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1978-02-10 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 竹内  猛君 理事 馬場  昇君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    加藤 紘一君       金子 岩三君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    倉成  正君       國場 幸昌君    佐藤  隆君       玉沢徳一郎君    平泉  渉君       福島 譲二君    堀之内久男君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       日野 市朗君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         水産庁次長   恩田 幸雄君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    田中誠一郎君         大蔵省関税局企         画課長     勝川 欣哉君         農林大臣官房審         議官      小島 和義君         農林省農蚕園芸         局果樹花き課長 畑中 孝晴君         通商産業省貿易         局農水課長  篠浦  光君         運輸省船員局労         政課長     松木 洋三君         労働省職業安定         局雇用政策課長 白井晋太郎君         自治省税務局固         定資産税課長  吉住 俊彦君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、農畜産物輸入枠拡大の問題と自由化の問題にしぼって、大臣姿勢をただしたいと思います。  五十二年九月以降、白米通商問題で協議が行われまして、去る一月十三日にストラウス代表共同声明発表があって一応の決着を見たところですが、この交渉を見ながら農民は、減反という新生産調整の物すごい心の痛手、傷を受けた、その傷口に塩ではなくてコショウを振りかけられるような気持ちだ、こう表現をした人もおるわけですが、非常に大変な気持ちでこれを見守っておったわけでございます。  そこで、まず最初は、整理する意味で素朴な質問ですけれども、何で牛肉とかオレンジ輸入枠拡大というのをアメリカが要請してきたんですか。牛肉オレンジ、それからジュース、そういうものの枠を拡大しろとアメリカが要求してきた理由、それについてまず聞いておきたいと思うのです。
  4. 中川一郎

    中川国務大臣 一番の背景は、やはりドル関係日本黒字である、これを少し調整すべきだという背景があったことは事実でございます。その中において牛肉オレンジがなぜ出てきたか。これはまた一般的なことでございますが、アメリカにおいて、非自由化すべきだという勢力と、それからやはり自由化であるべきで保護貿易はいかぬ、特に鉄とかああいうグループは保護貿易議員がいるわけでございます。ところが、農産物を中心とする議員は、やはり自由貿易だ、というのは、アメリカ日本にずいぶん穀類を売っておりますから、自由貿易の立場を主張する。ところが、農村議員の中にも、日本は一体農産物において自由貿易しているんだろうかという素朴な意見が出てまいりまして、工業製品についてはアメリカ保護貿易はしない、自由化しておくから、農産物についてもひとつもっと自由化してもらったらどうかという一般的な議論一つ出てくるわけです。特に牛肉オレンジ関係は、生産過剰といいますか、アメリカでは市場を求めているというので、日本についていい肉をもう少し買ってもらってもいいじゃないかという強い要請が出てくる。それからオレンジ関係議員も、季節自由化アメリカ日本の事情は知っておりまして、農業がある程度保護貿易であるということは、アメリカ自体保護貿易をいたしておりますから、それほどむちゃではない、柑橘類も、オレンジ競争品目であるミカンが枯渇して全くない六月から八月まで季節自由化をしても農民支障を与えないではないか、御同様な趣旨で、ブレンド用ジュース農民被害を与えるものではないんじゃないか、牛肉についても、別枠でということではなくて、いい牛肉を買う仕組みをひとつ考えてくれ、こういうことになって、農産物牛肉オレンジが非常に表面に出てきた、こういうのが背景でございます。
  5. 馬場昇

    馬場(昇)委員 新聞報道等によりますと、ストラウスさんなんかは、いま大臣が言われましたように、アメリカ日本の集中豪雨的な輸出によって物すごく被害を受けて保護貿易主義の動きがある、特に繊維とか鉄鋼金属食器の各業界から自動車業界まで波及しつつある、これを抑えるため日本協力を求める、これに関連して農産物輸入門戸を開放せよ、こう言ってきておるということをいわれておるわけでございます。  いま言われましたけれども、やはりアメリカというのは、日本農産物の有力な潜在市場と基本的に考えているのじゃないか、こういう点も考えられるわけでございますし、さらに、工業日本は非常に強いのだから農業も体質が強いのじゃないか、こういうぐあいにも考えておるのじゃないか。その辺に基本的にちょっと認識の違いがあるのじゃないか、こういうことを私感ずるわけでございますし、さらにこれは政治的に、とにかくアメリカ下院議員選挙が近くある、農産物がだぶついておる、それでここで少し門戸を開放したら選挙にも有利になるのじゃないか、こういういろいろな問題があって、犠牲をひとり日本農業に押しつけておるのじゃないかというような感じが私はするのです。こういう点についてはどうですか。
  6. 中川一郎

    中川国務大臣 日本人がアメリカの理解がないのと同じように、やはりアメリカ議員でも日本農業の実態がどうなっておるかということの認識のない人があることは予想されるわけです。そういう意味で、昨年の暮れ、党から二組の交渉団が行き、特に年末から農業団体が行ってそういった方々と話し合った、こういうことは非常にいいことだったと思うわけで、最近はかなり、今度の問題を契機にして、日本農業が零細で、もし自由化でもしたならばたちまち大変なことになるということは大方の人が知ってくれたものだ、こう思っておるわけでございまして、今度の交渉日本農業を知ってもらうという意味でむしろよかったなあという感じを持つぐらい非常な接触が持たれた、こう評価しておるわけでございます。
  7. 馬場昇

    馬場(昇)委員 まあ、日本農業を知らない、いろいろな認識不足もあると思うのですけれども、基本的には、最初大臣が言われましたように、やはり問題は日米貿易の不均衡黒字減らしというところにあるのはもうわかっておるわけでございますけれども、ここでまた素朴な質問になりますけれども、貿易均衡黒字原因がどこにあるかということは、もう大臣も御承知と思うのですけれども、結局これは、工業製品高度経済成長の中でどんどん向こうに入っていって、だからそこで黒字が出たということはもう御承知のとおりでございますし、また、わが国は、総輸入量の二七%は大体農林水産物で、アメリカからの総輸入量の半分は農林水産物ですね。そういうことを考えてみますと、不均衡とか黒字原因農業にはないとはっきりしておるわけでございますが、その原因がないところにしわ寄せを持ってくるという考え方は私はおかしいと思うのです。そういう点で、貿易の不均衡だとか黒字を是正する、こういうものはそれを出した原因のところでやってもらいたい、貢献しておる農林水産業にそのしわ寄せを持ってきてもらっては困る、こういうぐあいに思うのですが、どうですか、大臣の見解は。
  8. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにそのとおりでございます。日本アメリカとの総体的な貿易のアンバランスはありますけれども、その原因者自動車とか鉄鋼とかいういわゆる工業製品によって赤字、日本にとっては黒字ができたものであって、農業原因であることは全くないわけなんです。その点はアメリカも知っておりますし、これも福田総理が言ったのですが、黒字減らしのために農産物輸入をやるのではない。結局、言ってみれば、六十億ドル調整するとすれば、大部分、九〇%以上、九五%以上になりましょうか、恐らく一%程度じゃないかと思うのです。六十億ドルのうち最高いって五、六千万ドル、その程度のものですから、黒字減らしの効果もあらわれないんです。ですから、このことによって黒字減らしをするんだというのではなくて、姿勢の問題として、保護貿易に過ぎているのではないだろうか、よく見たら、農産物保護貿易で仕方がないが、もっと買ってもらえる姿勢がありはしないか、こういうことになってまいりまして、私も、黒字減らし責任農業が負うというのじゃなくて、先ほど言ったように農村はいま作付転換の非常にきついときですから、それに故障であったり支障であったりしてはならない、そういうことにならない範囲内の協力はできるものがあるかな、こういう判断でこれに対処することにして、ああいうような結果になった、こういうわけで、黒字減らしそのもの農業でかせごう、こういうところから向こうも発想いたしておりませんし、こっちもそれで対応はできない、こういうことでこの問題をとらえておったわけでございます。
  9. 馬場昇

    馬場(昇)委員 農民はやはりその辺を非常に心配し、また怒っているわけですね。結局、工業製品輸出をやってドルがたまった、その黒字減らしとか貿易の不均衡農村に押しつけるのじゃないか、農民に押しつけるのじゃないか、物すごく農民は怒っておられるわけですけれども、そこで大臣に確認する。  くどいようですけれども、工業でできた不均衡あるいは黒字の解消という、たとえば貿易交渉ですね、こういうものはやはりそこでやるべきであって、不均衡とか黒字減らしとかそういうものを、全然影響のない関係のない農業なんかに持ってくるという原則はおかしい、だから今後あらゆる交渉の場合も、工業黒字が出て不均衡ならばちゃんと工業で解決しなさい、それを農業に持ってくることをやってはいかぬ、こういう政治姿勢でこういう問題に対処していかれるかどうか、大臣姿勢をまず聞いておきたい。
  10. 中川一郎

    中川国務大臣 もう御指摘のとおりでございまして、そういう姿勢で臨んでまいりましたし、結果としても、いま申し上げたように六十億ドルからの調整をやる、それで農業の受け持ったのは一%程度の六千万ドル程度になるかならないかくらいでございます。したがって、九九%は工業でやるという姿勢をとったし、そういう結果になっておるわけでございます。  なお、それでは農業は一切知らぬのだ、工業でやればいいんでおれらはあずかり知らぬところだ、こうまで言えることかなということになると、もし今度の折衝が決裂をして工業保護貿易にでもなるということになれば、やはり日本経済の中に日本農業もあることであって、経済全体がおかしくなれば、ひいては失業の問題、大変な問題も出てまいりますし。そのことが農村経済にも大きく影響してくる。直接は関係なくても、間接的にはともどもにやはり国の経済というものはバランスがとれて成立をしているものでありますから、全くそっちのことだ、おれら全く知らないということで処することが農家のためになるか、この辺も考えなければいけないところである。しかし、農業がそのことによって傷がつくようなこと、悪影響が起きるようなことだけは避けなければいかぬということで、先日来御議論がありますように、牛肉についても、畜産農家には悪影響を与えない、またオレンジについても、量あるいは入れる時期等を十分配慮して実質与えない、こういう対処の仕方、しかも、もし万が一これに支障を与えるようになれば国内政策でこれをカバーをする、こういうことで、農業責任を持つものではないけれども、もちろんそうではあるが、できるだけ傷のつかない範囲内で協力できるものがあったらやろう、こういう態度で臨んだ、こういうわけであります。
  11. 馬場昇

    馬場(昇)委員 少し具体的な質問をいたしますけれども、この共同声明を見てみましても、はっきりしないところがございまして、牛肉オレンジジュース、これは五十二年度どれだけ枠を増大したのか、五十三年度はどうなるのか、これをきちんと数字をお示しいただきたいのです。これは事務局からでもいいし、大臣からでもいいのですけれども。
  12. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 日米経済協議に関連して講ずることといたしました輸入枠拡大の措置の内容でございますが、一つ牛肉につきまして、ホテル枠は従来一千トンでございましたものを五十二年度は一千トンふやしまして二千トンにする、それから五十三年度以降は三千トンにする、こういうことでございます。  それから次にオレンジでございますが、これは内地枠は従来一万五千トンであったのでございますが、これを五十二年度に一万八千トンにする、それから五十三年度以降は四万五千トンにしますが、そのうち年間枠と申しますか、年間に枠を設定いたしておりますものが二万二千五百トンでございます。それから季節枠ということで六−八月に割り当てを行いますのが二万二千五百トンで、合わせまして四万五千トンでございます。  それから果汁は、従来一千トンであったわけでございますが、五十二年度にはオレンジ果汁グレープフルーツ果汁込みで一千トンを増加しまして計二千トンにする。それから五十三年度以降はオレンジ果汁は三千トン、グレープフルーツ果汁は一千トンで、合計四千トンとする。オレンジ果汁ブレンド用であるというのが内容でございます。
  13. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣に聞きたいのですけれども、はっきりわかりましたけれども、この共同声明に五十二年度分は書いてありませんね。そして五十三年度分だけ書いてあるわけです。何で共同声明に五十二年度分をお書きにならなかったわけですか。
  14. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 共同声明は、ストラウスが参りましてそれで農林大臣協議をいたしました最終的な事項を書いてございます。したがいまして、現行の一千トンから五十三年度以降の三千トンというふうになっておりますが、もちろん、交渉の過程におきまして、五十二年度の枠を二千トンにするということは年明けの交渉以前に合意をいたしておったことでございまして、この中間数字をいろいろ書くということはいかにもくどくどしく相なりますし、また、これは対米的に見ましても、一千トンから三千トンになったということは、アメリカとしては国内的にも非常に説明をしやすいような状況でございますから中間を抜いてあるわけでございまして、別にこれは他意があってそのようにしたわけでは全然ございません。
  15. 馬場昇

    馬場(昇)委員 共同声明というのは、決まったことを皆書いてあるわけですね。ところが、くどくどしくなるとか、中間を抜いたとか、こういうことならば、きのうもちょっと問題になったのですけれども、ちゃんとメモを渡してあるわけでしょう。五十二年度分と五十三年度分を一緒にして、こういうことですよというメモをわざわざ渡してありますね。メモを渡してあるのには、ちゃんと五十二年度はこうだ、五十三年度はこうだというぐあいにきちんと出してあるわけです。日本国民に対しても、政府としては、物すごくこれは畜産農家とか果樹農家も心配している問題だし、事実をあからさまに出す。これは、五十三年度これだけであって五十二年度は何もないのだというような共同声明ですね、共同声明だけ読みますと。だから、隠してあるという感じがいたしますし、だから、そのメモを渡したのを、新聞なんかには秘密メモ、五十二年度分もあったのを隠してある、こういうようなことになっているわけですね。  こういう点で、大臣、私が考えても、五十二年度分は故意に日本国民にも隠してある、五十三年度分だけ出してある、そして譲歩しなかったのだ、そういうような政府の宣伝というか、ごまかしというか、こういうような感じがしてならないわけです。そういう意味で、やはりどうしてもおかしいと思うのですけれども、何で大臣は五十二年度はきちんと決めておりながらこういう共同声明に出さなかったのですか。
  16. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように、私が農林大臣になりましてこの問題がにわかに出てまいりました。そこで、ストラウスさんが十二月中に来るとか、あるいは一月になるかもしれない。そこでストラウスさんが来るまでもなく牛場さんが行って地ならし交渉をすべきだ。そこで、対米折衝農業問題はどの程度協力できるかということになりまして、持っていった案が、いまお話のあったように、五十二年度分については、牛肉について二千トン五十二年度からやっていく、こういう考え方だったわけです。それからオレンジについては、年内は三千トン、それから五十三年度は五割増しで二万二千五百トン。五十二年度は三千トン増しですから一万八千トン。ジュースも五十二年度から、たしかグレープフルーツを含めて千トンぐらいなら五十二年度から結構です。こういう案を持っていきまして、それでこれじゃちょっと足りないな、もう少し努力できないかなということになり、その後いろいろ検討してみたら、ホテル枠ならば三千トンぐらいまでは買える、五十三年度以降ですね。  それから、いよいよ向こうから来た回答が、牛肉については二万トンぐらいにしてくれないか、それからオレンジについては季節自由化をどうしてもやってもらいたい、オレンジジュースについては五万トンやってもらいたい。こっちに五万トンしかありませんのに、五万トンというメモが来たわけです。そこで、ぎりぎりこちらで詰めてみた結果、なかなかそんな季節自由化もできないし、ジュース五万トンもできない、さあいかに対応するのかということで、先ほど言ったように、江藤先生や皆さんが向こうへ行って対米折衝してくれる、農業団体も行ってくれる、だんだん向こうも理解してくれて、いよいよストラウスさんが来たときには、一万トンというのは買えと言われても買えません、需要のないところに買えと言われても無理じゃございますまいかと言ったら、それではホテル枠は三千トンは買えるのだな、それ以外は新規開発になるから、ひとつ努力をして、いい肉で買えるものがあるならばアメリカに行くかもしれない、これもグローバルでございますから、何もアメリカから三千トンプラスアルファ、そして二万トン、こういう約束ではなくて、アメリカから入りやすい——豪州競争力があれば豪州にも行くわけですから、アメリカというわけには約束もできない、グローバルとして二万トンに近いものを三千トンを含めてということになり、オレンジについては、二万二千五百トンをふやすわけにいかぬ、季節自由化はもちろんできない。そこで、いろいろ交渉の結果、四、五は無理だということを向こうも認めてくれて、きのう来説明申し上げたように、六、七、八ならば年間入れております二万二千トンと同じぐらい入れても支障がない。いろいろ研究した結果支障がなかろう。ジュースについては、五万トンなんと言われても困る……(馬場(昇)委員「簡単に、五十二年をどうして共同声明に入れなかったかということです」と呼ぶ)そういういきさつがあって数字が決まり、最終的には五十二年度、五十三年度というような細かいことではなくて、そして五十三年度の最終一番大きいといいますか、アメリカが五十二年度、五十三年度と要求してきたわけではありませんから、これから五十三年度以降はこういう姿になります。こういうものだけがアメリカは欲しかったのであって、特に五十二年度に何ぼ入れろということではなくて、日本姿勢として出してあったものの中から、一番アメリカの関心の深いといいますか、長期的といいますか、一番大事なところだけが共同声明に入っておりましたが、五十二年度の分はそれ以前の交渉段階においてすでに決まったことである。しかも、国民に心配をかけていると言っておりますが、これは新聞にもその当時から隠したことでもありません。全部第一回折衝は五十二年度はこう、五十三年度はこう、第二回目のストラウスさんが来たときにはこうということでやったのであって、決して隠しても何でもない。秘密に五十二年度をやったわけではない。堂々と発表もしておりますし、多くの方々は知っておられる。ただ、共同声明になかったから、後で見たら何かこれはプラスじゃなかったかと、振り返って言われればそうなりますけれども、交渉経緯では隠しても何でもなかった、こういうことでございます。
  17. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ぼくらが見た場合でも、やはり共同声明を見て、五十二年度分を書いてない、それで秘密メモと言われるものを見ますと——秘密じゃないけれども、渡したメモを見ますと、ちゃんと帯いてあるわけですね。そういう点でおかしいなと思ったのですけれども、問題は、今度はこれだけでも、五十二年度もそれだけふやしているわけですから、五十三年度以降またふやすわけですから、きのうもちょっとほかの委員質問でも聞いておったのですけれども、これで日本畜産農家とか果樹農家には全然影響ないと大臣は考えておられるわけですか。それが第一点ですね。この枠拡大日本果樹畜産農家影響はないと考えておられるかどうかということですね。  それからもう一つは、この決定によって、アメリカのすべての工業関係保護貿易主義になろうとしておるのですが、こういうものは解消されたと思っておられるのかどうか。あるいは今後、日本農畜産物に対してさらにこういうことをアメリカが言うてくる可能性があるのかないのか、そういう点を聞いておきたいと思うのです。
  18. 中川一郎

    中川国務大臣 まず肉について申し上げますと、いつも申し上げていますように、五十三年以降であれ、五十二年分であれ、日本の肉の必要な量にプラスしてしゃにむに入れて日本国内牛肉を圧迫しようという考え方から発想しておりませんで、日本国内の肉と輸入の肉とによって需給のバランスがとれる範囲内での高級牛肉グローバルの枠の設定ということでございますから、肉の総量について国内影響を与えるようなことはまずまずないだろう。特に、御承知のように、肉につきましては畜産物価格安定法というもので、値段が下がれば買い上げる、上がれば冷やす、そしてしかも、へそ価格を守っていくという姿勢をとっておりますから、しかも、この肉は大部分畜産振興事業団に入りまして、ここで手持ちを放出しなければ価格影響を与えないという制度、仕組みはそのままになっておりますので、まずまず牛肉については国内影響を与えるようなことはないだろう、それでもなおかつ与えるようなことがあったら、いまの畜産物価格安定法仕組みを発動して価格を正常なものにするし、また生産対策についても、さらに飼料を安くするとかいろいろな仕組みを講じて影響を与えないようにしていく、こういう考え方でございます。  それからオレンジについては、これもずいぶん研究したのでございますが、三月になりますと、まずまず普通のミカンというものはなくなってしまう。ところが、タンカンが四、五月に出る、これに影響を与えてはならぬというので、まず柑橘類のない六月、七月、八月、この時期に入れるならば、日本国民、消費者の胃袋からしてまだまだ果物の欲しい時期である、しかも、これを二万二千五百トン入れましても、月七千トン程度でありますので、まず柑橘には影響を与えないが、ハウスミカンに影響があるか、あるいはまたスイカ、メロン等に影響があるか、これらも研究いたしました。スイカ、メロンなんというのは大変な量でございますから、しかも、消費者などのあれが違いまして、本当の高級のもので大体あれはデパートでみやげ品ぐらいに流れるだけなんです。ですから、一般市場に流れるものには影響を与えない、量からいっても時期からいっても、こう思ってやりましたし、これもまた同じように影響があるならば調整保管で買い上げるとか、いろいろな政策を講じて、影響を与えないようにしていきたい、こう判断したわけでございます。  ジュースについても、前から申し上げたように、ブレンド用という枠を与えて、果汁業者がブレンド用として必要な場合に限り三千トンまでいい、こういうことにしたのであって、きのうも御質問がありまして、果汁業者は、おれは要らないんだという場合は申請してこなければ、通産省もアメリカも押しつけるわけじゃないということでございますので、ブレンド用によって消費が拡大するならばな、こう思うわけでございます。  このようなことで、仕組みそのものは影響を与えないようになっております。ところが、いま言った交渉経緯あるいは今後どうなるのだろうかということからいって、あるいはたくさん来るんだ、被害が大きくなるんだというようなことが大きく伝わって、むしろそのことによって牛価格はこの先々暗いんだぞというような宣伝に乗って、芝浦では下がっておらないけれども現地で下がってしまうというような異常な傾向にある。この方の被害の方が大きいのではないか。必要以上の不安感が流れることによっての動揺ということをむしろ私は心配しておりますから、影響ありません、影響がありましたならばこれを処置してまいる、このことが農家のためになる、こう思って、しばしば被害がない、そして実態がこうであるということをあらゆる機会を通じて申し上げておるところでございます。
  19. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いま大臣の答弁を聞いていますと、淡々として、農民の痛みというか心配というのは、そっちの方が心配するのが間違っているのだというふうにほとんど私には聞こえるのです。これは水かけ論になるかもしれませんけれども、まあ霞ケ関農業には影響ないかもしれませんがね、大臣。ところが、実際農民にとってみれば、本当に心配なんですよね。だからこれは、たとえばことしでも牛肉だって千トンふえておるわけですし、オレンジでも三千トンふえているわけですし、果汁も千トン五十二年度でもふえておるし、来年度からオレンジとか果汁とかは三倍とか四倍になるわけですよ。これが影響ないとは全然言えないのではないかと私は思う。これだけふえているんですよ。これは水かけ論ですから、結論としてさっき言われましたように影響があれば措置をするということですので、もうこれ以上追及いたしませんけれども、やはりそんな霞ケ関農業で、影響ないということではない、私はそういうぐあいに思います。しかし、これはもう、影響があれば措置をするとおっしゃいましたから、これ以上追及いたしません。  そこで、さっき質問したのに答弁がなかったのですけれども、結局、日本農業アメリカの犠牲になる必要はない、これはもうさっき大臣も言われたとおり、私と同意見ですけれども、本当にアメリカとの農産物貿易によりまして、いろいろ日本の政策の問題は言いませんけれども、結果として大豆とか小麦とか飼料作物とかというのはどちらかというともう全滅の状態にいまなっていますよね。そしてこれもアメリカなんかから来ているわけですけれども、そうしてそういうものが全滅になっているときに残っているのが果樹、畜産ですが、これがまたどんどん入ってきて、これが全滅になったら、日本農業はもうなくなってしまう、こういうことも考えられるわけです。そして、いま日本は減反をしておりながらも、減反をするからと、米のことで外国に門戸を開放せよなんて一つも言ってないわけですし、アメリカの今後のこういう圧力というものに日本農業が犠牲になることはない。もうそうすると日本農業は全滅するんだ、その辺についての御決意のほどを聞きたい。たとえば牛肉なんかどんどん入れてきたら日本の畜産が全滅します。飼料作物を千六百万トンも買っているわけですからね。飼料作物をとるのか牛肉をとるのか、本当にアメリカに開き直りたいという気もするわけです。そういう点で、絶対日本農業アメリカ等の犠牲にはならないという信念でやっているんだ、こういうことをはっきり農民に言明しておかれないと、影響ない影響ないということでは、農民は安心しないと思うのですが、いかがですか。
  20. 中川一郎

    中川国務大臣 実は肉の問題をもうちょっと申し上げますと、確かにアメリカからは千トンよけいに買うことにしましたが、アメリカ枠といいますか、アメリカの関心品目ですね。実は五十二年度の下期四万トン入れることを世界にも通知してあるわけなんです。ところが、最近の肉の需要が非常に伸びてきたというので畜産振興事業団の手持ちがなくなって、この枠は五千トンふやさなければ国内の消費に対応できないということで、ストラウスとの交渉のときにも、五十二年度の下期に総体枠として五千トンふやし四万五千トンとする、それから五十三年度もすぐ来ます上期については三万五千トン買う予定を世界に約束しておりましたけれども、これも四万トン買わなければ大体間に合わない、こういうことでありますから、総枠五千トンずつふやしていかなければならぬという中で、アメリカの関心品目である牛肉が千トンふえたからといって、これで大変だ大変だと騒ぐ方が——五千トンふやした。しかし、五千トンはもう畜産振興事業団の手持ちがなくなったからふやすんです。その枠の中で千トンいい肉を買うということですから、これが大変だ大変だと言われることはいかがかなと私は思うのです。しかし心配されますから、心配もあることでしょうというので、手当てもいたします。  しかし、そこで今後どうなるかというと、私は、もうアメリカはこれ以上のことは、仮にドル黒字になる、赤字がどうなるということになりましても、少なくとも農産品についてもっとドル減らしに買えと言うようなことは、今度の交渉経過から見てない。ただ一ついやなのは、きのうも話がありましたように、季節自由化の問題については、私は突っぱねたのですけれども、被害がないなら買ってもいい、被害がないなら買いますけれども被害があるから買えません、ある、ないだから、それじゃ共同調査してみましょう。今後は、これは突っぱねるつもりでございます。ちょっとその調査の結果によってその問題がまた火がつくかもしれませんけれども、これも断固として、いまのミカンの事情からして、私は職を賭しても、季節自由化なんということには応ぜられない。  そういうことで、対米関係は、まあ十年先のことはわかりませんけれども、まずまず二年、三年、四、五年の間はこれ以上農業で来ることはないだろう。  ただ、もう一つは、ニュージー、豪州から、今度の東京関税あるいは二百海里の問題に関連して、もっと買ってもらいたいという要請が来ております。でありますから、この次の波はニュージー、豪州、ECを含めた東京ラウンドの波がある。この波についても、私は、アメリカ交渉した姿勢でもって国内農業悪影響を与えない、特にニュージーには、魚は魚、農業農業ということで、粘り強く交渉して、日本農業には絶対悪影響を与えるような譲歩はしない、こういう姿勢でいきたいと思っておるわけでございます。
  21. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ストラウスさんは、この交渉で、最初は評価で言えばCぐらいかと思ったらAだったというぐあいに語っておられます。どこがAだったんですか。今度の交渉で、A、B、Cで言ってAだったと言われるのは、一番いいできだったと思っておられるんでしょうけれども、何がAだったんですかね。
  22. 中川一郎

    中川国務大臣 ここはなかなかアメリカのいいところだと思うのです。交渉する段階は非常に厳しくありますけれども、決まったらからっとして、君の努力に感謝する、非常に評価があったと、われわれもああいう態度をとりたいものだな、いつまでもじめじめしないで、みやげ物は少なくても大きかったと言えるような国民性になりたいなと、非常に勉強させられたところでございます。
  23. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この共同声明を見て、ほかのところにAの原因があるのかもしれませんが……。  次に移りますが、いまもちょっと触れられたんですけれども、あと心配なのは、東京ラウンドの問題とか、さっき言われました豪州とかニュージーランドの問題、ECの問題だろうと思うのです。結論的な決意のほどは言われたわけでございますが、アメリカでも季節自由化の問題を持ち出すかもしれぬとおっしゃいましたけれども、いろいろ関税の問題その他で、東京ラウンドの突破口としてこれはAだった、東京ラウンドに対する基盤づくり、そういう点ではAだったと言われたんじゃなかろうかと私は思うのですよ。そういう点も考えまして、さらにストラウス氏も、今後は二国間とか多国間ベースで要求を出していくというようなことを語っておられますね。こういう点について、いまアメリカからはもうこの農産物の問題についてはここ四、五年はないかもしれぬと言われましたけれども、本当にそう考えていいのか。ストラウスさんは二国間とか多国間の問題でこれを出すということを言っておられるんですから、念のためにそのことをもう一つ質問しておきたいと思うのです。  それから、ECの問題も非常に大切な問題でございまして、これも黒字問題としてアメリカにひけをとらない、五十億ドルぐらいの出超になっておるわけです。この間七日のブリュッセルのEC外相理事会で話し合いしている報道が行われておるんですけれども、その中で、こちらは、たとえば牛場さんとストラウスさんの話とはECは全然別個だ、当然のことですけれども、そういうことを言っておるわけですし、特に農産物についてもバターとかチーズとか豚肉のかん詰めとかビスケットとか、こういう農産加工品を日本に買ってもらいたい、そういう要求を出すというぐあいにも伝えられておるわけですから、そういう点についてアメリカから東京ラウンドその他のところでも今後要求が来ないのか、ECのこういう態度に対してはどうお考えになっておるのかということについて御説明願いたい。
  24. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 ECの従来までの交渉におきましては、ECの主張としては、第一点は、日米間の話し合いと同様に日・EC間においても密接な話し合いをしてもらいたい、必要であるということを言っておるわけでございます。これに対して、日本側といたしましては、日米共同声明というのは日米間だけの合意といった性格ではございませんで、日米双方が世界経済全体の運営という共通の目的に向かってとるべき政策を述べたものであって、したがってこれらの措置はすべてグローバルなものであって、いささかも第三国を差別するものではないという立場をとっております。  それから第二点は、マクロ的な政策は効果の発現に時間がかかるので日本政府はミクロ的な措置をとってもらいたいという要請がございます。これに対しては、いまお話のございました農産物も含めまして、ECの関心事項についてミクロ面で直ちにその効果のあらわれるような特別措置をとることは、日本国内事情等の関係もあってきわめてむずかしい事情にあるということを言っておるわけでございます。  それから第三番目は、日本の経常収支の黒字の方向を短期に転換させるためには黒字が早急に削減されるようにしてもらいたいという話でございまして、これにつきましては、日本政府は内需拡大による黒字削減に真剣に取り組んでおるのだ、そういう主張をいたしておるわけでございます。  農産物につきましては、いま申し上げました第二点のところのミクロ面ということで、酪農品、これは小口包装バターでありますとかあるいは直接商標のナチュラルチーズの関税の引き下げ等でございます。それから食肉加工品、菓子類等のミクロ的な関税引き下げあるいは枠の拡大の要請がございます。  私たちとしましては、現段階においてMTNがすでに本格交渉の事態に入っておるわけでございますから、MTNの場でこれを交渉すべきものであるということで従来も主張をいたしておりますし、今後も主張いたしたいと思いますが、今月の十三日からECの対日関係局長が参り、さらにまたその上層部が参るというふうなことで、四月ごろまでECの交渉が続くという状態にございます。
  25. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣、ECがバターとかチーズとか豚肉のかん詰めとかあるいはビスケットとか、こういうものを挙げて日本に増大を要請してくると報道されておりますが、これについてはどう対処されますか。
  26. 中川一郎

    中川国務大臣 これはECのほかに、またニュージー、豪州の関心品目でもあるわけです。ですから総合的に判断していかなければなりませんが、先ほど言った、この前の対米調整というのは何もアメリカだけのものではない。いま局長からお話があったように、グローバルで、全世界に日本姿勢を示した、こういうことでございますから、この点は今度のMTNでも評価をしてもらうように取り組みたいし、そのほかまた、追加でありますとかそういった問題についても、これから、外交交渉ですからどうなるかわかりませんが、国内生産に支障を与えるようなことはない、調整があるならば調整もしなければならぬ。何でもかんでもだめだという姿勢ではなくて、どの程度譲歩できるか、話し合いでございますから、これから相手と話し合って、最大限支障を与えないように、ぎりぎりの粘り強い外交をしてみたい、こう思っておるわけでございます。
  27. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、日本農業は保護政策をとっていない、こういうぐあいに思うのです。そして残存の輸入制限品目も外国に比べてそう多くはない。ECなんか少ないのですけれども、やはり輸入制限法上の効果を持つ可変課徴金制度なんかつくっておるわけですし、アメリカだって十六品目について輸入割り当て制をとっているわけですから、そういう意味で、私は日本農業は決して保護政策をとっておるとは思いません。だから、これ以上もう他国に譲歩する必要はないと私は思うのです。いまECその他に対する交渉の態度も申されたので、そういう考え方でやっていただきたいと思うのですが、特に最後に念を押して言っておきたいのは、これは農民が皆心配しておりますけれども、オレンジなんかの自由化は絶対なさらないでしょうね。保護政策をとっていない、だからもうこれ以上譲る必要はないということと、特にオレンジ等についての自由化は絶対にしないという決意であるかどうかということを尋ねておきたい。
  28. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国の農業が世界に比べて保護貿易が度が過ぎているかと言えば、それほどではない、そう変わらぬぐらいだ、どこの国でもやっているじゃないかという気持ちは私も持っております。特に日本は、北海道から沖繩まで、地域の特性によって非常に作物が違うわけですから、それだけにほかの国とは違って品目が多くなるのも仕方がなかろう、こういうことも申しておるところでございます。ただ、東京ラウンドというのは日本も積極的にこれをやるのだ、こう言っておりますから、一切何でもかんでも農業に関してはだめです。そういうことでは国際間は通らぬだろう。協力できるものがありましたら協力しましょうということでございますが、基本的には、いま言った農村影響を与えるようなことは絶対しない、特にオレンジの季節を含めての自由化ですね、ミカンに直接打撃を与える季節自由化を含めてこれは断じてしない、こういうつもりでございます。
  29. 馬場昇

    馬場(昇)委員 日米共同声明の柑橘業界研究グループが十一月一日までに柑橘事情の調査報告書を両国政府に出す、こういうぐあいになっているようですが、これの中身はどういうことですか。
  30. 中川一郎

    中川国務大臣 これも、先ほど来申し上げたし、当時も新聞記者発表でしたわけでございますが、あの短い時期に、季節自由化をやれ、やらないということになって、そんなことをしたら大変だよ、大変だと言うのならそれはできないだろう、しかし、大変であるかないか、一回それぞれ調査してみようじゃないかということになりましたから、調査することを阻むわけにはいかぬ。少し早い時期だったのですけれども、そんな早い時期でも困る、十一月ごろまで時間をかけてもらわぬと困るということで、調査はしてみようという決着を見たわけでございますが、わが国としては、最近のミカンの貯蔵技術なり、あるいは先ほど来議論のありますハウスミカンの現状なり、ミカンだけじゃなくてブドウや桃等にも影響があるということも指摘をして、自由化は絶対お断りする、こういうつもりでございます。
  31. 馬場昇

    馬場(昇)委員 次に、やはり外敵を防ぐというだけじゃなしに、みずからの体質を強化しなければならぬわけですけれども、そういう意味で、牛肉とかオレンジ、こういうものの体質改善についてどのような方策を持っておられるのかということについてお尋ねしたい。
  32. 中川一郎

    中川国務大臣 今度対米折衝をやってみて、対米折衝よりむしろ恐ろしいのは国内の消費者の声なんです。テレビ、ラジオ等でも、中川農林大臣になったら牛肉ぐらい生産者を向こうに回してやってくれると思ったら大したことはないと言われることに象徴されるように、むしろ、今度の対米折衝を通じて、一般大衆が安い肉を食いたい、あるいはまた夏ぐらい腹いっぱいオレンジを食いたい、こういう国民の声というものが今後むしろ恐ろしいのではないか、私は正直そう思っているのです。農業もやはり消費者に対応しなければならぬということからいけば、誇りを持てる農業というのは、消費者からも喜ばれるような仕組みに持っていかなければいかぬ。でありますから、対米関係だけではなくて、消費者に向かっても足腰の強い農業というものをやっていかなければいかぬ。ただ、アメリカにのまれたということではなくて、長い目で見て、日本農業日本の消費者に喜ばれる、こういうふうに持っていくために、もろもろの対策を講じて、柑橘農家なり牛肉農家、これは農産物すべてでございますけれども、体質の改善、農家経営の安定、こういうことをやっていきたい。この中身は局長から答弁させます。
  33. 野崎博之

