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1978-04-25 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 馬場  昇君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    加藤 紘一君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       羽田野忠文君    福島 譲二君       堀之内久男君    森   清君       森田 欽二君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君    日野 市朗君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁次長   戸塚 金郎君         水産庁長官   森  整治君         水産庁次長   恩田 幸雄君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君  委員外出席者         農林省農蚕園芸         局肥料機械課長 芦澤 利彰君         農林省食品流通         局野菜計画課長 井上 政行君         水産庁漁政部長 矢崎 市朗君         水産庁海洋漁業         部長      松浦  昭君         通商産業省機械         情報産業局産業         機械課長    鈴木 直道君         運輸省航空局参         事官      上田  浩君         日本国有鉄道新         幹線建設局工事         第二課長    江本 佑橘君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  角坂 仁忠君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  3. 小川国彦

    小川(国)委員 私は成田空港農民対策代替地対策について質問をいたしたいと思います。  最初に、昭和四十一年七月閣議決定の際に、「新東京国際空港補償について」、こういう運輸省文書が出されているわけでございますが、運輸省当局あるいは公団農林省、それぞれこの文書については内容について御確認をされているかどうか、まずその点からお伺いいたします。
  4. 大場敏彦

    大場政府委員 いま御指摘になりました四十一年の閣議決定でありますけれども代替地につきましては、その当時は公団が発足しておりませんので、国が代替地に対する対策をする、こういうような趣旨の閣議決定があったわけでありますが、それは承知しております。
  5. 角坂仁忠

    角坂参考人 お答えいたします。  当時の閣議決定につきましては、まだ公団発足前でございますけれども「国」という言葉でなされておることを承知いたしております。
  6. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの質問は、運輸省航空局にも質問しているわけでございます。
  7. 中尾栄一

    中尾委員長 このストライキでちょっとおくれているようです。  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止
  8. 中尾栄一

    中尾委員長 速記を始めて。  小川君。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 いま公団並びに農林省に対しまして、昭和四十一年七月閣議決定時の「新東京国際空港補償について」、こういう運輸省文書を私ども手にしているわけでございますが、運輸省としてはこういう方針で進んできた、この文書内容については運輸省確認をされているかどうか、ちょっとお伺いしておきます。
  10. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  昭和四十一年七月四日の閣議決定につきましては、運輸省もよく存じております。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 この昭和四十一年七月運輸省の出された文書「新東京国際空港補償について」という中で「地元皆様へ」という前文がございまして、この中で「新東京国際空港建設のため地元皆様に犠牲を強いることがあってはなりません。そこで、政府といたしましては、先般閣議決定をもつて明らかにしたように、千葉当局要望にそい、皆様方納得のゆくような十分な対策を講ずる決意であります」、こういうふうに言っておりますが、この「千葉当局要望にそい、皆様方納得のゆくような十分な対策を講ずる決意」は果たされたかどうか、この点運輸省はどういうふうに理解されておりますか。
  12. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  七月四日の閣議決定の線に沿いまして、運輸省といたしましても、千葉県とも御相談し、かつ公団指導いたしまして、この線に沿うように最大限努力をいたしましたとわれわれは了解いたしております。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 いま上田参事官は、閣議決定内容に沿って最大限努力をしてきた、こういうお話だったわけでございますが、その閣議決定内容の中に「代替地について 代替地については、千葉県の協力を得て次のような対策を講じます。(1)場所は、原則として同一市町内又は隣接市町村内に用意いたします。(2)代替地への移転は、部落単位で集団的に行なえるよう考慮いたします。(3)代替地移転した方で希望がある場合には、長期、低利の資金を融資し、また営農指導もいたします。なお、営農規模の拡大については、御相談に応じます。」こういうような内容があるのでございますが、この「代替地について」の内容は十分果たされた、こういうふうに理解していらっしゃいますか。
  14. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  代替地につきましては、県御当局協力を得まして約六百ヘクタールの代替地を県に用意していただいたというように聞いております。したがいまして、代替地提供等につきましては、代替地提供を受ける農民の方々の申し出希望によりまして、専業農業希望される方につきましては原則として一対一、それ以外の兼業農家の方については基準配分で割り当てたと聞いております。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 この対策について閣僚協がつくられ、幹事会がつくられたわけでございますが、この閣僚協幹事会はこの代替地対策についてどういうふうに審議を行ってきたか、その閣僚協方針というものはどういうものであったか、運輸省はその方針をどのように受けたのか、空港公団はどのように受けたのか、それから農林省はこの閣僚協方針をどういうふうに受けたのか、それぞれ三者の立場でひとつ、この閣僚協方針、それから各省事務次官による幹事会、この方針というものをどのように受けてやってこられたか、それがこれまで十二年間に何回程度行われて、どういうふうに取り組んでこられたか、それをお伺いいたします。
  16. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  新東京国際空港閣僚協議会昭和四十一年に設置されたわけでございますが、この臨時東京国際空港閣僚協議会は、五十年の八月までに閣僚協議会九回、それから幹事会十二回を開催いたしております。その間関係各省の御協力を得まして、新空港建設に伴う代替地対策あるいは用地買収価格等の問題について検討を重ね、それに基づきまして運輸省におきましても公団指導してまいっておる、このように理解いたしております。
  17. 大場敏彦

    大場政府委員 農林省といたしましても、当然閣僚協議会メンバーとして農林大臣幹事会農林事務次官が入っておりますから参画しております。  ただ、いま問題にされております地元対策、特に代替地造成、取得という問題につきましては、これは公団空港開港一環として、補償措置一環として実施されているということでございますので、空港公団責任という形で分担がされておりますので、空港公団の方へお任せして、私どもは必要があれば御援助申し上げる、こういった立場で対応してきております。
  18. 上田浩

    上田説明員 訂正をお願いいたします。  ただいま小川先生の御質問に対しまして幹事会十二回とお答えいたしましたが、十三回の誤りでございますので、御訂正方お願い申し上げます。どうも失礼いたしました。
  19. 角坂仁忠

    角坂参考人 いま運輸省から御答弁ございましたように、閣僚協議会方針運輸省を通じまして指示を受けまして、地元対策、特に代替地問題につきましては、その線に沿いまして、公団といたしまして公団責任において、特に代替地につきましては県御当局の非常な御協力を得ましていままでやってきたわけでございます。
  20. 小川国彦

    小川(国)委員 成田空港関係閣僚協というのがこの十二年間に九回ということになると、年一回開かれていないわけです。幹事会が十三回ということになるとどうやら一年に一回やってきた、こういう形でございまして、この中で空港一千百ヘクタールのものをつくる。そのうち六百数ヘクタールの農民民有地というものを買収する。そういう状況の中で、代替地政策というものは当然国の閣僚協の中でもっと議論されなければならなかったのではないか。これは決定当初、その後の取り組みにおいて、いまの御答弁を伺いますと、空港公団千葉県にこの代替地対策というものを任せて、運輸省あるいはまた農林省において、閣僚協の中でこれを議題とし、これをどうするか、こういうナショナルプロジェクトという観点からの取り組みが欠けていたのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、この点運輸省農林省はそれぞれどういうふうにこれに対処されてきたか、もう一度お伺いいたします。
  21. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  代替地問題につきましては、臨時東京国際空港閣僚協議会幹事会におきまして、記録によりますと、第一回は昭和四十一年の三月九日、二回目は同じく四十一年の三月十六日、第三回は三月二十二日といずれも代替地の問題につきまして検討いたしております。ここで大綱が決められまして、それに基づきまして運輸省及び農林省におきましては公団を適切に指導していった、このように考えております。
  22. 大場敏彦

    大場政府委員 代替地問題につきましては、いま運輸省から御答弁がありましたように、閣僚協議会というところで取り扱ったわけでありますけれども、四十二年の十二月の閣僚協議会決定で、代替地については公団において土地基盤整備事業を行う等により措置するということで決定がされておりまして、公団責任者という形で御推進願っておる、こういったふうに理解しております。
  23. 小川国彦

    小川(国)委員 いま発言が聞き取れないのです。もう一回ちょっと……。
  24. 大場敏彦

    大場政府委員 どうも失礼しました。  代替地につきましては、いま運輸省の方からお答え申し上げましたが、関係閣僚協議会でいろいろ審議されたわけであります。昭和四十二年の十二月に関係閣僚協議会決定がございまして、その中で、代替地の取り扱いにつきましては公団において土地基盤整備事業を行う等により措置する、こういった決定がされておりまして、こういったラインに沿いまして公団責任者となって代替地問題を取り扱った、こういった経緯になっておるわけであります。
  25. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっともう一遍。参事官答弁が日にちがちょっと聞きにくかったのですが、昭和四十一年の三月九日、三月十一日、三月二十二日とおっしゃったのか。これで見ますと、昭和四十一年七月の閣議決定前に代替地対策閣僚協があったように聞こえたのですが、これは四十二年でございますか、四十一年でございますか。
  26. 上田浩

    上田説明員 第一回目は昭和四十一年の三月十日でございます。二回が四十一年の七月四日、閣議決定のあった日でございます。それから三回目が四十一年の八月二十六日、それぞれ代替地問題について検討いたしております。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと合点がいかないのですが、農民代替地問題が起こるというのはこれからかなり後になってきているわけですね。現実に空港用地買収が始まって、それから当初は反対が七割ぐらいあった。そういう状況の中でとても代替地の話などは出ていなかったので、いまの上田さんの話だと四十一年三月十日、七月四日、八月二十六日の段階というのと、それからいま農林省のお答えの、四十二年の十二月になって公団土地整備事業は委託する、任せる、こういう形になった、この農林省答弁の方が時期的には妥当だというように思うのですが、三月十日の段階ではどういうことが討議としてなされたのか、七月四日はどういうことがなされたのか、八月二十六日はどういうことがなされたのか、これをひとつごくかいつまんでお話しいただきたいと思います。
  28. 上田浩

    上田説明員 お答えいたします。  私の答弁多少寸足らずの点がございまして、先生の誤解をお招きしたような感がいたします。まことに遺憾でございます。  第一回の四十一年の三月十日、これは予備的な会議でございまして、新空港建設に伴う代替地の問題及び航空事故防止対策について検討したという記録がございます。したがいまして、代替地問題につきましても予備的な検討をしたのではないかと考えられます。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 答弁が漏れているんです。七月四日、八月二十六日はどういう相談をしたか。
  30. 上田浩

    上田説明員 七月四日の幹事会は、これはまさに閣議で新空港位置決定に伴う地元対策という閣議決定がございます。それの一応予備的な段階といたしまして、この幹事会検討されたのではないかと考えられますが、新空港位置及び規模並びにこれに伴う地元対策について了解したというように記録されております。  第三回目の四十一年の八月二十六日は、幹事会空港予定地内の用地価格基準について早急に検討するように指示したというように記録されております。  以上でございます。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの三回の内容を聞きますと、何か項目だけ記録されているというふうに言っているのですが、その中では、どうも代替地の問題について具体的にどうするのかということが閣僚協の中で討議されて、所管省である運輸省がこれに対する方針を下して、これは農林省とも運輸省とも相談をして、閣僚協の中で最終的に空港公団に任せるんだ、そういう経過ですね、そういうものがすっきり出てこないわけですね。いまおっしゃったのは何かきわめて大ざっぱなもので、私ども、とても具体的な内容がその中で決められたというふうには思えないのです。恐らくおたくの方でもそういう文書はないだろうと思うのですね。これはございますか。この三回の中で、代替地問題については公団に任せる、こういう決定が行われたという記録はその三回でございますか。もしなければ、それはどういう時期に運輸省としてそういう方針を決めたのか。
  32. 上田浩

    上田説明員 ただいま手元には三回にわたる幹事会内容等につきましては詳細な記録はございませんので、後ほど検討いたしまして御報告いたしたいと思います。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 非常に大事な問題で、私はきょう質問する内容運輸省にも公団にも農林省にも全部事前に説明しているわけですよ。代替地の問題についてきょうは質問します。ですからそれぞれの三者がどういうふうにかかわってきて、どういう相談でこの農民対策というものを立てられたのか、その経過をひとつお聞きしたいということで言ってあるので、その決められた時期というものが、いま聞いているだけでも農林省の言っている時期とそれから運輸省の言っている時期と全然話がかみ合わないわけですよ。どういう時点で、政府成田空港という重要な国策なりナショナルプロジェクト決定するのに、その中にいる六百数戸の農民に対して、移転代替地対策運輸省農林省公団がちゃんと閣僚協の中で相談して、これはこういうふうにやっていくんだ、国としてこうするんだ、そういう明確な方針決定の時期がなければならないのですが、この時期は運輸省では明確になってないのですか。
  34. 上田浩

    上田説明員 いずれ記録を調べますと明確になっていると思いますが、手元にあります記録では、この三回のいずれかに代替地問題を検討されたというようにわれわれは考えております。
  35. 大場敏彦

    大場政府委員 私の方から便宜的に事情を、御満足のいくものであるかどうかわかりませんが、お答え申し上げます。  先ほど冒頭に先生がおっしゃいましたように、代替地の問題についての関係各省間の意思決定というのは四十一年七月に行われた。それは、代替地につきましては国が県の協力を得て所要の代替地を用意する、こういったことであります。このときには、私が御答弁申し上げましたように、新空港公団というものは発足しておりませんからそういったことになったんだろうと思うわけでありますけれども、新空港公団が発足いたしました後におきましては、昭和四十二年十二月におきまして、関係閣僚協議会決定がありまして、そこで関連事業計画決定をした。その中の一つとして、代替地については公団ができました後におきましては公団において土地基盤整備事業を行うこと等により措置する、こういったふうに変わったということであります。  先ほど運輸省の方からいろいろ御答弁申し上げました関係閣僚協議会開催日時あるいは幹事会開催日時、その会議における討議内容討議項目ということにつきましては、四十一年の国において県の協力を得て代替地を用意する、そういったラインに沿って、予備的に、新空港建設に伴う代替地の問題が発生する、そういったことにつきまして一般的な討議等をしていたもの、こういうふうに考えているわけであります。たとえば、新空港建設に伴って代替地がどの程度必要になってくるだろうか、あるいは買収が可能だろうかどうだろうか、買収可能性とか意思とか、代替地に関するその他の諸問題について、そういった一般的な討議がなされたものというふうに、正確な文章は手元に持っておりませんが、私どもはそのように理解しております。
  36. 小川国彦

    小川(国)委員 農林省の方では四十一年七月と四十二年十二月というものを結びつけて説明されたわけですが、先日農林省の方ともいろいろ討議をしましたが、その中で農林省は、空港公団については主管省ではないし農林大臣主管大臣でない、こういうことで、直接いろいろな業務にはタッチされてきてないわけですね。やはり直接やってきているのは運輸省運輸大臣であり、空港公団なんですが、その運輸省がこの問題について、代替地をつくることについて農林省協力を求めたい、あるいは指導を求めたい、そういうことを要請された経過はあるのでございますか。
  37. 上田浩

    上田説明員 私の先ほどの発言に対して補足させていただきますが、実は代替地問題が最終的に決定されましたのは昭和四十二年十二月二十一日の関係閣僚協議会決定でございまして、それによりますと、代替地問題につきましては、6の「営農」のところの(2)で、「代替地については、公団において土地基盤整備事業を行う等により措置する。」と、最終的にここに確認されております。その間に至るまで数回にわたりまして幹事会等を開いておりまして、この場におきまして農林省あるいは千葉県等に対する運輸省側の要請と申しますか、御協力をお願いしているというようにわれわれは理解しております。
  38. 小川国彦

    小川(国)委員 ようやく意見が合ってきましたけれども、こういうのはいまになって合わせるのじゃなくて、早くから合ってなければ農民対策がなかなかすんなりいかないのじゃないかと思わせるものでありまして、これは十分今後の反省の材料にしていただきたいと思います。  そうすると、今度はそういう四十二年の十二月二十一日に、これは閣議決定でございますか、閣僚協決定でございますか。
  39. 上田浩

    上田説明員 昭和四十二年十二月二十一日の決定は、臨時東京国際空港閣僚協議会決定となっております。
  40. 小川国彦

    小川(国)委員 その段階で、農林省については代替地についてどういうような対処をしてほしいか、こういうことはどうなっているのですか。
  41. 大場敏彦

    大場政府委員 特に農林省において具体的に、こういう点について協力してほしい、こういうような運輸省からの御注文といいますか、御依頼というものは、はっきりした記録には残っておりません。やはり本来的に、この問題は農地でありますから農林省ということにとかく連想されがちでありますけれども、やはり空港建設に伴う補償工事一環として解決する問題である、そういう意味で、空港公団が総合的に対応するというのが基本でございますから、それは空港公団及びその指導監督に当たる運輸省責任においてなさるというのが基本だというふうに理解いたしております。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  42. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、これはいわゆるナショナルプロジェクト、国家的な事業ということでございますけれども、六百町歩近い農地がつぶれる、その代替地をつくらなければならない。これは農林省国営事業にしてみても大変大きな農地造成事業だと思うのですが、こういう大事業について、臨時閣僚協の中で、農林省に対して、代替地造成営農方針、そういうことについて農林省ではこういう部門を受け持ってもらいたい、こういうような決定はなかった、相談はなかった、これは一切運輸省公団の中で行われる、こういうことであった、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  43. 大場敏彦

    大場政府委員 農林省としては、当然閣僚協議会メンバーとして農業問題に関心を持っておる、これは当然のことであります。持っております。ただ、私が申し上げましたのは、代替地という具体的な特定農家特定地区、そういういわば補償工事的な、補償事業的なものは、やはり公団が直接その衝に当たられるのが当然であろう、そういう意味で、確かにナショナルプロジェクトであることは当然でございますけれども、それぞれつかさつかさ分担するという意味におきまして公団が担うのだという決定がされたわけであります。そのほかの、いろいろな農業部面での関与の仕方がいろいろあるわけであります。たとえば、土地改良事業土地基盤整備事業等関係地区について実施する必要があるわけでありますから、具体的に申し上げますれば、成田用水事業だとかあるいは根本名川土地改良事業だとか、そういった土地基盤整備事業につきましては、農林省が直接関与し、予算も計上して、あるいは水資源開発公団等予算を配賦してやらせる、そういった関与はしているわけであります。それから営農面とかそういったその他の世話役的な機能につきましても、これは直接町村ないしは県庁等が行うわけでありますが、そういったもので末端から吸い上がってきたものにつきましては、農林省としてもそれぞれ必要な御協力をする、そういった意味におきまして、農林省成田の問題について全然関与していないということではございませんで、つかさつかさ分担の仕方に応じて関与してきているということでございます。
  44. 小川国彦

    小川(国)委員 土地基盤整備事業とか土地整理事業、これは敷地の外において農林省が行ってきたことは知っております。私がいま伺っているのは、敷地の中の農民移転対策について農林省は御相談にあずかってきたか、こういうことです。
  45. 大場敏彦

    大場政府委員 その代替地の問題につきましては、繰り返しますが、これはやはり責任者である公団指導監督者である運輸省、それから地元という意味における千葉県、そういったものが御協力なさって解決する、こういうことでございますから、農林省が直接そういった責任者を差しおいてのこのこ前面に出ていって対応する、こういった措置はとっておりません。ただ、必要があればいろいろな御助言ということはするということで、こういった体制で従来対応してきたということでございます。
  46. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、もっと率直にお聞きしたいのですが、農林省がこの十二年間の農民の、特に空港敷地農民代替地対策については関与されなかった、こういうことを私どもは事実として受け取っているわけなんですね。ですから、おっしゃるように、その周辺の問題とか間接的な問題についてはあるいは御相談があったかもしれませんが、直接的には関与されなかった、こういうことを私は確認をしたいわけですが、その点はいかがでございますか。
  47. 大場敏彦

    大場政府委員 農林省が直接、いろいろ他に責任者がいらっしゃるのを差しおいて関与はしておりません。
  48. 小川国彦

    小川(国)委員 いまの点ちょっともう一遍確かめておきたいのですが、責任者がいらっしゃるのに直接関与はいたしません、こういうことでありますが、ですからそれは運輸省公団に一応任せた、こういうことで、その中で運輸省公団から農林省に直接こういうことに相談になってほしい、こういう依頼は私はやはり十二年間なかったと思うのですが、そういう敷地内の農民代替地の問題について農林省に具体的な何かそういう御相談はございましたか。
  49. 大場敏彦

    大場政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、四十二年に閣僚協議会決定で、代替地問題については公団が対応する、こういう決定がされて、それを運輸省指導監督する、こういったことになっているわけでありますから、農林省は当面の責任者としての行動はしておりません。  それから二番目の、公団の、その間に相談があったかどうか、こういったことにつきましては、何をもって相談があったかどうかということによるわけでありますけれども、いわゆる公文書その他きちんとしたかっこうで、手続を踏んで公文書等によって農林省の意見を求めてきた、協議をしてきた、そういったことはございません。
  50. 小川国彦

    小川(国)委員 公文書をもってはなかった、こういうことですね。  それから、もう一つ、具体的な大きな事項で、こういうことは相談にあずかったというようなことが、農林省の、この公文書で問い合わせがなくても、あるいはこういう事業について協議があった、こういうことはございますか。
  51. 大場敏彦

    大場政府委員 協議があったかどうか非常に、そこはどういう証左をもって協議があったと判断するか、むずかしいわけでありますが、率直に申し上げますれば、運輸省公団責任を持ってなさっていたので、農林省は特にそれについて発言はしなかった、こういったことでございます。
  52. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、空港敷地農民代替地が一対一、一対一・五、こういう約束が、これは閣議決定方針を受けて千葉当局が現地の農民に対してこういう約束をしてきたわけです。当時の千葉県議会の中でもおよそそういう約束で進められてきた、こういうふうに理解をしているわけでございますが、これについては、運輸省公団農林省、それぞれこの代替地の問題に対して、一対一ないし一対一・五、こういう内容については、閣議決定を受けて一この閣議決定によれば、地元に対して不利益を与えないように、千葉当局要望に沿い、納得のいく十分な対策を講ずる、こういう閣議決定を受けてきているわけで、この一対一、一対一・五の内容については、運輸省公団農林省、それぞれこの数字についてはどういうふうに理解されておったか、その点を……。
  53. 大場敏彦

    大場政府委員 農林省は、一対一あるいは一対一・五といういまお話しの数字につきましては、存じておりません。
  54. 上田浩

    上田説明員 運輸省といたしましても、代替地の配分基準につきましては、一対一あるいは一対一・五ということは聞いておりません。
  55. 角坂仁忠

    角坂参考人 公団といたしましては、専業農家につきましては、従来の営農規模を確保できる代替地ということで一対一・五ということの約束があったということは、公団も承知いたしておりません。
  56. 小川国彦

    小川(国)委員 これは結局現地の農民がだまされたということだろうと思うのですがね。いま敷地内に残っている農民の人たちは、千葉当局の説明は、いままで以上の条件を与えるということで、一対一・五という数字を、これは県の職員が説明して歩いた。こういうことは、文書には残っていませんけれども、そういう形は出ているわけ。公団では、一対一という数字は専業農家についてはあった、こういうことは認めておられるわけですね。
  57. 角坂仁忠

    角坂参考人 専業農家につきましては、原則として一対一ということを約束もいたしまして、そういうふうに実行もいたしております。
  58. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸省のパンフを見ますと、「代替地移転した方で希望がある場合には、長期、低利の資金を融資し、また営農指導もいたします。なお、営農規模の拡大については、御相談に応じます。」こういうふうに書いてあるのですよ。運輸省文書閣議決定文書では、「営農規模の拡大については、御相談に応じます。」こういうふうになっているのですね。ところが、一対一というのは、いままでの面積と同じだけのことであって、拡大については御相談に応じるという閣議決定文書は出したけれども、一対一では拡大ではないのですよ、一対一・五になって初めて拡大になるわけなんでね。そういうような、千葉当局がやっている内容について、運輸省としては、知らない、こういうわけでございますね。
  59. 上田浩

    上田説明員 現実に専業農家に対しましては代替地を一対一の基準で配分いたしましたことは聞いておりますが、営農規模の拡大等につきまして、必ずしも耕地面積の拡大という形ではございませんで、たとえば、より生産性の高い作付の転換等を通じて営農規模を拡大する、そのようにわれわれは理解いたしておりました。
  60. 小川国彦

    小川(国)委員 いままた運輸省、おかしなことを言うのですが、作付規模の転換によって営農の拡大というのは図れるのでございますか。どういうふうに図れるのです。
  61. 上田浩

    上田説明員 たとえば従来の稲作から花の栽培等に転換する、そういうような指導を通じて、そういう生産性の高い農業に転換するというようなことだと聞いております。
  62. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっとよく聞こえないのですが、稲作から何に転換してですか。
  63. 上田浩

    上田説明員 たとえば花の栽培と申し上げたわけでございます。
  64. 小川国彦

    小川(国)委員 これは農林省の専門家もいらっしゃるのでお聞きした方がいいと思うのですけれども、米から花に作付規模を転換して営農規模の拡大というのは図れるのでございましょうか。
  65. 大場敏彦

    大場政府委員 これは作付規模の拡大ということであるか、あるいはその経営規模の拡大ということであるか、それはわかりませんが、いずれにいたしましても、畜産だとか、あるいは花卉だとか、あるいは野菜だとか、あるいはことに蔬菜の中でも施設園芸、そういった資本集約的な営農に転換するという形で、仮に耕地はそう伸びなくても、あるいは耕地は実際少なくても、経営規模の拡大ということを図っている農家は非常に多くございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 小川国彦

    小川(国)委員 これは農林省も大部無理して答弁していらっしゃると思うのですが、こういう農業の拡大というのはやはり農地の拡大が基本だと思うので、そういう施設農業に転換して農業が拡大されていく、それは部分的にはあるかもしれませんが、基本的な農政の姿勢じゃない、こういうように思うのです。この点は運輸省の方と農政を論議しても無理な話だし、ただそういう理解の程度しか持てない、そう言っちゃ失礼ですが、これは運輸省の飛行機の専門屋さんや自動車、鉄道の専門屋さんに、農民代替地政策をやらせるとそういうことになってしまってきた一つの問題の例示じゃないかと思うのです。  そこで、代替地について公団千葉県に委託をしたのはいつでございますか。
  67. 角坂仁忠

    角坂参考人 お答えいたします。  四十一年の九月十六日に公団総裁名をもちまして、千葉県知事に代替地の確保並びに造成、配分につきまして正式に公文書でお願いしてございます。
  68. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう形で千葉県に代替地の業務が全部任されてしまったのですが、それをまた公団が引き取りましたのはいつでございますか。
  69. 角坂仁忠

    角坂参考人 公団が直接代替地買収並びに造成その他を引き継ぎましたのは、昭和四十八年度からでございます。
  70. 小川国彦

    小川(国)委員 すると、四十一年九月から四十八年度までの間の千葉県の行った代替地対策なり造成事業、こういうものに対する最終的な責任はどこが、だれが持つということになっているわけですか。
  71. 角坂仁忠

    角坂参考人 県にお願いいたしまして、県が代替地を確保、一部造成いたしまして、それを公団の方で場内の地主さんと交渉が成立いたしました場合に、その代替地を直接農民の方と県が売買契約いたしまして、合意の上、そこで最終的に代替地農民の方の手に入る、こういう段取りになっておりまして、公団といたしましては、その間、県にお願いし、地主の皆様にお願いいたしまして、両者の合意を得るということにつきましては公団責任を持ってやっておった、こういうことでございます。
  72. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸省にお聞きしますが、この十二年間に行われた農民対策代替地、その実態というものを運輸省は把握しておられますか。
  73. 上田浩

    上田説明員 公団から報告を受けまして、その実態は把握いたしております。
  74. 小川国彦

    小川(国)委員 その実態の中で、専業農家が専業農家として立っていっている農家、これは移転農家の何割くらいが専業農家としてその後自立できておるか、その点は把握しておられますか。
  75. 上田浩

