麦は、昨年決まったのは九千七百円何がしでありますから、これはとっても話にも何もならない。捨てた方がいいような値段になってしまうということであります。もともと飼料用としてつくった麦ではございませんで、残念ながら天候の支配によって規格外に落ちたという、そういう点は、経費を同じくかけるばかりではなくて、乾燥調製、販売に当たって大変大きなコストがかかっているにもかかわらず、一年間丹精込めた麦がそういう状態で買いたたかれるといいますか、話にもならないような値段でしか買われないというのは、生産者にとってはたまらない気持ちであります。事実は食用に使えるというものも中にはあるわけでありますから、この辺についても、規格に検討を加える必要があるのではないか。私は昨年も一昨年もここで問題にしましたが、雨害によります穂発芽麦の問題を取り上げましたときにも、百分の二粒という一つの規制がありますけれども、現実にはなかなか百分の二という、これがアミノ数値とかいろいろな面で実需者の中では食用に供することができないという理由のもとに、百分中二粒の穂発芽粒がまじっているときには、これは規格外として、正規の買い入れはいたしませんということになっているわけですけれども、それも肉眼で見ていくわけで、検査員の検査方法に疑義をはさむものではありませんけれども、これは人間のやることでありますから、やはり見方によってはそれはいろいろ違いも出てきます。さすれば、機械でやれるかというと、これは機械ではとても精密なこういう検査まではできないのでありますから、そういう麦がどんどん出ていって、規格外として食用の方に回っていくというようなことがそのまま野放しされていていいのかどうかという点が、私は大いに疑問のある点であります。ここのところの実態を長官として把握されていらっしゃるかどうかを先ほどお尋ねしたのであります。おわかり願えたかどうかです。
  111. 澤邊守

    澤邊説明員 等外及び規格外麦、その品質が一般には食用に適しないということで、従来からその買い上げ予定をしておらないというのがこれまでの考えになっておるわけでございますが、災害等によりまして低品位の麦が大量に発生いたしました場合には、特例として他の良質の麦と混合加工することによって一応何とか食用に供することができるという、等外上麦について買い上げ措置をやっておるわけでございます。確かに毎年決めるということでやっておるわけでございますが、事実上はほとんど毎年やっておるという実績になっておるわけでございますが、本来やはり食用としては不十分なものであることは間違いないわけでございますので、一般的には単独では使えない、そういうものでございますので、やはりその年の発生状況等を見た上で措置をするという考え方を変えるのは適当ではないのではないかというように思いますけれども、実際の運用といたしましては、これまでもやっておりますような考え方で、その都度財政とも相談しなければいけない問題ではございますけれども、私どもといたしましては、等外上麦につきましては混合加工すれば食用に供するということでございますので、政府買い上げ措置を今後とも考えていきたいというように思っておるわけでございます。  規格外麦につきましては、混合加工を行いましてもおよそ食用には向かないということで、買い入れ対象にはなっておらなくて、別途生産関係における措置はございますけれども、やっておらないわけでございます。  そこで、いま御指摘にございました、規格外麦につきまして一部が食用に回っているではないかということで、八〇%ないし九〇%という御指摘も何かあったわけでございますが、私どもが調べておりますところでは、規格外麦製粉会社買い入れは、五十一年産が約五千四百トン、五十二年産が二千トン程度でございまして、五十一年産においては規格外発生量の一八%、それから五十二年産は一四%程度であるというふうに把握をいたしております。買い入れするものがそうである。それから製粉会社で調べておるわけでございますが、私ども聞いておりますところでは、買い入れました規格外麦は、大部分全粒粉に加工の上、飼料原料として使っているほか、合板の接着剤の増量剤、それからグルタミン酸ソーダの製造原料等、いわゆる主食以外の用途に使われておりますので、主食用の検査規格製粉会社買い入れとの関係は直接にはないというふうに考えるわけでございます。先生どういう方法でお調べになりましたのか、もしあれでしたら、後ほどお聞かせいただければ、その実態は調べてみたいとは思います。
  112. 島田琢郎

    島田委員 私はもちろん主食に使うということを言っているのではありませんで、言ってみれば準主食とでも言うのでしょうか、工業用に使われるものはもちろん人の口に入るものでありませんから、それは除外する。あるいはえさもそうであります。それを除いて、ともかく加工されて何らかの形で食用という用途に供される。的確に言えば準食用と言った方が正確かもしれません。こういうものについて政府はその実態を正確に把握しておられるかどうかという点が一つであります。同時に、私が指摘いたしましたような低価格での取引になっている。その事実はどうか。それから、価格差補てん金が改良協会に績み立てられて、そこを通じて支払いがなされるわけでありますが、五十二年産の麦の対象数量は幾らでありますか。
  113. 澤邊守

    澤邊説明員 規格外麦の用途別数量につきましてただいま資料が届きましたので、ちょっと五十二年産について申し上げますと、飼料用につきまして八一%、それからみそ、しょうゆ用につきまして一%、それから麦茶用が三%、その他用が一五%、恐らく先生のおっしゃっておりますのは、その一五%の中の八割、九割が製粉会社に行っておるというような御趣旨じゃないかなというふうに、これは私の方で推測したわけでございます。合計で五十二年産につきましては一万四千六百三十七トン、こういう数字が出ておるわけでございます。  価格につきましては、もうすでに御案内のとおりでございますけれども、五十二年産小麦農家手取り額は、政府買い入れ価格三等で契約生産奨励金を含めますと一万百七十六円ということになるわけでございますが、等外上は九千二百三十三円、それから規格外は私どもが把握しておりますのは、価格差補てん金を含めまして五千五十円という数字を一応把握いたしておるわけでございます。これはもちろん農家の手取り額でございますから、反面御参考に申し上げますと、政府の売り渡し価格から見ますと等外上は三千二十六円ということになるわけで、売り渡し面という点からすれば規格外よりも等外上がむしろ安くなっている。三等自体も三千二百七円というような数字になっておりますので、農家の手取りという点からすればかなり差があるということは、これは私どもも御指摘のとおりだというように思いますが、考えようによっては、それだけ政府食用に適するものについては保護を加えておる、こういうようにお考えいただきたいというように思うわけでございます。  なお、基金のことにつきましては農蚕園芸局の方からお答えいたします。
  114. 野崎博之

    ○野崎説明員 いまお話ございました価格差補てん金の対象数量は一万四千六百三十七トンということでございます。
  115. 島田琢郎

    島田委員 政府がお示しになった資料は正確なものというふうに受けとめたいわけでありますが、私の申し上げたえさ用千九百円なんという値段も実在しているということは現実にあるわけであります。ただ平均値でお話しされているようでございますが、高いところは有利に売っている場所もあるのかもしれません。しかし最低のこういうところでこういう状態が生まれているという点を私は重視しておきたい、こう思うのです。  なお、詳細な資料を私も欲しいと思いますので、その資料を後ほど御提出願いたい、こう思っています。  そこで、ちょっと順序が不同になってしまいました。大臣が出たり入ったりの質問でありまして、しかも急遽私が三十分余分に質問をする、こういうことになりましたし、質問通告は一時間ぐらいを予想して言ってありますから、あるいは突然何が出るかわからぬというようなことになりかねないことでありますが、しかし通告以外のことできょう資料の手持ちがないとすれば、突然のことでありますから、そのことはやむを得ない。したがって、資料として御提出願うとか、あるいはあとう限り長官、局長からお答えを願う。まあベテランで専門家の皆さんですから、私が何を聞いたって、それはわかりませんなんというようなことはないはずだと思いますから、その点はひとつ正確にお答えを願いたいのですが、正確を期しがたい面についてはやむを得ない、こう思います。  そこで、生産振興の対策について主として野崎局長にお尋ねしたいと思いますから、どうか前の方の長官のお隣にお座りいただきたい。  政府は過般、麦生産の中期目標というのをお出しになった。これは地域的な、地域別に分けた中期振興政策目標でありますけれども、これを大まかにひとつ理解をする意味で御説明を願いたいと思うのです。
  116. 野崎博之

    ○野崎説明員 国内産麦の生産につきましては、全国ベースでは先生御承知のように農産物の需要と生産の長期見通しとその計画に即してやっているわけでございますが、昭和四十九年度以降特に麦対策に非常に力を入れて麦の生産振興を図るというような見地でいろいろな施策を行ってきたわけでございます。  この対策につきまして、これを円滑に推進するために、特に麦につきましては、毎年昭和六十年とその年のちょうど中間に当たる年、昭和五十二年で言えば中間に当たる年は昭和五十六年になるわけでございますが、その年における、五十二年現時点におきますその中間年次の生産目標を樹立するように、これは都道府県を通じまして市町村段階までおりておるわけでございまして、市町村の計画が積み上がってきているわけでございます。この中間年次の生産目標はあくまでその努力目標でございまして、そういう努力目標という性格のものでございますので、これを集計して全国的に発表するとか、そういうことは現在いたしておらないわけでございます。
  117. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、中間年次の五十七年の努力目標と言われるのはどういう数字ですか。
  118. 野崎博之

    ○野崎説明員 各都道府県別に見ますと、おおむね長期見通しの方向へ向かって進んでいるというふうに考えられるような数字でございます。具体的にこれはまだどこにも外部的に発表いたしておりませんので、われわれも内部では大体長期目標に向かって進み得る数字だというふうなとらえ方をしているというふうに御理解を願いたいと思います。
  119. 島田琢郎

    島田委員 たとえば中期目標で柱になっているのは、土地の有効利用、特に裏作におきます土地の有効利用、それから麦作作業の受委託、こういうものが柱になっているようであります。日本の麦の振興を図っていく上で最大のネックになっているのは、北海道のような主産地帯における麦はそれなりに一応の進め方がもくろめるわけでありますけれども裏作振興というのは言うべくしてなかなかむずかしい。つまり、いまの麦価格、こういうものも頭に描かなくちゃいけないし、それよりも何よりも一番大事なのは、経営面積をどう確保して、裏作、表作で農家のいわゆる所得をどう得るか、やはりこういうところに非常に大きな目標があると思うのです。そのために期間借地を行うとか、あるいは農作業の受委託を行うとかいったような方法が手法として麦作振興の中で大きな柱になっているのだと思うのですが、これは一体どのように進められていますか、進んでいますか、その実績のほどをお聞かせ願いたい。
  120. 野崎博之

    ○野崎説明員 いまおっしゃいましたように、五十二年度から高度麦作集団育成事業、それから五十三年度から畑麦作集団育成事業、こういう事業を行っておるわけでございまして、実績につきましてはまだ正確にはつかんでおりませんが、大体目標どおりに進んでいるというふうに考えておるわけでございます。
  121. 島田琢郎

    島田委員 六十年目標を達成するという点で、午前中も大臣と他の委員とやりとりがあったようでありますけれども大臣はかなり自信を持っている、こう言っていますが、しかし、事務当局ではその実績把握が正確でない。どこに目標を置いてどういう努力をしようとしているのか、それではあいまいでさっぱりわからぬということになってしまうのですが、六十年目標というのは、先日お聞きをいたしましたところでは、大体一七・四%くらいを目標にしている、こういうことであります。四麦合計ですから、私どもに言わせればそんな目標ではとても麦作振興などということにはならない、麦の自給率向上なんということにならぬのではないか、こういう点で厳しく指摘をしたことがあるわけでありますが、いま一生懸命麦つくれ麦つくれと言っても、政府の手法にかかわる部分もはっきりせず、ただ六十年目標を一つの努力目標に挙げて努力するだけではいかぬのではないか。幸いというか不幸というか第二次減反政策が強行されまして、米から麦に転換をするというのが本年度においては大きく面積増加につながっているということになると思うのです。ところが、それは邪道でありまして、午前中も申し上げましたように、本当に日本の麦作を支えるのはだれか、これは畑作の麦つくり農家がやはり柱であり主軸でなければいけないと思うのです。そこのところに対する適確な政策がないというところに私は大きな不安を持っていると思う。なるほど米つくりをやめれば七万円くれますよ、こっちの方はいいわけでありますけれども、従来から本当に麦の生産振興のために大変な努力を重ねてきた畑作のいわゆる麦つくり農家は何の恩恵にも浴していないということだったら、これぐらい不公平なやり方はないと私は思う。確かに裏作麦振興のためには十アール当たり六千円というふうに奨励金がつけられてはいますけれども、しかし、実態はなかなかこれも政府の思うようには進んでいかない。かっこよく中期目標なんということをお出しになるものだから、私はこれはえらい頼りになる目標かと実は思っているのでありますけれども、いまの局長お話によりますと、これもどうやらあやふやで、どこによりどころがあるのかわからない。私の方からあえて指摘をしましたが、期間借地とか麦作作業の受委託とかという裏作麦復帰のための大変大きな柱は示されているので、ですから、ここのところがしっかりしていけば麦の生産は相当伸びるのではないかというふうに私は期待をしていたのですけれども、その点についてはまだ実績ははっきりわかっていないばかりか、目標もどうもすっきりしない。あえて言うならばそれは努力目標でありますというのでは、私は政策としてはこれは不満足なものではないかという気がするのです。この点重ねて指摘をしておきますが、麦生産の中期目標というようなものをせっかくお出しになっているのでありますから、これを本当に力のある、パワーのあるものにして、麦生産の飛躍的な拡大が図られるような、そういう思い切った措置を講じてもらいたいものだ、こういうふうに思っています。  ついでですから、土地利用の面で、いまの裏作麦の推進というようなことで、これも政府としては一つの要綱を決めまして推進しようというような考え方を持っているようでありますが、これも単なる文字にしただけのことであって、実質も具体策も伴わないものであるのかどうか、これはいかがですか。
  122. 野崎博之

