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1978-05-31 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月三十一日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長代理 理事 山崎平八郎君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 竹内  猛君    理事 馬場  昇君 理事 瀬野栄次郎君       金子 岩三君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    倉成  正君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       森田 欽二君    小川 国彦君       柴田 健治君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       武田 一夫君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         農林水産技術会         議事務局長   堀川 春彦君         特許庁総務部長 勝谷  保君  委員外出席者         文部省大学局技         術教育課長   福田 昭昌君         文部省学術国際         局研究機関課長 齋藤 諦淳君         農林大臣官房審         議官      小島 和義君         農林大臣官房参         事官      赤保谷明正君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農産種苗法の一部を改正する法律案内閣提出  第七四号)      ————◇—————
  2. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、その指名により、私が委員長職務を行います。  農産種苗法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、農産種苗法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、その内容、与える影響についてひとつ質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、本法改正によって日本農業農民に与える影響はどういうものになるかという点でございます。  第一番に、私は、本法改正によって種苗育成者に対し、その権利を保護すべく登録出願職務育成品種出願品種名称先願、それから出願品種審査品種登録、その効力、品種名称使用制限等々の規定が盛り込まれてきたことについて大きく一歩前進したことは評価をしたいと思います。特に、多年にわたって農林水産植物品種改良、向上に努めてきた農林水産業貢献者に対し報いる措置が創設されたということは、喜ばしい一面であるというふうに考えております。  しかし、この制度のよってもたらす利益が何者に及ぶのかということも考えてみなければならないと思うわけであります。私は、戦前大学研究室地方試験場、そして地方農民篤志研究家などのじみな努力によって新品種がつくり上げられてきたと思うわけであります。私ここに「世界一〇〇人の物語全集」というのがあるんですが、この中に二人の偉人——偉人という言葉が少し現代的にはどうかと思われる点もありますが、この中では農林一号の父と言われて稲の改良に生涯をささげた並河成資とかあるいはまた自然への愛情ということで成田のイチゴづくりをやった石原幸一とか、こういう稲とかイチゴとかの改良育種に生涯を打ち込んだ人たちがおったわけです。そういう戦前から戦後にわたるこうしたじみな研究努力をされてきた人々の報われなかった状況を考えますと、なおかつ今日またこういう方々が全国に散在していることを考えますと、やはりこうした形でのこの人たちに報いる、先ほど申し上げたようなさまざまな改善措置が講ぜられていくということは一つの前進であるというふうに考えるわけです。  ただ、そういう中で、私ども、まず新法とも言うべきこの農産種苗法改正によって、大学研究者とか国の農業機関研究者とか、そういう人々が当然この改正の中で新たな育成者として期待され考えられなければならないのじゃないか、こういうふうに思うわけですが、今日、文部省関係大学専門学校等農業研究機関において、戦前戦後を通じいろいろ新品種改良育種というものが行われてきたと思うわけでございますが、文部省当局において、こうした面についての研究調査がどのように行われているか、その実態を把握している程度においてひとつ御発表願えたらと思います。
  4. 福田昭昌

    福田説明員 大学におきましては、主として農学部関係になりますが、この農学部には、もちろん大学によって異なりますが、農学科だとかあるいは園芸学科だとか草地学科だとか、それから林学関係ですと林学科だとか、そういう学科が置かれておるわけでございます。農学関係でも繊維学関係とかございますので、どういうふうにとらえるかによりますが、水産とかあるいは獣医とかそういうものを除きますと、現在国立で三十三大学にそういう学科を置いておりますが、そういうところでいまのお話の関係育種学関係講座、これも大学によっていろいろ名称が違いますが、作物学講座とかあるいは果樹蔬菜園芸学講座あるいは林木育種学講座といったような育種に関連する講座というものが、基本的にこれは農学研究で大事でございますので、必ず置いてございまして、その講座中心にして研究が進められておる。そのほかにもちろん研究所等も若干ございます。
  5. 小川国彦

    小川(国)委員 その実態については私どもも把握いたしているところでございますけれども、そういう中で、戦前戦後を通じて新品種の発表といいますか、従前の法の中での登録的なもの、そういうようなものがどの程度行われてきているか、もし歴史的な経過を把握しておりましたら御答弁いただきたい。
  6. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 先ほど技術教育課長がお答えしました農学部のほかに、たとえば東北大学農学研究所であるとかあるいは岡山大学農業生物研究所とか、こういうところでもいろいろな研究を行っておるわけでありますけれども先生案内のように、大学の場合には基礎研究が非常に多くて、遺伝子関係研究はしておりますが、特に最近は育種関係の実用的なものが必ずしも行われていないような傾向が強いようでございます。個々先生方では、たとえば種なしスイカの育種をされた方なんかも過去にあるわけでございますけれども文部省といたしましては、従来、このような新しい品種が、大体一代雑種が非常に多いようでありますけれども、どういうようにされたかということは、それぞれ個々研究者登録と申しますか、そういうことになっておりまして、国有財産的に文部省として登録しておる事例は把握していないわけでございます。あるいは個々大学にあるか、そこのところはまだ調べ切っていないわけでありますけれども、そういう事情でございまして、文部省としては、いま御指摘のことが過去並びに現在においてどのように行われておるか、必ずしも具体的に実態を把握していない、こういうことでございます。  ただ、具体的に二、三の例を申しますと、たとえば五十一年度に茨城大学農学部主要農産物の品質の特殊性とその解決に関する研究で四百九十万円お金を出しておりますし、あるいは山陰地方におけるナシ産業に関する基礎及び応用的研究、そのほか瀬戸内における果樹特に柑橘の生態と利用に関する総合的研究、こういうような経費についても支出をしておるわけでございます。そのほか東京大学放射線育種共同利用施設経費として七百三十万円計上しておるわけでありますけれども、これは東京大学農学部中心になりまして、農林省放射線育種場をお借りして新しい育種研究共同利用を行っておる、こういう経費でございます。個々にそういうような経費を支出しておる、こういう状況でございます。  以上でございます。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、農林省にお尋ねしますが、農林省の直属の農業試験場及び都道府県農業試験場等公的研究機関においてはどれだけの新品種改良育種が行われているか、いわゆる蔬菜等の新品種というようなものでも結構ですし、全体的にでも結構ですが、そういう新品種がこれら公的な機関においてどの程度創出されてきているか、お伺いしたいと思います。
  8. 堀川春彦

    堀川政府委員 農林省国立研究機関並びに農林省が県に委託をいたしまして指定試験としてやっておりますもの、つまり国責任において遂行しております農作物の新品種はいろいろあるわけでございますが、その中でその性質がきわめて優良普及するに足るというものを、われわれといたしましては命名登録制度というものを設けておりまして、そして登録をしこれを官報に告示するという形で明らかにしておるわけでございます。これは従来の沿革を受けまして四十三年に明確にそういう制度を設けたわけでございますが、それ以降今日までの間に、水稲、陸稲から始まりまして、麦、野菜雑穀果実飼料作物、こういったようなものを全部総括いたしまして、登録をされておりますものが九百二十あるわけでございます。大くくりに申し上げますと、稲の関係で三百八十八、麦の関係で百八十六、飼料作物では二十九、果樹関係では二十八、野菜関係では四十九、あとその他ということになっておるわけでございます。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一遍数字を確認させていただきたいのですが、九百二十のうち稲が三百三十八、果実が二十八、野菜が四十九、あと二つ名前数字が明確でないのですが、それをもう一遍答弁してください。  それからもう一つ、それは年度としてはいつからいつまでか。
  10. 堀川春彦

    堀川政府委員 まず年度でございますが、四十三年にこういう制度を設けましたので、それから五十三年一月一日現在までの間に登録をされておるものの総数が九百二十と申し上げたわけでございます。  それから、もう一遍繰り返しますが、稲の関係で三百八十八、麦の関係で百八十六、野菜関係では四十九、果樹関係で二十八、飼料作物関係で二十九でございます。あとその他は雑穀でございますとかそういうものになるわけでございます。  なお、先ほども、この制度は従来の沿革を踏まえてと申し上げたわけでして、四十三年にこの命名登録制度制度として整備してスタートさせ今日に至っているわけでございますが、それ以前にたとえば水稲につきましてこれに似た制度をとっておりました。そういう従前のものも、この制度を体系的につくりました際に、この四十三年の時点で取り込んでおるということでございますから、いまの九百二十というのは四十三年以降に開発された品種ばかりであるということではございませんので、その点お含みおきをいただきたいと思います。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 その間における民間の同様の開発された品種数はどれくらいになりますか。
  12. 堀川春彦

    堀川政府委員 いま申し上げました命名登録制度は、国の責任において開発したものということに相なっております。  それから、民間関係は、先生案内のように、米麦等にはほとんど手を出しません。したがいまして、野菜果樹、花の関係中心でございまして、これにつきましては農産種苗法制度があり、この制度が二十三年に発足しましてから五十二年までの間におきます三つ分野にわたる登録をされました件数は三百二十四件でございます。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと数字が違うのでございますが、昭和二十三年から五十二年までの民間の稲とか麦を除いたものはわかるので、野菜、花、果実になろうかと思いますが、三百二十四とおっしゃいますと、私ども藤井健雄さんが監修されました「そ菜の新品種」という資料の中で見ますと、民間昭和三十三年から四十九年までで一千二百六十九という新品種を数えているわけでございます。そうしますと、いま御答弁になった三百二十四というのは非常に少ない数字になってまいりますが……。
  14. 堀川春彦

    堀川政府委員 藤井先生資料藤井先生独自の御調査によるものだと思うわけでございまして、これは「野菜品種育種における民間の地位」ということで、当方から国会の委員会審議資料として提出しております資料の中の十三ページに、民間関係で開発された品種としては野菜関係で千二百六十九あるというふうに記載をされております。この辺につきましては、根拠等については私どももつまびらかにいたしませんので、いま私の申し上げましたのは、野菜果樹花卉関係で、農産種苗法名称登録を受けました登録済み件数を申し上げたわけでございます。  ちなみに、民間からこの登録を受けるべく出願をしましたいまの野菜果樹花卉三つ分野にわたる出願件数は、千百十七ということに相なっております。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 これは農林省の出された資料でございますから、これで対比も出されてくるわけなので、もう少し根拠のしっかりした資料出していただきませんと、出願件数登録件数では大変な違いがあるわけでございまして、そうすると、藤井健雄千葉大学教授の出されたこの数字根拠というものが非常にあいまいになってくるのですが、この場合の国と公共団体の方の数字もやはり出願件数ということになるわけでございますか。
  16. 野崎博之

    野崎政府委員 藤井先生の監修されたこの数字出願件数数字でございます。
  17. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答え申し上げます。  「種苗名称登録の概況」のところに載っております千百十七件というのは、現行法農産種苗法に基づく名称登録出願件数でございます。その隣りにあります三百二十四件、これは法律に基づく登録件数でございます。  それから十三ページにありますのは、この間の蔬菜の新品種の数を藤井先生がプライベートにおまとめになりました、この法律制度とは離れました数字でございます。
  18. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、このデータはプライベートなデータということになるわけですか。
  19. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 農林省の方でそういう数字まとめたものがございませんでしたので、できるだけ関係資料をおまとめをしてお出しをしたいというつもりで、ここに載せてお出しをしたわけでございます。そういう意味では、藤井先生がおまとめになった数字でございます。
  20. 小川国彦

    小川(国)委員 ですから、農林省資料として採用したからには、ある程度権威のあるもの、信頼すべきもの、こういう判断で出されたわけでございますね。
  21. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 そういうようなつもりでお出しをしております。
  22. 小川国彦

    小川(国)委員 私、いま報告された現行農産種苗法による登録件数状況、それからこの藤井教授の出されたものを見ますと、問題として非常に考えなければならない点がここにある、こういうふうに思うわけでございます。  それは、一例を野菜品種育種にとってみましても、この藤井教授データもとに申し上げれば、官民割合を見ますと、昭和三十三年において国、公共団体で百六、民間で百九十八の蔬菜の新品種が創出されているわけです。ところがこの官民割合を見ますと、いわば国、公共団体が三五に対して六五%が民間ということで、官民割合は三五対六五、そういうふうになっているわけです。ところが昭和四十九年においては、官が二十三に対して民間は二百七十八、割合で申しますれば八対九二という驚くべき割合となってきているわけです。一体、国や公共団体は、育種の事業というものを野菜果樹花卉においては放置してしまったのかというようにも受け取られかねないこの数字実態であります。そしてそれは、国の方の農産植苗法に基づく登録件数を見ても、いま報告されましたのは花と野菜ですが、これでは官が九十七ですね。それに対して民間は三百二十四。これも三対一以上の比率になってくるわけですね。そうすると、文部省大学の農場とか農学部研究機関あり、あるいは農林省農業試験場都道府県農業試験場があって、そういうものが官として一体になってこういう品種をつくっていく。米、麦だけではなく野菜や果物や花についてもそういう新品種をつくっていく努力というものは、国の研究機関では放置されてしまったのか、こういうふうに数字の上では見ざるを得ないわけです。このデータは三十三年からしか出ておりませんけれども、それ以前のデータをたどっていけば、恐らく官民割合は五分五分か、あるいは官の方が上回っておったのではないかというような推測すらされると私は思うのですが、そういう点について農林省文部省は、官の実態についてそれぞれどういうふうにお考えになるか、見解を承りたい。
  23. 堀川春彦

    堀川政府委員 ちょっと数字を訂正させていただきます。  私、先ほど農林省命名登録制度で、稲の関係が三百八十八と申し上げたかと思いますが、三百三十八の誤りでございます。それから、果樹関係は二十八でございます。野菜関係では四十九でございます。  そこで、こういった農林省命名登録制度にのって農林番号をつけられております作風は、そのものとして大変値打ちのある優良なものということになっておるわけでございますが、民間育種との関係でございますけれども、私どもといたしましては、それ自体として非常に価値のあるものをそのまま増殖をすれば大変りっぱなものになる、人の食べる物として、食物として非常に優良性質食品であるというものを開発することは当然でございますが、究極的な目標をそこに置きまして、民間に対しまして、育種がございますこういった野菜とか花とかいうものにつきましては、これに対しまして優良育種母材を提供するということが非常に大きな使命であるというふうに考えておるわけでございます。  そういう形で、たとえば野菜について申し上げますと、先ほどのような優良品種登録があるわけでございますが、こういうもの、あるいはそれ以外の、形質に非常に特徴のある育種母材として使用できるもの、こういうものを民間育種業者に提供いたしまして、その結果、これは大づかみの推定の話でございますが、たとえばキュウリで申しますと、一代雑種の親にそういう国が提供したものを使う、あるいはその育種母材利用いたしまして民間で新しい品種をつくる、そういった関係を宛てまいりますと、それらを総括をいたしまして、キュウリの場合には現在普及をしております品種のうちの約八割、白菜で申しますと、中晩生の白菜につきましてはおよそ全部、トマトにつきましては、そういう計算をいたしますとおよそ六割五分程度というものが、国から育種母材を提供し、それのF1なりあるいはそれをもとにして改良選抜を重ねまして品種として固定をし、流通をしておるというものに対するウエートは非常に高いわけでございますから、こういった登録制度の表に出てきた数字だけでなしに、そういった民間と国との関係と、その結果が普及上どの程度実際面で力を持っているかということもあわせて御理解を賜りたいというふうに思うわけでございます。
  24. 小川国彦

    小川(国)委員 今度は中身でということでおっしゃっているわけですが、いま堀川さんの御答弁だと、素材を国の機関がつくって、そして応用民間にやらせているということになるわけなんですが、確かにいろいろな種苗素材を、国の機関なり大学機関なりあるいは農業試験場機関なりがやっていることはわかるのですが、そういうものはこれからの新しい種苗法改正の中で登録権ないしはあるいはそれに準ずる許諾権なり、そういう形で一つ権利的なものになっていくということになりますと、その素材を国がつくって実質的な権利民間に任す、こういう形では、一体国研究というものはどうなのかということをやはり問われる面があると思うのですね。ですから、そういう点ではもう少し国の機関もしっかりして、そして国の中でこれからのこうした新しい改正に備えた体制というものができていかなければならないのじゃないか。  もう一つ、この数字でいきますと、皆さんの方の国の研究員というのは、育種研究者というのは、文部省農林省一体それぞれどのくらいいらっしゃるのか。
  25. 福田昭昌

    福田説明員 文部省関係でございますが、先生御承知のように、大学ではいろんな名前講座を置き、それぞれの研究者が自分のテーマを決めながら研究をするということでございますので、はっきり何人といったような数字でつかまえることはできないわけでございますが、先ほど御説明しましたように、農学科なりあるいは園芸学科なり、その他の農学関係学科を置きまして、そこには必ず育種関係研究をやる組織ができておるということで、それが大学の数にいたしますと三十三大学ございまして、その大学には少なくとも一以上の講座は必ずあるという状況でございます。
  26. 堀川春彦

    堀川政府委員 育種関係の国の研究体制でございますが、研究室が全体として九十六、それに所属いたします研究員数は三百十二名。そのほかに指定試験関係がございまして、これは県に委託いたしまして育種関係の仕事をしていただいておる、これが四十二単位でございます。ということで、補助員まで含めますと百八十名になりますが、研究員だけですと百三十名ということに相なっております。なお、野菜関係は、この中で九研究案国立試験研究機関の場合ですが、九研究室の二十八名ということになっております。そのほか、指定試験といたしましては、長野県にトマト関係をやってもらっておりまして、一単位二名ということになっているわけでございます。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと数字をもう一度確かめたいのですが、皆さんの方で出された資料ですと、「農業技術研究所及び専門場所育種関係研究者数は百六十八、「農業試験場育種関係研究者数が百三十九、それから「指定試験研究員及び補助員数でいきますと百八十という数字が出てくるのですが、これはそのまま今度の農産種苗法関係に関与する研究者数というふうにこの数字を押さえているわけではないのですか。
  28. 堀川春彦

    堀川政府委員 いまの数字関係で申し上げますと、御提出してあります資料の十二ページの数字と存じますが、百六十八人というのは、農技研から始まりまして熱研センターに至る間の全体の育種関係研究者数でございます。これに対しまして、指定試験関係が右側の方にございまして、百八十名ということになっておりますが、指定試験年度年度でどういう人員構成でやるかがずれてまいりますので、これは五十二年の数字でございますが、百八十となっております。これが五十三年の場合には五名ふえる予定でございますから百八十五。それを、合計を百六十八といたしますると——失礼いたしました。その下の、農業試験場関係、2の資料がございます。それが百三十九ございまして、これを合計いたしますと三百七人になるわけでございます。それに、五十三年度は、三百七人が五人ふえることになっておりますので、その予定を含めますと、三百十二ということになるわけでございます。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと足し算が合わないのですが、百六十八と百三十九と百八十を合わせると四百八十七という数字になるのですが、いま三百十二と言うのは……。
  30. 堀川春彦

    堀川政府委員 ちょっと私、説明を混乱いたしまして間違えました。  百八十名の方は、これは指定試験関係で五人ふえると申しましたのが、指定試験関係でございませんので、ちょっとその点は取り消させていただきます。  五名ふえると申しましたのは、この資料の左側の半分に書いてございます部分の、上の方の1の関係が百六十八、それから2の関係が百三十九でございます。これが合計をいたしますると三百七になるわけでございます。私が三百十二と申し上げましたのは、これは五十二年度数字でございますので、五十三年度は五名ふえますのでその五名を加えまして三百十二になる。そのほか指定試験関係は、これは五十三年度の人数をちょっと、具体的にこれからの話でございますので、前年の五十二年の数字で申し上げれば百八十、こういうことでございます。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、この指定試験というのは定時的な研究員ではないということでございますか。三百七というのが定時的な研究員で、この指定試験というのは随時行われるか何かそういう研究員で、総数の中には加えないのですか。
  32. 堀川春彦

    堀川政府委員 国、県を通じます全体の育種関係研究体制という意味ではその百八十を加えて考えていただいて結構なんですが、この百八十という数字がそんなに年々大幅に変動するものじゃございません。しかし実行と計画で若干その増減があり得るので、あったといたしましてもきわめて微々たるものでございます。育種関係は息の長いことでございますから、そう大きな変動は起こり得ないことになっております。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 この数字の中には都道府県の単独育種者が入ってないようでございますが、都道府県試験場育種関係研究員を加えますと、総体的な国及び都道府県研究員の総数というものはどれくらいの数に農林省関係ではなりますか。県単独のやつも、ひとつ推定でも結構ですから、その数字を加えていただきたい。
  34. 堀川春彦

    堀川政府委員 全体の総数は実は把握をしておりませんが、県単では幾つかのいろいろな品目につきましてそれぞれ県単試験をやっており、一カ所当たり平均いたしますと一・三人程度ということになりますので、個所数がわかっておりますからちょっとこれを集計をさせていただいて、後刻お答えを申し上げたいと思います。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 文部省の方が正確な数字が出てこないのですが、三十三大学で、先ほど何講座とかとおっしゃったのですが、その講座数から推定をしていきますと、育種育苗をやっていらっしゃる研究員の数はおよそどのくらいに推定をされるか。もう少し具体的な数字をひとつお示し願いたいと思います。
  36. 福田昭昌

    福田説明員 数字を具体的に把握するのは多少むずかしゅうございます。というのは、一つたとえば作物学科という講座があります場合に、いわば種苗関係中心研究する人と、多少研究の側面がずれた研究をされる場合とございますので、人数を的確に把握するのはむずかしいわけでございますが、先ほど申しましたように、国立で三十三大学ございますが、たとえば農学科園芸学科、森林関係で申しますと林学科あるいは草地学科、畜産学科で草地関係がございますが、そういう学科数で見ますと七十五ほど学科がございます。その学科では、それぞれの作物なり園芸なりそれぞれの種苗関係研究しておる組織、講座と申しますが、これが大体一つはあるということになります。一つ講座としては二人ないし三人ぐらいおるわけですが、たとえば三人おる場合に三人ともみんなが完全に種苗専門にやっておるというふうには必ずしもならない面がございますので、正確な数と申すわけではございませんが、ほぼそういう見当ではなかろうかというように推察ができると思います。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 講座数は先ほど幾つとおっしゃいましたか。
  38. 福田昭昌

    福田説明員 先ほど申しましたように、たとえば育種学というふうにはっきり名称を打っている場合ですと、いわば種菌をやっているというのがはっきりするわけですが、作物学というような講座になりますと、育種専門である場合と専門でない場合とございますものですから、何講座という数字をきちんと出すことが、実態を調べないとよく把握できないわけですが、先ほど申しましたように学科が七十五ございますので、少なくともその学科にはほぼ一講座はあるというふうに言えるのではないかということでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、羽田委員長代理着席〕
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、七十五学科ないし七十五講座あると見て、そこに二人ないし三人いるというふうに見れば、百五十ないし二百人ぐらいの研究員がいる、こういうふうに一応推定してもよろしゅうございますか。
  40. 福田昭昌

    福田説明員 実態数字を申し上げないで申しわけないのですが、推定としてはそういうことになろうかと思います。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、文部省関係で言うならば二百、それから農林省関係で言うならば県単を除いて約五百、大ざっぱに七百近い育種関係研究員がそれぞれ国の機関に配置されている、こういうことになるわけです。これに対して、種苗会社の育種研究員というのは四十五社で四百五十九名、こういう数字からいたしますと、これは圧倒的に国の方が研究施設としても、研究のスタッフとしても、すぐれた充実した研究体制を持っているわけなんです。このような圧倒的な体制を持っていながら、最近の育種関係、特に蔬菜関係数字で見ますと、一番新しい昭和四十九年の数字で見ると、民間が九二%のシェアを占めて、国、公共団体大学研究機関を含めてわずか八%、こういうような数字になってきてしまうわけなんですが、こういう点については、先ほど皆さんは、遺伝子の研究がある、あるいは素材研究がある、こういうことをそれぞれ述べておられるのですが、やはり文部省にしても、農林省にしても、こういう育種研究体制というようなもの、やはり国なり公共の機関としてあるいは公共の大学としてこういうようなものをきちっとつくっていくというような体制があってしかるべきではないのか。いままでの大学とかあるいはまた研究機関の考え方というものは、象牙の塔ではございませんけれども、それぞれ独自の研究がなされていればいいということで済んできた時代が、今日ではやはり国民に奉仕する体制としてそういうものをきちっと国なり国の機関がつくっていく。そういう研究体制なりがやはりあってしかるべきではないのか。何か民間の下請的な研究だけが国の機関研究になってしまっていいのだろうか、こういう疑問を率直に持つわけなんです。そういう文部省農林省のいわゆる育種研究に対する体制というものを皆さん方はどういうふうにお考えになるか。これはひとつ農林省文部省、それぞれどういうふうに——いまのこういう大きな流れとして、官民関係がいまのような九対一くらいの割合になってしまっている。研究スタッフとしては、農林省文部省もそれぞれすぐれた研究体制を持っていながら、現実には企業の種苗研究の、種苗発表の下請的な作業に終わってしまっているのではないか、こういう疑念を感ずるのですが、そういう点については農林省文部省はどういうふうな見解を持っておられるか。     〔羽田委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  42. 堀川春彦