    上田説明員 六百八世帯のうち二百十八世帯が専業農家と報告を受けております。
  76. 小川国彦

    小川(国)委員 いま二百十八世帯とおっしゃいましたが、その農家の平均所有面積はどのくらいになっておりますか。
  77. 角坂仁忠

    角坂参考人 お答えいたします。  全部平均いたしますと一町数反になる、あくまで平均でございます。
  78. 小川国彦

    小川(国)委員 そうしますと、六百八戸のうち二百十八戸が専業農家で残った、約三分の一残ったと言われておるのですが、残りの三分の二の農家はどういうふうになったか、その実態は把握されておりますか。
  79. 角坂仁忠

    角坂参考人 三分の二の農家は、いわゆる兼業農家もしくは農業をやめまして新しい事業に転換したというふうなものを合わせまして、約三百九十世帯がそういうかっこうで、何と言いますか、そのうち一部の方がいわゆる商業に移った、その数字につきましてはいまここではっきり数字を覚えておりません、というような状況になっておりますのが約三百九十世帯でございます。
  80. 小川国彦

    小川(国)委員 皆さんの方の実態と、私の方の実態の把握では、かなり内容が違っているわけです。皆さんの方で、たとえば国有地、これは御料牧場跡地を約八十四ヘクタール、これを百八十月に配分したわけです。根本名、学校前、光ヶ丘、九年畑。これを見ますと八十四ヘクタールに百八十戸ですから、二月当たり〇・五ヘクタールになってしまった、こういうことですね。それから県有地の内容を見ますと、これは種鶏種豚揚、畜産試験場、県有林、鍋店牧場、これも八十四・五ヘクタールの県有地のところへ百五十三戸ですから、約〇・五ヘクタールですね。それから民有地が並木町、三里塚、葉山、旭宮内、両国沖甲地、二区三区、実の口、中沢、根本名、金堀、芝山、山武と、約二百一ヘクタールに対して二百九戸、ですからこれが約〇・九ヘクタール。こういうことで、総数三百六十九ヘクタールに対して五百四十二戸の農家が配分をされましたので、結局個々の農家の取得面積は〇・六八ヘクタール、こういうことになってしまって、開港前に平均一・三ヘクタールあった農家の所有面積は平均すると〇・六ヘクタール、いわば半分以下になってしまった、そういう実態になっているわけです。  しかも、このうち、私の調査によれば商業に転業した者は約二割くらい、それから農業に専業で残った人は私どもの調査ではまず一割五分程度、それから出かせぎ人夫その他になった者が残りの六割五分、こういうような実態になっておりまして、政府ナショナルプロジェクトということで成田空港決定し、閣僚協をもってこの対策に取り組むということだけれども、現実には農家が大半を占めていたこの空港敷地内に対して、農林省が直接農地代替地対策を担当することをしなかった、それが飛行機あるいは鉄道、そういうことの専門家の運輸省、その運輸省が今度公団に任せっぱなし、それからまたその公団千葉県に任せっぱなし、こういうことで、結局この代替地に移った農家がいまもう大半、先ほど兼業とおっしゃってましたが、ほとんど荒れ地にしておりまして、実質的には六五%の人は農業をやってない。家はりっぱな家を建てたけれども、大変零落した経済状況になってしまっている、こういう実態にあるわけです。農業を専業とした一五%も、満足な農業経営に達しているかどうかと言いますと、中には、土質とか地力が最低あるいは住居と農地の間隔が一時間も離れている農家もある、こういうような状態で、満足な農業もできない状況にあるわけなんです。  こういう点について、いまも、現地の空港敷地内の四十四ヘクタールの農家、あるいは周辺の騒音激甚地帯の移転対象になっている農家、これがあくまで農地を守っていきたいという考え方は、いまやっている運輸省公団代替地政策の中で進められたならば、これは農家としてはもう転落していく、こういうことをいままでの十二年間の経過の中ではっきりとその事実を目の前に見せられている、こういう実態があると思うのですね。そういう点について、運輸省公団農林省は、一体こういう実態をどう見るのか、それから、政府として総合的に営農状況についてもう一度再点検をしてみる必要があるのではないか、こういうふうに思いますが、いま私が申し上げた現状について、それぞれどういうふうに理解し、それから、その転業農民の現実の姿というものをどう受けとめてこれに対応していくか、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  81. 角坂仁忠

    角坂参考人 お答えいたします。  いま小川先生がいろいろ数字をお挙げになったとおりでございまして、御案内のように当時非常に反対が強かったわけでございます。先ほどからるる御説明いたしておりますように、公団責任において代替地造成をやったわけでございますが、当時、四十一年は公団といたしましてはまだ発足当初でございますし、それから閣議決定並びに運輸省のお約束にございましたようにいわゆる集団移転等々が大きな柱になっておりましたので、やはり県にお願いするということで県が四百六十町歩の代替地を第一次的に用意したわけでございます。たまたまいま御指摘の場所につきましては、そこに行きたいという方が非常に多かったわけでございますので、数回にわたりまして県並びに公団も入りましてそれぞれの団体の方と協議に協議を重ねまして、いわゆる当時の基準配分ということが合意に達しまして、そこで、そこの代替地移転したわけでございます。その中には、いま御指摘のようにあるいは農業を続けていかれる方があったかと思いますけれども、やはりそういう合意の上で、その当時やはり一対一でしてほしいという農家につきましては、別個に一対一をやっておるという状況でございます。その後、御指摘のようにせっかくの代替地を荒れ地にしているとか、あるいはいろいろな事業に失敗してというような方がやはりおることは私も承知いたしております。こういう者につきましてのいわゆるアフターケアと申しますか、こういうことを当然追跡してやっていかなければならぬわけでございます。そういう意味につきましては、これは公団独自ではいきませんけれども、その個々の農家ではなくて、周辺全部の、これから移られる方あるいは過去に移られた方のいわゆる専業農家皆様に対しましては、全般的の空港周辺あるいは北総台地の農業振興ということを、非常にむずかしい問題でございますけれども、やはりそういうものを勘案して、御協力していただいた方あるいはこれから御相談に乗っていただく方全般を通じまして、そういう方向に持っていきたいというふうに公団といたしましては念願している次第でございます。
  82. 小川国彦

    小川(国)委員 いま角坂理事は、公団としては北総地帯全部の農業と取り組んでよくしていきたい、御答弁は非常にもっともなんですが、現実の問題としては、少しも農民の問題が解決されていない。これは空港敷地内でもしかりですし、それから、周辺の騒音地帯の農家に対してもしかりですが、空港公団自身がこの閣議決定どおりのことをやってきたかというと、いま角坂理事も認めるように、大半が農業を離れざるを得ない事態になった。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  そういう状況の中で今後どうするかというのは、いまの角坂理事答弁では出てこないわけですよ。それはなぜ出てこないかというと、現に、これは総裁も御存じのように、四キロ滑走路の先端のところに住んでいらっしゃる方が岩沢政雄さんほか三軒あるのです。これはもう端的な例を申し上げるのですが、四キロ滑走路が九十九里に向かっていく。四キロ滑走路の外れから三百メートルぐらいしか離れていないところに現在も住んでいる農家があるわけですね。これは、この間の慣熟飛行では百二十ホンというような騒音下で、家の戸、障子ががたぴしいう、木の大枝が揺れる、そういうところに芝山町の岩山などでは現にまだ残された農家がある。ところが、その代替地の問題を公団さんがどういうふうにやっているかというと、この一年ぐらいの問に二ヵ所ぐらいの代替地を見せられただけで、しかも、一ヵ所は農地が三分されていて、農家が土地が三分されていては農業にならないと言うのですね。いま住んでいる岩沢さんのところは、農地があるそのど真ん中に自分の家がある。自分の家の後ろにはたんぼがあって、家の前には畑があって、農家は日中は家族が総出で農業をやっている。そうすると、自分の家の周りに農地があれば、農業をしながら自分の家へだれが来たかもわかる、それからまた、お昼に奥さんが帰ってお昼の仕度をして、御主人にお昼だよと呼べばたんぼからも畑からもすぐ帰ってこられる、こういう耕作地の真ん中に自分の住まいがあるというのが農家として理想なんだ。岩沢政雄さんは、いま滑走路の延長三百メートルのところで農業をやっているけれども、自分のいま農業をやっているところが最高の条件なんだ。岩沢さんのところはアプローチエリアのところですからね、むしろ公団買収しなければならぬところですよ。農家自身が移転を求めるのじゃなくて、公団自身が取得しなければならない土地のそういう農家にすら、まとまった農地のその真ん中に自分の家を建てて移転できる代替地をあっせんできないのですよ。私は、公団にも基本的に反対の立場に立っておりますが、そういう気の毒な農民対策というものはどうなっておるのだということをこの一年間やっておるのですけれども、そのわずか三軒の満足するような代替地をお世話することが公団はできないのですよ。なぜできないか。それは、いまの公団法の規定では農地公団が取得することは残念ながらできないわけですよ。先ほどおっしゃったように、ナショナルプロジェクトだけれども農林省はその相談にあずかっていない。それから、運輸省公団に任せてやっているわけですが、その公団代替地造成部というものがありながら、その代替地造成部は農地を取得したり造成したりすることは直接できないような仕組みになっているのじゃないですか。やはりこの公団法を改正して、公団自身が本当に代替地造成を、みずから土地を取得してりっぱな農場をつくって、皆さん、こういうりっぱな代替地があるのだからひとつこちらへ移ってくれませんかというような、きちんとした代替地の用意ができるような、そういう体制というものが政府公団においてできなければならないのじゃないか。この辺を私は、いま高橋航空局長もお見えになりましたから、運輸省公団も含めて一まだあるわけですよ。四キロの中にもあるし、アプローチにもあるし、それから騒音地帯にもあるし、こういう農民代替地対策というのは、今後やはり運輸省公団が、いまの形ですと農林省を抜きにしてやっていかなければならないわけで、やっていくからには、きちんと農地を取得したり造成したりすることができるという法的条件がなかったら、これはいまやっているように、どこかの土地を探してきては農民を連れていって、ここどうだ、気に入らなければまた次のところを探して、またこっちへ連れていって、どうだ、そういうような場当たりのことしかできなくて、本当の代替地対策というものはできないのじゃないか、こういうように思うのですが、ひとつその点、運輸省公団はいままでの経過と今後の展望を踏まえてどういうふうに考えているか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  83. 大塚茂

    ○大塚参考人 岩沢政雄さんのことにつきましては、この前も先生から御質問がございましてお答えをしたわけでございますが、最初、ちょうどあの岩山部落の十四軒の方々と集団移転についてお話し合いに入りまして、そのうち十二軒については話し合いがまとまりまして、移転をすることに決まったわけでございますが、岩沢政雄さん、それから吉井さんについては、同一の条件ではどうしても納得がいかないというようなことでおくれておるわけでございます。いまおっしゃいましたように、農耕地のど真ん中にお宅があって、非常に現在便利だという点は確かにそのとおりでございまして、私どももそういうふうな点を考えながらいままでも代替地をお世話をしたつもりでございますけれども、なかなかお気に召すところがないということです。しかし、できるだけそういう線で、なお私どもとしては誠意を尽くしてまいりたいというふうに考えております。  それから、代替地全体のやり方につきましての御質問でございますが、公団農地を所有し、あるいは公団の所有している農地を付近の住民に小作的にお貸しできるというようなことができますと、用地買収の問題は非常にやりやすくなる。私どもとしてはできるだけそういう方向で関係行政機関の御理解と御協力をいただくように、今後も努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  84. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 私ども公団と一緒になりまして十年間成田空港建設をやってきたわけでありますけれども公団の用地の仕事は、どちらかというと空港用地を取得したいというところに力が入るのはやむを得ないことだと思うのですけれども代替地の問題でも、用地を取得するための代替地という考え方がどうしても前面に出てきていたのではないかと思います。そして、北総台地全体の農業としての維持、展開、こういったものをどうするかという点につきましては、必ずしも十分な配意が行われてなかったかもしれない、この点は大変私どもも反省している点でございます。したがいまして、今後二期工事もございますし、一期で土地を売った方についてもいろいろ問題があることを聞いておりますので、今後そういった点につきましては、農林省にも十分御協力をお願いいたしまして、北総台地の新しい農業の展開という点で絵を描き、そしてそのことによって周辺の農民の方が安心して農業維持ができるようにすることについて農林省の力もかりていきたいと思っております。  そういった中で、ただいま公団農地法の関係で土地が保有できない、そのために代替地造成等ができないということの問題点もございますが、その解決のために農地法改正が要るのか要らないのか、この点につきましても、十分農林省と御相談しまして、要は北総台地の新しい農業の展開図を描くという点が達成できるように努力をするつもりでございます。
  85. 小川国彦

    小川(国)委員 いま公団総裁あるいは航空局長からお話があったように、この十二年間公団運輸省でやってきた農民対策というものは、どうしても専門家でないうらみが出てきているということでございます。したがって、今後の問題について、昭和四十一年七月の閣議決定によれば、政府が所要の代替地を用意しということを決め、しかも、それは同一町村内か隣接町村内に集団でつくって、営農規模の拡大もする、こういう閣議決定できたものが、現実はああいう事態になった。それに対しては今後変えていきたいということですが、農林省としてこの点について、いま公団総裁もおっしゃられたように、公団法を改正して、空港公団自身が——農林省が一緒にナショナルプロジェクトとして参加されていくならこれはいいと思うのです。農民代替地の問題について。もし農林省がそれでできないならば、これは公団法を改正しても、公団農地取得なり農地造成なり、そういう権限が付与され、そしてまた公団の中に農林省の専門家が協力する、入っていく、そういう形でやっていかないと、あくまで空港をつくられて、その下の農民を犠牲にされた、こういう形だけが残ってしまうと思うのです。この点ひとつ、きょうは農林大臣はいませんが、農林省を代表して来ていただいたわけでございますので、大場局長からその辺の考えを……。
  86. 大場敏彦

    大場政府委員 代替地取得の問題につきまして、公共事業実施者がそれを解決するというのがあらゆる場合に通用する原則であります。そういう意味空港公団というものがつくられてその衝に当たっていらっしゃる、こういったことであろうと思います。ただ、そのときに、解決の方法として、実施主体が造成行為をみずからやり、あるいは農地法の適用除外として農地そのものを取得する、そういう形になるかどうか、これはかなり慎重な検討を要する問題だと思います。御存じのとおり、いろいろ公共事業が各地で行われているわけで、同じように、問題の難易はございますけれども代替地の問題があるわけでありますが、それはそれなりに地域の実情に応じてケース・バイ・ケースで解決しているわけでありますから、特にそれが事業実施主体の農地の取得権ということにつながるのかどうか、これはかなり問題を残すだろうと思います。  そういうこと等は別といたしまして、適切な代替地農民に供給する、これは重要性のあることは当然のことでございます。論をまたないわけでございます。農林省といたしましては、公団なりあるいはその指導監督官庁である運輸省なりと地元との話し合いの過程において、いろいろな具体的な問題が出てくれば、それをいろいろ御相談にあずかれば御助言申し上げる、あるいは県庁が市町村あるいはその他の地元から意見を吸い上げられて、具体的な問題として公団あるいは運輸省当局に問題を提起されて、また私の方にいろいろ御意見を求められれば喜んで御協力申し上げたい、こういう姿勢は持っております。
  87. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、成田空港を今日あらしめた問題は、やはり端的に言えば官庁のセクショナリズムだと思うのです。ナショナルプロジェクトと言いながら、いろいろな諸問題について、農民代替地問題一つ見ても、行政が縦割りで行われている。千葉県知事が「望雲」という自分の回顧録みたいなものの中で、成田空港が今日になった一番の問題は各省のセクショナリズムだ、日本の政治行政が縦でしか動かない、横の連携が全くなされない、その犠牲はどこに来るか、それは地元民にしわ寄せの形でくる。代替地問題がまさにその一つの象徴的な例ではないかというふうに私は考えているわけです。ですから、もしこれをナショナルプロジェクトとして今後やっていくならば、農林省としても、公団に対して積極的に協力していくという体制をつくるなり、そういうものを農林省運輸省公団の中でつくるか、あるいは公団法を改正して公団にその力を与えるかどちらかでないと、そう言っては何ですが、現行の公団状況からは、いままでの問題を解決し、これからの問題に対処していくという能力は私はないと思うのです。  では参考に伺いますが、いままで空港公団に、農林省から農地造成とか農地の鑑定などができる農業技術者、専門家は何名くらい行ったのか、その辺ちょっとお伺いしたいのです。
  88. 大場敏彦

    大場政府委員 これは延べでありますが、たしか十七名くらいだったと思います。そういうのを農地関係のエキスパートとして公団の方の御要請に応じて派遣しておる、現在は三名程度が参画している、こういったふうに記憶しております。
  89. 小川国彦

    小川(国)委員 それからもう一つ。今後の代替地の問題なんですが、空港公団の資料によれば、いま持っている代替地は約二十ヘクタール、それから千葉県が持っている代替地が約二百ヘクタール。しかしこれは率直に申し上げて、千葉県の二百ヘクタールは、房州の石山まで含めて売りに来たところをみんな買ってしまったといううらみがあるので、実質的に使えるのは一割くらいではないかと言われているのですが、それについて現在公団ではどの程度代替地造成の土地を持っているか。
  90. 角坂仁忠

    角坂参考人 お答えいたします。  県有代替地が数字の上では百六十八ヘクタール残っておるわけでございますが、これは前の県有代替地を配分するときに公共減歩とかあるいは道路等につきましてはまだ減歩をしておりませんので、そういうものを差し引きまして、いわゆる農地として周辺にあって、代替地として地主さんの皆様が御希望すればお使いになれるという農地面積は三十数ヘクタールございます。ただ、先生も十分御承知のように、残っております農地がわりに小さい面積が多うございまして、やはり二町、三町とまとまったところを使うといいますと、いま御指摘のように二十数ヘクタール。公団の持っておるものは大体わりにまとまっておりますので、合わせまして三十数ヘクタールのものは、これから地主さんを説得するわけでございますが、いわゆる代替地として使用できるというふうに現在のところ考えております。
  91. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、これは千葉県と公団の問題で今後整理されなければならぬと思うのですが、代替地業務を全部千葉県に任せてきたために、千葉県がいろいろな土地を買い集めてしまった。現実にはそれが使用にたえない代替地もある。それは千葉県のしょい込みになっている。ですから、千葉県としては、さんざん千葉県に任せてきて今日までやらせてきて、そしていいところだけ政府がしょって、農民が買ってくれないかすのような土地だけを千葉県がつかんでいる。こういうことで千葉当局の中にも強い不満があると思うのですよ。  それからもう一つは、現地の農民から言わせれば、政府閣議決定までして空港と同一市町村内か隣接地につくると言ったけれども、いま公団の持っている三十数ヘクタールは、ばらばらで部落がとても集団で行けるところはないじゃないか、こういうことになってくるわけですね。その点になると、閣議決定で約束したことはもういまになるとほごと言わざるを得ないのですよね。二ヘクタールか三ヘクタールで、農村の集落というのは冠婚葬祭全部部落ぐるみやる、こういう形の中で生活しているわけで、それをばらばらに切り離すということは農村の集落としてはなかなか受け入れがたい状況があるわけです。そこでもう一度また繰り返すのですが、ナショナルプロジェクトなら、農民を散り散りばらばらにさせるのじゃなくて集団的な代替農地をきちっと公団がつくる、そういうことはできるのかどうか、そういう体制を今後組ませるという考え方は政府の中にあるのかどうか、この辺いかがでしょう。
  92. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 先ほどもちょっとお答えしたわけでございますけれども成田空港周辺の農地問題、農業問題について、運輸省としてはもう一つここで新しい眼でながめてみる必要がある。これをしないことには、二期工事の問題はもとより、現在のA滑走路の運営自体につきましてもいろいろ地元と支障が起こってくることが予想されますので、この際新たな展望に立って仕事をしてみたいと思っております。つきましては、私ども何せ素人でございますから、農林省の知恵とお力をおかりしまして何とか前向きの絵を描いて進めていきたい、こういうことで取り組みたいと思っております。
  93. 小川国彦

    小川(国)委員 いま運輸省航空局の方からそういう御答弁があって、私は、これは運輸省、大臣、行政機構含めて、政府行政部門一体になってこの問題を、いま局長言われるように、いまからでも遅くはないので、新たな視野から農林省運輸省公団を含めて農民の土地政策というものをつくっていっていただく必要がある。  それからもう一つ、さらに進めてみるならば、特措法が成立した段階で、この特措法の八条、九条に基づけば、さらに新たな騒音地域の農民の土地の買い入れあるいは移転の補償、こういうことになってくると、さらに二千ヘクタールとか三千ヘクタールに及ぶ農地、山林が出てくるわけです。こうしたものもやはり代替地問題などが大きな問題になってまいります。成田ニュータウンにしても、あるいは今度は千葉ニュータウンなども宅地開発公団がやりますが、この中の一番大きな問題は、農民の場合はやはり代替地があるか、金じゃないんですね。そういう点で言うならば、運輸省公団がもう一つこの代替地対策に対する大乗的な取り組みを進める、敷地内だけではなくて敷地外の騒音移転区域を含め、あるいは新たな特措法の問題を含め、そういう展望を持ち、それに対する主体が空港公団であるならば、空港公団にきちっとした代替地造成部が確立されていく、それに法的な裏づけなり権限なりをきちっと与えて、在来の問題、これからの問題をここで対処していく、そういう構えが必要であろうと思いますが、もう一度その点についてお伺いいたします。
  94. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 全く御指摘のとおり、特別措置法が成立いたしました現在を踏まえますと、なおさらのこと、周辺の土地利用計画というものをきちんとしていくことが大事でございますので、と言えばやはり何と言っても農業用地が大半を占めている土地でございますから、いま御指摘の点につきまして十分心を配っていきたいと思っております。
  95. 小川国彦

    小川(国)委員 それではちょっとこれに関連して農林省の方にお伺いしておきますが、印旛沼干拓地について農林省空港関係農民移転を受け入れた、こういう経過があるのでございますが、この印旛沼干拓地については、空港関係農民に何戸、何ヘクタールこれを配分したか、それからその考え方の根拠、これはどういうところからそれを受け入れられたか、この経過をちょっとお聞きしたいと思います。
  96. 大場敏彦

    大場政府委員 最初に成田空港関係の用地被買収者に対しての土地の配分でございますが、三十二戸、約百十二ヘクタールというふうに承知しております。  それから印旛沼の干拓地の配分基準、配分の考え方でございますが、これは土地改良法の規定に基づきまして千葉県知事が策定したものでございますけれども、考え方としては三つございまして、一つは入植前に耕作の用に供していた農地の所有権、使用収益権を移転したもの、これは移転入植という範疇に入るものでございます。それから印旛沼の漁協の漁業協同組合員である者、これが第二番目の範疇。それから第三番目の範疇といたしまして、公共事業、具体的に申し上げますれば成田も当然入るわけでありますが、公共事業に供するため農地の所有権及び使用収益権を移転した者。こういった三つの範疇の者から選ぶ。これらの者が配分申込書を提出するわけでありますが、そういった者の中から、農業に精進する見込みがある者、適格者を選定して配分を行った、こういった経緯になっております。
  97. 小川国彦

    小川(国)委員 印旛沼干拓地に三十二戸入植できた、これは農家一戸当たりたしか四ヘクタールと思いましたが、一戸当たりの所有面積はどのくらいになっておりますか。
  98. 大場敏彦

    大場政府委員 三十二戸で百十二ヘクタールでございますから、大多数一戸当たり四ヘクタール、若干、数戸でありましたが、それより欠けるものがございますが、大体四ヘクタールというふうに記憶しております。
  99. 小川国彦

    小川(国)委員 これは畑作農家が水田農家に転換したので農業的には大変苦労したと思いますが、しかし現実に見ますと、この印旛沼干拓地に移った農家は、御承知のように米が生産調整はありながらも一番安定した作目である、こういうことから、印旛沼に転住した農民というのはかなり安定した農業生活を持っているわけです。これは言うまでもなく四ヘクタールという代替地を国から与えられた、こういうことがやはり農家としての農業安定につながっている。ですから、空港関係農民の中で一番安定しているのは、この印旛沼の干拓地に移った農家ではないかというふうに考えるわけです。こういう経過から見ますと、先ほど公団なり運輸省航空局が、今後の問題に積極的に取り組むにはやはり農林省協力というものが必要だ、こういう考え方を述べられているわけでございますが、農林省としても、空港敷地内外の農民農地対策について今後ひとつ積極的に取り組んでいただく、そういう方針が望まれるわけでございますが、この点について、ひとつ農林省のお考えをお聞きしたいと思います。
  100. 大場敏彦

    大場政府委員 もとより、農林省といたしましては、地元農家の経営がどうなるかということには重大な関心を持っております。そういう意味で、代替地対策というものは非常に大切な事柄だと思っておるわけでありまして、農林省としては、たとえば公団あるいは運輸省その他の関係官庁から協力を求められれば、これに消極的な態度をとるつもりは毛頭ございません。協力を求められれば当然積極的に協力していく、こういった姿勢であります。
  101. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  102. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 武田一夫君。
  103. 武田一夫

    ○武田委員 私は、時間の許す限り、三点についてお尋ねします。  まず最初に水産庁にお尋ねします。  日ソ漁業協力協定については、午後から集中的にいろいろ審議がなされると思いますけれども、これは一応の妥結を見た。しかしながら、残念ながらサケ・マスの漁獲量は四万二千五百トンというような、これは昨年の漁獲量に比べて三一・四%という大幅な減少、ここ二年間通算しますと五〇%以上の減少という厳しい状況に追い込まれたわけでございます。二百海里時代に対する対応の仕方が非常に不手際だった、これがこんなにも深刻に日本の漁業、そして漁民を苦しめるような打撃を与えるとは恐らく政府も予想だにしなかったと私は思うのでありますが、いずれにしましても、中川農林大臣も涙をのんで帰ってきた、こういうような現実であります。  こうした漁獲量の大幅な削減、そしてまた主要漁場等の縮小などが漁民あるいは漁業経営者等に当然しわ寄せをしてくるのは、これは前回、前々回等の例によって明らかであります。そうした減船、また、それにより多くの離職者を出して、いまだに後遺症がいえないそのさなかに、こうした三〇%の減船ということは、これは日本の漁業界にとっては最大の危機ではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、最近この対策として関係者との折衝等があわただしく行われているようでありますが、その現況と、政府はこの三〇%減船という厳しい問題に対しましてどのように対処していくつもりなのか、その点を、まず政務次官を通してお聞きをしたいと思います。
  104. 今井勇

    ○今井政府委員 お説のとおり、今回のサケ・マス漁業交渉につきましては、相手国の大変厳しい態度、しかもまた、サケ・マスに対する基本的な考え方が、沖取りをなるべくやめようじゃないか、すなわちサケ・マスの母川主義というふうなものにぶつかりまして難航いたしたのもお話のとおりでございます。  そこで、最大限努力をいたしまして妥結をいたしたわけでありますが、おっしゃいますように三割の減ということでございまして、これに対します漁民の皆様方の御心配、御心労というものは私どもも痛いほどわかるわけでございますけれども、今後ともこのサケ・マスの漁業を続けていくためにも、やはりここで三割程度の減船をお願いせざるを得ないだろうというふうに実は考えております。  そこで、その減船に伴います救済対策いかんということでございますが、先生御案内のとおり、これは昨年の例もございますので、そういったものに準じまして、皆様方に御納得をいただくように今後とも万全の努力をいたしたいと存じます。その救済対策の中には、たとえば補償の問題あるいはまた離職者の対策等の問題も含めて、ひとつ十分に誠意を尽くして交渉をいたしたいと存じております。
  105. 武田一夫