    ○野崎説明員 水田裏作麦につきましては、これは連作麦を中心として麦の振興を図るという施策は一貫をいたしておりますので、従来から農業団体あるいは地方公共団体が中心になりまして水田裏不作付地解消運動を五十三年度は一億ぐらいの金でやっておるわけでございますが、これは先ほど申し上げております水田裏の作付奨励補助金あるいは高度麦作集団で、期間借地等による土地利用あるいは営農排水、そういうような事業を実施いたしますとともに、麦に関する土地基盤の整備もやっていく、同時にまた、麦の早生品種の育成と稲の中苗移植という技術改良あるいは品種改良、その普及ということに力を注いで、水田裏作麦の増産に力を入れるというふうに考えておるわけでございます。
  123. 島田琢郎

    島田委員 何だかさっぱり、わかったようなわからぬようなお話でありますけれども、時間の関係もありますから、前へ進みます。  私どもは五十年に農振法を改正しました。そういう点が問題であるから、ぜひひとつこの農振法の改正を図りながら、土地の有効利用を図ってまいりたいという説明でありましたから、私どもは、それはいいことだと思って、一部疑問を残しながら、質疑の中でおおよそ政府考え方がわかりましたから、これを成立をさせたという経過があるのであります。まだ二、三年しかたっていないから、あなたの思ったようなわけにはいかぬということになるかもしれませんけれども、しかし、事は急を要するのでありまして、やはり具体的に進むというようなことについて、すでに国会に法律改正が持ち出されましたら、もう次の段取りが進められているというのが、常識として私ども考えておるのでございます。法律をつくっておいて後からなわをなうみたいな話では、これは一体法律改正は何のためにあるのかと疑わざるを得ないというふうに考えるのであります。ちょっと苦情を申し上げておきますが、鋭意ひとつ麦作振興に対する基本的な考え方を明確にし、さらに具体的にどのようにして、どの地域で麦作振興を図っていくのか、そういう点をひとつ早急に明らかにするように努力してもらいたいと思っているわけです。  さて、そうした生産振興にかかわりますと、非常に幅広いいろいろな具体策が要るわけであります。現実には細切れであるとはいえ、あるいはそれぞれの所管局で違ったやり方であるとはいえ、生産振興策について幾つかの考え方が出されているようでありますが、たとえば、一つは機械の問題であります。最近、北海道におきましては、麦つくりの大型化というのがやはり地域的にずっと広がってまいりまして、大型コンバインを使って収穫をやるというような形に切りかわっているわけでありますが、北海道だけのことを言えば、大型コンバインというのは農家も非常に望んでいることでもありますし、ぜひ機械の導入に当たりましては、農民の皆さん方が使いやすい、自由な選択をさせるべきだという考え方もあります。また、地域によっては中型、小型、それぞれあるわけでありますが、最近は国産のバインダーあるいは小型コンバインあるいは歩行式のバインダーというものも出てまいりまして、かなり収穫作業については前と違った機械化の方向がとられているようであります。しかし、との機械の選択に当たりまして、前から見るとずいぶんよくなったのでありますけれども、まだ一つのタイプを示しまして、かなりメニュー的にはなってきましたけれども、それでも自由に選択するというようなことがまだ許されていない。とりわけ小型バインダーあるいは小型コンバイン等については助成の対象になっていないというものもございます。これはひとつ大きく麦作振興の立場から、たとえば収穫機だけを取り上げてみても、そういう点の不自由さがまだ残っているのでありますが、これをオープンにして自由に選択させて、地域に合った機械が合理的に使われていくということに考え方を向けるべきだと思うのですが、その点はいかがですか。
  124. 野崎博之

    ○野崎説明員 先生のおっしゃいましたように、麦の生産振興を図るためには、機械の導入というのは必至でございまして、そういう観点から、従来も栽培、収穫、乾燥等に至る機械の導入を図ってきたわけでございます。御承知のように、五十一年度から、これは大型になりますが、例の土地利用型集団営農対策事業の一環といたしまして、麦作あるいは稲と麦と一緒に一貫栽培をやるという場合のトラクター、コンバインの機械、施設の導入も行っておるわけでございますし、五十二年度からは、先ほど申し上げました高度麦作集団事業によっていろいろな機械の導入が可能になってまいっておるわけでございます。これはいま先生おっしゃいましたように、この事業では非常に弾力的に取り扱っているつもりでございますし、われわれとしましても、大体いまのところは、その各地区の経営規模に合ったような実情で高度麦の場合には入っていくというふうに考えておるわけでございます。事業の実施に当たっては、麦作振興地区というものを決めておりますので、一定の要件というものは、これはやむを得ない要件というものがあるわけでございまして、内地では五ヘクタール、北海道では十ヘクタールというものを振興地区の一定の要件ということで決めておりますので、この点は、規模の点はそういうことでございますが、高度麦作集団事業ではそういう適宜選択して入れるように私どもいたしておるつもりでございます。
  125. 島田琢郎

    島田委員 実情は、なかなか局長のおっしゃるようにはならぬのです。農林省の原局で話を聞きますと、それは自由にそうなっておりますと言っても、そこには機械メーカーもしゃしゃり込んできますし、また取り扱う農業団体やり方にもいろいろありますし、最後、実際に使う農家にとってみれば、自由選択というようなかっこうになっていなくて、かなり制約をされた形で機械が押しつけられるというようなことも間々起こり得るわけであります。それは昔ほどではなくなりました。昔はもう上から下まで一本で、この機械でなければだめだ、ほかは絶対助成しない、こんなことでありましたが、これはけしからぬということで改まってまいりましたが、それでもまだまだかなり不自由なものであります。第一、機械の管理作業以下収穫機器に至る日本の農業機械の開発というのは、ごく近年においてようやく軌道に乗りかかった感じがありますが、何といってもこれはアメリカや欧州で盛んに開発されてきたというものでありまして、日本の圃場にそのまま持ってきて使えるというのはなかなかむずかしいものであります。しかし、日本の農家は経営の知恵で、自分の圃場でりっぱにこれをこなすという技術を身につけましたから、いまはかなり問題はなくなりましたけれども、これだって非常に長い歴史を経て今日になっておるわけでありますから、こういう点はひとつあなたのお考えになっておるような指導方針を大いに末端にまでも徹底をさせて、事実そういう方向で機械が自由に選択されていくように指導してもらいたいと思うのです。  それから、小型コンバインの助成というのはどうですか、いまお聞きしたのですが、お答えがありませんでしたが。
  126. 野崎博之

    ○野崎説明員 先ほど申し上げましたように、高度麦作集団事業、この中では比較的そういうものが選択自由になっておりますので、小型コンバインも当然補助の対象になっておるわけでございます。
  127. 島田琢郎

    島田委員 それから、乾燥調製施設についてでありますが、最近麦作振興のいろいろな制度の中で施設もかなり近代的に変わってまいりましたし、麦の乾燥調製に当たっての機械化もずいぶん進んでまいりました。ただ、早くから乾燥調製施設を持っている人たちには、たとえば貯蔵ビンがないとかいうふうな乾燥工場もあるわけであります。それで、依然麻袋に詰めまして単体で処理をするということであります。しかし、昔は六十キロ一俵担ぎ上げたというほどの力持ちが農村にいっぱいいたのでありますけれども、最近はなかなか六十キロの麻袋を軽々と担ぎ上げるなどということは並み大抵なことでございませんで、麻袋処理というのはかなり苦労が多いことがよく指摘されております。何とかこれはバラで貯蔵し、バラで検査、運搬ができるように逐次改めていくべきだということを私は強く要求したいのであります。ところが、実際にはすでにやったものについては新たに全部の施設改善がなされない限り、従来ある乾燥の施設はこれから先も使っていける、したがって、まだまだ寿命もあるし、能力も持っておる。問題は、それに対するバラ貯蔵の施設があれば乾燥調製施設は非常に完全なものになるのだがなあというところに対しても、個別にそういうものが助成できるような道を開け、これは過般私も事務当局にお願いをした経過がございます。ぜひひとつこれも検討願いたいと思うのですが、いかがです。
  128. 野崎博之

    ○野崎説明員 乾燥調製施設全体のお話に関して申し上げますと、北海道につきましては大規模畑麦乾燥調製施設事業を五十年からやっておりまして、サイロとかビンとか、そういうみんな入ったものも対象にいたしておるわけでございます。  それから、高度麦の方では、乾燥調製施設で、サイロのような大きなものは入りませんが、ビンのような三千万ないし六千万円程度のものは補助対象にいたしておりますし、既存の施設で不足する場合にもそれを補足する意味の事業も対象にいたしておるわけでございます。  そのほか、土地利用型の中でも、ビンは対象にいたしておるわけでございますし、いま先生言われましたサイロ等についても今後われわれとしては十分検討はいたしたいと考えております。
  129. 島田琢郎

    島田委員 さて、せっかく乾燥調製施設も完備しましたが、残念ながら乾燥調製施設あるいは収穫機械が十分に機能を発揮し得ない年もあります。つまり、収穫時期におきます長雨が大変大きな災いになる。先ほどからくどくど申し上げておりますが、いまの段階で急がれるのは、何とか雨害に耐える雨害抵抗性品種の開発ができないか、これも切実な農民の声でございます。赤カビ、青カビ対策などはずいぶん昔から麦にはやられてきたわけでありますが、私のところの麦主産地であります斜網郡におきましても連年この時期になりますと雨の長降りで収穫に大困難を来す。せっかくの大型コンバインも圃場で十分走り回ることができない。いわんや乾燥調製施設につきましては、施設は完備していても、入ってくる麦がなかなかスムーズに流通しない、こういう点が非常に問題でありまして、一年がかりで丹精込めた麦が規格外麦に落とされて、本当にコストも引き合わないどころか、逆に経営の赤字負担になって、麦づくりはもういやになったと思わせるような状態になっていることはほっておけないと思うのであります。何とかこの際品種改良、私が言っているような抗穂発芽性の新しい品種の開発が急がれるのでありますが、これは技術会議の方にお尋ねをするのですけれども、いわゆる雨害抵抗性品種の開発というのは不可能でしょうか。
  130. 堀川春彦

    ○堀川説明員 雨の害との関係で、よい麦の品種をつくれないかというお話でございます。  雨の害を回避するためには、まず一つは、わせ化を図るということでございまして、そういう観点からわせ化の特質を備えた品種の育成に努めておるところでございます。こういった、収穫期に雨が非常に多く降るという日本の風土でございますと、そういったことを媒介にして病気が大変出ます。これは西日本で多いのでございますが、赤カビ病などが典型的なものでございまして、こういった赤カビ病にかからないようにするために、赤カビ病に対する抵抗性の強い品種をできるだけ育成をする、これが第二点であろうと思います。  そういうような観点から、わせ化あるいは赤カビ病に強い各種の品種ができ上がりつつあるわけでございますが、もう一つは収穫期に相当長期間雨が降りますと穂発芽を来すという問題があるわけでございます。これにつきましても、麦はもともと収穫期に雨の少ない地方の作物として発達したものでございまして、日本では北海道といえども収穫期にかなり霧雨のような雨がしとしと降るということもございまして、穂発芽の問題もございます。したがいまして、私どもも、そういうことに対処しながら穂発芽をできるだけ少なくする、穂発芽に対して抵抗性の強い品種をつくる必要があると考えております。ただし、一週間も十日も雨が降り続いたところに穂発芽が絶対ないというような品種をつくることはきわめて困難であろう、できるだけ抵抗性の強いものをつくるということに目標を置いて育種をしており、近年、これは北海道向けではございませんが、暖地向けの品種といたしまして、穂発芽性が難であるというものが幾つかでき上がってきております。こういったものの普及を図るということが一つの問題であろうと思います。  それからもう一つ、収穫期の雨を回避するために、いっそ思い切って熟期が非常におくれるといいますか、通常のものよりも一週間ないし十日くらい熟期がおくれるということによって逆にその雨害を回避するという技術はないものか、これは近年、そういった基礎的な理論からやってまいらぬとだめなわけでございまして、そういう新しい手法につきましても研究を開始しておるところでございます。  それから、先ほど来いろいろお話も出たわけでございますが、高水分の麦をいかにして能率よく収穫をいたしまして乾燥をするか、こういうことも結局収穫した穀物それ自身の品質の問題にかかわってまいりますので、私どもそういう角度からも試験研究機関として研究をしておるわけでございます。その結果は、具体的な機械の導入その他につきまして大いに参考に供しておるところでございます。
  131. 島田琢郎