    堀川政府委員 作物の育種あるいは種苗の生産、供給という全体の体系をどういうふうに考えていくかということだと存じますが、私ども国立研究機関といたしましては、指定試験等の関係で県とタイアップをいたしまして、できるだけ優良品種の作物、水稲から麦、豆、いも、甘味資源作物、飼料作物、工芸作物あるいは牧草飼料作物果樹野菜花卉、茶、桑、こういった主要な作物を網羅をいたしまして、これについて育種を大いに計画的に、しかも強力に進めなければならないというふうに考えておりまして、そのために、五十年の六月に設定をいたしました作物関係育種基本計画に基づいて、それぞれの国のいろいろの機関がございますから、その国の機関の機能分担、それから県との関係、そういうことを十分配慮をいたしまして、育種の試験、それからそのための研究、それから育種の試験が行われますための育種の支持、こういった三面に分けて考えて、これらを連携をよく保った形で効率的に進めるという形でやっておるわけでございます。  そこで民間との関係が問題になるわけでございますが、民間で主として行っておりますのは、たとえば野菜のF1、一代雑種、こういったものを民間ではかなり手がけておるわけでございます。なぜこれを民間が手がけるかということは、F1につきましては毎年毎年更新をするわけでございますので、したがって商業採算に合いやすいというようなことがございます。それぞれの会社では、そのF1の親というものは独特の系統のものを使うということで、親自体についてはそれぞれの会社が独自のものを持つという形で、それぞれの企業間でもこれが営業として成り立つということになっているわけでございます。私どもは、たとえば野菜について申しますと、一応いままでできるだけ試験研究の成果は公開するというたてまえをとってきております。そこで、野菜育種を、F1なりあるいは新系統をつくるために非常に役立つ母本というものを一生懸命育成して提供する。たとえばこれは昨日も申し上げたわけでございますが、白菜の場合に平塚一号という品種農林省で開発をいたしました。これを提供いたしまして、民間の企業でこれを片親にしましたいわゆるF1というのは二十八品種できております。それから、これを元にいたしまして新たな品種系統をつくりましたのが三品種ございます。そういう形で、民間の事業活動というものにもうまく連結できるような形で、いい種苗が供給をされるように、そのもとになります育種を進めていくというのが民間との関係における一つの国のあり方ではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。  ただ、野菜でも、たとえば栄養繁殖をいたしますイチゴのようなたぐい、これはなかなか育種がむずかしゅうございます。そういたしますと、こういった面につきましては国が大いに力を入れまして、民間ではなかなか手を出しません、したがって、こういうものについて力を入れるとか、もとより米麦、大豆というものにつきましては、民間でもきわめて少数の事例はあるようでございますが、こういった主要農作物についての育種ということは、長い期間を要する話でもございますし、一定の高度の技術能力を要求されることでもありますし、またなかなか採算にも乗りにくいということで、こういったことは国、県を通じます公共育種でもっぱらいい品種を開発して、そのものとしてこれの普及を図るということをやっておるわけでございます。さような機能分担が最も妥当ではないだろうかというふうに考えて、今後ともこういった基本的な考え方を踏まえまして、国の育種研究は計画的に体制整備をやってまいりたい。  なお、先ほど申し上げました育種の基本計画設定後、私どもは、育種関係研究室としては十整備をしてきておるわけでございます。  そういった状況でございまして、いろいろ諸般の農業上の要請というものも十分踏まえながら考えて、ある程度あるものに重点を傾斜しておくという考え方をとって、計画的な育種の推進、こういうことを図ってまいるつもりでございます。
  43. 福田昭昌

    福田説明員 大学におきましては、育種関係につきましての研究ということになりますと、普通作物あるいは園芸作物などを対象といたしまして、遺伝学、細胞学、生理学といったものを基礎としまして品種育成の改良といったようなことで、基礎研究にどうしても比重がかかりがちであるということが言えようかと思います。そしてその研究の成果は、育種学会あるいは作物学会、園芸学会、草地学会とか林業学会といったような学会におきまして、それぞれ研究者研究の成果を発表し公表しておるという状況でございます。もちろん大学研究も社会と密接な連携を持ちあるいは社会に役に立つ研究というものが大事でございます。そういう意味におきまして、大学におきます基礎研究が成果を生んでいくという形として、国のその他の試験研究機関等との連携が非常に大事になってこようかと思います。この点につきましては、大学におきましてそういう機関から受け入れます受託研究員制度とかあるいは研究そのものを委託を受ける受託研究制度といったものもございますので、こういったものが今後大いに活用されていくことが大事ではないかというふうに考えております。
  44. 小川国彦

    小川(国)委員 両方の答弁を伺っていると、何をやっているんだかよくわからないのですね。  結局、私が言わんとしていることは、国の研究費を使って行われた研究成果が、民衆に還元されずにメーカーに行ってしまっているんじゃないか、こういう現実を私は指摘したいというふうに思うわけなんです。たとえば、私ども種苗法関係をめぐっていろいろ、たとえば大学関係なり試験場関係調査をしてまいりますと、みんなそこがメーカーの系列につながっていってしまっているわけです。たとえば、千葉大学とか千葉の試験場を調べていくとミカド種苗という会社につながっていったり、北海道大学を調べていけば雪印種苗につながっている。京都の大学から調べていけばタキイ種苗につながっていくというふうに、いずれも大学や政府の研究機関がメーカーの系列に属してしまって、そして大学や国の機関研究成果というものがそのまま企業の収益事業の下請研究的なものにみんな流れていってしまっておる。ちょうど大学における薬品の研究が薬品メーカーの道具になってしまっておるのと同じように、種苗研究なり、大学なり試験場研究成果というものはみんなメーカーに吸い上げられてしまって、農民大衆に還元されてない。そういう点を私は指摘したいと思うわけなんです。ですから、これからこういう法律ができてこの権利がつくられていくにしても、いま農民が持っておる不安というものは、こういう特許的な形で権利が裏づけされてくると、樋代が一様に高くなるんじゃないか、このパテント代だけ樋代が高くなる、こういうふうに農民は異口同音に言っておるわけです。そういうふうに言っておるところは、結局パテントというものが こういう形で一つのパテント的なものをこの保護立法でつくっていく。そういうものの大半が種苗会社に帰属していってしまったら、結局パテント料は転嫁されて農民の負担になってくるんじゃないか。そういう意味では、大学にしても農業試験場にしても、国の機関がもっとしっかりして、一貫して自分たちのところで新品種をつくっていくという研究努力なり研究意欲というものがなかったら、われわれは基礎研究だけやればいいのだ、そのデータ民間に流して民間がいいものをつくればいいのだ、こういうような言い方では、国がせっかく巨額の予算を投じてそれぞれの文部省なり農林省なりに試験研究費を出しておる意味はなくなってしまうのじゃないか。企業の下請のために私どもは国の予算を出しておるのじゃなくて、国民にそれが還元されるという形でなければならないわけで、そういう点では、もう少しこういう新品種をつくっていくという意欲が農林省文部省にはなければならないじゃないか。その辺の意欲はいかがなんですか。
  45. 堀川春彦

    堀川政府委員 私どもは、民間でやり得る分野のものと国の育種研究というものが相互に適切な連携関係を保つことが必要であるという考え方のもとでやっておるわけでございまして、野菜にしましてもその他のものにしましても、民間の系列下にある下請的なことをやっておるというつもりは毛頭ございませんし、また基礎的なことだけやっておればよろしいというようなつもりもございません。それ自体品種として非常に値打ちのあるものを必要のある作物については作出をするということが国の使命であるというふうに考えております。特に民間で手を出しにくいもの、また主要食糧として国民生活上も農業生産の上でも重要なウエートを持つもの、こういうものについては、国みずからが積極的に当たって、そのものとして普及して値打ちのある品種の作出に努めているところでございます。  なおまた、民間との関係で系列企業というお言葉もございましたが、たとえばトマト野菜試が育成をいたしました興津十二号という品種がございますが、これは広く特定のだれということでなしに一般にパブリックにしておるわけでございまして、これを利用いたしまして大分県の経済連という農業団体が、F1でございますが、豊陽というりっぱな品種をつくってやっておるというような現実もございます。私どもは、特定の企業に対してつなげていく、あるいはその注文によって下請的に育種の仕事あるいは研究をやるというふうには考えておりません。成果はあくまでも一般に公開をするという気持ちでやっておりまして、そのことが最終的には農家の生産面に対するプラスとして実現をするということが究極の目標でもあり、また、いいものができて消費者も喜んで食べていただけるような優秀な食品をつくる、こういうことがわれわれの究極の目標でございます。
  46. 齋藤諦淳

    齋藤説明員 実は類似の問題で、職務関係で発明された特許につきましても、従来の法律のたてまえは各先生方個人の特許になる、それが御案内のように原則になっておるわけでございますけれども、しかし、国の多額の経費を使用したそういうものについては、ぜひ国有特許にすべきではないか、こういう問題が別途あるわけでございますが、これにつきまして文部省といたしましては、学術審議会で長年検討いたしました結果、実は本年十月から、はっきり職務上発明されたものは国有特許にするように制度づけたわけでございます。  この新育種等につきましては、法律関係もございまして、まだそういう制度化はなされていなかったわけでございますが、特許制度を検討する際にも、古い法律に基づいて考えておりましたので、文部省の審議会の中でもそのことが十分議論なされなかったわけでございます。そういう意味で、先ほど申し上げましたが、文部省としては、各大学でどのように登録しておるか、その辺のところを十分つかみ切っていなかった、そういう手落ちがあるわけでございますけれども、今後、大学内での特許制度が確立される、それとも関連させながら、この新しい法律に基づいて文部省としても十分検討したい、このように考えておる次第でございます。
  47. 今井勇

    ○今井政府委員 私、ただいまの先生の御指摘を拝聴しておりまして、少なくも今回の法改正は、新品種育成者というものを、それが個人であろうが企業であろうがきっちり守っていこうという精神であるわけです。したがって、公の研究機関等が、先生御指摘のようにもし万が一、一企業のためにあるようなことがあるならば、これは大変なことであろうと思います。私はそういうことはあり得ないと思うし、もしそういう疑いがあるならば、これは国民のために大変残念なことだと思うわけであります。  したがいまして、国等で開発されました成果は、やはり国民のために広く公開さるべきでありましょうし、それによって民間の英知を集めてそれぞれの方々が新しい品種をつくっていただくということを今後とも真剣に考えていかなければならぬと思います。政府がいろいろ答弁したようでありますが、要は、やはり国のみならず民間の方々も英知を集めて国民のために新しいものをつくっていこう、それを保護していこう、こういうふうに私どもは考えておりますので、先生の御指摘の点については十分配慮をいたしてまいりたい、このように思います。
  48. 小川国彦

    小川(国)委員 産業と大学の、癒着ではないのですが、私、日本の大きなメーカーのタキイとか坂田のそれぞれ出している月報のようなものを取り寄せてみたのです。たとえばこれはタキイ種苗の「園芸新知識」なんですが、これを見るとタキイ種苗で園芸専修学校というのをやっていらっしゃるのですね。そうして講師というのは、京都大学の名誉教授で農学博士の桑原さんという方であり、また京都大学教授で農学博士の塚本さんという人であり、京都府立大学の名誉教授、教授、こういう方々が全部タキイ種苗のやっている園芸専修学校の講師になっているわけなんですね。  こういうふうに見ますと、大学の農学博士、その方々がそろって種苗会社の専修学校の講師になっている。こういう形は、産学癒着という言葉がありますけれども、こういうちょっとしたものを見てもそういうつながりが出てきているわけで、そういう意味では、大学研究機関でつくられる種苗というものがどうも民間にそのまま流れていってしまうのじゃないか、研究の成果というものが、国の、公のものにならないで民間のものになってしまうおそれというものは、こういうようなものを見ても非常に強く感ずるわけで、そういう点は今後十分戒めていってもらいたい。先ほど次官の答弁がございましたが、こういう点を指摘し、十分注意を促しておきたいと思います。  それから、文部省農林省がそれぞれ研究体制を持っているわけなんですが、いま、日本の農業形態を見ますと、それぞれ地域的に特徴を持った地域農業というものが伸びていっているわけです。たとえば関東地区なら関東地区の関東平野を中心とした都市近郊の蔬菜とか園芸とかそういう農業が伸びていますし、北海道なら北海道なりの地域農業というものがあるわけなんで、そういう農業形態に応じた研究体制というものが、文部省とかあるいはまた農林省というそういう役所のセクトの系列の中で研究が埋没するのじゃなくて、そういう農林省文部省研究機関が一緒になって、地域の農業形態をどういうふうに振興させていくのか、そういう横の連携というのは一体とれているのだろうか、こういう点にも疑念を感ずるわけなんですが、種苗研究などに例をとっても現実にそういう横の連携とか地域的な対応策というものがあるのかどうか、この辺ひとつ……。
  49. 堀川春彦

    堀川政府委員 これは育種には限りませんが、私ども先生の御指摘の点は非常に重要な点であると心得ておりまして、育種に関して申し上げれば、これは先ほど申し上げました作物関係育種基本計画を適確に遂行するために毎年毎年育種部門の総括検討会議というのをやっておるわけでございます。これは地域でも行われますし、それから全国レベルで、普通は東京で行われる、いままではその例が多いわけでございますが、やっておりまして、その際、私どもといたしましては、日常の研究推進にも、いろいろこういう大学研究者の方々、研究教官の方々の御援助あるいは連携を保っておるわけですが、こういった会合等におきましても、大学等におきますそれぞれの地域の特性あるいは全国的な視野、こういったものを持った方に集まっていただいて、地域問題は地域問題として、大いに育種の検討について参画をしていただく、こういう体制をとって、現に参画をしていただいてやっておるわけでございます。  なお、これは毎年ということではございませんが、全国レベルで全国育種会議というのをやっております。先般その会合が開かれまして私も出ましたわけですが、これには学識経験者の中に現職の大学の教授等にもお加わりをいただいて、全体的な育種の検討をやっておるわけでございます。  この育種の検討と申しますと、これまでやってきましたところの成果についての評価、それから新たな優良品種ができました場合に、これを農林登録番号を付して命名登録をするにふさわしいものであるかどうかについての多角的な検討、こういったこともこういった育種会議の席でも行われておるわけでございます。  もちろん、別途いわゆる審査委員会というものが設けられまして審査を経るわけでありますが、そういう広い角度からあるいは地域的な特性というものを踏まえた角度からのいろいろ大学なり学識経験者の御意見も拝聴しながら進めておるということでございます。
  50. 小川国彦

    小川(国)委員 今回の法改正の話を農民に話しますと、農民の回答というのは一様に、そのパテント料だけ種が高くなる、こういうのが農民の素朴な受け取り方なんですが、農林省として、このパテント料による値上がりというものの歯どめはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  51. 野崎博之

    野崎政府委員 今回、法改正いたしまして育種者の保護に重点を置くわけでございますが、品種そのもの、極そのものの間にもいろいろ競合性がございますし、その種の中、品種の中でもいろいろ競合関係がございますし、実際にはその品種を使う経済効果によって価格が決まる、そういうようなことでございますので、われわれといたしましては、この品種登録制度になったからといって急にそういう種苗の価格が値上がりをするようなことはないと考えておるわけでございます。
  52. 小川国彦

    小川(国)委員 育成者権利が保護されるということは結構なわけですが、現行の種苗民間における育成状況を見ると、新しい登録はその大半は種苗業者に押さえられてしまうのではないか、こういうふうに思うわけですが、育成者の内訳として種苗業者と民間研究者割合はどのくらいになると推定されていますか。
  53. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 お答えいたします。  育成者について、企業の育種者と個人の育種者の割合という御質問だと思いますが、個人の育種者というのは、いろいろな作物、いろいろな型がございまして、そういう数字はつかめてございません。しかしながら、現行法名称登録制度の実績を見てまいりますと、登録件数で見ますと、制度発足以来五十二年度までの数字でございますが、個人で登録を受けておる者が六六%を占めてございます。これは果樹野菜と花が対象になっておりますが、登録を受けている個人の比率は六六%、申請をした個人の比率は六九%ということになっておりまして、会社だとか県だとかその他の団体だとかそういうものに比べて個人の出願が多い。また、個人の登録を受けた者が半数以上を占めておる、そういう事情になっております。
  54. 小川国彦

    小川(国)委員 その個人の内訳ですが、種苗会社に属する個人と、それから篤志農家のような農家の個人とあると思うのですが、それはどういうふうに分類されますか。
  55. 赤保谷明正

    赤保谷説明員 業務統計でそこまでとっておりませんで、会社の従業員としての個人で出願をした者と全くの個人育種者として出願した者との区別はしておりません。
  56. 小川国彦

    小川(国)委員 種前会社の持っている四百五十九という技術者数から見ましても、それから今度の種前法の観点からいっても、申請は個人でできるわけでございますね。そうすると想像される数字というものがおよそあろうかと思うのですね。従来の実績から見て、これは実務に携わってきた人なら、種苗会社の技術者が申請したものと、それから篤志農家が申請したものとは、従来の数字でもどの程度割合になっているかということははっきりしていると思うのですが、その辺、把握はされていませんか。
  57. 小島和義

    ○小島説明員 いま参事官からお答えしました比率は、登録件数出願件数につきましての名義人がだれであるかということを申し上げたわけでございますが、個人名義で出願いたしましたものの中に、会社の従業員あるいは公共団体等の従業員であって個人名で出願したものが幾らあるか、こういうお尋ねだろうと思います。これはいま参事官が申し上げましたように、的確にはお答えいたしかねるのでございますが、従来の農産種苗法の運用の中におきましては、たてまえは、従業員の場合も個人出願ができる、本人が同意した場合に限って雇い主ができる、こういうことになっておりますが、昨今の運用を見てみますと、なかなか個人が雇い主の出願に対して同意をしないというふうなことはでき得ないという状況にございますものですから、個人名義の出願のものは大部分が雇用関係のないもの、こういうふうに御理解いただいてまず間違いなかろうと思います。  そういうこともございまして、今回御提案申し上げています改正案の中におきましては、職務育種に関する規定の整備ということを改正事項の眼目の一つとして取り上げておるわけでございます。
  58. 小川国彦

    小川(国)委員 先ほどの局長答弁またいまの御答弁を伺っても、具体的にパテント料が、いまのお話では六六%個人ということですが、私どもは結果を見ないまでも、この種苗法改正の中で登録をされてくるものの大半が種苗会社に属する技術者のものになるであろうということは想像にかたくないわけなんです。現実に農家にとってみると、一体いま種代の負担はどうなっているのか。たとえばスイカの種を聞いてみますと、大体一粒十円、発芽率を八割と見ると、その一粒十円の極が十四、五円になる。スイカの値段を、高いとき安いときとありますが、平均七百円と見ますと、大体二、三%の種代だ、こういうふうに見られるわけです。たとえば白菜一反歩の種代は約千円、しかし、この白菜価格が高いときはいいのですが、ゼロに近いときもあるわけです。そういうときになると、種代の千円というものはばかにならない負担になる。それからスイカなどでも、北総台地のスイカの地帯へ行きますと、種代を調べてみましたら、スイカ四反歩つくる農家で種代は大体三万円近くなる。一町歩近くスイカをつくる農家もございますが、そういうところでは種代が十万円になる。ですから、農林省が言っておられるように、生産費の中あるいは農産物の売り上げ収入の中で種代はパーセンテージとしては二、三%から四、五%だ。種代の値上がりにはならないだろうということを言っておられるのですが、現実に農家の負担額として見ると、スイカをつくる農家でもいま言ったように四反歩で三万とか一町歩で十万とか、スイカだけでも大変な額の種代になっているわけです。そういう点からいきますと、今度これにパテント料がつく。そのパテント料がほとんど種苗会社のものに属するということになると、これはどうしても種代の値上がりを招来するのではないか、こういうふうに懸念されるわけですが、その辺の歯どめというものをどういうふうに考えておられるのか。  それから、新法の中ではそれに対して農林省が調整するという規定がありますが、調整の中にはこういう価格調整まで入っているのかどうか。その辺のところ、この新法ができる趣旨というのはやはり日本の農民と農業のためにあるべきはずなんで、それが逆に農民にとっては種代の値上がりという形で返ってくるのではならないと思うわけで、その辺の法的な歯どめ、運営における歯どめはどういうふうになっているのかということをもう一度伺いたい。
  59. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど申し上げましたように、種苗の価格というものは、特に野菜の種子等につきましては、品種の間に競合性が非常にある、そういうこともございますし、やはり自由競争といいますか、品種と需要と供給の関係で決まってくる。そういうようなことで、従来もそうでございますが、特別に種苗の価格あるいは品種登録による許諾料の水準、そういうものにつきましてわれわれとしましていろいろ問題になったという話は別に聞いておりませんし、そういうものにつきまして特定な基準をつくったりあるいは特別な指導、そういうようなことは直接的には考えておりませんが、今回、これは直接そういう価格の調整ということではございませんが、種苗業者が遵守をすることが望ましいという基準を公表することにいたしておりまして、その中にいろいろな生産あるいは調整、保管、それらに関していろいろ種苗業者が品質管理の面で遵守をしてもらいたいという基準は定めたいと思っておりますけれども、価格そのものは、その中にこういうふうにしろというようなことはいまのところは考えておらないわけでございます。
  60. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、この新法というかこの改正の中で種代が値上がってくるだろうということは、当然全農家が想定しているわけなんですね。問題は、種苗会社の業績というのが最近とみに上昇してきておりまして、テレビのコマーシャルまで登場するほど種苗会社の業績はよくなっているわけです。野菜の売り上げが一兆円というならば、その中の種苗代というのが二百億とも三百億とも言われますし、タキイとか坂田とかカネコとか、大手の種苗会社がその中で占めている支配体制、独占的な営業権というものは非常に大きいわけで、また当然そういう会社がこのパテントをたくさん取っていくだろう、そういうことによって種代というものが、この種苗会社の利益増とつながって非常に値上がりをしてくるということをいま農家が非常に懸念しているわけです。こういうことに対して、新法のねらいが一つ育成者に対する保護ではあるけれども、反面において、そのために、その育成者の大半が企業である、その企業のために今度はそのパテント料がつくということになって、育成者を保護したけれども反面農民には高い種を売りつけることになってしまったということではならないというふうに思うわけです。そういうデメリットにならないように、その辺の措置というものがもう少し農林省において考えられていいのじゃないか、そう思いますが、いかがですか。
  61. 野崎博之

    野崎政府委員 いまいろいろ大会社による寡占の問題等も出たわけでございますが、先生も御承知のように、こういう育種というものは非常に個人の技術なりあるいは経験、勘というものが非常に重要な要素をなすわけでございまして、そういう意味では、中小業者でも独自の分野で非常に成績を上げて、その分野、特にトマトだとかキャベツだとかの分野で大会社と堂々と渡り合っている中小会社もあるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、中小業者についても今度保護の体制が及ぶということになれば、一概に大会社がその販売網をもって中小会社をいろいろ圧迫するというような懸念もないのではないかというふうに思いますし、そういう意味でまた、農家と種苗業者の信頼関係といいますか、これは古いのれんの時代から何代も続いてそういう種苗業者と農家の関係というものは成り立っておるわけでございまして、そういうことも考えまして、先ほど申し上げましたように、生産費の中に占める種面代の割合もわりと少ない、それからあるいは品種等の相互の間で競合性もある、そういうようなことで、大会社の独占体制をますます強めるということにはならないのではないかというふうにわれわれとしては考えておるわけでございます。
  62. 小川国彦

    小川(国)委員 私ども種苗業者の中の大手と中小の格差の問題、これはもちろんあると思うのですが、いま種苗業者では倒産がないというぐらい非常に安定した業界になっているし、それから売り上げも飛躍的な勢いで伸びているわけです。そういう中で、国は米とか麦とか大豆とか、業者がやっても採算に合わないものは、基幹作物であるというたてまえはありますが、国がやっている。それで、野菜のようなものについては一〇〇%もう民間に任せきり、こういうような姿勢の中では、極はもうかるということで、今度大手商社とか大手の肥料会社まで種苗会社を始める、種づくりを始めるという動向も出てきているわけなんです。そういう動向が出てきている中で、国の研究機関がみずからいい種をつくって農民に安い種を供給しようという構えがなくて、一〇〇%民間任せで、しかも今度はそこにパテントの大半が流れていくということを野放図に認めていったら、一体この法律によって本当の農民保護あるいは農業の育成というものが図れるのかどうか。やはり農林省の観点は、こういう種をつくっている育成者の保護も大切だけれども、同時に農民の利益、農民の生活を守っていくという立場も農林省の立場になければならないわけで、そのときには公的研究機関での新品種をつくっていく構えとか何かがなければ、まさに種業界というものはこれからいろいろな大企業の進出の中で思うような利潤追求の方向に持っていかれる、こういう懸念があるわけです。そういう点について、農林省がこういう改正案を出してくるのにはその辺への配慮とか心構えがもう少しきちんとなければいけないのじゃないか、こういうふうに思いますが。
  63. 堀川春彦

    堀川政府委員 まさに先生御指摘のとおりの気持ちで、私ども野菜などについて民間任せという考えは毛頭持っておりません。  具体的に申し上げますと、育種の基本計画で取り上げてやっております野菜品種は、キュウリ、メロン、トマト、ナス、ピーマン、エンドウ、キャベツ、白菜、大根、ハナヤサイ、ニンジン、タマネギ、イチゴ、アスパラガス、こういう範囲に及ぶわけでございまして、これだけ総括をいたしますと、日本におきます主要な野菜は一応網羅をされておるというふうに考えております。こういった問題についてそれぞれ育種目標を立てまして、たとえば病気に強い種類のものをつくるとか成熟期の関係、その他優秀な品種の創出に努めているところでございます。  なお、野菜試験場というのをわれわれは専門場所として整備をしたわけでございまして、四十八年から発足をしておりますが、先ほども申し上げましたとおり、五十年に設定をされました作物関係育種基本計画に基づく育種関係研究体制の整備の中で整備されました十研究室の中で、二つは野菜関係でございます。大いにこういう面につきましては今後とも力を入れていくつもりでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  64. 小川国彦

    小川(国)委員 これで終わりたいと思いますが、最後に育種計画についていま技術会議堀川事務局長からありましたが、ひとつこれからこの改正法がもし通りましたら、私がいま懸念したような事態に対して、新品種の開発については国の機関が挙げて取り組む、こういう実績でお示しを願いたいと思います。  それから最後に、懸念される点として独占禁止法との関係がございますが、この独占禁止法二十三条の中に種苗法は入るのかどうか、それから百条の適用除外になるのかどうか、この辺の討議経過と結論をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  65. 小島和義

    ○小島説明員 お答えいたしますが、工業製品の場合にはある種のものの特許あるいは製法特許を通じまして、一定の商品につきましてのマーケットを完全に独占し得るという状態が事実上あり得るわけでございます。そういう意味におきまして、特許法におきましては独禁法の例外規定を設けておりますが、農産種苗の場合には、先ほど局長も申し上げましたように、ある作物の種類につきまして利用できます品種の種類というのは非常に数多いわけでございまして、相互に代替関係もあるわけでございます。また、作物の種類別にも一定の分野におきましては代替関係があるということから、ある品種を開発したことによりまして、その作物の種苗流通分野ないしは作物の生産分野を完全に独占するというふうな事態はまず想像しにくい、こういうことで、公正取引委員会の方とも十分協議いたしました結果、農産種苗の世界におきましてはその必要はないということで、規定の整備をしておらぬわけでございます。
  66. 今井勇

    ○今井政府委員 御質疑が終わるようでありますが、最後に一言だけ申し添えておきたいと思います。  最後の先生の御質疑は、まことにそのとおりであります。法改正をいたしまして、新しい品種をつくった方の権利を守るということは、個人であろうが企業であろうが、同じように守らなければなりませんが、それによって利用者に過重な負担がかかるということは、農林省としても放置するわけにはまいりません。したがいまして、具体的な問題として、いままで必ずしも十分でないと御指摘を受けたような問題につきましては、私どもは一生懸命やっておるつもりでございますが、今後なお一層努力を傾注いたしまして、御期待に沿うような行政の指導をやってまいりたい、このように思います。
  67. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  68. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 野坂浩賢君。
  69. 野坂浩賢

