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1978-06-01 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 馬場  昇君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    加藤 紘一君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       倉成  正君    國場 幸昌君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       中村 弘海君    葉梨 信行君       平泉  渉君    福島 譲二君       堀之内久男君    森   清君       上田 卓三君    上原 康助君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁林政部長 石川  弘君         水産庁長官   森  整治君         水産庁次長   恩田 幸雄君         海上保安庁次長 向井  清君  委員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 野辺 忠光君         大蔵省主計局主         計官      古橋元六郎君         農林大臣官房審         議官      佐々木富二君         農林大臣官房参         事官      長   晃君         農林省構造改善         局農政部長   森実 孝郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     加藤 紘一君   久野 忠治君     葉梨 信行君   前尾繁三郎君     中村 弘海君   島田 琢郎君     上原 康助君   武藤 山治君     上田 卓三君   菊池福治郎君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     木村 武雄君   中村 弘海君     前尾繁三郎君   葉梨 信行君     久野 忠治君   上田 卓三君     武藤 山治君   上原 康助君     島田 琢郎君   中馬 弘毅君     菊池福治郎君     ————————————— 五月三十一日  米の生産調整反対及び地域農業振興等に関す  る請願瀬野栄次郎紹介)(第五四三六号)  同(野村光雄紹介)(第五五六〇号)  同(吉浦忠治紹介)(第五五六一号)  商社養鶏インテグレーション進出阻止に関する  請願小川国彦紹介)(第五五〇七号)  今別営林署事業量及び地元雇用拡大等に関  する請願津川武一紹介)(第五五五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農産種苗法の一部を改正する法律案内閣提出  第七四号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  3. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 いま二百海里時代を迎えまして、漁業資源を確保する、かような観点から、わが国沿岸漁業重要性というものが日増しに高まっておるということはだれしも認めるところであります。  そこで、沿岸漁業振興につきまして政府はどのような基本姿勢を持っておられるのか、まずそれについて御質問をさせていただきたいと思います。
  4. 今井勇

    今井政府委員 お説のとおり、二百海里時代に入りまして、わが国の一千万トンに余ります漁獲高の中で約四割近いものが外国の二百海里でとっておるものであります。そういったものが、規制が強化されるに伴いまして、漁獲量が漸減をしてまいることは否めない事実であります。したがいまして、わが国といたしましては、わが国の二百海里の中の漁業振興させまして、国民の食糧を安定的に供給しなければならぬという大命題に当面をいたしております。  そこで、その施策でありますが、大きく分けて五つあろうかと思います。  一つは、まず沿岸漁場整備でございます。これは沿岸漁場整備開発法に基づきます事業促進をいたします。  次は、魚を増養殖しながらとっていこう、ふやしながらとろうという方策をとることでございまして、具体的に申しますれば栽培漁業センター整備、あるいはサケマスふ化放流事業拡充強化等々を強力に推進いたしたいと存じます。  三番目は、漁業生産基盤となります漁港についても、これは第六次の漁港整備計画に基づきまして整備を図ってまいりたいと存じます。  それから四番目は、漁業経営近代化あるいは水産物の流通改善合理化ということでございますが、このために沿岸漁業構造改善事業及び流通加工センター形成事業というものを推進すると同時に、価格の安定あるいは加工利用技術開発を図るなど、生産から流通にわたる諸般の施策を計画的に進めてまいろうということであります。  最後に、五番目でありますが、わが国二百海里の中にはまだ利用されていない資源がございます。そういったものを含めた資源調査を行いまして、資源有効利用を図ってまいりたい、このように考えております。
  5. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 沿岸漁場整備開発を進めるということでございますが、そこで私が問題にしたいのは、このわが国沿岸漁場における魚族資源保護、いかにこの資源保護しながら大事に使っていくか、こういう点について質問をさせていただきたい、かように考えるわけであります。  それはまず第一に、世界の三大漁場と言われてまいりました三陸沿岸沖合いにおきましては、最近、漁民の言葉でございますが、漁場砂漠化が進んでおるのではないか、かように言われておるわけでございます。私は、漁民というものは海を知り、海の中に生きておるわけでありますから、だれよりも海を愛するとともに、だれよりも海を知っておる、かように考えるわけであります。たとえば北部太平洋地域で最大の漁獲を誇りましたスルメイカ生産でございますが、かつては五十四万七千トンがとれたのでございます。ところが、五十一年度のこの生産実績というものは、一万七千トンに減少しております。四十分の一に減ったわけでございます。  ちなみに、私はこの地域沿岸の出身でございまして、漁業に従事した経験がございます。私は、中学一、二年のころ、昭和二十五、六年でございますが、学校から帰ってまいりまして、三時ごろ飯を早目に食べまして、おやじと二人でさっぱ舟で漁に出かけまして、そして夜中の九時ごろ帰ってくるわけでありますけれども、目の前の海で一晩に五百匹も六百匹も漁獲高があったわけであります。ところが、これが徐々に減少してまいりまして、私は最近も漁師の皆さんと会って話をしたのでありますが、大体昨年は漁獲高がほとんどゼロに等しい、皆無になっておる、こういう現状なのでございます。  そこで、この原因は一体何であるか、こういうことを私は調査をしてみたのでありますが、これは従来から認められてまいりましたけれどもトロール漁船大型化が相当強力になってまいりまして、産卵地域も含めまして全部根こそぎとってしまう、こういうところから漁場砂漠化というものが進んできたのじゃないか。漁民経験と知識によって彼らはそう言っておるわけであります。これは実際に科学的な根拠もあると私は考えるわけでございまして、そういう意味におきまして、漁場砂漠化という点につきまして水産庁の方はいかなる御見解を持っておられるか、まず御質問いたします。
  6. 恩田幸雄

    恩田政府委員 三陸方面におきます特にスルメイカを主体といたしました漁獲量減少が最近目立っていることは事実でございますが、特に漁場砂漠化したというような現状は私どもは十分把握しておりませんが、私どもといたしましては、それのいかんにかかわらず、沿岸漁場整備事業等を通じまして沿岸漁場整備改良を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  7. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 沿岸漁場整備促進ということにおきましては、たとえば魚礁を投下して魚のすみかをつくってやるというようなことを一生懸命なさっておられる、あるいは増養殖センターをつくりまして研究開発をなさっておられる。ところが、この地域は魚の宝庫でありまして、何も魚礁を投下しなくても、根こそぎとってしまう漁法をある程度やめるとか、そういうことをするだけで魚がどんどんふえてくるところなんです。ですから、イカはかりてなく、メヌケとかタラ——沖合いに出まして十五海里から二十海里ぐらいの地域で魚をとっている十トンクラス中小漁業者は、メヌケとかタラもきわめて減少してきている、こういうことを言っておるわけでございます。  そこで、調査いたしてみましたところ、戦前におきましてはトロール漁業というのは十一月から四月まで六カ月間操業しておったのですね。ところが、戦後の食糧難を迎えまして、それを救うためということで九月から六月まで十カ月間の操業を認めるようになった。さらにまた、戦前におきましては漁船馬力か少なかったものでありますから、引っ張る網もきわめて少ないし、場所も限られておった。ところが、最近におきましては千馬力ぐらいの船で引っ張るものでありますから、規模は大体三十六トンから七十五トンクラスであるようでありますけれども馬力が強いために定置網と同じぐらいの網で引っ張る、そのために稚魚まで含めてほとんど根こそぎ漁獲されてしまう、こういう実態があるわけです。このことを考えまして——私はトロール漁業を全廃しろとまては言いませんよ、これは北洋漁業その他、減船漁民方々は相当苦しんでおりますから。ただ、戦前並み漁獲期間を縮小するなり何らかの形で魚族資源保護検討する必要があるのではないか、かように考えますが、水産庁の方ではいかがお考えでしょうか。
  8. 恩田幸雄

    恩田政府委員 ただいまお話のございました底びき網漁業によります漁業資源の荒廃と申しますか、とり過ぎではないかという問題でございますが、私どもといたしましては、沖合い底びき網漁業につきましては、許可に当たりまして、隻数を限定するほか、大型化する際にはほかの船をつぶして大型化するというようなかっこうで、少なくとも船舶総トン数については全く増加しないように許可の制度で仕組んでおるわけでございます。そのほかに、さらに今度は減船の決めも出てまいったわけでございますが、中南部千島漁場開発あるいはもっと北方の漁場への転換ということで、国内周辺におきます底びき網漁業漁獲努力減少に努めてまいったわけでございます。  なお、禁止期間の問題を具体的に御指摘でございますが、私どもといたしましてはそういうようなかっこうでどんどん漁獲努力を間引く方向で考えておりますので、確かに戦前に比べますれば操業する期間がふえてはおりますが、全体としての漁獲努力につきまして、さらに沖合いに、たとえば五十五トン以上の漁船については水深五百メートル以深にするとか、そういうようなかっこうで、少なくとも沿岸漁業者と競合するような場所におきます漁獲努力につきましては、さらに減少する方向で考えてまいりたいと考えております。  なお、期間そのものにつきましては、これは戦後いろいろな事情を経まして現在に落ちついている問題でございまして、沿岸漁業者サイドの問題もございますし沖合い漁業者サイドの問題もございますので、今後さらに両者お話を十分聞きなから、私どもとしても検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  9. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 今後沖合い漁業者並びにトロール漁業者話し合いを通じて操業期間は詰めていく、こういうことでございましたが、これは両者が生きるということと同時に、沿岸漁業資源を確保する、保護していくということにおきまして、十二分に検討して早急に進めていただきたい。  それから、今後五百メートル以深方向漁場をできるだけ深いところに持っていく、こういうような指導をすると言われましたが、悪質なトロール業者は、岸から沖まで網をずっと引っ張っていくわけですよ。そういう例が間々あるのです。あなた方は指導していると言っていますけれども監視体制はどうなっているのですか。せっかく五百メートルとか言ったところで、毎日漁業に出ているわけなんですから、そういうところをきちっとしませんと、これは口だけではだめですから。いかがですか。
  10. 恩田幸雄

    恩田政府委員 取り締まりの問題につきましては、塩竈にございます第二管区海上保安本部中心にいたしまして各海上保安部取り締まりを願っていると同時に、私ども水産庁といたしましても、随時一ないし二隻の船を三陸沖にパトロールさせまして、これらの違反の絶無を期すように努力している段階でございます。  なお、先ほどの御質問の中で禁止期間を広げる問題につきましては、これは沖合い漁業者側のいろいろな問題もございますので、慎重に検討いたしたいということでございますので、つけ加えさせていただきます。
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 慎重な答弁でございますが、慎重に検討するということではなく、中小漁民魚族資源を確保するためにはとにかくそれしか方法がないのだ、戦前はそうやっておったではないか、そういう経験に基づいて、つまり自分たちの生活の糧を守るためにやってくれということを言っておるわけでございますから、水産庁は特定の業者保護するということだけではなくして、その他大多数の中小漁民を救うという立場から真剣に、慎重でなく早急にやっていただきたいということを要望いたしておきます。  それから、政務次官は二月九日の本委員会におきまして予算説明をなさった、その説明におきまして、沿岸漁業を進めるに当たっての増養殖栽培漁業、こういうものを進める。特にサケマス放流等におきまして、本年度は合わせて二百十八億円の予算をとる、こういうことを言われました。そして、北部日本から北海道にかけましてのサケマス放流事業が非常に成功してきたことは、私は高く評価いたします。全然サケが入ってこなかったところにも、三年、四年たちますと大群が押し寄せてまいりまして、これは漁民にとりましても非常な朗報だと思っておるわけでございます。  そこで、若干水を差すようでございますが、放流をする場合に、サケ稚魚が海に出ます。これは大体三月から四月ということになっておるわけでありますが、これが海に出ますと、ちょうどそのころ、同じように三陸沖合いにおきましてはコウナゴ漁が始まるわけであります。そうしますと、水産庁ではその辺まだ調査しているかどうかわかりませんが、サケ稚魚コウナゴを追っかけましてコウナゴを食べるわけです。そうしますと、そこで網をおろしますから、コウナゴと一緒にサケ稚魚が相当とれるわけなんです。それから、これは定置網その他におきましてもとれますので、せっかくの放流効果が半減しているのではないかと私は思うのですね。ですから、たとえば海の生けすとか、そういうものに補助を与えまして、そして海中でできるだけ大きくして、時期をある程度ずらすとか、そういう努力をすれぼもっともっと効果があるのではないかと私は考えておるわけですが、こういうこともぜひ検討していただきたい。もし御意見があったら述べていただきたいと思います。
  12. 恩田幸雄

    恩田政府委員 ただいま岩手県の山田湾中心に、いかにして河川におけるあるいは沿岸における歩どまりを高めるかということで、私ども鋭意研究を進めているわけでございまして、先生指摘海中飼育につきましても、現在山田湾の実験的な段階では相当いい成績を得て、従来の回帰率の数倍に上るような回帰率を示しているような実験例が出てまいっております。したがいまして、これらの技術をさらに開発いたしまして、十分見通しのついた段階で、沿岸漁業者方々——沿岸といいますか、サケマスふ化関係漁業者方々にこの方法を普及してまいりたいというふうに考えておりますが、これはもう少し時間のかかる問題ではないかと考えております。
  13. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、これは中小漁業者にとりましても非常に朗報でございますが、ただ漁獲につきまして、若干河川に上ってくるものと、それから海の中に定置で網を置いているのにかかるのと、大体この二つに漁獲権利を認めておられるようでありますが、漁民は目の前を魚が通るのになかなかとれない。中小漁業者刺し網を持っておる場合、これは非常に厳しくやられているようですが、これを若干緩めて、ある程度漁獲する権利を認める方向で御検討されてはいかがか。いままでみたいにただの自然放流サケが上がってくるときにおきましては、これは魚族資源保護ということで、刺し網をやりますと川に上るのが大分少なくなるということで禁止してきたわけなんですが、ところが魚も大変豊富になってまいりましたし、刺し網をやりましても、これをある程度認めてもそうそう影響はないのではないか。富を、資源皆さんに公平に分配をするという立場から検討してみたらどうか。それぞれ条例によって県であれするようではありますが、水産庁の方として、今後これを行政指導で認める方向検討すべきではないか、かように思いますが、いかがですか。
  14. 恩田幸雄

    恩田政府委員 私どもも、岩手県の沿岸漁業者の一部の方々から、サケマス刺し網でとりたいという御希望が出ていることは存じております。ただ、問題は、サケマスの採捕そのものの問題のほかに、ふ化放流をやるための産卵親魚をいかに確保するかという問題があるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、刺し網にかかりましたサケマスは、網の目に入りますと網ずれ等ができて魚体が損傷する、それによって採卵にも若干の支障が出るという問題が一つと、それから、サケ刺し網移動性のものでございますので、魚群が非常に集中してくるようなところに刺し網をお張りになって、一獲千金と言っては申しわけございませんが、そういうようなこともあり得るということでございます。したがいまして、現在の状況といたしましては、私ども刺し網を新たに認めるというような方向には考えておりません。  ただ、問題は、定置網漁業の方に漁獲が非常に偏在するというような傾向がございます。それでこの定置網は、一部は漁業協同組合の自営というようなかっこう関係組合員にその利益か潤っているというふうに考えておりますが、一部には個人的に近いような定置もあるようでございますので、どういう方に免許するか、これらにつきましては十分検討して、富の分配が公平に行われるような方向で考えてまいりたいと思っております。
  15. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 刺し網は一網打尽だ、こう言っておりますけれども、その網の規模にもよるわけでございまして、それから認める数にもよるんじゃないかと思うのですね。だから、資源を有効に使うんだということで、網の長さとか、そういうものも規制をいたしまして、ある程度認めるというような検討はできませんか。
  16. 恩田幸雄

    恩田政府委員 ただいま先生指摘方法一つ方法ではあると思いますが、限られた数にいたしますと、特に刺し網の場合には小さな経営でございますので、多数の共同経営ということにはまいらないわけでございます。したがいまして、一部の人に偏ってしまうというような弊害もあるということを私ども心配しておるわけでございまして、これについてはさらに検討いたしますが、現段階ではやはり定置でその利益を多数の方に分配するというかっこうが、当然、河川に戻ってくるようなサケマスにつきましては適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  17. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 たくさんの人に分配をするということで、協同組合形式のものに認めるという方針のようでございますが、漁民一人一人にとりましては、ある面におきましては、個々漁業をしながら協同組合そのものを維持しているという面もございますので、個々にとったからといってこれが必ずしも個人のものじゃなく、それらが集まれば一つ協同組合としても利益になるということもありますので、これは私も研究をいたしますが、今後もっと検討をしていただきたい、かように考えるわけであります。  それから、資源保護という点におきまして栽培漁業ということになってくるわけでございますが、アワビ栽培その他も研究を進めておられるようであります。これは結構なことでありますが、ただ密漁が非常に多いのですね。アワビは非常に高価なものでありますから、特に夏の時期になりますと、これは繁殖の時期でございますので禁漁に指定されておるわけですが、ところが最近はアクアラングが発達をしてまいりまして、漁民も海の上からたくさん監視しておりますけれども、これがなかなか取り締まりの実が上がらない。密漁者はそれをプロにしまして、そして夜、懐中電灯で海の中を照らしまして侵入してくる。これに対してはなかなか打つ手がないのですね。そこで、いま漁民の自主的な体制監視体制をやっておりますけれども警察もそれに十分協力をするとか、それからまた、密漁をした者に対しましては厳罰に処する、こういうような方針で、やはり貴重な資源保護するという処置がとられる必要があるのじゃないか、かように考えますが、いかがでしょうか。
  18. 恩田幸雄

    恩田政府委員 私どもも、岩手県の田老町の地先海岸におきまして、ことしの三月三十一日に、密漁グループが七人でトラックを使いまして、アクアラングを使ってアワビ密漁したということを聞いております。この際には警察が検挙しているようでございます。私どもは、各関係県の水産部課ともいろいろ打ち合わせをいたしまして、それぞれ地元において各県と県警とが十分連絡をとりながら、これらのような違反か起きないように十分な取り締まりをやっていただくようにお願いし、かつ指導しているところでございます。
  19. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次に、韓国輸入ワカメについて御質問を申し上げます。  沿岸漁民にとりまして養殖ワカメというのは非常にこれは増養殖一つの目玉であったわけですね。ところが韓国の方で日本栽培技術をとり入れまして、向こうの方で非常に安いワカメが入った、しかも、三年ほど前でありますが、日本ワカメが不足するというような事態が生じまして、非常に粗悪品も含めたワカメが流入いたしまして、漁民が大変な値段の暴落で悩んだわけであります。幸い昨年におきましては、韓国の方とわが水産庁の方で話し合いが進みまして、韓国の方にも自主規制を求めておられるようでございます。  そこで、私が御質問をいたしたいのは、それでむなおかつ韓国ワカメが流入してまいりまして、漁民にとってはワカメというものはまだまだ苦しい業種の一つになっておるわけでございます。いままでずっと漁をやってきた人はよろしいのでありますが、新しくこれから着業しようという人にとりましては、資本その他の点で難点がある。そういうことで、道具が古くなってまいりますと、廃業していくというケースが間々見られるわけであります。  私が御質問いたしたいのは、いま韓国ワカメ、これは昨年から貿易におきましても事前確認制を発動いたしておるわけでありますが、これによってどの程度韓国からわが国ワカメが流入しておるか。それからまた、昨年韓国政府に対しまして、何点かの自主規制を求めておるわけですね。たとえば、塩蔵ワカメの加工を四月末日で切り上げるように指導するというのが向こうの申し合わせ事項の一つである、無免許の養殖を取り締まる、あるいは輸出不適格品の例外的輸出を認めないとか、あるいは原料に粗悪な原藻を使用させないよう指導する、こういうような申し合わせがあったわけでありますが、この韓国側の申し合わせ、これは十分守られておると水産庁では判断されておられるのかどうか、その後の、つまり両国の話し合い、この経過につきまして御質問いたします。
  20. 恩田幸雄

    恩田政府委員 韓国からの塩蔵ワカメの輸入につきましては、先生指摘のように、五十一年には二万一千五百トン、それから五十二年には二万四千トンというようなかっこうで数量も伸びかつ品質の非常に悪いものが入ってまいりまして、わが国漁業者に多大な影響を与えたことは事実でございます。これに基づきまして、特に五十三年におきましては日韓の民間関係者の間で、五十三年におきます輸入量を一万九千トンにするということで合意しているところでございます。それで、現在一月から四月まで韓国から輸入いたしました数量につきましては約八千トンでございます。これは昨年の同期に比しまして四九・六%ということで約半減をしているわけでございます。韓国のことしのワカメの状況をいろいろ私どもが入手している情報によりますれば、ことしのワカメの作柄はよくないということでございまして、五月以後におきましても輸入が大幅に伸びるということは考えられないのではないかというふうに考えております。  それからさらに韓国側も、御指摘のように自主規制をいたしておりまして、五十三年度日本地域塩蔵ワカメ輸出自律規制実施要領というものをつくりまして、これによって韓国は輸出業者ごとに輸出数量の割り当て、品質の検査、こういうものをやっているように聞いておりまして、これらが大体適確に履行されているというふうな情報を私ども得ている状況でございます。
  21. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次の質問に移りますが、農林大臣の御努力によりまして、北洋のサケマス漁業は、量が減ったとはいいましても一応認められたわけでございます。ただし、それに伴います漁船の休廃業、まあ減船によりますところの補償問題が出ておるわけでございますが、共補償だけでは十分ではない、政府の補償を何とかお願いしなければならぬということでございますが、これに対しまして政府では対応策がなされたかどうか、決定されたかどうか、これについて御質問いたします。
  22. 今井勇

    今井政府委員 御案内のとおり、三割減船ということで、いまその減船のやり方等につきまして財政当局と折衝をさせておりますが、まだ結論には達しておりません。その方向といたしましては、業界の方々の御要望がわかりましたので、その業界の方々との話し合いをしながら、極力皆さん方の御要望に沿う方向でひとつ努力をいたそう、かように考えております。
  23. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 ぜひひとつ漁民並びに業者方々に対しまして十分配慮をしていただきますようにお願いを申し上げる次第であります。  さらに、わが国は、二百海里時代を迎えまして、漁業外交を強力に展開をする、こういうことがうたわれておるわけでございまして、ソ連のサケマスに見られるような厳しい規制がなされておるわけでございまして、それと同時に、ソ連と同じようなあるいはそれ以上厳しい処置をとってまいりましたのがニュージーランドでございます。  ニュージーランドにつきましては、ニュージーランド側の立場もあると思うのでありますが、何か乳製品、肉の製品と引きかえに漁業権を認める、こういうような交渉の経過があったようでございますけれども、しかし、わが国としましてもわが国の事情がございますので、これ以上の譲歩ということはできないと私は思うのであります。また、しかしながら漁業者にとりましては、あの地域におきまして十七万トンの漁獲をあげておるわけでございますので、三百隻にわたる漁船並びにその従業者にとりましては大きな痛手であると思うの  でございます。  そこで、ニュージーランドにおきましては、同じ自由主義国家であり、同じ太平洋を取り巻く太平洋諸国であります。そういう意味におきまして、われわれが誠意をもって話し合えば必ずこの問題の長期的な展望に立った解決というものがなされると、私は確信しておるのであります。ただ、問題なのは、やはり外交交渉におきましては、国内の国民感情というものがときには優先をすることがございますので、そうした国民感情に乗っかりまして、向こうが魚をとらせないのであるならば報復をするぞ、こういうような議論もなきにしもあらずだと思うのであります。ただ、もしチャンスがありますならば、やはり誠意と誠意でこの問題を解決をしていくというのが漁業日本としての姿勢ではないか、かように考えるわけでございまして、やはり誠意と忍耐をもってこの問題解決に当たられますようにお願いをいたしたいと思うのでありますが、同時に、政府とされましてはニュージーランドに対しましてどのような姿勢で今後取り組んでいかれるか、姿勢につきまして御質問をいたしたいと思います。
  24. 今井勇

    今井政府委員 ニュージーランドに対します姿勢は、ただいま先生のおっしゃいましたとおりでございまして、同じ太平洋にあります自由主義国として、しかも長い友情で結ばれました国でございますので、この際話し合いをいたしまして友好の関係を持続いたしたい、かように考えております。不幸にしていままでは十分な話し合いがとぎれておりましたが、幸いなことに、先生御案内のとおり、先日前農相の鈴木先生が豪州に行かれる機会がございまして、そのときにマルドーン・ニュージーランド首相とも会談をする機会を得まして貿易問題について話し合われたのでございます。その結果、先方もわが国努力をやや理解をしていただいたように私どもは考えております。そのときには漁業問題についてはまだ具体的な話はなかったようでございますが、私どもは、なおこの友好的な状況を利用すると言っては語弊がございますが、この機会に漁業問題につきましてもひとつ話し合いをするような努力を続けてまいりたいと存じます。  そこでお願いいたしますが、承りますと、先生はニュージーランドの議員連盟の有力なメンバーの一人であるそうでありますので、ひとつ政府政府として精いっぱいの努力をいたしますが、議員連盟の方にも力をかしていただくように、この際特にお願いをいたしたいと存じます。
  25. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 私は、ニュージーランド議員連盟を結成いたしまして百六名の国会議員団をもって、与野党を含めまして向こうの国会議員団と交流をしてまいりました。そういう意味におきまして、やはりお互いに相手の国内事情、自分の国内事情というものが十分相互理解されずに来ているという現状があると思いますので、議員の立場を通じまして、両国の友好を図り、そして何とかこの問題が解決するように私ども努力をしてまいりたい、かように考えるわけでございます。どうか農林省におかれましてもぜひこれを打開するように全力を挙げて努力をしていただきたいと御要請を申し上げます。  次の質問に移ります。  日本の森林地域におきましていま非常に大きな問題となっておりますのは、天然記念物に指定されておりますカモシカの被害でございます。これは、せっかく植林をしましても若い芽のうちにどんどん食べてしまう。かつては山地に住んでおった私どもの祖先は、このカモシカを食べて有効なたん白質供給源としておったわけでございますが、天然記念物でございますからなかなか捕獲もできない、手をこまねいて見ている、こういうような状況でございます。  そこで、林野庁とされましてはこの全国の被害を調査しておると思うのでありますが、どの程度の被害に上っておるかちょっと知らせていただきたいのです。
  26. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先生指摘になりましたように、カモシカによります森林の被害というものは年々増加いたしておりまして、昭和五十一年度には全国で二千五百四十三ヘクタールに及んでおります。これは昭和四十七年に比べますと約七倍ということで、私どもも非常に憂えているわけでございますが、特に被害が大きい民有林関係でございますけれども、長野県、岩手県、岐阜県、この三県で全体の被害の大体九〇%以上になっておるという状況でございます。
  27. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 それで、環境庁に御質問をいたしますが、どうも天然記念物だということで大変大事に扱ってきたようでございまして、何か生きたままで生け捕らなければこれはだめだというようなことで、控え目に五頭とか十頭とかいうような、一頭当たり五十万円ぐらいの予算をつくってきたようでございます。しかしこれではとても被害を食いとめることはできない、こういうことで心配しておったのですが、幸い一昨日ですか、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律が出まして、これが国会を通りますれば抜本的な対策に入るということでございますが、今後この法律に基づいてどのような抜本的な対策を練っていかれるのであるかどうか、環境庁の方、ちょっとこれを説明してください。
  28. 野辺忠光

    ○野辺説明員 ただいま御指摘ございました鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の改正におきましては、麻酔銃を使用しました捕獲ができるということになるわけでございまして、直接的にはこの法律でもって新しく対策が確立されるということではございません。私どもといたしましては、現在このカモシカが大変貴重な天然記念物に指定されておるといったような性格の動物でもございますし、また一方では農林業被害が相当出ておるという現状を踏まえまして、ただいま文化庁、林野庁、環境庁三庁合同いたしまして、それぞれ手分けいたしまして恒久的な対策を確立するための調査を進めている段階でございます。
  29. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 貴重な天然記念物を大事にしなければならないということはよくわかるのでありますが、山村で生活していく人々の生活権というものも十分考慮していただきまして、そして森林を守る。どうもともすれば天然記念物だからといってわれわれ人間の生活権まで脅かすものを大事に保護しなければならないということは、ちょっと本末転倒じゃないか。どっちに生活権があるのかわからない、こういう批判がたくさん出ておるわけでございまして、どうかそういう点も十分ひとつ留意して、農民の生活権を十分守るということで対策を練っていただきたい。この点についてはいかがでしょう。
  30. 野辺忠光

    ○野辺説明員 鳥獣保護とそういった農林業被害、あるいはまた農林業の振興あるいは地域振興という点は非常に重要な問題でございまして、両者調和が十分図れるように、そういうように基本的な対策が講じられますように留意しながら施策を講じてまいりたいと考えております。
  31. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次に、米の問題が非常に重要になっておるわけでありますが、米の減反政策、今後十年の間に転作を進めながらも調整を図っていく、こういうような農林省の計画であるようでございますが、この点につきまして概括的にどういう方針でいくか、お尋ねをいたします。
  32. 野崎博之