    島田委員 いまの事務局長お話では、私の受けておる印象としては、まだ具体的にそれが一般化できるような状態までは行っていないばかりか、試験研究の段階でもまだ模索があるというふうに聞こえるのですが、そうですか。
  132. 堀川春彦

    ○堀川説明員 具体的に品種名で申し上げなかったわけですが、たとえばわせ麦ということでございますと、現在国内でつくられております小麦の半分近くを占めますところの農林六十一号より一週間程度収穫期の早いサキガケコムギ、ゴガツコムギといったものを育成種普及に移そうとしておるところでございます。それから、赤カビに対しまして抵抗性の強い品種といたしましては、最近育成をされましたものとしてチクシコムギとかシロワセコムギといったものがあるわけでございます。さらにまた、穂発芽に対しまして強い品種といたしましては、シロガネコムギでございますとかゴガツコムギ、セトコムギといったものは穂発芽性難であるということになっておるわけでございます。  こういった問題につきましては、外国からもできるだけ育種の素材、母材を導入をするということもやりながら鋭意取り組んでおるわけでございまして、今後ともこの研究の重要性、育種の重要性を認識して強力に進めてまいりたいと思っております。
  133. 島田琢郎

    島田委員 せっかく研究、育種に御努力をされております試験場のそれこそ隠れた技術者の皆さんには深い敬意を払っているのでありますが、残念ながら国の予算も余り思うようにつけてあげてない、こういう点もあるようであります。きょうは大蔵省に来てもらっておりませんから、この点は指摘だけにとどめておきますが、いまのこうした新品種あるいは従来からある品種の中でも雨害抵抗性の強い品種の開発というのは急がれるという点では、ひとつ地方の農事試験場も網羅し、国が積極的に先頭に立ってこの開発を進めていく、そういう気構えがぜひこの際必要だと私は思っておりますが、こうした被害を受けた麦が一番問題になるのはアミノ数値ということになるわけでありますが、それらいま挙げられました品種は、一体今後雨害抵抗性品種の開発に当たって問題になりますアミノ数値というのは、どの辺を基準に考えて開発、改良を行おうと考えていらっしゃるのか、技術屋さんがおられたら教えてほしいと思います。
  134. 堀川春彦

    ○堀川説明員 低アミノの麦は、やはり加工適性その他から見て問題がございますので、私ども品種開発の目標といたしまして、そういった品質の問題としては、アミノ数値については三〇〇以上くらいを目標にして考えたらどうかということでやっておるわけでございます。
  135. 島田琢郎

    島田委員 三〇〇以上というアミノ数値が、今度は先ほど言った雨害に抵抗性があるのかどうかという点の基準としては一体これはどうなんですか。そうであれば大丈夫なんですか。
  136. 堀川春彦

    ○堀川説明員 収穫期に雨が降り続きますと、収穫された麦のアミノ数値は下がるということがございまして、そういったことが、たとえば粉にした場合の加工適性が非常に悪いということになるわけでございます。アミノ数値の高いものを目標にして育成をいたしましても、収穫期において気象条件が悪いと所期の結果が出ない、こういう関係になると思うのでございます。
  137. 島田琢郎

    島田委員 いま内地府県で主としてつくられている、先ほど五割以上占めていると言われた農林六十一号というのはどんなアミノ数値で、雨害抵抗性のランクから言えばどんな程度ですか。
  138. 堀川春彦

    ○堀川説明員 大体私ども承知しておりますところでは、アミノ数値で七〇〇くらいというふうに承知をしておるわけでございます。  なお、穂発芽その他雨害抵抗性が特に強いということでないものですから、この農林六十一号にかわっていいものがないかということがわれわれの研究の目標でございます。
  139. 島田琢郎

    島田委員 北海道で最近多くつくられておりますホロシリコムギはどうですか。
  140. 堀川春彦

    ○堀川説明員 ちょっとそこまでの用意がございませんので、後ほど資料にして提出させていただきます。
  141. 島田琢郎

    島田委員 通告しておりませんから無理もありませんが、技術会議は専門家がそろっていらっしゃるから、聞けばわかるかと思ったのですが。農家はその点はきわめて敏感でありまして、自己選択の中で、いま専門的なことを申し上げましたアミノ数値もちゃんと頭に入れて、これは高いか低いか、あるいは穂発芽しやすい麦かどうか、倒伏はどうだ、赤カビ病はどうだ、長い経営の経験から知恵を持っているのでありますが、しかし知恵だけでは、いまはなかなか機械化もありますし、天候に合わせて機械を駆使していかなければならぬということもあって、経営が複雑にしてきわめて多岐にわたっていますから、的確な指導は、そういう面も含めて、単なる品種開発とか、あるいは収量の増大とかといったような範囲にとどまらず、機械によって収穫されるということを念頭に置いた新しい品種の開発を急いでもらいたいと思うのですが、大体どれくらいかかると一般的に新しい品種は回るのですか。
  142. 堀川春彦

    ○堀川説明員 ちょっと御質問を的確につかみかねたのですが、大体新しい普及し得べき品種ができ上がるのに十年ないしそれ以上かかるというのは御案内のとおりでありますが、でき上がりまして、結局それを適地をにらんで、農林省では命名登録などをし、普及に移すということになっておりますので、全国レベルの普及率は少なくても、適地において普及を図っていくということでございます。  それにいたしましても、やはり種の問題もございます。それから、農家がそういうものを導入をするについて、いろいろ農家の経堂上の問題も出てまいりますから、やはり早くて数年ということになると存じます。御案内のように、さっきお話の出ましたホロシリコムギは、四十九年に登録をした品種でございますが、現在北海道の小麦の中で約七割のウエートを持っておると存じますが、これなどは普及がきわめて順調に早く進んだ一つの典型的な例であろうというふうに思っておるわけでございます。
  143. 島田琢郎

    島田委員 農蚕園芸局長、それから食糧庁の長官、いませっかく麦を一生懸命つくっても、収穫の段階でそういう思わぬ事態に遭って、来年の麦づくりにもまた勇気がわいてこないというふうなことにもなりかねないという、こういう問題などもあるということが御承知いただけたかと思うのであります。  そこで、話がまたもとに戻るんですけれども、当分、そうした五、六年あるいは完全なものということになれば十年というサイクルでしか新しい品種が一般化してこないという、こういう息の長いものであります。その間、やはり政策的に何らかの手だてを講じていかなくてはならないという意味で、少し順序が不同になってしまったんですが、私は規格についても改善をする必要があるんではないか、こういう意見を持っておるのであります。検査規格についても、考え方を大幅に変えていく必要があるんではないか。先ほど、被害を受けた麦の買い入れまでやれと言ったってそれは無理だというようなお話もありましたけれども、しかし、麦の生産振興を図るという意味から言えば、その点についても考え方をきちっと示してもらうということが、やはりつくる者にとっては大変大きな選択のポイントになる、こう思っているんです。  ところで、大臣にけさほどお聞きしましたら、いよいよ二十三日には麦価決める、その後の質疑の中で二%ちょっとぐらい、食管法四条によって決めるとすればパリティだから、パリティがそれしかないんだからそういうことだ、こういうふうな印象でありましたが、私は、その程度の値上げということになりますれば、せっかく緒についた麦作振興がまた逆戻りするという心配がある。そこで、いま申し上げました生産対策からあるいは品種の改良から、いろいろな麦にまつわります問題というのが非常に多い。とりわけ、麦管理改善要綱というような制度は、これは政府がおつくりになっているのではないと、こう言いますけれども政府が十分指導してつくったこの管理改善要綱、これの持っております不都合な面というのはすでに御承知をいただいている点でありますが、これは政府の前向きの麦の生産振興に対する姿勢を示す意味では、非常に私は問題があると思っております。この際、これを米のように直接管理方式に改めて、全量政府買い入れ実需者に向けて適正に売り払いを行うという、こういう方式に改めるべきだと思っているんですが、長官、これはどうです。
  144. 澤邊守

    澤邊説明員 麦管理改善方式につきましては、昭和四十三年以来実施に移しておるわけでございます。内容は、御案内のように、契約流通の促進を中心とした対策でございます。  そこで、現行食管法に基づきます麦の管理は、間接統制というたてまえになっておるわけでございます。これは本来は自由流通が主でございまして、価格が暴落したときだけ無制限に買い入れる。本来は自由流通が通常であるというたてまえになっておるわけでございますが、三十年ごろから買い入れ価格と売り渡し価格逆ざやが順次拡大をいたしまして、事実上政府が無制限買い入れということで自由流通がほとんど見られないという実態になっておるわけでございます。しかしながら、そういう制度の中におきまして、やはり自由流通のよさを少しでも全量買い入れの中でも実現をさせていくというためには、実需者の希望するような麦を生産をし、流通させていくことが必要であるということから、契約生産といいますが、流通契約といいますか、そういうことを奨励する対策として続けたわけでございます。当初はなかなか順調に進まなかった面もございますけれども、たしか四十六年以降は一〇〇%流通をしております。このために契約生産奨励金というものも交付をしておりまして、現在一俵六百円、小麦について出しておるわけでございます。これによりますと一〇〇%を達成されておりますので、やはり契約生産を通じて、あるいは契約流通を通じて希望に応じたものを生産をしていくというようなことは、これだけ世界的な流通商品でありまして、やはり品質の面におきましても実需者側、ひいては生産者側の需要、希望というものが相当強いわけでございますが、それに合わせた生産なり流通をさしていくというためには私どもとしては必要なことではないかということで、現在幸いにして一〇〇%達成されておりますので、この線で進めていっていいのではないかと考えておるわけでございます。事情がよほど変わればまた別でございますけれども、現在のところ目的を達成している。御案内のように、先生御出身の北海道のようなところでは契約流通をやる場合に、実需者と遠隔地に離れて生産がされておりますために運賃その他の点で不利な面がございますので、それに対しては年々相当量の政府からの補助もいたしまして、ただいまの対策を進めておるわけでございます。今後ともそれらも続けていっていいのではないか、かように考えております。
  145. 島田琢郎

    島田委員 制度としては長く続きましたから農家もそれなりにあきらめて一つの制度に乗っているわけですけれども、必ずしも内容は満足するような状態ではないのですよ。インサイダーとアウトサイダーの取り扱いは、これは依然不公平になっている。幸いにしてインサイダーに置かれている生産農民理解して、アウトサイダーに対してもプール計算でお互いに分け合おうではないか、そういう内部の操作によってそうなっているわけでございます。当面改善する考えはないという大変木で鼻をくくったようなあいさつでありますけれども、しかし、私は、これは大いに検討しなければならぬ時期に来ている、こう思うのです。  時間がなくなりましたからもうこれ以上質問できませんけれども、最後に、一分か二分しかありませんから長官から答えてもらいましょう。  ことしの賃金上昇率は一体幾らですか。それから、物価の上昇率は幾らになっていますか。
  146. 澤邊守

    澤邊説明員 消費者物価の四月の上昇率が、昨年に比べて三・九%の上昇でございます。それから、卸売物価指数、これは五月までわかっております。これは二・〇%の低下でございます。賃金水準の上昇率、これは私どもはいま公労協だけ把握しておりますが、五・四%というように把握しております。
  147. 島田琢郎

    島田委員 これ以上質問ができなくなりましたけれども、私は、少なくとも賃金上昇あるいは物価の上昇率は、昨年一年間の全体をとらえて言うのでないと正確でないと思うのです。公称七・三%の物価上昇率というふうに発表になっているのですから、そういう期間だけをとらえた上昇率という計算では、これから一年麦をつくっていくわけですから、そういう点で、そういう計算の仕方ではじき出していくとすればこれは不都合になる、こういうふうに思います。そういう面を的確に反映して、少なくとも麦の生産振興が前向きに進んでいくような価格決定をする、こういう考え方に立ってひとつ二十三日の麦価決定してもらいたい、こういうふうに要請をし、なお生産振興にかかわる問題は不十分な面もありますけれども、そういうものももろもろ整理されて整合性ある麦作振興策が出てきて初めて政府考えております中期目標などの達成も可能になる、こういうことだということで、最後にきょうの議論の結論として、そういう点をしっかりとやってもらわなければならないのではないか、これは答えは要りませんが、そのことだけ申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  148. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 竹内猛君。
  149. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、午前中の中川農林大臣に対する麦をめぐる諸問題についての質問に続いて、事務当局に午前の質問に関連をして幾つかの質問をしたいと思います。  まず第一の問題は、大臣も答弁をしているように、六十年の長期展望というものが根底から狂ったように私は思います。というのは、第一の問題は、米の生産が六十年段階で千百十万トン、こういうように見通されている段階で、五十二年、見通しをつくって二年目においてすでに千三百四十万トンという潜在生産力を持った。そうして、ここに百七十万トンの生産調整を余儀なくされているということ自体が第一の問題であり、第二は、これにかわるに麦、大豆、飼料作物を今度は重要な転作対象として奨励をする、こういうことになってきた。  この問題についても、当初の見通しから言うならば一七%の自給率、こういうようになっておりますが、いまの作付を転換をし、奨励をしていくならば、当然一七%の自給率ということではとどまらないだろう。これはもっと多くならざるを得ないし、なるべきである。一七%程度の麦の自給率ということではわれわれは承認できないし、また当然なことだと思うわけですから、六十年展望が崩壊するのはあたりまえだと思う。  こういう二点を見ただけでも、すでに六十年展望に問題が出ている。それだけではなくて、その根底にあった農業基本法でさえも、大臣みずからが農業基本法を直さなければならないと言っているわけだから、事務当局としてはそれを素直に受けて、なるほどこれをこのように直していくんだということについて考えられていることがあるかどうか、まずそのことをお尋ねします。
  150. 松本作衞