    ○野坂委員 昨日に引き続いて、残された問題についてお尋ねをいたします。  いまも議論がございましたように、国及び県、公の研究員皆さんが約七百人いらっしゃる。民間の方が、業者等を含めて四百五十九、その他個人もいらっしゃるということが明らかになっておりますし、そういう資質の高い公の研究員皆さんは、農産種苗法に基づく登録あるいは特許、こういう点については現在は八%程度だというふうに承ったわけでありますが、国の公の機関の場合はそういう特許なり登録は個人がやるのか、個人がやらないために国がそういう特許をとっていない、こういうことですか。その辺はどうでしょう。どなたでも結構ですから、わかった人……。
  70. 小島和義

    ○小島説明員 現行の農産種苗法で申しますと、野菜果樹花卉分野につきまして現行法が適用になっておりまして、制度の上では、育種を行いました個人が、ただいまでは「優秀な新品種」ということになっておりますが、そういう育成したものにつきまして個人が出願できる。これは雇われている人の場合も同様でございます。ただ、雇い主が出願することにつきまして個人が同意した場合には雇い主が出願できる。これを国の場合に当てはめますと、国の試験研究機関の職員も一応出願する権利があるわけでございますし、本人が同意をすれば国がかわって出願することができる。実際の運用はと申しますと、現在の農産種苗法の世界におきましては、制定当時はともかくといたしまして、昨今におきましては国または国の職員が出願したというふうな事例はございませんで、技術会議事務局長からお話し申し上げましたように、できるだけ公開をするというたてまえで運用いたしておるわけでございます。  それから特許の方になりますと、これは特許の世界の中にも職務発明という規定がございまして、公開しておるものもあるようでございますが、国有発明というのですか、そういう形で国が特許を取りまして、その実施収入に応じて雇われておる発明者個人に何がしかの対価を支払う、こういうケースもあるようでございます。全体としてどれくらいの割合になっておるかはつまびらかにいたしませんが、農林関係試験研究機関におきましても、きわめて事例は少のうございますが、そういうケースはございます。
  71. 野坂浩賢

    ○野坂委員 国の研究員に対する指導あるいは考え方というものは公開を原則にする、こういう指導方針なのですか、それはどういう方針で進められておるか。また、パテントを取らないという基本的な考え方は、公開をするということが原則であるならば、それはなぜそういうふうにされておるのかということをお尋ねいたします。
  72. 小島和義

    ○小島説明員 これは制度論としては、いま申し上げましたように、現行の農産種苗法の世界におきまして一応出願する権利はある、こういうことになっておるわけでございますが、少なくともこれまでの試験研究機関の行動態様といたしましては、機関としても職員としても農業全体ないしは消費者全体のために仕事をしておる、こういう意識がございまして、制度としては道を開いておるのでございますが、そういうものに乗っかりましてある種の権利を得る、こういうふうな考え方が比較的少なかった、こういうこととお考えいただいてよろしいと思います。
  73. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その中身を分析すると、発明なり発見なり育種というものは相当進めておるけれども、内容的にはそういう意味で登録をしていない、そういう意味ですね。
  74. 堀川春彦

    堀川政府委員 国などが現行農産種苗法登録をしておる件数が非常に少ないではないか、それはそのとおりでございます。国の場合に野菜、花、果樹を通じますと三%程度のウエートしかございません。これはどうしてそうなっておるのかということになりますが、これは一つ名称登録保護というのが現行法の主眼でございます。一方、先ほど私から御説明申し上げておりますように、四十三年以降、優良な作物の新品種で大いに普及に値するもの、普及をしなければならぬと国が考えておるもので、国の直接の事業あるいは指定試験等で作出されたものにつきましては、命名登録制度を用いて運用しておるわけでございます。これは具体的な普及の可能性等各般の広い角度から検討を加えまして登録をしておるという制度、これは農林省自体の技術会議制度でございますが、別途持って運用しておる。そちらの方には、先ほど申し上げましたような総括検討会議等での慎重な議論、討論、討議を経るとともに、当然、別途専門家による審査委員会の厳密な審査を経て合格点に達したということになれば登録をするということになっておりまして、私どもとしては、どちらかといいますと、現行法名称登録の保護ということで農産種苗法でしかれております制度、そういうことと直接のかかわりを持たない命名登録制度の方を活用しまして普及を図る、こういうことになっておるわけでございます。この命名登録制度で命名登録されますと、官報に告示されますが、同時に採用県というのが決まってまいりまして、採用県におきましてはそれを県の奨励品種として採用する、こういうような形になってまいって、県は県としてそういう品種普及奨励を図る、こういう行政を展開するということになっておるわけでございます。  なお、農作物種子法等もありまして、この体系による助成、援助ということも行われる、品目による主要農作物につきましてはそういうことになっておる、こういうふうに御理解いただきたいわけでございます。  今後どうなるかということでございますが、今後の問題につきましては、今回の法改正が、国のものであろうが、県の作出した新品種であろうが、民間のものでありましょうが、法人のものでありましょうが、個人のものでありましょうが、これは全体の制度の組み立てとしては一律に扱うという形に相なっておるわけでございまして、この点は対外的な条約加盟の問題でございますとかいろいろなことがございますから、制度としてそういうふうな一律的な制度になっておる。  ところで、その中で、こういう制度がしかれたからといって、国の場合に限って申し上げれば、ある新品種ができましたときに、その育種者が個人としてまず第一次的な登録をとり得る資格があるわけでございますが、全部登録をとるのか、こういうことになってまいりますと、私ども現実の見通しでは、いま審議官からも答弁の中で触れられましたように、必ずしもそうはなるまいというふうに思うわけでございます。  なお、登録をとるとすれば、国が一方においてそういう新品種を作出するというのが大いに普及をいたしまして、農家の段階あるいは消費者にも喜んでいただきたい、こういう気持ちでやるわけでございますから、したがいまして、試験研究の成果としての新品種、こういうものが農家段階までおりていって、できるだけ使われやすいような形でやる必要がある。まあ、そういう政策をやっておるわけでございますので、そういう物の考え方、農業施策の考え方と矛盾しない形で、今回の法律の中に規定をされましたるところの職務育種の際における国なら国の立場、新しいいいものができたら必ず全部登録をする、こういう形には必ずしもならぬのではないかというふうに思うわけです。  たとえて言えば、主要農作物である米麦、大豆、こういったものについて、国で開発をされた品種であるからといって一々国が登録をとりまして、そしてとりますれば当然のことながら、新しい法律による許諾、非許諾の関係が、使おうとする人たち利用関係方面から出てまいりますから、そういうことを必ずしもやらなくても別段支障もないし、いい品種普及という国の大目的からして支障がない。あるいは逆に言えば、そういう登録を国みずからがとることによって煩わしさも増すというようなことではいかがかなということもありまして、そこで国の場合に登録をとるかとらぬかということは、運用面ではその辺は慎重に配慮をしてやってまいりたいというふうに思うわけでございます。  もちろん、育成をしました個人に登録をとり得る資格があるということは、全体を通じてのこの制度の基本になっておるわけでございますから、育成者登録をとり得る場合もあるでしょうし、またそういう場合に、もし国が登録をとらないで全く育成者の御自由にお任せしていたときに、新品種普及というような面から見て何か問題が起こりそうな場合には国が登録をとることもあり得べし、こういうふうに思うわけでございます。  なお、今回の法改正は、対外的な関係の調整も十分意識してつくられた法律でございますから、国において新品種が育成をされたときに、それは国としても登録をとっておいてきちっとした方が対外的な問題を処理するのに適当である、こういつたような場合には国が登録をとることもあり得るわけでございます。  これは仮定の話でありますが、国の作出した新品種について全く登録をとらずに無条件にしておいた場合に、外国でそれをもとにいたしましてF1などを持ってくるというようなことが起こる場合もあり得るだろう。そういうときには、国がとるか育成者がとるか、いろいろ道はございますが、きちっと登録をとるということも考えられるわけでございます。その辺は、実はいろいろ多様な関係を配慮いたしまして決めてまいるべきことだと思いますので、当委員会におきます多角的ないろいろな角度からの御審議の結果等も十分念頭に置いて運用を定めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  75. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大体理解ができますが、今度の法改正では、職務育種の場合は、いままでは個人であったのですけれども、今度は使用者の方が登録できるわけですから、国の場合ですと、国は公開をする。しかし個人としては、せっかく研究したのだからおれはやりたい、こういうことで、公開の原則ですか、まあ、これから運用で考えるということでありますけれども、個人が適当にやった場合は、国側としてはあるいは技術会議としては、それはそれなりに了解をするということでありますが、それは必ず上司に届け出をしなきゃならぬものですか、個人で黙ってできないものですか。どうですか。
  76. 堀川春彦

    堀川政府委員 今回の法改正によりまして、いわゆる職務育種関係の規定が整備をされておりますので、国といたしましては、これに関します勤務規則というものを適切に設定をいたしましてやってまいることになろうかと思います。そういたしますと、この勤務規則によりまして、国が登録をとる場合と申しますか、そういうことを明らかにしておく必要があろうというふうに考えます。  それで、これとの関係から考えますれば、自分がいいものができたと思うという育成者の段階では、その状況をこの法律の運用に即して国として的確にキャッチしておく必要があるということがございますので、まあ国みずからわかる場合が多いわけでございますが、その辺はやはり育成者から何らかの方式によりまして国の当局に届け出をしてもらうというようなことが必要であろう。なお、それについて、個人として登録をとるのか、とる意向があるのかないのか、そういったその他のことにつきましても、育成者の考え方が何であるかということもあわせ聴取するというようなことが必要になってまいろうと思っております。
  77. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この中身の問題でありますが、そういう意味で登録はほとんどない、非常に少ないというのが現況ですが、それをもし一つ一つ登録をしたとすれば、国なり県の職員の試験研究の結果、育種苗というものは、登録は全体から見れば相当大きいものだというふうに考えられるものでしょうか。それを届けておったとすれば、全体の何十%ぐらい可能性があるものですか。どの程度のものですか。
  78. 堀川春彦

    堀川政府委員 今回の改正後の法におきます登録の要件というものは、現行法の要件とも違います。また、先ほど私から申し上げました優秀な種苗の命名登録をやっておりますそれのスタンダードとも違うわけでございます。要するに、非常に優良な形質を持っておって、その形質を遺伝的にあるいは交配等によってF1なり新品種の系統として利用することにおいて意義ありというものは登録され得る資格があるということになってまいりますと、理論上は、そういう値打ちのあるものを数え上げてみろということになりますと、今後もポシビリティーとしてはかなり多くのものがあり得るというふうには思うわけでございます。  そこで、そういうものの登録をたとえば国としてとるという場合には、やはり一定の目的を持ってとる必要があろうと思います。例示をすれば、先ほど私が申し上げたのが一例に当たるというふうに思うわけでございます。そういう角度から見て、国がどういうものについて登録をするかということは、われわれもなお慎重に検討して、この国会における論議も十分念頭に置いて慎重に設定してまいりたいというふうに考えるわけでして、私の見通しといいますか、見込みといたしましては、国自身の登録件数が、一挙にそんなに多くのものをとることになろうというふうには当面考えておりません。
  79. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私がお尋ねしたのとは若干違いますが、時間がありませんから……。  それでは、優秀な研究員皆さん育種苗についていろいろ研究開発をされるわけですけれども、それを個人の育成者あるいは業者、それから種苗店、たとえばタキイとか坂田とか、そういう方たちの研究の方に、言葉は悪いですけれども、よくわかるように言えば販売するとか、あるいはそれに似た行為ですね、そういうものはありがちなものではなかろうか。国の研究開発はこういう隠れたところには思うように出てこない。道路等には出てきますけれども、こういうところには出てこないから、賛助金といいますか、そういうものをもらうためにもそのような方法がとられておるのではないかというふうに推測をされるわけですが、そういうことは全然ありませんか、それともありますか。
  80. 堀川春彦

    堀川政府委員 国の研究機関が公的にやっておることにつきまして、私人なりあるいは企業なりかち通常役所として歳入のいろいろ措置等がとられる場合もありますけれども、そういうものは正規に認められたものでございまして、そうでない形で私的にパイプを通じまして金品を取るということはかたく禁じられておるわけでございますから、私どもそういうことは全くないというふうに確信をしております。  なお、民間企業等と育種研究成果との関係につきましては、一般論としては先ほど来私も申し上げておるところでございますが、今回の法改正後の登録制度の運用に当たって、ひとつこういうことは考えたくはないわけでございまするが、第一次的な登録をとり得る資格は育成者個人ということになっております。その育成者個人が登録をとり、かつその登録をとったものの利活用につきましては、こういうことはないとは存じますが、非常に優良種苗普及という趣旨において研究をやってきた、国民の税金を使わせていただいてやってきたという趣旨から見て、非常にそこが節度に欠けるといいますか、いかがかと思われるようなことがもしあり得るとすると、そういうことは考えたくはございませんが、もし万一将来においてそういうことが考えられるといたしますと、そういうことに対処して国としましても登録をとる場合が場合によればあるかというふうに思っておるわけでございます。その際には、もちろん新しい法の規定によります対価の支払いの請求というような問題も出てくるわけでございますが、そういうことを十分念頭に置きつつ、適切な運用を図ってまいることが必要ではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
  81. 野坂浩賢

    ○野坂委員 公にこの寄付行為といいますか、寄付採納といいますか、そういうものもあるんだ。それ以外のものは税金で賄っておるわけですからあり得ないということであります。この法律をぜひ通してほしいという方々の名前がたくさん書いてあります。読んだら切りがありませんから読みませんが、そういう方々は、非常に関心を持っていらっしゃるし、ぜひ法律を通してもらいたい。そういう意味で、この共同開発研究その他ということもあり得るではなかろうかと思うのですね。どういうものが正式に認められた寄付であって、どの程度今日まであるわけですか。五十二年度だけの実績でも結構ですが、どこどこだったかということも教えてほしい。
  82. 堀川春彦

    堀川政府委員 一般論を申し上げますと、受託研究制度というのは、国の試験研究機関あるいは受託事業というようなものが国のその他の機関について認められておる、たとえば検査機関などでございます。しかし、育種につきまして受託研究をやっておるというようなことはこれまでございません。  なお、たとえば公務の遂行に支障のない限りで講習会の講師に出張を依頼するというような場合が、民間からたまたま出てくるという場合がございます。これは公務の遂行に支障がないかどうかということを十分審査をいたしまして、しかも報酬等は取らないということで、実費支弁というような意味で旅費相当額を民間から受け入れまして別途歳入、それは歳入の中で受けるわけでございますが、ちゃんと予算の歳出科目の中で旅費を支給をして、そして受託出張をするという制度はございます。これも節度を踏み外すことになると、そういう制度がありますが、運用の問題として好ましくないという場合もありますので、私どもとしてはその点は十分気をつけて運用をするようにいたしております。
  83. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全然ないですね。それでは、その寄付なり委託研究なり、そういう公にもらうようなものは、いまの事務局長のお話では、旅費だけだ、いわゆる汽車賃だけだ、それはちゃんとするのだ。そのほかにはないかということを聞いておきます。私も調査をしておりませんから、ないか、あるかということだけを聞いておけばいいわけです。
  84. 堀川春彦

    堀川政府委員 私の先ほど一番前段に申し上げました受託研究という制度がございまして、この制度はわが試験研究機関でも運用をしておるわけでございます。研究の内容等はちゃんときちんとしてやっておる、ただ育種についてはそういうものはございません、こういうふうに申し上げたわけです。
  85. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。  それでは、先ほども議論がありましたが、種苗の価格ですね、種苗を販売する価格の中に占めるパテント料といいますか、それは大体何%になりますか。私たちはよく四%ということを聞いておりますが、平均してどのくらいを占めておりますか。
  86. 野崎博之

    野崎政府委員 麦を見てみますと約四・六%ぐらいになっておりまして、野菜では一%から三%、まあ平均して大体三%程度のところでございます。
  87. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いままで麦というのは種苗で国がやって、一般のところには公開されていなかったのですが、麦の四・五%というのはどういうことでしょうか。
  88. 小島和義

    ○小島説明員 ただいま局長が申し上げましたのは、生産費の中で種代がどれだけの比率を占めるかということを申し上げたわけでございます。いままでの農産種苗法の運用の状況におきまして、いままでは名称登録でございますが、名称使用の許諾を与えるに当たりましてどれだけの金銭の授受があるのかということは、なかなか的確には把握できないわけでございます。また法律自体が許諾に当たって必ず金を取るということを法律上明記いたしておるわけでもございませんので、なかなか統一的には調べにくいのでございます。お話がございました、四%とおっしゃいましたのは、工業特許の場合の実施料の標準というものが大体その程度のものではなかろうかということを私どもも特許庁の方から承っております。ただ、恐らく、農業の場合で申しますと、種苗の新品種利用にかかわる許諾料というのは、その水準よりはもうちょっと低い水準になるのではなかろうかという感じがいたしております。それは、先ほど申し上げましたように、工業特許の場合には、ある種の商品の生産の死命を制するようなものもあり得るわけでございますが、品種の場合には、非常に代替性の範囲が広いという事情もございますので、特許の実施料の一般水準よりはかなり低いものでなかろうか、こういうふうに考えております。
  89. 野坂浩賢

    ○野坂委員 今度は農業資材審議会というものの性格は変わってくると思われますね。いままでは、きのうもお話ししましたように、小委員会も開いて、それが優秀かどうかということを議論するわけですが、今度は重要な形質を定めるだけだ、こういうふうに性格が変わってくると思いますが、一条の二の「省令で定める区分ごと」、この「区分ごと」というのは具体的にどういうことなのかということと、その形質を定めるのは、区分ごとに定めるというのは一品ごとには一体どうなるのか、その辺ですね。一品ごとなのか、総体的なものか、その辺をちょっと明確にしてほしいと思うのです。
  90. 小島和義

    ○小島説明員 資材審議会の従来の役割りは、いまおっしゃいましたように、優秀性の判断でございますから、その品種が新しいということはもちろんでございますが、実際に農業の内部において利用した場合にどんな成果をおさめる品種なのかということを非常に多元的に判断をするわけでございますから、必ずしも植物自体につきましての形態学的と申しますか形態の分類ということの専門家ではなくて、その作物自体についての専門家というふうなことになってまいります。大体そういう構成で現在の資材審議会が運営されておるわけであります。重要な形質を定めるということになりますと、今度は作物の種類別の、分類学と申しますか、形態別の分類というふうな観点から御審議を願うわけでございますから、同じような専門家ではございますが、その性格というのは多少変わってくるのではなかろうか。また作物自体の種類も、これまでが野菜果樹花卉と限られておりましたのに対しますと広がってまいりますので、当然そういう方面の専門家もお入り願わなければならない、こういう意味で審議会は変わってまいります。  それから、どういうグループ別に重要な形質を決めるのかということでございますが、もちろんこれは各作物ごとに定められれば一番よろしいのでございますが、私どもといたしましては、この法律の対象となります作物を大体四百から五百ぐらいというふうに目下踏んでおります。そういたしますと、各作物について個別に決めるということも実は大変な作業になるわけでございまして、また、作物の中にはそういう形質の分類としては非常に類似性を持っているものも幾つかあろうと思います。物別に決めましても重要な形質というのはほとんど同じになる、こういうものがあるわけでございますので、そういうものは作物の種別ではなくて似たもの同士のグループをつくってそのグループについて決めるということもできるようにいたしておるわけでございます。
  91. 野坂浩賢

    ○野坂委員 その種類別、グループ別に大きくくくって、どのくらいの種類になりますか。
  92. 小島和義

    ○小島説明員 これはまだ完全に作業を終わっておりませんので、的確には申し上げかねるのでございますが、恐らく、一つのグループと申しましても何十種類も一つのグループに入るということはあり得ないわけで、せいぜい数種類ということであろうと思います。また、なかなかグルーピングができなくて個別に決めざるを得ないというものも出てこようかと思いますので、全体の数としては百を超えるというようなところではなかろうか、こういうように考えております。
  93. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうすると、いままで農業資材審議会の委員というのは二十名で構成をしておった。それは蔬菜なり花卉なり果樹、こういうことに限られておったのですけれども、今度は林産物も海産物、水産物も全部入るということになれば、それぞれグループごとから出したにしても一人で決めるというかっこうになっていきますね。ほかの者は専門外だから黙っておる。そういう意味では、総体的ではなしに区分ごとに決めるということになれば、重要な形質を相当人数ということになりますが、どの程度をお考えでありますか。
  94. 小島和義

    ○小島説明員 現在でも審議会の運営といたしましては、いわゆる本委員は二十名でございますが、その下に小委員会みたいなものをつくりまして、その中に本委員のほかに専門委員にもお加わり願って運営してきたわけであります。今度の資材審議会の運営をどうするかというのは、これは本法成立後において資材審議会を改めて選任いたしましてそこでお諮りするという筋のものでございますが、私どもといたしましては、二十人の範囲の中ですべての専門家を完全に網羅できるとは思っておりませんので、当然、必要に応じまして専門委員を選任いたしましてその方々に小委員会をつくってもらうというかっこうで話を詰めていく、こういう必要があろうかと思います。また、その前段といたしまして、役所側の事前作業といたしましては、現在も一部のものにつきましては準備段階の仕事をやっておるわけでございますが、そういう段階におきましても専門家の知恵を動員いたしまして原案を固めまして、その上で審議会にお諮りする、こういう運営を考えておるわけでございます。
  95. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いままでの審議会ではいろいろ議論をして優秀な新品種ということでありますが、今度は新品種ということになるわけでありますから、相当出てくるだろうと予測されると思うのですが、いまよりも多くなる、こういうふうな認識だと私自身は素人で考えるわけですけれども、出てくるというふうにお考えでありますか。
  96. 野崎博之

    野崎政府委員 今度優秀性を削除をしたということもございますが、実際に出てきますのはやはり優秀な品種なりあるいは有用性のある品種だと考えておりますので、従来よりは若干多くなるだろうとはもちろん思っておりますけれども、そう急激に一時に多く出てくるような事態にはならないだろうというふうに考えております。
  97. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうしますと、申請があって登録をするわけですが、それについては栽培試験とかあるいは現地調査というものがありますね、これはこの法律には農林省審査の職員、「出願品種審査をするに当たっては、その職員」というふうに書いてありますが、その審査をする職員という意味でしょうか。それから学校とか行政機関に委託をしますね。これは十二条の三です。「出願品種審査」のところですが、その場合は「その職員」というのは、やはり一緒に現地調査なり栽培試験をするということになりますか。  それと、出願をして、登録申請をして登録をするまでに、この調査と栽培試験というのは何年ぐらいかかって大体結論を出すものですか。
  98. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほどのお話でございますが、現地調査あるいは栽培試験、それは委託もやるわけでございますが、原則といたしましてわれわれの方の果樹花き課の種苗対策室、あるいはいま大阪、筑波、それから久留米におります種苗検査官、そういう人たちがその任に当たるということでございます。  現地調査は原則として全部行うことにいたしておりますし、栽培試験は必要に応じて、現地調査でなかなか特性がはっきりしないような場合に栽培試験を行うということにいたしておるわけでございます。従来の例から見ますと、審査の期間が大体二年、それから接ぎ木等で結果をするまで待つようなものにつきましては大体四年程度かかっておったわけでございますが、今回栽培試験等も必要に応じて行うことといたしまして、極力その審査の時間を短縮をしたい。われわれの希望としては、少なくとも現在よりは一年程度は短縮をいたしたいというふうにいまのところ考えておるわけでございます。
  99. 野坂浩賢

    ○野坂委員 現地調査は全部やっていただくわけですね。
  100. 野崎博之

    野崎政府委員 原則としてそういうことでございます。
  101. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ここに「出願品種審査上その必要がないと認められる場合は、この限りでない。」と書いてあったものですから。原則がそれであれば結構であります。  そうすると、現地調査や栽培試験を積極的にやるということになると、相当人数も要るんではなかろうか。いまの技術会議の事務局長なり審議官のお話等を聞くと、相当広範にいまやっていらっしゃるし、公に公開をして広く普及拡大をしていくということでありますから、現地調査なり栽培実験もいままでやっておったのですが、いま局長からお話があったように、今度新しい品種というかっこうに一応なって、やはりそれなりに個人の皆さんがすでに六九%も現実にやっていらっしゃるわけですから、それ以上に多くなるということは予想に一かたくないというふうに思うわけですが、人数その他についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  102. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほどお話し申し上げましたように、将来は先生のおっしゃいましたようにふえる可能性は多分にあろうかと思いますが、やはり優秀性を削っても、実際問題としてはその優秀あるいは有用なものしか登録出願されない、そういう観点からすれば、そう急激にふえるものではないということで、当初の体制といたしましてはいまの体制で行けるのではないかと思いますが、先生おっしゃいましたように、将来の方向としましては、やはり従来よりも件数はふえる傾向であろうと思いますし、今後各省庁と連絡をとりながら予算なり人員の拡充、そういうことに努めてまいりたいというふうに考えております。
  103. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それなりに多忙になってくるわけですが、五十三年度の予算は、これに関連をするような予算を見るとちょっと減っておるのじゃないかという気がするのですね、全体がふえておるのに。そういうことは、たとえば六千万円が五千六百万円になっておる。たとえば品種特性資料収集整備費とか、種苗特性分類調査委託費とか、種苗情報収集整備システム開発費とか、優良品種審査費とか、種苗制度改善調査費とか、種苗対策事務費とか、全部そろっておりておる、こういうのはどういうことですか。
  104. 野崎博之

    野崎政府委員 確かに、先生おっしゃいますように若干減っているわけでございますが、これは純然たる事務費でございますので、例の節約がかかった結果こういうことになったわけでございますが、当初の予算といたしましては、先ほど申し上げましたようにこれで一応推進普及には支障がないというふうに考えて計上をいたしたわけでございますが、われわれといたしましては、将来は当然またこれを増額いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、特許庁の方にもおいでをいただいておりますが、きょう「種苗法案に関する話し合い事項の要旨」というのをいただきました。まだ十分読んでおりませんが、これによって将来農林省と特許庁が相争うようなことはない、こういうふうに考えてもよろしいのか。また、裁判所等によって申告をされてそのことが問題になるというようなことはないと考えてよろしゅうございますか。それぞれお答えをいただきたいと思うのです。
  106. 野崎博之