    ○野崎政府委員 ただいまおっしゃいましたように、ミカン農家の経営の安定を図りますためには、やはり需給の安定を図るということがまず第一に必要になってくるわけでございます。そういう意味で、従来もやってまいったわけでございますが、優良系統のものに改植をするとかあるいは加工需要の拡大対策、そういうものをやってきたわけでございますが、特に五十三年度におきましては、相当予算をふやしましてそういう対策を講ずることにいたしておるわけでございます。  主な点を申し上げますと、まず生産調整の対策でございますが、これは改植等を進めるための費用が約九億、それから改植等を進める農家に対しまして系統資金を貸し出しまして、その末端の利子が安くなるように利子補給をする、そういう事業に約一億六千万、産地体制の整備といたしまして柑橘園の基盤整備、そういうものを新規に取り上げまして、これが約六億、需給調整対策といたしましては、例の加工品の調整保管事業、これも大幅にふやしまして一万五千トンということで約三億の金を計上いたしておりますし、加工促進対策といたしましては、果汁工場の整備近代化ということで約六億を計上いたしております。また、これは従来もやっておったわけでございますが、価格安定対策ということで例の基準価格の引き上げあるいは補てん率の引き上げで約十一億。全体で四十五億という相当大きい金になるわけですが、そういう予算措置を講じてミカン農家の経営の安定に資してまいりたいというふうに考えております。
  34. 杉山克己

    ○杉山政府委員 わが国の肉用牛の経営、特に子牛の生産部門にありましては、生産規模がきわめて小さい。土地問題の制約等もありまして、生産基盤が一般的に脆弱でございます。これらの制約条件を解決していくのには時間がかかりますが、基本的に体質改善の中心は、多頭化の推進ということが一つ、それから飼料自給度の向上、この二つが柱になるかと思います。  各般の施策を講じているところでございますが、当面、私どもといたしましては、まず適地における多頭飼育経営。一般的に条件が悪い中でも、山林原野等土地条件に恵まれた地域もございます。これらの地域におきましては、地域内の一貫生産体系の組織化ということを考え、林間放牧なども取り入れまして、飼料自給率の高い安定的な多頭経営を育てるというふうに考えております。  それから、そうでない、水田率の高い地域、こういったところにおきましては、水田裏を利用しての飼料作物の生産、利用ということ、畑地率の高いところにおきましては、青刈り飼料、その利用等を中心としての複合経営、畜種間の複合あるいは他の農産物との複合経営、こういった形での経営を育成する。それと同時に、子牛部門と肥育部門との有機的なつながりをつけるということで、段階的に規模拡大を図ってまいりたいと考えております。  肉算用種でなく乳用種、肉牛に使われる乳用種でございますが、これにつきましては、肉専用種に比べて比較的大きな肥育経営が出現いたしております。しかし、一層これの拡大を図るために計画的な初生牛の集荷、それから事故率が一般に高うございますから、これを低めるために、集団保育の導入によって飼料の効率的な利用、コストダウンということを考えてまいりたいと思います。  個々の事業面を挙げると煩わしくなりますが、私どもの畜産局でやっております仕事の全体がその方向に向かって仕組まれておるわけでございます。今後ともその充実に一層努力してまいりたいと考えております。
  35. 馬場昇

    馬場(昇)委員 もう時間ですので、最後に大臣に一言要望しておきたいのですけれども、自由化問題、特に日本農業問題ですね。これは先ほども大臣がちょっと言われたのですけれども、やはりすべての国民の理解を求めるべきだと私は思います。自由化をすると、たとえば牛肉がぐっと下がるのだ、ミカンがまた下がるのだ、国民に有利だ、そう国民は考えておられるわけです。その要望にこたえなければならぬということは、確かに政治としてはあると思うのです。ところが、そういうときにきちんと——たとえば日本農業は、一連の自由化でやっと大豆が四%になった、小麦も同じだ、あるいは飼料作物はほとんどゼロだ、わずかに残っておるのが米、それは減反をやらなければならないのだ、果樹も過剰になっているのだ。本当に自由化をやったという場合には日本の農作物はなくなってしまうのだ。だから、いま自由化反対反対と農民が言っているのは、決してこれはぜいたくな要求じゃないのだ。日本農業の実態というものからして、この自由化反対という農民の声はぜいたくな声じゃないのだという問題。さらには、たとえば外国から入ってくると安くなると言うけれども、たとえばレモンだって確かに自由化されたときは安くなりましたけれども、日本のレモンが全滅したらまた高くなっているわけです。そういう価格の問題だとか、それからまた、肉がなくなったと仮定すると、四十万トン、五十万トンというような肉を安定的に外国から輸入ができるかどうかという問題。あるいは世界で食糧危機がある、だからそういうときに戦略物資になろうとしておる。トイレットペーパーがなくなったときあんなに大変なことになった。もし食糧がああいう状態になったらどうなるのだ。いろいろなことでとにかく自由化農民なりが反対している。これはやはりこういう理由でこうなっているのですから国民の人も理解していただきたい、そういう国民に向けての理解というものは、やはり農林省がやっていかないと、農民とそうじゃない人たちが対立をするということになっては非常に困ると私は思うので、そういう点のPRとか理解というのを大臣、やはり求めるべきだと思うのです。  それからもう一つ、時間がございませんので、これは資料要求をしておきたいと思うのです。後で大臣に答弁してもらいたいのです。  過去十年間オレンジ輸入割り当て量、輸入実績、その輸入金額、その年の輸入業者数、そしてその全体の推定利益、こういう一覧表を資料として出していただきたいということを要求しておきたいと思うのです。  以上で、大臣の答弁を受けて質問を終わりたいと思います。
  36. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにこの点が私は大事だと思うのです。消費者の中にはやはり安いものを豊富に、いいものをと、こういう声も非常に強いのです。何も日本農家の犠牲になっていつまでも高いものを食わなくたっていいじゃないか、これも強い。しかし一方では、そんなことじゃ大変なんだ、牛肉だっていまは安いけれども、長期的に見れば将来肉が足りなくなる時代があるのだ、かつて大豆がアメリカ輸出規制をやったときにどうだった、だから少々高くてもやはり国内食糧というものは大事なんだ、国家安全保障だ、国民の安全保障につながるものだ、これも大いに強調しなければならぬところだと思うのです。そこで、この二者の相反するものの接点をいかに求めるかというのが、われわれ農村を預かり、消費者を預かる者のまず大事なところだ、こう思うわけです。  そこで、消費者にも理解していただくと同時に、やはり生産者も消費者の理解をいただくような努力をお互いにする、これをぎすぎすしたものにしてはならない。私は、米でも言っているのは、やはり生産者も努力するし消費者も努力をするというところからこの接点を求めて円満な解決をしたい。  同じようにこれは牛肉についてもミカンについても、やはり消費者も一朝有事のとき大変なことだ、この小さい国土で、土地条件の悪いところで生産にいそしんでいる農家の人々のことを考える。また、農家の人も何でも反対だ、何でもどうだということではなくて、やはり消費者からもよくやっているわいと言われるような姿勢を示す、こういう中に妥協していいものができていくのだろう、私はそういう方向に努力をしてこの問題を処理していきたいと思う次第でございます。  それから輸入の問題は、これは通産省の方になっております。輸入実績等はわかりますが、一つ一つ業者まで出せるかどうか、その辺はちょっと検討させてください。できるだけの資料は提出させていただきます。
  37. 馬場昇

    馬場(昇)委員 終わります。
  38. 中尾栄一

    中尾委員長 新盛辰雄君。
  39. 新盛辰雄

    ○新盛委員 農林大臣の所信表明を昨日聞いたのですが、特に水産の振興に当たる問題について約六百字程度内容で、読んで何か、二百海里時代到来という面だけの強調はされておりますが、内容が従来と変わっていないじゃないかという面ではきわめて失望をいたしました。  そういう観点から、現実の問題として、いま漁業外交という面においては、果たして日本姿勢としていわゆる先手先手で進めておられるのかどうか。もう八方ふさがりでどうにもならないという状況の中で暗中模索をしておられるように実は見受けられるわけです。そういう面でいまこそ発想の転換が必要になってきたのじゃないだろうか、そういう面で、ぜひ基本的な姿勢として農林大臣の所見を伺いたいのであります。  国内外の漁業の位置はきわめて重大であることは当然でありますが、強力な漁業外交の確立、沿岸整備開発、資源の拡大、遠洋、沖合い、沿岸漁業の見直し、そして新漁場、新漁業市場の開発を初めとしまして、いろいろな、これからの魚類の資源確保なり漁業の市場確保、貿易、流通、価格、そうした問題について、いま、現実の問題として、多くの外圧の中で日本の漁業の位置というのは非常に危険にさらされている。だから、新しい海洋秩序、ある意味では漁業の輸入を含める新しい秩序を確立しなければならないときにいま来ていると思うのです。  そういう面から見ましても、今日の漁業のあり方としてどうなければならないのか、しかも、これらの問題については、水産物の輸入問題あるいは流通の問題、魚価の問題ということについては、とりわけ問題が多くあるわけでありますが、こうした面のいわゆる新しい漁業再編成というものに向かって努力をされる気があるのか、あるいはまた新しい角度からの検討を加えられる気があるのか、二百海里時代が到来して、新しい農林大臣としてその決意をまずお聞かせ願いたいと思うのです。
  40. 中川一郎

    中川国務大臣 水産業は二百海里時代を迎えて大変な曲がり角に来たということは御指摘のとおりでございます。約一千万トンのうち四百万トンを外国のそういった水域に依存をしておりました日本にとっては、一番世界の中でも、ソビエトと並んでと言えるかもしれませんが、かなり厳しい——かなりじゃなくて非常に厳しい時代でございます。  そこで、水産外交をまず強力に展開して、この四百万トンに及ぶ外国水域での漁獲量の実績を守る、こういうことが基本的でありますが、これは国際的に各国各国それぞれ事情がございますので、二国間交渉をやっていく以外にない。もちろん海洋法会議での共通した問題での交渉も必要でありますが、現在のところは、二百海里海洋法に先立って、それぞれ個別に二百海里の問題が出てきております。  まずアメリカについては、まあまあそれほどの被害がなくてできたかなという感じでございます。幸い引き続いて、きのう来新聞にも載っておりますように、日米加の漁業、サケ・マス交渉も、まあまあ厳しくはあるけれども既存権益をそれほど崩さないでこれができたかなという感じを持っております。遡河性のサケ・マスに対する国際海洋法並びにアメリカ、ソビエト——カナダもそうでありますが、厳しかったのでありますが、まあまあかっこうがついたかなというところ。  次に一番問題はソビエトとの関係でございます。昨年来交渉が継続されておりましたが中断をして、この十五日からいよいよ政府代表を任命して、モスクワにおいて折衝しなければならない。しかも、これは三月中に解決をしなければならぬというので、これにも全力を傾けて既得水域権は守りたい、こう思っております。  さらに、ニュージーランド、豪州等も厳しくありますので、これにもそれぞれ対処したいということで、鈴木前農相も十三日には交渉に行っていただくというようなこともいたしております。  さらには、朝鮮民主主義人民共和国ですか、その関係、あるいは韓国、中国、多くの国々とのそういった個別の非常にむずかしい条件がありますけれども、それぞれ強力に展開をして、権益を守ることにまず最善を尽くしたい。  同時に、これを契機にして、沿岸漁業が少し見捨てられておったのではないかというので、沿整事業を初めとして沿岸漁業の見直しを行う、あるいは新規漁場の開発等も積極的に進める。特に魚の流通、価格対策、従来もすり身等を中心にしてやっておりますが、こういったことも強化しなければならないというふうに、総合的に水産を、水産元年と申しますか、そういう気持ちでこれからの時代に対処していきたい。決意を持ってやっておりますが、何分にもまだ初年度であり、階段一段上ったところでございますから、まだまだ不十分ではありますけれども、今年を元年としてやっていく姿勢で取り組んでいきたい、こう思っておる次第であります。
  41. 新盛辰雄

    ○新盛委員 カナダのバンクーバーで開かれておりました日米加三国の漁業協議、これは日本側の方が大幅に譲歩したというふうに報道されているわけです。いま大臣のお話では、まあまあだったろうということなんでしょうが、結論を三月に持ち越したということもこれは非常に気になるところです。しかも、十五日から始まる日ソ間のサケ・マス交渉と多少かかわり合いがあるのではないか。したがって、なおさらに厳しくなるし、制約を受けるであろう。今回のこの日米加三国の漁業協議においては、御承知のとおり、西経百七十五度、十度押しやられて日本の内部に入って、今度は東経百七十五度という形になっているわけですね。ここの位置はサケ・マス、ベニマス、そうしたものにおける漁獲量というのは非常に大きいわけですから、そういう面が、ただまあまあよかったろう。しかも、必ず、このサケ・マス交渉が日ソの間に行われる十五日以降の問題として厳しい制約を受けることは間違いない、そういうふうに思います。  こうしたことについて、これからのこの日ソ漁業交渉姿勢というのは、昨年の前鈴木農林大臣がずいぶんと努力をされましたけれども、外圧という面から来るいろいろな制約を受けながら、日本の立場は、ますます二百海里時代、追い詰められているという感じがするわけです。減船やあるいはまたそれに伴う漁業離職者などということについてもいろいろ問題が起こりました。その救済措置も、あるいはまた、北転船なり北洋漁業等の問題が、あるいは国内における南側の漁船との間の競合とか、いろいろな問題が出てくるだろう、こういう心配をしているのに、それに対する答えが出ない。漁民は魚をとることによって生計を保っているわけでありますが、そういう面の見通しがないという脆弱な漁業外交というのは、これはいろんな事情はあったにしましても、これから先の正念場だというふうに私は思うわけです。それをこれからどういうように決着をおつけになろうとするのか。あるいは日ソ漁業交渉には、中川農林大臣も初めてのことですから出かけていって、そして交渉に当たる、これは二月七日の予算委員会で大臣もそういう用意があるやにおっしゃっているようです。表現は別として。だから、そのことの問題をどういうようにお考えになっているのか。  それと、最近アメリカも、カナダもそうでありますが、カジキマグロ、こうしたものに対して、御承知のようなスポーツフィッシングというのですか、何かそういう団体の圧力を受けて、高度回遊魚であるべきはずの魚に対する姿勢、いわゆる沿岸国内の管轄権をいま主張する向きが出ています。後進国と先進国との間でも意見があります。国連海洋法会議においてそのことについてはまだ結論を出していないわけです。だから、こういうことに対しても、外交手段の一つとして外務省あたりもこれは漁業の方に任しているのじゃなくて、日本の主張すべきことをしなければならないときに来ているのに、第三次海洋法会議もございましたが、しかし、そういうところに政府代表、閣僚クラスの者が行って積極的に日本姿勢を示すべきだ、そういう外交の面でこれまた立ちおくれている。そうした面について二つ目にお聞きします。  三つ目に、いま南太平洋のフォーラム諸国の問題が出ました。あなた方は、この問題については必ず決着をつけられる用意がある。現実、カツオ・マグロの問題においてはすでにミクロネシアの方で、日本の漁場としては相当大事なところですが、ここはまあ来年の段階で二百海里だろう。アメリカの信託統治の国ですから、どういうふうに変わってくるかわかりませんが、そういうふうになるだろう。しかし、ニュージーランドを初めとするこの南太平洋のフォーラム諸国では、もうこの四月以降どんどん二百海里宣言をしています。この地域の関係各国で話し合っている向きでは、日本の船を締め出すとまでは言わないにしても、今度ニュージーランドの方にあるいは豪州の方に、十三日の日には鈴木前農林大臣政府の特使か何か知りませんが出かけていかれる。しかも、福田総理あるいは中川農林大臣の親書を持っていくというのです。ニュージーランドでは、もう先ほどから議論がありますように、牛を買うよという切符を持っていかない男には絶対に交渉はしませんというのですから。バターにしても脱脂粉乳にしましても、そういうもののバーターが確実に彼らの姿勢としてあるわけです。それをいま大体手探りで根回しをする程度のことになっているのか、あるいはその親書の内容として、これはやはり駆け引き、外交上の取引として、ある程度輸入を認めないわけにはいくまい。アメリカの外圧によってすでに牛肉オレンジ果汁、そうしたものについて拡大をしたわけです。それを見ているわけですから、あなたは、貿易は、農業農業、漁業は漁業だとおっしゃいますけれども、果たしてそのようになるのかどうか。これは外交の問題として、農林大臣、そしてまた外務大臣、来ていないようでありますが、それらの姿勢について、ぜひ、強力な漁業外交を進めるとおっしゃるのですから、そういう面に対する先手先手を打っていかなければならないと思うのですが、この三つについてひとつお答えをいただきたいと思います。
  42. 中川一郎

    中川国務大臣 日米加の漁業交渉はまだ交渉中でございますから、結論はどうなるか、もうちょっと先に延びるわけでございますが、結論としては、既得の権益、まあ水域はかなり異動があると思いますけれども、減船とかいうあのような厳しいことにはしたくない外交をしていきたい、そこまでできるのじゃないか、こう思っておるわけでございます。  引き続き大変なのはやはりソビエトでございます。十五日から、代表団も決まりました、きょうの閣議で決定もいたしましたので、強力な外交をしていただくと同時に、時期を見て、必要があり有利になるならば、私もみずから出かけていってという気持ちは持っておりますが、いつ何どきどうということは、まだ交渉の経緯を見なければわからないところでありますが、有利に展開するためには最善を尽くして取り組みたいと思っております。  また、南太平洋地域との関係でございますが、これも農業農業と言えるのは、まあニュージーランドにも言い分はあろうと思いますけれども、何といってもアメリカと同じように相当のわが国は輸入国でございますから、余り農業でもって大きな犠牲を、農業悪影響を与えるようなことでこの問題は処理でき得ませんし、魚は魚として強力にこれはお願いをし、交渉もし、折衝もし、そして既得権は確保したい、重大な決意で四月に向けて交渉を進めてまいるつもりでございます。  そのほか多くの国々との水産外交ございますが、きめ細かくそれぞれの国に対して手を打ち、既得水域権を確保したいということについては最善を尽くしたいと思いますので、国民外交として先生方の御協力もぜひとも必要でございますから、御協力願えるところは御協力願いたい、こう思う次第でございます。
  43. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、きめ細かい交渉をされるとおっしゃるのですけれども、あなたは、サケ・マス交渉の場合でもそうですか、水産庁を中心にして交渉に当たられる方々は御苦労さんですが、こういう厳しいことははっきりしているのですね。今度の日米加の問題でもそうです。それをにらんでいるのですから、厳しいのです。それに直接出かけていく用意を持っておられるのかどうか。これはあなた自身そういうふうにもしてみたい、許されるならば南太平洋の諸国についても、鈴木前農林大臣が帰ってきてから対処するのだとか云々ということで終わるのですか。現実こういうふうにニュージーランドの場合でも、すでにバターの年間輸入枠を二万トンだとかあるいは一般の脱脂粉乳関係でも一万トン、牛肉でも十万トンだと言うのです。それは駆け引きですからいろいろとおやりになるでしょうけれども、魚は魚、農産物農産物だといって、貿易は別だ、こうおっしゃいましても、そうはいかぬじゃないか。ところが漁民は、そのことに対して、新漁場を確保するのにどうもまだ暗中模索らしい、しかも外交手段としては後手後手を踏んでいるじゃないか、このことを心配しているのですよ。だから、あなたが現実の問題としてどういうふうにそのことを処理をされるのか。それは、きめ細かいことをやりましょう——抽象的な話じゃないのですよ、現実の問題なんだ。だから、そのことについて決意をひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  44. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉事というのはなかなか複雑なものでございまして、これにはいろいろなルートもあれば、私がみずからカナダに飛びソビエトに飛びニュージーランドに飛びということも必要かもしれませんが、タイミングというものも外交折衝には必要なのであって、やはり根回しなり水かきなりいろいろとやっているところであって、これは皆さんに明らかにできるものもあるし、できないものもあるし、私も選挙区が北海道、魚のど真ん中でございますから、鹿児島と同じですから、訪ソあるいは訪加、訪ニューというようなことはいとわないでやりますが、タイミングは少しわれわれにも任せていただきたい。激励いただきまして本当にありがとうございました。
  45. 新盛辰雄

    ○新盛委員 高度回遊魚の方は回答ないね。
  46. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、アメリカは、高度回遊魚につきましては一応二百海里の規制から外すというたてまえをとっておるはずなんですが、カジキにつきましては確かに御指摘のように二百海里内の漁労につきましてライセンスを必要とするという主張をしております。そこで、わが方はそれにつきまして実は反論をいたしておりまして、まだ決着を見ておりません。  ただ、そのほかの、先ほどいろいろお話の出ました南太平洋諸国は、遺憾ながら二百海里の中にもカツオ・マグロが規制の対象になる、高度回遊魚につきましてもなるという主張をいたしておりまして、これは海洋法のたてまえと非常に異なっておるわけでございます。ですからわれわれ、海洋法のただいまの草案、まだ決まっておりませんけれども、そういうものが国際的な合意の中で早くでき上がることを期待をしておるのですが、遺憾ながら片っ方で二百海里を宣言する国々で、先ほどのような御指摘のカツオ・マグロにつきましての規制をいろいろかけてくるという事態につきまして、実は頭を悩ましておるわけでございます。  現実の処理の問題といたしましては、そうきついといいますか、具体的に日本が非常に困るような事態に追い込まれないように今後の折衝でいろいろ解決をしてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  47. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いま現実の問題として、ニュージーランドあたりで、オークランド地方裁判所は日本漁船に罰金一千万円、これは禁漁区で操業したということになっているのですが、こうした漁船は魚を少しでも多くとりたい、二百海里によって狭められてきて——それは海洋秩序を守らなかったから云々という話じゃないのですね。これは日本政府が保護すべき、いわゆる政策の一つとして見なければならないのに、こういう漁船の拿捕によって、さらには豪州でもつかまっているわけです。また、もちろん韓国船あるいは北転船その他ございますが、そういう面で現実こうして事件が発生をしていることに対して、ただ罰金を払えばいいということで済まされるかどうか。  昨年、私どもはこの拿捕に関係するいわゆる罰則金についていろいろと議論をし合いました。しかし、いまこうして発生をしている南太平洋フォーラム諸国の関係筋の中に、いまからさらに起こってくるだろう漁船同士の圧力、あるいは戦争が相当起こってくるであろう、そのことに対して打つ手はあるのか。すでに、国際的な漁場の確保を図ってほしい、そうして入漁料の問題についても、次善の策としてこれは全額国庫負担をすべきではないかという強い要請も出されているわけですね。そういうことに対して皆さんはどういうようにお考えになっておられるのですか。
  48. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のようにニュージーランド、それからタスマニア等で一種の領海侵犯的な話が発生いたしました。それぞれ拿捕をされるという事態になりましたことはまことに残念に思っておるわけでございます。このことはわれわれ大いに反省をいたさなければならないわけでございますが、それぞれの規制が現在あるわけでございます。そういう問題につきましての周知徹底を十分図っていくということにつきまして、さらにいろいろ努力をしておるわけでございますが、先ほど先生御質問の入漁料の問題につきましては、交渉の過程で非常に高い主張をする国が間々出てきておることは間違いございません。端的に申しましてそういう問題でペンディングになっている、まだ決まらないという国が実はもうすでに二、三発生をしておるわけでございますが、私どもとしましては、引き合わない、こういう時期でございますから、日本の立場といいますか、言葉は余りよくないかもしれませんが、非常に吹っかけてくるという感じの話が非常に多いわけでございます。だからといって、これを安易に認めるという立場はとるべきではないし、断固としてそれは拒否すべきであるということでわれわれ突っぱねておるわけでございます。また、そういう、高い低いというのはいろいろございましょうけれども、やはり漁業的に採算に合わない、たとえばカツオのように何億という金を吹っかけてくるというようなことは許せないということで対応してまいりたいと思いますが、それだけでは現実には解決いたしませんから、いろいろ漁業協力というようなことで、やはり相手方の立場も考えまして、そういう面も進めながら入漁料の交渉をしていく。したがいまして、余り高いもので入漁料を決めて、それを国庫負担をするというのは際限のない話でございますし、またこれはたてまえ上、企業としてといいますか、経営として、その中から払っていく経費の一部だというふうにわれわれ考えておるわけでございまして、いままで締結いたしました例等を参考にしながら、妥当な額を決め、そこで今後経営が成り立っていくように、そういう方針で進めてまいりたいというふうに考えております。
  49. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それは、吹っかけられてそれをまた全部払っておったのではどうしようもないじゃないか。利益権の問題もいろいろありますけれども、現実、外国が二百海里専管水域を引く、そういう中に入って、その交渉がまとまらない。しかも、その中で当然起こってくる暫定的な措置、こうしたことについてひとつ考えていかなければならないんですよ。決まったら決まったで、中に入る入漁料についてはそれぞれの企業が払えばいい、それは国庫でやったら際限がないと。ところが、日本の主食になっているたん白質源の魚を、しかも、いま日鰹連やあるいはその他いろいろございますね、大日本水産会、いろいろございます。そういう企業や、いま商社がめちゃくちゃに魚を買い占める、そういう中の問題もいろいろあります。それはよくわかっています。しかし、こういう国際的な、いわゆる趨勢、流れに、やはり日本政府として対応し得るためには、漁民をそういう面で保護する意味もあって、入漁料の問題が私は出ていると思うのです。それはもうだめだ、それはもう企業がやればいいんだと突っぱねるということは、これは問題があるのじゃないですか。だから、そうした面について、やはり前向きに検討を加えていくことは必要ではないかと言っておるのです。どうですか。
  50. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘の点は、われわれも農林省に入ります前、考えたことでございますが、入漁料によって採算が合わない、出漁もできない、こういうことになればまた別でございますが、入漁料を払ったことによって、まあまあ経営はやっていけるというものに対して、国が負担をするというのは、やはり国民の税金でございますから、いかがかなということで、政府としてはむしろ、入漁料が高くならないように、そして、漁業権益が守れるように、この辺のところがやはり最大の力点を置くところであろう。今後検討はしてまいりますが、そういうふうに考えるわけなんです。これは本当に経営が成り立たないということであるならば、そういった配慮もしなければなりませんが、いまのところ、まあまあ出かけていっている人は、入漁料によって採算が合わない、出漁はやめた、危機状態だ、こういうものではないのではないか。今後推移を見てまいりたいと存じます。
  51. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうも、このことばかりでひっかかっているわけにもまいりませんが、お答えになっている向きは、私は満足していないのです。これから外交のいわゆる決め手になるのは、日本の漁業をどうするかということがやはり基本的な問題になると思います。外務省のお答えがないようでありますが、国連海洋法会議等における、日本はただ追従的に他国の動きを見ていればいい——それは、海底資源の問題やらいろいろございます。深海の問題もあります。しかし、こうした非常に苦しいところに追い詰められている場合、ソビエトは強力ないわゆる漁業外交をやっているように、日本もまた、そうした面では積極性を持ってやっていただかなければいけないじゃないか。だから、閣僚クラスの者が出かけていって、大いに日本の漁業の位置を訴えるべきだ。それはいままで一千万トンの漁獲量を誇っていた。しかし、それまでとらなくたって、六百万トンあれば日本の食生活の上には事欠かないのだという安易な考え方がいまだにあるのじゃないか。そういう面では、また別途の機会に議論をしたいと思います。  そこで、私は、こういうような状況になってきますと、結局、国内の漁業の制度というのはこれでいいのだろうか、漁業制度の再編成を行う時期が来ているというふうに思います。それも地域間あるいは業種間あるいは階層間、その利害対立の調整やあるいは紛争の調整などを含めた形の中で、あちらで事が起これば、そこにその場限りの手だてをするとか、あるいはいまたくさんあるこの業界、こうしたものに対して一元化していかなければならないことがいま起こっているのじゃないですか。各種の資源の状態に対応して、その管理制度というのをつくり上げていくことも必要じゃないか。また、漁業の生産力を伸長させていくためにも新しい制度を確立することが必要じゃないかというふうに思います。一番がんになるのは例の商社であります。これは大臣だってよく御存じでしょう。それはラーメンからコンクリートから鉄鋼までという、いまや魚からコンクリート、鉄鋼まで、もうまさに何でもかんでもやろうという野放し状態で、それは漁業者はたまったものじゃないのです。だから、これは流通ともかかわり合いがあるわけですが、そういう問題についてもメスを入れる必要があるのじゃないか、そういうことについてどうお考えですか。
  52. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生御指摘のように、二百海里の時代に入りまして、いろいろ漁業の情勢が非常に変わってきておるということは御指摘のとおりだと思います。そうではございますが、まだ漁業をめぐるいろいろな情勢は流動的だと判断せざるを得ないと思います。そこで、こういう情勢をもうしばらくながめながら、必要な制度の改正という問題につきましては、今後の検討課題ということで、そういう情勢を見ました上で十分検討いたしたいと思っているわけでございます。  そこで、商社の問題ということで御指摘がございましたが、商社は商社なりの機能というものがあって、それぞれの分野で適正な活動をしていただくということでございますが、具体的にどうということの問題がそれほど漁業で発生しているというふうには私ども考えておりません。それぞれ大手の会社は大手の会社なりに、また中小は中小なりに、それから個々の漁業者は漁業者なりに、それぞれの権利に基づきまして漁業活動を続けていく。その中で商社活動あるいは輸入の問題等いろいろ絡ませて、ダイナミックに動いているわけでございますから、いろいろ支障のある問題につきましてはもちろんわれわれといたしましても十分注意してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  53. 新盛辰雄

    ○新盛委員 満足しませんが、これはいまからの検討だとかいうのじゃなくて、もう現実の問題として、この漁業制度、いわゆる再編成ということ、従来のパターンでもって物事を考えておったのでは、二百海里時代で必ず大混乱が起こると私は思うのです。そのことに対して警告をいま発しているわけです。だからこの問題は、また当然その時期になったら議論になりますよということでは、これは漁民からの不満が出るのは間違いないのでありますから、その際にまた議論をいたしますが、いまわが国の二百海里水域の開発利用とか、あるいは外延的拡大から、もう長期的な供給安定の時代に変わった。そうなると、沿岸漁業というのが非常に重大になってくるわけです。この沿岸、沖合い漁業の振興対策の中で、いま皆さんが七カ年計画としてお出しになっておられるこの沿岸漁場整備開発事業はすでに実行はされておりますけれども、現実問題として、水産業はこれでいいんだろうか、沿岸の中でどのような整備計画で、見通しはどうなっていて、しかも遠洋からVターンをして帰ってくる、こういう漁船をつなぎとめる、いわゆる沿岸の中で漁場を開発をし、そしてまた魚をとらせるという仕組みについて、果たして技術的な開発あるいはそういう技術調査の面において完全であるだろうかと言えば、私はこれはまた疑問だと思うのです。  そういう面で、たとえば水産試験の機構問題においても、今度新しく水産省をつくる、農林水産省、こうなるわけですが、これは魂が入らなければ何をつくったって同じだ。わが国周辺水域の漁業の振興を図る振興部だとか、養殖研究所だとか、あるいは水産工学研究所とか、こういうのをおつくりになる。要員配置はわずか三十名、そういうようなことで果たしてできるかというのです。だから各試験場の事情を見てみると、農畜産の各試験場と比較をして、これは都道府県の関係だからここで答える必要はないとおっしゃるかもしれませんが、現実それと比較をしてみれば、きわめて脆弱ではないか。これがいままでの水産のあり方であります。水産行政のあり方でありました。ですから、そういう面でこの沿岸漁業振興のために技術開発あるいは技術者の投入をするとすれば、相当な人的能力も必要ですし、調査機能の面においても充実をさせなければならない、私はそう思うのです。そのことについて二千億の金を使って七カ年計画、ただそれでいいのかどうか。もう見直しをしなければならない時期に来ているのではないか。その点についてまずお答えをいただきます。  そして、これと関連をするわけですが、後継者を皆さんはどうしても養成をしたい。このままでほっておいたらみんな魚から離れてしまう。もう漁船に乗らない。これは大変なことだ。後継者に魅力を持たせるために、またそういういわゆる訓練機関あるいはそういうようなところも設けてやっておられるわけでありますが、その予算が今度幾らあるとお思いですか。私の調べでは九千万円ぐらいでしょう。漁業に関係する県は三十三県ぐらいあるのです。そうしますと、これは各県そこに渡っているのは二百五十万ぐらいでしょう。そんなことで、もちろん県の方もそれは魚を中心にして振興している地方自治団体は力を入れるかもしれませんが、国の政策としてそういうものが果たしてそれで可能であるか、胸を張って言うことができますか。そうしたことについてお聞きをいたします。  そしてまた、漁業離職者臨時措置法でしたか、去年一生懸命やってつくりました。これは北転船の、御承知のように日ソ漁業交渉で二十三漁種の約千二十五隻、これで約九千人くらい離職をしました。またこれと関連をして相当な減船になっています。この北転船の方もまたこの間相当減ったのですが、北転の二次減船、これでも相当これは数がふえました。こういうことに対する救済措置、そういう面についてはもちろん法律をつくったのですから、おやりになっていると思いますが、船から船へかわる場合は、これは運輸省。ところが、陸の上に上がって転換教育をするときには労働省。そしてまた、それに対する沿岸漁場整備の中に入らないにしても、その計画の路線に沿っていくならば、それは水産庁だ。こういう面で今度の予算を見ますと、これは沿岸漁業に関する限り二百十八億、こういうふうになっています。こういう面で、所信表明では盛んに沿岸漁業開発のために云々、こう力を入れていらっしゃるのですけれども、全くお粗末の限りであります。そのことについてお答えをいただきたいと思います。運輸省とかあるいは労働省にも来てもらっておりますが、その実態はどうなっているか。これは陸の方と、それから海の転船の関係における問題はどうなっているか。これは補足的にひとつ説明をいただきたいと思います。簡単にお願いします。
  54. 森整治

    ○森(整)政府委員 まず沿岸漁場整備の関係についての御質問でございますが、確かに初年度五十五億ということで七カ年二千億ということでございましたが、本年度の当初、それから一次補正、二次補正ということで、総額、全体が九十二億、来年度予算は百三十三億ということで逐次充実を図っているというのが実情でございます。その進捗率から申しますと、事業費ベースで二六・一%、今後こういう伸びを示していけばこの達成は当然可能であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、御指摘のいろいろ技術的にどうだという面につきましては、まさに御指摘のとおりでございまして、水産土木の技術がおくれておるという観点から、まさに新しくそういう研究所をいろいろスクラップ・アンド・ビルドして新しい研究分野を開いていくというのが今度の私どもの考え方でございまして、確かにいままで強いて言えば五十メートルまでの海をもっと広く使っていくという、そういう意味からは、新しい技術の開発をさらにどんどん進めていく必要があるという認識でいろいろ対処をいたしておるわけでございます。  それから後継者の問題でございますが、確かに予算額総額九千万円程度内容といたしましてはやはりいろいろ活動的なもので、施設的なものがありますと金額は非常に張るわけでありますが、この種の予算といたしましては私どもは別にひけをとった予算構成にはなっておらない。むしろ積極的に、私どもとしては相当充実した予算であるというふうに考えておりますが、この種の問題につきましては、やはり先生御承知のように、漁業全体、水産業全体、そういう中で若い人たち、ことに漁業については非常に若い労働力が必要でございますから、そういうものを確保していくということを考えていかなければならないというふうに考えております。  ちなみに申しますと、たとえば漁村の環境整備にいたしましても、来年度から事業に着手してまいるわけでございますが、そういうことも今後の一つの後継者の対策に相なるのではないだろうか。広く言えば、そういう沿岸の事業等全体が後継者対策に大いに影響があるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それから離職者の問題でございますが、御指摘のように今回の北洋の減船に伴いまして、減船をしないでむしろ転換をするということで、われわれのいわゆる監視船なり調査船なりそういうものに活用する、あるいは他省の所管にも活用していただくということをやると同時に、法律をもちまして離職者の対策を講じておるわけでございますが、所管といたしましては確かに労働、運輸両省にお願いをするということでございまして、私どもとしましてはそういう趣旨の徹底を図るということで、私ども横から大いに啓蒙に努めておるというのが現状でございます。  それから、今後もし沿岸等でいろいろ就労の機会を得るということのためには、もちろん沿岸の対策というのが事業面で大いに重視されるということも御指摘のとおりだと思います。水産庁全体といたしましても、御指摘の沿岸の対策ということには十分の努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  55. 松木洋三