    ○野崎政府委員 減反政策に関しましては、十年を目標にして長期の対策としてやるわけでございますが、とりあえず三年を第一期として進めることになっておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、片岡委員長代理着席〕 総合食糧自給力の向上ということが一つの目的でございまして、したがいまして、需給上の問題のある作物、温州ミカンとかブドウとか桜桃とか、そういうものは除きまして、他方、麦、大豆、飼料作物、そういう自給力の向上を必要とする作物につきましては、奨励金の面でも大いに増額をいたしまして、これを奨励をする。その他の作物につきましては、一般的に広く対象範囲に含めまして転作の推進を図ることといたしておるわけでございます。転作の推進につきましては、やはりその地域地域の実情に合った作物を選定して転作を積極的に推進していただくということが必要でございまして、現在各市町村、農協、そういう末端段階におきまして事情に即した適切な作物が選定されるように指導をいたしておるところでございます。
  33. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこでこの減反政策をできるだけ早く解消するということにつきましては、消費拡大に全力を挙げなければならぬ、そうして米をたくさんつくってもらって米をたくさん食べる、これが基本であるということは大臣も何回もおっしゃっておることでございます。そこで、たとえば大臣は全国民が百日に一わん食事をたくさん食べれば十万トンふえる、十日に一わんずつ食べれば百万トンの消費を拡大できる、こういうことを言っておられるわけでございます。そこで、それは一応抽象的なことなんでございますが、米の消費拡大につきましてちょっと抜けているところがあるのじゃないかと私は考えるわけであります。  それは、本年の一月の二十日に、「農産物の総合的な自給力の強化と米需給均衡化対策について」という閣議了解事項がございますが、その中で、「食生活における米の見直しを基本とし、次により米の消費拡大対策を強力に推進するものとする。」たとえば、「都道府県及び市町村をはじめ、教育、調理、栄養、保健、医療等各般の関係者の協力を得て、米についての正しい知識の普及を図るなど米消費拡大のための啓蒙を積極的に展開する。」これは宣伝に大いに力を入れて拡大を図る、こういうことですね。  それから二番目には、「米飯学校給食の計画的な拡充を図る。」これは学校の給食をパンから米飯に切りかえるという方式であると思うのであります。  三番目に、「米加工品の消費の拡大を図るとともに、米の新規用途の開発普及、清酒の製造における米の使用量の増加等を図る。」これは米を通じまして清酒その他をつくるということで消費の拡大を図る、こういうことだと思う。  四番目に、「良質米の生産を奨励するとともに、米の品質保持方法の改善普及を図る。」  こういうことで、四点あるのでありますが、私は一つ抜けておるのがあるのじゃないかと思うのですね。     〔片岡委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕 それは、米を販売をする小売商店の立場をもっと考慮いたしまして、たとえば米屋さんがもっと積極的に米を売るという意欲を燃えさせるような各般の施策も必要なんじゃないかと思うのです。たとえば、マージンを改定をするとか、報奨制度を設けるとか、おいしい新米をたくさんふやす、そういうことによって米屋さん自身が米を売るという意欲がなければ、私は米の消費拡大にはならぬと思うのですよ。たとえば閣議了解事項を見ますと、学校給食の米飯といったって、全部やったってたかだか二十万トンですよ。それから清酒の製造を全部やれば大体六十万トンですけれども、大体五万トンくらいしか放出しない現状じゃないですか。それによって二百万トンも三百万トンも余る米をどうやって消費するのですか。それよりも、私は、米を販売をしておる販売店が昨年よりも一〇%ふやすだけでも、年間の米の消費が千二百万トンとすると百二十万トン、二〇%ふやしたとしますと二百四十万トン、こういうふうに単純な計算ができるわけですよ。だから、農林大臣が言われるように十日で一わんふやすというよりは、はるかにこっちの方を督励、努力させた方が米の消費拡大になるのじゃないか。そういう点におきまして、食糧庁はこの米屋さんの方々に対しましてもっと積極的な行政指導というようなものをやる必要があるのじゃないか、こういう対策の中に五番目として入っていいのじゃないかと思うのですが、どうですか、食糧庁長官
  34. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 御指摘になりました点につきましては、私どもも同様に存じております。食糧管理制度といいます。種の統制のもとにおきまして、卸売業者、小売業者を通じて販売をやっておりますので、どうしても他の自由商品に比べまして販売努力が足らないというような傾向が出ておることは私どもも認めざるを得ないと思います。統制がある限り完全な自由競争というのはできませんけれども、いまの弾力的な食管制度の運用の中で、もう少し販売努力ができるような体制を考えていく必要があるというように思います。したかいまして、現在集荷から、卸、小売、消費者に至るまでの間の流通関係者か総力を挙げまして、消費者に対するサービスの向上、あるいは流通経費の節減、あるいは広告宣伝というようなことまでも含めまして努力していただくように要請を強くいたしております。ただ抽象的に要請するだけではなしに、そのためには現在の食管制度の流通関係の運用に競争的な原理をどこまで入れる余地があるか、内部でも検討し、関係業界からも種々検討して意見を求めておるところでございますので、何とかいま先生のおっしゃいましたような趣旨で、流通業者自身の販売努力によって消費の拡大に資するということを重点に進めていきたいというふうに考えております。
  35. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 そこで、新米の率をふやせば消費がもっと拡大するということもあるわけです。ところが古米が非常にふえておりますので、古米の処理については外国に経済援助でやるとか、いろいろな処理の仕方があると思うが、何か具体的に考えておりますか。
  36. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の十月末の米穀年度繰り越しの時期に三百六十七万トンの古米、一年古米、二年古米、一部少数三年古米もございますが、持ち越しをしたわけでありますが、昨年産米が非常な豊作であったということが主要な原因になりまして、ことしの十月末、新米穀年度に繰り越す際には五百万トンを恐らく超すのではないかというような見方を現段階としていたしておるわけであります。御案内のように適正在庫は古米の持ち越し量二百万トンということで現在進めておるわけでありますが、五百万トン以上ということになりますと三百万トンを超える文字どおりの過剰が発生するわけでございますので、これは当面国内の加工用需要に振り向けてそれを拡大していくという努力をしておるわけでございますが、さらに、それだけでは足りませんので、前回海外への援助なりあるいは飼料用にも転用いたしまして、それらのことも検討いたしまして、今後の需給の動向あるいは米の価格の動向等も見た上で本格的な処理に乗り出さなければいけないということで、慎重に検討を始めておるところであります。
  37. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次に、減反を進めながら転作をやっていくということでありますが、転作の主方向は畑作である、こういうことになっておるわけです。ところが、従来の畑作ばかりでなくいろいろな品種を研究する必要があるのじゃないか。農林省等におきましても、たとえば砂糖よりも三百倍以上甘いステビアとかそういうことを研究されておられるのですね。それから中にはイピルということで、フィリピン、熱帯の方だそうでございますか、これか生育いたしますとコークスと同じような形で製鉄業その他に使える。日本の製鉄業でもこういうものを研究しておる。この葉っぱは非常に高たん白なために配合飼料等に使える、こういうようなことが言われておるのです。こういうのについて農林省ではもっと積極的に取り組んで開発研究し、転作の有望な植物の一つにして進めていったらいいんじゃないか、かように考えますか、いかがでしょう。
  38. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほど申し上げましたように、転作の重点作物といたしましては麦、飼料、大豆、そういうものに重点を置いて、これは比較的栽培経験のある農家も多いことでございますし、大体全国どこでも栽培できる、そういう見地から、重点作物、特定作物として奨励金の面でも優遇しながら広めているわけでございますが、需給上の問題のある作物を除きましては一般的に広く対象にいたしておりますし、地域によりましては植林も対象にいたしておるわけであります。したがいまして、ただいま先生指摘のありましたステビアあるいはイピル、これについても別に対象外にしておるわけではございません。対象といたしておるわけでございますが、ステビアにつきましては、現に一部の地域ですでに試験的に転作を実施いたしております。それからイピルにつきましては、これは先生がいまおっしゃいましたように熱帯産の樹種でございますので、わが国へ入っても生育が可能かどうかというような問題もございますので、これらを導入するについてはやはり十分な試験研究が必要であろうというふうに考えておるわけでございます。
  39. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次の質問に移ります。  広域農業開発事業の畜産団地につきまして、広域農業開発事業におきましては、まず予備地区に指定し、精査地区に指定し、さらに全計地区、事業実施、こういうふうになって、そして一般の農民に対しましては牧場その他を払い下げるという形になっておるわけですね。そこで、公共牧場とか公共飼育牧場、牧草生産農場、いわゆる公共的なものはよくわかるのでありますが、それを除いて、つまり一般の農家、農民に対してどのような形態、規模で最後に売り出しをするというふうに研究しておられるのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  40. 長晃

    ○長説明員 お答えいたします。  御指摘の広域農業開発事業でございますが、先生御承知のとおり農用地開発公団で担当し実施しておりますが、公団事業の場合に、事業用地の確保につきましては、いわゆる持ち込み参加方式ということで、土地の所有者または使用権者がその資格で公団事業に参加するという形をとっております。したがいまして、公団がその所有地を開発して払い下げるという形ではないわけでございますけれども、ただ、事業用地の確保の促進をするという立場から、農地保有合理化促進制度を活用いたしまして、農地保有合理化法人でございますが、岩手県の場合ですと岩手県農地管理開発公社ということになりますけれども、この合理化法人が事業実施予定地を先行的に取得いたしまして、事業が完了した後で公団事業計画に従いまして個人または団体に譲り渡すということがございます。したがいまして、岩手県下の場合ですと、比較的、団体がこういった公団事業を受益するという形が多いわけでございますけれども、個人の場合ですと、みずから土地を取得する、または借り受けて事業参加資格を取得して事業に入っていく、あるいはそれが困難な事情があればこの農地保有合理化法人、岩手県の場合ですと先ほど申し上げました公社の制度を活用していただきまして参加することは可能になります。
  41. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 次の質問であります。  岩手県で巨大なCIファームという伊藤忠の資本を受けました養鶏会社ができまして、これは最初進出する場合に、中小養鶏業者との話し合いで、生産した卵は一切県内で売らない、こういうことで進出をしてきたわけなんです。わが岩手県の方々は非常に人がいいといいますか、それを誠実に受けとめましてこの約束をしたわけでありますが、県外に販売をいたしておりますと赤字であるということで県内で販売をし始めた。そこで、従来の養鶏業者が大変な痛手をこうむっておるわけでございまして、先般はデモ行進までやるというような状況に相なっておるわけでございます。畜産局長はこれを行政的に指導して何とか調整いたしたい、こういうような希望でございましたが、調査をし、具体的にどのような方向指導されるのか、御質問いたします。
  42. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま御指摘の点につきましては、これは一般の生産調整とはまた若干異なりまして、地元と、地元進出の際に当たっての誓約といいますか取り決めを取り交わしているわけでございます。そのことにつきましては、地元町村もこれに立ち会っているというような経過があったわけでございます。その内容といたしましては、先生も言われましたように、県内では生産された鶏卵を販売しないということであったのでございますが、この協定が守られていないという事情か出てまいっております。この問題につきましては、現在岩手県庁が具体的にその調整に乗り出しております。私どももその調整の進展状況について随時県庁から報告を聴取いたしておるところでございますが、現在まだ調整中ということで具体的な結論は得るに至っておりません。私どもとしても、今後一層督励してこの問題が円滑に解決されるよう指導してまいりたいと考えております。
  43. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 この問題は農民の死活にかかわる問題でございますので、農民を守る農林省としまして、ひとつここでがんばって明確に指導していただきたい、かように御希望申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わります。
  44. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 竹内猛君。
  45. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、いま自民党の玉沢委員からも話がありましたが、最近各地で問題になっている養鶏への商社の無軌道な進出に対して、農林省が取り組みを始めましたが、その取り組みの決意と、それから方向についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、最近養鶏関係の団体の大会がしばしば開かれます。これはときには消費者も参加をして開かれておりますか、その中の中心の題目が、商社系の養鶏がやみ増羽を行って各地で問題を起こしている。わが茨城県の新聞などによると、正直者がばかをみる、こういうような見出しで、茨城県にも大増羽が行われている。私もこれを調査いたしまして、その調査ども含めながら質問をしていきますが、まず農林省としては、商社系の養鶏が進出するその前提として、現在のわが国の養鶏の実態というものはどうなっているのかということを、概略説明を願いたいと思います。
  46. 杉山克己

    ○杉山政府委員 およそ物の生産につきましては、需給関係が一番基本的な状況といいますか考えるべき問題点であろうかと思います。その点、鶏関係の需給を考えてみますというと、養鶏の羽数は昭和四十六年にピークに達して一億二千四百万羽というような水準になったわけでございます。その後、若干過剰ぎみで推移してまいりまして、生産調整の必要が叫ばれてまいったわけでございますが、御存じのように四十九年にその時点の羽数で凍結するということで、生産調整についての方針が明確に打ち出され、現在指導が行われるようになってまいっております。  それに伴います羽数の推移は、先ほど申し上げました四十六年の一億二千四百万羽をピークといたしまして、四十九年には一億二千八十万羽、その後若干の減がありまして、五十二年、五十三年と最近また若干ふえてまいりまして、現在五十三年の数字では約一億二千四百万羽というふうに見られております。ちょうど四十六年水準くらいに現在また戻っているという状況でございます。  この間、飼養戸数、鶏を飼っております農家の数は一貫して減少を続けてまいっております。特に四十七年から五十一年までは年率二〇%程度、むしろ二〇%を超すような大幅な減少を続けてまいりましたが、ここ二年間は戸数の減少は一〇%台にとどまっております。その意味では、減少は相変わらず続いておるわけでございますか、減少の程度は鈍化してきているという状況になっておるわけでございます。五十三年現在で絶対数で二十七万七千戸飼養戸数があるわけでございます。  それから一戸当たりの飼養規模は、いま申し上げましたように羽数は減らない、戸数は減るという状況でございますので、急速に拡大して、四十九年ころは一戸当たり百八十四羽でございましたが、五十三年は四百五十羽というような水準に達しております。  それから大規模階層のシェアもふえてまいっておりまして、成鶏五千羽以上の階層で四十九年の戸数は〇・七%、それから羽数で五四・八%ということでございましたが、五十三年現在では戸数は二・一%それから羽数で七四%ということで急速に拡大してまいっております。  それから、これは地域別な状況でございますが、この地域別シェアにつきましては毎年増減がございます。したかいまして、一概には言えませんが、四十九年と五十三年の比較で見てまいりますと、戸数では東山、北陸、四国こういった地域のシェアかふえております。反面、東海、東北、近畿、こういった先進地帯でのシェアが減少してまいっております。それから羽数は関東、九州、北海道といったところの増加が著しく、東海、近畿、中国では減少しております。それから、これは最近だけではございませんが、従来から大規模階層の多い地域としては東海、近畿、沖繩といったところが挙げられる状況にあるわけでございます。
  47. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこでも明らかになっているように、二・一%の養鶏家が七四%という羽数を持つ。これはきわめて不自然な形ですね。そこで問題になっているのは商社系の養鶏の進出でありますが、その前に、四十九年の五月に生産調整を行いました。その生産調整の背景になっているものは、どういう理由でこの生産調整を行ったのか。そしてその後、その生産調整は今日までどのように指導をされてきておるか。五十三年までどう指導されて、どこに指導の欠陥があったのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  48. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、四十六、七年ころからだんだん需給状況が供給過剰ではないかという懸念が出てまいりまして、その調整が叫ばれるに至ったわけでございますが、四十九年に国も積極的に関与いたしまして、これは全養鶏農家ということではなくて三千羽以上の羽数を飼っている農家を対象に、そのとき現在の羽数を凍結する、それ以上増羽する者は特別な要件を備えた場合に限るということで抑制を図ったわけでございます。その考え方のもとに指導を強化してまいったわけでございますが、一番基本は、地域生産調整協議会におきまして羽数の確認を行う、そしてその羽数がそれ以後増羽が行われていないかどうかを確認して、その増羽の違反の状況があればこれに対して是正の指導をするということを基本にいたしております。本来業者間でのその地域におきますところの調整を基本とするものでございますが、中にはなかなか地域だけではうまく調整かきかないという場合もございます。そういうものにつきましては、これは県段階まで上げて、県も関与して指導するというようなことを行ってまいったわけでございます。  しかし、最近の実情を見ますと、地域によって非常にうまく行われているところもあり、一概には言えませんが、この国会でもたびたび御質問いただきましたように、宮城県とかあるいは茨城県とかその他の一部の府県で、特に大型養鶏企業がその生産調整の四十九年水準の取り決めを守らない、いわゆるやみ増羽を行っているという事例がかなり顕著に出てまいっております。こういった事態につきましては、農林省といたしましても、農政局それから県、さらには関係の団体等にも指導いたしまして、さらにその調整の実が上がるように種々指導を行っているところでございます。  指導の個別の実態なり今日までの経過につきましては、一々申し上げておりますと長くなりますので、また後ほど質問に応じてお答えしてまいりたいと存じます。
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、関係団体と言うのですが、国、県、市町村、これはよくわかりますが、農林省としてはどういう団体を養鶏の団体として確認をしておられるか、これはどうですか。
  50. 杉山克己

    ○杉山政府委員 一番主要なものとしては、いわゆる農業協同組合、全農、総合農協系の団体と、それから全鶏連、日鶏連という専門農協でもって構成されている中央団体がございます。これを中核にいたしまして、その傘下にある各県あるいは地域のそれぞれの団体を考えているところでございます。
  51. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど杉山畜産局長は商社系の進出があった、やみ増羽がふえたと言われているけれども、その商社系のやみ増羽の実態を農林省としてはどのように把握をされているか。
  52. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全体の羽数等についてはいま資料でもって申し上げますが、全面的にということではなくて、個別の地域的な特殊な事情として、先ほど申し上げましたように、宮城とか茨城とかそういった地点で顕著なやみ増羽の事例が出ているわけでございます。全体としての比率から言いますとそれほど極端に多いということではございませんが、一部大手の力のあるものが、その企業の全体の協定といいますか、四十九年の数量からいたしますと大幅な増羽が行われているという実態にあると承知いたしております。これが全体の関係者、大ぜいの生産調整協定、これに対して悪影響をもたらしているということで、こういう事例については厳にその是正を求めるよう指導いたしているところでございます。
  53. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その商社系の養鶏の背景あるいはその周辺にいろいろな経過があると思います。この間、本農林委員会理事会に商社系の養鶏の代表が陳情をしたことがあります。私もその話を聞きました。この商社系の養鶏の経営者は、私たちは過疎対策として、農林省が過去に行った、たとえば開拓地のところでいろいろな指導をした、果樹を栽培をしようということで指導をして、そこに金を入れて団地をつくった。ところが地域の実情や日当たりやそういうものの関係からどうもうまくいかないということで、借金はある、土地は一定の条件をつくった、そこでそれを卵に切りかえたということの話がありました。あるいはまた二百海里の問題で魚がとれなくなる。動物性のたん白がとれなくなる。そこで、卵を生産をして、これを魚と一緒にしてかまぼこにするんだ。港に送ってこれをかまぼこの材料にするんだ。しかもそれは日本の政治の欠点を補っているんだ。したがって、また消費者に対して安い卵を出すという形で市場を撹乱をするのではなくて、むしろ卵価の調整をやっているんだ、こういうぐあいに自分たちのやっていることについて合理的な位置づけをしている。このことについて農林省としてはそれをそのまま認めるかどうか。
  54. 杉山克己

    ○杉山政府委員 この問題のむずかしいところは、基本的には日本の経済は企業自由の原則というものがあるわけでございます。その中におきまして、農産物についての供給過剰を是正するために、お互いが相談して協調して羽数を凍結あるいは減らしていこうじゃないかという話になっているところでございます。その場合、お互いの自粛によって約束が守られればよろしいのでございますが、中には企業の方針で、そういうものを守る必要はない、そのかわり自分としては国からの融資を受けなくてもよろしい、それから卵価が低落した場合に価格安定のための助成措置を受けなくてもよろしいというようなことになってまいりますと、なかなかこれに対してそれは絶対いかぬということでペナルティーを科すような方法というのはきわめてむずかしい話になってまいるわけでございます。それから、そういう企業の立場からいたしますと、いま先生が言われましたように、むしろ生産性の高い合理的な経営をやっているという主張、あるいは卵の消費者に対する安い価格での安定的供給ということでは貢献しているのだという主張もあろうかと思います。  しかしながら、一般の企業の場合もそうでございますが、特に農業の場合は数多くの中小あるいは零細な農家が現実に経営を営んでいるという実態がございます。そして一部の者がそれなりにメリットを受けるということはあるにいたしましても、大多数の農家がダメージを受けるということはそのまま放置するわけにはまいらないと思っております。したがいまして、限られた制約のもとではございますが、行政指導としてできるだけそういう約束を守らせるように、さらに場合によってはその企業名も実態も公表するというようなことを通じ、あるいは個別に呼んで指導をする、要請をするというようなことを、県段階あるいは農政局段階、さらには特殊な事例につきましては国が直接関与いたしましてその是正を促すということをやっているわけでございます。  問題は、強力なペナルティーが科せられるかどうかということでございますが、いまも申し上げましたとおり、法律に基づいてこれを禁止する、強力な罰則を設けるというところまでは正直なかなかできない話でございます。私ども、現在の農林省の政策、各種の助成措置なり融資措置がございます。この手段を通じまして制裁措置といいますか、そういうものに対する助成はいたさないというようなことでできるだけ是正を効果あらしめるものにしたいということで措置をいたしておるところでございます。先般、五十三年度の生産調整に関する畜産局長名の通達も出したところでございますが、これにおきましてもその趣旨を従来以上に一層明らかにいたしておるところでございます。
  55. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは今井政務次官にお尋ねします。いま重大なことが二つありましたね。その一つは、資本主義社会における経営自由の原則、それはそのとおりだと思いますね。だとするならば、米の生産調整だって同じですよ、食管法というものはあるけれどもね。米をつくろうが何をしようがこれは農家の自由ですからね。だから本委員会で新潟県の松沢委員がしばしば言っているように、湿田地に、土地改良が行われていないところに、米しかできないところに転作をしろ、転作をしなければ、ペナルティーではないけれども来年はまた割り当てをかけるぞ、こういうことを言っている。米に関しては明らかに一つの、ペナルティーではないと言うけれども、それと同じような処置がとられる。  それからまたもう一つの重大な話は、それを破った者については卵価安定基金なりあるいは飼料の基金なり、それの加入を抑える、阻止する、こういうことで、それは言ってみれば一つのペナルティーだ、こういうふうに言われたわけですが、今日までのところを見ますと、これは両方とも守られておらない。欺瞞な、擬装した調整協議会の証明書とかそういうものを持ち込んできて堂々とそれを受けている、こういう例があるわけですね。だからこれはペナルティーになっていない。つまり、行政というものが、法律ではないから力の強い者、顔のきく者が、これは後でその実態を申し上げますが、そういう者か好きなことをやっている、ここに手のつけようのない状態ができてしまった。だから、確かに五十三年の、最近農林省の局長が通達を出したものはかなり厳しい通達であって、私はこれはある意味で了解ができるけれども、四十九年あのえさが高くてそしていろいろ問題があったときに、この生産調整をやって、これ以上羽数をふやせば大変なことになるからという形で廃鶏というのはやられたことだと思うけれども、それから四年間の今日までの間にこういうイセであるとかタケクマというグループがある商社を背景にしてほしいままにしている、そしてそれなりの論理と哲学を持ってやっているということについて、今井政務次官、これはどういうふうに解釈をし、理解をしたらいいのか。
  56. 今井勇

    今井政府委員 この問題は、私もしばしば御答弁をいたしましたのでそれの繰り返しになりますが、まず第一点の、米の生産調整と卵の生産調整と同じではないかという議論については首肯いたしかねます。米というのは、先生御案内のように、食管会計を持っておるものでございます。しかも、そういうものにつきましても、この際生産調整をしなければ食管会計自身が危うくなるじゃないかということからお願いをしておるわけでございます。そういう法律を持っておりましても、今回の措置はあくまで法律事項でなくて生産者の皆さん方との話し合いでいたしておるわけでございます。片や鶏卵につきましては自由でございます。しかしながら、これも生産過剰になりますとお互いに困るじゃないだろうかということで生産調整をしておるわけでございますから、生産調整という字は同じでありましても、おのずからし得る限度というものが変わってまいるのは当然であろうと思います。しかも、米の場合ですら食管会計を守るために話し合いでいこう、こうしておるわけでございますから、これはやはり限度があろうというのは御理解を賜らなければならぬと思います。  それから二番目の問題は大変大事なことでございまして、行政の目をごまかしてそういった生産調整を守らない者について、基金の加入あるいはえさの基金の加入等を阻止することは行政的にできるわけでありますから、もしそれをごまかしておる実態がございましたら、ぜひひとつこれは御通報願いたい。これは厳格に取り締まります。
  57. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 後の方のことについては、これは後ほど現地調査の結果を明らかにするから、そのときにこれはしかと取り締まってもらいたい。  今井さん、前段の話は、米の生産調整は国の食管会計に関係があると言われた。だから、それは法律事項ではないが、行政だけれども、守ってもらわなければ困る。それならば、卵の生産調整は、これは養鶏農家の個々の会計、生活に関係があるのですよ。国の会計に関係のあるものは守らせるけれども、農家個々の収入なり生産関係のあるものは破ってもいいなんというそんな議論はおかしいですね。政務次官としてそういう議論はだめだから、もう一度答え直してもらいたい。
  58. 今井勇

    今井政府委員 あなたは私の答弁の趣旨を取り違えて考えておられる。私が言っておるのは、米というのは食管会計を持っておりながらも、今度の生産調整は話し合いでいっておるのです。片一方は何もないのですから、同じ生産調整であってもおのずから違うじゃないかと言っているわけであります。本来ならば米というのは、しばしば皆さんも何かしかるべき措置を講じろとおっしゃるのですけれども、それは生産調整というのはあくまで話し合いでいくべきものだということで政府は御答弁を申し上げておりますので、御協力を賜っておるわけであります。しかしながら、片一方はそういうものを持たないのでありますから、生産調整で、話し合いでいこうというのが通り得る限度だというのは、私はこれは御理解賜れるものだと思いまして、決して間違った答弁をしておるとは思っておりません。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まあここでそういう議論をしようとは思いませんけれども、米の問題にしても、去年は生産者米価の値上がりは四%だ、消費者米価はそれの約倍上がっているはずだ。だから食管会計の赤字は、昭和四十八年ごろから見ると農林省の予算に占めるウエートはかなり下がってきているはずですね。当時四二%ぐらいあったでしょうか、これは大蔵省から見えているからわかると思いますが、それがいまは二七%ぐらいになっているんじゃないでしょうか。だからことしなんか米価を上げないと言っているでしょう。一般の物価は少なくとも七%以上上がっているというときに、所得も七%上げようと言って総理大臣ががんばっているときに、畜産物の価格はことしは一銭も上がらなかった。農家の収入、農業生産の三六%を占めている米の価格を一銭も上げないというようなことがあったとするならば、食管会計は国が持っているとはいえ、そのための生産調整であるならば農家はたまったものではないということで、しばしばここで議論していることなんでありますから。同じように養鶏の問題は、特別の会計はないにしても、農家としてみれば、米をつくる農家も卵を経営する農家も同じ気持ちですね。だから、その問題に対しては同じ心で同じ気持ちで取り扱ってもらわなければ困る。だから、くどいようだけれども私はもう一度政務次官にお尋ねしたい。私は決して誤解をしてさっき発言をしたわけじゃない、それを正当に理解して申し上げたことですから。
  60. 今井勇

    今井政府委員 誤解でないならば結構でございますか、私は何も卵の生産調整がどうでもいいと言っているわけじゃ決してないのです。卵の生産調整は価格が暴落することを防ぐために皆さんの自衛手段としてやっているわけですから、それを守らなければならぬことは当然であります。したがって、それを守らない者についてどうするかということのお尋ねでございますから、それには限度がありますというふうに言っているわけでありまして、あるいは法律等があってこれを取り締まることができれば非常に結構なことでありますが、現在ではそういうことではありませんので、やはり生産調整の協議会を通じてこれをせざるを得ないわけで、したがって、その生産調整を守らせる限度についてはおのずからやり得るリミットがあるであろうということを申し上げているのでありまして、決して農林省としてやみ増羽を奨励するわけでもありませんし、私もしばしばここで言いますように、社会正義に反することは決してやってはならぬと思います。
  61. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま政務次官から大変前向きの御発言があったのですが、私は、これはいまから幾つかの質問をする中で最後にお聞きしようと思ったのですが、お互いの良心、モラルの段階ではもはや鶏卵の生産調整はできない、非常にむずかしい。それで、これは法律によって規制していく、こういうことの方がより明確であり、よろしいと思う。この立法に対する決意はどうでしょうか。
  62. 今井勇

    今井政府委員 これは慎重に考えなければならぬ問題であります。したがって、まだまだここで明快な御答弁をする段階には至っておりません。
  63. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、きょう養鶏の問題に関して質問いたしますが、私に続いて恐らく公明党の皆さんもそれから共産党の皆さんも養鶏問題についていろいろ質問があろうと思います。そこで、これは理事会でも前々から養鶏問題についての質疑があり、特に本会期中に養鶏の問題については一つの結論をつけるということを今井政務次官もおっしゃられた、それは大変いいことだと思うのですね。だからこの国会の中でやるためには、きょう私は質問いたしますが、引き続いて、これは委員長にお願いしますけれども、参考人などに来てもらって、そして生産者あるいは消費者系もぜひ来てもらいたいと思う。そして、ここでそれぞれの意見を述べてもらって、そういう上で一つの結論を出して、いま言われたように立法的な方向に進むのであれば、それについてはそれの検討会などをつくって検討して慎重に取り扱っていくような処置をとってもらえば、それは非常にいいことだと思いますから、その段階としては、きょうは大体法案を全部処理したいということで理事会でも相談しておりますから、来週になりますと法案がありませんから、米と養鶏、それから自由化、農業基本政策、こういう問題を通じてぜひそのような方向に進めるようにお取り計らいをいただきたいということを委員長にお願いをいたします。委員長、どうですか。
  64. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 理事会に諮りまして具体的には決めたいと存じます。
  65. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、生産調整協議会の問題でございますか、私は、生産調整協議会というものに対して、おのような構成ではとうてい生産農民の気持ちを反映することはできないと思うのです。なるほど農林省から出された畜産振興対策推進指導事業実施要領というものがありますけれども、これを見ますと、構成については、生産者の代表あるいは事業を行う都道府県連合会の役員、関係者ということになっているけれども、最後に、知事が推薦する者ということになっている。こういうわけで、私の茨城県、他の県は知りませんが、やみ増羽の代表的な茨城県においては、四十名の委員の中で生産者の代表と思われる者は三人しかおりません。あとは県庁の職員が十四名、市町村長十八名、団体五名。こういうことですと、これは協議会はあるけれども生産者の気持ちなど理解することは非常に困難です。こういう協議会なら、これはそういうものが一個ある、それでは今度は運営はどうかというと、年に一回ないし二回しか開かれない。これもおざなりと言わざるを得ない。こういうことではどうしようもない。そして、私は五月四日の日に東茨城郡の小川町の実態調査を行いました。その小川町というところはやみ増羽の代表的なところであります。その町長は県の調整委員になっておることを知っていない。メンバーには載っていながら、本人は知っていないのです。こういうような状態では、とても愛情のある調整などはできるはずがない。それから町においても同じように町会議員であるとかそういう人たちが中心になっておりますから、生産者というものが入っておらない。だから生産者の血液が通じない。その上に持ってきて、県の生産調整協議会の会長というものは、党派は別にいたしましても県会議員であって、これはコンツェルンと言われるような大仕事をしているところの社長さん、農業経営といいますか養鶏には直接に関係がない、こういう者が生産調整協議会の代表になっているところに問題があって、そこから発展するのが今日の現状であるわけでありますから、この生産調整協議会というものに対して、これではいけないという何か考え方があるかどうか、これは農林省の方へお尋ねします。
  66. 杉山克己

    ○杉山政府委員 協議会は市町村段階、それから都道府県段階とあるわけでございますが、いまのお尋ねの点は主として県段階の協議会、その構成なり運営についての御批判であるかと存じます。茨城県の場合、先生がおっしゃられたのと若干構成が違うように私ども承知いたしておりますが、生産者団体役職員、これが個々生産者でもあれば同時に職員としての立場の方もおられるかと思いますが、直接生産者の意見を代表する方として八人参加しておられるように承知いたしております。いずれにいたしましても、この構成につきましては、県が主宰をするということでその選任も行うわけでございます。人選は当然県の方でも慎重な配慮のもとに行われておると思いますし、その運営についても、特に最近のような事態の展開を前にして真剣に行われていると考えられます。ただ、個々の問題につきまして、御指摘のようなあるいは運営について若干十分至らない点もあるかとは思いますが、そういうことのないよう、私の方も県に対してもさらに一層厳格にこの運営を行うよう指導してまいりたいと考えます。
  67. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それなら局長に重ねてお尋ねをしますが、各県の、私は茨城県の例を挙げた。それは、とりようによれば生産団体の代表だという形になるかもしれないけれども、四十人の中であれば、少なくとも過半数はその地域でまじめに鶏を飼っている者の代表が出てきて物を言う、これが本当の苦しみが反映するものじゃないでしょうか。だから、この協議会の構成等についての一つの基準というものをもう少し厳格にして、そして鶏の生産関係のない土建屋の代表とかそういうような者が入ってくるようなことは慎んだ方がいいのじゃないですか。どうですか。
  68. 杉山克己