    野崎政府委員 われわれといたしましては、特許庁といろいろ詰めてまいりまして、特許法との関係につきましては大体次のように考えておるわけでございます。  まず保護の対象といたしまして、特許の場合は自然法則を利用した技術的思想の創作である。それから種苗法によります保護の対象は植物の品種それ自体である、そういうふうに考えておるわけであります。  したがいまして、それぞれの特色に基づきまして保護の態様等も異なるわけでございます。特許の要件として要求されます進歩性、そういうものにつきましては、植物の特性からいたしましてなかなか進歩性なり新規性なりそういう要件は満たしにくい、そういうようなことでございますし、また、品種登録の要件といたしましても、特許の要件に比べて既存のものと区別されるという程度で結構だということで、非常に緩やかな条件になってきておるわけであります。したがいまして、農林水産植物の新品種でそれ自体を対象とする特許発明は事実上ほとんどまずないと考えられる。そういうようなことで、従来も、出願されたものはごくわずかございますが、特許された事実はない。そういうことを考えまして、いま申し上げましたように、農林水産植物については新品種それ自体を対象とする特許発明は事実上まずほとんどないというような考え方で、特許庁と整理をいたしたわけでございます。
  107. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ずっとお話をいただいたわけでありますが、それでは私の方から具体的にお聞きしたいと思います。  特許庁、調整規定の問題です。合意メモにもございます。この辺を聞いていきますが、植物の新品種自体に関する特許出願がありますか。それはどのくらいなのかということをまず聞いておきたいと思います。
  108. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 現在申請を受け取っておりますものが十数件ございます。
  109. 野坂浩賢

    ○野坂委員 特許庁としては、特許要件を満たしておる場合特許するのが当然だということになりますね。
  110. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 特許要件を満たしておりますれば特許するのが当然ということになります。
  111. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは農林省側にお尋ねをしますが、たとえばここには方法規定、方法調整規定になっておるわけです。物の調整規定ということについては若干不明確ではないかと思うのです。たとえば、接ぎ木をして青いバラができた。それを特許権で申請したといういわゆる方法規定ですね。他のところでは、いろいろ方法があったけれどもまた青いバラができた。これは登録の方で農林省側の方でとった。最初の場合は特許庁でとったということになると、この接ぎ木の方法は私の方法しかないのだ、こういうかっこうになってくる場合もあります。向こうの方は、そうじゃない、こういう状態が生まれ得る。だから、これは方法規定だけれども、物については問題があるじゃないか、こういう点があるわけですが、それについて、言うなれば、特許権はその品種自体に権利が及ぶが、その品種が本法案において登録品種であっても当然に権利が及ぶということになりますか、どうでしょう、その辺は。
  112. 小島和義

    ○小島説明員 方法特許につきましては、御設例にもありましたように、一般的な法則といたしまして、ある種の方法を講ずれば同じような結果をもたらす、そういうアイデアを得た、こういうものは、もちろん御設例にありますようなバラについて応用できるというものもございましょうし、ほかのものについて応用できるというものもございましょう。ところが、こちらの方で新しい品種登録する場合には、その品種自体を現に物として育成した、その中には交配によって新しい品種を得た場合もございましょうし、突然変異を確認したというものも含まれるわけでございますが、たまたまその結果として同じようなものが得られる場合があり縁るという意味で、ある育成をした品種を持っている人と、そういうものを別な方法で得られるという方法についての特許を持っている人、これが両存し得るという意味で調整規定を設けておるわけでございます。こういう調整規定は実は現行農産種苗法におきましても設けておりますので、それをそのまま踏襲することにいたしたものでございます。  それから、物の特許と品種登録というものが同じような関係にならないかどうかということにつきましては、現行の農産種苗法でも実はそういう調整規定を設けておりませんし、改正法におきましても、ただいま局長から申し上げましたような観点に立てば調整規定を設ける必要はないのではないか、こういう意味におきまして、ただいまのような改正案になっておるわけでございます。
  113. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先ほどのお答えで若干誤解を与えるような答弁でありましたら問題でございますので補足させていただきますが、十数件と申しますのは、昨日先生から御質問いただきましたように、このたびの改正法が出ます前、育種業者の保護が足りない、早く何かでやれというとき、特許法でやれないかということで特許法の審査基準を発布いたしまして、そして出てまいりましたものが十数件でございます。その後両省庁の間で種々検討いたしまして、今日のこの農産種苗法改正の線で保護を強めるという形、しかし特許法のような厳しい要件、強い権利ではないというような改正が出てまいったわけでございます。したがいまして、私ども、いま審議官からの答弁のような方向で、法律的には特許権の対象になるもの、新しい保護法の利益を得るものがございますけれども、現実の問題としてはきわめてまれではなかろうかということでございます。
  114. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この調整規定が特許庁と農林省との一番問題のところで、この「事項の要旨」にも、いま特許庁の部長さんがお話しになりましたが、理論的には否定し得ない、しかし事実上はまれであるというふうに言われておりますね。しかし、要件を満たせば特許登録はやむを得ぬのだということが明確に言われておるわけですが、これは、いただきましたこれの関係資料の三十一ページには、五号に「植物体の全部又は一部を生産するもの」と書いてありますね。これはいわゆる方法と物という関係ではなしに、人間の者ですね。その点はどうなのかということです。  それと、この法律自体を、いま審議官がお話しになったように、方法調整規定と物規定もこれによって明定されておるというふうに考えたらいいのですが、これはもしそういう規定がないということになれば、いまの特許庁の御答弁と錯綜して波乱を生ずるではないか、こういう結果になるのではなかろうか。まれであるけれども理論的にはあるし、今日十数種類受け付け出願があるのだというこの現実から見ると、非常に問題が起こりやすいではないか。こちらは特許権、こちらは登録権というかっこうで相争うという事態が起きれば、それぞれに問題が起きるのではないかということがあるから、調整規定をもっと明定化しなければならぬじゃないかということを言っておるわけです。
  115. 小島和義

    ○小島説明員 これは大変デリケートな点でございまして、特許制度は、御承知のようにあらゆる物資を通じまして一元的に発明の保護を与える、こういう法のたてまえが一つあるわけでございます。農産種苗法の方は、御承知のように、農林水産植物の栽培のために用いられる作物の品種、植物の品種についての登録、それを通ずる法の規定でございまして、理論的にそういう特許法のたてまえというものを否定するということについては、これは法制的になかなか大きな問題があるだろうと思います。その結果、実際上御心配になりますような二元行政というふうな弊害が出てくるかどうかということになりますと、先ほど申し上げましたように、植物の基本的な特性というのは、ただいまやっておりますような品種改良によりましては、局部的にはもちろん改良いたしておるわけでありますが、特許の世界で要求されるような進歩性とか新規性というものを持つというケースはまず考えられない、こういう意味からいたしますと、現実論としては、このために制度のたてまえ論の大きな調整をするという実益というのはまずないのではなかろうか、こういう観点に立ちまして、法律的には大変むずかしい問題でございますが、両省庁間でそういう合意に達しておる、こういうふうに御理解賜ればありがたいわけでございます。
  116. 野坂浩賢

    ○野坂委員 特許庁の部長さん、これは理論上は否定し得ないけれども実際は現実的にはまれであるということになっておりますが、これはあなたの方は、まれであるという前提は、ないだろうという想定なのかということが一つと、そういう場合は拒絶をするということを考えておるわけですか。それはどうですか。
  117. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 審議官答弁と若干重複して恐縮でございますが、このたびの特許法と農産種苗法との調整の問題は、実は三十年前の現行農産種苗法の制定時においても検討されたやに聞いております。したがいまして、当時から一応問題があったわけでございますが、現行農産種苗法と特許法との調整の規定をこのたびもそのまま踏襲しようという方向をとらせていただきました。今日まで三十年の間に、実は方法の特許につきましては、昨日お答えいたしましたように八件認めておりますが、植物自体の特許についてはいまだ認めておりません。もちろんその後の技術進歩がございますから、植物の分野におきましても往年よりも発明に値するものが出現することは予想されますけれども、このたびの農産種苗法改正によりまして、緩和された条件で新品種の保護がある程度容易に図られるというような事態が出てまいりますと、技術進歩の面はあるにしても、この植物自体の特許発明はごく限られて、大部分がいま申しました農産種苗の方に移るであろうということでございます。  さらに、基本的には、特許権とこの種苗法によって与えられます利益とは異質なものでございますけれども、理論的には明らかに違いますので法律面では別々の法律で対応するけれども実態面では、いま申しましたように歴史的な事実もごく限られておりますし、今後もごくまれでありほとんどないのではなかろうかという前提に立ちまして、従来どおりの調整規定を踏襲いたしました。ただ、現実の問題としましては、両省庁の間で十分調整をとって不当な影響がないようにいたしたいということも打ち合わせしておるわけでございます。御了承いただきたいと思います。
  118. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ごくまれであっても、法律はそういう細かいところに配慮していかなければいかぬじゃないかということを私は心配をし、物の問題、それ自体の問題、植物自体の問題についての明定の問題を提起したわけですが、十分話し合ってトラブルがないようにするということでありますから、あと一つだけお尋ねをして終わりたいと思うのです。  それは、きのうも話をしましたように、差しとめ請求権の問題と損害賠償請求権の問題であります。きのうの御答弁では、たとえば専門誌等に出してそれを見てもらって理解をする。初めから言わないで——初めから言えばよくわかるのですが、きのうの続きでありますから。たとえば、きょう「種苗の知識」というような雑誌に載せれば、政府としては責任がある、農蚕園芸局長は行政責任は負いますということをおっしゃったわけですね。たとえば公報なら公報に出せば、三カ月間なら三カ月間公示をすれば、それは大体したから、あなた方の差しとめ請求権なりそういうことは問題になりません、こういうことが言えるわけですけれども、そういう理論雑誌といいますか業界誌に出しても、どうも私は、出さなかった、間違って出しておった、理解ができなかったということになれば、やはり局長がおっしゃるように国が行政責任を負わなければならぬ。行政責任を負うということは重大な問題ですから、その辺はやはりきちんとしておかなければ、後に問題が残って、いつも国は損害賠償をしておるということになっても困ると私は御答弁いただいてからまた考えたわけですが、その点のきちんとする方法というものを考える必要があるのじゃないか。ただ単に業界誌に発表して、三カ月間なら三カ月間一回出して、やらなかったらそれで終わりだ、そんなことは知らぬということであってはならぬのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、その辺についての対処の方法はどうお考えでしょうか。
  119. 野崎博之

    野崎政府委員 昨日行政責任があるというようなお話をいたしましたのは、例の第十二条の四第一項の規定による出願が、この命令に規定する要件を満たす場合に行うこととされているわけですが、品種についての要件、出願者についての要件を満たしていない場合、誤って登録を与えた場合どうするかということの答弁を私いたしましたわけでございますが、いま先生おっしゃいました、従来、業界誌にまず内定のような公表をいたしまして、その発表の日から九十日以内にその理由あるいは証拠書類をそろえて審議会の種苗部会に異議の申し立てをすることができるというような運用をいたしているわけでございます。今回も、実際問題としまして、これは法律には別に書いてあるわけではございませんが、審議会の内部規定としてそういう運用をやっておるわけでございますけれども、今回も第三者からの異議の申し立てというような観点を踏まえまして、改正法においても同じ運用をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この法律はなかなかめんどうな法律で、読めば読むほどよくわからなくなってまいりますけれども、万遺漏のないように、農民の側に立ち、そして育種者の権利を保護し、日本農業が発展をし育種産業界が発展をするという方法でこれから取り組んでいただくように要望して、私の質問を終わります。
  121. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後二時より再開することとし、瞬時休憩いたします。     午後一時五分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  122. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  123. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、昨日に引き続いて、農産種苗法の一部を改正する法律案に対する質疑を続けたいと思います。  まず、これは今井政務次官にお尋ねしますが、育種品種登録制度の農政上の位置づけについてお尋ねします。
  124. 今井勇

    ○今井政府委員 新品種を育てるということは、これは農業の発展を支える最も基礎的なものであろうと思います。そこで、これまでも各地の気候、土壌などの条件に適した優秀な品種が次々と育成され、わが国農業の発展にはかり知れない貢献をしてまいったものだ、こう思います。今度の法律改正によります品種登録制度というものが、在来のものと異にいたしておりますことは御案内のとおりで、以前は名前登録するということでありますから、名前が少し変わっておれば似たようなものであってもそれが保護されなかったわけであります。しかもまた、在来は優良な云々ということでありましたので、非常に時代を先行しまして、先取りをしたと言いましょうか、そういうものに対しては、これが認められなかったという、そういったうらみもありました。したがって、今度は品種そのものを登録していって育種者の保護の強化をしていこう、こういうことであります。したがいまして、これからは収量、品質、熟期、耐病性等に特性のある品種の育成が一層促進されるようになろうと思います。したがいまして、この品種登録制度というのは、今後のわが国の農政においてきわめて重要な意義を持つ制度一つであるというふうに考えておるものであります。
  125. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そのような重要な品種登録制度に関して、本法の目的と性格について、実は昨日もお尋ねしたわけですが、なお引き続いて、第一条に関係をすることでありますが、法律の目的に新品種の保護ということをうたい込んで、種苗法の性格をより明らかにするべきではないか、これは一種の修正案を私たちは提案をしておりますが、これに関係する重要な問題でありますから、この点についても政務次官並びに関係者からお答えいただきたい。
  126. 今井勇

    ○今井政府委員 今回の法律改正の趣旨等については局長から答弁いたさせますが、確かに御指摘の点についての問題があろうかと思います。そこで、政府といたしましては、当委員会の御議論を踏まえまして、この委員会でしかるべき方向を打ち出していただきますならば、前向きでひとつ検討させていただこう、このように考えておるものでございます。
  127. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 後の質問と一緒に答えてもらえばそれでいいです。  いま前向きでこれを処理する、こういう御答弁がありましたから、私は、ぜひこれは前向きで処理をしてもらいたいし、そうあってほしい、こう思います。  続いて、種苗の問題に関して、午前中に同僚の委員の方から価格の問題についてのいろいろな質疑がありました。私は、種苗の価格というものは、何を基準にして、いつ、どこで、どう決めるか、価格を決めるにはどういう方法によってこの種苗の価格を決めるか、このことについてお尋ねしたいと思います。
  128. 野崎博之

    野崎政府委員 種苗の価格につきましては、原則としては野菜種子等については自由競争、需要と供給によって決まるというかっこうになっているわけでございます。種苗会社におきます野菜の種子を例にとってみますと、まず原材料費、原種代だとか種子買い入れ費、それから調整包装費、これは乾燥機だとか選別機の償却費、あるいは労務費、それから保管費、種子の貯蔵庫の償却費、あるいは販売費、これは運賃、宣伝費、事務費等でございますが、これらが種苗会社におきます一つ野菜の価格の形成要因になっておりまして、これに小売業者の販売費が加わると見ておるわけでございます。  いずれにしましても、野菜種子は販売競争も相当激しいものでございますので、その品種のよしあし、それから競合品種の価格、需給のバランス、そういうようなものによって、先ほど申し上げました市場の需要供給によって決まる、そういうふうに考えておるわけでございます。
  129. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この種苗の価格の決定というものに関して、私は、なかなかわかりにくいですね。どうしても一つの方式が見当たらないような感じがする。きのうから尋ねているけれども、これはわかりにくい。米の場合には生産費所得補償方式という方式があるし、それから需給実勢方式というものもある、その他、不足払いという方式もあるし、中間的なもので経費をとっていくという方式もあるし、いろいろある。この種苗の場合には、あるものは十八年間も二十年もかかるというし、あるものはそうもかからなくて済むということもある。どれだけ元がかかったのかどうなのか、生産費というものがつかみにくいことであろうと思うだけに、これは品質も、いわば信頼というものがあるいは価格の基礎になるのかもしれませんが、何がしかの価格というものを決める基準なり方法なり場所なり、そういうものがなかったら、買う方にしてみたら不安でたまらないと思うのですね。いままでそのようなことに対して取り扱ったようなことがあるのかないのか。ないとするならば、今後どうされようとするのか、この点についてはどうですか。
  130. 野崎博之

    野崎政府委員 やはり野菜果樹等の種子は自由競争ということが従来の傾向でございまして、実際問題として、われわれとしましてもそういうことに直接いろいろ関与したことはございませんが、今後とも種子のそういう流通の適正化を図る、そういう意味で、各業者等も正当な価格といいますか、不当な価格で売られないような指導はいたしてまいりたいというふうに考えております。
  131. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 どうしてもこれは質問の的に入ってこないから、これ以上質問してもどうもいい答えは出そうにないですね。だから、これはこれからひとつ研究する課題として預けておきます。  次いで、特許庁にお尋ねをしますが、特許庁のある仲間が本法に対していろいろと善意の忠告というか注文をつけております。社会党の農林水産部会でもその話を直接にお伺いしました。けさほど、特許庁と農林省との間で本法律を上程するに至った経緯の中でいろいろと取り交わされた内容が明らかにされましたが、それにもかかわらず、特許庁の内部からそういうような、この法律に対して心配だという意見が出ているということについて、どのような意見が出されていて、それをどう処理をされようとするのかということについて、わかるだけ特許庁の方からこれはひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  132. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 このたびの植物新品種の保護の問題につきましては、かつては農林省と特許庁の間で種々議論が交わされましたが、その後両省庁間で鋭意調整を進めました結果、両省庁を含めまして政府として最も望ましいものとして本法律案が国会に上程された次第でございます。特許庁の職員が先生方資料を配付する等、あたかも特許庁が本法案に反対しているかのような印象を与えたことがあるといたしますならば、まことに私ども申しわけないと考えておりますが、実は特許庁の特殊事情もございまして、工業所有権制度の本質にかかわる問題は、実は千名内外の技術者が、審査官並びに審判官が独自の立場でそれぞれの審査をいたすものでございまして、それぞれ千名内外の者は、独自の法律見解を十分確立してやっております関係上、特許庁におきましても、法律改正を提出いたします際にはきわめて深刻な議論が展開されるわけでございます。  このたびは、農林水産委員会というよその法律ではございますが、私どもの特許法のいわゆる工業所有権制度がどのようにこの法律関係でなるのかという心配をいたした向きも多うございまして、そういう点で先生方のところに説明がいったのではないかと思いますが、その後私どもも、一部職員のそういう疑問等につきましては、うちの審議室等を中心にいたしました専門家とひざを突き合わせた今後の検討を進めるような話も進めておりまして、この国会の審議が進みまするならば、それと並行いたしまして逐次内部の大勢は了解といいますか、鎮静化していくものと思います。今後ともよろしく御指導を賜りたいと思いますけれども、御了承をいただきたいと思います。
  133. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの御説明で理解ができますが、やはり特殊な任務を持っている方々が、自分たちの立場からこの法案に対してそれぞれ意見を持たれたということについて、私たちも、この法案がよりいいものに、また将来問題がないようにするために、ぜひその出されている七項目については、いずれ後でまとめて一項目ずつ、これはもうすでに確かめた部分もありますけれども、それは農林省の方へ確かめますから、ひとつ答弁の準備をしておいてもらいたいと思います。  そこで、登録出願職務育成者関係について私は質問をしたいと思います。  第七条には、「品種の育成をした者又はその承継人は、当該品種について登録出願をすることができる。この場合において、育成をした者又はその承継人が二人以上あるとき」には共同出願をする。このとき、第八条の職務育成者、国もしくは地方公共団体の公務員が育成したものが、業務命令やあるいは勤務の協定で決められたものと思うけれども、共同育成者または承継人の場合に、相互に紛争が起きたとき、いろいろな紛争があったときに、そういうような紛争に対して、国または公共団体責任者と研究者、発明者あるいはこれらの関係において、過去においていろいろな紛争があったことがあるかどうか。そうして、それはだれが、どのように、どういう場所でこれを調整をしたかということをまずお伺いをしたい。
  134. 野崎博之

    野崎政府委員 ただいま先生がおっしゃいました、共同育成者間でトラブルがあったというような話は、私ども現実には聞いておりません。共同育成者間でトラブルが生じた場合には、制度的に解決する道をこの法案で特に設けておるわけではございませんが、非常にトラブルが高進いたしましてなかなかどうにもならないということになりますと、出願そのものができなくなる、そういうような形になりますので、現実問題としては共同育成者の間でいろいろな話し合いが行われて円満にいくであろうというふうに考えておるわけでございます。  それから職務育成の場合でございますが、使用者とそれから従業者との間で紛争があった場合にどう解決するかということでありますが、これはやはり職務育成についての考え方、今回のこういうふうな改正の考え方を十分関係者に周知徹底をさせまして、あらかじめ契約、勤務規則等にそういうことについての何らかのルールを決めておいていただいて、関係者が十分それを知って行動をする、そういう方向が一番望ましいと思いますし、われわれといたしましてもそういうような方向で指導をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  135. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 過去にそういう争いの経験がないということは非常に結構ですが、ないということは常に保証できないことだと思うのです。それから、後の方の答弁の問題もありますが、このような起こり得るものについて、どこかでこの問題を受けとめて処理をするということが明らかでないと、やはり法案が不備ではないか。何かこれを支えるものがなくてはならないのではないか、こう思いますけれども、再度これは関係者からお答えをいただきたい。
  136. 野崎博之

    野崎政府委員 われわれ国の場合におきましては、契約、勤務規則、そういうものを定めることになろうと思いますが、そういう際に十分、どういうルールでそういうふうにやるかということをこれからひとつ慎重に、先生の御意見も踏まえて、検討いたしてまいりたいというふうに思っております。
  137. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、私は、災害における二つの側面から問題をとらえて質問をいたしますが、その一つは、品種優良であっても、それを買い入れて耕作をする土地の事情、または風水害という自然的な現象、あるいは病虫害というようなもの、そういう種と関係のないところで災害が起きた場合に、これは種の責任ではないけれども収穫がおかしかったというときには、どういうようにされるのか。しかも、考えられるものは、キュウリであるとかトマトであるとか、ナスであるとか、反別は少ないけれどもそのものは非常に収穫性が高い、こういうものにそういうことが起こりがちです。そのときにどのようにこれはやられるのかということについてお尋ねします。
  138. 野崎博之

    野崎政府委員 具体的にどういうふうにするかということになりますと、なかなかむずかしい問題でございますが、いま先生がおっしゃいましたように、確かに、植物でございますので品種と同時に土壌と関係のあるのはもちろんでありまして、土壌あるいは気候条件によって同じ品種であっても必ずしもいいものが出るとは限らないわけでございます。そういう御指摘のようなケースがあるかどうかは、われわれも実際には余り聞いておりませんのでよくはわかりませんが、やはり供給側である種苗業者とそれから需要者側の農家とが十分の話し合いをしてそういう種子の供給を受ける、そういうことが必要であろうと思います。したがいまして、種苗業者の方においては、指定種苗等については表示の義務もあるわけでございますし、その他の種苗についてもやはりその地域、土壌について、こういう品種がいいんだというようなことを十分説明する必要があると思われますし、そういう意味で、今回第五条に入っております。「業者が遵守することが望ましい基準」、こう書いてございますが、そういうことを通じても、そういう点ひとつ業者の指導と業者の自主的的な品質の管理の推進、土壌に合った品質の管理の推進、そういうこともその中でうたっていったらどうかというふうに考えておるわけでございます。他方、農家側におきましても、やはり自分が使う種子でございますので、その品種を導入するについては十分注意をしていただかなくてはいかぬわけでございます。とりわけ、最近いろいろ大型の作付地域が方々にできておるわけでございますので、やはりそういう大型の作付をやる場合には事前に試作をするとか、そういうようなことを農家側も十分気をつけていただきたい、そういうふうに需要者側に対し、農家側に対しては思っておりますし、業者側に対しては、そういう十分な説明と、先ほど申し上げました第五条の基準等についてそういう点も考えていきたいというふうに考えております。
  139. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ただいまの質問は、種はりっぱ、だけれども、土壌条件とか気象条件とか病虫害、そういうものによっていわゆる災害があったときにはどうするかという質問であったわけですが、今度は逆に、きのう四条並びに五条に対する修正を前提とした質問に対して、委員会で十分に議論をした中でこれに対しては修正もあり得る、こういうお答えがございましたが、この場合には、そのようにしてもなおかつ災害が生じた。品種を検査をし、遵守すべきものを公示をし、それを農家が了承して買ったにもかかわらず、その結果は必ずしもいい結果がなかったというようなときがあり得ると思います。ないということはないと思うのですが、そういう場合において、その災害なり被害というものにどういう補償をするのか。国が法律を定めたの、だから、農家としては国家賠償の請求でもするのかどうか、やることができるのかどうか、ちょっと飛躍しておりますが、そういうような、どこへ持っていったらいいのか。自分たちがそれを買ったのだからしようがないという形であきらめてしまうのか。農災法にはそういうものを救うものはない。そうすると、キュウリなどは園芸なんかの場合には反収六十万ぐらいの粗収入があるはずなんです。ナスでもやはりそれくらいあります。イチゴなどはもっと高いですね。それは労働力と相当な費用がかかっているからそういうふうになるのですが、それが失敗したとすれば大変な被害があるわけで、そのような場合に、その損害の補償というか償いはどういう処理をするか。要するに二つの場合ですね。一方においては、不可抗力というか、土地条件とかそういう問題、もう一つは、種そのものに問題があったとき、そういうときの災害に関する取り扱い、これをどういうふうにされるかということをいま聞いているわけです。
  140. 野崎博之

    野崎政府委員 種子は先ほど申し上げましたようにやはり自由売買、自由競争、特に野菜等の種子はそういうことでございますので、農家が土壌が悪いということで何かできたということになった場合にでも国なり県がそういう賠償をするというようなことはなかなかまいりませんので、やはり昨日も先生ちょっと触れられた問題でございますが、業者が品質の非常に悪いものを売った、最近はそういう非常に粗悪な品質の出まわりは少なくなっておるわけでございますが、間々交配ミスということもありますので、そういう場合には業者が自分の信用にかけて損害賠償を現在やっておるわけでございますし、いま申し上げましたようなそういう場合、それから不時の災害に備えたそういう場合にも、やはり昨日もちょっと申し上げたわけでございますが、今度「業者が遵守することが望ましい基準」、そういう趣旨のことを中にも入れて、ひとつそういう趣旨を周知徹底をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  141. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはひとつ政務次官に要請をしますが、業者と言っても元売りから、卸から、小売から、どこへこの不満をぶつけたらいいのか。卸屋に持っていったらいいのか、それともタキイ、坂田という元売りがある。業者にもいろいろの部会があって、その部会の中でも大変大きいものと小さいものがあるということで、自由売買だからそれはもう仕方がないのだ、こういうふうにあきらめてしまうのか、この辺はやはり何がしかの補償措置というのを考えておかなければ不安でたまらないと思うのです。法案を出して、新法ができて、いよいよ運用される場合に、そういう心配を残さないようにしておく必要があるから、この点は政務次官からお答えをいただいて前の方に行きたいと思いますが、何か考えていることがあるかどうか。
  142. 今井勇

