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1978-06-06 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 馬場  昇君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    金子 岩三君       熊谷 義雄君    倉成  正君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       平泉  渉君    福島 譲二君       堀之内久男君    森   清君       森田 欽二君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       鈴木  強君    芳賀  貢君       武田 一夫君    薮仲 義彦君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君  出席政府委員         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省畜産局長 杉山 克己君         食糧庁長官   澤邊  守君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      佐々木富二君         農林大臣官房参         事官      蜂巣 賢一君         農林省農蚕園芸         局肥料機械課長 芦澤 利彰君         農林省農蚕園芸         局植物防疫課長 本宮 義一君         農林省農蚕園芸         局果樹花き課長 畑中 孝晴君         農林省農蚕園芸         局畑作振興課長 伊藤 律男君         参  考  人         (全国農業協同         組合連合会常務         理事)     永松 英二君         参  考  人         (全国養鶏経営         者会議会長) 能登谷喜代衛君         参  考  人         (農林中央金庫         理事)     山根  滋君         参  考  人         (ヒヨコイセ         株式会社取締役         社長)     伊勢 彦信君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   松澤 俊昭君     鈴木  強君   吉浦 忠治君     薮仲 義彦君 同日  辞任         補欠選任   鈴木  強君     松沢 俊昭君   薮仲 義彦君     吉浦 忠治君     ――――――――――――― 六月五日  水田利用再編対策に関する陳情書外九件  (第四〇九号)  農業構造改善事業推進等に関する陳情書  (第四一〇号)  農林漁業対策拡充強化に関する陳情書  (第四一一号)  農畜産物輸入抑制等に関する陳情書外三件  (第四一二  号)  畜産酪農経営安定施策確立に関する陳情書  (第四一三号)  牛乳の価格安定等に関する陳情書  (第四一四号)  林政の転換に関する陳情書外二件  (第四一五  号)  国有林野事業特別整備計画実施反対等に関する  陳情書外三件  (第四一六号)  木材の需給計画及び価格安定に関する陳情書外  四件(第  四一七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ――――◇―――――
  2. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は、午前、養鶏問題について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、全国農業協同組合連合会常務理事永松英二君、全国養鶏経営者会議会長能登谷喜代衛君、農林中央金庫理事山根滋君、ヒヨコイセ株式会社取締役社長伊勢彦信君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に申し上げます。  参考人各位には、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。養鶏問題につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず、御意見をお一人十五分、永松参考人能登谷参考人山根参考人伊勢参考人の順序でお述べいただき、その後、委員から質疑がございますので、これにお答えをいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、永松参考人お願いいたします。
  3. 永松英二

    永松参考人 意見を述べる前に、まず、国会の諸先生方の平素の御協力によりまして、わが国畜産が非常に伸張を来しておるということにつきまして、厚く御礼を申し上げます。  中でも配合飼料関係につきましては、ここ二年半以上生産者渡し価格の安定が図られまして、畜産の安定、生産者にとりましてはきわめて生産意欲が上がってまいっておるということでございまして、このことが逆に需給の失調を来しておるということは、まじめな農民にとりましては非常に皮肉なことでございまして、生産者が努力するだけの効果が出てまいるという政策をぜひわれわれとしては要望いたしたいわけでございます。  二、三のことにつきまして申し上げたいと思いますけれども一つ計画生産促進のことでございます。  このことにつきましては、本来生産者が自主的に生産調整計画生産ができるということがたてまえでございますけれども、何分いろいろな意味での情報が不十分であるというふうな点から見まして、なかなかそうはまいらないということに現状はなっております。     〔山崎(平)委員長代理退席羽田委員長代理着席〕 したがって、行政による指導というものがきわめて大きな役割りを果たすと思いますけれども、残念ながら現在は指導でございまして、強制力がきわめて欠けておるというふうな点から申しますと、何らかそういった点の強化が必要ではないかというふうにわれわれは思っております。たとえば、需給動向の公表すら非常に欠けた点があるというふうに思いますし、需給調整協議会活動をしておりますけれども強制力において欠けておるというふうな点、非常に残念なことであるし、また、鳥関係につきましては、融資問題等につきましては他の畜種に比べて非常におくれておるというふうな感じがいたします。     〔羽田委員長代理退席委員長着席〕  次に、養鶏あり方の問題につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。  その根幹は、何と申しましても農家養鶏を育成する、助長するということをわれわれは念願としておりまして、家族労働を中心にする自立経営、これは単に養鶏のみならず日本農業根幹であるというふうに考えております。したがって、国内需要供給関係は、計画的に生産すると同時に国内でこれを完全に自給するということがたてまえであるというふうにわれわれは思います。特に卵につきましては、そういった点については非常に進んだ畜種であるという点が考えられます。  次に調整保管、何と申しましても、季節的またエッグサイクルによって需給のバランスが狂います。したがって調整保管をどうしても必要といたします。この場合に二、三の御要望を申し上げたいと思いますけれども調整保管の費用につきましては、いまの卵の中間経費流通経費ではなかなか賄えないという点がございます。したがって、これにつきましては、国の助成をぜひお願いをしたい。現在若干ございますけれども、まだまだ、たとえば横持ち料生産者の負担になる、それから売買差損が出た場合にこれも賄われてないというふうな問題がございます。  それから、調整保管の二番目に、割卵の施設が非常に不十分でございまして、割卵ができないためにからつき卵が非常に出回って価格が乱高下するという問題がございます。この問題につきましても、ぜひお考えをいただきたい。  それから、調整保管の三番目としまして、液卵公社というのが現在ございます。これは御承知のとおり、大きな赤字を現在持っておりまして、初手の考え方から言えば休止状態でございます。これをぜひ公的なものにしまして、株式会社ではなくて、もっと活動できる形にしていただきたいということをぜひお願いをいたしたいと思います。  そのほかに、生産者団体としましては、自主調整保管ということで、これは自分の金で現在やっております。  次に、大きな項目としまして、価格安定基金強化の問題でございます。これにつきましても、先ほどのエッグサイクル、また特に季節変動につきまして、これが大きな活動をしなければならないというふうに思っておりますが、これもすでに御承知のとおり、卵の基金赤字でございます。大体この六月には機能を停止するというふうな段階にございます。したがって、国の基金に対する積み立て、これをぜひお願いをいたしたいというふうに思います。  細かいことでありますけれども基金借り入れができます。こういった借り入れ金利助成等一つ手だてだと思います。現在、生産者団体では、基金が不稼働になっては困るということで、いま特別積み立てをいたしたいというつもりをしておりますけれども、残念ながら特別に積み立て民間がいたしますと、全部税金がかかります。こういった点はまことにわれわれとしては問題であるというふうに思います。  ちょっと細かくなりますけれども、いまの卵の基金積み立ての課税の問題は、他のえさとかブロイラーとかというものに比べますと、生産者の二分の一しか積めない、他の基金生産者と同額が非課税で積めるということで、何で卵についてそういう差別をしておるのかということが非常に問題になると思います。  結論的には、卵の基金、卵の調整保管のいろいろな手だて、こういったことが生産者にとって魅力のあるものでなければ、卵の基金に加入する者はいません。もっともっと魅力のある基金にするように、ぜひ御援助とそういったいろいろの手だての点をお考えいただきたいというふうに思います。  それから、次の項目といたしまして輸入の問題でございます。先ほど申しましたように、卵は国内自給ができます。にもかかわらず輸入がされておる、形は液卵でございますけれども。この輸入の量が年々ふえてまいっております。五十一年に比べまして五十二年は卵で二〇%以上ふえておるということで、需要の増に比べますと、なぜこんなにふえなければならないのかということが問題かと思います。  それから最後消費促進の問題でございます。日本人は卵を外国に比べて非常に食べておるということをよく言われますけれども、肉の消費を見ますと日本外国の十分の一とかそれ以上に少ないわけであります。したがって、古来、卵でいろいろな意味栄養をとっておるということで、日本人の卵の需要というものは国民栄養上も非常に重要な畜産物でございます。もっともっと卵が国民に食べられるように需要促進をすべきではないかということで、たとえば卵を買いやすくする、また卵のいろいろな加工開発をするということが必要かと思いますし、われわれも毎月二十八日を鶏の日というふうに決めまして、ひとつ国民に卵、ブロイラーについて知ってもらうというふうないろいろな工面をいたしております。国の方でもひとつぜひいろいろな意味での御援助お願いしたいというふうに思います。  それから、卵に関連しましてブロイラーについて一言御要望を申し上げたいと思います。これも現在過剰でございまして、価格は去年に比べまして四、五十円安というふうなことで、ブロイラー農家は非常に困惑をいたしております。これは牛肉、豚肉、ブロイラー肉と非常に関連がございます。現に牛肉が入ってくるという声を聞いただけで、全額とは申しませんけれどもブロイラー価格に影響をいたしております。いつの時点でそう発表があったから幾ら下がったという統計はまだ私はとっておりませんけれども、そういうことが如実に感ぜられます。したがって、ぜひこのブロイラーにつきましては、ほかの肉と同様に畜安法の指定食肉にしていただきたい、そして肉一連政策をとれるようにしていただきたいというふうに思います。また、ブロイラーにつきましては特に企業からの進出が激しい畜種でございまして、これにつきましても、先ほど申しましたように日本農業根幹である農家養鶏保持育成につきましては、ぜひ先生方に御協力お願い申し上げたいというふうに思います。  それから最後に、結論といたしまして、畜産物につきましては、国民のこれから最も必要な栄養資源でございます。ぜひこれを国内自給できるという体制をとり、また農家が安定してそして安心して目標を持って畜産ができるように、そういったいろいろな意味での生産環境の維持にいろいろな御援助お願い申し上げたいということでございます。手前勝手になりますけれども系統農協では中核農家群による営農団地というものをつくりまして、そしていまの新しい意味での流通、新しい意味での消費形態にそれがマッチするように、現在施策をいたしておるつもりでございます。  今後の畜産、いろいろな問題がございますが、ぜひ絶大な御援助お願い申し上げまして、私の陳述を終わりたいと思います。(拍手
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  次に、能登谷参考人お願いいたします。
  5. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 御意見を述べさせていただきます。  初めに、三月十七日、赤坂プリンスホテルに六党の各代表の方々には御多忙の中をおいで願いまして、生産調整下養鶏の実情について説明を聞いていただきました。また、本日は生産調整についての意見を申し上げる機会を与えていただきまして、全国養鶏経営者会議といたしましてまことにありがたく御礼申し上げる次第でございます。  最近、四月二十八日付で農林省の三局長通達が出まして、生産調整違反者に対しては凍結時への復元をうたい、生産調整を改めてさらに強化いたしましたことについて、生産者たちは、農林省がいままでになく前向きになったことを非常に喜んでおります。  なぜ生産調整は必要か。鶏卵生産調整は、石油ショックによってえさが二倍に値上がりいたし、畜産農家の中から自殺者まで出し、政府も第一次から第三次まで緊急融資をせざるを得なかったころ、養鶏農家の安定を目的として、卵価暴落を阻止するため、四十九年農林省実施に踏み切ったものであります。しかるに、これを全く無視して、今日まで大規模やみ増羽を続けてきた一部の業者、特にイセタケクマ両者が世論の沸き上がるところ、ついに摘発されるに至ったことは当然ではありますまいか。  両者は種々の口実を傲慢に強弁しながら、正直者の多くの養鶏農家生産調整を遵守してやっと卵価暴落を防ごうとしていることを逆用して、自分だけあたり構わず力任せに大規模化し、数百万羽養鶏を呼称し、まじめな養鶏農家の努力を全く水泡に帰せしめ、泣かせている無慈悲な横暴を許すわけにはまいらないのであります。  三つ目に、農業の中にこそ養鶏はある。私どもは、日本の農村にあって千羽単位の小経営も含めて広く養鶏農家経営を守ることこそが、今日の日本農業発展、すなわち食糧の自給率を高めようという日本農業の課題を解決する道だと思っております。このような農業の中にこそ養鶏は存在すべきものであり、これを支える養鶏農家を守るためにこそ今日の鶏卵生産調整政策必要性があると思っております。私どもは、養鶏農家経営安定を目的として実施されているこの生産調整を傍若無人に乱し続けているイセタケクマの行動は、特に悪質なものとして政治の場においてただしていただきたいものだと思います。  四つ目に、イセ養鶏工業論は……(「特定の個人の攻撃をするのじゃなく」と呼び、その他発言する者あり)
  6. 中尾栄一

    中尾委員長 よくその点はお考えになって言ってください。
  7. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 それでは気をつけて申し上げます。  私たちは、鶏卵生産調整と米の生産調整と切り離して考えるわけにはまいりません。四十万ヘクタールの水田転作を図ろうとしている今日、日本の耕地が有機質肥料不足によってやせこけているときに、養鶏を初めとする畜産耕種農業と結びつける複合経営あり方も現在考えるべき最も大切な点であろうと思います。養鶏は、この面からも農業の一部門として位置づけていただくことをお願いする次第であります。  農政問題につきまして御意見を申し上げさしていただきます。  このたびの大規模なるやみ増羽実態調査及びその阻止の運動を、私ども日本の農政の問題としてとらえているつもりであります。これは今日始まったことでなく、全国養鶏大会決議したり、過去数年にわたり何回となく、直接にあるいは日本養鶏協会などを通して、農林省に彼らの行為の調査と取り締まりを訴え続けてきたのであります。しかし、農林省は、思い切って勇断するに至らないまま今日に至りました。そこで私どもは、もはやこれ以上放任しておいてはますます養鶏農家が困っていき、農家が減っていく、そういうことにつきましてお願い申し上げている次第でございます。  去る五月九日に久保講堂で一千五百名の生産者消費者とが結集して開かれた大会は、これらの事実に怒り、自分たち生活権を守ろうとする叫びの大会でありました。全国各地から手弁当で参加してきた生産者消費者から百万円近い運動資金カンパが寄せられたのを見ましても、この運動が一部私ども既得権擁護運動などでないことは理解していただけることと思います。  生産調整を正しいレールに。以上のように、過去三カ年に及ぶ運動の頂点として、本日も国会という国の最高機関で各先生方に御審議いただいているわけでありますが、これによってまじめなる生産者生活経営が少しでも守れるようになることを願ってやまない次第であります。  最後に、私どもは、養鶏経営確立のための国会決議お願いしたいと思っているわけでございます。養鶏農業の中にはっきり位置づけていただきまして、商社独占企業養鶏への進出を阻止することを内容とする国会決議お願いしたいと思うわけでございます。将来は養鶏安定法の成立へと進んでまいりたいと思うわけでございます。この決議は、養鶏に限らず、現在進行しつつある養豚を初めとする各種畜産分野への商社、大資本の進出を阻止し、畜産農民生存権を守る力強い第一歩となるでしょう。  国会決議が成立したと聞いたならば、全国三十万戸のまじめなる養鶏農家は、どんなに喜び、また励ましになるか知れません。いままでの苦労も忘れ、今後の日本養鶏発展のために邁進することでありましょう。  よろしく御理解、御協力のほどをお願い申し上げます。(拍手
  8. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  次に、山根参考人お願いいたします。
  9. 山根滋

    山根参考人 農林中央金庫山根でございます。  中尾委員長初め、本委員会先生方には、常日ごろ農林漁業協同組合系統金融につきまして格別の御高配と御鞭撻を賜っておりまして、このことを関係者一同衷心より感謝申し上げております。  また、本日は、わが国農業枢要部門である養鶏の問題を審議されるに際しまして、参考人として私ども意見を御聴取いただける機会を設けていただきまして、厚く御礼申し上げます。  大変ふつつか者でございますが、以下、農業金融についての農林中央金庫基本姿勢養鶏金融についての考え方、及びただいま問題となっておりまする鶏卵生産調整についての融資上の措置等について、所信を申し述べます。  農林中央金庫は、すでに御高承のとおり、農林漁業協同組合及びその連合会を主たる構成員とする全国組織特殊金融機関でございます。したがいまして、その運営の原則は、手続の面において民主的協同組合的でなければならず、目的において農林漁業の発達と農林漁業者社会的経済的地位向上に寄与することを第一義とするものでございます。  そのため、具体的な活動方針といたしましては、第一に、系統組織の内部において協同組合の原点に立って、みずからの体制を整備すること、すなわち、信用、共済、販売、購買、加工指導などの各部門が全体のチームワークを強化し、組合員農家営農生活向上という一つ目的に向かって総合力を発揮すること、並びに信用販売といった各部門ごと単位組合県連全国連がそれぞれの分担機能を果たしつつ、相互に補完するという体制を一層強化すること、それらのことをねらいとしてただいま全中の指導のもとに協同活動強化運動及びそれに基づく組合金融推進方策を強力に推し進めている次第でございます。  第二に、わが国農林漁業の存立を脅かし、あるいはその発展を制約するもろもろの条件について、政策当局に善処を求めるとともに、金融上の諸施策につきましては、農林漁業政策協力し、政策との整合性を失することのないよう万全の配意をしている次第でございます。  さて、金庫農業貸し出しについての基本姿勢でございますが、農業資金需要に対しましては、単協信連金庫のいわゆる三段階が一体となって緊密なるネットワークと相互補完体制をもって融資に当たっているところでございます。  金庫の直接担当する分野は、主として全国連合会及び府県、信連との取引並びに農畜産物調整保管自主流通米金融等農業政策に関連するものでございますが、単協信連では十分に対応できない長期低利融資新規開発的融資につきましては、補完的立場において、直接これを担当しており、農業貸し出し重点支所の設置、低利融資制度創設等施策を行って、農業金融の充実に努力いたしている次第でございます。  農業のうち畜産につきましては、農業基本法に言うところの選択的拡大分野であり、一部に高能率、高所得の畜産経営が出現するなど、目覚ましい発展が見られるものの、巨額の資金量を必要とする反面、経営管理が困難でリスクも高く、単協のみでは対応しがたいケースも多いので、金庫が直接対応するものが相当数に上っております。  畜産経営の担い手は基本的には農業者であるべきでありますが、その農業者経営形態も、最近は個人経営から農事組合法人有限会社、さらには株式会社組織というふうに多様化しており、このほかに商社系インテグレーションと呼ばれる経営体も併存してしのぎを削っているのが現状でございます。金庫といたしましては、これらの多様な経営体に対して、農林漁業専門金融機関として窓口を開き、わが国畜産業発展のための金融を行っているわけでございますが、商社系と言われるような企業に対しましては、農家との間の適正妥当な契約が締結されているか、地区内の農家が不利に陥る懸念がないかどうか、系統農協協調関係に立っているかどうか、地元の農協県連の意向はどうか等について十分な調査を行い、慎重に対処してまいってきておる次第でございます。  次に、ただいま本委員会でも御審議いただいておりますところの鶏卵生産調整についての融資上の措置について申し上げます。  鶏卵生産調整につきましては、昭和四十九年以来農林省農林経済局長構造改善局長畜産局長連名による協力依頼を受けております。  生産調整のための行政指導内容となっている融資事業としては、農林漁業金融公庫資金沖縄開発金融公庫資金及び農業近代化資金という財政援助を伴った三つ制度資金が掲げられており、民間ベース資金対象外とされておりますが、金庫としては、当初から系統資金もその例外ではないと心得、融資担当の各部、各支所に対して、金庫資金を含めて生産調整協力するよう趣旨の周知徹底を図ってまいりました。不幸にして、現在私ども融資先について生産調整実施上問題があるケースが出ているとの御指摘を受けていると承っておりますが、金庫といたしましては、生産調整が始まる以前からの古い融資先についての継続取引といった問題もあり、また、具体的案件について違反の疑いがあるとの御指摘を受けたものについて、直ちに関係機関の協力を得て規模を縮小して是正を図ったという事例もございます。  私どもといたしましては、これからの融資につきましては、いやしくも行政指導とそごするような新規の貸し付けはいたさない所存でございます。また、既往のものにつきましても、公的に違反であるとの認定を受けるに至った取引先に対する融資につきましては、受託農家への影響、当該融資先金融上の信用問題等、いろいろ困難な事情はございますが、それらを総合勘案しつつ、可及的速やかに生産調整の趣旨に沿った処置をとることに努める所存でございますので、よろしく御指導を賜りたいと存じております。  最後に、これは蛇足になりますが、わが国畜産経営をめぐる内外の環境はきわめて厳しいものがあり、一経営体の努力ではもちろんのこと、系統組織の努力をもってしてもいかんともしがたい困難な問題を包蔵していることは申すまでもないところでございます。私どもは、さきに述べましたような基本姿勢を堅持し、常に自粛自戒を怠らず努力を続ける所存でございますので、先生方の相変わりませぬ御鞭撻と、卵価安定基金制度の拡充、調整保管制度の強化農業近代化資金制度の充実など、政策面での強力なバックアップを切にお願い申し上げる次第でございます。  御清聴ありがとうございました。(拍手
  10. 中尾栄一

    中尾委員長 ありがとうございました。  次に、伊勢参考人お願いいたします。
  11. 伊勢彦信

    伊勢参考人 御指名によりまして、この委員会で私ども意見を開陳するということができることは、私どもと同じ考え方で鶏の経営を進める者にとりまして大変うれしいことでございまして、こういう機会をお与えくださいました議員諸先生に厚く御礼を申し上げます。  最初に、いろいろと話題になっております私どもの会社につきまして、鶏の振興に関する問題を申し上げる前に、ちょっと一言つけ加えて申し上げたいと思います。  私どもの会社は、明治の終わりに始まりました日本でも最も古い鶏の会社でございます。片田舎で親子二代にわたりまして無我夢中で鶏に取り組んでおりましたうちに、気がついてみますと、皆様方からあるいは新しく鶏の産業に加入なさった方々から御批判を受けるというような状態に至ったということは感慨無量なものがございます。いろいろ御批判もございましょうが、われわれは一貫して日本の鶏産業のパイオニアとして努力してきたと自負いたしておるわけでございます。  特に申し上げたいことは、私どもの会社は農民の会社であり、たくさんの農民の集合体が一つの会社の体裁をなしておるということを特に申し上げたいと思います。私自身も生まれつき農家でございまして、多数の農家と一緒にわれわれの会社の事業を進めておるわけでございます。たくさんの農家と長い間一緒に仕事をいたしておりますが、ただの一例も農家の皆様に欠損を与えたとか、あるいは御迷惑をかけたとかという例はなしに、仲よくいままで仕事を進めてこれました。これも日本農業に対する政治が非常に適宜に進められたというおかげかとここに感謝申し上げるわけでございます。  なお、私どもの会社を指して商社養鶏というふうにおっしゃる方もございますが、日本商社経営されている農場もございます。その農場の羽数を見ますに、現在日本におります鶏の一%にも満たない少ない数でございます。私どもは、たくさんの商社あるいはえさメーカー、あるいはここに御出席の全農の皆様方と非常に仲よくおつき合いをさせていただいて仕事を進めておりますけれども、特定の方々金融機関以外からは資本的、資金的な御援助を受けて仕事をいたしたことは一度もございません。日本養鶏発展期にはたくさんの農家商社資金を利用して発展されたという時期がございましたけれども、私どもの会社は、長い歴史の中ででも一度もそういうような商社の皆様の資金的な御援助を受けるということはなしに、常に農民として農民立場で独立独歩商社の皆様に対抗してやってきたという自負を持っております。今後も一つ商社とかメーカーに偏することなく、独立独歩でやっていきたいと考えておりますので、何とぞ御支援をお願いしたいと思います。  それから、つけ加えまして、私どもの会社が卵価の安定にいろいろと努力いたしておりますことを一つ二つ申し上げたいと思います。  最近東京都内にたくさんのコンビニエンスストアと申しますか、非常に小型な店舗が千店ぐらいの規模で広がっておりますが、余りにも小さい御注文でございますのでなかなか配送ができない、卵の配送ができないというような現状でございましたが、私どもの会社で配送システムを勘案いたしまして、完全に都内に配送し、コカコーラと同じようにいつでも都民の手近なところに安い卵があるというふうな努力をいたしまして、卵の消費に非常に協力いたしておるつもりでございます。  また、最近魚肉が非常に不足ということで、幾つかの魚肉の会社が仕事がないという事態が生じておりますけれども、私どもはその会社と共同開発で、魚肉にかわる卵の消費加工品をつくっております。いろいろ各会社の努力を得まして、約二百万羽余りの卵の処理を加工食品に回して消費いたしております。少なからぬ卵の消費にプラスいたしておるかと考えておるわけでございます。  次に、生産調整の問題を含めまして、鶏に対する私ども考え方を多少申し述べてみたいと思います。  生産調整に該当すると思われる農家は、約五千羽以上の農家をとりますと、ことしの二月一日の農林省の統計によりますと五千七百五十戸ございます。日本に一億一千万羽の鶏がおりまして、日本国民に卵の供給をいたしておるわけでございますが、そのうち九千二百万羽の鶏は五千七百五十戸の農家で所有されて、国民消費する卵の大部分はこの五千戸の農家で供給いたしておるわけでございます。この五千七百五十戸の農家が申し合わせをしまして卵の生産を制限し、卵の価格をつり上げようということは、一億国民に卵の供給をし、いままで物価の優等生ということで、われわれの努力で積み重なってきたことを、このような安易な方法で国民に対し高い卵を供給するのはいかがなことかと存じます。大部分の心ある養鶏家あるいは国民の皆様には、こういうシステムは賛同を得られないのではないかと考えております。  それから、昭和四十九年に生産調整をやろうということが発表されまして、現在に至るまでの五千羽以上の農家の推移を見ますに、約三五%の鶏が五千羽以上の農家の中でふえております。いずれもこの五千戸の農家が、自分経営を合理化するために増羽されたことだと思います。しかし、いま一部で申されるように、四十九年のころに鶏の羽数を戻せということになりますと、この五千戸の農家のお持ちになる鶏の羽数の三分の一はカットしなければならないということであります。これは一戸二戸の農家経営にとって重大なことでもございますし、卵の値段の大暴騰のみならず、国民に卵を供給するという大事な事業に大混乱を来すおそれがございます。このような暴論は、言うことは簡単でございますが、日本の国にとっては非常にマイナスなことではないかと考えるわけでございます。  それから、生産調整を強行しようということになりますと、私どものような北陸あるいは東北で仕事をいたしております出おくれた養鶏家と申しますか、辺地におる養鶏家と申しますか、これから合理化して鶏で一家を支えていこうという情熱のある農家の前途をふさぐものでございまして、現在五千羽だとか一万羽だとかの規模農家自分生活の安定のためにもつと拡大、合理化したいという意欲に富んだ方々の前途を、こういう指導で摘み取ってしまうということは、鶏産業の活力にとっていかがなものかと心配するわけでございます。  農畜産物の中でただ一つ国際競争力があると私ども考えておりますこの卵につきまして、このままの形で農家の創意工夫によって育てていくということに御協力願えれば大変ありがたいと思います。大変勝手な言い分でございますが、安易な生産制限など行いましてみずから国際競争力をなくするということは、私どもの先人の苦労に対しても非常に申しわけないことでないかと考えるわけでございます。  そこで、生産調整にかわる何か養鶏経営を安定する案がないか。これにつきましていろいろ御意見が先ほど出ておりましたが、私ども考え方としまして一つの見地を申し上げたいと思います。  現在まで五千七百戸の農家が足並みそろえて卵の生産調整をしようということで努力してまいったのですが、結果的には三五%も鶏がふえてしまったということは、これは言うべくして現実には行われないということが実証されておるわけでございます。私の提案いたしたいことは、鶏卵生産用の初生びな、種卵、種鶏、そういうような部門生産調整実施すればよろしいのじゃないかと思います。現在採卵用のひなを供給するふ化場が日本に約百戸余りございます。養鶏農家に比べまして非常に数が少のうございますので、監督、指導あるいは協議などが非常に的確に行われるのではないかと思います。そしてもう一つは、非常に安いコストで生産調整が行われるのじゃないか。たとえば一割の種卵をカットする、あるいは買い上げして廃棄するという金額を計算いたしましても、約十億足らずの金額で生産調整ができるわけでございますので、この方面も御勘案願えれば大変ありがたいと存じます。  二番目には、先ほどからも御意見が出ておりましたが、外国からいまたくさんの卵が輸入されております。これは私どもの努力にかかわらず年々卵の輸入が増加し続けております。これは私どもの正常と申しますか適確な市場に必要な液卵をつくる努力が欠けておるわけでございます。ことしの一月、二月、三月、四月の卵の輸入量を見ますに、約四百万羽分の毎日生産される卵の分が輸入されておるわけでございます。これは五、六年前に比べますと約四倍近くにふえております。私どもはここで安易に、よい卵、安い卵、よい液卵をつくる努力をしない場合は、この四百万羽が一千万羽になり、三千万羽になり、五千万羽になり、ついに私どもの仕事がなくなってしまうわけでございます。日本鶏卵産業そのものがなくなるおそれがございます。これは夢物語ではございません。約十五年前に日本に種鶏の産業がございまして、たくさんふ化場がひよこをとる種鶏を生産いたしておりましたけれども企業努力を怠ったために、現在九五%まで外国から輸入して日本のものに代替されておるという現況でございます。これに対抗するためには、先ほど申しましたように、企業の合理化の努力が非常に必要であるとともに、お国の方で、いま日本に少ない液卵あるいは凍結卵、乾燥卵、これが市場の求める正常なものができる設備を養鶏農家あるいは系統団体あるいは流通団体の方々に手厚い融資補助などしていただいて、外国製品に負けないものが日本に十分できるように御助力願えれば大変ありがたいと存じます。  三番目に、鶏卵流通部門いずれを見ましても、からつき、食卓に上る卵の形のままで保管するという倉庫が日本に非常に不足いたしております。他の農水産物は豊富にそういう貯蔵をする施設がございまして、市場の値段により適時に出荷され、適時に保管されるということが行われておりますが、事鶏卵は、その日に生んだ卵は大体二、三日のうちに市場に出てしまう。市場の需要、不需要にかかわらず全部市場に出るということがございまして、暴騰、暴落を繰り返すということが行われております。これは私どもが余りにも合理化を急ぐ余り、流通部門のそういう保管、貯蔵に努力をしなかったということを反省いたしておるわけでございます。農民団体あるいは流通業者の方々に、こういう卵を適時に保管し国民の必要な量を適時に出荷するという施設をつくることに長期の融資あるいは補助金をお出しくださるようにお願いするわけでございます。  このような手厚い国のお手伝いを得ましてでも、なおかつ鶏卵産業に適合しない方々が出ておることは統計の示すとおりでございます。この方々が家庭生活に傷をつけることなく他の新しい産業に転換できるように手厚い転業資金などの制度を御準備くださいますと、この業界の近代化に非常にプラスするのではないかと考えております。  以上、非常につたない意見でございますが、私どもこのような方向で努力してまいりたいと思っております。ここに御出席の諸先生方の御指導で、戦後の日本は世界でもうらやむようなりっぱな国にしていただきましたが、今後もお国のことは諸先生に全くお任せして、私どもは卵づくりに励みたいと考えておりますけれども、一億国民にどうして安い卵を供給するか、それは養鶏農家の創意と工夫、経営責任にお任せいただければ大変ありがたいことだと存じております。安易に生産を制限し、値段をつり上げ、そしてその始末を国の補助金あるいはいろいろなお世話をかけるということは、たった一つ日本の農産物の中で国際的に自立できる産業が、そういう形に堕落あるいは滅亡していくか、いままでどおり自分の力で立っていく独立独歩の日本唯一の産業として残るかの分かれ道でございますので、この辺よく御勘案願いまして、正しい方向に日本鶏卵産業をお導きくださいますようにお願い申し上げます。  御清聴大変ありがとうございました。(拍手
  12. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 中尾栄一