    ○武田委員 いま基本的な考えをお聞きいたしましたが、この減船の問題がいろいろと問題になってくると思います。たとえば減船対象船の損害補償について、政府は昨年は交付金として三百二十六億円、それから残存船主が相互負担するいわゆる共補償には融資枠として三百八十七億を用意した。何かうわさに聞きますと、今回は八百億くらいの資金が必要ではないかというようなことも言われておるわけであります。そうした資金のめどというか、これについては果たして万全の手を打ってあるものかどうかという問題と、それから特に心配なのは、残存船主が口をきわめて共補償の問題でこれは何とかしてほしい、そういう深刻な訴えが来ております。  そこで、私の宮城県の場合を申し上げますと、残存船主が負担した昨年の共補償は、母船式独航船が一隻当たり一億五百四十六万五千円、中型流し網船AB区域のものが九千百六十七万九千円、同B区域が六千百二十一万四千円という多額の負債をして、共補償というもので互いに助け合おうと最大限努力をした。しかしながら、今回の三〇%の減船をもろにかぶって、もはやこれ以上の負担能力はない。ある方々に聞きますと、減船するのも地獄だが、しかし残存するのも地獄だというような深刻な心境でございます。  ですから、特にこの共補償の問題については、今後は相当真剣に取り組んでいただいて、政府としては全額国の責任でもって処理をすべきだと私は思うのでございますが、政府としてはいかがお考えかお聞きしたいと思うわけでございます。
  106. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 昨年の北洋対策でございますが、政府交付金としましては総額で三百二十六億円、さらにこれに融資枠が三百八十七億円でございました。  今回の問題につきましては、ただいま政務次官からも御答弁ございましたように、業界の意向も十分承りながら目下鋭意検討をいたしておりまして、もちろん額の確定というところまではまだ至っておりませんけれども、所要の必要なものにつきましては、これを確保いたしていくということは当然でございまして、私どももその線で目下検討をいたしておるところでございます。  なお、ただいま御質問にございました共補償の問題でございます。昨年は御指摘のような形で、業界の中におきます共補償措置というものがございました。本年は一層苦しい環境においてそうした余地がないというふうな御意見もたくさん承っております。この点につきましては、一つは昨年の例というのがございますが、同時に新しい事態というのもありますので、関係漁業者の意向も聴取をした上で、これは慎重に私どもとしては対処をして検討してまいりたいということで、目下鋭意検討をいたしておるところでございます。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 海の底も地獄だし陸に上がっても地獄だという、そういう深刻な状況ですから、水産庁は本当に仏様に見えてしようがないというような対策を私は期待しております。  ところで、問題は、減船に伴って出てくる離職者の問題であります。これは相当出てくるのじゃないか。宮城県の気仙沼というところは船員の供給基地でございまして、約八千人の船員を抱えておる。もし今回三〇%の減船になると、恐らく二千人という方々は仕事を失うのではないか、こういう心配をしております。前回離職者が相当出たわけでありますが、そうした離職者に対する対策というのが、就職も含めまして十分に思うようにいっていないというのが現実でございます。  そこで、一例を申し上げますと、これは宮城県の例でございますが、漁船の乗務員の有効求人倍率は〇・二倍、これは一般には大体〇・六倍ですから相当厳しい環境です。それで、船員職業安定所に漁業離職者手帳の交付申請をしている人が五百九十七人ございますが、そのうち就職できた方がわずか百五十七人。これは自分たちの希望するとおり、船乗りとしてまた活路を見出すことができた幸せな方々でございます。しかしながら、それといっても三分の一に満たない現実。それじゃおかに上がってどうかといいますと、おかに上がって仕事をやろうという人はまことに少ないわけでございます。公共職業安定所に就職希望を申し込みしている方がわずか十四人。それじゃ十四人が全部就職ができるかというと、何とわずか四人しか就職していない。こういうような現実でございまして、これはわが宮城県だけの例でない、福島その他の減船によって苦しんでいる方々の一様の悩みです。しかも、こうした方々の中で、四十歳以上の方々というのは特に厳しい。こういう方々の就職というものは非常に厳しいという環境です。しかも、こういう方々はかなりの高給を取っていました。それで、多くの借金を抱えながら家を建て、しかも子供は学校に通って金のかかる時期ときている。大変な苦しみ、おいそれと就職のできないような不況、こういうような状況でありまして、まずこうした方々の救済対策というものは、もう一層ピッチを上げて、県、市町村に指導をきちっとして、どうなっているのだというくらいの、そして実態を把握して対策を講ずるのは、これは当然だと私は思うのですが、現在どのような状況であるのか、まずその状況を、具体的な数字を挙げられれば示していただきたい、こう思います。
  108. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 前回の減船に伴いまして離職者対策でございますが、本年の一月二日に施行されました国際協定の締結等に伴います漁業離職者に関する臨時措置法、これによりまして、職業訓練あるいは職業転換給付金の交付等につきましての措置を労働省あるいは運輸省にお願いをして講じておるわけでございますが、四月一日現在におきまして、公共職業安定所なり海運局へ出頭した方は、三千五百九十五人というふうに承知いたしております。  水産庁といたしましても、前回も府県を通しましてその趣旨の徹底につき鋭意努力をしてまいったわけでございます。さらに、水産庁としましては、前回は北転船の十三隻を調査船に活用するというふうなことで、極力離職の発生の軽減に努めてきたところでございます。今回も遺憾ながら、やはり三〇%程度の減船に伴いまして離職者問題というのが非常に大きな問題になろうというふうに思っております。  そこで、これにつきましても、ただいま申し上げました臨時措置法に基づきますこうしたような措置について、各種の具体的な適用措置を講じていくということにつきまして、労働省あるいは運輸省等とも協議をしながら、万全の対策を講じてまいりたいというふうに考えている次第でございます。  なお、水産庁としましては、今後、沿岸漁業の整備開発あるいは栽培漁業の推進等によりまして、沿岸沖合い漁業の振興を図ることによって、その面に就業の場を求めるような方々に対しましては、地域の実情に応じながら、そういう面での就労の場の確保という点につきましても鋭意配慮をしてまいりたい。この点につきましては、今回の残念ながら離職者が生じました場合に対します一つの対応としては、こういう面の努力もしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 多くの方は、やはり海で仕事をするしかないということを自分たちもわかっておるし、環境としてもそうなっています。それだけに、いま話されたような、そういう海において仕事を見出せるような方向への努力、これをまず私は強くお願い申し上げます。  と同時に、今後こうした事態はますます強くなってくると私は思います。となれば、もう当面の対策をそのたびごとにやるというよりは、この辺で長期的な見通しの上に立った施策というものを、経営の面においてもあるいは雇用の問題においても、やはり考えていく必要がもう当然出てきたわけでございますが、こうした長期的な見通しに立った政府としての今後の、こういう減船そして離職者対策というものに対する検討というのは私はやっていると思うのです。そうしてやらざるを得ないと思うのですが、その点はどうでございますか。
  110. 今井勇

    ○今井政府委員 おっしゃるとおりでございまして、水産物の長期の需給見通しというのは、私どもの日本人の食生活、先生が御案内のとおり、ただいま動物性たん白とほとんど半々でございますが、最近の食肉の価格、物によりましては非常に魚価と競合するものもありますが、しかしながら、この傾向というものはそう将来とも変わっていかない、また人口増もありますので、全体の需要としては堅実に伸びていくだろうと見ております。一方、二百海里で、先生御指摘のように、外国に行ってとる魚が減るわけですから、トータルでは、これはほっておけば減ってしまうわけです。  そこで、やはり方策としては二つあろうかと思います。一つは、日本の沿岸、要するに日本の主権が及ぶところ、そこで積極的に漁場の造成をやり、増養殖をやっていって、魚をふやし、もってとるという方策。もう一つは、在来多獲性魚類と言われまして、イワシ、サバのたぐい等たくさんとれるわりには食ぜんに上らなかったものも、今後は積極的に食べていただくようなことをひとつ政府としても取り上げようということで、その供給サイドをしっかりと守っていこう、このように具体的には考えております。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつ長期的な観点からの、そうして安心できるような施策の実現を私は期待して、時間の都合上、次に移ります。  国鉄当局に伺います。  いま東北新幹線の工事が、東北に関する限り順調に進んでいまして、皆さん方大変期待しております。その中で、やはりいろいろと注意はなさっているようですが、農地を通っているという関係から、農地に対するいろいろな問題が出ているようでありまして、当局としてもいろいろな報告等で御承知と思いますが、私は、宮城県の白石市越河地区の水がれの問題について二、三お尋ねいた  します。  ここは福島のすぐ隣りでございまして、トンネルがいま掘られております。新幹線蔵王トンネル。ところが、その周辺に一番直接関係ある方々が三百五十世帯農家がございまして、昭和四十六年ごろから始まった工事なんですが、四十七年の暮れごろから四十八年に水がだんだん出なくなってきて、飲料水が不足する、そのうちに今度は灌漑用水の不足ということも出てまいりました。それが最近またあちこちで拡大しているということで、これは死活問題でございます。  地元の方々は、こうした生活権を奪われるという問題に対して、再三当局との交渉をしながら、今後安心して水が確保できるような対策要望等をしてまいったわけであります。当局としても、いろいろと努力をしながら応急処置などはしているようでございますが、この新幹線のトンネル工事が間もなく終わるというときに近づいているだけに、恒久対策というものが果たしてどのような形でなされるのか、非常に深刻でございます。しかも、最近、農業用水という問題ではトラブルも出ているということでございまして、ことしなどは、これは相当水争いが心配だという、こういうことを考えまして、先週でしたか、二十日ごろには、地域の住民が約百二十人ばかり、国鉄の方々とこの問題についていろいろと折衝したようでありますが、十分なる満足のいく答えが出なかったということでございます。  そこで、当局として、この水がれの対策に対していまどのような手を打っていき、今後この農業用水の確保、飲料水の確保に対してどのような対策を講じていくつもりか、農民が心配している食い逃げのような事態に当面することは絶対ないという、そういう確証ある答弁がいただけるかどうか、私はその点まず関係当局にお尋ねを申し上げたいと思うわけでございます。時間もございませんから、簡潔に、要点のみお答えいただきたいと思います。
  112. 江本佑橘

    ○江本説明員 御質問の蔵王トンネルの渇水問題でございます。蔵王トンネル約十一キロを四工区に分けまして、四十六年から着工してまいりました。それによりまして、福島県、宮城県にわたりまして、そのトンネルの東側で渇水が起こっております。  現在までの対策といたしまして、飲料水対策は、とりあえず福島県側では国見町の町営水道を利用させていただきまして、配管いたしまして給水しておりますし、宮城県側においてはトンネルの湧水あるいは深井戸を掘りまして応急対策を講じております。灌漑用水につきましては、トンネルのわき水を利用いたしまして、約一万六千メーターにわたるパイプラインで給水をいたしております。なお、これで耕作不能な個所がありましたところに対しては補償をいたした次第でございます。  今後の対策はいかん、こういう御質問でございますが、この種の問題、地元の御納得が得られるまで交渉を行って妥結したい、こう考えております。トンネル工事は、主体がほとんど完了いたしましたけれども、補償等が終わらなければこれは当然終局とならないわけでございまして、ほったらかして国鉄が逃げていくというようなことは絶対いたさない所存でございます。  対策につきまして、現在、現地の仙台新幹線工事局と地元の間で協議中でございます。必要に応じて専門家の意見を聞くなり、あるいは地元公共機関と協議するなりいたしまして、誠意を持って対処する所存でございます。よろしくお願いいたします。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、私は、いろいろ調査をしながらやっているというような中間報告をまずしてほしいと思うのです。何にもしないでいるということは、これは農家の人たちにとって不安なんです。いまこうやっています。要求についてこのように動いているという中間報告をまずしてもらいたいこと、これは間違いなくやっていただきたいと思います。  それからもう一つは、今後間違いなく水が確保できるような対策はとるから安心して任せてくださいという、その信頼をかち得るような努力を私はしてほしい。交渉の折衝で見ていますと、どうもさわらぬ神に何とかというような答弁しか返ってこないというのが、そこに臨んだ多くの農民の率直な意見です。そこに疑念と不安と不信というのが強くなっている。これは問題だと思います。ですから、安心して、われわれもやっているのですから、いま少々不便でしょうががまんしてもらいたいということで、当面としては、いま臨時的に応急処置をやっていることは積極的に進めていくという方向の姿勢をお願いしたいと私は思うのですが、その点どうでしょうか。
  114. 江本佑橘

    ○江本説明員 お答えいたします。  現在、応急対策をやっておるわけでございますけれども対策としましては、この応急対策基本といたしまして恒久対策に移っていきたい、こういうふうに考えております。  地元とは四十八年以来再々いろいろな協議をやってまいりまして、現在のところ、まだ成案は得ておりませんけれども、誠意をもって対処したい、こう思います。なるほど、これは飲料水にしろ、灌漑用水にしろ、非常に大問題でございますので、当然不都合なことのないようにいたしたい、かように考えております。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつよろしくお願いします。  もう一カ所、仙台の周辺でその影響が出ている、これは東北新幹線仙台総合車両基地、何か将来三千台くらいの車がそこに入ると言われる相当大規模なものでございまして、これは宮城県の利府町というところで工事が進められておりますが、そこに二十二世帯の方々のたんぼがあるわけであります。仙台、多賀城という二つの市、それから利府町の方々がたんぼを持っています。ここが結局、基地工事の土盛りによって一部の土地の隆起が始まりまして、その当時十センチくらいの隆起があって、そのために地下水が噴出するというような現象で稲が冠水し、水たまりが出て非常に苦労した、こういう事件がございました。これに対しては、補償の問題では幸いにも積極的に当局も取り組んでくれまして、当面の災害補償はしていただいたので関係者の方々もほっとしたのでありますが、しかしながら、最近になって、また被害の規模がじわりじわりと拡大しているということで、これはどうなっているんだとまた心配です。  ですから、これも先ほど言ったように、この点についても調査しながら、いろいろと抜本的な対策を考えて手を打っているんだというようなことを報告というか、実態というのを話がされてないようでございます。そこで、この方々も相当これから秋に向かってまたことしもかといううんざりした表情で仕事に取りかからなくてはいけないという現今でございますので、応急対策ではなく、抜本的な、被害を食いとめるような対策を私はお願いしたいと思うのですが、ここの状況はどうなって、いまどういうふうな対策を講じているか、その点をお尋ねしたいと思います。
  116. 江本佑橘

    ○江本説明員 お答えいたします。  仙台車両基地、利府町でございますけれども、大変御迷惑をおかけしているわけでございます。ここは二十五メーターから三十メーターにわたる軟弱地帯でございまして、土盛り工事をしたわけでございますけれども、その周辺が先生御指摘のように一部隆起したり水がわいたりということでございます。  対策といたしましては、この周辺に横断水路を完成させまして排水を行うということが基本かと思います。したがいまして、関係の公共機関と連絡をとりまして対処したい、こういうふうに考えております。また、農作物の影響等については専門家の知識をかりて対策を講じたい、こういうふうに思っております。  今後被害の増大でございますが、だんだん落ち着いてきておりますので被害の増大はほとんど済んでいるのじゃないかとは思っておりますけれども、今後被害が増大しましたときには、十分調査の上対策を講じ、また補償もしたい、こういうふうに考えております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 この地域の方々は工事局の方々に非常に協力的です。土砂を運ぶときにたんぼや畑にいろいろ影響があっても文句一つ言わずに、早く新幹線ができることを期待しながら協力をしている非常に模範的な住民なんです。それだけに、そういう方々も余り文句も言わずにそういう当局のやってくれることを本当に心から喜びながら、われわれも半分犠牲になってもいいんだ、これは東北の開発のために大事なんだからという気持ちの方がいるということは幸いだったと思うのです。それだけに、やはりこういう方々が安心して農作業が行えるように、誠意をもっていま答弁がありましたように対策を真剣に取り組んでいただきたい、これを要望いたして、次の質問に移らしていただきます。  時間がなくなりましたけれども、最後に一問、機械化貧乏について。  日本の農業と言えば機械化貧乏だ。農家の人は昔は地主にしぼられいまは機械にしぼられるのだと言っているそうでございますけれども、この機械化貧乏ということを解決するということは、日本の農業の一つの課題というか重大な問題ではないか。経営の専門化あるいは大規模化、大型機械化などに象徴される農業の近代化政策、そして生産性向上に偏重した、農業生産の特性などを無視した一つの行き方というもの、そこにこうした機械化貧乏を生む要素があるのじゃないかと私は思うわけであります。この機械化貧乏というものに対して、それは農村の皆さん方自身にもやはり問題がないとは言えない、しかしながら、それ以上に政府のこうした問題に対する取り組みが非常に弱いのじゃないか、こういうふうに思いますが、機械化貧乏の追放に対して、何か特に政府として、かくすべきであるし、しているのだ、こうすべきだというような対策、処方せんなどを考えておられたならお聞きしたいと思うわけでございます。
  118. 今井勇

    ○今井政府委員 確かに労働生産性を上げて、しかも重労働から解放されたということなどが機械化のメリットでございましょう。しかしながら、先生御指摘のように、機械の費用が生産コストの中の二割以上も占めるようになるということはこれはやはり異常でございます。その主なる原因の一つは、生産規模のわりにたくさんの機械をお持ちになるということであろうと思います。そこで具体的には、共同利用をする、あるいは農業機械の作業の受委託を進める、こういうために集団的な生産組織の育成あるいは農業機械銀行というものを実はやっておりまして、大分定着をしてまいりました。要するにおもやいで使うということが一つ。それからもう一つは、やはり買った機械は長もちをして使うということで、そのために五十三年度から政府は、農業機械の効率利用安全対策というようなことで、こういう予算をつけてやってまいります。同時に、メーカーに対しましても、その機械が市販されている間は部品等を絶やしてはならぬというふうな指導等も行いまして、めたらやたらにモデルチェンジ等をして売らんかなということについては厳に戒める施策を実はとっておりまして、このようなことを今後とも強力に進めてまいりたいと思っております。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 非常に結構なことで、確かに機械銀行あるいは請負制度の確立等々によって、一つは兼業農家の農業からの解放と、専業農家の充実といいますか、そういう方向は私は望ましいと思いますし、これは相当強烈な手だてでやっていただきたい、こう思います。  後で触れようと思ったのですが、兼業農家がやはりどうも、片手間にやっているということで、この機械の操作の中で事故を起こしている率が多い。そういうことで、事故から守るということからも、いま政務次官の御答弁なさったような行き方が好ましいのじゃないかと私は思います。  ところで、モデルチェンジにより値段を上げてもうけようというような、そういうことは厳しくやっていると言うのですが、これは日本農業新聞の四月十日のトップにこんなにでかく出ているのです。この間もあるえらい大臣が、新聞というのは本当半分うそ半分、そう言っているのですから、それを信ずれば半分が本当で半分がうそだ。そのうその方は別としましても、本当の半分はここに入っているのじゃないか。これを見ますと、値段をつり上げるためにいろいろと工夫をなされましてモデルチェンジの努力をなさっているということで、るる書いてあるわけです。こうした事実が私は絶対にないとは言えないと思うわけです。そのために通産省等はいろいろと行政指導などをしているようでございます。あるいはまた日本農業機械工業会というところで自粛規制呼びかけをしているようでありますけれども農家の方々に現地に行って聞きますと、やはりこういう新聞とあわせて、どうもわれわれは高く買わされているようだという感触は否定できないわけであります。そこで私は、こういうようなことが堂々とトップの、しかも段数で言えば七段もの相当ショッキングな新聞記事が出ているというところに、一つはこの行政指導が不十分なところがあると思いますが、この問題については通産省としてはどうですか。
  120. 鈴木直道

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  農業機械メーカーに対して農家が持っておられるいろいろな御希望があると存じます。それは性能面につきましても同様でございますし、安全対策でも同様でございます。これはまさに先生御指摘なさったとおりでございます。私どもといたしましてはそういう面を十分配慮いたしまして、それにかなったいい機械を供給する、それと同時に適正な価格でそれを供給するということは非常に重要なことだと思っておりまして、こういう全体の筋道にかなった機械をいかに供給していくかということで最善の努力を払っているわけでございますが、第一の性能の面につきましても、先生御存じのとおり、農業機械は最近数年技術的に進歩しております。その進歩の過程にありますような機械につきましては、やはり各農家の御希望に沿った新たな機械が徐々に出てくると存じます。あるいはまた、先生御指摘なさったように、いろいろな安全対策に対する強い御要望もございます。これに対応いたしまして安全対策を適宜適切にやっていかなくてはならない、かように思っておるわけでございまして、そういう面からまいりますと、毎年ある程度の新たな機械というものが登場してくるわけでございますが、基本的には先生御指摘なさいましたように、価格引き上げに直接つながるようなモデルチェンジは当然いけないということでございまして、やはり性能の向上、安全対策、そして適正な価格、これが三つ相かなったいい機械が供給されるような形で農林省とも共同で業界を十分指導してまいりたい、かように考える次第でございます。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 いま言った安全性の問題、何よりも安全ということ。というのは、最近、兼業農家が非常に多いということもございまして、奥様方やあるいは年寄りの方が機械を操作される機会が多い。それで事故がやはり三十代の後半から四十代以降になると極端に多くなってくる。これは死亡率も多いわけですから、安全性の問題ということは当然考えなくてはいけないし、さらにまた価格の問題でも、要するに農家に負担がかからないような、そういう規制というか監督を私は十分にお願いしたい、こう思います。  それから機械の中に欠陥機械もやはりいろいろ出てきますね。たとえばある調査によりますと、五十年中にメーカーに対して回収または補修を命じた欠陥機械の機数が二十九万機に達しているというふうなデータがあるのです。やはり機械は、値段とかみ合わせて、売る前のチェックというか指導というのがどうも問題だと私は思うのです。ですから、こういう点も踏まえてしっかりした指導の中で、今後の機械の販売政策というものには政府はもっと厳しく目を注いでいくことが必要ではないか、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
  122. 芦澤利彰

    芦澤説明員 お答えいたします。  先生ただいま御指摘ございました農作業に伴う事故をいかに防いでいくかということは非常に大切なことでございますが、事故の起こる原因を考えてみますと、一つは利用者が不注意でやった場合、それから一つは作業条件がよくなくて事故が起きた場合、あるいは機械がさらに十分整備されてなかった、そういう問題があるわけでございます。  私ども農作業の安全を期するために、やはりまず第一に利用する人たちの技能をよくして、そういういい技能を持った人たちが中心になって作業を進めていくように、技能者の養成ということを第一に考えておるわけでございます。  それからまた第二には、そういう人たちでもうっかりすることはありますので、農作業は常に安全第一で行うようにということで、安全の講習会を行ったり、部落座談会を行ったり、あるいはテレビとかポスター等で安全に対する呼びかけを行って、常に安全を念頭に置いて作業を行ってもらう、そういう気持ちの引き締めをやってもらうことを第二点の対策として進めておるわけでございます。  しかし、そうは言っても機械を安全なものにしていくということがやはり大切でございますので、昭和四十九年から農業機械化研究所で行っております農業機械の型式検査の中で、安全に対していままではどちらかというと性能のチェックをやっていたわけでございますけれども、安全のチェックを行うようになりましたし、そのほか五十一年からは主要な農業機械二十二機種につきまして安全鑑定を行って、安全のための防護施設がついているかどうかというふうなチェックを特に強化したわけでございます。  そういうふうに、機械に対しての安全のチェックを行うと同時に、私ども、補助事業で導入する機械、あるいは融資で導入する機械等については、安全鑑定を行った機械あるいは型式検査に合格した機械の中から選ぶようにという指導を重ねてまいりまして、安全の確保に努めてまいっている次第でございます。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので以上で終わりますが、今後ますます機械化の時代というのは続くわけですから、どうか十分なる安全対策と適正な値段で農家の負担のかからないような機械というものを一つの今後の基本的な考えの中に組み入れてもらって、対策を講じてもらいたい、この点を要望して質問を終わります。
  124. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 稲富稜人君
  125. 稲富稜人

    ○稲富委員 私、時間が余りありませんので二、三要点だけを申し上げまして、質問いたしたいと思います。  それは、現在政府が計画されております水田利用再編成の問題でございます。まず、現在政府が指示されております水田利用再編成対策に対する全国的な進展状況がどういう状態にあるのか、この点承りたいと思うのでございます。
  126. 野崎博之

    ○野崎政府委員 各都道府県別の仮配分については昨年十一月十九日にやったわけでございます。本年度予算成立後、正式な通知を各都道府県に出しまして、各都道府県におきましては市町村別の段階までは全部終了をいたしております。それから市町村では、いろいろ集落懇談会というものを通じまして、末端の農家へ割り当てておるわけでございますが、四月十五日現在で見ますと、末端の農家割り当て、それから農協段階、集落段階、そこまでの割り当てが済んでいるものが九八%になっておるわけでございます。
  127. 稲富稜人

    ○稲富委員 その問題は次にしまして、さらに、市町村におきましては、これを返上して行わないというような決議をした町村もあるように聞いておりますが、そういう事実がありますかどうか、承りたいと思います。
  128. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほど申し上げましたように、大部分の市町村においてはすでに仮配分等を完了いたしておるわけでございますが、所によりまして幾つかの市町村議会で割り当て反対、それから目標面積も反対、それに対して再考を求める、そういう例は幾つか聞いておるわけでございます。
  129. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで申し上げたいと思いますことは、現在の状態において大概の全国的な町村においては、水田利用再編成対策に対する進展状況というものはおおむね順調に進んでいる、こういうような御報告でございますが、その進むに至りました経過等はどのくらい政府としては掌握されておるのでございますか。これが実施をするに当たりましては、県及び市町村は非常な苦労を払っている。苦労を払いながらこういう状態に進んでいる。私たちが見ておりますと、いかにも国は上から指示して、実際のこれが実施に当たる責任は県、市町村にゆだねてしまって、高みから見物しているんだ、こういうようなそしりさえ受けるような状態であるのではないか。こういうことに対しまして政府といたしましてはどういうような見方をしていらっしゃるか。実際これが衝に当たっている市町村がそれほどの努力をしているということを認識していらっしゃるかどうか、その認識の点を承りたいと思うのでございます。
  130. 今井勇

    ○今井政府委員 細部については事務当局から答弁させますが、この問題については、先生御案内のとおり、農林省といたしましてもこれは大事業でございまして、単に一度の通達や何かで済もうとは毛頭考えておりません。したがいまして、省を挙げてこの問題の達成に取り組もうということで、私どもも何遍となく現場の担当者を呼び、あるいはこちらから出向き、そして状況を把握する等の努力をいたしております。しかしながら、先生おっしゃいますように、末端の方々が非常な御努力をなさっておりまして、それに対して私ども状況をつぶさに承知をいたしておりますが、といって、農林省がかわりまして出しゃばるという筋合いのものでもございませんので、お願いをするということに尽きておるわけでございます。したがいまして、先生おっしゃいますように高みの見物などということは毛頭考えておりません。しかしながら、そのような誤解を受けることがもしあるとするならば、これは大変申しわけないことでありまして、おわびを申し上げねばなりませんが、少なくとも私どもの、取り組み方についてはさようなことでは決してないというふうにひとつ御理解を賜りたいと存じます。
  131. 稲富稜人

    ○稲富委員 実際、次官も薄々御存じだろうと思いますが、各県あるいは市町村におきましては、財政の困難な中からその財政支出をして、これに対する協力を求めているという事実もたくさんあるのです。これほど努力してやっているということも、どれほど御認識なさっているか。また、そういうように財政困難な中から県並びに市町村が財政支出までしてこれが実行に当たっている、こういうような経済的な面に対しましては将来政府はどういう処置をとろうとしておられるのか、この点も承りたいと思います。
  132. 今井勇

    ○今井政府委員 この問題はお金だけで解決できるものではございませんが、先生おっしゃいますように、いろいろ各市町村に御苦労をかけておりますことをよく存じております。そこで、その一助にもなればということで、ことし百二十億の特別対策費を組みまして県知事さんにお願いをしているわけでございまして、もしも先生がおっしゃいますようなことでこの費用が不足をするというふうな事態が明らかになってまいりますれば、何らかの対策を講じなければなるまいというふうなことは考えております。
  133. 稲富稜人