    ○松本説明員 ただいまの先生の六十年の長期見通しについての御指摘につきましては、一つは、六十年の長期見通しそのものの内容はともかくとして、その途中経過についての現実の動きが六十年の目標と非常に違ってきておるではないかということから、六十年の見通し自体も変えるべきではないかという御指摘であろうと思います。  この点につきましては、私どもは、六十年の長期見通しは相当程度意欲的なものでございまして、この意欲的な目標自体が間違っておるというよりも、この目標に到達するための当面の農業の動き自体がその目標に必ずしも合っていないということについての反省はしていかなければならないと思っております。したがいまして、米の生産調整をするということで、六十年度の目標で千百二十万トンというような将来目標を掲げておることについて非常に違いが出てきておるではないかという御指摘でございますので、そのような六十年の目標に到達するように生産調整等も行っていかなければならないということでございますし、麦、大豆等の作物につきましても六十年の目標になかなか及びがたいのではないかというふうな御指摘から、特に力を入れていきたいというふうに考えておるということでございますので、私どもといたしましては、この六十年目標が違っておるということよりも、六十年の目標に合わせるように現実を近づけていくというための努力をすべき段階ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  しかし、六十年の目標自体につきましても、その内容につきましては検討すべき余地がないとは申せませんで、先ほど大臣が経済の情勢その他の状況変化によって検討すべき内容が出てくれば当然に検討しなければならないと申し上げましたように、私どもとしても絶えずこの目標が妥当であるかどうかということを検討していかなければならないと考えておりますけれども、現時点において直ちにこの目標を変える必要があるかどうかということにつきましては、この目標自体が五十年の比較食糧の自給度向上というふうな考え方が強く出された時期につくられたものでございますし、それに比べて現時点の一般の考え方自体が、あの当時以上に食糧の自給度を高めなければならないというような世論のコンセンサスが得られるかどうかというようなこと等もございますので、改定すべき時期等につきましては、そういうような盛り上がりもつくりながら必要な検討を進めるのが妥当ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
  151. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま官房長から二点にわたってお答えがありました。  四十七年を起点とした農林省がメモ的につくったこの見通しというものがあって、そのときに四十八年、四十九年とこの委員会で、こういうものは農林省の役所がつくったメモであって、内閣の承認も得ていないし、閣議の決定も経ていないし、農政審議会の議も経ていないから、そういうものは権威もないし何もないんだということを私はしばしば言いました。そして、安倍農林大臣のときに、これは五十年にでき上がったわけです。この政治的背景から言うと、四十八年、四十九年、高度経済成長のときの状況ですね。ところが、あれから低成長、安定成長という方向にぐうっと下がってきて、当初、国土庁や建設省までが予想し、通産省も関係をした、たとえば農村工業導入問題、雇用の問題、そういうところから言ってみても、これはかなり狂ってきている。松本官房長は当時国土庁の三全総を手がけたからよくわかっていると思うけれども、その点から見ても、すでに農業の事情も変わっているし、工業の事情も変わっている。そういう中で五十年から十年を展望した農業の長期見通しというものが出て、その見通しの中ですでに米が大きな狂いを生じているし、今度は麦自体についてももっともっと国が力を入れて、外麦の輸入を抑えながら国内の麦の生産を進めていく、そして、それを計画的に、お互いに、一方の輸入を抑えると同時に国内でふやしていく、こういう操作ができなければならないわけだ。  そういうような見通しに立ったときに、なお農林省としてやはり手続、つまり六十年に無理やりに近づけるのではなくて、六十年というものを展望したものをもう一遍洗い直して、そして国民的な合意というのは、やはりこの国会は国民から選ばれた国会だから、われわれが主張することは一つの国民の意見ですよ。とにかく採決すると十九対十九になるんだから、委員長の一票で物が決まるような状態なんだからね。そうでしょう。だから、そういう状態の中で、われわれがここで主張することについては、これはやはり国民の意思を代表したものとして受けとめてもらわなければ困る。  そういう中で、重要な農業生産目標についての方向については、先ほど大臣が言ったけれども、やはり事務当局としては謙虚に物をとらえて考えていく必要があるのではないか、私はそういうふうに思うんだけれども、もう一度官房長にお答えを願いたい。
  152. 松本作衞

    ○松本説明員 ただいま御指摘いただきましたように、当委員会におけるこの長期目標についての考えというものは、私ども絶えずこの内容の検討のために大きな参考としていかなければならないのは当然であろうと考えております。しかし、先ほど私が申しましたのは、現在の六十年の長期目標の内容につきましては、ただいま先生から御指摘もございましたように、ただ単に農林省だけが考えたということではなくて、政府意見として、政府の方向として、閣議決定を得るという大きな方針として確立されたものでございます。しかも、その内容につきましては、先ほど御指摘がございましたように、国土利用計画であるとか三全総であるとかいうような国土利用その他についての大きな国の計画の一環として組み入れられておりまして、この六十年目標が主張し、必要としておる農用地の面積五百八十五万ヘクタールというようなものも、国土利用計画の中に明確に裏づけられておるというような他の計画との関連等もございますので、そのような諸般の関係等も十分に検討した上で考えていかなければならぬ問題であるというふうに思うわけでございます。  したがいまして、私どもとしても検討しないということを申しておるわけではございませんが、現時点で直ちに事務的な検討を開始するということよりも先に、この六十年の目標の方向に近づけていくための現実的な努力をしていくということがまず第一段として必要なのではないだろうかというふうに申し上げておるわけであります。
  153. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題はこれ以上議論をしても時間が足りないから、また時間のたんまりあるときにひとつやりますから……。  そこで、先ほど島田委員からも発言があったし、午前中にも問題にしたように、麦の生産奨励をしていく、そのための方向として昨年も実は国会で決議をした。その一つの中に外麦の輸入を抑えて、逐次国内麦に切りかえていくということが決議をされている。昨年の麦の輸入とことしの輸入との間にどの程度の輸入の差があるのか、これはどういうことになっておりますか。
  154. 澤邊守

    澤邊説明員 ちょっといま数字を調べておりますので、約五百六十万トンでほぼ同じと思いますが、改めて正確にお答えさせていただきます。
  155. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまの食糧庁長官の五百六十万トンで変化はないということになると、努力していないということになる。一年間何も努力していない、そうじゃないか。
  156. 澤邊守

    澤邊説明員 四十九年から麦の生産振興について努力をいたしておりますけれども、昨年の生産量は特に大きく伸びたということではございませんので、また例の黒字対策等の関係もありまして、輸入の前倒しということで、農林省がこれまで持っております備蓄計画の範囲内において若干輸入を促進させたというような諸情勢もございますので、特に大幅に無理して入れた、こういうようなことではございません。
  157. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これまたずばり私は言わせてもらいますが、麦の生産を奨励する、そして、農家に不動の信念と態勢で麦づくりに励んでもらうためには、次のようなことがどうしても必要だと思うのです。  第一の問題は、食糧を確保する、麦はやはり米とともに基本的な食糧だから、それの計画をもう一度明らかに示していくことが必要だ。だから、六十年展望なり何なりというものを見直しをする。そして、米麦一貫の生産体制というものを確立する。そのための土地基盤整備、これをもっと早くやり遂げていく、そして労働の分配等についても考慮をする。そこで、品種の改良については、先ほどから島田委員も話をしたが、われわれの方では関東ですから、雨との関連においてできるだけ雨を避けて収穫ができるような、そういう品種にかえていく努力も必要だろう。それから、機械等の設備についても個人なり団体だけではできないから、こういうものについては国が思い切って助成をする。そして、外麦の輸入を計画的に抑えて減らして、国内麦に切りかえていく。こういう一貫した処置があり、特に政治的な面としては、麦をふやすという場合においては、他の作目にもかつてとったことがあるように、奨励するなら税金くらいはまける、これくらいの熱意を持たなければ、麦をふやそうとかけ声ばかりかけたってしようがないじゃないか、この点はどうです。こういう一貫した一つの構えがなかったら、これは部分的に切り込んでもだめだ。その点は長官、どうですか。
  158. 野崎博之

    ○野崎説明員 いま先生がおっしゃいました中で、私ども生産関係に関連する部分について申し上げますと、確かに先生のおっしゃいました点をわれわれも踏まえていろいろ施策考えてきたわけでございます。  まず、米麦一貫体制の確立ということでございますが、これは稲作の生産組織あるいは機械を麦等にも当然共用できるわけでございますので、そういう機械化体系を推進しているところでもございますし、また水田裏の奨励金をふやしてつけております。それから、不作付地解消運動、これも四十九年、麦の振興対策が発足しましたときからやっておるわけでございますが、そういう運動もやっておりますし、それから、先ほど申し上げました高度麦作集団育成事業、こういう中で機械等もいろいろ入れていく、それから畑麦につきましても、五十三年度から生産性の高い輪作体系を確立して中核的な担い手に土地の集積を図る、そういうようなことも踏まえまして、五十三年度から畑麦作集団育成事業というものを始めておるわけでございます。  それから、機械等につきましても、先ほどもお話に出ましたような乾燥施設だとか収穫機、いろいろあるわけでございますが、これも先ほど申し上げましたように、土地利用型のその中でも機械を入れておりますし、それから高度麦作集団の育成事業でも入れますし、それから畑麦作の中でもいろいろ機械を取り入れる。あるいは北海道等で乾燥調製というものが非常に必要になってきますので、北海道では特に大型の乾燥調製施設を入れる事業を五十年からでしたか、始めておるわけでございます。そういう意味で、一貫してそういういろいろな期間借地等による規模の拡大、あるいは中核担い手の育成、それから機械の導入、そういうことにつきましていろいろ施策を進めておるわけでございます。  なお、税金の面につきましては、やはりこれは他の税とのバランス、ほかのいろいろな作物との公平ということから考えますとなかなか困難な問題ではなかろうかというふうに考えておるわけです。  とにかく、生産対策といたしましてはそういう点でいろいろ毎年拡充をしてまいっておりますし、今後も先生のおっしゃるとおり、そういう面での拡充に大いに努めてまいりたいというふうに考えております。
  159. 竹内猛

    竹内(猛)委員 税金の問題は後で考えるというけれども、税金を免除するくらいの意欲がなかったら、農家だってこれは本気だなとは思えないんだよ。それくらいの意欲を持たなければだめじゃないか、それはぼくらの要望だからここでどうこう言うわけにはいかないが、そういう気持ちを持ってほしいということです。  予算の問題ですけれども、麦の予算の中で、五十二年度に百八十七億四千八百五万三千円という予算がある。去年の奨励金を原価に繰り入れたということで、かなりの上積みがあるけれども、その奨励金の部分を除いたら実際の費用は去年よりは少ない。百七十二億五千七百一万七千円という形でしょう。だから、麦の奨励奨励と言っても、その奨励金の部分を抜き取ってしまったら、実際の費用は余り多くないじゃないか。これはどうですか。
  160. 野崎博之

    ○野崎説明員 先生いまおっしゃいました百七十二億、昨年が百八十七億あったわけでございますが、これはこのうち三十六億が、例の生産振興奨励金麦価に繰り入れた、その関係で特別措置といたしまして五十二年産のビール大麦に対しまして五十キロ当たり千円でしたか、ビール会社に補助をする。それと、規格外麦に対しまして米麦改良協会に十八億全額国庫で金を出しておる。そういう生産振興奨励金麦価に繰り入れたことに伴う臨時的な措置でございましたので、そういうことで本年その分が減っておるわけでございます。したがいまして、その臨時的な措置を除きますと、相対的に言いまして、去年が百八十七億ですから、そのまま三十六億減らしますと百五十何億くらいになるわけでございますので、その他の面を考えますと生産対策その他は予算的にはふえておるわけでございます。
  161. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いまビールの話が出たからちょっとビールのことについてお伺いしますが、ビールの生産とビール麦の生産とのかかわり合いはあるのかないのか、これはどういう関係になっていますか。何か契約がありますか、国内で見通しを立てているわけですか。
  162. 野崎博之

