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1978-03-17 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月七日(火曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  農産物価格等に関する小委員       加藤 紘一君    片岡 清一君       倉成  正君    國場 幸昌君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       羽田  孜君    福島 譲二君       森田 欽二君    山崎平八郎君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       芳賀  貢君    馬場  昇君       瀬野栄次郎君    野村 光雄君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  農産物価格等に関する小委員長                 山崎平八郎君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十三年三月十七日(金曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       加藤 紘一君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    國場 幸昌君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       羽田野忠文君    平泉  渉君       福島 譲二君    堀之内久男君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    角屋堅次郎君       柴田 健治君    島田 琢郎君       新盛 辰雄君    芳賀  貢君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林大臣官房予         算課長     田中 宏尚君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         林野庁林政部長 石川  弘君  委員外出席者         議     員 芳賀  貢君         外務省アジア局         北東アジア課長 佐藤 嘉恭君         外務省経済局外         務参事官    羽澄 光彦君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         通商産業省生活         産業局通商課長 保延  進君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   太田 康二君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     石野 久男君   津川 武一君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   石野 久男君     小川 国彦君   不破 哲三君     津川 武一君 同月十五日  辞任         補欠選任   津川 武一君     不破 哲三君 同月十六日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     津川 武一君 同月二十日  辞任         補欠選任   野村 光雄君     浅井 美幸君 同日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     野村 光雄君 同月二十二日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     根本龍太郎君   國場 幸昌君     田中 正巳君   玉沢徳一郎君     松澤 雄藏君   羽田野忠文君     白浜 仁吉君 同月二十七日  辞任         補欠選任   野坂 浩賢君     川俣健二郎君   武田 一夫君     二見 伸明君   神田  厚君     大内 啓伍君   津川 武一君     不破 哲三君   菊池福治郎君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     野坂 浩賢君   二見 伸明君     武田 一夫君   大内 啓伍君     神田  厚君   不破 哲三君     津川 武一君   甘利  正君     菊池福治郎君 同月二十八日  辞任         補欠選任   日野 市朗君     岡田 利春君   津川 武一君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     日野 市朗君   不破 哲三君     津川 武一君 三月一日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     川俣健二郎君   新盛 辰雄君     石橋 政嗣君   吉浦 忠治君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     新盛 辰雄君   川俣健二郎君     島田 琢郎君   二見 伸明君     吉浦 忠治君 同月二日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     石橋 政嗣君   武田 一夫君     貝沼 次郎君 同日  辞任         補欠選任   石橋 政嗣君     小川 国彦君   貝沼 次郎君     武田 一夫君 同月四日  辞任         補欠選任   白浜 仁吉君     羽田野忠文君   田中 正巳君     國場 幸昌君   根本龍太郎君     加藤 紘一君   松澤 雄藏君     玉沢徳一郎君   野坂 浩賢君     兒玉 末男君   野村 光雄君     権藤 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   兒玉 末男君     野坂 浩賢君   権藤 恒夫君     野村 光雄君 同月十一日  辞任         補欠選任   吉浦 忠治君     宮井 泰良君 同月十四日  辞任         補欠選任   宮井 泰良君     吉浦 忠治君     ――――――――――――― 二月十六日  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の  一部を改正する法律案内閣提出第三三号)(  予) 同月二十四日  森林組合合併助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四六号) 三月一日  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、  北海道営林局の支局の設置に関し承認を求める  の件(内閣提出承認第三号) 同月四日  農業災害補償法及び農業共済基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第五〇号) 同月八日  森林組合法案内閣提出第四八号) 同月十日  国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置  法案芳賀貢君外十三名提出衆法第三号) 同月十四日  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五八号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第五九号)  漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六〇号) 同月十七日  国有林野事業再建整備特別措置法案芳賀貢君  外十二名提出衆法第二号)  国有林野事業改善特別措置法案内閣提出第一  九号) 二月十三日  国民のための国有林経営に関する請願上田卓  三君紹介)(第九二二号)  同(大原亨紹介)(第一一三三号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第一一三四  号)  同(日野市朗紹介)(第一一三五号) 同月十七日  国民のための国有林経営に関する請願千葉千  代世君紹介)(第一二九四号) 同月二十一日  国民のための国有林経営に関する請願北山愛  郎君紹介)(第一三六一号)  同(中西積介紹介)(第一四二三号)  オットセイ群の海上猟獲に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第一三六八号) 同月二十七日  中国食肉輸入禁止解除に関する請願石野  久男紹介)(第一五九一号)  同(松沢俊昭紹介)(第一五九二号)  同(和田耕作紹介)(第一六二〇号)  米の生産調整反対及び抜本的農業政策確立に  関する請願坂本恭一紹介)(第一五九三  号)  国民のための国有林経営に関する請願小川仁  一君紹介)(第一六一八号)  同(大島弘紹介)(第一六一九号) 三月六日  国民のための国有林経営に関する請願安島友  義君紹介)(第一六五九号)  同外一件(井上一成紹介)(第一六六〇号)  同外一件(伊藤茂紹介)(第一六六一号)  同(石野久男紹介)(第一六六二号)  同(大出俊紹介)(第一六六三号)  同外四件(川俣健二郎紹介)(第一六六四  号)  同(安宅常彦紹介)(第一六九七号)  同(井上泉紹介)(第一六九八号)  同(池端清一紹介)(第一六九九号)  同(岡田哲児紹介)(第一七〇〇号)  同外二件(加藤万吉紹介)(第一七〇一号)  同(川崎寛治紹介)(第一七〇二号)  同(川本敏美紹介)(第一七〇三号)  同外一件(岡田利春紹介)(第一七九〇号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願加藤  万吉紹介)(第一七〇四号)  同(北山愛郎紹介)(第一七〇五号)  同(竹内猛紹介)(第一七〇六号)  長崎南部地域総合開発計画即時中止に関する  請願外一件(村山喜一紹介)(第一七〇七  号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一七五七号)  同(川崎寛治紹介)(第一七九一号)  同(坂本恭一紹介)(第一七九二号) 同月九日  国民のための国有林経営に関する請願伊賀定  盛君紹介)(第一八三四号)  同(枝村要作紹介)(第一八三五号)  同(小川省吾紹介)(第一八三六号)  同外二件(上田卓三紹介)(第一八六三号)  同(上原康助紹介)(第一八六四号)  同(井上普方紹介)(第一九五九号)  同(岡田利春紹介)(第一九六〇号)  同(金子みつ紹介)(第一九六一号)  同外一件(川口大助紹介)(第一九六二号)  長崎南部地域総合開発計画即時中止に関する  請願外一件(細谷治嘉紹介)(第一八三七  号)  同(阿部未喜男君紹介)(第一九五一号)  同外一件(上原康助紹介)(第一九五二号)  同(川崎寛治紹介)(第一九五三号)  同外一件(川本敏美紹介)(第一九五四号)  同(坂本恭一紹介)(第一九五五号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第一九五六号)  同外三件(松本七郎紹介)(第一九五七号)  同(村山富市紹介)(第一九五八号)  中国食肉輸入禁止解除に関する請願金子  みつ紹介)(第一九五〇号) 同月十四日  長崎南部地域総合開発計画即時中止に関する  請願兒玉末男紹介)(第二〇七〇号)  同外一件(中西積介紹介)(第二〇七一号)  同(中村重光紹介)(第二〇七二号)  同(松本七郎紹介)(第二〇七三号)  国民のための国有林経営に関する請願板川正  吾君紹介)(第二一五四号)  米の新生産調整反対及び農業政策転換に関す  る請願小川仁一紹介)(第二一五五号) 同月十六日  国民のための国有林経営に関する請願石橋政  嗣君紹介)(第二二四八号)  同(小川国彦紹介)(第二三一五号)  長崎南部地域総合開発計画即時中止に関する  請願石橋政嗣君紹介)(第二二四九号)  同外一件(馬場昇紹介)(第二二五〇号)  米の生産調整反対及び地域農業振興等に関す  る請願瀬野栄次郎紹介)(第二三一六号)  同(日野市朗紹介)(第二三一七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  食糧の基本政策確立に関する陳情書  (第一六八号)  水田利用再編対策に関する陳情書外十三件  (第一六九  号)  米の生産調整に関する陳情書外九件  (第一七〇号)  予約限度超過米全量買い上げ等に関する陳情  書(第一七一号)  農用地開発公団関係費の増額に関する陳情書  (第一七二号)  麦作振興対策拡充強化に関する陳情書  (第一七三号)  農業者年金制度拡充強化に関する陳情書  (第一七四号)  農業共済制度強化拡充に関する陳情書外五十  九件  (第一七五号)  小麦粉に米粉混入反対に関する陳情書外四件  (第一七六  号)  農林水産物輸入自由化反対等に関する陳情書  (第一七七号)  果樹農業振興に関する陳情書外一件  (第一七八号)  農畜産物輸入抑制等に関する陳情書外二件  (第一七九  号)  野菜価格安定対策拡充強化に関する陳情書  (第一八〇号)  学校給食用牛乳供給事業拡充強化に関する陳  情書  (第一八一号)  林制転換に関する陳情書外三件  (第一八二  号)  国有林野事業特別整備計画実施反対等に関する  陳情書外十件  (第一八三号)  森林組合法制定等に関する陳情書  (第一八四号)  木材需給計画及び価格安定に関する陳情書外  八件(  第一八五号)  林業振興対策に関する陳情書外二件  (第一八六号)  奈良県に全国植樹祭誘置に関する陳情書  (第一八七号)  沿岸漁場整備促進に関する陳情書  (第一八八号)  瀬戸内海沿岸漁業振興に関する陳情書  (第一八九号)  漁港整備計画達成等に関する陳情書  (第一九〇号)  イカ資源保護のための規制措置に関する陳情書  (第  一九一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  森林組合合併助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四六号)  森林組合法案内閣提出第四八号)  国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置  法案芳賀貢君外十三名提出衆法第三号)  農林水産業振興に関する件(畜産問題等)      ――――◇―――――
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  内閣提出森林組合合併助成法の一部を改正する法律案森林組合法案及び芳賀貢君外十三名提出、国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置法案の各案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。中川農林大臣。     —————————————  森林組合合併助成法の一部を改正する法律案  森林組合法案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 中川一郎

    中川国務大臣 森林組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び改正内容を御説明申し上げます。  森林組合合併助成法は、適正な事業経営を行うことができる森林組合を広範に育成して森林所有者協同組織の健全な発展に資するため、その合併についての援助等措置を定めて、森林組合合併促進を図ることを目的として、昭和三十八年に制定されたものであります。  この法律につきましては、昭和四十九年に合併及び事業経営に関する計画認定制度につき、その適用期限の延長が図られたところでありますが、その後における森林及び林業をめぐる諸情勢の変化に対処し、森林組合事業経営基盤を一層強化する必要があることにかんがみ、昭和五十三年三月三十一日までとなっております現行認定制度適用期限をさらに五年間延長して、地域実情に応じた森林組合合併を引き続き促進することとした次第であります。  以上がこの法律案提案理由及び改正内容であります。  次に、森林組合法案につきまして、その提案理由及び主な内容を御説明申し上げます。  わが国森林林業は、木材等林産物供給国土保全水質源涵養等を通じて、国民生活向上に大きく貢献してきたところであります。  このような森林林業の果たす役割りに対する国民的要請は、今後とも一層増大するものと思われるのでありますが、同時に、これまで林業中核的担い手としての役割りを果たしてきた森林組合に対する期待も大きいと考えられるのであります。  現行森林組合制度は、昭和二十六年に森林法中に規定され今日に至っておるのでありますが、最近における森林林業をめぐる厳しい諸情勢を見ますとき、今後の森林組合制度のあり方は、一方において森林の保続培養と森林生産力の増進に努めるとともに、他方において林業発展林業従事者の地位の向上を図るものであることが要請されるのであります。  また、昭和四十九年の森林法等の一部改正に際し、森林組合組織及び機能についての検討を加えること等を内容とする規定国会修正によって附則に追加され、林野庁において学識経験者等による検討会を開催し審議を重ねた結果、単独法化すべきである等の結論を得たところであります。  このため、今回、森林組合制度森林法から分離独立せしめ、その広範な役割りへの制度的対応を図るとともに、森林組合事業及び管理運営体制につき一層の改善強化を図ることとし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  まず、森林組合制度森林法から分離独立し、森林組合法とすることに伴う規定整備でありますが、森林組合、同連合会及び生産森林組合事業組合員または会員資格管理等につきまして、現行森林法中の森林組合制度に関する規定とおおむね同様の規定を設けております。  次に、森林組合制度単独法化とあわせて、新たに制度改善充実を図ることとした主要な事項について御説明申し上げます。  第一は、林業に関する共済事業につきまして、従来福利厚生事業の一環として実施しておりましたものを、近年におけるその実施状況にかんがみ、被共済者保護を図る等の見地からこれを明文化するとともに、他の協同組合に準じた監督規定を設けることといたしております。  第二は、近年における林業活動停滞状況にかんがみ、森林組合による森林受託施業受託経営等事業を一層推進するため、一体的に整備することが必要であると認められる一定の森林につきまして、員外利用制限を緩和することといたしております。  第三は、生産森林組合による森林共同経営の一層の発展に資するため、事業範囲拡大総代会制の創設、行政監督簡素化等措置を講ずることといたしております。  第四は、森林組合及び同連合会経営管理等につき適切な指導、教育を行うことを主な目的として、新たに森林組合連合会会員の監査の事業を行うことができることとするとともに、当該事業に従事する者の資格を定めることといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 中尾栄一

  5. 芳賀貢

    芳賀議員 ただいま議題となりました国が行う民有林野の分収造林に関する特別措置法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  わが国森林面積は、二千五百万ヘクタールで国土のおよそ六八%を占めるとはいえ、国民一人当たりでは、〇・二ヘクタールと世界平均の一・二ヘクタールの六分の一にすぎません。  すなわち、森林の果たす役割りは、国土保全水資源涵養自然環境保全・形成、国民保健休養などの公益的機能を確保し、木材その他の林産物を持続的に供給するなど、国民生活の安定と福祉の向上を図る上できわめて重要なものがあります。  今日、わが国森林及び林業は厳しい環境に置かれ、かつてない危機に遭遇しております。  まず、木材需給動向については、年間一億立方メートルを超える国内需要に対し、国産材供給率は三五%に低下し、不足の六五%を外材に依存する状況であり、しかも世界の総輸出量の三〇%を輸入する日本は世界第一位の輸入国であると同時に資源不足国でもあります。  かかる状況の中で、森林面積の三分の二を占める民有林は、外材主導型の需給体制構造不況による木材価格低落により、その生産活動は大幅に後退しております。  民有林における造林動向については、昭和三十六年度の造林面積三十三万八千ヘクタールをピークに年々減少をたどり、五十一年度の造林面積は前年度より七%減少し、三十六年度に比べて五〇%の水準に落ち込んだのであります。  なかんずく、拡大造林の落ち込みは著しく、四百万ヘクタールと推定される里山中心薪炭林が未利用のまま放置されている現状は、森林有効利用の面からもゆゆしき事態と言うべきであります。  このような、民有林経営危機を招いた原因については、林業労働力不足造林コストの上昇、木材価格低落採算性の悪化、資金的制約等原因が複合して、林業者経営意欲を減退させ、林業生産活動は全般的に停滞するに至ったのであります。  かかる状態を黙過するならば、林業の衰退、森林の放置によって、ついには国土の荒廃という重大な事態さえも懸念されるのであります。  急峻な地形、狭小な国土、過密な人口を有するわが国にとって、国土保全し、水資源を確保し、国民保健休養のため、公益的機能を発揮する森林資源を増大し、適切に維持管理することは、国家百年の大計からもきわめて重要であります。  そのためには、造林等林業生産活動を国の責任で助長し、活力のある豊かな森林計画的に造成していかなければならないのであります。  民有林野造林については、国の補助造林制度融資制度による助成措置がとられておりますが、市町村自治体や小面積所有林家自力造林はきわめて困難な状況に置かれており、その上、公社造林等資金的な行き詰まりを来している実情であります。  このような、わが国林業危機打開のため、昭和四十六年には、第六十五国会農林水産委員会において林業振興に関する決議全会一致をもって議決せられ、決議の第一項の中に「国が行う民有林野の分収造林に関する制度的措置検討し、その実現に努めること。」と明示されているのであります。  これに対し、何らの積極的施策を講ぜず今日の危機を招いた政府責任国民の名において問われるべきであります。  この際、わが国林業現状に対処し、国土保全水資源確保自然環境保全など森林公益的機能を確保し、林業生産力の増大と林業従事者の所得の向上を期し、森林資源充実を図るため、民有林野に対する国営分収造林制度を創設し、国有林野事業組織、技術及び資金を活用して、二十年間に、百万ヘクタールの造林目標に、国営分収造林を実施するため、この法律案提出した次第であります。  以下、この法案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、国営分収造林計画に関する規定であります。  農林大臣は、森林法第四条に規定する全国森林計画に即して、昭和五十三年度以降二十年間に実施すべき国営分収造林計画を定めなければならないこととし、この計画において国営分収造林契約に基づく造林目標及び造林事業量を定めるものとし、なお農林大臣はこの計画を公表しなければならないこととしております。  第二は、造林実施地域に関する規定であります。  農林大臣は、関係都道府県知事の申請に基づき、中央森林審議会の意見を聞いて、自然的経済的社会的制約によって造林が十分に行われておらず、かつ、速やかに造林を行うことが必要であると認められる地域造林実施地域として指定することとし、さらに、知事がこの申請を行うときは、あらかじめ都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聞かなければならないこととしております。  第三は、国営分収造林契約の締結についての規定であります。  国営分収造林契約とは、国が民有林野につき地上権の設定を受けて造林を行い、その造林による収益を、所有者と分収する条件で締結する契約をいうものであります。  まず、農林大臣は、造林実施地域内の民有林の所有者が国営分収造林契約を締結したい旨の申し出をした場合、その民有林野が政令で定める一定の理由と、一定の要件を満たすときは、当該所有者を相手方として国営分収造林契約を締結することができることとしております。  この場合、小面積の所有者が数人で共同して申し出をした場合においても、国営分収造林契約を締結できる要件を定めております。  第四は、国営分収造林契約内容等の規定であります。  国営分収造林の収益を国及び造林地の所有者が分収する場合の分収割合は、それぞれ十分の五を標準とすることとしております。  第五は、国営分収造林契約に係る造林事業に関する費用の繰り入れについてであります。  政府は、国営分収造林契約に係る造林事業に要する費用に相当する金額を、毎会計年度、予算の範囲内において、一般会計から国有林野事業特別会計の国有林野事業勘定に繰り入れするものとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  6. 中尾栄一

    中尾委員長 引き続き、森林組合法案補足説明を聴取いたします。藍原林野庁長官
  7. 藍原義邦

    藍原政府委員 森林組合法案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容につき補足させていただきます。  第一章は、この法律目的森林組合等の名称、人格及び住所等について定めた総則の規定であります。  第二章は、森林組合に関する規定であります。  その一は、事業についての規定でありますが、組合員のためにする森林の経営に関する指導、組合員の委託を受けて行う森林の施業または経営等のほか、新たに組合員森林保護に関する事業を必須事業とし、組合員の行う林業に必要な資金の貸し付け及び物資の供給、今回明文化する林業に関する共済事業等のほか、新たに組合員林業労働に係る安全及び衛生に関する事業を任意事業といたしております。なお共済事業につきましては、行政庁による共済規程の承認責任準備金の積み立て義務等他の協同組合に準じた監督規定を設けております。  その他、林産物等の保管事業を行う組合に係る倉荷証券、組合員の経済的地位の改善のための団体協約等に関する事項について所要の規定を設けております。  その二は、組合員についての規定でありますが、まず組合員資格を有する者を森林所有者たる個人及び法人、森林所有者が主たる構成員となっている法人等とするほか、出資、議決権及び選挙権、加入及び脱退等に関する事項について所要の規定を設けております。  その三は、管理についての規定でありますが、定款、規約、役員、参事及び会計主任、総会並びに総代会に関する事項を定めるほか、出資森林組合の財務等に関する事項について所要の規定を設けております。  その四は、設立についての規定でありますが、森林組合を設立するには十人以上の組合員となろうとする者が発起人となることを必要とすること等設立の手続等に関する事項について所要の規定を設けております。  その五は、解散及び清算についての規定でありますが、解散の事由及びその手続並びに合併の手続、時期及び権利義務の承継に関する事項を定めるほか、清算に関する事項について所要の規定を設けております。  第三章は、生産森林組合に関する規定であります。  まず、事業につきましては、現行の必須事業である森林の経営及び任意事業である環境緑化木の生産等に加えて、新たに食用キノコの生産を行うことができることといたしております。  次に、組合員につきましては、その資格を地区内にある森林を現物出資した個人、地区内に住所を有する林業を行う個人等とするとともに、組合員の常時従事義務を緩和するほか、出資、定款、役員及び剰余金の配当に関する事項について所要の規定を設けております。  なお、以上の規定のほか、組合員、管理、設立並びに解散及び清算に関して必要な事項につきましては、森林組合に関する規定を準用いたしております。  第四章は、森林組合連合会に関する規定であります。  まず、事業につきましては、現行事業のほか、森林組合の場合と同様に林業に関する共済事業を明文化するとともに、新たに会員の監査事業等を行うことができることといたしております。この監査事業を行う森林組合連合会は、監査規程を定め行政庁の承認を受けるとともに、森林組合等の業務及び会計について専門的知識及び実務の経験を有する一定の者をこれに従事させなければならないことといたしております。  その他、会員たる資格、議決権及び選挙権、役員、総会等について所要の規定を設けるほか、事業会員、管理、設立並びに解散及び清算に関して必要な事項につきまして、森林組合に関する規定を準用いたしております。  第五章及び第六章は、監督及び罰則に関する規定であります。  附則におきましては、この法律の施行の日を公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日とするほか、森林組合制度の根拠法が森林法から森林組合法へ移行すること等に伴う経過措置及び関係法律改正規定を設けております。  以上をもちまして、森林組合法案提案理由補足説明を終わります。
  8. 中尾栄一

    中尾委員長 以上で各案の趣旨の説明は終わりました。      ————◇—————
  9. 中尾栄一

    中尾委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。芳賀貢君。
  10. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣に対して、昭和五十三年度に決定される加工原料乳の保証価格等の関係について質問をいたします。  その前にお尋ねしたいのは、昭和五十二年度の農林大臣が告示された加工原料乳の限度数量、これは百五十八万トンになっておるわけでございますが、この限度数量に対しまして、全国的に四半期別に関係知事が認定する認定数量というものを推定いたしますと、おおよそ百五十八万トンに対して二十万トン程度の限度数量を超過する認定数量が生ずるということが予測されるわけであります。この点については、昭和四十一年から今日まで、毎年三月末に保証乳価等の決定を行って、農林大臣が告示、政府が実施するわけでございますが、たとえば昨年度におきましても、百三十八万の限度数量に対しまして、おおよそ十四万トンの限度数量の超過数量というものが生じたことは御承知のとおりであります。これに対して、当時私は衆議院の決算委員長でございましたが、たまたま三月十五日に農林省所管の決算の審査を行いました際に、私から当時の鈴木農林大臣並びに大場畜産局長に対して、五十一年度の限度数量をオーバーしたおおよそ十四万トンに及ぶ認定数量に対しては、政府としては、当然、加工原料乳補給金法の第十一条第八項の規定によっても、畜産審議会の意見を徴して、農林大臣がその数量を適正に改定できる規定が明示されておるわけでありますから、この規定によって限度数量の改定をして、不安のない実施を行うべきであるということをただしたわけでございますが、これに対して鈴木農林大臣は、それは当然の趣旨であるが、政府としては、五十一年度の認定数量の超過分については、限度数量の改定を法律によって行うということでなくて、それに相当する補助金の金額等については、限度数量改定と同様の措置政府畜産振興事業団を通じて支出することで善処したいという、相当熱心な意見が述べられまして、結局昨年は、限度数量超過分の十三万八千トンは畜産振興事業団の助成勘定を通じてこれが全面的に支給された、そういう経緯があるわけです。  ことしは昨年よりも、数量においても約二十万トンと言われるわけでありますから、この点を農林大臣としていかように処理されるか。つまり五十三年度の保証乳価あるいは基準取引価格、補給金の額等を決定する前に、五十二年のこの発生した問題というものをまず明快に解決をして、しかる後に五十三年度の乳価あるいは畜肉の価格等について決定されるべき順序であるとわれわれは考えておるわけです。  ところが、去る十五日に畜産審議会が開催されたわけでございますが、われわれの知り得る範囲においては、この重要な限度数量の改定の問題について、農林大臣から何ら審議会の意見を聞くというような挙に出ていないわけです。あるいはまた審議会においても、積極的に農林当局に対しまして、この限度数量の改定に対して政府としてはいかようにするか、あるいはまた審議会としてこのような措置でこれは処理すべきであるというような正規の意見が出なかったということもわれわれは承知しておるわけです。これは農林当局並びにせっかくの畜産審議会としても、非常に消極的な対応で十五日の総会を過ごしたわけであります。  今後の日程としては、二十二日に飼料部会、二十八日に食肉部会、二十九日に酪農部会を開く予定が決定されておりまして、これらの部会は畜産審議会令に基づいて、総会を開かなくても部会の決定によって総会の議決にかえることができるということになっておるので、ことしは、いまのままでいくと、恐らく畜産審議会の総会を開かないで終わるというようなことが懸念されるわけであります。  そういたしますと、できるだけ早い機会に五十二年度の限度数量超過分についての農林省としての的確な方針というものを、この際、責任農林大臣から当委員会を通じて明らかにしてもらう必要があるわけでございますので、この点について農林大臣から説明を求めたいと思います。
  11. 中川一郎

    中川国務大臣 限度数量の問題につきましては、芳賀委員御指摘のとおりの実態であり、また、昨年来対処してきた経緯についても御指摘のとおりでございます。  さて本年はどうするか。二十万トン余っておりますので、限度数量を改定したらどうかということでありますが、せっかくの御指摘ではございますけれども、米についても予約限度数量、消費に見合った生産、法律の趣旨は違いましても、やはり加工原料乳についても生産のあるべき目標というものはこれを変えるわけにはいかない実態でございます。しかしながら、昨年とってきましたと同じように、限度数量は変えないけれども、準じた措置は講じたいという気持ちは持っております。  しかし、昨年と違いますのは、昨年は加工原料乳によってできた脱脂粉乳を事業団が買い上げるというような事態ではなかったわけでございますが、今年は、限度数量をオーバーしたのみならず、脱脂粉乳として一万四千トン、生乳換算九万トンを買い上げて保管をしなければならぬという状況に、昨年同様の措置ができるかどうかということに問題がないわけではありませんが、ひとつ大蔵省等とも折衝して、できるだけ準じた措置ができるように、今後検討はしてみたいと思っておりますが、昨年とそういった事情が違うということもつけ加えておく次第でございます。
  12. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、まず第一には、法律に基づいて限度数量を進んで改定する考えはいまのところない。もう一点は、従来は、限度数量超過の年度に当たっては、限度数量の改定を行わないで、それに見合う補給金額を畜産振興事業団の助成勘定から支出して処理してきておる、これが前例というか、慣例的なものになっておるわけです。この点についても、いまの大臣の御発言によりますと、政府としては方針が固まっていない。しかも、いまの御発言の中では、このことを実行することについても非常に消極的であるというふうにわれわれは感じたわけでございますが、その点は後日物議を醸すことにもなるわけですから、明快にしておいてもらいたいと思います。
  13. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘のとおり、限度数量を法律に基づいて改定することは当を得てない。現在必要でないといいますか、あるべき生産目標は昨年お示しした百五十八万トンであるということでございますから、法律による改定は行わない。畜産事業団による助成によってこれを見るということでございますが、その見方について昨年と同じようなことができるかどうか。いま言ったように、生乳換算で九万トン過剰を抱えて事業団が買い上げなければならないという事情にありますので、できるだけのことはしたいと思いますが、乳価とあるいはまた明年度の限度数量との兼ね合いにおいて十分検討はしてまいりたいとは存じますが、いまここで昨年同様の措置をとると言い切れるまでには残念ながら至っておらない。今後、検討課題として配慮してまいりたいと存じます。
  14. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの大臣の答弁は、これはきょうは時間がないから後に譲るが、厳密に言えば法律違反のおそれもあるわけですよ。  それではお尋ねしますが、加工原料乳の補給金法第十一条の生産者に対する保証価格に対する保証というものはどういう方針でやるわけですか。限度数量超過の分に対しては従来行ったような対応ができかねるということになれば、それはとりもなおさず、その分に対しては補給金を交付しないということになるわけですね。その場合、法律に明定されておる生産者保証価格というものを、どういう形で全額を生産者が受け取ることができるようにするかという、かわるべき方針というものがなければ、軽々に、そういう考えはないとかできないなんということは言えないと思うのですよ。その点を、限度数量の対象外に生じた、これは明らかに加工原料乳として法律に基づいて関係都道府県の知事が認定した認定数量に対して、どういう手法、方法で、生産者に対して農林大臣が告示した保証価格というものを確保するか、その点について具体的な方法というものを示してもらいたい。
  15. 中川一郎

    中川国務大臣 芳賀委員御指摘のように、加工原料乳の価格は再生産が確保されることを目的として定める、こうなってございます。そこで保証価格というものが出てくるわけでございますし、足りない分は、国が不足払いとして補給金として出すという仕組みでございます。  しかしながら、これはあくまでも限度数量の範囲内でございまして、限度数量を超える分については、この法律によって価格保証の対象とはならないというものでございます。したがって、政府からの不足払いのない牛乳として加工原料に回る、こういうことになります。しかし、それではなかなか大変であろうというので、法律による不足払い補給金はできませんけれども、準じた措置として、昨年、一昨年と畜産振興事業団からの繰り入れによって操作をしてきた。ことしもできるだけやりたいとは思いますが、昨年と同じようなところまでできるかどうか、状態は非常に厳しいということでございます。
  16. 芳賀貢

    芳賀委員 約束の時間が来ておりますが、これは重大な大臣の発言です。  私の聞いておるのは、加工原料乳の補給金制度に基づいて、法律第十一条に明定されておる生産者に対する生産者保証価格というもの、これは昨年の告示価格はキロ当たり八十八円八十七銭ということになっておるわけです。それに一円七十五銭の乳質改善奨励金という名前で、これも実質乳価として合わせて九十円六十二銭。この八十八円八十七銭、これはいかような状況が生じても、当然生乳生産者に対して確保されなければならぬという、これは法律に基づいた政府責任というものは明確になっておるわけですよ。それが、補給金も出せない、そういうものは関知しないというようなそうした無責任な放言をする——これは発言とは言えないですよ。こういう大臣は、かつてわれわれとしても経験したことがないわけです。次回に出席されるまでにもう少し、現にあるこの立法府で制定した、たとえば畜産物価格安定法であるとか、あるいはまた、いま私が指摘いたしました加工原料乳の補給金法等についても、大臣ももちろんですが、それを補佐する事務官僚である杉山局長が、後ろから何か大臣に進言しているようですが、局長自身が法律に背反するような認識で行政をやるということになれば、これは重大問題ですよ。いいですか。これはいま答弁はできないでしょうから、午後の時間、その際には、畜産審議会の会長の片柳真吉君あるいは畜産振興事業団の理事長の太田君にも参考人として出席してもらって、特に限度数量の問題、この不足払い法が昭和四十年に制定されて、その後の経過あるいは法律の運用というものが、政府、農林省の手によって、いかに歴代の大臣や局長の努力によって運営されたかというような点についても、当委員会において明らかにしたいと思いますので、十分勉強して出直してきてもらいたいと思います。
  17. 中川一郎