    ○杉山政府委員 鶏に全く関係のない土建屋の代表というようなのが入っているとすればそれは適当でないし、人選の仕方に問題があったかと思いますが、私どもとしては、県かそのような不適当な人選を行っているというふうには思っておりません。せっかくの御指摘でございますので、そういう人選についても、地元関係者、特に生産者の立場にも十分配慮するよう重ねて指導したいと思います。  ただ、申し上げておきたいのは、市町村段階ではまさに直接生産者自身がかなり多数入ってこられると思いますが、都道府県段階になりますと、生産者全体の数も多い、その中で総合的な立場で全体を見通しての代表的な意見をということになりますと、どうしても個々生産者というよりは、それらの生産者を束ねているところの団体の代表者ということに重点が置かれざるを得ないのかと思います。そういう代表者の方々が十分生産者の立場、意見を代弁し得るものであることが当然望ましいわけでございまして、私どもとしては、そういう形を通じて生産者の意見は反映されるというふうに考えておるわけでございます。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、農林省が今度、最近の各養鶏団体や内外の状況の中から、これは四月の二十八日に各地方農政局長あるいは知事等々にあてた通達が出されました。この通達をよく見ると、これはなるほど先ほどから局長も言われているように、また政務次官も答弁があるように、かなり前向きになっていることは事実です。だから、それは私は認めますが、前よりはいい、そしてやみ増羽に対する抑えるという意欲も見えます。見えますが、何せこれもお互いのモラルが確立していなければ、やった方が勝ちだということでどうにもならない。  そこで問題は、これを調整する場合においても需給調整協議会というものがやはり一つの足場になっている。それで、この需給調整協議会が従来二回会合をやったものを、これから四回やろう、あるいは現地調査もやろうではないかというようなことがうたわれております。これもいいことだと思います。  そこで問題は、それをやるためにはやはり財政の裏づけがなくてはならない。その財政上の裏づけというものはどういうようになっているのか。これは大蔵省もお見えですから、そういうことに対して、全国には二十八万戸という養鶏農家と一億数千万羽の成鶏及びひながいるわけでありますから、そして、しかも国内の卵の自給率というのは九五%まであるはずですから、これは大変自給度の高いものである。ただし、えさはほとんど外国から輸入ということを前提にして自給度が高いということを申し上げますが、この辺はどうでしょうか。
  70. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生おっしゃられたように、そういう需給調整協議会の運営をさらに積極的に活発に行わせるようにするということで、会合の数自身、それからチェックするための調査の回数、こういったものをふやすことにいたしておるわけでございます。これらに伴いまして当然事務的な経費がふえることになるわけでございます。これらの経費につきましては、全体の事務費の中ででございますが、約二百万程度の需給調整協議会の会議費を計上いたしておりますし、そのほか、これはちょっと細かく事務的な経費になりますので、後ほどまとめてわかりやすく御説明させていただきます。数字を申し上げさせていただきます。  それから、こういった個々会議なり調査についての充実を図る、そのための経費の予算増額を図るということのほかに、いまえさの問題が出ておったようでございますが、飼料価格について、農家の、これは養鶏に限らず、肉牛についてもあるいは乳牛についても同じでございますが、酪農農家についても同じでございますが、その一番コストの大きなウエートを占める配合飼料価格、これについて昨年来、秋それからことしの一月というようなことで、全体としまして約一五%の値下げを行うというようなことで、経営の安定にも寄与するような措置をとってまいっております。これは直接生産調整そのものではございませんが、養鶏農家の経営安定上の対策も、たまたまえさの話が出たものですから申し上げますが、そういうようなことで配慮いたしておるところでございます。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大蔵省にお尋ねしたいのですが、養鶏の問題というのは、国内で十分に自給のできるものだと思います。農家の意欲をちゃんと支えて、悪いものを征伐して、本当に調整をうまくやっていけばできると思う。後でえさの問題についてもお尋ねをしますが、最近のドル安・円高という中で自給飼料、特に養鶏の場合は九五%以上が購入飼料にまたなければなりませんから、そういうものの現状と見通しについてはぜひ明らかにしてもらいたいし、そこで大蔵省の方には——そういうことを前提にしていま農林省が通達を出された。農林省の通達は、これは前よりも財政を必要とします。金の裏づけがなければ調査ができない。しかもそれは、農業委員会なりあるいは市町村の調整協議会なりそういうものが監視をしなければとうていこの目的を達することはできないと思います。  そこで、第一点としては、やはり需給調整協議会の活動を潤滑にするために予算を盛り上げる必要があるということが一つと、それから、卵価安定基金なり飼料安定基金というものを検討しなくてはならないということが二つ目、それから三つ目は、農家はやはり一定の規模を持つためにはどうしても借入金を必要とします。制度金融を必要としますが、これについても再検討する必要がある。これは後で農林省に質問しますけれども、再検討の要があると思いますので、財政上の問題について今日考えられていることについて、大蔵省からお答えをいただきたいと思います。
  72. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど需給調整協議会等の事務的な経費、私は単価のところを若干一部の数字だけ申し上げましたが、全体としては前年六千八百万を九千八百万に約三千万増額いたしているところであります。
  73. 古橋元六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  先ほどから御議論を伺っておりまして、卵の生産調整という問題のむずかしさというものを非常に感じております。消費者の側から見れば確かに価格が非常に下がった方がいいでしょうし、しかし、農民の側から見ればある程度の価格は確保されなければいけない。しかし、同じ農民の中で価格の約束を守る人と守らない人との間の乖離が出てくる。ここのところをどういうふうにしていくのか。それにはまず第一段階に、私は個人的ではございますけれども、農民の中だけでいろいろよく話し合いをしていただくムードをつくる必要があるのではないか。そういう意味において、それにはまず地元話し合いをしていかなければならないということで、農林省の考えておられる需給調整協議会というものは非常に大切な一つではないかと考えております。さらにまた、現状がどうなっているかということも把握する必要がある。そういう意味におきまして、採卵鶏の飼養状況調査というものも必要なのではないか。そういうようなことで、先ほど畜産局長から申し上げましたように、五十三年度予算におきましても飼養状況調査につきましては年二回のものを年四回にするということで、予算もそういう関係の経費六千八百万円を九千八百万円にふやしておるという状況でございます。  また、卵の価格の安定でございますけれども、二つの団体、卵価安定基金がございます。これはいろいろと御議論のあるところで、私どもこれについては前からもう少し協調できないのかなと言っておるのですけれども、これについての基金の助成をやっております。これが五十三年度におきましては十二億一千五百万円計上いたしております。  さらにそのほか、畜安法に基づきます畜産振興事業団が助成いたしております調整保管、これは金倉の助成でございますけれども、こういうものについても体制をすでに整えておるということでもございます。  さらにまた、農林省が行政指導をなさるということであれば、それに応じて現在の既存の予算内において機動的に対処されるということも必要なのではないかと思います。
  74. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 飼料問題について、現在の円高・ドル安という段階で、特に採卵鶏の場合には九五%以上が購入飼料にまたざるを得ない。そのえさの問題の状況と見通しについてはどういうふうに把握をされているのか。
  75. 杉山克己

    ○杉山政府委員 配合飼料が鶏の場合主として飼料として考えられるわけでございますが、その価格の動向ということになりますと、その原料としてのトウモロコシ、大豆、こういったものの国際価格はアメリカにおける最近の豊作見込み、それから一般的にそのほかにも飼料原料事情が改善されてきておりますことと、それからただいま御指摘のように昨年じゅうからことしの前半、春ごろまでにかけまして為替相場が円高に推移してきたということがありまして、国内の配合飼料メーカーの原料入手価格は大幅に低下してまいっております。これらのことを配慮いたしまして、先ほども一部申し上げましたが、昨年の九月にトン当たり五千円程度、それからことしの一月に引き続きましてトン当たり三千八百円、これを率にいたしますと、昨年の秋以前の価格に対して通算約一五%の値下げを行ったところでございます。それから一月以降なお円高が続いております。このメリットも若干出ております。  ただ、私ども、現在の飼料の国際的な動向を見てまいりますと、昨年来ずっと飼料価格は安定してはおりますが、最近におきまして主原料トウモロコシの国際価格がやや上昇の傾向にございます。これは一つは、ブラジルの大豆が減産になるとか、アメリカ自身が価格が低いものですから農業に対する保護政策を強化するというようなことも出てまいった、さらにはソ連が相当まとまった輸入を行う形勢にあるということから価格か上がってまいったものと思います。それらのことを考えますと、現在買っております原料価格が七月以降配合飼料価格の上に反映して値上げが必要になってくるということが考えられるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、この一月以降の円高によるメリットを、先ほどお話の出ました配合飼料の価格安定基金にいわば貯金をさせまして、七月以降の値上げの際にはその値上げをしないで済むように価格補てんを行わせるという措置をとっているところでございます。価格自身は安いことも大事でございますが、その価格がしょっちゅう変動することのないよう、安定して推移するようにこれを保っていくことがまた必要であろうかと思います。その意味で、最近の飼料価格は価格水準も比較的低位にとどまっており、今後いま申し上げましたような運営を通じて安定的にこれを維持していくことができると考えております。
  76. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、卵の生産費は一体どういうように計算されるのか。それから羽数を三千羽から五千羽に切り上げたということは、農家の一定の労働力と五千羽という羽数をもってして、現在の飼料の動向、あるいは素ひなの価格、それに現在の物価の動向からする生活費を考えてみて、五千羽であれば農家は安心をして経営ができるのだという保証のもとに五千羽という位置づけをしたのか、それとも何かやぶにらみで五千羽くらいが適当ではないかということでやったのか、その辺の五千羽ということと生産費との関係、えさとの関係はどのように見られておりますか。
  77. 杉山克己

    ○杉山政府委員 一般的に生産規模が大きくなれば生産性は上がって生産費は低くなるのが原則でございます。ただ鶏卵の場合、ある水準まではそういうことが言えますが、またある水準を超えますと逆に単位当たりの生産費は上がってくるという波が見られるわけでございます。  具体的に申し上げますと、飼養規模別に産卵鶏百羽当たりの所得を見てみますと、三千羽から五千羽階層でもって六万七百十六円、この階層の単位当たり所得が一番高く出ております。それから三千羽未満になりますと、飼養規模が小さくなるにつれて所得は漸減している、きちんとした減り方を示しております。一方、五千羽を超えるとどうかというと、五千羽を超えて一万羽までの階層では五万五千二百四十六円、それから一万羽以上では五万一千二百四十四円ということで、五千羽を超えると百羽当たりの生産費は必ずしも規模に比例して安くなるとは限っておりません。  しかしながら、一日当たりの家族労働報酬について見ますと、規模拡大に伴って省力化が大きく行われるということも反映いたしまして、飼養規模が大きくなるほど家族労働報酬ははっきりと上がってまいっております。三千ないし五千羽層は一日当たり五千二十一円であるのに対して、一万羽以上層は一万七百二十円と、この点では大幅に上がっている傾向が見られるわけでございます。  それから、今回生産調整の基準羽数をかつての三千羽水準から五千羽水準に切り上げた理由はどうかということでございます。これは一番初めに御説明申し上げましたように、全体としての経営規模大型化してまいっております。そして、今日では五千羽以上の階層が生産量全体の七割以上を占めるという状況になってまいっております。昔の三千羽で抑えるということは今日ではやや小さきに過ぎるのではないかということで、大型と言うならば、生産調整の実効を期待するならば、五千羽以上の階層をつかまえることが実際的ではないかということで、これは生産者団体等の意見も聞いて改めることとしたものであります。
  78. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 生産調査の問題についてはもうこれ以上質問はしませんが、これまたいずれ詳しい説明を別にしてもらいたいと思うし、資料も出してもらいたいと思います。  私は、養鶏農家が一定の家族労働によって、その羽数によってえさ、素ひな、それに償却費、労賃、こういうものを計算をし、なおそこに安定した生活ができるということを基準にして物事は考えるべきだと思うのです。現在のように二・二%の農家が七〇%近い羽数を持っているんですから、当然これは専業化していく方向にいくわけでしょうから、そういうことに問題を設定してほしい、こういうふうに思います。  だから、五千羽がいいか一万羽がいいか、その問題についてはなお検討の余地もあろうと思いますから、そこで本日私が問題にしようとしたのは、そういうようにまじめな議論ではなしに、今度は、商社系というものは一種の自分たちの哲学と資本と力を持って、農林省が何を言おうが、協議会が何を言おうが、町村が何を言おうがおれたちはやるんだという形で、あちらこちらに天下って大変な経営者をつくり、最近では、わが茨城県の小川町では、今度は豚にも手を出した。イセ養豚というものがもうできております。こういうようなことになるのを見ると、これはどうしても黙っておるわけにはいかない。だから、この問題をここでもう一度蒸し返しますが、私は五月四日の日に現地の調査をいたしました。そして現地調査をしたときにまず驚いたことは、小川町という町は基地が二つあると言われているのです。どういう基地かというと、一つは百里の自衛隊基地、軍事基地です。これは相当な音がします。成田の空港の騒音も相当激しいものだけれども小川町の音もそれは小さなものではない。そういうところだけに人が住みにくいということはよくわかりますが、そこに最近どんどん入ってまいりまして、茨城県の五十三年の養鶏の成鶏数が三百五十三万羽でありますが、そのうち小川町は今日百十万、こういうふうになっておりまして、県全体の中の三割まではいきませんが、二八%くらいですかね、を持っている。ここの農家は四十九年に十五戸のものが五十年には三十一月になっています。そしてその三十一戸のうちで、もとからこの町に住んでいて経営をしているものは二、三戸で、四十九年前に入ったほかの者がおりますから、四十九年以前に小川町に籍を持っていた者は七戸ぐらい。あと二十四戸というものはまさに神奈川県、埼玉県、千葉県というように他の地区から入ってきている、こういう状態があります。しかもそれは、在来の経営者はよく守っている。お互いにそれぞれの経営を守っておりますが、外から入ってくる者が暴力的にこれを退けて、そして勝手に増羽をしている、こういう状態なんです。このことについて農林省は確認をされておるかどうか。
  79. 杉山克己

    ○杉山政府委員 個々地域の細かい実態についてその詳細までは承知いたしておりませんが、小川町の状況については種々いままで話も聞くところでございますので、茨城県を通じて資料を取り寄せておるわけでございます。いま先生がおっしゃられたようなこととほぼ同じような状況であるというふうに私どもも承知いたしております。
  80. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 小川町にそのように百万羽もの養鶏が入ってきたという背景について、それをどういうふうに農林省は把握されておりますか。
  81. 杉山克己

    ○杉山政府委員 小川町というのは、いま先生の御質問の中でもありましたように、茨城県の中では比較的開発がおくれている地域である、それから基地等もあるというようなことで、全体として農業的に見て、ほかの耕種農業等に利用しにくい地域、そこへ全体的に各地域から、地元では増羽が行われにくくなった、これはやみ増羽をやりたいというような意図も含めてかと思いますが、そういう経営がやりにくくなったところが余り目立たないところを求めて展開してきたのではないかというふうに一部考えられるわけでございます。地元に以前からおられる方々は普通の経営の延長としてやっておられるのでございましょうが、よそから来た者については、やはりそういう地理的な条件、それから個々経営の事情といったものを反映して進出が見られるようになったというふうに考えております。
  82. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私初めに申し上げたように、この方針なり通達というものが非常にまじめであって普遍性を持っておったとしても、これを実行するものは人間であります。その人間がこれに対して思惑をもってよこしまなことをすれば、必ずその結果というものは悪くなる。その極端な例が私はやはり小川町の増羽だと思う。あそこには基地があります。確かにその土地は余りよくない。広い山林があります。その山林地主と、その町にいる、これは名前もはっきり言いますけれども、永島建設という工場がある。その工場というものは、養鶏の鶏舎をつくり、豚舎をつくる専門の業者だと言われるくらいにこれをやっておる。そして、その山林の地主がこれに対して、森林法あるいは建築基準法、さらには農地法に違反すれすれの状態でここに、たとえば一町歩ということになると一つ規制を受けるから、それに近いところのような形で開発をして、そしてそれに誘致をする。誘致をするには政治力が必要だから町会議員、農協の中の理事、こういう者を使って、農協にも物が言えないように、町にも物が言えないように圧力をかける。これが調整協議会にまた物を言うから何も言えなくなってしまうという形でありますから、だから農林省が言うように、国としてはこういう方針を出した、それは県の協議会に任してある。県はまた市町村の協議会にゆだねてあるということになれば、そういう政治構造というものがある限り、この問題を抜本的に解消することはできない、こういう状態でありますから、これはいまここで答弁を求めるのではなくて、農林省としてはそういう構造をつぶさに、直接にでもいいから調べてもらいたいし、場合によれば本委員会調査団を出すぐらいのことをしたって別におかしなことではないと思う。そういうようなことをしない限り、まじめに養鶏をやっている人たちはこれはたまったものではない。これは何とも言いようがないんです。裁判をするわけにもいかないし、何もいかない。そうすれば、それをやった建設業と、それとぐるになっている一つの集団がもうかる。そして、あるところには山林地主を激励する集団ができているという。しかも、一反歩の賃貸料が五万円と七万円と言われている。騒音のするところの原野を貸せば五万円、七万円という金がもらえるということになれば、これはだれだってありがたい話だ。そういうことを黙って見ているわけにはいかないと思う。ですから、私は、この間は最初の調査だけれども、やがてもっと濃密な調査をして、この問題については一つのあかしをつけなければならない、こう考えておりますから、これは農林省の方として調査をする意思があるかどうか、この点はどうです。
  83. 杉山克己

    ○杉山政府委員 国が指示をして、それに基づいて都道府県が、さらに市町村がというのは、行政の流れとしてはまさにそのとおりでございますが、この問題は、この問題といいますのは、生産調整の問題は、まさに業者自身の間による、業者といいますのは生産者という意味でございますが、自主的な話し合いによる調整をベースとするものであるはずでございます。そして、そういったものの生産者自身だけではなかなか調整が図りにくいということから、地域の団体なり地域の市町村、公共団体の助勢といいますか介入を求めるということになってまいっているわけでございます。そういったところで調整のきかないものは、その上の地域の団体、県にあるいはさらには農政局単位に、さらには特に事例として極端なものは中央にも上がってくる。国会の場においてもこのように論議の対象になるということであろうかと存じます。私ども個々地域の問題について国が一つ一つ直接介入するというのは、実際問題として、事柄としても適当でないし、それから能力的にも限界がありますので、およそ一般にということではございませんが、いまおっしゃられました小川町のケースも含めまして、いままでも極端なケースにつきましては調査もいたしております。引き続いてそういう事例については調査を行いたい。また、そういう調査を行うことによって、関係者の自粛を促すことに効果をもたらすことができるというようにも考えているところでございます。
  84. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは宮域県の先般来問題になっている地域、あるいは先ほど自民党の玉沢委員から言われた岩手県、最近大きな大会をやった石川県、それと同じような形で並んでいる茨城県の小川町等々においては、これはぜひ調査をして、そういうよこしまなものに対して鉄槌を加えるということが、正しい者、まじめな者が大事にされるということになるんだから、これはぜひやってほしいということをます要望します。  次いでもう一つ、これは県の中ではどうにもならない問題が起こっている。これも御承知かと思いますが、埼玉県の畜産課長の紹介によって、埼玉県の森屋英竜という株式会社の森屋農場の代表取締役、これが越谷に養鶏場を持っている。六万五千羽ほどやっております。たまたまその地域河川改修のために立ち退かなければならない、こういうことで、県の課長の紹介といいますか書類によって、茨城県で引き受けてくれ、それが小川町に入ってくるわけですね。ところで、その書類が去年の十二月ごろ、地域の調整協議会は五十三年三月二十六日。すでに鳥は入って経営をやっている。こういうことであれば、これは県と県との間の問題は全くわからない。少なくとも県の課長という責任者の書類がある限り、それはどうかと疑うことはできない。それは信用する以外にない。そうしますと、埼玉県で六万五千羽がやめて廃鶏になった、これは全部移ったというなら話はわからないことはない。埼玉県の方でもいまだに堂々と経営しているし、茨城県でもやっているとしたら、これはおかしいじゃないですか、こういう問題。六万五千羽ですから、三千羽を一生懸命抑えようとしている、今度五千羽ですが、こういう問題については、どんなに人間が偉い人であっても有名な人であっても、そんなことは理由にはならない。これはみんな同じだ、平等ですから。こういう問題についての処理というものに対して、これはぜひ厳密な調査をしてもらいたいと思う。それを早くしてもらいたいと思う。これはどうですか。そういうことを聞いていますか。
  85. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまの御指摘の個別のケースについては承知いたしておりませんが、移転については、これはそのままそっくり持っていくということなら、別段生産調整に反するわけでも何でもないわけでございますが、そういう移転については、事実そうかどうかを確認する手続が必要でございます。ところが、いまのお話でございますと、そういう実態の方が先行してしまって、しかもやみでもって増羽が行われておる。もとのところでもって減産されておるという事態が証明されないうちに、そういう既成事実が進行しておるということになれば、そういう移転を認めておる趣旨とは反する話だと思います。その間の事務連絡をきちんとやって、そういう既成事実が先行することのないよう、移転問題については厳に処理すべきだと考えます。
  86. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間が参りましたから、あと三点だけお尋ねして終わります。  第一点は、私は、養鶏というものが、特に二百海里の問題などを考えてみたときに、養鶏だけではありませんか、畜産業は日本においては大事な農業生産の大きな一部門である、こう考えておりますから、やはり本委員会においても、養鶏に対する基本的な政策というものを追及しながら、まじめに経営をやっておる者がばかをみないような、そういうことを確立をする、政策的にも財政的にもそれから法律の上でも明らかにしてもらいたいということを、先ほど重ねて今井政務次官にお尋ねして、そういうことに対しては努力をするという意味のことがあったけれども、もう一度、今井政務次官、第一点についてお答えをしてもらえませんか。
  87. 今井勇

    今井政府委員 正直者がばかをみないということは政治の常道でございます。それをどうするかという担保の仕方についてのお尋ねであろうと思いますが、先ほど私が慎重な答弁を申し上げたのは、実はもろもろの問題があるからでございまして、直ちにここで答弁をしろとおっしゃいましても、同じ答弁を繰り返さざるを得ない。念のために申し上げておきますが、私は社会正義を破壊するようなものを許そうと思っておるのじゃ決してありませんが、それを取り締まるためにどのような方向でやるべきか、また、どのような方向が現在の自由主義経済下で可能かということを農林省としても検討させていただきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  88. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それで、そのためには、先ほど私が一つの例として茨城県の小川町の例を申し上げましたが、巨大商社養鶏の実態についても十分に調査をして、明らかになったものについては、それはどういう形でもいいから農林省みずから調査をして、それでわれわれも調査します。また関係団体も調査します。そういうものをあわせて、それに対して、悪いものは悪い、いいものはいいという形に指導すると同時に、ペナルティーという言葉がさっきありましたが、基金とかそういうところから追い出す、追放する。同時に、でき得れば四十九年の段階まで引き戻すということについては考えられませんか。
  89. 今井勇

    今井政府委員 実態の調査につきましては、しばしば申し上げましたとおり、農林省で実態を直接調査いたすことも可能でございますし、また、県を通じて調査することも可能でございます。特殊な例につきましてはすでに調査をいたしております。今後もその姿勢を続けてまいりたいと思います。  それからやみ増羽に対する行政措置としましては、いまのお話しのとおり、でき得る範囲のことを極力厳正に行わせたいと思います。ただ、問題は、もとの四十九年当時に戻せる担保でございますが、これはやはり協議会を通じて話し合いをしていって自主的にそういうふうにさせるということ以外には、いまのところ方途は十分なものがない、まことに残念なことでございますが、やむを得ないことだと思っております。
  90. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最近は卵価が非常に低迷をしております。だから、卵価の低迷というものを考えるときに、いま言う問題は大変大事な問題でありますから、やはり私たちは、なおこの委員会をさらに集中的な形で続けて、そして私は、まだ金融問題について一つも触れていない、前々から農林中央金庫をここに呼び出して融資の問題を聞こうじゃないかということがありましたが、直接そういうものを呼ぶことはどうかなということで、農林省自体としてはそういうやみ経営に対してどういう金融が動いておるかということも確かめなければいけない。そして、そういうだれが見てもよくないものに対しては、金融の面から、市場の面から、あるいは世論から、あらゆるところから締め出して、まともな顔では世の中が歩けないくらいにしなければだめですね、それを一つの哲学として持っておるのですから。だから、そういう人たちもこの場所に来てもらって、十分にあの人たちの見解も聞きながら、やはり聞くべきものがあれば聞くし、聞くところがないのならこれはやはりやめてもらわなければどうにもこうにもならないということでありますから、ぜひそのような取り扱いを重ねて委員長にお願いしながら、なお、私の質問はこれで終わったわけじゃありませんから、引き続いて次の機会にやっていくということを申し上げて、終わります。
  91. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  92. 中尾栄一

    ○中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新盛辰雄君。
  93. 新盛辰雄

    ○新盛委員 カツオ・マグロをめぐる南太平洋フォーラム諸国の二百海里漁業水域設定の動きは非常に深刻なものが出ているわけでありますか、前回も特にカツオの問題について質問をしたり議論もしてまいりました。しかし、現実はきわめて厳しい状況の中でございまして、わが国の遠洋カツオ漁業が、国民に動物性たん白質を供給するために、操業海域を遠く南太平洋に求めて生産増強に努力をしているわけであります。しかしながら、最近世界各国の二百海里漁業水域の設定実施によって、わが国の遠洋漁業はかつてない打撃をこうむり、いまだ経験したことのない危機に瀕していると言われています。特に、南太平洋諸国の二百海里設定、実施によって、南九州、とりわけ枕崎、串木野、山川あるいは宮崎の各カツオ基地等における事態は深刻化していると言われています。  こうした中で、昨年の円高・ドル安の影響等によって対米輸出の不振、国内需要の伸び悩み、魚価の低迷、そうした状況から、漁業経営が悪化の一途をたどっていまして、それに関連する加工業などすべての業界及び国民生活の動物性たん白質を求めていく面においても大きな影響を与えているわけでありまして、行き先不安も手伝って動揺しているということについて、私どもも非常に憂慮しているわけであります。  そうした面から、政府がこれまで外国の二百海里設定に伴ってカツオ漁業経営維持安定のためにどのように取り組んできたのか、またいかなる処置を講じてきたのかという問題について、きわめて消極的であり、あるいは漁業外交の面においても弱体化というふうにも言われているわけでありますが、そうした面について、きょうは大臣がまだお見えになりませんか、次官の方からもこうした当面深刻化している問題について、政府としてどういうふうに理解をしているか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  94. 今井勇

    今井政府委員 カツオ・マグロの経営維持安定策いかんというお尋ねでございます。  これは御案内のとおり、昭和五十一年に例の漁業再建整備特別措置法を制定いたしまして、それまでの固定化しました負債整理のための漁業経営維持安定資金の融資をする、あるいは経営規模の拡大、漁船その他の施設の合理化等を円滑に進めるための構造改善計画の推進などを行って、極力カツオ・マグロ漁業の改善に努力をしてまいりました。これはこれなりに成果があったものと私どもは考えております。  ところが、先生指摘のとおり、昨年末からの価格の低迷で再び経営状態が悪化しつつあるのでありまして、水産庁といたしましては、この法律の適用というものを踏まえまして必要な措置を講じてまいりたい、こう考えておりますが、何にも増してまず大事なことは需要を喚起することであろうと思うわけであります。そして、行き先に明るさが出てまいりますれば、またこれなりに皆さんも安堵されるであろうということで、ただいま実態の把握、それに応ずる措置について鋭意検討をいたし、適切な手が打てるように努力をいたしている最中でございます。
  95. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いまお答えのありましたように、結論から言えば需要の喚起、言うならば消費の拡大を図っていくことが、とりもなおさず生産者に対しても、あるいは安定した経営のあり方として好ましい状況でありましょうが、これから御質問申し上げますのは、それにしましても、基本的な漁場の確保、魚価、流通、需要の拡大、この問題が当面の問題として十分に認識を新たにしなければならない問題でもあります。  その第一の漁業の確保でございますが、外国の漁業専管水域の設定に伴って、強力な漁業外交を展開する必要があるだろう。もうすでにニュージーやその他の各国との交渉等も始まっておりますし、ギルバートとの交渉もいま進行中であるやに聞いております。こうした中で、南太平洋海域の漁場を一方的に喪失してしまうことのないように、伝統的な実績はぜひ確保しなければならないし、また、漁業協力の面において、それらの漁場の確保を含めた日本漁業外交政策を十分やらなければならないのでありますが、政府は、これまで交渉してこられた実績、さらに将来の展望について明確にしていただきたいと思います。  それに伴って、前回も議論をいたしました入漁料の問題は、漁業経営者が負担すべきものであるという政府としてはきわめて消極的な態度のように見受けられます。この問題も、せんじ詰めれば、サケマス北洋漁業の交渉の際に減船になってきたものに対する共補償を初めとする補償措置が行われております。そしてまた、かつては、二百海里が設定される昨年、一昨年の段階で、アメリカとの間における入漁料の問題について一部政府が、その補償のあり方についてはいろいろ問題はありますけれども、いわゆる業界を通して一時的な補償をしているという事実もあるわけであります。今後こうした問題は、もうすでに御承知だと思いますけれども、カツオ・マグロ漁業に関する十七県のかつお・まぐろ漁業対策推推道県協議会が生まれまして、すでに昨年来数回にわたる会合を重ねております。その申し入れの内容等もすでに御存じかと思いますが、何一つ前進をしていないし、そのことに対する真摯な取り組みがあったのかどうか非常に疑問であります。そのことについて政府としてはどういうふうに取り扱われているのかをお聞かせをいただきたいと思います。
  96. 今井勇

    今井政府委員 私から基本的なことのお答えをいたしまして、詳細につきましては長官の方からいたさせます。  まず、南太平洋フォーラム諸国の漁場の確保でございます。これは先生指摘になりましたようにパプア・ニューギニアとの間ではすでに交渉が妥結いたしまして、操業の継続が保証されております。また、現在ギルバート諸島及びソロモン諸島と交渉を行っております。さらにニュージーランドとの間でも、難航をいたしておりますが、先日、前の農林大臣が豪州に行かれましたときに、ニュージーランドの首相と再度会談をする機会がありまして、それによって両国間の貿易問題についてやや好転の兆しが出てまいりました。そこでこれを踏まえまして、今後漁業交渉開始ができますように鋭意努力をしてまいりたい、かように考えております。  また、二百海里をまだ実施しておりませんオーストラリアを含めまして、今後ともマグロ・カツオ漁場の確保のために最善を尽くしてまいりたい、このように考えております。  それから入漁料の問題につきましては、事の性格上、基本的には漁民方々の御負担を賜ることが筋であろうと思います。すなわち、入漁料そのものをずばり補助するということは、事の性格上なかなか困難であろうと私は思いますが、政府の中でも、漁民方々の経済状態を勘案しまして、ひとつ知恵を出そうじゃないかということでいろいろ検討さしております。以下、水産庁の長官の方から御答弁をさせたいと思います。
  97. 森整治

    ○森(整)政府委員 都道府県の知事の対策協議会からいろいろ御要請がございます。その最大のポイントに、いま先生指摘の国際漁場の確保と入漁料の国庫助成という項目がございます。いま基本的な考え方につきましては政務次官から御答弁を申し上げましたが、せっかくの御質疑でございますので、私どももいろいろ研究会を内部で設けまして、新しい事態の対応策につきまして詳細に検討いたしておるわけでございますが、いまの御指摘の入漁料の問題、これは直接国か補助をするというわけにはまいらないわけでございます。しかし、今度の、たとえて言いますとパプア・ニューギニアの漁業交渉におきまして、ともかく一船ごとに入漁料を払うということでなしに、漁場を向こうとしては提供するから、それに見合う入漁料を一括まとめて向こうへ払ってほしい、こういう新しいケースが出てまいりました。一体それはだれが払うのかということで、実はこの交渉をまとめる前に相当内部で議論をいたしました。結局は、いろいろ三団体に御負担を願う、各関係団体に御負担を願うということにしたわけでございますけれども、もっと突っ込んで申しますと、その団体が、じゃ金を払ってはするものの、一体だれが行くかということについての保証はない。また量が多いか少ないか、多ければたくさん行くだろうし、少なければ行かない、こういう変な問題がございまして、変と言ってはおかしいのですが、初めてのケースでございます。そういう事情もございまして、私ども実は寄り寄り内部では協議いたしまして、今回のパプア・ニューギニアとの交渉の決定に当たりましては、団体に対しまして、私ども何らかの知恵を出してみるから、ともかくとりあえずは団体でお引き受け願いたい、こういう経過で一応交渉をまとめたという経過になっておるわけでございまして、私どもといたしまして、今後予算編成等を通じまして、できるだけ知恵を出しまして、いま御指摘の問題についてはできるだけの、政府で何とかめんどうを見られないだろうかという線で検討をしてみたいというふうに考えておるわけでございます。
  98. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それと関連をしまして、国連の信託統治領のミクロネシア海域、特にマーシャル海域、この辺は鹿児島県カツオ・マグロ漁業の主要漁場ということになっているわけであります。このミクロネシアも一九八一年に国連の信託統治領から解除される予定になっておりますし、すでに昨年の八月にはミクロネシア議会で、米国の承認のもとに独自の海洋法を可決しております。来年の七月から実施の予定でありますし、そのことによって当然起こってきます漁場の問題、あるいは、六つほど可決されているわけでありますが、外国企業と漁業協定を結ぶ場合に海洋委員会、こうした中でどう取り扱うかという問題で論議がされています。結果的には、ミクロネシア議会が言っているのは、分担金、入漁料、こうした問題が中心になっているわけであります。こうした面から見て、私どもとしても、今後のカツオ漁業のいわゆる漁場確保の面において、特に中心であるミクロネシアの関係などを含めて事前の交渉をやるべきであるし、またどういうふうに変化していくかということについても、政府として把握をしなければならないはずのものであります。その面で、最近、これは鹿児島漁連の会長である山中貞則衆議院議員がマーシャル地区に出向くという話も承っておりますが、そういう交渉の中で新しくカツオ基地の建設なども進めていこうという話なども出ております。具体的には、カツオえさ供給基地をマジュロ島に建設するという問題も出ているわけであります。十分に政府も把握をしておられるとは思いますか、この種問題をやはり政府としてどういうふうに取り扱っていくのかということについて方針を示さなければならないし、その指標が全然ないわけであります。だから、こうしたことについてもひとつ政府の考え方を聞いておきたいと思います。
  99. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、南太平洋フォーラム諸国次々と二百海里を設定してまいりました。それに応じて私どももいろいろ交渉を行っておるわけでございまして、先ほど政務次官から御答弁申し上げましたように、それぞれの国々と交渉をしながら現在に至っておるわけでございますが、ただいまいろいろ御指摘のように、ミクロネシアが来年の七月一日より実施をするということになっております。これにつきましては、六月の五日から南太平洋諸国の集まりがございまして、外務省からも、われわれ水産庁からも、オブザーバーとして参加をするということに相なっておるわけであります。今後のこれら諸国の動静を探るには絶好の機会でございますので、まずそういうところの情報等をまとめまして、今後いろいろ対応策を講じてまいりたい。  現在は、ギルバート諸島とそれからソロモンの諸島と入漁交渉を開始しつつあるわけでございまして、いま先生指摘のような入漁料の問題あるいはカツオ・マグロのえさの基地の問題等々、いろいろな情報を得ながら、われわれとしても海外協力財団をどうやって使っていくかということとあわせまして、あるいは事業団等の協力をどういうふうにあわせて進めていくか、こういうことを全部総合的に含めまして、今後の漁業交渉の対応策を考えてまいりたいというふうに思っております。
  100. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これからの努力を期待するわけでありますが、次に魚価、流通の問題で、きょうの質問中心になりますけれども政府はいま、このカツオ・マグロの魚価が非常に急落をしておる、低迷をしておる、在庫増になっておる、あるいは各水揚げを行っている清水、焼津、枕崎、停船も余儀なくされるだろうと言われているわけでありますが、こうした実態をどうとらえておられるのか。五十二年度前半は、二百海里問題を契機とした水産物の全般的な魚価の上昇に一応あやかったというわけではありませんが、カツオ・マグロの魚価もそれなりに強い兆しが見えておりました。しかし、最近経済界の深刻な不況と魚価高によって、消費者の魚離れ、消費の減退、加えて韓国初め外国からの輸入の急増、そして円高によるかん詰め、冷凍輸出の停止、こうしたもろもろの要因によって国内の過剰在庫による冷蔵庫の逼迫、そうしたことも加えて、きわめて五十二年以降、特にカツオは暴落をしてきた、そういうことについて、政府は、特に水産庁はどういうふうに把握をしておられるのか。ここでカツオ輸入規制を強化してほしい、それは外国人漁業規制法に基づいて、特定漁獲物としてカツオ・マグロを政令指定すべきではないか、これは明確にお答えいただきたいと思います。  また、現状はどうなっておるのか、五十一年度、五十二年度、これまでのカツオに関する輸入はどれだけあったのか、そしてまた国内の需要の面においてどうなっていたのか、五十三年度、将来の見通しはどうなのか、そのことを明確にお答えをいただきたいと思うのです。そしてこの問題で、現在日鰹連が調整保管事業として独自の調整保管もあわせながら、この魚価の問題にいろいろな緊急対策を立てておるわけでありますが、そうした面におけるこれからの魚価安定のために、政府としてはどういうふうに取り組んでおられるのか。具体的に私の方から数字をもっていろいろと後ほど申し上げてみたいと思いますので、まず概念的な政府の、魚価流通問題について輸入規制、そしてさらに魚価安定のためにどういう措置をされるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  101. 森整治