    ○野崎説明員 ビールにつきましては、ビール大麦につきまして全農とそれから全中、それからビール会社、それぞれが中央段階で契約をいたしますし、県では県の経済連、それから会社、それぞれ契約をいたして契約量を毎年決めておるわけでございます。本年はたしか十五万一千トンの契約が済んでおるはずでございます。
  163. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これも麦芽の輸入などを見ると、四十三年に九万九千二百六トン、五十二年には四十万三千八百四十三トン、こういうぐあいに麦芽の輸入が物すごくふえているのだけれども、このビール麦に関連してもビールの生産がふえる。それと同じように、何かここには生産の計画性というか、相互に何か話し合っていくというようなことはないのかどうなのか。どうもビールはビールでどんどん独走する、それから、それにかかわり合いのある麦の方は、国内の麦の生産とかかわりなしに外国からどんどん入ってくる、そうして国内の麦をつくってみてもこれは検査の中で落とされてしまって、そして、せっかく麦をつくってみても今度は等級外になって買い取られてまた別なところで買いたたかれている、こういうことは余りよくないと思うのです。茨城県、栃木県、千葉県というのはもともとビール麦の産地だから、特に取手にはビール麦の大工場がある。ああいう工場があるんならそこと契約をするぐらいの指導ができないものかどうか。なるほど価格についてあるいは問題があるかもしれない。そういうときにも考慮して何かできないのかどうか。その点ではどういうことになりますか。
  164. 野崎博之

    ○野崎説明員 あらかじめそういう会社と、それから先ほど申し上げました全国段階でいろいろ数量的にも話し合っておりますし、各県でも経済連等の見通しあるいは会社等の見通し、そういうところでいろいろ話し合っておるわけでございます。個々の農家と直接契約をやるわけではございませんので、そこのところは個々の農家とビール会社との関係はそう生じてこないわけでございますが、先ほどもちょっと御質問ありましたけれども、結局、ビール大麦も相当増産をしてきておるわけでございますが、やはりビールの伸びの方がはるかに多い、したがって麦芽の必要量もはるかに多い、したがって足りない部分はどうしても輸入に頼らざるを得ない、そういうようなかっこうにいまなっておるわけでございます。
  165. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間がたってしまって堀川事務局長に尋ねる時間がどうも少なくなってしまったわけだが、こういうように麦を増産をしていこうとするときに、技術体系、麦の新しい技術あるいは品種を改良する、その場合、民間の耕作者、麦をつくっている者と研究室とのかかわり合いはあるのかどうなのか。調査によると、研究室が十一、研究員が三十五人いるということですが、十一で三十五人で日本の麦を大いに研究してやろう、これもずいぶんさびしい話だ。だけれども、そういう研究室体制で本当にいい麦を研究できるのかどうなのか。予算的に見てこれはどうなのか。民間との間で、なかなかいい研究者がいるわけだからそういう者との関連でもっと大胆に、麦をつくっていくというなら技術の面からも改良して改善をしていく、そういう努力をする気持ちはないのか。そういうことを提案しようとする意気込みがあるのかないのか、その点を聞かしてもらいたい。
  166. 堀川春彦

    ○堀川説明員 先般、農産種苗法の改正の機会に、麦についての育種の体制についてはかなり詳しく申し上げておりますのでここで繰り返しませんが、私ども六十三の作物についての育種の体制をしく中で、麦につきましては、研究室の数あるいはそこに配属をする研究員の数等についてはトップクラスに近いところに位置づけておるわけでございまして、そういう意味で私どもとしては体制整備には今後とも努力いたしますが、重視をしておるということを御理解賜りたいと存じます。  それから、民間との関係でございますが、ビール麦など民間におきましてかなりビール会社等も研究を進める、これは主として加工適性等に関心があるからでございますが、そういう面につきましては、国としてももちろん醸造用、ビール用の麦の育種もやっておりますけれども、相互に情報の交換、提携等をやっておるわけでございます。それ以外の麦につきまして一般の耕作者との関係につきましては、育種の目標なり具体的にどういう地域でどういう特質を持った麦をつくるかということになりますと、これは生産者の気持ちあるいは生産地域の諸条件、こういうことを無視してはできませんので、私どもこれは国と県と提携をして育種の仕事を進めておるわけでございますが、いろいろの段階におきまして現地の農家の方々の意向がどこにあるか、また生産条件なり経営条件はどうであるかということは、常に現場に研究者みずから出向きまして農家とも接触を保って、そういう声を直接なりあるいは県の試験研究機関を通じてなり、あるいはまた行政部局からそういう声が上がってくる場合もございます。こういうものを十分参酌をいたしまして、現にこの育種の基本計画を策定する以前の段階におきまして、農業団体の技術系統の方々も、農業団体としては農家の組織でございますからそういう声を当然反映していると存じますが、そういうお声も拝聴して育種の基本計画をつくったという経緯がございます。  今後とも大事な問題でございますから、実態に即した育種の目標を常に考えて育種を進めてまいりたいと思っております。
  167. 竹内猛

    竹内(猛)委員 けさほど来私は申し上げておるのは、大臣農業基本法に対して手を加える、あるいは六十年展望についても、その表現はいろいろあるけれどもやはりこれは見直さなければならないということはだれでもわかっていることであります。と同様に、米の問題についてもあれだけの思い切ったことを農家の合意のないままに押し切ってきた。そして、この十月のころになると一つの結論が出ると思いますが、麦に関しては、国内でかつて麦をたくさんつくった時期がある。あの時期は日本の農民がつくったのだから、それができないはずはないのです。それをできるようにするためにはやはりできるような形での予算的処置、それから技術の研究、機械への助成、そして価格の保証、こういったようなあらゆる面から麦を育てていく、そういう姿勢を政治的にも技術的にも経済的にも示していかなければならない、こういうことを私は申し上げておるわけですから、今後も外麦と国内麦の生産との関係についてはいずれ時期を改めてなお質問をしながらその問題点を整理をしていきたいと思いますので、きょうはひとまずこれで終わらせていただきます。
  168. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十三年産生産者麦価問題について、政府当局質問いたします。午前中に農林大臣に若干の質問をいたしてまいったところでございますが、午前の質問に関連して事務当局にさらに質問を続けてまいりたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのは、過去昭和四十八年の麦作付面積は、私の記憶では十五万五千ヘクタールであった、このように記憶いたしておりますが、自給率小麦が四%までに落ち、当時は安楽死するのではないかと言われておったわけであります。当時このように落ちた麦について、その理由、なぜ落ちたのか、どういうふうに当局は把握しておられるか、その点まずお答えをいただきたい。
  170. 野崎博之

    ○野崎説明員 いま先生おっしゃいましたように、四十八年度では十五万五千ヘクタール、小麦については四%という自給率でございます。  落ちました理由につきましては、やはり一つには都府県、北海道はちょっと違いますけれども、都府県を見ますと、非常にこれは規模が小さい、そのために収益性が低いということ、それから麦作と水稲作の作期の競合する地域があるわけでございます。それから、冬の期間ほかの産業へ兼業に出るその就業機会が、その時分非常に高度成長でございますので非常に多かった。それからまた、ちょうど麦の収穫期には雨害が非常に多い。そういうようなことから、非常に面積も減るし、したがって自給率も減った、そういうふうに考えられるわけでございます。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣に午前中質問した際に、ことし、すなわち昭和五十三年産麦の作付面積は、前年に比して一二二%で二二%の増加であり、四月一日現在の集計によると十六万三千四百ヘクタール、こういうふうに答弁がございましたが、私は二十万ヘクタールぐらい作付ができたのじゃないかというふうに思っているのですけれども、この数字に間違いございませんか。
  172. 野崎博之

    ○野崎説明員 午前中お話がございましたように、統計情報部で公表いたしましたのは都府県の面積でございまして、これが十六万三千ヘクタールで二四%の増ということになっております。それで、北海道の方をまだ統計情報部で正式に把握して公表いたしておりませんので、これは北海道庁の推計でございますが、それを入れますと、いま先生おっしゃいましたように約二十万ヘクタール余となるというふうに考えております。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十三年の四麦は五十二年度に比して二万九千七百ヘクタール、すなわち二二%の伸びであるようでありますが、畑麦が千ヘクタールで二%減って、水田麦が三万七百ヘクタールで三七%増というふうに私は皆さん方の統計数字から見ておりますけれども、これも間違いございませんか。
  174. 野崎博之

    ○野崎説明員 おっしゃるとおりでございます。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、畑麦が減ったのはどういうわけですか、どういうふうに理解しておられますか。
  176. 野崎博之

    ○野崎説明員 畑麦につきましては、都府県で減少を示しておるわけでございます。これは地域別にいろいろございまして、北海道とそれから関東、九州で全体の作付の約八四%を占めるわけでございまして、北海道の畑麦は若干ながらずっとふえている傾向でございます。都府県の方が毎年減ってきておるわけでございますが、関東では非常に規模が零細であること、したがって、収益性が上がらない、そのために野菜とか収益性の上がるものに転換をする、そういう傾向が一つあるわけでございます。それから、例のビニールマルチ栽培、そういうものが普及したために、野菜等の夏作物の作期が前へ前進をする、そういうことで麦と作期が競合いたしまして、先ほど申し上げましたように、高収益性のものへ移行する、そういう点。それから、夏作物の幼苗に対する防風、敷きわらのための麦作の必要性が、いろいろなほかの資材等ができましたので減少をいたした、それが関東地方では大体考えられる要因だろうと思います。  それから、九州地方というのは土地基盤整備の非常に盛んなところでございますし、要望も多いところでございまして、そういう基盤整備に伴いまして、これもまた果樹、それから野菜への転換が非常に進んだ、それから、やはり関東と同じようにビニールマルチ栽培というものが進みましたために、夏作物が先へ進む、そういう関係で減った。それから、特に南九州でございますが、これは台風その他、台風だけではございませんが、非常に天候不順という問題がございますので、そういう点で畑麦が減少をいたした、われわれは大体そういうふうに理解しておるわけでございます。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いずれにしても、ことしは四十八年度から見て六年ぶりに、若干の麦作がよみがえってきたということは一応言えると思います。十六万三千四百ヘクタール、一二二%のいわば作付面積がなされた、四麦ではありますけれども、前向きになってきたということは一応うかがい知れるのでありますが、この麦の作付面積の増というものについては、午前中も農林大臣に若干伺ったのでありますけれども、具体的な問題として事務当局は、どういうような理由でこうなったか、端的に申して麦がよみがえってきた理由は何であるかということを的確にお答えいただきたいと思うのであります。
  178. 野崎博之

    ○野崎説明員 一つには、先ほど来申し上げましたように、四十九年度からいろいろ対策を講じてきているわけでございます。五十二年度からは水田裏作の作付奨励金もふやしてきている、それから高度畑作集団育成事業、そういうようなことで期間借地による集団の育成あるいは機械の導入、そういうようなこともやっておりますし、それから五十三年度からは、畑作に対しまして、畑麦作集団育成事業ということで、やはり同じような補助をやってきている、そういうような生産対策というものが一つのふえた原因であろうと思います。それから、今回の転作に際しまして、水田利用再編成対策に際しまして、これを特定作物にして五万五千円の奨励補助金の対象にいたしておる、また裏転作も認めることにした、大体以上のような点が今回面積のふえた原因であろうというふうにわれわれは考えております。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、今後農家麦作意欲を喚起して、農家の経営及び土地利用の拡大を行うとともに、麦作振興し、定着させるためには、ただいまも野崎局長からいろいろお話がありましたが、要約すれば、私は何といっても価格及び生産対策の一層の強化拡充を図る、これ以外にないと思うのですが、この認識は農林省はどう思われますか。
  180. 野崎博之

    ○野崎説明員 先生がおっしゃいますように、私、先ほどちょっと落としたわけでございますが、今回の麦作のふえた原因の一つといたしまして、例の生産奨励金価格の中へ織り込んだということも一つの大きな原因だろうと思いますし、そういうことで今後も価格面でのいろいろな配慮というものは必要だろうと思います。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 先ほども申しましたように、麦はよみがえってきつつあることは一応うかがえるわけでございますが、ただいまも答弁ございましたように、二千三百円が基本価格に入り、生産振興という点から一歩前進、こういうふうにわれわれも認識はいたしております。しかし、農家は、麦では食えない、せめて米並みの所得が欲しいというのが農家の切なる声であることも御承知のとおりであります。麦は、つくっても十アール当たりせいぜい四、五俵でございまして、五万円にはなかなかならないというのが実情でございます。それでは、限られた畑を麦だけのために使うわけにはいかないし、機械化しても省力化しても面積拡大もできないわけであります。麦は経済作物として一人前の地位を保っていないというのが偽らざる実情であることも御承知のとおりであります。  たとえば、土地生産性を示す目標、十アール当たりの所得を見ましても、五十一年生産比較しますと、水稲が八万二千五百八十九円であったのに対しまして、契約生産奨励金と麦生産振興奨励補助金を含め、小麦の平均が二万三千三百一円、すなわち約三分の一であります。六条大麦でも三万三千百四十六円となっております。裸麦に至っては一万四千百五円と二割にも満たない状況であります。麦で食える所得にはほど遠いのが実情でございます。  午前中の農林大臣の答弁で、麦は米にとまではいかないけれどもかなり安定してつくれる価格にまで上げた、こういうようなことをおっしゃいますけれども農家やわれわれに言わせますとまだまだほど遠い価格であります。この点について当局はどういうふうにお考えであるか、その点の理解をひとつ農民の前に示していただきたいと思います。
  182. 澤邊守