    中川国務大臣 これは大事なことですから、誤解のないようにはっきりいたしておきますが、法律はあくまでも限度数量内の保証価格であって、限度数量を超える分について……(芳賀委員「もう一回法律を読んでこい、何だ」と呼ぶ)法律が、何度読みましても、対象とならない。したがいまして、歴代大臣も、歴代農林省のやってきたことも、限度数量を超えた分については保証はしておらないわけでございまして、まさに、畜産振興事業団から出しておることは、これは出し得ないからそういった便法を講じておるのであって、歴代畜産局長、歴代大臣と変わった考え方は全く持っておりません。
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 これは昭和四十年にわれわれが審議した法律ですが、そのとき、自民党所属の中川一郎君なる議員が農林委員会におりまして、まだ一年生だと思ったのですが、まあわれわれ先輩から見れば、内容が未熟であるかどうかということは別にして、非常に真摯な態度で、特に、当時の中川一郎君は、この限度数量の運用については、年当初にこれは農林大臣が告示することになっておるが、これにあくまでも限定するということではないと思うがどうかということを、これは当時の畜産局長の桧垣徳太郎君や当時の赤城農林大臣にただしておるわけです。この中川一郎質問のくだりだけ見ても、いま農林大臣として発言するような趣旨は、現行法の中にはどこを探しても出てこないわけです。何か米の減反、転作と限度数量の厳しい制限とを混同して発言をしておるようですが、この点は十分に、私が言うようにお互いに、勉強と、いうものはこれはもう制限がないわけですから、もう少し真剣に、農林大臣も畜産局長も勉強し直して、当委員会に出席するに足るそういう認識を持って後刻出席するように、私からも老婆心を込めて強く指摘しておく次第です。これは答弁は要らぬですよ。
  19. 中尾栄一

  20. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間がないので予定した質問がなかなかできませんが、特にこの際畜産物の価格の算定方式について、農林省の情勢報告を見てもわかるように、酪農も養豚も非常に専業化してきた、規模が拡大してきた、こういう形になっていますね。飼育数がふえて農家戸数が減っている。だから専業、こういう形になってくると、当然この価格の決定の方式というものは、いままでとってきた需給実勢方式でなくて、生産費所得補償方式で決めるべきであると思うが、この点について第一点。  第二点は、外国からの肉の輸入に関して、いま各地から日本に肉の輸入が非常に押し寄せている。これはアメリカを初め豪州、ニュージーランド、EC。この問題と関連をして、中国からの肉の輸入については、先般松沢委員が本委員会で質問をした、あのときにも努力をするとは言ったけれども、依然として問題はそのままになっている。その後どういう努力をして、これからいよいよ平和条約が結ばれるというのに、なお同じようなことを考えているのか。FAOの報告にもあるように、中国には口蹄疫がない、このように言っているのに、依然としてある、こういう形であるとすれば、大変問題だ、こういうふうに思います。  次いで、いま養蚕の問題が問題になっておりますが、その養蚕の問題で、養蚕農家というものを日本の農業の中でどういうぐあいに位置づけをされようとしているのか、これが第三点。  続いて、二国間協定によって韓国あるいは中国、そこから多くの輸入がされておるけれども、現在事業団にかなり滞貨がある、そういう状態の中で、いま交渉が行われているが、これは輸入の延期または輸入を大きく減らす、こういうことについてどういう考え方を持っているか。  最後に、米の生産調整に関連をして、永年作目の果樹には五年の奨励金が出ている、補償が出ているが、桑園に対しては三年というのはおかしいじゃないか、この点についてのお答えをいただきたい。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  21. 中川一郎

    中川国務大臣 五点のお尋ねでございますが、まず第一番目の、乳価決定に当たっては生産費所得補償方式をとってはいかがか、こういうことでございますが、これは食管制度で国が管理をしております米と、そのほかの作目の値段の決め方は当然基本的に違うわけでございます。加工乳におきましては再生産が確保されるということでございますので、従来のやり方が最も当を得た方法ではないかと思います。しかし、労賃のとり方等についてかなり前向きの、すなわち生産費所得補償方式に近いやり方も相当加味いたしまして、実態に合うように再生産が確保される仕組みを十分果たし得てきたもの、こう思っておりますので、御了解をいただきたいと存じます。  中国肉の輸入につきましては、いま専門家による調査を進めておりまして、まだ不明な点もございますので、それが明らかになりますれば、いずれの国からも輸入は拒むものではありませんが、今後またそういった不明な点をさらに解明をして、安心して輸入ができるかどうかということにさらに努力を重ねてみたいと思うわけでございます。  養蚕につきましてのお尋ねでございますが、養蚕は、わが国の伝統的な生糸でございますから、これを守り抜いてまいりたい、こういう基本姿勢であり、しかも地域の特殊な作目として非常に、農家の生活といいますか、経営の上にがっちりと根を張ったものでございますから、そういった観点からもこれを守り抜いてまいりたい。このために価格制度なりあるいは輸入の一元化等々講じて、これが安定対策また生産対策にも力を入れておるところであります。  これに関連いたしまして、中国、韓国等からの輸入について、確かにいま生糸の手持ちがございますので、来年の二国間の話し合いにおきましては、こういっただぶついた事情を十分説明して、しかるべき次年度の輸入枠を決めてまいりたい、参酌した上で交渉を進めてまいりたい、こう思うわけでございます。  果樹、桑園との差については園芸局長から答弁をさせます。
  22. 野崎博之

    ○野崎政府委員 果樹、桑等につきましては、育成期間が比較的長くかかる、そういうようなことで、奨励金を大幅にアップいたしておるわけでございますが、果樹は桑に比べてやはり育成期間が長い。桑は大体三年で成木になるし、果樹はそれ以上の期間がかかって成木になるわけでございますし、そういう意味で、桑は三年というふうに決めておるわけでございます。また、奨励金につきましても、従来果樹は四万円であったのを五・五万円に、桑は従来三万円であったのを五・五万円というふうに、奨励金は大幅に果樹に比べてアップをいたしておる次第でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは午後から大臣のいないところでこの問題を質問しますが、いまの局長の答弁は不満です。永年作目の果樹というのは、桃栗三年柿八年と言うけれども、桃栗は三年で実がなる。桑園は三年たっても本当のりっぱな桑園にはならない。確かに桑畑にはなりますよ。いま農林省が指導しているような密集密植方式というものがあるけれども、こういう方式をとっているから相当なものになると言うが、それは現在の状況においては試験の段階で、実際に余り各地でやっていない。だから本当に桑園を伸ばすというなら、もっともっと慎重に取り扱ってもらわなければ困るし、六十年の展望を見ても、六十年には十七万六千ヘクタールの桑園を目標にしている。現状が十三万六千しかない。これは四十七年のあのときから見ると面積はかなり減っているのです。だからことしから八年間毎年毎年五千ヘクタールの桑園を拡大しなければあの目標さえ達しない。そういう状況であるから、農家がこれをやろうという希望をしているときに、なぜそういうふうに抑えつけるのか。これはもっともっと考えてもらわなければならないし、予算は単年度であるし、桑園なりあるいは果樹というものは長い間かかるものだから、これは大蔵省も農林省ももっともっと考えてもらわなければいけない。この点については後でまたなお詰めますが、ひとつ答弁をいただきたい。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほど桃栗三年というお話が出たわけでございますが、確かにその着果期日は場合によっては早いものもあります。ただし、そういう成木になるにつきましては、やはり果実の方は相当時間がかかりますし、桑は大体三年で成木になる。たまたま私の方にありますいろいろな試験場のデータをとってみましても、桑は、一年目はもちろん低いわけですが、収桑量でいいますと、十アール当たり四百七十八キロ、それから二年目が千六百九十七キロ、三年目が二千百二十八キロ、それから四年目が二千四百キロ、そういうことになっておりまして、ここらがピークでして、あとは大体横ばい、それから十二、三年目から減ってくるわけです。したがいまして、十五、六年で更新するということになるわけでございますが、そういう意味におきましても、大体三年というところが桑としては完全に成木になるというふうにわれわれは見ておるわけでございます。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 あとは午後の時間にやりますから、これで終わります。
  26. 中尾栄一

    中尾委員長 神田厚君。
  27. 神田厚

    神田委員 昭和五十三年度の畜産物政策価格を中心に農林大臣に御質問を申し上げます。  まず最初に、現在の農政の中で、約四十万ヘクタールに及ぶ転作という状況の中で、農政というのは非常にむずかしい局面を迎えているわけでありますが、私は、構造不況業種の最たるものは農業だとこのごろ言っているわけでありますけれども、こういう中で、畜産をいわゆる農政の中にこれからどういうふうな位置づけをしていくというふうな形で大臣はお考えになっているのか。農政の中における畜産の位置づけ、これをひとつ明確にしていただきたい、こういうふうに思っているのでありますが、その点いかがでございますか。
  28. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国農業を過去振り返ってみますと、畜産というものは農業の中では非常に少ないウエートでありましたが、近年畜産のウエートが非常に大きくなってきた。しかも、需要も相当伸びておりますし、今後も伸ばしたい。こういうことで、わが国農業の中では重要な位置づけをして、六十年の見通しにつきましてもかなり前向きでやっておるわけであり、そのために草地造成とかあるいは価格安定対策とか飼料対策とかかなりきめ細かくやってまいりまして、相当前進したものとは思いますが、しかしまた、外国からの圧力やあるいは消費者からの要望等厳しい情勢もあるわけでございます。こういった要望にこたえるためにも、しっかりした畜産というものを粘り強く、単年度でできないこともありますけれども、長い目で見てしっかりしたものにしていきたい、こう思っておる次第でございます。
  29. 神田厚

    神田委員 この畜産の長期見通しについて、やはり私は、これを発展的に支えていく一つのものは価格問題だ、こういうふうに考えているわけであります。したがいまして、この五十三年度政策価格が決定されるに当たりまして、いま新聞などでは据え置きではないかとかあるいは上げる要素が非常に少ないとかこういうようなことが言われておりますけれども、この辺につきましては、大臣はどのようにお考えでありますか。
  30. 中川一郎

    中川国務大臣 価格は畜産政策の中で最も大事なものだとは思っております。しかし、先ほど来申し上げましたように、消費者の要望等厳しい面もございます。したがいまして、価格は再生産が確保されるに足る価格にすべきである。さてこれを上げるかどうするかということにつきましては、いろいろな指標によって生産費等を試算をいたしまして、しかも畜産審議会の議論も経まして決まるところでございますので、価格そのものがどうなるかということはいまお答えできませんが、価格も大事でありますが、それ以上にやはり生産対策というものが必要ではないだろうか。価格についても再生産が確保される仕組みでなければならないと同時に、体質改善により重点を置いて畜産農家の安定に資したい、こう思っているわけでございます。
  31. 神田厚

    神田委員 いま再生産の確保される価格を基本と考える、こういうようなことでございますね。そうしますと、たとえば現在需給実勢方式で食肉等は決められておりますけれども、この需給実勢方式でありますと、再生産の確保というものは非常にむずかしいのではないかというふうなことは明白だと思うのでありますが、その辺はどういうふうにお考えでありますか。
  32. 杉山克己

    ○杉山政府委員 需給実勢方式、これによって価格を決めてまいっておるわけでございますが、再生産がこれで確保できているかどうかということは、結果によって検証をし得ると思います。その意味では、四十九年の混乱というようなことはございましたが、概して畜産については生産は伸びております。一般的に生産性も向上しているという実績も見られるところで、いまの価格決定方式で私どもとしては再生産は確保し得ているというふうに考えております。
  33. 神田厚

    神田委員 私は考え方を異にしているわけでありますけれども、需給実勢方式のいろいろな問題点につきましては、午後からの時間にゆっくり申し上げたいと思うのでありますが、大臣のおっしゃられます生産対策、確かに大事であります。体質改善、生産性の向上、もちろん非常に大事な問題でありますけれども、これに対応する国の施策は、それでは十分にそれに対応するものを出しているかどうか、この辺になりますと非常にまだ十分とは言えないのではないかというふうな考え方を持っているのでありますが、いかがですか。
  34. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘のようにまだ十分とは申し上げられませんけれども、ここ数年来、畜産、酪農に対する国の生産対策なり金融対策なりあるいは価格対策なりあるいはまた流通対策というようなことで、相当前向きでやっておると存じます。ことし一年で終わるわけでありませんので、この考え方をさらに二年、三年と延ばしていって全きを期していきたい、こう思う次第であります。
  35. 神田厚

    神田委員 次に、輸入問題について御質問申し上げます。  畜産物の輸入が国内の酪農経営者あるいは畜産経営に対して非常に大きな影響を与えているわけであります。この問題につきまして、輸入の量というものをどの程度が適正というように考えているのか。需要に見合った形でのものだということになりますと、現在すでに自給は頭打ちの傾向を見せているというような考え方も一方ではあるわけであります。そういう中で、牛肉あるいは豚肉、そういうものに対する輸入もこれからやっていかなければならないだろうし、それからさらに一番問題になっておりますのは乳製品の輸入の問題があるわけでありますけれども、これらにつきましては、大臣はどういうふうなお考えを持っておりますか。
  36. 中川一郎

    中川国務大臣 農産物はもとより、畜産物も当然のことながら自給率の向上ということを第一番目に置いておるわけでございます。これは国民から少々高いものだという批判もありますけれども、国の安全保障という観点からいっても、自給率は高める、かたがた農家の経営を安定していかなければならぬ、それでもなおかつ需要にこたえられない部分については安定的な輸入ということによって需給のバランスをとっていきたい、こういう基本的な考え方でやってまいりましたし、今後もそういった考え方で農政を取り扱っていきたいと思う次第でございます。
  37. 神田厚

    神田委員 特に、いま私の質問の中で触れました乳製品の輸入規制問題、これについてはどういうふうなお考え方を持っていますか。
  38. 杉山克己

    ○杉山政府委員 乳製品の輸入は、形の上ではかなりの量ございますが、その内容を見てみますと、一つは、日本の国内では生産できないあるいは生産条件が著しく悪くて需要にこたえ得ないというようなもの、いま一つは、これをストレートに輸入しては農家に対する影響が大きい、そういうようなことを考慮いたしまして畜産振興事業団で一元輸入を図っているもの、それから特定の政策目的といいますか趣旨のもとに、たとえば飼料用の脱粉のようにこれを安く農家に提供する、同じように学校給食用の食用脱粉、これも学童父兄の負担等も考慮して安く供給するというようなことから、特定のものについての輸入を図ってはおるわけでございます。  しかし、いま申し上げましたように、無条件にあらゆるものを輸入しているというようなことじゃなくて、国内酪農との調整も考えながら、それぞれの趣旨に沿った形での輸入を行っておるわけでございます。今後とも、そういった運営をさらに適正に行う、国内酪農に悪影響を与えないという基本方針のもとに、輸入については運営を図ってまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  39. 神田厚

    神田委員 乳製品の輸入の問題につきましては、先ほどほかの委員から加工原料の数量問題につきまして質問がありましたけれども、限度数量を決めてそれ以上のものについては補給金の対象にしないというような形にしていますけれども、輸入を野放しにしておきまして限度数量を低目に抑えておく、こういうようなやり方は、自給率向上と言っておられますことと非常に矛盾があるというふうに考えておりますが、その辺は大臣はどういうふうにお考えでありますか。
  40. 杉山克己

    ○杉山政府委員 確かに国内の牛乳によって加工に回る分野をできるだけ確保するということは当然でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、国内の技術あるいは採算というようなことを考えました場合、どうしても国内では生産できないあるいは需要にこたえ得ないというものについては、これは輸入せざるを得ないと思うわけでございます。そのほかのものについてこれを無制限に輸入するというようなことがあれば、これは確かに問題でございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、特定の政策目的に基づくもの以外は、それなりに、事業団の一元輸入等で規制を図っているところでございます。そういうことで、その限度におきまして国内の原料乳をもって賄い得るものを市場に供給してまいるということになっているわけでございまして、できるだけ輸入の調整も図った上での国内原料乳の消化ということで私どもは考えておるわけでございます。限度数量も、そういった全体の需給を調整、考慮した上で決定されてまいっているという状況でございます。
  41. 神田厚

    神田委員 どうもはっきりしない答弁で、納得できませんけれども、いずれにしろ、五十三年度の畜産政策価格の問題が今月末には答申を見るわけでありますが、大臣がさっき基本的におっしゃいました、生産農家が再生産を確保できるものにするというふうなことで、これから先の問題についてよろしくお願いしたいというふうに御要望申し上げておきたいと思います。  最後に繭の問題で、基準糸価の引き上げを生産農家が相当要望しているわけでありますけれども、基準糸価の引き上げ問題と同時に、先ほど御質問があったかと思いますけれども、稲作転換奨励対象作物としての桑の期限が三年になっておりますけれども、これの期限延長、三年ではせっかくできたものもそれでやめてしまう、後は使い物になりません。ですから、これを少なくとも十年間ぐらい指定作物としてほしいというような要望がありますけれども、これについての御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。大臣の方からお願いします。
  42. 野崎博之

    ○野崎政府委員 基準糸価の問題につきましては、先生御承知のように、繭の生産事情、それから需給事情、経済条件、そういうものを種々しんしゃくいたして適正な水準に定めるということになっておるわけでございます。今後、蚕糸業振興審議会の意見を聞きながら決めてまいりたいと思っておるわけでございます。  いまの桑の三年のお話でございますが、果樹五年、桑三年ということになっておるわけでございますけれども、成木になる時期が桑よりも果樹の方が長い。桑は三年間たてばほとんど成木になって、後は安定した収量がとれる。果樹については、着果時期が、三年のものもありますが、五年以上かかるものが多い。そういうことで区別をいたしておるわけでございます。
  43. 中川一郎

    中川国務大臣 基準糸価につきましては、いま局長が答弁したとおりでございまして、五十三年度の基準糸価についてもその基本線を守っていきたいと存じます。  なお、果樹と桑との五年、三年の問題でございますが、これも局長が答弁申し上げましたように、桑は三年たてばかなりの生産を上げる、果樹は、桃栗三年柿八年で、いろいろありますけれども、平均的に見れば五年ぐらい見ませんと収入が上がってこないという、大体大方の納得の得られる線が出ておりますので、これで理解を得て御協力をいただきたい、こう思う次第でございます。
  44. 神田厚

    神田委員 終わります。
  45. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、午後一時再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時四十七分休憩      ————◇—————    午後一時九分開議
  46. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件につきまして、本日、畜産振興事業団理事長太田康二君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  48. 中尾栄一

    中尾委員長 農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。竹内猛君。
  49. 竹内猛

    竹内(猛)委員 午前中大臣に質問をいたしましたが、時間が非常に足りないために不十分な点がありますので、今井政務次官はそのときちょうどそこでお聞きになっていたわけですから、大臣の答弁もあわせながら、畜産問題と養蚕の問題について質問をしたいと思います。  畜産の問題に関しては、まず最初に、日本の畜産に対する基本的な考え方として、国内で自給ができる畜産物はできるだけ国内で自給する、そしてどうしても輸入しなければならない場合においてはそれなりの措置をとって輸入をするということが、農家のために一番望ましい方向だ、こういうふうに考えるわけです。大臣にも質問をしましたが、昭和三十七年、八年をピークにして、酪農の場合にも最近では非常に専業化してきて、一戸平均が十三頭を超えるほどの平均頭数になったし、それからまた、養豚の場合においても最近では五十頭以上の頭数を経営する、こういう形になってきて専業化してきた。そういう専業化をするためには、農家はそれなりの努力をしているわけです。  ところが、農林省の資料にはその努力の中のきわめて重要な部分が欠けている。何が欠けているかと言うと、借金がどうなっているかということについては、生産の伸びはあるけれども、借金の分については載せていない。農家の借金は一体どうなっているのか、この点について農林省からまず答えをいただきたいと思います。
  50. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生御指摘のように、三十五年、また最近におきましても、わが国の畜産は順調な発展を遂げつつあるわけでございます。飼養頭数もふえる、一戸当たりの所得も増大するという中で、負債の状況がどうなっているかということでございますが、物によって差はあるわけでございますが、これをそれぞれについて申し上げますと、まず養鶏でございます。これは四十七年度末は一戸当たりの負債総額は百二十一万五千円、そのうち制度資金が二十七万八千円ということでございましたが、これが五十一年には百七十万三千円、そのうちの制度資金は三十七万円というふうに、ここ四、五年の間に若干変化を見せて増大しているわけでございます。  それから養豚の場合は、四十七年度末が百五十七万三千円、制度資金が三十七万五千円。これが五十一年には二百三十八万二千円、制度資金が六十一万九千円というふうに変わってまいっております。  それから酪農でございますが、これは畜産の中でも一番負債の額が大きゅうございまして、合計で百八十六万二千円、うち制度資金八十四万七千円であったものが、五十一年に四百二十二万五千円、制度資金が二百三十八万三千円という額になっております。  これだけですとほかの農作物に比べてどうかということで比較がわかりませんので、参考のために稲作について申し上げますと、稲作が合計で六十五万四千円、うち制度資金が十六万三千円であったものが、百八万四千円、二十七万二千円ということに変わってまいっております。  これを総じて言えますことは、畜種にかかわらず畜産の方は、一般の特に稲作などに比べていずれも負債の額が大きい、中でも酪農が最も大きいということが言えるわけでございます。それから、経営の発展に比例してといいますか、それと相伴って負債の総額も伸びている。そのうちで制度資金に依存している割合は、養鶏、養豚に比べて酪農が金額的にも比率的にも大きいという状況になっております。
  51. 竹内猛

    竹内(猛)委員 去年、本委員会でいろいろ畜産の問題で議論をして、農家に対する特別融資をしていただいた、そういう経過があります。これは据え置きのものもあるし、金利が他のものよりも低いものもあったし、それ自体は悪いことではないわけだが、いまこの償還問題で相当農家のふところを痛めている。この問題に対する条件緩和とかその他の方法によって負債の問題について考慮する考え方はないかどうか。
  52. 杉山克己

    ○杉山政府委員 昨年畜産振興事業団の助成事業として行いました経営改善資金の融資についてのお尋ねかと存じます。  これは昨年、畜産の行政としては相当思い切った水準での、金額的にも相当多額の助成を始めたわけでございます。いろいろ御要望もあったわけでございますが、過去の負債について一応これを整理して、新たな発展を図るという観点から思い切った措置をとったわけでございますが、実はまだ償還も始まっておりません。条件等については、決めてお貸ししたばかりでこれから償還にかかろうかということでもございますので、その段階におきまして特にその条件改定をするというようなことはまだ考えておらないところでございます。
  53. 竹内猛

    竹内(猛)委員 仮に言えば、ことしもこれから金を借りなければならない。そうすると、前の金があると金を借りられないということが当然出てくるだろうと思う。そういう場合に考慮してもらわなければならないということを言っているわけです。  それからもう一つは、それぞれの業種によって金額が違うけれども、この金がどういうところに使われたのか。たとえば病人が出て医療費になったのか、あるいは子供を学校にやるための学費に使ったのか、さらには家畜をふやすために使うのか、こういうような借入金の使途というもの、主としてどういうところに行っているのか、これをお聞きしたい。
  54. 杉山克己

    ○杉山政府委員 貸し付けを行っていることの趣旨は、経営改善ということでございます。ただ、具体的にその使い道、何と何に充てなければいけない、またそういう証明がなければ貸したものは取り消す、そういう厳格な貸し付け要件になっておりません。したがいまして、経営改善ということではございますが、実際には、その農家の経営あるいは家計を通じて本当に資金が一番要るところに使われるという実態はある程度避けられないと思います。その場合、就学資金あるいは子女の結婚資金に使われなかったかと言えば、全くそういうことかないとは言い切れませんが、私どもとしては、そういうことを通じてでも全体としての経営上の資金繰りにはプラスになると考えております。決してそういうものを奨励するとか初めから認めたという趣旨ではございませんが、そういうものは一切いかぬというような条件にはいたしておりません。
  55. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほどの大臣の答弁では、畜産物価格の決定方式というものは需給実勢方式をまた踏襲する、その中でも十分に生産を償うことができるのだ、こういうようなお答えがありました。私は、先ほど質問したときに、養豚にしても酪農にしても専業化しているから、そういう農家が希望を持って進むためには、これを積み上げ方式である生産費と所得を償うような方式に切りかえるべきだ、こういうふうに主張して質問しました。いま、借金までして農家が生産をした、そして規模も拡大した、それで生産力が高まった。一人の生産力が高まれば生産費は下がってくる。その下がった部分についてのメリットというものは一体どこへ行くのかというと、これは農家に戻ってこない。だから、ことしの畜産物の価格というものは余り値上げをしないというようなことをすでに大臣は言っている。政務次官、一体ことしの畜産物の価格はどういう方向に行くのか。これは審議をしなければわからないと言うかもしれないが、一体据え置きをするのか上げるのか、上げるとしたらどれくらい上げるのか。その辺の見通しはもうぼつぼつできているはずだから、どうです。
  56. 今井勇

    ○今井政府委員 それを決めていただくために、審議会の御意見も聞かなければまいりませんし、また経済状況等も勘案して決めよう、こうなっておるわけでありますから、ただいま私の口から、上げるとか下げるとか据え置くとかいうことは申し上げかねるというふうに御了解賜りたいと思います。
  57. 竹内猛

    竹内(猛)委員 あらかじめ私は申し上げておくけれども、なぜさっき借金の話をしたかというと、たとえば、これはある新聞ですが、これを全部読みますから皆さんに聞いてもらいたい。「「今の安定価格帯では、せっかく上がった価格も足を引っぱられてしまう」「一千万円の借金もいつになったら減るのか……」「たまには家中で一日楽しみたい」——年間出荷頭数八十万を誇る全国有数の養豚地、群馬県。身を切るような“赤城おろし”の吹く赤城村と富士見村は県内でもトップを行く養豚地帯。だが生産農家の生活水準はまだまだ低い。施設の改善で減ることのない借金の重荷、そして、輸入圧力の脅成、消費を上回る来年度の生産の伸び、さらに、四十万ヘクタールの減反で心配される畜産物の洪水——と、養豚農家の不安はつきない。「当初四百万円だった借金も今では一千万円に増えた。それでも他の者に比べれば、まだ少ない方だ。借金を減らしたいのだが……。“バクチ”のような価格の変動では、どうにもならない」——と語るのは四十六年、減反政策のもとで三十アールの稲作を養豚に切りかえた下田嘉丈さん」という、これは三十七歳の富士見村の人です。「下田さんは一貫経営で年間一千二百頭の肉豚を出荷するかたわら、同村農協管内の畜産農家で組織している「畜産組織協議会」の副会長を務めている。また、養豚農家十戸で「富士見養豚経営者協議会」をつくり、毎月二回、研究会を開く。税理士に作成させたという資料をめくりながら下田さんはいう。「売上金額が六千百万円。そのうち飼料費が五割の三千万円、それから販売経費、薬・獣医師代、もと豚代、雇用労賃などを差し引くと、所得として残るのは三百三十万円だけ。しかもそれは、数字だけのことで、その中にはたな卸し資産や増設した施設費、新しく購入した種豚なども含めてのことだ。そのため本当に手元に残るのは返済用に積み立てる百万円だけ。その返済金も昨年までは近代化資金の利子四十七万円だけだったが、今年からは総合資金の利子、元金の返済も加わって百二十万円になった」。富士見農協では年間一万五千頭の肉豚を出荷しており、売上金額は七億円を占め、同農協では酪農とならぶ基幹部門。養豚農家は二百七十戸、うち大規模農家はほとんど一千二、三百万円の借金をかかえ、返済してもまた規模拡大、施設の改築などで“自転車操業”だという。これまで規模拡大で休みもなく働き、また、乱調価格で心身共にすり減らしてきた養豚農家。「これからはバクチでなく価格を気にせず安心して生活、経営できるようになりたい。そのためにはキロ当たり七百五十円から八百円の間で安定してほしい」と、下田さんの妻、和代さんは訴える。」  こういう声に対して、農林省なり、それから今井政務次官の背景にある政府与党の皆さんはどうお答えをするか、そのお答えをひとつ聞きたい。
  58. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまの先生の質問の前段で、生産費所得補償方式をとらない、あるいは農家にメリットを還元しない、こういったことでどうなのかということがございましたが、牛乳の保証価格は、これはまさに名前のとおり最低の底支え価格でございます。その意味で、生産費所得補償方式をとらない、それからメリット還元を行わないということでございますが、むしろ、そういうメリットが生じて、底支えのような財政負担による助成を必要としないという事態が一番望ましいというふうに考えているわけでございます。生産農家の立場からすればまことに厳しい話ではございますが、やはり経営は自立していくということが理想として一番掲げられるところであろうかと思うわけでございます。  それから、再生産を償うに足るような手当てあるいは配慮がいろいろなされているかということを含めまして、負債についての負担が大きいではないかというお話でございます。確かに、私も先ほど数字を申し上げましたように、酪農経営における一戸当たりの負債の額は大きゅうございます。ただ、負債はそれに伴って資産もできるということもありますし、それからこれに伴う金利は、これは生産費として経費の中に計上されるわけでございます。しかし、そうは言いましても、実際に借金を返すということになりますと、なかなか資金繰りがうまくつかないという事実はございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、これは事業団の助成事業としての融資でございますが、実質金利五分になるように、酪農の関係で言いますれば総額四百億円の枠を設けて融資を実施いたしたところでございます。実際に借り入れられましたのは、現在までのところその八割程度、三百三十億円というようなことでございますが、私、このことによってすべてが解決したとは申し上げませんが、酪農農家の資金繰りの改善にはかなり貢献し得たのではないかと思っております。今後とも、そういう資金繰りの状態なり何なり、手当てできるものがあれば、できるだけの配慮はいたしたいと思っているわけでございます。
  59. 今井勇

    ○今井政府委員 いま局長が答弁いたしましたとおりでありますが、私どもとしては、やはり生産者が再生産を確保して生産に励んでいただくということがまず基本的態度であることは、先生のお説のとおりであります。今回決めようとします畜産物にいたしましても、米と若干違いますのは、そのものずばりじゃなくて、一つの目標価格といいましょうか、幅の価格を決めるわけであります。したがって、そういう中で決めます価格については、生産費だけじゃなくて、需給の情勢等も十分考えなければならないことも当然のことであろうと思います。しかしながら、基本的には、生産者が安心して次の生産ができるようなものを基準にして考えたいということについては全く同感でございます。
  60. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま私が読み上げた群馬県の養豚地帯と同じようなことが私の茨城県にもあることを皆さんに報告をしておきますが、やはり専業化してきているんだから、そういう農家が倒れないようにするために、この際、必要な畜産物はまず国内で生産をする、その上に足りない部分については配慮する、そういう立場から、これは外務省、通産省にお伺いをしたいのですが、畜産物の輸入は一体どういう形になっているのか。これはもうやむを得ないものなのか、それともいま言うように国内でできるものは国内でやる、そしてなお不足のものについてはあれこれ、こういうふうな方針はとれないのかどうなのか、その辺についてのお答えをいただきたいと思います。
  61. 羽澄光彦

    羽澄説明員 お答え申し上げます。  酪農品、ことに牛肉についてでございますが、先生御存じのように、先般の日米通商協議におきましても、アメリカから、わが国が牛肉の輸入をふやすようにという要求がございました。こういった要求はアメリカの行政府だけではございませんで、政府のみならず、その議会方面等々、各方面から寄せられておるところでございます。わが方といたしましては、日米貿易関係が世界の貿易の拡大というものに占めます重要な位置というものも配慮しつつ、アメリカにおきまして台頭しつつある保護貿易主義を抑制しなければいけない、こういう観点に立っておるわけでございます。  したがいまして、農業の分野におきましても、種々困難な事情がございますけれども、わが方として、できるだけの努力をしておるという姿勢を示す必要があるという観点に立っておるのでございますが、農業経営及び総合食糧政策というものには支障を来さない、その推進には支障を来さないということが根本でございまして、その根本に従ってこういった交渉に臨んでおる次第でございます。
  62. 竹内猛

    竹内(猛)委員 通産省は——では、また後で……。  いまの答弁にもかかわらず、外国から、これは後でまたうちの委員から質問があると思いますが、牛が入るというようなことになって、値が下がって、非常に農家が苦労しているということはもうあちらこちらにあるわけでありますから、この点は、この農業政策が、単に農林省だけじゃなくて、外務省、通産省を含めた国全体の問題として考えていかなければならないし、仮に農産物を自由化を全部してみたところで五億ドルという額でしかない、そういうことをして日本の農村をつぶしてみたところで、それでこの不況、不況というかドルを減らすわけにはいかない、そういう点からしてこれは大いに検討する余地がある、こういうふうに考えてほしいということを要望します。  そこで、畜産物あるいは農畜産物の価格の決定の時期の問題について私は質問をしたいと思う。  法律があるからということでありますが、三月になると畜産物の価格の問題と養蚕の繭の価格の問題が議論になる。六、七月になると麦と米。それから九、十月ころになると砂糖。こういうように価格の問題がそれぞれまちまちな形で取り上げられる。なぜ、農家が作付をするころに価格の基本の方向を示して、それから一定の時期に、収穫のころにもう一度検討して価格を決めるというような、そういう弾力性のある価格の決め方ができないか。そういうことについては研究したことがありますか。これは政務次官どうですか。
  63. 杉山克己