    ○稲富委員 特に私がここで考えてもらいたいと思いますことは、これが衝に当たった市町村長、しかも非常にまじめに忠実にこれを実行しようとする市町村長ほど大きな悩みを持っております。そういうことをあなた方が引き受けるということはとんだことじゃないかと農民から突き上げられ、非常に悩んでいる市町村長も非常に多い。場合によりましたら、来年の市町村長の選挙においてはあるいは市町村長の座を退かなければならないような市町村長ができやしないかという悲惨な状態のところもあるということを、私たち十分実情を見て知っております。もちろん下から締め上げられながら苦しんでいるという市町村長等もたくさんあるのでございますが、こういうような市町村長の苦しみ等を国は十分把握しておられるかどうか。先刻の局長の話によりますと、いかにも非常に順調に、しかも安易に進んでいるような感じを受けたのでございますけれども、決して安易に進んでいるものではない。市町村長は、場合によったら自分の地位まで下げなくちゃいけないというような悲痛な考え方でこれに協力しておる。こういうような問題に対しても責任を負わなければならないだろう、こういう点を果たしてどのくらい掌握されておるのであるか、この点についても承りたいのでございます。
  134. 今井勇

    ○今井政府委員 先ほど局長から九八%というお話を申し上げましたが、この中でも、先生おっしゃいますように農協あるいは集落段階に配分してあります市町村数がまだ実は一六%あるわけでございまして、農家への配分を完了した市町村が八二%、あわせて九八%と申し上げたわけでございまして、大変問題があることはよく存じております。したがいまして、農林省としましても、ただお願いをしたからいいんだというふうには考えておりません。いろいろ市町村あるいは農協等の御要望をお伺いすることによりまして、農林省として御協力できます事柄についての御相談も積極的に受けるようにという指導を実はいたしておりますので、何か私どもの気のつかない、至らない点につきましては、ひとつ御教示を賜りたいと存じます。
  135. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから先刻、市町村等においてこれの反対決議をしたというのもあるというような報告を受けておりますが、こういう面に対しては将来どういう処置をなさろうという考えであるか、この点もこの機会に承っておきたいと思うのでございます。
  136. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほど申し上げました市町村議会の決議でございますが、これは地方自治法の第九十九条二項に基づきます意見としての性格を持っておるわけでございまして、これで直ちに執行機関が拘束をされまして配分できないとかなんとかというような性格のものではないわけでございますが、われわれといたしましては、そういう町村におきまして特にいろいろむずかしい条件があろうと思いますし、いろいろな問題を抱えておられるのであろうと考えておるわけでございます。したがいまして、よく末端の事情を聞きまして、そういう条件整備等につきましてとにかくできるだけ御協力いたしまして、末端の農家の皆さん方の御理解と御協力をいただけるように一層の努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  137. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは私が一番冒頭から申し上げた問題でございますが、今回の計画というものは行政指導でありまして、どこまでも理解と協力でやらなくちゃいけない。その点が、出発において国としてのなされたことが非常に足らなかった。この点だけは反省をして、その反省の中から今日理解と協力を頼んでいかなければいけないと思う。ところが、協力をするためには市町村は非常な努力をやっているという事実がある。これに対して反対しているというようなところも、強固な反対でございますから、こういう問題に対してはよほどの理解を持たせることが必要であると思いますので、これに対しては今後十分なる手を打って遺憾なきを期さなくてはいけないと思うのでございます。これに対する決意はもちろんおありになるだろうと思うのでございますけれども、その点も念のため承っておきたいと思います。
  138. 今井勇

    ○今井政府委員 これは先生のおっしゃるとおりでございまして、いままでなかなかできないところはできないなりにいろいろ内部の問題があろうと存じます。そういうところを、町村長さんが苦労をされ、御説得を賜っておるわけでございますから、そういう個々の問題につきましては、農林省は当然その御苦労に対して報いるという姿勢がなければなりません。具体の問題につきましては御相談に応じたいと存じます。
  139. 稲富稜人

    ○稲富委員 それから、私は、この問題につきましては前にもお尋ねしたことがありますが、転作作物をいかなものにするかという問題につきましては、農林省自体がもっと先頭に立って、その地方の土壌、土地柄、こういうものを十分検討して、転作作物等に対しては強力なる指導をやる必要があるのじゃないかと私は思う。やたらに大豆をつくれとおっしゃる。大豆をつくれとおっしゃっても、水田作物をつくっているようなところに大豆などできるものではないのですよ。それを、この村は大豆を主体としてやれというように、土地柄も考えないで、無責任と言えばあるいはオーバーになるかもしれませんけれども、そういう指示をされていることが非常に多い。こういうものについては、国もその地方と十分打ち合わせた上で、その地方の土地柄あるいはどういうような転作作物がいいのであるか、こういうものも十分検討して、これに対して指示をするということを怠ってはできないと思う。ところが、いまもまだそれが十分行われていないので、植えつけを前にして農民はまだいたずらに迷っているというような事情もたくさんあります。こういう事実もたくさん知っておりますから、特にこの点を申し上げたいと思いますが、これに対しては特段の再検討をして今後当たられる必要があると思いますが、その点を承りたいと思うのでございます。
  140. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先生のおっしゃられるとおりでございまして、われわれの方といたしましては国全体の技術指針というものを出しておるわけでございますが、各県でもそれぞれ各県の実情に応じました技術指針を出しておりまして、それから各市町村等におきましても、それぞれの地域の実情に合ったいろいろな営農指導をやっているところでございますし、特に本年から、改良普及の面で水田転作に関しまして特別な営農対策事業という予算も組みまして、いろいろな実証圃、そこでいろいろな技術指導をやるというようなこともやっておりまして、市町村、それから農協、改良普及員一体になって、その市町村の地域に応じたいろいろな作物の選定なり栽培等に関する技術指導、そういうものを行うことにいたしておるわけでございますが、全く先生のおっしゃるとおりでございますので、これからますますそういう点を通じまして、地域に合った転作作物の選定、それから技術指導ということに意を用いたいと考えておる次第でございます。
  141. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま御答弁のありましたようなことによって転作する、そしてその後にこれに対する補償は十分にやるということを前提としてやらなければいけないと私は思うのです。これをやらなければ、これが施行に当たった市町村長はますます困るという問題があるわけなんで、農民がこれに応じたがために損害をこうむったんだというようなことのないような補償を間違いなくやるべきであると思いますが、これに対してはどういうような考え方を持っておられるか承りたいと思います。
  142. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほどちょっと触れましたけれども、いろいろな特定作物、一般奨励作物があるわけでございますが、そういう特定奨励作物については、収益性が水稲に比べて非常に低いということで、水稲と均衡を保つような補償をするという意味で、奨励金も増額いたしておるわけでございますし、また、野菜等についても、野菜の価格保証制度がございまして、本年から保証価格のアップとかあるいは補てん率の引き上げとか、そういうことで対策を講じておるわけでございますが、これらの野菜等の問題、その他畑作物全体の共済制度というのも本年法律を出して御審議を願ったわけでございますが、そういういろいろな点を通じまして、いま先生のおっしゃいました価格対策、補償対策といいますか、そういうものを進めてまいりたいと考えております。
  143. 稲富稜人

    ○稲富委員 もう時間がありませんので最後になるのでございますが、この際いま一つ御検討願いたいと思いますことは、従来の土地基盤整備というものはほとんど水田対策のための土地基盤整備が主として考えられておりました。今後の土地基盤整備というものは、畑作転換を十分考えた上での土地基盤整備というものが当然行われていかなければいけないと思うのでございますが、こういうことに対する政府の考え方はいかがであるか、この機会に承っておきたいと思います。
  144. 野崎博之

    ○野崎政府委員 今回の水田利用再編対策に対しまして、非公共事業では先ほどお話が出ました転作促進対策特別事業、それから公共事業でも圃場整備事業等いろいろあるわけでございますが、先生おっしゃいましたように、水田を汎用化して畑に使えるという方向で、圃場整備の事業の採択に当たりましてもそういう点を十分考慮していたすことにしておるわけでございます。今後ともそういう方向で土地基盤整備事業も進めたいと考えております。
  145. 稲富稜人

    ○稲富委員 計画課長もお見えになったようでございますので、この機会に承りたいと思いますことは、水田の転作ということで一番安易に考えられるのが野菜なんですね。それで野菜への転作が非常にふえるのではないかといって現在野菜の産地は非常な不安、恐慌を来しておるというような事実があるのでございます。これは自然そういうことになるなと私はかように考えます。そういうことになりますと、おのずからこれが対策といたしましては、現在の野菜生産出荷安定法の内容等検討して法律の改正等も今後考えなければいけないのじゃないか、こういう点も考えられるわけでございます。野菜産地の土地であるとかあるいは価格対策という問題も当然考えなければいけないと思いますが、こういうことに対する政府の心構えはどうであるか、この機会に承りたいと思うのでございます。
  146. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 本年度における野菜への転作については、全体の転作目標面積が約倍になっていることに伴って、ある程度作付が増大すると見込んでおります。ただいまのところは、まだ農家段階へ目標面積がおりたばかりのところであるとか、あるいはまだ一部おりてないところがございますので、正確な作付面積は掌握が困難でございますが、一般的に申し上げれば、相当ふえるのではないかと見ております。  そこで、私どもといたしましては、野菜への転作につきましては、麦とか大豆のような需給上問題のない作物とは違って、つくり過ぎると過剰になって価格が低落をするおそれのある作物ということで、転作における扱いとしても麦、大豆と異なりまして、一般作物として奨励金についても格差をつけております。  と同時に、転作推進に当たりましても、需給の均衡が失われないように、都道府県及び生産者団体に対してことしの初めから各種の指導をいたしております。第一に、地域的、時期的な需給動向に十分配慮した野菜の種類及び作型の選定をしてもらいたい。第二に、野菜の生産動向に関する情報を適時的確に流していくということで、ただいまその努力をしておるところでございます。  御指摘のように、そういうことをやったとしても供給過剰によって価格が低落する心配がございますので、それに対処いたしまして、五十三年度予算においては、野菜価格安定制度の中で補てん率の引き上げとか、基準価格の引き上げ、さらに対象品目の拡大等の措置を講じておりまして、この価格補てんのための予算額は約百億円を用意いたし、対前年比で四〇%増ということになっております。  御指摘の法改正という点でございますが、私どもといたしましては、現在の野菜価格安定制度の運用の拡充によって十分対処できるのではないか、ただいまのところ各都道府県から価格補てんのための予約数量の申し込みを受けておりますけれども、おおむね各都道府県の御要望に沿い得るものというふうに考えて対処をしておるところでございます。
  147. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま局長からも御答弁がありましたように、野菜の転作におのずから一番安易にいくので、非常に野菜の過剰を来すであろうことは当然予想される。そうすると、野菜が輸送料にもならないようなことも過去にあったのでございますから、安定法の改正をしないとしても、安定法の拡充によって、これがため生産者が困らないような方策を真剣に考える必要があると私も考えますので、その点はひとつ十分尽くしていただきたいと思います。  時間が参りましたので、私は、最後に結論として申し上げたいと思いますことは、水田利用再編成のために、いま申しましたような苦労をしながら各地方とも政府の趣旨に沿いましてこれに協力をしているというのが現状です。満足をしない、不満を持ちながら農民は応じている、これが現状です。それで来年度においては、本年度そういう中で実施されました実績というものを見ながら、その上に立ってさらにまた再検討をする必要があるのではないか、かように考えるわけでございますが、これに対してひとつ政府の意のあるところを承りたいと思うのでございます。
  148. 今井勇

    ○今井政府委員 先生御案内のように、今回の稲作の転換は、緊急避難的なものではなくて、わが国の農業の構造のあり方を再編しようかというふうな意味合いを持っておりますことは御案内のとおりであります。したがいまして、今回は長期十年という形でいたしておりまして、その中の一期三年ということでいたしておるわけでございまして、そういった長い息の中で、今年の実施の状況を踏まえて、ひとつ改めるべきところがないのか、われわれが考えておった以外のものが何か出てきたのかというふうなこと等々を踏まえまして、ひとつ来年度のことはまた来年度として真剣に検討をしてまいりたいと存じます。  しかしながら、考え方は私が申し上げたとおりでございまして、一つの決めた方針に沿って、皆様方の御協力を賜りながら、息の長いものとしてやり抜いてまいりたい、かように考えております。
  149. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん本年度におきましては皆これに応じている。非常に苦しいながら、政府の意に沿うてやっているというこの農民の苦痛並びにこれに当たっている当事者の苦労、こういうことも十分踏まえた上で、もっと来年は希望を持って喜んで応じ得る、こういうようなことに検討して対処する、そうすることが今後農民に農業に対する希望を与える根拠にもなる、かように私は考えます。今回のこの再編成によって農民が農業に対する希望を失墜するようなことになれば、これこそ日本の農業の崩壊につながるものでございますから、来年は、やはり現在の実績の上に立って、農民希望の持てるような検討の上に立って、さらに考える余地のあるものは考え、改革すべきものは改革する、こういうことで処していただきたいということを特に私はここで希望として申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  150. 今井勇

    ○今井政府委員 ただいまの先生の御所論を十分心にとめまして、今後の行政を進めてまいりたいと存じます。
  151. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 この際、午後四時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後四時三十四分開議
  152. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  153. 小川国彦

    小川(国)委員 短時間でございますので、集中的に農林大臣に見解をただしたいと思うのでございますが、農林大臣も御承知のように、成田空港の問題が非常に重要な焦眉の問題となってきているわけです。午前の委員会でも私ども農林省あるいは運輸省空港公団、これらの関係者といろいろ質疑を交わしてきたわけでございますが、昭和四十一年の七月から今日まで、成田空港関係閣僚協というのが九回、幹事会が十三回ということですが、大体年一回くらいしか成田空港関係閣僚協というのは開かれなかった。そういう中で、当初の出発点であって一番大きな問題点であった農民の土地対策の問題が、空港で千百ヘクタール、そのうち約六百ヘクタールが農民の土地であったわけですね。これの代替地造成事業というものを、本来、国のナショナルプロジェクトと言うなら、これは農林省みずからが代替地づくりの先頭に立って農民対策を講ずべきであった。ところが、これが所管大臣は、たとえば水資源公団の場合には農林大臣が所管大臣になっているのですが、空港公団の場合には所管大臣は運輸大臣、しかも政府機関として直接代替地造成事業というのは一切が空港公団にゆだねられて、その空港公団はまた、千葉県の協力という名のもとに、実質的には千葉県にやらせてきた。その結果が、五百四十二戸の移転農家に対して三百六十九ヘクタールしか代替地は用意できなかった。結局〇・六八ヘクタールぐらい、一・二、三ヘクタールあった農家がその半分に農地がなってしまった、こういう状況があるわけです。そういうふうに農業が追い詰められていく状況の中で、空港敷地の中、北総台地の中心で、いい経営をしている農家であればあるほど、これはどうも政府の言うことを聞いていたのでは貧乏百姓になってしまう、こういうことが今日までの根強い反対闘争の大きな柱になってきているというふうに私は思うわけなんです。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕  そういう点で、十二年間の反省と、いま現実に行われようとしている政府農民の話し合い、対話、こういうものを考えたときに、やはり農林省が今後この代替地対策の問題に対しては正面に立ってやっていく必要があるのではないか。  そういう点について、農林大臣も枢要な閣僚の一人ですから、やはりこの成田対策というものを関係閣僚協の中で取り扱っていくのには、農民対策、土地対策に対して積極的に取り組む姿勢というものが私はなければならないと思う。そういう点について、農林大臣として、代替地の今日までの経過に照らして、今後どうするのか。その点の大臣の見解を伺いたい。
  154. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘ではありますけれども農林省というのは農民を守る立場で、たとえば農家が土地を持っている、そこを道路に欲しい、あるいは飛行場に欲しいといったような場合、これは農地法に照らして農地以外のものに利用していいかどうか、同時にまた農民の権利を守る、こういうことが基本でありまして、運輸省が使う土地について、建設省が使う土地について、農林省が前向きでその分を責任を持つということは、これは空港公団の問題のみならず、全体として私はいかがなものであろうか、やはり利用される方が代替地を探すなり補償するなりということを第一義的の責任者としてやるべきであって、それに対して農林省が許可をしたり、あるいは技術的な援助をしたり、御協力をする、これがたてまえであって、それを積極的に農林省がみずから公団建設省等がやる問題について責任を持ってやるというのは、これは農家一般の皆さんの理解を得られるところではないのではないかと存じます。  ただ、成田空港はああいった国際的な問題でもありますから、できるだけ御協力はいたしますが、その原則は外すわけにはいかぬのではないか、こう私は思う次第でございます。
  155. 小川国彦

    小川(国)委員 参考にひとつ公団の総裁と航空局長にお伺いしたいのですが、いま農林省としては直接的にこの問題にタッチはできない、こういうことでございますが、現行の公団法の中で代替地造成あるいは取得、こういうことができるのかどうか、その点について公団総裁の見解を承りたい。
  156. 大塚茂

    ○大塚参考人 公団の権限として代替地の取得、造成ということはできるわけでございますが、ただ、農地法によって、農地公団が保有をするというようなことは認められておらないということでございます。
  157. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣、いまお聞きのように公団自体は農地を保有する権限を持たないわけです。そういうところが農民のための代替地をやると言っても、みずから農地を保有できない、こういう状況の中で、一体どういう仕事ができるというようにお考えになりますか。これはもうしょせん無理なことなんですよ。それから農林省に言わせれば、公団法で公団がやることになっているのだからということなんですが、この十二年間の進め方の行き詰まりというものは、農林省がみずから責任とすべき農民の土地づくりというものを、事成田空港においては放置してきた。それは新幹線をつくるとかそのほかの高速道路をつくるというときの農民の土地のかかわり合い方と、成田空港のように六百ヘクタールもかかるという大規模農地がつぶれるというときに、農民農林省であるならばその対策があってしかるべきじゃなかったかと思うのですが、いかがですか。
  158. 大場敏彦

    大場政府委員 農地法の件が議題になりますけれども、私は必ずしも農地法ということだけに話を短絡するのは当を得ないと思うのです。すべて日本の国の中でいろいろ種々の公共事業が行われているわけで、いま御指摘になりましたように新幹線の事業もありますし、あるいはダムによる水没とか、そういった関係もあるわけで、そういった場合に、やはり公共事業の施行者が補償工事一環として対農民の折衝をして円満に解決をして、そして代替地等を取得している、供給している、こういった対応があるわけでありますから、公団にこういう能力がない、こういう能力はあっても農地法で農地を取得できない、それが直ちに成田問題の障害になっている、あるいは代替地供給の決定的な桎梏になっている、こういうぐあいにはまた必ずしも断定できないと私は思うわけであります。ですから、話が農地法の世界だけに飛び込んで、それだけのところに議論が集中されるのは、必ずしも議論としてバランスを得ていないというふうに考えております。
  159. 小川国彦

    小川(国)委員 農林省農民の生活を守るというふうに先ほど大臣おっしゃったのですよ。ところが、成田空港のこの十二年の結果を見たら、農民の土地や生活を守ることになってないわけですね。私はこの間農林省の方と半日議論しましたが、どうも聞いていると、結論として言えることは、農林省という役所は、個々に相談が組織から上がってくれば相談になる。それから今度の成田空港のような場合には、ナショナルプロジェクトと言いながら、公団がやることになっているのだからそれでいいんだということで、現実農民の土地が三分の一以下になり、それから移転した農民の実に六〇%から七〇%の農民が農業を継続できない、出かせぎになるというような状況に追い込まれていても、農林省はなおかつこれは公団の仕事だからということで、実際成田の十二年間には、残念ながら農林省がまともにかかわり合いを持ってないわけなんですよ。そのことが、今日の成田空港が十二年かかっても三本の滑走路が一本しかできない、しかも依然として農民の根強い反対があって、そういう中で政府の政策が混乱しているという事態は、やはり農民の問題として政府がこれをとらえようという姿勢がない、公団の仕事だから公団がやればいいということで、五百から六百ヘクタールの農地造成事業というものを農林省が全くタッチしなかった。私は十二年間現地で見てきているわけですから、やはりそういう責任というものを、農林省も今日の段階では何とかしなければならぬという考え方を持っていただかなかったら、この問題はさらに今後五年、十年と未解決のまま続くだろう、私はこういうように思うのですよ。もう少し大臣の積極的なこの問題に対する考え方をひとつお聞きしたいと思うのです。
  160. 中川一郎

    ○中川国務大臣 公団農地を買って交換をするということは、これはできないと思います。しかし、その事業を県にお願いして、県が買ってそして公団にかわって交換するという方法もあるわけでございまして、農林省が何もやらなかったのではなくして、農林省相談のあったことは親切丁寧にやったつもりです。もし御指摘のように、こういう問題は農林省責任を持ってやれというようなことになりますれば、これは公団のための農林省になってはいけませんし、あるいは新幹線のための農林省であってはならないのであって、農民の権利を守る側、立場にある私どもは、その基本線だけはきちっとしていきたい。しかし、国家的事業であったりなんかする場合には、農民の権利を守りつつ、次に生きていく道はどうかということに対して協力を求められたり指導を求められますと、それはこれまた協力を申し上げる、こういう筋だと思うのでございまして、今度の問題が、農林省が不熱心だからこの飛行場ができないと、しりぬぐいを農林省に持ってきてもらっても困るのでありまして、むしろ、この飛行場は軍国主義につながるとか、何かかにか農民に反対をするような指導をしたかなりの人があることもひとつ反省をしていただきたいのであって、そのことによって学生等が騒ぎ、むしろイデオロギーに取り扱われたところに問題があるのであって、そのしりぬぐいを、農林省のやり方が悪かったと、こういう事件が起きてから持ってきてもらっても困るということだけははっきり申し上げておきます。
  161. 小川国彦

    小川(国)委員 農林省空港公団のための農林省とか、そういうことは言ってないわけですよ。ただ、現実に北海道の農業とか関東の農業というのは日本の代表的なところなんです。しかも、千葉県の北総台地というのは農業の代表的なところで、そこの六百戸に上る農家移転をするについて、どういう農地が取得できるのか、そういうような実態について農林省が少しも相談がなく今日まで推移してきた。このことは国家的な事業だと言わないのならいいのですよ。これが地方空港で、千葉県の地方空港をやっているのならいいのですよ。昭和四十一年の七月に閣議決定をして、その中には運輸省だけではなくて農林省も入って、千葉当局要望に沿い、皆様方納得のいくような十分な対策を講ずる、代替地は同等の面積を同一町村内か隣接町村内につくる。これは閣議決定なんです。農林省もやはりその閣議決定を遂行しなければならない責任というものは内閣の一省として当然あるのだし、それから大臣の方で、反対闘争の結果だというふうに結果をとんでもない方へ持っていっていますが、じゃ、皆さんが、この六百戸の農家がどういうてんまつをたどったか、この農民の転落した状況農林省としてはっきり調査して把握すべきだと私は思うのですよ。そうすれば、いかに農政というものが情けないだらしのない農政であったために今日の事態になったか、こういうことがわかると思うのです。そういう実態を、農林大臣が言うように、反対運動のために農民が転落していったならば、三反や五反や七反の農家が食えるわけがないわけなので、こういうふうな三反や五反や七反しか配分をしなかった、そういう農民が土地を持てなかったという実態というのは政府の施策の中で行われたのですから、反対運動の結果農地の方がふえたというのは、これは残念ながらないのですよ。一対一が辛うじて保たれた人が一割くらいで、あとは三分の一しか農地がなくて、農地を三分の一しか与えなかったのは政府なんですから、農民をそういう三分の一しか農地が持てないような状況に追い込んだことは、それを見過ごしていた農林省というものもやはり責任を感じなければいけないのじゃないか。いまからでもおそくないから、やはりそういう農民の問題を考えるのが農林省ですから、たとえ六百戸の問題でもみずからのものとして考える農林省の姿勢を持っていただきたい、こういうことです。
  162. 中川一郎

    ○中川国務大臣 せっかくの御指摘ではございますけれども、われわれは農民を守る立場にあるわけでございます。その農民公団の必要な請に応じて金銭で解決する場合、あるいは代替地で話し合いがつく場合、それはまさしく補償でございまして、その補償問題について農林省が積極的に前に出てやれ、全般的なことは言わないが空港公団は国策であるからやれということになりますと、これまた国鉄だって国策で、新幹線だって国策でやっていることであり、けじめのつかないところでございます。そのために県というものがあって、公団から委託を受けて代替地を探すなり何なりの仕事が法的に支障のないようにできるような仕組みがあるわけでして、農林省みずからがこれに出ていく仕組みというものはどこを探してもないわけでございます。また今後とも、そういうことではなくして、やはり公団が中心になり、県や市町村の御理解、協力を得ながらこの問題は解決していく。そしてこの補償問題も大方の方々、かなりの方々は御納得をいただいておるものと思いますし、今後まだ残っております方々に対しても、さらに一層運輸省当局指導を得ながら公団が先頭に立ち、また県が協力をしてやっていく、それに対しては農林省もまたできるだけの御協力は申し上げる、こういうことでやっていくのであらざれば、今度の問題から、いや補償工事農林省責任を持ってやるんだ、農民の説得に当たるんだということでありましては、農林省の仕事の基本に触れる問題でございますので、せっかくではございますが、農林省が先頭に立ってこの問題の解決に、農民対策に当たるということだけはひとつ、せっかくの御意見ですが、お断りをせざるを得ないわけでございます。
  163. 小川国彦

    小川(国)委員 残念ながら持ち時間が終了していますので、その基本的な考え方にはもう少し大臣との間で詰めたい点がございますが、これはまたひとつ別の機会に譲らしていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  164. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 野坂浩賢君。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農林大臣にお尋ねをいたしますが、ソ連における漁業協定等ずいぶん御苦労があったと思うのであります。その点については敬意を表するわけでありますが、その結果論については日本の漁民、日本の国民は不満の意を表明をしておる、これが実情ではなかろうかと考えております。  去年の六万二千トンが四万二千五百トンになりました。そして、新しい禁漁水域の設定もされました。協力費という状態もつくられました。こういう状態をながめてみて、努力をされたと思うのでありますけれども、この実態については私どもも不満を持っておるわけであります。この交渉の過程の中で、大臣が率先いろいろとやられたわけでありますが、大臣の談話の中で、この協定は五年間有効であるから、この五年間はソ連の態度は変わらないと思う、このペースは続くと思うと、こういうふうに述べられたように伝えられております。公海は自由操業というふうに私どもは考えておったわけでありますが、母川国主義といいますか、そういう姿でソ連の強烈な意見というものが通ってきた、この点についてはどのようにお考えになるだろうか。公海における操業、そして母川国主義、世界の大勢がそうなりつつあるというかっこうで強引にソ連が進めてくる、この関係でいままでの沖取り、この五年間変わらないというのはいわゆる公海における沖取りは認められたものである、こういうふうに解釈をしてよろしいでしょうか、その点について。
  166. 中川一郎