    ○森(整)政府委員 いろいろ最近の需給事情からいたしまして、需要が伸びない、にもかかわらず供給の中でまた輸入が増大をして圧迫をしておる。そういう中で、まず第一番の御指摘としては、恐らく外国人漁業規制法によります輸入規制のための政令発動をなぜしないのかということが第一点であったというふうに思います。  そこで、この問題に関しましては私どももいろいろ検討はいたしておりますが、どうもこの外国人漁業規制に関する法律の特定漁獲物等としてカツオ・マグロを政令指定する、これをやりますと、先生御承知のように、本邦への陸揚げを目的とします外国漁船わが国への寄港を禁止するということになるわけでございまして、まあ相当強硬な措置に相なるわけでございます。それだけに、韓国との間に現在保たれております漁業関係に相当な打撃を与えることも逆に考えられる。そういうことから、韓国との間の漁業関係が少しおかしくなりはしないだろうか。かつて李ラインの復活みたいなことが行われかけたことがございます。そういうことからいたしまして、非常に極端なことはなるたけ避けてまいった方がいいのではないかという判断もございます。  それからもう一つは、国際的にいろいろな問題がある中で、あえてこういうことを発動せねばならないということになりますと、刺激が強くなりはしないだろうか。こういうことから、むしろ、この韓国からのマグロの輸入問題につきましては、政府間レベルでの話し合いあるいは民間を含めた話し合いということによりまして、現在のわが国の需給事情、価格の情勢、そういうものは同時に韓国の利害関係にもつながるわけでございますから、そういうことを基本に置きまして、国内の需要に見合った輸入の秩序を図っていくという線で韓国の協力を求めていくということを行ってまいりたいと思っておるわけでございます。現にそういうラインで、初村政務次官韓国にお出ましいただきまして、この辺の数量の調整に鋭意努力をしておる最中でございます。  それから、どのくらい入っておるかということもございましたけれども、話の順序が逆になって恐縮でございますが、確かに全体といたしまして輸入数量が、四十九年の六万トンから五十二年の十二万五千トンというふうに倍にふえておる。それで韓国も三万七千トンから八万二千トンまでふえてきているということでございます。韓国だけではございません。台湾もそれにつれて、ふえてきてはおりますが、韓国、台湾、これらを中心に輸入の秩序化を図ってまいるつもりでございます。  それから、今後のそういう価格問題に対しましての基本的な対策についての考え方はどうかという御指摘がございました。この問題につきましては、基本的には消費を拡大していく。たとえて言えば、マグロの輸出がいろいろ円高等によりまして停滞していく、その中でかん詰めにいたしましても市場が非常に停滞をしておるわけでございますから、そういう需要喚起をする意味でのいろいろな方策を考えること。それからもう一つは、調整保管の事業を本格的に動かしてまいりまして、ともかく当面の価格事情の改善を何とか図っていきたいというふうに考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  102. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その価格の面の調整、そしてそのことに対して、現実の問題ですから、調整保管中央協議会あるいは現地協議会というのがあるわけでありますが、これは生産者やら加工業者あるいはその他関係諸団体が入っているわけですけれども、現実の問題として、水産物調整保管事業、これは日鰹連の自主買い取りを含んでのことでありますが、この調整保管価格と放出価格との差損、そしてそれらの経費でありますが、これは二百海里時代の中に入って新しい要素として生まれてきたと理解をするわけであります。こうした金は全額国の財政措置によって補てんをするべきである、私はそう思うわけであります。そのことについてどういうふうにお考えになっているかをお聞かせをいただきます。  それで、現在この日鰹連では、五十一年度から実施した政府補助による調整保管事業と、これを補完する独自の調整保管事業の中で、現在政府調整保管事業の中で五十二年四月から五十三年三月、このカツオ調整保管枠が五千トン、そして五十三年四月から五十四年三月一万トン。この先の五千トンの内訳は日鰹連四千トン、全漁連が一千トン、こういう調整枠というのがあるわけでありますが、このことによって、余り金額のことを言うのはどうかという話もあるのですけれども、数字をあらわさないとどうしようもないので、現在買い取り価格としてキロ当たり二百三十七円、これは日鰹連が二・五キロ以上の最低買い取り価格としていままでやってこられたわけでありますが、それが四月十六日以降枕崎の方では二百十円になったわけであります。そのことによって生じてきている差損というのはきわめて膨大なものがございまして、魚価の面から来る、これは枕崎の漁港での数値でありますが、すでに約三億八千万程度売り負けているという状況が出ております。政府としては、問題の差損の補償、そうしたことについてこれからどういうふうにお考えになっていくのか。魚価安定基金で価格差の補償ということになるわけでありますが、現実問題としてまず差損に対する補償というのができるのかできないのか。日鰹連なども強い要望があると聞いておるわけであります。無利子でもって安定基金を出しているわけですけれども、できることなら八割を十割にしてほしいという意見なども出ております。また五年償還の延期、いわゆる償還計画をこういう赤字になっている経営者の事情を加味して政府の方で処置をさせるべきじゃないか、こういう意見も出ているわけでありますが、このことについてどういうふうにお考えになっているのかお聞かせをいただきたいと思うのです。
  103. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま御指摘の日鰹連等が行っております買い取り保管、これに伴いまして差損が出た場合に国が負担をすべきではないかという基本的なお考え方がまずあったと思います。これにつきましては、まず日鰹連等調整保管をする団体に調整保管をしていただく、これに対しまして国が、そういう事業主体の借り入れの金利でございますとか入出庫料、いわゆる金倉でございますが、保管料、そういうものにつきまして二分の一相当額を助成をするというたてまえでいままでやっておりまして、現に五十二年度は魚価安定基金から金倉、保管費用の助成として二千八百万程度の補助、それから売却した差損の八割相当額について八千百万の無利子融資を行っておるわけでございます。そういう売買差損が生じました場合には、損失額の八割相当額を魚価安定基金から無利子融資をする、期間は五カ年という仕組みになっておるわけでございまして、その何割が適当であるか、またそれをふやしたらというお話もいまございましたけれども、そういうことにつきましては、今後いろいろ検討の課題とは考えておりますが、基本的な考えの枠組みといたしましては、ただいまのように団体が調整保管を行う、その金倉を国が助成する、その差損が生じた場合には、差損につきまして無利子の融資をしてつないでいく。これがその先どうなったか、あるいはその後そうやっていってなおかつそれを返せるとか返せないとかいう話になった場合の問題につきましては、いまから議論をするのはまだ多少早いのではないかと思いますが、一つの考え方なり御意見として、要するに魚価安定基金には政府が金を出しておるわけでございますから、しょせんは政府の金で、それをどういうふうにするかということにつきましてはそれなりのお金の性格に応じて今後考え方を整理していったらいいのではないかと思っております。ただ、現在のたてまえといたしまして、一応返せるものという前提でお貸しをしてある、それは無利子でお貸しをしてあるということでございますから、まだ返せないという段階になっておらないので、私の方として魚価安定基金をどうするということまでいま申し上げる必要はないのではないかというふうに思います。むしろ、調整保管事業がうまくいくように、その事業をどういうふうに運営していくか、これは先生も先ほどいろいろ価格の問題等にも触れられましたが、そういう点で改善すべき点があればわれわれも大いに改善し、その結果、事業を適正に運営していってなおかつ負担し切れないという問題が出てまいりますれば、その段階で私どもとしてはその後の対応策を検討させていただきたいと考えております。
  104. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうもおっしゃっていることは、実際、買い取り価格の面で下がったとは言え、何もそう心配することはないんだ。言うならば、カツオはよくとれているじゃありませんか。昨年四月の計数でいきましても、焼津で七千二百十六トン、枕崎で二千三百六十八トン、価格で焼津が三百十九円、枕崎が三百二十四円。これが五十三年の四月で数量の方が倍になる。焼津が一万三千七百六十九トン、枕崎が四千五百八十トン、価格の方は焼津が二百四円、枕崎は二百一円、こういうふうになっているので、カツオは現実よくとれています。昨年の倍であります。だから経営の面で、キロ当たりの買い取り価格が下がったにしても収入では変わりがない、そういう観点にお立ちになっているので、そう深刻に魚価安定基金の方でと考える必要はないんじゃないかとおっしゃっているんだろうと思うのです。  そこで、金利、倉敷、いわゆる入出庫料、保管料で金利の面が発生するのですが、通常倉敷料と言っておるわけですけれども、現在二分の一補償ですね。それを三分の二程度にしたらどうか。公共事業投資の場合と同じようにするのがたてまえかどうかわかりませんが、そういうふうになるべきじゃないか。いまカツオ・マグロ漁業は非常な危機に瀕しているわけですから、そういうことについてお考えがあるのか。一期十五日、二期で三十日という金利、倉敷の形になっているのですが、仮に倉敷料一キロ五円とした場合、一万トンで五千万円です。一万トンに対して金利が二千万円。仮にキロ当たり五十円というふうに見た場合、一万トンでは差損が五億出るわけです。だから、この際十割全部めんどうを見てほしいという要望が出るのはあたりまえです。無利子、五年間償還の形を延期してもらうということも、いまは豊漁で浜値が下がるという状況ですけれども韓国マグロあるいはカツオがそれに加わってきているという現状ですから、非常に事態は、いま裕福だというふうに思っておられるかもしれませんが、夏のビンチョウも大体五月から六月が最盛期でありますけれども、これが少ないわけです。不漁なんですね。だから、こうしたものが豊漁にでもなればまた大変なことになるのでしょうが、来年のカツオ漁業というのはもう先行きわからない、冒頭申し上げましたそれぞれの漁場の問題と関連がありますので。そういう不安定な状況ですから、価格の面で補償していくということ、あるいはすでに一航海出て帰ってきたたびごとに借財が重なっていくということであってはならないわけであります。だからそういう面を政府がもっと積極的にお考えにならなければならないのに、どうもそういう補償という問題についてはいま差し迫ってやるということを考えない方がいいんじゃないかというような御答弁では困るのでありまして、水産庁長官の前向きに問題をとらえようとしていないところに問題があります。どうですか。
  105. 森整治

    ○森(整)政府委員 調整保管事業につきましては、ほかのカツオ・マグロ以外の問題と、それから漁業以外で政府が助成する調整保管事業、そういう制度との全体の関連が一つあろうかと思います。そういう横並びの比較、それぞれ利害得失、このカツオ・マグロの現状でどこまでそういう主張ができるかどうか、いろいろ問題はあろうと思いますけれども、せっかくの御提案、御意見でございますので、いろいろ私ども検討いたす際の一つの課題にはさせていただきたいというふうに思います。  この問題は、いま金倉の補助率をいろいろ動かすということと、それが実際に売買の収支として出てくるわけでございますから、その収支がどういうふうに出てくるかということ、それと、それに対するいまの無利子の融資制度、それの全体のどこにウェートをかけて今後物を考えていくか、こういう御指摘であろうかと思いますので、その一環といたしましてひとつ十分に検討させていただきたいというふうに思うわけでございます。  とりあえずの問題といたしましては、とりあえずともかく調整保管事業を発足させていくという方向で私どもとしては物を考えてまいりたい。その際に、いますぐどこまで改善をせねばならないかどうかという問題もあろうかと思いますが、関係団体ともよく相談をいたしまして善処いたしたい、こういうふうに考えております。
  106. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この魚価安定基金の五十三年度ですけれども、金倉に対して補助金の資金は十七億円、確認していいですか。貸付金は差損などを含めるわけですが、二十八億円、この数値は間違いありませんか。
  107. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  108. 新盛辰雄

    ○新盛委員 基本財産五億円、これは人件費とか事務費職員の諸経費ですからこれはいいのですが、金倉補助金の資金とか貸付金、こうした五十三年度以降の資金として、計画としてこれで十分なんですか。
  109. 森整治

    ○森(整)政府委員 当面の事業といたしましては支障はないと思います。もし今後の推移を見まして何か手当てが必要だとすれば、その段階で考えさせていただきたいと思います。
  110. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その段階で考えるということは、事態がいまのように二百三十七円も二百十円——現実浜値は百八十円あるいはまだそれ以下に下がっている話を聞いているわけです。枕崎では一時百二十六円というところまで来ておりました。こういう状況ですから、こうした魚価安定基金の面をもう少しふやすべきじゃないか。この十七億、二十八億円で足りるということではなくて、そのときに考えますということでお答えがありましたけれども、それで増額をするということも含めての回答ですか、水産庁長官
  111. 森整治

    ○森(整)政府委員 前年度の決算五億でございますから、今年度十七億計上しているのは相当な額と考えております。ですから、これを実行いたしてまいります過程でさらに何か対応する必要があるということであればその際に考えたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  112. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうすると、調整保管枠の拡大ということもお考えですか。日鰹連などに施行されているこの調整保管枠ですね。
  113. 森整治

    ○森(整)政府委員 今年度もすでに先生御承知のように二万トン、二万八千トンという枠を一応組んでおるわけでございますから、この措置でなおかつ不十分であるということであれば、これを拡大していくということについてはやぶさかではございません。しかし、いまこれからの予算といいますかこれから事業を実行していくという段階でございますので、どの程度の規模までいきますか、なるたけ早く買うことが目的ではありませんので、要するに値段を戻すということが基本の対策でございますから、枠をうんと拡大をして抱えてみたけれども一向値段が戻らないということでは相済まぬことでございます。そちらと兼ね合いでいろいろ物を考えてまいりたいと思います。
  114. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私は根拠を持って申し上げているわけでして、カツオ・マグロ調整保管事業関係で、いま現実に日鰹連、これは全体を通して調整保管の関係で単価二百十円、保管数量が四百八十八万五千三百キロ、そして金額か十一億一千六百三十九万三千八百円。放出の単価を百八十円に見た場合におきましても、放出数量四百八十八万五千三百キロ、金額が九億一千六百四十六万七千六十円。この差し引き一億九千九百九十二万六千七百四十円、こうなる。これだけの差損を抱えてしまうということ、これ自体非常にゆゆしきことでありますので、ぜひとも今後のこの措置について、補償措置なり償還期間の延長なりあるいはまた八割を十割にするなど、その手だてを水産庁としてもお考えをいただきたいと思うのです。よろしゅうございますか。
  115. 森整治

    ○森(整)政府委員 関係団体とよく協議しまして、いろいろ今後の運営につきましては十分遺憾のないように措置をしてまいりたいと思います。
  116. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうした中で、最近のカツオ一本釣り、三百トンないしは二百九十九トン型自営船です。こういう中で見てまいりますと、水揚げ、一航海百三十トン、単価を二百十円とした場合の経費を算出しますと、年間総水揚げ高が一億六千三百万円です。この年間水揚げトン数七百八十トン、損益をゼロとして考えた場合に、どうしても二百四十五円六十三銭にならなければ引き合わないという結果が出るわけです。そうしてそういう例からいきますと、百六十トンで二百十円の場合も、損益をゼロとする場合の単価は二百二十円になる。そして一航海水揚げでどうしても必要な数量は百六十七トンになる。こういう現実から見てまいりましても、それぞれの出漁する経営者は、油代やらいろいろな一航海当たりの出費、そういうものがかさんでいるということだけは現実でありまして、こういう問題についても十分ひとつ水産庁の方でも把握をしていただいて、今後の対処をお願いをしたいと思います。  そこで、一本釣りのカツオ漁船が価格の暴落というふうなことで危機にさらされているのも、実は原因が何であるかということを水産庁は把握をしておられるのかどうかわかりませんが、最近かつおぶしに、まき網漁業十一隻ですか、すでに漁船認可をしておられるわけでありますが、これを見まして、やはり一本釣りが、かつおぶしをつくるためにも、傷まないしまたりっぱなのができるということで、現地の加工業者を初めとして一本釣りのカツオというのは貴重なものであります。最近、海外まき網許可船がすでに十一隻、大体五百トン級であります。そして試験操業船が四隻、これもすでに出ているというふうに言われています。中には、日本丸というのは一千トン級のものであります。こういうような許可行政をめぐって、そのあり方について現地の皆さんから強い不満が出されております。サケマス漁業交渉がうまくいかなかったので、独航船を廃止して、廃止した船を遠洋カツオ・マグロ漁業船に転換をするとか、あるいはまた流し網漁船をマグロ・カツオ漁船に変えて認可していくとか、そういう転換を奨励をするような形の中で実はこういう一本釣りのカツオ漁船というのは大変圧迫を受けている。今後このまき網をこのまま野放しにして、北洋漁業等の交渉の結果から見てさらに拡大をされようとするのか。私どもは縮小してほしい、そういうふうに願ってやまないのです。そのことについて考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  117. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま先生の御指摘にございましたまき網の漁業でございますが、許可船が十一隻で、調査船は三隻でございます。四隻と言われたのは、恐らく大学の実習船が一隻ありますから、これを入れられたと思いますが、これは一時的な操業でございますので、私どもは一応調査船は三隻というふうに見ておりますが、合計で十四隻の操業でございます。  これらによります漁獲量は、五十一年で約一万七千トンで、これはカツオ・マグロ全体の漁獲量の二・四%ということに相なるわけでございまして、カツオの一本釣りの漁業漁獲量も逆に他方では増加をしておるということでございまして、私どもはこれが直接大きな影響を与えておるものとは判断をいたしておりません。  しかし、これらの南方まき網漁業許可等につきましては、五十二年の二月に「当分の間、漁業調整上及び水産資源保護上支障がないと認められる場合に限り、許可若しくは起業の認可をする。」という通達を出しておりまして、したがいまして、現段階では新規許可は認めておらないということでございます。今後とも新規許可につきましては、いろいろな二百海里の水域の設定の状況あるいはカツオ・マグロ漁業との調整の状況等を見きわめながら、慎重に対処してまいる所存でございます。
  118. 新盛辰雄

    ○新盛委員 政府許可行政のあり方について慎重に、いわゆる一本釣りとの競合とか、あるいは資源無視の操業方法であるこのまき網等についても、許可行政という中で十分に配慮していきたいというお答えでありますが、現実このかつおぶしになるいわゆる一本釣りによるカツオ、それが最近もうかつおぶしでは、消費者の食生活が変わったという面もありますけれども、粗製乱造なふしをつくって、それをパック原料、最近真空パックというのがあるのですが、もうかつおぶしをすっちゃって入れて売り出しておりますが、そういう原料にするために、これは安直でありますし、まき網でもってどんどんもう根こそぎとってしまって、傷がつこうがどうしようが、それをパック原料だからという形の中で、消費者を含める無統制な無規制な形の中でやられていることに、実は消費拡大の面でも大きな難点が出てきておると思うのであります。だから、こうしたことについて、これからのカツオ漁業者を守っていく面でも、ぜひ縮小の方向で今後御検討をいただきたい。そしてこの許可行政という面においても、そういう全体的な海洋秩序、いわゆる漁船操業のこれからのあり方等も含めまして御検討をいただきたいと思うのであります。  さらに、こうした状況の中にありますだけに、私どもは、今後こういう操業される方々生産意欲に対して、需要の拡大、販路をどう求めていくかということが当面の緊急課題でもあります。そのことについて、いろいろとかつお・まぐろ漁業対策推進道県協議会等においても議論がされているわけでありますが、現在の調整保管中のカツオを低開発諸国への経済援助物資にするために、かん詰めなど輸出品がストックされているのですから、これを思い切って政府が買い上げて、それを海外援助に充てるとか、あるいは学校給食、自衛隊給食用のかん詰め原料として国が買い上げて給食指導を行うなど、地震、災害の非常用の備蓄食糧としてこれまた国の買い上げによる措置を行ったらどうかということを前から主張しているわけでありますが、販路の拡大方式についてどういうふうに取り組んでおられるのか。また、現実にそのことによる実績はあるのか。そしてまた、業界も地方自治体も積極的にこの需要拡大のためにお取り組みになっておられます。そうした諸団体に対して、国として財政的な援助を裏づけしながら、販路の拡大、需要の拡大を図るべきだと思うのでありますが、そのことについて考え方をお聞かせいただきたいと思うのです。
  119. 森整治

    ○森(整)政府委員 主としてかん詰めに相なろうかと思いますが、カツオのかん詰めばそのほとんどが輸出に向けられておりまして、御指摘のように、輸出の競争力が減退して在庫が増大しているという現状でございます。これにつきましては、御指摘のように世界食糧計画の一環といたしまして、カツオのかん詰めを国が買い上げまして開発途上国へ現物で拠出するということをやっておったわけでございますが、さらに本年度からは海外商品無償援助事業というのがございまして、これにつきましてもカツオのかん詰め等を対象品目に加えるということで、これは外務省計上の予算でございますが、ただいま関係各省と協議をしているところでございます。それからまた、自衛隊に対しましてもその利用が拡大されるよう、これは一応の限度があるようでございますが、これもわれわれとしては現在いろいろ働きかけをしているということでございまして、カツオのかん詰めで申しますと、その実績としましては、五十年が二十七万ドル、五十一年が四十三万ドル、五十二年も四十三万ドルで、いま実施中ということでございまして、五十三年は先ほど言いましたように海外の無償援助も加えていこうということを考えておるわけでございます。この他いろいろな料理講習会だとか、集団の給食施設の関係者に対する普及啓蒙というような中で、積極的にカツオのかん詰め等を取り上げていく、マグロも若干ありましょうが、そういうことで、今後とも消費の拡大対策をさらに積極的に進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  120. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が参りましたので、いままでのお答えをさらに今後の議論の中に生かしながら、ぜひ現地の皆さん方の強い要望、そして最近のこうした危機に対して積極的に取り組んでいくという面でも、新しい漁場の確保とか、あるいは魚価、流通、需要の拡大、そうした問題については、いまのカツオ業者を含めて加工業者、そういう皆さんとも連携をとりながら、何よりも魚価の安定、そして生産者が価格を上げるから消費者もまたそれによって魚離れが起こるという仕掛けの流通機構ではなくて、生産者を優遇できる体制、そしてまた消費者に対しては消費者が魚を積極的に消化していくというような、漁業整備を図らなければならないと思いますので、政府の今後の一段の取り組みをお願いして私の質問を終わります。
  121. 中尾栄一

    ○中尾委員長 野坂浩賢君。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 去る五月二十五日に私は竹島周辺における漁業問題について質問を行い、政府側から答弁をいただいたのでありますが、その後の状況の問題なり問題点を指摘して、ごく簡潔に質疑を行いたい、こう考えております。きょうの質問は竹島問題なり、さらに時間が許せば、いま目前に迫っております米麦価の問題についても言及してお尋ねをしたい、こう考えております。  きょうも参議院の商工委員会におきましては、日韓大陸棚協定に関する国内法の問題、これに関連して竹島周辺における諸問題についての集中論議がなされておるのでありますけれども、いままでの私を含めた答弁の中では、歯切れが悪い、すきっとしない、こういう点が幾つかございます。きょうは、日本水産庁長官でありますし、日本の外務省でありますから、そういう立場で十分に明快に御答弁いただきたい、こういうふうに思うのであります。  繰り返す必要はないと思いますが、去る五月の八日、九日以来、韓国警備艇等によりまして、日本漁船特にイカ釣り、カニかご漁業の諸君たちが十二海里外に退去命令を出されたという問題に端を発して、今日までいろいろな動きがあることは御案内のとおりであります。  したがって、まず水産庁長官にお尋ねをしたいと思うのでありますが、竹島周辺における漁業の実態の現状というのは今日どのようになっておるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  123. 森整治

    ○森(整)政府委員 五月の初旬に、イカ漁場が竹島の周辺の海域に形成されておりました。そこへイカ釣りの漁船群が移動するイカを追って入ったということでございますが、具体的に申しますと、東経百三十度から百三十五度の間の北緯三十八度から四十度の海域に、ただいま百八十隻ぐらいのイカ釣り漁船が広く分布をしているというふうな状況でございます。したがいまして、竹島周辺の五十海里以内の海域にはなおイカ釣りの漁船と、沖合い底びき漁船、ズワイガニかご漁船、約二十隻程度が操業している模様でございますが、具体的にいま直接問題になっております竹島にどの程度近づいておるかということにつきましては明確ではございません。ただ、特にそのためにいま漁業を行っていくことに何かトラブルがあったというような情報は受けておらないわけでございます。もう一回申しますと、竹島の周辺にあったイカが北上しつつあるものですから、漁船もわりに分化をしておる、ただ竹島の周辺にもイカ釣り漁船はまだいるということでございます。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 緯度、経度についてもお話しをいただいたわけでありますけれども、竹島から五十海里の範疇ということになれば、私たちが質問をする問題もございません。問題は、竹島から十二海里、ここに焦点を合わせて今後御答弁いただかなければならぬ、こう思います。  それについての点は非常に把握しにくいしというお話、特にイカがいろいろと産卵を始めたのでその辺は定かでないということでありますが、私たちが承知をしておりますのには、二十五日にもお話をいたしましたけれども、十二海里内、いわゆる瀬づきといいますか、ことしは瀬づきになっておるためにイカが順次竹島の方に入っておる。五月上旬とっておりましたときには百二十箱ぐらいとっておったけれども、十二海里外に出て大体六十箱になってきた。そこで、五月、六月の最盛期のイカの価格を計算をすると、その差額が約一億二千六百万円に及びますよというお話をして、政務次官から、それらの問題は十分検討して、補償の問題についても考えていきたい、こういう御答弁をいただいておるわけです。水産庁長官は定かではないということでありますが、これらをめぐって鳥取県議会あるいは島根県議会では、韓国を訪問をして抗議なり要請を行おうというような事態まで起きた。しかし外務省から、事態は好転をしたんだ、こういうことで訪韓延期ということになったというように承知をいたしております。そういう好転したということの内容は、私たちは、日本漁船が十二海里の周辺に、竹島周辺でイカ釣り漁業ができ得るというふうに好転をしたというふうに判断をしてもいいではないかと考えておるわけでありますが、水産庁長官はどのようにお考えになり、外務省はどのような意味で好転をしたということになりましたかということを、それぞれ御答弁をいただきたい、こう思います。
  125. 三宅和助

    ○三宅政府委員 この前、先生の御質問に答えまして、私は好転の兆しがあると申し上げておるのでございますが、その後いろいろと韓国側との非常にデリケートな折衝を通じまして、事態は結果的に大いに改善しつつあるということでございます。  では、事態の改善とは何かという御質問でございますが、一般的に申しますと、原状復帰の方向に向かっての事態改善であるということでございます。それ以上の中身につきましては、いろいろと微妙な問題もございますし、それを言うこと自体か必ずしも日本漁民——私は日本の外務省てすから、日本漁民のためにならない。と申しますのは、御承知のように、お互いに竹島の領有をめぐりまして、日本日本の固有の領土、韓国韓国で自己の固有の領土だ、こう主張しておるわけでございます。領有権に絡めますと、安全操業の問題というのは少なくとも短期的には解決しないということから、領有権問題を離れて現実的な解決を図らんとしているわけでございます。したがいまして、こういうようなことから、私がいま申し上げましたことから中身を御推察願うというより方法がないということで、中身につきましてはこれ以上の答弁は差し控えさせていただきたい、こう思います。
  126. 森整治

    ○森(整)政府委員 外務省側から御答弁があったとおりでございまして、私どもはその線に沿って適切な指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  127. 野坂浩賢

    ○野坂委員 外務省の三宅アジア局次長は、原状復帰というお言葉であります。原状復帰というのは従来どおりということであります。水産庁長官は、そういう状況を受けて適切な指示と指導をしてまいるということでありますが、原状復帰ということでありますから、水産庁としては、現地の漁民皆さん方に、そういう原状復帰という状態から竹島周辺での漁業は可能である、出漁了承、こういうふうに指示されることかきわめて具体的で適切である、こういうふうに私は判断をいたしますか、適切とはそのような方法ですか。——私は水産庁長官にお尋ねをしておるのです。補充答弁は後からしていただきたい。
  128. 森整治

    ○森(整)政府委員 私が先ほど適切と言いましたのは、いろいろ適切という意味もございますけれども水産庁が非常に明確に指導して陣頭指揮までしていろいろやっていく、そういうようなことで申し上げたわけではございません。むしろ、私どもとしては、大いに目立つ形でいろいろ指導をするということは避けたい。そういうことがむしろこの時点では適切な態度であろうというふうに判断をいたしまして、それなりの現地への連絡をしながら、円満な操業ができるように、安全な操業が確保できるように配慮をしながら、普通の指導とちょっと違うのかもしれませんか、そういう対応をしておるということでございます。
  129. 三宅和助

    ○三宅政府委員 ちょっと誤解を与えてはいけないと思いますのでもう一度補足いたしますが、私が申し上げたのは、原状復帰の方向に向かって事態が改善しつつあるということでございますので、そのあたり誤解されると非常に困ると思いますので、もう一度立たしていただいたということでございます。
  130. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう裏づけのように、自民党の諸君たちが十九日から三日間訪韓をしておる。その中で金鍾泌総理とお会いになって、腹と腹だ、手荒なことはせぬ、こういうふうに言ったと新聞は伝えておりますね。いまのお話では歯切れが悪いのはやむを得ない、こういうふうに思うわけですけれども、この領有権とは別にして、漁業問題は現実的に解決をしたいという外務省の当面の措置でありますが、それなれば日韓漁業協定に述べてあります日韓漁業共同委員会というのがありますね。年じゅう事務局長おるわけですから、これに直ちにそれらの問題かあれば派生的に早期にかけて対処した方が、事態がいわゆる平和的に外交的に解決するわけですから、そういう措置を行ったらどうなのかということか一点と、佐藤北東アジア課長も二日に訪韓をして日本大使館等を通じていろいろな折衝を行ったわけですが、これは非公式なものか公式なものか。公式なものの日韓漁業共同委員会を開く意思ありやなしや、そして開くとすればいつごろ開こうとしておるのか、日本側は申し入れをしておるのかどうか、その点についてお伺いをしたい。
  131. 三宅和助