    ○杉山政府委員 畜産物だけじゃなく、農産物全体の話にまたがりますので、あるいは官房からお答えするのが適当かと思いますが、私から一応お答えさせていただきます。  農産物の価格決定、いろんなやり方があると思います。作付前に価格決定を行う、あるいは収穫後に行うというような考え方もあろうかと思います。物によっては現にそういたしております。そのことが特定作目の生産を誘導したりする上で一つの方法でもあろうかと思うわけでございます。  ただ、畜産物について申し上げますならば、これはほかの農産物と違いまして、一年じゅう、一月から始めて十二月まで、いつの時期でも物が生産されるという事情にあるわけでございます。それから、価格水準を決めますと、これがどうしても国の財政なりあるいは畜産振興事業団の売買操作等と関連してまいるわけでございます。こういう、国にいたしましても、畜産振興事業団にいたしましても、会計年度ということでもって区切りをつけているという事情があるわけでございます。それならばそこに合わせてということで、従来その会計年度開始直前の三月に決定してまいってきたところでございます。ほかの農産物と平仄を合わせて検討してみてはどうかという御意見もございまして、畜産物につきましても決定の時期をどうこうするかということについて検討したことがございますし、いまでもその検討を捨てたわけではございませんが、先ほど先生御自身が御指摘になりましたように、法律にも規定されているというようなこともあり、それと、現実やはりこの三月の時期に、このように迫られてくると、にわかに変えるということも実務的にもいかがかというようなこともあって、現在までのところ三月に決定するというやり方で続けてまいっておるようなわけでございます。
  64. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、要望としては、農家の皆さんに、物をつくるときにはおおむね予備価格のような形のものが出て、それから収穫のときに最終的に決定をしていくというような親切な形のものが一番いいのではないか。これは法律の関係があってにわかにはいかないけれども、検討としてはそういう検討をしてほしい。  そこで、外国との関係の問題で、中国食肉輸入の問題について私は大臣に質問したところ、研究をしいろいろ調査をしている。農林省は、このことについて、どういう研究をしどういう調査をされているか、そのことをまずお聞きします。
  65. 杉山克己

    ○杉山政府委員 中国産の食肉の輸入解禁問題、これは長いこと議論になっております。戦後三回にわたりまして、この問題の究明のため民間調査団による調査が行われております。また、そういう調査に基づいて、わが国の家畜衛生専門家による総合的な検討を行ったのでございますが、概して言えますことは、中国における家畜衛生事情、これは確かに好転いたしておるようでございます。一般的な好転しているということは認められるのでございますが、まだ不明な点がたくさんございます。それらの点につきまして中国側に照会をしている、そういう段階にあるわけでございます。  食肉の輸入解禁につきましては、いずれの国におきましても、家畜衛生制度あるいは伝染病の発生状況、輸出入の検疫制度、そのまた具体的なやり方などにつきまして資料の提供を受ける、それから家畜防疫官を現地に派遣して、家畜衛生的な見地から、本当に解禁していいものかどうか詳しく調査をさせることにしております。しかし、国交正常化以来、中国とのいろいろな交流はありますけれども、家畜衛生事情に関しましては、中国からの情報は、「家畜伝染病発生月報」という雑誌が一回送られてきただけでございまして、現段階では獣医学的な判断をするに足る情報はきわめて乏しいというのが専門家の見解でございます。  中国産の食肉の輸入解禁は、家畜衛生の見地からの技術上の問題の解明がとにかく基本条件でございます。今後とも両国間の家畜衛生技術者の交流を進めて、家畜衛生事情についての相互理解を進めるということがまず先決であろう、そのことを深める必要があるというふうに考えております。
  66. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これも要望ですが、もう日中の平和友好条約の締結というのが日程に上ろうとしているときであるだけに、いつも同じような形での、そうでなくて、やはり努力をして、あるいは獣医師なり何なりというものがもうこのごろはしばしば中国に訪問をしているわけですね、そういうものに委託をするなり、いろんな形で努力をして、資料を取り寄せながら、FAOなんかでは口蹄疫はなくなった、こういうふうな話もあるのですから、それを確かめながら——中国は別に日本に肉を輸出をしたいわけではない。中国に対して、そういうようなものがあるかないかという問題についてのそのことを、私も、いま質問しているのは、何も中国から肉を入れろと言っているのじゃないですよ。こういうことが友好の妨げにならないようにしてほしいという立場から物を言っているわけですから、間違えないようにひとつお聞き取りをいただきたいと思うし、そういう努力をしてほしい、こういうことを求めます。
  67. 今井勇

    ○今井政府委員 竹内先生おっしゃるとおりでございまして、局長から申し上げましたように、われわれとしましては、発生の状況だとか、撲滅する方法だとか、ワクチンの問題、あるいは診断方法等について、先方にその情報を求めておるわけでございまして、そういうものが解明されるに従いまして、われわれはこの問題を解決しようという熱意を持っておりまして、これを口実にして一日延ばしに延ばしているというようなことでは決してございませんので、御了解を賜りたいと思います。
  68. 竹内猛

    竹内(猛)委員 養蚕の問題についてこれからお伺いします。  先ほど中川農林大臣は、養蚕業は伝統的な産業である、農業においてもそういうふうに位置づけをすると、そのことは同感です。やはりこれは伝統的な産業であり、かつては日本の輸出産業としてアメリカ方面から海外に大変輸出をしたものです。だから、農林省に蚕糸局というのがあって、蚕糸局の皆さんは肩を高めて廊下を歩いたと思うのです。ところが最近は、農林省の中の農蚕園芸局の、しかも繭糸課という一つの課、あるいはもう一つ何とか、蚕業課ですか、そういうところのすみの方に追いやられてしまって、すみのすみのところに行ってしまった。こういうところを見ると、これは養蚕業を大事にしているということにはならないと思うが、そういう形のものが至るところにあらわれている。これが非常に次に質問することと関連してきて私は残念です。  先ほどもちょっと質問したけれども、六十年の展望によると、十七万六千ヘクタールの桑園をつくらなくちゃならない、こういうふうになっている。ところが現在は、四十七年の十六万四千ヘクタールよりも減って、十三万六千ヘクタールしかない。十七万六千というその六十年展望に到達するには、四万ヘクタールをふやさなければならない。これを計算してみると、毎年五千ヘクタールをふやさなければならないという形になるんです。そうするためには、いまのような状態ではこれはならないでしょう。これは六十年展望が誤っているのか、現在のそれが誤っているのか、何が面積が減った理由になっているのか。その面積が減った理由ということについての主な点をずっと挙げてもらいたい、こう思います。
  69. 野崎博之

    ○野崎政府委員 ただいま先生おっしゃいました六十年目標、これから最近の数字、おっしゃるとおりの数字でございますが、やはり減りました原因につきましては、他作物との競合、特に野菜とかメロンとか、そういうものとの競合ということが一つございますし、それから養蚕労働力が減少していく。やはり若い人がなかなか養蚕業というものにつきたがらない、そういうような事情もございまして、労働力の減少がまた二つ目の原因。それから小規模の養蚕農家が相当減っております。大規模の経営はそう減ってはおりませんが、小規模養蚕農家が脱落をいたしております。そういうようなことで、いろいろほかのものへの転作とか、そういうことで非常に壊廃が著しい。そういうふうな原因が主な原因でございます。
  70. 竹内猛

    竹内(猛)委員 やはりこれは一番大事なところを、いつも役所は急所を抜かして言ってしまうから困っちゃう。それはやはり価格が不安定で生産がうまくないということでしょう。そういうふうに答えてもらうとすっきりするのだけれども、そこのところを言わない。そうすると、次に、じゃ、価格を上げろという話になるから、そこは言わなくて、規模がどうだのこうだの、そういうところにいってしまうからどうもすっきりしない。  問題は、やはり需給関係からいって、これは伝統的産業ではあるが、米のように、絹の着物を着なくても死ぬ人はいない。しかし、日本に冠婚葬祭があり、神社仏閣があり、お祝いがいろいろある場合には、やはり絹というものは準必需品だ、こういうぐあいに位置づけをしているわけですね。だから、伝統的産業であり、しかもこれは本当に日本的なものであるという意味においてやはり大事だ。そうだとするならば、どれだけこの需要があって、それに対する供給をどのようにするか、生産をどうするか、それの足りない分についてはどのようにしていくかということが考えられなくちゃならない。そのときに、現在のようにちょっと景気が悪くなると滞貨があるという形で、いま事業団に相当なものがたまっている。こういう状態で、なお二国間協定というようなものがあって、数量においてのいろいろな話し合いがこれからされると思うけれども、これは、先ほどはできるだけ話し合いをして削減をする方向で努力をしていると言っているが、その方向についての努力が、いま通産省並びに外務省、それから農林省と、この三つが担当だと思うけれども、それぞれ努力というものは、どういうところに問題があって、それをどう克服するかということについてひとつお答えをいただきたい。
  71. 野崎博之

    ○野崎政府委員 絹糸につきましては、先ほど大臣からお話がございましたように、蚕糸事業団に相当大量の在庫を抱えておりますので、その事情を十分説明を相手国にいたしておりますし、わが国の絹需要もなかなか停滞をしてはかばかしくいかない、そういう国内の需給の厳しさも十分説明してございます。きのう、おととい事務的なレベルで会ったわけでございますが、そういう事情を十分説明をして、課題になっている蚕糸事業団の在庫を適当な水準まで減らすような方向でわれわれもひとつ進みたいし、相手側もそういう状況を十分理解をいたしてもらいたいということを話しております。
  72. 竹内猛

    竹内(猛)委員 通産省はどうですか。
  73. 保延進

    保延説明員 絹関係の需給関係が非常に厳しい実態にあるということは十分認識いたしておるわけでございます。昨年は景気の不況もございまして絹の需要も停滞いたしましたので、一層厳しさを増しておるわけでございます。  輸入の問題につきましては、昨年も非常にむずかしい交渉を長期間行いまして、当省の所管でございます絹糸及び絹織物につきましては削減をいたしたわけでございます。そういったことで、来年度につきましてもさらに一層の削減ということはなかなかむずかしい情勢ではございますけれども、業界の非常に苦しい実情につきましても十分認識をいたしておりますので、今後粘り強く交渉を行っていきたい、かように考えております。
  74. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃいます二国間協定ということは、韓国についての御質問だろうと了解いたします。その前提で答弁させていただきたいと思います。  私どもといたしましては、通産省並びに農林省から、国内の需給関係、これからの展望等々、わが方の事情につきましては詳しくお話を承り、こういったことを踏えまながら韓国との間で話し合いを進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。しかしながら、他方におきまして、日本と韓国との間の貿易関係というのは、去年にいたしますと、約二十億ドルあるいは十八億ドルから二十億ドルぐらいの貿易不均衡という大きな問題も抱えておりますし、韓国側の輸出産業に取り組む姿勢というのも、これまた非常に熱意のあるものでございます。  かような状況でございますので、日韓間の友存関係ということも考えますと、他方におきましてわが方の国内需給関係を考えながら韓国との貿易全体の促進ということを考えなければならないという、きわめて困難な問題を含んでおる点を御理解いただきたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、日本側の困難な事情は韓国側に十分伝える所存でございますし、かような見地に立ちまして粘り強く交渉を続けてまいりたい、かように考えております。
  75. 竹内猛

    竹内(猛)委員 繭の問題も、実際は六十年の展望になると八三%まで自給率を高めていこう。そうなると、消費というのはほぼ固定をして四十万俵というようなことであるとすれば、それが伸びないとすれば、勢い輸入を抑えなければ、逐次減らさなければだめだ。だから、一時的につくったあのときでも、法律家あるいは国会で議論でもしてもらえばよかったけれども、これはそういうことでなくて、二国間の協定という形で、しかも、許可をするものが罰則を与えて、事前協議というような形での取り扱いになっていて、そういうのは不十分だと私は思うのです。だから、何とかこれは減らしていかなければ、抑えていかなければ、国内におけるところの生産が伸びた場合にはいつでも同じ問題が毎年起こる。だから、これを延期することはできないかどうか、この点はどうですか、政務次官。
  76. 今井勇

    ○今井政府委員 ただいま事務当局がお答えしたように、相手と誠意ある折衝をさせております。したがって、この折衝経過を通じて私どものいまのわが国の絹事情、そういったものを十分相手国に納得をしてもらって、先生のおっしゃるような方向に一歩でも近づこうという努力をいたしておりますので、しばらく様子を見ていただきたいと存じます。
  77. 竹内猛

    竹内(猛)委員 じゃまた輸入の問題に関連をして、繭とか絹糸、それから絹織物等も、輸入規制強化ということについてどういうように考えるか。繭については輸入の増大が目立ってきているけれども、これはやはり一元的に輸入をすることはできないのか。こういうことで、特に韓国の問題がいろいろな形で、お化けのような形で結局は繭の輸入のようなことになる。いろいろな名目はつけるけれども、日本に入ってくる。中国の方は比較的約束どおりにやっているが、韓国の方が問題だということ、それを何とか抑えることはできないか、これはどうですか。
  78. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いま先生おっしゃいましたように、問題は韓国でございまして、五十二年の六月から一月まで約二千三百六トンのうち、七割弱が韓国のものでございます。それにつきまして韓国に対しまして、昨日も、それからおとといも、始まりました協定の交渉の中で強く申し入れをしてございます。もし無秩序に入れるならば、生糸の量からその分を差っ引くぞというような話も一方出ているわけでございますが、そういうような強い要請はいたしております。これは二国間の話し合いでございますので、これからまた粘り強くそういう話を進めていきたいと思います。  繭についてはそういうことと、それから国内における輸入商社あるいは製糸業者の自粛といいますか、そういうものを強く指導をしてまいりたいあるいは乾繭取引所の品位の引き上げとか格差をつける、そういうようなことで、極力繭の無秩序な輸入を排除していきたいというふうに考えております。
  79. 竹内猛

    竹内(猛)委員 本年の繭の生産者価格というものについて農林省はどのように考えておるのか。キロ二千百円以上を生産者は要望しておるようですね。これに対してどうですか。
  80. 野崎博之

    ○野崎政府委員 繭それから生糸の価格につきましては、生産事情あるいはその需給事情、それからその他の経済条件を勘案して決めるということになっておりまして、確かに引き上げ要因といたしましては、繭生産の減少とか、あるいは労働費の上昇というものがあるわけでございますが、片や、先ほど来申し上げておりますように、絹の需要が停滞をいたしておる。末端におきます絹需要が今後どうなるか、非常にむずかしいわけでありますが、やはり繊維産業全体としては不況の状態を脱し切れませんし、また円高等の問題で、そういう心理的不安も非常にございますので、需要がこのまま回復するというふうにはなかなか考えられませんので、そこらの生産事情、需給事情、経済事情等を十分勘案しながら、審議会にお諮りをしながら決めていきたいと思っておるわけでございます。
  81. 竹内猛

    竹内(猛)委員 最後に、大蔵省お見えですからお聞きしたいのですが、先ほど農林大臣にも質問したわけですが、米の転作問題と関連をして、永年作物としての果樹には五年間は奨励金がついておる。桑には三年だということですね。先ほどからの説明であれば、三年あれば大体大丈夫だというような話もありました。しかし、それは農林省としていま指導しているところの農場がそういうことなんです。私どもが調べたところによると、三年ではまだまだりっぱな桑園にはならない。やはり四年、五年——五年が一番確実だ、そういうことで安定をするということでありますから、予算は単年度予算、計画は三年が一区切り、そして長期十年、こういうことになっているわけだから、その点について大蔵省としても、六十年計画に到達するには一年間に五千ヘクタールの転作をしなければならない。農家が米からの転作でいま大変迷っておるし、養蚕に変えようというような農家も中にはあります。しかし、そのときに問題になるのは、何といってもいまの永年作物の中における差別の問題だ。これを差別のないように、永年作物として果樹並みに、桃栗だって三年あれば実がなるというのだから、別に予算を、未熟なものをそこで切ってしまわないで、もっとがんばれということで、農家に勢いをつけていくという意味で、大蔵省の方もひとつ協力をしてほしい、こう思うのですが、大蔵省どうですか。
  82. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えしたします。  先生いま言われておる点でございますが、そういう竹内先生の御提案でございますので、いろいろと検討はさせていただきますけれども、現在桑につきまして三年間といたしておりますのは、桑の育成期間が三年であるということ、その期間は収入が非常に少ないので、ほかのものに比べて高い五万五千円を与え、三年過ぎますと十アール当たりの所得は非常に高くなりますので、さらに定着性も高まるということで、これを三年ということで、農林省はいろいろ技術的に検討いたしまして大蔵省に要求してきたものでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在のところ、農林省からの御要望のとおり認めたものでございますので、これについて農林省からの御変更がない限り、私どもとしては変更するという考えはございません。
  83. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農林省に問題があるということはよくわかりました。それじゃ農林省を洗脳しなければだめですね。だから、今度は、農林省の課長等々責任者に現地へ来てもらって、現地で話をしてもらうようにしますから、その点はあらかじめここで通告しておきますが、最後に、桑の苗がない、転作をしようにも苗がないということでありますが、茨城県、栃木県が苗の産地ですけれども、この苗には二種類ある。実生のもの、それから代出しという二つのものがありますが、苗をつくるにはいずれにしても二年かかりますね。だから、現在の物価なりの状況から言うと、一本四十二、三円というのはやはり苗が安いから、現地では五十円ぐらいにしてほしい、こういう要望もあるわけです。これはもっともな要望だと思います。これについて農林省、どうですか。
  84. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いま先生おっしゃいました桑苗の取引価格でございますが、これは生産者であります全国桑苗協会、それから需要者であります全国養蚕連、この間で協定をして取り決めることになっておるわけでございまして、秩序ある団体取引の推進に努めている。これは自主的にその両団体で取り決めるわけでございまして、国が直接どういう価格にしろということで介入をするような性格のものではございませんが、われわれとしましては、全体的に需給の均衡が図られるように、全国的な立場で桑苗の需給調整協議会等も開きまして計画生産に励むような指導はしてまいりたいというふうに考えております。
  85. 竹内猛

    竹内(猛)委員 じゃ、以上で終わります。
  86. 中尾栄一

  87. 新盛辰雄

    新盛委員 主に牛肉問題について質問をしていきたいと思います。  牛肉の輸入枠拡大が生産者に与えたショックはきわめて大きいものがあります。中川農相は、日米通商交渉決着の後に、国内畜産農家には支障はない、こう言い切ったわけでありますが、現実に子牛あるいは枝肉の価格は下落をしておりますし、生産農家は将来の希望も全く失って生産意欲が減退の一途をたどっているわけでありますが、政府に強い不信感を持っているこれからの畜産農家の問題について、政府としては一体どう考えているのか、そのことをまず第一にお聞かせをいただきたいと思うのです。  それと十五日の日に、一応、「最近における畜産の動向と畜産関係諸施策等について」畜産局長が例の諮問をするところの問題で、価格が今度決まるということになるわけですが、飼料の需給計画、いわゆる飼料需給安定法、これに基づいて輸入飼料の買い入れ、保管及びそれに伴う売り渡し、こうした問題や、指定食肉たる豚肉や牛肉の安定価格を決める畜産物の価格安定等に関する法律に基づいて諮問をしておるし、加工原料乳の保証価格及び基準取引価格、こうした生産者補給交付金等にかかわる問題を含める加工原料乳生産者補給金等暫定措置法に基づいて、一応三項目にわたる価格の問題についての諮問が行われて意見を徴することになっていますね。  この価格は、それぞれの諸団体からの強い要望があって、少なくとも現状ではどうにもならない、上げてほしいという要求が出されていることは御存じだと思います。  新聞等によると、これがまた据え置きだ、とてもじゃないが生産者の方だけをめんどう見るわけにはいかない、消費者はどうなっているのだということなどもあって、これからいろいろそれぞれの各部会で議論がされるのでしょうが、答申を出されたその結果に対して、従来生産費及び所得補償方式などという主張を私どもはやってきておるのですけれども、そういう面にかかわることについては、政治加算あるいは現状据え置き、これはどういうふうになるかわかりませんが、そういう動向に対して従来のパターンをいつも繰り返してきているわけですが、そういうことに対して政府はどう考えているか。まず、前段第一と第二、お答えをいただいて、順次参りたいと思います。
  88. 今井勇

    ○今井政府委員 畜産物の輸入の問題につきましては、当委員会でも大臣から再三再四にわたって御答弁申し上げておりますように、わが国の総合食糧政策に支障のないこと並びに生産農家の生産意欲をそがないようにすることを第一に心がけて、そういうことのもとで輸入をやろうというふうに考えております。  しかもまた、畜産物につきましては、先生御案内のように、輸入が事業団で一元化されておりますし、その価格には安定帯というものがありまして価格支持をしておるわけでありますから、暴落をするようなことがあれば、直ちに法の定めるところによる制度を発動するということになろうと思っておるわけでございまして、そういう意味で、農家の方々に非常な御心配をかけることは万々なかろう、このように考えております。  それから、畜産物の価格につきましては、御案内のとおり、この月末に畜産審議会のそれぞれの部会の御審議を経まして価格を決めるわけでございますが、その決め方につきましては、従前やっておりました方式を踏襲いたしまして、価格の算定をし、審議会の議を経ましてから、政府責任においてこれを決めたい、かように考えております。
  89. 新盛辰雄

    新盛委員 この輸入枠を拡大したことによって国内の生産者が非常に大きな影響を受けている、こういうことの認識は持っておられるようであります。ちなみに、今年度の輸入枠は五千トン拡大して八万トンというふうになっています。ホテル用のものは来年から三倍、三千トンに拡大した。これはグローバルなベースでいくと一万トンだというふうになっていますが、安い輸入牛肉が出回る、しかし、国内の消費者が食べる場合は、これは国内の牛肉ともそう変わらない形の中で出されているわけです。しかも、国内の生産者は、現実、私どもの方で調査したものでも、昨年十二月の和牛の去勢枝肉の中物、この卸売価格は一キロ一千六百五十円平均であったのですが、一月後半からつるべ落としに、二月にはキロ一千四百円台になっています。そしてまた、これに対して生産コストは千五百五十円内外になっています。こういうことですから、これはもう完全なる赤字経営であります。  私の鹿児島は全国一の子牛の生産県であります。その子牛、肉牛価格の推移を見てみますと、子牛は、雌で五十二年の一月平均価格去勢牛あるいは肉牛合わせて平均一〇%、いまはもうちょっと上がっていると思いますが、下落しているのです。こうした原因は何によって起こったのか。どうしてそういうふうになるのか。しかも、いま和牛の肥育の実態を見てみますと、和牛一頭の肥育コストは五十六万円、これは五百八十キロの場合であります。しかし、枝肉にすると、これは三百七十キロで中物格づけ率を六四%としても、枝肉はコストがキロ当たり千五百三十円になる。最近の相場は千四百六十円から七十円。ですから結局一頭当たり二万円から三万円赤字になっている。子牛を買って、しかもそれを肥育して売りに出す、そういう面においても赤字が二万から三万というふうになっているという現実ですね。これは二十五万円をいう一頭当たりを基礎にした場合のことでありますけれども、仮にこうした状況から見ましても、畜産物価格安定法による安定基準価格というのを設けられて、その上限とかあるいは下限とか、そういうものをつくって、一応の生産者に対する保証措置、こういうようなこともあるのですが、和牛の中物の枝肉一キロ一千三百三十円、上位価格が一千七百三十円、中心価格が一千五百十六円、こんな調子でいきますと、全く間尺に合わないじゃないか。だからいろいろと最近新聞をにぎわしているのですが、もうやめた、畜産振興のためには国内生産者の位置づけ、あるいは非常に奨励をしてうんと振興させるのだというけさほどの農林大臣の抽象的なお話がありましたけれども、こういうふうに具体的に現実的にあらわれていることに対して、どういうふうにされようとしているのか、それをお聞かせをいただきたいと思います。
  90. 杉山克己

    ○杉山政府委員 枝肉の卸売価格の推移、大体先生御指摘されたとおりの動きになっております。昨年来ことしの初めまで、比較的安定して安定帯価格の幅の中で、特に中心価格を前後にして推移してきたということで非常に好ましい状況であったものでございますが、最近になりましてやや下落の傾向を示しております。この安定帯価格の維持を図るということが安定制度の一番基本をなすところでございまして、私どももこの点は非常に注目して見守っているところでございます。この価格の維持のために、今後事業団の売り渡しの調整なり、生産出荷の調整なり、関係者の協力も得て努力しなければいけないと思っておるわけでございます。  それから、子牛の価格でございますが、これも市場によって差がありますので一概には言えませんが、特に先生御指摘の南九州の市場におきましては、七%から一割くらい確かに下がっております。そこで、この下がった原因は何かということでございますが、経済現象でございますのでいろいろ複雑に絡み合った理由があるかと思いますが、その一つに最近の、日本側から言えば輸入、先方から言えば輸出に対する諸外国からの強い要請、いわば外圧というものが出てまいっておりまして、そのことが、非常に農林省が苦心したところでありますが、いろいろ新聞等でも報道される。それらのことから、私どもといたしましては、実質畜産経営に支障がないようということで、需給上影響のないようなスケールで輸入を図ることとしているのではございますが、先行きについて不安、懸念を持たれる向きも出てくる、そういったことが、実際の商取引の段階で価格の上で反映するというようなことがひとつ出てきたのではなかろうかと思っております。  そこで、そういう先行きではないんだ、きちんと需給の枠にはめて輸入は調整してやるのだ。さらにそういう輸入されたものによって仮に価格が下がるようなことがあれば、先ほど政務次官からもお答えいたしましたように、いまの安定制度のもとでの価格維持はできるし、特に子牛については子牛についての価格安定制度もとられている。さらに、子牛の価格安定制度の中におきまして、五十三年度からは対象の数量あるいは単価あるいはその補てん率、こういったものを高めるというような実質的な改善も図っているところでございます。  そういうことで、全体的な農家の生産意欲を阻害しないような総合的な対策を図りながら、同時に、先ほど申し上げましたように、市場価格の維持を心がけるということで農林省としては対応してまいるということにいたしておるわけでございます。
  91. 新盛辰雄

    新盛委員 それでは具体的に入りますが、価格安定制度、これは五十年から始まったんですね。輸入によって安い肉が入ってくる。それを畜産振興事業団が一応買い入れて、そしてそこで上限、下限、値が下がれば置く、あるいは値が上がればこれまたそこで調整をするという調整資金があるわけでありますが、現実の問題として、なぜ輸入牛肉の価格が——無謀に輸入をするからというわけではありませんが、その形態を調べてみると、もはやこの調整金などというのは、実は消費者の上に上乗せされた形に現象面として出ているような気がするわけです。その内容として、いま牛肉の流通形態を見ると、これは確かに輸入の場合でそうでありますが、仮にオーストラリアから肉を入れる。これは一キロ当たりですが四百五十円、原価の推移はまた去年と違うかもしれません。ところが、輸入して到着をすると、その価格は、運賃とかあるいは関税とか保険料あるいは防疫料、そういうようなものがありますが、それで五百円になって、そして今度は畜産振興事業団の方に買い入れた価格、これは途中の商社マージンも入りましょうが、あるいは関税を二五%として見た場合もそうでありますけれども、六百八十円になる。四百五十円のものが畜産振興事業団に来たときは六百八十円になる。しかもそれに調整金を六百円上乗せして、事業団からの売り渡し価格として千二百八十円という値段になる。そしてまた、さらにこれは流通を通して小売店に入るときは千八百九十円。政府が一昨年ごろから指導された指定店、全国で二千三百店くらいあるのですか、ここに直接卸す場合は二割から三割この値段とは別に安いわけです。結局、調整金三百五十円という形の中でそういうふうになるのだそうであります。だから、こういう流通機構を持っていて、その調整金という形の中でやっておられるのですが、もうすでに畜産振興事業団の収入は、五十年度は百五十五億、五十一年度は倍増されて三百七億、五十二年度はさらにふえるであろう。恐らく四百億くらいになるんじゃないかと思うのですが、こういう金を何にお使いになるのか知りませんが、事業団というものは、もう一回機構の内部についてもっと整理して、あるいは畜産の赤字になっている人たちに、家畜振興事業資金とか、あるいは別に農業近代化資金とかいろいろありますが、そういうものに対する補強とか、あるいは生産奨励の面の役割りを果たすようにできないのか、こうした問題がいま消費者団体からも出ているのです。お聞きでしょう。そういうことのつながりの中でどういう見解をお持ちになっているか、きょう実はぜひお聞きしたいのです。  モーモーフライトと言えば、アメリカから約五十頭の成牛を飛行機で積んで、そしてどんどん国内に持ってくるのですね。こういう形の中で、飛行機代を入れても、あるいは関税を引いても、国内に持ってくればすべて間尺に合う。そういうことの関連の中で、実はオーストラリアにこの子牛の生体輸入計画というのを、鹿児島の商工会議所の会長である岩崎与八郎何がしという者が、鹿児島の有力者、行政、農業関係、畜産農家約七十名を一人当たり五十万円の旅費までくれて、そして畜産交流のためあるいは研究のためという名目であったのだそうですけれども、それならそれでいいんですが、そういう現地のオーストラリアの子牛あるいは成牛、いわゆる牛の飼育状態はどうなっているか、コストはどうなっているかという研究の場面なら、それなりに一応これから畜産振興としては価値づけられるんですけれども、その後にすぐ出てきたのが生後十八カ月から二十四カ月、もうほとんど成牛であります。子牛だと言っているんですが、専用の輸送船、いわゆる運ぶ船を専用的に持って輸入する。そして国内で約三カ月から四カ月肥育して出そう、しかも粗飼料も同時に輸入をしよう。これは現地価格はどういうふうになるのか、元値はどうなるかわかりませんが、大体二倍から三倍で買い付けまして、あるいは運賃、検疫料、えさ代などを支払って、そして四カ月肥育すれば農家一頭当たり十万円くらいの利益がありますよ。これは全国で一年間二万頭、そして毎月一千六百頭であります。こういうふうに輸入をするいわゆる輸入子牛は一頭八万三千円だそうでありますが、こういう形の中で輸入をしてくる。そして畜産農家はそれでもってまたさらに打たれる、こういう状況を繰り返すことによって。事業団というのは果たしてこういうことに対してどういうふうに考えているのか。また農林省畜産局長自身が、こういう問題は恐らく相談があったのじゃないかと思うのですが、もう今月か来月かに第一便を出そうというんです。現地の鹿児島じゃもう大変なことでありまして、そして農政連という、これはむしろ保守的な団体でありますけれども、猛烈に反対です。ただ、商社が、いわゆるミサイルからラーメンと言われる商社、自民党内部でも商社法でもつくって規制しなければいけないという人もいらっしゃるようでありますが、それほど商社が農家というものまで侵すようなことをして、国内需給の面で役割りを果たすんだということなのか、あるいは自分たちの営利のためにやるというのか、これは農畜産のこれからの、われわれが展望を持っていくために非常に大事な問題だと思うのです。このことについて調査されているのか、あるいはお聞きになっているのか、あるいはまたそのことについてどういうふうにお考えになっているかをお聞かせいただきたいと思うのです。
  92. 杉山克己