    ○中川国務大臣 お答えするに先立ちまして、このたび交渉に行ってまいりましたが、御指摘のとおり、昨年が二万トン、二百海里をソビエトが引いた段階において減りました。しかも、昨年から従来の日ソ漁業条約はこれを破棄する、こういうことになっておったわけでございます。が、今回またさらに二万トン減る、その上に、操業区域もきわめて大事な三角水域の相当部分が解除されなかった。したがって、漁区、漁獲量に対応する減船というものを昨年に引き続いて行なわなければならなくなったということについては、長年あの水域で操業しておりました百年にわたる歴史、われわれの先輩が築いたこれだけの漁業がこういう状態になったということは、いかに二百海里あるいは母川国主義あるいは相手のあることとはいえ、まことに残念な結果であって、国民の皆さんはもとよりでありますが、特にあの地域で働いております漁師の方々に対してはまことに申しわけない結果であったということを、この機会をおかりして、まず申し上げる次第でございます。さてそこで、今度の交渉で私は当初どうしても、昨年が二万トン減っておりますから、ことしはそういった大幅な急激な変化がないように、そのためにはやはり資源を大事にしなければならないとするソビエトの主張も正しいと考えまして、人工ふ化場その他協力できるものは協力して、お互いに譲り合って漁獲量を守っていきたい、こういう基本的態度で参ったのでありますが、予想はしておりましたものの、かたい壁は、沖取りはやめるべきである、しかも母川国主義というものは、これはソビエトあるいはカナダ、アメリカその他の国々だけじゃなくて、わが国も昨年の漁業水域を決めます際には、遡河性のサケ・マスは母川国がこれを管轄する、こういうふうにもう国際的にも定着したものでございますので、ソビエト側の主張というものは非常にかたく強かった。特にこれを裏づけするものは、すでにアメリカ、カナダも相当厳しい規制を行っておる、さらにソビエト自身がECその他において非常に二百海里時代の厳しさを受けておる、現実魚がなくなったというところから、わが国に対しても、どうかひとつその事情を察してくれというソビエト自体の厳しさもこれに重なっておった。そこで、何とか従来の実績をとお願いいたしましたが、いろいろ交渉の結果、あのような、いま御不満であるという御指摘があったとおりの結果となったわけでございます。この点についておしかりを受けましても、これは不徳のいたすところというか、微力のいたすところであって、何ら異議のないところでございます。ただ、今度の交渉で得たものは、非常に厳しかった旗国主義をとらないという問題や漁期の問題、その他規制等々、非常に厳しかったのでありますけれども、それらは大体解決をして、漁獲量と、それとうらはらをなす漁区についてかなり厳しい結果に終わったということでございます。が、もう一つよかったなと思えることは、ことし一年限りと言われておりました今度の話が、少なくとも基本となります協力協定におきましては、はっきりと四年、しかも、その先は毎年、破棄通告がなければずっと続くという長期協定でございます。ただ、サケ・マスにつきましては毎年、議定書によって、すなわち政府間の話し合いによって決めるということでございますから、まあことし決まったけれども来年はわからぬのだと言われればそれまででございますが、この協力協定が発足するに当たりましての初年度としての議論はかなり資源論について話し合いをいたしまして、そして話し合ったものであって、ことし一年だけがこうであるというんじゃなくて、今日の段階ではこうではなかろうかというところから決まった漁区であり、漁獲量でございますので、恐らく来年に何か変わった事態でも起きたりあるいはわが方が守るべきことを守らなかったりするような異常な事態が起きればこれは保証できませんけれども、守るべきは守り、きちっとした操業をしていくならば、私はソビエトといえども必ず理解をしてくれて、五年ぐらいはいまの操業ができるのではないか。言ってみれば、ことし限りのものではありますけれども、五年間の初年度としての議論を十分いたしてこういうことになりましたので、そう変化はないものと確信をしておる次第でございます。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂委員 協力費というものが今度出ておるわけですが、アメリカとの協力費といいますか、入漁料はたしか三・五%だったというふうに理解をしております。今度ソ連との交渉では四・五%、金額にして十六億七千万ということになりますと、これからニュージーランドその他と交渉する場合にこれが一つの問題になってくるのではないかと思うわけですが、四・五%になった根拠、これはソ連は一〇%ということを当初要求しておったのだから、それを四・五%にされたというのではなしに、われわれとしては水域は狭められ、禁漁区は設けられ、協力費は取られ、漁獲高は制限される、しかも重量と尾数で両方から縛りつけられるということになれば、これらは諸外国との関係から見て、協力費についてはどのような見解をお持ちでしょうか。
  168. 中川一郎

    ○中川国務大臣 お金にまつわる話は二つあったわけでございます。一つは、アメリカ等に払いますような入漁料等の扱いでございます。二つ目は、資源を確保するための、たとえば人工ふ化場等のようなものに対して協力しようということであったわけでございます。ところが、交渉過程において、先ほど申し上げたように、漁区を狭められたので、これは何とか解除してもらいたいと言ったら、資源確保のためだと言いますから、資源確保のためならばふ化場等をつくることによってこれに代替できるのではございますまいかと言ったところが、そのような意味のふ化場等についてならば私どもはお願いしませんということになりまして、約百億くらいかかるであろうふ化場に対する私ども協力でございましたが、それはもう要りません。というのは、単なるいやがらせではなくして、北海道では成功しておるようですが、わが国では成功するかどうかわからぬということもございました。  そこで、それは立ち消えとなりまして、交渉過程では、そういった金銭でわれわれは物を言っておるのではありません、資源で物を言っておりますというので、いろいろと詰めて最終案が出たわけでございます。私ももう少しがんばってもと思いましたが、漁期も近づいておりますし、これ以上お願いしてみても非常に壁は厚いと見ましたので、御批判はありましたが、最終判断をいたしました。  その際、イシコフ大臣から、ところで協力費というか、入漁料というか、あの一〇%の問題はどうなりますかという軽いお話がありました。交渉の当初に、三・五%はアメリカ等でも入漁料としてお支払いをいたしておりますので、それについては前向きで私は協力をしたいと思っておりますという約束になっておりましたから、三・五%プラスアルファ、約束はいたしましたが、御承知のように、相当削減されておりますし、協力費は漁民が出すものでございますので、大幅なお願いを私から漁民に話すことはとてもできません、しかし約束は約束でございますから若干なりとも御協力申し上げることにいたします。その御協力の程度は、三万五千トンが七千トン足していただいて四万二千トンにしていただきました、したがいまして、これになぞらえるわけではありませんけれども、三・五%に〇・七%を足して四・二%ぐらいがいいところではなかろうかと存じます。こういうお話を申し上げたわけでございます。それに対してイシコフ漁業相から、取引をするわけではありませんけれども丸くして五%ぐらいではいかがですかということでしたから、丸くする方法ならば四・五というのも丸い一つの数字ではないでしょうかと申し上げたら、それで結構でございます。お互いこれでいきましょう、こういうことで決まったわけでございます。  そこで、この四・五%の性格は何か、単なる入漁料ではなくして、資源を大事にするための機械とか器具等のようなもので、そのことによってまた私どもの資源も確保できるというような意味で、これは具体的なことは民間がやるべきことでございますので、そういった性格、お支払いの方法については、大日本水産会の亀長会長との間で民間が自主的に話し合いをした、こういういきさつになっておるわけでございます。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂委員 日ソ漁業協力協定の条文その他についても時間があれば述べたいと思うのですが、外務委員会あるいは先輩の皆さんからお話があろうと思いますので、後に回したいと思うのです。  そこで、この結果起きてくる問題ですね。わが国の漁民に対する影響というものは甚大であります。去年、ことしとなってくると、減船は約三割というふうによく言われておりますが、これについては政府はどのような措置をとられようと考えておられるのか。また、残った皆さんの、減船された皆さんに対する共補償というものもございますが、これに対する対策もあわせてお伺いをしたいと思います。  なお、いままでのような自主的な減船というのは不可能に近いのではないか。漁民の皆さんの中には、どうあろうとわれわれは全部出漁しようではないか、こういう強硬な意見すらあるとも伝え聞いておるわけであります。これらの漁民の皆さんあるいは加工業者、運搬業者、特に乗組員の皆さんには十分な対応策をとらなければならぬという政府責任が現在できておると考えますが、それに対する態度と対策を具体的にお話しをいただきたいと思います。
  170. 中川一郎

    ○中川国務大臣 この漁業には四種類ございます。御承知のように、日本海の方々、これは減船その他はなく従来どおり操業できるわけでございます。太平洋小型も日本海同様減船その他はなくて従来どおりできるわけでございます。もう一つは、四八船と言われる中部流し網でございますが、これは漁区、漁獲量からいって三割程度の減船は避けられないであろう。それから、従来のA区域で操業いたしておりました独航船による母船団につきましては、現在六船団あるわけでございますが、三割すなわち二母船は削減をせざるを得ない。ただ、二母船を削減して四母船ということでございますが、それもちょっと無理ではなかろうかなということでございますが、それを三母船にした場合でも、四母船のときの独航船そのままというわけにはまいりませんけれども、独航船はなるべく切らないという工夫をこらしながら母船のあり方というものをこれから研究したい。この点については、流し網、独航船、これは母船を含めて、この上とも業界と話し合いをしてよりよい最終案を出したい、こう思う次第でございます。  なお、これを決めるに当たりまして議定書その他に書くようにという意見もありましたが、こういったことは国内問題でございますので、ひとつ自主的にやることを理解願いたいということで御了承を得ておりますし、自主的に話し合いをしてやっていきたい。  そこで、昨年も減船をいたしておりますので、基本は昨年にならってやってまいりたいとは思います。しかし、その上に、ことし厄介な問題が二つ出てきております。  残ります方件には、昨年と同じような共補償ができるかどうかという問題がございます。この辺も昨年とは事情が違いますので、いかようにするか、負担のできる範囲内での調整をしなければならないということが第一点でございます。  もう一つは、減船をされます中に、昨年、共補償の負担を持っておる方がございます。減船になりますと、共補償の能力がなくなってくるという問題もございますので、昨年の措置にいまの二つの問題を加味して、あるべき姿はどうかということを、できるだけ財政当局の御理解もいただきたいとは思いますが、さりとて財政にも限界のあることでございますから、そこはぎりぎりの調整をして、まあまあ減船対策としてはよかったなというものを生み出していきたい。しかも、五月一日から四八船中部流し網は出漁しなければなりませんので、早急にまとめ上げて出漁に支障のないようにいたしたい、こう思っておる次第でございます。
  171. 野坂浩賢

    ○野坂委員 共補償の融資枠というのは、去年は三百八十七億あったわけですが、いままでやめていく人に残った人たちが補償する、その補償をするために融資枠もして、借りている。今度その人たちが減船になって、残されたのは半分になるということになりますと、共補償の負担が、残る人もなかなか大変ですね。しかも、日本漁業ということを代表して農林大臣がお行きになったわけですから、この共補償については、政府が肩がわりをしなければ、今後の漁業振興にも大きな影響があるのではなかろうか、こういうふうに私は思うのです。ぎりぎりのところというお言葉をお使いになったわけですけれども、その点がよく私には理解ができませんが、やはり政府が肩がわりをする、それから加工業者その他についても十分な対応策というものをお考えになっておることは当然だ、こういうふうに思っておるわけですが、その点については、措置をしていただけるだろうと確信をしておりますが、いかがでございましょうか。
  172. 森整治

    ○森(整)政府委員 去年共補償をしておるわけでございまして、その方がまた減船をもしするということになりますと、また払えなくなる、こういう問題があるわけです。その問題につきましては、別途何らかの措置を考えなければならないというふうには思います。  ただ、ことしも去年と同じように共補償が行われるべきであって、それが行われないから、かわりに政府がみんな見ろという考え方については、そういうふうにはなかなか考えにくい問題があるのではなかろうか。むしろ、やはり新しい現在の時点で共補償がなかなか行いにくいという事情はもちろんございます。そうなると、あと政府がどういうふうに救済金というものを考えていくか。去年の例を申し上げますと、利益金の約五年分を、共補償のない業種については見た例がございます。これが実は最高でございます。そういうことと共補償との関係、それから去年どういう水準であったか、そういういろいろな要素を総合的に勘案いたしまして、今回は政府といたしましてもできるだけのことはしたいと思いますけれども、去年とのバランスあるいは今後の業界の考え方、それらの調整の上にいろいろの判断を下していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  173. 野坂浩賢

    ○野坂委員 去年とのバランスと新しい情勢、それをどう調整をし、かみ合わせをするかということですけれども、去年、共補償をしてもらって、ことしは少なくなったから共補償をしないということになれば、これまた片手落ちになりますから、漁民の不満が増大をして、北海道選出の農林大臣の選挙区にも重大な影響をもたらすわけですから、それらについては必ず漁民の期待にこたえて、もし不満であれば北海道の土は踏まない、こういう決意で参られたわけですから、漁民の納得のできるような措置を政府責任において実施すべきである、こういうことを私は強く要望しておきます。それについては農林大臣からお答えをいただきたいと思うのです。  もう時間がございませんが、そのほかに、日中漁業協定にしてもことしで期限切れになりますし、ニュージーランドにも農畜産物との抱き合わせ問題でいまは交渉ができ得ない、こういう状態です。この間、先輩からもお話がありました北朝鮮との関係も、ことしの六月三十日で民間漁業協定は失効いたします。私はこの間朝鮮にも参りました。そして、経済水域二百海里の場合に、百五十海里まではそれではいいだろうという暫定合意書、これは日朝漁業協議会と朝鮮の平壌市にあります東海水産協同組合連盟との間に合意をしたわけで、暫定合意書という名前になっておるわけです。ことしそれをやる場合に、国交がありませんから、朝鮮民主主義人民共和国としては、日本の漁船が、百トン以下の諸君たちがとるわけですから、それを政府が保証するのは当然だろう、その政府の保証する方法いかん、こういって尋ねますと、それはだれが見ても政府が保証するというふうに理解ができるようにすることであって、わが国が言うわけではなくて、それは日本の国がやるべき仕事ではないか、こういうふうな意見があります。それらについては、これから民間漁業協定を、いわゆる暫定合意書を本協定に直していかなければなりませんが、その場合には、政府としては保証できる、そういうふうな措置をとってもらわなければ、もし、この合意書がだめになれば、向こうはどうでもいいわけですから、日本側の方に問題があるわけですから、やめるということになれば、これまた日本海の漁業に重大な影響があります。それについては、そういう措置を政府は誠意をもって対処していかれるだろうと思うわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  174. 中川一郎

    ○中川国務大臣 二百海里時代を迎えまして、日本の水産にとりましては非常に厳しいものがありますが、各国それぞれ事情が違いまして、ニュージーランドは酪農品との取引であったり、あるいは技術協力との取引であったり等々、いろいろあります。日中漁業の問題もございます。中でも御指摘がありました朝鮮民主主義人民共和国でありますが、昨年はああいう暫定取り決めでございますが、これは一年でございますので、また民間による話し合いを期待いたしておるわけでございますが、その場合、政府保証等につきましては、交渉の内容、具体案を見た上でまた十分検討してみたい、こう思っておる次第でございます。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう三分ばかりありますから、共補償の関係について後で御答弁をいただきたいと思うのです。  それから、たとえば民間の漁業協定をやる場合、朝鮮民主主義人民共和国との民間同士がやる場合に、その協定内容を見てからどうするかということを考えるというお話でありますが、その場合はそれぞれ代表が出て、協定ができれば即協定成立というかっこうになるわけでありますから、見てからということになると非常に問題を残すわけですよ。だから、話し合ってその協定即実行というかっこうにならなければ、やってみてどうか、それだったらやめますということになれば、その漁業協定をせっかく詰めたものをパアにする、なかったことにするということが現実的にできるだろうかということを、私は話し合いをしながら痛感をしてまいりました。したがって、協定は即実行というかっこうになれば——それぞれ民間漁業協定をやる際に、政府は間接的に指導しながら、協定即実行ということにならなければ、私はこの協定自体の成立を危ぶみます。その点についてはどうでしょうか。
  176. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まず、最初の方の共補償でございますが、これは昨年とは事情が違うということをはっきり申し上げておるところでございまして、昨年並みだけで済むとは思っておりませんので、これからは昨年とは違った厳しさを踏まえて漁民の方々の納得のいくようにいたしたい。  ただ、きのうも業界代表の方に申し上げたのですが、恐らく何百億という金になるだろうと思うのです。でありますが、私も今回ソビエトに参りましていろいろ勉強になりましたが、あの大使館の実態というものは、行ってみれば非常にみすぼらしいところに住まって役人の方々が苦労しておられる、国家投資というものは外務省の予算の全部よりも大きいという事態も十分考えながらこの問題に対処していかないと、政府の問題だから何でもかんでも全部が政府であるということではなくして、そういうことも踏まえつつ昨年とは違った事態にどう対処するかということを考えていっていただきたいということを業界の皆さんに率直に申し上げたところでございます。しかし、どうしても納得いかないような解決はすべきではありませんから、そういった財政の厳しさ、莫大な国家投資ということを踏まえつつ最終案を得たい、こういうわけでございます。  それから、朝鮮民主主義人民共和国との関係でございますが、私がソビエトに参りましても、政府の大方の代表権を持って行ったにいたしましても、交渉内容全部おまえが行って取り決めてきてよろしいということで行っているわけではございません。逐一、国益上どうすべきかということを相談して、時間をかけて合意をしておることであって、今度行きます民間の交渉団に、すべてやってきたことは政府責任を持つから行ってやってこいなどということは、いかに言われましても、やはり交渉内容を見た上でないと判断がつかないということは御理解がいただけることだと思います。もし、無操業状態になれば大変でありますから、もちろんできるだけの御協力は申し上げますが、白紙委任状をよこせと言われましても、これはお渡しするわけにはいかない、私自身ももらえないぐらい外交交渉というものは厳しいものである、この点は御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
  177. 野坂浩賢

    ○野坂委員 漁業協定に伴います減船その他大きな影響のある漁民の皆さん、あるいはそれに関連をする事業を実行していらっしゃる皆さん、それについての生活の保障あるいは対策、これは政府を代表してあなたがソ連にお行きになってお決めになったわけですから、それの犠牲になる皆さんに対しては手厚い対策をとっていくというのが与えられた大きな使命と任務であると私は判断しております。そのような措置を講ぜられるようにぜひお願いを申し上げておきたいと思います。  それから二番目は、朝鮮民主主義人民共和国との関係の問題は、おっしゃることは私はよくわかります。あなたが今度の漁業協定を行うに当たって、逐一わが国と相談をされて、対処の方針、合意のやり方、こういう点についても逐一御報告なり指示を得られたことだと思います。民間漁業の協定に行く諸君も白紙委任で思うようにやるというふうには考えていない。だから、皆さんに協力を要請をし、指示をお願いし、そして、その道程の中で必ず進めていくだろうと思います。そういう対応策はやっていただけますねということが一つと、そして、それを見てということでありますが、どっちにしても政府は何らかの形で保証しなければ成立はしないという場合には、その保証措置としては当然やっていただけるものと私は確信しております。日本漁業を守るためにも、漁民の生活の安定を期すためにも必要だろう、こういうふうに考えますが、そのように考えてよろしゅうございましょうか。
  178. 中川一郎

    ○中川国務大臣 内容を見た上で判断をしたいと思いますが、前向きでできるだけのことはしたい、こう思っておる次第でございます。
  179. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、時間が参りましたから終わります。
  180. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 菊屋堅次郎君。
  181. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 同僚の野坂君に引き続いて、今回、非常に厳しい情勢の中で、日ソ漁業交渉の最後の詰めを、中川農林大臣みずから訪ソされて、日ソ漁業協力協定を初め漁獲高その他の取り決めをやってこられたわけでありますが、結果については、それぞれ政党の立場なりあるいは政治判断として意見のあることは当然だと思いますが、御苦労だったと思います。  そこで、日ソ漁業交渉の中身に入る前に、四月二十一日に正式調印が行われた日、中川農林大臣、コスイギン首相にお会いになったわけですね。これは報道で出ておるわけですけれども、報道によりますと、中川農林大臣は北方領土問題あるいは日中平和友好条約の締結の情勢というものをお話しになり、コスイギン首相からは日ソ善隣友好条約の問題についてお話が出たというふうにお聞きしておるわけであります。これはたまたま私一月下旬から約一週間訪ソしました際に、最高会議関係あるいは各省のそれぞれのポジションの関係と話し合った際にも、相手側から日ソ善隣友好条約等の問題の提唱がございました。  これから日ソのグローバルな問題を進める立場から、コスイギン・ソ連首相との会談の状況について少しくお話を承っておきたいというふうに思います。
  182. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今度訪ソするに当たりまして、漁業問題がうまくいくようにという趣旨の福田総理からのブレジネフ書記長あての書簡を携えてまいったわけでございます。イシコフ漁業相に、できれば表敬をしながらお渡ししたいが、その時間、都合等がなければ直接お渡しいただいても結構でございます。福田総理からぜひ首脳の方にも御協力いただきたいということでございますということでお渡しいたしましたら、イシコフさんから、確かにお渡しいたします。そして御返事はまた別途差し上げます。こういうお話でございました。  最終段階になりまして、イシコフさんから、わが党の首脳の方が大臣にお会いすることになっております。恐らくあす午前中ぐらいではないかと思いますが、御連絡を差し上げます。こういうことでございました。  当日の朝になりましたら、コスイギン首相とお会いする機会をつくりました、時間は午後三時半でございます。たしか金曜日だったと思います。そこで、こちらからは重光大使と、行っておりました亀長代表に通訳を加えまして四人表敬をいたしたわけでございます。向こうからはイシコフ漁業相と極東部長さんと通訳の四人でございました。  そこで、コスイギン首相から歓迎のごあいさつと、このたびの漁業交渉が二人の間でその晩のうちに調印されることになっておりましたから、ああいったことはまことに結構なことであった、そこで、わが国とソビエトが非常にいい関係にある、今後ともさらにこれをよくしていきたい、そのためには、お渡ししてある条約というものができれば非常によくなるのである。これを妨げるグループもあるようだが、そうすればいままでよりもっともっといい関係になるので、その点を福田首相にお伝えを願いたい、こういう趣旨のお話がございました。  そこで、私からは、お世話になったお礼あるいは訪ソをいたしました目的、そしてできた結果等について申し上げるとともに、話し合いがつきましたが、昨年二万トン、ことし二万トンということでございますので、漁民は非常に混乱をいたしております。しかし、話し合ったことでございますから、ことしは何とか対処してまいりたいと思いますが、来年からまた急に変化の起こらないように、ひとつイシコフ漁業相とも話し合ってはまいりますが、首相閣下の御理解、御協力も願いたいと存じます。なお、条約等の話についてお話がございましたが、御承知のように、わが国には四つの島の問題と平和条約の関連の問題がございます。この点は御理解いただきたいと存じます。ただし、せっかくのお話でございますから、お話は総理によくお伝えしたいと思います。こう申し上げたわけでございます。  そうしましたらコスイギン首相閣下から、ただいま理解をしてほしいというお話ではあったが、私の方の話も理解してもらいたいということを重ねて申し上げておくという趣旨のお話がございました。その後また経済協力関係等日本とソビエトが手をつないでやっていくことによって両国が非常によくなるんだという趣旨の話を、各方面からの意見を加えてお話がありました。きょうはレーニンさんの誕生の会合かお話し合いがありますのでということで、約三十分たちまして、そこで最後に私から、必要があれば御報告申し上げますが、大韓航空機の問題についてお願いを申し上げて、御回答を得て会談は終わった、こういうわけでございます。
  183. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 報道では、中川農林大臣が日中平和友好条約の交渉問題にも触れられたというふうに聞いておるわけですけれども、これは全然言及されなかったのでございますか。
  184. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今度の訪ソ中、イシコフさんとの話においても、またコスイギンさんとの話においても、日中問題については、向こうからもこちらからも一切話はありません。
  185. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、今回の日ソ漁業交渉に限らず、北洋漁業の問題あるいは日ソの友好関係の問題をこれから考えていく場合には、やはりグローバルな視野から日本政府としても対応していくということは非常に必要だと思うわけですね。そういう点で、中川農林大臣が、漁業交渉の機会に、ソ連のコスイギン首相とも歓談をする機会を持ったということは、それなりの意義を持っておるというふうに思います。  そこで、第二点として、今回の日ソ漁業交渉の結果あるいはその前に先行して行われました日米加漁業交渉の結果というものを見てまいりますと、一体、来年以降の北洋漁業の状態をどう考えたらいいのか、あるいは将来の北洋漁業の見通しをどう考えたらいいのかということが、関係漁民から見れば大変重大な問題だというふうに思うのです。  それで、各論に入ります前に、農林大臣としては、この二つの漁業交渉を通じて、来年以降の北洋漁業関係の見通し、判断というものはどういうふうに持っておられるのか、それを概括的にお伺いをしたいと思います。
  186. 中川一郎

    ○中川国務大臣 北洋関係につきましては、二つに大別して問題があると存じます。  一つは、二百海里そのものによる日米、日加、日ソという問題でございます。これにつきましては、二年間の交渉経緯を経まして一つの見通し、方向というものができた。日米、日加もそうでございますが、日ソも暫定協定ではございますが、今回交渉に当たりまして、来年の日ソ、ソ日協定については、イシコフ漁業相に日本に来ていただきまして、両国が満足する解決を図ろうではないかとお願いをいたしましたところ、イシコフ漁業相も、ぜひお伺いして、飛行場の段階では十月と言っておりましたが、正確な時期は今後また決まってくるものと存じますが、本年、昨年と交渉しましたこのルートをよりよいものにしていこうではないかというお話も申し上げて、そうしようではないかということになったわけでございます。  日米の二百海里問題については、アメリカとの関係におきましては大体定着しつつあるのではないか。カナダとの話し合いも大体うまくいっておるだろう。  それともう一つは、こういった二百海里外の公海における漁業、わけてもサケ・マス問題というのがことしが新しい時代、すなわち日米加の間においてもあるいは日ソの間においても、新しい調整を行ったわけでございます。この両協定ともかなり長期のものでありまして、しかも、ことしが初年度である。日米加そして日ソと、その谷間であります水域が今度漁獲をされるようになった。もちろん操業区域はソ連側もあるいは米加側も縮小されましたが、こういった新しい時代の調整が行われる年であった。そして、その一年目は、議定書ではありますけれども、そして御批判はありますけれども一応決まった。これは単にことしだけのものではなくして、かなり長期にわたって確保できるものと私は思っておるわけでございます。ただ、その後大きな変化が起きたり、特に操業等についてわが国が約束を違えるというようなことがありますれば、これはまた厳しくなることは当然でございますけれども、このことしから始まります新しい二百海里なり、遡河性漁業問題等を踏まえて調整をいたしましたことしの操業というものは、今後とも継続されるもの、そしてまた継続していかなければならない、こう思っておる次第でございます。
  187. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの北洋漁業水域における日ソの今後の判断、あるいは日米加の今後の判断という点では、私は日米加の点では、古い時代に私自身本会議でも問題にしました例のいわゆるアブステンションのラインというのは十度西に寄るという形で、今後、日米加の関係では来年にまた新しい無理難題が出てくるという可能性は薄いだろう。同時に日本の漁業水域二百海里にアメリカ、カナダから漁船が来るという状態になる。でありますから、そういう点では日米加の間において来年度以降非常に厳しい条件が出てくるという可能性は薄いだろうという判断を私自身持つわけです。  ただ、日ソの関係はどうかということになると、これはこちらからも向こうへいわゆる八十五万トン、また六十五万トン、これはサケ・マス交渉の前に決まった、こういうことで向こうへも行くし、ソ連からもこちらに来る。いわゆるフィフティー・フィフティー論というのがあったりして、これが来年度以降そういう問題でむしろ日本の国内の水産界からすれば、こういった八十五万トン、六十五万トンの今後の変化いかんによっては、南北問題というのが国内の漁業界で出かねない情勢もあり得るということで、またソ連は、私自身、恐らく日中の問題については向こうから全然問題は出なかったということ、そのとおりだと思いますけれども、いわゆる中ソの関係から見て、日本と中国との関係いかんによっては、日ソの漁業問題に来年度以降やはり響いてくる可能性というのは、これは十分予想されるというふうなことを思ったりして、それできょうの本会議で、馬場君の質問に対して福田総理は、五年の協定ができた、一つのレールが敷かれたというふうに言われ、農林大臣自身も、ことしは第一年度のスタートだ、次年度以降もこのベースの上でいけるというふうなお話をされておるわけですけれども、日米加と違って、日ソの場合にはいわゆる来年度以降でもアンノーンファクター、これで大体ベースが決まったというふうに判断しかねる、そういう問題が私は考えられるのではないかというふうに思うのですけれども、今度交渉されて、率直な実感から、いや来年度以降も大丈夫だというふうに言い切れるかどうか、再度御答弁を願っておきたいと思うのです。
  188. 中川一郎