    ○今井政府委員 局長から御答弁申し上げたように、粗悪なものが出回らないというためにも今度、農林水産大臣は、種苗業者が種苗の生産、調整等について遵守することが望ましい——これを遵守すべきというふうに修正をせよというお話もありますが、基準を示すわけです。したがって、この基準に外れたものであるということは国としては考えていないわけでありますから、もしも万が一、生産業者が基準に外れたものを売っておれば、これは当然いけないわけであります。しかしながら、基準を守っておりながら、なおかつその他の条件でいけなかったという場合には、これはやはり買った方も無責任であるとは言えないわけでありまして、そこは常識的な解決を図るべきであろう、このように思います。
  143. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これもなかなかむずかしい問題で、すぐお互いに理解のしにくい問題ですが、そういうこともあり得るということを心配してのことであります。  そこで、続いて、本委員会に出席をして民間育種者を代表したという形で御意見を述べていただきました食方英藏氏の話を思い出しますと、この法案について大変辛らつな御意見を述べられた。食方さんの書いたものをよく見ますと、どうも新法に対する意見ではなくて改正する前の法律を頭に置いていろいろ意見を述べられておるように感じられる。したがって、この新法においては、食方参考人があのときに述べたことについて、どのようにそれを救済をしたというか、取り入れて改められているのかということをこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  144. 野崎博之

    野崎政府委員 この前参考人として食方さんの御意見を私も拝聴しておったわけでございますが、参考人の言われた点は、まず第一点は、登録期間が短いので、その育成の保護が弱まっていく。それから、職務育成品種の規定が整備されていないため、会社等での育成者の保護が十分でない。それから三番目は、現行の名称登録制度は、判断基準のはっきりしない優秀性を要件としている。それから四番目は、国際水準から見まして育成者の保護の内容等が海外に比べて見劣りがする。そういうような点であったろうと思うわけでございます。  今回の改正法案では、まず第一点の登録期間につきましては、従来三ないし十年であったものが、一般作物では十五年、それから果樹等の永年作物では十八年ということで、これを長期にして保護を強めたということでございます。  それから第二に、職務育成品種の規定につきましては、何回もお話が出ましたが、職務特許の例に準じまして使用者が出願をする場合には従業者はその対価請求権を持つ、そういうことを法律的にはっきりいたしたということでございます。  それから、優秀性の件についても、いままでその優秀性というものがあったために、かえって逆に時代の先取りをした人がお気の毒な点もあるということで、優秀性という問題につきましては、これは個人の評価に任せるということで優秀性を削ったということでございます。  それから、育成者の保護の内容の拡充、そういう点につきましてもいろいろわれわれとしましてはその他配慮を加えたところであります。  なお、参考人の意見といたしましては、この改正案には権利がうたわれていない、そういう御指摘もあったわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、この改正法案は確かに権利法という構成はとっていないわけでございますが、違法に登録品種種苗を販売した者に対しては差しとめ請求権、それから損害賠償請求権を認める、ともにその場合に罰則を科することができる、そういうようなこととしたわけでございますし、それからまた登録名義を変更して一時的に財産価値を取得するというようなこともできる。そういうことで、形式的には権利法ではございませんが、実質的には権利法と同じような保護が与えられる結果になっている、そういうふうに解釈をいたしておるわけでございます。
  145. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いまの集約というか整理で、ほぼ食方参考人が言われた問題は整理をされていると思いますが、最後に倉方参考人はこう言いましたね。いまのような法律では国際条約に入れないであろうというような極論までされたわけですが、そうするといまの法律になるのですかね、これはどういうふうに受け取られましたか。
  146. 野崎博之

    野崎政府委員 デンマークでは、今回のわれわれが提案しましたと同じような品種保護の制度によって、しかも条約に加盟をいたしておりますので、また、その条約自体も、条約の事務局等におきましても、大体その条約の国内的な運用については非常に弾力的な考えを持っておりますので、そういうデンマークの例もこれあり、われわれとしては当然加入ができるものであろう、ただ条約の改正の動向もございますので、そういうことも念頭に置きながら、一日も早く条約に加盟をいたしたいというふうに考えております。
  147. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、先ほど特許庁関係のお話をしましたが、七項目にわたって問題が提起をされておりますので、この点どう農林省としては処理をされたかということについて、一項目ずつ確かめていきますから、それに誠実に答えていただきたいと思います。  もうすでに私の仲間また私自身もきのうから質問をしておる点もあります。重複をするところがありますけれども、これは将来のためにひとつあらためておく必要がありますから確かめますが、まず第一点としては、品種登録に関する制度の法的性格が不明瞭である。この法律では権利という用語が一切使われていない。育成者の地位については知的所有権に属しないものとして構成されたにもかかわらず、差しとめ請求権、損害賠償権が発生する法的構成をしており、知的所有権との関係において、その法的性格が不明確である。したがって、育成者の地位及び第三者の権利との関係において整合性のある体系となっていない。こういうことが第一点の指摘でありますが、これに対してどのように整理をされておるのか。
  148. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほども申し上げましたように、確かに今回の法律は、何々権という権利法の形態はとっておりません。したがいまして、特許権、著作権等のような知的所有権に属さないようなものとして立案されておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、育成者の保護につきまして差しとめ請求権あるいは損害賠償請求権というものを認めておるわけでございます。また、その違反行為をした人に対して罰則を設ける、そういうようなことをやっておりますので、実質的にはそういう知的所有権とほとんど変わらない保護が与えられておると考えておるわけでございます。  なお、登記された商号においても権利として規定されていないわけでございますが、やはり差しとめ請求権、損害賠償請求権が付与されております。これも先ほど申し上げました外国のデンマークでも同じような制度で条約に加盟をいたしておるわけでございますし、また差しとめ請求権、損害賠償請求権、これは現行の農産種苗法にもあるわけでございますので、われわれとしてもそれを引き継いでその規定を入れておるわけでございます。
  149. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、品種登録の効力に基づく第三者に対する禁止の行為と新品種の特許権による実施する権利との間で混乱が生じる。その理由としては、同一品種について種苗法案に基づく品種登録と特許法に基づく特許権の双方が付与される事態が想定される。その場合においての調整規定がないために両者の権利関係に混乱が生じる。特に同一品種について品種登録が特許権より先に設定された場合、品種登録の効力に基づいて同一品種の特許権に対して禁止の行為が働く一方、特許権者は特許法第六十八条の規定によりその特許権を実施する権利を有する。両者が争う場合が想定され、その場合の調整規定が必要であるが、法案にはこの規定がない。この点はどういうふうにされるか。
  150. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど来特許庁からも何回もお話がございましたように、特許の対象は「自然法則を利用した技術的思想の創作」、それから品種登録の対象になるのは植物の品種それ自体である。そういうようなことで保護の対象も態様も異なる。そういうようなことで、特許の要件である進歩性あるいは新規性といいますか、そういうものについては植物の品種から見ましてなかなかなじみがたい。したがいまして、従来も特許出願されたものはごくまれにしかない、しかも特許されたものは一件もないわけでございます。  また、品種登録につきましては特許に比べて非常に緩やかな条件、既存のものと区別されればそれでよいというような非常に緩やかな条件で登録をされますので、実際の植物新品種登録はほとんどこの制度によることになるであろう。特許の対象となります新品種それ自体について特許の対象となるものは事実上まずあり得ない。そういうような観点から今度の品種登録制度にいたしたわけでございます。  したがいまして、そういうような事情からいっても特許法との調整規定は設ける必要はなかろう、そういうようなことで特許庁と十分話し合いをして今回の提案をいたした次第でございます。
  151. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、農林水産植物の具体的範囲が政令に委任されているため、農林水産植物の中で登録対象になるものとならないものとが生じ、法のもとでの平等に反する。また、農林水産植物としての微生物の範囲についても農林水産大臣が省令で定めることになっているが、登録対象外である工業的微生物との関係は学術上区分できず、しかも農林水産大臣が一方的に決定し得るため、所掌事務と権限の配分に混乱を生ずる。  この省令に関することについての見込み事項はけさほど出してもらいましたから私は読んでおりますが、なおこういうことについての質問に答えていただきたい。
  152. 野崎博之

    野崎政府委員 農林水産植物の範囲でございますが、これは各省庁とも協議をしながら決めるつもりでございまして、農林水産物の生産のために栽培されるものを政令で決めることにいたしておるのでございます。  どういうものを決めるかについては、その政令をつくるに当たりまして当然各省庁と協議をいたすことにいたしておりますし、先ほど申し上げましたように、農林水産物の生産のため栽培されるものを政令で決めることにいたしておりますので、工業的微生物、発酵工業用の原料、そういうものは当然除かれることになろうと考えております。
  153. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、品種登録の効力として差しとめ請求権がある以上、誤った登録によって第三者の種苗を販売する権利等が侵害された場合、第三者の権利を回復する手続が明確にされていない。登録に対する第三者の不服申し立てに関する規定がない。したがって、裁判所は、当然、登録が有効であることを前提として事案の処理を進行させることになり、第三者の対抗する手段が保証されていない。こういう意見に対してはどうお答えになるか。
  154. 野崎博之

    野崎政府委員 品種登録に当たりましては、これも何回も出てまいりますが、書類審査のほかに現地調査あるいは栽培試験を行って慎重に審査をいたす予定にいたしておりますので、誤って品種登録がなされることはまずまずないと思いますが、万一このようなことがあった場合には、救済方法といたしましては、一般法であります行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法等によりまして異議の申し立てあるいは取り消し訴訟等、そういう方法によって第三者の救済が図られるように考えておるわけでございます。
  155. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、品種登録の取り消しの効力が不明である。品種登録者が登録料を納付しないとき、それ以前の納付済みの期間については登録の効力は当然存在するものと解される。他方、当初から登録要件を満たさなかったことが事後的に判明したとき、登録の効力は当初から発生しなかったものと解すべきである。この両方が同じ取り消しの対象とされる。取り消しの効力についての統一的な解釈ができない。この疑問に対してはどうか。
  156. 野崎博之

    野崎政府委員 品種登録の取り消しは四つの場合がございまして、まず第一は、植物体の特性が登録後に変化していることが判明した。二番目には、登録料の納付がなかった。三番目は、品種登録者が登録後の調査に応じない。四番目が、登録後に法案の要件を満たしていなかったことが判明した。最初に申し上げました三つの場合は、登録の取り消しがあった後で登録が失効するわけでございますが、最後の、登録後に法案の要件を満たしていなかったことが明らかになった、この場合は登録が当初から失効することになるわけでございます。  取り消しがあった場合にいつから登録が失効するかということについての規定は、それはもちろん別に規定はないわけでございますが、いま申し上げましたように、取り消しの事由がそれぞれこうあるわけでございますので、その事由を見ればおのずからこれは判明をすることであろうというふうに考えておりますので、別段こうこういう場合にはいつから失効する、そういう規定がなくても、取り消しの効力については不明な点はないというふうに考えておるわけでございます。
  157. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次いで、農林水産植物の相当部分につき育成者の保護が期しがたい。この法律により保護される対象は、実質上交雑品種のみであろう。たとえば、果樹、菌、花卉等については育成者を保護し得ない。また、品種登録の効力が種苗以外に及ばないために、農林水産植物の輸入に対して品種登録者は対抗できない。このような疑問に対してはどうお答えをしてくれますか。
  158. 野崎博之

    野崎政府委員 品種登録制度農林水産植物全体を対象にいたしておるものでございまして、接ぎ木等による栄養繁殖の植物である果樹花卉、シイタケ、これらの品種はもちろんでございますが、種子で繁殖をする植物であります稲、麦それから樹木、こういうものも当然対象にいたすわけでございます。これら固定品種それから交雑品種ともに登録制度の対象にいたしておるわけでございます。現に、現行農産種苗法による制度におきましても、農作物につきましてはそういう栄養繁殖の品種あるいは種子による繁殖の品種、交雑品種、これらについては全然区別しないで登録をいたしておりますので、改正後も全く同様になるわけでございます。  登録品種についての保護は、種苗の有償譲渡についてでございますが、これは何回も申し上げますように、農家の自家採種やあるいは農家がその種苗を用いて生産、販売するというところにまで効力は及ばない。これはやはり農業政策上非常に重要な点でございまして、その農業政策との調和を図りながら品種登録の保護を与える、そういうような両面の目的を持っておりますので現在のようなかっこうにいたしておるわけでございますが、おっしゃるような農林水産植物の相当部分につき育成者の保護が期しがたいということにはならないというふうに考えておるわけでございます。
  159. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に、この法案は植物の品種の保護に関する国際的動向に逆行するものである。植物新品種の保護に関する国際条約第一条には、「この条約は、植物新品種育成者又はその権利承継者の権利を承認し、保障することを目的とする」旨規定されているが、この法律育成者権利自体を否認している。なお、イタリア、ルーマニア等では特許法で育成者権利を保護し、かつ、この条約に加盟をしている、こういう意見でございます。この点について。
  160. 野崎博之

    野崎政府委員 今回の改正案によりまして、国際条約には当然われわれは入れると思っておるわけでございまして、先ほども申し上げましたが、デンマークは今回の提案しましたわが方の品種登録制度と同様な保護制度をとっておるわけでございまして、しかもこの条約に加盟をいたしておるわけでございます。  今回の品種登録制度は、大体そういう意味では諸外国の水準にまで引き上げようということでございますので、実質的に新制度による保護が権利と同様な程度のものになっている。したがって、今岡の法案改正が条約と逆行するというのは、むしろわれわれとしてはちょっと解しがたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、最後に言われましたイタリア、ルーマニアの件でございますが、イタリアは、UPOV条約の加盟国でありまして、特許法の特例法を設けておるわけでございますが、その特例は新品種種苗については今回のわが方の提案の内容とほぼ似通ったものである。それから、ルーマニアは、これは条約には加盟いたしておりません。しかも、その方式は、その独占権を国に移転いたしまして育成者がその報酬を受ける、まあソ連式でございますが、そういうようなことでルーマニアはなっておるわけでございます。
  161. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでその質問は全部であります。  私は、一つ一つ局長答弁に反論もしなかったし、再質問もしなかったけれども、これは特許に関する専門的な知識を持っておる方々が、本法案の成立に対して大変心配をしての有益な意見だと思いますので、いま答えていただいておりますが、なおそのお答えは記録にとどまっておるわけですから、将来誤りのないようにしていかないと困るということだけは注文をしておきます。これ以上、このことについては触れません。  そこで、最後に問題は、りっぱな法案が成立をしてもこれを運営する体制、こういう体制がしっかりしていなければこれは意味がないと思うので、農林水産技術会議の方にお尋ねをします。  新品種登録制度の整備と並んで、国の育種に対する意気込み、それから姿勢がきわめて重大だと思います。国の育種に関する予算あるいは人事の配置、施設等についても、もっと拡充すべきではないかと考えるわけであります。昨日来の政務次官あるいは事務局関係答弁にもありましたように、現在、国の育種は、昭和五十年六月に策定された作物関係育種基本計画に即して推進されているようでありますが、国の育種の一層の振興を図るという見地から、この基本計画及びこれに基づく国の育種体制についてさらに突っ込んだ論議を展開してみたい。  まず、この基本計画は一体どういう手続を経て策定されたのか。また、この計画では現在六十三の作目を当面の育種対象作目としているようでありますが、その具体的種類はどうかという点。さらに、育種については、本法の提案理由説明にもありましたとおり、作物ごとにたとえば多収品種の育成とか病気に強い品種の育成とか画期的な新品種の育成が強く要請されておりますが、このためには直接に新品種の育成を行う研究分野はもちろんのこと、育種の方法の改善とか育種の支持とかいう、すぐれた特性を持つ育種素材の導入、点検等を担当する研究部門もあわせて強化を図り、これらが有機的な連携を持って強力に育種を推進する必要があると考えるわけであります。この点、基本計画ではどういう取り扱いになっているのか。また国、県の協力分担関係はどうなっているのか。さらに、育種の振興のためには、その体制の整備と並行して相当な予算の確保と近代的な研究施設の整備が重要であると考えるわけでありますが、育種関係の予算は十分確保されているのかどうか、研究施設の充実は図られているのか。  以上、若干長くなりましたけれども、きのうも私はこのことについても若干触れましたが、なお改めてこの点についてお伺いをしたいと思います。
  162. 堀川春彦

    堀川政府委員 大変広範な範囲にわたるお尋ねでございますので、なるべく簡潔に申し上げたいと存じますが、時間等の関係もございますので、もし冗長にわたる節がございましたら御指摘をいただきたいと存じます。  まず、基本計画関係でございますが、この計画の策定の手続でございますけれども、直接的には作物関係育種に関します試験研究の推進についての検討会というものを事務局お世話のもとにつくりまして、これは参画いたしましたのは学識経験者、試験研究機関の職員、それから主として作物ごとの普及なりあるいは奨励行政を担当する農林省の部局の関係者、こういった者が加わっておるわけでございますが、ここで入念な検討をいたしまして、報告が出ましたのが昭和四十九年六月でございます。これをもとにいたしまして、なお事務局といたしましてはさらに内部検討を行い、関係の方面との調整を了した上、この計画を案として策定をいたしまして、農林水産技術会議の議に付し、そこで御了承されまして、農林水産技術会議としてこの計画を決定をし、公表をした、それが五十年六月のことでございます。そういう手続を経ているわけでございます。  次に、どのような作物かということでございますが、六十三の作物を対象にいたしておるわけでございますが、これらの作物は、現下の農業事情、農政上の要請、そういうことを十分考慮いたしまして、緊急的に取り上げる必要性の有無、そういうことを考えて、普通作物については十七種類を対象にしております。稲の関係では水稲、陸稲、麦では小麦、大麦、子実用の燕麦、豆の関係では大豆、落花生、小豆、いもの関係ではカンショ、バレイショ、コンニャク、雑穀類では子実用のトウモロコシ、同じく子実用のソルガム、それからこれは甘味資源関係ですが、私どもの言葉で糖料作物類と呼んでおりますが、てん菜、サトウキビ、それから油料作物といたしましてなたね、工芸作物としてイグサがございます。以上十七。  それから、牧草なり飼料作物関係が十五ございます。寒地型の稲科の牧草といたしましてイタリアンライグラス、オーチャードグラス、チモシー、ペレニアルライグラス、トールフェスク、メドゥフェスク、スムーズブロームグラス、こういったものでございます。暖地型の牧草といたしましてはダリスグラス、バヒアグラス、それから豆科の牧草といたしまして赤クローバー、アルファルファ、白クローバー、飼料作物といたしまして青刈りなりサイレージ用のトウモロコシ、それから青刈り、サイレージ用のソルガム、同じく青刈り、サイレージ用の燕麦、こういうことでございます。  果樹関係は十一ございまして、かんきつ類でリンゴ、ブドウ、日本ナシ、桃、カキ、クリ、梅、スモモ、アンズ、ビワ、こういうことでございます。  それから、野菜と花の関係でございますが、全体で十八ございまして、キュウリ、メロン、トマト、ナス、ピーマン、エンドウ、キャベツ、白菜、大根、ハナヤサイ、ニンジン、タマネギ、イチゴ、アスパラガス、それから花でございますが、ユリ、チューリップ、菊、ツツジ。  それから、お茶、桑、これがそれぞれ独立した項目になっております。  これで全部で六十三あるわけでございますが、これのほかに最後の項目といたしまして、その他新しい作物及び新用途の開発の可能性のある作物というのも機動的に取り上げ得るということにしておりまして、これはまだ具体的に育種の目標をつくって進めるというところまでいっておりませんが、この当時想定をいたしましたものには、いわゆる糖料作物でございますが、ステビアというのがございます。それから、たとえばアカザの一種でございますが、キノアというのがございまして、これは実の中にたん白含有量が非常に多いという特色を持つものでございますが、こういったものについてやる必要が出てくるかなということも考えまして、いま言った最後の項目を持っておるわけでございます。これはまだ具体的に育種試験というところまでいっておりませんが、たとえばステビアなどは熱帯農研を中心といたしまして、これの育種素材としての試料の収集を図っておるということでございます。  なお、育種体制は幾つかの段階があるわけでございますが、その段階に入ります前に育種試験という、作物の交配をやり、それから選抜をやりというのが育種試験と称されているものでございますが、これを中心といたしまして、そういう試験が的確に、あるいは効率的に行われるための一つ基礎的な育種研究という部門が機能的には必要でございます。なお、先生からもお話のございました育種支持でございますが、育種支持と申しますと、素材を外国から入れて交配の材料としてそれを貯蔵しておくというようなことが育種支持に当たります。また、特性を検定する等のことも育種支持に当たりますが、そういった育種支持機能、この三つの機能をうまく結びつけまして、しかも、これから申し上げる試験研究機関で適切な機能分担をして進めていくことが必要であるということで、そういうことを試験場別になり、あるいは作物別に明らかにしておるわけでございます。  そこで、具体的にどうなっておるかということでございますが、まず第一に、作物関係育種の推進機能の整備ということで、五十年以降作物育種についてこれを試験研究一つのパートと申しますか、部門ということで位置づけた。従来は一般の栽培部門の中に作物別になり入っていたわけでございますが、それを独立した、いろいろの作物がございますけれども、それをひっくくって作物育種という部門を設けて進めることにした、これは後ほど申し上げます専門別総括検討会議等との関係がございます。後で御説明申し上げたいと存じます。  それから、育種推進機能の分担の明確化ということで、まず、こういった作物育種に共通する問題をどこで担当するか、これは農業技術研究所が行うということにしてありまして、その内容は、作物共通の問題についての連絡調整、それから大変基礎的な研究、たとえて言えば麦の育種をする際に利用できると考えられている方法でございますけれども、遠縁種あるいは近縁種のものとの間の交雑をするというような場合に、基礎的な理論とその技術、こういったものについては、これは麦に限る話ではございませんが、作物共通の基礎研究ということになるわけでありますから、技術研究所が主体になってやっておる。それから、育種支持に関係するものといたしまして、技術研究所には種子の貯蔵施設を持っておりまして、所要の種子を一括してここで貯蔵をし、育種の材料としてこれを使うということをやっております。これは平塚にいまありますが、現在のところ二万数千種類くらいの種子が集まっているわけでございますけれども、筑波に技術研究所が移転した際には五万種類くらいの種子を貯蔵し得る、そういう能力施設を持ったものにしたいというふうに考えているわけですが、これらは作物育種共通の問題として技術研究所が扱うということにしております。  なお、これは今度作物の関係にあります。たとえば果樹とか野菜でございますが、専門場所がございます。それから、一般普通作物等で農事試験場とか、水稲関係でも農事試験場関係してまいりますが、そういうふうに作物によりまして部門内の育種の共通問題を扱うところはどれかということを位置づけておるわけで、いま申し上げましたような果樹とか野菜につきましては、それぞれ果樹試験場あるいは野菜試験場が部門内育種共通の問題を扱う試験場であるというふうに位置づけ、それから農事試験場は全体、水稲とか畑作物についての育種共通問題を扱う試験場であるというふうにしておるわけでございまして、具体的には、こういった部門内育種共通のやるべきことというのは、各部門内の連絡調整、それから共通の基礎研究ということをやります。麦の場合の例をとっても、たとえば染色体等の遺伝的な因子の組み替え育種をやるという方法がございます。こういうことは農事試験場でやるというふうに分担が決められておるわけでございます。それから、やはり共通的な支持ということで、たとえば麦でございますとか野菜でございますとか、そういうようなことについて農事試験場なりあるいは野菜試験場が外国からの種苗の導入を行う。さっき貯蔵して保管しておくというのが技術研究所ということを申し上げたわけですが、そういうことをやる。それを検定するために若干つくってみるということも含むわけでございます。これらは共通支持という内容ということで理解をされております。  それからさらに、そういった試験場がいろいろやるわけでございますが、そのほかに作物別に育種の試験地と育種中心地というものをつくるという考え方がございまして、育種の試験地と申しますのは、育種試験、つまりさっき申しましたような意味でこの育種中心をなす部分でございますが、そういったことを県の試験場などにもお願いをいたしまして、そうして具体的にどういう作物でどういう目的の育種をやっていただくかというようなことを考えて分担を決めておるわけでございます。それから、育種中心地と申しますのは、そういう試験も一部やりますが、麦なら麦あるいは小麦なら小麦、そういうふうに細かく分かれていくわけでございますけれども、それの試験の取りまとめをやると同時に、みずからも必要な試験を行う、それから研究も必要に応じて行う、育種支持もしかりというようなことで、作物別に中心をつくって取りまとめ、かつ研究なり育種試験なり支持をやる、こういうのがあるわけでして、例を申し上げますと、たとえば小麦につきましては東北の農業試験場、それから大麦につきましては九州の農業試験場というふうに育種中心地が決められておる、かようなかっこうになっております。  それからなお、特性検定試験地、系統適応性の検定試験地というものを設けて実行いたすということにしております。  それから、先ほどもちょっと触れたんですが、作物関係の専門別の総括検討会議というのを毎年開くことにしておりまして、育種のこれまでの経過、それから成果についての評価、それから今後の取り組み、どういった問題を取り上げていったらよかろうかということについての検討をやり、毎年これを取りまとめておるわけでございます。そういうようなことで、これはブロック別にも行いますし、全国レベルでも行うわけでございます。  こういうようなことを通じましてやってまいるわけですが、この育種研究を行う体制といたしましては、これも申し上げておりますとおり、国では九十六の研究室で三百十二名の職員を擁してやるということにしておるわけでございます。指定試験関係では、四十二単位で百三十名というようなことになって、補助員を入れますと百八十名というようなことでございます。  それから、この機会に、大変恐縮ですが、小川先生の御質問で県単の育種をやっております人員の関係についてお尋ねがございまして、小川先生には別途御報告申し上げておるわけでございますが、この関係では全国で百二十カ所で延べ百六十人というのが県単関係育種に従事をしておる、かように御理解を賜りたいと存じます。  それから、予算の関係でございますが、予算の関係では資料で御提出をしてあるわけでございますけれども、総体といたしまして約十三億弱の予算に育種の試験研究関係の予算はなっておるわけでございます。これはこういう形で実行いたす基本体制に必要な予算として組まれておるわけですが、それ以外に別枠予算なり大型別枠の予算というのがございまして、これは特定目的のために予算を取って特定の目的研究をやるということになっておるわけでございますが、こういう関係の中に、たとえば一般別枠で行っております稲麦の合理的作付体系の確立に関する研究があるわけでございますが、五十三年度予算で約一億七千万でございますけれども、こういう予算の中にも育種関係は含まれておるわけでございます。ただ、育種分が幾らということで明示できるような形になっておりませんので、このうち幾らと明確に申し上げられないのですが、そういうものがございます。それから、いわゆるグリーンエナジー計画といって、大型別枠のいわゆる新プロ研究と申しておりますが、これは本年度から具体的に実施に入っておるわけでございまして、予算額は六億八千万円でございます。今後も継続いたしまして、十年くらい続けて総体としては百億円規模ぐらいの試験研究を考えておるわけですが、太陽エネルギーの光合成による利用を飛躍的に拡大をするというのが目的でございますので、その中に育種関係も当然のことながら入ってくるわけでございまして、これもこの六億八千万なり今後総体としての百億のうち育種関係が幾らというふうにびしっとは申し上げられないのですが、相当なものがこの育種の関連に充当されることになろうというふうに思っておるわけでございます。  それから、施設の関係でございますが、施設の関係につきましては、筑波の整備は、御案内のように、あの法律に基づきます計画的な整備ということでやっておるわけでございますが、これ以外に一般会計におきまして施設整備を年々やってきておりまして、これも育種の部分が幾らであるかということはなかなかむずかしいのでございますが、いまのところ大体二十二、三億くらいの規模でいっておるわけでございます。五十三年度は不動産購入費を一部含むわけでございますが、二十三億二千七百万ということになっておりまして、このうち育種関係は共通のものが非常に多いわけでございますのでなかなかむずかしいわけでございますが、育種に直接関係いたしますような温室なり網室、貯蔵庫というようなものに限定してみた場合に、五十二年の場合でございますけれども、約一割程度ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  そのほか、育種の材料の導入等につきましても予算を持っておりまして、現在予算を持ちまして探索導入と申しまして、特定の目的を持って特定のところへ行きましてある種の品種を入れてくるということを国みずからやっておるわけでございますが、それの一年間の実績は約五百種類くらい入れておるわけでございます。こういった予算を直接使いましてやっておりますもののほかに、いろいろのルートで私どもはこの育種に役立つだろうと思われるものの収集に努めておりまして、これは技術会議が窓口になってやっておるわけでございますが、そういうものも含めて考えますと、年間およそ千を下らないような種類のものが集められておるというふうに思うわけでございます。かようなことで、育種推進のための基盤づくりということにも努めておるわけでございます。  なお、今後ともこの育種体制の整備充実、それから試験研究が効果的に推進をされる方策というようなことについては真剣に努力を続けてまいりたいと思っております。
  163. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 大変時間を過ぎて済みません。いま技術会議の事務局長から大変親切な、内容の豊富な話があったわけですが、これはやはり新法案に対する取り組みだと思います。なお、二点ほど準備があったのですが、これはいずれ後で説明をしていただきたいと思うのです。  大変時間を超過して恐縮でしたが、私の質問はこれで終わります。
  164. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  165. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農産種苗法の一部を改正する法律案について、農林省並びに特許庁等関係当局に質問いたします。  農産種苗法は、過去、昭和二十二年の第一回特別国会において成立し、二十四年五月三十一日第一回改正以来、昭和四十五年六月一日の第七次改正まで七回の改正をしてきたわけであります。本法を見ますと、第一条には目的規定を設けるものとし、「指定種苗の表示に関する規制、品種登録に関する制度等について定めることにより、種苗流通の適正化と品種の育成の振興を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的」としております。さらに、本法の中身を見ますと、最近における種苗の育成、流通実態等に即応して、品種育成者の保護の充実と保護対象植物の拡大等を図るとともに、これに関連し、法律名称も現行の「農産種苛法」から「種苛法」に変更する、こういうふうになっているわけであります。こうした措置というものは、関係者の長年の要望でもあったわけでございますが、今後わが国における育種の一層の振興と優良品種の諸外国との積極的交流を図る上において大きな評価が与えられようということになるわけでありますから、この点についてはわれわれも期待するものであります。しかし、改正案の内容等を見ますと、品種登録の保護要件として優秀性が削除されておりますし、本案の運用と特許法との関係にもいろいろ問題がありますし、国際条約への加盟といった問題も基本的事項としてあるわけでございます。こういったことを踏まえまして、私は最初に特許庁に特許法との関係についてお伺いをいたしたい、かように思います。  本法提案に当たって、昭和四十七年以降二回にわたる検討会を設置する等慎重な配慮がなされてきたわけでありますが、こうした検討の過程を通して最も大きな問題となったのは、国際条約への加盟要件等と関連いたしまして、植物新品種育成者に対する権利を特許法と同様に独占的権利として付与するかどうかということが問題であったわけであります。  そこで、具体的な法案策定の段階において特許庁との話し合いが行われまして、結局特許法の体系をとらず、間接的に育成者を保護するいわゆる取り締まり型方式によることとして本法提案を行ったが、このことについては去る五月二十四日、参考人等にも私は意見を求め、これに対する陳述を受けたわけです。すなわち、言いかえますと、最初は特許法と横並びであったわけでございますけれども、その後の経緯によって最終段階では農林省がおりて取り締まり型になったという結果になっております。  私は、本法審議に当たって、この間における経過について特許庁のお考えを将来のためにまず明確にしておいていただきたい、かように思いますので、冒頭お尋ねするわけでございます。
  166. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 当初農林省と特許庁の間でどのように新しく植物新品種の保護を強めるかという議論がされたことは先生御指摘のとおりでございますが、そのときの方法論の一つとして、理論的に考えられますし、また先進国の例等もある一つの体系は、特許法体系といいますか、特許法の体系の中に別の植物特許法と申しますか、そういうふうなものを設けましてその場で処理する方法も考えられたわけでございますけれども、これはあくまでも理論的に考えられた方法でございます。しかしながら、現実には三十年前の農産種苗法が現存しておりますし、その後におきましても植物自体の特許の件数がいまのところございません。このような実態を反映いたしまして、さらに保護の実態に対しましても、非常に強い権利を与えるかわりに登録要件を厳しくするか、権利自体は若干緩くても登録要件を緩くするか、さらには単に権利だけを認める法律にするか、権利と同時に関係流通業者並びに消費者の保護もあわせて考えるような法律にするか、種々議論がございまして、今日のような農林省の提案法律になったわけでございまして、これは両省庁意見の一致しました法案でございますし、意見は完全に一致しております。
  167. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ただいまの点について農林省当局にお尋ねしますけれども、特許庁としては完全に農林省と意見が一致した法案であるとおっしゃる。また、一致しなかったら出すわけはないと思いますけれども農林省側としてこの間の経過について、将来のためにあわせこの席で明らかにしておいていただきたい。
  168. 野崎博之