    澤邊説明員 反当の所得におきまして、小麦初め麦類が稲作に比べましてかなり劣っておるということは御指摘のとおりでございます。労働当たりの報酬につきましてはかなりいいところまでいっておるわけでございまして、特に大規模にやっております北海道等におきましてははるかに稲作以上に有利になっているという面もあるわけでございます。そのように反当におきましてはかなり差がございますけれども、表作、裏作という言葉がございますように、裏作麦の場合は、やはり表作の米に比べまして反当の所得において現段階で劣るのはやむを得ない面もあると思います。ただ、麦は御承知のように、作物の特性といたしまして技術的にも大規模経営によるメリットというのが非常に大きく上がるものでございます。したがいまして、現在裏作は土地利用率が非常に下がっておりまして、自己所有地以外の他の所有者からの借り受けその他の方法によりまして利用権を集積することによって生産性を上げるということをやってまいりますればかなり所得は上げられるというような面がございます。これは一々数字の細かいことは申し上げませんけれども北海道あたりでは反当たり平均四、五時間でやっているという例が実現しているわけでございます。内地におきましてはそのような土地の集積を図るということはなかなか困難な面がございます。畑作につきましては水田裏作以上に困難でございますけれども水田の場合は比較的、比較的といいますか、非常に土地利用率が低くて、あいているところがあるわけでございますが、それをうまく活用するということでやりますれば、今後労働生産性が非常に上がるという面、それに伴いまして土地生産性ももちろん上がってくるわけでございますので、そのような方向で今後奨励をしていくというために価格政策ももちろん必要でございますが、各種の奨励金政策生産基盤整備、それらをあわせてやっていくつもりでおります。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省は今後十年にわたる水田利用再編成対策を推進していくことになっておるわけですが、しからば、ことしは生産調整のいわば初年度でございます。初めよければ終わりよしという言葉があるように、最も重要な年である、かように思うわけです。過酷な新生産調整を農民に押しつけている現在の農政にあっては、私は何といっても麦作振興は最重要な課題である、かように思うのですが、その辺の認識はどうですか。
  184. 野崎博之

    ○野崎説明員 先生のおっしゃるとおりでございまして、われわれといたしましてもやはり国内で非常に自給率の少ない麦、大豆、飼料作物等を特に特定作物として指定をいたしまして奨励金も高くしている、そういうようなことで、やはりそういう自給率の低い作物に特に重点を置いてその振興を図ることが必要だろうと思っておるわけでございます。
  185. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、農林省としても、他の作物もそうでありますけれども、特に麦作振興というのが、自給率を上げる上においても、今後の新生産調整を推進する上においても重要な課題でございますから、麦作にかかわる所得については、政府が六十年を目標とした農産物の需要と生産の長期見通しというのを立てておられますので、少なくとも六十年目標の達成まで、麦作についての期間は減税をしてさらに麦作振興を図るというのも大きな一助である、私はこういうふうに思うわけですけれども、こういったことについては団体からも強い要請が出ているわけですが、この点についてはどういうふうに検討を進めてきておられるか、お答えをいただきたい。
  186. 野崎博之

    ○野崎説明員 いま先生おっしゃいましたようなお話も聞いてはおりますが、税全体のバランス、それからほかの作物等に関連をいたします公平の観点から見ますと、やはりこの問題は非常にむずかしい問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  187. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 むずかしい問題であるかと思いますけれども、十分ひとつ御検討いただきたいということを重ねて要求しておきます。  以上申し上げましたように、麦の政府買い入れ価格は、御承知のように、昨年より生産振興奨励金を織り込み、食管法に規定するパリティを乗じた価格決定されたわけであります。われわれは生産費及び所得補償方式によってぜひともひとつ御検討いただきたいということを強く要請しているわけでありますが、その価格水準は他の作目に比していまだ均衡を得たものでなく、先ほどから申し上げましたように、米並みの所得を得るにはほど遠い水準であることは言うまでもありません。今後十年間に米に対し遜色のない所得が確保される価格水準が実現されねばならないと思いますし、そのためには本年度が、先ほども申しましたように、初年度でございます。将来展望にわたって麦作振興と定着を図る適正な価格にぜひともやっていただきたい。  いよいよ麦価米審が明日に迫っておりますが、けさほどの農林大臣の答弁等を聞いておりましても、五月のパリティ指数がまだ手元に届いてない、いずれにしても、もうあすは諮問する時期になっておるわけでございますして、恐らく当局としても十分承知をしておられるのだろうけれども、なかなか委員の追及も厳しいところから、まだはっきりしてないというようなことをおっしゃっておりますが、農民の十年間の新生産調整に対する不安を除くためにも、麦作に対して十分な生産費が補償できる価格諮問されて農家の要請にこたえるということで御検討いただきたいと思うのですが、そういう点について農林省当局の考えを、全国麦作農家のためにひとつ希望あるお答えをいただきたいと思う。
  188. 澤邊守

    澤邊説明員 明日の米価審議会に諮りまして、二十三日に決定予定いたしております今年度産の麦の価格につきましては、昨年度から改めました、従来のパリティ価格方式をもとにいたしまして、生産奨励金を含めた水準で調整をして算定をすることにいたしたわけでございます。それによりまして、昨年は四四%以上の値上げになったわけでございます。その新しい方式に従ってはじくつもりでおるわけでございます。  ただいま先生、米と同じような価格、所得とあるいはおっしゃったかと思いますけれども、現在小麦と米の価格比は、小麦の場合で見まして、これは五十二年産でございますが、五五・七%、一番高かったときには二十五年の六四・三%というのがございますが、その後どんどん上がりまして、三〇%台まで下がっておったわけでございます。四十九年から力を入れるようにしまして、順次上がってきて五五・七というかなりのところまできております。対米価比数字でございます。それに例の水田裏作奨励金、これは水田裏作をやっておらないと交付を受けられませんけれども、これを加えてみますと六七・四%ということで、過去におきます。過去と言っても戦前は別にしまして、二十五年の最高だった年以上の対米価比になるという水準になっておるわけでございまして、かなりの水準にきているのではないかと思います。  生産費所得補償方式で算定すべきだという御議論もありますけれども米価審議会において昨年、半年以上審議をしていただきました際に、この問題も議論されましたけれども、麦の生産費は地域により、経営規模により、農家により、えらい差がございます。あるいはまた、作柄が非常に不安定でございますので、年によって非常に大きな生産費の差がございます。したがって、そういうものを基礎にして生産費方式あるいは生産費所得補償方式というものをとることにはなお問題があるということで、二千三百円の生産奨励金を含むという方式を当分続けてみてはどうかという一致した報告がありまして、それに基づいて昨年からやったわけでございますので、今年もその方式でやりたいというように考えているわけでございます。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以下、時間の範囲内で数点、具体的な問題をはしょってお伺いしておきたいと思います。  まず、麦加工工場より遠隔地にある麦主産地、たとえば北海道とか離島なんかもそうでありますが。こういったところの麦について、運賃負担等の関係から非契約麦か生じておるわけでございます。現在、全国米麦改良協会よりその都度助成している運送費について、引き続き助成措置を講じていただきたい、かように思うのですが、この点はどう検討しておられますか。
  190. 澤邊守

    澤邊説明員 実需者の工場から非常に遠隔地のところは、現地売却をいたしますので、確かに運賃が高くなって契約生産が進まないという心配がございます。しかし、現在は、四十九年以降ですが、国が運賃を負担して援助することにしておりますので、一〇〇%流通契約に基づきまして流通が行われております。非契約麦は現在ございません。北海道だけについて申し上げますと、去年で三億三千万ぐらいの運賃助成をいたしておるわけでございます。
  191. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 等外規格外麦買い入れを行う問題でございますけれども、私は検査規格の改善をひとつ提案したいわけであります。  現在の規格外小麦は、発芽粒が二%入っている場合となっております。すなわち、百粒に二粒混入している場合ということでございますが、御承知のように、比重選別機の構造等もいろいろこれあり、この二%の規格を五%にかえるということはできないものか。そうしますと、相当多く救われるわけです。いわゆる比重選別機の構造にもよりますので、こういった農家の希望が強いわけです。私はしたがって、五%とした場合、もちろん価格が若干ダウンするということは、これは覚悟の上であります。若干価格がダウンしてもこの検査規格を五%にする、こういったことで検討いただきたいと思うのですが、こういったことについては農林省は全然考えたことがないか、こういった意見に対してどういうふうにお考えになるか、その点もこの機会に明らかにしていただきたいと思う。
  192. 澤邊守

    澤邊説明員 現在、等外麦規格外麦食用に適さないということで、買わないというたてまえになっておりますけれども、その中で等外上につきましては、これは災害等のときに非常に発生が多いわけでございますが、これにつきましては、単独では食用にはなりませんけれども、混合して使う、いい麦とまぜて使えば食用にならぬではないというところがございますので、これは災害対策という意味も含めまして、大体毎年事実上買い上げをいたしております。等外下は、これは食用に適さない、いわゆるくず麦ですから、これは買っておりません。  規格外麦につきましても、これは先ほどもほかの方にお答えいたしましたけれども、一部食用に回っているじゃないかという御指摘もありましたが、私ども調べたところでは、全く回ってないかどうかというところまではわかりませんけれども、工業用その他の加工用に回っている場合が大部分であって、食用に回っているのはほとんどないように見ておりますので、そのように、食管法上食用に適さないものを買うというのは適当でない。特に御指摘がございました二%というのは発芽をした麦でございます。これを用いますと加工上非常に粘度が落ちて非常に支障を来すということでございまして、実需者からもきらわれる、用いないということでございますので、その規格をいま直ちに直すということは、せっかくのあれでございますが、なおさらに慎重に研究はいたしますけれども、いまそういたしますというお答えをいたしかねる次第でございます。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 慎重でなくてもいいですから、ひとつ検討して、ぜひ規格を変えてもらいたいと思う。  そこで、規格外麦政府買い入れ対象となっていないことは、いまおっしゃったとおり、われわれも十分承知しておりますが、昨年から全国米麦改良協会に十八億円の全額国庫負担で麦振興特別基金を設立しておるわけであります。昭和四十九年から五十一年産生産振興奨励金の平均単価、キログラム当たり三十五円を限度に価格差補てんを行っておりますが、五十二年産麦ですでにたしか五億円が支払われているというように私は記憶いたしております。五十三年産麦以降、規格外麦の発生は、いまもお話がありましたように気候によって左右される、また、いろいろ振れがあるわけでございまして、しかも地域的に集中する傾向もあります。また、作付面積の増加に伴う発生量の増加も見込まれるわけでございます。こういったことから基金の増額を図るべきである、かように思うのですが、この点はどういうように政府は対処する考えでございますか。
  194. 野崎博之

    ○野崎説明員 おっしゃいましたように、十八億で昨年米麦改良協会全額国庫補助でつくりまして、昨年五億を支出いたしております。これは災害対策の一環という面もございますし、全国的に五%の規格外麦が発生した場合にこれを出すということになっておりますし、地域的に見れば県別で九%程度発生すればその県に対してもその金を出すということになっているわけでございますが、過去の例を見てみますと、非常にそういう場合は少ないわけでございます。全国的に五%というのは非常にまれでございまして、過去何年間とりましても全国的に見て大体一%ないし二%というのが通例でございますし、それから県別にとってみましても九%も規格外麦が出るという県も過去の例から見ると非常に少ない。そういうことも考えまして、十八億から五億引いた十三億がまだ残っておりますので、われわれとしてはいまの金額で当分いけるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  195. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、水田裏作麦奨励金の問題ですけれども水田利用再編対策との関連において水田裏作麦の奨励措置が重要であることはもう言うまでもございません。現行十アール当たり六千円の水田裏作麦作付奨励金を大幅に増額することも今後麦作生産振興に大きく寄与することはもう当然ですが、この増額については検討の用意がありますか。
  196. 野崎博之

    ○野崎説明員 いまの水田裏作作付奨励金でございますが、これは水田裏に対して麦を誘導するという一つのかかり増し経費に対する補助という性格のものでございます。そういう意味で、おっしゃいましたように、水田裏にもっとふやすという要請から見れば、これをふやせというのは確かに一つの御意見であろうとは思います。ただし、米麦一貫体制ということでまた性格も性格づけられておりますし、積算もそういうことになっておりますので、片やいま米の生産調整というものを非常に御協力を得ながら進めておるわけでございまして、そういう点から見ますと、生産調整の関連から見るとちょっと性格的に矛盾するというような点もございますし、非常にむずかしい点を含んでおるわけでございまして、われわれといたしましてはなお慎重に検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  197. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、麦の契約生産奨励金は、昭和五十一年産麦より、政府買い入れ麦について実需者と流通契約を結んだ場合に六十キログラム当たり平均六百円になっておりますが、契約栽培を促進することがさらに重要であることはもう言うまでもございません。そういった意味で、この大幅な増額ということについてはどういうふうにお考えですか、これもあわせてお答えいただきたい。
  198. 澤邊守