    ○中川国務大臣 角屋委員御指摘のとおり、日米加の方は大体これで安定していくだろうと私も思います。  私は、今度参りまして、日ソの関係も、二百海里内あるいは二百海里外のサケ・マスも安定していくだろうと思っておるのです。ただ、日中との関係においてという御指摘がありましたが、私どもは、日中は、あらゆる国とそういったことで意地悪をするような敵対関係を持たない関係において両国が仲よくしていく、こういう基本方針を貫くべきであって、日中が日ソに影響したり、日ソが日中に影響したりするような外交は国益上とるべきではない、こういうことであり、福田首相以下、外務大臣等も、日中は日中であって、日ソは日ソである、日中が日ソに影響を与えるような外交はとらないということはしばしば国会等でも申し上げておりますので、日中問題は、解決されるとすればそういった影響のない形において解決されるもの、したがって、日ソ間の漁業関係もうまくいくものと確信をいたしておるところでございます。
  189. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私も、いま中川農林大臣が御答弁のように、日中は日中、日ソは日ソということで、日本の主体的条件から問題をさばいていく、これはそのとおりでよろしいというふうに思います。ただ、相手国の、両国の関係は必ずしもそういうふうな受けとめ方にはまいらないだろうというふうに思いますので、日ソの漁業問題についてはやはり中国とのこれからの動向いかんというのが無関係ではあり得ないというふうに私自身政治判断をしております。それはそういうこととして、私の判断として申し上げておく程度にとどめておきます。  サケ・マスの今度の交渉の場合に、先ほど来も問題に出ておりますように、いわゆる母川国主義というのが第三次国連海洋法会議以来強く国際会議の舞台で出てくる、この方向は、日本政府としても、われわれとしても、大勢としてはこれを拒絶できないという事態にある。したがって、北洋の海域で操業する場合には、そういうことを大勢として拒否できないという状態の中で、長い間の伝統的な日本の漁業をいかに既存実績として確保していくか、その一点の努力に道筋としてはならざるを得ないというふうに、私は、大局から言えばそう判断をします。  統合草案の中で、遡河性魚種の母川国は、当該魚種に対し、第一義的な利益と責任を有するというふうなことがうたわれておるし、日本の立場から北洋漁業でやるとすれば、第三項のところで、外国の遡河性魚種の漁業については、母川国は伝統的漁獲国の操業実績、通常の漁獲量、操業パターン、全操業水域を考慮して、その経済的混乱を最小限にするよう協力する、いわばここに主張の根拠を置いて、伝統的な既存実績を最大限確保していくということに今日の国際的な話し合の大勢の中ではならざるを得ないということに私は理解をするわけです。  それにしても、過去の漁獲量の実績を見てまいりますと、御承知の日ソ漁業条約が締結されて、それに基づいての漁業規制が始まりましたのは昭和三十二年であります。日本の公海における漁獲量としては、昭和三十二年の実績として十六万二千二百六十六トンというのがこれまでの間の公海上では最高ということになっておりました。これから十六万、十五万、十一万、十三万、九万、十二万、九万、十一万、十万、十一万というふうな隔年の推移を経て、一昨年が八万二千百八十六トン、これは実績でありますが、去年が六万二千六百三十九トン、ことしは中川農林大臣もがんばりましたけれども、結局は四万二千五百トン。昭和三十二年日ソ漁業条約が締結された当時、十六万二千二百六十六トンからずっと九万、十万台以上を確保しておった数字から見ますと、これは資源状況の変化というのももちろんありますけれども、非常な激減になる。しかも、最低四万台から五万台のところで今後ともに漁獲ができるのかというと、確たる展望がないという状態に置かれておるということではないかというふうに思うのですけれども、今後の漁獲量がことしの四万二千五百トンからさらに拡大するという見通しも全くないわけではない。ことしは不漁年であるけれども、来年は豊漁年である。したがって、来年はことしの四万二千五百トンよりももっとふえる可能性がある、あるいは禁漁区についても、ことしのまざるを得なかった禁漁区を来年は少しく、努力によっては緩和できるというふうな判断ができるでありましょうか、その辺のところをひとつ農林大臣から……。
  190. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに、二十数年前にはかなりの漁獲量をとっておった、それはだんだん減ってきたことも事実でございます。ところが、ソビエト側から言わせますと、沿岸といいますか、川口に入ってきます資源が非常に減ってきておる、だから沖取りはだんだん減るのは当然のことであり、本来ならばゼロにすべきだ。そこへ二百海里というものが出てき、遡河性のサケ・マスは母川国がこれを管轄するということからいけばゼロにすべきであるというのが強い主張でございましたが、それは先ほどの海洋法会議においても、過去の実績を勘案して、経済的混乱を避ける、こういうようなところからと、もう一つは、日ソ友好という観点から今度の調整となったものと存じます。したがいまして、海洋法なり二百海里なり遡河性サケ・マスの今日の対応というものを踏まえた調整が四万二千五百トンであり、あの区域だろうと存じます。  そこで、今後これがどうなるかというと、私は、先ほど申し上げたように、しっかりした操業を行い、そして日ソ間で十分話し合っていくならばこの実績は確保されるものと、こう信じておるわけでございます。  そこで、来年はふえる可能性があるかというお話でございますが、実は交渉段階で四万五千トンになりますに当たりましては、約五千トンは不漁年調整ということで入っております。四万五千トンの根っこには、約五千トンは私どもの方もそれぐらいはいたし方なかろうということから、いろいろな計数整理をいたしまして四万二千五百トンになったわけでございますので、イシコフさん健在で、またわれわれも過去のいきさつで話し合いができるとするならば、豊漁年は五千トンふやしてもいいのではないですかと言い得る根拠は持っておるし、理解があるいは得られるかもしれないと思っております。  そんな甘いものではないかもしれませんが、ことし四万二千五百トンになりますいきさつでは、不漁年調整というものの五千トンが基礎として入っておる、であるから、言い得る根拠はあり得る、こう思っておるわけであります。
  191. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 こちらが相手側と漁業交渉を進めるに当たって、松浦さんが最初に行かれた当時から、ソ連に対する漁業協力として、ひとつふ化場をこちらでやらしていただきますが、いかがですか、あるいは実験場をやらしてもらいたいと思うのですが、いかがですか、それには相当な経費がかかるけれども日本としては協力いたします。これが結局は、大臣からも、先ほどの御質問に対しての答弁の中で若干出ておりましたけれども、ペンディングと言っていいのか、ふ化場あるいは実験場についてはそういう話としてきちっと中川農林大臣のところで決まらなかった。今後ともにこれは宿題になるか、あるいはどうなるかということは、私の政治判断では、やはり人工ふ化場を日本の協力によってあちらに持つということになると、沖取りという問題についてギブ・アンド・テークで将来ともに、それによって資源をプラスしたわけだからとらしてあげますというふうな関係になる。そこで、これは協力費とか入漁料ということであると、向こうがいわゆる沖取りの全面抑止ということを言う場合も、人工ふ化場や実験の協力とは違って、毎年毎年で、ギブ・アンド・テークの関係にないという認識から、そういう態度はとりやすい。最終的な交渉の過程の判断では、そういう人工ふ化場とか実験場を向こうがやっていただきますと言わなんだのは、将来展望の中で、沖取りの全面抑止というのは基本的な認識としては持っておる。したがって、いまの漁業協力についてはむしろ避けていこうとしたのではないかという判断をするわけですけれども、それはそうでないわけですか。
  192. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えいたします。  大臣の御訪ソに先立ちまして、私、ソ側と交渉いたしておりました際に、日本側から人工ふ化場あるいはこれに準じます実験センターを五年の計画で、約百億の事業費を投じまして設置しようではないかということを持ちかけた経緯がございます。また、大臣御訪ソになりましてからも、その構想をイシコフ大臣に話した経緯がございます。しかしながら、ソ側はこのような提案には今回の交渉におきましては乗ってまいりませんで、特に向こう側が指摘いたしました点は、北海道における現在の非常に高い効率を持った標準的なふ化場を極東のソ連水域において実施をいたしましても、必ずしもその効率が上がらないのではないか。というのは、特に自然的な環境その他が違っておりますので、さような点から必ずしもこれがうまく適応しないのではないかという問題と、いま一つは、このようなふ化場をつくって、その結果資源がふえるということについてはきわめてその効果が遅いということを申しまして、この二つの点から向こう側は乗ってこなかったということでございます。あるいはその背後に、角屋先生御指摘のような向こう側の考え方があったかもしれませんけれども、少なくとも表面に出てまいりました議論はさような議論でございました。  しかしながら、この人工ふ化場の問題は、実は河野大臣あるいは高碕大臣以来の懸案の話でございまして、しかも何回か両大臣間で、両大臣と申しますのは、日本側の大臣とソ連側の大臣とがコミュニケその他で確認し合ったことでございますので、今後ともこのような提案はわが方としては維持していきたいという気持ちは持っております。
  193. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 結局、漁業協力で人工ふ化場その他の提案は、ことしの場合は向こうが受け入れるという形にならずに、結局のところは協力費ということで十七億六千万、これは日ソ間で合意した一キロ当たり九百二十円の魚価に四万二千五百トンという掛け算からいってそういう数字になってくるわけですけれども、それの四・五%ということでラウンド数字で十七億六千万ということになるわけです。これは大臣、後ほど触れるこれからの減船対策あるいは雇用問題と関連するわけですけれども、この十七億六千万の協力費については政府と業界との折半説というのも世上あるわけですけれども、これはどういう取り扱いをされるわけですか。亀長さんがソ連に行っておって、亀長さんと相手側の漁業相の間で文書交換というか、文書を差し出すというか、そういうことで民間の形でやってくるわけですけれども、実際の十七億六千万の負担はどういう御方針でいかれるわけですか。
  194. 森整治

    ○森(整)政府委員 別に折半ということを決めておるわけではございません。むしろ、ただいまのわれわれの考え方は、人工ふ化場なり自然産卵場の設備なり機材なり器具なり、そういうものを現物で提供してほしいという希望でございまして、そのリスト、が向こうから提出されるということでございますが、そのリストを見ながら、民間で出したらいいというもの、あるいは政府の方で持ったらいいようなもの、そういう区分も可能なのではなかろうかということで、そのリストの提出状況を見まして、後で判断をいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  195. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回の漁獲高の大幅削減等に伴いまして、また去年以上に厳しい困難な条件の中で、北洋漁業の救済対策政府として早急に講じなければならぬ。先ほども質疑の中で出ておりましたように、昨年度は母船式のサケ・マス、それから中型のサケ・マス、これのAプラスB地域とB地域の二つに分かれておったわけです。それに太平洋の小型サケ・マス、日本海サケ・マス流し、それから日本海サケ・マスはえなわといった漁業種類に対して減船を行い、それに対して政府が一隻当たりの政府交付金あるいは融資対策事業を去年講じたわけでございます。そうして、去年の場合で言えば、北洋漁業の関係特別緊急融資として、これはつなぎ融資になるわけですけれども、百四十七億円、減船漁業者救済対策として政府交付金が総額三百二十六億円、先ほど共補償の問題が出ておりましたが、相互補償に要する資金の融通として三百八十七億円、これに税法上の特例措置というのもありますが、こういった共補償の中で、去年は、私の承知しておるところでは漁民自身が百三十三億円負担したと承知をいたしております。それと、離職者の雇用対策というのは、去年の暮れに国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づいて離職者に対する雇用対策上の措置をする、去年は北洋全体の中で約八千名近い者が離職せざるを得ないという事態になりましたが、ことしの場合も、今回の三割減船ということに伴います離職者がそれなりに相当数出てまいりまして、事態が今日の経済情勢でもありますので、これに対する対応というのは昨年以上にまた非常に困難な問題があると思います。  そこで、去年はそういう形でやられたわけですけれども、ことしの場合は、大臣も答弁で言われましたように、太平洋の小型サケ・マス、日本海のサケ・マス流し、日本海のサケ・マスはえなわは減船しないわけですから、去年はやりましたけれどもことしは減船対策としては要らない。したがって、母船式のサケ・マスと去年のAプラスB地域あるいはB地域の中型サケ・マスについては三割減船をやらなければならないという事態だろうと判断をいたします。  そこで、野坂君からも出ておりましたけれども、去年共補償で漁民が百三十三億円負担をした。ことによると、この負担をした、共補償をやっておる漁船自身をまたことし減船をしなければならぬという——ことによるとじゃない、事実そういうものが出てまいる。これはもう当然政府が最低限肩がわりしなければならぬ。共補償を実態に即してことしやるのかやらないのかという問題もありますけれども、共補償をやっておる漁船が実際に今度は減船になるという場合は、政府が全面的に肩がわりをしなければならぬ、これは最低限の問題である。それ以外の問題について、ことしの厳しい条件下で共補償をやるのかやらないのか、あるいは業態によってやるものもあれば、共補償でなしに全面的に政府自身が対策として考えるというものも出てくるだろうと思うのですが、その間の問題についてもう一度御答弁願っておきたいと思います。
  196. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生御指摘のように、相互補償、共補償につきましても厳密に言うと二つあるわけでございます。政府が一応公庫の資金を融通するということで公に認めたものと、そうでないもの、いま御指摘になりましたけれども、そうでないものについては私どもは一応関知してないという考え方でございます。その辺、おのずから問題を分けて整理しないといけないのではなかろうかというふうに思います。せっかくの御質問でございますから、この際明確にしておかなければいけませんが……。  それからあともう一つの、今後、共補償といいますか、それが非常にしにくい環境にあるわけでございまして、では、そういう環境を踏まえて政府はどういう救済金を出すか、これはまた別に去年との比較を考えながら、ことしのまた新しい事情としてその辺の事情をどういうふうに考えて救済金の処理を考えていくかということにつきまして、さらに業界ともいろいろ話し合いをしながら納得のいく形で決着をつけたいというふうに考えておるわけでございます。
  197. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 持ち時間があと五分ばかりになりましたので、質問を結びにいたしたいと思うわけです。  いずれにしても、関係業界の諸君と話をしましても、去年減船になって、ことしは大体去年の線でいけるのだろうと思ったら、さらに漁獲高も減り、三割減船をやらなければならぬ。来年はどうかというとわれわれには見通しとしてさっぱりわからない、そういう状況下にこのサケ・マスの場合も置かれているわけでありまして、関係業界としては大変深刻な事態だと思うのです。したがって、関係業界からは、今回の場合は全面政府補償で責任を持ってやってもらいたいという強い要請が起こっておるのもけだし当然のことだというふうに思うわけであります。五月一日には中型のサケ・マス関係はそれぞれ操業をしなければならぬ、その前に準備万端を整えなければならぬ。母船式サケ・マスについては六月一日からの操業ということで、五月二十五日には出漁予定ということになっておる。これもやはり準備万端これから急がなければならぬということでありますので、去年の例に準ずると言っても、去年の例とまた違った条件が、大臣も言われるように出てきておるわけでありますから、総括的に言えば去年の政府対策以上の対策で、やはり漁民がこれからの漁業経営ができるように私からも強く要請をしておきたいというふうに思います。  最後に、この間、漁船積荷保険のときに、国際漁業全般について私から触れて、安倍農林大臣臨時代理に、北洋の問題にしろ、あるいは北朝鮮の問題にしろ、あるいはニュージーランド、豪州、その他全般にわたる問題について質問を申し上げたわけであります。が、特にこの際一つだけニュージーランドの問題についてお伺いをしておきたいと思うのです。  これはもう従来日本にとっては貴重な漁場だったわけですが、貿易問題が絡みまして、せっかく鈴木前農林大臣が行かれたけれども、物別れに終わる。したがって、四月一日以降は相手の二百海里の漁業水域からこちらが出ざるを得ない、そういうことに相なっておるわけでありますけれども、六月には日豪の閣僚会議があるというふうに聞いておるわけです。ニュージーランド問題については、大臣も六月ごろにニュージーランドを訪問してこの漁業問題を打開をいたしたいというふうにも伺ったりしておるわけですけれども、このニュージーランド問題について、しかるべき機会に大臣みずからニュージーランドに行ってこの問題の打開を図るというお考えがあるのかどうか、お伺いをしておきたいと思うのです。
  198. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ニュージーランドの二百海里設定に伴いまして何とか打開の道を講じたいということで、わざわざ鈴木前農林大臣に御足労願ったわけでございます。先立ちまして、ニュージーランドから農産品を中心として宿題が来ておりましたので、これに誠意ある回答を持っていったつもりでございますが、受け入れられずに、四月一日から二百海里水域が設定され、わが漁船が総引き揚げしておる異常な事態にあるわけでございます。  そこで、何とかこれを解決したい。私もニュージーランドを訪問することはいとわないのでございますし、また六月には確かに日豪会議もございますので、できればとは思いますが、環境づくりがなくして、ただ行ってみてだめだったでも無責任でございますので、できるだけの環境づくりをして、その機会にニュージーランドを訪問し、解決できるものならそうしたいとは思います。  しかし、向こうの言っておりますことは魚と酪農製品を結びつけて、しかも、わが国にはわが国の酪農製品の事情があるものでございますから、これを受け入れることによってわが国の酪農にひびが入っては困りますので、譲り得る線というものは限界がございますからそう簡単にはいきませんけれども、その中にも何らか解決案があるのではないかということで、根回しといいますか、環境づくりに努力をして、そういうことになるように、円満に解決ができるように最善を尽くしたい、こう思っておる次第でございます。
  199. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。
  200. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 野村光雄君。
  201. 野村光雄

    ○野村委員 私は、日ソ漁業交渉問題につきまして大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、質問に先立ちまして、非常に大変な漁業交渉で、全国漁民のために御苦労なさってこられました中川大臣に対しまして、率直に敬意を表する次第でございます。  なお、本日の本会議並びに先ほどの委員会等を通じまして、確かに相手が相手だけになかなか思うような成果がおさめられなかった、こういう時点に当たりまして、率直にその非は非としてお認めになりながら、謙虚な姿勢を示していらっしゃることに対しましても私なりに評価をさせていただいておるわけでございます。  ただ、今後、毎年繰り返していかなければならない日ソ漁業交渉でございまして、この際改めて振り返ってみた中で、いま漁業団体なり私どもは、今回の日ソ漁業交渉に当たって一つ二つ誤算があったんじゃないか、こんなふうに受けとめております。  その一つは、先ほど来も出ておったかもしれませんけれども、何とかして効果あらしめるという善意のためではあったと思いますが、わが国としてソ連に対して各種の漁業協力なり援助をする、その代償というような立場で少しでも漁獲量をふやしてもらいたい、ところがそれにイシコフ漁業相が乗ってこなかった、こういう結果。第二番目には、漁獲割り当てに対しての読みに対して、率直に言って、公海上のサケ・マスは全面禁止というゼロからの出発、こういう原点に、まさかゼロからということではないのじゃないか、最初からそういうことで出ばなをちょっとくじかれた、こういうところにやはり若干の反省すべきものがあったのじゃないか、こういうふうに受けとめておりますが、率直に大臣の御帰国後のひとつ将来のための御感想をお聞きいたしたいと思うのですが。
  202. 中川一郎

    ○中川国務大臣 このたびの交渉の厳しいことはよく承知いたしておりましたし、したがって二月の十五日から五月に向けて折衝に入った。そして、折衝段階では、沖取りはこれは差し控えようということがありましたので、これは大変なことになったなあ、こんなことになっては大変だというので、いま先ほども答弁申し上げました松浦部長初め向こうの大使館の皆さん等、専門家等、あるいは業界代表の方々も熱心に交渉し続けておったわけでございます。ところが、三月末でございましたか、松浦部長が帰国直前に、沖取りは今年ひとつ認めようというお話がありまして、一同はほっとした気持ちでおったわけでございます。まず一匹もとれないという状態はなくなったな、そこで時期も迫ってまいりましたので、四月早々に、内村元の水産庁長官、長くやっておりますし、経験者でもあり、またわが省の顧問でもございますし、外交関係には非常に強いベテランでございますから、とりあえず私の代理として折衝方をお願いし、訪ソをしていただいたわけでございます。その段階で三万五千五百トンでございましたか、数字が出まして、まずまず一安心したなあ、そこへ加えまして、漁業協力というものに魅力を向こうは持っておるようにも思いましたことも事実でございます。これはまた当然のことで、向こうから言われるまでもなく、これからの資源を保護するという意味においては、わが国は積極的にやるべきであるというので、先ほども申し上げましたように、数年間の計画ではあっても、約百億程度の施設をつくることによって資源が守られるであろう、この辺のところとのかみ合いで話すならばかなりいけるのではないか、特に昨年二万トン厳しく規制をされておりますから、ことしそのような厳しいことにはならずに済めるのではないか、また済まさなければいかぬ、二年間連続して大打撃では、北海道漁民にとっても大変でございますから、そういう決意でまいったことは事実でございます。  ところが、そういった人工ふ化場の協力については、先ほども答弁があったとおり、長い懸案であり、今後も十分相談していくということではありましたが、そのことによって漁獲量をふやす、あるいは漁区を増大させるということにはとても結びつかなかったということも事実でございます。  また、ソビエトの話を聞いておりますと、二百海里時代というのはそうなまやさしいことではないのだ、自分みずからもEC等において厳しい規制を受けておる、全滅をしたというようなところもあるのだ、私は、日ソ友好ということからいけば、二年引き続いての減船ということは耐えられないのだ、どうか日ソ友好のためにもそういう厳しいことは外していただきたいとお願いしたのでございますが、わが国みずからが対外関係において全滅をする、ゼロになるのだ、こういうこともあるので、あなたの国にばかり汗を流してくれというのではなくて、みずからも汗を流しておることも理解してほしい、こうだんだんと言われてみますと、それが真っ赤なうそではありませんで現実の問題でございますので、その点についてはこれは困ったことだなあ、こういうことになったわけでございます。  しかし、イシコフさんも、せっかくそういうことであるのでかなりの窓も開くことにしたし、さらにはまた漁獲量についても七千トン上積みするし、さらには旗国主義というものも言うことを聞いてあげた、このように私としては相当の御協力、日ソ友好の関係もあるし、漁業者が混乱してはいけないということもわかるし、あなたがわざわざ来て御熱心にやったことがわかるからこれだけのことをやったのだ、切々と自分の立場として自分のやってきたことを友好裏に話をされますと、相当私も、私自身の回りが操業しておることでもございますので、最善を尽くして、あらゆる方面から参りました交渉団一致結束して、大使館の皆さんも内村顧問も、また松浦さんもあちらにおります大使、公使の方々も、特にまた向こうへ行っております業界代表の方々とも相談しながら打って一丸となって言うべきは言い、お願いすべきはお願いしたのでございますが、だんだん時期が過ぎて、これ以上交渉してみても平行線ということになりまして、時期は迫る、向こうの言うこともあながち否定できない幾つかの指摘事項もあるというところから、さらに将来長期的なことも勘案して、厳しい条件ではありましたが、政府の請訓を得て判断をした、こういうわけでございます。  誤りがあったとすれば誤りがあったと思いますが、私としては何とか大きな変化がないようにという気持ちで臨んだのでございますが、そういった見当違いがあったと言えば見当違いかもしれませんが、向こうが当初はそういったような意向も持っておりましたので、その意向を足がかりにしてと思って交渉に臨んだことは事実でありましたが、足、がかりは足がかりにならなかったということも率直に申し上げる次第でございます。
  203. 野村光雄

    ○野村委員 もう一つ、大臣にここで率直に私はお尋ねしたいのですけれども、私ども、大臣がだれよりも、北海道選出でございますし、漁業の町を地盤ともしていらっしゃるし、特に漁業に対してはことのほか精通していらっしゃる。こういうことに対しては私たちは全幅の信頼をいたしております。しかし、ソ連はソ連で、やはり私たちの立場から見ましたときに、三十年という長い漁業大臣という立場のキャリアと経験を持っていらっしゃいまして、私も微力でございましても、昨年訪ソもさせていただきまして、イシコフ漁業相にもお会いさせていただきました。その中でひそかに私は心配しておりましたのは、昨年あの二百海里時代を迎えての長期日ソ漁業交渉、前鈴木農相が前後三回にわたりまして訪ソなさいました。約五十数日間という折衝をなさったわけです。こういう前鈴木農相は、農相のまたその時代の大きなイシコフ漁業相との人間関係、ソ連の日ソ漁業に対する基本的な考え、やはりそれなりの知識なり経験を踏んでこられたと思っているのですが、こういう前農相の御意見、また、そういうものを求められていったのかどうなのか、この点はどうなんですか、率直に、簡単でよろしゅうございますから。
  204. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昨年鈴木大臣が苦しみましたのは、例の領土問題でございます。これはイシコフさんにも鈴木さんにも、とうてい自分の判断だけで解決できるものではない。鈴木さんには国民的背景もあれば、あるいは政府のかたい、あるいは国会を挙げての厳しい縛りがございます。また、イシコフさんにもそれなりの領土問題については縛りがあるということで、非常に時間がかかったということでございまして、魚の問題よりはむしろそちらの方で時間を食ったものだと思うのです。  今回私参りまして、イシコフ漁業相が二十年、三十年のキャリアがあるから勝負は非常に厳しかったのだろう、こういう意見がありますが、私はむしろ逆に思っておるのでございます。もし、新しい人が漁業大臣になっておったならば、言ってみれば取りつく島もない。資源論からいって恐らくもっともっと冷たい結果になったのではないか。イシコフさん、ベテランであればこそ、過去のいろいろな日本の動き等も知っておりますし、資源等も知っておって、むしろ日ソ友好というものは大事である、あるいは漁民の立場というものを考えて、窓をあけるにしても数量を決めるにしても、あるいは旗国主義というものを貫かしていただいたのも、むしろイシコフさんという人のキャリアが、日本にとってマイナスよりは、いい結果に仕向けてくれたとも、これは全部そうだとは言いませんけれども、そうも判断できるぐらいだと評価する人は、私一人ではない、多くの人が接してみてそう感ずる。それだけ人物が偉大なのかもしれませんけれども、私はこういう厳しい時期に、遡河性のものは母川国のものである、しかもソビエトが非常に苦しいという中にあって、漁業問題についてこのような結果を得たことはそう評価すべきだという面も持っておる。  その証拠には、今度参りましても、無条約状態は避けなければならないということで、イシコフ大臣は非常に忙しい日程、わが国との交渉だけではなくて、多くの国との交渉もあったのでございますが、毎日精力的に十分話し合いをして、聞くべきことは聞き、問答無用というようなことではなくして、十分誠意を持って話してくれたあの誠意、私は折衝いたしましてそういった面もあるのかな、こう感ずるぐらいでございまして、イシコフさんがわが国にとって手ごわい相手であることには間違いありませんけれども、むしろわが国にとっては長い間、また今後ともやっていただいた方がいいのではないかというぐらい、私としては正直感じてきた次第でございます。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 野村光雄