    野崎政府委員 ただいまお話がございましたように、特許庁との調整を終えて出したわけでございますが、特許綱度における保護の対象と植物品種そのものとの違いがございまして、特許の対象になりますのは自然法則による技術的思想の創作である、それから品種登録の対象になりますのは植物の品種それ自体である、そういうようなことで保護の内容も対象も態様も違ってくる、そういうことでございますし、植物の品種自体につきましては、特許の要件である進歩性、新規性ということがなかなか満たされにくい、そういうこともございますし、また現実に従来も特許された例はない、出願された例はごく少数あるわけでございますが、特許された例はない、また比較的緩やかな条件で品種登録ができる、そういうこと等を考え合わせまして今回の品種登録による改正にいたしたわけでございます。したがいまして、いま申し上げましたように、農林水産植物の新品種それ自体を特許発明の対象とすることは事実上まずないというふうに考えておるわけでございます。そういうことで特許庁との調整を終えたわけでございます。
  169. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省側と特許庁側に聞くのですが、特許庁においては、昭和五十年十一月に植物新品種に関する審査基準を公表しておるわけであります。この基準によりますと、「植物新品種」の「はしがき」の三項目に「この審査基準は特許出願にのみ適用される。」こうありまして、冒頭「産業部門の名称」は「植物新品種」、2に「産業部門の範囲」として、「この審査基準は、育種された品種に属する植物に関する発明(以下、品種に属する植物に関する発明という。)に適用する。この審査基準の対象となる品種に属する植物に関する発明とは、品種に属する植物自体の発明および品種に属する植物を育種する方法の発明を意味する。この審査基準における分類単位である品種の概念は植物分類学上の単位でなく、農学上の分類単位である。」というふうに記されております。  そこで、順序として、本法と特許法との運用をどのように調整するか、これとの関係で特許庁と行政上調整ができているのか。いま勝谷総務部長は特許庁を代表して答弁がございましたが、完全に一致しておる、こういうことでございますが、われわれは疑念を持つところでございまして、国民に迷惑、心配をかけないようになっているのか、この点もひとつ明らかにしていただきたい。  まず、農林省からお答えいただいて、その次に特許庁からお答えいただきたいと思う。
  170. 野崎博之

    野崎政府委員 植物の品種それ自体につきましては、先ほど申し上げました特性によりまして、特許発明の対象になることは事実上まずほとんどあり得ない。そういうようなことで、特許との調整も必要ないのではないか、調整規定を入れる必要はないのではないかというふうに考えたわけでございますが、特許庁あるいは農林省の双方で、制度の適正な運用を図るために相互に出願状況を知らせ合うというような情報の交換は今後ともお互いに十分にやってまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。
  171. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 審査基準の発表でございますが、実は育種業者の保護育成についての要望が非常に強まりましたときに、育種業者自体からの要望と、さらに国会を通じまして、特許法の範囲でできる限りの特許の登録をしなさいという御要望をいただきまして、特許庁としては、かねて検討しておりました審査基準を発表したのが五十年の十一月の実態でございます。その後、先生御存じのとおりに両省庁の間で種々検討がいたされまして、ただいま完全に意見の一致した法案を提出しているわけでございますが、局長からの説明にありますとおり、特許権とこのたびの登録によって与えられます権利、そしてさらにその権利の背後にあります登録の要件等は異なっておりますので、理論的には今後も両法律による体系があるわけでございますけれども、先ほども述べましたように、三十年の実績を見ましても実は植物自体の登録はございませんし、さらに、今後技術の進歩発展とともにその分野における進出も予想されますけれども、一方ではこのたびの法律によりまして登録要件が緩和され、ある程度国際的な水準の保護が与えられるという法律ができるわけでございますので、私どもといたしましては、植物自体の登録はほぼこの法律で満たされるのではないかという感じがいたすわけでございますし、さらに、そのきわめて微妙な接点におきます問題をスムーズに解決するために、局長御指摘のとおり、両省庁の間で十分な連絡体制をとる、このようにいたしたいと思っておるわけでございます。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 特許庁並びに農林省答弁をお聞きしておりますと、要約すれば、特許法と農産種苗法との調整の問題は、本法発足の昭和二十二年、すなわち三十年以前の現行農産種苗法の制定時においても検討されてきた、そこで、その際の調整規定をそのままずっと踏襲していく、こういうふうなことに私には聞こえるわけでございます。そしてさらに、先ほど野崎局長から御答弁がございましたように、今日までの三十年の間に方法の特許については八件認められた、こう言っておりますが、植物自体の特許については一件も認められていない、こういう発言があったと思います。しかし、今後は特許庁も農林省も連携をとりながら密接にやっていく、それはもちろん当然のことでございますが、私に言わせれば、そうであるならば、この五十年十一月の特許庁が出しましたところの植物新品種に関する審査基準というものはまさに有名無実で、何の役にも立っていない、こういうことになるわけですけれども、その点は農林省はどういうふうに答弁をなさいますか、また特許庁はどういうふうに認識しておられるか、お答えをいただきたい。
  173. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先ほどお答えいたしましたように、特許法の分野で特許されるべきものにつきましては、育種業者の要請並びに国会からの御要望もございまして基準を発表いたしました。そして、今後は、先ほど申しましたように、まずほとんどないという状態ではございますけれども、理論的にはそういう分野を残したわけでございますので、いまの基準をそのまま残すことによって体制を整えたい、かように考えているわけでございます。
  174. 野崎博之

    野崎政府委員 いま特許庁の方からお話がありましたように、理論的にはあり得ることは考えられますが、事実上はまずほとんどない。しかし、先ほど答弁いたしましたとおり、理論的には考えられ得るということもございますので、こちらからあえてそういう発表された基準を廃止してもらいたいというようなことは言っておらないような次第でございます。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 勝谷総務部長、私が先ほど言いましたように、実際にはこれはもうほとんどあってなきがごとし。名はあって実がないというものを有名無実と言うのですが、事実上こういうふうに一件もなかったというのですから、今後もまた踏襲していくとなれば、これはほとんど有名無実、こういうことになりますね。その点はどうですか。
  176. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先ほど申しましたのは、育種業者を保護するための体制がない、それで、特許法で速やかにできる範囲のものをやれという御要望があってあの基準を出しまして、その基準を出すまでの間に登録したものが実は過去一件もないということでございまして、基準を発表いたしましてからは、午前中にも御報告いたしましたように、すでに十数件の出願がなされておるわけでございます。これがすべて植物新品種の発明として登録されるかどうかは今後の検討にまつわけでございますけれども、すでに発表し、受け付けているものもございますし、理論的には今後も発明の分野というのは残されておりますので、基準は今後も維持してまいりたい、かように考えております。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省に伺いますけれども、いまの勝谷総務部長の答弁によると、理論的には発明の分野の道は残してある、こういうような意味の御答弁でございましたが、そうしますと、今後こういった種苗法の問題について農林省と特許庁の二また、すなわち二元行政が行われるということになりかねない。農民はどちらについていいか迷う、どちらに登録すればいいかということにもなりかねない、将来問題が起きないとも限らない、こういうふうに私は思うわけです。こういった点についても、本法提案に当たり審議をする上できちっとしておかなければ、いわゆる交通整理をしておかなければ将来に禍根を残すのではないかということで、私は何も皆さん方を責める意味で言うのではなくて、その点は明確にしておいてもらわなければいかぬということで申し上げるわけです。将来に問題を残すのではないだろうか、二元行政にならないか、その自信があるか、その点をお答えいただきたい。  これは今井政務次官からでも野崎局長からでも結構ですからお答えいただきたい。
  178. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほどもお話し申し上げましたように、理論的には考えられないことはないわけでございますが、事実上はまれにしかない。それで、品種登録の要件も特許の要件に比べまして非常に緩やかな要件になっておるわけでございますので、事実上は品種それ自体に対する出願登録はほとんど品種登録分野で行われるであろう、そういうことと、先ほど申し上げましたように、新品種それ自体が技術発明の対象になることは事実上ほとんどまずない、そういう点で将来ともそう問題はなかろうというように考えておるわけでございます。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省側は問題なかろうということですが、なかろうということはあることもあるというわけですから、特許庁はその点は絶対心配ないですか、どうですか。
  180. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 理論的には割り切れておりますし、実態の問題としては、先ほど申し上げましたように、両省庁の間で十分連絡をとりますので、行政運営はうまくいくものと考えております。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点がどうもはっきりしないので、私も将来のために禍根が残らなければいいがと大変心配しております。この点は政務次官としても、私の質問の意のあるところをさらに検討し、今後問題を残さないように、両省のセクト主義を排し、連携はもちろんとってもらわなければなりませんが、将来国民がどちらに特許申請すればいいか迷わないようにきちっとした今後の行政指導とともに、せっかくこういった基準が設けられておるのに、これを一件も植物に対するものがないままただ有名無実に置いておくということになっておるわけですから、その点十分認識を新たにして今後対処してもらいたいと思うのですが、政務次官どうですか。
  182. 今井勇

    ○今井政府委員 御心配はまことにもっともなことでございますが、いきさつはどうあれ、政府の間で思想を統一いたしまして、内閣の責任において法案を提出いたしました以上は、成立いたしました法案を国民の皆様方に御心配なく、疑義なく運営することは政府の責任でございまして、これはしかと政府の責任においていたさせたいと思います。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林省当局に私はさらに念を押しておきますけれども、端的に申し上げて特許法というのは物を発明した者には排他的な権利を付与することになるわけで、そのために権利を付与することは言うまでもないわけです。今回は権利付与がないわけです。育種した人は登録してやりますよ、登録を受けない人は黙ってやってはいけませんよという、端的に言うと取り締まり型の本法になっております。  そこで、これで十分本法の目的が達成できる自信があるのか、この問題の総まとめとしてさらにもう一回お答えをいただいておきたい。
  184. 野崎博之

    野崎政府委員 先ほど来いろいろお話が出ましたように、品種育成者の保護といたしまして登録名義の変更ということもございますし、あるいは差しとめ請求権、損害賠償請求権というものもございますし、それについて違反した場合には罰則等も設けているということで、私的所有権ではないと言いながらほとんどそれに近い権利保護を与えている、そういうことからして育成者の保護は十分考えられると考えておるわけでございます。
  185. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私は党を代表する立場で、すでに五月二十四日以来論議をしてきた問題でございますが、修正点についても総括的に触れておきたいと思います。  現行法第四条の修正、復活の問題でございますが、わが党の修正及び復活についてもすでに政府の方にもその案を提示してありますので、これは開口になりますか、最約的に与野党折衝の方で決めるということでいま鋭意努力はしておりますが、公開の席で正式に申し上げておきたいと思って質問申し上げるわけでございます。  今井政務次官からお答えいただければと思いますが、現行法第四条の修正、復活として「農林水産大臣は、指定種苗の「表示規定」および「生産等に関する基準規定」を遵守させるため、当該官吏に、当該指定種苗の生産を業とする者及び種苗業者から検査のために必要な数量の指定種苗を集取させることができるものとする。」こういうようにやるべきであると私は思っておるわけです。細かいことは時間の関係で全部申し上げませんが、すでに通告して提示してありますので、これについて当局のお考えを改めてお伺いしておきたいと思います。
  186. 今井勇

    ○今井政府委員 第四条の規定につきましてこれを削除いたしました理由は、昨日も御答弁申し上げましたが、かいつまんで申しますと、現行法によります種苗検査のための種苗の集取に当たりましては対価を支払うこととされておりまして、過去三十年の運用に当たりましては集取を拒まれるような事例がございません。したがいまして、現行法のような規定は置かなくても検査上特段支障がない、こう考えたためでございます。  しかしながら、せっかくの御提案でもございますし、きのうも申し上げましたが、当委員会でしかるべき方向をお示し賜りますならば、政府はその方向に対しましてその趣旨を尊重いたしまして、前向きで検討させていただきたい、かように考えております。
  187. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 改正案第五条関係についても申し上げておきます。  「指定種苗の生産等に関する基準」についてでございますけれども、これを精神的規定にとどめず実効性のあるものにすべきだ、私はかように思っておるわけです。これについては政府としてはどういう見解をお持ちであるか、政務次官からお答えをいただきたい。
  188. 今井勇

    ○今井政府委員 第五条につきましても、原案をつくりました考え方は、横前業者などが自主的な品質管理を一層促進させることをねらいとしまして、種苗業者などが遵守することが望ましい基準を定めて公にすることにいたしたわけでございますが、この基準を「遵守すべき基準」というふうにして、これを守るための行政上の措置を規定することも立法論として一つの考え方だと思います。したがいまして、せっかくの御提案でもございますので、第四条と同様に、当委員会で考え方をおまとめくださいますならば、政府としてはその考え方を尊重いたしまして、前向きで検討させていただきたい、かように考えております。
  189. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、わが党の部会でも先日来再々にわたって検討いたしまして、現行法改正案とさらにわが党の修正案を考えております。とりわけいまの四条、五条を含めて、私は次のような法律の条文の規定の順序等を考慮すべきである、その中に若干の文言の検討をすべきである、かように申し上げるわけでございます。  すなわち、私たちは改正案の第五条をまず四条に持ってくる。ちなみに、第三条は「保証種苗についての表示」でございますが、これはこのままとしまして、修正案として申し上げますと、第四条に「指定種苗の生産等に関する基準」という見出しで、「第四条 農林水産大臣は、優良な品質の指定種曲の流通を確保するため特に必要があると認められるときは、当該指定種苗の生産、調整、保管又は包装について当該指定種苗の生産を業とする者及び種苗業者(以下「種苗業者等」という)が遵守すべき基準を定め、これを公表するものとする。農林水産大臣は、前項の規定により定められた基準を遵守しない種苗業者等に対して、遵守基準を遵守すべき旨の指示をすることができる。農林水産大臣は、前項の指示に従わない種苗業者等があるときは、その旨を公表することができる。」こういうように第四条に持ってきて、特に政府案の改正案で「望ましい基準」というものを「遵守すべき基準を定め、」こういうふうに直すべきであり、さらに、その下に「指示」ということを、強い言葉でありますが、入れるということで、第四条としたわけであります。  さらに、第五条は、現行法の第四条を五条に持ってまいりまして、「指定種苗の検査」という見出しで、「第五条 農林水産大臣は、当該官吏に、種苗業者等から検査のために必要な数量の指定種苗を集取させることができる。但し、時価によってその対価を支払わなければならない。前項の場合において種苗業者の要求があったときは、当該官吏は、その身分を示す証票を示さなければならない。」こういうように現行法の四条を若干言葉を強くしまして五条に持ってくる。すなわち、第三条の「表示」、それから第四条の「遵守すべき基準」、こういったものが守られているかどうかということが大変問題になりますので、四条の後に第五条を持ってくるべきだ。表示が守られているかどうかについて検査するが、検査するということが強いことになりますから、「検査のために必要な」というように私は変えるべきである、修正すべきである、こういうように考えて第五条に持ってきたわけであります。  さらに、第六条は、改正案の第六条を持ってまいりまして「報告の徴収等」、「第六条 農林水産大臣は、指定種苗の検査の結果必要があると認めるときは、種苗業者等に対し、その業務に関し必要な報告を命じ、又は帳簿その他の書類の提出を命ずることができる。」ここに「報告の徴収等」ということを持ってまいりました。さらに、これには現行法の第五条のいわゆる「保証種苗の」つまり「指定種苗の検査の結果必要があると認めるときは、種苗業者等に対し、」云々というこの文言を合わせ六条に持ってきて、このように修正案を考えたわけであります。  さらに、第七条ですが、改正案の政府提案の第四条を第七条に持ってきまして、「指定種苗についての命令」、「第七条 農林水産大臣は、第三条の規定に違反した種苗業者に対し、同条第一項各号に掲げる事項を表示し、若しくは当該事項の表示を変更すべき旨を命じ、又はその違反行為に係る指定種苗の販売を禁止することができる。」  こういうようにしまして、時間の関係で細かい解説はできませんが、第三条で、改正案のとおりでございますが、第三条で「保証種苗についての表示」、第四条は「指定種苗の生産等に関する基   第五条で「指定種苗の検査」、第六条で「報告の徴収等」、そして第七条で「指定種苗についての命令」、こういうように法律の条文の規定のいわゆる順序配列というものを考えるべきである、かように提案したいわけでございますが、もちろんこれについては各党と理事会で検討し、また最終段階でいろいろ詰めまして国会としていろいろ検討する、そしてまた政府にいろいろと考えをただすということにするわけでございますが、本日の審議に当たりまして記録にも残しておきたい考えもございましたので、以上読み上げまして、農林省には先日こういった問題については詳細前もって提示してございますので、十分御検討いただいたと思いますが、これらを総括していろいろ検討いただいたと思いますけれども、十分対処していただきたい、かように思うので、これらについて政府の考えはどうであるか、お伺いをしておきたい。
  190. 今井勇

    ○今井政府委員 大変多岐にわたります御修正の趣でございます。これらにつきましては、ひとつ、他の党からの修正の要求等もございます。したがいまして、当委員会におきまして十分な御論議を賜りたいと存ずる次第でございます。
  191. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官答弁のとおり、他党とも相談をしつつありますし、また政府にいろいろ再検討をお願いしたい、こう思っておりますので、理事会の検討を踏まえて十分ひとつ政府においても対処されるように要求しておきます。  時間も詰まってまいりましたので、あと、はしょって重要な問題をこの機会にお尋ねしておきますので、簡潔明快にお答えいただきたいと思う。  法律案の運用に関する問題でございますが、品種登録の対象植物等について、本法においては、品種登録の対象とする植物は、農産物、林産物または水産物の生産のために栽培される植物で政令で定めるものとしておられます。  政令事項はけさほどいただきました。数点お伺いしたかったのですけれども、一点だけお伺いしますが、「農産種苗法の一部を改正する法律案政令規定見込事項」は三項目になっております。この中で、一項目に、「穀類、野菜果樹、工芸作物、飼料作物、花き、林木、きのこ類、海そう類等について、これらに属する種類を掲げて規定する見込み。」とあります。また、本法の「省令規定見込事項」は十五項目になっておりまして、いろいろ規定をしておりますが、第七項目のところに、「法第十条第二項の農林水産省令で定める農林水産植物の種類は、りんご、ぶどう、すぎ、ひのき等とする見種類込み。」ということになっております。  私は、もっと早くこれを手に入れると、いろいろ検討したかったのですけれども、端的にこの機会に伺っておきますが、果樹の中でナシとかカキとか桃、こういったものについてはなぜ省令事項に入れなかったのか。また、林木の中で松などはなぜ入れなかったのか。松くい虫で相当被害を受けているから恐れをなして入れなかったかどうかわかりませんが、その辺いろいろ他にもたくさん種類はございますけれども、端的に「ひのき等」と書いてありますので、その点説明をもう少し、本法審議に当たって、しておいていただきたい。時間もございませんから、簡潔で結構ですから、お答えください。
  192. 野崎博之