    ○松木説明員 運輸省から御報告を申し上げます。  いま先生のお話の中にもございましたように、今回の日ソ協定締結に伴う減船が約一千隻、離職者数が八千名を上回るということでございまして、これらの離職者対策は大変重要であると考えておるわけでございます。現在のところ、私どものところへ入っております数字では、一月の末で私どもの方へ求職をしてまいっております離職船員が九百九十一名という数に上っております。これは相当な数でございます。これらの離職船員の方々に対しましては、従来の施策に加えまして、昨年末国会一致の御意思で御成立いただきました国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づきますところの給付金の支給等の施策を行いまして、離職船員の生活の安定と再就職の促進に、関係省ともども大いに努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  56. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先生がおっしゃったとおり、海から陸へ転換する分については労働省の所管になっておりますが、現在、船員の場合は、やはり海から海へ行くのが第一志望ということのようでございまして、各安定所に職業相談員等を置いて、職業相談その他職業紹介の実施につきまして相談を実施しているわけでございますが、海から陸へ転換する人は、現在のところほとんどまだ出てきていないというのが状況でございます。
  57. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今後の問題として、これは実績的にまたこれから議論になると思いますので、次の機会にお聞きしたいと思います。  そこで、沿岸漁業政策の面では、いま長官の方からお話がございましたけれども、予算は十分とっているとか、あるいはまだそうした面では内容的にもこれから整備しなければならぬ面もあるけれども、という前向きの姿勢のように見受けられますが、これはまだ検討する余地が大いにあると思うのです。これは要望にしておきますが、たとえば栽培漁業、この開発をいまいわゆる内水面、そういうような関係で、波静かなるところでハマチ養殖をやっておられる。漁船の方は、全く漁業者がやるいわゆる漁船事業であります。ところが、ああいうふうな湾内でハマチ養殖をおやりになる方々は、よく調べてみると、中には全く漁業にかかわりのない人がやっている場合がある。素人でもできる。一キロのハマチを養殖するのに小アジや小イワシを七キロも使って、しかも食い残しは下に沈でんをして汚染、そういう状況で魚公害というのが出てきております。赤潮が発生する。瀬戸内海の問題も出ました。あるいは鹿児島湾の奥にもそういうのがありました。これは直接関係はないのだということなんだそうでありますが、ハマチ業者にとってみれば大変なことであります。だから政策の面で、栽培養殖、それが国内の魚を潤すようになるんだという発想、これは少し検討していただかなければならないんじゃないか。もっとプランクトンをふやす、いわゆる沿岸をきれいにする、雇用の造出を図るというのは、陸の上に失業対策事業があるように、海の方にやはりそういう漁業失業者を救済する能力を持たしてもいいんじゃないか。これは去年から私は言っているのです。そういうようなことをして雇用の造出を図るということもいま大事なことじゃありませんか。そうした問題についてもぜひひとつ御検討をいただきたいと思います。  時間がないものですから、魚価、流通問題について、水産庁も来ておられると思いますので、ちょっと触れておきます。  この水産物の秩序ある輸入対策、これはもう調整保管事業の問題等あるいは魚価安定基金、こういうような問題等もいろいろございますが、最近の現実的な問題を少し申し上げて、ぜひこれからの流通体制についてお考え願いたいと思うのです。  御承知のように、昨年の十月以降でしたか、十二月二十八日から一月二十日ごろまでに七千六百五十二トンのいわゆる日鰹連が持つものがありましたが、政府調整保管の三千九百五十トン、枕崎に六百十三トン、山川に四トン、あるいは日鰹連の方でも枕崎に一千九十一トンあるいは山川に三百二十八トン、こういうふうにあったんですが、水産庁の指導価格で二・五キロ以上は二百十一円だ、こういうふうなことで、最終的に二百二十七円で買い支えていたのですが、一月二十三日ごろでしたか、一斉放出をおやりになった。ところが、生産者の方は、御承知のとおり値段が二百二十五円に下がっちゃった、大変だ、何とかしてくれ、抑えてくれ、強い要望がございました。こういうような面で、結局、串木野あたりでは、マグロが二千五百トンぐらい冷凍冷蔵庫の中にいっぱいひしめき合って、しかも入り切れないで魚を船の上で保管をしているという事情であります。結局、いま国内に冷凍冷蔵庫というのは三千七百カ所あるんだそうでありますが、最近では急速冷凍のマイナス四十度から五十度ぐらいになり、しかも巨大な冷凍冷蔵庫もあちこちにできておるというのですね。そういう保管をされることは、新しい二百海里時代として必要になってきたのかもしれません。ところが、これが値段の面で、放出をするという段階に来て、いわゆる魚転がしが起こる。商社が途中で買い占めて、これは私どもの馬場委員が去年指摘をした問題であります。そういうようなことによって流通が混乱をする。そういう措置について、いつの時点で生産者を守るか。生産者あって加工業者がある、あるいは消費者があるのですから、そういう関係の流通と、生産地から消費者へという段階における問題やら、これは非常に大事なことであります。だから、いま魚価が一応一定的に安定していると言われておりますが、そういう面で日鰹連あたりが買い支えておるからこれは大丈夫、政府が保管事業によってやっているんだからこうだという説明等がいろいろなされますが、しかし現実問題として、流通性の面において、あるいは魚価の面において、あるいは市場の卸売価格問題においても、これはいろいろと問題があるわけですね。そのことに対して、これは通産省の所管になるのですか、いまどうなっているのか。いま安定しているんなら、どういう理由で安定しているか。これは将来は、こういう二百海里時代で一千万トンという形の中では、外国の水産物の輸入もしなければならぬ、いわゆる輸入制限の問題もある、そういうことについてどういう構想をお持ちなのか、まずそうしたことについて展望を明らかにしていただきたいと思うのです。
  58. 森整治

    ○森(整)政府委員 いま御指摘の問題は、むしろカツオ・マグロの需給調整について、カツオマグロの価格が最近非常に弱含みになっている——というよりも、一ころから比べますと非常に下がりまして、昨年の暮れからことしの初めにかけましてちょっと危機状態があったというふうに理解をいたしておりますが、全体といたしましてまあまあで、カツオ・マグロは一ころ、たしか五十年に非常に価格が下がりまして、それから一応いろいろやっておりまして、またそういう問題が出たということでございますが、一つは、不況によりまして需要が減退したということ、それから為替の問題で円高ということから輸出が非常にとまってくる、そういうことから、かん詰め業者の原料魚の買い控えというのがありまして、非常に影響が出てまいったというふうに大局的には理解をいたしておるわけでございます。もちろんその中で、韓国からの輸入の問題がいろいろ指摘をされております。これにつきましては、需給協議会を設けましていろいろ調整をしておる。  そこで、国内といたしましては、先ほどの先生御指摘の日鯉連の自主調整保管、それから場合によりましては政府の指示によって調整を行うということで、これにつきましてはもちろん、冷蔵施設が不足しておるというふうにはわれわれ考えておりません。むしろそれだけのオーバーフローがあったというふうに理解をいたしておるわけでございまして、今後ともいろいろな対策を講じて、価格の安定に努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございますが、一ころよりはやや持ち直したというふうに、いまのところ私ども判断をいたしております。今後もっと需要を開拓するというようなことにつきましては、われわれできる限りの努力をしたいというふうに思っております。
  59. 篠浦光

    篠浦説明員 水産物につきましては、先生御案内のとおり、国内消費に必要な量の大部分国内で漁獲されております。数字を申し上げますと、国内生産量は五十一年度約一千万トンでございますが、輸入量は百十万トン、それから輸出もございまして約百万トン。単純に差し引きしますと、ほぼ国内で賄われておるというようなかっこうでございまして、輸入に依存する割合というのはかなり小さいということでございます。しかしながら、水産物の輸入問題につきましては、特に多獲性の近海魚、これは中小の沿岸漁民の方々の漁獲物でございますので、現在輸入割り当て制をとっておるということでございます。その場合、国内漁業との調整を図るということで、輸入の量につきましては水産庁と協議しながらやっておるということで、需給の安定を図りながら水産物の秩序ある輸入というものに努力してまいりたい、かように考えております。
  60. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣からもひとつ見解を聞かしてください。
  61. 中川一郎

    中川国務大臣 カツオ・マグロの現状が非常に厳しいということはよく認識いたしております。これは輸入の問題もありますが、不況からくる消費の減退、こういうようなことで、非常に危機状態にありますが、ようやく最近芽を出したかな、よくなりつつあるかなというところまで来ておりますが、今後とも輸入の問題あるいは調整保管等を確実に実効あらしめて、何とか活気のあるものに戻したい、これからも最善を尽くしてまいりたいと存じます。
  62. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が来ましたので最後に。いま魚離れというのが現実の問題になっております。確かに、農畜産物輸入枠拡大とか、いろいろな問題はあったにいたしましても、日本人が摂取している動物性たん白質源は、かつてはいわゆる農畜産物を上回って魚の方が優位に立っていたのです。五一・二%ですね。いまはもうそれこそ逆転しまして、魚の消費量は非常に弱い。こういうように現実の問題になってきているので、これからの水産業振興の面では——確かに農林水産省というのをおつくりになった。私どもは、いまから議論をするわけですけれども、単独の水産省をつくる、そうしたことによって機能を発揮できるように、先ほども申し上げましたように、わずかな人員を配置して水産振興を図るなどという幻想だけではなくて、魂を入れなさい、そして真剣に取り組んでくれ。外交の面においてもそうだ。漁民を守っていく、漁民に夢を与え、希望をつなぎとめさせるということは、いま日本政府がやらなければならない大事な仕事だと思うのです。これからの漁業再編成の問題を申し上げましたが、流通、魚価あるいはそうした機構について一大メスを入れてほしい、そうしなければいまからの二百海里時代にわれわれは対応することができないだろう、そういうことをいままで申し上げてきたわけであります。  そうした面について、農林大臣は、おれは水産問題もよく知っておるのだとおっしゃっておるのですから、知っておられるなら知っておられるなりに、何か活気ある芽が出てくるように、そのことを締めくくりにして、あなたのお考えを聞いて終わりたいと思います。
  63. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国は海洋国で海に囲まれているというところから、魚は動物たん白質の重要な供給源であった。今後も、畜産その他は伸びてまいりますけれども、やはり相当大きなウエートを占めます。そういうときに、取り巻く情勢は厳しく、また問題も多いことはよく承知いたしておりますので、一遍にはよくなりませんけれども、将来にわたっては制度の見直し等も行ってしっかりしたものにしていきたい、対処してまいりたいと思います。  決意の一端だけ申し上げまして答弁といたします。
  64. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、午後零時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後零時三十二分開議
  65. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  66. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、野菜価格安定対策と米の生産調整との関係を中心としまして質問をさしていただきたいと思います。  まず最初に、野菜の暴落問題について質問をしたいと思うわけでございますが、ここに私は二枚の送り状を実は持ってきたわけでございます。これは私の友人で、私の隣村、富里村というところに、農協の理事をしながら畑作を一生懸命やっております佐藤繁夫君というのがおりまして、一枚の送り状は、ことしの二月五日発で二月六日売りりという白菜を、二トン車のトラック一台に積んで神田市場の東一会社というところへ持っていきました送り状なんでございます。この送り状で見ますと、単価、八キロ一把平均百三十二円、こういう相場になっておりまして、トラック一台の収入が四万二千百八十円。ですから、このトラックで二回分運びますと、約一反歩、十アールといいますかの白菜が消える、こういうわけで、この一枚の送り状でもらってきた代金が四万二千百八十円、これを二回持っていって八万四千三百六十円というのが一反歩の白菜の収入になるようなんです。  その佐藤さんが、同じくちょうど去年の二月七日売りで十五日清算、一日違いで納めた白菜の売買の仕切り書を持ってきたわけなんですが、これを見ますと、これもやはり東京青果というところへ白菜を納品しているのですが、八キロ一把のもので三百円、トラック一台で九万一千四百二十円、こういう総収入になりまして、そこから農協と経済連の手数料を引きますと八万一千八百二十一円、大変細かい数字を申し上げて恐縮でございますが、これで見ますと、ことしの白菜の値段というのは去年の半分というように暴落をしているわけでございます。  実はこの佐藤さんというのは満州から戦後、成田の隣の富里村へ開拓農家で来まして、それまで満州で魚屋さんをしておったそうですか、開拓農家農業に入って、そして中学を卒業すると農業に専業で打ち込んできた。その彼が実は感激しながら話すことなんでございますけれども、昭和三十二年、いまから二十年前に、去年それからことしと納めたこの八キロの白菜を初めて神田の市場へ持っていった。そのときのキロ当たりの値段は九円五十銭であった、トラック一台持っていって二万円になった、こういうわけなんですね。当時、白菜をトラック一台積んでいったってとてもそんなたくさんなお金にはならないよと言われたんだそうでございますが、彼が開拓農家としてようやく白菜をつくれるようになって、そしてトラック一台積んでいって二万円になった。隣のおやじが大変びっくりして、二万円になったら一級酒を買う、こういう話をしていた。その当時はまだ、昭和三十二年ですから、農村ではしょうちゅうか合成酒を飲んでいたころなんだそうですけれども、白菜が非常にいい値段で売れたということで、隣のおやじに一級酒をおごった。農家にしては当時一級酒を飲むというのは大変なぜいたくじゃなかったかと思うのですが、そのぐらい、白菜が高く売れた農民としての感激というのを二十年たったいまも忘れずに覚えているというのです。  その二十年前のこの白菜の値段と比べて、それじゃ去年、ことしという白菜の値段を見ると、これは暴落も非常にはなはだしいのではないか。そういう点で、この二十年間農民の生活水準というのはどんどん変化し、向上してきた、せざるを得ない状況に追い込まれてきているのだけれども、白菜の値段を見る限りでは、値段がさっぱり向上してない。  それで、二十年前と今日の物価を調べてみても、二十年前九円五十銭だった白菜はいま、これはキロ当たりでございますけれども、十六円。一・六倍しか白菜は値上がりをしていない。ところが、この二十年間、物価はどうかというと、十倍から、物によっては百倍、こういう諸物価の値上がりをしているのに、白菜を中心とする野菜の農産物というものは依然として低迷をしている。  それからまた、同じように私、昨二月九日のやはり神田市場の愛知県のキャベツをちょっと調べてみたのでございますが、これが十五キロのもので三百円。これから運賃、手数料あるいは箱代、袋代、こういったものを引きますと、農家の手取りはゼロになってしまう。こういうように、キャベツにおいても同様の現象があるわけです。  こういうように、白菜なりキャベツなりあるいはまたそのほかの、大根その他も同様と思いますが、野菜のこうした低落現象、暴落現象というものに対して、農林省としてこういう実態をどういうふうに把握しておられるか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  67. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 野菜の価格の変動が確かに御指摘のようにあることは事実でございます。昨年秋からことし一月、二月にかけまして秋冬期に出回る野菜は、作付面積はほぼ前年並みでございましたが、昨年十一月以降の異常な高温によります暖秋、暖冬の影響によりまして作柄が良好になったのに加えまして、生育が早まる。そのためにいわゆる前進出荷が行われたのでございまして、それによりまして豊富な出回りとなっております。このため野菜の市況は、一方では暖冬による白菜等の消費の減退、なべ物が少ないというようなことで消費の停滞がございまして、価格は低迷を続けてきたのでございます。  このような価格の異常な低落に対しましては、重要野菜につきまして農林省といたしましては一定の基準価格を決めまして、それから下がる場合には価格補てん事業を行うということでやってきておるわけでございますが、昨年来の異常な価格はその補てん事業をもってしてもなかなか防止し切れないということがございまして、いわゆる市場隔離事業というものをやったのでございます。白菜につきましては昨年の十一月十八日から二十六日にかけまして茨城県産のものにつき、またキャベツにつきましては十二月七日から十三日までの愛知県産のものについて市場隔離をして、市場に出回らない、つまり供給量をカットするという対策を講じてきたところでございます。  このような対策によりまして異常な価格の低落を防止する、そのことによりまして野菜栽培農家の経営の安定を図る。野菜は総じて長期的に見た場合には価格は物価上昇程度に推移いたしておりますけれども、短期的に非常に変動がある。変動によりまして暴落したときには次の年暴騰をするというようなことがございますので、できるだけ安定的な作付をし、収入も安定をして、野菜作経営農家が安定をするような対策を種々講じております。  御指摘のありました長期的に見てどうかということでございますが、作付面積は国全体として見た場合には微減でございますが、反収の増がございます。片一方価格については、個々の野菜についてはそれぞれ区々でございますけれども、野菜全体をならして見た場合には、先ほどお答えいたしましたように、趨勢的には消費者物価の上昇程度の上昇をしてきておるというのが現在の実情でございます。
  68. 小川国彦

    ○小川(国)委員 先日私は、千葉県の八街町というところで野菜づくりに励んでいる農村青年たちと懇談会を持ったわけなんです。この地域は千葉県の北総地帯、こう言われるわけなんですが、非常に畑づくり専業の農家が多うございます。いま私どもが水田地帯から畑作地帯の農村を回っても、まず出かせぎに行っていない農村というのはないわけなんですが、この北総地帯の畑作づくりの農家だけは出かせぎがほとんどないわけなんです。年寄りの夫婦から壮年の夫婦から若夫婦と、三夫婦ぐらいそろって一生懸命野菜づくり、畑作農業をやっておるわけなんです。そういう点では、こういう農業地帯こそ政府も力を入れて大切にしていかなければならないまさに専業農家群じゃないか、こういうふうに思っているわけです。  この青年たちと懇談会をやった席の中で、これはぜひ農林大臣にもこういう青年たちの声に対してどういう所見を持たれるかちょっとお聞きしたいわけなんですが、まず第一の青年の声は、野菜の問題についていえば、国の安定事業というのは消費者本位のものではないか、もっと農民の立場を考えた行政であってほしい。東京都の野菜の価格で消費者の物価指数が決まる、この点には非常に矛盾を感じている。消費者中心の農政ではなくて、農民と消費者の双方を見据えた農政としてあるべきだ、これが第一の青年の声です。  第二番目の青年の声は、日本政府を支えているのは農民である。そして、農家の基盤の上に成り立っているのは自民党政府である。その自民党にいまほど農政の中で非常に不信を感じてきているときはない。自民党も危ないですよ、こう言っているわけなんです。  それから三番目の青年は、トヨタ自動車一社の税金と全国農民の税金が同じだという。テレビや自動車の売り込みも大事だろうが、ドルをためることばかり考えないで、農業が自立できることも考えるべきではないか。減反とか生産調整とかいって農家の生産意欲を失わしめるだけではなく、農民の働く心まで失わせてしまっているのではないか。  それから第四番目の青年は、野菜の単価は十年間変化していない。穀物単価が高ければある一定の面積をそちらへ移す。企業的には連鎖的に考えられるだろうが、これとは逆に米から野菜に切りかえようというのは無理ではないのか、そういう意見。  それから五番目の青年は、このほか種の問題、出荷経費の問題、容器の問題など細かい点が次々と意見が述べられたわけですが、なぜ野菜が安いか。これは野菜の安定事業とか出荷奨励金という制度を見ると、どうも政府の点取り主義が目立って、消費者サイドの考え方が見受けられて農民の立場ではないのではないか。政府が奨励金を出せば作付はふえる。作付がふえると需要と供給のバランスが崩れて、生産費を割ってしまうようなことになる。奨励金で農民を踊らせてしまうのではないか。  それから第六番目の青年、これは一番最後ですが、ともかく農業百年の大計を見たら、農家が再生産できる相場を常に考えてくれないと、農家に嫁の来手がなくなって農家は滅んでしまう。豚を飼うのに一千万円補助金を出すからやれと言って、自立できるかどうかというところへ来たら輸入をする。朝日の差し込んだころだと思っているともう夕方になってしまっている。この辺で日本農業をどうするか。オランダの干拓事業を見ても永年継続してやっている。日本の八郎潟はきょうやってあすやめるという状態だ。もっと大計を持つべきではないのか、こういう声が農業に打ち込んでいる青年の仲間たちの声として切実に訴えられ、語られたわけなんです。  農林大臣は、こういう農業青年たちの声というものをどういうふうに農政に受けとめ、生かしていくという考え方をお持ちになっていらっしゃるか、その点をお伺いしたいと思います。
  69. 中川一郎

    中川国務大臣 農村の青年の声は、われわれも地方へ行きますと幾つか出てまいります。その中にも当たっているものもあるし、ちょっと間違っているなというのもあるわけです。しかし、総じて農業が置かれている立場、地位が低い、これはもう認めざるを得ないのではないかと思うのです。それは、前から申し上げましたように、わが国は高度経済成長、そして第二次産業、工業製品を中心にして異常な発展を遂げたわけでございます。したがって、そういったところに働く労働者の賃金が、それらの方々には御不満があるようですが、農業者に比べると非常に上がっておる。それが公務員、国家公務員から地方公務員の教職員、役場に至るまで、すなわち農村の周りどころではなくて、自分のところの働くお嬢さんの月給の方がお父さん、お母さんが先祖伝来の土地を大事にして汗水流した収入よりは多い、こんなばかなことがあるかという気持ちがあることだけは言えるのではないか、こう思います。  そこで、私たちはいつも農政を展開する場合に、高度経済成長についていけといっても、これはなかなかついていけない。毎年ベースアップが一〇%とか一五%上がるわけでございますから、それについて農家所得を上げるといっても、これはなかなか大変だ。安定成長は、単なるドルの問題とか日本経済とか資源の問題とか、いろいろあるけれども、やはり第一次産業とバランスのとれた発展をとるという意味においても安定成長というものが必要ではないか、この辺を直さなければとても農村はついていけない、私は、根っこの問題についてこういうとらえ方をいたしておるわけでございます。  したがって、最近安定成長になり、むしろ不景気になってまいりますと、町で働く場所がない。いままではだれでも大学に入れて、だれでも就職ができるというところですから、農村から離れていくということではありましたが、最近は安定成長となり、やはり農村がいいかなということでUターン現象も見られるというぐらいに空気は変わっていくのではないか。そうした事情を背景にして、これからひとつ農村に日の当たるようにしていこうというのが、私のいまの決意でございます。  そういう大局的な中に、いろいろ御指摘ありましたが、野菜についても、先ほど局長から答弁がありましたが、時期、場所によってはずいぶん上がったり下がったりいたしますけれども、われわれの統計によれば、消費者物価の値上がりと野菜価格の値上がりというものはそう大きな違いはない、まずまず並行してというか、同じ傾向をたどって価格は引き上げられておる。もちろん昨年暮れ以来の暖冬、しかも消費も減退をする、なべ物を食べないというところから、異常な値下げのときにはそういったことになりますけれども、またこれが高いときもあるというようなことで、野菜農家が塗炭の苦しみを全国的にしているとは思わない、部分的、地域的には、あるいは特に時期的にはそういうことがあっても、そう過酷な姿になっていないのではなかろうか。まあ昨年秋以来のことは非常に深刻な問題がありますから、これは対処いたさなければなりませんが、そう大きい目でひどい、先ほど御指摘のような物価は上がったが野菜は上がらないというようなことには、傾向上、数字上はなっておらない、こう認識しております。  それから、減反政策が農村をいじめる最大のものだというふうにとられておるのですが、私は、これは政府が減反をしなければならぬようなことをしてきたのではない、やはり社会の情勢が米を食べないという空気、また米が異常に生産されるということから来たものであって、減反政策が農民を苦しめるのではなくて、社会の情勢がそうなったので、政府がそれに対処をして農民の理解と協力を得て他に転換をするということであるので、この辺のところをすべて政府に持ってくるというのはいかがかな。  それから、野菜の問題についても、これは消費者だけを考えて生産者を考えておらないという御指摘もあったようでございますが、私は、そういうことはない。むしろ、どちらかというと消費者の方からの不満の方が多いのではないか。われわれ台所にある野菜は高い、高い、安いという喜んだ言葉はないのであって、いまの価格制度の仕組みも消費者本位ではなくて、やはり下がったときに何とか農家の生産がおかしくならないようにと仕組んだものではないのだろうかな、こう思うわけでございます。  また、豚についての御意見もありましたが、豚も、いまは大体えさも安くなり、夕方にはなっておらぬのじゃないかな。いまはまだ朝日が達した勢いのいいところまで行っておるかどうかは知らぬが、夕方を迎えておらない。豚農家はいま安定しつつある。  総じて、私たちも地方を回りますが、世に言われるようなことをとらえて余り神経質になっている点もあるのではなかろうかなと私の経験からも考えるところであり、ただ相対的に、高度経済成長下における日本農村というものが全体的に弱い立場にあった。合理化なり所得の増大にはなかなかでき得ないものであった。しかし、安定経済成長になれば、むしろ非農家よりは農家の方が相対的によくなってくるのではないか。このことは、蛇足でございますが、貯蓄率においても農村の方が非農村よりも多い。これは先々心配だから貯蓄性向が高いのだ、無理して貯金しているのだとも言われますが、外国に出ておられるお客さんの中でも農村の占める旅行客が非常に多い等々、苦しい面もあるけれどもいい面もあるのではないか、こう思っておるわけでございます。     〔委員長退席、羽田委員長代理着席〕
  70. 小川国彦

    ○小川(国)委員 何か農林大臣のお話を聞いていると、農家も安心していいような気持ちに襲われるのでございますけれども、しかし現実の数字は先ほど申し上げたように、二十年たっても相対的な比率の中ではむしろ下がってきている、こういうことは隠せない事実でありますし、それから現実に野菜専門で来ている農家がその営農の中で行き詰まってきているということは、これもいま私が申し上げた数字、具体的にトラックに積んで持っていっても、諸経費を引いてしまうと手取りが全く残らない。これはもう非常に厳しい声でございまして、私は、昨年の暮れに、野菜の暴落状況を心配してずっと畑作地帯を回ったのです。夕方農村の出荷場へ参りますと、そこに三々五々集まってきた農村の人たちが皆神田の市場の相場に耳を傾けているのですが、これが非常に打撃的な低相場しか出てこない。選挙で言えば、まさに落選した晩のような空気で、一杯飲む元気もない、そのくらい非常に深刻な状況なんです。そういう点では、私は、もう少し農林大臣にもその辺は厳しく認識をしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  それから、いま農村の貯蓄率が非農村よりも高い、こういうことをおっしゃっておられるのですが、これは農業収入の上での貯蓄率ではなくて、大資本の土地買い占めの中で土地を手放した農民の貯金が非常に高いんじゃないか。私ども千葉県の農村を見ていると、もう農協自体が貯金優先で動いています。そういう点から見ると、これは大臣が言うように、確かに貯蓄率は高いけれども、それは農業収益の貯蓄ではなくて、土地を売った収益だ。現にいま私が申し上げた富里村などでも、具体的な数字はちょっと私失念いたしましたけれども、貯蓄率は落ちているのです。それから、むしろ農協から借り出している率が多いわけです。大体農村は年の暮れに野菜の売り上げで借金を返すというのが多いのですが、その借金が返されない状態が起こっているわけなんです。ここ二年ぐらい続いてきているわけです。  ですから、そういう点では、私は、大臣が言われるように、そう過酷なものになっていないのではないかというような楽観的な見方ではなくて、やはり高度成長から安定成長に行った、その中で安定するんじゃなくて、いままで落ち込んでいた農村がさらに落ち込んでいく、こういうおそれを野菜農家の問題を見ていて私は痛切に感じるわけでございまして、これはもちろん農政全体で農家のレベルアップを図らなければならないと思いますが、やはりそういう意味では野菜づくり農家の問題もひとつ真剣に御検討をいただきたい、こういうふうに思います。  それからもう一つ、いまはしなくも大臣から出ました物価指数と野菜の関係なんでございますが、野菜の場合には季節商品的なものでございますから、物価指数の中から除外すべきものではないか、こういうふうに私は思うのです。たとえば、野菜は高いときには反収量というものは落ちている。それから逆に、野菜がたくさん収穫されたときには暴落して収入が落ちる。こういうようなもので、いろいろ物価問題に対する都市の主婦の感覚でいくと、主婦の生活感の中ではおっしゃるように野菜が高い。大臣のおっしゃるように主婦の声もあるわけなんです。ところが、家計費の中に占める割合を見ますと、野菜は年間五万円か六万円しか買ってないのです。これを一般の家庭の年間平均二百五十万円から二百六十万円の生計費から見ますと、二%か三%の比率にしか野菜はなっていないのです。ところが、現実には物価指数の中で、野菜が高いから物価が上がる、こういうような説明をされるのでございます。  私、農林統計で調べてみましても、都市世帯における年間支出金額は、昭和四十八年で野菜にかける支出は三万七千円、それから昭和五十二年で五万円、こういうわけで、家計費の中に占める割合も非常に低ければ、物価指数の構成要因としては不適当ではないかと思うぐらい非常に安値の状態にある。それから、非常に変動の多いものである。こういう点からは、物価指数の中から除外すべきものであるか、あるいは一歩譲っても季節的な修正をしないというと、物価指数の中に三月期だけの非常に高値の野菜の値段が繰り入れられていく、こういうことも問題ではないのか。そういう点では、福田さんが経済成長の中で消費者物価の問題を非常に気にされておりますが、しかしその中で野菜に責任というものを負わされると、いま申し上げた実態から見てもこれは非常に無理があるのではないか、こういうふうに考えるのですが、農林省としてはこの点、どういうふうにお考えになりますか。
  71. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 消費者物価指数の中で野菜の占めるウエートは、全国指数におきましては二・八%、東京都区部の消費者物価指数におきましては三・〇九%ということで、いま実例的にお話がございました金額と比べまして、そう開きがあるものではないというふうに存じます。  そこで、野菜の指数でございますが、これは時期的に野菜の消費の内容が異なります。したがいまして、品目構成といたしましては月ごとあるいは季節ごとに移り変わりがあるのは当然でございまして、そういうことから、いま申し上げましたのは周年でございますけれども、品目別の入れかわりを含みつつ大体三%ということでございます。  確かに御指摘のように、季節商品である、季節的に価格の変動が大きい、その点からこれを消費者物価指数の中にそのまま入れるということはいかがであるかという御指摘、御意見、確かに一理あるものというふうに存じますが、消費者物価指数は大体消費者サイドから見た場合の実感を数字的にどう反映するかということでございまして、そちらのサイドからすれば季節商品であろうとやはり入れていかなければ、消費の実態を数字的に示すものにはならないということがございまして、これに入れられることはやむを得ないものではないかというふうに考えております。  ただ、三月期だけをつかまえて上がり下がりがどうであろうかということでは、これは確かに御指摘のようなことがございます。そこで、五十三年度の物価の見通しといたしましては、従来は三月期を対前年比ということで前年の三月と比べて上昇率が幾らかということで数字を出しておりましたのを、五十三年度におきましてはそれぞれの月の前年比を出しましてそれの平均を出す、いわゆる年度平均の上昇率を見るということによって出される数値を一応の目標値として考えるというふうに改めることになったのでございます。こういたしますと、三月期だけをつかまえて野菜が高いの安いのという問題は緩和されるというふうに考えております。
  72. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その問題はまた今後の問題といたしまして、先ほど農林大臣に私が指摘したように、この本年に至る野菜の暴落というものは大変な状況があるわけですが、こういう状態のところへ追い打ちをかけるように米の生産調整をやり、畑作への転換を安易に推し進めよう、こういうように受け取られるわけでありますが、これで野菜への影響はどういうようなことになってくるか、野菜への転換率、その面積をどう押さえているか。
  73. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 これまでの野菜の転作面積について若干申し上げたいと存じますが、大体野菜の総作付面積の一〇%程度というのがこれまでの転作の実績でございます。野菜の作付総面積は、生産調整が始まりました四十六年には六十五万一千ヘクタールでございまして転作面積は七万三千ヘクタール、五十一年は総作付面積が五十九万七千ヘクタールでありましたのに対して転作面積は六万四千ヘクタールということで、ただいま申し上げましたように、おおむね一〇%程度ということで推移いたしております。  価格につきましても、先ほど大臣からお答え申し上げましたように、全体としては短期的な変動があるものの、趨勢的には一般物価上昇程度の上昇で来ておる。ということは、やはり稲作転換が行われたにもかかわらず全体の作付面積が微減でございまして、需給のバランスがとれてきたというふうに見られるわけでございます。  そこで、五十三年度以降の転作でございますが、今回の水田利用再編対策におきましての転作作物の取り扱いといたしましては、麦、大豆、飼料作物等、これら需給上問題のないものに重点をかけるということで、奨励金におきましても一般の奨励金単価より高い単価とする。それから、需給上問題のある、たとえばコンニャクのような非常に過剰生産に陥っておるというものにつきましては、これは転作の奨励措置にしないということといたしておりまして、野菜につきましてはその中間のものでありまして、奨励措置としては通常の奨励措置にするとともに、転作の実行に当たりましては需要の動向と見合って慎重に対処すべきものというふうに方針として出しておるわけでございます。  ただいま御質問のございました、ことしの転作による野菜の作付面積がどのくらいであるかということにつきましては、まだ農林省としてどのくらいになるのか、ただいま各県におきまして転作面積の配分を市町村におろし、農家段階におろし、目標転作面積を詰めておる段階でございますので、正確な数字はわかりませんが、情報によりますと、大都市周辺を中心にして若干増加するんではないかというふうな情報を得ております。来る二月十七日に全国で野菜の需給協議会を開くことといたしておりまして、その時点でわかります情報をさらに持ち寄りまして、今後の作付がどうなるか、さらに詳細分析をしてまいりたいというふうに考えております。
  74. 小川国彦

    ○小川(国)委員 昭和五十二年のときには二十万ヘクタールのうち約六万ヘクタールが野菜にかわった、こういうことですね。五十三年は五十万ヘクタールのうち最終的には十万ヘクタールくらいが野菜にかわるだろう、こういうふうに推定されていますが、この数字についてはどういうふうにお考えになりますか。
  75. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 ただいまお答え申し上げましたとおり、まだ全体の数字がどうなるかつかんでおりません。作付が現実に行われますのは、やはり転作面積の全体が各農家ごとにどうおりて、それに対応して野菜の作付をどのくらい転作の場合にやるかということがはっきりしませんと出てまいらないのでございますが、都道府県なり県庁なりあるいは県の経済連等の情報をできるだけ早く集めて、情勢をつかみたいというふうに思っております。十万ヘクタールであるかどうか、その数字がどうなるかについては、ただいまのところ、ちょっと申し上げかねる次第でございます。
  76. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、こういう見通しがない形でいたずらに畑作とか野菜への転作が進められていくということは、一体いかがなものでございましょうか。これは、およそ三十九万一千ヘクタールの減反の対象の中で、たとえば飼料作物は十万ヘクタールとか大豆と麦は十万ヘクタールとか、それでひとつ五〇%以上の生産の転換をさせていこう、そういう中で野菜もいま見通しとしては、二月、三月の最終的にやればほぼ十万ヘクタールになるだろう、そういう見通しを一般的には持っているわけです。そういうようなことについて見通しなしに推移していった場合、野菜にどっと転作が進んでいった場合、この暴落が拍車をかけられるという事態が起こるわけで、その辺のおよそのめどというものをお持ちにならなければ、農林省が畑作転換、野菜への転換と言っても、見通しなしにそういうことをやっておられるということになりますが。
  77. 中川一郎

    中川国務大臣 この点が非常に大事なポイントでございます。私どもも転作奨励金を差し上げることはいいけれども、そのことによって水田は奨励金というげたをはく。その結果、周りのまじめな畑作作物に影響を与えて、いわゆる転作洪水ということで周りがまいってしまうのではないかということを前々から指摘もし、その点を配慮をしてきたところでございます。したがって、いままでの転作でもそういう傾向なしとしない。たとえば、北海道では小豆が転作作物としてつくられる、その結果小豆が暴落をする。転作地ではげたをはいているから何とかやっていける、しかし周りの畑作農家ではどうにもならぬ、まいってしまうということでございます。そこで、そういうときには北海道に小豆を余りつくらないようにという指導をしながら、周りの畑作に迷惑をかけない指導をいたしてまいったわけでございます。  そこで、今後これはどうなるのかということですが、先ほど局長が御説明申し上げましたように、幾らつくっていただいても価格に迷惑を及ぼさない、たとえば麦、大豆、それから飼料作物、これは肉という段階で価格政策をやっておりますから、こういった価格政策のしっかりしたものならば幾らつくってもらっても値段が保証されておりますから下がらない。ところが、コンニャクのような、もう過剰生産でどうにもならぬところへまた生産奨励金というげたをはいたコンニャクができますと、たちまちそれが洪水になってコンニャクがまいってしまう。こういうものは転作の対象としない。そういう品目を全部で七つほど指定しておるわけです。  そこで、野菜はどういう位置づけかというと、奨励するものではない。先ほど言った価格政策のあるものは、奨励金をさらに上積みしてげたを二回はかしてうんとつくってくださいということになっておるわけでございます。野菜は禁止品目には入っておりませんで一般の奨励金が出る。じゃ、十万町歩もふえたらいまの六十万町歩の野菜に大影響を与えるではないか、まさにそういうことでございます。でございますから、その点は禁止作物にすべきかどうか、私としては判断に迷うところでございます。禁止をすればこれは一番いいのでございますが、そうするとまた野菜不足という、野菜地帯は大概都市近郊でございますから、壊廃地も相当ありまして、そのことが野菜高になってもこれは大変だ。  そこで、どうするかというと、県に指導して、たとえば千葉県ならば、いま野菜は非常に困っておる、ここでつくられたら困るからというので、県が転作をお願いする段階で指導していただく。県段階には需給協議会というものもありますから、その辺のところで、野菜をつくったら既存の人もまいりますし、野菜をつくった人もまいりますから、まあほかのものにしてくださいというような指導行政によって転作野菜洪水を起こさない、こういうことで処置をしていきたい。そういうことで全国調整をした結果どの程度にふえますか、私はこの野菜のことを一番心配して、県段階での指導をきめ細かく見守っておるということでございます。
  78. 小川国彦