    ○野村委員 それでは時間がございませんので、具体的問題を簡単に項目を挙げまして質問いたしますから、答弁漏れのないように、ひとつ私の質問の趣旨をよく踏まえて御答弁をお願いいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、四万二千五百トンという、前年対比三一・四%減、五十一年に比較いたしますと半減された実態であります。そこで、先ほど来質問が出ておりますので、重複は避けますけれども、まず減船対策に対して、これはどうしても聞いておきたいことでありますが、具体的にひとつこの対応策に対してどういう考えでいらっしゃるのか。  それから、第二点といたしまして、今回の漁業交渉によりまして、ソ連に対する漁業協力費といたしまして、十七億六千万円、これは先ほど来の御答弁を聞いていますと、漁業団体がこれを負担して支払う、こういうようにちょっと聞き及んでいるわけですけれども、そうした場合に、漁獲量は減るし、もし漁業団体が負担をするとするならば、それが魚価にはね返ってくる、こういうことに対しての不安を抱いているわけでございますけれども、むしろこれは農林省として、国が支払っていくべきでないか、こういう考えを持つものですけれども、これに対する御答弁をいただきたい。  共補償の問題、これは先ほど来触れておりますので、この問題に対する基本的な考えだけひとつもう一度示していただきたい。  それから次に、いま北海道の水産関係団体、道水産部等で心配いたしている問題で、漁業区域が大幅に制約をされた、さらに大幅な減船を余儀なくされた、このことによりまして、いままで最も漁獲量の高かったこの水域が制約された関係上、少ない四万二千五百トンではあるけれども、果たしてこの区域内でこの水揚げができるのか、こういうことに対する不安を抱いておりまして、このとれるようになりました水域の過去の実績と、そして、この四万二千五百トンがこの水域内で果たして水揚げができるのか、こういう問題に対して、ひとつ過去の実績等を含めながら明確なる御答弁をいただきたい。  次に、恒久対策問題として二点お尋ねをいたしたいわけでございますけれども、ソ連等では盛んに母川国主義というものが叫ばれておりまして、この問題は、すでに国連海洋法会議等におきましてもだんだん世界の大勢となってまいりました。そこで、この二百海里時代を迎えまして、今後、来る年、来る年、漁業交渉によって日本がかつての大幅な漁獲量を得るということは非常に至難な状態になってきたのではないか。そういうことから、長期展望に立った場合に、わが国独自の力で増養殖等の漁業を再検討する段階に来ているのじゃないか、大臣、私はこういうように思っております。  そこで、一番問題なのは、幸い北海道を初め、日本の国というのは周囲が海に囲まれておりまして、このサケ・マスの生まれ故郷に帰ってくるという習性の中からいきますと、さらに人工ふ化を拡大をして、そうして母川国主義の中でわが国自身がこういう人工ふ化、養殖等によって漁獲量をふやしていく、そのためには、現在の河川が非常に汚染されている、こういう問題もございます。かつて北海道の石狩川あたりもサケが相当上った川でありますけれども、最近は上らなくなった。こういう具体的な、サケ・マスが母川に帰る習性をもろに生かして対応策をしていくならば、私は今後の努力によって、わが国独自の中で漁獲量はもっともっと水揚げをふやしていくことができるのじゃないか、将来のためにこういうことに対する恒久的な対策として対応する考えは持っていないのか、こういう将来展望です。  それから、もう一つ恒久対策といたしましては、ただいま申しました、今回、大臣から提案ございましたけれども、農林水産省という機構改革もできてきますけれども、この漁船の減船対策、流通機構の改善、増養殖事業、こういうもので特別な対応策をするための対策本部みたいなものを水産庁に別個につくる考えはないか、これが第四点であります。  最後に、もう一つは、最近、小型のサケ・マス漁船で、トン数の水増し問題、こういう問題が起きておりまして、去る十八日、また二十二日も小型のサケ・マス漁船がソ連の取り締まりにおきまして大きな罰金を取られておりますけれども、これはむしろ漁業団体からは、十トン未満ということではむしろ小さ過ぎて危険が伴う、こういうようなことで、数年前から増トンをしてほしいということを水産庁に申請が出されておるようでございますけれども、現在の小型サケ・マスのこの十トン未満というものを増トンする対応策は考えていないのか、この点を質問いたします。  以上であります。
  206. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まず、減船対策でございますが、この点は先ほど来も申し上げましたように、中部流し網におきましては三割程度、大体そういうことになろうと思います。それから、母船式においては、いま六船団ございますが、二船団は最小限度削減をしなければならない。また、それに付随いたします独航船もこれは減船せざるを得ない。しかし、二船団で済むのかな、三船団切って三船団ぐらいにしなければならないかなという考え方もあの水域では考えられるわけでございます。しかし、その場合は、なるべく独航船は一船団減らしたことによって一船団分切るというのじゃなくて、独航船の数はなるべくふやすという配慮をしながら三船団を残す、こういうようなことで、基本的な考え方として、これから業界と話し合いをしたい。  それに対する補償等は、これは昨年をベースにして、ことしまた新たに昨年のような共補償ができるのかなという問題もありますし、あるいは減船されます船そのものが共補償の額を持っておるわけですから、これをどうするのかな、こういうようなことを踏まえまして、昨年よりはプラスなかっこうで減船対策はしなければならぬだろう、こう見ておるわけでございます。  次に、四・五%の問題でございますが、二百海里時代を迎えて、大体入漁料というのは、アメリカでもそうですか、三・五%がベースになっております。そこで、今回は三・五%でと思っておったのでございますが、向こうから一〇%という案もございまして、また私が冒頭、交渉に当たりますに当たりましては、三・五%は前向きで私の方は用意をいたしておりますと言いました関係もあり、最終段階で三・五%プラス〇・七、これは三万五千トンプラス七千トン、四万二千トン、これを一けた下げたかっこうのようなことでイシコフさんに申し上げたところ、丸くして五%にしてくれないかという話があって、丸くする方法ならば四・五というのもありますがいかがですかと言ったら、よかろうということになって、決まったのが四・五%でございます。ただし、これは原則は漁業者が負担する。入漁料三・五%を持っておりますのも、これは漁業者負担ということになっております。コストの一部であるという考え方でございます。したがいまして、四・五%も原則は漁業団体が負担をするということで、漁業団体の代表でございます亀長水産会会長と向こうの政府との間で話し合いを、どういう処理をするかということになっております。  そこで、これを全部漁業団体がするのか、どの程度政府が負担するかということについては、先ほど来長官が答弁いたしておりますように、今度は現物でお支払いをするということになっておりますので、これを仕分けをして、政府が持ったがよかろうというようなもの、あるいはこれは団体が持った方がよかろうというような仕分けをして、漁業団体とも話し合いをして、政府のできるだけのことはしたいな、こう考えておるわけでございます。  次に、共補償のことは、先ほど申し上げましたように、昨年とは違った状況になっておるということでございますので、繰り返さないことにいたします。  それから区域あるいは減船から空枠になりはしないか、こういうことでございます。確かにいまの水域で過去の実績からいきますとかなり無理なところもありますが、区域が狭められただけにそこでの操業努力というものをやれば、期間はたっぷりあるわけでございますから、まあまあいけるのではないかな、こう見ておるわけでございます。  それから、恒久対策について、今後の問題、一体今後どうなるのか。これはしばしば御答弁申し上げておりますように、確かにいままではだんだん下がってまいりましたし、これからもまただんだんなくなってしまうのではないか、こういう御懸念かとも存じますが、私は今度はまた新しい出発である。過去の日ソ漁業条約というものがピリオドを打って、これから二百海里時代を迎え、遡河性母川国主義というものを迎えたこの段階において五年間の協力協定、これは五年ではありますが、将来毎年、破棄通告をしなければ継続する、恒久性を持った協定でございます。その協定に基づく初年度の話し合いというものをいたしたわけでございます。  そこで、資源その他いろいろと話し合ってできた五年間の協定の第一年でございますから、私は今後重要な変化があったり、あるいは日本の操業等において間違いを起こしたりする等のことがあれば、これはそういうことになると思いますが、しっかりした操業を行えばまずまず当分の間は大丈夫ではなかろうか、こう判断をし、また、そうあってほしいということを願っておるものでございます。もちろん、ことし議定書を結ぶに当たりまして、これは五年間の議定書であるということにはなっておりませんから、理論上から言えば来年以降も毎年決めていくわけですから可能性はあるわけでございますが、五年以上の計画の初年度の調整を資源その他から十分話し合ってやったものであって、来年に全く関係のない数字だとは思っておりません。そういう意味で、今後はしっかりわれわれも正すべきは正して、この数字だけは前後できるようにいたしたいものだと思っておるわけでございます。また、母川国主義に見られるように、わが国も母川国でございますから、わが国へ帰ってまいりますサケ・マスがたくさん帰ってくるように、それにはやはりふ化場の建設、養殖等国立、民営等々含めて、いままでもかなりここ二、三年やってまいりました。特に昨年から大幅にやっておりますけれども、さらに計画を立てて増養殖というものをやってまいりたい、こう思う次第でございます。  次に、水産省、これはもう漁業外交を行うに当たって、農林大臣というのと農林水産大臣というのでは与える印象も非常に違うと思いますので、ぜひこの国会で通していただきたい。同時に、部も一つ増設をいたしまして、外交関係、非常にこれはもうソビエトだけでなくて、韓国の問題もあれば、ニュージーの問題もあれば、もう多くの国と折衝しなければなりませんので、特別対策本部というのではなくて、もう水産庁の機構を挙げてこの問題と取り組んでいきたい、こう思う次第でございます。  トン数の水増し問題で日ソ間にトラブルがあり、これをどうするか、あるいは大体そもそも小さいのではないか、これをどうするかということについては、水産庁長官から答弁をさせます。
  207. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま御指摘のトン数の水増し問題につきましては、船が帰ってまいりますので、道庁を通じまして調査を行うことにしておりますが、もしお話のように、トン数が従来よりもう少し多くないと困るのであるというお話につきましては、これは大体七トンを十トンに直したわけでございます。これ以上大型のものにつきましては、逆にそういう船の型があるわけでございます。それとの漁業調整の問題が逆にございます。そういう観点から、直ちにそういう話にはなかなか応じられないのではないだろうかというふうに思います。むしろ適正なトン数でやはり操業をしていくということが、今後こういう二百海里時代でいろいろ監視の目が光るということになりますと、必要なのではなかろうかと考えておる次第でございます。
  208. 野村光雄

    ○野村委員 以上で質問を終わります。
  209. 中尾栄一

  210. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日ソ漁業協力協定等について、農林大臣質問いたします。  農林大臣政府を代表して四月十一日から二十三日まで懸案の日ソ漁業協力協定交渉のため訪ソをされる出発に先立ち、去る四月七日、緊急質問をいたしたのでありますが、果たせるかな、その交渉の結果は漁獲量、操業区域、期間についても想像に絶する結果となり、残念至極と言わざるを得ません。このまま推移すれば遠からず北洋締め出しとなる意図が明らかじゃないか、こういうふうに国民は大変憂慮にたえないところでございます。  いろいろ答弁を求めたいのでありますが、同僚議員からも質問ございましたし、時間の制約もございますので、はしょって、どうしても聞いておきたいこと数点にしぼって質問をいたします。  母船式にしても、いま大臣からもいろいろ答弁がございましたが、六船団のうち減船を二船団にするか三船団にするかなどということでいろいろ検討中だということをおっしゃいましたが、大変憂慮すべき状態でありますが、日米加漁業条約との絡みで、漁業区域の壊滅的な縮小とあわせて日米加の操業期間の制約というのがあるわけでございますから、こういうようになってきますと、ソ連から締め出され、日米加からこういうふうに制約を受けますとどこに漁場があるのか、こういうことになるわけでございます。従来、母船式は五月十五日出漁していたわけですけれども、一番早い漁場でも六月一日以降にならぬと網を入れることができないことになったわけです。  日米加の漁業条約が今月上旬妥結したわけですけれども、従来の西経百七十五度が東経百七十五度までしか出漁できない。しかも、なおかつ操業期間の制約がある。ゆえに漁場をどこに求めればいいか、また母船式はいつ出港すればいいのか、これらが問題であります。中型流し網のみならず母船式も壊滅的打撃を受けているわけでございますから、先ほどの話と同じように、これはまた漁獲量が決められても空枠でなかなか漁獲量確保ができないんじゃないかといういろいろな心配がございますが、こういった漁場の問題、母船式はいつ出港するのか、この点について簡潔にひとつまずお答えをいただきたい。
  211. 森整治

    ○森(整)政府委員 現在のところ、五月二十六日、函館を出港するという予定になっております。
  212. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、減船に対する救済対策の問題ですけれども、昨年は五百五十一隻プラス母船四隻で五百五十五隻が減船したわけですが、母船四隻は別として、五百五十一隻に対し政府の交付金は三百二十六億円、それと共補償に必要な金を、農林漁業金融公庫の金を貸付金という形で三百八十七億円を措置したわけであります。今年も昨年との見合いになるのかとわれわれは思っておりますが、実はこの共補償についても政府の交付金にしてくれという漁業者の強い要請が出ていることは御存じのとおりでございます。すなわち、出漁しない、残る者が多くなるのでどうしても負担が重くなる、こういったことから政府のいわゆる交付金にしてくれというのですが、これはどうしてもそうしなければならぬ羽目になってきたんじゃないかと思うけれども政府も十分検討しておられると思うが、その点についてはどういうふうに見解をお持ちであるか、お答えいただきたい。
  213. 森整治

    ○森(整)政府委員 昨年と事情が若干、共補償につきましては違っておることはそのとおりだと思います。ただ、昨年と同じ共補償を政府が全部交付金で見るということは私ども考えておりません。むしろ共補償が非常に少ないということになりますと、やはり漁業者の立場というのもございますから、昨年の例を申し上げますと、利益の五年分が最高額の交付金、利益のある一年分なりのほかに共補償を十年分見るというようないろいろなやり方がございました。ただ、そういう共補償がある場合とないという場合にいろいろ差が生ずるというのは、これはやむを得ないことでございます。ただ、去年の例もございますし、またことしの事情もございますし、その辺をどういうふうに調整をしながら減船をされる方々の御納得を得ていくかということにつきましては今後非常にむずかしい問題でございますが、そういう調整を図りながら御納得のいく線で妥結をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  214. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いま水産庁長官から答弁がございましたが、あなたも北海道出身の大臣であるし、また現地のことはよくおわかりだと思うが、一応水産庁長官答弁もわからぬではないですけれども、実際に、三割減船というけれども今回は三割にとどまらない。これは母船式にしてもさっきおっしゃったように、二船団、恐らく三船団ぐらいになって半分になるんじゃないか。そうすると、一般のサケ・マスにしても当然三割どころか三割五分ぐらいになるんじゃないかというようなことまで言われておりまして、かなり上回る数字になる。控え目におっしゃっておると思う。そうして見たときに、だんだんだんだん残る人が多くなって、どうしても負担する人が少なくなる。そうすると、無理をしてくる。従来の経過もわかるけれども、こんなことではとても負担し切れなくなってくるということで、相当、これは前からの例もあるので一挙にはいかないかもしれないが、条件を考えていかなければならない。そうしないと大変無理がいく、こう思うが、率直に交渉に当たった大臣として、責任者として、あなたどう考えられますか、あなたからも再答弁をお願いしたい。
  215. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昨年の場合と違うのは二つ、三つあるわけなんです。共補償の場合、ことしは船の残る方が少ないからなかなか大変だという御指摘ですが、それ以外に去年また共補償をしておるという二つの問題がありますから、ことしまたやめていかれる人に共補償できるかどうかということについては、言わなくてもなかなか厳しいということを踏まえまして対処いたしたい、こういうわけでございます。
  216. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その点はひとつ十分事情はわかっておられると思うが、だんだんだんだん残る人が多くなってくるわけですから、相当厳しいことになると思うので、十分注意をして対策を講じてもらいたいと思う。  さて、今回の日ソ漁業交渉の経過を見ましても、これは減船の繰り返しになってまいりますね。そうすると、抜本的なサケ・マス漁業の将来の見通しということを確立しなければ大変な問題であると思う。大臣も今回の交渉に行かれていろいろ感じられたと思うけれども、将来のサケ・マス漁業の展望ということについてはどういうように考えられるのか、これはひとつここで相当深刻に考えなければならないと思うが、その点についてひとつ見解を承っておきたい。
  217. 中川一郎

    ○中川国務大臣 日米加の魚の話し合い、また日ソの話し合いというのは、相当古い歴史がございます。ところが、古い時代に比べますと、かなり量が減ってきたというのも事実でございます。そこで、八万トン台で推移してまいりましたが、昨年から二百海里と遡河性の問題が出てまいりまして、また新しい厳しい事態を迎えたわけでございます。昨年はソビエトの二百海里という事態に対処して二万トンが減少され、六万二千トンとなったわけでございます。そして、ことしは日米加の対応、そして遡河性サケ・マスによる対ソ調整ということで、本年は日米加の改定、それから日ソの新しい協定というものができて四万二千トン、そして非常に狭められた操業水域という事態を迎えました。  そこで、これからまただんだん減っていくんであろう、こういう御心配が大方の方にあることもよく承知いたしておりますが、交渉いたしました私といたしましては、これが新しい事態のスタートの年である。今後はしっかりした操業をやっていくならば、これから長期に契約を結びましたその初年度のこの実績だけは何としても確保していきたいし、確保していけるのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。同時に、各国が母川主義をとっておるのと同じように、わが国もまた母川国でもあるわけでございますので、増養殖事業等を、ふ化場の建設等を前向きにいたしまして、帰ってくるサケ・マスの増大ということについても前向きに対処して、北洋におけるサケ・マス、そして沿岸定置等による資源の確保を図って国民の負託にこたえてまいりたい、こう思うわけでございます。
  218. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣は四月二十一百帰国されまして、そのとき総理に対して報告をされた後、記者会見をしておられます。その中で「今後は各国との水産外交を推進して漁場の確保に努めるが、前浜(日本の沖合い、近海を指す)をもっと大事にする漁業に切りかえなければならないと思う。」こういった趣旨のことを記者会見でおっしゃっておられます。このことは間違いございませんね、大臣。
  219. 中川一郎

    ○中川国務大臣 全くその通りでございます。
  220. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日本におけるサケ・マスふ化事業を充実する必要がある、こういう意味も含めてのことだとわれわれは理解して質問するわけですが、御承知のように、日本はサケ・マスのふ化技術というものは世界的にも高度であります。明治九年にやったという歴史がございますが、組織的には明治二十一年からやっておりまして、昭和二十七年の水産資源保護法施行に伴い、北海道さけ・ますふ化場、すなわち千歳にございますが、昨年われわれも視察をしてまいりました。このふ化場は、昭和二十七年、水産資源保護法施行とともに水産庁の所管になったやにわれわれは記憶しております。現在、本場のほかに六支場、三十七事業場があるわけでございます。北海道さけ・ますふ化場の五十三年度予算をちなみに申し上げますと、十三億四千万円、かなりの予算を投じて事業をやっているわけですが、そのほかに本州の方においては太平洋側として茨城県、日本海側として富山県等があり、組合がふ化放流事業をやっておりまして、国は二分の一補助をいたしております。このように本州のサケ・マスに対する放流事業事業費補助を三億六千万円国は出しておりますが、今回、農林大臣の訪ソに当たって私が出発前に、この協力費についてはアメリカ、カナダ並みに三・五%、これを一歩も譲ってはいけない、これ以下に交渉しろということを厳しく申し上げたわけですが、結果的には四・五%の協力費を出すことになったわけです。これは日本円で十七億六千万円支出することになるわけでございますが、こういったことについてもついに日本側の譲歩となったことはまことに残念である。  そこで、私は申し上げたいが、北海道だけで、ふ化放流は従来八億尾、本州で約三億尾くらいでございました。回帰量を見ますと四十七年、四十八年ごろから比較的増大しておりまして、五十年には北海道だけで千五百万尾回帰してきているという記録が出ております。最高年度でございまして、今年はおおむね一千万尾と言われておりまして、四十五年ごろには五百万尾でございましたが、それと比べると五十年度というのは実に大量の回帰を示しております。成果が出てきたわけです。こういったことから、日本のふ化技術は高度である、しかも日本のふ化放流に今後ますます力を入れていくということは、当然先ほどの大臣の答弁からも考えられるし、前浜を充実していくということですから当然のことでございます。  そういった意味で、私はぜひ大臣にこの際要求したいことは、北海道もさることながら、本州のふ化放流を県なり漁協に任せている現実を改めて国営にして、そして力を入れる、もちろんそれにも協力すべきところはしなければなりませんけれども、日本のこの太平洋側と日本海側のふ化に対して国営によって今後充実をしていく、こういったことに大きく力を入れ、予算を取っていただく、かように私は言いたいわけですが、それに対する大臣の決意、また大臣の見解を承りたい。今回訪ソされて貴重な体験をしてこられたと思うが、それについてどのように感じておられるか、率直な意見をこの席で述べていただきたい、かように思うわけでございます。
  221. 中川一郎

    ○中川国務大臣 北海道では国営のふ化場があることは事実でございますが、本州では民営を中心にしてやっております。私は国営をつくることが必ずしもいいことではないのではないかと思いますが、今後検討して、必要があればつくることはやぶさかではありませんけれども、とりあえずは民営のいまやっておりますものをもっともっと積極的にやって、できるだけのことをしてみたい、それでもなおかつ必要があれば、その際は検討いたしますが、現段階においては民営のものを大いに促進をしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  222. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 民営のものを積極的に検討していきたい、要約すればこういう答弁でございますけれども、積極的というのはどういうことですか。要するに予算をもっと出してやらぬと積極的にならぬわけですけれども、どういう意味でおっしゃるのか、再度ひとつ御答弁いただきたい。
  223. 中川一郎

    ○中川国務大臣 やはり本州にはそういった民営のふ化事業というものが系統的にあるわけでございますので、もちろん予算の面でも大いに気張ってみたい、こう思っておるわけでございます。
  224. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この点は大臣ひとつ将来のサケ・マスを展望した際に、先ほどもいろいろ答弁がございましたが、もうまさにだんだん北洋から締め出しを食う、またソ連もさることながらアメリカ並びにカナダにしても漁場をだんだん狭めてまいりました。本当にどこに漁場があるのか、また、どこに行って漁をすればいいのかというほど大変狭められてまいりました。当然いわゆる前浜の増殖は必要なことでありますが、日本の母なる川へ帰ってくるサケ・マスというものも、これは回帰率が示しておるようにたくさんあるわけですから、これらに力を入れて、そして、それに対しても日本でもこのように増殖しているといういわゆる現実を示しながら強力な水産外交を続けてもらわなければならぬ、かように思うわけです。  厳しい時間の制約の中でございますので、全部をただすことはできませんけれども、私、最後にもう一点この機会に、要望を兼ねて農林大臣に所見を伺っておきたいのであります。  私の調査によると、北マリアナ連邦国政府は、このほど北マリアナ社会経済開発計画を発表し、総合的な開発計画の中で漁業問題も取り上げられておるのであります。そこで、現在、北マリアナ海域で日本の民間とテニアン漁業協同組合との漁業合弁事業が推進されて、来る五月に同政府から正式に許可が出る予定になって、いま交渉を続けております。漁港はテニアン港及びサイパン港を使用することになっており、漁業形態は底たてなわ、船引き網、刺し網、定置網などで、現地ではとりあえず冷蔵倉庫や、かん詰め、削りぶしなどの二次加工工場建設の計画があるわけでございます。したがって、今次減船が余儀なくされているときでもあり、わが国のいわゆる水産資源を確保する上からも、従来のエコノミックアニマルと言われるようなことではなりませんが、現地の協力を得て、現地の住民を使いながら工場を建設し、そして日本からも技術指導をし、北転船等をぜひひとつ転用させていただいて、今後両国の間に友好を深めつつ、二次製品なりまた冷凍の魚を日本へ持ってくるということは、日本国民のたん白資源を持続的に確保するという上からも重要なことである、こう思うわけです。  でございますから、政府にお願いしたいことは、北転船等の救済のためにも、日本側民間から要請があれば、政府の強力な協力により相談に応じていただきたい、そして、いろいろと協力していただきたい、こう思うのです。具体的になりましたならば、この問題を大臣のところへまた提起したいと思いますので、それに対する大臣の所見を承っておきたい。  なぜかなれば、もう国会も五月十七日で一応会期を終わるわけで、こういう機会が今後なかなかとれそうもないので、五月のこの許可がおりた時点で私は質疑をしたいと思っておりましたが、許可がおりることはほとんど見通しが立っておりますので、前もって大臣に見解を承っておき、国会が終わった後、休会中またいろいろと政府相談申し上げたいと思っていますので、こういうときでもありますし、ぜひ政府の強力なる御援助をお願いしたいと思うが、大臣の見解を重ねて承りたいと思う。
  225. 中川一郎

    ○中川国務大臣 そのことにつきましては、水産庁もよく承知いたしております。具体的な申し込みがありますれば、十分その目的に沿うように対応してまいりたいと存じます。
  226. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なお、いまの件につきまして、海外漁業協力財団、荒勝理事長のところでございますが、この方の協力もぜひお願いせねばならぬようなことになってくると思うが、こういった海外漁業協力財団の対象になるのかどうか、それもひとつ承っておきたいと思うが、これは水産庁長官で結構ですから、御検討した結果、どういうことになるのか、御意見を重ねて承りたいと思う。
  227. 森整治

    ○森(整)政府委員 具体的な内容について詳しく承知はいたしておりませんが、私どもいま手元にあるところでは、一応、事業の種類によりましては当然海外漁業協力財団の融資の対象になるというふうに判断をいたしております。
  228. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今後の政府の御協力をさらにお願いして、時間が参りましたので、一応質問をここで終わらしていただきます。
  229. 中尾栄一

  230. 稲富稜人

    ○稲富委員 まず、大臣にお尋ねいたします。  今回の日ソ漁業交渉に当たりましては、中川大臣非常なる御苦労をなされたこと、私たちも各新聞等を通じて十分承知いたしておりまして、非常にその御苦労に対しましては感謝を申し上げます。しかるにもかかわらず、結果的に見まして私たちの思うような結果を得なかったということは、これまた一方においては非常に残念である、かように考えております。  そこで、私、冒頭にお尋ねいたしたいと思いますことは、少なくとも二国間の協定というものはやはり対等な形においてまずかからなければいけない、かように思います。ところが、今回の協定の内容を見ますると、長くなりますから最後に結論だけ申し上げるのでございますが、大臣もよく御承知であると思いますが、要するに「ソヴィエト社会主義共和国連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業の規制に関する暫定措置に関するソヴィエト社会主義共和国連邦最高会議幹部会令に規定されている探査、開発及び保存のための生物資源に対するソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め、両締約国間の漁業の分野における互恵的協力を発展させることを希望して、次のとおり協定した。」かように書いてあります。最初から「ソヴィエト社会主義共和国連邦の主権的権利を認め、」そして、この協定を結ばなくちゃいけない、こういうような前文を書かなくちゃできないような状態がなぜあったか。対等な形でやらなければいけないのが、一方的な主権的権利を認めてやらなくちゃいけないというその根拠をまず冒頭に承りたいと思うのでございます。
  231. 松浦昭

    ○松浦説明員 お答えを申し上げます。  今回の協定の前文の中に、ただいま先生からお話しのありましたような条項が入っておることは事実でございます。これは旧来までの協定もそうでございましたが、ソ連の現在持っております法制のたてまえから申しまして、二百海里内につきましての魚の資源、それから二百海里外につきましては遡河性魚類の資源、これにつきましてのソ連側の主権的権利の主張を認めたということでございまして、サケ・マスにつきましてはまさに母川国主義が前提であるということからこのような規定を前文に入れた次第でございます。かような母川国主義のたてまえは、先ほどから大臣御答弁申し上げておりますように、わが国も母川国主義というたてまえをとっておりまして、これは世界的な一般的な傾向といたしましてそのような母川国主義の考え方をとっておるわけでございます。  なお、主権的権利と申しますのは、これはいわば魚に関する管轄権でございまして、さような意味でわが方の二百海里法の中にも管轄権という規定がございます。この管轄権を認めたということを前提にいたしましてこの協定を結んだということでございます。
  232. 稲富稜人

    ○稲富委員 後ほど質問いたしますけれども、それじゃ二百海里の中における管轄権だということでこの条文があるとするならば、この協定の中に二百海里外の禁漁区が認められておる、こういうことも大体の原則から言うならばその規定に反したことになりはしないか、かように考えるわけでありますが、この辺いかがでございますか。
  233. 松浦昭

    ○松浦説明員 これはソ連邦の二百海里内の主権的権利、これはサケ・マスも含めまして従来から管轄権を認めてきたわけでございまして、ここは先生読んでいただきまして当然おわかりのように、日本の漁業水域に関する暫定措置法に基づき、漁業に関する日本国の管轄権というものも向こうに認めさせております。それに対応いたしましてソビエトの管轄権も認めておるところでございまして、文字の上では「主権的権利」と「日本国の管轄権」、こう書き分けてございますが、それはわれわれとしては同じようないわば魚に対する主権的権利というものが、日本の場合には管轄権という表現になっておるということでございまして、あくまでも相互性は貫かれておるというふうに考えておるわけでございます。
  234. 稲富稜人