    中尾委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  14. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 まず最初に、伊勢参考人にお伺いをいたします。  いまお話しの中で、経営体といたしまして農民の集合体である、かように申されたわけでございますが、羽数は何羽ぐらい規模としましてやっておられるか。  それから、農民の集合体と言われましたけれども、どのような契約その他ということでやっておられるのか。つまり、商社養鶏とは違うのだ、こういうことを言われましたが、それにつきましてちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  15. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  農民の集合体という大変抽象的な言葉を使いましたが、私ども農家との結びつきはこういうような形をいたしております。ただいま約百戸の農家と卵の生産、飼料の供給、ひなの供給、そういうようなことで包括的な契約をいたしまして、契約期間は六年間、契約を解除したいときは六カ月前に申し出ればお互いに契約がやめられるという形態になっております。これは卵の生産の一定の指数が決めてございまして、生産が上がるごとに契約料が支払われていくという仕組みになっております。  私どもの契約農家の平均羽数は約一万羽でございまして、農家に支払われる利益の分配金は、ことし、昨年大体変化はございませんが、年間約三百六十万ぐらいでございます。それにかかる労働力は、女の方大体一名というような形で仕事をしていただいております。その鶏の羽数が約百万羽でございます。それから、仙台にございます構造改善のあとを引き受けましたりいろいろいたしました農場の鶏の羽数が約百三十万羽かと存じます。合計ほぼ二百三十万羽の採卵鶏を所有いたしております。  以上でございます。
  16. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 能登谷参考人にお聞きいたします。  全国養鶏経営者会議に所属されている農家方々は千羽以上から対象になっておるということでございますが、能登谷参考人御自身も相当経営をされておるというふうに伺っておりますが、どの程度の経営でどのような内容経営体としてやっておられるか、お聞きいたします。
  17. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 私の養鶏はトキワ村養鶏農業協同組合、専業養鶏組合でございます。組合員は十五名でございます。もう一つ有限会社トキワ農場がございます。これは土地を持たない生産法人の関係の組織でございます。これと合わせまして十九万羽ございます。一農家戸数当たり一万二、三千羽ぐらいだと思います。  以上でございます。
  18. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 そうしますと、一応農家とされましてはお互いに一万羽ずつは経営体として所有されている、こういうことだと思います。  そこで、問題になっている生産調整でありますが、これは昭和四十九年度から生産調整の徹底を図るということできたわけでございます。その末端の現状でございますが、各市町村ではそれぞれ需給調整協議会というものが中心になってやってこられた、かように考えるわけであります。そこで、いま能登谷参考人からは、イセタケクマが大規模やみ増羽をなさってきたというお話があったわけでございますが、この需給調整協議会にはそれぞれ全鶏会議農家方々も相当入っておられたのじゃないか。これは今日までかなりの年数がたっておるわけでございますが、つまりこの協議会におかれましては、どのような調査をし、どのような活動をしてきたか。全然有名無実ではなかったと思うのですが、そういう点につきましてはいかがお考えでございますか。
  19. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 経営会議は、まず会員はほとんど農家の専業形態を主としてございます。それで、特に私たちの組織は農業基本法以来農家の共同集団化を目標にしてやってございます。理想としているところは、亡くなられました日本の大規模養鶏をやられた彦坂先生が、農家の集団を集めまして十万羽養鶏をやられたことをもって、私は日本の近代化養鶏の初めではないかと思うわけでございます。そして、農家の集団の上において共同経営をし、近代化、大規模化の方向を農林省指導のもとに今日までやってまいったと信じてございます。  生産調整は、当然わが組織の、いわゆる農業近代化を進めてまいりました昭和四十年ごろから、生産調整必要性価格安定について訴え続けてまいってございますので、全国経営会議は、生産調整につきまして、そうしなければ日本農家養鶏は育たない、やっていけないということを何年もやってございます。
  20. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 そこで、先ほど四十九年度から生産調整に入った、こういうことでございますが、しかるにもかかわらず三五%のやみ増羽がなされてきたということを参考人から指摘されたのでございますが、そういたしますと、この三五%のやみ増羽の大半というものは、商社養鶏とか大規模養鶏方々によってのみなされた、かように御判断をされておられるのかどうか、その点についてはいかがでしょうか、能登谷参考人にお伺いします。
  21. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 御指摘の羽数の問題でございますが、やはり私たちの主張は、また私たち自身は、養鶏を、米以外の畜産を——農業構造改善事業が始められたとき、構造改善事業が土地区画整理を中心に行われるとき、必ず畜産を計画に加えなければ事業は認められませんでした。そして、たとえば鶏が十万羽、豚なら一万頭、こういった農業構造政策が打ち出されて、必ず米以外の計画をということが、われわれ農村計画にとって一つの大きな要求であったし、それがなければできなかったわけでございます。  その中で、当然養鶏は近代化路線をたどって一つ企業養鶏と言われる方向をとってまいったのも事実であります。私たち自身も、そういった方向の中に鋭意努力してまいったわけでございますけれども昭和四十七、八年のニューカッスル、マレック病の大恐慌の中に、大変な赤字の中に農家がのたうち回ったわけでございます。その後で生産調整が実行されて、そして生産者がお互いに羽数の抑制に努め、そして価格安定に努力して経営の立て直しを図ったのは、昭和四十九年以来ここ三年の間でございます。そうして、ようやく経営が安定になり、農家組織の中に養鶏一つの専業として成り立つ形態ができてきたと私は信じておるわけでございます。ところが、その上に立って、いま問題になっている大増羽が特定の企業と言っていい方向に集中したことに、私は今日問題があると信じているわけでございます。
  22. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 伊勢参考人にお伺いいたしますが、特定の業者といたしまして一応名指しをされておるわけでございますが、中小養鶏業者にとりましては、やみ増羽をしないように生産調整を守ってきた、ところが一部の業者がそのようなやみ増羽を図りまして、むしろ生産過剰になり経営の圧迫を中小業者が受けるというような状態になっておる、そういう指摘をされておるわけでございますが、安い卵をできるだけ大量に生産をするということは、確かにそれも一理あるわけでございますが、一方にとりましては、農家養鶏をされていくという方々にとりましては、非常に大きく経営上の圧迫というものを受けるのではないか、そういう点に関しまして、実際指摘されるようなやみ増羽というようなことを行ってきたかどうか、その実態について伊勢参考人にお伺いをいたしたいと存じます。
  23. 伊勢彦信

    伊勢参考人 特定の業者の増羽により卵が下がったという御指摘でございますが、これははっきり見えるかどうかよくわかりませんが、昭和四十九年に五千羽以上の生産調整関係のある農家の持ち羽数が六千六百万羽でございまして、それが五十三年の二月一日の農林省調査によりますと、九千二百万羽に増羽いたしております。約二千八百万羽の鶏がどこかでふえておるわけでございます。これは、先ほど御質問の方から多数農家とおっしゃいましたが、これはいずれも五千戸の農家でございます。五千戸の農家のどなたかで約三千万羽に近い鶏がふえておることを統計で示しておるわけでございまして、決して私どもの会社が増羽しておるから卵の値段が下がったということではないと思います。  参考までに、これも農林統計の発表でございますが、日本の五大都市への入荷量が昨年同期に比べて月々減っております。それにもかかわらず卵価暴落するということは、私は流通の形態に問題があるのではないか、先ほど申しましたように、何かと流通に不備な問題があるのが卵価の低落の原因ではないかと、この農林省の統計から推察して申し上げておるわけでございます。  以上でございます。
  24. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 次に、永松参考人にお尋ねをいたしますが、年々二〇%ぐらいずつ外国から液卵輸入されておる、こういうことでございますが、この抑制の方法としましていま二つの提案がなされたと思うわけでございます。一つは、国際競争力に対抗できるわが国の生産体制というものを整備しまして食糧の自給を図っていくという物の考え方、もう一つは、できるだけ国が補助をしながら、つまり中小農家も含めまして、これを保護育成をしながら、あるいはその他の方法によりまして外国からの輸入を抑制する、こういうような二つの考え方がなされておるわけでございますが、永松参考人とされましては、この輸入というものを抑えるためにはどのような方策というものがわが国にとっては適切であるとお考えか、こういう点について御質問申し上げます。
  25. 永松英二

    永松参考人 私の言葉足らずで誤解を与えまして申しわけありませんが、二〇%と申し上げたのは、五十一年に比べまして五十二年の輸入が年間で二〇%ふえたということでございまして、トン数からいいますと、現在百八十万トンの中の約四万トンぐらいでございます。申しわけございません。  それから、御質問の点でございますけれども、いま液卵に関税がかかっております。これにつきましては、ちょっと私、失念しましたけれども、パーセントと金額になっております。いずれか低い方だったと思いますけれども、それが金額の方が六十円ということになっております。ここしばらくそれが動いておりません。しかし、われわれとしましては、百五十円ぐらいの金額にしませんとこれが障壁にならないということで、かねてから御要請申し上げておるわけでございます。いま御質問のどういうふうに輸入を抑制するかということでございますけれども、これが一番大きな手だてであるというふうに思います。それから、外国の相場は非常に上下いたします。したがって、関税の障壁をその辺まで上げておく必要があるのではないかというふうに思っております。
  26. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 能登谷参考人にお尋ねしますが、先ほどこの生産調整に関しまして、採卵用のひなを供給するふ化場が全国で百あるけれども、これで調整すれば非常に安いコストでできるのではないか、このような伊勢参考人のお話があったのでありますが、これに対しましては全鶏会議としてはどういうような御見解をお持ちでございますか。
  27. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 コストの問題につきましては、伊勢さんが指摘するように農家養鶏が高い卵になるということは絶対ありません。私たち経営会議と名をつけましたのは、先ほど申し上げましたように、農業の近代化、土地と養鶏畜産を結び上げていく、そして米以外の畜産を取り入れろという農業施策によってわれわれは鋭意努力してきておりますし、それと同時に、コスト計算につきましても徹底した、企業競争力に勝てるように技術とその他の勉強をしてまいるために組織されたのが全国養鶏経営者会議という名前でございます。
  28. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 山根参考人にお伺いいたしますが、やみ増羽をしている業者からは資金を引き揚げるべきだという考え方がございます。先ほどこの生産調整協力をするために、具体的な事例もある、かように申されたわけでありますが、たとえばどういうようなことになっておりますか、どういう事例があったのでしょうか。また基本的な姿勢としまして、今後もそれを堅持されていくのかどうかお伺いします。
  29. 山根滋

    山根参考人 具体的な名称ははばかりますけれども、一有限会社に対する設備資金融資に際しまして、当初生産調整協力するという確認を得て、生産が増加しないという判断のもとに融資をいたしましたが、その後、これは大雛の飼育施設でございましたが、その大雛が成鶏として飼われておるということが判明して、地元でも問題になったというケースがございまして、関係機関の協力を得まして、地元の需給調整協議会との間で生産調整に関する覚書が取り交わされて、その覚書に従いまして調整の実が上げられたという報告を受けております。  なお、今後の融資につきましても、生産調整協力する意思を確認し、生産調整を逸脱した場合には繰り上げ償還を命ずる、それに従ってもらいますという確約を得て融資をするというふうな措置をとりたいというふうに考えております。
  30. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 時間が参りましたので、終わります。
  31. 中尾栄一

    中尾委員長 竹内猛君。
  32. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、前回に次いでまた養鶏についての御質問を申し上げますが、本日は大変御多忙のところを参考人の皆さんには御出席をいただいて、貴重な御意見を提起していただいたことに対して感謝を申し上げたいと思います。  そこで、問題はたくさんございますが、まず伊勢参考人にお尋ねをしますが、先ほど玉沢委員からもお尋ねがありましたように、農家との契約状況というものがどういう形で契約がされておるのかという問題について、もう一度詳しくお尋ねしたいと思います。  私の場合には、特に百戸の農家との間で、一万羽以上の者との間に契約があって、そして解除は六カ月を基準にして解除する、こう言われておりますが、その地域はどういう地域で、どの程度の羽数によって契約をされているのか、この点についてもう少し詳しく説明をしてもらいたい。
  33. 伊勢彦信

    伊勢参考人 まず私どもの契約いたしております地域から申し上げますと、石川県で五十八戸だったと思います。それから宮城県で三十五、六戸でございます。それから埼玉県で十一、二戸、富山県で六戸ぐらいでなかったかと思います。間違いましても多少だと思います。  この契約の始まりました経緯と申しますのは、能登半島で国の制度資金をお借りになって営農を進めておられましたけれども、非常に地域的な困難さから制度資金の滞留を起こされた農家が七十戸ほどございまして、それをまとめて、何か新しい仕事で制度資金を返す方法がないかという御相談がございまして、こちらに御出席の農林中金さんあるいは公庫、県の方々と御相談いたしまして契約案をつくったわけでございます。これは私どもの会社がつくったというわけではございませんので、県、金融機関、農家代表が集まりましてつくったものでございます。  契約の内容は、基本として六年間契約をいたしましょう、その間私ども指導に従って卵の生産をする、生産した卵につきましては、われわれは農家の委託を受けて責任を持って販売をする、利益の分配につきましては一年、二年の卵価の高下ではなしに、約五年間の平均でその利益を農家に分配する、大まかなところはこういうことになっております。もし必要でございましたら契約書の内容につきましてはお届けいたします。そうしてこれは、大体六カ月に一回ずつ、県及び農家の代表、金融機関、私どもが入りまして、契約の実施状況、あるいは改善事項がないか協議をしながら話を進めております。申し添えますならば、この契約いたしました農家は、一戸も残らず滞留資金をつい最近返済いたすことができまして、各界の御協力を大変喜んでおるわけでございます。  以上でございます。
  34. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 さらにお尋ねいたしますが、いま石川、宮城、埼玉、富山と出ましたが、その他の県にはありませんか。茨城県にはないですか。
  35. 伊勢彦信

    伊勢参考人 そういう契約書を交わしたのはございません。
  36. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 契約書を交わさなくても、援助なりあるいはそれを応援したり、関連をしているものはありませんか。
  37. 伊勢彦信

    伊勢参考人 御質問の意味がちょっと、非常に範囲が広うございますが、私どもの会社は、技術的なお世話あるいは品物の共同購入のお世話、そういう先は宮城県、福島、茨城、新潟、富山、石川、かなり多数にわたっておりまして、御要請があればできるだけ御助言を申し上げてお手伝いいたしております。
  38. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 きょうは商社系養鶏としてイセタケクマ両者の代表の方においでをいただいたわけですが、タケクマ商社系養鶏も同じような趣旨で同じことをやっていると理解してよろしいですか。
  39. 伊勢彦信

    伊勢参考人 タケクマ養鶏経営内容につきましては、私伺ったことはございませんが、目的は同じだと思います。しかし、事業形態はかなり違っておると思いますが、私は詳しいことは存じておりません。
  40. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは重ねてお尋ねしますが、何人くらいの農家方々が、どういう形でその養鶏に参加されますか。農家そのものが参加をしているのか、それとも賃金でやっているのか。パートでやっている人もいるのか。その辺の労働の内容の状況は、どうでしょうか。
  41. 伊勢彦信

    伊勢参考人 いまの御質問は、私どもの会社に対してですか。百戸と申しましたのは、完全に独立した農家との契約でございます。そのほかに、この間から問題になっております。仙台にございます色麻農場と申しますのは、百二十戸の農家が戦争中に軍馬の飼育をやっておられまして、戦後国の指導で果樹の団地をおつくりになりましたが、この構造改善事業がうまくなくて、そのまま私どもの会社が百二十戸の農家をお引き受けしまして、賃金の契約で仕事をしております。
  42. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこが問題ですね。賃金の場合に、労働基準法とかあるいは労働災害とか、そういう労働に対する法律等々の適用によって支払われているのか、それとも相対でやられているのか、その辺はどうでしょう。
  43. 伊勢彦信

    伊勢参考人 多分でございますが、例外なしに、労働基準法に決められた方法あるいは決められた保険とか制度は多分一〇〇%適用されると思います。しかし、農家の奥さんでたまたまパートでお出ましになる方につきましては、一、二抜けておるのがあるかもしれませんが、百人のうち九十九人まではきちっとされておると思います。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは恐縮ですが、その関係の資料があったら先ほどの資料と一緒にぜひお届けをいただきたいと思うのです。これは重要なことでございますから、ぜひお願いしたいと思います。
  45. 伊勢彦信

    伊勢参考人 かしこまりました。
  46. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それから次に、公害の問題についてお伺いいたしますが、ふん尿の処理はどのようにされておるか、その点をお尋ねします。
  47. 伊勢彦信

    伊勢参考人 私どもの会社が農場を設立するときは、付近の農家と契約いたしまして、畑とか農地に鶏ふんが還元される見込みが立たないときは農場を建設しないというやり方でつくっております。契約農家の場合は、いずれも自分のたんぼとか畑に入れていただいております。  御指摘の問題は、多分私どもが仙台に果樹団地の農家と一緒につくりました農場のことかと思いますが、この農場は、新しい試みといたしまして、二階建ての窓のない鶏舎をつくりまして、二階に鶏がおり、一階で排せつされた鶏ふんを発酵、乾燥させるという仕組みで、一切舎外に搬出せずに処理するという形態をとっております。
  48. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほどの御意見をお聞きしますと、いま農林省がやっている生産調整というのは、安いものを生産していくためには余り意味がないというふうなことで、安くいいものを出せばそれで社会に貢献するんだ、こういう御意見のように承りましたが、それは間違いでしょうか。それともそういう意味じゃなかったとか、もう少し違った意味の御意見でしょうか。それはどうでしょう。
  49. 伊勢彦信

    伊勢参考人 一口ではちょっと申し上げがたい御質問でございますが、これは私どもの行動とは別に、私どもの信念としまして、あくまで自分の責任で自分がどれだけの規模の鶏を持つかを決め、あくまで自分の努力で安い卵をつくるべきだ、そして諸外国の卵との競争に打ちかっていくべきだと考えております。そういうことは、昨年も一昨年も農林省にお伺いしまして、早期に生産調整を撤廃していただくようにお願いいたしております。しかし、どんどん生産調整を破って仕事をしろという意味ではございませんので、私の信念を申し上げたわけでございます。
  50. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 確かに四十六、七年ごろに八十万戸ほどあった養鶏農家が現在二十七万戸になった。そして二・二%の養鶏農家が約七〇%の鶏を持っている。これはある意味においては経営形態が大変な独占体のような形になっていると思うのです。そうして平均で四百五十羽だ、こういうことになっております。  そうすると、信念として生産調整は無意味だからそれを打ち破って安い卵をつくっていくんだということになると、農家は四十九年五月以来、三千羽というところで非常に努力しておられる、それにもかかわらず商社系養鶏が宮城県や茨城県やあるいは石川県や富山県その他に進出をして撹乱をしているということが現在政治的に問題になっている、道義的に問題になっている、そのことについて、あなたの信念とそれから全国養鶏農家のモラルとの間に非常に違いがあるけれども、それをどうお考えですか。
  51. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ただいま先生から御質問がございまして、生産調整を支持するグループは約二十万の農家、こういうふうな概念でおっしゃいましたが、私は、農村で約四百羽の平均羽数を持つ農家方々は、恐らく生産調整ということについてはこれを擁護すべきだというお考えはないと思います。これは私の推定でございますけれども生産調整をぜひ守りたい、こういうお考えの方は約五千、一万、一万五千、それに生活の基盤をかけておられる方々の御希望でないかと思います。平均約四百羽の農家が、それで家庭生活にどれだけのプラスになっておるかと考えますと、現在の利潤から考えまして、ほとんど農家のプラスにはなっていないと思っております。私ども意見の違いますところは、約五千戸の企業養鶏家と申しますか、その方々自分生活の基盤ということでこの運動を展開しておられるのだと思います。
  52. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そのことはよくわかります。それは四百五十羽で養鶏としてやっていけるなんということはだれも考えてはいないけれども、そうではなくて、いままでは三千羽、最近の農林省の通達で今度は五千羽になった。しかし、その五千羽でもまだ適当じゃないと私は思う。これは後で能登谷参考人に、養鶏家が成り立つ適正規模は一体どういうことであるかということは詳しくお尋ねをいたしますから、その点はよろしいです。  そこでもう一つお尋ねしますけれども、私の調査によると、最近小川町のある地域で養豚にも手を出しましたね。イセ養豚というものができておりますが、これはおたくと関係ありませんか。
  53. 伊勢彦信

    伊勢参考人 はい、私ども関係会社は豚をやっております。
  54. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 関係ありますね。
  55. 伊勢彦信

    伊勢参考人 はい、あります。
  56. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうすると、小川町の養豚に、また養鶏関係があるでしょう。ありませんか。
  57. 伊勢彦信

    伊勢参考人 鶏も関係ございます。
  58. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで先ほどのお話ですが、労働基準法という話がございましたが、あそこへ行って調べてみると、パートで女の人が一時間三百五十円ですね。そういう形になっていて、労働基準法どころの騒ぎではないですね。そういうことでありますから、地元の人たち企業養鶏商社養鶏があらわれることによって何のメリットがあるかということを聞いてみると、せいぜい鶏ふんをもらうくらいのものだ。あとは、地元の方ではパートで一時間三百五十円、男で四百五十円くらいの金をもらう。しかも、二万羽の養鶏が来た場合にそれに参加している者は三人ないし四人、十五万羽で大体十五人から二十人くらいの者が働いているということでありますから、もうかれば何でもしていくということでは、これは今度は労働のモラルにも反する、こういうふうに私は思うのですよ。  だから、同じ養鶏の仲間との間では、三千羽の生産調整が守られないで、これはもうどんどん構いなしにやってしまう、そして賃金においても確実に労働三法によってそれが支払われているとは思えないような賃金の状況であるというふうに私は見てきた。これが間違いであるかどうかということを、この際ひとつ、明らかにできなければいずれ資料なり何なりで明らかにしていただきたいが、いま答えられる範囲内で答えていただきたいと思います。
  59. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ちょっと私が留意しない点を御指摘いただきまして、大変ありがとうございました。私どもの賃金の支払い方法が労働基準法に違反するかどうか、私はここでちょっとわかりませんので……(竹内(猛)委員「違反とは言っていない。」と呼ぶ)それは何でございましょうか、安過ぎるわけでございますか。もし調べまして御指摘のように安過ぎるような点がございましたら、御報告をまつまでもなく是正いたしたいと思っております。
  60. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 さらにお尋ねをいたします。  飼料とか金融というものはどういうふうにされておるか。それと、できた卵は、先ほどは東京にあるいは魚と一緒にして、こういうふうにお話がありましたが、どういうような経路で市場に出しているのか。この三点についてお尋ねをいたします。
  61. 伊勢彦信