    ○小川(国)委員 答弁になりませんね。結局、生産調整を強引に進めていきますと、いま大臣が言ったように、田場所でたんぼをつくっていた農家は最低四万円の土台がある。その上に五万円を畑でとれば九万円の収入になる。ところが、畑場所の人は、一生懸命やっても五万円は五万円にしかならないわけです。ですから、四万円の奨励金をもらってそこで五万円かせいだ田場所の野菜と、それから五万円にしかならない畑場所の野菜ともろに勝負したら、単価で勝負にならなくなるわけです。そして、一般的に言われることは、野菜は大体一割ふえると三割値が落ちるというのですね。二割ふえてきたら五割値が下がる、こういうわけですよ。いまの十万ヘクタールが畑の野菜に回っていったら野菜の価格は五割ぐらいの暴落が予想される。ことしもう手取りがない野菜づくりの農家が、さらに五割暴落したら一体手取りはあるのかどうか、こういうところまで追い詰められると思うのですね。  そういう点で、いまの大臣の答弁を聞いていると、禁止作物にするかどうか、これも見当がつかない。県段階を見守るということでは、これは幾ら転作奨励、農林省が畑作転換をやるといったって、野菜をどれくらいやらせるかというめどもなしにこういう転換策を進めるということは、これは納得できないですよ。
  79. 中川一郎

    中川国務大臣 ですから、奨励をしてうんとつくってください、御安心くださいというものには奨励金を出して、そして周りに迷惑をかけないように品目について指導する。それから、これをつくられたら困りますという禁止品目あるいは制限品目というものも決めておる。しかし、それ以外の作物は、これは県が指導して、そして県内での野菜の需要以上のものをつくっては困ると、その段階で処理すれば、かなり私は効果があるのじゃないか。これはやはり県は県民農家のことを考えているわけですし、また町村に来れば町村段階でも指導するということで、そう大きな乱れを起こさずに済むのではないかなと思うのですが、さらに御指摘もありましたから、そういった過剰生産にならないように、県あるいは市町村を指導するように——私は本当に野菜のことは心配しているのです。そのことによって野菜洪水を起こすというようなことになれば大変だということでございますから、一層の指導をして、不安のないように措置をするように指導してまいりたい。  それから、御質問は、野菜は何ぼぐらい、あるいは何は何ぼぐらいという全国の面積目標を決めてという、そういうことの御指摘がございましたが、これはやはり地域地域に事情があることでございますから、積み上げ方式によっていく以外ないので、上から野菜は何ぼ、大豆は何ぼと、こう頭から押しつけてやるべき仕組みのものではないのではないか、地域地域の事情を参酌して、その地域で一番いい形のものをつくって、その結果野菜が何ぼになり、大豆がどうなったということではないかと思うのです。
  80. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣がくどくど繰り返しても、それはだめですね。  米の九%減反で、米づくり農家はまず収入の一割から二割減るわけですよ。それが今度なだれのように畑作に転換していって野菜づくりになって、また農家がそのために三割から五割という収入減になっていくわけですよ。この打撃は畑作にいくほどさらに大きいわけです。ところが、野菜に転作する目標のめどを農林省が持ってないということは、これは幾ら自由主義経済の中でも許されないと思うのですよ。そういう安易な形で、こういう四十万ヘクタールの減反なんというのは、幾ら野菜に転換するかという転作目標が示せないなんということでは、これは納得できないですよ。
  81. 小島和義

    ○小島説明員 私からちょっと野菜の取り扱いにつきましての経過を御説明申し上げたいと存じます。  この五十二年度現在におきまして、約十九万ヘクタール余の転作が行われておるわけでありますが、野菜はその中におきまして六万ヘクタール余を占めておりまして、現在、すでに国内に供給されております野菜の中でかなりなウエートを占めておるわけでございます。したがいまして、たとえば全面的にこれを転作を認めないということになりますと、それだけのものは国内の供給から落ちてしまうという問題がございます。  それでは、お話のように、仮に認めるにしても、何万ヘクタールという目標を示し、その中で認めたらどうかという御意見もあるわけでございます。ただ、ここで非常に扱いがむずかしゅうございますのは、野菜はもちろん大部分のものが市場に供給されるというものになるわけでございますが、農家自身もまた野菜の消費者といたしまして、自家消費分というものを持っておるわけでございまして、今日のような全面的な転作対策というものが始まります以前におきましても、農家が水田の片すみにおいて野菜をつくるというふうなことはあったわけでございます。したがいまして、農家の消費いたしますもの、さらにまた野菜と一口に申しましても、ただいま暴落を起こしておりますようなもののほかにさまざまな種類の野菜があるわけでございますから、そういうものを面積をもって抑えるということはどうも適当でない、こういうふうに判断いたしておるわけでございます。
  82. 中川一郎

    中川国務大臣 この野菜の面積を、四十万町歩のうち何町歩ぐらいがいいということを地域地域の事情に応じないで決めることもむずかしいし、あるいは大豆を何町歩つくってくれといっても、これまた品種の問題や排水の問題や技術の問題や、これは上から抑えるものではないと私は思うのです。減反の面積、やり方も、やはり理解と協力によって、野菜の事情や何かを考えながら、土地条件を考えながら、これは市場だけで面積が決まるものではありませんで、いま言った土地条件あるいは技術の問題等々、それから趣味嗜好もあって、国が何町歩転作してくれと言うようなことは、やれと言われてもこれはできがたいことでございますから、野菜についてもやはりその地域その地域の事情、県々でも需給調整協議会ですか、そういった機関で相談しながらやっていただく以外にない。これは政府の方から、野菜は何町歩、大豆は何町歩、ビートは何町歩、それを県別に割ってというふうに上から押しつけていく性格のものではない。あくまでも理解と協力によってそれは考え出していただいて、そうして野菜にも迷惑をかけないように、また転作される人も一番いいように、そういうものを求めていくこと以外にない、こう思うわけでございます。
  83. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農林大臣のは答弁になってないですよ。米で一割減反して、それで頭をおっぺしたわけですよ。おっぺしたしわ寄せが野菜の方へいって、今度は五割ぐらいの値下げになる、暴落になる方へおっぺしちゃった。だから、そこのところへ起こる事態というものをやはり農林省としては予測しておかなければならないわけですよ。飼料作物をどのぐらいにするのか、野菜はどのぐらいにするのかという目標値をきちっと持ってなくて、ただ府県で適当にやってくれ。みんな野菜へ来たらどうなります。それこそいま起こっている暴落現象にさらに拍車をかけて、米づくり農家の打撃ではなくて、今度は野菜づくり農家にも打撃を与えることは明らかなんですよ。だから、その転作目標を農林省が持ってない、数字を示せないということでは、これは農民は納得できないと思いますよ。  委員長、この点については理事会でひとつはっきりした農林省側の答弁をしてもらうようにお諮りいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  84. 中川一郎

    中川国務大臣 作物別に、転作四十万町歩を、何を何町歩つくれ、何を何町歩つくれということが上から言えることかどうか、これは自由主義経済で自由流通のときに——統制経済なら、これはこうつくれということはできますが、計画経済ではございませんし、それはできにくいことでございますから、御理解いただきたいと思うんです。これは地域的に違って、技術も、それから品種……(小川(国)委員「自由主義経済じゃなくて、めちゃくちゃ経済ですよ」と呼ぶ)ですから、米の転作というのは非常に大変なことだ。転作される方も大変だと言うのですが、周りも大変だ。だから、私が消費拡大ということを一生懸命言うと、よけいなことを言うななんと言う人もいるくらいで、私はこれは真剣に考えているのです。(小川(国)委員「答弁してもだめですよ、数字を出せないのでは」と呼ぶ)数字は、理事会をやられましても何しても、計画経済ではありませんし、独裁国家ではありませんから、つくるわけにはまいりません。(「二千百十億の積算の根拠が不明確でございますね」と呼ぶ者あり)二千百十億は大枠で見通しは立てております。七万円のものはどれくらいだろうという一応金を試算するのにはやっておりますが、大豆が幾ら、どれが幾ら、野菜が幾らということは、示せと言われても、まあ理事会で御相談いただくことは結構でございますが、私としてはこれは理事会が開かれたから、どうしたからといっても、できる性格の問題ではない、こういうことだけは——気持ちはわかるんですよ。気持ちは全くわかるのです。  私は、野菜農家の人が本当に心配するだろう、北海道なんかでもそうです。この間農村の座談会もありましたが、野菜農家の皆さんから、せっかくつくっているのにわれわれのところに洪水は来ないでしょうね。ですから、それはひとつ転作者の人も野菜の事情を理解して、野菜を押し込むようなことはしないでください、まさにここが理解と協力でお互いにやっていかなければいけない、こう申し上げておるところでございます。
  85. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いや、それは自由主義経済は結構なんでございますけれども、野菜の生産量が一割ふえたら値段は三割下がるというのですよ。野菜の生産量が全体で二割ふえたら値段は今度さらに五割下がるというのですよ。それはもう神田市場、全国の市場を通しての従来の実績がそういう形を示しているわけです。ですから、幾ら畑作に、野菜に転作されるかということは、畑作農家が立っていくかいかないかという重大な問題につながっているわけなんですよ。そのめどを農林省が持たないで、ただ畑作に転換すればいい、どの程度になるか見当もつかないでやられていたのでは、米作農家が打撃だけじゃなくて、畑作農家もひっくり返るような事態になるというのですよ。農林大臣としてその辺のめどを持っていないということはあり得ないわけですよ。
  86. 中川一郎

    中川国務大臣 ですから、その辺のところは、県は県の農政上の責任を持っておりますし、町村は町村での農政を持っておりますから、県内の情勢、町村内の情勢を判断して、自主的に理解し合いながら何をつくるかということをやってください、そういうことも含めて強制はしない。面積も強制しておらないわけですから、これだけのことをやっていただかないと大変ですよということの目標は与えているわけですから、その辺はひとつ、大変なことは理解できますけれども、私の言っているところも理解をいただいて、そして私としても野菜が大変な事情はわかっておりますから、さらに県にも指導をして、野菜にいって洪水を各県各県起こさないようにひとつ仕組んでください、千葉県ならば、特にいま非常にひどいところだから、千葉県は少なくとも野菜には転換しないという中での作付転換を工夫していただく、こういうことをお願いしていって全きを期したい、こういうわけでございます。
  87. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは了解しませんね。私、質問がまだ半分以上残っているのですが、いま言った、農林大臣が北海道の中川農林部長の答弁なら私わかるのですよ。しかし、中川農林大臣、一国の農政を預かる人が、四十万ヘクタールからの生産調整をやろうというのに、それがどういう方向にどのぐらいずつ転換さしていくのかという目標を示さないで、一体どうして国の農政を預かれますか。  私は、この点は理事会でもう一度協議をしていただいて、ひとつはっきり農林大臣の答弁をいただくし、また同僚議員の了解を得ましたら、もう一遍改めて大臣にこの点はただしたいと思います。  委員長理事会は開いてくださるわけでしょう。
  88. 羽田孜

    ○羽田委員長代理 それは、所属いたします政党の理事の方から、また理事会の席でお話しいただきたいと思います。
  89. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ですから、申し出があれば委員長としては理事会で諮る、こういうことに了解していいですね。
  90. 羽田孜

    ○羽田委員長代理 はい。
  91. 小川国彦

    ○小川(国)委員 終わります。
  92. 羽田孜

    ○羽田委員長代理 瀬野栄次郎君。
  93. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣の所信表明について質疑をいたします。  日本農業はいまだかつてない厳しい試練にさらされておることは御承知のとおりでございます。国内にあっては、今年から高圧的姿勢で強行される米の新生産調整問題があり、また外圧として農畜産物自由化枠拡大を強く迫られているわけでございます。     〔羽田委員長代理退席、委員長着席〕 その一方で、低成長時代に入って所得の伸びが余り期待できないとあって、事実安い農畜産物の安定供給を求める消費者の要請があり、まさに内憂外患の中にあります。したがって、明るい見通しは何一つ見当たらない状態でございます。しかも、その打開策を打ち出すべき肝心の食糧農業政策が場当たり的でございまして、長期的な展望も何ら見当たらないという、まさに農林水産冬景色というべきかつてない危機に直面しているわけでございます。  農林大臣は、この日本農業の立て直し、また再建について、かつまた食糧の安定確保という国民的課題をどう解決していこうと考えていられるのか、まず最初に所信を賜りたいのであります。
  94. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘がありましたように、日本農業の現実は厳しく受けとめております。お話がありましたように、一つ日本古来固有の水田を四十万町歩もほかの作物にかえなければならぬ、これは避けて通れない米の需給の状態でございまして、これも何とかやらなければならない。ところが、米以外の農作物に転換をすると、これまた外圧というものと競争しなければならぬという厳しさがある。一方、消費者は消費者で、安いものを外国からでも食べたいという要請もある。一方、農家の方は、外国からなど入れるのはけしからぬ、われわれは生産費がかかるのだから、高い農産物であってしかるべきで、農産物価格は引き上げるべきである。これはいずれも強い要請でございまして、しかも土地条件は制限をされておる。気象条件も厳しい。そういう中で、この四つ五つのむずかしい問題を同時に解決しなければならないわけでございますから、これは容易な仕事でない、こう受けとめております。  そこで、まず外圧に対しては、日本農業支障を与えないということを基本線として調整をしていかなければならない。第二番目は、何としても四十万町歩の水田は、これはほかの作物に転換するように、国民の理解、協力、特に農村の自主的な御判断によって御協力をいただいて、これをなし遂げたい。そして、畑作農家そのほかの農村に対しては、国は、できるだけ安い生産費でできるように、農業基盤なり農業の生産体制なり金融措置なり、あらゆる措置を講じて、低コストで生産できる努力をし、それが消費者にも反映するようにする。  こうして、非常にむずかしくはありますけれども、一つは対米折衝、対外折衝は厳然たる姿勢農業を守る、できるだけ協力できるものはするが、基本は変えない、そして米の生産からほかの方にかえていただいて、総合的な食糧の自給度を高める、かたがた生産費を下げることに努力をして、農家と消費者を守る、こういうことで、厳しくはありますけれども、その中の最大公約数として明るいものを見出せるはずだ、こう思って、最善を尽くしてまいりたい、こう思っている次第でございます。
  95. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣は、所信表明の中で「まさに農林水産業の発展なくしてわが国の真の繁栄はないと申しても過言ではありません。」云々と、至るところにいろいろなことを述べておられるが、冬来りなば春遠からじという言葉があるのですけれども、農林水産はまさに冬景色、こういうふうにわれわれは言っておりますが、果たして春が来るのか、それはいつ来るのか、どういうふうに見ておられるか、そのビジョンはどういうふうに考えておられるか、それをひとつ大臣はまず冒頭はっきりしていただきたいと思う。
  96. 中川一郎

    中川国務大臣 農業は、今日までは他産業に比べて非常に厳しかった、暗かった、冬であった。というのは、高度経済成長貿易は伸びる、経済は発展をする、勤労者の月給も、本人は余り上がっていないと思うけれども、農村に比べては相当上がっておる、こういうところから、農村が低所得で苦労しておった。  しかし、安定成長になってまいりますと、従来のようなベースアップが行われるであろうか。たとえば、いままではだれでもが大学に入れて、だれでもが就職もできた。ですから、農村を離れて大概の人が大学に入ってサラリーマンになったのでありますが、そういった場所もこれからはそう期待できない。やはりじみではあるけれども、相対的に農村の方がいいのかなあという意味での春もやがて来るのではなかろうかな、こう思っております。  こういう社会的国際的環境でございますから、このときに農村に活力を与える政策が並行するならば、まあ暖かい春とは言わないまでもかなりぬくい時代も来るのではなかろうか、ぜひともそういう方向に持っていきたいと思ってがんばっておる次第でございます。
  97. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣が春が来るのかなあ、こういうような言い方で所信を述べられましたが、まさに厳しい日本農業でありますけれども、もっと確信あるひとつ所信を述べていただかなければ、まさに日本農林水産業は冬景色から脱出できない、こう思うのです。  以下問題点を指摘しながら、いろいろと質問してまいりたいと思います。  たくさん問題がありますけれども、若干しぼって質問してまいりますが、まず今年度の特に大きな問題として新生産調整の問題がございます。米の新生産調整は、過去八年間農民は一〇〇%近い実績を上げて政府の対策にこたえてまいったわけであります。政府もまた多額の費用をかけ、農民に犠牲を強いて実行されてきたわけでありますが、今日なお需給のバランスは整わずなお過剰状態から脱し切れないということは、政府の需給の見通しに大きな誤りがあったとしか考えられません。大臣は、社会の状態が変わってきた、こう言いますけれども、実際には米の需要というものは千二百万トンというこの数字を上下しておるわけですから、国民の人口もふえておりますし、消費が減退したとは言えない。千二百万トンという消費を見ても、潜在生産力千三百四十万と過大評価してありますけれども、それがぐっと一千万トンに減ったというわけではないのです。社会情勢が変わったと言っても米はおおむね千二百万トン、月に百万トンぐらいの消費をずっと維持してきているんです。大ざっぱに申し上げまして。そういったことから、政府の指示に従って農民生産調整を実行してきたわけでございますけれども、これら農民に対して私はやはり政府としては十分な反省と責任感じていかなければ農民の理解と協力は得られないと思うのです。前大臣にもこのことはしばしば申し上げてきましたけれども、新農林大臣に、私はあえてこのことを冒頭申し上げておくわけであります。  そこで、大規模な生産調整をしなければならない時代を招いたいわゆるその責任はどう深刻に反省しておられるか、これは何としても私は率直に大臣から所信をお聞きしなければ納得できないことであります。米の減産ばかりを追求して、転作作物の定着化の政策努力を怠った結果がこういうふうになったということも言えるわけであります。そういったことを踏まえて、謙虚に私は大臣からの考えを開いておきたい、かように思います。
  98. 中川一郎

    中川国務大臣 責任逃れもいたしません。農林行政にも誤りもあればあるいは努力の足りなかったこともありますから、深く反省もし、特に百七十万トンからの異常な生産調整をやらなければならない事態を迎えたということは深刻に受けとめ、責任感じるものでございます。  ただ、できた原因が、行政が誤っておったからかというと、そうではなくて、予想以上に消費の減退の傾向が依然として強い。それから、生産の方はどうかというと、国が政策として造田、新規開田は認めない、こういう抑制政策、国としてはできる限りのことをやったのでありますけれども、農家の人は自力開田をやっても米をつくった方がいいというので、トラクターを持ってきてさあっと水田にしてしまう。こういうことの両面がありまして過剰米というものが出てきた。これが現実である。しかも、生産調整をやっているうちは、生産意欲があるのだから米価は据え置くべきではなかろうかとやりました当時の第一回目の生産調整のときは、三年は守られましたが、その後はかなりの大幅の値上げをしたというところから、米が一番有利な作物になったというので四万円、七万円のげたをはかせてもまだ米がいいのだという作物になってしまった。米の値上げをしたのは、何も政府だけの責任じゃなくて、やはり農家や皆さんの御協力もありながら、そういった意欲的な米価になったことも事実である。  それやこれや、やはり農家もあるいは消費者も協力が足りない。米が余る。農家も生産意欲が強くてどんどん新規開田をする。それやこれや総合的な結果として百七十万トンの生産調整をしなければならない事態を迎えた。政府責任なしとはいたしません。そういう判断ができなかったことや、あるいはもっともっと米の抑制について力を入れたらよかったというようなことを言えば幾らでもありますが、大体の流れとしてはそういうことから百七十万トン、しかも恒久的にこれをやらなければならぬ。  そこで私は、生産調整よりはむしろ消費の拡大こそが農家のためであり、長期的に見て消費者のためであるというので、生産調整に入れる力の倍、三倍の力を消費拡大ということで、国民的な問題であるとして米飯をやってもらいたい。政府もみずから隗より始めよで消費拡大に努力をするし、農協団体等においてもラーメンを食うような姿勢をやめて、まず米飯だという総反省、国民の問題としてこの問題をとるべき時期であり、ただ政府が悪いのだ、政府が悪いのだということではなくして、国民全体、消費者も生産者も考えるべき時期に来ておるのではないか、こう申し上げておるところでございます。
  99. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 生産調整について一つのこれは提案で、このことが果たしていいか悪いか、またこれは農民の理解と協力もなくてはいかぬわけですが、大臣があえてそういうことをおっしゃるので、私申し上げますけれども、現在、米が過剰基調であることはもう十分われわれも承知しておりますが、また今回の新生産調整に対して、政府は麦、大豆、飼料作物、ソバ等の特定作物を設けておられますけれども、私は自給率向上の上からも、一つの例をとりますと大豆ですね。大豆については次のようなことを考えてみたらどうかということを一つ提案したいわけです。  現在、大豆の十アール当たり所得というものは三万一千五百五十九円ということで、水稲の十アール当たり所得から見ると、八万二千五百八十九円ですから、五万一千三十円も低いわけです。小麦の場合は二万三千三百一円、こういうふうになっております。そこで、昔はたんぼの土手に大豆を植えておりましたですね、いわゆるあぜ豆と言いまして。それがだんだんなくなって、農家もみそ、しょうゆもつくらなくなってきたということで、最近はほとんど市販のものを買うということになっておりますが、私は自給率を上げる上にも、また大豆の油は人体にもコレステロールもたまらないし、植物性で結構なことであるし、また、かすはこれは飼料用にもアンチョビーのいわゆる代用品としても使えるということにもなりますし、実に大豆というのは利用度が多い。  そこで、現在ある水田も、昨日もいろいろ論議したところでありますが、例の湿田地帯はなかなか用排水の施設も急にはできない。全国的に見て約三分の一くらいがようやく暗渠排水ができている程度でございますね。いまからやるにしても相当時間もかかる。そうした場合に、こういった湿田に対しても大豆をつくるということを次のような方法でやるとかなりできるのではないか。というのは、現在ある水田のあぜというものに約五十センチぐらいさらに土を盛り上げて、いまのあぜにまた五十センチぐらいあぜを広くする、そして三条ないし四条ぐらいの大豆をまかせる。もちろんこれは、先ほど言いましたように、農家の理解と協力がなくてはいけません。ちょうどいわゆる額縁みたいにあぜがあるのに、額縁をまたふやすようなかっこうにして、仮に額縁転作といいますか、そういうようなかっこうにして、大豆を三列ぐらい植える、そして農家協力を求める。そうすればほとんど生産調整をせずに、大豆の増産を図ると同時に、自給率を上げるという、一挙三得にも四得にもなると私は思うのです。  そのためには、どうしてもこの特定作物としてある中でも、大豆を水稲並みに価格を上げるか、またそれに近くするという、ひとつ思い切った政策をする。そのことによって農家も大豆をつくることに意欲を燃やす。こういったことで全国的にやったならば、湿田も乾田のようなかっこうになってまいりますし、また大豆の増産にも通ずる。問題はその価格であります。そういったことを、農林水産冬景色と言わずに春景色になるように、一つぐらい思い切ったことをやってみる、そうしていけば国民も納得してくれる、消費者も納得してくれる、こう思うわけです。そして将来、米が足らなくなった場合は、その土手を、もとのあぜを残して後で追加したところの五十センチぐらいの畦畔を崩して水田にする、こういうような方法でやっていったならば、大豆の増産もかなりできるし、また将来にわたっても、生産調整、こういったもののコントロールができると同時に、湿田における乾田としての応急措置みたいなことにもなるのではないか、こういうふうにも考えております。  もちろん再三申しますように、これは農家の理解と協力がなくてはできませんし、それには農林大臣の蛮勇をふるったところのこういった額縁転作というか、転作するための大豆の価格を米に近いものにまず上げる、米並みにしてあげるならば、こういうふうな政策を思い切ってやるというふうなことがどうであろうか、こういうふうに思うわけです。何かそういったことをやらなければ、いまのようなことではますますじり貧になっていくのではないか。ことしの学校の入学希望者等を現在見ましても、全国の農業高等学校等は今度の新政策でぐっと減っております。昭和四十五年からの第一次生産調整の場合にも受験者がぐっと減った。このように農業の政策が敏感に響くのでございます。去る一月三十一日、大臣も会員となって一緒に結成しました愛農議員連盟同志会の席上、愛農高校の校長、浦田会長の意見を聞いても、ことしの農業後継者育成の専門の学校でさえも、従来に比べて七割も八割も希望者が減るということは、農業の明るい展望がないためにそのような傾向になって残念である、この前言ったように、本当に農業は大変なことになっていく、こう言って叫んでおります。  そういった意味で、いまくどくどと提案しましたが、一つの例でありまして、これがいい悪いとかいろいろなことは抜きにして、こういったいろいろなことを考えて、生産調整しなくても済むような、そして自給率が上がるようなことを思い切った施策としてやるべきではないか。それが農林大臣、あなたが今度就任した一つの大きな役目ではないかと思うのです。北海道のああいった畑作地帯の大農地を抱えたところから出た大臣ではないですか。いままでで二回目の、本当に久方ぶりに北海道から出た大臣であるならば、そういうことを思い切ってやるべきではないかと思います。大臣の所信を承っておきたい。
  100. 中川一郎

    中川国務大臣 示唆に富んだ御意見を承りまして、非常にありがたく思います。姿勢としては大豆とか麦とか飼料作物、ソバ等の自給率の悪い、特に価格政策のある大豆のようなものを思い切りやってもらって、ほかの洪水を起こさない、こういうふうにしたいと思うのです。  ただ、瀬野議員も御存じだと思いますが、大豆を畑でつくりますといま一万五千円で買う仕組みになっております。ところが、国際価格は六千円でございます。したがって、九千円は国の一般会計から不足払いとしてお支払いすることになっているわけなんです。そこへ今度生産調整で反七万円差し上げて、仮に三俵できたとすると、大豆一俵に二万三千円いくことになります。そうすれば国の金が根っこで六千円と二万三千円でいきますと二万九千円、一俵六千円で買える大豆に二万九千円国が金を出して大豆をつくるという仕組みになってしまうわけなんです。しかも、その上にまた値段を上げろ——いまの仕組みはそういうことですから、大豆はそういうことになるわけで、水田で大豆をつくった場合大体二万九千円ぐらい国の一般会計から出して、畑でつくった場合は九千円国の会計の持ち出し、三俵とれた場合の話です。その上に米並みの値段で一俵四千円ぐらい上積みしろということになれば、六千円の大豆に三万二、三千円出さなければいかぬ。これは一年や二年ならば国家も国民も理解してくれるでありましょうが、これから先々、長い間そういうことが一体許されるだろうか、こういう悩みがあるのです。  これは大豆の例で御指摘ありましたが、麦でも同じ傾向でございます。外国から買えば三千五百円の麦を、畑でつくれば一万一千円お支払いをする、そのほかに、仮に麦が四俵とれますと、一俵二万五千円麦についていく、そうなってくるとどうなるのか、これも大体大豆並みの非常識な、国民が持ち出すか国家が持ち出すかのことになる、こういうことで、なかなか転作というものは容易でない。  しかし、先ほども野菜で議論がありましたように、野菜をつくれば野菜の洪水で周りの人がまいってしまうから、そこでまいらない大豆とか小麦とか飼料作物とか、そういったものを重点的に、八割補助、七割補助と言ってもいいぐらい莫大な負担ではありますけれども、自給率の悪いこういったものをつくるということで最善を尽くしておりますので、戦略作物として農家の皆さんに理解と協力という形でお願いしているのが現状であり、これはさらにまた一番大事な作物ですし、莫大な経費はかかりましてもさらに一層促進してまいりたい、こう思う次第でございます。
  101. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 その数字については私も細かい試算をしておりませんが、一応大臣の答弁を正しいとしても、先ほど申しましたように、要するに価格の問題と農民の理解と協力が問題であるということは前提として申し上げたわけです。私もそれはわからぬじゃありませんけれども、いわゆる新生産調整に要するお金が要らなくなれば、その分を回すということで、そういったことで一回試算をして、日本のいわゆる畦畔を利用した場合にはどうなるか。暗渠排水の施設もすぐにはまいらぬわけです。きのうも論議しましたように、圃場整備が十年、二十年と、かなりかかるようなことになっています。そういったことを考えていろいろ検討して、もう少し何とか農家が明るい希望を持ってやれるようなことを考えていかなければ、ただしゃくし定規的に、こうだああだと理屈ばかり言って、机上で計算したことばかり言っていたのでは、日本農業は冬景色どころか、まさに極寒景色になってしまいますよ。  そういう意味で、一つの提案をしたわけですが、そういったことを十分検討していただく、そうして何か脱皮できるような方法を考えるということをしなければ、結局いまのままでいけば、全然期持できないというようなことで、まさに日本農業撤退大作戦が始まったと言えるようになってくると思うのです。そういう意味で、私は一つのアイデアを申し上げて、皆様方の検討をお願いしたいということをやったわけですから、十分踏まえてやってもらいたいと思うのです。  さて次には、このペナルティーの問題もどうしても触れておかなければならぬ問題ですが、御存じのように、今回の新生産調整について、非協力者には次年度の買い入れ限度数量を減ずるという、いわゆるペナルティーをもって臨むということでございますが、これが農家も相当頭にきておるわけです。こういった高圧的な態度では私はならぬと思うのです。  そこで、政府がこのような態度で真の協力を得ようとしておられますけれども、果たしてことしの新生産調整が順調にいくかどうかということが大変疑問になってきています。いま各市町村から農家へおろすために農協といろいろ協議がなされて、私どもの熊本県でも二月の中旬以降に農家へ割り当てがいくというようなことになっておりますが、いずれにしても新生産調整は、ようやくいま農家の皆さん方の身近な問題として批判の声が高まりつつあります。もちろん政府はこれを遂行しようとして努力しておられることも事実でありますが、私は、このような大規模な米の減反政策を十年間も継続実施するわけでございますので、農民の生産意欲というものは十年間の間に、いまでさえそうですか、だんだん減退してくる、かように思うわけです。将来の米の需給操作に対しても大変な支障を来す、かように思うわけです。単に潜在的な生産力が問題となるばかりでなく、生産意欲をも加味したところの需給計画が立てられるであろうかどうかということが農林省当局においても大変心配されておるのじゃないかと思う。また、そうでなくてはなりません。  そこで、農民の米づくりへの意欲の減退というものは、まさにことしでさえもはかり知れないものがあるし、先ほどの農業学校のいわゆる志望者の減少を見ても敏感に響いていることはうなずけるところでございます。単に机上の需給計画で済ませられない事態を招くようなことになってしまったのでは、その政治責任というものはきわめて重い、かように言わざるを得ません。食糧政策についてはずいぶん検討していくということを所信表明でおっしゃっておりますけれども、私は、大臣が一年か二年でおれは交代するからということで、そんなことではないと思いますけれども、将来にわたって考えてもらわなければ大変な問題であるがゆえに、慎重でなくてはならぬ、十分この新生産調整については、またこのペナルティーについても検討していかねばならぬ、かように思うのですが、再度農林大臣の見解を承っておきたいと思う。
  102. 中川一郎

    中川国務大臣 将来を見渡して、どうしても単年で百七十万トンは生産調整はしなければならない。そうしなければまた過剰米になって、一俵二万円もするものを二千円程度で家畜のえさにおろさなければならぬ。大変な国家財政の危機でございますし、農政不信に陥る。  そこで、百七十万トンをどうしても生産調整しなければならないとするならば、これは実現できなかった農家はやはり翌年やってもらわなければ、実現するということでやりました方に、もう一回それでは来年はその分は実現した人が背負ってやります。農業団体から、これは実効あらしめるためには、できない人は結構です。来年はその分を私たちがやります。こういう担保があれば、私たちは何もそのような無理はしませんけれども、やはり実効あらしめるためには公平確保、まじめにやったというか、実現できたからやったか、あるいは有利だからやったかは別としても、実現した人と実現しない人の間にそれだけの公平感がなければこの仕組みはできない。  では、できなかった分はどうするのだ。その分はしなくて済むというならこれは結構でございますが、公平確保ということからいくと、これはどうしてもやはりことしできなければ来年、来年できなければ再来年と責任を持って、みんな、それぞれの地域地域の事情がありますから面積の大小はありますけれども、御納得をいただいて、やはり理解と協力責任というものを持っていただく以外にこの問題を実効あらしめる道はないということで、決してペナルティー、罰則というものではない。その分を、全量であるかどうかは別として、やった人に負担をさせるわけにはいかない。とすれば、そういう仕組みをどう言われてもこれは検討してやり直すという仕組みにはならない、こういうわけでございます。
  103. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そういうことであるから、新生産調整農家が喜んで理解と協力ができるようなことにして、そしていかねばならぬ。そのためには、社会的な状態で米が過剰であって、政府がそのような農業の見通しの誤りからここへ来ているということをもっと認識しなければ、農家は救われない。もっと協力できるような生産調整をやるべきじゃないかと私は言いたいわけです。  何回言ってもあなたはそういうことで繰り返しておられるが、そこで後々いろいろ問題を指摘しますから、これはもう本当に大変であるという認識の上に立って、農林省としてもこれは十分検討していただきたいという意味で問題点を挙げてみたいと思う。  五十三年度の農林予算は五十二年度予算より一五・八%、四千百六十六億円の増、すなわち三兆五百六十七億円でございまして、五十三年度予算の最大の特徴は、減反を強化する上から水田利用再編対策費が前年度に比べ二・一五倍に及ぶところの二千百十二億円となっております。そういったことで、私はこの水田利用再編対策について以下お伺いしてみたいと思う。  本年度農林水産行政の最大の目玉とも言われておりますが、米の新生産調整が重大な問題になっておることはもう言うまでもないことですけれども、水田利用再編対策と、従来から行われた稲作の転換特別対策事業並びに水田総合利用対策というのがございましたが、この違いは農林省は何というふうに説明されるのですか。簡単でいいですから、お答えください。
  104. 野崎博之

    ○野崎政府委員 最初生産調整はあくまで一時的な米の生産の調整に重点を置いたもの、それから次の水田総合利用対策につきましては、食糧農産物の自給力の向上と水田の有効利用、それから次の水田利用再編対策は長期的に、構造的に不足する食物を増大して過剰な米を減らしていく、しかも中核的な農家に水田を集めていくといった農業経営の構造改善の面も考えてやっているということでございます。
  105. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 百七十万トン、三十九万一千ヘクタールという大規模な減反目標というものは、経営規模の小さい兼業農家などで労働力とか機械施設などの面から自己転作できない農家の水田利用をそのままにしておいては達成できないということと、さらには、かと言って休耕奨励策はとれないという事情から構想が練られた、こういうふうにいろいろ過去に説明を聞いておりました。  そこで、当初かなりこの生産調整は補完的なものから積極的、前向きに位置づけたように私は推移した経過を思うわけでございますが、あくまで本命というものは自己転作というようにいまでも農林省はおっしゃっているのか。その点もひとつ明確にしておいてもらいたいと思う。
  106. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先生のおっしゃいましたように、あくまで自主的に協力していただいて自己転作をやるのが最善だと思っておるわけでございます。
  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それならば、全中が考えておられるような、農協が農用地の利用権調整の役割りを担うことにより地域農業振興を図る契機とする、こういったことをおっしゃっておりますが、全中がおっしゃるような、前向きの受けとめ方で取り組んでおる全中の姿勢をそのままわれわれは受けとめていいのか。すなわち、いま申しましたような全中が言っているような受けとめ方に対して、農林省もそのように理解しておられるのか、また別な考えはあるのか、その辺も明らかにしていただきたいと思う。
  108. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先ほど申し上げましたように、あくまで自己転換ということが最も望ましい姿でございますけれども、やはり経営規模が非常に小さい、なかなか簡単に転作できない、そういう方方のたんぼを農協等で集めまして、中核的な農家へ利用を集積していく、そういう方法も一つの方法であろうということで、今度の対策では新しくそういう意味で農協等による管理転作という制度を組み入れたわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、さらに聞いておきたいのですが、今度のこの農協が行うところの管理転作の具体的な内容仕組みについて、おおむね五つの仕組みがあるようにわれわれは理解しておりますけれども、その概要について簡略にひとつ説明してください。
  110. 野崎博之

    ○野崎政府委員 目的は、いま申し上げましたように、中核的な農家へそういう水田の集積を持っていくということでございますが、一つは、水田の預託を希望する農業者が、農協等と水田の預託契約を締結して預託を行います。農協は、預託水田につきまして転作希望者を見つけまして、預託者の意思をもう一遍確認して、その代理人として使用貸借を締結して、その水田で転作が行われるようにいたします。そのほかに、農協が預託者の同意を得たときには、みずから共同利用施設として当該水田を使用貸借により借り受けたりすることができますし、あるいは預託者から直接経営を受託して転作を行う、そういうような仕組みになっておるわけでございます。  また、この預託水田につきましては、人が決まるまでいつでも耕作可能な状態に置いておくというような意味で、そういう管理に要する費用を預託者から徴収をするということになっております。  これに対します管理転作奨励補助金が平均四万円、転作をした場合には計画加算等について平均一万円の交付金を出すということでございます。ただ、これは従来の休耕と違いまして、やはりあくまでその水田を中核的な農家へ集めて大いに利用してもらう、転作してもらうという意味が中心でございますので、二年を経た場合、まだ転作者が見つからないというような場合には、この奨励金は打ち切るということにいたしておるわけでございます。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま説明がありましたが、この管理転作の内容仕組みについては農地法の第三条の許可を必要とするものや農振法にかかわり合いのあるものもあるし、また農協法第十条に基づいてみずから行う経営受託事業に移行する場合などがあると思量するわけでございますが、これらの問題はすべて解決済みなのか、もし問題点が残っておればその問題点、また見通し等について簡潔にお答えをいただいておきたいと思う。
  112. 野崎博之