    ○三宅政府委員 現在の漁業協定に基づきまして、年一回委員会を開いておるわけでございまして、通常夏開いております。ことしももちろん開く予定でございまして、その際には、単なる竹島における問題のみならず、全体のいろいろな問題につきましておのずから日韓間で話し合うということでございます。ですから、日韓間における漁業操業問題秩序全般について話し合う、その一環としていろいろな問題が取り上げられる。したがいまして、そのためにはいろいろな事実関係その他も調べまして、われわれとしては十分検討してまいりたい、こう考えております。
  132. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この協定の中で、「いずれの国の政府も、他方の国の政府の要請があり、かつ、これを適当と認めるときは、暫定的漁業規制措置に関して」云々と書いてありますね。適当だと思うので、混乱が生ずれば早期にそういう委員会を開いていただきたいと思うのですが、夏というと時期としてはいつでありますか。
  133. 三宅和助

    ○三宅政府委員 具体的な時期に関しましては、双方の都合のいい時期でございます。通常は七、八月ごろ、夏に開いておりますので、これからいろいろ準備いたしまして大体そのころになるのではなかろうか。もちろん向こう側の都合もございますし、また日本政府の都合もございますので、その時期につきましては今後調整いたしまして決定いたしたいと思います。
  134. 野坂浩賢

    ○野坂委員 早期に開いていただかなければならぬと思います。  韓国との問題については、いつもはれものにさわるような態度で日本政府は臨んでおるのではないか、こういう意見が強いですね。そして、政府はその場しのぎの対応策ばかりで場当たり的だ、こういう批判が現地においては非常に厳しいのであります。そういうことを受けて、事態は好転しつつあるし、原状回復に向かって進んでおるということでありますから、しかも水産庁長官のお言葉によりますと、適当な措置だという措置において現場との連絡をとるということでありますが、どういう形であっても現地の皆さん水産庁としてはそういう連絡をとって、漁業関係に対しては万遺漏のないような措置をとっていただけるものだ、こういうふうに思いますが、その点はどうかということと、あわせて竹島周辺における安全操業についても十分対処ができておるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  135. 森整治

    ○森(整)政府委員 もちろん私ども、当面の漁期を何とか安全に操業できるのではないかという線で最初から最後まで努力をしておるわけでございます。いま先生の出されました御指摘につきましては、当然できる限りの、現在一番妥当、適当であるという方法で連絡と指導をしてまいり、また、そのためにいろいろなトラブルが発生しないということもあわせて念頭に置きながら、万全の措置といいますか、考えられるだけの手は打ってまいりたいと思っております。
  136. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それは原状復帰の前提だというふうに考えてよろしいわけですね。
  137. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほど外務省の方から御答弁がございましたように、すべて明確に解決をしているというふうには申せない段階でございます。方向で解決しっっあるという表現を使われたと思いますが、そういう段階でございますから、それなりの考え方で、そういうことを前提にいたしまして指導なりをしてまいりたい、こういうつもりでございます。
  138. 野坂浩賢

    ○野坂委員 海上保安庁おいててすね。——そういう事態で、事態は好転しっっあります。私をして言わしむれば、領有権とは別に暗黙の了解というふうにさえ受け取れるお言葉ですが、それについてはまた誤解だと外務省が言うかもしれませんが、そういう状況を踏まえて、海上保安庁は漁民の安全操業確保という立場で、漁船から見えるところに、しかも安心をして操業ができる態勢のところに巡視船等は配備されるものだ、こういうふうに二十五日の答弁では受け取っておりますが、巡視船は現状どこにおりますか。
  139. 向井清

    ○向井政府委員 お答え申し上げます。  先般の委員会で御答弁申し上げましたように、海上保安庁といたしましては、漁船の安全操業の確保を主眼といたしまして五隻配備、それから常時二、三隻の哨戒行動ということでレーダー監視によりましてむらなく監視をしておる。それによりまして漁船の方に安心感を抱いていただく、あるいは不測の事態に対応する態勢も堅持してきておるわけでございまして、現在もその態勢を続けておるということでございます。  最近の報告によりますと、巡視船の船長等からの話でございますが、巡視船等と多数の漁船が行き会っておるということもありますし、水産関係機関の情報提供もございまして、いまとっております海上保安庁のこのような哨戒警戒態勢はおおむね周知されておるとわれわれは了解しておる次第でございます。
  140. 野坂浩賢

    ○野坂委員 不測の事態は起きない、漁船とは十分連絡をとって安全操業の確信を漁民は持っておる、この位置に海上保安庁の巡視船はおると考えてよろしゅうございますか。
  141. 向井清

    ○向井政府委員 先般もお答え申し上げましたように、わが方の哨戒警戒態勢と申しますものは、非常に広範囲の海域を対象といたします関係上、レーダー監視でございまして、竹島周辺の海域が十分レーダー監視範囲にカバーできる地点まで進出し、状況判断ができる態勢を堅持しておるというふうに御理解願いたいと思います。
  142. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私が質問をしておる趣旨は、たとえば海上保安庁の巡視船は、レーダーの中に入って十分対応しておる、しかし漁船からは一向に見えない、こういうことでは漁船皆さんは安心をしないということになりますから、その点については漁船漁民皆さん十分連絡をとっておりますかということが一つと、不測の事態は起きないという確信を安全操業のために確保しておるか、こういうことを海上保安庁としては十分対応をしておるかという二点です。
  143. 向井清

    ○向井政府委員 先ほど申し上げましたように、巡視船があのあたりの海域を行動しつつレーダー監視を続けているわけでありますが、かなり広い範囲にわたりまして漁船操業が行われておるということで多数の日本漁船とも行き会っておるわけでございまして、そういう意味で漁民に対しては相当の安心感を与えておるのだろうとわれわれとしては考えております。  それから、不測の事態云々につきましては、これは相手のあることでございますし、予測外のことという意味での不測の事態でございますので、どのようなことがあっても直ちに対応できる位置取りとか時間的関係ということを十分配慮いたしておるということでございます。
  144. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういう対応をぜひしていただきたいと考えております。  そこで、先ほど三宅次長は、領土問題は非常に問題があるので、一応、福田さんの好きな現実的な対応の仕方ということでありますが、たとえば解決できない場合は、これは私の考えですが、十二海里以内には共同水域として両方とも漁業が入る、そういうかっこうで一定の、暗黙の了解ということでなしに堂々と入るような対応の仕方で、当面領有権の問題が解決するまでは現実的にやってもらった方がいいのではないか、こういうふうにさえ思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  145. 三宅和助

    ○三宅政府委員 解決の仕方にはいろいろな方法があると思います。いずれにいたしましても、領土問題、この安全操業の問題は基本的に領土問題からくる問題でございます。ですから、三十日の商工委員会の竹島問題における集中審議の際、総理も、竹島の領有問題については思いを新たにしてこの問題の解決に大いに努力したい、こう言っておられます。それはともかくといたしまして、その間に安全操業をどうやって確保するか。ですから、先ほど先生指摘のとおり、一つは今後委員会でこの問題を取り上げるということで、操業全般の問題をどうやって解決するかということも一つ方法でございましょうし、それから、とりあえずは五月、六月という期間に備えまして、何としてでも漁民皆さんに御迷惑のかからないために全力を尽くすというようなことでいろいろと努力を重ねておる。その結果が、私がすでに申し上げましたように、事態は大いに改善しつつあるということでございます。ですから、解決の方法にはいろいろな方法、また対応なりタイミングというものがございます。     〔委員長退席、山崎一平)委員長代理着席〕 そういう方向で現在努力しているということで御認識いただきたいと思います。
  146. 野坂浩賢

    ○野坂委員 皆さんからの御答弁をいただいて大体理解はできますが、お話がありましたように、原状復帰するために最大の努力をしておる、集約するとそういう意味の全体的なお話でありますが、暗黙の了解ということではなしに、堂々と安全操業がその海域でできるように、早急に措置をしてもらうように要望しておきたいと思うのであります。  それについて最後に政務次官の見解を承って、私の漁業問題に対する質疑を終わりたいと考えておるわけです。
  147. 今井勇

    今井政府委員 この問題につきましては、前の委員会でも私から御答弁申し上げました。外務省が鋭意折衝してくだすっておりますが、農林省といたしましても、竹島の領有権問題がわが国の主張でおり早期に解決することを希望するところでございますが、安全操業の問題につきましては、領有権の解決を待つことなく実際的な解決を図るというふうな方向でいま鋭意折衝をお願いをしておりまして、先ほどの外務省の御答弁によりますれば、明るい兆しの方向に向かっておるということでございますので、私どもはそれを受けまして、漁民の方の安全操業になお一層配慮をいたしてまいりたいと思います。
  148. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この問題は、いわば予測された事態でありますから、早期に今後このようなことのないように対応していただくことを要望して、次の質問に移らしていただきます。  政府はことしの米麦価の取り扱い、これについて、「三十日までに農林、大蔵両省の基本的な考え方が固まった」、こういうふうに報道されておりますが、その固まった基本について、どういうことが決まったのか、関係の責任者から御回答をいただきたい。
  149. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨日の一部の新聞にただいま御指摘ございましたような記事が載ったのは、私も読んで承知をいたしております。事実はあの記事のような進捗状況にはなっておりませんので、御案内のように、米価は、ことしはまだ生産者米価決定の時期につきまして、審議会の開催日取り等を含めまして細部を決めておりませんが、例年の例によりますれば、七月の上旬から中旬にかけて実施することになろうかと思っております。  米価の算定方式につきましては、最近は生産費所得補償方式によりまして決めておるわけでございますが、生産費所得補償方式の場合、種々のデータを用いるわけでございますが、重要なデータの一つといたしまして、五十二年産米の生産調査というものを用いますし、また五月まての——といいますのは、七月から見てわかる最近時までの物価、生産資材なり労賃等の物価を算定の重要な基礎に用いて算定をいたしまして諮問をし、最終的に決定をするということをしておるわけでございますか、現在のところ、五月までの物価、賃金等の統計は出ておりませんし、五十二年産米の生産調査も統計情報部におきまして、例年のことでございますけれども、現時点におきましては出されておりません。  したがいまして、大蔵省と私どもが、私自身がきょう現在で全く折衝をいたしておりません。したがいまして、記事のように、両省におきまして話がついたというような事実は全くございません。
  150. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この間もこういうお話で、何も接触がない、きょうも接触がない。それでは、ここに書いてあります「焦点となっている消費者価格についてはお米と麦の同時決定をめざす」「両方とも小幅に値上げするが上げ幅は麦の方が大きい」「生産者価格についてはお米をすえ置き、麦を三%前後引き上げる」、こういうことは農林省で検討されたことがありますか、ありませんか。
  151. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまお答えいたしましたように、本年産の生産者米価及び米の政府売り渡し価格につきましては、具体的にはまだ何も決めておりません。種々あらゆる場合についての一般的な検討はもちろんいたしておりますけれども、具体的に本年の価格をどうするかというようなことにつきましては、先ほど申し上げましたようなきわめて重要なデータ自体が出ておちない段階方針を決めるというようなことは全くございません。
  152. 野坂浩賢

    ○野坂委員 六月の十九日と二十日、米価審議会か懇談会が開かれるというふうに伝え聞いておりますが、米価審議会が開かれるのか、懇談会が開かれるのか、招集者は一体だれなのか、それについてお伺いしたい。
  153. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 一部の新聞の記事にそのような観測記事が載っておりますが、私どもといたしましては、先ほども申しましたように、生産者米価を決定するために諮問をいたします米価審議会は七月に入ってからという見当を現段階でつけております。六月の中旬の終わりごろに開催をするという観測記事は、実は昨年の米価審議会の審議の経過にかんがみまして、たとえて申しますれば、昨年も一昨年に引き続きまして答申かできなかった、あるいはまた深夜の審議ということでかなり難航をした、また会場等につきましても相当秩序が乱れたというようなことがございましたので、米価審議会の委員の各位が昨年の秋二回ばかり懇談会をお開きになりまして、審議会のあり方といたしまして、秩序ある審議をし、余り深夜にわたる無理な審議はやらない、そうして答申も米価審議会の使命として必ず行うというようなことのために、米価審議会での審議のやり方について今後検討し、手直しすべき問題はないかということを懇談会の形式で討議を行われました。その結果の一つといたしまして、種々ございますけれども、ただいまの問題に関連いたしましては、例年七月に開催いたします米価審議会、諮問を受けて審議をする米価審議会におきましては、米価そのものにできるだけ局限をして審議をする、それによりまして審議の能率も上がり、審議日数もできれば短縮をし、深夜、夜明けまでの審議というような異例なこともやらなくて済む。そのためには七月の価格を審議する前に、予備的にと申しますか、価格をめぐります生産事情あるいは流通、需給、消費といったような価格以外の問題につきまして事前に米価審議会におきまして、懇談会ではなくして審議会という正式の審議会において政府から種々の説明を受け、審議をしておくべきではないか、こういうような結論が出まして、政府に対しても申し入れがございました。  したがいまして、私どもといたしましては、六月の下旬中には生産者麦価についての諮問は行わなければならないことに法律上決められておりますが、その前ごろに、ただいま申しました米をめぐる価格以外の諸問題についての審議を行う米価審議会を、いわゆる前広審議と称して開催をしていただきたい、かような希望を持っております。ただ、具体的な日程につきましては現在決めておるわけではございませんが、新聞の記事の前後であることはまず間違いないと思いますけれども、大臣の日豪経済閣僚委員会の出席の日程の細部がまだ決まっておりませんので、決めかねておるところでございます。
  154. 野坂浩賢

    ○野坂委員 麦価の審議会は二十二日と私どもは承知しておりますが、それが違っておるかどうかはっきりしてもらいたい。  それから、これは米価審議会の懇談会ではなしに米価審議会そのものであるという御答弁です。そのときには生産の事情、消費の事情、こういうようなものだけでやるということですが、そういうことを積み上げていくと、大体米の値段、価格というものが出てきて、あなたのお話を聞いていると、その裏には七月の上旬には深夜にわたらないで一気に、きわめて簡単に解決をするのだというようにさえ受け取れるわけですけれども、この六月十九日と二十日の米価審議会は、そういう資料その他は全部提出をして、農林省側から米価をめぐる諸情勢、こういう意味で生産、消費あるいは物価の動き、そして計数、そういうものまでも説明されるわけですか。
  155. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 二点のお尋ねでございますが、生産者麦価を諮問する米価審議会、六月二十二日という御指摘でございますけれども、具体的には先ほど申し上げた事情にありますので決めておりません。ただ、先ほど申しましたように、六月いっぱいには諮問をして政府が決定することが法律上義務づけられておりますので、大臣の訪豪の日程等もにらんで、恐らく御出発になる前までに決めなければいけないのではないかというような見方をいたしておりますが、いずれにしても細部が決まりませんので決めかねておるところでございます。  それから、先ほどお答えいたしましたその前に開く予定をいたしております価格以外の米に関する前広審議のための米価審議会、これは価格に直接関係するような議論は行わないという前提で開いていただくわけでございます。米価審議会の懇談会でもそういうような趣旨で申し入れもございます。また、先ほど申しましたような生産者米価決定の際の重要な資料でございます生産調査、昨年の分でございますが、これは恐らくその時点までには間に合わない、例年のことでございます。したがいまして、そういう資料も提出することはないと思いますので、その審議において具体的に価格がどうなるかというような議論にはとても及ばないというふうに考えております。
  156. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それまでに農業団体、農民団体等との意見の交換なり、そういうことはやる必要があるだろう、こういうふうに思いますね。そういうことはおやりになりますか。
  157. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 昨年の例でございますと、大臣と農業団体の代表との米価をめぐります。米価だけでございません、基本的な農政も含めますけれども、協議は、話し合いの場は、昨年はたしか三回持ったと思います。今年も第一回はすでに持っております。ただ、具体的な米価問題というよりは、米価の決定をめぐる背景とも言うべき基本的な農業の認識なり基本対策というようなことについて、種々御要望もあり意見の交換もしました。また近く第二回が行われることになると思います。(野坂委員「農民団体は。農業団体だけでなしに、農民団体というのがありますね」と呼ぶ)農民団体につきましては、これまでは特にそういう正式の場での議論をしたということはたしかなかったかと思いますが、要請ということで、いわば陳情というような形で大臣にお会いいただくことは、これまではあったかと思います。
  158. 野坂浩賢

    ○野坂委員 要望があればやりますね。
  159. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 大臣と御相談した上で善処したいと思います。
  160. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたはどう思いますか。
  161. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 お申し越しがないので、どういうような趣旨でどのようなやり方をするかということが明らかでございませんから何とも申し上げかねますけれども、秩序ある普通の要請であるということならば、大臣の日程がとれれば考えられることだと思います。
  162. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんか、米の消費の拡大はことしは全力を挙げてやるわけですね。この米の消費の拡大の際に、これは新聞を見ますと、あなたは全然話し合っていないということですけれども、米は五%程度上げるんだ、計算でいくと、三年間で逆ざや解消でいくと五・九だ、しかし、まあ五%くらいだろうというような話があります。これはあなたはそういうことはないだろう、こういうふうにお考えだろうと思いますが、この米の消費の拡大をやらなければならぬ。一般的に言うと需要と供給のバランスということを農林省側は盛んに言われますね、だから減反をやるんだというような話ですね。米の消費の拡大をやるということになると、余り値上げをしては拡大につながらぬではないかというのが自由経済の原則ですね。そういうことについては消費価格というものはそう上げないというふうになるのであろうと常識的には思いますが、その点はどうかということと、それから逆ざやの解消は大蔵省と話し合っておるかどうか、また、この米の消費の拡大と逆ざや解消は二つのうちどっちを重点に考えておるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  163. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 米の逆ざや解消について大蔵省と農林省が話し合っているかというお尋ねでございますけれども、これは先ほどお答えいたしましたように、生産者米価、売り渡し米価とも、私自身きょう現在まで全く大蔵省と話し合いをいたしておりません。これははっきり申し上げておきたいと思いますが、やっておりませんので、大蔵省と合意したというような事実はないわけであります。  ただ、政府といたしまして五十一年産米を決めたとき、五十一年度以降おおむね五カ年間を目途に売買逆ざやの解消を図るという方針を定めまして、五十一年産、五十二年産につきまして段階的な解消を行ったことは御案内のとおりだと思います。この方針はいまも残っておりますし、また現在両米価の間に大幅な逆ざやがあることも事実でございますので、段階的な解消を図る必要が基本的にはあると考えておりますが、消費者家計の問題あるいは物価への影響等諸般の事情もありますので、今後総合的に検討をしてまいりたいと思っております。  なお、おおむね五カ年間と申しておりますのはおおむねでございますし一また残っておる一六・七%を、一部新聞に出ましたように、あと三年間だから三分の一としまして五・六%だというように機械的に当初から考えているわけではないわけでございます。そのときどきの情勢に応じましておおむね五年間で解消したい、こういうことでございます。  なお、質問の第二点でございます米の消費拡大と逆ざや是正、売り渡し価格の引き上げとの関係につきましては、最近米の消費が依然として減少傾向にあるわけでございまして、これの一番大きな原因は食生活が多様化してきた、副食が非常にふえて主食が減ってきたということ、副次的な要因はたくさんあると思いますけれども、そういうことが基本だと思います。家計費に占めます米の購入費の割合は、御承知のように、三%をすでに割っておるということでかなり小さなものになっておりますし、また、その価格が消費にどの程度影響するかということは、もちろん影響はあると思いますけれども、最近の統計を種々分析いたしますと、われわれが普通考えますほど大きくはない、そのように思います。したがって、逆ざや是正のための売り渡し価格の引き上げの幅の大きさ、それから競合食品との相対価格関係がどうなるかというようなことと関連する問題でございますので、少しでも引き上げれば直ちに消費に大きく影響するというようなものではないと考えております。
  164. 野坂浩賢

    ○野坂委員 長くなりますから、生産者米価については今国会中いろいろと議論をさせていただきたい。  ただ私どもは、今度の政府の減反政策は食糧管理法を守るためにやむを得ない措置だということを何回も聞きました。生産者側から見れば、食糧管理法というのは直接統制あるいは全量買い上げ、二重米価、こういうことだと思っておるわけですけれども、全量買い上げなり直接統制は終わった、残された二重米価がとれれば、食管会計、食管法というものはなし崩し的に崩壊をされるという姿になることを心配をしております。  そこで、もう時間がありませんから、政務次官に直截にお尋ねをいたしますが、今度の減反問題についてペナルティー問題というのが予算委員会なり本委員会でずいぶん論争されました。農家の皆さんの自主的な判断と理解の協力ということであったわけでありますが、湿田その他の事由によってこれに協力でき得なかった地域もあるわけです。それと生産調整に応じた地域とは、たとえば農村の基盤整備事業とかいろいろな事業がございますが、そういう点について格差をつけるようなことはないであろう、私はこういうふうに考えておりますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  165. 今井勇

    今井政府委員 この問題については前のどなたかにも御答弁申し上げましたか、私ども生産調整については農民の皆さん方の御協力というのを第一に考えておりまして、そのために各地方公共団体にもずいぶんお骨折りを願って、これを一〇〇%達成しよう、達成できるという前提で実は行っております。特に割り当ての問題について、いま湿田のお話が出ましたが、県の割り当てのときにはそういうことも勘案して枠を設定をいたしておりますし、その中でのお話し合い個々の問題を決めていただいておりますので、できないところに無理無理させるということには相ならぬというふうに確信をいたしております。したがいまして、全部できるという前提のもとで行政を行いますので、そういう意味の差別は考えておりません。
  166. 野坂浩賢

    ○野坂委員 格差はないということでございますね。
  167. 今井勇

    今井政府委員 この間も補助行政等についてのお尋ねがございましたが、全部できるんですから、格差はあり得ようはずがございません。
  168. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全部できるんですからということですが、できない場合を想定をして、そういう点についても格差をつけるようなことは農林行政としてはないであろう、こういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  169. 今井勇

    今井政府委員 ちょっと先生の言い方と私どもの言い方が違うのですが、私どもはできないということを考えてないものですから、当然格差はないんだというふうに考えておるわけでございます。
  170. 野坂浩賢

    ○野坂委員 たとえば、大阪府は現状は一〇〇%ではないわけですね。そういうところと一一〇%やったわが県とで格差があるとすると、協力をしたところはいいけれども、協力しなかったところは、要請があってもやらないぞということでは全体の国の農政というものが上がってこないんだから格差をつける、そういうことはやらないで農林行政を進めなければわが国の全体の農政の進展がないじゃないか、そういうことを申し上げておるわけで、ある場合を想定して物を言っておるわけです。現実にあるのですから。
  171. 今井勇

    今井政府委員 補助行政につきましても枠に限度があるわけでございますから、いまお話しのようなところで進度をどうするかということならば先生のお尋ねのようなことでございまして、それはやはり一〇〇%達成する、一二〇%達成するということの方に進度を合わせることは当然のことだと思います。
  172. 野坂浩賢

    ○野坂委員 福田総理もあなたの上司の中川農林大臣も、減反政策というものはペナルティーはやらないのです。減反政策は農家の自主的な判断、そして今日の情勢の理解と協力を受けて進めるべきものでありまして、ぜひ御理解と御協力を賜りたい——私はそれぞれの事業に格差をつけないということがその言葉の裏の意味だと思います。そうでなければ日本の農政は格差行政をこれから進める、政府施策にある程度協力できない者は切って捨てるというまことに無慈悲な農林行政になるおそれを私は持つわけです。そういうことはないですか、ないようにすべきではないですか、こうあなたに言っているわけです。その点はどうです。
  173. 今井勇

    今井政府委員 政治の要諦は正直者がばかをみないということでございましょう。したがいまして、先生のお尋ねのように、片や意図的に政府のいまの要請に対して御協力を賜らない、片や積極的な御協力を賜るという場合に、その補助率を変えるとかなんとかいうわけにはまいりませんが、限度の中で事業を執行する場合にその遅速がある、あるいはその進度の甲乙がある、これは当然のことだと思います。
  174. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その辺がよくわからぬのです。私とあなたと意見が若干かみ合わぬところがありますね。そう思うのですよ。
  175. 今井勇

    今井政府委員 私は全くかみ合っていると思うのです。あなたのおっしゃり方と私の言い方が少し違うだけのことであって、政治の要諦は正直者がばかをみないことだということに尽きていると私は思うのであります。もっと言うならば、補助行政でございますし、枠に限度があるわけですから、どちらを先にやるか、どちらを優先的にするかという場合にはおのずから差がつくであろう、そういうふうに申し上げておるわけです。
  176. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私が言っておるのは、協力した者は正直者であって、自分の判断からやむにやまれず協力でき得なかった者は不正直である、そういう認識にさえとれる。誤解を生みやすいですね、あなたの言葉は。日本の農民はみんな正直なんです。ただ協力できなかった。これしかつくれないんだ。県も、たとえばあなた方は七項目の基準を出してきた、その七項目の基準に基づく数字というものは出し得なかった。そして、県から市町村、部落へと、こういうふうにおりてきた場合は、きわめて通俗的に簡単に何割ということで決められておる。あなた方が決めた七項目と違った方法で下では決められておるわけですよ。そういう点もあるんだから、正直、不正直の問題はないじゃないか、みんな一緒ではないか、こう言ってあなたに申し上げているわけです。その点についてはそういう事情を了察して、正直、不正直、そういうものはこの問題に関する限りないじゃないですか。だから、同じように農林行政というものは補助事業をすべて進める、公共事業を進めるということは当然ではありませんか。いよいよ格差があるのに、さらに格差をつけることになるのではないですか。だから、一般的に、平面的に格差のないようにしてもらいたい、こう言っておるわけです。
  177. 今井勇

    今井政府委員 ですから、私は意図的にと申し上げたのでございます。  くどいようでありますが、各府県の割り当ては、もろもろの状況を考えて枠を決めたわけでございますから、その枠の中でそれぞれ各町村、各個人のお話を承ってその枠の消化について御協力を賜ろう、私どもはそれを考えておりまして、一〇〇%達成するような努力皆さんが血のにじむような思いでしていただいておるわけですから、その意味で私どもは全部ができるものという前提で行政を行おう、こうしておりますが、万が一、意図的に、おれは協力しないのだという者がもしおありであるならば、公共事業等の進度についてこれは差があるのは当然であろう、こう申し上げたわけでございます。
  178. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この点については実質的なペナルティーをすべての事業に科する、こういう政府方針である、私にはそう思われます。そういう受け取り方しかでき得なかった、あなたの答弁は。したがって、この問題については、もう持ち時間が経過しておりますから、委員長にお願いを申し上げて、改めて別な機会で十分論争さしていただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  179. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 野村光雄君。
  180. 野村光雄

    野村委員 私は、通告いたしておりますとおり、本日は鶏卵の生産調整と養鶏農家の経営安定対策、これを主体にいたしまして、ただいまから質問いたしたいと思います。  この問題は、すでに昨年十二月八日、さらに本年三月二十九日、二回にわたりましてわが党の吉浦議員の方から指摘がございまして、最近のイセ並びにタケクマ等を初めとする商社のやみ増羽が指摘をされまして、この吉浦議員の質問が発端となりまして、全国的に大きな問題となってまいりました。去る五月の二十七日でございましたか、朝、NHKテレビにおきましてもこの問題が長時間にわたりまして放映をされた実態でございます。  こういうような指摘を受けまして、農林省といたしましてもようやく事の重大さを再認識なさいまして、去る四月の二十八日に関係局長名によりまして「鶏卵の生産調整の強化について」ということで全国都道府県知事に通達が出された、こういう実態でございます。  本問題がさらに私どもの北海道におきましても大きな課題となってまいりまして、一昨日私はこの養鶏農家の実態というものをつぶさに調査をしてまいった次第でございます。  本問題に対しましては、わが党といたしましても、時期を見ましてぜひこれは鶏卵生産調整の強化に対する国会決議まで持っていかなければならない、こういう決意をわが党としても固めているわけでございますけれども、このような背景の中から、さらに私が調査をいたしてまいりました諸問題を取り上げながら本日はお尋ねをいたしたい、こう思うわけでございます。  まず第一番に、基本的なことでお尋ねをいたしたいのでありますけれども、養鶏農家の位置づけ、これをどういうふうに農林省は考えているのか、この基本的な問題でございますが、養鶏農家は私が申し上げるまでもなく、農業の基盤の上に今日まで発展してまいりました。しかも、長い伝統と歴史の示すとおり、養鶏農家というものがかつてのいにしえのころから農家の手によって育成されてまいったことは自明の理であります。そういう中から、今後の発展、育成というものに対しましては農林省の役目として当然手がけていかなければならない、こういうように私は考えているわけですけれども、最近一部商社の中には、これは工業としての位置づけというような問題が言われ始めてまいってきております。このような商社の考え方に対して、農林省としてこの際明確に、養鶏農家の位置づけというものを天下に示す必要がある、こう考えますけれども、この養鶏農家の位置づけに対する基本的な農林省のお考えをまず明らかにしていただきたいと思います。
  181. 杉山克己

    ○杉山政府委員 養鶏は、わが国の農業の中でも、畜産一般いずれも成長を見込まれており、その中にあっても特に四十七年来その発展を遂げてきているところでございます。四十七年をベースに、六十年についての需要と生産の長期見通しを立てておるわけでございますが、その中でも明確に成長分野として位置づけが行われており、農政の方向としても、これを育成強化していくということは、基本理念として確立されているところでございます。  ただ、養鶏の経営のあり方ということになりますと、先生もいま御指摘になりましたように、これは一般の土地に依存する耕種農業とは異なりまして、施設産業的な性格が強うございます。その点をつかまえて、一部では確かに、むしろ工場生産に近い企業経営だというような考え方があるのかと思います。事実今日まで大資本による直営あるいはいわゆるインテグレーションという形での養鶏の経営が進行してまいったわけでございます。そうして、それはそれなりに確かに生産性も上げて、経営としてのメリットも大きかったというふうに見るわけでございます。  ただ養鶏は、これは古くから農家にとって副業的な地位からだんだん独立したりっぱな畜産経営という形で育ってまいりまして、現在これに依存している農家の数もきわめて多いわけでございます。一方にきわめて大規模のものがあると同時に、中小規模の、これに生計を依存している農家も多いということを考えますと、そのあり方について、むやみに一般工業と同じようにこれを大規模化、工場生産化していくということには問題があろうかと思います。  その意味で、いずれも一つの考え方のもとにそれぞれ成長を遂げてきているところでございますが、その間の調和を図り、一つの全体の畜産業として調和を図りながら、その育成を考えていくということがきわめて重要な課題であるというふうに認識いたしております。その観点から、大中小を問わず、全体としてその経営が安定するように、特に需給問題が一番むずかしい話でございますので、企業間においてこの調整を図る、いわゆる生産調整を図るということで、特に四十九年来その強化について、私ども行政当局も限界と思えるくらい介入をいたしましてその実行方を進めてまいったわけでございます。  最近におきまして一部、特に企業的経営のものにつきまして、地域的に限られている話ではございますが、やみ増羽の問題等が生じて、先生指摘のような大きな問題になりつつあるということは私どもも十分認識いたしておるところでございます。これらの是正方については、本日のこれからの御質問にお答えする中でももう少し補足して御説明申し上げることになろうかと思いますが、早急にできるだけの是正を図ってまいりたいと考えております。
  182. 野村光雄

    野村委員 いまの御答弁を聞いておりますと、農業の立場ということで認めてはいるけれども、一方では工業と農業との安定調和を図るのだ、こういう非常にあいまいな印象を受けたわけでございます。  私が一番心配いたしますのは、だんだんと工業的な、商社がこういう大型な、大規模な養鶏経営というものを始めてまいりますと、年々養鶏農家が倒産をし、激減をいたしております。確かにいま、一部には商社の大幅な増産によって価格は安定し、消費者の立場からは若干歓迎されておるかもしれませんけれども、これを放任いたしておきますと、近い将来、結局は小規模の農家が行き詰まりを来して倒産の憂き目に遭い、最終的には数少ない一部の商社に一手にこれが握られていく。こうなった場合に、結局は商社の言いなりの生産流通ということになっていく。最終的には消費者自身も高い卵を買わなければならない、食べなければならない、こうなると私は心配しているわけです。  そういうことで、この基本的な問題はもう少し明確にしておく必要がある、こう思うのですけれども、どうですか。
  183. 今井勇