    澤邊説明員 先ほどもお答えいたしましたように、契約生産が現在一〇〇%行われております。非契約麦はかつては若干ございましたけれども、種々奨励をいたしまして、いま御指摘ございましたような契約奨励金を出して一〇〇%達成されておりますので、そういう点からいたしますと、将来とも一切上げないとか、そういうようなつもりはございませんけれども、いま直ちに上げるというほどの理由はないのではないかというふうに思っております。
  199. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なお、ビール麦についても五十二年産より五十キログラム当たり二百円となっておりますけれども、これも政府買い入れ麦と同様の引き上げができないものか、こういうように要請が強いのですけれども、この点についてもお答えをいただきたい。
  200. 澤邊守

    澤邊説明員 ビール麦は政府買い入れをやっておりませんので、民間同士の話し合いで決めるものでございますので、他の小麦とか大麦、裸麦と違いますので、政府が直接関与しているものではございませんので、両者の話し合いによって適正な価格決めていただく、こういうような仕組みにしておるわけでございます。
  201. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私の質問がぴんとこなかったようですが、最後に、若干品種改良の問題でぜひともお尋ねしたいことがございます。  北海道等、春まきは秋まきに比べて二分の一の、三俵以下の収量でございます。これはどうしても少なくなることは当然ですが、これでは農家も採算に合わないわけです。そこで、春まきの多収性品種というものを改良すべきですけれども、この点はどういうふうな改良のための研究をしておられますか、全然やっておりませんか、その点、簡潔にお答えください。
  202. 堀川春彦

    ○堀川説明員 春まき小麦は、戦前等におきましては、秋まき小麦との関係で北海道においてある程度作付がなされてきたという経過がございます。その後、秋まき小麦で優秀な収量の高いものが出てきたということもございまして、その他のこともございますが、春まき小麦が非常に減少した。今日におきまして春まき小麦は、たしか北海道におきまして、昨年の場合に千五百ヘクタール余りくらいの作付でございます。北海道以外は、気象条件等の関係がございまして、ございません。  そこで、春まき小麦につきましては、作期が、春植えまして、そしてその年に収穫をするわけでございますけれども、他の作物との、要するに輪作の組み方によりましては、かなりこれは輪作体系の中に取り込んで、いい経営になり得るという性格を持っているものでございますので、かたがた国内でソフト系の小麦がほとんどでございますけれども、ハード系の小麦でいいものができないかという声もございまして、そういうことを考えまして、私どももこの春小麦についていいものができないかということで育種を進めてきておるわけでございますし、現実に取り組んでもおります。いまのところ、品種といたしましては、四十年にできましたハルヒカリというのが一番普及をしておる。その後にハルミノリというのもできましたが、現段階ではハルヒカリがほとんどを占めておるという状況であろうと思うわけでございます。  確かに、先生おっしゃいますように、春まき小麦と秋まき小麦の収量の差ということを見てまいりますと、私どもの見方では、北海道の場合でございますが、秋まき小麦に比べまして大体六、七割くらいの収量というふうに見ておるわけでございます。年によって変動はございますが、おおよその見当としてそのくらいに考えてよかろうか、こういうふうに思うわけでございます。一層この春まき小麦につきましてつくりやすく、かつ収量が上がるということになってまいりますと、北海道畑作の中において、春まき小麦を取り入れ、かつまた他の作物をその前後につないでいくという体系ができるわけでございますので、こういう点についてはその重要性を認識をして、今後とも春まき小麦の優良品種の開発につきまして育種に努力をしてまいりたいと思っております。
  203. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、麦は完熟期に穂発芽すると当然食用にならぬわけでございます。北海道等主産地は抗穂発芽性品種の改良、開発を図っていただきたいという要請がかねがねから強いわけでございます。すなわち、不発芽の品種をつくるべきである。私たち聞くところによると、技術会議の方でもたしか京大でやっているというようなことでございますが、間違いございませんか。研究しておる人はどこでやっていますか、簡潔にお答えください。
  204. 堀川春彦

    ○堀川説明員 糖発芽をできるだけ避けるという趣旨での研究は、麦におきます育種の一つの重点の項目でございます。こういう観点からの育種の研究というのは各地で行っておるわけでございまして、あえて京都に限定をしたわけではございません。多分京都と先生がおっしゃいますのは、これも先ほど御答弁申し上げたのですが、大体日本の麦は、収穫期に雨が多いということで、できるだけ収穫期を前の方に早めるという形で、いわゆるわせ化の品種をいかにして開発するかということに非常に重点を置いてまいったわけでございますが、雨害回避のためには、逆にいって収穫期を後ろの方にずらしまして雨害を回避するということが一つの方法でございまして、これはそういうかなり基礎的な面から取り組んでまいらぬと、非常にいままで発想してなかった新しい研究分野でございますから、したがって、その基礎の部分につきまして京都の大学にお願いをして、細胞質の変化によってそういう性質を持つ麦がつくれないかということの研究を開始したところでございます。  そういうこともやっておりますが、いずれにいたしましても、雨害回避、雨害に関係の特に強い害である赤カビ病に強い抵抗性のある品種の育成、それからさらに穂発芽をできるだけ少なくするような穂発芽に対して抵抗性の強い品種の育成、こういうことは現に取り組んでもおりますし、比較的従来のものよりもそういう抵抗性の強い品種を先ほど御紹介申し上げたわけですが、シロガネコムギとかあるいはゴガツコムギ、セトコムギ、こういった小麦は近年開発された小麦でございますけれども、穂発芽の抵抗性が強いということでございまして、今後ともこの点には重点を置いて取り組んでまいりたいと思っております。
  205. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がないので、最後にはしょって申しますが、昭和十年代は麦の品種改良等が盛んに行われて、多収穫の麦の品種がいろいろと発見されました。その後品種改良が色あせてきて、数年前からわれわれが国会でずいぶん追及してまいりましたので、品種改良に力を入れ出してきましたが、最近でも、ようやく品種改良というのに重い腰を上げたような感じがしておりますけれども、国立の試験場で余り開発してない、品種改良をやっていない、こういうふうに私は思っているわけですが、時間がございませんが、国立の試験場で、どこでやっているか、その点をひとつお答えいただきたい。
  206. 堀川春彦

    ○堀川説明員 これは国立の試験場と県の試験場とタイアップして育種は進めるというのが一番効率的な進め方でございます。といいますのは、一つの品種を育成をいたしまして、あらゆる地域に適応する品種ということはあり得ないわけでございます。そういうことになりますと、育成地、育種試験を行いますところ、あるいは系統適応性の試験だとか特性検定をやる、こういうものは県の現場において適当な地を選んでやるということが適当でございまして、しかし、それの費用は国が責任を持って持つという形でやる、こういうことが適当であろうということで、県と国がタイアップをいたしまして育種を進めておるわけでございます。  国の試験場としてやっておりますものを例を挙げて申し上げますと、たとえば小麦につきまして赤さび病の耐病性の点について特に力を入れておりますのは東北農試でございます。赤カビ病につきましては九州農試、中国農試がやっております。それから、わせ化というのは、これは各試験場及び試験地でやっておるわけでございます。それから、二条大麦の縞萎縮病につきましては、指定試験で栃木の農試でやっておる。大麦につきまして、ウドンコ病に対しましての抵抗性の強いものを農事試験場でやっておる。そのほか、各地域の試験場でやっておるというようなことでございまして、例を挙げればまだまだいろいろございますが、そういう形で進めておるわけでございます。
  207. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一つの品種改良をするについては最低十年以上かかるであろうということが言われますが、麦作振興を図れと言いながら品種改良、こういったものについても、どうしても水稲と麦との労働力の競合というような問題があるので、最近は御存じのとおり、田植え機械の発達によって田植えが早くなっておる。したがって、収穫も早くなるというようなことで、いろいろ競合してくる。そういった問題から県と国とタイアップしてやっていることもよく承知しております。しかし、国の力の入れ方がどうも足らないというのが農民また農業団体の不安な要素になっております。そういった意味で私は最後に指摘したわけですが、そういった点を十分踏まえて、ひとつ農民が安心してつくれる麦作の品種改良に、春まきを含め、力を尽くしていただきたいということを最後に申し上げたい。  なお、明日はいよいよ麦価米審が行われて五十三年度産麦の価格決め段階になってまいりますが、以上けさからいろいろと質問してまいりましたことを踏まえ、十分なパリティ指数によって、今年はやむを得ないわけでございますので、十分農家が、十年間の生産調整の初年度としてその希望が持てる麦価決定されるように、最大の諮問決定努力をしていただくように最後に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  208. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  209. 津川武一

    ○津川委員 午前中に大臣に対して、生産者麦価決め方、いまのパリティ指数によるものは、昭和二十五年、六年、アメリカに占領されておって不当に麦価が低く抑えられたのを基準としてこれにパリティ指数をかけてきたのだから、農民の要求にもこたえてない、自給率を高める点についても役立ってない、そこで私は急速に自給率を高めるように生産者麦価の算定方式を改めることを要求してきました。そこで、これに対して農民農業団体、たとえば全中は所得補償、再生産確保を基本生産者麦価を要求しております。そのため、農民農民団体、たとえば北海道農民連盟、この方たちからはけさも私たちが要求を受けたわけですが、小麦六十キロ当たり一万二千五百円以上、このように要求しております。私はこれからの農民団体の主張には正当な根拠があると思って支持していきたいと思いますが、政府自身があしたの麦価決定でこういう状況を踏まえてやるべきだと思います。農民団体の要求をどう考えているか、これにどうこたえようとするのか、まず伺わしていただきます。
  210. 澤邊守

    澤邊説明員 昨年度から従来のパリティ方式に手直しをいたしまして、新しい方式、修正パリティとも言っておりますけれども、それでやったわけでございます。ちなみに、昨年、従来どおりのパリティ方式でやりますと、小麦の場合七千三十四円というようになりますのを、新しい変更いたしましたやり方にいたしまして決定いたしましたのは、九千四百九十五円ということで相当大幅な引き上げになったわけでございます。これは米価審議会におきまして半年以上委員会をつくりまして、生産者、消費者、あるいは一般中立という方々、それぞれ出ていただきまして、半年以上だと思いますが、相当慎重に検討していただきまして、その場合、生産、所得補償方式というような問題も議論されました結果、こういう方式がよかろうということで、いわば全員一致、生産者を含めまして、決められた方式でございます。それにのっとって去年決めて、ことしはその方式で私どもは引き続きやりたいということを大臣もこの席においてはっきり申し上げておるところでございます。  それで、ただいま津川先生から御指摘のございました農協中央団体あるいは日農その他から種々要求を出されておりますが、その中心になります農協から出されておりますのは、私ども米価とも含めまして三円ばかり会っておりますけれども、前回のときに、第三回目に出されましたけれども、これは従来というか、昨年決まりました方式を否定するつもりはないんだ、これは文書ではないのですが、口頭ではそういう趣旨のこともございまして、大体昨年はもちろん御同意も得て新しい方式を決めたわけですが、今年度についても特別異議はないというような受け取り方を私どもはいたしております。その他の団体につきましては、私どもが去年からやっております方式について必ずしも賛成をされておりませんので、そこは食い違いが残ると思いますが、農協系統につきましては、私どもといたしましては、基本的には御要求の線と、私どもが国会でも一般論として大臣お答えしている去年方式でやりますという点とは隔たりがないというふうに理解しております。
  211. 津川武一

    ○津川委員 全中との話はそれでいいとして、その他の農民団体、きょうも私たちは北海道農民連盟から一万二千五百円という要求を受けましたが、この農民団体の要求をも十分考慮に入れてあした決めていただくよう要請して、次の質問を進めていきます。  第二の問題。なたねでございますが、この席で私は何回もなたねのことを論議しましたが、依然としてなたねは生産が減る一方でございます。ちっとも減り方にチェックができていない。そこで、やはりなたねの基準価格をも農民の再生産が償われるように、そうしてまた、生産意欲が出るように考えるべきだと思うし、これが一つ。もう一つには、なたねのいろいろな生産の土地条件の整備、それから試験研究、生産技術体系などというものが非常におくれているので、これに対する政府の所信を伺わしていただきます。
  212. 野崎博之

    ○野崎説明員 なたねの価格につきましては、先生御承知のように、大豆なたね交付金暫定措置法ということで、パリティ価格及び生産事情その他経済事情を参酌してなたねの再生産を確保する、麦と同じようなかっこうのものになっているわけでございます。  御承知のように、確かになたねの面積が毎年減ってまいりまして、本年も統計情報部で主産県の面積を公表いたしておりますが、昨年に比べて大幅に減っておるわけでございます。われわれといたしましては、これに対しまして、いろいろ生産面でどうしていったらいいかというようなことも考えておるわけでございますが、土地基盤整備につきましては、これはなたねだけの土地基盤整備というよりも、やはり畑全体の土地改良事業、そういうようなことで公共事業等でもことしは相当畑に対するそういう予算面がふえておりますので、広い意味の土地基盤整備はそういう公共事業の面でひとつ考慮を願うというふうに考えておるわけでございます。  それから、なたねの減少の原因としまして、麦と同じような、何といいますか、収益性が非常に低いとかあるいは兼業の増加によってそれが減るとか、と同時に機械の立ちおくれというものが一つあるわけでございます。なたねの収穫機というものがなかなか開発できなかったということが確かに一つの原因でございまして、これにつきましては、収穫機の開発につきまして五十年度からその開発を進めて一応終わりまして、五十二年度からその収穫機を使った実証圃を使って、機械だけでなしに、機械と同時に肥料のやり方、そういうものを全部入れました実証圃をつくっていろいろ検討をいたしたわけでございます。五十三年度予算でも同じような予算を組んでおりまして、やはりそういう実証圃をつくりまして、そこで機械体系と組み合わさってどういうふうな増産ができるかという事業を試験的にやっているわけでございます。それからまた、五十三年度から新たにこれに加えまして、生産改善集団育成事業ということで、要するに不作付地へ作付するように誘導をするというような目的で集団を育成するためのいろいろな経費、集団の活動費だとかあるいは機械、小型防除機だとかそういう機械を入れて生産集団の育成と同時に機械による増産を図る、そういうような生産対策を実施をいたしておるわけでございます。  今後もそういう生産対策の面については十分ひとつ力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  213. 津川武一