    ○野崎政府委員 農協がその農地を預託する場合は別に農地法の適用はないわけでございますが、実際に転作者を見つけてその農地を譲る、そういう場合には農地法三条の許可が必要であるということになっておりまして、別に農地法に抵触するような問題はございません。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水田利用再編対策の中でさらに農協管理転作という問題についてお聞きしておきますけれども、目標面積を是が非でも達成しなければならぬ、こういう政府の強硬な押しつけ的な対策でございますが、現行の諸制度から見ましても、こういった制度との間に数々の矛盾があると私は指摘するわけです。  その第一は、農業者年金基金法との関係で、農協管理水田に出した場合、経営移譲一年前のいわゆる基準日に三十アールを欠くことにならないのかということが一つの問題になるのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  114. 中川一郎

    中川国務大臣 いまちょっと構造改善局長来ておりませんので……(瀬野委員大臣から答えてください」と呼ぶ)  私は、法律違反はどこにもない、こう思っております。  いまの話、ちょっと聞き取れなかったのですが、もう一回言ってください。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農協管理転作の問題で、水田利用再編対策を進める場合にいろいろ問題がまたあるわけですが、先ほど申し上げた以外に現行諸制度との間に矛盾が起きてくる、こういうことを私は指摘するわけです。  まず第一は、農業者年金基金法との関係で、いわゆる農業者年金基金法では経営移譲を行う一年前の経営面積が三十アール以上あることを要件としておるわけです。したがって、三十アールに近い経営面積の農家の場合、保全管理にとどまっている場合はいいが、転作希望者に使用貸借で貸すといった場合には基準面積を下回らないよう十分配慮せねばならぬ、こういうふうに解釈できるわけだと思うのですけれども、要するに農協管理水田に出した場合、経営移譲一年前のいわゆる基準日に三十アールを欠くということにはならぬのか、その点は政府はどういうふうに説明をなさるのか、その疑問点を明らかにしていただきたいというわけです。
  116. 小島和義

    ○小島説明員 お話のように、年金の受給資格と申しますか、一定の制約要因があることは事実でございまして、そのこと自体、これは法律で決まっておるものでございますから動かすわけにはまいらぬわけでございます。ただ、そういう方がすべて農地を預けなければならないということになっておるわけじゃございませんで、再々申し上げておりますように、みずから転作をするというのがたてまえなわけでございます。よんどころなく管理転作に出すという場合におきましても、ただいま先生が御指摘なさいましたような年金の受給資格ということを十分念頭に置きながら、それにひっかからぬような範囲内において預けるということになりますように、関係者にも、間違って預けてしまったために資格が失われたということのないように十分指導をしなければならないというふうには考えております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうすると、基準日以降管理転作に出した場合とか、使用収益権を設定して後継者へ移譲した場合ということもちょっと疑問になるのですけれども、その点はどうですか。
  118. 小島和義

    ○小島説明員 本人とその後継者の職業なり能力によって変わってくるわけでございますが、本人自身が、たとえば老齢化のためにもう農業を続けにくいという場合に積極的に後継者に対して経営を移譲させるというふうなねらいも含めまして今日の年金制度はでき上がっておるわけでございます。したがいまして、お話にありましたように、後継者が農業をやる能力を十分持っておるという場合に、後継者に経営を移譲いたしまして、そこでその転作が行われるという仕組みもあり得るわけでございますから、本人と家族の組み合わせによりましてケースはいろいろございましょうが、いずれにいたしましても、その管理転作に出したことによって受給資格がなくならないように、本人にも十分そういうことをわからせるように指導していきたいというように考えておるわけでございます。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 第二の問題点は、相続税、贈与税の納税猶予制度の問題ですけれども、現行の制度では、納税猶予を受けているいわゆる特例農地の二・〇%以上の農地を貸したりすると納税猶予は打ち切られるということになっていますね。二〇%未満でも、貸し付けた農地に見合う猶予税額は支払わなければならない仕組みとなっております。したがって、保全管理の段階では猶予制度の打ち切りなどはないけれども、使用貸借その他によって貸し付けなどが行われるということになりますと、猶予の打ち切りあるいはその面積に見合った猶予税額を支払わなければならないということになるように解釈できるわけですけれども、その辺もこれは一つの問題点じゃないかと思うのですが、地元からの問い合わせもあっておりますので、この点について答弁をいただきたいと思う。
  120. 小島和義

    ○小島説明員 ただいまの点につきましても、基本的な考え方は年金の場合と同じでございまして、片方におきまして、税の制度といたしましていまのような仕組みがあるわけでございますから、そういうことに抵触しない範囲において転作を進めるなり、あるいは抵触しない範囲において管理転作を進めるなり、そういうことが適確に行われますように、末端に対してよくそういう事情をわからせるという指導をいたしたいと思っておるわけでございます。そういう事情を知らないために、税金が急にかかってくる、こういうふうな混乱が起きないように指導いたしたいと思っております。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 末端にその事情を知らせるという期間もないし、そういうことが果たして可能かどうか、相当これは無理しているわけです。  第三点には、農地法や農地取得資金との関係でこれまた問題になると思うのですが、農地を取得する場合の農地法三条の許可の条件は、農地を取得した後、すべての農地について耕作することを条件にしておるわけです。また、農地取得資金の借り入れについても過去三カ年内に農業経営を縮小した者は借り受け不適格者となっております。  そこで、管理転作に出して、しかも保全管理という状態のまま、一方で農地を取得するといったことが農地法の趣旨から見て認められるかどうかということは、これは大変な問題じゃないかと思うのですが、この点はどういうふうに説明なさっているんですか。
  122. 大場敏彦

    ○大場政府委員 管理転作の結果、自作農資金等の経営規模の縮小というような要件に該当して、そして繰り上げ償還、こういう措置が該当することがないよう、これは水田利用総合対策の一環として、それに協力した者が不利益をこうむることのないよう、いま打ち合わせ中であります。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大場局長おっしゃるように、この点は今後に問題があるわけですけれども、大臣よく知っておいてください。いま打ち合わせ中で、今後に問題が残る。農林省もこれは詰まっていないのですよ。さっき、いままでの問題もよく指導してと、こう言っておりますけれども、その点が大変問題が残っておるわけです。  まだありますよ。第四に指摘する問題は、管理転作というより保全管理の場合の奨励補助金四万円が、既存の農地流動化施策、農作業受託組織にどのような影響を与えるかという問題があるわけです。すなわち、保全管理で四万円の奨励金をもらえるにもかかわらず、利用増進事業に移行することに同意する預託者がいるだろうかという問題でございます。結局、既存の小作料を四万円に近い水準に引き上げることになりまして、借り手の負担を大きくし、稲作の作業受託組織をピンチに追い込むのではないかという点が問題となります。この問題は担い手農家の経営確立の問題として、今後これは相当疑問として残る問題ですが、この点についてはどういうふうに農林省は説明しておられるのですか。
  124. 大場敏彦

    ○大場政府委員 管理転作の場合に、その地主、土地所有者が取る取り分というものは、反当り四万円の奨励金から、農協に預託するわけでありますから、農協が保全管理をする費用を差し引いた残り、あるいは農協等がいろいろ手数を要する、その手数料を差し引いた残りが地主の取り分、こういったことになるわけであります。  そこで、その具体的な地主の取り分というものがいかになるかによって実勢小作料水準等に影響があって、それが農用地利用増進事業等に影響を及ぼすか、こういった問題になるかと思うわけであります。  具体的にその地主の取り分というものは転作奨励金の額によって一つは変わる要素があります。これはもちろんその圃場の生産力によって奨励金が変わりますから、その生産力によっていろいろ変化が出てくる。それからもう一つは、保全管理の方の費用は、その圃場の管理の態様、徹底度とか、あるいはむずかしい、やさしい、そういった問題がありますから、それも地域によって、あるいは圃場によって差が出てくるということで、これは一概には言えないわけであります。結局はかなりいろいろばらつきがあるということでありますけれども、具体的に申し上げますれば、それぞれ農協が具体的にそういった要素を決めるときには、その地方の実情というものをよく加味しながら、一方において農協は利用増進事業等も兼ね合わせてやっているわけでありますから、そういったことの事情もよく考えて決めるということになろうと思います。  そういった意味で、実勢小作料あるいは標準小作料と結果においては大きな乖離は出てこないのではないだろうか、こういうふうに判断しておりますので、利用増進事業に重大な支障を来すということにはならない、また、そのように指導いたしたいと思っておるわけであります。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまいろいろお聞きになっておったと思うが、事務的なことですから各局長に答弁いただきましたが、これを一々やっていると、とても決まった時間には全部消化できませんので、ひっくるめて大臣に見解を承ります。  先ほどからいろいろ問題を指摘してきましたが、こういった新生産調整を強行する陰には、いろいろな問題があるわけです。すなわち、いま申し上げた他の制度との関連で見ても、管理転作は、従来行った休耕などの保全管理という手法を使えば、他制度とぶつかる問題をかなり回避することができるのも事実でございます。しかし、今回のように、このような三十九万一千ヘクタール、百七十万トンという国の大方針による新生産調整を強行するとなりますと、食糧の自給度の向上が叫ばれておる今日、前向きの農業生産の再編成のための農地の有効利用といった立場から見ても、いま数々指摘したようなことで、順調にこの新生産調整が遂行できるかどうかということは大変問題がある。だから、われわれは昨年から、十分検討し、国民のコンセンサスを得て、農家の理解を得て慎重にやるべきだということを再三申し上げてきたわけでございますが、こうしたたくさんの問題、他制度との関連を抱きかかえながら、果たしてこの新生産調整が成功するかどうか、あなたは自信があるかどうか、その点をまとめてお聞きする次第であります。
  126. 中川一郎

    中川国務大臣 この制度、仕組みは法律違反ではないということだけは間違いないと存じます。  それから、ただ管理転作をやるに当たってはいろいろな恩恵やあるいは権利関係において配慮をしておかなければならない点は幾つかあるということは事実でございますが、今度の生産調整は、管理転作は例外の場合であって、自主的に自分のところで転作をする、どうしても自分でできないという人は農協に管理転作をお願いする、こういう、これは例外と言ったらどうか知りませんが、主力をなすものではない。しかし、これも百七十万トンやるに当たっては、そういう仕組みも入れた方がよかろうということで入れておりますので、そのことの権利関係あるいは税金の問題等については十分配慮して円滑にいくように対処していきたい、こう思う次第でございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 大場局長、あなたに追加してお聞きしておきますけれども、先ほどあなたからも農地法や農地取得資金の問題等で今後十分検討しなければいかぬという問題等もあったわけですが、この公開の席で、大変問題がございましてとてもできません、解決できませんとは恐らくあなたも口が裂けても言えぬだろうと思うけれども、正直なところ、実際いろいろ問題があるわけで、事実末端においては早速こういった問題が支障を来す問題になってくるわけですが、そういったことで、さっき若干あなたも今後検討するということをおっしゃっているけれども、どうですか、今後の検討の見通し等、お答えをいただいておきたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  128. 大場敏彦

    ○大場政府委員 国の政策といいますか、そういうものに協力したため、事実上結果として経営規模が縮小したということによって不利益なことにならないように努力はいたしたいと思います。そういう方向で打ち合わせしたいと思っております。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 新生産調整に対する問題は以上を指摘しておきまして、会議録を見てまたさらにいろいろと大臣に承っていきたいと思います。  次に、食管の問題にも触れておきたいと思うのです。  食管制度について農林大臣は堅持ということをおっしゃっておられるわけですけれども、所信表明によりますと、その十九ページに「食糧管理制度の適正、円滑な運営に資することを旨とし、」というわけで、だんだん色あせてきた感じで、私たちもこれは大変なことだ、こう思って実は所信表明を聞いておりましたが、大臣は昨年の二月、これもしばしば指摘されましたように、新聞の「論壇」において食管制度の廃止論というようなことで示唆されております。その精神はいまも生きている、しかし廃止に踏み切るという意味じゃないというようなことも予算委員会等で聞いておりますが、その真意は私ははかり知れないものがある、かように実は内々思っているわけです。  この食管事業がうまくいかない、食管がどうなるかということについて生産者も消費者も大変心配しておりますけれども、今回いわゆる食糧管理制度というものが将来危うくなってくるということになりますと、私はその怪しくなってくるのを見越してか、いわばひがんだ言い方をすれば、将来にわたってだんだんいわゆる需給調整機能というのが崩れてくるということを裏返しに言えば見越して、こういうふうなことを先走っておっしゃったんじゃないかというような感じもあるわけでございまして、あなたの本当に食管に対する、堅持をしていくかどうかということ、これがわれわれはだんだん疑わしくなってきたというふうに言わざるを得ません。何も昨年二月のいわゆるあなたの新聞の「論壇」を踏まえて言うわけじゃありませんけれども、何か予防線を張っているような感じがしてなりませんけれども、今回の所信表明でも「食糧管理制度の適正、円滑な運営に資することを旨とし、」とありますけれども、食管はあくまで堅持していく、いわゆる消費者、生産者を守るためにもやっていくということを、あなたは新農林大臣として就任されてこの席で明らかにひとつ農民のためにもまた消費者のためにも明言をしてもらいたいと思うのですが、その点についてお答えをいただきたい。
  130. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年の二月の朝日新聞「論壇」にも書いてございますように、あれは見出しは「食管制度を廃止せよ」と書いておりますが、中身を読んでいただきますとそうは書いてないんです。いまのような仕組み、すなわち米を投げつけての生産者米価の引き上げ、そしてしゃもじ族の消費者米価の据え置き、そうして逆ざやは大きくなる、食管の赤字は膨大になる。米はかつて七百万トンも余った時代がありましたが、またこれが七百万トンも八百万トンも余って、古米処理を再びやらなければならないような締めくくりのないことをしておくと食管は堅持できなくなるだろうという警告の意味で、食管のあり方について適正を期さなければならない。適正を期さなければ、国民大衆の中からこの制度はだめだという世論になって、最後は農民のところにかぶってまいりますよ。そのことはまた消費者にも影響することでありますから、この際消費者も生産者もあるいはまた政府もよく考えて、この運営の適正を期すべきである、こういうふうに文章の流れはあるわけでございます。いまもその考え方は変わっておりません。  そこで、そういうことにならないように食管は堅持しませんと消費者も大変だと思うのです。国民にとって大事な主食が不安なものになってはいけませんから、政府が管理をして必要な米は買い上げて安定的に消費者に配給する、こういう仕組みは残したい。がゆえにこそ生産調整は、この際農家の皆さんの理解と協力によってこれを実効あらしめたい。また、消費者の皆さんにも、パンやラーメンやインスタントに向きたい気持ちはありましょうけれども、一日一杯食べる気持ちさえ起こしてくれればそのようなむだな過剰米が出ないのでございますから、消費者の皆さんも、長い意味での食糧の確保、日本で一番生産性の高い、日本の気候風土に一番合ったこのうまい米を食べることに御協力くださいと、こうお願いしているのであって、これが実現すれば食管は堅持されるし、堅持するためにこのことが実効あらしめたい、こう思っておるわけでございます。そういう意味で、前の農林大臣も食管制度を堅持させる、ためにも水田利用再編対策はこれはぜひ実現したいものだと述べておりますので、私だけが変わった意見を持っておるというわけではございません。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、その消費拡大にも触れていきたいのですが、消費拡大が必要なことは言うまでもありません。いま大臣もいろいろおっしゃいましたが、私も前大臣にも昨年十一月このことで申し入れもし、いろいろ説明をしてまいりました。きょうも日本酒のアルコール添加の抑制の問題も論議されましたし、もちろん学校給食の米飯への全面切りかえ、これも希望すれば全面的にやる、こういう表明をしておられます。そのほかに私は、みそも米を十分使う。また、酢ですね、すしなんかをつくるときの酢、これも米酢と言って米の酢が一番いいわけですから、米酢を使うよう大いにひとつ指導もしてもらいたい。また、農林省も推進を図ってもらいたい。先般から申し上げておりますライスワイン、また最近ではライスジュースと言って、まあミカンとの競合という問題もありますが、そういったライスジュースというのもできております。嗜好によってまたこれも大いに販路は拡張できると思う。こういった問題についても十分やってもらいたい。こういったあらゆる方途を講じて消費拡大に力を入れてもらいたいと思う。  特に一番消費拡大で重要なことは、国民の皆さんに大いに米を食べてもらう、その理解に努めることです。仮に一億一千万の国民が一日一ぜん——一ぜんというと大蔵省の調査で約六十グラムになっていますけれども、一日三回、朝昼晩と食べます。この一ぜん、小さい茶わんで一杯ということになりますが、これを一杯だけよけい食べていただくと、国民の皆さんで一億一千万で三百六十五日を掛ければ二百四十万九千トンという米が消費できる。そうすると、逆に百七十万トンいわゆる調整しなくてもずいぶん米が足らなくなるという現象になる。これはまあ年寄りも子供もみんな入っていますので、幼児と年寄りを除いても一日一ぜん、一杯だけ御飯をよけい食べていただきますと、簡単に百七十万トン調整ができるという可能性が生まれる。また、二百四十万九千トンの半分、百二十万四千五百トンになりますが、年寄り子供を除いてもそれぐらいの調整はできるというような、大ざっぱな荒っぽい議論ですけれども、いわゆる計算が成り立つわけでございます。国民の皆さんにお米を食べていただくという、こういった消費がいかに大きな影響を及ぼすかということは明らかであります。  こういった面について、本当に真剣に農林省は取り組んでもらいたいと思う。ことしの予算にも若干組んでありますけれども、これに対する考え方を簡単でいいですから、ひとつ述べていただきたいと思う。
  132. 中川一郎

    中川国務大臣 私は、まさにそうだと思っているのです。生産調整をやりますと、正直なところ、いろいろな無理もあるのです。制度上も大変だし、先ほどの野菜に影響を与えるという問題もあるし、莫大な国家財政も伴う。ですから、一日一ぜん食べていただくということ、これが実効が上がれば無理な農政はなくなるのです。でありますから、この間、衆議院で民社党の佐々木委員長が農政に対する基本姿勢はいかにと言うものですから、国民の皆さんに御協力をいただくことが一番結構なことであるので御協力をいただきたい、特に日本酒もまた加えていただきたいと言ったら、国会の答弁けしからぬといって、次の日かその次の日に、これからの答弁は慎重にやるようにというおしかりだか御注意だかを受けたわけでありますが、私はおしかりを受けようが何しようが、機会あるごとにこれをやっていかなければいかぬ。ライスワインとかいろいろありますが、そういうことをやりましても、要は消費者の理解と協力、これがなくしては絶対できないわけでございますので、私も、政府も一体となってこの消費拡大に全力を傾注しますが、やはり国民皆さんの理解、協力でございますので、当委員会の理解と協力もお願いする次第でございます。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 消費拡大については農林省もひとつ格段の努力をお願いしたい、かように要求しておきます。  さらに、大臣、この機会に伺っておきますが、五十三年度産の米価決定方針でございますが、米の過剰を背景に、巷間低米価決定となるのではないかということでいろいろ取りざたされておるわけでございますけれども、米価決定についての大臣の、要するに政府の決定基本方針というものはどういうふうに考えておられるか、お答えをしていただきたいと思います。
  134. 中川一郎

    中川国務大臣 生産事情から言えば、米価はそうはずめる空気にはない。先ほど瀬野委員も生産意欲がないいまの現状と言うのですが、私はむしろ米については生産意欲があり過ぎるから困っておるのでありまして、その辺は慎重に考えなければならぬところではありますが、やはり法律に従って、食管法に言う所得補償方式という形で、米価審議会の意見も聞きながら適正なところで決定をいたしたい、こういう考え方でございます。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次は、農産物輸入自由化問題について、若干はしょってお聞きしておきたいと思います。  まず、東京ラウンドのことでございますが、夏ごろの妥結を目指して本格交渉の火ぶたを切ったわけであります。途中経過の説明を省略しますけれども、米国とかEC、豪州などの世界各国がこれで納得するとは考えられないわけでございまして、日米経済戦争に続いて農業が出血を強いられるのは必至と見られております。  今後の交渉はまさに予断を許さないと思っておりますが、こういったことについて、東京ラウンドに向けて大臣はどういうふうな決意でおられるか、お答えをいただきたい。
  136. 中川一郎

    中川国務大臣 この点も農民の皆さんの心配しておられるところだと存じます。対米折衝におきましては対米折衝の重要性にかんがみて応分の協力をする、しかし農政の基本、そしてまた農家経済悪影響を与えない、特に水田利用再編成に支障のない範囲内での調整を図りましたことは午前の委員会でも詳しく御説明したところでございます。  引き続きましてECの問題あるいはニュージー、豪州等の問題がございます。これらに対しましてもいま言ったような基本的な態度、すなわち日本の農政、農家経済、特に水田利用再編成というものに支障を与えない範囲協力できるものがあれば協力いたしますが、無理なことはしない。特に農業というものに保護政策をとっておりますのは日本だけではございませんで、世界各国、保護の中で農業が守られておりますから、その姿勢交渉するならば相手の国々も理解をしてくれるもの、こう思っておる次第でございます。また、こういう考え方で対処したいと思っておるところでございます。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、そこで、米国の農業協同組合連盟のグラント会長が一月二十二日、ストラウス米大統領通商交渉特別代表への書簡を出された。その中で次のようなことをわれわれは耳に入れておるわけです。さきに東京で行われた日米通商交渉では日本牛肉、柑橘類及びオレンジジュース輸入規制を緩和したが、この程度の譲歩では十分でなく、これらの品目を含む農産物の対日輸出日本からさらに譲歩を引き出すことが必要である。このようなことを書簡で述べて要請しておられる。  私たちはこういったことを聞くに及んで、またしてもこういった容易ならぬ事態が起きてくる、またそういう要求も出てくる、こういうふうに勘ぐるわけですけれども、これについては当局はどういう見解を持っておられますか。
  138. 中川一郎

    中川国務大臣 農業団体あるいは議会筋には、アメリカ側にも意見もあれば日本側にも意見がございます。でありますが、政府政府との間においては今回の合意がぎりぎりのものであって、お互いが納得し得る最小限のものであり、あるいは最大限のものである、こういうことでありますので、農業団体の意向を受けてさらに政府間の責任あるところの交渉というものはないだろうし、避けて通れるものと私は存じます。しかし、今後とも、農業団体あるいは議会筋にそういう空気がありますから、民間外交なり議員外交を通じてそういうものについて理解が得られるように努力をしていきたい、そして、そういうことの声が起きないようにする努力をしていかなければならない、こう思っておるところでございます。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係ではしょらざるを得ませんが、国内の問題、果汁オレンジの問題で、自由化の問題を引き続きお聞きしておきます。  今回のこのいわゆる日米交渉では農畜産物輸入利権をめぐっていろいろ問題が起きておりますが、果汁オレンジは約六十億のマージンがあるやに聞いておりますが、商社等の動きがいま活発化しておりまして、商社の方でも対抗策として、いわゆる今度のオレンジ果汁拡大分についての輸入窓口をぜひ商社の方に窓口一元化してくれ。これに先立って農業団体では、一般業者に輸入数量を任せると果汁原料価格の暴落につながるという問題も起きてくるし、またオレンジ季節枠が、すなわち大臣が説明されました六月−八月の二万二千五百トン、いわゆる四万五千トンの半分ですね、これが守られるかどうかと大変不安を抱いておるわけです。  そこで、系統農協では各業者に割り当てずに生産者団体に一元化することを強く要請しておるわけです。ところが反面、オレンジ輸入割り当てを前に、柑橘の輸入業界の中で、完全自由化後に焦点を合わせて割り当ての門戸開放を求める動きが強まってきておりました。そういったことから生産者団体への割り当て反対を言っておりまして、農業団体の一元輸入という農協の要求には真っ向から対立して、いわゆる反対をしている態度をとっております。すなわち、日米両国に一元的輸入窓口を業者団体がつくりたいというわけですね。  大臣もこのことは十分承知だと思うのですが、こういった対立が起きておりますけれども、この問題について窓口一元化、農協か業者かということになるわけですが、どのように対処する考えですか、明らかにしてください。
  140. 野崎博之

    ○野崎政府委員 先生御承知のように、オレンジ果汁につきましては四団体及び協同果汁に対しまして実需者割り当てということになっておるわけでございますし、オレンジにつきましては過去の実績に基づきまして輸入商社に割り当てをしておるわけでございます。  この割り当てが適正に行われるためには所管官庁である通商産業者とも十分協議をしなければいかぬわけでございますが、いま先生おっしゃいました農協に一元的に割り当てろという話は聞いておりますが、農協に一元的に割り当てていいかどうか非常に種々問題もございますので、これまた輸入上の問題といたしまして、通産省あたりとも十分相談しながら、また国内関係方面と検討して慎重に対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いま野崎局長の答弁をお聞きになったように、ちょっと声も小さかったし、歯切れも悪いのですが、事実そういった窓口を求めて農業団体業界かということになっているわけです。相当いま沸騰しておりますからね。大臣、御存じでなければ十分認識していただきたいと思うが、一つにはこの問題は、いよいよ業界がそのことで強く農協に対して反論してきたということは、静岡以西のいわゆる西日本におけるミカン作地帯では大変心配しております。いわゆる自由化に踏み切るための前兆ではないか、こういうことで大変心配をしておるわけです。  時間が詰まってきましたので、あまり申し上げられませんけれども、そういうことで重大な問題でございますので、農林大臣は北海道出身だといっても何も北海道の農林大臣ではありませんから、南にあるミカンの地帯のことも、これは全体を考えていくことは当然でありますし、またそんなけちなことをおっしゃっている大臣ではありませんが、農家の皆さんはややもすると、農林大臣は北海道だから北海道のことはなかなか力を尽くすけれども、このミカンには疎いんじゃないかということをよく言って不安がっておりますので、この席でひとつはっきりとしたあなたの所信を申し述べていただきたいと思うのです。
  142. 中川一郎

    中川国務大臣 ミカンと競合いたしますオレンジにつきましては、生産農家支障のないぎりぎりの折衝を行ったわけでありまして、六月から八月、ミカンもタンカンもない、しかも貯蔵しないように正規の市場ルートに乗せる、こういうことを条件にして調整を行いました。  この輸入の方法につきましては農業団体業界、いろいろいま検討いたしておりますが、事務当局で通産省と相談をして合理的な一番いい方法というもので処理をすることになろうと存じます。  ただ、そのことが自由化につながるということは絶対あり得ませんで、午前中にも申しましたように、自由化はもとより、季節自由化を含めて、自由化は柑橘農家に大きな影響を与えますから、これは私は断固阻止をしてまいりたい、こう思っておるところでございます。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農畜産物自由化をしたら大変なんです。それはもう当然できないことはわれわれも承知しています。自由化しなくても、枠を拡大すれば同じことになるわけですから、その点をよく踏まえて十分対処していただきたい。  次に、林業関係の問題について農林大臣並びに関係当局に質問してまいります。  林政上の重要な対応策について、最初農林大臣の所信を承りたいと思います。  昨年十一月二十四日、当委員会で私がるる指摘をしたところでございますが、重要な問題でございますのであえてまた質問申し上げてまいりますけれども、今日のテーマである国産材の自給力からいって、重要なことは、間伐問題が林政上の重要な課題であることは言うまでもございませんが、さらに一九八〇年代に入れば間違いなく戦後造林地からの主伐材供給が始まるわけでございまして、今日の間伐材問題はあすの主伐材問題であると言ってよいわけでございます。  国産材の自給力を考える場合、戦後三十二年間、わが国歴史上かつてない大造林を行ってまいりました。戦後はいち早く天皇陛下のいわゆる御臨席を仰いで植樹祭を行ってきたことは国民周知のとおりであります。その結果、戦後八百万ヘクタールの造林を行ってまいりました。戦前の二百万ヘクタールを合計すると一千万ヘクタールの人工造林地となっております。ゆえに、戦後の造林地は二十年生以下の幼齢林が七割台を占めているとはいえ、戦前の二百万ヘクタールの四倍以上の生産力を持つことになります。  一方、昭和四十八年に政府が改定された林産物の需要及び供給に関する長期見通しで想定された三年後の五十六年度のいわゆる需要量は、一億三千四百八十万立方メートルとなっております。ところが、現在の木材の状況を見ますと、木材総需要量が年間一億立米強でございまして、外材、国産材の比率は、外材が六千七百万立米ないし六千八百万立米、国産材が三千二百万ないし三千三百万立米となっておりまして、六八対三二というような割合のいわゆる外材依存型になっておることは御承知のとおりです。このまま推移しますと大変な問題が起きるということで私は指摘をするわけでございますが、日本国内材も、数年を待たずして外材はわずか輸入すればいいことになり、国産材でほとんど供給できる時代がいずれやってくる、またその日も遠くない、こういうふうに私は指摘するわけであります。  すなわち、現在は需要量から外材輸入量を差し引いて残りが国内供給量になっております。私は、こういったことではいけないし、またこういった状態を続けていたのでは、今後国内材の供給が大幅に始まっても、なかなか国内材のよさというものは浸透せずに、今後木材生産意欲にもまた国内材の問題についても大きな暗影を投げかけるということで大変憂慮しておるわけです。したがって、需要量マイナス国内供給量イコール不足分を外材輸入というように転換をしていただかなければならない。これも急激には転換はできないのです。そういったことで、私は、いまこそ林業のいわば大転換期に来ている、かように言うわけです。  ことしは、御存じのように、農林省設置法によって営林局の一部廃止の問題、さらには国有林野の整備法を初め、森林組合の単独法の問題、また森林組合の合併助成法の問題、そのほかもう一件、当委員会に提案される国会承認案件がございますが、かつてない、いわば林業国会とも言うべきときが来ております。五年前の森林法改正は戦後における一大改正でございましたが、それにまさる重要な森林組合の単独法等が提案され、また林業においても、昨年の漁業国会と言われた以上に、ことしは林業国会とも言うべき重大な曲り角、転機に来ております。こういったときに農林大臣は就任されたわけでありますが、ややもすると林業は忘れられがちでありますけれども、林業に大いに重きを置いて施策をしてもらわなければならない、また大転換を図らなければならない、国の大変な問題が目の前にぶら下がっておる、かように私はかねがね言い、また特に今国会において冒頭指摘をするわけでございます。  そういったことを踏まえて、私は農林大臣に、こういった林業が大変な転機に来ているということについての認識と対応策をどう考えておられるか、所信を冒頭に承りたいのでございます。
  144. 中川一郎

    中川国務大臣 林業を取り巻く状況も農業、水産業に劣らないぐらい厳しい状況にございます。価格の低迷、山の荒廃等々、あるいは製材業界、合板業界にまで大きな動揺を与えている現状でございます。  そこで、ことしは林業国会と言われるくらいに、まずは国有林のあり方をここで見直そうではないかということで、一般会計から造林、林道に対しての導入や、あるいは機構の改革や各般にわたる改革をしたい。また、一般民有林につきましても林業基盤整備を図る、あるいは流通関係の見直しを行うなど、あらゆる意味でここで出直し的な年にしたい、こう思って真剣に取り組んでおるところでございます。
  145. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、この外材輸入の問題ですけれども、現在、外材の輸入は、八〇%が二十数社のうちの大手十社になっております。大手十社が七〇ないし八〇%のシェアを握っております。莫大な資金力によって優に手形の取引もできるという状態になっております。また一方、組織団体である森林組合等を見ると、その資本金は八百万か一千万ということでわずかな取引しかできない状態で、森林組合等が幾らがんばっても太刀打ちできないような状況になっております。そういったことで、国産材はなかなか対抗することができない。  こういったことで私はいろいろ申し上げたいけれども、時間も詰まってまいりましたので、はしょって申し上げますけれども、いまのような外材の輸入状況では大変なことになる。これでいいのか、どういうふうに対策を講じておられるのか、その対応策をどう考えておられるかということを私はお聞きしたいわけです。  時間もございませんので、ひとつ簡潔に要点をお答えいただきたい。
  146. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま御指摘のように、現在、日本の木材需要は国産材だけではなかなか賄えないということで、外材の輸入が六五%になっておりますけれども、やはりいま御指摘がありましたように、日本の森林はまだ若齢級の森林が多うございます。したがいまして、現在私どもが考えております見通しによりましても、まだ当分の間、外材によらざるを得ないというふうに考えておりますが、しかしながら日本の林業なり林産業というものに大きな影響を与えるような輸入であってはいけない。今後、安定的に、そして需給関係を乱さないような形で、外材が国民の需要に合うような形で入ってまいりますよう私どもとしても対処しなければいけないと考えておりますし、この点につきましては、目下その方向について私ども鋭意検討を進めておる段階でございます。
  147. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外材問題については、林野庁がおっしゃったようなぬるいことではどうしようもありませんが、問題の指摘をして、法案の審議の際にまた改めていろいろとお尋ねすることにします。  これまた農林大臣の所信表明に当たって重要なことを指摘しておきたいと思います。それは林業の政策についてでございます。  林業は、従来からどちらかといえば生産対策に力を入れ国家投資を行ってまいりました。これはそれなりに成果をおさめてきたことは私も十分認めます。しかし、気がついてみると、木材を市場に出して商品にかえることは林業者が手を染めることにはなっていないということがわかってきたわけです。もちろんこんなことはもう前からわかっているわけですけれども、その状態がいよいよ深刻になってきたということでこのように指摘をするわけです。農業に比べて林業は立ちおくれております。木材安定法は皆無に等しいわけです。予算措置も少ない。これからの措置を真剣に考えていかねばならぬと思うわけです。  そこで、たとえば森林組合で木材市場を持っているのは全国で九十四カ所でございます。一県当たり平均すると一・七八ないし一・八となり、二カ所弱となっております。木材市場のないところは第三次産業にゆだねている現状でございます。ちなみに昭和五十一年度の実績を見ますと、森林組合が行った造林面積は、組織的なてこ入れで伸びたとはいえ、民有林全体の四〇%強の成果を上げておりますが、出てきた製品の取り扱いとなると一〇%にも達していない現状であります。すなわち機械等を入れていろいろやってはおりますけれども、要するに根本的なてこ入れが欠けていたということでございます。その結果がいまも申し上げたように外材輸入に拍車をかけてきていることも事実でございまして、国産材の需要の減少を来した一因ともなっていると言っても過言ではございません。まことに残念なことであります。  そこで、国産材の流通をいかに円滑に進めていくか。いま藍原林野庁長官は、まだここ当分はとおっしゃいましたけれども、その当分というのが半年なのか一年なのか二年なのか三年なのか問題でありますが、当分というけれども、一九八〇年代と言いましたように、ここ四、五年を経ずして重大なときが来る、急にカーブは切れないからいまからやらねばならぬということで私は指摘をするわけです。そこで、国産材の流通をいかに円滑に進めていくか。行政的、財政的に援助をすべきときである。こういった点からも十分林業に対する認識を国会においてもしていかなければならぬ、かように思うわけです。  農林大臣はこういったことをどういうふうに評価しておられるか。先ほど言いましたように、まさに気がついてみたところが、生産には力を入れたけれども、いわゆる商品化した後の問題については全く手がつけられてなかったというところに重大な問題があった、こういうふうに指摘せざるを得ません。それについて大臣の見解を承りたいのであります。
  148. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生の御指摘がありましたように、これから日本の国産材が用材として伐期に達し、国民の利用になるわけでございますけれども、現在七〇%がまだ二十年以下の森林でございます。したがいまして、日本の森林の中心が主伐に達するにはまだ相当の年数がかかるというふうにわれわれ考えておりますが、それにいたしましてもやはり間伐等がこれから行われなければなりませんし、そういう観点から私どもとしては、先ほど申し上げましたように、需給が安定するような形で外材が輸入されるような方途を考えなければいけませんし、また一方、木材というものが従来に比べますとその利用の範囲が狭まっております。したがいまして、木材の利用面の拡大ということもあわせて考えながら、今後、日本の林業の基盤をさらに整備すると同時に、木材の需給が安定して行われるような外材の輸入を図っていく必要があろうというふうに考えております。
  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、林業関係の五十二年度予算で、公共事業は要求以上についておりますし、特に造林など予算が要求以上についたために、果たして遂行できるかどうかということで憂慮されておるのが現状でございますが、一方、建設省関係の道路、ダム等も膨大な予算がついておることも御承知のとおりです。いわゆる経済成長七%遂行のために公共事業に大型投資がなされていることはもう皆さん百も承知のとおりでございます。  そこで、私はこれまた問題を指摘するわけですが、造林等を行う場合に、一般土木に労働力が流れて、奥地化する造林になかなか人が集まらないという懸念をことしはしておるわけです。造林時期がやがてやってくるわけですが、たとえば建設業のダム、道路なんかでございますと、失礼な言い方ですけれども、道路を工事する場合に旗を振って交通整理をしている御婦人方は、おおむね一日八千円から一万円くらい取られる。ところが、林業に従事する労働者は、造林の場合、御婦人でせいぜい一日に五千円程度ですね。そうなりますと、今回は公共事業がかなりふえてきます関係から、どうしても建設関係のダム、道路にとられて、林業関係、しかも造林は奥地化してくる、重労働であるということで、労働力の確保がむずかしくなってくる。そういうことでますますこういった造林等の公共事業の推進が図れないということが懸念されるわけでございます。  そこで、農林大臣並びに林野庁長官、ひとつ英断をもってこういったものに対する予算を、ルールを守れる範囲で、かつ交付条件を緩めて、手を抜かぬ使い方を考えてやったらどうかと私は提案をしたいし、また考えるわけでございます。すなわち、林業だけが崇高な姿勢で御飯を食べていくということにはできないわけです。そういったことをよく実情をわかった上で、机上の予算ばかりじゃなくて、特に造林にしわ寄せが来ないように、こういった思い切った弾力的な予算というものをつけてやらなければ、一般公共の道路、ダム、こういった建設関係の仕事に労働者が多く流れて、林業はますます推進が図れないという状態になってくるということを懸念しております。  これに対してどういうように考えておるか、お答えをいただきたい。
  150. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 林業労働力につきましても、従来から、土木等に比べますと、確かに労賃というのは低目かもしれません。しかしながら、私ども現在、森林組合の労務班の育成、あるいは県におきましては公社造林の推進等々を図りながら林業労働力の確保なり推進というものを図っておりますし、また林業労働に携わる方々につきまして、社会保障制度のいろいろな面での適用促進という形で対応も図っておりますし、本年度、ただいま御指摘ございましたように、公共事業がそれぞれ大きく伸びておりますが、造林事業につきましても、そういう点公共事業との競合のないような、そしてまた造林事業に役立つような方法で、私ども積極的に対処してまいりたいと考えております。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 林野庁長官の通り一遍の答弁で納得するわけにいかぬけれども、とにかく大変なことでありますから、ひとつ農林大臣も十分これについては林野庁長官の意見を聞いて対処してもらいたい、こう思います。どうですか、農林大臣
  152. 中川一郎