    ○杉山政府委員 御質問いただいた項目、たくさんにわたっておりますが、一つは、流通、消費者価格の問題、一つは、事業団の機能の問題、いま一つは、生きた子牛の輸入の問題ということであろうかと存じます。  そこで、まず第一の流通の問題でございます。確かにいまの価格安定制度は高い国産牛肉の価格に合わせて輸入肉の価格を調整するということにいたしております。そのために安く入った輸入肉に対して調整金を課するという形をとることになっておるわけでございますが、これは国内で長期のことを考えて基本的に牛肉の自給を図りたい、特に今後においては世界的に供給不足も懸念される、さらに現在四十二万戸からある畜産農家の、肉牛農家の経営を守るという立場から、消費者にも御理解願って、国内水準に合わせた価格での輸入牛肉の国内流通価格を形成するということを図っているわけでございます。しかし、できるだけ消費者に安くお手元に届けるということは当然必要でございまして、国内牛肉の生産についてその生産コストを下げる努力をする、同時に流通段階の経費を節減する、そのための流通改善を図るということは必要であろうと思っております。そのための施策、これは一々御紹介すると煩わしくなりますが、何がしか——何がしかというより私どもとしてはできる限りたくさんのことをやってまいっているわけでございます。  それから事業団が高い国産牛肉との差を調整するということで、調整金を取りますと、これは事業団収入になる。その収入の額は、ただいま先生の仰せられましたように、五十一年、五十二年、三百億あるいは四百億というような大きな額で上がってまいっております。この金額について、これを一体何に使うのか、これは生産奨励なり流通改善に使えないのかという御質問でございますが、まさにそのような事業に対して、事業団はこの輸入牛肉による差益をその用途に充てて使っているわけでございます。大きなものとして、畜産経営改善資金特別融通事業、これは農家が負債でもって困っている、この負債の整理のために改善資金として特別低利な五分資金を融資するというようなことをやっております。また、子牛生産奨励事業、これは肉専用の繁殖雌牛を保有する場合に、これが子牛を分娩いたします。その場合に奨励金を交付する。そのほか生産対策といたしましても幾つかのことを、さらに流通段階におきましても、たとえば牛肉の小売販売店が共同仕入れを行うというような事業、そして一定価格、安い価格でもってこれを消費者に提供する、いわゆる東京都の小売店で行っているところの朝市というような流通改善事業、こういったものにも助成するというようなことで、何も差益をポケットに入れてしまうというようなことでなく、まさに生産の奨励のため、あるいは流通の改善のため、生産者、消費者に御便宜を図るということで、そういう支出を行っているところでございます。  それから、三番目の生きた牛の輸入でございます。生きた牛の輸入は、特定のものを除いて、一般的に四十六年の秋以降自由化されております。そういう意味で、自由化されておりますから、特段の規制は働かないわけでございます。親牛につきましては一頭七万五千円の関税、それから子牛につきましては一頭四万五千円の関税がかけられるということになって、この負担のもとに自由に輸入できるということになっております。ただ、その中で、特定の農業生産者に対して貢献する、そういう農業生産上の意味の認められるものにつきましては、関税割り当て制度によって一定の枠を設けて無税とするという仕組みがとられております。  そこで、先生、鹿児島の企業が子牛を輸入してこれを日本の農家に肥育させるということを計画しているという御指摘がございましたが、私ども特別に調査するとか、何か事情を聞いたというようなことではございませんが、一般的に私どもの行政のルートに関係者等から上がってくる意見なり話といたしまして、そういう事実のあることは十分承知いたしております。これについて、役所の見解はどうかということでございますが、これは農業者が実際にそれを入れて肥育することにプラスがあるという面は確かに考えようによってはあるのでございますが、日本の牛の肥育は、肥育する農業者だけでなしに、子牛をとる子とりの農家もあるわけでございます。この立場からいたしますと、先生おっしゃるように、自分たちの子牛のマーケットが侵される、価格が下がって経営の安定が害されるという話になるわけでございます。そういう意味では、きわめて慎重な調整を必要とする。したがいまして、私どもは、この点については、いままで仮に無税のものを輸入するというときは、全国的な農業団体四団体だけに限定していままで無税割り当てを行っております。この考え方は今後とも変えないつもりでございます。自由化のもとに関税を払って子牛を輸入するというのであれば、それは制度的にはいけないとかあるいはだめだというものではございませんけれども、正直に申し上げまして、コスト的にそれで合うのだろうか、それから、そういうなれない外国産の子牛を持ってきて日本の技術でうまく育てられるのだろうか、いろいろ問題があると思います。それらのことを考えれば、十分分析した役所としての正式な見解ではございませんが、余り好ましい話ではないというように私は理解いたしております。
  93. 新盛辰雄

    新盛委員 好ましいことではないという畜産局長の御答弁があったのですが、確かにこれは例があるのですよ。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 いままでそういう形態で生体牛を入れて内地で飼育をする。ところが、牛の性質もあるのでしょうが、非常に粗暴きわまる、そして肉質においても粗悪である。飼料の面でも日本の草と外国のオーストラリアの粗飼料などとは比較にならない。そういう諸条件やら、疫病の関係においてもいろいろと問題がある。コストが合うのか合わないのかという以前に、そういうものについて野放しにしていくことがどうなのかと言っているのです。私は指導すべきじゃないかと思う。いままで農家というものは、農業基本法に基づいて、これは何をやるものか。ところが、農家の中に丸紅がおったり伊藤忠がおったり何がおったりというように、商社があるというのはけしからぬ話だ。そういうものが商社ルートを通してやってくるわけでしょう。そういうものを野放しにされることが、逆に、一生懸命子牛を成牛にして出そう、そして畜産農家も採算がとれなければいけないわけですが、そういう面を押しやってしまうような結果になりやしないか。だから、そういう面については強力な行政指導が必要になってくるのじゃないかと言ってくるのです。その辺、どうですか。
  94. 杉山克己

    ○杉山政府委員 その点では、私は答弁の中で申し上げたつもりだったのですが、整理して申し上げますと、野放しにしているわけではございません。  まず第一に、関税が子牛の場合は一頭当たり四万五千円かけられるということになっております。それから、無税の割り当てという制度はございますが、これは企業に対して割り当てるということは考えていない。まさに農業団体の中で、農業者自身の判断によってそういう調整がついて、必要だと認められるならば無税の枠の割り当ては考えるということにいたしているわけでございます。
  95. 新盛辰雄

    新盛委員 これからの、たとえば子牛の元値を決める問題、飼料の問題、所得が減少したらそれを救済する共済制度、あるいはまた農業近代化資金とかいろいろ借りていますが、そういうものの償還期間を長くしたらどうか、これは畜産振興の四つの原則なんです。そういう問題を除外して別な面から入ってくることは非常に問題がありやしないか。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 だから、そういう面の抜本的な対策として、これはただ通り一遍の問題ではなくて、生産農家の生産意欲をかき立てさせるようなものでなければならないはずだ。現に南九州、特に大隅の地域に畜産団地その他を設けられまして、そして畜産振興、日本全国で一番大きい個所なんです。ここは全国の中でも一一・三%程度のものを持っているわけですから、それこそいろいろな調整金の中からお出しになる手だてを考えればいいのであって、こういう別途の形のものを、輸入の自由化だから、あるいは関税の面でも規制が若干あったにしても、そういう面に対する政府の指導政策としてどういうふうにお考えになっておるのかということを——いや、それは自由ですからおやりなさい、勝手でございますというなら、恐らくうまみのある話ならみんな飛び込むのじゃないですか。そういうことに対する行政指導というのはできないのですか。
  96. 杉山克己

    ○杉山政府委員 特殊な、個別的な事例を法律的な権限なしに禁止するというようなことはできないわけでございますが、私ども、一般的な行政のあり方として、先ほど申し上げましたように、現在の関税制度なり関税割り当て制度の中での規制はやっておるわけでございます。少なくともそういう考え方に基づいてやれるようになっている、そのことを十分に運用しているわけでございます。  それからまた、そういった問題につきましては、もちろん法律等に基づく行政上の介入はできないにいたしましても、地元の県なり農業団体に対して、そこら辺の調整を十分図るようにということでの一般的な指導といいますか。そういう話は私どもとしてもいたしておるところでございます。しかし、個別の特殊な事例だけ、どうしてもやりたいというのをどうやって抑えることができるかということになりますと、正直申し上げましてなかなかむずかしい問題があるのではないか。ただ、私先ほど全部は御説明申し上げませんでしたけれども、飼育技術の問題でありますとか、採算の問題でありますとか、検疫の問題でありますとか、そういうことを考えますと、事実上今後大きな規模でそういうことがやれるのかどうかということについては、はなはだ疑問を持っているわけでございます。そういう一般的な疑問を持つとかなんとかだけではなしに、強力に抑えろと言われましても、いま申し上げましたそこのところが一つの限界であろうかと思うわけでございます。  それから、子牛の価格安定について制度的な安定を図られているけれども、そういうことだけでなしに、御趣旨は、現在、親牛を保有するものに対して、子牛を分娩した場合には奨励金が出されておりますが、こういったものを続けて出すあるいは増額するというようなことを検討してはどうかというお話でございます。これはいまここでどうこうという話はなかなか申し上げにくいのでございますが、いろいろ現地の御要望も承っておりまして、今後検討すべき課題かと考えております。
  97. 新盛辰雄

    新盛委員 この際、いま御回答のあったように、子牛の生産奨励金、たしか現行一頭当たり一万円、これなども三万円に上げよという要求が出ているわけですよ。だから、現実に合わせた形の中でそういう要望を拡大するということでなければ、これからの畜産振興というのはあり得ないと思うのです。そういう中で、先ほどから私の方で出しております調整金という名の三百億から四百億、事業団がポケットに入れたとは言いませんけれども、家畜導入資金あるいはその他いろいろな活用をしているのだ。ところが、今度消費者の面から見ると、価格差、いわゆる輸入肉と国産牛肉との間の差を埋める役目を果たしているという面では、一つの方法として、これは与野党含めて価格安定制度というのをつくったわけですから、そういう面の活用をこれから図らなければならないわけです。そこで、調整金というのは税金にひとしいものじゃないか。先ほど申し上げました図式によって、外国の牛を入れた場合においても、それが最終段階になると三倍から五倍に近い値段になる。この流通問題の整理をしなければならない時期に来ているじゃないか。だから、そういう差益金をもっとそういう面に差し向ける方法はないのか。そういう面も含めて、これからは国内の畜産生産者と消費者とを直結するものでなければならないはずだと思うのです。そういう面で、大場前畜産局長が、去年の議事録を見ますと、ことし一月、二月、三月ごろは大変なことになるだろう。だから、この際、八千トンぐらいの牛肉を緊急放出をしなければならないことになるかもしれない。あるいはまた、国内牛肉の産直方式、いわゆる産地から持ってきてすぐ卸すという、これは生協とかいろいろな関係諸団体がありますが、そういうものと提携をしてやらなきゃならないだろう。そしてまた価格の競争が働く中で、輸入牛肉、そして取り扱い業者との関係、この枠組みを外していった方がいいんじゃないだろうかというふうな御答弁をされているのですよ。  だから、こうした面について、これから価格をお決めになるわけですが、御説明があったと言われる、そういう面に対する基本的な方針として畜産局はお考えになっているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  98. 杉山克己

    ○杉山政府委員 流通改善に関する対策、これは事業団の資金を活用するということだけではなしに、それ以前に政府としての方針なりあるいは政府としての財政的措置というものがあって、各般の施策が組まれていくわけでございます。消費者に安くお届けするための流通改善、こういうことになってまいりますと、現在の流通機構はきわめて複雑でございますが、産地には食肉センター、それから消費地には部分肉市場、この整備を図ることがまず大事であるというふうに私どもは考えております。そこで五十三年度予算におきましては、食肉センターを倍増するような大型の充実促進を図るということにいたしておりますし、部分肉センターはまず大消費地である東京都に設けるということで予算化を図っております。  それから具体的な、いわば応用問題とでもいいますか、現実のこの市場のいまの流通を活用しながら、その中で安く消費者のお手元へ届けるためにどういうことをやったらいいかということで、幾つかの対策をとってまいりましたが、それを幾つか申し上げてみますと、たとえば週一回安売りを行うための特別売却、これはただいま先生が言われましたような生産者団体と消費地とを直結いたしまして、これはモデル的な事業でございますから、国産肉について週に一回安売りを行わせる。それから特別売却に続きまして、俗語ではいわゆる朝市と言われておりますが、東京では小売店が共同仕入れを行う。そして中間経費を節減して、安定した価格でもって——安定したというのは、この場合通常の市価の一割安くらいでございますが、安定した価格で消費者にお届けする。そのためには資金が要るとか、事務的な経費がかかるというようなこともありますので、事業団からこれまた金を出すというようなことをやっております。先ほどの特別売却についても事業団の金が出ております。  さらに、そういう直接助成的な事業だけでなしに、牛肉の販売の仕方を通じて価格を下げるのに貢献させる。具体的には輸入肉の割り当て数量をふやす、それからその割り当ての仕方について改善を図るというようなことを考えているわけでございます。その中では、特に監視が行き届きますところの指定店、これに対する売り渡し量もふやすと同時に、その指定店の数もふやしていく。さらにそれに対する都道府県、市町村あるいは民間の婦人団体等によりますモニター制度、これを活用して十分指導していくというようなことも行っているわけでございます。  そういうことで、事業団の資金の活用ということ、あるいは現在の売買の運用ということ、さらに基本的には国の政策あるいは予算措置というようなことを含めまして、総合的に流通改善対策を講じているところでございます。
  99. 新盛辰雄

    新盛委員 そういう努力の跡があらわれないのが現状なんですよ。どうしても消費者の方は、高い牛肉を食わされている。だから、いま具体的におっしゃいました食肉卸市場あるいは食肉センターあるいは部分肉流通機構の整備、こうしたようなことによって、産地、消費者の直接なかかわり合いというのを流通の機構改善の面でやっていきたい、こういうことなんですが、この御答弁はもう昨年もおととしもずっと同じような言い方がされてきているわけですね。しかし、現実は、なぜこんなふうに上がるのか。消費者はもう自分に痛みがくるわけですね。だから、そういう流通機構の面で、たとえば指定店を広げよう、指定店に行くと二割、三割は安くなるんですよ、小売店の方に行くと上がるんですよ。そういう機構整備の面で、ここで事業団の性格を少し変えたらどうか。まあ、いろいろな御提言があります。公団方式をつくればいいじゃないかとか、あるいはまた輸入事業団をつくって、もうそこで価格もきちっと決めて、消費者に直接安く入れられるような、いわゆる消費ができるような、そういうものにしたらどうかという提言はいろいろあるんですよ。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 農林大臣は、いや、牛は自由化の面においても国内の畜産業界にまだそう影響はありませんと言っておりますけれども、現実の問題として、生産農家は侵され、消費者の方は高い肉を食わされるというのは間尺に合わない。だから、そういう面の機構改善について、いまおっしゃっているようなことで相も変わらずこの五十三年度もいかれるというなら、これは大変なことになるんじゃないかと思うのです。  また、価格の問題においても、これは各部会でいま相談がされて答申があるでしょう。現状は円高で、しかも、現在のドルの動きによって仕入れ価格はきわめて安いのですから、安くなったはずのものがなぜ消費者には高くなるのか。その疑問を一つ解くだけでもこれは大切なことなんですよ。それが畜産行政としてなすべきことじゃないでしょうかね。通産省ももちろんかかわり合いがありますが、その指導という面で、わかっていることがなぜできないのか、そのことについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  100. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまの価格の形成の基本的な仕組みというのが、国産牛肉はコストが高い、輸入牛肉はコストは低い。しかし、国産牛肉を保護する、将来の自給を確保するということを考えますと、牛肉の価格を安い国際価格のままで国内に流通させるわけにはいかない。国産牛肉の値段は当然下がりますから、そうなれば農家は成り立たないということになるわけで、そこを調整するために調整金を取るわけでございます。本格的に国民に牛肉を安く供給するということには、長期的には、限界はありますものの、やはり努力をして生産コストを下げていく、あるいは上げないようにするということを国内でもって図ることが第一というか、一番大切なことであろうかと思っております。  ただ、そういう中で、流通に改善を加えて流通経費の節減を図るということもあわせて必要である。そのための措置として、先ほど来私の申し上げたようなことを幾つかとってまいっているわけでございます。そういう意味では、消費者が三割も五割も、あるいは半分にも三分の一にも国際価格並みに下がるということを御期待なさっても、これは現在の仕組みからすればできない御相談ということになるわけでございます。  それからそういうささやかな努力——私どもとしてはこれは最大にやっているつもりでございますが、形の上ではそれほど顕著に効果があらわれないという意味では、ささやかにしか評価されないと思いますが、とにかく、いま一般的に物価が上がっている中で、たとえ低成長とはいえ去年の二月に比べてことしの二月、一年間の総合物価指数は、小売物価指数は約四・五%上がっております。それに対して牛肉価格は、小売価格で三%下がっております。三%程度は大したことないじゃないかとあるいは仰せられるかもしれませんが、やはりこれは生産対策、流通対策、いろいろ苦心してきた一つのあらわれではないかというふうにも思うわけでございます。いろいろ価格を引き下げるドラスチックなこと、基本的な制度にもさわる話で限界がある話でございますが、私どもも、制度の中ではこれで最大限やっているというふうに考えているわけでございます。
  101. 新盛辰雄

    新盛委員 畜産振興事業団の中に、現在在庫は、肉は幾らあるのですか。
  102. 杉山克己

    ○杉山政府委員 ただいまきょう現在でということでは承知しておりませんが、昨年の後半からことしの初めにかけては、一万トンを少し大きく割り込む七千トン程度の水準のときがあったわけでございます。若干、これでは在庫を市中の調整を図るために維持するには不足するのではないかということで、これを少しふやすということでいま買い入れ等の措置を行っておるところでございます。一万トンないしそれを若干上回るところに来るのではないかというふうに見ております。
  103. 新盛辰雄

    新盛委員 いま国内の需給状況から判断をして、事業団として在庫保有、これはどのくらいあったらいいと思っているのですか。
  104. 杉山克己

    ○杉山政府委員 市況によってもちろん在庫に変動があるわけでございます。市中でもって高くなった、いざ出さなくちゃいかぬ、相当量が必要だというふうなときを考えますと、これは多いにこしたことはありませんけれども、コストの点も考えなくてはいけないということになりますと、従来の経験からいたしますと、一万トンレベルではやや少ないのではないか、これをもう少し上回った水準にするのが妥当ではないかというように思っております。なお、もう少しこの点は詳しく専門家の検討を待って、どの辺が妥当かということは決める必要があろうかと思います。
  105. 新盛辰雄

    新盛委員 国内流通のそうした面で、放出の時期というのがあるわけですね。いまのような現状であれば一万トンくらいがどうだろうかということなんですが、これは放出ということについては時期その他等あるのですか。
  106. 杉山克己

    ○杉山政府委員 これは安定帯価格の形成がどうなっているかということによって、当然、振れがあり得るわけでございますが、一般的には定期的に年間の物を毎月割り振って出していくという形にいたしております。毎月と言いましても、月々売却はいたしますが、枠としては二カ月とかそこら辺の期間を単位として定めて出していくということになろうかと思います。  いま年間流通しております輸入肉の量は、これは八万トンから多いときで十万トンレベルくらいかと思います。そうなりますと、一万トンという数量は一カ月強というような数量になるわけでございます。その程度はやはり流通在庫として、調整用の在庫として必要ではなかろうか。いま申し上げましたように、できるだけ価格変動のないのが好ましいわけでございますが、変動の起こったときは、若干の幅はあるにいたしましても、安定的に月割りにして出してまいりたいというように考えております。
  107. 新盛辰雄

    新盛委員 ここで政務次官、大臣がいないからなにですが、昨年来からの輸入枠拡大の問題で、ずいぶんとそれぞれの団体から押しかけられて、政府あるいは自民党、与党としてもずいぶん苦労されたと思うのですが、自民党の中にある畜産振興議員連盟、山中貞則会長になっているのですけれども、こういう輸入枠拡大についてはどうしても納得がいかない。政府、特に農林大臣の方は、そう言ってみたって、現実国内のそういう農家を大変なことにするんじゃないんだからしんぼうしてくれというようなことなんですが、その申し入れの内容に、牛肉輸入についても、子牛の関税を現行四万五千円から二十万円に、成牛の場合は現行七万五千円から三十五万円に引き上げろ、国産ミカンジュースの保護を図るために、コーラ類の現行五%から一〇ないし一五%引き上げるという問題と一緒に申し入れがされていたようですね。このことに対して、これは与党内部のことですから、われわれは知らないということでもないのですが、これは政府が言っていること、それからそういうふうに強い要求が出されているということ、この辺の関係で、どういうふうに政府としてこういう申し入れなどについて措置されていこうとされるのか。そのことによって、まあわれわれは、それは政府が、あるいは自民党、与党内部のことだからというふうにほおかぶりをすることもいいのでしょうけれども、これによって決まるこれからの制度の問題で非常に重要な問題がありますから、お聞かせをいただきたいと思います。
  108. 今井勇

    ○今井政府委員 私の知っております範囲内では、議員連盟のそういったお申し入れば、自由民主党の執行部に対してお申し入れがあったように承っております。したがいまして、党の方でそれをどう受けとめられますか、私どもまだ正確には承知いたしておりませんが、仄聞いたしますところによりますと、党でも事柄が事柄だけに慎重な取り扱いをされているやに承っております。
  109. 新盛辰雄

    新盛委員 そういう慎重に取り扱っておられることだけを見ても、事は非常に重大なことなんですが、私どもは、やはり、これからの畜産農家を育成をしていくために、何にしても子牛を買って、その肥育をして、しかも肥育をして出したときには、それまでのえさ代とか、そして最初の元値も含めて赤字が二万から三万出るというような、そういう結果を見ているということに対して、もういまから牛を飼う気にもならない、豚を飼うわけにもいかぬ。養鶏もあるいは加工原料乳の問題もそうでありますが、そういうふうに非常に生産意欲を失うようなことになりはしないだろうかという心配をしているわけですね。だから、これは、冒頭に申し上げたように、いまの畜産農家が切望しているその期待に、何かをやってくれるだろう、もっとわれわれを保護してくれるだろう、そういうことに対しても、もっと積極的なお答えがあってしかるべきだと思うのです。これからまだいろいろと長い時間議論をしていくことになるでしょうけれども、もう価格決定が月末に迫っているのですね。だから、据え置きだろうとみんな思っている。そういうことで、今度は政治加算だというような、取ってつけたような政策というのは、もういまの段階では通用しないのじゃないか。その基本的な問題について最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  110. 今井勇

    ○今井政府委員 畜産物の価格については、先生御存じのとおり、生産者が再生産を確保しこれを続けていただくということが前提であります。これは先生の気持ちも私どもの気持ちも全く同じでございます。したがいまして、この価格については、そういうふうなものを第一義的に考えはいたしますが、やはり法に定めるところによりまして、需給の状況あるいはそのときの経済の状況等も総合的に勘案せよ、こう書いてあるわけでございまして、そういうことを勘案しながら、ただいまいろいろその価格の算定に当たっているわけでございまして、結果的には、審議会の御意見を承りまして、政府責任においてこれを決めたい、かように考えております。
  111. 新盛辰雄

    新盛委員 畜産物の価格安定法による安定基準価格、こうしたものがあるわけですけれども、現実もはや肥育をしても、成牛にして出してみても、採算がとれない、そういう皆さんに対して、どうですか、いま共済制度というのはいろんな面でつくられているわけですけれども、国とか地方自治団体、あるいは個人も含めまして、そういう面における共済保護、そういう新しい制度というのをつくる必要があるのではないですか。そしてまた、所得がこうして現実減少しました。借金が拡大をされました。ここに、もう時間ありませんが、具体的にその借金の事例もあります。そういう人たちに対して、長期貸し付け、償還に対しては、六年とか十年とかいうのはありますが、二十年ぐらいに思い切ってこの償還の期間を延ばすとかいうような手だてをしない限り、生産農家はもう太刀打ちできないんじゃないかと思うのです。その二点についてお答えいただきます。
  112. 杉山克己

    ○杉山政府委員 第一点の、肉牛について価格低落による所得減を補償する共済的な仕組みはどうかというお尋ねでございますが、現在、肉用子牛につきましては肉用子牛価格安定事業というのがございまして、これは道府県単位に生産者が一定の積立金を積み立てる。そして国、道府県がこれに助成して基金にして、価格の異常低落に際しては、この基金が生産者に対して補給金を交付するということで子牛の価格安定を図ることにしているところでございます。これに対しまして、成牛の方について同じような制度がないかということでございますが、成牛はむしろ製品たるところの枝肉、この枝肉価格の安定を図るため現在畜産物価格安定法があって、食肉価格安定を図っているわけでございますから、その適切な運用を図るということで、事実上その経営安定にも資するということになるのかと考えるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 成牛自体について何か特別な共済制度を考えるということになりますというと、これは種類だとか肥育形態など、その生産費だとか価格、これは非常に格差が大きゅうございます。子牛のようにわりあいと、一本化するというようなことについてはそれほど抵抗なくできるものと違いまして、技術的にも仕組みをつくることはむずかしいのではないかというふうに考えております。しかし、気持ちにおきましては、先生のおっしゃられるように、私どもも価格の安定ということを図る気持ちには変わりないわけでございまして、現在のその仕組みをまさに十分に活用して、一層安定に資するように考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、資金の長期化ということでございます。一般に畜産経営のための資金は、その家畜の回転期間といいますか、成育期間等を勘案して定められるわけでございます。近代化資金でもそれらのことを考えまして、全体の配慮から、五年あるいは七年といったような中期の期間での貸し付けが行われているところでございます。いまの資金回転の状況、経営の実態からしますれば、これを特別に延ばすというようなことまでは考えておらないところでございます。
  113. 新盛辰雄

    新盛委員 終わります。
  114. 中尾栄一

  115. 芳賀貢

    芳賀委員 最初に、農林省の予算課長おりますか。  予算課長に質問するというのは、きょうは大蔵省の出席を求めるまでもないと思うので、内輪で間に合わして農林省の政府委員である予算課長に出席を求めたわけであります。  そこで、お尋ねしたいのは、農林省予算の中で昭和五十二年度の加工原料乳に対する交付金の予算関係についてです。  これは慣例としては食糧管理制度、食管の米価の予算と同じように前年度主義を踏襲してきているわけです。しかし、昨年、ことしのように、毎年度当初の加工原料乳に交付すべき限度数量が、昨年の場合には十三万七千四百トン、五十二年度のことしの場合には約二十万トン超過するということが——超過というのは、加工原料乳の法律にうたってある認定数量が限度数量を超過した分をこれを超過数量と言うわけでございますが、そういうような実情にあるので、予算運用の点から見て、まず予算課長から内容説明を願います。
  116. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 ただいま先生からお話ありましたように、こういう価格関係の予算につきましては、食管会計と同様に、慣例といいますか、前年度の数量と単価をもとにして予算を計上しているわけでございます。したがいまして、昭和五十三年度のただいま国会審議願っております予算におきましても、前年度の限度数量百五十八万トン、それから補給金単価二十四円五十八銭をもとにいたしまして三百八十一億の補給金等勘定への繰入金というものを計上しているわけでございます。これまた先生御承知のとおり、補給金等勘定におきましては、乳製品の輸入とそれから不足払いの支払いというものをやっているわけでございますが、補給金等勘定で支出いたしますのは、あくまでも加工原料乳の限度数量内の法律上に基づきます補給金でございまして、それに必要なものを前年度主義ということで計上し、その後政策決定を受けました単価なり限度数量の変更につきましては、現在でも補給金等勘定に積立金等の蓄積がございますし、それから過去には、それだけで不足いたしまして一般会計から追加ということもあったわけでございますけれども、予算計上はあくまでもそういう前年のその単価と数量というものに基づいていたしまして、その後の政策決定に伴って補給金等勘定なりその後の予算で対応するということが従来のならわしになっておりますし、こういう価格関係予算というものの性格から言ってそういうことじゃないかと思っております。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 私の尋ねておるのは、昭和五十二年度の当初予算は、限度数量については百三十八万トン、それから交付金の単価についても前年同様ということになっておるわけです。ところが、農林大臣が四月一日から実施するために告示した限度数量は五十二年度百五十八万トン。だから、五十二年度の当初予算においても、告示数量と予算の数量というものは最初から二十万トン違ってきておるわけです。しかし、農林大臣審議会の議を経て告示した百五十八万トンというのは、これはいかなる場合であっても予算上も実行しなければならないわけですね。だからその点が、限度が超過した場合の措置というのは、これは経過的に見ると、限度数量の改定あるいは交付金の予算額の改定を行わないで、挙げて畜産振興事業団の助成金勘定からやや合法的に体裁を整えて支出をして終わらしておるということになっておるのだが、これは予算上から見ると問題があるわけです。  そこで、事務的な答弁でいいわけですが、五十二年度の例をとっても、この予算の数量と、それから告示された限度数量の二十万トンの差、これを毎年年度末にはどういうふうにやっておるか、決算にもかかわる問題ですけれども、その点を田中課長から説明してもらいたい。
  118. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 五十二年度当初予算では、百三十八万トン、それから補給金単価二十四円七銭という前年の五十一年度の数量と単価ではじきまして三百二十五億円の予算を計上したわけでございます。その後五十二年三月三十一日に告示されました限度数量が百五十八万トン、それから単価が二十四円五十八銭ということで、約六十三億円の不足を生じているわけでございます。  これにつきましては、現時点で、まだ三月でございますので、最終的な決算等詰まってないわけでございますけれども、補給金等勘定の性格から言いまして、国の原資と過去の蓄積なり乳製品にかかる輸入差益、そういうものでプールで処理することになっておりますので、過去の慣例から言いまして、現在、補給金等勘定に積み立てられております積立金により処理するということになろうかという感じがしておりますけれども、現在まだ三月中でございますので、最終的な決算の締めには至っていないわけでございます。
  119. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、限度数量が二十万オーバーした場合は、これは当然その分について一般会計から畜産振興事業団の交付金勘定に入れて、その勘定から、当初予算の百三十八万トンと合わせて百五十八万トンというのが告示された数量だから、五十二年の年度末には完全に支払いされるという手順が正当な手続であり、処理だと思うのですが、ことしはその点一体どうするか。
  120. 田中宏尚

    田中(宏)政府委員 同じ繰り返しになろうかと思いますけれども、不足払いの財源といたしましては、補給金等勘定から払う。補給金等勘定の収入としては国からの交付金とそれから輸入差益、それから過去の蓄積、そういうものに加えましてその年度における運用益、総体で不足払いを行うという仕組みになっておりますので、国の予算額が不足払い所要額にどんぴたりということが制度の仕組みとして必ずしも要請されてないわけでございます。したがいまして、仮に補給金等勘定に全くの余裕がない、あるいは先行き問題があるという際には、先生の御指摘のように、補給金の支払い総額にあわせた予算編成ということも先々の話としては考えられようかと思いますけれども、現段階、少なくとも五十二年度の決算におきましてはそういうところまでいかなくて処理できそうな見通しでございますし、それから五十三年度につきましては、これから限度数量なり補給金単価の御審議を畜産振興審議会等でいただきますので、そのときに上がるのかどうかということはわれわれにとりましては予測がつきませんので、その点にかかる答弁ははっきりとできないわけであります。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、予算上は、国の予算の編成が毎年十二月に行われて、そして一月から順調に行けば三月一ぱいで来年度予算が成立するわけだから、ところが限度数量というのは牛乳年度当初に決めるわけですからね。予算の編成、成立と限度数量の決定、告示がずれておることは間違いないのです。しかし、その数量が判明した時点で予算の執行についても補正等の措置をしかるべき時期に行うというのが至当じゃないかと思うのです。どうも見ておるとずれのある数字については全部振興事業団の財源に依存する。それが当然であるというような慢性的な認識が続いておると思うのですよ。そこに問題があるわけですからね。  そうすると、二十万トンについての財源というのは事業団ではもうちゃんと用意しておるわけですか。太田理事長、ちょっと待ってください。  委員長に申しますが、私は以前からきょうの質疑にあたって、参考人として畜産振興審議会の片柳会長と、いま見えておる畜産振興事業団の太田理事長の出席を、理事会を通じて委員長に決めていただきたいということを申し出ておるわけです。太田さんは見えていますが、もう一人片柳会長はどうしておるか。
  122. 中尾栄一