    野崎政府委員 ここには「りんご、ぶどう、すぎ、ひのき等とする見込み。」これは代表的な例を挙げたものでございまして、全体の種類としては当初四百ないし五百種類ぐらいになる予定でございますので、いま先生のおっしゃいましたそういうカキ、ナシとか、そういう果樹類は当然含まれるわけでございます。
  193. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農民の方から、不安だったので、明快にここで答弁を求めてくれという要請があったものですから、一応私もあらあら承知はしておりましたけれども確認したわけです。林木についても同じことだ、こういうように理解をしておりますので、十分ひとつ不安のないように、きちっと政省令では規定していただきたいと思います。  次に、現行の農産種苗法と新法の種苗法との最も大きな違いというものは、五月二十四日の参考人のときにも私いろいろ指摘したのでありますが、保護要件についてでございます。現行法が優秀性と新規性をその要件としていることに対して、新法においては新規性のみをその要件としているのであります。  そこで、政府において、本法の運用に関連し、優秀種苗の奨励普及とともに、生産農民の保護に対し、どのような措置を講じようとしておられるのか。すなわち、言いかえますと、農林省は優秀な新品種としてどのような方法で従来に劣らないように普及していくのか、ひとつ具体的にこの点も明らかにしておいていただきたい。
  194. 野崎博之

    野崎政府委員 先生おっしゃいましたように、今回の改正によりまして優秀性については削除をいたしたわけでございますが、これは栽培技術、利用技術等時代の推移とともに変動するものでございますし、また個人の嗜好によることもございますので、優秀性の判断は個人に任せたいというようなことで削除したわけでございます。  優良種苗普及については、いまおっしゃいましたように、生産農家のためにも当然必要でございますし、そのため従来から各都道府県において、各県の気候、土壌、それらに適した優良品種を奨励品種として指定をいたしまして、その普及に努めているところでございます。これらの点は、今後ともそういう各県に、地域に適合した優秀種苗普及ということに一層力を入れたいというふうに考えますし、国がまた原原種農場をみずからつくって優良種苗を配布している場合もあります。バレイショとかサトウキビ等はそういう例でございますし、あるいは府県の原原種圃、原種圃に対して国が助成をしている、米麦、大豆等はそれに該当するわけでございますが、そういう例もございます。あるいは各公益法人がいろいろな採種事業をやっている、それに対して補助をしている、これは雑豆類とかなたね、そういうものでございますが、そういうものも今後とも一層拡充していきたいというふうに考えているわけでございます。
  195. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五月二十四日の当委員会で、四名の参考人を招致していろいろ伺いました。その中で問題がかなりあったわけですが、全部をここでお聞きすることはできませんけれども、その中から数点はしょってこの機会にお尋ねをしておきます。  まず一つは、近代的な農業発展の上で、物質的な基盤として農業技術の改良発達、特に品種改良の果たした役割りが大であることはもう言うまでもございません。従来、国及び県などの農事試験研究機関の成果というものは、私たちも、日本農業の発展のために大きな役割りを果たしたわけでございまして、これは高く評価をいたしております。そういったことから、本制度の制定によりまして、政府は品種改良についてややもすれば民間育種に重点を移行したり、安易に外国品種に依存するがごとき、すなわち、これから外国から素材がどんどん入ってくる、日本は素材がほとんど限界に達した、そういう意味では外国から素材を得ることは大いに結構なことでありますが、さればとて、どうしても日本人は新しいものに飛びつくという習性がございますので、そういった面で知らず知らずの間にそういう外国品種に依存するがごとき姿勢を持つというような結果になるおそれなしとはしない、私はかように思うわけでございます。その点を、農業者あるいは団体も、または改良の第一線に立っておるいわゆる直接農業に従事している者たちは大変心配をしているわけでございますので、その点は十分心配ないように配慮されると思いますが、全国農民のためにここで明快にひとつお答えをいただいておきたいと思います。
  196. 野崎博之

    野崎政府委員 本法の改正によりまして、米麦、大豆等につきましても、民間育種登録といいますか、そういうものは若干ふえるかもしれませんが、やはり米麦、大豆につきましては、非常に高い技術と非常に長い年月、それから非常に複雑な組織、そういうようなもの、したがって、多額の経費を要するものでございますから、民間における現在の体制から見まして、やはりこういう部門は公共育種が今後も主体になっていくだろうというふうに考えられるわけでございます。また、海外からの品種導入につきましても、わが国の気候風土に合うかどうか、そのまま入れてわが国に育つかどうか、そういうものにつきましても十分やはりそういう点、適した品種を入れる必要があるというふうにも考えておるわけでございます。したがいまして、育種については、従来どおり農家の経営の安定を図る観点から、基本的には国、地方公共団体の公共機関が当たるというふうに考えておりますし、農林省といたしましても、作物関係育種基本計画というものを農林水産技術会議でつくっておりまして、この計画に従いまして、今後ともその計画の発展拡充を図ってまいりたいというふうに考えております。
  197. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 法第七条、十二条の四、すなわち新品種登録、法第十二条の五の二の一、許諾を受けて生産、販売することによりまして種苗価格が不当につり上げられないということで、私たちは十分農林省としても配慮していただきたいと思いますし、本法の施行によって、その結果生産物の価格というものに影響するとなると、これは農民は大変困るわけでございます。そういったことで、さきに検討会においても、いろいろ文献を見ますと、一つには、現在の種苗価格にも技術開発費が含まれている、二つには、種苗費が生産費の中に占めている比重が小麦で四・六%、キュウリで一ないし二・三%である。こういうふうに言われております。三つ目には、不当に高い場合は品種選択に当たって代替性があるというようなことから大きな影響はないんじゃないかというふうにわれわれも判断はしておるものの、この点は農民も大変皆関心の強い問題でございますので、この点についても政府は本法提案に当たってどういうふうに検討されておるか、ひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  198. 野崎博之

    野崎政府委員 いま先生がおっしゃいましたとおりでございまして、種と種の問あるいはその主たる品種間でも競合関係にあるものがあるわけでございますし、やはりその経済的効果によって価格が決まるものでございまして、品種登録があるからといって直ちに値上がりをするものではないというふうに考えておりますし、また生産費の中に占める種苗代も、いま先生がおっしゃいましたように非常にわずかの部分でございますので、すぐ価格がつり上がるようなことはないというふうに考えております。
  199. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 第八条関係で、国、地方公共団体における公共育種登録関係でございますが、これも特に主要食糧の品種改良が、主としてこれは米麦を初め国、県等で行われ、いままでは公開の原則に基づいて農業者はその改良メリットを受けておったわけでございます。今後本法が施行になった後も当然そうあるべきである、かように思いますので、不安をなくすためにも、この点、この機会に当局の見解を全国農民のために明らかにしておいていただきたい。
  200. 野崎博之

    野崎政府委員 国が行っております育種は、農業経営の安定を図る見地から、広く一般の農家に普及させることを目的といたしておるわけでございます。国の試験研究機関で育成された場合、新制度におきましては、現行制度と同様、第一次的には登録を取り得る資格は従業者にあるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、このたてまえを貫くためにも、必要がある場合には職務育成品種については国も登録を受けられる道を開いておく、そういう方途を講じまして、従来のように一般的に普及される、そういう体制をとるつもりでおるわけでございます。
  201. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次の問題も五月二十四日に参考人を招致した際の陳述の中で論議をした問題ですが、改めて当委員会で政府の見解をお聞きして明らかにしておきたいと思うのです。  新品種育種なり枝変わり等の発見にかかわる登録について、従来の実績から見ますと、その過半が個人農業者であるわけです。したがって、これらの育成者が真に保護されるようにするためには制度の趣旨徹底や手続の便宜等について普及所、農協等の組織的対応が必要になると私は考えるわけです。そこで、こういったことについて、この施策の具体化はどういうふうに考えて本法提案に及ばれたのか、これもひとつ明らかにしていただきたい。
  202. 野崎博之

    野崎政府委員 この制度の趣旨、内容、そういうものを十分に周知徹底を図ることが必要でございますので、わが方の出先機関でございます地方農政局あるいは県、市町村等に十分そういう趣旨の周知徹底方を図りたいというように考えておりますし、そのための予算等も組んでおるわけでございますが、いま先生おっしゃいましたように、そういうところを通じまして、普及所あるいは農協、そういうところへも十分周知徹底を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  203. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 出願品種審査体制のことで私も触れておきたいわけですが、御承知のように、現行法においては新品種登録要件が新規性のほかに優秀性を必要としているためにその申請件数も比較的少ない実情にあったわけでございます。本法においては新規性のみをその要件とすることから出願件数が飛躍的に増大するということは言うまでもありません。そこで、出願品種審査に当たっては書類審査のほか原則として現地調査または栽培試験を行わせることになっているわけですけれども、これに対応した人員及び施設等の確保が必要となります。  そこで、この整備予算はどうなっているかということをお尋ねするわけですけれども農林省説明によると、五十三年の予算は五千六百万円で、将来はコンピューター方式を取り入れるというようなことを答弁しておられるようでございますし、そういった考えもあるようです。  言うまでもなく、出願件数もふえるし、かなり事務繁雑も起きてくるということから人員の養成または配置も必要になってくる。そうすると間に合わぬのではないか。法律だけ通せば後は何とかなるというようなやり方ではないか、こういうように思うのですが、その点は心配ないように、十分対処できるような対策を考えて本法提案をしておられるのですか、その点も明らかにしていただきたい。
  204. 野崎博之

    野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、書類審査、それから現地調査、それから栽培試験と三つの段階があるわけでございますが、現地調査は原則として全部行うことといたしておりますが、栽培試験につきましては必要な場合に行うということにいたしておりまして、これらの仕事をまた大学都道府県試験場に委託をしたりあるいは民間の専門家に委託をする場合もございますが、そういうようなことでこの事務を進めてまいりたいと思っておるわけでございますが、いまおっしゃいましたように、当初予算は五千六百万円ということで発足いたすわけでございますが、優秀性を排除いたしましても、やはり実際に出てきますのは優秀なものあるいは有用なものでなければなかなかそういう登録品種としては出てこないわけでございますので、当初の予算なり人員としてはいまのままでいけると思っておるわけでございますが、将来は先生のおっしゃいましたふえる可能性もございますので、今後各省庁といろいろ連絡しながら人員、予算等の拡充に努めてまいりたいというふうに考えております。
  205. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農業資材審議会のことでちょっとお尋ねしておきますけれども、この委員の任命については、本制度が装いを新たにして発足するわけでございますので、適正な運営でないと、将来大変な不安を与えると思うわけでございます。冒頭農林省と特許庁に質問しましたように、いわゆる今回の法案が取り締まり型にもなっておりますし、いろいろ経過等あったわけでございますので、こういった制度の運営を適切にするためにも委員の任命については十分配慮してもらいたい。どういうようなお考えで構想を練っておられるか、本委員会で発表できる範囲でお答えをいただいて、ぜひともひとつ各関係者の委員を糾合して、円満な、しかも農民も納得する委員会の構成にしていただきたいと思うのですが、その点どうでしょうか。
  206. 野崎博之

    野崎政府委員 いま先生おっしゃいましたように、今回の審議会の使命は、農林水産植物の重要な形質を定める場合、それから裁定をする場合、審議会の意見を聞くということになっておるわけでございまして」、いま先生がおっしゃいましたように、十分公平に、しかも育種者の意見等も取り入れる、そういうようなことも踏まえまして、育種あるいは品種について専門的な知識を有する方、あるいはこの道につきましてあるいは今回のこういう改正いたしました制度につきまして十分な学識経験を有する方、厳正中立な立場から意見を言っていただく方、そういうような方々に御依頼をいたしたいというふうに考えております。
  207. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、農林省当局にお尋ねしておきますが、財団法人日本特産農作物種苗協会というものがございます。全国で、北海道の網走に昭和四十三年設立しておりますし、九州は昭和四十四年に熊本県菊池郡西合志町野々島に設立されております。さらに、北海道十勝に昭和五十一年現在設立中でございますが、これは北海道中川郡幕別町の豊岡でございます。  その中で、九州の熊本県の場合でございますが、用地面積が十四ヘクタール、うち耕地面積が十三ヘクタール、この差の一ヘクタールは建物等を建てるための用地であります。建物は千百八十一平米、職員は場長以下工人ということになっておりまして、設立当初は熊本県の場合は昭和四十四年に四千二百五十万円の総工費でこれを建設した。土地は県条例によって無償で提供、その後隣接地二ヘクタールをぜひ拡張したいということで、長年の懸案でありましたのでこの二ヘクタールを今回県条例にかけて十六ヘクタールにするということのようであります。  なお、予算としては網走と熊本に対して三千百七十三万八千円の予算が計上されておりまして、これは既設センター、すなわち建物建設をするための予算である。この二分の一強、すなわち千六百万円内外になると思うんですが、これが熊本県の乾燥調製施設に、残り千四百万か千五百万ぐらいが北海道のいわゆる網走の網室をつくるということで、合計三千百七十三万八千円が計上されておるようであります。すなわち、畑作種苗生産体制整備事業としてこれが計上されておる。  これについて、私の言っていることに間違いないか、また、こういう計画によって県側とはどういうふうに折衝して用地交渉を進めておられるのか、さらには、この日本特産農作物種苗協会の経営状態といいますか、どういうふうになっているのか。日本で北海道に二カ所、本州で熊本に一カ所という三カ所しかない原極をつくるいわば種苗センターであるだけに、重大な関心を持っておりますが、その仕事の中身等もあわせて、時間もございませんので簡潔に要点を、はしょって結構でございますから、最後にこれの政府の考えをお述べいただいて質問を終わらせていただきたいと思います。
  208. 野崎博之

    野崎政府委員 特産農作物種苗協会は畑作の優良な原種苗を供給するという公益的な事業を行っておるわけでございますが、扱っております品目は大豆、雑豆、落花生、なたね、カンショ、バレイショ、ソバ、燕麦、ビール麦というようなものでありまして、いま先生おっしゃいましたように網走、九州、十勝にあるわけでございますが、十勝は五十一年度から発足をしているわけでございます。  熊本のセンターの問題につきましては、熊本県を中心に畑作物の優良原種前を供給しているという実態でございまして、現在、当協会が県から用地を無償で借り受けるように話し合いを行っておるところでございますが、もうすでに既存の十四ヘクタールは本センター設立当初、昭和四十四年の設立でございますが、県から無償で借用しておるわけでありまして、当初から県に対しては十六ヘクタール必要なので十六ヘクタール無償で借りたいと言っておったわけでございますけれども国立の蚕糸試験場が試験圃場をつくる関係で二ヘクタール県から無償で借用をしておったわけでございます。今回、国立の蚕糸試験場の試験圃場の役目を終えましたので、その跡地二ヘクタールをまた県から無償で借用をいたしたいということで、いま県と話し合いをしているところでございます。  以上のような経過でございます。
  209. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本件についてはいろいろ県側の対応のあり方もあるわけでございますし、熊本県議会の六月県会でもいろいろこれが問題になるわけでございます。特に熊本県議会議員広瀬博美氏からも、この問題については十分検討して、政府の方の考えをお聞きした土で県としても条例制定に協力しなければならぬということもございまして、特に本法審査に当たって、全国に三カ所しかない種前センターが本州では熊本に一カ所あるということで、大事なセンターでもございますので、県側とトラブルのないように十分検討した上で対処していかれるように最後にお願いいたしまして、時間が参りまして大変恐縮ですが、御協力を感謝しつつ私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  210. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  211. 神田厚

    ○神田委員 昨日に引き続きまして、農産種苗法の一部を改正する法律案について御質問を申し上げたいと思います。  昨日、私は種苗の輸入の問題について御質問を申し上げたわけでありますが、まず、現在どういうような状況種苗の輸入がされているか、種苗輸入の動向はどういうふうになっているか、御説明をいただきたいと思います。     〔山崎(平)委員長代理退席、片岡委員長代理着席〕
  212. 野崎博之

    野崎政府委員 昭和五十二年におきます種苗の輸入金額は六十八億円でございまして、年々増加の傾向にあるわけでございます。  種類別に見ますと、輸入金額では飼料作物が一番多くて三十一億、その次が野菜の種子で約十四億でございます。  輸入先別に見ますと、アメリカが最も多く、その次が台湾、韓国、デンマークというふうになっておるわけでございます。  それから、輸出は約五十三億円で、これも年々増額の傾向にございます。
  213. 神田厚

    ○神田委員 この輸入の動向は、これから国際条約などに加盟をしていくという形になりますと、さらにこれがふえていく傾向になるだろうと思うのです。国際交流が活発化してくる状況でありますが、これに伴う検疫体制はどうなっているのか。この問題については昨日もちょっと申し上げましたけれども昭和五十年十二月八日に行政監察がなされておりまして、「動植物検疫に関する行政監察」の中において非常に大きな問題点が広範囲にわたって指摘をされているわけでありますが、今回特に種苗行政に関する部分について御質問を申し上げたいと考えているわけであります。  これが監察を受け、そして現在この監察に対してどういう対応をしているかということについて、まずお答えをいただきたいと思います。
  214. 野崎博之

    野崎政府委員 御指摘の行政監察につきまして、昭和五十一年八月、五十二年十月の二回にわたって行政管理庁に対してその後の措置状況ということで報告をいたしております。  行政監察に基づきます指摘事項は、先生も御承知かと思いますが、十一項目に及んでおりまして、業務の統一等に関する事項については必要な調査を行って、すでに七項目については改善をいたしておるわけでございます。  病害虫の重要度に関する事項につきましては、ただいま広く学識経験者の意見を徴するということで、植物検疫対象病害虫検討会を昭和五十二年度から開催をいたしまして検討を進めておるわけでございます。     〔片岡委員長代理退席、山崎(平)委員長代理着席〕 植物検疫の執行体制については、今後、植物防疫所における調査研究体制を整備して、これらの検討会での検討結果を勘案しながら、重要病害虫に対する検疫体制の強化を図ってまいりたいと考えております。  すでに措置済みの七項目の一つ、物理的消毒方法の採用、薬量基準の調整という指摘事項につきましては、物理的消毒方法については菌核、麦角菌についての加工消毒を採用する、それから薬量基準については試験結果に基づきそういう措置をいたしたわけでございます。  それから、指定港の取り消しにつきましては、本年、五十三年三月三十日に名瀬と笠利を取り消しました。  それから、証明書制度の実効確保、これは当面の措置といたしまして輸出国に対して改善を要求いたしております。  それから、基準の統一、これは消毒効果等の判定基準を統一しろということで、これを統一したということでございます。  それから、輸入植物検疫規程の整備、これはまだでございますが、いま申し上げました検討会の結論を待って措置をいたしたいと考えております。  それから、調査研究の推進、これは当面組織を拡充するということで、植物防疫所に病菌課と害虫課を新設いたしまして調査研究を推進いたします。  それから、移動制限植物の広報、取り締まりの徹底、これは取り締まり職員の強化、それから広報活動を強化充実をいたします。  それから、種バレイショ検査基準の統一、指定県の見直し、これに対しましては、基準は統一し、徹底をいたしておりまして、指定県の見直しについても措置をいたしたわけでございます。  先生のおっしゃいます点につきましては、いま検疫対象病害虫検討会、ここで検討をいたしておるわけでございます。
  215. 神田厚

    ○神田委員 この重要病害虫の検討会は、どういうメンバーで、いつごろからどういう問題について主に検討して、いつごろその結論を出そうとするのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  216. 野崎博之

    野崎政府委員 構成員は、大学先生あるいは試験場の方々等、専門家の方々十五、六名で構成をいたしております。すでに二回ほど会合を開きまして、結論は今年度いっぱいくらいで出る予定になっております。
  217. 神田厚

    ○神田委員 この検疫問題は非常に大事だと思うのです。その中で農林省が改善計画その他についてこたえたということでありますけれども、私はまだまだこれの指摘しているものに対しましてどの程度のことがおこたえになっておられるのか、ちょっといまのは概要だけでわからないのでありまして、後からその資料をいただきたいというように考えております。  まず指摘をしたいことは、軽微な病害虫については輸入の検査の対象外に指定をしたらどうだという問題があるわけですね。穀類検疫について、わが国に定着していない病害虫に重点を置いて実施することとして、すでにわが国に定着している病害虫は、これを検査の対象外に指定することを検討する必要がある、そういう指摘があります。こういう問題がやはり一番大事な問題になってくるのではないかと考えるわけでありますが、この点につきましてはこの病害虫の検討会を経て結論を出す、こういうことでございますか。
  218. 野崎博之

    野崎政府委員 いまおっしゃいましたとおりでございまして、現在わが国にもうすでに存在しておる菌もあるわけでございますが、検疫対象病害虫検討会を設けて、これをどうするかということの結論を出したいというふうに考えております。
  219. 神田厚

    ○神田委員 それでは、先ほど出されましたこの資料で、種苗の輸出入の状況の中で、輸入の関係で、いわゆる検疫で輸入ができなかった、廃棄されたり処分されたりしたような問題はどの程度事例がございますか。
  220. 野崎博之

    野崎政府委員 いまちょっと全体的な様子はどうなっておるかという数字がございませんが、また後刻調査をいたして御報告いたしますけれども、例を言いますと、たとえばグラジオラスの球根、こういうものがあるわけでございますが、これがやはり相当病気にかかっている、そういうことがございまして、空港や港で廃棄されたというような事実はわれわれも聞いておりますが、四十九年、五十二年の検査実績を見ますと、輸入グラジオラスの球根の不合格率が四十九年が二二%、それに対しまして五十二年が二%と非常に減ってきているわけでございます。これは一例でございますけれども、そういうふうにだんだん減ってきている傾向にあることは事実であろうというふうに考えております。
  221. 神田厚

    ○神田委員 どういう理由でどういうものが廃棄処分にされたりあるいは処分の対象になったのかということが非常に重要なのでありますが、いま調査中であるということでしたならば、後でその資料出していただきたいというふうに思っております。たとえば、グラジオラスなどにつきましては非常にむずかしいだろうと思うのです。これは検疫の今後の方向性にも及んでいくわけでありますけれども、球根類そのものも、輸出の方も多いですが、輸入も少しずつふえてくるだろう、こういう中で輸入業者の人たちが非常に検疫に対して不信感を持っているんですね。それは検疫体制の問題とも関連しているのでありますけれども、検疫が二人の検疫官でやられるとか、いろいろそういう内規みたいなものがあるようでありますけれども、検疫官によって輸入が許可されたり許可されなかったりする問題がある。それから、そういうことについていろいろとうわさも聞くというようね不信感を持っているんですね。このいわゆる行政的な検疫体制というものについてはどういうふうにお考えになっているのか、この辺のところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  222. 野崎博之

    野崎政府委員 わが国に入ってきます植物につきましては、海外の病害虫が国内に侵入して農作物に被害をもたらすということを防ぐために、やはりこれはどうしても綿密な検査をしなければいけないというふうになっておるわけでございますので、病害虫が付着していないことが明らかであるか、あるいは消毒、選別除去したものでなければこれを輸入してはならない、そういうふうに規定されておるわけでございます。こういうような法律の目的から言いまして、病害虫が付着する植物については消毒あるいは選別除去という措置がとられているわけでございますが、これらにつきまして輸入関係者の理解と協力を得て行っているものでございます。もっと法律を緩和して緩やかにすればいいじゃないかというようなお話もございましょうが、やはり国内にそういう病害虫が入ってくることを防ぐためには、いまの法律にございますように、ある程度十分な検疫をする必要があるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、この検疫官に対します研修等を通じまして、検疫の仕方、そういうことにつきましては十分研修もいたしまして、今回の優良品種の交流等は、先ほど先生もおっしゃいましたように、これから多くなってくる傾向が出てくるだろうと思いますので、必要最小限の規制はやむを得ないというふうに考えておりますが、植物検疫そのもののために、いたずらにややこしくして国際交流を妨げる、そういうことはないように、ひとつ研修なり指導を今後ともしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  223. 神田厚

    ○神田委員 粒検というふうに一般に呼ばれておりますけれども、この粒検については非常に低姿勢で一切何も言うなというような、そういうことも言われていると聞いているところもあるわけでありますが、やはりその検疫官がすべての権限を持っておりますので、そういうところから、適正な検疫がなされなければならないというふうに考えておるわけであります。少しずついろいろなミスなんかもあるようでありまして、ここに資料がありますけれども、「ガーデンライフ」という雑誌に載ったのでありますけれども、これは平尾さんという水産庁かどこかに勤めている学者の方ですが、種の交換をしている、外国から種をもらった、その種が結局検疫の間違いでだめになってしまった、そういう実例が出ているのであります。ちょっとその部分だけ読みますと、「この間、じつはハイブリド・ペオニー(シャクヤクの交配種)の種子がたまたま手に入ったからとて、なんと三キログラムも送ってくれたのだが、種子にまぶしてあった殺菌剤を日本の防疫所がカビと誤認して全部焼却処分に付してしまった」、そのために送ってもらった人に何とも顔向けができなかった、こういうようなこともあるわけです。  それで私は、これから先国際交流が活発になってくる中で、検疫の問題をひとつ十二分に考えて検疫体制というものを確立していただきたい、少なくともこういう間違いや、あるいは検疫官の一人の主観的な考え方によってそれが焼却処分されたりあるいは入れられたりというふうな不公平なことがないように十二分にその点を検疫業務の確立に関しまして指導を強化していただきたい、こういうふうに考えるわけであります。そのことは先ほど御指摘もありました指定港や何かの問題等とも行政の面では絡んでくるのでありましょうけれども、まずそれを検査する人間の教育、そして、それを検査する人についての信頼感を十二分に持たせていただきたいというふうにお願いしたいわけでありますが、その点いかがでございますか。
  224. 野崎博之

    野崎政府委員 われわれもいまお話しになったような例はちょっとまだ聞いたことがございませんけれども先生のおっしゃることはまことにごもっともな点だと考えまして、これから研修等を通じましてそういうふうな方向でもってまいりたいというふうに考えております。
  225. 神田厚

    ○神田委員 これは行政監察の方でも多分指摘をされていたかと思うのですけれども、この植物防疫の全般的な改革といいますか、そういう中でひとつ現行の植物防疫の法規やあるいは改正、そういうものに対する審議会みたいなものを設けて、そこでそれに携わっている業界の人たちの意見も十二分に聞いてほしいというようなことも要望がなされているわけでありますが、その辺につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  226. 野崎博之

    野崎政府委員 行政監察のときにはそういうことは言われてないようでございますが、一般の検疫規程全般の問題につきましては、学識経験者等の御意見も、公聴会というような形式で開いて御意見を拝聴いたしたいと考えております。
  227. 神田厚

    ○神田委員 それから最後に、先ほどちょっと触れられておりました種ジャガイモの問題、私は読んでいて非常に驚いたのですけれども、非常に大きな問題点として提起されているのです。この種ジャガイモの問題ですけれども、どのくらいの量の輸入といいますか、検疫の対象になっているのか。そして、それらがこれから先、種バレイショの検疫対象の地域やその他が非常にあいまいで、現実に十三道県が指定されているけれども、生産実態に即した見直しがされていないという指摘もありますけれども、この種ジャガイモの検疫の問題というのはいま一体どういうふうになっておりますか。これからどういうふうにしようということですか。
  228. 野崎博之