    伊勢参考人 えさの一部は、こちらに御出席の全農さんから供給をいただいております。ある一部は、各商社あるいは幾つかのえさメーカーからいただいております。それから、約四割は私どもの会社がシカゴで買いまして、それを運びまして委託配合をしていただいております。  できました卵の生産物あるいは私どもの仲間の卵につきましては、私ども関係会社が東京で販売いたしております。そのうちのかなりの部分は、先ほど申しましたように加工食品に使用いたしております。  金融につきましては、先ほど少し申し述べましたが、各銀行から借り入れいたしております。  以上でございます。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農林中金の山根理事にお尋ねいたします。  先般来、本委員会でもこの養鶏の問題が取り上げられて、農林中金の金が商社系養鶏に回っている、こういう疑問が出されたし、ある意味では具体的に指摘をされております。仙台とか石川県金沢とか。そういうことについて、これは確かに四十九年の生産調整以前の問題、四十九年から今日までの段階、こういうふうにあると思いますけれども、先ほどのお話の中で、農林中金は、農業発展をするというその整合性の上に立って金融の基準を決めているということでありますね。そこで、三千羽の調整というものは、四十九年五月以来今日まで三千羽の調整をしてきた。これは農家養鶏が何とかやっていけるという数であったろうし、それにお互いが努力をしてきた。もちろん法律でありませんから、破ろうと思えば破れないことはない。破っている者もいますが、そういう者に対して、一方においては、農家がお互いに発展をするため、一方では、安ければいいという形で、一つの信念でやっておられる、こういう方がいらしゃいますけれども、そこで、商社系養鶏に対する疑問に対してどのように農林中金としてはお答えになりますか、ちょっと答えていただきたい。
  63. 山根滋

    山根参考人 お答えいたします。  商社系企業といいますか、インテグレーションと申しますか、そういう概念が大変あいまいであって、なかなか私どもも正確には申し上げにくいのでございますが、たとえばいま御答弁なさいました伊勢さんのようなケースの場合、非常にたくさんの農場があり、そのもとに契約農家もありというような形の中で、果たしてこれが生産調整に違反になっているのかどうかという点につきましては、私どもは大変掌握しにくいところでございます。もちろんイセグループと言われるものに対する融資はしておりますが、それは個々の農場に着目し、農場の建設資金とか合理化資金とかというかっこうで見ておりまして、その農場につきましてそれぞれの凍結羽数を超えないかどうかというチェックはいたしております。  先ほども申し上げましたように、トラブルがあった場合に、現地の需給調整協議会を煩わし、結果として是正し得た、そういうケースもあるわけでございますが、トータルとして調整違反になっているかどうかということについては、金融機関としてはなかなか判断しがたいところであります。  結局、そうは言うものの、関係団体には絶えずそのことについて注意を喚起し、報告を求めるということになっておりますが、確定的に公的に認定するということはなし得ませんので、もしそういうものが公的にされた場合には、それに従った処置をしたい。その前に相当な疑問がある場合については、極力事前に注意を喚起し、是正を図る、そういう措置をしているところであります。
  64. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま私の質問に対してお答えいただきましたが、私は、これを四十九年前と四十九年後と、それからこれからと、三つに分けて質問したわけです。全然農林中金の金が回っていないということはないだろう、恐らく系統の金が回っていると思うのですが、こういうことについていろいろの疑義がありましたが、回っていなければ結構ですよ。先ほどの伊勢さんのお答えの中では、やはり金融の方もちょっと手伝ってもらったというような話も聞いておりますが、それは全然ありませんか。
  65. 山根滋

    山根参考人 たとえばイセグループに対する融資について、四十九年以前と以降とで増羽を進めるような貸し増しが行われたかどうかというふうな御質問であったかと思いますが、私どもは、イセグループに対するトータルの資金といたしましては、四十九年以降相当量現在まで融資額は減少しております。その中で四十九年以降に融資した金額はないかどうかと言われますと、私どもは個別に、先ほど申しましたように農場ごとにチェックして融資したものはございます。
  66. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 一方において生産調整をして農家経営をそれぞれ守っていこうというときに、これを壊していくことに対する金融というのはよくないということで、これは農林中金に対して今後大いに是正をしてもらわなければならない、こういうことについては要請をしておきます。  それから、全農にお尋ねをいたしますが、えさ販売をやっておられる。これはイセ養鶏の代表の方も、これを取り扱っている、こういうふうな話がございましたが、国が、法律ではないけれども、お互いに経営を守り合おうではないかという形で生産調整をやっている。そういう生産調整に応じないところに飼料が売られているということで、そういうことに対する取り扱いというのはおかしい。当然の要求として、そういうように守らない者については、飼料安定の基金なり卵価安定の基金から出てもらわなければならないと思っているのですが、それの参加者の有力な団体として、全農の御意見を聞きたいと思います。
  67. 永松英二

    永松参考人 イセさんの場合ですけれどもイセさんはえさのメーカーでもおありになるので、われわれから出ているのはごく一部だろうと思います。  それから、われわれの姿勢といたしましては、生産調整に従っているところにえさを出す、これは組合員の場合もそうでありますし、ほかの関係の場合でもそうでございます。それから一部につきましては、イセさんのようにメーカーさんでも特定のものについての交換をしたりということで出す場合もございます。  それから基金の問題でございますけれども、これは先生のおっしゃるとおり、あくまでも生産調整に従っておるということを前提に基金に加入を求めていますし、卵の場合には業務方法書にもちゃんと書いてございます。えさの場合には、われわれとしてはそういう姿勢でやっておりまして、これは業務方法書には別段書いてございませんけれども、姿勢は先生のおっしゃるとおりでございます。
  68. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 またイセ養鶏にお尋ねしたいのですが、生産調整に対して社長さんは、どうしても生産調整ではやっていけないという矛盾を感じられているようですね。そこで、それを破った場合には、基金なりそういうものから外されてもやはりやっていくという決意がおありですか。
  69. 伊勢彦信

    伊勢参考人 生産調整に矛盾を感じておると申しますよりも、先ほどグラフをお示ししましたように、実態が矛盾をあらわしておるのではないか、こういうことを御説明申し上げております。  能登谷会長から御説明がございましたように、たとえば二つに分けて、小さな農家方々基金とかいろいろなもので手厚く保護する、そしてある規模以上のものはそういう国の保護を受けずに自由にやっていくというような能登谷さんの御提案だったかと思いますが、そういう御提案には私は大賛成でございます。
  70. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 能登谷参考人にお尋ねしますが、能登谷さんの団体は本当の生産養鶏農家の代表だと思うのです。私はそういうふうに理解をします。私の県でも養鶏経営している皆さんがその会議に参加をしていることも知っています。  それで、いまの物価状況の中で、あるいはえさその他のことを考えてみて、当初三千羽、今度は五千羽に増羽をされましたが、これで本当に養鶏農家がやっていけるかどうか、この辺について、卵の生産費計算というものからいって、五千羽というものは妥当かどうかということについてどのようにお考えでしょうか。
  71. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 農家養鶏一つの専業養鶏としての経営規模、こういうことかと思いますけれども、私たちは、先ほど申し上げましたように、養鶏を新しい村づくり運動の中で、米プラス畜産、こういう思想の中で今日までやってきたつもりでございます。そこで、稲作経営とかほかの経営と離れた、単純に専業で養鶏をやっていくには現在その規模は幾らか、こういうお尋ねだとしますならば、五千羽でやっていけるかどうかということにつきましては、五千羽でも十分やっていけると信じております。私たちの問題にしているのは、一千羽養鶏であろうとも、農家複合経営の中において、地域の農業を営む上においてのプラスアルファ、こういう組み立ての上で今後とも考えていかなければならない大事な問題だと私は信じているわけでございます。  先ほども申し上げましたように、生産調整は、鶏卵生産調整だけではなくて、米の生産調整と離れて論議できないと私は思っているわけです。それで、四十万ヘクタールのたんぼを減らして米づくりをやめるとき、何を選ぶかと申しますと、当然米以外の畑作物、果樹、畜産、こういう組み合わせの中で農村経済が守られていき、農家経営が立てられていくべきだと私は現在も信じていますし、将来もその方向になされなければならないものだと信じておるのでございます。その中において、養鶏は必ずしも一万羽、五万羽の企業方向だけが日本養鶏あり方とは私は信じていないわけでございます。私はもちろんそれは否定します。そして、専業的にやっていかなければならない農家養鶏の方もあるわけでございます。その経営の適正規模は現在の中で幾らかと申しますと、一戸当たり五千でもやっていける規模であると信じますし、イセさんがたくさんの合理化を図り、そのためには大規模化が一つの理想だと申されますけれども、実際に日本養鶏農業協同組合が五十人の会員をコンピューターにより年間トータルをとってございますけれども、その分析表によりますと、最も安いコストは一万羽、二万羽であるということがはっきり出てございます。逆に、五万、十万と資本をかけた大規模経営方々は高いコストになっているはずでございます。  ただ、そういう中にあって、養鶏経営としての他の条件がございます。たとえば、飼料問題でございます。大規模化、経営の合理化の第一要件として、流通の合理化、販売の市場の寡占化、独占化が私はあると思うわけでございます。そこで、卵の値段は一年一定ではございません。年によっては極端な差がございます。そうしますと、非常に安い時期に農家が困るわけでございます。そして今日のような低卵価になったときに、やはり農家は耐え切れなくて養鶏を投げざるを得ないわけでございます。そうしますと、大規模養鶏たちは、こういうたとえははなはだ卑近でまたおしかりを受けるかもしれませんけれども、大きく借金をしょった人はどんなときでもつぶれない、小さい農家の人たちは、小さな借金のためにあすは続けていけないということでございます。大規模養鶏経営者は市場をある程度抑えてございます。そうしますと、安いときは競争の中で損をしていても、農家は耐えられないけれども、その人たちはいわゆる金融企業の大きさということで対応していきます。そうしますと、当然高いときが来ます。その高いときに、当然その人たちは大きな生産力の上に立って大きな利益を獲得して、経営の立て直しということも考えられます。農家の人たちはそういったことができません。そのために農業協同組合あるいは全農等のいろいろな組織論の問題が出てまいるわけではございますけれども、必ずしもそれが適正に機能しているかということにつきましては、私が指摘するまでもなく、先生方はよく御存じのことだと信じているわけでございます。私は、三千羽でもよろしい、一千羽でもよろしい、その農家自分の置かれた地域の経営の中に立体的に組み上げられてその経営がやっていける方向こそ今日とるべき問題であり、そういった中にあって生産調整というものが農業政策の中に行われているものだ、こう私は信じていますし、また今後ともそれに大きな期待を持っているわけでございます。そして経済効率をうたい、大規模経営が安くできる、そしてそれが流通合理化につながる、これが企業の競争優先の原理だと申すならば、やはりいまの生産調整というのは一体何だろう、こう考えるわけでございます。  私は、養鶏を産業とする考え方そのものに非常に不満を持ち、養鶏、養豚というものは米と組み合わされた、土と組み合わされた農業経営の中に考えられるべきであり、今日それの競争が非常に激化してまいり、あるいはそういう大型養鶏がどんどん進んでまいり、専業養鶏が出てまいり、そして専業農家の中にも、やはり一万ではだめだ、五万だ、十万だ、こういう傾向をとっているのも事実あるわけでございますが、そういう人たちの議論が優先しておって、そのためにたくさんの養鶏農家が壊滅していく現状そのものに、私は今日的な大きな問題があるものだ、こう思っておるわけでございます。何とぞその辺よろしくお願いいたします。
  72. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がありませんから、最後に一言だけ、これは能登谷参考人にお尋ねします。  三千羽の段階生産調整したけれども、これがなかなか守られておらずに、今日現状のようなやや政治問題化されてくるようになりました。これが今度は五千羽に切り上げされたわけですが、お互いにこれは、自分養鶏農家経営を守ろうではないかという共通のモラルがあって、そして町村の中であるいは都道府県の中で生産調整協議会等々の議を経て、そしてまた、その中に正しく位置づけられた農家卵価安定基金あるいは飼料の安定基金に参加をしていくという形で、お互いが信じ合いながらやっていく中で、一方においては、これは別にイセタケクマさんだけではなくてまだほかにもあると思いますけれども、そういう商社系がどんどん一つ考え方のもとに出てくるということになったときに、いまのような生産調整だけで守れるかどうか、別な法的手段も必要ではないかと思うのですが、この辺はどうですか。簡単にお答えをいただきたい。
  73. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 ただいま先生のおっしゃるとおりだと思っております。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これで私、質問を終わりますが、参考人に来ていただきながら、私、失礼なことをしまして申しわけありませんが、きょうは大変皆さんにはお忙しいところおいでいただいてありがとうございました。  これで終わります。
  75. 中尾栄一

  76. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 養鶏問題について、全国農業協同組合連合会常務理事永松英二参考人全国養鶏経営者会議会長能登谷喜代衛参考人農林中央金庫理事山根滋参考人ヒヨコイセ株式会社取締役社長伊勢彦信参考人の四名の方にお忙しい中おいでいただき、貴重な御意見を陳述していただきまして、ありがとうございました。  この養鶏問題については、本年三月、公明党の吉浦委員が当委員会政府の見解をただしたことが一つの発端となりまして、いろいろ今日論議をしてきたわけでございますが、私も本問題について数回質問をしてまいりまして、政府の見解をただしてきたところでございます。  鶏卵生産調整国会の場で政治問題化したということは、それだけにまた社会的な問題でもあり、また意義のあることでもあるというわけでございまして、本日、参考人及び明日また農林大臣を迎えて最終的な決議をするというようなことで、いろいろ検討をしていきたいということで、きょうは貴重な参考人の御意見を伺っておるわけでございます。時間の制約もございますが、本日は、かねがね論議している中からぜひお伺いしたい数点についてさらに御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いしたい、かように思います。  まず最初に、全国養鶏経営者会議会長能登谷喜代衛参考人にお伺いしますが、全鶏会議は、最近の養鶏に対する生産調整について、一部にはこの生産調整を廃止せよという批判があることも事実でございます。こういったことについては、全鶏会議ではどういうふうに討議しておられるか、まず最初率直な意見を承りたいのであります。
  77. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 御指摘のとおりでございます。生産調整の必要の論と、必要でない、やめてしまえという議論の二つのあることは事実でございます。  生産調整をしなければならないという議論の人たちは、当然卵価安定基金えさ基金、こういった制度の中に、いわゆる農業と農村と土と結びつけた中に当然生産調整というのがあって、その上において農家が安心して経営をやれる、たとえそれが千羽であろうと五千羽であろうと、経営の中に複合的に組み入れられていくのが本当であり、それを守るべきなのが農業政策であり生産調整であると信じているわけでございます。  そして必要でないという議論の方は、専業経営の方に多いわけでございます。それはなぜかと申しますと、今日、生産調整が非常に規制力がないといいますか、あるかなきかのごとき状態であるなら、やめた方がよろしい。私たちのたくさんの例の中に、羽数をふやしたいといいましてもなかなかできません。そして力が弱いために一般金融を受けることもできません。しますと、当然信連、農林中金、農林漁業金融公庫に金を借りにいくわけでございます。しますと、当然生産調整の問題が出てきて、それがネックになって拡大が阻まれている原因がございます。そこで、そういうならやめてしまえ。片一方ではどんどん、十万羽、二十万羽というのをやっているその実例を目にして、これをどうして取り締まるんだ、どうしてくれるんだ、そして何とかできないものかということを幾たびか関係機関あるいは農林省等にも申し上げてございますし、また農林省のお役人の方にも来ていただいて共同で討議したこともございますけれども、やはり生産調整は自主規制であって、それを違反したからへったくるあるいは規制する何物もないので非常に困る。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕 こういう議論があって、この生産調整、賛成、反対の論がかみ合わないままに今日に来ているわけでございます。そこで、みんながこれをはっきりしてもらわなければ困るというのが、今日こうした場になっているわけでございます。
  78. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 能登谷参考人、それでは全鶏会議としては、生産調整は必ずできる、こういうふうに自信をお持ちでございますね。その点はどうですか。
  79. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 当然生産調整はまじめに実行されてほしいし、それが実行できるような国の施策お願い申し上げます。
  80. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 能登谷参考人にさらにお伺いしますけれども、本日出席しておられるイセグループはかねがね、全鶏会議の会員の中にも増羽している者がいると言っておられます。また、今回の運動自分たち既得権擁護のための運動である、かようにも私は仄聞しておりますが、これについてはどういうふうにお考えをお持ちであるか、この席で明らかにしていただきたいと思います。
  81. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 全鶏会議の中にもやみ増羽をしている者があるということは、詳しく知りませんが、一部には知ってございます。経営会議の中にもあります。私は、エゴで生産調整はできないと思います。生産調整はみんなで、そしてみんなが利益を分け合う、そしてみんなが生活し合う、そしていまの日本の農村の農民の人たちが、養鶏をやっている人たちが、そういう生産調整の中に、卵価安定基金えさ基金といった政府の庇護の中に生活を安定していくことが私は本当だと思うし、その中に、いかに私たち会員の中であっても、違反しているということがあれば、当然お互いに抑制し合って、規制し合うべきものだと思っております。
  82. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 永松参考人にお伺いします。  農協は、また全農にしても、言うまでもなく農民の味方でなくてはなりませんし、また農民あっての農協であり全農であることは言うまでもないことでございますが、このように養鶏問題が国会の場において論議される、いわば政治問題化してきたわけでございます。そこで永松参考人もかねがね十分承知しておられると思いますが、農家が切実に訴えております。また農林省が四十九年以来生産調整してまいりましたこの生産調整については、当然これを擁護していく、また農家を守るためにも当然この推進を図るという立場である、かように私は思っていますけれども、そういう点についての決意を、またお考えを改めてお伺いしておきたいと思うのです。
  83. 永松英二

    永松参考人 われわれ農業団体、生産者の団体でございますから、卵の価格が安定するということは最も望ましいところでございます。そのためには需給バランスをとっていく。そのためには、生産が過剰になり、消費がそれに追いつかないという場合には、当然生産調整問題が起きてまいりますし、生産者団体がそれをやるということはもう当然のことでございます。われわれは四十九年以来そういった姿勢でやっております。  それからもう一つは、これが需給バランスがとれたから終わるということではなくて、計画的な生産ということを将来ともわれわれはやっていくような、そういう仕組みをいま着々とつくりつつある、そういうことでございます。
  84. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 永松参考人にさらにお伺いします。  時間の関係で詳しくは申しませんけれども商社系を初め、一部生産者の中にもやみ増羽ということがあることは事実でありますし、いろいろ問題になっているわけですけれども永松参考人は、いわゆる全農としていろいろそういったことは掌握しておると思いますが、やみ増羽については、確かにあるということは十分承知しておられますか、どうですか。
  85. 永松英二

    永松参考人 多分あるということは承知しております。
  86. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで永松参考人にさらにお伺いしておきますけれどもイセグループの卵をフラワーで売り出しておりますが、イセタケクマ等の卵を全農サイドで買っておられる。もちろん、これは末端の方でやっているんだから自分は直接や  ってないとおっしゃるかもしれませんけれども、買っておられる事実があるか。また飼料を売っておられる、この点についてはどうですか。
  87. 永松英二

    永松参考人 タケクマさんの場合とイセさんの場合と若干違いますけれども、特にタケクマさんの場合には農協の組合員がほとんどでございます。これの生産された卵につきましては、当然系統が責任を持って売っていく。それから、その必要なえさも当然供給していくというふうなことが考えられます。  それから、イセさんの場合には、フラワーから卵をいただいておりますけれども、これは、組織員から上がってくる卵は、農協の統制率がいま三〇%でございます。首都圏でわれわれが売っております卵は四〇%以上になっております。したがって、そういった意味での供給受け入れ先の品ぞろえと申しますか、そういった意味で、品ぞろえのために出していただくということは常時起きてまいります。
  88. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 永松参考人にさらにお伺いします。きょうは参考人意見陳述を受けるわけでございますので、追及するという意味でなく、いろいろ私たちも今後のために十分意見をお伺いしておきたいという意味からさらにお尋ねするわけでございますが、もう一点だけお伺いしておきたいと思います。  いま御答弁をいただきましたように、いわば全鶏会議のみならず、まじめにやっている農民、また生産者の中にも一部増羽をやっている人も若干はあることも知っております。こういう自由経済の中ですから、なかなかむずかしいこともよく承知しております。しかし、やはり卵価を安定し、そして日本養鶏を守っていこう、しかも養鶏農業の中に位置づけよう、こういうことでいま真剣に訴えておられますし、私もことし四月にはそういった問題をとらえて、ぜひともそういう方向で農林省も検討していただきたいということを言っておるわけです。そういったことから、今回こういった問題がいろいろ政治問題になってきておりますが、やはり農協にしても全農さんにしても、言うまでもなく、いわば農民の利益擁護のため、農民のためにあるわけでございます。農民あっての農協であり全農でございます。そういった意味から言えば、いまこういうふうにやみ増羽が大変問題になっている、しかも生産調整を真剣に考えようというときに、一番そのキャップである、また中心である全農が、いやしくも農民をますます苦しめるような、窮地に追い込む、と言うと大変言葉はひどいかもしれませんけれども、結局はそういった商社系その他にえさを売る。また、全農が売らなければよそが売るのだから、どうせなら自分たちが売って、それで益は農民に還元すると言えばそれまでかもしれません。しかし、精神的にもまた道義的にも農民を擁護しなければならぬ、農民を守らなければならぬどいうときに、相当量の飼料をそういった商社系に売っていくということになると、これはなかなかむずかしい問題でありますけれども農民としては納得いかないという声があることも事実であります。さればとて、すぐに飼料を停止する、また卵の買い入れをやめるということになると、またこれは社会的な問題にもなります。その辺は全農としても大変苦しい立場であろうと思う。その辺について、農民を守るということを第一主義にすべきであるということから、今後やはりそういった問題についても十分検討していくということをしなければ、末端で幾ら生産調整を言って、農林省指導してやっても、結局は、そういったところが抜けていくとなれば、これはもう全くナンセンス、こういうふうにも私は思うのです。言いにくいことを私はあっさり申し上げますけれども、その点について永松参考人はどういうふうに考えておられるか、将来どういうふうに自分たちは対処していくのか、その点をここで明らかにしていただきたい、かように思います。
  89. 永松英二

    永松参考人 申しわけありませんけれども、先生には若干誤解があるのじゃないかと思います。われわれは組織でございますから、組合員の養鶏についてはあくまでも対応していくということで、組合員には自然人もございますし、農業法人もございます。そういったところには、生産調整を守るということを前提にあくまでも対応していくということでございまして、商社である経営についてはわれわれはタッチしていかないという姿勢でやっております。
  90. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点、明確に御答弁いただけば幸いでございます。  それでは、伊勢彦信参考人にお伺いします。  イセ株式会社の文書によりますと、「宮城県色麻農場に於て施設の増加は国の構造改善事業のあとをうけて毎年農政局、県の指導のもとに、農村振興の信念のもとに実施したものです。」また、本日もいろいろと意見開陳がございました。ところが、イセは、正当な増羽、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、宮城県の色麻農場で現在百三十二万羽の鶏舎を持ち、四十九年以降五十九万六千羽の増羽をしておると農林省は言っておられますが、このことは御承知でございますか。その点をお答えください。
  91. 伊勢彦信

    伊勢参考人 農林省のお話は伺っておりません。先ほどの羽数の増大については、瀬野先生がおっしゃったとおりの経緯で生産が増加しておると思います。  以上でございます。
  92. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 率直にお伺いしますけれども、実は農林省はそういうことを答弁いたしておりますが、伊勢さんの方では正当な増羽、こういうふうに考えておられるのか。その辺のことについて、農林省がそういうふうに言っておりますが、皆さん方はどういうふうに思っておられますか。要するに五十九万六千羽の増羽ということには間違いないか。どうですか。
  93. 伊勢彦信

    伊勢参考人 色麻農場につきまして私どもがお引き受けしました経緯は先ほど申し述べたとおりでございます。最後の打合会は昭和五十二年の七月のごく初めだったと思っておりますが、正確な日は記憶いたしておりません。その折に東北農政局から招請がございまして、各課長が御臨席のもとに私どもの色麻農場の建設計画について協議をいたしました。昨年、一昨年、そのまた昨年につくりました計画がややおくれておりましたので、おくれないようにという御指示をいただきました。その折、生産調整の問題も私の方から提起いたしまして、両者が抵触するということも論題に取り上げて協議をいただいたわけでありますが、諸般の事情からこの建設は進めるべきだという結論に達したわけでございます。しかし、昭和五十二年の九月に至りまして改めてまた御連絡がございまして、生産調整強化が叫ばれておるので、七月に討議した結果をとらずに何か他の用途に転用できないかという御書面の御指示を得ました。そのようなことを踏まえまして、他に転用などの新しい方策がすぐ決まりませんので、それ以後は、正確に申しますと昭和五十二年初頭以来一切の建設はいたしておりません。  以上でございます。
  94. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 伊勢参考人から開陳がございましたので、後日のために確認をしておきますが、いまおっしゃったのは五二−三六二号で、昭和五十二年九月二日付、東北農政局農政部長からイセグループの系列会社である有限会社ノースエッグプロダクション代表取締役菅野光雄殿に対する文書であろうかと思います。「農地転用許可後の工事進捗状況及び今後の土地利用計画について」という表題で、「昭和五十二年七月七日付けで貴社から提出のあったこのことについては、今後の計画では昭和五十三年から昭和五十六年までに鶏舎五十二棟を建設しようとする計画であるが、現在鶏卵生産調整により飼養羽数が抑制されているので土地の有効利用を図るために他用途に供する計画を樹てることができないかどうか検討されたい。」という文書ですが、この文書をいただいた後は増羽並びに拡張はしていない、こういうふうに理解してよろしいですか。それを確認しておきたいと思います。
  95. 伊勢彦信