    ○津川委員 局長、私はここで何回かなたねのことを取り上げたのです。まだ減りがとまらないのです。またやりますから、この次あたりはとりあえず減りをとめて、そしてふえるように、そういう形の施策と答弁を要求して、また進んでいきます。  その次は、小麦の稲転の場合は七万からの奨励金畑作にはそういったことがない、ここで非常に不公平がありまして、稲転並みに何らかの形で行政を公平にして、畑作がいま減っているからそれを減らないでふやすために稲転並みの何か行われなければならないと思って、このことを午前、農林大臣に要求したわけです。この点で何か考えなければならぬと思いますが、これが一つ。さらに、この点で具体的な要求が農民農民団体からは輪作奨励金を交付せいということになっております。これも私はもっともだと思います。この点、政府はどう考えているか。現に転作奨励金が、北海道でてん菜の作付面積が急速に減ったとき、政府は五十二年度に九億七千万円、ことしの予算で十二億七千九百万円からをてん菜輪作営農団地育成特別事業としてつけております。てん菜につけて小麦につけない。また、ここで小麦が差別待遇されている。こういう点で輪作奨励金小麦につけてもいいのではないかと思いますが、いかがでございます。
  214. 野崎博之

    ○野崎説明員 麦は、御承知のように、畑作地帯で非常に地力維持の面でも輪作体係の根幹になる作物であるというふうな考え方はもちろん持っておるわけでございますが、われわれといたしましては、五十三年度から新たに畑麦につきまして畑麦作集団育成事業ということで中核的な担い手の育成あるいは集団育成、規模拡大あるいは機械導入、そういうようなことが比較的小規模な一ヘクタール以上のところでできるような予算も準備をいたしまして、積極的に畑作麦の振興に力を入れるという施策をとっているわけでございます。  ただ、輪作奨励金の問題でございますが、この問題につきましては、いろいろ問題がございまして、要するに水田再編利用の奨励金みたいに、こういうふうに出すことにつきましても、やはり個々の農家によって非常に規模が違う。適正な、規模の大きい農家ほど非常に有利であって、規模の小さい農家はなかなかむずかしい。それから地形、気象等を考えましても、非常にそういう輪作が可能な地域と非常に輪作のむずかしい地域が出てくるわけでございます。それからまた、農家ごとに、これは水田再編利用の奨励金でもそうでございますが、六月三十日なら六月三十日でそういうふうに水田がほかのものに転作をしているということを市町村が確認をして奨励金を払うという仕組みになっているわけでございます。同じように、こういうかっこうで輪作の奨励金を出すということになりますと、大体四、五年輪作がかかるわけで、その間にいろいろな作物が植わってくるわけでございます。そうしますと、いつどういう作物がどこでどういうふうにつくられて、麦がどういうふうな状況になってくるかということを毎年追跡調査をしてそれを把握しないと奨励金がなかなか払いにくい、そういうことになりますと、これは市町村の事務量だけでもう非常に膨大なものになるわけでございます。そういう意味で、この輪作奨励金というものは非常にむずかしいのではないか。  ちなみに、農林省でも、北海道の畑作問題研究会というのをやりまして、その際の結論といたしましても「輪作について奨励金制度を設けるべきだという意見もあったが、これには種々の問題があり、」この「種々の問題があり」というところは、私、先ほど来申し上げた点でございますが、そういうふうに「これには種々の問題があり、当面てん菜の作付拡大に関する各種助成を活用しつつ、輪作を促進することが実際的であろう。」そういう研究会の結論も得ておりますし、先ほど申し上げましたような非常にむずかしい点もございますので、現在の段階ではなかなかむずかしいのではないかというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。
  215. 津川武一

    ○津川委員 輪作奨励金、何かいろいろめんどうな状態があって現在は無理だというふうに言っている。しかし、稲転の場合、水田にはあれだけ出して、専業の畑作小麦をこんなふうに扱うというのはやはり妥当でない。したがって、輪作奨励金でも何でも、やはり不公平を直すという意味において、困難もあろうが、とりあえず金額は少なくても何らかの形で是正していくスタートを切るべきだと思うのです。この点の見解を重ねて伺わせていただきます。時間がないので、次の質問ともあわせていきます。  それは、水田裏作小麦でございます。農林省は、長期計画の中で六十年に五十五万トン、四十七年の二十八万トンから五十五万三千トンにふやす。現在、ことしで二十万トン、どうもまだまだ遠い。したがって、結局、稲転再編利用だけでなく、水田裏作を利用するということが何よりも必要になってまいります。麦は麦で解決するのじゃなくて、水田水田としてやるのではなくして。そこで、水田、麦という点での一貫生産体制が進んでいかなきゃならぬ。米麦一貫の生産、これは忘れてはならない。ここの点で政府は忘れているんじゃないかなという心配が強く持たれます。というのは、水田裏作の奨励措置奨励金は五十一年には反収五千円、五十二年は五千円から六千円に引き上げました。五十一年は五千円、五十二年は六千円、ことしは据え置いております。したがって、裏作麦に対して政府は評価が足りないんじゃないか、軽視しているんじゃないか。実際に裏作麦奨励金、五十二年の予算五十二億八千七百万円、このうち実際に使ったのは四十五億八千五百万円、せっかく計上した予算さえ使ってないという消極的な姿勢が出ております。五十三年度の予算に至っては、四十七億七千百万円と減らしております。どうしてこう裏作麦に不熱心なのか、小麦生産をふやすとすればここがかなめではないか、このように思う次第でございます。したがって、裏作麦をどう評価しているのか。これをうんと奨励して育てていかなきゃならない。北海道は畑作、関東以南、以西ではこの裏作が根本的な問題です。裏作について、これが一つの質問。  第二番目は、裏作に対しての試験研究体制をどうしてもわせ化にして、梅雨を避けていかなければならぬ。したがって、出穂後熟期を早める種も必要でありますし、早熟性の麦の品種改良も必要になってきます。どうしてもあと一週間早目に、梅雨前に収穫することが水田裏作の技術的なかなめであると思います。これも繰り返しここで何人かの委員によって指摘されていますが、試験研究の重点をここに集中すべきだと思います。二の点がどうなっているか。ついでに、北海道の畑作のものは、雨に対する抵抗の強いものでなければならぬ。きょうも不慮のいろいろな等外麦が出ることが指摘されておりますが、試験研究は関東以南のものの梅雨前に収穫できるようなわせのもの、これの品種改良に全力を注ぐべきだと思うのです。この二点。  つまり、さっきの輪作奨励金みたいなもの、不公平を是正するために何らかこれから、最初は、スタートは少なくてもいいから考えなければならないのじゃないかと思う、これが一つ。二つ目には、水田裏作の問題の価格の問題と奨励金の問題と技術の問題、お答え願います。
  216. 野崎博之

    ○野崎説明員 最初の、輪作奨励金にかわるものを何かというお話でございますが、われわれといたしましては総体的に水稲と畑作価格是正を図っていく、そういうことで現在のところは考えているわけでございます。  それから、水田裏の奨励金でございますが、先生おっしゃいましたように、確かに米麦一貫体系の確立ということは非常に重要な点でございます。そういう観点からも水田裏作奨励金を出しているわけでございますし、あるいは高度麦作集団でいろいろな機械を入れたり、期間借地による規模拡大ということも、米麦一貫体系の確立ということを当然念頭に置いてそういう施策に組み入れておるわけでございます。ただ、奨励金を増額するかどうかということにつきましては、確かに先生おっしゃいましたように、連作麦裏作を誘導するという面では奨励金を上げるということは一つの御意見ではあろうかと思いますが、米麦一貫体制ということで、片やいま水田再編利用計画、水田再編利用をやっているところでございまして、そういう生産調整との関連から考えまして、これが果たしてすぐ奨励金をふやしていいものかどうか、そこのところは非常にむずかしい問題もあるわけでございますので、今後さらにひとつ検討させていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  217. 堀川春彦

    ○堀川説明員 麦の品種の問題でございますが、先生御指摘のわせ化の麦の品種の育成のお話でございますが、これにつきましては、全体的にどのような種類の麦につきましてもわせ化ができないかということでやっておるわけでございまして、近年開発されたものといたしまして、小麦について言えば、農林六十一号より一週間程度早いサキガケコムギとかゴガツコムギなどが育成されておるわけでございます。なおまた、わせ化は雨害との関係がございます。したがって、雨との関係の非常に強い病害、たとえば赤カビ病に強い抵抗性のある品種の育成ということもやっておりまして、これにつきましてはチクシコムギとかシロワセコムギが近年開発されておるというような状況でございます。  こういったわせ化なり雨害回避の問題以外にも重要な研究課題がありまして、先生も御指摘のとおり、稲、麦を一貫いたしまして、合理的な作付体系を確立する、この中にさらにわせ化の品種の育成ということを含めた特別の別枠研究ということを五十二年度から開始しております。これについては特別の予算を計上しておるわけでございます。昨年が一億七千万円程度でございます。ことしは二億二千万円余りというようなことでやっておるわけでございまして、そういった水稲との関係における表裏通じました一貫した合理的な作付体系の確立、その中における品種の開発、こういうことも進めておるわけでございまして、御指摘の点は十分私どもも重視をして今後研究を進めてまいりたいと思っております。
  218. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  219. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後四時十九分休憩      ————◇—————     午後六時五十八分開議
  220. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、片岡清一君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る昭和五十三年産麦価決定等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。提出者から趣旨の説明を求めます。片岡清一君。
  221. 片岡清一

    ○片岡委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、昭和五十三年産麦価決定等に関する件について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     昭和五十三年産麦価決定等に関する件(案)   我が国の食糧政策は、内外圧の強まるなかで、根本的な政策の転換が迫られている。   特に、麦類は、水田裏の有効利用及び畑作物としての重要な穀物であることにかんがみ、政府は、その生産対策をさらに強化するとともに、国内自給率向上を図り、麦作生産意欲がさらに喚起されるよう左記事項の実現に努めるべきである。    記  一、昭和五十三年産麦の政府買入れについては、麦作農家の所得と再生産が確保されるようその価格の引き上げを図ること。  二、国内産麦類の増産体制を確立するため、生産基盤の整備、水田裏作による米麦一貫生産体系の確立及び優良品種の開発普及特に雨害、病害等に強い品種の改良開発を強力に推進するとともに、収穫乾燥調製施設等の機械化作業体系の確立を図ること。   右決議する。  以上の決議案の内容につきましては、先般来の質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のことと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  222. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  片岡清一君外五名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  223. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、本決議に対し、政府より所信を求めます。中川農林大臣
  224. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの本委員会の御決議につきましては、その趣旨を尊重して、適切に対処してまいる所存であります。      ————◇—————
  225. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、島田琢郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る農畜産物輸入に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。島田琢郎君。
  226. 島田琢郎

    島田委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、農畜産物輸入に関する件について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農畜産物輸入に関する件(案)   去る一月の日米通商交渉において農畜産物等の輸入促進が迫られて以来、生産農民の不安と動揺は大きく、我が国農業に更に重大な影響を与えようとしている。   すなわち現在進められている東京ラウンド(多角的貿易交渉)においても、我が国は諸外国から牛肉、オレンジ、果汁等の市場開放を依然として強く要請されていることは看過しえないところである。   特に最近の我が国農業は、大規模な米の生産調整をはじめ、みかんや乳製品等の過剰、農畜産物価格の低迷等により極めて深刻な事態に直面しており、かかる時期に我が国農業の振興を図る上に重大な支障をきたすような諸外国の要請を受け入れることはできない。   よつて政府は、今次の東京ラウンドの取りまとめに当たつてはこれらの諸事情を十分ふまえて対処すべきである。   右決議する。  以上の決議案の内容につきましては、先般来の質疑の過程等を通して委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  227. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  島田琢郎君外五名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  228. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、本決議に対し、政府より所信を求めます。中川農林大臣
  229. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの本委員会の御決議につきましては、その御趣旨を尊重して、適切に対処をしてまいる所存であります。
  230. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 ただいまの両決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らうことにいたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時五分散会