    野崎政府委員 いまおっしゃいました種バレイショにつきましては輸入はないようでありまして、例の原原種農場で生産したときには検査をいたすことになっております。これは従来どおり厳重に検査をいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  229. 神田厚

    ○神田委員 これがいろいろ問題があるというふうに指摘されています。「国内植物検疫の適正化」というところで行政監察の方で指摘を受けているわけでありますが、この辺の問題につきましても適正に検疫が行われるように指導をしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  全体的に非常に限られた時間でありますから、大ざっぱに検疫の問題について触れましたけれども、私は、行政監察に指摘をされるまでもなく、検疫の問題については、指摘されておる事項を見ますと、非常に簡単なことがやられないでいたということで、時代がどんどん進んでいくに従ってその機構だけが中途半端に、あるいは決められたことが置き去りにされていたということで、農林省の方の態度が指摘されてやむを得なかったのではないかというふうに考えているわけでありますが、検疫問題につきましては非常に大事でありますと同時に、これから先のこういう状況の中でさらに重要になってまいりますので、検疫体制の改善にもう少し力を尽くして早くそういう体制が整うように意を尽くしていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、政務次官の方からひとつ。
  230. 今井勇

    ○今井政府委員 御指摘まことにごもっともなことでございます。ただいま局長の方からいろいろ答弁をいたしましたが、御趣旨に沿いましてきちっと行政指導いたしたいと存じます。
  231. 神田厚

    ○神田委員 それでは、若干残された時間で質問申し上げますが、今回の改正の問題点の一つは、諸外国並みの新品種の保護制度を整備することによって種苗の国際交流の円滑化を図ること、こういうふうに言っておるわけでありますが、今回の法律改正によって種苗の国際交流の円滑化が図られてわが国の育種者が圧迫を受ける点はないだろうか、こういう問題が一つあるわけです。その点はどうでありますか。  さらに、外来品種に依存をして農業生産の基礎的資材であります種苗の国内生産がおろそかになってしまうおそれはないだろうか。この二点をお伺いしたいのであります。  特に、外来品種に依存をしてしまうと、相当数多くの外来の品種が入ってまいりますから、それに対応して日本の国内における育種の問題がなおざりにされてしまってはこれまた大変なことになるわけであります。その辺のことにつきまして御答弁をいただきたいと思います。
  232. 野崎博之

    野崎政府委員 外国との交流によって国内の育種が打撃を受けないかということでございますけれども、わが国の国土、気候風土なりそういうものが外国と相当違うわけでございますが、その中で従来非常に優秀な育種もされておったわけでございます。また、野菜等についても逆に輸出力が非常に強くて、そういう意味では競争力を持っておる業者もおる。それからまた、外国から優秀な育種素材を導入いたしまして、それを利用しましてわが国の気候風土に合った品種を育成するというようなことが可能になるであろうと考えておりますし、海外の優秀な品種利用したものがつくれる、そういう意味では農家の側にもメリットがいくんではないかと考えておるわけでございます。
  233. 神田厚

    ○神田委員 きのうときようにわたっていろいろと御質問申し上げました。その中で育種の問題、種苗の問題というのは非常に大事であるということが改めて痛感をされたわけであります。米に偏っていた日本の農業をこれから先違うものにかえていくという大事な時期でありますし、麦の問題にいたしましても麦の品質改良というのがいま一番急務であると言われているし、品種改良の問題にもっと力を尽くして取り組まなければならないなど、いろいろな問題を抱えているわけであります。さらには、野菜も同じように大変重要であります。  こういう中でこれから先の種苗行政に取り組む当局の態度を政務次官の方から御答弁をいただきまして、あと大臣に対します質問を残しまして、本日の質問を終わりたいと考えております。
  234. 今井勇

    ○今井政府委員 お説のとおり、いまわが国は農業の構造を大きく改善しようという大命題に逢着をいたしておるわけです。したがいまして、先生お説のとおり、米、麦、大豆、これは在来は公共育種を主にしてまいりまして、今後ともそれをやってまいりたいと思いますが、今回の改正によりましてそういったものも民間の方々の知恵を拝借できるような形にもなってまいりました。したがって、そういった方々の知恵をかりながら、主体は公共育種でやってまいらざるを得ない、こう思います。  同時にまた、米を他の作物にかえますいわゆる転換作物につきまして、特に御指摘もありました野菜等々の問題につきましては、いままでのところ、どちらかといいますと民間育種というものが非常に活発でございましたが、今度は国の政策で転換をいたすわけでございますから、こういうものについても今後さらに一層公共育種といったものの努力をいたしてまいりたい、かように考えております。  この法改正を機会に、現今の非常に厳しい情勢を踏まえまして、さらに心して行政に当たってまいりたいと考えます。
  235. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  236. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  237. 津川武一

    ○津川委員 今度の種苗法の提案、私は本当によかったと思います。育種のために一生懸命努められた人たちがある程度報いられるようになってよかったと思います。  この間、五月二十四日にこの委員会で参考人の意見をお伺いいたしましたが、その中で、世界に誇れる品種民間育種者の手によって数え切れないほどつくられておるということを伺いまして、私も非常に希望を大きくしたわけであります。  そこで、こういった人たち、過去において新品種をつくられた人たちに対して何らかの形で国が敬意を表したり、経済的な報いをしたりする必要があるかと思います。と申しますのは、たとえば青森県の農事試験場の藤坂支所で田中稔先生のグループが耐冷性、耐寒性の品種、フジミノリ系統のものを一生懸命つくってくれました。私が国会に出たのは九年ほど前ですが、四国や九州に行ってみてびっくりしたのです。山間地帯や谷間にこのフジミノリがつくられておる。そして、冷害に耐えるものをつくった。いまフジミノリを超えて新しいものができていますが、このフジミノリの功績は非常に大きかった。これにレントゲンを加えて今度はレイメイをつくっておる。このレイメイの果たした役割りも非常に大きい。フジミノリは、藤坂試験場のフジ、田中稔先生がつくったからミノリという。この先生が報いられずに終わっている、これからはこんなことはなくなりますが。  こういう立法をしたついでというのはおかしいのですが、過去にそういう非常に大きな育種をした、新品種を発明した、そういう人たち審査会なり委員会なり設けてピックアップして何らかの形で国が報いてあげることが、この法律をつくった趣旨からいっても当然じゃないかと思うわけであります。ひとつ政府の御意見を伺わせていただきます。
  238. 今井勇

    ○今井政府委員 一般的な議論としてまことにごもっともなことであります。政府の褒章制度は隠れた人材を発掘しようということが趣旨でございますから、私どもいまお話を聞いて当然そう思いますが、それがもし行われていなければ、そのやり方についても検討せざるを得ないだろう、こう思います。
  239. 津川武一

    ○津川委員 たとえば、これから新しいものができます。それは一日にして成るものでなく、過去十年、二十年前から積み重ねたものが何人かの研究者に受け継がれて、そして新しくすばらしい品種ができる。その功績は、過去に五年前、六年前において手がけておっていま一線から退いておる人もしくは故人になった人、こういう人たちも加わって新しい品種ができてくると思います。新しいものができる、今度は具体的な問題であります。これも必要かと思いますが、その前の段階の人あるいは故人になっておる人たち、この点はどうされますか。
  240. 今井勇

    ○今井政府委員 すでに故人になられた方の表彰等については、ただいまちょっと即答いたしかねますが、ひとつ研究させていただきたいと思います。
  241. 津川武一

    ○津川委員 局長からもひとつ。
  242. 野崎博之

    野崎政府委員 いま政務次官から御答弁ありましたように、故人になられた方についての問題はまたいろいろ検討させていただきたいと思いますが、過去に優秀な品種を育成された方は、褒章等の制度もございますし、そういう褒章等の制度利用して功績がたたえられるようにもなっておりますし、そういう制度を今後とも利用していきたいと思いますし、また国や試験場育種者で顕著な功績を上げた方に対しましては、これまでも表彰をいたしましたりあるいは特別昇給を行ったりというようなことはやってまいったわけでございます。また、会社等においても、そういう優秀な品種育成等、優秀な業績を上げた育種者の方々については、それぞれの会社でそれなりの処遇を考えているというふうに聞いておるわけでございます。
  243. 津川武一

    ○津川委員 その次に、この育種研究の現状を見ると、水稲、麦、大豆、畜産のえさ、こういう主要作物は主に国や県の試験研究機関などで取り組まれてまいりましたし、野菜花卉その他一部果樹などは種苗会社だとか個人育種家の民間育種として取り組まれて新しいものをつくってきた、こういうことがございます。  そこで、新しい品種をつくる、品種改良をやる育種、こういう点で国の機関として取り組むべきものは何か、こういうもので国の方針があるのかどうか。民間人たち水稲をやっても差し支えないと思いますが、国がやるからには一つ育種の方針なり条件なりがあってしかるべきじゃないか、たとえば民間でやるとすると経費でとてもできない、レントゲン照射なんてなかなかできない問題が出てくる、そうすればこれは国、県が試験研究を引き受ける、そうでないものは民間がやるなどということも考えられるわけであります。したがって、国として育種研究一つの方針、一つの領域、性格があってしかるべきだと思うわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  244. 堀川春彦

    堀川政府委員 国が育種研究をやります際に、ちゃんと一つの確固たる方針に基づいてやることが望ましいということは、先生御指摘のとおりでございまして、私どもも当委員会で再三申し上げておりますように、五十年六月に策定いたしました作物関係育種基本計画というのはまさにそういう考え方に基づいて策定されており、これに基づいて育種の試験研究が進められておるわけでございます。六十三の作目についてやっておるわけでございますが、これにつきましては、米麦、大豆等の主要農作物のみならず、日本の農業の生産の上から見てウエートが高く、農家にとっても重要度の高いという主要な作物は大体すべて網羅をしてあるというふうに考えております。  なお、コンニャクでございますとか地域の特産物的なものでも、その地域においての重要度が高い、こういうものは必ずしも全国的に広くつくられておらなくても取り上げるという考え方でございます。  また、民間育種との関係で考えてまいりますと、現実に民間育種がかなり盛んに行われておりますのは野菜の一部でございますとか花、そういったようなものが中心ではございますが、これは国としてどうでもいい、民間任せにすればいいという考え方はとっておりませんで、やはり野菜の中でも重要な野菜はすべて取り上げまして、その主要なものについては育種を国みずから行う、花にいたしましても、たとえばユリでございますとかチューリップ、あるいはツツジ、そういったかなり広く農家が生産され、生産額も多い、こういったようなものにつきましては国が積極的に取り上げて育種をする。全体としましてはやはり国、県、こういった公共育種を進めておる関係と、それから民間育種との機能分担がうまくいくようにということを考えながらやる必要もございます。そういう点にも配慮をいたしましてやっておるつもりでございます。
  245. 津川武一

    ○津川委員 民間、これは大学も入れて民間と考えてもいいのじゃないかと思いますが、国が当面必要なものをやるために特別の試験研究をやる。大学一つの自分たちの学者の良心に基づいてやる。それから、種苗会社は一つのそういう点でやる。篤農家は一つの自分の興味から新しい品種研究したり育成したりしていく。繰り返しますけれども、その場合、大きな費用とか何か困難な問題があればこれは国が特定の目的でもってやる。しかし、民間のものはかなり大胆に、たとえばいま水稲は主として国と県の試験場がやっておりますが、民間でも水稲研究を大いにやるべきだと思うのです。この民間のやる人たちに、水稲であっても、国が計画を立ててやっておるものであっても、民間の人が試験研究をやっていい成果を上げそうなら、これは援助すべきだと思うのです。  どこの試験場ということを私はここで言いませんけれども、ある春化栽培、これをやっておる人のグループの中で、ヒエの中に稲を接いだわけです。そうしたら、すばらしい病虫害に強い品種ができた。これをその地域の試験研究所に持っていったら、お米はおれたちがやるのだからおまえは黙っていろと言われた、こういう例が出たことがございます。これはその学会で一度報告になった。私もお客さんで祝辞を述べに行ったら出ていた。  そこで、国はそういう点で自分が国策として研究しているものでも民間研究を大いに奨励すべきだ、こういう意見なんですが、国として必要なところはやるが、そのやっているものに民間が大きく貢献するような場合があったら喜んで吸収すべきだと思うのですが、吸収するつもりなんでしょうけれども、念のために答えていただきます。
  246. 堀川春彦

    堀川政府委員 いま春化処理の技術の問題を例に挙げられましておっしゃったわけでございます。米麦、大豆というようなものは、これはなかなか民間育種になじまない。なぜならば、それには相当長期の蓄積が要るし、その間経費もかかるし、かなり高度の技術、経験というものも要るということからしまして、やはり国、県を通じます公共育種でやるべきものというふうに私ども思っております。もとより、やるべきものと申し上げましても、民間でそういう資質、能力のある方が新しい開発をなさるということを無視するとか排除するとか、こういう意味じゃございませんので、私ども、外国でもいろいろの、たとえば米なら米の育種関係することはフィリピンにございます国際機関のIRRIでもやっておりますし、いろいろなところで関係する研究が行われておる、大学でも行われておるというようなものはすべてその研究内容なりそういうものを正当に評価して、勉強すべきものは勉強するという謙虚な態度でいくべきだというふうに思うわけでございます。  なお、私ども、一般に民間育種に対する助長の施策といたしまして試験研究サイドからなし縁ることは何であるかというふうに考えてまいりますと、やはり多年にわたる国立あるいは公立の試験研究機関育種についての蓄積というものはかなり広範にわたり、かつ多量のものがございますので、そういう蓄積の成果というものを必要に応じ民間に提供する。それは技術情報の形で提供いたしましたり、あるいは開発されました品種系統について、これは民間育種に使おうという向きがございますならば、それが適切なる計画であると認められる限りにおいてこれを提供いたしまして役立てていただく、こういうようなことをやっておるわけでございます。特に野菜などにつきましては、そういう例が顕著でございます。特に米の関係で御指摘になったわけでございますが、一般的な心構えとしては、私どもそういうふうに思っております。
  247. 津川武一

    ○津川委員 これも五月二十四日のこの委員会で参考人が話してくれたことですが、民間で一生懸命やっている、いいものができている、国がこれに援助してくれない。いまの局長の言葉でいうと、そういうものを国から払い下げてくれて出すという。そこで、何でもかんでも民間のものを初めから援助するわけにはいきませんけれども、当面大事な問題で、課題になっている問題で、民間の人がやってみてそこに伸びる芽があるときに、これに私は国が助成、援助をして、試験研究所から技術援助をする、苗を送る、材料を送るというだけでなく、個々の試験研究所の場を、施設を、資金をなどという援助が必要になっていると思いますが、この間聞いている場面だとほとんどそういう場面がなさそうなんですが、この必要があると思いますが、いかがでございます。
  248. 堀川春彦

    堀川政府委員 民間育種ないし育種に関連します試験研究的なものあるいは聖業的なものに対しまして、直接的に資金援助をいたすというようなことはやっておらないわけでございます。  これはなぜかと申しますと、大変内容が複雑でもございますし、専門的でもございます。したがって、どれが資金援助の対象たり得るかということはなかなかこれはむずかしいわけでございまして、したがって試験研究サイドからいたしますると、先ほど申し上げましたようなことで、基礎的な試験研究をやっておりますことからわかってまいった新しい手法の可能性としてこういうものがあるよというようなことを申し上げる、あるいはもうちょっと具体的、実用的な育種技術についてはこういう方法が作物についていいんではないかというようなことを公開する。そういうようなことをやると同時に、育種母材の提供を必要に応じやるというようなことがいいことではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。  私ども育種の全体的な推進のためには、国内のみならず海外とも同様の態度でいろいろと接触をしておるわけでございまして、海外においても日本の育種の成果をいろいろ技術試験研究の成果として論文になったものを欲しいとか、あるいは具体的にできました種を欲しいとかいうようなことで御要望があるときに、これを提供するというようなこともしておりますし、逆にその逆もやっておるわけでございます。  これは国名は申し上げませんが、ごく最近も稲以外の糖類のグレーンの交雑をしたと称されるものを入手をいたしまして、こういったものについては、技術的に申しますと、本当にそういう交雑ができたのかどうかということについては正直申し上げましてかなり疑問に思える点もあるわけでございますが、とにかく物自体として優秀なケースが何かあるということであればこれを利用するにやぶさかでない、また研究する値打ちがあるということで、そういうものにつきましてもわれわれも謙虚な気持ちで研究をしたいというふうに思っておるわけでございます。  そういうっもりでやりたいと思いますので、民間に非常に多くの育種事業家と申しますか、見方によりましては研究もしておるというふうにも見えるわけですが、そういう方がいらっしゃいまして、これに対しましていかなる基準で資金援助をするか、大変むずかしい問題でございますから、先生のおっしゃることも、何らかの基準でも設定できてそれが農業政策上非常に有効であるということになりますと、私どももそれは考えていかなくちゃならぬことだと思うわけですが、研究させていただきたいと思います。
  249. 津川武一

    ○津川委員 たとえば、制がん剤の研究民間の病院でやってある程度までめどがついていくと、それを完成するために国が補助を出しているんです。種苗協会あたりが、そういう点で問題になっている品種がある程度まで見通し出たとき、私はそれを完成させるためにそんな処置も必要かと思うのですが、勝手にいまの局長答弁を、そんな場合は生きるんじゃないかなというふうに解釈をしてさらに質問を進めていきます。こういうところで繰り返しても仕方がないのですから。  そこで、今度の第八条の職務育成品種で、公務員が新品種を育成した場合、国や県に対してその対価の請求ができるようになっております。そこで、その契約、勤務規則その他の定めるところにこの場合なっておりますが、どんな取り決めになるのでしょうか、ここいらをひとつ明確にしていただきたいと思うわけです。この次にまたもう少しこの点では質問を続けますが、ひとつよろしくお願いします。
  250. 野崎博之

    野崎政府委員 民間の会社等では、それぞれいろいろな契約、勤務規則等もあろうかと思いますが、国の場合もこれからどういう勤務規則をつくるか、ひとつ慎重に検討してまいりたいと思っておるわけでございまして、いまここで具体的にどういう勤務規則かということ、内容についてはまだ申し上げられませんが、それぞれ担当のところと相談しながらひとつ検討いたしてまいりたいというふうに考えております。
  251. 津川武一

    ○津川委員 そこで、やはりそこいらの基準を私はめんどうだろうけれどもつくってあげるのが、職務育種人たちに報いる道だし、また一そういう情熱も起きてくるかと思うんです。局長、いま民間育種会社にはある程度の基準があるかと思いますが、ここいらも基準がそれぞれ違ってきますので、民間の団体にも一つの何か基準みたいなものがあってよろしいんじゃないか、そういう必要があるんじゃないかというふうに思われるわけであります。  と申しますのは、また繰り返しますが、育種はそう簡単にできるものではない、長年月がかかる。その場合、幾人もの人たち責任者として参加してくるわけです。一人の責任者のときに出てくる、でき上がったときには、そのAならAという人の研究責任者のときにでき上がっても、その前段階として大きな大事な問題がその前のBのときにできていて、それを最終的にAのときに集成大成したという、こういう場合、AとBをどうするのかという場合。さらにこの場合、全体としてのグループがなければならない、圃場の整備で草も取らなければならない、そういう点では農業労働者もそこに参加していくわけです。こういうチームが、どこの試験研究でもいまのやり方です。こうなってくると、一つの何かこういうことに対して苦労された個人というものを中心に考えながら、そのかわった世代、グループ全体について、何かしていかなければならないんじゃないかと思うわけです。この場合、請求するのも本人か個人か試験場か、試験場の中の集団かチームかといういろいろな問題も出てくるわけでありまして、ここいらあたりひとつ系統的に案を示して基準などというのがあった方が試験研究が一層情熱を持って進んでいくんじゃないかと思うわけであります。  ここいらのお考えありましたら、ひとつ聞かしてくださいませんか。
  252. 野崎博之

    野崎政府委員 先生おっしゃいましたように、育種というのは非常に長い年月を要するわけでございまして、何世代にもわたって選抜を繰り返して、目標とする品種として子をつくるわけでございますが、中には何十年かかる場合もありますし、通常は十何年というところでございましょうけれども、そういう非常に長い期間を要するし、その間にまたいろいろな人が関与をしてくるということでございます。  実際、育成者の範囲というのは一体どの辺になるのかというようなことになりますと、具体的にはその素材になる品種の選定だとか、あるいは交配、各種の育種方法の決定、あるいはその品種の育成についてどういうふうにやっていくかという設計、それに基づきます選抜固定操作について具体的、直接的に判断をする人、大体そういうことになりますと、普通、試験場なり研究所で見ますと、主任研究員やまた補助研究員というようなグループになると思いますが、単に労務を提供したにすぎない人、あるいは管理職である社長だとか場長だとか、そういう人たちは、余り育成者の範囲には含まれないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  また共同育成、これは先生のおっしゃった意味の共同とは違うかもしれませんが、共同育成の場合の出願の取り扱いについては、今回の改正案では、共同育成者が共同して出願をするということになっておりますので、共同研究をした方は共同した、同じような保護を与えられるというような仕組みになっているわけでございます。
  253. 津川武一

    ○津川委員 質問を進めていきます。  私も試験研究所に行くのは好きなんです。ですから、方々へ出たとき、できるだけ寄らしていただくようにおじゃましているわけですが、皆さんの側からも、ぜひ激励していただきたい、いいものをやっているというところがありましたら、私たちに寄ってみてくれるように連絡していただければ、私たちもまた大いに面目を施すことができると思います。  そこで、そういう試験研究所に寄ってみると、一番最初に言うのは試験研究費なんです。これが何とかならないかということが非常に大きな皆さんの課題です。  ちょっと雷、類を調べてみた。一九七七年の農林水産関係試験研究要覧によりますと、一人当たりの研究費の推移を見ますと、区分は実験部門A、B、非実験部門の三つに分かれており、育種部門の実験Bの年度別の推移を見ますと、四十七年七十三万円、四十八年八十万円、四十九年八十六万円、五十年九十七万円、五十一年九十八万円、五十二年百五万円、四十七年から五十二年の六年間に三十二万円ふえただけで、年間平均すると五万円。これだと最近の光熱水道料、図書費、いろいろな雑費の値上がり経費にも及ばない。さらに、事務員を一人置くと、実際上研究に使えるお金は三十万円、そういう例をうんと訴えられます。したがって、実質上試験研究に使われるお金を、施設なりいろいろな道具なり、そういうものを中心に思い切って増額しなければならないと思います。これがいま農林省の、各県の試験研究所のどこへ行っても、特に国からの委託研究をされている児の試験研究所の場合の痛切な願いでございます。この点の方針を伺わしていただきます。
  254. 堀川春彦

    堀川政府委員 先生は、人当研究費という形でのいわゆる経常研究費について御言及になったわけでございます。そういう経常研究費的なものと、それと別に目的研究と申しますか、特別に計画を組みまして、研究課題を与えて、そうしてその中で研究予算を組んで研究を進めるものと、大ざっぱに言えばこの二つの系列があろうというふうに思うわけでございます。  そこで、人当研究費についてでございますが、これにつきましては、御案内のように、国の全研究機関大学も含めてでございますけれども大学文部省の管轄でございますが、大学との関係も考慮をして、国立試験研究機関の方は科学技術庁、大学の方は文部省ということで、それぞれ連絡も取りつつ、どういう人当研究費のあり方がいいかということを多年やってきておるわけでございます。  そこで、研究者からいたしますと、そもそもこの人当研究費は光熱水料になりましたり、機械器具になりましたり、紙代になりましたり、通信費になりましたり、人夫賃になったりということで使われるわけでございます。しかし、これは経常研究としてやっておる限りにおきましては、水道も使うだろうし、光熱水料も要るんだしということでございまして、人当研究費の中から水道料なり電気料なり、あるいは紙代なりというものが出るのがおかしいというふうに思うのは間違いでございまして、そういうことではなしに、恐らく研究者諸君としましては、共通経費的にまず頭から差し引かれて、残りが各研究室に配分される、その残りが少ないからどうこういう話であろうと思うのでございます。  そこで、この点は、人当研究費自体の単価のアップということを実現いたしませんと、なかなかそういう研究者サイドの要請にはこたえられないということから、私どももこの点はきわめて熱心に実現を図っておるわけでございまして、もちろん農林省だけで単独にいかないという面がございますから、全体の調整を図る科学技術庁に対しましても、大蔵省主計局に対しましても、その点は力強く今日まで申してきたところでありまして、先生御指摘のとおり、特に実験系IIが私どもの試験研究関係は多いわけでございます。これにつきましては、前年が百五万円というのを百十二万円まで、額にして七万円ふやしたというのは、近年の推移から見ますればやや画期的なことであると申しますか、これはなかなか厚い壁がございまして、この連年の推移を見ていただければその辺の——もちろん私ども、十分だというふうに思っておるわけじゃございませんが、努力の成果が一端としてこういう形で実ったというふうに思っておりまして、この点は引き続き努力を続けてまいりたい。  なお、試験研究機関別に見まして、この辺のあり方というのはいろいろと違うわけでございまして、なかなか画一的な基準でやりにくいという点もございますが、それらは都府県、一般別枠あるいは大型別枠予算、こういうものの中にも試験研究費として使える部分が、これ自体が試験研究費でございますから、いま言ったような光熱水料なり何なりというものに向けられる部分も当然あるわけでございまして、こういったものとの関係等も十分考え、かつ基本的には、人当研究費の単価アップでやるという認識で今後努力をしてまいりたいと思います。
  255. 津川武一

    ○津川委員 これは話すと、皆さんがすぐ気づかれると思いますが、私はあえて品目と場所を挙げませんが、これは育種研究じゃないのです。病虫害の研究です。国から大学研究費が行ったのです。同じものが指定特定研究費として国と県の試験場に行った。大学に行ったのは、その額がそのまま試験研究費になっている。国に行ったものはどういうかっこうか、試験研究所の経費が足りないのか、やはり光熱、一般経費を差し引かれて、そこのところに三分の一ぐらいしか行ってないのです。  こういう点がありますので、やはり研究費プロパーをふやすように、実際の研究者に渡るところにふやすようにやる必要があると思います。品目は何だかというのは、あるいは皆さんは気づくかもわかりませんけれども、そこまで私も言いませんが、そこのところをやるように皆さんに要請して、時間が来ましたので、もし答弁があれば話を聞きますけれども、なければ、私はこれで終わります。
  256. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、明六月一日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会