    伊勢参考人 先ほど申しましたように、昭和五十二年初頭より一切の建設はいたしておりません。
  96. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは最後に、農林中央金庫理事山根参考人にお伺いしておきます。  農林省畜産局長農林省構造改善局長並びに農林省農林経済局長から、五三畜A第一九八二号、昭和五十三年四月二十八日付で「鶏卵生産調整強化について」という通達が出されております。これは十分御承知だと思いますが、この中で七項目目に「鶏卵生産に関係する商社、配合飼料製造業者等に対する指導」ということで、その(1)の中に「国又は都道府県は、鶏卵生産に関係する商社等に対して今後無断増羽を助長することがないよう強力に指導することとし、この指導に従わない商社、配合飼料製造業者等については、飼料工場を承認工場とするための推せん及び制度資金の融通に関する推せんの停止等各種の行政手段により適切な措置を講ずることとする。」ということが書いてありますが、中金は十分御承知でございますね。
  97. 山根滋

    山根参考人 十分承知しております。
  98. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、先ほども山根参考人からいろいろ意見の開陳がございまして、今後生産調整上の問題については、以前から生産調整をやっている継続のもの等の取引もありいろいろ検討はしている、関係機関の意を十分体し、行政上そごする新規の貸し付け等はしない、農家を守るために可及的速やかに生産調整に沿った処置をとるという趣旨の御答弁がありまして、私も農民の系統政策金融機関としてまさにそうであると傾聴した次第でございます。  そこで、これまた最後になりましたけれども農林中央金庫としては、言うまでもなく農林水産業に対する農民、漁民、林業家の代表の金融機関であります。そういった意味から、農民を守るために、また日本の食糧生産のために、ぜひひとつ正しい金融をやっていただくということは言うまでもありませんが、いまこういった問題になっております。しからばといって、早速金融の道をとめるとか、またはいろいろ従来貸していた融資をすぐに返済せよということになると大変な社会問題になりますので、その点は十分配慮していただくわけですけれども、、今後、農民を守る立場から、こういった問題が政治問題になっておるわけでございますので、十分この局長通達等を踏まえて、農民側に立った正しい金融あり方ということで姿勢を正していってもらいたい、かように思うわけです。時間がございませんのではしょって申しましたけれども、ひとつ最後山根参考人の決意をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  99. 山根滋

    山根参考人 御趣旨を十分に体しまして善処したいと思います。先ほども申し上げましたように、生産調整上違反がある企業に対しましては、新規貸し付けば一切しない所存でございますし、古い貸し付けにつきましても、いろいろの困難な条件がございますけれども、可及的速やかに善処する所存でございます。
  100. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 冒頭申しましたように、各参考人に貴重な御意見を伺い、辛らつな質問を申し上げて恐縮でございましたけれども、どうかひとつ御了承を得たいと思います。今後大いに参考にして、私たち国会の場で善処してまいりたいと思います。ありがとうございました。
  101. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 神田厚君。
  102. 神田厚

    ○神田委員 各参考人には大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。私に与えられました時間が非常に短いものですから、全部の参考人の皆さんに御意見をいただけないかと思うのですが、ひとつあらかじめよろしくお願いをいたします。  まず最初に、伊勢参考人にお尋ねをしたいのでありますが、生産調整に対する考え方、先ほど来いろいろ聞いておりますけれども、端的に生産調整に対する考え方をお聞かせいただきたいと思うのですが、よろしくお願いします。
  103. 伊勢彦信

    伊勢参考人 生産調整と申しますのは、ごく短期間なら私は非常に効果があると思います。しかし、かように三年、四年、五年と生産を調整と申しますか生産を制限と申しますか、こういうことを続けることは、先ほど申しましたように、日本鶏卵の供給者はわずか五千七百戸の養鶏家にしかすぎないわけでございます。五千七百戸の養鶏家の利便のために、一億国民に供給する卵の価格が多少つり上がってもよかろうという考え方は捨て去るべきでないかというのが私の考えでございます。  あとつけ加えて申しますならば、まだまだ努力の仕方によっては卵の消費は伸びると考えられますので、努力はそちらに向けるべきではないかと考えております。  以上です。
  104. 神田厚

    ○神田委員 それでは重ねてお伺いしますが、イセグループは生産調整協力してそれを守ってきたのかどうか、その点はいかがでございますか。
  105. 伊勢彦信

    伊勢参考人 常々私は生産調整の撤廃を叫び続けております。しかし、色麻農場のいままでの御質疑の中の例に見られるように、見解と申しますか、方法の違いはございますけれども、私どもは十分生産調整の趣旨を尊重して事業を進めてきたつもりでございます。
  106. 神田厚

    ○神田委員 重ねてお伺いしますが、趣旨を尊重して事業を進めてきた。趣旨を尊重したということと、生産調整いわゆる行政指導を守ってきたか、この二つの考え方は非常に微妙でありますね。端的にお答えいただきたいのでありますが、生産調整を守ってきたというふうに解釈をしてよろしゅうございますか。
  107. 伊勢彦信

    伊勢参考人 私も、先ほどから問題になっております色麻農場につきましては、その表現に苦しむわけでございますけれども、私は生産調整を守っておったと申し上げたいと思います。
  108. 神田厚

    ○神田委員 色麻農場に限らず、全国的なほかの地域におきましてもやみ増羽の実態がある、こういうような経営会議調査等もありますけれども、そういうことも含めまして、生産調整を守ってきたというふうに私どもはどうも全面的にそれを信頼するわけにいかないというふうな資料もあるわけであります。     〔片岡委員長代理退席委員長着席〕 その点は、色麻農場に限らず、たとえば茨城県の問題、それから石川県の問題等、全体的に含めましていかがでありますか。守ってきたというふうに言い切れますか。
  109. 伊勢彦信

    伊勢参考人 幾つかの地方の名前を挙げて生産調整を守っておるかどうかという御質疑でございますが、いずれも趣旨を尊重し、守っておったと申し上げます。
  110. 神田厚

    ○神田委員 それでは、この調査をなされました全国養鶏経営者会議能登谷参考人にお尋ねいたします。  大変大事な問題ですから、調査そのものにつきまして相当綿密な御調査をなさったのだろうと思うのでありますが、当面、大変固有名詞を出して申しわけございませんが、イセグループのやみ増羽の問題につきましては、どういう御調査をなされましたか。
  111. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 調査につきましては、約六カ月にわたって慎重に調査したつもりでございます。ただし、具体的に入ることその他を断られたこともありますので、正確さにつきまして多少の問題があるかと思います。  それで、問題を提起していますのは、経済合理の、とでもいいますか、企業競争が当然であり、生産調整は廃止せよということを公然とうたう養鶏産業グループがございます。そして百万羽養鶏経営こそ安い卵を国民のためにつくる、それが理想だ、こう言っているグループがございます。私たちは、日本鶏卵の生産がごく少数の人たちの手によってなされることに対して、思想的にも農政問題からいっても反対するものであります。私は、卵の生産、養鶏農家のものであり、米の過剰生産、減反政策とあわせて、農家経営、農村社会を守る上において、複合経営、立体経営の中に今後とも築いていかなければならない、それが新しい道だと信じております。
  112. 神田厚

    ○神田委員 どうもやはりやみ増羽の実態というものが明らかにならない。これにつきましては農林省調査をするという約束をしているわけでありまして、その調査結果等につきましては、午後からまた質問をさしていただくわけでありますが、私はそういうことを含めまして、後ほど理事会等にもお願いをいたしまして、農林水産委員会からきちんとした調査団を派遣して現地調査をしなければならない、そういう問題を含んでいるというふうに考えているわけであります。後ほどそういう点につきましても委員長にもお願いをいたしたいと思うのでありますが、この実態があいまいなままいろいろと論議を進めていきましても、これはなかなかよい結論は出ないわけであります。やはりこのやみ増羽の実態というものについて非常に食い違いがあるわけです。一方で経営会議の方では、百九十万羽近いたとえばイセグループについてはやみ増羽があるという調査をしている。しかしイセ社長さんは、生産調整の趣旨に沿ってそれを守っているからそういうやみ増羽はないと言う。やみ増羽がないということであれば、四十九年以前のイセの登録羽数と現在の羽数とを比べればこれは明らかになるわけであります。そういう点を、やはりもう少し権威のある機関において実態調査をしていかなければならないというふうに私は考えているわけでありますが、その点は午後の委員会の質問の中でも触れさしていただきたい、こういうふうに考えております。  全国養鶏経営者会議の能登谷会長さんにお伺いいたします。経営会議では、鶏卵生産調整強化養鶏経営安定に関する国会決議を要請しているようでありますが、これにつきまして、どういうふうな点につきまして決議してもらいたいのか、その内容と趣旨についてひとつお伺いしたいと思います。
  113. 能登谷喜代衛

    能登谷参考人 生産調整問題につきまして、この問題が提起されてから約一カ月、農林省では新たに三局長通達をもちまして生産調整強化を通達してございますし、畜産局長名をもちまして七項目にわたり相当の規制内容のものを出してございます。私たちはそれがそのまま実行に移されるなら何も申し上げる必要はございません。  ただ、そこで、通達がはっきり出ましたけれども、それが本当に実行されるだろうか、不安と疑問を抱いている原因三つがあります。一つは、農林省は、生産調整は自主規制である、そうおっしゃいまして、そしてどうしても聞かない違反者については、国の世話にもなりません、卵価安定基金の世話にもなりません、企業は競争だと言われる人に対して、現在の世情の中で抑えることはできない、こう申し上げること。二つ目は、いわゆる産業養鶏グループの人たち、百万羽養鶏、数百万羽養鶏をもって企業の合理化、生産の合理化と称して、それが安い卵を消費者に届ける国民的使命だと主張して譲らないグループの考え方三つ目は、一部マスコミが盛んに生産調整は無用であるという論、農林省がどんな通達を出しましてもそれは空転する、こう主張して譲らないマスコミの現況。この三つの観点から、せっかくこうして議論され農林省がりっぱな通達を出しながら、それが実際に行われないときどうなるだろう、こういう心配がございますので、でき得れば、国会の場において農林省が出された通達が実行できるような決議が欲しいとお願い申し上げる次第でございます。
  114. 神田厚

    ○神田委員 世界的に日本の農産物が価格的な面で非常に太刀打ちできないという中で、卵は国際価格に比べましても十分にこれに太刀打ちしていける数少ない農畜産物一つであります。そういう中には、卵にまつわるいろいろな行政がかなり努力をなされていて、生産農家等につきましてもかなりの努力の上でそういう価格の維持がされている、こういうふうに感じるわけでありますけれども、そういうところから考えますと、米の減反やその他の農政の転換期に当たりまして、卵の生産農家立場を守っていかなければならないというふうに考えるわけであります。農家経済のこれから先の見通しやその他も含めて考えていきまして、そういう立場から、この卵の問題というものをもう少しいわゆる生産農家要望に沿った形で実態を把握しまして、そしてこれの対策を早急に立てていかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。  きょうは参考人方々には大変貴重なお話を聞かしていただきました。今後の委員会等の審議におきまして十二分にそれらの意見を参考にさしていただいて、審議を尽くさしていただきたい、こういうふうに考えております。本日はありがとうございました。  終わります。
  115. 中尾栄一

    中尾委員長 津川武一君。
  116. 津川武一

    ○津川委員 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。  一部の参考人からは非常に貴重な御意見を承りました。一部の参考人からは弱肉強食でもいいというような恐ろしい意見も拝聴いたしたわけでございます。  そこで、一番最初に伊勢参考人にお尋ねいたしますが、いまヒヨコイセ経営はどうでございますか、お願いします。
  117. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ヒヨコイセ経営規模でございましょうか。
  118. 津川武一

    ○津川委員 経済状態、景気がいいかどうか、順調かどうか。
  119. 伊勢彦信

    伊勢参考人 昨年までは大変よろしゅうございましたが、この春からはやや卵価が低うございますので、期待したほどの成果は上げ得られない状況でございます。
  120. 津川武一

    ○津川委員 昨年までは非常によかった。ところで、五十一年度の法人税滞納、このことで大蔵省に一億五千九百六万円の抵当権設定契約をしていますね。理由を聞きましたら、納税の猶予、換価の猶予にかかる五十一年度法人税一億五千九百六万円について。もう一つは五十二年三月三十日受付で、六千八百三十五万千三百円の滞納額、延滞税は国税通則法所定の額。もう一つ五十二年六月十八日受付で、五十二年三月三十日に設定された県税に対する滞納二千三百十四万五千六百三十円。経営が順調であるのになぜ一億五千万、六千八百三十五万、こういう国税、法人税を納めないのか、県税は二千三百十四万を納めないのか。これは私は脱税じゃないかと思うのです。午後の会議農林省に聞くと、個人企業の秘密だと教えてくれないので、あえて本人にお尋ねする次第でございます。どうしてこうなりましたのか、これは脱税でありませんのか、今後どうされるのか、お伺いしたいと思います。
  121. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ただいま御指摘のございました国税の滞納につきましては、大量の——大量とは申しませんが、私ども企業に比べまして大きな所得税が発生いたしておりますので、国税局と私どもの経理担当といろいろ御相談しまして、納めやすい形態にお願いしたわけでございます。それにあわせまして、県と国税局にお願いいたしまして分割で税金を払わせていただく、こういうような処置をとったわけでございます。
  122. 津川武一

    ○津川委員 ヒョコのイセさんが宮城県の色麻に一つの農場を持っておりますが、これはよく県庁などと打ち合わせたり協議されたりしておやりになっていますか、この点をまずお答えいただきます。
  123. 伊勢彦信

    伊勢参考人 出発の経緯につきましては先ほど申し上げましたとおりでございます。正確な期日は存じませんが、出先の農場で農政局と毎年打ち合わせをしておったようでございます。と申しますのは、昨年の七月の折に、いままで出先の担当者と協議をしておったけれども、建築がおくれておるので今回のこの打ち合わせは私に出るようにという直接の御通知がございました。そこで、去年の七月の初めだったと思いますが、東北農政局に出頭いたしましていろいろ協議をいたしました。それは先ほど申し上げたとおりでございます。
  124. 津川武一

    ○津川委員 五月の十八日だと思います。宮城の県庁と保健所と家畜保健所がおたくの色麻農場を調査に行きましたけれども、立ち入りさせなかったし、調査を拒否されたと私農政局を通じて報告を聞いておりますが、このとおりでございますかどうか、これが一つ。  もう一つ、宮城県の古川土木事務所への建築申請、承認されたのは鶏舎が二十五棟。実際はやみ建築といわれて十棟建っております。建築法違反でございますが、こういうことをされておられるのかどうか、これが第二点。  第三番目には、先ほど色麻農場で働いているのは全部従業員で、九九%いろいろな労働条件、失保、健康保険、いろいろやっておられるというわけであります。私たち調査では、現在時点で二百九名おりますが、この中で常勤が一割だけです。あなたは九割以上が常勤だと言っている。その点できちんとやっていると言っている。あとは農家の奥さんたちで臨時雇いだと言っていますが、私たち調査では、九割が臨時雇い、一割が常勤。しかも、常勤に対して健保、失保などの最低条件さえも適用されていないのがございます。これがお答えいただきたい次の点でございます。  その次、公害問題ですが、これは私たち調査、鶏ふん処理施設を持たない高床式で四年間に一度鶏ふんを農場内の土地に出して土をかぶせて処理するか、乾燥しないままヘドロ化して汚水排水となって周辺の水田などに流れ出ております。そのために窒素過剰で、苗腐れ、稲の倒伏などが起きております。これで抗議されたことはありませんか。抗議されてどうされたか、答えていただきます。  もう一つ、こういうかっこうでウインドレスなものだから、今度は鶏舎から飛ぶ脱毛、羽などが牧草に付着し、乳牛などの胃腸障害のおそれが出ている。人に対してぜんそくを起こしておる。そして埋めた死鶏を野犬が掘り出し、カラスが群がり、巨大ネズミ、親指大のハエがたかっております。  これがわれわれの現地調査なんでございますが、これらの点、お認めになるのかならないのか。皆さんの実態でお知らせいただくことがあればお伺いします。
  125. 伊勢彦信

    伊勢参考人 質問が非常に多かったものですから、恐れ入りますけれども一番から順番におっしゃっていただけましたら一つずつ御返事申し上げたいと思います。大変恐縮でございます。
  126. 津川武一

    ○津川委員 一つは、五月十八日の県庁の立ち入り検査をなぜ拒否したか。
  127. 伊勢彦信

    伊勢参考人 はい、これは伺っております。これは最初から申し上げなければならないことでございますが、たくさんの鶏あるいは豚などが飼養される場合は、どのような理由があれ部外者が入るということは非常に危険なことでございます。ずっと慣行としましては、私どもの申し上げることを御信用いただくということで、事務所で事情を御説明申し上げて調査をしていただいておったわけでございます。このたびも御調査にお越しになったときに、やはり従来どおりにお願いしたいということを極力お願いしたわけでございまして、決して拒否とかそういうことではないというふうに聞いております。
  128. 津川武一

    ○津川委員 次は、やみ建築。
  129. 伊勢彦信

    伊勢参考人 やみ建築、これは御指摘を受けまして大変恐縮でございます。確かに私どもの書類の不備で書類の抜けておる点がございました。早速県と協議をいたしまして訂正の手続をしておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
  130. 津川武一

    ○津川委員 次は、常雇いがあなたは九割、ぼくらが調べたのでは一割。それに対して必要な健康保険だとか厚生年金だとか失業保険だとか掛かってないのがうんとある。
  131. 伊勢彦信

    伊勢参考人 ちょっとその問題は、私が頭が悪いのでございましょうか、常に来ていただいておる方々が大体二百名ぐらいだと思っておりますので、その方々については、どう申しますか……
  132. 津川武一

    ○津川委員 労働協約、失業保険、厚生年金、退職手当、そういう規定がされておる意味のことをあなたはさっきお話しになった。
  133. 伊勢彦信

    伊勢参考人 はい、労働協約というのはいたしておりませんけれども、各種保険などについては全部掛かっておると思っておりますが、もし間違いでございましたらお許しくださいませ、すぐに調べましてまた御連絡申し上げます。正式な社員でなくてもそういう保険は掛けておるはずでございます。
  134. 津川武一

    ○津川委員 次は、鶏ふん。あそこの北の上の方にある、いっぱいたまっておったでしょう。あれが流れ出て、窒素が出て、稲が立ち枯れしている。
  135. 伊勢彦信

    伊勢参考人 その問題でございますが、鶏ふんが流れたわけではありませんので、もしも鶏ふんが流れればということで村と協議をいたしまして、そのおそれを防ぐために排水路を設けまして、村の指定の排水溝に流れるようになっております。私どもが御迷惑をかけましたのは、昨年始めました割卵工場の割卵いたしました卵のからを洗浄いたしましてたん白質をろ過する装置がやや不備でございました。そのたん白質がそのまま水田に流れ込んで、稲の収穫に非常に御迷惑をかけたという点がございました。これは早速御迷惑をかけた方々と協議いたしまして処理いたしまして、ことしの三月ごろに新しい浄化設備ができ上がりまして、この後は測定しましたたん白質の含量ではたんぼには御迷惑はかからないという数値が出ておりますので、多分これで大丈夫かと思っております。
  136. 津川武一

    ○津川委員 羽毛が飛んで周りの牛が下痢している事件。
  137. 伊勢彦信

    伊勢参考人 そういう話も初期に承りまして、周りの農家に鶏の羽が飛散しまして御迷惑をかけていないか、御指摘がございまして調査をいたしまして、風の方向のところにつきましては細かい金網を張りまして、その御指摘の農場へは鶏の羽が入らないように処置いたしてございます。
  138. 津川武一

    ○津川委員 廃鶏、死んだ鶏にカラスなどが……。
  139. 伊勢彦信

    伊勢参考人 廃鶏の処理は、私どもは三光油脂工業という会社と契約いたしまして、毎日出る廃鶏につきましては、三光油脂工業に運びまして油脂材料に使うということで毎日供給をいたしておりますので、それが穴を掘って埋めてあったというのはごく二、三年か四年前にそういう例があったかどうか私まだ聞いておりませんけれども、ここ二、三年はそういうことはあり得ないと考えておりますが、もう一度調査いたしましてまた御報告いたします。
  140. 津川武一

    ○津川委員 そこで委員長、一億五千万、六千万、二千三百万という国税、地方税の滞納、これは納めやすい形にといま言っているのですが、換価で、評価の問題で脱税なんですよ、これをそういうふうに答弁されては私たちは困る。  もう一つは、きわめてはっきり労働条件、いろいろな保険が適用されている、しかも九割が常雇いと言っているが、われわれの調査では一割。これは県庁の指導も受けない。農林省調査でも明らかになっているように、六十万羽近いものがやみ増羽になっている。これをこのままにしておくわけにいかない。参考人として確かめる点でもきょうこのとおり非常に問題がありますので、証人として明確なところを確かめていただくよう委員長から適当なお計らいをしていただくようにお願いいたします。これは伊勢参考人に対して。  それから、中金の方おいでになりましたが、時間がなくなってしまいましたのでやめますが、皆さんのおやりになっていること、これからやはり農民のお金で農民を苦しめるようなことをなさらないとおっしゃっていただいたので、後で個々のことはまた御相談に上がりますから、その節はよろしくお願いいたします。  それでは、私の質問は終わります。
  141. 中尾栄一