    ○稲富委員 この点は私いまの答弁では腑に落ちませんので、後ほど禁漁区の問題についてはさらにお尋ねすることにいたします。  次にお尋ねいたしたいと思いますことは、まず、大臣の向こうとの交渉の間に受けられた率直な感触について承りたいと思うのでございますが、今回のこの協定の内容を見ますと、全くわが国の漁民が死活の問題に苦しまなければいけないという結果を生み出すような状態になっておることは御承知のとおりでございます。ここに大臣として非常にお悩みになったと思う。そもそも共産主義のソ連は、御承知のとおり、労働者の生活を守るということが共産主義国としての非常な目的であるという一つの国柄を持たなければいけないと思う。しかるにもかかわらず、わが国の漁民、すなわち労働者、こういう人たちがかくのごとき苦しい状態になるということをどれほどソビエトは承知しておるのであるか、その共産主義のソビエトの国が日本の労働者である漁民が死活の問題になるということを、これを見捨てていいと思っておるのであるかどうか。なぜそういうことをやらなければいけない問題があるのであるか。単なる漁業以外の問題か何かあってそういうことになるのであるか。これは大臣が交渉の中で受けられた感触がありますなら、その点について承りたいと思うのでございます。
  235. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の点を私も議論の場に持ち出したわけでございます。あなたの国は労働者を大事にする、勤労者を大事にする国ではありませんか、今度のような措置になりますと、本当に海に働く人が職を失うのでございます。何とかその点を御理解いただくわけにはいきますまいかという趣旨のことを申し上げたのでございます。それに対しては、いや、実はわが国でも二百海里時代を迎えて、漁場を失ってEC等から締め出されておるのである。この苦しみはあなたの国だけではなくして、わが国もあなたの国以上の苦しみをしておるのであって、二百海里時代というのはそういうものであり、長期的に資源を尊重する立場からいけばこれはやむを得ない措置であり、そしてまた、長期的には必ずや漁民にとっていいことになるであろうということでございまして、勤労者に対する私の意見、いま御指摘のあった点も向こうは十分わかるけれども、自分も汗を流しておるのだから、ともどもに汗を流そうではないかという趣旨の回答がありまして、向こうも現実苦しんでおるところでございますので、これもいたし方ないかなということで、それ以上の反論はできない現状であったわけでございます。
  236. 稲富稜人

    ○稲富委員 ソビエトも苦しんでおるかしらぬが、それならば日本の漁民も苦しめていい、こういうような論法でやられたら、日本はその苦しみをどこに持っていけばいいかということになってくるのです。互恵的協力を発展せしめるということをこの協定で言っておるが、それでは互恵的協力というものは全然なかったと言わなくちゃいけない。自分の方がECその他で漁場を失って苦しめられたから、それを日本に持ってくるんだということでは、ソビエトと日本との間において互恵的協力の精神はなかったんじゃないか。これはあなたに言っても追いつかないことでありますけれども。われわれがソビエトに対して非常にふんまんやる方なく、理解のできない点はその点でございます。  そういう点は大臣はどうお考えになったかということを承りたい。
  237. 中川一郎

    ○中川国務大臣 その点も申し上げたのでございます。あなたの国は社会主義国家でございますから、仮に職場を失いましても次の職場へとすぐ転換できるんじゃありますまいか。わが国は自由競争でございまして、職場を失えば他にすぐ転換するわけにはいかないという事情もあるということを申し上げたのでございますが、その事情はわかるけれども、その資源はわれわれ国民の、勤労者の資源である。その資源がなくなることによってわが国の労働者がどのようなことになるかも理解してほしいという趣旨の話がありまして、向こうも、政府はそれぐらいのことはきちっとやったらいいじゃないかということまでは言いませんでしたが、背後にはそういうことがあるのではないかという雰囲気の中で——特に私はコスイギン首相に会いましたときにこういうことを言いました。今度の話し合いは厳しかった、しかし、話し合いがついたことはついたことだから仕方ないが、昨年も二万トン減り、ことしも二万トン減る、その結果三割の減船をしなければならない厳しい事態でございます。職を失う者が出るのでございます。したがって、今回のことは何とか対応いたしますが、来年からはそのような厳しい変化がないように、イシコフ漁業大臣ともよく話をしますが、閣下もぜひとも理解をしていただきたい、私はこう申し上げたのでございます。  それに対する回答は、確かに事情はわかるけれども、資源というものはわれわれだけのものではない、われわれの子孫の時代にも大切にしなければならない貴重なものである、心ある、良識ある漁師の皆さんならば資源を大事にしなければならぬということは理解できるであろう、ただ資源があるからと言ってナイロンその他でとってしまうということは、真の将来を考える漁民のとるべき立場ではない、こういうことを申しております。資源を大事にしよう、確かに苦しむことはあっても長期的に見るならばこれがとるべき道ではなかろうかという趣旨の話もありまして、私としてはできるだけのことはやりましたが、やはり資源論というか、特に沖取りは未成魚を含めてとるわけでございますから、資源の活用としては、やはり育ったいいものだけをとる河川入り口の操業というものが——それに反発して、いや途中で死ぬ魚もおりますから生きているうちにとった方がいいのでございますという議論をしてみましても、未成魚がたくさん入っているものを沖取りするというのは資源論からいくとどうも攻撃力がないということで非常に苦心したところでございます。
  238. 稲富稜人

    ○稲富委員 相手が相手であるだけに大臣の御苦労の点は私も十分わかります。ただ、私たちのどうしても腑に落ちない点をこの際率直に大臣に申し上げたい。不満の一つでも申し上げなければこちらも国民として何となく気持ちが満たされませんので、あなたの御苦労を知りながら私としてはそういう点の不満をここで明らかに申し上げたいと考えておるわけであります。  昭和十四年に三十八万トンを記録した日本の北洋サケ・マス漁獲量が、今年は四万二千五百トンと昨年の六万二千トンよりもさらに減ぜられた。いまは二百海里時代になりましたけれども、日本が一世紀にわたりまして開拓した日本の漁場は既得権といえば既得権です。日本の開拓した漁場というものがこういうように全く壊滅しなければいけないような状態になっているという現状を考えれば考えるほど、われわれといたしましてはあなたの努力は認めますけれども、国民としては本当にふんまんやる方ないものがあると思うのです。特に代々漁業に当たっておられる漁民、また地域的な方々の悲痛感というものはもっと大なるものがあった、かように私は考えます。  こういうことになったということは、この交渉に当たりまして、政府の漁獲割り当て作業に対する何か交渉が甘かったと言うと失礼になるかもわかりませんけれども、その交渉があるいはもっとよくいったんじゃないかという、そういう観察があったんではなかろうかということも考えるわけでございます。  そこで、この際お尋ねいたしたいと思いますことは、従来わが国はソビエトに対して漁業協力援助策といたしまして、サケ・マスの人工ふ化場や共同研究センターの建設、あるいはサケ・マスが産卵し、自然増殖しやすいように河川の修理のためのブルドーザー等の土木機械の給与等各種の協力の案を提唱してあったと思うのです。ところが、聞くところによりますと、こういうものに対してソビエトは一顧だにしなかったということでありますが、事実であるかどうか。私たちが本当に漁業資源を守ろうとするならば、われわれが漁業資源を守るためにこういうような苦肉の方策をとろうとするならば、せめてソビエトとしてもわれわれがこういうことで協定を結んで将来努力をするというわれわれの誠意のあるところは何とか認めて乗ってくることが私は当然であると思う。しかしながら、こういうような日本の提案に乗らなかったということは、どこに理由があるのか、この点もわれわれ解しがたいところでございますので、ようございましたら承りたいと思います。
  239. 中川一郎

    ○中川国務大臣 実は資源の問題につきましてまず一言申し上げておきたいのでございますが、資源についてはソビエトだけではなくて、実は日本に対してはアメリカも非常に厳しいのです。というのは、一昨々年になりますが、アメリカと二百海里協定を結びますに当たりまして、私ども、アメリカにそのようなことはやめてもらいたいということで国会議員団として派遣されたことがございます。そのときに、アラスカの国会議員が、わが国は沖取りは一切やっておりません、あなたの国が沖取りをするものですから、かつて十四のかん詰め工場があったにもかかわらず、沖取りのために現在では一つのかん詰め工場しかなくなりました、やはり沖取りというものは資源上よくないので云々という話がありまして、ソビエトやアメリカから言われるまでもなく、あのような、かつて三十万トンとったというようなことをずっと続けておったならば、やはり資源というものは枯渇したのではないか、こういうことは率直にわれわれも受けとめて対処しなければならない、とり方については、あったからとるということではやがてなくなるということも反省しておかなければならない、単にソビエトがいやがらせで言ったことではない、それから過去の実績を無視して言ったことではないということも反省しておかなければならないというふうに考えるわけでございます。  次に、資源の協力の問題についてどういう状況であったか。実は人工ふ化場とか増殖センターというようなものについては前々から話があったようでございます。これは河野さんあるいは高碕さんの時代からあったというので、今度は資源の問題ならばそれにひとつ真剣に取り組もうというので、二月十五日から始まりました交渉においてもそういう用意がありますよということを先方に伝えたわけでございます。  そこで、イシコフさんは関心があるから必ず乗ってくるだろう、こう思いまして、私も交渉に当たりまして、漁獲実績は昨年二万トン切られておるのでことしはそういった減船等を含めた急激な変化のないようにお願いしたい、しかし、資源のことはわかりますからいま言ったようなことで十分協力したいし、また、三・五%の入漁料と言われるものについても、人工ふ化場あるいは増殖センターにプラスをしてさらにこれを前向きなものにして、川の改良とかあるいは伐採禁止とかいうようなことで増殖することについては前向きで用意があります。こう申し上げて交渉に入ったわけでございます。  そこでまた資源論が出ましたから、だから申し上げておるではありませんか、人工ふ化場で協力します。こう申し上げたら、あなたの方でそういうことをおっしゃるならば、これについては前々から議論はあったが、一歩も前進していないゆえんは、北海道ではいいとしても、あるいは日本ではいいとしても、わが国でいいという例はありませんし、実際やろうといっても設計もできておらないし、場所も決まっておらないし、そういうわけにはいかないのです。ですから、それを盾にしておっしゃるならば、それは要らないと申し上げても結構です。こういうことに発展してきました。そう言わないで、私の方では協力する用意がある、だから前向きでやるということをまず決めておこうと言ったら、それは前向きでやることは結構だということであったのですが、だんだん文章を整理していきましたら、その点については資料の交換を行うという程度で、事業を実施するなんということは文章からも消えてしまったということでございます。そして、資源論で、とにかくソビエトに帰ってくるサケを日本が途中でつかまえてしまう、しかも未成魚もつかまえてしまうから、わが国に入ってくる魚がだんだん減ってしまったのだ。二十年前に比べて現に半分近くになってしまったことも事実のようでございますので、なかなかこれは攻めにくい。しかも、イシコフさんの力で東から入ってまいりますところは穴をあけてくれたのです。南から上がっていく、北に向かう、カムチャッカに向かうだけは、これはどうにもならぬということで、資源論で非常に立ち往生といいますか、平行線をたどりまして、いろいろ考えた結果それではもうここで決断しよう。  三・五%のことももうお忘れになったのかと思ったら、実は一〇%お願いしてあったが、あの点はどうなりましょうかという話でございました。忘れておったと思ったらやはり忘れていないなということで、私は、三・五%にプラスを言っておりました。しかし、このように厳しいところでは、民間が出す金でございますので、約束は守りますけれども、大幅なことはできません、三・五%に〇・七、そして四・二、それは三万五千トンにあなたが七千トンの配慮をしてくれた比率をもって四・二を提案するものでございますという趣旨のことを申し上げたら、そうかね、五%にまるくしてくれればありがたいのだが、取引しようとは決して思いませんよ。そこでも漁獲量や地域の取引はしないけれどもというそろっとした話がございました。それでは、まるくする方法ならば五・〇なら一番いいけれども、四・五というのもあるのじゃありませんかと言うたら、それならそれで結構ですというので、非常にあっさりと四・五が決まっていった。一〇%の要求が大変だ大変だと言っておりましたが、四・五で案外あっさりと決着を得たということでございまして、要は帰ってくる大事なものを、沖取りを抑えることが将来にわたって両国ともいいことなんだということに徹しておったことも事実でございます。
  240. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣の御答弁が余りに懇切でございまして、私の質問時間の方がだんだんなくなってまいりますので、今度は最後でございますけれども、まとめましてお尋ねいたします。  これは先刻お尋ねしました禁漁区の問題でございますが、今回、二百海里外に三角形のいわゆる禁漁区が認められています。御承知のとおり、これはわが国においてはベニサケの最もいい漁区でございます。しかし、これは公海でございます。この公海である三角形の禁漁区を認めたという理由はどういうことに根拠があるかということ。それから、これをもしも母船式といいますか、そういうようなことから認めたものであるとするならば、サケ・マス以外の漁獲ならばこの禁漁区内でもいいのであるか、この点もひとつこの機会に承りたいと思うのであります。  さらにいま一つ、今回の協定によりますと漁業協力費として十七億円を支払うということになっておるのでございますが、これが根拠はいずこにあるか、その理由を簡単に承りたいと思います。
  241. 中川一郎

    ○中川国務大臣 三角水域はサケ・マスだけの三角水域でございますから、それ以外の魚につきましては、公海の原則で操業は自由でございます。  それから、十七億六千万の根拠は、いま申し上げたように、三・五%というのはアメリカ等においても入漁料としてお支払いしているものであり、いま言ったいきさつで一%ふえまして四・五%となったのでございますが、これは一キロ当たり九百二十円掛ける四万二千五百トン掛ける四・五%が十七億六千万になるわけでございます。これは入漁料というのでスタートはいたしておりますけれども、資源を大事にするということで、お金で支払うのではなくて、大日本水産会が、魚をふやすための機械、施設、器具等でいま具体的にソビエト側と話してございます。ただし、この負担がなかなか大変だということでございますので、そのうち国がどれくらい水産会に手助けができるかということが今後の課題であるわけでございます。
  242. 稲富稜人

    ○稲富委員 最後に、結論といたしましてお尋ねいたします。  今回の北洋のサケ・マス漁業のためにこうむった問題は、損害に対する漁業者の補償と雇用の問題というものが当然起こってくるわけでございます。すなわち、サケ・マスの漁業者は、大臣も地元でございますからよく御承知のとおり、約二万人、関連産業を含めれば二十万人と言われております。漁獲金額は六百三十億円に上るとさえ言われておるのでございます。これらの企業が仮に一挙につぶれるということになりますと、それこそ日本の経済界に大混乱を来すようなことになることも必至であるのであります。それで、政府は、この衝撃をやわらげるために、昨年においては五十一隻でございますか、この減船に対しての総額三百二十六億円の補償と三百八十七億円の融資を行っております。今回の関係者の大きな打撃に対していかなる態度で処していくかということをこの際政府として明らかにされておくことが、関係者に対して不安を与えない一つの道でもあると私は思いますので、その点がありましたらこの際明らかにしていただきたいということ。  さらに、わが国が長く伝統として持っておりましたこの漁場のサケ・マス漁業の将来に対しては、もっと積極的な何らかの対策を立てる必要があるのではないかと私は考えますので、サケ・マス漁業に対する将来の具体的な政府としての対策があるとするならば、この際十分承りたい、こういうことをお願い申し上げたいと思うのでございます。
  243. 中川一郎

    ○中川国務大臣 補償につきましては、減船の数を中部流し網については三割、母船については六隻のうち二隻、場合によっては三隻、これに伴う独航船の減船をいたさなければなりません。  この減船に当たりましては、昨年もしかるべき補償をやっておりますし、昨年よりはもっと厳しい共補償の問題とか、やめられる人の補償の問題とか、いろいろありますので、実態に即して減船対策を講じてまいりたい。  ただ、これら漁業者は裏作を持っておりまして、これがたちまちおかに上がってしまうというものではなくて、夏の期間サケ・マスの漁業がなくなるということであり、したがって、働く皆さんも、減船した分が即失業というものでもありません。しかし、サケ・マスがとれなくなった分の減収なり過剰労働力というものが出てまいると思いますので、それらについては、昨年施しましたような施策で、政府責任を持って対処したいと思っておるわけでございます。
  244. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま申しましたように、年額相当な金額を上げておりましたものが収入減になることは明らかでございますし、その関係者が大きな打撃を受けることは当然でございますので、これに対しては万遺憾なきを期するような対策政府としても立てていただくことを強く希望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  245. 中尾栄一

    中尾委員長 津川武一君。
  246. 津川武一

    ○津川委員 大臣、御苦労さまでした。ソ連との交渉をテレビで見たり新聞で読んだりして、大変だったと心から思っております。  しかし、現実は必ずしも満足する状況ではありません。かなり関係者が困ってもおり、不安にもなっており、また落胆もしております。先どうなるかという心配がかなり出ております。漁船の基地である釧路、八戸、塩竈などは大変な状態になっております。これが現実でございます。  このうちの一つ、八戸ですが、八戸港では、昨年、太平洋中型サケ・マス流し網漁船三隻、日本海サケ・マス流し網漁船二隻、母船式独航船二隻、合わせて七隻を減船しております。ことしもまた、いま大臣の言う三割減船で七隻の減船は必至になってきたのじゃないかと大きな問題になっております。大臣は裏作があるから離職者は出ないと言っておるけれども、漁業協同組合の試算では、この七隻でどうしても百三十人くらいの離職者が出て失業者になるのじゃないか。それで、交渉の成果に対して非常に不安が出ているわけであります。  これに対する対策ですが、現地の要請を踏まえて青森県でも政府に陳情しておりますが、何としても失業者は出したくない。失業者を出さないのが一番だ。というのは、去年八戸でサケ・マスと北転船の減船で五百三十人離職しておりますが、再就職したのはたったの百二十人。だから、減船は避けなければならぬ。減船は避けてほしい。減船は最小限度にとめるべきだ。大臣が帰ってきて、現地では、のうのうとと言っているのですが、三割減船するとは何事かと言う。もう少し考えて、減船を最小限に減らす対策、失業者を出さない対策、出したならば再雇用する対策をとっていただきたい。被害を一番受けるのは漁民なのだ、漁業労働者だ。これはきょう参議院で、うちの下田京子議員も大臣に申し上げたと思うのですが、減船を最小限にとめて失業者を出さない、出した失業者は再雇用する、これが根本であると思うのですが、この点はいかがでございますか。
  247. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘の、減船があるけれども、失業者はないと答弁をしたということですが、そうは言ってないのです。減船した分全部が即失業者とはならない、裏仕事もございますので、こう申し上げたのでございまして、失業者が出ないとは申しておりませんということをまず申し上げておきます。  全部ではなくても、サケ・マスで働いておりました分は過剰労働となりますから、失業というかっこうになるのか、職を失うわけでございます。これらに対しては、昨年やりましたような特別の対策を十分講じ、また昨年以上の気持ちでこれには積極的に取り組んでまいりたい。もちろん三割減船反対、一隻もない方が一番いいわけでございます。そのためにこそ二週間にわたって全力を挙げてやってみたところであり、これ以上交渉しても平行線であって、操業期を失えばもっともっと大きい被害をこうむるであろうということで、忍びがたきを忍んで妥結をしてきたということも御理解をいただきたい。ただし、失業は恐ろしいものである、だから、これは何とか対策を講ぜよということについては最善を尽くしたいと存じます。
  248. 津川武一

    ○津川委員 やはり被害が一番多くて一番後まで残るのは漁業労働者だし、この点、昨年以上という形でやると農林大臣は言っていますから、ぜひそれをやるように私もさらに求めて、次に進みます。  二つ目は、減船を余儀なくされた船に対する補償でございます。大臣は先ほど、国でも補償する、共補償もすると言っております。昨年の減船で八戸で一業者平均六千九百万円負担している。それでいまがんばってやっている。その上に、今度はまた共補償は一億円かかるだろうと言っている。もう共補償には耐えられないと言う。何とか裏作の点で対策を起こして、国からもそういう点で援助をしていって、共補償はしないでも済むような形にしてほしい。どうしても減船しなければならないのなら、交付金などの特別交付で、国の負担でやってもらわないと共補償に耐えられない状態になっていると言うのです。そういう点で共補償をできるだけ少なくして、私の希望から言うならばなくして、全部交付金などで賄うべきだと思うのですが、この方針を伺わせていただきます。
  249. 中川一郎

    ○中川国務大臣 去年の減船と比べて状況はさらに厳しくなっております。現に昨年の共補償分を背負っておる。さらに、ことしもし共補償制度でやるとするならば、少ない船で多くの船をやらなければならぬというような重なった事情があることは十分承知いたしておりますので、そういう事態を踏まえて対処してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  250. 津川武一

    ○津川委員 次の質問ですが、今度の議定書を見ましたら、臨検、拿捕、裁判管轄権などが規定されておりますが、罰金に関する規定がないのです。日ソ暫定協定の第七条三項には罰金規定があって、これに基づいて、前回もここで質問したように、ささいなことで罰金がびしびし取られている。漁民の間には、罰金がなくなったというので、さすがは中川農林大臣だと言っているのですが、今度本当に罰金がなくなったのでございますか。
  251. 中川一郎

    ○中川国務大臣 初め、ソ連の提案は、ソ連の船が発見したら直ちにそこで裁判をして、罰金何百万円と取るという仕組みにしてくれ、こういう話でございました。そこで、裁判権をあなたの国に差し上げるわけにはいかない、公海においてあなたの国が主権を行使するということは国家の名誉にかかわるとはっきり申し上げて、その点は理解いただきました。  次に、それでは通報するからあなたの国が罰金を取りなさい、こういう話でございました。それに対しても、わが国は民主主義の国でございますから、監督官が行って、おまえは罰金を何ぼ納めろ、こういうわけにはまいらないのです。裁判所に行って、この人はこういう罪があってこの法律に違反しておりますから罰金何ぼというふうにやらなければ取れません、恐らく裁判をすれば、わが国では五年か六年かかるでしょう、したがって罰金はなじむものではないということで、罰金も御返上申し上げたわけでございます。ただ、行政上の措置ならばできる、許可条件に違反した場合には操業停止何日というぐらいのことはできます。あるいは極端に違反した場合には免許権は取り上げる、これは許可をするときの条件でございますから、民主主義のもとでもやっておりますし、できることでございます。そういうことで、話し合いをいたしまして、それではということで、初犯については操業停止十四日間、それを繰り返した人に対してはその操業期間はもう魚はとらせない等のことをやって、行政措置によって規制は守られるようにしよう、こういうことで基本的に話し合いがついたわけでございます。  その違反の内容等についても、お互い意見が違っておっては困りますからというので、これも事務的に打ち合わせをして、そうトラブルがない形で、行政措置だけで、罰金というものは、もちろんソビエトにも取られませんし、わが国が取るというようなこともないという仕組みだけは守ってきたのでございます。
  252. 津川武一

    ○津川委員 そこで、いまの大臣の答弁ですが、罰金がなくなったかわりに、今度交換書簡で、初犯では二週間の停泊命令、二回以上になると残存漁業期間全部停泊命令、事実上出漁禁止。罰金でめちゃくちゃにやられたのを、これでめちゃくちゃにやられて、もっとひどい目に遭うんじゃないかという心配を今度は逆に持っているのです。初めは、罰金がなくなったと喜んでいて、交換書簡をよく見たら、やはりあったんだ。また、漁民は非常に不安になっているわけです。  この点で、漁民が大臣に質問してくれというのは、政府とソ連の当局と十分交渉して、いままでの罰金みたいなめちゃくちゃなことはないようにということなんです。いかがでございますか。
  253. 中川一郎

    ○中川国務大臣 もちろん、法律に違反した行為があれば、罰金その他は裁判所を通じて堂々とやる場合はありますが、二百海里水域において、何が何だかわからないんだけれどもそこそこっと来ておまえはこれに違反したから罰金を納めろというような仕組みは、ソビエト側もやらないし、わが国でもしない。漁業法とかその他でもちろん裁判にかけなければならない、これはソビエトの裁判じゃなくて、わが国の法律に明らかに違反した場合には、これは当然裁判所を通じて、弁護士を立てて、正か邪か、シロかクロかという議論をした上での罰金はありますけれども、何が何だかわからぬ、網をたくさん持っておった、船が長かった、罰金と、こういうことは一切ない、こういうことでございます。
  254. 津川武一

    ○津川委員 そこで、この間大臣がいないので臨時代理がおったときに質問したのですが、着底トロール、これでやられて、また罰金取られているのがあって、着底トロールは今度の交渉で認められるだろうと言っていたのですが、これはどうなりましたか、ひとつ答弁してください。
  255. 森整治

    ○森(整)政府委員 モスクワからの情報では、今明日ぐらいに妥結するという見通しのようでございます。結論といたしましては、いわゆる着底トロールを禁止するという措置はとらないということでございまして、詳細は、後刻公電が入りましてからにいたしたいと思います。
  256. 津川武一

    ○津川委員 その次ですが、国民の非常に心配した問題は、いつまでサケ・マスをあの公海でとれるかという問題です。農林大臣が帰国後の記者会見で、今日の日ソ協定の結果、五年間の操業が確保されたというふうに言っております。きょう私はほかの用事でここに来なかったのですが、ここでもそういうふうに答弁されていると思うのです。協定の有効期間は確かに五年だが、協定第三条は、二百海里外の水域におけるサケ・マスの保存及び合理的な利用については毎年協議することが決められている。大丈夫でございますか、五年間というのは。そこらをひとつ答弁していただきます。
  257. 中川一郎

    ○中川国務大臣 サケ・マスにつきましては、長い歴史があって、だんだん減ってきたことは事実でございます。ましてや、二百海里時代を経まして、昨年二万トン減って、八万トンが六万トンになった。ことしは過去の日ソ漁業条約というものが破棄になって、お手元にございます新しい協力協定というものを結んで新しく五年ないしはそれ以上の約束をしたわけです。それで、書いてございますように、毎年のサケ・マスの保存、利用については協議をして決めるということになってございます。でありますから、来年のことはどうなるかと言われれば、来年は来年で決めるということにはなりますが、新しい海洋法なり遡河性サケ・マスのあり方について五年間約束をし、その初年度はいかにあるべきかということで、資源その他について十分話し合った結果、初年度はこの程度でよかろうと、こうなったわけでございますが、さて二年目はどうなるかということは、話し合いでありますからどうなるか推測はできませんが、おおよそこういった新しい時代の初年度というものは非常に重みを持つものであって、翌年何らかの資源状態について変化があったりあるいは操業について無理があったりというような、予期せざる事項が起きた場合には、これは責任は負えませんけれども、まずまずしっかりした操業をやっていくならば、来年またどうだというような新しい資源論をもって厳しく、しかもこれを追い出してしまうなんということは、もしやるならば、毎年協議をすると、こういうことにはならないのだろうと思います。毎年協議をするということは、初年度をベースにして紳士的な話し合いが行われ、まず五年ぐらいは、少々の変更はあるにしても、ことしのような大きな変更はないと、こう私は判断をいたしておるわけでございます。
  258. 津川武一

    ○津川委員 協定が五年で、協定に基づいた最初の議定書があのとおりだから、私もそうあれかしと願う者の一人でございます。  だが、去年の二百海里のときも非常に気になる通信がいつもあったんです。ノーボスチ通信のE・カチューラという人の評論です。昨年何かわれわれが心配したとおりのことがこの人の評論で書かれてそのとおりになっているのです。この人が四月二十日のノーボスチ通信で何と言っておるかというと、「この決定はソ連側の立場の変更を意味するものではなく、ソ連側としては北西太平洋の公海でのサケマス漁獲は、生物学的に見て容認できぬものとして全面禁止の必要があると考えている。七八年度の漁獲割当て設定に同意したのは、この問題の解決にはある程度の過渡期が必要だとの理解にもとづくものである。」したがって、ことしの議定は一つの過渡期のものである、こうなってくると心配なんだな、中川農林大臣。いいことを言ってくれてわれわれもそう願うけれども、したがって余り楽観しないで、甘く見ないでやはり全力を挙げてやる必要があるということを指摘して、もし何か大臣が答弁があればお聞きするし、ないならばこれで質問を終わります。
  259. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、前々から言っておりますように、ソビエト側は公海におけるサケ・マスは、沖取りというものはやめるべきであるという原則は間違いありませんし、急激な変化を与えてはならないから全面禁止はやめる、言いかえれば過渡期ということであることには間違いないとは思いますが、その過渡期が何年であるのか、三年であるのか、五年であるのか、来年であるのか、判断によるとは思いますが、しっかりした操業を行えば、過渡期とは五年ぐらいを意味するのではないか、こうも思いますので、向こうがいかように書いていましょうとも、われわれとしてはそれぐらいのものは確保するんだという気持ちで対処しなければ、なくなるんだという前提ではこの仕事はでき得ない、こう思うわけでございます。
  260. 津川武一

    ○津川委員 終わります。      ————◇—————
  261. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案について、明二十六日、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、明二十六日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十三分散会