    中川国務大臣 大事な点でございますから、万遺漏なきを期してまいりたいと存じます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、藍原林野庁長官にお尋ねしておきますけれども、昨年は木材が低迷している上に、実は九州のヒノキまた四国のヒノキ、秋田の杉というように、価格が大変下落しました。もちろん九州なんかはその七〇%はヒノキというせいもあってか、営林局が予定以外の増伐をしたということで、いろいろな批判が出ておるわけです。その理由は、一つは、外材輸入により需要停滞が起きているということもありましょう。また二つには、国有林が経営が苦しいので増伐をしたということもいろいろ指摘されております。すなわち限界以上増伐したんじゃないか。そういったことで木材市況がダブついてきた。こういうことで、事実大変な低落ぶりでございました。国有林の伐採は、民間の状態を見て、十分コントロールできるように差し控えるべきじゃなかったかと、私はかように指摘したいわけです。木材価格を崩した、そして民材圧迫をする元凶は国有林であったということが指摘されております。これはどこのだれが言ったといいますと、やはり国有林を払い下げてもらう関係もあってなかなか民間の方ではそういったことは公開の席では言えない。私が代弁して言うわけですけれども、これは藍原林野庁長官も十分認めておられると思うが、そういうことで、大変下落した上に民間は苦しんだわけです。国有林の方も、増伐して経費を賄うということで計画したと思うのですけれども、市況が悪くなったために安く売るという結果になって、これまた国有林もずいぶんと苦しまれたと思うのです。要するに民材を圧迫しないような国有林の経営をしてもらいたい。昨年のこういった酷な対策はやってもらいたくない。  詳しく言う時間がございませんが、十分反省の上に立って今後指導してもらいたいと思うのです。林野庁長官、どうですか。
  154. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国有林の伐採方法につきましては、従前から国有林は安定的、計画的に木材を供給するという方途をとってまいりました。したがいまして、木材の価格の高騰あるいは低迷、あるいは需要の増大、減少等に、ある意味で無関係、と言っては語弊があるかもしれませんが、そういう形で年間の伐採量を決めまして伐採いたしております。と申しますのは、国有林の伐採量が日本の需要全体に占める割合が一割でございます。したがいまして、地域によりましてはあるいは非常にその影響が大きいところもあるかと思いますけれども、全体とすれば一割でございますので、さほど影響もなかろうという関係で、いままでそういう方法で伐採いたしておりました。ただ、昨年非常に木材関係が供給過剰と申しますか、緩和基調になりましたために価格も低迷するということがございまして、ある意味で、地域によりましては民間の林業の方々に迷惑をかけた点もあったと私どもは十分反省をいたしております。  したがいまして、今後こういうことのないように、国有林の独立特別会計の中でどういう形でそういう方途が行い得るか、十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 中川農林大臣、いまお聞きになったようにそういう事実があったわけで、ひとつ林業関係についても十分意を尽くしていただいて、今後、農林大臣としても指導していただきたいと思うのです。ようございますね。  時間が迫ってまいりましたが、さらに、林野庁長官で結構ですけれども、間伐ですね、これもいろいろ指摘したいところでございますけれども、これも本当に真剣にやらなければいかぬから、たびごとに申し上げなければいかぬと思って申し上げるわけですけれども、実際にこの間伐に対しては決め手がない。ことしも予算を多少組んでおられるけれども、もういよいよ切り捨て間伐もできないような状態になっております。そういったような意味で、ひとつもっと強力な、抜本的な対策をやってもらいたいと思うが、きょうはこれに対する見解だけ承っておきます。
  156. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 私どもも、これからの林政の重点は間伐であろうというふうに考えております。したがいまして、まだまだ十分とは言えませんけれども、間伐につきまして種々な施策を講じておるわけでございますが、これからの日本の森林をさらによくするためにも、間伐についてはさらに積極的な施策を考え、また総合的な対策を打ちまして、日本の森林が活力のあるいい森林になるような方途を積極的に対応してまいりたいと考えております。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十三年度の林業関係予算で、これは私は本当に大変いいことをやってもらったと評価しておるわけです。また、遅きに失したのではありますけれども、この点についても一点触れておきたいわけですが、林業従事者中小企業退職金共済制度適用促進対策というのでございます。これはもうぜひともひとつ、三年間の期間を経て、四年後には本格実施ということで、ことしの七月一日から発足予定で九カ月予算を組んでおりますが、この中身について簡潔に説明をいただくと同時に、ぜひともこれは強力に推進をしてもらいたいと思う。
  158. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいまお話ございました中小企業退職金共済への林業労働者の加入促進の問題でございますけれども、これは御存じのとおり中小企業退職金共済法に基づきます特定業種退職金共済制度というのがございます。それに対しまして、林業がその適用を図るようなことを目指しまして、五十三年度から五十五年度の三年間にわたりまして加入奨励を国の助成のもとに行いまして、これは都道府県単位に林業従事者の退職金積立共済事業を整備するものでございます。この整備を三年間やりまして、その結果先ほど申し上げましたような特定業種退職金共済制度へ乗り移るということでございまして、林業従事者は御存じのとおり社会福祉面では必ずしもまだ十分でない面もございます。したがいまして、こういう退職金については、特にいままで通年雇用がなかなかむずかしいということから、恩恵も受けておりませんでしたけれども、この制度を積極的に推進いたしまして、林業従事者がこの恩恵を受けられるような方途を見出したいということで、五十三年度から予定したものでございます。  私ども、そういう意味で、この御審議いただいております予算が確定いたしましたならば、積極的にこの推進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣、いまの中退共の問題ですが、これは略して中退共というのですが、これは目的を達成するまで、すなわち物になるまでぜひとも持続してやっていただきたい、かようにわれわれは熱望している事業でございますので、大臣もそれに対する見解を述べていただきたいと思う。
  160. 中川一郎

    中川国務大臣 承知いたしました。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一点、最後に承っておきますが、林野庁長官、今回、新林業構造改善事業促進対策調査研究費がついておりますが、新林構といいますけれども、従来は第一次林構、第二次林構とやってきたわけですけれども、いよいよ昭和五十四年度でもって地域指定を終了するわけで、第三次林構に匹敵すべき林構を新林構として特に名をつけておられますが、そのゆえんとその中身についてどういうふうに考えておられるか、その大綱だけ、簡潔で結構ですが、最後にお答えをいただきたいと思います。
  162. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま推進しております第二次の林構が、五十四年度には計画した全地域の指定を終了いたします。したがいまして、私どもは、この林業構造改善事業が非常に地元からも要望が強くございますし、さらに林業につきましては基盤整備等々、推進しなければいけない問題が多々残っております。  したがいまして、五十五年度以降におきますこれからの林業のあり方ということを考えまして、従来やっておりました林業構造改善事業は、主として経営基盤の充実あるいは資本装備の高度化というものを中心にいたしておりましたけれども、今後、ただいま検討しております構造改善につきましては、地域林業の形成促進あるいは生活環境の整備と推進、こういう問題を中心にした林業構造改善をやろうということで、今後調査に入ろうというふうに考えておる次第でございます。
  163. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で一応質問を終わるわけですが、残余の問題は、通告しておりましたけれども、次の機会に譲ることにして省略させていただきます。
  164. 中尾栄一

    中尾委員長 竹内猛君。
  165. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、大臣の所信表明に関連をして幾つかの質問をしていきたいと思いますが、とりわけ七%の経済成長というものと農業との関係、それから、きのうからきょうに及んでわが党の同僚がいろいろな角度から米の生産調整問題や自由化をめぐる諸問題についての質問をいたしました。そういう問題を締めくくる意味において、あるものは確認し、あるものは今後に問題を残していくという形で整理をしていきたいと思います。  まず最初に、福田総理大臣は施政方針の中で、五十三年度の経済成長の目標を七%程度に置く、これによって日本経済は五年越しのいろいろな諸問題も解決をするし、長いトンネルを抜けることもできる、これが解決するかしないかという問題は、末端の企業も家庭も大変な問題なんだ、こういうことも言われました。  あるいはまた、宮澤経済企画庁長官は経済演説の中において、政府は五十三年度経済成長率を七%程度と見込んだ、必ずしも容易でない課題ではあるが、雇用の安定確保、国の経済の将来の発展への足固めをする上においても、ぜひともこれは達成をしなければならない重要な問題である、こういうふうに言われております。  しからば、それなら、その七%成長というものを農業に持ち込んできた場合に一体どういうことになるのか、経済企画庁はこれをどのように説明をするのか、まずそこから説明を求めます。
  166. 田中誠一郎

    ○田中説明員 五十三年度の経済見通しにおきましては、農林水産業の生産指数、五十二年度の一〇一・一から約二・二%の減少と見込んでおるわけでございます。ただ、全体の経済は、すでに御説明申し上げておりますとおり、十五カ月予算を中心といたします財政面の支出を中心といたしまして在庫投資の調整が進展し、個人消費が漸次消費者物価の安定とともに上向く、一方設備投資も漸次、ことに非製造業部門を中心といたしまして回復していくのではないかということで七%成長を見越しておるわけでございますが、その間にあって二・二%の減となっておりますけれども、御承知のとおり五十二年度は大変な豊作であったということの関係もございますので減少にはなっておりますが、作付転換等について万般の措置を講ずるということで七%成長のもとで農業生産は整合性を持っておる、かように考えておるわけでございます。
  167. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 経済企画庁は日本農業というものを日本経済の中でどういうような位置づけにしてあるのか、一体国民所得の中に農業はどういう位置を占めるのか、この点についてどうですか。
  168. 田中誠一郎

    ○田中説明員 農業は申すまでもなく国の基本でございまして、政府といたしましては、五十三年度経済見通しにも述べてございますように、食糧自給度の向上というのを基本といたしまして総合的な農政を推進するということを考えておるわけでございます。
  169. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その両方の答弁を聞いてみて、きわめて抽象的で何が何やらさっぱりわからない。これではなかなか審議のしようがないのですね。  大体、日本農業は一九六〇年から一九七五年までの間にどういうふうな変化をしたかというと、耕地面積において一九六〇年に六百七万ヘクタールあったものが七五年には五百五十三万ヘクタール、これは五十万ヘクタールが減少しております。農家戸数で六百六万戸の農家が四百九十一万戸、百十五万戸の減少、しかも九〇%は兼業農家ということになっている。就業人口が千四百五十四万人のものが七百八十三万人、これは六百七十一万人の減少です。作付延べ面積八百十三万ヘクタールが五百七十一万ヘクタール、二百四十万ヘクタールの減少です。耕地利用率一三〇%のものが一〇〇%ちょっと超えた、あるいは一〇二%ぐらいとなっている。  こういう現状からしてみて、どこに一体生産の増強とか自給率が高まったということが言えますか。経済企画庁、しっかり言ってください。
  170. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま先生から御指摘がありましたように、過去の十五年ほどの間を見ますと、わが国の高度経済成長下におきまして、耕地面積にいたしましても、就業人口にいたしましても農家数等にいたしましても、減少しておるということは事実でございます。しかし、高度経済成長の時期が済みまして安定成長の時点になりましてから、いわゆる四十九、五十、五十一年というあたりになってまいりますと、耕地面積の減少の割合というようなものも従来の約半分程度になっておりますし、就業人口の減少というようなものの傾向も減ってきておりまするので、いわば経済全体の中における農業の位置というものは、経済が安定化していくに従って、その本来の位置を回復しつつあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  171. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いずれにしても、きわめて抽象的な話ですが、それなら五十一年度の農業粗収入は幾らです。
  172. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 いま直ちに調べましてお答えいたします。——農家経済調査によります一戸当たりの農家所得は、五十一年におきまして三百六十六万二千円でございます。
  173. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その全国の農業の粗収入は何兆になっているかということを、各戸ではもちろんわかっておりますけれども、それはどうなっておるか。七兆と言われ、八兆と言われ、九兆と言われているが、それはどれが本当か。
  174. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 農業の粗収入、いわゆる総産出額で申しますと、五十一年は九兆二千九百億というふうに概算で出ております。
  175. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、問題は、経済企画庁、その七%の成長というものは一体どういう方法で具体的に五十三年度に、農業の内部及び外部でもいいから、やろうとしているのか、その点を聞かしてもらいたい。
  176. 田中誠一郎

    ○田中説明員 経済見通しにおきましては、実は産業別の総生産を出してございませんで、私どもは支出項目別に積み上げるという段階的接近法をとっておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました農林水産業の生産指数、そして生産活動によってどういった経済循環にプラスをもたらすかという点は解明してございません。
  177. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これ以上この議論をしても仕方がないけれども、少なくとも五十三年で七%の経済成長を実現する、そして五十一年度においては九兆二千九百億の粗収入があったとするならば、当然農業におけるこれの七%増というものは、計算からしてみたってできないはずはない。  そこで、じゃ私の方から今度は質問するけれども、この四つのうちのどれをとるかということについてひとつ答えてもらいたい。  第一は、七%の経済成長という場合に、農地の面積がふえないということで、あるいはふえるとするならば、七%の農地の造成をしなければならない。反収というものが同じであれば、そうしなければならない。つまり農地造成の方法が一つある。第二は、今度は農地が現状のままであれば農業生産性を七%ふやすということが考えられる。その次は、農畜産物価格を七%つり上げるということが考えられないかどうか。それから、それでもだめな場合には、国が、あるいは別な団体から、七%ふやした部分農業に注入する。さらに、それでもだめだとするならば、農業外における安定的な雇用制度があって、そこに雇用させて収入を与える。どういう方法をとるのか、この方法のどれかの方法をとらない限り、農村あるいは農業の中で七%成長させようというのは無理じゃないか。どの方法をとるのですか。
  178. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまお話がございましたように、国民経済全体の伸びの七%と同様に、農林業についても七%の成長をさせていくということになりますれば、御指摘がありましたように、農地の面積を七%ふやすとか価格をふやすとか、ないしは農外所得をふやす、さらには生産性を上げるというようなことを考えていかなければならないわけでございますが、方向としては、いま御指摘がありましたようなものをそれぞれについて努力をしていかなければならないと考えておりますが、ただ農林業につきましても国民経済と全く同様に七%の成長が達せられるかどうかということは必ずしも断言することはできかねるのではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。わが国経済の産業構造からいたしますと、全体として七%上昇する場合に、農林業、第一次産業につきましても全く同様に七%の上昇が確保できるかどうかということにつきましては、疑問があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  179. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま私は具体的な方法、筋道をちゃんと出したのだから、そのうちのどういう筋道でいくかということについて答えなければ、これは具体的な答えにならないじゃないですか。こちらからちゃんと言っている。農地をふやすのか、生産力を上げるのか、それができなかったら国が財政でその部分だけをやるのか、あるいは農畜産物価格を上げるのか、あるいは農外に一つの雇用条件をつくって、そこで賃金を保障して所得を上げるのか、何かしなかったら七%ふえないでしょう。その七%ふえるということをいま具体的に聞いているわけなんだけれども、この問題はどういうことになるのですか。
  180. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいまも申し上げましたように、農業自体におきまして七%をそのまま確保できるかどうかということについての保障はなかなかむずかしいと思うわけでございますが、しかし全体の経済成長の中で農業もそれ相応の規模の拡大をしていかなければならぬということは、御指摘のとおりでございます。筋道といたしましてどれか一つを選択するということではなくて、やはり土地改良長期計画に基づきます農用地の拡大なり、農業生産の各般の措置による生産性の向上なり、または農外の収入等につきましては、農村における雇用機会の増大というような形で農外の所得も向上していくというような各般の施策をとっていかざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それからまた、お話のようにマクロ、全体としての場合の考え方、その中にも農家の形態がいろいろございますから、特に農業を中心にして経営をしておるような、そういう農家についての所得をどのようにして上げていくのかということがこれからの農政上非常に重要な点であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  181. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この話もこれ以上続けると時間がかかって空転をしてしまうから、経済企画庁も農林省も農業における七%、経済成長率七%というものについてどの程度真剣に取り組んでいるかということについて、これは十分に研究をして、いずれ後で資料をぜひ出してもらいたい。そうしないとこれはうそになりますよ。総理大臣が七%をやらなければ大変なことになる、家庭も民間もと、こう言う。経済企画庁長官は、もうそれを上回ったようなえらいことを施政方針で述べているのですからね。それがいまのような答弁を委員会でもってやられるということになると、これはさっぱりできていないじゃないかという形になってしまう。私は具体的に四つなり五つなりの問題を挙げて、そのうちのどういう筋道をとっていくのかということを尋ねたけれども、これの答えは、まあ各般にやりますと、こういうことだから……。  農林大臣、どうです。
  182. 中川一郎

    中川国務大臣 経済成長というのはマクロの日本全体の経済を指すのであって、農業も七%、林業も七%、水産業も七%、商工業も七%、そういう積み上げでできるものじゃないと私は思うのです。したがって、国の成長率が決まったから農業で七%、七%上げるのにどれとどれとどれで、じゃあ地域はどこで、どうやって、どこの町村でと、こういう仕組みのものではないと私は思うのです。  したがって、農業についてはいま御指摘あった五つについてできるだけ最善の努力をしていく。生産性も上げなければならないし、価格対策、流通対策、金融対策、いろいろなことをやって景気がよくなるように最善の努力をする、そういうものが全体として組み合って日本経済が七%、こういうふうになっていくのであろうと思いますので、それぞれ五つ、それ以外にも金融政策もありますし、流通対策もあるし、いろいろと総合的にやって農家経済をよくし、国の成長率七%に御協力を申し上げる、こういう姿勢で行政を行うべきだ、こういうことではないかと思うのです。  七%の農林省の具体的内容と言われましても、そういう正確なものではないのでどうかひとつ、専門家でわかっているとは思いますけれども、特に申し上げておく次第でございます。
  183. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農林大臣がそういうことを言ったから、先の方へ行こうと思ったけれどもちょっと行けなくなっちゃった。  農林大臣ですよ。農林大臣が自分の管轄の中で七%を実現するためには、最大限どことどこにポイントを置いてそれを進めていくのだ。七%ということは容易じゃないでしょう。九兆二千九百億という粗収入が出ているのだから、それに七%を上げるということは、単純にしても少なくとも粗収入で五千億以上のものが加えられなければならぬということだ。  ところが、米の生産調整百七十万トン、これは去年のこの委員会でも五千百億円というものは、あのときの価格でもうすでに減収することはわかっている。それに、なるほど二千百十二億という予算を組んだじゃないか。あの予算にもぼくらは、その位置づけに実は異議がある。あるけれども、ともかく二千百十二億という予算が組まれている。去年は九百八十二億ですか、だからそういうものを差し引いてみても、四千億というものはそこでもう現にマイナスになっている。それで、四十万ヘクタールという土地に何をつくるかわかりませんが、いずれにしてもそれが仮に収入になったとしても、やはり少なくとも二千数百億というものは収入減になることだけは明確なんだ。マイナスの要因はかなりはっきりしているけれども、プラスになるという要因は大臣、ないじゃないか。何かあるかね、プラスになる要因は。しかも、来年は米の価格は上げないと言っている。畜産物の価格は来月審議するけれども、これもどうも値上げどころじゃない、値下げをしなければならないと、すでに煙幕を張っているわけだ。そして、外国からは果汁なり牛肉なり、そういうものが入ってきて、すでに既存の農家の頭をこづいている。こうなってくると、農家の所得が拡大をする道は一体どこに求めるのか、これをまず聞きたいわけだ。
  184. 中川一郎

    中川国務大臣 正直申し上げて生産量は昨年に比べて、昨年が豊作であったということ、それから米の生産調整をやるというようなこと等から、適正にはじいて量におきまして二・二%は下がるだろう。では、金額にしてどうなるのかというと、生産調整費も行くでありましょうし、あるいはまた量はマイナスになっておるけれどもそこでまた新しい転換作物もできてくるだろうし、あるいは農業基盤費も相当大幅にふやしておりますからここからの兼業収入もいくであろうし、農産物価格は上がらないと言っても、いろいろな農産物があるわけですからそれぞれ値上がりもあるだろうし、政府の管理いたします牛乳とか大豆とかビートとかいろいろな作物がありますが、それらの値上がりもあるであろうし、あるいは生産性の向上もあるであろうし、いろいろ総合的にそれに向かって努力をするということで、農業においてもどれとどれで何%ずつ、そして合計七%、こういうものではないのではないかと思います。  まあ厳しい状況ではありますけれども、国の全体の七%成長に農業においても応分の努力をする、こういうことだろうと思います。
  185. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この点についてもいまの大臣の答弁を含めて、経済企画庁と農林省にもう少し細かい緻密な資料と数字で説明をしてもらわなければ、とても私には理解しにくいものだ。それはしにくいですね。面積はふえない、価格もどうも上がらない、そういうところで農村の所得や経済が成長するなんということは考えられない。何もそれは農業だけに七%ふやすなんて、そんなやぼなことを言っているわけじゃない。そういうことを前提に理解をして言っていることだけれども、少なくとも農村内部ではどうなのか、こういうことを言っているわけです。  そこで、きのうの大臣の所信を伺うと、総合食糧政策というものをやっていこう。その総合食糧政策の柱は、もう一度聞くけれども、何と何でしょう。どういう柱です。
  186. 中川一郎

    中川国務大臣 過剰傾向にありますのは第一番目に米あるいはでん粉、そういった過剰傾向にあるものの生産を抑制して、特に少ない大豆、麦、飼料作物、甘味資源作物、こういったものを、先ほども申し上げましたが、できる限りふやすというのには、大変な財政力あるいは国の施策というものが総合的に投入されなければできませんが、あえてこれを行って総合的に自給力が上がる、こういう方向、まあ肉なども飼料作物等からいってその中に入るわけです。そういうふうに六十年度の農産物の需給と生産見通しに向かって努力をして総合食糧政策に、これは全部百点満点のことはできないにしても、その目標に向かってまっしぐらに農政は突進をしていく、こういうことだろうと思います。
  187. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 総合食糧政策というのを言ったのはいまから三年くらい前だと思うのです。そのときに、米麦一貫体系、それから複合経営、農用地利用増進事業というもので借地農業というものの規模拡大、こういうふうに説明があったと思うけれども、これは間違いかどうか。
  188. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 五十年の八月に総合食糧政策を展開いたしましたときの大きな柱といたしましては、農業基盤整備の促進、米対策、麦対策、粗飼料生産対策、それからこういうふうな農業生産のための中核的な担い手の育成確保対策、それから価格政策、それと輸入農産物の安定化と備蓄対策、漁業経営安定対策、農山漁村の福祉の向上というような柱をもとにいたしまして、総合食糧政策を展開したところでございます。
  189. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、その総合食糧政策の大きな太い柱である米、これの減反、それから麦は前の年よりは確かに生産はふえているかもしれないけれども、依然としてまだ六十年展望が期待をしているような成長の仕方をしていない。先ほどもいろいろ質疑があった。あの中で、小川委員の質疑の中で、米以外の物は、おしなべて六十年展望の日程からいってみても、その自給率が余り伸びていないという話があったけれども、そのとおりだと思うのですね。そういうことで、米麦一貫体系というものが必ずしも成功の上に乗っていないのじゃないか。  あるいはまた複合経営、つまり基幹の作目というものを置いて、それにプラスアルファを加えていく、そして地力の増進ということで畜産の振興、つまり大家畜、小家畜というものをこれに加えて地力を増進していく、有機質を土壌に入れる、こういうことが必要だと思うけれども、それが意外に前進をしていない。  それから、三番目の問題の農用地利用増進事業にしても、やはり借地農業、これは瀬野委員質問にもあったように、四万円という管理田をつくった。この四万円というのが借地料というような形に理解をされると、現在の耕作賃貸料、そういうようなものの値上げという形になって、今後農地を集中的に集めて、それを近代化していく方向には決してならないではないかというような感じがする。  そういう点で、このせっかくの方向というものが、一つ一つ頭を砕かれているような方向に来ているのではないかということで、総合農政ということの中身が抑えつけられているような方向にあるのではないか、こう思うのだけれども、それはそうではないということになるのかどうか、その辺はどうですか。
  190. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、この総合食糧政策の推進に当たりましては、いろいろと問題が残っておることは事実でございます。しかし、米の再編対策という形で、今後需要の動向に即した農業の再編成を進めていこうということに来年度から着手しようとしておることでございますし、また中核的な農家の育成という形を特に複合経営というものと結びつけまして、地域農業のあり方を再編成していこうということにつきましては、すでに地域農業推進対策事業という形で、全国的な地域農業振興に乗り出しておるというふうな政策も講じておるところでございます。  また、中核農家育成のための利用権設定事業につきましても、農振法改正に基づきまして、その内容の促進方を図っておるところでございます。ただいま御指摘がありました米の生産調整、今度の管理転作の場合、この利用権設定事業が阻害されることになるのではないかということにつきましては非常に重要な問題であろうかと考えておりますので、今後の米の水田利用再編対策の指導の中で、そのようなことが起こってこないように十分に配慮してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  191. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業の生産を拡大をするというのは、何よりもその基盤である農地を拡大をしなければならないということになると思う。ところが、その農地の拡大の観点から言って、たとえば六十年の展望を考えたときに、八十六万ヘクタールを造成し、七十万を壊廃をする、差し引き十六万ヘクタールというものを増加をする形になっている。ことしはすでにそれの三年目に入っているわけだから、本当ならば、そのうちすでに四万八千ヘクタールというものはどこかに造成されていなければならないはずだ。これも恐らくまだ未達成ではないかと思われる。このように計画と実施との間には幾つかのずれがあるし、問題がある。  そこで、農用地をいかに拡大をするのか、こういうようなことについて農林省として何か新しい努力と考えがあるのかどうなのか、これはどうですか。
  192. 大場敏彦

    ○大場政府委員 農用地の需給バランス、収支計算の関係で、先生が御指摘になりましたように、耕地の壊廃の方が進んで、どうも農用地の造成の方がおくれている。先ほど官房長から御説明がありましたように、最近壊廃のテンポは鈍くなってきておりますけれども、しかし差し引き計算では、やはり残念ながら農用地の造成の方がおくれているというような実情であります。そういうような意味で、六十年見通しを達成するのには相当な努力が必要だ、五百八十五万ヘクタールという農用地を確保するということは相当な努力が必要であるというふうに私ども認識しております。  そのためにはいろいろな対策が必要だとは思いますが、一つはやはり優良な農用地を確保する、壊廃を防止するというようなことから、農地法の転用許可についての厳正なる履行によって優良農用地が壊廃されないように努めるということが一点だろうと思うわけであります。それから、積極的には、優良農用地がかなり残されておりますから、それを農用地区域内に積極的に編入するということも必要でありましょうし、あるいは農振地域内における開発許可の制限を厳しくする。それから、土地保有合理化法人による農地の買い入れ、そういったものを活用するというようなことが必要であります。  そういうことで優良農地を確保することとあわせて、もう一つは積極的に、あるいは国営あるいは農用地開発公団等による農用地の造成事業あるいはその他の公共事業の採択基準等を緩和して、農用地の造成事業を図る。外延的拡大としては、ことに宝庫として残っておりまする国有林等を初めとする山林原野の開発をする、そういったところに外延的な拡大をしていく、そういった努力をする必要があるというふうに思っております。
  193. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 現段階で四万八千町歩の達成はできているのかできていないのか、これはどうです。
  194. 大場敏彦

    ○大場政府委員 現在までのところ、五十三年度予算による造成面積を推計いたしまして、これは四十六年以降でありますが、農地それから草地合わせまして四万というふうな推算をしております。
  195. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、非常にテンポが鈍いような感じがしますね。現在、石油ショックのときに商社が買い占めた土地が四十万ヘクタールと言われている。その中で、特に東京、名古屋、大阪、この三大都市圏においては三十万ヘクタールの土地がある。  この問題に関連をして、二、三、関係機関に聞きたいわけですが、その中には生産緑地というのもあるし、いろいろな形でいろいろな運動がありました。そこで、特にこの際自治省にお聞きするのですが、宅地並み課税という問題があります。その宅地並み課税は、大体ことしで期限が切れるはずですが、これを自治省はどうされようとしているのか。やめようとするのか、それとも別な形で存続させようとしているのか、この辺はどうですか。
  196. 吉住俊彦

    ○吉住説明員 お答えを申し上げます。  市街化区域農地全般につきましては、五十四年度の課税のあり方についてどうするかということを法律でもって検討すべきであるということにされておりますので、五十四年度の課税に間に合いますように慎重に検討してまいりたい、かように存じております。したがいまして、五十三年度直ちにいまの課税方法を変更することは考えておりません。
  197. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 自治省にもう一度、追及するようで恐縮ですが、五十四年度の方向性について、どういう方向で行こうとするのか、現在のものをそのまま延長するのか、それともやめるのか、それとも別な形のものにするのか、三つしかないと思うのです。延長か、やめるか、それとも直して残すか、どうですか。
  198. 吉住俊彦

    ○吉住説明員 結論から申し上げますと、おっしゃったこと全部について慎重に検討させていただきたいということではございますけれども、御承知のように、三大都市圏の特定の百八十三市の市街化区域農地がA、B、Cというふうに分かれております。A、B農地につきましては、御案内のように、四十八年以来いわゆる宅地並み課税を行ってきているところでございますが、これまた御承知のように、いま御指摘のありました生産緑地でございますとか、あるいは客観的に見まして農地として保全すべきであると認められる一定の要件を備えた土地については減額措置を講じておる。それで、こういうA、B農地の課税につきましては、基本的にいまのやり方を踏襲すべきではないかというふうに一応考えてはおります。ただ、C農地につきましては、いま申し上げましたA、B農地と異なりまして、いまなお都市化の程度が低いといったような状況にもありますので、今後の状況等も考え合わせましてなお慎重に検討させていただきたい、かように存じております。
  199. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 食糧の自給率を高める、そして国内におけるところの生産性を伸ばしていくということは、何と言っても優良な土地を持たなくちゃならないわけだから、遊休の土地についてはできるだけこれを農業生産に当てはめるように、適用するように農林省は努力をすべきである。したがって、法人が持っていようと何人が持っていようと、所有権はそのまま持っていてもいいけれども、利用権を設定して所有と利用というものの分離をして、そこに経営権というものを保障していく、そういう方向について考えたことがあるかどうか、これは農林省、どうですか。
  200. 大場敏彦

    ○大場政府委員 未利用地がどこにあるかということによって対応は若干違ってくると思いますけれども、農振法のいわゆる農用地区域内であるという場合には、これはもちろん今後も農業として大いに利用していかなければならない、こういう土地であります。そういう意味で、先ほど私が御答弁申し上げましたように、農振法による開発許可制の厳正な運用だとか、あるいは場合によっては合理化法人による買い入れとか、そういったものを活用するとか、それからいま先生がおっしゃった利用権についての設定といいますか、そういう意味でいわゆる草地利用権とか、あるいは特定利用権、そういったものの制度をできるだけ活用するということも考えられると思うわけであります。  それから、未利用地が農用地区域外という場合には、やはりその土地によってケース・バイ・ケースで判断しなければなりませんが、農業上の利用としてやはり確保しておくことが必要だというものは相当あるだろうと思います。そういったところにつきましては、積極的に農用地区域に含める、ただいま申し上げました措置をとる必要があるというふうに思っているわけであります。  それから、市街化区域外の中でもあるわけでありますが、それにつきましていろいろ農業上のサイドから開発をする。実態を見ますと、遊休地はかなり小団地で散在しているという例が多いわけでありますから、そのことだけをつかまえて農業上の開発をするということはややむずかしい点もありますから、周りの農地を取り入れて、それを含めた広範な形で開発する、そういった手法も探求していく必要があるのじゃないかというふうに思っております。
  201. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私が農業経営の中で前々から主張しているのは、土地利用型の経営形態と施設利用型の方法と、二つの形が大別してあるだろう。だから、都市近郊というものはやはり、施設、資本投下型の農業経営を促進して、なるべく家畜と組み合わせた形で地力を強化していくというような方向を意識的にとっていく必要があるだろう。それから、北海道や東北のように土地の比較的広いところでは、気候上から土地利用型にならざるを得ないだろう。それも、その適地に適応した形の経営形態をとっていくべきであって、ともかく土地というものがなければ生産は高まらないし、自給度だって高まらないのだから、その努力をやるべきだ、こういうふうに思います。  ところで、今度はもう一つ公共事業の問題で伺いますが、ことしの予算に一般公共一三七・五%、こういうぐあいに予算がついている。この予算を執行する場合に、受ける方の農家は一体どれくらいの金を出せばこれに対応できるのか、これはどういうことになりますか。
  202. 大場敏彦

    ○大場政府委員 農業基盤整備は予算で七千二百八十二億という国費の計上をお願いしているわけでありますけれども、それは事業費に直しますと一兆二千億余ということであります。  この分担関係というものを過去の実績等から類推いたしますと、地方の負担額、これは都道府県、市町村合わせましてでありますけれども、約三千百二十億ということでございます。二五・七%。それから、その他負担、これが結局生産者、農民の負担ということになるわけでありますが、それが千六百三十四億、全体の事業費に対しまして一三・四%。なお、国費の負担率は約六〇%であります。
  203. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 問題は、その公共事業をやって基盤整備をして、そこに何を植えてどういう所得が農家に返るかということが問題なわけです。だから、先ほどの小川委員質問ではないけれども、米の方は生産調整をする、それを野菜に持ち込まれたら野菜が下がってしまうという形になる。大臣は、独裁国家じゃないからそれは自由だ、そんなに押さえつけることはできない、こういうふうに言った。それは大臣の言うことは理解はできる。私も独裁国家はきらいだからね。やはり民主的な国でなければいけないと思うからそれはいいのですが、それにしても予算を、たとえば二千百十二億というものを計算したんでしょう、予算を積み上げたんでしょう。その予算を積み上げる基礎というものは何かあるはずだな。あれはどこへどうするか、これはこうするかというような基礎がなければ、わしづかみに二千百十二億というものをつかみ出したわけじゃないでしょう。それには何か積み上げる基礎があるでしょう、あれに幾ら、これに幾ら、これに何ぼと。それはないはずはないでしょう。  大臣、それはどうだね。
  204. 大場敏彦

    ○大場政府委員 積み上げといいますか、過去の基盤整備といいましても、先生御存じのとおり各種事業にいろいろ分かれておるわけであります。灌漑排水事業、圃場整備事業とか畑地帯総合土地改良事業とかいろいろあるわけでありますが、国費、地方費その他という分担率がそれぞれあるわけでありますから、そういうものに即しまして積み上げて全体をトータルしたのがただいまの数字になる、こういったことであります。  それからなお、畑作とかあるいは水稲関係がどのぐらいのシェアになっているかということを参考までに申し上げておきますと、七千二百八十二億という予算額の中で、これも類推であります。五十二年度等からの実績をベースにして類推したわけでありますが、水稲関係が三千六百二十億、約四九・七%、畑関係が三千四百億、約四六・七%、こういったことになっております。畑はもちろん普通畑だとか樹園地とか牧草地というふうに分かれますが、マクロ的に申し上げればただいまのような数字を私どもは類推しております。
  205. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題についてもまた、これは時間の関係から余り詳しいことを聞けないから、いずれあれをしていきます。  農林大臣にお聞きしますが、この間ある新聞に、農林大臣は、来年は生産者米価は抑制する、米の値を上げるとまた米に集中するから米の値は抑える、こういうふうに言った。その真意はどうなのか、これが第一点。  第二点、畜産物の審議会が来月からあるけれども、これに対する価格を値上げするどころじゃない、これは下げなければならない要素が出てきたということで、値を下げるという話だが、これはどうだ。この二つ。
  206. 中川一郎