    中尾委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  142. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。柴田健治君。
  143. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 食糧庁の長官にお尋ねしたいのですが、いままでも生産調整をずっとしてきたのですが、五十三年度から今後十カ年百七十万トンの生産調整をやるということです。われわれはどう勘定しても、いまだんだんと古々米がふえていく、百七十万トン生産調整をことしやって、それならまた明年在庫がふえないのかといえば、ふえる要素がある。そうすると、百七十万トンというのは、需給均衡論という言葉から言って、安定して、農民にも責任持って自信を持って十カ年は一切変更しないということが言えるのか、どうなのか。われわれは生産調整に反対であります。それから一年でも二年でも早くこの生産調整をやめさせていきたい。それには米の消費拡大をしなければならぬ、こういう考え方に立っておるのですが、いま農林省が方針を出しておる百七十万トンは十カ年変更なしで、責任を持って、在庫も何もふえないように、そういう処置がとれるのかどうか、まず聞きたい。
  144. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今年度から十カ年を目途といたしまして米の需給均衡化対策を推進することにいたしまして、農民各位に非常に御苦労をおかけしておるわけでございます。これは十カ年を目途にしておりますが、第一期三カ年間は百七十万トンを調整目標にするということを原則として決めておるわけでございます。したがいまして、先生がただいま言われましたように、十カ年間百七十万トンを続ける、かような考えでおるわけではございません。一期三カ年間は、経営の安定ということもございますので、毎年動かすのは好ましくない、こういう考えに基づきまして、一期三カ年間だけは原則として百七十万トンを固定して実施をしていく、こういうことだけを決めておるわけであります。  したがいまして、一期三カ年間が終わりましたところで、その時点での需給を検討いたしまして、恐らく第二期、三年になるか四年になるか、それはまだ決めてはおりませんけれども、第二期のその期間、原則として固定した生産調整の目標というものを決めて実施していくということになろうかと思います。  私どもといたしましては、希望といたしましては、十カ年間続けるにいたしましてもこの数量がだんだんと少なくなるようにしたいというような期待は持っておりますが、具体的に九年目なり十年目に幾らにするかということは現在考えておるわけではございません。
  145. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 問題は、一期三カ年で百七十万続けてみて、消費拡大を一生懸命やって、どうしても在庫米がふえるということになれば、今度は二百五十万トンの生産調整もあり得るということですね。百七十万トン以上に二百万トン、二百五十万トンの生産調整をやらざるを得ないというときも二期目になったら出てくるということも言えるわけですな。
  146. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 百七十万トン、第一期の目標を定めましたときには、そのような事態はないようにということを考えながらやっておるわけでございますが、抽象的に申し上げればそういうこともあり得なくはないということでございますが、消費の拡大に努力をいたしまして、そのような事態が起こらないように願っているところでございます。
  147. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官、米の消費拡大運動をやらなければならぬということで展開されてから約十年くらいたっておると思うのですね。十年間かかっていまの現状はまことに恥ずかしい限りだ。遅々として消費が伸びない、正直のところ、いまそういう大きな壁にぶち当たっている。あなたら十年間運動をやって、なぜ伸びないのか、どこに欠陥があったのか、やり方がまずいのか、たとえば流通の過程で問題があるのか、米の味、要するに質において国民の口に合わないようになったのか、何が原因なのか、その原因をひとつ具体的に説明願いたい。十年間やった結果もう大体実態を把握されておると思うので、具体的に説明願いたい。
  148. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 四十五年度から消費拡大につきまして予算も計上いたしまして努力をしてまいっておるわけでございますが、当初はテレビ宣伝とかあるいは学校給食につきましても実験的な実施から入っておりまして、漸次強化をいたしまして今日に参っておるわけでございます。にもかかわらず十分の成果が上がっておらないではないか、その原因は何だと考えておるかというお尋ねでございますが、消費が減退をしてまいりました主要な原因を振り返ってみますと、やはり食生活の多様化といいますかあるいは高度化といいますか、要するに主食と副食との摂取の比率が、だんだん副食の摂取がふえてくるということで主食全体が減退をしてくるという傾向をたどってくる。その中で、小麦製品でありますパンとかめん類に比べまして、米の消費の減り方がより大きいというような経過をたどってきたわけでございます。四十五年からの一人当たりの消費量の推移を見てみますと、四十八、九年ごろまでは、年によって違いますけれども、一人当たり消費量は年率で三%前後減ってまいったわけでございます。その後オイルショック等を契機にいたしまして、一時、年の減少率が前年に比べて〇・八とか一・二とかいうように一%台にとどまってきておったわけでございますが、ごく最近、これはまだ資料が短期でございますので、決定的なことは必ずしも申し上げられないかと思いますけれども、各種の指標を見ますと、また減り方が三%前後に戻ってきているのではないかというように見ておるわけでございます。  その原因につきましては、先ほど申し上げましたのが一番大きいと思いますけれども、さらに副次的な要因といたしましては、米が食品として必ずしも健康上好ましくないんだ、たとえば太るとか高血圧になるとか糖尿病になるとか、あるいは頭が悪くなるというような極端な議論がございまして、それらも消費の減退、米離れ現象の一つの原因ではないかというように思うわけでございます。  それからまた、最近の米の減少の内容を分析いたしますと、年齢層によって、世代によってかなり差があるわけでございまして、若年層、青年層といいますか、これの減り方がより大きい。所得との関係よりは、むしろ年齢との関係の方が大きいということで、米離れ現象は青年層といいますか、若年層を中心にして及んでおるというふうに見ざるを得ないわけでございます。そういう点では、学校給食で、戦後米不足のときであったこともあり、アメリカからの援助小麦をもって始まったものでございますけれども、その後長くパン給食が主体になっておったということが、意図的ではございませんけれども、結果的には若年層といいますか、そういう者の米離れ現象を促進をしたという原因の一つではないかというように見ておるわけでございます。  そういう点から、今年度から先ほど申しましたような需給均衡対策を十カ年計画で始めるに際しまして、生産供給面での転作目標の強化をいたしまして、水田利用再編成政策を進めますと同時に、もう一つ需要面の対策といたしまして、消費拡大につきましてこれまでやってきたのを見直しまして、不十分な点が多々あったと思いますので、本格的に取り組むという姿勢で予算的にもかなり強化をし、今後もさらに強化をしてまいりたいと思うわけでございます。  ただ、食生活にかかわる問題でございますので、なかなか短期間に即効性を上げるということは、率直に申し上げまして困難だと思います。したがいまして、腰を据えて気長に国民の理解を求め、需給問題からの理解と栄養の面からの誤解を解き、むしろ積極的な評価をしてもらうということにつきましてのPRをいたしまして、国民の理解、協力を得ながら段階的、漸進的に進めていく、かような考えで今後一層強化をしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  149. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官はいろいろの壁というもの、矛盾というか、そういうものをいま説明されたんですが、もう原因はあなたわかっているんですね、正直言って。米の消費が伸びない原因はわかっておる。わかっておってしないのは、少したちが悪いという言い方をしなければならぬ。知らずにいきよるのなら大目に見るということもある、知らぬが仏ということもあるから。知っておってやろうとしないのは、食糧庁、農林省を含めて政府は無責任だ。  それから、いまや農業政策生産者農政ではない、消費者農政だと言われておる。消費者農政であると言われるなら、もっと米の消費拡大をやってもいいし、消費が伸びなければならぬと思うのに伸びないのは怠けておるという証拠だと私は思います。われわれは学校給食法を早う変えなさい、学校給食法があるために日本農業はだんだん破壊されていくし、日本の民族意識がなくなっていくじゃないか、農業と民族意識を破壊したのは学校給食法だと言っている。その学校給食法一つすら直そうとしないあなたの姿勢ですよ、食糧庁、農林省の姿勢、そこにわれわれは非常に不満がある。いまのような緩慢なやり方を、思い切って早く大転換をしなければならぬとわれわれは思うのですね。それができない弱さ、農林省は何をするところなのだ。農政、農政と言っても農業をなくするところが農林省だ、こう言われる。やろうとしないところに問題がある。やろうとすればやれると私は思うのですね。  だから、私はいまのような米の消費率でいくと、いまあなたら常に——いずれこの七月十日までには新しい米価を決めなければならぬ、今月中に麦価も決めなければならぬ。いまの状態から言うと、また米価は据え置きだろう。あなたの顔色を見たら、ああもう据え置きだなという顔をする。なぜならと言うと、在庫米がどんどんふえている、米が余るのだからしようがないじゃないかという姿勢なんだ。われわれから言えば、余らしている、意図的に余らしているじゃないか。余らしているのと余ったというのとは論議が分かれるところなんです。実際何ぼ余るのか、四百六十万トン余るのか、五百八十万トン余るのか、それを食糧庁は確認しているかね。
  150. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の十月末、五十二米穀年度から五十三米穀年度に移る際の古米の、一年古米だけではなしに二年古米も三年古米も一部あるわけですが、新年度への持ち越し量は三百六十七万トンでございました。一年たちましてことしの十月末、五十三米穀年度から五十四米穀年度に移ります際の古米の持ち越しがどれくらいになるかということにつきましては、現在年度途中でございますので的確に見通すわけにはまいりませんけれども、半年たったところでございますので今後の見通しを一応行ってみますと、三百六十七万トンが五百三十万トン程度にこのままでいけばふえるのではないかというように考えております。政府といたしましては、かねがね申し上げておりますように、古米の新年度への持ち越しは二百万トンが適正であるということで計画を立てておるわけでございますが、そういう点からいたしますと、五百三十万トンといいますのは三百三十万トン過剰であるという事態がことしの十月末に発生することになるわけでございます。  そのようにふえます理由はなぜか。一年間に三百六十八万トン、約三百七十万トンから百六十万トンふえて五百三十万トン程度になるその理由を申し上げますと、昨年の豊作によりまして、平年作に比べてといいますか、当時の計画をいたしましたのが平年作で千三百十万トンでございます。それに対しまして、御承知のように、千三百十万トンの生産が上がりまして、そこで百万トンふえることになることと、あとの六十万トンにつきましては、需要の見通しが、最近の一人当たり消費量の減退傾向からいたしますと、約六十万トン前後見通しよりも減るのではないかという点で、供給面と需要面と両方から百六十万トン程度の古米在庫の増加になる、かような見通しを現段階として立てておるわけでございます。
  151. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 われわれ瑞穂の国ということで米を中心に食うてきた民族なんですね。昔は戦争中で米のない時分でも米三合を基準に配給してきた。それが二合七勺になり、終戦時には二合前後ということに切り詰められたが、大体平均三合。三合ということになると四百五十グラム、いま一億一千三百万人おるのだから、一億一千三百万人が四百五十グラムで計算すると千八百万トンだ。それから、酒米や加工用が百万トンあるから、千九百万トン米ができても消化できる可能性がある。それがいま千二百七十万トンから千三百万トンの生産と押さえても、加工米を入れても一人平均二合、要するに三百グラム、一日三百グラム食べてもらおうとしたら年間千二百四十三万トン必要だ。加工用のものを百万トン加えると千三百四十万トンだ。だから、前より一合下げても、米の消費拡大でもっと米を食うてもらう運動をすれば、一年に二百万トンも米が余るなどということはどう考えても出てこない。あなた、基礎的な数字と言うが、米の消費をどれほど伸ばすかということを考えて、国民の皆さんに一日どの程度食べてもらうかということを考えて、それで制度的な改正を考えたらどうかという気がするわけです。  それから、いませいぜい千二百七十万トンぐらいの生産でべらぼうに余ってくるというやり方、この米の売り方に問題があると私は思うのです。いま全国で小売が六万何ぼあるでしょうが、もっと農協に売らせたらどうかという気がするのです。もっと米を食うてもらうように、消費者にとって便利のいいように、どこでもいつでも米が買えるという仕組みに米の売り方をもう少し変えたらどうかという気が私はするのですが、農林省は依然としてそれを考えない。たとえば、農協を合併させても小売権利を持っておる区域だけしか売らせない、あとは売らせない、そういうむちゃなやり方というのはないのじゃないか。いま全国に小売業者が六万二千七百四十八ある。農協が小売業者として登録して認可をもらっておるのが六千三百で一割、農協にもっと米を売らせたらどうか、ラーメンや何かを売らせるようなことをせずに米を売りなさい、そのぐらい思い切ってやったらどうかという気がするのですが、米の流通の方法の改革、第一に、これの新しい構想があるのかどうか。  それから、政府は意図的に自主流通米の制度をつくった。これは食管制度を守ると言いながら、これを骨抜き、形骸化するために、この自主流通米制度を伸ばすために、意図的に、新米ができたときに、政府米はなるべくにおいのするうまくない古々米を売るようなことをしておる。古々米と新米をまぜて売ったりするから、どうしても自主流通米の方へ手を出すとか、自由米とか縁故米とかいうことに発展してくる。在庫米がふえるように、ふえるようにしたのじゃないですか。新米が出たら同時に政府米も新米、自主流通米も新米でやったらいいじゃないですか。なぜ食糧庁は米が一番おいしいときに味の悪い古々米を売るのか。意図的に、そういう縁故米をふやしたり自主流通米をふやしたりするような作戦をとったのじゃないですか、どうですか。  また今度は十月なら十月に新米ができた、新しい米穀年度になったら、同じように思い切って政府は新米を売る、古々米を一切まぜない、そういうことでおいしい米を供給する。農民にはどういう指導をしておるのですか。良質米をつくりなさいよということで、ササニシキとかコシヒカリとか、いろいろな品種統一をして、一生懸命肥培管理をさせて、いい米をつくらせておいて、消費者には意図的に悪い古い米を供給していくようなやり方、それで米が余る、政府米はうまくないのだという印象を与える。そういう意図的なことをやって米の消費が伸びないという言い方はわれわれには聞こえない。いままでのやり方を根本的に変えたらどうですか。
  152. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いろいろお尋ねになりましたので、順次お答えをしたいと思います。  一つ流通改善の問題でございます。食糧管理制度のもとにおきまして米の流通も管理をしておるわけでございますので、これは一種の統制であるわけでございます。したがいまして、完全な自由競争というわけにはまいりませんので、その間、通常の自由競争商品に比べて競争原理が働かない、販売努力もやや弱いということは御指摘のとおりであるわけでございます。小売店は現在全国に六万二千余りございますけれども、いずれも登録制度をとっておりますので、だれでも勝手に売れるという仕組みにはなっておらないわけでございます。そこで、いま言いましたように、小売店につきましてもあるいは卸売業者につきましても、とかく販売努力において欠ける面があるということで、新規参入を認めるとか営業区域を拡大するというようなことによりまして、もう少し競争条件を導入して積極的な広告宣伝なり販売努力、消費者サービスということが実現するようにすべきではないか、かような点が指摘をされておるわけでございます。  私どもといたしましても、いま例としては小売のことを申し上げましたが、小売、卸、集荷の各段階につきまして、現在の食管制度という統制のもとではございますけれども、統制の根幹を維持する範囲内において競争条件をもう少し導入する方法はないものかという点について検討いたしておるわけでございます。関係流通業界にも問題を投げかけまして、少しでもそのような改善をすることによって業者自体が積極的な販売努力をし、それが消費拡大につながる、かようなことに持っていきたいものだということで検討しておるわけでございます。  その一環といたしまして、農業協同組合が卸売業あるいは小売業を現在かなりのところでやっておるわけでございますが、さらにやっておらないところについてもやれるようなことにするかどうか。逆に集荷面、これは農業協同組合系統と商人系統と二つございますけれども、卸売業者自身が集荷業務に乗り出すようにすべきだという議論もあるわけでございます。特に超過米の集荷を一〇〇%行うためには集荷努力をもっとする必要がある、かような意見も他方にあるわけでございます。そういう相互乗り入れ的な考え方でやるべきだ、こういう点も問題点の一つでございます。それらを現在検討いたしておりますので、いずれ近い機会に結論を得たいものということで進めておるわけでございます。  次に、自主流通米をふやしたことが政府の在庫をふやしたのではないかという御意見、それから、新米の売却をもっとふやすべきであるにかかわらず、古米の売却を政府が行うために消費が伸びないのではないかという点の御指摘でございますけれども、確かに自主流通米という制度を四十四年からつくっておるわけでございますが、これは政府が買い入れして売り渡す、そういう政府の手を通さずに、一定の流通規制のもとに集荷団体から卸売業者にストレートに物が行く、その間に、良質米に対する消費者の好みというのは非常に強まっておりますので、その品質に応じた取引、価格の形成が行われることを期待してやっておるわけでございます。これは完全に野放しにしておるわけではございませんで、一定の流通規制のもとにやっておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、そういう自主流通米ができますれば、それは全部新米で流通しておりますので、全体としては自主流通米も政府管理米ということで管理体制の中に入っておるわけでございますが、自主流通米は新米だけで出回るということのために、政府が直接買って売るものにつきましては古米の充当率がふえてくる、かような結果に確かになっております。しかしながら、自主流通米を含めました政府管理米全体といたしましては、そう極端にふえておるわけではないわけでございまして、他の要因で古米の売り渡しがふえておるという面がございます。それは先ほども過剰米の在庫でちょっと申し上げましたように、政府は備蓄的な考え方も含めまして、需給操作上は百万トン以下で十分間に合う古米の持ち越し量を、備蓄という、余裕のある備蓄を行うという観点から数年前から二百万トンの古米の持ち越しをやるということにいたしておるわけでございます。これは不測の事態に備えるという意味で百万トン以上ふやしたわけでございます。  このようなことをいたしますと、不測の事態に売れるような品質のものを持っておるということのためには、言葉をかえて言いますれば、備蓄の機能を果たさせるためには、やはり古い古々米なり三年古米なり四年古米というのを持っておりましても、いざ新米が足らないというときに出しましても食べてもらえません。したがいまして、回転備蓄と申しまして、一年古米くらいで備蓄を新しいものと入れかえていくというような操作をしなければ、量として持っておってもいざという場合には消費者が買わないということで、備蓄の機能を果たさないという心配が出るわけでございますので、どうしても二百万トンの古米の持ち越しをやりますものは、次年度には、新年度に入りましたものはその年に売り切ってしまうということをやって、また新しい米を古米として持ち越すというような回転をしなければいけない、そういうことのために、二百万トンという備蓄量をふやしたがために新米が出てから古米を売却する数量がふえざるを得ない、こういう矛盾が実は出てきておるわけでございます。備蓄をふやせばふやすほど古米を食べなければならない。昔の江戸時代のように外国からも何も入らぬ、よその都道府県からも入らないというような封鎖経済のもとにおきましては、米は古くなっても五年でも十年たっても食べられないことはないですから、ないときには食べるということでございますが、いまのように輸入は自由にできるという時代のもとにおきましては、古米を、三年、五年とたったものを仮に持っておりましても、それはいざという場合に売り渡しをいたしましても食べてもらえないということで、備蓄の機能を果たさないということのためにいまのようなことをやっておるわけでございます。  そういう意味で、備蓄をふやせばふやすほど一年古米を食べる量がふえてくるという矛盾が実はあるわけでございます。そういう意味で、私どもは二百万トン備蓄の中で主食用には百七十万トンくらいを次年度に古米として売却をしたいという希望を持っておりますけれども、今米穀年度は、昨年非常に豊作でございまして、新米の出回りがいわゆる自由米を含めて豊富に出回っておりますために、それと政府売りとの競争ということも考えまして古米の売却量を計画よりは減らして実施をしておるわけでございますけれども、それにいたしましてもやはり新米との競争で売りにくいという面があるわけでございます。ことしは特殊な年でございますけれども、そのような考え方でその年々の豊凶のいかんによりまして弾力的に古米の混入率といいますか、売却率は、操作は弾力的に変えていきたいというふうには思っておりますが、基本的にはそのようなことでやっておるわけでございます。  ただ、くどくなって恐縮でございますが、古米といいましても最近のものは低温貯蔵古米でございますので、低温貯蔵米と言っておりますが、新米と私ども食べましてもほとんど変わりがございません。それほど昔のような常温古米と違いまして古米臭という独特のにおいもほとんどございませんので、品質としては古米といいながらも非常によくなっているという点につきましては消費者の御理解も得たいものというふうに考えております。
  153. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官、備蓄米二百万トン、それならば米価審議会に古々米が三百六十五万トン、ことしの十月には五百三十万トンだというような数字はこれからは言われない、二百万トンちゃんと引いて言わなければだめですよ。ところが、一般の新聞報道には五百三十万トン、実質は五百八十万トンくらいになるだろう、五十万トンくらいの開きがある。長官、豊作だ豊作だといって、それならでき上がったものを皆買ったわけじゃないんだ。買ってないでしょう。買い入れ数量が大体決まっておるんだから、多少の幅を持っておるかもしれないけれども、そうべらぼうに政府が、豊作だったからといってまるで買っているわけじゃない。要するに縁故米がなぜこれだけふえるのか、縁故米としてどの程度動いておるか、数字をあなた調査したことがありますか。
  154. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 縁故米とか自由米とか不正規米とかいろいろ言っておりますけれども、要するに政府の管理を外れて流通している米の量がどれくらいかということでございますが、これは事柄の性質上、なかなか幾らということを調査することは困難でございます。ただ、推定といたしまして、米の生産量というのはわかるわけでございますので、それから農家消費量というのも別途の調査で推定できるわけでございます。それから、政府へ売却したもの、あるいは自主流通米で流れたもの、あるいは買い入れ限度超過米ということで自主流通ルートで自主流通米に準じて流通したもの、これらが把握できますので、それらを全体の生産量から差し引きまして、余剰といいますか、残りが出てまいりますので、その部分が先生のおっしゃったいわゆる縁故米とか潜在米と称するものであるわけでございますので、これはその年々によりまして、豊作の年、不作の年によりまして動きがございますけれども、私どもは常識的に百万トン前後という把握をいたします。昨年は、御承知のように、豊作でございましたので、その量はふえておるというふうに推定をいたしております。
  155. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 百七十万トンの生産調整を第一期三カ年やる、三カ年から次は、四年目に入ると百万トンになるとか五十万トンにするとか減っていく見通しならまだ明るいということが言えるわけです。生産農民立場から言えばまだ展望がある。ところが、三カ年やってまだ余るなら、また次は二百五十万トン生産調整だ、こういうことになると、いよいよ日本農業は破壊されていく。それから、需給均衡論だとか水田利用再編成、名前はいろいろなことを使っておるけれども、たんぼに米をつくるのをやめえということは生産農民にとっては悲劇であるし、それは酷な話であって、それをあなたらがあえてやるということは、それだけ責任を感じなければならぬ。第一回七百二十万トン古々米ができた時分に、約一兆円の国の財政負担ということで騒がれて大分食糧庁はたたかれたと私は思うのですね。二度とこんなばかなことはいたしませんという約束をしておられると思うのです。われわれはそう聞いた。二度とこういうことはしませんから、五分の一の価格でトン二万一千円ぐらいで払い下げをする。いま購入する場合にはトン三十万を超しておりますから、それを今度は従前のように五分の一や六分の一でえさに払い下げをした場合にどれだけ損失があるか、恐らくいま数字でいくと二兆円を超すのではないかという計算が出てくる。この前一兆円も国民に迷惑をかけた。人間というのは一遍失敗したら二度と失敗してはならぬというのだ。またこれを二回目もやる。その間、もう二度とこういうことはしないためには、米の消費拡大に全力を挙げるべきだ。輸入を抑えてでも米の消費を伸ばすべきだ、それが食糧庁の任務ではなかったのでしょうか。輸入はどんどんふやすわ、米は余らすわ、また国の財政負担で損失を与えるわ、普通の民間会社だったらあなたら首ですよ。そういう無責任なことをしておいて、国民に対しても申しわけないし、生産農民に対しても申しわけない。何にも感じない。あなた方神経が通っているのかどうかわからない。非常に無責任な集団だ、農林省は。無責任者の集団のようだ。私はこういう事態を迎えないために、第一回で失敗をして七百二十万トンも余らかして、一兆円も国の財政負担をして、税金を納めている納税者に迷惑をかけているのだから、もう二度とこういうことをしないために輸入を抑える、米の消費拡大に全力を挙げる、学校給食も変える、酒もアルコール分を添加するのをやめさせる、そして流通改善を思い切ってやる、こういうことをなぜしない。依然として責任を感じない。食糧庁なり農林省の責任者というものはもってのほかだという気がするのですが、澤邊長官だけしかったってどうにもならぬので、どうですか、もっと明確に責任をとるという、そういう腹をくくって、米の消費拡大を具体的にこれからこうやって、一日でも一年でも早く生産調整をやめさせる、こういうものがなければ、あなた日本人ではないと言われるよ。日本人なら米を食うべきだ、そういう気魄を持って米の消費拡大をやるべきだと私は思うのです。どうですか、長官。
  156. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 このような事態になり、過剰がまた再現しているという点につきましては、私どもとしても責任を深く痛感をしておるところでございます。  そこで、食生活のことでございますので、これを法律的な強制をするとか無理強いをするというわけにはなかなかまいりません。したがいまして、国民の理解を得ながらPRに努め、理解を得ながら協力をしていただくということで誘導をしていくという必要があるというふうに考えております。したがいまして、今年度から需給均衡化対策の一つの大きな柱といたしまして、消費拡大につきまして全力を尽くすということで努力をいたしておるわけでございます。ただ、事柄の性質上決め手というものはなかなかすぐないわけでございますので、いろいろの手を組み合わせまして総合的な効果が上がるように腰を据えた努力をしたいというように思っております。  具体的には何をやるつもりかということでございますが、先般も各ブロックにおきまして、県のこの関係の責任者にお集まりいただきましてブロック会議をやったわけでございますが、やはり米の需給問題なりあるいは栄養問題等についていろいろ誤解等がございますので、そういうことを解きながら米の消費を拡大することの必要性の啓蒙といいますか、普及といいますか、そういうことを行いますための体制を整備する必要があるわけでございますが、昨年から県段階では一応の体制が整いつつありますけれども、町村段階はこれからでございます。したがいまして、県も一応の形は整ったけれども、中身はこれからでございますので、内容を充実いたしますと同時に、各町村にそのように同じような体制をつくっていただくということを一つ重点としてやりたいということでございます。  それから、学校給食等に米飯を導入するということが何としても基本的に大事なことだと思います。これは直接には文部省関係で進めておられることでございますので、文部省にもお願いをしながら協議をして進めておるわけでございますが、単にパン食から米飯に学校給食を切りかえることによりまして米の消費が何万トンふえるという目先だけの効果ではなしに、子供の時代から米食になれるということを通じまして、成人してからも米中心の食生活を営むという意味から基本的に大事なことではないかというように思っております。  そこで、現在、完全給食校で約六割の学校が何らかの形で米飯の給食を導入しておるわけでございますが、これは平均いたしますと、月三回ぐらいでございます。これを五十六年までには週二回まで持っていきたいという計画が両省の間でできておりまして、これをできるだけ達成するようにということで、今年度は、昨年の二万四千トンに対しまして四万五千トンまで米飯給食量をふやすということで努力をいたしておるところでございますが、今後、できますれば五十六年度までに週二日というのを少しでも繰り上げるというような検討もしてまいりたいというふうに思っております。  それからさらに、先ほど御質問がございました流通段階販売努力という点につきましては、先ほどお答えしましたように、種々問題点がございますので、米の流通改善を行うというのもその一環として考えておるわけでございます。また粒食、米を、御飯を炊いて食べるという形だけではなしに、加工をして新しい製品として粉食形態で食べる、麦はまさにそのようになっておるわけでございますが、そういうような利用の開発もしていくという必要がございますので、それらに対しまして、実験的な企業努力に対しまして無償で米を交付するとか等の援助をしてまいりたいと思います。御承知のように、ライスワインだとかライスめんだとかライスクラッカー、あるいはライスパンだとかという各種の米粉入りの新製品がいろいろ出ております。これが本当に定着するかどうかということはにわかに断定できない面がございますけれども、そういう努力を民間企業は非常にやっておられる点は大変心強いと思っておりますので、これを政府といたしましても基礎的研究は引き受けながら、企業の開発努力に対して一層援助をしていきたいというふうに考えております。  また、米を食べていただくためには良質米を生産するということがどうしても必要でございますので、生産農家にもそのような努力を一層お願いをしていきたいというように考えております。
  157. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 長官は机上論で物を言われるが、一つも実行面にはあらわれてこない。たとえば、米を食う運動をやろうと思えば思い切ってやれるわけで、それはいま五百万トンの在庫米をある程度減らさなければならぬということになれば、えさにおろした場合にはもう六分の一くらいの価格になってしまう。相当の損だから、全国で各工場であろうと官公庁の食堂は全部米を食うてもらう。三割引きにしたらいいじゃないですか、値引きしたらいいじゃないですか。農林省の地下の食堂に行ってみても、米は余り食うていないじゃないですか。各県庁だろうと市役所だろうとどこだろうと、官公庁の食堂にはぎょうさん米を食うてもらう、各工場の給食施設を持っておるところには全部米を食うてもらう。値引きをしてやればいいのですよ。そのくらいの米食い運動を思い切ってやる。少々損をしてもそれがPRになる。いままで相当の金を使って米を食いましょうと言ったって、新聞広告や何かでそんな要らぬ金を使うよりか、実行面でやっていくというぐらいな思い切った根性のある行動を起こしたらどうかということです。どうですか、長官、それをやってごらんなさい。
  158. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先般、一月の二十日に米の需給均衡化対策につきまして政府で閣議了解をいたしました際にも、米の消費拡大につきましては農林省だけではなしに政府全体として取り組むということで四項目ばかり決めたわけでございますが、その際あわせて、政府関係の各種行事等におきまして食事を出す場合には米食にする、それからまた酒は日本酒でいくということを申し合わせたわけであります。  農林省の場合には率先垂範の意味もございまして、いろいろ会議等の昼食なりあるいはお酒等につきましては、米飯と、米に限定してやっておるわけでございます。農林省の食堂におきましても、めん類につきまして、そばは米だけというわけにいきませんけれども、うどん類につきましては全部米入りのうどんに切りかえておりまして、通常のうどんは売らないというようなことで努力はいたしておるわけでございます。  また、農業協同組合等におきましても、米の日をつくったり、あるいは先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、パンだとかめん類の販売を自粛するとか、あるいは役職員が弁当を持ってくる日を決めるとかいうような、やや精神的な面もございますけれども、各種の運動をやっておるわけでございます。これらの運動は無理強いするわけにはまいりませんけれども、漸次輪を広げていきたいというように思っております。  なお、学校給食のほかに職場その他の食堂等で値引き販売をしたらどうかというお話でございますけれども、結局はこれは米を安売りをしろという御意見につながるわけでございますので、政府の売り渡し価格を決める際、それらのことももちろん考慮しながらやらなければいけないというように思いますが、特定の食堂なり給食施設だけに特別の安売りをするというようなことがどの程度効果があるか、どこで線を引くかという問題もございますが、どの程度の効果があるかという点につきましては、従来食べておったのが置きかわるのに若干プラスはないとはもちろん申せませんけれども、それほど画期的な効果は必ずしも期待できないのではないかというようなこともございまして、一般的に米が栄養的にすぐれている面のPR、マイナスイメージの払拭はもちろんでございますけれども、米が穀物として麦以上にすぐれたものであるという点のPR、特に食生活におきます栄養成分をとる比率の中で、やはり穀物を中心とした炭水化物の摂取量がわが国の場合理想的な現状になっておるというふうに専門家は言っておりますので、これ以上穀物の摂取量が減らないようにというような点のPR、あるいは米の需給の安定、長期的に見た国民食糧の供給の確保という点からいたしますと、目先の利害だけではなしに、やはり中期的、長期的に見ていかなる事態にも安定供給を確保していくためには、国内でとれた食糧を中心に据えた食生活を営むことが需給安定上絶対必要である。現在世界の穀物事情は若干緩和をいたしておりますけれども、かって数年前にはかなりの不足があったわけでございますし、中期的、長期的には依然として不足の心配が残っておるわけでございますので、そういう需給面の理解を消費者国民に求めるためのPRも積極的にやりまして、米の消費拡大に御協力をいただくというような努力に重点を置いていきたいというふうに思っております。
  159. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 澤邊長官が長く長く答弁するということは、せぬいうことなんです。余りやらぬいうことです。長く長く答弁する人は、やったためしがない。簡潔に言う人は本気でやる。岡山県の県知事見てください。日本語余りべらべら言いやしませんよ。米食い運動、本気でやっているじゃないか。予算措置もしてちゃんとやっている。長野知事がえろうべらべら言わなくても、腹くくって米食い運動一生懸命やっている。全国の知事にハッパをかけてみんなやらしたらどうです。あんた、べらべら言うて答弁だけはするけれども、本気でやってない証拠なんだ。だから、余りもう日本語はべらべら言わないでもいいです。やるかやらぬかに追い詰められてきておるんじゃないですか。もっと思い切ってやりなさいとわれわれ言うておる。一県の知事がやれるのに食糧庁の長官がやれないというのは、あんた、どっかが欠けておるんじゃないですか。みずから反省してもらわにゃ困ると思う。どこが欠けておるだろうか、私が言うまでもない。一県の知事が米食い運動を一生懸命予算措置もしてやっておるのに、よその県にそういうことをようやらない。食糧庁長官の力がないのか、指導力がないのか、能力がないのか、どこか何か欠けておるんじゃないですか。思い切ってやったらどうですか。ぐずぐずべらべら言う必要はないんですよ。米の消費拡大を具体的にどうするか、ぼくらはもう何年もこのことをこの席から言うてきたんです。やりなさい、やりなさいと。農林省の答弁は、検討いたします。善処いたします。考慮いたしますでいつも日が暮れてしまう。検討、検討で終わっちゃう。もう検討段階じゃないですよ。いま農民はあんたらのために追い詰められているんですよ。米の消費拡大一生懸命やりさえすれば、生産調整しなくてもいいし、農民に全部どろをかぶせている。米価安いからちいと上げてくれ言うと、あんたのところは、米が余るんだからといって、米の価格を上げようとしない。いま日本はあんたらの罪で、昔はわれわれ常識から言うと、米を食うて薬を飲みよった。だから、難病人も余り出ない。いま薬を食うて米を飲むようになったから、難病人が三十五種類も日本にできた。わけのわからぬ病気がどんどんふえて、三十五種類難病というものができた。われわれの時分には、米を食うて薬を飲みよった。いま薬の消費額がものすごく多い。金額を基準に置いて考えたら、そういうことが言えるわけだ。米の価格がいかに安いかということが言えるわけだ。それから、米の消費が伸びてないという証拠だ。そういうことを平気で、皆さん方は知っておって、米を食うて薬を飲むような時代にもう一遍戻してくる。そういうことはできるはずである。だから、いまの米が余ったとか余らかしたとかいろいろ論議はあるわけですが、何としてもこの人為的な操作、天災地変でこういう現象があらわれたんじゃない。政治的な欠陥ですよ。行政的な欠陥です良いまわれわれ農村へ行って農民にどう答えたらいいのか、答える方法がない。  きょうほかの問題通告しておったのですが、時間がないからやめますが、いずれまた改めて質問申し上げますが、とにかく何としても米の消費拡大を本気でやらないと、われわれは納得できない。いずれ麦価を決める、新しい米価を決めるときが来たら、また皆さんは農民にどろをかぶせる。そういう発想で、避けて通ろう、逃げの一手ですよ。そういうことで、昔、農林省の役人というのは、各省の役人とは違って根性があった。皆さん方の先輩には多くの指導者が出て、多くの根性を持ったりっぱな人々が日本農林省には出たんだ。いま日本農林省は何もしない。正直のところ、もう残念でたまらぬ。せめて澤邊長官ぐらいは歴史に残る食糧庁長官として、思い切って米の消費拡大をやってもらう、実行してもらうということをつけ加えて、私の質問を終わります。
  160. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 鈴木強君。
  161. 鈴木強