    中尾委員長 先ほど理事会を開きまして、理事懇談会の中で各党の御意見を賜りまして、当初の、けさほどの理事会におきましても各党の意見をまとめた上で一致、合意点に達した場合にということで合意を得たようなことでございましたから、そのように取り計らったわけでございます。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、本日、片柳会長を参考人として出席を求めることに問題とか、不当の理由があるということできょうは呼ばないということになったのですか。
  124. 中尾栄一

    中尾委員長 けさほどの各党の御意見での段階の上でそう取り決めたものですから、きょうは呼ぶことには適切でないという判断の上に立ってこのような形がとられた、こう御解釈願いたい、こう思います。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 参考人の出席要求は、質問者である委員が事前に一定の手順をして申し出ておるわけですからね。質問予定者が、必要であるから参考人の出席を願いたいということを言っておるわけですからね。それが国会の諸規定等に基づいて、要求されておる参考人なるものは適切でないというような明確な理由がある場合は別でございますが、きょうは畜産問題を集中的に当委員会において審議をするということに一番密接な関係があるわけですからね。だから、参考人として、これは喚問でも何でもないのですからね。参考人として貴重な意見を拝聴したいということで出席を求めておるわけですから、そういう点については後日悪例が残らぬようにしてもらわないと、国会の国政調査権であるとか、参考人あるいは証人の出席ないし出頭要求等について、明確な理由がないのに、それはだめだとかどうかと言うことは、これは今後当委員会の運営から見ても問題を残すと私は考えておるわけです。しかし、この点については、後刻の理事会において慣例等を十分に調べて適正な運営を今後委員長において行ってもらいたいということを希望しておきます。
  126. 中尾栄一

    中尾委員長 委員長としてその点の希望は十分お聞き入れいたしまして、この次の理事会に諮りたいと思っております。ただ、きょうのお決めになったことは御了解願いたい、こう思っておりますから、どうぞよろしく。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 太田さん、御苦労さんでした。  そこで、いま田中算課長に私が質問した問題ですが、農林省としてはまず予算の限度数量と、それから告示された限度数量の二十万トンの数量差の分については畜産振興事業団から支出させるという方針のようでございますが、振興事業団の財務関係はどうなっておるか、十分あるとか、さらに限度数量をオーバーした二十万トンについてもありますとか、率直に説明願いたい。
  128. 太田康二

    ○太田参考人 先ほど予算課長から御答弁のございましたとおり、私どもの補給金等勘定というのは、先生がお尋ねの政府からの交付金が一つございます。それから、私どもがいたしておりますところの輸入乳製品の売買操作益によって生ずる益、原則的に益が出るわけでございますが、この益がございます。それから、過去に積み立てた積立金がございます。こういったものが主として財源になっておるわけでございまして、五十二年度の例で申し上げますと、これも先生が御指摘になりましたとおり、予算の編成は十二月から一月にかけてでございますから、その当時は一応五十一年度の限度数量の百三十八万トンという数字を使いまして、それの九八%掛ける二十四円七銭、合計三百二十五億円というのが交付金になるわけでございます。それを私どもは受け入れるわけでございますが、その後、三月末になりまして正式の五十二年度の限度数量が決まるわけでございますが、これが五十二年度におきましては百五十八万トンに相なったわけでございます。そして、補給金の単価も二十四円五十八銭ということでございますから、合計が三百八十八億円ということになるわけでございまして、私どもが交付金としていただいた金と実際に交付しなければならない金額との間には約六十三億円の不足ということに相なるわけでございますが、運用益等の収入も、先ほどの主たる財源のほかにあるわけでございまして、昭和五十二年度の補給金等勘定全体といたしましては五十六億円の損失になるというふうに現在見込んでおるところでございます。  しかし、これにつきましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、補給金等勘定には年度当初に積立金が百五十一億円ございましたので、今年度発生が予想されますところの損失金を差し引いても、約九十五億円というものが五十三年度に繰り越されるというふうに現在見込んでおるところでございます。
  129. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、この積立金等を対象にすれば、二十万トンの差額数量に対して交付金勘定から支出をしても、九十五億円まだ残額があるということになるのですね。そうなると、午前中に議論したわけですが、百五十八万トンの限度数量を、五十二年度末までの認定数量がおおよそ二十万トン程度超過するということがすでに判明しておるわけです。これも従来の例から見ると、特に前年の五十一年度末においても、やはりこの分は、法律に基づく限度数量の改定手続を省略して畜産振興事業団の助成勘定からその所要額を全額支出しておるわけですね。去年その時期には太田理事長は健在であったからよくわかると思いますが、ことしも政府が支出するということを決めれば、限度数量の改定をやれば、これは交付金勘定から支出しなければならぬ、昨年同様ということになれば、これは助成勘定から支出しなければならぬ、これは当然この二様のどれかによって処理することになると思いますが、勘定が異なっておっても、事業団においては限度超過の二十万トンについては財務上から見ると対応できるというふうに承知していいわけですね。
  130. 太田康二

    ○太田参考人 今年度の限度数量の処理の問題につきましては、私、権限があるわけではございませんのでお答えいたしかねるわけでございますけれども、ちょっと先生に申し上げますと、私どもの補給金等勘定で支払っておりますのは、農林大臣がお定めになります限度数量の範囲内で都道府県知事が認定した数量、これにいまの補給金単価を掛けた金額を限度として支払うことになっておるわけでございます。したがって、一つ、仮の例として、本年度限度数量が超えるではないか、それをもし、恐らくいままでの例だと改定をしないわけでございますね、しないということになりますと、補給金等勘定では支払うわけにまいらないわけでございます。  そこで、いま先生がお尋ねの、五十二年度の際も、十三万七千トンオーバーした分をおまえのところの助成勘定の中から支払ったじゃないかというお尋ねでございますが、たとえばいまの金額が適切であるかどうか私よく存じ上げませんが、五十何億というお話でございました。そういった金が、では五十三年度の助成勘定の中にないのかねと言われれば、本年度の輸入牛肉勘定の売買差益というものも相当多額に発生いたしておりますし、一部を積み立てて、大部分をまた明年度に、決算の終わった後で助成勘定に繰り入れるわけでございますから、絶対額として五十億程度の金が助成勘定にないというわけではないということを申し上げておきたいと思います。
  131. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ、財政上から見ると、農林大臣から指示があれば、この種の支出は当然加工原料乳の交付金法に基づいて、法律の第十一条第八項には、保証価格等の改定をやる場合は畜産審議会の意見を聞いて改定ができるというその改定条項というものは明らかになっておるわけだから、いずれにしても、振興事業団から支出するということであれば、手続上の問題というのは私としては余り問題にならぬと思うわけですが、まあこの際、理事長から金はある、心配ありませんということが明確にされましたから、その点は、農林当局としてもその財源措置に困るから云々ということにはならぬということが明らかになったわけです。  それから次に、農林省に尋ねますが、第三次酪農近代化計画の達成に当たって、これは昭和六十年が目標達成時になっておるわけですが、その近代化計画によっても、生産の総量も当然ふえておるし、その中において飲用向け、加工向けの用途別については、飲用化が相当進むということになっておるわけですが、それにしても、加工原料向け生乳というものは、現在の加工原料乳の数量から見ると相当大幅に上回るわけです。上回ることを期待して近代化計画というものが策定されておる。そうなると、この近代化計画の達成と、特にその中の加工原料乳に対する対応というものを、現行法律制度を運用した場合においては一体どうやるかという点については、近代化計画が策定されたときに十分な配慮というものはされておると思いますが、これは事務的な答弁でいいですから、局長から明快にしてもらいたい。
  132. 杉山克己

    ○杉山政府委員 四十九年を基準年度とする第三次酪農近代化基本方針、これを目標と実績とを対比してみますと、生乳生産につきましては、四十九年はスタートの年ですから四百八十七万六千トンということで、同じ水準でございます。六十年見通しが七百六十八万トン、この間、仮に直線的に年率同じ率で伸びるということで、途中年次の計数を測定いたしてみますと、目標は、五十一年は五百二十九万七千トン、五十二年は五百五十二万一千トンとなるべきといいますか、となる推定ができるわけでございます。これに対して実績の方は、五十一年は第三次酪農近代化計画を上回って五百三十六万九千トンになっておるわけでございます。五十二年はまだ最終的な数量は判明いたしておりませんが、中間の数値として測定できる五百五十二万一千トンをやや大きく上回りまして、五百八十万トン台が見込まれております。  それから、加工乳の見通しについてどうかということでございますが、これは加工乳の需要ということではなくて、全体としての乳製品需要ということで目標を設定いたしております。基準年度二百万トン、そして目標年度三百二十八万トンということになっております。これも生乳の場合と同じように直線的に毎年伸びるということで見通してまいりますと、五十一年は二百十八万四千トンの目標に対して実績は百九十八万六千トンということでやや下回っております。五十二年につきましては、二百二十八万二千トンの目標に対しまして実績はまだ目下のところ推定ができておりません。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  133. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いているのは、これは政府のつくった近代化計画ですが、昭和六十年度には飲用向け需要量が全国で四百二十八万トン、乳製品向け需要量、乳製品は生乳を原料としてつくるわけですから加工原料乳といっても差し支えないわけですが、これが三百二十八万トン、自家消費等の需要量が十二万トン、これを合わせて生産目標が七百六十八万トン。ただ、これについて奇異に感ずることは、国内の総需要量というのは、これは近代化計画だからと言えば別でありますが、輸入量というものが入っていないわけですね。最近における乳製品等を全部生乳に換算した場合には、五十二年度には生乳換算で約二百二十四万トンの輸入が行われておる。そういうことになっておるわけですから、いかに近代化計画であっても、現実に外国から生乳にして二百万トン以上の輸入が持続的に行われておるわけですから、これを合算しなければ国内の総需要数量が幾らであるということにはならぬわけですね。こういうところに非常に手落ちがあるわけです。  そこで、私の聞いておるのは、六十年には三百二十八万トン飲用向けの需要量がある。これが全部現在の法律に言う加工原料乳でないとしても、五十二年度の当初の百五十八万トンに比べるとこれは約二倍の数量になっておるわけです。だから、こういうような加工原料乳というものを、午前の農林大臣の暴言のように、当初決めた限度数量を上回った場合においては、政府としては法律上、行政上何ら責任がない、頼みもしないのに勝手に生産をしたんだからというような、まことに聞くに耐えないような無謀な発言が行われたわけでありますが、近代化計画達成の過程において、毎年毎年乳製品の原料乳というものの需要がふえておるわけです。それに対する価格上の政策とか、あるいは現在の不足払い法における補給金制度というものを一体これにどう対応させていくのか、こういう点が明確にされなければならぬわけでしょう。しかも、ことしから米の水田利用再編成ということで、これも十年間ですからね。特に日本の最大の畜産酪農基地の北海道においては、水田面積のちょうど三分の一、八万八千八百二十ヘクタールが無理やり転作されるわけなんです。九万町に及ぶ水田が畑作に転換されるという場合において、転作の実施の分野の中には当然飼料作物が急激に増反する、あるいはこれを給源にして酪農や畜産が多頭化の方に向かう場合もある。それによって生乳が畜肉の生産もこの分だけ余分にふえるというような要素をことしからまたはらんでいるわけですよ。  だから、この際長期見通しに対して、畜安法あるいは加工原料乳不足払い法というものをどのように対応させて運用するかということは非常に重大な点なんですよ。その場逃れではだめですよ。大臣、局長などというのは一年か二年で交代するが、長期計画ということになれば、十年もそれ以上も続くわけでしょう。その間政権がかわればまた官僚諸君も全部姿勢が百八十度転換する場合もあるが、現に局長をやっておるとか農林大臣をやっておるという人物については、まじめに検討して不安のないようにする必要があるんじゃないですか。どんどん近代化方針の期待にこたえて加工原料乳もふえていく。そういう場合に、一体価格の対応はどうするかということは大事じゃないですか。そういう将来展望があれば、こうやりますとか、なければないでもやむを得ぬが、その辺を明快にしてもらいたい。
  134. 杉山克己

    ○杉山政府委員 幾つか問題点を指摘されたわけでございますが、まず第一に、乳製品需要の中で、先ほど申し上げました数量の中で、輸入の分はどうなっているのかという話でございます。  輸入については、確かに調製品等の数量が若干定かでないところがありまして、はっきりしたものだけ取り上げますと、生乳換算で約二百四万トン輸入量がございます。これだけ輸入していると、いかにも日本の酪農経営を圧迫するような形での大量の輸入が行われているかのごとく思われるわけでございますが、その内容をごらんいただきますと、日本の国内では生産できない、あるいは需要にこたえ得ないもの、あるいは特定の政策目的から安く入れざるを得ないもの、学校給食用の脱脂粉乳あるいは飼料用の脱脂粉乳といったものがそれに当たります。それから、無限定に入れてはまさに国内の酪農に影響を与えるからということで、事業団でもって一元輸入を図って調整しながら入れることとしているもの、こういったものに分けられるわけでございます。その意味では、一見した数量は二百万トンあるいはそれを超える大きな数量ということでございますが、これ自身は直接的には全く関係ないなどということは申し上げるつもりはございませんが、いままでの経過からして、日本の酪農のあり方、水準と並行的な存在意義をもって評価というか、位置づけることができるものというふうに考えております。国内でできるものを無理やり、あるいは何ら規制なしに外国製品を優先させるのだというようなことで考えているわけではございません。  それから、先ほどの目標値の乳製品需要の数量の中には、芳賀先生御自身でもお触れになりましたように、これは乳糖、カゼインの一部のようなものも含んでおりまして、必ずしも指定乳製品を対象とする加工原料乳だけの数量ではないわけでございます。それにしても大きく伸びるではないか、長期の目標からすれば、限度数量はそれに見合ってもう少し大きくてもしかるべきではないかという御指摘かと思います。ただ、これは長期の農産物の需要と生産の見通しでございまして、このことが直ちに法律上の限度数量そのものを制度的に規制する、あるいは自動的に決定するという性格のものではないわけでございます。限度数量は、やはり毎年毎年その年度の需給見通しを立て、全体としてのバランスを考えて決定するということになるわけでございます。今日、率直に申し上げまして、全体的な長期的な視点から見たら過剰かということについては私は確かに問題はあると思いますが、懸念はあるにしても、もう少し需給は慎重に検討する必要があると考えております。しかし、五十二年に限ってみれば明らかに需要を上回る生産が出ており、限度超過がはっきり出ておる。しかもこのときに、事業団において乳製品、脱脂粉乳の一万四千トン、生乳換算九万五千トンの買い入れも行っております。こういう事態のもとでは、限度数量をオーバーした分を、昨年は確かに見たことがございますが、全く同じに扱えるかどうかということについては、なお今後の需給の見通しとの関連において慎重に検討する必要があるのではないかというように考えております。  それからあと、全体の水田再編利用の政策との関連から、牛乳の生産については増産を意図しておるのではないかということでございますが、これは確かに長期的な観点からそのように考えておりますし、同時にまた、現在の流通飼料、輸入飼料、これに傾斜がかかっておりますのを、自給飼料に傾斜を変えていくという観点からいたしますれば、私ども、長期的な増産と同時に、そういう飼料の給与体系の改善ということも含めて、水田再編利用は、これは積極的に畜産の立場からも進めていくべきだというふうに考えております。
  135. 芳賀貢

    芳賀委員 私の質問と全然違うことを言ったのでは答弁にならないんですよ。いいですか。たとえば、近代化計画の中の北海道について取り上げると、北海道の六十年度目標は、生産数量が三百四万トン。そのうち飲用向けの需要量というのは十九万トンしかないわけです。十九万トンですよ。そうすると、昭和六十年の時点において、北海道においては生産数量に対して飲用向けというのはわずかに六・二%しかない、そういうことになるでしょう。ところが、残りは若干の自家用と、あとは大体九二%程度はいずれにしても飲用以外の用途に向けなければならぬということになるわけです。どういうわけで北海道の最も良質な生乳というものを、北海道の地域に限定して、あくまでも全部これは加工原料にするというような、こういうやり方というものは、水田の転作方針と全く同じじゃないですか。しかも、現時点はどうなっているかというと、これは統計情報部の昭和五十二年一−十二月の年間集計によると、北海道は、百七十七万四千八百八十トンの総生産、このうち飲用牛乳については二十万七千三百七十八トンということになっておるわけだから、この飲用率は、昭和五十二年においては一二%ないし一三%ということになっておるのですよ。いいですか。特に、いま審議しておる、畜安法とか加工原料乳不足払い法、特に不足払い法というのは、法律を制定したそもそもの目的というのは、国内における生乳を、でき得る限り政策手段等も加えて、飲用化、市乳化を進めるというのが法律の最も根本的な目的ということになっておるわけです。だからことしは、法律上、主要な加工原料乳の生産地域は、去年は北海道、岩手県であったが、岩手も今度は飲用県というものになる。北海道一道だけが、いわゆる法律の対象になって、北海道を対象にして保証乳価等の計算をやらなければならぬということになるわけでしょう。北海道は市乳化が拡大されるということでなくて、むしろ市乳化が、政府の行政によってどんどん縮小されて、昭和六十年にはわずか六%程度しか飲用乳は用途が閉ざされるというようなことになるわけなんですよ。こういうことになった場合に、では、北海道で生産されたほとんどの加工原料乳とか飲用向け牛乳というものは、どういう手段で価格上の保証をやるかということになるわけでしょう。こういうでたらめなことをやっておって、いかにも生産者に恩に着せるような態度で、頼みもしないのにそんなに牛乳を生産されてもしようがない、そんな数量に対し限度数量を改定するなんというのはがしからぬという態度を、農林省の幹部の中にはしばしば露骨に示している者があるでしょう。例を示せと言えば、私は言いますよ。しかし、きょうは何も必要がないから言いませんが、いまだかつてないような農林省のこれに対する方針というのは、われわれとしても非常に警戒を要するわけです。この点は、問題を整理して、この次の機会までに農林省並びに政府の統一見解として一近代化計画の達成の過程におけるわが国の生産された生乳とか畜肉等の農民に対する所得の保障あるいは価格保証等に対しては、責任を持ってどうするというような点を明確にしておく必要があると思うわけです。  それから最後に、五十三年度の価格決定に当たって、これもいろいろ問題があるわけです。今度は北海道だけを対象にするということになれば、北海道だけが持っておる特徴というものがあるわけです。その特徴というものは、価格計算上から言うと、すべてプラス要因ではないわけです。むしろプラス・マイナスということになれば、マイナス要因というものは働きやすい、そういう懸念があるわけですよ。たとえば、飼料の問題にしても、北海道の場合には、購入飼料と自給飼料の割合というものは、全国的あるいは内地府県との対照では、これは全く異なっておるわけですからね。そうなると、飼料作物を中心とした自給飼料の率が多いということは、その生産された自給飼料作物というものを価格計算上どのように適正に評価するかということは非常に問題なわけですよ。これを、従来のように統計情報部が行っておる自給飼料作物についての評価方式をそのまま踏襲するということになれば、この分は購入飼料の実績主義ではなくて、いわゆる統計の費用化計算でやっておるわけだから、同じ北海道でも乾燥牧草を一キロ購入すれば、これは大体三十円ないし四十円で販売されておる。ところが、統計の費用化計算で言えば、同質の乾燥牧草がわずか十五円程度ということにしかならぬわけです。そうすると、値段が半分にしかならぬでしょう。そういうものをもろに、従来こうだからあたりまえだということになった場合は、ことしの飼料費用というものは非常に激減するというようなことにもなるわけですね。あるいは運搬経費等も、これは対象になっておるのは、北海道だけで言うと、北海道の冬半年における生乳の運搬状態が一体どうなっておるか。専業酪農家は、ほとんど設備はバルククーラーですから、そうすると、今度は牛乳の運搬搬出についても、馬そりとか自家用車というわけにはいかぬわけですね。タンクローリーで運ぶということになれば、その酪農家の軒先まで大型の車を入れるということになれば、当然、完全な道路整備とか除雪をしなければ、毎日毎日の搬出ができない。これらの労働時間とか経費というものは、運搬費等の費目の中において計上されるのが当然でしょう。そういうものを一体どうするかという問題ですね。  それからもう一つ、これは北海道だけの特徴で、今村経済局長も昔から事情を知っていますけれども、その北海道の農家の固定負債の中で一番固定化率が高いのは、専業酪農家ということになっておる。この専業酪農家だけ、一戸当たりの平均固定負債、これは焦げつきの負債ですよ、これは昨年度においては、大体一戸平均で約千五百万平均ということになっておるわけです。これも焦げつきの負債ですからね、この負債から生産性というものは抽出できないわけだから、じゃ、専業酪農家の場合にはこの固定負債というものは、当然元金も利子も酪農や畜産の販売収益の中から償還する以外に道がないということになるでしょう。そうなれば、こうした別途の、この固定負債に対する価格計算上の負担というものは、当然考慮して実現しなければならぬということにもなるわけです。  それからまた、いまの機械化とか、あるいは畜舎の設備等も完備しておるから、昨年一年間で、北海道は年間、搾乳牛は平均して実数量で四千九百キロ、相当これは生産が躍進しておるわけです。しかし、これについても、この一頭当たりの生産乳量というものは、これは統計情報部の調査農家によるわけだから、米にしても他の農産物にしても、実収平均高から見ると、大体一〇%ないし二〇%上位農家の生産性というものを反映しておるわけですからね。それでは、ことしの計算に使う三・二%換算の主要な生産地域における一頭当たりの生産乳量をどうするか。つまり価格の計算というのは、分母が大きくなればなるほど答えである価格というものは小さくなるわけだから、これを最初から逆算方式で、ことしは据え置きということになれば、どういう計算でもこれはできるわけなんですよ。だから、据え置きとかマイナスのようなことになるとすれば、いままでと違った角度から、あるいはまた北海道だけが対象ということになるのであれば、従来の算定方式というものをもう少し緻密に、科学的に、合理的に計算をし直して、そうして適正な、生産者から見ても国民から見ても、この程度の算定方式で出た答えというものは至当であるというようなことになるように努める必要があると思うわけです。  きょうはこの大まかな問題だけに限定されたようなことになりますけれども、審議会の予定から言うと、今月の二十九日が酪農部会ということになっておるようですが、今井政務次官、当委員会においては、昨年に続いてこの農産物価格に対する小委員会というものが今回も設置されて、いま委員長代理の山崎平八郎委員が小委員長ということに一方的に決まっておるわけです。しかし、これについても本委員会が開けない場合においては、委員長も率先して鋭意小委員会等を開いて、この畜産全体の問題とかあるいは畜肉とか加工原料乳等の価格決定に対しても十分詰めた議論を政府側としなければ、なかなかこういう困難な時期には十分な答えは出ないと思うのですよ。  そういうことですから、これに対して、今井さんは相当権威者に近づいてきているわけですからね。それで人間がとにかくまじめだ。そういうことで、あくまでも政府官僚のペースにはまらぬようにして、国会議員であり、農林政務次官ですからね、議員としてのウエートを堅持して、どの程度やるか、事務当局を鞭撻して——中川農林大臣というのは余り頼りにならぬですよ、実際問題から言うと。本人がいればなおはっきり言いたいわけですけれども、せめて補佐役の今井政務次官として十分に努力してもらいたい。  以上申し上げたような点について、答弁があれば簡明に答えてもらいたいと思います。
  136. 今井勇

    ○今井政府委員 芳賀先生の農民を思う切々たる御心情、私ども全くこれは共鳴をするものでございます。今回の諮問に対しましてもそういったお気持ちを十分尊重いたしますが、片一方やはり生産の状況あるいは需要の動向等も政府の立場として考えざるを得ません。そういうことで、いまの御議論を通じましたその先生のお気持ちを体しまして、政府責任において決めさせていただきたい、かように考えております。
  137. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 瀬野栄次郎君。
  138. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産関係諸施策並びに基準繭糸価格等について、農林省当局に質問いたします。  昭和五十三年度畜産物政策価格を審議する畜産振興審議会の総会が十五日開会されまして、引き続き二十二日は飼料部会、二十八日に食肉部会、二十九日に酪農部会を開き、諮問に対する答申を得て、三月三十一日までに五十三年度畜産物価格を正式決定することになるわけでありますが、今年は政策価格をめぐる環境条件が例年になく厳しいものとなっておりますけれども、五十三年度の価格決定に当たって農林省としてはどう対処する方針で検討されているか、まず見解を最初に承りたいのであります。
  139. 今井勇

    ○今井政府委員 先ほどからの御議論にもお答え申しましたとおり、今回の畜産物の価格決定につきましては非常に厳しい条件下にございます。しかしながら、農林省といたしましては、生産農民がやはり再生産を確保して、続けて畜産をやっていただけるというお気持ちにこたえることがまず基本であろうと思います。それともう一つは、やはり消費者の立場等も考え、かつまた需給の状況等も考えまして、やはり妥当な線に落ちつくというふうな努力をいたさなければならないと存じます。このために畜審の各部会の御審議を経ましてひとつ決定をしてまいりたい、このような基本姿勢を持っております。
  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今年度の一番大きな課題と言えば、限度数量超過分の扱いの問題であると言えるわけであります。すなわち、五十二年度生乳生産量は五百六十万九千トン、そのうち飲用乳が三百五十四万七千トン、加工原料乳以外の乳製品が三十七万一千トン、自家消費が十一万一千トン、加工原料乳の限度数量が百五十八万トンに設定されておることは御承知のとおりであります。結果的には加工原料乳が百七十八万トンで、これは二月後半から三月末までの約四十日間で二十万トンになるというふうに推定されておりますが、この二十万トンが超過する見込みであることは午前中の農林大臣の答弁によっても明らかになったところでありまして、この扱いをどうするか、補給金の交付の対象にぜひせよということが今日畜産問題では当面重要な最大の課題である、かように認識をしておるわけでございます。  五十一年について見ますと、百三十八万トンの限度数量に対して十三万七千四百トンがオーバーして大問題になったわけでございまして、記憶に新しいところであります。これに対し畜産振興事業団の助成勘定から三十四億四千四百万円を出して解決したわけであります。補給金の単価がキログラム当たり二十四円七銭、乳質改善奨励金がキログラム当たり一円、それで三十四億四千四百万円の助成をしたことになります。五十二年度については、補給金の単価がキログラム当たり二十四円五十八銭、これに二十万トン掛けますと四十九億一千六百万円、乳質改善奨励金は一円七十五銭、これに二十万トン掛けますと三億五千万円、合計五十二億六千六百万円ということになります。  こういったことから考えましたときに、昨年同様補給金交付の対象にしていただきたいし、また、そういうふうに検討いただきたい。大蔵省のいろいろの関係もあろうかと思いますが、ぜひともそういうふうにやってもらいたい。そういった場合の財源等はどういうふうになさるのか、私も党を代表して改めてひとつ見解をお伺いしておきたい、かように思います。
  141. 今井勇

    ○今井政府委員 午前中に大臣が御答弁申しましたように、本年度の限度数量につきましては前年度のこともありまして、政府としては思い切りまして相当多量な限度数量というふうな気持ちで設定をいたしたわけでございます。ところが、その後生産が九%を超える伸びを示しております。一方、生乳の飲用も需要が伸びておりますが、それに追いつかなかったというようなことから、先生御指摘のようなことになっておるわけであります。しかし、この問題につきましては、従前の例もこれありますが、十一条に基づきます法の限度数量そのものを変えるということは、午前中の大臣の答弁のとおり、ただいま考えておりません。しかしながら、せっかくの農民諸君の御努力等に対しまして何かひとつ手当てをしなければならぬのじゃないかというふうな気持ちがあることはまたこれ事実でございまして、そこらあたりを踏まえてひとつ慎重に検討をさせていただきたいと存じます。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 慎重に検討するということは結構ですが、もう少しく申し上げてみますと、このほとんどの対象になるのが北海道であると思うのです。オーバー分の八ないし九割が北海道のものということになろうかと思うのですが、御存じのように、北海道は米の新生産調整においても三五%比率で転換が進められておる。その中で、転換作物として飼料作物の生産奨励が主に考えられるわけでございます。  このように酪農の振興を言いながら限度数量のオーバー分について何ら対処しないということになれば、政務次官は慎重に対処するとおっしゃっているが、北海道の農民としては、米で締め出されて、酪農でまた締めつけられる、今後どのように進めばいいのかということで、北海道農民は路頭に迷うということになるわけです。その点も十分認識しておられると思いますけれども、私は日本全体で市乳の自給率が七〇%内外と、こういうふうに認識しておりますが、これで二十万トンという量をカットするということになりますと、実質的に生産調整するということになりかねないことになる。自給率はまだ不足しておるわけですから、当然これら二十万トンについては政府の見通しの甘さからきたものであるだけに、十分これに対処すべきであると思います。そういう点を含めてさらに当局の見解をひとつ承っておきたいと思います。
  143. 杉山克己

    ○杉山政府委員 酪農を振興するということは、長期の目標としてこれは当然必要なことでもあり、いまだもってそのように考えておるわけでございますが、ただ現実にことしの需給からいって、需要を超える生産が出てきたということも事実でございます。しかも、その出方が、昨年は生乳の生産が七・二%伸びて、それに対してことしは九・一%、これは一月までの実績でございますが、伸び方がきわめて大きいのでございます。需要も伸びているから、ほかの農産物に比べればかなり有望な、期待の持てる作目であります。にもかかわらず、生産の伸びが余りにも大きいということから過剰が生じている。ただ、これが今後どうなるのかということについては、慎重な見通しを必要とするでございましょうし、先生おっしゃられるように、酪農振興の見地から、消費拡大の問題も含めて十分検討しなければいけないと思っております。  ただ、限度数量というものの基本的な性格を考えますと、これは単に財政負担が要るから、要らないからというようなことだけでなしに、需給を見通しての一つの基本的な生産の指標という性格を持っているわけでございます。そこを考えますと、ことしの限度数量を超過した分についてこれをどう扱うかということは、将来の展望を含めて検討を要するきわめてむずかしい問題だろうというふうに考えております。
  144. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府は畜産審に諮問をして、答申を得て決定するということなので、具体的なことについてはなかなか答弁がむずかしいところかもしれませんが、畜産価格の決定に当たっては、いま言っているようなこと並びにいまから申し上げることも十分配慮してやっていただきたいと思うがゆえに、問題点を指摘しておきたいと思うのです。  私は、ただいま局長から答弁がございましたけれども、あえて申し上げたいのは、乳製品の輸入状況を見ましても、市乳に換算すると五十一年に二百十二万八千トン、五十二年は二百二十四万トンもの輸入実績があるわけです。まさにつくられた過剰ではないかと農民は血の叫びをしておるわけです。二十万トンの超過分の措置で大騒ぎをする前に、いまも申し上げましたごとく、なぜこういうような事態になったかということを政府は反省してもらわなければいかぬ。これは米の場合も同じですが、責任について十分反省をしてもらわなければならぬ。農民はこういったことについて怒りを覚えておるわけでございます。見通しの甘さというのがこういった結果になったのではないかと指摘せざるを得ません。乳製品の輸入を規制すれば、二十万トンのオーバーなどはすぐ解決する問題であります。この輸入規制もせずにだぶついているといった事態は何事かとわれわれは言いたいわけでございます。まさにお米でもって生産調整を受け、畜産問題でこのように厳しい仕打ちによってダブルパンチを受けているのが現在の状況でございます。  そこで、私は擬装乳製品についてお伺いしますが、御承知のように、ココア調製品のうち九〇%が脱脂紛乳になっております。また調製食用油脂、これも自由化製品でありますが、このうちの七〇%がバターになっております。脱脂粉乳とバターはIQといって制限品目になっております。自由化品目のココアは一〇%、マーガリンは三〇%しか入っていない、こういう状況です。こういったいわゆる擬装乳製品を見ましたときに、本来は脱脂粉乳、バター等のIQ品目で取り扱うべきではないか。ココアはたった一〇%、マーガリンは三〇%しか入っていないのですから、これはIQ品目で取り扱うべきである、かように申し上げたい。すなわち、ココア調製品及び調製食用油脂は制限品目すなわちIQとして取り扱うべきでないかということを申し上げたいわけでございます。  また、こういったことから、擬装乳製品のために国内市乳価格を圧迫するばかりでなく、これらを原料とした還元乳や乳飲料の生産を増大させることになって、国内のいわゆる市乳化促進を阻害し、わが国酪農に重大な打撃を与えているばかりでなく、飲用牛乳の消費市場を混乱させるとともに、食生活の上からも消費者が大きな不信を抱いていることも御承知のとおりでございます。  こういった実態を踏まえて、窮地に立たされておる酪農民、こういった者を見殺しにするということはけしからぬ、これは政府の見通しの甘さ、施策、対策の拙劣さからこういったものはきている。しかも、七〇%の自給率しかないこういった市乳を、二十万トンオーバーしたからといって、一概に生産量が上がっているとかそんなことをいってこれらをいわゆる交付金の対象にしないというようなことはけしからぬ、こう思うのです。その点について明快な答弁をひとつ求めます。
  145. 杉山克己