    中川国務大臣 二つとも私は言ったことの記憶がないのですが、特に米について上げられないということをどこで言ったのか。どの新聞、ぼくは新聞もまだ見ておらないのですけれども、米価については、食管法に言う生産費所得補償方式というもので米価審議会の意見を十分承って、ただ過剰傾向にあるという状況も踏まえなければならないが、適切な米価はいかにあるべきか、こういうことで最終的に決定することになりましょう。  それから、肉について、まだ意見を言ったことは一切ございません。ただ、生産事情が、えさ代が非常に安くなっておるということから、そう上げるような情勢にあるかどうかと聞かれれば、生産事情は非常にうまくいっておりますねと、かつて四十七、八年度でございましたか、あのえさ代は上がる、物価は上がる、いわゆるオイルショックの前後、ああいう異常なときにできた負債も何とか返せるというところまで肉の事情もよくなってきたなということで、まあ事情はよくなっているなとは思っておりますが、これを引き下げるとかいうようなことはまだ言っておりません。
  207. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題については、これは新聞にも出ていたし、それから放送にもあったから、これは誤解があってはいけないから、きのう松沢委員なり野坂委員からこの話があって、大臣とも時を見て話をしたい、こういう話もあるから、いずれこの問題も含めて話をさせてもらいたい、こういうふうに思います。  そこで、時間も迫っておりますから、次には食糧庁に苦言を私は呈したい。  食糧庁がモチ米を二万五千トン買い入れをする。これはタイから五千トン、中国から一万トン、韓国から一万トン。こういう、一方において米の生産調整を要求し、抑えて抑えて抑えているときに、同じ米を、モチ米ではあるけれども、それを買うという、農民の心理をこれくらいあれをしたものはないと思うのです。少なくとも計画なり生産方針というものがあるならば、まさにそういうことはおかしいんじゃないですか、これは。どうなんです。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  208. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 米の需給均衡を図るというのが一番大きな課題になっておるという情勢のもとにおきまして、私どもも、モチ米につきましても基本的には国内生産で需要を賄っていくという考えで進めるべきものだと考えております。ただ、五十一年産が非常に不作でございまして、ウルチ米ももちろん不作でございましたけれども、モチ米も非常に不作でございまして、モチ米の生産、需要の規模は大体五十五万トンないし六十万トンというところが普通でございますが、四十万トンを少し超した程度の生産しか五十一年度は上げられなかったというようなことがございまして、五十二年産につきましては、各種の奨励措置を従来よりは強化をいたしまして生産、集荷の促進を図ってまいりましたが、残念ながら五十一年産が不作であったこともございまして、種が確保できなかったというようなこともございました。また、モチ米は元来そうなんでございますが、生産なり需要の規模が、いま言いましたように、ウルチ米に比べればはるかに小さいということもございまして、価格変動、需給変動が一年置きぐらいにかなり極端な変動を繰り返すのをこれまでやってきたわけでございますが、そういう点もぜひ直していきたいということで努力はしたのでございますが、いま言いましたような五十二年産につきましては十分な生産が上げられなかったということもございまして、需要に対しまして供給不足ということがございますので、従来も毎年何がしかずつ入れたことがございますけれども、今米穀年度におきましても輸入をしたいということで進めておるわけでございます。  これはあくまでも不足分を緊急的に補うという考えでやっておることでございまして、基本的にはやはり国内で生産をしていきたい。したがいまして、五十三年産につきましては各種の対策を講じてぜひ生産を確保し、国内供給で需要が賄い得るようにしていきたいと思っております。たとえて申し上げれば、種もみの確保がまず前提でございますので、これにつきまして格段の努力をいたしますと同時に、生産団地の育成ということ、それから契約栽培体制をこれまでも進めておりますけれども、さらに一層強化をしてまいりたい。また、場合によってはモチ米の調整保管もできる、それに対して援助もしていくということで、余った場合の心配を少なくしていくというような諸対策を講ずることによりまして、五十三年産米はぜひ需要にも合った国内生産を確保していきたいというように考えて努力しているところでございます。
  209. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 米の生産を一方において調整をし、そして、まあペナルティーは罰則ではないとかなんとかと言うけれども、結局はそれをやる。こういうような段階のときにモチ米をたとえどれだけでも輸入するなんということは、農民の心理に対してこれくらい逆なでをしたようなことはないからね。これだけは何とか国内でちゃんと調達をしていくぐらいのことはしなければだめじゃないですか。それはぜひやってもらいたいと思うのです。  そこで、きょうは大蔵省が見えていると思いますが、税金の問題で尋ねますけれども、一つは木材の問題です。  木材の問題で今度国会に法律が出ますが、それは結局材木の状況が悪いからという形で、非常に不況ということで何とかひとつ一般会計から四十二億もつぎ込まなければやっていけない。一方においては外国の材木は無税でどんどん入ってくる、こんなばかなことはない。税金をかけて、国内の森林を守ったらいいじゃないですか。どうしてそれが税金がかからないか、この点についてが一点。  それから、果汁あるいはオレンジ等々の二十二品目の自由化がなお引き続いて要請をされようとしている。農林大臣もかなりがんばっているようだけれども、それにもかかわらずするするあちこちからやはり出てくる。これは税金を下げないできちんと上げる。自民党の二つの議員団が大分元気のいいあれを出したけれども、その気持ちはよくわかる。そのくらいの気持ちでなければ日本農業を守ることはできないと思う。  だから、そういう二点についてぜひ関係者の回答をいただきたい。
  210. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 第一の木材の関税率でありますが、木材は、御承知のように、国民生活に不可欠な重要な基礎資材でありますが、わが国の森林資源の現状から見ますれば、今後増大します木材需要を充足するためには、国内供給力の増強を図りつつもなお相当量の外材の輸入を図っていく必要があると考えられるわけであります。このような見地から、木材の関税率につきましては、丸太類等無税にしているものも相当ありますが、他方、キリとか松とかラワン等、加工木材でありまして国内の林産業または製材業の保護のために必要と考えられます品目につきましては、それ相応の関税をかけておるわけであります。  第二点の農産物の関税率でありますが、御承知のように、今回の前倒しにおきましても、わが国の総合農政の推進に支障を来さないよう慎重に配慮した次第でありまして、今後とも国内農業の保護と、他方、国民食糧の安定的、効率的供給というものを十分配慮して対処してまいりたいと思っております。
  211. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひ日本農林水産業を守るという立場に立って、ひとつ一緒に協力してやってもらいたいということを、これは強く要望したいと思います。  最後ですから、これは農林大臣にどうしても締めてもらわなければならない問題は、きのう松沢委員、野坂委員質問がありました。そして、きわめて具体的に、水田に転作可能なところと非常にむずかしいところという問題が出た。それで、最終的にはこれは話をしたい、こういうこともこの委員会で要求が出ました。ぜひその話の場をつくってもらいたいということについては、改めてこれは要求をします。これが第一点。  それから、第二点。ペナルティーというのは罰則ではない、これはあくまでも公平というようなことでそれを浸透するために指示をしたのだ、こういうふうに言っている。そこで、公平であろうと何であろうと、農家は米をつくるのだ。豊作ということもある。それで、割り当てをもらった農家が割り当てを完遂してもなお豊作で米ができたときに、米は割り当てよりもできますよ。それから、いや、そんなこと言ったって別に罰則ではないからそんなものは聞かない。これもまた米ができるのです。二種類の米ができるわけだ。その米の取り扱いはどうされるか。
  212. 中川一郎

    中川国務大臣 第一番目の話し合いは、ぜひともその場をつくらしていただきたいと存じます。  それから、第二番目の米の余り方に二通りある。生産調整はやったけれども、技術がうまかったり天候がよかったりしてたくさんとれたというもの、それから生産調整をやらなかったからなおよけいとれた、この二種類できることは当然でございます。しかし、この二種類の米も自主流通に乗せて消費者に行くようにこれを処理するように指導してまいる。そして、これに必要な奨励策も講じていきたい。できた米はルートに乗せて消費者に渡るようにしたいということでございます。ただし、その場合、助成の度合いは生産調整をやった人に手厚くなるのは当然のことである、こういうことでございます。
  213. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に、私は畜産の肉の問題で生々しいことを一つ報告して終わります。  昭和四十八年、九年、石油ショックのときに因がなかった。そこで、農林省の助成を得て秋田県の雄勝郡の仲間が相当の肉の団地をつくりました。これはもうすでに本に出ているから私はあえてこれを言いませんが、「村の腹立ち日記」というのがありまして、そこの百七十ページから百七十一ページにきわめて具体的に中身が出ている。その後またそこへ懇談に行ったところが、またこの中にも出ているが、農林省が最も中心になって支えて七五%も補助をした、にもかかわらず、いま一人が一億円という赤字をしょって、去るに去れず進むに進まれずという形でもう困っちゃっている。  こういう事態というものは、これはやっぱり補助事業から来る結果ですからね。補助金さえやれば何でもうまくいくのだというのはとんでもない話なんだ。だから、補助金でなくても融資でもいいから、農民が本当に自主的に自立して、そしてりっぱな経営ができるようにしていかなければ、日本農業というものは完全だとは言えない。そういう点でぜひこの秋田県の仲間に対しては農林省も温かい手を伸べてやってもらいたい。余りここで公表することはよくないから細かいことは言いませんが、大変補助事業における犠牲とは言わないが、補助事業万能である、補助金さえやったらあとは何でもいいというような、そういうことはよくないということをここで申し上げて、終わります。
  214. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  215. 神田厚

    ○神田委員 昨日からきょうにかけまして、農林大臣の所信の表明及び昭和五十三年度の農林水産関係予算の説明を聞きまして、それについての質疑を続けているわけでありますが、まず最初農林大臣にお伺いしたいのでありますけれども、農林大臣は所信の中で、農林水産業の役割りというのは、わが国の経済社会が、今後、健全にかつ調和のとれた姿で発展していく上で不可欠のものである、まさに農林水産業の発展なくしてわが国の真の繁栄はないと申しても過言でない、こういうようにおっしゃっているわけであります。さらに、しかしながら、高度経済成長の過程を通じて労働力、土地が流出して、その体質が大変弱まってきてしまっている、こういうふうなことを言っているわけでありますけれども、その原因は一体どこにあるのか、体質が弱まってしまって日本農業がここまでこういうふうになってきてしまったという、その端的な原因というのはどこにあるというふうにお考えになっておりますか。
  216. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国は、御承知のように諸外国、特に欧米、競争関係にありますアメリカあるいはEC等に比べて非常に土地面積が少ない。一方、高度経済成長で、他産業は非常に合理化され、生産性を上げていった。これに追いついていくのに、農業が少ない土地の中でなかなかついていけなかった。かなり政府としても他の国々に比べて助成策は、いろいろ批判はありますけれども、金融政策にしても農業基盤にしてもあるいは価格対策にしてもかなりの施策は講じたけれども、他産業についていけなかった。その結果、農村から離れる、二種兼業が多くなる。こういう全体的な大きな流れの中でそういうところに来たのだろう、こう見ておるわけでございます。
  217. 神田厚

    ○神田委員 そして、こういう農業を立て直すために、農業というものを全部の日本の産業の中でどういうふうに位置づけていくのか。私は、全産業の中で農業のこれからの役割りというものをきちんとさせていかなければならないのではないかというふうに考えているわけであります。ただいまいろいろお話を聞きましたが、そういう大国がおっしゃったような形である傾向というのは今後ますます進む。いろんな統計資料を見ましても、日本農家が縮小傾向にある。きのう衰退だという言葉を同僚委員が使いましたらば、農業が衰退しているというのはちょっと言い過ぎだというような大臣のお言葉もありましたけれども、いろいろな統計や何か状況から見ますと、やはり日本農業というのが非常に厳しい状況に立たされていることは間違いないと思うのであります。そしてさらに、「昭和五十三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というのが一月の二十四日に閣議決定をされております。私は、この中での農業の位置づけというものをお伺いしようと思ったのでありますけれども、前の議員が多少これについて質疑を交わしたようでありますが、なおこの問題について、経済企画庁にもおいでをいただいておりますので、ひとつお聞きをしたいのであります。  この見通しを立てるに当たって、先ほどの話を聞いておりますと、経済企画庁はミクロの、いわゆる産業別の見通しは立てなかったと言っておりますけれども、それでは、この経済指標の中で農林漁業生産指数を対前年度の割合で九七・八%に見たのはどういうことであるのか。しかも、これの基準が昭和五十年度を一〇〇として九七・八に見てあるというような状況もあるわけでありますね。この辺のところの根拠をひとつお示し願いたいと思うのであります。
  218. 田中誠一郎

    ○田中説明員 ただいま先生御指摘のとおりに、五十三年度の農林水産業の生産指数は九七・八と五十二年度に比べまして二・二%の減少でございますが、その理由といたしましては、これも先生よく御存じのことでございますが、五十二年度中は大変豊作でございまして、平年作に比べて約一〇五%であったというふうに理解しておるわけでございますが、それに比べまして五十三年度は減少するということの結果、農林水産業全体としては二・二%の減少になると推計しておるわけでございます。
  219. 神田厚

    ○神田委員 これは経済成長七%を達成しなければならないという日本のいまの経済状況の中で、農林水産業がどうしても七%達成のためのいわゆる最低限である一〇〇の指標までとれないというこの状況、これは先ほど農林大臣の話を聞いておりましたらば、そうは言っても全部の産業がいわゆる七%成長に一〇〇以上の指標をとるということはあり得ない、あるいはない産業もあってしかるべきだという話がありましたけれども、私は、国民総生産の中の問題としてのこれから先の農業の位置づけというのが非常に大事な問題になってくると思うのであります。つまり、これからだんだん話を突き詰めていきますと、国民総生産量で、たとえば農業の先ほどの話では九兆二千億程度の総生産だ、これに対しましていわゆる農林予算がどのくらい国家から支出をされているかという問題をだんだん議論をしていきますと、少なくともここにおきまして一〇〇、いわゆる経済成長率七%ならばそれに少なくとも最低一〇〇に見通せるぐらいの農業の総生産というものを持っていかなければいけないのではないか、私はこういう考え方を持っているのでありますけれども、その点は大臣はいかがでございますか。
  220. 中川一郎

    中川国務大臣 いまの九七・八でございますか、これは農業生産量で推計すればこの程度であろう、それは生産量が昨年は豊作であったというようなことから見通せばその程度しか見通せない。しかし、生産額においては一〇〇などというものじゃない。生産奨励金の補助金も入れば土地改良の金も入れば、あるいは何がしかの価格のアップもあるであろうしということで、かなりこれは上回るであろう。でありますから、一〇〇以下の生産額ということではない、こういうふうに見ているわけでございます。
  221. 神田厚

    ○神田委員 まあちょっと意見のとり方が違うようなんですが、奨励金などをやはりたくさん出すということは、GNPから言うとマイナス要因なんですね、プラスの要因にはならないと思うのであります。ですから、大臣のお答えになった意味は、結局は農家の所得というものをもう少し高めさせろ、さらに農業のいわゆる産出したものをもっと多くさせろ、さらにそれを流通させていかなければいけないんじゃないか、こういうふうなお答えであろうというふうに私は思うわけであります。  なお、この問題につきましては、私は、どうしても一〇〇くらいまでとれないというような問題がいまの日本農業の非常に厳しい状況というものを示しているのではないか、こういうふうに思っているわけであります。  そしてさらに、この見通しと基本的態度の中で、これの三番目に、いわゆる東京ラウンドの交渉への取り組みが書かれておりまして、この東京ラウンドに対する取り組みと同時に、経済協力の中で向こう年間日本は倍増以上の経済協力をしなければならない。倍増以上ですね。こういうふうな意見も付されているのです。「倍増以上に拡大するため努力する」というふうにこの中では書いてありますけれども、これはいわゆる経済協力全般の問題でもありますが、農林水産の輸入の問題につきましても、やはりこういう基本的な考え方に立たれるのかどうか、御質問申し上げたいと思います。
  222. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 対外協力につきまして援助を倍増するということは、これは農産物輸入を同じような方針で、テンポで輸入をしていくということとは全然別問題でございます。御存じのとおり、国際協力と申しましてもいろいろ範囲が広うございまして、その中には、開発援助あるいは専門家の派遣要請あるいはまた食糧援助その他を含んでおるわけでございまして、そういう部面におきます日本の支出を倍増させようということでございます。  片や農産物輸入をどうするかという問題は、これは国内の需給その他を考えて決定せられるべき問題でありまして、全然関係はないというふうに考えておる次第でございます。
  223. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、この五年間にわたって倍増するというのは援助の問題ですか。——そうですか。それでは、その点はわかりました。  次に、農産物の日米交渉などを通しまして非常に厳しい輸入の問題がいろいろ出てきたわけであります。この問題につきまして、政府はもちろんそうでありますけれども、農林省も基本的にいわゆる日米の輸入問題につきまして認識を非常に甘く持っていたんではないか、私はこういうふうな考え方に立つわけであります。と申しますのは、五十一年度の農業白書の中で農林省はどういうふうなことを書いているか。五十一年度の農業白書は、五十二年の四月に出されたわけであります。この白書の中で農林省は、「このような、農産物需要の動向と国内生産拡大の必要性から考えると、農産物輸入拡大する条件とその可能性は、かなり小さくなったとみられる。したがって、国際収支に黒字が生じた場合、農産物輸入によってその幅を縮小する可能性も小さくなったとみられる。」こういう記載をしているわけでありますね。これは五十二年の四月に、こういうことを五十一年度の農業白書に堂々と書いておりながら、いわゆる対米の通商交渉でもわかるような形でああいう問題を国民の中に巻き起こして、非常に農業者に対しまして不安と実害を与えてきたという事実をどういうふうに御認識なさっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  224. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 御存じのように、わが国の農産物貿易につきましては、これを安定的に拡大をしていくということが基本でございまして、その年次年次により非常な変動を来すようなことでは、これは適当と考えられないわけでございます。安定的な拡大と申しましても、従来、相当の年次を経まして現状に至っておる。その現状を見ますと、日本農産物輸入の全体のパイは相当大きなものになっておるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、今後安定的な発展と申しましても、その発展の速度あるいは幅あるいは大きさというものにつきましては、従来のように物を考えてはいけないのではないかということが第一点でございます。  それから第二点は、今回の日米交渉におきまして、日本黒字を処理をするために農産物の重要品目の輸入枠拡大を行うという趣旨ではございませんで、大臣も御説明いたしましたように、対外経済関係の重要性に配慮しつつ、農業の分野におきましてもできるものはこれを協力するという姿勢を示す観点から、同時に農家に不安を与えない、あるいは総合食糧政策の遂行に支障のないような、そういう配慮を払いつつ行ったものでございまして、今回の日米関係黒字の処理というそういう観点から行ったものでは決してないと理解をいたしておる次第でございます。
  225. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、黒字の問題ではないということならば、黒字減らし農産物輸入を云々するという気持ちがないというならば、農業白書の中に、「国際収支に黒字が生じた場合、農産物輸入によってその幅を縮小する可能性も小さくなった」、こういう言葉を書く必要はないんじゃないですか。いかがなんですか。
  226. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 今回の黒字の対策として、農業関係につきましても、たとえば、御承知のように輸入の前倒しあるいは備蓄の積み増し等を行ったわけでございまして、そういう意味におきましては、農業部門につきましても緊急輸入のうちのある一定の部分を持ったことは確かでございますけれども、御存じのようにそれを金額に直しますとごくわずかな数字でございます。そういう実績を見ましても、ここの白書に書いてございますように、黒字幅を縮小するために農産物が果たすべき可能性というのはきわめて小さくなっておるというふうに理解をいたしております。
  227. 神田厚

    ○神田委員 まあ理屈というのはどうにでもつくわけでありますから、それはあれでありますが、私は素直に読んで、農業白書がやはり日本経済の、いわゆる輸入の問題も含めました見通しを間違っていたんじゃないかというふうに率直に思うのですが、どうもいまの局長の答弁を聞いておりますと、そうじゃなくて、それはそういうふうに書いたけれども、今度の黒字減らしの問題は別問題だというような言い方をなされているようで、はなはだ納得がいかないのでありますが、局長は本当にそういうふうに思っているのですか。
  228. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 今回の緊急輸入で、先生御存じのように十億程度の緊急輸入をやるということにつきましての処理は、これは黒字減らし対策のことであろうと思いますが、たとえばそういう措置といたしまして行いました農産物輸入の前倒しにつきましては、これを金額に直しますと大体二千四百二十万ドルぐらいでございます。それから第二点の備蓄在庫の積み増しを行いましたが、これも金額に直しますと二千七百二十万ドル程度でございます。それから五十二年度の農産物輸入枠拡大でございますけれども、これは主として水産物を中心にして輸入枠拡大いたしておりますが、それを金額に直しますと大体一億六千万ドルぐらいでございます。したがいまして、それを合計をいたしましても約二億一千万ドルでございます。  そういうことでございますから、日本黒字を六十億ドルにするということに対する農産物の寄与というものは、白書に書いてございますように、きわめて少ないものということに現状はなっておるわけでございます。
  229. 神田厚

    ○神田委員 この問題でやりとりしていてもしようがないと思いますから、次へ移りますけれども、私は、やはりそういうふうなことを言えば、どういう事態が生じてきても、たとえば二億一千万ドル程度のものはいつでも輸入しても構わない、その程度農産物はいつでも輸入しても構わないというような態度にでも聞こえるのですが、これはそういうようなことでもいいんですか。そういうことではまずいと思うんですね。二億一千万ドル農産物と言えば、何を輸入するかによって相当国内農業に対する打撃を与える場合があるわけでありましょう。ですから、私は、この農業白書にいわゆる書いた時点と、それから後起こってきたことと、経済環境がやはりちょっと変わってきた。変わってきたところを見抜けなかったという率直な反省があってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  230. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 私の申し上げておりますのは、二億一千万ドル農産物、その程度の規模はいつでも、いかなるときでも輸入拡大すること、あるいはまた備蓄を拡大することはできるんだということを申し上げておるわけではございませんで、輸入を行いますときには、やはり国内の需要と供給とのギャップを埋める、それが現在のIQ物資の輸入割り当て枠を定めるときの基本的な考え方でございます。したがいまして、先ほど申し上げました五十二年度のIQ物資の輸入枠拡大によります一億六千万ドル程度のものと申しましたのは、そういう国内の需給事情を勘案して輸入量を決めた結果のものでございます。  同時にまた、備蓄の積み増し等につきましては、国内においてそれを積み増すということの可能なる範囲において対処をいたしたものでございまして、二億一千万ドル程度輸入枠の増大はいつでもできるんだ、そういうふうには決して考えておらないわけでございます。
  231. 神田厚

    ○神田委員 局長が一人で御答弁なさっていますけれども、農業白書というのは局長が一人で書かれたのかどうかよくわかりませんが、本来、官房長かだれかが御答弁あってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  232. 松本作衞

    ○松本(作)政府委員 確かに、農業白書自体はその執筆した段階での経済状況をもとにしてつくっておりますので、五十二年度中におけるような、百億にも達するような急激な黒字が生ずるというようなことを予想しておらなかったことは事実でございます。  しかし、考え方といたしまして、農業白書に述べております今後の国際収支の改善を農産物輸入によって相当程度負担することは考えておらないということについては、いま経済局長から御説明しましたように、農林省の考え方であるわけでございますので、この点については御理解をいただきたいというふうに思うわけでございます。
  233. 神田厚

    ○神田委員 それでは、日米交渉について、経過もいろいろ論議されましたのですが、妥結がされました。しかし、妥結された後でなお心配な点が二、三ありますので、大臣にお聞きしたいのでありますけれども、この日米交渉の妥結の問題というのは、これから先の諸外国との交渉についてどういう影響を持つとお考えになっておりますか、農林大臣
  234. 中川一郎

    中川国務大臣 この点もしばしば申し上げておるわけでございますが、今度の調整した枠の拡大は、単なるアメリカだけと約束したものではなくして、グローバルベースで豪州にもECにも門戸を開いておるわけでございますから、したがって、諸外国からお話があった場合も、この間の調整はあなたの国との関係を含めての調整でございますという対処の仕方をしていきたい。また、そういうつもりで調整をしたわけでございます。なおまた、それでもECあるいはニュージー等がかなり厳しい条件を持ってくることも予想されるわけでございますが、その場合においても、協力できるものは協力しなければなりませんけれども、わが国農政の基本や、あるいは農家経済や、水田利用再編対策等に支障を与えるようなことは避けていきたい、こういう気持ちでございます。
  235. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、日米間に限って御質問を申し上げますと、日米間のこれからの交渉はどうなるのか。当面今度の交渉一回限りで終わるのかどうか。つまり、来年度以降アメリカがさらにいろいろな話をしてきた場合に、その歯どめをしていかなければならないというふうに考えるわけでありますけれども、そういう歯どめというものをお考えになっているのかどうか。さらに、どういうふうな形でその歯どめというものをかけていくお考えなのかどうか、これをひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。
  236. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカとの話し合いでございますから、アメリカが今度出るかはアメリカの事情によって変わってくるかもしれませんし、アメリカのことを推測して正確でないかもしれませんが、今度交渉した過程においては、先ほど局長が答弁いたしましたように、黒字があるからぜひともそのうちで何億ドルやってくれという手法で来たのではないわけなんです。黒字があったことに端を発して、農産物についても保護貿易という姿勢はいかぬのではないか、こういう議論が出てまいりまして、もう少し高級牛肉について買えるところがあるのではないか、あるいはまた、季節自由化をやっても日本農村に異常を与えないのではないか、この辺のところは国内のことを考えてみてもできるのではないかという要請がございましたので、それは理解できるが自由化はできない、数量ならこのぐらいでという調整をいたしまして、そして姿勢を認めてくれた。ドルとしてはそう大きなものではないけれども姿勢は高く評価するというか、まあ、どの程度評価していただいたか、これでいこうということになりましたので、恐らくまだ姿勢が悪いというやり方、あるいは少なくとも、ドルが足りなくなったから農産物もうちょっとやれというようなことは来ないであろう。三年、五年、十年先になればわかりませんけれども、ここ一年や二年のところは、少なくともこの間のような戦争はもうないであろう、こう見ておるわけでございます。
  237. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、大臣の方では、アメリカがそういうようなぐあいで、たとえば、ことしと同じような形の黒字が来年度も残るというような予想がされておりますけれども、そういう場合であっても、また黒字減らしに名をかりたような形での日米交渉については応じない、あるいはそういう話し合いには応じないというふうな、いまのところはそういう基本的な態度を持っている、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  238. 中川一郎

    中川国務大臣 そういうことはここ一年、二年のうちはないであろうし、もし言ってまいりましても、こたえられるような情勢はこちらにはない。話し合いにも応じないと言ったら、これはまたひどいことになりますから、話し合いはしますけれども、いまのところ、日本農業の現状はこたえられるような結果が出るような情勢にはない、こういうことでございます。
  239. 神田厚

    ○神田委員 それでは、先ほど来いろいろお話が出ていますように、豪州、ニュージーランドからの要求が非常にきつくなってくるだろう、こういうことが言われております。日本農業影響のないような形で対処をしていかれるというふうな大臣の答弁でありますけれども、鈴木前農林大臣がニュージーランドと豪州に行かれるようであります。それで、これが福田総理大臣の親書を携えて訪問するということでありますけれども、当然この訪問は、言ってみれば、やはり農産物日本に対する輸入の問題と切り離して考えることはできない、こういうふうに考えているわけでありますが、前農林大臣から中川大臣の方に、あるいは中川大臣の方から前農林大臣の方へお話があったのかどうか、あるいは意見の交換があったのかどうか、そういうふうなことはいかがでございますか。
  240. 中川一郎

    中川国務大臣 私が就任した際、事務引き継ぎとして、ニュージーを初め国際関係調整を要する問題があるという中に、ニュージーからいろいろの宿題が来ている、これはなかなか大変な問題であるのでという引き継ぎがございました。したがって、その後も、これに対してどう対処するか、部内でもいろいろ議論を重ねてまいっておりますし、また、いろいろな人を通じて、その後のニュージーの感触や国内の事情の説明や、探っておるわけでございます。そして、今度たまたまニュージーからの招請がありまして、鈴木前農林大臣向こうへ行かれるということでございますので、総理からも向こうの方の首相に、また私からも副首相にあるいは担当大臣に、鈴木前大臣からよくお話しをいただいて、日本の事情も聞いていただき、いま懸案となっておる水産を含めた農業問題、これが実りある解決ができることを期待し、お願いしたい、こういう趣旨のことで話し合いもし、親書もお願いした、こういうことでございます。
  241. 神田厚

    ○神田委員 ニュージーランド、オーストラリア、この問題の対処というのは、また非常に大きな問題になってくるんですね。ですから、そういう中で農林大臣が鈴木前大臣と意思の疎通を図ったということでありますれば、ある程度向こうの出方というものもわかるのでありましょうから、ひとつそういうふうな問題につきまして、わが国の農業、畜産に対する圧迫のないような形で対処をしていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げるわけであります。  次の問題に移りますが、大臣は所信表明の中で、総合的な自給力の向上を図らなければならない、こういうふうに述べておられます。何回か同じような形での質問があったかと思うのでありますけれども、私はここで、中川農林大臣大臣に御就任されてから、いわゆる自給率の問題、食糧自給というものについてどういうふうに御発言をなされてきたか、それをちょっといろいろ新聞や何かで書かれているものなどを見てきたのでありますけれども、食糧自給はやらなければならないけれども、国際価格の問題、そういうものとの関連で、「自給率を上げることにも問題がないわけではない。」というような話もしておりますね。そして、「自給率を上げるため農家に赤字の作物をつくらせ、消費者にも負担を強いる政策は考え直すべきだ。個々の農家経済を助ければ、それでいい。」こういうふうなお話を五十二年十一月三十日の日本経済新聞などでしております。  私はここで、大臣がおっしゃっている総合自給率を高めなければならないのだというふうなことと、もう一つ、国際価格、国際競争力についての大臣考え方と何かちょっと矛盾している面があるのではないかと思うのですが、その辺の御見解はどういうふうになりますか。
  242. 中川一郎

    中川国務大臣 この辺まことにポイントをついた意見を含めてのお尋ねでございます。  オイルショックのときは、自給率の向上が万能だったわけです。それの前までは選択的拡大であったのですが、特にそれと前後しまして、アメリカが大豆の輸出規制をやった。それで、みそ、しょうゆが不自由をするということで、やはり食糧というものは自国で確保しておかなければ大変なことになるというので、一枚看板自給率自給率という時代があった。ところが今度は、対米折衝のときには、消費者の間からやはり安い物を食いたいわ、輸入したっていいじゃないか、こういう声も国内の世論として、四、五年前の自給率というものと対照的にまたそういう空気が出てきたことも事実でございます。  そこで、冷静に考えてみて、自給率の向上というのは大事なことであることはもう間違いない、しかしそこには経済性でぎりぎりの接点があるのではないだろうか。余り無理な自給率の向上をやりますと、先ほどもちょっと例を申し上げましたが、大豆の自給率を上げるとすれば、畑でつくりましても、一俵約九千円の財政負担をしなければ大豆が生産されない。しかもさらに、水田に数万円の金をかけて三俵、五俵の大豆をつくるということになれば莫大な経済力を伴う。この辺のところも考えなければ、単に何でも幾ら金がかかってもいいから自給率を上げるというだけではよくないのではないがな、この辺も私はまじめに考えてみなければならないところだろうと思うのです。国家経済国民経済、消費者対策、そういう点を、自給率向上が一天万乗の言い方をしているのに対して、その辺のところは若干考えてみる必要がなかろうかという意味で、新聞が正確に伝えているかどうかは別として、私の考え方を申し上げたわけでございます。  特に農家経済というものもよく考えてあげませんと、やはり農家の戸数が減る、農家が苦しくなる。農村というものは、精神的であっても日本の基である。また、地域社会を形成するのにも農村は健全でなければならない。わが国経済の上にももちろん大事、食糧の確保ということも大事、あらゆる意味で健全な農村というものをつくっていかなければいかぬというところからいけば、その辺も大いに考えていかなければいかぬのではないか。他産業に比べて、農家経済というのは非常に悪いというようなこと、じゃそうするためにはどうするかというと、生産性の向上なり金融対策なり担い手対策なり土地基盤の整備なり、そういったものを思い切ってやってしっかりした農村をつくっていく、こういうことも考えていかなければならないのではないか。総合して言うならば、どれ一つも先走ってはいけない、何でも自給率であってはならないし、すべて調和のとれた農政であるべきだ、こういう意味でそういう発言もしてまいったわけでございます。
  243. 神田厚

    ○神田委員 大変大事な大臣の御見解ですね。これは突き詰めていきますと、たとえば大豆の話をしましたけれども、私は、大豆を例にとられるのは余り適切ではないのではないかと思うのです。米の生産調整の中で大豆の自給率を上げろという形で特定作物の中に入れておるわけでしょう。ですから、そういうものを、これはこうだといういまのようなお話をしますと、大豆に転作しようとする人はやはり多少遠慮が出てくるのじゃないですか。  それはそれといたしまして、そうすると、問題になりますのは、大臣のこの所信表明の中にあります。国内で生産可能なものについては極力国内で賄うようにする、たとえばバナナまでとにかく日本でつくれという話ではないということで受けとめるわけでありますけれども、一番問題なのは、自給率の問題をもし大臣がそういうことで考えを進めていかれますと、いわゆる「農産物の需要と生産の長期見通し」、問題の六十年見通しの見直しにまで発展をしていかざるを得ないのではないかと考えるわけでありますが、その辺のところはどういうふうにお考えになっていますか。
  244. 中川一郎

    中川国務大臣 長期見通しというのは、国際環境がこれだけ複雑であり、したがってそれによって日本経済も大きく動く、そういう中で二年、三年、四年の間にすぐ変えるという性格のものではないのではないか。長期構想は現段階においてもそう大きく変わったものではない、やはりあれに向かって最善の努力をしていくということでいいのではないか。また時期が来て、改定を要する時期があれば別でありますが、現段階においてはあの見通しのもとに農政を推進していく、こういう考え方でございます。
  245. 神田厚

    ○神田委員 非常に短絡的な申し上げ方をしたものですから、大変粗雑な議論になりましたけれども、この長期見通しの問題も、農業基本法でいろいろやられまして、閣議決定されて出されてきたりなんかしているわけでありますが、過去の問題を見ていますと、過去の長期見通しの出し方にいろいろ問題があったと思うのですね。たとえば、これはもうすでに御指摘があったかと思いますが、麦や大豆なんかにしましても、第一回、第二回の長期見通しの中では、こういうものについて縮小、つまり量を少なくするような形での見通しが出されていた時点もあったわけです。ですから、われわれはこれでも低いという考え方をしているのでありますけれども、この六十年長期見通しにすら達していかないというような状況になっているのが現在の農業でありますから、これに何とか到達する努力を先にすべきではないかという考え方を持っているわけであります。  農業基本法農政はいままでやられてきた農政の基本でありますけれども、この農業基本法農政が本当に日本農家をよくしたかというと、決してそうではない。たとえば、耕作面積にしましても、どんどんそれを粗放化して減らしてしまっている。こういう中で、農業基本法そのものをもう一度見直していかなければならないのではないか、そういう時期に来ているのではないかというふうに考えるのですが、その辺はいかがでございますか。
  246. 中川一郎

    中川国務大臣 いまの農業基本法の前にちょっと一つだけ理解をいただいておきたいのは、大豆の話をしましたら、いやせっかくいま大豆をつくっているのに水をかけるようだ。そうではなくて、いかに自給率達成に、総合自給力というものをつけるために、皆さんはそうではありませんが、世に政府は努力が足りない、こう言っておりますが、これだけの努力もしながら優先作物としてやっているんだという意味で申し上げたので、これはやめてくれという意味ではございませんので、大事なポイントでございますので、申し添えさせていただく次第であります。  それから、農業基本法でありますが、これを読んでみて、そう間違ってはいないんじゃないか。ただ、運営が、高度経済成長下であったり、あるいはまた選択拡大というような考え方もあったりして、あれにも選択拡大と書いてありますけれども、あの法律の精神に基づいて政策をしっかりやっていけば、そう間違った農政にはならない。あの法律があるから日本の農政がどうもまずい点が出てくる、こうとも考えられないわけでございますが、いずれにしても、相当時期もたったことでもございますから、十分検討してみたい、こう思う次第でございます。
  247. 神田厚