    鈴木(強)委員 お許しをいただきまして二、三お伺いをいたします。  その第一は肥料の問題でございます。私は最近、屎尿の再生利用の結果、屎尿から燐がとれる、その燐を使ってつくった肥料があることを知りました。この肥料は有機質の特殊肥料だと言われておりますが、特に成分の燐は、御承知のように、わが国におきましては生産量が少なく、年間二百四十四万トン、総額にしまして四百十六億円に上る輸入をしていると聞いております。ですから、本当にこの特殊肥料の効果があるものとすれば大いに活用すべきではないか、こう思います。しかし、私もまだその性能等について十分理解をいたしておりませんので、質問も若干どうかと思いますが、もし農林省がこの事実について知っておられるとするならば、農林省としてはどういう見解をお持ちでございましょうか、まずその点をお答えいただきたいと思います。——委員長の方から御指名もありますし、当然答弁者が来ていると心得ておったのでございますが、まだお見えになっておらないようでありますから、やむを得ません。そこで、ひとつ質問の順序を変えましてお尋ねいたします。  最初に、桃のせん孔性細菌病の農薬の問題、それから同様に灰星病の防除農薬の問題についてお尋ねいたします。  私の選挙区は山梨県です。御承知のように、果樹によって生計を立てておる農家がたくさんございます。そこで困ったことに、桃のせん孔性細菌病というのが発生をいたしまして、これは一晩にして全く商品価値をなくしてしまうような恐ろしい病気でございます。この病菌を完全に撲滅する農薬が今日まだ開発をされておらない。まことに遺憾にたえません。病原体はバクテリアでございますから、なかなかむずかしいように聞いてはおりますが、特に私は、昨年の三月十一日の予算分科会でこの問題を当時の鈴木農林大臣にただしてございます。大臣も、確かに対応のおくれを認められまして、現地の視察等を行い、積極的にこの農薬の開発に努力する、こういうお答えをいただいているわけでございます。  その後一年を経過いたしました。農林省としては、この桃のせん孔性細菌病、果樹農家にとっては頭痛の種、大変困っておりますこの病原菌の防除のための対策をどういうふうにとられておるか、ひとつ最初に説明してください。
  162. 本宮義一

    ○本宮説明員 桃のせん孔性細菌病が近年桃の生産地で非常に大きな害をなしておるということは先生の御指摘のとおりでございます。  これの対策といたしましては、基本的には、樹勢の弱い木に非常に発生が多い、また土壌が流亡するというような園ではこれまた発生しやすいというようなことから、基本的には健全な樹勢、旺盛な樹勢の園をつくるということ、それから土壌改良剤の投入等によって果樹園を健全に管理するということが基本でございますが、この病気に対しての農薬散布ということが現実の対策として必要でございますので、従来からこれについての農薬の、防除についての的確な指導を国としては県も通じて行ってまいりました。ですが、現実問題として、発生を見てから農薬をまくということではなかなか効果が出ないというようなこと等もございまして、このせん孔性細菌病がなかなか防除のむずかしい、難防除の病害であるということで農家の方も困っておられるわけでございますが、そういうことに対処いたしまして、昨年秋でございますが、新しくストレプトマイシンとチオファネートメチル剤の混合剤でございますアタッキン水和剤というのを農薬として登録いたしております。この農薬は昨年山形県下でも数カ所の展示圃において実験的に試験をしてまいったのでございますが、相当の効果を上げていると聞いております。今年につきましてのこのアタッキン水和剤の使用については、普通ですと山梨県の五月の雨量は平均しまして大体百ミリ程度と言われておりますが、ことしの雨量は四十ミリを下っておる、六月に入ってもまだ二十二ミリ程度ということで、雨量が非常に少のうございますので、現在のところこの病気の発生の報告を見ておりませんので、まだことしの防除効果についてはつまびらかにいたしておりませんが、相当の効果は上げ得るものと考えております。
  163. 鈴木強

    鈴木(強)委員 原因が、原因というか、防除の方法とその原因との関係ですが、樹勢の弱い木、あるいは土壌の悪いところ、そういうことにあるということは御指摘のとおりだと思いますが、それで、いまお話しのアタッキンという農薬は昨年登録をし、山形で使った結果大変効果が出ている、こう判断されているということですが、これが、私が農林大臣にお願いをし、皆さんが積極的に研究をするというものの終着駅ですか。これは決定的にせん孔性細菌病に効くと判断をされているのかどうなのか。この辺もう少しさらに研究を重ねていくという態度がおありですか、どうですか。
  164. 本宮義一

    ○本宮説明員 アタッキン水和剤の農薬の開発並びに登録は、前に大臣のお答えになられたものの中に含まれるわけでございますが、この農薬については相当の効果があるということは従来のデータ等からも言われておるのでございますが、さらに、これはまだ現在のところ登録にはなっておりませんけれども、新しい農薬の開発を、これは民間企業ではございますけれども、ストレプトマイシンとベノミルという殺菌剤との混合剤を開発するということで目下試験が行われております。この試験結果はまだ現在のところ出ておりませんが、効果試験をいまのところ実施中であり、毒性試験についてはこれから手がけるわけでございますけれども、せん孔性細菌病に対するこういう新しい農薬の開発が現在民間の農薬企業の中において行われているのでございます。
  165. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それは農林省としても早急にできるだけの御援助も申し上げて、果樹農家が期待している防除薬、農薬の実用化を一日も早くやらなければなりませんね。そういう意味で、大体これの実用化はいつの時期と考えていま研究されていますか。
  166. 本宮義一

    ○本宮説明員 ただいま申し上げましたように、現在これを散布した場合のこの細菌病に対する効果試験を実施中でございまして、それに引き続いて毒性試験等が行われますので、いつの時点でこの農薬が登録されるかということはいまの時点でははっきりいたしかねます。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕 しかし、こういうような所要の試験を経まして、効果があり、しかも毒性試験において、十分に農薬としての使用が認められるものであれば、できるだけ早くこれを登録いたして農家に使用していただきたいと思います。
  167. 鈴木強

    鈴木(強)委員 だから、もっと前向きに農林省として、国会で大臣が答弁したことですから、もっと積極的に取り組んで、そして一日も早く必要な試験はして、そして登録をして、農家のためになるような、そういう努力をしてほしいということを言っているのです。ですから、もっと前向きに取っ組んでもらえませんか。
  168. 本宮義一

    ○本宮説明員 最近、農薬で、病害虫の中では防除が非常にむずかしいという病気は、いま先生のお述べになっておられる桃のせん孔性細菌病初め各種ございまして、こういうものの的確な農薬の開発につきましては、本年度予算からこれの開発を促進する予算を計上いたしております。この中身のものは、農薬の開発に当たりまして毒性試験をしなければならないわけでございますが、これが相当巨額の金額に上りますので、企業としては相当売れる見通しのあるようなものでなければなかなか企業の採算ベースに合わないという面もございますので、そういう毒性試験に要する経費を国が、早く言えば貸し与えるという形で、それで毒性試験にパスすれば企業はそれを返還していただく、もし毒性試験にパスしなくて農薬として登録できない場合においては、その要した経費の半分を国が返していただくというような、毒性試験の費用軽減を図ることによりまして、農薬の登録を少なくともいままでよりもよりスムーズに、より刺激をして促進するという体制で進めたいということで、五十三年度予算から新農薬開発促進事業という事業を新規に発足いたしております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  ただ、そこで、五十三年度の対象の病害といたしましては、これは前々から非常に問題になっておりますリンゴの腐乱病、それからリンゴの落果防止剤に対する農薬の開発を対象とするということに五十三年度はいたしております。
  169. 鈴木強

    鈴木(強)委員 せん孔性細菌病の農薬の予算は組んでないのですか。
  170. 本宮義一

    ○本宮説明員 五十三年度には、この事業の対象には、桃のせん孔性細菌病はしておりませんが、今後この病気の推移を見守りまして対象とするか否かを検討してまいりたいと思います。
  171. 鈴木強

    鈴木(強)委員 あなたは、御質問をしていくと、やっているということを小刻みに出すわけだけれども、こういうことは、最初あなたの方の姿勢としてぴしっと出していただいて、そして、せん孔性細菌病というのは一夜にして商品価値をなくすような非常に恐ろしい病気だから、早くこの農薬を開発してほしいということを私は大臣にお願いしたわけですから、そういう点から言えば、このせん孔性細菌病の予算を組まないのは、せっかくそういう助成のための予算を組むとすれば、なぜこれを組まなかったか、リンゴの落果とかそういう方面には組んだけれども、桃のせん孔性細菌病については組まなかったのはどういうわけか、そういうことをわれわれに説明してくれなければだめじゃないですか。時間も少ないのですから、ちゃんとポイントを外さないようにしてほしい。  それで、さらにこの開発のために努力されているようですから、その点は了といたしますが、ひとつもう少し前向きに、積極的に検討していただいて、果樹農家の悩みを解消していただくようにお願いをしたいと思います。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  それで、時間がありませんから、土壌の改良、こういった面についてもあわせて農林省としては指導していただかなければなりません。したがって、これらをどういうふうにされたのか、時間がありませんから後ほどまた別途お聞きすることにいたしますが、あなたはいま、ことしはそういう病気が発生していないようだというふうに言っておりましたけれども、私はおととい選挙区へ帰りまして伺いましたところ、もうすでにこれは出ておるわけです。ですから、もう少し、普及所等があるでしょうから、連絡を密にしていただいて、そして実態というものを十分に把握した上で適切な指導をすると同時に、実態をつかんだ上において新しい農薬の改良のために一層ひとつ努力をしてもらいたい、こういうことをあなたに要望しますが、いいですね。
  172. 本宮義一

    ○本宮説明員 各県におきます病害虫の発生状況は、毎月これを取りまとめまして、試験研究の方にも入っていただいての検討を経まして、発生予察情報としてこれを農家の方に提供いたすことにいたしておりますので、各県の実情については相当つまびらかに私ども時々報告をいただいて承知していると思っておりましたけれども、いま先生のようなお話でございますれば、この点につきましても十分現地を調査いたしまして、的確な今後の防除指導について県と相ともに指導してまいりたいというように思います。
  173. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それからもう一つ、灰星病の農薬についてはどうでしょうか。これは皆さんの御苦労でかなりいい薬ができておるのですけれども、もう少しこれは研究をしていただくことになっておるのですけれども、その後この灰星病の農薬についてはどのようになっておりますか。
  174. 本宮義一

    ○本宮説明員 灰星病の農薬につきましては、現在私どもの聞いているところでは、三つほどの化学物質がそれぞれ薬効試験あるいはまた毒性試験等をいまテスト中であるというふうに伺っております。その中にはすでに薬効試験及び農薬の作物への残留試験が終わりまして、相当効果が高いというように伺っているものもございますが、毒性試験に目下かけられておるといったようなことで、まだその三つの農薬は登録の面の申請に上がってまいっておりませんので、いまここではその農薬についてとやかく言うのを差し控えたいと思いますけれども、灰星病が最近桃の、特に北の方の寒い地域に桃の産地が移っていくことに伴いまして、桃の産地の大きな病害になる、特に果実を侵しますので、果実の商品価値を非常に落とすということで、農家の関心の的でございますので、これも農薬だけの防除ではございませんけれども、農薬についても、十分にそういうような農薬の開発についてはわれわれも努力し、この促進を図るように努めてまいりたいと思います。
  175. 鈴木強

    鈴木(強)委員 三つやっているそうですか、それはどういうのですか、ちょっと教えてください。
  176. 本宮義一

    ○本宮説明員 私どもが伺っているところでは、ロブラールという名前でこれはテスト中でございますが、これはすでに薬効、残留試験は終了して、目下毒性試験も取りまとめ中というふうに伺っております。  それから、スミレックスという農薬は、これは前々から相当呼び名が高いのでございますが、すでに薬効及び残留試験は終わって、いま毒性試験を実施している。これは薬効は非常に高いというふうに私ども伺っております。  それから、もう一つのキャプレート水和剤、これは混合剤でございますが、キャブタンとベノミルというものの混合剤でございますが、薬効試験は終わって、薬効はあるが、残留試験はまだ終わってない、残留試験を終わった後でこの毒性試験に入るということに相なります。  大体以上の三つが私どもの承っているものでございます。
  177. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。その点を含めまして、前段のせん孔性細菌病とあわせてさらに積極的な御検討をいただきまして、一日も早く新しい農薬が出てまいりますようにお願いをしておきます。  次に、果樹共済の問題で若干お伺いしますが、これも私、昨年三月十一日の予算分科会で鈴木農林大臣に質疑をいたした問題でございますが、御承知のように、山梨県は日本のスモモの全生産量の八割を生産している県でございますが、残念ながらこのスモモが果樹共済の対象になっておらぬ。それにはいろいろ理由がございますが、昨年私はこの問題について、特に一昨年の冷害によりまして山梨県のスモモは全滅をいたしました。スモモの木の下に立って、天を仰いで涙を流して泣いている農家方々の姿を見まして、果樹共済の中でスモモが対象から除外されておったことに対して私は改めて本当に憤激を感じ、何とかこれが一日も早く果樹共済の中に入るようにと願いまして、昨年も質疑をいたしたのでございますが、何か五年くらいかかるとか、調査にいろいろ困難性もあるようでございますが、その後この問題についての御調査はどのように進んでおられるか、それをひとつ聞かしてください。
  178. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 スモモの共済制度についてのお尋ねでございますが、スモモにつきましては、御承知のように、昭和四十九年度から昭和五十三年度まで五カ年にわたりまして、主産県であります山梨県と山形県、この二県に委託をして、被害率等の基礎調査実施してきたところでございます。  スモモ、それから梅、ビワ、桜桃、こういうものを含めまして、一般に小粒果樹というふうに呼んでおるわけでございますけれども、これらの小粒果樹につきましては、一般に収穫量の年次変動が非常に大きいということから、適正な基準収穫量の設定がなかなか困難である、こういう問題が共通して見られるわけでございます。そのほかに、特に損害評価の面におきまして、こうした小粒果樹については実はかなりむずかしい問題がございます。と申しますのは、御承知のように、これらの果樹はわりあいに葉が多くて、しかも実は小さい、葉と実が同色である場合が多いものですから、葉の裏に隠れてなかなか収量をつかみにくいという実態がございます。実を落としてみて初めて全体の収穫量がわかるというのが現実でございまして、これを共済制度に仕組みます場合に、収穫前の状態でどういうふうにして損害評価を行うかということが実は非常に大きい問題になるわけでございます。  そういうことから、ことし、五十三年度でございますが、特に調査予算を組みまして、この小粒果樹についての損害評価方法の調査を行うことにいたしておるわけでございます。この調査の結果を待ちまして、私どもとしましてはなお果振法の対象に追加指定をするという前提手続も残されておるわけでございますけれども調査の結果を待ち、そういった手続を待ちまして、できるだけ早く結論を出したいというふうに考えておるわけでございます。
  179. 鈴木強

    鈴木(強)委員 昨年も同様なお答えをしているわけですねん第一番は危険分散の問題、第二番は基準収穫量の適正の問題、第三番目には損害評価の方法の問題、こういったむずかしい問題がありまして、なかなかてきぱきと進まないのだというお話を聞きました。それはもう前からわかっていることでございますから、私は改めて、一年有余の年月がたった今日、農林御当局としてこれらのむずかしい問題をどういうふうにこなして、五十三年度に一応調査を終わって、五十四年度には果樹共済の中にわれわれの願っておりますこのスモモが入っていけるかどうなのか、そういう点を聞きたいわけですね。したがって、前の二つの問題は大体もうよろしいのか。いま予算を特に計上して、損害評価でございますか、その面にことしは力点を置かれるように承ったのですが、そこが済めば大体の五年間の基礎的な調査を終わるというふうに理解をし、五十四年度には法律の改正ができる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか、それならもうこれでいいですが。
  180. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 三つの問題がございますが、さしあたって一番大きい問題は、ただいま申し上げました損害評価方法の確立の問題でございます。損害評価方法の調査は先ほど申し上げましたように本年度から新しく始めるわけでございまして、本年度中に終わるかどうかということをいま直ちに申し上げる状況にないわけでございますけれども、私どもとしては、損害評価の方法につきましてある程度の確信が得られれば、スモモの共済制度化というものを本格的に仕組んでみたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、スモモにつきましては、これは果樹全体そうでございますけれども、法律の改正は必要ございませんで、政令で追加指定をすればよろしいということになっておるわけでございます。
  181. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、本年度中に調査が完了するかどうか、その辺ははっきりした見通しがないわけですが、ひとつぜひ馬力をかけて努力していただきたいと思います。  それから、果樹共済そのものの内容等についても多くの改善すべき点がございますね。山梨県なども、この内容によりましてなかなか農家方々が積極的に加入をしてくれないという側面も一つございます。しかし、不備な点はありましても、この制度をつくるに際しましては、いろんな困難を克服し、乗り越えてできた制度でございますから、最初から百点満点にはいかないでありましょう。したがって、そういう点はわれわれも深く理解していただくように農家方々とも話をしているわけです。したがって、一歩一歩農家方々の期待に沿えるような方向に改良していくということが皆さんの務めでございましょうね。  ですから、いまのスモモの問題を含めまして、さらにこれらの点についてもできるだけ早く改善策を示していただきたい、こう思いますが、ひとつもう一度お答えをいただきたい。
  182. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 御指摘のように、果樹共済についてはいろいろ問題がございます。一つは加入率が非常に低いという問題がございます。これは農家間あるいは産地問におきまして、果樹については栽培形態や技術にかなり格差があるというようなこと、それから制度発足後まだ日も浅いといったようなことが問題であろうかというふうに思います。  なお、こういった加入率が低いということとも関連をするわけでございますけれども、果樹共済の収支は非常に悪うございます。そういった問題も含めまして、私ども果樹共済の問題をさらに改善するように検討を進めたいというふうに思っておるわけでございます。
  183. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、その点も含めまして大いにひとつ努力をしていただきたいというふうにお願いしておきます。  それから、最初の質問ですが、担当の方がお見えになりましたので、もう一回やり直します。  最近、屎尿の再生利用の研究の結果、屎尿から燐がとれるそうでございます。私はその燐を使ってつくった肥料があることを知りました。この肥料は有機質の特殊肥料だと私は聞いております。特に成分を分析してみますと、燐というものがかなり有効的にとれると聞いておりますが、御承知のように、わが国におきましては燐の生産量が非常に少のうございまして、年間二百四十四万トン、総額四百十六億円の輸入をしておるわけでございます。  そこで、本当にこの燐というものが効果があるとすれば、この特殊肥料というものを大いに活用すべきではないか、こう思うのでございます。私も、ちょっと無責任かもしれませんが、まだその内容等についてのことは詳しくは知っておりません。そういうふうに聞いておりますから、ひとつ農林省としてこの特殊肥料について御了承であれば、これに対する御見解を承っておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  184. 芦澤利彰

    芦澤説明員 先生御指摘のように、人ぷん尿の中には燐が含まれておるわけでございまして、燐のほかにも、カリだとか窒素などが含まれておるわけでございます。ただ、確かに量は含まれておるわけでございますけれども、人ぷんの中の燐の成分は〇・二%か〇・三%というふうなわりあい薄いものでございますので、そのままでは肥料として使うのにはわりあい使いにくいという感じがしております。  ただ、先生の御指摘のように、最近屎尿処理あるいは資源の有効利用というふうな観点から、屎尿あるいは廃棄物等を肥料として活用しようという動きも出てきておりまして、一部にはそういうものを実際に肥料として使われておる例もございます。肥料にする場合には、やはり必要な成分がなければなりませんし、また品質が保全されてなければならないという問題がございますので、そこらは肥料取締法に基づきまして所要の指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  185. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、なお検討して、本当に資源有限の国でございますから、燐というものがそのように活用ができるものとすれば、私は大変いいことではないかと思いますので、御検討をさらにしていただくことをお願いして、終わります。  どうもありがとうございました。
  186. 中尾栄一