    ○杉山政府委員 乳製品の輸入について規制を行うべきではないか、何も規制を行っていないのは妥当でないという御指摘でございますが、御存じのように、特にわが国の酪農に影響を及ぼすような乳製品、これについては直接事業団におきまして一元輸入ということを行っておりまして、最も強力な輸入規制の対象としているわけでございます。そのほか、わが国の国内では消費者の需要にこたえ得ないもの、生産ができないもの、あるいは特定な政策目的から特に低い価格で供給する必要があるもの、前者としてはナチュラルチーズ、乳糖、カゼイン、後者といたしましては学校給食用の脱脂粉乳あるいは飼料用脱脂粉乳といったようなものがございます。一番初めに申し上げました事業団の一元輸入の対象としては、バターとか食用の脱脂粉乳、こういったものが主なものでございます。  そういう実質を考えますというと、何も無制限に国内の生産をも無視して輸入をさせている、輸入を全く規制していないというような話ではございません。私ども、やはり国内生産との調整を考えながら輸入の規制を行っていると思っているわけでございます。  それから、中には擬装乳製品という形でもって実質乳製品が入ってくるではないかという御指摘でございますが、ココア調製品のように、あるいは調製食用油脂のように確かにそういう形で入ってくるものもあるわけでございますけれども、これらの品目はいずれも今日貿易上自由化品目となっているわけでございます。すでに今日まで長い歴史を経て自由化として取引されているものについて改めて直接的な規制を行うというようなことはきわめて問題でございますし、国際的に困難な問題であろうかと思いますが、ただ、これが増加してわが国の酪農に悪影響を及ぼすというようなことがあっては問題でございますので、特にココア調製品については業界の自主規制措置、一定限度を画してそれ以上は輸入しないというような措置を求めまして政府としても指導を行っているところでございます。  しかし、輸入が行われて、その点が国内の乳製品、生乳の処理の行く先をふさいでいるではないかという御指摘に対しましては、私ども御指摘あるいはその見通しを誤ったから限度数量の超過問題が出たのではないかという御意見に対しましては、私どもは確かに見通しとしての生産需要、これが当初予想したペースとは変わった、異なったということは言えますが、ただ需要は需要なりに順調に伸びているわけでございまして、むしろ五十二年度は生産が異常に伸びたと言うべきであろうかと思っております。前年の七・二%もかなり驚異的な伸び率でございましたが、本年最終的には九%前後になろうかと思いますが、この伸び率は農産物としてはきわめて高い、しかも二年続きの全く一般には関係者としても予測し得なかった異常な伸びであったということが言えるかと思います。
  146. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 杉山局長、そういう意味で五十二年度の限度数量の超過分について私はどうしても考えてもらいたいということでいろいろいま申し上げてきたわけですが、畜産振興事業団の助成勘定で五十一年は手当てをしたわけですね。先ほども申し上げましたように、五十二年度についてもぜひひとつ出してもらいたいわけですが、大蔵省は、昨年に引き続き今年も認めるとなると、私も非公式にいろいろ接触しておりますが、来年もその次の年も今度は認めなければならないということで歯どめがきかなくなるというようなことを大分懸念しておるようでございます。このようなことでなくて、ことしは新生産調整の厳しいときでもあり、酪農民に希望を持たせていくためにもぜひとも考慮に入れていただきたい、かように思うわけです。  それで、ことしの原資はいわゆる輸入牛肉の差益金等見ましても少なくとも四百億は超す原資があると思うが、それは大体そういうふうに政府も間違いないと認めておられますか。
  147. 杉山克己

    ○杉山政府委員 畜産振興事業団に、食肉の差益等によりまして、先生いま申されましたような財源が生じていることは事実でございます。
  148. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産局長は酪農民を守るためにこの原資をできるだけ使って何とか見てあげたい、努力したいという気持ちには変わりはありませんか。
  149. 杉山克己

    ○杉山政府委員 大蔵省がどうのこうの、あるいは財源がある、ないという問題、確かに重要な要素でございます。ただ、この問題はそういう次元だけでなしに、酪農の生産のあり方をどう考えるかという長期的な視点に立って検討すべき問題だと思います。やはり限度数量というのはその年の需給を見通して生産の指標、あるべき姿というものを設定したわけでございます。それが崩れるということになりますと全体の需給が崩れる。全体の需給が崩れる、具体的には過剰のものが出てくるというようなこと、しかも、これが長期にわたって構造的に出てくるというようなことになりますと、これは幾ら財政で支えるようなことをやってみても切りがない。酪農経営自身が危殆に瀕するような話になる。現在の不足払い制度そのものの基本が揺るがされるような話になるのではないか。農民自身にとっても決して幸せな状態ではないというふうに思うわけでございます。  そこで、そういうあるべき姿を考え、将来の需給についての慎重な検討を経た上でこの取り扱いは決定すべきである。安直に、金があるからといって限度数量を認めて財政負担するという性格のものではないというように考えております。
  150. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま局長おっしゃったこともわれわれもわからぬではないですけれども、酪農民の窮状を十分踏まえて諮問をし、検討を進めてもらいたいと思います。  そこで、五十三年度のこの限度数量の設定ですね、これはどういうふうにお考えであるか。私はこの機会に大幅にひとつ拡大していただきたいと思うのだが、それについてもひとつ当局の見解を承っておきたいと思います。
  151. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いろんな要素を積み重ねていま検討しているわけでございます。限度数量は、結局需要と供給をどう見るかということによって定まってまいります。需要も供給もいずれも、生乳——原料乳、それから飲用乳、こういった同じ生乳の中でも二つの分野に分けてどう見るかということによって定まってくるわけでございます。五十三年度におきましては大幅な需要拡大を考えての各種の対策もとられているところでございます。そういったことなども総合的に見た上で需給をどう決めていくか、見通しをどう決めていくかということによって限度数量は定められていくというところのもので、まだ数量的にどうこうと申し上げる段階ではございません。
  152. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ぜひともひとつ枠拡大をお願いしておきたいと思います。  次に、五十三年度の加工原料乳の保証価格の問題ですが、これも巷間伝えられるところによると、かなり厳しいものをわれわれははだ身に感じておるわけですけれども、加工原料乳の要求価格は五十三年度がキロ百四円五銭、五十二年より下回る要求を農業団体はいたしております。すなわち、五十二年度要求価格は百六円十一銭を要求して九十円六十二銭に決まったわけでございますので、アップ率一四・八%ということになったわけです。なぜことしはそのようになったかという理由はいろいろありますけれども、指標価格が昨年一月以来トン六千円の値下げ、さらに乳量が一頭当たり約一割ふえている。そのほかいろいろファクターがあるわけですけれども、このような経営コストが下がったことから判断しまして、いろいろとことしは厳しいということが言われておりますので、われわれは農業団体ともいろいろ検討してきましたが、算定方式を改善すべきではないか、こういうふうに政府に申し上げたいわけです。  すなわち、算定の基礎に対する問題の中で、第一点は、農業団体で調査した北海道、青森、岩手、山形、福島、長野、鳥取の一道六県の牛乳生産費調査というものを基礎資料として農業団体はやっておりますけれども、政府は北海道、岩手の一道一県の農林省による牛乳生産費調査を基礎資料としておる、ここに大変な違いがあるわけであります。  もう一つは、飼育家族労働の評価でございますけれども、系統農協では、算定基礎資料として一道六県の牛乳生産費調査を使用しながらも、全国平均賃金で家族労働を評価しておるのに対しまして、政府は家族労働も北海道、岩手の一道一県の製造業五人以上規模の賃金、すなわち現金給与のみで評価しております。この一道一県の賃金は、全国平均賃金より低くなっているだけでなく、千人以上の大規模の事業所の賃金を除いているとはいえ、五人以上千人未満の全国平均賃金を使用している米価に適用した賃金より二〇%以上も低くなっておるわけでございます。すなわち、農民、農業団体は算定方式の改善を強く求めておるわけでございます。  もう一点は、自給飼料生産家族労働の評価でございますが、系統農協では、自給飼料生産の家族労働は、飼育家族労働と同じく製造業五人以上規模全国平均賃金一時間当たり千四十二円二銭で評価しておりますのに対して、政府は、自給飼料生産家族労働は、飼育家族労働と区別して一時間当たり六百三十円四銭の農村雇用賃金で評価している。すなわち、自給飼料生産家族労働を飼育家族労働と区別して低く評価しなければならない理由はどこにも見当たらないばかりか、逆に低く評価していることがいかに不当かということが明らかになるわけでございます。  ほかにいろいろございますが、この三つについて、農家の皆さん方もまた農業団体も、こういった算定方式の改善をしなければなかなかこれは値上げにはならないということで、農林省はこういった点については当然検討すべきだ、こういうふうに思うのですが、それらについてどういうふうに検討されたか、しておられるか、見解を承りたいと思う。
  153. 杉山克己

    ○杉山政府委員 価格の算定方式についてのお尋ねでございますが、まず生産費をとる場合の対象地域、農業団体の要求は一道六県の生産費を基本にしている。これに対して国の計算は、昨年の場合一道一県の地域を対象にしている。本年はルールによりますれば一道にならざるを得ないという状況にあるわけでございますが、この地域の差、これをどう考えるかということ、これは主要な加工原料乳地域における生産費をベースとして算定するということになっておるわけでございまして、主要なというのをどういう点で判断するかといいますと、私どもは市乳化率が五〇%以上のところを除く、つまり加工乳比率が五〇%以上のところが主要な加工乳生産地域だというふうに考えているわけでございます。これは現在の価格安定制度がまさに加工原料乳そのものを対象にしているということから、やむを得ないと言いますか、当然ルールとして定まってまいる対象地域のとり方であるということになると思います。  それから、家族労働の評価について、全製造業の平均労賃をとるべきではないかということでございますが、この労賃の見方については従来から長くいろいろ議論のあったところでございます。現在ではその地域における主要な製造業を中心とする農村の被雇用者が雇用される事業所の平均した労賃単価を採用しているわけでございます。その意味では、従前の農村日雇い労賃をベースにしておったものに比べますと改善を見たわけでございます。  それから、自給飼料の生産、これについても労賃の評価がえを、飼育労働と同じように行うべきではないかという御意見でございますが、飼育労働につきましては、その労働の特殊性ということを考えまして、従来歴史的に特段の措置をとったという経緯があるわけでございます。むしろ、労賃単価いかなるものを基準に考えるべきかということならば、やはりその地域で、何も酪農に限らず、およそ一般的に働く人たちが現実に得ているところの賃金単価、これをベースに考えるべきではないかというように思うわけでございます。
  154. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府の諮問に当たっては、そういった算定方式というものを、農業団体あるいは農民の要求にこたえて、十分参酌して諮問し、答申を受けられるようにしていただきたいと思うのです。  さらに、飲用乳の問題について一点伺っておきたいのですが、飲用乳の価格交渉については、御承知のように、五十二年春から交渉に入り、もうずいぶん長い期間交渉が続いております。現在もなお乳業メーカーとの交渉中でございますが、ずいぶん延び延びとなって今日に至っております。当初、五十三年の三月には決まるということであったわけですけれども、これもいまのところ四月にずれ込むような状況になっておりますが、この価格交渉の現状と、今後どの方向に持っていくのか、農林省はどう監督、指導しておられるか、その点もこの機会に明らかにしておいていただきたいと思う。
  155. 杉山克己

    ○杉山政府委員 昨年、非常に長い当事者間の交渉が行われたわけでございますが、なかなか妥結に至らなかった。最後は農林省が調停といいますか、その間の意見調整に乗り出したわけでございます。そして、本年の一月末まで暫定的に、処理メーカーが生産者に対してキロ当たり一円九十五銭を支払うということで一応の了解がついたわけでございます。二月一日以降どうするかということについては、すでにもう一月半を経過しているわけでございますが、現在まだ結論を得ておりません。ただ、生産者団体、それから処理メーカーはこれは上げたいということで販売店と相談をしているところでございます。ただ、販売店の中には、今日牛乳の小売価格を上げると消費減退につながるのではないか、また、そういうことを防ぐためには相当大規模な思い切った消費拡大運動もあわせて行うべきではないかというような意見もありますし、それから上げた場合に、生産者、メーカー、販売店の間でどういうふうにそれを分担すべきかというような議論も背景にあるというようなこともありまして、現在まだその交渉は結論を得たというに至っていないと聞いております。  ただ、では私どもとしてそれについてどう考えるかということになりますと、何分消費者の家計に直接影響する小売価格の話でございます。できれば上げたくないという気持ちはございます。消費の減退につながることも好ましくないという気持ちもあります。しかしながら、一面、現実に牛乳を扱っている各段階の方々、生産者ももちろんでございますが、原料の処理メーカーあるいは販売店、これらの方々の経費の増高ということも事実でございます。しかも、二年以上も据え置いているということからすれば、そこはやはりコストを割るような価格は長続きはしないということで、まあ妥当な水準で改定が行われるならば、それは役所としても注意をして見守ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  156. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この価格交渉は見守っていくと言うけれども、見守っていけばまた一年も二年もということになるんだが、大体いつごろをめどに結論を出すというような考えですか。それも見当つかないのですか。
  157. 杉山克己

    ○杉山政府委員 これは役所がいつごろをめどに決めるというような統制価格の価格のようなものではございませんので、やはり当事者間の了解といいますか、大方の意向がおのずと一つのところに、一つのところにというか、何か決まってくるというような過程があるのだろうと思います。その点、介入して幾らに、いつまでにしろというようなことを強制するつもりはございません。しかし、こういうことがいつまでも中途半端にぶら下がっているという形は好ましくありませんので、できるだけ早く、いずれの形にせよ、決着がつくことが望ましいというふうに考えております。
  158. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、牛肉安定価格問題等に関連してお伺いしますが、安定価格問題、たくさんあるのですけれども、四点ばかりこの機会に確かめておきたいことがございますので、はしょって質問を申し上げます。  今回の日米交渉においては、五十三年度はホテル用牛肉三千トンを含め高級牛肉をグローバルベースで一万トン輸入増とするよう努力するとしておりますが、いまだこの問題について具体的にどのような方法で行うかということははっきりしておりません。農林省はこのことについてはまだ具体的なことは言っていないと思うのですが、どういうふうに具体的に言うつもりか、また、いつごろ言うつもりか、その点簡潔にひとつお答えいただきたい。
  159. 杉山克己

    ○杉山政府委員 アメリカとの交渉におきましては、先生いま言われましたように、ホテル枠は三千トンにする、それからホテル枠、一般枠を通じまして全体でもって一万トンの高級牛肉の消費拡大が実現するように相互に努力するということになっております。  それを具体的にどういう形で実現に移すことにしているかということでございますが、アメリカの側におきましてもこの点きわめて熱心でございまして、東京にそのための業者団体による事務所も設けた。さらに、先方からその打ち合わせといいますか、売り込みのためのミッションも参っているというようなことで、細かい事務的、具体的な打ち合わせが始まっている段階でございます。
  160. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 畜産振興事業団によるところの輸入牛肉の売り渡しは、現在でさえ多くの批判があることは御承知のとおりです。すなわち、末端価格が異常に高くなっているとか、一部の業者が独占し、肉ころがしをして暴利をむさぼっている、こういったことなどでございますが、高級牛肉を扱うとした場合、さらにこれを助長することにならないかという懸念がございます。こうした点に関連して、事業団の売り渡し方式を改善すべきではないかという声があるのですが、こういったことは農林省としては検討しておられるのか、その点も明らかにしていただきたい。
  161. 杉山克己

    ○杉山政府委員 アメリカから高級牛肉が入ってくるだろうということは事実でございますが、その高級牛肉に限らず、事業団が売り渡す輸入牛肉、これ一般につきまして流通が明朗に、おかしなところに流れたり、おかしな形で超過利潤がたくらまれたりすることのないようにしてまいることは当然必要なことでございます。その点、事業団の売り方という問題もあるかもしれませんが、むしろ各流通段階においてその点は商業道徳といいますか、牛肉が今日世の中の非常な関心を集めている、国民に対する責任の十分あるところを承知して、自粛あるといいますか、節度ある行動をとってもらうというようなことがまず必要であろうかと考えております。  事業団の売り方としては、公正を期するということになれば、それこそ競争入札みたいなことがいいということも出てまいるわけでございますが、一面売り値が高くなると、これまた末端消費者価格に御迷惑をかけるというようなこともあるわけでございます。  そこで、事業団が売った価格が適正なマージン、流通経費を乗せて小売価格として実現するようにということで、特に指定店に対する売り渡しを重点に行ってまいりたいというふうに考えております。指定店に売ります分については報告を求める、それからモニターによる監視を強化するといったような各種の手段を講じて、明朗な形で消費者にお届けできるように今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  162. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府は、今回の日米交渉とも関連して、五十二年度下期の一般枠を五千トン追加するとともに、五十三年度上期の一般枠についても五十二年度上期三千五百トンよりも五千トン増を輸出国に通告しておりますが、五十三年度の牛肉の需給と価格見通しを明確に示していただきたい、こう思うわけです。すなわち、需給計画を明らかにしなければわれわれも将来のことについていろいろ検討ができませんし、五十三年度の価格の見通し、こういったことについていろいろ検討する上からも明らかにしてもらいたい、かように思っておるわけでございます。  すなわち、価格を冷やすために入れる、政府はこう言っておりますけれども、国内生産者価格が下がり過ぎて畜産農民の不安を増すということになったのでは大変でありますし、また足りないから入れる、こういうようなことも言われるが、何を基準に足りないと言われるのか。中心価格を割っている状態で輸入ができるのか、こういったことをわれわれ言わざるを得ませんが、そういったことも含めて需給と価格、こういった見通しを明確にしていただく、こういったことを私はお尋ねするわけです。
  163. 杉山克己

    ○杉山政府委員 輸入の枠自身は半年ごとに決める、半期で決めるという決め方をしておりまして、需給の計画とすぐに結びついてはいないわけであります。じゃ、需給はどうなるかということでございますと、私ども、生産の方はわずかに増加するかというくらいに見ております。需要の方は短期的な現象はいろいろありますが、年間を通じて数%上昇するのではないかと見ております。価格につきまして、確かに特に一昨日、昨日あたり枝肉価格が大幅に低落した現象が見られます。ただ、これがどういう理由によるものか、それから先行きどうなるかということについては慎重に検討を要すると思っております。事業団の売買、輸入をどうするかということについては、そういったことの検討を踏まえた上でしかるべく対処したいと考えております。
  164. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今回の日米交渉は、農産物については今回限りの措置と受けとめておりますけれども、五十四年度以降米国が要求を出さぬよう一定の歯どめをする必要があると思うが、この点はどういうように考えておられるかということと、さらに今後はジュネーブでの多国間貿易交渉を初め、EC、オーストラリア、ニュージーランド等との問でも農産物輸入にかかわる貿易交渉が持たれるものと思われますが、日本政府はどのように対処されるのか。特にニュージーランド等は、本年の四月一日より二百海里漁業専管水域を実施することに絡めて、乳製品や牛肉の輸入拡大につき強硬な要求をすると思われるわけですけれども、日本はこれに対してはどういうふうに対処するのか、これらも含めてひとつこの機会に局長から明らかにしていただきたいと思う。
  165. 今井勇

    ○今井政府委員 畜産物の輸入につきましては今後とも外圧が強まることはあれ、弱まることはなかろうかと思います。しかしながら、しばしば大臣が言明されておりますように、総合食糧需給政策の堅持と生産農民の保護ということがまず第一でございますから、そこらあたりの兼ね合いを十分考えた上で善処してまいりたいと思っておりまして、安易に輸入を続行しようとかいうふうなことを考えているものでは必ずしもございません。
  166. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生体輸入の問題でこれまた若干伺っておきますけれども、言うまでもなく牛肉は非自由化品でございます。種畜用などは、生きた家畜でございますけれども、これは自由化されていることは御承知のとおりでございますが、法の盲点をついたこの生体家畜輸入量が急速に伸びておりまして、ほとんどが屠場直行牛となっております。昨年はブームとなりまして、私も国会で何回か取り上げてまいりましたが、輸入規制せよと行政責任が強く追及されたわけですけれども、依然輸入頭数等はふえておるわけであります。昨年の二月でしたか、アンカレジで五十数頭が墜落によって斃死したというような問題が出て、にわかにこういった問題がクローズアップしてきたわけですけれども、屠場直行牛の頭数等を見ますと、五十年が千二百三十八頭、五十一年は二千三百六十六頭、五十二年五千三百三十頭、いわゆる精肉換算で一千トン前後のものが入ってくる、毎年倍々と、こういうふうな姿できています。昨年私がこの問題を追及したときは、農林省としては、まだ精肉換算で一千トンくらいでわずかであるからそう影響はないと言っておりますけれども、そう言っているうちにだんだん影響力が出てくることは言うまでもございません。一方では牛肉は非自由化品目として事業団が輸入調整しているにもかかわらず、その間隙を縫って生体がこのような状態で入ってくるとなれば、価格体系はだんだんおかしくなってくるのは当然であります。  方策としては関税を上げるという方法もあると思います。すなわち、四十六年当時は一頭七万五千円、この当時はずいぶん高い、こう言っておりましたが、四十六年からずっと今日までこの生体輸入の関税は据え置きになっておりまして、その関税ではとても高いから引き合わないだろうと言っておったのですけれども、やはりメリットがあるからこのようにだんだんふえてくるということはもう明らかでございます。  こういったことを考えましたときに、何とか手を打たねばならぬ、こう思うわけですが、これに対してどう対処するのか、また、どう規制措置を考えておられるか、簡潔にお答えをいただきたい。
  167. 杉山克己

    ○杉山政府委員 牛の生体の輸入は、先生がおっしゃられるように最近急激にふえてまいっております。ただ、ふえ方は、数字としては大きゅうございますが、絶対水準は、先生御自身言われましたように肉に換算して千二百トン程度、それから比率にして全体需要量の〇・四%程度ですから、これは影響は言うほどのことはなかろうというふうに思っております。ただ、事柄がいかにも目立つ事柄でございますし、尋常の姿でないということで話題にもなるわけでございます。それから、特にアンカレジで事故が起きたというようなことが、逆にそんな道もあるのかということで、そういうことをやりたいというような人が出てきたということもあってふえてきているのかと思います。  ただ、これは私ども採算面から見ますと、いまの関税率でも成牛一頭当たり七万五千円、子牛で四万五千円というのはかなり高い関税率だと思います。それに輸送費、検疫費、諸般の経費を加えますと、コスト的には普通では引き合わないはずでございます。それがなぜ入ってくるかということになりますと、やはりそういうまとまった形で入ってくれば品物がそろえられる、あるいはどこそこの新鮮な牛肉でございますというようなことで目玉的な客寄せの材料になり得るというようなこともあって、一部の店で、必ずしも採算だけでなく入れているということもあるのかと思います。  今後これが極端にふえるとは思いませんけれども、また私どもの検疫の能力の問題もありまして、そんなにふえられても受け入れられないというような事情もあるわけでございますが、今後とも注意して見守ってまいりたいと考えております。
  168. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、いま局長から答弁ございましたが、これは自民党の、名前を言うわけにはいきませんが、その関係のいわゆる中心者の議員も、一頭三十万くらいにすべきだというようなことをわれわれに個人的には言っております。それはそれとして、これは十分対処してもらわなければいかぬ問題です。  いま局長からも若干触れられましたが、政務次官もよく御承知だと思うけれども、確かに農林省は動物検疫の処理能力に限界があるのでいまが精いっぱいである、これ以上できない、こう言っておるのです。昨年私がいろいろ質疑したときもそういうふうにおっしゃっておりました。限度いっぱいだからそれ以上はできないから大体そこらで歯どめができると言っておりましたけれども、御承知のように、成田空港がいよいよ三月末開港、さらに鹿児島空港の新設、移転に伴う検疫能力の拡張ということが当然考えられてくることで、これらを当て込んで商社やスーパーは、ジャンボ機を使ってでも入れたい、こういうふうに現に言っております。すでに予約申し込みを受けておる現状でございまして、減るどころかどんどんふえていくという状況下にございます。いままだ〇・四%くらいだからさして影響はないと言っておられますけれども、私はこういった抜け穴輸入は大きな政治問題になってくる、かように思うわけです。いまのうちにちゃんと手当てをして措置をしておかなければ将来に禍根を残す、そういったことで私は警鐘乱打的に皆様方に警告を発するわけでございます。早急な対策に迫られておるという認識に立って十分対処してもらいたい、かように思うのですが、政務次官いかがですか。
  169. 今井勇

    ○今井政府委員 確かに御指摘のような問題がありますことは承知いたしております。さりながら、これは本来自由化されておるものでございますから、行政指導をいたしますにもおのずから限度があろう、こういうふうに思うものでございます。しかしながら、生産農民に対します影響等を考えますならば、手をこまねいておくというわけにもまいりませんので、そこらあたりひとつ慎重な態度で皆さんの御安心のいくように何らかの工夫をいたしてみたい、かように考えます。
  170. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、鶏卵の生産調整問題について質問をいたします。  御承知のように、鶏卵の生産調整は四十九年から増羽凍結、最低ライン三千羽を、五十三年からは五千羽に引き上げる基本方針をとっておるわけでございまして、このことは皆さんも十分承知しておられると思います。実は昨年、昭和五十二年十二月八日、わが党の吉浦委員が当委員会で質問をいたしましたが、そのことについて若干質問申し上げるわけです。  十二月八日の当委員会会議録第一号によりますと、宮城県とか茨城県を初め、あちらこちらで商社系の業者がインテグレーションという形でかなりのやみ増羽を行っている、こういったことについて農林省は知っているか、また調査しているかということでございましたが、その後、調査をするということで御答弁いただいておりますけれども、どのように調査されたか、その点明らかにしてください。
  171. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生が言われましたように、三千羽以上を飼っている人を対象に従来から生産調整を進めてまいってきているわけでございます。そういう生産調整を進めた結果、ここ数年はおおむね百八十万トン程度で横ばいに推移してまいったわけでございます。大体安定した状況を見せておったのでございますが、昨年来、飼料価格が値下がりした、生産環境が好転したというようなことから、特に夏以降、ひなのえづけが増加してまいりました。加えて昨年の末から本年にかけて暖冬であったとか、廃鶏が——廃鶏というのは要らなくなった、もう終わった廃鶏処理が渋滞したというようなことによって、生産量全体としてはかなり増加しているというように見られます。  現在の卵の価格は、軟調で推移しております。そのため農林省といたしましても、先般開催された全国鶏卵需給調整協議会、ここにおきまして若鶏、年をとった鶏をできるだけ早く早期淘汰をするようにということで指導をいたしております。それから、五十三年度から、年四回の飼養状況実地調査を行って、生産調整がより徹底して行われるように指導してまいることにいたしておるわけでございます。  それから、農林省が直接調査したかということでございますが、これは市町村の鶏卵需給調整協議会、第一線ではここが実効を確認しているわけでございますけれども、そこの調査の結果は私ども承知いたしております。商社系かどうかというようなことまでは区分けしておりませんが、十万羽以上飼養している大規模経営体のものが無断増羽がかなりあるというふうに見られるわけでございます。こういったものに対しては、それぞれ実情に即しまして市町村、都道府県、農林省、農林省はまた出先機関で農政局というのがあるわけでございますが、こういったところがそれぞれ関係団体に対して生産調整を守るよう強力に指導しておるわけでございます。  それから、鶏卵の基準価格というのを決めて価格補償を行っておるわけでございますが、この制度の中におきまして、生産調整に協力しない養鶏家に対しては価格補償の対象にしないというような措置をとっているわけでございます。協議会でもって直接生産調整の相談を進める。また、それに対する指導監督を強化する。反面、基準価格に対する補てんという制度の中で、協力したものを手厚く取り扱うというようなこと、各般の対策を通じて実効が上がるようにというふうに措置いたしておるところでございます。
  172. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昨年の十二月八日の吉浦委員の質問に対する調査があいまいというか、はっきりと具体的に出ませんけれども、私はたくさんここに調査したものを持っております。その一、二の極端な例を申し上げてみたいと思う。  それは全国養鶏経営者会議、会長は能登谷喜代衛氏でありますが、この全国養鶏経営者会議の調査によれば、茨城県、ヒヨコのイセグループというのがあります。これがダミー会社を使って盛んに増羽している事実がございます。  まず一つは、東茨城郡内原町、涸沼農場であります。県も認めておりまして、当初七万六千羽であると県に言っておったわけでありますが、実際には二万から二万四千羽収容の鶏舎を九棟建てておりまして、現在は満杯になっております。  二番目の例としては、東茨城郡小川町、与沢農場でございますが、これも明らかにイセグループの直営であります。小川町の調査では成鶏八十五万羽と言われておりますが、実際は百二十万から百三十万羽いると言われております。それも町の需給調整協議会に届けずにやっておりまして、地元でも大変な問題になっております。  さらに、宮城県の株式会社タケクマ、これは富山県の黒部市に本社があります。具体的な、ダミー会社を使っての鶏卵の生産調整に関する違反事例として挙げるわけでありますが、宮城県の伊具郡丸森町、鈴木養鶏場、これは五十一年までは五万羽であったわけでありますけれども、五十二年には十万羽に増羽しております。ダミーの具体的な組合名は筆甫養鶏組合であります。この増羽については、県もこの増羽の実情を認めて強力な行政指導によっていろいろと監督している現状であります。  さらに、宮城県の加美郡色麻村、ノースエッグ色麻農場でございますが、これはイセグループで、九十万羽増羽されております。県でもこのことは確認はされておりまして、ノースエッグの責任者並びに親会社の富山県の株式会社ヒヨコのイセ社長に対し、宮城県としては事情聴取等、増羽分の縮小について強力に現在指導中でございます。  このようなことがたくさんございますが、特に増羽数の大きいものを数点挙げたのですけれども、こういったことについては知っておられるのか、知っておればこういったことに対して強力な指導をすべきだと思うが、また、これに対して当然規制をすべきだと思うが、農林省の見解を伺いたいと思います。私もこの公開の席で名指しで明らかにしたわけですから、十分これを踏まえて御答弁を賜りたい、かように思います。
  173. 杉山克己

    ○杉山政府委員 幾つかの事例について私どもも承知いたしております。そして、先生御自身いま言われましたように、各段階におきまして、市町村でなかなか手に負えないというものは県の段階まで上がって県が強力に指導しているということがございます。県の指導でもきかない本当にむずかしいというもの、それから広域にわたるような事業を行っているものについては、農政局なり、さらに最終的には農林省ということも考えられますが、ただ、これは法律的に、どうしても禁止する、あるいはその規制に従わないものは何か罰則を科するというわけにもまいりませんので、そこら辺の最終的な効果になりますと、よほど悪質なものについては困難もいろいろあるわけでございます。できるだけ各段階と一緒になって生産調整の実効が上がるよう指導してまいりたいと考えております。
  174. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係で全部申し上げることができませんが、政務次官、いまお聞きになったとおり、私は、このような状態は農林省の行政指導に真っ向から抵抗しているといいますか、挑戦していることじゃないか、かように思うわけです。こういったことを見るにつけても、私は、十分これは行政指導せねばならぬ、言うことを聞かなければそれに対する対策をとらなければならぬと思うのです。もし、それができないとなれば、農林省は癒着しているのじゃないかといってやっぱり農民が憤りを感ずるのは当然のことなんであります。  そこで、私は申し上げたいのですけれども、この問題について、一般生産者には生産調整を厳しく行い、商社インテグレーションにはこれを甘く見る、また許しておる、法で取り締まるわけにはいかない、こういうことでございますと、これはもうこの五千羽の生産調整もめちゃめちゃになるのじゃないか、こう私は思うわけです。  私は、こういったことについて野放図にせずに、農林省は十分な対策を講じてやっぱり養鶏業者を守るということが大事じゃないかと思う。そのために強力な指導をしてもらいたいと思う。そうしないと、今後こういった問題について大変問題が大きくなって、養鶏業者、農業者の将来に対する不安というものはつのるばかりであります。だから、しっかり取り締まる。と同時に、行政指導を平等にやっていただきたい。そして、農家が希望を持てるようにする。こういったことで十分対策を講じてもらいたい。あえて申し上げるわけですが、その点について最後に政務次官の見解を承っておきたい。
  175. 今井勇