    ○神田委員 それでは、この議論もなお詰めなければならないんでありますが、時間もありませんので、米の問題について触れさせていただきたいと思うのであります。  まず、私は、最初に、この米の問題につきましては、行政のいわゆる農林省の進め方の問題、これが非常にやはり問題があったと思うのですね。五十二年の十一月十九日に省議の決定がされまして、そして都道府県の配分が決まったようであります。しかし、閣議了解されましたのは五十三年の一月の二十日であります。省議の決定が先にされまして、そして都道府県配分が全部済まされてしまって、それから閣議が了解した。私どもは、農林水産委員会議論の中では、いわゆるこの都道府県配分等の、こういう米の需給均衡化対策については、非常に大事な問題であるから閣議の決定という形でやったらどうだというような意見がありまして、そして鈴木前農林大臣も閣議決定という形でこれをやりたいというふうに御答弁があったというふうに私ちょっと記憶しているのでありますが、しかし、そういうものの前に、すでにいわゆる都道府県配分を済ましているというようなやり方、そして今度は閣議の決定ではなくて閣議の了解事項になってしまった。この閣議の了解事項の中身が、また非常に需給均衡化対策の全文ではないんでありますね。その中のいわゆる抄訳といいますか、かなり切り詰めたもの、骨子しか閣議了解になっていないわけであります。この辺のところが、そもそもこの需給均衡化対策に取り組む、いわゆる農林省のつけ焼き刃的な、ああいう状況ですからあわてたのでありましょうけれども、やはり国民の、農民の合意も得られないような状況をつくり出してしまったのではないかというように思うわけですが、その辺につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  248. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに、手続その他で反省しろと言えば十分反省もするわけでございますが、何分にも五十三年度から生産調整をしなければどうにもならない、実は五十二年度からやりたいくらいの空気であったわけでございます。しかし、どうしても時期的に間に合わないというので、五十二年の三月ころから農業団体や皆さんに、これはもう五十三年度からはやっていただかなければできませんということで、知事会議にもかけたりいろいろと話し合った。その中に、生産者や団体あるいは地方公共団体の責任者から、あんまり遅く配分されたのではとてもできません、種子や肥料の準備等もございますので、なるべく早く配分目標をひとつ案を示してもらいたい、そうでなければこれに協力したくてもできない、こういう強い要請があったものでございますから、国会からしかられておりますけれども、予算がまだ決まらない段階で、ああいう通知を、案をお示しをした。そして次に、米の長期的な需給均衡化対策ですか、閣議決定いたしましたのは、やはり、予算編成といいますか、大体予算の編成のめどをつけた段階で、十年間こういう形で考えたいという骨子を閣議了解としてとったことでございます。  まあ、そういったことの時期なりやり方なりについていろいろ御批判はいただきますけれども、何分にも非常事態であり、緊急事態であり、しかも実効あらしめなければならないということであれば、まあああいう方法しかなかったのかなあと、鈴木前農林大臣からの引き継ぎではございますけれども、引き継いだ私としても、まあまあこのくらいしか仕方なかったのかなあと思っておるところでございまして、御指摘は、決して弁解いたしません、しかと承って、反省すべきは反省してまいりたいと存じます。
  249. 神田厚

    ○神田委員 ほかの委員からの質問もあったかと思うのですが、いま末端で非常に混乱していますね。これは先ほどからいろいろ話がありますように、ペナルティの問題です。つまり、ペナルティを課されるのではないかというので、ある地方自治体では、独自に奨励金の上乗せをしながらその面積を達成しようとしている。私は、こういうふうなあり方というのは本当の農政のあり方ではない、こういうふうに考えているわけであります。そういうふうなことにおきまして、この罰則、いわゆるペナルティ問題についてのきちんとした見解を農林省がお出しになる用意があるのかどうか。さらに、転作の、この問題についての、地方に対して、そういう地方自治体のいわゆる行き過ぎた奨励加算の方式を改めさせるような用意があるのかどうか、まずこの辺についてお聞きしたいのであります。
  250. 中川一郎

    中川国務大臣 これがまさに理解と自主性の結果やはりどうしても生産調整をやらなければならないとすれば、地方自治団体やあるいはまた生産調整をした——しない農家からした農家へというようなこともやっているようにも聞いております。こういうことで、みんな、地方自治団体も、国も、生産調整をする人も、しない人も、みんなで力を合わせて百七十万トンは生産調整をしなければ、食管そのものに触れる全体の大きな問題である。しかも、これは国民食糧でございますから、これが混乱した状態になるということは、これは消費者の問題でもあるということで、まさに全国民の理解と協力によってやることでございますので、町村がそうやってくれることに対して、それはいかぬということではもちろんないわけでございまして、そういうことでやってくれることも、これも一つの方法、こう受けとめている次第でございます。
  251. 神田厚

    ○神田委員 結局そういうふうなことを地方自治体が独自にやり出すということは、やはり私は大変問題があると思うのですね。それは、農林省の方から言えば結構だという話ですけれども、それでは農民が自主的に転作をする、それから自主的にそういう転作問題について対処をしていくという考え方と、考え方が違ってくると思うのですね。農林省がこういう方針を出した、その方針に沿わなければ何とかされそうだというので、いわゆる地方自治体が奨励金の上乗せをするというやり方は、私はやはり大臣とは全然意見を異にするわけでありますが、ここで議論をしていてもあれですから、そういう地方の実情もあるということで、私はその点について憂慮しているというふうにひとつ御理解をいただければと思うのであります。  さらに、時間がありませんので先を急ぐのでありますが、本来、古米や在庫米の処理のことしの方向を聞きたいと思ったのでありますが、いわゆる先ほども問題になっておりました転作作物の収入の不安定、これによってもたらされる農家の所得減の問題、これが非常に問題になってくると思うのであります。一月三十一日に公表されました農家経済の収支月報でも、野菜が大変暴落をしておりまして、それから畜産が足踏みをしておりまして、それで農家の所得というものが大変落ち込みました。こういう統計を考えていきますと、私はこれはやはり転作問題の一つの警鐘である。転作問題について農林省がこの時点でやはりきちんとした考え方、対処の仕方をしておかなければ、非常に大変な問題が起こってくるのではないか。特に問題になっておりますのは、野菜の暴落と畜産の足踏み、この辺についてどういうふうに対処をしていくのか、ひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。
  252. 杉山克己

    ○杉山政府委員 畜産の動向につきましては、年年飼養頭数が、全体としてもそれから一戸当たりの頭数もふえてまいっております。そのときどきの収支を見ますというと、伸びるときもあれば若干停滞するときもありますが、全体としては安定的に伸びている傾向にあると思うわけでございます。いろいろ今回の対外的な対応等に伴う影響等について議論をされているわけでございますが、私ども、農家のそういう経営にあるいは所得の確保の上に悪影響の及ばないようにということで、対策の面も考えながら措置いたしておるところでございます。  牛肉につきましては、御存じのように、畜産振興事業団が国内価格安定制度とリンクして輸入牛肉の供給を扱っていくということにいたしておりますし、それから、農家の経営の上から申しましても、子牛の価格安定制度を充実させる、あるいは飼料価格の値下げを行う、そのほか集団産地の育成などもろもろの生産対策を講じておるところでございます。  今後、牛肉につきましても、あるいは酪農農家につきましても、需要の増加も見込めることでございますし、生産、経営の安定ということは期していけるものと考えております。
  253. 神田厚

    ○神田委員 時間が余りありません。ですから、このことについて議論を進められないのは残念であります。しかし、畜産局長がおっしゃったような形で事態は推移していない。私は、統計が示す数字というのはやはり皆さんでしたら大変尊重するのだろうと思うのでありますが、それにすら明らかに畜産の状況というものは足踏み状態と出ているのですね。それから、野菜は物すごく暴落をして、そしてこれが全体的な農家所得を圧迫してしまっている。こういうことを考えますと、今後の農家の、不況下の中で農外収入は減ってくる、そして頼りにしている農家所得が減ってくる、こういうふうな問題が起きてきますと、やはり農家は全体的なじり貧になってしまう。農家経済がじり貧になってしまったときの日本経済というのは、これまたひどい姿になってくるのではないかというふうなことを非常に憂慮するものであります。  時間がありませんので、最後に大臣に御質問いたします。  大臣は、農業予算は一〇%を割らない、こういうようなことを言っておられましたけれども、ついに一〇%を割ってしまいまして、九・八九%というふうなことになってしまいました。したがいまして、やはり一〇%というのは一つの歯どめであったというように私は思っているのでありますけれども、こういう形で農業予算は年々減っていくのであろうか、そういうような一つの見通しと、それからこういう厳しい農業環境の中で、これから先日本農業を守っていく御決意を、各種農業団体やあるいは水産団体、森林団体あるいは多くの人たちと話し合いを進めながら、協力と理解を求めながら、日本農業を守っていかなければならないというふうに考えるわけでありますが、この予算の一〇%を割ってしまったということと、それからそういう一つの決意を最後に承りまして、質問を終わりたいと思います。よろしくどうぞ。
  254. 中川一郎

    中川国務大臣 農政を取り巻く情勢は非常に厳しくもあり、また野菜の問題も、これは昨年暮れの異常な暖冬異変という気候条件もありますが、全体として農政を取り巻く情勢は厳しいものがありますから、これからまたあらゆる努力を振り払って何とかこの危機を乗り切りたいと思います。  それに関連をいたしまして予算一〇%の問題でございますが、私は、党にありますときから、一〇%予算は確保をしたい、その中でも、食管制度の余りだれも喜ばない逆ざやのようなもので毎年毎年使っているよりは、それを農政に使うという意味において一〇%を確保をしておきますと、その分がよそへ行きませんから、これを力強く——力強くというか、絶対の方針としてやってまいります。  ただ、ことし九・八何がしと申しますけれども、実は、国債費というものが大きくなった、あるいはまた予備費がかなり大きいものがとってある、こういうようなみんなで分担しなければならないものがあるわけで、その分について農業だけが応分の負担ができないというわけにはちょっと理屈上いかぬ。それから、ことしは地方攻勢というのですか、地方財政が非常に厳しかったというようなことで、その辺に相当張り込んでいるというようなこと。まあ地方財政の方は別としても、予備費とそれから公債費、共通の責任のあるもの、また予備費は将来農業が特にいただけるという見込みのあるもの、そういうものを含めますと九・九で、まあまあ一〇の線は確保できたかなということでございますが、〇・一それでも減っているわけでございますから、今後はこの線を割らないように、ひとつ皆さんの御支援も得ながら、農業の大事なポイントとして、農政を守る大事なかなめになりますから、これは今後もしっかり守っていくようにしたいと存じます。
  255. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  256. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  257. 津川武一

    ○津川委員 初めに、漁業の問題。  それは、いま行われておる日本、カナダ、アメリカの漁業交渉で、サケの区域や漁獲量がかなり困難を来しております。さらに、これから始まる日ソのサケ・マスの漁業交渉でも難航が予想されてまいります。  そこで、政府としてもこれに万全の対策をして臨むことをお願いしつつ、当面、とりあえずそういう交渉において有利になるために、日本でのサケ・マスのふ化放流、ここがかなり大事になってきたと思います。資源が減るのに対しても、これを守ることが非常に大事であります。私はかねてから、北海道でのふ化放流を五十億程度にいかないか、内地でのものは十億程度でいかないか、日本の河川のサケ・マスの放流できる最高限度まで、限界まで、ここのところを検討してやってみる必要があるかと思います。内地について言うならば、一億足らずのものが二億になり、今度の予算案で三億超してきましてふえていますけれども、ここのところを急速にふやす方針を持っておるか。日本の河川の中で、一つ一つの河川でサケ・マスの放流ができるかどうかということの点検をやるべきだと思うのでございますが、この点まず答えていただきます。
  258. 中川一郎

    中川国務大臣 水産外交は非常に厳しいものがありますけれども、それぞれの国について、アメリカアメリカ、そして日米加の問題、そして日ソの問題、さらにはニュージー、豪州、それぞれ強力に、誠実にやっていかなければいかぬ、こう思っております。かたがた御指摘がありましたように、サケは必ず母川国に帰ってくるものであるというところからいくならば、ふ化というものにもつと力を入れるべきだ。たしか昭和四十六年ごろからふ化事業というものの予算を年々ふやしてまいりました。ことしもかなり大幅に伸ばしてやっております。また、民間においても、国にばかりお願いしないで民間でもやったらどうだ、特に定置業者は最近いいわけですから、定置業者が負担してもやるべきだという声すらあるわけでございますから、これについては前向きで取り組んでいきたい。ただ、われわれもやってみると、本当にふ化できる川というのはごく限られたものだそうで、北海道や青森の川なら全部できるかと思ったらそうでもない。技術的な問題もありますが、前向きで取り組んでいきたいと存じます。
  259. 津川武一

    ○津川委員 大臣の言っている北海道や東北の河川、やはりどこまでできるか、試験研究的に全河川について検討していただきたい、こういうことなんです。  次はリンゴでございます。ことし不景気のためにリンゴが売れない。安い。安くても売れない、こういう状態でございます。  二月八日のりん対協、青森りんご対策協議会の協議の結果、一月末の在庫が千三百九十九万箱。昨年が千二百三十四万箱で、百六十五万箱の超過が出ております。このうちで、出荷対象になるリンゴで言うと、一月末現在でことしは千二百四十九万箱。去年が千百四十五万箱で、百四万箱ばかりふえている。これがかなり圧力になってリンゴの不況の原因になっています。青森県のリンゴ関係者が百万箱出荷から切ってみよう、県内消費十五万箱、外国への輸出二十五万箱、加工六十万箱という計画を立てております。しかし、まだいろいろそれぞれの関係者の意見が必ずしも全的な一致を見ないで足踏み状態になっております。この間ミカンを一割市場から隔離したら、ミカンの値段も上がったし、リンゴの値段も上がったんです。そこで、この市場からの百万箱の隔離に対して国が何らかの呼び水、援助をするならば、指導するならば、私は道が開かれていくんじゃないかと思います。当面、リンゴの危機を乗り越える一つの重要な対策はここにあるので、これをどうするかということをひとつ、これに対する国の方針、農林省の方針を答えていただきたいんです。  もう一つ。いままでのリンゴ行政、非常によくやってくれました。黒星病にも、それから斑落病にも、腐乱病にも、そしてリンゴの矮化にも。ここは技術的指導が中心でありました。どちらかというと流通や価格対策は自由に扱われてきたきらいがございます。したがって、リンゴ行政は生産体制を援助してきた、これは一本の柱で。流通と加工にもうひとつ国の支えがあるならばリンゴ産業はますますよくなっていくと思うのでございます。これが質問の二つ。  今度の予算の中にも、加工用材料のリンゴに対する価格保証がありますが、キロ二十七円、これだと一箱二十キロにして五百四十円、キロ四十円ぐらいになって一箱八百円ぐらいになりますと、政府が黙っていてももう少し加工の方に回って、生食の分もよくなる、結局消費者のためにもなる、こういう行政ができると思うのでございます。  リンゴについてこの三点答えていただきます。
  260. 野崎博之

    ○野崎政府委員 最初に、青森県で百万箱市場からカットするという話は聞いておりますが、このような対策に対しまして現在青森県の方で助成措置ができるかどうかいろいろ検討中であるというふうに私ども聞いておるわけでございますけれども、農林省といたしましてもどういうふうなかっこうで御援助できるか、いま県庁ともいろいろ連絡をとりながら検討をしているところでございます。  それから価格の問題、確かにおっしゃいましたように、スターキングでは前年の六〇%程度に落ち込んでおるわけでございまして、これは生産量が若干上がったのと、それから、ことしの天候不良の影響でこうなったわけでございますが、販売の大勢が明らかになりますのが大体三月ないし四月ということでございますので、その際に生産者の代表あるいは卸売業者の代表、そういう方たちの参集をいただきまして、一体本当に恒久的に過剰なためにこうなるのか、あるいは一時的な本年の過剰在庫なのか、そういうようなことを検討いたしまして、そこでもし本格的な過剰な場合にはどういう価格対策をとるとか、あるいは流通対策をとるとか、そういうような点について検討いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  261. 津川武一

    ○津川委員 加工の材料のリンゴの価格保証、局長落としたようだから……。
  262. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 数字の問題でございますので、事務局よりお答えを申し上げます。  加工原料用価格の五十二年、現在動いております分が、全国で平均をいたしますと一キロ十七円余りでございますけれども、先生御承知のように、青森の場合には過去の水準が高い水準で動いてまいりましたので、現在でも三十八円ぐらいの価格になっております。さらにこの十七円の全国水準を五十二年度の予算要求で二十七円にまで上げるようにいたしておりますので、青森が幾らになるということはこれから検討をいたしますけれども、かなり上がっていくのではないか。ですから、主産地では相当高い水準になるというふうに考えております。また補てん率も五十三年度からは〇・八を〇・九にいたしますので、全体が拡充をされるというふうに御理解を賜りたいと存じます。
  263. 津川武一

    ○津川委員 次に水田利用の再編対策についてでございます。中川さんが農林大臣になってから、私も感心していることが幾つかある中で、米の消費を拡大すること、一生懸命やっておって、がんばってくださいね。  そこで一つ私、気になることがあるのは、毎日夜にテレビ見ると、小麦の製品のテレビが非常に出るのです。ラーメン、カップヌードル、いろいろなものが出てくるのに対して、米の消費宣伝が余りにも少ない。したがって、小麦製品のテレビ宣伝がどのぐらい入って、どのぐらいのお金を使っておるのか、お調べになってくださるように頼んでありましたが、お調べになってくださっているか、これが一つ。  あれは民間の業者がやっているけれども、民間に負けないでこっちも政府が援助してでも匹敵するぐらいの消費宣伝の広告をしなければならないと思うのですが、この二点、答えていただきます。
  264. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 お尋ねございました麦製品に関する広告宣伝費、民間でどのぐらい使っているかということは統一的に調査を行っておりませんけれども、部分的でございますけれども、いままでわかりました点を御説明したいと思います。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 たとえばパンの製造業につきまして食パンの広告宣伝をかなりやっております。最近調査いたしましたところでは、主要五社の場合を見ますと、一社当たり平均広告宣伝費は約三億四千万円ということで、これは総売上高の約二%でございます。それからビスケットもかなりやっております。これは主要四社、一社当たり四億七千万円、これは総売り上げ高の四%、パンより高いわけです。さらに即席めん製造業、これも調べてみましたら、主要五社で一社当たり十八億五千万円でございますから相当なものでございます。これは売り上げ高に対して約五%。さらに中小企業関係で通産省が、中小企業庁でございますが、原価指標というのを出しておりますが、これは五十年度のものでございますけれども、それで見ますと、パン製造業の場合は一社平均五百万円、総売り上げ高の約一%。大手五社はパンの場合先ほど申しましたように二%、中小企業は通産省で調べは違いますが一%ということになっております。  これに対しまして、米関係はどうだということについてでございますが、政府といたしましては、予算措置も講じまして、テレビとか新聞、雑誌等でそういう広告媒体を使ってやるのと、それから米祭りというようなことを東京、大阪でやるとか、あるいは講習会をやったり、いろいろな指導書なりパンフレットを配るというようなことをやっておりますが、五十三年度におきまして六億五千万円ぐらいを予定をしております。国が直接やるものは六億五千万円計上しております。もちろん学校給食に米飯を導入するために炊飯施設を導入する、そういうものは除いておりまして、いわゆる直接的な広告宣伝的なものでございます。これらをやります場合定額助成のようなことをやっておりますけれども、県なり民間団体が協力してくれまして、国が出す以上にかなり負担をして、たとえば米祭りの場合なんかかなり出してもらっておりますが、全体でどれくらいということは、いままだ把握は実はいたしておりません。  それから、民間の個別企業でどうだろうか、米屋さんでございますが、これも早速調べてみましたので、総合的なものではございませんけれども、米屋さんの中で卸売業者を調べてみますと、これは非常に少ないのです。総売り上げ高に対して〇・一までいかないのじゃないか、高いところでもそれに達しないということではないか。さらによく調べてみたいと思います。  そういう意味では、米の消費宣伝というのは非常におくれているということは民間においてはもう歴然としております。政府側としては努力しておりますけれども、まだまだ民間の経費から比べればはるかに少ないということでございますので、今後それらにつきましても、金だけの問題ではございませんけれども、一層努力したいと思っております。
  265. 津川武一

    ○津川委員 いまの食糧庁長官の、足りない、これに対して大臣はどう考えているか、どうされるのか。  また、見ていると、そうめんみたいに、はしでこうやって、しょう油につけたのが上がっていく。見ていると私でも食べたくなる。米のものは、NNNで二秒か三秒ぽっと入ってくるだけ、まことに下手なんだな。金も足りないからそうだろうと思うけれども、大臣があれだけ米の宣伝に熱を入れているのだから、この点での宣伝で大臣の所信をひとつ聞かしていただきます。
  266. 中川一郎

    中川国務大臣 テレビというのは新規需要開発の場合に非常に効果があるものなんですね。何にもなかったものをうまそうに食べたらうまそうだなあと思うのですが、米はまさか食べているのを見たことがない人はないし、食べない人はないし、ここで米を食ったらうまいなんて言っても何かそらぞらしいし、これはなかなかむずかしいところだなあと思うのです。  ですから、これは国民の皆さんが農業の実態を見て、あのような異常な減反調整をしているのだ、そして百七十万トンもやって、周りの野菜の人が苦しみながら農村はやっている、こういうことを消費者がいかに理解するか。やはり理解と協調といいますか、協力ということでやっていく以外にないのかなあと。しかし、米に対する消費拡大については、学校給食から、新規需要の開発からずいぶんやっておりますし、最近ようやく、私が料理屋へ行くと、ああ米の大臣が来たとか酒の大臣が来たとかと言って、料理屋でも酒を出したり米の飯を最後に食わせるというようなことで、やはりうまずたゆまず、テレビその他も必要ですが、当委員会の問題として、それがだんだん政府の問題として国会の問題として輪を広げて、国民の理解と協力をいただく。特に私は、農協あたりがもっと自分のつくったものを、政府の宣伝にまつばかりでなく、農協みずからがもっと真剣に、減反調整が厳しいというならば、これを避けるための努力を農協みずからが、やはりラーメンとかパンに安易に食糧を求めるのではなくて、米というものを大事にするんだという農協を中心にしての全国的な動き、もちろんみずからが消費拡大を実践する、同時に消費者に向かってやる、こういう総ぐるみ運動を農業団体にも強くお願いしたい、こう思っておるわけでございます。
  267. 津川武一

    ○津川委員 小麦でつくったものの宣伝は、いま食糧庁長官が言ったみたいに、企業がかなり力を注いでいるので、それに対して政府ももっとこういう宣伝に力を入れるべきことを強く要請して、次の問題に入っていきます。  そこで、私たちですが、ペナルティーなどと思われるようなことで農民に威圧をかけたり、そして農民と十分相談もしないで減反を押しつけていくことには真っ向から反対しなければなりません。これが一つ。  二つ目には、だからといってお米が余っていいというふうに私たちは考えていません。したがって、農民が進んで、自主的に、民主的に、自分の感じで、感情でお米から他の作物に転換していくような条件をつくるべきだ。そういう条件ができたならば農民は喜んで稲転をして、日本のお米過剰という状態が解決されると思います。  そこで、いま農民が稲転に踏み切れないいろいろな条件の一つには、稲作との収入の差がございます。第二番目には、稲作から大豆などに移っていっても土地の条件が合わない。第三番目は、営農で、機械化やいろんな品種なんかの問題でこれはためらわざるを得ない。第四には、稲には日本の共済制度の中で一番進んだ共済制度がある。次に転換していってもこういったことがなかなかできない。そこで、こういうもろもろのことが、その他のことが解決されるならば、稲転が非常によくいって、米の過剰状態は解消されて、日本農業がかなりよく伸びていくと私は思います。  したがって、第一にお伺いしたいのは、農民が自主的に稲転ができるように、政府から協力を求められたときに進んでやれるような対策、これをどう考えているかということをまずお答えいただきます。
  268. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにそのとおりで、単にやりなさい、条件が悪くてもやれ、やらなかったらペナルティーをかけるぞ、こういう姿勢じゃないのです。どうしてもやらなければならぬのは百七十万トンである。それには政府協力しますから農家の皆さんも理解をしてください。そして、やるに当たってのいろんな問題があれば、これはお申し出ください、御協力申し上げる、こういう仕組みでございます。御協力申し上げる幾つかの問題については、事務当局からそれぞれ説明をさせます。
  269. 大場敏彦

    ○大場政府委員 転作のための基盤の整備ということでございますが、御承知のとおり、基盤整備は農林省の予算の中でも特に重点を置いて五十三年度予算を編成した中の一つであるというふうに私ども理解しております。その中でも特に、稲作の転換のための条件づくりという意味で、たとえば圃場整備事業、そういったものにつきましては、基盤整備の伸び率以上に重点的に伸ばしているということもしておりますし、それから、実施の仕方につきましても、通年施行という形の原則を採用する、あるいは事業費の配分等におきましても、稲作を転換する意欲の高いところへ重点的に配分する等の措置も講ずることとしております。それから、転作のための条件づくりとしては、いろいろ当委員会でも御議論があったわけでありますが、その中の一つとしての、たとえば排水条件の整備、そういったことにつきましても、圃場灌排事業等につきましても、それ相応の手当てをしたり、あるいは農道その他の整備につきましても、稲作転換というところに焦点を置いて予算の整備をしておる。それから配分につきましては、特にそういった関連事業につきましては、転換のために最初から配分しないで、ある相当量は留保しておいて、それを稲作転換のために重点的に、傾斜的に配分していく、こういった姿勢で臨もうとしております。
  270. 野崎博之

    ○野崎政府委員 価格等の問題につきましては、御承知のように稲作と均衡のとれたかっこうで奨励補助金を出す。それからまた、将来相対的に畑作物と水稲との価格差を縮めていくように考える。それから、営農指導につきましては、技術指針の中でもいろいろそれぞれの作物につきまして、反収の問題、あるいは栽培技術の問題等示されておりますが、各県等におきましても、それぞれの地域に応じた技術指針を示しておりますし、また、普及事業においては、従来からそういう不足する作物に対してどういう栽培体系がいいかということを重点的にやっておったわけでございます。それからまた、水田総合利用対策のいままでやっておったその際にも、転作作物等のためのいろいろな指導助言はやっておったわけでございますが、五十三年度からは特に水田利用再編等特別営農指導事業とか、要するに、特に今回の水田利用再編対策に応じまして、現地でいろいろな実証展示圃をつくって、そこで栽培体系等を見せながら現地の農民を指導する、そういうような営農指導をやっておりますし、また、共済については、御承知のように本年度法律改正案を準備いたして、そういう御要望に沿うようにやっていく所存でございます。
  271. 今村宣夫

    今村(宣)政府委員 水田利用再編対策に関連いたしまして、転作対象作物であります畑作等の経営の安定を図りますために、農業共済制度を拡充することといたしております。畑作物共済及び園芸施設共済につきましては、昭和四十九年度から試験実施を行ってきたわけでございますが、その実績等を踏まえまして、昭和五十四年度から本格実施へ移行することを目途に、この通常国会に農業災害補償法の一部改正法案を提出することにいたしておりますので、その際はよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  272. 津川武一

    ○津川委員 転換対策、わかりました。  そこで問題の、押しつけ、強制というのか、協力、お願いするという形に必ずしもなっていない。たとえば青森県の稲垣村という村、ここは一戸当たりの農家農業所得の大きさで日本のビッグファイブに入っているところです。二千二百六十二ヘクタールの水田の中で、いままで土地基盤整備を行われているのが約二〇%。そこで、この村の村長が通年施行で稲転をやることに決めたのです。県庁とも相談して、五十三年に二百三十四ヘクタール、五十四年に三百四ヘクタール、五十五年に五百四十ヘクタール、こういうことをやることに決めて、下と相談している。ここには農協が三つある。その一つの農協で、職員が私に訴えてきたのです。その農協で、二百三十四ヘクタールの中で九十ヘクタール受け持つ。そうすると、政府からの奨励金四千五百万円、これに対して、近代化資金などの系統資金の元利払いが二千五百万円、生活資金などのための農協からの借入金の元利払いが一千万円、建物共済などの掛けていかなければならないものが一千万円。四千五百万円がこれでちょんになってしまいます。ほかに公租公課で一戸四十万円、計千八百万円が足らなくなる。生活資金がそっくり足らなくなる。いままで九千万円からの収入を上げておったので、それでやっておった。それでも政府に言われてきたので、全部通年施行でやるというので役場が農民に話している。農家は千八百万円の公租公課を払うお金と生活資金がないためについていけない。これが現状です。したがって、農家にどうしてもついてこいと言うならば、この系統資金の元利払い、建物共済などの元利払い、こういうものの一時延期ができるのか、それから、土地改良区の整理組合の賦課金など通年施行をやるから使わないから、そういったものの免除ができるのか、これを聞いてくれというわけなんです。  こういう形で、政府協力を求めてお願いしているという再編対策が行われているのです。これだけの犠牲を農民に強いる、このことを村の行政を通じてかなり強引にやって、農民が音を上げている、この状態でいいのかというのが第二の質問。  第三が、これに対して皆さんがいろいろな申し入れをしている。いまみたいに元利払いの一時延期をしてくれなどという相談、申し入れ、農林大臣はその相談に応ずると答えておる。これは実際できるのか。この点まず答えていただきます。  もう一つ、青森県に常盤村という村がございます。ここでは村長の名前で、こういう説明書がついておりますが、これは水田利用再編対策についてのお願いです。まさに形としてはお願い。ところが、ここでは小麦が十アール当たり七俵上がる。だから、所得の合計は政府の奨励金を入れると十三万五千円になると言っている。稲をつくると十二万二千円にしかならないから、得だからこの稲転に応じなさいと言っているのです。ところがどう見てみても、七俵なんか上がることはない。この村の特殊なところにあって、苦労さんたんして他から灌漑排水をして、いつか一回は七俵つくったことがあります。ところが、青森県の現状からいうと四俵です。こういう形で農民におりていって、押しつけになっているわけです。  宮城県。宮城方式というのがあって、皆さんが申告しなさい、それでやろうと言っている。そうしてやるならばと言って、大豆を植えなさい、反収二百十キロ。ところが、この宮城県、調べてみたら、反収は五十年で百二十キロ、四十九年で百二十六キロより上がっていない。こういう形に対して農民が、違う、二百十キロ上がると言うが、違う、だから受け入れられないと言っている。これに対して受け入れろと言っている。こういう形の、農民がやろうとするときの指導の間違いの指摘をしたときに、こういうふうな申し入れをしたときに、これを受け入れる体制があるのかどうか、この点が質問の第三点になりますか、まずこの点、稲垣村と常盤村と宮城県の実態について答えていただきます。
  273. 中川一郎

    中川国務大臣 それに対してお答えは事務当局から考え方を申しますが、ぼくは津川さんの考え方がちょっと本末転倒しているのじゃないかと思っているのです。いかに過剰生産というものが農家にとって厳しいものであるか、そこからスタートしなければならぬのです。リンゴでもミカン農家でも、最近では野菜農家でも、過剰生産のときは生産費を割ってしまって大変な苦労を農家の皆さんが九〇%背負っているわけなんです。そこで、政府も一〇%程度になるか、その苦しいときには手当てをする程度なんです。これだけ百七十万トン、在庫五百四十万トンを持ったときに、農家は何にも犠牲にならぬで、もっといいものがあったらつくってやろうという考え方は改めてもらわないといけないのです。過剰生産は、政府が一〇〇%責任あるのか、だれがそこに責任あるのかは別にして、過剰生産になっていることを解決するのには、自分も汗を流さなければ長期的にこの制度はもたない、こういうふうに思っていただかなければ、米つくっているよりよくなったらやってやるというのでは、これは政府がお願いしなくたってできるのです。その辺の発想を政治家の皆さんにも御理解をいただいて、過剰生産の責任政府も相当持ってもらうが、やはり農家も団体も地方公共団体もみんなでこの難局を乗り切ろう、こうならなければ私はいかぬと思うのです。  そういう発想ではありますが、この考え方が間違っているかどうか、私は間違っておらないと思うのです。全部政府責任でやったのであって、農家は一切損しないでこの際これでまたもうけようなんということでは、物の考え方が違うのじゃないか、私はこう思っておりますから、長期的に農村を守っていくならば、ぜひとも過剰生産を避けなければならぬ、それには政府も力をかせ、都道府県も汗を流してください、われわれも若干の応分の協力をしましょう、こうなければいかぬと思うのです。これをやったら有利になるから、この程度までやれ、これではちょっとひどいと思うのですが、いま具体的に要望のあった点については事務当局より答弁させますが、基本的考え方はその辺のところを踏まえていただきたいと思うわけです。
  274. 大場敏彦

    ○大場政府委員 基盤整備事業、土地改良事業についての賦課金の納め方の問題は私からお答えいたします。  土地改良事業をやるときには当然その受益効果というものを測定して、それから農民が払うべき賦課金と彼此考量して事業を始めるわけであります。ですから、本来的には、しかもその賦課金がかなり長期にわたって延納が制度的に許容されておりますから、そういう問題は起きないのじゃないかと私どもは思っております。ただ、転作の結果、従来予定しておりました作物より違った作物ができるということで、そういうことはケースとしてはあり得ると思いますけれども、これはいま先生も御指摘になりましたように、そのために米と他の作物との所得格差を考えて転作奨励金が交付されているということもありますし、それから理屈にわたるようでありますけれども、本来的には、受益効果というものは後年度において発生するわけでありますから、現在も相当長期にわたって延納が認められているものを、さらに延期するというような事態には直ちにならないのじゃないかと思っているわけであります。四十六年度から休耕ないしは転作等もやっておりますが、そういったことと同じようなことを今回展開するわけでありますが、従来もそういった措置はとっておりませんので、そういう意味で、しばらく様子は見たい、現在直ちにそういった必要性が出てくるというふうには私どもは認識しておりません。
  275. 津川武一

    ○津川委員 また大臣とやり合わなければならなくなりました。前二回やったので、なるべくきょうは少し詰めようと思っていたのですが。  大臣農業をやるかやらないかは国民の基本的な権利でございます。これはあなたが覚えていると思います。どういう作物をつくるかも農民の基本的な権利であります。稲を植えようが、稲をやめようが、大豆を植えようが、稲から大豆にかえようが、大豆から米にかえようが、これは基本的な権利でございます。このことはどなたも侵すことない基本的な権利です。この点、大臣はどう思っておられるか、これが一つ。  第二番目に、生産調整してくれと言った。私のたんぼは湿田で、どろ地帯、さるけ帯でほかのものはやることはできません、どうしてもやるならば一年か二年かかって排水してください、そのときなら相談に応じます。この農民の声と、百七十万トン余るのだから、減反しなければならぬからやってくれという政府協力への要請と、どちらが優先するのか。国がやる仕事だからおまえそこでもやれということは、これはまさに国家ファッショになります。これは基本的に対等です。農林大臣の言うことを聞いていると、百七十万トン、三十九万ヘクタールは、国のどうしてもやらなければならぬ仕事だから、農民よ、おまえらは自分の利益を犠牲にしてもこれに従え、こう号令しているのです。この号令している点についての見解。  重ねて言います。農業する権利は国民の基本的な権利である、どんな作物をつくろうが農民の基本的な権利である、こう考えておりますかというのが一つ。  二つ目には、湿田でどうにもならない、ほかのものをやれないから、もう一年なり二年なり条件を直してからやるというこの農民と、いま百七十万トンやらなければならぬからやれというこの国の方針と、どっちが法律的に、憲法的に優先するのか。私は全く対等である、こう思うがどうか。  三つ目には、いままでそういう意味で、国家、このためには国民が犠牲を払っても従えということを命令してきてやしないか。  三つの点、答えていただきます。
  276. 中川一郎

    中川国務大臣 ですから、この生産調整は、権力でやってくれとは絶対言っていないのです。やらないことも自由でございますと言っているのです。  ただし、やらないところには、国民の基本的権利ですから何をつくろうと結構です。どこの職業でいこうと結構です。その生産調整協力しないお米は政府は買うわけにはまいりません。政府も、国民に必要な食糧を買うことが食管法の精神ですから、その米は食管法で買えません、自主流通米で流してください。そうして、そういう農家が多くなっていけば、法律の仕組みは、要らない米が日本じゅうに流れたら食管法の仕組みはなくなりますよ——なくなるとは言わない、なくなる危険がありますよ。それでもいいから米をつくりますというものを、しゃにむにやろうなどということは一つも言っておりません。基本的人権があればこそ、法律までしないで、理解と自主的にやってくださいと言っているのであって、命令したことも強要したことも一切ありませんから、共産党より以上に私の方が民主的でございます。
  277. 津川武一

    ○津川委員 そこで、買い上げない、来年に積み重ねる、これは、政府が繰り返し罰則でないと言っている。だが、これはまさに憲法に違反した、国民に対する不平等、差別だ。この点での国民の、農民考え方は、アンケート調査してみると、政府から罰則を加えられるからやらざるを得ないと言う。これは何といっても罰則だ。  もう一つ、地方自治体で、一〇〇%やれないときに、次の政府の補助金やいろいろな補助事業の採択や金融制度の問題で差別待遇されやしないか、だから仕方なく従わざるを得ないのだということが出ている。このペナルティーだと考えている農民考え方が間違っているのか、これをどう納得させるのか、地方自治体にこの点で差別待遇するのかしないのか、答えていただいて、私の質問は終わります。
  278. 中川一郎

    中川国務大臣 国家政策は、農民全体を守るという大きな高邁な考え方からやっている法律に基づく行為でございますから、国家政策に協力してくれた人には手厚く処置をしていく。そしてまた、そういうことのないように協力してくれるように理解と協力を粘り強く求めていきたい。しかし、憲法で保障されておりますから、本人がつくりたくない、いやだというものを、無理やり権力で中央集権力でやるような考え方はさらさら持っておりません。生産調整が円滑にいって、食管制度が堅持されて、長い意味農村もそしてまた消費者もよくなる、こういう方針に政策は重点を置かれる、こういうことでございます。(津川委員「地方自治体に対して差別は」と呼ぶ)地方自治体に対して差別するようなことはいたしておりません。地方自治体はもう全県が御協力いただいておりますし、いま協力しない市町村があるなどということは聞いておりませんから、そんなことはいたさないつもりでございます。
  279. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  280. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会