    中尾委員長 薮仲義彦君。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  187. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、先日、農林大臣が静岡に参りまして、現地の関係者の皆さんとミカンあるいはお茶の問題等について視察もし、懇談もなさったという経緯を踏まえまして、本日はミカンとお茶の問題にしぼって質問をさせていただきたいと思います。  最初に、ミカンについてお伺いをいたします。  われわれ県下のミカン農家、ほとんどになりますけれども、五百戸の方を中心にして実態調査をいたしました。一ヘクタール以下の方がほとんどでございますが、それらの方のいろんな形のアンケートの結果がございますが、それを要約して言うならば、現在ミカン農家の直面する経営状態は非常に悪化しているというか、非常に困難な情勢にある。これはどういうことかというと、御承知のように、経費は年々増大をしても、ミカンの価格というものがそれに準じた適正な価格ではない、いわゆる必要経費も賄えないような非常な厳しい価格というものが現在あるわけでございまして、このままでいきますとミカン農家をやめなければならない、あるいはまた後継者についても非常に困難な問題が横たわっておるわけでございます。  この調査結果から、結論として何が一番指摘されなければならないかといいますと、ミカン農業の一番の問題点は需給がアンバランスである、それによって安定した価格の維持ができない、これが一切生産者経営困難というところにしわ寄せが来ておる。やはりここで農林省が最もいまやらなければならないのは何かと言えば、ミカンの需給の安定を確立しなければならない。長期の展望に立って生産、そして需要というものが安定した形でなされれば、今日のようにミカン農家を窮地に陥れることはなかったのじゃないか。また、もっと率直に言うならば、農林省指導がどうだったのだ、農家の方を苦しめるような結果になってないかどうか、そういう点から、農林省は今後ミカン農家のこの経営不安等の諸問題を解決するために需給の安定ということについてどういう計画を立てているか、まずその辺を最初にお伺いしたいのでございます。
  188. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 お答え申し上げます。  先生がいま御指摘になりましたように、ミカンの農家が大変苦しい状態に立ち至っているということは私どもも十分に認識をし、それに対する対策を立てておるところでございます。従来からミカンの需給の安定ということが永年作物である果樹についてはまず基本でございますので、最近の需給動向にかんがみまして、これはほかの晩柑類に改植をするとか、そういう生産の調整をやる、また、とれました果実についても出荷の調整なり、あるいは場合によってはそれを加工に回し、さらに調整保管をやるとか、そういういろいろな年々の対策もあわせて需給の調整について努力をしてきたわけでございますけれども、ただいままでの現状で申しますと、生食用の需要というものが予想以上に伸び悩むといいますか、最近減少の傾向にあるというようなこともございまして、いままでのところで需給の均衡が図られておらない、そういう実情でございます。  そこで、本年も引き続き改植等をやってございますけれども、今後とも果汁を中心にいたしまして積極的に需要の拡大を図ると同時に、引き続き生産の調整に力を入れていきたいと考えておるわけでございます。
  189. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、ちょっと具体的に申し上げますけれども農林省日本農業の六十年代の見通しというもの、いわゆる六十年の農政のあるべき姿を立てているわけでございますが、特にミカンに限って言いますと、基準年の四十七年が生産量三百五十六万トン、アバウトですが、六十年には四百五十二万トンという生産の見通しを立てているわけでございます。  そこで、一番問題になります需要の方を見てみますと、国内需要に限って言いますと、生食は二百六十一万トン、加工、いわゆるかん詰めとか果汁に六十万トン、合計三百二十一万トンというものを基準年に置いているわけですが、六十年にはどうなるかと言いますと、生食が二百六十七万トン、加工が百三十五万トン、こういうような数字を立てているわけですね。  ところで、私はこの六十年見通しについて二、三伺っておきたいのでございますけれども、まずここで生食はそうふえない、二百六十一万トンが二百六十七万トン。これはまあ人口増が、厚生省の人口問題研究所の推計でも一億二千二百万人程度、これはやむを得ないなという感じがいたします。しかし、問題になりますのは、加工消費が四十七年六十万トンが約二倍以上の百三十五万トンになる。これはどういう事情によってこんなに加工消費がふえるのか、もう少しこの中身を見ていきますと、四十七年果汁が三十万トン、かん詰めが二十九万トン、アバウトで六十万トン、こうなっているわけです。それが六十年には果汁が一挙に百万トンという消費の見通しを立てている。果汁がなぜ三倍にふえるのか。人口増から割り出してみても、生食であろうと果汁であろうと、それを消費するのは同じ人なんですから、なぜこんな数値がぽんと出てくるのか、その辺の根拠をちょっとお伺いしたいのです。
  190. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 四十七年当時、ミカンが四十六年から四十七年にかけて百万トン以上、一番増産になった年でございますが、その前の四十五年から私どもの方で、これからは生食だけではなくて果汁による消費というもので全体の消費拡大を図ろうということを計画をいたしまして、四十五年から国で助成をいたしまして果汁工場をつくってまいりました。四十九年度までに約二十工場、温州ミカンのジュースの工場をつくってまいったわけでございます。四十五、六年当時は天然果汁というものは余り知られていなかった、いわゆるジュースといえば色づきのジュースだったのですが、それがだんだんに食生活の中に定着してくるだろう、また、そういうふうにさせていかなければいけないということで、天然果汁を伸ばすということに重点を置いて政策的にもやってまいりまして、昨年、五十二年産の温州ミカンについては原料で約七十万トンしぼるところまでいったわけでございます。これは生果がたくさんできましたので、それを果汁に回したということもございますけれども、いままでの消費の形態から見ますと、果汁についてはほぼ順調に、私ども考えておるようなラインで伸びておりますので、今後もそれを中心にして全体の需要の拡大を図っていきたいという、相当政策的な意欲を盛り込んだ計画でございますが、現在は大体その計画どおり進んできているというふうに言えるかと存じます。
  191. 薮仲義彦

    薮仲委員 それでは、六十年代にこの需要が百万トンふえるというのは、農林省は自信と責任を持って見通しを立てているのですか。
  192. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 当時、いろいろな関係の方、これは果樹の審議会で最終的には御審議をいただいたわけでございますが、その関係業界の方々意見等も参考にいたしまして私どもがはじいた数字でございまして、果汁については、いまのような状況で伸びればそこまでは行くのではないか。むしろ最近の動向から見ますと、生食用といいますか、生果実の方が私ども考えていたよりも減ってくるのではないかというふうに感じておりますが、ジュースについてはいまの状況でいけばかなり計画が達成できるのではないかと考えております。
  193. 薮仲義彦

    薮仲委員 いま課長は答弁の中で、今後生食が減るのじゃないかということをおっしゃった。四十七年の基準年に農林省がお立てになった一人当たりの生食の量は十九・二キロ、六十年は逆にふえて二十一・二キロ、いまおっしゃっていることとこの計数とは相反することであって、生食が減る傾向であれば、この六十年の二十一・二ということ自体、これは訂正しなければならないのじゃないですか。
  194. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 生食用の需要については、確かに最近伸び悩んでおりまして、これはいろいろな景気の動向とか、そういったところもあろうかと思いますので、全体として果汁を中心にして今後の拡大をやっていくわけでございます。生についても、私どもの方としてはこれからもできるだけ需要の拡大を図るように努力をしてまいりますが、どうもいまの状況を見ますと、先生御指摘のように、皆さんに計画どおり召し上がっていただけるかどうかというところが私どもとしても非常に心配なところでございます。
  195. 薮仲義彦

    薮仲委員 課長は心配程度で済むかもしれませんけれども、実際、高い肥料を使い、農薬を使っている農家の方は、一家の生活を抱えているわけです。ここで簡単に答弁なさるけれども、私も静岡ですが、静岡のミカン農家の方はそんな簡単な情勢にはないわけです。今後ミカンを続けるかどうか。いまおっしゃったように、六十年の見通しについておっしゃるのですと、これを単純な関数で見ていきますと、純増ということになってくるわけです。この見通しについても、先ほどいろいろ伺ったら、四十七年と六十年はありますが、中間については一切見通しがございませんという農林省のお話だった。そうしますと、最終年度が六十年という目標は立っている、スタートの四十七年はありますが、いま実際の生産量がどうなのだ、需要がどうなのだ、あるいは植栽の面積はこれでいいのかというのをチェックしなければならないのに、中間の年次においてはその見通しについて計画どおりいっているのかどうかということが何らチェックされていないというお話ですが、それが現実なのですか。
  196. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 農産物の需給の長期見通し全体を含めまして六十年度を目標にするものはつくってございますが、段階的なといいますか、年次的なものにつきましては、そのときどきの気象の変動とかいろいろな要因がございますので、いわゆる計画としてつくっているわけではございません。ただ、私どもの方でも、摘果の指導をやるとか、そのときどきの指導が必要でございますので、ミカンにつきましては全国果実生産出荷安定協議会という、中央の農協あるいは各関係県の農協でつくりました協議会を持っておりますが、そういうところで、そのときにどの程度できて、どの程度摘果をしていくかということについては十分協議をしながら進めておるわけでございます。
  197. 薮仲義彦

    薮仲委員 いま摘果というお話をなさいましたけれども、摘果をするからには、その根底に当該年度の消費需要、いわゆる需要の状況というものの見通しを立てなければ、何トン摘果すべきであるかという判断はおのずとできないと思うのです。先ほど来課長が永年作物、永年作物とおっしゃっているように、確かに永年作物です。永年作物であるがゆえに、なおさら長期にわたっての見通しがなければ——裏作、表作ありますというのはわかりますけれども、いま私たちがつくっているミカンの量はこれでいいのだろうか、あるいはこれでは少しつくり過ぎているのだろうか。現在の消費の動向がはっきりわからずに、ただ八月一日に大体の予想量を出して、何十万トン摘果しなさい、そういうことかもしれませんけれども、実際、行う方にとってはこれは非常に苦痛であり、困難の伴う問題であります。つくっても売れなければ値がたたかれるのは道理ですから、ここで必要なのは需要と供給、先ほど来指摘するように需要についてある程度の見通しを立てて、広くミカン農家の方に、これぐらいが現在の消費動向の適正水準ですよということをきちっと教えておけば、これから十年先あるいは二十年先にはそこまで需給の調整をしましょう、農林省指導農業団体が話し合って、将来自分農業はどうあるべきかということで、みずから努力してそういう方向へ持っていけるような計画があれば、農家の方もおのずとそういう方向は選択していけると思うのですが、八月ごろになって何万トン摘果しましょうとか、そういう場当たりみたいなことになってくれば、農家の方に与える打撃は非常に大きいわけで、この辺で農林省として、需給の見通しというか、特に需要について確かな計数 年々の需要の見通しを見ましても、われわれは大体このぐらいだなという判断を持っています。農林省は、いままでの実績から、いま日本国内消費量は何百万トンぐらいだと踏んでいらっしゃるのか、それをちょっとお伺いしたいのです。
  198. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 いまというのは去年、ことしぐらいのことではないかというふうに理解をいたしますけれども、昨年は最終的には三百五十万トンできまして、それなりの需要といいますか、それなりに消化したわけでございますが、価格の動向その他を見ますと、価格安定のためにはどうも量が多かったのではないかと思っております。したがいまして、去年の果汁の調整保管というものを除きますと大体三百三、四十万トンぐらいというふうに見ておるわけでございます。
  199. 薮仲義彦

    薮仲委員 先ほど申し上げましたように、四十七年から六十年、途中の年次においてチェックなさらないということで、単純に関数的にそれを一本の直線で引いた場合に、いまおっしゃった三百二十万トンというのは、見通しよりも高いのか低いのか、ちょっとお伺いいたします。
  200. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 先ほどから申し上げておりますように、四十七年というのは前の年より百二十万トン、百十万トンなり百二十万トン多い、非常に大きな年でございましたので、三百万トン台に初めて乗った年でございますが、それを基準年ということで考えておりますのでそこに載せてございますが、先ほど来申し上げておりますように、年々のいろいろな問題につきましては関係の団体とも御相談をしながら、現実的な需要の見通しをしながら対応をしているわけでございます。
  201. 薮仲義彦

    薮仲委員 農林省の判断はどうなんですか。
  202. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 率直に申し上げまして、最近の需要の、消費物資全般がそうでございますけれども、そういったものの影響もございまして、先ほど来申し上げておりますように、果汁については順調に伸びておりますけれども、生食需要については停滞をいたしておりまして、全体としてはどうも私ども考えておりますような伸びというところまでなかなかいかない、何とかして政策的にもこれを引き上げていきたい、そういう気持ちを持っております。
  203. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうもあいまいでよくわからぬのですが、じゃ具体的にもう少し申し上げますと、昭和五十一年、数量で大体三百三十一万トン、これは見込みですね。それで、二十二万トンほど摘果しまして実際は三百八万九千トン、五十二年度は見込みとして三百七十五万六千トン、これも約二十一万トン摘果しまして三百五十四万四千トン、こういう形で農家の方に摘果をお願いし、こういう形でおさまったわけですが、一番最初のころの基準年の翌々年の昭和四十九年ころ、三百八十四万トンとれそうだ、そういうことで大号令で四十五万トンほど摘果をしていただいて三百三十八万トン。四十九年、五十一年、五十二年とここ数年来見ましても、摘果だけでは需給バランスをとることはもう非常に苦痛であり、困難じゃないか、やはりこの辺で需要の見通しをはっきり立てて農家の方と積極的に今後の営農あり方、どうしなければならないか本気になって話し合ってまいりませんと、もう四年、五年とこういう深刻な状態が続いておりますので、農家の方の営農がまいってしまうのじゃないか。  私はこの辺で農林省お願いしたいことは、六十年の見通しについてもう一度、先ほど来私が指摘しましたように、生食の需要あるいはジュースの需要についても相当無理があるのじゃないか、見直しをする必要があるのじゃないか、さらにまた少なくとも永年作物であるがゆえに三年ないし五年に農林省も計画というものを持っておって、計画年次に対して生産量と需要がどうであるか、それらのものをチェックしていかなければならないと思うのですが、その辺の考えはいかがでしょう。
  204. 蜂巣賢一

    ○蜂巣説明員 お答えいたします。  六十年の長期見通しというのは、先生も御承知のように、ミカンだけでございませんで、米を初めといたしましてほとんどすべての農産物を尽くした見通しでございますので、策定後の推移を見ますと、ミカンのように品目によりましては多少見通した方向と違うものも若干ございますが、需要につきましてはおおむねそういう見通しの方向に沿ってその後動いておりますので、いまこの段階で長期見通しを改定するということは考えておりません。  ただ、いずれにしましても温州ミカンは最近需給動向がかなり見通した方向と変わってまいっておりますので、需給を均衡させるための対策というのを一層強化する必要はあろうかと考えております。
  205. 薮仲義彦

    薮仲委員 いまのようなお話ですと、農家の方は、ことしはどうだろう、そして来年はどうだろう、こういうことで営農に対して非常な不安を感ずるわけですね。やはりいまミカン農家にとって必要なのは、消費はこれしかいまのところ望めませんよというのであれば、この程度の生産量しか無理じゃないですかというような長期に立っての見通しを立てて、少なくともいま何年間はこのような苦労をしていってください、五十六年あるいは五十七年には需給というものをバランスさせますよ、五年先なりあるいは六年、七年先に需給がバランスします。いまはこうです。でも、みんなでこういう点を努力していくならば需給というのはバランスします——この条件を見ても、生食の六十年の見通しが約二十一キロ、いまは十九キロ、計数に大した大きな変動がないわけですよ。あとは人口増ですよ。そうなってくれば大体どの程度がミカン需要の限界か、そんな極端な変化がないと思うのです。それが百万トンもふえるという見通しが実際大丈夫かなという不安はどなたも持っているわけだ。農林省が百万トン絶対ふやせるという、重ねて聞きますけれども、確信があるのかないのか。これは農家の方にとっては非常に深刻な問題で、それが簡単に純増の方向にありますとか、われわれの計画どおりいっておりますというようなことで済まされるか済まされないか、農家の方にとっては非常に深刻な問題ですから、やはり私がいま特に要望しておきたいことは、将来の需給の上に立って——一度壊したバランスというものはなかなか戻らないのですから、何年ごろにはこうします。そして、このような形が温州ミカンの営農にとって適正な規模で、生産量で、需給のバランスですというものを農林省がつくるべきだと思うのですが、その辺はいかがですか。
  206. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 温州ミカンにつきましては、私どもも非常に農家の方が摘果とかいろいろな面で苦労をされていることを十分に承知しているつもりでございます。  最近の需要、特に生産よりも先生御指摘のように、需要がどうなるかということが一番問題でございまして、特にここ二、三年の需要の変化というものは、これはミカンだけではございませんが、全体の消費物資を通じていろいろな動きが複雑になってまいっております。そういう意味で、いまの需要の動向というものを私どもももっとしっかりとつかみまして、そして、そういう上に立って現実的に生産の調整なり、あるいはさらに需要の拡大をどうやっていくかというようなことについて現実的な政策を立てていきたいというふうに思っております。
  207. 薮仲義彦

    薮仲委員 きょうは時間がありませんのでこの程度にしておきますけれども、どうか温州ミカンの需給についての計画を、確かなものを、農家の方が安心できるように早急に確立をしていただきたい、このことを要望しておきます。  次に、二点ほど結論だけ簡単にお伺いしたいと思うのですが、一つは、いま行われております温州ミカンについての改植等促進緊急対策事業、この件と、加工原料用果実の価格安定制度、この二点についてお伺いします。  私は、やはり今後需給バランスの上で現在の営農規模を変えなければならない、ある意味では改植であるとか伐採であるとか、こういう形で需給のバランスがとられなければならないということは、非常につらいことでありますけれども、それを乗り越えなければならないときがあろうかと思います。しかし、伐採したけれども、残ったミカンが粗悪であればいつまでたっても農業経営向上しないわけです。私は、こういう伐採であるとかいろんな形での対策が行われておりますが、この改植というものは農業経営を安定させる上において必要だろう、こう思うわけです。これが五十三年度で一応計画は終わっておるわけでございますが、五十四年度以降もこの事業は継続すべきであると思うのでございますが、その辺の農林省の見解を伺いたいことと、二点目の、加工原料用の果実価格安定制度でございますが、これはやはり二年が一つのサイクルになっておりまして、一年目と二年目においていろんないわゆる必要経費あるいは価格に非常な変動があって実情とは合わない、こういう問題もございます。ないしは足切りの問題もございますが、こういう二年サイクルを農家の皆さんは一年契約という形に見直してほしいという強い要望がございますが、その辺、将来を含めてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  208. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 初めの問題でございますけれども、改植の現在の事業は、御指摘のとおり、五十三年度で終了することになっております。しかしながら、先ほど来いろいろ先生からも御指摘をいただいておりますけれども、やはり需要というものをもう一遍きちっと見直しをして、それに合った形で生産をどう持っていくかということを現在検討いたしておる段階でございまして、私どもは五十四年度予算以降どういうふうにするかということについては現在検討中でございますが、改植等温州ミカン園の転換につきましては、いまの段階で見ている限り、これは進めていかざるを得ないのではないかというように考えております。これは農家の方にとって大変な事態であるということも十分に認識をいたしておりますけれども、基本的に需給の調整を図るということになりますとそういう方法しかないということで、政府でやれるできるだけのことをするというようなことで現在検討をしている段階でございます。  それから、もう一点の、二年事業で現在加工原料用価格の安定をやっておりますけれども、これを単年度にというお話がございました。これは関係の方から御要望もあるわけでございますが、温州ミカンというのは、御承知のように、隔年結果で、一年置きにできたりできなかったりというのが大体通例でございまして、加工原料の確保の安定というような立場からいいましても、また一年置きに価格が上昇し、あるいは下降するというような、そういう実態からいいましても、やはり二年を一期として運用をするのが適切ではないかということで現在やっておるわけでございますが、生産者方々の御要望というのは、二年ということよりもむしろ保証基準価格の水準が低いとか、そういうようなところに問題があるのではないかというふうに考えておりまして、五十三年度についても保証基準価格の改定をやってまいりますし、また補てんの、いわゆるいままでは補てん幅というのを〇・八というふうにとっておりましたものをことしから〇・九にする、そういったようなことで制度の拡充を五十三年度もいたしましたし、今後も制度全体がうまく動いていくように十分努力をしてまいりたいと考えております。
  209. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか、ミカン農家の方が少しでも安心できるようなミカン農政を実現していただきますよう重ねてお願いをいたしておきます。よろしくお願いいたします。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  次に、お茶の問題でお伺いしたいのでございますが、ただいまミカンの問題、いろいろお話しさせていただきましたが、このお茶は、幸いなことに永年作物の中では比較的安定した形で推移しているわけでございますが、われわれが危惧することはミカンの二の舞だけはあってはいけない、こういうことを絶えず心に思っておるわけでございます。しかし、近年大変お茶の値段が安定し、好況でありますので、全国的に生産意欲向上、こういうことで新たな開園という事態が起きているわけで、それに相反して消費の伸び悩み、むしろ下降という現状も指摘されておりまして、ミカンのように過剰になるんじゃないかというようなことが心配されるわけでございます。この問題は、ミカンもお茶も同じように、本来的には生産者全国的な規模の中でみずからが努力していかなければならない問題であることは十分わかっているわけでございますが、やはりそこに国としての指針、適切な指導というものが、安定した茶業の育成には必要だろう、こう思うわけでございます。  そこで、時間の関係で要点をはしょって申し上げるわけでございますが、こういうことから、やはりミカンと同じように六十年までの長期見通しがあるわけでございますけれども、ここで二、三懸念される点を申し上げますので、そういう点を含んで茶業の安定というものをどう将来つくり上げていくか、その辺のところをお伺いしておきたいと思うのでございます。  具体的な面で申し上げますと、お茶の栽培面積の推移、大きなところ等を含めまして顕著な例を申し上げますと、私の手元に農林省からいただいている資料で、四十三年度から五十二年の資料がございますが、鹿児島が四十三年度で四千五百八十ヘクタール、それが五十二年度には七千二百二十ヘクタール、このようにふえているわけですが、この数値は別にして、伸びている倍率だけ申し上げますと、茶の栽培面積は鹿児島が約一・五七倍、三重県が一・三八倍、宮崎が一・三四倍、お茶どころの静岡は一・〇九倍。また、耕作面積に伴っての生産量の推移を見ますと、鹿児島が四十三年度当時に比べて二・一二倍、熊本が一・八九倍、宮崎が一・六七倍、静岡が一・〇七倍と、いずれにせよふえておるわけでございますが、非常に極端に倍も生産量で伸びているようなところもございます。  もう少し数値を申し上げますと、反収がどうなっているか、この点も私は非常に懸念するわけでございますが、静岡等を例にとりますと、十アール当たりの生産量が四十三年当時二百四十二キロ、五十二年で逆に減って二百三十七キロ、こういう数値になっております。しかし、他の府県は鹿児島が四十三年当時は十アール当たり百二十三キロが百六十六キロ、熊本は七十一キロが百六キロ、宮崎は現在が百三十九キロ、いずれにせよこの反収というものはだんだん増加しております。これは茶の耕作面積もさることながら、お茶を植えて摘採時期、四年、五年あるいは七年、八年とたってまいりますと、十アール当たりの収穫量も自然とふえてくるんじゃないか。こうなってきたときに、やはり反当たりの増収ということが農家にとっては経営の安定でございます。ミカンと違って、お茶は一しん二葉とか、いわゆる新芽のうちに摘んでしまうとか、摘採廃棄とか、いろんな方法がありますが、そういうところは逆に農業経営を窮地に陥れかねないわけでございます。  いま、まとめていろんな数値を申し上げて非常に恐縮でございますが、このようなことから、お茶もミカンと同じように年々非常に過剰基調にあるんじゃないか、こういうことからして、ミカンの二の舞を踏まないようにこれに対する適切な対策を農林省にお立ていただいて、お茶の農家の皆さんが安定した形で営農できるように、さらには需要の増ということが同じように大事でございますので、需要の増を含めて十分な対策をとっていただきたい。  まとめて質問して恐縮でございますが、以上のことについてお伺いしたいと思います。
  210. 伊藤律男

    ○伊藤説明員 いま先生がおっしゃいましたように、私どもといたしましても、お茶につきましての需給価格については非常に心配をいたしておるところでございます。先生も御存じのように、四十八年、四十九年には若干お茶の価格につきまして、下落とまではいきませんけれども、少し下がった時期がございました。私どもといたしましては、六十年の見通しはございますけれども、その時点から新しく考え方を変えまして、植栽面積につきましての制約といいますか、面積をできるだけふやさないようにしてまいりたいというふうに思ったわけでございます。現実に四十八年、四十九年、五十年までにつきましては、多いときと少ないときとがございますが、年間大体千ヘクタールから二千ヘクタール程度の栽培面積がふえているわけでございますが、それ以降につきましては、大体百ヘクタール台の栽培面積の増に抑えているわけでございます。  これにつきましてはいろいろな方法をとっているわけでございますが、稲作のように強制的なことはなかなかできませんので、農用地開発などにつきまして、国が大々的に開発をするような場合にお茶の植栽をできるだけ少なくするとか、また海外へのお茶の栽培の投資を抑えるとか、そのほかいろいろなことをいたしまして抑えてきたわけでございますが、その結果昨年の五十二年につきましては、年間で百ヘクタール程度しかふえてないというのが現状でございます。もちろんお茶につきましては廃園になる面積もございますので、全体を抑えるということにはならないと思いますが、その辺は私どもといたしましても、植栽面積について今後十分配慮してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  また、先生もいま御指摘ございましたように、お茶につきましては、ミカンやそのほかの実のなる作物と違いまして、葉っぱ、茎を摘んでこれを収穫するわけでございます。それからもう一つは、一番茶、二番茶、三番茶、多いところでは四番茶というようなことで何回も摘むわけでございますが、御存じのように、一番茶の価値というものが非常に高いわけでございまして、そういう点からは量的な調整がしやすい作物でございますので、私どもといたしましては、五十年から茶の生産流通安定対策事業というものを組みまして、茶業中央会が中心になりまして、各都道府県それぞれの団体にお集まりをいただきまして、毎年毎年需給関係会議を何回も持ちまして、需給の安定に努めているわけでございます。その結果、幸いにいたしまして、五十二年、またことし五十三年につきましてはそれほどの価格の下落はないというようなことで推移をしておりますけれども、今後ともそういうことで、私どもといたしましては、お茶の需給についてはいま申しましたような手だてのほかにも十分いろいろなことを検討して、対策を打ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  211. 薮仲義彦

    薮仲委員 時間が参りましたので、以上で終わりますが、どうかお茶農家の方が安心して営農できるようにこれからも努力をいただきたい、お願いして終わります。
  212. 中尾栄一

    中尾委員長 神田厚君。
  213. 神田厚

    ○神田委員 私は午前中に引き続きまして、養鶏問題につきまして御質問申し上げたいと思います。  午前中参考人からいろいろ話を聞きまして、今度は政府の方の考え方を聞かしていただきたい、こういうことで、非常に限られた時間でありますけれども、御質問を申し上げたいわけであります。  まず最初にお聞きしたいことは、生産調整の問題であります。この生産調整行政指導の中でうまくやられていない、こういう感じを強く持っていたわけでありますけれども、かねてからこの委員会でもわれわれが主張しておりましたように、いわゆる巨大商社養鶏の実態の調査、これはどういうふうになっているのか、農林省の方で実態について調査をするという約束をしているわけでありますけれども、どの程度の調査をどういう形でおやりになったのか、まだ全部まとまってないというような話も一部聞いておりますけれども、すでにこの調査の問題が出ましてからかなりの日数がたっているわけであります。したがいまして、その調査の結果につきまして御報告をいただきたいと思うわけであります。
  214. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整の実態の調査といいますものは、それぞれの協議会におきまして地元において調査したものを県で集計し、さらにそれが農政局なり中央段階までまとめて集計するということで通常上がってまいるわけでありますが、国会でもいろいろ御論議いただきました問題は、そういう一般的なことよりも、全体の中で特に違反の事実の著しい個別の商社についてどうかということでございます。  そこで、それらの一部のものにつきまして、国といたしましても関係者を督励いたしまして相当件数につきまして個別の調査実施いたしたわけでございます。それらのものにつきましてはある程度のものはまとまっており、すでに先生の御質問に対して直接ではございませんが、この委員会におきましても個別に実績について私の方から御報告申し上げるということになっております。
  215. 神田厚

    ○神田委員 個別に数字を申し述べたいということでありますが、私どもがいまいわゆる商社養鶏という中で問題にしておりますのは、たとえばイセグループとかタケクマグループとか、そういう問題であります。この二つにつきましてはそれではどういう程度の調査結果が上がってきておりますのか、お聞かせいただきたいと思います。
  216. 杉山克己