    ○今井政府委員 この問題については瀬野先生のおっしゃるそのとおりでございます。農林省も小と大それぞれ区別して行政指導するなどというようなことは決してございませんし、今後もそのような厳しい態度で臨んでまいりたいと思います。
  176. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官からかたい決意がありました。昔、養鶏振興法を養鶏安定法に改正して、養鶏は農家経営に任せるという趣旨の議員立法をしようという動きがあったことは皆さんも思い出されると思いますが、実際は実を結ばずに、行政指導で今日までやってきております。そういったことを考えまして、養鶏はあくまでも農業の範囲である、こういうふうに位置づけて、やっぱり原点に立ち返って考えていかなければ、こういったことで野放図に行ったら大変だというように思うのです。その点特に申し上げます。議員立法としてまたわれわれも考えなければならぬとも思いますけれども、その点政務次官は昔のことを思い出されるかどうか、あえてもう一点お伺いしておきます。
  177. 今井勇

    ○今井政府委員 確かにお説のようなものはあることはありますが、しかしながら、こういうものについても先ほど申し上げたとおり厳しい態度で臨んでまいるという姿勢でおりますことを申し上げておきたいと思います。
  178. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ぜひともひとつ農林省としても厳しい処置をして指導していかれるようにお願いを申し上げておきます。  時間の関係もございますので、次の問題に入ります。  基準繭糸価格について伺います。  全養連では三月十六日、昨日ですが、東京九段会館で全国蚕糸生産者大会を開き、生糸、繭価格の三月末決定に向けて追加議案を含め四つの議案を議決し、日本農業の抱える問題の縮図が養蚕にあると、血の叫びをわれわれはひしひしと感じたのでございます。私も党を代表して当面の諸問題を種々明らかにするとともに訴えたわけでございますが、ここに改めて政府の見解を求めるものでございます。  まず、わが国の養蚕は、御承知のように、養蚕農家数が四十五年三十九万九千戸から五十二年二十万三千戸となり、繭生産量でも四十五年十一万一千七百トンから五十二年七万九千トンと激減しております。また、五十二年は養蚕農家戸数、繭生産量とも前年に比べ一〇%減でございます。まさに幻の産業になりかねないが、わが国伝統の養蚕業がここまで落ち込んだ原因をどのように分析しておられるか、率直にまず最初に伺いたいのであります。
  179. 野崎博之

    ○野崎政府委員 ただいま先生おっしゃいましたような数字で年々落ち込んでおるわけでございますが、主な原因は、一つは他作物との競合、これは収入の点もございますが、野菜とかメロンとか、そういうものに対する転換、そういうものが一つの原因でございますし、次には養蚕労働力の減少、これは若年労働者がどんどん養蚕から離れていくという厳しい情勢の中でございますし、また小規模の農家が脱落をしていっている、比較的大規模な農家は大体横ばい程度に推移をいたしておるわけでございますが、小規模の農家が脱落をしていっている、それらが衰退の大きな原因であろうというふうに考えております。
  180. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、いま野崎局長から答弁がございましたが、いまおっしゃったことも確かに原因の一つであるけれども、この原因は景気の低迷、さらには内需の停滞、減少傾向にあるということも十分うなずけますけれども、最大の原因は価格が不安定である、よって希望が見出せない、したがって生産意欲がわかぬ。いわば養蚕業冬景色ということになるんだが、政務次官は私の意見、全く間違い、こういうふうにおっしゃいますかどうですか。
  181. 今井勇

    ○今井政府委員 間違いというふうに申し上げるわけではございませんが、やはりこの基準糸価の問題は生産者の再生産といいましょうか、意欲をかき立たせると同時に、やはり需要を喚起していっていただいて、需要が伸びませんとどうにもならない問題でもあります。そういう両面を考えていかなければならない問題でありまして、そのような考え方から今回の基準糸価も決めてまいりたい、このように考えております。
  182. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 野崎局長に伺いますが、政府の閣議決定による六十年見通しによると繭生産目標は十三万五千トンとなっております。昭和五十四年は九万トン目標となっておりまして、農家もこれに向かって努力しようということになっておりますが、六十年見通しについてどのように目標達成のための計画を立てておられるのか、それとも計画を変更しなければならぬというふうに考えておられるのか、その点、時間もございませんので、簡潔にひとつお答えください。
  183. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、六十年度の目標を達成するのはなかなか厳しい情勢でございますが、われわれとしましては大いに養蚕を振興して目標に近づくようにいたしたいというふうに考えておるわけでございまして、五十一年度に蚕業審議会の会長からもいろいろ御勧告がございまして、それに従いまして集落別、市町村別、都道府県別に生産数量の目標を決めまして、それに向かって生産を振興するということにいたしております。  具体的な施策といたしまして、補助事業といたしましては桑園の改良施設とか密植栽培とか、そういうような近代化施設あるいは桑苗主産地の育成、それから低位の生産地の桑園改良、そういうようなことを始めると同時に、五十三年度からまた水田再編利用対策もございますので、大幅な奨励金を出しまして、それらも利用しながら一歩でも六十年度目標に近づくべく努力をいたしているところでございます。
  184. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十三年度新生産調整は、御承知のように、三十九万一千ヘクタール、百七十万トンということでありますが、この新生産調整等による転作、すなわち水田に桑を植えるということでいろいろ熊本初め各県でも検討が進められておりますが、基本的にはどういう対策を政府は考えておられるのか、すなわち奨励金とさらには面積とか生産量はどういう程度に目標を立てておられるのか、これもひとつ簡潔でいいですからお答えください。
  185. 野崎博之

    ○野崎政府委員 果樹につきましては従来四万円であったものが五・五万円になったわけですが、桑につきましては従来三万円であったものを一躍二倍近い五・五万円というようなことで、非常に奨励金のアップを図っておるところでございます。  面積等につきましては、これは具体的には各地域実情あるいは地域の実態、主体性、そういうことを勘案いたしますので、作目別にはっきりした数字なり目標というものは現在のところつくっておりませんが、大幅に奨励金をアップして生産振興に寄与する、そういうふうに考えております。
  186. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 稲作からの転換を含めて、農林省は六千ヘクタールの増植を対象県に呼びかけておるようにわれわれは承知しておるのですけれども、その条件はかなり厳しいではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。もちろん転作として野菜その他をやりますとどうしても野菜と競合しますので、こういった桑に転作をするということについてはわれわれも結構だと思うのですが、そのわりになかなか進むことがむずかしいんじゃないかというふうな見方をしておる方もおるわけです。  そこで私は、この一つのネックになった問題としては、稲作転換奨励金の交付期間を最低五年以上に延期するということは何としてもやってもらいたいと思う。午前中農林大臣もこれに対してはかたくなにいろいろ答弁しておられたようですけれども、やはり桑というのは三年から収量がありますけれども、五年ごろから本当に収量が出てくるわけでございまして、むしろ昨日の大会なんかでは十年にしてくれ、こう言って要求も出たのであります。私は、小麦や大豆など特定作物は十年間奨励金を出すということになっておりますが、これに対して一年だけで勝負にならない永年作物だけに、これだけの差をつけられたのでは政府奨励の意図を疑いたくなる、また農民がそう言うのも当然である、かように思うのでございます。同じ永年作物の果樹は五年となっておるわけでございますので、せめて果樹並みの奨励期間設定が必要ではないのか、こういうふうに思うわけです。きのうも大会で、このことはぜひ農林省に迫って必ず五年にすると私も決意を述べてきたわけですが、ひとつ前向きに検討願いたい。午前中いろいろ答弁されておるけれども、今後こういったことについては十分前向きに検討する、こういうように言って、農家の皆さんに、いわゆる養蚕家の皆さん方に安心して希望を持てるようにしていただきたい。そうすればこの稲転も進んでいく、かように思うのです。局長の見解を承りたい。
  187. 野崎博之

    ○野崎政府委員 午前中も御答弁申し上げたわけでございますが、果樹は比較的生育期間が長いわけでございます。それから、着果時期は桑並みに三年ないし四年というのもございますが、成木になるには非常に期間が長い。片や桑の方は大体三年ないし四年足らずで完全に成木になって、その収量も、午前中申し上げたのですが、埼玉県の蚕業試験場の調査によりますと、大体三年目に収桑量で十アール当たり二千百二十八キログラム、四年目で二千四百キログラム、ここらが大体ピークでございまして、その後は大体横ばいないし減少していく、こういうかっこうになっておるわけでございます。したがいまして、大体三年ないし三年ちょっと程度のところがピークでございますので、われわれといたしましては、桑は生育期間三年で大体成木になる、そういうことで果樹と一応区別をしておるわけでございます。
  188. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十三年度の適用基準糸価を大幅に引き上げていただきたいということについてお伺いするわけでございますが、御承知のように、五十二生糸年度で見ると、一万六千六百円の生糸生産費に対し、実勢糸価は、事業団による一元輸入措置等の価格対策にもかかわらず、生糸生産費をはるかに下回る水準で推移しております。生産費が全く補償されていないといって昨日の大会でも強い決議がなされ、要請があったわけでございますが、私も全くそのとおりに思うわけでございまして、生産費レベルに基準糸価の引き上げを図るべきである、かように思うわけです。いわゆる平均繭価と生産費がもうずいぶん四十九年から離れてきました。そういうことで、これを近づける、またこれを一致させるという方向でぜひやってもらいたい。これが今後の養蚕農家の発展に大きなネックになっております。そういったことで政府の考えをただすわけでありますが、ことしは全養連としても基準糸価を昨年の一万三千百円から一万四千五百円、基準繭価は昨年の千九百十五円から二千百円、このような要求をしておるわけでございます。これについても十分ひとつ検討した上で価格決定をしていただきたいと思うのですが、これに対する見解を承っておきたい。
  189. 今井勇

    ○今井政府委員 今朝以来しばしば御答弁しておりますように、生産者の生産費をもとといたしますことはもちろんでございますが、何といいましてもこの場合にはその糸を買っていただいて、さらにそれを製品にしていただくことがなければどうにもならないわけでございます。すなわち、需要の動向といったものもやはり考えなければなりません。したがいまして、審議会の御意見等も聞きながら慎重にひとつ先生の御意見を踏まえまして対処してまいりたい、かように考えます。
  190. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに私は、実勢糸価を生糸生産費以上で保証するために日本蚕糸事業団の需給調整の仕組みを改善し、さらに強化すべきではないかということを申し上げたいわけであります。  事業団が生糸を放出する場合に二つの方法があるわけですが、一つは、一般糸については一万四千百五十円しないと放出しない。二つ目には、実需者売り渡し、いわゆる瞬間タッチと言っておりますが、これについては一万三千四百五十円の水準を上回ると安く放出する。こういった仕組みの改善強化をして、いわゆる生産費水準で糸が出回るような放出を考えるべきだ、こういうふうにも思うのですが、こういったことについてはどういうふうに当局は検討しておられるか、お答えいただきたい。
  191. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いま先生おっしゃいましたように、基準糸価は現在一万三千百円ということで、その上限価格が一万四千五百円でございますから、千四百円の幅があるわけでございます。その幅の中で動くような仕組みになっておりまして、瞬間タッチのいわゆる実需者売り渡しというものと、それから一般売り渡しと両方あるわけでございますが、瞬間タッチの方は、その基準糸価を割るおそれのあるときは売ってはならないという規定がございまして、そのラインを大体一万三千四百五十円というところに置いておりまして、その一万三千四百五十円を割るようなときにはもう実需者売り渡しもやめる。それで、一万四千五百円の上限価格を上回るようなおそれのある場合、これが一万四千百五十円、先ほど先生がおっしゃったところですが、その際には一般売り渡しをやって、要するに千四百円の幅の中でひとつ生糸の価格を安定をさせようという制度のねらいでございますので、現在のところはそういう幅の中で動いておるわけでございます。
  192. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 昭和五十三年度の二国間協定の問題でお伺いしておきますけれども、事業団の在庫がなくなるまで当分の間行わない、すなわち延期すべきではないかということを申し上げたいわけであります。昨日の大会でも、このことが大きな議題として第二号議案で提案されたわけでありますが、御承知のように、昭和五十二年は二国間協定の見通しの甘さによって、中国が五十五万五千俵、韓国が三万九千五百俵、五十三年五月末の生糸年度での見込みを見ましても、国産が一万俵、外国産が七万俵、合計八万俵余りが在庫となって抱え込むということになるわけです。昨年も六月から九月の間買い支えたわけでございますが、この基準糸価が三回も下回ったために六月から九月の間四カ月間買い入れたわけですけれども、この生糸価格問題がこういうふうに農民に不安を与えておるときでもありますし、この二国間の協定というものは当然延期する。在庫が三万俵以下あるいは二万俵、こうなったらまた交渉再開というようなことにすることはやぶさかではございませんけれども、在庫がこのようにある限りは二国間協定はやるべきでない、こう思います。農林大臣も粘り強く日本の実情を訴えて対策を講ずるというふうな考えのようでございますが、極言すれば来年いっぱいは輸入しなくても十分間に合う量である、こういうふうにも思うわけです。国内の蚕糸関係業者を守るためにも、また生産者を守るためにもひとつこのことは強力な交渉をしていただく、そして農民の要望をぜひとも実現するように努力してもらいたいと思うのですが、これに対する農林省の見解を承っておきたいと思います。
  193. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いま先生おっしゃいましたように、二国間協定につきましてはわれわれもわが国の絹の需給が非常に厳しい状況であるということを十分説明いたすつもりでございますし、現に昨日、おととい日韓の第一回事務レベル会議があったわけでございますが、その際にも非常に厳しい需給状況であるということを十分説明してございます。また、事業団の在庫も非常に過剰になっておりますので、その在庫が適正在庫になる方向で輸入問題も考えてみたいというようなことも相手国側に申し入れておりますし、十分そういう点を踏まえてこれからも輸入の交渉に臨みたいというふうに考えております。
  194. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間がないので、はしょってあと二点伺っておきますが、外国産繭の輸入について強力な法的輸入調整措置を講ぜよということを私は申し上げたいわけです。昨年は韓国が不況のためにずいぶん倒産が起きたことは御承知のとおりでございます。韓国産が最近急増しているということで私もいろいろ調査してみましたが、五十二年十月は三百トン、十一月二百トン、十二月百八十五トン、こういったものが韓国から直接入れられないために、伝票だけよこして、これがタイ国を通じて日本に入ってきている。いわゆる品物は直接日本に入っているけれども伝票だけが動いている、こういう状態であります。これは私はせんだっても指摘したわけでございますけれども、こういったことをすれば幾ら国内で二国間協定を厳しくし、さらには国内生産者を守ろうとしても、ざるみたいに入ってくるとなれば、これはどうしようもない。  そういったことを当局は十分知っておられるかどうか。また、法的輸入調整措置をどういうふうにするように考えておられるのか。こういったことを見逃せばざる法でありまして、いわゆる別枠とかそういう姿で出てくれば、私たちが幾らここらで一元化を図ってやっても結局むだである、こういうふうに思うわけです。その点承知しておられるのか、また対策はどういうふうに法的輸入調整を行う決意なのか、検討しておられるのか、お答えをいただきたい。
  195. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先生おっしゃいましたように、五十二年の六月から五十三年の一月まで全体の繭輸入量は二千三百六トンでございますが、そのうち韓国産が約七割を占めているわけでございます。われわれもこれに対しましては韓国に対して非常に強く抗議を申し入れたわけでございます。昨日の日韓事務レベル交渉でも非常に強く申し入れておりますし、この韓国産をどうするかということが一つのキーポイントになると思います。中国産につきましても、中国側も大体こちらの事情をわかりまして了解をいたしておりまして、数量は非常に減っておるわけでございます。韓国の方も大体こちらの事情はわかっているようでございますが、われわれといたしましては、もし無秩序な輸入が入れば生糸からその分差し引く、そういうつもりで交渉に臨んでおります。現に五十二年産につきましても相当繭が入っておりますので、その分だけ生糸の輸入を抑えているという状況でございます。  いま申し上げましたように、韓国産のものがキーポイントでございますので、これが抑制されれば、あえて立法措置までいかなくても、国内商社の方もいろいろと指導しておるわけでございますが、国内商社の方も大体そのガイドラインを守っていくようにわれわれもやりたいというふうに申しておりますので、国内商社の問題と、それからいま申し上げました韓国産の問題がどういうふうな実効を上げるか、それを見守りながら今後の措置をまた考えていきたいというふうに思っております。
  196. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 絹織物の輸入調整措置についてですが、これもさらに強化すべきではないか。すなわち、事前許可制の問題でございます。時間もございませんので、はしょって申し上げますが、御承知のように、香港、マカオについては網をかぶせたわけです。他の国については、特にイタリアからもいまどんどん入ってくるわけですが、抑えていないので、ここも拡大すべきである、かように思うわけです。すなわち、絹撚糸については現在二十三カ国が対象に事前許可制になっております。この対象外であるフィリピン、マニラから最近は帯状になって入ってくる。また、絹ロープとして入ってくる。それが日本に来てから糸としてほどくということで糸になる。こういう姿で入ってくるということは当局も承知しておられるかどうか。こういう抜け穴があることがわれわれの調査でようやく最近わかってきた。こんなことをしていたのでは、幾ら規制しても、日本国内の養蚕農家を守ろうとしても、ざる法になります。  そこで、現在二十三カ国が事前許可制になっておりますけれども、このフィリピンのマニラから入ってくるものがわかった場合は即刻対処策を講じて、いわゆる事前許可制の対象国に拡大する、こういったことをやって、網の目をくぐってくるものに対してはすぐ手を打つということをしていかなければ、商社はなかなか鋭敏でございまして、そういうように規制されると今度は伝票で動かしたり、規制以外の国を経由して品物を入れる。その場合には帯になってみたり絹ロープになって入ってくる。こういうことをやっていればいつまでたってもこの問題は解決しない。いわゆる国内の養蚕農家の生産費に見合って基準繭価を上げることは、当然これが最大の今後のわが国伝統産業の発展につながるわけですが、反面日本の繭また生糸を守るためにも、こういったものをきちっとやっていかなければ、幾らわれわれがここで声を大にして言ってもざる法になる。  こういったものについては、私は指摘したわけですから、当局、知っておるならば、またわかっていなければ調査をして、直ちにこういったことに対する規制をする、規制というか、いわゆる事前許可制をとるというような、二十三カ国以外の国もこういったことがわかれば対象国にするということをここでひとつ明らかにしていただきたい。そうしなかったら、何ぼ国内でこうして口角あわを飛ばして質問して力説してもざる法になることは受け合いであります。そういう点について野崎局長から答弁を求めます。
  197. 野崎博之

    ○野崎政府委員 いまおっしゃいましたように、現在韓国、中国、イタリア、アメリカ等二十一カ国が事前許可の対象になっているわけでございます。当初は十九カ国でございましたが、いま先生のおっしゃったようなそういう国が出てき次第これに追加をいたしておるわけでございまして、これは本来的には通産省の問題でございまして、通産省でそういう事務を扱うわけでございますけれども、われわれとしましても、そういう国が見つかり次第この中へ入れて、事前許可制の対象にするように通産省へ強く申し入れるつもりでございます。
  198. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いまの答弁に対して政務次官にお伺いします。  絹織物の輸入調整措置、いわゆる事前許可制の問題でございますけれども、通産省の問題だと言うけれども、これは通産省の問題というだけでほっておくわけにいきません。これは即農林サイドにかかってくる問題でございます。先ほどのタイの問題、そしていまの絹織物の、フィリピンのマニラからの帯あるいは絹ロープで入ってくる問題等、これを二十三カ国以外の対象国として入れるということについては強力に農林サイドから通産省とも協議をして、早く手を打っていただく、措置をしていただくということでお願いしたいのですが、この点農林大臣にも十分伝えて手を打っていただきたいと思うが、最後に政務次官の見解を承っておきたいと思います。
  199. 今井勇

    ○今井政府委員 ただいま局長の御答弁をいたしましたとおり、そういった不法、不当な方式に対しましては厳しく対処してまいりたい、かように考えます。
  200. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 どうかひとつ厳しく取り締まっていただきたい。  時間も参りましたので、以上で質問を終わります。
  201. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  202. 神田厚

    神田委員 午前中に引き続きまして、五十三年度の畜産の政策価格の問題について御質問を申し上げます。  まず最初に、三月十五日に開かれました第十三回畜産振興審議会に「最近における畜産の動向と畜産関係諸施策等について」という題で畜産局長報告が出されております。この中でいろいろと現在の畜産をめぐる動向について言われておりますが、ひとつ局長にお伺いしたいのでありますけれども、「畜産物の輸入をめぐる厳しい国際環境の中にあって、飼料基盤の脆弱性、高地価の下での経営用地の取得難等今後の我が国畜産の安定的発展を図る上で解決すべき多くの課題を抱えております。」こういう指摘をしております。これは御指摘のとおりであろうと思います。そうしまして、「農林省としては、長期的にみて畜産物の国際的需給について不安の大きい状況の下で国民への畜産物の安定的供給を図るためには、可能な限り国内生産の振興に努めるとともに、需要に対し国内生産では不足する分について安定的に輸入を行っていくという基本方針に立って、主要畜産物について、輸入割当制度畜産振興事業団による一元輸入、関税等諸制度の適切な運用により、輸入畜産物が国内生産に悪影響を及ぼさないよう努めるとともに、「農産物の需要と生産の長期見通し」に即し、畜種ごとの条件、地域の特性等を十分考慮しつつ、飼料の安定的供給の確保、畜産物価格の安定、畜産物の流通の合理化等各般にわたる施策を総合的かつ計画的に推進し、畜産物の安定的供給と畜産経営の安定を図って参る所存であります。」こういうふうに述べておられます。このことにつきまして、これが畜産局長の言っているような形で推移していけば問題はないのでありますけれども、現在の状況から考えていきますと、いろいろと問題を含んでいると私どもは考えております。  まず冒頭局長に、この辺のところをひとつどういうふうに今後の見通しというものをお持ちになりまして、したがって、こういう抽象的な表現ではなくて、これに肉づけをした形で御説明をしていただきたい、こういうふうに考えるのであります。
  203. 杉山克己

    ○杉山政府委員 ここは「畜産をめぐる一般動向」ということでございまして、基本的な認識、それから、それに即しての農林省としての考え方を述べたわけでございます。事柄の性格上どうしても一般的、抽象的にならざるを得ないのでございまして、あとむしろこれについてのコメントということになりますれば、畜種ごとにあるいは需給の問題、価格の問題、それぞれこの報告全般を通じて私の立場から述べているところでございます。したがいまして、これを全部述べるようなこともできませんので、ごく簡単に二ページから三ページにかけてもう少し解説をさせていただきたいと思います。  「畜産物の輸入をめぐる厳しい国際環境」、これは申すまでもなく、最近の外圧があるということ、それから製品そのものもでありますが、飼料の問題につきましても、いまでこそ安定しているけれども、いつまた、価格条件等、需給条件も同じでございますが、厳しい事態にさらされないとも限らない、そういう認識を踏まえて「輸入をめぐる厳しい国際環境」と言ったわけでございます。  「飼料基盤の脆弱性」、これは自給飼料の増産をうたって、草地造成等を図っておりますが、必ずしも面積的にもそれから土地の生産性からいっても十分ではない。それから、草地だとか基盤整備につきましても、あるいはそれぞれの畜産を行っていくのに当然資本、土地といったものが必要でございますが、その用地の取得につきましては、地価も高い、資金を多額に要するというようなことで、一般的に一番基本となる土地の取得がむずかしい、しかし、こういった問題については大いに努力して解決していかなければいけない、そういう問題意識をここでうたったわけでございます。  それ以下のパラグラフは若干解説しているわけでございまして「長期的にみて畜産物の国際的需給について不安の大きい状況の下で国民への畜産物の安定的供給を図るためには、」云々とございますが、このくだりは、牛肉等について特に問題が先鋭的に取り扱われており、安い牛肉をたくさん入れたらいいではないかという一般の論議もあるわけでございますが、むしろ私どもは、牛肉などは長期的に見ればそれほど遠くない将来、国際的に需給はかなり逼迫するのではないか、そういうことを考えれば、需給を整え、安定的な供給を図ることはやはり必要なんだ、そういう意味で「可能な限り国内生産の振興に努める」ということをうたったわけでございます。これはほかの畜種によっては若干の差はありますが、基本的には同じような認識を持っているわけでございます。そして、輸入を全く仰がないで済むわけではございませんので、需要に対し、国内生産では不足する分については安定的に輸入を図っていく。  それから、そういう基本方針に立って、では具体的にどういう制度的な、政策的な対応、仕組みをとっているかというのは、主要畜産物については輸入割当制度事業団による一元輸入、関税、そういったものが制度としてあり、それを適切に運用してまいりたい、そして「輸入畜産物が国内生産に悪影響を及ぼさないように努める」ということを言っているわけでございます。  それから、一般的な特に生産対策の面でございますけれども、「農産物の需要と生産の長期見通し」という一つの目標があるわけでございます。これがここ六十年までの農林省、あるいは畜産については私ども畜産局の一つのターゲットになるわけでございまして、畜種ごとにあるいは地域の特性等に応じ、飼料の安定的供給の確保、畜産物価格の安定、文字どおりそこに書いてありますような事柄、畜産物の流通の合理化、これらについて総合的に対策を講じてまいりたい。  もちろん私の説明はきわめて不十分でございますが、その中身につきましては、最近におきますところの現状に即しての考え方は、この報告全般を通じてお読み取りいただけると思いますので、以上でもって答弁とさせていただきます。
  204. 神田厚

    神田委員 この報告書を全部読ませていただきましたが、一言にして言うならば、生産者に対する配慮が非常に欠けている、そういう感じを私は持ったわけであります。  午前中の大臣に対する質問の中で、農林大臣は、畜産農民に対しまして再生産の確保ができるような体制に日本の畜産を持っていきたい、こういうことを言われました。しかし、現在この畜産局長報告を読んでみる限りにおきましては、日本の畜産農民が再生産が確保できるような方向性というのは一つも打ち出されていないということを私は痛切に感じたわけであります。この点はいかがでございますか。
  205. 杉山克己

    ○杉山政府委員 そういうふうに読まれたということならば大変に残念でございますが、私どもの気持ちはいま私が申し述べましたとおりで、畜産に対してきわめて安定経営を志向した、役所としてはできる限りの対策を講じていく、農家に対する配慮は十分考えているつもりで作成いたしたものでございます。
  206. 神田厚

    神田委員 私はそういうふうに読めなかったわけでありまして、さらにいろいろと問題点を含んだ報告書になっていると考えています。  ところで、政務次官にお尋ね申し上げますが、大臣は再生産を確保できるような畜産にしたい、こういうふうに言っておられます。そして、現在すでに再生産が確保できるような畜産体制に入っているというふうな答弁が午前中あったようであります。私は十五分という限られた時間の中でありましたので、十二分にそこで議論をすることができませんでしたけれども、政務次官もそのように、現在の畜産農民が再生産が確保できるような畜産の体制になっているとお考えでありますか。
  207. 今井勇

    ○今井政府委員 私もややそれに近い意見を持っております。たとえば酪農につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、生産量が九・一%でしたか、大変高い伸び率になりまして、生乳の消費量が増加しておりますが、その伸び率を上回って伸びておることやら、あるいはまた畜産頭数がやはり増加傾向にある。こういうことから考えましても、それは本当に畜産農民の皆さん方の御努力である、そのたまものであるということはそのとおりでありますが、そういった方々がやってやろうというお気持ちがあればこそであろうと思いますので、私もやや再生産を確保できているのであろう、そういうふうに認識をいたしております。
  208. 神田厚

    神田委員 再生産が確保できるから飼養頭数がふえたという議論は私は非常におかしいと思うのですね。飼養戸数、それからいろいろな農家経済のそういう状況を全部踏まえてみないと、飼養頭数がふえたから、さらに生乳の伸びを上回っているから再生産が確保できるというような議論は非常に暴論である、非常にむちゃくちゃではないかという感じがするわけであります。  それでは、一体飼養戸数はどの程度、どういうふうに推移しているのか、それから畜産農民、畜産農家の負債というのはどういうふうになっているのか、この辺はどうでございますか。
  209. 杉山克己

    ○杉山政府委員 飼養戸数なり飼養頭数なりは畜種によってそれぞれ異なるわけでございますが、たとえば乳用牛について申し上げますと、ちょっと古くなりますが、三十五年ですと四十一万戸、それから節をとって見ますと、四十年が三十八万二千戸、四十五年三十万八千戸、五十年になると、この間大幅に減ってまいりまして十六万戸、五十二年十三万七千戸で、三十五年当時に比べて三分の一程度に下がってまいっているわけでございます。  その間、飼養頭数の方は、中間を省略いたしますが、八十二万四千頭から百八十八万八千頭ということで二倍強に数字になっております。  一戸当たりの飼養頭数は、二・〇頭であったものが十三・八頭というようなぐあいに、農家としての経営規模は一般的に言って大きくなってきている、生産性も上がっているということが一応言えるかと思います。  それから、負債状況はどうかということでございますが、酪農について見てみますというと、四十七年−五十一年、この五年間の動きを見てみますというと、酪農はほかの養鶏とか養豚に比べて負債の額は大きゅうございます。一戸当たり平均が、四十七年が百八十六万二千円、それに対して五十一年は四百二十二万五千円ということで大きくふえているわけでございます。  それから、酪農に対しては制度資金による支えがかなり行われておりまして、いま申し上げました負債のうち、四十七年、百八十六万円のうち八十四万七千円が制度資金によるものでございます。それから五十一年、四百二十二万円のうち二百三十八万三千円が制度資金によるものでございます。  ほかに、畜種別それぞれございますが、とりあえず酪農について御答弁申し上げました。
  210. 神田厚

    神田委員 いまの数字を聞いて、政務次官、それで再生産が確保できるような畜産の状況になっているというふうにお感じですか。もしも、きちんと再生産が確保されていれば、どうしてそんなに飼養戸数が減ったり負債がふえていくのか、その辺のところはだれが考えても、現在の畜産が再生産が確保できているような、そういう状態ではないということは明白である、私はそういうふうに考えますが、いかがですか。
  211. 今井勇

    ○今井政府委員 この問題でいつも議論がすれ違いますのは、飼育頭数のどういう農家を対象にして論ずるかということであろうと思います。  ちょっと話が飛びますが、たとえば米の場合でもそうでありますが、八〇%をバルクラインといい、平均の耕作反別を持った農家の生計費といい、それぞれの要求団体によって、あるいは政府の考え方が違うというところから問題が出てくるようなものでございまして、一体何頭飼育している農家の生産費が償えるのか償えないのかということを前提にして議論をいたしませんと、ややともするとすれ違いの議論になるのではなかろうかという感じがいたします。  そこで、私のざっと申し上げました意見は、やはり酪農として、あるいは畜産農家として自分の生涯をかけてやっていこう、こう思われる農家というものを頭の中に置いて私は先ほどの御答弁を申し上げたつもりでございます。
  212. 神田厚

    神田委員 それは日本と、オーストラリアとかそういうふうな国の違いはあります。オーストラリアあたりでは、二千頭なり三千頭なりというのが平均の飼養頭数だというような言われ方もしている。それでは政務次官の方に、日本の酪農農家は大体どの程度が適正な飼養頭数かというようなことを言ったら、これはちょっと困るんじゃないですか。そういう話では私はやはり納得できませんで、つまり再生産が現在のような状況の中できちんと確保ができているような畜産の状況だという、そういう状況認識を変えていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  213. 杉山克己