    今井政府委員 こういうふうに考えていただければよろしいかと思います。  一つか二つの企業に全体を牛耳られるような段階というものは考えてもおりませんし、また、そうあってはいけないわけでございます。と言って、先生のおっしゃるように、どこまでが認められて、どこまでが認められないというのを即答しろというのもこれまた非常にむずかしいことであろうと思う。そういう意味で、大中小あわせて共存するという答弁をしたのでありますが、要は、大きなものか資本力に物を言わし、また増羽のそれぞれの協定を破って業界に混乱を与えるようなことはいけないという意味で御理解を賜りたいと思います。
  184. 野村光雄

    野村委員 次の問題に移らせてもらいたいと思いますけれども、私はこの際きつく要望いたしておきます。あくまでもこの鶏卵の生産調整は農家の経営を安定させるということを主体にして進めていくことを基本としていただきたい、これを強く要望いたしておきます。  次に、商社の無断増羽に対する対策等につきましてお尋ねをいたしたいわけであります。  これは農林省といたしましても、今日までの何回かにわたる本問題の質疑を通しまして、この商社の無断増羽の実態というものがだんだん明らかになってまいりました。そこで、私はこの際どうしてもお尋ねをいたしたいことは、先ほども局長みずからおっしゃっておりましたとおり、去る四十九年五月に農林省から凍結の指示がなされまして以来、このまる四カ年にわたりまして、凍結後における各商社の無断大幅増羽というものが見逃されてきた、こういう実態でございます。  そこで先般、わが党の吉浦委員が本委員会の席上におきまして、四十九年の生産調整通達以後の十万羽以上の無断増羽の実態、これの資料提出を要求いたしました。ところが、出てまいりましたのは、たった一片のこれだけの資料でございます。四十九年に凍結した後の実態の調査、こういう指令を都道府県に出しておきながら、まる四年間でこれだけの実態しかつかまなかったということですか。明らかにしてほしいのです。あるでしょう、この控え。
  185. 杉山克己

    ○杉山政府委員 やみ増羽の実態をどう把握しているかということでございますが、これは先ほど来申し上げておりますように、四十九年の水準で凍結するということにいたしたわけでございます。その際の凍結の考え方は、飼養成鶏雌羽数三千羽以上の生産者については原則として増羽を行わないということで、市町村、都道府県、それから全国各段階におきまして調整協議を行ってまいっているわけでございます。その際、調整協議会におきまして把握したところの数字、これをもとにしてその後、いままでは年に二回、今年からは四回ということに増強することにいたしておりますが、各生産者についての調査を行ってまいっているわけでございます。  その実態は、調整協議会の判断で無断増羽としているものが全体で約三百八十万羽ございます。そのうち十万羽以上を飼養している大規模経営体のものがどれだけかと言いますと百七万羽、三百八十四万羽のうち二八%ということになっているわけでございます。  それの個別の内訳はどうかということで、岩手県、宮城県、茨城県というようなところの十万羽以上無断増羽しているものについての具体的な名前と羽数につきまして、資料として先般吉浦先生のところへお届けしたわけでございます。これは無断増羽といいますか、当時の取り決めに対する違反の実態は、件数としてはかなり多くございます。それから、きわめて大規模のものもあるわけでございますが、増羽数自身が十万羽以上というのは、この段階におきましては四者というふうに把握されておったわけでございます。
  186. 野村光雄

    野村委員 イセ並びにタケクマ等は無断増羽の対象の中に入っていないのですか。
  187. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全体の調査につきましては昨年の秋から行っておったわけでございますが、イセ、タケクマ等最近におきます大型の無断増羽については、その調査時点以後において明らかになったものでございます。最近の事例でございます。
  188. 野村光雄

    野村委員 それでは、最近のイセ、タケクマを含めた増羽の実態というものは、この資料提出後にようやくつかんだということですね。じゃ、その実態を明らかにしていただきたいのですよ。
  189. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全体の調査関係と、個別に問題が出てきたところについてその個別を調査した事例と両方あるわけでございますが、現在、またそれなりに、五月現在での全体の新しい調査を実施いたしておるところでございます。前回の全体的な調査は、その後また推移しているところもあるはずでございますので、イセ、タケクマ等のものも含めて全体の計数を取りまとめたいと考えておるところでございます。
  190. 野村光雄

    野村委員 そうすると、一番大きな、商社として大規模なやみ増羽をやっておりますイセ、タケクマ等については、いまだにその実態をつかんでない。私どもからいいますと、対応策が農林省としては非常に及び腰のような感じがするのですが、全然まだどういう状態かもつかんでないのですか。うわさ程度ですか。
  191. 杉山克己

    ○杉山政府委員 十万羽以上の無断増羽についての組織立った全体の調査ということで、私どもはかっての調査の数字を御報告申し上げたわけでございますが、現在この問題として取り上げて進行中のイセ、タケクマの問題、あるいはそのほかのものにつきましてわかっているところを申し上げますと、ます宮城県の色麻村の色麻農場という、これはイセグループでございますが、凍結羽数が二十四万羽ということになっております。これに対して現在羽数は八十三万五千羽、したがいまして、この差は五十九万五千羽ということになっておるわけでございます。  それから、茨城県小川町の、これもイセグループの関連のものが一部入っているというところでございますが、ここは、ある農場でございますが、現在羽数十五万羽、四十九年当時はゼロでございましたので、十五万羽全部が無断増羽になるというような事例がわかっております。十万羽以上はその二例でございます。  そのほかにも、十万羽には達しませんが、宮城県等におきまして数万羽の無断増羽の事例は把握しておるものがございます。
  192. 野村光雄

    野村委員 時間ございませんから申し上げておきますけれども、全国養鶏経営会議で本年三月に調査した資料がございますから、よく一回見てくださいよ。農林省よりも早くこういう商社の実態というものをつぶさに調査した実態が全部書かれておりますから、よく見ておいてください。よろしいですか。  私はここで一番心配いたしておりますのが、四十九年の五月に凍結の通達をしておりながら、果たしてこれらの商社、企業がこのやみ増羽に対して反省の態度を示しているのかどうなのか、ここに大きな問題があるわけでございます。聞くところによりますと、反省どころか五十三年から五十六年にかけて、さらにタケクマ等におきましては百六十五万羽の増羽計画をしておる、こういう実態でございますけれども、農林省としては、これだけ大きな問題になりましたやみ増羽に対し、しかも商社に対して実質的にどういう調査なりまたは指示なり与えたのか、そして、その反応というものは、心から反省しているのかどうなのか、その辺の実態はどういうように掌握しているのですか。
  193. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整の本来のあり方というのは、地域におけるお互いの相談ということが基本であると思います。ただ、そのお互いの相談が、事が経済問題でありますので、なかなかうまくいかない場合もある。そういう場合に備えて、実効を上げるために行政機関、地方公共団体も介入するというようなことで、従来からその生産調整の実効を上げるための措置をとってまいったところでございます。それを全国的に統一するといいますか、足並みをそろえるということで国が通達でもってその生産調整の実行方について指示をいたしておるわけでございます。いわば行政指導をいたしておるわけでございます。  これに対する全体の従い方といいますか、協力の仕方でございますが、先ほど申し上げましたように、一億二千万羽おる全体の中で、三百八十万羽ほどが無断増羽ということになっておるわけでございますが、特定のものに集中してこれがあらわれているというところに一つ問題がございます。  そこで、そういう目立った特定のものに対して指導を行っているかということでございますが、これは問題が起こりましてから特に重点的にやっているわけでございますが、直接一つ一つについて国が全部調査に回るということもむずかしい問題でございますので、都道府県を督励いたしまして、特にイセ、タケクマの場合は宮城県、それから小川町という場合には茨城県、別な事案につきましては岩手県、それぞれそういった各県を通じまして実態を把握させる、調査に行かせるということでその報告を聞いております。それから、その関係者を農政局なりあるいは一部特定のものについては農林省にもじかに呼んでその協力方について指導したという事実がございます。  ただ、それに対して、では完全に協力を誓っているかということになりますと、それぞれの立場があっての主張もするということで、絶対的にどうしてもいやだ、自分の考えでもって無断増羽を今後とも断行するのだというような強い言い方はいたしておりませんけれども、全面的に協力するというような体制までには現在のところ至っておりません。
  194. 野村光雄

    野村委員 そうしますと、行政指導はした、しかし、先ほど言ったように、やはり心からの反省というものはしていない。これはやはり全国養鶏経営会議の方で調査した内容、これは農林省みずからがその実態をいま認めていらっしゃるようでございます。  そこで私は、結局は四十九年の生産調整の実情というもの、確実にその実態を掌握すると同時に、そのやみ増羽をいたしました、まあやみ増羽といいましても、十羽でもやみ増羽になるし、百羽でもやみ増羽になります。これは一応該当ということになりますと。しかし、私たちがいま申し上げておりますのは、どこまでも養鶏農家というものを育成、そして守っていくという立場の中から、当然農林省としては農家の立場に立って、農民の養鶏を守って育成するという立場に立って臨まなければならない。そういたしますと、当然農家でもないような商社の何百万羽と大幅なこういうやみ増羽というものに対しては、特に私は厳しい態度で臨まなければならない。しかし、いまの答弁を聞いていますと、育成していかなければならない農家と同一視みたいな立場で非常に手ぬるい、こういうところに、今日のやみ増羽が農民をここまで追いやった最大の要因がある、こう考えるわけであります。  そこで、ようやく重い腰を上げて、四月二十八日に、鶏卵の生産調整強化に対する通達、こういうものを出しました。しかし、この通達というものは、かつての四十九年の通達さえも空洞化して今日まで農林省みずからが容認してきた、わかっていながら、手ぬるい状態で容認してきた、そういう過去の実態からいって、新たに出した今回の通達がまた空洞化するのではないか、こういう不安を農民は抱いている。これに対する、実質的な効果あらしめていくためへの確信と対応策を持っているのか、これが第一点。  それから、そのためには、この四月二十八日の通達の凍結羽数というものは、昭和四十九年五月にさかのぼって凍結をするというのか、改めて本年四月二十八日に出した通達の時点にまた戻って、現状を容認した上で、今後ふやしたものに対して凍結するというのか、私はこれは重大な問題だと思うのではっきりしていただきたい。  この二点を伺いたい。
  195. 杉山克己

    ○杉山政府委員 すでにもう何遍も御答弁申し上げておりますように、基本は、この種の問題は当事者間の協議、合意というところにあるわけでございます。それが経済問題であるかためになかなか実行が困難である、そこで行政が介入するということで今日のような指導を行ってきているわけでございます。ただ、経済自由の原則の中でどこまで指導が行い得るかということになりますというと、これは法律上の罰則とか制裁を伴うものではございません。しかし、その実効を確保するための手段といたしましては、私ども行政上ぎりぎりの措置をとってまいったし、とってまいるつもりでございます。  たとえば、現在、鶏卵価格が下落いたしました場合は、その価格について補てんするための卵価安定基金制度がございます。この補償をする対象には生産調整を守らない生産者は入れないというようなこと、あるいは養鶏に直接つながるような国の補助金あるいは融資、こういったものについてはこれを行わないというような、むしろ行政指導としては相当思い切った、ペナルティーという言葉は若干弊害があるかもしれませんが、いわば助成、援助というものは行わないという意味で差別措置をするというような意味を込めまして、行政としては相当思い切った制裁的な、実効につながる措置もとってまいったわけでございます。もちろん、それでもなおかつ自分のところはそういう安定基金の恩恵を受けなくてもよろしい、あるいは補助金も受けなくていい、さらには国の融資を受けなくても自力でもって調達する、企業がそれでまいってしまうなら、そのときは自分の責任でもっていさぎよくつぶれるというようなところまで割り切っているような企業に対しては、実はそれ以上効果的な、本当にこれを抑止するという力はなかなかないわけでございます。  しかし私どもは、これは一つには、実際に経営している人たちの、無断増羽ということを行われておりますそういう人たちの意識の問題でもあると考え、先ほど申し上げましたように、非常にたび重なる、くどいほどの説得も行ってまいっているところでございます。さらには、こういう国会等の場におきましても、その個別の名前もあえて申し上げる、実態についてもあえてこの場で御報告申し上げるというようなことで、さらにそういう生産調整についての協力を期待するというような考え方のもとにあえてそういうことをいたしておるわけでございます。  もう一つ、増羽の基準ですが、五十三年、本年の新しい通達でもってそれはどこに置いているかということでございますが、基準は四十九年に置いております。ただ、四十九年そのままではなくて、当事者間の合意といいますか、相談でやはりその後の事態の推移がございますので、調査検討会の結論に即してこれを決めるということにいたしております。基本のベースはあくまで四十九年というところに置いております。
  196. 野村光雄

    野村委員 そうしますと、この五十三年四月二十八日の通達の内容、これによりますと、ただいま御答弁ございましたとおり、この生産調整、これに従わない、協力をしない者に対しては卵価の安定基金の融資というものはしないとか、見合わすとか、いろいろな項目だけはある程度具体的なものが何カ条か出ております。そういたしますと、いまの御答弁から言いますと、これに従わない者は昭和四十九年にさかのぼっての羽数に基づいてこれを適用する、こういうことでございますね。  そういたしますと、これから都道府県から、ここに書いてありますような具体的な数字を改めて報告してもらうまでもなく、全養鶏会議におきまして調査した実態、または関係市町村からつかんだ実態があれば、これから改めて調査するまでもなく、直ちに、たとえて言いますと、昭和四十九年の通達を出したときには五十万羽しかいなかった。ところが、通達以後調べてみたらすでに二百万羽いた、四百万羽いた、こうなりますと、当然これは該当するわけですから、文句なしに直ちに融資対策なりこれに関連いたします諸問題に対しましては手が打てる、こういうことでございますね、お伺いいたします。
  197. 杉山克己

    ○杉山政府委員 この通達の中で、二ページ目でございますが、いろいろ実態について調査をするんだということが書いてございます。これは市町村の鶏卵需給調整協議会等がその調査をやるわけでございますが、「この調査で明らかとなった無断増羽については、同協議会等が中心となり、都道府県、農林省の協力体制の下で鶏卵生産に係る団体等と連携を密にしてその是正指導の強化を図るものとする。」とにかく実態をきちんとつかまえて、その是正指導の強化を図るということを基本に置いております。それから「なお、本年度においては、前記調査検討会の結論に即して、市町村鶏卵需給調整協議会等の指導及び規制の下に、現行の凍結羽数基準の三千羽を五千羽に改訂する。」こういうことを言っております。  そういうことで、基準を四十九年に置いていることは変わりありませんが、凍結羽数基準を、そもそも、ベースを三千羽のところを五千羽に改定するというようなこともございますし、それからその後の現地の事情等によってやむを得ないと認められたものも、これは大規模の無断増羽というようなものではございませんが、一部あるはずでございます。ですから、基礎は四十九年に置いておりますが、そのときとただの一羽とも違わないというような数字にはならないわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、そういうことで無断増羽ということに認定されるものに対しては、まさに通達にありますように、私ども、たとえば直接私か所管しております卵価安定基金につきましては、そういう生産調整に協力しています。ちゃんと守っておりますという証明を受けた者でなければ——この証明は協議会、市町村か行うわけてございますか、証明を受けた者でなければその価格補てんの対象にしないということは、これははっきりいたしております。  なお、融資の問題につきましては、これは経済局が所管しておるわけでございますが、新しい融資については、これは当然抑制していただくということで考えておりますし、私どもは既存の融資の問題についても経済局に検討をお願いしたいという姿勢でおるわけでございます。
  198. 野村光雄

    野村委員 経済援助の停止に対しては、担当でないから、またちょっと後退のような感じですけれども、聞いておりますと、四十九年にさかのぼって、先ほど来私が言っておりますとおり、五羽や十羽のことを言っているわけではございませんで、四十九年にさかのぼってみたところが、大幅なやみ増羽がしてあった。こういうものに対しては融資その他一切これに対しては停止をする、こういう前向きな御答弁のようでございますので、断固これはひとつ勇気をふるって農民のために実行していただきたい。  もう一つは、先ほど御答弁を聞いておりますと、ただし、こういう制度から一切の融資を受けなくても、自分自身で、自己資金か自由に調達できる者はこの通達に違反しても手の施しようがない、こういう御答弁でございましたけれども、確かに金融面において手の施しようがないかもしれませんけれども、少なくとも農林省の通達に従わないような不当な商社、業者に対しましては、それなりに天下に公表する、この会社とこの会社は、こういう通達が出してあるにもかかわらず、この通達を一切無視して従わない不当な業者であるということを天下に公表するということぐらいはできるんじゃないですか。そういうことはできませんか。やるのは当然でしょう。
  199. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整を実効あらしめたい、それから多くの中小の養鶏農家を保護したいという立場から、私はそれは当然だと思います。ただ、本当に申し上げたいのでございますが、そういうことをどの限度までやるかということになりますと、これは大小いろいろ程度はありますが、必ずしも実行してない生産者の数も全体としては相当の数に上るのではないかということや、それから、そのことが企業秘密を一切暴露するような形でもって行うことが適当かどうか。法律上特別な犯罪を犯したというわけではない。行政指導に従わなくて、それは好ましくないのではございますが、どの程度までそういう制裁的なことが行い得るかということになりますと、全体の効果ある実行を期待するためできるだけのことはやる考えではございますが、その程度等についてはなお検討を要すると思っております。
  200. 野村光雄

    野村委員 行政的責任を持って一たび公平を期するために通達を出したわけです。それを守らなくても何もされないんだ、こうなりますと、結局は不公平になりますよ。正直者がばかをみるんだ。私の心配するのは、またもとへ出戻りするんですよ。やはり制裁を加えて罰金を科するとかなんとかということは、確かに行政通達ということで法律違反ということではございませんから、そこまで私は要求しているわけじゃないけれども、しかし、何という会社がこういう通達に対してこういうふうに従わない、この実態を公表するぐらいのことは、罰金よこせとか体刑に処すとかどうこうというのじゃないのですから、当然それぐらいのことはしかるべきじゃないですか。何もむずかしい話じゃない、あたりまえのことじゃないですか。もう一回その点……。
  201. 杉山克己

    ○杉山政府委員 その意味ではすでに国会のこういう場での答弁等においても、私ども行政としてはかなり思い切った立場から個別企業の名前なりあるいはその実態について、相当程度発表もいたしておるわけでございます。違反している者をどういう程度までつかまえるかというような技術上の問題もありますし、そこは行政が余り恣意的になってもいけないという考え方もございますので、慎重を要するということを申し上げたのでございまして、およそ一切そういうものを発表しないとか、守秘義務があるからこれは守るんだ、公表しない、そういうことを申し上げている意味ではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  202. 野村光雄

    野村委員 ただ私、なぜこんなにやかましく念を押すかといいますと、ともいたしますと、こういう問題は、先ほど来みずから、よほど思い切ってとこう言って、この商社のやみ増羽の実態を国会で明らかにするために大変長い間思い悩んで、ようやく思い切ってここで発表する、こういう姿勢があるから、結局は統制がとれないというところに最大の原因があるんだ、こういうことで私は念を押しているわけです。
  203. 今井勇

    今井政府委員 たび重なる御発言でございますから、私から答弁いたしますが、農林省の優秀な官僚のためにも弁明しておきたいと思いますが、農林省が一部企業に加担をするとか、それから、やみ増羽を大目に見ているとかいうことでは決してないのでございます。やはり行政官としては、国民の公僕でございますから、公平な行政をやるというのは当然のことで、したがって、いまの先生お話のようなことでも、はい、さようでございますか、直ちにやりますということでは、これは私は軽々だと思うわけです。したがって、いろいろ言葉を選んで言っておりますその真意をこれは御洞察を願いませんと、下僚がかわいそうでございますので、私からお願いをしておきますが、決してそんなつもりではございません。こうやってこの国会の場で、これは国民がみんな聞いているわけですから、ここで個人の名前が出、会社の名前が出ることは、これは何にも増して耐えがたいことであろうと思いますが、それをあえてやっております真意をどうぞひとつ御理解を賜りたいと思います。
  204. 野村光雄

    野村委員 政務次官、その点は政府もわれわれも、公僕として大衆から選ばれて出ました議員である以上は、そう軽々しくこの委員会で私どもとしても人の名誉なり営業に関する問題を、軽々しく名前を申し上げることは当然慎まなければならない。しかし、多くの農民なり国民を守るためには、やはり国の方針なり考えなり姿勢に従わないのは従わないとして、当然はっきり明確にしていくことが私は真の公平な政治のあり方だろう、こういうことで念を押しているわけでございまして、その点の基本的な立場政府側もわれわれも寸分も変わらない、こういうつもりで私はあえてこの問題をお願いしているわけでございます。  次に、養鶏農家の経営安定資金対策につきまして、時間がございませんので、はしょって最後に質問いたしたいのでありますけれども、私は先ほど言いましたように、北海道の養鶏農家数名と懇談をいたしてまいりました。その中で、養鶏農家の置かれているいまの立場というのはいかに大変であるかということを二、三、時間がございませんから申し上げますけれども、この北海道の養鶏農家の経営のあり方というのは、大体生後百二十日のひなを買って、それから卵を産ましていく。養鶏も昔と違いまして分業化されております。そういうことで、生後百二十日のひなを千百円で仕入れてくる。これが大体、百二十日目のやつを千百円で買ってきて、二十日ないし三十日目ごろから卵を産み出す。そして、大体三百七十日ないし三百九十日ぐらい卵をとって、この三百七十日から三百九十日で大体二百五、六十個産ませて廃鶏処分にする。廃鶏の値段が一羽四十五円。そういうことで、農家の手取りが、一昨日聞いてみますと、キロ当たり二百四円。生産費は何ぼ少なく見積もっても、最小限度二百九十円に売れなければ経営が安定しない、こういう状態であります。  そういう中で、私も長い間、農林水産委員会の中で農畜産物の価格問題に今日まで触れてまいりました。農畜産物のこの価格の決定というものは、基本的には生産費所得補償方式とかパリティ方式とかありますけれども、少なくともこの生産費所得補償方式というものが基本的な考えとなって一般の農畜産物の価格というものが農林省におきまして決定されてきているのが、今日の農畜産物の価格決定の基本的な姿勢でございます。そういう点からいきますと、養鶏農家の実態というものは、ただいま申しましたように、この基本的な生産費所得補償方式の基本から考えますと、全くもってこれはお話にならない状態でございます。  そこで、ぜひひとつこれは経営安定資金対策の融資というものをまずこの際緊急の処置として対応していかない限り、全国の養鶏農家の大半の方々が本年内にもまたたく間に壊滅状態に入っていく、私はこういうような非常に厳しい状態を目の当たりにしてきたわけでございますけれども、この経営安定の資金対策に対して、具体的なお考えをひとつこの際明らかにしていただきたい。  第二点に、窓口をこしらえて、養鶏農家の経営の相談、経営指導、こういうものを早急に対応していく必要があるんじゃないか。いかにいたしましても、現在の状態におきましては、農家の自分自身の力においては、経営というものはもうどう考えても、財政困難でもあるし、価格は安いし、もうにっちもさっちもいかない、こういう現況にございますので、この経営相談なり指導の窓口を開設する考えはないか。  三つ目には、卵価の安定基金保証につきましてでございますけれども、すでに御存じのとおり、この安定保証価格というものが、二百五十九円が保証されております。しかし、先ほど申しましたように、わずか二百五円ぐらいの手取りでございますので、この掛けている農家は二百五十九円の保証をされましてある程度安定するわけですけれども、私が参りました農家も、一万五千羽余り飼っておりました。しかし、安定基金の保証に対して、掛金だけでも年間大体百五十万からの金がなければ掛けることもできない、こういうことでございます。こういうのに対する財源措置と、並びに、安定基金保証に対する財源に対しましてもすでに底をついてきているような現況を承っているわけでございますけれども、これらに対する政府の融資対策、この三点につきましてひとつ明確な御答弁をいただきたいと思います。
  205. 杉山克己

    ○杉山政府委員 経営安定対策でございますが、融資の問題もございますけれども、私ども、全体としての経営安定対策ということになれば、やはり一つは、先ほど来御答弁申し上げているところでございますが、生産調整を実効あらしめるように、供給をしぼって卵価の回復を図るということを順序として考えるべきだと思っております。その点、最近におきまして、調整保管、あるいは液卵公社による液卵の買い付けというようなことで、供給に対する抑制措置をとってまいっているところでございます。これによって、卵価は卸売価格が一時キロ当たり二百十五円まで低下いたしましたが、今日、わずかではございますが、二百二十四円程度まで回復が見られております。今後さらにそういう需給調整措置を強力にとって、卵価の回復を一日も早く願うということがまず基本であろうかと思います。  それから、現に下がって損をしておる——個々の農家によって損の程度は若干の差はあろうかと思いますが、先生もおっしゃいましたような、北海道のようなそういう大きく損を出している農家がある。これらに対しては、現在の卵価安定基金、これは先般基準価格も二百五十九円と決定したところでございますし、この水準まで、これは平均の価格でございますが、価格補てんをする、その対象として取り上げるということにいたしておるわけでございます。  それから、これはむしろ三番目の御質問になりますが、そういうことで対象となる鶏卵の数量がふえてくる、それから、補てんする単価も大きいということになりますと、資金的にそれぞれの基金が問題を生じてまいるわけでございます。まだ、現在の高い水準に上げまして初年度でございまして、基金の造成は十分ではございません。国の助成も従来より増額いたしておりますが、今回の卵価の低落に対して、この補てん、当分私はやはり借り入れに依存せざるを得ないのじゃないかというふうに思っております。それは、借り入れでつなぐということで全体としての経営安定を図ってまいる。  それから、融資の話でございますが、大変申しわけないのでございますけれども、運転資金について、現在特別に世の中、資金が不足しているという状態ではございません。そういたしますと、制度資金とか特別な低利な利子補給をせいというような話になってくるのかと思いますが、運転資金についてそこまでの措置をとったこともございませんので、私ども、むしろいま申し上げましたような、もっと実質的な、需給調整でありますとか卵価安定基金の発動でありますとか、そういう措置を中心に考えてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  それから、確かに最近の養鶏農家の経営は、いろいろ新しい問題を抱えてむずかしくなってまいっております。こういった人たちにガイドラインを与えるためコンサルタント事業を活発に行うべきではないかという御指摘、ごもっともでございます。この点につきましては、従来からも都道府県の農業の普及事業と、それから民間団体による、これは都道府県畜産会が中心になりますが、それによる畜産コンサルタント事業を実施いたしているところでございます。五十三年度、この充実を図って、それなりに予算措置をそれぞれ講じているところでございます。  たとえば、総合診断指導事業ということで四千三百万、高度技術導入等で一千七百万、特別診断指導事業でもって約一千万とか、そのほか、畜産技術改良共同利用の施設診断指導、そのほか新畜産団地特別診断指導、こういったたくさんの指導事業をメニューにいたしましてコンサルタント事業を一段と活発に行うことにいたしております。
  206. 野村光雄

    野村委員 時間が経過いたしましたので、最後に御要望申し上げまして私の質問を閉じますけれども、先ほど来、いずれにいたしましても、一部商社の不当な増羽というものが、まじめな養鶏農家の大きな不安を招来した最大の原因でございまして、おくればせながら、農林省といたしましてもこういう各関係局長通達を出しまして対応策に乗り出したわけでございますが、ぜひひとつ速やかに勇気ある対応策を講じられまして、経営農家の保護育成のために勇断ある対応策を講じていただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  207. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 武田一夫君。
  208. 武田一夫

    ○武田委員 私は、三点について質問します。  まず最初に、近年、特に農村におきまして農村特有の病気が発生している。この間は、私は近代化による機械の導入ということによって起こる災害については一応質問しておきましたけれども、今回は、その農村特有の病気、すなわち、稲刈りの際の脱穀あるいはもみすり、あるいはまた農薬散布などによって引き起こすようなぜんそくや気管支炎、こういった呼吸器障害、これが非常にふえているという実態。さらにまた、農作業の過労。農家の方々というのは、集中的に働くというところからも、腰痛、ぎっくり腰とかというものが多い。あるいはまた水田性皮膚炎あるいはまたかぶれ、それからハウス病、その他破傷風とかあるいは高血圧、脳卒中等々たくさんございますけれども、こうしたものが、農家の方々や医学関係方々に言わせると、いわゆる農業病だ、あるいは農夫病と言っても差し支えないというような特徴を持っている病気であるということで、この問題が農村の方々には非常に深刻な問題を引き起こしているようでございます。  現在、こうした病気の実態というのをまず農林省サイドではどのように把握されているものやら伺いたいと思うのでございます。
  209. 野崎博之

    ○野崎政府委員 農夫症につきましては、いま先生おっしゃいましたように、一般に栄養の偏り、あるいは過重労働、そういうものに起因して出てまいるわけでございます。症候としては、いまもおっしゃいましたように、肩こり、腰痛、しびれ、あるいは夜間多尿、息切れ、目まい、そういうような症候があるわけでございますが、そういう農夫症と言われるような状態を示している方は全国的にどれだけあるかというような統計的なものはなかなかございませんので、これらの症候群につきまして、農林漁家健康生活管理及び農業家族労働適正化特別事業、こういうものの事業の中で一遍調査をしたことがございます。  昭和四十九年度でございますが、これを見ますと、有症者の多い症候といいますと、男子で千二百二十五人のうち腰痛が五百八十八人、肩こり五百四十五人、これらは約二人に一人の割合で出ているという状況でございます。それから、夜間多尿というのは二百九十三人で、これは約四人に一人だということです。また、女子につきましては千三百七十六人中、肩こりが七百九十一人、腰痛六百九十五人で、これは男子の場合よりはややその割合が高くなっております。次に多いのが目まい、三百九十三人、これも約三人に一人で、男子よりも高い割合、そういうような傾向でございます。
  210. 武田一夫

    ○武田委員 農薬の中毒等でもたくさんの事故がありまして、たとえば北海道などで調べた調査の結果では、二〇%ぐらいの方はそうした体験をしているというようなことでございまして、農業の近代化という、農機具の普及やあるいは化学肥料やあるいは農薬の多用というものによって、こうした近代農業の中における農業病、あるいは公害によってさらに悪質な形で発生して、それが農家の貴重な労働力というものに影響を与えている。  こういう実態はもっと詳しく、いま二、三の実態はお話がありましたけれども、大体十五、六種類くらいのものがあるようですが、全国的なそうした実態を掌握しながら、政府としても対策を講じていく。これは後で申し上げますけれども、予防の観点からも、あるいはまたそうした方々の治療等々につきましても、やはり貴重な労働力を確保する意味において、ということはとりもなおさず日本の農業の興廃にかかわる問題でもありますので、そしてまた後継者の問題ということを考えたときに、こうした問題に手を打ってあげることが農業を支え、発展に大きな力となってくる、これをよく知っていただきたい、こう思うわけでありまして、そうした調査等を通した上での国としての大きな対策は必要だと思うのですが、政務次官、こういう考えはどうでしょうか。
  211. 今井勇

    今井政府委員 確かに農業というものが日本ではまだまだ過重な労働であり、なかんずく主婦労働が中心になりがちな現今では、おっしゃるような問題が多々起こっておろうと思います。しかし、よく考えてみますと、そういった過重な労働なり何なりを除去するために農林省といたしましても構造改善なりあるいは機械の普及なり、また家庭の主婦にとっては例の台所の革命などをやっているわけでございまして、むしろそういう方面にさらに力を入れることによってそういう病気を予防するという方向に持っていくことがより積極的な施策であろう、このように思っております。しかしながら、このようなことに対する、たくさんの方々が悩んでおられることに対しましては非常に頭を痛めておる現実でございます。
  212. 武田一夫

    ○武田委員 これはいろいろ各地域ごとに健康を守る、管理のための努力をなさって、県や市町村等でもそういうことで力を入れたり、あるいは巡回診療などを通して医療機関の不備を補っているというような努力があるにもかかわらず、なおかっこうしたことがあるということであります。そうした観点から、こうした十何種類からあるような慢性的疾病に対する対策として、それに悩む農民あるいは農村医学関係者等から、こうしたものをやはり農業病、職業病として認定して、国や社会というものが保障、予防などの責任を持ってしかるべきでないかという声も聞かれてきているのは御承知だと思います。また、こういうような仕事というのは、要するに、言うなれば、何といいますか、農業現場で働き、そこでかかったそういう病気であるということを考えますと、やはり私も、そうした要望というのは率直に受けとめながら検討していく必要があるのじゃないか、こういうふうに思います。  さらにまた、予防ということにまず力を入れるということも重要でありますので、予防のために、やはり健康診断というものが大きな一つのこういう病気を防ぐ支えにもなるのじゃないかということを考えると、そういう方々の健康診断は国保の給付対象にしてほしいという声も私は理解ができる。こういうふうな農村の悩める方々の声というものに対して、私は農林省として、関係機関、あるいは厚生省等あるでしょう、そのつながりはあると思いますが、大いに働きかけて、こうした方々のそういう声を実現する方向に持っていったらどうか、こう思うのですが、その点いかがでしょうか。
  213. 今井勇