    ○杉山政府委員 特にいろいろ問題が大きく出ましたケースとして、いま御指摘のイセグループ、タケクマグループといったものが挙げられるわけでございます。  イセグループにつきましての調査結果ということでございますが、これは一度だけではなく、御指摘を受けましてから何回かにわたって県、市町村鶏卵需給調整協議会、これらを通じて調査を行っているわけでございます。  一番最近におきましては、三月二十二日に現地調査実施いたしたわけでございますが、そのときの状況を申し上げますと、これはイセグループの宮城県の色麻農場という場合のケースでございます。まず、鶏舎につきましては、三十五棟建設されておりました。その全鶏舎の収容能力は、百三十二万羽というふうに見込まれます。これは六万羽用が九棟、それから三万羽用が二十六棟ということで、これを合計いたしますと延べ百三十二万羽、その中に実際に現在どれだけ飼養されているかといいますと、成鶏で八十三万五千羽というふうに推定されたわけであります。これは全鶏舎について一つ一つ鶏の数を数えるということは困難でございますので、全体を見ての推計というものが一部加わって、いま申し上げましたようなおおむね八十三万五千羽というふうな推定になったわけでございます。  この農場につきましては、経過は、四十七年から建設を開始しておるわけでございますが、四十九年度に地区鶏卵需給調整協議会との間で、当該農場の凍結羽数は二十四万羽と決めておったわけでございます。したがいまして、いま申し上げました調査結果からすれば、この時点で五十九万五千羽の無断増羽があったというふうに判断されるわけでございます。  それから、同じイセグループとして、茨城県の小川町の実態について調査をいたしております。これもやはり県、市町村鶏卵需給調整協議会指導してその調査を行ったわけでございますが、これは二月の十日から二十五日までの間の調査結果でございます。小川町での無断増羽を行っている者は、延べで十二人おったわけでございます。その者の凍結羽数の合計は、つまり四十九年時点の水準で凍結すると決めた羽数の合計は一万七千羽でございました。それに対しまして、この調査時点での羽数は五十七万三千羽ということになっております。差し引き五十五万六千羽が無断増羽ということになるわけでございます。  その内訳でございますが、無断増羽のうち、二十四万三千羽につきましては、これはイセグループの関連会社と、それから飼料購入だとか鶏卵販売を通じて関係を持っているものというふうに見られるわけでございますが、そのほかイセグループの直営農場が一カ所ある。その一カ所の無断増羽分は十五万羽というふうに見られたわけでございます。  若干、個別の細かいことはほかにもございますが、省略いたしまして、次に、主な事例ということでございますので、これはタケクマグループ、宮城県の丸森町筆甫養鶏組合というのがございます。ここは凍結羽数五万羽でございます。四月七日に県と仙南鶏卵需給調整協議会調査いたしましたところ、鶏舎の収容能力は十四万八千羽、これに対して、この時点での実際に飼っております羽数は九万二千羽ということで、無断増羽数は四万二千羽というふうに見られたわけでございます。  そのほか、それほど羽数は多くないにいたしましても、イセグループ、あるいはいま申し上げましたタケクマグループの中で、何がしかの無断増羽の見られた事例がほかにも数件あったわけでございます。
  217. 神田厚

    ○神田委員 いま報告を聞いているだけでも、相当数の増羽がされているわけであります。  そして、ちょっとお尋ねしたいのは、この三十五棟百三十二万羽、宮城県におきましてイセグループがやっておりますものでありますが、この養鶏の鶏舎というのは、いつごろからどういうふうにつくられたかというふうな御調査はなさりましたでしょうか。
  218. 杉山克己

    ○杉山政府委員 一棟一棟の経過を詳しく調査したわけではございませんが、先ほども触れましたように、この農場の建設は四十七年から開始されております。四十七年七月に農地転用の許可を受けまして、その後四十九年度までの間に、六万羽用の鶏舎九棟を建築いたしております。それから、その後五十年四月から五十一年十二月の間に三万羽用の鶏舎が二十六棟建築されております。  おおむねこのように承知いたしております。
  219. 神田厚

    ○神田委員 これも先ほど午前中に御意見をいただきました養鶏経営会議の方の調査とは鶏舎の建設の月日等に多少ずれがあるようでありますが、いずれにしましても、午前中のイセの責任者の話を聞いておりますと、生産調整に対する考え方が全く違うのですね。それで、この期間にこれだけの増羽をした。私は生産調整についてどういうふうに考えているかという質問をしましたらば、その趣旨を尊重して生産調整協力をしてきた、こういう答えをしておられました。しかし、当局の方の御調査によっても明らかでありますように、現在八十三万五千羽が当局で見ているやみ増羽の数だという形になりますれば、趣旨を尊重して生産調整協力をしてきた、こういうことをこの委員会参考人の言葉として言っていること自体に私は大変な驚きをいま感じているわけであります。  それで、お尋ねをしたいのでありますけれども、そういうことでありますならば、農林省といたしましては、このやみ増羽の分につきましてはどういうような御処置をおとりになるおつもりでありますか、お聞かせ願いたいと思います。
  220. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整需給調整というものは、本来は当事者の自覚にまって全体の利益のために抑制するというのが一番期待されるところであり、本来の姿であろうと考えられるわけでございます。ただ、自分たちだけの間ではなかなかそれがうまくいかない、そういう約束をすること自体いやだ、あるいは約束してもこれを破るというようなものも出てまいりますので、行政当局といたしましては、通達を出しまして、これをできるだけ忠実に守らせるように指導するということを従来からやってまいっているわけでございます。  その意味では、御指摘になりましたこのケースについては、正直申し上げまして、市町村、それから県あるいは農政局、さらには直接農林省といった各段階を通じまして、いままでにも再三再四、始終勧告、指導といったことを繰り返してまいったわけでございます。それに、そういう抽象的な口頭だけの話ではこれは強制力を持たない。そこで、私どもといたしましては、できるだけ全体から、いろいろな行政の面からこれが実行をされやすいようにということで、たとえば卵価安定基金の補てん対象としてそういう無断増羽を行っている者は認めないということや、あるいは直接養鶏関係する国の補助金、こういった補助事業の対象としては認めないとか、それから、これは担当している金融部門お願いいたしまして、そういうものについての融資は差し控えるようにということを始終やってまいったわけでございます。そういうことをやってもなおかつなかなかこれに従わないという結果が出てまいっているわけでございますが、これは一つは、企業自由の原則のもとで行政指導によってできるだけ全体の調和を保っていくということでございますので、正直申し上げまして、自分はどんな場合にも自分の危険負担でもってやるんだ、そういうものに同調し得ないと言われますと、その限界を感ぜざるを得ないところがあるわけでございますが、私どもとしては、重ねて全体の利害ということも説きまして、さらに一層協調に向くようにこの指導を精力的に続けていくということを考えるわけでございます。
  221. 神田厚

    ○神田委員 先ほど八十三万羽の増羽と申しましたが、これは色麻の分については五十九万五千羽でございますね。私の方が間違えましたから訂正します。  それで、いま答弁を聞いておりまして感じたのでありますけれども、それは卵価安定基金の対象から外し、あるいは国の補助対象から外していくということでありますけれども、しかし、きょうのあの参考人のお話を聞いておりますと、どうも生産調整に関する考え方農林省の言っていることと全然違うのです。ですから、これはそういうなまぬるいやり方では、依然としてやみ増羽を続けるだろうというような感じを持たざるを得ないのであります。現実に色麻で五十九万羽、ほかのところでも相当数の増羽がされている。こういう状況を放置しておくということ自体が非常に問題であると思うのです。いろいろな手だてをして、町村からも言うし、県からも言うし、農政局からも言うし、農林省からも言う。けれども、言うことを聞かない。そして、現実に百数十万羽という増羽がされておる。これは行政当局としては非常に力がないというか、怠慢であるということを言われても仕方がないというふうに感じるわけであります。  したがって、ここでこのやみ増羽された分については、それではどういうふうにするんだ。一般の五千羽から一万羽、あるいはいわゆる生産調整協力をしている農家は、経営を拡大すればもう少し楽になるかもしれない、そういうことがありながら、がまんをして生産調整協力をしている。一方では、企業がそういう野方図なやり方で経営を拡大している。それに対しまして、当局がそういうなまぬるい態度では、私は、多くのいわゆる生産農家の人たちに納得が得られない話である、こういうふうに感じるわけでありますが、重ねて局長より、このやみ増羽分の対策、それから、それを推進している企業に対する態度、これを明確にお答えいただきたいと思います。
  222. 杉山克己

    ○杉山政府委員 なまぬるいという仰せでございますが、一般の常識からすれば、むしろ行政としては最大限ぎりぎりに相当思い切った措置をとっているところでございます。先ほど申し上げましたことを繰り返すまでもございませんし、それから、現にここで私自身が、その事例について相当、調査した結果を細かい点までお話し申し上げているというようなことは、一般の場合でしたら、ほとんどそれでもって抑制効果は働く。現に養鶏の場合、たくさんの農家なりあるいは企業経営の方がいらっしゃるわけでございますが、そういう行政指導でもっておおむねは適正に守られている。そういう中で、我を通して本当にどうにもしようのないところが数企業あるわけでございますが、こういったものに対してどうするかと言われましても、私どもといたしましては、やはり現在の制度の中でできるだけあらゆる手段を使いながら、さらに従来からやってきたことを重ねてしんぼう強く指導をする、説得をするということに努力をするしかないと言えば、おしかりを受けるかもしれませんが、それがやはり与えられた手段であり、方法であるというように考えるわけでございます。
  223. 神田厚

    ○神田委員 それでは、現実にこの増羽された分についてはどういうふうにそれを処置しよう、その分についてはどういう考え方を持っていますか。
  224. 杉山克己

    ○杉山政府委員 原則として、やみ増羽の分については凍結の羽数に戻すというのが本来的な考え方でございます。ただ、そういった内容的な話し合いに至る前の段階にまだあるものでございますので、それ以前の基本的な協力の態度、姿勢を促すというのがまずもってとるべきところであろうかというように考えております。
  225. 神田厚

    ○神田委員 それでは、その数企業というふうに言われている幾つかの企業と、この問題についていつごろまでにどういうふうな指導の仕方をしようとしているのか、その点はいかがですか。
  226. 杉山克己

    ○杉山政府委員 中央官庁が一つ一つの個別企業をそれぞれ説得するといいますか、直接対象にするというのは異例でございますし、全体の能率から見ていかがかと思われる点もございますので、私どもとして、原則はやはり地元の県に強力な指導をするように要請する。そして、終始、談判をするというわけにはまいりませんが、直接農政局あるいは農林省にもその企業の責任者にお越しいただいて事情を聴取し、役所の考え方を強く説得するように話をするということをやってまいりたい。いつごろまでにと言われましても、これはできるだけ早急にということで、できるだけ早い時期にその作業に取りかかりたいと思っておるわけでございます。
  227. 神田厚

    ○神田委員 この問題はもうすでに、時間がたてばたつだけ、どんどん鳥はふえていくわけですよ。四十九年から現在まででもう百数十万羽ふえている。さらに、これを日にちを前にすれば前にするだけふえていくのはあたりまえなんです。ですから、局長さんが一生懸命努力なさっていろいろお話ししてくれたけれども、言うことを聞かない企業があるわけですから、そんななまぬるい、県に任したりあるいは時間をかけて説得すると言っても、私は限界があると思うのです。大変な仕事かもしれませんけれども、そういう点はどうかひとつ——各生産農家はいま大変な中で努力をして協力をしているのです。こういうことを放置して、さらに時間を長く延ばしていくということは、農民の農政に対するさらに不信につながっていく問題になるわけです。  そういうことでありますから、どうかひとつ局長から生産調整に対する決意をお聞かせいただきたいと思うのでありますが、同時に、すでに農林省の方にも行っておるかと思うのでありますけれども、生産農家の皆さんが養鶏経営安定に関する要請というものを出しておりまして、生産調整強化養鶏安定法の制定について、さらには畜産特別融通対策事業について、鶏卵鶏肉価格安定対策の強化消費拡大について、飼料の確保と価格安定対策の確立について、こういうような要請書が行っていると思うのであります。これらの要請に十二分に耳を傾けていただきまして、どうかひとつ日本の生産農家のいわゆる農家養鶏を何とかつぶさないように、これが振興のためによろしく御指導のほどをいただきたい。  最後お願いをいたしまして、局長の決意をお聞きして質問を終わりたいと思います。
  228. 杉山克己

    ○杉山政府委員 御質問の趣旨はよくわかりました。今後とも、私ども、できるだけ養鶏農家経営の安定を期するために最大の努力を続けてまいりたいと考えます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  230. 中尾栄一

    中尾委員長 津川武一君。
  231. 津川武一

    ○津川委員 商社によるやみ増羽の問題、ここまでやってきまして、もう結末を聞きたいと思っているわけであります。政務次官がこの会期中にけりをつけたいというわけでありまして、農林省としてはどういうけりをつけるのか、その方針を伺わせていただきます。たとえば、生産調整前の羽数に戻すつもりでやるのかということであります。また、卵価安定基金からその利益を得させないようにするのか、農林中金などからの融資を引き揚げさせるようにするのか。これはやってみなければわからないというふうにいまも局長が言っております。私もそうかと思いますが、農林省一つの目標、絵図面、構想というものがなければ農民も納得しないのじゃないかと思うわけであります。  これはきょう聞きたい最後の答えでありますが、その前にもう一つ、これは抵当権を調べたのです。そうしたら、昭和五十一年度の法人税について、これが換価の猶予で納税猶予されておるもの、つまり滞納されておるものが、国税で、法人税で一億五千九百六万三千九百円、これが一つ。同じ五十二年三月二十五日で、同じ換価の猶予、納税の滞納、延滞税を含む、これが六千八百三十五万一千三百円。こんな関係で、法人税がそうなってくると地方税も滞納になってくる、問題が出てくる。それで、五十二年三月三十日、石川県に滞納が二千三百十四万円あります。そうして、そのために大蔵省に担保を取られている、そのために石川県庁に担保を取られております。  この事件が起きたのは五十一年、きょう参考人ヒヨコイセの最近の経営状態はどうかと言ったら、五十二年までよかったそうです。よかった中でこれだけの滞納をする、換価の利益をごまかした、脱税した、こういうのが問題のヒヨコイセでございます。  この点はわかっていたでしょうか、これの増羽を黙って見ているのでございましょうか、お答え願います。
  232. 杉山克己

    ○杉山政府委員 個別企業経営内容まで詳しくは存じませんし、それから税法上の問題、先生がおっしゃられるようにこれが脱税なのか滞納なのか、それとも徴収猶予、延納なのか、そこら辺のことは私ども、税務当局に聞けばそれはあるいはわかる話かもしれませんが、現在まで特にその点についての問題意識を持ったことがございませんので、承知いたしておりませんでした。
  233. 津川武一

    ○津川委員 問題を解決する上において大事なことだから、ぜひひとつ調べて事を処していただきたい。  こんなことをしておりながら、この間もここで話したように、県庁の指導監査、立ち入りを断っておりますね。それから、建築基準法に違反しておりますね。これはここで話したとおり。  その次にまた問題なのは、まだあるのです。きょう、ヒヨコイセでは石川県などでは百万羽委託経営、色麻町では百三十万羽直営、この直営の九割九分近くは本工、一割ぐらいは婦人の臨時工、これにきちんとした労働者を雇う手続をしているというふうに言っているのですが、私たちが調べてみたら、現在、色麻農場で働いておる従業員二百九名の一割だけが常勤者で他は臨時工、労働条件は劣悪で、健保、失保など最低条件さえも一部にしか適用されておりません。きょうの参考人イセ社長が来まして、九割に適用されていると言っているのですよ。こういうことがかなり出てまいりました。  それから、その次の問題は鶏ふんの処理でございますが、四年間に一度鶏ふんを農場内の土地に出し、土をかぶせて処理するか、乾燥しないままヘドロ化し、汚水排水となり周辺水田などに流れ出し、そのため窒素過多などを起こして、苗腐れ、稲の倒伏などを起こしております。私も五月十九日、現地に行ってみまして、現地の農民たちとも懇談してみましたが、こんな状態です。  もう一つには、ウインドレスの鶏舎、そこから脱毛が飛んで牧草に付着して、乳牛などが胃腸障害を起こしているのが出ております。埋めた死んだ鶏を野犬が掘り出し、カラスが群がり、巨大ネズミ、親指大のハエが異常発生しております。こういうために、苦情、不満が地域の中から出ているわけであります。この点もひとつ確認して指導していただきたいと思うのですが、確認されているでしょうか。これはどうなさるつもりか、お答えを願います。
  234. 杉山克己

    ○杉山政府委員 企業それぞれに経営上の問題を抱えていると思います。先ほどおっしゃられた納税の問題にいたしましても、あるいは雇用の問題にいたしましても、特に畜産関係は、最近環境公害の問題にいたしましても、いろいろ問題を抱えていると思います。それなりに個別企業について苦情も出てくる、それの是正を行政庁にそれなりに要請してくるというごともあろうかと思います。それはそれとして私どもは承らなくてはいけませんし、それに対するそれぞれの必要な措置も、とるものはとるということで対応してまいることでございますが、ただ、イセの問題につきましては、私ども、そういう経営一般の問題もさることながら、それ以前のやはり生産調整、その問題が大切である、その点に重点を集中していままで調査も行い、それなりの指導も行ってまいったところでございます。  せっかくの御指摘でございますから、それらの点にも目を配って私ども生産調整指導にさらに努めたいと思います。
  235. 津川武一

    ○津川委員 これもこの間から私は中金からの融資を問題にしたけれども、最終的に調べてみたら、十億五千万円も中金からの融資がある、生産調整前と生産調整後を合わせるとこんなふうになっているわけです。  そこで、最初の質問。もうこの会期でけりをつける、いろいろなことがありますが、せめて色麻工場、直営、これに対してどういう形のけりをつけるのか、これはそのつもりでやってみてできなかったら仕方がないですよ、しかし、けりをつける方針がなければならない。そこで、生産調整前の羽数に戻すように指導していくのかどうか。こういうたくさんのことがあるので、卵価安定基金からこのイセを除外するのか。もう一つは、こういうことがあるために中金からのお金の償還を中金に求めるのか。中金の人がきょう来まして、一部返させております。皆さんの方がやったのか、ここで問題になったからか。  そこで、解決の具体的な設計図案を示していただきたいと思うのです。時期でなく、どういうふうな方向に持っていくという。そうでないと、被害を受けている農民たちが  この問題が解決すると、こういうやみ増羽をやる人がなくなるのです。局長が言うように、具体的な法律がないからどうにもならないと言うと、きょうの参考人はもっと増羽するつもりらしい。そうすると、これは増羽競争になってしまう。ここのところはどうしてもけりをつけなければならないと思うのですが、けりのつけ方を伺わせていただきたい。
  236. 杉山克己

    ○杉山政府委員 このけりのつけ方というのは、ある日、一刀両断的にすばりと問題のすべてが解決できるという形には私はなかなかならないと思います。  そこで、基本的な考え方はどうかということでございますと、先ほども申し上げたのでございますが、やはり約束としての凍結羽数があるわけでございますから、ここに戻すということを基本に考えるべきだと思います。ただ、その場合の前提といいますか、条件といたしまして、現在やみを行っているにいたしましても、それにつながる雇用の問題、地元の利害の問題その他配慮すべき事項はたくさん出てまいると思います。そういったことについては、やはり違反は違反として、そういう事情について十分聞くということは必要であろうと思います。そういった両面の意見も聞いて、そこに先ほど申し上げましたような基本の態度でもって調整を図るということであろうかと思います。  それから、そのことが、行政庁がいいかげんなあやふやな態度で、後が守られなくては困るという点は、まことにそのとおりでございますので、私どもとしては、態度も厳正にすると同時に、実効を持たせるために卵価安定基金についてはこれは当然その補てんの対象としない、そのことについて個別事例について、十分そこが的確に把握されてない、あるいは過ちで払われているものもあるのではないかというようなことになりますとこれは問題でございますので、その点の監視を厳正に行うようにこれは指導をしたいと思います。  それから、これはそれ本来ではございませんが、配合飼料の安定基金という制度がございます。ここで、そういうものに対する制裁的な措置がとれないかという議論があったわけでございますが、私ども関係者等の意見も聞きまして、現在のところこの配合飼料基金に加入するには、そして、その価格補てん措置を受けるためには、加入する際に誓約書を取る。きちんと、無断増羽をしないよう、その約束を守りますという意味の誓約書を取るということにいたしております。この問題は、ただそのことが紙切れだけに終わって、後で実行されなかった場合どういうふうに措置をするのかということになりますというと、関係者の間で意見も分かれておりますので、そこまでのきちんとした強力な強制はできませんが、少なくとも相当に本人の道徳的な、あるいは商業上のモラルといいますか、そういう意味での強制力を持つ誓約書を取るということを考えておるわけでございます。  それから、融資につきましては、こういう席で断定的なことを申し上げるのは、やや私としてはまだ検討したい、ためらう点があるわけでございますが、私自身の気持ちとしては新規な融資はしない。それから、既存の融資については、畜産局の立場としては、これはどうしても言うことを聞かないならば、その点は一部か全部か、ともかく回収する方向でもって検討をしてもらいたいということを要請したいと考えております。  それから、関係する団体なり、あるいは関係する親会社なり、あるいは関係する取引先というようなものが種々あるわけでございます。それが一律にどういう形でというようなことはなかなか申し上げにくいのでございますが、そういう手段もできるだけ活用して、私どもとしてはさらに一層の指導に努めたい、かように考えております。
  237. 津川武一

    ○津川委員 そういう解決の図案というものがいま局長から出たので、それに向かって全力を挙げてやってほしいと思います。私たち、今会期が終わってもまた農水の常任委員会なんかありますので、ひとつ検討していきたいと思います。  そこで、やみ増羽のことはこれで終わるとして、いま卵価が非常に安くなって、養鶏農家が非常に困っておりますので、その対策を若干伺いたいと思います。  実は、私もびっくりしたのですが、この間うちの女房がワンパック九十五円で買ってきたのです。いや、びっくりしました。それで、よく聞いてみたら、これダイエー、西友などが、そういうスーパーが生産者から買いたたいて売っておるのですね。ワンパック百円以下で売らなければおまえのところ買わないぞ、そのかわり百円の協賛金を出せ、こういったかっこうでやって、うちの女房がワンパック九十五円で買ってきておるわけ。食べてみたらおいしいのです。これがやはりいまの卵価をたたいている一つの原因だと思うのです。こんな状態をお調べになっていましょうかしら。これはやはりとめてやらないと大変なことになります。  この点、まず答えていただきます。
  238. 杉山克己

    ○杉山政府委員 確かに卵価はずっとここのところ低迷いたしております。私ども、対策としては、先ほど来申し上げておりますように、そもそもやはり供給をしぼる、需給関係を正常化しなければ、卵価の回復は期待しがたいというふうに思っております。  そこで、やみ増羽のものなども含めて、一般的にむしろ大多数の方々には、これは正常に守っていただいておるわけでございますから、さらにそれを励行していただくように、生産調整について指導強化する、そのための通達も先般出したわけでございます。  それから、さらに需給の調整を図る具体的な手段といたしまして、生産者団体等による調整保管を行う。これに対しては一部国等による助成が行われているわけでございますが、この調整保管もすでに実施に移しつつあるところでございます。  それから、液卵公社による液卵の買い上げを行うというようなことを考えて、考えているというよりは、この点についてはすでに一部実施をいたしているところでございます。  これらの措置を通じまして卵価の回復を目指す、若干そういうことに出たということもございまして、一時二百十七円くらいまで、底に行きました、これはキログラム当たり単価でございます。卵価は、やや回復の兆しを見せております。二百二十円台までは参りましたが、まだまだ水準としては低い。さらに一層いま申し上げましたような各般の需給調整措置、これを講じてまいりたい。  それから、個々の取引関係については、それは需給関係が緩んでいるので、個別の農家なり個別の企業にしてみれば、なかなか交渉はむずかしいのでしょうが、こういうときに不当に買いたたかれないようできるだけ組織的な行動をとるよう、団体等にもそこらの指導に万全を期してもらうよう政府としても指導してまいりたいと考えております。
  239. 津川武一

    ○津川委員 時間が来ましたので、そろそろ終わりにしますが、いまの保管調整、局長、これがやみ増羽している人たちのよってもって立っている根拠なんです。これがなければ、やみ増羽の人たちがもっと正体が出てくる。正体が隠れても隠れても保管調整、したがって、保管調整はそういう立場からもう一回検討し直して、そういうやみ増羽の人のよってもっていく根拠にならないようにがっちりやってほしいと思うのです。  この点でもう一つ、二つお伺いしておきますと、卵価安定基金、いま完全に機能を果たすことができなくなって赤字になっているので、これは国が早急に援助していかなければならないと思います。この点はどうするかということ。  輸入の問題、これはほとんどダンピングなんだ。これに対する政府の対策を聞かしていただいて、最後に、加工乳だと、豚肉だと、牛肉だと、国の支持価格制度として価格保証の問題があるので、卵のこういう価格保証に対して政府考え方、この三つの点を聞いて、私の質問を終わります。
  240. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いろいろ卵価の回復のための制度なり仕組みというものがあり、それを強力に推し進めていくということは必要でございますが、そのことがかえってやみ増羽を助長する手段に悪用されるというようなことがあれば、これはとんでもない話でございます。そこは十分配慮して、そういう措置についてはそういうことにならないよう進めてまいりたいと考えます。  それから、卵価安定基金、確かに対象数量も見込みよりふえて、支払い資金に不足を来すという事実がぼつぼつ出てまいっております。基金の性質によって物が違いますが、そういうことがうかがわれる。私どもとしては、現在の単価を引き上げました、従来以上に充実さしたこの卵価安定基金、まだ資金の造成が十分ではございません。今後数年にわたってその造成を図っていかなければならないわけでございますし、先々はそういう造成も可能でございますが、現在のところ資金欠如を来すということは十分考えられます。  これについては、当面私はやはり借入金で泳いでいただく。それから先、借り入れが累積してどうにもならなくなるような事態になるのかどうかというようなことは、これは様子を見て、またしたがって、その対策もその状況によって判断をしていく問題であろうかと考えております。  それから、鶏卵について牛肉あるいは豚肉の場合のように価格安定制度を設ける考えはないかということでございますが、これは牛肉、豚肉の場合と異なりまして、鶏卵そのもののやはり経済的な性格、簡単に言えば回転が早いということと、それから現実の需給問題として、日本国内で十分必要量を賄ってむしろ余りあるという状況でございます。そういうことを考えますというと、それぞれの政策はそれなりのそういう性質あるいは経緯があって成り立っているわけでございまして、私はやはり現在の需給調整、これを推し進めるということと、それから、いま申し上げました卵価安定基金の整備充実、これはすでに従来からも図ってまいっておるところでございますが、この活用を図るということによって対応していくのが一番現実的な行き方ではないかというふうに考えております。  それから、一部、鶏卵というよりはむしろ液卵輸入がいまでも行われているわけでございますが、当然、これだけ国内で供給過剰になっている事態のもとにおきましては、私ども輸入は抑制するという考え方のもとに指導してまいっております。これは現実に大手の実需家がおるわけでございまして、その大手の実需家に対して個別にそういう要請をするというようなことで、それなりの成果も上げてきているというところで、輸入量が特にふえるというような事態には今日なっておらないところでございます。
  241. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  242. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、明七日水曜日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会