    ○杉山政府委員 やはり物の生産性というのは、生産規模が大きくなるに従って一般的には上がるわけでございます。経営というものである以上、どんな小さな規模の経営もこれを温存するというか、育てていくというわけにはまいらない、やはり一つの採算のとれるあるスケールというものを想定しなければいけないと思います。  どのくらいが一番妥当かということになりますと、そこは絶対的な定まった数字というものがあるわけじゃございませんけれども、従来畜産経営を見てまいりました目からいたしますというと、一戸でもって大体生活が賄え、安定した経営が継続できるようになるには、おおむね酪農の場合は三十頭から四十頭くらいは必要であるというふうに考えております。
  214. 神田厚

    神田委員 そうしますと、現在は十三・八頭ぐらいだというふうなことを言われておりますね。そうすると、現在の状況の中では、十三・八頭ぐらいでは再生産がきちんとできているというふうには認識なさってないのでしょう、どうなんですか。
  215. 杉山克己

    ○杉山政府委員 現在の酪農農家は、およそ酪農だけで全生計を立てて、経営をそれだけでもって終わらしているというわけではないわけでございます。それはやはり専業に酪農だけをやっているところもありますが、同時に並行して肉牛もやっている、あるいはほかの畜種、豚とか鶏を飼う者もありましょうし、あるいは水田とか畑、そういった全体としての複合的な経営を行っているわけでございます。その意味で、十三・八頭というのが、そのまま全部が一人前にそれでもってすべての完結した経営であるというふうに考えているわけではございません。
  216. 神田厚

    神田委員 この話をずっと続けていきましても、ほかにまた質問しなければならない項目がたくさんあるものですから……。  私はやはり局長の言っていることも非常に矛盾している、御自身でもお感じになっていると思いますし、政務次官も、やはり現在の十三・八頭平均ぐらいの飼養頭数の中で畜産農家が再生産が確保できるような状況にはなってないということをひとつ明確に御認識をいただきたいというふうに思うわけであります。そういうことでないとこれから先の話を進めることができないのでありますが、ひとつその辺のところは、どうかそういう非常に大ざっぱな認識ではなくて、もう少し生産農家に対するきちんとした見方をしていただきたいという御要望を申し上げておきたいというふうに考えております。  続きまして、大変大事な時期に至りまして、いよいよことしの審議会の答申を得るわけであります。この政策価格の答申につきましては、毎年国会のこの委員会の中でも論議をし、あるいは附帯決議をつけたりしているわけであります。それで、昨年もこの委員会におきまして附帯決議をつけました。私どもは、この委員会の中でつけられました附帯決議というものは非常に尊重されなければいけない、こういうふうに考えているわけでありますけれども、一向にこの附帯決議そのものが尊重されない、しかも反映されないということは、非常に残念であると同時に、本委員会の権威にかかわる問題であります。畜産局長もすでに昨年どういう附帯決議がつけられているかは御案内でございましょうけれども、この附帯決議につきまして、いわゆる加工原料乳、それから飲用原料乳、それから豚肉及び牛肉の安定基準価格等の労賃のとり方、こういうものにつきましてどの程度、あるいはこの酪農にかかわる畜産農家の負債の累積の金融措置、こういうものがどういうふうに答申に反映されているか、その辺のところはどういうふうにお考えでありますか。
  217. 杉山克己

    ○杉山政府委員 昨年の三月二十五日、衆議院農水委員会全会一致の附帯決議をちょうだいいたしております。「畜産物価格等に関する件」ということで、八項目にわたって御意見をちょうだいしているわけでございます。そのときの価格決定、これに伴ってとられる措置、さらにはその後の一連の政策の展開、特に翌年度予算の編成といった諸般の過程を通じてこういったものが実現される、できるだけ私どもの政策の中に取り込まれていくということになるわけでございますが、まず第一のところ、「加工原料乳保証価格については、生産コストの上昇を適正におりこむとともに、家族労働費について製造業労賃が十分に反映されるよう評価するなど生乳の再生産確保が図られる水準に引き上げること。この場合、自給飼料生産労働費の評価については、酪農における粗飼料生産の重要性にかんがみ、特段の配慮を加えること。」この点につきましては、労賃のとり方を、それ以前の農村日雇い労賃と製造業五人以上の平均賃金というやや折衷した労賃単価をとっておりましたものを、その地域の製造業を中心とする六業種に従事する雇用労賃、この労賃単価をとることによりまして、地域におきますところの他産業の労賃が配慮されたというふうに考えておりますし、このことによって賃率は一二・六%のアップを見ております。  それから、お尋ねでは直接ございませんでしたが、二番目の「加工原料乳の限度数量設定に当たっては、生乳の生産事情等を的確に把握し、十分な量が確保されるよう措置すること。なお、五十一年度の限度数量超過分についても、補給金と同様の措置が講ぜられるよう努めること。」これにつきましては、前年の百三十八万トンよりも二十万トンよけいに見込んだ百五十八万トンというのを五十二年度の限度数量として設定いたしました。それから、五十一年度の限度数量超過分につきましては、これは直接補給金の対象ということではございませんが、それに準ずる扱いでもって、事業団の財源によりまして実質的にそれに相当する扱いがなされたわけでございます。  それから、「飲用原料乳については、消費の積極的拡大を図る各種施策を推進するとともに、生乳の広域需給体制整備促進すること。なおこれとあわせ、還元乳等については早急に生乳に切り替える措置を講ずること。」これは三番目の御意見であったわけでございますが、これにつきましては消費拡大運動を一般的に、たとえば土曜日の学校給食の問題でありますとか、そのほか拡大運動を積極的に展開してまいっておるところでございますし、特に五十二年度予算におきましては、国と事業団の予算を合わせますというと二億五千万の財政負担をするという形でもってさらに一層拡大してこれを推進することにいたしております。広域体制につきましても、生産者、乳業者で構成する生乳広域需給調整協議会を設けて、そこで体制を整備する、促進するということを行うことにいたしております。  それから四番目は、「豚肉及び牛肉の安定基準価格」でございますが、これについては、「労賃、生産資材等の上昇を適正におりこむとともに、所得の補償にも十分配意し、その再生産確保が図られる水準に引き上げること。なお、素畜の価格安定制度拡充強化及びその安定的確保を図ること。」これにつきましては、肉価格はまさに再生産の確保を図ることを旨として、私どもとしては労賃、生産資材等の情勢を、経済事情を適正に織り込んで決定さしていただいたわけでございます。  それから、素畜の価格安定制度につきましては、これは子牛の価格保証につきまして、五十三年度予算におきまして特にその拡充を図っているわけでございます。単価におきましても、対象数量におきましても、それから補てん率におきましても、いずれも改善措置いたしたところでございます。  五番目に、「鶏卵、鶏肉に対する需給調整を徹底するとともに、卵価安定基金及び液卵公社等による価格安定機能を一層強化拡充すること。」これは安定基金に対する出資を七億から十二億にふやしておりますし、補てんする単価にいたしましても、これは五割方アップをいたしております。  あと六、七、八とございますが、六は輸出、近年の外圧、牛肉等の畜産物の輸入については現行制度の適切な運用に努めるというようなこと、これはそれの線で努力をしてまいったわけでございますし、七、国有、民有林野の活用、飼料作物の増産、備蓄、これらについてもそれぞれ対策を講じております。  それから、特に八番目に、「酪農等にかかる畜産農家の負債が累増している実情にかんがみ、これが整理のための所要の金融措置等を講ずること。」これは先生もいまお尋ねがあったわけでございますが、これにつきましては、畜産振興事業団の経営改善資金という新しい融資制度によりまして旧債負債を乗りかえる、五分の低利資金でもってこれを融通するということにいたしました。その結果四百億の資金枠に対して三百三十億の需要があったわけでございます。このことによりまして、農家負債の全部が何も解消されたというわけではございませんが、かなり悪質の前から滞っておりました旧債は肩がわりができたのではないか、改善が進められたのではないかというふうに思っております。  もちろん、以上のこと全部でもって完全にすべて決議におこたえしたというわけではないかもしれませんが、それなりに私の方としてもおこたえいたしてまいったつもりでございます。
  218. 神田厚

    神田委員 大変丁寧に御答弁いただきましたが、そうしますと、ことしもこういうような形で委員会決議がされた場合には、これをより尊重してそういうものの中に織り込んでいただける、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか、政務次官。
  219. 今井勇

    ○今井政府委員 御決議は各党の理事諸公が御相談なさいまして、全会一致の場合にこの委員会で御決議賜るものと了解いたしておりますので、政府も御決議を賜りました線に沿って鋭意努力することは当然のことでございます。
  220. 神田厚

    神田委員 それから最後に、時間が来てしまいましたものですから余り質問できません。畜産問題の審議会が答申を出しましたところに、答申と同時に建議がつけられておりますね。食肉部会におきます建議、これも四項目あります。さらに酪農部会における建議、これも四項目ございます。私は、これは非常に大事なことがここに書かれているというふうに考えておるのですが、これらはたとえば一番最初に、この価格の決定時期三月というのは必ずしも適当でないからこれを早急に改善しろ、こういうことも含めまして非常に大事な建議がそれぞれ四項目ずつつけられている。これについて政府はどういうふうに評価いたしましたか、お尋ねいたします。
  221. 杉山克己

    ○杉山政府委員 畜産物の価格決定の時期は、これは法律によりまして三月ということになっておるわけでございます。三月三十一日までに決定するということになっておるわけでございます。一般に農産物は播種期あるいは収穫期に価格決定を行うものが多い。これはやはりその時期を起点としてサイクルが一年間回るからということであろうかと思います。ところが、畜産物につきましては年の初め、一月から十二月までずっと切れ目なく生産が行われるという事情がございます。そういった意味で、いつの時期をとるかということになりますと、ほかの農産物のように播種期とか収穫期というような、そういうはっきりした基準がないわけでございます。ただ三月は、一般的に言って国会審議等もありますし、事務的にもかなり煩瑣な時期である。それから、ほかの農産物とのバランスを考えるというようなことを考えたら、ほかの農産物に合わせてもう少し適当な時期が選べないだろうかという御意見、前からあったわけでございます。  そこで、私どももいろいろ検討はいたしたのでございますが、いま申し上げましたような、やはり特段ここを起点として考えるべきであるというような基準がなかなかうまく見出せない。それからもう一つは、やはり法律で決めているということから、現実になかなかその点だけを改正するということもむずかしい。あるいは法律で決めているにはそれなりのやはり理由もあるということも、いろいろ検討して思い当たる点もあるわけでございます。  それに、三月を改定時期とすることは、四月以降を開始とする国の会計年度あるいは畜産振興事業団の会計年度というようなことを考えますと、それと密着した形での畜産行政の展開ということがあるわけでございますので、価格決定につきましてもやはり四月からの新年度に合わせる三月決定というのはそれなりに意味がないわけではないということで、正直申し上げまして、にわかに決断してこれをすぐ改正するというところまでは至ってないわけでございます。問題点のあることは承知いたしておりますが、いまのところまだ三月でやるということで今回も参ったわけでございます。(神田委員「建議全体について」と呼ぶ)個別にはたくさんあるわけでございますが、建議につきましては、先ほど申し上げました国会委員会決議に対する私どもの対応と同様に、それぞれしかるべく誠意をもっておこたえしてまいっているつもりでございます。
  222. 神田厚

    神田委員 時間がありませんので、また後で続けてやります。  終わります。
  223. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  224. 津川武一

    津川委員 きょうは畜産の中で養鶏、わけても商社的インテグレーションの養鶏がかなりあくどいこともしておるし、生産調整も乱しておるので、瀬野委員も若干やりましたが、さらにそれを継いで問題を深めてみたいと思っております。  採卵鶏の規模、飼養戸数と飼養羽数の推移を見てみますと、昭和四十五年から五十二年の八年の間に、一千羽未満では百三十四万戸が減って、ここで減った羽数は三千百二十三万羽、一千ないし五千羽未満のところでは減少戸数が一万戸、減っている羽数が一千七百万羽、ところが五千を超しますと、五千から一万未満では千二百戸ふえて八百万羽増加になっております。一万羽以上は千六百戸ふえて、四千三百万羽の増になって、差し引き大体同じところにきているわけであります。つまり小規模養鶏農家は大幅に減少、一万羽以上の大規模経営が大幅に増加しております。一万羽以上のシェアを言うと、五十二年で戸数で〇・八%、羽数で五三%も占めております。こういうふうに大規模なものがふえて、小さなのが滅んでいく、これは四十年代前半からインテグレーション、商社関係がふえてきたことがかなり大きな役割を果たしているのじゃないかと思います。後で申しますが、インテグレーションは養鶏の分野に野方図に勢力を拡張してきたのでございます。そこで、小さい農家、農民的農家は規模の拡大もなかなか図れない、資力もない、これで先ほど申したようにやめなければならなくなっております。おまけに経費がかさむ、卵価は思うようにならない。そこで、現にきょうも全国の養鶏経営者会議などが開かれて、その危機を乗り切るために六党政党も呼んで、私たちも陳情を受けたわけであります。  そこで、質問の第一ですが、この農民的、農家的養鶏者をどのようにして守っていくのか、どのくらいの規模が適正の規模であるのか、そして、この農家的養鶏者にどんな援助があるのか、援助してきたか、そこいらを答えていただきます。
  225. 杉山克己

    ○杉山政府委員 養鶏は、先生御指摘のように、きわめて急速に経営規模が大型化してまいっております。その中で、従来からの農家による養鶏、これが非常に苦しい中でも発展といいますか、経営の条件のいいものは、あるいは才能のある方は、その中でも経営を大きく伸ばしてきたという事実は見られるわけでございますが、一般的に言って中小規模の経営はなかなかむずかしいということがあろうかと思います。  私ども最近の状況を見てみますと、養鶏は、ブロイラーにいたしましても採卵にいたしましても、比較的長い間安定した経営を続けてまいったわけでございます。これは全体の傾向としてでございますが、その状況が最近変わってまいりまして、ブロイラーにいたしましても卵にいたしましても、価格の低落がかなり激しくなってまいっております。こういった状況からいたしますと、消費の拡大が望めれば一番よろしゅうございますが、なかなかそれは言うべくしてむずかしい。特に卵は世界的にも一番最高水準の消費量に到達しておりますので、これを伸ばすということは現実困難な問題であろうと思います。そういうことを考えますと、やはりいまの価格低落ははっきり供給過剰が原因である、したがって、それをなくす生産調整を行うべきであるということになると思います。  そこで私ども、対策の最大のものは、国の助成とか融資とか、いろいろなことが考えられますが、経営を行っている者みずからの手で適正な生産規模を維持して、卵価を、あるいはブロイラーの場合は肉価を回復するということが一番大事なことであろうかと考えておるわけでございます。それから、卵価が低落した場合は卵価安定基金による補てん、さらには液卵公社による買い入れ、あとは畜安法に基づく自主的調整保管といったような低落時の対策、そういった鶏卵価格の安定のための対策がとられておるところでございます。あと、鶏の改良の推進あるいは養鶏団地の育成、こういった生産対策なり飼料価格の安定対策というものもとられておるわけでございます。あるいは鶏卵と鶏肉の流通改善、衛生対策、これらにも力を入れて従来から対策を講じてまいっているところでございます。
  226. 津川武一

    津川委員 きょうも全国の養鶏経営者会議に出席してみましたが、自民党からは羽田委員も出ておりました。養鶏者は、日本のわれわれが食べる卵くらいは自分たちで自給できると言っている、そういう意欲も持っている、能力も持っていると言う。それに対していま問題を混乱さしているのは商社系の養鶏、インテグレーション養鶏、こういうことなんです。  そこで、インテグレーション養鶏を、どのくらいあるのをどうつかんでいるか、四十九年の生産調整をやらしてからどのくらいふえているのか。農林省に何ぼ聞いてもヒヨコのイセの実態はわからないと言うが、一番大きなインテグレーションの一つのヒヨコのイセについて、どのくらい現在やって、どのくらい増加しているのか覚えているか、ここらをまず答えていただきます。
  227. 杉山克己

    ○杉山政府委員 規模別の調査、全体がどうなっているかというようなことは、これは集計もある程度できているわけでございますが、ただ個別企業がどの程度の経営の実態を有しているか、飼養羽数なりあるいは生産量なり、あるいは店舗数なり従業員なり、それから特に生産調整に対してどういう行動をとっているかというようなことになりますと、なかなか捕捉しがたいところがあるわけでございます。国として統一的な調査をやっているというわけでもございません。しかし、では、そういう実態をまるっきり知らないのかと言われますと、私ども、やはり生産調整を続けていく上でいろいろ問題のあるところについては、それなりに現地からの報告を徴しております。  それで実態は、私どもの段階で知り得る程度のものは把握いたしておりますが、ただそれらの実態は、いわば生産調整を推進するために必要な資料としてとった、そういう目的を持った特別な資料でもございます。そうなりますと、個別企業の経営の中身、これを公表するというわけにもまいりませんし、それから権威ある統計というわけでもありませんので、これらは外に出すということはいたしておらないわけでございます。
  228. 津川武一

    津川委員 そういう形だから大規模なインテグレーションが好き勝手なことができる。  どうしてもやはりやっていかなければならない、そこに入りますが、その前に、昭和五十二年十月六日、宮城県農政部長が宮城県丸森町町長に一つの文書を出しております。これによると、タケクマ系の筆甫養鶏組合、タケクマ系の佐々木農場については「養卵の生産調整を了知しながら、五十一年以降に急激な増羽並びに新規養鶏経営を開始しており、」と言っている。県を通じてわかっているはずですが、この状態に対して農林省はどう考え、どのように指導して何をしたか、具体的に答えていただきます。  個々の経営はいかないと言うが、宮城県はこんなもの、しかもこれは町長に出している、これをほったらかしておいているところに今度の問題がある、この問題に答えていただきます。
  229. 杉山克己

    ○杉山政府委員 生産調整というのは、やはり当事者間の話し合いが一番ベースになるものでございます。その意味では、地域での業者間での話がうまくいかないときは、農業団体でありますとか地域団体、あるいは市町村長等の指導、調停といったようなことが要請されるわけでございます。しかし、大企業になってある程度広範に事業所も持っている、養鶏の個所数も多いというようなことになりますと、なかなかそういう市町村段階ではうまくいかない。そこで県が乗り出すということになるわけであろうと思います。  ただいまの宮城県の農政部長が積極的に介入しております実例、これは私の方も承知いたしております。それで、その報告等ももらっているから、内容的なこともある程度知っているということを先ほど申し上げたわけでございます。これに対して農林省はどうしているかということでございますが、そこはやはり県が直接おやりになっていることでございますので、県がそれを効果あるようにさらに一層努力してくれることを期待し、お願いするという立場でございます。ただ、さらにこれがどうしても言うことを聞かない、うまくいかないというようなことになりますと、農政局もありますし、さらには農林省が直接乗り出すことだって全くないとは言い得ません。調査するようなこともあり得ますが、ただ正直に申し上げまして、中央官庁がそういう個別の調整業務に乗り出すということになりますと、これは人手が幾らあっても足りない、とても及ばないというところになりますので、そこは一般的には都道府県なり、あるいはせめて農政局の段階でもって事が処理できるようにということで指導をいたしているところでございます。
  230. 津川武一

    津川委員 いま私が指摘した宮城県の農政部長のことは、局長は覚えていると言う。これを具体的にどう指導したか答えていただきたい。急激な増羽、これに対する農林省の見解を聞きたい。こういうものは増羽の前の状態まで返すべきである、こういう指導でなければならぬ。このことを議事録に載せて、宮城県にはっきりさせたいと私は思うのです。この二つの事例は、増羽する前の状態に戻しますか。
  231. 杉山克己

    ○杉山政府委員 そういう個別の実態についてはっきりした形で何をすべきだというようなことは、中央官庁としてはなかなか具体的には判断しにくいのでございます。むしろそこは、まさに先ほど申し上げましたように、現地において一番関係者とも接触の深い、実態についても詳しい関係者が指導をして調整を図るべきだというふうに考えております。国としてはやはり一般的な指導を図る、特別にどうこうということではなくて、そういう全体的な方針の中で具体的な措置を現場でとってもらうということを基本とすべきだと考えております。
  232. 津川武一

    津川委員 農林省の見解として、この場合、増羽する前の状態の羽数に返すように指導するのかと聞いているのです。  そこでもう一つ、ここにヒヨコのイセの社内ニュースがあるのです。五十一年五月一日、茨城県の小川町インテグレーションの社内ニュース。昭和四十七年に一万羽、四十八年に五万八千羽、ここまではいいのです。生産調整を始めた五十年二月以降、五十年に六万六千羽、五十一年に十万四千羽の増羽、そうして会員ともども五十四年を目指して五十万羽の日本一の養鶏グループに成長させると言っているのです。これは具体的な例なんです。この茨城県の小川町の実態を知っているのか。これで言うと、生産調整してからどのくらいふえているかというと、十六万から十七万羽。個々のケースで片づけられないですよ。なければこれを差し上げてもいいのですが、これに対してどうするのか。これは個々の小さい例で、茨城県に預けておくなどではなくて、やはり国はこれに対して見解を出すべきです。いかがでございます。
  233. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまの事例につきましては、そのものの実態報告を受けておりませんので承知いたしておりませんが、先生のお話でもってそういうものかということは一つ認識いたします。いろいろ申し上げましたが、特別に法律に基づいて制裁権をもって強制するということもできないものですから、正直に申し上げまして、どうしても言うことを聞かないものはなかなか手のつけようがなくなるというところがあるわけでございます。そういう困難な情勢の中でも、そこは全体的な行政の力でもって適切な生産調整をやるように重ねて指導をするということをしんぼう強くやっていくことになるのかと思いますが、先ほどの例にいたしましても、先生せっかくおっしゃるお話でもございますし、私の方もいま一度現地にも問い合わせて、事情をよく調査した上で相談をしてみたいと思っております。
  234. 津川武一

    津川委員 委員部、これを上げるから局長に届けてください。これはもとの状態に返すべきだと思うのだな。検討して、次の一般質問のときにまたこれを聞きますから答えていただきます。  次に、今井政務次官、実はきょうの経営者会議で私もびっくりしたのです。あんまりひどいので、ヒヨコのイセの宮城県の色麻の航空写真を撮ったわけです。そうしたらこんなかっこうで、ここに六万羽入るところが九棟、六、九、五十四万羽、三万羽入る養鶏の鶏舎が二十六、二十六だから七十八万羽、合せて百三十二万羽、これが何と生産調整をした後に出ているのです。それで、心配している人たちが入っていくと、ここは汚れるといかぬからといってだれも入れないのです。こういう状態なんです。  政府小川町の十七万羽は知らないと言っている。これの内容を調べてよこせといっても返事をしないのです。だから彼らは、農民的、農家的養鶏経営者が苦しんでいるのを知らない。苦しみの根源はここにあるのです。皆さんが指導をし、通達を出してから百三十二万羽です。あんまりひどいので、これは委員長に見てもらいます。そして委員長、これを政府に見せていただければと思います。  もう一つ、宮城県丸森町のタケクマ、これも生産調整をやってから忽然と出てきたのですよ。皆さんびっくりしているわけです。これは一つ五千羽が二十五棟、こういうかっこうなんです。これを政府は知らないと言えるかという問題なんです。これを政府が知らないとすればどこに畜政があるのか。ここまで来たのを知らないとはぼくは言わせない。全国養鶏経営者会議は、きょう六党呼ばれてわれわれも行ってみたら、そこでいろいろ説明されて、何ぼやっても政府が教えないものだから航空写真を撮って、会場の中にこれがパネルとして張ってあったのでぼくは借りてきたのです。羽田さんも見てきたのです。私、貸してくれと言ったら、幸い、それは公開したんだからいいというわけです。こういう状況です。このタケクマ、ヒヨコのイセ、こういうことを御存じなのかどうか。知らないとすれば農政はないと思うのです。知ってほったらかしておいたとすればひどい。これは当然増羽する前の状態に返すべきだと思うのです。これもひとつ委員長に見せていただいて、委員長から政府の方に回していただければと思います。  それで今井さん、こういう状態でいいのか、ひとつ答えていただきたいのです。
  235. 今井勇

    ○今井政府委員 私は初めて拝見をいたしましたが、やはり生産調整をやっていこうという大方針のもとでそれぞれの業界が努力をしているわけでありますから、それを大きく乱すような行為というのは、これは社会正義の上からも好ましいことではない。ただ、これは法律をもって規制すべきものでもございません。そのために、市町村段階あるいは県段階の協議会等がそれぞれ生産調整をやっておられるわけでありますから、そういうものに対する指導強化を通じまして強力な指導をやってまいるのが筋であろう、このように思います。  それで、実態につきましてはなおよく農林省の組織を通じて督励いたしたいと考えます。
  236. 津川武一

    津川委員 これは余り大きいので、県を通ずることも必要だけれども、農林省が直接乗り出して事態を見ていかなければならないし、対策を講じなければならないと思うわけであります。農林省が直接乗り出していただきたいと私は思うのですが、今井政務次官の重ねての答弁を明確にお願いします。
  237. 杉山克己

    ○杉山政府委員 たくさん事例があるわけでございまして、そのすべてを掌握しているわけではございません。ただ、先ほど言われた幾つかの事例のうち、私どもああいう写真までは存じませんけれども、数字の上、表の上でもって知っているものはあるわけでございます。そういう生産調整がうまくいかない顕著な事例につきましては、先ほど申し上げましたように、直接は都道府県等の努力によりまして、また私どもはそれを指導いたしましてうまくいった事例もあるわけでございます。  ただ、御指摘のようなうまくいかない事例が顕著に出てまいるわけでございます。これらにつきまして今後どうするか、国が直接介入すべきでないかという御指摘でございますが、これはそういうことがいいとか悪いとかいう以前に、国の行政そのものになじむかということも一つあるわけでございます。私は、先ほど申し上げましたように、地方農政局を通じましてやるのがせいぜいかとは思いますけれども、一般的な基本方針をとる上でも、さらにその問題についてよく実態を把握する必要があるということなら直接調査をしてもよろしいかと考えております。
  238. 津川武一

    津川委員 今井政務次官、きょう全国養鶏経営者会議で長野県のこういう例が出た。二千八百五十羽、これが鶏卵需給調整協議会で調べたら百九十羽多くなっている。この人は非常にりっぱな後継者を持っている。だから、この需給調整協議会の中でこの人に百九十羽ぐらい認めてやってもいいのではないかという議論になった。しかし、県の指導の方針もあって、この際だからやはり厳格に調整していこうということになった。長野県は小さなものは滅んでいま県内の自給率は六〇%。そこで、県が農林省と相談して六万羽増羽することになって、この青年の家が一千羽頼んだ。そうしたら、百九十羽増羽しておったからということで断られている。余り厳格過ぎるとも思えるけれども、これが現実なんです。  それに対して、私が挙げたタケクマとイセの二つ、宮城県でこうなっているので、これはぜひひとつ国が挙げて実態調査して、増羽前の状態に戻すことを次の委員会で正式な答弁をいただきたい。いかがでございますか。
  239. 杉山克己

    ○杉山政府委員 調査することはここでお約束してもよろしゅうございますが、もとの状態に戻すことをさせるのは、先ほども申し上げましたように、行政として強制できる性格のものではないわけでございます。いまの生産調整は、当事者間の合意によりまして相談づくでもってここまで落とそうということで初めてそれが実施される性格のものでございます。そうなりますと、法律に基づく何か生産調整みたいなことを考えるべきではないかというその次のところへ参りますが、これはまたこれで現在の自由主義経済のもとでどこまでそういうことが許容されるのかというむずかしい問題もあるわけでございます。  それから、大型経営が全体の養鶏農家にいろいろ影響を及ぼしているということは事実でありますが、それ自体に対する積極的な評価も世の中にはないわけではない。そういう中でもって、現実、その協力を求めながら実質的な実効ある調整をやっていくということだとすると、私はおのずから限界もあって、そこは強制はなかなかできない話ではないかと思います。
  240. 津川武一

    津川委員 そこで、このヒヨコのイセが何をしているかということなんです。こういう形で生産調整を目指して一生懸命苦労してやっている農民的養鶏家を苦しめているこれに、何か安定基金から出してないでしょうね。どうでございますか。これが一つ。これに飼料安定基金から援助してないでしょうね。これに近代化資金を出していないでしょうね。公庫からお金が出てないでしょうね、こういうアウトサイダー、撹乱者に。ここのところはどうでございますか。
  241. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いまお尋ねの件は、一番初めは卵価安定基金のお話でございましたか、これは生産調整を守った者に基準価格まで補てんするということでやっております。(津川委員「出してないでしょうね」と呼ぶ)はい。
  242. 津川武一

    津川委員 飼料安定基金は。
  243. 杉山克己

    ○杉山政府委員 卵価安定基金の方から、さかのぼってもう一つ補足して申し上げさせていただきますと、実態的には、出しているか出してないかの確認につきましては、個別にはわからないケースもあるということだそうでございます。  それから、えさの安定基金につきましては、加入していれば出すということになっております。これは別段大型だから、インテグレートした企業だからということでなしに、えさ価格の安定を図るという趣旨で、加入したものについてはその価格安定のための措置をとっておるわけでございます。
  244. 津川武一

    津川委員 近代化資金、公庫資金は。次もありますので、時間も来たので、もう少し言いながらまた聞きます。  もう一つ、ヒヨコのイセは、私たちの調査だと二十社から二十億円くらいの資金を借りている。この中に、中金の金沢支店から二億円、宮城の県信連から八億円、こういう点で農協の資金が出ている。これをどんなに教えろと言っても政府は教えない。われわれが調べてみるとこういうことなんだ。したがって、これはやはり教えていただかないと養鶏という畜産を正しくやっていくことができない。  もう一つ。昨年の六月、このヒヨコのイセの中の一つの部門であるフラワー食品でブロイラーを広げようとして農林中金に二十億円の借入を申し込んでいる。そうらしいのですよ。農林省は教えてくれないのでぼくはあちこち聞いてみるとそういう資料が出てくる。かなり苦しみましたよ。これは中金が出し渋っている。それはフラワー食品に脱税があるらしい。そして、地元で農民はフラワー食品はタイラントだ、暴君だ、暴力団だと言ってたくさんのトラブルも起きているのです。このフラワー食品やヒヨコのイセの反農民的な、農民とのけんかや農業を犠牲にしている話は次のときにやりますが、こういう点で、中金の金をこういう撹乱者に出していいのか、これに政府の系統資金なんか、公庫資金なんか出していいのか、近代化資金を出していいのか、ここいらのことを政府に決めていただかなければならなくなりました。もう一つは、この撹乱者の撹乱したもの、生産調整の前の状態にどうしても戻さないと農政の信義は通らなくなった。なかなか大きな問題になりましたので、今井政務次官として、答えられなかったら次の委員会で、皆さん省議を起こして相談していただいてからでも結構ですが、私はこういうものはもとの状態に返すべきだということが一つ、羽数は。そして、これに国の援助はやめるべきだということが二つ。これは直接農林省が、県庁なんかに預けないで直接出ていかなければならぬ。というのは、百九十羽増羽しても農民がしかられている、これは宮城県の色麻町で百三十二万羽なんです。タケクマは丸森町で十二万五千羽なんだ。こういう状態は、やはり国政が直接出ていただいて、これに対する直接の指導方針を出していただかなければならぬ。私はいつも農林省と詰めてから質問しているのですが、詰まらないのです。農林省は乗ってこないのです。実態を教えてくれない。したがって、私は想像的な、無理やりにこんな、二十億円も借りているとか、宮城信連が八億出しているとか、金沢の農林中金の支店が二億円出しているなんということを模索しなければならぬ。こんなことでなく、タケクマとヒヨコのイセに対してきっぱりさせて、事態をはっきりさせて、どんなに国の指導に反しているのか、指導に限界があるとすれば立法しなければならぬ。私はこの次にまた聞かなきゃならないというのはこういうかっこうなんです。  政務次官の最後の決意を聞いて、質問を終わります。
  245. 今井勇

    ○今井政府委員 質疑を聞いておりまして、いろいろ問題がありますことがよく納得をできました。そこで、ひとついままでの議論を踏まえまして、農林省といたしましてもその対策を協議してみたいと存じます。しばらく御猶予賜りたいと思います。
  246. 津川武一

    津川委員 終わります。
  247. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時三十二分散会      ————◇—————