    今井政府委員 大変貴重な御意見でございますが、先生御存じのことであろうと存じますが、職業病といいますのは労働基準法に基づかなければなりませんし、そういたしますと雇用関係がなければいけないわけでございます。その点、大変役人的なことを言って申しわけないのですが、直ちにいま農夫症というものを職業病として云々ということについてはさらに検討させていただきたいと存じます。  しかしながら、いずれにいたしましても予防することがまず何といっても先決の問題でございましょうから、厚生省とも連絡をとりまして、日本農村医学会等の協力を得て、健康診断をするなり、予防措置についてのいろいろ御相談を受けるなり、また、その他考え得るもろもろのことについて積極的な取り組み方をひとつさせていただくようにいたしたいと存じますので、御容赦を賜りたいと存じます。
  214. 武田一夫

    ○武田委員 農業者というのは諸条件の中でいろいろ苦労しながら食糧をつくるためにがんばる方々でございますし、そういう方々一つでも二つでもそうした配慮をしてあげるところに、私は農村を育てる大きな芽が出てくるのじゃないかと思います。金が入ってこないとなれば、これは出さないような努力をしなければいけない。そのために、一番経済的な負担になるのはどうも病気のようでございます。私、農林省あるいは厚生省に、都会と農村との病気によって出す金はどのくらいの差があるんだということを聞いたら、そういうものもはっきりつかんでないということでありまして、実態調査というか、実態を十分に把握してないというところにもやはり農村の存在というものに対する考えが非常に弱いのじゃないか、こういうことを重ねて御忠告申し上げ、ひとつそうした農村の農家の皆さん方の切実な声を十分に取り入れるような方向検討していただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  次に、二番目の質問として、この間、牛場大臣とストラウス特別代表との間に多国間貿易交渉をめぐっての話し合いがありました。その際、ストラウス代表は、農産物の自由化について日本側に具体案を提出するよう要求した、こういうことでございますが、その要求は六月二十日までということでありますけれども、その要求に対して政府はどのようにいま検討しているのか、どういうふうに取り組んでいるのか、この点まずお話し願えればお願いしたいと思うのです。
  215. 今井勇

    今井政府委員 この会談におきましていろいろのことが議論がされたようでありますが、農林省関係の問題につきましての農産物の輸入の問題、これは御要請がいろいろあったようでありますが、農林省の基本的な考え方は、わが国にはわが国の農業の事情がございますし、いかに強い御要請でありましても、わが国の農業を根底から破壊するようなものに対する御要請というものは、わが国としてもこれはとうてい許容できるものでもございません。一方、国際経済の、特に日米の関係からすれば、できるだけの協調を図るための努力もしなければならない、このように考えておるものでございまして、特に牛肉、オレンジ等がどうも話題になったようでありますが、これにつきましても、ただいま申し上げたように、日本の国内の需給の状況、また日本の国内の農民の皆様方の現在の状況、そういうものを十分把握いたしまして、国内の皆さん方に十分な御納得をいただいて対処をしなければならぬ、このように考えておるものでございます。
  216. 武田一夫

    ○武田委員 いま次官からかたい決意の一端をお聞きしまして一応安心しておりますが、ミカンについてはそういうような状況になれば壊滅的な打撃に陥るであろうという心配がある。その意味で、そうした国内生産農家を守るという強い姿勢で取り組んでいただきたいと私は思うのであります。  牛肉の輸入枠の拡大についても、いまのような決意であれば私は一向に心配ないとは思いますが、どうも聞くところによると、農林省としてはそういう輸入増加等は、いわゆる拡大は認めないというような決意でいままで来たけれども、最近それがぐらついてきて、そして、どうも多少の譲歩はやむを得ないのじゃないかというようなことをにおわせているようなことがちらちらと聞かれる。地元の畜産の皆さん方はそういうのは非常に敏感でございまして、どのような譲歩をされたとしてもわれわれとしては大変なことだということで心配しておりますが、そんなことはないと思うのですが、いかがでしょうか。
  217. 今井勇

    今井政府委員 農林省としてまだ結論を出したものでも何でもございません。ただ、牛肉につきましては、世界全体にとっても、またわが国にとりましても不足するものでございますから、その足らざるところをよそから補うということは国民の皆様方のためにもやらなければならぬことでございますが、その補い方が問題だと思うわけでございまして、その基本はあくまでもわが国生産農民の生活を脅かすことであってはならぬわけでございまして、そこあたりを十分考えた上での決断をいたしたいと考えております。
  218. 武田一夫

    ○武田委員 私は、国内の自給率の向上あるいは農家の経営努力による生産性向上の努力の手を縛るようなことのないように十分にひとつ配慮をめぐらしての交渉というものをまずお願いを申し上げます。  特に、昨今、生産調整によりまして、減反、転作ということが厳しい状況の中で進められてきたわけでありまして、私たちの住む東北におきましても、米を主体とする農家が米をつくらずほかの作物に移るということで、もう本当に涙ぐましい努力をしておるわけであります。その中で、われわれの周辺の農家の方々は、湿田地帯が多いところではもうどうしようもないので、稲の青刈りによって転作をしよう、いわゆる飼料作物としての利用方法というものに転作を見出しているような方が、多いところではもう五〇%、たとえば割り当てが百ヘクタールとすれば、そのうちの五十ヘクタールをその水稲の青刈りによって転作しよう、こういうようなところまで出ているわけでありまして、こういうような精いっぱいの努力の中で、こういうものと畜産というものとのつながりは非常に強いわけですので、そういうこともひとつ十分に御配慮いただきたい。聞くところによりますと、四十万の転作面積の中で、そういうものをひっくるめ、いわゆる牧草などに、いわゆる草を植えるとかというように飼料作物として転作する面積が十万ヘクタールはあるんじゃないかということもちょっと聞いておりますから、これは相当な面積になってくるわけであります。ところが、それをつくったはいいけれども食わせる胃袋がないというようなことでどうするんだという心配が正直言っていまもうすでに起こっているわけでありますが、そういうことのないようにひとつ十分なる体制で、各市町村段階における指導方もあわせて、私は政府のかたい決意をもう一度お伺いしたい、こう思うわけでございます。
  219. 杉山克己

    ○杉山政府委員 転作先として何を選ぶかということはいろいろございますが、飼料作物は有力な転作対象作物でございます。一般に飼料作物と言う場合、私ども一番望ましいといいますか、主体となるのは牧草、草であると思っております。そういう草を含めまして、飼料作物への転作はかなりな規模に達するものというふうに見込んでおります。ただ、私どもいま承知している段階では十万ヘクタールにはちょっと届かない。しかし、従来五万数千ヘクタールであったことを思えば、非常に大幅なそういう転換が見込まれているわけでございます。  それで、一部湿地帯、湿田地帯でもってそういう乾いた牧草ができない、地理的な条件からむずかしいというところは、青刈りの稲というような形での飼料作物への転換が予定されております。私ども、当然こういったものにつきましても、出てくるもめは優良な状態で、それから動物にとって支障のない形で飼料として供給されることを望むわけでございます。  飼料の供給ができました場合、これが十分に消化されるかどうかということでございますが、わが国の飼料の自給率は、粗飼料と濃厚飼料全体合わせまして四〇%そこそこでございます。今日、国際的な配合飼料の原料価格が安いものですから幾分濃厚飼料に傾斜しているきらいはありますが、私どもとしては今後できるだけ自給飼料、粗飼料の生産を伸ばしたいと考えております。そういう意味からいいましても、転作によりまして草を中心とする粗飼料の生産が増産されるということは非常に好ましい、十分にそれはえさとして畜産の世界ではお引き受けできるというふうに考えております。
  220. 武田一夫

    ○武田委員 飼料の国土資源活用による自給率の向上というのは、いま話があったように今後必要になってくる、これは当然だと思うのです。しかしながら、それは農家の個別経営という観点から言うと、まだいろいろ問題もあるのじゃないかと思うのですが、水田酪農の見直しのために政府としてはどういう点にこれから力を入れていくか。それからもう一つは、転作計画と酪農近代化計画とが十分かみ合うような指導徹底をしているものかどうか、私はこの二つがいろいろな問題の中で今後考えられる問題じゃないかと思うわけで、この点、政府の考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  221. 杉山克己

    ○杉山政府委員 水田における畜産というのは条件が限定されておりますので、およそあらゆるところで無条件にこれを奨励するというわけにはなかなかまいらないかと思います。しかし、御存じのように、第三次酪農近代化計画というものがございまして、畜産の中でも酪農という形での水田からの転換を強化していくということで考えておるわけでございます。
  222. 武田一夫

    ○武田委員 転作計画と、もう一つ、各市町村段階でやっている酪農近代化計画、それをよく指導調整しながらやらないと、牛がうまやにいなくて、つくったものがさばけないでどうしようもない。  たとえば、具体例を申し上げますと、宮城県の仙北地方、大崎平野というのは米を中心に進んできまして、おいしいササニシキなものですから、ほかは必要なかったのですね。そこに転作をしろということで無理をして大事なたんぼをつぶして、稲を植える、これを青刈りでやるというわけですが、残念ながら牛を飼っていないわけです。周りがみんな米ですから。そうすると、それをどのようにどこへ持っていったらいいかということを考えると頭が痛いのです。隣の市町村に持っていけるかというと、隣の市町村もそれぞれ計画によってやっているでしょう。そのためにでき上がったものは焼くしかないというような悲壮感がいまからにじみ出ているわけです。そこはいま言ったように多いところは何と五〇%、最低でも三〇%とか二〇%という地域がかたまっているわけです。  これは宮城県の場合ですが、ほかにもそのおそれのある地域が出てくるというようなときに、そうしたことのないような流通等も含めた上での指導監督が必要だと私は思っております。そういう事態が発生する可能性はあるのじゃないかと思うだけに心配なものですから、その点についての政府の考えをきちっと聞いておいて、各市町村段階における計画の中の転作計画とうまく調整をしながら、これがスムーズに進められるようにしてほしいという願いを込めて質問したわけですが、その点に対するお答えをお願いします。
  223. 杉山克己

    ○杉山政府委員 御質問の趣旨わかりました。転作に当たっては、何をつくるかということを決めるのに、そのつくられたものがどう処分、行く先が定められるかということも十分検討されるはずでございます。飼料作物につきましては、牧草にいたしましてもそれから青刈りの稲にいたしましても、それほど広域の流通ということは予定いたしておりません。できるだけその地域内での流通、できれば当該転作農家の経営の中で消化されることが一番望ましいと考えております。ただ、ただいま先生がおっしゃられましたように、ある程度まとまった地域でまとまった転作が行われるということになりますと、その限られた地域では消化できないという問題が出てまいります。  そこで、私どもといたしましては、その種の問題につきましては、当然、農業団体、当該市町村、さらに県も入りまして、そういう転作された作物が合理的な、有無相補うような形で流通するように十分指導することを心がけたいと思っております。
  224. 武田一夫

    ○武田委員 その点よろしくお願いいたします。  最後に、時間もございませんから、今度は肥料の価格の問題をお尋ねして、質問を終わります。  六月に入りまして肥料価格が決定されるということで、いま全農と肥料メーカーとの間に価格の交渉が行われているということでございますが、あちこちでいろいろ言われることは、過剰設備を抱えて低操業に悩むメーカーか価格の面でかなりのアップを要求してくるのじゃないか、経営の安定ということを盾にそうしたおそれが十二分にある、こういうことで農家の人は、また肥料が上がるのじゃないか、機械が上がり、肥料が上がり、ことしは米はどうもうまくなさそうだというような中で非常な不安を持っているわけでありますけれども、現況としては、これはいま交渉中ですが、政府はどういうふうな見通しを立てているわけですか、農家には影響がないと見ているものかどうか、その点答えていただきたいのです。
  225. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先生いまおっしゃいましたように、七月から新肥料年度に入りますので、六月いっぱいで全農と肥料メーカーの代表の間で価格協定交渉が行われるわけでございますが、最近の年次を見ますと、特に五十二肥料年度を見てみますとほぼ横ばい、全体を通じまして約〇・一%程度の値上がりにしかなっていないわけでございます。  いま先生おっしゃいました五十三肥料年度の価格につきましては、いま全農と肥料メーカーとの間で交渉中でございますのではっきりしたことは申し上げられませんけれども、輸入の原材料価格は下がっておるわけでございます。片や人件費あるいは公共料金、国鉄の運賃とか、そういうものが値上がりするという点、値下がりと値上がり双方の要因があるわけでございますが、われわれといたしましては、肥料か農業生産にとって非常に重要な役目をいたしておりますし、また農家側にとっても非常に重要な点でもございますので、農家に悪影響のないような方向で値段が決まるように全農の方も指導してまいりたいと考えております。
  226. 武田一夫

    ○武田委員 聞くところによりますと、肥料専門のメーカーというのは相当赤字を抱えて大変苦労もしている、あるいはまた総合メーカーの中で肥料部門が赤字なために、ほかの方でよくても肥料の赤字を何とかしたいということで、そういうものが結局肥料の値上げにつながるということは私はないとは思いますが、そういうようなことも農家の人は非常に心配しています。特に専門の肥料メーカー大手五、六社がいずれも赤字を抱えて大変だという。大変だから応分な負担ということで農家の方にその大変が来るということになると大変なわけでありまして、そういうような肥料価格に転嫁するような操作等についての監督指導というのを十分にしながら、適正な価格で、農家の経営を圧迫しないような方向というのは十分にやろうとしてやっているのだと思いますけれども、その点についての心配はないものか、お答えいただきたいと思います。
  227. 野崎博之

    ○野崎政府委員 硫安、尿素、高度化成につきましては、先生も御承知のように、肥料価格安定等臨時措置法に基づきまして、全農とメーカーが交渉するわけでございますが、この際はあくまで肥料の生産コストが基準になりますので、いまおっしゃいましたようないろいろな肥料の国際価格の変動、輸出価格と国内価格が非常に違うわけでございますが、そういうような変動というものは除外いたしまして、あくまで国内での生産コストを基準にいたしておりますし、また他の部門の赤字というものも排除して、純粋に肥料の生産コストを基準として決めるということにいたしておりますので、そのような心配はないと思っておるわけでございます。
  228. 武田一夫

    ○武田委員 どうかひとつ、農家の方々を取り巻く条件というのは非常に厳しい、そういう環境にありますので、そういうときにこういう話が出てくるものですから、まあ米が上がるとか景気のいい話があればいいんだけれども、ほかのものが上がるというような、そういう状況の中で、仕事をする手もずいぶん生きが悪くなっているというような状況もあちこちでありますので、どうかそうした意味で農家の経営を圧迫するようなことのないような、そういう対策を十分に講じていただきたい、このことを最後にお願いして、時間が来ましたので質問を終わります。
  229. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  230. 津川武一

    津川委員 商社系の養鶏のやみ増羽についていろいろ問題になっておりますので、お尋ねいたします。  そこで、事情はさておくとして、四月二十日のこの委員会今井政務次官がこう答えております。「しばしばここで御答弁申し上げたように、私どもも社会正義に反するものを見逃すわけにはまいりません。したがいまして、先生おっしゃいますように、四十九年の凍結羽数時点に戻すことについては、当然、当該事業体がその方向努力するように強力な指導をいたしたいと思いますが、問題は、先生十分御存じだと思いますけれども、善良な農民が実はそこで多数働いておられるわけですね。ものによっては土地を提供された方がそこに雇用契約を結んでおられる者も現実にあるわけでございます。したがって、そういうものについてわれわれも配慮をしなければ結局いかないということもあります。しかしながら、そういうようなものを踏まえまして個々のケースによりまして現実的な対処をしてまいりたい、このように思っております。」こう答えておられます。しかも、会期が延長される前に、政務次官はこの会期中に片づけたい、こうおっしゃっているわけであります。  具体的にどうおやりになったか、お答え願います。
  231. 杉山克己

    ○杉山政府委員 一つは、違反している増羽の著しいものについての実態把握ということでございます。この点につきましては、すでに前回先生にも一部御答弁申し上げたところでございます。  それから、一般的な方針といいますか、指導として通達を策定いたしまして、これは五月の調査を行うというようなことから若干日付はさかのぼっておりますか、四月の二十八日付の三局長通達を出しております。この中で、従来にも増して生産調整の強化について厳正に臨む、関係方面もそのつもりでもって事に当たるようにということを指導いたしております。  それから、個別問題については、これは政務次官もお答えいたしましたように、ただけしからぬ、だから四十九年にすぐ戻せと言いましても、それはそれなりの経過もあったという事情もございます。その事情もやはり一面において十分聞かなければいけないというようなこともありまして、これは県、農政局を通じてその後聞き取りを行わせてきたところでございます。現在までのところ、これについて具体的にどういう水準で今後どのように持っていかせるかという結論まではまだ出しておりませんが、先ほど申し上げましたような全体的な方針の中でこの問題も当事者の、これは双方あるわけでございますから、意見をよく聞いて結論を出したいと考えております。
  232. 津川武一

    津川委員 農家が求めておる商社のやみ増羽の実態の調査はしていただいて、ここで報告を聞きました。それは一つの前進と思います。ところがまだ、いまの局長の答弁みたいなことになりますが、政務次官は「個々のケースによりまして現実的な対処をしてまいりたい」、私は、請負みたいな契約、こういうふうなものであれば、それはある程度まで仕方ないが、直営の分だけは凍結時点にまで戻すように、こういうふうに言ってみたわけであります。こういうための具体的な努力がヒヨコのイセに対してどのように行われたか、具体的に答えていただきます。
  233. 杉山克己

    ○杉山政府委員 やみ増羽の問題は、御指摘のヒヨコのイセだけ一社を対象にして行っているわけではないわけでございます。そこで、むしろ全体のそれぞれ関係する団体にいろいろな機会に生産調整についての考え方、基本的な今日の時点におきますところの新しい考え方を取り入れました指導ということを行ってまいっているところでございます。それから、個別のそれらの企業につきましても、茨城県とか宮城県あるいは岩手県といったような県庁が四月から五月にかけて詳しい聞き取り、意見の交換ということも行っております。それから、農林省自身も、これは五月中にでございますが、一部事情聴取を行ったという実績があるわけでございます。  ただ、これにつきまして部分だけを取り上げて四十九年にいますぐ戻すかということになりますと、これは全体としてどう決めるか、しかも、その決め方につきましては、御存じのとおり、卵価安定基金に対する取り扱いの問題、それから飼料安定基金についての取り扱いの問題、さらには今後の融資のみならず、現在まで貸し付けている融資についてどのような措置をとるかということ等、全体を総合して決める話でもございますので、その結論まではまだ至っていないと申し上げたのでございます。
  234. 津川武一

    津川委員 政府を代表しての次官の答弁が、個々のケースによりまして現実的な対応をする、したがって、いま局長は一般的なことを話した。その局長がいままでそういう形で農民的な養鶏農家を、言葉は悪いが、だましてつないできた。ここは国会ですよ。政府の、個々のケースについて具体的に、しかもこれは四月二十日の答弁、きょうは六月一日、何らかの形で一つ個々のケースを片づけることは全体を片づける方針、したがって、個々のケースについてまだ何もしていないといういまの答弁、そうすると、これは問題が片づかないということになります。政務次官どうです。
  235. 今井勇

    今井政府委員 いまの局長の答弁は、個々のものについて何もやっていないという意味ではございますまい。私が答弁申し上げたとおり、個々の問題について生産調整を四十九年のものに返れとおっしゃいますから、これはそれぞれの生産調整の協議会という場でしなければならない趣旨のものを申し上げたつもりでございます。したがって、その後追っかけまして通牒を出しまして、そして、やみ増羽等についての実態の把握、それに対する強力な指導をやろうとしておりますので、私の答弁に違反したことを農林省がやっているとは思っておりませんし、一歩前進したつもりでおります。
  236. 津川武一

    津川委員 確かに実態を調べてやみ増羽数を報告したことは前進、私もこれを高く評価する。そこで、個々のケースを決めるということは全体の方針になりますので、まだヒヨコのイセに対しては農林省として具体的におやりになっていないようだが、政務次官のいまの答弁から言って、これから直接おやりになりますか。これは農政局を通じてもいいです。農政局は政府だから。この点を明確にしていただきます。
  237. 杉山克己

    ○杉山政府委員 個々の最終的な処理は、やはり現地の当事者ベースということになりますので、農政局あるいは県を通じてということになりますが、先ほども申し上げましたように、この問題をどう解決するかということについてはやはり実効ある、裏づけとなるような措置、これを伴わなければいけないと思っているわけでございます。そうなりますと、卵価安定基金についての取り扱いなり、飼料安定基金、さらには融資の問題を全体としてどうするのか、特に既存の融資の問題などは、金融機関にもむずかしい事情もあるわけでございます。それら関係者の意見もいままである程度聞いてまいっているところでございますが、それらの意見を整理した上で、やはり個別についての扱いを決めるということが並行して行われる話であろうかと思っているわけでございます。  時間がかかっていて申しわけないのでございますが、事柄がそれだけまたむずかしい背景もあるわけでございまして、今後さらに精力的に、この問題をできるだけ取り進めるように努力いたします。
  238. 津川武一

    津川委員 局長の言うようにむずかしい背景があることは、私は後で話します。だが、個々のケース、いろいろなことを整理する、ヒヨコのイセに対して直接おやりになりますか。
  239. 杉山克己

    ○杉山政府委員 中央官庁が個々のケースを一つ一つ処理するというわけにはなかなかまいらない。ただ、これだけ大きくなった問題でございますから、基本的な考え方は、私ども中央官庁としてもこれを整理して、その前提のもとに現地にこれをおろして調整させるということをいたしたいと思っております。
  240. 津川武一

    津川委員 考え方として、いままで農民に話してきましたことを局長はまた繰り返しています。  そこで、具体的な行為として、局長自身出かけていけば一番いいのだけれども、現地には農政局もあるから、中央官庁として、農林省として、ここまで問題になったこのケースは直接タッチして片づける必要があると思いますが、意見としてでなく、方針としてでなく、具体的な行動を私はいま問いただしているわけです。重ねて答えていただきます。
  241. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先生のおっしゃったような趣旨で私はお答えしたつもりだったのでございます。中央で考え方を決めて、その指導のもとにきちんとやらないと、現地だけではなかなか処理しきれないだろう、そこで考え方を整理した上でこれを指示して取り扱わせる、こういう意味でございます。
  242. 津川武一

    津川委員 ここで私が質問したのは四月の二十日です。五月の十八日に宮城県の県庁、県庁の出先機関の家畜保健所、それから普通の保健所、問題の色麻町の地区鶏卵需給調整協議会の人たち十数人が色麻のヒヨコのイセの方と連絡して、協議して、調査に入る、よろしい、向こうがこう言ったのです。いろいろ調べてみたら、この間局長が答えてくれたのは「これは県と地区鶏卵需給調整協議会が三月二十二日に現地調査を実施した結果、鶏舎につきましては三十五棟建設されております。そして、全鶏舎の収容能力は百三十二万羽、これは六万羽用が九棟、三万羽用が二十六棟ということで、合計百三十二万羽の収容能力が認められました。」よかったです。「その中で現在飼養されておりますところの羽数は、成鶏が八十三万五千羽、これは若干推定が加わっております。個別に確認し得たものばかりではなく、全体としての推計で八十三万五千羽。」ここまでやってくれたのは非常によかったのです。ところが、聞いてみたら、この二十六棟のうちで、この棟には幾ら、この棟には幾らというその報告がかなり違うのです。そこで、三万羽用の鶏舎で五千とか六千の非常に少ないところ、ここがそのとおり入っているだろうかというので、宮城県庁、家畜保健所、保健所、地区協議会が行ってみたのです。かなり疑念を持たれているわけですね。ところが、これをヒヨコのイセが拒否しているんです。あなたは非常に困難な問題かあると言ったが、私はここが困難な問題だと思う。こうなってくると、宮城県庁は何と言っているか。また、このことを東北農政局に言ったら東北農政局が何と言ったか。もうぼくらの手に負えないから、本庁が直接指令してくれなきやならぬ、こういうことなんです。この調査が拒否されていることを何と考えて、拒否したことに対してどのようになさるのか、答えていただきます。
  243. 杉山克己

    ○杉山政府委員 企業の立場からそういうことを主張したのかと思いますが、私ども、拒否したというその報告まではまだ受けておりません。体を張ってまでどうしても拒否するということになりますと、強制の調査権を持たない限り中へ入って調査を実施することはできない話になってまいります。しかし、この種の調査で法律的な強制権を持たせるということは、これはできない話であろうと私ども思っておりますので、拒否されたことはまことに残念でございますが、やはりこの上とも当事者、関係者の説得を行って、調査を受け入れるようにさせるようにすべきだというふうに考えます。
  244. 津川武一

    津川委員 二十六棟あるところのこの写真は皆さん見られたでしょう。あの北の方に、写真でいくと上のところに鶏ふんの処理場があるんです。これが無処理なんです。雨が降ってくると流れていって、その川から水を取っている田が過成長、こんなに大きくなって実らないのです。保健所ははいれる。だから、あなたは、はしなくも言った。われわれが、これは法を改正しなければやれないんじゃないかと言ったら、現行法でやれると言った。建築がやみ建築なんだ。建築基準法違反なんだよ。こういう状態を見ておいてできないというのはおかしいのです。  そこで、現行法のあらゆるものから検討して、ここはひとつ具体的に処理していただかなきやならないと思います。これが拒否されたことは河北新報に載っているんです。畜産局は見ています。私は知らないとは言わせません。もっと農民の立場に立って、農民とざっくばらんに話をしてください。本省がこれに入るように指令してやれば、東北農政局も宮城県も行けると言っています。この点、そうなさいますかどうか、具体的に答えていただきます。
  245. 杉山克己

    ○杉山政府委員 あるいは原課の方にそういう情報も入っておったのかもしれませんが、全体としてそういう地域調査の結果、あるいは調査のできなかった結果について、正規の連絡を私の方は受けておらなかったものですから、知らないと申し上げたわけでございます。  まあ、それはそれといたしまして、これをどうするのか。建築基準法なり、あるいは保健関係の強行法規なり、その他のいろいろな関係からも調査することは可能ではないかとおっしゃられれば、確かにそういう面からの調査は可能かもしれませんが、それが直ちに生産調整違反の問題についての調査権と結びつくかといいますと、それはそれなりにまたむずかしい問題があるわけでございます。私の方は、これはやはり畜産行政としての生産調整でございますので、別の法的な裏づけによる調査を利用するというようなことではなしに、その面からやはり説得をして、相手の協力を得て、実態をさらに精細に把握するということをまず心がけたいと思います。それについて中央がじかに話をするかということでございますが、とにかく東北農政局なり宮城県庁に一遍その実情を聞いて、私ども相談をいたしたいと思います。
  246. 津川武一

    津川委員 三万羽用二十六棟の中で、いっぱい入っているのと入ってないのがある。したがって、どのくらいやみ増羽しているか、これを調べてここに報告してくれますか。いかがです。
  247. 杉山克己

    ○杉山政府委員 この前、私が推定で入っていると申しましたのは、実は個々の一棟、一棟ごとにどれだけ入っていて、どういう推定をしたかという、そこまでは聞いておらないのでございます。全体として推定した結果がそうであったということで聞いておるのでございますが、恐らく先生がおっしゃられたように、外観から見て相当入っている、いっぱい入っている、あるいは中ぐらいである、あるいは余り入っていないというのを見て全体として推計をした部分があるのだと思います。  同じようなことになるのかもしれませんが、せっかくのお話でございますので、私はこういう調査はある程度推定が入らざるを得ないことになるかと思いますが、重ねて調査するようにいたしたいと思います。
  248. 津川武一

    津川委員 もう一つ、農林省、杉山局長が大変なしろものを相手にしているのだ。ノースエッグプロダクション、これは皆さんも案内書で見ればわかるとおり、ヒヨコのイセの一つの部門です。これは総務部と経理部が直轄している。このノースエッグプロダクションが農林省、農林大臣あてに提出している農地転用許可後の工事進捗状況報告を見ますと、今後の計画として五十三年−五十六年の四年間に毎年十三棟ずつ合計五十二棟、一棟三万羽合計百五十六万羽の鶏舎をつくると言っているのです。これは皆さん生産調整の指令をした後ですよ。こういうものをこのまま置くから問題がこうなるのです。この提出された状況報告書をとらえて何らかの措置に出なければならないと思いますが、いかがでございます。
  249. 森実孝郎

    森実説明員 御指摘がございました問題、農地転用許可後の工事進捗状況の報告は五十二年七月に提出されておりますが、この事業計画では鶏舎面積の増設、当初の事業計画を上回る分を含めての増設が予定されているということになっております。したがって、この点につきましては、当初の事業計画を超える増設はわれわれ農政全体の立場から認めるべきでないという観念に立ちまして、現在以上に鶏舎を増設しないように、現地において残地については他の用途に充てるように東北農政局を通じて指導しているところでございます。
  250. 津川武一

    津川委員 この間農林省が報告してくれた以上の増羽、鶏舎の建築はとめさせますね。いかがでございます。
  251. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま構造改善局の方から農地法上の問題としてそれを取り上げて御説明があったわけでございますが、私ども畜産局の立場としては、それをとめさせたいと考えております。中で相談させていただきます。
  252. 津川武一

    津川委員 もう一つこの点で指摘しておかなければならぬのは、なぜぼくがこのとおり具体的に何回も繰り返して言うかというと、この問題一つ片づくとやみ増羽の商社の問題が片づくのです。このヒヨコのイセはなかなかのしたたか者なんだ。某政党に呼ばれて何と言ったかというと、やらざるを得ない、増羽せざるを得ないと言っているのです。ここまでなんです。  そこで、もう一つの問題は資金源です。  根抵当が設定されております。昭和四十三年六月二十五日、四億円、設定した、借りた人はイセ養鶏で、貸した人は農林中金、取り扱いは農林中金の金沢支店。四十八年八月九日、一億円、これは富山県のヒヨコのイセ、貸し出した人は農林中金、ここが二つ目。つまり、四十七年七月に第一次調整の通達を出している。それに対して四十八年八月九日に一億円、こういうことなんです。その前の四億円の融資は四十三年だからまだいい。ところが、もう一つある。五十三年二月八日、これは一億五千万円、利息は九%、これはヒヨコのイセのフラワー食品、取扱店は金沢支店、こういうことなんですよ。第二回目の生産調整の後こういう点で一億五千万出ている。  だから、問題が解決しないのですよ。こういう農民のお金で農民的な養鶏農家をつぶす増羽をやっている。農林省はこういうことを覚えておったでしょうか。私に指摘されて初めて覚えたのでしょうか。お答え願います。
  253. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 農林中金の融資の状況については私ども把握しておりますが、前回も申し上げましたとおり、その内容につきましては守秘義務等の関係もございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  254. 津川武一

    津川委員 こんな状態でありますので、先ほどの理事会でも私は中金を参考人として呼んでいただくようにお願いしました。委員長からもその取り扱いをしていただきたいと思います。  そこで、こういう状態、個々のものをそうだというならば、商社系の養鶏に対して中金からどのくらい融資が出ているか、これを年次別に、個々のケースは略語でA、B、Cとか一、二、三とかで結構です。場所は要らないので、全体としての調査をこの委員会に報告をしていただきたい。これはいかがでございますか。
  255. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 商社系養鶏というお話でございますけれども、商社系の会社でございまして養鶏以外の部門を兼営しているものもございますし、なかなか養鶏分を把握するのはむずかしいわけでございます。また、仮にそれがわかりましても、先ほど申し上げましたような事情もございますので、公表された有価証券報告書による数字はこの前たしか申し上げたと思いますけれども、それ以外の数字につきましてはお許しをいただきたいと思います。
  256. 津川武一

    津川委員 政務次官、こんな情勢なんです。有価証券はここのところはないのだ、公表するような。そうすると、どうしても農林省自身が、個々の企業の秘密はわかるから、全体としての調査をしてやる必要があると思います。これが一つ。  第二番目には、生産調整の通達が二回ある。農林省の方針を明示している。農林中金から借用するときには必ず用途が書いてあります。いま彼らは逃げているけれども、使途がわからないもの、それに対する償還計画を立てないものは貸しません。こういう点ではっきりわかりますから、養鶏増羽のためというのはわかりますので、中金に出したものを一つの全体像としてわれわれに提示する。もう一つは、そういうことにこれから出さないように指導する、これが二つ。  三つ目には、いままでやむ増羽のために出したものは回収する措置を政府として中金にとっていただきたいと思いますが、この点はいかがでございます。
  257. 今井勇

    今井政府委員 突然のことでございますから、よく省内で相談をいたしますが、基本的な問題でして、出せるものはお出しいたしたいと思います。  ただ、厳密な意味で商社系とはいかなるものかということからまた議論しなければならぬかもしれませんしということでございますが、精神はよくわかります。わかりますので、検討する時間を与えていただきたいと存じます。
  258. 津川武一

    津川委員 今井政務次官の誠意のある答弁、私はいいかと思います。今井政務次官はこう言っております。「私どもも社会正義に反するものを見逃すわけにはまいりません。」これをあくまでも貫いていただきたい。  その点で、私の質問にも若干問題があったかもわかりません。というのは、宮城県のヒヨコのイセが、茨城県の小川町ばかりつついているうちに、石川県、富山県、埼玉県、茨城県、宮城県なんだ。したがって、これは個々の県へやらしてもだめなんだ。繰り返しますけれども、石川県、富山県、埼玉県、茨城県、宮城県、関係する農政局は北陸、関東、東北、こういう形で、個々のそこのところの地域でやっても、こっちではだめなんだ、どんなことをしているかわからぬ。これは農林省が直接担当する以外に問題の解決がないと思いますが、この点を私が満足するように答えていただければ、これで質問は終わります。
  259. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど、商社系というのはどういう定義を意味するのか、ここの問題が一つむずかしいということを政務次官からも申し上げましたけれども、それはヒヨコのイセというものの経営が、通常の総合商社が資金を出してインテグレートするという形とは異なりまして、県ごとにその経営の形あるいは経営支配の形が差があるわけでございます。販売だけを事実上委託を受けてやるような形に近いものもございますし、直営に近いものもあるというようなことで、その点はかなり県ごとに独立した経営の形をとっているという実態が一つございます。その中では、まさに農民自身が生産をやっていて、販売だけをむしろイセに預託しているというような形のものもあるわけでございますので、むしろやはりそういう地域地域個々経営の実態に即しての生産調整ということであるべきだと思います。そういう意味では、レッテルといいますか、一つのグループに属するという名前だけで一本化した扱いということは、これは適当ではないのではないかというふうに思います。ただ、イセのグループの問題は、単に個別の県の問題としてでなく、全体的な生産調整の問題だということで、それぞれの県に対して十分指導をするという形でこの取り扱いを進めるということで対処したいと考えております。
  260. 津川武一

    津川委員 そういう答えだろうと思って、ここに、皆さんのところにあるイセの報告書の表を持ってきましたよ。こうです。  社長、本部、横書きで上に、技術部、総務部、経理部。この総務部、経理部の中に、フラワー食品、ツリーエッグシステム、フラワーエッググループ、ノースエッグプロダクション、スノーエッグレジョン、イネ飼料、ヒヨコの営業部、こうして、どこどこあるかというと、首都圏、北陸、東北、近畿圏、富山、石川、関東、宮城、新潟、そして富山、石川、新潟、山形、埼玉、千葉、茨城、神奈川、東京、宮城、岩手、福島、青森、秋田。  私は、さっき遠慮したんだ。私が質問したよりももっと積極的に答えてくれるかと思った。あにはからんや、これがあなたの態度です。これがあなたたちが覚えていること、直系の、インテグレーションとは何かなんという……。  だから、どうしてもやはりこれは、これだけに広がっているので、農林省が直接担当して問題を解決しなければいけないと思います。  政務次官に答えていただきます。
  261. 今井勇

    今井政府委員 生産調整は各町村、県がやるのでしょうけれども、いまお話を承りますと、非常な広い範囲でやっているようですから、だれかがそれを上で見てないとわからぬというのは、これは常識的だろうと思います。
  262. 津川武一

    津川委員 終わります。
  263. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 速記をしばらくやめてください。     〔速記中止〕     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  264. 中尾栄一

    ○中尾委員長 速記を起こしてください。      ————◇—————
  265. 中尾栄一

    ○中尾委員長 次に、農産種苗法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  266. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 昨日に引き続いて、私は農産種苗法の一部を改正する法律案に対して質疑を行います。  その前に、中川農林大臣のお父上がお亡くなりになったことについて、社会党の委員を代表して心から哀悼の意を表したいと思います。  本法案については相当の時間をかけて審議をしてまいり、質疑をしてまいりましたが、最後に、大臣に数点について詰めていきたいと思います。  そこで、第一点といたしまして、品種登録制度の農政上の位置づけをどのように考えられるかという点を御質問します。
  267. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今日、農業を取り巻く情勢が厳しく、あらゆる点において生産性を上げ、農家経済を安定し、よってもって食糧自給度を高めなければならない、そういう場合に、いい品種ということは非常に農政上大事なことでございますので、この際法律の改正もいたしまして、いい品種が次々と出られる、こういう仕組みについてお願いを申し上げたところでございます。
  268. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その場合に、法案を質疑をしていく中で、何点かにわたって原案に不十分なところがありますので、その点を質疑の結果、ぜひこれを修正していきたいと私は考えております。  すでに今井政務次官の答弁を通じて、かなりその点は明らかになったわけでありますが、最終的には大臣からの答弁をもってこれをいたしていきたい、こう考えておりますのでお答えをいただきたいと思いますが、現行の法第四条の検査の規定を削除した理由いかん、その点を修正したいと考えておるが、この点はどうお答えになるか。
  269. 野崎博之

    ○野崎政府委員 御指摘のとおり、現行法第四条、農林大臣は、検査に必要な種苗を種苗業者から対価を支払って集取させることができるという旨の規定を削除しているわけでございますが、現行法でも対価を支払って集取しているというようなことで、無料で集取するというような規定を置かない限りは、こういう規定は必要ではないのではないか、そういう意味で削ったわけでございますが、十分その点は検討いたしてまいりたいと思います。
  270. 中川一郎

    ○中川国務大臣 原案でもその趣旨は達成できると思いますが、修正した方がよろしいということであれば、結構でございます。
  271. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この法律は専門家が読むものでなくて、農民自体が見てわかりやすいものにしなければならない。そういう意味では、ぜひここは修正すべきであると考えます。  続いて、第五条に移りますが、第五条の場合においては、その基準については「遵守すべき基準」に改め、基準を遵守しない種苗業者に対しては勧告、公表等の措置をとるべきだと思うが、どうか。厳しくしてほしい。
  272. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の点は、そういうこともよかろうかなと思いますので、本委員会で修正いただきますならば、それも結構なことだと存じます。
  273. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 厳しいこの遵守基準というものを決めてそれを勧告し、公表の処置をとるべきだ、こういうふうに思いますので、ぜひこれは修正をすべきだということを主張したいと思います。  続いて、品種登録制度によって種苗価格の不当な値上がりを招かないかという心配がありますけれども、これをどのように処理されるか。
  274. 野崎博之

    ○野崎政府委員 種苗については、種と種の間あるいはその下の品種と品種との間で非常に競合関係がございまして、種苗自体の価格はその経済効果によって決まるものであるというふうに考えておりますので、品種登録ができたからといって直ちにそういうふうにすぐ品種が値上がりをするというふうには考えておらないわけでございます。
  275. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 なお、今回の改正は、種苗業者のためのものであるとの声も依然としてあります。この点について、種苗業者のためのものでない、やはりこれは種苗育成者、これを守る、こういう立場にあるし、それを利用する農民が現在よりもよりいい種苗を安心して取得できる、こういうことに関して大臣どうです。
  276. 中川一郎

    ○中川国務大臣 そういう御指摘もあろうかと存じますが、私どもといたしましては、やはりいい品種かできやすくする、そのためにはそれに合った法改正をしておきませんと、希望が持てないといいますか、やりがいがないといいますか、新品種をつくった人の権利が守られる、希望が持てる、こういうことに力点を置いておりまして、種苗業者保護するという御指摘は、私どもとしては当たっておらないのではないか、こう思っておるわけでございます。
  277. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これまでも個人の育種者が大きな役割りを果たしてきておりますが、このような育種者が真に保護されるよう品種登録制度の趣旨の徹底を図るべきではないか、その徹底をどのようにして図られるか。
  278. 野崎博之

    ○野崎政府委員 今回のこの制度の趣旨徹底につきましては、中央あるいは地方におきまして関係者を集めていろいろ説明会を催しますし、都道府県、市町村を通じましてこの周知徹底方を図る予定にいたしております。  なお、新聞雑誌等でも、そういう情報の提供をいたしたいと思っておりますし、改良普及員あるいは農協等を通じまして、そういう趣旨の徹底も図りたいというふうに考えております。
  279. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 品種登録制度を実施していくための体制、それから審査を迅速に行ってほしいという意見がある。  なお、この資材審議会というものがあります。これはぜひ内容を再検討して、資材審議会が従来のようなものでないような処置をとるべきであると考えるけれども、この点についてどうか。
  280. 野崎博之

    ○野崎政府委員 審査体制の迅速化あるいは審査の迅速化のための審査体制の拡充、そういうことにつきましては、われわれといたしましては、当初は現在の人員等で賄えるというふうに思っておりますが、将来そういう件数の増加に備えまして、今後各省庁と連絡をとりなから、その人員、予算整備拡充に努めてまいりたいというふうに考えております。
  281. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ただいま局長が答弁したとおりでございまして、改善すべきは大いに改善してまいりたいと存じます。
  282. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは大臣に答弁を求めますが、特許法との関係についてはどういうふうにされるのか。
  283. 中川一郎

    ○中川国務大臣 特許法においても理論上は対象となるということにはなりますけれども、実体問題として特許というようなものは想定できませんし、その辺のところは特許庁とも十分話し合って、ダブリのないように行政的配慮を加えたい、こう思っておるわけでございます。
  284. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは第一条の「目的」に関する点でありますが、法律の目的に新品種の保護をうたい、種苗法の性格を明らかにすべきではないかということを主張してきましたが、その点は大臣どうされますか。これはやはり修正する意思がありますか。
  285. 中川一郎

    ○中川国務大臣 その点も国会、当委員会の修正がありますならば、結構なことだと存じます。
  286. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 第十二条の五第二項第八号に関して、たとえば苗木を数本買ってきて穂木をとって販売した場合には、買った数は増加していないので取り締まる方法かないのではないか、なぜ種苗業者の再増殖禁止を明確にできないのか、業界癒着と言われる点がここにあるのではないかということを問題にされておりますか、その点はどのようにされるか。
  287. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いまおっしゃいました点につきましても、品種登録者の許諾が要ることになっていると考えておりますが、この点が明確になるような議論がされておることはわれわれも承知をいたしているわけでございます。  なお、苗木を買ってきてそれから穂木をとって販売するという場合は、これは植物体の数を増加させるということになりますので、当然品種登録者の許諾が要ることになるわけでございます。
  288. 中川一郎

    ○中川国務大臣 その点は明確にした方が結構だと思いますので、これまた当委員会で御修正いただいて結構だと存じます。
  289. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 登録の取り消しについて、登録品種の植物体の特性と異なることとなったことか判明したときには、農林大臣は登録を取り消さなければならないとされているが、農林水産大臣だけでこの特性が変わったかどうか、それはわからないのではないか、この取り消しの規定を適正に運用するためには、第三者から植物体の特性が変わってしまったので登録を取り消すべきであると申し出ることができるよう制度上処置をすべきであると思うが、この点はどうか。これは非常に重要なところですから、しっかり答えてもらいたいと思います。
  290. 野崎博之

    ○野崎政府委員 登録品種の特性が保持されているかどうかにつきまして必要な調査をやるという規定もございますが、この調査及び取り消しの規定の適正な運用を図るため、第三者から登録品種の特性が変わってしまったので登録を取り消すべきであると申し出ることができるよう省令で手当てをいたしまして、御趣旨の点が十分生かされるようにしたいと考えておる次第でございます。
  291. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の点はわからないわけでもありませんが、実効を上げるために、法律に明文するのではなくして、省令によって万全を期して取り消しができるようにいたしてまいりたいと存じます。
  292. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点はわが党の部会の中でも注目しているきわめて重要な点でありますから、誤りのないようにしてもらいたいということを特に注意をしておきます。  最後に、植物の品種自体について特許されることがあるのかどうか、二元行政にならないようにすべきであると思うけれども、その点はどうか。
  293. 野崎博之

    ○野崎政府委員 特許制度と種苗法の品種登録制度では、保護の対象及び態様が異なっておりまして、植物の特殊性から見て、特許の要件である進歩性等はなかなか満たしにくいので、そういう植物の品種自体について特許されることは事実上まずないというふうに考えられますので、二元行政になるというようなことはないというふうに考えております。
  294. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いま局長から答弁がありましたとおりで、これも先ほども私ちょっと答弁したかと存じますが、実体上二元行政にならないように措置をしてまいりたいと存じます。  なお、答弁を終わるに当たりまして、竹内委員から、当初、父のことについてお悔やみのお言葉をいただきまして、まことにありがとうございました。  また、竹内委員のみならず、皆様方からもいろいろと御配慮いただきましたことを厚くお礼を申し上げさせていただきたいと存じます。  本当にありがとうございました。
  295. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 以上で終わります。
  296. 中尾栄一

    ○中尾委員長 瀬野栄次郎君。
  297. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農産種苗法の一部を改正する法律案について、農林大臣に最終的に総括的な質問を若干いたします。  優秀な新品種の育成と良質な種苗の流通農林水産業振興の基本であり、その果たす役割りはまことに重要であることは言うまでもございません。かかる意味で、農林大臣は、本法によって十分な役割りを果たすことを確信して提案に及ばれたか、まず総体的にその所信を冒頭承っておきたいのであります。
  298. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いい品種を多く発見していくということは、農政上きわめて大事なことであり、この法案の提出、そして実行によって実効が上がるものと確信をいたして提案した次第でございます。
  299. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昨日も長時間にわたって農産種苗法の一部改正案についていろいろと質問してまいりましたが、わが党としても特に次の点、政府の考えをただしておきたいと思います。  「農林水産大臣は、指定種苗の「表示規定」および「生産等に関する基準規定」を遵守させるため、当該官吏に、当該指定種苗の生産を業とする者及び種苗業者から検査のために必要な数量の指定種苗を集取させることができるものとする。」と現行法第四条の修正をすべきではないか、かように私は提案をして、昨日、局長及び政務次官からもいろいろ答弁いただきましたが、最終的に農林大臣からこの点についての見解を承っておきたい。
  300. 中川一郎

    ○中川国務大臣 遵守規定につきましては、改正案においても実効が上がるものとは思いますが、さらにそういうことを現行法の趣旨を踏まえて法制化し、明文化することが妥当であるという御決定でございますならば、これまた結構なことだ、こう思っておるわけでございます。
  301. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 改正案の第五条関係で、「指定種苗の生産等に関する基準」については、これを精神的規定にとどめず、実効性のあるものとする、こういうふうに私は提案するわけですけれども、こういった問題に対して大臣はどうお考えでございますか。
  302. 中川一郎

    ○中川国務大臣 五条の問題につきましても、さらによりよきものにするためということで御提案がありますようでございますので、結構なことだと考えます。
  303. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昨日もいろいろ政府当局と議論をしたわけですが、次の問題は、本法提案に当たりまして、具体的な法案策定の段階において、特許庁等との話し合いが行われまして、結局特許法の体系をとらず、間接的に育成者を保護するいわゆる取り締まり型の方式によることとして本法提案になっております。すなわち、最初は特許法と横並びでありましたが、最終段階で農林省がおりて取り締まり型になったという経緯がございまして、私が昨日も指摘しましたように、去る五十年十一月に特許庁において植物新品種に関する審査基準を公表しております。今後、この五十年十一月の植物新品種に関する審査基準の運用と農林省との間に十分な連絡調整ができるのか、こういったことをいわば不安に思うわけでございまして、大臣から特にこの点について明確な国民に対する答弁をひとついただきたい。すなわち、特許庁と行政上の調整ができているのか、国民に迷惑をかけぬようにしてあるのか。少なくとも二元行政が行われるというようなことになったのでは、これは大変なことになります。  昨日もいろいろと質問してまいりましたが、いままで植物に対する問題は一件も特許庁にはなかったということで答弁いただいております。そういったことを踏まえて、大臣から明快なる御答弁を最終的にいただきたい、かように思います。
  304. 中川一郎

    ○中川国務大臣 理論上は特許庁においても扱い得るということになっておりますが、過去の経験あるいは今後の見通しからいきまして、特許庁による認可というようなものは生まれる見通しもありませんし、十分連絡をとって、二元行政にならないように、新品種をつくられた方に迷惑をかけることのないように十分配慮してまいりたいと存じます。
  305. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣に再度お伺いしておきますけれども、本法提案に当たって、重要な問題の一つとして私は次のことを指摘せざるを得ません。すなわち、今後日本の農業の発展のため、また種苗の流通、新品種の育成というようなことをずっと考えましたときに、これは冒頭申しましたように、農林水産業の基本に当たる問題であり、今後またこの役割りが大変重要な役目を果たすことになりますので、その関係から、国、県で育成者を養成せねばならぬ、また国の機関の種苗の育成に力を入れていただきたいということが大きな問題である、かように認識をいたしておるわけでございます。  すなわち、現在国、県で育成をやっておりますが、一例を申しますと、検査官にしても、すなわち発芽率を検査して、果たして表示と発芽率が一致するかというようなことをやるのが検査官ですが、これらは全国三カ所で二十一人しかおりません。しかも、国、県のこういった職員は、民主主義の世の中になりまして、昇格あるいは昇給というような、自分の栄進のことがどうしても頭にあるために、種苗の育成に腰を据えていくということはなかなか容易でない。いわばいまのところは民間に任せているというようなかっこうでございまして、むしろ民間の方がじっくりと腰を据えて開発をして、さらに優秀なものを育種しておる、また研究が進んでおるということが言われるわけであります。  いまの状況では、登録の問題を見ましても、審査官は日種協の役員等を使って、キャップには農林省関係のサイドでおられますけれども、中身は日種協その他の方が多い、いわば民間任せみたいなことになっておりまして、こういった民間の力を借りねばできないようなことになってはいけない。やはり国、県のこういった育成者、職員かうんと力をつけて今後育成に当たってもらわなければいかぬ。そういった意味で、私が先ほど申しましたように、国の機関の種苗の育成に力を尽くす。こういったわずかな人間ではどうにもならぬ。検査官もふやすと同時に、予算研究費、待遇等についても十分考えて、いわば息の長い仕事でございますので、十分喜んで農民のためにこたえられる育種ができるように対処すべきである、これが大きな問題である。本法を改正したからといって、これらの問題に意を尽くさなかったならば画餅になる、かように思うのですが、大臣、その点の決意はいかがでございますか、所信を承りたい。
  306. 中川一郎

    ○中川国務大臣 民間におきます育種事業というものも大事でございますから、それなりに希望が持てる保護政策はやらなければなりませんが、民間にすべてをゆだねることは大きな間違いであり、まず国の機関がしっかりやらなければならぬということでございますので、機関の整備、特に研究者の待遇あるいは昇進等希望を持ってできるようにしたい。少なくとも他の研究者に遜色のあるようなことがあってはならないということは十分認識して対処をいたしたいと存じます。
  307. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点は十分認識して対処していただきたい。  また、本法は昭和二十二年に制定されて以来三十年が経過して今回の大改正になったわけでございますが、もう一つ重要なことは、これは大臣は文部省とも十分連携をとってやってもらいたいことでございますが、農業学校の学生諸君にその農業学校の課程において、日本の将来の発展のためにこういった育種の問題についても教育の中に何とか織り込んでいただいて、そういった農業学校の生徒諸君の中から息の長い、しかも、こういった育種に力を入れるような人が出てくるようにやっていかなければ、だんだん老齢化してまいりまして、将来のために大変心配である、こういったことで、やはりこういった育種というものは一つの勘でもありますので、学校時代から育成をし、そして、そういった希望を持つような教育を与えながら実効のある今後の育種をしていかなければならぬ、教育にも力を入れていかなければならぬ、こういうふうに思えてなりませんけれども、今回の本法提案に当たって、これまた農林大臣、文部省とも十分検討の上、こういったことについても鋭意力を尽くしていただきたいと思うのですが、大臣の見解を承りたい。
  308. 中川一郎

    ○中川国務大臣 きわめて重要な指摘でございまして、農業を背負う農業教育において育種の問題に関心を持ってもらうということが基礎的にあるいは根本的に大事なことでございますので、今回を契機に文部省とも十分相談をして御趣旨に沿えるようにいたしたいと存じます。
  309. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、農業資材審議会の委員のことで一点伺っておきたいと思います。  本法提案に当たり、画期的な改正になったわけでございますが、やはり各関係学識経験者、団体等の代表等を含めて、国際的にも今回は道が開けていくわけでございますので、いわば重要なスタートをするわけでございますから、農業資材審議会の委員の任命については本制度の適正な運営ができるように十分ひとつ人選その他配慮して対処してもらいたいと思いますが、それについての大臣のお考え、対処方針を承りたい、かように思います。
  310. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり十分対処してまいりたいと存じます。
  311. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上をもって、本法の総括的な質問を終わります。
  312. 中尾栄一

    ○中尾委員長 神田厚君。
  313. 神田厚

    ○神田委員 農産種苗法につきまして締めくくりの御質問を申し上げます。昨日、一昨日に引き続きまして、本日大臣に対しまして最後の二、三点を御質問申し上げたいと考えております。  まず、この農産種苗法が出されてまいりました背景といいますか、この農政の状況というのは、米の生産調整をめぐりまして日本の農業が非常に厳しい状況の中に置かれて、そういう中で出されてきたわけであります。そうしますと、ここに農産種苗法が出されてきて、この法律が果たさなければならない役割りというのは非常に大きなものがあるというように私は感じるわけであります。一つには、やはり生産調整によりまして振りかえられておりますほかの生産、たとえば麦なら麦にしましても、これの新しい品種の開発、それから品種の改良、こういうものが非常に重要になってきておりますし、あるいは野菜に転換するという状況の中ではやはり野菜の品種の改良なりそういう種の開発が大事になってきている。こういう中から、やはりこの法案が農民のサイドに立った法案として生かされなければならない、私はこういうふうなことを考えまして、まずこれを利用する農民に十二分にこの法案が寄与するような形で、運用に当たってそれに十分留意をしていただきたい、そういうように考えるのでありますけれども、大臣の御決意をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  314. 中川一郎

    ○中川国務大臣 この法案ができましても、農民に十分徹底いたしませんと法律の目的が達成できませんので、改良普及員であるとかあるいは団体等を通じまして十分農家に関心を持っていただくように指導を徹底してまいりたいと存じます。
  315. 神田厚

    ○神田委員 その中で、先ほども指摘がありましたけれども、育種の行政の現在の状況を見ますと、民間に頼っている部分が非常に多い。私は過日の委員会でも御質問申し上げましたが、野菜に至りましては九十数%が民間育種に頼っている。こういう体制を改めなければならないというふうに考えるわけであります。政務次官より非常に前向きな御答弁をいただきましたけれども、そういう意味におきまして、公共の育種機関のこれから先のさらに拡充というものを果たしていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  316. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まさしくそのとおりでございまして、今日までもかなりやってはまいりましたが、さらに一段と国の機関というものを充実して、新しい品種というものを発見あるいは開発するということで対処してまいりたいと存じます。
  317. 神田厚

    ○神田委員 さらに、国際条約の加盟の問題に関連しまして御質問申し上げます。  この法案が国際条約に加盟するということを前提として準備をされた、こういうことになっておりますけれども、現在の種苗の輸出入の状況から見ますと、この国際条約に加盟をしましてわれわれがそのメリットを得るというのはなかなか大変なことであります。  そういう意味におきまして、一つには、やはり外来の品種に依存して日本の農業の非常に大事な生産資材であります。基礎資材でありますこの種苗の問題について、日本の国の生産がおろそかになってはいけないということ、これをまず一つ御留意をしていただきたい。  それからもう一つは、それに関連しまして御質問申し上げました防疫、検疫の問題、これが行政監察で指摘をされておりまして、これに対しましてさらに前向きにこの検疫制度というものを考えていかなければならないのではないか、これについての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  318. 野崎博之

    ○野崎政府委員 種苗につきまして国内自給度を増せというお話、まことにごもっともでございますが、今回そういう条約に入りましていろいろメリットがあるわけでございますが、やはりわが国の国内で非常に生産がむずかしいレタス等の問題をとりましても、梅雨どきに当たりますのでなかなか生産できない。あるいはトウモロコシではF1の親品種というものはなかなか入りにくい。そういうようなこともございますので、今回やはり条約に入りまして、そういうものがスムーズに入ってくるような制度にいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、検疫等につきましては、昨日も御意見がございましたが、行政監察の線に沿って進めるつもりでございますし、例の病害虫の範囲の問題、そういう点につきましてもいま検討会を設けて検討いたしておりますので、その結論を待って適正に措置をいたしたいというふうに考えております。
  319. 神田厚

    ○神田委員 最後に、この法案が運用されるに当たりまして、いろいろ御質問がありましたけれども、特許庁との関係の問題など多少問題を残しております。したがいまして、これが発布されまして運用に際しましては、どうかひとつ農民の側に立ちました適正な運用がなされますように、当局におかれましてよろしく御指導をしていただきたい。これは実施されまして、いろいろ問題が起こる可能性がありますものですから、そういう点につきましてひとつ大臣の方から最後に御決意をお聞きいたしまして、御質問を終わらせていただきたいと思います。
  320. 中川一郎

    ○中川国務大臣 特許庁との関係等いろいろありますが、二元行政にならないように十分配慮する等、その他執行に当たりましては全きを期するよう十分指導してまいりたいと存じます。
  321. 中尾栄一

    ○中尾委員長 津川武一君。
  322. 津川武一

    津川委員 大臣、どうもこのたびはお父さんを亡くされまして、私からも心から弔問申し上げます。残った大臣、お元気でがんばってくださるようお願いいたします。  そこで、質問でございますが、ただいま瀬野委員、神田委員から出ましたが、特許法と種苗法の関係でございます。今度の私たちのこの種苗法では、育成方法についての特許権が認められます。特許法では植物の品種、これが認められております。したがって、今度行われたときに育成方法だけでなく品種を求めようとすれば特許法にいくのじゃないか、こういう点が心配であります。いままでは植物の新品種で特許はゼロだったというのですが、この法律ができたのでその心配もないわけではありません。そこで、特許庁と農林省と十分協議していただい」て、私たちのせっかくつくった種苗法で事が進まれるように、新品種に対しても十分な配慮が必要かと思うわけであります。この点が一つ。  時間がないので、もう一つ続けて質問いたします。この点とも関連してまいりますけれども、民間育種が非常に果樹や花卉では盛んで、無性繁殖の可能性が多いものが非常に多くございます。この点で、増殖することなく譲渡する場合のみ許諾は要らないことが明確にならなければならぬと思います。この点で、無性繁殖の品種育成者が最も強くこの点を要求もしております。そうでなくなることを心配しております。農林省は増殖して譲渡することは認められないと説明してきましたが、法文は必ずしもそうはいかないところがあるのでございます。したがって、こういう不当な増殖を育成者個人が摘発することはきわめてむずかしいだけに、行政当局としても何らかの監視体制、そして、つくった人たちの権利を守る必要があるのではないでしょうか。この点がきっちりしなくては登録制度に対する信頼を得ることができないと思いますので、この二点答えていただいて、私の質問を終わります。
  323. 野崎博之

    ○野崎政府委員 特許制度との二元行政になるというような先ほどのお話でございますが、これは先ほど大臣から御答弁いただいたように、植物の新品種そのものについては、その植物の特殊性から見て、特許要件にはなじまないし、植物の品種自体についての特許をされることは事実上まずないというふうに考えられるわけで、二元行政の憂えはないと思います。  特許の方法につきましては、御承知のように、調整規定を設けておりますので、そこで解決をしていきたいというふうに考えております。  それから、第二点目の数をふやして転売する、そういう場合には非常に困るのではないか、これも御指摘のとおり、われわれも今度の改正案でもそういうことのないように考えておるわけでございますが、先ほどいろいろの御意見もございましたように、十分ひとつ前向きに検討をいたしたいというふうに考えております。
  324. 中尾栄一

    ○中尾委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  325. 中尾栄一

    ○中尾委員長 この際、本案に対し、竹内猛君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る修正案か提出されております。  修正案について、提出者から趣旨の説明を求めます。竹内猛君。     —————————————  農産種苗法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  326. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、農産種苗法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付いたしましたとおりであります。  朗読を省略して、以下修正の趣旨を簡単に申し上げます。  修正の第一点は、目的規定の中に、新品種の保護を明確にするための字句を加えたことであります。  第二点は、改正案においては、現行法の、種苗業者から検査のために必要な種苗を集取できる旨の規定が削除されておりますが、この規定は、種苗検査の唯一の根拠規定とも解され、削除されたことにより検査の弱体化の懸念も持たれますので、この規定を復活させたことであります。  第三点は、改正案では、優良な品質の指定種苗の流通を確保するため、農林水産大臣は、種苗の生産、調整、保管等に関し、種苗業者等が遵守することが望ましい基準を定め、これを公表することとしておりますが、本規定を「遵守すべき基準を定め、これを公表する」ことに改めるとともに、その基準を守らせるための措置として、勧告及び公表の規定を新たに設けたことであります。  第四点は、品種登録の効力の規定中、品種登録者から譲り受けた種苗等をその数を増加させて転売することが認められるようにも読めますので、この転売が認められないよう規定を明確化したことであります。  以上が修正の趣旨であります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  327. 中尾栄一

    ○中尾委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  328. 中尾栄一

    ○中尾委員長 修正案に対して別段御発言もないようでありますので、原案並びに修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、これより農産種苗法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、竹内猛君外五名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  329. 中尾栄一

    ○中尾委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  330. 中尾栄一

    ○中尾委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  331. 中尾栄一

    ○中尾委員長 この際、本案に対し、瀬野栄次郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。瀬野栄次郎君。
  332. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、ただいま議決されました農産種苗法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農産種苗法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、優秀な新品種の育成と良質な種苗の流通農林水産業振興の基本であり、その果たす役割の重要性にかんがみ、左記事項に十分留意して本法の施行に当たるべきである。     記  一、品種登録制度は、品種の「優秀性」を登録要件とはしていないが、育成者の保護を通じて優秀な新品種の育成を図ることが本制度の趣旨であることにかんがみ、制度の施行に当たつては、その趣旨を周知徹底させるとともに、必要に応じ優秀品種の普及奨励のための措置を講ずること。  二、育成者の保護の強化に伴い、許諾料及び種苗費が不当に値上がりすることのないよう適切な指導を行うこと。  三、種苗の国際交流の円滑化を図るため、本法施行後「植物の新品種の保護に関する国際条約」にわが国の意見を反映させつつ、加盟実現に努めること。  四、国及び地方公共団体が行う育種については、試験研究体制の充実とこれに要する予算の確保を図り、併せて育成者に対する報奨等の優遇措置を講ずること。  五、民間における職務育成品種の出願等に関しては、従業者の地位が不当に害されることのないよう十全の指導を行うこと。  六、民間の個人による育種が農業の発展に寄与してきたこれまでの功績を評価し、国としてもその助長に努めるとともに、無性繁殖等の新品種については、品種登録者の許諾なく不当に増殖販売されることのないよう制度の趣旨徹底、運営の適正化に努めること。  七、出願品種の審査等が迅速かつ適正に行えるよう必要な体制整備及び所要の予算措置を講ずること。  八、農業資材審議会の委員の任命に当たつては、本制度の適正な運営が確保されるよう十分配慮すること。  九、良質の種苗の生産流通を確保するため、種苗検査の厳正な実施に当たるとともに、種苗業者等が遵守すべき基準の適切な運用を図ること。   また、良質な種苗の生産のための採種事業の育成確保について適切な措置を講ずること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通して各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ委員全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  333. 中尾栄一

    ○中尾委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対して別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  334. 中尾栄一

    ○中尾委員長 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府より所信を求めます。中川農林大臣。
  335. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいる所存でございます。     —————————————
  336. 中尾栄一

    ○中尾委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  337. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  338. 中尾栄一

    ○中尾委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、参考人の出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  339. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  340. 中尾栄一

    ○中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十三分散会      ————◇—————